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1973-02-27 第71回国会 衆議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十七日(火曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 根本龍太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小澤 太郎君    理事 仮谷 忠男君 理事 田澤 吉郎君    理事 湊  徹郎君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 谷口善太郎君    理事 山田 太郎君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君       伊能繁次郎君    臼井 莊一君       大野 市郎君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       小平 久雄君    志賀  節君       正示啓次郎君    瀬戸山三男君       田中  覚君    田中 龍夫君       塚原 俊郎君    野田 卯一君       保利  茂君    細田 吉藏君       前田 正男君    松野 頼三君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    大原  亨君       小林  進君    田中 武夫君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       梅田  勝君    中島 武敏君       村上  弘君    岡本 富夫君       北側 義一君    安里積千代君       小平  忠君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 櫻内 義雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         労 働 大 臣 加藤常太郎君         建 設 大 臣 金丸  信君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       江崎 真澄君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      福田 赳夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長     亘理  彰君         内閣法制局長官 吉國 一郎君         総理府賞勲局長 吉原 一眞君         総理府恩給局長 平川 幸藏君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会         事務局取引部長 熊田淳一郎君         警察庁刑事局保         安部長     斎藤 一郎君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         環境庁自然保護         局長      首尾木 一君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省証券局長 坂野 常和君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         国税庁長官   近藤 道生君         厚生省年金局長 横田 陽吉君         厚生省援護局長 高木  玄君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林大臣官房予         算課長     渡邉 文雄君         食糧庁長官   中野 和仁君         通商産業省貿易         振興局長    増田  実君         通商産業省企業         局次長     橋本 利一君         通商産業省重工         業局長     山形 栄治君         通商産業省鉱山         石炭局長    外山  弘君         運輸大臣官房長 薗村 泰彦君         運輸省海運局長 佐原  亨君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君         建設大臣官房長 大津留 温君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉田 泰夫君         建設省住宅局長 沢田 光英君         自治大臣官房審         議官      近藤 隆之君         自治省行政局選         挙部長     山本  悟君        自治省税務局長 佐々木喜久治君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     南部 哲也君         参  考  人         (東京証券取引         所理事長)   森永貞一郎君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   野原 正勝君     志賀  節君   松浦周太郎君     田中  覚君   津金 佑近君     村上  弘君   不破 哲三君     梅田  勝君   矢野 絢也君     北側 義一君 同日  辞任         補欠選任   志賀  節君     野原 正勝君   田中  覚君     松浦周太郎君   梅田  勝君     不破 哲三君   村上  弘君     津金 佑近君   北側 義一君     矢野 絢也君     ————————————— 二月二十六日  昭和四十八年度予算における公共投資関係費の  削減及び福祉予算等増額に関する請願(田中榮  一君紹介)(第四九四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これより会議を開きます。  昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行ないます。  梅田勝君。
  3. 梅田勝

    梅田委員 私は、ベトナム問題を質問したいわけでありますが、その前にラオス問題についての質問を若干行ないたいと思います。  二月の二十二日、ラオス愛国勢力代表ビエンチャン政府代表によって、ラオスにおける平和回復民族和合の達成に関する協定が結ばれました。これはベトナム和平協定の成立とともにインドシナ半島における人民の新たな勝利であります。ラオス協定では、外国からの干渉を受けることなくラオス人民自身の手で国内問題を解決する原則が確認され、米軍機による爆撃機を含むすべての侵略行為の終結、外国軍隊の撤退、特殊部隊の解散、ラオス人民を真に正当に代表する正式の民族連合政府樹立などが規定されているのであります。政府はこれを支持されるのかどうか、外務大臣にお尋ねしたいと思います。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 当委員を通じまして申し上げてございますとおり、この間成立しましたパリ協定を軸にいたしまして、それを念頭に置きまして私どもインドシナ政策考えてまいるという方針に変わりはございません。
  5. 梅田勝

    梅田委員 どうもはっきりせぬようですね。ところが、協定調印直後の二月二十三日、米軍のB52戦略爆撃機が九機ラオス南部爆撃し、限定爆撃は今後もあると言っておるわけであります。これらは明らかに重大な協定違反だと思いますが、いかがなものでしょうか。外務大臣にお聞きします。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘の点は、新聞紙上を通じまして、米国ラオス政府要請にこたえて敢行したことであるというように承知いたしておりますが、それ以上の実態は私どもに明らかでございませんので、これについての判断というものにつきましては、いまの段階で差し控えたいと思います。
  7. 梅田勝

    梅田委員 協定アメリカ帝国主義干渉を禁止しているのでしょう。そこでこういうものが行なわれておるということは重大だと思うのですね。多くの国民は、世界人民は、この不当な爆撃に対して怒りの声をあげているわけです。ですから、やはり明確な態度政府としてとることが必要じゃないかと思います。  そこで、二十四日の新聞記者会見におきまして、二階堂官房長官が、米軍爆撃再開は遺憾だと発言された報道がありますが、米国政府抗議をされたのか、長官にお伺いしたいと思います。
  8. 二階堂進

    二階堂国務大臣 私は、米国政府に対してその抗議を申し込むという考えではなかったのであります。事がどういうわけでああいう爆撃が行なわれたかということについては、双方言い分があるようであります。しかし、いずれにしても爆撃行為そのものはまことに遺憾である、爆撃行為そのものは遺憾である、こういうことを私は記者会見において発言したものでございます。
  9. 梅田勝

    梅田委員 外務大臣はいかがですか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカはもとより協定の当事者でございまして、協定の精神、文言につきましては責任を持たれておる国であると承知しております。そのアメリカがそういう挙に出たということにつきましては、報道によりますと、ラオス政府要請によるものであるということだけ私は伺っておるわけでございまして、それ以上承知いたしていないわけでございます。どういう事情があってそういう運びになったのかということにつきましては、いろいろの事情があったことと思うのでありまするけれども、その事情を究明しておりませんので、先ほど申しましたように、私ども判断を、いま国会で申し上げるというようなことは御遠慮したいと思います。
  11. 梅田勝

    梅田委員 爆撃そのものについてはどうですか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 爆撃ということ自体につきましては、二階堂官房長官と同様に、たいへん遺憾なことだと思います。
  13. 梅田勝

    梅田委員 要するに、和平協定以後アメリカによってそういうことが行なわれたということは遺憾だ、こういうことでございますね。これはいずれまた外務委員会等で議論になると思います。  次に、ベトナムの問題に移りたいと思います。ベトナム民主共和国との国交正常化の問題について質問をしたいわけであります。まず、二階堂長官発言について御質問をしたいわけであります。  サイゴン政権が、南ベトナムの支配においても制約を持っておるということは、わが党の不破議員質問大平外相が答えられておるとおりであります。そこで、ベトナム労働党機関紙ニャンザン編集長のホアン・チュン氏が、日本サイゴン政府との現在の関係は、日本ベトナム民主共和国との国交樹立障害にならないと言ったのに対して、二階堂官房長官が、これは柔軟かつ現実的なものなので十分参考にしたい、このように評価されると同時に、従来のベトナム政策にこだわらない、かように述べた報道がございます。これは新聞報道のとおりでございますか。
  14. 二階堂進

    二階堂国務大臣 外交の問題に関しましては、大平外務大臣がおられますから、外務大臣がここで申されることが正当な政府見解だと私は考えておりますが、私が記者会見をいたしますといろいろな問題の質問をされる。たまたまこの問題が質問されましたので、私はその会見において私の見解を申し上げたところが、えらい大きく、読売でございますか、出ておりまして、私もびっくりしたのでございますが、それはこういうことでございます。  北ベトナム労働党機関紙ニャンザン編集長がいろいろなことを述べておられますが、その中で、「日本サイゴン政府との関係は、北ベトナムとの国交樹立に当たって障害にはならない。日本ベトナム再建のために寄せるあらゆる援助を歓迎する」等々述べられておりまして、私は、このことについてどう思うかというクラブにおけるある記者質問でございましたから、私は、伝えられておるように、北ベトナム責任者発言が、先ほどお読みしたようなことでもし事実とすれば、柔軟かつ現実的なものであるとの印象を受けます。政府としても近く北との接触考えておるようでございますから、その際十分参考にいたしたいということを一点申し上げたのであります。  第二点は、南ベトナム唯一合法とする見解を変更したのかという、まことに専門的な、外務大臣でなければ正式に答弁のできないようなことを私に質問をされましたので、私もなまはんかな知恵をしぼってお答えしたのが、カナダアメリカなどに従来にない動きがある——これはもうカナダは承認しておるわけでございます。アメリカは今後どういう措置をとるか、そんなことも十分考えながら対処していくことになると思います。唯一合法にいつまでもこだわるわけにはいかないと思う。弾力的に対処していきたい。  最後がもう一点あるのですよ。いずれにしても外務省は近く担当官を派遣する、それも事実であるようでありますので、先方との話し合いや帰国後の報告を聞いて、ここにおられる外相がどのように措置されるか、考え方を具体的に述べられると思います、こういうように述べておるわけでありまして、従来ベトナム全域を代表する唯一合法政府南ベトナム政府であるとしてきたことに、いつまでもこだわるわけにはいかないであろうという私の私的見解を述べたのであります。しかし、南ベトナム地域を代表するのはチュー大統領のもとにある南ベトナム政府であり、解放戦線なるものではないという見解に変わりはございません、こういうことでございます。
  15. 梅田勝

    梅田委員 外務省アジア局三宅南東アジア第一課長らが近くベトナム民主共和国へ派遣されると報道されております。そこで外務大臣にお伺いしたいのでありますが、どんな資格で、いつごろ、何をしに行かれるのか、お答え願いたいと思います。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 いま私ども出先官憲北ベトナム側とが、非公式の接触を持ちつつございます。その接触を通じまして、外務省係官をハノイに派遣することを受け入れられるかどうか、その時期等について先方感触を聞いておる段階でございますので、まだ派遣することにきまったというわけのものではございません。  私どもがそういう接触を始めましたゆえんのものは、いまも御指摘がございましたように、日本サイゴン政府と従来いろいろ関係があったわけでございますが、新しい和平取りきめが成立するという段階を迎えましたので、北越政府前提のない、隔意のない意見の交換を遂げる機会を持ちたいという願いを持っておるからでございまして、いまそういうことが可能かどうかということについての、先方感触を聞いておる段階でございます。
  17. 梅田勝

    梅田委員 その場合の、受け入れられるかどうかの感触を当たっておるということだそうでありますが、その場合の資格ですね。政府派遣団として受け入れられる用意があるのかどうか、こういう感触を得られるためにやられるのですか。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 政府役人という資格で派遣したいという希望を持っておるわけでございまして、先方がそれに対してどういう反応を示されるか、まだわかりません。
  19. 梅田勝

    梅田委員 政府役人ということは、政府の公式の役人であり派遣団である、このように理解していいのですか。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございます。
  21. 梅田勝

    梅田委員 その場合に、ベトナム民主共和国との関係改善は、国交樹立前提として接触をするという意味でありますか。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 先方が、わが国サイゴン政府との間に従来持っておりました関係について、どういう評価をされておりますか、ニャンザン編集長の御意見も発表されておりますけれども先方政府自体がどういうお考えを持っておるか、その他双方に関心のある問題につきまして隔意のない意見を交換するということが係官を派遣する目的でございまして、その報告を待ちまして、私どもといたしましては、今後北越に対しましてどういうことをやるべきか、どういうことをやるべきでないか、そういう判断を持たなければならぬと考えております。
  23. 梅田勝

    梅田委員 どうもはっきりせぬですね。南ベトナムサイゴン政府を最近訪れて帰ってこられました法眼外務次官が、北ベトナムを承認する障害はない、これは南ベトナムサイゴン政権の側においてもない、こういう意味を語っておられるのが報道されておりますが、わが国の側からの問題は、いま外相がおっしゃったように、非常に何かすっきりしないものがある。しかし、ベトナム民主共和国の側からは、すでに公式にニャンザン紙上において見解が明らかにされて、ベトナム民主共和国の側から、サイゴン政権との外交関係を持っている日本政府との国交回復において、何ら障害がないと言っておるわけでありますから、その点、外相が明確に国交樹立方向へ進めるということが明言できないのは、どういう理由があるのでしょうか。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、北越政府がどういうことを考えられておるかよく承知した上でいろいろ申し上げないと、こちらのほうで一人相撲をとってもいけないわけでございますから、私どもとしては、十分意思の疎通をはかった上でと考えております。現に南越政府外交関係を持ちながら北越政府とも外交関係を持っておるものが二十三カ国もあるわけでございまして、その外交関係の持ち方は、両方とも大使館を持っておるものもあれば、一方は大使館であって、一方は総領事館の場合もある。一方は大使館であって、一方は貿易代表部のようなかっこうのものもあります。それから両方とも承認したままで実館を置いていないところもあるわけでございまして、現在の状況は、少なくとも言えることは、北も南も全土を代表する唯一合法政府であるという立場を最後まで貫く態度にはなっていないということは言えようかと思うのでありまして、私どもといたしましても、いろんな事情が許しますならば、国交を持つということについて日本としてちゅうちょする理由はないと考えておりますが、とりあえず先方の御意向を十分お聞き取りしなければならぬと考えております。
  25. 梅田勝

    梅田委員 外務省は、二月の十六日、今後のインドシナ政策の大筋をまとめまして、いわゆる二つベトナム固定化をきめた、かような報道がなされておりますが、これは事実ですか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもが申し上げておりますことば、今後のインドシナに対する政策は、先ほど申しましたように、パリ協定というものを踏まえてやっていかなければならぬと考えておるわけでございます。それで、いうところのパリ協定は、ベトナム一つの国ともいっていない、二つの国ともいっていないわけであります。また、将来ベトナム人民基本的権利は尊重する、そして終局において統一を目ざしておるということは書いてございます。同時に南ベトナム人民自決権を尊重いたしておるというような性格のものでございまして、そういうきわめて、伝統的な国際法上の観念から申しますと割り切りにくい、いわば灰色の協定なんでございます。しかし、事態がそういう事態であるということでございまして、そして当事国ばかりでなく全世界が、この協定をひとつ固めて、平和の固めの基礎に使っていこうというようなコンセンサスが見られておる状況でございますので、日本といたしましても、この協定を軸にいたしまして、今後のインドシナ政策考えなければならぬということを申し上げておるわけでございまして、南北をいつまでも固定したものとして考えるというような考え方に立っておるわけではございません。
  27. 梅田勝

    梅田委員 そうしたら、二つベトナム固定化をきめたということではないということですね。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 あくまでもパリ協定にのっとってやるというように、簡明にひとつ御理解をいただきたいと思います。
  29. 梅田勝

    梅田委員 新聞報道されているのですから、きめたのか、きめていないのか、これはやはり国民の前に明らかにすることが政府責任ではないかと思うのです。  一つでも二つでもない、これはきわめて哲学的な表現だと思うのですけれどもね。和平協定では、第五章におきまして、ベトナムの再統一南北ベトナム間の関係というものにおきまして、明確に将来の方向というもの、つまりベトナムの再統一への方向というのはきめているわけです。したがいまして、日本政府協定を踏まえるといま外相が言われたわけでありますけれども、踏まえるのであれば、このような、固定化をきめたという報道なり決定をなされたというようなことはないというように明言されてしかるべきじゃないですか。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどそのようにお答えしたわけでございます。
  31. 梅田勝

    梅田委員 そのように確認をいたしまして、今後やはり、ベトナムとの国交正常化ベトナムの再統一方向日本政府も貢献するように期待をいたしまして、次の問題に移りたいと思います。  国鉄の問題に移らしていただきます。  田中総理大臣施政方針演説におきまして、日本列島改造論を提唱してきた意義を述べまして、交通通信ネットワークの整備と、国民の足であり輸送の大動脈である国鉄役割りを強調されております。そして閣議了解と称しまして、国鉄財政再建新十カ年計画を持ち出し、その一環として、昨年廃案となり、すでに国民の審判が下った運賃値上げ法案を、それから一年もたたないうちに再提出したことは、国民生活の上からきわめて重大な問題であります。国鉄問題をめぐって、私は政府国鉄当局見解をただしたいと思います。まず運輸大臣にお伺いいたします。  財政再建計画は十兆五千億円というばく大な投資を予定しておりますが、それによってどんな国鉄をつくろうとしておられるのか、いわゆる三本柱について簡潔にお答え願いたいと思います。
  32. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 国鉄の果たすべき役割り、これは申すまでもございませんけれども、一昨年の総合交通体系の確立ということで、運輸政策審議会でも答申がございましたし、またそれを受けまして政府の間でも関係閣僚協議会を開かれまして、そこで大綱がきまっておると承知しております。財政再建計画はもちろんこの線の上に立ってのお話でございまして、昨年は不幸にして審議未了になりましたが、しかし、その基本的な方針は変わってはいないのでございます。  もう少し具体的に申し上げますと……(梅田委員「三本柱を簡単に言ってください」と呼ぶ)総合交通体系の中でもうたっておりますが、要するに、国鉄というものは今日その機能を十分に発揮できないような財政状態にあるから、それを財政再建をさして、本来の国鉄の果たすべき役割りを果たすような体制にしようということが眼目でございまして、そのためには、いまお示しになりましたが、政府国鉄の、まあ公共企業体でありますけれども、非常に最近は公共性が強くなってまいりましたので、いわゆる独占性が薄れてきたことは事実でございますから、そういう公共性に応じるようなあらゆる援助をしようということで、他の公共企業体にはないような援助をすることにしておるのでございます。  それから、国鉄自身ももちろんそういう一般会計からの援助を受けるのでありますから、最大限合理化し、節約をし、営業収益を上げるように努力をいたしまして、国鉄財政再建には、もちろん自分のことでありますから、最大限の努力をしなければならぬ。しかし、全体から申しますとそれだけでは足りませんので、その足りない部分につきましては、やはり公共企業体としてそれを利用せられる国民の方々にも必要最小限度の御負担を願うというようなたてまえを持ちまして、いまおっしゃる三本柱でございますが、その基本的な態度は変わっていないのでございますが、ただ、その内容をごらんになりますとわかりますように、昨年御審議の際に議員の方々からいろいろの御意見を伺ったのでありまして、今度の再建計画におきましては、具体的にそういった一つ一つの問題について検討を加えまして、国会議員の皆さま方、国民の方々を代表しての御意見でございますから、そういう点を最大限に取り入れまして、具体的な内容につきましては相当今度は改善をしたということでございます。
  33. 梅田勝

    梅田委員 私が聞きましたのは、財政再建の三本柱じゃなくて、設備投資方向ですね、つまり運輸政策の三本柱を聞いているわけです。三つあるでしょう。それをちょっと簡単に言ってください。
  34. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 これは、先ほど申し上げました総合交通体系の中でもいろいろ御意見が出ておりますように、都市間の交通を確保すること、それから大都市における通勤、通学といいますか、そういう大都市の交通の中核的な役割りを果たしてもらうということ、それからもう一つは貨物問題でございますが、いままで国鉄のほうは、どうも旅客に主力が注がれたような傾向がございまして、貨物の運送につきましては設備投資が非常におくれておる。そのために、だんだんトラック等に圧迫されまして、収益が少なくなってきておるという事実がございますので、今度は国民の要望にこたえるような貨物輸送体系をつくろうということで、いまおっしゃったような三つの大きな目標を持ちまして、もちろんこれだけではございませんが、いろいろな過疎地帯とかその他いろいろの問題がございますけれども、大体いま申し上げたような点を主要な課題といたしまして、今度の再建計画をつくったということでございます。
  35. 梅田勝

    梅田委員 いま言われたことは現行計画のときでも言われたわけです。問題は、その実行によって国民にとってどんな国鉄になったか、またなりつつあるかということが重要だろうと思うのです。  昭和四十四年度から四十六年度までに七百二十九の貨物取り扱い駅の廃止、駅員がいなくなった無人駅が五百五十六もふえておるわけです。通勤ラッシュはどうなったかといえば、ものすごい混雑であります。安全はどうなったか、北陸トンネルの火災事故や、最近の新幹線脱線事故などに見られるように、国民の側から見ますと、自分の命さえ脅かされている状態であります。  そこで、具体的にお伺いしていきたいと思いますが、まず大都市の通勤ラッシュ、これをどうするおつもりかということであります。今度の再建計画では、混雑率を何%に下げる予定にしておられますか、数字で具体的に言ってください。
  36. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 大都市の通勤輸送でございますが、四十年から四十七年まで、いわゆる第三次長期計画におきましての一部におきまして、約四千八百億の投資をいたしました。これは主として東京中心でございます。一応の目標を混雑率二四〇%というふうにいたしてやっておりましたが、当時四十年度二八〇%だったものが、大体いま二五〇%ぐらいに下がっております。これは東京を中心とするいわゆる五方面作戦と申しまして、すでにいままで東北線、中央線、総武線、常磐線、これは全部完成いたしました。そして現在は、御承知の東海道線だけが横浜の関係で残っておりますが、これができますれば予定どおり全部できたことになります。  今後の問題といたしましては、四十八年から五十七年まで約七千億の投資をいたすつもりでございます。これによりまして東海道、中央線等の複々線化、あるいはいまお示しの大都市付近の、ことに、率直に申しまして非常に大阪のほうがいままで私のほうは手が抜けております。東京中心でございますので、今後は大阪に相当主力を注いでやっていきたいということで、東京で申しますれば、混雑率を、いま二五〇%前後のものをぜひ二〇〇%以下にしたいというふうに考えております。
  37. 梅田勝

    梅田委員 四十年度に始まりました第三次長期計画では、いわゆる通勤輸送力の増強が最重点の一つになっております。第三次計画の最終年度の四十六年度では、たとえば中央緩行、総武線におきましては、計画は四十六年度までに二三九%にする予定であったわけですね。ところが、四十六年度の実績は二六八%で、これはできていないわけです。それから山手線の外回りでありますが、これは一九一にする計画であったわけでありますが、実績は二三〇%でございまして、これも計画はできていない。横須賀線におきましては二〇〇%にする予定のものが、現在は二九八%の非常に高い混雑率になっておるわけであります。要するに計画が達成できなかった、混雑が依然として続いているということは、これは事実だと思うのですね。こういう点で大臣はどう思われますか。
  38. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 大都市における交通の混雑という問題は、もちろん国鉄は、この問題を解決するための中核的な機関であることは否定はできません。いま国鉄総裁が申しましたように、国鉄としましてはあらゆる努力をして、設備投資をふやしましてこれに対処しておると思いますが、ただそのほかに、大都市におきましてはいろいろの交通機関がございます。結局そういったものとの総合的な関係において大都市の交通難は緩和をしていかなければならないと思います。特に東京、大阪等の超大都市というところでは、やはり今後地下鉄というようなものを大いに活用いたしまして、それによりまして公害の少ない、しかも輸送力の大きいものをもっともっとふやしていかなければならぬということを私は考えておりますが、そのほかに、民鉄もございますし、バスもございますし、そういったものを総合的に考え合わせまして、国鉄の設備の増強と合わして、今後十年間には、国鉄総裁が申しましたような水準には少なくとも達成するように努力をしていかなければならないと考えておる次第でございます。
  39. 梅田勝

    梅田委員 地下鉄や私鉄のことを聞いておるのと違うんです。国鉄のことを聞いているわけでありまして、はっきりしていただきたいと思うんです。  今度十兆五千億の膨大な設備投資をやられますが、そのうち大都市通勤輸送対策の経費は、総体と比較いたしまして何%になりますか。
  40. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 全体で七千億でございますので、在来線に対しては、総投資に対して一二%でございます。
  41. 梅田勝

    梅田委員 総予算に対しては六・七%じゃないですか。
  42. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 十兆五千億のうちの、新幹線を除きましたものに対して一二%、新幹線を入れますと、十兆五千億に対する七千億でございますから、約七%。そうでございます。
  43. 梅田勝

    梅田委員 第三次長期計画では、全投資額のうち、通勤対策の占める割合は一七・五%、現行計画は一四・九%です。そして、今度の再建計画では六・七%、まあ約七%。どんどん減っているというのは事実なんですね。  運輸大臣、先ほどあなたは、国鉄には三つの役割りというものがあって、大都市における通勤対策というものはきわめて重要なその一つの柱であるとおっしゃいましたけれども、これは今後の社会の発展を予測するときにきわめてぐあいの悪い問題だと思いますが、御所見はいかがでございましようか。——大臣に聞いているのですよ。
  44. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 大都市における交通対策でございますが、先ほど国鉄総裁が申しましたような趣旨でこれを計画しておるわけでございますが、先年来、東京方面の国鉄を中心にいたしましての交通ラッシュに対する対策というものは、設備投資の方面におきましては、計画しておりましたおもなものが大体でき上がりつつありまして、そういう関係で、いまおっしゃったような数字になるかと存じますが、しかしこれは、今後の東京方面のさらに都市がどうなるか、どういうふうな輸送状況になるかということを見まして、もちろんこれは流動的に考えていかなければならぬ問題だと思いますが、今日の段階で申しますと、いま申し上げたように、一応既定の計画として東京方面のもめが大体工事ができ上がりつつあるということで、工事費のほうは減っておるということでございます。
  45. 梅田勝

    梅田委員 将来ともに混雑率は確実に減るということではなさそうですね。大都市通勤輸送における混雑の緩和は依然として解決をしていないということは、これは事実でありますから明白だと思います。  では、次に質問をいたしますが、他方、貨物のほうはどうなっているか。このほうはどうなるのか。五十七年度、十年先ですね、貨物輸送総量をどれだけに予測をされておりますか、大臣。
  46. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 五十七年度の貨物輸送総量につきましては、十年先でございまして、なかなか私どもだけの知恵では正確な数字も出ません。幸い、御承知のとおり先般国の全体の基本計画ができました、あれは五十二年まででございますが、それと、その後のいろいろな運政審、その前の運輸政策審議会、あるいは新経済社会発展計画等が一応出ておりまして、六十年度のラフな一つのビジョンがございますので、それを勘案いたしまして、昭和五十七年度には約千四百億トンキロというふうに推定いたしております。
  47. 梅田勝

    梅田委員 十兆五千億円の投資総額のうち、貨物関係には幾ら投資する予定でございますか。
  48. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 貨物関係には、一応これはいろいろな内容がございますが、ことに貨物ターミナルの整備ということに重点を置きまして、一兆八千五百億の投資考えております。
  49. 梅田勝

    梅田委員 五万トン以上のいわゆる大口荷主は、現在何件あり、全輸送量の何%を占めておりますか。
  50. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 五万トン以上の荷主の数が、現在全体の輸送量の約五五%ぐらいのものだというふうに考えております。件数が、五百件ぐらいだというふうに考えます。
  51. 梅田勝

    梅田委員 同じものは、昭和四十年当時は幾らでございましたか。
  52. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 昭和三十八年度、これはちょっと先生の御質問の前でございますが、これが五万トン以上は約六〇%でございました。その後、石炭産業が急にああいうふうな形になりましたので減りまして、四七%ぐらいだったというふうに記憶いたします。
  53. 梅田勝

    梅田委員 四十年のときは四七%、それが四十六年になりますと五五%にふえたということですね。五十七年になりますと幾らぐらいになりますか。
  54. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 これは非常にむずかしい推定でございまして、先ほど申しましたとおり、三十八年には六〇%あったものが、二年でもって四七%に落ちる、それがさらにまた五五%にふえるということで、これは企業の規模、あるいは山で申しますれば山の命脈が尽きたとか、いろいろ客観的な情勢がございまして、一々具体的に検討するわけにはまいりません。したがいまして、五十七年度、さっきに申しました千四百億トンキロにおきますいまの数字は、ちょっといまのところ、いかなる資料をさがしましても、不可能ではないかというふうに考えます。
  55. 梅田勝

    梅田委員 要するに、わからぬということですな。  それでは、これらの大企業がおもに使うフレートライナー、それから石油、セメント、鉄鋼、自動車なんか八品目あるそうでありますが、いわゆる物資別適合輸送、これによりまして送っている輸送量は、フレートライナーと合わせまして五十七年度で全輸送量に対するパーセントは幾らぐらいですか。
  56. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私のほうではフレートライナーとその他の区別をいたしておりますが、その他の中の品目別まで五十七年度の推定は不可能でございます。  フレートライナーと申しますのは、御承知のとおりコンテナ輸送の特急、急行列車でございまして、コンテナ輸送と申しますのは、御承知のとおりいわゆる大荷主でなくて小荷主でございまして、これの数量は……(梅田委員「そんな説明は聞いていない、数を聞いている」と呼ぶ)大体数は五〇%というふうに考えております。
  57. 梅田勝

    梅田委員 私ども国鉄貨物局の方に聞きました資料によりますと、財政再建十カ年計画による貨物輸送量は、フレートライナーが全体に対しまして三三・三%、専用貨車が四四・二%、数量のほうは非常にフレートライナーの場合はふえまして一億一千四十六万トン、これは四十七年の見込みに対しまして十八・五五倍、十八倍ですね。非常にふえておるわけであります。同じ資料によりまして、一般の中小企業や農家や地方の人々が主として使う普通の貨物ですね、これはどうなるかと調べてみますと、非常に減っているんですね。四十七年見込みは四六・五%を割ったものが、五十七年、十年先になりますと八・三%、二千七百五十七万トン、これは絶対数におきまして、四十七年を一〇〇といたしますと三二に激減をするわけですね。これは事実ですか。
  58. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 全体の方針といたしまして、国鉄の貨物輸送を近代化するためにまずコンテナ化する、コンテナ化されたものをフレートライナー化するというのが方針でございます。したがいまして、現在コンテナに乗っていないもの、これは普通の中小の荷主の方々がたくさん使っておられますが、それをコンテナ化する、そして速達するということが目的でございまして、いわゆる貨物輸送の近代化によって、いままでの先生のおっしゃったような荷主をフレートライナーあるいはコンテナに吸収するということが、その目的でございます。
  59. 梅田勝

    梅田委員 計画によりますと、将来は三億トン以上の、まあ幾らになるかわかりませんけれども、少なくともそれ以上の輸送量を、どんどん特急貨物なんかつくって走らすということでありますから、いま走っている在来線の旅客列車、こういうものは結局、そこのけそこのけお馬が通るという式に追い出されてしまうのじゃないか、かように思います。これは旅客にとりましても非常に重大な問題だと思うわけであります。結局、大手貨物のほうは拡大充実、増強、中小貨物は切り捨て、通勤列車はすし詰め。これは大臣にお伺いしますが、これが国鉄法第一条にいう、公共の福祉の増進の姿ですか。大企業のばく大な設備投資、貨物優先ではなく、国民がほんとうに望んでいる国鉄輸送、大都市通勤の緩和のために、そういうためなら国は思い切って資金を出す、これこそがいまこそ必要なことではないか、かように思いますが、御所見を伺いたいと思います。
  60. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 いまお示しのような考えは毛頭持っておりませんし、具体的に申しましても、国鉄の貨物輸送についてのやり方が非常に効率的ではありません。もっと効率を上げてこれを能率化しよう、そうして収益を上げようというのでございますから、旅客輸送を犠牲にして、たとえば通勤通学輸送なんかを犠牲にしてでも貨物を運ぼうというような趣旨では全くございませんし、これは路線別にお考えくださると、その点はもっとはっきりすると思いますから、詳細につきましては国鉄総裁からお答えいたさせます。
  61. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいま先生のおっしゃいましたこと、非常に私どものほうの話をわかっていただけず、まことに残念でございますが、少し説明させていただきます。(梅田委員「簡単にやって」と呼ぶ)はい、簡単にやります。  具体的に、たとえば東海道線の例で申し上げます。東海道の新幹線ができましたために、東海道の通勤がやっと五分間隔で入るようになったわけでございます。すなわち東海道線から急行、直行を全部どけまして、そしてその穴を通勤輸送と貨物輸送に使ったわけでございます。したがいまして、いまの湘南地帯のあの十五両編成、五分間隔という輸送は、新幹線ができたために初めてやったわけでございます。したがいまして、今後、いまの予定のように新幹線ができますと、大体いまの全体の距離でもって約三千五百キロぐらいできます。そういたしますと、日本全体の輸送量の約八割がそこで運ばれておりますので、その三千五百キロにつきましては、まず現在走っておる急行直行を全部やめてしまいます、原則として。そうしてそのあとに、まずデータイムの通勤輸送の時間をとります。それからローカル輸送の時間をとります。それから貨物輸送をとります。そういうふうにして、いまの在来線を通勤、ローカル輸送と貨物輸送のダイヤに完全につくりかえるというのが新幹線の非常に大きなメリットでございまして、これは東海道線の例を具体的にごらんくださればよく御理解がいくというふうに存じまして、決していま先生のおっしゃったように、貨物輸送だけをやって、在来線で昼間のあいた時間を通勤輸送やローカル輸送に使わないというふうなことでなくて、まず白紙になったダイヤの中で通勤とローカル輸送の線を引いて、その残りを全部貨物輸送に使う。いままでのような特急、急行という旅客列車は今度はなくなりますので、その分は貨物に使えますが、普通の通勤、ローカル輸送の時間帯は貨物は要らないわけでございます。貨物は昼間動きませんから要らないので、貨物は夜、いい時間帯に動かす、こういう考え方でございます。
  62. 梅田勝

    梅田委員 実際はダイヤ改正のたびごとに地域の住民は困っているということで、どんと要求が出ているのです。いまの答弁は全く納得いきませんが、時間の関係で次の問題に移りたいと思います。  運賃問題に移りたいと思います。  昭和四十一年以来、わずか七年の間に旅客運賃は三回も値上げされました。そこで大臣にお伺いしたいわけでありますが、昭和四十年に比べまして旅客運賃は何%上がっておりますか。
  63. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 一五二%だそうです。
  64. 梅田勝

    梅田委員 一五二%というのは実収ですか、それとも……。
  65. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 賃率で申して一五二%ということでございます。
  66. 梅田勝

    梅田委員 その間に消費者物価はどれぐらい上がっておりますか。
  67. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 その間、消費者物価のほうは一四六だそうでございます。
  68. 梅田勝

    梅田委員 私どもが総理府統計局からもらってきた数字と少し大臣の御答弁が違うわけでありますが、昭和四十年を一〇〇といたしますと、旅客運賃は一六八・九%に上がっておる。それから消費者物価は一四四・九%に上がっておる。これは明らかに政府が先頭を切って公共料金を引き上げることによって消費者物価が上昇していく、こういう関係が数字の上で明確になっているように思います。それを今度の計画では、今後は十年間に四回値上げをして、実数倍以上になっていくというわけでありますから、国民は今度の運賃値上げについてはどうしても納得がいかない。政府は公共料金の引き上げをやるべきでない。これは政府がとめようと思えばとまるわけですから、絶対に物価の安定のためには公共料金の引き上げはやるべきでない。あるいは公債発行とか借金政策、利払いで経営が追われるというような経営はやるべきではない、そういう政策はとるべきではないということを強く要求していると思うのです。  そこで、貨物のほうはどれだけ上がっていますか。
  69. 秋富公正

    秋富政府委員 貨物運賃の水準でございますが、四十年に比べまして四十六年度において一一八%でございます。
  70. 梅田勝

    梅田委員 旅客の上昇率に比べて貨物のほうはあまり上がっておらぬということですね。これは非常に重大な問題だと思うのです。なぜならば、それは必ず全体の国鉄会計の損益に影響する重大な問題だと思うのです。  そこで国鉄総裁にお伺いいたしますが、四十六年度の旅客、貨物別損益ですね、経営計算、これはいかがになっておりましょうか。
  71. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 四十六年度の旅客、貨物別の営業係数、実はたいへんおくれて申しわけございませんが、あと一週間ぐらいでまとまると存じます。と申しますことは、私どもまず原価計算の中で、御承知の線区別原価計算、これは貸借対照表に出さなければいけませんので、これは先にやります。その後いろいろ事務が繁雑化いたしましたので、おくれまして一週間ぐらいのうちには必ず出します。
  72. 梅田勝

    梅田委員 国鉄御自慢のコンピューターでもあかぬのですか。
  73. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 いま最終の取りまとめをやっていますので、一週間以内に出します。
  74. 梅田勝

    梅田委員 朝日新聞に載っておったのを私は見たのでありますが、国鉄内部の試算によると、昭和四十六年度の場合、旅客部門は収支とんとん、貨物部門が二千億円以上の赤字で、結局国鉄全体の赤字二千三百四十二億円の大半ば貨物部門の不振によるものである。同年度の貨物運賃収入が二千五百億円なのと考え合わせると、国鉄貨物は原価のほぼ半分で運んでおる。そういう計算だといわれておりますが、そういう試算はできておるのですか。
  75. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私どものほうは、客貨別の原価計算と申しますのは、一つの客貨の傾向を見るためにつくっておるのでございます。いわゆる内部管理資料でございます。
  76. 梅田勝

    梅田委員 試算ができておるかどうか聞いておるのです。
  77. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 その試算を最終的に取りまとめているわけでございますので、それを含めまして一週間以内にまとめたいと思っております。
  78. 梅田勝

    梅田委員 できたらさっそく予算委員会に提出をお願いしたいと思います。  総裁が一週間後でないと正確に言えないと言われますので、この新聞報道で出されたものを基礎にして申し上げますが、結局、貨物は原価の半値で運んでおった。これでは赤字になるのが当然じゃないですか。しかも国民にとりまして重大なことは、貨物の大部分は先ほど明らかになりましたように、大企業の製品や原料が運ばれておるわけであります。しかもその上に割引までやっている。たとえば大企業が自分で貨車を持っているいわゆる私有貨車ですね、これに対しては割引をどのようにされておりますか。
  79. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 いまの客貨別の営業係数をそのままおとりくださって赤字だとおっしゃることは若干説明を要しますが、これは御説明させていただけませんので申し上げません。これにはいろいろ非常に問題があるということだけを申し上げさせていただきまして、その問題が運賃に直結する問題でないということだけを申し上げます。  それから、いま御質問のいわゆる私有貨車の割引でございますが、私有貨車と申しますのは、いまお話しのとおり、荷主がつくってそれを私どもで運用するわけでございますが、これは二つございます。一つは利子と償却費、これはうちが払いませんので、うちがつくったならばうちが払うであろう利子と償却費は当然引きます。それから普通の場合、私どものほうの貨車ですと大体平均空車キロは八十キロ走っております。いわゆる空車でもって、実入り用でなくて商売にならない空車キロ、これは日本の物流地帯が非常に片寄っておりますので、行き道は一ぱい、帰りはからはやむを得ないわけであります。これはトラックでもしょっちゅうあることでございます。その空車キロが平均八十キロでございます。その八十キロ分だけについて空車回送の分をただにする。これは一般貨車と同じ扱いでございます。
  80. 梅田勝

    梅田委員 その話が納得できないわけですね。普通の貨車を利用する場合には八十キロまではただになるというようなことはやらないわけなんです。ただ私有車であるということだけで八十キロまではただというのは、どうしても中小企業の貨物を御利用になる方がお聞きになりましたら納得はされないだろうと思うのですね。また、一五%の割引、これについても納得をされないと思います。  そこで、当然国民の間からは貨物の赤字が、あるいは国鉄が営業割引をやっている、そこにも原因がある、こういう声が次第に大きくなってくるのは当然だと思うのです。この営業割引の対象になっておるのは全体の何%ぐらいございますか。またその割引率あるいは割引額は全体で幾らぐらいになるものでしょうか。
  81. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 営業割引の率がたしか平均一二・七%だと思います。数量が千八百万トン強でございます。千八百万トン台でございます。割引の額が六十六億で、それによる増収額が三百七十億というふうに大体記憶しております。
  82. 梅田勝

    梅田委員 これは具体的にやらないとあれですが、日産自動車のある小金井、ここから宮城野の間三百六十六キロございますが、普通ならば車運車一台分の運賃は四万九千八百円。ところが日産自動車には三万七千八百円、一万二千円もまけておるわけですね。これは実に二割四分も割り引いておるわけであります。この話を聞けば、何ということをするのだろうなということを国民の皆さん方は思われるのじゃないかと思うのです。その上に、今回の値上げ計画では等級の変更もございまして、大臣にお伺いしたいわけでございますが、お米の運賃は何%上がり、もう一ついま申し上げました日産の自動車ですね、この場合は何%上がるのでございましょうか。
  83. 秋富公正

    秋富政府委員 お米のほうの値上げ率でございますが、いわゆる新しい等級では第三等級になりますが、これは二九・六%でございます。それからいわゆる自動車でございますが、これは第一級でございますので、これは一級と二級を新しく一級にします関係上で、六・七%の上げでございます。
  84. 梅田勝

    梅田委員 いまの数字を聞きましても、国鉄の運賃値上げの階級的な性格というものは非常に出たんじゃないかと思うのですね。値上げ率が、お米は自動車の四・四倍、こういうやり方では、ますます国民は納得しない。  しかも、ここでお伺いしたいのでありますが、昔、政策割引というのがございましたね、昨年の予算委員会でも御説明がございましたけれども。生鮮食料品なんかを多少安くするというものでありますが、これを昨年九月全部やめた、これは事実でございましょうか。
  85. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 昨年の九月末と一昨年の九月末、二回に分かってやめました。
  86. 梅田勝

    梅田委員 国民が必要な野菜、生鮮食料品、これは以前は政策的割引をやっておった。それを一昨年と昨年にわたって、しかもこういう膨大な値上げをやろうとしている状況のもとで政策的割引をなくするというのは、日ごろ物価安定を口になさっている政府方針としては、きわめて矛盾を感ずるわけでありますが、大臣いかがなものでしょう。大臣に聞いているのですよ。
  87. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 ただいま国鉄総裁が申し上げたように、この政策割引というものは長い間かかりまして漸次にこれをやめていったというのが実情でございます。  ただ、お話しになりました中でちょっとつけ加えて御答弁いたしますと、私どものほうは今度の運賃値上げにつきましてはいわゆる等級制の問題がございますが、この等級制の中でどれを一級にするかとか二級にするかとか三級にするかという問題につきましては、これは法律によりまして国鉄にまかしてございますので、その間国鉄としましてはいろいろ考慮いたしまして、具体的な品目についての運賃をきめていくということになるかと思います。
  88. 梅田勝

    梅田委員 国鉄がきめると申しましても、監督機関は運輸省にあるのですよ。政府方針が、公共料金を引き上げない、物価を安定するという政策がきちっとあるのであれば、磯崎さんちょっとぐあい悪いじゃないか、そんなことしたら国民が困るじゃないかと指導するのが運輸省の責任だと思うのですね。そういう点で、いまの答弁は非常にぐあいが悪いと思います。  運賃問題につきましてまだまだ審議してもし切れぬぐらいの問題点がございますが、時間がありますので、次の点についてだけ大臣の御所見を承りたいと思います。  一つは、いままで申し上げましたような大企業に対する特別割引、この特別割引をやめるべきだと思うのですが、いかがなものでしょうか。  もう一つは、国民生活に直結する生鮮食料品の政策割引を復活してはどうか、この二点について御答弁願いたいと思います。
  89. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 初めのお尋ねでございますが、大企業に対して特別に、先生のおことばをかりると奉仕している、という事実は全然ございません。鉄道営業法にも書いてございますが、ある条件のもとに、どなたが利用されましても同じような条件でもって利用していただいておるのでございまして、特にある企業に対して利益になるようにというような意図をもってやっておるものは、この運賃体系ではないと私は信じております。  それから、あとのほうの生鮮食料品等に対してまた割引を復活したらどうか、政策割引を復活したらどうかというお尋ねでございますが、ただいまのところは、今日まで長年かかりまして政策運賃をやめまして、そしてこの政策運賃というものが、私はあまり古くから国鉄の内情を知っているわけではありませんが、とにかく国鉄財政を悪化させた一つの原因になっておると聞いております。でありますから、今日やめたものをすぐにまたその部分だけ復活するということについては、これは慎重に考えなければならぬと思いますので、ただいまのところは、これを消極的に考えざるを得ないということで御了承いただきたい。
  90. 梅田勝

    梅田委員 生鮮食料品を昨年やめたことによりまして、浮いた財源というのはいかほどのものでございましたでしょうか。
  91. 秋富公正

    秋富政府委員 これは昨年と一昨年の二回に分けましたものでございますから、全額で申しますと、このいわゆる政策割引は五十億でございますが、昨年だけで申しますと、昨年の十月にやめましたものですから約十二億上ございます。全部含めまして十二億でございます。
  92. 梅田勝

    梅田委員 とにかく十兆五千億という膨大な設備投資が予定されている。しかし国民が切実に望んでおるのはわずか五十億あるいは十二億。これをやれないというのは、結局自民党政府の政治姿勢に、基本姿勢にあると断ぜざるを得ないわけでありますが、これは立ち入っておりますとまた時間がございませんので、次の問題に移りたいと思います。  新幹線ができまして初めて本線上における脱線事故が起こりました。国鉄御自慢のATCも決して安全が絶対なものではないということが証明をされまして、やはり交通、運輸における労働者の、働く人たちの役割りというものが基本的なものだ、やはり人間が列車を動かしている、コンピューターでありましても、それは人間の労働の所産だという点を、今度の事件は明確にしたと思うのですね。国鉄再建計画によりますと、十カ年で十一万人の要員削減を、これから事業規模を質、量ともにきわめて拡大しようとされているそういう時期に、強行されようとしている。これは国民にとって非常に不安を招いている重大な問題だと思います。  そこで、国鉄総裁にお伺いいたしますが、今回の新幹線事故で国鉄当局は何を反省したのか、簡単にお答え願いたいと思います。
  93. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 もちろん、人間と機械のコンビネーションということが大事であるということ、これは私ども十分知っております。ただ今回については、昨日もこの委員会で申し上げましたが、例外的な線区についての一重系については非常にミスがあった、ミスと申しますか、思い足らざる点があったというふうに思うわけであります。
  94. 梅田勝

    梅田委員 結局、機械化過信ですね。労働者軽視が問題だと思うのです。国鉄労働者の賃金水準は、国鉄労働組合の調査によりますと、昭和四十六年で八万五百四十二円、春闘での上昇率一四・三%となっておりますが、民間賃金は八万五千百二十円、春闘での上昇率一六・六%でございます。いずれも国鉄のほうが民間労働者よりも低い。さきの円ドル問題での集中質疑の際にも、この予算委員会席上におきまして田中総理大臣は、わが党の津川議員の質問に答えて、日本の賃金に水準が国際水準から見て非常に低い、これが日本の輸出競争力をささえてきており、今日の円ドル問題の一つの要因となっていることをお認めになっておられるわけです。こういう点から見て、低賃金の問題というのは、労働強化をもたらす合理化の問題とともに、これは単に国鉄労働者の問題だけでなく、非常に大きな社会的な問題そこに発展をする問題になっております。国民の側から見れば、事故がいつ起こるかわからぬという不安にもなっておるわけであります。  そこで、運輸大臣質問をいたしますが、このようになっておるのは、国鉄労働者が国鉄当局と対等に話し合うためのストライキ権がない、これが重大な要因となっていると思いますが、占領軍によりまして取り上げられたストライキ権の回復をやる考えはないか、御所見を承りたいと思います。
  95. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 その問題につきましては、政府といたしましても非常に重大な関心を持ちまして、関係の組合あるいは総評の方々と協議を続けてきておる次第でございます。私のほうとしましては、公務員制度審議会における御審議の結果どういう結論が出ますか、それによりまして、他の公共企業体も同時にこれは解決していく問題であるというふうに考える次第でございます。
  96. 梅田勝

    梅田委員 ストライキ権というのは、御承知のように、憲法で認められた労働者の基本権なんですね。これば認めるのが当然なんです。国際労働機構、ILOからも、日本政府に対して反省を求めることの勧告がなされている、これが実態なんですね。前の運輸大臣国鉄労働者との間でスト権回復について努力をすると約束をされながら、結局うやむやになって今日まで来ているということは、これはぐあい悪いと思うのですね。大臣、いかがですか。
  97. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 この問題について、私も昨年の参議院における前運輸大臣発言について調べてみたのでありますが、ただいまお示しのようなふうには答えていないように思います。いま具体的にどうこうしろというこまかな指示を運輸大臣が出す筋のものではありません、いわゆる順法闘争、ストライキ、処分といったようなことを繰り返していいかどうか、大局的、全体的に考えるべきだと思います、いずれにしても公労法等のことは労働大臣所管のことでありますから、田村労働大臣とよく話し合いをいたしたいと思います、こういうことを答えているようでございまして、先ほど私が申しましたように、これは公務員制度審議会という権威のある方々がお集まりでございまして、そこでせっかく長い間にわたって審議をしておられますので、私のほうはその結果を待っておるということで御了承いただきたい。
  98. 梅田勝

    梅田委員 国鉄労働者は運輸省の所管の労働者ですね。だからそこの労働者の基本権の問題については、もっと運輸大臣が積極的な姿勢を示すということが私は重要であろうと思います。強く要求をしておきたいと思います。  運輸審議会が運賃の値上げを答申いたしましたときに、石塚会長は、大臣を困らせるような答申は出せない、こういうことを発言をいたしておりますが、これでは、トンネルか隠れみのだ、ばかにするなという批判が出るのは当然であります。総理の諮問機関である国民生活審議会の消費者保護部会がこれらを批判いたしまして、消費者代表の参加などを要求したことは、異例なことなんですね。あまりにもひどいからである。構成は、元官僚、そういうのがごそっとおる。結局なれ合いみたいな審議になっている。この審議会の構成を、消費者代表や労働者代表を入れて、国民の真の声が反映できるように、構成と運営を民主化する必要がある、このように考えておられますか、御所見を承りたいと思います。
  99. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 運輸審議会の会長がそういう発言をされたということは、新聞で承知いたしました。私は、この諮問を出しましたけれども、電話もしたこともなければ、会ったこともございません。頼んだことはもちろんございません。運輸審議会は、法律によりまして、独自の見解をもって結論を出すべきでありますし、そのように運用されていると信じております。その点につきましては、私どもは全然存じません。  それから、運輸審議会の運営をもっと民主的にしたらどうかということは、抽象的には全く同感でございます。ただ、問題は方法論でございますけれども、運輸審議会というのは、具体的な許認可の案件につきまして審議をして、運輸大臣に答申をするという、いわば行政機関的な性格を持っている審議会でございまして、ある方面の利害関係者とか、ある利益を代表している人たちを入れて、そこでお互いに議論を戦わしてまとめるというような性格のものではこの運輸審議会というものはないと私は考えておるのでありまして、委員全体が、一人一人が広い経験と知識を持った人で構成されておる。そういう意味で、国会の承認人事になっていると思うのでございます。  ただ問題は、その運用だろうと思います。聴聞会、公聴会をもっとたびたび開いてやったらどうかという、そういう問題についての運用が問題だと思いますので、これは、私も、その方向に対しては同感でございますが、運輸審議会に対しまして、そういった点についても意見をよく聞いてみたいと思っております。
  100. 梅田勝

    梅田委員 公聴会を開いても、その切実な声は聞かない。それがいまの運輸審議会なんです。これを変える必要があるということを言っているのです。  時間になりましたので、最後に重ねて意見を申し上げて質問を終わりたいと思いますが、わが党は、国鉄日本列島改造のための先兵として仕立てて、国鉄を一そう大企業奉仕にさせる国鉄財政再建計画に断固として反対をして、国鉄を真に国民の生活向上に奉仕する交通輸送機関として確立するために奮闘するということを明らかにしておきたいと思うのです。  そして、そういう観点に立って、私どもは、第一に、国民生活に重大な影響を与える旅客運賃値上げの撤回を強く要求いたします。そして、大企業には非常に安く、旅客には高い大企業本位の差別運賃体系を直ちに是正する、これを要求したいと思います。  第二に、日本列島改造論、工業再配置、そういう計画に奉仕をして、大企業の貨物輸送力の増強を最優先するような、そういう国鉄づくりではなくて、国民のための通勤輸送力の増強をはじめとして、地域の住民の生活と経営を守る、そういう国鉄をつくっていただきたい。そのためにばく大な借金と利払い、こういう悪循環を招くような巨大な設備投資をやめて、国民が要望している必要な路線や駅の整備、その建設資金を国の資金によってまかなう。  第三には、十一万人の合理化を絶対やめる。そして、国鉄をささえているのは労働者だ、その労働者を大切にする、そういう行政をやるということを強く要求いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  101. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて梅田君の質疑は終了いたしました。  次に、北側義一君。
  102. 北側義一

    北側委員 私はまず、土地問題からお伺いしてまいりたい、このように考えております。  この土地問題というのは、現在、日本におきまして、国内的な課題では最大の課題となっておるわけであります。たとえば地価の上昇を見てみますと、六大都市の市街地価格指数、これは日本不動産研究所の調査によるのですが、昭和三十年三月を一〇〇といたしますと、昭和四十七年九月は二四四一。ということは、十七年六カ月で二十四・四倍に値上がりをしておるわけであります。そういうことで、昭和三十年当時から地価が急騰してまいりましたので、政府としてもいろいろな手を打ってこられたわけでありますが、そのことごとくが失敗であったと言っても過言ではないのではないか、私はかように考えております。  たとえば、昭和四十三年の秋に地価対策閣僚協議会が行なわれまして、地価総合対策という三本の柱をつくった。すなわち、一つは、譲渡所得税の優遇改正をやって土地の供給を行なおう、このようなことがなされたわけであります。しかし、その結果を見てみますと、なるほど土地は供給されましたが、その供給された土地が、マイホームを望むいわゆる庶民の手には入らずに、大手不動産業者や、また電鉄の不動産部、これらが買い占めた。そして、あらわれてきたのは、ここ数年の日本における高額所得者、これがずらっと並んだというのがあらわれた結果であります。  また、土地売買の一つの目安として行なわれた地価公示法、これを見ましても、私たちが審議の最中に非常に心配したとおり、その地価公示法の価格というものが、最低の目安といいましょうか、そのような最低の目安になっておる。たとえばNHKのあと地の問題にしましても、やはりこのことが実証されております。あってなきがごときものとなっておるのが実情です。  また、三つ目の都市計画法によるところの市街化区域、市街化調整区域、この線引き、これも御存じのとおり、市街化調整区域におきまして二十ヘクタール以上の開発許可、これには知事が許可をおろさざるを得ない。このようなことで、現在乱開発が日本全国で進んでおる、こういう実態であります。まして、田中総理が日本列島改造計画を発表なさってから、いままで上がらなかった地方都市の地価も急激に上がっておる。  私、このような問題を見まして思いますのは、こういう問題に対して政府は一体どんな意識を持ち、また、どのような責任を感じておられるのか、これは非常に重要な問題だと私は思うのです。この根本的な問題が意識の中になければ、土地政策というものはうまくいかないのじゃないか、かように考えております。その点を大蔵大臣、建設大臣に御答弁いただきたいと思います。
  103. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 土地問題につきましては、政府をあげて非常に重大な関心を持ち、これに対して徹底的な対策を講じたいという考え方でおりますことは、いまさら申し上げるまでもございません。  それから、ただいまも御指摘がございましたが、たとえば昭和四十四年度の土地税制の改正につきましても、累進税率を時限的に分離軽課することにしたということも、土地、宅地の造成等によかれかしと思ってやりましたことは御案内のとおりで、その結果が必ずしも所期の目的を達することができなかった。そこで、これらを補完する意味から申しまして、今回御審議を願っております譲渡税、保有税というような、いろいろの観点を組み合わせて目的を達成しようとしておることも御承知のとおりでございますし、また、総合対策でございますから、金融上の措置についても、ずいぶんこれは思い切った措置を従来からとり続けておるわけで、これが、的確に数字をあげて、効果がどういうふうにあらわれているかということは、申し上げるような資料もまだ十分できておりませんけれども、相当の効果をあげていると考えておるわけでございます。  何と申しましても、総合的な対策でなければなりませんが、大蔵省といたしましても、従来的な税制の考え方あるいは金融政策というものにつきましても、旧来の考え方にとらわれずに、現下の重大問題に対しましてできる限りの措置を講じてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  104. 金丸信

    ○金丸国務大臣 お答えいたします。  土地問題は、現下の政治問題としては一番最大の問題であろうと私も考えておるわけでありまして、先生と全く同じでございます。昨年来金融の緩和というようなこともありまして、企業等が投機的な考え方によって買いあさりをしたということもこの問題点にもなっておると思うわけでございますが、どちらにいたしましても、公共事業を推進するにいたしましても、あるいは住宅問題を解決するにいたしましても、この問題を解決せずして何の解決もできないわけであります。  私は、いつも申し上げるわけでございますが、土地は公共優先であるべきものだという考え方でおるわけでありまして、ただいま大蔵大臣からも述べられたとおり、いわゆるあのような考え方で最善の努力をして土地問題に対処してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  105. 北側義一

    北側委員 大蔵大臣は、新土地税制とか、またそのほか金融の引き締めとか、いろいろな問題からそうお答えになっておられると、このように考えておるわけでありますが、では、新土地税制について、具体的な問題についてまずお伺いしてまいりたい、かように考えております。  まず、その土地税制の非課税措置として、土地譲渡税、この中で、都市計画法による開発許可または知事の認定を受けて行なう千平方メートル以上の宅地で、利潤率が適正かつ公募によって販売したものと、このようにあるわけです。これはいわゆる非課税措置が講じられるとなっております。そこで、適正な利潤率というのは一体幾らになるのか。これは非常に大事な問題ではないかと思うのです。これが他の地価のいろいろな利潤率に全部一つの目安となっていくんじゃないかと考えますので、この点を明確にしていただきたい。
  106. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 御指摘のように、適正利潤率というものは、非常に大きな、大切な要素であると考えております。そこで、考え方でございますけれども一つは取得原価、それから一つは造成費これをもとにいたしまして、同時に、一般の企業活動から得られる程度の利潤を認める、こういう考え方から、どの程度の水準が適当であるかということにつきましては種々検討を進めているところでございますけれども、裏から申しますと、土地の値上がりによる投機的な利益を排除する、この考え方を適正利潤率の決定については十分に取り入れなければならない、こう考えておる次第でございます。現在、数字をあげてどの程度と申し上げる段階にはまだ至っておりませんけれども、いま申しましたような積極、消極の両面から詰めて決定をいたしたい、かように考えております。
  107. 北側義一

    北側委員 この適正利潤率は、大体いつごろまでにおきめになるのですか。
  108. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 なるべくすみやかに決定いたしたいと思いますが、大体二、三週間程度の余裕をいただきたいと思っております。
  109. 北側義一

    北側委員 この問題は、先ほど申しましたとおり、非常に重要な問題でありまして、いま大臣が言われたとおり、一般企業の利潤、これが一つの基本的な数字、このようになってくる、このようなお答えであろう、こう解釈いたしております。  そこで、先ほど大臣が言われたのは、土地譲渡税がこのようにきめられたのは、これはあくまでも投機排除のためのものであるというお答えであるわけであります。そこで、そのような土地投機というものを抑制しまた排除するならば、たとえば、不動産会社ではない一つの企業、そういう商社なり企業というものが、土地の値上がりのためのいわゆる投機買いをする場合に、その企業の本業の業績にかかわらず、その土地利潤というものを別個に離して、すべてに二〇%をかけるようになっておりますが、それはよく承知しておりますが、やはりそれ以外にも、法人税なりその他を、欠損法人においても別個に取るべきであるというのが筋じゃないかと思うのです。でなければ、いわゆる投機の排除にもならないし、また、欠損法人においては、投機対象に土地を買い占めるおそれがこれからも出てくるのじゃないか。総合的な法律で地価がぴしっと急激な上昇をしなくなったらけっこうですが、少なくとも、当分の間は、実効はなかなかそう簡単にいかないのじゃないかと思うのです。そうすると、欠損法人としては、二〇%で済むのですから、やはりそちらのほうの投機買いというものは必ず起こってくる。大臣が言われたとおり、あくまでも投機排除のためにやるならば、土地というものは別個にしなければならない、こういう考えを私は持っておるわけですが、それに対してどのようにお考えでしょうか。
  110. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 土地税制というものは、先ほど申しましたように、従来的な感覚だけでは考えられないようなところまで及んだわけでございまして、欠損法人にも二〇%の譲渡税をかけるというようなことは、特にこの土地問題が重要であるから割り切ったわけでございまして、御承知のように、欠損法人でない普通の場合におきましては大体二〇%、合わせれば七〇%までいくということで、これは相当思い切った税率であるというふうに私ども考えているわけでございます。
  111. 北側義一

    北側委員 そのことはよくわかるのです。欠損法人でない場合は、なるほど七一%近くなります。これはよくわかります。しかし、私の言っているのは、欠損法人の話をしておるわけです。投機排除のためであるならば、これは別個にすべきであると、こう申し上げておるのです。名目は投機排除とあなたはおっしゃっておるのですから、それをお話し申し上げておるのです。
  112. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 やや課税の技術にわたる問題でございますので、まず私からお答え申し上げたいと思います。  ただいま北側委員指摘の点につきましては、税制調査会の中におきましてもかなりの御論議をいただいております。ただ、その場合に、まさしくおっしゃいますように、完全に他の所得と分離いたしまして、法人税と別の、たとえば七割の課税をするということにいたしますと、利益を持っております通常の法人は、この税によりましての追加的な負担が約二割になる。ところが、欠損法人は、この税による負担が七割になるということで、やはり新しい税制としては、その税の中での法人ごとのバランスというものも留意すべきであろう。そういう面から、法人税と全然別の税で欠損法人にも適用するという方式をとらずに、法人税は課税しておいて、そのほかに加重的な二割を取り、それを欠損法人にも及ぼすということのほうがこの税としてのバランスとしては適当であろうという結論になったという経緯でございます。
  113. 北側義一

    北側委員 結局、投機の排除という問題があるわけですが、その場合に、これから先一挙に地価というのは安定せぬわけですよ。いまのような、たとえば一つの地価対策を見ましても、いろいろな地価対策が出てきております。これは実施されるまでに相当な期間が要る。形式上でも、届け出制が許可制になったときょうの新聞に出ております。あとでお聞きしますが、そこへいくまでにはずいぶん時間がかかるわけです。だから、投機の対象にならないということがあなたのほうからお答えできるのだったら、それでけっこうですが、どうでしょうか。
  114. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは、まず税として、税の力だけによっては効果があげられないこともある。それからもう一つは、投機を抑制しながら、好ましい宅地その他の造成に支障がないように、むしろそれを促進するという目的をまたあわせ持ってこの目的を達成するようにしなければならない。そういうことから、たとえば実施の時期に猶予期間を置くというようなこともまたそういう配慮からきているわけでございます。なかなか複雑な目的を持っておりますだけに、税としての組み立て方が複雑と申しますか、微妙な点がございますけれども、この税制の立て方と、それからたとえば大蔵省で申せば、金融の措置というようなものがずいぶんいまきびしく行き渡っておりますから、そういう点と、それから総合的な土地対策の効果と合わせて投機目的の抑制ということができる、こういうふうに考えているわけでございます。
  115. 北側義一

    北側委員 この問題については、ここで論議したら時間がたちますのでやめますが、やはり相当検討しなければならない課題ではないかと思うのです。その点ひとつよろしくお願いします。  次に、土地保有税の問題について自治大臣にお聞きしたいのですが、保有税につきましては、取得価格の一・四%の税率が保有税としてかかる、このようになっているわけです。そこで、私いま考えますのに、保有税の目的というものは、あくまでも供給促進という面にあるのではないかと考えておるわけです。そうした場合に、たとえば地価の上昇は、いままでの例を見ますと、年々大体一五%近く上がっており、ひどいところは三〇%というようなところもあるわけです。それであるならば、一・四%くらいの低率な保有税を払ってじっと抱きかかえておったほうがいいのではないかとか、また、一・四%くらいですと、それはかえって土地を売買する場合の上のせになるとか、こういう心配が出てくるわけです。そういう点、これではたして供給促進になるのかどうか、非常に私、危惧しておるわけですが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  116. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはさっきから大蔵大臣がお答えしておりますように、土地譲渡税というものと相まって土地投機を抑制したり、供給促進を考えていこう、こういうところに問題があるわけでございまして、一・四%というものは取引価格にかかるわけでございますから、これは相当な金額になるわけでございます。固定資産税とでは比較にならない高率なものになる。いまおっしゃるように、この保有税だけ一つを取り上げてみますと、そういう見方も私、確かに出てくると思うのです。しかし、これは譲渡税とのかね合いというところに妙味が発揮されるわけでございまして、その点を御理解願いたいと思います。
  117. 北側義一

    北側委員 なるほど、言われるとおり、地価というもの、これは総合的にやらなきゃ地価上昇は押えるわけにいかないように思います。よくわかっております。わかった上で私は申し上げておるわけであります。というのは、先ほども申しますとおり、一・四%じゃ、総額から見ましても、地価の上昇が一五%いっておる現在、かりに総合的な、土地譲渡税も考え、保有税も考え、土地取得税も考えても、そこまでいかないわけです。そこらの問題を私、考えて、一つ一つこれを具体的にいま質問申し上げておるわけです。一・四%のような、そういうことでは、おそらくこれは供給促進にはならない、こういう考えを私は持っております。  特に、大都市近辺はそういう傾向が強いと思うのです。御存じのとおり、東京都におきましても、大阪におきましても、住宅難は深刻な問題です。そういう場所は、御存じのとおり、下水道工事、地下鉄工事、こういう公共関連施設の工事が非常に進んでおります。急激に地価が上昇をしております。そこで一・四%程度の保有税で供給の促進になるか。おそらくならないと私は思います。そこらの問題を、初めにお聞きした政府責任問題という問題と関連して私は申し上げておるわけです。もしこの地価政策が、失敗して、また同じようなことが起こった場合に、その責任は一体どうするのですか、その点をお伺いしたいと思います。
  118. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 本来、未利用地税といいますか、空閑地税と申しますか、そういったものを的確に捕捉して、これに課税をするということが非常に効果的だと思います。しかし、これは関係省庁で検討をしてみましたが、なかなか捕捉は困難で、一体どこからどこまでを未利用地とするかというわけで、こういう形になったわけでございます。  御承知のように、譲渡税については、さかのぼって課税することになっております。これは大蔵大臣からはっきり申し上げましたように、七〇%売買価格において税として持っていかれる。そうすると自己資金、これもおそらく金利がかかるわけでありますから、これが一〇%、そして人件費を一〇%以上と見ると、土地というものは、いわゆる投機対象としては妙味がない。しかも、一方においては一・四、なるほど率は低いようでありますが、譲渡税とのかね合いで持っておろうとすれば、これに相当な保有税がかかる。こうなれば、いわゆる投機対象としては、まさに妙味がなくなるというわけでございまして、今後の推移を見るわけでありますが、やはり相当な効果があがるというふうに自治省としては考えておるわけでございます。
  119. 北側義一

    北側委員 あなたは効果があがるとおっしゃっておられるわけですから、もし効果があがらない場合には、この一・四%といういわゆる保有税を上げるのか、上げないのか、これが一点。  それと、もう一つ私がお伺いしたいことは、土地保有税の課税対象地域の中で、その地域がきまっておるわけです。一、東京都及び指定都市で二千平方メートル以上。二、都市計画区域内では五千平方メートル以上。三、その他の市町村区域で一万平方メートル以上、こうなっておるわけです。たとえば東京都及び指定都市で二千平方メートル以上、こうおっしゃっていますが、実際の問題としてはどういう実情になっておるかといいますと、二千平方メートルという大きな指定都市というものは、住宅難が一番激しいところです。そういうところで二千平方メートルというのは、これに税がかからないとすると、これは絶対待っております。必ず地価の値上がりを待っておるのです。だから、こういう指定都市の中におきましても、その地価上昇を待って、絶対売らないというのが一般の常識です。あなた、これは一ぺん東京のあき地をずっと調べてごらんなさい、売るか売らないかよくわかるから。だから、二千平方メートルは、あまりにもこれは幅が大きいのではないか、このように考えておるのです。現に、これは調べられたらわかりますよ。あき地をずっと一ぺん調べてみなさい。少なくとも、自分の家を建てるのだったら、千平方メートルだったら三百坪ざっとあるのですから、それで十分じゃないですか。中にはそれ以上の家にお住まいの方もあるでしょうが、ほんとうに住宅に困った人というのは、そんな広い住宅は要らないのです。だからもっとそういう土地を吐き出さすためには、少なくとも二千平方メートルというのはあまりにも大きいのじゃないか、私こう考えております。これについてはどうですか。
  120. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 二千平方メートル、まあ一口に言うと六百坪というわけですが、これは住宅供給を促進するというところに根本の意味があるわけでありまして、従来の住宅等にはかけない。ところが、これの非常におもしろい点は、これがまあ免税点にはしておりまするが、これを上回るということになってくれば、これはかけていくわけです。しかも、そればかりか、同じ人があちらこちらに持っておるものを全部集計して免税点が出てまいるわけでありまするから、同じ一個人が持っておる土地の集計、こういうあたりにまあわれわれの主張を発揮していこうという点があるわけでございまして、御了解願いたいと思います。
  121. 北側義一

    北側委員 いまこの東京都及び指定都市という地域、ここにおる住民というのは、住宅では今度の新税でもおそらく救えないでしょう。私は救えないと思います、こういうあれでは。六百坪以上でしょう、これは。以下ではかからないということになりますと、これは固定資産税を払って、そうしてじっと待っておるほどいいのですよ、間違いなく。それは地価の上昇の路線価格を一ぺん大蔵省で調べてみていただいたらわかります。どれぐらい上がっておるのか、そんなことは単純計算でわかるのです。少なくとも六百坪なんという宅地は要らないわけです、自分が住む分については。二千平方メートルではあまりにも大き過ぎます。そうしなければ、こういう東京都、指定都市における宅地供給は絶対できません。私はそう思うのです。宅地でそのままほうってあるのが一ぱいありますよ。現実の姿から見るならば、これは少し大きい、私はそう思うのです。
  122. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 まあ、自分がうちを建てるために持っておる土地にまでこの税金を課する、そういうことは考えていないわけなんです。六百坪が大きいということですが、この免税点は、さっきもちょっと申し上げましたように、もし土地を商品として思惑の対象として持っておるということになりまするというと、全部それを集計するわけです。そして、たとえば六百坪を、六百三十坪持っておったらどういうことになるかというと、六百三十坪全部に税金をかけるわけです。免税点といっておりますが、六百坪を控除した三十坪にかけるのじゃなくて、一坪でも二坪でも六百坪、いわゆるこの二千平方メートルを超過した分全部をひっくるめてかける、こういうあたりにも現実処置をしております。  それから、さっきちょっと私お答えをうっかりいたしましたが、税率を将来なぶるかどうかという点等につきましては、事の推移を見ながら十分検討の余地を残しております。
  123. 北側義一

    北側委員 六百坪以上の場合かかる。これはそれでけっこうです。なるほど少しは供給されるでしょう。しかし、それ以下の二千平方メートル以下の分がずいぶんある。二千平方メートルまで供給できるでしょう。そこから押えますね、それだったら。こうなるでしょう。そのときもやはり検討しなければならないのじゃないですか。私はそう思うのです。  まずそれと、これは大蔵大臣にお聞きしたいのですが、土地新税について、これはまあ自治省も同じだと思うのです。その税金の取り方として、取引価格が一つの基準になっておるわけです。しかし、その取引価格というのは、これは非常につかむことがむずかしいのじゃないかと思うのです。  たとえば、先般の昭和四十六年度の所得税の脱税第一位、第二位、その二位にこの土地売買が入ってきておるわけです。ということは、非常につかみにくいからそういう脱税の行為が出てくるのじゃないか、かように私は思うわけですが、一体国税庁として、はたしてそれだけの取引価格をきちんと把握して課税するだけの人員もおり、また能力があるのかどうか。   〔委員長退席、湊委員長代理着席〕 たとえばごまかし申請を見破るだけの人がおるのかどうか。いまのいわゆる税務署の体制を見ますと、なかなか全部見られない。これが実態です。そういう中で、はたしてこういう新税ができて、取引価格を一つの基準として、ごまかし申請がかりにあったとしたら、それを見破るだけの能力や人的資源があるのかどうか。ここらのところを非常に私は危惧しておるわけです。その点どうでしょうか。
  124. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 土地新税に限らず、税務職員の問題について言及していただいて、私もたいへんありがたく思うのでありますけれども、税務職員の現状あるいは待遇等につきましては、私も深甚な関心を持っておりますが、この新税をやはり創設、考えるにつきましては、徴税行政の上においても十分やれるという確信をもってこの提案をいたしたわけでございます。新税のことでございますからずいぶん苦労はあると思いますけれども、御期待に沿うような行政をやってまいりたいと考えております。
  125. 北側義一

    北側委員 まあその点をよく考慮してひとっこれは取りかかってもらわなければ、現地では、こういうことはとてもできないなんという声も、税務署の中では出てきておるわけです。ああいう新税をつくってくれるのはけっこうだが、人数は一つもふやしてくれないで、一体どうしてやれと言うんだ、こういう声が出ておりますよ。これができなかったら、幾らりっぱな税制をつくったって何にもならないのですよ。しかも、取引価格を基準にするようになっておるのだから。取引価格を基準にするのですから、そこまで深く調べるのには、特に人的資源というものも必要ではないかと思うのです、時間と。その点を心配して申し上げているのです。これは論議したってできる、できぬでしかたがない、やめますがね。そこらの点をよく考慮して、私はやっていただきたいと思うのです。本来ならばこれについてやはりそれだけの人数を、きちんとつくるだけのものをつくらなければいけないのじゃないかと思うのです。そういう計画が出ていないのですか。
  126. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 北側委員よく御承知のとおり、国税の法人の譲渡益重課は、原則といたしましては四十九年四月一日以降の譲渡について適用になる。その間でも、宅地供給に役立たないような関係会社間の取引などにつきましては、これは課税を行なうという仕組みで、現在御提案申し上げております。御指摘の点、私どもといたしましても十分腹に入れまして、来年度予算の際にどの程度の人員増を必要とするか十分研究いたしまして、関係方面と接触いたしたいと思っております。
  127. 北側義一

    北側委員 では地価公示法についてお尋ねするのですが、昭和四十八年度も一万四千五百七十地点の地価調査、これが予算では認められておるわけです。先ほども申し上げましたとおり、この売買の目安といわれる地価公示法、地価公示価格、これは実際、現在ほとんど売買の中で、地価公示法なんというよりむしろ近傍類地の価格、売買価格実例、これがおもになって、いま大体土地の売買というものが進められております。そういうところでこの地価公示を、ばく大な金を使ってだんだんふやしていくのもけっこうですが、これやはり権威があるものにしなければならないと思うのです。でなければ、毎年毎年膨大な予算をつけてふやしても、最終目的というものはきちんとなければ、また権威あるものになるというめどがなければ、やってもむだじゃないか、こういう考えに、私は立たざるを得ないのです。  御存じのとおり地価というものは、路線価格もあります。大蔵省でやっております、固定資産税の評価価額、譲渡所得税の評価価額、地価公示法、近傍類地のいわゆる売買価格の実例、こういういろいろな方法があるわけです。その中で一体どれをほんとうに最終的にはいわゆる国が認めた地価の価格にするのかという、そこらをはっきりしなければ、こんないっぱいあったって何にもならぬです、やったって。そういう点、どのようにこれを考えておられるのですか。
  128. 金丸信

    ○金丸国務大臣 NHKの問題が地価公示制度は何のためにちるのだという大きなこれは反響を呼んだと思うわけでございますが、地価公示制度は御案内のように、昭和四十五年度に九百七十地点、四十六年度に千三百五十地点、四十七年度に二千八百地点、四十八年度に五千四百九十地点の今回予算をお願いをいたしておりますし、四十九年度に一万四千五百七十地点を予定をいたしておるわけでございますが、御案内のように、民間の土地の売買の目安にしたり、公共用地の土地取得の算定のもとにいたしてまいりたいと思うわけでございますが、先生のおっしゃられるように、これは全然ぬかにくぎだというようなお話でありますが、さほどの状況でもないように、私の調査では承知いたしておるわけですが、しかし、この地価公示制度は徹底的に国民には浸透していただいて、この件はあくまでも定着させたい。なお、著しく土地の問題で土地が高騰している、その場合はこれに対してはこれを中止勧告するというような考え方もあるわけでございますから、そのような方法でこの地価公示制度を定着させたい、このように考えておるわけでございます。
  129. 北側義一

    北側委員 だから、なるほど国土総合開発計画等では中止勧告、許可制にして中止勧告、こういう問題があって、やはりそれは一つの目安のあるというのはわかります。しかし、やる以上は最終的なめどをぴちっときめて、地価公示法にやはり税金がかかっているわけですから、ばく大な金がかかっておるわけですから、そうして、年々調査をふやしていくわけですから、これが実際にきちんと生きていけるような方法をやぴちっと何にもならない、こう思うのです。そうしなければこれは幾らお金をかけたって何にもならぬです。あなたは地価の急騰は御存じのとおり、いま一五%、ひどいところはもう三〇%いっている。そういう場所では全然これは目安になっておりませんよ。たとえば指定都市や東京都あたりで用地買収するのに、地価公示法の価格で用地買収しようとしたって、これは買収できないです。東京都の用地課の役人や、大阪市の役人に聞いてごらんなさい、はっきりできないと言っておりますから。それは全然地価の上昇の率の低いところはいいでしょう。しかし、非常に上昇の高いところでは目安にならないというのが実態です。そういう点で、どうかこの地価についての地価公示法が一つのやはりめどになる、そういう目的でつくられたのですから、あくまでそれを貫き通してもらいたいと思うのです。貫けるような方法をとってもらいたいと思うのです。  それと、先般、田中総理が一月二十六日の地価対策閣僚協議会の席上で、都市計画区域内の市街化区域及び市街化調整区域、この線引きを見直すようにというような指示が出た、このように私、聞いておるわけですが、これについて建設大臣と自治大臣の御意見を承りたいと思うのです。
  130. 金丸信

    ○金丸国務大臣 線引きの問題につきましては、市街化区域と市街化調整区域の問題があるわけでございますが、この線引きの問題につきましては、非常に問題になっておるところもあるようであります。しかし、この線引きの問題を変えなければならぬということになりますと、相当なまた問題が起きるということを考えるわけでありまして、慎重に今後検討しなければならぬと、こう私は考えておるわけでございますが、そういう場合、ただし東京都あるいは大阪というようなところで市街化調整区域の中に宅地として適地がどうある、それを使いたい、こういうような場合につきましても、簡単にその線引きを考える、そしてすぐ変えるというようなことをしてはどうか、それについても十分な検討をしなくちゃならぬ、こう私は考えておるわけでございます。
  131. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 線引きの問題は建設省にゆだねるわけであります。ただ、私ども自治省側として考えますると、地方公共団体の経営いたしておりまする土地開発公社、この土地開発公社などが住宅用地を求めるという場合に、都市計画区域のみに一体限定するかどうか、調整区域でも、もともと市町村が線引きをし、これを県が許可したと、こういうあの策定の順序からいいまして、市町村が住宅適地であるというふうに認めて、比較的安い宅地用地、これは宅地の場合ですが、宅地用地を確保できるというならば、これは建設省側においても弾力的にお考えを願えないかというふうに、地方財政窮乏のおりからそんなことを考えておるわけであります。また具体的にそういう提案をして、建設省側の考慮を促しておるというのが実情でございます。
  132. 北側義一

    北側委員 都市計画法では、御存じのとおり調整区域においても、二十ヘクタール以上の開発については知事が許可しておるわけです。これが乱開発のやはり一つの問題点となっておるわけです。私、都市計画法を審議した場合に、この二十ヘクタールの市街化調整区域における開発については、公的機関がいわゆる住宅建設なり公的施設のために開発するのはこれは非常にけっこうじゃないかと思うのです。線引きをやりました当時、市街化区域と市街化調整区域がありまして、市街化調整区域が地価が上がらなかった、こういう実態があります。だから、当初の目的、市街化区域については八十万ヘクタール、現在百二十万ヘクタール近くになっております。これはなぜかといいますと、やはり地価をできるだけ上げたい、市街化区域に入りたい、まあこういうことで線引きがなされたわけです。そういう点から見まして、私、初め申しましたとおり、やはり都市計画法の審議の最中には私、そういうことをお話し申し上げたわけです。ところが、そのときは全然受け付けてもらえなかった。いま自治大臣の話を聞きますと、そういう話が出てきた。これは四年前の審議のときにそう言うべきだったと思うのです。私、それはけっこうだと思うのです。公的な、いわゆるそういう住宅建設をするために調整区域、それは私はけっこうだと思います。そのかわり、乱開発をとどめるような方法を考えなければならない。これが一つ。  それと、おおむね十年間で市街化区域については公共投資を行なう。はたしてこの広がった市街化区域において十年間でそういう公共投資が行なえるのかどうか。これは地方財政とのやはり関連もあろうと思うのです。その点で非常に心配しておるわけです。その点どうでしょうか。
  133. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 群小業者の場合ですと乱開発が行なわれる、そういうことでああいう規制をする、これが大きな理由になったわけであります。で、市町村であるならば、これは宅地供給という大目的を遂行していく上に乱開発ということにはならない、だから例外措置をと、こういうわけですね。これは御了解願えると思うのです。  そこで、しからばその原資をどうするのか、資金をどうするのか、こういう問題が起こってくると思います。そこで、これは大蔵大臣とも協議をいたしまして、地方債でこれを認めていく。しかしこの地方債にも限界がありまするので、勢い縁故債という形にならざるを得ません。ましてや農協の系統資金でも使うというようなことになりますと金利が高い。その金利を一体どうするのか。したがって、政府金利と縁故債の金利の差額ぐらいは、これは国においてめんどうを見るという方途はないものであろうかということで、目下大蔵省と自治省との間において煮詰めておる、検討中であるというのが現況でございます。
  134. 北側義一

    北側委員 いまの自治大臣の意見について、大蔵大臣また建設大臣、どのように思っておられるか。これはやはりそういう指定都市なり大きな都市においては非常に大事な問題になっております。でなければ住宅は建たぬです。そういう点から、相当検討しなければならない問題だと思うのです。大蔵大臣、建設大臣、その点どうですか。
  135. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま自治大臣からお話がありましたとおり、土地対策要綱をきめますときにも、地方公共団体の取得する部分について、必要がございますれば地方債の計画、あるいはその消化等につきまして大蔵省としては協力をしていくということで、具体的な案を考えておるわけでございます。ことに、いわゆる農協関係と申しますか、系統資金の活用というようなことも、あわせて積極的に考えてまいりたいと思っております。
  136. 金丸信

    ○金丸国務大臣 この線引きの問題は、ただいま自治大臣が申し上げましたように、各町村、市あるいは県できめてきて、それを建設大臣が決定をいたすということでございますから、その点につきまして、建設省は相当な責任考えておるわけでございますが、自治大臣のおっしゃられるような考え方で私たちも土地を、宅地をそのように提供できるという方向で、検討をいたしておるというわけであります。
  137. 北側義一

    北側委員 いま自治大臣が言われたとおり、乱開発というのはそういう公的な機関ではできないと思うのです。そういう点については私も賛成です。線引きの引き直し、それだったら賛成です。特別措置によって、調整区域においてもそういう公的な公営住宅なり、またいわゆる公的な住宅建設、公的な施設、この建設には二十ヘクタール以下でもできる、こういう特別措置が必要じゃないか、こう思うのです。これはやはり、先ほども申しましたとおり、現在の大都市の住宅難のほうから見ますと、どうしてもこれは必要です。  そこで、先ほども言いましたが、心配なのは、はたして市街化区域が、そういう公共投資が行なわれてやるだけの財源が出てくるかどうか、これが非常に心配になってまいりますが、しかし、その問題とはこれは別個に考えたらいいのじゃないかと思います。  そこで、市街化調整区域の全面積のうち、一体現在二十ヘクタール以上の許可になっております開発、これは全国で面積としてどれくらいあるのでしょうか。わかりますか。
  138. 高橋俊英

    高橋(弘)政府委員 四十六年度についての統計がございますけれども、三十四件、千二百ヘクタールという記録になっております。四十七年度はまだ集計がございません。
  139. 北側義一

    北側委員 私、聞いたところによりますと、七千ヘクタールぐらいあるんじゃないか、こういうことを聞いておるのです。これは確かな数字ではありません。  そこで私、思いますのは、都市計画法を審議した場合、二十ヘクタール以上は開発許可になった。これがいまやはり一つの大きな問題になっておるのじゃないかと思うのです。たとえば日本開発銀行、ここがやはりそういう資金を貸し付けておるわけです。私いただいた資料があるんですが、これは確かかどうかわかりませんが、日本開祭銀行が民間のいわゆる宅地開発資金として融資した金額、これを、その面積の規模、及びその調整区域か、市街化区域か、都市計画外区域か、また融資金額、大体どれぐらいあるんでしょうか。
  140. 吉田泰夫

    吉田(太)政府委員 まず全体の件数でございますが、十二件、ヘクタールにいたしまして千三百八十ヘクタールでございます。金額にいたしまして百億円。うち、市街化区域内が六件、ヘクタールにいたしまして八百十五ヘクタール、金額にいたしまして七十三億円。市街化調整区域五件、四百十五ヘクタール、金額二十三億円。市街化区域外一件、百五十ヘクタール、五十億円でございます。
  141. 北側義一

    北側委員 日本開発銀行のほうからこのような融資が出ておるわけですね。私、思いますのは、先ほど言いましたとおり、やはり市街化調整区域において日本開発銀行がそういう融資をする。その融資を受けて開発する。いろいろな問題が起こってきているわけですよ。たとえばゴルフ場の乱造成なんかでがけくずれが起こって土砂によって流される、こういう事件も起きております。ゴルフ場なんか、これは二十ヘクタール以下でもいいわけですね、都市計画法によっては。こういう問題もよく考えなければいけない問題じゃないかと思うのです。国がいわゆる調整区域なり都市計画区域外にそのように融資がなされて、その融資が乱開発に結びつくようでは、これは話にならないと思うのです。これは先ほどの自治大臣の意見と全然別個の面で話をしているわけです。そういう点の規制も大事じゃないかと思うのですね。その点どうですか。
  142. 吉田泰夫

    吉田(太)政府委員 直接のいまの御質問のお答えではございませんが、先ほど御説明申し上げましたときに残しましたことを多少お伝えいたしますと、市街化調整区域内におきます融資及び都市計画外の区域に対する融資につきましては、いずれも宅造関係あるいは都市計画法の開発許可関係の法律の認可を受けたものであり、建設省から推薦を受けたものというようになっております。
  143. 金丸信

    ○金丸国務大臣 ゴルフ場の問題につきましては、都市計画法の中で改正をいたしてまいりたいと、目下検討中でございます。
  144. 北側義一

    北側委員 時間がありませんので、もうあと三十分ですから、次に進みます。  経企庁長官にお伺いしたいんですが、きょうの新聞では、新国土総合開発計画では、土地の急騰や投機的買い占めが急増またはおそれのある、そういう判断をすれば知事が特別規制地域を指定できる、このように一応経企庁のほうでは、新聞発表によりますと、なったように私、思うのですが、そこで二、三の点についてお伺いしたいんです。  特別規制地域の指定の範囲をどういう場所にするのか、これが一点。たとえばまた、虚偽の許可申請をしたり許可制を無視した場合の罰則はどうなるのか。この二点についてお伺いしたいんです。
  145. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 国総法はこの国会に御提案すべく、いま鋭意関係各省からの調整をやっておりまして、党との関係もやっておりますが、いずれもまだ未調整の段階でございまして、新聞報道はスクープというようなことではなかろうかと思いますが、したがいまして、この場所で私からそれの内容についてお答えすることは、立場上ちょっとむずかしいことがあるわけでございます。いずれにいたしましても先ほどから御質問のような趣旨は私どもも同感でございますので、そういう御趣旨が生きますような改正をしたいと考えておるわけでございます。
  146. 北側義一

    北側委員 この問題は非常に大事な問題なんです。これがたとえば届け出制が許可制になった。まことに私、喜んでおるわけです。それが今度また話し合いの段階で、大手のそういう土地業者あたりから骨抜きされるようなことになりますと、つくった土地新税も何にもならないようになっちゃう。その点、新聞がスクープした、こうおっしゃっておられるが、そういう許可制になされて、一番大事な罰則とか、いまお聞きしたのは、これは非常に基本的な大事な問題なんです。そうしなければ、私が幾ら土地論議したって始まらぬですよ。できてないものをいますぐ出せと言ったってしかたがないでしょうが、少なくとも骨抜きは絶対してもらいたくない。その点をやらなければ、土地問題を幾ら論議したって論議できぬですよ、正直言って。一番大事なところですから。届け出制にして五万や十万の罰金じゃ、こんなものどうにもならぬです。そんなことをやられるなら、これは幾ら田中総理が日本列島改造計画なんと言ったって、また地価が上がる。泣くのは庶民ばかりですよ。そういうことはしてもらいたくない。だからあくまでも、きょう新聞に発表があったような許可制にするなら許可制にして、骨抜きにしてもらいたくないという私たちの心情です。関係大臣、どうですか。大蔵、建設、これはどうですか。答えられませんか。
  147. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま経企庁長官から答弁がありましたように、いま鋭意法案作成中でございますが、私どもの気持ちとしては、骨抜きというようなことは考えておりません。ただ、骨抜きということばがいろいろに使われる場合もございますから、土地問題の解決が十分できるように、また好ましい土地造成ができるようにという意味でお考えをいただきたい、そういう意味で万全を期していきたい、こう考えております。
  148. 金丸信

    ○金丸国務大臣 ただいま企画庁長官が申し上げたとおり、考えを申し上げる段階でないわけではございますが、建設省の立場としては、公共用地、住宅等の問題が非常にやかましいときでありますから、できるだけ安易に土地が入るようなことになっていただけることを多くを望んでおるわけでございます。
  149. 北側義一

    北側委員 この問題につきましては、特別規制地域の指定の範囲というのは、非常に大事なところだと思うのです。それとあわせて罰則をどのようにきめるのか。骨抜きというのは、実効があがらないことを骨抜きというのです。だから実効をあげるようにしてもらいたい。でなければ、ここで予算委員会のときは土地論議を一生懸命やっておって、あとで、予算が、うるさいのが終わってからぱっと出された、これじゃもう話にならぬですよ。だから申し上げているのです。これはここで論議しても始まらぬでしょう。  では、環境庁長官にお伺いしたいのですが、実は先般、琵琶湖の総合開発計画、これが国会を通過しまして、その実施の段階に入ったわけです。ところが、御存じのとおり、琵琶湖というのは非常に大事な京阪神の一千万人のいわゆる上水道の水源になっております。ところが今度、琵琶湖の北に湖北線というのが完成するわけですね。ところが、琵琶湖総合開発計画とあわせて湖西線が完成される。そういう面もダブって、土地業者が猛烈にあそこの買収にかかっておるわけです。琵琶湖の水質を保全するために、滋賀県としても、用地買収をやって何とか水質を保とうというような、そういう計画はあるのですが、いまはその計画より先に買収されておるのが実情なんです。このままいきますと、大臣も御存じと思いますが、先般、建設省の近畿地建が土木学会に琵琶湖の水質を占ってもらったわけですね。昭和六十年になりますと、いまのままではこれがもうどろ海に化するであろう、こういう結論が出ておるわけです。水質を保全するためのこういう問題に対しての規制は、どのように考えておられるのでしょうか。
  150. 三木武夫

    ○三木国務大臣 北側さん御指摘のように、琵琶湖は自然の景勝の地であるばかりでなしに、上水道の水源池でもあるわけですから、これはもう水質の汚濁をどうしても防止しなければならない。そのために、御指摘のあったような、いろいろ土地の買い占め、乱開発からくる一つの琵琶湖の汚濁、いまこれをきれいにしようというのに、またこれの汚濁の原因をつくったのでは意味はなさないですから。あそこは国定公園になっているわけです。九万ヘクタールくらい指定しておるわけですね。陸地が二万ヘクタールくらいあるのですか。これを国定公園としていろいろな規制をしておるわけですが、しかし、それだけでは足らない面もありますので、この四月から実施される自然環境保全法、これでやはり特別地域に指定ができることになっている。この指定の中にもう少し広くかけたいと思うのです。そして琵琶湖というものの汚濁を未然に防止するような処置を講じたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
  151. 北側義一

    北側委員 この点、ひとつ大臣、よろしくお願いいたします。いまの問題は非常に大事な問題です。  それから、労働大臣が何かお急ぎのようですので先に……。  実は今度、御存じのとおり、厚生年金の積み立て金を、住宅供給の面で年金加入者の個人住宅の建設に融資しよう、こういう制度ができたわけです。   〔湊委員長代理退席、委員長着席〕 その融資の条件等についてはあとで厚生大臣にお聞きしたいのですが、その前に労働大臣に……。いわゆる個人が企業を通じてこういう住宅融資を借りた場合、どうしても企業主の考え方、たとえば、その融資を会社が受けて個人に貸し付けるわけですから、そこで、経営者と個人との関係というものが非常に大事な問題となって、使用人が結局経営者に金縛りになるのではないか、こういう危険性が出てくるのではないかと思うのです。住宅融資を借りるとき、企業主が借りるわけですが、その企業主から個人が借りて住宅を建てるわけですから、そういう心配が出てくるわけです。そういうようなやり方というのはILOの精神にも反しないかと私は思うのですが、その点、労働大臣のお考え方を承りたいと思うのです。
  152. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 厚生年金の住宅問題でありますが、御指摘のとおり、事業主を通じて融資をする。政府はいろいろな各方面で住宅問題に対しては熱意をもって対処をいたしておりますが、厚生年金は所管が厚生大臣でありますけれども、連絡をとりますと、これに対しても検討したいということを聞いております。不当なことのないようにすることは当然のことでありまして、私の所管であります事業団の融資も事業主を通じてやる。また御承知のように、財産形成法の融資制度、これも事業主を通じて労働省としてやっておりますが、御指摘のような足どめだとかいろいろなことは、あまり聞いておりません。なお十分御趣旨を尊重してよく調査いたしますことはいたしますが、いまのところでは、さような特に足どめだとかなんとかいういろいろの妙な影響は、私の所管の事業団並びに財産形成の事業主を通じて融資をするこういう問題については、さようなことはまだ仄聞いたしておりません。  以上でございます。
  153. 北側義一

    北側委員 では、いまの労働大臣の答弁に対して厚生大臣どう思われますか。  それとあわせて、いわゆる厚生年金の積み立て金を住宅供給の面で年金加入者の個人住宅の建設のために融資しよう、これのいわゆる貸し付け条件、また貸し付けの金額、その制度を簡単に御説明願いたいのです。
  154. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答え申し上げますが、厚生年金の被保険者の方々から、従来とも、住宅資金に貸してもらえぬだろうか、こういう非常に強い要望がありました。よその公的共済組合においてもそういうことを現にやっておりますので、来年度からそういうことをやろう、こういうことにいたしまして、これは還元融資の一環としてやるわけでございますから、あくまで被保険者、労働者の方々の福祉になるように貸そう、こういう考え方で来年度から出発しようという考えでございます。  それで、貸し付けにあたりましての金利は六分二厘でございまして、被保険者の期間に応じてその金額に差をつける、こういうやり方でございまして、これも大体よその公的共済組合と同じでございます。その内容は、五年以上十年未満が百万円、十年以上二十年未満が二百万円、二十年以上が二百五十万円、こういうふうなことで貸し付け制度を行なうわけでございますがいその貸し付けにあたりましては、住宅金融公庫もこれに見合って一緒にお貸ししようではないか、こういう考え方で動いていくわけでございます。
  155. 北側義一

    北側委員 これは私も非常にいい制度だと思うのです。住宅金融公庫とあわせて両方借りますと、二十年以上になりますと五百万ぐらいになりますので、非常にいいことだと思います。ただ、先ほど心配したとおり、この貸し付けによって事業主が使用人を金縛りするようなやり方はどうしても避けなければならないと私は思うのです。その点をひとつようく配慮していただきたいと思うのです。  厚生大臣、労働大臣けっこうです。  次は、時間がもうありませんが、住宅問題で二、三点だけお伺いしたいと思うのです。  まず、東京都における住宅難は一番ひどいと思うのです。東京都においては、昭和四十七年の公営住宅の建設は計画戸数一万九千八百戸ですが、三月末の段階で発注高は一体どれぐらいになるのか、四十六年、四十七年についてお伺いしたいのです。
  156. 沢田光英

    ○沢田政府委員 まず東京都のお話でございますが、東京都につきましては、四十七年度の年度末発注高はおおむね二〇%程度でございます。  ちなみに、関連をいたしまして、公団住宅が非常に問題になっておりますので、これは東京支所管内でございまして、ちょっと範囲が広うございますが、これにつきましては、公団住宅におきまして、四十六年度におきましては計画戸数が三万四千五百戸でございました。これに対して発注戸数が二万七千五百戸。このうち東京都の分は九千三百戸でございました。また昭和四十七年度につきましては、同じ地域で計画戸数が三万四千八百戸でございました。四十八年三月末までの発注見込み戸数は一万六千戸でございました。そのうち都内の分は七千四百戸程度、かような状況になってございます。
  157. 北側義一

    北側委員 いま言われたわけですが、これは私が調べた戸数ですがね。たとえば東京都の場合、公営住宅のいわゆる計画戸数が昭和四十六年は一万八千五百戸、そのうち発注したものが一万五千五百戸、未発注が三千戸ありますと、こう聞いております。昭和四十七年度分については、計画戸数が一万九千八百戸、発注済みがこのときの時点で千四百戸、三月末までに千六百戸、合計三千戸、こう聞いております。一万九千八百戸で三千戸ということですね。これは私が東京都に聞いた分ですよ。これじゃもう東京の人の三百万近いといわれる住宅難は解決できないです。  先ほど住宅公団も言われましたが、公団住宅につきましても、これは私が公団のほうから聞いたのですが、昭和四十七年度の賃貸分の計画が六万二千戸、これの十二月末の発注高が五千四百三十七戸、分譲分の計画が二万六千戸、発注高が五千三百四十一・五戸。〇・五戸というのはややこしいのですが、十二月末でこう聞いております。こういう実態ですね。  特に、御存じのとおり、千葉県、神奈川県、ここらでは公団のいわゆる入居者は、建てた場合八〇%は自分の地元の人を入れたい、こういう意見も出ております。東京都の住宅難の人はどこへも行くところがないのです。公営住宅に行く以外にないのです。その公営住宅が建たない。一体これはどうしたらいいんですか。東京都の住宅難で困っている人にわかりやすく説明してもらいたいのです、どうやったらいいか。
  158. 金丸信

    ○金丸国務大臣 住宅の問題につきましては、御指摘のとおりでありまして、東京都の問題はまことに頭の痛いところでございます。しかし、全体から見ますと住宅計画は何とかいける。この問題については、御案内のように、地方公共団体の負担の問題、税の問題等ありまして、こういう問題につきましても、昭和四十八年度にはわが省は考えておるわけでございますが、しかし、それとてもその程度では考えられない。そこで経済閣僚懇談会等で土地対策要綱というようなものをつくり、そういうようなものの強力なうしろだてによってこの問題を解決しなければできない、このように考えておるわけでございます。
  159. 北側義一

    北側委員 それは、まあ大臣の言うことよくわかるんですがね。しかし、こういうぐあいになったというのは、やはり地価対策のおくれがこうなったわけですよ。その責任は、少なくとも第一期住宅建設五カ年計画の場合でも、第二期住宅建設五カ年計画の場合でもそうです。第一期の場合は一世帯一住宅、こういって、第二期の場合は一人一室とこうおっしゃっておられるのですから、まして五カ年計画の中のいわゆる三大都市圏における住宅建設の拡充、こうおっしゃっておられて、公的資金住宅三百八十万戸のうちおおむね七割を三大都市圏に建設する、こうおっしゃっているんですよ。ところが、いまのままじいっと見ておりますと、なかなかそういうぐあいにいきません。これは公団総裁も、いまのままではいかぬと、これはうそかほんとか知らぬが、新聞でこうおつしゃっている。  そういう面で、私が土地問題を先ほど論議した場合に、いわゆる東京都及び指定都市においては、保有税については、二千平方メートルは大きいじゃないかというのは、そういう点から言っているんです。でなければ、もう土地がないんです。放さなかったら、保有税で供給させなかったら、そういう土地がもうないのです。ない証拠がこういう住宅政策としてあらわれてきておるわけです。だから私、先ほどからそれを何べんも言っておりますが、なかなか変えようとしない。これについてどうでしょうかね。公団総裁も、日本住宅公団のあり方を考え直さなければならない時期が来ているのじゃないかと思うのですよ。とてもじゃないが、この五カ年計画にあるうちの公団の計画戸数はいまのままでは建たないですよ。千葉県だって九千戸でやめてくれといってきているでしょう。だから、第二期住宅建設五カ年計画、これは閣議決定されて世の中に発表されておるわけですから、これを組み直さなきゃならないような時点まで来ているのじゃないかと私は思うのですよ。第三年後には事実できないことははっきりわかっているのですから。ここらについて、公団総裁どうお考えなんですか、今後の日本住宅公団のあり方について。
  160. 南部哲也

    南部参考人 首都圏の臨海三県につきましては、いまお話しのようにいろいろな問題がございまして、特に将来の水問題これからただいま人口を抑制しようという方針をはっきり打ち出しております。したがいまして、新規に土地をこの三県について求めるということは非常にむずかしくなってきておるというような状態でございまして、これはやはり国全体といたしまして、過密の対策をどうするか、首都圏の水問題をどうするか、あるいは足の問題をどうするかという総合的な見地から、どこに住宅を建てるかという点について早急に検討すべきであると思っております。われわれできるだけ関係の都道府県とはお話をしておりますけれども、ただいまそのような状態でございまして、今後どこに立地をするかということについてのはっきりした国の指針もいただきたい、このように思っておる次第でございます。
  161. 北側義一

    北側委員 時間がないので、これはまた建設委員会でじっくり論議したいと思います。そうしなきゃもう時間がないです。  最後一つだけ、これは大事な問題ですからこれだけぜひ聞いておきたいのです。というのは、最近地価の上昇に伴って、大都市におけるいわゆる家賃、これは民間における住宅家賃です。これは猛烈に上がってきております。これは実は昨年私のほうへ、ある一区ですが、相談に来た分をちょっと読み上げましょう。これは大阪市の阿倍野区松崎町二丁目の一の三十一、東桃荘というのです。これは三十年に建築されております。ですから地代家賃統制令にひっかかっておりません。昨年の初め家賃が四千五百円だったのです。これはアパートですからね。ところが暮れには九千八百円になっております。また同じく阿倍野区橋本町三の四十八、これは昭和三十年四月の建築で、これも地代家賃統制令から除外されております。ここで八件あります。ある一例だけ申し上げますと、小谷さんという方は昨年の初め四千円だったのです。ところが昨年の暮れには一万五百円要求されております。四千円が一万五百円になっております。またもう一例申し上げます。福西さんという方は五千三百五十円が昨年の初めの家賃です。ところが家主から一万一千円要求されております。こういう実態です。大体みなそういう実態になっております。  これは、一つの原因というのはどこにあったかといいますと、一昨年の十二月二十八日に地代家賃統制令が改正になった。なるほど、いままで地代家賃統制令で押えられておった人はまことに気の毒だと私は思うのです。しかし、地代家賃統制令の対象外の住宅でもこうやって上がってきておるわけです。というのは、それを一つの基準にして計算したり、方々上がったので、うちも上げようということで、ずっと上がってきているのが実情なんです。いまそういう住宅家賃のトラブルがものすごいのです。これについては、一体、建設大臣、どのように考えておられるのですか。私の知っている範囲では、全部地代家賃統制令の改正が発表されてからこうなったのですよ。特に、私の聞いたところでは東京より大阪のほうがひどいです。この阿倍野区は戦災で焼けてない場所です。
  162. 金丸信

    ○金丸国務大臣 私もそういう話を間々聞きまして、弱ったことだと、いつも考えさせられる大きな問題であります。この統制令が適用されているものは二十五年度以前の住宅でこの統制額を改定したと、こういうことでございますが、それにならってみんな追っかけて家賃を上げておる。これにつきましては、現にわが省も指導もし、いろいろあらゆる方法をとって対処いたしておるわけでございますが、どちらにいたしましても、この問題は、物が上がるという問題等もあるわけでございますから、そういうものの総合的な観点からそういうものを抑制していかなければならない、こういうように考え、そしてこの家賃に対して、できるだけ高家賃にならぬような、今後も指導を絶ゆ間なくしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  163. 北側義一

    北側委員 まあ、そういう答弁をなさるだろうと思っておったのですが、問題は行政指導だけではどうにもならない問題です。私は思うのですが、たとえば、先ほども申し上げましたとおり、東京都においては公営住宅は計画戸数の二〇%しか発注高がない。そうして高い民間の住宅の狭いところで非常に苦労をなさっておる。申し込んでも何百倍という申し込みでなかなか当たらない。非常に不公平だと思うのですね。そういう点からやはり私、思うのですが、そういう民間の非常な高家賃の住宅については、やはり住宅控除とかなんとか、そういう考え方というものをここらで考えなければいけない時期が来ておるのじゃないかと思うのです。そうしなければ、これはあまりにも不公平です。そこらの問題を大蔵大臣どのようにお考えになっておられるか、ちょっとお伺いしたいのです。
  164. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 家賃の問題はほんとうにたいへんな問題で、御指摘の御意見も私は無理からぬところだと思いますが、ただ、この家賃の控除ということになりますと、自分の持ち家、これに対する修繕費管理費という問題もあり、あるいはさらに、非常に無理をして借り入れをして家を建てられているという方々との均衡などもございますので、家賃の控除ということは、税法上は非常に至難な問題であると思います。まあ私として、やれること、考えられることは、課税最低限を今回もずいぶん思い切って引き上げたつもりでございますが、将来とも、これは衣食住という一番人間生活の根本の問題でございますから、やはり一般的な課税最低限の引き上げの問題として考えていくことにいたしたい、こういうふうに考えております。
  165. 北側義一

    北側委員 御存じのとおり、現在の都市化というものは、産業と人口とが集中してなったわけです。その根本原因は、やはり経済第一主義、輸出至上主義というところから、企業が都市に集まり、人口が集まったわけです。その集まってきたそういう人たちが、大都会での住宅難で住宅が建たない、にっちもさっちもいかない状態になっておるわけです。公営住宅に当たる人はまだしもいいと思うのですよ。当たらない人は非常に格差が出てくるでしょう。ましてや、公営住宅や公団住宅の家賃にしたって、最近は非常に上がっております。大阪市のどまん中に建っております此花区の千鳥団地ですか、それと大正区に建っております千島団地は応募倍率が〇・二と〇・四ですか、家賃が高いからです。大阪市内ですよ、それが建っている場所は。そんな住宅を日本住宅公団が建てているわけです。だから、大都市におるいわゆる住宅難の人たちは非常に困っている。これでは自民党の票が減るのはあたりまえだと思うのです。その面からも大都市の住宅対策はもう少し真剣に考えてもらいたいと思うのです。そのためにやはり、先ほど言いましたが、非常にむずかしい面が、大臣が言われたようにあると思います。しかし、所得税の減税、これは全部平均にいくわけですから。そこらは頭をしぼっていただいて、何とかひとつ考えてもらいたいと思うのです。これは諸外国でやっている例があるわけですから。その点もう一ぺん検討してください。
  166. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いま申しましたように、北側さんの御説も、まことに一つ考え方であるということは、先ほども申し上げたとおりでございますが、税制の問題としてはなかなかこれはむずかしいということを率直に申し上げたわけでございますが、なおよく勉強させていただきたいと思います。
  167. 北側義一

    北側委員 もう本会議で時間がないようですから、これで終わりますが、あとはひとつ建設委員会で、またその場合、大臣を呼びましたら、ぜひとも来ていただきたいと思います。まだだいぶ残っておりますので、その点どうかよろしくお願いいたします。
  168. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて北側君の質疑は終了いたしました。  本会議散会後直ちに再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時二分休憩      ————◇—————    午後二時三十三分開議
  169. 根本龍太郎

    ○根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。楢崎弥之助君。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 過ぐる二月二十二日の夜に、証券取引法第百二十五条、相場操縦の禁止に違反した疑いで、大手飼料メーカーである協同飼料の幹部が東京地検に逮捕されるという事件が発生したわけであります。この種の問題は、いろいろうわさはあるけれども確証がなかなか得がたい。今度の協同飼料の問題は、内部からの綿密な資料に基づく告発があったので、東京地検が動き出せたのではないかと私は推察しますが、その点、法務大臣どうでしょうか。
  171. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 お話の事件は、去る二十二日、関係者四名の逮捕をいたしまして、目下厳重に捜査を進めております。そういう捜査中の事件でありますので、捜査の内容をここに御報告申し上げることがたいへん困難と存じますが、専門の刑事局長が来ておりますので、刑事局長からお答えを申し上げます。
  172. 安原美穂

    ○安原政府委員 お答えいたします。  ただいま楢崎委員から、捜査の端緒として相当の確証を得てやったのであろうなというお尋ねでございますが、ただいま大臣が申し上げましたように、捜査中でございますし、この種事件の捜査の端緒をいま申し上げることは、将来におきますこの種事件の検察運営に支障がございますので、ひとつその点はごかんべんいただきたいと思います。  ただ、申し上げますことは一すでに先ほど大臣が申し上げましたように、四名につきまして逮捕勾留の上捜査をしておるという状況でございますので、犯罪を犯したと疑う相当の嫌疑をもってやっていることだけは間違いないことと存じます。
  173. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 逮捕されたのは中堅クラスの幹部でありますが、事は株の公募ですから、トップが知らないわけはないのですよ。だから、当然私はトップ段階までの責任が追及されることがやがてくるであろうと思いますけれども、いわゆる下のほうだけでものごとを処理しないように、ひとつこの際は望んでおきたいと思います。  この事件は、いわゆる株価ブームの中でかねてからうわさの絶えなかった、いわゆる時価発行にからむ黒い株価操作の実態をはしなくも暴露したものであります。時価発行増資によるいわゆるプレミアムかせぎが企業の過剰流動性をさらに増幅しておることもまた事実であります。いまやインフレマインドの中で、株でもうけて土地や商品へ、これがもう定型化しておる。したがって、この際私は、この株の問題は徹底的に究明する必要があろう、このように思います。  それで、三共製薬のいわゆる決算粉飾事件、これは結局は不問になったのでしょう。どうですか。公認会計士は処罰をされておりますが、三共製薬そのものの上場株としての適性の問題等も含めて不問になったのでしょう。どうですか、この点は。
  174. 坂野常和

    ○坂野政府委員 三共製薬の件につきましても、ただいま検察当局で調査をしておられますので、その結論についてどういうことになるかは、私どもは存じておりませんし、また申し上げる段階でもありません。  ただ、三共製薬の増資自体は、訂正報告書によりまして進行中であります。
  175. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 おそらく私はこれは社会的な影響が大きい、あるいはその株主を保護するという立場から、不問に付されるのじゃなかろうかと思うのです。しかし、おととしでございましたか、安藤鐵工がやはりやられましたですね。これは容赦なく上場停止がされたと思いますが、どうですか。
  176. 坂野常和

    ○坂野政府委員 安藤鐵工は、投資家に与える影響がきわめて重大でありましたので、上場廃止の処分になりました。
  177. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういう点からしますと、やはり三共の粉飾決算も、利益を簿外に置いて、そしてこう、からくりしておったわけですね。悪質な点においては同様ではなかろうかと思うんです。  川崎汽船が二月上旬に経理監査を受けたといいますが、運輸大臣どうですか、その点は。
  178. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 私の承知しております節囲では、監査を受けたのではなくて、調査を受けたという程度だったと聞いております。
  179. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どういう理由で調査を受けたのですか。
  180. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 詳細、政府委員から答弁さしていただきたいと思います。
  181. 佐原亨

    ○佐原政府委員 九月の決算期におきまして、海運会社、川崎汽船だけではございませんけれども、昨年の三カ月にわたる長期海員ストで非常にダメージを受けましたので、九月決算時期におきまして、持ち株の売却益を出しまして決算をいたしました。その株の処分につきまして若干のうわさが耳に入りましたので、一応事務的に調査を始めさした。このような次第でございます。
  182. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 問題は、時価発行であります。で、時価発行にはメリットとデメリットがもちろんあると思いますが、しかし、それ自体の中に宿命的に株価操作を招きやすい、そういう問題を内包しておると思いますが、大蔵大臣、その点はどうですか。
  183. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 本来時価発行増資というものは、資金調達が多様化しておるその一環として、企業としての自己資本を充実するということからいえば、これはけっこうなことだと思いますが、いま楢崎さんもデメリットというお話がございましたが、単なるプレミアムかせぎだけを目的にして操作をするというようなことであれば、これはまことにいかぬことである、こういう性質の問題であると思います。
  184. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、そういう性質を内蔵しておりますから、その誘惑に乗りやすい。つまり、株価が高ければ高いほど増資プレミアムがふえる、そういうことですね。そうすると安いコストで資金が調達できる。だから結局、発行会社は株価をつり上げればつり上げるほどプレミアムが多くなりますから、そういう性質を内包しておると私は思うのです。  そこで、今度の協同飼料の事件は、市場関係者の中では、氷山の一角であると言っておる人が多いわけですけれども、問題は、協同飼料に限らないで、かなりの数の事業会社が、いわゆる株主安定化工作、そういうにしきの御旗と申しますか、名目に隠れて、結果として株価のつり上げをはかっていると思われる節があります。東証理事長、お見えになっておると思いますが、その点はどう判断なさっておられますか。
  185. 森永貞一郎

    ○森永参考人 御質問の前段のほう、おくれて参りましたので聞き漏らしておりますが、後段の点につきましてお答え申し上げます。  流通市場における株価の公正なる形成、これはもう取引所の本来の目的でございまして、特に最近のように時価発行が多くなりますと、流通市場における価格を基礎にするわけでございますので、その価格形成については特に公正を期する必要があることは申し上げるまでもないと存じます。私どもといたしましても、株価形成の監視を、特に専従者を置きまして努力をいたしておるわけでございますが、今般協同飼料につきまして、証取法百二十五条違反の疑いを持たれるような事実が起こりましたことは、まことに遺憾に存ずる次第でございまして、これを機会に一そう株価形成の公正化に努力をしなくちゃならぬと痛感をいたしておるところでございます。  お尋ねのように、これが氷山の一角でほかにもたくさんあるのかというお尋ねでございますが、私ども、株価の監視に際しましては、時価発行の事例につきましては、あらゆる案件につきまして日常の監視を実行いたしておるのでございまして、特に問題がございますような場合には、時を移さず関係者に注意をいたしまして、不穏当な価格形成を中止させております。それらの調査の実績を通じて見ましたところでは、おっしゃるように氷山の一角というほど株価操作が常態化しておるというような事実はございません。しかし、氷山の一角というような表現が生まれておるということは、私どもといたしましても、そういう疑いをもって見られていることはたいへん残念なことでございまして、これは要するに証券業界がまだ全幅の信頼を得ていないということだと存ずる次第でございまして、なお一そうそれらの点につきましては監視を厳重にし、また会社、経営者並びに証券会社に対する株価形成の公正化の緊要性につきまして訴えてまいりたいと、さように考えておる次第でございます。
  186. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 売買審査室があると思いますが、この審査に当たっておるのは何人で、一日の出来高がどのくらいで、一人平均どのくらいの審査をしておるか、お答えいただきたい。
  187. 森永貞一郎

    ○森永参考人 株価の審査と申しますか、監視は、実は二段階に分かれております。  第一段階は、市場部におきまして、価格形成の現場でおかしいことがあった場合にそれをチェックするという部面でございます。現在、市場部員は二百人ぐらいおりまして、それが各ポストに分かれておりまして、おかしか形成がないかということを目を光らして見ておるわけでございます。これは現場での審査でございます。  その次に参りますのが売買審査室でございまして、これは売買の記録、場帳といっておりますが、売買申告照合書というのが正式な名前でございますが、それを、問題の案件につきましては一々ひっくり返しまして検討しているわけでございますが、そちらのほうの要員は約十人でございます。
  188. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、一日の平均出来高、一人が受け持つその審査の量ですよ、その十人で。
  189. 森永貞一郎

    ○森永参考人 売買出来高は、これは多い日は十億、最近のようにさびれますと一億ということでございますが、調査をいたしました案件は、昨年一年間を通じまして約千五百件でございます。千五百件を十人の者が担当しておるということで、これは年間の延べ件数でございます。
  190. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 十人の審査ではとても無理であろうと私は思いますね。  そこで東証は、今回のような不祥事件を予防するために不審な値動きをした取引に対して、昨年一年間で五十七件を警告した、新聞で読みますとそうなっておりますが、その五十七件の内容は公表できますか。できるか、できないかだけでいいです。
  191. 森永貞一郎

    ○森永参考人 千五百件調査いたしましたものからだんだんにしぼってまいりまして、最終的には五十七件につきまして関係者に、これは担当者から重役までいろいろございますが、注意を促したわけでございます。これは、いわゆる法令違反ないしは定款違反等の疑いには至らない案件でございまして、個々の銘柄あるいは個々の会社等につきましては、いま申し上げますことは何ぶんにも過去の実績でもございまするし、できれば御容赦をいただきたいと思うのでございますが、もし御要請がございますれば、おもな種類別の案件について申し上げることは可能かと存じます。
  192. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは影響するところが大きいと思いますからよくわかります。いまの種類別でもよろしゅうございますから、私の質問が終わった段階でひとつお示しをいただきたい、このように思います。  そこで、その五十七件のうちに協同飼料は入っておりましたか。
  193. 森永貞一郎

    ○森永参考人 協同飼料につきましては、昨年の十月の末に関係の証券会社に注意をいたしまして中止せしめたわけでございますが、そのときの状態で、いま少しく調査をしなければならない問題点が残っておりまして、それらの点につきましては、東証の持っておりまする調査権限等の範囲を越えるものもございましたので、大蔵省に中間報告をいたしまして、その後引き続き調査をいたしておる。したがいまして、五十七件の中には入っておりません。
  194. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 つまり軽度のものが五十七件で、この協同飼料は要注意ということで別扱いであるというふうに聞きました。じゃ、この種の要注意の案件が別にまだありますか。
  195. 森永貞一郎

    ○森永参考人 協同飼料の問題につきましては最終的な結論を出していなかった、そういう意味で五十七件には入っていないわけでございます。  それ以外に注意を要する案件があったかどうかということでございますが、私ども万全の努力をいたしまして五十七件にしほったわけでございまして、私どもの目の届く範囲におきましては、五十七件だけというふうに御承知いただきたいと存じます。
  196. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、協同飼料はその五十七件よりもひどい案件として別個にいろいろ注意されたんでしょう。そういうふうに私、聞いたんですけれども
  197. 森永貞一郎

    ○森永参考人 協同飼料につきましては、注意いたしましてそこで中止いたしましたのでございますが、さらに内容等につきまして調査をする必要のある問題が残っておりましたので、最終的な処理はいたさない状態のところで、今日の事態が発生したということでございます。
  198. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、調査中でまだ警告するに至らなかったわけですか。そういうことですか。
  199. 森永貞一郎

    ○森永参考人 当該証券会社に対しましては厳重な注意をいたしまして、それによって問題の売買取引行為は中止をされた。さりながら、委託者の内容とかいろいろな点につきましてまだ調査をしなければならない問題が残っておりましたので、引き続き調査中であったというふうに御承知いただきたいと思います。
  200. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 なぜ五十七件のうちに入っていないのか、ちょっといまの答弁ではわかりかねるのですが、三光汽船は五十七件のうちに入っていますか。
  201. 森永貞一郎

    ○森永参考人 もう一度申し上げますと、五十七件は一応の決着をつけた案件でございまして、調査中のものであるところの協同飼料の案件は、その中には含まれていないということでございます。  それから三光汽船についてのお尋ねでございますが、これは三回にわたりまして増資をいたしておりまして、そのつど価格形成状況を詳細に調査をいたしております。調査いたしました結果は、関係の会員会社もきわめて多数にわたっておりますし、またその会員会社に対する委託者もきわめて多数にわたっておるのでございまして、特別に人為的な価格操作的なことがあったという事実は、私どもの調査の範囲ではつかめませんでしたことを御報告いたします。
  202. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、五十七件には入っていないわけですね。
  203. 森永貞一郎

    ○森永参考人 五十七件には入っておりません。
  204. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ごろ証券界は、時価発行基準を厳格にして、安易な発行に走らぬように申し合わせをしたと聞いております。時価発行基準を明確にしてください。
  205. 森永貞一郎

    ○森永参考人 ごく最近に四社で申し合わせました時価発行についての自主的な取り扱い基準、これはただいま詳しく申し上げますが、私ども考えております時価発行の基準を、大ざっぱなところで恐縮ですがまず申し上げますと、時価発行というのは、時価が高ければ高いほどいいというものではないわけでございまして、高ければ高いほど発行者の責任が大きい。ということは、要するに株主から貴重な資金を払い込んでいただいているわけでございますので、その株主に報いることが伴わなければならない。その報いる報い方は、たとえば無償交付もございましょうし、配当の増加もございましょうし、業績の改善はむろんでございます。そういうように株主に必ず報い得るという自信と、それから投資家から信頼の置けるような会社にこそ時価発行が許されるべきと考えるのでございまして、さような趣旨で関係会社にも呼びかけ、また証券会社にも自粛を促しておる。これが根本的な態度でございます。  ごく最近に申し合わせました基準についてのお尋ねかと存じますが、それについては、いま資料をもちまして詳しく申し上げます。
  206. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはひとつあとで明らかにしてもらいたいと思います。  そこで、大蔵省は時価発行増資をきびしくチェックするというふうな談話が載っておりましたが、その方法はどういう方法を考えておられるんでしょうか。
  207. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたが、大蔵省の方針と申しますか、考え方をちょっと申し上げたいと思います。  要するに時価発行の増資が、株価の高騰によってプレミアム分が多くなるという意識のみで安易に行なわれて、投資家に不測の損失をもたらさないように、引き受け証券会社を指導しておるわけであります。  それから証券界においても、申し合わせによって発行会社の質的基準の強化等をはかっており、さらに最近は当局の指導によって、証券界において時価発行会社の選別を一そうきびしくする等の観点から、増資によって得た資金の使途の確認、親引け比率の一そうの縮小、アンダーライターの過当競争の排除等を内容とした基準の強化を申し合わせておるわけでございます。  なお、金融機関等に対しましても、こういう趣旨はよく行き渡るように指導いたしております。
  208. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 株価操作など、違法なケースが起こったときには、大蔵省は行政処分を考えられておりますか。
  209. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 実は、今回のこの事件の前になりますけれども、最近の株価の形成、これは時価発行に限りませんけれども、その形成等については、当局としても実情を十分掌握したいと思いまして、立ち入り検査も行なっているわけでございます。そのやさきにこういう刑事事件といいますか、疑いの事件が起こったわけでございます。それらの当局としての検査によりましても、検査によって得た結果によっては、いろいろの処分が考えられるわけです。(楢崎委員「行政処分」と呼ぶ)ちょっと行政処分と言っていいのかどうか、その点は政府委員から明確にいたします。
  210. 坂野常和

    ○坂野政府委員 株価操作等が行なわれないために、ただいま東証理事長がお答え申し上げましたように、まずは日々の取引の状況を監視してもらっている。取引所の段階において、そういったことが起きないようなチェックをしてもらう。取引所において問題ありというような場合には、証券局のほうへ連絡をしてもらうというのが一つの方法です。もう一つは、証券局において、これは事後になりますけれども、証券会社の検査をいたします際に、特に最近の動向から、株価形成については詳しい検査をいたしております。これは昨年の五月ごろから特にそういったところに力を入れておりますが、そういった結果出てきた問題が、証券取引法違反の疑いがあるような場合には厳重な注意をいたす、あるいは再びそういうことが起きないように社内の体制を措置するというようなことをいたしてきております。
  211. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 処分をなさいますかと聞いておるのです。
  212. 坂野常和

    ○坂野政府委員 最近におきましては、証券取引法上の行政処分をいたした事例はありません。
  213. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今後考えられますかと聞いておるのですよ、さっきから。
  214. 坂野常和

    ○坂野政府委員 過去においてもいたしたこともありますし、今後も、そういった悪質なものがあれば、行政処分もいたすつもりでおります。
  215. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 理事長にお伺いしますが、株式市場というのは本来、自由市場であるはずでありますが、このように行政が介入することについてはどう思われますか。
  216. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お説のごとく、株式市場は自由市場でございまして、需要と供給の投合するところに従って株価がきまるというわけでございます。したがいまして、株価そのものには行政も介入いたしませんし、私どもも介入は全然いたしておりません。  ただ、株価形成が行なわれるについてのルールづくりが取引所の任務でございまして、そのルールをつくり、またそのルール違反の事案については、これを調査し、注意し、警告し、場合によりましては、定款の規定に従って処分をするといったようなことになるわけでございまして、証券市場の秩序を維持いたしますために、行政当局が場合によっては関与せられることも、証券市場のあり方としては当然のことだと存じます。
  217. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 東証には正会員協会というのがありますね。これは簡単にいうとどういうことを目的にした組織ですか。そしてキャップは、理事長というのですか会長というのですか、どなたがおやりになっていますか。
  218. 森永貞一郎

    ○森永参考人 正会員協会と申しますのは、東証の正会員八十三社が共同のいろいろな問題を処理する。たとえば、病める会員ができました場合の救済金の拠出であるとか、あるいは共同で建物を持つとか、そういったような共同の経済行為を目的とした八十三会員による任意団体でございまして、その会長は会員の互選するところでございますが、現在は大和証券株式会社会長安部さんが会長をしておられます。取引所としてはこの団体には全然関係はございません。
  219. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 自治大臣にお伺いしますが、この東証の正会員協会、これは毎年政治献金をやっておりますね。四十六年度はどうなっておりますか。
  220. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 東証正会員協会が政治団体に対して行なった寄付の状況はどうか、こういうお尋ねでございます。  これは昭和四十六年の分ですね。これは届け出の中から事務的にチェックをいたしましたものでございます。東証正会員協会から——これを一々読み上げますか。大体四十六年、四十七年、四十八年の一月まで、今日まで届け出のありまする分で、八千六百八十万円寄付額の届け出があります。
  221. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは官報に公表されておりますから、どなたでも見ることができるわけです。おもなところを拾らってみましょうか。育成会、国民協会、虚心会、新産業政策研究会、新政治調査会、政経研究会、政策懇談会、聖山会、長規会、蓬庵会、一新会、山水会、第一国政研究会、アジア研究、こういうところですね。
  222. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そうです。
  223. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 間違いないようであります。  私が調べたところによると、育成会は佐藤派、新産業政策研究会は大平派、新政治調査会は中曽根派、政経研究会は佐藤派、政策懇談会は三木派、蓬庵会は石井派、第一国政研究会は船田派、アジア研究は佐藤派、それから四十六年には出てきておりませんけれども、四十四年には新政治経済研究会、福田派でございますね。  それで、この東証正会員協会の寄付行為の原資は一体何によっておるのか。つまり私が調べたところによりますと、四十二年から四十六年まで五年間約二億三千万、一体この原資はどうなっておるのか。それからこの種の政治献金、寄付行為をするというのは、協会の規約上根拠がはたしてあるのかどうか、もし理事長がお知りだったらひとつお話をいただきたい。
  224. 森永貞一郎

    ○森永参考人 先ほど申し上げましたように、取引所は全く無関係でございますので、的確なことは全然存じませんが、若干の昔からの財産も持っておると思いますし、日常の経費につきましては、おそらく会員に対しまして売買高に比例しての拠金を求めておるやに承知いたしておりますが、的確なことは存じません。
  225. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これはひとつ自治大臣、お調べをいただきたいのですが、東証正会員協会の規約がここにあります。寄付行為の根拠がどこかあるかと調べてみたら、第三条の目的のところの2の中の(5)にあります。どうあるかというと、「関連機関への出資または融資、ならびに寄金を行なうこと。」いま政治献金されておる、この名前は何とか研究会、調査会になっておりますが、この自民党の中のいわゆる領袖の方々の派閥、これは東証正会員協会との関連機関でございますか。
  226. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 どうも私もいまそれを初めて伺ったわけでございまするから、もうちょっとそれをしっかり調べてお答えをしたいと思いまするが、大体それは寄付金一般について指定しておるもののように思います。もしそうであるとするならば、この政治的なそれぞれの会合への寄付金というものは、その条項に該当するんじゃないかというふうに考えます。
  227. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは異なことを承りますが、自民党の各派閥は、そうするとこの証券会社の関連機関ですか。そんな癒着がありますか。この中に入るというのはどういうことなんですか。これはしかと私は承っておきます。  そこで、大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、おたくの事務次官は二月二十一日、証券業界の代表を招致されまして自粛の勧告をされたということが新聞報道されております。こういう証券会社から政治献金を政府・自民党の領袖が仰いでおって自粛を促すなんといったって、それはできない相談じゃないですか。何の顔あってそういうことができるのですか。私に言わせると、この協会から政治献金する根拠もない、何ももうかる事業をやってないから。引き継いだ資産があるから、それから出しておる、食いつぶしておるということになるでしょう。何のために政治献金の必要があるんですか、証券会社が。何のためにあるんですか。こういう政治献金の状態を一体どう思われますか。東証の理事長に御感想を聞いておきたいと思うのです。
  228. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お尋ねでございますが、その東証正会員協会なるものは、私の全く関与しない団体のことでもございまするし、政治献金一般についてのことでございまするならば、現在社会慣行で若干のことが行なわれておることは承知いたしておりますが、ただいま御指摘のような、正会員協会が政治献金をすることについてのコメントは、私といたしましては、この際差し控えたいと存じます。
  229. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはそうでしょう。あなたがめったなこと言いよるとたいへんなことになりますからね。しかし、こういうことで大蔵省が証券業界の代表をお呼びになって自粛を言われたって、これはきき目がありませんよ。片一方では銭をもらっておるんですから。私は、こういう点は政治の姿勢から見ても、これは明確にすべきであろうと思うのですね。そして、特に株の売買益は非課税になっておりますね。年間五十回以上、二十万株以上は業務とみなすことになっているけれども、これもいまだかつてチェックされたことはない。結局わからないんです。だから株の売買益というのはこれは非課税で表に出てこない。その売買益を今度は政治資金規正法、寄付行為をすればこんなふうに自治省の届け出で出てくるけれども、会費の場合は、全然出てこない。つまりこの種の売買益、それに株価のつり上げが含まれる。これが政治資金の一つの大きなルートであると、このようにわれわれは思うわけです。  したがって、このようにいまや株価形成の適正化ということが言われ、協同飼料のような問題が起こっておるこの段階ですから、こういう証券会社から政府・自民党の領袖が政治献金を仰いでいるという問題について、私はこの際だから特に自民党の総裁としての田中総理の御見解を聞いておきたい。これはしかるべき機会にひとつ委員長にお取り計らい願いたいと思いますが、どうでしょうか。
  230. 根本龍太郎

    ○根本委員長 楢崎君に申し上げます。  総理の出席を求めての御答弁を要求されているようでございまするので、これは理事会にはかりまして善処いたしたいと存じます。
  231. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ぜひそのようにお取り計らい願いたいと思います。  そこで、私はここで今日の株の問題のいろいろな問題点が集中的にあらわれていると思われる三光汽船の問題を例に出したいと思うのですが、昨年一カ年の間に三回の時価発行をいたしました。第三者割当であります。あとで資料をお渡ししますけれども、七百億円のプレミアムを三光汽船は取得されております。ことしは四回目の第三者割当、時価発行をするという計画があるやに聞いておる。私は、こういう点について大蔵省は何か警告を発せられたことがありますか、三光汽船に。
  232. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 御必要によって政府委員から御説明いたさせますが、三光汽船につきましても、事情は証券局においてよく調べておるはずでございます。
  233. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 一緒にあとで御答弁ができたらお願いします。  私は、この三光汽船は、私の調べた範囲においては、一つは株価操作の疑いがある。一つは粉飾決算の疑いがある。以下具体的な例をあげていきたいと思います。  まず、昨年十月一日の株主名簿によりますと、当時の資本金は二百九億円、発行株数四億一千八百万株、そのうち十万株以上百十六名ですか、これは株数でいくと四億八十三万二千四百二十五株、大体九六%を占めておる。私はこれはほとんどひもつきであると思います。これもあとで資料をお渡ししますけれども、ほとんどひもつきです。つまり安定株主というのでございますか。そうすると、いわゆる浮動株、流動株は四%にしかすぎない。こういう浮動株が四%しかないというような、こういう株の分布状態、これはその流動性の部分が非常に少ないから、結局いわゆる三光汽船なり、あるいは関係者による株価操作が容易にできるという可能性を包蔵しておる。私は、こういうところから三光汽船の異常な株高、これが時価発行、巨大なプレミアム、そういうふうになっていっておる図式をここで問題にしたいと思うのです。このような株の分布状態は、上場株として適正なものであるかどうか、この点をまずお伺いします。
  234. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それでは私から三光汽船の問題について、一連の御報告を申し上げたいと思います。  三光汽船の経理状況については、各事業年度ごとに提出される有価証券報告書等について大蔵省においても審査を行なっておりますが、同社の決算に粉飾等の事実はございません。また、有価証券報告書等に含まれる財務諸表についての公認会計士の監査意見におきましても、毎期会社決算が適正である旨表示されております。  それから、株価形成の問題でありますが、有価証券市場における株価形成については、証券取引所の売買審査室において、常時相場監視の一環として調査を行なっておりますが、三光汽船会社については、四十六年秋以降投機的な動きもありましたようなので、信用取引委託保証金率の引き上げを行ない、逐次規制を強化して現在に至っております。  最近におきましても、引き続き売買内容の調査を行なっておりますが、四十七年末の株価急騰も、個人投資家の回転の早い売買によってもたらされたものと見られておりまして、株価形成上特に問題があるとの報告は受けておりません。  株価、最近の増資の状況その他省略いたします。  それから、大蔵省におきましては、証券会社の定期検査の際に、個別銘柄の株価形成についても調査を行なっております。四十七年の証券会社検査に際しましても、三光汽船株式会社の株式の売買について検査を行なった会社もありますが、その際に、価格形成上特に問題となる点は認められなかったと聞いております。  それから、こまかい点になりましたら、政府委員からお答えいたします。
  235. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 言わないことはいいのです。大体いまおっしゃったようなことは、三光汽船が弁解として出しておる内容ですね。それは明確にしておきます。  そこで私は、与えられた時間が少ないから、私の疑問点をいまから言っておきますから、それぞれの部署においてひとつ御調査をしていただきたい。  まず、好決算の一つの問題として、高船価売船のからくりの問題が一つあると思います。特に、いまお手元に配っております資料でいきますと、下から三枚目と二枚目ですね。これは、特に昭和四十六年九月期及び昭和四十七年三月期、ちょうど前回の円の切り上げが行なわれた時期に、非常に高船価売船の事実が集中をしておる。で、私はこれはドルを早く国内に持ち込んで円にかえる、この方法に使われたのではないかという疑いを抱きます。その疑いを生む原因は、特に国光丸、あるいは旭光丸、あるいはかすぴ丸、大光丸、この辺は調べてみると、売船契約における三光汽船と住友あるいは丸紅等々の有価証券報告書の間に食い違いがあります。だから、私は証券局でこれは明確にしてもらいたいと思う。有価証券報告書に食い違いがあるのですから。  つまり、一例をあげますと、三光汽船のほうには売り掛け金としてその国光丸が残っておる。だから、当然住友のほうの有価証券には未払い金として出てこなくちゃいけない。それが未払い金として出てきていない事実がある。これは有価証券報告書を照合して見られればわかりますから、その点はひとつ明確にしてもらいたい。  次に、三光汽船とジ・ラインの問題についてお伺いをしておきたいと思います。  もう御承知のとおり、そのジ・ライン株の買い占めを三光汽船はやられております。一体そのジ・ラインのほうは集約会社、三光汽船のほうは非集約会社、それでもう決裂状態になっておる。四十七年九月末の決算期では、三光汽船はすでに四一%株を買い占めておる。聞くところによると、今日ではもう五〇%になっておるのじゃないかということが言われておる。しかもこの買い占めた株の名義が、三光汽船が九千万株、東光商船が三千五百万株、瑞星海運名義が二千八十五万八千株、こうなっております。念のために言うておきますと、瑞星海運の全株は東光商船が持っておるのですね。そして今度は東光商船の全株を新光海運が持っておる。新光海運は三光汽船の子会社である。まるで子会社、孫会社、ひ孫会社がこれを買い占めておるわけですね、まあ新光を抜かして。こういう状態を見てみたときに、一体この三光汽船とジ・ラインのこの問題、どういう解決が望ましいと運輸省はいま思っておられるのか。  それからもう一つは、これは調査をお願いしたいのですが、三光汽船あるいは東光商船、瑞星海運がジ・ラインの株を買い占めたが、その原資は一体どうなっておるかという問題であります。つまり、かりに昨年の三月から九月までの時価を平均化してみて、ジャパン・ライン株を二百二十五円、三光汽船の株価を五百円と、これは推定です。ちょっと低目にしております。そうすると、東光商船は三光汽船株式を八百二十九万七千七百三十株持っておる。ジャパン・ライン株式は三千五百万株持っておることになりますね。そうすると東光商船は、先ほど言った時価でいくと、百二十億円余りの原資が要ることになる。同様の計算でいくならば、瑞星海運は八十七億円の株式保有金が計上されなければなりません。ところが、私が調べたところによると、この東光商船と瑞星海運、この日本企業調査による調査で見てみますと、全然原資がこれに出ていない。これを調べてください。  出ていないということになるとどうなるかといえば、当然これはいわゆる名義貸しがあるかもしれない。名義貸しの先を洗えばこれはどこが出したかという二とが明確になる。つまり自己株操作の疑いがある。自己融資買い建て工作の疑いがある。したがって、これは国税庁が調べればすぐわかることです。国税庁長官、どうですか、この点は。
  236. 近藤道生

    近藤(道)政府委員 お答え申し上げます。  国税局といたしましては、ただいま御指摘のような問題をも踏まえまして調査をやっておりますが、ただその結果につきましては、御承知のように各税法の守秘義務がございますので、申し上げかねるわけでございます。
  237. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もし私が指摘したとおりならばどういうことになりますか。
  238. 近藤道生

    近藤(道)政府委員 ただいま御指摘のございましたことは、まだ今後の調査時期に属する問題でございますので、その時期におきましてまた考慮いたしたいと存じております。
  239. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは、さっきのいわゆる高船価売船の住友、あるいは丸紅の有価証券報告書と三光汽船の有価証券報告書に食い違いがある。粉飾決算の疑いがある、どちらかが。その問題と含めて、この二つの問題は当予算委員会が終わるまでにぜひ御報告をいただきたい。その結果いかんによれば、この問題はたいへんなところに発展をするわけであります。  さらに、もう一つ伺っておきます。これはジ・ラインが言っておることですからさだかではありませんが、ジ・ラインは、四十七年九月決算期の段階において、安定株主が五三%おると、こう言っておられます。もしそれが事実ならば、すでに四一%は三光汽船に押えられておるのですから、これは固定しております。そしてジ・ラインの五三%、これも安定株とすれば、流動性のある株は、さっきの問題と同じですけれども、六%しかないということになります。だから市場に品薄になっている。厳にこれは調査してください。東証も大証も名証も、三者ともそのために売り方が多くなって、この売り方が逆日歩の関係になっておる。これは半年ぐらい続いておるはずです。そして、現段階では信用取引をそのために停止しておりますけれども、しかし、過去の売買の実績があるから、残の株はそういう状態になっております。もしそういう状態であれば、このジ・ライン株は上場株として適正性がありますか。こういうふうに逆日歩の状態になっておるのがもう一年近く続いておる。  並びに、もう一つは、このジ・ラインの株価形成について妥当性があるかどうか。この二点について伺っておきます。
  240. 森永貞一郎

    ○森永参考人 まず、浮動株の問題でございますが、取引所の流通市場において取引する要件として、ある基準の浮動株式あるいは浮動株主がなくてはならぬことは当然でございまして、私どもの上場審査基準、これは新たに上場する場合、それから上場を廃止する基準、その両方にわたりまして浮動株主数並びに浮動株式数の基準を設けておるわけでございます。これは資本金の大きさに対するパーセンテージじゃございませんで、絶対株主数ということで、あるいは株式数ということで規定いたしております。  廃止基準のほうを申し上げますと、浮動株主数が三百人以下になったら上場を廃止する。それから、浮動株式数が八十万を割ったら廃止するということになっておるわけでございます。  三光汽船の場合は、浮動株主数が四千九百八十三人、浮動株式数は千三百十七万株でございまして、現在の廃止基準には該当いたしません。おそらくジ・ラインにつきましても同様な事情かと存ずる次第でございます。  信用取引上逆日歩等の事例が起こっているというお話でございましたが、さような事例も確かにございまして、そういうようなことで、多少過当投機化しておるという傾向が見受けられましたので、三光汽船、ジャパン・ライン両方につきまして、何回となくこの規制を強化いたしてまいったことは御承知のとおりでございます。現在は値幅制限まで実行をいたしておる次第でございます。  以上、上場廃止の要件には該当しないこと、並びに信用取引の運営上はしかるべく規制措置を講じて、あまりに極端な過当投機にならないように配慮しているという点をお答え申し上げたわけでございます。
  241. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その上場廃止の基準に当てはまらないことは、いまおっしゃったようなことを私は知っています。いま、この種の問題で問われておるのは、基準とか、あるいは法に違反しさえしなければ何をやってもいいのかというのがまさに問われておるのですよ、今日の問題は。買い占めあるいは売り惜しみ、暴利取り締まりの問題もそうでしょう。企業倫理の問題が問われている。だから、基準に適合しているから廃止の問題は起こらないというような、そういう理事長のお考えだったら、ほんとうの取り締まりや指導はできませんよ。しかも、逆日歩の情勢がこんなに起こっておるのに、それでも妥当と思われるのですか、あなたは。こういう株が上場株として適正さがあり、株価形成が妥当に行なわれる、そうあなたは思っていらっしゃるのですか。
  242. 森永貞一郎

    ○森永参考人 ジャパン・ラインを例にとりますと、先ほども申し上げましたように、千三百万人の浮動株主がおるわけでございまして、上場を廃止するということは、この千三百万人の善意の浮動株主に対しまして株式の流動性を全く失わしめるということで、既存株主の保護という観点も、やはり取引所政策上たいへん重要な問題なのでございます。そういう意味で、極端に浮動株主数あるいは株式数が減少した場合には、公正なる価格の形成に支障があるというので廃止基準も設けておる次第でございますが、三光汽船並びにジャパン・ラインの場合には千万をこえる、ジャパン・ラインの場合のことは、いまちょっと私、的確な資料がございませんが、そういう株主の利害も考えなければなりませんので、軽々に上場廃止をすべき問題ではないというふうに考える次第でございます。  価格形成に支障がないかということでございますが、逆日歩等の現象、これは三光汽船、ジャパン・ラインに限りません。ほかにも例がございまして、決して好ましいことではございませんが、逆日歩をつけることによりまして売買の調整も自然に行なわれるというような仕組みになっておるわけでございます。そのほかの面で、たとえば証拠金であるとか、値幅であるとか、あるいは極端な場合には貸借取引からはずすとか、そういったようないろいろな措置をその場合その場合に即して講じておるということでございまして、いきなり上場廃止という問題は大問題じゃないかという感じでございます。
  243. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 妥当か妥当じゃないかを聞いておるのですよ。
  244. 森永貞一郎

    ○森永参考人 上場廃止をすべき場合ではないということを申し上げたいと存じます。
  245. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、そうじゃなくて、上場株として適正があるか、あるいは株価形成について妥当かどうかをまず聞いているんですよ。
  246. 森永貞一郎

    ○森永参考人 過当投機が起こっております事態は、浮動株主数が少ない、浮動株式数が少ないということよりも、むしろ、その株式の取引をめぐって過当な投機的な雰囲気が起こっておる、あるいは過当な投機的取引が行なわれておる、それに対していろいろな規制措置を講じておるということを申し上げておるわけでございます。
  247. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 答弁にならないですね。そういうことでは、幾ら警告したって、あなたは指導できませんよ。大体、昨年五十七件警告されたと言うが、警告の内容が問題ですよ。ただ自粛しなさいという程度でしょう、若干は報告を求められておられるようですけれども。そういうお考えでは、私は、ほんとうの警告なり注意にはならぬと思うのです。いずれ私が要求した調査の結果が出てきたら、もう一ぺん問題にしたいと思うのです。  そこで、運輸大臣、先ほどの三光汽船とジ・ラインの問題についてどうあるべきだと運輸大臣は思われておるか、明らかにしてください。
  248. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 運輸省の立場といたしましては、海上運送法その他海運政策の見地からいたしまして、従来とってまいりました海運政策がここで乱れるようなことがないようにという考えで進んでおります。  いまお話しのように、ジ・ラインの株を四一%三光汽船が取得しておるという話も聞いておるのでありますが、昨年でございますか、両社の社長間で、こういう異常な状態を解消しょうということで話し合いを進めてまいりました。それで、とうとうそれが結果を生みませんでした。しかし問題は、その場合に両社で話し合いましたのは、両者が対等の立場に立ってお互いに業務提携をしようということが一つと、もう一つは、いまのお話の株をこういう不安定な状態に置かないで、これを手放してくれということが一つであったと聞いております。あとのほうの株の処分の問題について、両方意見が合致しませんで、とうとう話し合いができなかったというような結果になっておると聞いております。  私ども運輸省の立場としましては、御承知のように、日本の海運の再建のために法律を出しまして、先年集約をいたしまして、ジ・ラインはその集約体の一つでございます。それで私が申し上げたいのは、そういうような集約体の一つとして、これは定期船会社でございますけれども、そういうものの支配権を得るような形になってまいりますと、海運政策考えなければならぬと考えておりますので、いま申し上げましたような株式の問題につきましても、三光のほうは、そういう支配権を持とうとか、重役を中に入れようということは考えておりませんと言っているそうでございますけれども、とにかく、この両社がもう少し話し合いをいたしまして、そういう海運政策に影響のないような方向で、お互いに業務提携をすることをわれわれは希望しておる次第でございます。
  249. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何をおっしゃっているかさっぱりわからないのです。そういう状況説明は私は知っておるのですよ。それを知った上で、一体どうあるべきかということを聞いておるのですよ。一方は政府から補助している集約会社でしょう。それがもう半分も食われているのですよ。これは非集約会社の、政府一つの海運行政に対する挑戦であると見れないこともないのですよ。しかも、三光汽船の社長は、もう言わずと知れた元郵政大臣。だから、もし海運政策に対する挑戦だったら、私は国会の場でやるべきだと思うのですよ、政治家であるだけに。だから、この辺は非常に重大だから、こういう状態を目の前にして、一体運輸大臣としてはどういう姿で解決されるのが好ましいとお思いですかということを聞いておるのですよ。
  250. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 ことばが足りませんでしたかしれませんが、一言で申し上げますと、先ほどもちょっと申し上げましたように、海運政策の上に支障のない形でもって、両社が対等で協調できるような体制をつくってもらいたいということを考えておる次第でございます。
  251. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 同和対策の問題がありますので、きょう問題にした三光汽船をめぐる株の問題は半分です。とりあえず、私がお願いした調査事項、これをこの予算委員会が終わる前に明らかにしていただきたい。それが明らかになった段階でまた質問をしたいと思いますので、この点は一応保留して、以下、同和対策問題に入りたいと思います。  同和対策の問題に入る前に、実は、私は明らかにしておきたい問題があるわけであります。  御承知のとおり、日本共産党は、過ぐる一月三十日の本院代表質問村上君、さらに二月三日、この予算委員会で松本善明君が、ともに部落解放同盟と部落大衆の解放運動を無法な暴力集団だときめつけ、ことさらに暴力学生と同列に論じることによって、あたかも連合赤軍などと同様の暴力集団であるかのような印象を国民に与えるという、まことに驚くべき暴挙に出たのであります。  各政党の自己主張や相互批判は当然であるといたしましても、それが度を過ぎれば独善的となり、セクト的になります。特に反自民、反独占のための野党の結集、共闘が国民的な要望として高まっている昨今の政情の中で、私たちは、みずからの言動がもたらす客観的な意味、あるいは結果として与えるであろう影響というものを常に冷静に計算し、判断していくだけの謙虚さがぜひ必要であると思っております。  村上、松本両君がこの種の問題を国会で取り上げたことの批判を、私自身がまたこの国会の場で行なうことの意味あるいは是非について、私なりに真剣に考えたのであります。そして、考え抜いたあげく、やはりこの問題は非常に重要でありますし、特に、十年間の時限立法である同和対策事業特別措置法もすでに四年間を経過いたしておりますので、何としても、残された六年間で同対審答申の完全実施を目ざさなければならない、そういうところに来ております。それにもかかわらず、施策のほうは、毎年指摘しておりますとおり遅々として進んでおりません。部落大衆の悲願をかけての必死の運動を展開している今日の段階であるだけに、この運動にも水をかけることになると思われる日本共産党の言動を、この際どうしてもたださなければならないと私は考えまして、あえて反論に踏み切った心情を、委員の皆さんにもぜひ御理解をいただきたいと思うのであります。  日本共産党は、矢田教育差別事件をきっかけに、党の方針に忠実に従う部落解放同盟正常化全国連絡会議なる分裂組織をつくりあげ、あたかも過去の支配階級が行なってきた差別政策と呼応するかのように、これまで執拗に解放運動の妨害と分裂の策動を続けてきたのであります。解放同盟と部落大衆から逆に鋭い糾弾を受けて窮地に追い込まれた一連の動きの中で、今回の村上、松本発言は起こったものであると私は考えます。したがって、その発言自体は決して目新しいものではありません。ただ、この発言が、国権の最高機関である国会の場で二度にわたって行なわれた以上、どうしてもこれを見過ごすことはできないのであります。国会の場の発言であるだけに、国民に与える影響ははかり知れないものがあります。特に、差別観念の拡大再生産を助長する意図を持った悪質きわまる挑戦として、私はここに日本共産党の意図と行為を徹底的に糾弾し、事の真相を国民の前に明らかにしたいと思います。  結局、共産党の皆さんは、部落問題というのをわかってはいないのではないかと思うのです。石を投げつけられた痛みは、しょせん投げつけられた者にしかわからないのかもしれません。差別糾弾のやり方には、あるいは時に激越なものがあると思います。それは私も思います。しかし、静かな水面に投げた小石が、最初はぽつんと小さな一つの波紋しか描かなくとも、やがてそれは二つに、三つに、四つに、大きく輪を広げていくように、何げなくささやかれる差別的なことばが、部落大衆にとってそれがどんなにつらく、時には死にもまさる苦痛と屈辱を与えるものであるかを、共産党の皆さん方は考えられたことがあるでしょうか。現に、部落出身であるという、ただそのことだけのために、結婚にあるいは就職に破れて自殺に追いやられる若い部落の青年や娘が、いまもあとを絶たないという現実を一体どう判断されておるのでありましょうか。  過去五十年間、いばらのかなたに解放の星を見つめる部落解放同盟の旗、あの荊冠旗に象徴されるように、筆舌に尽くしがたい幾多の差別と偏見と弾圧に抗し、死を賭して風雪にたえながらも運動の途上に倒れられた故松本治一郎先生をはじめ、幾多の諸先輩、同志の方々のなき霊に対しても、また今日、部落解放同盟と手を取り合い、完全解放をみずからの命題と受けとめて解放運動に取り組み、真剣な努力を払われている日共以外の各政党の方々、全国の地方自治体、労働組合、民主団体の方々の名誉のためにも、私は、今回の日本共産党の差別発言を非常に遺憾に思うのであります。  今回の差別発言には、要約して次の四つの問題点があることを指摘しなければなりません。  第一は、事実関係の意図的な歪曲であるという点であります。  第二は、それによって解放同盟を暴力集団として印象づけることにより、やっぱり部落の者はむちゃをするのだという一般大衆の部落民に対する恐怖心をあおり、一般大衆との分断をはかり、同時に、すでに存在している社会意識としての誤った差別観念を拡大助長しようとするその作為であります。  第三は、この種の問題を国会の場に持ち込むことの適格性についてであります。これは、部落解放同盟と日本共産党との問題すなわち政党と大衆団体との関係でありまして、その間に生じた意見方針の対立が背景となっている問題であります。もし意見がおありなら、なぜ堂々と解放同盟の代表と会い、議論を尽くそうとされないのでしょうか。一月三十日の村上発言を受けまして、ちょうど中央政府交渉を持っておりました解放同盟中央委員会は、翌三十一日、院内の日本共産党控室に代表を送ったのでありますが、ついにあなた方は面談を拒否されました。片方では話し合いを拒否しながら、突如として、その対立関係を一方的に国会に持ち出し、自己の差別性を隠蔽し、合理化しようとする。結局は、日本共産党の言いなりにならない部落解放同盟がただ憎いという恨みから、さらには、日本社会党との密接なる支持協力関係に対するそねみから国会に持ち出されたとしたならば、それはまさに場所違いであると申さなければなりません。  第四の問題は、それにもかかわらず、あえて国会の場に持ち出した日本共産党の意図についてであります。  日本共産党は、過去の警察権力による激しい弾圧のゆえに被害妄想となり、過剰な恐怖心にさいなまれて、自己を見失っていられるのではないかとさえ思われるのです。いま一度村上、松本発言を思い出していただきたいのであります。それは、おくめんもなく暴行事件なるものをでっち上げ、国会の場を通じてそれを警察の権力に通報し、権力に対して命ごいと介入を哀願したということになるのであります。権力になれ合い、権力に呼応して部落解放同盟を弾圧させようということになるのであります。何と弁解されようと、結果的にはそうなるのであります。そんなことが革新政党としてはたして考えられることではありましょうか。このような日本共産党の言動は、やがては警察国家への道をみずから開くことになり、今後、労働運動や住民運動、基地反対闘争など大衆運動を警察権力に売り渡し、争議権、団結権、団体交渉権に対する弾圧を誘発することになるということがなぜおわかりにならないのでありましょうか。それほど今日の日本共産党は変身されたのでありましょうか。  最後に私は、二月三日、この予算委員会で松本君が取り上げた事実関係について、その真相を明らかにしたいと思います。以下申し上げることは、松本君が取り上げた事件の現地当事者及び吹田市当局の関係者、並びに、本件を含む一連の大阪における事件に対するあまりにも卑劣な日本共産党の指令に、意見書を出して除名された元日共党員の証言によるものであることをまずはっきりさせておきたいと思います。  松本君が問題にした昨年九月十八日、同二十七日のできごとは、実は吹田市の同和地区にあり、部落の幼児を預っている「壽」という保育園の保育指導に関して起こったものであります。  この保育園の保母さんの保育のしかたにむちゃなところがあって、預けた幼児にけがの絶え間がない。昨年一年間だけで百二十七件もの負傷事件が発生しているのであります。私は、ここにその資料を持ってきております。たとえば、まだお乳を離れたばかりの一歳の幼児に、一メートルくらいの高さの飛び台から、下にマットも敷かずに飛びおりさせる。これでは幼児がけがをするのもあたりまえのことでありましょう。だから、けがや脱臼や捻挫、内出血が絶え間なく起こっておるのであります。  一方、保母さんのほうは約三十名ほどおられますが、その中の五名ほどの人がいわゆる日共系の保母さんでありまして、問題は、いつもこの日共の指示で動いておられるこれらの保母さんたちによって引き起こされているということもまた特徴的であります。十八日、二十七日のできごとも、この日共系の保母さんたちによって引き起こされた事件であるという事実を、まず頭に入れておく必要があります。  問題の九月十八日は、午後七時半から、解放会館において、幼児を預けている父母の会のおかあさんたちと保母さんが、吹田市の民生部長、同和対策室長同席のもとに、保育園の秋季運動会のことで話し合いを持ったのであります。ちょうどその打ち合わせが終わったところで、たまたまその日、保育園で起こった幼児の負傷事件について、おかあさん方から問題提起がなされたのであります。  この壽保育園では、幼児たちにけがなど異常な事態がもし起こった場合には、保育父母の会並びに解放同盟の支部に密接な連絡をとりながら、適切な応急措置がとられるように、かねてから話し合いが行なわれ、それが了解事項になっていたのであります。  ところが、その日の午前中に、子供の負傷事件が起こっていたにもかかわらず、全然親元のほうには連絡もされず、お医者にも見せられないで隠されておったのであります。母親が昼間の仕事から帰ってきて、夕方の五時半に子供を保育園に迎えに行って初めて事故が知らされたのであります。あまりの大けかでありましたので、母親はすぐ医者のところに連れていったのでありますが、お医者さんに、すぐ見せにこなかったことを非常にしかられまして、もし脳内出血でも起こしていたら一体どうするんだと、すぐにレントゲン写真を四枚とって、一週間は絶対に安静にして経過を見るということになったのであります。  その日の夜の打ち合わせの席には、ちょうどそのけがをした幼児の担当の保母さんが出席していましたので、その間の事情の説明をそのおかあさんが求めたのであります。ところが、その保母さんは、私はそのときその場にいなかったから知らない、大体、今夜は運動会の打ち合わせなのに、そんなことを持ち出されるのは心外ですと言って、突然その保母さんが泣き出されまして、席をけって帰ろうとされたところから問題が発展したのであります。  そこで、市の当局者も一緒になって、その保母さんをなだめている最中に、これまた突然に、市職の幹部三名、これはおそらく日共の党員と思いますけれども、この三名が解放会館に乱入してきて、話し合いをしている当事者には一言の断わりもなく、また、おかあさん方が制止するのを振り切って、実力で連れ出そうとしたのであります。  そこにまたふしぎなことに、サイレンを鳴らしてパトカーが三台も飛んできたのであります。警官が言うには、解放会館で大げんかがあっているので、早く助けに行ってくれという、男の声の一一〇番があったのでかけつけてきたということでありました。おかあさん方が事の次第をよく説明しますと、事情をのみ込んだ警官たちは、逆に三名の日共の人に、話し合いを続けなさいと言って帰っていったのであります。結局、話し合いはできずに、保母さんは強引に三人の男から連れ出されたのでありますが、その際、けがをしたのは三人の男のほうではなくて、実はおかあさん方のほうであったのであります。  もうすでにおわかりのとおり、まず市職の三名の党員が乱入をする、そうすれば必ず問題になることをあらかじめ見越して、三人の乱入とともに、外に残った一人が二〇番に電話する。すべて筋書きどおりの舞台回しでありまして、乗せられたのは部落のおかあさん方のほうであったのです。  これが、松本君があげた九月十八日の真相であります。  保育指導の問題は、父母と保母さんが真剣に話し合えば解決することであって、何も日共の方が出てくる必要はないのであります。岸部小学校で起こった問題も、吹田二中で起こった問題も、常にこのように日共が介入することによって問題がこじれてくる。被害をこうむるのは、結局いつも子供たちのほうであったのです。今回けがをさせられた幼児のおかあさんも、同じ市の職場で働いている市職の組合員であるということも、あらかじめつけ加えておきたいと思います。  このために、翌十九日、市役所で同盟支部の皆さんと市長との話し合いが持たれまして、日共系保母の勤務状態、日常の保育状態、その中から生まれる絶え間ないけがの続発など、多くの問題がおかあさん方から出され、さすがの市長も、そんなにひどいとは、知らなかったと、思わず漏らすありさまであったということであります。そこで市長も、九月二十五日までには安心して預けられる保育園を、市長の責任でつくり上げると約束されたのであります。  ところが、二十五日になっても約束が果たされなかったものだから、いよいよ松本君が言った二十七日の問題に発展するのであります。問題の保母五人と、父母の会のほうからおかあさん方五人が、話し合いを再度行なうことになったのでありますが、市長が立ち会うというので、同盟側も支部長が立ち会うことになりまして、結局、この十二人で話し合いが行なわれたのであります。いつも相手はおかあさん方なんです。御婦人なんです。しかしこの話し合いも、途中でまた市長が突然保母を促して席を立ったので、支部長がそれを制止したはずみに、ちょうど、くつ下を市長がはいておられたんで そのくつ下の足が畳をすべって、自分でこけられたのであります。この状況は、その場に居合わせた市の同対室長、次長、民生部長を含むみんなが見ていたんですから、間違いありません。だから、市長は暴行を受けてもいないし、けがもするわけがありません。  松本君は、質問の中で、同盟の一人が市長に襲いかかって、結局けがをさせたと言っておりますが、現場にいた人がそんなことを聞きますと、きりと笑い飛ばすことだと思うのです。また松本君は、市長の診断書の写しも持ってきていると言いましたが、その診断書の写しは一体どこの病院のものなんでありましょうか。  私たちが実地で調べたところでは、市長は市民病院では、何ともないと診断されたはずであります。ところが、市長の奥さんの弟さんが事務長をされている新千里病院のほうに行って入院されたという話が伝わりましたために、わが党の坂口府会議員が、さっそくお見舞いに参上いたしましたところ、市長は病院にはおられなかったんであります。これでは、幾ら警察が捜査の協力を市長に要請されても、市長さんは出られないんじゃないでしょうか。  以上が、私たちが調査した事実関係であります。私は日共の方と違いまして、もし間違いがあったら、いつでも、重要な問題ですから、訂正するにやぶさかではありません。  そこで、日共はよく傷害事件というものを口にされるんでありますが、どのようにしてそういうような事件がつくり上げられるものか。日共のあまりにもセクト的な誤った指導のゆえに、意見書を出して党を除名された元日共党員、岸部小学校教諭の人が、その点に触れて興味ある告白をされております。以下その告白の一部を紹介してみたいと思います。  解同との話し合いをやめて、直ちに相川病院の事務所へ行け、それ以上話し合うならば党を除名するなどと電話による指導が出されて、私は相川病院におもむいたわけです。もちろん相川病院とは日共党員の病院で、着いた私は診察室ではなくて、裏の事務所へ連れ込まれ、日共吹田市委員たちがよってたかって、解放同盟幹部を告訴せよとの指令だ、傷の写真をとるなどと言い出した。ところが、写真にもうまくとれないほどのかすり傷なので、今度は診察室に連れていって顔面をほうたいだらけにして、また事務室に引き返し、今度は院長がカメラマンに早変わりして写真をとる始末でありました。その後、一週間の診断では傷害事件として不利だから、気分が悪いとかなんとか言って十日間の診断書を書いてもらえという指導さえ出されたし、さらに告訴を有利にするため、分会で告訴支持の決議を行えとの指導も出されたわけです。  これが、傷害事件と告訴の真相であり、傷害事件なるものが、全く日共の党利党略のためのでっち上げであることは、まぎれもない事実です。  このようにして日共は、思いのままにならぬ解放同盟幹部憎さに、傷害事件をでっち上げては解放同盟幹部を告訴し、解放同盟即暴力集団の大キャンペーンを展開するわけであります。  以上は、私の演説ではなしに、少し長くなりましたけれども、元日共党員の教諭の告白であります。最近、日本共産党も三十八名になられました。活躍されておる。たいへんけっこうなことです。官房長官も、いろいろ日共のこのごろのやり方についてほめられておられるようではありますけれども、これは要らぬことで、別に私は他党に干渉する気持ちは全然ないのです。ただ、中国共産党の主席である毛沢東さんのおことばに、敵からほめられるときは悪いときと思え、敵からけなされるときはいいときと思え、という教訓があります。私は何となく私自身、この教訓の真実的なところを非常に痛感するわけです。まあ最近田中内閣はわれわれからけなされっばなしですから、あるいはいいときかもしれません。  そこで私は、質問を三点だけしておきます。  第一番は、代々の総理府総務長官は、部落解放同盟の全国大会あるいは同対審答申完全実施の中央行動にごあいさつに見えられております。そして政府の決意を表明されております。政府は一体この部落解放同盟の運動をどのように評価されておるのか、それが第一点。  それから第二点目は、昨年の分科会の質問で、十年の時限立法だが、前半の五年間で三分の二の事業をやると、当時の山中総理府総務長官は私に約束されました。ところが、現実はそうではありません。その点についてどうお考えなのか、それが第二点。  第三点目は、わざわざ同対審答申が出されて、そして十年間の時限立法までつくられた。たいへんこれはわれわれは佐藤内閣時代の一つの業績だと評価しております。すでに残された期間は六年間。ところがこの問題に携わる人が五名しかいないのです。それで、私はこの問題の窓口というものを明確にしたらどうか。これは行政管理庁長官からいえば、いわゆる組織を簡素化するというのがたてまえでしょうが、あと六年間ですから、もう少し窓口というものをきちっとしたものにして、この五名しかいない担当者の方を倍加するなり、こういうことができないものかどうか。  以上、三点について承って、私の質問を終わりたいと思います。
  252. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 お答えいたします。  同和対策に非常な理解を持っていただいております楢崎委員意見を交えての御質疑、私も深く傾聴いたしておったわけでございます。御質疑の三つにわたっての問題点でございますが、御指摘になりました部落解放同盟が暴力集団云々という点でございます。これにつきましては、私どもはさような認識の上には立っておりません。同同盟はあくまでも部落の差別を解放するという大きい、長年の目標の上に立っての団体でございますので、私は暴力集団と理解はいたしていないことを表明申し上げておきたいと思います。  二番目の問題につきましては、いわゆる同和対策特別措置法にのっとりまして、政府も鋭意これに対策を講じておりまして、御理解ある楢崎委員御了解のとおりに、あと五年間にわたりまして四千七百三十三億という事業費をもってこれに対する推進を行なうとともに、単なる物的な問題でなくして、やはり人権の擁護の立場、あるいは教育の立場、あるいは産業育成の立場、これなどを含めた精神的な立場に立っての施策に万全を期したいと考えております。本年度予算におきましては、御承知のとおりに百五十九億、昨年に比べますと一六二%の増を示しておるような次第でありますとともに、それ以外に特別のワクを各設けますとともに、さらに約二百六十億を優先いたしまして、住宅、あるいは街路事業、あるいは基盤整備事業に充てるという優先的な方針も、各省協議のもとに施策をとっておりまして、さらにことしは御承知のとおりに、総理府の中に定員を一名増員いたしまして、対策室の立場から各省との連絡を密にいたしまして、連絡協議会あるいは宣伝費においても五百万円の宣伝費をとるというようにして施策の万全を、前向きの姿勢でとっておりますことも、ひとつ御理解を願いたいと思うのでございます。  以上、御報告いたします。
  253. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま総務長官からお答えがありましたように、政府は同和対策には非常に熱心に取り組んでおるわけです。楢崎さんのお話では、それにしては五名の定員では少ないじゃないか、こういうお話でございます。しかし、これは実際五名じゃないのです。この同和対策の施行は関係各省が責任をもって実行しておるわけでありまして、ただ、関係各省が多岐にわたるものですから、その連絡調整のために総理府に要員を置く、その要員が五名である、こういうわけでありまして、ただいままでの私が見ているところによりますると、大体これで一応連絡調整は円滑にいっておる、こういうふうに見ておりまするが、何か看板を掲げたらどうだろうか、こういう御指摘、御提案でございます。これは総務長官ともよく相談いたしてみたい、かように考えます。
  254. 根本龍太郎

    ○根本委員長 楢崎君に申し上げます。  先ほど御要求がありました資料につきましては、関係方面に連絡の上、提出させるようにいたしたいと存じます。
  255. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 要望も含めまして、総理のこともありますから、あとは委員長におまかせしたいと思います。終わります。
  256. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、小林進君。
  257. 小林進

    ○小林(進)委員 私は物統令が廃止されました以後の消費者米価の状況について、まず関係大臣にお伺いをいたしたいと思うのでございます。  物統令廃止のときに、私ども社会党並びに野党はあげて、その廃止後の消費者米価は必ず上がりますよ、だから廃止すべきじゃないということでたいへん激しく反対をいたしましたが、そのときに政府並びに食糧庁は、物統令を廃止しても消費者米価は値上がりをいたしません、その自信はありますという、こういう答弁を繰り返して、ついに廃止をされたのであります。その後の経過を見てまいりますと、私どもの調査では、大体消費者米価はその後最低五割、ものによっては倍に値上がりをしている、こういうふうに調査をいたして結論を出しておるのであります。私は、この観点に立って、ひとつ政府に、逐次質問をいたしてまいりたいと思います。  四十七年度の政府買い上げ米の数量は五百五十万トン、自主流通米の数量が二百五十万トン、そのほか余剰米の買い上げが四十五万トン、計八百十万トンになっているようでございますが、この八百十万トンを、前年度の余剰米も含めて大体年度がわりには五十万トンだけを残す、七百九十万トンを四十八年度の年度に組み入れてこれを消費をしよう、こういう政府の御計画のように承っておりまして、その七百九十万トンの中で、いわゆる政府米が五百三十万トン、自主流通米が二百六十万トンという数量になるわけでございますが、この政府米の中にも指定銘柄米が百八十万トン、非指定銘柄米が三百七十万トン、こういうふうに分かれておるのでございます。  私は、まずこの問題に関連して最初にお伺いいたしておきたいが、この銘柄の品種と数量をひとつ表にして御提出をいただきたいということであります。  それから第二点といたしましては、この四十八年度の端境期において五十万トンの残で、一体、この四つの海に取り囲まれた日本の食糧の非常時体制として十分かどうか。大体、いまわが日本において買い入れ米だけにおいても一カ月の消費量は五十万トンというのでありまするから、この端境期に五十万トンを残すということは、ただ一カ月分だけの食糧を備蓄しているということになる。四つの海に囲まれて、そして外国の食糧に依存しなければならないようなわが日本において、一カ月分だけの食糧を次年度に持ち越すというような、そういう準備体制で一体非常事態にこたえることができるのかどうか。国内に凶作が起きた場合のみならず、あるいは大陸において、あるいは外国において天変地異が起きた、あるいは戦争が起きた、不測の災害が起きたということで、外国の食糧の買い付けができないというような場合に、一体日本の一億国民の食糧事情がどうなるのか。実に私は、こういうところに政府並びに農林省の食糧対策というものの、非常に長期性のない、場当たり的な農政があるということをつくづく感ぜざるを得ないのであります。少なくとも一年くらいの食糧はちゃんと備蓄をして、しかも海の中に格納するとか、湖の中に格納するとか、一年間もみで貯蔵して品質が変わらない、うまい米が食えるくらいの、そういう長期の計画がちゃんと農林行政の中に出て;なければならぬと思う。まずこの点をお尋ねをいたしておきましょう。
  258. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 農林省の重要なる役目といたしまして、食糧の安定供給をすることは当然のことでございます。また、なかんずく主食につきましては最大の注意を払わなければならないと思います。  ただいま、種々数字をあげてお尋ねがございまして、私どもの資料と大体一致しております。本年十月末で五十万トンの古米を次年度に持ち越すごとになるわけでございますが、小林委員は新潟県で、もうお米のことは百も御承知のことであると思います。ちょうどその年度がわりには四十八年の新米がずっと集荷されるのでございまして、古米の持ち越しは五十万トンでございますが、かりに平年作程度と見まして、二百五十万トン程度の買い付けが終わって次の米穀年度に入る、こういうことでございます。もとより先生の御心配のように、これがことしも不作である、来年も不作であるというようなことで需給が逼迫するというような事態、これは避けなければなりませんから、そういう場合には、場合によって、毎年計画を立てます生産調整の緩和をはかる場合も出てくるかと思いますが、現状におきましては、なお過剰米の条件が相当あると思いまするので、ことしの計画では、二百五万トンの生産調整をお願いしておるということであります。なお、明年の十月末では七十五万トンの古米でいきたい、そのときも同様に新米が入ってまいりますので、まず心配はないのではないか、こう思います。
  259. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、農林省が非常時に備えて、一不時の場合に備えて一年分くらいの米の予備量、備蓄米を持つべきであるという私どもの主張は、これはいまの農林大臣の説明で納得するわけにはまいりません。時間がございませんから、これはやがて場所を変えて、もっとあなたがわかるように私のほうで説明をいたしたいと思います。それで先ほどの銘柄米の品種の表は、ひとつ文書にして出していただきたいと思います。  次に私は質問いたしますが、今度は四十六年度の政府買い上げ米と自主米に関して。これがいま流通機構に乗って消費をせられているわけでありますが、この政府が買い上げた米を、今度は流通を通じて小売り、いわゆる消費者に売られるわけです。売られるときに、政府は非銘柄米といわゆる指定銘柄米とに分けて、そして消費者に売られておる。そのほかに政府の手を通じないで、自主流通米というのが、これは時価相場で売られている。政府がお売りになっている非銘柄米が十キロで最末端の小売り価格が一千六百円。それから指定銘柄米が、これは甲地においては同じく十キロで一千六百円。それから乙地、丙地に至りますと、政府米の中でも非指定米との間に若干の、百円ばかりの差がついているようでございますが、そのこまかいことは別にいたしまして、政府の手からいわゆる銘柄米として小売り商人に流れていくときには、四十六年度の米で大体五百万トン、それから政府の手を通じない自主流通米がやはり百九十五万トン、こういう形で流れていく。大体三対一くらいですかな。政府が扱って、小売り商のところまで届けられる米が十キロ一千六百円という価格で三ならば、自主流通米といって政府の手を通じないで、末端の小売り商の手から消費者に流れていくのが一。三対一ぐらいの関係で出ていく米が、これが消費者の手にいくときには逆になっている。自主流通米、いわゆる別なことばでいえばうまい米という名前で、こちらのほうは七割くらいに化けてしまう。それで、政府の一千六百円の標準米は大体三割以下です。二割五分くらいに変わってしまうんだ。これは特に東京とか大阪あるいは名古屋とかという都市に、東京で例をいえば、自主流通米、すなわちうまい米というのを買っている消費者が大体八割。標準米を、いわゆる政府の指定した一千六百円の価格で買っている消費者が二割。逆になっている。政府の手から出るときと消費者の手にいくときはこの米の数量が全く逆になっている。しかも、標準米はいま申し上げたように甲地において十キロ一千六百円だが、自主流通米になると最低二千二百円から二千六百円、こういう価格に化けている。一体この化けぐあいはどうなっているのか、この点、私は農林大臣にまずお尋ねをしておきたいと思います。
  260. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 お答え申し上げますが、小林委員の御指摘のような化けぐあいをどうもしておらないように思うのであります。私の申し上げる数字がもし違っておりますれば、企画庁のほうでも御調査願っておると思うのでありますが、農林省の食糧庁の調査でお許しいただきたいのですが、精米十キログラム当たりで標準米あるいは徳用米、これは普通下米といわれておりますが、これは小売り販売指導価格どおり、いま御指摘の大体千六百円で推移しておると思います。ただ、上米とか中米とかといわれておるものが、あるいは御指摘のように高いという分だと思うのでございますが、それにいたしましても、上米が、昨年価格改定後に、九月の第四週で千九百四十四円のものが二月第一週二千百七円、それから中米というのが千七百五十三円でございましたものが千八百六十一円。この中米の上がり方が六・二でございますから、政府の売り渡しの総平均七・五に対してはこれは下回っておる。ただ、上米は八・四上がっておりますので、これは上がっておる。一応この数字を申し上げまして、また御意見を賜わりたいと思います。
  261. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、自主流通米の中の価格だとかあるいは中米とかというのをいまお尋ねしているのじゃないのです。私の聞いているのは、政府の手で五百万トンも押えて、標準米として十キロ一千六百円で売らなければならない米である。それがいつの間にやら自主流通米に化けて、そして上米になったり中米になったりして、十キロ二千二百円になったり二千四百円になったり二千六百円に化けているのです。しかも、その化けている数字が逆に七割にも八割にもなっているじゃないか。出ていくときには二割しかない自主流通米が、消費者の手にいくときには八割も九割にも化けて、政府の手から出る標準米が七割も八割もあったのが、二割から一割に減っているという、一体その数字のからくりは、数量のからくりは、どこでどうすりかえられていくのかということを私はあなたにお尋ねしているのです。
  262. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私は、まともに受けてお答えをしておりましたので、ただいま実態に即してのお尋ねにつきましては、ただいま食糧庁長官がいろいろ調べておるようでございますので、このあとお答えをさしていただきたいと思います。  ただ、いま言われるような事態が起こらないように、物統令をはずした以降におきましては、配給米表示実施要領、これは消費者代表や業界の方々も参加してきめていただいたものでございまして、そして配給品目、正味重量、販売業者名、掲精年月日、もとより販売価格、これもそれぞれ明示いたしまして、そしてこれを励行せしめておるような次第でございます。ですから、一般大衆の方々がお買いになる標準価格米、徳用上米につきましては、これらの措置がまず無難に行なわれておるということを申し上げておきたいと思います。
  263. 小林進

    ○小林(進)委員 農林大臣は何もこれはお知りにならない。役人の書いた数字、数量を自分もわからないままに読んでいるというだけの話でありまして、これはどうも実に情けない。私は申し上げますよ。いいですか農林大臣、政府が売り渡す指定銘柄米、これは六十キロで八千百四十三円なんです。ちょっと質が悪いからといって非銘柄米、銘柄のない米は七千七百六十五円ですから、これを十キロに直しますと、いわゆる銘柄米は千三百八十円なんです。これで小売り商に卸す。この千三百八十円を、あなた方の指導価格の千六百円で小売り商は売っているわけなんです。いわゆる非銘柄米は十キロについて千三百円なんです。これを千六百円で売っている。だから十キロ売って二百円から三百円がいわゆる手数料になるわけです。しかし、この指定銘柄米の中には、わが新潟県自慢のコシヒカリも、あるいはササニシキも、みんな入っているのです。この千三百八十円で政府が小売り商に届けて、千六百円で売りなさいという米が、これはコシヒカリでございます、ササニシキでございます、自由米でうまい米でございますといって、二千四百円から二千六百円に化けてみな売られているのです。この化けぐあいを歯どめをする規制が、現在の農林行政の中におありになりますかというんです。物統令が廃止されたらないでしょう、その歯どめが。ありますか。私はそれを聞いているんですよ、あなた。
  264. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 その辺は私も注意をしておるのでありまするが、これはコシヒカリでござい、これはササニシキでございといって売る売り方につきましては、これは特定の場合を除きましては認めておらないのであります。  そこで、どういう場合に認めておるかといいますならば、原料の受け払い等によりまして、内容と表示の一致を確認できるような、そういう場合だけに産地、品種の表示を認めておるのでございまして、また、これらの点につきましては、県食糧事務所が随時検査をいたしまするし、また大型精米工場において、そういう許されておる場合には検定機関が検定をしておるということでございまして、お尋ねの点が私にはちょっと十分にわかりかねるのであります。
  265. 小林進

    ○小林(進)委員 これは農林大臣は何にもわからないのです。農林大臣、いいですか、もう一回繰り返して申し上げますけれども政府から小売りへやるときには、いわゆる指定銘柄米、その中にはササニシキもコシヒカリもみな入っている。それが十キロ千三百八十円でいくのです。それを千六百円で売りなさい。もっとも、もう物統令が廃止になりましたから価格の指定はできないが、千六百円で売りなさいという指定を農林省はしておるわけです。ただ、そのときには守らぬでいい、罰則がないから。ただ農林省の指導で、千六百円で売りなさいよ。いま一つは、その銘柄の指定米を売ってくださいと言って来たときには、必ず千六百円で売りなさいよ、しかし、もう指定米なんかうまくない、やっぱり自主流通米のうまい米がほしいと言ってうまい米を買いに来る、千六百円の指定米を買いに来ないで、それでその指定米が余ったときには、いつでも混合して、自主流通米に衣がえをして適当な値段をつけて売ってよろしいと、あなた方は指導しているんだ。だから小売り商人は、千六百円の指定米を買いに来ると、この米はうまくないですよと言う。コシヒカリであっても、これはうまくない、政府の指定米はうまくない、うまい米はここにあるんです、自主流通米といってこれはうまいんです、そのうまい米の中にも、中米もあります、最上級の飛び切りの米もあります、その中米のうまいのが二千二百円、飛び切りうまいのが二千四百円、その上にコシヒカリというと二千六百円、これはもうほっぺたの落ちる米でございますと言って、あなた方のいういわゆる指定標準米を全部自主流通米にくらがえて売っているということなんです。  いいですか。もとは、あなた方が小売り商人に出すのが十キロが千三百八十円ですから、それが十キロについて二千六百円なら、幾らのもうけになりますか。千三百円、倍額じゃありませんか。倍額のもうけになるんですよ。千三百円で払い下げた米を、自主流通米はうまい米です、指定米なんかうまくないんだ、標準米はうまくないんだ、この米はうまいんだといって衣がえして売ると、最低で二千二百円ですから、九百円から千四百円という、これが大きなもうけに化けて、自主流通米という名前で、東京ならば八割か九割の人たちにみんなこれを売りつけているということなんだ。そうすると奥さん方は、実に涙が出るほどつらいけれども、みえもある。奥さん、もう指定米なんか買う人はありませんよ、奥さんがこんなうまい米をお買いにならないでと言われると、腹の中では千三百円の徳用米を買いたいと思っても、米屋へ行くとつい指定米を乗り越えて自主流通米に手が出るという、こういう消費経済が行なわれているんですよ。  いま物価が高くなったといったって、何よりも高くなっているのは消費者米価です。これくらい値上がりをしている、これくらい不当な利益を得ているものはほかにもありませんよ。株の値段が上がったの、土地の値段が上がったのなどといっても、倍までもわずかの間に上がっている品物はありません。消費者米価だけですよ。そういう行政をあなた方はおやりになっているということを、肝に銘じて考えてもらわなくちゃ消費者はたまらない。  そこで、私は大蔵大臣にお伺いいたします。いまの政府が買い上げて消費者にお売りになる米には、まだいわゆる二重価格制というものが存在をしているはずでございますが、政府が全農、農協その他から生産者米価で買い上げられて、そしていま最終末端まで売りつけられる価格の中で、政府が負担をしている補助金は一体どれくらいになりますか。私は大きな数字はわかりませんから、六十キロについて一体どれくらいの負担になっているか。——大蔵大臣に聞いているんですから、あなたは黙っていらっしゃい。答弁があるならあとでおやりなさい。答弁の調整をしちゃいけませんよ、あなた。
  266. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 小林委員の前段の御指摘は、私も先ほどから申し上げるように、実態についてはなおいろいろ考えさせられる点がございます、そう申し上げておるのです。しかしながら、そのことは食管法の違反でございまして、それについては、私どもとしては、食糧事務所を通じ、あるいは都道府県知事との関係におきまして、厳重に注意をいたしておるところでございます。
  267. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 お答えいたしますが、いま六十キロ当たりの計数を持っておりませんから、六十キロに換算してあとでお答えいたしましょう。  全体の予算の額から申しますと、四十八年度予算で国内米管理勘定が、コストの逆ざやを原因として二千六百九十三億円計上されております。要するに、二千六百九十三億円が損失として発生をする。これには過剰米の処分によるものなどは除いております。これが一般会計からの繰り入れを原資とする調整資金で補てんすることになっておりますが、一トン当たりのコストの逆ざやは約四万三千円、これは一等から四等までの平均が四万三千二百三十四円でございます。  これをもう少し分解して申しますと、まずコストの逆ざやが四万三千二百三十四円で、売買逆ざやが一万九千百二十七円、末端の逆ざやが二千九百二十六円、その総額が、いま申しましたように、全部で二千六百九十三億円ということに相なるわけでございます。
  268. 小林進

    ○小林(進)委員 まあ大ざっぱな答えがございまして、大体一トンについて四万三千円の逆ざやとおっしゃいました。そうすると指定米で、三等米標準ですけれども、いま政府が買い上げているのは一トン十三万五千七百三十三円です。十三万五千七百三十三円の中で四万三千円という赤字を政府が補助をしておいでになる。そういう形で、十キロ一千六百円で政府は消費者の利益のために売られているわけだ。ところが、その一千六百円のいわゆる標準米、指定米は売れない、残ったから、これは混合して自主流通米にいたしますといって、自主流通米に化けて、そしてこれが二千四百円、二千六百円という価格で売れていくのですから。  これは大蔵大臣、国民の税金で一トンについて四万三千円も補助している米が、それほど犠牲になって末端の小売り商に利益を保証しておきながら、それがまた消費者に二倍に売られていくということになるならば、政府がこれだけ逆ざやで赤字を補償している理由は何にもないじゃないですか。これは大蔵大臣としても、そういうことで米が売られていくならば、重大な決意をして、そんな逆ざやの補償金なんてやめてもらわなければならぬと私は思っている。あまりにも小売り商を大切に扱い過ぎて、いわゆる消費者というものを全くめくらにした行政ではありませんか。はなはだしい不当利得を物統令廃止という形の中で与え、政府はいわゆる小売り商人を庇護し過ぎるではないか。これは円の切り上げなんというものじゃありませんよ。もっとこれは悪質な行政であるといわなければならぬと私は思うのです。次の問題がありますから、そう長くも言っているわけじゃありませんが……。  そこで、私は申し上げますけれども、小売り商はその自主流通米にかってな名前をつけている。やれ「希望」という名前をつけたり、あるいは「かがやき」という名前をつけたり、「のぞみ」という名前をつけたり、小売り商がそれぞれえてかっての名前をつげて、そして極上の上でございますと言っては、二千六百円だの二千四百円だので売りさばいているわけなんであります。そういうことになれば、一体銘柄というものを定めた理由一つもないじゃないか。買う消費者は、コシヒカリでございますというからコシヒカリと思っているけれども、中に何が入っているかわからない。全くこれはわからない。ササニシキでございますと言って小売り商人が持っていくから、そうだと思うだけの話であって、だれもわからない。たまたま、うまい米ですと言って持ってきたけれども、うまくなくて古米が入っていたという例があるんだ。あなたはうまい米だと言って二千四百円の高い米を持ってきたが、味が悪くて食えなかったが、一体どうしたんだと言ったら、米屋さんは、そうですか奥さま、それじゃあなたの口に合わなかったんでございましょう、今度はあなたの口に合ういい米を持ってまいります。そのときには、ほんとうのササニシキかなんかを二割か三割入れて、コシヒカリを二割か三割入れて、そして今度これはいかがでございますかと言ったら、これは本物ですから、うまかったと言ったら、そうですか、それじゃ奥さんのお口に合ったんでございましょう。こういうようなことで、まるで消費者をめくらにして手当り次第のもうけをしているという、こんな行政が一体許されていいんですか。  これは、経済企画庁長官、あなたの番です。これは不当利得じゃありませんか。物価を差し押えるという経済企画庁が、これほどの悪質な手当たり次第のもうけを放任しておいて、それを一体許していいとお考えになるのかどうか、私は責任ある答弁をひとつお聞きしておきたいと思う。
  269. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 小林さんの非常に行き届いた御説明でよくわかりました。そういう実態があるとすればはなはだ奇怪なことであると思います。  そこで、私のほうの行政といたしましては、標準価格米制度を設けるとともに、やはり販売業者に対しましては、米の配給品目、正味の重量、搗精工場名などについて必ず表示をつけるように指導をしているわけでございます。また米の産地、産年、銘柄等についても表示がなされることが望ましいと考えますが、これはなかなか技術的に困難な面もございますから、これは任意表示といたしておりまするが、なお、表示をする場合に、不当表示防止の観点からいたしまして、受け払い台帳の整備等を要件としてこれを認めている。すなわち、受け払い台帳を整備しないような業者はこれを認めないということを考えておりますわけでございます。  なお、農林省とよく連絡をとりまして、消費者の選択のレベルの観点から、適正な表示が行なわれるようにせっかく努力をいたす考えでございます。
  270. 小林進

    ○小林(進)委員 ともかく、私はコシヒカリの本場です。大蔵大臣、あなたはササニシキの本場だ。いいですか、お互いに米の味は知っているはずなんです。私は特に毎日コシヒカリを食べて生活しておりまするし、私のところへも生産地の農民はしょっちゅう来ております。生産地の小売り業者も来ています。  私はこの質問をするためには、東京じゅうの小売り業者のコシヒカリというコシヒカリ、ササニシキというササニシキ、みな買って試食さしてもらいました。全部これはうそですと言いましたよ。全部うそです。うそだと言うんで、私は今度はある特定の小売り業者のところへ行って、君のところに売っている越後コシヒカリはうそだと言っているじゃないか、コシヒカリの内容ではないじゃないかと言ったら、彼は呵々大笑いたしました。先生、そんなことはさまっております、ほんとうのコシヒカリなんかというのは、軟質米でねちねちして、うまくなくて食えないんです、これはやはり硬質米を入れたり、これをみんな混合するところに私ども業者の腕があるんで、そこで初めてほんとうのうまい米ができ上がるんでございまして、いまさらコシヒカリの純粋なんていって、それをまともに思われる先生がしろうとでございますと言って笑われた。だから事実、コシヒカリと書いても本物はないということは、業者みずからが証明している。みんな混合している。これは誇大表示じゃありませんか。公取委員長、ひとっここへ来て、あなたは誇大表示、これを許しておいていいのかどうかを……。
  271. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 いまのおっしゃられたことは、文字どおりそれは不当表示でございます。  しかしながら、この不当表示につきまして、昨年三月に食糧庁長官のほうで、この不当表示に関する非常にこまかい通達を出しておられる。と申しますのは、いまのお話でおわかりのように、そのものがはたしてコシヒカリであるか、ササニシキであるか、あるいはどのようなものがまじっているかということは、かなりの経験と技術がなければ認識できないんです。これはもうむしろ農林省のほうにお聞きいただきたいのでございますが、農林省のほうではすでに検査官も、御承知のとおり大体二万人ぐらいおられる。それから民間のほうも、検査をする能力がある団体を指定しておられる。そういうことがありますが、こちらは、いまのところは、公取としましては、これに御協力申し上げる段階であって、いずれもう少し事態がはっきりいたしますれば、私のほうの専属のといいますか、何が不当表示であるかということを明示いたしたいと思いまするが、いまのところは、産地や銘柄、それからいつとれたかという産年を記述するのにはこれこれの条件のものが要るということで事こまかに規定してあるのでございますが、それが守られておらない。ましてや私のほうはいまのところ従事する人間は二十三名。全員を不当表示に充てたって、人員が二十三名しかおりませんので、六万軒もある小売り業者に対してとてもできないから、農林省からお申し出があれば、私のほうでは、不当表示としてこれを規定するということは十分考えております。
  272. 小林進

    ○小林(進)委員 ほかの品物とは違って食糧ですよ。米ですよ。一日の中で欠くことのできない国民の生命線のぎりぎりにある品物です。この品物を、こういう消費者を盲目にして、とるだけとりほうだいの食糧行政をやっておきながら、なおかつ公取は、公取に手がないからそんなことを調べられません、農林省の責任でございます、これじゃ消費者はたまったものではございません。これがいまの政府、独占の政治の実態なんですよ。消費者は泣いたって泣き切れませんよ。  そこで私は、もう時間がありませんから、次の問題を控えているのでありますから申し上げますが、この根本はやはり物統令を廃止したことなんだ。米の消費者価格を自由にしたということなんです。どうしても米に関する限りは、もとに返して物統令を復活してもらわなくちゃならぬ。やる気があるかないか、これが一つです。  それから第二番目は、この標準米が売れ行きが悪くて残った、買い手がないから残った場合には、自主流通米と混合して自由に価格をつけて売ってもよろしいという指導を農林省が許していることなんです。これはだめです。やはり標準米は標準米として、標準米の中に銘柄があるなら、一等銘柄、二等銘柄、三等銘柄と、ちゃんと政府の扱う米のワクの中で品種の顔をつけて売るということ。それを直ちに自由米に変換をして、かってほうだいに、「かがやき」であるの、「希望」であるの、女性であるの、男性であるのと名前をつけて売る。そういうようなばかなことはやらせない、こういうこと。  特に第三番目は、先ほどの話の中に、品種というものをちゃんと明らかにしてと言っておりますけれども、正しく品種を明らかにして消費者のうちまで届けている米なんというのは、まあ大きくいえば一俵もないと言って私はよろしいと思う。かってな名前をつけてやっておるのですから。しかも、銘柄という制度を設けたら、ちゃんとその銘柄を明確に指示し、その銘柄に偽りがあるかないか、末端まで監視する監視体制を持たなくちゃいけない。大規模の工場を見ておりますとか、何をふざけた答弁をしておりますか。みんないま小売り業者は、自分のうちで精米機を持って、そしてこれを精米して、 コシヒカリでございます、 ササニシキでございますといって、あれはかってな名前をつけて売っております。ただ、それに対する規制は全くないというこの事実です。この銘柄制度があるならば、末端の消費者の手までちゃんと銘柄に偽りがないように届けられるように、機構を改革してもらわなければいけない。  大蔵大臣おわかりになりましたか。こんなようなものに対して赤字補てんの金を出せば、国民は税金を何ぼ出したって間に合うわけのものじゃありません。小売りの米屋がもうかるだけです。そういうむだな補助金なんか出さないでください。そういう点も含めて私は厳重にここで警告を発しておきますけれども、時間がありませんから、きょうはこの問題は半分にして、また後日、ひとつ場所を変えてさらに私はこの問題を強く要望をいたすことにいたしておきます。  次に、私は厚生大臣にお伺いいたします。これは吉池軍曹の事件でございますが、昭和二十年の八月十二日であります。ブーゲンビル島のムグアイで敵前党与逃亡罪で死刑の処刑を受けたという問題でございますが、これに対して未亡人の吉池きよ子さんが遺族年金、弔慰金の請求をした。これに対して厚生省はきよ子さんの請求を却下した。いろいろの経緯を経て、この問題が、昭和四十五年の八月参議院で取り上げられた。自来十七年間との問題は争い続けられておるのでございますが、遺族は、私の夫は死刑などになるはずはない、証拠はどこにあるか、ブーゲンビルで死刑になったというならば、死刑になったという証拠はどこにあるか。これに対して厚生省は、戦没者連名簿だけをたよりにいたしまして、その連名簿の中に死刑処刑があるということになっているから、これを取り消すわけにはいかないということで、これがいま裁判で係争をされているわけであります。前の参議院議員の旧陸軍不当処刑兵士の遺族を守る会の責任者である武内五郎さんが、吉池未亡人きよ子さんを押して訴訟をされている。訴訟の相手は厚生省です。齋藤さん、あんたです。  これに対して私が非常に不愉快にたえないのは、そういうブーゲンビルという孤島の中の閉鎖した社会の中で命を落としたその軍人を、証拠もないままに、もう二十七年、三十年もたっているのに、遺族は、証拠がないんだからどうぞ白と言ってくださいと言うのにかかわらず、その遺族のことや引き揚げ者のめんどうを見なければならない厚生省が、なぜそれを、黒だ黒だ、おまえは逃亡兵だ、死刑兵だと頑強に固執をして、全部が白と言っているものを黒と一体言い続けなければならぬのかという、私は、その姿勢、これがどうしても気に入らない。  そこで、第一問としてお伺いいたしますけれども、この吉池軍曹は、旧陸軍刑法による陸軍軍法会議法によって処刑をされたということになっている。ところが、この旧陸軍刑法には、軍法会議法第百十二条に基づく公判調書というものをちゃんととり、なおかつこれを永久に保存しなければならないということになっているが、これは死刑であるとか軍法会議でやられたとおっしゃるならば、その公判の調書はちゃんと厚生省側にあるはずでありますから、これをひとつ提出をしていただきたい。  なおまた、軍法会議法の第五百六条には、死刑の執行始末書というものをつくって、これもちやんと永久に保存していなければならないという軍の規定がある。検察官及び監獄の長はともに署名捺印して、そしてこの始末書というものを保管しなければならないという規定がある。この吉池軍曹の死刑執行始末書、おありになるでしょうから、これをひとつお示しをいただきたい。どうでありますか、まずここからひとつお尋ねいたしましょう。
  273. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 吉池軍曹の事件は非常に古い事件でございます。ただいまお述べになりましたように、昭和二十七年に奥さんのほうから遺族年金及び弔慰金の請求が出まして、私のおとうさんは公務死でありますから遺族年金、弔慰金の請求を認めてもらいたいという請求が出ました。それに対して、ずっといろいろいきさつはありますが、敵前党与逃亡の罪であるということで、審査会等において却下になってまいっておりまして、そしていまお話しのように、昭和四十五年十月から訴訟が提起されて、今日まで十五回にわたって弁論、証拠調べが行なわれ、なお現在でも東京地方裁判所において裁判中の事件でございます。そうした裁判の途中に、昭和四十五年、援護法の改正が行なわれまして、そして昭和四十五年十月から遺族年金を支給されるということになっております。  そこで、その裁判の内容につきましては、裁判のほうでおやりになるわけでございますが、今日までのお話しによりますと、ブーゲンビル島における死刑の執行のもろもろの調書並びにそれに必要な書類は、戦後オーストラリア軍隊によって押収されて、向こうに持ち帰ったのではないだろうかということが、昭和四十六年七月六日の裁判において、鈴木義治並びに花園一郎氏から証言されておるということを承っておりまして、厚生省には調書は全然ございません。
  274. 小林進

    ○小林(進)委員 厚生大臣、注意してください。私は、何も遺族年金をもらったかもらわぬかということを言っているのじゃないのですから。いまの裁判は、罪なき罪で死刑にされたという名誉回復のために、その裁判をないことにせよということで訴訟で争っておるのですから。その死刑をされたこともない、その裁判の記録もないにもかかわらず、厚生省は証拠もないままに、これはいわゆる引き揚げ者や何かが調製をしたその中に、どうも死刑されたらしいという一項目があるというそのことだけを基準にして、相変わらずこれは死刑になったんだということを言っておるから、私は、いやしくも人を死刑にしたとかあるいは銃殺をしたとかいうことになれば、あだやおろそかの問題ではないぞ、その人の子々孫々に残る問題だから、それを証拠立てる確かな証拠をお出しなさい、その証拠の一助として、必ず保管していなければならぬ裁判調書だの死刑のあと始末書というものがあったらお出しなさいと言ったら、あなたはないと言ったじゃないか。ないと言ったばかりじゃない。いまの話には、いわゆる捕虜になって捕えられたときにオーストラリア軍に没収をされたらしいというふうな答弁がありましたが、だれが一体それを言ったと言ったら、いまあなたは花園一郎がそう言ったと言う。私はあとでも言いますけれども、花園一郎は、その書類は私がマッチで焼きましたということを証明しておりますよ。もはやそこで、あなたの言うことと花園自身の言うことばが二つに分かれているじゃありませんか。それくらいあなた方は証拠のないことをつくり上げて、罪なき人を罪にしているという何よりの証拠なんだ。  そこでまた質問いたしますよ。いいですか、その死刑執行の始末書もない、死刑執行の公判の調書もないことは明らかになりました。しかし、オーストラリア軍に取り上げられたらしいと言ったけれども、花園はそう言っていません。私がマッチで焼きましたということを言っております。もはやあなたの証言はうそです。  次に言いますが、吉池軍曹が所属をした旧第十七軍の歩兵第二十三連隊長、これは福田さんという人です。はじめ同連隊の生き残りの戦友が、昭和四十一年四月厚生省に、吉池軍曹の死亡事実更改に関する証明書というものを出している。私は直属の連隊長です、戦友です、吉池君が処刑をされた事実はございませんでしたという証明書を厚生省にお送りいたしております。その書類を参考までにここへひとつ御提出をいただきたい。ありますね。  なお申し上げます。同時に吉池軍曹の本籍地である長野県、それから吉池軍曹が所属をいたしておりました宮崎県のこの部隊、部隊の所在する宮崎県両方の県から、県の世話部やあるいは関係県の名前で、同じくこの直属上官の連隊長の添書をつけて、そして、どうも吉池軍曹は処刑にはなっていないから、何とかひとつこの裁定を変えてくれろという要請の書類が厚生省に出ているはずであります、二つの県知事の名前で。この書類をひとつ、これもお示しをいただきたい。ございますね。お示しをいただきたい。
  275. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 援護局長をして答弁させます。
  276. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 いま先生の御指摘になった書類は、厚生省にございます。
  277. 小林進

    ○小林(進)委員 提出する……。
  278. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 いま先生のおっしゃられた書類は、厚生省にございます。
  279. 小林進

    ○小林(進)委員 それじゃ、それをひとつちゃんと喪失しないうちに持ってくればいい。きのうも私は事前に必要な書類はみな用意して持ってきなさいと言うにもかかわらず、持ってこない。そこにやはり厚生省のやましいところがある。出せない。  そこで言いますよ。厚生大臣、あなたたちがこれが死刑になったという唯一のよりどころは、この吉池軍曹の直属の中隊長である第十七軍歩兵第二十三連隊第七中隊の中隊長有村一郎元大尉だ。これが帰還にあたって作成した歩兵第二十三連隊死因未詳者状況一覧表、別名有村報告、死亡者連名簿というのに、この吉池君がどうも死刑になったという記録が書いてあります。これが厚生省の唯一のよりどころなんです。ところが、じゃ、有村一郎元大尉、これは宮崎県の人だ。この大尉に対して厚生省の参事官の坂田良右衛門という、これは事務官です。これは吉池事件を七年間専門にあなた方の命令で調査した人だ。坂田良右衛門事務官が有村一郎元大尉に会っておるのだ。会ったときの話の内容を全部上司たる皆さん方に報告すると同時に、有村メモとしてその報告書を書いておる。その中に、一体有村一郎とその坂田良右衛門事務官が会ったときの話の内容はどういうことになるかというと、ちょっと読み上げてみますよ。厚生省坂田事務官が、「吉池事件調査経過の概要」という中に書いてある。これはあなたのところに出した書類ですから、あなたのほうがもっと詳しいはずだ。その中に、有村一郎氏は、厚生省援護局の坂田事務官、すなわち自分です、自分の部屋に来て次のような発言をされた。「手紙で先に申し上げたようにわたくしは出征中に自分の部下を八〇〇人近く死なせました。そしていろいろな中隊に居りましたが、中隊長も小隊長もそして我々皆戦死し、わたくしだけ生き残りました。復員の際帳面上の人員と実際復員した者との差については、わたくしの印で事務下士官に全部処理をさせました。それは遡って以前に死亡した者でもその時の責任者が戦死しているので全部わたくしの印を押した訳であります。兎に角当時は、援護法や扶助料に差支えるなんという予測はなかったので、部隊としては何とか形をつけて復員したというのが事実で、これらの責任は全部わたくしに在ります。」いわばいいかげんなものでございました。早く人数だけ合わせて復員をしたいというだけで、判こをまかして適当にみなやれといって判こを押したのがこの始末書でございます。こういうことを厚生省の事務官にしゃべったということを言っておるじゃないですか。だから吉池君のように知らない者は何と言われても話しようがありません。こんな苦しいことはありませんでしたと坂田事務官に物語った、こう坂田が報告しておる。いいですか、これによれば、繰り返しますけれども、事実も不実もないのですよ。復員上の帳面づらを合わせるために事務下士官に判こをまかしてめくらめっぽうに判こを押したのであって、目的はただ一つ、何とか形をつけて復員したいというのがそのときの偽らざる気持ちであったということを、有村大尉自身が厚生省の坂田事務官にこれを言っておるのですよ。坂田君はそのまま報告のメモの中に書いてある。あなたごらんになりましたか。ごらんにならないでしょう。そういう不勉強でここにおいでになるから私は困るのです。  今度はこれについて、有村中隊で有村さんが判こをまかして、おまえ、帳面づらを合わすようにわきに判こを押しなさいと言って、判こを預かったのが准尉です。その准尉が原口福雄という人なんだ。これは歩兵二十三連隊。原口福雄氏に坂田事務官は直接会っていないのです。会っていないで、同じく二十三連隊の主計中尉であった高橋久能という人が坂田さんに協力をして、この准尉に会いに行っておるのです。会いに行ってその准尉との談話を持ってきて坂田さんに報告している。坂田メモに入っている。それによれば、原口氏が吉池軍曹の死亡の証明書を書いたと自分で言った。私が書きました。そしてどういう根拠で書いたのかというその質問に対して、名前は名簿にあるが実在をしていない人、何々連隊何中隊といって名前はあるけれども、もう死んじゃったか行くえ不明になっていない人、そういう者は全部死亡として整理を私はいたしました。整理したのです。終戦後上陸地でつじつまを合わせなければ、いつまでたっても復員できないので、そのように死亡とし、ときには刑死とし、あるいはときには銃殺というように書きました。しかし、何で刑死としたかと言ったら、軍法会議からの通知によるものではなく、関係者が話し合った。つまりうわさとも想定ともつかないものでそのように書いたのであります。あとで言いますけれども、何かやはりそういううわさ話があった、想定があった、それを私が聞き流しに書いたのでありまして、実情を見たわけでも、いわゆる憲兵隊や軍法会議からの正式の通知によって書いたものではございません、こう言っている。これが坂田メモの実情です。厚生省が唯一のたよりにしているいわゆる有村報告といい、いわゆる原口准尉という判こを押した本人の報告が、本人みずからの口をしてこうして書いてある。これでも確証であると言われますか。  いま一つ言いますよ、時間もありませんから。厚生省援護局で厚生省の立場で七年間もあなた方の命令で一生懸命にこれを追及した坂田良右衛門事務官が、昭和四十一年の一月二日です。坂田メモ、ここにあります。分厚なものがあります。これです。このメモの中で、「吉池事件調査経過の概要」の中に、七年間調査の結果、敵前逃亡死刑の確証はついにつかめませんでした、こういっているではありませんか。  厚生省はこの報告も信じぬしかないといって、いまなおこれは黒だといって訂正をされないということは、実に私は厚生省の中に旧軍隊が生きているという以外にはないのですよ。なぜかならば、この衝に当たっているいわゆる復員局の調査課長、第一課長というのは、みな旧軍人でしょう。旧わが陸軍の参謀であったり、旧海軍の参謀であったり、陸士の四十二だの五十だのという旧の軍人が、依然として天皇の名において、自分たちの調査に反抗するような、不利益を申し立てるような下士官、兵のごときは、白が黒でも押しまくれという、こういう強引な姿が厚生行政の中に生きているとしか思われないじゃありませんか、あなた。なぜ一体これをこのようにして罪を着せる必要があるのか。  坂田メモの中には、死刑の判決を受けて刑死をしたというならば、当然ブーゲンビルにおけるその証拠書類がなければならぬといっている。その証拠書類はちゃんと行っているのです、これは。ちゃんと福岡の検察庁に送付されて、いまでもその記録はあるのです。これは福岡検察庁まで行ってみましたけれども、吉池という名前は一つも刑死の中に発見することはできませんと言っているじゃありませんか。  それじゃ吉池の連隊長であった福田環氏も、自己の連隊にそんなことがあったことは、十七年目のいま問い合わせを得て、私は連隊長として初めて知りました、私は全然いまでも知らない、しかし、さっき言いました彼の直属の中隊長の有村一郎がこれこれにいるから、有村中隊長に照会をしてみてくださいと言って、連隊長はその事実を否定した手紙をよこした。しかし有村一郎はそれに対して、復員したいばかりに判こを預けて、判こを押させたという証言をしたことは先ほど申し上げました。  そのほかに同部隊にいた将校十五人の回答を全部求めた。せめて吉池のその刑罰を知っているかと言ったら、十五人の回答が全部知らないと言ってきているじゃありませんか。  なおその当時、ブーゲンビルにおける十七軍の法務官をつとめた八人の裁判官、これを全部いまの坂田は問い合わせをいたしました。その八人の名前全部言いましょうか。これは坂田メモに全部入っている。その八人の法務官も全部口を合わせて、口を合わせてじゃない、全部個々でありますけれども、そういう事実はありません、全く知らないことであります、こう答えているじゃありませんか。法務官八人が言っているじゃありませんか。  憲兵将校、下士官十二名、これも坂田事務官が全部当たったのだ。その憲兵大尉渡部馨氏以下全員が、これも全然知りません、しかも刑死はなかったと私どもは否定いたしますと明確に言っている。憲兵というのが一番犯人を戦地において扱うのですから、その憲兵も言っている。なお、これで坂田事務官は再び福岡検察庁へ行って判決書を今度は特に見せてもらった。そしたらブーゲンビルにおける判決の調書が一冊になってあった。それには表に昭和十九年六月二十日から昭和二十一年七月の三十一日までという記録が書いてある。全部はぐって見た。見たらその中に、昭和十九年八月から昭和二十年十一月二十八日まで十六カ月の分がまるまる欠けている。これはいま福岡検察庁にあるのが欠けている。この欠けているときの、いわゆる昭和二十年の八月十二日処刑されたとあなた方は言っているのですから、その間はこれは抜けている。だから坂田メモは、かくして彼は七年間あらゆるところで調査をやりましたけれども、ついにこれを立証することができなかったと言っているじゃありませんか。にもかかわらず、厚生省はあえてこれを黒であると言っている。なぜ黒であるかというその根拠を、厚生省ががんばっている根拠を私が言いましょうか。  それは昭和三十六年の五月二十四日です。厚生省の援護局の中で当時の板垣復員課長、田島俊康事務官、三浦祐三事務官、柏井秋久事務官、坂田良右衛門事務官、山田義次審査第一課長、この六人と、その部外者としては吉池軍曹の直属の上官である二十三連隊長の福田環と元主計中尉、その連隊の中尉の高橋久能と計八名が会合をした。そのときに旧連隊長の福田と主計中尉の二人が、当時のブーゲンビルにおける戦場の状況を詳しく説明して、食糧がなかった、食うものがなかった、だからそのために各人が位置を変えて食糧をあさったというようなことはありましたけれども、逃亡などという事実は全くなかったし、考えられるような状況ではなかったんです、その中でありますから、これはひとつやめてもらいたいと言ったときに、ここに出席した六人の厚生省の、これはみんな旧軍人です。中佐から少佐です。参謀です。一番悪いことをしたやつらです、こいつらは。このやろうどもは、本件は一たん死刑の執行による死亡として遺族の申請を却下したものなんだから、これをくつがえして死刑でないというためには、死刑による死亡でないというためには、これを証拠立てる証拠を出す必要がある、だから、遺族のほうで証拠を出してくるまではこれはくつがえすわけにはいかないと言ってさっさと散会をしてしまった。これが今日まで尾を引いているのです。皆さん、こういう残酷非道なことをやらしておいて、一体戦争は済んだといわれますか。いまでも遺族は泣いているのですよ。うちの夫はいやだというのを縁もゆかりもない戦争にひっぱり出されて、食うものも食わず、このブーゲンビルの飢死戦場、しかも八月十二日です。終戦の直前です。そういう中で痛めつけられておいて、いまなおかつおまえの夫は刑死だ、銃殺をされたといわれたんじゃ、とても私は生きていても子孫にこの汚名を残すわけにはいかない、こういうことなんです。いいですか、わかりましたか。まだ証拠は山ほどあるけれども、次にまだ問題がありますから私はこれで終わりますけれども、こういうものを厚生大臣、なぜ一体こんなものをあなたは争う必要がある。取り下げて天下に謝罪する、遺族におわびをするという気持ちにならぬですか。ならないならば、私はこの問題はどこまでもがんばりますよ。あなたの首をもぐか私の首をもぐか、最後までがんばらなければならないが、ほんとうにこういう残酷な話を、天下国民に謝罪するという気持ちになるかならぬか、ひとつあなたは答弁をしていただきたい。
  280. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 この事件の吉池さんのお家族のお気持ち、すなわち自分のおとうさんは逃亡罪ではないんだ、りっぱな公務死であると叫んでおられるその心情というものに対しては、私は衷心から同情を申し上げております。そして、この事件は私のほうが訴えているのではないのでございまして、私が訴えられておるのでございまして、もう御承知のように十何回、公判で証人調べをいたしておるのでございますので、裁判によって事実関係をおきめいただくきり方法がないのではないか。  なるほど、おっしゃるように死刑執行の調書はございません。それは何もないのです。ありません。おっしゃるとおりでございまして、私が訴えられておるのでございますから、私のほうから取り下げる……(「おかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)私のほうは訴えられておるので……。というわけで、裁判で事実関係を私は明らかにしていただきたいとお願いをしたいと思っております。
  281. 小林進

    ○小林(進)委員 もちろん原告の側では、白であるものを黒であると厚生省が言われるから、名誉回復のために訴えて、白の実証を求めている。厚生省のほうが、私のほうが間違いました、あなた方は白なんです、それを私どもが黒と言ったのは間違いですとあなたわびれば、あしたにでもいいですよ、裁判を引き下げますよ。訴えられているから引き揚げないとは一体何事ですか、あなた。その根性が間違っておるのですよ。あなた方が白でございました、間違いでございました、一言言いなさい。さっと遺族はあしたからそれを引き下げます。これは私が神かけてここで宣言をいたしますからやりなさい。やりますか。やらなければ承知しません。やりますか。
  282. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、私はお家族の心情というものにほんとうに同情を申し上げております。しかし、これは司法権として裁判所に係属されておる事案でございますので、私がはっきり申し上げたように、執行の調書はない、私は厚生省としてこれだけははっきり言えます。そして、その事案はいま裁判所に係属しておる事件でございますから、その点はどうか御了承を願って、裁判でおきめいただくきりないのではないかと思います。
  283. 小林進

    ○小林(進)委員 もう実に、一言こう言う。私がこれだけるる述べて、実際にあなた方が唯一の証拠にしているその連隊長から中隊長まで、復員をされたあとのためにやむを得ずめくら判を押しましたと言っている。それを唯一の証拠にして、なおかっこの気の毒な未亡人並びに家族、親戚、身内を泣かしておいても、これを裁判に名をかりてわびないという心臓は、それは鬼ですよ、あなた。人間の気持ちじゃないです。これはとても人間の気持ちじゃございません。私は時間もありませんからこれはまたあらためてひとつ……(「あらためることはないよ」と呼ぶ者あり)それじゃ、世論に従いまして法務大臣にひとつ御説明を……。
  284. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 裁判中の案件でございますから、具体的裁判事件としてでなくて、一般論として、こういう立場にお立ちになった方に対して名誉の回復をする道が制度として何かなかろうかという、その問題としてこれをとらえまして、一言お答えを申し上げてみたいと思います。
  285. 小林進

    ○小林(進)委員 それはよろしゅうございます。これからそれは質問します。
  286. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 ああそうですか。はい、それじゃ……。
  287. 小林進

    ○小林(進)委員 いまの厚生省の頑迷な態度には、私も了承できません。これはまた世論を背景にいたしましてもっと厳重な質問をします。  次に、私は軍法会議、いわゆる陸軍、海軍刑法に基づく軍法会議のその不当性について、これを御質問をいたしますとともに、当然これは私はなきもの、存在しないものとして廃棄すべきであるという観点に立って御質問をいたしたいと思います。  これは昭和四十七年の三月二十五日であります。去年の三月二十五日にわが党の楢崎委員のこの問題に対する質問に答えて、軍法会議は不当だからこれはやめるべきではないかという質問に答えて、当時の法務大臣前尾国務大臣はこのように答えているのであります。ちょっと読み上げます、短いですから。「ただいま申しましたように、法律的にはいろいろ問題があると思います。ただ、各省で盛んにいま検討しておるので、最後の結論が出ておるわけではありません。ただいまのお話も含めて検討させていただきたいと思います。結論は最近において出すと思います、各省寄り寄りでやっておりますから。ただいまのお話も、刑事局長が持ち寄って、そして最終的な結論を出すと思いますから……。」去年の三月二十五日。同時に、そのちょっと前の三月十七日のこれも予算委員会で、当時の官房長官の竹下登氏が、同じく、「重大な問題であります、まことに申しわけない問題でございます、早急に処置いたしたいと思います。」という、こういう回答が出ております。ところが、いままでどうもその後の回答を聞いておりませんので、あとを継がれた法務大臣は、この軍法会議を存在しないものとするというこの要求に対して、どういうふうなお処置を内閣がおとりになったか、政府がおとりになったか、御答弁をいただきたいと存じます。
  288. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 軍法会議で行ないました裁判は、二つ方向があると思います。  一つは、陸軍刑法、海軍刑法などの一口にいう軍刑法、これを適用して処断をしたのが一つ。それからもう一つは、軍法会議でやって、軍法会議の裁判であるけれども軍刑法の適用をしなかった。たとえていえば破廉恥罪のごときものにつきましては、軍法会議でありながら適用した法律は一般刑法を適用して断を下したもの、こういう二色があるわけでございます。  前のほうの軍刑法に基づいて判定を下しましたこの種の判決は、どういうことになったかというと、先生御承知のごとく、終戦後前後三回にわたる恩赦によりまして、この判決は一切の効果を失うということになっております。ただし、ここに注意をすることが一つありますのは、それは判決の中身の及ぼす効果がなかったことになる、無効となるという意味でございます、この恩赦は。判決があったという事実は消えないのであります。判決があったという事実は消えないから、公務扶助料はちょうだいができない。昭和四十五年以降は、いろいろ政府も苦心をいたしました結果、公務扶助料がとれない人々につきましては、援護法の適用によって遺族年金を差し上げるという程度のことにとどまっておる。これは完全な名誉は、先生仰せのとおりに回復されておりません。判決の言い渡された中身の及ぶ効力はなかったことになるけれども、判決のあったという事実は消えていない。これを消さなければ問題にならぬのであります。これを消さねばならぬ。それを消す道は一体どうすればよいかということであります。  それからもう一つの問題は、この軍法会議の裁判でありながら、一般刑法を適用して裁判をしたというものは、これは恩赦にはなっておりません。なっておりませんが、言い渡しを受けましたときから十年を経過をいたしますというと、その受けた判決は効果がなかったことになる。これは刑法三十四条の二という条文がございまして、その条文によりまして恩赦になったのと同じ結果になっておる。しかし、これも先ほどから申しますように、判決それ自体があったという事実は消えない。これを消す道がなかろうかということが問題でございますが、この問題を法律制度として、とにもかくにも判決があった、人間社会に判決が行なわれた。その判決があったというこの歴史上の事実、そういう事実を取り消して、なかったことにするという法律は、私の調べますところどこにもいままで先例が見当たらぬ。外国の立法例にもございませんし、日本の法制の上にもそういうことがございません。判決はあったけれども、判決の中身が及ぶ効果というものは消すんだ、これはできることでございます。いままでできておるわけでございますが、言い渡した判決それ自体がなかったことになるという法制は初めての試みでございます。  私は、先生仰せの重要なこれらの人々の名誉回復、いやしくも戦争自体が間違っておったというのに、その戦争のまつ最中に軍法会議をやったことがどうかこうかなどということは論外で、これは何かの法制上の道がありますならば、これを根本から取り除く、そして判決がなかったことにするという方途を講ずることができるものならばこれを講じてみたい、こう考えるのでございますが、私は、実はありのままに申しますと、この御所論は、二、三日前に御質問の要綱として出てきました書類を拝見をいたしまして、なるほどこの事態は重大だということを感じたにとどまるのでございます。そこで、直ちに見通しが立たぬわけでございますが、私のところには幸いに司法法制調査部がございますので、そういう仕事をするところでございます司法法制調査部に命じまして、法制的に道がなかろうか、そして根本的に名誉を回復する道がなかろうかということを、前向きの方向で検討をしてみたいと考える次第でございます。
  289. 小林進

    ○小林(進)委員 法務大臣からは、私の質問の要点をよくとらえていただきました。しかも、問題解決のためにひとつ前向きにやりたいという御答弁をいただいて、私もやや明るい感じを受けたんでありまするけれども、しかしその答弁は、やはり昨年の三月二十五日の前の前尾法務大臣の御答弁も、いまのあなたのお答えほど明確じゃないけれども、そういう方向でひとつ各省話し合って何とか解決をしたい、こういうことを言われているのであります。だから私から見ると、前尾法務大臣より少しあなたのほうが前向きのような感じを受けますけれども、何か堂々めぐりをしているじゃないかという感じも強いわけであります。  しかし、問題はおっしゃるとおりなのです。遺族扶助料も確かにもらった、あるいは弔慰金ももらった。問題はそれじゃない。軍刑法で、軍法会議でやられて汚名を着せられた、そしてそれは子々孫々にまで残っていく、その痕跡をなくしてもらいたいというのが遺族の切実な要望であるわけであります。これに対しまして、法務大臣は法律上その形がないとおっしゃった。確かに私も調べましたが、ないです。ないが、それにやや近い例はあるんです。  これは何かといえば、わが日本の明治初年に、反逆児として賊名を負うたのが西郷隆盛先生であり、江藤新平先生であった。しかし明治のブルジョア民主主義、やはり議会政治というものがあったが、その政治の中で、後日どういう法律手続か知らないけれども、その汚名は抹消されて、そして後年侯爵にもなり、伯爵にもなり、国の元勲として祭られるような、ちゃんとりっぱな地位を獲得せられている。そういう先例があるんですから、何も昔は明治の西郷さんだ、こっちは下士官、兵だ、下士官、兵だけは二十年たっても、三十年たってもそれはどうでもいいという考えがいささかでも法務大臣や政府為政者の中にあるとしたならば、私は了承できないと思う。いいですか、今度の戦いの中で一体軍法会議にかけられた者がどれだけあるか、私はあなたにお伺いしたいのですけれども、時間がないから私が申し上げますけれども、いま調査した数字だけでも、昭和十六年から二十年まで陸軍だけで二万と八百七十七人、海軍だけで一万四千百六十四人。けれどもこれは全部じゃない。推定して大体軍法会議で処罰された者が五万人前後だろうといわれている。この人たちが全部こういう汚名を着て泣きぬれているんだが、その内容を見ますると、五万人の数字の中を見まするというと、ほとんど処罰されている者は下士官、兵、軍属、一般人ですよ。常人です。軍法会議は、御承知のとおり軍司令官の一存で、これを起訴せい、これを不起訴にせい、これによって起訴か不起訴かが始まるのであります。それから軍法会議が開かれる。そして軍隊には例として、何をやろうとも将官の罪は不問にせい、佐官の罪はこれを回避せい、尉官の罪は自決だ、みずから腹を切らせて、軍法会議にかけないうちに腹を切らせる。処罰は下士官、兵、軍属、一般の者に限るという不文律の規定がある。特に幼年学校出の者に対しては先輩がこれをかばって、一人も軍法会議や罪におとしいれるようなことはならぬという長い不文律の規定があって、そして全部下士官、兵が、いわゆる戦場という閉鎖社会の軍隊という中で、血も涙もない処罰を受けて死刑になったりしている。しかも軍法会議、いわゆる戦場における臨時軍法会議、その臨時軍法会議の中には、いわゆる軍法会議法に規定をせられているが、法務官は高文をとった専門家ですが、必ず法務官をつけなくてはならぬということだけれども、法務官をつけた軍事裁判はほとんどありません。一定の法廷の中で軍事裁判を開けという軍法会議の規定、私は軍法会議の規定をここに持っています。一つも実際に適用されておりません。大体憲兵隊長の部屋かあるいは憲兵の部屋で、いわゆる軍法会議と称するものが開かれている。いいですか、しかも軍法会議の時間は大体一時間、長くて二時間、三時間です。それで銃殺、死刑、ばんばんとやられている、これが実情です。しかも、その軍法会議には控訴の制度があるにもかかわらず、戦地における軍法会議には、その控訴審というものは絶対に認めない。すべて一審で終わりです。弁護士も一切配置されておりません。こういう中で五万人の人たちが処刑をされていっているのです。これをあなたは黙って見ているわけにいきますか。こういう実態です。  いまもう戦争が済んで二十七年、一体この戦争をやったのはだれですか。この戦争を発動し、計画をし、しかも重要なる計画の参謀の中に入った者はだれですか。そういう高級な人や政治の責任者は全部罪になっていないじゃありませんか。だれが一人でも罪になりましたか。東条はなったとおっしゃるかもしれませんが、東条さんはあれは外国の軍法会議、いわゆる勝者が敗者を処罰するという外国の軍事裁判にかけられただけの話でありまして、われわれに言わせれば茶番劇、と言っては悪いかもしれませんが、茶番劇のようなものだ。そこで刑を受けたと言うけれども日本国内の裁判で、戦争を発動し、戦争を計画し、戦争の主要な役割りを演じた者が、一人でも処分を受けた者がいますか。罪になった者がいますか。そうしてぬくぬくとして、東条さんの奥さんにたとえれば、いま厚生省にもいるだろうけれども、遺族年金はいま幾らだ。百万円近くの遺族年金をもらって、わが世の春を謳歌しているとは言わぬけれども、ぬくぬくと生活している。東条はひきょう者だ。ピストル自殺で死んだまねをしたけれども、逃げて生きていたら、いま二百万円近い年金をもらっている勘定になるだろう。そういう状態の中で、戦争に参画もしなければ計画もしない、妻子眷族の中にいて、いやだいやだと言いながら持っていかれて、食うものも食えない孤島の中で苦労した諸君が、こういう閉鎖社会の中の司令官の一方的な判断でみんな銃殺になったり、陸軍刑法にやられたと言っているものを、このまま放置しておいて、国民感情が許しますか。  私は率直に言います。天皇陛下は戦争がお済みになったときにマッカーサーのところに行って、私が責任をとるから、朕の股肱の臣はひとつ死刑にしないでくれ、私の命にかえても。しかし庶民は言っていますよ。こうして天皇さまは、いわゆる自分の周囲に高級軍人や参謀長や高級の政治家をマッカーサーにお頼みになったかもしれないけれども、われわれ草の根に死んでいる下士官や兵や一般庶民のこのわれわれに対して、天皇陛下は何もやさしいことばをかけてくれないのか。われわれは二十年たっても三十年たっても、まだこういう銃殺だの軍刑法で死刑になったという汚名を着ながら世間をはばかって生きていかなければならぬのか。こんなことが許されていいのか。天皇さまにも恨みも言いたくなりますよ。これが庶民感情であり大衆の気持です。それは決して天皇さまが悪いのじゃない。周辺にいる者が悪いのです。皆さん方が悪いのです。それを、法律でそういうことが助けられないとか救えないとかいうことでこれを放置しておいて、戦争は済んだなどということでほおかぶりをされていて許される問題ではないと私は思うのであります。法律の段階ではない。政府全般、いわゆる国民代表の政党全般として、いま少し真剣にこの問題を考えるべきじゃないか。  時間がありませんから簡単に終わりますけれども、同じ資本主義のアメリカは、それでもいいですよ。軍法会議を開くときには、そんな下士官、兵ばかりじゃない。真珠湾攻撃をやったときのキンメルなどという者はちゃんと軍法会議に呼ばれている、おまえなぜぼやぼやしていたと。ちゃんと将軍も軍法会議にかけています。それくらいでなければいかぬのです。日本人ではどうです、将官で軍法会議にかかった者がいますか。そういう閉鎖社会の中でやっているこの問題を真剣にひとつ考えてくださいよ。いいですか。  もっと言っていいのなら、時間があまりありませんが言いますけれども、私は、横井庄一さん、よく助かって帰ってくださってああよかったなと思います。今度は奥さんと一緒に新婚旅行はグアム島へおいでになるそうです。実に明るい感じがいたします。しかし、軍法会議のたてまえから見れば、これは逃亡兵じゃないのですか。辻政信さん、みずからおれは逃亡したんだという「潜行三千里」の本を出した。あれは逃亡兵じゃないのですか。罪に問われることなく参議院議員になった。また逃亡したくて行っちゃって、今度は行くえ不明になっちゃったのでありますけれども。小野田寛郎さん、いま、これから厚生省が先頭に立ってフィリピンへ飛んで行かれる。あれは何ですが、あれは逃亡兵です。しかもあの逃亡兵に対して、おい戦争に負けた、小野田逃げろ逃げろ、逃亡せいと言って指揮した人は、これは逃亡の共犯だ。いま内地に帰ってきて、名前は言いません、ぬくぬくとして生活している。恩給生活をやっています。しかもその小野田少尉だって、これは大きな声で言えませんが、やはり逃亡の最中にフィリピンの農民の人を殺している。一体これは出てきたときに、もしかりにつかまったときに、フィリピンの法律に該当するのかしないのか。一体どう処断される考えだったのか。いま大騒ぎされていられるが、そういうさなかに、横井庄一さんと同じ状況でいる人たちが、みんな逃亡兵や軍刑法で処罰を受けて、いまでも泣きぬれている人が山ほどいるのですよ。  ここで言えば、山下馬吉一等兵などという事件がある。もう時間がありませんからちょっとだけ申し上げますけれども、横井さんと同じです。この山下さんの場合、ちょっと読み上げましょうか。「「私は横井さんと同じように逃亡した。私は罪に問われ、今もその枷を背負っている」という人がいる。長崎県福江市の山下馬吉軍曹である。昭和十三年久留米軸重隊に入隊以来、支那事変から大東亜戦争にと、七年間余の従軍の後終戦をタイでむかえた。日本軍は投降して、武装の解除が行なわれることになった。昭和二十年九月二十六日である。山下軍曹は納得できなかった。部下三名とともに投降部隊を脱したのである。山下さんたちの頭は次の言葉でいっぱいだった。「生きて虜囚の辱めをうけず、死して罪禍の汚名を残す勿れ」戦陣訓のおしえであった。また、日本軍が捕虜に加えた残忍な仕打ちを、こんどは日本兵がうけることになるのではないか。なんとかして生き伸びようと、秘かに相談して逃亡を決意したのである。万一の場合を考えて、武器をもったまま部隊を離れたのである。タイ国チェンマイから流浪がはじまり、いつの間にか仲間が別れ別れになり、山下さん一人、昭和二十一年二月」戦争が済んだ次の年の「二月六日バンコックにあらわれて自首した。旧第十八方面軍臨時軍法会議」は昭和二十一年の二月に開かれて、戦争が済んだ一年あとに開かれて、「同月二十三日逃亡「横領の罪で」手榴弾を持っていったので、武装していったから軍隊の武器を盗んだということで、「懲役一年の判決をうけ、バンコックで一カ月、日本に送還されて横浜刑務所で三か月刑に服したのである。大赦令によって逃亡罪は赦免されたが、」いわゆる手榴弾を盗んだという「横領の前科は消えないのである。」そしていまなおつらい生活を送っております。横井さんはこれは手榴弾ではない、鉄砲を持って逃げちゃったのです。横井さんはりこうだったから、鉄砲を持って宮城へ行って、天皇さま、お預かりいたしましたこれをお返しいたします、こう言ったので逃亡罪を免れたのでございましょうが、一体そんな不公平がこのままに放置されていいのでありまするか。私はこんな例を、もう時間がありませんから簡単にしますけれども、拾い上げたら幾つでも例がある。  これは新潟県小出町羽根川、佐藤竹松さんという人です。この人は曹長なんです。これがやはり、これだけ申し上げてひとつ結論を急ぎますが、この曹長さんが、いいですか、これはビルマの、いわゆる二十七年前の暗く悲しい思い出にいまも悩んでいる、終戦直後、ビルマの収容所で起きた集団暴行事件で、佐藤さんら県内出身の当時下士官七人は部下の罪をかぶって、旧軍刑法で無実の有罪判決を受けた。これは戦友たちが年に一回ずつ長岡市に集まり、上官暴行の汚名だけはそそぎたいと、無実を晴らす対策を話合うというのです。「佐藤さんら下士官七人は旧陸軍第五八連隊第一中隊に属し、終戦をビルマで迎えた。英国軍に武装解除されて、ビルマ・サガエンの捕虜収容所にはいり、連日強制労働に狩出されていた。帰国の望みも断たれたまま、収容所生活はすさむ。二十年の暮れ、」戦争に負けた年です。「事件が起った。佐藤さんの話によると、同中隊のA准佐を」准佐というのはこれは一番悪いのです。ちょうど齋藤君みたいなものなんです。このA准佐——准佐ではありません、准尉ですが、「同中隊のA准尉を兵隊四十数人が集団でなぐり、軽傷を負わせたのだ。収容所の生活は苦しい。食糧が乏しかった。その食糧をなぐられた准尉がピンはねした。」兵隊の分をピンはねしていた。「この准尉、戦争中は弾のこない後方に逃げ隠れ、戦いが終ると部下に当りちらしていた。兵隊たちの積る」恨みを買っていたのだ。それが爆発したのだ。ところが、同情した下士官が兵隊の罪を買った。これは兵隊が四十人でなぐった。そうしたら中隊長以下来て、おまえの監督が悪いから、兵の暴行は上官たる下士官おまえの責任だから、おまえが罪をとれと言われて、どこで曹長、いわゆる佐藤竹松曹長以下七名が罪をとらされた。佐藤さんは当時曹長でありまするから下士官として罪をとらされた。これはいまはわかりませんが、これは旧軍隊のしきたりなんです。兵の悪いのはみなこれ上官の罪にされるのでありますから、下士官が罪をとらされた。「他の下士官と一緒に党与上官暴行と暴行静止不服従罪で禁固二年の刑」に処せられて一等兵に降格させられた。どうですか。七人は二十一年七月に仮出獄という名目で帰国したが、「青春の貴重な時代を戦いに明け暮れたうえ、終戦後に受けた無実の暴行罪の判決は大きな痛手だった。」昭和四十年十月の大赦令で恩給だけは復活したが、それまでの二十年間は恩給が停止されたし、そしてその後恩給は復活したが、一等兵の恩給をもらっていて、曹長の恩給から見れば三分の一にも満たないような、そういう形に放置されて、いまなおうつうつとして楽しまざる生活を繰り返している。  それで結論を出しますが、実際数えあげていけばまことに切りがない。四分の一世紀を過ぎた今日、このような暴力的ないわゆる軍法会議というのは、全くぼくは赤軍のあのリンチよりもひどいと思う。内容を全部言えといえば私は何でも言いますよ。赤軍のリンチよりも悪いのですよ。閉鎖したあの戦地の中にあって、みんな殺している形は。それをいまでもなお正当であるとして護持をして、守っていかなければならぬ理屈がどこにあるのか、私はそれを法務大臣にお聞きしたい。一体なぜこれを守っていかなくちゃならぬ理由がどこにあるのか、私はそれをお尋ねいたしたい。西郷さんや江藤新平さんを無実にして、昔の元勲にした。私は元勲にしろと言っているのじゃないのです。あのときの戦争を計画した重大なる仲間の一人であったといったらお気に召さぬかもしれませんけれども、岸さんも、顧みて総理大臣にもなられた。賀屋さんも、戦争内閣の重大な責任者も、この中で国会議員として栄誉の限りを尽くしてはるばると引退をされた。そのさなかに、下士官、兵、一般の人だけは、何でいまなお子々孫々に至るまで泣いていかなければならぬのか、その理由をひとつ聞かしていただきたい。どうしてもこの軍法会議自体を、特に戦時中における軍法会議自体をひとつないものにしていただけないか、これが私のお願いの筋です。私どもはここにその法律案の改正案も準備しております。政府がおやりになってくださるというなら、私はこの改正案をここへ提出するのをやめます。
  290. 根本龍太郎

    ○根本委員長 小林君に申し上げます。あなたの持ち時間はすでに経過しております。結論を急いでください。
  291. 小林進

    ○小林(進)委員 で、やめたいと思いますが、法務大臣、特にこれは一法務省だけでなくて、内閣全般の問題でございますから、総理大臣をひとつ代表して、総理府総務長官から御意見を承っておきたいと思います。
  292. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 何とかして法制的にやる道がなかろうか、何とかしてやってみたい、こういう積極的な姿勢で検討をいたします。  かりの話でありますが、これができました上は靖国神社にお祭りすることができることにもなろう、名誉は必ず回復される、こう考えますので、最善を尽くしてみたいと存じます。
  293. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 先ほどから小林委員の、ほんとうにその立場に立っての正義感に満ちた御意見、私も深く傾聴、拝聴いたしております。  したがいまして、いま法務大臣も述べられましたように、政府といたしましてもこれらの問題につきましては、どう法体系の中にこれを裏づけてまいるべきであるかというような点については、関係省庁とまた十分連絡をとりながら、前向きの姿勢で考えてみたい。また小林委員のとうとい御意見、また指摘になりました点については、総理にも御報告申しておきたい、こう考えております。
  294. 小林進

    ○小林(進)委員 一言でありますが、いまも総務長官が、軍法会議の判決が、法体系の異なる現行法ではどうも再審ができないのではないかというようなお考えであるならば、こうしたいわゆる弁護士も上告も何もない異常な状態で受けた裁判でありますから、せめて再審の道でも講じていただきたい。どうしても軍法会議自体を無効にする、なきものにするということがもし政府側でできないとならば、こういう無実の罪に泣いている人たちのために再審の道を開くという法律改正も、私はあわせて考えていただきたいと思いますが、結論は、やはり全部を一律に軍法会議の桎梏からのがれられるような、ないものにしていただくというのがお願いの筋であります。これをおやりいただきますまで、私は何十年でも繰り返して政府にお願いの質問をいたしますので、どうぞひとつよろしくお願いいたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  295. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  296. 根本龍太郎

    ○根本委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  明二十八日、井上普方君の質疑の際、日本住宅公団総裁の出席を求め、意見を徴したいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  297. 根本龍太郎

    ○根本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、明二十八日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十五分散会