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1973-02-06 第71回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月六日(火曜日)     午後一時五分開議  出席委員    委員長 根本龍太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小澤 太郎君    理事 小沢 辰男君 理事 田澤 吉郎君    理事 湊  徹郎君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 谷口善太郎君    理事 山田 太郎君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君       伊能繁次郎君    臼井 莊一君       大野 市郎君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       小平 久雄君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       塚原 俊郎君    灘尾 弘吉君       野田 卯一君    野原 正勝君       福田  一君    保利  茂君       細田 吉藏君    前田 正男君       松浦周太郎君    松野 頼三君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    大原  亨君       小林  進君    田中 武夫君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       梅田  勝君    神崎 敏雄君       平田 藤吉君    岡本 富夫君       安里積千代君    小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 櫻内 義雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         郵 政 大 臣 久野 忠治君         労 働 大 臣 加藤常太郎君         建 設 大 臣 金丸  信君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       江崎 真澄君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         人事院総裁   佐藤 達夫君         総理府人事局長 皆川 迪夫君         総理府統計局長 加藤 泰守君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         沖繩開発庁総務         局経理課長   和田 善一君         沖繩開発庁振興         局長      渥美 謙二君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         文部省管理局長 安嶋  彌君         厚生大臣官房長 曾根田郁夫君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林省農林経済         局長      内村 良英君         農林省構造改善         局長      小沼  勇君         農林省農蚕園芸         局長      伊藤 俊三君        農林省畜産局長 大河原太一郎君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         食糧庁長官   中野 和仁君         林野庁長官   福田 省一君         郵政大臣官房電         気通信監理官  舘野  繁君         労働大臣官房長 藤繩 正勝君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         建設政務次官  松野 幸泰君         建設省住宅局長 沢田 光英君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月六日  辞任         補欠選任   津金 佑近君     神崎 敏雄君   中島 武敏君     梅田  勝君   不破 哲三君     平田 藤吉君 同日  辞任         補欠選任   梅田  勝君     中島 武敏君   神崎 敏雄君     津金 佑近君   平田 藤吉君     不破 哲三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これより会議を開きます。  昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。安宅常彦君。
  3. 安宅常彦

    安宅委員 最初に私は、ぜひ聞いておきたいことがあるのです、総理。それは、きのうまでの予算委員会の論議を通じて私の受けた感じ、あれは聞き間違いでない限りはそれが真実なんですが、あなた、増原さんを呼んで、そして勉強してくれということを命じた、こういうことになっておるのですが、しかし、私がいろいろと調査をしたところ、そうではなくて、四十七年の十月六日の国防会議議員懇談会の席上、あなたが発言をして、これは四次防をきめる準備のときの懇談会ですが、そのときにそういうことをお命じになった、こういうふうに確かなことが私の耳に入りましたが、そのとおりですか。
  4. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いや、そのようではないと思います。私は、さだかにいつどこでということは記憶しておりませんが、いずれにしても、四次防に対していろいろな議論があるということは前提になっておりますが、これは国防会議議員懇談会国防会議の席上というようなところで依頼をしたのではないと思います。それはその当時の記録を調べてみなければわかりませんが、これは国民の無制限な防衛費の拡大の不安に対して、さまざまな面から検討しなければならない、政府もやっぱりPRが足らないということに対してPRをしなければならない、そういうことで言ったのでございまして、私はそうではないと思います。
  5. 安宅常彦

    安宅委員 これは確かにそのときに出席をしておった方で、当時の大臣とこれは違いますから、違った人は別として、列席した人はわかるわけでありまして、懇談会ですから……。これは懇談会を四十七年十月六日に開いたということは事実でしょうね、防衛庁長官
  6. 増原恵吉

    増原国務大臣 平和時の防衛力限界について勉強を……(安宅委員「十月六日に国防会議懇談会を開いたか開かないかを聞いている」と呼ぶ)ちょっとそれじゃ……。
  7. 安宅常彦

    安宅委員 それでは続けますが、じゃ十月九日に国防会議を正式に開いて、これは懇談会から切りかえて、それで四次防を決定された、こういうことなんでしょう。どうですか。そこで思い出しませんか。
  8. 増原恵吉

    増原国務大臣 いまちょっと調べさせていただきます。十月九日であったように記憶をいたしまするが、ちょっと調べさせていただきます。
  9. 安宅常彦

    安宅委員 このことは各新聞とも、四次防決定にからんだ大きな記事をみんな見ておると思うのですけれども、別なところで小さく載っておるのですよ。それで、いろいろ発表もあなたのほうであったのですが、各社の記者から聞いたら、事実その日はやっておるし、そのときに発言したということも明らかになっておるということが、記事にも載っておるし、そういうあなた方のほうの発表があった、こういうふうに言っておるのですよ。そのときではないと思いますというのは、総理、ありませんだったらいいけれども、ないと思いますというのは、その辺微妙なんです、あなたの答弁も。
  10. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 この問題は、事実を申し述べますと、官房長官と私が私の部屋で話をして、そして四次防——平和時における防衛力限界なるものの知恵を入れたのは官房長官が入れたと思います。そしてその翌日か何か、どっちかに防衛庁長官依頼した、こういう記憶がありまして、私は、どこで、 いつかというようなことはさだかに覚えておりません。しかし、正式な機関で述べたということはないと思います。
  11. 安宅常彦

    安宅委員 懇談会でもないという意味にとっていいですね。
  12. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 と思います。
  13. 安宅常彦

    安宅委員 と思います……。そのとき出ておる人は、あと三木さんも、大平さんも、増原さんも、中曽根さんも、それから二階堂さんきょういないけれども、みんな出ておるのですが、そういう発言があったという記憶は全然ありませんか。だれか、中曽根さん、あなた記憶ないですか。——ない。まあ、とにかくそういうことだから、どうも出発点からきのうまでの議論はおかしい。  それで私は、この国防会議にかけてくれなんて言うんでないですよ、この問題は。あんなインチキなものを出されて、それを国防会議にかけられたらたいへんなことだから、しかも国会予算委員会の三十分前に出してくるような、そういうものを、それはあなたのほうで出すということ自体おかしいから。あなた、これは国会対策上相当強引に持ってきたみたいなやり方で、相当苦しんだみたいです、手を加え過ぎて、かえってぼろが出て。中国と今度国交回復してきたとき、あなた覚えたかもしれませんが、反面教師というのがありますな、向こうのことばで。いいとこですよ、これは。そういう意味です。かからなかったことがたいへんありがたいぐらいなんです、こんなインチキなものは。  そういう意味でずっと続けますけれども、たとえば四十八年の一月十日か十一日に、日本記者クラブとの会見で、あなたはそのことを言っています、そのときにやったということも。それからそのときに出席をした大平さん、そういう立場日本人全知全能を集めても——これは田中さんじゃありません、大平さん。この四十八年の一月十日か十一日の日本記者クラブとの会見で、大平さんが、あんなものは日本人全知全能を集めてもできるものじゃないよと、こういう発言をしております。そういう発言をした覚えがありますか、日本記者クラブとの会見で。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう覚えがあります。
  15. 安宅常彦

    安宅委員 証拠歴然というところですね。それでこそっとあなたが——こそっとだかどうだかわからぬけれども、増原さんを呼んで勉強しろと言ったのじゃないということがわかったわけです。ちゃんと正式の議場に出ていたからそういうことを覚えているのですから。そういうことだけははっきりしておきます。  それで、直後に、二十二日ごろだったか、あなたは内閣記者団との懇談をやっております。そのときもそういうことを実は発言しておるのです。これは発言しないかどうかというのは、私が聞いた新聞記者の方とあなたと対決させる意味とか、裁判するつもりはありませんけれども、そういうことをみんなが言っている。頼んだ首相自身が、そのときには、数字で出すのは非常にむずかしいというような発言をして、防衛庁援護射撃みたいな発言もしておるということまで、いろいろと聞いてみたら、そういうことも明らかになっているわけですね。それで国防会議議員懇談会を開いてやったのが一月二十五日、ことしになってから。そのときには増原長官から、数字、何万トンだとか、そういうものは言わない。で、前のほうのでしょうか、防衛限界というのは何だ、哲学みたいな話をして、簡単な説明をされた、こういうことをいろいろ人から聞いています。あなたのほうの閣僚の人からも聞いています。  こういうことになりますと、その中で、今度は懇談会から国防会議に切りかえて、そのときは、こういうあなた方にとって非常に重要な、私らにとってはあんなのはインチキなんですけれども、そういう重要な平和時の自衛隊限界、こういうものは懇談会から正式の国防会議に切りかえたときには何も議題にもならないで、その日は何をきめたかというと、いままで未成立であった四十六年度の一千三百十一人の自衛隊増員と、それから四十七年度に出した、未成立になっておった三千五百九十四人の自衛隊自衛官増員と、この二つをまたさらに四十八年度の増員と合わせて一本の法律、六千九百八十八人の増員法律を出すことをきめているのですね。そのとおりですか。——うなずいているから、そのとおりだと思っていいですか。
  16. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 前日に、防衛庁依頼をしてあったものに対して中間報告がありました。そのときには数字はありません。それで私はそれを聞いて、せっかくそれだけのものができたならば、あした懇談会が開かれるはずだから、そこでも意見を披瀝したほうがいいだろうということでございまして、その当日はいまあなたが述べられたとおりでございます。
  17. 安宅常彦

    安宅委員 私はこの問題で時間をとりたくないです。そういうことになりますから、きのうちょうど科学技術庁長官ですか、数字もあのときは言わなかったし、私は説明を受けなかったし、何だかかんだかわかりませんみたいな答弁を、あなたの内閣の連帯でやらなければならない。そして守るためには必要かつ妥当なものだと総理ががんばっているのに、あなた方の大臣は全部わけのわからないことを言うという意味がそこではっきりした、私はそう思っています。  しかも、一月二十五日に数字はありませんでしたと言うのでしょう。そしてそれから五日後の二月一日の予算委員会の冒頭に、今度はあなたのほうで数字を入れてお出しになった。みんなつんぼさじきだと思うのですね。こういうことになったら、シビリアンコントロールなんてりっぱなことを言うけれども、これは防衛庁長官が何かきめたものを、国防会議議長であるあなたがさつと持ってきて、そうか、よしおれが発表してやろうなんという、そういう機構に、あなた方の国防会議なり内閣構造がそうなっているとすれば、これは何万トンとかなんかの問題じゃない。これはゆゆしい問題ではないですかね。これは独裁、とんでもない話。それはそういうものではないというならば、国会にはまあうるさいからいいかげんなものを出しておけ、こういうことになっただけの話かどっちかです、これは。
  18. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私はゆゆしい問題だとは考えておりません。毎度申し上げておりますとおり、私が、国民理解支持を求めるためにあらゆる角度からPRをしなければならない、またPRをするためには、あらゆる方面から、あらゆる角度から勉強しなければならない、その勉強一つとして平和時の防衛力限界なるテーマを与えて、防衛庁当局回答を求めたわけでございます。その過程において、国会では、防衛庁答案が出たら国会でもって発表するかと、こういうことでございますから、答案がいただければできるだけ早く発表いたします、ただ非常にむずかしいと言っておりますと。でございますから、ある一つの条件を仮定をして、平和時という状態を想定してつくるのでございますから、私は、数字が入るということそれ自体困難だと思いますが、防衛庁長官は、数字を入れてもなるべく答弁をしたいと思いますと、こういうことを述べておるのですから、そうかなあと私は考えておりますと、こう言っておりまして、そして一日の午前九時半に私に回答が与えられ、そしてここで三十分後には直ちに、防衛庁長官が手渡した案はどうか、こう言うので、そのままオウム返し報告をいたしたわけでございます。
  19. 安宅常彦

    安宅委員 ここで論争する気はありません。とにかく制服でもだれでもいい、防衛庁長官でもいいが、それを持ってきて国会に出すとき、ああそうかというので、国防会議がその間にあるのにもかかわらず、そういうときには議題にもしないで、自衛官増員なんかの問題よりももっと重要なはずであるその平和時の防衛力限界といろものをかけないでおいてぽんと出してくるなんということは、私はとてもとても一般常識では考えられないこと、シビリアンコントロールなんてどこにあるかわからないこと、これだけは指摘しておきます、これらの事実が明らかになったのですから。何名かの防衛庁の職員の増員ということも大事でしょう。だけれども、これはもっと大事なはずだ。懇談会から正式の会議に切りかえて、そうして法律案をきめておいて、そのときにもきめないで、そしてたった五日間くらいで、だれにもはからずにぽんと出すということは、どうしてもこれはえらいことだと思っています。これで私はこの問題を切り上げます。  次に、政府外交の問題におけるいろいろな立場ですけれども、いままで政府は、アメリカベトナム戦争の介入の理由として、アメリカがいわゆる国連憲章五十一条を根拠にしたものだ、これを是認する立場をとってきた。あるいは椎名さんのようにみずから、純然たる中立ではない、敵対行為を持つのだということまで言った人もおる。そういう考え方がずっと貫かれてきた。ところが、アメリカ和平協定を結ぶと、今度は、アメリカがそういっています、アメリカはそういっています。ではあなたはどうだと言うと、さっぱり黙ってしゃべらない。こういう態度に変わったと、私はそういうふうに理解しています。そのとおりですか。大平さん、そのとおりですね、そうですね。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 過去におきまして政府のいろいろの言明がございましたが、それと私が今国会を通じまして申し上げたことと、別に矛盾をしているものとは思いません。
  21. 安宅常彦

    安宅委員 答えないで、矛盾しているかどうかなんて答えるんだから、あなたに質問したってやっぱりわからないみたいですから、ずっと進みます。大体私は、一国の外務大臣が審判ができないとか、そういうことを言っているのです。自主性というものがないじゃありませんか。アメリカがこういっているといったって、私はこう思っている、日本政府はこう思っているというのが、これが独立国外交をあずかっている一番えらい人の言う発言であり立場ではないでしょうか。たとえばアメリカ中華人民共和国中華人民共和国というと、本会議佐藤さんあたりが、この前あたりまで、いままで中共中共と言っていたのを中華人民共和国とあわてて言う。いままで北ベトナムだの北越だのと言っていたのを、アメリカベトナム民主共和国とああいう協定を結ぶと、ベトナム民主共和国というふうに言う。アメリカがいわないうちは、日本のは、薬のきき目までだめなんですね。こういうことがあってはいけません。私はオウムのようなそういうやり方、これはぜひ今後改めてもらいたいと思うんです。そして三者が調印したこのたびのベトナム和平協定にしても、南ベトナム臨時革命政府のことになるとなかなかもってごにやごにやと言って、サイゴン政府のことを考えてことばを濁してしまう。こういうことはぜひ改めてもらいたいということだけ指摘をしておきます。  それで私が聞きたいことは、首相もことしの二月一日の本会議で、第二次世界大戦において最後に残ったベトナム戦争民族自決の線でまとまった、世界指導者は新しい道を求めていると思う、こういうふうに言っています。力によるものではなく、つまり力による解決の限界を感じたと思う、こう言っています。歴史は大きく動いているのですから、そろそろアメリカのいうことばかりでなく、そのとおりばかりでなくて、ベトナムでも朝鮮でも、問題が起きたそのときそのときのアメリカの対処のしかた、こういうものに対して日本独自の立場から批判なり判断する、そういう時期が来ているんじゃないか、私はそう思いますが、総理どうですか。
  22. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本は常に独自で自主外交を展開いたしております。これはほんとうでございますから、これはほんとう外交基調でございますので、ひとつ御理解を賜わりたい。ただ、アメリカとの間には非常に友好的な関係を保持しておりますので、アメリカとの間に外交上の意思の疎通をはかっていくというようなことは前々からやっておることでございまして、これからも友好きずなは深めてまいろう。しかし、この友好きずなを深めてまいるということと、日本の自主的な外交基調ということは全く相反するものでないということを申し上げておきます。
  23. 安宅常彦

    安宅委員 ベトナム戦争アメリカ侵略戦争であるということは、日本新聞テレビもラジオも、あるものは率直に、あるものは遠回しに、肯定をした立場で報道しています。そして国民の大多数もそのとおりだと、自民党の支持者だって、世論調査を見た結果わかるように、そう思っているんですね。ただ政府だけが、そうじゃないのだ、そうじゃないのだ、後世の歴史家が判断するだろうなんて言ってがんばっているのはあなた方だけ、ここにいる人だけなんです。こういう時代になってきた。これはおそろしいことで、国民との断絶というのはますます広くなっていく。そして、私のところに電話がきましたけれども、テレビなんかを見ていると、国会であなた方が、そのことを質問されると何か逃げ回っているようにしか、国民の目には映らないそうです。これは重要なことですよ。だから、こういうことはやめなければなりません。これだけ言っておきます。  次に、最後ベトナムが残ったとあなたはおっしゃったけれども、アジアの平和のために非常に重要なことは朝鮮問題だ、私はそう思っています。決して、最後まで残ったのはベトナムではない。そういう意味朝鮮の場合というものは、その国の形成なり統治の形態というものは朝鮮人民自体がきめることであって、朝鮮内部の問題である、こういうふうに私は考えておるのですが、そのとおりでしょうか。
  24. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは南北朝鮮全体の国民が、人民がといいますか、みずからの判断においてきめられることであります。
  25. 安宅常彦

    安宅委員 それではお伺いいたしますけれども、朝鮮で昨年の七月四日に発表されたいわゆる南北共同声明、これをどう評価しますか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 日本政府としては、そういう自主的な話し合いの機運が盛り上がって、南北がテーブルを囲んで自主的な、しかも平和的な統一への話し合いを始めたということを高く評価し、かつこれを歓迎いたしております。
  27. 安宅常彦

    安宅委員 ここでちょっとこういう平和の問題で聞いておきたいのですが、いままでの論議の中で大平さんは——たとえば、いろいろな会談がベトナムでいま行なわれていますね。朝鮮ではないですよ、ベトナムで。そうした場合に、兵器を取りかえるとか兵力をどうするとかそういうときに、日本の基地から兵器を取りかえる分を送るなんというときには、いろいろ心配な点は少し残りますが、あとは日本の基地を使用して日本にいるアメリカ軍がベトナムに兵器を送ったりなんかするのは、それはいけないことだという意味発言をしておりますが、何であれ、兵器を送るであれ、取りかえであれ、すべてそういうものは——今度自主的な外交をやると総理がはっきり言っていました。こういう平和な時代になったときに、ベトナムの問題に関して日本から兵器を、日本の基地を中継にして、あるいはそこから出すということは、これは拒否すべきだと私は思いますが、それは一般常識だと思うのですけれども、どうですか。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもが取り結んでおります安保条約におきましては、極東の平和と安全に寄与する場合に米軍に基地の使用を認めるわけでございまして、問題の事案が出てまいりました場合に、それがその趣旨に沿っておるかどうかということを申すまでもなく自主的に判断しなければならぬと考えております。
  29. 安宅常彦

    安宅委員 そうすると、南ベトナム軍の戦車が修理されることを意味するのでしょうかね、日本で。アメリカ軍のやつは、あらゆる外国軍隊は撤退するのですよ、アメリカ軍は撤退して、いないはずなんですよ。だから、アメリカの戦車や兵器の交換なんてないはずですよ。不破さんだったか松本さんの質問のときの答弁にそういうことを言って、私、ふしぎなことを言う人だなと思ったのですけれども、何もベトナムの軍隊の兵器を日本で修理して、交換であれ何であれ、誤解を生むようなことを、日本から発送するなんということはやめるのがあたりまえで、りっぱな常識じゃないですか。どうです。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 その武器がアメリカの所有にかかる武器であるというような場合にいままでは、それを修理するという場合におきましては、その武器が第三国の手に渡っておりますものにつきましても、安保条約の解釈といたしましては、米軍の所有にかかるものにつきましては米軍が使用のものと同様な取り扱いを、ただいままでしてまいりました。
  31. 安宅常彦

    安宅委員 ただいままでのことはいい。アメリカ軍はいないはずだ。アメリカの兵器を修理したり、取りかえっこをする兵器として送る必要はなくなったはずだ。あるとすれば、南ベトナム軍の戦車か兵器だということになる。だから、そういうものはあり得ないはずだと私は言っているのです。何かそういうことが交換のときはちょっと心配ですねなんという答弁があったから、そこを確かめておきたい、そのことに限って。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 私が心配しておりますのは、私どもがやることにつきまして一点の疑惑もあったらいかぬと思います。したがって、この前にも相模原の戦車の輸送につきましても、原則としてベトナム向けば今後ないであろうということを国民にお約束をいたしたわけでございますし、アメリカ側にもその点確かめて同意を得ておるわけでございますが、原則としてという意味を申し上げた場合に、いま申しましたように、アメリカ所有のものが南ベトナム政府に渡っておる場合、そしてそういう兵器がいまベトナムの国土にある。それが今度の停戦協定によりまして漸次兵器の削減、引き揚げをやっていくということがこれから始まっていくわけでございます。それで、その場合に、まだ現実に起こっておりませんけれども、米軍所有の兵器の取りかえというようなことが全然起こり得ないといま断言できるかと問われると、そういうケースが起こり得るかもしれないことを心配いたしまして、原則としてということばを入れたわけでございまして、今後一切そういうことはいたしませんなんというしらじらしいことを申し上げることは非常に非礼だと思いまして、私は真実を申し上げておるわけでございます。
  33. 安宅常彦

    安宅委員 九十日以内に引き揚げることになっていますね、あの協定は。そうしたら、ベトナムと何もこっちが安全保障条約を結んでおるわけじゃあるまいし、ベトナムの兵器はこっちに来る心配はさらさらないし、アメリカは撤退したのですから、アメリカの兵器はないはずだし、そんなことは起こり得ないと私は思います。これだけは言っておきます。あとは、答弁するとあなたは長くなっていけないから、次にいきます。  ところで、南北共同声明のことですけれども、これを評価し支持するということでありますから、こうした場合に、私ども、ベトナム一つであるという、そして政府間の接触を進めなければならない、もうすでにやっておるという意味にとれる総理発言があったのですがね。こういう問題について私は非常に重大な関心を持っているのですが、アメリカじゃなくて、わが国が過去において直接介入し、植民地支配をしてたいへんな迷惑をかけておる朝鮮、いま二つに分かれておるとあなた方が言っている、この問題について言うならば、ベトナムよりもっと近いところの朝鮮民主主義人民共和国との公式折衝というのもやはり始めなきゃならない時期だと、私はそう思うのですね。どうなんでしょう。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 前段に述べられましたベトナムの場合におきましては、和平取りきめといういわば国際的な取りきめができまして、ベトナムの将来についてのブループリントが出されたわけで、ございまして、したがって、日本政府といたしまして今度ベトナム全地域に対して外交的な取り組み方をどうするかという場合は、そういう新たな取りきめというものをベーシスにいたしまして、その精神とその取りきめのラインに沿って考えてまいりますというのが日本政府の態度でございます。  いま御指摘の朝鮮半島の問題でございますが、朝鮮半島におきましては、なるほど御説のように、日本に近い地域ではございますけれども、朝鮮半島全体の統一につきましてのブループリントというのはまだ出ていないわけでございまして、去年の七月四日ようやく話し合いが始まったわけでございますので、この話し合いの行くえというものを深甚な関心をもって見守っているというのが、いまわれわれの態度でございます。
  35. 安宅常彦

    安宅委員 だからさっき念を押したのです。アメリカが何か入って話し合いをした分だと何でもオーケーだけれども、北と南とほんとうに外部勢力の干渉なしに一緒になろうという共同声明まで発表しているときに、隣国の日本が片一方を承認し、片一方を承認していない。片一方には重大な援助をし、片一方には前向きどころか、うしろ向きどころか、そっぽ向きをしておるというふうな態度は悪いのじゃないかという意味で、私はさっき言った、アメリカのまねばかりしてはいけませんよと。中国のときだってそうでしょう。最後まで、重要事項指定方式までがんばって、負けて、そして恥も外聞もない、今度は中国が、日本がその気ならば手を握ろうと言ったら、やっぱり、世界の情勢を判断されて決断をした田中さんに私は敬意を表しますけれども、行かざるを得ない。普通だったら恥ずかしくて——けんかでぶんなぐっておいて、そしてのこのこ出かけていくなんというのは、庶民の感覚では普通はないのですよ。だから、そういう誤りを今後もおかさないようにしてもらいたい、そういう意味で私は言っています。何か慎重な態度でやることが外務大臣の特権みたいな考え方は、たいへん間違いだと私は思います。  ところで、そういうことに関連して、いま中華人民共和国の話をいたしましたから……。中華人民共和国がいま国連において、正当な地位の復活がちゃんとなっていますね。加盟しています。そうした場合に、中華人民共和国と国交を結ばれた総理に私は聞きますけれども、真の友好を子々孫々にまでと言われたその気持ちがほんとうに真実のものならば、そして平和というものを保っていくというならば、中華人民共和国というのは平和愛好国だ、こういう確信をもってやられたことでしょうね、あれは。
  36. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日中の平和は、両国の永遠の平和をもたらすものであるとともにアジアの平和に寄与することである、こういう考えでございますし、中国そのものが——日本が中国に侵略をするようなことはごうもございませんし、これはもう全然できないことであります。中国も、そういう日本の実態をよく理解をし日中復交に踏み切ったものと理解をしております。また、中国がこちらのほうに向かって脅威になるものであるというふうにも私は考えておりません。両国が友好関係を永遠に保持していくための正常化である、こう考えております。
  37. 安宅常彦

    安宅委員 ところが、いま国連では、まだ法的に中華人民共和国は侵略者であるという立場をとっている決議がたくさんあって、そういうらく印を押されたままになっている、そういうことなんですね。そういう状態を、握手をしてきたあなたが取り除いてやらなければならないなということが、国交回復をなされたあなたの当然の義務でもあり、それは当然の立場じゃないかと私は思っています。どうですか、田中さん。——中さんです、それは。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 中華人民共和国政府が国連に中国代表政府として入られたということは、即、国連は平和友好国の結成しておる世界機構でございますので、この事実をもって、国連が過去において御指摘のように中華人民共和国政府を非難した決議がございますけれども、しかしそれは、国連がこの加盟を認めたということは、そういった過去の決議はもうそこでなくなっていると私どもは解しておるわけです。
  39. 安宅常彦

    安宅委員 それでは今度は——去年の国連総会のときは、私、外務大臣であった福田さんとたいへんここで論争したのでございますけれども、国交回復前で前でありましたが、死文化しておるという、なかなかりっぱなことば福田さんは言われたのですよ。今度はなくなっていると大平さんは言われた。そのとおりでいいと思うのです。なくなっているのだったら、国連における朝鮮決議というものを廃止しなければ、ほんとうになくなったということにならないのです、法的には。だから、ことしの国連総会における日本の態度はそういう態度で臨むべきだと思いますが、どうですか。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 ことしの秋の国連総会におきましてどういうように朝鮮問題を取り上げるかということは、まださだかでございませんで、私どもとしては従来の経緯もよく検討した上で、正しい取り組み方をしていきたいと考えていますが、いまのところ、具体的にどういう取り組み方をするかといいましても、どういう議題が出てまいりますか、まださだかでございませんから、この機会に、私から意見を申し上げる段階ではないと思います。
  41. 安宅常彦

    安宅委員 これは去年のいきさつもありますから、外交的にいろいろな国々から、あなたのほうにいろいろな意見が出ていると思うし、ちょうどいまごろの予算委員会でありましたが、すでにその検討を開始しておったのですよ、去年の国連総会のときは。まだきまってないというのは、なかなか福田さんと違ってあなたはのんきな人ですね。今度はあのときとは違って、中華人民共和国と国交が回復しておるのです。国交回復した国で、たとえばどういう形式が、とあなたは言ったのですが、アルジェリア決議案というものが去年出ましたね。そういうときには、それに賛成するという立場をとるのが当然だ、ああいうものが出た場合には。私はそう思いますが、ああいうアルジェリア決議案と同じようなものが出た場合には賛成なさる、こういう態度ですか、それをお聞きしておきたい。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 まだどういう案が出るかわからぬわけでございますので、これから答えをいま申し上げるわけにまいらぬと思うのでございまして、先ほど申しましたように、朝鮮問題につきまして議案が出た場合につきましては、十分慎重に対処してまいるつもりでございまして、政府部内におきましては、いろいろな場合を想定していろいろ考えておることはございますけれども、国会におきまして、政府がこう考えておるなんということを申し上げるのは、非常に不謹慎だと思っています。
  43. 安宅常彦

    安宅委員 国会以外に言うのだったら不謹慎かもしれないけれども、国会に言うのがなぜ不謹慎ですか。だめです、そんなの。そんなインチキ答弁はだめです。国会で意見を言うのが何が不謹慎なんです。(「いまのことばはよくない」と呼び、その他発言する者あり)朝鮮決議を撤回するというアルジェリア決議案というものが去年出ました。それが撤回できないと中国が侵略者のらく印が消えないのです、総理。それを言っているのですよ。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 国会は最高の機関でございますから、国会における答弁というのは非常に慎重でなければならぬわけでございまして、よそで言うようにぞんざいなことは許されないということを私、申し上げたわけでございまして、目下朝鮮問題を、この秋の国連総会でどお取り扱うかという問題につきましては、まだ国会で、政府が責任ある答弁をできる段階ではございませんということを申し上げておるわけです。
  45. 安宅常彦

    安宅委員 何か総理理解しがたいようですけれども、喬冠華という中国の代表が初めて国連で代表演説を打ったときに、朝鮮決議を撤廃しろと言ったのは、中国に関する決議を撤廃しろと言わなかったのは、それは朝鮮決議というのはたくさんあるのです。その決議の中に、中国が侵略者だというきめつけられた決議があるわけですね。関連しておるわけですね。だから、朝鮮に関する決議というものを撤廃しろと言っているわけですよ。  それを、今度国交回復した国として、その案にそういう立場に立つのが当然ではないかという私の質問に対して、あなたが、国会でそういうことをはっきり言うのは不謹慎だなどという言い方はたくさんな間違いです。それは慎重にいたしますとかなんかだったら理解するけれども、不謹慎だと言うのは、これは取り消してもらわなければいけませんね。議事録に残ったら非常におかしなことになりますよ。
  46. 大平正芳

    大平国務大臣 今秋の国連総会におきまして、政府がどういう態度を、いま御指摘の問題につきましてとってまいるかにつきましては、慎重に検討してまいります。
  47. 安宅常彦

    安宅委員 前のやつは、そういうことを国会で言うのは不謹慎だということは、取り消すことはできないのですか。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 国会で申し上げる場合は、もう政府がいろいろ腹をきめて、内外とも問題のないことを申し上げるのが、私は国会に対する私どもの態度でなければならぬと思うのでございまして、中途はんぱなことを申し上げるのは、私どもは、たいへん不謹慎だと問われる性質のものではないかということを申し上げたわけでございます。   〔安宅委員「それじゃ立たないよ、そんなの。そんなばかなことありますか。国会で言うのが不謹慎だなんて言うのだったら、おかしなものでないですか」と呼ぶ〕
  49. 根本龍太郎

    ○根本委員長 安宅君に申し上げますが、発言は正確にしてください。立ってから……。   〔安宅委員「どっちに話しているんだよ、人をばかにしている。あっちに注意するのだったらいいよ、あっちに。何言ってんだい」と呼ぶ〕
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 私が申し上げたのは、まだ政府が十分最終的にきまっていないことを国会で申し上げるのは、政府側の態度として不謹慎な態度でないかということを申し上げたのでございまして、国会のことについて申し上げたわけでは決してないのでございますので、私のことばが足らなかったことは恐縮いたしますが、そういう趣旨でございますので、御了解を得たいと思います。
  51. 安宅常彦

    安宅委員 私もずうずう弁で日本語あまりじょうずでありませんけれども、そういうときには、不適当だとか妥当を欠くと思うので、少し待ってくれとかと言うのがあたりまえで、不謹慎なんて言うのはどこのことばだかしらないけれども……。はっきり言ってくれって、委員長もどっちだ、どっちがはっきりだ。  そういうように外務省は、日中国交回復が実現しても、相手国である中国が国連の中において、現在侵略者というらく印を押されている立場であるということを理解しながら、そのことについてどういう態度をとるかということに、いまだ態度を決定することができない、こういう政府立場だということを確認しておきます。私は、これは中国に対しても世界一般常識に対しても、たいへん失礼なことになるような気がいたしますが、そういうことだけ確認しておきます。  それでは次に入りますが、朝鮮民主主義人民共和国との接触のしかたは、南北共同声明による会談の進行を見守って云々、これも非常にどっちだかわからない答弁だったのですが、私はこの問題について朝鮮側からは貿易代表団が来る、あるいは高松塚の調査団が来る、これは日本の文化にとって重大な貢献をしていきました。若い少年たちが非常に興奮したサッカーの代表団が来る、そういうことについて、きょうお休みになっている官房長官が、院内の官房長官室で正式にお会いになる、こういうことになったことは非常にいいことだと私は思っています。こういうことを私どもは進めていかなければならないと思うんですね。このサッカーの団長さんという人はチョン・クァンスンという人ですが、教育部副部長日本でいえば文部次官に当たる人なんですが、こういう人と院内の官房長官室で会見をなさる。ここまで来たということは、私は日朝友好促進議員連盟の事務局長をしている立場からも、たいへんけっこうなことだと思っている。だから、そういう意味で、今後どうなるかわからないなどと外務大臣が言っているうちに、一国の官房長官がそういう人と公式に会ったり、いろいろな接触があなた方の閣内でもあるわけですから、こういうことは外務省、おくれないようにしてもらわないとたいへん困るのです。  それで、私は郵政大臣にお聞きいたします。郵政大臣、私ども一緒にミッションを組んで朝鮮へ行ってからちょうどいま一年になります。そのとき向こうに行ってこられたときのあなたの感想ですね、ひとつここで述べてもらいたいと思います。
  52. 久野忠治

    ○久野国務大臣 お答えを申し上げます。  私、当時朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮を訪問いたしました当時の政治家としての私の考え方を明らかにしておきたいと思いますが、私自身の国際情勢に対する認識は、国際間の関係は緊張緩和の時代に入ったという認識であります。そのような時点に立ってわれわれがとるべき態度は何かといえば、思想、制度の違いを越えて、体制の違いを越えて、お互いに友好親善関係を進めることが、アジアの平和にとって、さらに日本の国益にとって必要ではないかという考え方でございました。しかし、今日の時点、政府において考えられておりますることは、ただいま外務大臣がお答えになったとおりでございます。  以上でございます。
  53. 安宅常彦

    安宅委員 最後は要らない、それは。田中内閣にはなかなかりっぱな政治家が大臣におられる、そういう意味ではいままでと違うじゃないか、こう思っておったのですが、点数ちょっと、最後の一言があったから辛くしなければなりませんが、とにかくそういう信念を持っておられる、こういう人がたくさん自民党の中にもおる。  こういうことで、通産大臣にお聞きしますけれども、ベトナムと正式な接触をしなければならぬと言っている。そのアクションを起こしたみたいなこともはっきり総理が言いましたね。その中で、どうでしょう、連絡をとるということも必要でしょうね。ですから、いろいろ通商の関係なんかあなたは持っておられると思うのですけれども、たとえば——これは間違いました。郵政大臣ですね。たいへん失礼しました。郵政大臣に聞きますが、そういう状態になっている。だから、朝鮮に行かれたときたいへん電話で不便を感じられた。いろいろあのとき言ってましたが、郵便協定やらいろいろなことがあると思うのですけれども、当面、中華人民共和国との場合も、国交が回復する前に直通電話があったのです。そういうことを考えて、ハノイそれからピョンヤン、こういうところと日本との直通電話の開設、これぐらいはひとつ、いまのようなお立場からぜひ実現をしてもらいたい、こう思っているのですが、どうですか。これが、接触の第一歩になればたいへんいいと思っているのです。
  54. 久野忠治

    ○久野国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮とは、わが国との間はまだ国交は回復されておりません。未回復国でございます。さような立場から、電気通信あるいは電話等の問題につきましては、やはりお互いに今後とも十分な協議を遂げる必要があろうかと思うのでございます。  現に、両者の間で通話をいたしておりまする回数は、電報にいたしますと月間六千通ございます。電話は二千五百度ございます。これがすべて中華人民共和国の北京経由か、あるいはモスクワ経由でなされておるわけでございます。  さような不便な状態にあるわけでございますから、何らかの形で直接通信ができ得る方法はないものかという意見があることは、よく私は聞き及んでおります。しかしながら、これらの諸問題を解決をするためには、まだ、先ほど申し上げましたように国交未回復国であるだけに、皆さんの意見をも十分拝聴いたしまして前向きに検討をいたしたい、かように存じておるような次第でございます。
  55. 安宅常彦

    安宅委員 通産大臣にお聞きいたしますが、朝鮮との経済交流というのは、先ほど申し上げたように、たいへん大きくいま発展しています。いままで十年間ぐらいは、年間往復六千万ドルくらいしがなかった貿易が、いま一億ドルをこえています。倍以上になって一億三千万ドルくらいになっているでしょうね。どんどんふえていくのですね。だから、貿易を促進すべきだ、私はそう思います。いろんなそういうことについての便宜、いろんなことについても考えておられるのじゃないか、私はそう思うのですが、見解を聞いておきたいと思います。
  56. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私たちは南北間における緊張緩和を歓迎いたしまして、この緊張緩和が事実上どういうふうに進展していくかを非常に注目しているところでございます。その進展の度合いに応じまして、ケース・バイ・ケースで環境をつくっていくということを考えてけっこうであると思います。
  57. 安宅常彦

    安宅委員 非常にはっきりしないんですが、顔色見て大体わかりましたが、ただここで私は、こういうことです。南北共同声明というのは、両方が外部勢力の干渉を受けないで自主的にやろうといったときに、私ども考えなければならぬのは、じゃましてはいけないと大平さんはおっしゃいました。じゃまをするかしないかという問題は、いろいろ議論あると思うのです。片一方だけ膨大な経済援助なりあるいは協力をするということについても、相当いま問題になっているんですね。現にいま滞在中の金さんですね、大統領候補になられたあの方が、いろんなことを本でなんかも書いておりますし、発言しておりますが、このことについて私ちょっと触れてみたいと思うのです。  韓国のみならず、経済協力というのは、一つ一つのプロジェクトを検討してそれに対して行なう、こういうふうになっているのではないでしょうか。これは外務大臣ですか、経済企画庁長官ですか、どっちですか、主管は。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 政府の経済協力は、プロジェクトベースでやっております。
  59. 安宅常彦

    安宅委員 ところが、そうでないのがあるんです、特に韓国の場合。そのほかにも少しあるようですけれども、これは去年の二月ごろ大騒ぎになったんです、韓国の新聞に出て。外務省はあわてて否定したんですが、七月にそれが交換公文ができて、それが実施されておりますね。これは百五十四億円ぐらいだったと思いますが、大体五千万ドルですか、これは緊急商品輸出という名前で、要するにドル・ショックや何かいろんな経済状態が混乱して、そうして赤字補てんする力がないからぜひ頼むという、そういう意味で韓国側から頼まれて五千万ドル、そうして九月五日、六日の日韓経済閣僚会議のときにも、今度あとの五千万ドルを協力しましょうやということにしてきた。これはプロジェクト何もないです。どうです、それは。
  60. 大平正芳

    大平国務大臣 それは御指摘のとおりでございまして、私のことばが足りませんが、原則としてプロジェクトベースでやっておるわけでございますけれども、韓国ばかりでなく、緊急経済援助というものにつきましては、多くの国に対しまして日本政府は供与をいたしておりまして、韓国だけではございません。
  61. 安宅常彦

    安宅委員 はっきり言うならば、私、歯にものを着せないで言いますけれども、表向きはどうであろうと、日韓条約、当時の有償、無償の政府援助というのはおおむね底をついてき始めたし、それで外貨準備は、そうかといって経済の伸展うまくいかないで六億ドルぐらいしかない。プロジェクトごとの協力程度では困るし、これは政権自体の存立が危うい、頼むと、このような状態に対しての、これは言うなればきわめて政治的なつかみ金の援助ではありませんか。それ以外に何の解釈のしようがないでしょう、プロジェクトごとじゃないんだから。どうなんです、それは。それ以外に考えようがないんじゃないですか。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 後進国それぞれいろいろな事情を持っておりまして、その国の当面の経済のバランスがとりにくいというように事情あるいは不慮の災害等がありました場合に、緊急援助を与えるということは、日本の役割りの一部ではないかと心得まして、多くの国に対しまして、そういう形の援助はいたしておるわけでございます。
  63. 根本龍太郎

    ○根本委員長 久野郵政大臣より発言を求められています。これを許します。
  64. 久野忠治

    ○久野国務大臣 先ほど申し上げました答弁の中で、電信と電話の回数、数字を一部間違えましたので訂正をいたしたいと存じます。  電信につきましては、これは六千通でございます。電話につきましては二千五百度と、こう申し上げたのでございますが、それは二百五十度の誤りでございますので、訂正をさせていただきます。
  65. 安宅常彦

    安宅委員 それは知っています。いいですよ。要するに、前向きで検討する、これだけでけっこうなんですから。  これははっきり言いますと、いま韓国には不実企業というのがある。この一年前の予算委員会でも、私は一生懸命これを明らかにしろと言ったのですが、初めて聞いたと、当時通産大臣田中さんが言われたくらいで、不実事業というのは、もうどうにもならない企業のこと。そういうものが、日本からの輸銀ベースや何かで、いろいろな援助というか、もらっている。それから政府の借款の、韓国政府からの割り当てがある。やったけれども経営が困難になる、今度それは返せない、返せないから、あそこの国は商業銀行だとか、いわゆる韓国銀行だとかありますけれども、中央銀行でない半官半民の銀行もありますね。こういう銀行が肩がわりをする。政府がそれを保証する。結局、韓国の金融機関がそのためにたいへんなことになってしまい、韓国政権自体も、外資の償還とその利払い率が急増する。こういう中でしかたがなくて、名目はドル・ショックに為替レート変更による損失補てんだ、こういうことで話し合いがあったということを私、知っておるのです。そのとき行った人の中でみんな言っていますから。だからそういうことで、いつ日本の地方自治体みたいに成り下がったのか、日本株式会社の支店に韓国が成り下がったといったような、そういうようなことは、私はとるべきことではないような気がしますがね。どうなんです。韓国の側からいったっておかしなことじゃないかと思うのですよ。外務大臣、それはどうなんです。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、被援助国が経済自立を達成いたしまして、この種の援助が要らない状態になることが目標でなければならぬわけでございまして、そのめども立たずに、むやみに援助を差し伸べるということは、親切そうに見えて実は親切でないことは御指摘のとおりだと思うのでございます。  私どもも韓国につきまして、御指摘のような点につきまして、日韓経済閣僚会議等におきましても、いろいろ問いただしてきたわけでございますけれども、先方の言い分といたしましては、いま遂行いたしておりまする五カ年計画というものの満了期になりますと、自分たちといたしましては自立を達成する見通しを持っておる、そういうことをめどに鋭意国内の政策も引き締めてやっておるということで、そういう方向に各国経済が固まって、自立の方向に固まってまいることを期待いたしておるわけでございます。
  67. 安宅常彦

    安宅委員 政府のそういう借款で、初めはプロジェクトでやっていますと言ったが、事実私にそうではないものがあると言われて、今度は原則としてと直したんですね。それで私の言うことは、原則として正しいのだとあなたはおっしゃる。実際考えてみますと、どういうことかというと、赤字だって、ほんとに赤字が出たらまた補てんする。まるでころがしの借りかえ借りかえの借金みたいなことに、こっちが、金を貸す側の日本が乗っかっていっている。自転車営業みたいな会社に一生懸命金をつぎ込んでいる。これは国民の血税ですよ。こういうことはたいへん重大なことだと思うのです。そして向こうが喜んでいるかというと、そうじゃない。これは金大中という大統領候補になった人が日本に滞在しておって、「朝日ジャーナル」だかで発表していますが、若い青年なんかは、これは日本の経済侵略じゃないかと、反抗心を持ってこれを見ている。いま反共法だとか戒厳令だとか、国家保衛に関する特別措置法だとか、言論や何かが全部封鎖されているからものは言えないけれども、これは必ずタイみたいなことに、爆発することは当然ではないかと、この大統領候補は言っていますよ。これは重大なことなんです。しかもこういう問題について、金を貸す相手の側が、つぶれるのかつぶれないのかどんなことだかわからなくて、どんどん金を貸すばかがどこにおるのですか、普通ならば。  こういうことを考えますと、こういうことはもうやめてもらいたい。しかも、こう言って私は提案しますが、インドネシアだって、フィリピンだってどこだって、こういうものはたくさんあるが、その海外協力基金などを通じて出る金は、これは大まかなところは予算書に出ておりますけれども、実際国会は、どこからどういうふうになって、どういうところに貸したかということは、もうつんぼさじきなんです。これでは国会の審議のしようがない。この間中曽根さんにエレベーターで会って、不実企業というものが出るぞと言ったら、どういうことかと言うから、こういうことだと言ったら、そんなのたくさんあるんですかと、ほんとうに心配な顔をしておられましたけれども、そういうことを私はほんとうに、お互いに政府の要員も国会もこの際反省する必要がある。  ですから、海外経済協力計画というものを詳しいものを出して国会の審議にのせる。総理は、GNPの一%くらいは海外援助に使うつもりだとおっしゃっている。たいへんな金ですよ、一%といったら。百兆円で一兆円でしょう、年間。こういうものがどこにいったか、お互いにわからないでいるということは、たいへんなことだと私は思いますから、そういう提案をします。総理どうですか。
  68. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 外務大臣から述べましたとおり、被援助国の民生の安定、また経済の復興等に寄与し、貢献するために支出が行なわれておるのでありますから、その実行の過程を十分把握をして、実効があがるようにしなければならないということは、もう御指摘のとおりでございます。  不実企業の問題等御指摘がございましたが、これらの問題に対しても、過去において国会の問題とむなり、韓国当局が補助、援助をしたり、またいろいろな手助けをして、大体企業も常態に戻るような措置もとられておるようでございます。しかし、こういうものの実態を見きわめないで、だらだらと援助をするということは、援助の基本的な理念にも反するわけでありますから、当然吟味をしてまいらなければならない、こう考えております。  それから、経済協力が非常に大きくなるから国会議論をしていただくということは、もうこれは当然のことでございまして、政府は御質問にいっでもお答えをしたり、その実態を明らかにしたいと思いますし、必要があれば資料の提供は、これも当然のことだと考えております。
  69. 安宅常彦

    安宅委員 これは資料を出せと言うと、間に入った各個人企業がある、今度相手の国の企業の問題もある、したがって、海外経済協力基金から離れた分は私らでもわかりませんとか、輸銀は民間ベースだから、民間の企業の信用なんかにも関係するので出せませんと言う。全然私らにはわからない、そういう仕組みになっているのですね。ですから、どういうところにこういうことをするつもりだという計画、こういうものは、あと決算のときに、どういうようにするかは別として、その方式はお互いに考えなければなりませんけれども、予算として大まかなことだけは書いてある。あとは全然、基金に行ったり輸銀に行ったりしたらわからない、こういうことですから、この点は方法を研究して、ただ資料として出す、答弁には答える、そうではなくて計画を出す、これを基本にして私は提案しておきます。そういうことについて賛同願えませんか。
  70. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは御理解いただけると思いますが、この年度でもってどのくらいの海外援助をしようということは考えておりますし、政府ベースのものは予算で御審議をいただくわけでございます。しかし、これをどこの国にどういうふうにやろうということを計画をすることは、これは相手が、当然もう頼まなくてももらえるものだというふうにもなりますし、なかなかそこはむずかしいのです。銀行が、もう君のところには今年これだけ貸せる予定である、こういうことを発表するようなもので、これはやはり外交上の問題もございますし、一つずつプロジェクトを詰めなければならない問題もありますので、四角四面に予想表を出して、実行見積もりをつけて御審議というわけにはいかないものである。  しかし、そうかといって、全然わからないんだということは、これはもうたいへんなことでありますから、国会の御審議に必要なことは、現状はこうでございます、将来はこうなると思いますというくらいなことは、当然国会の御審議に必要なものは提出をし、お答えをしなければならない、こう考えております。
  71. 安宅常彦

    安宅委員 そう言ったって、結果的には知れることは、総理、同じですよ。だから、たとえばある国でやっているように、こういう問題については秘密会でやる慣習をつくるとか、みんなで国会で討議をすればいい。こういうふうにすべきだと私は思いますが、私の提案ですから、今後またこれは詰めていきたいと思っております。  さらに、私どうしても気がかりなことがあるんですけれども、日本の食糧の需給体制からいって非常にまずいのじゃないか、それから、なぜこんなことをしなきゃならないのかという二つの意味でおかしいと思っているんですが、ケネディラウンドの援助を含めて、これは贈与ですけれども、そのほかに日本が全部含めて百三十三万三千トンの米を韓国に貸与したりしておるんです。ケネディラウンドの分は贈与、こういうことになっておるんですけれども、これは条件はどうですか。食糧庁長官は来ておりますか。——条件と価格、貸与の場合の価格、それからどういう条件か。
  72. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ちょっと時間がありますから、おかりをしましてお答えをしますが、平和時における防衛力限界という問題が先ほどございましたが、昨年の十月の初め、防衛庁長官に閣議のあとだったか、平和時の防衛力勉強しておくよう指示をしたと記憶をしております。これが第一であります。  そのあとの問題でございますが、そのあと十月六日、国防会議議員懇談会のとき、各国の防衛費負担のことに話が及んだので、重ねて同長官に、この間依頼したことをやっておくようにと発言をしたようでございます。これが正確なお答えでございます。
  73. 中野和仁

    ○中野政府委員 韓国に対する輸出の状況でございますが、韓国に対しましては、貸し付けで六十三万三千トン……。
  74. 安宅常彦

    安宅委員 価格と条件だけでいいです。
  75. 中野和仁

    ○中野政府委員 価格は、年によって、国際価格でやっておりますので違っておりますが、最近では玄米で四万九千二百八十円。それから条件といたしましては、いま四十六年から延べ払い輸出ということで、十年間据え置き、あと二十年間で償還、これが最大でございますが、金利は、据え置き期間中が二%、それからあとは三%ということになっております。
  76. 安宅常彦

    安宅委員 これには米で返す分と金で返す分ありますね。これは重要なことですね。日本国民である日本の農民は、農業の政策の中で三十年年賦で、据え置き期間の間は二分で据え置いてもらって、そしてあとは三%で、いろいろな援助を自分の国の政府からやってもらった農民は一人でもおるでしょうか、農林大臣。これはおるかいないか、これだけでけっこう。  それから、トン当たりの価格にしても非常に安いんですがね。これは日本の消費者の立場から見ますと、たいへん納得のいかないことだと私は思います、庶民の感覚でいうならば。どういう見解をお持ちですか、農林大臣
  77. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 韓国の食糧事情にかんがみて、大きくは経済援助のたてまえの上からいたすことでございまするから、国内で見れば生産費所得補償方式……。
  78. 安宅常彦

    安宅委員 そんなこと聞いておりません。日本の農民で、一人でもそういう援助を受けた農民がおるかと聞いておるんです、一つは。そういう条件で、三十年年賦で、据え置き期間二分で。
  79. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 それはございません。それで、後段のお答えを申し上げておるわけです。適正な国内価格でこれを韓国に輸出するということは、いま申し上げたようなたてまえでございまするから無理なことで、国際価格でいたした、こういうことでございます。
  80. 安宅常彦

    安宅委員 こういうことだからね。韓国というのは頼母子講という制度がうんと発達して、この間、八月ごろですか、朴大統領が厳命して中止させた。それでも利息というのは、普通一五%か一六%ぐらいの年率になっておるんです。前は四〇%ぐらいだった。そういう国に貸すんですよ。二%、三%というのは、みんなびっくりしておるんです、向こうは。えらいことだと思っておると思うのですね。日本の農民もびっくりしている。そういうやり方がいかに援助だとか協力だといっても、私どもは考えなければならないことじゃないでしょうか。農林大臣、自分の国の農業を縮小再生産の方向に持っていって、強制的な減反政策をやらせておいて、そして農民は希望のない日々を、出かせぎなどでやむなく農外収入で生活を立てている。そしてそのために生産意欲が衰えてき始めておる、こういう状態ですよ。日本の農業というものをあずかるあなたはよほど考えなければならない、そういうことではないですか。農林省が十月に、「農産物需給の展望と生産目標」なんというものをつくった。これを見たら、あれは机上の空論ですよ。現在麦は一五%にしか自給率は達していない。大豆は四%。とうふが上がるのも無理はないです、外国に依存する限り。こういうことになっておる。米が一〇〇%になっておるからいいというけれども、だんだん減反していけば、今後も続けるとこの間おっしゃっておりましたから、そうしたら結局、米はいいけれども、麦の分が外国から入ってこないなんということになった場合には、自給率がぐんと下がるでしょう、一挙に。たった一五%なんですから。米を食うのが減って麦食うのがふえるでしょうという分析をしておる農林省が、このことに気がつかないで、そして独立国の自立した民族農業というものを立てるというあれがなくて、何でも——今度アメリカベトナム戦争でさんざん悪事を働いて、そのおかげで自分でかってに貧乏をして、そうしておいて今度はどういうことかというと、日本が黒字になったのはけしからぬ。それで日本のどこに目をつけるかというと、農産物の自由化、すぐ一次産品のところに持っていって、資本の側を擁護することばかりいままで考えてきた。今度どうするかわからぬけれども、そういう植民地的な、そこまで言わなくても、隷属農業というのでしょうか、そういう政策は打ち切るべきだと私は思うのです。  飼料なんかもそうですね。今度日本農業新聞が、二月三日の新聞ですけれども、養鶏なんかは飼料の再値上げで、農林省がいう団地農業なんというものはもうだめだということをトップに、一面に写真入りで書いておりますよ。世界の趨勢として米の不足が見越される、そういう状態があるときに、農林大臣はよほどそういうことを考えなければならないと私ども思っています。どうですか、ほんとうに自立した自給自足を基本とする日本の農業というものを、これは思想、立場を越えた民族的な一致したコンセンサスができると思うのですけれども、あなたはそういう立場をとることに賛意を表していただけませんか。
  81. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 いまおっしゃっていることは、私は担当者としてよく理解ができます。  ただ、私が現実に即して処理をしていく場合に、国際的な関係と国内的な諸事情というものをにらんでいかなければならない。米が需給が不均衡になって、余るようになってそれをどうするか。そのためには転作奨励をする、休耕措置もとりましたが、国民の嗜好がでん粉質の食糧よりも肉だ野菜だ、果樹のほうに向いておるとすれば、その場合に、そのほうを奨励していくという必要はあると思うんですね。それから、国際的には開発途上国との関係等も考慮しなければなりませんから、それらをにらみ合わせながらの総合的な農政をとっておるということを、御理解いただきたいと思います。
  82. 安宅常彦

    安宅委員 誤解されちゃ困るけれども、私はおもに主食を中心にしていま言っておるんですよ。米が一〇六%だなんて大きなことをいって、ことしはどうですか。単年度でいうならばどれくらい不足するんですか、米の分は。そういうこともいろいろ計算されていると思うんです。余るのか足りないのか、まだわからないのかもしれませんけれども、大体の予想ですね。そして麦は一五%ぐらいしかいっていない。今度転作といったって何に転作するのか。麦に転作するのだったらまだ主食というものは確保されるけれども、野菜だのトマトばかり——トマトも野菜かな。それをやっていたって主食は確保できない。主食を確保するということは、自立しだ民族的な一国の農業だ、私はそういうふうに考えているのですけれども、主食に対する対策というものが、主食までが外国に、今度は大豆と同じような立場になったときのことを考えたときには、みんな不安だと思うんですよ。そういうことを私は言っていたんですから、大筋は理解できるというならそれでけっこうです。  ただ、ここで言いますけれども、あなたのほうにこういう情報が入っていないでしょうか。いま米が不足になりがちだ、減反政策はまだ続く、そうした場合にはこれが恒常化してくる、そういうことで、ひとつこの際どうだ、木材みたいに値上がりするだろうというので、北陸地方あたりに集中的な精米施設をつくる動きがあったり、近畿やその他のところで酒造米の契約栽培で、具体的に、もう品種のいい米をぴしゃっと押えてしまったりしている状況が全国各地にあらわれている。そうしてそれを倉庫に押えておけば、おそらく一年後ぐらいには大きな値上がりをするだろうということで、必死になって動いている人がいるんですね。そういう情報は農林大臣、入っていませんか。
  83. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまのところ、そういう情報を得ておりません。  御承知のとおり、食糧は政府において管理をしておりまするので、所要のものの確保については万遺漏なきを期しておりますし、その点で問題がないと、こう思います。余り米などについて流動性がございまするが、量はたいしたことございませんので、それが現在、投機に向かっておるというふうには見ておりません。
  84. 安宅常彦

    安宅委員 あとであわてないようにしてください。そのときに責任をだれがとるかといえば重要なことになる。私はそう心配しています。  さらに農業の問題ですが、セマウル運動というのが韓国にあるのです。セマウル運動というのですがね。新しい農村をつくる運動という意味でしょう。精神運動を含めて大統領のかけ声で非常に盛んになっているのですが、この運動、さっき言った大統領の対立候補であった金という人が言っていますけれども、成功しないと言っている。実際いろいろな私らに入ってくる向こうの新聞なんか見ても、ときどき、村長がこうやれと言ったのを反対だと言って抵抗して、何か傷害事件を起こしたとかという事態も起きているのですが、このセマウル運動というものに対して、七六年までの四年間で日本は約十億ドルの長期低利の資金を貸してくれないかという向こうからの要請が、九月五日、六日の日韓経済閣僚懇談会で話が出たそうですね。そしてこの計画は、ほとんど半分以上が日本の経済協力でやろうという計画なんです。一年分として八千万ドルを約束されたというふうに私は聞いているのですが、新聞にも載っていますけれども、そのとおりですか。
  85. 大平正芳

    大平国務大臣 去年夏の経済閣僚会議で、いま御指摘のように、先方からそういう要請がありましたことは事実でございます。  われわれといたしましては、韓国が農業国として経済の自立を達成していく上におきまして、農村が振興、安定してまいることは大事だと思いますが、この計画は、いわば新しい農村の建設の一つの運動でございまして、先ほど安宅委員にも御返事申し上げましたとおり、政府の援助は原則としてプロジェクトベースでやっておりますので、その中でプロジェクトとして把握できるものだけを取り出してみまして、そのものにつきましては、当面私どもも考慮しようということにいたしておりますけれども、それ以上の約束はいたしておりません。
  86. 安宅常彦

    安宅委員 わかりました。どうせ八千万ドルはきまることでありましょう。どうせ交換公文は近く発表されるんじゃないかと私は見通していますよ。  ただ、こういうお金があったら、農林大臣、なぜ日本の農業の拡大再生産のほうへ持っていかないか。たとえば、きのうわが党の阿部君が質問された農家の負債負担の問題なんかはありましたが、農業というものを、自立した農業経営と  いうものをつくるためになぜ使えないのかということを、非常に私もどかしいような気がするんです。こういうことだけはっきりとあなたに念を押しておきます。さっきの米の相場、投機の問題もありますから。  ところが、こういうものは、はっきり言って第  一次産業というものをいじめる、軽視する、そうして国内生産を否定してしまう、こういう歴代自民党内閣がとってきた外国依存の政策というもの、これはちょうど韓国の農業もそうですよ。アメリカの余剰農産物で害されて、そしていまや食糧が足りなくなって、穀倉地帯であった南朝鮮がいま、一週間に五日間米を食う日、あとは米のない日、こうなっているんです。逆になったんです、今度ね。二日が米のある日、あとは米のない日というやり方をしていますよ。そこまで農村が疲弊したというのは、わが日本が韓国と同じようなコースを歩むような気がして、私は非常に憂慮にたえない、こういうことだけは言っておきます。このたびの大豆の値上がりもそうですね。それは大豆、あるのだといわれています。  特に、木材の値上がりのことで、私の見解だけ述べておきたいのですが、時間がないので対策はあとで聞きますけれども、これは異常です。ちょうど六〇年代に、所得倍増政策の初期にも、これに似たような現象が起こっておりました。ただ、私が調べた範囲内では、当時と決定的に違うのは何かというと、当時は外材依存率がまだ一三・三%ぐらいであった。今日は五五%に達している。六〇年の場合には原木、立木のつり上げあるいは地代のつり上げ、山林地主のやり方なども原因があったのですけれども、今回はそうではなくて、製品の値上げが顕著であるというところに決定的な違う点があるのです、原木や立木だけじゃなくて。かなりこれは注目しなければなりません。総理、これは完全な投機だと私は思うのです。そうでなければこんなにならない。林野庁がいろんな見解を発表していますね。アメリカがストライキをやったとかしないとか。だけれども外材は、値段は高くなったけれども堂々と入ってきて、品不足でも何でもないですよ、いま調べてみたら。港に行ってごらんなさい、貯木場をごらんなさい、山ほど積まれている。  これは何かというと、一つは、二年前につくった輸入商社、国内林業業者あるいは木材加工業者、林野庁などで構成する外材需給検討会というのが、見通しを故意に誤ったのではないかとさえ疑っている。重大なことです、こんなものは。日本の経済成長率からいって、材木の需要というのはほんとうは伸びていかなければならないのに、わざとなぜここで減らしたかということについて、私は非常にこれは疑義があるのです。そういう意味で、それに参加している連中がおるのですから、こういうふうに機を見ておったこの資本の連中は、外材依存率が増大することによって——一つは大手商社自身そのものが流通市場に進出していることがある。そうして価格の主導というのは、どこで主導権というのは握っているかといったら、外材商社がこれは思いどおりできるようなところに、外材依存率が高くなったことによって、それができるという確信がある。これらを奇貨として、幸い彼らからいえば日本列島改造論なんというブームがわっと出たもんですから、いまだというんで投機を始めた。ちょうど時期も一致する。こういうことをやっている。私どもは、これでもうかるのは、喜んでいるのは大手商社と第一次問屋と、そうして林野庁じゃないかと思っているのです。林野庁の役人さんに聞いたら、やっぱり赤字だから、今度少し上がったらもうかるというか、赤字がなくなるでしょうね、わが役所も、なんて言っているくらいですから、これは否定してないんですね。こういうことはどうなんです。首相、大体そんなところじゃないかと私は見当つけて質問しているのですが、首相の見解を聞きたいですね。
  87. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 昨年があまり木材の需要が伸びなかったということで、多少需給計画が低くなかったかということは、すなおに私はそう考えております。  それからもう一つは、去年からことしにかけて非常に金融が超緩慢でありましたので、民間の住宅建設が非常に伸びたというのと、いままではうちに対しては貸せなかった銀行ローンというのが、ハウスローンというのが急激に伸びたわけです。これは無制限にも貸す、貸し出し競争さえ行なわれたということで、政府が当初企図したよりも民間住宅建設戸数が非常に伸びておるというところ、二つ合わせると、やはり木材の需給というものに対して一時のアンバランスがあったということは、これはもう否定できないんじゃないかと私は思います。  しかし、いまあなたが述べられたように、価格は多少上がっても貯木場にはあるんじゃないか。それは製品化する過程において多少需給見通しの狂いがあって、製材がおくれたというようなところで急激に上がったということだと思います。だから、木材価格は比較的にいま落ちついてきたということだと思います。
  88. 安宅常彦

    安宅委員 落ちついていないのですよ。これは小売り価格を見ますと落ちついていないのです。時間がないから、ここに資料を持っているのですが、林野庁なんかどういう気持ちで見ているのか。大体十二月と二月一日の比較をしてみたら、ほとんど値下がりしてませんよ、小売り価格は。そして、最近南方材がまだ値上がりするという記事が出ていますね。そして、いま東北は雪が降って建築ができないので手控えておるから、そういうことがまたどんどん始まってくると、結局値上がりするだろうというのが一般の見方ですよ。これは完全に投機です。だから私は、見通しを誤ったか誤ってないかなんというより、共同正犯、林野庁が入っているみたいなことまでとれる発言しましたけれども、それはまあいい。過去のことはいいから新しいことをやらなければならないと、総理しょっちゅう言っているのですから。これは各業者の在庫品を調べる、そして徹底的に、たとえば製材業者や何かの能力がないとかなんかだったら政府は指導して、その木材が適正な価格で市場に出回るように、ぜひ強力な指導をしてもらわなければ困ると思うのです。これはうちを建てる人だけじゃない。大工さんなんかみな泣いているのですよ。私も職人のむすこです。あなたもそうだという話を聞いた。お互いに小学校しか出ていない。大学を出ていない。しかもあなたは一級建築士だ。こういうときには大工さんの立場を守らなければならないのじゃないでしょうかね。どうなんです、これはがんばってくださいよ。
  89. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 大工さんの立場を守るというよりも、これだけの資金を準備すればうちが建つと言っておったものが、建たなくなるということがございます。もう一つは、これを請け負った施工業者が、やはり幾ばくかの値増しをしてもらわなければ建たない。値増しをしてもらわなければ工事の竣工が延びるというような、非常に深刻な状態にあることは事実でございます。  そういう意味で、外材の手当てを大幅にしなければならないということと、林野庁はみずからも、いままででも伐木の計画があるわけでありますから、伐採計画量を大きくしながら、需給調整をちゃんとやるというんではなく、やはり常に大き目に供給力を保持するということでなければ物価の安定にも寄与できないわけでありますから、政府は、その間の事情を十分調査の上善処いたしたいと思います。
  90. 安宅常彦

    安宅委員 いまごろ、値上がり始めて半年もたってから十分調査の上ではおそいのです。これは緊急を要します。うちを建てる庶民の気持ちというものをほんとうにくんでもらわなければならないと思うのです。  ところが、建設省だとか通産省あたりでタッチしているんじゃないですか。林野庁かな、タッチしているのは。通産省は違いますね。何かプレハブ住宅、つまり工業化住宅の普及促進、これをやっておるのですね。在来工法のうちはいま八〇%で、プレハブなんか二〇%ぐらいなんですけれども、これを五〇対五〇にしようというふうなことを計画されている。ところが、この間の台風でプレハブの屋根が吹っ飛んでいって、それで欠陥住宅だとわあっとたたかれたから、これに進出をしておった東レだとか、ミサワプレハブだとか、それから松下プレハブだとか、東急だとか、大成だとかがっくりしちゃった。今度木材が上がった。一生懸命になってこのいわゆる工業化住宅というものを宣伝し、建設省あたりでもそうだそうだ、今度はそういうふうにしたほうがいいだろうというのでたいへん肩を入れておられるといううわさがある。そうじゃないというんだったら私は答弁は要らないのですが、そういう状況というのは、これらの会社が工業化促進の花形であるだけに十分察しがつくのです。こういうこともひとつ正しく見詰めておいて、政府というのは万遺憾ないようにしていただきたい、こう考えています。  林野庁長官に聞きますが、あなたのほうでこの値上がりが始まってから、木材価格安定対策研究会というのをつくられたようですね。その中へ諸戸林産という会社の代表が入っているのですが、これはどういう会社ですか。
  91. 福田省一

    福田政府委員 お答えいたします。  木材価格安定対策研究会、こういうことで発足いたしましたけれども、従来は山林の所有者、あるいは木材の生産業者、あるいは流通関係、加工関係、これを主体にしておりましたけれども、今回は末端の需要という意味で……(安宅委員「この諸戸というのはどういう関係ですか」と呼ぶ)それは山林の持ち主でございます。それから、消費者とかあるいは建設関係も全部入れてございます。
  92. 安宅常彦

    安宅委員 私は、いろいろなところから聞いたのですけれども、この人は、この会議の中で、十月までの値段に戻せというのだったら戻してみせますという発言をしたというのですよ。これは重要な発言をしているのですね。自分みずから投機をしているということを暴露するみたいな発言をしたという話が、私のところに聞こえてきている。だから、私は犯人はそこにあるのだと言っているのです。総総、ぜひ気をつけてください。  時間がありませんから、最後に当面する労働問題について質問をいたしたいと思います。  ILO事務局長のジェンクス提案に基づいて、いまストライキ権と処分撤回の問題を中心にして、政府は総評と直接協議を行なっているわけですが、これは三回やっているようだけれども、今後どういう日程で行なうつもりなんでしょう。それをお聞きいたします。
  93. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 お答えいたします。  ただいま公務員制度審議会において、鋭意重要なる問題点の解明その他について審議が行なわれている最中でございます。
  94. 安宅常彦

    安宅委員 たいへん困ったな。官房長官なり労働大臣なり、坪川さん、いま公務員制度審議会のことを言っているんじゃなくて、直接協議をしているのですよ、あなたのほうは。あなたも出席なさっている。これはどういう日程でやっているのか。  それから、ついでにずっと聞きますが、どなたからでもけっこうです。総評からの八項目の申し入れというのがありますね。八項目の申し入れがある。どういうことかといいますと、これまでの不当処分と起訴を全面的に撤回すること、不当労働行為の根絶をはかる措置を早急にとり、すでに行なわれた不当労働行為の回復措置をすみやかにとること、労働協約締結権の回復、仲裁制度、人事院勧告制度を撤廃し、争議権を回復する、不当労働行為制度の完備、すべての公務員に団結権を保障する、中央交渉権の制度化をはかる、未批准条約を即時批准する、こういうことを原則として確認した上で、この直接交渉というのは行なわれている、こういうふうに私は理解しているのですが、そのとおりですか。
  95. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 二十三日に三者で協議いたしましたが、その問題は二十三日でなくて、スト権の問題、不当労働行為の問題、処分の撤回の問題並びに各省レベルの、忌憚なく言えば大臣との折衝の問題、それから農林並びに全電通、この処分をどうするか、こういう五点にしぼって二十三日協議いたしまして、あすもう一度両者が寄って協議するような方向であります。
  96. 安宅常彦

    安宅委員 そうすると、ただいま総評からの申し入れというのは、原則的には認めたけれども、議題としては当面する問題に限って、いま大臣が言ったようなことについて協議をしている、こういうふうに理解します。  ただ、直接協議というのは、これはジェンクス提案というものがあって、政府がそれを了解して、そうしてそのとおりやらなければならないなというので直接協議を始めたわけでしょう。言うなればベトナム和平会談みたいなものよね、労働大臣。そのときに、全電通と全農林に対して、二万名に及ぶ処分を断行するなんというのは、北爆再開を断行したのと同じだと思う。信義に反することだと思うのですが、どうですか。
  97. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 二十三日の協議に、安宅議員から御指摘のような問題がありまして、私も多少その意見なかなかと思いまして、関係の全電通、全農林に担当官を派遣いたしまして聞きましたところ、やはりこれは昨年からの懸案の問題で、各方面のものも決定した、あと全電通と全農林が残っておる、それを二十九日に必ずやりたい。私が考えましても万やむを得ぬと考えて、私も承諾いたしました。
  98. 安宅常彦

    安宅委員 全電通と全農林に人を派遣してというのは、何か間違いでしょう。電電公社と農林省に派遣したのじゃないですか。そうでしょう。
  99. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 電電公社と農林省に派遣いたしました。
  100. 安宅常彦

    安宅委員 だめだよ、しっかりしなきゃ。それでこういうことは、あなたは万やむを得ないとこうおっしゃっているけれども、処分していないところだってあるのですよ。私は、ここで言うことはいろいろな情勢上控えますけれども、しかし、こういうことについて、もともと労働基本権というのは憲法二十八条に定められた労働者の生存権にかかわる基本的な権利です。これは、スト権を奪ってしまったところの国家公務員法、公共企業体等労働関係法、こういうものは、第二次世界大戦後の米ソの冷戦構造の中で、そして強引に占領軍の政策としてスト権を奪われた。私は当時地方の労働組合の幹部をしておりましたから、くやしくてほんとうに一週間ほどこのやろうと思ったものです。こういうことを私は身にしみて感じておる。どうでしょう、田中さんも、四半世紀も過ぎたことだ、新しい道だと言う。そうして実際にILOからこのように勧告が来てみたり、あるいは提案が来てみたりしている世の中になる。全逓の中郵の問題では、あるいはまた都教組の問題では、最高裁が判決でストライキを、何というんでしょうか、全面的に禁止するということは、国家公務員といえども、地方公務員といえども、これは憲法違反のそしりを免れない、こういうふうに判決が出ている時代、こういうことについて、なかなか労働大臣もたいへんでしょうが、この問題について、ストライキ権というものについて最高裁の判決というものを頭に置いて、こういういままでのストライキ権を奪った制度というものは、もう変えなければならないんだということを、総理自身判断してもらいたいと私は思うのですが、どうですか、見解は。
  101. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 憲法の定めるとおり、労働基本権が守られなければならないということはそのとおりでございます。  しかし、国民生活にも密接な関係を有するものでもございますので、いま御承知のとおり、ILOに持ち込まれたものまで、まあそれは自国の問題として、ILOに持ち込む前に、国内でもう一ぺん相談をしてくださいということになって、いま政府も総評との間に会談を重ねておりますし、また、スト権の問題その他に対しては、三者構成でやる公制審で現に諮問をし審議中でありますから、やはり一日も早くしかるべき結論が出ることが望ましい、こういう考え方でございます。
  102. 安宅常彦

    安宅委員 最高裁の判決というものは、これはもう最高のものなんですね、こういう問題で。そして全専売の山形の問題で最近、これは地裁ですけれども、専売公社に公労法を適用するのは間違いだという意味の判決が出ているのです。全面的にストライキ権を付与すべきだという意味にとれる判決なんですね。そういう時代になってきたんです。政府だっていろいろ事態の変わりによっていろいろなことをしていますよ。きょう、人事院総裁おいでになっておられますけれども、政府職員の、あなた方は給与という、われわれは賃金という、この賃金をきめるのは人事院の勧告によってやるのですよ。ところが、人事院の勧告はどうあろうと、一〇%引き上げる予算をすでに組んで、人事院勧告なんかどうでもいい、人事院の総裁なんかあってなきがごとき態度をとっておる。こういうことは、人事院制度というものは、ストライキ権を奪った代償としてできた機構でしょう。それとは関係なしに予算を組んで、学校の先生は月給を上げるんだなどということをやることは、人事院の存在を無視したことになるのじゃないですか。これは担当大臣、だれか答えてください。  さらに、人事院総裁にお聞きしますが、こういう措置をとられて、人事院総裁として、あなた、自分の権威を傷つけられて、そうしてくやしいなと思いませんか。どうです。
  103. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私としてもくやしいことが一つあるのであります。先ほどの申し入れ文書か何かの中に、人勧体制撤廃というのがありまして、これはまたわがほうとしてははなはだ心外なことで、これはあらゆる方面から御支持をいただかなければならぬことだということを、強くここで申し上げておきます。  いまお話しの件は、われわれとしては、文教委員会等でたびたび申し上げておるのです。相当徹底したことを申し上げて、教員の方々の給与はどうしても上げなければならぬというようなことをたびたび言ってきておりますし、御承知のとおりに、われわれの年々の勧告においても、できるだけ待遇改善にはつとめてきたわけです。今度出てきました話はその線に全く乗る話でございまして、まことにいい機運が出てきたものだとわれわれとしては喜んでいるわけであります。どうぞよろしくお願いいたします。
  104. 安宅常彦

    安宅委員 私の質問をさか手にとって、そうして総評の申し入れのほうがくやしいと言う。あなたはなかなかの大政治家だと思います。しかし、人事院の制度が存在する今日、政府機関そのものが、大蔵省を含めて、人事院の勧告を待ってやらなければならないのに、事前に予算を組んで、そういう人事院に先がけた行動をとるということは、先ほどの大平外務大臣じゃないけれども、それは不謹慎な行為というのは、ほんとうはそういうときに使うのです。そうなんじゃないですか。労働大臣、あなたどう思います。労働大臣じゃないですか、総務長官ですか、だれですか、この問題は。総理でもいいですよ。
  105. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 お答えいたします。  ただいま人事院総裁が述べましたとおり、われわれといたしましては高度な立場から、教職員の生活のしあわせを願ってとられる措置として私たちは理解いたし、そしてその法的の手続も、おそらく公務員に対して、いわゆる強制的なる法律上の措置をいたして強制するという内容ではないということを、私は伺っておるような次第であります。
  106. 安宅常彦

    安宅委員 あとのほうちょっと意味がわからなかったのですが、私は、具体的に言いますと、予算を盛るというのだったら、ストライキ権がないのでしょう。人事院勧告というものを無視した形でもう先行しているのでしょう。そうしたら、教員組合と賃金の配分の問題、そういうものをきめて予算に出すのだったら、よほどまた——私どもは総裁から皮肉を言われたから、しっぺい返しするようで悪いけれども言っておきますが、五段階だとか何だとかいう一方的に政府が頭に考えてきたこと、そのための予算で、教員組合なり学校の先生方は、いま校長から教頭から主任から何か五段階に職階制をとられて、そうしてネジを巻かれるということだったら、こんなものは要らない。それよりも、教師という立場の自由だ、そして教育の真実というものを守るためにはこれではいけないのだ、権力から給与の面で締められるなんというばかなことはないという立場をとっているのです。押しつけがましく、月給を上げてやるからどうだというふうにしてやるそのやり方、私どもはそういうことを含めて、そういうことが意見としてあるならば、そういう話し合いがついたときに予算を持ってくるのだったら、話はよほど変わってくると思うのですね。意見を聞かないで、いきなり要りもしないもちをこんなたくさん持ってきて、食え食えなんて言ったって食えない場合もあるのと同じように、あるいは毒が入っているかもしれないのだ。だから、そういうことはお互いに話し合わなければならない。それが団体交渉ですよ。そういうことを私は言っているのです。そういうことを政府はやっちゃいけない、こういうことを私は強く言っておきたいと思うんです。  それで、ここで私は聞きたいのですが、国際的に見ても、日本の公務員の労働者に対する労働権の規制というものは特にひどいんじゃないですか。しかも低賃金で押しつけておる。総理、どうですか、外国の例も御研究なさっておられると思いますが、そうだと思いませんか。
  107. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 給与が最善のものであるとは思っておりません。しかし、給与もだんだんと是正され、理想に向かって前進しつつあるということは、これは事実でございます。しかも、人事院の制度ができたことは、民間給与が上がった場合、民間給与との均衡をはかるという意味もございまして人事院の制度が発足したわけでございまして、まあこれからも、公務員の勤務の状態や給与の改善等に対しては、当然考え、努力を続けるべきでございますが、しかし、これから理想的な状態をつくり得る日本になりつつありますから、お互いにひとつ協力をし合いながら、これはもう日本人全体のためにある公務員でございますから、その責任が十分果たせるような給与や勤務条件の整備のために努力を続けてまいりたいと思います。
  108. 安宅常彦

    安宅委員 私は労働権を基本にして聞いたのですが、いいです。大体政府の態度は、この直接協議というものを禁止をしているんじゃないかということだけはわかりました。禁止をしておる。だれが出ておる、労働大臣と総務長官出ておられるけれども、答弁を取っ違えるようなんですから、御出席なさっても十分聞いていないんじゃないかと思って、私、心配なんですよ、直接協議だって。これは重要なことです。  ですから、特に私どもは、公務員制度の審議会ですね、この問題にいたしましても、非常に大きな不満を持っておるのですよ。たとえば、このたび使用者側が、国家公務員のいまの職種の中でも、ストライキ権はやっぱり必要だ、だけれどもそれは単純労務を提供している労働者だけだ、しかもそれは、ストライキ権はやるけれども、国家公務員としての資格をはずすなんという案を出してきていますね。これは政府がやらせたのですか。やらせないとしても、政府も同じような考え方を持っていますか、どうですか。
  109. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 お答えいたします。  目下公務員制度審議会においては非常に意欲的に、また、個々の懇談会の形式などを得て、非常に真剣に三者間でもお話し合いをしておられますので、私は、その成果を非常に期待いたしておる最中でございます。いま政府側がとやかく、これらに対するところの批判というものは、大事な審議のさなかでありますから、慎みたいと思います。御了察願います。
  110. 安宅常彦

    安宅委員 たとえば、こういうことは言えませんか、坪川大臣。単純労務を提供する労働者に対してはストライキ権は必要だと思う、ただし国家公務員の地位はワク外にするという、その使用者側の意見というものは、ストライキ権は与えなければならないんだなという、いま国家公務員として従事をしておる職種の中に、そういう人がおるんだという考え方で使用者も出してきたんだ。これが基礎になっているというふうに理解していいわけですね。あなた方もそう思うでしょう。
  111. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 安宅委員の非常に重要な御指摘の問題点はよく理解もいたしますけれども、非常に重要な審議のさなかでございますから、政府の一員といたしまして、それを批判いたしたり、私見を申し上げることは、先ほども申し上げましたとおり慎みたいと思いますので、御賢察願いたいと思います。
  112. 安宅常彦

    安宅委員 どうも諮問機関というのは、だから隠れみのなのですね。政治資金規正法なんというのは、やはり諮問機関が決定しても逃げる。これは都合が悪いときは、諮問機関がいまやられています、やられています。諮問するのはあなた方ですよ。だから、具体的に言うけれども、諮問機関のこの期限というものは九月末でこのたび終わり。もうその次の第四次公務員制度審議会でもやるつもりですか。百年河清を待つがごとく、あなた方の見解も申し述べないで、慎重慎重と言って投げておくつもりですか。  私は、時間がないので具体的に提案します。国会会期中にこの結論を出すように指導してもらいたい。諮問するのはあなた方の立場です。ストライキ権を与えるようにという諮問案というものをつくって、そうしてぜひこれでまとめなさい。制限があってもやむを得ない事態があるいはあるかもしれません、三者構成だから。しかし、あなたのほうの意見として諮問案というものを出すべきだ。初めから諮問案は出さないのですか。ぼうっと荷物を預けただけでしょう、これは。それじゃいかぬから、そういうことをやって、国会会期中にこれをまとめ上げるということを、あなたがここで答弁してもらいたいと思うのです。百年河清を待つがごとしではだめです。
  113. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 先ほども申し上げましたとおりに、目下公制審において非常に意欲的に審議をし七おられるさなかでございますから、私がそのリミット等を、かく期待したいというようなことを申し上げることは、これは私たちが諮問をお願いしている立場から、それを申し上げることは差し控えたい、こう思っております。
  114. 安宅常彦

    安宅委員 こういう提案がジェンクスさんからあったから、それはわかった、それでどうかひとつよろしく、こういう諮問のあり方があるでしょうか。米価審議会だって、一俵何ぼ、一石何ぼと案を出して諮問をするのですよ。このごろときどきごまかすけれども、あなたのほうは。だから、諮問というものはそういうやり方をするのが正しいというのです。それでかまわないでおいて、どうなろうとかまわぬ、野となれ山となれでは困るのですよ。そういう意思は全然ありませんか。会期中なりあるいは任期中なり、この九月までに。
  115. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 お答え申し上げます。  再度申し上げますが、諮問を申し上げるときに、こちらといたしましては何らの原案も提示せずに、ゆっくりひとつ十分慎重に御審議を願いたいということのごあいさつをいたしておりますので、その点御賢察を願いたいと思います。
  116. 安宅常彦

    安宅委員 わかりました。時間がないので、そんな不誠意な答弁に一々かかり合いしていたらたいへんなことになる。じゃ、リミットの問題、どうのこうのというのだったら、私は言いますよ。タイムリミットはちゃんとある。二月十日に、政府のそういう態度に抗議して、そして処分撤回を求めて、労働者がストライキをやる、こういうことを発表しています。これは非常に重要なことです。私は先ほど言ったように、北爆再開みたいなことをやった、これに抗議をする労働者の心理というものはわかると思うのです。そしてさらに、それは労働大臣自身がおかしいんじゃないかと思ったと言うのですからね。加藤さん、そうでしょう。そう言ったじゃないの。だから、やむを得ないということがわかったと言っているのだから、おかしいと大臣さえも思うようなそういうととをやる。そして、公務員の制度審議会がいつなんだかわからない。政府との、その直接協議というものも、なかなかもって論議がかみ合わない。それを政府立場を考慮して、総理が言うように、ジェンクスさんは、ILOが正式に勧告を出したりしたら困るから、かえって日本政府立場が困るだろうというので、だからその事前にもう一回話し合ってみなさいという、そういうあれは親心で日本政府に出してきたと思うのですよ。それさえも、何らそういうことは、総理はわかっているけれども、あと、わかったような顔をしない人が担当したんじゃ困ると思うのですけれどもね。こういう意味でいうならば、処分というものについても私は言いますよ。  日本の公務員あるいは公共企業体の労働者に対する処分というものは過酷なものです。これはドライヤー勧告に出てきますね。そういうことを政府は二回ほど勧告を受けている。これは徳川時代の処分みたいなものです。昇給延伸あるいはまた昇給ストップ、いろいろな問題は、何というのでしょうか、死ぬまでじゃないのです、死んだあとも、奥さんがもらう退職年金から死んだときの葬祭料、葬儀の費用まで差をつけられるのですよ。死んだあと今度遺族がもらう遺族年金まで差がつけられますよ。子々孫々までだ。これはまるで佐倉宗五郎みたいなものじゃないか。そんなばかなことはないですよ。そんな処分のしかたをしている政府はないのです。外国でもない。ストライキ権もそのとおりだけれども、処分は特に過酷なんです。  だから、この問題は重要な問題なので、どうかひとつそういうことを含めて、二月十日をタイムリミットにしてぜひ、そこが正念場なんですから。私どもも、このストライキというものをぜひ何とかひとつ正常な形でやっていかせたいという気持ちはあるのです、ストライキに入らないで。それは政府の誠意いかんにかかわっていることなんですね。今度はゆっくり慎重になんて言っていられないですよ。どうです。
  117. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 安宅議員の先ほどの北爆の問題でありますが、これは立場立場でいろいろな意見があるので、ある方面からは、スト権奪還のためにまたストをやる、これもまたきついではないか、北爆と同じではないか、こういうふうな御意見もあったり、またいまのように、協議中に北爆をやるのは詰まらぬ、こういうふうな意見がありますので、今後とも政府と協議の場で、安宅議員からいま御指摘のような処分の問題も、あす十分協議いたします。誠意をもって協議いたします。  それから、この際誤解のないようにお願いいたしたいのは、先ほどの安宅議員から八項目の提案の問題でありますが、これは総評のほうから話があった程度で、政府のほうはこれを了承いたしておりません。聞きおく程度、こういうお話で、これは全面的に了承したと誤解をなさらぬようにお願いいたします。
  118. 安宅常彦

    安宅委員 そういうことを含めて、ストライキの問題における論争点になるのではないでしょうか。  時間がもう何分もありませんので、最後に、私はこういうことを申し上げてみたいと思うのです。いま処分を受けている国家公務員、公労協の労働者はどれぐらいおるだろうかということを調べてみましたら、公労協が八十万人ですよ。それから電電公社の全電通というのは、一企業だけで三十万人です。ちょうどいま二十九万人ですからね。そういうやり方。そういうふうに、みんなで大体百九十万人です。こういう処分を受けている人がいるのです。だから、公労協の労働組合員というのは、職場に働いている人全部が一回ぐらいは処分を食っているのです。懲戒処分です。懲戒というのは、悪いことをしたやつにというのが懲戒ですね。そうでしょう。賃金を引くなんというのじゃない。懲戒だ。こういう懲戒罰というのは、先ほど言ったように、死んだあとまで差別が身につく。これが全員だということになる。そうしたら、悪いやつだから処罰をするとすると、全部が政府から見たら悪いやつ、これがあなたの仕事を助けたり、そして仕事をしているということになる。どうなんですか、この責任はだれが負うのですかね。政府から見たらみな悪人だけが国家機関の仕事をしているということになります。どうなんですか。
  119. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 公務員は国民のために存在をするのでございますから、国民が望んでおるような公務員の体制をつくることに努力をしてもらわなければならないし、政府もまたそのように指導していかなければならぬということが一つございます。  もう一つ、公務員としての制度上の問題、身分の問題、給与上の問題、その他公務員が真に国民のために働けるような環境や慣行をつくるように努力をしなければならぬ。それはもう当然のことでございます。  第三の問題は、違法行為が行なわれた場合処罰を受けておるということでございますが、これは、まあなるべく処罰を受けるようなことをしないことが望ましいことでございます。これは、特に給与の改定とか制度の改正とかということで公務員がいろいろな違法行為を行なうというのではなく、政治ストを行なうという場合もあるわけでございます。そういうようなことが現に起こることは政府の指導力が悪いからだと、こう言われればもう一言もないわけでございますし、いろいろな問題もあるわけでございますが、処罰を受けた人たち、これは、将来こういう処罰を受けないような方向に政府も十分指導していかなければならない、こういうことでありまして、いま受けておる者をどうしろということは、これは法律上の問題でございますので、これをすぐゼロにする、無に帰すということは、法制のたてまえ上なかなかむずかしいものでございます。  しかし、まあいろいろなものは、長い歴史の中で、お互いによりよき慣行やよりよい制度をつくっていくための一つの過程におけるものでございますので、お互いが国民第一主義ということを前提にして、われわれもまた公務員でございますから、国民のために努力をしなきゃなりませんが、公務員の職を退く場合には一国民になるわけであります。だからそういう意味で、国民立場で望ましい公務員制度というものをつくるべく最善の努力を傾けてまいりたい、こう思います。
  120. 安宅常彦

    安宅委員 これは最後になりますけれども、たとえば国鉄労働組合、動力車労働組合がILOに提訴をした六八六号という事件があるのですが、これはマル生運動の不当労働行為の問題等が入っています。それから仲裁裁定は、労働組合は拘束されて政府は拘束されないというのはおかしいじゃないかというので、これは全部拘束して、資金上何とかというんで、三者構成の仲裁機関が裁判をして、判決が出た場合に政府も従うのだ、赤字だ黒字だと言わないで、こういうふうにちゃんとなっておるんですよ。それで、実際に去年ストライキのまつ最中にごたごたしておったけれども、運賃値上げをしなければ仲裁裁定は実施できないと国鉄総裁は言っておった。ところが、ストライキをぶたれちゃったらやっちまったですね。事実上そういうものはもう空文化してしまっているんです。そうして、人事院総裁の話もさっきやりましたけれども、事実上政府が人事院制度というものを破るような行為を平気でやっているんですね。人事院の勧告を待たないで平気でやってみたり。さっき言ったでしょう。特にまた、このILOの六八六号のときには、賃金の永久の差別というものは労使の調和には役立たないものだ、こうなっている。それから、全逓中郵事件の最高裁の判決では、国家公務員であって、国民の全体の奉仕者であるという理由だけで労働基本権を全面的に否定するというのは、憲法違反のそしりを免れないといっているんですよ。田中さん、そういう時代なんです。そこのところをはっきり認識した上で、そうして今度二月十日という問題について、違法なストライキをやらないようにしてくれなどという従来の発想ではない発想で、この何日間の間にあなた方は発想を変えて相談しなければならない。これが、いま具体的に事態が動いておることについて、あなた方が真剣に対処しなければならない態度だと私は確信しています。どうか、その意味では責任を持ってください。もし、そういうことについて、いままでのような答弁でぬらりくらりしておれば、何とかなるなどという考え方でいったならば、その責任はすべて政府側に帰せられる、世論から、そういうことになるであろう、こういうことを明確に申し上げておきたいと思います。  政府ほんとうに強い、特に首相の強い指導力をこの際発揮してもらいたいということを要望して、これは最後にぜひ答弁していただきたいのですが、私の質問を終わらせていただきます。
  121. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 悪循環を続けることは望ましい姿ではありません。政府も、日本国民のためにある政府でございますから、政府は、労使というような使用者的な立場でだけものを考えているわけではないわけであります。日本の、わが国に適合する理想的な制度はどうあるべきかということに責任を持たなければならない立場にあるわけでございますから、十分誠意をもって事に当たるつもりでありますが、やはりこの戦後四半世紀の間に、最も新しい労使慣行、いろいろなものを完成しようとしておるのでありますから、性急にストライキに訴えるということは、私は、国民支持を得るゆえんでもないと思うのであります。ですから、やはり静かにお互いが胸襟を開いてものを考えるというときを持っていいと思うのであります。だから、二月の十日、十一日になるから、いますぐどうしろという、こういう一つの、戦術の上からいえば評価さるべきものかもしれません。しかし、やはりお互いが……(安宅委員「おかしいよ、それだったら言うことがある」と呼ぶ)そういう論争をするために言っているわけではないので、だから、こちらも誠意を持ちますが、すぐストライキに訴えるということに対しても、私は、慎重に配慮してほしいという政府立場は、これは当然申し述べなければならない。これは国民の利益を守るための立場で申し上げておるわけでありますので、まずこちらの誠意を披瀝して、同時に、ストライキに訴えるという立場に突っ込みつつある皆さんにも、自重を願いたいという希望は申し上げておきます。
  122. 根本龍太郎

    ○根本委員長 安宅君の持ち時間は終了しておりますので、どうぞ……。
  123. 安宅常彦

    安宅委員 最後に、そういうことをおっしゃるのだったら一言。答弁は必要でありません。私の見解を言っておきたい。ぜひお許し願いたい。  これは総理、この問題は、直接協議やその他の問題、あるいは公務員制度審議会の問題等、いきさつはいま始まったのじゃない。だから、そういう意味で、戦術上なんて言われたら困る。それからもう一つ、そういう問題で政府が処置を誤ると、ILO問題、国際的な問題になる。こういうことだけはあなたのほうではっきり頭に置いていただきたい。  私はこれだけ申し上げて終わります。(拍手)
  124. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて安宅君の質疑は終了いたしました。  次に、安里積千代君。
  125. 安里積千代

    ○安里委員 たいした時間もございませんので、私はつとめて論争を避けまして、簡明に質問を申し上げたいと思いますので、その意を体してお答え願いたいと思います。  総理の施政方針演説の冒頭におきまして、今度のベトナム戦争の終結に関係いたしまして、これは新しい平和の幕明けである、そして、わが国は世界に例のない平和憲法を持って、国際紛争を武力で解決しない方針を定めて、平和国家として生きてまいりましたということが述べられております。現実に照らしまして、多少面はゆいことばでありまするけれども、政府が、単に平和国家として日本が生きるというだけじゃなくして、わが国が世界に例のない平和憲法を持って、この線に沿うて国際平和に向けて平和外交を進める、また進めてきた、これからもそういった姿勢で進めるのだという基本的な外交姿勢を示したものとして私は受け取りたいのでございまするが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  126. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 御説のとおりでございます。日本は平和憲法を持ち、平和のために国民はたゆみない努力を続けてまいりました。四半世紀の短い間に、世界史に類例のないような経済繁栄をもたらしたわけでございますが、これからは、みずからの平和を享受するだけではなく、世界の平和にも寄与し、貢献してまいらなければなりません。  その意味において、日本の持てる経済力、技術力等をもって、一つには、ベトナム後の復興や民生安定に寄与してまいるとともに、開発途上国に対する経済援助等も続けたり、国際機関に応分の出資を行ない、協力をすることによって、平和の維持に貢献をしてまいろうという理想を持っておるわけでございます。
  127. 安里積千代

    ○安里委員 そこで、施政演説に、これは「新しい平和の幕明けであります。」ということを言われておりますが、私、お聞きしたいのは、このベトナム戦争終結の、これが平和への幕明けだといたしますならば、この幕を明けるために、日本政府としてどのようなことをなさったのであるか、貢献されたのであるか、簡単にお答え願いたいと思います。
  128. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ベトナム戦争は、第二次戦後に東西の接点において起こった紛争の、いわば現実的な面から見ますと、最終的なものとして解決を見たわけでございます。われわれ日本も、これが平和的解決の一日も早からんことを心に祈っておったわけでございますし、祈るだけにとどまらず、関係諸国との交流の過程において、早期平和の招来のために努力をしてまいったわけでございます。  これからは、まだ紆余曲折を経ると思いますが、一日も早く真の平和が訪れることを望んでおりますし、また、この平和が恒久的なものに育てられていかなければならないし、その過程において日本も、民生の安定、経済復興その他に対して、可能な限り最大の努力を傾けるということでございます。
  129. 安里積千代

    ○安里委員 ベトナム戦争の終わり、そしてそれが平和への幕明けだということを言われるのでございますが、ベトナム戦争の始めから終わりまで、今日までのことを考えてみますならば、日本は、アメリカベトナムにおけるところの軍事行動に対して非常な協力をしてきた。ことに、沖繩の基地をベトナム戦争に直結して利用されたことは、顕著な事実であると私は思うわけであります。もちろん、沖繩の復帰前とあとでは性格が違う、こう思うのでございますけれども、少なくとも、ベトナム戦争に関する限り、日本政府アメリカに対する協力をしたのだ、積極的な協力ということがもしことばが強ければ、少なくとも、これに対する便宜を与え、間接的にベトナム戦争遂行に関係したのだ、こういうふうに見るのが事実であり、また、率直な見方だと思うのでございますが、政府とされましては、それを否定されるでありましょうか。
  130. 大平正芳

    大平国務大臣 安保条約上の義務をになっている政府といたしまして、アメリカのわが国にある基地使用を認めたという限りにおきまして、間接的に無関係であるとは言い切れないと思います。
  131. 安里積千代

    ○安里委員 復帰前におきましては、沖繩は別に条約によって、もちろん安保条約外でございますが、復帰前におきましては、沖繩基地は、日本政府の意向にかかわらず、施政権をアメリカが握っておったということだけでもって、アメリカが自由にベトナム戦争の拠点として使った。これは安保条約の有無にかかわらずその事実があった。やむを得なかったことではなくして、平和条約第三条がそうならしめた。このことは争えないことでございましょう。いかがでございましょうか。
  132. 大平正芳

    大平国務大臣 安保条約並びにその関連の取りきめの範囲内におきましては、われわれはその基地の使用を認めたわけでございまして、ベトナム戦に直接進撃するというようなことを認めたわけではないわけでございまして、われわれの持っておる取りきめに伴う範囲におきまして、基地の使用を認めたという事実は否定することはできません。
  133. 安里積千代

    ○安里委員 私はまだ復帰前の話をしておりますが、復帰前の沖繩基地は安保外でございましょう。  これから復帰後のことをお聞きしますのですが、復帰前は、何も安保条約の云々、基地を提供した云々とはかかわりなく、アメリカは自由に沖繩を戦争行為に使った、また使うような平和条約を結ばれたんだということにしかなりませんが、それと復帰後とは区別してちょっとお答え願いたいと思うのです。
  134. 大平正芳

    大平国務大臣 復帰前は仰せのとおりでございます。
  135. 安里積千代

    ○安里委員 沖繩の復帰後に、沖繩の基地の使用というのは、本土並み、すなわち安保条約の事前協議事項というのも何の変更なく沖繩に適用されるということでずっと言われてまいりました。ところが、復帰後におきまして、沖繩の基地の利用ということは、少なくとも、われわれ現地において見た限り、また、表面にあらわれている事象からしまするならば、復帰前と変わりないところの基地の状態であります。  そこで、ばく然と申し上げるとわかりにくうございまするから、今度の北爆開始にあたって、沖繩の基地がどのように使われたかということについては、理解をして、事実を握っておられるでしょうか。
  136. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 御質問の御趣旨は、沖繩返還後におきまして、米軍が沖繩にありまする施設、区域をどういうふうに使っておったか、その使用の態様がベトナム戦争との関係でどうか、こういうことかというふうに伺いましたけれども、復帰後におきましては、本土と同様に、安保条約並びにその関連取りきめに基づきまして、米軍に対しまして沖繩にあります施設、区域を提供し、この施設、区域が地位協定に従って使用されるということを確保いたしておるわけでございます。その関連におきまして、沖繩におきまする施設が、ベトナムに対する、たとえば補給でありますとか、そういうふうな米軍の行動に関連して使用されている、また、その使用に対しまして、日本側は施設、区域の使用を認めている、こういう状態できておったわけでございます。  しかしながら、たとえばB52のごときは、昨年、緊急台風避難というかっこうでの飛来以外には一切沖繩には飛来いたしませんでしたし、そういうふうな状態があったことは、まだ記憶に新しいところでございます。
  137. 安里積千代

    ○安里委員 私は、北爆開始後において、現実にどのように使われたかということを知っておるかということでございましたが、だいぶん広げられてお答えでございました。  そこで、それでは関連をいたしまして、沖繩からベトナム戦争に向けて、直接弾薬、武器が輸送せられるということは事前協議の対象になりますか、なりませんか。
  138. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 在日米軍の施設、区域が補給活動のために使用されることは、事前協議の対象になりません。
  139. 安里積千代

    ○安里委員 現にベトナム戦争に出撃することが明らかなところの、ベトナムに送られているというそのことに対しても、事前協議の対象になりませんか。
  140. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 安全保障条約に基づきまして事前協議の対象となりますものは、重要な日本国に対する配置の変更、それから重要な装備の変更、並びに日本にありまする施設、区域を使用しての戦闘作戦行動のための発進、こういう三つに限られておりまして、補給活動はこのいずれにも該当しないというふうに、従来から政府は一貫した態度をとっております。
  141. 安里積千代

    ○安里委員 直接戦闘地域に入っていくところの戦闘部隊に対しまして武器、弾薬を補給することは、事前協議の対象にならないのですか。あるいはまた、純然たる補給であるか、戦闘に対する補給かというところに区別の基準があると思うのでございますが、私は、今度の北爆開始後、沖繩から現実にこのベトナム戦争に対しまして送られるところのそういった補給は、単なる純然たる補給じゃなくして、戦闘に対する補給、こう見るべきものだと思うのでありますが、それも事前協議の対象にならない、このようですか。
  142. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 昨年の六月七日、衆議院の沖繩及び北方特別委員会に対しまして、政府は、戦闘作戦行動についての見解を提出いたしております。その中で、事前協議の主題とされるものは、「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての施設・区域の使用」であるから、通常の補給等、直接戦闘に従事することを目的としない軍事行動のための施設、区域の使用は事前協議の対象とならない、こういうふうな見解を提出いたしておりまして、通常の補給は戦闘作戦行動の対象にいたしておりません。
  143. 安里積千代

    ○安里委員 その通常の補給ということはどういうことでしょうか。外務大臣、お願いします。
  144. 大平正芳

    大平国務大臣 この問題は、もう安保国会以来ずっと、政府が事前協議を要する事項といたしまして、精細な論議が繰り返された問題でございまして、政府の一貫した立場は、いまアメリカ局長が申し上げたとおりでございます。  で、沖繩から出撃の態勢を整えて、それがベトナムの戦地に直接参るというような場合は、当然事前協議の対象になるわけでございますけれども、そうでない限りは、通常の補給活動というものは事前協議の対象にならないというのは、今日までの一貫したわれわれの理解でございます。
  145. 安里積千代

    ○安里委員 それじゃ、特に北爆開始後、沖繩から、ホワイトビーチ基地から、北爆開始前にはなかったところの武器、弾薬というものが輸送されておる、この事実というものを知っておりますか。そういう事実があったということは知っておりますか。これは防衛当局ですか、どこですか。事実を知っておるかどうかということです。
  146. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 個々の米軍の行動につきましては、必ずしも全貌を承知いたしておりませんけれども、沖繩並びに本土にあります米軍の施設、区域を使いまして米軍が補給活動を行なっておるということにつきましては、承知いたしております。
  147. 安里積千代

    ○安里委員 そういうことを聞いておるのではない。防衛庁や施設庁は、ことに北爆開始後、沖繩から、従来にないところの武器、弾薬、あとで触れまするけれども空中給油、こういったことが行なわれておる事実を知っておるかというのですよ。知らなければ、それが事前協議の対象になるかならぬかわからぬじゃないですか。ほんとうに戦闘行為に使ったものであるか、単純なるところの補給であるか。理屈を言えば、単純な補給だから事前協議の対象にならぬというのでしょうが、しかし、事実を知らずして、それが単純な補給であるか、それとも戦闘行為の戦場にまで持っていくところの補給であるかわからぬじゃないですか。その事実を知っていますか。知らなかったら、事前協議の対象になるかならぬかはわからぬはずですよ。
  148. 大平正芳

    大平国務大臣 いま局長が御答弁申し上げましたとおり、個々の米軍の行動を私ども監視しておるわけじゃございませんから、的確に答える自信はないわけでございます。  ただ、これが事前協議にかかるかかからぬかという問題でございますが、事前協議は安里さんも御承知のとおり、米軍が日本に対しまして協議越ししてまいる性質のものでございます。米国側からそういう協議越しはないわけでございます。米国と日本との間におきましては、こういう場合は事前協議に該当するということにつきましては、完全に一致した了解を持っておるわけでございまして、私どもはその了解に従って、米国側が行動しておるというように信頼をいたしているわけでございまして、それも信頼ができないということになりますと、これは重大な問題でございまして、お互い国と国との約束というものは、そんなに簡単に破れるものではないと信頼いたしております。
  149. 安里積千代

    ○安里委員 そうすると、結論的には、個々のアメリカの行為は知らなかった、こういうことなんです。これは重大だと思うんですよ。事前協議事項というのはアメリカが事前におそらく持ってくるでありましょう。しかし、個々のアメリカの行動に対しましては知らない。私は、先ほどベトナム戦争の北爆開始後に日本政府がどういうことをとったか。何もやっておりませんけれども、少なくとも復帰後においても、沖繩の基地を使って、ベトナム戦争、ことに北爆に対しましてアメリカがいろんな行動をした。その個々の行動を知らない。知らないと言うんだったら、事前協議というのはこれは空文ですよ。知らないうちに出たら、ああ知らなかったからで終わりなんですよ。それじゃ事前協議対象というのは、アメリカがこれからやりますということを言ってこぬ限り、個々の行動について知らない、いつ出たかわからない、戦闘行為に行ったかわからない、それは自分たち知らなかった、それならば、事前協議というものはあってなきがごときですよ。アメリカの考え一つで自由に作戦行動をやっても、日本に話がないから日本はわからなかった、これでは、事前協議事項というものは全然意味をなさないものになるんじゃありませんか。
  150. 大平正芳

    大平国務大臣 だから、先ほど私が御答弁申し上げましたように、日米間には、こういうことは事前協議の対象になるのであるというかたい了解があるわけでございまして、それによって米軍が行動をしておると信頼をしておるわけでございます。
  151. 安里積千代

    ○安里委員 そこで沖繩から、ことに最終的なあの北爆の際において、アメリカが沖繩の基地を使って直接にベトナム向け武器、弾薬も送られていく、こういう事実も、全然その事実は知らなかった、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。したがって、別に事前協議も受けていないし、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。何のために向こうには施設庁があり、あるいはまた自衛隊も派遣されておりますか。
  152. 大平正芳

    大平国務大臣 事前協議の運用につきましては、いま私が御説明申し上げたとおりでございます。
  153. 安里積千代

    ○安里委員 そんなことを聞いておるんじゃないのですよ。今度の場合に、それは復帰後ですよ、沖繩基地を使って、沖繩からベトナム戦争に弾薬、武器の輸送がある。空中給油もある。復帰前以上に激しい事実があった。そのことを日本は知らなかったと、こうおっしゃるのですから、それなら事前協議の意味もないのです。そうすると、知らない間に、復帰後においても沖繩がこのように使われておるという事実があるとするならば、知らなかったということは、これは新聞にも報じられておることなんですが、ほんとうはこれは事前協議の対象になるけれども、知っておったと言えば、事前協議で承諾したかと問われるもので、知らなかったとお答えしておるような感じを受けるわけなんです。  しかし、そんなことをお話ししておってはしようがありませんが、それじゃ空中給油はどうなんでしょうか。これは前にもあれがあるということは私はわかりながら、あえて質問しております。空中給油に対しましても、やはり直接戦闘行為に使うところの給油でなければ、戦場に向かうところの場合の空中給油でなければ、事前協議の対象にならない、こういうふうに解しておられるわけですか。
  154. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 KC13を使いまする空中給油の問題につきましては、昨年あるいはその前以来ずっと国会において御論議をいただいておる点でございますけれども、この問題につきまして、政府は一貫いたしまして、空中給油は事前協議の対象になる戦闘作戦行動に該当するものではない、こういう見解をとっております。  それから、先ほど繰り返して御質問ございました米軍の行動につきましては、外務大臣も御答弁ございましたように、個々の行動についてそのつどというかっこうの通報は得ておりませんけれども、大きな動きにつきましては、いろいろな形を通じまして、米側からその状況について通報を受けております。事前協議そのものは、もちろん米側が日本側に協議を申し込んでくる性質のものでございますけれども、四条によりまする随時協議という形でも、日本側から積極的に問題を提起して、米側との間に十分な意思の疎通をはかるという手だては講じられているわけでございます。
  155. 安里積千代

    ○安里委員 空中給油はすべて事前協議の対象にならない、こういうことですか。いかなる場合においても空中給油は事前協議の対象にならない、こういうことでございますか。
  156. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 具体的には、B52のケースが考えられるわけでございますけれども、B52に対しまして、沖繩から発進いたしまするKC135が空中給油をいたす行動そのものは、事前協議の対象とならないというのが政府の従来からの一貫した見解でございます。   〔委員長退席、湊委員長代理着席〕
  157. 安里積千代

    ○安里委員 そのB52が作戦のために戦闘命令を受けての途中の給油であっても、事前協議の対象にならないというわけですか。
  158. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 空中給油そのものは、事前協議の対象となるような戦闘作戦行動のための日本の施設、区域の使用には該当しない、こういうふうな見解でございます。
  159. 安里積千代

    ○安里委員 これは昭和四十四年の六十一国会では、給油の場合も明らかに、発進する飛行機が作戦のために飛び立つという戦闘命令を受けて、途中で給油する場合は、その範疇に入ると考えるといって当時の愛知外務大臣はお答えしておるのですがな。B52のお話をいたしましたけれども、B52がベトナムの爆撃なり戦闘行為に加わっておるということは事実なんです。これは明らかなことだと思います。これが沖繩基地からの給油を受けてそうしてベトナム戦争に参加する、こういったことも事前協議の対象にならない、こういうことになりますというと、四十四年、六十一国会におきまするところの外務大臣の答えは全然相反するということになりますが、それとも、B52が戦闘行為のために命令を受けた行動であるのかないのかということは、どこで、だれが判定するのですか。
  160. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 当時の愛知外務大臣の御答弁につきまして、議事録をしさいに調べてみますと、愛知大臣の御答弁は、B52が沖繩に着陸いたしまして、そこで給油をした上で発進をする場合には事前協議の対象となる、こういうことでございまして、空中給油そのものは事前協議の対象とならないということにつきましては、政府の見解は一貫しているわけでございます。
  161. 安里積千代

    ○安里委員 純然たる補給であるのか、戦闘に対する補給であるというこの区別によって変わると思うわけでございまするが、一体、その判定は、これは受けるほうのアメリカがとるわけですか。
  162. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 B52そのものは、ベトナム爆撃ならベトナム爆撃という戦闘作戦命令を持っておるかとも思いますけれども、それに対しまする途中の、沖繩の基地を使いまするKC135の空中給油そのものは事前協議の対象にならない、こういうことを繰り返して申し上げているわけでございまして、それは事前協議の対象となるような戦闘作戦行動のための日本の施設、区域の使用ではない、こういう考えでございます。
  163. 安里積千代

    ○安里委員 私はどうも理解ができないのです。六十一国会の、これは私が持っております衆議院内閣委員会の調査室のプリントですけれども、「爆撃出動機に対する空中給油」の欄ですよね。「ベトナム爆撃に向かうB52に空中給油のため、日本の基地を使う場合、事前協議に入るか。」という問題に対して、愛知外相は、「給油の場合も明らかに発進する飛行機が作戦のために飛び立つという戦闘命令を受けて途中で給油をする場合はその範疇に入ると考える。」と、こういうふうに明らかにしておるわけなんですよ。そうすると、B52がベトナム戦争に参加して、そうしてベトナムを爆撃しておる事実はもう公知の事実。これに対して、沖繩がこの空中給油基地になってこれに対して給油をする、こうして作戦行動に直接参加する、こういったことが事前協議の対象にならぬ、アメリカに自由にさせる、私は、そういうような安保条約でありますならば、今後もこのような解釈で安保条約を解釈し、そうしてアメリカの基地を沖繩に、そして本土に求めておるならば、アメリカのこれからのいかなる行動に対しましても、日本政府の事前協議の対象にならないという解釈を拡大することによって、先ほど、国際紛争は武力に訴えないというこういう前提のもとに、平和憲法を堅持して平和外交を進めると言われたところの田中総理の言われたことは、無になってしまうと思うのですね。安保条約の存在はその意味においても、日本の憲法に反し、また平和外交の基本にも反するとともに、アメリカの行動に対して日本自体が直接に、国際的にも責任をとられるような危険がある。これでは、平和日本の安全あるいは平和日本としての外交を進めることは私はできないのだと思う。  そういう点において、このようなあいまいな条項、安保条約というものに対して考え直さなければならぬ問題があると思うのですけれども、外務大臣、いかがでしょうか。
  164. 大平正芳

    大平国務大臣 いまの愛知大臣の御答弁についての御見解でございましたが、愛知大臣が言われたのは、沖繩の基地をかりに発進する場合に、ベトナムへ出撃するという命令を受け、そのための給油をやるということになりますと、これは当然直接の出撃に日本の基地を利用するわけでございますから、当然これは事前協議の対象になるという御答弁であったわけでございます。すでにそこでもう、あなたの言われる事前協議にかかるかかからぬかの勝負はついておるはずだと思うのであります。  それから、その飛行機が飛び立った途中で空中給油をやるということも、また事前協議の対象になるかというお話でございますが、その機は、すでにその発進にあたって事前協議を受けておるはずでございますので、そこで歯どめがついておると私は思います。
  165. 安里積千代

    ○安里委員 私は、その問題を論じておりますと時間がございません。私が申し上げたいのは、このベトナム戦争日本が、特に沖繩基地を通じ、これは岩国もそうでありましょう、各地もそうでありましょうけれども、ベトナム戦争日本が直接、先ほどは間接にと言いましたけれども、むしろ直接にアメリカと協力してやったということに対しましては、先ほど言われました、国際紛争を武力で解決しない方針を定めておるにかかわらず、この国際紛争に、日本が直接的にしろ間接的にしろ参加をしておった。   〔湊委員長代理退席、委員長着席〕 こういうこと自体は、平和の幕明けに対しましては、総理としましても、日本政府としても大きな反省を求めなければならぬと思います。そういう反省のもとにこれから平和外交を進めることでなければ、世界の信を日本は失うことになる、このように考えます。  次に進みます。それではベトナム戦争終了後日本の基地、特に沖繩の基地機能はどのように変わると見ておりますか。防衛庁のほうでお願いします。
  166. 増原恵吉

    増原国務大臣 沖繩におきまする自衛隊の施設といたしましては……。
  167. 安里積千代

    ○安里委員 自衛隊を聞いているのじゃないのですよ。アメリカの基地機能ですよ。
  168. 増原恵吉

    増原国務大臣 自衛隊ではないのですか。それでは……。
  169. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカは、ベトナム平和回復後におきましても、ある程度の軍事力をアジアに保持したいということを表明いたしております。日本といたしましても、本委員会を通じてたびたび申し上げておりますとおり、安保条約という条約上のワク組みを保持してまいることが、せっかく芽ばえかけた緊張緩和を定着さしていく上において賢明な措置であろうというように政府も考えておるわけでございます。  しかしながら、それではどの程度の軍事力をアジアに保持することにアメリカがなるであろうかということにつきましては、いままだ私ども明らかにいたしていないのでございます。ただ、日本といたしましては、必要最小限度にこれをとどめるべきである。とりわけわが国の都市化の現象、その他社会経済状況が緊張してまいる上におきまして、膨大な基地の存在ということの間に問題がいろいろ出てまいっておることは、御案内のとおりでございまして、これを最小限度にとどめなければならぬのは政府の責任であると思うのでございまして、沖繩国会におきまして、沖繩基地の縮小について衆議院の決議がございましたし、たびたびの日米首脳会談におきましても、本土、沖繩を含めまして、基地の整理縮小をやっていこうじゃないかということに双方合意をいたしておりまするし、一月二十二日の最近開かれました安保協議委員会におきましても、そういう方針を確認して世間に発表もいたしておるわけでございまして、そのラインに沿いまして、沖繩、本土を通じまして極力整理縮小計画を精力的に進めてまいる方針でございますが、これを具体的に、廣次的にどういう計画で進めてまいるかということにつきましては、この間発表をいたしました十カ所の返還以外に、いまそれを申し上げるまでに煮詰まっていません。
  170. 安里積千代

    ○安里委員 簡単にお答え願いたいのですが、防衛庁の当局の言明として、基地の機能は強化されるであろうという見方をしておられます。アメリカの基地の機能は強化されるであろう、こういうふうに新聞にも報じられておりますが、防衛庁としてはそういうふうに見ておられますか。
  171. 大平正芳

    大平国務大臣 それはアメリカ側がそうおっしゃっておるということでしょう。
  172. 安里積千代

    ○安里委員 防衛庁が、見解としては基地の機能は強化されるのじゃないか。なお具体的に言いまするならば、統合して、反面、三沢、横田、岩国、嘉手納各空軍基地と、横須賀、佐世保の海軍基地、それに各通信基地の機能強化という形であらわれてくるであろうというふうに見ておられますが、そのとおりですか。
  173. 大平正芳

    大平国務大臣 政府といたしましては、そのように見ていないわけでございまして、従来散在いたしておりました基地を一カ所に集約していくということにすぎないと考えておるのでありまして、アメリカ側は、しかしそれによって、全体として米軍の機能は低下しないんだということを言っておるわけでございます。  御注意いただきたいのは、今度の整理縮小計画というのはアメリカから出た発案ではないのでありまして、これは日本側から出た計画でございまして、米軍の同意を得て実行しているわけでございまして、私どもが、日本が、米軍の基地機能を強化するためにやるなどという大それた考えは持っておりません。
  174. 安里積千代

    ○安里委員 だれも日本アメリカの基地機能の強化をはかるということを言っておりゃせぬですよ。アメリカがそういう方向に行くというふうに、こちらとしては見ていないかというふうにお聞きしておるのです。  そこで、総理の施政方針の中にあります、いまから二十年前は二千八百二十四カ所もあった本土の在日米軍事施設が、いまや九十カ所に整理、統合された、それからまたさらに十カ所云々ということがございます。これだけ見ますというと、二千八百二十四カ所もあったものが九十カ所になったということで、たいへん大きな縮小というものが行なわれた、そういう感じを非常に受けるわけです。平和条約発効当時、占領終了当時幾つあったかわかりませんが、こんな膨大なものがあった、それが現在九十カ所、こういうふうに言われることは一応わかるわけでありますが、ただ受ける感じが、本土の基地は二千幾らから九十になった、こういうことを国民の前におっしゃっておりますが、沖繩はと言われた場合に、答えが出ていないわけなんです。私は、沖繩を含めて、国民全体に対しては非常に錯覚を起こしめると思うのですよ。ことばのあや、数字のあやと申しますか、二千幾つかあったのが二十何年目には九十になった。ところが、沖繩に八十幾つまだあります。本土と同じです。この事実を見ませんでは、本土で二千幾つあったのがいま九十になった、施政方針として軍事基地のあり方に対しましてこうおっしゃって、同じほどの数、しかも密度においては本土の八十何倍もある、そういうものが沖繩にあるのだということを、国民の前には隠しておるのか、あるいは返還された沖繩を別扱いにしておるのか知りませんけれども、そういうことがうかがわれるのですが、意識的に沖繩の基地は除いてこんなことを言われたのでしょうか。総理、どうでしょう。
  175. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 本土の基地が縮小されつつあるという事実を述べたわけでございます。  同時に、沖繩に対しましても、沖繩の長い間の占領ということもございまして、沖繩の狭い地域に軍事基地が非常にたくさんあるという事実は承知をしております。これも本土と同じように合理的に整理、統合したいということは、サンクレメンテ会談でも十分話し合いがされましたし、その後のたびたびの日米の会談でも行なわれております。この間の協議委員会におきましても、沖繩の基地の幾ばくかを整理、統合するということでございまして、沖繩に関しては、基地の整理、統合を考えない沖繩の開発計画はできないとさえいわれておるのでございますから、沖繩の基地に対しても、日米双方において引き続いて、整理、統合に対して努力を傾けるということでございます。
  176. 安里積千代

    ○安里委員 少なくとも、基地問題を論ずる場合に、安保問題を論ずる場合に、日本本土と同じ数だけのものが狭い沖繩にはひしめき合ってあるのだというところの事実、しかも、先ほど申しましたように、いざ戦争となりますというと、アメリカの行動に対しては、本土では気づかないというけれども、沖繩では事実上、事前協議の対象になるかならないかという解釈の問題は別として、現に復帰後におきましても、恩納村の通信所の一帯の水域の提供を要求される、あるいはまた落下傘が落ちる、あるいはまた燃料補助タンクが落ちる、金武村あるいはまた北谷村におきますところの演習というものが強化される、こういった姿といろのが沖繩の現実です。ですからその点も頭に置いて、何か知らぬけれども、沖繩も復帰したら終わったような感じを持たれるかもしれないが、基地の問題を論ずる場合におきましても、安全保障の問題を論ずる場合におきましても、この現実を抜きにして考えてもらっては私は誤ると思っております。これ以上申しましても肝心なことが抜けますので、私はこれで終えます。  次に私は、復帰後におきまする沖繩に向けなければならぬ対策。沖繩を配慮して、復帰後の対策をいろいろと講じたということになっておるわけでございますが、問題は、では復帰後にどうなったかということが非常に大きな問題でございます。  いま問題になっておりますのは、本土と同じように物価高、そうして土地の買い占め、まずこのことが沖繩のいまの生活の問題に大きくつながっております。そこで、総理府も統計的に調べておられるはずでございますが、復帰後におきます消費者物価の値上がりの指数、おわかりでしたら御発表願いたいと思います。
  177. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 安里委員御指摘になりましたように、沖繩の開発というものは非常に重要な問題でございますので、私も担当責任者といたしましては、何と申しましても、復帰されました上に立ってやはり内地と同じ姿での、本土同様の国民生活のしあわせが、環境の整備また公共事業の推進あるいは文教その他を含めまして、内地と格差のなき沖繩県の開発を推進していくということが、私の基本方針でございます。  いま御指摘になりました物価の問題につきましても、いわゆる昨年の復帰いたしました時点の六月を基礎に置きまして、物価の指数が一〇〇といたしました場合に、七月におきましては一〇〇・九、八月におきまして急に上昇いたしまして、一〇四・五というような上昇の率を示しておるような次第でございますが、これの大きな基因は、台風の襲来という不幸な事態もあったことからくる、いわゆる消費者物価の中における生鮮食料品の高騰が非常に目立ってまいりましたので、政府といたしましては農林省と十分連絡をいたしまして、野菜の急送あるいは肉類の急送等もいたしまして、一応安定の一途をたどりながら、他の消費者物価の指数を見ますと、大体内地同様な姿であることも御理解賜わりたいと思うのであります。  昨年の七月に、政府といたしましては沖繩特別物価対策協議会で決定をいたしましたので、その要綱に従いまして、目下物価の高騰を極力押えたい。その方法といたしましては、いわゆる行政指導を十分にいたす面もございます。あるいは独禁法にかかる物価の、いわゆる協定の排除もいたさなければなりません。あるいは農林省と十分連絡をいたしまして、そして野菜その他を沖繩本土に輸送する点も欠かさずに行なっておるような次第でありますので、一応安定の方向をたどっておることを御理解いただきたいと思うのであります。
  178. 安里積千代

    ○安里委員 私が問うことだけ答えてくれませんか、時間がなくなりましたので。私は、ただ物価指数だけをお聞きしたわけです。お答えを願っておりますとたいへん長くなりますから。  確かに昨年の六月から十月までの総合で四・五%上がっております。その特に上がっておるものは食糧と被服でございまするけれども、同じ期間におきまする日本全国のあれは二・一%のはずであります。そうするならば、沖繩の場合はその約二倍半上がっておるということになります。そしてまた、統計のとり方が去年の六月でございまするので、これにも別に作為はないだろうと思いまするけれども、六月といえば復帰直後の物価でございます。これは、ドルの三百五円の切りかえ、こういった時代の、値が上がったところの六月をとっておりますので、これを普通の復帰前のものに比べますと、実に三三%という数字も出ております。しかし、これはこれといたしまして、少なくとも本土以上の物価高を来たしておるという事実も争いございません。  それとともに、これももう時間がございませんので、私は数字的なことは申し上げませんけれども、これは総理府においても調べられておるはずであります。沖繩の土地の買い占め、ほとんど日本の大資本家による投機的な売買、これがもう行なわれておるということも事実でございます。そのことにつきましても、総理府は調査して、統計と申しますか、資料を持っておられると思いまするが、詳しい数字は別といたしまして、結果の総計のところ、あるいはパーセントでもよろしゅうございますから、御調査になりましたところの結果をお知らせ願いたいと思います。
  179. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 お答えいたします。  総理府、または私、長官といたしましても、沖繩県の土地の値上がりというものは、内地同様非常に重要な課題になっていることも十分認識いたしておるような次第でございますが、復帰一年前から復帰半年の間におきまして、売買が確実とみなされた土地が大体六千万平米でございます。また、売買のうわさがされたものとして予想されるものが一千二百万平米でございます。また賃貸借等のいわゆるなにが八百万平米でございまして、合わせますと大体八千万平米というものが、土地のそうした問題にかかわっておるという状態でございます。  その目的は、やはり観光あるいはレジャーの施設、ゴルフ場、ことに海洋博等を目標といたしました土地の売買というものも行なわれまして、沖繩本土の中部、南部を中心とするところにおいて、非常に高いところといたしましては、四倍あるいは二倍から二倍半というような状況であることを御理解いただきたいと思います。
  180. 安里積千代

    ○安里委員 これは本土の場合におきましては、列島改造論の関係もありましょう。沖繩の場合においては、その影響というものは少ないかもしれませんけれども、海洋万博が行なわれる、あるいはまた本土から締め出されと言っては語弊がございますけれども、いろいろな制約を受けるので沖繩に進出するというような面もありましょう。あらゆる面に対しまして多くの資本力というものが沖繩に入ってくる。これが土地買い占めのいろいろな問題にもなっております。これが将来の開発にもいろいろな影響をしてくるものだと思って、非常に心配をいたしております。  そこで私は、本土復帰にあたりましてこういう事態というものは予想された問題でなかったかと思います。だから、こういうことに対しまする手が打てなかったろうか、こういうふうに感ずる点がございまするけれども、自然の成り行きとしてこうなった、これで放置していいものかどうか、その点、総理のほうがよろしゅうございますな、大事な問題でございますから。こういう沖繩のほとんどの農耕地までもいま取られてしまって、多くの投機的売買あるいはレジャーその他の施設に、本土大資本によって買い占められておる。特に大手商社の進出、買収というのが非常に多いのであります。こういうことは、本土の場合にもこれは打つ手がいろいろあるかもしれませんし、ないかもしれませんけれども、沖繩の場合においては、その結果というのは非常に大きいと思います。何とか打つ手がないか、あるいはまた、これはこうすればこういう目にあわなかったのだといったようなことが、いまから考えられぬでしょうか。ひとつ総理の……。
  181. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 非常に重要な問題でございます。したがいまして、沖繩の土地利用計画の策定、あるいは公社等のいわゆる先行取得というような問題、あるいは沖繩におきましてももうすでに地価公示制度の実施をいたしておるような情勢でありますとともに、内地のように、いわゆる土地税制の改善等も考えますとともに、非常に御理解いただいておるあなたのおかげで、御承知のとおりに、本年は新たに、いわゆる土地開発基金なるものの制定を県知事の強い要望によって行ない、政府といたしましては、十億の予算実施もいたしまして、これらの土地問題に真剣に取り組んでいることを御理解願いたいと思います。
  182. 安里積千代

    ○安里委員 なかなか心せくわけでありますけれども、私がちょっと申し上げたかったのはこういうことです。土地問題というものがむずかしい問題であることはよくわかります。特に沖繩がアメリカの支配下にあったときから、われわれは、軍用地問題、あわせて民間の土地の問題、どう土地を確保するかということはたいへん問題があったわけです。アメリカが、これはねらいは別だったかもしれませんけれども、アメリカの統治の中において、布令で、沖繩の経済に特に必要である、そうして、どうしてもその土地がなければ利することがない、経済的に大きくプラスする、貢献するという、そういうことがない限り、外国人の土地の買い受けというものを禁止いたしておりました。この外国人のうちには、もちろん沖繩に本籍を有しない日本人を含めてであります。アメリカのねらいは別だったかもしれません。幸か不幸かそれによって、外国で沖繩の土地を取得することを制限できてまいりました。だが、途中でアメリカはこの布令を廃止しました。廃止したとたんに自由に売買ができるようになって、進出されてきました。そこで、琉球立法院はまた独自の立場で、趣旨を同じゅうします立法をいたしまして、制限をつけてこの土地を守ってきたという過去のことがございます。これはまあ過去のできごとでございまして、沖繩が復帰する場合において、本土の大いなる資本などというものが、あるいはまた投機的な売買がこのように行なわれると思うならば、復帰の段階において、対策としてこういつた措置が何とかとれなかったものだろうかといまから考えられる点でありまして、これは政府ばかりではなくして、沖繩におるわれわれ自体としても責めを感ずるわけでございますけれども、残念ながら、あらゆる問題が手おくれ、手おくれ、事が起こってから、あとからこのことをどう処理するかということにほんろうされているのが日本政治の全体の姿じゃないか、このような気がするわけであります。  そこで、ちょっと話が別でございますけれども、物価の問題で私、申し上げたのでありますが、こういう自然的に物価の上昇があった、あるいはまた異常な買い占めなどで上昇があったということもいわれますけれども、公の立場におけるいろいろな行為というものが、物価つり上げに関係したのじゃないかと考えられる筋もございます。  そこで、私はその例をちょっと申し上げたいと思いまするが、昭和四十六年三月には日本銀行の支店が向こうにできたはずであります。日本銀行があそこにできるにあたって、日本銀行はあそこの土地を幾らで買ったのか。まだ復帰前でありますよ。そうしてあの建物を幾らで建てたのか、その金額を大蔵省銀行局関係、御存じでしたら……。
  183. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 総額で大体四億円ぐらいです。それから、これはかねがね非常に大事な問題でございますから、中央銀行のことでもございますから、琉球銀行の鑑定部に十分鑑定をしてもらい、また周辺の地価なども十分調べまして決定をしたものでございますから、政府としては、前々から十分注意いたしまして決定された価格であると信じております。  それから、建物等につきましては、御承知のように、日本銀行のことでございますから、金庫等については特別の施設が要るわけでございます。そういう点をからみ合わせますと、総額として相当な額でございますけれども、これはその当時、あるいは最近における本土における新築の支店、たとえば鹿児島などもございますけれども、そういうところと比較いたしましても妥当である、こういうふうに考えております。  なお、坪当たり単価、建築費等、詳細資料がございますから、この時間に御説明させてもよろしゅうございますし、資料としてお届けしてもよろしゅうございます。
  184. 安里積千代

    ○安里委員 資料でいただきたいと思いますが、しかし、簡単にお答えできると思います。建物は坪当たり幾らか。それから、いま土地の敷地四億とおっしゃいましたけれども、何坪で四億であるか、その数字だけお知らせ願いたいと思います。そうして建物の総額だけ……。
  185. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まず最初に土地の単価を申し上げます。三・三平米当たり八十六万一千円でございます。それから建築費のほうでございますが、三・三平米当たり六十五万三千円でございます。  建物の総額はよろしゅうございますか。
  186. 安里積千代

    ○安里委員 ちょっとすみません。いま総額だけひとつ……。
  187. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 総額五億九千万円でございます。なお、このうち四割見当が金庫及び金庫にかかわる工事関係の費用となっております。
  188. 安里積千代

    ○安里委員 あとで詳しく資料をいただいてからあれします。と申しまするのは、この数字理解できないものがあるからであります。当時の沖繩におきまする新聞で報じられましたところの金額と相当相違をいたします。そうしてそのことは、当時このようなばく大なるところの単価でもって契約するということ自体が、非常な疑問を持たされたところの問題であります。しかし、日本の金融機関の元締めである日本銀行がやる、またそういったことが、地価の値上がり、あるいはその後のあらゆる物資の値上がりにも間接に影響をしておるものだ、私はこう見ておりますので、あとで資料をいただきましてから、さらに詳細に明らかにしていきたいと思っております。  そこでもう一つ、いま直接物価に関係いたしまして重要な問題が迫っております。それは、復帰時点におきまして、沖繩におきまする消費米の売り渡し価格というものは、復帰時点を基準にして五カ年間一応据え置く。これは生活に、台所に直結する大事な問題でありますとともに、主食米の価格というものは物価的にたいへん大きな影響を持つものであるという配慮からなされたものだと考えております。そこで、米の値段というものは本土より安かったのでありますが、その安い価格を復帰時点において押えて、五カ年間はこれを維持していくという基本線に従いましてなされてまいりました。これは正しい配慮だったと思っております。  ところが、あれから一年にもならないこの二月一日から、本土が値上がりしたということで値上がりを来たしております。復帰に対しまする特別措置の線からいきまするならば、これはそうあることも理屈の上からは言えましょう。しかし、それは非常に大きな問題じゃないか。そのことは庶民としては、政府のいろいろな配慮によって、本土の高い米じゃなくして、従来の値段でもってあれしておった、せめて五年はそうだと思ったのが上がった。これは諸物価の上がり以上に生活に非常に響いております。これはどうしても上げなければならなかったものでしょうか、農林大臣
  189. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 おことばを返すようですが、大事なことでございまするから、ちょっと御説明申し上げたいのです。  復帰時に消費者米価は五年間据え置くんだというようないまの前提の御質問でございますね。ところがこれは、沖繩復帰に伴う特別措置法によりまして、五年間、復帰時の価格を基準として、復帰後における内地の価格の変化の率を加えて毎年定めることとしている、こういうことでございまして、御承知のように、本土のほうは昨年九月に消費者米価を引き上げたわけでございます。そこで、本来でありますれば、その時点においても考慮できることでございまするが、当時は、先ほどの沖繩開発庁長官の御説明のように、非常に諸物価の高騰しておるおりからでもあって、いろいろ御相談の結果が、三カ月実施を延期しようではないか、それをもう一カ月延ばして実施を四カ月おくらせた、そして引き上げ幅も、本土のほうは政府売り渡し価格が五・三%の引き上げでございますのを、これを沖繩分につきましては五%の引き上げにとどめよう、こういう措置をとった次第でございまして、いま御指摘のような、私どもから考えまして、不当であるというふうには考えておりません。  また、たいへん諸物価に影響を生ずるのではないかということですが、われわれの検討では、引き上げ幅五%は、消費者支出全体に及ぼす影響は〇・二%と、こう見てやったわけでございます。
  190. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 ただいま農林大臣お答えになりましたとおりでございまして、幅あるいは時期等につきましては、農林大臣と私の間において、沖繩の県民の皆さんの立場を十分そんたくいたしながら配慮いたしたような次第でございます。  また、先ほど申し上げました八月の物価指数の点において、誤りがありましたので御訂正願いたいと思いますが、一〇四・五は一〇五・二の誤りでございますので、御訂正願いたいと思います。
  191. 安里積千代

    ○安里委員 据え置きということばは、私のことばが少し適当でなかったと思いますから、それはおっしゃるとおりだと思います。  問題は、一般の人々というものは、少なくとも食糧品、主食米が上がるという問題は、非常に大きな影響を受けるわけです。五カ年間はいまのような基準で、あと三カ年でまた本土並みに次第になっていくんだということで、一応みんなの期待といたしましては、諸物価が上がってもせめて食べるところの主食米については現状を維持していくという、こういう気持ちというものが支配的なんです。それを、まだ一年もならないうちに、本土が上がったから沖繩も上がれ。これは理屈からはそうかもしれません。規定の上からそうかもしれません。しかしそこに、いまの特殊な事情下において本土以上に諸物価が上がって、ほかの物価だった場合にはがまんもできるかもしれませんけれども、これだけはもうがまんができないところの、購入することを拒否することのできないところのものなんです。  ですから、何とかこれだけでも現状を維持する、前の上限を維持して上げないようにするという配慮が政治的にあってしかるべきじゃないか。ちっともそれは悪くないのじゃないか。参酌してきめるということになっていますから、上げなくてもいいじゃないですか。金額にしてたった四十円くらいであるかもしれませんけれども、それを上げないということによって、政府ほんとうに物価政策に対しても、政府関係するところの物価の問題についても、政府としては心を砕いておるんだということが明らかになるのじゃないか。庶民の生活に対して配慮があるということ。いま主婦たちは総立ち上がりしておるのですよ。ですから、そういうあたたかい配慮があっていいんじゃないか、私はこう思うのですが、理屈の上ではそうでも、政治の場なんですよ。時期が時期ですよ。まだ一年もならぬですよ。そうすると、政府は初めのうちはそう言っておったけれども、あとになってどう変わるかもしらぬという不信感がいつでも伴ったら、私は政治じゃないと思います。  私は、これは理屈じゃなくして、本土が上がったから沖繩も上げたらいいんじゃないかということではなくして、一応復帰時点のものを基準にしていくという、なぜそうしたかという基本線に立ち返って、この際これを上げないようにする。ほかの物価については打つ手はないかもしれません。買い占められた土地に対してはどうする手はないかもしれませんけれども、少なくともこれをやることによって、私は政治的には非常に大きな効果があると思います。総理大臣、理屈はそうでありましても、大臣の断で、これだけでも復帰時点に返って、原点の趣旨に返りまして、上げるにしても、一年もならぬこのときにすぐ上げる、それは本土が上がったからと、こういうしゃくし定木でなくて、私は、そのことが他の物価を押える一つの物価政策になるんではないか、こう思います。総理、ひとつその点、御配慮願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  192. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 安里委員のおっしゃっておる気持ちは私もわからないことはございません。しかし、先ほど御説明申し上げたとおりに、血も涙もないような措置でなく、やはり相当考慮をしながらまいったということは御了解願えると思うのであります。  また同時に、量は少のうございまするが、米作農家の生産者米価のほうの引き上げも考えなければならないということが一方にございました。また、現にとられておる措置によります財政負担も相当な額に上がりまするので、大体この辺で御了解願えるのではないかということで、今回の措置となった次第でございます。
  193. 安里積千代

    ○安里委員 次に移りたいと思います。  総理の施政方針演説の中に、沖繩の振興開発に関係いたしまして、「沖繩の特性を生かしながら環境の保全を優先させ」ということが述べられてございます。そこで、総理のお考えとして持っておられまする、理解として持っておられまする沖繩の特性というものを、どのように御理解されておられるでしょうか。
  194. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 沖繩は、御承知のとおり、島が多いということが一つございます。それから土地もやせておるということもございます。第三は、米軍の基地が非常に多いという特性がございます。やはりそういう現実を直視して、沖繩の将来というものの展望図をかかなければならないと思うのです。これは、重化学工業の基地にしようとすれば、御承知のとおり、まさに残された山紫水明が侵されるということもございますし、同時に、農業だけでやろうとしても水が少ないというような問題もございます。それから観光をどういうふうにするのか、また二次産業比率をどうするかというような問題も、十分考えなければならないと思うのです。私も、沖繩海洋博覧会の計画をやったときには、この沖繩海洋博覧会の施設や整備事業が沖繩の開発計画に沿ったものであることが望ましいということを考えたわけでございます。  ですから、沖繩の特性といえば、いま申し上げたような自然的な制約、立地的な制約、それから基地が多いというような問題を十分考えて、特に基地の整理、統合というような問題もたいへん重要なことであろう、こう考えております。
  195. 安里積千代

    ○安里委員 私が特にいまお聞きしたがったのは、特性のうちで大事な点は、私は沖繩が一つの亜熱帯地域にあるということが非常に大きな問題だと思います。島であるということ、亜熱帯地域であるという問題、この問題と、その次にありまするところの総理の農業施策につきましては、高能率農業の育成、それから農村環境の総合的な整備、これが農業の政策といたしまして述べられておるわけであります。  そこで私は、この二つを結びつけて考えまして、沖繩の地域は、いわゆる亜熱帯地域としての土地を生かす農生産、これを度外視しては非常にいけない問題があると思う。総理日本列島改造論も、この農業面にはどっちかというとスペースのさき方が少ないだろうと思っておりますが、沖繩の場合におきましても、いまいろいろな問題がありまして、私が一番心配するのは、沖繩におきましても多くの離農者ができ、耕地がこうして失われていく、こういった場合に、私は特に、サトウキビの生産その他農生産に対して、非常に支障を来たすのじゃないか。このことを考えまして、私は、本土の場合も同じでございまするけれども、沖繩の農業の振興に対してよほどの理解を持たないと、単なる工業化一本あるいは観光一本となりますと将来を誤るのじゃないか、こういうことを私は非常に考えるわけであります。  そこで、農林大臣に少しお聞きしたいのであります。私は、沖繩の特性のいまの主産業、サトウキビ、砂糖でございますが、基本的にお伺いしたいと思います。この特性を生かしていく糖業振興について、基本的にどのような位置づけと申しますか、立場で沖繩の糖業を見ておるか、この点、基本的なものを簡単にお答え願いたいと思います。
  196. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 安里委員非常に強調されました亜熱帯地区における沖繩の特殊性、これは私は全く同感でございまして、この沖繩の亜熱帯地帯におけるところの沖繩の開発という問題を重点に置きましての農業政策も考えなければなりません。また、あの美しい海に囲まれている、いわゆる海を中心とした問題、及び東南アジアに最も近い立場である沖繩県でもありますので、これら等を含めましての観光あるいは産業の開発を、ひとつ推進いたしてまいりたいということを申し上げておきたいと思います。
  197. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 砂糖の関係では、第一に、土地基盤整備事業に四十七年七億円ほどを、今回御審議を願っておる予算では十二億円に引き上げております。また、サトウキビ生産対策費といたしまして、四十七年六千二百万円のものを七千五百万円に引き上げるというような予算措置を講じておるわけです。
  198. 安里積千代

    ○安里委員 私のことばが足りないかどうか知りませんけれども、私は、どういう位置づけをしておるかということなんですよ。私から申し上げたいと思います。決して、沖繩の基幹産業だから沖繩の農民のために糖業を振興させろ、こういった立場じゃなくして、もっと高い立場から、日本の甘味資源を供給するところの基地として沖繩の糖業を考えろということを私は申し上げたかったのであります。  と申しますのは、それは、沖繩に砂糖ができませんでも、安いところの外国糖を入れればいいかもしれません。しかしながら、甘味資源というものは、食糧も同じでございますけれども、どういう事情で外国から入れていることに対して、支障が起こって窮屈になる場合がないとも限りません。そういう場合において、常に国民に責任を負うところの政府は、どんな場合においても国民に不自由をかけない、最低限は国内で保有しておるのだ、こういう体制が農業施策の基本としてなければならぬじゃないか、こういうふうに私は思うわけです。  そういう立場から糖業を見て、コストは高かろうがこれを保護してやらなければならない。買い上げ価格もそういった立場において見なければならぬじゃないか。この基本姿勢がなくて、ただ沖繩のものはこれだけ高く買い上げるというような金の問題じゃなくして、真の日本の甘味資源をここで保持する、いかなることがあったって国民に迷惑をかけないのだ、こういう高い立場からの位置づけで糖業を見てもらいたい、こう思うわけですよ。  そこで、もう時間がございませんので、最後にお願いしたがったのは、そういう立場から、今度の櫻内大臣の就任前に、前日か何か知りませんけれども、砂糖買い上げ価格を発表いたしました。これは非常に不評判を買っております。こんな安いことでどうするかといって農民はおこっておりまするし、これじゃもうサトウキビをつくるな、こういうような生産意欲も失われようとしております。  そこで私は申し上げたいのは、考え直して、新しい大臣のもとにおいて、そういうことでこの告示価格を改定してもらえないか、要望はこれだけです。そういう配慮がなければ、いわゆる農民の生産意欲を失わしめる。このことから私は、国の国民に対する、将来の糖業の振興のためにも配慮がなされていいんじゃないか、これをお願いというか、要求したかったのです。お答え願いたい。
  199. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほどの甘味資源の重要性、しかも沖繩におけるサトウキビの位置づけというものは、私も十分考えておる次第でございます。  私は、こまかい予算措置のほうを申し上げたわけでございますが、いまお尋ねの、今回決定した沖繩産糖の買い上げ価格、これはおっしゃっておることがどの程度のことをおっしゃっておるのか、ちょっと私にはかりかねるのです。というのは、四千四百五十円の引き上げでトン当たり八万八千七百円になって、そして臨時糖業助成費を別途八億円計上しておるという報告を私は受けておるわけでございますが、これがこの資料等を見る限りにおきましては、例年になく買い上げ幅も上がっておるということでございまするので、非常におしかりを受けるようなものでないというふうに、一応私はここにある資料では見ておるのでございます。その点、お答えを申し上げます。
  200. 安里積千代

    ○安里委員 私は、官僚、事務当局がいろんなそろばんをはじいてはじき出した数字にかれこれ文句は言いたくありません。ただ忠実にやったと思います。農林省の生産者基準価格が、十六度から十八度までを五千九百四十円、十九度から二十一度までを六千九百五十円、これを一律に一本化して七千円にせい、簡単に結論を言えばたったそれだけの問題です。たったわずかな問題なんです。これだけの配慮がなされぬかということであります。
  201. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 いまの御指摘の分は、サトウキビの買い上げの問題でございます。今回、おっしゃるように、トン当たり二百円引き上げて六千九百五十円。そのほかに、会社と生産団体との話し合いに基づく五十円がつきまして七千円ということになります。ところが、従来、運搬費は生産者持ちであったものを、これを今回は会社持ちにいたしております。それから糖度のいかんによって価格が非常に違っておりましたのを、今回はその糖度のことは問わないというようにしておりますので、この価格の決定はそう御不満をかこつようなものでないというように見ておるのでございます。詳しくはパリティ計算から始まってきめる問題でございまするから、御不満があるのはおかしいように思うのですが……。
  202. 安里積千代

    ○安里委員 時間がありませんので、最後に私は文教当局にちょっとあれします。  総理も、教育の問題につきまして、熱意を込めて施政方針の演説においてなされております。確かに「人間形成の基本が小、中学校で定まることを思えば、義務教育を充実して整備することは、何よりも大切な問題であります。」というふうに述べられております。そういう線に関係ある問題でございまするけれども、一体、小学校、中学校の教育というものを効果的に遂行しまするためには、一つの学校にどのくらいの在籍と申しますか、規模と申しますか、これが普通適当でございますか。まず文部大臣
  203. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 お尋ねの趣旨は小中学校の学校の規模のことだろうと思います。年の状況とか教員の組織とか、いろいろな事情によって変わってまいりますけれども、おおむね十二学級から二十四学級が適当だ、こういままで考えているわけでございます。人数にしますと、一学級当たり標準四十五人にしておりますから、一学級の人数によって変わってくるわけであります。
  204. 安里積千代

    ○安里委員 私が、いまなぜこのことを持ち出しておるかと申しますと、戦後の沖繩は、基地の関係もございまして、特に那覇市の例をとりますならば、一つの小中学校に実に多いのは二千五百人、併置しますところの幼稚園を合わせますと三千人近い二千九百人、これが一小学校であります。こういう規模の学校においてりっぱな教育を施せといってもできない。そこで、これを二つに分けなければならぬ。分けるにしましても、稠密な土地なので土地もございません。幸いに土地があった。それは今度アメリカから解放されましたところの与儀のタンクの敷地のあとがある。これを那覇市に無償で渡すことによって学校もできる。ところがこれは、大蔵省においてやはり問題がある、あるいはまた総理府の事務局をそこに建設するというふうな話もあるということで、これがなかなかできないでおります。こういった問題もある。アメリカが接収しておって解放された土地ですよ。優先的に教育のための場所がないのだから。それで、これを買えといったって、これは、市町村の自治体ではなかなかできるものではありません。本土でもこの費用のために、市町村は非常に困っておるはずでございますが、これを大蔵省も、アメリカに長い間占領されて制約を受けてきた、この三千人近いところの小学校の例なんですが、もう一つ学校をつける、これだけのことは、無償で那覇市にやって学校を建てるようにする。これは大臣の教育に対する方針に私は合致しているんじゃないか。ひとつこの点を……。
  205. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 与儀のガソリンタンクのあと地は、御承知のとおりいま都市計画を計画中でございます。この地域に対しては国の機関もつくりたいということを考えておるのでございますが、これがあと地利用については、小学校用地としても当然考えなければならないと、こういう考え方でございます。  まあ無償にするかどうかという問題ですが、できれば無償ということも考えられるわけです。しかし、いまの国有財産の処分に対しては、無償ということでなく有償になっておりますから、これは開発法第九条でございますかに基づく措置が必要なわけでございますから、適切な処置をとって考慮ができると、こう考えております。
  206. 安里積千代

    ○安里委員 実は農業施策の問題につきまして、特に最近、学者あるいは専門家、あるいは農林省の皆さん方の中におきましても、数年後には世界全体に食糧危機が来るんだということもずいぶんと言われております。これは傾聴すべきところのいろいろの意見だと思って考えております。大豆の不足の問題で、いろんな問題にも差しつかえたことは御承知のとおりであります。食糧を外国から輸入するものも多い。こういう中において、いま世界に食糧危機が来るのじゃないかと警告を発せられたときに、日本政府とされましても、米が余ったから減反した、こういったいろんなこともありまするけれども、あらゆる面に長い目でもって見て、国民に迷惑をかけないように、あることをやればすぐ次の事象が起こり、また次の起こったことに対して手を打つといったようなことでなくして、長い展望のもとにおいてあらゆる対策を講ずることが私はほんとうに必要じゃないか。大臣だってこれは御承知でしょう。おっしゃるとおり、無から立ら上がって経済成長した。そうしたら公害問題が起こった。公害が起こった、あるいはドルが多くなった、あるいはまたいろんな問題があとからあとから起こっております。どうぞひとつこの問題に対しても、農業の基本施策としてお考えを願いたい、こう思っております。  まだあったのでありますけれども、たいへんどうも時間が来てしまいまして意を尽くさなかったのでございまするけれども、とにかく誠意を尽くして、特にいまの基地の状況、沖繩の復帰後の状況は、決して安心できる状況ではございません。これに対しまして、あらゆる面から万遺漏なきを期するような対策を講じていただくことを要望いたしまして、終わります。(拍手)
  207. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて安里君の質疑は終了いたしました。  明七日は午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十三分散会