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1973-03-13 第71回国会 衆議院 予算委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月十三日(火曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 根本龍太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小澤 太郎君    理事 仮谷 忠男君 理事 田澤 吉郎君    理事 湊  徹郎君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 谷口善太郎君    理事 山田 太郎君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君       伊能繁次郎君   稻村左四郎君       臼井 莊一君    大野 市郎君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    小平 久雄君       正示啓次郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    塚原 俊郎君       野田 卯一君    野原 正勝君       保利  茂君    細田 吉藏君       前田 正男君    松浦周太郎君       松永  光君    松野 頼三君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    大原  亨君       北山 愛郎君    小林  進君       田中 武夫君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    細谷 治嘉君       松浦 利尚君    安井 吉典君       栗田  翠君    庄司 幸助君       中島 武敏君    岡本 富夫君       高橋  繁君    安里積千代君       小平  忠君    永末 英一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 櫻内 義雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         郵 政 大 臣 久野 忠治君         労 働 大 臣 加藤常太郎君         建 設 大 臣 金丸  信君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       江崎 真澄君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       田代 一正君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省証券局長 坂野 常和君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         国税庁長官   近藤 道生君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林大臣官房予         算課長     渡邉 文雄君         農林省構造改善         局長      小沼  勇君         農林省農蚕園芸         局長      伊藤 俊三君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         食糧庁長官   中野 和仁君         通商産業省貿易         振興局長    増田  実君         中小企業庁次長 森口 八郎君         運輸省海運局長 佐原  亨君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         運輸省航空局長 内村 信行君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省住宅局長 沢田 光英君         自治大臣官房審         議官      森岡  敞君         自治大臣官房審         議官      近藤 隆之君         自治省行政局選         挙部長     山本  悟君  委員外出席者         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     南部 哲也君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月十三日  辞任         補欠選任   灘尾 弘吉君     松永  光君   福田  一君    稻村左四郎君   安宅 常彦君     松浦 利尚君   津金 佑近君     庄司 幸助君   不破 哲三君     栗田  翠君   矢野 絢也君     高橋  繁君   安里積千代君     永末 英一君 同日  辞任         補欠選任  稻村左四郎君     福田  一君   松永  光君     灘尾 弘吉君   松浦 利尚君     安宅 常彦君   栗田  翠君     不破 哲三君   庄司 幸助君     津金 佑近君   高橋  繁君     矢野 絢也君   永末 英一君     安里積千代君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算  国政調査承認要求に関する件      ————◇—————
  2. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これより会議を開きます。  昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、締めくくり総括質疑を行ないます。永末英一君。
  3. 永末英一

    永末委員 私は、民社党を代表いたしまして、四十八年度予算案に対する締めくくり総括質問を行ないたいと思います。  田中総理民主政治というのは、総理国民との間に信頼感がちゃんと結ばれているというのが、私は一番の要諦だと思います。ところが昨今、国鉄における混乱は目をおおうものがあります。通学の小学生が乗りおくれてみたり、あるいはまた、通勤の人々が乗ろうとすればけがをしてみたり、とんでもない混乱が起こっております。これに対してどう対処するお考えか伺いたい。
  4. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 間々申し上げておりますように、国鉄国民の足であり動脈でもありまして、国民生活の上では不可欠な機関でございます。その意味で、国有鉄道順法闘争という名における違法行為が依然として行なわれておるということは、はなはだ遺憾なことでございます。労使の間で可及的すみやかに解決されるように、国鉄管理職側にも依頼をし、また運輸当局政府側も、可能な限り正常な状態に回復するために努力を続けておるのでありますが、もう最後のどたんばまできていると思いますが、いまだ解決ができず国民各位に迷惑をかけておることに対しては、たいへんな責任を感じておるわけでございます。  それで、新聞に報道されるような状態、また、与党の議員各位にも現場状況等も視察をしてもらっておるわけでありますが、混乱は相当きびしいようでございますし、乗客側から感情的な強い批判も出ておるのでございまして、政府としては可能な限り最大努力を行なって、一日も、いっときも早くこの問題の解決が行なわれ、国民の負託にこたえ得るように努力を続けてまいりたい、こう考えております。
  5. 永末英一

    永末委員 ただいま総理の御答弁中に、順法闘争といっているが違法行為であると言われました。違法ですね。
  6. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これはもう当然違法だと考えております。
  7. 永末英一

    永末委員 一刻も早く解決をしたいと言われ、運輸当局を督励し、ということがございましたが、私は一時間二十分の時間をいただいておりますが、運輸大臣に質問するつもりはございません。あなたは総理として、現場へ行ってしっかりやれと言われるつもりはございませんか。
  8. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 公労委に提訴をしたのでありますが、これも不調に終わっております。労働大臣にも再度にわたって徹宵努力を続けてもらっておるわけでございます。必要があれば、もう残っておるという問題は具体的化されておるわけでございますし、国労との間にも協議が行なわれておるわけでございますので、政府は一体の責任でございまして、政府ができる最大努力を続けてまいりたい、こう思います。  私が出ていってまとまるものなら、それは一向出ていってけっこうでございますが、政府には労働大臣もあり、運輸大臣もありますし、また毎日報告も聞き、指示もしておるわけでございますから、とにかくあらゆる角度から正常化のために努力を続けてまいりたい、こう思います。
  9. 永末英一

    永末委員 違法状態をそのまま放任しておくことは一刻でも猶予ならぬ問題である、これが、先ほど申し上げました、あなたと国民との信頼感をつなぐ重要な契機だと思います。しっかりやってください。  さて、昨日EC六カ国が、域内では固定、そうして共同フロートをきめました。これは通貨戦争といわれております。これを受けて、この一カ月来わが国にもいろいろな問題がございましたが、昨日また通産省では、中小企業転廃業をひとつやらせるんだというので、要綱をきめてやろうとしておられるようでありますが、中曽根通産大臣、どうですか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国際通貨調整たびごとに、わが国中小企業の一部には、企業を継続していく上について、継続可能か不可能かというような喫水線上を上下しているようなものがあるわけでございます。ケミカルシューズだとかクリスマス電球などはその中に該当します。そういうものは、前回の切り上げのときに、一部は韓国へ進出したり、あるいは一部はほかの仕事に転換したりしたのがございます。かなりそういう業種もございます。こういったようなことが何回も続くということは悲劇でございますから、そういう将来性の薄いものについては、この際思い切った構造転換を行ないまして、安定した企業として繁栄できるような措置を、政府も積極的に協力して講じたい、そういう考えに立っていまいろいろ検討しているところであります。
  11. 永末英一

    永末委員 転廃業というのは、させようとするほうはきわめて簡単に口にいたしますが、するほうにとってはまさに死活の問題で、通貨戦争のいわば戦死者ですね。とんでもない話だと思います。したがって、これは十分に検討してもらわねばなりませんが、言うならばその一山が、この月の十六日パリにおける十四カ国蔵相会議で行なわれようといたしております。なるほど本国会では予算案審議中ではございますが、言うならばその司令官に相当する——司令長官総理でございますが、司令官に相当する愛知大蔵大臣は、野党の了承を得て、やはりパリの十四カ国蔵相会議には出席して、政治家として各国責任者と渡り合うときが来ておると思います。総理愛知大蔵大臣出席させるおつもりはございませんか。
  12. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま予算最終段階になっておりますので、国会尊重、また予算審議重要性ということで考えておるわけでございますが、予算審議状況と、また各党の御承諾が得られるということであれば、しかもこれは両院でございますが、衆参両院各党の御了承を得られる、また出席をすることが望ましいという各党の御意見が明らかになれば、政府としては出席をしてもらうことが望ましいことだと考えております。これはあくまでも国会の問題がございますので、国会の御意思によってということをひとつ御理解賜わりたい。
  13. 永末英一

    永末委員 二年以前から発生いたしましたこの問題は、今後しばらくの間、きわめて重要な日本の経済のワク組みをきめる問題でございまして、私は、またわが党は、愛知大蔵大臣出席をして、田中内閣としての責任をりっぱに果たすべきだと考えます。  さて、本日は三月十三日でございますが、予算審議というのは、一日一日を争いましても、四月一日には成立する見込みは私はないと思う。参議院がわずかの日数で審議を結了するということは、いまのところ考えられないとするならば、政府ははっきりと暫定予算を出して、そして各党の、もし開会をそのまま続けるということに同意が得られなければ、予算委員会を二日か三日おくらせて、その間愛知大臣を送る、このくらいの決意があってしかるべきだと思いますが、あなたは、暫定予算をその意味合いで出す決意はございますか。
  14. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは常に申し上げておりますとおり、総予算国民生活に重大な影響があるものでございます。ましてや、御承知のような国際情勢下における年度予算審議でございますから、一日も早くこれを年度内成立をさせていただきたい、こういう基本線は変わっておりません。しかも、参議院予備審査も行なっておるわけでございますし、衆議院で三分の二の日時を要した法律案でも、三分の一であげていただいておる例もございます。そういうようなこともございますし、事態の重大さを認識されて、良識に訴えるということ以外にはないわけでございます。  特に暫定予算の問題がございましたが、これはなかなか重大な問題でございます。いまにして政府参議院審議権を拘束するような立場暫定予算を出したらたいへんなのでございまして、せっかくの御発言でございますが、そういうことはいたしません。これはもうとにかく、参議院審議というものが、自然成立かもしくはぎりぎり一ぱいまで審議がかかるのだというようなことを予測して暫定予算を出すというような挙に出た場合、それこそ大問題を惹起するわけでございまして、これはいっときも早く参議院に送っていただいて年度内成立をはかるように、こういうことでぜひお願いをいたします。
  15. 永末英一

    永末委員 年度内成立総理がなお固執しているというのは、議会側からいいますと、参議院審議権を拘束しているように聞こえますね。十分に参議院予算案審議をお願いするという態度なら、もうこの際、愛知大蔵大臣はきわめて重要な任務があるので、どうしても年度内にいかなければ、暫定予算をお願いして、どうぞ行ってきていただきたいと思うがいかがでしょうか、こうやって参議院の各会派にも御相談いただくのが筋でしょう。いかがでしょうか。
  16. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 参議院の御審議参議院の自主的な御判断でやっていただくわけでございますし、政府予算審議をお願いしているわけでありますから、参議院予算審議が促進されるように、政府としても審議最大の協力をするということでなければならないので、いまから、参議院審議の結果を予測して暫定予算を提出するなどということは、それは可能な問題ではないわけでございまして、これはもうどなたが私の立場になっても、そういうことはもうできるものではないということは、これはもう過去の例に徴してもそうでありますし、これは将来においてもそういう原則であるということだけは御理解をいただきたい。  愛知大蔵大臣が、もし皆さんの御了解を得て、また皆さんの御激励をあとにして国際場裏に出発をすることがあっても、それだからその間は暫定予算をやったらどうかというような問題とは、これは全く別な問題でございまして、そういう状態が誘起されるなら、それはもう出席できないということもありますので、それはひとつどうぞ、参議院審議権を拘束するようなことは、一切考えておらないということを申し上げます。
  17. 永末英一

    永末委員 それは暫定予算が出たときに、いまあなたの言われたことをもう一ぺん反すうしてみたいと思います。私は、何も参議院だけのことを申し上げておるのではないので、総括締めくくり質問ではございますが、衆議院予算審議はまだ終わってないのでございますから、あと何日続くかわかりませんよ。だから、そういう心の態度を持たれたらいかがかということを申し上げているのでございます。  さて、EC諸国は十九日に為替市場再開をきめました。わが国為替市場はいつ再開するつもりですか。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 為替市場再開は、なるべくすみやかにやりたいというのが政府の最初からの態度でございますが、今回の閉鎖は、ヨーロッパ市場の動向を見るということが大きな理由でございますから、ヨーロッパ市場がいよいよ十九日に再開ということの見据えがはっきりいたしますれば、同調するのが自然の成り行きかと考えておりますが、十九日にはたして再開できるかどうか、ヨーロッパのほうも、まだ最終的にははっきり見取れない状況であると思います。
  19. 永末英一

    永末委員 ヨーロッパ諸国は、各国間の取引が、それぞれの国の通貨で行なわれる量が非常に多いわけであり、聞くところによれば、六〇%程度そういう貿易が可能であると聞いております。しかしわが国の場合には、ほとんど円建てで貿易をやることができない。したがって、為替市場がなければ、その被害たるや、わが国貿易に関係する者にとっては非常に大きいわけですね。その意味合いで、私は一刻も早く為替市場再開されなければならぬ問題だと思います。いまの大蔵大臣の御答弁では、ヨーロッパ待ちヨーロッパがきまらなければ何とも言えない、こういうお話でございますが、それでは、ヨーロッパ再開日がきまればその日に再開する、こういう意味ですか。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 気持ちとしてはなるべく早く開きたいわけでございますから、ヨーロッパで先般の会議がございましたときも、ECとスウェーデンは、十九日に再開ができるように努力しようという申し合わせになっておりますが、日本は自主的な立場でこういう問題は処理すべきである、こういう立場が留保されておりますから、考え方としては、ヨーロッパ市場再開されなくともその前に開くということもできるわけでございまして、日本としては、為替管理というようなものが十分であると思いますしいたしますから、考えようによりますけれども、ただ、何しろ異常な状態でございますから、どういうことが起こるやもしれない、やはり大事をとるのが国益を守るゆえんである、そういう考慮から、ただいまのところは十六日まで市場閉鎖しております。そして十六日まで市場閉鎖についての通達をいたしますときも、その前であっても開場することがあるべきことを、念のためにその通達の中にも書いておいたような状況でございまして、これが政府の姿勢でございます。
  21. 永末英一

    永末委員 それでは、ヨーロッパ市場再開にかかわらず、それ以前にも再開することありという用意をしておる、こういうふうに解してよろしいな。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのところは、十六日、今週の金曜日まで閉鎖をしておる、こういう状況でございます。考え方としてはそれ以前にも開き得ることもあり得る。しかし現在の見通しとしては、金曜日まで閉鎖しておいたほうが安全であろう、こういうふうに考えております。自然そのことは裏からいえば、来週には開きたいということ、当然でございます。
  23. 永末英一

    永末委員 市場再開せられたとき、現在のような変動相場制でいくおつもりですか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そう考えております。
  25. 永末英一

    永末委員 変動相場制ヨーロッパもいまのような形で続きます。個別に変動相場制をとる国もあれば、いまのように共同変動相場制をとる国もあります。そうしますと、おもな貿易国というのが、非共産圏は大体変動相場制になってきておるということになりますと、相当長期変動相場制が続くのではないかと思われます。大蔵大臣のお見込みはいかがでありますか。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 変動相場制に移行いたしましたときは、ヨーロッパ状況が今日のようではございませんでしたが、そのときでも、日本としては変動相場制を相当期間続けるということを考えておりました。適当の期間変動相場制をとっておいたほうがよろしいという考え方でございましたが、特に今回のように、EC諸国がどういう形になりますか、これもさだかな見定めにできませんが、一応共同フロートというような、つまり変動相場制度に入ることになる公算がきわめて大きい、こういう新しい情勢が出てまいりましたので、それらも十分考慮の中に加えまして、適当の期間変動相場制で円の実勢を見据えていくということが適当であろう、こういうふうに考えを強くしております。
  27. 永末英一

    永末委員 三月三十一日の会計年度終了日は、変動相場制が続いておりますね。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いつ固定相場制に返るかというその時期については、いま申しましたような考え方でございますから、いま何とも申し上げるほど具体的に考えておりません。適当の期間、相当の期間ということで御理解をいただきたいと思います。
  29. 永末英一

    永末委員 私の推測では、四十七年度の会計年度の終わるときも変動相場制が続いておるであろうと思います。  さて、一応仮定を立てますが、その前提に立った場合に、私企業が三月決算をやりますと、きのうも、また先週の終わりにも問題になったのでありますが、私企業の期末の決算のときに、アメリカがドルを切り下げる前に取得したものについては評価損を認めますか。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点が昨日もいろいろの御質疑をいただいた点でございますが、三月期の決算を前に控えておりますから、従来の企業会計の基準のとり方並びに会社に対する税の取り方等につきましては、早急にいろいろの御意見を謙虚に伺いまして善処いたしたいと思っております。  御指摘の、特に長期外貨建て債権債務評価損評価益等をどういうふうに仕切ったらいいか。これには企業会計審議会でも三案ありますことは昨日も問題にせられたところでございますので、これらについては、あらためてとくと、しかも早急に検討をいたしたい、こういうふうに思っておりますので、具体的に、そのとおりとか、そうはいたしませんとかいうお返事は、もうちょっとお待ちいただきたいと思います。
  31. 永末英一

    永末委員 日本銀行の事業年度が終わったときの決算はどういう形になりますか。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日本銀行は、御案内のように前回の例もございますので、利益金あるいは積立金等によって、固定相場が変わりまして外国為替相場の基準価格が変わりました場合には、前回の例によりまして処理をすることを考えております。
  33. 永末英一

    永末委員 外為会計も、変動相場が続いておる限り、年度決算いたしましても、いまのお話ですと固定相場に返らない限り評価損は計上しない、こうなりますね。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日銀の場合と外為会計とは多少異なりますけれども、外為のほうは、これもお話しすると長くなって恐縮なんですけれども、資金会計であって、そして貸借対照表の上に明らかにしておけば、その処理を、必ずしも固定相場に返りましたときでもやらなくともいい、こういう考え方がございますが、何しろいまのところは変動相場制をとっておりますから、どうしても仮定の問題になるわけでございますが、外為については貸借対照表の上に明らかにしておけば、必ずしもそのたびごとに処理はしなくてもよろしい。それから日銀の保有外貨についての評価損が出ました場合、これは固定相場が変わった場合でございますが、これは前回と同様の処理をするつもりでございます。
  35. 永末英一

    永末委員 私が伺いたいのは、私企業はこの前固定相場に変わったので、いまおっしゃったような税法上の措置をとられ、評価損を認めた実績がありますね。この良否は別ですよ。さて日本銀行の場合には、この前も固定相場に返りましたから、事業年度の終わりに評価損を立てられたわけだ。したがって、結局バランスをとったあげくの果て、政府に対する納付金が減ったと思います。ところが外為会計は、固定相場に変わりましたから、評価損はこの前立てました。それだけのことである。私が伺いたいのは、一体いままでの御説明でも、外為会計はただ単なる資金の移動を記帳するのであるからという表現の中には、これが実害を与えたのである、損をしたのであるという感覚は少しもないのですね。日銀の場合には明らかに納付金が減るというので、一般会計に損害を与えたことははっきりするわけです。外為会計はそうは思われませんか。損害を与えているという感覚はございませんか。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはしかし、貸借対照表の上では評価損というものが明らかになっておりますから、外貨の保有によってその期においてこれだけの損をしたということは明らかになっているわけでございますが、資金会計のことでもございますし、理論的には外国のほうの側の平価の切り下げ、切り上げがあるような場合にも、それに応じて評価益が出る場合もあるし、評価損が出る場合もあるし、その期その期でその評価損を処理をする必要はないし、適当でもないのではないか、こういう考え方でございます。
  37. 永末英一

    永末委員 益のことを聞いているのではありません。私が伺っているのは、固定相場に変わったら、こういうことです。それは外為法の八条で、相場に変更があった場合に、変更後の外国為替相場により改定する、こう書いてあるからそれでやっておられるわけだ。私が伺いたいのは、三月三十一日に変動相場が続いておった場合にどうするのか聞いている。もし私企業に対して評価損を認めるなら、同様のことをやはりやらなくてはいかぬのじゃないですか。その場合でも、この八条があるからといって三百八円で計算して、全然知らぬ顔しますか、伺いたい。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは外為特別会計及び日本銀行等の場合においては、為替相場が変わりましたときに仕切りをし直すわけでございますから、変動相場制のときにはやはり三百八円という、現在空なものになっているというお説でございましょうが、三百八円のレートで計算をする、こういうつもりでございます。
  39. 永末英一

    永末委員 大蔵大臣、それならば私企業においても、固定相場に変わらない限り三百八円で計算せよということになりますね。そう言われますね。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それが、いまお手元にもお持ちかと思いますが、企業会計審議会意見の中にも、たとえば三百六十円から変動相場になった、あるいは三百八円になったというときに、取得の時期で計算をすると、そのときの相場を用いてもよろしいというそういう意見もあることは御承知のとおりでございますから、私企業の会計経理の場合でも、そういう考え方は十分に成り立ち得ると思います。
  41. 永末英一

    永末委員 私は、私企業であろうとそれから日本銀行であろうと、外為会計という特別会計であろうと、同じように取り扱わなければ、国民の側から見て、片方は、変動相場だからといって差益損を私企業で認めて、税金は取らぬということをやってみたり、ところが、政府は何ぼ損をしたか見たいのに、そのときには差益損を計上せずして、買ったときの三百八円で計上して損害はありませんという数字が出てきたのでは、わからないではないですか。この辺は、私企業であろうと公共体であろうと、統一的な扱いをするということでなければ、国民の側から見て、一体今回のこういう為替の問題というものが、国に、すなわち国民にどれだけ実害を与えたかはっきりしない。統一的にやるおつもりはございますか。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国の場合は、公定の相場というものが現在ないわけでございますから、そのときに変動相場制の中で恣意的なレートをそこに使うということは、公の立場からはいかがかと思いますが、そういう考慮も必要ではないかと思います。したがって、固定相場制に返りましたときに、いかなるレートがきまるか、そのレートによって評価損というものを明らかにすべきである、こういうふうに考えております。
  43. 永末英一

    永末委員 えらいがんばりますが、変動相場、相場といいましても、固定相場をたてまえとして、固定が正常の状態で変動相場は異常な状態が動いているのだ、こういう考え方がそういう答弁をさせるのです。しかし、もしほんとうに長期、数年にもわたって変動相場が続いて、その場合に二会計年度にわたっても続いている、しかもあなたも言われたように、三百八円という空なこの数字を固守して決算をしていくということは、日本銀行のためにも、また外為会計のためにも私はおかしいと思う。あなたはもし、空で決算すれば差益損がございませんから、損したという感覚はあるのですかないのですか。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは変動相場制施行中、いわば毎日レートが出ているわけでございますから、それで換算すれば損であるという経済観念というものは非常にはっきりしていると思います。
  45. 永末英一

    永末委員 三月三十一日に二百五十五円であったということになりますと、明らかに三百八円引く二百五十五円でございますから、幾らになりますか、五十数円の損になります。三月三十一日現在で三百八円よりもレートがうんとドルのために下がり、円のために上がっておるという場合には、損だと認められますね。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは損でございます。ただ、御案内のように、政府として変動為替相場というものを何年も続けるというような考え方でないことは累次御説明のとおりで、適当な期間ということでございます。  将来、理論的の問題としては、変動相場制というものを何年もとるという場合だって、あるいは長い将来にはあるかもしれませんが、そういう状態が予想されるようなときには、またその事態に応じたようなくふうができるかと思いますが、いまのところは、そんなに長い期間ではないというつもりでございますから、そして公的には固定相場に復帰すればそこでレートができるわけでございますから、そういうことが予想される場合、それのできた場合にそれを基準にするということでいいのではないでしょうか、こういう考え方でございます。
  47. 永末英一

    永末委員 私企業の場合には、もし差益金が認められなければ税金を払わなくちゃならぬ、こういうことになるのであって、単なる数字ではないのである。ところが、どうもわがほうの日本銀行なり外為会計になりますと、数字だけで終わってあとでやるのとやらないのと同じみたいなことですが、私はそれはやはり違うと思う。しかし、先ほどあなたもお認めになったように、三月三十一日現在で基準相場よりうんと円が上がっている、ドルが下がっておる場合には、損だということをお認めになった。さて、いよいよ固定相場に返るときに、いまの見通しでは円がどんどん安くなるという見込みはないと思うのです。したがって、ドルが二月に一割切り下げられましたけれども、実質的には円切り上げという形で固定相場に変わらざるを得ないと思います。そうしますと、そのことは直ちに国の損でございますから、日本は全世界でも第一位に相当するドル紙幣を持っておる、ドル債権を持っておるわけでございますから、その差額はアメリカに対して補償させよう、こういうお気持ちはございませんか。
  48. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、少なくともいままでの列国の例から申しましても、ある国が為替相場を下げた、そして相手国が損をした、これをカバーするための損失補償をしたというふうなことは、私は寡聞にして聞いたこともございません。これは、そういう角度で処理するのはいかがでございましょうか。いま突然の御質問ですから、私は理論的にもう少し検討したいと思いますけれども、瞬間的なお尋ねでございますと、そうお答えせざるを得ません。
  49. 永末英一

    永末委員 このごろはエレクトロニクスが発達して、何でも瞬間に動くようになっていますので、瞬間にお答えいただけるかと思ったのですが、私が先ほど損の確定をあなたに迫ったのは、損をしておるということがはっきりすれば、どうしてその損を防ぐかということをやはり考えるのが筋である。この損の責任はわが民社党にあるわけじゃございませんね。やはり田中内閣でしょう、損をしたとするならば。総理、そうでしょう。お答え願いたい。
  50. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 アメリカが引き下げたということでございますから、アメリカ責任というのが非常に大きいわけです。いまの問題、これはドルが切り下げられてもアメリカから品物を入れるとかという場合には、同じ値段で同じ量が入るわけですし、もっと安く入るんだという事実もあるわけです。
  51. 永末英一

    永末委員 総理がいみじくも言われましたように、アメリカがドルを切り下げたんだからアメリカ責任だ。だから、愛知大蔵大臣、あっちの責任でこうなったんだから、その円の減価分に対する補償をしろということぐらい言ったっていいじゃないですか。どうですか。
  52. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そのドル一〇%切り下げたこと自体に、ぴしゃりと損失補償ということは、私は無理じゃないかと思います。しかし、これだけのドルがたまりましたことに対して、これ以上減価しないように、アメリカとしても何らかの補償措置を講ずるとか、あるいはドルは、当委員会でもたびたび論議がございましたが、紙くずになったわけではなくて、それなりに購買力を十分国際的に持っているわけでございますから、この使い方等について、アメリカ側も積極的な協力をするというようなことについては、私はいろいろの方法があると考えます。
  53. 永末英一

    永末委員 私は、この損というのは、なるほど政府のやっておることでは数字のように映るけれども、これは国民が損をしておるのであって、その国民の損というのは、結局のところ、もし政策がうまく行なわれておるならば、国民が外国から、差益損の分だけ自分の生活の周辺に購入をして、これを使っておるべきものだと私は思います。すなわちそれは、その分だけ国民に減税ができたであろうし、あるいはまた社会福祉のために金が使えたであろう、政策よろしきを得ればですよ。ところが、それをやっていない。あなた方に損の感覚が非常に明確であるならば、なるほどそうだと口だけではなくて、やはり大衆減税をしなくちゃならぬ、社会福祉のために金を使わなくちゃならない、一兆円ぐらいわけないのでございますからね。それを、ぼやっと紙入れを持って外圧を待っておるもんだから、ばさっとやられた。もう二度とあってはならぬ。   しかし、変動相場制をやっておるというのは、だれが考えてももう一ぺんやられるぞという予知をしているわけでございまして、田中総理、その意味合いでは、いまのように経済政策の転換を、口先だけではなくてほんとうにやるということが、国民の損を取り返す道だと私は思いますが、いかがですか。
  54. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本の国際競争力が強くなったという一つの面もあるわけでございますから、これだけの状態を前提として、輸出優先の経済政策から国民生活充実への政策に切りかえてまいります。こう言っておるのでございまして、これからはやはり国民努力国民の国際競争力というものが、国民生活自体にあまねく還元をせられるという政策を重点にしなければならないということは、言うをまちません。
  55. 永末英一

    永末委員 ドルがわが国に大いに保有せられたということは、言うならばドル債権が円にかわって、そうしてその円が過剰流動性の原因をなしたことは衆目の一致するところであります。  さて、過剰流動性の対策のために銀行の準備率を引き上げたり、あるいはこれから窓口規制をやろうというのでありますけれども、そもそも原因が、ドル債権を持っておる銀行に円がだぶついたということでありますから、一斉に準備率を引き上げたり、地方銀行もこれに巻き込んでしまうということになるならば、中小企業対策、先ほど中曽根通産大臣転廃業までやらなくちゃならぬなんとえらいことを言っておるのでありますけれども、その場合に、一律にこれをやって金融を引き締めてしまうということになりますと、中小企業に対してやはり非常な打撃になる。私はこの際、やはり分けて実施すべきだと思いますが、いかがですか。
  56. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そのとおりでございます。したがいまして、預金準備率を二回引き上げたということは資金の総量的な規制でございますけれども、たとえば、中小金融機関はこれから除いてございます。それから、これが苦心の存するところでございまして、総量を規制をいたしましたが、具体的には商社等については、たとえば大手十社とか二十社とかいうのを限定して、手形の買い取り限度を規制したり、特に融資の総量を規制をしたりしております一方、中小金融に対しましては、実は昨日も全銀協をはじめ地方銀行に対し、相互銀行に対して、信用金庫に対しまして、特に中小金融の緩和ということについては、私から直接にアピールもいたしておりますし、それから一方財投関係と申しますか、いわゆる政府関係三金融機関を中心として二千億の融資規模というもので、当面の輸出関連中小企業を中心とする対策をすでに講じつつあることも、御承知のとおりと思います。
  57. 永末英一

    永末委員 金融対策といいますと、銀行が相手のようになるわけでありますが、しかし、現在の過剰流動性というのは、銀行にのみ原因があるのではなくて、銀行以外のところにも原因があります。これにやはりはっきりと規制を加えていかなければこの過剰流動性は直らない。これらに対しまして弾力的な対策が必要だと思いますが、どういう対策がありますか、お聞かせを願いたい。
  58. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これについてはいろいろ意見がございまして、昨日申し上げましたが、たとえば端的に言って、ドイツのようなやり方をしたらどうかという御説がなかなか有力でございますが、私は率直に申しまして、四十六、七年当時ならともかく、というのは、あの当時は特に外貨の流入による資金の過剰性が現実に端的にあらわれておったときでございます。あの当時なら格別、現在は正常な輸出活動によって、それが全体として多過ぎるということは問題でございましょうが、これは総合政策でだんだん輸出が減退してくることになると思いますが、とにかく正常な経済活動としての輸出手形のかわり金なのでありまして、そこを根っこでつかまえて、たとえば流通性のない国債あるいは無利子の国債、こういうものを強制保管をさせるというようなことは、日本の場合は不適当である。ドイツのような場合に、正常取引は別として、過剰の投機資金が乱入するような国におきましては、ああいう対策は私は適切だと思いますが、日本の場合は、そういう説をおとりになる方からいえば、クリアカットなやり方ではないと御指摘を受けるわけでありますけれども、全体のマネーフローからいえば、何といったってこの金融機関からの貸し出しが七十兆円というような量でございます。そういう状況からいたしますると、一面資金の総量を押えておいて、そして選別的に、目的的にシビアな規制をして、特にそういう過剰性のあるようなところを目がけて規制を金融政策としてやることが、まどろっこしいように御批判も受けるかもしれませんが、これは国内的には適切な措置である、かように考えている次第でございます。
  59. 永末英一

    永末委員 多くを説明されるのは、まだ政策が固まっておらぬのだと思います。この点は非常に重要な問題でありますから、はっきりと対策を立てて、庶民のために、やはり金融の筋道をきちっとして、妙な金がうろうろしないようにやってください。総理、よろしいな。
  60. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま大蔵大臣述べたとおりでありますが、もう一つの方法としては、時価発行があるわけです。金融機関を通さないで、それで実際は金融機関に抱かしておってという問題があるわけですから、これは去年の下期の半分以下に押えるというような意味で、大蔵省としては適切な処置をやっております。やっておりますが、やはり日銀のシェアが非常に小さくなっておりますから、現実問題としては、都市銀行だけではなく、雑金融機関といわれておるような機関とか系統機関とかあるわけですが、いままでは一時の平価調整が行なわれて、ちょっとでも締めると中小企業や零細企業に影響するということでやってきたわけです。それが一つには過剰流動性を生む結果にもなっているわけです。ですから、いま大蔵大臣述べたように、中小企業や零細企業に必要な資金は必ず出します、しかし過剰流動性というようなものは吸い上げます、規制をします、そういうことであって、とにかく金融機関だけではなく、株式の時価発行という問題で、市場で任意に資金が集められて、その企業の手元資金を潤沢にして、投機等に回ったということも、これはほんとうにそうだと思います。そういう面があると思います。  ですから、そういう意味においても、大蔵省は的確に、許可というよりも、行政指導もしておりますし、下期における時価発行の数量も強く規制をしておりますので、だんだんと正常化は進む、このように理解していただきたいと思います。
  61. 永末英一

    永末委員 私ども民社党は、この過剰流動性の根源をつこうというので、先週六つの商社にわたって、そして木材、穀物、鉄、繊維、金融その他につきましてその実態を調べました。その中で、いろいろ問題がございますけれども、生糸について、ほっておいてはならぬ問題であると考えて、農林大臣にはこの生糸に関する件について申し出を党としてしておきましたが、生糸市場再開は十五日にきまったのですか、農林大臣。
  62. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 十五日再開のために、昨日横浜生糸の、両取引所の理事長を呼びまして、再開に対する準備の指示を命じました。
  63. 永末英一

    永末委員 横浜も、神戸もですね。
  64. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 横浜、神戸両取引所でございます。
  65. 永末英一

    永末委員 市場再開しただけではだめであって、その再開された市場において生糸の糸価が合理的になる、もっと低い値段できまるということでなくてはならない。だといたしますと、いままでのような規制では不十分だからこそ、あれほどの糸価の高騰が見られたのでありますから、やはり思い切った規制を加えなくてはなりません。思い切った規制を加えられますね。
  66. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 両理事長との間でおおむね意見の一致を見ておりまするのは、新規売買については、取引員ごとに新たに枚数制限を課した上、停止を解除し、買い玉の促進に資する。先限についても、臨時増し証拠金を大幅に増徴する。当限全建て玉について十四日以降十万円の定時増し証拠金を課する。値幅制限を当分の間五%から三%に圧縮するとともに、十五日以降の当限にも適用する。売買片側の規制を全限月に適用できる条件を整備する。委託者別の建て玉制限についても、その発動条件を三月中に整備する。四月一日から受け渡し供用品の拡大をはかることとし、三月中にその範囲を決定する。  こういうようなことで意見の一致を見ましたが、永末委員の御関心事はこの受け渡し供用品の拡大にあると思うのでございます。御承知の、現在の二十一中に加えまして二十七中生糸を取引所の供用品とすることについて大体の意見調整がはかられた、こういう段階でございます。
  67. 永末英一

    永末委員 外国生糸はいかがですか。
  68. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 外国生糸の取り扱いでございますか。
  69. 永末英一

    永末委員 外国生糸を供用品にする件。
  70. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 その点は、現在のところまだ結論を得ておりません。
  71. 永末英一

    永末委員 早く結論を得てやってください。  さて、その点で、もともと四十六年の十二月に繭糸価格安定法の一部改正が議員提案で行なわれました。それからですね、おかしくなったのは。したがって、いまやこの改正になりました繭糸価格安定法第十二条の十の二というのは、価格安定幅も二倍ぐらいの値段がついておるわけでございますから、意味がなくなっておる。こういうものは要らぬのだと思いますが、これを改正、廃止する御意思はございますか。
  72. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 率直に申し上げまするが、現在農林省ではまだその点の検討はいたしておりません。
  73. 永末英一

    永末委員 先週の八日に、大平外務大臣に、中国に対する輸入関税の問題で、特に生糸等は緊急を要する問題であるから、日中間の平和条約の締結の前でも、実務的な問題として韓国並みの関税率にしたらどうかと申し入れた。御努力をされて、十日にそうしたのだという発表をされましたが、事実、間違いございませんね。
  74. 大平正芳

    ○大平国務大臣 生糸につきまして、便益関税を認めました。
  75. 永末英一

    永末委員 生糸の生産者もまた消費者も、いまのようなむちゃくちゃな生糸の騰貴があれば、着るものもなくなりますし、商売をしているのはみなつぶれます。たいへんな問題でございまして、いま農林省がまだ検討していないというような点がございましたが、総理大臣、これを安定させることは重要な問題でございますから、農林省を督励して、それらの問題について早く解決案を出すようにされますな。
  76. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 できるだけ努力を続けてまいります。
  77. 永末英一

    永末委員 もう一つ、農林大臣、先ほどあなたが言われました委託者別の建て玉制限についても、ストップ幅を小さくするということで考えられますね。
  78. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 その御趣旨で考えてまいりたいと思います。
  79. 永末英一

    永末委員 大体円ドル問題で伺ったのでございますが、もう一つの問題をひとつ総理に伺いたいと思います。  本予算委員会の当初、平和時の防衛力の限界についていろいろの議論が行なわれましたが、結局二週間ほど議論いたしまして、総理防衛庁長官に、出した資料も説明も撤回せしめたということでございました。しかし、本予算に盛られている四次防の内容であるとかということを、何もわれわれ野党は承認したわけでも何でもないのでございますから、その辺はやはり詰めておかねばならぬ問題でございまして、あの当時わが党の小平議員の質問に際して、あなたは防衛庁長官が専門家である。何か内閣総理大臣は専門家でないようなことを言われましたが、そうでしょうか。あなたは国防会議の議長であって、最も専門家でなくてはならぬ。ただし、その専門家というのは国民の常識の集積場ですわね。何も鉄砲のたまがどれだけ届くかというようなことを詳しくする必要はございませんが、その意味合いで、防衛庁長官が専門家であなたが専門家でない。専門家でないような総理大臣に、命預けておったのではあぶないという気に国民はなるかもしれませんね。お考えをお聞かせ願いたい。
  80. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 法制上私が最高責任者であるということは御指摘のとおりでございますが、これは防衛庁長官が防衛に関しては専門家だ、これは国民もそう考えておるわけです。財政に関しては、予算に関しては大蔵大臣のほうが専門家だと、こう考えておると思いまして、そういう常識的なことを述べたわけでございます。責任を回避するということではございません。最終責任は私にある、こういうことでございます。
  81. 永末英一

    永末委員 文民統制というのは、政府サイドにおきましては最終的にあなたが統制するということですよ。これはしっかり腹に入れてやってください。  さて、わがほうの防衛問題を考えます場合に、田中内閣ができましてからもう少しはっきりさせておかなくてはならぬ問題がございますが、昨日ジュネーブにおきまして米ソ間に戦略核兵器の制限交渉、第二次交渉が始まりました。われわれは核兵器を持つものではございません。田中総理は核兵器を持つつもりはないと思いますが、同時に、また、中国におきまして核兵器の配置等における前進が見られると伝えられております。田中内閣も核兵器は持たない、その持たない理由をひとつあわせてお述べ願いたい。
  82. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 自由民主党内閣は一貫して続いておるわけでございまして、前内閣以来申し述べておりますように、つくらず、持たず、持ち込まずの三原則は確実に堅持をしてまいりたい、こう考えております。そして私の考え方は、核というものはこれは攻撃的な兵器でございます。相手が使ってくるからやむを得ず受けるんだからということをいっておる国もございますが、しかし核は、核兵器は攻撃的な兵器であるということが、第一に、持たないという憲法に背反をするという、憲法の精神から見ても核はつくらず、持ち込まず、持たずが最も正しい姿であるということ。  それからもう一つは、やはりいま持っておる世界の核保有国にも、兵器としての核というものは、やはり持たないような方向でだんだんと廃止をしていくようなことが、人類久遠の平和を維持するためには必要であるという考え方であります。  もう一つは、やはり歴史の上から見て、日本は戦争をやってみて、戦争に敗れて平和憲法を持っておるわけでありますから、やはり核兵器というものは、世界の国々がみんな禁止をする方向に進むように運動を続ける立場にあって、相手が持っておるから相手の持つものは自分も持つというような類の問題として核兵器を論ずることはできない。その意味では、唯一の被爆国である日本が言う核を持たない、核を持たないようにしようという考え方は、世界にも相当評価をされる問題であろう、このように考えております。
  83. 永末英一

    永末委員 防衛庁長官、中国の核ミサイル配備が進んでおる状況をどう判断されますか。
  84. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 中国の核装備の進んでおる状況の具体的な進捗、状況については、現在のところまだつまびらかにいたしておりません。
  85. 永末英一

    永末委員 つまびらかにせぬでは困るんですね。「敵を知りおのれを知らば百戦危うからず」というのは孫子の兵法に書いてありますわね。調べてください。  私、総理大臣に伺いたかったことは、われわれの周辺、アメリカ、ソビエト、中国、ともに核兵器を持っておる。われわれは持たない。持たないで、国民に持たないほうがより安全なんだ、持つことは危険なんだ、国民の安全に対してそれのほうが危険度が多いんだ、こういう説明を国民にしなければなりませんね。そのことをはっきりしないと、巷間核兵器保有論者というのがいましてね。これはただ単にわれわれ国内のみならず、国外も、あんなことを言っておるけれども、核兵器を持つのではないか。持たない方針がわが国の安全のために必要なんだ、ここのところひとつ言うてください。
  86. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 人類の平和を守っていくためには、核が使われるような戦争が起こってはならないというために努力を続けなければならない。しかし、依然として核保有国はあるわけでございます。これらの国々はずっとバランス・オブ・パワーの歴史の上に核兵器を持ったということでございますが、実際核兵器は、私自身がすなおに申し述べる核兵器が使われるような戦争、言うなれば第三次全面戦争ということが起こり得るだろうか、また起こってはならないのだ、こういう結論を持っているわけであります。それは核兵器が使われる全面戦争というものは、言うなれば地球上の全人類が死滅することを意味するものであって、それはもうどこの国が勝って、どこの国が負けるなどという狭義な過去の戦争形態でははかり知れないほどの惨禍をもたらすものである、こう考えておるわけでございますから、だから日本はその意味で核兵器を持たないといったことは、これはやはり戦争で敗れた国の一つの収穫だったと思うんです。  私は、そういう意味で核は持たないと言ったことは、やはり日本としては正しい見解を全人類平和のために述べたんだ。一国の安全のためだけではなく、人類の平和というために、核を使うような戦争は人類を破滅に導くのだ、だから核はなきにしくはないんだ。だからできるだけ核兵器をなくするようにということが正しいことであって、日本人はおおむねそれを理解しておると思っておるのであります。
  87. 永末英一

    永末委員 私が伺ったのは、核を持たないほうが持つよりも安全なんだということを聞きたい。持つべきでないということは当然のことであって、そこのところを一体総理はどう考えておられるか。
  88. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それはあなたの言われることはわかるのですが、それはなかなかむずかしい問題なんです。一国の立場で言うと、理想論と現実論というものの区別はあるわけであります。ですから核を持たないほうが——日本は持たないという、つくらず、持たず、持ち込まずという基本的な政策を決定しているわけですから、これは間違いありません。しかし、持たないほうが自国を守るためにいいんだという、そう判断をすれば、相手が持っているわけですから、ですから、やはり核の国際管理が行なわれるとか、核は絶対に使わないとか、核がないとかということと、理想と現実の間にはいまだ開きがあります。そういう意味において日本は持ちませんが、アメリカの核のかさのもとにはありますと、こう言っておるのですから、これはちょっとあなたの御発言にすなおにお答えがいまできない、こういうことです。
  89. 永末英一

    永末委員 その迷いがあってはならぬのであります。防衛の問題は現実の問題であって、理想論を戦わしておる問題ではない。あなたはひとつ国防会議の議長としてじっくり考えて、もう一ぺん機を見て聞きますからね。いまのようじゃいけませんよ、それは。やはりあなたが核を持たないほうがわが国の防衛のためによろしいという自信を持って国民を説得せねばなりませんよ。アメリカの核なんていつどうなるかわかったものではないと私は思うんです。たくさんそう言うている人もあります。アメリカだってそうでしょう。自分のところにさしかけておりますけれども、なぜよそまでさしかけねばならぬのですか。それは核戦略をもっと真剣に研究していただいて。これはその意味合いで、この時間とは関係ございませんが、留保しておきます。  さて、核兵器拡散防止条約は署名は終わりましたが、批准はもう何年もたって何ともなっておりません。いまのような意味合いでこれはどうするおつもりですか。
  90. 大平正芳

    ○大平国務大臣 政府はすでに署名を終えておるわけでございまして、国会の批准を待っているわけでございまして、私どもといたしましては、国会の十分な審議を経て、なるべく早く御批准をいただくことを期待いたしております。
  91. 永末英一

    永末委員 大平さん、あなた妙なことを言われましたね。国会の批准を待っているつて、批准してくれと言うてきたことありますか、国会に。あなた署名して、外務省の金庫の中に入れたままじゃありませんか。出すつもりですか。批准を求められますか。
  92. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま、与党との間にその調整を急いでいるわけでございます。
  93. 永末英一

    永末委員 与党との間でしょう。国会ではないですね。与党ですね。もう一ぺんお答え願いたい。
  94. 大平正芳

    ○大平国務大臣 さようでございます。
  95. 永末英一

    永末委員 総理大臣、お聞きのようなことですわ、大体。そういうことは、やはり整理をしてかかっていただきたい。  さて、総理に伺いたいのは、三次防のときに、有事即応体制をやるんだといって三次防の大綱に書いてございました。これは国防会議で決定になった。それは、「有事の際すみやかに事態に対処し、行動能力を継続的に維持しうるよう弾薬の確保等後方体制の充実を図る。」これが有事即応体制であります。ところが、四次防の大綱ではこれは消してしまった。有事即応はやる必要がないというのでやめたのですか、伺いたい。
  96. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 防衛力は、原則として有事即応でなければならないのであります。ですから、やめたんじゃありません。
  97. 永末英一

    永末委員 ところが、あなたの閣僚は、この委員会でもまたよそでも、有事即応ではないんだという答弁をしていますね。どっちがほんとうですかね。有事即応にいまあるんですか、わが自衛隊は。それとももう有事即応ではないんですか。二つに一つですよ、これは。お答え願いたい。
  98. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 総理の御答弁を若干補足をさせていただきますが、防衛力というものは、お説のとおり、本来、有事即応であることが望ましいわけであります。三次防では、御指摘になりましたように、「有事の際すみやかに事態に対処し、行動能力を継続的に維持しうるよう弾薬の確保等後方体制の充実を図る。」というふうに明記をしたことは、御指摘のとおりであります。そして、有事即応体制の整備を計画の方針として掲げたわけでございます。四次防においても、たてまえとしては、有事即応体制が必要であるという考え方はとっておるのでございまするが、わが国の防衛力が、いまある整備の過程で、四次防において全般的に有事即応体制の整備を行なうことが困難であるというふうに判断をいたしましたので、有事即応体制の整備ということばを計画の方針としては掲げなかったわけでございます。  しかしながら、御承知と思いまするが、たとえばレーダーサイト、沿岸監視というふうなものにつきまして、有事即応体制について、従来からの努力をさらに四次防においても続けていくという努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  99. 永末英一

    永末委員 増原国務大臣は、二月七日、本院のこの場所で、「有事即応という考え方を持った自衛力の整備ではございません。」と答えているではありませんか。ところが、いまあなたは、たてまえは有事即応だ。どっちがほんとうなんですか。白か黒かはっきりしてもらわなければ困りますよ。
  100. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 まだ、現在整備されつつある状態は、残念ながら有事即応体制と申し上げるに至っていないという趣旨を申し上げましたので、あるいはことばが不十分で、有事即応体制ではない、有事即応体制を目的とはしないというふうにお聞き取りがあったとすれば、その点は訂正をさせていただきたいのでありまして、本来は、有事即応体制でなければなりませんが、現在の整備段階では、陸海空の装備その他の段階を、現状で有事即応体制に持っていくか、ある程度の備えを拡充していく、そうして有事の際には速急に可能な限りにおける有事即応体制への転化をはかるということも考え合わせまして、現在の整備をいたしておるという意味を申し上げたつもりでございまするが、ことばが足りなければ、その点訂正をさせていただきたいと思います。
  101. 永末英一

    永末委員 総理に質問したいのですが、おりませんから……。
  102. 根本龍太郎

    ○根本委員長 いますぐに参ります。
  103. 永末英一

    永末委員 その時間、見てください。
  104. 根本龍太郎

    ○根本委員長 もう参りましたから……。
  105. 永末英一

    永末委員 田中総理、あなたのところの国務大臣は、この前この委員会で言うたことを取り消しました。困るんですね。ことばが足らなかってと思うから取り消す。しかしわれわれは、言われたことを信ぜざるを得ないでしょう。あとになると、それは違ったんだ、趣旨と違う、取り消す。取り消さぬようにやはり慎重にかまえて答弁してもらわなければ、国民はあなたの内閣を信用しませんよ。  さて、三次防というのは国防会議の決定事項だ。いまお話を聞いておりますと、そこで有事即応をきめたけれどもできていないんだ、こういう話だ。そうしますと、国防会議で防衛力整備計画の大綱をきめてやっても、それは行なわれていない。行なわれていないというのは、あの防衛力整備計画というものは、行なわなくてもよい計画ですか。
  106. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それはもう必要不可欠のものでございました。
  107. 永末英一

    永末委員 それなら、有事即応も必要不可欠というので、三次防の防衛力整備計画でつくられた。ところがそれは達成されていない。だから、しなくてもいいんじゃありませんか。どうなんでしょう。
  108. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 原則的に防衛力、自衛力というものは有事即応でなければならないということは、これはもう存在意義を失うわけでありますから、ですから、それはもう基本的には、どなたが考えても、有事即応でなければならない。しかし、有事即応ということになりますと、現実的問題としては、それの使命を果たせるように体制が整備されなければならない。その整備の過程を、防衛庁長官がすなおに述べますと、有事即応にたえられるというにはいまだしでございますと、こう答えておるわけでございまして、その意味で、三次防から四次防に引き続いておるわけでございまして、だんだんと名実ともに有事即応ということが申し上げられるようになる過程でございますと、こう御理解いただければ幸いだと思います。
  109. 永末英一

    永末委員 あなたは私の本会議の質問で、防空機能は除いてと、こういう発言。すなわち、防空機能には有事即応があるように言われました。  さて、防衛庁長官、スクランブルをやります場合に、そのスクランブルをやるわがほうの航空機は、ミサイルを持っておりますか。
  110. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 スクランブルの際には、ミサイルは装着いたしておりません。
  111. 永末英一

    永末委員 何のために上がるんですか。
  112. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在、スクランブル体制にありまするものは、領空侵犯措置であります。すなわち、警察行動であります。したがって、領空の侵犯をするおそれのある航空機に対しまして、信号弾あるいは飛行機の羽を動かす、そういう動作によって退去を命ずる。場合によっては機銃を撃ってよろしいわけでありますから、そういうような場合に使う程度で足りるということ。もし相手方から攻撃されたというような場合、これは自衛行動としてロケット弾を撃つということで、まだミサイルを発射させるというような段階までには至っておりません。
  113. 永末英一

    永末委員 スクランブルで見たところが、レーダーに映らなかったたくさんの航空機がこっちに向かって飛んでくるというので、さあ、ほかの隊も上がらなくちゃならぬという場合に、ワン・スコードロン、一中隊が上へ上がって勢ぞろいするのに何分かかりますか。——防衛庁長官、知らぬの。あなた専門家じゃないの。
  114. 久保卓也

    ○久保政府委員 私も正確に存じておりませんが、おそらく十数分程度で上がれると思います。
  115. 永末英一

    永末委員 十数分といいますと、レーダーに入った航空機が、十数分といっても十一分か十九分かわかりませんが、どれくらいわがほうに直進してくるのですか。何キロ、速力は一マッハとして。
  116. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは御承知のように、レーダーサイトの場所によりまして違ってまいります。最も条件のよろしい場合二百数十マイルということであります。
  117. 永末英一

    永末委員 そうしますと、わがほうの要撃戦闘機中隊が上空で編隊を組むころには、もうわがほうに侵略し来たった航空機は頭上におる、あるいはもう通過いたしておる、こうなりますね。
  118. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは相手方のスピードによって違ってまいります。しかも、これはレーダーサイトから二百数十マイルでありますから、航空基地からになりまするともっと後方になりますので、これは会敵線というものを厳密に計算してあります。どの辺で会敵するかというのは相手方の高度によって、それからまた場所によって違いまするが、仰せのように非常に弱いところと、それから十分に会敵できるところと、こういうのがございます。
  119. 永末英一

    永末委員 ソ連と戦争することはないと思いますけれども、ソ連の空軍司令官は、遠いところから空対地、ミサイルをぶっ放して、相手方の防空圏に入らなくても攻撃ができる、こう言っております。そうしますと、うちの要撃戦闘機というのは無効である。つまり飛び上がっても相手方がおらぬ、だれもおらぬところに飛び上がる、こういう形になりますね。
  120. 久保卓也

    ○久保政府委員 相手方の発しまするASM、空対地のミサイル、これには大型と小型とあります。大型の場合には相当遠距離から発射いたしまして、いまおっしゃいまするような場合が生じてきます。しかしながら、その場合にはミサイルを要撃することが可能であります。
  121. 永末英一

    永末委員 先ほどスクランブルをやります航空機には、空対空ミサイルが積んでないと言いました。空対空ミサイルは、これは総数何ぼ持っているのですか。それからわがほうの実働基数は何基ですか。
  122. 久保卓也

    ○久保政府委員 四次防末におきまして、これはミサイルでスパロー、ファルコン、それからAAMの1型とありますが、初めの二つが約五百基足らず、あとは千足らずであります。したがいまして、この分は非常に少ないわけでありますが、これは、ミサイルによりまして違いまするけれども、全航空機に対しまして数個の搭載分、つまりそれぞれの飛行機に対する二ないし四発ずつに対して、総数で二ないし数回の範囲内、こういうふうにお考えいだだけばけっこうでございます。
  123. 永末英一

    永末委員 田中総理、このこまかい質問をいたしましたのは、あなたが防空機能については有事即応だと言われたが、実際は、スクランブルをかける飛行機が飛び上がることは飛び上がるようになっておりますけれども、それが防空能力があるかというと、たとえばミサイルにいたしましても、二ないし数回しか飛び上がれないという程度なんですね。その実情をやはり国民に訴えなければ、わが国の防衛の現状はわからぬわけであります。  さて、F4を四次防では大いにつくるのでありますが、F4の飛行場は厚さが二十五センチ要ると聞いておりますけれども、F4の航空機が飛べる飛行場は幾つありますか。
  124. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在、百里で飛べるようになっております。それから、小松で現在滑走路を整備中であります。あと千歳とそれから新田原、宮崎でありますが、これが使えるようになります。  なお、滑走路は二十八センチであります。
  125. 永末英一

    永末委員 それは最終的にいつ使えるようになるのですか。
  126. 久保卓也

    ○久保政府委員 年度はちょっと承知いたしておりませんが、四次防期間中には全部使用できます。
  127. 永末英一

    永末委員 総理、有事即応と違いますね。飛行機は買え買えといって予算を出す。ところが、飛行機はつくっても、飛ぶ飛行場というのはいまのところ百里一つであって、四次防期間というとあと四年かかりますでしょう。四次防期間が済んだときには四つの飛行場で飛行機を飛ばすことができる。これは有事即応とは言えませんね。何のために飛行機を買うのかということをむしろわれわれは言いたい。そうなりますでしょう。どうです。
  128. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そういう状態を一日でも早く整備をするように、飛行場の整備を進めるとともに、飛行機もすぐはできないのでございますから準備をしておく、こういうことであります。
  129. 永末英一

    永末委員 もともとF4という飛行機を買うところに無理があるのです。そういうもろもろの問題があるということを承知をして新しい航空機の装備をすべきである。ところが、いまのように飛行機はそろったが飛行場がおかしいということは、これは健全な防衛体制とは思えません。  レーダーサイトにつきまして、四つのレーダーサイトが八時間勤務しかできない、二十四時間勤務できない、このように報道されました。これはおかしなことであって、それならば、その間にもしどっかの飛行機が飛んでくるとつかまえられない、こういうことになります。これも有事即応と違いますね。いかがですか。——防衛庁長官、一ぺんくらい答えてくださいよ。
  130. 久保卓也

    ○久保政府委員 レーダーサイトの操作員というのは非常に高度の技術を要します。ところで、沖繩に四つのレーダーサイトができましたので、これに配備をする関係上、本土の中でレーダーサイトのカバレージが若干重複する——全般的に重複いたしておりまするけれども、ある程度重複しているところで、欠けているのをがまんができるというところがございます。そういうところを選びまして四カ所、しかもこの四カ所につきましては、御承知のバッジという機能の中に入っておらない、手動のものであるというところだけを選んだわけでありますが、しかし、体制としては好ましいことではございませんので、なるべく早くもとの状態に復したいというふうに考えております。
  131. 永末英一

    永末委員 時間がございませんので、答弁は簡単に願います。  海の場合も、たとえばP2J、これは対潜哨戒機でございますが、いろいろな電子機器を積んでおる。これをちゃんと整備をしなければならぬ。その電子機器の整備員の数が足らぬ。六割ぐらいしかおらぬ。防衛庁長官、そうですね。
  132. 久保卓也

    ○久保政府委員 六十何%であったかと思います。
  133. 永末英一

    永末委員 陸上自衛隊のことを一つ聞いておきますが、百五十五ミリのりゅう弾砲をぶっ放す、この特科で十分に人員が足りておりますか。防衛庁長官
  134. 久保卓也

    ○久保政府委員 これも大体六〇%台の充足であります。
  135. 永末英一

    永末委員 これは定員の問題ではないのです。減員を充員する問題だ。  労働大臣、若年労働者というのは、年々これからだいぶ減ってくるのでございますが、どうですか、若年労働者というものは大いにふえてくる傾向はございますか。
  136. 道正邦彦

    ○道正政府委員 昭和四十七年の中卒と高卒者の求人倍率は、それぞれ五・五倍、三・二倍と逼迫しております。今後中卒、高校を卒業して就職する人の数は、四十七年の八十一万人から五十年には七十五万人、五十五年には七十二万人程度に減少するものと見込まれます。
  137. 永末英一

    永末委員 総理、四次防というのは、昨年以来、おかしな形で大綱を出して、それから一年近くたちましてから内容を出したりいろいろなことがございましたね。しかし、いまや四次防というのは兵器を調達する計画なんです。しかし、その兵器は人間がいなければ動かない。いま慢性的な欠員があるわけであります。その欠員も、重要なところに足らぬのですね。その現状を前にしながら、なおやはり兵器を買おうというようなことは、国民の側から見ると、人の面から見ましても、これは有事即応ではないのであって、あなたは、国民の命を預かる責任者として、いつ何どき、どんなことがあっても、国民の命は守りますということでなくてはならぬ。ところが人の面でも、いま労働省が答えたようにきわめて窮屈である。これは別の角度から見ますと、喜んで自衛隊に来る人間の数が足らぬのでしょうね。そうなりますと、何を争って兵器ばかり陳列するか、こういうことをわれわれ国民の側としては伺わなくてはならぬ。そんな兵器を買う意味はあるのですか。
  138. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国防の任を果たすためには、兵器の更新も行なわなければいけませんし、新しい装備も必要であることは申すまでもありません。しかし、装備だけできても運用する人員が欠員になっておるじゃないかということでございますが、これは確かに二つ問題がございます。  一つは、防衛の任務というものは崇高な任務であるのだということを、まああなたが指摘をされたように、政府側のPRも足らないということでもあろうと思いますが、独立国が自由と平和と独立を守るためには、どうしても不可欠なものであるということでありますから、防衛の任につく人たちが、その使命感に燃え得るような啓発を、やはり行なわなければならないということが一つあります。これは、待遇の問題その他制度の問題もあります。こういう問題をおいおい整備してまいろうと思います。  もう一つ、私はいま防衛庁や文部省にも調査研究を求めておるのでありますが、お医者さんがどうしても必要であるという場合、防衛医科大学をつくらざるを得なかったように、ほかの国でもやっておりますように、防衛庁でみずから技術者を教育するというような考え方、しかも、尉官や下士官が人生の中途において退役をしなければならないというようなことで、実際困っておるのです。やはり、そういう制度が魅力がないのだと思います。だから、ほかのところでもって四年間かかる大学を八年間かかってもいいと思うのです。そういうような状態で、もっと社会との間に応用がきくような学校の制度というものが必要である。ある人は、もうみな高校以上出ておる人が入るのだから、そんな学校などといっても、それは、募集や、若い人たちの魅力にはならないと、そう言って一笑に付しておる人もありますが、私は、そういう考えじゃだめだと思うのです。現実問題として、みずから人を養成し、また、養成された人たちが社会にも十分出れるのだということが望ましいことである、こういうふうに考えております。
  139. 永末英一

    永末委員 時間が参っておりますので、最後に総理から総括的なお答えを願っておきたいのです。  いま二、三の例だけを申し上げましたが、私は、もっと微に入り細をうがって、防衛庁長官から、有事即応体制になっていないということ、それは物と人の面においてそうだということ、これを国民の前に明らかにしてもらうつもりでございましたが、時間がないので省略をいたします。しかし、問題は、それを知りながら、なおかつ兵器調達計画にばく大な金をかけて、そして現員を見ると、現実に人が集まらないし、労働省が明らかにいたしましたように、若い人々はきわめて窮屈になってくる。この現状を前にしながら、定員だけのワクをふやそうとしておる四次防はやはり改めて、有事即応体制にあること、これでほんとうにわれわれの国がもっと安全にいけるのだ、これが最小ぎりぎりのところでございますから国民の皆さまよろしくと、ぜひこういう姿勢で国民にお願いしなくてはならぬ問題だと思います。その点について、四次防を変えるおつもりはあるかないか、総理に最後に伺っておきたい。
  140. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 四次防は、御承知のとおり、もうすでに昨年から発足をしておるのでございますから、ぜひ四次防は達成をせしめていただきたい。達成できるように御協力のほどを切にお願いをいたします。  しかし、欠員が補充できないということは、いま御指摘のとおり事実でございますから、いわゆる国民の防衛に対する理解を深めるためには努力をいたします。同時に、若い人たちが魅力を持って入隊できるような制度や、待遇や、その他の問題に対しても、十分整備をしてまいりたいと思います。同時に、先ほど申し上げたように、防衛庁につとめても、民間に出た場合の保証ということが、事実、技術の上その他において保証できるようにしなければ魅力あるところにはならないわけでありますから、そういう問題に対しても、積極的な努力を傾けてまいりたいと存じます。
  141. 永末英一

    永末委員 終わります。
  142. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて永末君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  143. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいまの情報によりますと、順法闘争の問題で、特に高崎線の上尾駅を中心として、乗客との間に非常にトラブルが起こっておるという情報が入ったわけであります。もしできましたら、いま状況がどうなっておるか、そして、政府としては緊急にどういう対策をいまやらんとしておるか、総理並びに運輸大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  144. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 国鉄における労使紛争が非常に長引きまして、国民に御迷惑をかけておることは、まことに遺憾に存じております。  先般来、政府のほうでは、労働大臣を中心にいたしまして、関係閣僚協議の上で、この実態を一日も早く収拾するようにということで……。
  145. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういうことでなく、いまの事態を報告してもらいたい。
  146. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 ところが、本日ただいま入りました情報によりますと、十三日の七時十分、高崎線上尾駅におきまして、列車に乗り切れない乗客が騒ぎまして、電車の窓ガラスを次々に破壊をいたしました。また一部の乗客が、ホーム駅長事務室等に侵入いたしまして、電話線を切断したりして、いまとまっておるという状況でございます。  それで上尾駅では、十時現在におきまして、群衆といいますか、乗客をはじめ群衆が大体七千人くらい集まっているということでございます。上尾駅の駅員はいま全部駅をからにしておって、駅員はゼロだそうです。それから、駅長と助役は負傷いたしまして、入院をしたというような情報でございます。このために、ただいまのところ、十時三十五分現在、高崎、東北、信越、川越各線がとまっておるようでございます。  それで、この情報に基づきまして、さっそく関係閣僚の間で協議をいたしましたが、運輸省としましては、とにかく労使間の紛争問題を越えた問題でございますということで、国鉄総裁に対しましてさっそく指示をいたしまして、いま国鉄総裁が、国鉄に動労の三役を呼びまして話をいたしております。とにかく、こういう事態は、労使間の問題を越えてでも早く収拾するようにということで、国鉄総裁にいま、動労の三役と話を進めさせておるということでございます。  なお、現地には機動隊を出しておるようでございます。その人数は、ちょっといま私の手元では判明いたしませんけれども、事態がこれ以上拡大しないようにということで、駅舎を中心にいたしまして、これ以上の騒ぎが起こらないようにという措置をしておる状況でございまして、一応、中間的でございましたが、御報告いたします。
  147. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 中間報告がございましたが、いま、官房長官、国鉄総裁等が協議をして、いま運輸大臣が述べたような状態でございますが、このような事態が拡大をしないように機動隊の出動も求めておるようでございます。  駅長、助役が負傷して入院をしたようでございますが、乗務員等は民家に避難をしておるようでありまして、事態はいつ解決をするというような見通しをまだいますぐ申し上げられませんが、早急に事態の収拾をいたしたいと考えております。
  148. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 このような事態はすでにある程度予想されておったわけですから、今日まで解決に誠意を見せなかった当局あるいは政府責任は重大であろうと思いますが……(「動労が悪いんだ」と呼ぶ者あり)しかし、いまだれが悪いとかいいとかいう事態ではなしに、とりあえずいま起こっておる事態を緊急に解決することが先である。それで私は、運輸大臣なり労働大臣、官房長官を要求しておりましたけれども、直ちにその解決に当たっていただいて、その部分に関する質問は自後に回したい、このように思います。なお、そのほかに必要な関係大臣があれば、ひとつ即座にその解決に当たっていただきたい、これを要望いたしておきます。なお、事態に急変があれば、この総括質問中に報告をいただきたい、このようにお願いをしておきます。  それでは、早急な解決を願いまして、私の別の質問から入りたい、このように思います。  まず、新聞の報道するところによりますと、予算委員会終了直後、防衛庁はPXL、AEWの調査団を欧米に派遣するということが伝えられておりますが、その計画は事実でありますか。
  149. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘になりましたPXLに関する調査団という件でございますが、先生御承知のとおり、次期対潜機及び早期警戒機等につきましては、昨年十月九日の国防会議議員懇談会におきまして、本件につきましては国産化問題を白紙に戻しまして、輸入等も含めまして、根本的な検討を加えるということが了解されております。  防衛庁といたしましては、この趣旨に沿いまして、現在、国防会議におきまして、専門家会議が来年度開かれるということにつきまして待っております。したがいまして、ただいまの調査団につきましても、専門家会議の開催によりまして、たとえば諸外国の制度、資料、運用等につきまして調査が必要であるというように認められる場合には、だれか職員等を海外に派遣するということもあり得るかと思いますが、現段階におきましては、まだ専門家会議もスタートしておりませんので、現在、国防会議専門家会議の今後の検討を待っておる次第でございます。現在きまっておりません。
  150. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、まず、四次防決定の際の国防会議できめられたとおり、AEWあるいはPXLは、国防会議が構成された後、その検討を待ってきめる、そういう御答弁と承ったわけであります。これは、もちろん国産か輸入かは別として、採用することはさまっておるのですか。
  151. 久保卓也

    ○久保政府委員 防衛庁内部でどういう考え方を持っておるかということはございまするけれども、採用するかどうかということは、四次防以降の段階の問題でありまして、そういう意味ではさまっておりません。
  152. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 四十八年度にはPXLあるいはAEWの技術研究開発費は削除されておるが、三次防段階では技術研究開発計画の中に載っておるということは、採用の方向でいままできたということであろうと思います。したがって、これが専門家会議である程度の結論が出たら、調査団を派遣する前に国防会議にかかるのかどうか、それを聞いておきます。
  153. 久保卓也

    ○久保政府委員 国防会議事務局に置かれまする専門家会議の結論が出ますれば、研究開発がスタートするということでありまして、その場合に、研究開発項目として大きな項目であるから、国防会議にかけるべきかどうか、その時点で、国防会議のほうで御判断いただくだろうと思います。  なお、採否の場合には、装備の採否として、あらためて国防会議にかけられるべきであろうと思います。
  154. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 以上のような手続が済まない限り、大蔵大臣としては、国防会議の正式メンバーでありますから、出張旅費は認めない、こういうことになりますね。
  155. 愛知揆一

    愛知国務大臣 旅費ということは、御承知のように、支出負担行為の承認事項ではございませんから、各省庁の判断によって支出をいたします。
  156. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理にお伺いしますが、総理は、今度の国会の冒頭の代表質問に対する御答弁の中で、ベトナム戦争の教訓として、力の政策というものには限界がある、これをよく知らされたという御答弁がありました。その御認識は、今後のわが国の防衛力整備計画の中でどのように反映されるのでありましょうか。
  157. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 力の限界、バランス・オブ・パワーの長い歴史がだんだんと変化をし、ベトナム戦争終息に向かったことは望ましい、歓迎すべきことである、こう述べておるわけでございます。力の限界というものは、無制限に装備や防衛力が拡大をするようなものではないということ、もちろん日本では憲法の制約がございますから、無制限なものでその使命が達せられるものではないという考え方や、いままで核に対する三つの原則がございますが、こういうものはますます強く持っていかなければならぬとか、そういう立場でこれから防衛力の整備に対しても考えていくべきだ、こう考えます。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、いままでの日本の国防の考え方、安全保障の考え方について、特段の影響はないということですか。
  159. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 申すまでもなく、日本の防衛力というものは憲法に制約があるわけでございまして、国民の必要最小限の負担で独立と自由を守ろうということでありますので、考え方の基本は最小限という考え方を是認しており、そこからスタートしておりますので、大本においては変わりはないと申し上げていいと思います。
  160. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そのような、力の政策には限界があるという総理の御認識が、日本のこれまでの、一次防から二次防、三次防、四次防と驚異的な増強をなし遂げてきた今日までのあり方に、大きな影響を与えるものと私どもは期待しておったわけですが、その点は影響がないようで、いままでの考え方に変更はない、こういう御答弁のように聞いたわけであります。  そこで、中曽根大臣にお伺いしますが、かつてあなたは防衛庁長官の時代に、いわゆる長期防衛計画、つまり、一応十年間ぐらいの先を見通して、そしてその前半の五年間ということで、新防衛力整備計画という新しい名前の構想を発表されました。そのときのあなたの構想は、十年後の一つの整備目標として、もし有事の際には、最低自衛隊で一カ月程度は持ちこたえるという目標が一つ加えられておったと思いますが間違いありませんね。
  161. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 あのときは楢崎さんから御質問がありまして、楢崎さんが、大体陸上十八万、海上自衛隊三十万トン前後、航空機千機前後、この辺でどうかと、こういう話がありまして、まあその辺の見当でしょう、私が個人的に頭にあるのは、当たらずといえども遠からず、その辺でございましょうと、そういうふうにお答えをしたのでございまして、防衛庁としてそういうことをきめたとか、考えておるということではなかったのでございます。それで、日本のそういう防衛力整備の目標の一つの心づもりとして、まず日米安保条約をもって補完するが、相手の出方やそのとき来る兵力量にもよるけれども、まあその程度持ちこたえるということはできるかどうか、いまそういう状態であろうと思いますと、そういうふうにお答えしたのでございます。
  162. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっと誤解があります。私は、さっきおっしゃった、そういうことでいいではないかとは言っていないのです。そういうところを考えておるのではないかと質問したのです。それははっきりしておってもらわぬと困りますよ。  久保局長にお伺いしますが、せんだっての第一分科会で、あなたは、でき得べくんば有事の際、いろいろ形態はあるけれども、大体侵略自体を一地方と考えて、一月ないし数カ月は持ちこたえ得るような自衛隊にしたいというようなことをおっしゃいましたが、中曽根大臣の御答弁のとおり、十カ年の長期防衛計画でも、その十年目に一月ぐらい持ちこたえるという目標である。では、あなたの目標でいけば、今日の四次防ではとても一月は持ちこたえられないということになりますね。少なくとも何日ぐらい考えていらっしゃるのですか。
  163. 久保卓也

    ○久保政府委員 この一カ月あるいは数カ月というのは、それぞれ意味のある時期でありますが、その時期というのは、実は対米関係の問題であります。したがいまして、こちらの兵力の大小ということは必ずしも関係がない。つまり、米国が支援をしやすい時期と、あるいはし得る時期というのは、机上の計算によりますると、ある種の規模で一カ月、あるいは大規模継続的なもので数カ月というような意味であります。したがいまして、四次防だから数日、一カ月でなくてよろしいというようなものではございません。
  164. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何かさっぱりわからないのですが、要するにいまの時点では、四次防を考えてみても、その目標がさっぱりわからないのですね。何のためにいろんな新装備をしておるのか、膨大な四兆六千三百億というような大金をかけてやるのか、さっぱりわからない。  そこで、あなたが言ったような目標でいくと、一月ないし数カ月持ちこたえるためには、今後どれだけ防衛力を増強しなければならないかわからないんですね。したがって、ここで私どもといわゆる考えが分かれると思うんですね。結局は役に立たないのです。だから、国を武力で守るという発想に踏み切れば、あなたのように、一月ないし数カ月持ちこたえるためにも相当の増強をこれからやらなくちゃいけない。それもアメリカ次第だ、こういうことでしょう。  私どもの考えとしては、結局、総理の御認識もあるとおり、力の政策には限界があるのだ。これがベトナム戦争の教訓だ。だから、国の安全保障を求めるについて、武力でこれを行なうという発想はもう過去のものになっておる。もう少し新しい観点から安全保障というものを考えるべきではないか。すなわち、何としても平和外交あるいは中立の外交政策を積極的にとっていくということこそ日本にとって最も安全な方策ではないかと、こういう対比的な形で私どもの考えを出しておるわけであります。これは、先ほど言ったとおり、いまのままでいくと、あなた方の目標からいくと、どれだけまだ防衛力がふえていくかわからない。しかも、いわゆる中期防衛計画なるものは、数年前廃止されたはずです。それがまた今度、毎年ごとの中期防衛計画を出すというのは、一体どういう意味なのか。  それと、防衛庁長官は、次期五次防をできれば考えたいと答弁されたことがありますが、いまのところの考えは、やはり次期防衛計画においても四次防の装備を更新させる、そういう考えなんですか。その二つをお答えください。
  165. 久保卓也

    ○久保政府委員 昭和三十年代におきましては、長期計画、中期計画、いずれもつくっておりました。四十年代になりまして中断をいたしまして、四十五年度分だけをつくりました。現在考えておりますのは、四十七年度から準備をいたしまして、四十九年度から長期及び中期の見積もりあるいは計画といったようなものを考えてみたい。  それの趣旨とするところは、毎年毎年統合年度防衛計画というものをつくっておりますが、それの背景として考えるべきこと、それから、毎年毎年防衛力整備を考えねばならないわけでありますが、やはりそれの長期的、中期的な見積もりとして、前提、背景というものを持っておったほうが望ましいということ、これはほとんどの主要各国も、すべてそういった長期計画及び中期計画がございます。したがいまして、あるべき姿に戻ろうというわけであります。そしてまた、この長期計画あるいは中期計画というのは、五年に一ぺんつくるというような筋合いのものではありませんで、毎年毎年見直してまいろう、常にそういった長、中期の見通しのもとに、毎年の年度防衛計画あるいは毎年度の業務計画、あるいは予算といったものを見てまいりたい、そういう意味でありますので、これといわゆる五次防というようなものとは直接の関係はございません。  そして、防衛庁長官が再々御説明申し上げておりますように、四次防が済んだあとで、どういう形で防衛力整備を進めてまいるか、これは今後の検討の問題であります。
  166. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 結局は、いまのところはそういう答弁しかあなたはなさらないでしょう。しかし、すでに北山委員も指摘しておるとおり、私も分科会でやりましたが、すでに四次防のいろんな装備関係は五次防へ四千億程度ずれ込むのです。もうすでに五次防の先取りをしているのです。だから、あなた方がどんなにごまかしても、もうすでに五次防は今日の時点で始まっているとわれわれは思っているのです。しかし、こういう点は、私はきょうは時間がありませんから、いずれ内閣委員会の防衛二法のときに徹底的に論議したいと思いますから、この程度にいたしておきます。  いずれにしても、PXLあるいはAEWなんという最新型の兵器は、これは単なる四次防の装備の更新ということでは説明はつきませんよ。新しい防衛構想が背景にないと、こういうことを採用するという意味がわからない。だから、これはいずれ論議をしたいと思います。  そこで、総理にお伺いしますが、あちこち遊説される際に飛行機を使われると思うのです。全日空なりあるいは日航に乗られたとき、たとえば板付から羽田に入るとき、大阪から羽田に入るとき、上りのときはまっすぐ名古屋からずっと羽田に入らずに、浜松から大島に抜けて、それから御宿というのですか、あそこの上から東京湾を横切って羽田に着きますね。御経験があると思います。どうしてこんなに外回りするかおわかりですか。名古屋から直接羽田に来れば非常に早く、経費も少なく済むのですが、なぜかおわかりですか。総理考えられたことありますか。
  167. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 一つは、防衛コースの問題もありますが、高度によっていろいろ協議をしておるようでありまして、現実的には海の上を飛ぶいまのコースが一番安全であるということが一ついわれております。これはまっすぐ飛ぶこともあるのです。羽田から富士の北側を通ってまっすぐやったこともありますし、BOACの飛行機が富士の前でもって乱気流で墜落したこともありますが、これはよほど有視界飛行ができるような状態でないと、北富士は飛べないというようなことを聞いているわけです。ところが、所沢との問題とか、そういうラインとの問題がありますから、いろいろな制約はあると思いますけれども、いまの大島コースは、羽田の構造上からいっても、安全コースであるということだけは事実のようであります。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いろいろ言われたようですが、横田空域という米軍の専管空域があるからそうなっているのですよ。安全だからじゃないのです。私は今日の段階でも、日本の空であって日本の空でない、日本の自由にならない空が幾つかあると思うのです。横田空域がそうでしょう。そのほかにどういうところがありますか。運輸大臣がおられませんから、航空局長でもよろしゅうございます。
  169. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 お答え申し上げます。  米軍が管制している空域といたしましては、横田空域、それから岩国の上空、それから沖繩の嘉手納の上空でございます。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうしてこういう制限空域ができておるのか、あるいは米軍専管の空域ができておるのか、外務大臣、法的な根拠は何ですか。
  171. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定第六条に基づきまして、航空管制の整合をはかっているわけでございます。
  172. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 横田空域に限ってみれば、いつからこの空域ができたのですか。
  173. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 私どもとして承知いたしましたのは、昭和三十四年ごろかと思いますが、その前にも、米軍の内部におきましては、横田空域というものがおそらくあったと思います。
  174. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ごろとはなんですか。特に横田空域は、わが国の独立のシンボルである東京の首都圏にあるのですよ、自分の国の自由にならない空が。それについて、ごろとはなんですか。はっきりしてください。
  175. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 三十四年に間違いございません。
  176. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは、何に基づいてそう言えますか。
  177. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 管制の合意書が三十四年にできております。それに基づきましてでございます。
  178. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうじゃないでしょう。管制の合意書、つまり横田のIFRですか、それと東京ACCのアグリーメントが三十四年にできましたか。正確に答えぬとだめですよ、あなた。
  179. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 航空交通管制合意書は、第一付属書につきましては昭和二十七年六月にできましたが、第二付属書、こういったことをきめておることにつきましては昭和三十四年にできております。そのころからと思っております。
  180. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうじゃないんじゃないでしょうか。いわゆる外務省のほうから御答弁のあった三十四アグリーメント、これに基づく横田IFRと東京ACCの下部協定は、三十五年三月七日じゃないですか。三十四年にできたのですか。
  181. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 ATCアグリーメントは三十四年の四月一日でございます。そこで、それに基づきましてローカル協定といたしまして横田の米軍管制所と東管との間の合意書は、先生のおっしゃるとおりに三十五年三月七日でございます。
  182. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そのとおりでしょう。三十四年のATCアグリーメントは一般的な協定なんですよ。アグリーメントなんです。具体的な横田なら横田の空域のあれは、三十五年のそのローカル協定でしょう。  じゃ、ブルー14はいつできましたか。
  183. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 三十一年の一月三十日でございます。
  184. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ブルー14が三十一年にできている。これは横田空域のための専用の専管航空路ですよ。つまり、横田空域というものが存在するから三十一年にグリーン6を受けてできたのですよ。だから横田空域というのは前からある。おそらく私の想像では二十七年、民間航空が就航した時期、そしてそれから日本政府が初めて日本の空に航空路を設定しましたね、それが二十八年、そのころから明確に浮かび上がってきている。そして三十五年のそのローカル協定ではっきりしたんだと思うのです。それほど総理この横田空域、日本の空が制限され、首都圏の空が制限をされていることについても考えがあいまいなんですよ。何とも思っていない、私に言わせると。  そして、私は時間がないから実情を言いますと、いま依然として横田空域に制限を受けている。いまやっと、三十七年の九月に、羽田リバーサルということで羽田と名古屋の直行が部分的に許可されている。そして羽田−福岡便あるいは羽田−京城便、下りの回廊ができた。それから今度は横須賀デパーチャーといって、羽田から横須賀、そして浜松、これが包括的に承認されましたね。それでもなおこれは許可を受けないとできないのですね。ただ、横須賀デパーチャーに関する限りは、包括承認であるといっても米軍がその気になればいつでもクローズさせられる、そういう状態です。非常な制限を受けているのです。  ここでちょっとお伺いしておきますが、横田あるいは岩国に、フライトプランを見ればわかるが、米軍の軍用機でデンジャラスカーゴーという中身のあることばが、フライトプランにたびたび出てきたと思いますが、間違いないですか。
  185. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 間違いございません。
  186. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どういう内容ですか。
  187. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 フライトプランにはデンジャラスカーゴーと書いてあるだけでございますので、その内容はわかりません。
  188. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これはデンジャラスですから、何ともお感じになりませんか。どういうものか無関心でおられましたか。これを調べられたことはないのですか。日本の空を飛んでいる。どうですか。
  189. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 私ども民間航空当局といたしましては、調べたことはございません。
  190. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 防衛庁長官、どうですか、一度も調べられたことないのですか。こういうデンジャー、和語、日本語にならないでもわかるでしょう。こういうデンジャラスカーゴーというのがフライトプランの中にあるということを。
  191. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 防衛庁では調べたことはないようでございます。
  192. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは、いわゆる普通爆弾ではない。ABC兵器の疑いがある。それに対して一度も関心を示さない。何たることですか、日本の空を飛んでいるのに。怠慢ですよ、そういうことは。しかも、昨日も、呉からのベトナム向けの船出の中に爆弾が含まれているということで、ベトナム和平協定に触れるのではないかという問題がここに論議された。今度は空の問題です。ベトナムに運ばれておったらどうしますか。どうなるのですか。私はこれは早急に調べてもらいたい。今年一月、二月、そういう事例があったかどうか、すぐ調べて御報告をいただきたいと思います。  それから、昨年ニアミスは三十二件ほど報告されておる。そのうちの五件が運輸省が正式にニアミスとして認定した。それを読みますとはだが寒くなる思いです。急に出てきたから、急旋回したといった報告になっているのですよ。幸い事故が起こらなかったからいいようなものです。しかも、航空安全推進連絡会議の報告によりますと、これはパイロットに対するアンケートでございましたけれども、昨年だけで百一件のニアミス、そのうち七十三件が軍用機とのニアミスという報告が出ておるのです。それで私は、こういう空域、特に横田空域の場合は、何回も言うように日本の独立の尊厳を汚すものである、いつまでもこれをほっておくことは。同時にたいへん危険である。もし横田空域がなかったら、羽田の出入はあと百便くらいふえてもいいと私は思うのです。すでに制限されている。と同時に、727で一分間一万円くらいかかるのですね、費用が。十分間よけい飛べば十万円むだな費用がかかる。747の場合は、ジャンボの場合は五倍かかる。これは利用者としてもたいへんな損なのです。こういう日本の首都圏にこの種の空域があるということに対して、一体総理はどう思われておるのか。これの解除への意欲というものをここで持つべきじゃないか、そのように思いますが、どうでしょうか。
  193. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 米軍機、自衛隊機、民間航空機の調整ということが必要であるということはよくわかります。わかりますから、まあ関係の間で可能な問題に対しては十分調整をしていかなければならぬと思います。この前、全日空機の事故がございましたが、そういう問題を契機にして、自衛隊機も海上を使ってやるようにというように、いまだんだんと改善されておるわけであります。横田の問題その他に対しては、非常にこう大きな設備もしてありますし、いろいろな問題があると思いますが、しかし、民間機との調整が可能なものに対しては、これは十分やっていかなければならぬと思います。  原則論は、もう私が申すまでもないわけでございますが、日本の防衛のために日米安全保障条約があるわけでありますし、民間航空とも、どちらも国民の生命、財産を守るということでありますから、まあ在来のように惰性で、占領時代からやっているんだからというようなことで是正すべきものがあれば、それはもう十分一つずつ是正をしていかなければならぬだろう、このようには思います。
  194. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、横田空域をどうされるおつもりですか。いまのままでほっておかれるつもりですか。特に首都圏にあるではないか、これを言っているのです。
  195. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 横田空域の問題を、直ちに移転するといっても、いまも端的に申し述べましたが、非常に長い間の問題でありますし、しかも、施設もたいへん大きなものになっておりますし、これをどこへ移すかといっても、そう簡単に移せるものではないということは御承知のとおりでございます。ですから、そういう現実の中で米軍機、自衛隊機、民間航空機との調整問題等、できるものは十分検討していくべきだろうというふうに考えます。
  196. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これはやはり岩国、嘉手納とありますけれども、特に私は横田空域をいま取り上げたのは、首都圏にあるという点です。だから、これぐらいは何としても日本の空にしたい、これが総理大臣としては当然じゃないでしょうか。私は、そういう意欲でこの横田空域の解除の問題についてほんとうに取り組んでもらいたい。  そのためには、もしそういう交渉をなされるとすれば、当然すぐには日本の手に返ってきません、準備がないか。そうすると航空交通管制官を養成しなければならない。そういう場合には、ひとつ定員の問題は寛大に考えると、こうならなくちゃいけませんが、福田行管庁長官のお考えを聞いておきたいと思います。
  197. 福田赳夫

    福田国務大臣 非常に重大な問題のようでありますので、定員の問題でこの問題の処置がつかえるというようなことがあっては相ならぬと、かように考えます。
  198. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 たいへん前向きの御答弁でけっこうであります。ひとつ総理と御相談になって、意思を疎通しながらこの問題は解決に当たってもらいたい、そのように思います。  そこで、時間が迫りましたが、岩国、三沢の問題に入りたいと思います。もうすでに分科会でやったとおり、わが党は三沢に安井委員を団長として数名、岩国に私と同僚数名行って調査をしてまいりました。で、どうしてもこの四十八年度予算に出ておるいわゆる十億の改築、改修費は、日本側が持たなければならないという理由がわからない。  外務省からも御答弁いただいたのですが、その前にちょっと私は明確にしておきたい問題があるのですけれども、例の一昨年六月九日のパリにおける愛知・ロジャーズ会談、この中身ははっきりしたわけですが、このときに当時の愛知外務大臣は、そのリベラルに解釈することを保証する点について、安保協議委員会やあるいは予算折衝等でできるだけリベラルな取り扱いをしたい、こう御答弁になった。大平外務大臣は、そのすぐ直後、二十四条に関する解釈をリベラルにするのではないかと私が聞いたら、「仰せのとおりと思います。」という御答弁があった。これは全然食い違っておりますが、どうなんですか。
  199. 大平正芳

    ○大平国務大臣 岩国、三沢の問題をお取り上げいただきまして、その問題の処理は、私といたしましては、基本的に地位協定を踏みはずすようなことがないようにやらなければならないという私の信念を吐露したものでございます。従来の日米間の折衝の経緯は伺っておるわけでございますけれども、いずれの場合におきましても、地位協定自体は踏みはずすことのないように処理したいということを申し上げたつもりでございます。
  200. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 食い違いはないとおっしゃるのですか。それだけはっきりしてください。
  201. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この問題の処理にあたりましては、日米間の合意が前提になるわけでございまして、この問題は、そもそも日本側から提起した問題でもございますので、そして日米間の合意を達成して事をなし遂げようとする場合におきまして、地位協定の解釈という問題につきまして、できるだけリベラルな解釈が望ましいということをアメリカ側が言われて、そういった解釈をできるだけ保証するようにいたしましょうと日本側が言われたことは、それなりに私は理解できるわけでございますけれども、しかし地位協定を、だからといって踏みはずすというような、限界を越えてまでのリベラルな解釈というようなことは、私はなすべきではないと考えております。
  202. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 愛知大臣と大平大臣の答えは完全に違うのです。いまどんなにお合わせになろうと思っても違うのです。  そこで、アメリカ局長にお伺いしますが、あなたは、新築提供は二十四条二項でできる、これは従来からの政府の一貫した考え方である、そう私におっしゃいましたね。あなたは、この「占領軍調達史」これは一九五六年に調達庁が発行しておる。これは、調達史編さん委員会をつくって、当時の施設庁が中心になって、外務省も入れて、政府でつくった調達史なんです。読んだことありますか。
  203. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 私は、当該の資料そのものを読んだことはございません。
  204. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 施設庁長官、ございますか。
  205. 高松敬治

    ○高松政府委員 私も、まだ読んだことがございません。
  206. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これぐらい読むべきですよ。施設庁長官、おたくがつくったのですから。いいですか、そして行政協定時代の、行政協定の解釈についてきちんとなっているのです、これは。いいですか、これの六九九ページに書いてある。「経費負担」の項がある。いまの二十四条二項は、当時の行政協定にもそのまま文言としてあるのです。そこで、「第二条および第三条に定めるすべての施設と区域および路線権の提供に要する経費」これは日本側が持つ。カッコして(「借上料と補償費」)と二つきちんと書いてあるのです。「など」はない。これが当時の行政協定の解釈ですよ。確定解釈だ。新築提供なんてないのです。ないから、いままで防衛施設庁長官はそういう解釈でずっときたのですよ。したがって、何回も指摘したとおり、山上長官は、この解釈に基づいて、何回も言うようですが、四十五年の八月十八日内閣委員会で、「米軍が入りました後においていろいろな備品をつくる、設備をつくる、家を建てる、これは自分でやるのがいまたてまえになっておるということ」自分というのは米側ですが、そういう答弁にきちっとなっておるんです。これが確定解釈です。それを何でいまごろ変えるのか。それが結局は、いわゆるリベラルな解釈に通ずる。われわれ断じて、新規提供、新築提供をこの地位協定の二十四条で行なうということは認めがたい。前の政府の確定解釈はそうであったんですから。  同時に、昭和二十八年三月の日米合同委員会、これは港湾の施設使用についての日米両国の合意でございますけれども、この港湾の施設であっても、ほかの施設であっても、この考え方は一貫しております。米側はこう言っておるではありませんか。「米軍は、提供施設の維持、管理及び所要の改良又、それ等に関する費用に対して責任を有する。」一貫してそうなっているんです。断じて許しません、この解釈は。二十四条でできるという解釈は許されない。どんなことがあっても許されない。もしそれを許すということは、何回も言うとおり、旧行政協定の二十五条の二項の(b)、つまり日米分担金一億五千五百万ドルを日本側が負担する、それは削除されたのに、再びこれを生かすことになる。つまり、実質的な地位協定の改定になるんですよ、そういう解釈をするということは。改定に通ずる。これは拡大解釈です。われわれは国会の権威にかけて、かかる二十四条で新築提供ができるなんというような解釈は許すことができない。あなたの見解がもし国会の確定解釈になれば、日本国民は、今後米側が要求すれば、新しい基地内の新築は全部持たなくちゃいけぬようになる。国民のたいへんな負担になるんですよ。あなたは自分の答弁の重大性というものをもう少し考えてください。断じて許すことはできない。しかもせんだっての分科会では、うしろから若い人が解釈をごちょごちょっと耳に入れて、それをそのままオウム返しの答弁をしている。そういう解釈が国会で通用すると思ったら大間違いです。もう少しあなたは答弁責任を持ってもらいたいと思う。
  207. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 前々から御答弁申し上げておりますように、地位協定第三条に関しまする合意議事録によりまして、米側は三条に基づく管理権の内容といたしまして、協定目的遂行のための必要な限度において六項目の措置をとることができるということが合意されてございますが、この六項目の措置と申しますのは、協定の目的遂行のために必要な限度において、米側がこのような措置をとることが許容されているということでございまして、米側がこのような措置を自己の発意におきまして、自分の責任においてとります場合には、当然この経費は米側の負担であるということは、政府がかねがね申し上げておるとおりでございます。  一方、地位協定第二十四条二項におきまして、日本政府は米側に費用の負担をかけないで、施設区域の提供を行なうということがございまして、その限りにおきまして、従来の政府考え方は、この場合の施設、区域の提供に対する費用の負担の対象となるものといたしまして、新規の提供、追加の提供並びにこれに準ずるものとしての改修、改築、こういうふうなことは日本側が経費を負担すべきものである、するものである、こういう考え方をとっておるわけでございまして、この点に関する政府の従来の考え方は一貫して変わっていないところでございます。
  208. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 変わっておるじゃありませんか。私はいまも読んだでしょう。だめですよ、そういうことじゃ。じゃ、あなたこれを読みなさいよ。日本側が持つのは、借り上げ料と補償費と、その二つになっているのだ。そして、いままでの政府答弁もそうでしょうが。山上さんの答弁も、家を建てることと、きちんとことばの上でも含んでおるのです。だめですよ、そういうことでは。いま急に変えてきているんだ、今度の国会で。だから、あなたはこの前の答弁でもおっしゃったとおり、あなたのような解釈はいままで国会で示されなかった。それをあなたは認めた。だめですよ、そういう解釈は。これと見比べてください。だめですよ。
  209. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 昭和三十五年の安保条約国会審議の段階におきまして、安保条約そのものの審議との関連におきまして、地位協定そのものにつきましては必ずしも十分な時間をかけての御論議をいただいておらなかったということは歴史的な事実でございますが、当時以来、政府は、地位協定の各条につきまして、地位協定の解釈として全条にわたっての解釈を国会で申し上げたことは確かにないわけでございます。  先ほど、山上当時の施設庁長官の国会における御答弁につきまして言及がございましたけれども、これは速記録をよく読んでみますと、山上長官は、地位協定の解釈としてということは言っておりませんで、その当時の運用のあり方として自分はこう考えている、こういうことを申したというふうに私は承知いたしております。
  210. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長、そんな答弁が許されますか。私は委員長の御判断をいただきたい。明確に過去の、この権威ある文献にも、私が指摘したとおりに、日本側が負担するのは借り上げ料とそれから補償費と、二つきちんとなっている。それに基づいて施設庁の今日までの解釈も、家を建てるということは米側の負担である、きちんとしておるのだ。いまのような答弁を私は許されません。この点はひとつ、これは私も本を持ってきておるし、関係の文献を持ってきているから、ひとつ委員長で、どうなのか判断をしていただきたい、このように考えます。どう取り扱うか。
  211. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御存じのように、地位協定は国会の御承認を得た協定でございまして、米軍の基地の使用につきましては、これに基づいて運営をしなければならぬ私どもは責任を持っているわけでございまして、私どもがいまやろうとしておりますことにつきまして、地位協定の違反であるということであると、あなたの御指摘のとおり事は重大だと思うのでありまするけれども、私ども地位協定を十分検討いたしまして、私どもでやりますことは地位協定上差しつかえがないことであるという判断によりまして国会の御審議を願っておるわけでございます。  岩国のごらんいただいた施設につきましても、昭和十四年に建てられたということでございまして、ずいぶん年月が経過いたしたわけでございまして、これが老朽化しているかしていないかという評価の問題はあると思いますけれども、これが使用に耐えられないような状態になった場合に、安保条約の存続期間中提供する責任を持っておる日本として、これを提供してまいるということが、地位協定違反とは私はどうも考えられないわけでございます。  山上元長官についての言及がございました。その点も私どもよく研究はしてみたわけでございますけれども、私どもがいまとっておる地位協定の解釈が地位協定違反とは、せっかくの御指摘でございますけれども、私どもはそのように考えていないわけでございますので、政府の言明と政府の措置に御信頼を願いたいと思います。
  212. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほどアメリカ局長は、この山上さんの答弁の中に地位協定の解釈ということばがないから、取り扱いとしてその答弁をしたのです。何を言うんですか、あなたは。解釈があるからそういう取り扱いになっているんじゃないですか。何を言っているのです。それを詭弁というのです。そして、いろいろ調べた結果とあなたはおっしゃいますが、これをあなた読まれましたか。これが当時の調達庁の確定解釈なんです。これを検討されましたか。これを検討した上で、もう一ぺん返答してください。当時の確定解釈では、それは調達庁の——ちょっと待ってくださいよ。当時の調達庁の確定解釈です。つまり政府の確定解釈です。だからこれをごらんになって、読んで、これを読んで検討した上、再度あなた方のこれに対する、この調達史における解釈の見解を示してください。政府がわざわざつくった委員会で、こういうりっぱな解釈の本を出しておるのですから、そのような手続をとってください。
  213. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その山上元長官のいま御指摘になりましたくだりにつきましては、検討をいたしました。そして……。
  214. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 山上さんじゃなしに、これですよ、調達史ですよ。
  215. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御指摘の部分につきましては、検討をいたしたわけでございます。これは山上さんの御見解でございますが、現在の政府責任者の解釈というものを御信頼いただきたいと思います。
  216. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何回言っても私は納得できません。そういうかってな解釈こそリベラルな解釈なんですよ。そしてこれは一九五六年、行政協定の時代ですけれども、今日の地位協定の二十四条二項は、この行政協定では二十五条の二項(a)として、同じ条文になっているのです。だから、その解釈は生きるわけです、同じ条文ですから。これが政府の解釈。それがいま変わった。私はそういうことは許されません。  もう一ぺん言います。この調達史をもう一ぺん検討していただいて、この政府の見解に対する解明をひとつやっていただきたい。そうしなければ、われわれは何ぼ国会審議して御答弁をいただいても、それがくりくり変わるようじゃ、国会の権威は一体どこにあるのですか。そういうことではわれわれ審議できませんよ。何を信用するのですか、答弁で。
  217. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 行政協定時代のことにつきまして御言及がございましたので、その関係について御答弁申し上げたいと存じます。  行政協定第二十五条、御指摘のとおりに現行地位協定の第二十四条とほぼ同じ規定でございますけれども、行政協定第二十五条には防衛分担金に関する規定がございますので、この点が違っているわけでございます。  政府といたしましては、当時、行政協定に基づきまして、防衛支出金というもので米軍に対する施設、区域の提供等をいたしてございますけれども、防衛支出金の内訳といたしまして、合衆国軍交付金、施設提供等諸費、合衆国軍事顧問団経費と、大きくいってこの三つに分かれております。そのうちの施設提供等諸費の支出の実績といたしまして、借料、買収費、補償費、補助金、工事費等々が計上されているわけでございますけれども、この防衛支出金によりまして、現に政府は米側に対して建物等を新築し提供した事例が多々あるわけでございまして、追浜の兵器廠でございますとか、追浜のヘリコプター地区云々、こういう施設を現に防衛支出金によって提供しているわけでございます。
  218. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは私は知っているのですよ。そしてそれは、当時防衛分担金があった時代だ。それが漸次防衛分担金が減らされたのは、防衛施設庁の庁費あるいは防衛庁費あるいは顧問団に対する費用がだんだん増していって、それに比例して減額していったんです。そういうことは知っていますよ。しかも、あなたがいまおっしゃったのは典型的なリロケートです。それ以外にありません。あなたが何と言おうと典型的なリロケートです。だから、私はこれ以上押し問答してもしようがないと思う。それで、私は政府のいままでの確定解釈、これがどうしてそんなに変更されるのか、これを解明してください。そうしなければわれわれは責任が持てない。以上です。  提案がございます。どうしても私は納得できない。その政府の確定解釈では、私にいただいた点では、このくだりに、どちらで行なうかは、個々の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案の上決定する、こうなっているのです。つまり、政治的な判断でそのつどきめる、こういうことですよ。これじゃ歯どめはありません。だから、この私に示された統一見解も含めて、もう一ぺん政府の見解を明確にされて、そして、それと私が提案したものとどうなのかを、ひとつこの委員会の責任において明確にしてもらいたい。解明をしていただきたい。そうしなければほんとうに何度審議をやっても、国会での政府答弁がくるくる変わるようでは責任を持った論議はできない、そう思います。提案いたします。
  219. 大平正芳

    ○大平国務大臣 地位協定二十四条二項の解釈をめぐりまして疑義が提示されましたので、政府としてあらためて検討の上、政府の見解を申し上げることにいたします。
  220. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ではいまの見解と、それからさらに先ほどのデンジャラスカーゴーの調査結果を一緒に提出していただいて、その分についての質問を保留いたします。
  221. 根本龍太郎

    ○根本委員長 いや、これは別の機会にやってもらいたい。
  222. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは四十八年度予算の十億に関係しておるんじゃないですか。冗談じゃありませんよ。削っていただくならいいですよ。冗談じゃありませんよ。予算が通ってしまった後解明するなんていったってだめですよ。   〔「休憩休憩」と呼び、その他発言する者あり〕
  223. 根本龍太郎

    ○根本委員長 地位協定二十四条の解釈については、後刻政府から見解の表明を求めることとし、その取り扱いについては、あらためて理事会において協議いたします。  これにて本日の楢崎君の質疑は終了いたしました。  午後一時半より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時五十三分休憩      ————◇—————    午後一時四十一分開議
  224. 根本龍太郎

    ○根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、運輸大臣から発言を求められております。これを許します。新谷運輸大臣
  225. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 今朝、高崎線上尾駅を中心にいたしまして混乱いたしましたその後の状況につきまして、一言中間報告をさしていただきます。  混乱の原因がはっきりいたしました。上尾駅に通勤列車が約十分おくれて到着いたしました際に、この列車のドアがあかなかったそうでありまして、そのために一般乗客が非常に憤激いたしまして、運転席に乱入して運転士を追い出したり、駅長室に乱入して電話線を切ったというようなことが発端でございまして、先ほど御報告申し上げましたような混乱を惹起したような次第でございます。  その後、国鉄当局に対しまして、事態を早く平静に戻すようにという指示をいたしました。十二時現在におきます状態は、上尾駅には約二千人の旅客、公衆が駅を占拠しておられるということでありますが、これは鉄道電話もこわされております。そこで、駅前の通運会社に臨時に駅の出店を置きまして、そこを中心にして、そこが電話も通じておりますので、上尾駅との連絡をとり、いろいろの指示を受けておる状況でございます。上尾駅以外は通信連絡線は全部無事でございまして、本社との間でもいろいろの報告をし、また指示を受けております。  それから大宮駅でございますが、一時、相当の旅客が滞留したという報告を受けましたが、現在では通常の状態に復帰いたしておるようでございまして、そういう心配は大宮駅についてはございません。  それで、上尾と大宮の間が不通になっております。と申しますのは、上尾駅から大宮に来られる旅客が、線路の上を歩いて大宮に来られたそうですが、その際に信号機を投石等によってこわしてしまったらしいのです。そういう関係で大宮−上尾間はいま復旧作業をやっておりますが、これは信号機が中心でございまして、非常に努力はいたしましても、すぐに復旧はちょっとむずかしいのではないかということでございます。それで、とりあえずバスを動員いたしまして、三十五台を確保いたしまして、代行の輸送を始めております。これはもう始まっております。  それから上尾と大宮の間でございますが、単線ででも何とか復旧をさせるようにという努力をいまいたしておりまして、ある程度回復の見込みが出てきたということをいま報告を受けたのでございますが、その程度はまだわかりません。夕方までにどこまで復旧いたしますか、これはまだちょっと確定的に申し上げかねるという状況でございます。  それから、埼玉県警や消防の方々からは、これに対して非常に協力をしてもらっております。  それから、主要駅における旅客の案内、誘導につきましては、放送とか大きな掲示をいたしまして、よく駅にあることでありますが、いつまで待ってもどうなったかわからない、何時間待たされるというような事態がないように、旅客の方々に周知徹底させるという方法を指示をいたしております。  それから、問題はきょう夕方の通勤客の帰りの足でございますが、これはさっき申し上げましたように、高崎線が完全に復旧するとはなかなか考えられませんので、さらにバスの手配をさせました。鉄道の修理はもちろん急ぎますけれども、バスによって代替輸送ができますように、あらゆる努力をしてもらいたいということを国鉄に指示をいたしております。  それから国鉄では、本社、首都圏の本部、東京の北局、高崎局に対策本部を置きまして、また上尾駅前と大宮駅にも前進基地を設けまして、本社からは内田常務理事が大宮に派遣されまして、現地の指揮に当たっておるのでございます。  それから、ただいま国鉄総裁が動労の三役と会って折衝いたしております。もう二時間程度にもなりますが、まだ折衝が続いております。それから、そのあと、おそらく労働大臣国鉄の総裁以下幹部と三役をそれぞれ呼んでいただきまして、この事態を早く収拾するようにという政府としての強い希望を申し入れるという手配をいたしております。  なお、一言追加いたしますと、十二時十分に官房長官からは談話を発表いたしまして、組合側はともかくこの際実力行使を中止して、国民の迷惑を回避するように措置をしてもらいたい。同時に、国鉄当局も一そうの熱意と誠意をもって事態の解決に当たるべきであるという意味の談話を官房長官から出したのであります。  今後とも、私たち関係の者はあらゆる努力をいたしまして、事態の収拾に当たりたいと考えております。
  226. 根本龍太郎

    ○根本委員長 質疑を許します。阪上安太郎君。
  227. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ただいま運輸大臣から、今朝発生いたしました国鉄混乱した事件につきまして、中間報告を受けたわけであります。どうぞひとつ、その事後対策について万全を期していただきたい。特に輸送の回復、確保、それから治安対策等につきまして、国鉄当局とともに最大努力をしていただきたい、このように思います。  さて私は、土地問題について締めくくりをいたしたい、このように考えております。  御案内のように、土地の保有は非常に偏在いたしております。それから地価は依然として高騰を続ける情勢にあります。このことは、この予算委員会を通じまして、相当突っ込んだ論議が行なわれたわけであります。こういった状況は依然として続いておるわけであります。その結果、一握りの土地独占所有者と土地を持たない国民大衆、これによりまして国民が分断される、こういうことになりますと、国民の政治への不信と反感が非常に高まります。われわれはそういうことは決して望ましくないのでありますけれども、このままに放置いたしますならば、土地恐慌といいまするか、ことばはあまり適当でないけれども、土地騒動、こういったものが起こりかねないと私は思います。  そこで、このことにつきましては、現に南米等におきましても、特にペルー等におきましては、こういった問題がすでに発生いたしております。よほど私たちは心しなければならぬ、このように思うわけであります。  そこでこの際、総理にお伺いいたしますが、思い切ってこの際土地の再配分を行なうべきではないか、私はこういう考え方を持っております。そのためには、私権の問題とからんでまいるだろうと思います。けれども、この際、ただ単に土地税制であるとか、土地利用計画であるとかという程度のものではなくして、もっと高い観点からこの事態に対処するために、土地の再配分をやっていくという考え方が必要であろうと思うのでありますが、総理の見解を承りたいと思います。
  228. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 土地は限られたものでございますし、人間はだんだんふえていくのでございますから、需要と供給の面において、供給が不足になっていくという原則は否定することのできない事実でございます。特に人口が大都市に集中をしてまいりますと、都市の内部において、都市の周辺において、土地問題は大きな社会問題化することも事実であります。でありますので、土地問題につきましては、画一、一律的にこれを律するということはなかなかむずかしいわけでございます。  そういう意味で、まず一つには、国土の総合開発によって計画をつくり、知事や市町村長が中心になって利用計画を定めて必要な規制は行なう、こういうことで私権は制限をされるわけでございます。  第二は、都市においてでございますが、都市周辺に対しては、当然、宅地化さるべきであるし、また宅地化されることによって相当部分の宅地の需要にこたえ得るというので都市近郊の市街化区域の放出に対して税制上の措置が講じられておるわけでございますが、現に今年度以降どうするかという問題を御検討いただいておるわけであります。これらの問題は、ただ供給をされて、乱開発が行なわれスプロール化されるということであるならば別でございますが、緑地が適宜保存をせられ、計画どおりに必要な宅地が供給せられるということになれば、相当程度都市の土地問題は解決に向かうわけでございます。  それから第三点は、既成市街地の再開発という問題でございます。これは、所有権そのもの、憲法二十九条において定められておる所有権は別としましても、基準に沿って再開発を行なうことによって住宅は提供せられるわけであります。そういう意味で、全国的にも国土の総合利用というものを前提にして、地域的な特性に合うような政策をあわせ行なうことによって土地問題を解決するということでございます。  最後に、一言申し上げておきたいのは、土地は公け化されることがいいんだということになれば、いまの法律でもできるわけでございます。これは土地に関する相続税を引き上げていけば、もうある時期には全部国のものになるということになりますが、そういうことだけでもって土地問題を解決することは合理的でないという考え方で、憲法で定める二十九条の私有権というものを是認しながら、憲法のワク内で公共のために使われなければならないという、やはり限度を自覚をしながら効率的な土地利用計画を定めるということが、最善の策だと思います。
  229. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私がいまそういう質問をいたしましたのは、土地利用計画、これはすでに政府のほうで国土総合開発法案というものを今度出そうとしている。しかし、その内容をながめてみますと、ただいま私が総理に申し上げたような、その中にある土地利用計画は、一般的な利用、それから規制、それから地価に対するところの高騰を押えていこうとする努力、そういったものは見られるわけでありますけれども、私がお聞きしたいのは、しかし結局のところ、この場合思い切って取り上げなければならぬのは、やはり土地の再配分をやらなければいけないことだが、そういうものが、この土地利用計画の草案といいますか、中に入っていない。これはやはり手抜かりじゃなかろうか。そこまで思い切らなければいけないのじゃないか。  それから、憲法第二十九条の財産権、これに対しては、たてまえとして私有財産というものを憲法はとっておりますが、しかしその例外規定があることは、総理は御承知のとおりであります。公共の福祉のためには財産権を侵してもいいと明確に憲法は規定しているわけなんです。そこで、一般法と特例法という関係から考えたときに、むしろこの場合、特例法のほうが先行するということを考えていく必要があるのではないか。さような意味合いにおきまして、総理が、憲法の規定から言うならばぎりぎり一ぱいの線であるというような考え方よりも、むしろ特例を生かしていくという方向へ頭を切りかえていただく必要がある、私はこのように考えるわけであります。  それと関連いたしまして、土地の再配分というような大問題は、なかなかむずかしい問題となってくるでありましょうけれども、この場合どうしても私は、そこへ頭を持っていかなければほんとうの土地問題の解決にはならない、こういう考え方を持っておるわけでありまして、そういう質問をいたしたわけであります。いま一度その点について総理考え方を伺っておきたい、このように思います。
  230. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 憲法二十九条の私有財産権はもちろん守らなければなりませんが、公益優先、公共のために使用されなければならないという条文があるわけでありますから、そのとおり考えていくべきだと思います。そうして、土地収用法等の規定を、申すまでもなく公共のためには収用の規定もあるわけでありますから、その程度のものは憲法の許容範囲内であるということは当然であります。そういうものがだんだんと拡大をされてまいると思うのです。いままでは、道路とか学校とか公共物件でなければならないといっておったものが、住宅そのものも、大多数の国民の生命や環境を守るというためには、公共性というものの中にだんだん組み込まれてくるということになると、一般的な考え方よりも特例的なもののほうのウエートが高くなるだろうということは当然のことなんです。ですから、いままでならば、どんな法律ができましても、法律の適用を受けない地域にかってに何をつくってもいいじゃないかといっても、牧場をつくっても、蚊が出たり虫が出たり、排水や汚水の問題が出てまいりますから、やはり基準に合うようにつくらなければならないという制限を当然受けるわけであります。でありますから、特例的な措置とか一般的な問題ということよりも、やはり憲法の、公共のために使用されなければならない、それは法律をもって行なうという面が非常に強くこれから土地問題に出てくるということは、これは避けがたいということではなく当然のことだろう、こう思うわけであります。  その過程において土地の再配分が考えられる。再配分に対してなぜ考えないかというのは、いま出しておりますのは、当面する土地の問題や、投機を押えようという問題や、もうすでに買ってしまったものに対して暴利を取り締まろうというようなことを考えておるわけでございまして、やはり数十年、数百年という将来を考えられなくとも、少なくとも十年とか十五年、昭和六十年展望というもので一体どういう状態になるのか、その状態における国民生活の規模や環境はどうあるかということが、おおむね策定されることによって土地の利用計画は定まっていくわけでございますから、そういう意味で、いま出ているものに対しては、必要不可欠のものが欠けておるじゃないかということでございますが、経済社会発展計画も二年間、また国土の総合開発計画においても五十年までにはということでありますので、これが四十八年一ぱい、四十九年、五十年というふうに年を重ねるたびに、いま御指摘になったような問題が解決され整備されていく、このように理解をいただきたい、こう思います。
  231. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで、いま大体考えられておられる土地利用計画、これについて少し詰めてみたいと思います。  一つは、公有地の拡大、そういうことによって、家を持っていない、土地を持っていない庶民に対して配分していく。そのためには、ただ単に公有地を確保して公共施設をつくるという、そういう単純な考え方ではなくして、もっと真剣に土地再配分をやってやる。そのためには、まず第一番に公有地の拡大をそういう意味においてやらなければいけない。いまのようななまぬるい考え方ではいけないのでありまして、この際思い切って、せっかく法律もできておることでありますし、金も十分に用意して、そして公有地をこの際拡大していく。そして、それがただ単に公共事業に使われるだけではなく、庶民住宅その他の住宅建設に対して土地を再配分してやる、そういうところまでいかなければいけないと私は思う。  この場合に、自治大臣のこれに対する考え方を伺っておきたい。あまりむずかしいことを言わぬでよろしい。とことんやる、そのためにはこういう欠点があるのだというようなところぐらいまで、私はひとつお話を承っておきたいと思います。
  232. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御承知のように、地方の公共団体の用地取得のために、財源としては、公共用地先行取得債、そして土地取得のための地方債の拡充強化をはかる、それから、公営企業金融公庫の融資ワクを拡充強化する、これは従来とってきたところであります。  そこで、今度この公共用地を拡充強化していくために、まあ地方債にも限度がありまするし、勢い縁故債で手がけなければならぬ。特に住宅用地に必要限度のものにはひとつ網をかぶせてしまおうということになりますると、このものにもし縁故債を用いた場合、政府の融資の金利と民間資金との金利の間に多少開きが出てまいります。あるいはまた農協の系統資金を使ったらどうか、これは農地のレンタル制の問題とともに検討されております。そういうことになりますと、このいわゆる利子の差額について補給措置がとられないものであろうか、これを実は大蔵省側としきりに自治省としては検討を重ねておる。ぜひひとつこれは実現をしたいというつもりで話し合いをしておるような次第でございます。
  233. 阪上安太郎

    ○阪上委員 まことにそのとおりでありまして、思い切った利子補給が必要でありましょう。ドルもだいぶたまっているようでありますし、思い切ってそっちのほうへ使うという手もありましょう。そういったことについて、大蔵大臣いかがですか。
  234. 愛知揆一

    愛知国務大臣 自治大臣から御答弁申し上げましたように、土地対策につきまして、御承知の閣議できめました大綱もございますが、特に、この策定に際しまして、地方公共団体の先行取得の資金源についていまお話がございましたが、系統資金の活用とあわせて縁故債ということを積極的に考えろ、ひとつ財政当局といたしましても、利子補給という問題については前向きに取り上げましょうということで、それを基本的な考え方にしていろいろ案を練っておるような次第でございます。
  235. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そういう形で、過剰流動性資金などもどんどん消化していくということが必要だと思います。  この際、建設大臣にお伺いいたします。  この土地利用計画の中で、土地委員会、ちょうど英国が持っておりましたようなランド・コミッション、こういったものを導入するという考え方はお持ちでございましょうか、どうでしょうか。
  236. 金丸信

    ○金丸国務大臣 ただいまそれは建設省の中で話し合いをいたしておる、検討中というところでございます。
  237. 阪上安太郎

    ○阪上委員 あるいは多少おそまきかもしれませんけれども、一度ひとつ政府で土地委員会というようなものについて考えていただきたい。  その一つは、やはりその機能としては、前々から私ども申し上げておりますように、公的な土地の一手買い上げ機関国鉄国鉄で、あるいは政府の各省で土地を買っていろいろなことをやっている、あるいは地方公共団体がやはりばらばらな形で土地を買っておるといったものにつきまして、もっと計画的に土地を買い上げていくというような一つの機能を持たす、そういう土地委員会。それから同時に、やはり外部経済でもっていろいろな公共事業が行なわれることによって、その土地はその価格で買い上げられるが、周辺の土地は非常に地価が値上がりしていくわけであります。これは自由な競争の中で得たところの財産ではないと私は思います。この場合、これに対してやはりそういった委員会等が賦課する。そういった外部経済によって地価が上がったものに対して、上がった分に賦課していく、あるいは付加価値税をこれに充当していくというような考え方、そういったものを実施する一つの機関としての土地委員会、こういうものが私は必要だと思います。場合によりましては、土地収用の体系というものをそういったものに移していく考え方もあってしかるべきだと思います。これまたなかなか重大な問題であり、長い間論議されてきたところでありますが、政府も何かそういったものをやろうとする気分があることは私も承知いたしておりますので、ぜひひとつそういったものに頭を向けていただく、こういうことを私は特に望んでおきたいと思います。  それから次に、開発許可制、これはやはり今度の計画でも取り入れられているし、同時に在来から都市計画法等においてもこれは適用されておりますが、これはかつて田中総理にも私は伺ったのでありますけれども、都市計画の区域内で開発許可をやっているというようななまぬるい考え方ではなくて、すべての開発に対して許可制で臨んでいく。このことは一方においてやはり地価を抑制する大きな役割りを持っておる。かって気ままに土地を買って、そこでかって気ままな開発をやっていくということでなくして、許可制を用いることによって地価暴騰等に対する非常な抑制になっていくだろうと私は思うのであります。  それから、狭い日本でありまするから、この際けちな考えで、狭い根性で、ただ単に都市計画区域内において開発を許可するんだ、あるいは今度の場合、特定の区域を設定して、それは許可制に持っていくんだとかいうような、あるいはまた取引の禁止をやっていくのだとか、いや許可制に持っていくのだというような考え方、それもけっこうであります。けれども、この際、やはりそういったことでなくして、全土にわたって開発の許可をやる。そして保全すべきものは保全していく、あるいはそういったふうにいたしまして、非常に大きな範囲で開発許可をやる。しかもその許可は、これは政府考え方でもけっこうでありますが、できるだけ市町村というものを尊重いたしまして、市町村長が権限を持つところまでいけば私は一番いいと思う。けれども、そうでなくても、いまやろうとする方式で、市町村長の意見を聞いて、知事がこれをきめていくという考え方もいいと思いますが、私が申し上げたいのは、要は、やはり開発許可制というものは思い切って広げていかなければいけないじゃないか。それを広げないから、ほかのいろいろな法律を引っぱり出してきて、あるいはつくって、日本列島の改造というものの根底にある土地問題の解決に当たろうとしているのだけれども、私は、この開発許可制度を全国的に、全土的に及ぼすということによって、多くの問題が解消できる、こう考える。こういうことでありますので、これは建設大臣ではなくして総理から、総理は専門でありますから、そういった考え方についてひとつ伺っておきたいと思います。
  238. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 現在でも森林は森林法において、農地は農地法において、都市は都市計画法によって、国土の相当部分が許可制に近いものになっていることはなっているのですが、いま御指摘になったようにばらばらなんです。ばらばらであって、全然総合性がないというところに問題があるわけでございまして、私が、私の論でございますが、都市政策調査会やそれから列島改造論の中で述べたのは、現行の都市計画法のごときものを全国土に網をかぶせてということが前提になっております。  立法の過程において論争したわけでございますが、いまいろいろな法律との関連もありますし、いますぐ当面の土地問題を解決せんとするときに、投機を押えたり、不当利得を押えたり、乱開発を防止したりというときに、全土をすぐ理想的なものに網をかぶせるということにはいろいろな問題があるので、まず現時点においてはこのような制度でスタートをいたしましょう、こういうことでスタートをしたわけでございますが、やはりその過程においては、農地法の問題とか、森林法の問題とか、海岸法の問題とかいろんな問題等がからんできまずから、だからだんだんとこの狭い日本は、いま御指摘になったように、全国土が利用計画がきめられる。そして幾ばくかの規制は必ず受けるようになる。規制を受けるというよりも、それが日本人全体の自然保護になり、次代の国民に残す財産になるのだということに転化していくことはもう不可避だと私は考えております。現時点において、すべてのものを一挙に理想的なものにできないというところに問題があるわけでございます。
  239. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 総理のお考えをちょっと補足させていただきたいのでございますが、実はその土地利用基本計画というものを考えておりますわけですが、これは、現在ございまする国土を五つの地域に分けまして、都市地域それから農業地域、森林地域、自然公園地域、自然保全地域、こうそれぞれに分けまして、たとえば都市地域には都市計画法がございます、農業地域には農地法、農業関係調整法がございますが、そうしたそれぞれの法律と組み合わせて、全体を総合的に考えるということをいま考えておるわけでございまして、総理のお考えはそういう点にお触れになったわけでございます。
  240. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私も要綱を読んでおりまして、そういった地区の区分というものをやろうとしている意欲を私は知っております。私ども社会党が持っておりますのと多少違うのございますけれども、大体よく似たものじゃないか、あるいはあれは社会党の策をとったのじゃないかと、私はここまで思っているわけです。  そこで、この際いま一つ伺っておきたいのは、土地利用計画といたしまして、土地収用につきましてもう少し簡潔な方途をたどる必要があるのじゃないか。なかなかこれまた私権制限の問題とからみましてむずかしいでしょうけれども、しかし、いまのようなしちめんどうくさいことをやっておって、はたして目下の急に対応できるかどうか。  私の考えとしては、ひとつどうだろう、この際、宣言方式を用いてはどうか、こういうことなんであります。それは先ほどの土地委員会等が英国あたりでは持っておったところの力でありますけれども、ここをこういうふうに使うんだという看板でも立ててもよろしい、それから異議申し立ての期間も与えてやっていいが、宣言したならばやるんだ、いうところのいわゆる土地収用に関する宣言方式、これをひとつ採用する必要があるのだろうと私は思うのでありまして、この場合、これはたいへんな問題ですが、ひとつ総理意見を聞いておきたいと思います。
  241. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 土地収用法を将来展望いたしてまいりますと、いまあなたが述べたような方法を採用せざるを得ない。これは土地委員会、まあ土地委員会には、ちょっとあれですが、三つあるわけです。これはいまあなたが述べられたような、いわゆる裁判を受ける権利、最終的に裁判で確定する権利は留保しながら公共事業は代執行できる、こういう状態においてその価格を、おおむね収用価格を決定するのが土地委員会制度である、こういうことであり、これはロンドンのニュータウン法によって採用されておるものでありますから、そういうものであって、最終的には裁判を受ける権利で最終確定はするが、確定を待たずして事業の執行ができる、こういうことになるわけであります。ですからそういう制度をどうしても採用しないと、いまの大都市における再開発は全然できない、こういうことになるわけでございまして、そういう意味で、そのためには、ただ土地委員会だけではなく、いまの状態よりもよりよいところを提供してそこに移転できるようにしてやらなければなりません。時価でやるといっても、時価よりもよけいのものをもらってもなかなかうちは見つからないということもありますかも、やはりハワイの不良街区改良のように、いまよりもいい状況を提供しておって、しかも区画整理ができたらそこに帰ってくることもできるし、移転先に定着をすることもできる。移転する人が損をしないんだ、収用される人は絶対に損をしない、こういう制度ができることが望ましい。これはもうそういう方向は不可避だと思います。
  242. 阪上安太郎

    ○阪上委員 さすがに総理、非常に深く検討なさっているようでありますが、ぜひそういった方法へ向けていくように今後ともひとつ努力願いたい。  いま一つ土地利用計画につきまして大事なことは、過般国土総合開発、最初は利用計画ともいっておられたようでありますが、これにつきまして、やはり巷間いろいろな方面からの批判を私は耳にしております。それは何かというと、なるほどある程度権限を知事並びに市町村長を尊重するような方向へ向けられておるけれども、最後決定についてはやはり国だという形が出ておるようであります。  そこで、しかしながらこれに対して国土総合開発あるいは土地利用あるいは都市の再開発、その他もろもろのそういった開発事業について住民の参加をさすべきである。ただ単なる審議会というような程度でもってやっておってはいけないんだ。積極的に住民が参加できる、そのことによっていろいろな土地の取得に対する問題も解消できるんじゃないか。このことにつきましては、アメリカのフィラデルフィアでありますか、この市が、人口十五、六万だと私は思っております、早くからそういう制度を取り上げておる。ただ単に都市計画委員会というものだけの意見によって進めていくんじゃなくして、その背後にある市民の声を聞いてやっていくんだ。具体的な方法としては、これについては都市計画市民会議というような名称を付した会議をもって、そして多くの労働組合であるとか、あるいは商業組合であるとか、あるいは一般婦人層であるとかいろいろなものを網羅して、大体三百数十団体の代表者を集めてそしてこれをやっておる。それはただ単なる住民運動という形ではない。そうじゃなくして、これはもっと法的にオーソライズドされたものである。たとえば諮問したところの都市計画委員会、これが答申をしてくる。それに対して一方においてこの市民会議がそれを見て、そこで会議を開いて、そしてこの点は納得できない、この点はこうすべきであるというようなことでもってこれを市長に勧告してくる。その勧告権を認めて、そして都市計画委員会の出した結論に対して、これに対してさらに市長は修正を加えていく、そういうことでありますので、いまわが国で行なわれておるようなもろもろのそういったことに関する問題というものは、ほとんどそり市民会議によってこなされてしまっておる。だから、過去十数年間において、都市計画問題について市民の反対があり、そしてこれが実施できなかったという例は一回もないということが実証されておるわけなんであります。  私はやはりこの際、上からの押しつけではなくして、ほんとうに住民に参加さして、そういった都市再開発にしろ何にしろやっていく、そういうことについてやはり下部からの参画ということは必要である。そういう意味において、そういったものをオーソライズし勧告権を与えていくようなそういう市民の会議というもの、これを持つ必要があるのではないか。これについてもひとつ、どうでしょうか、小坂さん、あなたからひとつやってくれますか。
  243. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私どもも、その阪上委員の傾聴すべき御意見、よく承知しておるわけでございますが、ただこの開発の場合、市町村長を主にしてやっていったほうがいいか、まあ相当広範囲にわたります場合が多いものですから、都道府県知事というものを主に考えていったらいいかという点で、実は後者をとっているわけでございます。  その場合、都道府県知事が開発の計画をきめまする場合には、市町村長とそれからいまおっしゃったような意味の地元の何か審議会、非常に各方面にわたって意見を有する人たちによって構成される審議会の意見を聞いてきめるということではどうであろうかと思っているわけでございます。  ただ、この場合、審議会は執行機関ではなくて、諮問機関であるという性格を考えておるわけでございます。
  244. 阪上安太郎

    ○阪上委員 まあそのくらいのところから入ってもらっても非常にけっこうだと思います。ぜひひとつ住民が直接参加できるこの道を開いてやらぬと、住民参加の地方自治だとか国民参加の政治だとかというようなことを百万べんおっしゃったって、これはへの突っぱりにもならない。ほんとうにそういう気持ちで住民参加の場所を与えてやる。そのことによって都市の再開発もスムーズに進むし、まあ田中さんが言っておられるような新しい開発の方向というものも出てくると私は思うのだ。住民を全然つんぼさじきに置いておいてそういうことをやろうとしてもこれは無理だ、そういうことで私は申し上げたのでありまして、こういうことになりますと総理大臣、またひとつ一席やろうという気持ちになるかもしれませんが、まあこの程度で私はけっこうであります。  そこで、次に土地関係税制の問題で若干伺っておきたい。  大かたの線は出ております。しかし私は、一つは、この市街化区域内農地の宅地並み課税、この問題であります。私は、私の論として、いま地方行政委員会等におきまして小委員会をつくって検討しておられて、どこまでいっているかは知りません。しかし、自民党の案であるB案でありますか、これを下回ることはいけないという意見もある。それから同時に、いま一つは、課税は反対ではないけれども、しかしそれならばもっとコンパクトに、市街化区域というものをもっと縮めてそしてやるべきじゃないかという意見もある。そしてまた調整区域等についても、もう少し考え直す必要があるんじゃないかという声もありますが、それはそれなりにいたしまして、私が言いたいのは、ただ単に、地方税法を昨年改正して、そしてそれに特例を設けて引き延ばしておいて、今度また同じような方向で進もうということについて、税制でもってあの目的を達成しようとする考え方は間違っているんじゃないかと私は思うのであります。あまりにもこそくな手段であろう。もっとやはり市街化区域内に持っておる農民の土地、これを都市計画に参画せしめていくという方法を考えてやる必要があるんじゃないか。そのことのほうが先決だと私は思うのであります。税制はいまのような状態であっても私はいいと思うのです。そんなけちな考えを持たないで、税制でもっていぶり出していこうというような考え方を持たないで、この際思い切って開発に参画するという考え方が必要だと思います。  それからいま一つ、これはもう時間がありませんので一挙に片づけてしまいますが、ただそういう土地を吐き出させた場合に、直ちにこれを住宅にするんだという考え方はおかしいんじゃないかと私は思う。何でもかんでも、住宅が不足しているからといって、そうした市街化区域内の農地がかりに出てきた場合に、これを住宅化していこうという考え方は、これは少し短兵急過ぎるのじゃないか。東京都にしても大阪市にしても、いまは緑地がなくて困っているのでありますから、こういった点につきまして、直ちにそういった公共物を、建物を、上物を建てていくというような考え方じゃなくして、もっと緑地を温存するという考え方に立つべきである。ことに、そういった点について農民の中には、やはり生産緑地を確保するんだという考え方も出ておるようであります。こういう機会でありますので、思い切ってひとつこの点について、あまり税でいびり出すという考えじゃなくして、大いに参加さしてやる。よその土地を買うて、そして土建業者がそこで上物を建てて大もうけしているんですから、そういったことも考えたときに、私は第三セクターとしてでもいいだろうと思う。地方公共団体なり何なりが、思い切ってそういった事業に市街化農地の農民が参加することができるというような方向こそ先に出すべきじゃないか、私はこういうふうに考えておるわけであります。これはどなたでしょうか。自治大臣。
  245. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 前段の御質問でありまするが、これは御承知のように所持しておるところの財産、土地建物、こういうものの標準価格に税率を課する、いわゆる固定資産税の対象としての問題ですね。これはもう御承知のとおりです。そこで、これによっていぶり出して土地をどうするということよりも、四十六年のときには、むしろ周辺土地との均衡をはかる意味においてこれはやはりある程度の税負担をしてもらわなければならぬのではないか。で、まあ御承知のように軽減措置をとりながらあの法律が制定されたわけであります。その後議論が出てきてこうなって、私ども自治省としては研究会に委嘱をしてA案、B案となった。ところがこのA案、B案のうちどちらでいくか、B案でいくかということで政府案をきめようといたしましたときに、去年の経緯もあるから、一応、共産党を除く各党共同の修正でもあるし、話し合いをしてみよう、こういうことで現在御指摘のような話し合いに入っておるわけでございます。  まあ自治省としては、過去の法律がそのまま生きておりまするので、これはもう三月一ぱいに話し合いがもしつきません場合には、当然この本法が生きてまいりまするので、それでは国会尊重意味から、ひとつ党側の各党の折衝におまかせいたしましょうということで、ここにきておるわけであります。したがって、この固定資産税だけによって農地をことさらに吐き出させる、住宅用地にしていくというものではありません。したがって、いま一つの御提案としてありましたように、いま土地税制上の問題として考えておりまするのは、この農地を売却した場合においては、ひとつ譲渡税において相当従来を上回った方向で免税措置を検討できないものかというので、これが検討されておるわけであります。  後段の御指摘については、貴重な御意見として承っておきたいと思います。
  246. 阪上安太郎

    ○阪上委員 まあいずれにいたしましても、昭和三十八年でありますか以降、評価はしておるけれどもこれは適用していない。適用除外になっているというよりも、農地については特別の扱いをしておった、そういう事情があったんでしょう。ですから、そのことはやはり尊重されるべきだと私は思う。ことに、今度これをやろうとしたときに考えられたのが、やはり地価を抑制しようとか土地を吐き出さそうとかというような目的があった。吐き出させたり抑制するなら、別に方法があるじゃないかということを私は申し上げておるのであって、まだ検討中だそうでありますから、十二分にひとつ検討していただきたい、このように思います。  それから、いま問題になっているのは、やはりこれに対する骨抜きだとかなんとかの批判がありますが^それは一般の庶民の、あるいは住宅地域内における宅地との差がすでにあまりにもひど過ぎるじゃないか、こういうことだと私は思うのであります。そんならば逆に思い切って、住宅地域の宅地についてもっと思い切って五十坪なり六十坪なりの固定資産の、これの基礎的な控除をやってみるということが必要じゃないだろうか。いま汗水たらして、それでもって、退職金でもって土地を買い、家を建てた。これにやはり農地と比べて非常に高い税金が課せられておる。しかし、これらのものについて全部が全部とはいきませんけれども、庶民的な五十坪や六十坪のものをここで基礎控除してやるということが、非常に必要な段階に来たんじゃなかろうか、こういうように私は思うのです。この点について自治大臣、どう思いますか。
  247. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは重要な御指摘で、いわゆる農地の宅地並み課税というものが思うようにまいりませんというと、そういう議論がやはり一方から出てくると私は思うのです。ところが、固定資産税というのは、御承知のように資産についての応分な負担を願おうという財産税的な要素もありまするし、まあ収益税的な要素もある地方の財源としては非常に安定した財源ですね。ですから、いまにわかに御提示の件についてお答えはできません。これはもう相当慎重に、税制調査会その他の意向も徴しながら考えなければならない問題でありまするが、農地が少なくとも五万円以上もして、その市町村の平均価格よりもはるかに上回っておる。これは普通該当するものは五万円というより、二十万、三十万というものも現実にあるわけですね。そうなりますというと、いま御質問に出てきたようなそういう素朴な意向が、土地を持っておって、しかもこわれかかったような二十坪以下の小さなうちに住んでおる人の間から出てくると私は思うのですね。ですから、税というものは公平でなければならぬというたてまえから申しますると、やはり都市周辺の、特にA農地といわれるような農地については、これは相当税負担というものも考えてもらっていいのではないかという結論で現行法があるわけでありまして、まあいいところをいっておる。だから今後各党間の話し合いというものも、どうかひとつ、ほぼそれに近い形でまとまらないものかというふうに思っておる次第でございます。
  248. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そういう税論、これは私にもよくわかるのです。ことに固定資産税のごときは、これは別段収益税でも何でもなくて資産の評価税ですから、そういう論議があってしかるべきだと私は思う。  ただ私がいま言いたいのは、いま問題になっておる問題として、この間うちまでここに一定の地域の農地があった、そこが宅地化された、そこへ家を建てた。この家を建てたところの宅地に対する固定資産税の課税と、そのそばにある農地との間に大きな開きがある、百倍以上の開きがある。これに対してどうするかという問題であり、農地に対しては農業経営の面からも十分に考えてやらなければならぬ面がある。そうなってくると、そう四角ばったものの考え方でなくして、政策的なものでも私はいいじゃないか。この場合そういった宅地に対してやはり税の軽減を考えるべきだ。高いほうへ持っていこう、地方財政が非常に苦しい、これは基礎的な財源である、その点も私はよくわかりますけれども、そんなことを言い出せば、思い切って租税の再配分をやってみたらどうか、私はそういうふうに思うわけであります。国と地方の税の再配分をおやりになったらいいじゃないか、実はこういうふうに思うわけでありまして、これはなかなかむずかしい問題ですけれども、そういう点を政府は配慮しておかなければいけないと私は思うのであります。総理の発言を求めるとまた時間がかかりますので、この辺でやめておきます。  それでは、次に地価の公示制、これはもう北山委員からも指摘がありまして、いまのままでは五十億もかけてこんなものを拡大する必要はない、こう言われておりますが、ものは使い方だと私は思う。この場合地価公示制というものをもっとしっかりしたものにして、そしてそれを上回る分について九〇%くらい思い切って課税する、こういった考え方をとるべきだと私は思っております。法人税について、譲渡益に対して一〇〇%かけるというようなことについての是非論議が行なわれておりましたけれども、それとは別に、公示価格というものをもっとオーソライズして、そしてそれを全国的に普及する、そうすれば五十億の金は惜しくもない。こういった点について、これをやはり税制に取り入れていく、あるいはこれを評価の手段に使っていくという考え方はどうでありましょうか。これはやはり自治大臣ですか。
  249. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは予算委員会でもしばしば問題になりましたように、固定資産税の評価額、相続税、そしていまの建設省が行ないまする地価の表示、これが三通りに分かれておるのは、私、望ましくないと思います。それは願わくは一本化されて固定資産税もその税率によってかげんしていく、これは一つの理想論として政府側としての決着がついておることはよく私も承知をいたしておりまするが、現実問題でまいりますると、この地価表示は、御承知のように市街化区域内において二千八百地点で行なわれた。ところが私ども固定資産税は、もう日本じゅう全部の土地、しかも田畑、山林を含むというわけで、これは標準地だけでも七十七万カ所に及んでおるわけですね。ですからいま直ちにということはできませんが、将来の理想の方向としては、相続も、固定資産も、地価表示も一緒になってそこでおのずと税率でかげんしていくということになれば、これは望ましいわけだと思います。
  250. 阪上安太郎

    ○阪上委員 たいへん時間の配分が悪くてもうだんだんと迫ってまいりました。  そこで、この際伺っておきたいと思うのは、地代と家賃、特に家賃についての規制ということについて伺っておきたいと思うのでありますが、時間がありませんので、私のほうから申し上げてみたいと思います。  これは地代家賃統制令がありますけれども、非常に骨抜きになっております。しかしながら、いまわが国において、御案内のように最近持ち家の伸び率が減ってきております。そして再び賃貸住宅の建設が三十何%でありますか、伸びを示してきている。ところが、これらの多くの人々が賃貸住宅に住んでおるわけでありますけれども、その家賃の問題はあまりいままで取り上げられてきていない。しかもその家賃はどんどん上がっていく。民間においては御案内のように、やれ手数料であるとか、あるいは更新料であるとか、敷金であるとか、礼金であるとか、いろいろなものがこれに加わっていくわけなのであります。といってあまり強い規制をいたしますと、民間で賃貸住宅を建てないというおそれもあります。しかし私は、やはりこれをこのままに放置しておくことはいけないと思う。ことに公的住宅の家賃というものがやはり年々値上がりしております。  そこで私は、この際ひとつ思い切って家賃の補助、そういった制度をやはり民間それから公的住宅にかかわらず実施する必要があるのじゃないか、このように思います。ことに住宅公団においてはなかなか土地が取得できないというので、もう入居する者の利便も考えないで、どこかにいい土地があったら何でもかんでも買って、そしてそこへ家を建て、そして入居者がなくて、いま関東地区だけでも五千戸くらいは建ちっきりでもって入っていない、こういうような状態があるわけであります。こういった問題を考えたときに、この際ひとつ思い切って家賃補助制度というものをこれに導入していく。それはただ単に公的な住宅ばかりじゃなく、民間の住宅に対してもやはりそのくらいの思い切った手を打っていく必要がある、私はこのように考えるわけであります。  もともと私が言いたいのは、公共事業というようなものにつきまして、やれ道路であるとか、公園であるとか、あるいは港湾であるとか、いろいろな方向へ向けられているわけでありますが、それはそれでけっこうであります。しかし、私は人間の基本的な人権というものを尊重していくたてまえからいって、なぜ住宅が、すべての住宅が、ことに二億も三億もかけて住宅をつくる場合は別でありますが、いわゆる庶民的な国民的な住宅は、民間が建てようが国が建てようが思い切ってこれに対して補助をしてやるということが必要である、このように思うわけであります。今度の四十八年度予算を見ましても、そういった特定地域に対するところの住宅建設に対しての補助の制度であるとか、あるいはいわゆる農協がつくるところの住宅に対する利子補給であるとか、いろいろなものが出ているわけであります。私は極端に言うならば、道路がなくても人間は生きていけると思う。けれども住居がなければ生きていけない。こういったものが公共事業としての対象になるという考え方を持つ必要があると思う。ただ単に国が建てたものばかりが公共事業だという古くさい考えにこだわっておってはいけないのではないか。端的に言うならば、民間の庶民住宅、こういったものに対して思い切ってこの際建設補助をしてやっても差しつかえないのじゃないか。しかし、なかなかむずかしい問題もあるので、この際思い切って家賃のほうでひとつ考えてみる。だからそこに入居する人の収入と見合って、その際思い切って家賃を補助してやるという考え方を採用する必要があると思うのであります。この点については建設大臣、それから公団の総裁からひとつ御答弁願いたいと思います。
  251. 金丸信

    ○金丸国務大臣 住宅の問題は、先生の御指摘のとおりでありまして、昔住宅宅地審議会でそのような意見もあったということも聞いておるわけでございますが、それをこの際やるということになりますと、家賃体系というものを抜本的に改正しなければならないという面もあるわけでございます。また、いま先生の御指摘のように、いわゆる住宅金融公庫あたりで助成をしていただいておる、そういう点で、住宅をつくる場合非常に金利が安いというような面もあるわけでございますが、どちらにいたしましてもそういうことを行なうには公的資金をふやさなくちゃならない、こういうことでありますし、また現在、住宅宅地審議会に住宅政策はいかにあるべきかということを諮問しております。十分検討してみたいと思っております。
  252. 南部哲也

    ○南部参考人 最近、家賃の高騰とそれから立地が非常に遠隔化したために、御指摘のように、ただいま関東では三千戸ほどあき家がございます。われわれといたしましては、これらに対しましてどのように対していったらいいか、いま建設大臣からお話しのように、家賃の体系そのものについても一応再考すべき時期に来ているんではないか、このように考えておる次第でございます。
  253. 阪上安太郎

    ○阪上委員 さらに総裁に伺っておきますが、あれは金利を一分ほど下げてくれれば家賃を三千円くらいまけることができるという問題と、それから古い入居者と新しい入居者の間にギャップができておる。しかもそれについて公団では、新しいものからその穴埋めをしている。こういう制度は公団としてはどういうふうにお考えになっておるかということ。  それから、先ほどありましたように二年も前に建てたけっこうな住宅が入居者がない。これは高麗川団地なんか典型的なものだと私は思う。それも結局は一つの欠陥を持った欠陥団地であるということでありまして、水はない。足は便が悪い。しかしそういうところに求めていかなければならない。しかもそれが公団が買うた土地ではなくして、すでに別の企業が持っておった土地、それをまた高い値で買うていかなければならない。いろいろな矛盾が出ておる。私はこういうことを考えたら、公団の将来というものは非常に情けないものだろう。こんな形でもってほんとうに公団というのは存在価値があるのかというような気もするわけであります。そこで、金利の引き下げの問題であるとか、それから先ほど言いましたような新旧家賃の、この問題に対する新しい家賃制度というものをつくり出していく。そのためにはやはりこれに対して補助をしてやらなければいけないというようなこと、こういったことを総合的に考えていかなければならない、このように思います。  そこで、金利の分について大蔵大臣から一言承らしていただきたい。一分下げることによって三千円も家賃をまけることができる、この問題について一体どうするかということと、それから公団のいま言ったようなことに対する対策を、もう一度伺っておきたいと思います。
  254. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御承知のように、金利の問題はわれわれも非常に関心を深くしておるところでございますが、四十八年度、公団のほうで申しますと、御承知と思いますが、資本回収コストの引き下げを五分から四分七厘に下げております。それから公庫のほうは、個人の住宅の場合、五分五厘から五分二厘に引き下げまして、あわせて貸し付け限度額も二百五十万円まで拡張いたしておりますので、こういったことがある程度は家賃の引き下げに効果があるものと思っております。しかし、御指摘のようにこれは非常に大問題でございますので、何かと今後も考えていかなければなるまいと思っております。  ただ、先ほど御言及がございましたが、家賃それ自体の補助制度ということになりますと、基本的にもいろいろ問題がございますし、たとえば居住水準と居住者の負担限度とをどういうふうに見るかというようなことをはじめ、いろいろ問題がございますが、先ほど建設大臣が言いましたように、今後ともいろいろと検討していきたい。それから金利の引き下げにはこの上とも努力したい、かように思っております。
  255. 阪上安太郎

    ○阪上委員 公団総裁から御返事をいただこうと思ったのですが、時間の関係上けっこうでございます。どうぞひとつ前向きにこの問題の解決に当たっていただきたい、このように思います。  それから、いま大蔵大臣から御答弁がありましたが、総理、これ一つおやりになったらあなたの株は一ぺんに上がりますよ。ぜひひとつこういった点も考えていただきたい。  そこで、最後でありますけれども、実は私、いま一つこの国会で問題になっておりました消費者米価に対する二千六百億円の財政負担、これについてはどうも了承できないという考え方を持っておりますが、この際ひとつ委員長から、あと時間が三分ほど残っておりますので、関連質問を許していただきたい、このように思います。
  256. 根本龍太郎

    ○根本委員長 小林進君から関連質疑の申し出があります。阪上君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小林君。
  257. 小林進

    ○小林(進)委員 限られた時間でございますので、結論だけをお伺いいたしたいと思うのでございますが、政府が食管法のもとで統制をしておいでになります米が、一〇〇%のうちいわゆる政府米と称するものが六九%、自主流通米といって政府が補助金、財政支出をおやりにならない米が約二三%あるわけでございます。私は、その政府が補助金をお出しになって消費者のほうへ安くいくように手当てをされている米についてどうしても納得いかないので、政府並びに農林大臣にお伺いいたしたいと思うのであります。  政府が一トンについて四万から四万五千円の補助金をお出しになっておる。これが食管会計の赤字のもとになって二千六百億円の赤字になっておるわけでありますが、その七〇%の政府米の中に、いわゆる銘柄米と非銘柄米という二つの種類をお持ちになって、その非銘柄米が政府の手持ちの中の四五%を占めている。その非銘柄米だけは、これは指定米と称して十キロ千五百九十六円で売ってくれよと、指導価格というものをつけて小売り業者におやりになっている。それが四五%。そのうちでも九%がどこかに飛んでしまって、実際は三六%しかその指定価格で売れていないということを、これは農林大臣みずからがお認めになりました。その九%をお認めになったけれども、一体その九%が幾らかというと、大体私の計算では七十万トン。それに対する政府の補助金が大体三百億円です。その三百億円という補助金をおつけになったいわゆる非銘柄米が、農林大臣のことばをかりても、それはぱっとどこかへ飛んでいってしまって、上米に化けたり、あるいは極上米に化けたり、あるいはササニシキに化けたりして売れている。そうすると、国民の血税の三百億円近くの金を出した効果が何もないではないか。これは全く税金の浪費ではないか。そういう浪費をしているこの予算をわれわれは認めるわけにはいかぬぞ。これが第一点です。  ところが、もっとひどいのは、その四五%のほかにやはり補助金を出している米に、いわゆる指定銘柄米というのがございます。この指定銘柄米は非銘柄米よりは政府は六十キロについて二百円くらい高くお買いになっている。高くお買いになっているのでありますが、やはりそれに対して一トン四万なり四万五千円の財政支出をちゃんとおやりになっていることにおいては変わりはない。この米に対してはもはや野放しです。消費者にいくときにはもう野放しだ。野放しで、これはもうかってに売ってよろしい、こういうふうに政府が指導されておりますから、小売り商人はこれをもういわゆる上米にしたり、極上米にしたり、「かがやき」にしたり、「希望」にしたり、ササニシキにしたり、コシヒカリにしたりして、かってな値段をつけて売っている。これが大体二百三十万トンから二百五十万トン、パーセンテージにして二四%。その補助金だけでも、私の計算でいけば八百億円から九百億円。大体九百億円も国民の血税をつけて、食管法第一条で消費者に安く売ってくれよと価格の調整のためにつけた九百億円のその米が、政府の手を離れるときにはもうかってな値段をつけて売ってもよろしい。一体そういうような行政が許されていいのかどうか。これは全くむだな、税金の浪費だ。そんなことの予算を組まれていたんじゃ国民はどんなに税金を出してもこれはかなわぬぞ。午前中は十億円の金の問題でとうとうがたがつきましたけれども、今度は午後の部に入りますと、まず一千億円から一千二百億円、合計してこれを全部ならせば二千六百億円です。こういうむだな食管会計の補てんのためにおやりになる財政支出がある限りは、どうしても私どもはこれを認めるわけにはいかない。これが第二問です。  第三問で私が申し上げたいことは、一体食管法という法律はまだ存在しているのか存在していないのかというたいへんな問題であります。法治国家とはいいながら、食管法の第八条の第四には、ともかく消費者に対しては購入券と引きかえでなければ、購入券のない者には米を売ってはいけないとちゃんと書いてある。購入券によらぬ米の販売は禁ずるという法律がちゃんとある。それからまた、その購入券に必要な事項を書き入れない者には米穀類を売り渡してはならないとちゃんと法律で明記をされておるのでありますが、そういうようなことは、一切これはもう法律が行なわれていない、無法状態です。一体、食管法をどうしているのか。一つも法律が行なわれていない。法律を行なわぬでもよろしいのかどうか、いかがですか。購入券や購入通帳を持ってこない者には米を売ってはいけないとあなた方はちゃんと規定しておきながら、一つとしてこれが通用されていない。一体そんな法律があっていいのか悪いのか。しかもこうやっていわれるように、もう米のやみ市というものが公然と行なわれて、この食管法という法律の食糧の統制の中にこういう正米市場というものがちゃんと行なわれている。一体これは許しておいていいのか、悪いのか。これが第三番目です。  それから第四番目は、大体その自主流通米のほかにいわゆる自由米というものがあって、いまはもうモチ米の投機が問題になっているときを離れまして、この上米と称するササニシキだとかコシヒカリだとかいうその他の極上米が全部、大企業が代行者を入れて米の買いあさりをやっています。これはもう歴然たる事実だ。毎日の新聞にも摘発をせられて、あそこの倉庫に非検査米があった、こっちの倉庫に検査米が滞留していたという評判で一ぱいだ。公々然とウルチ米までが投機の対象になって行なわれていることも、これはかくかくたる事実であります。こういう問題に対して、一体政府は取り締まりをおやりになるのかおやりにならぬのか。毎日毎日食わなければ生きていけない米の問題でございます。米の問題はルールなし、無法の状態に放置せられているという、これを一体どうお考えになるか。  とにかく一、二の問題から言いますと、二千六百億円、国民の血税で、そして消費者に安い米を売ろうというために認めたこの金が一銭も生きていない。一銭も生きていないというならば、これほどのいわゆる血税の浪費はないのでありますから、私どもは現状のままではこの予算を認めるわけにはいかぬ、これが党としてのわれわれの態度でございますから、ひとつ明確にお答えをいただきたいと思います。
  258. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 まず、逆ざやになっておるいまの実情からいろいろお話がございましたが、これは第一には米を生産する農家に、生産者米価としてどの程度のものを支払うかということで、毎年米価審議会に諮問をいたしまして、そしてその後に生産者米価を決定しておるわけでございます。それが政府の売り渡し価格との間で逆ざやがあって、その逆ざやの総額が幾ら幾らになるといういまの御指摘でございます。これは生産者米価のことを中心に考えておることは、小林委員も米産地のことでございますからよく御承知のことであろうと思うのでございます。  そこで問題は、政府の売り渡しますいわゆる標準米になるべきもの、これがただいま御指摘になりました四五%、これが全国平均でいきますと流通が三六%にしかなっていないということでございます。そこのところが問題になるわけでございますが、これは実は政府が卸へ渡す、そして卸へ渡したときに、これも昨年の米価審議会の答申の中にございますように、消費者のことを考えて標準米をつくるがよろしいと、こういうことで、標準米をおおむね政府としては四五%の見当で用意をいたしました。それがいよいよ流通段階に入りまして実際の実績はどうなっておるかというのが、平均三六%ということになるわけであります。  そこで、あなたはそこの九%を問題にされるわけであります。私どももこの九%は、できれば四五%がそのまま標準米として流通するのがよろしいが、そのためには、店にちゃんと標準米を置いて、だれが来てもこの標準米が買えるように用意はしておる。しかしながら、その標準米が残ったときはどうか、こうなると米屋の長年の習慣上混米としてさばいておる、こういうことなのであります。  そこで問題は、その価格の面でございますが、この価格は御承知のとおりに物統令がはずしてあるわけであります。ただ消費者のことを考えまして、一応の標準米を置けとこういうことで、そしてその標準米ができるだけ履行されて消費者のためになることが好もしい。しかし混米になるという事実については、これは否定をいたしておらないのであります。(発言する者あり)ごゆっくりお聞きください。  そこで、その次に銘柄米の御質問でございましたが……。   〔発言する者あり〕
  259. 根本龍太郎

    ○根本委員長 御静粛に願います。
  260. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 この銘柄米につきましては、これはどちらかというと生産者米価を考えておるわけですね。良質米をつくってもらおう、こういうことで、せっかくの努力をしたものについては一俵四百円ほどをこれを支払ってやってもらいたい、こういうことから、いろいろ検討の結果、なるほどこれからは良質米を大いに奨励するがよろしいというので、銘柄については四百円をつけることにいたしたのであります。  それからいま食管法の関係のお話がございました。(小林(進)委員「四百円つけたんじゃないのですよ。四百円にも一トン四万五千円の補助金がついているのを、野放しに何ぼでも高く売っているのはけしからぬじゃないかというのです」と呼ぶ)(「質問を聞いていないじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)いや、よく聞いていますよ。私は聞かずに言ったのではない。私は明快に答えていますよ。明快ですよ。   〔「明快」と呼び、その他発言する者あり〕
  261. 根本龍太郎

    ○根本委員長 御静粛に願います。
  262. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 銘柄米は、その四百円はそういうことでついておる。あなたは産地だからよくおわかりだと思うのだ。足りなかったらあとでもう一ぺん質問してください。  それからこの銘柄米の、私はいま売り渡しの四百円と申し上げましたが、買い入れについては二百円でございます。  それから食管制度によれば、配給通帳云々ということがございました。これは守られておらない。これは、この米がだぶつくような実情になりまして、これをしいて履行せしめてもいかがか。しかし、それならばこの制度を変えたらいいじゃないか、こういうことでございまするが、いまの食管制度は米の不足のときにできた制度でございます。そしてその不足のときのことを考えまするならば、私は繰り返し申し上げておるように、いま食管制をいじるということによっていろいろ問題が起きるよりも、この現実に即してやっていくほうがよろしい。しかし通帳を出す、購入券を出すということになれば、これはいつでも出せるように用意がしてあることも御承知であろうと思うのであります。  それから自由米の買いあさりの問題でございますね。これにつきましては、これは先般来ここでお答えを申し上げているように、モチ米の需給の関係が悪うございまして、その関係から、モチ米に始まって投機、それからそのやみ買いというものが出てきて、これについてはいまの食管制度の流通過程を厳守させるということから取り締まりもできることでございまするので、先般来全国的に調査をいたし、またその結果も大体まとまりつつあるという状況で、このやみで動いておる事実を否定しておるわけではございません。したがいまして、食管法によってこれを取り締まるということで、現に取り締まり中であるということを御承知願いたいと思います。
  263. 小林進

    ○小林(進)委員 委員長、時間がありませんからこれ一問で終わりますが、農林大臣、あなたは私の質問に答えたつもりでいるけれども、何にも答えていないのです。いいですか、第一番目のその四五%の非銘柄米、政府米ですよ。その非銘柄米の四五%のうち九%、この米には一トンについて四万五千円、十キロについては四百五十円ずつの国民の税金がついている。だから政府は売るときには物統令からははずしたが、ひとつ十キロ一千五百九十六円で売ってくれよ、決してかってな値段をつけて売らぬでくれ。その売らぬでくれということばの裏には、十キロについて四百円か四百五十円ずつ国民の税金がついていて、ちゃんと安くなるように補っているのだから。その税金をつけた米が、四五%がいつの間にやらもう九%どっかにふっ飛んじゃって、それが二千円に化けたり、二千五百円に化けたりしていっているから、三百億円の国民の税金が何にも生きないで、ただゼロになってしまった。この三百億円、これを一体どうしてくれるか、そんなむだな金の使い方をするのはどうかというのです。これが一点だ。  第二点のもっとひどいのは、今度は次の銘柄米です。これだって政府がやはり一トンについて四万五千円ずつ裏をつけて買った米であることは間違いない。いいですか、あなたは二百円で受け付けたの四百円で受け付けたの、そんなことを私は聞いているのじゃない。銘柄米もやはり国民の税金で一トン四万五千円、いいですか、十キロについて四百五十円ずつちゃんと政府が補助金を出して、税金でまかなっている。これも安く売ってくれよと。安く売ってくれるんだから国民は税金で、いわゆる十キロについて四百五十円ずつよけい出しましょう。この点においては指定銘柄米も非銘柄米も同じですよ。ところが非銘柄米のときには九%よそへ飛んだだけだが、指定銘柄米はもう二四%そっくりよそへ飛んじゃって、これが二千四百円だ二千八百円だ三千円だに売れているじゃないか。これでは、いわゆる一トンについて四万円、一千億円も国民の税金で安く売ってくれるように裏づけをした意味が何もないじゃないか。税金のむだ使いじゃないか。だから、そういうむだな金を出しておる食管会計というものに対しては、私は四十八年度の予算として認めるわけにはいかぬから、認めてもらいたいならば……。
  264. 根本龍太郎

    ○根本委員長 すでに時間がだいぶ経過しておりまするので、結論をお急ぎください。
  265. 小林進

    ○小林(進)委員 そういうむだな浪費をしないような具体的な方策を出していただきたい。具体的な方法を出してください。
  266. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これは先ほど私、お答えを申し上げましたとおりに、いわゆる生産者米価を幾らにするか、そして政府売り渡し価格は幾らかという、そこの逆ざやの問題であって、銘柄米につきましても、その生産者にいい米をつくってもらおうということでつけておるものである、そして現在は嗜好に合った良質米の流通がよろしいと、こういうことで、そして消費者価格は自然に価格形成ができるようにと、こういうことで物統令からはずされている。しかし、そういうことだけでは消費者のためにいかがかということで、米価審議会は標準米をつくれと、こういうことでありましたから標準米をつくった。こういう経緯にあるのでありまして、標準米の余ったものを長年の米屋の伝統で混米にして売るということは、いまの場合認められておるんですから、それはやむを得ないことであると思います。
  267. 小林進

    ○小林(進)委員 答弁には納得できませんけれども、時間がありませんので、これで私はやめます。
  268. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでは私の質問を終わります。
  269. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて阪上君の質疑は終了いたしました。  先ほどの楢崎君の質疑に対する政府の見解について発言を求めます。大平外務大臣。
  270. 大平正芳

    ○大平国務大臣 地位協定第二十四条の解釈につきましては、先般来御説明申し上げたところでありますが、この際、政府としては、その運用につき、原則として代替の範囲を越える新築を含むことのないよう措置する所存であります。  なお、岩国、三沢の施設整備につきましては、右の点を踏まえまして日米合同委員会に臨み、その決定を経て実施いたします。
  271. 根本龍太郎

    ○根本委員長 ただいまの政府見解に対し、楢崎君より発言を求められております。これを許します。楢崎弥之助君。
  272. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 意見だけ申し上げておきます。  ただいまの政府見解は、地位協定二条、三条、二十四条の拡大解釈でありまして、日米分担金の復活という事実上の地位協定改悪に通ずるものであって、私たちとしては絶対に承服できません。  なお、岩国、三沢の改築、改修費十億円は事実上凍結されたものと解し、問題をすべて今後に残したいと思います。以上。     —————————————
  273. 根本龍太郎

    ○根本委員長 この際、昨日、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び本日午前の民社党の各委員から要望せられました種々の修正意見に対し、内閣において検討せられた意見の開陳を求めます。田中内閣総理大臣
  274. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 昭和四十八年度予算につきまして、長期間にわたり真摯な御審議をいただいておりますことに対しまして、まずもって深く感謝の意を表する次第でございます。  もともと、四十八年度予算は、内外の諸情勢にかんがみ、国民福祉の向上、物価の安定、国際収支の均衡回復という三つの困難な課題にこたえることを主眼として編成したものであることは、しばしば申し上げたとおりでございます。  まず、円問題について申し上げます。  国際収支の均衡回復につきましては、政府は、数次にわたり円対策を講ずるなど、あらゆる努力を傾けてまいりましたが、米国のドル切り下げを契機として、国際通貨情勢はまことに予断を許さない状況を迎え、わが国としても、円の変動相場制への移行に踏み切らざるを得ないことになりましたことはまことに遺憾であります。このような円の変動相場制への移行は、特に輸出関連の中小企業等に対し大きな影響を与えることが懸念されますが、これら中小企業対策につきましては、財政、金融、税制の各面にわたって万全の措置を講ずる所存でございます。  なお、円が変動相場制に移行したことに伴って、予算編成の前提となっていた経済見通しも修正を余儀なくされ、昭和四十八年度予算及び財政投融資計画の編成がえを要するのではないかという御意見でありますが、現下の流動的な国際通貨情勢のもとでは、年度を通じた経済全体に及ぼす影響や税収の見積もり等、歳入歳出両面に対する影響を的確に把握することは困難であります。また、最近の経済の実勢を見ると、経済の上昇基調がかなり明確になってきており、また、輸出の増勢にもなお根強いものがあるなど、変動相場制移行による影響はかなり吸収されるものと見られる状況にもありますので、現段階において経済見通しを改定する必要はないものと考えており、このような微妙な情勢のもとにおいては、現在御審議を願っている予算を一日も早く成立させていただき、予算を執行できるようになることが、国際環境の変化に即応して国内経済の安定をはかるゆえんでもあると考えておる次第でございます。  第二に、国民福祉の問題であります。  政府は、経済社会基本計画においても明らかにいたしておりますように、輸出優先の経済構造から、国民福祉志向型の経済構造へ転換をはかることが基本的に必要であると考えておるのであります。このため、経済成長の成果がより一そう社会のすべての階層に行き渡り、国民がひとしくゆとりと潤いのある生活ができるように、社会保障の充実、生活関連社会資本の整備、豊かな自然環境の確保などにつとめてまいりたいと考えます。  昭和四十八年度予算は、新しい経済計画の初年度として、限られた財源の中で国民福祉の向上に格段の努力をいたしたつもりでございます。今後は、特に社会保障について、できるだけ早く長期計画を策定して、その計画的な推進をはかる所存でございます。  第三は、物価の安定であります。  物価の安定は、国民福祉に大きな影響を及ぼす重大な問題であります。政府としては、物価の安定を本年度の再重点課題の一つとして、これに取り組んでまいる所存であります。  社会保障の充実や生活環境の整備をはかるためには、財政の資源配分の機能を一そう活用し、財政主導型の経済運営を行なうことが必要であり、四十八年度予算の規模がある程度大型になったのはこのためであります。もちろん、予算の執行にあたっては、景気の動向を見守りながら、慎重な配慮を加えてまいる所存であります。  物価安定の基本は、経済活動全体が均衡ある姿で、安定した成長を続けるよう、総需要の水準を適正に保つことであります。特に、最近のような経済情勢のもとにおきましては、金融政策の適切な運営が重要であります。外貨の累増などに関連し、ややもすれば、土地や商品への投機に走りがちな、いわゆる過剰流動性を吸収するために、適時適切なる措置がとられなければなりません。このため、すでに、預金準備率の引き上げや窓口規制などの措置を逐次講じているのでありますが、円の変動相場制への移行は、一面においてデフレ的要因ともなることも否定しがたく、また、金融を引き締める場合においても、中小企業に画一的にその影響が及ばないように配慮する必要がありますので、一そうきめこまかい金融施策の運営につとめてまいりたいと存じます。  また、生活必需物資の投機については、国会に提案しております生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律案により規制する考えであります。  さらに、地価問題に関する総合的な土地政策の確立については、去る一月二十六日の地価対策閣僚協議会において、土地融資の抑制、土地税制の改善、公有地の拡大等、各般の施策を強力に実施することを決定しておりますが、すみやかにその具体化を推進し、地価の安定をはかってまいりたいと考えておるのであります。  四十八年度予算につきまして、四党が熱心に御検討を加えられ、共同の組みかえ案を発表されたことにつきましては敬意を表する次第であり、また、組みかえ案の内容につきましても、個々の項目にわたって十分慎重に検討いたしました。しかし、御提案の組みかえの御要求には沿いかねることをはなはだ遺憾といたします。  政府といたしましては、過日も申し上げましたように、これまで生産、輸出を推進してきたわが国の経済社会構造を福祉中心構造に転換するため、今後一そうの努力を傾ける所存であります。その際、この四党組かえ案をはじめ、各党から寄せられた御意見、さらには、参議院における御審議を通じてお示しいただく御意見については、謙虚に耳を傾け、遺憾なきを期するとともに、今後とも一そう適切なる措置を講ずるよう努力してまいりたいと存じます。  以上。
  275. 根本龍太郎

    ○根本委員長 ただいまの内閣総理大臣の発言に関連して、辻原弘市君より発言を求められております。これを許します。辻原弘市君。
  276. 辻原弘市

    ○辻原委員 昨日、われわれ野党四党から要求をいたしました、野党四党共同予算組みかえ、修正に対する政府の見解を、ただいま詳細に承りました。しかし、総理から御発表になられました内容はきわめて抽象的であります。少なくとも、われわれが提示をいたしました組みかえの内容は、歳入歳出あるいは財政投融資計画等全般にわたって、具体的な組みかえの方向、修正の方向を差し示したはずであります。しかしながら、それに対しては答えられておりません。しかも、組みかえをしなければならぬという前提についても、われわれときわめて意見を異にいたしております。  しかしながら、せっかく政府も、いま総理のおことばをかりて申しまするならば、それぞれ具体的に閣議を通して検討せられたという結果の発表である、こういうふうにお答えになりましたから、われわれも誠意をもってこれに対して検討を加えたいと思います。したがって、この政府見解を含めて、自後の予算委員会の取り扱い等について私どもも協議をいたさなければならぬと考えております。  したがって、委員長におかれては、この際委員会を暫時休憩され、直ちに理事会を開催せられるよう要求いたします。
  277. 根本龍太郎

    ○根本委員長 以上をもちまして、締めくくり総括質疑は終了し、昭和四十八年度総予算に対する質疑は全部終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。    午後三時十九分休憩      ————◇—————    午後四時五十二分開議
  278. 根本龍太郎

    ○根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十八年度総予算に対し、辻原弘市君外二十名より、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党四党共同提案にかかる昭和四十八年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議がただいま提出されました。
  279. 根本龍太郎

    ○根本委員長 この際、提出者の趣旨弁明を求めます。松浦利尚君。
  280. 松浦利尚

    松浦(利)委員 昨日来、われわれ野党四党の予算補正について当委員会でこれを説明し、政府の見解を求めたところ、先ほど政府を代表して総理からその回答がありました。この回答につきまして、ただいままで詳細に検討いたしました結果、政府態度は誠意を欠くものであり、とうていわれわれの了解し得るところではないとの結論に達しましたので、ここにあらためてこの補正内容を組みかえ動議として提出いたしたいと思います。  したがって、私は、提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党が共同提案いたしております昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議につきまして、その提案の理由及び概要を御説明申し上げます。  すでに動議の案文につきましては、お手元に配付いたしてありますので、御参照いただきたいと思います。  まず、動議の主文を朗読いたします。   昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算については、政府はこれを撤回し、少なくとも左記の点を含めてすみやかに組替えをなし、再提出することを要求する。    右の動議を提出する。  最初に、昭和四十八年度予算の編成がえを求める理由を申し上げます。  理由の第一は、円再切り上げの責任予算編成の前提が崩壊したということであります。  政府は、これまで円の再切り上げを避けるといいながら、ついに円の変動相場制への移行、円の大幅切り上げという事態を招き、国民に深刻な打撃と損失を与えるに至りました。このような事態になるまで内外政策の転換を行なってこなかった政府責任はきわめて重大であり、政府の円対策の無能ぶりと大企業優先、アメリカ追従の姿勢を暴露するものであります。  しかも、円再切り上げという事態を迎え、昭和四十八年度予算は、その前提をすべて失い、根本的な再編成を行なわなければならない事態となっています。政府の経済見通し、予算案、財政投融資計画を再検討し、新しい事態に対処して、国民の生活と利益を守るよう編成し直さない限り、国民の期待にこたえることができないことは明らかであります。  理由の第二は、大企業優先から国民生活優先への根本的な転換が求められていることであります。  以上申し上げましたような重大な事態を迎えて強く批判しなければならないことは、過去二十年にわたる政府・自民党の大企業優先、輸出至上主義の高度成長政策に基づく内外経済政策であります。  とりわけ、わが国の高度経済成長は、生産第一、低福祉、低所得政策によって進められてまいりました。すなわち、労働者には低賃金と長時間労働を押しつけ、公害をたれ流しにし、社会保障、社会福祉の充実を怠り、生活環境の整備を放置し、農業や中小企業を踏み台にして、国際競争力を強め、低輸出価格、二重価格を通じて進められてきたものであります。  しかも、その上に、政官財一体となった金融、財政政策によって産業基盤偏重の税制、財政投資が拡大され、一方では、消費者物価の高騰を招き、国民生活を苦しめてきました。まさに国民生活の犠牲と負担の増大によってもたらされたものであります。  理由の第三は、昭和四十八年度政府予算案国民生活を一そう苦しめるインフレ促進、低福祉、高負担予算となっていることであります。  田中内閣は、今日の事態を招くに至ったことについては何ら反省せず、あくまでも日本列島改造論を振りかざし、従来にも増して高度成長路線を推し進めようとしているのであります。  すなわち、昭和四十八年度予算は、福祉充実はおろか経済政策転換の姿勢は全く認められず、円再切り上げの原因をもっぱら外圧に置き、みずからの責任を回避して、通貨危機の犠牲を国民に押しつけ、またしても国民生活の犠牲と負担の増大をはかろうとしているのであります。これでは、事実上の大幅な円再切り上げのもとで国民の不安は高まり、国民生活を脅かすことは明らかであります。  さらに、具体的に申し上げるならば、その一つは、昭和四十八年度予算は、明らかにインフレ促進、物価値上げ予算であるということであります。すなわち、政府は、地下鉄、バス料金に続いて、国鉄運賃、健保料金値上げ法案を提出し、公共料金の値上げによる政府主導の値上げ政策を進めようとしているのであります。  また、だぶついた資金と日本列島改造論によって、土地、株式、生活必需物資への投機をあおり、インフレの進展と社会的不公正を拡大しています。加えて、巨額の国債を増発しようとしているのであります。  これらは、物価値上げに一そう拍車をかけ、国民生活を圧迫するだけでなく、大衆の貯蓄を減価させ、将来の大衆の生活を完全に破壊するものであります。しかも、減税とは名のみで、物価調整すら十分行なわれず、大衆負担を一そう増大するものとなっているのであります。  また、二つには、昭和四十八年度予算案は、福祉転換どころか低福祉、高負担を先行させ、その反面、産業基盤投資を優先させている予算であるということであります。  政府は、口では福祉充実を唱えながら、老齢福祉年金は月額五千円にすぎず、五万円年金構想も完全に見せかけのものであり、国民年金に至っては、その実施は昭和六十一年からという遠い先のことであります。しかも、健康保険料、厚生年金、国民年金の保険料の引き上げは、国鉄運賃の値上げと相まって、国民負担を増大させ、かえって福祉を後退させるものであります。  これに対して、列島改造を先行させる道路等の産業基盤投資は大幅に増額し、これまで放置されてきた住宅、生活環境、社会福祉、教育文化施設等の整備は軽視され、かえって公害の発生、自然破壊に拍車をかけようとしております。  さらに、三つには、昭和四十八年度予算は、農業と中小企業の危機を一そう深めるものであることであります。  政府のこれまでの農基法農政のもとで農林漁業は破壊され、危機に瀕しております。しかるに、減反と米の買い入れ制限が推し進められ、生産費と所得を補償する生産者米価及び食管制度はくずされ、農産物の自由化促進によって果樹、畜産も経営の自立性は完全に脅かされています。  円再切り上げの事態を迎える中で、中小企業予算は相変わらずコンマ以下の低位に放置され、中小企業労働者に対する積極的施策は全く忘れられて、中小企業の危機的状態をますます深めております。  編成がえを求める理由の第四は、四次防推進の予算だということであります。  政府は、国民世論を無視して、四次防計画を決定し、攻撃用兵器の装備を進め、これと対応して自衛官を大幅に増員し、さらに兵器国産化などにより、日米安保条約のもとで軍事力の増強をはかろうとしております。これは平和を願う日本国民のとうてい承認することのできないものであります。  以上のような国民生活軽視の予算を容認することはできません。政府予算、財政投融資計画を根本的に再検討し、福祉優先、国民の生活と利益を守るよう編成し直し、国民の期待にこたえるべきであります。  次に、編成がえに関する要求の概要を申し上げます。  日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党は、ここに共同して、政府昭和四十八年度一般会計予算、同特別会計予算及び同政府関係機関予算を撤回し、少なくとも次の点を含め編成がえすることを強く要求するものであります。  組みかえ要求の第一は、歳入関係であります。  その一つは、勤労者の所得税の減税であります。  物価高の中で勤労者に重い税の負担をかける現行の税体系を根本的に改め、生活費非課税の原則を貫き、諸控除を大幅に引き上げるべきであります。  そのために、所得税は四人家族年所得百五十万円まで無税とすることを目途に諸控除を引き上げるべきであります。  なお、高額所得者に対しては課税を強化すべきであります。  二つには、中小零細事業者の減税であります。  中小零細事業者に対しては、法人税率の引き下げなど大幅な税の軽減を行なうべきであります。  三つには、大企業の税負担を強化することであります。  大企業の法人税率を四〇%以上に引き上げること、また、法人受け取り配当の益金不算入など大法人優遇の法人税体系を根本的に改めるべきであります。  四つには、大企業、資産所得優遇の減免税を廃止することであります。  大企業、資産所得優遇の租税特別措置を廃止するとともに、交際費課税の強化、広告費課税の新設、さらに有価証券の取引、譲渡所得に対する課税を強化すべきであります。  五つには、土地税制の改革であります。  土地税制を抜本的に改革し、法人所有の土地譲渡所得の完全分離、高率課税及び大法人所有の土地の適正な証価等による土地課税の強化を行なうべきであります。  六つには、国債の発行については、財政法第四条、第五条の原則に立って、赤字国債の発行をやめることを要求いたします。  第二には、歳出の増額についてであります。  その一つは、物価の安定であります。  国鉄運賃値上げ等各種公共料金の引き上げをやめ、政府主導による値上げ政策を根本的に改めるべきであります。  また、大企業の管理価格の監視機構の強化、生活必需物資の投機規制、生鮮食料品の価格安定対策と消費者保護行政の強化、生協等への助成など、強力な物価安定対策を緊急に実施すべきであり、さらに、消費者米価の物統令適用を復活することを要求します。  二つには、社会保障の拡充であります。  まず、健康保険法の保険料の引き上げ等の改悪をやめ、医療保険に対する大幅な国庫補助を行なうべきであります。  また、老齢福祉年金、障害、母子・準母子年金を大幅に増強すること。そのために、老齢福祉年金は六十五歳以上少なくとも一人月額一万円とし、障害、母子等についてもそれに準じて、それぞれ引き上げること。厚生年金、国民年金については、老齢福祉年金等の引き上げとあわせて、従来の積み立て方式を賦課方式に改め、同時に支給額の大幅な引き上げを行なうため制度の抜本的改革を行なうことを要求します。  生活保護費、老人福祉費、児童手当、心身障害児(者)対策、難病対策等につきましては、社会福祉関係費を大幅に増額すること、保育所、老人施設、心身障害児(者)施設、医療施設等福祉施設の緊急整備、並びに社会福祉施設従業員の増員と待遇改善をはかるべきであります。  さらに、以上のことを含む社会保障、社会福祉施設の充実をはかるため、総合的な年次計画を立てることを求めるものであります。  三つには、生活環境の整備であります。  公共賃貸住宅の建設戸数はこれを年間百万戸にふやし、政府出資並びに補助金の増額等により家賃の値上げを押えるべきであり、下水道、ごみ処理施設、公園緑地の拡充、生活道路、大量輸送機関、交通安全施設等の整備、農村地域の生活環境の改善等生活環境関係予算を大幅に増額すべきであります。  また、土地投機を規制し、土地税制の強化、公有地の拡大、地価の抑制など総合的な土地政策を確立し、強力に実施することを要求します。  四つには、公害対策と自然環境の保護についてであります。  公害関係法令を再改正し、公害原因者負担原則に立って、企業に公害防止施設の整備を行なわせること、発生源規制の強化並びに総排出量規制の実施など、公害防除施策を強化するとともに、公害監視体制を拡充するよう大幅な予算措置を行なうべきであります。  被害者の救済措置についても、企業責任を明確にするとともに、公害被害者救済制度の改善をはかること、また、休廃止鉱山対策、公害関係研究体制の確立等をはかること、同時に瀬戸内海等海域浄化対策の強化など、自然環境の保全、整備を行なうことを要求します。  五つには、中小企業、農業対策であります。  ドル切り下げ、円の変動相場制移行に伴う被害から中小零細企業を守るための緊急対策を強化し、下請企業対策及び労働者雇用対策の徹底、大幅な緊急融資を十分行なうべきであります。また、中小企業信用保険公庫の出資金の増額と保証ワクの拡大、小規模事業助成の拡充、納税猶予の実施など、中小企業対策予算を大幅に増額すること、中小零細企業の労働者福祉施設の整備を進めることを要求します。  農業対策につきましては、主要食糧の自給体制を確立し、食管制度の根幹を維持し、農産物の価格支持制度を拡充するとともに、土地改良事業など農業基盤整備のための国庫負担を大幅に増額することを求めるものであります。  六つには、地方財政の強化であります。  地方財政の危機を打開し、生活福祉重点の政策を実施するため、地方財政を強化する必要があります。そのため、地方交付税率の引き上げ、国庫補助制度の改善、超過負担の解消等をはかるべきであり、また、危機に直面している公営企業に対する国の助成を強化することを要求いたします。  七つには、文化対策であります。義務教育の完全無償化を実施するとともに、私学振興のため経常費補助を含む国庫助成を増額すること、奨学金制度の拡充をはかり、国公私立大学の授業料は値上げをしないこと、人口急増地域の不足教室解消、僻地教育振興のための教育施設整備、教員の増員、さらに幼稚園施設整備、社会教育施設の充実等、教育関係費を大幅に増額することを要求します。また、入場税を撤廃し、文化、スポーツ施設の整備、文化財の保護、芸術家、芸能人等の生活、医療共済制度の設置助成などの予算を大幅に増額することを要求いたします。  第三には、歳出の減額についての要求であります。  その一つは、四次防計画をとりやめることであります。  二つには、産業基盤整備のための公共事業費の削減であります。大企業優先の産業投資のための公共事業費、特に産業道路整備の予算等を削減するとともに、日本列島改造計画による先行投資や経費の支出は大幅に削減すべきであります。  三つには、産投会計繰り入れ金の削減であります。産投会計の大企業優先の融資につながる繰り入れ金を削減らすことを要求いたします。  第四は、財政投融資計画についてであります。  財政投融資計画はこれを抜本的に改め、大企業、産業優先の運用を、住宅、生活環境など国民生活改善、福祉優先の施策に大幅に投入することを要求します。  また、財政投融資計画の運用の民主化をはかるため、国会議決のあり方を抜本的に再検討すべきであります。  以上、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党が共同して提案をいたしました昭和四十八年度政府予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議の理由及び概要を申し上げましたが、これらは当面緊急を要する最低限度の要求であります。政府は、いさぎよく今回の予算を撤回し、すみやかに国民立場に立った組みかえを行ない、再提出されるよう強く要求いたしまして、趣旨弁明を終わります。(拍手)
  281. 根本龍太郎

    ○根本委員長 以上をもちまして、動議の趣旨弁明は終わりました。     —————————————
  282. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これより討論に入ります。  昭和四十八年度予算三案及びこれに対する撤回のうえ編成替えを求めるの動議を、一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。まず、倉成正君。
  283. 倉成正

    ○倉成委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和四十八年度予算三案につきまして、政府原案に賛成し、四党共同提案の組みかえ動議に反対の討論を行ないます。  本年一月二十二日のイタリアリラの二重相場制導入、習二十三日のスイスフランの変動相場制移行を契機として国際通貨に危機が訪れ、ついにはドルの一〇%切り下げと、日本変動相場制への移行等という事態を迎えたのでありますが、ドル不安をはじめとする国際通貨問題の解決は依然として残されたままであります。  このような中にあって、わが国経済は、社会保障の充実、社会資本、とりわけ生活関連資本の整備、物価の安定、対外黒字の縮小による国際収支の均衡の達成という未曽有の課題に当面しておりますが、問題解決への道、必ずしも平たんではありません。  今回のわが国変動相場制への移行は、ヨーロッパにおけるドル売りを契機に、通貨不安が増大し、アメリカがドルを一〇%切り下げたことに起因する、いわば外的条件により生じたのでありますが、その原因の当否はともかくとして、これによって国民生活に与える影響を最小限に食いとめ、中小企業対策等に万全の施策を講じなければならないことは当然であります。それとともに、この機会に、これまで生産、輸出を推進してきたわが国の経済社会構造を福祉中心型構造に転換する等、災いを転じて福となす諸般の施策を一そう着実に推進することが望まれるところであります。  他面、変動相場制への移行により、やや過熱ぎみであった景気が適度に冷やされ、貿易面では、輸出がますます抑制され、輸入が増大する結果、貿易収支の黒字が減り、内外不均衡の改善が促進されるという効果も期待されるところであります。  国民福祉の向上、物価の安定、国際収支の均衡化という、わが国経済の直面するいわゆるトリレンマを同時解決するためには、やはり政策手段の多様化をはかる必要があります。財政支出政策が主として国民福祉の向上に充てられることを要請される現段階において、金融政策、租税政策、貿易為替政策等総合的施策の一そうの活用が期待されるところであります。これにより、従来の経済構造は徐々に転換され、経済社会基本計画の想定するような均衡のとれた安定成長、高福祉型の経済社会が実現されるものと確信いたします。  この場合、財政政策も大きな転換が必要とされることは言うまでもありません。財政機能も、従来の景気調整型から資源配分型にその機能を変え、公共部門主導のいわゆる財政主導型経済への移行をいたさなければなりません。  わが国の財政は、いままでもきわめて高い増加を示してきましたが、経済全体の成長も早かったため、国民経済に占める財政のウエートは、欧米諸国に比べ相当低い水準にとどまっております。すなわち、昭和四十四年度においては、欧米諸国が三〇ないし三五%となっているのに対し、わが国は一八%であり、財政政策の積極的展開が目ざされている昭和四十八年度においても二二%程度にしかなりません。もちろん、財政の拡大が直ちに国民福祉の向上に直結するものではなく、その内容が大切でありますが、いずれにしても、わが国においてはまだまだ財政のウエートを高め、公私経済部門間の不均衡是正をはかる余地があるといえます。  このように福祉社会の建設を目ざして財政政策の積極的展開をはかろうとする場合、次のようなことに留意する必要があると考えます。まず、財政主導型経済といっても、すべてに政府が関与することが国民福祉の向上に寄与するわけではありません。政府企業、個人がそれぞれ適切な分野で円滑に活動することが、均衡のとれた国民福祉の向上に資するゆえんであり、財政がどの程度の経済活動まで分担すべきかについては、国民的コンセンサスに基づき、これを明らかにすることが必要であります。  次に、財政主導型経済政策の運営にあたっては、単に欧米福祉国家の模倣ではなく、わが国の実情に適合した独自の福祉社会のビジョンを描き、これを長期的な計画のもとに、着実に実現していくという姿勢が必要であります。このような意味において、政府が四十八年度予算と並行して経済社会基本計画を明らかにしたことは、まことに適切と存じますが、今後ともその具体化に一そう努力することを要望する次第であります。  また、財政が福祉社会の建設に積極的に取り組むためには、それに応じて負担がある程度高まることはやむを得ないところであります。福祉は天から与えられるものではなく、国民が協力してつくり出すものであります。現に、欧米福祉国家における租税及び社会保険負担率の水準は、わが国より格段に高くなっており、今後わが国においても、財政支出の効率化、租税負担の公平化につとめつつ、負担の上昇に対する国民理解を得る必要があると考えます。国際収支の黒字が大幅で、かつ輸出を押え、内需の拡大をはからなければならない現段階においてこそ、福祉政策のおくれを取り戻す意味も含め、相当思い切った福祉充実策がとられるべきであり、そのためには、いままでのように、景気が回復すれば財政が縮小するということではなく、引き続きある程度財政規模を拡大することが必要かと存じます。その意味では、四十八年度予算において社会保障関係の支出をふやすとともに、生活基盤に関連する社会資本の整備を積極的に行なうことは、まことに時宜に適したものと考える次第であります。このため、四十八年度の財政規模はかなりの伸びを示しておりますが、対内均衡等経済全体の動向にも十分配慮していることがうかがえるところであります。  すなわち、国、地方を通ずる政府財貨サービス購入の伸びは一六・六%と、経済成長率一六・四%と、ほぼバランスがとれたものとなっており、また、公債依存度も一六・四%にとどめられているので、これにより経済全般の安定的成長は確保されるものと考えられます。  以上、内外の情勢及びわが国経済の現状と課題について触れてまいりましたが、このような背景のもとに編成されてまいりました今次予算最大の特色は、国民福祉の画期的向上であります。  その第一は、社会保障を中心として国民福祉に関係の深い経費を大幅に増額したことであり、二兆一千百数十億円に及ぶ社会保障費の中において、特に社会福祉費及び社会保険費を対前年比それぞれ六五・三%、三二・〇%と大幅に伸ばし、五万円年金制度の実現、年金に対する物価スライド制の導入、福祉年金の月額五千円への引き上げ及び扶養義務者の所得制限を二百五十万円から六百万円までに大幅緩和、寝たきり老人の医療の無料化を六十五歳まで拡大、被用者医療保険における家族給付率六割への引き上げ、政管健保に対する国庫補助率の一〇%への引き上げ、難病、奇病対策費の充実、心身障害者対策費の大幅増額、生活扶助基準の一四%引き上げ、看護婦の夜間手当の引き上げ等をはかっておりますことは、高く評価されるべきであります。  第二には、社会資本の整備であります。  国土の総合開発を環境保全につとめながら計画的に実施し、各種の社会資本を充実させていくことは当然でありまして、欧米に比し社会資本のストックの少ないわが国にとりまして、これらの充実が急務とされております。したがって、本予算におきましては、かかる立場から資源配分に留意され、公共事業における道路整備の構成比を前年度の三九・六%から三六・六%と少なくし、反面、生活環境施設、住宅のウエートを高くし、特に下水道、環境衛生、公園等の対前年伸び率をそれぞれ大幅にふやし、生活環境施設全体を対前年比六一・四%と伸ばしておりますことは、政府がいかに国民の生活環境の整備に意を注いでおるかのあらわれであります。  さらに、今日国民最大の関心事は土地問題であります。限られた国土の有効利用をはかり、国民が豊かな生活ができるためには、土地問題に対する強力な施策が必要であります。政府においてとられようとしておる全国的な土地利用計画の策定、土地取引の許可制及び開発の規制と土地保有税の新設等一連の土地税制の強化は、金融措置と相まって、地価抑制に大きな効果を持つものと期待され、特に政府が土地問題について、私有財産権を公共の福祉のため、憲法上可能の最大限まで制限し、あえてこの難問解決に立ち向かわんとする姿勢を評価するとともに、さらに各種の施策を組み合わせ、国民のために土地が有効に利用されることができるよう今後一そうの努力を期待するものであります。  なお、財政投融資と国会審議との関係につきましては、従来からの国会における経緯等を尊重し、四十八年度から国会の議決を求められたことは、財政民主主義に忠実たらんとする政府の姿勢のあらわれと評価さるべきであります。  今日求められているものは、発想の転換であり、戦後体制のつくり出した経済の流れを変える施策であります。今日、わが国をめぐる経済情勢はきわめてきびしく、国際社会の中にあって、わが国経済が福祉志向型経済として安定的成長を続けてまいりますためには、国際協調を指向した経済構造、特に中小企業を中心とした産業構造の再編成に取り組むことが必要であります。同時に、限られた資源を適正に配分し、国民的ニーズを満たしていくための努力として、財政硬直化の要因となっているものを取り除き、思い切った既定経費の見直し等、財政政策の転換も当然必要でありまして、まさにわが国の経済運営、財政政策が歴史的転換期にあると申せましょう。田中総理の決断と実行が強く期待されるところであります。  本予算は、叙上のほか、教員給与の改善、国鉄再建、健保をはじめ各般にわたり、時代の要請に即した政策が数多く含まれ、まことに時宜を得たものと考える次第であります。  今回の円変動相場制移行に伴い、経済見通し、歳入見積もり等を改め、予算の組みかえを行なうべきであるという主張もありますが、第一に変動相場制下でのレートの水準、変動相場制期間等流動的な要因が多いので、現段階で年度を通じた経済全般に及ぼす影響を的確に把握することは困難であり、したがって、税収を中心とした歳入の見積もりについても、いまこれを変更することは妥当でないと考えられます。  また、最近の経済の実勢を見ると、経済の上昇基調がかなり明確になってきているなど、変動相場制移行による影響はかなりの部分吸収されるものと見られる状況にもあるので、歳入予算に計上されている税収は確保し得るものとも見られます。  さらに、歳出予算については、外貨建ての支払いにかかるものであっても、変動相場制のもとでは歳出予算額を減額すべきでないものも多く、輸入価格の低下等により一部不用を生ずることが予想されても、どの程度の低下となるかを予測することが困難なものもあるので、いまこれを減額することは適当でないと考えます。  このような事情を考慮すると、むしろ変動相場制移行に伴う国内経済への影響等を極力回避するためにも、この予算をできるだけ早く成立させることが必要と考えます。もちろん、この場合、変動相場制移行に伴い、大きな影響をこうむる輸出関連の中小企業等に緊急の対策を必要とする場合には、財政投融資の弾力的運用や予備費の使用、場合によっては、補正予算等によって対処することが必要でありましょう。  なお、本予算の執行にあたっては、内外の情勢の変化に対応し、機動的、弾力的な運営を政府当局に期待するものであります。  野党四党の編成がえを求めるの動議は、国債の発行の取りやめのほか、多くの重要な提案を含んでいるにもかかわらず、財政規模を幾らにするのか、また歳入、歳出の各項目についての具体的数字も明らかでありません。いやしくも国民生活に重大な影響のある予算の編成がえを求めるならば、かかる抽象的な表現ではなく、説得力のある数字をもとにした提案をされることを期待いたすものであります。  なお、予算委員会審議のあり方について一言すれば、今日ほど社会経済の変化の激しい時代はありません。予算委員会審議は分科会を含めて三百十五時間に及んでおります。時代の変化におくれないためにも、その質疑時間の長短というよりもより能率的な、より密度の高い審議の方法を与野党の協力のもとに見出していくことが、国会国民の期待にこたえるゆえんのものであることを痛感するものであります。  以上申し述べました理由により、私は、政府原案の予算三案に賛成し、四党共同提案の組みかえ動議に反対して、討論を終わります。何とぞ委員各位の御賛同を賜わらんことを要望いたします。(拍手)
  284. 根本龍太郎

    ○根本委員長 次に、阿部昭吾君。
  285. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私は、日本社会党を代表し、昭和四十八年度予算政府三案に反対し、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党が共同で提案いたしております組みかえ動議に賛成の討論を行なうものであります。  まず第一に、われわれはこれまで政府に対し、大企業優先の経済成長政策から国民の生活と福祉を重点とする政策に転換することを繰り返し強く要求してきたところであります。  しかるに、政府自民党は、口では福祉優先を唱え、高福祉社会の建設を宣伝しながら、大企業優遇、国民不在の政策を変えようとせず、事態を一そう悪化させてきたのであります。物価は絶え間なく上がり、生産と資本の集積、集中が進み、富と所得の格差、不公平が広がり、公害と環境破壊、社会の荒廃がとめどなく進行しております。しかも国民の犠牲とインフレ政策、生産第一、輸出第一主義の政策は、ドルを蓄積させ、ついに事実上の大幅円再切り上げに追い込まれるに至りました。  もちろん、今回の円再切り上げの事態を招き、国民に重大な損失を与えるに至った大きな原因は、アメリカが金交換性を停止し、ベトナム戦争をはじめとして無制限にドルをばらまき、アメリカ経済の実態を無視した過剰ドルのたれ流しを行なってきたことにありますが、より重大なことは、わが国が依然としてアメリカ追従の姿勢を続け、これまでの高度成長政策に対し何らの反省もなく、日本列島改造論などを振りかざして、従来にも増して高度成長路線をひた走りに推し進めようとしているところにあります。  現に、だぶついた低利資金と日本列島改造論にあおられて大資本による土地や株、商品の大がかりな買い占めと投機が行なわれ、経済の水ぶくれ、ギャンブル化が進行し、インフレと社会的不公正が拡大し、いまやわが国は、田中内閣の人気のがた落ちや短命説程度の低次元のことではなしに、日本社会の歴史的な地殻変動のきざし、不気味な予感がひしひしと痛感されるのであります。  日本は変わらなければなりません。それは生産第一、輸出と金もうけ第一主義の列島改造論、高度成長経済路線ではナンセンスであります。真に生きた人間のしあわせと、落ちついた人間の生活をすべてに優先させる社会改造が日本のとるべき進路であります。  われわれは、こうした田中内閣責任をきびしく糾弾するとともに、もはやその前提を失った昭和四十八年度予算は根本的に組みかえることは当然であり、わが国経済の構造的欠陥を改めない限り、国民の福祉も円問題の解決もあり得ない、このことを強く主張するものであります。  第二は、昭和四十八年度予算の内容について端的に申し上げますならば、福祉財政どころか、戦後最悪の積極インフレ予算だということであります。大型国債発行と国鉄運賃の値上げ、健保料金の引き上げなど、公共料金の軒並み値上げを行ない、しかも、その上に、産業基盤投資に片寄った公共投資に巨額の資金がつぎ込まれ、住宅、生活環境整備などは放置され、大資本優先の列島改造の先行投資が着々と進められているのであります。これでは、政府のいう資源配分の適正化を阻害するだけでなく、地価や建築費をつり上げ、いたずらに鉄、セメント、土建、不動産業者を潤す結果となるだけであります。最近の地価高騰により、事業費に占める用地費の割合は平均二五%、都市近郊においては四〇%も五〇%もの大きなウエートとなっており、これが事業規模の縮小と予算の非効率的使用に拍車をかけていることは必至であります。  第三は、福祉軽視、高負担先行の予算であり、農業、中小企業切り捨ての予算だという点であります。公約違反の貧弱なごまかしの年金制度にもかかわらず、健康保険料、厚生年金、国民年金の保険料負担は、給付に先立って、確実に三千億円の負担増を押しつけるものであり、国税だけを見ても二兆五千億、地方税を含めて三兆数千億にのぼる自然増に対し、減税は、国税においてわずか三千三百億余円、地方税を含めましても四千億円余りであります。物価高騰に有効な手段、政策が何ら実行されないままに、国民負担の増大はきわめてきびしいものがあります。  農業は、自由化の促進と減反の強行によって完全にその基礎が崩壊し、円切り上げの事態を迎え、中小企業が大きな打撃を受けることはもはや明らかであります。  第四は、日本の平和に逆行する四次防本格化予算だという点であります。政府は、国民世論を無視し、アジアの緊張緩和の方向に逆行して四次防計画を決定し、空軍力を軸とした攻撃的、侵略的重兵器の本格的装備を進め、産軍一体化体制を強めようとしております。  ここで特に申し上げたいのは、政府が、防衛施設庁費に、三沢及び岩国の米軍基地兵舎の改修、改築費十億円を計上していることは重大であります。これは、安保締結以来、提供施設の改築費をわが国が負担する初めてのケースであり、まさに地位協定第二十四条の提供施設の維持管理費は米側が負担するというこの規定をほごにするものであり、旧安保の防衛分担金を復活するものであり、われわれは絶対に許すことはできません。  現在、米軍が基地の整備、拠点化や老朽施設の改築を要求している額は数百億円にのぼっており、もしいま三沢、岩国のケースを許すならば、地位協定によるわが国の負担は歯どめがなく増大し、国民は幾ら税金を払っても足りなくなるといわなければなりません。  政府は、一昨年の沖繩返還協定に際し、基地整備費六千五百万ドルの負担について、地位協定の拡大解釈をすることを密約したことを予算委員会でしぶしぶ認めましたが、われわれは、国際情勢の緊張緩和に逆行して、ニクソン・ドクトリンに追従し、米軍の拠点化など日米安保体制を強化拡大しようとする今回の政府予算案は、これを全面的に削除することを強く要求するものであります。  以上の観点から、今回の政府予算案は、平和と人間尊重、国民生活、福祉充実を願う国民世論を完全に踏みにじるものであり、断じて容認することができないのであります。  これに対し、四党共同組みかえ動議は、まさに現時点における国民の緊急かつ最低限の要求であります。少なくとも、編成がえに関する要求の内容を含めて、直ちに根本的な編成がえを行ない、真に平和と福祉重点の予算に組みかえることなしに国民の信託にこたえることはできないと確信するものであります。  以上、簡潔に申し上げましたが、委員各位の御賛成を強くお願いし、私の討論を終わります。(拍手)
  286. 根本龍太郎

    ○根本委員長 次に、栗田翠君。
  287. 栗田翠

    栗田委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出予算三案に反対し、野党四党共同提出の予算撤回と編成がえ動議に賛成するものであります。  まず最初に、きょうの総理の四党共同要求に対する答弁は、いままでの予算審議についてほとんど考慮を払わない当初の答弁の繰り返しであり、何の誠意も見られないものです。  外為市場が今週も閉鎖され、通貨危機をはじめとして、商品投機その他、国民生活の不安がますます深刻になっているこの時期に、このような答弁をするとは、全く許しがたいことです。  私は、日本共産党・革新共同を代表して、強く抗議いたします。  さて、いまわが国は、国際通貨危機の深まりの中で、政府の誤った円対策により、円の対ドルレートの大幅引き上げと変動相場制長期化を余儀なくされ、労働者、農民、中小企業者の生活と営業は深刻な打撃にさらされようとしており、これに対する十分な対策が緊急にとられなければならない事態となっております。  しかし、本予算は、これまでの論議を通じて明らかなように、こうした事態が引き起こされる以前につくられたものであり、予算の基礎がくずれているだけでなく、緊急事態の要請にこたえる内容は全く含まれていません。政府・自民党は、当然本予算案を撤回し、再提出すべきものであります。  ところが、政府・自民党はこの当然の要求に一向に耳を傾けず、あくまで本予算案で押し通そうとしていますが、このような態度は、予算審議の基本的なあり方に照らしても全く不当であり、とうてい認めることはできません。  次に、本予算そのものに対する反対理由を簡潔に述べます。  その第一は、本予算がかつてない大型予算であり、インフレと物価高を促進させ、国民生活を一そう苦しいものにせざるを得ないという点です。  政府予算は、一般会計では二兆三千四百億円という戦後最大の赤字公債を導入し、過去二十年間の最高の伸び率を示す超大型予算であり、しかもこれに加えて、国鉄運賃の二三%の値上げをはじめ、健保、厚生年金などの公共料金の大幅引き上げを予定しております。このような予算案がインフレと物価高を進め、地価の暴騰に拍車をかけ、国民の生活を一そう耐えがたいものにすることは明白であります。  第二に、このような政府予算の中で、大企業の高度成長を引き続きはかる日本列島改造が、自衛隊増強とともに、最も重視されていることです。  田中首相の日本列島改造が、大企業本位の高度成長をねらう国土開発計画であり、公害を全国に拡散し、国民の生活と環境の新たな破壊を生み出すものであることは、いまや隠しようのない事実となっています。それにもかかわらず、新たな幹線自動車道建設を中心とした第七次道路整備五カ年計画を決定し、あくまでもこれを強行しようとしています。  また、社会資本の整備の名のもとに、一般会計の公共事業費も二兆八千億円で、昭和三十年以来の最高の伸び率を示していますが、その圧倒的部分は大資本のための産業基盤づくりであり、下水道、公園、教育、福祉など国民生活に密着した生活環境施設整備費はわずか二千二百億円に押えられております。  さらに、公共事業費のこのような大幅な増大は、地方自治体の負担を重くし、地方財政をますます身動きできない事態におとしいれているものとなっております。  第三の反対理由は、本予算案が、第四次防衛計画の第二年目として、対米追随のもとで、四次防計画を強行し、自衛隊の増強と日米軍事同盟の侵略的強化をさらに推進しようとしていることであります。  防衛関係費は、来年度予算案では九千三百五十五億円にも達し、F4FJファントム戦闘爆撃機をはじめ、四次防の目玉商品の多くが計上された上、復活折衝の過程では、沖繩の南西航空混成団の発足、FST2改に搭載する空対艦ミサイルの開発開始などが決定され、四次防計画の侵略的性格は一そうきわ立ったものとなっております。  これは、横須賀の米空母の母港化の受け入れや、関東計画の実施にも示されているように、田中内閣が安保堅持を基本に、日本国憲法と平和を願う日本国民の要求に挑戦して、ニクソン・ドクトリンに呼応してアメリカのアジア戦略の新たな再編に積極的に加担しつつ、対米従属、国民弾圧、憲法違反の自衛隊の増強と、日米軍事同盟の侵略的強化を推進しようとするものであり、私たちは平和を願う国民の名において、断じて許すことはできません。  第四の反対理由は、政府予算案が、福祉充実の宣伝とはうらはらに、まさに高負担、低福祉であり、国民生活を一そう苦しめる予算だという点であります。  政府は、社会保障関係費が一般会計の伸び率を上回っていることをもって、福祉充実だと言っていますが、一般会計に占める比率は前年度予算と比べて、わずか〇・五%しか上昇しておりません。健保、年金とも保険料が大幅に値上げされる上、五万円年金が実現したといっても、実際に受け取る人はごくわずかであり、一カ月五千円の老齢年金で一体幾日生活できると考えているのでしょうか。高福祉予算なるものは、全くから文句にすぎません。  また、大資本に対しては、租税特別措置など特権的減免税のほとんどを残した上、公害対策に名をかりた税制上の優遇措置を新たに追加しているにもかかわらず、一般会計で一兆一千五百九十六億円の自然増収を見込みながら、国民大衆の減税要求に何らこたえようとしていません。  さらに、公害対策についても、見るべきものは全くなく、依然として大資本の公害たれ流しを放置し、きびしい公害規制を求める国民の切実な願いを平然と無視する姿勢を示しています。  以上で明らかなように、本政府予算案は、国民の切実な要求に背を向け、大資本の利益と軍備増強を第一とした全く反国民的な性格であると断ぜざるを得ません。よって、本予算に反対いたします。  わが党は、すでに発表している予算に関する主張に基づき、予算を再編成することを強く主張いたしますが、少なくとも四党提案に沿って本予算を撤回し、再編、再提出すべきであると考えるので、この動議に賛成します。  以上をもって私の討論を終わりといたします。  (拍手)
  288. 根本龍太郎

    ○根本委員長 次に、山田太郎君。
  289. 山田太郎

    ○山田(太)委員 私は、公明党を代表いたしまして、昭和四十八年度予算政府三案に反対し、野党四党で共同提出した予算組みかえ動議に賛成の討論を行ないます。  当面する国際通貨危機は、西ドイツマルクの三%切り上げ、イギリス、イタリアなどを除く拡大EC諸国共同変動相場制移行によって、より一そう重要な時期に立ち至っておりますが、円の実勢から見て二〇%もの大幅再切り上げ必至と考えられるようになってきております。  このような大幅再切り上げがわが国経済に甚大な影響を及ぼすことは、すでに苦境に追い込まれている中小企業者の実情から見て容易に想像ができるのであります。  われわれは、当委員会または本会議で再三指摘してまいりましたが、ただいま採決を求められている政府案は、大幅円切り上げという今日の事態を予測せずして編成された予算案であり、予算編成の前提条件が大きくくずれているのであります。  しかも、政府は、予算審議の中において今日の事態に追い込まれた政治責任の表明で、政府が今後とるべき姿勢として、わが国の経済社会構造を福祉中心型構造へ転換するための努力をすると確約しているのであります。  かねてから、わが党が政府に要求してきた、大企業優先の高度経済成長から国民福祉優先への経済構造の転換は、まさに内外経済政策の緊急課題であり、政府は直ちにこれを実行に移す予算措置を行なうべきことが当然であります。  わが党をはじめ野党四党が予算の編成がえの動議を提出した理由は、政府が以上のような必然的な政府予算修正の責任を果たさず、すでに今日の政策課題にこたえていない予算案を原案どおり成立させようとしているからであります。このような政府態度は、政府予算編成に対する権威をおのずから失墜させ、国民を困難におとしいれ、政治不信を増すだけだといわなければなりません。  先ほど総理から四党共同組みかえ案に対する見解が示されましたが、予算審議の段階での総理答弁の繰り返しであり、われわれにはとうてい了解できるものではありません。  以下、予算政府案の内容から見て、これに反対するおもな理由を述べます。  第一は、政府案は庶民生活切り捨ての物価値上げ予算であるということであります。政府案は、一方では大量の国債発行をもとに、財政規模を安易に膨張させ、インフレをあおり、他方では国鉄運賃や健康保険料などの公共料金の値上げなど、政府みずからが物価高騰を主導し、さらには、地価安定のめどもなく、日本列島改造を先行しようとするなど、二重、三重の物価値上げ予算になっております。  それでなくとも現に大商社などによって、生活必需物資までが買い占めされ、異常騰貴を見せており、昨年の卸売り物価の急上昇のはね返りや、野菜価格の先き不安なども合わせると、物価問題の深刻化は必至であるといわなければなりません。物価の安定を要求する国民的合意を無視し、政府みずからもその公約を掲げながら、これに逆行した物価値上げ予算を編成した政府責任は重大であります。  わが党は、この際、日本列島改造のための産業基盤投資関係予算を削除して、国債発行を大幅に減額し、また国鉄、健保の料金値上げなど、公共料金値上げをストップすることを強く要求するものであります。  第二に、政府の宣伝する福祉充実が全く見せかけのものであり、いわんや福祉経済への転換などということは及びもつかない予算案であるということであります。  政府は、社会保障関係費の伸び率をあげて福祉充実予算であると宣伝していますが、社会保障関係費の一般会計に占める割合は、四十七年度よりもわずかに〇・五%ふやしたにすぎないのであります。しかも、福祉向上のビジョンは何ら示されておりません。福祉充実の一枚看板である年金は、老人福祉年金が本年十月より月額わずかに千七百円のアップのみであり、五万円年金のキャッチフレーズも、掛け金の引き上げを先行させ、厚生年金において実際に五万円年金を給付される者は受給者中の約一割であり、国民年金に至っては夫婦五万円の給付が、実際には六十六年ごろという先のことであり、政府のいう福祉の充実は、かくも見せかけのものであります。  わが党は、当面四十八年度十月より老齢福祉年金一万円を、また、厚生年金六万円、国民年金夫婦で六万円の実施を、修正賦課方式により実現することを強く要求するものであります。  第三には、来年度税制改正が、福祉税制逆行の税制改正であることも指摘しなければなりません。  政府は、大幅所得減税の公約を踏みにじり、国税の自然増収だけで二兆五千億円以上見込まれているにもかかわらず、国税、地方税を合わせて、わずかに五千億円程度の減税にとどめてしまっております。予想される物価高から国民生活を守り、福祉向上をはかる意味からも大幅減税は当然であり、政府案では、税負担の不公平を助長するだけであります。  さらに、大企業優先の高度経済成長のてことなり、また、国際的に見ても低水準に据え置かれている大企業の法人税の引き上げが見送られ、租税特別措置の改廃が小手先の細工に終わり、さらに、地価投機抑制のために期待された土地税制が世論批判をかわす程度に終わったことは、とうてい納得できないのであります。  政府が真にわが国の経済体質や産業構造を転換し、さらに、所得配分の公平を期する意思があるならば、大法人税率を四〇%以上に引き上げ、勤労所得者の課税最低限を標準四人世帯で年収百五十万円に引き上げ、また大法人、資産所得者に対する租税特別措置の撤廃、土地税制の強化等を実施すべきであります。  第四には、社会資本整備の面でも、生活環境施設整備が前年度より大幅に増加したと政府は宣伝しておりますが、前年度に対する増加額八百六十億円は、道路整備費の増加額一千八百七十八億円を大きく下回っており、政府があくまで産業優先の姿勢を変えていないことは、公共事業費に占められる産業基盤投資が六五・五%を占めていることを見ても明らかであります。これでも、生活関連、社会資本を重視したいと言い得るかどうか。産業道路中心の公共投資が、産業優先のネットワークを張りめぐらす中で、生活環境整備をあと回しにした政府案が、国民の命や生活を重視していないことは明瞭であります。わが党は、公共賃貸住宅年間百万戸の建設をはじめ、生活環境関係予算とともに、公害関係予算の大幅増額を強く要求するものであります。  第五には、中小企業と農業の危機を一そう深刻化する予算であるといわねばなりません。  現在すでに事実上の大幅円切り上げに直面した中小企業者は、一昨年十二月の大幅円切り上げによる被害からようやく脱しようとしていたやさきだけに、その影響は想像以上のものがあります。  政府は、かねてから、中小企業に甚大な影響を与えることからも、円再切り上げは絶対に回避すると言い続け、この政府の公約をだれよりも期待していたのは中小企業者であります。  しかるに、政府中小企業対策予算の伸び率は、予算規模の伸び率よりはるかに低く、このことは、今日の事態の推移を全く予測していない予算であるというべきであります。  政府が直ちに措置すべきことは、大幅な緊急融資はもちろんのこと、助成の拡充、下請企業対策及び労働者雇用対策の徹底、さらに減税、納税猶予を実施するなど、中小企業対策予算を大幅に増額することであります。  農業の実情は、減反、買い入れ制限等、食管体制がくずされる一方、農産物自由化促進は、果樹、畜産経営をも脅かし、急速な都市化現象と相まって、まさに農業経営は危機に直面しております。  加えて、商社の投機が動く中で、主要食糧の自給体制の確立と農業経営の健全化は急務でありますが、政府予算案はこの基本的課題に対して答えを出していないのであります。  わが党は、農業基盤整備に対する国庫負担をはじめ、食管制度の根幹を維持し、農産物の価格支持制度の拡充のため、予算の大幅増額を要求するものであります。  第六には、本年度の防衛予算は四次防計画が本格的に予算化されたものであり、従来の専守防衛構想から逸脱し、攻撃型の兵器を増強した危険な内容を持っていることであります。  しかも、攻撃型兵器増強に伴う自衛官の大幅増員、南西航空混成団の新設、防衛医大の新設や、予備自衛官の増員、さらには産軍複合体制と在日米軍基地の整理、統合による強化等、日米安保体制と連動して軍事国家へのレールが敷設される意図が明らかであるといっても過言ではありません。  わが党は、アジアの平和に逆行するのみならず、国民福祉充実を妨げる軍事力増強予算は断じて認めることはできないのであります。したがって、四次防計画を取りやめ、さらに三次防の国庫債務負担行為を打ち切り、防衛関係予算を大幅に削減し、それを福祉関係予算に振り向けることを強く要求するものであります。  以上だけでも、数多くの欠陥を持つ政府案に対し、強く反対するものであります。  わが党は、社会、共産、民社各党と一致して、平和を確立し、大企業優先から国民生活優先に転換するため、予算組みかえ動議を提出いたしましたが、政府は、この動議を真摯に受けとめるとともに、野党四党の動議提出の背景には、国民の過半数を越す支持があることを十分認識すべきであります。  これをもって四十八年度予算政府三案に反対し、野党四党の組みかえ動議に賛成する私の討論を終わります。(拍手)
  290. 根本龍太郎

    ○根本委員長 次に、安里積千代君。
  291. 安里積千代

    ○安里委員 私は、民社党を代表し、政府提出の三予算案に対して一括して反対するとともに、野党四党共同提出にかかりますこれら政府予算案につき、撤回の上編成がえを求める動議に賛成する態度を明らかにしたいと思います。  わが党が政府予算案に反対する第一の理由は、円の実質的再切り上げによって、予算案の前提が根本から崩壊しているということであります。言うまでもなく政府は、これまであらゆる努力を払い円の再切り上げは回避すると国民に約束し、またその前提のもとで今回の予算を編成したのであります。しかし、事実はすでに御承知のとおり、円は実質上の大幅再切り上げを余儀なくされ、いまも為替市場長期にわたって閉鎖されているなど、予算の前提条件は根本からくずれ去っているのであります。  そこで、政府の当然なすべきことは、第一に、このような事態を招いた政治責任を明確にし、第二に、その反省の上に立って、新たな構想のもとに予算案を組み替えることであります。民社党をはじめ野党四党が、その基本的な主張の違いがあるにかかわらず、共同して政府予算案の組みかえ要求動議を提案した最大の理由は、現在、国民の一致した要望である国民福祉の飛躍的増大をこの際にこそはかることが、円の再切り上げによる国民の生活不安を解消し、それがひいては円の再々切り上げを防止する最も重要な道であると考えるからであります。にもかかわらず、このような国民の切実な要求を無視し、与党自民党の絶対多数をたよりに、政府予算案を何ら組みかえることなく成立させようとする態度は、まさに政府の反国民的な硬直した姿勢を示すものであり、わが党の断じて認めがたいところであります。  政府予算案に反対する第二の理由は、今回の予算案国民生活を一そう苦しめるインフレ促進予算であるということであります。  田中内閣は、その成立以来、事あるごとに日本列島改造論の必要性を強調してきたのでありますが、これが国民生活にもたらした直接の影響は、土地を投機の対象にさせ、地価の暴騰を招き、それがひいては大豆、木材など生活必需品等の商品騰貴を引き起こし、いまや日本列島はインフレの危機にさらされているのであります。まさに田中内閣こそ戦後最悪のインフレ促進内閣であるといっても過言ではありません。  にもかかわらず、今回の予算案は、この物価高にブレーキをかけるどころか、一そう拍車をかけようとしているのであります。すなわち、第一に旅客の二一二・二%など大幅な国鉄運賃の値上げを予定し、第二に幹線道路を中心にした産業基盤公共事業を行なうことによって、全国的な地価の上昇をもたらし、第三に、無原則かつ大幅な国債発行によって予算の大型化をはかり、財政面からインフレを促進していることであります。このようよ国民生活を犠牲にしたインフレ予算は、直ちに撤回し、組みかえを行なうべきであります。  民社党は、四党共同組みかえ案にもその骨子を述べておりますが、インフレを抑制するため、まず国鉄運賃の値上げを取りやめ、土地価格の安定は、土地利用公社の設立によってはかり、さらに法人税の四〇%への切り上げ、富裕税の創設などによって国債の減額を行なうことを主張しているのであります。これら強力なインフレ対策を全く無視した政府予算案に対しては、わが党は断じて反対せざるを得ません。  第三に指摘しなければならないことは、現在、国民の最も切実な要求であります福祉の飛躍的向上に対しまして、政府予算案がきわめて冷淡であるということであります。わが党は、すでにこの国民の要求にこたえるため、昨年国民福祉四倍増五カ年計画を作成し、政府にその実現を迫ってきたのでありますが、政府は依然としてその場しのぎの対策に終始しているありさまであります。それどころか、口では福祉充実を唱えながら、現実には老齢福祉年金はわずかに月額五千円にしかすぎず、五万円年金構想も完全に見せかけのものであり、国民年金に至っては、その実施は昭和六十一年からという遠い先のものであります。しかも、健康保険料、厚生年金、国民年金の掛け金は大幅に引き上げるなど、国民に低福祉、高負担をしいるものであるといわざるを得ません。  さらに、老人、心身障害者の福祉施設と、さらにそこに働く従業員対策についても、その約九〇%を民間に依存するなど、全く政府の社会保障、社会福祉予算国民の期待を裏切るものであります。これでは、福祉国家の建設もまた夢物語であると断ぜざるを得ません。  次に、政府予算案に反対する第四の理由として、防衛費の大幅増大をあげたいと思います。  わが国の防衛予算は、毎年急膨張を続け、昭和四十八年度は九千三百五十四億円にも達し、四次防がその第二年目を迎えようとしていることであります。現在国民は、このような政府の防衛力増強計画に対して深い危惧の念を抱いていることはいまさら言うまでもありません。  わが党は、自主防衛の必要性を認める立場に立ちながらも、第一に、国民的合意が成立しない現状において、四次防のごとき防衛力増強計画だけが独走することば断じて許しがたく、第二に、日中国交回復、ベトナム和平など、アジアの緊張緩和が続いている現状においては、防衛費の削減をはかりこそすれ、増強をはかる必要性は全く認められないのであります。  この際、わが国が率先して防衛費の削減をはかることこそ、アジアの緊張緩和を一そう促進し、ひいてはわが国の安全と平和を確立する道であるにもかかわらず、政府が今回の予算案で防衛費を増大していることに対し、強く反対するものであります。  最後に私は、政府が真に大企業優先、生産第一主義から、国民生活優先への転換をはかろうとするのであるならば、四野党共同の組みかえを求める動議の線に沿って、いまからでも予算案を編成がえされんことを切望し、政府予算案に対する反対討論と、野党四党の共同組みかえ動議に対する賛成討論を終わります。(拍手)
  292. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、辻原弘市君外二十名提出の昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議につき採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  293. 根本龍太郎

    ○根本委員長 起立少数。よって、辻原弘市君外二十名提出の動議は否決されました。  これより昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算昭和四十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  294. 根本龍太郎

    ○根本委員長 起立多数。よって、昭和四十八年度予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  おはかりいたします。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  295. 根本龍太郎

    ○根本委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  296. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて昭和四十八年度総予算に対する議事は全部終了いたしました。      ————◇—————
  297. 根本龍太郎

    ○根本委員長 この際、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、予算の実施状況に関する事項並びに予算制度等に関する事項につきまして、議長に対し、その承認を求めることとし、その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  298. 根本龍太郎

    ○根本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  299. 根本龍太郎

    ○根本委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  去る一月三十一日総予算審議を開始いたしまして以来、終始真剣なる論議を重ね、慎重な審議を尽くし、本日ここに審査を終了するに至りました。これはひとえに委員各位の御理解ある御協力のたまものでありまして、委員長といたしまして衷心より感謝の意を表する次第であります。  ここに連日の審査に精励されました委員各位の御労苦に対し深く敬意と謝意を表しまして、ごあいさつといたします。ありがとうございました。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。    午後六時十一分散会