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1973-02-24 第71回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十四日(土曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 根本龍太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小澤 太郎君    理事 仮谷 忠男君 理事 田澤 吉郎君    理事 阪上安太郎君 理事 辻原 弘市君    理事 谷口善太郎君 理事 山田 太郎君       荒木萬壽夫君    伊能繁次郎君       今井  勇君    臼井 莊一君       大野 市郎君    倉成  正君       小平 久雄君    國場 幸昌君       島田 安夫君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    塚原 俊郎君       野田 卯一君    野原 正勝君       福田  一君    保利  茂君       前田 正男君    増岡 博之君       松浦周太郎君    松野 頼三君       保岡 興治君    安宅 常彦君       北山 愛郎君    小林  進君       島本 虎三君    中澤 茂一君       中村 重光君    安井 吉典君       栗田  翠君    津金 佑近君       山原健二郎君    石田幸四郎君       岡本 富夫君    安里積千代君       小平  忠君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 田中伊三次君         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 櫻内 義雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         労 働 大 臣 加藤常太郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       江崎 真澄君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君         公正取引委員会         事務局取引部長 熊田淳一郎君         公害等調整委員         会委員長    小澤 文雄君         公害等調整委員         会事務局長   川村 皓章君         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         防衛施設庁総務         部長      河路  康君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁自然保護         局長      首尾木 一君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         法務省民事局長 川島 一郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         文部大臣官房審         議官      奥田 真丈君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省管理局長 安嶋  彌君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林大臣官房予         算課長     渡邉 文雄君         農林省農林経済         局長      内村 良英君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         通商産業省貿易         振興局長    増田  実君         通商産業省企業         局長      山下 英明君         通商産業省公害         保安局長    青木 慎三君         通商産業省公益         事業局長    井上  保君         中小企業庁長官 莊   清君         運輸大臣官房審         議官      原田昇左右君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君         運輸省自動車局         長       小林 正興君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         自治省財政局長 鎌田 要人君        自治省税務局長 佐々木喜久治君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月二十四日  辞任         補欠選任   赤澤 正道君     國場 幸昌君   北澤 直吉君     増岡 博之君   黒金 泰美君     今井  勇君   田中 龍夫君     保岡 興治君   灘尾 弘吉君     島田 安夫君   阿部 昭吾君     中村 重光君   細谷 治嘉君     島本 虎三君   中島 武敏君     栗田  翠君   不破 哲三君     山原健二郎君   矢野 絢也君     石田幸四郎君 同日  辞任         補欠選任   今井  勇君     黒金 泰美君   國場 幸昌君     赤澤 正道君   島田 安夫君     灘尾 弘吉君   増岡 博之君     北澤 直吉君   保岡 興治君     田中 龍夫君   島本 虎三君     細谷 治嘉君   中村 重光君     阿部 昭吾君   栗田  翠君     中島 武敏君   山原健二郎君     不破 哲三君   石田幸四郎君     矢野 絢也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これより会議を開きます。  昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行ないます。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係もありますので、意見をできるだけ避けまして、簡潔にお尋ねをいたしたいと思います。  最近の雑誌であるとかあるいは新聞報道等ドル引き下げの問題に関連をいたしまして感じることは、アメリカほんとうドルを防衛しようとする意思があるのかどうかと実は疑わしく思うわけです。あとでお尋ねしてみたいと思いますけれども、ニクソン大統領経済報告だとか、あるいはまたシュルツ財務長官談話、いろいろなものを読んでみましてもそう感じるわけですが、今度のドル一〇%引き下げ、これによってアメリカ国際収支というのが改善されるというように日本政府は見ておられるのかどうか、そこらあたり考え方、見通しというものを、ひとつ大蔵大臣から伺ってみたいと思います。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 今回のドル切り下げで、どの程度アメリカ貿易収支改善されるかというお尋ねでございますが、アメリカの今後の経済政策経済動向はもちろん、世界経済全体の動向とも密接に関連する問題でございますから、流動的な要因が非常に多いと思います。したがって、現段階で的確に予測することは困難でございますけれども、長期的に見れば、今回の措置によって米国の貿易収支改善方向に向かうことは間違いないのではなかろうかと思います。  ただ、一昨年の通貨調整のときの実績に照らしても明らかでございますが、切り下げの直後には、短期間ではありますけれども、かえって逆に貿易収支悪化傾向を示すということはあると思います。したがって、切り下げ効果というものは、長い目で見ていく必要があるものと思われるわけでございます。  なお、アメリカ側からも、御指摘のように、いろいろの意見が出ておりますけれども、一番端的な意見としては、アメリカ財務次官が今回のドル切り下げに際して発表しました意見の中で、アメリカ国際収支改善効果が完全にあらわれるのには、二年以上かかるであろうということを言っておりますことは事実でございます。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 きのうの商工委員会で、中曽根通産大臣お答えになっておりましたが、円の切り上げをやっても、一、二年は効果が出るのがかかるであろう。いま大蔵大臣お答えになりましたように、ドル切り下げをやりましても、いま直ちにその効果があらわれるということにはならない、若干の期間が必要であるということは、私もわかります。わかりますけれども、それにしても一昨年十二月の平価調整の際のアメリカ貿易収支赤字、それが二十億ドル程度ございましたですね。ところがこれが六十一億ドル、実に三倍の赤字という形に悪化してきた、拡大をした。このことは、常識では考えられないのではないでしょうか。やはり効果がそう急にあがらないんだというけれども、徐々にあがってこなければならないですね。そうではなくて三倍に赤字がふくれたということは、大蔵大臣答弁ではございますけれども、私はどうも理解ができないわけです。  そこで、アメリカ経済学者計画値を用いた東京銀行試算によると、一〇%切り下げ価格効果というものは約七十億ドルである、こう試算をいたしておるようであります。ところが、アメリカのことしの経済成長率は名目一〇%ということになっておりますね。そうした高い成長率が見込まれておるということになってまいりますと、勢い所得効果というものが出てくるわけでしょう。所得効果が出るということは輸入が増加してくるということになりますね。そうなってくると、私は貿易収支というものはこれはむしろ拡大をしていくのではないかというように感じますが、大蔵大臣はどのようにお考えになりますか。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御指摘のように、そういう点も大いにあろうかと思います。同時に、アメリカ経済日本とずいぶん構造も違っておりますから、海外貿易に依存する度合いは日本と違って相当低いわけでございますから、必ずしも所得の増加ということが海外からの輸入の激増ということには結びつかないという点もあろうかと思いますけれども、これらは、アメリカのこれからの国内政策動向にかかるところが非常に多いと思います。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 アメリカ国内政策動向を見ていきたいということですけれども、ニクソン大統領が先般の経済報告で言っておることは、貿易赤字は、インフレ防止によってではなくて、今後の通商交渉並びに通貨交渉でやるという姿勢を明らかにいたしておりますね。してみると、ほんとうアメリカが独自の施策というものを意欲的に進めていこうとする意向は、ここであらわれていないじゃありませんか。そうなってくると、いまの大蔵大臣お答えは、私はどうもニクソン大統領アメリカ政府考え方とは違うような感じがいたします。  さらに、シュルツ米財務長官談話によりますと、金利平衡税と対外直接投資規制段階的に解除すると言っておりますね。このことは何を意味するんでしょうか。私は、これはドル防衛の放棄であると考えるのでございますよ。だとすると、世界基軸通貨であるところのアメリカといたしましては、私はきわめて無責任な態度だと思うのです。これであってはならないんだ。したがって、政府といたしましては、いま大蔵大臣お答えになりましたようなことではなくて、アメリカのいわゆるドル交換性をどう回復をするか、これに全力を集中して私はアメリカに迫っていくという態度でなければいけないんじゃないでしょうか。あまりにも希望的観測というものによって終始していくということは適当ではない。アメリカドルをどう防衛するかということは、私は、日本は言うまでもなく世界に重大な影響を及ぼすということになってまいりますと、あなたまかせというようないまの大蔵大臣答弁は理解できないです。そういうことであっては国民は納得しません。  日本も、待ち政治というものがいままでありましたね。その待ち政治というものは一てきしなければならぬと思います。みずから進んで改めるところは改めていくという態度でなければいけない。それが、国際的に日本発言力というものが非常に高くなって、日本に対する信頼性というものが強められてくるというように思います。しかしそうではなくて、政府施策を見てみると待ち政治である。まあ外圧だ、外圧だと今度の円の変動相場制移行の問題にしても言っておりましたが、それは外圧ということではなくて、外圧日本政府が待っておったということですよ。国会からきびしく批判される、あるいは財界からも相当きびしく圧力がかかってくる、だからできるだけ日本政府が恣意的にやるということは、いままで円の切り上げはいたしませんとこう言ってきた立場上それは言えないのだから、だからして向こうさんまかせで、アメリカドル切り下げをやった、あるいはその他通商上の圧力を加えてきた、どうすることもできません、もうやむを得ないのです、こういうことでやおら立ち上がってやろうとする、これがいわゆる待ち政治ですね。これはいけないことなんです。これは予算委員会等、あるいはその他の委員会でも同僚諸君から強く指摘されたことでありますし、私は、おそらく政府も反省をいたしておることと思うのでありますけれども、きょうこの段階になっても大蔵大臣のいまの答弁は、攻撃するわけではありませんけれども、納得いかないんじゃないでしょうか。この点はどうお考えになりますか。これは続いて経済企画庁長官からも、日本経済関連をする問題でございますから、私はお答えをいただきたいと思うのです。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 もう少し長く御説明いたしませんと、私の真意が御理解いただけないかと思いますけれども、いまのお話は、アメリカ国内政策の問題と、それからもう一つは、今日まではアメリカドル国際通貨の中でただ一つ基準通貨になってまいったわけでございますが、そのアメリカドルが金との交換性が回復していない、こういう一つの大きな問題があるわけでございます。したがって、基本的に国際通貨の安定ということからいえば、アメリカドル兌換性を回復して、そして合理的な基準にその相場が置かれるということが、一番国際的に望ましいことであると思います。したがって、従来からもそういう点で日本はあらゆる機会に、その期待のもとに主張も続けてきたわけでございます。しかし現状から想像して、はたしてそういうことができるかどうかということになってまいりますと、非常に疑問が多い。  そこで、やはり将来の問題としては、たとえばSDR中心にして国際通貨の安定を期するというような方向に向かうように、二十カ国会議その他において機会あるごとに、従来からの日本主張というものを、成果があがるような努力というものを一そうしていかなければならないと思います。しかし同時に、何と申しましてもアメリカドルというものは、現状においてはまだ基準通貨であるわけでございますから、アメリカドル自身が、国内的にもインフレ抑制策をとり、その他の面におきましても、アメリカドル自身が信認を回復するようにするということが、これが世界的にも望ましいことでございますから、よほどアメリカ側努力を新たにしてもらわなければならない。そのことについては、今後とも日本としては十分の主張をしてまいりたい、努力を一段と強くしていかなければならない、こういう考え方を持っているわけございます。
  9. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 基本的には大蔵大臣と全く同じような考えでございますけれども、ただ、いまドルの問題を考えてみまする場合に、各国ともドル基準通貨として考えておるということは変わりないのでございますが、ドルの現在の居どころからいたしまして、自分の国がドルを持っているということ、資産として評価するということに多少の動揺が見られるわけです。さりとて、自国の通貨交換性のある通貨として使うということについては、みなそれぞれ回避しているというのが、今日のドルに対する各国の見方であるというふうに思うのでございます。  そこで、アメリカがどう考えているかということは、これはそんたくの域を出ないわけでございますけれども、今日アメリカは、一日も早く金とドルとの交換性を回復するということを考えているかというと、これはやはり私は中村さんと同じような気持ちを持たざるを得ないのでございます。この段階において一体どう考えたらいいか、日本としてどう考えたらいいかということになりますと、やはりフロートということにその意味がある。変動相場制をこの段階において持っていて、そして一方においてアメリカドルと金との関係をどう持っていこうとしているかということを探りながら、基準通貨としてのドルの地位をどう持っていくかということを、日本として考えていったらいいんじゃないかというように思っておるわけでございます。
  10. 中村重光

    中村(重)委員 大蔵大臣答えられたように、それはSDRというようなものを中心考えていくこと、一つのこれは考え方、これは相当重要な問題点として考えていかなければならぬ、こう思うのですよ。アメリカドル信頼性を高めるような努力をしてもらわなければならないと、こうおっしゃる。私は、それは期待感だけであってはならないと思いますね。もっと積極的に日本政府としてはこうあるべきであるというので、これはやはり国際会議においても主張していく、その実現をはかっていく、そういうことでなければいけないんじゃないでしょうか。これはまあわかり切ったことでありますが、アメリカといたしましては、貿易収支あるいは国際収支でどんなに赤字になってもそれ自体では困らないわけですね。そういうことだから、結局ドルというものが、強い円であるとか、あるいはマルクであるとか、そこへどんどん流れ込んでいくわけでしょう、そこへたまっていく。たまったからおまえのほうは円が強い、あるいはマルクが強い、これはけしからぬ、だからしてこの円の切り上げをやれ、あるいはマルク切り上げをやれ、こういうことで、国民がせっせっと汗を流してかせいだ、そういう努力の結晶であるところの、何と申しますか、外貨というものを再び吐き出さなければならぬ、こういう形になっているわけでしょう。私はそのことを考えてみますと、政府はもっとき然たる態度というものを持たなければならない。もっと見識を持って、先ほど申し上げましたように、みずから正すべきものは正す、同時に要求すべきものは強く要求して、単なる期待感ではなくて、これを実現させるということでなければいけないんじゃないでしょうか。  いま、変動相場制で、おそらく前回の一六・八八%、一六%から二〇%程度円切り上げというものは避けられないんではないか。そのことが、言われたように日本経済に及ぼす影響というものは非常に大きい。中小企業、農業あるいはいろいろな日本生産性の低い、競争力のない産業に対しましては手痛い打撃を受けるわけなんです。しかし、さあこれで終わったから、これからひとつ立ち直っていこうということになってまいりますと、希望も生まれてまいりましょうし、意欲も出てまいります。しかし、今度こうしたけれどもまたやられるんだ、こういうことになってまいりますと、国民といたしましてはお先まっ暗ということになっていくではありませんか。そのことを考えてみますと、いまお答えになりましたような抽象的なことではなくて、もっと見識のある、そうした私は日本政府態度というものが打ち出されなければならないと思います。  今回のドル一〇%切り下げ、あるいは日本が幾らになりましょうか円の切り上げと、こういう形になってまいりました。それによってアメリカというものは貿易収支というものが、あるいは国際収支基礎収支というものが実はこうなるのだ、あるいはそうならない、要するにこれが回復しないということになってまいりますと、日本政府といたしましては、もっと具体的な考え方をもってアメリカに迫っていくという態度でなければならないと思います。ですから、いまお答えになりましたようなことはきわめて抽象的でありますし、いままでもお答えになったことでありますから、一歩前進した答弁というものが出ないものでございましょうか。いかがでございますか。
  11. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一口に申しますと、アメリカ自体が保護主義的な政策になるようなことに対しては、これは断然反対をしていかなければならないと思います。というのは、たとえばアメリカとして日本を含む他国からの輸入に対して、障壁を新たにつくるというようなことは避けてもらわなければなりませんし、また逆に、アメリカとしても国際収支改善には非常な努力をしておるし、他国にも要請しているくらいでありますから、アメリカから日本を含む他国に対して輸出制限を要請されるようなものに対しては、輸出制限をしないというようなことも、これは非常に大切なことでございますが、ともするとそういう気配もないではない。こういう点については、日本としても重大な関心を持って交渉もし、主張もしていかなければならない。そうしてやはり日本としては、自由開放の体制で日本の進路を世界の中に求めていることが国是であると思いますから、この日本の基本的な考え方が十分通っていけるように、他国、ことにアメリカもそういう基本的な姿勢で応じてもらうように、これは基本的な問題でございますが、大いに主張すべきところを主張してまいりたい。過去においてもそうやってまいりましたつもりでありますが、一段とそういう面については努力が必要であると思います。
  12. 中村重光

    中村(重)委員 ただいまお答えになりましたようなことで、日本政府のスケジュールと申しますか、その他の先進諸国との間にどのような協調を保ってやっていこうとお考えになっておられますか。
  13. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そのことは、反面におきましては、日本としては累次にわたるいわゆる円対策、これについては相当の努力をしてまいりまして、それなりの効果はあったと思いますし、これからもあがってくると思いますけれども、これはやはり推進していかなければならない、こう考えるわけでございまして、その中には御案内のように、一々申し上げませんけれども、いろいろの項目があるわけで、相当手がけてまいりましたが、たとえば今度の国会におきましても、関税の問題についても御審議を願っており、あるいは今後におきましても資本の自由化等につきましても、政府として考えておりますことを実行に移したい、こういうふうな考え方で進んでおるわけでございます。
  14. 中村重光

    中村(重)委員 私は、日本がこれから進めていこうとする通商上の問題、努力ということについては、続いてお尋ねをしたいと思うのですが、いまあなたにお尋ねをいたしましたのは、対外的な協調体制ですね。アメリカに向かって日本一国だけで言う、要求するということではなくて、いわゆる国際舞台というものが必要になってまいりましょうから、関係の最も深い欧州諸国、まずそうした国々とどのような場所で、今後どのような方針で迫っていこうとお考えになっておられるかということをお尋ねしたわけです。
  15. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、いま非常に多面的な状況になっておりますのと、それから、ひとりこれは通貨問題だけでございませんで、通商貿易全般あるいは資本全般に通じての問題でございますから、たとえば通貨問題にすれば、一つの場は二十カ国委員会というようなところがその場でございますし、またIMFもその場でございます。貿易通商ということになれば、多国間の問題の討議の場としてはガットその他もございますし、あらゆる機会を活用していかなければなりません。それから同時に、たとえば対外経済協力というようなことも大きな問題でございますが、これは二国間の折衝の問題でもありますが、同時に国連その他この系統を通ずるいろいろのまた国際組織がございますから、それらの場において日本として積極的にやるべきこと、あるいは他国に要請すべきこと、これは多面的に交渉やあるいは討議の場を持っておるわけでありますから、多面的にその成果をあげるようにしていかなければならない。その討議や折衝や、あるいは要請の場というものは、今日においては実に多面的になっておりますので、あらゆるそれらの機会を通じて、日本の国益の上に立った主張努力ができると考えております。
  16. 中村重光

    中村(重)委員 大蔵大臣お答えになったんだと思うのでありますけれども、円の変動相場制から切り上げという形に進めていくには、日本単独でもあり得るということを言われたように伺っているわけですけれども、でき得るならば、単独であることよりも、平価調整という、スミソニアン調整のときのような形のものを望んでおられるのではないか、こう思うわけです。そのいずれを日本政府としては望んでおられるのか。国際的な調整の場で問題を解決していこうとすると、いまお答えになりましたようなことを、アメリカに対して強く迫っていくということであるのかどうか。それから、その場合に、ドルと金との交換性回復といったようなことがいま期待薄であるとするならば、それにかわるものといたしましては、当面SDRの問題が考えられるのではないかと私は思います。それらの点に対しては、日本政府としてはどのように態度を固めてお臨みになろうとしておられるのか、それをひとつ伺ってみたいと思います。
  17. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、日本としていずれのやり方をするのが国益上有利であるか、率直に申せばそういうかまえ方でいくべきものである、かように考えておるわけでございます。  それから、きわめて最近の、二月に入りましてからの情勢で申し上げますならば、今回のドル切り下げを含むところの国際的な通貨の問題の処理は、一昨年のスミソニアン会議のような形はとられなかったわけでございます。本来ならばスミソニアン式の方式のほうが穏当である、あるいはそれが正常な姿であると思いますが、今回の場合のごときは、ドイツを頂点に突発したと申しますか、起こりました不安状況に対して、それぞれの国が急速に態度を決定しなければならなかったために、必ずしも会議体でやらなかったわけでございますから、こういう状況から見れば、日本の場合におきましても、そのときの状況や条件、いろいろございますけれども、場合によれば日本としてきめなければならない場合もあるかもしれない。しかし、もちろん今回の場合におきましても、各国が一堂に会して会議をして、その結論としてあることをきめたわけではありませんけれども、やはり相互間に、双方とも理解を持ちながら、それぞれのやり方、出方というものを連絡し合いながら、それぞれの国が適当と思う措置をとったわけでございますから、今後におきましても、ことばは必ずしも適当でないかもしれませんが、そういったような関係国間の根回しとか理解のあるやり方をとっていくことは当然のこと、かように考えるわけでございます。
  18. 中村重光

    中村(重)委員 私も、今度のアメリカドル切り下げ、それから日本変動相場制移行ということが、スミソニアン調整のような形で進められなかったということは承知をしているわけです。しかし、日本変動相場制というものがいつまでもそのままであるということはあり得ないでしょう。大蔵大臣は、相当な期間と言っていらっしゃるわけですが、その際に、できるならば、日本政府としては、何か国際会議の場でいろいろとアメリカに要求するような場を持つということは、当然お考えになっておられるのではないか。しかし単に単独切り上げであるということになってまいりますと、その場というものはないわけです。ですから私が、日本も正すべきことは正すと申し上げたのはそういうことでございますから、切り上げはやるけれども、単に単独切り上げというような形だけではなくて、やはり国際舞台の場でSDRの問題も話し合う、アメリカドルと金の交換性回復の問題についても、日本政府としてはどうするのかというようなことについての考え方をまとめる、そして国際会議の場でアメリカに追っていく、そういう態度であるべきだということを私は言っているわけです。そのことについてどうお考えになるかということをお尋ねしたわけでございますが、しかし、後段のお答えの中で一応出てまいっておりますから、その点についてはあらためてお尋ねはいたしません。  ただ、何回も申し上げますけれども、みずから正すべきことは正すけれども、アメリカにもっと強い態度で当たりなさい。あなたもお答えになりましたように、アメリカみずからは自由貿易主義というものを事実上放棄しているのですね。そして、よその国にだけ自由貿易主義であれということを強調しているということは、けしからぬ話ではありませんか。今回の通貨危機といったようなものも、アメリカ政府の意図を受けた多国籍企業というようなものが、ドル売り、マルク買いというようなことで大きな問題を引き起こしたといったようなことを考えてみますと、あまりにもアメリカの身がってというものは許すべきではないと私は思うのです。そのことについて強く私はあなたに言っているわけでありますから、日本政府としてはほんとうに反省をして、みずから正すべきものを正していこう、これからこうしようといったようなことをお考えになっておられるとするならば、そのことをもって堂々たる態度で臨んでいくというような姿勢がなければいけないじゃありませんか。そういうことでなければ、あなたが先ほど来お答えになっておりますことも、いままでのいわゆる外圧期待する待ち政治、できるだけ自分はどこからも非難されぬように、まあやむを得なかったという形で切り抜けていこうとする態度を、少しも変えていないというような感じを私は受けるわけでありますから、そういう態度はいけないのだということを申し上げているわけです。  先ほどあなたは、前回の通貨調整後だいぶ努力をした、こうおっしゃっておられる。私は皆無であるとは申しません。しかし、結果から見るならば、何もなさなかったと言われても返すことばはないのではないか。しかし、あなたが言われるように、努力をしたのだ、したけれどもどうしても円が強い。どうして円が強いのかということについては、あなたはどうお考えになっていらっしゃいますか。
  19. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどもちょっとお答えいたしまして、いまお述べになりましたことは、私も原則的にまことに同感でございまして、日本の国益を伸ばし主張すべきことを主張するのには、多数国間の会議を活用するということが原則的に一番よい方法だと思いますけれども、場合によりますと二国間で大いにやったほうが有利の場合もございますから、その辺のところは、いまきわめて多様化しておる国際間の経済問題の討議の場をいかに活用するかということについては、最善の選択によってできるだけの成果をあげるようにいたしたいと考えておるわけでございます。原則的に、お考えについては私は同感でございます。  それから、ただいまの、日本輸出がどうしてこんなに強いのかということには、いろいろの原因があろうと思いますけれども、長い期間にわたりまして、日本経済力を充実するためには、日本の資源の状況その他から申しまして、経済構造からいって、輸出にできるだけの努力を向けていこう、こういうことの成果があらわれている結果でございまして、そしてこの段階になりますと、こうして培養し得た力をこれからは福祉のほうに転換をし、内需中心のほうに振り向けて切りかえていこうという努力を、特に今年度のこの予算を中心にしてはかっていきたいというふうに考えを転換してきているわけであります。したがいまして、こういうふうな従来の動向には相当の変化をあらわすようにしていかなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。
  20. 中村重光

    中村(重)委員 抽象的なお答えでございますが、四十八年度予算の中に、いま大臣がお答えになりましたようなことの期待がはたしてできるのかということになってまいりますと、私はそうは考えておりません。しかし、きょうはそのことについては触れまいと思いますが、経済企画庁長官に、いま私がお尋ねをいたしましたことについて具体的に……。  私は、商工委員会に所属をいたしておりまして感じたことは、ほかにもたくさんありましょうけれども、申し上げてみますが、円が強過ぎた原因といたしましては、やはり民間主導型の経済構造、それから輸出中心主義というものから脱却できなかったという点が一点あげられるのではないかと思います。それから、先ほど申し上げましたように、いわゆる待ち政治であったということですね。みずから自主性を持ち、主導性を持って問題に取り組んでいこうとする意欲に欠けておったという点も、私は指摘できると思うのです。それから、為替差損が円切り上げ等によって起こってまいりまして、大企業が苦しくなってまいりますと、そのしわ寄せを弱いものに、下請中小企業等にして、そのリスクを転換していく、そういうことが事実上あげられる。そのことが、中曽根通産大臣が先般来通達を出したという形になってきたのであろうと私は思っているわけです。それから、これは多くの同僚諸君から言われたことでございますけれども、低賃金構造、長時間労働、それから合理化であるといったようなことでリスクをカバーしていった、弱いものにしわ寄せしていった。それから独占禁止法の緩和をやった。これは不況カルテルの問題が出てまいります。これはあとでお尋ねをいたしますが、これらの点が一応あげられるのではないかと思います。一緒に申し上げたが、しかし、あなた頭がよろしゅうございますから覚えていらっしゃると思います。これらの点について、ひとつ具体的に考え方をお聞かせいただけませんか。
  21. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 商工委員会におきまして中村先生からいろいろ御指示をいただいておることは、私もよく承知しておりまして、いまお述べになりましたこと、私もまことにさようなことだと思います。特に、待ち政治と言われる点、これは非常に反省をしなければならぬことだと思いまするが、いまアメリカあたりが、日本政策転換を求めたい、こう言いましても、一体だれに話したらいいのか、一体日本政策というのはだれがどこで決定をしているのかわからぬ、結局、外圧こそが日本政治を決定するというようなことを言っている者があるというふうにいわれておるわけでございます。私は、その当否は別といたしまして、当たらぬ点もたくさんあると思いますけれども、そういう点、やはり主導的に政府みずからが責任をとる形においてきめていかなければならぬというふうに思っておるわけであります。  その点で実は、いまの日本貿易が非常に黒字が多いということで非難されておること、これは、いまの日本貿易構造が、旧来の工業的にまだ低度の開発をされていた時代の形、すなわち、原料輸入が非常に多くて製品輸入が少ないという形を、一般の工業国並みに製品輸入をもっと高い位置に上げていくということが必要であるというように思うのです。その意味で、総理大臣に関税の権限をある程度委譲する、そういう考え方の立法を国会におはかりしたらとの考えもあるのでございますが、こういう点などもひとつ考えていただきまして、政府にもう少し主導的な立場をお与えいただくということが、一つの方法ではないかというように思うわけでございます。  それから独禁法のお話は、またあとで御質問あろうかと存じますけれども、この点はもちろん非常に大事でございますけれども、貿易の点に限って申し上げますると、やはり工業の間で相談ができないという形てすね。これが輸出に限っては何かできないものかという感じがするわけでございまして、輸出をする場合に完全にめくらめっぽうに輸出する。過当競争が非常に安い輸出価格で日本の製品を海外に持っていく。そうすると日本製品の洪水などといわれる。国内では利潤が得られないままに大量の輸出海外において非難を受けている。その結果が、非常に安い製品輸出のしわ寄せといいますか、これをカバーするために大量生産をするようになる。そのために公害が出る。あるいはいま御指摘になった、それを下請企業にしわ寄せするというふうな問題も出るかと思うのでございますが、こういう点も私ども今後変えていかなければならぬ点ではないかというふうに思います。もとより独禁法を厳正に運営いたしまして、寡占によるところの独占の弊害というものも除去することは当然でございますけれども、輸出に限っては少しその点を考えていただくことができぬものか、考え直すことができぬものかというふうに思っている次第でございます。
  22. 中村重光

    中村(重)委員 まだ、民間主導型であるとか、それから低賃金構造であるとか……。
  23. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 民間主導型の問題は、主導型に政府がしたというより、そういうふうにほうっておいたというところではないかと思うのでございますが、政府としましては、この国会においてしばしば申し上げておりまするように、福祉型の産業構造に転換する、経済構造に転換するということで、もっと国民の消費をふやすとか、あるいは政府の投資をふやすとか、あるいは民間の住宅投資をふやすというふうなことで、従来の設備投資主導型の構造を変えていくということを考えておるわけでございます。  それから低賃金の問題につきましても、これは非常にむずかしい点は、問題は二重構造というところにあると思います。日本の低賃金の零細企業の問題というものは、非常に私ども努力しなければならぬ問題でございまして、逐年改善はされておりますけれども、現在でもやはり、大企業の賃金を一〇〇としますと、一ころ五二、三であったものが、百人単位の事業所で見ますと六〇程度に上がってきているかと思いますけれども、それでもそうした十対六ぐらいの差があるわけでございます。もっと小さな五人未満の事業所などになりますと、やはり半分ぐらいの賃金だというふうに思うのでございまして、こういうものを上げていかなければならぬということは強く考えておるわけでございます。ただ、所得統計の面から見ますと、この五年間に、日本の賃金というのは平均しまして一五・一%上がっております。これは各国に例を見ない上昇でございます。欧米では大体八%から一〇%ぐらいだと思いますが、日本ははるかに上がっております。アメリカは五%平均というふうに承知いたしております。そういうふうに上がってはおりますけれども、多くの努力をしなければならぬところがございますし、ことに大企業と零細企業との間の賃金所得の不均衡、この問題は非常にむずかしい問題でありますが、どうしても解決していかなければならぬ問題であるというふうに思っておる次第でございます。  なお、つけ加えますと、経済社会基本計画の中におきましてもこの問題を大きく取り上げておりまして、今後五年間にできるだけそうした方向努力するということを政府として決意しておるわけでございます。
  24. 中村重光

    中村(重)委員 長官は、日本の賃金が一五%上がったとか、アメリカはこうだとか、よそとの比較をおっしゃいますね。ところが低いほうの比較はおっしゃらない。都合のいいことだけをお答えになる。それじゃだめなんですね。いままでが低過ぎたということでしょう。それを均衡させるということでしょう。貿易収支を均衡させるということ、それはいままでの日本のいわゆる経済構造というものを改めていかなければ均衡できないんじゃありませんか。そうでしょう。ところが、いまあなたが、日本の賃金はずっと若干上がりつつある、問題は大企業と中小企業との賃金格差ということ、これはよくないことだという、それだけでは問題の解決にならないじゃありませんか。いままでの生産第一、輸出中心、これから転換をして、生活と福祉優先の経済構造を打ち立てていくのだとおっしゃるならば、やはりそれに沿うところの具体的な施策というものが行なわれなければいけないのではないでしょうか。  結局、輸出中心というものを転換をするということになってまいりますと、内需をふやしてこなければならないでしょう。内需をふやすということは、それだけの大衆の購買力をふやしていかなければならないじゃないのでしょうか。それならば、賃金をぐっと引き上げていくとか、あるいは社会保障の問題であるとか、住宅その他おくれておるところの社会投資を大幅にふやしていくとかいうことでなければ、問題の解決、いわゆる内需に期待するということにならないのじゃないでしょうか。そのことを私は、経済企画庁長官であるところのあなたに、基本的な考え方、そして具体的な考え方というものを明らかにしてもらいたいということでお尋ねをしているわけです。  それで、続いて私は労働大臣にもお尋ねをいたしますが、同僚諸君の質問に対しましてあなたは、低賃金構造といったようなものもある、しかし賃金というものは労使間において決定をしていくのであって、政府が介入すべきものではないというお答えがございました。なるほどそれはミクロ的と申しましょうか、労使間において賃金というものが決定されていかなければなりません。しかし公務員等はそういう仕組みになっていない。これもあなたがお答えになりましたように、労使間の話し合いによって賃金というものがきめられていくというシステムに切りかえていかなければならない。そのことについても、あなたはどうお考えになっておられるのかということが一点。  それから、単に労使間において賃金をきめるのだということだけではなくて、あなたは政府閣僚であるわけでありますから、政府姿勢としては、現在の日本経済構造を切りかえていくためにはどうあるべきか、いまの低賃金構造、長時間労働というものをどう改めなければならないのかということについてのあなたの見識というものが、私は当然明らかにされなければいけない、こう思うのです。その点について、長官と労働大臣からもう一度お答えをいただきたい。
  25. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 賃金問題につきましては、後ほど労働大臣から御専門の見地でお話があると思いますが、いまおっしゃいました内需主導型と申しますか、政府の財政支出をふやして、国民の購買力をふやして、そして経済構造を福祉優先に変えていくという方向については、私も全くそのように考えておるわけでございます。  ただ、福祉というものをつくり出す、原資ということばはおかしいですが、そうした資源ですね、そういうものは、結局、国民所得の中から、課税により、あるいは公債により、政府の財政によってそれを国内に散布していくという形でございますので、やはり経済の成長あるいは完全雇用、そういうものがやはり一方においてなければならぬと思うわけでございます。そういう意味で、いままでの二けたの経済成長というのはちょっと大き過ぎるし、それを維持しようとすれば、原料資源のない日本でございますから、これはやはり原料を輸入しなければならない、そうすると輸出をしなければならぬということになりまして、この輸出優先、生産優先という構造は、結局あまりに早過ぎる高度成長から来るというふうにも反省せられますので、今度の基本計画においては九%の成長ということをいっているわけであります。九%というのはだいぶ大きいじゃないかという御批判もございましょうけれども、今日すでに一〇・七%という経済成長を見込んでおります段階でございますので、これを五年で割ってみますと、後半は七ないし八にしないと平均九にならないというようなことで、そういう成長をとっているわけでございます。その成長を期待しつつ、一方においては、いま中村先生がおっしゃったと同じような考え方に基づきまして、移転的な支出をふやす、それから公共投資九十兆円というものを五年間に見込んでいるわけでございまして、その中で、いまいわれている公害の問題、環境汚染の問題を解決したり、あるいは生活環境、もっと上下水道、特に下水道を完備したり、公園というような環境をよくする施設をしたり、いろいろなことを考えておりますわけで、そうした全体の考え方で内需をもっとふやして、それによって国民所得をふやして、それによって財政を豊かにして、そうしてもっと社会福祉的な面に移行させていこうというふうに全体の計画は強く考えておるわけで、この点は中村先生と同じ考えであるわけでございます。ただ、ものごとは一ぺんにいきませんので、私は、なだらかにそういう方向に持っていこう、こう考えておるわけでございます。
  26. 中村重光

    中村(重)委員 労働大臣に、お答えになる前に、時間の節約上もう一点あわせてお答えをいただきたいと存じます。  いま経済企画庁長官お答えになりました、福祉を進めるには、要するに成長というものが伴っていかなければならぬという議論については、きのうも商工委員会でたしかそういうことのお答えがあったようであります。私は、その点については、あらためて土俵をかえまして商工委員会でじっくり議論をしていきたいと思います。いずれにしても長官、日本の労働賃金がアメリカと比較をいたしまして三分の一というけれども、長時間労働であるとかその他の労働条件を賃金に引き直しますと五分の一です。ヨーロッパの二分の一というけれども、実際はヨーロッパの三分の一相当の賃金であるということを、あなたはじっくりとひとつ頭に入れて経済計画をお立てになり、日本経済構造転換には、そのことをお忘れになってはほんとうの転換にならないということを、私ははっきり申し上げておきたいと思います。  労働大臣、長官からもお答えになりましたように、いわゆる大企業と下請企業等の賃金の問題でございます。あなたはどの程度これを把握しておられるのか知りませんが、同じ場所で同じような労働、あるいはそれ以上危険な労働をしながら、実際は大企業労働者の賃金の三分の一以下であるというこの実態。これは、円切り上げ等によって大企業が中小企業にそのリスクを転換をしていくということになってまいりますと、単価が急に引き下げられますから、ますますもって労働者に対するところの労働条件は悪化していく。こういったことは単なる賃金問題ではなくて社会問題である。これらの点に対しては、労働大臣はどう把握をしておられ、これをどう改善をしていこうとされておるのか、あわせてひとつその点もお答えをいただきたいと思います。
  27. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 お答えいたします。  中村議員は、商工の関係中小企業の問題では特に専門家でありますので、この点で御心配の点は私も同感であります。しかし最近、大企業に比べて中小企業、零細企業もどんどんと毎年上がってきておりまして、先ほど小坂経済企画庁長官が、五割とか六割とか、こういうようなことを申しておりましたが、この点については、きょう私もよくあらゆる統計を見たのでありますが、五百人以上の賃金を一〇〇といたしますと、三十人ぐらいの方は七割くらいまでに実際これは上がってきておる。しかしながら、特に二人、三人というのは相当低賃金もありますので、何とかして国民が賃金に対しては公平でなくちゃならぬ、こういうので、労働省としては、最低賃金制を特に適用いたしまして、零細企業の数人とか十人とかいう問題に対しましては、御指摘のように、賃金の上がるように助成をする。これについては、もう私から申し上げなくても十分御承知のように、労働省が上げよと、こういうわけには法規の関係でなかなかいきませんが、やはり行政的に、国の経済の成長に見合ったように、いわゆる賃金を改善するのは労働省としては当然でありますから、いろいろ各般の行政指導をいたしまして、御指摘のような方向に持っていく所存であります。  まあ先ほどのお答えにもなりますが、小坂長官からもヨーロッパのほうの関係アメリカ関係を申し上げましたが、アメリカ関係は御指摘のように三分の一である、これはもう間違いありません。しかし、ヨーロッパのほうの関係、これは賃金の問題なり、統計というものは、取り方によっていろいろ取り方があることは御承知でありますけれども、悪いほうの面の取り方といい面の取り方、製造業とか第一次、第二次産業、第三次という産業の面も、十分この間うちから私、実際に見ましたが、イタリアを抜いておることはもう間違いありません。フランスに近づきつつある。ドイツに対しましてはまだ六割程度で、イギリスには八割、こういう程度まで行っておりますので、賃金問題に対しましては労使が自主的にやることは当然でありますが、今後の経済の向上に見合って指導していく所存であります。  以上、お答えいたします。
  28. 中村重光

    中村(重)委員 満足のいく答弁ではございません。ございませんが、時間の関係がございますから、あらためてひとつ商工委員会に、下請関係商工委員会の所管事項でございますので、その際に出席を要請いたしますから、お断わりにならないで、ぜひひとつ進んで出てきていただきたい。そのことをひとつここで確約をしておいてください。
  29. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 お答えいたします。  賃金問題は経済関係、商工関係にも重大な関係がありますので、もうこれはここでお約束いたします。ただ、委員会がかち合ったときに、時間の関係とかありますが、中村さんの御意見を尊重して、これは確約いたします。そして私、十分申し上げることも忌憚なく申し上げて、御意見も尊重しつつ、何といったって中小企業、零細企業等の下請企業、これは大企業に比べて労働条件、賃金の問題その他いろいろな問題が、これは改善しなくちゃならぬのは、まあ商工関係のほうは使用者の関係と労働者の関係、やはりこれは管轄大臣でありますから、御趣旨に沿うように努力するとともに、出席いたしますことは確約いたします。
  30. 中村重光

    中村(重)委員 日本経済構造を転換をするということについて、具体的な問題としてお尋ねをしてまいりたいと思います。  通産大臣に伺いますが、不況カルテル、これに対する一つ考え方、これを具体的に今後どう取り組んでいくのかという点でございます。  御承知のとおり、昨日も商工委員会で実は質疑が行なわれておったように思いますけれども、先ほど私もちょっと触れました為替リスク、これをカバーするために不況カルテルを、公正取引委員会は申請があるとすぐお認めになる。これは高橋委員長には、前委員長時代のことでございますから、私は酷であると思います。したがいまして、時間があれば関連してお尋ねをいたしますが、まず通産大臣に、鉄鋼カルテル、私は、鉄鋼カルテルを認められる際に通産省に対しても、公正取引委員会に対しても、これをやるべきではないということを強く主張いたしました。ということは、生産性が非常に高い。若干のリスクであるとか、あるいは不況という形になってまいりましても、鉄ぐらい変動の激しいものはありません。下がったかと思いますとすぐ上昇して、これを吸収していくというようなことが、賃金にいたしましてもその他いろいろな不況要因が出てまいりましたことに対しましても、できるわけですね。だからして、ただ値段がちょっと落ち込んだということだけでもって、不況カルテルというものを認めるべきではないのだということを強く迫りましたが、ついにお認めになりました。公正取引委員会はそのとき、不況カルテルは認めるけれども、一年の申請に対してこれは半年しか認めませんよ、そうして値上げをしないということを条件にいたしますよという、実は私どもに対しましてそういう了解を求められる態度をおとりになりました。もちろん了解はいたしませんでしたが、そういう説明であったわけであります。  ところが、値段は立ち直りました。いわゆる不況から脱出をいたしました。いたしましたが、なお六カ月延長した。私はこのときも絶対に延長を認めるべきではないとこう言ったわけです。ところが十二月三十一日までこれを延長を認めました。はたせるかな、どんどんどんどん鉄の値上がりという形になってまいりました。生産制限をやる、値段をつり上げる、そういったような形が、日本経済に対して、鉄は産業の米でございますから、どのような悪影響を来たしたかということについては、あなたも御承知になっておられるであろう。この鉄の不況カルテルを認めたが、しかも延長したことについて、あなたはどうお考えになっておられるか。これももちろんあなたが通産大臣におなりになります前のことであったわけでありますが、しかしあなたはこのことについて重大な関心を持っていらっしゃるでございましょうから、その点について、反省としてどうお考えになるか。今回の変動相場制円切り上げという形に進んでまいりました。いろいろな不況カルテルの申請というものが相次ぐであろうこともまた十分考えられます。これに対してはどういう態度でお臨みになるのか、これは通産大臣と、同時に高橋公取委員長から、それぞれお答えをいただきたいと思います。
  31. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 不況カルテルの運用問題につきましては、お説のとおり今後非常に慎重にやっていきたいと思います。  そもそも独禁法によりまして需給ギャップが非常に大きいというようなこと、あるいは原価、採算を割っているというようなこと、あるいは大部分の企業がそのために非常に経営上の危機に直面している、そういうような要件が、不況カルテルを認める要件になっていると思います。昨年鉄鋼その他の不況カルテルを認めましたときには、確かにそういう条件があったように私も思います。しかし、その後景気が回復してまいりまして、最後の段階になりますと、かなり鉄鋼なんかも、十二月、一月にかけては上がってまいりました。そういう情勢をよく検討してみますと、なるほど不況カルテルの取りやめる時期というものについては、よほど経済状態の前途を洞察しながらやらぬといかぬ、そういうことを感じたわけでございます。  相当な深刻な不況が来て、そうしてカルテルの条件が十分整っているということが非常に大事であると同時に、それをやめるという情勢判断、その二つが非常に重要である。まあしかし、一般的に見まして、カルテルというようなものはわりあいに機動的に運用することが、国民経済を安定していく上に望ましいのではないか。カルテルを一たんつけたら、これはなかなかやめないというのもかたくなですし、またカルテルを認めないというのもかたくなであります。でありまするから、経済情勢の実態に即して機動的にこの制度は運用すべきもので、そして国民経済全体の調和、あるいは消費者保護ということを頭に置いて実行していくべきものである、そういうように考えます。
  32. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 不況カルテルは、もう御承知のとおり法律上認められている制度でございます。まあ認めないという国も世界じゅうにはあるようでございますが、そういたしますと、一定の要件が整えばそれを認める。どんな場合でも認めないというふうに非常にきびしくいたしますと、民間の側では、現実にございますが、認可を受けないでかってなカルテルをやるわけでございます。これのほうの弊害のほうが大きい。と申しますのは、なるほど昨年一ぱい鉄鋼のカルテルが続きました。六月には、つまり第二次のカルテルを認めているわけでございます。結果においては一年一カ月近くに及んでおりますが、その間の事情を見ましても、常に大幅な需給ギャップが存在いたしましたし、値段の上におきましてもメーカーの価格はほとんど動かない。これはカルテルを認めるときに要望といいますか、条件として厳重に指示してあったものでございますから、メーカー価格というものはたいして動いてない。ただ、一部例外といたしまして、これはやむを得ないと思いますが、自動車とか造船のような大口のひもつき需要に対してだけは、千円ないし二千円の値上げを行ないまして、これはある程度収益にプラスになっておりますが、いずれにしても、赤字の状態が実質的には続いておった。全製品ではございません。カルテル対象品目についての赤字が続いておったということは疑いの余地もないわけです。  年末近くになりまして、十一月の終わりから市中相場、仲間相場が急騰した。メーカーの価格は据え置きでございましたから、そこで、私どもはできるだけこれを冷やすべく大幅な増産の要請をいたしましたが、しかし、その市中価格を冷やすことがなかなかできないで一月まで至っている。この市中価格がなぜこうなったかについては、私どもは多少、思惑とはいえませんが、仮需要も入っているのじゃないかと思いますけれども、今日になって若干低下する傾向のものも見られます。  そういう次第でありまして、不況カルテルの考え方につきましては、あまり厳正に認めないという方針を立てますと、やみカルテルを誘発するだけである。といって、これを甘くすればかえって弊害が出るということでございますが、機動的にという点になりますと、いまは審判をもって、相手が応諾をすれば別でございますが、審判を開始して手続をとらなければならぬ。そうしますと、その間にカルテル期間が終わってしまうということでございますので、そう簡単に打ち切るというわけにはいかない。相手方の同意を得てやめてもらうということしかないというのが実情でございます。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣、あなたは、不況カルテルを一たん認可をしたらばこれをいつまでも延長していくということはよろしくない、しかし認めないというかたくなな態度をとるべきではない、いわゆる柔軟性を持った取りきめでなければならない、こうお答えになっております。  それでは具体的にお尋ねいたします。鉄鋼の不況カルテル、これは田中内閣が成立をしてから延長になったはずであります。したがってあなたが通産大臣。期限切れになりましたものを、鉄の市況は回復をしておったのに、なぜに鉄のカルテルをさらに半年延長するという措置をおとりになったのでしょうか。これを認めなければならなかったという具体的な理由は何だったのでございましょうか。これは公正取引委員会が認可をするのですけれども、通産省主導型なんです。通産省の強い要求によって公正取引委員会はこれに追随をしていっている。これは拒否できないということが今日実態なんです。これは私も十二、三年間商工委員会に所属をいたしておりますから、つぶさにそこらあたりの事情を承知いたしております。したがいまして、ひとつあなたから具体的な問題としてお答えをいただきましょう。
  34. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 あの当時の情勢は、まだ景気の回復の芽というものは出ている状態でないように私は思いました。ものによっては多少先行指標が出てきているものもございましたけれども、大体一月——五月ぐらいが景気の底ぐらいで、ようやく夏ぐらいから上向き始めるというので、政府としては、たしか九月までに予算の支払いを促進しろ、そういうことで繰り上げぐらいまでやっておった状況であります。それで、やはり内需を旺盛にするという意味から、秋には補正予算もかなり大型のものを組もう、そういう論議がまだ行なわれておったときでございまして、その補正予算が行なわれ、その後急激に景気が回復してきた、そういう状況で、それは秋深まったころであったと思います。そういう意味におきまして、延長しましたときにはまだ鉄鋼カルテルを認むべき状態にあった、そう私は判定いたしました。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 判断の問題ということになってまいりましょうか、市況は回復しておったわけです。ただ、鉄鋼業界が若干まだ赤字というものが残っておったといいましょうか、そういう状態であった。だから、それを延長して完全に赤字をなくしてしまう、そういった鉄鋼業界のわがままと申しましょうか、それを実は公正取引委員会も、通産省もまたみずから主導型でもってこれを認めたということです。そういうことになってまいりますと、あらゆる赤字企業というものは不況カルテルを認めなければなりませんよ。市況が回復をしておるということは、これは当然利潤が上がってくることなんです。ただ、いま直ちに一挙に回復をするのか、なだらかに回復をするのかというだけの違いなんです。不況カルテルというものは悪なんです、大体。これは今日具体的な事実をもって明らかでしょう。いまの輸出がどうしても衰えないということも、そうした不況カルテル等においてリスクをカバーしてやる、内需に転嫁してやはり安く外国に売っておる、こういったようなことが、今日の日本が大きな変動相場制円切り上げという状態の中に追い込まれた。私は、これらのことは元凶でさえあると申し上げたいぐらいなんです。  私は、いまの通産大臣の考え方は改めていただいて、反省すべきものは反省をする、そして、今後不況カルテルの問題については慎重な態度で、原則としてこれを認めない、こういう方針でいきたいというぐらいにあなたの前向きの答弁がほしいわけなんです。昨日の商工委員会では、あなたはきわめて率直に答弁をしておられました。私は好感をもってむしろあなたの答弁を聞いておったぐらいなんです。きょうのあなたの答弁は、残念ながら全くかたくなな答弁でございまして、そういうお役人のような、たいへんあそこに並んでいらっしゃるのに悪いのでありますけれども、事務当局がお答えになるような答弁では、あなたも満足できないのではないでしょうか。私は、姿勢として改めてほしいと思いますが、もう一度ひとつ簡潔にお答えいただきましょう。
  36. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 御説のとおり、行政の主目標が国民福祉型というふうに変わってまいりまして、消費者保護ということが非常に重要な要素に登場してきたわけでございます。そういう点も考えまして、カルテルの運用につきましては今後慎重に処理していきたい。  私、申し上げました中で、カルテルというものは機動的に運用すべきものだということを申し上げましたが、いままで関係当局の考え方を見ますと、発動するのがおそい、しかし一たんかけたらなかなかやまない、そういうような調子があって、どうも身重の感じがいたしておりました。しかし、カルテルのようなものは消費者や国民経済全般を見て運用すべきものですから、機動的に、必要があった場合にはさっさとやる、そのかわり必要がなくなる見込みがあったらさっさとやめる、そういうようにしててきぱきやるべきものではないか、そういうように感じます。いままで、なかなかかけられないから、一たんかかったらうんと引き延ばしてやってもらおうという、そういうお互いの疑心暗鬼なんかもあったんじゃないかと思います。そういうところを独禁法の精神に基づいて、国民経済や消費者のことを考えててきぱき片づけていく、そういう相互信頼感を回復してやるようにいたしたい、そのように思います。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 いまの不況カルテルの問題については、中小企業も例外ではないのです。私は、これは高橋委員長に、もう少しあなたも見直していくという姿勢がほしいと思います。中小企業の不況カルテル、これは五百八十七件です。いま中曽根通産大臣お答えになりましたように、一度カルテルを認めたらばこれはずっと延長していこう、そういう傾向がある。十年以上が何と二百二十七件ですよ。中小企業といえども、こういう温床に置いておったのでは中小企業ほんとうに近代化しません。私は、中小企業の振興というものについては人後に落ちないつもりなんです。ほんとうに真剣に取り組んでまいっておるつもりであります。しかし、ほんとう中小企業を愛するならば、ほんとう中小企業の振興をはかるならば、中小企業日本経済の中におけるところの位置づけというものをほんとうに高く評価をしていくならば、むしろ協業化とか共同化の方向を進めていく。そうして、この温床の中に置くところの不況カルテルという形においてこれを守っていく、いつまでもこういう形で守っておくということから脱却していかなければならぬということを強く進言をいたしたいと思う。ましてや、中小企業の協同組合の共同行為というもの、あるいは中小企業の協同組合の組合員であるから独禁法に違反するようなことがあっても、これは独禁法除外であるということで、中小企業は協同組合員であるがために、あるいは協同組合なるがために、自由自在にどんなことがあっても、これは独禁法は動かないというたてまえになっておるではありませんか。こういうことが真に中小企業を愛する、中小企業を真に近代化し、これを振興するということに私はならないと思う。きわめて無責任な態度であると考えております。中小企業の振興をはかることはここにあるのではありません。申し上げたように、共同化や協業化を強力に推進していく。そうして低生産性中小企業というものを、国際競争にうちかつ、負けないような体制をつくり上げていくということでなければなりません。いたずらに過保護は私は避けるべきであると考えます。それらの点に対しては通産大臣からひとつお答えをいただきます。時間の関係がありますから、公正取引委員長からは、あらためてまた商工委員会で見解を伺ってみたいと思います。
  38. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 確かにおっしゃるように、中小企業を真に育成するということは、公正取引、それから自由なる活動を伸ばしていく、そして創意くふうによって中小企業は自力更生でいくということが、真に伸ばす基本であるように思います。いたずらにもたれ合って温存させていくことは、長い目で見て必ずしも中小企業のためにはならない、この点については同感でございます。御趣旨を体しまして、カルテルの問題については、先ほど申し上げましたように機動的に運用していく、こういうことでやっていきたいと思います。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣は電算機の自由化の問題について、昨日商工委員会で、約束事としては、通貨調整ができたらばこれをやめるということであった。これは貿管令ですね、やめるということであったんだけれどもということで、まあしかし四囲の事情としては、これはやはりそのまま存置をしていくということでなければならないのではないかというようなお答えがございました。また電算機の問題については、これまた電算機も当初は通産省はこれは撤回するということを打ち出しておりました。その後大蔵大臣は、これはテレビで私はお聞きいたしましたが、それは困るのですというようなことを言っておりました。その後若干通産省の考え方というものが変化してきたような感じも実はいたします。ところが電算機は、御承知のとおりソフトウエアに伴う部分というものは非常に技術格差があるわけですね。ですから、この電算機の自由化をするという場合、本体だけではなくて、全面的に自由化を認めていくという方針なのかどうか、その点をひとつお伺いしておきたいと思います。
  40. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 日米間のいままでの貿易交渉の中で、先方が強く要請したものの中に電算機がございます。しかしわがほうとしては、日本のこれからの将来の産業構造の行くえを考え、また産業構造審議会の答申等にもありますように、知識集約型産業に伸びていこう、それで付加価値の高いものに転換していこう、これによって発展途上国からの追い上げを逃げていく、そういう方向をきめておるわけでございます。その知識集約型産業の本命の一つと見られるものは電算機産業でございます。  世界の情勢を見ますと、イギリスやフランス、ヨーロッパ系統におきましては、ほとんど自由化したためにアメリカのIBMとかユニバックとか巨大な国際企業が入ってきて、そしてそれが力をたくましゅうしているという状態に追いまくられてしまっておる。ほとんど国産電算機産業というものが窒息しているという状態になってしまいました。この状態を見ますと、日本の将来を考えるとある程度国産電算機産業が体力を持つまでは、できるだけアメリカのものを制限して、そして時間をかせごう、こういう考えできておったわけで、通産省としては電算機産業を伸ばすために、大型電算機その他に対して補助金まで与えて研究開発をしてきたところでございます。しかし、いつまでもそういう態度をとっているべきものであるかどうか。国際的な現在の情勢に視野を広げてみます場合に、電算機関係のことをアンタッチャブルの世界に置くべき段階ではない、そういうように私、判定いたしました。  そこで、これを国際場裏において日本もなるほど合理的な立場であるということを納得してもらうような、そういう立場を日本としても順次段階的にとっていく、そういう意味で電算機問題の処理というものを、いままでの聖域からはずして、そして検討の対象に入れて、さてどういうふうにこれを段階的に処理して国際場裏にも通用するような立場を得ていくかという検討に入ろう、そういうことを私は言明し、目下それを事務当局に検討させている、こういう段階でございます。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 時間がございませんのではしょりまして、御出席いただいたそれぞれの大臣にお尋ねいたします。  福田長官にお尋ねしたいのですけれども、先ほど私は公正取引委員会の問題について申し上げました。私は、日本経済というものを正常化する、安定経済方向に持っていく、そのためには競争条件というものの整備がなければならぬと思います。それから、申し上げましたように、中小企業の問題等に対しましても調査というのはほとんどできないのです。下請企業に対しましてもほとんど文書、書類調査なんです。みずから通産局の連中であるとかあるいは公取の出先で調査をするなんということは、皆無とは申しませんけれども、もう三年に一ぺんか五年に一ぺんしかできません。その他いろいろな問題がありますけれども、これは公正取引委員会としても考えているけれどもできないのです。それと申しますのは、やはり銭が足りない、人が足りないということですよ。予算全体といたしましては、これは公正取引委員会の要求も何ときわめてみみっちい、十億かそこらの要求しかしていないのですよ。認めているのは九億七千万円認めているのですね。ところが、人といたしましては三百五十八名、純増五名なんです。いつも言っているのですが、こういう状態ではだめなんだ、もう少し公正取引委員会の機能を強化して、活動できる体制をつくり上げていかなければならないと思う。いま欠員充足をしないというたてまえがあります。しかし、少なくともあなたはそういう考え方を持っておられない、充足する必要のないところはしない、削減するところは削減するところもあろう、しかしほんとうに国策を推進していくためには、私はふやすところは、いままでのこうしたことにとらわれないでずっとふやしていく、そういう態度でなければいけないのだ、こう思いますが、長官としての見解をひとつ伺ってみたいと思います。
  42. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話しのように、公務員の定員につきましては、これは厳にこれが増員を抑制する、こういう全体としての姿勢はとっているのです。しかし、それじゃ国政は円滑に動きません。そこで、一律に削減だというようなことではなくて、必要なものには増員を行なう、こういうふうにしております。  お話しのように、公正取引委員会は、これはその活動が非常に今日の経済情勢のもとにおきましては大事である、そういうふうに考えまして、特に四十八年度のごときは九名の増員、しかし計画に基づく減員が四名ありますので、ネットとするとお話しのように五名です。しかし、その五名ふえる純増の中でも参事官を特に新設をするというようにいたしまして、公取の機能強化ということには心がけておるというようなことでありますが、今後とも経済情勢の推移に応じまして、公取がその機能を尽くし得るように、定員の面からは十分な配慮をしていきたい、かように考えております。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 農林大臣にお尋ねいたしますが、農産物の自由化の問題について、田中総理大臣は、自由化について検討するようにという指示をされたと伺っておりました。先般当委員会におきましては、農産物の自由化というものはむずかしい、こういう答弁をしております。あなたも記者会見においては、これに対する考え方を明らかにしておったようでありますが、私は、農作物の自由化、これはやはり日本の農業というものが競争力を十分持ち得る、いわゆる基盤整備であるとか、あるいは価格支持政策というものが確立しないままの自由化というものは、日本農業を壊滅の状態に追い込むのではないか、そのように思います。ですから、申し上げましたように、十分な競争力を持たせるということについて、精力的な取り組みをなさる必要があるであろう、このように思いますが、アメリカが強く要求をいたしております農産物の自由化の問題について、品目は二十四であると記憶をいたしますが、これらに対しましては、全部ということはもちろんないでしょうが、自由化についての考え方というものはどうして進めていこうとするのか、伺ってみたいと思います。
  44. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 田中総理から貿易の自由化について、残存品目について国内対策もよく検討してみたらどうか、そういう話があったことは事実でございます。私もそれはそれなりに受けておる次第でございますが、この農産物の自由化のことを考えまするときに、国際情勢が非常に変わっておるとはいいながらも、しかし、この自由化の日本の国際的な約束がどんな経過にあるかということを、ちょっと大事なことですからお聞き願いたいんです。  それは、四十三年の十二月末に、両三年中にかなりの分野で自由化をするということを申しておるのであります。そして、当時から調べてみますると、大体四十四年の九月ごろに百二十ほど全体でまだ非自由化のものがあった。現在これが三十三までになっておるんですね。それで、私の所管のほうの農林関係で言うと、当時七十三でございましたものが、四十四年から四十六年の間に七回自由化をして、そこで四十五、それから四十七年に二回いたしまして四つ、合計四十九、この自由化をいたしたわけであります。そのほかに、一品目にはならないけれども、枝番というのを十四やっておるんです。ですから相当な努力をしてまいっておるのであります。しかも、ただいま中村委員の御指摘のように、単純に自由化をしたんではたまったものではないのでありまして、それにはそれなりの対応策をとっていかなきゃならない。詳しくは申し上げませんが、基盤整備事業であるとか、あるいは価格対策であるとか、構造改善事業というものを、これを逐次やりながらしかもこれだけの努力をいたした。これは私は、農産物の自由化については胸を張って国際的に言える。  そうして、現在の世界的な農産物関係の非自由化品目はどの程度であるか。そうすると、調べてみると、フランスは三十九、イギリスは十九、西ドイツは十九、それからアメリカは、なかなかずるいのであります。ガットにおける広範な義務免除を取得をしております。しかしながら、そうはいうものの、農産物関係はどれぐらい制限しておるかというと、基幹的農産物を含めて二十やっておるのであります。そうすると、日本との関係は、わずか四つぐらいの差でございまして、日本の農業の実態というものは十分アメリカは理解してくれるものと思うのであります。  そこで、基本的には、農業に対して、まだまだこれは残っておるものを自由化するには影響は大きい、こういうことで、私としてはどうも了承をしかねるのでありますが、しかし国内対策を十分やって、なお余地があるかないかということについて検討をしたらどうかというので、いま鋭意検討はいたしております。しかし、私の基本的姿勢は変わらない。御指摘のような構造改善とか基盤整備とか、価格安定対策をもっと十分にいたしまして、万全の用意がなければ、あとのものについてはなかなかむずかしい、こういう立場にあるわけでございます。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 自治大臣にお尋ねをするわけですが、その前に大蔵大臣と通産大臣に申し上げておきたいと思います。  大蔵大臣は、先般、中小企業の問題について、財政演説で実は胸を張って演説をしておられました。しかし、中小企業の予算というものは、四十七年度よりも総予算に占める比率は低下しておるという事実を見のがしていただかないようにしてもらわなければならないということです。それから財政、いわゆる金融措置の問題にいたしましても、開銀であるとかその他、大企業と中小企業と比較をいたしますとき、九九・三%という中小企業が、大企業よりもその財政投融資も少ないというこの事実です。ましてや中小企業は、今回定義の改正によりまして、通産省といたしましては、一億円まで中小企業の範囲を広げようといたしております。それだけ対象は広くなってまいります。にもかかわらず、中小企業の予算は、比率において四十七年度よりも低いということは、どこに胸を張って中小企業に対して手当てをした、十分な予算措置あるいは財政投融資、金融措置を講じたということが言えるのかどうか。  また通産大臣は、先般円問題に対する本会議の質問に答えて、四十八年度の予算の中にあげております問題等を、あたかも円対策であるかのような答弁をしております。円対策の問題は、四十八年度予算の中には入っておりません。これでは何を考えておるのかということを指摘しなければなりません。具体的な問題につきましては、私は商工委員会お尋ねをすることにいたします。  自治大臣にお尋ねをいたしますが、都道府県において制度金融というのが御承知のとおりあるわけです。私は、相当な額にのぼっておるであろうと思う。それが地方の地域経済に、あるいは都道府県の財政にこれまた相当な影響があるのではないか。しかし、これは各個ばらばらなんですね、都道府県は。ましてやその中には、輸出振興金融なんというものすらあるわけです。これらのことは、私は、地方自治体の権限と申しましょうか、それを侵すべきではないと思います。侵すべきではないと思いますけれども、今日地方経済、地方自治体の財政といえども、私はやはり全体的な視野の中でこれを見る。十分地方自治体と話し合いをやって、改むべきものは改めていくということでなければなりません。もっとこの制度金融というものは、私は主体性を持った、そういう組織化したようなことが必要ではなかろうか。そういう意味で、この県民公社なんといったようなことも、一つの何と申しましょうか、組織化し体系化するような手段ではないかというように思います。この制度金融の問題につきましてお答えをいただき、電気ガス税の問題をお尋ねいたしまして終わりたいと思います。委員長、まことに申しわけありませんが、あと一問で終わりますので、御了承いただきたい。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 中小企業関係の予算の問題でございますが、中小企業一般会計の対策費の伸び率は一七・八%でございますから、この点を御指摘であると思います。ところが、この中で中小企業信用保険公庫への出資金が四十七年度と同額でございますから、その関係を抜きましてその他のものを比較いたしますと、二二・八%の伸び率になっております。  それから財投関係でございますが、これは政府関係の三機関の普通の貸し付けの規模が四十八年度は一兆六千七百十九億円でございまして、これは四十七年度の計画一兆三百億台から見ると、相当な増額でございます。そして、これらの三機関に対する財投の融資は八千七百八十一億円で、これまた四十七年度の七千二百億円から比べれば、非常な増額になっておるわけでございます。  なお、御指摘がございました今回の当面の輸出関連中小企業対策につきましては、財政上、税務上、為替政策上、そして予備費の活用、その他を四十七年度中におきましても万遺漏なきような全面的な措置を用意しておりますことは、累次御説明申し上げているとおりでございます。
  47. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 制度金融の問題につきましては、非常に効率的に利用されておることは、私ども承知いたしております。  ただ問題は、自治省としてこれを今後の研究題として研究の熱意は持ちまするが、いま直ちに組織的、制度的にこれをするということについては、まだ検討の余地があるというふうに考えております。また同時に、その金融関係の当局者の判断に待つことが正しいのではないか。地方自治体の資金のゆとり等々においてこれを運用しておられることについては、私ども抑制をしたりとか干渉したりとかそういうつもりはありませんが、なお今後の問題として十分検討いたしたい。
  48. 根本龍太郎

    ○根本委員長 中村君に申し上げまするが、あなたの持ち時間はすでにだいぶ経過いたしております。
  49. 中村重光

    中村(重)委員 大蔵大臣商工委員会お尋ねをいたします。政府のほうから私どもいただいております資料で言っておりますから、一般会計において四十七年度総予算に占める比率は〇・五九%、四十八年〇・五六%、財政投融資は四十七年一三・四%、四十八年一二・七%。絶対額はふえたといっても、総予算に占める比率は低下している。申し上げたように、中小企業の範囲は拡大するといったようなこと等々考えてみると、胸は絶対に張れないのだということだけをはっきり申し上げます。  電気ガス税の問題でございますが、時間の関係がありますから私から申し上げますが、電気ガス税は若干免税点は引き上げております。引き上げておりますけれども、このガスは産業用に対するところの免税あるいは軽減措置というものはございません。ございませんが、電気については五百三十億の軽減措置を講じておられる。しかも、免税の品種は百二十九品目、さらにまた軽減措置というものが実は相当あるわけですね。この中に貿易、いわゆる輸出振興税制というものがありますよ。これが約十五億程度ではなかろうかと私は思います。何のためにこの産業に対して特別のこういう減免措置を講じなければならないのか。一般家庭の電気ガス税こそ撤廃しなければならない。にもかかわらず、一般家庭に対しましてはそういう措置をおとりにならない。そして産業優先ではなく生活、福祉優先とはいいながら、現実には、電気ガス税において申し上げましたように、千五百億の税収の中において五百三十億というような減免措置を講じておるということは、私はけしからぬことだ、こう思うのです。ですからこういうものは改める。産業優先、産業に対するところの軽減措置というものはなくする。そして一般家庭における電気ガス税をなくする、そういうことに改めていかなければならないと思います。  さらにまた、電気ガス税は従価税になっております。従価税ということになってくるとどうするのか。小規模の、供給密度の低いところは料金が高いですよ。料金が高いから、従価税であるから電気ガス税も高い。こんなばかな話はありません。ですから、これは従量税に改めていくということでなければ均衡はとれないと私は思います。これらの点に対しての大臣のお考え方を伺ってみたいと思います。
  50. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘の点は、きわめて重要な点をついておられると思います。ただことしは九年ぶりに、ごくわずかではありますが、一%税率を引き下げました。そして、時間がありませんから電気だけを申し上げれば、千円に免税点を、これまた引き上げた。御承知のように、関東電力管下の電力消費、一般家庭の平均は千六百円と申しております。したがいまして、一般家庭のごく零細な面には、免税点でカバーできる。全部免税にしてしまうということについては、これはにわかに決断いたしかねますが、今後も引き続いて免税点を上げていく、これはやはり社会経済の発展の状況等からいいまして必要なことだというふうに私は考えております。  それから、御指摘の免税種目につきましては、これは機宜に応じて検討しなければならぬ。事務当局にもそのように作業をさせておるところでございます。
  51. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて中村君の質疑は終了いたしました。  次に、山原健二郎君。
  52. 山原健二郎

    ○山原委員 きょうは文部大臣だけに質問をしぼりましたので、一時間三十分、つき合っていただかなければなりませんが、教育の問題、特に大学の問題を中心にして伺いたいのです。  先般の衆議院の本会議における田中総理の施政方針の演説の中にも、大学は学ぶところである、しかし、今日なお学園の紛争が絶えないのは遺憾であるという表明がなされています。また今日の大学問題について、全国の父母も非常に憂慮いたしておるわけですね。この問題を中心にして伺っていきたいのです。  その大学問題に入る前に文部大臣の考え方について伺っておきます。それは昨年大臣が文部大臣に就任をされたときに、十二月二十七日のサンケイ新聞に、「新大臣インタビュー」というのが出ております。その中にこういうことばがあるのです。「われわれの目からみると日本共産党は、憲法を守る政党ではありませんよ。」こういうことばがあるわけですね。そのほかにもいろいろ問題になる点はありますけれども、それはあとへ残しまして、こういう発言をしたということは、これは天下の公器に発表されているわけですが、事実ですか。
  53. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いまの御指摘の新聞記事は承知いたしておりませんけれども、私は、年来日本共産党は共産主義社会を建設したい、こうお考えになっているのじゃないか、かように考え続けておるわけでございます。共産主義社会ということになりますと、いまの日本の憲法と抵触する部分が幾らか出てまいるわけでございますので、そういう疑念を抱き続けている、そのことがあるいはそういう記事になっている点があるのじゃなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  54. 山原健二郎

    ○山原委員 これは年来のあなたの考え方は別にしまして、文部大臣として就任した新聞記者に対するインタビューの中で出ているわけです。「日本共産党は、憲法を守る政党ではありませんよ。」こういうことですね。私はこの事実について明らかにしたいのです。あなたがこういうことを言っておるのかどうかはっきりしていただきたい。
  55. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 公式の発言として言うたことはないと思います。しかしいま申し上げましたように、私自身がそういう気持ちを持っておるわけでございますので、雑談の間には出ていることはときどきあるだろう、こう思っております。
  56. 山原健二郎

    ○山原委員 日本共産党は憲法を守る立場をとってきました。また現実に守るだけでなくして、憲法における民主的条項の現実的な実現のために戦ってきています。それをあなたの見解がどうあろうとも、文部大臣として、しかも最初の記者会見においてこういう発言をするということは、私はいままでの文部大臣で聞いたことないのですよ。そういう考え方でこれからも文部行政をやっていく、そういう思想性を持ってやっていくつもりかどうか伺っておきたい。もしこの新聞の記事が不正確であるとするならば、それは明らかにしてもらいたいと思いますけれども、あなたはいまそう言ったというのですから、これは文部大臣として私どもは非常に重要な問題です。いま文部大臣になられたばかりで、私も文教委員としてこれからおつき合いをしていかなければならぬ日本の文教行政の最高機関にある者が、公党である、しかも五十名の国会議員を持っておる公党に対して、こういういわれなき偏見を持って立ち向かうという態度をとられるのですか。
  57. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 日本共産党の綱領もいろいろ書いておいでになるのだろうと思いますけれども、やはり日本共産党の綱領と日本憲法との間で食い違っている面もあるのではないか、こう思っておるものですから、あるいは雑談の間にそんなことばが出たのかもしれません、こう申し上げたわけでございます。公式の場面で申し上げたことはないと思っております。
  58. 山原健二郎

    ○山原委員 ではお聞きしますが、文部大臣として、これは文部大臣に対するインタビューですからね。単なる非公式な場における個人としてのあなたに対するインタビューではないわけで、だからそういう立場から考えましたときに、この発言は適当な、適正なことばであったかどうか、あなたの今日の見解を伺っておきたいのです。
  59. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私は、先ほどそういう疑問を持っているのだ、こう申し上げたわけでございまして、この疑問はいまも持っておるわけでございます。しかし、こういうことを公式の場面で言うてまいるつもりはございません。
  60. 山原健二郎

    ○山原委員 心の中で何を思っていようと、それはいろいろの見解があろうと思うのであります。だけれども、しかし、この公党の問題に対して、その正確な分析もなしに軽々な立場で発言するということは、これは許しがたいことです。今後こういう態度はとらないのかどうか、公式の立場でこういう態度をとらないのかどうか、はっきりさせていただきたいと思います。(谷口委員「ここは公式の場じゃないか」と呼ぶ)
  61. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いま谷口さんから、ここは公式の場じゃないかというお話がございまして、お尋ねを受けますから自然こんなことを言わなければならぬようになったわけでございますが、公式の場面で言うていくつもりはございません。
  62. 山原健二郎

    ○山原委員 こういう考え方でこれから文部行政をやるとすると、私は重大な問題だと思うのです。あなたの考え方はわかりましたから。しかし、そういう態度で今後の日本の教育行政の最高機関として、しかも、教育行政の立場は憲法と教育基本法に基づいてやられるわけですから、そういう態度で行政をやっていくのかどうかですね。いまのような考え方でやっていくのかどうか伺っておきたいのです。
  63. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 ただいままで申し上げたことで御理解いただけると思うのでございますけれども、山原さんの御意見よく承って、公式の場面ではそういう表現をいたさないようにしたいと思います。
  64. 山原健二郎

    ○山原委員 教育の基本にもかかわる問題でもあるわけです。これは明らかに偏見であるし、しかも党はそういうことを言っておりません。してきてもおりません。また綱領にも明らかになっていますから、そういう点で、あなたの偏見は私は捨てていただきたい、こう思うのですよ。だから、いま公的な立場ではそういうことを言わない、そういう姿勢をとらないということを言われましたが、私は最後に、サンケイ新聞という公的な機関に、あなたの真意を伝えていないとか、あるいは不正確であるとか、あるいはこれは公人として言ったものではないとかいうようなことがあれば、そういう申し入れをするかどうか伺っておきたいのです。
  65. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 新聞にいろいろ伝えられていることを、一々私のほうから抗議をしたり弁明を求めたりするようなことはしたくないと考えておるわけでございます。どういうときのインタビューであったか、私しかと覚えておりませんけれども、相手もあることでございますので、一々そういうことをしないほうがよろしいんじゃないだろうか。しかし、いまも申し上げておりますように、私の考え考えとしまして、公式の場面において、いま御指摘のような発言はしないという心がけでまいりたいと思っております。
  66. 山原健二郎

    ○山原委員 昨年の十一月八日に早稲田大学におきまして川口大三郎君という学生がリンチ、殺害を受けて、そしてその遺体は東京大学の構内に遺棄されたという事件が起こりました。文部大臣は当然この事実は知っておると思いますが、その後の早稲田大学における動向といいますか、それについてはあなたは知悉をされておりますか。
  67. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 なお紛争が続いているわけでございまして、たいへん心配をいたしております。今日なお学園の中を総長が自由に歩けないというような状態も続いているということを聞かされますたびに、心寒い思いをいたしておるわけでございます。
  68. 山原健二郎

    ○山原委員 いまの構内を歩けないとか、紛争が続いておるとかという報告は、どなたから受けたのですか。いつの時点ですか。
  69. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 事務当局が総長を呼びまして、総長からいろいろと報告を受けておるようでございます。私が総長から直接受けたのではなくて、総長が事務当局に報告をする、その報告を事務当局から私が受けるという形でございます。
  70. 山原健二郎

    ○山原委員 一番新しい時期はいつですか。
  71. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 しょっちゅう聞いておりますので、数日前もこれは話題になったこともございます。
  72. 山原健二郎

    ○山原委員 これは事実を明らかにして問題を解明しないと、抽象的なことでは問題の解決はいつまでもあいまいになってしまいますので、一つ一つお伺いするわけですが、十一月八日に川口君の殺害事件が起こって、十一月二十八日に早稲田大学第一文学部、ここにおきまして学生集会が開かれております。この第一文学部の学生数は四千四百名、そして、学生集会の成立に必要な人数は八百八十名です。それで、この学生集会に参加した学生数は千四百十一名。もちろん集会は公式に成立をしております。こういう状態の中で、暴力追放ということが第一文学部において非常に大きな声になってまいりました。こういう事実は御承知でしょうか。
  73. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 詳しいことは承知しておりません。しかし、学生自治会の主導権をめぐりまして、各セクトがきびしい対立抗争を続けている過程において、何度か集会が持たれまして、そこで採決等も行なわれているという一般的な話は伺っております。
  74. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、一般的な話で、いままで大学紛争の問題がきわめてあいまいな形で見過ごされてきましたから、いま数字をあげて申し上げているわけです。うすうす大臣も知っておられるということがわかりました。  引き続いて、同じ十一月二十八日に、早稲田大学社会科学部で、これは学生数と必要数はちょっと私いまわかりませんが、しかし、出席学生数が六百三十六名。ここで正規に臨時執行部を構成をいたしまして、七十六名の学生が執行部に選ばれております。こういう事実があるのです。おそらく、このことについても明確には御承知ないかもしれませんが、これは新聞その他で周知のことでございますから、私は数字をあげていま申し上げております。  さらに、翌日の十一月二十九日には、教育学部におきまして、この学生集会の定足数が千十七名です。それに出席をした学生が千五百七十名です。だから、定足数をはるかに突破して集まっているわけですね。ここでも、暴力追放に対して学生の熱意というものが発表されまして、その立場に立って臨時執行部三十六名が選出をされております。  引き続いて、十一月三十日、政経学部ですが、ここの学生集会の定足数は千百五十名です。ここでは、学生の集まりが何と二千三十一人集まっています。そしてここでは、学部教授会が、自治会公認の基準としている在籍学生三分の一以上の千九百人の大会要求署名で、この集会は構成されています。一部の学生ではないということがおわかりになるでしょう。  次に、十一月三十日、第二文学部です。ここでは、集会定足数四百四十九名ですが、その一・五倍の六百六十九人の学生が出席をして、暴力追放の立場をとっています。  さらに、十二月一日になりますと、商学部、これは全在籍生の三分の一を大幅にこえますところの二千二百人の大会が開催されました。そして、採決時には千七百名の学生が採決に参加しています。  こうして見ますと、早稲田大学には七つの学部があるわけですけれども、その中で、学生みずからが学生の総意を結集して選んだ執行部の成立数は実に五学部に及んでおりまして、正式執行部が成立をしているわけであります。こういう経過について、大学の紛争の問題を判断をする場合に、こういう数字はきわめて必要なわけですね。学生の多くの総意がどういうところにあるかということを知る意味におきましても、きわめて重大な問題でありまして、だから私は初めてここで数字を明らかにしたわけでありますが、こういう経過というものについては、大臣は御承知でしょうか。
  75. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いまおあげになりました数字は、しかとは承知いたしておりません。いたしておりませんが、セクト間の主導権争いが非常に激しいことは伺っております。同時に、特定のセクトが多数を得がたいという場合には、すぐ採決に持ち込まないで、流してしまって、またあらためて集会を開くというような対応策もとられたりしているということも伺っておるわけでございます。
  76. 山原健二郎

    ○山原委員 いま私が尋ねているのは、私はあくまでも事実をあげているわけです。私なりにこの数字は調査をしてまいりました。だから、文部当局は当然これを知っておらなければならないことなんですね。山原の言う数字は間違いだと言えればいいのですけれども、そうでなくて、全くばく然とあなたは把握をされて、そうして、いま二回、セクト間の争いだということばが出てきているのです。そういうあいまいな態度ではいけない。学生の大半が集まって、そうしてみずから執行部を建設していく、あるいは暴力に対する反対の決議をしていく、これはセクトでも何でもありませんよ。それをセクトなどと、こういう感覚で見ておるところに問題があるわけで、私は、そのことをいま申し上げているわけでございます。  さらに、十二月六日ですが、これは教育学部におきましてクラス委員総会が開かれておりますが、選出されたクラス委員総数は百九十五人、そのうち定足数は三分の一でありますけれども、百二十六人の出席を得まして成立をいたしております。  学生諸君は、非常にねばり強い苦闘の中で、一つ一つ民主的に集会を成立させ、そして民主的にみずからの執行部を選んでいっている。その過程、これを私は理解していただきたいんですよ。だから言っているわけです。  さらに、十二月七日にも、政経学部が自治会委員総会を開いておりますが、これは定数の八十名をこえます百一名の自治会委員の出席のもとに会議が開かれているわけです。  さらに、一月二十九日、本年に越しまして、社会科学部自治会総会は、三役と、常任委員十八名を正式執行部として確立をし、一月二十七日には、第一文学部で、六十五名の自治委員の出席で正式執行部を選出いたしております。  これが川口君殺害後におけるところの早稲田大学の学生諸君の動向であります。私がこの数字をあげたのは、この数字に意味があるからです。一部の学生ではないのです。彼らがみずからこういう集会を開いて、そうして着実に石がきを築くように自分たちの執行部をつくり上げていっているわけです。この過程は御承知でしょうか。
  77. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 事前に、いまお話しになりましたようなことを尋ねるのだということが伺えておりましたら、私なりに調査をしておくわけでございますけれども、そういうお話がございませんでしたので、調査をしていないわけでございます。したがって、ばく然とそういうことが行なわれているということは知っているけれども、個々の集会において、何票対何票で何人の自治委員が選ばれたのだというようなことは承知していないわけでございます。
  78. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、文部大臣に、私も質問順序が急に変化をしましたので、昨日、早稲田大学の問題、そして東京大学の問題については質問をする、こう言っているわけです。しかも、その正確を期す意味において申し上げたわけで、しかし、これはいつ聞かれても、今日の大学問題を重要な問題として考えておるならば、資料として持っておらなければいけないものだと思うのですよ。そういう正確な数字がなくして、ほんとうに問題を正確に把握することはできない、こう思うのです。あなたはばく然と知っておる。しかし、これはもう新聞にも出ております。切り抜き全部持っておりますから。まさかそんなことを文部省も知らないはずはないと思うのです。現実はただいま申し上げましたような状態でありますが、今度は、これについての学校側の態度ですね。これを発表しておきます。  一月二十四日、教育学部におきまして、学校当局のほうとしては、「教育学部自治会を教育学部の学生を代表する唯一の組織として認める。」という専任教員会の決定を伝えています。当局側も認めておるわけですね、この学生のいま申しましたような状態を。そして、これは逐一詳しくは申し上げませんが、さらに一月の二十六日、政経学部におきましても、「自治会の信任投票の成立を認める。」として、特にここは、学部当局としましては、「学生投票の点検に立ち会った結果の過半数が投票し、その過半数が学友会を再建することに同意したものである」ことを認めて、学内にその旨を告示しています。さらに社会科学部、二月の三日でありますが、時岡学部長は、「千五百人以上の投票があれば承認せざるを得ない」と発言をいたしております。さらに第一文学部は、二月の八日に教授会、教員会見解を発表しまして、一年生——三年生全員に郵送しております。これはこう書いております。「これまで学生が健全な自治会再建のために努力を重ねてきた意義を十分尊重する。」こう述べておりまして、自治会の承認について四項目の条件をつけ、これが満たされたものを正式の自治会として認めることを明らかにしています。これは学部当局側ですよ。その四項目の条件とは、「1  クラス委員」これは自治委員とも呼ばれておるようでありますが、「1 クラス委員選出のための公正な選挙管理委員会の設置、2 クラス在籍者の過半数の出席を条件とするクラス委員選挙と公開の開票、3 クラス委員総会における多数の支持を得た執行部の選出、4 その執行部による自治会員の総意を反映し得るような自治会規約の提示と全自治会員の絶対多数による承認、」こういうことがつけられています。さらに二月十日に、第二文学部におきましては、守屋学部長と臨時執行部が確認書を結びまして、「昨年十一月三十日の学生大会を学生集会と呼んでいたことを撤回、前規約に基づいた正式な学生大会と認めます。」として、「私は、昨年十一月三十日の学生大会及びそこで決議された内容を即時無条件承認し、また責任をもって教授会に承認するよう要請します。以上確約します。」こういうことが行なわれているわけです。  だからこれは、一部の学部、一部の学生によるものではなくして、暴力追放を決意した大多数の学生諸君と学校当局側のこれに対する対応のしかたというもの、川口君の殺害事件を中心にして昨年末から今年度にずっと発展をしてきておる早稲田大学の動向というものが、いま私が申し上げました点でおわかりになると思うのです。この過程について、文部大臣はどうお考えになりますか。
  79. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 早稲田大学の中におきまして、学生自治会の再建をめぐり、非常に激しい争いが続いておるわけでございます。それらの結果についてのことを、私が認定する認定しないというようなことを申し上げることは、いささか適当ではないのじゃないだろうか、かように考えるわけでございます。
  80. 山原健二郎

    ○山原委員 文部大臣、私が調査してこういう事実をあげているわけですね。そして、何千何百何十何名と、一名までなぜ私が言っておるかというと、私は、事実に基づいてあなたと論議をしたいという気持ちでやっているわけです。     〔委員長退席、小澤(太)委員長代理着席〕 だから、私の言っておることに、いまここでそれは間違いだとか何とか言えないかもしれませんが、しかし、こういう大きな流れが早稲田大学にあったということは理解できますか。こういう大きな流れを理解できますか。
  81. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私が申し上げますと、また山原さんの反発を買うものですから、なるたけ言わないでおこうと思っておったわけでございますけれども、セクト間の争いは非常に激しいものがございます。また、学外からの動員が行なわれます。同時にまた、執行権を握れないとなりますと、その集会を流してしまうわけであります。二回、三回、四回と流していって、大体多数を握れるというときに採決をする、こういう習慣も行なわれております。また、委員に立候補する者を、横に回りましてやめさせる、圧力を加える、脅迫を加える、こういうことも行なわれたりしておりますし、また、学生大会が開かれて、それが確かに早稲田大学の学生であったという認識が学校当局にどこまで得られておったのかということについても、私はしかと承知しておりませんので、せっかくのお話しでございますけれども、これまでおれが言うておるのだから、それをそのまま認識したらいいじゃないか、はい、そうでございますと言い切れないのは、そういうところに私のわだかまりが若干ある。たいへん申しわけございませんけれども、その辺の御理解は得たいものだと思います。
  82. 山原健二郎

    ○山原委員 いまどんな混乱が起こっておるのですか。ちゃんちゃんばらばらやっておるのですか。
  83. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 先ほど申し上げましたように、総長自身が学園の中を自由に歩き回れる状態でないということは伺っております。
  84. 山原健二郎

    ○山原委員 総長のことばを申し上げましょう。あなたの認識は全く誤っています。そんな状態じゃないのです。これはもうすでに昨年のことですが、十一月八日に事件が起こりまして、その後、学生諸君の、私が申し上げましたような状態が続いて、総長もいろいろ苦悩されたと思うのです。しかし総長は、十二月の九日にこう言っています。「革マル派の暴力追放から新生自治会の結成へと熱意を盛り上げてきた学生の力は高く評価している。連日行なわれている討論が、きっといい結果を生むと期待もしている。この盛り上がりが完全に全学生のものになるまで事態の推移を見守り、大学として適当な時期に打つべき手を考える」と言っています。すでに昨年の十二月九日の段階で、早稲田大学村井総長は、あなたと違って、すでに早稲田大学に正常な姿が生まれつつあるということを総長みずからが言っておるわけでしょう。あなたは、二月のこの日になりまして、まだそんなことを言っておるのですか。いま、早稲田大学で暴力はあるのですか。ゲバ、リンチあるいはテロ、そういう事件が起こっていますか。
  85. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 総長の気持ち、私はまさにそうだろうと思います。私もそんな気持ちを持っております。一般学生に勇気を持ってもらいたいなという気持ちを非常に強く持っておる一人でございます。同時にまた、いまのお話は十二月のときのお話のようでございますが、二月の初めにおきましても、早稲田大学の構外で機動隊が待機しておった。なぜ待機しなければならないか。やはり、一触即発のような学園の状況に備えて警察当局がそういう配慮をしておったわけでございますから、おっしゃるほど自由な姿になっていなかった、こう私は思うわけでございます。きょうからたしか入学試験が始まったのじゃないかと思いますので、きょうの時点におきましては、そういう不安があるとは私には考えられませんけれども、二月の初めにおきましても、いつまで待機しておったか知りませんけれども、機動隊が学外に待機せざるを得ないということは、非常な不安な学園の中の姿ではなかっただろうかと推測をいたしておるわけであります。
  86. 山原健二郎

    ○山原委員 早稲田大学におきますところの第二文学部の暴力事件、これはいままで、特に一九六九年以降、学校に登校できない学生もおりました。私の調査では、一九六九年以降大体二十六名、暴力をふるわれたわけですね。それから、そのために授業料も払えず、一年、二年留年したとか、授業料を払いながらもそれ以上学校へ行けない、授業も受けられないという状態で、学校をやめていった学生も十三人おります。この個人に対する暴力、監禁、テロ、リンチ、脅迫、強奪事件、これは一九六八年以降約七十件、被害者九十名、この中には女性も含まれています。そして、その中で、一九七〇年の十月には、山村君というのが御承知のように焼身自殺をするという事件も起こっているわけですね。こういうことがあったのです。加害者の名前もわかっているわけですが、そういう事件がありました。     〔小澤(太)委員長代理退席、委員長着席〕 そして、その最後が川口君のあのような殺害事件になってきたわけです。  しかし、いまはそういう状態はありません。学校に登校できない学生はいなくなっています。そういう状態を学生諸君みずからがつくり出しているわけですね。そういう大きな流れというものを認識をせずして、大学問題について何を考えているのですか。だからあなたは、いつもセクト間の争いだと言っているわけです。この前、二月の三日の、本予算委員会の総括質疑におきましての、わが党の松本善明議員に対してのあなたの答弁をちょっと読み上げてみますと、「事実セクト間の激しい対立が行なわれているわけでございます。たとえば、文学部が革マルだとか、あるいは法学部が民青だとか、いろいろいわれておるわけでございますし、これらのセクトが学外のセクトとも密接に関係を持っておるわけでございます。そういうことで荒れに荒れているわけでございます。」と言っている。二月の三日に、早稲田大学は荒れに荒れておったわけですか。二月の三日、松本議員がこの場所であなたに対して質問をいたしましたとき、早稲田大学は荒れに荒れておったわけですか。私がいま申し上げましたように、大学の中は、村井総長まで言っておるように、学生諸君や教職員の皆さんの努力によって正常な状態に返っておるとき、それをあなたは「荒れに荒れている」と、こう言っておるわけです。しかも、私が学生諸君の数を言いましたように、各学部におきまして、定足数をはるかに上回る学生が集まっている。早稲田大学四万。民青とかなんとかいう問題じゃないのです。その四万人の学生諸君の意向というものが暴力追放のほうに向かって、そして、定着した自治会を構成し、しかも、学部当局がこれを是認するという、そういう状態、その二月の三日です。その段階であなたは、なおかつ事実に反して「荒れに荒れている」という、そういう答弁をいたしているわけです。私は、こういう国会における事実誤認の答弁に対しては抗議をいたしたいのです。荒れに荒れておったのですか。
  87. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私は、そのとおり認識いたしておりました。その当時、学外に機動隊が待機しておったのです。なぜ待機しておったか。いつ、どんな問題が起こるかわからないから、心配で待機しておったのであります。同時に、あの当時の新聞の写真を見ると、学生部長が学生に両腕をかかえられて、学内を振り回されておったじゃありませんか。まさに暴行、脅迫が公然と行なわれておったじゃありませんか。同時にまた、政経学部ではストライキが行なわれておったじゃありませんか。あれが正常な状態だとおっしゃいますと、私と山原さんの間には非常な認識の違いがあるなと、いまさら思い知らされるような感じがいたしておるわけでございます。
  88. 山原健二郎

    ○山原委員 あなたは答弁の中でも、学生部長ですか、それが腕をこうされたという写真を見たという話があるのですが、それは、多くの学生の中でそういうことがあったかもしれませんね。けれども、テロ、リンチ、殺害、こういうものが横行してきたわけで、荒れに荒れておるというそういう状態は、いま、学生やあるいは教職員の皆さんの力でなくなろうとしておる。この現実を見ないで、いまもなおかつ、いままでどおり、革マル派の暴力とか、そういうものがあの早稲田大学の中を横行しておるというふうな認識であなたはこの本委員会における答弁をしたんですか。昨年十一月八日に川口君が殺害されたときから、いまもなお荒れに荒れておる、そういうテロあるいは脅迫、暴行、殺害事件などというものが早稲田の中に起こっているという情勢の判断をしているわけですか。だからあなたは、いま学生諸君の、あるいは教職員の皆さんの、総長までが認めておるような正常な状態に取り戻そうとするこの努力に対しては、何らこれを認めようとしていない。実際にはあなたは、こういう不正確な情報に基づいて発言をしておるにすぎないわけです。
  89. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 二月三日と山原さんが御指摘になりましたが、その際は私は、いろいろな関係者と電話で連絡をとって情勢を確かめております。二月三日現在のことでございまして、しかし、一刻も早く学園が正常化するようにこいねがっており、また、それに対していい知恵がないかと考え続けてきている一人でございまして、総長が十二月にそういう気持ちを持っておられたことは当然のことだと思いますし、またそのときも、二月の三日現在におきましても荒れておったことは事実でございまして、そういう平和な秩序ある学園ではなかったと考えておるわけでございます。ストライキが行なわれておったこと一つとりましても、それは私は、御理解いただいていいんじゃないだろうかと思います。
  90. 山原健二郎

    ○山原委員 あなたの認識は間違っています。私が先ほど来数字をあげて言ってきた……(「民青大学」と呼ぶ者あり)民青なんかの問題じゃない。四万人の民青がおるか。そんなことを言って、いつも問題をすりかえようとしておる態度があなたの中にもあるのですよ。そういう問題じゃないでしょう。だから、あの学部の自治会構成、学生集会というものがどういうふうに学生諸君によってつくられてきたか。しかも暴力追放という、この一致点で学生と教職員の皆さんが努力をしてきたこの十一月、十二月、一月、この苦悩と、心死の暴力追放の努力に対して、あなたは一体どう考えるのですか。全く十一月八日の時点から変わらずに、荒れに荒れておるという、そういう事実認識をもってこの早稲田大学の問題を見ているのですか。
  91. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 二月三日現在のことと、今日幸いにして曲がりなりにも入学試験が行なわれるようなった時点とでは、相当な変化が起こってきているだろうと思います。全体的に秩序が完全に回復される日の一日も早いことをこいねがっているわけでございます。
  92. 山原健二郎

    ○山原委員 具体的にそれじゃ聞きましょう。二月三日、何があったのですか。
  93. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 二月三日という日は、山原さんが提起されたものでございますから、その山原さんのお話に従って二月三日と申し上げているだけのことでございます。
  94. 山原健二郎

    ○山原委員 二月三日というのは、あなたがこの本委員会において答弁した日ですよ。その日に、いま荒れに荒れておると、こう言っている。きょうと言っているのですよ。現在と言っているのですよ。だから、正確に言えば時間がかかりますから、いま申し上げませんけれども、この松本議員の質問に対しまして、いま、荒れに荒れておるという答弁をしている。荒れに荒れておるというのはどんなことですか。どんなことがあったのですか、この二月三日に。
  95. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 先ほど、学校の構外で機動隊が何個中隊か待機しておったということを申し上げたわけでございまして、忙しい機動隊が待機せざるを得ないほど、学園の中で、いつ、どんな問題が起こるかわからないという不安があった、こういうことでございます。具体のお話がございましたが、私は、新聞に掲載されました写真までその際には取り上げて、公然と犯罪行為が行なわれているので心配しておりますということもつけ加えておるわけでございます。
  96. 山原健二郎

    ○山原委員 写真のことをずいぶんこだわるようですが、問題はすりかえないでほしい。写真のことはずっと前のことです。二月三日というのは、機動隊が学外におるとかいうようなことは機動隊の問題ですよ。警察当局の問題ですよ。学内にどういう状態があったのか、ないでしょう。あなたは言えないじゃないですか。学内に乱闘があったんですか、この日。「荒れに荒れている」状態があったのですか。テロやリンチが行なわれておったのですか。学生が学内に入れなかったのですか。そういう事実はないんです。だから私は先ほど言いましたように、学生諸君が一つ一つ石がきを積み上げるように、また教職員の皆さんが総長も含めてこの努力を認めておるという状態、全早稲田の学生、全早稲田の教職員が一生懸命になって努力しておる。との過程をあなたは全く認めようとする姿勢を持たないで、そして「荒れに荒れている」という状態、しかも二月三日の時点、何もないじゃないですか。機動隊が行っておるなんてことは問題じゃないでしょう。機動隊はかってに行っているわけでしょう、学外に。あなた文部大臣でしょう、あなたは警察庁長官じゃないのだから、学内にどういう事実があったのですか。   〔発言する者あり〕
  97. 根本龍太郎

    ○根本委員長 静粛に願います。
  98. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私は当時学校の責任者とも話し合っておるわけでございますけれども、学校の責任者が自由に学園の中を歩けるような状態ではないんだということも伺いました。同時にまた、こんな状態では学校当局が相当の警備力を持たざるを得ない、持たなければ何ともやっていけないというような心配ごとを聞かされたことも事実でございました。そういうことを踏まえて当時申し上げておったわけでございます。
  99. 山原健二郎

    ○山原委員 あなたの答弁を聞いても、「荒れに荒れている」という状態じゃないでしょう。そういう状態じゃなくて、いま言いましたように各学部においても、学部教授会が学生の自治の会あるいはそういうものを承認をしていくということですからね。そういう状態、それをあなたは全く認めようとしないで「荒れに荒れている」と言う。しかもそれはきわめて根拠のない抽象的な発言なんですよ。だから「荒れに荒れている」という問題について事実があるかないかといえば、事実は言うことはできない、警察が周囲におったということだけでしょう。事実はないのです。あれば一体どういう事実があったか言ってごらんなさい。
  100. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 学校は正常に教育を行なうところだと思うのですけれども、その授業、教育が行なわれていないで荒れていないという考え方は、私にはどうしても納得できません。
  101. 山原健二郎

    ○山原委員 ここは国会の答弁ですからね。「荒れに荒れている」というのは、あなたどういう状態だといえば、これは全く騒乱のような状態とか、あるいは実際に人身にけがが生ずるとかいうような状態をさすだろうと思うのですよ。そういうことを立証できないで、ただ「荒れに荒れている」んだという、こういう認識、だからその背後にはあなたはいままで学生や教職員の皆さんが努力してきたことに対しては、何らこれを評価しようとしてない態度があるわけです。どうですか、私が言いました学生や教職員の皆さん方の努力、総長のことばまで私は出したわけですが、こういう努力、この早稲田大学を正常に発展させていこうとする大きな流れというものに対しては、あなたはこれを評価されますか。全くしませんか。それとも全く十一月八日時点と同じ、現在もなお「荒れに荒れている」状態であると、そういうふうに認識をされておるのですか。
  102. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 川口君が殺される、学生が殺されるというようなことは、私は全く異常な状態だと思うのでございまして、そんな状態が続いているというようなことは、だれでも私は考えられないと思います。当然学校当局は授業が正常に行なわれるように一生懸命に努力しております。まだ完全にそこまで至っておりませんけれども、一生懸命努力しております。その努力はみんなで評価すべきだと思いますし、それは助けていかなければならない、こう思います。
  103. 山原健二郎

    ○山原委員 現在の時点で、登校できないような学生がおりますか。
  104. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 そこまでの事実は私はよく承知しておりません。ただ、セクト間の争いが激しいものですから、単純におっしゃるような姿ではないということだけ私は心配をいたしておるわけでございます。現在は、いずれにしましても入学試験が行なわれておるわけでございますから、静穏な状態に向かっているだろうという期待はいたしております。
  105. 山原健二郎

    ○山原委員 どこであなたと私とがかみ合わないかというと、あなたは事実を根拠にしてないからです。そうでしょう。長い間、先ほど言いましたように登校できない、暴力を受ける、革マルの暴力を受けるということで登校できない学生がおったわけですね。そして最後にはああいう殺害事件が起こった。しかし、早稲田の学生、教職員がそういう暴力は排除しようということで皆さんがじりじりと立ち上がって、その革マルの暴力を排除していく、こういう状態になって、現在では登校できない学生はいないのであります。こういう事実に基づいて論議をしないから、だから全く根拠なしに「荒れに荒れている」んだという国会答弁になってしまうわけです。文部大臣は警察当局じゃありませんから、だから学生の動向とかあるいは教職員の姿、そして大学の流れがどういうふうに動いておるのかということぐらいは把握していなくて、どうしてこういう重大な問題を分析することができるのですか。だから私は、あなたが私に反論するならば、事実をもって反論をしていただきたいわけです。ところが一つも事実はない、しかもその虚構の上に、「荒れに荒れている」ということばが出てくるわけでございます。問題はそういう状態ではなくして、大学の流れは新しくこの暴力を排除する方向に向かっておるということなんです。そういう根拠なしに、あなたは松本議員に対する答弁をいたしまして、「荒れに荒れているわけでございます。」と、こう言っているわけです。(発言する者あり)あなた方も事実を知らないからそう言っているんでしょう。事実を私は言っているんだから、反論があるならば事実をあげて反論してもらいたい。  しかも、こういうところをあいまいにすると大学におけるセクト間の争いだとかいうような問題だけで、すべて問題があいまいもことされていくわけなんですよ。だから、私はきょうは一時間半の時間をいただいて、ほんとうに事実の土台の上にあなたと論議をしていきたいと思って言っておるわけです。しかも、そういう根拠のない、「荒れに荒れている」という上に立ってあなたは警察の常駐を提案をしております。松本質問に対しまして、「現在、いまの早稲田大学に警察のパトロールを頼むべきじゃないか、それ以外には秩序を維持できないじゃないかと、こう思うのでございまして、ぜひ日本共産党の御賛成を私は得たい、このことを提案申し上げたいと思います。」こう言っておるわけでございますが、これはいま私が申しましたように、大学がみずからの力で暴力を排除していこうとしておることに対して、いま警察の力がなければ秩序を回復することはできない、しかも警察官の常駐パトロール体制をつくるということですね。これも事実認識の誤りの上に立って行なわれていることなんですよ。だからあなたは、当時、二月三日ですよ、二月三日に何もないんだから。その前後にはないんだから。あるならば反論しなさい。  ところが、そういう状態であるにかかわらず、あなたは大学に常時パトロールを入れるということを提案しておるんですね。これは文部官僚の、文部行政者の言うことじゃない。警察官僚の言うことだ。そういう考えをいまも持っておるのですか。
  106. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 そのときの松本さんのお尋ねはこういうことであったと私、記憶しております。速記録を見直しておりませんのであるいは食い違いが若干あるかもしれませんが、自分がたびたび政府に警告を発しているにもかかわらず、早稲田大学で川口君が殺されたじゃないか、政府は一体どう責任をとるのかという式のお話であったよう  に思います。そこで、早稲田大学が非常に荒れておるわけであります。機動隊が学外に待機している。また、学校の責任者が学園の中を自由に歩けない、いつ危害が加えられるかもわからない、そういう状態でございますから、そういう状態の中で政府に責任をとれと言われると、やっぱりパトロールを許す以外には責任をとれない。私は、常時パトロールなんということは言っておりません。速記録にそんなことはないはずでございます。パトロールを許したらどうかと、こう申し上げているわけでございます。それ以外には政府の責任を追及された場合に政府の責任のとりようがない、こう私が判断したから、松本さんのそういう御意見に対しまして、そういう提案をさしていただきますと、こう申し上げたわけであります。
  107. 山原健二郎

    ○山原委員 「現在、いまの早稲田大学に警察のパトロールを頼むべきじゃないか、それ以外には秩序を維持できないじゃないかと、こう思うのでございまして、」これは二月三日の時点です。で、松本議員が問題を提起したのは昨年の四月三日でありましたか、本委員会の総括質問において、この暴力集団の問題を取り上げて、その一年間の経過のことを言っておるわけですよ。あなたが答えておりますのは、「現在、いまの早稲田大学」これは二月三日の時点ですね、その日が答弁の日ですから。あの二月三日の日現在、早稲田大学に警察のパトロールを頼むべき、しかも、それでなければ秩序を回復できない条件があったのですか。あなたはそれをどういう事実に基づいて判断をされたのですか。
  108. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 そのときに答えておりますとおりに、一つは、学校の責任者が学園の中を一人で自由に歩ける状態にない、これが一点でございます。いつ身辺に危害を加えられるかわからない、そういう不穏な状態にあったということが一点でございます。これは学校当局者から聞いておるのであります。第二点は、学校当局者みずからが、このままの状態ではみずからが警備力を保持せざるを得ない、保持しないではとても秩序の維持ができない、こういう不安を訴えられたことが第二点であります。第三点は、学外に機動隊が何個中隊か待機を続けておったという事実でございます。  こういう三点から考えまして、一体政府の責任をどうとるのかと追及されてまいりますと、やっぱり学園の中がおさまるまではパトロールをしてもらう以外にはとりようがない、こういう判断をして、御相談を申し上げたわけであります。
  109. 山原健二郎

    ○山原委員 学校の責任者というばく然たる、どういう人物か私もよくわかりませんけれども、その一人の発言かどうかわかりませんが、その発言によって——私は先ほどから言っておりますように、総長のことばを持ってきておるわけです。それから学内の動きもあなたに伝えたわけですね。そういう状態の中で言っているわけですから。しかも、その一人の人間がどういうふうに言ったというふうに言われて、おれが安心して歩けないのだということを、そのことだけで反論をされても困るわけですよ。だから、あの二月三日の現在、いま早稲田大学に常駐パトロールを入れなければならないという、そういう条件があったわけですか。だから私は、荒れに荒れておるという状態から、そういう認識のもとにパトロールを常駐させなければならぬ、そうでなければ秩序の維持は回復できぬのだと、こういう論法にあなたはなっておると思うのですけれども、そういう状態があったのですか。
  110. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私が、パトロールを認めたらどうでしょうかと申し上げたら、すぐ山原さんは常駐パトロールと、こういうふうにことばを置きかえられる。また、その当時の認識につきまして私が申し上げている。どうも山原さん自身が、当時の早稲田大学の状況を、ほんとうに御承知だったんだろうかという疑問を持ちます、私自身が。
  111. 山原健二郎

    ○山原委員 これはもう新聞を見たら全部、常駐パトロールと書いてあるわけで、あなたが言われたここでの答弁が、そういう印象を与えることばであったわけです。だから、常駐パトロールではないわけですね。
  112. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 松本さんが政府の責任を追及されるものですから、責任を全うしようとすれば、いまのこの場合においてはこんな手しかないように思うのです、いかがなものでしょうかと申し上げたわけでございます。
  113. 山原健二郎

    ○山原委員 これは大事なところだから、私は繰り返して聞いているわけですけれども、責任を追及するのは、これは当然ですよね。大学に指導、助言の立場にある文部省の最高責任者が、その責任を、問題が解決しない場合に追及されるのは当然のことであります。しかし、その松本さんの責任追及とあなたの答えておるのは、これは「現在、いまの早稲田大学」とこう言っているわけですからね。  で、あなた、いま常駐パトロールということではないと言われましたが、あなたがここで提案されているのは一体何なんですか。何を提案されたのですか、この日に。「現在、いま」何を提案されたのですか。
  114. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 学園の中で人身殺傷等の事件が起こらないようにする、それには、いますぐ対応策というとそれしかないんじゃないだろうか、こう考えたわけでございます。山原さんと私との間に、当時の事実の認識の上においても大きな違いがあるようでございます。大きな違いがあるようでございますが、私の申し上げた事実がそのとおりであるとすれば、山原さんならどんな対応策をお考えになるだろうか、そういうことで比べていかなければ、ちょっと歯車が合わないんじゃないだろうかという感じがいたします。
  115. 山原健二郎

    ○山原委員 全くあなたの場合は、事実を具体的にあげれない事実認識の上に立っているわけですよね。言えないじゃないですか。二月三日の時点に何があったかと言えば、言えないでしょう。周囲で警察がパトロールをしておった、こういうことだけですわね。そうして、ある責任者というのが自由に構内を歩けなかったということ以外にはないわけです。私の場合は、だから冒頭から事実をずっとあげているわけですよ。事実をあげているわけです。それで、私の事実に対する反論がないわけですから。ほぼそういう状態は知っておるということを言われたわけですね。ほぼ知っておって、そして大学は正常な姿に返ろうとしておる、前進しておるこの流れというものを全く認めないで、いま、現在早稲田大学に警察のパトロールを頼むべき、それ以外に秩序の回復はない。秩序を回復しようと必死になってやっておる、しかも回復の状態が生まれつつあるときに、いま、現在パトロールを入れる以外に秩序の回復の道はないと言うのは、これは早稲田の教職員、学生の努力というものに対して、あなたが何一つそれを評価しようとしていない、このことを意味しているんじゃないですか。
  116. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 山原さん、自分で私の答弁をつくっていらっしゃるような感じがいたします。私は一つもそんなことを申し上げておりません。二月三日当時の現在において、政府は一体早稲田大学の秩序維持についてどう責任を負っていけるのかというふうにお尋ねを理解したものですから、そのときにおいては、それ以外にはないように考えるので相談を持ち出しただけのことでございまして、当然、大学人が学園の秩序回復に対して積極的な努力を払っていく、私たちはそれを援助していく、これはもうお尋ねがなくても御理解いただけると思うのであります。  また私は、パトロールを今日まで続けていけというようなことを一切言ったことはございません。その当時の状態のもとにおいて、こんな方法しか考えられないんじゃございませんでしょうかと申し上げたわけであります。  同時に、いまいろいろ数字をあげてお話しになりました。山原さんのお話ですからそのとおりだと思いますよ。思いますが、それを認定しろということになると、一体一人一人が早稲田大学の学生であったかどうかということについて私はつまびらかにしておりませんし、同時にまた、集会で採決をとられるときにはこういう例もあるんですと、私はいろいろ承知しておるものでございますから、こういうことを申し上げておるわけでございます。  また立候補にあたりましても、おろすための努力が半ば暴力を行使して実行されている事実も承知しているものですから、こんなことを申し上げるわけでございます。たいへんすなおにそのまま受け取りまして、はい、そのようでございますと、こう申し上げられないことは遺憾でございます。遺憾でございますけれども、皆さんが努力してくれていると思います。また努力しなければいけないと思います。またその努力に対しまして、実るように文部当局も積極的な協力を惜しんではならないと思います。でありますから、協力する筋道がございましたらお教えをいただきまして、よいことにつきましてはすぐにでも実行に当たっていきたい、そういう点において全く同じ気持ちを持っております。
  117. 山原健二郎

    ○山原委員 大臣の答弁はやはり事実認識が違うのです。当時の新聞も読んでみていただきたい。大体一般の商業新聞におきましても、学生諸君の行動というものに対して評価をいたしております。主張においても評価しております。セクトの争いか、そうではない、圧倒的多数の学生が暴力追放を求めていると書いてあるんですよ。しかも四万の学生が立ち上がって、そして大会に出席し、自治会を再建しておるということも書かれている。またテロ、リンチを行なう革マルとの対立である、川口君を殺したのは、これは明らかに革マルという集団ですね、だからそれとの対立である、それを克服していく過程が新聞の記事にも克明に書かれておるのです。そうして、それはほぼ天下周知の事実である。しかも、セクト間の争いだというのは間違いだ、こういうことばも主張の中にも幾つか出ておるわけでございます。だから、ちょうど電車の中で暴力が発生する、それに対して、その暴力に対して電車の多数の者がそういうことをやめろ、そういうことはするべきではないと言って多数の人たちが、電車の中におる者が立ち上がる、こういう状態なんです。それをあなた方はセクトの争いだ、こういう言い方をするわけですね。大多数の早稲田の学生、それがセクトですか。革マルの殺人行為に対して、そういう暴力は排除しようとして立ち上がっておる。そういう運動を起こしている。しかも、最初はあぶなくて、危険な状態の中でやっている。それとこの革マルとの間がセクトの対決ですか。あなたはそういう感覚をもって見てきているんじゃないですか。  だから、あなたは早稲田の問題についてもこう言っておるわけですね。革マルの問題を追放して民青が早稲田をとるんだとかいう言い方をしているのですよ。そういう言い方をしている。どろ仕合いに持っていくんです、あなた方が。大多数の学生諸君がこうした努力をしておる段階で、そういう見方をあなた方は常にしてきたわけです。これはどうですか、この十一月以降の状態は、革マルと暴力追放という学生とのそういう対決ではなかったんですか。
  118. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 川口事件というようなほんとうに残念な事件が起きたわけでございますので、早稲田の全学生が暴力を追放したいという気持ちを強く持ったことは、私はそのとおりだと思います。したがって、また文学部の学生自治会を革マルが主導権を掌握している、これを追い落としたい、みんなそういう気持ちを持ったようでございます。ところが、とってかわるものが民青だということで一般学生が必ずしもついていかない、その事実があるのでございます。民青じゃ一そういやだという学生もあることは事実でございます。そういう意味のセクト間の争いでございまして、セクトに入らない学生が大部分なんですけれども、学生自治会の主導権争いがセクト間の争いになるわけであります。だから、暴力追放においてはみんな一致するんですけれども、セクト間の争いにはついていけないという気持ちを一般学生が持っているところに、早稲田大学の正常化が時間のかかっている基本的な原因があるというふうに私は思っているわけであります。
  119. 山原健二郎

    ○山原委員 民青が何をしたんですか。
  120. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 民青が文学部の学生の自治会を掌握したいという努力をしておられることは事実のようでございます。
  121. 山原健二郎

    ○山原委員 民青が暴力を使ったんですか。
  122. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 かってに質問されても困ると思うのです。私はそんなこと一つも言っておりません。暴力を追放するという意味において早稲田の全学生が一致しているでしょう、こう申し上げました。
  123. 山原健二郎

    ○山原委員 私はだから最初に数字をあげて言ったわけです。大多数の学生諸君が暴力追放、そういうことでみずから自治会をつくっていくという過程を歩んでいるわけですね。そのことを私は言っているわけですよ。それをあなたは、そのことを見ようとしないで、革マルと民青の戦いだとか、そういうすりかえをやっておるんですよ。民青が大多数の学生諸君の支持を得て執行部になることだってかまわぬじゃないですか。あたりまえでしょう。しかも四万の学生、民青じゃないですよ。率直にいって、そんなにたくさんおるとは私は思いません。あなた方はそういうすりかえを論議の中に持ち込んできているのです。だから、いつもこういう形で暴力集団が泳がされているのです。実際にそうなんだ。そういう状態で、民青がおるからということで革マルの殺人行為、テロ、リンチ、これが許されてきたのです。実際そうですよ。  だから、あなたの発言の中にもあるのですよ。いいですか、早稲田大学で殺人事件を起こしたのは革マルでしょう。殺人事件を起こしたのは革マルという集団ですね。これは隠れもない事実。そのことについて文部大臣が、川口大三郎君が殺された早稲田大学は、革マル系と代々木系学生の間の激しい対立でゆれている、こういう言い方。しかも、革マルを追放したあとで民青が出てくる、こういう言い方。民青だってなんだってこれは学生に変わりはありません。民主的に選ばれれば、民青が執行部をとったってかまわぬことだ。当然のことなんです。そのことと、暴力を使い、リンチ、殺人を行なう集団とすりかえてはいけない。どういう学生が自治会の委員長に選ばれようが、それは学生の民主的な意向のもとで選ばれていく。しかし問題は、リンチ殺人事件を行なう凶暴な犯罪集団、それと問題をすりかえてはいかぬわけですよ。  だから、大多数の学生諸君が立ち上がっている。その中に民青はきらいだという者もおるだろう、あなたが言われたとおり。あたりまえのことでしょう。また民青でいいという者もおるだろう。またほかにもいろいろの集団があるでしょうね。そんなことを問題にしているのではない。すべての学生が暴力に対して対決しようとしておるときに、いつもセクト間の争いだ、こう言うわけです。暴力を排除する、暴力を使っておるこの凶悪な犯罪集団に対して、き然とした対決をしていくという姿勢が文部当局には見えないから、だからそれをすりかえるために、セクト間の争いだということで問題があいまいにされていく、そういう事実がたくさんあるわけですね。  私は、だから暴力の問題について、早稲田の学生、教職員が立ち上がって、正常な状態にこれを変えようとしている努力、そしてそれが一定の成果をあげている今日、そのことについてあなたは認めるかどうか伺っておきたいのです。
  124. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私は、学生自治会がどのセクトに掌握されたらいいというような式の考え方は、一つもここで申し上げたつもりはございませんので、先ほど山原さんがいろいろ、私の言わないことまで言ったような式で御質問されていることは、ぜひ変えていただくようにお願い申し上げておきます。  同時に、学園の秩序を回復する、これはもう早稲田全学の責任だと思います。またそのために一生懸命皆さんが努力されていることも、私はもちろん評価をいたします。さらにより一そう早く完全な秩序の回復されることを、期待している一人でございます。
  125. 山原健二郎

    ○山原委員 その努力の結果、早稲田の状態が正常な形に移行しつつあるということ、少なくとも昨年十一月八日以前の状態とは違うということはお認めになりますか。
  126. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 ああいう大事件が起きたときの状態が、いままで続いているということはもうあり得ないと思います。当然正常な状態に向かって前進を続けている、かように考えております。
  127. 山原健二郎

    ○山原委員 そういう中で、これは学生、教職員の努力ということになると思いますね。暴力追放ということで努力をされて、そして私が言いましたように、学生諸君も正常に多数の学生参加のもとに集会を開いて、そして自治会もみずからあらためてつくっていく。そして一部、一部ではありませんが、学部教授会のほうもこれを認めていこうという方向に向かっておることは、これは確かだと思うのです。そういう点で、いま大臣も言われたように、正常な方向努力の結果向かいつつあるという段階だと思うのですね。そういう中で二月の三日に、このパトロールの常駐、常駐ということばは違う、こういうふうに言われたのですが、パトロールを強化するという意味でしょうか。とにかく警察のパトロールの常駐ではないということですからそうですけれども、そのパトロールをやるにあたって、「ぜひ日本共産党の御賛成を私は得たい、」これは党を代表するところの松本議員に対する提案として出ております。共産党は警察を入れるなどということは考えていない。いま早稲田の学生諸君が、また教職員の皆さんが努力しておる、これがほんとうに学園から暴力を追放していく一番正しい道だということを、今日までも主張してきたのです。これはおそらく、この暴力集団の問題について、国会の中で一番熱心に主張してきた政党だと私たちは自負しております。  で、ほんとうに暴力を排除するためには、大学を構成する全教職員または学生諸君が、暴力に対してはき然とした態度をとっていくということ、そしてそうでなければ、学園に暴力が横行する限り、学問の自由も学園の自治もないのだということを、私も昨年来文教委員会におきましても主張し続けてまいりました。おそらく歴代の文部大臣は知っておると思うのです。そういう態度をとり続けてきたこの共産党に対しまして、全く逆な形、すなわち警察のパトロールを入れるということに対して、これに賛成をしてもらいたいということは、これはまさに私どもの考えておることと逆な道を、それを逆用して協力を求めるという提案に実はなっているわけです。だから私は、この問題についてはもちろんお受けするわけにもまいりませんし、またこういう提案は、公党に対する提案としてぜひ撤回をしてもらいたい、取り消してもらいたいということを私は強く要求するわけです。  なぜなら、先ほど言いましたように、私どもの主張、私どもの暴力追放の考え方とそれは違うからです。そういうことを協力要請されても、もちろん引き受けるわけにはまいりません。  しかしそうでなくて、そういうことで逆に共産党というものに対して、何だか暴力集団と対置する集団であるかのような印象を与えることば、このことばについては、ぜひとも文部大臣の口からこれは取り消してもらいたい。そのことを要求します。
  128. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私は、暴力追放に熱心なかまえを取り続けていらっしゃるから、一触即発の状態にどう対応するか、そうするとパトロールしか考えられないのじゃないか。はずは合っているつもりでございます。しかし、もうそういう事態は過ぎました。いまは必要ございません。したがいまして、いま提案を引き下げろとおっしゃれば喜んで引き下げさせていただきます。
  129. 山原健二郎

    ○山原委員 二月三日に提案されたことを取り消されましたので、この問題についてはこれ以上申し上げません。(「いまは必要ない」と呼ぶ者あり)いまも必要ない。二月三日も必要ないのですよ。だから、根拠がないから、それで荒れに荒れておるなどと言う。論証をようあげなかっただけのことなんですよ。そんな問題はもうすでに解消しましたのでおきます。  これと関連をいたしまして、もう時間もあまりありませんが、東京大学の精神神経科の病棟の問題です。これも昨年ちょうどこの予算委員会において取り上げました。そして高見文部大臣も、これを解決するために日をかしてもらいたいということを言われたわけです。依然として赤れんがと称せられる東京大学医学部精神神経科は占拠されたままなんですね。もうすでに三年数カ月を経過いたしております。しかも東京大学の学生、この三年間に卒業した者は少なくとも病床実験ができない、自分の学内において病床実験ができないまま卒業をしていくという状態、または東京大学の精神神経科に入院をしたいと思う患者の方たちも、入院ができないというような不正常な状態にあることは御承知のとおりであります。高見文部大臣は、何とかこの問題を解決したいと言ってまいりましたが、一向に解決するめどはありません。いまの文部当局の姿勢でありますと、おそらくまだ何年も解決しないだろう。しかも、一部の集団によってここが占拠されたままである。この不正常な状態に対して、新しい文部大臣はどういうふうな態度をおとりになるか。解決される見通しをはっきりと持っておるのかどうか、伺っておきたい。
  130. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 非常に長い間御指摘のような状態が続いていることに対しまして、深く心配をいたしております。また責任も感じております。これが厚生省所管の国立病院でございますと、院長さんをかえるなり直接手を下して解決をはかることができるわけでありますが、大学の付属病院でございますために、政府は直接手を下せない、あくまでも指導、助言の範囲にとどめておるわけでございます。やはり私はこの姿勢は大切だろうと思うのであります。あくまでも政府が直接手を下すのではなしに、大学当局に善処を求める、これが学問の自由を守っていきますためには、こういう姿勢は将来とも大切だ、こう考えるわけでございます。そのことが、また結果的には解決を非常におくらせてきているわけでございます。私は、やはり大学の中に過度に政治が持ち込まれている、ここに一つ問題点があるなという感じを持っているわけでございまして、学校当局にその辺のけじめをはっきりしてもらいたいな、こう念願をしておりまして、そういうことで、具体的な方途を確立しながら秩序を回復に持っていけないかな、こんな気持ちを一つ持っております。  もう一つは、大学自身の大学全体の管理、運営、これがもう少し全学的な立場から方針を確立して、それを実行していけるというような方法はないものかな、こうも考えているわけでございます。こうなりますと、制度的にも考えなければならないかもしれませんけれども、同時に、大学当局が運営の面でもなおくふうできる余地があるのじゃないかな、こうも思うわけでございます。たいへん回りくどいようでございますけれども、こんな方向で解決をはかっていく以外にはないのではないだろうかな、こう思っているわけであります。  なお、具体の方法などにつきましてお考えをお持ちでございましたら、むしろお教えを賜わりたい、こういう気持ちさえ抱いております。
  131. 山原健二郎

    ○山原委員 国有財産であり、しかも日本の最高の学府である病院が、三年数カ月も占拠されたまま放置をされておる。これは異常な事態です。それは大臣もお認めになると思うのです。また前の高見文部大臣は、これも両方のセクトが同じテーブルについて話し合いができるという、こういう言い方をしているわけですね。またセクトということばが出てくるのです。これも、一方は暴力を使って看護婦を追い出し、そして学園を占拠しておる集団ですよ。それと正規に任命された教職員、看護婦というものが正常に話し合える状態ではないわけです。だから昨年の何月でしたか、当初に一回会を持ったっきりで、しかもその席につくなり、おまえたちと話をしないのだということで全然話し合いが行なわれない。そういう暴力を使う集団と、それと正常な形の教職員というものと話にならないものを、セクト間の争いだというような形で見ておるところに、ここにも問題があるわけです。  学問上の対立といえば、これはいろいろあると思うのです。何の学問だってあると思うのです。九九%がAという学説を出す、一%がBという学説を出す。私は、一%のBの学説だって大学においては尊重しなければならぬと思うのです。しかし、これは学問上の問題は学問上の論争によって解決をしていく問題ですね。また科学的に実証していく問題なんです。それを抜きにして、それをもう、おれたちの気にいらない考えを持っておる者は暴力で排除していくというこの集団と話し合いをして問題が解決できるなどという、そういう状態でないにかかわらず、なおかつ話し合いが行なわれるかのごとき幻想を私たちに抱かして、また一年間経過をして、何一つ解決しようとしていないばかりか、病院長はこの占拠集団に対して、予算の分割もするなどということを最近言い始めて市民権を与えていく。ますます混乱は長引いていくわけですね。これに対して、文部当局はこの一年間、係官にも聞きましたが全く手を打てない、どうしたらいいでしょうかという、そういう悩みまで私は訴えられたのでありますけれども、そういう姿勢では私はだめだと思うのです。  たとえば、国有財産法に基づく文部省所管国有財産取扱規程というのがありますね。これは、こういう不当な状態が生まれたときには、文部大臣は大学当局に対してその報告を求めて、それに対してすみやかに措置を指示することができるという文言も法律上あるわけです。だから、そういう指示をしたのかといえば指示もしていない。あるいは文書によって病院長に対していろいろの指示がなされたかといえば、それもなされていない。依然としてあそこは過激派集団の出撃基地として、何があそこにおるかわからぬという状態。患者も十二名おるけれども、どういう状態に置かれておるかわからない。その医療費もどうなっておるかわからない。会計検査も行なわれていない。国有財産が三年数カ月にわたって全く不法な状態に置かれておるにかかわらず、文部当局は一つも文書による指導も行なっていない、こういう状態なんです。こういうことはやりにくいとか、むずかしいとかいう問題はあるかもしれません。しかし、ほんとうに問題を解決しようとする努力としては全くなされていない。これではいつまでたっても解決しません。だから私はそういう点で、この国有財産の用途及び目的の阻害が発生しているこのことについては、国有財産を守る立場からきちんとした法律上の手続をとるべきである。あるいはそういう不法な占拠は間違いであるという告示を行なうということ。一つ一つ着実な手を打たなければ、ただ漫然と見ておって話し合いで解決できるなどということでは、問題はもう済まされないわけであります。これは学生諸君の病床実験のためにも、あるいは日本の精神医学の前進のためにも許されない状態です。国有財産管理の面からも許されない問題でありまして、そういう手を一つ一つ正規に打っていくということから問題を解決していく。  しかも、東京大学自治会は、御承知のようにいま学長によって公認されるという、正常な方向へ向かっております。昔の東大闘争のような状態ではなくして、いま学生自治会も公認をされて、そしてかつてのような暴力事件などが起こらない状態に大勢としては進んでいるわけです。その中でこの問題がいま取り残されているわけでありますが、それに対して、こういう暴力による占拠ということについて大臣はき然とした態度をとって、そしてそれに対応する処置、法律的な手続というものをきちんと踏んで、さらにはまた解決しようと熱意を持っておられる教職員の皆さんに対して激励を与えていく、そして早稲田において前進をしておるような姿を、東京大学においても現出をしていくのが文部当局の責任だと私は考えております。この点についての見解を伺います。
  132. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 ただいまの山原さんのお話、全くそのとおりだと思います。そういう姿勢で臨んでいくべきだ、かように考えております。  いままでの経緯を聞いておりますと、何といいましても患者が入っておるものですから、患者が入っておるのに予算を配賦しないとかいうわけにもいかない。同時にまた、患者が年月を経ますとなくなるはずでございますけれども、反代々木系の方々がかつぎ込んでくるのだそうでございます。医療法のたてまえから、かつぎ込まれた病人を拒否できないという問題もあったりして、この事柄が一そうこの問題を遅延させてきておるようでございますけれども、御指摘全くそのとおりだと思いますので、よく考えて前進させるように努力を続けていきたいと思います。
  133. 山原健二郎

    ○山原委員 また反代々木などということばが出てくるわけですね。反代々木も何もないのですよ。病棟を占拠しておる者、それと一般の文部大臣任命によるところの教職員と、反代々木系との違いなどという印象を与えるようなことばを使いなさんな。私はいまのことばをここで取り消していただきたい。
  134. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 青医連の問題は、山原さんはよく御承知だと思うのでございますけれども、東大のあの騒動、昭和四十四年、あれが静穏になってきた際に、それに対して反対して残った方々、これは御承知のように、過激派集団と申し上げたらよろしいのですか、とにかくそういうグループであることは言うまでもないと思うのでございます。そういう方々が外の方々とも手を組んでがんばっておるわけであります。外の方と手を組まなければがんばり抜けるものではありません、わずかな人数ですから。ですから、そういう意味で申し上げておるわけでございますので、私はそう間違ったことを申し上げているはずはないな、こう思っておるのでございます。
  135. 山原健二郎

    ○山原委員 反代々木ということばですね、いつもそういうことばを使う。それじゃこちらで正常な授業再開、病床の再開を願っておる者は代々木系ですか。私は東大精神神経科の問題を話しているのですよ。これは代々木系と反代々木系のけんかですか。そういう言い方は改めていただきたいのですよ。占拠している人、これは院長も不法な占拠だと言っておるその集団でしょう。私はその集団のことをさしておるのです。
  136. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いま申し上げましたのは赤れんが、精神科の病棟のことでございますが、病棟を占拠して自主管理を続けておられる方々のことを申し上げたわけでございまして、それ以外の方々には、私はいま言及はいたしていないわけでございます。
  137. 山原健二郎

    ○山原委員 もう時間もなくなっておりますが、反代々木などというあいまいなことばは。少なくとも文部大臣ですよ。文部大臣というのは、これはまた別の性格を持っています。あなたは教育基本法、憲法に基づいて文部行政をやっていかなければならない立場ですから、そういう反代々木などということばは。私が尋ねておるのは、一般的なことを尋ねているのではなくして、この東京大学病院の精神神経科の占拠集団のことについて、これをどう解決していくかという質問をしているわけでしょう。そのことを反代々木などと言われると、これは私は非常に憤慨を感ずるわけです。そういうことばの使い方はいま改めていただきたい。
  138. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 先ほども申し上げましたように、東大事件を終息させる、それに反対したグループでございます。そう申し上げておきます。
  139. 山原健二郎

    ○山原委員 時間ももうないと思いますが、いまの問題について私の提起もありましたが、それについては文部大臣もこれから努力をされるという話でございますから、この問題はおきたいと思います。  最後に授業料、学費の問題です。これは今度も宮田君という明治大学の学生が自殺をされました。学費の値上げ並びに黒ヘル集団の暴行、そのことによって大学のロックアウトの絶え間ない状態、それに対する怒りの遺書を残しまして自殺をしたわけです。ところが、現在学生の七八%がアルバイトをしておるという状態。しかも学費は国立大学の値上げ、そのことによって誘発をされて私学授業料というものも値上げをされまして、いまや一般庶民が子供を大学に通わすことができない、こういう状態が起こっておるわけです。  私はここで提起をしたいわけですが、国立大学の授業料というものは公共料金とは違いますけれども、しかし、これはそういう性格も持っておると思うのです。したがって、この問題についてはちょうど国鉄料金の問題が国会で審議をされておりますように、当然全国百七十万の学生、その家族を含めて、しかもこれは高等学校の授業料にまで影響しておりますので、ほとんどの国民がこれの影響を受けるわけです。したがって、国立大学の授業料の問題については、私は、当然省令ではなくして法律行為として国会の中で審議をしていく、こういう立場をとるのが今後正しい姿ではないかと思うのです。  さらに、私学の授業料の問題につきましても、たとえば私鉄の審議会がありますように、そういう適当な機関をつくって審議をしていく、こういう過程を歩むのが、これがいまきわめて必要な時期を迎えておるのではないか、こう思うのです。こういう見解を私は持っているわけですが、これに対する文部大臣の見解を伺いたいのです。
  140. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 学校の授業料は、国鉄の運賃のような独占機関の使用料とはちょっと事情は異なっておりますし、また予算にはもちろん歳入として計上しているわけでもございますので、特にこれを立法に額を求めるということは、適当ではないというふうに私は考えております。
  141. 根本龍太郎

    ○根本委員長 山原君に申し上げまするが、お約束の時間はすでに経過しております。結論をお急ぎください。
  142. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、いま提案しましたけれども、文部大臣の見解とは違うと思うのです。しかし、私はいずれ必ずこの問題は国会で正常に論議をしなければならない、法律行為としてやらなければならぬ時期を迎えると思うのです。もう授業料の値上げというのは大幅に拡大をしていく一方なんです。実際もう子供たちを学校にやれないという状態を迎えておるわけですから、当然そういう時期が来ると思うわけでございますが、なおこれについて検討を深めていただきたいということを要請しまして、私の質問を終わります。
  143. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて山原君の質疑は終了いたしました。  午後二時委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時二十二分休憩      ————◇—————    午後二時五分開議
  144. 根本龍太郎

    ○根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。島本虎三君。
  145. 島本虎三

    島本委員 きょうは環境問題、公害対策にしぼって質問をしたいと思います。  まず三木環境庁長官にお伺いいたしますが、最近の心境その他報道によりますと、環境保全か開発かについては、長官としては、二者択一の論はとらない、新しい環境の創造もあり得るということを言っておられるようでありますが、これはなかなか哲学的な意味でもあろうかと思いますが、いかなることを意味するのでございましょうか、その解明をまずお願いしたいと思います。
  146. 三木武夫

    ○三木国務大臣 むずかしいことを言った覚えはないわけでして、開発と環境というものを両てんびんにかけて、オール・オア・ナッシングということはとらぬ。それは現にやはり開発の必要というものはあるわけですから、これはもう万人が認めておるのですから、開発と環境の保全というものをどうして両立させるかというところに政治のくふう、英知というものがあるわけですから、そんなに簡単にどちらかオール・オア・ナッシングだったら、政治は要らないかもしれない。  そういう意味で言ったわけでありますが、しかし、私がなおそれにつけ加えたのは、このごろはどうも、GNPということで計算されるものはよくわかるのですから、非常に価値を認めて、目に見えないもの、金で計算できないもの、こういうものに対して、たとえば、自然の保護であるとか、環境の保全であるとか、これはGNPには出てきませんから、どうもそういう価値に対するウエートというものを軽く考える傾向がある。だから今後は、両立をさすということが理想であるけれども、開発の前提になるものは環境の保全である、環境の保全というものが確保されるという開発でなければしてはいけない、こういうふうに、いまのこの風潮に対して、ウエートを環境の保全にかける環境行政をやりたいというのが私の趣旨でございます。
  147. 島本虎三

    島本委員 開発にも環境保全という考えが優先するものである、まあこういうような意見として伺いました。そうすると、国土総合開発法案がもうすでに準備されておるようであり、提案されておるようでありまするけれども、公害に対する万全の配慮はこれによってなされたものですか。
  148. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 さようでございますが、その前に、実は経済社会基本計画におきまして、公害の防除につきましては非常に重視をいたしておりまして、長期的展望に立って総合的、計画的に対策を講ずる必要があると考えておりまして、昭和六十年及び五十二年の環境水準の目標を明示して、その達成のために最大限の努力を払うということにいたしておるわけでございます。  この目標を申し上げますと、昭和六十年には人の健康及び生活環境に影響のない環境水準を回復するということ、昭和五十二年までに、三大湾地域における硫黄酸化物の排出量及び三大都市地域におけるBODの排出負荷量をおおむね半減するということでございまして、さようなことをきめておりますわけでございます。  さらに、ちょっと詳しくなりますがお許しをいただきますが、環境の監視、観測システムの整備、新規工業の開発については、事前の環境アセスメントの徹底等、環境アセスメントシステムの開発整備を考えております。それから環境基準、排出基準の見直し強化、濃度規制から総量規制への移行を検討する、民間公害防除投資、環境保全関係公共投資の大幅拡充、環境保全の費用負担について汚染原因者負担の原則の徹底、そういうようなことを非常にこまかく規定しておりまして、国土総合開発法の中におきましても、さような理念をもって全法案を貫いておる、かような次第でございます。
  149. 島本虎三

    島本委員 一々これを明らかにしてまいらなければなりません。  私がいま聞いたのは、それは次に聞く予定であったのでありますが、先を越して経済社会基本計画の内容に触れられたようでございます。いずれその方面へ入らしてもらいまするけれども、私がいま言ったのは、公害に対する万全の配慮がなされた、こういうようにいま御答弁があったようであります。そうならば、この自然環境保全法ができました。その自然環境保全法ができた際に附帯決議ができました。この附帯決議は、まことに私どもとしては、日本の将来のためにも、これからの環境保全のためにもぜひ守らなければならないもろもろのことが、附帯決議として挿入されておるわけであります。その一つ一つについて十分な配慮を加えられておるものかどうか。まず環境庁長官、この点についてははっきりお伺いいたします。  第二番目に、「政府は、この法律の適切な実施運用を図るため、現地管理体制の確立について格段の努力をすべきである。この場合において、司法警察員としての権限を持つ自然保護取締官制度の創設につき、次期国会を目途として検討すること。」これがあるのであります。自然環境保全法ができても、保全を維持するに足るような人員や機構が整っておらなければどうにもならない、これを次期国会までの間に十分検討する、これをはっきり公言されておるわけであります。この附帯決議第二項、これをどのようにして検討され、どのようにして対処されるつもりでございましょうか、まずこの点を先にお伺いしておきたいと思います。
  150. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この自然環境保全法案が国会を通過するときの附帯決議、この附帯決議の個々の中にある一つの御趣旨というものは、これを体して今後の自然環境の保全をはかりたいと私は考えておるわけでございます。この附帯決議の一々について、どのようにこれを尊重するような手続をとったかということは、事務当局から説明をいたさせます。
  151. 首尾木一

    首尾木政府委員 お尋ねの附帯決議の第二項でございますが、これにつきましては、現地管理体制の確立ということで、本年度、現地管理員の増加及び管理事務所の増加ということを予算に要求をいたしまして、その結果といたしまして、四十八年度の予算におきましては、二つの管理事務所の増設と、昨年に続きまして九人の管理員の増加というような結果になっておるわけでございます。  なお、ここにございます司法警察員としての権限を持つ自然保護取締官制度の創設の問題でございますが、これはこの法律が通りましたときに、私どもといたしましてこの問題を検討いたしたわけでございますが、最終的な結論としましては、この司法警察職員としての制度を創設するためには、現在の管理員が全体としてあまりにも少な過ぎるというような状態、そのようなところでこの制度をやりますと、各種の司法警察職員としての職務執行に基づく事務が非常にふえるというような点から、全体といたしましての仕事の面から考えれば、むしろ現在は、この自然保護のために、自然反則については一般の警察官にこれをお願いをするということで、考え方としましては、当時これを見送ったわけでございます。しかし、将来の問題といたしまして、この点については再検討するということを当時の国会で大臣からお答えを申したわけでございまして、私どもとしては、この問題については、どのようにすればこの司法警察職員制度というもの、司法警察権を持たせてこれを運用することがうまくいくかということにつきまして、目下鋭意検討中でございまして、今国会を目途としてこの法律を出すかいなかという点につきましては、いまのところまだ結論を得ておらない段階でございます。
  152. 島本虎三

    島本委員 労働基準監督官でもこの程度以上の権限を持っておる。林野庁の役職員でもこれ以上の権限を持っておる。にもかかわらず、それ以上の重要な任務を負っている環境庁が、何らそういうような権限もない、人員も足りない、これではっきり環境の保全に任ずるための施策として完全だといえますか。まず人員も足りない、権限も足りない、これでやろうとするのです。森林保安官、こういうような一つの大きい任務さえあるのに、あなたまかせのような環境庁ではだめです。  それと同時に、「政府は、無秩序な開発が、回復不可能なまでに自然環境を破壊している現状にかんがみ、自然環境を適切に保全するための土地利用計画等について積極的に検討すること。」この点も重大な提案をしてあるのです。おそらくはこれらの点も十分考えられておると思いますが、長官、これは考えていろいろ施策をされましたか。
  153. 三木武夫

    ○三木国務大臣 島本委員御承知のように、今年度の予算編成の最後の場面に私これを当たったわけでございますが、やはりこれだけの自然の環境はどうしても保護すべきであるという調査が全国的に行なわれる必要がある。だから、環境の国勢調査、これをことし一年かけてやる。一年という時間は短いのですけれども、あまり長期にかけるというのも、非常に急を要しますから、一年間にそういうことを行なって、これだけの環境はやはり守ろうという、環境保全に対する一つの限界というものを考える場合の参考にしたいということで、これを要求の上でしてはなかったわけですが、十分な予算の要求でなかったので、これを追加して予算を計上した次第でございます。そういうことも配慮しながら、そういう予算の追加を行なった次第でございます。
  154. 島本虎三

    島本委員 予算の追加を行なったのはわかりました。しかしながら、長官、いま附帯決議にこれを明確に載せてあるこの事項、これが国土総合開発法案の中に具体的にあらわれてくるのであります。昭和四十五年十一月の六十四国会、いわゆる公害国会といわれましたが、その際には、公害対策基本法の中で、産業との調和という文言、これがあるがために公害をまき散らす要因にもなったということで、これは削除されたのであります。そしてこれは過去のものになってしまっておるのであります。しかし、国土総合開発法案、この要旨によりますと、土地利用基本計画の規制条項、これが大事なところでありますけれども、国または地方公共団体は、土地利用に関して総合的な見地から、自然環境の保全、公害の防止、公共施設の整備状況との調和等、措置を講ぜらるるよう配慮するものとするとあって、公害が防げないということで基本法から取り除いたこの調和ということばが、今度は国土総合開発法案の中にこつ然としてまた出てきているのです。これは何と調和させるのですか。生活環境と調和する。そうならば、産業は一〇〇汚染するような状態にある、国民はゼロを欲する、この場合の調和は、五〇でがまんせいということなんです。いま承りますと、これは万全の公害に対する配慮がなされておると言いますけれども、こういうようなことで、はたして配慮が完全だ、附帯決議に従順だ、このようなことはとうてい私は言えないと思います。これはやはり私は答弁として納得できません。これはどういうようなことなんですか。配慮を十分してあると言うなら、このような過去の亡霊を再びよみがえらせて、そうして再び同じような愚を繰り返そうとする、こういうような発想では、とうてい公害の根絶にはならない、こう思います。伺います。
  155. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国土総合開発法は私の所管でございますので、私から御答弁申し上げます。  まず、この法案の考え方でありますが、これは先ほども申し上げたことの繰り返しになりますから、要点だけまたもう一度申し上げますと、まず第一番に、開発前の段階で環境に及ぼす影響を十分調査するということでありますが……。
  156. 島本虎三

    島本委員 いや、先ほどのやつは十分私も了解しております。環境保全について、これは計画との調和をはかれ、この部分だけは逆に逆行するものだ、したがってこれはどういう意思だ、こういうことであります。
  157. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 はい、わかりました。その点は、実は環境と調和した工場の建設を行なうという点でこの調和ということを問題にされたのだと思いまするが、私ども、工場をつくっちゃったあとでその環境との調和をはかる、こういうんじゃございませんで、まず、いま申し上げておったように、開発の前の段階で環境に及ぼす影響を十分調査していく、そしてそれについては十分住民の意思を見きわめる、そうして、そうした結果を踏まえて地域の環境条件に適する範囲内での開発規模を考えていくという発想でございまして、したがいまして、環境と調和した工場の建設を行なう。そういうことのほかに、公害規制法の厳格な適用によって排出規制等を行なってまいる、こういうことでございますので、ただいまおっしゃいました趣旨も十分含まれておると考えておるわけでございます。
  158. 島本虎三

    島本委員 公害対策基本法、これを改正したときに、あの当時の佐藤内閣総理大臣は、憲法第二十五条による人間優先、生活優先、この精神をはっきり入れるべきであるというのに対して、入れるのが当然であるけれども、憲法は優先する、憲法二十五条にこれがはっきりある以上、入れなくてもその精神によってこれを運用するものである、すなわち、これは調和ということばをもう取ったんだから、これであとはもう全部憲法の精神によってこれを運用するのだ、当時このように言っているのです。ところが、それによって了解していたのですが、それならば、はっきり国土総合開発法によって環境優先ということをなぜいわないのですか。調和ということをなぜ入れなければならないのですか。調和というならばまた公害誘致ですよ、これは。こういうようなやつではだめだから、まさにこれは調和でなくて優先だ、こういうようなことにならなければならないということです。これによっては、とうていいまあなたが言ったように、公害のない開発なんかできません。国民を欺くものです、これは。もう一回よく読み直して、はっきりした答弁をください。
  159. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題につきましては、いまお述べのようなおそれがあれば、これは十分考慮いたす次第でございます。
  160. 島本虎三

    島本委員 十分そこは直して、こういうことのないようにすべきです。  それともう一つは、環境庁長官、この環境保全のためにいま世界の公園といわれております瀬戸内海の汚濁、これはもう極度に達しております。したがって、これはもう特別立法が必要な段階であります。しかしながら、この瀬戸内海の環境保全特別措置法に類するような法的な規制、法的な保護、こういうようなものはいま必要な段階でありますが、長官は、政府は、進んで立法の意思がおありでしょうか。
  161. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま瀬戸内海は、もういまにして瀬戸内海の浄化のための対策を講じなければ、これは永久に死の瀬戸内海になる危険がありますので、これは本格的に取り組みたいと考えておることは、島本委員もよく御存じのとおりでございますが、やはり特別立法が必要ではないかという心境でございます。いま検討を加えておるわけでございますが、要は、瀬戸内海をもう一ぺんきれいな海にするために実効をあげるのにはどうするかという角度から、この特別立法の問題の結論を出したいと考えております。  いまそういう段階でありますので、明白にお答えにはなってないかもしれませんが、私のいまの心境、去来するものは、お察しのとおりでございます。
  162. 島本虎三

    島本委員 通産大臣にお伺いしておきたいと思いますが、いま、瀬戸内海の汚染、この解決は重大な一つの課題になっております。したがって、この汚濁の原因、これをいろいろ追及してみますと、やはりその元凶は、工場排水、アンモニアや燐酸、こういうようなもので、このたれ流しによるものが多い。それと家庭排水、これが主原因である、こういわれておるのであります。この解決法、これに対して特別立法によって規制する方法は、いまこれから考えたいという意向のようですが、現在それを閣法によって出そうとする意思もないようであります。そうするならば、現在ある法律でこれを阻止する、こういうようなことになると、その解決法としては、きれいな水を無制限に使って、きたない水にして流すようなことをやめさせて、いま諸外国がとっているように、水を還元使用させて、そうして排水は川や海に直接捨てない、流さない、こういうような方法、いわゆる閉鎖給水体系、クローズドシステムと、こういうようなことをいっておりますが、これを採用しなければならないし、これはもうすでにアメリカでもやっているんです。あの国土の広いアメリカがやっているんです。当然西欧諸国もやっているんです。日本だけ、GNPでは世界三本の指に数えられるといいながらもやっておらないのであります。これはやはり通産省としても十分今後考えなければならないのじゃないかと思います。  したがって、工業用水の排水、こういうようなものを生産工程に再投入して、リサイクルさせて、その過程で汚濁物質を除去する、こういうような公害防止のための一つのやり方を、ここに規制措置とあわせてこれは実行させるべきであります。これをやらせないと、現在の瀬戸内海のように、一たん死んだ環境は戻らないのであります。したがって、もうすでにこれより悪くしないために、また、いい環境はこれ以上悪くなるのを阻止するためにも、どうしても企業に対してはこれを義務づけるようにさせるべきだと思います。農業、でん粉関係、糖業関係、こういうような方面でも、これはあげて効率があるということをいわれておるようであります。鉄鋼関係、パルプ製紙、ヘドロの問題、こういうようなものを解決するためにも、ぜひクローズドシステム、閉鎖給水体系、こういうようなことを企業に義務づけて、そうしてきれいな水はきれいな水にして返す、このことをはっきりやらすべきです。やれないような日本の企業の力ではないはずであります。問題は決断にかかるわけです。あなたの実行にかかるわけです。御意見を伺います。
  163. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 御意見のように、それを最終目標として私たちは努力すべきであると思います。クローズドシステムによるリサイクルというのは、工業用水の効率的使用の面からも好ましいことでもあります。当面は、いまある公害諸立法による規制を厳重に守らせつつ、いまのようなクローズドシステムによるリサイクルの方向に強力に推進してまいりたいと思います。
  164. 島本虎三

    島本委員 鉄鋼関係、パルプ関係、ヘドロの問題をあわせて、その方面はまず先にこれを実施させるべきだ、こう思っております。この方面をおいてほかをやらしても、あまり効果があがらない。この方面を率先してやらすべきだ。いかがです。
  165. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 鉄鋼やパルプにおいては、部分的に実施しているところがございます。しかし、徹底的にやっているところまでまだいっておりません。全企業がそういう方向に進むように、これからも推進してまいりたいと思います。
  166. 島本虎三

    島本委員 次に、先ほどやった経済社会基本計画、この面について企画庁長官の御意見、それに付随していろいろ伺ってみたいと思います。  これは、やはり公害対策、環境保全、これを中心にして考えますと、何としても経済成長率を落とさなければならないのじゃないか、こう思うのです。ただ、経済社会基本計画によると、依然としてこれは二倍あるいは三倍近くまで上げるような発想のようであります。そうなりますと当然総生産は五十二年には百八十四兆円にまで上がる計画のようであります。そうすると、成長と公害ははっきり矛盾するということで、ローマクラブあたりでも、成長を落とせということで、これは世界の声になっているのです。日本だけ成長だけはぐんぐんと上げて総生産力を上げる、それでいながら公害はなくします、こういうような奇術はできないのであります。しかし、何かこの点では、いかに公害がない経済社会基本計画である、こう言いながらも、これにもまた一つの欺瞞が隠されている、こう言わざるを得ないのであります。これに対していかがでございますか。
  167. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 方向として、私はやはり御主張のことはそのとおりだと思っております。いままでにあまりに急激な成長が行なわれたという点は反省せぬばならぬと思いまするが、これは言ってみれば日本国民一つの非常なエネルギーの昇華されたる結果であると思うのでございますが、その方向をできるだけためて福祉国家の方向へ持っていくためには、財政というものがその働きをするのだと思います。基本計画では、御承知のように九%の成長を平均として見ておるわけでございますが、これは今日ある成長をあまり急激に落としますと不況になる。不景気になっては福祉も達成せられませんので、徐々にこれを落としていくという発想でございます。  一方、公共投資を非常に大きくいたしまして、九十兆円というものを公共投資の目標にいたしておりまして、御承知のように一〇三ページにそれぞれその内容を記載しておるわけでございますが、一方におきまして、やはり全体の成長との見合いで見まして硫黄酸化物、それから水質の汚濁、これは言うまでもなくBODを減らすということでございますが、これは大体六〇%ぐらいにする。昭和六十年にはいままでよごれた空気なり水なりを、もとに戻すという気持ちでやってまいろうということで、五十二年度までには六〇%。しかも三大湾地域あるいは三大都市地域、そういうものは四〇%台に落とすという計画を立てておるわけでございます。まことに、われわれの考え方方向は御主張の線に沿うものでございますが、具体的にやる段階として、さような目標をこの計画の中に入れておる、こういうことでございます。
  168. 島本虎三

    島本委員 目標の点はわかるのであります。確かに目標はわかるのであります。しかしながらこの新経済社会基本計画、この中でやはり問題になるのは環境の保全と公害対策、これをきちんとしないでいかに経済発展をさしてもだめなんだ。この辺が一番問題なんで、これをどのように規制し、どのようにして環境をよくしてこの計画を進めるかにあるわけです。したがって、これには経済社会基本計画の中で成長と公害、これをどのように扱っていく姿勢なのか、この点が問題なのであります。あえて言うと、中央公害対策審議会企画部会の調査によりますと、それと逆な所論が出されている。経済成長率を年九・二%に見ている。そして計画中のプロジェクトで工場の分散も考慮して対策を進めると、昭和五十五年ごろの県ごとの環境破壊、これはどの辺まで行き着くか、これを数字をもって検討してあるわけです。いまあなたのおっしゃった経済社会基本計画、これと全然違うのであります。これは一体どういうようなことですか。現在の東京、神奈川、大阪、この程度の高汚染地域が十三府県まで及ぶようになる。それと青森、茨城、鹿児島、この開発拠点県、こういうようなものの汚染ランクは四つか五つ急に上がってしまって、東京や神奈川、この程度まで上がってしまう、こんなことになるのであります。そして昭和六十年ごろには、空気や水のよごれが四十五年の三倍になる、こういうような報告であります。  そうすると、将来の環境を数字で押えたデータですから、これに対処してはっきりした計画を立てるのがこの経済社会基本計画、この骨子でなければならないのであります。片やこのようになっている。片やこのようにりっぱになるという。厚いからりっぱになるという問題じゃなかろうと思うのです。こういうような別々な考えでやったら、国民はこれによって惑わされてしまうのです。この態度、どっちがほんとうなのか。環境庁長官、企画庁長官、両方から出されているのです。御所見を両方から承ります。
  169. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まず私のほうからお答えいたしますが、この計画は、審議会をつくりまして、民間の有識者、ことに産業界、労働界の有識者の方々の意見を十分盛り込みまして、それに政府考え方というものをいろいろ入れたわけでございますが、これを内閣が決定するに際しまして、重要なことを一つ言っておるつもりでございます。  それは、われわれはいままでそう思っていたわけでもありませんが、事実としてそうなっていたのは、環境も資源も限りがあるということをとかくなおざりにしていた傾向があるのじゃないか。何か持ってきてつくれば、自然にそのままの環境でつくるものだけがつくられていくというのは間違いであって、そういうものをつくろうとすればやはり環境はよごれるのだ、それから、資源も外国から持ってくればいいと考えるのはこれは誤りであって、持ってくればその間においてその資源はそれだけなくなっていくので、そこに摩擦というものは当然起きるという考え方に立たねばならぬということでございます。したがいまして、さっきおっしゃったような瀬戸内海の開発をするにしても、その使う水をもとのきれいな水にして返せ、そういう考慮が働かなければいかぬということでございます。硫黄酸化物あるいは窒素酸化物の汚染の問題にしても、あるいはBODを考える場合にいたしましても、いま申し上げたような環境と資源の有限性というものを十分考えながら開発をやっていく、これが重要だということを、政府の決定に際して入れたわけでございまして、そういう決定の入っておる私どもの考え方は、いろんな御批評はあろうと思いますが、これが政府として最善と考える計画であるというように考えておるわけでございます。  なお、その計画の詳細につきましては、局長のほうからまた申し上げることにいたします。
  170. 三木武夫

    ○三木国務大臣 中央公害対策審議会の中間報告ですが、それはそのとおりだと思います。それは現在のままで何にもしないでこのままの状態でいけば、そういう数字が出ると私は思います。ただしかし、それまでの間に、たとえば自動車にしても、いろんな混乱はあっても、排気ガスに対してマスキー法を日本は五十年、五十一年から実施をしよう、あるいはまた硫黄酸化物に対しても規制を強化しよう、あるいは窒素酸化物でも、新しく窒素酸化物とかオキシダントなんかに対する環境基準もつくろう、その上へ持ってきて総量規制までやろうというわけであります。そういう点で、大気あるいは水質等に対するいろんな汚染というものに対しての規制というものが一段と強化されるわけですから、その規制に沿うて、あるいは工場にしても自動車にしてもやはり今後適応していかなければならぬ。また、政府のほうにしても、工場の再配置であるとか、あるいはまた資源に依存する型の産業から知能集約型の産業産業の再編成を誘導していこうというわけですから、いまあげられておるその数字というものをそういう状態に持っていってはたいへんなことになる。それを防ぐためのいろいろな施策が講じられるわけでありますから、現状そのままでずっといくということではないわけでありますので、企画庁のいま言った経済社会基本計画も、あるいは中央公害対策審議会の中間報告も、矛盾はしないと私は思います。
  171. 島本虎三

    島本委員 両方の答弁を聞いて私はやはり、矛盾しないと言いながらも、ここにもまた心配が残るわけです。その中で、硫黄酸化物、窒素酸化物のような大気の汚染、こういうようなものは良好県が皆無になって、高汚染地区が九八%、ほとんど全土に及ぶという警告が発せられているのです。それと同時に、長官もBODの問題に触れましたけれども、北海道や秋田、こういうような低汚染区域は現在二十区ありますが、これがゼロになるのです。そして、こういうようなものがゼロになってしまうということからして、やはり心配しない人は一人もいないはずです。産業廃棄物、これは低汚染地区は今度は高汚染地区に格上げになるわけです。こういうのがこの計画なんです。そうだとすると、防ぐための施策、これと同時にやらなければならない施策が山積しているはずです。公害サイドからいっても環境保全サイドからいっても、まず長官としても、これを実施する前にやらなければならない、こういうようなことに対して手を打たなければならない問題が多いのであります。  まず、公害に対する実情です。公害立法、こういうようなものは、現在発生する公害を押える効果あるものでなければならないのは当然なんです。当然過ぎるほど当然なのでありますけれども、現在ある公害立法、たとえばいわゆる無過失賠償法です。これには差しとめ権もないでしょう。推定規定もないでしょう。裁判の判例待ちでしょう。基本になるものを裁判に求めている。こういうように抜けているのです。いわゆる公害罪処罰法、これは予防措置としてのおそれ、こういうような段階においてはとってしまったでしょう。だから、これは未然防止は困難な状態にしてこれを成立させているのですよ。それから、自然環境保全法、先ほど言ったように、司法警察官としての資格を持つところの取り締まり監視、こういうようなものは削られてしまっているのですよ。大気汚染防止法、あえて大気汚染の元凶である電気、ガス、こういうようなものには及ばないような仕組みになっているのですよ。それから基地公害、これに対しては、どんな公害をやっても住民はがまんしなさい。治外法権ではないけれども、しかし補償だけはしてやるから、補償でがまんしなさい。いわゆる基地周辺法、いわゆる特損法、こういうようなものによってやれるのはこれだけなのです。がまんせいという法律です。いまある公害立法、これがしり抜けである。そしていま両長官がおっしゃいましたけれども、総量規制を行なうと言う。総量規制を行なうならば、それはどういう資格がある、どういう強力なものですか。憲法のように、法のように強い権限ですか。これは総理府令でしょう。行政の単なる努力目標でしょう。そうだとすると、それの基礎になるところの法律はしり抜けである。総量規制をやるという最大の目玉が行政上の単なる努力目標であって、総理府令である。こういうようなことで、はたしてこれは公害が完全に防除できる、環境保全が完全になされる、こういうように思いますか。まず、こういうようなものを完全にして、そうしてそれから考えるというならいい。それを取り締まるほうの法律、それを規制するほうの総量規制、こういうようなものをこのような状態にしておいていかにやろうとしても、独占や大企業本位の運営になってしまうのです。  こういうような点からして、やはり国民の農業、漁業の収奪につながるもの、と同時に、現法律そのままでは国民の健康と生命、ことに生活にも重大な被害を及ぼす、こういうようなことも明瞭でありますから、現行立法そのまま、こういうような状態で、いかにこういうような美辞麗句を並べても公害対策にはならない。国民の生命も健康も財産も守ることにはならない。そういうようなことからして、もう一回この国土総合開発法のようなものは考え直すべきである。考え直さないとしたならば、これはいまのような点からして、国民に対しての重大な侮辱であるといわざるを得ないと思います。これに対する反論を企画庁長官から求めます。
  172. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 どうも親友の島本さんに反論という大げさなかっこうはとりたくございませんが、私の意見を申し上げさしていただきます。  いまの日本産業というものは、終戦の荒廃から非常に急速度にきたのでありまして、その結果非常に大都市に人口が集中している。田中総理の表現をそのままかりますと、国土の一%足らずのところに三分の一の人が集まっている。そこから実は公害が発生しているわけでございまして、そこで、私どもはそういう状況を変えていかなければいけない。それが国土総合開発法の基本理念でございまして、いま島本さんの御指摘のようなことがないようにするために、そのためにわれわれは国土総合開発法をつくり、また経済社会基本計画をつくるということを考えておるわけでございます。従来は新経済社会発展計画、発展という字をつけておりましたが、今度はひとつ基本に触れた問題を考えようではないかというので基本計画、ことばも改めて姿勢もまた変えておるわけなんでございまして、先ほど環境庁の作業に対する御批判がございました。私はりっぱな労作であると思いますが、この労作は、先ほど三木長官言われましたように、現状のままに推移すればという前提があるのでございまして、私どもは、そういうことがないようにするために一つの計画的な目標をつくって、そうして空気中の硫黄酸化物を半減するとか、BODを半減するとか、ことに三大地区については四〇%にしようじゃないか、そのためには財政投資をこうするのだ。いままでは、実はこうしたいという目標がありましても、それに向かっていく財政投資の実態を解明していないのでございますが、今度はちゃんと金をこれだけつけてこうしよう、こういう計画を立てたわけでございまして、繰り返して申し上げますが、私はあなたのおっしゃると同じように現状を心配しております。そうならないためにどうすればいいかということでいまの法律を考えておる、こういうようなことでございます。
  173. 島本虎三

    島本委員 再度申し上げます。いまの法律を考え、いまのような計画を実施させる前提条件として、たとえば公害に関するこれらの一つの条件、法律を改正し、そうして総量規制をするといえども、これは単なる努力目標であってはどうにもならない。これも強い規制ができるような法以上の権限あるものにしなければならない。そういうようなことのあとで、漁民や農民からの収奪にならないように考えてこれをやらなければならぬ。先にこつ然としてこれを出してしまって、あとから考えるといったってこれはうまくないということです。いまのは確かに答弁としては体をなしておりますけれども、内容に至りては私は納得することはできませんので、その点だけははっきり申し上げ、これがはっきり解明されるまでの間にうかうかこういうような計画を出すべきじゃない、このことをはっきり申し上げておきたいと思います。  ことに、環境保全の点とからんで、やはり産業優先という立場、この立場だけはどうも政府は何といっても捨てておらないように思います。まず私としては、原子力発電それから火力発電、この点についての政府考え方、これは一貫してただ急いで建設しようとする態度に終始している、こういうふうに思うわけであります。通産大臣はいないのですか。——これは環境保全、公害防除、こういうような目的を行政の中に入れて実施している現在、原子力発電と火力発電、この点では、条件を無視してでもこれを強行しようとする通産省の態度が見えるのであります。私どもとしては、こういうような点ではおそらくはまた環境の破壊になる、このことをおそれるのであります。こういうようなことについては、通産省はどういうように指導をなすっておられるのですか。
  174. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 エネルギーがかなり不足してまいりますし、また将来はその不足度がますますひどくなりますので、通産省としてはできるだけこのエネルギーの供給を考えていきたいと思っております。  しかし、環境を破壊し、あるいは住民の意向を無視してまでもそれを強行するというようなことは、われわれは考えておりません。第一に地元の住民、特に県会や知事さんの意向を最大限に尊重して、そして地元の市町村とも調和をして了解を得た上で建設を行なう、こういう方針で指導しております。
  175. 島本虎三

    島本委員 それではお伺いいたしますが、この原子力発電の最近の認可済みのもので、福井県の大飯、関西電力の一、二号炉、これは佐藤前総理大臣が引きぎわに強引に許可して食い逃げをした。それから福島の東電の六号炉、それから茨城の東海村の日本原子力発電東海第二号炉、それから伊方の四国電力、これは選挙に際してこれの認可を強行してやった。住民がこれに対して十分納得も理解もしておらない間にこれをやってしまった。おそらくこれに対してまた当然問題が出るでしょう。環境庁長官もこういうような点に対しては、環境破壊と同時に公害対策の点からも、十分考えなければならない問題が多いのであります。今日の日本政府と電力会社は、住民の不安と反対運動、こういうようなものを無視してでも強行したい、そして各地に原子力発電所の建設を強行しようとする動きが見えるのであります。環境庁長官、こういうような重大な事実を長官として認識されておられますかどうか。  アメリカのマサチューセッツの工科大学のケンドールという教授ですが、この人の計算によりますと、原子力発電所で冷却材喪失事故が起こった場合に、万一緊急冷却装置が十分に機能しなければ、七十万キロワット一基でも三・二キロの幅で風下百二十キロメートルにわたって致死量の影響を及ぼすほどの放射性の物質が放出される、こういうようなことが出ておるのです。その肝心の緊急冷却装置に関しては、アメリカの原子力委員会のローゼン、コルマー、ローベン並びにオークリッジ国立研究所のコットレル、ローソン、リッテンハウス氏をはじめとして三十名近い専門家が、今日の暫定基準では決して十分安全ではないという見解をさえ示しているのであります。そして日本では、この冷却材の喪失時における緊急冷却装置の機能を見る試験が行なわれておらないのであります、科学技術庁においても。いままでに全くこれをやられないままに、ようやくいまから東海村の原子力研究所で小規模な実験をしようとしている段階なんです。この不十分な小規模実験さえも、結果が判明するまでの間は一、二年じゃないのであります。こういうような中に、もう企業化だけはだんだんしていくのです。アメリカでさえもこれは危険だといわれているのです。それをなぜ国土の狭い日本に強行しなければならないのか。このような状態のままでは、問題の緊急冷却装置にたよった原子力発電所の建設がどんどん先行しようとしておりますから、環境庁長官、これは十分戒心しなければなりません。これに対する長官の御意見を伺います。  その前に、日本には緊急冷却装置の実験を行なった学者がいるのかいないのか、現在これに対してどうなっているのか、科学技術庁長官並びにどなたかの意見を伺いたいと思います。
  176. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先ほど御指摘のありました福島県、愛媛県あるいは福井県等におきまする炉の設置につきましては、地元の町村長、町議会あるいは知事さんの、いずれも了承を得てやったものでございまして、地元の意思を無視してやったものではございません。それから、原子力委員会の安全審査部会におきまして、いずれも厳重な審査をしたものであります。伊方の問題につきましても、地下水の問題がございました。この問題も問題はないという判定に基づいて踏み切ったものであります。それから第二に、緊急冷却装置の問題でございますが、これは東海村に第一基のコールダーホールをつけるときから問題になった問題で、日本の場合は特に地震がありますから、アメリカの設計以上に厳重な幾段階かの補強工作をやった緊急冷却装置をやっておるのです。それで、東海村の一号炉のときから、それは実験をやっております。現に稼働してから実験しているということは私はまだ聞いておりませんけれども、それを設計し、それをモデルでやっているときから、建設しているときから、そういう実験はやっております。おそらくいま建設しているいろんな、沸騰水型とか、あるいはそのほかのいまいろんな型がございますけれども、それらにつきましても、そういう実験の結果によった設計によってやっているもので、私は安全上問題はないと思っています。  それからアメリカの、ただいま御指摘になりました緊急冷却装置の問題もかねてから知っておりますけれども、それらは、ある前提を置いた上の計算数値をかりに出しているということでありまして、この間アメリカの原子力合同委員会委員長のプライスさんが見えまして、私はそのことを質問しましたら、アメリカの原子力合同委員会においては問題ないと心得ている、そういう回答を得ております。
  177. 島本虎三

    島本委員 これは日本では完全にこの問題に対しての実験は終わっていますか、科学技術庁。
  178. 成田壽治

    ○成田政府委員 緊急冷却装置につきましては、原子炉安全専門審査会においていろいろ検討をやって、計算をやって、だいじょうぶであるという結論を出して許可をしております。実験につきましては、四十八年度から原研に予算をつけまして、四十八年、九年、二年にわたって実験をやることになっていますが、これは計算を実証するための実際の実験でありまして、許可に対しては、計算上だいじょうぶであるという結論でやっておるわけでございます。
  179. 島本虎三

    島本委員 そのようにしてもうすでに、実際実験をしないで、計算上だいじょうぶだという学者の意見を信じてこれを進めているのであります。そういうようなことにおいての事故がもし起こった場合には、取り返しがつかないのであります。環境破壊、これ以上の被害を受けるのであります。私は、いま通産大臣おっしゃったようなことに対する反論、これは必ずこの次の環境公害対策特別委員会あるいは科学技術庁関係委員会でやってみたいと思います。ただ、ここでは時間がありませんから、ただ一つこの問題に対してはっきり伺いたいのであります。  あなたは急がない、こういうように言っておられますけれども、完全に合意を取りつけてやる、こう言っておりますけれども、北海道の伊達の火力発電、この問題については、あなたは完全な手続をして全部合意の上に立ってこれをやろうとしているとお思いですか。
  180. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 伊達火力の問題にいたしましても北海道の知事さんは了承して、北海道の道議会も了承してくれていると私、覚えております。知事さんは了承していることは間違いないと思います。
  181. 島本虎三

    島本委員 やはりそういうような文書が来たから、それは了解とみなす、これは形式的にやる者のやり方なんです。権力者としての考え方なんです。ところが、いま現地ではてんやわんやではありませんか。それは議会がそうやったあれは、かつて自民党がよくやった強行採決を地方議会でやって、そうして委員長がかってに、不信任された人がこれをやって、こういうふうになっていますとそれをよこしただけです。これに対して、実際調べなさいと言っても調べておらないじゃありませんか。そして、形式が整っているからいいんだ、こういうような考え方じゃだめだと思うのです。そうしてこれを昭和四十七年十月十九日、第六十回の電調審にかけましたが、このかけ方もまともですか。
  182. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 伊達火力の問題はなかなか長い間の問題でございまして、地元の中に賛否両論ございました。そこで通産省といたしましては、電調審にかける前に慎重に推移を見守りまして、地元の議会あるいは知事さんの了承がなければ進めることができないというので、ずいぶん促進派のほうからもやれやれという、われわれのところに陳情や何かがございましたが、しかしわれわれはそれを押えまして、そうしてそういう時期が来るまで待って、そうして時期が到来して電調審にかける、こういう手続を踏んだのでございます。
  183. 島本虎三

    島本委員 時期は到来していないのです。電調審にかけるにも、これはもう開会もしていない、審議もしていない。その電調審でこれが決定したといって、もう発表しているではありませんか。こういう事実があったらどうしますか。開会もしていない、審議もしていない、その会議の決定だとして、もうこれを配付しているじゃありませんか。そしてそのことが指摘されて、あなたの部下ではありませんが、これは経済企画庁の総合計画局長宮崎仁さんが、わび状書いているじゃありませんか。「第六十回電源開発調整審議会の開催について、総合計画局四十七年十月十九日における印刷物の表現は、第六十回電源開発調整審議会開催前、十月十九日午後三時におけるものであって、いまだ決定したものでないことを確認します。いまだ未決定の事項についてあたかも決定したような文書が、総合計画局長名により配布されたことは、住民の意向を無視し、審議会の公正な運営について疑惑を与えたものであり、きわめていかんであります。今後はかかることのないようにいたします。昭和四十七年十月十九日 経企庁総合計画局長宮崎仁」と、わび状まで出して、これを強行しておいて、そうしてこれで皆さんの支持によって円満にやった、こんなことが言えるのですか。わび状が出ているじゃありませんか。これはどっちですか。とんでもない話だ。
  184. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 私のことで、ございますから、ちょっとその経緯を申し上げておきたいと思います。  いま御指摘の文書を、確かにその他の関係の方々にお渡しをしたことは事実でございます。この審議会は午後三時開会という予定でございましたが、その審議会の結果によって案件が了承されたかどうかということはきまるわけでございまして、普通そういった場合には、当然この審議会の終わったあとで記者会見で結果は発表するわけでございます。ただ、官庁のしきたりとしまして、そういったものに対する予定原稿をつくることが多いわけでございますが、今回の場合に、それが事前に予定原稿が配られてしまったというような手落ちがございまして、いま御指摘のような事態になったわけでございます。決してこれは、その審議会が終わる前にそういったようなことはきまったというようなことではございませんので、その事情も十分お話をいたしまして御審議をいただき、そうして御賛成を得た、こういう経過でございます。
  185. 島本虎三

    島本委員 自分がわび状を書いておりながら、その事情を釈明する、これによって幾ぶん納得できるようなことを言っても、覆水は盆に返らないのであります。こういう強行手段をとったという事実だけは残るのであります。これはもうこれをもって納得するわけにまいりません。したがって、伊達火力の着工については、これはもう強行着工するようにうわさが流れておって、地元の農漁民の反対を押してまでも強行するということは、当然これは不測の事態も予想されるのであります。あえて言うと、流血の惨事を招くことがあることは避けなければならないのであります。こういうようなことに対して、いわゆる強行すべきではない。そして、いまもう現地では市長さえリコールされておる、こういうような状態であります。その中でこれをやることは、いたずらに混乱を招くことになるので、これは慎重に考えるべきだ、こういうように思います。これに対して環境庁長官、通産大臣、強行するお考えですか。
  186. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 最近の実情も調査いたしまして、いつやったらいいか考えてみたいと思います。
  187. 三木武夫

    ○三木国務大臣 火力発電の建設等については、公害防止、環境の保全ということを頭に置きながら、地元民の納得を得ることが必要だと思います。
  188. 島本虎三

    島本委員 その地元民の納得が得られないままに、現在もう混乱が継続しているわけです。そして電調審の認可が、いまのような、また不当なやり方と思われるような状態で強行して、そしてついにこれを決定した。そしてこれも強行しようとしているのです。  この火力の立地、こういうようなことについては、昨年の十二月の電力白書で、通産省では、これは電調審で着工を決定しても、地元の反対でできないものが五地点、三百五十万キロワットある、こういうような報告があります。そしてそれだけではなくて、火力発電の立地できない三つの原因、それは大気汚染への不安、温排水の水産物への影響、それから景勝、国立公園等の自然破壊、こういうようなことを述べられておるのですが、伊達の場合にはこの三つがそのまま当てはまるのです。そして田中内閣総理大臣をはじめとして、北海道の産炭、この事情からして石炭専焼の火力発電、こういうようなことも今後やるべきだと発表しているのに、重油専焼のこういうような環境破壊のおそれがある、それも北海道の湘南の地といわれるようなこの伊達市においてこれを強行するのであります。こういうようなことは環境破壊だけではなくて、こういうようなやり方は行政的にも許されない。当然場所も変更してもう一回考えるべきだ。これがいまの場合には混乱を収拾する一つの道だと思うのです。そして現在は環境権の訴訟が行なわれております。係争中です。そしてもうこれは判決が出るまで強行着工、こういうようなものは一切見合わせなければならない、こういうように思います。あえて言うと、裁判中に大阪セメントの臼杵工場の進出、これによってかつては問題になったこともあったわけであります。現在は環境権に基づく建設差しどめの訴訟を札幌地裁で審理中であります。したがって、その決定が出るまでの間はやはりこれは着工を強行すべきじゃない。強行をすることによって環境の破壊にもなる。このことは重要であります。十分これを考えなければならないと思いますが、この点についても、通産大臣並びに環境庁長官両方とも話し合って、着工させないような合意を得れば一番いいのでありますが、それまでの間相談する時間もございますまいから、御意見を承りたいと思います。
  189. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 伊達火力につきましては長い間のいきさつがございまして、知事さんや地元の内部にもいろいろな考えの人もおります。総合的に考えてみまして、そしていままでの経緯も考えてみまして、従来の方針を遺憾ながら変えるという考えはありません。
  190. 島本虎三

    島本委員 じゃ、考えを変えないということは、強行着工するという意味ですか。
  191. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 着工という問題については、先ほど申し上げましたように、いつやるかということは、最近の情勢を調査してみて考えをきめたい、こう申し上げておるところでございます。
  192. 島本虎三

    島本委員 したがって、これはもう係争中であるから判決まで待つ、こういうような考えは全然ないわけですか。
  193. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そういう考えは、現在のところ持っておりません。
  194. 島本虎三

    島本委員 いかに混乱が起き、流血の惨事になってもこれを強行する御意見ですか。
  195. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、最近の情勢をもう一回よく見て、そしていつやるかということは考えてみたいと、こう申し上げているところでございます。
  196. 島本虎三

    島本委員 場所の変更は、あらためて考えませんか。
  197. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 従来の方針をやっていきたいと思っております。
  198. 島本虎三

    島本委員 長官、そのそばには国立公園があるのです。そしていろいろな施設があるのであります。そしてそこにはもう北海道にはかつてないような、求められないようなりっぱな農業地帯にもなっているのであります。あらためてそのきれいな土地をよごしてまでも発電所を設けなければならない、着工しなければならない、こういうようなことは避くべきであります。ことに環境権を基本的な権利として尊重する、このことは長官大事なことであります。これはもうすでに世界の問題になっております。日照権でさえも権利として認めるべきだ、このことはもう裁判官によってはっきりと、これを法的な確信に基づいてもう裁判されておるでしょう。日照権そのものは実体法はないのです。なくても法的な権利として、法的な確信としてこれを認められつつあるのです。東京都なんかにおいてはもうすでにこれが実現しようとさえしているのであります。政府は、裁判の判決の積み重ねを待っているというだけじゃなくて、行政の責任者として、この問題に対して強力に推進すべき時期だと思うのであります。長官、環境権の問題についていかがお考えでしょう。
  199. 三木武夫

    ○三木国務大臣 まあ最近環境権という、ストックホルムの会議等においてもこういう問題が取り上げられたわけでありますが、どうもまだ法の概念として、環境権というものを確立されてはいないわけであります。しかし、やはり憲法の条章などにも、十三条、二十五条、これにはやはり健康で文化的最低生活あるいは幸福を追求する権利、これとやはり環境の保全とかかわりのある条章があることは事実ですが、いま言ったように法の概念としては確立をされていないので、政治の指導理念としてこの憲法の精神は生かすべきであって、いますぐ公害基本法などに、環境権として取り入れることは困難があるという考えでございます。
  200. 島本虎三

    島本委員 しかし、この問題についてははっきりと申し上げさしてもらいたい。環境裁判の実例ということで、最近、二月の十四日、広島の高等裁判所で屎尿処理場とごみの焼却場の建設不可の判決が出ております。施設の建設前に環境権を理由にして争ったものであります。これは住民の生活環境が優先するという判決が出ているのであります。いわば予防裁判がはっきり確立しているのです。こういうようなものも一つの環境権でしょう。それをもう建てて、被害が起きてからの裁判、こういうようなことではもうおそい。したがって、国際連合の人間環境宣言が、一九七二年ストックホルムで、「人間環境の保全と向上のため、世界の人民を鼓舞し、指標となる共通の展望と共通の原則を必要とすると認め、宣言する。」はっきりこれは宣言されているのです。すでに日本の憲法も国際協調主義をとっているわけでありますから、国際的にきめられたことに対しては、当然国としては従うべきものであります。まして、環境庁長官、大石長官も当時出席しているのです。条約も宣言も趣旨は同じであると解すべきであります。ことに憲法そのものの中にも、環境権は十三条の幸福追求権、それと二十五条の生存権に基礎を置く基本的人権、この二つによってはっきり認められています。したがって、環境権が侵害されたときは、または侵害されようとするときには、積極的に排除する権利でもあるわけです。  国会は、これに対して環境保全宣言をしているじゃありませんか。第六十四国会、衆議院産業公害対策特別委員会、公害関係の諸般の審議を進めた結果、自由民主党、日本社会党、公明党、民主社会党の四党の共同提案による環境保全宣言を全会一致で採択しているのです。この宣言は、「健康で文化的な生活を享受することは国民の基本的な権利であり、そのためには良好な環境の確保が不可欠であることにかんがみ、長期的な視野の下に、現在及び将来の国民のために、国をあげての努力により良好な環境が確保されなければならない。」はっきりいっているじゃありませんか。国会でも決議しているじゃありませんか。こういうような状態なんです。それでもまだなじまないということはもう許されません。したがって、もう行政自身は当然その方向で行なわれなければならないはずでありますから、憲法六十六条の三項によってでも、行政権の行使、これをしなければならないわけであります。  その意味においても、伊達環境裁判、こういうようなものも局地的な問題じゃなくて、もうすでにこれは全体的な問題になっているのだ。環境庁長官がまだそういうような考え方じゃこれは困るじゃありませんか。まして、国際連合の人間環境宣言そのものがもうすでになされている現在です。副総理として、実力大臣として、いまここに国民の輿望をになっているのはあなたじゃありませんか。環境権、こういうようなものも日照権とともに実体法に即さないといいながらも、もうすでにそれが確立されたも同じであります。これに対してはっきりした態度をとるべきである、私はそう思います。長官いかがですか。
  201. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いまの国会の決議等にも、人間の健康にして文化的な最低生活、その生存権、あるいはまた幸福追求権、この前提にはやはり環境の保全が前提になる、そのとおりだと思いますね。だから、これからの政治の大きな指導理念として、それはやはり決議にあったようなことは、もう大きな指導理念として、その問題というものは頭に置かれなければならぬ。だからいろいろな政府の文書でも、政策転換ということは結局そういうことですよ。狭義における経済の効率性というものから、人間の福祉とか、環境の保全とかいうものに政策転換をしようということでしょう。いろいろな政府の出しておる文書の底を流れておる精神はそうであります。だから、私はあなたの言われておることは否定はしない。  ただ、これを私法上の権利として一つの環境権というものを法律の中にこの段階で入れろということに対しては、まだ法の概念として明確に確立をしていないから、この段階ではやはり困難がある。しかし、環境の保全ということについては、もうすべての政治の前提にしなければならぬ、このことはあなたと全く同意見であります。
  202. 島本虎三

    島本委員 次に、基地公害の問題について、ちょっと防衛庁長官並びに施設庁長官に伺いたいのであります。  今月の七日に田中武夫委員の質問に防衛庁長官答弁されております。これは、基地公害が公害等調整委員会及び公害関係諸法の管轄外にある点を指摘されたのでありますが、それに対して、昨年公害等調整委員会の法制定の際の附帯決議を絶えず努力しております、基地内公害を防止したい、こういうふうに答えているわけでありますが、これには相違ございませんか。
  203. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 簡単に御説明をさせていただきますが、昨年衆議院の公害特別委員会における附帯決議事項のうちで、第一は、防衛施設の運用等から生ずる障害にかかわる紛争の処理について、防衛施設審議会の意見を徴するよう体制を整備することにつきましては、附帯決議の趣旨に沿い措置するよう、審議会の所掌事務の改正につきましていま鋭意検討を進めておるところでございます。  第二番目に、民間共用飛行場の運用にかかわる障害に関する紛争の処理について、公害等調整委員会と連絡協議の場を設けることにつきましては、公害等調整委員会との間で相互に確認をいたし合っておるところでございます。今後、具体的事案の処理にあたっての連絡協議が、有効適切に行なえるように、さらに努力して調整を進めたい考えでございます。  第三は、防衛施設周辺の整備等に関する法律の運用にあたりましての補助事業の範囲の拡大とか、補助率の引き上げなどについて検討を加えて努力をいたしておるのでありまするが、最近の例では、防音工事の補助対象施設として精神薄弱児施設を追加したり、民生安定施設のうち、消防施設の補助率を引き上げたり、沖繩につきましても、民生安定施設の大部分につきまして、本土よりも高い補助率をきめるなどの措置を講じたのでございます。さらに、昭和四十八年度予算案におきましては、御承知を願っておるかと思いまするが、新規の政策費として住宅の防音工事の補助、あるいは防音工事の維持費の補助等について所要額を計上をして御審議を願い、その実施をいたしたいと考えておるところでございます。
  204. 島本虎三

    島本委員 そういたしますと、公害等調整委員会と「連絡協議の場を設けるなど実効をあげる方途を講ずること。」とありますが、何回協議をいたしましたか。
  205. 高松敬治

    ○高松政府委員 現在までこの連絡協議をやる事案がございませんで、現在までそれはやっておりません。
  206. 島本虎三

    島本委員 これは、基地公害を公害対策基本法の適用範囲にするように、除外するようなことがないように、この場で十分検討せい、これも含ままれておるはずであります。これらは両方で会って話し合って、どの辺まで突き入っていいか、入っていいか、この辺も話し合いの対象になっているはずであります。基地公害を公害対策基本法の適用外に置いておる、これではだめなんだ。米軍基地でも自衛隊基地でも治外法権ではないんだ、これがはっきりしておるわけです。治外法権ではないのだから、国民等のために公害対策基本法の適用範囲内にすることは当然なんであります。当然であることをしていないから、これを協議せい、協議の場を設けろ。全然していないということは、これはどういうことでありますか。小澤委員長、これはなぜしないのですか。
  207. 小澤文雄

    小澤政府委員 先ほど防衛庁のほうからお答えのありましたように、具体的な事件は出ておりませんので、具体的な事件についての処理の協議ということはまだございませんけれども、ただ、附帯決議の趣旨に従ってこういう制度的な場をつくることについては、事務的に接触をして打ち合わせは進んでおります。
  208. 島本虎三

    島本委員 じゃ、これは公害対策基本法の適用範囲にすることに踏み切ったというふうに了解してもいいわけですか。
  209. 小澤文雄

    小澤政府委員 問題が微妙でございますので、まだそこまで踏み切ってはおりません。
  210. 島本虎三

    島本委員 踏み切っていないから、治外法権的な運営をされるということになるじゃありませんか。この中では、投票でも何でも、もう政策ビラも張れない。全然ないままに隊列を組んでいって投票させられる。これは治外法権以外の何ものでもないでしょう。そういうようなことがいま平気で行なわれているのです。そしてもう事案があがってこない。あがってこないように仕組んであるのです、これは。これは長官もおられますけれども、いろいろ治外法権的な運用をしておらない、こういうようなことを前回答弁されております。これは間違いございませんね。間違いないはずなんです。したがって、時間の関係上、これを前提にして話しますよ。  それならば、もっと住民に対して、一般の国民に対して、普通の公害の大もとを排除するように、騒音ならば騒音の大もとを排除するように、これをやらせるべきです。大もとを排除しないで、そして損害賠償だけはしてやる。これは治外法権的な考えの何ものでもないじゃありませんか。これじゃだめだと言うのです。試みにこの点を釈明してください。これはもう附帯決議の中の第三項目にあった、「民間が共用する防衛施設たる飛行場の運用に係る障害に関する紛争」の問題になります。千歳市の例です。千歳市のちょうど進入口のところに末広小学校、青葉中学校、この二つの学校がありますが、あぶなくて、騒音で勉強ができない。移転の補助を条件にして、騒音地区を市内一千メートル逆に拡大進入してきているのが防衛庁じゃありませんか。そしてそのために、施設庁長官の名においてこれは告示十四号を出したのです。そうすると、二千メートルも市内に入られたのじゃ都市計画も蹉跌を来たす。そしてどうにもならないから、市並びに市の議会が議決をもってこの告示十四号の返上を迫っているじゃありませんか。それに応じないのがこれは施設庁でしょう。これは補償してやるからそこを明け渡せと、都市計画もできないようにくしの歯を折ったように中までずっと、市中まで入り込んでいる。千メーターを二千メーターにして拡張を指定してしまった。だから今度は補助してやる、学校を移転しなさい、補助してあげる、その条件としてそこを明け渡せということです。こういうような重大なことがありながらも、事件が一つもないなんてことが言えますか。市の命運にかかわる重大な問題です。こういうようなものがもうすでに行なわれているのです。なぜこれを取り消さないのですか。なぜ市と市の議会のこの決定を尊重できないのですか。なぜそうしなければ補助できないのですか。なぜそういうような特権を固持しなければならないのですか。これは重大なことだと思うのです。長官、いかがですか。
  211. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 御趣意のとおり公害が起きないようにすることが一番重要であり、いい方法でございまして、防衛庁関係といえどもそういう趣意を第一にしておることは当然でございまするが、しかしやはり防衛庁、自衛隊としての与えられた目的遂行上やむを得ず騒音その他を与えるということも、何と申しまするか、全体としての国家目的の遂行の一端としてやむを得ぬということも残念ながらあるわけでございまするので、これは、だからというような意味ではなくて、いわゆる周辺整備法、これは国会の皆さまのむしろ自発的な御発意によってこういうものをきめていただきまして、これによってできるだけの補償をいたす。補償をするからそれでいいというふうな、そういうたてまえに立っておるわけではないことは御理解をいただきたいわけでございます。  そういう趣旨でこの問題を取り扱っておりまするが、具体的な問題につきましては、政府委員より答弁をさせていただきたいと思います。
  212. 高松敬治

    ○高松政府委員 二千メートルに拡大いたしました問題につきましては、この前も申し上げたと思いますが、千歳につきまして今度広げましたが、小松あるいは新田原等の飛行場については、すでに二千メートルに拡大をいたしておるわけでございます。それで、その拡大によりまして、拡大された地域について騒音防止その他の対策事業が進め得るということが一つ考え方でございます。  いまお話がございました、市で議決をして撤回を求められておるということは、私はそういう事実を耳にいたしておりません。むしろ、あの二つの学校の移転問題につきまして、私どもは、それを周辺対策の事業の一つとして取り上げたというところが一つ効果として出ているわけでございます。そういうわけでございまして、故意に二千メートルに広げて、一般の住民の方々にたいへん迷惑をかけている、こういう問題ではないように私は思っております。
  213. 島本虎三

    島本委員 長官の認識不足です。そうしなければ補助を出してやらないぞということで、補助を出してやる条件として二千メートル市内に延長してきたのです。知らないなんてことじゃこれは許されませんよ。そのかわり今度は、その辺には逆に市の都市計画が実施されないのです。国のほうでそこに補助を出さないのです。市の発展上の重大な問題ではありませんか。これは補助してやっても、その下では勉強はできないのです。これではあまりひど過ぎる。青葉中学では、五十分の授業時間のうち最高十八回中断されている。末広小学校では、四十五分の授業時間のうち十回前後は中断するのです。したがって移転しなければならない、こういうふうに言うと、今度はそこまで延長して、そのかわり補助を出してやる、こういうようなやり方です。札でほっぺたをたたいてやるような問題ではありませんか。これが特権じゃなくて何ですか。治外法権じゃなくて何ですか。  それだけじゃないのです。国鉄の千歳駅でさえも列車の入れかえのブザーが聞こえない、いま列車事故の多いさなかに。こういうような事態さえあるのです。そして第二航空団の幹部は、国を守るために飛んでいるのだから、ある程度がまんするのが当然だ。  こういうようなことで、公害対策の万全を期しますとか、公害対策に対してはこれは十分配慮していますとか、こんなことが言えますか。言っていることは、文句があるならば金でやるからがまんせいということじゃありませんか。これがいわゆる公害対策基本法の適用範囲に入り得ない、こういうような理由でしょう。ですからそういうことをしないで、音がうるさかったならば出さないようにしたらばいいじゃないですか。町のほうに進入してこないで、山のほうへ滑走路を進入していったらいいじゃありませんか。なぜ自衛隊はそういうことをするのですか。それほど民生安定を口実にして、金をやることが慈善だと思っているのですか。これはもう全然逆行しております。逆に滑走路は市のほうへ延ばさないで、山の人のいないほうへ延ばしてくれという陳情です。これをやらないで市のほうへ、市中へ延ばしてきているのです。こういうべらぼうなことがありますか。議会で決議したのを知らないと言う。もう一回調べなさい、議会で決議しているのです。  したがって、こういうような事態であるから、公害等調整委員会においてはこの点を十分配慮して、こういうようなことがないように、調停なりあるいは裁定なりを十分下して、こういうようなことをさせないようにすべきです。これではあなた、賛助機関ではありませんか。まごまごしているからだめなんです。私は、きょうはまことにこれは遺憾です。やはり音を出すのはかってだ、それだけがまんせい、これだけがもう依然としてやはり自衛隊としての態度なんですか。今後そういうようにしないとするならば、どういうふうにするのですか。もう一回これを国民の前に、はっきりあなたの意思を吐露してください。
  214. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 先ほど申しましたように、自衛隊といえども治外法権的な思想などは全然持っておりません。ある程度騒音等を発しまする仕事を自衛隊の隊務遂行上、訓練、演習等のために出しまするが、それについて、全然これをとめ得る場合がないではございませんが、とめ得ない場合もある。そういう場合には、御迷惑をかけることに対する補償として、この周辺整備法をつくっていただいたということでございまして、平気で迷惑をかけて金を払えばいいなんというような、さような不届きな考えは絶対持っておらないのでございます。  いま御指摘になりました具体的問題については、私、大体は承知をしておるのですが、詳細に承知しておらないところがございまするので、具体的問題についての御返答は本日は差し控えさせていただきたいのでございますが、基本的精神は、島本委員の仰せになりましたように、私どもは治外法権的な考えなどは決して持たない。迷惑がかかったら補償すればいいだろうなどという考え方をもって事に処しておることはありませんし、将来もさようなことは決していたしません。したがって、具体的問題についても、私、十分に承知をしておらないところがございまするので、これを十分承知の上検討をいたしたい、かように考える次第でございます。
  215. 根本龍太郎

    ○根本委員長 島本君に申し上げますが、時間が経過しておりまするので……。
  216. 島本虎三

    島本委員 まだです。待った時間が五分間、始まったのが五分おくれておりますから、もう十分以上あるはずです。
  217. 根本龍太郎

    ○根本委員長 正確に事務当局ではやっておりますので……。
  218. 島本虎三

    島本委員 そっちのほうが間違っております。
  219. 根本龍太郎

    ○根本委員長 どうぞ結論を急いでください。
  220. 島本虎三

    島本委員 結論を急ぎます。  では、田中委員の質問した中で、これは重要なことが一つございます。それは七日の日でありますけれども、無過失損害賠償責任制度、これについて、四十九年度には対象を健康被害にまで広げて、生業補償制度を取り上げたいという答弁がこの場所でありました。私は、これは大事な問題点だと思っております。したがって、今後これに対しては、民事責任を踏まえた損害賠償保障制度としてのこれはもう構成をするものであって、財政方式は賦課方式を考えておられるようにも思われるのでありますけれども、しかしこれはどうなんですか、生業補償制度というのは、これは財産権まで含んでおるのですか。そうではない、単なる生業というとその一部なのか、また全然別なのか。これはちょっと生業補償といっても困るのでありますが、この点について解明を願いたいと思います。
  221. 三木武夫

    ○三木国務大臣 田中委員に私から答弁をしたわけですが、島本委員も御承知のように、損害賠償保障制度をこの国会に提出をするという約束をしておるわけです。これはいまだ世界に先例のない法律でありますから、なかなかこれの実施については、いろいろな法案をつくる場合でもお手本もないわけですから、いろいろな認定とか、あるいはまた基金の徴収方法であるとか、いろいろな点で検討しなければならぬ問題があるので、したがって、まずこの損害保障については健康の被害、これを中心にしてこの制度を軌道に乗せたい、そしてその次に四十九年度から生業の補償についても取り組んでみたい。  いま御指摘のように、生業補償というものは、やはりいろいろ生業というものの態様が多様でありますし、またどういうふうにして生業の被害というものを認定するかという問題もある。農業、漁業の共済制度との関連もある。非常にこれは複雑な問題でありますが、しかし、要は被害を受けておる人を何とか救済しなければならぬというのが立法の精神でありますから、その困難というものを乗り越えて、何とか一つの生業補償ができるような道を開きたい、そういう強い願望を持って四十九年度から取り組んでみたい。むろん生業補償というものは一つ所得保障というような形に、この問題はまだ十分検討されておりませんが、そういう性格のものを考えたらどうかなというふうに考えておるわけでございます。
  222. 島本虎三

    島本委員 そうなりますと、環境庁が行なっております、地方都道府県にございます医療救済法によりますところの公害被害者認定審査会がございます。もっぱらこれは申請人が、たとえば水俣病の患者であるかいなか医学的見地からのみ判定する機関でございます。もちろん医者をもって構成しておるのであります。したがって、判定機関であり、医者をもって構成されておるような公害被害者認定審査会、こういうふうなもので行なっておりますけれども、今度は生業被害についても損害賠償の給付をすることになれば、生業被害というものは定額化、定型化しにくいものでありますから、被害額の算定、こういうようなものが大きい問題になることは理の当然であります。こうなりますと、単なる医学的な判定だけではできません。したがって、現在都道府県に置かれておりますところの公害審査会は、調停、仲裁、こういうふうなものを行なうものでありますけれども、これらの機能を拡充強化して地労委的な組織にして、この生業補償の認定のいかんをも十分担当させるべきが妥当でないかと思うのであります。前回、田中委員の質問に対して小澤公害等調整委員長は、そういうような機構を地方に拡充強化する必要はごうも考えないという答弁がございました。これでは、はたして生業補償をどの機関がどうしてやるのか。ないままに、これは国民が待望している長官の発想でありますから、これをどのようにして実施するのか、これは重大な問題であります。公害被害者認定審査会か公害等調整委員会か、これはどっちのほうがどうするのか、この点についての考えをひとつ承りたいと思うのであります。一方は総理府総務長官であります。一方は環境庁長官であります。
  223. 三木武夫

    ○三木国務大臣 田中委員に私が答えましたのは、損害賠償保障制度を軌道に乗せたい、そして健康の被害を受けた人たちを何とかやはりこれによって救済の道を早く講じたいということで、これを軌道に乗せることに全力を尽くして、これが軌道に乗れば、四十九年度からこの問題を取り組んで検討をしたいということを申したのであります。  いま島本委員の言われるように生業補償というものになってきますと、一体認定はどうするのか、自然現象との関連もありますから、やはり公害でなしにいろいろな自然現象との関係もあって、非常に複雑な背景を持っておりますが、赤潮等に見られるように、気の毒であるという感じを私も持っておるわけでありますから、何とかこれを救済できないか、こういうことで、いまこれはどうだ、あれはどうだと一々、まだ構想が固まったものではないが何とかしてそこまで拡大したいというので、四十九年度から取り組んで真剣に検討したいということを申し上げたので、まだ構想ががっちりと固まっておる段階ではないということを御了承願いたいのでございます。
  224. 根本龍太郎

    ○根本委員長 島本君、すでに時間が経過しておりまするので、結論をお急ぎください。
  225. 島本虎三

    島本委員 これでやめます。これでやめますけれども、せっかく来ていただいたのでありますから、ハムとべーコンの問題で農林大臣と厚生大臣の見解を承りたいのでありますが、今度農林大臣の諮問機関の農林物資規格調査会食品部会で、今度は新たにハムとべーコンについてJAS法ですか、こういうようなことをきめたようでございます。しかし、これは一体どういう根拠でおきめになったのか。  同時に、厚生大臣、これに使われる亜硝酸ソーダは、たん白質を構成するアミノ酸と結合することによってきわめて発ガン作用の強い物質をつくることになっております。動物実験の結果これは実証されておるのであります。また農林省のほうではこれを使ったものを販売しようとしておるのでありますけれども、これまた農林省と厚生省とで、この安全性の問題で対立する問題であります。肉やハムやソーセージ、イクラ、タラコ、こういうようなものにも亜硝酸ソーダが着色剤として添加されているのでありますけれども、これは危険な一つの発ガン物資であります。こういうようなことを両大臣十分御検討の上でこれをなされたのでありますか。これは最後の質問でありますから、ひとつ両方ともよろしくお願いいたします。
  226. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 お答え申し上げます。  四十七年の四月に食肉加工品の輸入自由化が実施されまして以来、ハム、ベーコンの食肉加工品の種類が非常に多様化、複雑化してまいりましたので、農林物資規格調査会の専門委員会を四回、消費者懇談会を一回、加工食品部会一回を開きまして、それに基づいてJASの品質表示指定品目に追加指定をいたしたわけでございます。  島本委員の御関心は、亜硝酸塩を使用している面にいろいろと御批判があろうかと思うのでありますが、私どもの一般的な見解としては、このハム、べーコン等の製造には広くこれが使用されておる。国際的にも国内的にも広く使われておりまして、詳しいこと私、十分承知しておりませんが、食品衛生法から申しますると、七〇PPM以下であればいいような見解になっておると思うのでございますが、JAS法の関係からは五〇PPM以下で指導して使っておる、こういうことでございます。
  227. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えを申し上げますが、亜硝酸ナトリウムにつきましては防腐的な効果なりつやを出す効果といったようなことで、添加物として国際的にも国内的にも認められております。しかもまたわが国におきましては、数字を申し上げまして恐縮でございますが、諸外国に比べまして使用許可量は非常にきびしくいたしておりまして、国際食品規格は二〇〇PPM、アメリカも二〇〇PPM、カナダも二〇〇PPM、日本はこれに対して七〇PPM、三分の一という非常にきびしく厳格にいたしておりまして、御指摘のように発ガン物質としての危険は全然ない、かように考えておる次第でございます。
  228. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて島本君の質疑は終了いたしました。  次に、石田幸四郎君。
  229. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 私は国鉄問題を中心にして、これから関係各大臣に質問をするわけでございますが、その前に、最近話題になっております投機買いの問題について若干お伺いをしたいと思います。  最近大豆や木材が急騰して、それが商社の投機によるものである。そういうものだけに、たいへん国民感情をさかなでにしておるわけでありますが、これらの対策はきわめて急を要する問題だと思います。また最近では、繊維の流通機構にも同じような問題が起こっておりまして、絹織物の白生地問屋など、ここ数日新規契約ができない状態になっている。その理由もまた、流通段階における商社の買い占めが行なわれている。そのために今秋には洋服も和服も五〇%高は免れまい、このようにいわれておるわけであります。また、本日のある新聞によりましても、大きな話題になっておりますのは、医療用ガーゼの問題が提起をされております。この医療用のガーゼは一〇〇%輸入原綿にたよっているわけでありまして、これを加工、生産するところの、いわゆる転廃業等の問題はあるにいたしましても、綿糸相場が急騰いたしまして、本年二月までの約一年間において五八%も急騰しておる。このためにこれが原因となって極端なガーゼの品薄になって、いわゆる病院の手術にも事欠く、こういうような状態が報道されておるわけであります。  政府はこういう問題に対しまして、昨日の閣議で商社による投機買いを規制することを話し合った、このように報道されているわけでございますが、経企庁長官に伺いますが、この閣議での話し合いの内容とは一体どんなものであったか、これをまず伺っておきたいと思います。
  230. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 閣議の内容を、実はそのままに申し上げないことになっておるわけでございますが、まあ一般論としてお聞き取りをいただきたいと思いますが、最近の経済の状況というものは非常に局部的にアブノーマルな現象が起きておって、それも国民生活の上で大きな御迷惑をかけておる点が多いわけでございます。これを何とかせねばならぬということでいろいろな意見が出ておるわけでございます。  まあ基本的には、やはり金がだぶついておる面があるのではないか。いわゆる過剰流動性が存在する。それをもう少し吸い上げるくふうを何かしなければいかぬだろうということと、これは対症療法みたいなものでございますが、それから現に起きている投機、これの原因をもっときわめる必要がある。局所的にそうした買い占め等が行なわれていると見られるものについては、これに警告を発したり、場合によっては立ち入り調査をする。これが商社であるか、また他の機関であるか、そういうこともだんだん調べた上で判明することであろうが、いずれにしてもこれはほうっておくことはできない。それから場合によっては、それに対する何か規制措置も、法的なことも考える必要があろうというようなことがいろいろ話し合われたわけでございます。
  231. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 政府の対策としては、簡単にいえばいわゆる行政指導の強化、それからまたいわれておりますところの新しい立法措置、そういうようなことのようでありますが、立法措置をする場合に、まずこういう投機的行為を規制するその一つの条件として、一体何が投機であるのか、こういう問題を明確にしなければならないと思うわけであります。一体どのような状態が不当投機に当たるのか、こういうような問題について通産大臣に具体的な例をあげてお伺いをしたいわけであります。  またさらに、この一年間だけでもけっこうでございますが、これが明らかに投機買いによる物価の高騰である、こういうようないままでの把握されております現象がございましたならば、この点についてもお伺いをしたいと思います。  もう一点、いわゆる商社のそういう投機買いを規制するにあたりまして、商社といいましてもその資本規模には大小ございますし、資本力の差はきわめて大きいものでございます。いわゆる商社そのものに対する規制をするという方向なのか、あるいはまた投機現象面に限っての規制をお考えになっているのか、この辺の御所見を承りたいと思います。
  232. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 投機とは、将来の価格変動を期待し、一時点に財を安く購入し、他の時点でそれを高く販売して、時間的経過を媒体に利得を得る転売行為をさすものといわれています。この点、流通段階において通常付加されるマージンとは異なる、こういうことであるようです。  それで、そういう事案があるかということでございますが、最近毛糸の取引におきまして、どうもそれらしいというにおいのする案件がございました。そこで関係者に対して警告を発し、また注意を与えたという事例がございます。
  233. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 なお不十分だとは思いますけれども、時間もございませんので先へまいります。  大蔵大臣にお伺いいたしますが、先ほども経企庁長官からお話がございましたように、いわゆる過剰流動性の問題がたいへんこの投機買いの背景として論じられておるわけでございますが、やはりここにメスを入れない限り、物価安定はきわめて困難であろうと思います。政府はこの問題に対してどう対処なさるのか。ただしこの問題は、いわゆる中小企業対策と密接な関係がございますし、単なる全体的な金融引き締めだけであっては、中小企業は円の再切り上げに対処するためのいわゆる十分な対処はできない。たいへんな倒産が出てくるかもしれない。こういう意味で、この二つの問題の関連を踏まえた上でいまの御答弁をお願いを申し上げたいと思います。
  234. 愛知揆一

    愛知国務大臣 過剰流動性というものが昨今におきまして非常に大きな問題になっておりますので、これに対しましては政府として鋭意、現に対策を講じておるところでございます。実情をまずお話しいたしますと、今日の状況におきまして、ただいま中小企業の問題をおあげになりましてそのとおりでございますから、一般的に全体として金融を、総需要を抑制するという立場の金融全体の引き締めということは、これは十分に配慮して行なわなければならないところであると考えております。  そこで、詳しく申し上げますと切りがございませんが、御案内のように準備率の引き上げというものを一つのてこにいたしまして、過剰流動性を押えながら目的的に、たとえば商社資金等が、土地に向かう、あるいは株に向かうというようなところを、きめこまかく選別的に、目的的に金融を引き締めていくという考え方に立ちまして、具体的な措置を展開いたしておるわけでございます。たとえば土地等に対しての例を申し上げますならば、これから六月ごろまでの間におきましては、土地に関連する融資というようなものは、おそらく従来から見れば三分の一以下に抑制をされる。これは具体的な成果が相当あがっておるはずでございますが、計数的に正確なことを取りまとめて申し上げるまでの計数は出ておりませんけれども、一例をあげますとそういうやり方でございますから、投機的な資金の抑制ということについては、これからもきめこまかく行政的な措置をやってまいりたいと考えております。
  235. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 投機買いの問題はその程度にしてまいりまして、新幹線公害に入ります前に、最近の国鉄の連続事故について若干お伺いをいたしたいと思います。  国鉄総裁お見えになっておりますが、最近連続して国鉄の事故が起こっているわけであります。二十一日大阪で起こった新幹線事故の問題、それから二十二日に同じく新幹線で神奈川の大磯付近の架線事故の問題が起こっております。それから二十二日には総武線の馬喰町——錦糸町間の地下トンネル内の事故、中央線の立川駅の通過事件、それから昨日の成田線の踏切事故と、このようにたいへん事故が多発をしていると思うのでございますが、多分に不可抗力的な事故とは思いますけれども、こう事故が連続しておっては、国鉄に対し国民の不安は取り除くことができないと思います。この国民の不安を除去するために、総裁はどんな決意に立ち、いかなる対策をしようとしているのか、お伺いをしたいと思います。さらにまた、二十一日に起こりました新幹線の事故の原因について、本日、その事故の原因がわかっておりますれば、あわせてお伺いをいたしたいと思います。
  236. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 最近、いまお説のとおり非常に事故が頻発いたしまして、皆さまに非常に御心配、御不安をかけていることはたいへん申しわけなく思っております。  私どもも、昨年の十一月の北陸トンネルにおきまして、いままでかつてなかった事故を惹起いたしまして、それにつきましても、いろいろ検討し、またできるだけの応急策を講じてまいったわけでございますが、それに数カ月を出ずして、いまお説のような事故が頻発いたしまして、まことに残念しごくに存じます。  ただ、いまの事故の中には、実はいろいろ種類がございまして、必ずしもその事故も一貫した原因はないというふうに思いますし、中に、たとえば職員の怠慢、弛緩等の事故が若干ございますが、私は、私のほうの職員は一生懸命やっているという確信を実は持っております。しかし、それにもかかわらず、こういう事故が起きますことにつきましては、いろいろ事故対策その他につきましてもまだまだ考えなければならない点があると思いますが、私は過去十年間、保安体制については、あらゆることに優先して予算を使い、実績をあげてまいったつもりでおりますけれども、保安と申しますものは経営以前の問題であり、また労使問題以前の問題であるということを深く肝に銘じまして、今後とも、いろいろな種類の事故、これは限りない広さを持っているかと存じますが、これについてやはり挑戦していく以外にないというふうに確信いたしております。  ただ、昨日の成田線の事故は非常に残念な事故でございまして、実は昨日の朝ですか、一昨日でございますか、非常にあの付近はいまダンプカーが走り回るということで、私のほうの責任者から警察署長にお願いしたばかりでございましたが、お聞き及びのとおり、二メートルちょっとしかない道路にダンプカーが来て、しかも停車しなかったというふうなことで、たくさんの、約六十名のお客さまにおけがをさしたことは非常に残念に思っておりますが、やはり踏切問題等につきましては、国鉄だけの力ではなく、警察その他外の方方のお力も拝借いたしまして、今後とも絶滅を期してまいりたいと思っております。  また、ただいま御質問の最後の新幹線の大阪における事故でございますが、これは昨日も各委員会におきまして御説明申し上げましたが、いわゆるATCと申します自動の列車制御装置というものに対しまして、何らかの異常現象、いまのところ迷走電流その他ではないかというふうにいっておりますけれども、残念ながらまだ的確にわかっておりません。ATCとブレーキとの関係におきまして、若干異常があったのじゃないかというふうに思っております。ただ、その後すぐ現車試験等をいたしましても、全然ああいった事故があらわれませんので非常に困っておりますが、きょう先ほど、もう一ぺん全部洗い直すという意味で、技師長を責任者といたしまして、事故調査の委員会、技術検討会をつくって、技術研究所の総力をあげまして、将来の新幹線の中枢になるこの保安装置、さらに十年たったこの保安装置の確認をいたしたいと思っております。  ただ、あの種事故がどこにでも起きるということではございませんで、昨日も申し上げましたが、あれは実は側線から本線に出てくるポイントでございまして、ああいう個所は全国で四カ所ございます。すなわち、鳥飼と申しますのは大阪のほうの車庫でございますが、車庫から本線に出てくるところ、それが鳥飼と、東京のほうでは三島、それからもう一つ品川でございます。それから浜松に工場がございますので、その浜松、この四カ所につきましては、いわゆる側線から本線に出る際のチェックが一重系でございましたので、これを全部二重系にするということで、とりあえず必ず一たん停車をしてから非常信号の上に乗るというような措置をいたして、もうすでに実施いたしておりますが、本線筋におきましては必ず、ツー・セクション・クリアという私のほうの原則がございまして、その原則を機械的に二重に三重にチェックしておりますので、本線筋におきましては絶対にああいう事故は起こらないという確信を持っております。  以上、まだ不明確な点があってたいへん恐縮でございますが、私ども国鉄の名誉にかけてもこの問題を解明いたすつもりでございます。
  237. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 国鉄の事故問題に対して、さらに格段の努力と研究をお願いいたしまして、次の問題に移りたいと思います。  私がいま取り上げます問題は、新幹線公害の問題であります。  昭和三十九年十月に新幹線が開業いたしまして、都市間交通の新しいにない手として、その業務成績はたいへんに著しいものがございます。しかし、その後数度にわたるダイヤ改正があり、あるいはまたスピードアップ、列車の本数の増加、山陽新幹線の開業等によりまして、振動、騒音の問題が続出をいたしております。そのために沿線住民の苦情がここ一、二年の間に急増いたしております。これだけの問題ではございませんで、さらにまた新幹線は成田、東北線あるいは調査五線の発表もありますので、全国旅客交通の中核的な役割りをこの新幹線が将来ともに果たしていくわけであります。そのために、新幹線公害への関心もまた非常に高まっているような状況ではないかと私は思うのでございます。  このような状況を受けまして、四十七年の十二月二十日、環境庁長官から運輸大臣に対して、「環境保全上緊急を要する新幹線鉄道騒音対策について」という勧告がなされました。翌一月三十日には、国鉄総裁より運輸大臣に対して対策内容の報告があったわけであります。この報告を受けまして、運輸大臣が閣議のあとで記者会見をしていらっしゃるわけであります。その内容を見ますと、これは昨日も話がございましたけれども、いわゆる新幹線の騒音基準につきましては、責任者である環境庁長官が、八十ホン以下にせよ、こういうふうに言われておりますが、この問題に対して運輸大臣は、この線に沿って最大限の努力はする、しかしながら、六十や七十にしようと各地で言っておるけれども、これはなかなか実際問題としてはできない、そういうような地方の言い分を聞いていたのではだめなんだ、その環境庁の基準も、八十ホンという数字も、科学者が集まってきめたものだから、このあたりが妥当なところじゃないかというような談話を発表されたように新聞には掲載されております。この問題もきのう委員会では問題になりましたけれども、なおひとつ、このとおりと受け取っていいのかどうか、明快な御答弁をお願いします。
  238. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 大体、経過はいまお示しのとおりでございますが、私の発言内容が正確に伝わっていないように考えます。私は、新幹線の騒音公害につきましては、実は就任以来、運輸行政としては人命を守ることが第一、同時に、公害をなくするようにあらゆる努力をしなければならぬということをやかましく申してきたのでございまして、新幹線の公害問題もその一つでございます。  したがいまして、新幹線の騒音公害に対しましては、これはこれからいろいろ研究を遂げられ、また技術開発も遂げられると思いますけれども、ただいまのところ、昨年の暮れに、公害対策審議会は、権威のある方がお集まりになって一応の結論を出しておられるのでございまして、それに基づいて環境庁長官から私のほうに勧告がまいっております。少なくともこの基準だけはぜひ守ってもらいたいということで、さっそく国鉄のほうにその旨を申し送りまして、国鉄にその対策を指示したわけでございます。国鉄からはそれに対して返事がまいりました。さらに私のほうからは重ねて、今後こういうふうな対策を講じなさいということを申しておるのが実情でございます。  いまの八十ホン、あるいはそれ以下の問題につきましては、実は私は、そういう権威のある審議会の議を経て、責任官庁である環境庁長官から、原則として八十ホン以下ということを示されておりますから、これはぜひ守らなければならない。しかし、新幹線はまだ全国土に通じておりませんけれども、これは全国土を縦貫する非常に大事な総合交通体系の一つでございまして、それについていろいろの基準が出ておるのではなかなか実行はしにくいということを申したのでありまして、八十ホンでいいんだ、これが最大限であるというような意味のことを申したことはないのでありまして、国鉄も八十ホン以下というその基準に対しまして、さらに技術開発をして騒音をもっと軽減するような努力もいましておりますし、私もこれは、八十ホンという基準は一応出たけれども、将来に対しましては、これをもっともっと下げるように。たとえば、私はしろうとでございますけれども、車両の改良もございますし、レールそのものの改良もあると思います。あらゆる方法を講じまして、この騒音公害を軽減するような措置を今後とも引き続いてやっていかなければならぬという意味で、国鉄に対しても指示しておった次第でございまして、その記者会見のときにも、そういうことをつけ加えてもちろん申しておるのでありますが、私の申したことが十分に伝わらなくて、いまお話しのような誤解を招きましたことは非常に遺憾でございますが、私の真意はそういうところにあるのでございまして、今後とも八十ホン以下、できるだけそれを低くする、特に都市を通ります新幹線につきましては、そういう騒音公害が都市でないところよりも多いと思いますから、そういう点には特に重点を置いてあらゆる騒音対策を講じ、同時に、それを防除するような工事も行なわしたい、こういうふうに考えておりますので、御了承いただきたいと思います。
  239. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 次に、環境庁長官にお伺いをしたいのでございますが、環境庁の定められたこの八十ホン以下という基準でございます。このデータにつきましては、いまも運輸大臣から答弁がありましたように、たいへんに科学的な、合理的な数値であるというようなお受け取り方をしているようであります。ただ私は、中公審から出されました、審議に使用されて、そして勧告文にあらわれたいわゆる関係資料、基本データ、これがいわゆる勧告文の内容と中公審の答申でございます。その中にいわゆる資料が出ているわけです。一、二、三、四と四つ出ております。ところが、この四つの資料を調べてみますと、これは環境庁でお調べになった基本データは一つもございませんね。資料の一番、二番は、これは国鉄が任意に騒音対策のために調べた資料です。それによってあらわれてきたデータでございます。それから三と四につきましては、これはいわゆる東北大の二村教授のグループの方々がお調べになった資料をそのまま用いて、そうして討議をしていらっしゃるようでございますが、私はこの問題についてはたいへんに不満があるわけであります。いわゆる勧告すべき相手の国鉄の資料をそのままうのみにして環境庁のほうでは審議をなされて勧告をされた。そういうような態度では、これは私は、国民の皆さんも十分に納得できないのじゃないか。一体、環境庁では、騒音に対するいろいろな測定をなさって、基本的なデータをいろいろお持ちであるのかどうか、この点についての御見解を承りたいと思います。
  240. 三木武夫

    ○三木国務大臣 基準についていま御指摘のあったような、これは国鉄から出たものだ、もう一つは東北大の教授から出たものだという資料の出所についてのお尋ねでございましたし、この点は事務当局からひとつお答えをいたすことにいたします。
  241. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  資料の出所については、ただいま先生御指摘のとおりでございます。環境庁ができましてから、航空機騒音と新幹線騒音の問題に直ちに取り組みましたが、環境庁発足以来、各地方自治体に監視体制の整備をすることに力を入れておりまして、この種の問題については、環境庁みずからデータを持っておりません。したがって、専門委員会の先生方にお集まりいただきまして、そして各先生方からのデータを持ち寄り、あるいは諸外国の文献等のデータを比較して、先生方からデータの批判をしながら、これをつくり上げていったわけであります。したがいまして、基本的なデータは、国鉄当局、それから専門委員会のメンバーに入っておられます二村先生のデータをここに代表のものとして掲げたのでございまして、現在各地方自治体からそれぞれのデータはいただいておりますが、このような新幹線の系統的なデータというのは、今後の問題として私どもはこれからとるものでございまして、既存のデータを中心にやったものでございます。
  242. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いまデータの問題については御報告があったとおりだと思うのでございますが、今回の答申を出すにあたりまして、中公審の専門委員は、昭和四十七年三年二十九日、浜松市周辺の状況を聴取しておられます。しかし、そのときにもデータの収集はしていないわけです。それから昨年の十一月、環境庁が関係各県にこの新幹線の騒音測定結果を依頼いたしまして、その一覧を取りまとめておられるわけであります。これがそのデータでございます。それから四十七年六月には特殊公害課のほうで、「新幹線による騒音及び振動の実態」というものをまとめておられますけれども、ここに掲げられたデータも、たとえば名古屋市の場合を入れましても、四十二年二月のデータなんです。名古屋市では四十五年の五月にデータを発表しておりますけれども、そういう古いものも含まれておる。それから、各県に依頼してつくりましたデータ、これによりますと、百ホンをこすところは島田市と愛知県の小坂井町、この二点しかない。これは全部で二十三カ所行なったと思うのであります。しかし、この地図を見て調べてみますと、データの出し方がきわめていいかげんなわけであります。時速二百キロのスピードは出るところという基準で二十三カ所を設定していらっしゃる。たとえば岡崎市、愛知県の地図で見てみますと、市街地から七キロも離れたところでデータの収集をしているわけです。あるいはまた岐阜県の垂井町あたりでございますと、私もあそこら辺はよく知っておりますけれども、たんぼのまん中をきわめて快適な状態で新幹線は走っておるわけであります。そういうところのデータを集めてきて、そして研究し、また答申を出そうというような姿勢では、これは新幹線騒音公害に対する環境庁の姿勢が疑われるのじゃないか。今後は絶対にこういうようなことではなくして、全国的に新幹線がこれから設置されるわけでございますので、ここら辺の研究を環境庁独自で十二分になさるべきだと思いますが、そういう点につきまして、ひとつ政治的見解を含めてお答えを願いたいと思います。
  243. 三木武夫

    ○三木国務大臣 最近の公害の苦情の中では、やはり騒音というものが一番多いのです。そしていま御指摘のように、府県の協力を得て実地の調査などもしまして、やはり新幹線沿線の状態というものが非常に看過することができない、そういうことで、緊急の暫定措置として指針というものを出す必要があるということで、中央公害対策審議会の専門部会で、いま御指摘のような八十ホンというノイズのレベルを出したわけでありますが、これは全く暫定的な指針でありまして、今後はやはり全国に適用される環境基準を出したい。この環境基準の作成については、他の協力も得ますけれども、環境庁の一つの責任において、そしていろいろなデータ調査もいたしまして環境基準はつくりたい。何ぶん急に何とかしなければならぬという必要から、他のいろいろなデータなども利用したわけでございますが、環境基準の設定に対してはそのように考えております。
  244. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この問題ばかりやっているわけにまいりませんので先へ進みますが、運輸大臣にお伺いをいたします。  この騒音公害の問題は、いわゆる何ホンというような数値にその問題があるのではなくして、それだけの数値のある騒音が人間生活にどんな影響を与えているかが問題だと思うわけでございます。その正しい認識なくして公害対策というものは立てられないわけでありますが、一体運輸大臣といたしまして、現在、騒音公害が各沿線住民に具体的にどんな被害をもたらしているか御存じであるかどうか、まずこの点からお伺いをいたします。
  245. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 各沿線の各地について具体的にまだ承知しておりませんけれども、抽象論といたしましては、住宅地区に対しましては、騒音のために非常に日常生活がじゃまされているということはよく了承しておりまするし、また、学校でございますとか、あるいは病院でございますとか、一般の公共施設、そういった人の集まりますような公共施設、そういったところでも、騒音のために非常に被害を受けているといいますか、そういう被害を受けておるような状態は、私も関係当局からよく事情を調べまして承知しておるつもりでございます。こういった問題に対しまして、これはその土地の状況にもよると思いますけれども、具体的に各土地、土地に応じたような対策を講じていくのがこれからの一番の仕事ではないか、私はさように考えまして関係者に督励をしておるような次第でございます。
  246. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 たいへん抽象的なので、私もたいへん不満なのでございますけれども、これらの新幹線の騒音公害というのは、私たちが机上で論じているような、そんな簡単なものではないわけであります。一ぺんこの事情を運輸省においても、ひとつ十分に聴取すべき責任があるのではないがと私は思うわけでございます。  名古屋大学の衛生教室でデータ収集をしましたときの答えでございますが、幾つかアンケートを出しております。その中で一つ、二つ事例をあげて参考に供したいと思うのでございますけれども、まず小さい子供さんのある家庭におきまして、新幹線が通っただけで、騒音、振動ともに入るとは思いますけれども、子供がびっくりして起きてしまったということが実に百件中六十五件、六五%の多きに達しているわけであります。あるいは乳幼児がお乳をあまり飲まなくなった、こういうようなことも五人に一人の割合で出ております。あるいはまた、学校へ行っている子供さん方が新幹線の被害のために勉強ができない、そういうようなことも五十八人の人が訴えていらっしゃいます。あるいはまた、新幹線もいまはかなりおそくまで走っておりますので、夜眠れない、そういうような答えをしている人も約五〇%あります。あるいはまた病気の人で、とてもうちに寝ていられない、そういうような苦情を訴えている人も実に七七%に及んでいるわけであります。こういうような実情をもう少し的確にひとつ把握をしていただいて、そしてこれに対処していただきたいと思うのでございます。  今度は振動の問題に移りますけれども、すでに騒音に対する答えというものはほぼ出ておりますが、振動による家屋の破損、それから身体への影響、これはいろいろあると思います。私もいま写真をここに持っておりますけれども、こういう問題に対して、国鉄当局としてはどのような態度で臨んでいかれるのか。ただここで問題になりますところは、振動公害の場合は、建物の新しいか古いかによって、その判定というものは非常にむずかしい。いままでの国鉄さんの答えでまいりますと、新幹線とのいわゆる因果関係がはっきりすれば補償する、このように申されておるわけでございます。しかし、振動公害におきまして、新幹線との因果関係を立証するということは、これは私は無理だと思います。私も現場へ行ってみましたし、いろいろ実情を聞いてみましたけれども、その因果関係を立証するのは非常に無理でございます。そういたしますと、全面的にと申しては語弊があるかもしれませんけれども、その申し入れのあった方々に対しては、やはり個別に十二分な手当てをしていただかないと、これは問題が解決をしないんじゃないか、このように思いますので、総裁の御見解を承りたいと思います。
  247. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまお説のとおり、騒音と振動とは相当実は違った影響になっております。騒音につきましては、大体いろいろな角度から判定がわりあいに容易であるということで、私のほうでも、先生御承知のとおり、約一キロおきに十二メートル半、二十五メートル、五十メートルという距離によりまして、一地点について三カ所ずつはかりまして、大体、沿線につきましては一応調査を全部終わっております。もちろん多少家々によって事情は違うにいたしましても、大体の、何と申しますか、一つの概念はつかめるわけでございますが、ただ振動になりますと、地質その他の関係でいろいろ問題がございます。実は、私どももいままで病院、学校等の対策に追われておりまして、確かに一般の民家の方々のそういった問題に対する注意が行き届かなかったというふうに思っております。現在まだ二十名ほどの調査員しかおりませんが、これをなるべく早く六十名ぐらいにふやしまして、そして、とりあえずお申し出のあったところにつきましては、至急調査を進めたいと思っております。実は、四十六年度からこれを具体的に始めておりまして、わずかではございますが、百五十カ所ぐらいでございますが、大体一応の手当てをしたところでございます。しかし、いまおっしゃいました非常にむずかしい点もございますが、あまり理屈ばかり言っておりましても解決になりませんので、私どもといたしましては、専門家が見ますとたいていわかるそうでございますので、いまそういう角度から、なるべく早く具体的に問題を処理してまいりたいと思っております。  おかげさまで、静岡、岐阜等につきましては、だいぶ話が進んでおりますが、実は、まだそのために調査に伺えない地域がございます。これもここ数日間に大体話がつきまして、調査をさせていただくようになると思いますが、そういたしますれば、なるべく早く進展させてまいりますし、振動につきましては、大体実害補償でまいりたいというふうに考えております。
  248. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 もう少し承りたいのでございますが、振動公害につきましては先ほど来問題になっておりますが、因果関係はあかすことがむずかしいわけでございます。そうしますと、実害を申し出た人については極力その補償に任ずる、こういうことでございますか。
  249. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 なかなか概論的にそう申し上げられないまでも、私どもの気持ちといたしましては、いま先生のおっしゃったような気持ちでもってぜひ進んでまいりまして、やはり新幹線を環境とマッチさせたものにしたいという希望、熱意を持っております。
  250. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、次の問題に入りますが、騒音の問題でございますけれども、これは環境庁長官によく聞いていただきたいのでございます。  いわゆる騒音の大きさによって私たちの身体に与える影響、こういうものがいろいろな角度から、いままでも労働災害の面から研究をされてまいりました。それによりますと、いわゆる四十ホンから五十ホンの間におきましては、身体にさほどの影響は起きないけれども、五十から六十、そういうような音の大きさになりますと、これが持続されますと、うるさいとか、何となくからだが疲れるとか、そういうような不調を訴えてまいります。それから、六十ホン以上の騒音の中に長時間おりますと、ホルモンの分泌に異常があらわれてくる、このようにいわれております。さらにまた、九十ホンをこえると耳の中の内耳の細胞がこわれて、長時間ここにおりますと難聴が起こる、こういうふうにいわれておるわけであります。特に妊婦におきましては、いままでの動物実験の中では、百ホンをこえるところに長時間おりますといわゆる子供の奇形があらわれる、こういうような問題もいままでのデータの中に出ているわけであります。そうしますと、いまの騒音の中におきましては、環境庁で定められた八十ホンというような数字は、たとえば名古屋みたいな、約十四キロ市街地を走っているわけですけれども、その中で八十ホン以下なんというのはほとんどないわけですね。しかも、一体どのぐらいの間隔でこの騒音が起こってくるか、騒音の起こる時間というのはわずかに六、七秒のことでございます。しかしながら、現在の国鉄が出していらっしゃる時間表、あれの本数でいきますと、上下線を合わせますと約五分半に一回くらい、この百ホン以上の音が出るところもあるわけです。それだけにこの問題は、私は政府としても非常に重要視をしていただかなければならない問題じゃないか、こう思っているわけです。  いま国鉄のほうからもその騒音対策についていろいろいたしますということが発表になりまして、私も内容をよく承知しております。承知しておりますが、これは五十一年が一応完成目標になっているわけでございまして、そういたしますと、実に四十八年、四十九年、五十年、五十一年と、四年間はしんぼうしなければならぬということになるわけでございます。したがって、これらの施策をいろいろ進めていただくと同時に、やはり沿線が希望しておるスピードダウンの問題についても、十分ひとつ国鉄側と協議の上で、環境庁のほうで人体に与える影響等をお調べの上で、ひとつ御審議を願いたいものだ、このように思うわけであります。  まあこのスピードダウンの問題について、私もいろいろやりたいのですけれども、時間がありませんので、残念ながらこの議論はいたしません。いたしませんが、いままでの国鉄さんのお話によりますれば、新幹線はスピードを生命とするからスピードダウンはできない、こういうふうにおっしゃっておられるわけです。しかし、四年間も九十ホン、百ホン、あるいは百五ホンというような音の中で実際に住んでいらっしゃる人たちの状況を、私も、もう耳に痛いほど聞いておるわけであります。非常に気の毒な状態でございます。そういうような状況を、単にいわゆる国鉄新幹線はスピードを生命とするからというような議論でこれを片づけていったのでは、私は大きな政治不信のもととなるのじゃないかと思うわけでございます。いわゆる極端な話をいたしますれば、わずか十五分か二十分スピードダウンをしたらば、というようなことは考えられます。過去において名古屋——東京間は二時間半で走っておりました。それがいま二時間であります。その二時間半で走ることは決して不可能なことではない。過去にそういう事例があったわけであります。そういう施策を進めると同時に、スピードダウンをすることによりますれば、これは二十ホン、三十ホン、極端にいえばの話でありますが、少なくとも十五ホンや二十ホンのそういう騒音を下げることは、私は決して不可能ではないと思います。いわゆる今日の科学文明の時代にありまして、一体人間はどうしてもそこまで急いで旅行しなければならないのかという問題があろうかと思います。いわゆる人間の生存に適する環境を無視してまでもスピードアップをはからなければならないという考え方は、私は、いわゆる私たち人間が営んでいる目的と手段を大きく考え違いをしているのではないだろうか、このように思うわけであります。そういう点につきまして、原則論になりますけれども、長官の御見解を承っておきたいと思います。
  251. 三木武夫

    ○三木国務大臣 原則的には新幹線はスピードが速いということが生命であることは事実でありましょうが、一方において騒音に対する苦情というのは非常に高まってきているわけであります。それだけの被害を受けるということですから。それをいきなり石田委員の言われるスピードダウンという、そういう前に、防音壁であるとか、あるいはまた車両の改善であるとか、あるいは線路の改善とか、何かやはり、国鉄自身としても沿線の苦情でそれは無関心たり得ないことは事実でありますから、こういうことに金がかかっても、技術の開発というものに対してこれから積極的に取り組んで、そうして騒音からくる沿線住民の被害をできるだけなくしていこうということに最善を尽くすということが、現在の段階では必要だと思います。
  252. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 なお私もこの問題について議論をしたいのでございますが、まだ質問をたくさん用意しておりますので、また次の機会に譲りたいと思います。  時間の関係上、自動車賠償保険の問題を先にやらしていただきます。  いわゆる一般に交通事故といいますと、自動車部門における交通事故をいわれるわけであります。最近多少死亡事故が減少傾向にあるといいましても、なお四十六年には一万六千人をこす死亡者が出ており、九十五万人前後の負傷者を出しているわけでありますが、その中において遺族の生活の悲惨さは言うべくもございません。その内容もまたきわめて各種雑多でございます。これらの交通災害の問題で最近ごく顕著にあらわれてきた問題は、いわゆるから判決の問題があるわけでございます。  この点について法務大臣にお伺いしたいのでございますが、最近の交通事故の賠償に対する裁判が行なわれますと、自賠償の範囲をはるかにこえる一千万、二千万の裁定が出ております。しかも賠償能力の欠如から、現実には被害者の家族が判決どおりの額をもらえない、こういうような状況になっております。これは加害者の逃亡とかあるいは会社の倒産、こういうものが意識的に行なわれている面も考えられるわけであります。  最近の日本交通科学協会第四回総会で示されたデータによりますれば、中小都市におきまして二五・五%、約四人に一人はもらえなくなっております。それが途中でくれなくなった分を含めますと三八・三%、十人のうち約四人はもらえない、こういうようなデータが出ております。あるいはまた東京等の大都会におきましては二九・九%、途中でくれなくなったという人を入れますと三七・一%、四割に近いわけであります。このから判決は自動車事故の裁判に限らないとは思いますけれども、今後この傾向が増大するとすれば、裁判の結果も非常に権威のないものとなって、ひいては社会秩序の維持に重大な影響を及ぼしかねないと私は心配をしておるわけですが、こういう問題について法務大臣の御見解を承りたいと思います。
  253. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 お説のとおり、裁判が確定をいたしましても、実際にその賠償金がなかなか取れないということ、先生お説のとおりと存じます。  そこで、この対策といたしまして私が申し上げたいと思うことをありのままに申し上げますと、これは裁判所の司法行政、裁判所に専属する司法行政に関することに言及せなければならぬ。それは私の立場においては慎むべきことでございます。しかし、そう言うておっては答弁になりませんので、裁判所の司法行政に介入をするのではないという限度で私の所見を申し上げますと、これは一口にずばり申しますと、交通事故による損害賠償請求事件という民事事件は、極力力を入れて、迅速な裁判で解決をしてもらう以外にはない、こう考えるのでございます。しかし、どのように迅速なる裁判をいたしましても、まあ一審は一年、二審も一年、三審も一年程度はかかるであろう。そうすれば三年を要することになるわけで、先生御心配のような、加害者、賠償責任者のほうにいろいろな変化が起こってきて、お役に立たぬということになるわけでございます。  そこで、裁判を極力迅速にやりますこともちろんでございますが、大事なことは、ある程度裁判が進みましたならば、裁判上、裁判所の職権に基づく和解にひとつ力を入れていただく。そして、双方得心をして和解の金額をきめて仲裁の道を講ずるようにしていただく。それから和解になりません場合でも、裁判を一度中止をいたしまして、調停裁判所の手にこの事件を移しまして、正式裁判は中止をいたしまして調停をやるということにもひとつ力を入れてもらいたいものだ、こう希望をするのでございます。裁判を迅速に行なうこと、裁判中に、事案によりましょうけれども、極力和解を進めていただくこと、裁判上の和解ができない場合でも、裁判を中止して調停裁判所にこれを移して調停の措置を講ずる、そうして加害者、被害者が賠償責任に、金額において、得心をして話し合いがつきます場合においては、先生御心配のごときことが比較的に少なくて済むのではなかろうか、こういうふうに考えておりますが、これは司法裁判所に対する私の念願、そうありたいものだという希望としてお聞き取りを願いたいと存じます。
  254. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 運輸大臣にお伺いいたしますが、いま法務大臣からも御見解がございましたように、いわゆる一審、二審、三審というような形でいきますれば、この裁判問題はなかなか解決できない、そういうわけで、やはり調停に持ち込むのがいいのじゃないかという御見解であったようでございますけれども、調停に持ち込んだ場合、具体的にはお金の問題になりますので、やはりいわゆる自賠償の限度額の問題が、先ほど来お話が出ておりますように一千万、二千万の裁定が出るような時代でございますので、非常に現況に合わない。昨年十一月、佐々木運輸大臣が、自賠責の限度額を引き上げる、こういうような意味の御発言をしていらっしゃるわけでありますが、本年度中に引き上げられる考えはございますか。また、引き上げるとすればどの程度か。私たち公明党は、少なくとも一千五百万程度、このように考えているわけでございますが、この点についての御見解をごく簡略に、時間がなくなりましたのでお伺いしたいと思います。
  255. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 この問題につきましては、十分事情を御承知のことと思いますが、われわれのほうといたしましても、この問題がだんだん移り変わってきておりますので、引き上げ問題につきましては、他のいろいろな点も比較均衡上考慮しなければならぬ問題もありますけれども、これは前向きの姿勢でもって、この引き上げの問題についてはなるべく早急に対処したいという考えでございますので、御了承いただきたいと思います。
  256. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 きわめてあいまいもことしてとらえがたい御答弁でございます。本年度中に引き上げることができるかどうか、この点についての明快なお答えをいただきたいと思います。  それからもう一つ、自賠償の中でのもう一つ問題点は、傷害に対する支払い限度額の問題があるわけです。たとえば死亡について五百万の限度額があるわけでございますけれども、その限度額で打ち切ったというのは実に百人のうち三人、三・二二%、こういう非常に少ない率です。一年間におきましても五百六十六人です。ところが、傷害問題になりますと一七・二八%、一年間で十二万人の人が、五十万円ではどうにもならないけれども打ち切られておる、こういうような現象が出ているわけであります。そのために、長期療養を要するような人たちは、非常にこれが生活の上で難渋を来たしておるわけであります。現在の比率からいきますれば、死亡保険金限度額五百万に対して十分の一というような状況になっております。今度死亡限度額を引き上げる際には、この十分の一の比率ではなくして、少なくとも十分の二、五分の一程度ぐらいまでは引き上げる必要があるんじゃないか。この点を含めて、いわゆる限度額の引き上げはいつごろというふうに運輸大臣はおっしゃっているのか、前佐々木大臣の新聞発表は間違いなのかどうか、この点も含めてお答えをいだきます。
  257. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 死亡、傷害両方を含めまして、同じことだと思います。すでに私のほうもこの問題については積極的に取り組んでおりますし、審議会のほうでも、御承知のようにいまこの問題を検討を始めておる際でございます。私のほうは、決してこれをなおざりにしておるわけじゃないのでございますけれども、御承知のように、自賠償の責任保険の収支がようやく四十八年度におきまして、いままでの長い間の赤字から脱却してきたような次第でございますので、そういう点も含めまして、今後なるべく御趣意に沿うように早くしたいと考えておりますが、それが今年度内にはたしてできるかどうかということになりますと、いまのような保険会計の収支の点も考えまして、あるいは審議会の審議の模様も考えまして処置をしなければなりませんので、との点は、四十八年度に必ずやりますということを明言するまでには至っていないのであります。この点は、御趣旨の方向に沿ってなるべく早く結論を得るように努力をいたします。
  258. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、時間がありませんので先へ進みます。国鉄問題に入るわけでございますが、運輸大臣と国鉄総裁にお伺いをしたいと思います。  まず一つは、独立採算の問題でございます。昭和四十五年八月に提出をされました四十四年度日本国有鉄道監査報告書によりますれば、この中に、「国鉄経営についての再検討」という項目がございますけれども、「すでに政府からの財政補助が行なわれている現在、すべての経費を自らの収入によってまかなうという意味での独立採算制は、もはやくずれているともいえる。さらにここ数年続いているいわば構造的ともいうべき赤字状態が今後も避けられないとするならば、独立採算制の維持は不可能となろう。」こういうふうに報告がなされておるわけでございます。また、いままで磯崎国鉄総裁といたしましても、政策赤字線というものは、国鉄会計とは別勘定にして、政府に負担をしてもらいたい、こういうようなことも申されておるわけであります。あるいはまた去年の四月二十五日の運輸委員会の記録によりますれば、丹羽国務大臣は、国鉄運賃というものは公共性が第一だ、そういう意味で、やはり独立採算ということが非常に無理があるのじゃないか、いわゆる独立採算よりも公共性が中心になる、こういうようなことを御答弁されておるわけであります。一体今後も国鉄の財政の基本といたしまして独立採算制を固持するおつもりであるのかどうか、この点についてまず磯崎国鉄総裁並びに運輸大臣の順にひとつお答えをいただきます。
  259. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 最近、御承知のとおり、非常に財政状態が窮乏いたしまして、ただ私どもから見ますと、純粋な企業としてやっている面あるいは純粋な企業として成り立つ面と、純粋な企業としては成り立たないけれども、どうしてもやらなければならない面、そういう二つの面がだんだん私、はっきりしてきたような気がいたします。もし純粋の民間企業であるならば、そのあとのほうの面はやめてしまう、たとえば私鉄が貨物輸送をやめてしまったとか、あるいは中小私鉄が鉄道をはがしてしまったというようなことに形がなると思います。しかし、国鉄としてはそういうことはもちろんできませんので、結局、その全体のソシアルミニマムと申すのでございますか、最低の足を確保するということについては、運賃だけでやっていくことは不可能だということになりますれば、その分は過疎対策その他の関係政府が、あるいは国民の税金で国民全体としてめんどうを見るという考え方、これは私は無理でない、また外国においてもそういうふうな考え方がとられているというふうに思います。  ただ、もちろん政府がお金を出してくださるときにどういう名目でお出しになるか、これは一応別といたしまして、私どもといたしましては、そういう企業経営のワク外のものにつきましては、相当積極的に、維持するならば維持するで考えなければいけないというふうな気持ちを持っております。
  260. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 この問題につきましては、これは非常に重要な問題だと思いますが、多少理屈になるかもしれませんが、私の考えを申し上げますと、国鉄総裁が申し上げましたのは現実の姿でございますが、この国鉄も、それから他の日本電信電話公社、これも終戦後にできましたいわゆる公共企業体でございます。それについてのいろいろの法令が出ておりますが、いずれも一方では公共性のあるということ、それから一方では企業性を持っているということを書いてございます。各法令にそういうことが書いてございますが、いまの独立採算制というのは、こういう公共企業体ができました当時を振り返ってみますと、まさにこれは文字どおりに独立採算制で企業運営をいたしておったと思います。でありますから、この独立採算制をとらしたというゆえんは、おそらくやはり企業意識に徹しまして最も効率的な企業の運営をやって、そうして国民に対して、国民の福祉につながるようなサービスを提供させようという趣旨から出ておったものだと思います。  ところが、社会情勢が非常に変わってまいりました。どの公共企業体に対しましても公共的な見地からの需要、要求というものがだんだんふえてまいりまして、国鉄なんかはその一番著しい例だと思いますけれども、全国にわたって、総合交通体系のあの議論にありますように、採算を度外視いたしましてやらなければならぬ仕事がたくさんふえてきておることは御承知のとおりでございます。  そういう面からいいますと、公共企業体が発足いたしました当時と比べますと、非常にやっております仕事が変わってきておることは事実でございまして、その面におきましては、独立採算制だけではもうとうてい国鉄というものは運営できない、経営できないというところに来ておるのは事実でございます。  でございますから、今日は、この独立採算制を根本としておった企業性の強い公共企業体というものから、だんだん公共性というものが強調されまして、そういう部面における働きも多くなって、その部分については、したがって国が大いに助成をし援助をしなければ、国鉄の本来の機能を発揮することができなくなってきたというような状態でございますから、今日私は、単純にこれは独立採算制を維持しているのだということは申し上げませんが、しかし、独立採算制を根本としてでき上がった公共企業体であるということはもう事実でございまして、その点は発足当時から申しますと、非常に大きな変貌を遂げてきておるということではないかと考える次第でございます。
  261. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この議論は、なお運輸委員会で十分したいと思いますが、次に大蔵大臣にお伺いいたします。  今回の再建十カ年計画を見ますと、いわゆる利用者負担が七兆九千五百億、四六・七%、政府負担が三兆八千八百億、二二・八%、このようになっております。国鉄の企業努力といたしましては五兆一千八百億で三〇・五%になっておりますが、この再建計画、どういう順番にウエートを置いて、というようなことはなかなか言いかねる問題だとは思いますが、やはり基本になりますのは国鉄の企業努力であろうかと思います。それに対して、どうしてもこれからの計画を実施するためにはこれだけの資金を調達しなければならない。その際に、いわゆる利用者から運賃という形で収入を上げることができる部分、それから政府の助成をもらう部分というふうにきめてくるのだと思うのですが、私はこの比率、いわゆる利用者負担の七兆九千五百億という金額、政府負担の三兆八千八百億の金額というのは非常に疑問があるわけであります。なぜ利用者だけがいわゆる政府の負担の倍額も十年間で四回の値上げという形で支払わなければならないのか、このように非常に疑問があります。そして政府のこういった財政補助につきましては、ここ数年間もう原則がなくて、くるくるくるくる変わってきているわけであります。一体、今後の十年間においてどういう原則で政府は国鉄への助成措置をされるのか、伺いたいわけであります。  一例をあげますれば四十八年度予算に見られる大蔵省の助成措置というのは、大体が資本収支への助成措置であろうと思います。しかし四十七年度予算には、地方閑散線への助成措置がございました。これは経常経費の問題です。あるいは外国の例を見ましても、フランスなどの場合は、いわゆる通勤定期あるいは通学定期に対して国鉄が受ける損害を政府が助成をしておるというような形で、いわゆる経常経費への支出が多いわけです。しかも基本的には、赤字は全額政府が負担をする、こういう基本的な態度を貫いて助成をいたしておるわけでございます。現在の政府の資本収支へのそういう助成だけでは、赤字はますます膨大化するだけで、少しも改善方向へ向けられるようにはどうしても思えない。まあ十カ年計画——確かに机上では、そういうような単年度黒字になるような方向には向いておりますけれども、いろいろな、あの十カ年計画にいたしましても、人件費の問題にいたしましても、あるいは貨物部門の問題にいたしましても、非常に不確定要素が多過ぎるわけです。ですから私は、十年後においても、単年度黒字が出るなんというそういうおとぎ話は容易に信じかねる、こういうふうな見解をとっているわけでありますが、しかしいずれにしても、政府の助成措置というのは、いままでのように利子補給の段階、それから経常経費への支出、それから資本収支を全面的に助成する、そういうような方針の変更ではなくして、この十年間において一貫した方針で貫かれなければならないし、またいろいろ議論はございますけれども、そういう意見を私は持っておるわけであります。その点についての御見解を承りたいと思います。
  262. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国鉄の再建問題は、なかなか大きな問題でございますが、こまかく数字をあげて申しますと、だいぶ時間がかかりますから、まず基本的な考え方を申し上げたいと思います。  ただいまも質疑応答がございましたが私どもの考え方としては、国鉄が、何と申しましてもわが国の交通体系の中で基幹的な輸送機関で、高い公共性を持っている。したがって、そういう立場に立ちまして、四十八年度から五十七年度の十年間に、ただいま御指摘のとおり三兆六千億円でありますが、ほかに財政投融資が九兆三千億円ございますことも御理解いただいておると思います。総計、これは単純に計を言うべきでないかもしれませんけれども、合計いたしますると、十二兆九千億というような助成措置を十年間でとりますが、しかし、この国鉄に対する助成の考え方は、たとえば新幹線等というような先行的な整備を促進するための工事費に対する助成、それからもう一つは、過去の債務の利子負担を軽減するための助成、この二つの考え方に徹しまして、これらを通じて国鉄の経営体質の強化をはかろうということであって、国鉄の独立採算制というものを否定するという考え方ではございません。したがって、十年後におきましては、本来の姿にりっぱに立ち直る、そして国鉄が、その後におきまして、安全で確実で、よい輸送のサービスを提供してくれるようにということを目途にいたしておるわけでございます。  こうした新幹線等の問題は、要するに政策的の目的の実現のための助成でございますから、このような、国としての助成としては適当なやり方であろう。それから外国との比較についても御言及になりましたが、こうした政府としての助成策は、外国の例に比べましても決して少ないものではない。これは具体的な数字の説明などは省略いたしますが、そういうふうな考え方でやってまいっておるわけでございます。
  263. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 まあ外国に比較しまして、そう少ないものではないというお話でございますけれども、私もフランスやイギリス、ドイツの例を調べてみました。しかし、これは国情が全然違うのです。ですから、そういった意味での比較は、私は適当ではなかろうと思います。また、この十年間の長期試算を見ましても、四十八年においては、二千三百五十六億の利子を支払うことになっております。しかも計画の最終年度におきましては、六千四百十七億という利息を払うような、こういうような長期収支がはたして適切であるかどうかということは、私は、非常に問題が多かろうと思います。しかし残念ですが、時間がありませんので、次の問題についてお伺いをしておきたいと思います。  まず一つは、受益者負担の問題でございます。いままで政府は、しばしば、公共料金ではあるけれども、この国鉄運賃の値上げを行なわなければ、その値上げ部分は全部税でまかなわなければならない、それでは負担の公平を欠くという、そういうことをしばしば言及をしておられたわけであります。しかしながら、私は、この受益者負担ということばの定義が非常に不明確だと思うのであります。また、いままでの議論の上からいきましても、たとえば新線が開設をされ、駅ができる。その周辺の土地の所有者は、土地の価格が非常に上がる、こういうような受益者もあるわけでありますが、こういうものは間接的な受益であって、そういう要件を算定をすることは非常にむずかしい、こういう議論をいままで運輸省、国鉄はされてまいりました。国鉄というよりは運輸省であり、また大蔵省だと思うのでございますが、そのように考えてまいりますと、この受益者負担というのは、間接的な受益を含まない、こう定義をする以外にしかたがないわけです。  そうしますと、直接的な受益というのは一体どういうものか。それは国鉄を利用しているか、していないかという外見上の区分から受益者をきめているというふうに見ざるを得ないわけであります。今回の赤字部門は、いわゆる旅客部門は大幅に黒字である、貨物部門は大幅に赤字であるというふうにいわれております。直接的な、いわゆる外見上の区分から受益者をきめるのであれば、何も旅客運賃を値上げするそういう必要性、意義というものは一つも認められないわけです。  時間がありませんから先に進みますが、そういたしますと、国鉄のほうでは、旅客と貨物はいわゆる共通部分、いろいろ施設を共有しておるので、総合原価主義によって判断をしなければならない、こう言われております。ところが、この総合原価主義という立場に立ちましても、これはやはり同じ問題が出てくるわけであります。じゃどういうふうに配分をして、旅客をどれだけ上げて、貨物をどれだけ上げるのかということになってきますと、いわゆる負担主義である。いま旅客のほうはふところがあたたかいからこのぐらいは上げられるのじゃないか。貨物のほうは、いわゆるトラック等との競合がございますので、とてもそんなに上げられない。したがって、総合原価主義の立場からいって、旅客部門も大幅に上げざるを得ないというのが、いままで聴取をいたしました、いわゆる国鉄側の説明であったわけであります。しかし、これでは私は非常に矛盾があると思うのです。じゃ一体、その旅客部門の利用者はどういう性格を帯びているかといいますと、簡単に言えば、先に貨物部門を申し上げればいいわけでありますが、貨物部門の利用者は何ゆえに国鉄を利用するか、何の目的で利用するか。これはまず、一つは利用者が企業であることが特徴でございましょう。利益追求のために商品の運搬手段として国鉄を利用し、対価を払うわけであります。したがって、対価というのは運搬される商品の原価にも含まれておりますし、さらにその商品価値を再生産をして利益をあげているわけであります。ところが、旅客部門の利用者のほうは、会社の出張等の問題はそれはありましょうけれども、直接的には価値を再生産しないのであります。そういう本質的に違う問題をひっくるめて負担主義と言って、そしていま余裕のある側のほうからより多くの運賃値上げという形で吸収をしようというのは、私はこういう論理で国民の皆さんを納得させることはできない、こういう立場に立つものでございますが、運輸大臣の御見解を承りたいと思います。
  264. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 運賃の構成についての非常に御研究の深い御意見を伺いましてありがとうございましたが、この問題については私たちはこのように考えております。  先ほども申し上げましたように、公共企業体、企業性を持って運営している企業体でございますから、これはお話がございましたが、足りないところを全部一般の国費でもってまかなうということは適当でない。したがいまして、そのどの部分かということば別といたしまして、とにかくそれを利用する方にやはり経費のある部分を負担してもらうというのは、これは企業体としては当然出てくる議論ではないかと考えておるのでございます。  それから、いま旅客運賃と貨物運賃との問題につきましていろいろ御意見を承りましたが、おっしゃるように、国鉄の運賃は従来から総合原価主義をとっておるのでございます。御研究でございますから数字をあげる必要ございませんが、今日旅客、貨物運賃を通じまして収支プラスになっている部分は、大体新幹線の旅客運賃だと思います。在来線の旅客運賃もマイナスでございますし、貨物は相当の赤字でございます。ただ、これを計算しますのに、お話しのように、共通費というのが多いのでございまして、大体五〇%くらいが共通費じゃないかといわれております。したがいまして、いろいろ前提条件を置かないとプラスだマイナスだと言えないのですけれども、概括しまして貨物運賃は相当の赤字であるということは確かでございます。しかし、それならば、どうせ足りないのならば、上げるのに貨物運賃にずっとウエートを置いて上げたらいいではないか、こういう議論がすぐに出てくるわけでありますけれども、御承知のように、旅客運賃にいたしましても、貨物運賃にいたしましても、国鉄の運賃は長い間の歴史を持っておりまして、そういう沿革の上に過去の経歴というものを積み重ねましてでき上がっておる運賃でございますから、これは今日急にたてまえを変えますると、物価にも非常に大きな影響を与えることになると思います。  したがいまして、今度もその点を十分に考えまして、貨物運賃、旅客運賃をやはり従来の方針に従いまして、総合原価主義に従って、これは物価の変動にあまり急激な影響のないような方法をとろうということで、ただいま出しているような運賃改定案に落ちついたような次第でございます。その点はひとつ御了承をいただきたいと思います。  なお、答弁の足りない点があるかもしれません。この点は御指摘くださればあらためてお答えを申し上げます。
  265. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いまの問題については、旅客と貨物の本質論に大臣はお触れになっておらないわけですね。じゃ実際に、私なら私がしょっちゅう新幹線に乗っております、国電も乗ります。しかし、私は貨物部門の利用者ではございません。一般的な社会活動のために、国鉄の旅客部門を利用しておるわけです。それが何ゆえに特定の企業の利益追求のために、われわれがその分の赤字を負担しなければならないのですか。それは総合原価主義というのはわかります。わかりますが、先ほども御指摘申し上げたように、総合原価主義の立場からいきましても、いわゆる貨物部門でこの程度しか上げ得ないであろうという想定がどうしても出てくるでしょう。そうしたら、結局旅客部門の分は旅客に大幅の値上げをしょってもらう以外にないというのが総合原価主義の立場でしょう。それは矛盾があるわけですよ。どこまでいっても、この矛盾は私は解決しないと思う。  では一体、この貨物部門の占める立場というのはどういうものか。いま貨物はトラックに対応しようと思ってフレートライナー網を設置しようということでやっております。こんなことでは、収入が年間に三百億から四百億くらいのものでしょう。そういうものを拡大していっても、一年間で二千五百億、貨物の四十六年度の収入は二千五百一億ですよ。そこまでフレートライナー方式で収入をあげるようにはとうていいかないわけです。しかも道路はどんどんどんどん整備されるでしょう。トラックはその利便性を利用してどんどん国鉄のそういう貨物輸送を吸収していくわけです。そういうトラックの長距離輸送に対して何らの措置もせずして、そして競争しろといったって、国鉄の赤字はおさまるわけは絶対にございません。  また、国鉄さんの状況を申し上げますと、私もここに一つのデータを持っておりますけれども、一番運賃の上げ率の低い、一級貨物というのですか、その一級貨物の運賃は今度のアップ率においても、総合的にいきますと二四%でなくて、たしか七・八%くらいのアップにしかならないのです、そういう商品は。しかも、ここに私はある運送契約書の写しを持っておりますけれども、これは半年間に一万トン輸送する契約です。これは二二%も割り引きするのですよ。そういうような不合理を片づけないで、総合原価主義などといって旅客部門にそれだけのものをどうしてもかさ上げをしなければならないのだという議論は、私は成り立たないと思う。だから、総合交通体系の中で国鉄貨物の占める立場、使命、そういうものはどうも間違っておるようにしか私には思えない。よしんばこれが正しいといたしましても、今後も引き続いて国鉄の主要なる赤字を占めるのは貨物部門だ。その貨物部門に対して、では、いかなる指導を運輸大臣は国鉄になさるのか。フレートライナー方式なんかでいったって、一年間の収入を二千五百億程度に上げるためには、まだ十年はかかるのです。一体どのように指導され、その赤字をなくそうと努力をされるのですか。その点の御見解を承りたいと思います。
  266. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 貨物部門に対する指導方針でございますけれども、これは国鉄総裁から詳しく具体的に述べたほうがいいかもしれませんが、運輸省の立場といたしましては、一応は、いまお示しの、一昨年でございますか、関係閣僚協議会できめました総合交通体系の中で示されております方向に向かって指導していくつもりでございます。  となりますと、もう少し具体的に申し上げますと、貨物部門におきましては、やはり国内における貨物の動きを見ながら、中距離及び長距離の貨物輸送というものは国鉄に依存するように、国鉄がその施設の整備をし、サービスの内容の改善をいたしまして、トラックに負けない、というと語弊がありますけれども、トラックに負けないような運送条件で運んでいくということが望ましいと思っております。これはできないかといいますと、私は、やりようによりましてできると考えております。といいますのは、これは国鉄総裁はまた違った意見を言うかもしれませんが、われわれから見ますと、今日まで国鉄の設備投資というものが、旅客輸送というほうにあまりに集中し過ぎたように思います。貨物部門がとかく取り残されがちだったのじゃないかと考えるのでありまして、まだ改善の余地はたくさんあると思います。まあ数字のほうは私は詳しいことは知りませんけれども、大体二百キロぐらいのところが限度で、トラックとの関係考えましても、これは経済的には一応国鉄の輸送のほうが有利であるというような研究の結果も聞いておるのでございまして、今後設備を充実し、サービスの改善をいたしますことによりまして、国鉄の貨物輸送に対する運賃収入というものは、今後相当に伸びていく可能性は十分あるのじゃないか、私はそのような認識に立っておるわけであります。  具体的に必要でございましたら、国鉄総裁からお答えさせます。
  267. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 もう時間が来てしまいましたので、残余の部分はまた運輸委員会等で申し上げますけれども、まず一つだけ申し上げておきたいと思います。  まず、独立採算制のこれは事実上の崩壊でありますから、政府はやはり国鉄助成の原則論を、ただこの程度やっておるから適切なんだというのじゃなくて、やはり国鉄を育てる意味におきましても、どういう原則論の上でそれをなさるのかということを明快にされなければ、国民の皆さまもどういう税の使い方によるものか、これは不明朗な面が多々残ると思います。その点で申し上げたわけであります。  それからもう一点、政府がどうしても国土開発のために新線計画をなさっている、そのために、営利性が基本であるところの受益者負担の論理というものはすでに破壊をされておるのです。受益者負担というものは主要原則ではない、補助原則にしかすぎないというのが、今日の情勢を見ても私は適切な考え方ではないだろうか、こういうふうに思うわけでございます。  さらにまた貨物部門の問題についても、もう一ぺんこれは、どのような形で再建するかあるいは縮小するか、この態度をもう少し明快にすべきである、こういうふうに思います。  それだけの意見を補足いたしまして、残余の問題については運輸委員会等におきまして質疑を続行したいと思います。  以上であります。
  268. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。  次回は、来たる二十六日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十三分散会