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1973-02-07 第71回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月七日(水曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 根本龍太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小澤 太郎君    理事 小沢 辰男君 理事 田澤 吉郎君    理事 湊  徹郎君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 谷口善太郎君    理事 山田 太郎君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君       伊能繁次郎君    臼井 莊一君       大野 市郎君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       小平 久雄君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       塚原 俊郎君    野田 卯一君       野原 正勝君    福田  一君       保利  茂君    細田 吉藏君       前田 正男君    松浦周太郎君       松野 頼三君    森山 欽司君       山崎平八郎君    阿部 昭吾君       大原  亨君    小林  進君       田中 武夫君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    安井 吉典君       木下 元二君    中路 雅弘君       中島 武敏君    三浦  久君       岡本 富夫君    安里積千代君       小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 櫻内 義雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         郵 政 大 臣 久野 忠治君         労 働 大 臣 加藤常太郎君         建 設 大 臣 金丸  信君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       江崎 真澄君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         内閣総理大臣官         房審議室長   亘理  彰君         公害等調整委員         会委員長    小澤 文雄君         公害等調整委員         会事務局長   川村 皓章君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       田代 一正君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         防衛施設庁総務         部長      河路  康君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         科学技術庁長官         官房長     進   淳君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省人権擁護         局長      萩原 直三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林省構造改善         局長      小沼  勇君        農林省畜産局長 大河原太一郎君         食糧庁長官   中野 和仁君         通商産業省公害         保安局長    青木 慎三君         通商産業省化学         工業局長    齋藤 太一君         運輸省海運局長 佐原  亨君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         運輸省港湾局長 岡部  保君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君         運輸省航空局長 内村 信行君         海上保安庁長官 野村 一彦君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月七日  辞任         補欠選任   保利  茂君     山崎平八郎君   津金 佑近君     木下 元二君   不破 哲三君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   山崎平八郎君     保利  茂君   木下 元二君     中路 雅弘君   三浦  久君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   中路 雅弘君     津金 佑近君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これより会議を聞きます。  昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。楢崎弥之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ただいまジュネーブにおいてはまだたしか十八カ国の軍縮会議は継続しておると思うのですが、日本自衛力というものはこういう国際的な軍縮対象、あるいは規制を受けるものですか。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 日本自衛力日本憲法制約のもと、最小必要限度のものを考えておるわけでございまして、国際的な軍縮という問題を考える場合におきましても、いま政府のとっておる防衛力に対する態度は特にその精神に背反するものとは私ども考えておりません。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 数量とかそういう問題でなしに、いま外務大臣がおっしゃっているのは、日本憲法を持っておる、したがってこれは戦力ではない、だから軍備でもない、だから軍縮対象にはならないのだ、そういう意味ですか。数量対象になるほどのものじゃないという意味ですか。どっちですか。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 国際的に軍縮が問われておる現状に照らしまして、日本の現在の防衛力内容、水準というものは、その精神から申しまして特に関わるべき性質のものではないという理解を持つております。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、これは仮定の問題ですけれども、軍備がだんだんふえていく。もしジュネーブの国際的なそういう軍縮会議のある線が出た場合に、これは仮定ですけれども、そういうものには拘束されないのですね、政府理解では日本自衛力戦力ではないという御見解のようですから。性格としてですよ、数量じゃないのです。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 どういう国際的取りきめが将来できますか、さだかに展望はきかないわけでございますが、もしそういうものがかりに出た場合におきましては、その内容をよく検討させていただきまして、わが国防衛力との関連において検討すべき問題があればしなければならぬと思いますけれども、いまそういったものを論究する基盤がまだないわけでございますので、具体的に政府見解を申し述べる条件が現在整っておるとは思いません。
  9. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そんなむずかしいことを聞いているのではないのですよ。やはり拘束を受ける性質のものか。ただ数量数量的に考えてその対象にならないと考える、そういう意味ですか。どっちですか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 いま申しましたように、国際的な取りきめというようなものが将来できるかもしれぬ、できないかもしれない。できた段階におきまして、それをよく吟味して日本防衛力との関連を問わなければならぬと思いますので、まだそれができてない段階において御返答申し上げる筋合いのものでないということを申し上げておるわけです。
  11. 楢崎弥之助

    楢崎委員 大体わかったようです。つまり、もしそういう軍縮一つの結論が出た際には、やはりその関連を十分考えなくちゃいけない。——うなずかれたから、そうだと思いますね。  総理にお伺いするのですが、この、例の限界ですけれども、お考えになった上、必要かつ妥当と御認識になったようでありますのでお伺いするのですが、ここに「想定」と「前提」と二つことばがありますね。この想定前提というのは、この二つは単なる仮定として、こういう仮定に立てばという意味ですか。それとも肯定的な判断としてこのことばを使われておるのですか、こういうふうに考えるというふうな肯定的な判断として。単なる仮定ですか。どっちですか。
  12. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 学問的にいえば、流動する国際情勢の中での問題でございますし、相手がどういうような状態になるかということがわからないのでありますから、その意味では一応仮定してと、こう申し上げたわけでございますが、しかし、防衛庁当局が申し出た中には、現在のような状態というものを一応平和時と考えて、しかも日米安全保障条約や、外交的努力や、国内的な施策がうまくいくという現在の状態判断をして、それをおおむねこのような状態が続くということを想定したわけでございますから、まあ一つ判断でございます。
  13. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから、単なる仮定ではなしに、やはり肯定的な一つ判断に立っておるのだ、こういうふうにお答えがあったと思います。  そこで、この御認識ですが、今日のアジア情勢は、全体として安定した緊張緩和状態に至っているという見方に立って、今日の状態を平和時と規定されておるわけですね、これは。どうですか。
  14. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 現在は、朝鮮半島においても話し合いが行なわれておりますし、日中間においても日中の国交の正常化ができましたし、またベトナム問題も終息の段階に入った、こういうことから考えまして、アジア状態はこれ以上緊張するようなことがないだろうという想定に立っておるわけでございます。
  15. 楢崎弥之助

    楢崎委員 総理、もう一ぺんことばをよく聞いておってください。今日のアジア情勢は、全体として安定した緊張緩和状態に至っている、そういう見方に一応立たれておるわけですね。間違いないですね。
  16. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 おおむねそう考えております。これは、米ソ戦うかなどということが本には書いてありますが、私たちはそんなことも考えておりませんし、中ソもし戦わばというような本も刊行されておりますし、読んだこともございますが、そんなことも万あるまいということでございますし、朝鮮半島においても再び火をふくようなことはないだろうというような考え方考えておるわけでございます。
  17. 楢崎弥之助

    楢崎委員 四次防決定の際に非常に特徴的な点は、四次防を決定するに際して「情勢判断」というものと「防衛構想」というものを国防会議決定されたのですね。これはいままでなかったことです。その国防会議決定された「情勢判断」はこうなっております。今日の状態は、「全体として安定した緊張緩和状態に至っているとはみられず、」。国防会議決定された「情勢判断」のほうは、全体としては安定した緊張緩和状態に至っているとは見られないという判断に立っておる。この「平和時」のほうの情勢判断は、「大勢」ということばを使ってあります。「全体」ということばと同じでしょう。「大勢としては緊張緩和傾向にあるもの」と判断する、こうなっておる。明らかに食い違っておりますね。どうなんですか、これは。
  18. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 平和時の防衛力限界想定いたしますときには、現在の状態、また周囲の状態を見まして、これから平和的な状態が続くものであろう、こういうことを想定しておるわけでございます。四次防決定のときの問題は、これは「しかし」という状態から述べておるわけでございます。日本に対して侵略が全くないというようなことを想定することはがたいのでございますということを述べておるわけでございます。
  19. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ここにもちょっと食い違いがあるのでしてね。国防会議決定の「情勢判断」では、「地域的ないし期間的に限定された武力紛争の生起する可能性を否定することはできない。」いつ起こるかわからないという判断です。こちらのほうは「今後とも続くもの」と考えている。ここにも食い違いがあるのです。いいですか。国防会議決定の「情勢判断」とそれほど食い違っているのです。これをまず指摘をしておきます。  それから「国防基本方針」、昭和三十二年度決定、第三項に、「国力国情に応じ自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備する。」こうあります。この整備する目標は平和時の目標なんですか、それとも違うのですか。
  20. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 憲法で許容する最小限度防衛力漸次整備していかなければならないということでございます。平和時における防衛力限界というものは、四次防が行なわれるときに、無制限に防衛力が増大をするのではないかという不安に対してこたえるために、あらゆる角度から検討したいということを考えたわけでございますから、二次、三次、四次にわたって漸次整備をされておるものは、同一の趣旨によって、憲法制約下最小限防衛力として整備をされておるわけでございます。私たちが平和時における防衛力限界というものを考えた場合、少なくともこの平和時における防衛力限界憲法の許容する最小限のものでなければならないという考えでございます。
  21. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ことばは多うございましたが、さっぱり要領がわからないのです。そうすると、この基本方針第三項の「必要な限度」、これは、これまでは必要であるという上限限度なんですか、それとも最低これまでは必要であるという下限限度ですか。
  22. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 四次防を行なうときには、必要なものとして四次防を策定をいたしたわけでございます。平和時における防衛力限界……
  23. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうじゃない、「国防基本方針」を言っているのです。昭和三十二年決定の「国防基本方針」の中にいわれておるこの「必要な限度」というのは、ここまでは必要であるという上限限度意味なのか、それとも最低これまでは必要であるという下限限度ですかと聞いておるのです。「国防基本方針」の中の限度の問題を聞いておるのです。
  24. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 憲法で許容する必要最小限ということでございます。
  25. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは上限ですか、下限ですか。
  26. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本防衛力は、憲法の許容する範囲内でなければならないということはそのとおりでございますし、必要最小限のものでなければならないということもそのとおりであります。ですから、上限憲法の許容する範囲を越えてはならないということが上限になっております。
  27. 楢崎弥之助

    楢崎委員 たいへんその辺もあいまいでございますね。平和時の防衛力目標、これが達成されたら有事即応能力がありますか。
  28. 増原恵吉

    増原国務大臣 御説明に申し上げておりまするように、平和時の防衛力は、今日の国際情勢を平和時というふうに考えまして、この緊張緩和傾向が、いろいろ、日本及び諸外国の平和努力なり、内政諸施策推進によって、続いていくであろうと考えるという前提に立ったものでございます。そういう意味前提に立った自衛力というものを平和時の自衛力と申しておるわけでございます。
  29. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そういう、質問に関係ないようなことを答弁しちゃいけませんよ。有事即応能力はあるのか、ないのか。ないならないでいいのです。まだないと言えばいい。
  30. 増原恵吉

    増原国務大臣 有事即応という考え方を持った自衛力整備ではございません。しかしながら、いまわれわれが平和時であると測定しておりまする、考えておりまするものが万々破れました場合には、その場合にはこの平和時の防衛力として整備しておりまするものでわれわれは日本防衛に当たる、こういうことになるわけでございます。
  31. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その有事即応能力があるがごとくなきがごとく、もしこの期間に非常事態が起こったらこの平和時の防衛力で守るんだと、こういう御答弁でしたね。じゃ、平和時の防衛力整備目標と、平和時でない、非平和時の防衛力とは、例をあげてください、具体的にどういうところが違うのか。
  32. 増原恵吉

    増原国務大臣 ただいま私どもが持っておりまする防衛力整備計画は、第四次防衛力整備計画しかございません。このたびお示ししましたのは、平和時というものの前提における考え方をお示しをしたのでございまして、それ以外の防衛力整備計画はいま防衛庁政府としては持ってはおらない、こういうことでございます。
  33. 楢崎弥之助

    楢崎委員 まあ、笑い話になるかもしれませんが、そういう非常事態のときのことは考えを持っていないということですから、もし、たとえば何か起こった、非常事態が起こったときに戦車が出動する。その辺は車がこんでますが、うしろからゆっくりゆっくりついていく、こういう状態になりますね、何もないから。つまり、たとえば、あなた方は平和時じゃないときには、一例をあげますと、非常時立法なんていうものを考えているんじゃないですか。
  34. 増原恵吉

    増原国務大臣 いま楢崎委員の述べられました、いざというときにそこらの車のあとからついていくかということでございますが、ある程度のそういう場合の規定は、防衛庁設置法及び自衛隊法に不十分ながらございます。しかしこれは、いまこれを十分整備をして、そういうときにりっぱに行動ができるというふうな規定をつくるということは時期ではないというふうに考えまして、そういう法案の研究、起草なり、御審議なりを願うというふうなことにはまだいたしておらないということでございます。
  35. 楢崎弥之助

    楢崎委員 要するに私が言いたかったのは、平和時という、これは全く概念的にも混乱があるし、国防会議決定の「情勢判断」とも食い違うようなあいまいさがあるし、非常に混乱しているということを指摘したかったわけです。  それで私が申し上げたいのは、今日のような政府の、日本安全保障に対する発想のしかた、政策、これでは防衛力限界なんというのは出てこないんですよ。なぜかというのを具体的に私はいまからちょっと指摘をしたい。  まず第一番に、あなた方は重大な、憲法の恣意的な解釈を行なっておる。つまり、自衛隊合憲の上に立っておる。したがって、憲法が禁止している戦力規定についても、それを犯すほどの自衛力になっているのに、それをごまかそうとしておる。そしていわゆる防衛力が、憲法が指定しております国際関係の安定に寄与する、そういう発想をここに堂々と書かれておりますね、「平和時」のこの構想の中に。そうしてその武力こそがわが国の独立と平和を守るのだという発想にずっとつながっていっておる。これはきちんとこの中に書いてあります。これは重大な、憲法に挑戦する構想である、私はこのように指摘せざるを得ません。  それから二番目に、安保条約というものをあなた方はポスト・ベトナムでも堅持するという立場に立たれておる。それは結局、二十三日の安保協議委員会における合意を見ましても、今後の日米協力関係は、あるいは共同作戦体制ニクソンドクトリンの方向に沿うものであるという確認もなされておる。そして米国からは、そのニクソンドクトリンに基づいて強い自主防衛力強化の要請があっておる。そういう中で、具体的には安保運用協議会なるものが新しく一月十九日の日米首脳部の間で合意された、そういう形になっているんですね。  それで、私は安保運用協議会の問題についてちょっと詰めておきたいのでございますが、これを設置する法的な根拠は一体何に置かれておるのか。たとえば、類似した委員会がありますね。安保協議委員会、これは交換公文によってできております。日米合同委員会、これは地位協定によってできております。ではこの安保運用協議会はどういう具体的な法的根拠があるのか、それをまずお伺いしたい。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 いま御指摘のように、安保条約の運営につきましていろいろな協議形態があるわけでございますが、いま御指摘運用協議会を今度考えたわけでございますが、それは随時協議一つ形態でございます。従来この随時協議におきましては、日米間の事務レベル協議もございまするし、また時々刻々、日米間の係官によりましての協議が行なわれておるわけでございますが、それをまとまった形で機動的にやってまいる上におきましては、こういう運用協議会をつくったほうがよろしかろうという当方の提案に基づきまして合意を得たものでございますから、随時協議一つ形態であると御承知願いたいと思います。
  37. 楢崎弥之助

    楢崎委員 時間が制約されておりますから、安保条約の第四条、随時協議、これを基礎にしておる、そのように簡単に答えてください。それはわかりました。  そうすると、合同委員会は、主として基地の技術的な関係防衛庁長官を入れた、あるいは向こうは太平洋司令官を入れた安保のいままでは運用も入っておったと思うのですが、それにすでに安保協議委員会交換公文でできておる。それから、あいまいな性格でございましたが、日米安保事務レベル会議というものがあったはずです。そういうものと、この新設される安保運用協議会はどういう関係にあるのですか。こういうややこしい委員会があると私は思うのだけれども、これになぜ上のせするようにこの安保運用協議会をおつくりになったのですか。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 直接には二つ動機がございまして、一つは、相模原から戦車を搬送するというような問題が生じ、国内法との関連が出てまいりました場合に、米軍全体の末端にまで趣旨が徹底していなかったうらみがありましたので、ここを何とか是正しなければなるまいという動機一つありました。  それからもう一つは、いま御案内のように、基地整理縮小計画を本土、沖繩にわたりまして計画推進中でございまして、これを効果的に実行してまいる上において、在来の仕組みで足らないところをこういう運用協議会の姿においてカバーしてまいることが運用上適切であると判断したからでございます。
  39. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私どもは、やはりこれは屋上屋を重ねるものであるという感じがする。これは決定権があるのですか、何かこの協議会は。単なる協議調整の機関なんですか。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 それは協議いたしまして、そこでこなされた問題につきましては、最終の決定はもちろん私の責任になるわけでございます。
  41. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、やはりいろいろなものを決定していくという協議会なんですね。あなたはただいま基地を縮小していくというようなことも言われましたけれども、これは念のためにはっきりしておきたいのですが、田中総理指摘をされておるのですけれども、基地の数が二千八百何がしかから九十に減ったというようなことを言われておった。米軍基地はそうかもしれません。しかし、それは国民に返されるのではなしに、自衛隊に移っていっているのですね。いま自衛隊の施設面積、これは幾らになっておりますか。
  42. 長坂強

    ○長坂政府委員 概数で申し上げますが、自衛関係の施設面積は約九億平米でございます。
  43. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それと、現在残っておる米軍基地の面積と足したら幾らになりますか。
  44. 高松敬治

    ○高松政府委員 一月末現在の数字は、本土が九十、二億七千七百五十一万平方メートル、沖繩が八十六、二億八千四百八十五万平方メートルでございます。
  45. 楢崎弥之助

    楢崎委員 足して幾らになりますか。
  46. 高松敬治

    ○高松政府委員 足して百七十六、約五億六千二百三十六万平方メートルでございます。
  47. 楢崎弥之助

    楢崎委員 おかしいじゃないですか。自衛隊の基地が九億何がしとさつき言っている。それに現在残っている米軍基地を足したら幾らになるかといったら、減るのですか。何を言っているのです。そんなことで時間をとってもらっちゃ困りますよ。これは算術計算ですよ。
  48. 高松敬治

    ○高松政府委員 失礼しました。いま私が申し上げましたのは、本土、沖繩を通じての合計の数でございます。それの米軍の使っている施設の数と面積でございました。
  49. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が言っているのは、自衛隊の基地とそれと足したら幾らになるかとさっきから聞いているのです。米軍基地だけを聞いているのじゃないのだよ。
  50. 高松敬治

    ○高松政府委員 両方足しまして、これに九億五千万足すわけですから、約十五億平方メートルでございます。
  51. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ちょっと立っておってくだざい。昭和二十七年の米軍の面積は幾らだったのですか。——こちらから申しましょうか。それをコミットしてください。十三億だったですね。そうでしょう。
  52. 高松敬治

    ○高松政府委員 はい。
  53. 楢崎弥之助

    楢崎委員 わかりましたか、総理大臣。米軍基地は当初十三億であった。その二千八百何カ所か、今日米軍の基地は減らされておるけれども、それが自衛隊の基地に移された。そしていわゆる日米基地は十五億です。ふえておるのですね。決して基地は減ってない。自衛隊への返還である。国民への返還ではない。これは数字上明確なんです。だから、米軍基地が縮小した、縮小したとそういうことばかり言っちゃいけませんよ。まさにこの安保運用協議会は、いかに米軍基地ニクソンドクトリンに基づいてドル節約のために減らしても、それは自衛隊が肩がわりしていく、それをいかにうまくやるか、これを協議する一つの機関なんですよ、これは。数字がそれを示しているでしょう。それで結局、やはりあの戦車の輸送問題あるいは立川の自衛隊移駐等に見られるように、この運用協議会の設置というのは、やはり安保優先、こういう立場に立っての設置と見ざるを得ないわけです。そしてその日米共同作戦をより能率的に行なうための機関である。米軍基地自衛基地への移管の問題は、さっき言ったとおりであります。結局、日米両軍による米軍基地機能の維持あるいは自衛基地機能の維持、それを確保するための運用協議会はそういう性格を持つと客観的な事実から判断せざるを得ない。これはたいへん危険な委員会である。だから、あなたは、一月にアジア調査会とかあるいはどこかで、安保はいかにも御神体論、お守りだ、さわらぬ神にたたりなしといったような、いままでのニュアンスと、ポスト・ベトナムは安保運用がもういかにもさわらぬ神にたたりなしというような印象を与えて、運用についてニュアンスを変えるがごとく装っておるけれども、現実はそうじゃないのです。この安保運用協議会の設置がそれを物語っておると私は思わざるを得ません。  それから、ここに一つだけ私は念を押しておきたい問題があるのですが、一月の九日の日でしたか、韓国の金鍾泌さんがお見えになりましたね。そして、田中総理もお会いになったでしょう。大平外務大臣もお会いになったですね。このときにいろいろなことを話し合われた。その中で、このアジア安全保障問題についても意見を交換されておる。日本の新聞では、これはASPACの存続問題あるいは国連での韓国の立場についてのいろいろな話し合いというふうに載っておりましたが、韓国側の新聞その他でこれはそんたくするところですけれども、この新設される安保運用協議会に韓国側からオブザーバーとして出る可能性が非常にある。これは念のために伺っておきますが、そういうことは絶対にないですね。
  54. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう消息は承知していないわけです。私ども、そんなふらちなことはいたしておりません。
  55. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それはしかと承っておきます。  それから、やはり平和時の限界限界と言いながら、力を持っておることが平和の維持のためになるのだという力の政策、あるいは相手のあることだから、つまり相対的にこれを考える、つまり抑止論ですね、こういう考えの上に立ってあなた方は防衛構想を立てておる。そういう中で、私は限界などというのは出てこないと思うのですよ。あり得ないです。際限なくふくらみますよ、こういう条件の中で。現実に政府・自民党がとられておる施策の中では、これは出てきょうがないのです。  さらに、この装備の点で、このいただいた平和時のものに、一番最後にこう書いてありますね。数字の問題でえらい勇気をもって出したように書いてあるのですが、読んでみますと、たったのこれだけですね。陸上自衛隊、五個方面隊、十三個師団、十八万、海上自衛隊、五個地方隊、四ないし五個護衛隊群、約二十五万トンから約二十八万トン、航空自衛隊、三個航空方面隊、一個航空混成団、約八百機、それだけがここに載っておる。何のことかこれはさっぱりわかりませんね。田中総理は、これが非常に妥当だ、必要だと思われたそうですが、具体的にこれをちょっと、考えておられる中身について聞いておきます。  これは、いままでの防衛局長の答弁から想像するならば、四次防の完成時の二十一万トンから、四万トンないし七万トンふえる、それは外航船舶の保護に当たる二護衛隊群について、現在はそれぞれ艦対空がついておりますね。DDGになっておる。これが一隻ありますね、現在は。ヘリコプター搭載護衛艦DDH、これが二隻、そしてその他の護衛艦五隻、計八隻から現在なっておりますね、外航のほうは。内航のほうが別に二群ある。この内航のほうは、あまり装備はよくないわけですね、外向けでないから。これが四万トンふえるというのは、内航のほうを外航の装備に変えるという構想でしょう。そうですね。一ぺんに言いますから、あとで違う点があったら言ってください。  それから艦対艦、SSM、これは装備する可能性がありますか、それも一緒にお伺いしておきます。
  56. 久保卓也

    ○久保政府委員 二十一万四千トンから二十五万トンになる場合には、内航護衛群の二群についても、外航と同様の近代化を行ないたいということであります。  それからSSMにつきましては、五十年度に建艦予定をいたしておりますDDA一隻、それと、現在考えておりますのは、魚雷艇の三隻にSSMを外国から輸入して装備したいという計画でおります。
  57. 楢崎弥之助

    楢崎委員 総理、目をあけて聞いておってください。SSMを装備する、艦対艦、これは全く新装備ですね。その予定である。アスロック、ターターはすでに載せておりますから。  では、もう一つ海のほうを聞いておきます。安井質問で局長に対して、一群ふやす場合に、それはハンターキラーじゃないでしょうねと念を押しました。あなたはそれは考えておりませんとおっしゃいました。田中総理はそれをしかと守られますね。
  58. 増原恵吉

    増原国務大臣 防衛庁で計画をしておりますことを総理に報告をいたしておるのでございまして、われわれのほうとして、第五群と申しますかは、研究すべきものとして五ないし四と申しておりますが、これはハンターキラーは考えておりません。
  59. 楢崎弥之助

    楢崎委員 わかりました。ただし、ほんとうの姿はこういうことじゃないですか。ハンターキラーとしてヘビーな群にはしないのだ、それを分散さしてやる、いざというときはそれを引き抜いて編成すれば、直ちにハンターキラーになるはずです。どうですか、その点は。
  60. 久保卓也

    ○久保政府委員 そういう考え方はいたしておりません。従来、ハンターキラーのグループについてはいろいろな考え方がございました。たとえばDLH、これは約八千トンでありますが、そういうものを二隻、DDG、これはターター艦、対空ミサイル艦でありますが、これを二隻、他に四隻の護衛艦、そういたしますと、まとめて使うわけでありますが、いざというときにはそれを二つに分けて運用することも可能であるといったようなものがヘビーである。われわれとしては、そういう特殊な用途、特殊な装備のものを持つことはあるまい。したがって、現在は外航群でありますが、それを内航に及ぼし、さらにもう一群、つまり外航、内航と同じような一群をつくる、それを機動的に運用してまいるというのが適当ではなかろうかという発想に立っておるわけであります。
  61. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いずれ、私が指摘したようなことをあなた方は考えておるのですよ。いまのところ分散して、ごまかして……。  それから、空のほうをちょっと確かめておきます。F104Jが四次防の中でいずれなくなる。後継機が必要なんでしょう。次期FXはいつごろから検討に入り、いつごろまでにきめられる予定でございますか。
  62. 久保卓也

    ○久保政府委員 従来から要撃戦闘機部隊は十隊ございますが、現在のF104の部隊が、昭和五十五年度になりますと一隊減って九隊になります。そこで、全体の体制としてはやはり十隊を維持してまいりたいという発想に立てば、その穴埋めをしなければならないわけで、それの手当ては、もし昭和五十五年度にその一隊をふやすような手当てをするとすれば、昭和五十二年度の予算に載せなければなりません。したがって、昭和五十二年度の予算に間に合うようにするためには、昭和五十一年度には決心をしなければなりません。そのための準備をするとするならば、逆算をいたしまして昭和四十九年度ぐらいから考えねばなりません。  これは物理的な手順を申し上げたわけで、政府あるいは防衛庁がこういうことを現在の時点で考えているということではございません。
  63. 楢崎弥之助

    楢崎委員 物理的に考えればそうなるんだから、そうなるんですよ、結局。だから、いま若干私は内容について触れてみましたが、お聞きのとおりです。四次防ですら外国に脅威を与える装備の内容だ。特にFST2改の攻撃性については、前の国会で問題になったところです。しかるに、この平和時の限界の中における装備の内容は、四次防と違ってさらに新装備のSSMを装備する。それからもう次のFXを考える。非常に危険な、四次防よりもさらに危険な内容を持っているのです。だから、そういう質の限界はできないと言っているのです。今日は、数もさることながら質の時代です。質に限界がないというようなことは、限界がないということですよ。そしてそのために費用的にも、GNPの一%といっても、国力は、どんどんGNPが上がれば、これは歯どめにならない。たいへんなものです、これは。  そしてさらに、限界がきめられないという一番最後の私の考えている理由に、シビリアンコントロールの問題がある。シビリアンコントロールがはたして正常に行使されるか。今日の状態は政産軍が癒着の状態にありますよ。特に産軍癒着の状態については、私はこの前一例をあげた。東京螺子の問題です。東京螺子のその後の調査はどうなりましたか。簡単に報告してください。
  64. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その後調べましたところ、一応楢崎委員指摘のとおり、会社の措置について穏当を欠くものがございました。よって、会社の首脳部を招致いたしまして、厳重注意を与えておきました。
  65. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、まだ契約はもちろんできておりませんが、四次防のこの二年度の予算がこれに載っておるのですが、四次防予算に関する限りはネジも含まれておるのですから、審議できませんね。
  66. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 御指摘の部分は、東京螺子の業務の内容、販売品やあるいは会社重役等の問題についてありましたので、その点はよく調査いたしまして、そして処置したわけでございます。
  67. 楢崎弥之助

    楢崎委員 六%クローズになってなかったでしょう、一部はなっておったかもしれないが。なっていなかったはずです。  法務大臣にお伺いしますが、私の質問に基づいて、自発的に特捜部がこの問題を調べた事実がありますか。
  68. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 本件は、事件を立てる立件前の内偵中かと存じます。刑事局長から御報告を申し上げます。
  69. 安原美穂

    ○安原政府委員 昨年、七十国会における楢崎委員の御指摘に基づきまして、東京地検特捜部におきましては、御指摘のような事実、すなわち、東京螺子が航空機のネジを納入するにあたりまして、いわゆる原価の水増しをやってプライスリストをごまかして詐欺をしたのではないかという疑い、それから詐欺がないにいたしましても、そういうことを防衛庁担当官が容認しておって、その間において職務上の不正と申しますか、贈収賄があるのではないかという疑いを御指摘になりましたので、これを端緒といたしまして、東京地検特捜部では調査をいたしておりますが、ただいま調査中でございます。
  70. 楢崎弥之助

    楢崎委員 一方においては調査中である。通産大臣の中間報告では指摘の部分もあった。六%クローズは守られていないはずです、全体的に。したがって、四次防第二年目の予算は、それが明確になるまで審議することができませんが、どうなりますか。
  71. 増原恵吉

    増原国務大臣 防衛庁の立場としてのお答えをさしていただきますが、前臨時国会で指摘に相なりました東京螺子の問題については、当庁の専門家による調査グループを編成をしまして、四十四年度から四十六年度の三年間にわたる財務記録並びに抽出した数十品目についての原始伝票及び製品元帳、当庁に提出をされました資料等について、でき得る限り必要な調査を行ないました。  この結果、原始伝票と製品元帳とは符合していることが確認をされましたが、当庁に提出をされた資料とこれらの原始伝票及び製品元帳とは、一部に符合しないものも見られたのでございます。この一部一致しない点については、東京螺子の事務管理の不手ぎわに基づくものとも考えられ、また、当庁への提出資料が一種の見積もり資料でもあり、これをもって一がいに改ざんと断定することは困難であると考えております。この点については、検察庁において独自の立場で調査中と聞いております。  いずれにしても、四十六年度プライスリストの作成に関連をして疑惑を持たれたことは遺憾でございまするので、四十六年度プライスリストは今後の使用を中止し、原価調査の方法等についても再検討をし、なるべく早い機会に新しいプライスリストを作成することとし、それまでの間は四十二年度プライスリストを用いることにいたしたいと考えます。  なお、前国会において、航空機用螺子の利益率は約六%前後と申し上げましたが、今回当庁ができ得る限りの調査を行ないました結果では、当庁の航空機調達に関連する航空機螺子の利益率は、約七・一%前後ということが明らかになりましたので、この点訂正をさしていただきたいと存じます。利益率の七・一%は、民需用の航空機にかかわるものを別として、当庁関係の航空機にかかわる調達に関して、今回でき得る限りの調査を行・なった結果判明したものでございます。民需分をも含めた航空機用螺子の利益率は、当庁の調査結果に基づく計算では、約一〇・九%となっておるのでございます。  なお、前国会での答弁は、わずか一夜のうちにでき得る限りの努力を尽くし調査をしました結果に基づき申し上げましたものでございまして、このことは、その際、ただいまのところの調査結果とお願いをし、お断わりをして説明をしたとおりでございます。これを今日の調査に基づいて数値を訂正をさしていただきたい、かように存ずる次第でございます。
  72. 楢崎弥之助

    楢崎委員 大蔵大臣にお伺いしますが、お聞きのとおりです。一方においては司直の手によって調査中、一方においては間違いの事実があったことを明確に認められて、訂正をしますとおっしゃった。これで二年度分の四次防関係審議ができますか。ネジがなかったらパアになるんです、機械は。飛行機も、戦車も、軍艦も。ばらばらになって、飛行機だったら墜落しますよ。金額は相対的に低いから、このくらいはというわけにいかないのです、われわれは予算委員の立場としては。どうするのですか。大蔵大臣の御見解を聞きます。あなたが予算書を提出しておるのだから。
  73. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 防衛庁から御説明があったような次第でありまして、それを基礎にいたしまして予算を提出いたしております。
  74. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この予算はいつつくられましたか。結論が出たのはつい最近ですよ。そんなことを言っちゃいけませんよ、大蔵大臣。だめです、そういう答弁じゃ。
  75. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 御承知のように、項によりましては、実施計画をさらに承認をする手続が残っておりますから、それにかかわるものにつきましては、実施計画のときにさらに念査をいたしたいと思います。
  76. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それじゃ、これは審議できないじゃないですか。そういう答弁じゃ審議できないじゃないですか。だから、ああいう答弁であれば、私はこの点は審議できない。これはいずれ理事会で明白に……。
  77. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは他の予算につきましても同様でございまして……(楢崎委員「私はまだ発言中ですよ」と呼ぶ)防衛庁の予算については、実施予定計画を提出をして、実施計画を大蔵大臣が承認することになっております。他にもこういう支出がございます。
  78. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの答弁では了承できません。だめです。こんなことじゃ責任ある審議はできませんよ。
  79. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 くどいようですが、御案内のように、防衛庁の経費の中の款項目の中には、実施予定計画をつくりまして実施を承認する手続が残っているものが他にもございます。したがって、現在御質疑のありました点でこれにかかわるものについては、実施計画承認の際にさらに十分念査をいたしたいと思います。これは、他にもこういう項があることは御承知のとおりでございます。
  80. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それじゃ、これは責任ある予算書じゃないですね。不確かです。これは調査結果の報告いかんでは変更されるかもしれない。そうでしょう。
  81. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは予算の立て方の中で、予算の項目の中には、実施予定計画をつくりまして、そうして計画の実施を承認するという手続がさらに留保されているものがほかにもございます。これは予算制度のたてまえから申しまして、先般当委員会で御質疑をいただいた事項の中にもそういうものはございますし、四十七年度予算で計上されておりますものでも、年度内に、まだ三月までございますけれども、実施計画を承認しないで使用がまだ決定していないものもございます。
  82. 楢崎弥之助

    楢崎委員 了承できません、ああいう答弁では。
  83. 相澤英之

    ○相澤政府委員 これは私から申し上げるまでもなく、御案内のことと存じますが、予算を組みます場合には、それはたとえばことしの予算で申しますと、昨年の十二月あるいは新しいところでも、一月の時点における物価その他の状況というものを前提といたしまして、また見込み得るものは、今後における物価の上昇その他を織り込んで算定しているわけでございますが、その予算を実際に執行するにあたりましては、その状況によっては、当然予定していた価格でもって執行できないことがあるわけであります。また、一応の予定価格がございましても、予算の執行に際しましては、競争入札によるというようなものがたてまえになっておりますから、その予算価格で落ちるということにもならない場合もございますので、したがいまして、予算において予定しております価格は一応の見積もり価格であって、実行に際しましては、これが適正に実行されるような保障がございますというふうに存じております。
  84. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そういうあいまいな数字で出されているのです。四十七年度の予算は四次防の第一年度ですね。その四次防のネジ関係のプライステーブルは私が申し上げたとおりの状態になっているのですよ。問題のあるプライステーブル、これを基礎にして予算を組まれたのでしょう。それがいまのような状態ですから、結論が出るまでは審議できないじゃないですかと私は言っているのです。非常に簡単な論理です。
  85. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほどからたびたび申し上げておるとおりでございまして、実施計画の承認をしなければ、この予算が実際支出できないわけであります。その承認の手続に際しまして、十分念査をする機会が残っておる。これが予算制度上からいって制度としてきまっておる制度でございますから、よく御理解いただけると思います。
  86. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまのような答弁では私は了承できないのです、私自身が。もう何回も言うようですけれども、いわゆる間違いの個所があったということは明確に言われて、答弁を訂正します、防衛庁長官はそこまで言われているのですね。それから法務大臣も、局長をして代弁させられましたけれども、いま調査中である。そういう状態の中で、この四次防予算に関係のある金額を責任をもって審議できますか。私は一応この問題は保留しておきます。  もう一つ、私はこの産軍癒着の問題で明らかにしたい問題があるのです。いままでわれわれは、防衛産業に対する防衛官の天下りの問題は何回もやってまいりました。ここでいままで抜けておったといえばそれまでですけれども、これからも、いわゆる基地整備というものがどんどん出てきます。その中で防衛施設庁関係の工事費、基地関係の工事費というのは非常にふえていくと思います。そういう中で、私は防衛庁関係が発注した民間の工事量と防衛施設庁関係の職員の天下りが非常に関係があるという事実を、この統計によって明らかに知ることができたのです。それでたくさん刷ってありませんから、これを総理ちょっと見ておっていただきたいのですけれども……。  それは、昭和四十二年から四十七年、昨年の暮れまでの統計が出ておるわけです。私は別にここに年度別のも持っております。そしてそこにある、備考のところに数字を書いておりますでしょう。それが防衛施設庁関係から天下りされた人数です。その数字は人数をあらわしております。一応三等級以上です。一位から十八位まで全部天下りしていますね。そして十九位と二十位はそれは見当たりません。しかも、この中にどうかと思われるような業種が非常に上位に進出しております。  さらに一例をあげれば、これは年度別がございませんけれども、年度別を見てみますと、たとえば東急建設、これは四十五年度まではそうたいしたことはない。四十六年度から急激に受注量がふえておる。これは元施設庁長官が天下りされて後の状態です。そしてそれがどのような形で受注を強引にとっていかれておるかも私は調べております。あるいは元次長の一人は、防衛庁関係では、ずっと退職以来無職ということになっておるが、無職で食っていけるわけはないのです。実際は横浜倉庫の嘱託をされておる。つまりやみの給与をもらっておるわけです。それから一部の人は業者から家を建ててもらっておる。私は名前を言いません。  しかも、私の調べたところでは、いわゆる関係のある企業への天下り禁止の条項がある。役員になる場合は二年間の禁止条項がある。だから一応やめてすぐ会社に行くけれども、その条項に触れないように身分は参与とか顧問とか嘱託ということでおって、二年が過ぎると取締役になったり支店長になったりしておる。全くかご抜けですね、禁止規定は。私は、こういう関係について総理はひとつ姿勢をただしてもらいたいと思うのです。どうでしょうか。
  87. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは防衛庁のみならず、その職にあったということが非常に影響力を持つというような企業に再就職するには、二年間というきびしい規定がございます。再就職するとすれば、五十を過ぎておるというような人たちでございますから、この二年間というものは非常に人生においてたいへんなものだとは思いますが、しかし、国民の立場に立って、かつて影響力を持っておった地位の人が地位利用というようなことにならないように、そのような措置がとられておるわけでございます。  いまお示しになりました書類等で、防衛庁からいろいろな会社に再就職しておる者もありますし、建設省からいろいろなところへ行っている人もありますし、それはまた運輸省からもございます、農林省からもございますが、そういうために特別な配慮を行なわれるということは、これは絶対に避けなければならないことでございます。しがていま国費支弁に基づく事業の執行に対しては公開入札制度をとっております。そういう意味で、防衛庁につとめておった人が請負会社その他の機関に就職をしたから、ゆがめられたり不当な契約が行なわれておるということは考えておらないわけでございますが、しかし、お示しのような批判が起こらないように、十分これからも注意をしなければならないことは、そのとおりでございます。  ただ、まあすなおな考えで申し上げますと、これは就職に対して二年間の遊ばなければならないような制限があるわけでありまして、ちょうど再就職のるタートで、人生において大事なときにこの二年間というものが一体いいのかどうか、他にもっといい方法がないのかというようなことも、これは真剣にやはり官公吏というもののことを考える場合、いろいろ検討しておるわけでございますが、なかなかいい方法がないということで現在のような状態になっておるわけでありまして、少なくとも国民各層から指摘されるようなことのないように、政府としても将来とも検討してまいらなければならない重要な問題だ、こう思います。
  88. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、この問題に対する措置が厳格にやられないならば、いずれ具体的に出しますから、そういうところまでしないでいいように、ひとつ総理が、私がこうちょっと例をあげましたね、そういう点についても明確に把握して、注意をしておっていただきたい、このように思います。というのは、これから基地関係たいへんですよ、これは。いわゆる下級職員の人は一生懸命やっておる、上のほうの人がすいすいとこういう状態では、私はいわゆるやる気をなくすと申しますか、まあ基地問題であまりやる気を起こされては困るのですけれども、しかしそれはのけたとしても、一般の問題として、私はこういう点は十分考える必要があると思います。  そこで、以上私はだいぶん長いこといろいろやったのですけれども、結局私が申し上げたいのは、軍備というものは本来相対的なものである。一たん軍備で国を守るという発想に踏み切ったならば、その限界なんというものは本来原理的にもないのです。  二番目に、今度は現実の問題として、違憲の自衛隊を合憲と強弁する憲法の拡大解釈、安保条約の堅持、対米従属下の日米共同作戦体制、抑止論に立つ防衛構想、政産軍癒着体制など、日本安全保障に対する政府・自民党の発想及び施策のもとでは、原理的にはもちろんのこと、現実的政策としても限界などはあり得ない。だから、限界なんかもともとはあなた方つくることはできないのですよ。それを国防会議の議長たる田中総理は、昨年中国から帰ってこられて、アジア情勢緊張緩和の方向に向かっておるにもかかわらず、ニクソンドクトリンに沿う米国の圧力のもとに、あの巨大な四次防というものを強行しなければならない。国民はそれに対して重大な批判を持っておる。はたしてこれだけの巨大な軍事力が必要なのか、こういう情勢緩和への方向に向かっておるこのときにというこの疑問にこたえると申しますか、そういう世論工作としてあなたは安易に、本来つくることのできないはずのものを、あたかも歯どめがあるかのように国民をまあ欺瞞する。全くあのときの状態としては、総選挙対策としてあなた自身が限界明示の指示を防衛庁になさったのです。そして今度予算委員会でこの防衛問題を追及されるや、今度は四次防をさらに上回る、四次防すら国民の批判があるのに、それを上回る五次防の予告を含んだような防衛庁見解なるものを、今度は国会対策という関係からこういう羽目になったのですというようなことで、あなたは軽率にも総理大臣としてそれを追認するような行為をやる。しかもよく聞いてみると、その限界について閣内はまるでばらばらである。閣内の不統一がこれほど示された件はないと私は思うのです。  だからわが党としては、自衛隊は違憲の存在である、そして四次防は絶対承服できない、反対であるという立場から、このように安易に、手続的にも内容の点からいっても無責任きわまる見解は、どんなことがあっても容認することはできません。それを明確にしておきます。  次に私は、沖繩密約と地位協定の変質の問題についてお伺いしてみたいと思うのです。  去年の三月十八日及び二十一日の予算の分科会で、私はこの問題を取り上げた。当時の外務大臣福田さんでありました。そして、議事録を読んでもらうとわかるとおり、四十六年六月九日のパリにおける愛知・ロジャーズ会談があったことを認められました。そして三億二千万ドルのほかに何がしかの金が要求されておるという事実も、吉野さんによって明らかにされました。二月五日の安井質問に対しては、当時の外務大臣である現愛知蔵相が、六千五百万ドルという数字がアメリカ側から出たこともはっきり答弁されました。  この日米のやりとりの内容ですね。たとえばロジャーズ長官は、六千五百万ドルの使途についてリベラルな解釈を期待すると述べられた、愛知外相はそれに対して、できる限りのリベラルな解釈をアシュアする、保証する、そういうやりとりがあったのかどうか。これは安井委員指摘したところでありますが、もう一ぺん聞いておきます。
  89. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 交渉の途上におきましては、いろいろの経過がございました。その一環として、いま御指摘の、いわゆる愛知・ロジャーズ会談の中の六月九日のパリにおける会談のことについて、私が当時東京に対しあるいは在米大使館に対して、事務的な内連絡をしたものがございます。これは、それまでのいろいろの経過、それからその後の経過もあわせて詳しく申し上げませんと真相がはっきりいたしませんけれども、そこのくだりだけに限定して言えば、いまお話しになったような内連絡を私がいたしたことは事実でございます。
  90. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは電信によってやられましたか。
  91. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 パリからの連絡は電信によってやりましたが、ただいまもお断わりいたしますように、内容に入りますと、六十五というものは、話にはその前に出たわけでございますけれども、これはP3の移転等が、そのときから見れば将来の問題になりましたから、返還後行なわれる場合においては、日米安保協議委員会を通じて日米間が話し合いをし、さらに、これは日本当局としては、財政上の措置をしなければならぬものでございます。そういう点はそのときにはすでに明確になっておりましたことで、この六十五の使途というふうにその電信等にはあったかと思いますけれども、これは例の、前にこちらの積算として一応つくったもの、こういう問題については、将来安保協議委員会等においてできるだけリベラルな取り扱いをしてもらいたい、これをアメリカとしては期待するという要請に対しまして、こちらとしては、できる限りそういうふうに取り扱うということについて、私として、自分のできる限りの努力はいたしましょう、こういう意味で、アシュアということばを使ったわけでございます。  なお、御参考までにお話し申し上げますが、その前等の交渉におきましては、なかなか日本のほうもたいへんでしょう、これだけ基地の縮小、整理統合でございますか、返還措置等についてこうやって話し合いをしておられるが、予算の措置なども、将来自分のほうの要請に対して、これを相談されるときに、大蔵省当局等との折衝などにも外務大臣としては御苦労のことでしょうと、そういうやりとりなどもありますような環境で行なわれた会談でございますし、また、いま御指摘の文書等は、日米合意した議事録等では全然ございませんで、日本側の内部連絡でございますから、字句などにつきましてもきわめて粗雑な表現が使われておるということも、あわせて御了解いただきたいと思います。
  92. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いずれにしても、包括的な予約をなさっていらっしゃるわけですね。それをわれわれは密約といっておるのですけれども——ちょっと待って。あなたは、さっきもそうですが、私が発言中に言っちゃいけませんよ。あとで言いなさいよ。解釈ということばがある。そしてこの解釈は明らかに地位協定の解釈をさしておる。文字どおり厳格に解釈すれば、少なくとも岩国、三沢の改修、新築については、地位協定日本が負担することはないはずである。普天間もそうですよ、厳格にいえば。しかしそれを、その解釈を自由にすることをあなたは約束した。ということは、拡大解釈をするということです。現に、安井質問に対して地位協定二十四条の二項を持ち出されておる。過去の答弁を見ましても、これは江崎元長官もおられますけれども、基地の撤去あるいはその移転、それとそのための施設、 つまりリロケーションというんですか、これも大体おかしいんですよ、本来は。しかし、それは慣習上あなたたちはやってきたようです、こっちが要求するんだからやむを得ないと。しかし、米軍がかってに建てたものを、古くなったから改修するとかあるいは新しく新築するとかいうようなことは、米軍の負担でやるというのがいままでの政府の答弁なんです、リロケーションの問題は別として。これは地位協定の、何といいますか、返還と提供のコンビネーションとしてのリロケーションを考えてみても、本来地位協定の二条三項は、要らなくなったら米軍基地日本に返す、そうなっておるんですね。それに対して、金を払わなくては返せないということになるんですよ。本来、要らなくなったら当然日本に返されるべきものなんですね。それが二条三項の条文ですよ。結局、基地を返してもらおうと思えば金で買うという結果にしかならないんですよ、リロケーションを認めるということは。ましてや、新築なんというのは二十四条の二項から出てこない。これは何回もわれわれは過去の国会審議の中で確認したんですよ。それを現にあなた方は、との密約に基づいて文字どおり拡大解釈するという約束を果たされておる。だから、この問題は非常に重要であると思うのですよ。  つまり、まず第一番に地位協定の変質であるという点、それから、こういったことを一たん許せば、今後新築ということで全部日本側が負担しなければならない、こういう道を開く。これは三十五年に地位協定が改定された。やっと二十七年以来この種の日米分担金は廃止されて、その分の日本の負担が減った。ところが、いわゆるニクソンドクトリンに基づいて、それに忠実に米側から要求のある今日段階における日米防衛分担金を、形を変えて復活させることになりますよ、これは。  さらにもう一つ、今度は財政法上問題がある。もし六千五百万ドル、これが日本側の負担になるという予約、密約が事実とするならば、まさに予算の先取りを約束したことになる。したがって、取り扱いいかんによっては財政法上も問題があります。それほどの内容を含む電信文ですから、私はこれを明らかにしてもらいたいと思います。
  93. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 密約ということとリベラルということばの問題でございますが、密約はございませんことはしばしば申し上げているとおりでございます。これは先般安井委員の御質問のときにお答えする機会がございませんでしたが、アメリカ側の最近のスポークスマンの言明でも、日米間にかような密約はございません、返還協定以外にはないということで明らかに否定しております。  それからリベラルということは、その当時の感触からいえば、日米双方の立場を十分理解しながらということであり、それから、当時は地位協定は、これはもう返還になれば当然地位協定がかかることを前提にしておりますけれども、地位協定の中身がどうであるとか、あるいは地域がどういうふうに移転をするのであるとかいうようなことは、その話には、私とロジャーズの話には出ておりません。その点で、予算の先取りであるとか、あるいは地位協定の問題であるとか、こういうことは、私は返還協定の当時責任者ではございましたけれども、安保協議委員会のやり方とか、日本の予算の作成については私は権限を持ちませんから、私としてできる限りのことをいたしますということを請け負うといいますか、私として努力をいたしましょうということを言っておるのであって、これは両国の合意によって、先取りであるとか、あるいは地位協定を変更するというものを絶対に含むものではございません。
  94. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これはすでに今度の予算にかかわりがあるのですね。岩国、三沢の改修費として十億円が計上されております。重要なかかわり合いがあるから、はたして愛知さんがおっしゃっているとおりなのかどうか、この電信文の内容を明らかにしてもらいたい。その明らかにする方法はいろいろあろうと思いますから、これを要求します。
  95. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 そのいま御質疑の点については、私がただいま明確に申し上げたとおりでございますことを念のため……(「明確じゃない」と呼ぶ者あり)いいえ、その限りにおいて明確でございます。
  96. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなた方は前科があるのですよ。かつてうそを言った。だから出しなさい。だめですよ。
  97. 大平正芳

    大平国務大臣 ものごとの筋道を申し上げますと、もう楢崎委員も重々御承知のことと思いますが、地位協定、これは前の旧安保行政協定が国会にかかっていなかったのでいろいろ論議を呼んだわけでございますが、これは国会にかけた日米間の取りきめで権威のあるものでございまして、私どもといたしましては、この地位協定を厳正、適切に運用していく責任があるわけでございます。  したがって、いま問題になっておりまする今度の基地の整理、縮小にからめまして、私どもといたしましては、この地位協定を厳正に適用していくという態度で終始いたしておるわけでございます。問題は、この基地の整理、縮小に伴いまして、どのような金がいまから予想されるであろうかというお話し合いが、当時日米間において行なわれたわけでございますけれども、それとてもまだ整理縮小計画自体が固まっていない段階の話でございまして、過程においていろいろの数字が出たというようなことは、愛知大臣からもお話があったとおりでございまして、問題は、あなたが御指摘になりました地位協定を厳正に適用しているかどうかという判断が、私どもにとって一番重要な課題だと思うわけでございます。  その点につきましては、この間の安井委員の御質疑におきましても、なるほど前例のない改築なんというものを入れることは、拡大解釈じゃないかという御質疑がございましたが、これは仰せのとおりだ、こういう前例はない。しかしながら、地位協定を読みますと、私どもは安保条約の継続期間中基地を提供する責任があります。提供するということは、使い得る状態において提供するということが当然のことだと思うわけでございまして、この旧海軍時代からの古い施設が物理的に老朽してしまったという場合に、これを修改築するということは、当然この地位協定の中に認められてしかるべきものであるとわれわれは解釈いたしておるわけでございまして、それが拡張解釈であるというのがあなたのお説ではございますが、政府見解としては、そうでないと申し上げておるわけでございまして、いま御指摘の問題につきましては、過程においていろいろな話があったということは、事情をお聞き取りいただいた経過があるようでございますけれども、問題の本質はその一点にかかってくるのではないかと私は思います。
  98. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いたずらにそういう説明をいま私は求めておるのじゃない。あなたの説明あるいは愛知蔵相の説明がほんとうに信用できるのかどうか、これはこう言っては失礼ですけれども……。とにかくその電信文を出してください。電信文はあるとおっしゃったのですから、電信文を出してください。その上でわれわれは判断します。(「あるものなら出しなさいよ」「質疑を続けろ」と呼び、その他発言する者あり)
  99. 大平正芳

    大平国務大臣 いま提出の御要請がございました資料につきましては、政府部内で一ぺん相談をさせていただきたいと思います。
  100. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それじゃ、それが出てくるまで私は質問をこのまま待ちます。(「休憩休憩」「質疑を続けろ」と呼び、その他発言する者あり)
  101. 大平正芳

    大平国務大臣 楢崎委員の前段の御質問の基地問題のところで、自衛隊と米軍と合わせた基地の面積が十五億平米になっておる、米軍の当初の基地は十三億平米でなかったか、ふえておるじゃないかという御指摘でございましたが、この十五億平米の中には沖繩基地を入れての計算になっておりますので、それから沖繩基地を引いたものと十三億平米とを御比較いただかないと正確ではないと思いますので、念のためにその点を申し上げておきます。
  102. 根本龍太郎

    ○根本委員長 この際、十二時半再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時四十五分休憩      ————◇—————    午後零時五十六分開議
  103. 根本龍太郎

    ○根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、外務大臣から発言を求められております。これを許します。大平外務大臣
  104. 大平正芳

    大平国務大臣 休憩前に御要求のありました電文は、昭和四十六年六月九日、在仏大使発外務大臣あて電信第八七七号にかかるものと承知します。  この電文全体につきましては、国の重大な利益をおもんぱかりまして、政府といたしましては、秘密扱いにいたしておるわけでございます。しかしながら、御指摘の部分につきましては、すでに本委員会等の論議を通じまして、その内容がほぼ明瞭になってまいりましたので、その部分につきまして電文を読み上げたいと思います。  この電文のパラグラフ二でございます。  二、次に、ロ長官より、六五の使途につき日本政府のリベラルな解釈を期待するとの発言があり、これに対し本大臣より、できる限りのリベラルな解釈をアシュアする旨述べた。  以上でございます。
  105. 根本龍太郎

    ○根本委員長 楢崎君の残余の質疑を許します。楢崎君。
  106. 楢崎弥之助

    楢崎委員 第二項の内容が明確になったわけです。  そこで、この「リベラルな解釈」というのは、つまり地位協定の二十四条に関する解釈であるとわれわれは解せざるを得ませんが、どうですか。
  107. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりと思います。
  108. 楢崎弥之助

    楢崎委員 したがって、この四十六年六月九日の時点で、日米の間にこういう約束をされたわけですね、解釈について。そしてわれわれが、これは密約であるというのは、実は二項の次の三項に出てくる部分があるから密約だとわれわれは言うわけです。つまり、これは外に出ないでしょうねという、そのやりとりがあっておるのですね、出たら困るから。議会対策もこれありというようなことがその三項の中にあるはずであります。だから、われわれはこれを密約だと言っておるのであります。  そこでこの件は、沖繩国会のときに、実はこういうことになっておるのですと、どうしてあのとき明確にされなかったのですか。これをお伺いしておきます。
  109. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 沖繩返還交渉の過程におきまして、財務関係を含め種々のむずかしい折衝が重ねられたわけでございますけれども、ただいま御議論になっておりますいわゆる六十五の使途ということにつきましては、昨年の春、政府当局からすでにこの国会の場におきまして御答弁申し上げておりますように、交渉の過程におきましてそういう数字が米側の見積もりとして出てきたことはある、こういうふうに申し上げておりますが、それがまさに交渉の実態でございます。  ただいま二項に続きまして次の問題を御提起でございますけれども、請求権の問題を御念頭に置いての御発言と考えますけれども、請求権の問題につきましても、沖繩返還協定四条の規定で請求権のことを処理いたしておりまして、これ以上の密約は何もございません。
  110. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そんなことは私は聞いていないのですよ。つまり、われわれが密約と言うのは三項があるから言っているんだ。それでいいんです。  そこで、これはまさにこの時点のやりとりが、今日現実となって拘束をする形であらわれてきておるのですね。五日の安井質問の中でも明らかにされましたけれども、公明党の中川委員の質問に答えて、当時福田大臣は、「六千五百万ドルぐらいの金が整理縮小というようなことでかかりましょうかというようなことを軽く言った時期があります。」これは軽くないんですね。まさに重い拘束力としてのしかかってきておる。だから十億という金、さらに普天間に那覇のP3を移すということで四十七年度の予算に計上された三十八億、そしてこの六千五百万ドルは五年間で払うということになっておる。そうすると大体二百億円ですか、五年間で割ると年間四十億ないし五十億です。ちょうどぴたり合うじゃないですか。まさにこれは拘束しておる約束だ、このように言わざるを得ないのですね。その点はどうですか。
  111. 大平正芳

    大平国務大臣 沖繩における基地の整理計画というものは、これから日米間で協議しながら進めてまいるわけでございます。その協議がととのい、同意を得たものから支出いたしてまいるわけでございまして、その場合は、適正に地位協定の示すところに従いまして処理してまいるつもりでございます。  六千五百万ドルになるのかならないのかということでございますけれども、私どもはこれから始めてまいるわけでございまして、すでに当時考えておりました基地の整理計画とは、また日本側の要求によりましてベースを変えたところもあるわけでございまして、現実に日米間で合意を見たところから順次進めてまいるわけでございます。六千五百万ドルというものが拘束力を持っておるというようには、私は考えておりません。
  112. 楢崎弥之助

    楢崎委員 実際にこの約束があるから、突如として二十三日の安保協議委員会合意事項として十億円が出てきたのですね、岩国、三沢の改修費が。これは基地を移転してくださいというその交換として出てきている問題じゃないんですよ。嘉手納の改修の場合は、那覇のP3を嘉手納に移すということでそういう説明ができるかもしれないが、岩国、三沢は全然関係ないんです。  そこで、五日に安井委員も要求をなさいました。私もここであらためて要求をしたいんですが、岩国、三沢の改修費十億円の積算基礎、それから内容、予算計上の根拠を明らかにしてください。
  113. 高松敬治

    ○高松政府委員 岩国、三沢につきましての予算要求額の内訳でございますが、三沢につきましては三億四千五百万、隊舎十棟分、それから岩国につきましては六億五千五百万、これは隊舎三棟分でございます。以上合わせまして十億でございます。
  114. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この隊舎はどういう隊舎ですか。米軍が建てた隊舎なんですか、それとも提供する時点で日本側の施設であったものの隊舎ですか。
  115. 高松敬治

    ○高松政府委員 三沢につきましては既存の建物の改修、改造が大体おもになると思います。それから岩国につきましては、老朽した建物の改築ということになります。
  116. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは私ども何回も聞いているんですよ。それは米軍が建てた建物が老朽したから改修するのですか、それとも、たとえば旧軍隊のものであった、それを現存の施設として提供をして、それが老朽したから改修するのですか、どっちですか。
  117. 高松敬治

    ○高松政府委員 岩国につきましては、現在あります日本側が提供している建物が非常に老朽している。昭和十五年−十七年ぐらいに建ったものが非常に多いわけでございます。そういうものについての改修、改築ということを考えておるわけでございます。
  118. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは非常に重大なことです。地位協定ではたしてその改修が日本側負担として認められるかどうか、具体的にこれは見る必要がある。いままでの政府の答弁では、私の記憶では既設の軍の建物で、老朽化したからという説明でした。その軍は、旧日本軍なのか米軍なのかはっきりしなかった。これは明確にする必要があると私は思います。
  119. 高松敬治

    ○高松政府委員 岩国に現在国有の建物として提供しておるものは二百四十むねございます。そのうち約六割が非常に老朽化している。この予算は、この施設の改築のための予算でございます。
  120. 楢崎弥之助

    楢崎委員 先ほども申し上げましたとおり、これは見る必要がある。米軍が建てたものがあるはずである。そして、それはいままではアシュアランスがなかったから、米軍の負担で建てていた。それの改修が、そのアシュアランスがあるから今度は日本側が負担してもらう、こうなってきたとわれわれは思います。それを明らかにするためには、まず見る必要がある。これが一つ。  それから、これは一つの頭でしょう。総合計画の中の頭金でしょう。総合計画の規模はどのくらいになるのですか。
  121. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 岩国並びに三沢の改築、修築あるいは追加の施設の提供、これにつきましては、米側との折衝の過程におきましていろいろな話し合いが持たれたわけでございますけれども、金額的には隊舎、格納庫あるいは付帯施設、そういうものを含めまして、岩国につきましてはおおよそ十四、五億円、三沢につきましては約十億円弱、こういう数字が出されまして、それをもとに今回政府といたしまして、三沢、岩国両方につきまして約十億円の予算をお願いしているわけでございます。
  122. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは先ほど申し上げたとおり、地位協定日本側の負担になるかどうかの、つまり国民の負担の問題ですから、ひとつ具体的に坪数等も含めて明確な積算の基礎を示す必要がある、このように思います。その点はできますか。
  123. 高松敬治

    ○高松政府委員 具体的な、日米間でどこの位置にどの建物をどうするというこまかい調整はまだできておりません。これからいろいろやってまいります。  ただ、予算の規模といたしましては、先ほど申し上げましたように、三沢につきましては十むね、五千百二十九平米、それから岩国につきましては三むね、七千七百九十二平米というものを本年度つくる、こういうことで要求をいたしている次第でございます。
  124. 楢崎弥之助

    楢崎委員 お聞きのとおりのあいまいな基礎で、何で審議できますか。つかみ金じゃないですか。何を根拠にこの予算の審議ができますか。まだわかっておりません、だめですよ、それじゃ。明確にしてください。それか、この分は削除するか。
  125. 相澤英之

    ○相澤政府委員 三沢の飛行場と岩国の飛行場につきまして、防衛施設庁から要求のありました金額について査定をいたしまして、十億円の予算を計上したわけでございますが、その予算の内訳は、ただいま施設庁長官が答弁いたしましたとおり、三沢につきましては五千百二十九平米の隊舎の改築でございまして、この単価は六万五千三百四円ということでございます。これは八万一千六百三十円という査定単価につきまして、一部現在の資材、隊舎の材料を使用するということで、その八掛けで六万五千三百四円という単価を採用いたしております。その改修費と設計管理費を含めまして約三億四千五百万円になっております。  それから岩国の飛行場につきましては、七千七百九十二平米の隊舎の新築をすることにいたしておりまして、この単価は八万一千六百三十円でございます。設計管理料を含めまして六億五千五百万円ということで予算を見積もっております。
  126. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは防衛庁の出した資料でということで、そうでしょう。ところで防衛施設庁のほうは、さっきお話しされたとおり全然あいまいですね。あれじゃだめですよ。もう少しきちっとしたものを出してください。施設庁長官が自分でおっしゃったのですから、きちっとなさっていないということは……。
  127. 高松敬治

    ○高松政府委員 この話は前からいろいろ交渉があったようでございますが、だんだん具体化してまいったのが、具体的に話の内容が出てまいりました時期が一月の初めでございます。一月の二十三日の安保協議委員会の前に、一月の六日だったと思いますけれども、そのころになりまして話がかなり具体化してきました。本年度若干の工事をやるというふうなことがほぼ明らかになってまいりました。したがいまして、ちょうど予算の査定の時期にもなってまいりました。たいへん具体的に、細目をきめて、きちっとした予算の要求にはならなかったわけでございますけれども、そういう時日の関係もございまして、一応こういう、ただいま御説明申し上げましたようなことで予算上の積算をやって、それで要求したわけでございます。  これには、先般大蔵大臣からも御説明がございましたが、私どものほうの仕事については、また支出負担行為実施計画の承認というのがございまして、そうして細目が決定され、工事が実施されていく、こういうことに相なるわけでございます。
  128. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いま聞きましても、経過を正直に言われたわけです。私もその間の事情はわかります。急にきまったことですから、だから設計も何もない中で、とりあえずということですよね。だからそういう予算を、われわれはその適正さにつ、いて審議するわけにはいかないのですよ。だから、もう少し明確な積算基礎が出されるまで、私はこの点の質問について保留したいと思います。委員長のお取り計らいをお願いいたします。
  129. 根本龍太郎

    ○根本委員長 それでは、いまの問題については一応保留にしていただきまして、残り時間をどうぞやってください。
  130. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いいですか、それで。この問題は別に時間をくれますね。
  131. 根本龍太郎

    ○根本委員長 いや、持ち時間内でやっていただきます。
  132. 楢崎弥之助

    楢崎委員 保留した分の質問時間がないじゃないですか。
  133. 根本龍太郎

    ○根本委員長 わかりました。楢崎君に申し上げます。あと八分残っております。これを保留の質問の時間に回すことにいたします。  楢崎君の質疑は、保留分を除いて終了いたしました。  次に、田中武夫君。
  134. 田中武夫

    田中(武)委員 私はきょうは、財政投融資計画の国会承認と公害を中心に質問するつもりですが、その前に、もう総理、大蔵大臣もごらんになったろうと思いますが、本日の各紙の朝刊は、一面トップで大きくドル不安、通貨危機を伝えております。そこで、この問題について、緊急質問的に二、三の点だけをまずお伺いいたしたいと存じます。  先日、小林進委員の質問に対して、大蔵大臣は、しばらくは静観といったような意味の御答弁があったと思います。しかし、このような事態になってもなお手をこまねいて静観をしておられるつもりなのかどうなのか。また総理も、それをお認めになってそれでいいとお考えになるのか、まず総理、大蔵大臣、御所見を承ります。
  135. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず、事実関係を一応御説明いたします。  ヨーロッパ市場の状況でございますが、詳しく報道されておりますように、ドイツにおきましては相当な……(田中(武)委員「新聞に出たことはわかっておるんだ」と呼ぶ)はい。そしてドイツ政府としては、現行相場を維持する、市場の閉鎖もしないということで、昨晩というか今暁、駐独大使を通じまして、ドイツ側の見解も当方に伝達がございました。そしてこの状況で、ドイツとしてもその態度を続けていきたい。日本側といたしましてもそれを承知をいたしまして、状況を、さらに推移をながめておるところでございます。
  136. 田中武夫

    田中(武)委員 推移をながめておる、こういうことなんですが、それでいいんですか。こういう事態になった根本的な原因は一体どこにあるのか。またこの通貨旋風は円に対して直撃のおそれがあると思うのですが、そういう点についてもまだしばらくながめておる、そういう態度なんですか。一昨年の円の切り上げのときには、きわめて不手ぎわであった、これははっきり言えます。そうでないというなら指摘します。当時いろいろなことを私、申しました。不手ぎわであった、銀行や商社だけをもうけさした、そういう点はいままで何回も繰り返されておるわけですが、その原因はどうなのか、根本原因はどこにあるのか。この前の不手ぎわを再び繰り返さないような適切な対策、これが必要だと思うのですが、いかがですか。
  137. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ドイツに比較いたしまして、日本側としては為替管理が非常に行き届いておりますから、投機的な短期資金の流入ということはさしておそれずによろしいのではないか。今日の東京市場の状況も、比較的平静のようでございますので、秩序のある市場活動が続いていくことを期待いたしておる状況でございます。
  138. 田中武夫

    田中(武)委員 愛知さんが腹の中か頭の中か知らぬが、期待しておるだけで期待どおりにいくものじゃないと思うのです。  短期資金の話が出ましたが、たしか経済計画によれば、四十六年度の短期資金が三十九億ドル、今日短期資金は八十億ドルにも達したといわれておりますが、これがまだどんどんふえる、あるいはこれによって買いささえをやる、調整をする、そういうお考えなんですか、どうなんですか。
  139. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ドイツの例にも見られますように、スミソニアン体制というものを秩序をもって維持したいというのが列国の見方でございますし、現状におきまして、日本としてもそういう態度は続けていくべきである、こういうふうに考えておるわけでございます。なおしかし、市場の状況等については十分注意をして、推移をながめてまいりたいと思います。
  140. 田中武夫

    田中(武)委員 今後アメリカはもちろんのこと、ヨーロッパ諸国からも日本に対する、あるいは円に対するといいますか、圧力は一そう強くなると思う。これはいま大蔵大臣なり総理が、それは円を切り上げますとかなんとか言えぬし、また言うべきでもない。また、あまり手のうちを見せたくないという気持ちもわからぬことはない。しかし、ただ静観、静観じゃ、これは無策になるわけなんです。それほど静観だとか事態を見詰めておるというだけでいいんですか。ほんとにそれでいいんですか。どうなんです。
  141. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 各界の広い意味の協力を得まして、東京市場はただいまのところ秩序ある状況である、かように判断をいたしておりまして、この秩序ある機能が続くことは確信をもつて見守っておる次第でございます。
  142. 田中武夫

    田中(武)委員 一昨年の場合に、窓口の受付時間までも延ばして、いわゆるいまあなたが言った各界ということであろうと思うが、銀行、商社等をいわば救済というか、もうけさしたでしょう。一昨年の議論を私は繰り返したくないのですが、そういうことをまたやるつもりなのか、やらないのか。これは円の切り上げとかいうことでなくて、何らかの方法で銀行なりあるいは商社、これに期待をしておるというが、むしろ銀行なり商社は、政府が何とかやってくれてわれわれが損をしないということで、あるいはあなたの言っておる期待にいまのところ沿うておるかもしれぬと思う。  そこで総理、たしか本会議の代表質問における御答弁で、再び円を切り上げるようなことがあれば、責任をとりますといった意味の御答弁をしておられるように記憶しておりますが、議事録を確認した上でないと言えるかどうかわかりませんが、たしかそういう御答弁をしておられます。その責任とは一体どういうことなのか。どういうことを言っておるのか。そういう発言をしておられますよ。
  143. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは本会議ではなく、参議院の予算委員会だったと思いますが、円切り上げをしないかするか、しないように最善の努力をいたします。その理由は何か。それは、日本はいま第一回の切り上げも、二年、三年たたなければその効果をあらわせないということでございまして、まだ第一回の切り上げ後時間もたっておりません。その効果もあらわれておりません。しかも、いまいろいろなことを言われますが、中小企業や零細企業を持つ日本の経済の状態考えますと、円の再切り上げに耐えられない部面が多いので、切り上げ回避のために全力を尽くします。そう言っておって、なおその上に切り上げたらどうしますかということでありますので、どういう責任を感ずるか、相当な責任があると思います、こう答えておるわけでございます。そして、その後の問題としては、この相当の責任というものはどういうものかということに対しては、円切り上げを回避するために全力を傾けるという熱意を示したものでございます、こう述べておるわけでございます。
  144. 田中武夫

    田中(武)委員 参議院の予算委員会といえば去年の秋ですね。それから今日まで日もたち、だんだんと事態は悪くなったというのか、切迫してきたと思うのです。この時点においてどうです、それでは。私は切り上げとか、切り上げたらどうだとかいう議論ではなくて、もしそのような事態が起きたようなときに、やらねばならぬというアメリカあるいはその他の円に対する圧力、日本に対する圧力に屈するというか、回避できなかったときの責任はどうお考えになりますか。
  145. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 そういうことにならないように全力を傾けておるわけでございます。なったらどうするかということでございますが、これはもうそういうことにならないように最善の努力をするということで、ひとつきょうは御理解をいただきたい。なったときは、ということはいま全然考えておらないのであって、現平価を維持するということを前提に、諸般の政策を進めておるわけであります。
  146. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、具体的に、たとえば参議院でもあるいはここにおられる辻原委員の代表質問の中でも、あなたは具体的に触れておられますよ。と同時に、静観だ、こう言っておるんでしょう。しばらくは見詰めておるということですね。その間には、どうです、矛盾はないですか。
  147. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 大蔵大臣述べておりますのは、あなたの質問が、いまヨーロッパでドル売りが盛んであるというような状態に対して日本はどう考えるかという御質問に対しては、まあ率直に申し上げると、ベトナム戦争も終息に向かっておりますので、ドルは強くなるだろうと思っておるにもかかわらず、ヨーロッパ市場が混乱をしておるという事実でございます。これはあなたもいま御指摘の中に触れられた、ユーロダラーの問題その他があるわけでございます。しかし、それに対しては、西ドイツ政府は為替管理政策を強化することによって固定相場は維持してまいる、変動相場制などには移らない、こういうことを明言しておるわけでございます。日本はいままででも、去年の例もございますので、ヨーロッパ市場の動きも十分関心を持ちながら、しかし、日本においては適切な為替管理の諸方策がとられておりますので、ヨーロッパの事情等の推移を見てまいりたい、こうお答えをしておられるわけでございます。ですから、円平価の切り上げ問題とは区別をして御質問に答えておるわけでございますので、その間は御理解をいただきたい。
  148. 田中武夫

    田中(武)委員 通貨対策に対する諸般の施策ということと、いま直ちにこういった状態に対してどうするかということを、それはこちらも区別して聞いておるはずなんです。  そこで、これは緊急質問的にやっておりますので、これだけに時間をとるわけにはまいりませんので、ただ一言、この問題の最後に、じゃいいですね、平静を保っておるので静観をしばらく続けるということで、もしもたいへんな事態が起きたときには責任をとりますね、もしもあったときには。あなたの見通しが誤ったときにはどうします。
  149. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど、各方面の協力を得て東京市場は秩序ある機能が続くようにと申し上げましたことは、田中さんのお考えになっているような意味を込めて各方面の協力を得て、こういう意味でございまして、かりにも一部の者がこれによって利得をするとかどうとか、かりそめにもそういう批判の出ないように、十分に注意をして対しておるということを含めて申し上げたわけでございます。同時に、秩序ある市場のファンクションを続けていきたいということは、現平価によりまして現在の政策を変えるというようなことはしないということが前提になっておることは、もちろんでございます。
  150. 田中武夫

    田中(武)委員 それではこの件につきましては、この程度できょうはおいておきましょう。そして、はたして総理、大蔵大臣の見通しの甘さがあったのかなかったのか、そういう事態に、二、三日すればまたわかると思いますから、同僚委員から続けての質問があろうと思います。  そこで、今度政府としては画期的に踏み切った、こういうような言い方をしておりますが、何回かこの委員会で私も取り上げ、野党からもいろいろと角度を変えて提案をしてきたいわゆる財政投融資計画、ことに資金運用部資金その他について国会の承認を求むるという方向にまあ動いてきた。政府あるいは大蔵省としては、これに対して一歩も二歩も前進したように言っておられますが、私もそう受け取りたいのですが、残念ながらそうは受け取れないのです。  と申しますのは、まず第一には、われわれがいままでこれを要求してきた趣旨というものを、どういう観点に立ってこれを要求しているかということは順に申し上げますけれども、その前に、これは総理に聞きたいのですが、総理が無理だったら大蔵大臣——総括質問に対してはできるだけ総理に御答弁願いたいのですよ。大蔵大臣等の、というては失礼ですが、答弁をいただくならば、一般質問なり当該委員会でやれるのですから。そういう意味で、予算総則の法的性格というのは一体どんなものです。
  151. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 相当法制的な、技術的な問題でもございますが、予算総則というものは、たとえば財政法二十二条等によりまして総則にきめるべき事項を規定されたものである、こういうふうに理解していいのではないかと思います。  それから、今回提案しておりますこの考え方は、ただいまも話がございましたが、特に田中委員から年来当委員会におきましても御熱心な御主張がありまして、政府側としてもこれに敬意を表しながら、その御趣旨を何とか生かしたいと思いまして作案をいたしたのでございます。その点も付言いたしておきたいと思います。
  152. 田中武夫

    田中(武)委員 予算総則というものは、財政法二十二条に規定があります。そして一号から六号までいろいろ書いてあります。これは一口にいえば、一会計年度に限り財政の処理事項あるいは予算の執行に関する事項を定めるというのが予算総則だと思うのです。それが何年かにわたる、あるいは予算総則で毎年掲げてくることによってそれが一般化するような場合は、これは当然財政法その他の法律に入れるべきだと思うのです。まず今度の問題とは切り離して、予算総則の本質という上に立ったらそうじゃないですか。いかがですか。
  153. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 実は、これは多くを申し上げませんけれども、われわれ共通の目的を達するためにいかなる方法が具現できるかということを考えまして、そして、この財政法第二十二条の第六号の「予算の執行に関し必要な事項」ということの中で、特別会計の予算総則に規定し得ることとして、あとで詳しく申し上げますが、目的としておる両資金の運用の予定額を定め込もう、これによって目的を達し得る、また、財政法第二十二条六号もこういうことを予想しておると解して妥当である、こういう見解に立っているわけでございます。
  154. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、先ほど言ったように解釈しておるわけなんです。ところが、必ずしも予算総則なるものがそういった観点で規定せられておるわけではなく、同じようなことを毎年続けることによって、本来ならば法に定めるべき事項を定めておる場合が多いんです。  そこで、一つ具体的にお伺いをいたしたいのですが、この財政投融資、ことに資金運用部資金その他について、私は若干の弾力を持たすことに反対ではございません。これは当然弾力的な運用をすることが必要であることは認めます。しかし、これに関連して出てまいりますところの、まあ措置法と長たらしいから言うておきましょう。措置法を見ても、弾力運用ということに関連した規定はあるわけなんです。ところが、この百分の五十、これは二分の一にひとしいんですが、これは、五年以上にわたる長期の分のうち、本年度支出する分に対して百分の五十までは増額することができるというように読んでいいんですね。
  155. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それでは、主計局長から答弁させます。
  156. 相澤英之

    ○相澤政府委員 五年以上にわたるというのは、貸し付け、つまり運用の期間でございまして、その金額につきまして百分の五十以内の弾力条項が認められているわけでありますから、ことしについて云々というので、そういう観点からいいますと、ことし運用する金額についてそういう条項があるということは当然でございます。
  157. 田中武夫

    田中(武)委員 そうですね。予算総則の性格からいって、百分の五十までの増額ということは、本年の予算の運営について二分の一まで、半分までは増額することができる。それならば来年は百分の七十、八十、ついには百分の三百ということもあり得るんですね。いかがです。
  158. 相澤英之

    ○相澤政府委員 論理的には、これは予算総則のきめ方でございますから、そういうことはあり得ると思いますが、しかし、この百分の五十というのは、従来、政府保証債あるいは特別会計等の借り入れにつきまして設けておるところの弾力、百分の五十というものに準じて今回設けましたものでありまして、目下のところ、これを大幅に改定するというようなことは考えておりません。
  159. 田中武夫

    田中(武)委員 そのとき、そのときに予算総則で出してくるから、それは予算総則として国会の承認を得るんだからいいじゃないかとこちらでも言っているようです。しかし私は、百分の五百というようなところまでいくかどうか知らぬが、そういうような上限は一応法律で規定すべきだと思うのですよ。私は、何も硬直財政を言っているのではない。したがって、弾力条項についてある程度の幅を持たすことは私も認めます。しかし、青天井という法律のきめ方はないでしょう。どうです。
  160. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはただいまも答弁がありましたように、政府保証の限度額とか公庫の借り入れ金の限度額というものをきめるのでございますから、そして私は、先ほど申しましたようにお互いに目的とすることを達成するためには、やはり総則できめるのが一番よろしい、こういう考え方できめることにして、かつ、性質上弾力条項がどうしても必要であるということから、五〇%増を認めることにいたしましたので、その上限が野放しになるというようなことはないように考えていくべきものであると思います。
  161. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたのいまの説明は一号から五号までで、六号の説明じゃないですよ。限度額ということをはっきり書いてあるのは、一号から五号までのやつには書いてあります。実は六号がこれがくせ者なんです。法律というのはいつもそういうように、その他何とかといったような、運用がしやすいようにきめておる。これは権力者のための法律をつくろうという立場に立つからそうなるのです。もう何回も私はここで申し上げましたが——何か法制局長官言いたげな顔をしているが、聞こうか。やはり国民の金であるという点、ことに憲法の財政民主主義、八十三条ですか、たしかそうだったと思いますが、法定主義、議会主義、そういう点からいくならば、あまり法律でしり抜けをつくること、これは望ましい態度ではない。また、最近ことにひどうなってきておるのは、いままでの国会承認事項をあるいは法律事項をできるだけ政令に移す、国会の権限を行政府に持っていこうとする動きが強過ぎる。そういう意味から、逆に私は強く法律で縛るべきだという態度をとっておるんですよ。もっと言うならば、田中内閣を信用できないからです。むずかしい顔をしてもそうなんだよ。だから、法律で上限をきめるべきである。それが二倍まではいいのか、あるいは二分の一まではいいのかは論議になりましょう。だが、青天井というきめ方については了承できません。
  162. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いまの御意見は、まず第一は財政法二十二条についてでございますね。二十二条の第六号に基づいて、そして予算総則で運用の総額をきめて、予算総額は国会の議決をいただくわけでございますから、従来に比べまして、両資金につきましては、全体の運用の額というものが予算総則ということにおいて両院の議決をいただく、ことになりますから、官僚的とか反民主主義だとかいうことではなくて、逆に田中先生年来の御主張にかなうように、われわれとしてはずいぶん知恵をしぼりましたわけで、法律論については、あるいは法制局長官から説明してもらったほうがよろしいかと思いますが、私のこの意図、今回提案いたしました政策的の意図は、ここにおいて国会の議決を予算総則においていただくことがよろしい。  そして、弾力条項を五〇%つけることがよろしいか悪いかということは、これは御議論があるところであるとすれば、十分それらについてまた御論議をいただいてけっこうでございますが、われわれの意図するところは——ただいまの御説はちょっと私どもとしては遺憾なんでありまして、目的とすることは、先ほど来申しておりますように、共通の目的のもとにくふうしたつもりでございます。
  163. 田中武夫

    田中(武)委員 遺憾であるということは、大蔵省を縛るからだよ。できるだけ国会の干渉を受けたくない、そうだよ。やはり上限というようなものは青天井にするものじゃないですよ、あなた。それは一号から五号まではこれこれの限度額と書いてあるのだが、六号は意味が違うのですよ。しかも今度法律を出すのでしょう。われわれの主張をいれて、清水の舞台から飛びおりた気持ちでやりましたというのがあなた方の気持ちでしょう。ならばなぜそこまでやらなかったかというのが私の主張なんです。しかし、それは平行線になるだろうと思いますが、ともかく予算総則の中へちょっと一行だけ書くことによって、それが二倍になり三倍にまで弾力的に動かされるのだというようなことは、まさか非常識なことはやらないと思いますが、そのことも法律的にあり得るということだけは指摘しておきます。今後そういうようなことが出たときに、この議事録が残ると思いますから。また、この法案審議は大蔵委員会にかかりますから、そのときにもまたある議論が展開せられるのではないかと思いますので、指摘だけをしておきます。  そこで、われわれが財投計画を国会の議決事項にせよと主張してきたのは、計画全体を一体化したものとして審議さす、こういうようなやり方でなくて、これはまあ二重議決ということを理由にあなた方は逃げるだろうと思うのだが、政府関係予算とか特別会計予算だとかというように出していくのと同じように、財政投融資計画予算書として出すべきではないか、そういう意味で主張してきたわけなんです、われわれの主張してきたのは。しかも、それは究極のところ資金運用部資金にしろあるいは郵便年金、簡易保険等々にしても、結局は国民の金である。しかし、一般会計の歳入と違うというようなことぐらいは私も理解しています。その国民の金を国民のためにどう使うのかをもっとはっきりしろ。そこに前の大蔵大臣の福田さんもおられますけれども、私はずいぶんやりとりしたわけですよ。そのときに、これはたしか四十六年二月二十日に当時の鳩山主計局長も、財投のようなものも広い意味で財政でありますと答えておるわけなんですよ。議事録をここに持っておりますが、そういう上に立ってやった場合に二重議決になると。しかし、これは何なら政府関係機関と一緒にしたってかまわぬと思うのですよ。あとでその点に触れますがね。  こういうように、二重議決だということを理由にこういうようなわかりにくいというか、これをわれわれは要求してきたのではない。したがって、あなた方がおっしゃったからそれに沿いましたというのは、いただきかねるというのがいまの気持ちなんです。せっかくしておるのに何だ、そういう顔をしておるようだが、そういうことなんですね。どうですか、二重議決の点は、なったってかまわぬし、避ける方法はありますよ、技術的に。ないというなら教えてあげますわ。
  164. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは申すまでもなく、一つは、われわれの検討としては二重議決の問題があるわけで、たとえば、産業投資支出については産投特別会計がございますね。これの予算として国会の議決をいただくわけですし……(田中(武)委員「産投はいいのだ」と呼ぶ)それから政府保証による資金調達、これについては一般会計の予算総則で議決をいただくわけでございますから、二重議決の問題が当然生ずるわけでございます。そこで、それを避けるための方法を考えたわけです。  それから第二には、やはり何と申しましても郵便貯金とか簡易保険の資金というものは、一般会計の歳入歳出というような角度で扱うのにはなじめないものであるということは、ただいまの御意見にもございました。そういう点を勘考いたしまして、いわゆる財政制度審議会ですか、これにもわざわざ小部会、小委員会もつくって、法制上あるいは国会法等いろいろの検討も経まして、誠意を尽くして検討いたしまして答申も出ておるわけでございまして、その答申のよいところをちょうだいいたしまして政府原案をつくったわけでございます。
  165. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたとしてはそうだと思う。しかし私はやり方はあると思う。二重議決ということを一つの言いわけの根拠にしてこういうような出し方をしておることは、われわれの年来の主張に沿いましたとは受け取りがたい。このことをまず言っておきます。  これを解決するのは、いわゆる公社、公団、事業団そのものを再検討する必要があるというか、その再検討から進めるべきだと思うのです。そこで、政府関係機関とそれからそうでない財投から受け入れる法人ですね。特別会計ですか、予算総則十四条に五十ばかり書いてあります。その中のいわゆる国会の議決を要するというのと、そうでないのと、総則でいうなら二十一番から先と二十番までと、特別会計は国ですが、それは一体どこが違うのですか。だから、政府関係機関としてこ、こに九から二十まであがっておるでしょう。その法人と二十一から四十九までの法人、本質的にどこが違うのですか。
  166. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは、私もお答えがちょっと的がはずれるかもしれませんが、結局私は公団、事業団というものの性格の論議ではないかと思いますが、もしそうだといたしますならば、公団、事業団というようなものは、設立のときに国会の議決によって設立されるわけでございまして、そして公団や事業団の性格からいたしまして、これは機動的にといいますか、効率的な活動をしてもらわなければならない。そこで、その活動等については主務大臣の監督下において活動させることが適当である、こういうところが他のものとの基本的な相違であって、これがやはりこういう四十幾つかの中に扱い方の相違が出てくる。私は基本的にそう考えておりますが、さらにこまかい御議論でございますれば、またあらためてお答えいたします。
  167. 田中武夫

    田中(武)委員 なるほど特殊法人は全部法律できまっております。だから、かつて法案を国会でいつか審議したじゃないか、こういうことだと思うのですがね。私は、こういう法人の設置法というか、これ自体に検討を加え直す必要があるのじゃないかということを前々から言っておるのですよ。この前にも例をあげました、輸銀と海外経済協力基金、これは双方とも資本金は政府が全額出資です。そして輸銀のほうは、いわゆる予算をもって国会の承認ということになっておる。だが、海外経済協力基金は、一行政官庁の長官である経済企画庁長官、あるいは道路公団については建設大臣といったようなところで承認すればいいということになっておる。それ自体がおかしいのじゃないかということを、ぼくは前にも何回かやったわけなんです。本質的にどこが違うのかといったら、法律がそうなっておるからということは、これは答えにならぬですよ。当然同じようにすべきじゃないかと私は思う。現に、金額はだいぶん違いますが、輸銀には、財政計画中、この産業投資特別会計を除いて四千二百億円というのが出ています、本年度も資金運用部資金から。海外経済協力基金は六百十億円ですね。金額のけたは違うけれども、同じことなんですよ。ところが一方は、予算をもって審議するようになった。一方は、われわれの年来の主張にもかかわらず、前進したといっても、いままでとは変わっていないわけなんですね。そうして、いろいろ見てみますと、予算の説明書あるいは財政法二十八条による云々という、この参考書類にちょっと書いてあるけれども、これを見ただけでは、いわゆる資金運用部資金、国民の金が国民に対してどのように使われておるのかということが一向わからぬ。それをもっとわかるようにしろと、これがわれわれの年来の主張なんです。これでは一向に前進したといえないと思うのです。せっかくの御処置でございますけれどもね。やはり福祉国家だあるいはその予算だと、大きく、ほとんどの先生が言うておられるわけなんですよ。そうすると、これを見た場合に、どれだけ国民のためにその資金が使われておるのかわからないんですよ。  そうなると、財政法二十八条の条文にさかのぼって議論せにゃいかぬのですが、その中の、いわゆる七号だったですかな、主要な法人について云々とある。この主要な法人ということについては、このこともかつて議論いたしました。その結果、いままでよりか若干多い事業団、公団等について出てきております。だが、主要な法人についてはこれこれというこの規定も、私は実は気に入らないんです。国民のために、言うならば、福祉増進のためにどう使う予定かということがもっとわかるような説明をしてもらいたいと思うわけなんですよ。これは二十八条にさかのぼって議論せにゃいかぬのですが、大体、主要な法人云々ということは一体だれがきめるのかといえば、これは財政法で提出してくる大蔵省がきめるんだろう、こういう議論をしたと思うんですよ。被告が刑罰の基準をきめるようなものだ。だから委員長、むしろこの基準、たとえば融資幾ら以上とかいう一つの基準は、国会がきめるべきだと思うんですよ。大蔵省が主要であるとか主要でないとかきめることが一つおかしいんです。前にこの議論をして、そのために若干多く出してきました。それまでの七つか八つであったやつが、まあ十ばかりふえたということは認めます。というて、私は、百何ぼある特殊法人全部について出せとも言わないとしても、主要なる法人というのをどこで線を引くのか、これは必要だと思うのですよ。これは結局答えは理事会で相談してということになろうと思うのですが、むしろ予算委員会自体で線を引くべきだと思うのですよ。委員長、どう思いますか。私の議論は間違っていますか。
  168. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 輸銀とか基金とかのお尋ねもございましたが、これも田中委員の最もお得意とされるところですから、あらためて私からの答弁は必要でないかとは思いますけれども、やはり一口に言えば、輸銀と基金は現在の性格はだいぶ違いますですね。一口に言えば、輸銀は、いわば金融機関の補完作用とでも申しましょうか、それから基金のほうは、公法人として特殊の機能を持って、みずから、たとえば海外の企業の調査とか、開発の推進というようなこともやるわけでございますから、やはりこの議論を離れても、輸銀と基金というものは合体したらいいじゃないかというような別個の議論もございますようなことですから、将来の問題として、その方面もあわせて論議の対象にはなると思いますが、現在の制度下においての輸銀と基金との取り扱いの相違というのは、結局、金融機関としての立場と公法人としての海外経済協力基金の立場というものが、予算書の扱いの上に違うところがあるのは、やはり無理からぬところではないかと思います。  それから、二十八条の御意見については、立法論でございますから、これをいかようにお取り上げになるか、これは国会の問題としてお考えいただきたいと思います。
  169. 田中武夫

    田中(武)委員 委員長、どうですか。
  170. 根本龍太郎

    ○根本委員長 田中君に申し上げますが、いずれ理事会にはかりまして、この取り扱い方を検討します。
  171. 田中武夫

    田中(武)委員 そういうことは、小委員会でも設けるとか何かして、ちゃんとこっちでこれ以上のものは出してこい、こうやるのがほんとうだと思うのです。被告のほうに刑罰の基準をきめさすという、こういう行き方はないですよ。被告ですよ、あなた。わかりやすいから、輸銀と海外経済協力基金とを私は並べて言っておるのです。道路公団にしたってそうですよ。これも全額政府出資なんだ。これは道路ということですから、国民福祉につながると思うのです。そういうことで、これを見たって全然わからないのだな。この予算中にもっとわかりやすいものを出せと言ったり、あるいは形式を変えろと言っても無理だと思いますから言いませんが、少なくとも、一体、資金運用部資金その他について、どれだけが国民の福祉のために使われておるのかというような、まとめた説明書ぐらいは出せませんか。どうですか。
  172. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 実は、若干時間がかかっておりますけれども、財投の質、投資、融資計画等につきましては、目的別にわかりやすい計表はつくりたいと思っておるところでございます。
  173. 田中武夫

    田中(武)委員 とおっしゃっておるのですから、出してくださいよ。いつまでに出ますか。
  174. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 なお、この予算の説明書にも一〇一ページに「使途別分類表は」ございますが、いま御指摘になったのは、これではわかりにくいからもう少し解説的なものをという御注文であると理解してお答えいたしました。
  175. 田中武夫

    田中(武)委員 そのとおりなんです。予算の説明の中にあることを見ております。ただし二行だけでしょう。これじゃわからぬですよ。われわれの長年にわたっての主張というものはこういうことではないということ、これを十分わかってもらって、さらに財投について国会の承認を求めよということについての真意を理解してもらいたい。それが一つ。もう一ぺん、大蔵省なり、何ならあらためて財政制度審議会の会長に来てもらって論議をしてもよろしいが、財政制度審議会にもはかる等、いろいろの方法でもう一度検討してもらいたい。これで事が終わったということではないということが一点。  それから、ことしについては、さしあたり、いまおっしゃったような資料をできるだけ早い機会に、一般質問でやれるような余裕のあるときでないとだめですからね、そういう機会までに出してもらいたい。この二つを申し上げておきますが、どうですか。同時に委員長、それを確認していただきたいと思います。
  176. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 要するに、一つはもう少しわかりやすい説明資料ということで、これは何とかくふういたしまして、なるべくすみやかに……。  それから、将来引き続き検討をせよというお話、これは将来の勉強の課題といたします。
  177. 田中武夫

    田中(武)委員 将来といってもいろいろ解釈のしかたがあるが、引き続き検討してもらいたい。これで事が終わりということではないということだけ申し上げておきます。わかりましたか。委員長のほうもよろしく。
  178. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 しかし、この新しい御提案は、われわれとしても誠意と知恵を傾けてやったことでございますから、すぐすみやかにとおっしゃられても、なかなか政府案としては出ないと思います。
  179. 田中武夫

    田中(武)委員 どうだ、大蔵省顧問にでもするか。そうしたらいい知恵を授けてやるがな。
  180. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私もかねがね、予算委員の一員として長い経過を承知いたしておりますが、予算委員会としても国会の立場で御検討いただいてしかるべき問題ではなかろうか、衆知を集めてやるべき問題だ、こういうふうに思います。
  181. 根本龍太郎

    ○根本委員長 田中君に申し上げますが、先ほど私が申し上げたように、理事会にはかってこの取り扱い方を検討いたします。
  182. 田中武夫

    田中(武)委員 小委員会を設けて閉会中にやれとの意見もあるが、中野さんのときにきめたが、一回もやらなかったのだよ。  それでは、一番最初総理に確認して入りたいと思っておったのですが、この間、ちょっと時間とめてくれますか。
  183. 根本龍太郎

    ○根本委員長 自余の問題について……。
  184. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、自余じゃない。それをまず確認しないといかぬのだ。(「大蔵大臣」と呼ぶ者あり)いや、大蔵大臣とは違うのだ。全般のことなんだ。それじゃ副総理に聞こうかな。  これで、財投の国会承認の事項は不満であるものとして済ますが、いまの委員長並びに大蔵大臣の答弁を了として——了とはしませんが、それを一応聞いたということにして、次に公害の問題に入ります。  そこで、総理でなくちゃいかぬと思うのだが、これは副総理言ってください。私は昨年一年間、公害対策並びに環境保全の委員長をやっていました。いわばそれの締めくくり的な意味においてこれをやりたいと思うわけです。そこで、できるだけ総理の答弁を求めたいんです。  最初に言ったように、失礼ですが、当該大臣の御答弁なら、一般質問、分科会あるいは当該委員会でできるわけなんです。この総括質問が終わると、総理委員会に出すということはなかなかむずかしい。与党の諸君がうんと言わないんだ。だから、ここでは総理のなにを聞きたいんですが、総理にまず私は確認したかったんです。総理に聞いてからじゃないと入れないんだよ——総理、あなたのおらぬときに言うたんだけれども、できるだけ総理の意見を聞きたいんです。でないと、総括の場でやるあれがないわけですよ。  そこで、まず第一に総理に確認をいたしたいんですが、委員会あるいは本会議における国会の決議あるいは法案採決に際してつけるところのいわゆる附帯決議、これらについて総理は、国会の意思をどのように、まあ、尊重いたしますとは言うだろうが、そのつど担当大臣は、御意見ごもっとも、あるいは御意見を体してと言っておるんですが、総理、そのような国会の委員会、本会議の決議、法案採決に際しての附帯決議、これらについてどのように理解しておられるか、まずお伺いします。
  185. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国会の決議、附帯事項等に対しては、原則的にこれを尊重しなければならぬことは言うまでもないことでございます。
  186. 田中武夫

    田中(武)委員 そういう御答弁の上に立って質問を続けていきます。  まず第一に、無過失損害賠償責任法といっても、これはそういう法律でなくて、大気と水質の汚濁防止法を改正したということですが、当時は無過失損害賠償責任について、新しい制度だといわれたわけなんです。そのときに附帯決議をつけております。その附帯決議の上に立って、ひとつ逐次お尋ねしたいんです。  まず総理、公害対策基本法第二条第一項では公害の定義を定めております。第二項におきましては、救済すべき範囲といいますか、いわゆる両方とも、一項も二項も定義なんです。そこには、大気と水以外に土壌汚染とか騒音、振動等々、いわゆる典型七公害をあげております。それに対して、まず重要だというか、だから水と大気に手をかけたんだ、こういうことはわかるんです。しかし、公害対策基本法においては、大気、水と同列に他の公害を現に定めておるわけなんです。区別する法律的根拠はないわけなんです。そこで、あとの公害について、この法律、いわゆる無過失損害賠償という上に立って対象範囲を逐次広げていく、そういう気持ちについてはいかがですか。
  187. 三木武夫

    ○三木国務大臣 田中委員は、公害特別委員長として一年間、これを手がけてこられたわけでありますから、前後の事情を十分に御承知になっておるわけでありますが、無過失の損害賠償保障制度の措置をとれ、それは附則の中にありますが、附帯決議の中にも、いまお話しのような問題があるわけでございます。しかし、その国会の意思を尊重して、この国会に公害による損害賠償保障制度を提案したいということで準備をしておるわけです。これは附則の国会の意思を尊重して……(田中(武)委員「それは趨勢です」と呼ぶ)趨勢でもありますが、また一面において、国会の意思も尊重しておる。ただしかし、その場合に附帯決議の中にある範囲を拡大して、いま御指摘のような振動とか、悪臭とか、騒音とか、いわゆる七つの公害に全部適用せよという御主張でありますが、何ぶんにも損害賠償の保障制度というものは諸外国にも例のない、日本が初めてやるわけであります。この立法、先例もありませんし、非常に困難があるわけでありますので、いろいろな検討しなければならぬ事項があるにかかわらず、水とか大気の汚染とかいうもの以外に、悪臭とか、騒音とか、地盤沈下とか、こういうものにいきなり拡大をするということになりましては、非常に健全な損害賠償制度の発達のために私はならぬと思う。十分な検討を尽くして、将来の方向としては、田中委員の言われるように、拡大の方向だと私は思います。  しかしまず、類例のない画期的な立法をやろうというのですから、一番緊急性があり、また重大性がある水と大気の汚染、これでやはり損害賠償保障制度というものをきちんと軌道に乗せる、その次に、いま言われたような他の公害にも拡大の方向で検討いたすということが、現実的だと思うのでございます。
  188. 田中武夫

    田中(武)委員 大もの長官、副総理としてはいささか……(「いささかもの足りないよ、それは」と呼ぶ者あり)もの足らぬですね。こういう不規則発言におだてられるわけじゃないですが……。これはやはり公害防止基本法という法律の上に立って考えてみる、これが必要であって、さしあたりということで、一応はあの法律の審議に当たり、それが成立するように私も努力しました。しかし、それでもって足れりではありません。現に、空港付近、伊丹もそうですし、あるいは環状七号線ですか、東京においても、いろいろな振動、騒音等で健康を害し、現実の訴訟すらもう起こっておるわけなんです。したがって、これは私は、決断と実行の田中内閣において決断をし、実行すべきものであろうと思うのです。どうですかな、順次ということでなくて。  続けて申します。われわれがこれを主張しておるのは、いわいゆる大気汚染防止法だとか水質汚濁防止法だとかいう単独法のびほう的な改正を望んでおるのでなくて、民法の七百九条の特例措置といいますか、そういう意味において、一般法として取り上げるべき段階がもう来ておると思うのですよ。それについてもっとはっきりとした答弁をしてもらいたい。
  189. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いまお答えしたように、私は否定はしないのですよ。これはやはり方向としては拡大で、ことに生業補償の問題については、これはやはり附帯決議にもありますが、実際いろいろな農漁民の人の、気の毒な実例をたくさんに知っておるわけです。だから、まずこの大気汚染、水質汚濁の損害保障制度を四十八年度に軌道に乗せて、四十九年度は生業に対する補償制度を実施したいという方向で取り組んでみたいと思っておるのです。  そのときに、いま言われたような他の公害についても範囲の拡大、いま騒音なんかというのは確かに問題の一つでありますから、そういうものを拡大の方向で検討をいたします。しかし、次にやはり取り上げてみたいと思うのは、生業補償の問題というのは、これが軌道に乗ったら取り上げてみたいという考えでございます。だから、田中委員考え方も否定はしないのですよ。だけれども、こういう初めての法律ですから、何もかも一ぺんに——因果関係なんかもむずかしいですよ、やはりほかの公害は。そういうことで、そういうことを軌道に乗せてからそういう問題に取り組みたいというわけでありますから、田中委員のお考え、望むとおりで、反対する、方向が違うわけではないわけでございます。
  190. 田中武夫

    田中(武)委員 二項のほうはあとで聞こうと思っておったが、あなたは先ばしって答弁してしまったが、それは対象範囲と救済範囲が、健康の問題だけでなくて、生活環境の上に立って、基本法の二条二項ですかの点について、いわゆる財産権、それも積極的侵害だけでなく、消極的な、すなわち公害なかりせばかくかくあるべきというような点までも救済するような措置が望ましい。そういう意味において申し上げておるわけなんです。  もう一ぺん確認しますが、順次でなしに、一体いつまでに出すのか。少なくとも私は、公害防止基本法の上に立って、法律の上においては区別がないのになぜ区別したのか、聞きたいわけです。それはまず、初めてのことだから順次と、こういうことはわからぬことはないのですが、いつまでということは言わなくとも、もっとはっきりしてください。そうでなかったら、せっかくの基本法の精神に沿ったものとはいえないわけなんです。いかがです。
  191. 三木武夫

    ○三木国務大臣 振動とか、悪臭とか、地盤沈下、これをやるためには、いろいろな点で研究を、実際問題として必要とすると私は思うのです。したがって、いまは一番緊急性のある、また非常に重大な問題を提起しておる大気と水質、これをやる。いつまでという期限をここで切れと言われるが、やらぬためにこうやって言っておるのではないのです。やろうとするにしても、非常にむずかしいでしょう。いま言ったように、大気とかあるいは水質以外は非常にむずかしい検討を要するので、それも拡大していこうという方向で検討するということで、期限を切れということは、やはり調査も研究もしなければならぬものがまだ一ぱいあるので、その点はひとつ御了承を願います。
  192. 田中武夫

    田中(武)委員 現に公害はまき散らされておるわけです。損害は、現に国民が受けつつあるわけです。したがって、一日も早く、いっときも早くそういった法の完備が望ましい。そういう意味において確認いたしますが、引き続き検討ということは、そう長い将来ではない、このように三木さんの良心を尊重し、善意に受け取りますが、いかがです。これは副総理という大もの大臣としても、はっきりと、国民が安心するような答弁をしてください。
  193. 三木武夫

    ○三木国務大臣 損害賠償保障制度というものは、これはあくまでも被害を受ける国民の側に立った立法であります。企業者側に立った立法ではないわけです。したがってこれは、公害に対して、公害対策基本法にきめられておる公害に拡大していく方向で、しかもそれは、研究が済めばできるだけ早く実現をさすということが、この立法の精神だと私は思っております。
  194. 田中武夫

    田中(武)委員 これ以上論争しても、いつまでという期限を言えと言ったって言わないだろうし、言えないだろうし、まあ三木さんの良心というか、あるいはその政治家としての公約というか、ここで言うたんですから、これを尊重して、一日も早く、いっときも早くそういうように望みます。それはいま言ったように、これは公害対策基本法、さっき防止と言ったのは間違いですが、対策基本法の定義の一項、二項を含めて検討する。よろしいですね。
  195. 三木武夫

    ○三木国務大臣 よろしゅうございます。
  196. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、無過失損害賠償について、私はこれは私自体の持論ですが、これを完全にやるためには二つ前提がある。その一つは、かりに法が整備せられても、結局は本人の救済にならない場合が多い。それは一つは、訴訟という手続をとった場合には、時間と経費が要る。しかし、憲法の保障する資格ある裁判官の裁判云々は、これはもちろん侵すことができないが、訴訟手続以前に行政的措置でこれを救済する方法、これは現にわれわれが言ってまいりまして、公害等調整委員会というのができました。これはいわゆる国家行政組織法第三条による、政府から独立した準司法的な権限を持つ、裁定権を持つものとして一応認めます。前進です。しかし、中央で一つじゃ、どうもこれは裁き切れぬと思うのです。委員長も見えておるわけですからあとで聞きますが、裁き切れぬのが出ておるはずなんだ。そこで、各府県と言いたいのですが、一ぺんにそうはならぬとしても、大きな公害地をかかえておる地区あたりには、そういう組織を地方にも持つべきである、こういうのが一点。  もう一つは、せっかくそこで裁定をせられた、あるいは訴訟に勝ったとしても、その責任企業が資力のない場合には、これはほんとうの救済にならない。そこで救済制度を考えるべきである。それは基金とかいろいろな方法があると思うのです。そういうことを、この二つの法律を採択するにあたって、あなたがさっきおっしゃった附則に修正を加えたわけなんだ。それを受けて、いま救済制度というか、補償制度について検討しておられると聞きます。  そこで、第二の点はあとへ回しますが、まず第一の件、この行政委員会を地方までつくる必要があるのじゃないかという点について、総務長官それから委員長、双方の御意見を求めます。
  197. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 お答えいたします。  田中委員指摘の点については十分理解はいたし得るのでございますが、いろいろの問題点もあるやに承っており、またあることも私、把握もいたしておるのでございます。そうしたことを考えますときに、そうした点も解明することも必要でもございますので、一応地方におけるところの公害紛争処理の実態、あるいは発生の件数の状況等、十分実情を検討いたしました上において、前向きの姿勢でこれを考えてまいりたい、こう考えております。
  198. 小澤文雄

    小澤政府委員 御承知のように、現在地方には都道府県公害審査会がございまして、公害紛争、損害賠償をめぐる紛争につきまして、和解の仲介、調停、仲裁などをいたしております。ただ、裁定についてはございません。  それで、地方にも裁定権を持つようにすべきではないかということはかねてから問題でございまして、いろいろ検討してまいったのでございますが、現在のところ、地方の公害審査会が調停、仲裁で、あるいは和解の仲介といったようなことで、現実に受けている公害紛争を処理し切れないという事態はまだ伺っておりません。  それと、もし裁定を地方で持つということになりますと、裁定制度は御承知のように、公害紛争についての特別法としての無過失賠償に関する規定、それからそれに含まれないものについては、一般法としての民法の不法行為に関する規定、それらの適用につきまして、法律を厳正に適用して最終的な結論を出すのでございますから、待ったなしで、裁量の余地がないわけでございます。したがって、そこで出てくる結論は、たとえ一カ所で出ても、それは当然一つの基準として全国的に及ぶものでございましょうが、現在のところ、地方の公害審査会はそれぞれ地方限りの独立の、中央との関係のない機関でございまして、その地方の各審査会の見解を統一するというシステムがございません。そのような関係で、いますぐ裁定を地方の審査会にしていただくということについては、なお問題があろうかと思います。いまの審級制度の問題がございます。かりに地方の判断に対して不服がある場合に、それを統一するためには、中央にさらにそれを不服の申し立てをさせて、審査の請求をさせて、中央で統一するというのも一つのやり方かと思いますが、これは今度は救済の簡易、迅速の趣旨に合わないということになってまいりますし、非常に問題のところでございますが、なお検討しております。それで、行く行くは地方の事件の実情などを見て、さらによく検討していきたいと思います。
  199. 田中武夫

    田中(武)委員 検討し、そしてまた検討するという答えなんです。言えば結局問題があるというのですが、問題は金ですか、人ですか、制度ですか。どうなんです。だから、いわゆる労働委員会も同じようなものです。だから中央労働委員会と地方労働委員会との関係のように、異議あるときには中央へ持っていけるようにしてもいいし、あるいは独立したものにしてもいいと思うのですが、そういう先例はあるのですよね。人か、金か、制度か、どっちなんです。
  200. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 御指摘のように、人あるいは金、制度、いろいろございましょうけれども、私は、第一に中央と地方の審査会との上下関係が、いまのところは全くないという状況でございますので、この制度の機構というものをどう取り組むべきかということが、やはり優先する大事な仕事ではなかろうか。私は、さっき申し上げましたように、そういうような関係を、さきに言ったような問題点を、実情をひとつ十分把握いたしましてそして検討したい、こう考えております。
  201. 田中武夫

    田中(武)委員 無過失損害賠償に対する二つ前提、これは訴訟手段に訴えるならば時間がかかる。去年発足したところですから、まだ一般に定着していないからそう出てきてないと思うが、それでも相当出てきておるでしょう。そうすると、訴訟よりおくれるようなことになれば、この制度は何にもならないのですよ。で、いまのところはいわゆる関係はないけれども、関係のないような法律であるから関係がないだけなんだ。そうでしょう。だから、地方労働委員会と中央労働委員会とのような関係を持たせてもよし、先例はあるのですから。あるいは中央の公害等調整委員会に、中央労働委員会のように規則制定権を持たすことによってコントロールができるのですよ。そういうことについては、法制局長官にもよく意見を聞いて考えなさいよ。もうこれ以上言いませんが、もたもたしていると、こんなこと言うておるうちに公害は出ておる。しかもいつも泣かされるのは弱い者。あっせんとか調停とかいうのは、結局は弱い者が泣かされているという実態をごらんになって考えなければいかぬと思うのですよ。これだけ申し上げておきます。
  202. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 さっき申し上げましたように、決していつの日かというような気持ちで検討をいたすようなことではございません。必ず近き将来にその日のあることを願いながら検討いたします。
  203. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、いいですか、坪川さんの在任中にこれを実現するように、もしそれが実現できなかったら留任だ。まあそれはそれとして、ともかく早く検討してください。  そこで、これは総理あるいは副総理にお伺いしますが、環境庁でいまいわゆる救済賠償制度を考えておられる。これに足を踏み入れるとこれは相当また時間が必要だが、そういう法案が今国会に出るんでしょう。そのときにやるとして、そこで基本的な考え方の二、三点を伺っておきます。  まず第一点は、保障制度を考えるにあたって、これを民事的責任保障として考えておられるのか、それとも社会保障制度の一環のような考え方を持っておられるのか。これは当然民事責任保障として考えるべきではないかと思っておるのですが、この点が一点。  それから基本法の精神ですね。三条には企業責任、あるいは四条には国の責任、二十何条にもありますかな。企業責任というように基本法には規定してあります。そういう上に立って、しかもいまいわれているPPPの原則、いわゆる汚染者補償の原則をどのように考えておられるのか、それから実施にあたっての負担金等の徴収機関をどのように考えておられるのか、そういうような基本的な態度について、ひとつ考え方の基礎をお伺いします。同時に、この法案はいつ国会に出されますか。
  204. 三木武夫

    ○三木国務大臣 一つは、基本的性格は民事責任の責任損害賠償保障制度である。  それから、徴収方法はPPPの原則、汚染者負担の原則というものによりますが、しかしながら、やはり因果関係が明らかでない場合もありますから、したがって、国としてもまた国民の健康被害というものに重大な関心を持っておりますから、ある程度の国、地方公共団体等の負担も必要だと考えておるわけでございます。  それから、これはいまいろんな問題、まだ検討を要する問題がありますが、来月の早々には出したいという目標でございます。
  205. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど論議いたしました無過失損害賠償制度の対象及び救済範囲の拡大、あるいはこの問題等々に関しましても、四日市訴訟その他公害訴訟で、司法のほうがもういい判例を出しておるのですよ。だから行政がおくれておる。やるかやらぬかという気持ちが大事だと思うのですよ。そうでなかったら、司法の判決を待ってと言っておったって、たとえば因果関係、共同不法行為の問題、いろいろな点を論議いたしまして、何とか参事官というようなのが法務省から出てきてつまらぬ答弁をしておった。だが、私は委員席で黙って聞いて、言いたかったのですがものが言えなくて、どうもこのやろうと思ったこともあった。だが、すでに判決が先ばしったというか、もう出ておるのですよ。そういうことを踏まえて考えてもらわなければいけないと思うのです。  それから、それに関連をしてですが、強制的損害賠償措置ということを考える。これは、このやり方については、担保の提供とか積み立て金とか、あるいは公害基金とかいろいろあると思うのです。すでに、たとえば原子力損害補償法とか鉱業法とかでそういう先例もあります。そういう点もあわせて検討してもらいたい。いかがですか。
  206. 三木武夫

    ○三木国務大臣 公害の加害者から汚染の度合いによって強制徴収するのですが、その金をいま言った、どういうふうに徴収するか、どういう基金とかいろいろな方法については、十分検討いたします。
  207. 田中武夫

    田中(武)委員 それで三月中旬に出ますか、法案が。
  208. 三木武夫

    ○三木国務大臣 国会の会期もありますので、極力この法案の提出を、私の立場としては急がしておる次第でございます。
  209. 田中武夫

    田中(武)委員 無過失責任賠償について、もう判決がすでに示した点は除きましょう。  もう一つ、大きな論争になったのは差しとめ請求権なんです。公害は発生すればもうおそい。一番いいのは発生以前にそれを食いとめること、防止することにあると思うのです。そういう点から見ても野党案、と申しましても社会党、公明党、民社党ですが……(「共産党は入ってないのか」と呼ぶ者あり)あのときは共産党は入ってない。社公民の共同提案では、この差しとめ請求権をはっきりと明記したわけなんです。これが一つの大きな論争になりました。しかし、自民党諸君の反対もあって残念ながらこれを修正することができなかったわけですが、附帯決議は入れておると思います。そういう点についてはどう考えておられますか。これは環境庁だけの問題でなくて、通産省にも関係がある、法務省にも関係があろうし、結局は、法制局に意見を求めるということになろうと思いますが、これはやはり副総理としての三木さんから伺いますけれども、この差しとめ請求権の問題も真剣に考える、近くそれも法制化いたします、こういう答弁をしてください。
  210. 三木武夫

    ○三木国務大臣 田中委員御承知のように、これはなかなか問題のあるところで、国会においても論議されたわけでありますが、これはまだ結論には達していないが、これは国会の決議等もございますので、十分に検討をいたす次第でございます。
  211. 田中武夫

    田中(武)委員 これも基本法の四条、十九条からいって、当然認めるべきあれなんですよ。私が主張しておるのは、基本法の精神の上に立ってやっておるわけです。せっかく基本法をつくったんですが、それぞれのこまかい点についてはぼつぼつやりましょうじゃ間に合わないんです。どうです、基本法の精神の一日も早く実現するように全力をあげる、そのぐらいは答弁をしてくださいよ。
  212. 三木武夫

    ○三木国務大臣 公害対策基本法は、われわれが公害の防止を考える場合の基本になる憲法のようなものでありますから、そういう精神に向かって前進をいたしたいと思っております。
  213. 田中武夫

    田中(武)委員 それから次に、瀬戸内海の汚染の問題に入りたいと思いますが、総理、昨年八月二十二日午後二時二十五分にあなたに会いました。覚えておられますか。そのときに、実は委員会総理をと言ったが、総裁・総理に就任せられて間もないことでもあったし、外交的な問題も、まだあなたがハワイに行く前だという事情もあって、これは与党理事諸君の理解も得てあなたに面会を申し入れたわけです。そのときに瀬戸内海環境保全法といいますか、これは仮称ですが、それをつくる意思はないかということで、具体的な何点かをあげてあなたに申しました。で、もし政府にその気がないのならば議員立法でもやりますよと言ったら、いやいや、それはわしがやる、必ずやる、だから協力してくれ、こうおっしゃったんですが、覚えておられますか。いかがです。
  214. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 早々の間でございましたからさだかには覚えておりませんが、あなたと瀬戸内海の問題に対して積極的な話し合いをしたということは覚えております。
  215. 田中武夫

    田中(武)委員 あのときテープレコーダー持っておったらよかったね。あなたは必ずやる、だから協力を君もしてくれ、こうだったんだよ。  そこで、この瀬戸内海環境保全、これは東京湾と二つ並べて私は話しますが、東京湾にも同じことが言えると思うのですが、これはぜひつくらなければいかぬと思うのです。いかがですか。
  216. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、そのときにこう申し述べたと思います。瀬戸内海は真に風光明媚な地域でございますし、世界にも誇るべき瀬戸内海が汚染されることは、これを防止しなければならない。そういう意味でマスタープランをつくったり、また屎尿処理施設を拡大したり、下水や都市河川の問題等も十分やらなければならないし、また瀬戸内海というものが汚染されるような無制限な工業開発というようなものまで、やはり考えていかなければならない問題だと思います。しかし、瀬戸内海だけではなく、大阪湾、東京湾、言うなれば瀬戸内海よりももっと汚染されておると思われる東京湾の問題もありますので、単独立法になるか基本法になるかは別にしまして、いろいろな角度から検討しなければならないでありましょう、こう私は自分の考えをすなおに述べたように記憶しておりますが……。
  217. 田中武夫

    田中(武)委員 これはあなたが言った言わぬと言ってもしようがないけれども、それはあなたは、いややる、必ずやる、わかったわかった、こう言ったんだよ。まあこれはいいとして、あらためて伺いますが、これはぜひひとつつくってもらう。検討じゃない、もうぜひ、できれば今国会でも成立さしてもらいたいと思います。この問題につきまして、いわゆる各論的な問題については、後日大原委員も用意しておられるようですから、あまりこまかくは言いません。しかし、少なくとも基本的には、瀬戸内海はこれ以上開発をやらない、したがって埋め立てももうやらない。それから、六十年たたないと瀬戸内海の水は変わらないといわれておる。この点については、あなたも先日来言っておられるからいいんですが、いわゆる濃度規制でなくて、水質については、いわゆる工場排水、下水等々を含みますが、これは総量規制をやらなければいけない。こういうことで、これは「日本列島改造論」の九八ページにもあなたは書いておられますね、総量規制と。しかし、どういう方法でやるか、具体的には書いてない。  いずれにせよ、そういうことを含めてひとつ検討じゃない、もうできれば今国会にでも出す、つくる、こういうことで御答弁をいただかない限り、どうも私は納得ができないのです、あなたのやるやる、必ずやるというその言質からいってね。まあほかに七点ばかりあげましたが、そういう点については、あとの同僚議員の質問にゆだねることにいたしますが、基本的な態度だけは伺っておきたい。  さらに、三木環境庁長官というか副総理も、雨の中を御苦労でしたがこの間瀬戸内海をごらんになったはずです。あれを見てどう思いました。やらなくちゃならぬと思うでしょうがな。ひとつ正、副総理から、この瀬戸内海環境保全法についての考え方を伺います。正が先。
  218. 三木武夫

    ○三木国務大臣 田中委員も言われるように、瀬戸内海は世界有数の景勝の地域でありますから、これを美しくするということはわれわれの責任であるわけでございますので、私も先般瀬戸内海に、いま御指摘のように参ったわけでございます。瀬戸内海は年々汚染度が、全体としてはやはりひどくなっている。いまにして対策を講じなければ、美しい瀬戸内海は永久に戻ってこないかもしれない。  そういう意味で、この十四日にも沿岸の知事会議をやり、お集まりを願って、どうしてもやはり地元の熱意あるいは行動、こういうものがないとなかなか目的を達成できませんから、いろいろな瀬戸内海を美しくするための率直な意見の交換をしたいと思っております。そのためには、あるいは公共下水の整備も要るし、あるいはまたいま言いよった開発に対する再検討も要るでしょうし、あるいはまた規制の強化、ことにやはり濃度だけではいけませんから、総理の言われるような総量規制というものも必要でしょうし、非常な総合的な対策が必要でありますから、こういう点で特別立法というお話は、もし現行法でどうしても瀬戸内海の浄化ができぬというんならば、これはやはり考えてみるべきだと思いますが、そういうことも含めてこの問題に対しては早急に結論を出したいと思っております。
  219. 田中武夫

    田中(武)委員 少なくとも現実を見てこられた三木さんの口から、いまのような答弁が出るとは思わなかった。もっと二歩も三歩も前進した御答弁があってしかるべきだと思うのです。  ここに、これは通産省からもらった資料なんですが、瀬戸内海の沿岸といいますか、特に瀬戸内海といわれておるところに、新産都市計画による全国十五地区のうちで四地区があるわけなんです。それから工業整備特別地区ですか、工特法というやつ、あれが全国六カ所のうち三カ所ある。半分あるのです。それから製油所は全国で十四ないし十五と書いてありますが、そのうち八つから九つ瀬戸内海の沿岸にあるのです。いわゆる大型石油コンビナート、これが三地区あるわけなんです。  そこで、タンカーを含めての瀬戸内海の交通量は、これは海上保安庁から調べてもらったのですが、昨年七月に三日間調査してもらった平均なんです。タンカーが百四十三隻。場所は瀬戸内海のうちの備讃というのですから、岡山と香川のあの辺でしょう。あそこで三日間の調査のうちタンカーが一日に百四十三隻、そのうち一万トン以上が二隻、タンカー以外の船が九百五十八隻、うち一万トン以上が五隻、合わせて一千百一隻で、一万トン以上が七隻あるわけなんです。このような状態の中でなおかつ、これは運輸大臣にも伺うわけですが、瀬戸内海を埋め立てて関西新国際空港というようなものがつくれるのかどうか。もう現状においてすら、漁民その他の人たちはノリの養殖その他についてもお手上げなんだよ。だからそういう面から見ても、もう瀬戸内海を開発することはやめる、埋め立てはやめる。(「橋もやめろ」と呼ぶ者あり)したがって、関西新国際空港も、瀬戸内海を埋め立ててやるような構想は撤回する。橋の問題にしても、いま話があるように、漁民あるいはこういった海上交通の面から反対者もおるわけなんです。そういう点からいかがですか。いまこそ決断と実行の田中内閣が決断をすべき時期だと思うのですが、これはどうですかね。この関西新国際空港の問題も、去年八月二十二日あなたに話したのですよ。いかがです。
  220. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほども述べましたように、瀬戸内海が汚染せられておる事実に徴して、この汚染防止のために各般の施策を行なっております。これは、都市下水の問題、屎尿処理の問題、いろいろな問題が実行されておりますし、また現にマスタープランもつくっておりますし、また大型模型をつくって研究も進めております。御指摘のように、四十年ないし六十年に一ぺんしか水が変わらないというような状態もありますし、その中に大きな事業の計画もあるわけでございまして、瀬戸内海の自然環境保全のために、立法を含めた各般の問題に対して、検討しなければならない段階に至っておるということは事実でございます。  いま、本四連絡三橋もやめてしまえというような……(田中(武)委員「そうは言っていない。それすらも反対がある」と呼ぶ)まあ、そういうことや反対があることは知っております。知っておりますし、しかも関西新国際空港、これもなかなか条件もむずかしいようでございます。伊丹の飛行場は困っておる。いま三カ所ばかり候補地がいろいろありますが、つくらないでいいのかというほどでもないようでありますし、これはやはり調和を十分考えてまいらなければならぬ問題だと思います。  いずれにしても、瀬戸内海も東京湾もそうでありますが、そういう規制というような立場に立って、やっぱり将来展望というものをきめて、そして適切な具体的な調整措置、規制措置というものを含めた各般の自然環境整備の措置がとられなければならない段階を迎えておるという理解に立って、政府も積極的に地元民との交渉を持ちながら勉強してまいりたい、こう思います。
  221. 田中武夫

    田中(武)委員 先日来盛んに勉強、勉強ということばを使っておられるが、どうもいままでの田中角榮さんとはだいぶ変わってきたね。決断と実行はどこへ行ったのかわからぬ。少なくとも国際空港がそんなに日本にたくさん要るのか。それを必要とするのは一体だれなのか。財界である。したがって、大阪と神戸の商工会議所は賛成しておるようですが、ほかは全部反対です。伊丹では、自分のところのやつを向こうへ行ってくれるならというような考え方の人も、中にはあるようです。しかし、地元は全部反対です。それだけははっきり言っておきます。成田でもあれだけの騒ぎがあったんですがね。ここへ持ってくるとなれば、あんなことでは済みませんよ、おどすわけではないですが。まあ運輸大臣にも聞きたいのだが、いいだろう、総理が言っておるのだから。それとも、撤回しますと言い切るのならここでやれよ。ただあなたは、航空審議会の結論を待って云々ぐらいしか言えないだろう。言うてみいや。
  222. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 瀬戸内海の環境保全につきましての基本方針は、いま総理からおっしゃったとおりでございまして、私もその方針に従ってこれから努力をするつもりでございますが、お尋ねがございましたので、事実だけを申し上げておきます。事実だけですね。(田中(武)委員「国際空港だけでいいよ」と呼ぶ)ああ、そうですか。  国際空港は、もうこれは私が言うまでもなく御承知のとおりでございまして、いま航空審議会のほうに、その規模とか位置をどうするかという諮問をいたしておるのでございます。これは必ずしも海上に持っていけという意味ではございませんで、もっと広く、関西にも国際空港が要るであろう、それならばどういう規模でどこに置いたらいいかということを、これはフリーな立場で審議をしていただいておるのでございます。これは結論が出ますれば、もちろん地方自治体にも十分御相談をいたしまして、さっそくに準備にかからなければならぬと思いますけれども、これは田中先生御承知かと思いますが、かりに海のほうに……(田中(武)委員「簡単、簡単、時間がない」と呼ぶ)ああ、そうですか。まあ、いろいろな方法がございますから、その方法につきましても、海洋汚染ということにはひっかからないような最善の努力をしていきたいと考えております。
  223. 田中武夫

    田中(武)委員 地元自治体にもだけれども、まあ自治体ということでもいいのだが、地元住民の意思に反してはということにしてください。  ついでですから、もう答弁は要らぬとしても、国鉄の無人化等についても、運輸大臣だから言うておきますが、大きな問題になっておるのだ。これについても、地元住民の意思を無視してはやりません、これだけははっきり答弁できますか。できるのならやってください。それとも押しつけるか。
  224. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 いま地方自治体と申しましたのは、地方自治体が地元住民をある意味において代表しているという意味において地方自治体と申しましたが、仰せのとおりに、関係の地方住民の意思を無視してはやれないと思っております。国鉄の問題についても同様でございます。
  225. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、瀬戸内海の汚染に関連してですが、赤潮と油汚染の救済の問題が急務になっている。これも水産庁等からもらった資料ですが、私が陳情などで受け取るよりかなお数字が少ないようですけれども、水産庁からもらった資料によると、赤潮による損害が四十六年度で十一件、五千七百九十五万五千円、四十七年度は、これは特にひどかったのですが、七月、八月で七十一億円。それから油による損害、これは主としてノリですが、四十六年度で五億三百十四万三千円、ことしに入ってから、一月、これは事故があったのですが、二億五千万円というような大きな損害が出ております。これについてどのように救済するのか。こういう点から見ても、瀬戸内海環境保全法の必要を痛切に感じるのではなかろうかと思うのですが、どうですか。
  226. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 損害の実情は、田中委員のお示しのとおりの資料が私のところにも参っております。  そこで、この損害の補償は、私から申し上げるまでもなく、原因者負担ということが原則だと思うのであります。ところで、この油による汚染のほうは、お手元にお持ちの資料でごらんいただくとおわかりと思いますが、原因者は四二%は追及ができておるのでございまするから、このほうは損害補償の問題は一応軌道に乗ると思うのであります。しかしながら、その他を把握するということがきわめてむずかしいという実情にございます。  なお、漁業の赤潮のほうの関係につきましては、赤潮のそもそも発生の原因そのものがまだ十分つかめておらないという実情にございまして、御指摘の昨年の七、八月のハマチの大量斃死につきましては、やむなく災害に準じて天災融資法による緊急の措置をする、こういうことであったわけでございまするが、非常にむずかしい問題だと、農林省としても頭を痛めておる実情でございます。
  227. 田中武夫

    田中(武)委員 もっとこまかくやりたいのですが、これは一般質問なり分科会で行ないます。  次に、基地公害の問題です。これも実は公害等調整委員会設置法のときにいろいろ問題になりました。なぜかというと、基地がこの調整委員会の管轄の外に置かれているということで、そのときに防衛庁なり防衛施設庁なりの答弁では、いわゆる防衛施設周辺整備法、あるいは特損法がありますのでという答弁があったわけなんです。ところが、これは全然当たらないのだ。その辺から手をあげて来るやつがあってもそれはだめだよ。当たらないのですよ。法律の精神が違うのだ、法律の精神が。だからこれも検討するようにと言っておるのですが、どのように検討しておるのか。もう時間がだんだんと迫ってくるから、次まだやりたい点がたくさんあるので、この辺で学のあるところを示したいのですが、どうなんです。まだ防衛施設周辺整備法とか特損法がありますからと答えるかね、防衛庁長官。——だめだ、そんなところから手をあげたって。てめえらに聞くんだったらいつでも聞くよ。大臣が立って、計数等がつくから政府委員をしてというならともかくも。ともかくどうなんです。
  228. 増原恵吉

    増原国務大臣 田中委員よく御承知のように、昨年の附帯決議事項のうちで、防衛施設周辺の整備等に関する法律の運用にあたっての補助事業の範囲の拡大、補助率の引き上げなどについては絶えず検討を加えて、一生懸命いま努力をいたしておるわけでございまして、ことしの予算にも相当額を計上していただいて、成立をいま期しておるようなわけでございます。四十八年度予算で……。
  229. 田中武夫

    田中(武)委員 もういいや、その辺は。もう予算書を見ればわかるんだから。というのは、あの附帯決議がそうなっておる。あの附帯決議が、その法律に基づいてこうせよというようになっておるが、基本的に言うならば、その法律の目的が違うんだよ。周辺整備法とか特損法というのは違うのですよ、公害の問題については。通常発生すべき損害ですよ。いま無過失損害賠償が問題になっておるが、これは無過失じゃないでしょう、法律の精神は。だから、その辺についてどのように検討するか、それだけでいいんだよ。あくまでも特損法だとか周辺整備法ということで固持するのかどうかということなんだ。
  230. 増原恵吉

    増原国務大臣 お答えをいたしまするが、現在のところ、周辺整備法をさらに拡大する方向を考えておりまするとともに、いま御指摘になりました整備法以外の方法について、適切な方法がないかということを検討をいたしておりまするが、まだどういうふうにこの問題について見当をつけるかというところまでに至っていないのは、たいへん残念でございます。
  231. 田中武夫

    田中(武)委員 周辺整備法等を強化する、予算をもっとつけるということと、さらに、公害についてはこの法律とは目的が違う、精神が違う、そういうことだけを申し上げておきます。  それから、次に米軍基地の問題ですが、これはもう時間がないから、じっくりとやるのはまたあらためてやるとして、ここで申し上げたいのは、米軍基地は治外法権ではない。日本の公害対策基本法が適用になる。地位協定の十六条には、「日本の法令を尊重し」云々となっておる。しかも、このもとをなす安保条約、その精神及び七条によって、国連憲章のもとにのみ存在するということをここにはりきりといっている。ここは国連憲章ではないが、国連の昨年におけるストックホルム会議においての人間環境宣言、これによって国連の意思が明らかになった。したがって、それの存在について根本的に検討する時期が来ておる。もちろん、何回か議論になっておる日本憲法の九条、あるいは防衛というような点からの安保条約の論争ではなくて、人間環境宣言の上に立って、環境ということの上に立っても考え直すべき時期が来ておる。そのことを申し上げておるのです。時間があれば人間環境宣言の原則を読み上げてもいいんですが、ここに持っておりますが、もう時間の関係もありますので、しません。これは総理、それから大平外務大臣、これは二人に申し上げたと思うのです。ことにこれは、やはり八月二十二日の午前の委員会であなたに私、申し上げたと思うのです。議事録持っておりますがね。これは明確にしてください。日本の法律に従ってというか、公害について日本の公害諸法の適用はある。はっきりしてください。
  232. 大平正芳

    大平国務大臣 これはたびたび申し上げておりますように、米軍基地といえども治外法権地域ではない。したがいまして、日本の法令の適用が一般的に除外されておる地域ではありません。しかしながら管轄権は米軍にあるわけでございますので、公の行動には直接日本法令の適用はないことは御案内のとおりであります。しかし、御指摘のように、地位協定の三条におきましては、施設、区域内の作業については、公共の安全に妥当な考慮を払うという項もきめられておるわけでございまして、大気汚染でございますとか水質汚濁等の問題は、まさに施設、区域外に対して及ぼす影響が大きいわけでございますので、米軍といたしましても、わが国の公害規制関係法令の実態について、これを十分尊重すべきものであることは言うまでもありませんし、その趣旨に沿いまして、日本側といたしましても米軍に要請いたしておるところであります。
  233. 田中武夫

    田中(武)委員 この間、国連の環境会議事務局長のストロングですか、これのメッセージも読売かどこかを通じて日本に来ていますね。そういったように、国連自体、いや世界全体の動きが、平和の問題、戦争は一番何といっても自然環境をこわすもの、同時に人間は豊かな環境のもとにということが、これが人間環境宣言の第一条の冒頭に掲げられてある。そういう上に立って再検討をすべき時期が来ておる、そういうことだけは申し上げておきますが、総理いかがです。
  234. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 環境整備は国際的な大問題にもなっておるわけでございますし、基地等の公害防除は、法令の直接の適用はないにしても、当然日本の法令を順守してもらわなければならないわけでありまして、このためには軍との間に意思の疎通をはかったり、また施設に対して立ち入り調査を行なえるようにという申し入れ等も行なっておりますし、特に、基地基地周辺とのいろいろな問題もある現状に徴して、大きな意味で改善に対する最善の努力を続けなければいかぬということは、当然のことだと考えております。
  235. 田中武夫

    田中(武)委員 そういう面からも、もう根本的に考え方を変えてもらいたいということだけ要請しておきます。  次に、PCBについてお伺いいたしたいのですが、これは先日公明党の渡部委員が取り上げてやられました。そこで深くは申しません。あのときの通産大臣をはじめ閣僚の皆さんの答弁、まことに不勉強であり、まことに遺憾です。あんな態度ではたしてこの問題が解決つくのかということ。そこで、その回収、生産の数量の単位を間違えるようなことじゃだめですよ、幾ら秀才顔をしておっても。回収及びその処理について、具体的にひとつ納得がいくように説明してください。
  236. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 PCBの処理につきましては、まず液状PCBの焼却処理については、昨年十二月に環境庁によって焼却時の暫定基準が決定されましたが、高砂における焼却処理に際しては、本基準を十分守ることができることが確認されているので、安全性は十分確保されるものと考えられております。また鐘淵化学はPCBの取り扱いになれていることもあり、PCB処理については、PCBの生産者であった鐘淵化学及び三菱モンサント化成で行なわせることが現状では最も適当だと考えられていますので、県の指示を待って焼却を再開させることといたしたいと思います。  次に、PCBを使用した感圧紙及びコンデンサーについては、これを安全に処理する技術について、国の研究機関を中心に開発に努力しているところであり、この技術開発を待って処理設備の設置場所をきめたいと考えております。  なお、液状PCBの処理についても、今後新たなより効果的な処理方法及び処理体制が考えられるならば、これについても十分検討を進めてまいりたいと思っております。  とりあえず以上御回答申し上げます。
  237. 田中武夫

    田中(武)委員 局長かだれか知らぬが、書いたやつを読むだけぐらいではだめですよ。高砂は私が住んでおるところなんです。実態はどうであるかということはよく知っています。もう時間の関係等もあるので、あとまだ二、三項目聞きたい点があるから、あまり詳しくは申しませんがね。  まだ未回収が五万トン近くあるのです。それをいまの能力で、千四百度以上で処理するとしたら何年かかるか。しかも、その間全国から回収せられたのが——この間、渡部委員が示されたのは千葉かどこかのもののです。あれよりひどいのですよ、高砂は。したがって、PCBの掃きだめになりたくないというのが地元民の切実な考え方、願いなんだ。  それから、先ほど、環境庁が暫定基準を出されたというが、この暫定基準だって自信のあるものではないんだ。同時に、それを出して調査をして、そしてほとんど日本列島総汚染という結果が出た。そのあとどないするのかということについては、関係省庁どこも何もやっていないでしょうが。そんなことでいいんですか。少なくとも回収してきたやつはもう絶対に漏れないような体制をというか、保管措置を強くやる。同時に一日も早くそのすみやかな、いわゆる焼却というか、その方法を考える。いまの鐘化の設備なんぞでやっておったら何十年もかかるのですよ。計算してごらん。頭いいんだからできるでしょう。その間地元の人たちは、PCBの掃きだめで毎日恐怖にさらされておる。一ぺん鐘化へ行ってきなさい、どんな状態であるのか。それからまたそのことを発表したことによって、いわゆる瀬戸内海というか、あるいは十一水域における魚はこれはもう売れなくなった。またこわくて食えない。そういう損害に対してどう救済するのか。あるいは健康診断にいたしましても、厚生省はそろそろやろうかというぐらいな態度。この間、渡部委員指摘しておりましたが、すでに県ではやっておるわけですよ。あるいは新聞の投書欄の投書等も持ってきておりますが、これをもっと一般的にやってくれという投書もあるわけなんです。そういうことに対して一々答弁をとればとても時間がございません。そこで総括をして、もうこれは一々言わぬ。だから総理から責任ある答弁をいただいておきます。
  238. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 PCBにつきましては、その被害が非常に大きいので、もうすでに去年から製造を禁止いたしておるわけでありますが、しかし、全国にばらまかれておるものは非常に膨大もない量でございます。  その意味で、閉鎖性のもの、また開放性のものとを問わず、これが回収ということに対しては万全を期さなければならないわけでございます。で、回収をしたものそのものの焼却ということに対しても施設が不完備であり、またこれにかわるもの等の研究開発等も現に行なわれておるわけでありますが、しかし、同じような名前、同じような効力のあるものは同じようにまた害もあるのではないかという問題等もあります。ですから、広範な問題としてこの問題とは正面から取り組んでいかなければならないということでございます。特に、魚の骨が曲がったり、母乳の中からもPCBが検出されるというようなものさえあるわけでありますから、健康被害の調査等も進めながら万全な対策をとっていきたい、こう思います。
  239. 田中武夫

    田中(武)委員 これはほんとうに重大な問題なんです。それから、先日も渡部委員が触れておりましたけれども、第二、第三のPCBの心配はないのか。したがって、これから新しい化学製品については、絶対安全であるという確認を持たなければ製造、販売等をやらしちゃいけない。未知の世界なんですからね。そういう点についても確認しておきます。いかがです。
  240. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 制度の完備をはかりながら、新しい製品に対しては公害が全くないという確認が行なわれない限り、むやみにこれを使用せしめないということはもう当然のことであります。
  241. 田中武夫

    田中(武)委員 それから、いわゆる暫定基準によって十一水域ですか、これこれの魚は汚染の何がある、こういう発表がばっとなされて、それで漁民は、これは生活の問題にかかっておるのですよ。その救済等についても万全の措置をとる。ひとつ総理
  242. 三木武夫

    ○三木国務大臣 PCB、やはりだいぶん大きな問題でありまして、われわれとしても対策の推進会議を開いてやっておるのですが、これは回収についてももう少しやはり全力を尽くして、困難ですけれどもやらなければいかぬし、またこれを焼却する場合の技術などもまだ開発されてない面もありますから、そういう研究、開発あるいはまた回収——新しいものは製造禁止になっているわけですが、これに対して一段と努力を傾けて、この問題に対する国民の不安を解消するように努力しなければならぬ。また、被害等についてはいろいろ関係する省があるわけで、この問題についても各省間で、いまだ結論は出ておりませんけれども、相談をすべき議題だと思います。
  243. 田中武夫

    田中(武)委員 このPCBだけでも一時間でも  一時間半でも質問することはあるわけなんです。しかし、あえてここでやっておるということは、総理の決意を聞いておるのですからね、最初言ったように。分科会でも一般質問でもできるのですよ。総理がどないするのかということを言ってくださいよ。
  244. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 PCBの問題に対しては、製造の禁止、それから代替品の発明、それから回収、回収後の処理の問題等々に対して触れたわけであります。そしてこれは国民の健康に関する問題でございますし、そういう問題に対してもあらゆる角度から調査を進めて、万遺憾なき体制をとらなければならぬと思います。  ただ、具体的には、例の静岡県の湾の汚染とか、それから日本コンデンサの問題に関しての琵琶湖の問題とか、いろいろ指摘せられておるところがあるわけです。そういうものに対しては、全部の魚を一匹ずつ全部検査をしてというわけにはいかないと思います。しかし、これは漁民の生活権に関する問題でもありますし、売れば国民の健康にも関する問題である。こういうことでありますから、こういう問題に対しては、可能な限りやはり最大の努力を行なうということが必要であるということは、もう私も身にしみて考えております。
  245. 田中武夫

    田中(武)委員 この問題はまたあらためて深く追及することにいたしまして、八〇%まで生産をしたところの同じ鐘淵化学の問題に関連して、いわゆる石油たん白の問題があります。これをやろうということで通告したら、やられる前にあなたは先手を打って、安全確認は二、三年先ということできのうの夕刊に出ております。やられるだろうということで先手を打たれたと思うのです。先手でも後手でもいいのだ。質問せぬうちにこういうことをやるなら、もうそれで一つは目的を達したと思うのだが、この真意はどこにあるのですか。ことに二、三年先だとかいうようなことで、若干それぞれの新聞によってニュアンスが違うのですが、ほんとうに安全であるということがあらゆる面から確認せられるということ、さらにこれは同じ鐘化ですから、PCB等との相乗関係あるいは他の農薬その他との相乗関係等々も検討し、検査をして、そしてもう絶対あらゆる面から安全であるという確認が得られるまで、ここに「二、三年先」と書いてあるが、これは日経ですけれども、それぞれきのうの夕刊に出ております。若干ニュアンスが違うのですが、その真意を伺いたいと思う。  と同時に、もう時間の関係で一ぺんに言いますが、これは国民の基本的人権であるところの、たとえば酵母の名称等についても、企業秘密だといって発表していないのですね。あるいは企業の二年間にわたるデータを信用してやったというのだが、このデータの公表もしてない。知る権利を侵されておる。同時にまた、それを押しつけてくるということは、他の天然動物たん白、卵とか牛乳とか、それがあります。選ぶ権利というものも侵されてくる。いろいろな基本的人権にも関係するから、そういう点について押しつけるということでなくて、十分に消費者が安心せられることが確認せられるまでは製造販売は許すべきでない。いかがですか。
  246. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 お答え申し上げます。  石油たん白は先生すでに御承知のように、飼料として問題になってきたわけでございますが、肉とか卵などへの生物濃縮というふうなことを考え、究極的には人間の健康に、かかわるというふうなことで、先年農林省からの申し入れもございましたので、食品衛生調査会におきまして専門の部会を設けて研究をいたしてまいりました。  まず第一に、安全性確認の方法と申しますか、基準というものを検討いたしまして、それに基づいて一つ調査をいたしました。これは人間の健康に最終的には関係あることでございますから、そこで、実験段階においては一応安全であるということが確認されましたけれども、それは実験段階における判断でございまして、それだけですぐ製造ということには絶対になりません。食品衛生調査会におきましては、試作の段階においてもう一回再検査をするということを条件として考えてもらおうということで農林省にも申し上げてございますから、その結果が出ない限り、農林省はおそらく製造ということを許可するというようなことはない、かように考えておる次第でございます。
  247. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほども申しましたように、これをあいまいなことで製造販売された場合には、まず国民の安全を求める権利、あるいは選択する権利、あるいは国民の知る権利等々の侵害になる。そういう人権問題にも関係すると思うのだが、どうですか。その上に立って十分なひとつ検討をして、絶対に安全だというところまで、確信を持つまで態度を変えてもらっては困る。はっきりもう一ぺん言うておいてください。
  248. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 お答え申し上げます。  試作の段階において、さらに国の機関による再検査を行なうということでございますから、厚生省としては、人の健康を守るという責任がございますから、納得いく結論が出るまではやめていただく、これは当然だ、かように考えております。
  249. 田中武夫

    田中(武)委員 農林大臣、それよりかあなたのほうはそういうことにたよらずに、天然動物たん白の確保、言いかえるならば酪農政策あるいは漁業の振興、こういった点から、まずそのほうに解決点を求めるべきだと思うのです。それも含めてどうぞひとつ簡単に答弁してください。あともう一点だけ。
  250. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 厚生大臣のお答えしたとおり、農林省としても慎重に扱ってまいりたいと思います。  なお、田中委員の御指摘のように、そういう化学的なものにたよらずに根本的な酪農政策をとれということについては、私も同感でございます。(田中(武)委員「漁業と酪農だな」と呼ぶ)漁業のことについてももとよりでございます。
  251. 田中武夫

    田中(武)委員 まだ行き当たりばったりというか、まあ口先だけの答弁で終わっておるようですが、時間の関係もあるから、もうあと一点だけお願いします。  今度は鉱害についてお伺いします。これもいろいろ資料を持っていますが、時間の関係がありますので……。ともかく休廃止鉱山は現在五千三十七鉱山あります。そのうち、鉱害がありと認められたもの、あるいはであろうと認められたもの合わせますと二千五百三十鉱山。これはまず第一に、現存する鉱害源を除くことが第一である。鉱害発生源の規制も必要である。今後の新鉱害に対する対策も必要である。あるいは鉱害被害者の救済等々も必要であると同時に、休廃止鉱山の鉱害については委員会において決議をいたしております。これは鉱業法によって、かりに休廃止しても五年間は鉱業権者に責任がある。当然です。だが、土呂久のように住友金属鉱山といったようなところならば何とか話は進みます。しかし、もう何もないところもある。松尾にも行って驚きました。しかも、いま言っている公の公害とメタルマイニングの鉱害との違うところは、長年にわたって山の鉱害が公害の原点だと言われるほど、大きく言えば千古の昔から蓄積せられた鉱害なんです。  したがって、私は先ほどPPPの原則を主張いたしました。しかし、それだけにこだわっておると、この問題は解決しない点がある。行くえ不明になっておる鉱業権者もあれば、見つかっても全然無資力の人もおるというような、そういう点を踏まえて、だがしかし現実に鉱害は起こっておる。被害者は出ておる。どう解決するかという問題が残るわけですが、その点についてひとつ御答弁を願います。総理、いかがです。
  252. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 鉱業権者の不在等の鉱山等につきましては、昭和四十六年度に休廃止鉱山鉱害防止工事費補助金制度を創設して、地方公共団体が防止工事を実施する場合、国が三分の二の補助金を交付することとして、これを実行しております。  鉱害問題は、地域社会の問題でもありますので、地域内における総合施策の一環として、地方公共団体が事業主体となって、工事を実施することがまず適当であると考えます。  なお、この補助金工事のうち、調査指導業務については、昭和四十八年度より金属鉱物探鉱促進事業団を改組拡充いたしまして、ここで行なわせることにいたしたいと思っております。
  253. 根本龍太郎

    ○根本委員長 田中君に申し上げます。持ち時間が経過しております。結論をお願いいたします。
  254. 田中武夫

    田中(武)委員 結論を申し上げます。  いわゆる無過失損害賠償等と関連をして、この問題をひとつ考えていただきたいということ。  最後に一言言いたいのは、たいへん失礼ですが、総理、あなたが総理になられた当時は、コンピューターつきブルドーザーといわれたのです。ところが、先日来の御答弁を聞いておると、このコンピューター、ちょっとおかしくなったのじゃないかという感じがします。そこでひとつ、狂ったといっては失礼ですが、おかしくなったコンピューターつきのブルドーザーほどこわいものはないのですよ。何でもかんでも押しつぶしてしまう。日本列島改造論がどうもそういうような感じすらするわけなんです。そこで開発四法について、三木副総理環境庁長官が事前協議とかなんとかいうようなことになっておると思うのですよ。それをひとつうまくやってもらうということが、副総理たる三木さんの仕事だろうと思うのです。狂ったコンピューターといって、たいへん失礼ですが、そういう感じもするのだから、その辺は副総理あるいは総理、うまく連絡をとってやってもらいたいと思います。一言最後に申し上げておきますが、一言ずつ御答弁を願って終わります。
  255. 三木武夫

    ○三木国務大臣 開発も環境の保全も、国民の福祉という共通の目的でありますから、したがって、環境を保全するということは開発の大前提であることは当然でございます。そういう点で、今後いろいろ問題を起こして、あとから追っかける行政というものはどうにもならないですから、事前に十分な協議を行なって、そして環境の保全と開発とが両立できるような施策を講じていきたいと思っております。
  256. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 列島改造なるものは、生活環境の整備ということをはかるために考えておることでございます。そういう意味で、よく理解をしていただいて御賛成を賜わりたい。これが実行に対しては、この理想が実現するように万全な配慮をしてまいりたい。
  257. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  次に、中島武敏君。
  258. 中島武敏

    ○中島委員 総理にお伺いしたいのですが、今国会の総理の施政方針演説の中で、「環境基準をきびしく改め、排出規制における総量規制の導入など規制を強化する」こういうふうに言われました。このことに関してお伺いしたいのですが、たとえば、政府がきめました硫黄酸化物の環境基準が守られていても、実際には公害病の患者が続発しているわけであります。たとえば千葉市であるとかあるいは新南陽市であるとか、こういうところは環境基準以下であります。しかし、市が独自に患者を公害病として認定しているわけであります。つまり現在の硫黄酸化物の環境基準、これは人間の健康を守れるものとはなっていないということをはっきり証明していると思うのです。  そこでお伺いしたいのですけれども、総理が今日きびしく改めると、こういうふうに言われておりますのは、現在の現行の環境基準をきめたときに政治的に甘かったと反省されていらっしゃるのか、それとも当時は科学的に十分わからなかった、こういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、まずこの点をお伺いいたしたいと思います。
  259. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 公害に関する制度も基準もできたわけでございますが、しかし、これは万全なものではないということでございます。健康第一ということが政治の上で守られなければならない道でございますから、公害の基準が、現行規定が守られなければならぬというだけでなく、これからもなお国際的基準や実態に合うように基準を強める方向に進めていかなければならないという公害防除、健康優先ということに対する基本的姿勢を言ったものでございます。
  260. 中島武敏

    ○中島委員 この環境基準がきめられましたときには、これはもうすでに広く知られていることでありますけれども、生活環境審議会の公害部会の環境基準専門委員会が報告を行ないまして、このときには二十四時間平均一時間値に対して〇・〇五PPM、一時間値に対しては〇・一PPM、こういう報告をしたわけであります。   〔委員長退席、田澤委員長代理着席〕 ところが、生活環境審議会の答申によりますと、年間を通じて総時間数に対して一時間値が〇・五以下である日数が七〇ないし八〇%以上維持されることであるとか、あるいはまた一時間値が〇・一PPM以下である時間数が少なくとも八〇ないし九三%以上維持されることとか、こういうふうに骨抜きになっていったわけです。しかも、それが厚生省で最終的に政府が確認したものは七〇%、八八%というふうになっていったのです。これはつまり、専門委員会が閾値つまり、人間の健康を守るぎりぎりの線として答申、報告したものが生活環境審議会で骨抜きになり、さらに厚生省で骨抜きになっていっているということをはっきり物語っているわけであります。なぜそうなっていったかということについては、産業界の非常に猛烈な反対運動が行なわれたということも、これも周知のことであります。したがって、今日これをきびしく改めるということをやろうとするならば、やはりかりに産業界の抵抗があってもこれを排除して、そしてほんとうに人間の健康が十分守れる、そういう基準をきめなければならないと思うのですけれども、具体的に考え方をお伺いしたいのですが、改めるとおっしゃった場合に、どういうふうに改められようとされているのか、その辺具体的にお伺いをいたしたいと思います。
  261. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、骨抜きになったとか、非常に産業界の反対によって実情に合わないものをきめたとは考えておりません。これはそれなりに政府としては最善のものをきめたわけでございますが、しかしどう考えてみても、生命を大事にしなければならないこと、健康優先にものを考えなければならぬことはもう論のないところでございます。そうして日本では超過密というような問題もございます。また国際的な基準、その後の国際的な変化もあります。そういう問題に徴して、改めるところがあれば改めます。ただこれは、これからまだ手をつけられないような分野に対しても、だんだんと公害防除や公害排除の基準をきめていくように積極的な姿勢をとりたい、こういうことでございまして、現行のものを甘くするなどというような考え方は全くありません。よりきびしくしなければならないということでありまして、政府が産業界の圧力やその他に対していつでも後退をしておるというような考え方、そういう先入観はひとつここで払拭していただきたい、こう思います。これはほんとうに積極的に生命と健康を守ろうという、公害に対する基本的姿勢を積極的に打ち出したものと理解を賜わりたい。   〔田澤委員長代理退席、委員長着席〕
  262. 中島武敏

    ○中島委員 産業界の問題については、そういうことは知らないという意味のお話がありましたが、これは厚生省の環境衛生局公害部編「大気汚染防止法の解説」の中にはっきりそういうふうに認めているわけです。ですから、今度ほんとうに人間の健康が守れる、人間の生活が守れるというふうな公害対策を進めるにあたっては、やはり過去の問題についてもきちんとした反省に立って進む必要があるのではないかというように私は考えるわけであります。そういう点では総理が前向きを強調されるのはわかりますけれども、過去の経緯についてはっきりおっしゃらないのは納得しがたいところであります。  そこで……。
  263. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は専門家ではありません。私がきめたのではありません。日本においては最高水準の専門家が衆知を集めて妥当なものと決定をしたわけでございますから、だからそういう意味では権威のあるものだ……(「まだ中島君の発言中じゃないか」と呼ぶ者あり)いや、御本人の了解を得てやったのであります。
  264. 根本龍太郎

    ○根本委員長 委員長が許しました。
  265. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御本人の了解を得てやったのです。
  266. 中島武敏

    ○中島委員 それじゃ具体的にもう少しお尋ねしたいと思うのです。前回の専門委員会が報告をしたこの基準値ですね。これは今回は改定される場合にはそれ以下にはしない、もっと甘いものにはしないということですね。
  267. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほども申し上げておりますとおり、甘くするような考えは全くない。これは健康第一ということで、重くなっても甘くはならない、私の基本的な考え方はそうであります。
  268. 中島武敏

    ○中島委員 過密な地帯においては五年とか十年とかというふうにして達成の目標期限、これをこの前は切りまして定めましたけれども、これは今回はそういうことはないというふうにおっしゃいますか。
  269. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 期限を切ってやれれば非常に説得力もあるし合理的であると思いますが、これは総量規制等も私は導入したいということで、この立法当時からも言っておりますし、私自身、列島改造論の中でも述べておるわけでございますが、これは地域によっていろいろ違うものもございますし、そういう意味で、政府は積極的に国民的衆知を集めて公害対策に完ぺきを期さなければならない責任を持っておりますが、いつまで、どういうふうにしますかということは、現時点においては明確には御答弁できないということは、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  270. 中島武敏

    ○中島委員 前回は五年あるいは十年というような非常に長い達成までの期間を設けたわけであります。そのために非常に公害が今日見るようにひどくなっていった原因をつくったわけですね。そういう点からいいますと、期限を明記することはできないにしても、きわめて早くこれを実行しなければならないということは当然のことだと思うのです。その辺はいかがですか。それはそのとおりですね。
  271. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま総理が言われたように、地方の公害の実態あるいは科学的な究明の進展度合い、こういうことで、環境基準というものは常に見直していく性質のものです。その方向は、いま言われたように強化の方向である。いま年限の問題も含めて公害対策審議会の中で、専門家がこの問題も含めて検討中でございます。
  272. 中島武敏

    ○中島委員 これに関連してもう一つお尋ねしたいのですが、窒素酸化物とかあるいはオキシダントですね。これについての環境基準は現在ないわけなんです。そしてこれは、私が聞いたところによりますと、専門委員会におきましては七二年の六月二十日に報告が出されております。ところが、中央公害対策審議会からはいまだにこの答申が出てきていないと思うのですね。なぜこんなに、専門委員会の報告が出されてからもう半年以上にもなるのですけれども、非常に長引いているのかということについて理由を伺いたいと思うのです。といいますのは、窒素酸化物は非常に人間の健康に重大な影響を与えるものであることは言うまでもありません。特に硫黄酸化物と一緒になれば相乗作用を及ぼすということ、このこともいわれております。それだけに急がなければいけないと思うのですね。その点で、いまのことをお伺いしたいと思うのです。
  273. 三木武夫

    ○三木国務大臣 窒素酸化物については、御承知のようにこの問題はなかなか世界的に技術的な解決をしていない問題であります。それだけに、この基準をきめるについてはいろんな議論があるわけでございますから、ほかの基準よりもこれは相当にいろいろ論議するために時間がかかっておることは事実ですが、これはできるだけ、数カ月のうちには必ずきめたいと思っております。
  274. 中島武敏

    ○中島委員 数カ月でございますね。
  275. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そうです。
  276. 中島武敏

    ○中島委員 数カ月以内には決定をしたいと言われるが、なるべく早くこれはきめなければいけないと思うのですね。  それでは、次にこれに関連してさらにお伺いしたいと思いますが、農作物の被害の問題にかかわる問題なんですが、群馬県の安中ですね。あそこの東邦亜鉛の安中製錬所、ここからSO2が出されておりますけれども、これの排出量は排出基準に合格しているわけです。ところが、農作物に対して被害を起こさせないための生活環境の環境基準というようなものがないわけですね。私は、人間の健康だけではなくて、やはり農作物等にもかかわる、生活環境にかかわる環境基準を設けるべきであるというふうに考えますが、この点、いかがでしょう。
  277. 三木武夫

    ○三木国務大臣 安中の亜鉛のことでございますが、これは政府委員から答弁をいたさせます。
  278. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  安中の問題というよりも、硫黄酸化物に関する環境基準のきめ方について、現在、健康を保護するという観点からの環境基準しかできておりません。ほかの問題についても残念ながらわが国では、いま健康の保護のほうに重点を置いた環境基準をつくっておりまして、いずれ農作物その他動植物等の生活環境にわたるものまでこれを及ぼそうと思っておりますが、現在健康のほうに主力を置いているという点で、将来の問題としていま勉強最中でございます。
  279. 中島武敏

    ○中島委員 これは、将来の問題としてというのは、現在検討を行なっているのでしょうか。どうでしょう。
  280. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 現在検討を行なっておりますが、農作物全般に対する問題は非常にむずかしゅうございます。農林省、関係各省とも相談しながら勉強に入っております。
  281. 中島武敏

    ○中島委員 これは一刻も早く、これまた設ける必要があると思います。  また、これに関連して次の問題ですが、水の底質に環境基準が設けられていないわけなんです。現在の公害対策基本法の第二条でこれは除かれているわけなんです。ところが、兵庫県の生野鉱山の場合ですけれども、この鉱山の排水が流れたために市川の流域で農作物の被害が起きている。これはカドミウムであるとか、こういう重金属の被害だというふうにいわれているわけであります。県の調査によりますと、重金属の量は基準以下だというふうにもいわれているのですけれども、同時にまた、同じ県の調査によりますと、河川の底質の中に含まれる重金属の量は非常に多いというふうにもいわれているわけであります。つまり川の底に含まれている重金属が下流の農地を汚染しているのではないか、こういうふうにいわれているわけですね。そういう点からいって、私は環境基準の問題でいえば、底質の環境基準をも設ける必要があると思うのです。その点見解を伺いたいと思います。
  282. 三木武夫

    ○三木国務大臣 中島委員の御指摘のように、その必要があるという考え方のもとに、いま専門委員会で検討を加えておるのでございます。
  283. 中島武敏

    ○中島委員 念のために聞きますが、公害対策基本法ではこのことを除くというふうにはっきりきめておりますけれども、にもかかわらず、専門委員会で検討を加えているというふうに理解してよろしいのですか。
  284. 岡安誠

    ○岡安政府委員 カドミウムにつきましては、水質とそれから土壌につきましてまだ環境基準ができておりません。土壌の汚染につきましては、米の汚染というところから土壌の汚染度をはかっておるというのが現状でございます。土壌と同じように底質につきまして非常に問題がむずかしいわけでございます。と申しますのは、カドミが土壌に入りますと、硫化物その他で変化をいたしまして、それの安定性、不安定性等の検査をいたしませんと、直ちに健康被害その他の被害ということが判定できないということで、基本法ではおっしゃるとおり、必ずしも環境基準をつくる必要もない部類というふうになっているわけでございます。  ただ、私どもやはり底質につきまして、どの程度汚染をされていたらこれにつきましてしゅんせつまたは封じ込め等の策を講じる必要があるかという基準をつくる必要を感じまして、先ほど大臣がお答えいたしましたとおり、専門委員会に諮問をいたしまして、しゅんせつなり封じ込めをするべき判断基準というものをつくりたいということで、大体私どもの見込みといたしましては、今年度中にはある程度の基準ができるというつもりで作業を進めておる次第でございます。
  285. 中島武敏

    ○中島委員 そうしますと、基本法では除くというふうになっているわけですから、この基本法を改正するということでございますか。
  286. 岡安誠

    ○岡安政府委員 対策基本法では環境基準をつくってはならないというふうに規定しているわけではございません。私どもは非常にむずかしいということから、基本法では環境基準をつくるべきものというふうにはなっていないように理解いたしますが、行政を進める意味におきましては、やはり必要であるというふうに判断をいたしまして、現在作業を進めておるというようなことでございます。
  287. 中島武敏

    ○中島委員 じゃ、次の問題に移ります。  水質の環境基準の問題ですが、御存じのように、現在の水質の環境基準は昭和四十五年四月二十一日に閣議決定されているわけです。ところがその後、昭和四十五年七月二十三日に、経済企画庁事務次官の通知がこれに関して出されておりまして、これは「水質汚濁に係る環境基準の取扱いについて」という文書でありますけれども、その中でこういうふうにいわれているのです。「環境基準の設定に当っては、生活環境の保全は、汚濁源の存立も考慮に入れて、経済の健全な発展との調和を図るように考慮するものとされている。」そして基本法第九条第二項と、こうなっているわけです。この基本法と申しますのは旧基本法であります。  そこでお伺いしたいのですけれども、この事務次官通知は取り消されておりますでしょうか。
  288. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いまお話しの通達でございますけれども、これはやはり環境基準ができましたための施行通達ということでございまして、経済企画庁当時出たものでございます。従来行政通達につきましては、取り消しというような行為はいたしませんで、新しく運用方針ということによって改定をするということになっておるわけでございます。私どもは、環境基準一般につきまして、漸次これを見直しをし、よりきびしくするということにいたしておりますので、具体的には、環境基準の見直しということによって、新しい基本法に基づきます環境基準に即応するようにいたすという方針で、現在対処いたしておるわけでございます。
  289. 中島武敏

    ○中島委員 これはしかし、取り消してないとすれば、その通知は実際上生きているということになるわけですけれども、この点はどうなんですか。これは旧基本法のもとでの水質の環境基準であります。そうだとするならば、これについてのその当時の解釈を通知したものは取り消されてしかるべきじゃないか。これが取り消されないままに今日なおあるということは、全くこれは解せないことだと思うのです。この点、もっと明快なお答えをいただきたいと思います。
  290. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そういういろいろ解釈上の混乱も起こりますから、取り消すことにいたします。
  291. 中島武敏

    ○中島委員 取り消されるわけですね。  次の問題に移りますが、今度の国会における共産党・革新共同の村上議員の代表質問において、公害法の改正問題をこの質問の中で要求いたしましたが、これに対して総理は、その必要はない、法改正の必要はないという答弁をされました。この問題について私は具体的にお尋ねしたいと思うのです。  現在の公害対策基本法、この基本法では環境基準も定める、規制基準も定めるというふうになっておりますけれども、これはばらばらになっているわけであります。環境基準は行政目標である、また排出基準は守らなければならないけれども、もちろん守っていても、環境基準をオーバーしてしまうという場合もしばしば生まれてくるわけであります。こういうことが結局公害をひどくしてきたと思うのです。この点では、やはり公害法というのは公害を押える上で実際に効力がある、実効があるものでなければならないと思うわけであります。すでに地方自治体によりましては、川崎でありますとか、あるいは三重県とかいうところでは、総量規制というようなものに踏み切った自治体もあります。しかし、これはその自治体が踏み切れば、なるほど踏み切ることはできるでしょう。しかし、踏み切らなければ踏み切らないままで置いておくことができるという、そういう現在の基本法になっているわけであります。  私は、法律というのは、特に公害法の場合には、それがほんとうに現実の公害を防ぐ、規制をする、押えることができる、そういうものでなければ意味がないと思うのです。そういう点からいって、私は、この公害法はやはりもっと実効あるものに改正されなければならないというふうに考えますし、同時に、いまの量規制の問題でいえば、やはりはっきりこの点、環境基準と総量規制がきちんとリンクされているというふうに法律の上で義務づけなければいけないと思うのです。私はそういうふうに考えますけれども、この点について総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  292. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 個々の排出基準だけでは環境の維持ができないということは、私もそう考えておりますので、総量規制というのは前から主張しておるのでございます。私は、列島改造の中でも総量規制が必要だろう、ということでございますが、この問題に対してはいま検討を進めております。成案を得たいと思っておるわけでございますが、しかし監視体制とか、いま言われる環境別にみんな違うわけであります。東京とか大阪、名古屋、四日市、みんな違うわけでありますから、そういう意味でどういうふうな規模にし、その中の基準をどうするのかということまで検討を進めていかなければならぬと思います。  総量規制を行なう場合には、自動的に環境基準というものとうらはらにならなければ、総量規制はなかなか算出できないという問題があると思いますが、私はこの総量規制までどうしても実現をしたいという熱意を持っておるわけでございますし、できるだけ早く、技術的にはたいへんめんどうな問題があるようですが、私は政治の立場から、やはり総量規制というものはすみやかにつくってまいりたいという考えでございます。
  293. 中島武敏

    ○中島委員 総量規制についての総理見解はわかりましたですが、これをもっと積極的に言いますと、やはり法律の上においてきちんと義務づけるものにしなければならないのじゃないかということであります。これがやろうと思う自治体はやれる、やろうと思わない自治体はやらないで済ますことができるというようなことでは、せっかくの総量規制もほんとうに公害を防いでいくものとして役に立たないわけです。そういう点からいいますと、私は問題として考えますのは、やはり法律の上において、公害法の上においてきちんと義務づけるということが必要なのではないだろうかということを主張しているわけであり、またそれについての総理の御見解を聞いているのです。
  294. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 総量規制というと、一定の地域の環境基準が守られるためにということになりますが、こういう過密の中において総量規制を行なうということになりますと、複合公害的なものがたくさん出ておりますので、一社の煙突からどういうものということをきめるということは、なかなか技術上はむずかしいわけであります。ただ、総量規制という一つ考え方は、裏返して言うと、過密の地域とか複合公害が起こりやすいと認められる地域の排出基準をきびしくするということになれば、それが一つの総量規制というものの裏返しになるかもしれません。  そういう問題で地域的には、これは千葉は千葉として、また四日市は四日市として、水島は水島として一つの基準、それは国がきめるよりもきびしい基準になると思います。それよりもいいんだということにはならないと思います。北海道でもって火力発電所の煙突をつくるという場合は、これは別かもしれませんが、普通の時点においては、地方自治体がつくるものはどうしても国できめておる基準よりもきびしいものになる。これはそうなることがあたりまえだと思います。ですから、私も総量規制ということを提唱しながら、技術的にそれらがどのように解明されていくのかという過程においては、いろいろな議論が存在するわけでございまして、とにかく総量が規制されない限りは、なかなか過密都市の環境も環境汚染を排除するわけにいかないという考え方から、いろいろ考えておりますが、私も専門家ではありませんので、専門家の意見も聞きながら、とにかく環境の保持ということに対して可能な手段があれば、すべてこれを採用していくという考え方でおります。
  295. 中島武敏

    ○中島委員 総量規制が環境基準にリンクされていて、そして地域的なものであるということは、これはもうそのとおりのことなんです。そのとおりのことなんですが、私、繰り返して申しますが、それをきちんと法律の上において義務づけて、すべての市町村、自治体においてこれを行なうというふうに現在の法律はなっていないのです。だから、これをきちんと義務づける必要があるのではないか。法的に義務づける必要があるのではないかということを私は言っているわけでありますし、総理がその点についてどうお考えになっていらっしゃるか。つまりもっとはっきり言えば、やはり現在の法律をもっと役に立つものに改正しなければならないではないかと私は思うのですけれども、その点についての総理見解をもう一度伺いたいと思うのです。
  296. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 現行法は現時点において是なりとして政府は立法をお願いしたわけでございますが、しかし未解決の部分、また適切な処置が見当たらないということで、そのままになっておるところもあると思います。でありますから、先ほども田中委員にお答えをしましたように、やはり世界の例とか、日本は特殊な例もございますから、そういうものの中から実効をあげられるものがあれば、法改正をすることは何もいとわないのであります。いままでの現状の法律が、固定的なものであるなどとは考えておりません。ただ、未知の分野があって、どうも考え方としてはわかるんだが、これを一体どう捕捉するかという問題で技術的に困難な面もあります。しかし、それは時とともに解決できる問題だと思います。そういう問題を考えながら、踏まえながら完ぺきなものにしていかなければならないということは当然だと思います。  それから、今度の工業再配置などでもっていく場合には、自然環境の保全ということが前提になっておりますから、これは建物の建蔽率とか、緑地をつくれとか、道路を広くしろとかいろいろな問題がございますが、そういうものだけではなく、やはり水質、それから大気汚染ということはもうどうしても考えなければなりません、樹木に対する公害というものもございますから。そういう意味で、今度の新しい地域開発等が行なわれる場合には、当然ある一つの基準というものが示されて、それに適合するものでなければ許可をしないというふうに現実的にはなっていくわけです。それが公害基本法や公害関係法の一つの分野を受け持つものだと思います。そういうものがだんだんと大きくなって、日本の将来における公害に対する法制が確立をしていくというふうに考えます。
  297. 中島武敏

    ○中島委員 必要によっては法律を改正して役に立つものにするという、そういう意味と私、理解いたしましたが、それでよろしゅうございますね。  これにも関連しまして、さらに実際に問題になる問題を申しますと、硫黄酸化物の上のせ権というのは、法的には地方自治体において現実には認められていないのです。しかも実際の現実はどうかといえば、公害が非常に激化してくる。ですからこの問題は非常に実態にそぐわない状態になっておるわけであります。しかも、基本法がどういうふうにこの辺の問題をいっておるかといいますと、十八条で、「地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、前節に定める国の施策に準ずる施策を講ずる」云々と、こうなっているわけです。国の法令に違反しない限りにおいて、というふうに強調されているわけで、それからまた大気汚染防止法もいま申し上げましたように、地方自治体の上のせ権というものを認めておりません。  そこで、これらの問題については、やはりはっきりと法の改正を必要としていると私は思いますが、同時に進んだ地方自治体において、いろいろこの辺を非常に苦心しながらやっておられる経験がだんだん生まれてきています。そういう点で、私は中路議員に関連質問をお願いしたいと思います。
  298. 根本龍太郎

    ○根本委員長 中路雅弘君から関連質疑の申し出があります。中島君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中路雅弘君。
  299. 中路雅弘

    中路委員 いまの環境基準と排出基準の問題を中心に、一つ二つ御質問したいのです。  総理は施政方針演説の中で、さきの総選挙を通じて、国民の政治に対する不満を痛いほど感じたというお話をされておるわけですが、先ほど御答弁にあった、国の環境基準が骨抜きになったとか実情に合わないものをきめたのではなくて、いまでは最高水準で考えたんだという御答弁がありましたけれども、私は、時間がありませんから、一つの例で、大気汚染だけで、私の住んでいる川崎のことでお話ししますと、御存じのように川崎は公害の認定地域、国の指定地域に南部のほうはなっているわけですね。この四十六年度の指定地域になっている地域、四十七年度もそうですが、この二年間の年間の平均濃度を見ますと、たとえば大師だとか、川崎の中央地区、みんな指定地域ですが、すべて〇・〇五という国の基準に到達しているわけですね。人間の健康を守るということで公害防止の法律がきめられている、それに基づいて国の公害の環境基準がきめられているわけですが、一方でその環境基準を達成している地域が、同じ国の公害病認定患者の指定地域になっている、これは全く私は矛盾することだと思うのです。  今週の月曜日のNHKのテレビのニュースのときでも、このことが問題になって、川崎の住民の人たちが、いまのこの中でもどんなに公害でひどい状態になっているかということを訴えている。そのときにニュースで、数字で国の環境基準は〇・〇五だということが出て、現にそういうふうに近くなっている。そこでこれだけ苦しんでいるわけですから、私は国の環境基準がいかに実情に合わないか。環境基準に到達しているところで、現に認定患者の指定地域にしているわけです。そこでは現に、一番新しい資料で、ことしの一月三十日現在で千四百四十名の認定患者がいるわけです。市の医師会の調べでもこの十倍近く、約一万二千人の対象患者がいるだろうといわれている地域なんです。それから見ても、いまの国の公害の環境基準が骨抜きどころか、実情に合わないどころか、全く矛盾しているということは、私ははっきりしていると思う。  もう一つは、総理の総量規制を導入するようにというお話がありましたけれども、いまのやられている排出口での規制ですね、排出基準での規制でいいますと、川崎の場合をとってみると、ことしの一月一日からKの値が六・四二の規制ですから、全国では一番規制のきびしい地域です。そこで考えてみても、四十六年度の一年間に亜硫酸ガスの排出実績が約八万八千トンです。ここでいま国のきめている排出規制でとってみた場合に、実際の全体の許容排出量はどのくらいになるか、九五%を占める四十二工場全部合計しますと十九万トンになるわけですね。現在の実績の二・三倍出してもまだ許容の中に入るわけです、いまの国の規制基準では。いまでさえこれだけ、千四百人の公害病認定患者がいる。それで亜硫酸ガスをさらに倍以上出しても国の基準にはまだ抵触しないんだ、こういう全くちぐはぐな状態が起きているわけですから、いかに人間の健康を守るということで公害対策をやっているんだといっても、この行政を見ても全く逆に手を縛っている。だから川崎のような地方自治体では独自に公害防止条例をきめて、地域別の総量規制をやっているわけですね。  しかし、いま中島委員が言ったように、国の法令と地方の条例の場合に、この国の法律に基づいてそのワクでやられるわけですから、法的な体系ではいま問題が残るわけです。だから私は、国の基準をもっときびしくきめるとともに、それを行政指導じゃなくて、やはり拘束力を持った基準としてきめる、それに基づいて総量規制の方式を、国の方式としてもはっきり採用するということの規制をやらなければ、実際にこういう公害多発の地域の行政というものは成り立たないと思うのですね。そういう点で、地域ではもうそういう総量規制をやっているところがいまふえてきているわけですから、公害問題では国のこういう行政が一番おくれているわけですから、公害の特にひどいところでは、この問題を国の方式としても採用するということを、私は、はっきりとここで御答弁をお願いしたい。  もう一つ補足しますと、さっき、窒素酸化物が技術的にまだ非常に困難だとおっしゃいましたけれども、たとえば、同じ川崎で見ても、川崎で出される燃焼過程からの窒素酸化物は、市の推計で約五万トンから七万トンに達するといわれています。そうしますと、亜硫酸ガスのトン数とほぼ同じぐらい、匹敵するぐらいの窒素酸化物が出ている。しかも、これが光化学スモッグやいろいろな大きな要因になっているといわれているわけですから、やはりこれも規制の対象にして減少させるということもここではっきりしなければ、大気汚染の問題一つとってみても、全くこれは規制にならないのですね、いまやっていることは。これは最高水準を集めて考えた案だと言われますけれども、私は、こういう点では地方自治体のほうがよほど苦労していると思うのです。川崎では独自に、そういうために監視センターもたくさんつくりました。四十七年度の予算で、市の予算の中で、公害対策の予算は八億円使っているのです。これに対して国が幾ら補助を出したか、支出したか。八百万円しか出していないのですよ。一%しか金を出してないのです。いまの法令のワクの中の施設にしか出さないというわけです。硫黄酸化物もそういう調査をやるとすれば、いろいろ調査の施設も必要でしょう。そういう問題について国がもっと施策をやれば、金も出せば、こういう問題の研究も進むわけですね。こういう点で、いま中島委員が質問しまして、これから研究していくのだ、努力するのだと言われているわけですけれども、こういう点の不備ないまの公害関係の法案を、大気汚染だけについて質問しましたけれども、改正をして、不備を直して、また行政指導だけじゃなくて、法的な拘束力を持った一つの方向として、いま総理が言われた点をはっきりと公害行政の中で確立していくということを、私はここで言ってもらいたいというように思うのですが、どうですか。
  300. 三木武夫

    ○三木国務大臣 川崎の実例については、四十四年でしたか、あすこに排出基準をきめたのは。しかし、三十年代からの蓄積がずっとあった。そういうところで、いろいろな多数の患者の方が出られたという原因もあったと思うのです。  そこで、一つにはやはり排出基準というものについては、総理も言われたように、いろいろな地方の実情等も照らし合わせて、これは強化していく方向へ持っていく。しかも、いろいろ困難はありますけれども、どうしてもやはり総量規制、いま硫黄酸化物や窒素酸化物のお話があったが、いろいろなものがその汚染の原因になるわけですから、総量規制というものに踏み切らなければ、公害の防止ということはなかなか目的を達成できないので、困難はあっても、それをひとつやろうということ。硫黄酸化物についても、いろいろと困難な問題はあるけれども、これに対する排出基準をきめて、そしていろいろな点から、いま言ったような排出基準の全体としての見直しもやる。硫黄酸化物に対しても、窒素酸化物に対しても、これは排出基準をきめる。総量規制も、今後実施する方向でいま準備を進めておるわけですから、そういういろいろな各面から、公害防止というものを、もっと住民の不安のないような方向に持っていくための努力をいたしたいと思っておる次第であります。
  301. 中路雅弘

    中路委員 もう一回だけ御質問しますけれども、先ほど中島委員も言った点ですけれども、現行では、地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、国の施策に準ずる施策を講、ずるということになっていますね。だから、地域で非常に公害のひどいところもあるわけですから、国の場合に環境基準をきびしくする。その基準を最低必要な基準としてきちっと確立をして、地方自治体がその規制値についてはさらに条例によって上のせできる。そういう点で、やはりいまの公害法と条例との関係も、実情に応じて地方自治体が条例によって、一そうきびしい規制をとるということができる方向をしっかり確立しないと、この点は市長なんかの話を聞きましても、実際に法体系で言われれば、いま地方自治体がやっているのはいろいろ問題もあるということを言っているわけですね。しかし、実際国の行政がおくれているからそうせざるを得ないわけです。だから、国のほうが法的にもこういう方向をとっていくというのを、やはり地方の実情も違うわけですから、やはりはっきりと保障するということが必要なんではないかというふうに思うわけですが、環境基準をきびしくするということともに、この基準が最低限のものだ、地方の実情に応じてさらに上のせすることが条例によってできるのだということも、はっきりとさせる必要があると思うのですが、その点はどうですか。
  302. 三木武夫

    ○三木国務大臣 硫黄酸化物の上のせについては、これはやはり通産省とも十分に協議をいたしまして、実現できないかという方向で検討をいたすことにいたします。この問題が、やはり法律上できないことになっておりますから、この問題は、何とか解決をするように努力をしてみたいと思っております。
  303. 中路雅弘

    中路委員 それじゃもう一点だけ。いまの問題、あと続いて中島委員にやっていただきますが、先ほどの社会党の委員の人の発言の中であったわけですが、基地の問題ですね。  一つの例でお話ししますけれども、今月の三日の日に那覇軍港で、ガスが漏れて中毒事件が起きているわけですけれども、これはフローリンガスという猛毒性のガスなわけです。こういう問題を見た場合に、たとえば輸送の際に、国内法では、高圧ガス取締法で、移動の際には都道府県に届け出しなければならないわけですが、この三日の日の問題は、米軍のほうがこの容器の内容物がからだといって実際届け出もしていないわけですね。それでこういう事件が起きている。また港湾の場合は、国内法でも、危険物を扱う場合には海上保−安庁に届け出をしなければならないということですし、また、現実にある地位協定でも、事故の際にはすみやかに通報しなければならない。これも怠っておるということがやられているわけです。基地の場合に、油の問題だとか、いろいろ問題があちこちでいま起きてきていますけれども、単にアメリカに要請して中に調査に入るということじゃなくて、先ほどもお話のあったように、公害法で、米軍自衛隊の基地に対しても規制の対象からはずさないで、この問題については、人権の問題でもありますし、生活環境の擁護の問題でもありますから、基地内の立ち入りの調査やあるいは輸送の問題について、安全をはっきり確保するためのしっかりした規制が必要ではないかと思うのですが、この点についてだけもう一点伺います。
  304. 三木武夫

    ○三木国務大臣 基地内の問題については、大平外務大臣も答弁されたように、公害問題というのは国民生活に大きな影響があるわけですから、これはやはり米軍も、公害に関する規則、法令を尊重することは当然であります。必要があったら同意を得て立ち入り検査もする。また、そういういろいろな公害を起こすような場合もありますから、われわれのほうとしても、去年の暮れに報告を求めてあるわけです。そして、その報告の回答も来つつありますが、そういうことで、基地内の公害をできるだけ防止をするように努力をしていきたいと思っております。
  305. 中島武敏

    ○中島委員 では続けてお伺いしたいと思いますが、いま、SO2その他地方自治体の権限問題と総量規制の問題、こういうことが必要だということが明らかになってきたと思うのです。さらに私は、届け出制を許可制にするという必要があると思うのです。現行法は、公害発生施設は届け出制であります。そのために、公害施設でも立地を認めざるを得ないというふうになっているのです。これではほんとうの意味で公害を防ぐことは非常に困難であります。そういう点から、届け出制を許可制にはっきり改める、そして基準をきびしくするということがどうしても必要だと思います。現実の問題としてもこういう問題が起きている。  たとえば、これは四日市でありますけれども、四日市の裁判判決が出てからあとに、住民代表と昭和石油が交渉をして、そして、二万バーレルの施設を新しくつくるというようなことはやらないというふうに一たん約束をした。ところが、これがその後の交渉の中で取り消されるというような事態も起きているわけであります。四日市の場合には、まだ非常に公害病患者も続出をいたしております。一カ月約二十人、ずつぐらい毎月ふえているというふうにも話を聞いているわけであります。ところがその一方で、昭和石油はこの増設あるいはこれの稼働ということをやはり進めようとしているわけであります。私は現実の問題として、これでは公害をほんとうに防ぐということはなかなかむずかしいのじゃないかということを非常に痛感するわけであります。  そういう点からいって、具体的にお尋ねしたいと思うのですが、少なくとも、四十三年ですか、あの専門委員会が報告を行ないました数値が達成されない限りは、工場の新増設ということは認めるべきではないのではないか、公害を防ぐという観点からいえばどうしてもそうせざるを得ないのではないかというふうに私は考えるわけですけれども、これについての御見解を承りたいと思います。
  306. 三木武夫

    ○三木国務大臣 届け出になっておりますけれども、事前に十分な審査をしまして変更を命ずることもできるわけでありますから、したがって、そういう公害防止の見地から、いろいろな増設等に対しては、事前に十分な検討を加えたいと思っております。
  307. 中島武敏

    ○中島委員 なるほど、確かに事前の検討を加えることはできます。しかし、その事前の検討はどういう基準に基づいてやられるかといえば、やはり排出がきちんと法的になっておればよろしいとかいうことになるわけなんです。ところが現行法は、先ほど来明らかになってきておりますように、環境基準一つとりましても、また排出基準の問題でもそうですけれども、十分に国民の健康を守れるというような数値ではないわけですね。そうしますと、そういうこと、がわかっていても、やはり届け出制の場合にはこれを許可しなければならないというふうになってしまうわけであります。そうすると、やはりここで必要になってくることは、公害から人間の命や健康を守るということをほんとうに最優先に考えるならば、それは守れるようなものにどうしてもしなければいけない。つまり、ことばをかえて言えば、十分にこのことが保障されるためには許可制にするということが必要なことではないかと、重ねて私は申し上げたいと思うんです。外国におきましても、ほとんどの国々は許可制をとっております。  そういう点からいっても、日本の場合には、もっと外国とは違った地理的な、あるいは自然的な、たいへんな条件があると思うんです。そういう条件に適合して考えるならば、一そうのことこのことが必要になってくるのではないかというように考えますが、重ねでお伺いしたいと思います。
  308. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いまの点は、二つの問題があると思います。環境の基準を強化せなければならぬという点が含まれておるが、これはやはり強化の線で今後検討を加えるということを申し上げておるわけであります。  それから届け出というものは、そのことによって事前の調査ができますから、いろいろな設計等の変更等も命ずることもできますけれども、あるいは許可というようなことも、それは十分に検討すべき問題だと思います。いまのところは事前の協議を通じて、許可制にあるような、そういう目的をそういう形でもって達成をしていっておるわけでございます。許可制については、今後の研究課題といたします。
  309. 中島武敏

    ○中島委員 すでに四日市の話を申し上げましたが、そういうことを考えてみましても、これは研究とおっしゃれば研究でしょうけれども、しかし、届け出制のもとでは非常にその点で制約があると思うのです。やはりどうしてもこれは許可制にしなければならないという点で、このことを強く推進をする必要があるのではないかというふうに思います。  さらに、次の問題について関連してお尋ねしたいと思いますが、ほんとうに公害をなくしていく、押えていくということをやろうと思えば、だれがいままでこの日本の公害を押えてきたか。私は、一言ではっきり申しますと、やはり住民、国民が公害からみずからを守るために立ち上がり、そうして住民が公害を押えてきた。これが日本の公害問題についての歴史であると思います。そういう点からいえば、ほんとうに公害をなくしていくということのためには、住民の意見、住民の声、これを制度的にもきちんと行政に反映をさせるという必要があるんだと思うのです。  そういう点から、私は一つの問題としては、最も住民に密着している地方自治体にもっと権限を渡すという必要があろうと思います。この点は、何も硫黄酸化物の上のせ権だけの問題ではありません。たとえば電気・ガス事業におきましても、地方自治体の権限は制約されているわけであります。そのために、公害を守ろうとすれば、東京にしても、横浜にしても、どこにしても、たいへん苦労するわけです。そういうことからいって、地方自治体にもっと権限を移すということが必要であると思う。  もう一つは、住民をほんとうに公害行政に参加させる。そういう意味からいって、公選制の公害委員会というのを設ける必要があるのではないか。そうして、個々の公選制の公害委員会が相当な権限を持って首長を補佐したり、あるいはまた、みずから独自の立場から公害の調査を行なったり、あるいは諮問にこたえて政策を発表したり、あるいは違反を取り締まったり、あるいは告発をしたり、あるいは患者の認定を独自に行なうとかいうような、そういう公害行政を住民に密着して進めることのできる機能、権限というものを持った公害委員会を設ける必要があると私どもは考えますが、その二つのことについて御意見をお伺いしたいと思います。
  310. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま、公害問題について私は思いますのに、二つの点がやっぱり大事である。一つは実情を把握することであり、もう一つは科学的な究明をするということだと思うのです。公害問題は世界的にまだ未知なといいますか、究明されていない未解決の問題があまりにも多い。したがって、今後やはり科学的に究明して、公害というものを追及していかなければならない。したがってそういう点で、実態の把握という点では、いま御指摘のように住民と密着すべきだと思う。住民の協力を得なければ実態調査はできるものではない。したがってそういう点では、実態の調査においては住民の協力を得て、実態調査の誤りなきを期することが必要である。  しかし、科学的な究明はやはり科学者というものにゆだねなければ、ただ住民の人たちが集まっただけでは、今日の段階にあっては公害問題の解決にはならぬと私は思う。やはり科学者の一つの大きな課されておる責任というものが多い。したがって、いまここで住民の公害委員会のようなものをつくって、それで公害問題の解決に資せると私は思わない。しかし、前段で言われた、公害問題に対する地方自治体の権限を大幅に強化すべきだということには賛成です。地域社会の住民の生活と一番密着しておるのはやはり自治体ですから、できるだけ権限は地方自治体にゆだねることがいい。しかし、住民による公害委員会というものは、今日の段階では、いま言ったような点から、やはり科学者が公害を究明するということが一番必要なんで、実態調査の場合に地域住民の協力を願う、こういうことにしたい。委員会の設置が公害問題の解決になるとは思わない。
  311. 中島武敏

    ○中島委員 その委員会が科学者を任命するといいますか、その選出された委員会が科学者その他適当な人々を任命して、もっと具体的な研究をやるという、そういう考え方なんです。ですから、実際に住民ともきわめて密着をしており、そしてまた実際の権能も持っており、そしてまた科学的な調査研究ということも行なうことができるという、そういうものとしての公害委員会という意味で申し上げたわけであります。
  312. 三木武夫

    ○三木国務大臣 実際問題として、公害問題というものは、よほど科学的に究明されなければならぬですよ。これはいろいろな問題で、世界的にいって未解決の問題が一ぱいですからね。そういう点で、公害のわれわれの研究所、研究機関というものを来年の一月から開設しようとするのもそのためであります。地方のいろいろな科学者といっても、これは日本の全頭脳を動員して公害問題の解決に当たらなければいかぬ。地方地方でそういう方々もおられましょうけれども、もう全日本の最高の頭脳を結集して公害問題の究明に当たらなければなりませんから、地方自治体ごとの科学者も入れた公害委員会というアイデアは、公害問題を解決する目的を達成するのにはいかがかと思って、賛成はいたしかねるわけであります。
  313. 中島武敏

    ○中島委員 この問題、もっと議論をしておりますとまた時間もなくなってしまいますので、また別の機会にもっと詳細に問題の提起を行ないたいと思います。  引き続いて次の問題でありますが、患者の救済問題についての見解をお聞きしたいと思うのです。  現行の救済法が大気と水だけに限られているとか、あるいはまた相当範囲にわたる著しい大気の汚染または水質の汚濁が生じたところで、その影響による疾病が多発している地域で、政令の定めるところとか、非常に限定をされております。そしてまた医療関係だけに限られておりますし、その給付内容もきわめて貧しいと思うわけであります。しかも、汚染者負担の原則という点からいっても、この現行法は企業が半分しか負担しないというふうになっているわけですけれども、これも汚染者負担の原則からいって私は正しくないと思うんです。そういう点で、私どもは、この患者救済、被害者救済の問題については、全面的な法改正を提起したいというふうに思っておりますが、具体的な問題で少しお尋ねしたいと思います。  国が、政府が認定を行なわないにもかかわらず、実際には県や市が患者救済のために地域指定を行なっておるという事実は非常にたくさんあるわけです。このことは何かといえば、政府が行なっている地域指定というのがあまりにも実情に合っていない、これでは救済されないということを、これははっきり証明していると思うわけであります。たとえば、これも四日市のことですけれども、四日市のあの問題になっております磯津のすぐ隣に楠町というのがありますが、ここの楠町の小学校では、県下で三番目に認定患者が、子供さんが多いわけなんですね。これは町が独自に認定しているものですけれども、全県下ならしてみても三番目に多い。ところが実際には、これが政府の指定地域からははずされているという実情にあるわけであります。  そこで、具体的にお尋ねしたいんですけれども、指定地域を設けている、指定地域を行なうその基準は一体何に置いていらっしゃるのかということ、これをまずお伺いしたいと思います。
  314. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今度、損害賠償保障制度をつくろうとしておりますが、その場合に限定をしましたのは、たとえばイタイイタイ病であるとか水俣というような特異的な疾患に対しては、必ずしも地域指定でなくして、地域外であっても、十分な臨床的な検査を受けて、そしてその公害病に指定を受ければ、いまでも特別措置法の対象になっておるわけです。やはり今度の損害賠償保障制度でも変わらない。  ただ一番問題なのは、非特異的な疾患、たとえば呼吸器系統の疾患のごときは、普通のぜんそく、気管支炎のようなものは一般にもあるわけですね。そういう点で、その因果関係といいますか、汚染物質と疾患との因果関係というものが、なかなかその点が立証しにくい点もあって、相当その地域にかたまってそういう病気が発生したということで一応地域指定するという考えでないと、特異な疾患はいいのですよ、それはもういまでもないのですからいいけれども、非特異的な疾患については、どうもやはり処理しにくいのではないかという考え方から、今度の損害賠償保障制度でも、地域指定を行なうということになっておるわけでございます。
  315. 中島武敏

    ○中島委員 地域指定そのものがいけないということを私は申し上げているわけではないんです。そうではなくて、実際にはたいへんに公害病の患者が続出している。ところが、もう川一つ隔てたところではなくて、道路一つ隔てて、こちらは認定される指定地域である、こちらはそうではないという、こういうところが至るところにあるわけですね。全国至るところにそういう実態を見ることができるわけです。そのために、片一方の指定地域外の患者は非常に救われない気持ちを持っているわけなんです。一体何が基準でそういうふうになっているんだろうかということであります。私が環境庁の資料を見ましたところによりますと、これはどうやら環境基準が基準にされているのではなかろうかと考えられるのですけれども、そうなのかどうかということについてお伺いしたいと思います。
  316. 三木武夫

    ○三木国務大臣 一つは、線を引いてすぐ隣合わせで、それがやっぱり指定を受けないと、何かそういうときの矛盾を私自身も感ずるのですよ。この指定の問題というものは、今度の損害賠償制度の中で検討をしてみたいと思っています、ボーダーの方々に対しても。しかし、どこかで線を引かなければならぬ。損害賠償保障制度に限らず、実際の政治の中にそういう問題というものは、この問題ばかりでなしに、いずれの場合でも起こるのですね。線を引けば、そのボーダーの人たちという問題に対して。  それと、やはり基準になっておるものは、大気の汚染なら汚染というそういう汚染物質、それによって公害、健康の被害を受けた、それがその地域で非常にやはり発生率が、何といいますか、有症率及び有病率が高い、こういうことを基準にして指定をしておるわけです。だから、公害のその地域における大気、環境の汚染の状態、有症率、有病率、こういうものを一つの基礎にして地域の指定を行なっておるわけでございます。
  317. 中島武敏

    ○中島委員 私はその点で、やはり実際には指定地域外のほうがもっと患者が発生しているという場合がある。その点ではもっと基準を下げる必要があるのじゃないか。そしてもっと合理的に、ほんとうに患者が救われるというふうなものに、やはり即刻改める必要があるんじゃないかと思うのです。検討ももちろんけっこうですけれども、やはりもっと急ぐ必要があるんじゃないだろうかということを強く要求をいたしたいと思います。患者は実際に苦しんでいるわけですから。ですからこの問題は、いまは環境庁長官も不合理な面があるということを認められておられるわけですけれども、もっとこれを急ぐということを強く要求をいたしたいと思います。  次の問題に入りたいと思います。新幹線の問題についてなんですけれども、御存じのように列車や航空機には騒音基準がない、あるいは適用されてない、こういうふうに言っていいと思うのです。この間、新幹線騒音の暫定基準が発表されました。また、国鉄のほうからこれについての計画書が一月三十日付で出されております。それを見てわかりますことは、音源対策の基準が八十ホンというふうにされているわけであります。なぜ音源対策の基準を八十ホンにしたか、その理由が書かれておりますけれども、それは、苦情の大半が八十ホンをこえる地域で発生しているというのが一つの理由のようであります。それからもう一つは、その妨害度が自動車騒音の七十から七十五ホンに相当しているからである、こういうふうにいっているわけです。  ところが、自動車騒音の七十から七十五ホンといいますのは、都道府県の知事が生活環境を保全するために自動車の最高速度を制限したり、あるいは自動車の通行禁止をするという、こういう問題について、交通規制ですね、これを公安委員会に要請する段階の数字なんです。そうすると、この八十ホンというのは非常に高い、非常に実情に沿ったものではないというふうに考えられるわけで、実際に学者の調査によりましても、やはり五十五ホンから六十ホンぐらいになりますと、睡眠妨害であるとか、あるいはまた情緒的な影響であるとかいうようなものが生じてくるということが報告されております。つまり、この八十ホンというのは健康を守れるものではないということがはっきりしていると思うのです。  そこで、私はもっとこれを引き下げるべきじゃないか、もっと実情に合ったものに引き下げるべきではないかというように考えますけれども、この点についての御見解をいただきたいと思います。
  318. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この八十ホンというのは、専門家が十分な検討を加えて出された数字でありますが、しかし、八十ホンというのは地下鉄ぐらいの音でしょうから、それはやはり相当な音であることは間違いがないわけで、これはやはりいま言われたように、何か騒音の防止技術というものを、国鉄総裁も来られておるのですが、徹底的にこの技術の開発というものをやられて、だんだんとこれは下げていかなければならぬということを感じますよ。いまは専門家がいろいろな条件のもとで出された数字でありますが、私も、これはやはり満足する数字とは思わない、相当にやかましい音を出す数字であることは間違いありませんから、今後の技術開発、特にこの推進をする必要がある、こう考えております。
  319. 中島武敏

    ○中島委員 いま環境庁長官は、専門家が出された数字だと言われましたけれども、その論拠とされておるのは苦情が多いからというだけなんです。これは専門的な考えじゃありませんですね。専門家が出した考えとはいえないと思うのです。そして現実に八十ホンというのは、これはたいへんな数字なんですね。先ほども申し上げたように、自動車のいわば、言ってみれば緊急時の措置を要請するというような段階の数字に相当するわけなんです。この点では、私は全く実情に沿ったものでないというふうに考え、そしてまたこれは改めるべきだと思うのです。もっと下げなければいかぬ、実情に合ったものにしなければいかぬと思いますが……。
  320. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま申したように、これはわれわれも満足すべき数字とは思わないので、暫定基準にしたわけですね。これはやはり、正式な基準というものは近い将来きめたいと思っておりますが、新幹線のいろいろな騒音に対しての苦情もあるし、また新幹線の拡張も行なわれるわけでありますから、新幹線の騒音に対する問題はやはり緊急を要する問題なので、暫定的な基準として出したもので、これは、環境基準を出す場合においては十分な検討を加えるという性質のものであります。
  321. 中島武敏

    ○中島委員 これと関連して、あとでいまの問題に返ってきたいと思いますが、障害対策の基準が八十五ホンとなっているわけです。この障害対策の八十五ホンという基準がきめられているわけですが、実際の障害対策は、これはいつからやられるのかということについてお尋ねしたいと思います。
  322. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 お答えいたします。  この障害対策のほうも、勧告が出る前に全然やらなかったわけではないのでございますが、しかし、勧告が出ましてその線に沿って急速に、防音対策のほうも、騒音対策のほうも、障害対策のほうもこれを実施しようということで、国鉄のほうもその対策を私の手元まで具体的に示してきておるのでございます。  でございますから、現在でも可能なものは実行いたしておりますが、しかし、予算面におきましては、実は来年度は東海道線関係を主にいたしまして大体百三十五億ぐらいの予算をとっております。現在の開通しております新幹線全部にわたりまして、騒音あるいは障害両方の対策を実施するにつきましては、大体八百億ぐらいの設備投資が要るだろう、こういう予想をしているのでありまして、実行できるものからこれはどんどん実行させるようにしておる次第でございます。
  323. 中島武敏

    ○中島委員 現在すでに既設されている東海道新幹線あるいは岡山新幹線、これはなるほどいまの音源対策八十ホンは十分なものではないから、もっと下げるという検討を加えるというお話がありました。これからつくられる東北、上越新幹線あるいは成田新幹線、さらにもっとつくられる計画のようでありますけれども、これについてもやはり八十ホンという数字を維持していくお考えでしょうか。
  324. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 先ほど環境庁長官からお答えになりましたように、現在出ております環境庁の勧告は暫定的なものでございます。したがいまして、さらに研究調査の結果、もう少し違った結果が出るかもしれません。しかし、われわれといたしましては、権威のある中央公害対策審議会の議を経まして環境庁のほうから権威のある勧告を出しておられると信じますので、いまのところ、今後の新幹線につきましても八十ホンというものを基準にしていかざるを得ないと思っておりますが、しかし、お話しのように、これは八十ホンに全部押えるという意味じゃありません。もちろん、そのほかに車両の改造でありますとか、あるいはレールをもっと重くすれば騒音が非常に少なくなるそうでありますが、そういう点、あらゆる点を考えまして八十ホン以下に押えるように最大限の努力をしょう、こういうことになっておるわけでございます。
  325. 中島武敏

    ○中島委員 そうしますと、現在のは暫定基準であって、環境基準が設けられるまでは、しかし八十ホン、なるべくそれ以下に押えるということでありますけれども、これが続くということになるわけですね。私はこの問題について、これまた非常に大きな被害を及ぼす問題だと思うのです。  そういう点からいいますと、既設の新幹線については、スピードを落とせば文句なしに音は小さくなるわけであります。したがって私は、人間のほんとうの環境を守る、人間優先の政治ということを総理も今度の演説の中で強調されておられましたけれども、これをほんとうに貫くということからいうならば、やはり既設のものについては、そういうふうにスピードを落とすということも考えなければならないんじゃないか。あるいはまたこれからつくられる新幹線についても、現在の八十ホンなんということではなくて、もっともっとみんなの生活環境を守られる、そういうものでなければならない。もしどうしてもそれができないというのであれば、人間優先の観点に立つならば、やはりそれが、そのきちんとした保証があるまで待つというふうにするべきではないかと思うのです。この辺についてお伺いしたいと思います。
  326. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 簡単にいえば、スピードを落とせばということでございますが、それはそのとおりだと思います。しかし、新幹線は一定の時速で走るというところに、新幹線の意義があるわけであります。二百キロ・パーアワー、二百五十キロ・パーアワー、こういうことでございますから、すぐこれを鈍行にするというわけにはいかないと思いますが、しかし、技術的に解決できる面は相当あると思います。札幌オリンピックのときに、ゴムタイヤをはいた新しい乗りものをつくったわけでございます。これも一つの知恵であろうと思います。高速自動車道でも騒音公害やいろいろありますので、防音壁をつくったりいたしております。そしてまん中に何か薄いものでもいいからつくれないかということでもって、両方一緒にすれ違うときの非常に高い騒音というようなものが防除できるという面もございます。まあいろんな問題が技術的にも研究され、また施設の上でも整備をされていくということで解決をしていきたい、また、それ以外にないのじゃないか、こう思います。  特に、これからつくられなければならないという成田新幹線とか大都会の中というものに対しては、やはりいろいろな面から、構造上できるところはトンネルにするとか、いろいろな問題があると思いますから、各般の技術的な改良を一緒に考えていく。スピードを落とせということに対しては議論が相当あるだろうと思いまして、この問題に対しては慎重に考えなければならぬ問題だと思います。
  327. 中島武敏

    ○中島委員 私は、やはり人間の生活環境あるいは人間の健康ということを優先して考えるということを貫くとするならば、いまの総理の意見を納得することはできません。この問題に関して、時間がだんだんなくなってまいりましたのでまた別の機会にはっきりとやりたいと思います。  最後に一つ二つだけ、ごく簡単なことですけれども、お尋ねしておきたいのですが、東北、上越新幹線の問題について、北区の区長と国鉄第三工事局長との間に、区の意見を無視しては、区の意見といいますか、この場合は区の意見のようでありますが、無視しては工事に着工しない、こういうふうな約束があったそうでありますが、すでにまた何か工事に着工されているというような話も聞きますけれども、この点はいかがでしょうか。
  328. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私のほうでも、新幹線の建設にあたりましては、地元の、ことに自治体の方々とできるだけお話をした上でということで、そういうふうなお話し合いになっているというふうに思います。  いま先生のおっしゃったことは、たぶん私のほうの用地の中でやっておることじゃないかと思います。もちろん東北、上越新幹線は政府決定され、法律の手続に基づいて決定され、また昨年度予算も国会において通過したわけでございますので、私どもといたしましては、その限度におきまして仕事を進めるという義務を持っているというふうに存じます。しかしながら、鉄道の用地外におきましてはいろいろの問題がございますが、用地内におきまして、たとえば要らない建物をどけるとかあるいは何か仕事をする場合には、まず老朽の取りかえを始める際に、やはり新幹線のことを考えてやるというふうな意味で工事を始めているというところがございます。そういうことだろうというふうに存じまして、いまの、地元とのお話し合いを破って、地元にかってに云々というようなことはないということを確信いたしております。
  329. 中島武敏

    ○中島委員 そういうことであれば、そのことはわかります。  最後に、これは最後ですが、総理にお尋ねしたいのですが、先ほどいろいろお尋ねした中で、公害法については実情に沿ったものに改正するというお気持ちの表明がありました。このことについて、今国会で公害法の改正をおやりになるというふうにお考えになっていらっしゃるのか、あるいはもしそうでないとすれば、いつおやりになるというふうに考えられるのか、この点について最後にひとつお伺いしたいと思います。
  330. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 現行法の今国会での改正は考えておりません。しかし、先ほどからるる申し上げておりますとおり、世界各国の例もございますし、まだ不明の分野もございますから、実情把握につとめていかなければならぬわけでありますから、この法律を理想的なものにするためには積極的に努力をすべきでございますし、改正を考えないということではありません。実効があがるような方向で検討しなければならぬことは、当然のことだと申し上げておるわけであります。
  331. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。  次回は、来たる九日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十分散会