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1973-02-03 第71回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月三日(土曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 根本龍太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小澤 太郎君    理事 小沢 辰男君 理事 田澤 吉郎君    理事 湊  徹郎君 理事 阪上安太郎君    理事 谷口善太郎君 理事 山田 太郎君       荒木萬壽夫君    伊能繁次郎君       臼井 莊一君    大野 市郎君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    小平 久雄君       近藤 鉄雄君    田中 龍夫君       塚原 俊郎君    戸井田三郎君       灘尾 弘吉君    野田 卯一君       野原 正勝君    福田  一君       保利  茂君    細田 吉藏君       前田 正男君    松浦周太郎君       松野 頼三君    村田敬次郎君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       大原  亨君    北山 愛郎君       小林  進君    田中 武夫君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       津金 佑近君    東中 光雄君       松本 善明君    岡本 富夫君       安里積千代君    小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 櫻内 義雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         郵 政 大 臣 久野 忠治君         労 働 大 臣 加藤常太郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       江崎 真澄君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長     亘理  彰君         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         警察庁長官官房         長       丸山  昮君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁長官官房         長       田代 一正君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         法務省刑事局長 安原 美穂君         公安調査庁長官 川井 英良君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      穴山 徳夫君         厚生省保険局長 北川 力夫君         厚生省年金局長 横田 陽吉君         厚生省援護局長 高木  玄君         社会保険庁医療         保険部長    江間 時彦君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林大臣官房予         算課長     渡邉 文雄君         農林省農林経済         局長      内村 良英君         農林省農蚕園芸         局長      伊藤 俊三君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         食糧庁長官   中野 和仁君         林野庁長官   福田 省一君         水産庁長官   荒勝  巖君         通商産業省通商         局長      小松勇五郎君         通商産業省企業         局長      山下 英明君         通商産業省鉱山         石炭局長    外山  弘君         通商産業省公益         事業局長    井上  保君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君         労働大臣官房長 藤繩 正勝君         労働省労政局長 石黒 拓爾君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         建設政務次官  松野 幸泰君         建設大臣官房長 大津留 温君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉田 泰夫君         建設省道路局長 菊池 三男君         自治省行政局長 林  忠雄君         自治省財政局長 鎌田 要人君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      佐々木 直君         参  考  人         (東京大学学         長)      加藤 一郎君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ―――――――――――――委員の異動 二月三日  辞任         補欠選任   赤澤 正道君     戸井田三郎君   正示啓次郎君     村田敬次郎君   瀬戸山三男君     近藤 鉄雄君   中島 武敏君     松本 善明君   不破 哲三君     東中 光雄君   正木 良明君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   近藤 鉄雄君     瀬戸山三男君   戸井田三郎君     赤澤 正道君   村田敬次郎君     正示啓次郎君   東中 光雄君     不破 哲三君   松本 善明君     中島 武敏君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これより会議を開きます。  昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。小平忠君。
  3. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、民社党を代表いたしまして、四十八年度の予算並びに関係いたしまする重要問題につきまして、総理並びに関係閣僚に若干の質問をいたしたいと思うのであります。  平和時における防衛力限界につきまして、一昨日以来、各党の代表がそれぞれ総理並びに防衛庁長官を中心にただしておるのでありますが、この質疑を通じて国民は、何か政府答弁がきわめてあいまいでありますから、不安と動揺を激化しておるような感じがいたします。そこで私は、予定いたしておりまする質問に先立ちまして、まず、この問題について解明する意味で、総理並びに関係閣僚にお尋ねをしたいと思うのであります。  平和時の防衛力限界につきましては、一昨日防衛庁が示しましたその見解によりますと、陸上十八万人、海上約二十五万トンないし約二十八万トン、航空機八百機であります。これは一応の量を示されたのでありますが、これに対して総理は、国際情勢に大きな変化がない限りこの案を守ることが、必要かつ妥当と考える旨言明されました。  この案は、さきに決定されました四次防に比べまして、陸は同じでありますけれども、海上は三万六千トンないし六万六千トンの増強であり、航空は三十機の増強となっておるのであります。これは結局、政府が四次防に次いで新たな計画があり得ると理解してよいのか、まず防衛庁長官にお尋ねしたいと思います。
  4. 増原恵吉

    増原国務大臣 御承知のように、四次防は、昭和四十七年度を初年度といたしまする五カ年の防衛力整備計画でございます。このたびお示しをいたしました平和時の防衛力限界、私どもは防衛力めどとも申しておりますが、この限界は、何年間という期限のないものでございます。したがいまして、これは四次防とは内容、性格の異なる、あるいは防衛力整備についての見方の異なる分野のものでございます。  なお、御発言のありました陸は、十八万で大体同じでございます。海は、四ないし五護衛隊群と申し上げておるのでありますが、これはなお引き続き研究をどうしても要するという形において、四ないし五という数字を申し上げました。四護衛隊群が、四次防で二護衛隊群いわゆる近代化整備をされまして、それが約二十一万四千トンばかりになるわけでございますが、あとのものが整備をされますと、四護衛隊群で二十五万トンになる、そういうふうな意味合いでございまして、四次防は四十七年度を起点とする五年間の明確な防衛力整備計画である。平和時の防衛力限界は、何年間ということを考えないで、平和時というものが続く限りそういうものを限界めどとして防衛力整備考えていくというものでございます。
  5. 小平忠

    小平(忠)委員 ですから、四次防が一応五年間に限られておるから、四次防が終わった後においての平和時における防衛力限界防衛庁が示したのであるから、それをはみ出る分については、新たな計画考えられますかどうかということを伺っているのです。
  6. 増原恵吉

    増原国務大臣 平和時の防衛力限界なるものは、総理からもたびたび申されたように、平和時というものを前提としての防衛力整備考えておるわけでありまして、これは防衛力整備計画というものではございません。防衛力整備計画は、現在ありますものは第四次防衛力整備計画だけでございます。  第四次防衛力整備計画が終わりました時期にどうするかは、昨日も申し上げましたように、どういう形でやりまするか、いままでのように四次、今度は五次というふうにするかどうかは、ただいま、あらためて十分研究をすべきものとして、そういう問題としての取り上げ方をいたしておるわけでございます。
  7. 小平忠

    小平(忠)委員 そうすると、ことばをかえれば、四次防の後に五次防、六次防、そういう整備計画を持つ持たないは別として、逆にいえば、この防衛計画というものが、平時である限り、一昨日示した防衛庁の案のあのいわゆる限界よりも越えることはないと理解してよろしいのですか。
  8. 増原恵吉

    増原国務大臣 仰せのとおりでございまして、平和時という前提が続く限りはあの限界を、あのめどを越えることはないというつもりで策定したものが、一昨日の四次防の限界でございます。  したがいまして、四次防が終わりましたあと防衛力整備計画を立てまする場合には、さらにまたあらためて整備計画としての計画を立て、それぞれの必要とする機関にかけ、特に年々の予算において御審議をいただいてきめるというものでございまして、平和時の続く限り、申し上げましたものが限界であり、めどである、こういうことでございます。
  9. 小平忠

    小平(忠)委員 総理にお伺いしますが、そうしますと、一昨日の防衛庁が示した案を、総理は守ることが必要かつ妥当だと考えられた。したがって、いま防衛庁長官が指摘したとおり、平和時におきましては、すべてこの防衛庁計画を、限度を越えるということはない、このように理解してよろしいのですね。
  10. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私が防衛庁に依頼をして、防衛庁が、非常にむずかしい問題ではございますが、一定条件もと考えられる平和時の防衛力限界なるものに対して試算をしたり、勉強してみましょうということであの答案が出たわけでございます。私は専門家ではありませんが、あの答案そのものは、専門家一つ条件前提として想定をした結論であることは事実だと思います。  そういう意味で、私は、数字的にあれを判断するということは、現在の時点においても、私自身能力としては困難な問題がございますが、防衛の任務を担当しておる防衛庁の、まあ一つ条件前提としてのものではありますが、平和時の防衛力限界として答案を出した以上、これを尊重し、妥当なものと考えてまいりたいということは、先般この席から申し上げたわけでございますから一あの条件もと、あの試算をしたような条件がずっと続くという平和時において、あの限界を越すようなことはないというふうに理解をしていただいてもいいと思います。
  11. 小平忠

    小平(忠)委員 それで、私は総理にこの際明確にお尋ねしたいのでありますが、この問題について、およそ与野党の委員国民も一種の不安を非常に感じておると私は思うのです。それは一昨日、総理がこの防衛庁案に対しまして、この案を守ることが必要かつ妥当だと考える、こう言明しておいたその翌日、昨日は、野党の質問に答えて、これを政府案とするのか、閣議決定をするのか、国防会議にかけるのか、かけません。そしてこの案を政府案とするのには、自信がないとか、作業を伴うについてはきわめて慎重な態度で臨まなければならないとかというようなことがあなたのことばから出るものですから、国民は非常に不安を感じていると思う。  そこで、総理にお伺いしますが、私は、この問題は手続論実質論とこの二面あると思うのです。私は、あえて手続論の問題よりもいわゆる実質論、中身であります。それで、総理防衛庁の案に対して適切妥当だ、必要かつ妥当だと考えた限り、これは田中内閣の案だと考えることは無理なんですか。
  12. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、閣議にはかって防衛庁に指示したわけではございません。手続を経てやったわけではありません。私が各省大臣にいろいろな施策に対して、いろいろな案を勉強してみてくれと言うと同じ趣旨にいずるものであるということは、これは理解をしていただきたいのでございます。しかし、専門である防衛庁当局答案を出したわけでありますから、この答案に対して、答案を求めた当事者である君はどうするかということになれば、私は、専門家の出したものに対しては、尊重し、妥当なものと存じますと、こう答えておるわけでございます。  大体、国防会議にかけなければならないようなもの、こういうもの、政策として決定をし、国会審議を仰ぐというような問題に対しては、こういう重要な問題は国防会議にかけ、閣議決定をし、適法な手続もと国会提案をされる、また法律的措置が行なわれるということでございますが、この平和時における防衛力限界防衛力目標防衛力めどというようなものは、私が間々申し上げておりますように、一定の方程式もないし、計算の方法もない。しかし、平和時というものを一定に定義づけて、そして勉強してみましょう、こういうことで答案を出したものでございますから、私は、その答案に対しては、十分妥当なものだと思いますし、尊重いたしてまいりたいということを申し上げておるわけでございます。
  13. 小平忠

    小平(忠)委員 昨日から総理、回りくどいことをおっしゃらぬで、私はその結論だけ伺っているのですから。  総理国防会議議長でございますね。したがって、あなたはシビリアンコントロール最高責任者なんです。そういう立場において防衛庁の案を必要かつ妥当と考えた、妥当と認めた限りは、それをあなたは国防会議にかけるという考えがあるんですか、ないんですか。
  14. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国防会議にかけるような案件ではない、こう考えております。
  15. 小平忠

    小平(忠)委員 そうすると、平時における防衛力限界というようなものは、防衛庁設置法の中にある国防会議の付議すべき事項の第一号にある国防基本じゃないのですね。
  16. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 新しい装備をつくったり、また予算で五カ年計画をきめたりというような具体的な政策は、これは国防会議議題とすべきでございます。で、適法な手続をとって国会提案をしておるわけでございます。しかし、この平和時における防衛力限界というものは、これは一つ条件防衛庁考えて、それでこれが戦時編成とか平時編成とかいうものではなく、平和時というものをどういうふうにしますか、平和時とはこういうものであって、一定に固定しておるんだということであれば別でありますが、そうではなく、国民皆さんから理解を示してもらうための一助にもと、とにかくめんどうなことであっても、平和時ということを一応規定して勉強できないか、防衛庁立場で平和時というものを仮定して、その上に成り立つ平和時の防衛力目標限界というものを勉強してみましょう、こう言って答案が出たもの、これが国防会議議題になるものである、また、しなければならないものであるということではないわけです。運動方針としてきちんと年間のものとしてきめるということであれば、これはもう当然正式な機関手続を経なければならない。しかし、今度のものは、平和時というものを想定して、そして防衛庁で勉強してみてくれと言って出たもの、言うなれば私の要請に対する防衛庁の答えであります。これを国防会議にかけて、政府案として正式に決定をするという趣旨のものではないと、こう理解をしております。
  17. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは、国防会議にもかけない、政府案とすることも考えていない、何のためにこの案を出したのです。私が劈頭に防衛庁長官に伺ったのは、これは四次防ないし四次防をはみ出るその限度について、新たな防衛整備計画考えられるかどうかなどについても伺ったのはそこにあるのです。  それでは総理、あなたが防衛庁のこの案を守ることが必要かつ妥当と考えた。何のためにこの案を出したのです、国会に。何のために出したのですか。
  18. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 防衛庁から答案が出たら国会でもって報告をするか、いたしますと、こういう前言がございます。そのために、防衛庁長官から答案が出ましたので、それを国会質問に答えて申し上げたわけでございます。
  19. 小平忠

    小平(忠)委員 そうするとこの案なるものは、政府の案でもなければ、結局国防会議にもかけない、私はそこに、あなたのいわゆる一貫性のない方針国民の前にさらけ出して、不安と動揺を巻き起こしておると思う。防衛庁防衛庁の案として持つことはいいでしょう。しかし、これを一国の総理が適切妥当と認めたということは、これは政府考えじゃありませんか。総理、あなたは自由民主党の総裁であると同時に国防会議議長なんです。最高責任者なんです。そのあなたが必要かつ妥当と認めた限りにおいては、私は田中内閣のいわゆる基本的な考えだと思うのです。そうでなければ何のためにこれを国会に出したのですか。要求があったから出したと言う。出すからには私は、やはり確固たる決意がなければならぬと思うのです。いかがですか。
  20. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政府は、政府が行なう施策、またこれから行なうような施策に対して、主権者である国民理解を求めるために努力を続けなければならないことは、民主政治基本的原則だと思います。そのためには、絶えずあらゆる角度から勉強しなければならないことは当然であります。  そういう意味で、平和時の防衛力限界というものを防衛庁研究をしてもらったわけであります。そうしてあまりにも固定した状態なもので研究をしたものでございまして、これは政府案として決定をするようなものではないわけであります。これが国際情勢日本経済の伸び、財政負担能力、社会福祉等内政問題、そういうものも総合して勘案したものであれば、これは政府決定をするというようなこともあり得るかもしれませんが、いま防衛庁から答案が出されたものは、仮定が多過ぎて、これを政府案として決定をするというようなものでないことは、理解いただけると思います。  それが、私のところに出たのはおとといの朝であります。その三十分後には国会で私が答弁をしたのであります。そういう状態において、防衛庁から出されたものをすべて国防会議にかけ、そしてこれを政府案としなければならないということになれば、防衛庁からもっと大きな数字が出ても、それを国防会議議題にしなければならないということにもなるわけでありまして、まだ、政府がこれを確定するには、もっと広範な立場において勉強を必要といたします。
  21. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは総理はなぜ一昨日この場で、防衛庁の案を守ることが必要かつ妥当と考えると言明したのですか。
  22. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私が要請をし、私が指名をした専門的な立場にある防衛庁長官の苦心の作であることは事実でございます。そういう意味で、この答案を求めた私としては、現段階において妥当なものと認めますと、こう述べたわけでございます。
  23. 小平忠

    小平(忠)委員 昨年四次防問題をめぐりて、本委員会が長期にわたってデッドロックに乗り上げた問題も、やはりシビリアンコントロールの問題です。これはその当時佐藤内閣ではありましたけれども、あなたはその佐藤内閣のいわゆる主要な地位にあって、特にそれを力説された一人であります。私は、総理自身がこのシビコン精神を根底から、何かくつがえしているような感じがしますが、いかがですか。
  24. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、文民統制の実をあげるために全力を傾けてまいるつもりでございまして、御発言のような姿勢は全くございません。
  25. 小平忠

    小平(忠)委員 そうすれば、一昨日の朝防衛庁が案を示して、それでこの案についてはまだ検討している、まだ私も見たばかりだから検討中であるというのであるならば、これはあなたが総理大臣として慎重にシビコン精神を発揮することは、われわれ理解できるのだけれども、二時間や三時間後に、なぜあなたはこの案を守ることが必要かつ妥当だと言明したのですか。そのことが、私はいわゆるシビリアンコントロール精神をくつがえしていると思うのです。
  26. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 文民統制の最も大きな力は国会でございます。また、政府機関の中では閣議であり、国防会議でございます。そういう意味で、これらにかけて正式に決定をするには、これはむずかしい問題でございまして、いま直ちにこれを確定することはできませんし、国防会議の議に付する気持ちもございませんと、こう明確に答えておるわけであります。  では、答案を求めた私に対してどう思うかということでございますから、私は、それは政府案として決定をしたり、国防会議にかけるに至るものとは思いませんが、私が依頼をし、私が指名をした専門家である防衛庁の案でありますから、妥当なものだと考えますと、こうすなおに答えておるわけでございます。
  27. 小平忠

    小平(忠)委員 また答弁が変わってしまったのです。答弁がまた変わっちゃったのです。総理個人とおっしゃるけれども、あなたは総理大臣でしょう。あなたは自由民主党の総裁なんです。国防会議議長なんです。そうするとあなたは、いまあなた個人の意見を述べたのは、田中内閣に責任を負わぬということですか。政府として責任がないのですか。
  28. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、閣議の議を経て、所要な手続を踏んで、また、法律が求めるようなものを防衛庁に正式に依頼をしたのではないのであります。四次防の問題等に対して、防衛費が無制限に拡大をされるおそれを抱く人もありますので、これらの国民に対して支持と理解を求めていくためにはあらゆる努力をしなければならない。その一つのものとして、平和時の防衛力限界というようなものがもし示されれば、それはかっこうな材料であろうと思う。そういう意味で、勉強してほしいと求めたわけでございます。  でありますから、これを閣議にはかるというようなものでもないし、また国防会議に付してきめるようなものではない。ただ、御質問が、出したものに対して、求めた田中はどう考えておるかということでございますから、妥当なものだと考えております、こういうことであります。私は、個人田中角榮であると同時に内閣総理大臣の職にあることは事実でございますから、少なくとも私があれを守らなければならない。また、妥当なものであるということは、内閣がこれから年次にいろいろな予算をつくってまいりますときなども、あの防衛庁の見解というものは十分考えて、その範囲内でなければならないことは当然である、このように考えております。
  29. 小平忠

    小平(忠)委員 私はさっぱりわからないのです。それでは、一体何のためにこの案を国会に出したのですか。それは田中総理個人、個人ということばは絶対にあり得ないでしょう、内閣責任制の観点から見ても。あなたが、この案を守ることが必要かつ妥当と言明された限りは、あなたが総理としての責任を持っている以上、いまのような答弁国民が納得しますか。私自身もわかりません。  こういう問題は、このままにしておきますとどこまでも尾を引きます。昨日、本問題について、社会党の中澤委員は総括質問中で、政府の統一ある見解を示されたいということについては、委員長がはかられて、これは理事会で相談いたしますよ。相談されると思います。しかし、扱い方についての相談と基本問題は違うのです。だから、総理のようないまの発言ならば、国会防衛庁の一試案を示す意味がないと思うのです。そんなものは撤回しなさい。
  30. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 政府は、議員の発言に答えなければなりません。議員は、政府に対してこの答えを求めたのであります。私はその質問に答えたのであります。
  31. 小平忠

    小平(忠)委員 総理は、委員質問に答えたとおっしゃるのであるならば、それでは、内閣としても責任をとらない、何でもかまわない質問に答えればいい、その答えた内容については責任を持たぬということですか。
  32. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 質問に答えていわく、私はこの答案に対して妥当なものと考えております、こういう結論を出しております。
  33. 小平忠

    小平(忠)委員 重ねて申し上げますが、必要かつ妥当と考えた限りにおいては、私は責任があると思うのです。防衛庁の案を守ることが必要かつ妥当と考えたのでしょう。そうしたならば、ほっておくわけにいかないでしょう。ただ飾っておくわけにいかないでしょう。それを、政府案とする考えもございません、国防会議にかける考えもございません。それでは何なんです。  私は、時間が貴重ですから、さらに防衛庁長官に一点伺いますが、この示された平和時における防衛力限界なるものは、一応これは量的に答弁されました。したがって問題は、量の限界は一応承りましたが、質の限界です。質の限界というものをお示しになるお考えですか。
  34. 増原恵吉

    増原国務大臣 四次防についての御論議をいただいた際に、三次防から四次防へ経費的には約二倍になったではないか、この先どういうふうに膨張するかわからない、歯どめをしっかりしろという御議論がありましたことは御承知のとおりでございます。そういう趣旨に沿って限界を示せ、それも、ただことばをもって示したのでははっきりしないから数量をもって示せということが、だんだんの質疑の中で出てまいりました。  われわれとしても初めは、御承知のように、防衛力というものは本来相対的なものでございますので、なかなか限界をお示しすることは困難であるというふうに申し上げておったのですが、だんだんと、いろいろと前提あるいは条件等を設けるならば検討の余地はないことはないというふうに申し上げ、そして総理からの指示に基づいて、平和時の防衛力限界というものを勉強してみろというお話がありましたので、平和時の防衛力限界ということでお示しをいたしましょう。しかし、それについて御質問の方々は、単にことばをもってしたのでは十分でないから、やはり量をもって示せというふうな御意見もございまして、この点は、われわれとしては一番苦労をしたところでございますが、一昨日申し上げましたように、量をもってお示しをいたしました。  しかし、この前提として御説明を申し上げました中にもありますように、やはりこれは第四次防衛力整備計画と違いまして、五年間の期限のあるものではございません。平和時である限り将来にわたるものでございますので、その間に防衛力を最小限度整備するという方針は、まだ続いていくわけでございます。したがいまして、やはり装備の近代化などにつきましては、これを行なっていくべきものでございますので、質における歯どめというようなことはなかなか困難でございまして、質における歯どめということは、今度の防衛力限界については考えておらないということでございます。
  35. 小平忠

    小平(忠)委員 長官、いいですか、いまあなたは非常に重大な発言をされたのです。わが国の防衛問題のかなめは、量より質なんです。いまや、この質の問題については国際常識となっておるのです。昨年、米ソの首脳会談においても、核保有について、いわゆる量より質だということは各国が指摘しているのです。現に防衛庁でも、主力航空機数が、三次防では八百八十機であったのを四次防では七百七十機としたでしょう。百十機も数を減らしておるじゃありませんか。しかし、防衛費そのものは大幅に、三次防の倍にもなっている。こういう観点から見ますと、今度のいわゆる平和時における防衛力限界は、単に量だけを示しても、それは結局的確なる限界にならぬと私は思う。  現に、つい最近まで国防会議の事務局長であった海原氏が、先般来毎日新聞の紙上で、現実的防衛論というテーマで一連の防衛論を展開しておりますけれども、その中でもはっきり、戦車の数が幾つある、飛行機が何機ある、船が何隻ある、だからどうだという、この数字で戦力をとらえることは間違いだ、このように海原氏が指摘して、盛んにあおっているのです。現に、国防会議の事務局長であった人がこういう発言をするということは、やはり真髄をついている。  私は、そういう意味から、あなたが質については考えていないということは、いま出されたあなたのいわゆる平和時における防衛力限界なるものは、きわめて幅があってあいまいで、その核心をつかんでない、こう指摘してもいいと思うのですが、いかがですか。
  36. 増原恵吉

    増原国務大臣 一昨日御説明を申し上げまして、たしか印刷物を御配付したかと思うので、少しことばが足りなかったかと思いまするが、わが国の防衛力は、小平委員よく御承知のように、憲法上や政策上の制約がございます。そのほか、経費はGNPの一%の範囲内で適切に規制をされるというふうなことも、政府としては考えておるのであります。また、人員の募集や施設取得が引き続いて困難であるというふうなことも、御説明を申したとおりでございます。そういういろいろの制約があるわけでございます。前記の諸制約条件もとで、なお欠けている機能の付与や装備の近代化等内容の充実をはかるものといたしますと申し上げたのでございまして、ただいま質について限界があるかとお問いになったので、少し端的にお答えを申し上げ過ぎたかもわかりませんが、そういう意味で申し上げたのでございます。  先ほどちょっと議題となりました海のものでも、護衛艦を、艦齢がぼつぼつ参るものがあるわけですが、つくりかえる場合にはやはり装備の近代化された、廃艦になるものよりも新しいもののほうが、近代化され、能力が上のものを持ってやっていくという形になる、そういう意味でございまして、質に制限がないという意味で、どんどん何か質的に強化していく、そういう趣旨を申し上げたわけではないことを御理解いただきたいと思います。
  37. 小平忠

    小平(忠)委員 いまあなたが、質については考えていないという、さらにそれに補足をして、最初の説明にもあったように、政府としてはGNPの一%ということをいま論及されましたけれども、それははたして政府決定なんですか。それはおそらく決定されていないでしょう。GNPの一%を防衛費の限界にするなんということをきめたらたいへんなことじゃありませんか。だから、単に量という問題だけをここに論議しても、防衛論議の核心をつかんでいないということを私は指摘したいのであります。  総理、いかがでしょうか。いま防衛庁長官がGNPの一%に言及されたけれども、総理はそのようにお考えですか。
  38. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、確信がある状態で申し上げるわけではありませんが、私も間々お答えしておる中で、現在の国防費は各国に比べて非常に低い、その低いということを立証するために、GNPに対しては〇・八%程度でございまして、  一%以内でございます、こういう状態で援用しておるだけでございます。ただ心の中では、やはり  一%をこすというようなことになると、いろんな問題があるのではないかという感じは個人的にはしておりますが、これは根拠があってのことではありません。私は、現に一%以内であるということでございます。ですから、防衛庁が立てたものは一つの仮定を置いてやったものであります。一%という仮定を置いてやったものでありまして、防衛庁限りの勉強した結論であります。そういう意味で、これを政府決定にするとかいうようなものではないということを申し上げておるわけでございます。
  39. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、ただいまの防衛庁長官の説明、総理の御答弁を伺っていまして、きわめてあいまいであります。私は、今日防衛論議というものはそれほど重要かつなかなか複雑なものであるということは、あえて申し上げるまでもないのであります。  私は、この機会に総理の見解をただしたいと思うのですが、先ほどの総理答弁で、平和時における防衛力限界について、あなたの答弁を私は了解したのではなくて、わからないのです。しかしこのことは、貴重な時間でありますから、次の問題に論議を進めたいと思います。  そこで、このように論議を重ねても、特に防衛庁長官から出された平和時における防衛力限界なるものが、逆に内容が、どこに責任があって、どういう意味で出したのか不明確なようなことまで来ているということは、それだけに問題がやはりあるのであって、したがって私は、さらにこの問題を専門に掘り下げて論議する場が必要だと思うのです。そういう意味で、真剣にこの防衛論議をする――わが民社党は、憲法で許されておる最小限のいわゆる自衛権、自衛力を認めております。すなわち専守防衛という立場に立って認めております。そういう見地から、その真剣に論議する場を考えてはどうか。たとえば衆参両院に防衛委員会等を設置して、そこで真剣に論議をする、そして国民の疑惑、不安を解消するということに努力されてはいかがですか。
  40. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 文民統制の最も大きな力は国会でございます。そういう意味で、国会において防衛委員会もしくは安全保障委員会のごときものをつくっていただきたいというのは、政府・与党からは常に提議をいたしておるわけでございますし、また民社党からもそういう御発案がございます。これは、皆さんの御賛成が得られてこのような機関が設けられ、文民統制の実がよりあげられることが望ましいことを明確に答弁申し上げておきます。
  41. 小平忠

    小平(忠)委員 総理の意思はわかりましたが、特に私はこの機会に総理並びに閣僚の皆さんに申し上げたいのは、以上のような論議がかわされ問題が多いときに、いろいろ国民の不安や疑惑を生ずるようなことを避ける意味からも、今日の段階において、四次防が問題がある、その四次防をさらに上回るような防衛力限界などを提出するということは、かりに防衛庁の一試案であるといえども、私は軽々だと思うのです。したがって民社党としては、どうかこういう問題を詰めて、国民のコンセンサス、理解を得るというその段階に到達するまでは、現状より防衛力増強しないという基本方針で臨んでもらいたい、このように私は考えます。総理、いかがですか。
  42. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 現に四次防に対して御審議を賜わっておるのでございまして、この期間において、四次防を上回るようなものを御審議を願おうというような気持ちは全くございません。
  43. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは、次に質問を展開いたしたいと思います。  田中総理の側近の一人であります、第一次田中内閣の閣僚でもありました木村武雄代議士が、最近中国を訪問されましたが、その際、周総理と会談した内容が伝えられております。  すなわち、周総理は、一、アジアで緊張が緩和したとはいえ、まだ緊張している情勢もあるから、日本が自衛力を持つことも必要であろう。ただし四次防とは別である。二、ソ連のアジア集団安保はにせもの、中ソ国境に、特にモンゴルに大兵を置いて中国を脅かし、インドに武力闘争をやらせている。三、日米安保は日本人としては必要と認めざるを得まい。米国の核のかさはソ連に対し必要である。将来日本が完全独立すれば安保が要らなくなるのは当然である、と述べたと伝えておりますが、総理は、この周総理の安保並びに緊張緩和に対する発言をどのように受けとめておられますか。
  44. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 木村議員が訪中の結果の話は、詳しくは聞いておりませんが、一部は御本人から、一部は同行者から、一部は新聞等の報道を通じて承知をいたしております。  周総理が言われたことに対して言及をすることは、私自身、まだ明確にどうこうということを申し上げられるような状態にはありません。しかし、この中で、日本が必要最小限の自衛力を持つということは、これは政府はいま四次防を御審議いただいておるのでございますし、独立国である日本としては必要最小限度、憲法の許容する範囲内で独立と自由を守らなければならないんだということに対しては、私もそう考えておりますし、また政府自身も、自衛力を持たなければならないということに対しては間々申し上げておるとおりでございます。  他の問題に対しては、これはどうも私がここで批評したり評価をしたりするようなものでないということは、御理解賜わりたい。
  45. 小平忠

    小平(忠)委員 さらに木村代議士が、次のような帰国談を出されておる。つまり周総理が、日米共同声明の台湾条項について、大平外相がこれを削除することを考慮したということを述べた点は、非常に注目すべきことだと思うのですが、大平外相はそのような発言をされたのでございますか。
  46. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういう覚えはございません。
  47. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは、木村代議士がそういう談話を出され、各社がこれを扱っておられるのですが、あれはにせものですか。
  48. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私が台湾条項――台湾条項というのは安保条約にありませんけれども、極東条項ということでございましょうが、そういうことの削除というような大それたことを申し上げたことは、国の内外を通じて全然ございません。
  49. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは、木村武雄代議士を本委員会にお呼びして、それをひとつ明らかにしてください。私はこの問題を保留しておきたいと思います。日中の国交回復に対する共同声明がなされ、また今般、ベトナム戦争の停戦という歴史的な段階において、アジアの情勢は緊張緩和の方向にいっているということはまことに喜ばしいことでございます。そういう観点から、昨年の十一月の臨時国会においてわが党の春日委員長が、特にこの日米共同声明にかかる台湾条項についてのいわゆる空文化、並びに日米安保条約の極東条項についての問題について触れて、総理が日中国交回復との関連においての答弁をされております。しかし、その昨年の十一月から今日の時点でも、国際情勢極東情勢は大きく変わりつつある。こういう中で私があえてこのことを外務大臣に伺ったことは、やはり今日、安保条約についてのすなわち検討期、再検討期に入っているということを私は申し上げたいのです。  それで、総理は、このような国際情勢の変化、アジアにおける緊張緩和、このような方向に対して、日米安保条約はやはりこのまま堅持することがよろしいと思われるか。検討を加える時期でないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  50. 大平正芳

    ○大平国務大臣 政府がたびたび申し上げておりますように、安保条約並びにその関連いたしました取りきめは、一切変えるつもりはないということを申し上げてまいりましたことは、小平さん御承知のとおりです。この中には当然のこととして、その一つの柱になっておりまする極東条項というものも、改廃する意図のないということを証明いたしておるわけでございまして、残念ながらあなたのおっしゃるように、いま安保条約を再検討するという意思は、毛頭政府としては考えていないわけでございます。  こういうように緊張緩和が進んでまいりました段階におきましては、あなたが再検討すべきであるというお考えをお持ちであることは私もよくわかるわけでございますけれども、政府立場はそうでないということでございます。何となれば、こういう緊張緩和情勢が出てまいりましたゆえんのものも、既存のこういう基本的な条約のワク組みがしつかりしておる環境の中で生まれてきたものでございまして、これをせっかくいまから固めて育ててまいる上におきまして、この環境は手がたく維持してまいることが賢明であるという判断を政府としては持っておるわけでございまして、そのような御意見もありましょうけれども、政府立場を明確にしておかなければならないと思います。
  51. 小平忠

    小平(忠)委員 きわめて重要な一つの転換期、段階でもありますから、いま外務大臣は、やはり従来の現状維持論、安保堅持論を明確にされましたが、しからば日本を取り巻くアジアの国際情勢がどう変わっているか、簡単にその要点を私は述べてみたいと思うのです。  第一は、力の政策による東西の対立が後退し、かつ日本が経済的、政治的に基盤を安定したことによって、日本が軍事的に民族解放戦争の戦場になる可能性はほとんど考えられなくなったということが第一。  第二に、日本を侵略しようと思えば侵略し得る物理的能力を持つアメリカ、ソ連、中国との間に友好が増進し、それらの力の多くは日本にとって脅威ではなくなりつつあるということ、そしてその傾向は、今後一そう前進するという条件を持っておるということ。  第三は、核兵器は、SALT交渉の妥結あるいは国連における核軍備の遅延にかかわらず、ますます実質的軍事兵器としてその価値を減退し、政治的兵器の傾向を強めている。つまり、核戦争はほとんど一〇〇%不可能となって、その意味で米国の核のかさの信頼性というものはお飾り的なものとなりつつあるということ。  第四は、対ソ、対中戦略として成立した日米安保条約は、米ソ、米中対立の緩和、日中正常化実現によって、そのあり方におのずから変化が求められるに至っているということ。特に日米安保の主眼であります米軍の常駐と基地の常時確保は、国際情勢の大きな変化によって絶対必要条件ではなくなってきているということ。現実にわずか三万五千人の米軍の常駐と十カ所程度の友好基地の確保をもって、日本防衛を全うするという信憑性は薄らぎつつあるということ。  私はこのような具体的な問題を取り上げて指摘申し上げましたが、それでもやはり政府・自民党としては、安保の現状維持論をあくまで主張なさるのですか、総理の所見を承りたいと思います。
  52. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いまあなたが述べられました国際情勢の動向、健全な方向に向いておるということ、大筋におきまして私も同感でございます。  そこで、一つ御注意いただきたいのは、そういう状況は現在の安保条約その他既存のワク組みがあった中で生まれたということでございます。もしそれ、安保条約というようなものがあってそういう状態が出てこない、いつまでたっても出てこないというのなら、これは一つの問題点でございましょうけれども、この安保条約の存在というものも含めて、既存の全世界に張りめぐらされました条約的なワク組みの基礎の上に、あなたが御指摘のような健全な方向が出てまいったということは、私は非常に歓迎すべき傾向であると思うのでございます。  そして私どもといたしましては、既存のこういう安保条約のようなワク組みが、緊張を呼ぶあるいは火をふくというようなことは、これは極力避けてまいらなければなりませんし、今後も平和外交等の精力的な展開を通じまして、そういうように努力をしてまいるのは当然でございますが、先ほど申しましたように、そういう状況を健全に定着さしていく上におきまして、あなたと私どもの見解の分かれるのは、この既存のワク組みを、もうそれではやめたらいいじゃないか、この衣を脱いだほうがいいんじゃないかという御議論と、いや、これを持っておったほうが、この健全な傾向を定着する上において有効であると判断する、この判断の違いであろうと思うのでございます。  ヨーロッパにおきましても、あなたの御指摘のように、アジアよりも進んだ緊張緩和が定着状況にあると私は思うのでございます。けれども、ヨーロッパ各国も、ワルシャワ機構もNATO機構も含めて、既存のワク組みを変えようなんという動きはどこにも出ていないのであります。アジアにおきましてはまだそういう定着状況にまで至っていない、ようやく緊張緩和の芽ばえが出始めたときでございますので、私どもといたしましては、この現状を軽々に変えるということは、かえって不安を呼ぶおそれを持つのではないかということを考えておるわけでございまして、その判断の違いであろうと思うのでございます。
  53. 小平忠

    小平(忠)委員 私がいま問わんとする基本姿勢を、野党の一部の方が主張する、安保即時廃棄論という立場に立って質問している、これに対する答弁のような感じがするのですが、民社党は、御存じのように即時廃棄論ではないのです。すなわち、条約というものは一たんきめたら永劫に変えなくてもいいというものではないのです。今日の現状に照らして矛盾撞着、非現実的な内容を改めてはどうかという、いわゆる改定論なんです。  私は総理にお伺いいたしますが、現在、政府・自民党の中にもいわゆる再検討、再審議というそういう空気が高まっている。現に、現職の防衛庁長官防衛局長までが有事駐留論を述べたり、かつ、さきの総選挙で自由民主党から立候補した候補者の四七・八%までが、改定ないし段階的解消論に賛成しているということは、これはきわめて注目すべきことであります。このような自民党内部の、現にけさ新聞でも報道されておりまするように、自由民主党の安保調査会で安保政策の再検討をきめております。こういう報道がなされておりますが、私はこのような観点から見ましても、すでに現に再検討、再審議の段階に来ている、こう思うのですが、総理、いかがでしょうか。
  54. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 外務大臣が述べましたとおり、また私も述べておりますとおり、日米安全保障条約はこれを維持してまいるという基本的な考え方、もう一つは、改定をするというような考え方を持っておらないということでございます。これはヨーロッパだけではなく、私もちょっと調べてみますと、集団安全保障体制というものの中にある国々、著名な国々だけでも七十六カ国もあるわけであります。  そういうことから考えてみても、日米安保条約が果たしておる平和維持の機能ということを考えますと、いままでの長い歴史に徴しても、これを軽々にワク組みを変えるというようなことは、それは不安の要因になっても、より平和を増進するというようなものにはなれない、ならないという考え方を、政府は持っておるわけでございます。
  55. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは、総理は現在のアジア清勢は、さらに緊張緩和の方向に進むとお思いになりますか、それとも現状のような状態でいくとお思いになりますか。
  56. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 緊張緩和の方向に進むことを祈念し望んでおるということは、もうこれは申し上げておるとおりでございます。これからはベトナム問題も解決の曙光を見出したわけでございます。なかなか四者が集まるということはむずかしいのじゃないかといわれておったけれども、四者もいよいよきのうから会談を始めるというような状態になっておりますから、こういうことを契機にして、これからより平和な状態が続くことが望ましい、こう考えております。平和になるだろうという考え方を前提にして希望を持っておるわけであります。
  57. 小平忠

    小平(忠)委員 そうなりますと、やはり当然常識として、現状のような安保条約の現行規定がきわめて現状に即しない、そういう情勢になるように思います。現に、米軍の基地駐留がかえって日米間のいわゆる親善友好に害を与えておるマイナス面、そのように総理はお考えになっておりませんか。したがって、いま総理が極東情勢、日本を取り巻く内外の情勢というものは、今後一段と緊張緩和の方向に進んでいくであろう、そういう方向にいっても、なおかついまの現状の安保条約のいわゆる諸条項を守って、いまのとおり現状にしがみついて、このままいこうという形を堅持されるんですか。
  58. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 二国間以上で集団安全体制をとっておる国々がたくさんあるということは、先ほど申し述べましたが、これらの国々はみな双務契約というような、いわゆるお互いが義務を果たし合うということになっておるわけでございますが、日本は言うなれば片務契約でございます。ヨーロッパのNATOにおけるように、駐留軍に対する給与も払わなければならないというような事態にはないわけであります。そういう状態を、ほんとうに世界にあるいろいろなものと比較してみても、日米安全保障条約が果たしておるメリットというものは高く評価できると思うのです。  私は、そういう意味で、そういう立場政府は日米安全保障条約の維持を続けなければならないし、また、今日まで日本が非常に困難な中で平和を維持し、周辺が平和の方向に向かってきたのも、一つには、日米安全保障条約というもののあることによってである、こう理解をしておるのでありますから、まあ基地の問題その他に対しては、これは情勢も変わっておりますし、都市化も進んでおりますから、周辺住民との利害が対立をしないように、またそのような事柄が日米の基本にひびを入れることのないように、諸般の配慮を続けてまいることが、これはもう当然のことでございますが、根本にある日米安全保障条約の改変というものは、政府考えておりませんということにひとつ御理解をいただきたい。
  59. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは、今後極東の緊張緩和がさらに進み、国際的な、現在多極化の様相を呈しておる国際情勢が一段と平和友好の方向に進んでいった場合に、今日の軍事同盟的色彩を持つ日米安保条約が、さらにこれが日米の、いわゆる平和友好条約というようなものにだんだん変わっていく、そういうことを総理は望ましいと思いますか、いかがですか。
  60. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国連が集団安全保障の実をあげるようなことができる理想の体制が確立をすれば、それはそういうことになると思います。
  61. 小平忠

    小平(忠)委員 時間の関係もございますから、外交、防衛問題はこの程度にいたしまして、次に移りたいと思います。  次は、インフレと物価を中心とする経済問題に入りたいと思います。  まず、最初に総理大臣にお伺いいたしますが、総理は、現在の日本経済をインフレ経済であると認めますか、認めませんか。
  62. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 インフレというものは、物価が大幅に長期的に上昇、加速するという状態だと思いますので、現状はさような状態ではないというように思います。ただ、インフレを警戒しなければならないということを考えております。
  63. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは、愛知大蔵大臣はどのようにお考えですか。
  64. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま企画庁長官が申し上げたと同様の考えを持っております。
  65. 小平忠

    小平(忠)委員 いま経企庁長官、大蔵大臣が、インフレではない、ただ警戒しなければならぬ、こういう答弁でありますが、いかにそういう答弁をなさいましても、現在の日本経済がインフレであることはいまや常識なんです。その証拠に、インフレという文字が活字になってちまたにはんらんしているでしょう。私は、この際インフレとは何ぞやという定義を明らかにして、その上に立って、いわゆる端的にいうならば、こういうきびしい現状認識、そういうものが現在のインフレ、物価高を克服する最大の根本問題だと思うのであります。  そこで私は、次の三点がいわゆるインフレという一つの常識的な定義づけのものであろうと思うのですが、第一は、消費者物価が定期預金金利を上回っているかどうか。第二は、卸売り物価が安定しているかどうか。第三は、換物運動が起こっているかどうか。これらの点私は、インアレであるかないかという一つの基準じゃないか、こう思うのであります。  消費者物価について、政府の見通しが、来年度、いわゆる四十八年度は五・五%。そうしますると、五・二五%の預金金利を上回っておるということになります。さらに卸売り物価は、昨年の年率で八・五%上昇している。さらに換物運動に至っては、土地はもとより、株、絵画、最近ではゴルフ会員権に至るまで急激な投機を呼び起こしているというようなことは、御承知のとおりだろうと思うのでありますが、これらの材料をそろえても、なおかつインフレではないと、そうお考えになりますか。
  66. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 まず、消費者物価について申し上げますと、小平さん御承知のように、四十五年度は七・三%上昇しております。四十六年、これは不況でございまするが五・七%、四十七年度に至りまして五・三%でございます。したがって私は、四十八年度の目標といたしまして五・五%というものを掲げまして、これは絶対にひとつ政府国民皆さまの御協力をいただきまして守りたい、こう思っておるわけでございまして、まず非常に低い目標を出して、実態がそれ以上というようなことはできるだけ避けたい、こう思っておるわけでございます。繰り返して申しますと、四十五年度は七・二%まで上がっておるのでございまして、現状はそれよりはよいわけでございます。  それから卸売り物価について申し上げますと、四十五年度が二・三%、それから四十六年度はマイナス〇・八%でございまして、これは不況ということでございます。そんな関係で、四十八年度の見通しも二・〇、こういっておるわけでございます。  ただ、昨年の暮れ非食糧農林物資、ただいま木材とか皮革とか羊毛とか、こういうものは非常に上がりまして、この指数の取り方でございますが、期間平均というものと期中平均、一月から見て十二月がどうなった、そういう見方でございますと、非常に上がります場合もございます。いまのお話のように八%上がるということがございますけれども、期中の平均をとりますと、いま申し上げたようなことになる、こういうことでございます。  それから換物思想云々のお話がございますが、これは確かに土地とか株とかあるいは書画骨とうとか、まあきのうもお話があったように、宝石とかそういうものにあることは私、否定いたしませんが、こういうものを極力押えたいと考えております。  どうやって押えますかということでございますが、やはり過剰流動性というものが問題ではないか。これは昨日中澤委員からも御指摘がございまして、私も就任以来非常にこれを言っておるのでございまして、実は四十六年度の外為の散布超過からきておるのが四兆四千億円、これに金融機関の貸し出し増が十二兆七千億円、四十七年度になりまして、これは十一月までしか出ておりませんが、一兆九千億円が外為じりの散布超でございまして、金融機関の貸し出し増が十四兆ございます。これはきのう日銀総裁がおっしゃいましたが、これに農協とかあるいは信用組合とかいうものを加えますと三十兆をこえるということになるのでございますが、この過剰流動性というものにひとつ引き金を引いて、これを何とか押え込もうじゃないかということで、大蔵大臣にも日銀総裁にも御心配願いまして、先般から申し上げているようないろいろな措置を三回にわたってとっているわけで、その効果が逐次浸透しつつあるやに思われまして、株の面では、これはもうそれだけではございません、ドル不安という問題がありましょうけれども、非常に下がってきているわけでございます。  土地については、全般の土地政策、税制とそれから誘導的な政策という両方からこれを押えつつあるわけでございます。ただ、昨日もお話がありましたように、一部の商品に、たとえば大豆というようなものに傾斜的に過剰流動性が集中するということは非常に危険を伴いますから、何とかこれを押えたい。こういう個々的なものをやってまいりますれば、決して御心配のことはないというふうに思っております。  ただ、私が心配しますのは、いかにも物価が上がるのだ、上がるのだという、そのことが巷間に流布されますことのほうがむしろ心配でございまして、かりに大根百円、二百円なら二百円と、こう出ますと、二百円で売らなければ損だという印象が出てくるわけで、ここは私は申し上げているのですが、どうぞひとつ、政府も一生懸命いたしますが、国民の皆さんもそういう点を自分の問題として考えていただきたい、こう申し上げているわけでございます。
  67. 小平忠

    小平(忠)委員 小坂さんの最初の発言について、私は問題があるのですが、その後段に言った、みんなが物価が上がるのだ、上がるのだと言うから物価が上がるのだというようなことは、それは非常に軽率だと思いますよ。それは取り消しになったほうがいいですね。しかし、そうは言うけれども、政府は来年度の経済見通しを実質経済成長率を一〇・七%にしておりますから、やはり高度経済成長政策の延長は変わっていないと見ざるを得ないのです。  そこで、私はお伺いしますが、今後五カ年の経済運営の基本となる新しい長期経済政策、これはどうなっているのですか。
  68. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 経済審議会におきまして、いろいろ御審議をいただいておりますわけでございますが、近く総会を開いて結論を出していただけるというような段階になっておりまして、大体二月八日に総会を開いていただくというふうに考えております。
  69. 小平忠

    小平(忠)委員 まだできないんですかね。昨年の十一月の本委員会で、わが党の佐々木書記長が、これに対して政府に尋ねましたら、昨年の十二月中旬までにはできますということを、この委員会で言明しているんですよ。怠慢じゃありませんか。
  70. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 非常に慎重に御審議をいただいております関係もございますが、実は各方面、産業界、労働界等のいろいろな御意見がございまして、中には非常に傾聴すべき御意見もございますものでございますから、そういうのを入れて、逐次訂正をし、よりよいものを申し上げたい、こう考えておりましたところ、国会になりまして、やはり総会には総理大臣の御出席をいただかなければなりません。二月八日は当委員会が休憩でございますので、その日を総会の日にしたという関係でございます。
  71. 小平忠

    小平(忠)委員 物価とインフレにつきましてさらに大蔵大臣にお伺いしたいのですが、日銀総裁に御多忙のところをお越しいただいておりますので、この際、佐々木総裁に、昨日に引き続いてたいへん御迷惑でございますが、若干お伺いしたいと思います。ただいま私は政府に対しまして、大蔵大臣、経済企画庁長官にこのインフレというものに対する認識について伺いました。日銀総裁といたしまして、現在のわが国経済の現状を、一体インフレ経済と考えるのかどうか。  さらに、昨日公定歩合のことにつきましては中澤委員に御答弁されておりますから、私はあえてこの問題は省略いたしまして、時間の関係上、長々と質問の理由を述べるのを省略しまして結論だけ申し上げたいと思いますが、現在のいわゆる調整インフレ、これは政府が意識して、外圧をおそれるためにとっていることが、今日非常にこの物価問題にもはね返って、国民に大きな迷惑をかけておるのであります。そこで、やはりいま国民の大きな関心の課題は、円の再切り上げ、デノミに非常に重大な関心を持っております。日銀総裁といたしまして、いわゆるインフレに対するお考え方、さらに円の再切り上げ、さらにはデノミについてどのようにお考えか、お伺いいたしたいと思います。
  72. 佐々木直

    ○佐々木参考人 最近、卸売り物価が目立って上昇してまいりました。この点から、今後の物価の動向について非常に心配をしておりますことは事実でございます。しかしながら、これに対しましては、今後の金融政策その他によりまして、できるだけその上昇を押えていきたいと思いますし、それは可能である、こう考えております。ただいまお触れになりました、政府が調整インフレを考えておるというようなお話がございましたが、それは全くないと私は信じております。そういうような政策というものが国としてとれるものではない、こういうふうに存じておるのでございます。  国際収支の問題につきましても、物価が上がることによって国際収支の均衡を回復しようというようなことは、これは筋違いでございまして、やはり国内の物価の上昇を穏やかにし、安定させるということがおもな目標でなければならないと思います。国際収支の調整につきましては、別途いろいろな方法を講ずべきである。  いま円の切り上げの問題について御質問がございましたが、いま申し上げましたように国際収支、特に貿易収支の黒字対策といたしましては、輸出の調整、輸入の増大ということにつきまして具体的な措置をとることがまず第一に必要でございます。したがって、輸入の自由化、あるいは輸入関税率の引き下げ、あるいは輸入物資の輸入ワクの拡大、そういうような具体的な措置が今後とられなければならないと思います。  国際収支の調整の手段といたしまして、為替相場の調整も一つの部分ではございますけれども、しかし、こういうその国の通貨の対外価値をあらわしますものを、そうひんぱんに変更するということは適当ではございません。ただいま申し上げましたような具体的な諸政策をまず実行していく、これが第一に必要である、こう考えるわけでございます。  それからもう一つ、デノミネーションのお話がございましたが、これは確かにほかの欧州の国々、イタリアは別でございますが、それらに比べましてゼロが二つ多いことになっておりますので、このゼロを二つとったら、ほかの国と大体同じぐらいのレベルで為替相場が組めるというようなことがよくいわれております。そういう点は、確かに国のプレスティージをあげるという意味でいいのかもしれませんけれども、ただ、この問題につきましては、国民がその実態を十分理解していただくのに非常に骨が折れます。このデノミのうわさが新聞に出るだけで株が動くというような現状では、やはりこういう問題を実行するのには適当な時期ではないというふうに思いまして、現実の問題としては、実施の段階というようなことはほど遠い問題であろう、こう考えております。
  73. 小平忠

    小平(忠)委員 デノミにつきましては、多分に問題のあるところでありますが、総裁は、現状は、タイミングをはかってみましてもなかなか適切でないという御意見ですが、あなたは、デノミをやるべきだとお考えですか、それは当分やるべきでないとお考えなんですか。
  74. 佐々木直

    ○佐々木参考人 その点は、やっていけないというような問題ではないと思いますが、しかし、いますぐやらなければならない、また、そのうちの機会をつかまえて、もう絶対にやらなければ経済全体がうまく動かないというほど根本的な問題とは考えておりません。
  75. 小平忠

    小平(忠)委員 前の御答弁でちょっと明確を欠いた点なんですが、総裁として現在の日本の通貨、経済情勢、これらを勘案して、円の再切り上げを回避できるというお考えなのでしょうか。それとも、これは回避はできぬ、早晩、時期の問題だというふうにお考えですか。
  76. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ただいま申し上げましたような国際収支、特に貿易収支の均衡回復のための具体的な方策が実行されれば、円の切り上げは回避できると思います。しかし、それをおろそかにしておりますと、そういう問題について非常にむずかしい立場に追い込まれるおそれがなしとしない。したがって、現状においては、われわれはそういう具体的な貿易収支の改善方策を、一日も早く実行していくことが大事だと存じております。
  77. 小平忠

    小平(忠)委員 日銀総裁としてそうお考えでしょうが、壁頭に、政府は調整インフレなど考えていない、こうおっしゃいましたけれども、しかし、現在やっておる中身は、現に調整インフレじゃありませんか。だから、それは総裁がそういうふうにお考えになっても、政府の最も財政金融のいわゆる責任者である大蔵大臣、さらに経済の見通しについて的確なる計画を出して、国政の運営に、国民の負託にこたえようとする経済企画庁長官、この方々が、従来の自民党内閣のいわゆる金融政策、財政政策を踏襲して、現実にいまの態勢というものは、私は調整インフレであると思うのですよ。だから、そういう観点から、一部ではもう円の再切り上げは回避できない、むしろそれなら早くやってもらったほうがいいというちまたの声も聞くことがあるのですが、やはり私は、そのようないま安易なものではない、このように考えるのですが、もう一回総裁のお考えを御披瀝願いたいと思います。
  78. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ただいま物価がだいぶ上がっておりますことをとらえて、先ほどからお話しのように、これをインフレと呼ぶかどうかという、そういう呼び方の問題についていろいろ御議論がありましたけれども、少なくとも私は、いまの政府がインフレーションを政策として行なって、インフレを推進している、そういうことは毛頭考えておりませんし、それは事実に反すると思います。また、そのインフレによって円の切り上げを回避するということは、これは理論的にもおかしなことでございまして、それはとうてい成功いたすものではございません。  ただいま御指摘がありましたように、一部でもう円の切り上げをしたらどうかという意見があることは、私も存じておりますけれども、しかし、私が最もおそれますことは、具体的な貿易の均衡回復手段がとられないで、ただ円の対外価値の変更によってのみ問題を解決しようとしてみますと、われわれは、すでに一年有余たちました例の一六・八八%という高い円切り上げの効果が現状であるということを考えますと、大事なことは、具体的に効果のある手段を講ずるということであると思います。したがって、もう何か自分のところに影響するのは困るから、一般的な手段で問題を解決してもらいたいというような考え方は、はなはだ責任のない言い方だと存じております。
  79. 小平忠

    小平(忠)委員 総裁はそういうふうにお考えでありましょうが、結果的には調整インフレなんです。  そこで、いまの物価問題ですが、総裁のひとつ意見として、いまの物価高騰、この物価の値上がりについて、どうすれば歯どめになるか、どうすることによって物価高騰を押えることができるか、あなたの御意見をお聞かせいただきたい。
  80. 佐々木直

    ○佐々木参考人 最近の物価の上昇には、その原因がいろいろございます。大体三つぐらい考えられると思います。一つは、最近需要がだんだんふえてまいりまして、その需要の増大によりまして価格が上昇していく。それからもう一つは、コストが上がってまいることによりまして物価が上がってくる。  それで、このコストの上昇の中に、もう一つ具体的に最近目立ちますものは、海外の原料高の影響がそのコストの上昇に及んでおる。したがって、三つと申し上げましたが、コストの上昇の中に二つの原因がある。国内のコストの上昇と海外から買い入れる原料品の価格の上昇、こういうものがございます。いまの国外の物価の上昇、ことに、最近御承知のようにソ連における不作などから食糧価格が非常に上昇しております。こういうものは、なかなか政策的に回避できない。こういうものは、ある程度物価にはね返らざるを得ないと思います。  それから、国内のコストの上昇は、これは経済成長があまり急速に一部分において行なわれるとそういう問題が起こりますから、これは、経済成長を穏やかにするというやり方である程度は回避できると思います。それから需要の調整も、これは私どもは今後の金融政策において相当調整ができるものと思います。いまの福祉国家という方向のもとにおきましては、財政がどうしても大型化するのは、その転換期においてやむを得ないことでありますので、全体の需要がバランスをこわさないようにするためには、民間のほうの需要をある程度押えぎみにいかなければならない。そのためには、民間の需要に直結いたしております金融政策、市中金融機関の貸し出し態度、こういうものの調整が非常に大事である。この点を調整いたしますれば、総体の需要というものを穏やかなものにすることが可能である、こう考えております。
  81. 小平忠

    小平(忠)委員 もう一点お伺いいたしたいと思いますが、この物価上昇に対しての歯どめというものは、相当政府が思い切らなければなかなか困難だと思うのですが、私は、この物価上昇の歯どめというか、思い切ったことをやらねばならぬ一つとして、いま賃金は、物価上昇につれてある程度スライドしております。スライドされていないもので、庶民大衆が非常に文句を言っておるのは預金です。それも法人や大企業の預金でなくて、零細なお金を積み立てておるところのこの預金に対しまして、今日のような物価上昇なら、だんだんと積んでおる預金の価値が減っておるのですよ。ですから、この預金や保険会社の保険――預金といいましても、まあ具体的にいうならば、何でもかんでも預金をいうのではなくて、すなわちマル優に該当する程度のもの、こういうものに対するスライド制なんです。預金や保険会社のいわゆる保険、こういうものはいわゆる物価スライドをする、すなわち、物価が上がっただけ上積みしていくという、このスライド制をとってはどうかと私は考えるのでありますが、特にわが国銀行の元締めである日本銀行の総裁として、いかがでございましょうか。
  82. 佐々木直

    ○佐々木参考人 確かに御指摘のとおり、一般の人々が汗を流して得た所得をもって貯蓄したものに対する金利の額よりも、物価の上昇の率のほうが高いということは、もうこれは非常に困ったことでありまして、ぜひこれを避ける方向に進まなければならないと思います。  したがいまして、ただいまもお話がございましたような預金金利のスライド制、これも確かに一つ検討に値するものであると思います。ただ問題は、もし物価が上がりましたときに金利を上げてまいりますそのときに、金融機関の貸し出しのほうの金利の問題がどういうふうになるかということもございますので、そういう高くなりますときの預金金利の支払いの資金の源をどこに求めるか、これが研究問題だと思います。したがいまして、御趣旨は非常にわかりますけれども、ただいますぐ具体的にどういうふうにそういうことをやれるか、その点は研究させていただきたいと思います。
  83. 小平忠

    小平(忠)委員 佐々木総裁、これはほんとうにいまのような底知れない物価上昇の現状を考えますと、そういう意見を非常に聞かされます。そういうことをひとつ国民運動にして、もう国民が銀行の窓口へ押しかけていってどうしてくれるのだということを、全国的にこれを盛り上げるぐらいのことをやらぬと、政府は本腰になってこの物価問題に具体的な対策をやらぬような感じが私はいたします。ですから、どうか具体的にぜひ御検討を、日銀総裁という立場でお考え願いたいと実は思います。  次は、国立大学の協会長である東大の加藤学長がお見えでありますし、御都合もあるようでありますから、順序を変えまして、今日の大学の管理体制、そしてわれわれは教育国家建設というそういう観点に立って、ここ数年、特に今日の大学のあり方、単に大学のあり方だけでなく、高校あるいは小中学校のいわゆる刷新について、われわれ従来とも非常に強く主張してまいった点であります。  最初に文部大臣にお伺いいたしますが、昭和四十四年の八月七日に制定されました、いわゆる大学の運営に関する臨時措置法です。この大学の運営に関する臨時措置法、この法律が施行されましてもうすでに満四年目です。政府は、この臨時措置法によって具体的にどのようなことをなされてきているか、いまどうしているか、まずお伺いしたいと思うのです。
  84. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いわゆる大学措置法が制定されましてから、この法律が一種の抑止力みたいな形で、大学紛争が一時的に休息状態に向かってきたことは事実でございます。  ただ、この法律の中に審議会が設けられることになっておるわけでございますけれども、紛争校に対しまして勧告いたしますとか、あるいは研究、教育の機能を停止させる措置などをとる場合には、一応諮問してから行なうことになっておるわけでございますけれども、そういうような措置をとった例はないわけでございます。したがいまして、この審議会を相当数開催いたしておりますけれども、大学の現状について報告いたしましたり、あるいはまた御意見を聞かせていただきまして、それを参考にして、大学との間で意思の疎通をはかるというような役割りをさせていただいてまいったわけでございます。別途中央教育審議会のほうで、今後の大学のあり方につきまして十分な御討議をいただきまして、御答申も受けておるわけでございます。こういういろいろなことを基本にして、大学問題に対処してまいっているところでございます。
  85. 小平忠

    小平(忠)委員 審議会は何回ぐらい開きましたですか。
  86. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 制定いたしましたときには五、六回開いた、こう聞いているわけでございます。昨年は、あるいは一、二回開かれた程度であるかもしれません。私がこの地位につきましてからは開いておりません。
  87. 小平忠

    小平(忠)委員 文部大臣、私の調べた範囲では何もやってないということなのです。審議会もこの措置法を制定した当時、確かに数回持たれたことは事実でしょうが、もう文部省としましても、結局挟手傍観、何もしていない。今日の国立大学はもちろん、私立大学、依然として大学紛争は続いておるのです。こういうことで、日本が真の教育国家として、日本の将来を背負って立つ若者が、ほんとうに学びよい学園で思う存分に勉強するということが、いまの体制ではでき得ないのです。あなたは主管大臣としてこれでいいと思いますか。
  88. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いま御指摘になっておりますのは、いわゆる大学措置法に基づきます臨時大学問題審議会のことでございます。臨時大学問題審議会は、この法律に基づいていろいろな措置をとる、その場合にこの議を経なければならないということになっておるわけでございます。この法律に基づく、いま申し上げますような措置はとったことがないわけでございます。しかし、この法律が抑止力になった、大きな効果を果たした、かように考えておるわけでございます。  別途中央教育審議会、ここではたび重なる御討議をいただきまして、今後の大学問題に対しまするいろいろな御答申をいただいておるわけでございまして、この御答申に基づきましては、着実に、合意の得られたものから対策をとっていきたいということで努力をしておるわけでございまして、この国会におきましてもいろいろな問題、新構想の大学問題から入学試験の改善問題から、その他いろいろな問題を御提案申し上げているわけでございます。したがいまして、臨時大学問題審議会というものと、大学の運営改善に関するいろいろな審議会と別途にあるということを御理解いただいておきたいと思います。
  89. 小平忠

    小平(忠)委員 この大学の運営に関する臨時措置法の第一条に、きわめて明快に政府としてやらねばならぬことをうたっているのです。審議会は、もちろんこれはいわゆるこの法律の定めるところによって設けられた審議会ですから、審議会が具体的に行政府にかわって執行するわけじゃないので、問題は文部省なのですが、いまあなたのような答弁でまいりますと、結局、単に法律は空文にひとしい。そうしているうちに、もう来年の八月には、時限立法ですからもう消滅してしまう。私は、この機会に、加藤東大学長にお越しいただいておりますので、特に国立大学協会長という立場からも、今日の国立大学のいわゆる管理運営状態について、あなたの率直な御意見を承りたいと思うのです。
  90. 加藤一郎

    加藤参考人 国立大学協会と申しますのは、国立大学七十六のいわば連合協議機関でございまして、直接に大学の管理運営に当たっておりますのは個々の大学でございます。  東京大学の現状を申しますと、研究、教育は、一部には絶えずトラブルがあるところもございますけれども、全体として見ますれば、研究、教育は滞りなく行なわれていると申してよろしいと思います。  なお、大学の管理につきましては、評議会というのが最高機関になっておりますが、学長のもとに、私のところでは紛争後に臨時総長室というものを設けまして、そこで全体の企画、立案、調整というようなことを担当するような組織にしておりまして、臨機応変の措置がとれるような体制をつくっております。  しかし、大学と申しますのは普通の行政機関とかあるいは企業体とは、かなり組織原理の違うものだというように思っております。その組織者の中でも、東大を例にとりますと、学生が総計約一万六千人おります。入試中止で一学年欠けておりますが、全部そろえば約二万人、そのうち大学院が四千人という大きな数でございます。それから教官といわれます教員に当たります者が三千五百、その半分が助手でございます。それから一般の職員が約五千四百、これも職種が多種多様に分かれておりまして、病院の看護婦さんから事務職員に至るまで多数ございます。そのほかに、定員外の臨時職員というのが千人近くいる、現在約八百に減っておりますが。そういう非常に複雑な構成をとっておる。大きく分けますと、学生と教員と職員という三つ、それぞれ機能の異なる構成員をかかえている大学でございますので、普通の企業体、行政機関とは違う、やはり組織原理なりあるいはやり方なりを考えなければならない。国立大学協会といたしましては、そういう問題についていろいろ意見を交換しておりますが、やはり大学である以上、そこで全員の信頼と理解もとに管理運営を進めなければならないというように考えているわけでございます。
  91. 小平忠

    小平(忠)委員 これは文部大臣でも大蔵大臣でもいいのですが、東大の応用微生物研究並びに地震研究に、従来どれだけの予算を計上されておったか、また来年度予算でこれをどのように計上されておるか、ちょっとお聞かせ願いたい。
  92. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いま予算額を持っておりませんので、後刻御報告させていただきます。
  93. 小平忠

    小平(忠)委員 加藤学長、ただいまあなたのお話では、一部学生にトラブルがあるけれども、研究などは順調に進められているというお話ですが、現在、応用微生物研究並びに地震研究は行なわれておりますか。
  94. 加藤一郎

    加藤参考人 地震研究所、それから応用微生物研究所におきましては、職員との間にトラブルがございます。一部の教官は研究所内にはいれないというようなこともございますけれども、研究所の内部とはいろいろな連絡はとれますし、それから研究も、全然支障がないとは申せませんけれども、研究は引き続き行なわれている。それから研究所は、これは大学院教育の一部を担当しておりますが、その大学院の教育のほうは滞りなく行なわれております。
  95. 小平忠

    小平(忠)委員 いま加藤学長が、壁頭に現状について概括的に述べられましたけれども、あなたがここで述べられているような状態ではないと私は思うのです。今日、東大だけを見ましても、なかなかその学生のトラブル、紛争が絶えない。それが今日私立大学では、まあ早稲田が御承知のような状態でございますが、まことに遺憾であります。  それで、あれほど問題になった大学の運営に関する臨時措置法も、時限立法で来年はなくなってしまう。しかし文部大臣は、この臨時措置法によって、これが抑止力となって、大学紛争も今日ではそう国民に迷惑をかけるような状態ではないとおっしゃいましたけれども、そんなような認識で、今日、文部行政をあなたは最高責任者として担当していいのかどうか。さらに、この臨時措置法が時限立法で来年で消滅することになるが、さらに引き続きこの種の措置法が必要であると考えるのか、あるいはもう消滅して要らないとお考えなのか、いかがですか。
  96. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 先ほど私がいわゆる臨時措置法、これが抑止力になって紛争が休息に向かりたということを申し上げたわけでございまして、心配要らないというようなことは全然申し上げておりませんし、非常に心配をしております。根が深いという気持ちまで持っておることを御理解いただいておきたいと思います。  同時に、この法律は来年の八月まで効力を持っておるものでございます。現に早稲田大学でも激しい紛争が起こっておるわけでございますので、どう対処していくが非常に重要な問題でございます。ただ、この法律の効力が八月まであることでございますので、この間の推移を見ながら、十分にどう対処していくかということを考えていきたい、かように存じておるわけでございます。
  97. 小平忠

    小平(忠)委員 加藤学長は、この臨時措置法の存廃問題についてどのようにお考えですか。
  98. 加藤一郎

    加藤参考人 大学の管理運営の直接の責任は大学当局、学長を頂点とする大学当局にあるというように考えております。それで臨時大学措置法が出ますときにも、これは大学の自主的な解決によるべきであるということで、国立大学協会としては、そういう法律なしにやるということを表明しております。現実にも、私はその法律によって紛争が解決されたというようには思っておりませんで、やはり大学当局の努力によって今日まできている。しかし、いままで不十分なところもあったかもしれませんが、これにつきましては、大学当局が責任をもって当たるべきであるというように思っております。
  99. 小平忠

    小平(忠)委員 一部新聞報道ですけれども、今度あなたがやめたいというようなことを漏らしておるようですが、もしそうであるならば、それはどういうことからそのような御心境であられるか、ちょっと伺います。
  100. 加藤一郎

    加藤参考人 いまの問題は、内部で議論しております段階でございまして、表に申すことはあまり適当でございませんが、私が申しておりますのは、私は学長の再選ということにかねてから反対であるので、その主張を通させてほしいと言っているところでございます。
  101. 小平忠

    小平(忠)委員 仄聞するところによりますと、あなたは学長室にとどまって、常時大学全体の総合管理運営に当たることができないような状態である。もう転々と居所を変えなければならないというようなことも聞くのでありますが、事実でございますか。
  102. 加藤一郎

    加藤参考人 ときによりましてはそういうこともございましたが、現在はちゃんと学長室におりますし、また、私がどこにいても、連絡は十分とれるようになっておりますので、その点は、管理運営上全く支障がないというように考えております。
  103. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、たいへん失礼なことを申し上げたのですが、それはいまあなたが、大学の管理運営は自主的に大学がやるんだと大みえを切られたから私は申し上げたので、私は、東大の現状がはたしてそのような状態にあるかどうかということは、非常に疑問だと思うのです。ですから、これはやはり国立大学は、中でも何といっても東大は、歴史また伝統のいわゆる校風、しきたり等から見て、わが国の国立大学でもまさに中心的な存在であるだけに、東大のいわゆる運営そのものが非常に大きな影響を持つ意味から、あなたにこの際、さらに突っ込んでお伺いしたいのは、文部大臣は非常に深刻に考えておられる。けっこうだと思いますが、深刻に考えるだけでなく、やはりこれは、この臨時措置法が制定されてから四年になろうとしているその状態において、この法律が抑止力になって、最近の大学紛争も下火になっているというような考え方であるならば、非常に私は大きな間違いであると思うのです。現実に、各大学の様相というものは、表面に出ていなくても、その間に今日どのような態勢にあるかは、それが思想的にも、また学生が各家庭とのいわゆる関連においても、どのような状態になっているかは、私があえてここで申し上げるまでもないのであります。  したがって、今日のこの大学の管理運営というものが、この次元においてほんとうに学びやすい、そして誇り高い学園にするために、私は、深刻に考えているだけでなく、どうすればいいのか、この点について私は文部大臣にお伺いすると同時に、最後に加藤学長に、やはり大学の運営というものは、もちろん教育行政、大学行政というものがそれは大きなウエートをなしますけれども、何といっても大学自体が、自主的に責任をもってその衝に当たるのでなければならぬ。これは日本だけでなく各国ともそうです。したがってこの機会に、学生の動向やあるいはその実態を十分に把握して――ぼくはあなたのような考え方は実は甘いと思うのですよ。十分にやっていますなんということではないと思うのです。ですから率直に、国民が安心して理解できる御発言、御答弁を賜われれば幸いだと思うのです。
  104. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 今日、大学問題の原因をなすものは多岐にわたっていると思います。そのうち、特に管理体制を中心にしていま御議論になっているわけでございます。私は、これまで学部自治を中心にしていろいろな慣行を積み上げてきた、それが国立大学の管理体制ではなかろうか、こう思っているわけでございます。その場合に、教職員の教育、研究の活動を、活発にまた自主的に行なってもらう、そのことを基本にして管理体制がつくり上げられてきた。また、このことは将来にわたってもたいへん大切なことだ、こう思っております。  ところが、秩序破壊の行動が強く出てきた。暴力をもって体制を破壊するというような活動まで起こってきますと、なかなかこういう姿では対処できない。場合によっては、教官の中にこの体制を逆手にとられる方もあるようでございます。そういうところから、中枢的な管理機構について、もっと指導力を確立しなければならないんじゃないかという意見が一つございます。まさに私たちもそう思っているわけでございまして、人によりましては、強くリーダーシップを発揮される学長さんもいらっしゃって、効果をあげておられるところもございますが、同時に、機構的にもこれを考えるべきじゃないかという御意見がございます。  もう一つは、重要な問題を審議する審議機関、これがやはり全学的な考え方をまとめ得るような審議機関でなければならないと思うのでありますけれども、学部の割拠主義、それがそこへ出てきて、なかなかまとまらないというような事情もございまして、今日では学部ごとに、秩序を乱した学生の処分がばらばらになったりして、これが学園の秩序を保持するに非常に困難をきわめているというところもあったりするようでございます。したがいまして、また学校それぞれが、いまの学部自治を基本にしながらも、どうやって今後に対処するかということで非常なくふうを続けていただいております。私たちはその努力に期待していきたいと思います。  同時にまた、半面違った学校管理の体制も、違った型も持ち込んでいいんじゃないだろうか。いろいろな型がそれぞれ効果を発揮しながら今後に対処していけるようなくふうをしなければならない、こう考えているわけでございまして、近く茨城県に設けます筑波大学、これを基礎にしてそういう御提案をいたしたい、かように考えているわけでございます。
  105. 加藤一郎

    加藤参考人 私の申しましたのは、大学当局が責任をもって処理しなければならないという、そういう考え方を申したのでありまして、今後とも大学の管理につきましては、責任をもって十分の努力をいたしたいというように考えております。  不十分な点、御指摘を受けましたような点につきましては、いままでも鋭意努力をいたしておりますが、今後ともその解決に努力をいたしたいというように思っておりますので、よろしく御理解をいただきたいと存じます。
  106. 小平忠

    小平(忠)委員 学長、結局あなたの管理している大学だからといって、少し隠しておるんじゃないかと思うのですけれども、現実に応用微生物研究所と地震研究所は閉鎖されているのじゃないですか。先ほど、それは支障は一部あるけれども、出入りできない教授があるような現状で研究をやっているとおっしゃったけれども、全面的に閉鎖されているのじゃありませんか。
  107. 加藤一郎

    加藤参考人 閉鎖されてはおりません。職員は出入りしておりますし、助手も出入りしております。それで研究所の連絡などは行なわれております。
  108. 小平忠

    小平(忠)委員 私は文部大臣に、いま国立大学を中心にいろいろ論議しておりますが、さらに、私立大学についても同様のことが言い得るのです。ですから、いまのような状態で、大学が自主的に管理運営をいまのような制度でできる能力があるかどうか、さらに、あなたは主管大臣として、現状のような体制で将来への大学の未来像、こういうものを打ち立てていくことが一体できるかどうか、こういうことについて、もう少し突っ込んだあなたの意見をお聞かせ願いたいと思います。
  109. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 その前に、さっきお尋ねございました東大の予算の問題でございますが、四十六年の支出額でございます。予算につきましては、各研究所等への配分の問題もございますので、いまとれますのはこの数字じゃないかと思いますが、応微研が四十六年で二億六千五百五十四万円、地震研が五億一千九百九十八万円でございます。  いま、私立の大学についてお話がございました。まさに、現に早稲田大学があのような状態になっておるわけでございますので、より以上に私立大学の管理体制にも問題があろう、かように考えているわけでございます。学生の要望に対応できるような大学当局の内容の充実、これも大切でございますし、大学当局がまた秩序違反に立ち向かっていける体制、これも非常に大切なことだ、かように考えるわけでございます。秩序違反に対応できる管理体制が、いま一番議論の中心になっているわけでございます。  その場合に、私が一番疑問に思っておりますのは、大学に政治活動がいろいろな方面から活発に持ち込まれているわけでございます。学内における政治活動に対して、大学当局がどういう指導方針をもって対処するのか、私はこれができていないんじゃないかという感じがするのでございます。たとえば、いま早稲田大学はセクト間の対立であのような状態になっておるわけでございます。しかも、そのセクトの中には政党が介在しているセクトもございます。私は、大学の中に政治活動を持ち込むこと、学園の中での政治活動は、慎んでもらえないものだろうかという希望を非常に深く抱いておるものでございます。学園の中がそういう面で荒れている点が今日では非常に多いわけでございまして、こういう予算委員会等を通じまして、こういう問題のあり方を深く論議していただけることはたいへんしあわせなことだと思いますし、私は、そういう問題につきましても大学当局の考え方を強く求めていきたい、こういう気持ちでおるわけでございます。  同時に、内容の充実につきましては、私学助成につきましても、今回も経常費助成について四四%の増額計上をお願いしておるわけでございます。大学の充実につきまして政府としては格段の努力を尽くしていきたい。しかしながら、いまのような荒れた大学の姿につきましては、大学当局がどうあるべきかということについての指導方針の確立を求めていきたい、こういう気持ちで一ぱいでございます。
  110. 小平忠

    小平(忠)委員 大臣、ただいまきわめて重要な発言がありましたが、これは大学自体が、その政治的な色彩を持ち込む持ち込まぬの問題も、一にかかって文部行政に、それはあなたに責任があるのです。だからそういうことについて、やはり根本的に日本の国らしいうるわしい未来像を、大学の未来像を確立できる、生かせる、そういう体制のものを進んで積極的に確立すべきであると私は思うのです。いまの問題は、また場所を変えまして私は根本的にお伺いもし、また掘り下げた論議をしながら、教育行政のいわゆる刷新強化、これに私は最善を尽くしたいと思うのです。  最後に、現在のわが国の入試制度であります。これでいいのか。入試制度です。入学試験の制度であります。児童も学生も、そして家族ぐるみで、まさに試験地獄。この問題について、もう少し進んで改善、改革をしてはどうか。すでに国民的な世論です。形式的なマル・バツ方式で、まるで人間をつくるのか何をつくるのかわからぬような状態です。もっとこの問題について、責任ある内申書の採用のしかたについても、もう少し伸び伸びとした幅のある入試制度に変えることができないか。私は、入学にはそういう幅のある、そして今日のような試験地獄の状態から脱却して、ただし卒業はきびしい、こういう態度に根本的に改めてはどうかと考えるのでありますが、文部大臣、いかがでございますか。
  111. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いま御提案になりました考え方、私は全面的に賛成でございます。入学はやさしく、卒業はむずかしい、そういう姿勢で大学当局は強力に当たってもらわなければならない、かように考えておるわけでございます。  ただ、入学はやさしくということだから、どんどん学校をふやすということになってまいりますと、いま進学希望者が非常に急速な勢いでふえておるわけでございまして、それに対応するようにそのまま大学をふやしていって、学校をふやしていって、それに対応できるだけの先生方を充足していくことができるかということになりますと、ちょっと疑問がございますが、少なくとも、卒業はむずかしい、この体制は非常に大事なことだ、かように考えているわけでございます。  入学試験の改善の問題につきましても積極的に進めておるわけでありまして、四十二年の大学の入試要領の改正から推薦入学の制度も取り上げられまして、今日では五七%、五百校をこえる大学が、この推薦入学を採用するようになったわけでございます。やはり調査書を活用するなど、これはたいへん重要なことだと思いますが、そういう方向に向かっております。  同時にまた、難問、奇問を出して受験者を困らせる傾向も多分にあったわけでございますけれども、こういう問題につきましては、広域の共通テスト、大学につきましても第一次的には共通の学カテストをしたらどうかということで、四十八年度の予算にもその調査研究費を計上させていただいているわけでございます。大学につきましては、高等学校で教わる基礎的なものさえ把握していれば十分に書けるというようなテストを共通に実施する、その上に、学校当局が必要とするような能力などにつきましてテストを行なう、あるいは面接を行なうというようなことを加えればいいのじゃないだろうか、こう考えているわけでございまして、そういう方向で現在努力を続けている最中でございます。  それと一つ、これは世間一般にも考えてもらいたいという意味で加えさせていただきたいのですが、社会の学歴偏重の風潮、これもぜひ打開したい。でありませんと、特定校に入学志望が集中していく、これが学生を入試地獄で苦しめている、こう思うわけでございまして、学歴偏重の社会風潮もぜひ是正していきたい、こう念願しているものでございます。
  112. 小平忠

    小平(忠)委員 入学にやさしく、卒業にきびしいという、私の意見を述べて質問をしたのに対するあなたのいまの答弁の中で、結局、入学はやさしくということだから、高校や大学の数をどんどんふやすという意味ではないことを私はつけ加えて、今日の教育行政というものは非常に重要な段階に来ておりますから、どうかきびしい姿勢で私はこの改革に取り組んでもらいたいということを申し上げて、次の問題に移りたいと思います。  時間がだんだん迫ってきておりますので、私は要点だけをかいつまんで土地問題について総理にお伺いしたいと思うのですが、土地問題は、いわゆる地価問題、住宅問題を含めまして、やはりこの際、土地及び土地所有権の原点にさかのぼってその対策を根本的に洗い直す必要があるのじゃないかと私は思うのです。  すなわち、土地は人間生活の共同の基盤であり、それは本来、全人類が平等に利用するべきものであって、決して個人の所有に帰してはならないということは歴史が教えているのですね。いわゆる版籍奉還の建白書を見ましてもこういうことがいわれております。「臣等居ル所ハ即チ天子ノ土、」「安ソ私有スヘケンヤ、」とあるのですが、この歴史的な事実を直視するならば、土地に対する私権の制限というのは、当然これは行なわれなければならぬと思うのです。先般、田中総理が私権の制限について発言されております。ほんとうに、あなたが発言された内容を、国民はいろいろな角度から注目しているわけです。この機会にあなたの見解を承りたいと思うのです。
  113. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 土地の所有権というもの、財産権というものに対しては、憲法の条章どおり守っていかなければならぬことは当然でございます。しかし、公益優先という原則に基づいて、また憲法の別の条章にも定められておりますとおり、公益のためにはこれを利用するということで、法律に基づいて収用などが行なわれておるわけでございます。土地は増産ができないものでありますから、国民のためにより有効に利用されなければならない。しかも、憲法の条章を守りながら有効に利用されなければならないということになりますと、これは土地の利用権、利用というものに公益優先の原則を貫くということは当然できるわけでございます。  その意味で、法律に基づいて特定地域等を指定して、それが公益のために、また多数の人のために必要であるものに対しては、収用を行なったり、また利用を制限し立体化を行なりたり、また自然環境の保持のためには、高さや構造の制限も行なうということが、現行法で可能になっておるわけでございます。  今度は、長期的な展望に立った土地対策、また当面する土地対策ということに分けて、諸般の施策を強力に推進することにいたしておるわけでございます。今度、いろんな税制上の問題、また知事や市町村長が中心になって、これから新しい国づくり、県づくり、村づくりを行なうために必要な施策が、円滑に推進できるようにもいたしております。また、将来の値上がり等を予測して買いあさるというようなものに対しては、特定地域に指定する、いわゆるインターチェンジができたり高速鉄道の駅ができるというような場合、そういうところを指定して、急激な値上がりを防止するように、あらゆる角度から考えながら、可能な限り、最大にも近い土地政策を展開しようと考えておるわけでございます。
  114. 小平忠

    小平(忠)委員 今般、政府が発表されておりまする土地政策の要綱ですね、どう見ても私は手ぬるい。あなたが内閣首班となられ、それから臨時国会、今度の特別国会における施政方針演説、これらを伺っていましても、かけ声は大きな声で叫ぶのですけれども、中身は非常に弾力性ある運用等、現在の物価上昇の元凶となっておる土地問題に対するきめ手になっていないような感じがするのです。それで、いま総理のおっしゃったことは、それはなるほどそういう体制で進めなければなりませんけれども、やはり問題は二、三点に集中されるのではないか、こう思うのです。  それで、時間の関係もありますから、私、党の基本的な考え方を二、三申し上げまして、総理の所見を承りたいと思います。  われわれはまず第一、地価の凍結をこの際根本的に考えるべきでないか。ですから、ここで凍結地価をこえる売買は認めない。そのために土地評価委員会を設けて、その地価を認定するような制度をまず確立してはどうか。  次は、土地利用の基本法の制定でありますが、これはどうしても国土の開発保全の基本計画、こういうものとの見合いの上に絶対に確立しなければならぬと思うのですが、この点が第二点です。  それから、土地の利用計画、これは、やはりどうしても地域を指定したならば、土地の自由売買を認めないというような、しかしその途中の移動については、ここに思い切って土地利用公社をつくって、その土地利用後者が一手に、いわゆる土地所有者から買い受けて、これをを需要者に売買するというようなことが思い切ってなされない限り、土地問題の解決はできない。  それから第四番目は、土地の有効利用なんです。その有効利用を促進するために、いわゆる固定資産税による課税の適正化なんです。これをやると同時に、やはり空閑地を、この際税制の面から、高度に利用を促進するという意味で空閑地税というものを確立する。そして土地の騰貴を防ぐということが大事でないか。  第五番目は、いわゆる土地の増価税の問題です。思い切ってこの制度を設立する。  第六番目に、国あるいは地方公共団体が社会投資をする、また公共住宅を建設するというような、土地を取得する必要の場合には、これはやはり交付公債を支払うというような制度を確立して、いわゆる公有地優先の考え方をとるということが非常に重要でないか。  たくさんある中で、やはり現在の政府案、もう一歩これをきびしくして、思い切ってこの際土地問題に取りかかるという態度が必要でないか、このように思うのでありますが、総理の所見を承っておきたいと思います。
  115. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 何項目かにわたって御言及になられましたが、まず、私たちも土地税制とか土地の対策を考えるときに、土地を一年間凍結ができないかということで、相当広範にわたって議論をいたしました。ところが、土地に対する基準価格というものがないということでございまして、なかなか凍結ということができないということになったわけでございます。将来ともできないのかといえば、いま土地の公示価格制度を進めておりまして、五十一年ぐらいになれば全国的な公示価格ができるかもしれない。しかし、公示価格というもので押えるということが、いま全国的にはないわけでありますから、できないということでございました。  それからもう一つは、ではもっと激しいことで、課税標準価格を何倍かにして、それでもって押えられないかということまでやりましたが、そういうことをやっても、山林、雑地等非常に安いものもあるし、高く評価をしなければならないものもある。これは、一つ一つで全部土地というのは違うわけであります。俗なことばで言うと、隣の土地は倍でも買えと、こういう土地に対する昔からの法則のようなものもありますから、同じ町内で同じ番地であっても価格は違うわけであります。自分の隣地をもう一メートルだけ拡大できれば、建蔽率や斜線制限が行なわれないで、まるまる十階が建つというようになると、その一メートルは普通の価格の何倍かで売買をされるわけでございます。でありますし、底地権の問題と地上権の問題も、判例を見ても、底地権は一割だというところもあります。底地権が八〇%だというものもあります。逆に言うと、地上権が八〇%、九〇%のところもあるし、一件ずつみな違うわけであります。ですから、そういう土地というものに対して、ある時期にやはり公示価格というか、それからいままで政府自体でも、自治省と大蔵省の課税基準が違うというようなものでありますから、これはやはり衆知を集めて、あらゆるものに対して基準価格が定められるということであれば、そういう問題も考えられるわけであります。ですから勉強しようということにしております。  そしてもう一つ、すべて一定期間押えてしまうということの反論としていま出されましたのが、移動と供給がストップしてしまって、現実的にはなかなかむずかしい、そういう場合は収用権を発動すればいいじゃないかという第何番目かに申し述べられたものがあるわけでございます。これは、そういう意味で土地に対しては、今度とった処置というものは各国の例から比べてみてもおわかりになっていただけると思いますが相当なものである。  今度とられた税の中でも、これは専門家がいろいろ研究する過程において勉強していただいたわけでございますが、これは一律に分離課税をやったらどうかというような面も考えてみました。ところが、一律分離課税をしますと、黒字の会社はその率だけ払えばいいわけでございますが、一律分離課税ということでやりますと、赤字の会社というものの負担というものは非常に多くなるということになります。そういうあらゆる角度から、政府もこれが万全であるとは申し上げられませんが、現時点における可能な限り、ほんとうに最大のことをテーブルの上にのせ、そうして具体的な政策を固めたわけでございます。  結局は、いまの都市計画法と同じものを全国利用計画、土地利用計画というものに置きかえれば、そうすると地価はきまるわけであります。ここは緑地であるから家は建たないのだ、ここは商業地区であるから建蔽率は五〇%は建つのだ、ここは工場地域であって工場以外のものは建たないのだ、ここは風致地区でもって全然利用はないのだということになれば、これは標準地価というものはきまると思います。いずれにしても、これは一つずつの取引ケースをきめることはできなくとも、大ざっぱに標準地価のごときものが想定され、算定されると思うのです。  そういう意味で、あなたもいま述べられたとおり、やはり国土の利用計画というものが定まれば、いま御発言になられたいろいろな問題が解決するわけでございます。今度土地利用計画を定めようと言っておったのは、これは、いま安い山林を買っておけばやがてはもうかると思っておったものが、今度の法律によって知事は、そこは自然風致地区である、国土保全地区であるというふうに指定をすれば、家は建たなくなるわけでございますから、その意味においては、先の利益を見通して買うことに対しては大きな歯どめになるわけでございます。それで、特定地域に指定をするということになれば、これは、知事や市町村長、地元の考え方によってこの地域を特定地域に指定するということになれば、高く買っておって、じゃインターチェンジはここだろうというような思惑で買っておったものが、その特定地域内に編入をされ、暴利を押えられるというふうにしてあるわけでございます。  また、公共団体や農協も土地を全部買うということがむずかしいので、やはり土地に対してはレンタル制度等を認めたり、農協法の改正をやったり、また市町村、公社が土地を確保できるように、また特定地域の中における地主は、公共団体や都道府県に対して買い取り請求権を与える。法制的には可能な限り、考えられるものはみんな網羅して行なったつもりでございます。まあ二〇%賦課するものを三〇%でやったらどうかというような御議論は存在するところではございますが、現行法制でとれるというようなものに対しては相当なことをやったつもりでございます。  また、土地管理委員会か評価委員会かというようなもの、これはやはり市町村が一番わかっているわけです。市町村が一番わかっているわけですから、市町村や都道府県にそのような機構が必要であろうということも想定をいたしておるわけでございます。  あとは、地方公共団体の土地取得に対する交付公債の問題がございましたが、これは非常にうまくやったのは、茨城県が鹿島開発に対しては、長い期間で坪五百円というような債券を交付したという一つの例がございます。これは非常に成功した例でございますが、まあそういうものよりも、レンタル制度を拡大するということとか、それから市町村が土地を取得し事業を行う場合には相当の地方債を認める、大蔵省もそういうものに対しては大幅に認めよう。認めるだけではなく、今度はいろいろなものに貸してはならないということでありますから、農協や金融機関の金はどうなるんだ。それこそ公のために、多数の人のために使えるような、市町村やそういう地方開発、それから住宅供給というようなものに資金が自動的に回せるように、金融機関の協力も求めておるということでありますので、土地に対しては可能な限りあらゆることをやったと思っております。  しかし、政府の以外にも、国民の中にはいろんな議論があるわけでございますから、そういう意味でこれからも毎日勉強し、検討し、いいものがあったら、採用できるものがあれば直ちにこれを採用する。いまちょうど国会が開かれておるわけでございますから、もうこれをもって足れりという考えではなく、全精力を傾けてまいらなければならない、こう思います。
  116. 小平忠

    小平(忠)委員 土地問題については、ただいま総理は、きわめて親切に、そして御丁寧な答弁がございましたが、しかし、それはあなたの持論である、結局決断と実行、これがなければ不可能でございますから、ただいまの最後の御意見のようにあれできまったもんでない、この審議を通じて改善していきたいという意向でございますので、どうぞ善処を願いたいと思います。  約束の時間が参りました。まだ年金問題、さらに本年の最大課題である鉄道運賃の値上げについて、国鉄の再建並びに国鉄のいわゆる管理問題、特に私は、国鉄の再建は運賃値上げだけでは絶対に再建できない。管理体制を根本的に改めないで、いまのような状態で、磯崎総裁のやり方で、一体国鉄が再建できるか。今日の国鉄赤字の現状から見て、物価の上昇に影響しない程度のある程度の運賃値上げは、それはやむを得ぬという面もあるのですけれども、現在の国鉄の管理状態から見るならば、現在の運賃を値上げしても、それは焼け石に水だというようなことから、わが党は断じて今回の国鉄運賃値上げには反対であります。その前にその政治姿勢をただせという……(「政治姿勢か」と呼ぶ者あり)問題を指摘しておるのであります。なお、農政、食糧問題につきましても、国際的な食糧の危機、穀物の減産等、またわが国農政の方向、特に過酷な米のいわゆる生産調整、今日の具体的なミカンの問題や大豆の問題、そうして、もう次から次と場当たり農政というものが、国民経済の上に大きな支障を来たしておることから、いろいろ伺いたかったんでございます。しかし堅頭に、いわゆる平和時における防衛力限界について、どうも総理答弁があいまいなもんですから、非常な時間を食いまして、約束の時間が参りました。  最後に私は、総理の政治姿勢について。やはり何といっても現在のいわゆるわが国の政党政治、議会政治の根本は、選挙制度、そして金がかかる選挙、ここに私はあると思うので、やはり公選法の思い切った改正、もうさしあたってこのアンバランスな定員の是正は直ちに行なうべし、そうして政治資金規正法は根本的に、従来われわれの主張のように改正すべし、これが何といっても重要な課題であろうと思うのでありますが、最後に私は総理のこの点に対するお考えを伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  117. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 本会議で申し述べましたとおり、定数の是正及び政治資金規正法の解決は急がれておるわけでございますが、何回か国会提案をして成立を見なかったという問題もございますし、これは民主政治、議会制民主主義、政党政治等の根本に触れる問題でございます。まあ、そういう意味で各党から政府に対する強い御要望もございます。また御叱正もございます。選挙制度調査会の意見も徴しておるわけでございますので、政府も全力を傾けてまいりたい、こういうことで御了承いただきたいと思います。
  118. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて小平君の質疑は終了いたしました。  午後一時十分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十分休憩      ――――◇―――――    午後一時十五分開議
  119. 根本龍太郎

    ○根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  総括質疑を続行します。小林進君。
  120. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、党の指示に従いまして、主として物価問題、社会福祉の問題中、年金、保険、国鉄運賃等について御質問を申し上げたいと存じます。  まず、第一の物価問題でございますが、物価がなぜ上がるのかという物価上昇の原因をまず正確にとらえていかなければ、これに対する的確な対策も生まれてこない、こういうことになると思うのでありますが、私は、物価がなぜ上がるかという、その原因は、国際的理由と国内的理由の二つがあると思います。  国際問題としては、輸入インフレでありまして、これはアメリカの世界的戦略の失敗でございまして、世界じゅうにドルのたれ流しをしたこと。ベトナム戦争だけでも三千億ドルに近いものを浪費をしておる。そのために、ついに金とドルとの交換を停止しなければならないなどの理由によって、世界的に物価高の被害を受けるに至ったのであります。  特に最近は、ヨーロッパにおいてさらにこのドル不安が激化いたしておりまして、そのヨーロッパのあおりを受けてわが日本でも、東京の外国為替市場はドル売りがいま殺到をしておるというふうにいわれておるのでありますが、物価値上げの国際的要因の中心であるこのドル不安を、一体政府はどういうふうに見ておられるのか、また、ここ両日ドル売りが殺到いたしておりまするが、これに対してどういう対策をお持ちになっておるのか、まずこれからお聞かせを願いたいと思うのであります。
  121. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ドルの問題でございますが、ベトナム戦争も済みましたし、アメリカ自身の経済について、きわめて最近の大統領教書その他等から見ましても、アメリカの経済、財政の再建策というものは、かなり理解ができるような感じがいたしますから、基本的にはドルが強含みになるというのが自然の推測であろうかと思います。  同時に、しかし一方では、ドルに対するヨーロッパ筋あたりの多少の動揺がございまして、ごく最近のところでは、ドイツ市場等において御案内のような状況が起こっております。ドイツといたしましても、ちょうど、時差の関係もございますが、数時間前に閣議があったようでございますが、一口にいえば、ちょうど日本の為替管理のような、短資の流入を阻止するということが決定をされまして、ドイツの市場におきましても、為替市場を閉鎖するとか、あるいはフロートするとかいうことがなくておさまるように見受けられておるようでございます。  東京にも、そういうふうな余波といいますか、これが若干あらわれたような模様もございますけれども、実需を中心にした資金の動きであるようでございまして、何ら懸念を持ちません。  日本といたしましては、政策の変更というようなことは考えるような状況では全然ございません。これがこの二、三日来の動きに対します私どもの見解でございます。  それから一般的に、ドルの世界への散布と、これがどういうふうにそれぞれの国の経済政策等に影響したかということにつきましては、またお尋ねによりましてお答えをいたしたいと思います。
  122. 小林進

    ○小林(進)委員 この一日だけでも一億八千万ドルも流れてきているというこのドル、日銀がこれを一生懸命に、最低の一ドル三百一円十銭でせっせと買い上げられているのでありますが、これが私は、もうたいへんな社会不安を相当に巻き起こしていると思っておるのでございます。それに対して大蔵大臣は、何らの懸念がない、だから何らの手当ての策も打たない、こういうことを言われておるのでございますが、私は、一体そういう豪気な発言でこの事態をしのぐことができるのかどうか非常に不安を持っておりますが、そういう御発言でございますから、勝負はそう長い時間がかかることじゃございませんので、しばらくその答えをひとつ留保させていただきます。  それにあわせて、最近の株式市場でございますが、天井知らずに上がっていくかと思ったものが、今度はがた落ちにいま暴落をいたしておるのでございます。なぜ一体こういう株式市場が急に暴落をしているのかということに対して、やはり一般市場では、もうヨーロッパ、西ドイツを中心に、ロンドンでもそうでありますが、このドルの異常な流出のために、わが日本もやむを得ず近く円の再切り上げをやらなければだめだろう、こういう見通しなんです。この見通しで、一生懸命にドルを円にかえた金で、株を投機の対象にして買いあさった大企業が、今度はその先を見越して売りに回った、これが株の暴落の最大の原因であると見ておるのでございますが、これに対しては関係庁で、この株の暴落に対して何か手入れをされるというふうな若干の風評も飛んでいるようでございますが、これに対する政府の見解並びに対策等もあわせてお聞きいたしておきたいと思うのであります。
  123. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 証券市場、株式市場におきまして、御案内のような数日来の状況でございます。これは率直に申しますと、この一月くらいの間の上がり方が非常に急であり、あるいは上がり過ぎというようなことが警戒されて、そういう気分が底に強く流れてきておった。それから、しばしば御説明いたしておりますように、政府といたしましても各種の措置を講じてまいりまして、資金が過度に株式に回らないようにという措置をとってまいりました。こういう点が相当の影響、効果を与えたものであると、こういうふうに見ておるわけでございます。もとより、こういったような市場の特異な雰囲気というものがございますから、その他いろいろの考え方や底意もあろうかと思いますけれども、基本的には、上がり過ぎたことに対する警戒と、それから各般のとられた措置の影響が相当の効果を発揮したものと、こう考えておるわけでございます。  私は、証券市場が秩序のある状況に戻りつつある一つの傾向と見て、この点は評価をいたしておりますが、同時に、あまりに急激に下落するということは、やはり心理的な不安要素が何となしに出てくることは、これまた政府としては警戒しなければなりませんから、たとえば、信用取引の証拠金の率などについては、かなりきびしい措置をいままでとっておりますけれども、こういう点には臨機に、多少の手綱を締めたりゆるめたりということが必要ではなかろうか、こういうふうに考えまして、現在市況の動きを十分に見きわめながら、臨機の措置も場合によってとるような体制にいるわけでございます。
  124. 小林進

    ○小林(進)委員 株の暴落の問題についても、おそらく、政府のそういう金融面における引き締めが効果をあげた、政府政策の好ましい結果だというふうな御答弁があるだろうということは、大体想像いたしておりましたが、私どもは、そういう政府施策によってこういう状態が来たのでは――それは若干の影響はありましょうけれども、そうではない。やはりドル相場の影響と、それに対する企業の先を見越した、いわゆる買い手に回っていた大企業が全部売り手に回ったこと、私はそういうふうに考えておるのであります。ただし、そこで出てくる被害者は一体だれか。やはり被害者は、中小企業者とか一般の庶民階級が大きなあおりを受けるのではないか。そういう点を十分考慮に入れて政府施策を見ているのでありますが、十分ひとつ間違いのないように処置をお願いしておきます。  国際的なインフレの原因はこれくらいにいたしまして、この物価高の一つの原因は国内的な理由だ。これが私は中心だと思う。歴代自民党の政府が輸出産業に対して、金融及び税制をはじめ、他のもろもろの分野というものを一切犠牲にして、過保護の優遇処置を続けてきた。このような過保護の土壌の中で、わが国の大企業を中心とする重化学工業は大きな肥満児として成長をしてきたのであります。この輸出産業優先の経済運営の方策をずっと強化してきた結果、国際競争力は確かに強化をされましたし、それによって大幅の黒字が発生をいたしたのでありますが、この大幅の黒字が、いわゆる物価上昇、インフレの元凶なんだ。これが一番悪なのでありまして、この大幅黒字をつくり出し、その結果において消費者物価というものが高騰をしてきた、社会資本の充実というものが全部犠牲にされた、公害規制というものも、これは国民に浴びせかぶして、一切それを徹底しなかった、そして労働者を中心にする一般大衆には、低賃金政策と労働の強化を徹底的に押しつけて、そして大幅黒字というものをつくり上げてきた、こういうふうに私どもは認めているのでございまして、これが国内政治における物価高、インフレの中心だと私どもは解釈をいたしておるのでございまするけれども、一体政府は、これをどうお考えになりますか。  ジョセフ・シュンペーターは、資本主義はその失敗のためではなく、その成功のために滅ぶ。日本の経済は、まさにいまそこへ行っているのだ、重工業化の過度の成功と大幅黒字のために、いま日本の資本主義体制はつまずこうとしているのだ、いまは日本の資本主義の重大なる危機だ、こう言っていいのでございますが、この理論について一体どういうふうにお考えになりますか。
  125. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これまでのあり方について振り返ってみて、その功罪についていろいろの御批評はあると思いますけれども、やはり何といいましても、国全体としては経済力が非常に大きくなりました。それで、いまこれからこの国力というものをうまく配分をいたしまして、今日的な、あるいはこれからの国民の要望にこたえていくということが、財政政策面でも非常に必要なことであると考えまして、いわゆる公私両部門間の資源の配分を重点にしていく、こういう考え方でやっておるわけでございます。  具人体的に申しますと、大企業優先という話がございましたが、法人税についても税率を上げよという御主張の御質問かと思いますけれども、われわれとしては、まず課税所得を拡大するということで税制も考えておるわけでございますから、それに固定資産税の加重ということを考えれば、法人の税というものも従来よりは相当の加重になる。勤労階級に対しては所得税を中心にする大減税を行なって、いまの御趣旨のようなことをこの政府の原案で考えておるわけでございます。
  126. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、これから先の政策を聞いているのじゃない。一体なぜインフレができ上がったのか、その原因はこれじゃないかと私は聞いている。あなたもそう思わないかということを言っているのでありますから、私の質問をよく聞いて、質問にマッチする答えを明快に簡単に答えてください。  そこで、そういう無理な輸出第一主義によって生まれたドルは一体何なんだ、私はこれを今度はあなたに聞くのでありますが、その外貨とは一体何か。これは国内の資源と労働力の産物である。産物が外国に輸出されている。その対価として、最も利率の低い、しかも減価する、毎日毎日値打ちが下がってくる、減価するドル資産の形でいま保有されていることなんです、ドルの滞貨ということは、黒字の滞貨ということは。言いかえれば、この一番不良財産のドル資産をためていることは、日本の資源と労働力を浪費していることである。国民経済にとってこれは非常に大きな不利益を与えていることなんです、いまのドルの過重な蓄積は。これが一つ。  同時に、大幅な黒字は、いわゆる企業が輸出していく、その企業の私的利潤なんです。私的利潤の一形態である。こうドルの蓄積というものを科学的、学問的に分析しなくちゃならぬと思うが、一体この理論をあなたは認めるかどうか。イエスかノーかでいい。よけいなことはあまり答えぬでよろしい。
  127. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 非常に理論的な御意見ですから、イエスとかノーとか簡単にはお答えできません。イエスともノーとも申し上げられませんとお答えをする以外に、簡単なお答えはございません。
  128. 小林進

    ○小林(進)委員 まあ大蔵大臣ぐらいになったら、そういうドルの性格ぐらいやっぱり科学的に分析してかからなければ、そこから生きた政策というものは生まれてこないですから、少し勉強が足らないな。  それで、ドルが大幅に蓄積されたということがすべての悪の元凶なんですから、しかも、このドルを蓄積することはだんだん国民に不利益をもたらしているのでありますから、問題はドルを減らすということ、これが物価対策の中心でなくちゃならぬ。これが物価対策の中心なんだ。ならば、その減らすためにどういう政策を持っていくべきか。円の切り上げを行なうということも、これは効果的な一つ政策でございましょう。ただし、これはもう前回一六・八八%を切り上げをしてみて、これが成功しなかったということは明らかになったわけです。でありますから、この点においては、軽々に円の切り上げをすべきだという説には私は賛成しない。これは政府立場で言っているのじゃありませんよ。わが党の立場であまり賛成はできない。この前も円の切り上げをおやりになったのですけれども、これは輸出入業者とか、そういうものに直接影響をしたけれども、国民や全消費者に何も潤すところがなかった。私どもは、その意味において、円の切り上げにはあまり賛成はできない、こういうことなんです。  それじゃ一体、この手持ちのドルを減らすために他の方法は何かといえば、輸出資本です。この輸出大企業の私的利潤の追求のひずみを是正するというこの方法だ。別なことばでいえば、輸出を抑制するということだ。こういう経済政策に転向をしなければ、このインフレ、物価高というものを防止することはできないのではないか。そのためには、いままで政府が進めておりました、輸出産業のために特別保護をしてきた一切の政策というものを、思い切ってこれは転換をしなくちゃいかぬ。わが社会党が流れを変えるというのはこれなんだ。ここで転換しなくちゃいかぬ。税制上、金融上のいままでの優遇処置を撤廃する。租税特別措置法なんという、こういうものは断々固としてやめなくちゃならぬ。そして国庫、予算の面からも、福祉優先の経済政策というものにきばっと切りかえていかなければならないと思うのでございまするが、この考え方にはあなたは決して反対される理由はないと思う、科学的な主張ですから。それに対して、一体政府はどういうことをおやりになったかというと、この理論構成に沿うた政策というものを何もおやりになっていないのです。これを私はこれからひとつ政府に反省を促すために質問をしていくのでありますが、まず、やっぱりそこで中心になってくるのは、総理大臣、あなたの姿勢です。やっぱりあなたの頭脳ですべては動くのです。  そこで、最近世論というものは、総理の思想の転換をいま非常に要求している。総理の現状認識はずれている、こういうことを世論は言っているのでありますが、これは総理、個人的な考えじゃございませんから、あしからずひとつ。公党の立場で申し上げるのでありますが、ずれている。それで、その世論を代表いたしまして、こういう説がある。「端的にいって、インフレ、土地、公害をはじめ、国民生活の現状はきわめて異様である。」もはや異様であるという表現です。「これを調整すべき政治の機能は無策に近い。」それなのに、金権政治や大企業優先の政治はなお横行している。実際に国民のいら立ち、欲求不満が危険な形で噴出しないかと心配させられるような異様な世相である。これに対し、首相の衆参両院における答弁にば、「いろいろな補足説明がついてはいるが、基本的には、過去の高度経済成長政策を礼賛し、その路線に執着することが本音としてにじみ出ている。日本列島改造問題も、この路線の延長線上に位置づけようとする態度を固執し、改めようとしない。この態度を大胆に改めるところに国民のための政治の出発点がある、」と言っている。そしてこれを踏み切らねば、自民党政府は自分で墓穴を掘ることになろう、こう言っております一実にこれは至言だと思うのであります。  総理は、高度成長政策施策を進めることについては自民党のチャンピオンだった。ずっとこれをあなたはお進めになった。その点においてはあなたは非常にくろうとであろうけれども、残念ながら、こう景気が過熱して、インフレがとめどなくいっているときに、その経済を縮小するとか、安定をさしていき、経済成長から国民福祉のほうへ政策を転換するときには、どうもあなたには経験がないんじゃないか、あなたの頭の中にもその思想がないんではないか、これを国民はおそれている。いわゆる経済成長に油を注いで、さらに過熱させるところのチャンピオンではあるけれども、それをさましたり国民のほうへ転換せしめるほうの能力は、どうも首相には経験と思想が足りないのではないかということを国民は非常に心配をしております。  この総理のこの考えが、四十八年度の予算の中にそのままあらわれている。ことばだけは福祉予算といいながらも、実態は何も変わっていない。十四兆二千八百億円、二四・六%の拡大の中に、経済の実質成長率が一〇・七%、消費者物価の値上がりが五・五%。これは政治的発言であって、実際は七%であるというのは、そこらにいる経済企画庁の作業員までが、五・五%で押えきれるものではないと言っておる。なお貿易収支に対して、四十八年度の貿易収支の見通しが八十一億ドル、今年度の見通しが八十九億ドルといいますから、来年度の貿易の黒字も八十九億ドル。これを全部合わせたら、これは経済成長予算そのものじゃございませんか。この骨格は。どこに一体福祉予算と銘打てる性格がございますか、この骨格自体は。これはそのまま経済成長予算そのものではございませんか。
  129. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 一〇・六%という成長率というものは、いわば安定成長率と言うことはできると思います。それに対応する予算でありますし、予算の内容を詳しく申し上げますと時間がかかりますが、福祉予算については、いままで福祉関係として要請されておりましたこと、今年度、たとえば厚生省が要請されておったことはほとんど全部この予算に編成されている。この一事をもってしても福祉予算と言うことはできると思います。
  130. 小林進

    ○小林(進)委員 大体これが福祉予算か具体的にまたあとでひとつ議論で申し上げますが、厚生省の要求どおりと言うけれども、厚生省なんて一番ちゃちな省なんであって、総理の思想が変わらない限り、それを見ながらやっているものでありますから、何も福祉予算と銘打つような進歩はないのです。旧年どおりを踏襲しているのですから。これはまたあとで言いますが、そんなことで、これが福祉予算だなんて言ったら、大蔵大臣の知能を疑わざるを得ない。  そこで、時間がないですし、問題は幾つもあるのでございますから急ぎますけれども、これを一体どう対策するかと言うからには、そのものずばり、問題はやはり、具体的には、輸出を抑制をし、輸入を促進し――いろいろ政府は言っておりますが、そのものずばりで言って、私はやっぱり賃金だと思う。賃金を大幅に引き上げるということなんです。それから法人税を引き上げる。輸出を押えるというのは、ではどういうふうに押えるか。あなた方のように輸出課徴税をかけるか、超過税をかけるか、あるいは輸出税をかけるか、あるいは円の切り上げをやる。そういう形で輸出を押えることができないというならば、やっぱりそれに準ずる効果ある政策というのは、それは賃金の引き上げしかないのです。いままでは低賃金で、過剰な労働で、二重価格で安い物をつくって、輸出第一主義でやっておった。そのためにわれわれ国民が全部いま迷惑をこうむっているんでありますから、その迷惑を取りはずすための、それはもろもろの政策はありますよ。それは実は、あげれば幾つもあるんです。幾つもあるが、そのものずばりは、この低賃金構造をやめなくちゃいかぬ。これが一つ。第二番目は、あなたの言われる社会福祉政策です。環境整備もありましょうが、社会福祉政策を進める。大幅に問題を引き上げていくということなんです。  ところが、この賃金を引き上げるということに対しては、大体資本主義でいる人たちは理解する力がない。だから、輸出を押えるためにも低賃金政策というものを離せない。低賃金をするためには、円の切り上げをやっても賃金の上昇だけは押えようというのが、経済白書なんかにあらわれてくる官僚のものの考え方だが、こんなことでは、この急場に臨んでいるインフレ政策ということの根本的な押え方にはならない。もちろんそれは、社会福祉のためにうんと支出すると同時に、賃金を上げることなんです。賃金の引き上げなんです。正当な賃金、国際的な賃金をくれるということなんです。一体、わが日本がどんなに低賃金であるかいとうことは、時間がないから言いませんけれども、比較しなくてもおわかりのとおりなんです。それをせめて国際水準まで引き上げる、これはやるかやらないか。これ一つです。いいですか、おやりになりますか。私の言うことは、大蔵大臣、おわかりになりましょう。おやりになりますか。
  131. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 小林さんのおっしゃることは、小林さんの御意見としては耳に入りますが、必ずしもその御意見には賛成できない。先ほども、申し上げかけると答弁が長いと言われるから途中でやめましたけれども、たとえば、いま輸出を押えることが必要だとおっしゃる。これは、今度のわれわれの考え方は、内需優先の考え方。内需ということの中には、たとえばわれわれがつくり上げる生産物も、われわれ国民がお互いに分かち合うようにしようではないか、そして社会福祉を大いに高め、社会資本を充実するほうに向けていこう、こういう考え方ですから、その限りにおいては御同様でございます。そのためには、輸出促進のために講じられてあったような税の特例措置をやめて、法人に重課をする、こういうこともやっておるわけでありますし、また、輸出貿管令の発動というようなことも、別の措置でございますが、これも相当な効果を発揮することになるわけです。輸出は抑制ぎみにやって内需に転換をしていこう、これが現在のとるべき基本的な考え方でございます。
  132. 小林進

    ○小林(進)委員 内需を強めるといいますか、需要を強めるということ自体も、やはり賃金の、いわゆる正当な賃金の支払いということから始まってくる。社会福祉政策を進めていく、そのこともやはり賃金を大幅に引き上げることから始まっていく。そして輸出を押えるということも、いま賃金を食いながら彼らは輸出製品を出してきた。これからは、むしろ輸出製品に賃金が食い込んでいくくらいの大幅な賃金を支払うことが、やはり正当な価格になって品物が海外に出ていくという、こういう形になっていく。だから、内需を増強することも、社会福祉を充実することも、本質的には全部賃金です。この賃金を思い切って引き上げなければインフレ問題の解決にならないのです。これはもうあな方とは議論の余地がないから、やるかやらぬかです。やらなければ、私どもはやらせるまでやるのですから、やらなければ国民がみんな迷惑するのですから、これをもっと上げてくれなければ、国民が迷惑するのですから私どもはやるのです。政府は、しかし民間の賃金まで上げるわけにいかぬだろうけれども、公務員から三公社五現業をガイドポストにするためにも、ぐっとことしはひとつ上げて、そして民間の賃金にもその影響を及ぼして、国内の需要を高めていく、輸出を押えていく。そうして企業ベースの利潤、大体黒字なんというのは企業のほんとうの利益追求なんだから、そういう企業の輸出による利潤の追求をひとつ押えつける。この政策を徹底的にやってもらわなければ、もうこれ以外にインフレを押える方法はございません。これを強く要望しておきまして、あとは行動をもって示すだけであります。これは申し上げておきます。これをやる。  それからいま一つは、政府はことしから福祉予算に流れを変えるといっております。福祉第一主義といっておりますが、一体福祉予算と銘打たれるからには、その福祉経済の原則というものをまず国民に示さなければいけない。ことばの問題じゃありませんからね。去年までは高度成長経済でございました、ことしからはいわゆる福祉経済をやるのであるというならば、福祉経済の原則というものを国民のだれもがわかるように示してもらわなければいけない。お示しになりましたか。経済の長期経済計画もまだ出ていない。社会福祉の長期計画も何も出ていない。ことばの論議に終わって、そして予算の骨格は去年と同じような成長経済そのままを出しておいて、どこに一体福祉予算といわれるような特徴があらわれているか。私は時間がないから申し上げますけれども、一体、福祉経済の原則を学問的にお示しになれますか。ありますか。相談するなら相談して、ひとつ早々とやってください。ありますか。
  133. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 本年を基準といたしまして五カ年計画を、先ほどの御質問で申し上げたのですが、八日に審議会の答申を得ることになっておりまして、その中に、やはりいまお示しを要求されました問題も入っておるわけでございます。  福祉社会の基準とは一体どういうことを考えるかという点についてだけ申し上げますと、まず一つは、老齢者がその時の社会基準に応じた、それに応じて生活できる年金を獲得すること、これが一つでございます。それからもう一つは、医療等のサービスが要求せられ、それが充足せられるということ。それから第三は、一般の福祉社会のいろいろな市民的な要求が満足される施設を持つということ、この三点でございます。
  134. 小林進

    ○小林(進)委員 経済企画庁長官、あなたの一ついいところは、あなたは、黒字と物価を押えるためには、家庭電器でも鉄でも輸出品を値上げすればいいということを発言されたが、あれだけは経済企画庁長官としてなかなかりっぱで、そのものずばりです。いいことを言われたが、いまの答弁は、これはもういただきかねる。福祉経済政策をこれから実行するというならば、まず福祉経済というものは何かという原理というものが学問的に明確にされなければいけない。そこから問題を発生していかなくちゃいけない。福祉経済の原則とは何ぞやから始めなければいけない。それが政府にないじゃありませんか。私はやはり、福祉経済というからには、新しい経済論が出てこなければならぬと思う。私をして言わしむれば、これは私の持論でありまするけれども、学問的に客観的に評価を得たわけではありませんが、第一に、福祉とは憲法第二十五条にいう生活権擁護の問題であります。福祉経済にはこれが一本入らなくちゃいけない。生活権を擁護する。これは生存権じゃないのであります。生活保護じゃない。人並みの一般の生活を国民すべてに保障するという、こういう骨が一本経済政策の中には入らなければならないと思うのであります。いまの政府がやっておる福祉政策なんていうのは、これは調整インフレのためにただ福祉を利用しているのにすぎないのです、ことばたくみにごまかしているけれども。根本はやはり経済成長です。何も変わっていない。やはりごまかし、だ。  第二番目には、これが重点です。福祉経済とは、政府が、国民のいわゆる健康と老後の生活と、それから足、いわゆる交通、そうした基本的な国民生活に絶対必要なものを責任をもって保障するということなんです。これが経済の本質、政策の根底に入らなければ、これは福祉経済とは言われないのであります。その交通確保のための中心をなすものは国鉄だ。国鉄なんです。そして、やはり国民の健康を保持するものは健康保険。それから教育は義務教育。だから、こういう国民の生活の基本的な問題は国が責任をもって国民に与えるという、これが福祉経済の原則です。だから、義務教育は金を取らぬでしょう。それが国鉄になると、独立採算だなぞといって、赤字だから金を取るという。一体そんな福祉経済がどこにありますか。これが間違いなんです。これは国民の足なんです。生きるために絶対に必要なんだ。もうこれは欠くべからざるものだ。ならば、そういう国鉄や最小限度の交通機関などに赤字などというものが出るはずがない。義務教育費に赤字がありますか。消防に赤字がありますか。それを、同じ国民に必要なものであるにもかかわら、ず、国民の生命と身体を守るその健康保険に対して、赤字だから独立採算制で個人の負担を高める、国鉄が赤字になったから負担を強めるなんということは、福祉経済に対する原則からはみ出たたいへんな間違いだと思う。間違いです。  だから、社会主義国家なんかにいきますと、御承知のとおり交通費というものはただに近い。交通費というものはただのように安いのです。健康保険料なんというのは、日本のように赤字になったから金を取りますなんて言わないのです。みんなほんとうにただに近いような安い料金で提供しまして、国民が交通費や医療費の負担でいささかも苦しむようなことは、いわゆる福祉を中心とする社会主義国家にはない。政府が、いわゆるそういう福祉を中心にしていかれるというならば、そこまで大きく政策を転換していかなければいかぬ。  そこで私は、国鉄の運賃をお上げになるその政策には、これはまっこうから反対です。絶対反対です。社会党並びに野党は全力をあげて、そういう福祉政策の、羊頭を掲げて狗肉を売るような、国民の必要なものをみんな値上げしていくような政府政策には絶対反対です。これはもう答弁は要りません。絶対反対です。だから、国民健康保険の値上げに対しても、絶対これは反対です。しかし、いまの福祉政策の私の主張に反対意見がありますか、大蔵大臣。あるならひとつ言ってください。
  135. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまのお説で申しますと、いまおあげになったようなものは全部ただにしなければならないということに相なるわけでございますが、私どもの考え方は、社会福祉と申しましても、およそ分けて二つあると思うのです。  一つは、公的ないわば扶助というような感じで、これはもうその恩典を受ける方が、全部完全にまるまる一〇〇%政府の援助の対象になるという考え方のものが一つあり得ると思います。しかし、もっと広い意味の社会保障ということになりますれば、これは国民全体が社会連帯意識と申しますか、その上に立ってお互いに助け合う。たとえば年金制度にしましても、保険制度にしましても、これはお互いのものとしてりっぱに育て上げていくということが中心でなければならない。これにはやはり、年金や医療の給付を受ける方がそれに応じた負担をし、あるいは拠出をしまして、お互いに育て上げていくということが必要であって、これは何らの拠出なしに給付だけを受けるという考え方では成り立たない。こういう二種類があると思います。あるいは国鉄の場合におきましても、国民全体のこれは大事な国鉄でございますから、国も、しばしば申し上げましたように、もうあとう限りの財政力を投入いたしますが、受益者においても応分の御負担をいただきたいというのが考え方の基本でございますから、その点においては、遺憾ながら基本的な哲学が違うと申し上げて言い過ぎではないかと思います。
  136. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、ただにせいと言っているんじゃないのだよ。国民の生活に負担を感じない程度のものにそれをとどめておきなさい、だんだん低くしておきなさい、生活必需とか暮らしに必要なものは、国民が負担を感ずるような引き上げをやめなさいと言っている。福祉政策だと言いながら、国民はインフレの中に苦しんでいるのに、福祉政策をやりますと言ったその初年度に、いままでのようにぼんぼん上げるというその考えが間違いじゃないかと私は言っているんですよ。人のことばをよく聞いていらっしゃいよ、あなた。そういうことをやめなさいと私は言っているだけの話なんです。だんだん下げるほうにいかなければいけない。国民が生活の中に負担を感じない方向に持っていくのが福祉政策だということを申し上げておるのです。逆じゃないですか。  私は、次から、もうこういう理解力のない政府理解ある答弁を求めても無理ですから、この程度に対決点だけ明確にしておきます。  これはインフレ問題について中曽根通産大臣に質問いたしますが、あなたは調整インフレ説をお出しになって、新日本製鉄の永野会長と相呼応してこれを唱えられたんだが、それは信念を持って唱えるなら唱えるでいいが、後日またこれを取り消された。朝令暮改でありますが、こういうことに対してどういったようなことをお考えになっているのか。  これは時間がありませんから続けてずっと申し上げます。あまり時間がない。  あなたは防衛庁長官をやっていられるときも、第四次防衛計画もとみたいなものを持って、閣議にも国会にも出さないうちに、アメリカへ飛んで行って、アメリカあたりでばんばんとそれを披露して、たいへん日本の国会が迷惑をこうむったというようなことがある。これは調整インフレでわれわれは至るところでえらい迷惑を感じているのであります。こういう防衛庁時代の問題は別として、いまの通産大臣のこの問題、これはひとつ明らかにしてもらいたい。  それからいま一つは、あなたは一月の十七日から五日間にわたって中国を訪問されてまいりました。どういう用件で行かれたのか、その目的は何か。それもお尋ねいたしますが、同時に一体行かれたパーティーは何なのか。特にこれは民間人も行っている。民間人も、日中経済協力会会長稲山嘉寛、これは新日本製鉄の社長。会長と一生懸命に調整インフレを唱えながら、その社長と一緒に今度は中国を訪問する。それから副会長には鐘淵化学の会長だとか名古屋鉄道の会長だとか、理事長が小松製作所の社長だ。こういう民官合同で、特に自分の主管をする最も直接関係のある企業のこういう社長あたりを引率されて、政府の責任ある地位の人が外国旅行を堂々とおやりになることが、これは一体いいことかどうか、私はどうもその判断に困っておるのです。過去にも一体こういう事例があったものかどうか。まあ一般の人たちは、こういう通産大臣の動きを見ると、どうも何か財界との癒着があるのではないか。これは、げすの憶測だとおっしゃればそうかもしれませんが、どうもやはりそういう疑惑が深まってしかたがないのでありまするが、こういうことと二つです。  あなたに対しては、ずっとやったほうがむしろお互いにいいと思いますが、総理大臣はこれをどういうふうにお考えになるか。これはやはり、民間、政府の要人が直接一緒になってこういう外交交渉、政府交渉に行かれることは、これ、もちろん総理が許可されたから行かれたのでありましょうけれども、総理の所見も実は聞いておきたいと思います。これはいいことか悪いことか。  また三番目には、話が古くなりまするが、あなたのおっしゃる首相公選論。私はプライベートの問題はなるべく触れたくないです。これはお互いにジェントルマンとしてやりたくないが、この首相公選論などというものは、たいへんにこれはわれわれに直接影響してくる。これはもはやあなたの個人プレーではなくて、政治課題としてのってきている。選挙のどきも、これはやはり選挙の課題として、私どもは、この首相公選論というものとこちらで対立をしながら、これは間違った説だというようなことを堂々と言ってわれわれは戦ってきたわけなんでございますが、そういうことで、政治家ばかりじゃない、国民もみんなこの首相公選論にたいへん影響を受けたり被害を受けたりしているのだけれども、これを一体どうされたのか。これは石川達三さんがこういうことを言われている。かつて中曽根さんは「首相公選運動をやっていた。私が賛成の意を表したところが、向うから会いたいと云って来た。政治家から御馳走されるのは厭だからと云って、私の方から彼を銀座浜作に招待したことがある。ところが中曽根はいつの間にか首相公選論を云わなくなって、佐藤四選問題に関しては、(二年後には自分が立候補するが、今回は佐藤を支持する)と語った」「いつから中止したのか。その説明はなかった。彼はそういうちゃらんぽらんな男だ。日本の防衛もどうやらちゃらんぽらんなところが有るような気がする」。これは「流れゆく日々」という、石川達三さんの公開せられた本の中にある一節であります。これはすべて中曽根さんの人格にかかわることだから、私は全部読みません。ほんの必要なところだけにしておきます。これはいま申し上げまするように、単なる個人対の問題ではなくて、私ども全部この影響を受けているものでありますから、やはり政治家として、出処進退はいつかは明確にしておいていただかなければならないと私は思うのであります。  次に、四番目の問題といたしまして、これは「週刊新潮」。これはしかし、検察庁が「週刊新潮」を起訴猶予にされておるのであります。どういうことであるか知りませんけれども、まあそこまで私は言いたくないですから、中曽根さんも言いたくなければ、これは私ども直接関係あることじゃございませんから、私はもう認めますが、ただ、これに準ずべきものとしまして、これまた「週刊現代」に、実にわれわれ政治家全部に影響するようなものが載っているのです。それはあなたがちょうど中国へ立たれるころに「週刊現代」に載せられたものであります。それはいわゆる河野派のスポンサー三人衆の一人といわれた北海道炭砿汽船の社長、会長をやられた萩原氏と大森実氏との談話の中に、萩原氏が「遺言がわりに明かす中曽根事件最後の真実」こういう見出し、これは私どもが読んでも非常に不愉快です。非常に不愉快だし、これは中曽根大臣にしても不愉快だと私は思います。中曽根さんを支持される方も、また反対に立つ方も、こういう文章は非常に不愉快だと思うから、これは公開することはやめます。お互いにこれはあまり好ましいことではありませんが、ただしかし、やはりこういうことは政府の責任ある地位にある人は、身元を明らかにする、みずから進んでそういうことを明快にするということが必要なんではないか。特に、この萩原氏の遺言をもって明らかにするということばの中には、われわれに関係のある人の名前も出てくるのです。たとえば衆議院議長の中村梅吉氏、あるいは参議院議長の河野謙三氏だとか、あるいは前文部大臣の稻葉何がしとか、こういう人たちの名前が全部出てくるというと、単なる萩原氏とか大森実氏とか中曽根さんとかいう個人個人の関係ではなくて、これは政治家全部、われわれ国会議員全部に影響する問題でございます。特にやはり、政府の要人として重要な地位にある方々が、そういう疑惑の中において人の信頼を失うような形のままにそれを放任されておくことは、中曽根氏自身もとるべき方策ではないと思います。われわれ自身もとても耐え得ることではないのです。そういう意味において、われわれ全般の共同の問題として、私は、この問題をひとつ中曽根さんから処置をしていただけないかと思うのです。  まあ、もっと申し上げればありますけれども、私は、あなたのプライベートの問題で人格に傷ついてはいけませんので、非常に注意して質問をいたしておりますが、これはいますぐお答えをちょうだいしたいという問題でもない。(「答えさせろ」と呼ぶ者あり)むしろ、適当な時期に誤解のないような答弁をしたいというならば、私はそれでもいいじゃないかと思います。しかし、いま申し上げました四つの問題について、ここでおっしゃるというならそれもいい。ひとつあなたの選択におまかせをいたします。
  137. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まず、調整インフレの問題ですが、私は調整インフレということを言ったことはないのです。昨年の九月ごろ、景気をもう一馬力上昇させる必要がある、補正予算を組む必要がある、そういうことを言いました。それを調整インフレというように一部で誤解して、新聞が書いたということはございます。私は、国会におきましても、およそインフレと名のつくものはあらゆるインフレに自分は反対であります、そういうことを言っております。  第二に、この間の訪中でございますが、これは周恩来首相からかなり前からたび重なって招請のお話がございまして、それでその要請に亡たえて行ったわけです。これは総理、外務大臣、御了承のもとに行ったことでございまして、いずれ覚書協定がことしで切れるわけでございますから、政府間協定を結ぶ、実務協定を結ぶ、そのスタートを早く切る必要がある、そういう意味で通商局長以下を連れて行ったわけです。その際、日中経済協会ができまして覚書事務所が解消しましたら、それにかわる何かをつくっておかなければいけない。そこで、財界の大かたの総意によってそういう団体ができました。せっかくそういう団体ができて、この際一緒に御同行願って、御紹介を兼ね、その貿易協定の実務を実際に担当するのは民間商社であり、あるいは民間の団体でございますから、一体、覚書事務所、友好貿易、そういうものをどうするかという話し合いも現にする必要がございます。そういう実務の調整の話も一緒にしていただくために、その役員である会長、副会長、専務理事理事長に御同行願ったわけであります。  首相公選論につきましては、十数年前に憲法調査会がございまして、いろいろ自由な論議をやったわけです。メンバーはいろいろ多彩な人がおりまして、一院制を主張する人もあれば、二院制を主張する人もある。要するに議会制度の改革論を自由にやったわけです。私はそのときに、首相公選論が正しいと思いまして、憲法改正の一つの方向としてその主張をいたしました。しかしその後、憲法調査会が終わりまして、そして自民党内閣は、その後、憲法問題につきましては、当面消極的な態度を持ってきたわけでございます。首相公選というものを実行するについては憲法改正を必要といたします。そこで、研究活動のほうに当分入ったほうが適当である、そう思いまして、早稲田の小林昭三という憲法の教授を中心にしていまその研究活動をやっておるわけでございます。早稲田の小林教授は講座の中でも首相公選を論じておられますし、「首相公選論入門」という本もその後書いておるのであります。  週刊誌の問題につきましては、「週刊新潮」の問題は、この前の総裁選挙の問題につきましていろいろ書かれた内容が、私の名誉を棄損しかつ真実に反することでありましたから、私は名誉棄損で告訴いたしました。その後いろいろ経過があり、また取り調べ等もありまして、関係者が全国紙に謝罪をし、また私に対しても謝罪をし、またその週刊誌もその部分を削除するという、編集権の上から見れば重大な訂正をするようなことも社告をもっていたしましたので、こちらの名誉はこれで誤解が解かれた、そう思って一件落着したことでございます。  「週刊現代」の問題につきましては、あの内容を読んでみましたけれども、どうも事実と違うところもございますし、想像や推察でもって書かれたこともございます。多分に記憶が薄れた趣の記事が多うございます。しかし、相手もいまいらっしゃることでございますから、一々ここで反論するのもおとなげないことでございまして、あの記事には非常に迷惑しておる、そういうように思います。
  138. 小林進

    ○小林(進)委員 この問題は、実は私が質問をしないでもやはりだれかが質問する問題でございます。ですから私は御質問したわけでありますが、・いまのお話で、これで全部議員各位の誤解が解けたというわけにはいかぬと思います。特に中国問題の、おっしゃる新日鉄の社長の日中経済協会などというものに法的根拠があるわけではない。任意団体で、しかも、できて間もないものでありまするから、そういうような理由づけで、主管官庁が幕下にある企業となれ合いのような形で行かれることは、やはり好ましいことではないと私は思います。いずれにいたしましても、御答弁は御答弁なりに承りまして、いずれかの機会にいずれかの人を通じて、この問題を再度質問さしていただくことにいたしたいと思います。  次に、私は年金問題について御質問をいたしたいのでございますが、私は、昨年の十一月六日に本委員会質問に立ったときに、年金制度の抜本改革について、社会党の案を示しながら政府方針をお尋ねいたしました。そのときに、前の厚生大臣の塩見さんが明らかにされた点で今日に至るもなお実行されていない問題がありますので、今日はそれにしぼって具体的に質問をいたしたいと思います。  まず第一は、福祉年金は一体どうしてたばこ銭程度でよいのかという問題であります。国民年金法第一条に見るとおり、国民年金制度は、憲法第二十五条第二項に規定する理念に基づき、老齢、廃疾または死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを防止するためのものである。月三千三百円とか五千円で安定がそこなわれることを防止することが一体できるのかできないのか。それはできないことは申すまでもありません。  そこで、昨年の本委員会でも、厚生大臣は私の質問に対して、これを認められた上、次のように答えていられるのであります。「老齢福祉年金の位置づけあるいは性格といったようなものにつきましては、いま社会制度審議会におきましても、今後の扱い方について協議をいただきまして、これが御意見をいただくことに相なっておるのでございまして、この点につきましては、さらに検討さしていただきたいと存じます。」こういうふうに言われておる。昨年のこの発言に基づいて、政府は一体どこまで検討をされたのか、お伺いをいたしたいのであります。
  139. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えを申し上げます。  老齢福祉年金につきましては、御承知のように、三千三百円の金額でございましたが、昭和四十八年度は五千円に引き上げ、さらにまた昭和五十年度には一万円、夫婦で二万円ということをきめておるわけでございます。  そこで、ただいまお尋ねにありましたように、塩見前大臣のときに、性格なり位置づけというものを検討しなければならぬということで、その後、厚生省内にありまする国民年金審議会に、他の所得保障の年金等の関係、そういうものの中における老齢福祉年金の位置づけ、拠出制年金との関係、そういうふうな問題点を御検討いただくことにいたしてございまして、当審議会において小委員会を設けまして目下検討中でございまして、まだ結論を私どものほうにいただいていない、こういう状況でございます。
  140. 小林進

    ○小林(進)委員 これはどうも私の調査とは違いますが、関係審議会の意見を聞いてと言われたが、その後、福祉年金の基本的な位置づけについて関係審議会に諮問をされたということは私は聞いていないのでありますが、いま厚生大臣のお話では、諮問したと言われているけれども、それでは、去年十一月六日の私の質問の以後の何月何日に一体その関係審議会に諮問されたか、まず具体的にひとつお示しをいただきたい。私にはない。明確にお示しをいただきたいと思うのです。
  141. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 十月の中ごろに、国民年金審議会において御相談をいただくようにお願いをいたしておりまして、その後、小林委員のそういう御意見等も十分承りまして、検討をしていただくようにお願いをいたしてございます。
  142. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、十月にその他一般の審議を依頼されたということは承知をしておりまするけれども、この委員会で厚生大臣が私に約束をされて以後、それを実行されたということは寡聞にして私は知っておらないが、いま厚生大臣は、その後諮問の追加をしたと言われているのでありますから、それはきょうはこのままにしておいて、その真実をひとつ追及することにいたしましょう。この中で思いつきのでたらめをおっしゃっているとは思いませんが、答弁はひとつ十分注意してくださいよ。これはひとつお願いをいたしておきます。  それから、私はこれは総理大臣にもお尋ねいたしますが、同じ十一月の六日の本委員会田中総理大臣は、「いままでなかった経済長期見通し、計画を立てますときには、社会保障の位置づけもやりたい。しかも、その中で四十八年度年金をどういうふうに位置して、将来の展望図はどうであるかということは、ぜひ明らかにいたしたい」こういうふうにお答えになっておるのでございますが、予算案で見る限りは、福祉年金には、これは五万円年金のうちの五千円という、こういう位置づけをされたということになるわけでございまするが、そうならば、一体七十歳以上の高齢者は五千円で暮らしていける、こういうお考えで五千円の位置づけをされたのかどうか。さらに田中総理は、将来の展望図まで明らかにすると言われたが、一体、福祉年金の展望図はこの四十八年度の予算の中のどこにありますか、これをお示しいただきたいと思うのです。
  143. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 長期経済計画につきましては経済審議会に諮問をいたしておりまして、七日か八日には答申をいただけるということでございます。四十八年度の予算編成にあたりましても、これが作業の過程でありまして、答申をいただけない状態ではありましたが、この長期経済計画の見通しが、四十八、四十九、五十、五十一、五十二年度と、こういうことになるようでありますので、四十八年度の予算は、その長期経済計画の一年度予算にふさわしいものであることが望ましい、こういう考え方を持っておったわけでございます。十二月の予算編成期までは答申がいただけるようにと要請しておったわけでありますが、二月の七、八日になった、こういうことであります。しかしその中には、きのうも関係大臣から御報告申し上げましたように、政府から民間への振替所得六%を八・八%ぐらいに上げようということでありまして、これが金額的な見積もりもできるのではないかと思います。  老人福祉に対しては、五千円で一体食えるのかということでございますが、これは寝たきり老人その他に対してはまた特別な社会保障の制度もございますし、また老人そのものの扶養義務者も存在するわけでございます。全然ない人は一体それで食えるのかという問題に対しては、確かに御指摘のような問題がございます。しかし、去年三千三百円に、千円引き上げたばかりでございますし、ことしは五千円に――五千円でもって来年はわかりませんというのじゃ困りますから、いろいろな議論がありましたが、来年は七千五百円に、五十年度には一万円に、夫婦二万円に、こういうことを現に考えておるわけでございまして、長期経済計画の中におおよその社会保障の位置づけということは示していただけると思いますが、まあその中に、各項目別にどうするんだ、年次計画はどうだということを全部示していただくにはむずかしい問題があろうと思います。しかし、そういう問題は社会保障制度審議会等もございますので、そういうところでも十分審議をしていただいて、やはりできるだけ年次計画がつくられることが望ましい、こういう考えでございます。
  144. 小林進

    ○小林(進)委員 四十九年七千五百円、五十年一万円、これが福祉年金に対する総理大臣のいわゆる展望図なのかもしれませんが、これでは私は満足いたしません。同時にまた、福祉年金だけで生活しなくたって、ほんとうに何もない人は生活保護で生きていけばいいじゃないか、これも総理の思想をひとつ変えてもらわなくちゃいけない。生活保護を主体にして年金はそれを補完していくという考え方は間違い。人間の名誉心も失います。老人に対するこれは一つの侮辱的なものの考え方。年金を主にして生活をしてもらって、それで足りないところは残念ながら生活保護で補完をしていくという、こういう考え方でやはり福祉政策を進めていかなければなりませんから、これはひとつ総理に十分またお考えをいただきたいと思います。  なお、第二に、昨年の本委員会では、いまあらゆる公的年金制度にひっかかりのないお年寄り、いわゆる谷間の人々と称する、こういう人たちに対して、一体どういう政策をお持ちですかということに対して、前厚生大臣はこう言っているのです。「やはり、私は、もう一ぺんこの五年年金に加入する機会を与えるとか、」「何らかの措置を講ずる必要があるということで、ただいま検討をいたしておる最中でございます。」という返事をされております。どういう検討をされたのか、ひとりお聞かせをいただきたいと思います。
  145. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えをいたしますが、ただいまお尋ねの任意加入の十年年金、五年年金の加入者であった方々につきましては、もう一度五年年金に加入をしていただくようにいたしたいと考えておりまして、目下審議会で御審議をいただいておりますが、今回のその法案の中に、もう一回そういう方に五年年金にお入りくださいということの任意加入の方策を入れたいと、準備をいたしておる次第でございます。
  146. 小林進

    ○小林(進)委員 これはもう実にぬけぬけしたごまかしの答弁です。あなた、このことばの中にはまことに冷酷むざんな気持ちがひそんでいて、聞くも涙に耐えない。いいですか、これはやはり基本原則だ。年金というものの基本原則を考えなければいかぬ。基本原則は一体何だ。まず第一には、年金というものは老後の生活を十分に維持し得る年金でなければならない。いいですか、これは第一の原則だ。第二は、老人、高齢者一人残らず平等に適用されるという、これは第二の原則だ。第三は、いますぐ着手する年金でなければいけない。いいですか、老人を待たせることはできないのですよ、あなた。年寄りを待たせることはできない。ここに年金の特質がある。第四番目は、インフレが進行しているのでありますから、この進行に耐え得る制度でなくてはならぬ。  いま、私が申し上げました谷間の人たちをどうするかというのは、昭和三十六年にこの年金制度が実施されたときに五十五歳以上であった人、この人たちは年金に加入できなかった。年金からはみ出された人たちが現在幾らになっているか。いま六十七歳です。六十七歳から六十九歳の人たちが、これがいわゆるすべての年金からはみ出されておる。この人たちは幾らいます。百二十九万人いらっしゃる。それからいま一つは、この三十六年に年金制度が施行されたときに、同じくこれは五十歳以上であって、これを任意加入といった。入りたいならば入りなさい、しかし、無理に入らぬでもいいのですよ。厚生省はなるべく入ってもらわないほうがいいんだ。このいう形で投げ出されていた人たちが、現在六十二歳から六十四歳まで至っておりまするが、この人たちの数がまあ百十二万。合わせて二百四十一万人いらっしゃる。これは推定ですから、正確にいえば若干開きがあるかもしれませんが、この人たちはすべての年金からはみ出されている。一銭にもならない。  そうして、いま大体生活保護の実態を追求していきますと、こういう階層の人たちが主として生活保護の対象になっている。さびしく人生を送っている。しかも、同じ年寄りの中で片方は年金をもらっている。だんだん孤独感を深め、さびしい心境の中でいられるんだから、もし福祉政策を重点的にやるということになるならば、ほんとうに年金をやるとするならば、五万円年金だの虚構の説を掲げて太鼓をたたくよりも、いま現実に苦しんでいるこの人たちに最第一に年金制度というものは実行されなくてはいけない。  それを何です。いまあなたは、関係審議会に諮問をして、その回答を待ってというのは、それは何です。老人のいわゆる年金対策というものは、お年寄りは待てないのだという原則が一つ貫いてないじゃないですか。老人というものは一人残らず平等に扱わなければならぬぞという原則が貫いてないじゃないですか。こんな年金が一体どこにあります。こんな過酷、残酷な年金制度が一体どこにありますか。しかも、私の質問に対して前大臣は、さっそくその問題については何とかひとつ年金をもらえる機会を与えたい、何とか処置を講じたいという、そういう答弁をしておきながら、何にもやってないじゃないですか。諮問をしているということは、それは何にもやってないということなんだ。そんな国会答弁をごまかしたり、だめですよ。あなた、ここは一体何です。国民の代表の審議するところですよ。その場当たりの答弁をしておいて、あとは野となれ山となれ式、そんなことはだめです。
  147. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 ただいまの御質問にお答えいたしますが、先ほど申し上げましたように、年金制度発足当時五十歳から五十五歳までのその問題につきましては、いま法案を作成するために審議会に諮問をいたしておりまして、その法案の中に任意加入をもう一回入っていただけるような道を講ずるための措置を講じておる次第でございます。
  148. 小林進

    ○小林(進)委員 一体、前の大臣が処置をいたしますと言う、その処置をいたしますというのを、いまさら諮問をいたします、これは権威がないじゃないですか。それはいつやるのですか。言いかえれば、一体いま六十七歳とか六十九歳、六十二歳とか六十四歳にいる人たちは、あなた方の腹の中は、年をとれば七十歳になって、そのうちには福祉年金に入って五千円もらえるのだ、先にいけばだんだんなくなってしまうのだから、まあ国会の中でがたがた言われていても、ほおかぶりしていれば時が解決してくれるなどという、そういう残酷な気持ちでいるのじゃないですか、あなた方は。なぜ一体今度のこの予算の中に、福祉予算と銘打つことしの予算の中に入れられない。たいした金じゃないのだ。一体それがなぜ入れられないの。諮問といったっていま始まったことじゃないのだ。この問題は十年も、この国民年金が実行されたときからの懸案なんだ。いまさら新しい問題のように考えて、これから諮問しますなどという、そういう通り一ぺんの答えで解決する問題ではない。なぜいままでサボったのですか。いまもサボっているじゃありませんか。
  149. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えいたしますが、説明が不十分でございましたが、法案を出す前に関係審議会に諮問をして法律を出すという意味において申し上げたのでございまして、その内容については、任意加入の者については、再加入をもう一回いたしますということで現在法律をつくっており、予算もつくっておるわけでございまして、その法律案を国会に出す前に関係審議会に諮問しているということで、来年度の予算に組み入れてございます。
  150. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは、来年度の予算の中に組み入れられているということをお聞きいたしましたが、それは一体任意加入にはみ出された現在の百十二万の任意加入の人たちだけか、いまの六十七歳から六十九歳に至る、最初からはみ出されたそういう人たちも含めて、ことしから応分の年金を差し上げるために法文の作成を急ぎ、予算措置をしたというのかどうか、いま一度具体的にお示しを願いたいと思います。
  151. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えいたしますが、お尋ねの点は二つございまして、五十歳から五十五歳までの任意加入の者については予算に組み入れて、法律を提出すべく、目下関係審議会に諮問しておる。  それからもう一つの問題は、五十五歳、すなわち国民年金制度ができました当時、制度に入れなかった者、こういう者についての一つのお尋ねでございますが、この問題につきましても十分検討いたしましたが、いまのところ結論を得ていない、こういうふうに申し上げることはできます。
  152. 小林進

    ○小林(進)委員 一番気の毒な六十七歳から六十九歳、一番生活保護の対象になり、一番人間的に疎外されている、一番最初に手を出さなければならないこの問題は、目下研究中で、ことしはくれないというのだな。四十八年中はこれは年金の対象にしないというのですね。間に合わないということなのか。もうその理屈は要らない。くれないならくれない、くれるならくれる、それだけ言ってもらいたい。
  153. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えいたします。  制度発足当時五十五歳以上の者につきましては、こういう方々については拠出制年金の中で解決したほうがいいか、あるいは無拠出年金のような、老齢福祉年金の形で解決したほうがいいか、実は私も大臣就任以来今日までいろいろ考えてまいりましたが、結論をまだ得ていないという状況でございます。
  154. 小林進

    ○小林(進)委員 いまの話は君、君は局長でいいよ。君は大臣なんて格じゃないよ。ぼくは局長答弁を聞いているんじゃないのだ。何だねそれは。拠出年金に加入しようかということか、福祉年金にしたほうがいいかまだ結論がつかない。福祉年金といえば七十歳までくれないということなんだ。七十歳になってくれたらいいか、いまのうちからくれたらいいか、まだ考えていますということだ。だから、くれるのかくれぬのかと言えばいいのだよ、君。人が聞いてもわからぬような、そんなごまかしの答弁をするなと言うんだ。言いかえれば、七十までくれないということを君は言っているんじゃないか。冗談じゃない。  そういう君のような答弁を――ぼくはもう時間がないから総理にひとつお尋ねしますが、総理お聞きのとおりです。福祉優先の年とはいいながら、このあなたの、福祉を銘打たれた四十八年の発足にあたって、六十七歳から六十九歳、百三十万人のお年寄りが一銭の年金にもならないではみ出されている。それに対して福祉年金で充実しましたと言う、あなたの厚生省が。私は先ほどから言っているのだ。総理大臣は成長経済には実に能力者だけれども、福祉経済になるというと、若干こういうものにごまかされるおそれがあると私が申し上げた。それなんです。あなた、こういう人たちを最初に救うというのが福祉経済の第一の仕事でなくちゃならぬ。それを、いま厚生大臣は何ですか。まあまあ六十七歳から六十八歳、六十九歳になって四年間、五年間そのままほっぽり出しておけば七十になる、七十になったら福祉年金の、あなたの言う五千円をくれればいいのだから、まあまあそれまでほおかぶりして、やかましいのだけはしゃべらしておいて、知らぬ顔していこうという、そういう答弁をしている。これではあなた、義理も人情もない冷たい政治になるじゃありませんか。  そこで、六十二歳から六十四歳、任意の加入しかできなかった百十二万人はいささかの点を考えて、これは五年年金か何か実施すると言っているから、それとあわせて、ひとついま言った六十七歳から六十九歳の人たちも、総理の英断において年金を差し上げるという、こういう心情になられないかどうか、私は総理の決意をひとつお尋ねをしたい。
  155. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、年金の内容そのものを専門的に検討いたしておったわけではありませんが、予算ができましてから、六十七歳から六十九歳までの者に対しては結論が出なかったということを聞いて、この問題に対しては何らか結論を出せないのか、出すべきであったというような気持ちも個人的には持ったわけでございます。いま厚生大臣述べましたとおり、引き続いて検討を続けておるわけでございます。しかし、そんなことを言っているうちに、もう六十九歳の人はちょっと待てば、来年になれば七十歳になってしまうではないかという急を要する問題でございます。これらの問題に対しては政府もこれから、いま厚生大臣述べたように、可能な限り検討を続けてまいりたい、こう考えます。
  156. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、ひとつ総理のほんとうの決断と実行をここでお願いをいたして、特に私は期待しておきます。それでなければ、いまこの年金を組んだかいは何もないのです。時間がないけれども、五万円年金なんというものは何ですか。いままで国民年金でいえば五百五十円をことしから今度は九百円、夫婦で千八百円、なおその間付加金の分も含めれば四百円ずつ八百円、夫婦で二千六百円ずつばあっと取られていくのです。一番資格の早い人で昭和六十一年までこれは取られていくのです。そしていつもらえるかといえば、一番早くもらう人は昭和六十六年です。いまの国民年金における夫婦五万円をもらえるのは昭和六十六年だ。死んでしまいますよ。そういうのを羊頭狗肉の五万円年金五万円年金、五万円年金の国だ。だれがもらえるのかといったら、三十五歳で昭和三十六年に二十五年の国民年金に加入したのが、ようやく六十六年になって夫婦で五万円もらえるという。そのためにいままで掛け金が五百五十円でよかったのが、夫婦で二千六百円ですぞ。わんさわんさと取り上げて、それで福祉年金、福祉の年といわれますか。年寄りは待てないのだということを私は繰り返して言います。そんな十六年も先の話をされたんでは、この辺なんかみんな死んでしまう。こっちもみんな死んでしまう。それではだめだ。だから高負担、低福祉なんというものではない。延々福祉ですよ。延々福祉だ。まぼろしの福祉です。  厚生年金だってそうだ。時間が過ぎるから私はこんなことを言っているわけにいきませんけれども、政府の注意を喚起して、そういうような年金をかけて福祉ができましたと国民が納得できますかと私は言っているのですよ。厚生年金だって、厚生年金のいわゆる新しい加入者は七十四万人ぐらいいらっしゃいますが、五万円もらえるのはそのうちの七万人いるかどうかです。一割にも足らぬ。二十七年間いわゆる毎月月給から保険料をとられておいて、そしてやめて、五万円と称する年金に一体該当し得る者が、いいですか、もらっている中で一割の七万人がいたらお目にかかりたい。そのためにいままでの掛け金も、月給の中から差し引く負担金も、千分の六十四を今度は千分の七十三から七十九までばあっと引き上げる。取るほうはばあっと引き上げておいて、そして交付するものは一万円年金。五万円年金というなら、せめてその年金で裁定される人たちが八十万人いたら、七十万人も五万円もらって、例外的に一割か二割はずれるというなら五万円といってもいいだろうけれども、五万円年金と銘打って、五万円に該当するものがたった一割弱だ、あとはみんなもらえない、そんな一体五万円年金では、厚生年金においても福祉年金においてもお話にはならぬ。  そうしておいて、今年度からこの保険料の値上げのために、いま政府に納めている血と涙の金が、国民年金、厚生年金合わせて大体六兆円か七兆円でしょう。共済年金も加えれば大体九兆円の金が入っている。それからまたこの保険料の値上げに基づいて、今年度から毎年十年間、ずっと今度は一年間一兆八千億ずつ保険料が入るのです。全部これは大蔵省の預金部の中に入っていくのです。一兆八千億円です。その金をいわゆる預金部の中から財投に投ぜられておる。そうして大企業のほうに使われて、輸出産業第一でインフレをあおられて、そして自分の出した金で庶民はみんな自分の首を締めている、こういういわゆる転換が行なわれている。搾取じゃないですか。だから、いま五万円年金をつくったということは、これは大蔵省の預金部なんかにすれば笑いがとまらない。大企業にとっては笑いがとまらない。払わせるほうは、保険料だけはたたき上げられて、そして痛めつけられるというこの状況が、一体どうして福祉年金ですか。だから年金というなら、拠出じゃない、いますぐ救わなければならない、そういう福祉年金のほうに重点を置きなさいということを言っているじゃないですか。それは私は納得できない。  私は、時間もありませんから、次に健康保険のほうの問題についてお尋ねをいたしますけれども、この政府の福祉政策の中で、国民を愚弄し国会を愚弄しているものの最たるものは、年金も全く虚構でありますけれども、もっとひどいのは、私は、この健康保険法の改正だと思います。  御承知のとおりに、この健康保険法の改正というものは六年前なんです。昭和四十二年に政府が、医療保険の抜本改正をいたしますと公約をしたんです。その抜本改正の内容は、各種医療保険の給付の格差を是正する、医療制度、予防活動、健康管理の対策、公害対策などの諸問題の解決も含めて、国民は職業のいかんを問わず同一の保険医療を受けることができることを前提とした、政府のとうとい公約なんです。いいですか、昭和四十二年にその公約をされたんですよ。抜本改正というものを公約された。そこに至るつなぎ的な処置のために、臨時特例法というものを提出をされた。これは二年間の時限立法でしょう。そういうのを出して国民をごまかしたために、昭和四十二年には国会を大混乱におとしいれて、ついに、歴史的な自民党の暴力行為によってこの法案が通過をした。  ところが昭和四十四年に、この二年間の時限立法の臨時特例法を、まだ抜本法の準備ができぬからひとつ野党諸君了解してくれといって、その臨時特例法の内容を本法に繰り入れるという作業をされた。これは総理、御存じでしょう。そのときにはあなたは幹事長をしておられて、これもまた力で通すために、あなたは先頭になってやれやれといって与党を指揮された総司令官でございましたから、よく御存じのはずなんです。あなたは指揮者だ。そうして二回もいわゆる大混乱の中でそういう臨時特例法を本法に繰り入れられたが、そのときにも政府は、抜本改正は必ずやります、こういう約束をされた。しかも前総理の佐藤榮作先生は、予算委員会においてもしかり、社労委員会においてもしかり、機会あるごとに、抜本改正は必ず早期実施をいたします、こういう公約をずっと繰り返してきた。だからいまでは、与野党ともにあわせて、抜本改正というのは国民の世論になっているんです。これはもう国会の中にも定着した意見なんだ。いつ政府がやるか、それだけの問題なんです。  だから前の故斎藤厚生大臣、いまのは生きているから、これは故と言います。故斎藤厚生大臣は、昨年の国会には、この公約に基づいて、医療基本法、健康保険法の抜本改正法案、一部改正案という三案を出して、その四十二年の与野党ともに一致した公約を実施するために努力をされた。ところが、前の国会では健康保険の財政対策の一部改正案が野党のいれることにならず、ついに廃案になってしまった。こういう経過、それは総理大臣、よく御存じでしょう。その経過の中にいまの厚生大臣は、齋藤君なんかはこの経過はみんな知っているんですから。われわれにこの公約を、政府を代表して持ってきたことがある。それが厚生大臣になったら、その公約をちりあくたのように捨ててしまって、詐欺と同じなんですよ、これは。そうしておいていわゆる廃案になった健康保険法の一部改正案に抜本改正案の一部を継ぎ足して、ぬけぬけとしてこれをいま改正案と称して国会へ持ち出してきた。これは国会軽視も公約違反もはなはだしいと私は思っておる。どうです厚生大臣、私の言うことうそがありますか。悪かったら悪かったで、良心に基づいた答弁しなさい。
  157. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 ただいまのお尋ねにお答えをいたしますが、御承知のように昨年は財政対策法というものを出し、同時に抜本対策の健康保険法、二つ出したわけでございますが、片方の財政対策法のほうは衆議院のほうを通りましたが、参議院において廃案になる、抜本対策法のほうは衆議院において一日も審議を受けなかったというふうな事態も踏まえまして、この際は、現段階において国民が要望する緊急な問題だけは解決しようではないか、被保険者諸君が最も要望しておる家族給付率の引き上げとか、あるいは高額医療費の支給制度のような問題これは抜本対策の中に入っておりました。それを国民は要望しておりますので、それをひとつこの際は緊急に実行しようではないか、そのほかの問題につきましては、やはり国民各階層に急速に合意を得られることも困難でございますので、それはしばらく時間をかしていただくこととして、緊急な問題だけを解決していただきたい、こういうことで法案を現在練っておるところでございます。現段階において実施可能なもの、そして国民の喜んでいただけるもの、それを中心として健康保険制度の改革をいたそう、こういう考え方でございます。
  158. 小林進

    ○小林(進)委員 そういうずうずうしい答弁をされるんです。前の国会国民のためにならないといって廃案にした法案に、ちょびちょびっと一つ二つを追加しておいて、そうしてむずかしいのはあと回しだ、国民に喜ばれる、だから早く出した。だれが国民喜びますか。喜ばぬからこそ前の国会で廃案にしたんじゃありませんか。実に国会審議それ自体をあなた方はちっとも勘定に入れてないんだよ。国会軽視なんですよ。  そういうことで、しかも先ほどから繰り返しているように、医療保険の抜本改正法は必ずやりますというその公約に対して、むずかしいからあと回しだという、そんな理屈がありますか。官僚答弁だ。大臣の答弁じゃないと言うんだ。だから、同じ斎藤でも、前の故斎藤厚生大臣はなかなかりっぱだ。これは同じ官僚でも、まだあなたよりは一つ大臣らしいアイデアがあった。ビジョンがあった。官僚ではない、彼は。医療体制について基本施策を示す医療基本法の制定と、三本の法律が出なければこの医療の赤字対策も満足にいかないんですから、私は三本を並列に必ず出します、彼はこう叫び続けて国会の中で努力した。りっぱじゃないですか、あなた。同じ斎藤でも天地の差があるじゃないですか。時間がないからやめるが、社会党は、前に廃案になったものに二つ三つこぶつけたってだめです。絶対に私どもはこの法案を阻止いたします。  まあ反対のところだけちょっと羅列して言いますと、第一は、いま申し上げたように、六十八国会に提出されて廃案になった財政対策法、それをほんの一部を継ぎ足して出してくるというその政治的姿勢がだめだ。若干の給付を行なっているけれども、これは国民が喜ぶなどというものじゃありません。もっと言えば、そのために保険料をみんな上げてしまって、徴収する料金が、四十八年度だけで七百九十一億円よけい取るんです。そうして給付の改善といって、そのうちから六割給付するとか、妊婦の出産料を上げるとか、ちょろちょろっとつけておいて出す金が五百九十三億円、差し引き三百七十八億円というものをちゃんと厚生省が過重に収奪するようにできておる。そうして改正した改正したと言うけれども、国民の側から見れば、この改正によって四百億円もよけいふんだくられるんです。福祉の年にそんなことがありますか。そろばん見ればわかる。給付の改善といったところで改善は六割でしょう、五割給付、家族の給付が。その六割給付に対しては、すでに四十四年ですよ。いまから四年前に政府が、いわゆる保険審議会に、七割の給付をやりたいと思うからどうですかと、あなたもうすでにいわゆる答申を求めているじゃありませんか。四十四年に七割にしますという答申を求めておきながら、今度は福祉の年という四十八年に至って、一割削って六割に上げますという、そんな愚弄したやり方がありますか、総理大臣。いや、頭かかえて考えることないです、そういうことみんなやっているのですから。それは国民に対するたいへんな愚弄だ。しかも社会保障制度審議会では、家族でも十割給付を目標にして、当面は七割の給付をやりなさい。あなた方がやっているその社会保障制度審議会でも、まずさしあたり七割だ、不満だけれども七割をやりなさいとちゃんと言っているじゃないか。六割なんというのはどこにもないものを、それを六割にしておいて、鬼の首を取ったぐらいに給付を改善しますなどということは、情けなくてものもしゃべれないくらいだ。(「答弁答弁」と呼ぶ者あり」)まあ答弁あとでよろしい。  それから、まだ反対がある。大体高額医療費の支給だといったところで、三万円じゃ高過ぎる、二万円からにしなさい。それを三万円にして、しかも、高額医療を払う人は一カ月に百五十万も払う人がある。それも含めて一時それはみんな患者が負担しなければいけない。長期入院している者は、公費負担といわれたところで、百万円も百五十万円も先に支払う自己資金がありますか。そうして二、三カ月たってから初めてそれを還元してくれるという形、何にも血の通った処置がない。  それから、特別保険料だってそのとおりですよ。臨時徴収だというけれども、法文の上に臨時だという処置が書いてありますか。しかも、同じ健康保険の中でも組合健保にはこれは任意だ。取っても取らぬでもよろしい。中小企業者や一番気の毒な人たちでつくっている政管のほうだけは、強制的にこれみんなボーナスからふんだくろうというのでありますから、逆じゃないですか、あなた。取るんなら、ボーナスもよけい、保険財政も余裕のあるほうから取ったらいいじゃないですか。こういう逆保障をやっている。  それから、国庫補助だってそのとおりです。たった一〇%。一〇%の国庫補助だって、これはあなた方の案じゃないんだ。昨年の衆議院において与野党一致いたしまして、修正議決の段階で、今度は国家補助を一〇%にしなさいという国会の意思が出てきているだけの話であって、何にも厚生省の新しい政策じゃない。もし健保財政についてほんとうに考えようというのなら、これを二〇%にしたらどうです。国保は四〇%でしょう。調整が五%。四五%も国民保険にいっているんなら、この政管保険、一番気の毒な労働者たちが生活しているそういう健康保険のために、その半分の二割ぐらい国家補助をしたところで、何にも痛くもかゆくもないじゃないですか。黒字財政なんだ、金が余っているんだから。この二割の国家の補助金を出せば、何も保険料なんか千分の七十三だの、やれ千分の八十まで引き上げるのという引き上げをしなくてもよろしいのです。ちゃんと財政がまかなえる。なぜそれをやらないのです。反対です。  弾力条項だってそのとおりです。去年われわれがこの法案をいわゆる廃案にした根本の理由の中には、いわゆる弾力条項、七%も八%も保険庁長官がかってにこれを上げたり下げたりできることはけしからぬ。人のふところから金を取るからには、そういうわがままは許せぬと言って反対したら、今度は保険庁長官がやる仕事を厚生大臣がやりますからということだけを入れかえて、そのまま持ってきた。一体、国会で廃案にした意思がちっとも生きてないじゃないですか、この中に。国会軽視じゃないですか。  最もはなはだしいのは保険の福祉です。一千三百万人もいるこの政管保険で生活している気の毒な老齢者が多い。中小企業者が多い。この労働者に与える福祉施設、保健所を設けるとか、予防をするとか、レクリエーションにやらせるとかという、そういう設備に費やす金がたった二十五億円です。同じ被用者保険でも、組合健保には驚くなかれ五千億円のこの福祉施設と福祉の費用が使われている。これは五千億円も福祉のために使っているその組合健保には保険料も任意だ。取らぬでもよろしい。血の涙の出るようなこの政管の中から、福祉施策といえばたった二十五億だ。満足に保養もレクリエーションも健康の回復もできないようなこういう貧弱な設備。五千億と二十五億ですから話にならない。そういう者からなおかつ保険料をふんだくろうというんだもの、あなた、賛成できますか。われわれはこれには絶対反対をいたします。ものの道理をわきまえたら、そんなことをやれるわけはないのです。もうあなたの答弁なんか聞かぬでも、次にいきますよ。――答弁がありますか。それじゃどうぞおやりなさい。
  159. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えを申し上げますが、だいぶきびしい口調のお尋ねでございますが、今回出しまする法案は、従来とも出しておりました財政だけの法律でないということだけはぜひ御理解をいただきたいと思う次第でございます。  すなわち、被保険者諸君が何とか家族給付を上げてもらいたい、これは要望だと思います。さらにまた高額医療、最近の疾病構造の変化に伴いまして、自己負担が相当多額になっておりますので、それについて何とか償還制を実施しようではないか。こういうような給付改善を中心とし、その給付改善に見合うだけの保険料だけは応分御協力をいただきたいという考え。それと同時に、健康保険というのは私が申し上げるまでもなく、御承知のように、短期保険でございますから、一年間の収支バランスをとる、これは私は基本でなければならぬと思うのです。そこで、それをじゃましておりまする今日までの三千億の赤字は、一般会計において負担いたしましょう、そうしてあとは単年度で収支とんとんでバランスをとっていただきたい、そのために国の補助を一〇%、すなわち八百億を出し、それと同時に、上限の改定もいたそうというわけでございまして、そう一がいにきびしく御批判なさるようなものではなくて、いな、むしろ改善法である、こう考えておる次第でございます。
  160. 小林進

    ○小林(進)委員 まあ私は、保険は、申し上げまするに、福祉経済の原則の中では、これはもうむしろ一銭も値上げをすべきでないというその原理からものを申しているのでありますから、そういう説明には私は承服はできませんし、社会党としても賛成はいたしません。これは廃案のためにあくまでも戦います。  次に、社会福祉施設の貧困について私はお尋ねいたしたいのでありますが、すでにこれは言い尽くされておるので議論は別にいたしまして、きょうは、特に低賃金と劣悪な労働条件のために従事者確保に苦しんでいる民間社会福祉施設の問題について、一、二お尋ねをいたしたい。  政府は、いわゆる公私の格差是正のために民間施設職員の給与改善費として七億三千万円を計上しておりますが、そこで第一に、この対策によって民間施設の従事者の給与は一体現在平均して何%のアップになっているか。それは、四十六年でも四十七年でもいいです。これは数字で示していただきたい。また、前年度一体これはどれだけ上がったか。  第二に、この対策の前提には、公立の施設職員と民間施設職員との給与にどれだけの格差が生じておるのか、これは実態調査に基づく資料がなければならないと考えておりますが、この資料があったらひとつお示しをいただきたいということであります。
  161. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えを申し上げます。  社会福祉施設に働いておられる方々の給与につきましては、年々改善方に努力をいたしてまいりまして、四十七年度末をもちまして国家公務員並みになる、これが実現すると、こういうことになっております。  そこで、四十八年度におきましては、一三%程度アップということを考え、民間施設につきましては、さらに、先ほどお話しの金額を上乗せする、こういう仕組みにいたしてございます。  それから、実態の問題でございますが、これは当然やらなければなりませんが、先年やりましただけでございますので、御指示のように今後とも実態調査を検討いたします。
  162. 小林進

    ○小林(進)委員 これは実態調査をして、そうして具体的な数字をひとつお示しをいただきたい。どうも政府のやり方は、つかみ勘定でやられておって、ちっとも公私のレベルが明確にされていないという懸念がありますので、これはひとつ要望いたしておきます。  なお、公私の格差の是正を国の責任で毎年行なうとするならば、やはり本俸とか諸手当、退職金等についての実態調査、さらには勤務時間、宿直や日直の回数、入所者対職員の比率等々にわたる実態調査、これを毎年行なわなければならぬと私は思う。行なわなければ国の施策の実効が、効果があがっているのかいないのか、これはわかるはずがないのであります。四十八年度以降はこれを毎年行なわれるということを約束されるかどうか。これはもう、民間の社会福祉施設には従業員が、つとめ人がなくなっちゃう。みんな逃げちゃう。たいへんなことですから、私は基本的な問題を聞いておきます。毎年実態調査をして、そしておやりになるかどうか。
  163. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 前向きに十分検討をいたします。
  164. 小林進

    ○小林(進)委員 民間の社会福祉施設の窮状は、困っている状態は、まことに新聞やテレビで繰り返し報道されておりますように、これはたいへんなことであります。その中から一つ私は選んで申し上げますが、東京都の多摩市にある重症心身障害児施設島田療育園を例に引いてみますと、厚生省の基準である児童一・七五人対一人の介護職員をとても確保できない。二・五人に対する一人という形で運営されておりますが、加えてこの四月から、これは欠員の補充をする見込みが立たない。このために、同園の小林園長、私と同姓ですが、社会党の調査団に対しまして次のように語っておる。次のように言っておるのです。すなわち、全力を尽くしてもなお必要最低限の十一人の介護職員の補充ができない、だからできない場合には、まず第一に国または都が人員を確保してもらいたい、この足りない職員の人員を国で確保してもらいたい、それができなかったら、第二案として、子供の一部を国か都が引き取ってくれ、もうやれないのですから、それもできないならば、第三番目に施設ごと国に差し上げますから、どうかひとっこれを引き取ってもらいたい、私どもはそこまで追い詰められているのです、こういうことを言っているのでございます。  そこで、単刀直入にお尋ねをいたしますが、政府はこの切実な要求にどうこたえられるか。私はここで一般的な行政努力を伺いたいとは思わない。たとえていえば看護婦を養成するとか保母を養成するとか、そんなことではもう間に合わないのでありまして、今日ただいま崩壊の危機に瀕しているこの民間の社会福祉施設に対し、国はどこまで責任を負おうとしているのかをひとつ御答弁をいただきたい。これは、いまただいまの問題ですから。
  165. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答え申し上げますが、島田療育園の問題につきましては、先般新聞にも出ましたので、私も調べてみましたが、ああいう重症の子供のめんどうを見る職員をどうしても確保できないということが基本であります。そこで、何とか職員を確保する方法がないだろうかということで東京都のほうとも連絡をとっておりますし、同時にまた、子供を送っておりまするいなかの父兄の方々のほうにも連絡をとりながら、そうした県から何とかお手伝いによこしてもらえぬだろうかということを、目下お願いをしておる最中でございます。
  166. 小林進

    ○小林(進)委員 児童福祉法の第二条は、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。」と、こういうことをいわれているのですが、この国の責任の見地から、民間社会福祉施設の職員確保をこれはどうしてもめんどうを見てやらなければ、だれもめんどう見る人がない。あるいは国の施設にこれをしていくかどうか。私は、いま何か話し合いをしているというふうな、わかったようなわからないようお話がありましたけれども、責任をもってこの介護員をいわゆる定員にさせられますか、あるいは国が引き取るか、ひとつ明快な回答をいただきたいと思う。事態は逼迫して今日の問題でありまするから、明確にひとつお答えをいただきたいと思います。
  167. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お尋ねにお答え申し上げますが、こういう重症のほんとうにお気の毒な子供さんでございますから、再度家庭には私は帰したくない。何とかひとつめんどうを見てあげられるように、全力を尽くす考えでございます。
  168. 小林進

    ○小林(進)委員 全力を尽くすというのでございますから、責任をもって解決をする、こう私はおっしゃったものととりまして、あとはあすからの厚生省のその実行をひとつ監視させていただくことにいたしまして、次の問題に移りたいと思います。  医療の供給の問題でございますが、医療基本法、先ほども申し上げましたが、これをつくって供給体制を完備するという公約が全く踏みにじられているために、供給体制が非常におくれて、健康保険が事実上なきがごとき状態になっているということは、もう私が申し上げるまでもないのであります。  この医療供給体制の整備について、公的医療機関、特に自治体病院の再建、私は自治体病院だけにしぼって具体的にお伺いをいたしたいのでありますが、予算案は、この公的病院財政再建対策費として二億八千八百万円を初めて今回計上をされた。これは都道府県が日赤、済生会病院、厚生連、北海道社会福祉事業協会の開設する病院等に財政補助をしようとする場合、その二分の一を国庫補助をしようとするものでございます。  これについてまずお尋ねをいたしたいことは、地方自治体は、たとえば四十六年度自治体病院に対して総額六百二十億円を一般会計から繰り入れただけでもこれは精一ぱい。ところが、いま自治体病院は赤字でたいへんみな苦しんでいる。これは大きな問題を引き起こしている最中でございますが、その上に今度四十八年度から新しい予算をつけたはいいけれども、日赤、済生会などに都道府県が、いわゆる財政的補助をした場合にのみこの金の二分の一を国が補助をする、こういう形なんでありますが、一体この自治体に、自分の病院が足元でどうにもならないときに、日赤、済生会まで救済する余裕があるのかどうか、都道府県が日赤や済生会にそういうことをやらなければならないという義務があるのか、これはまず自治大臣、厚生大臣ひとつ……。
  169. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 自治省としては従来、いま御指摘の一般会計分の六百二十億、これに見合って地方交付金の中から百五十億程度これに加算をし、いろいろこまかく分けておりまするが、いわば実質の助成措置をいたしておるわけであります。しかし、地方交付金そのものの性格からいいまして、これは今後増収に見合ってふやすことはできても、それ以上年次を追うて助成をするということはなかなかむずかしい。しかし、地方公共団体による病院というものが地域社会に果たしておる役割り、特に特殊な治療とか採算を度外視した地域社会福祉のための治療とか、いろいろな面で経費のかかっておることはよくわかります。で、そうかといって、それじゃ六百五十億、いま御指摘になったような金額が一般会計からそのまま右から左へ出されていい性質のものであるかどうか、これはやはり議論の存するところだと思いますが、やはり地方公共団体の病院というものの果たしておる役割りからいって、今後とも国の補助金を供与してもらうというような形になることは望ましいという方向で、現在関係省庁とも横の連絡を密にしながら、話し合いをしておる最中である、こういうふうに御理解を願いたいのでございます。
  170. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えを申し上げます。  日赤、済生会等がガンとかあるいは救急医療、そういった点で非常に苦しんで、赤字を出しておるわけでございます。そこで、自治体のほうも、財政豊かではないとは思いますけれども、地域住民福祉のためにそうした方々が、地域医療その他のために病院が働いておるわけですから、国がある程度の補助を出し、県もまたお出しいただきたい、こんなふうなことを考えまして、自治省のほうにもお願いをいたしておるような次第でございます。
  171. 小林進

    ○小林(進)委員 自治大臣、一体あなたのほうが出さなければならぬ義務があるのかどうか、余裕があるのかということに対して、やればやれるような話だけれども、いま話し合いをして、その話がつけば出してもいいとおっしゃるのですか。そこをひとつ明確にしてください。
  172. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは大体国が三分の一、県が三分の一、そして経営市町村において三分の一というような形でどうであろうかという含みで話し合いを進めておる。その三分の一は国の補助という形で補助されることが望ましいという態度で、自治省としては打ち合わせといいますか、協議をしておる最中でございます。
  173. 小林進

    ○小林(進)委員 厚生省と話し合い……。
  174. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そういう話し合いをしておる、こういうことです。
  175. 小林進

    ○小林(進)委員 次に、医療法第三十一条にいう公的医療機関には、いわゆる自治体病院も含まれているにもかかわらず、公的医療病院財政再建対策費の対象とされていないのは一体どういう理由になっているか。これは厚生大臣にお尋ねいたします。
  176. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えを申し上げます。  自治体の病院は自治体がそれぞれ設置しておりまする病院でございまして、日赤、済生会等はそれぞれ別な立場でできておる病院でございますので、別個の取り扱いをすることは当然だ、かように考えております。
  177. 小林進

    ○小林(進)委員 厚生大臣は自治体病院に対して、診療報酬でまかない切れない部分を交付税で見るべきだというのか。自治体がつくっているのと設立の主体が違っていることだけはわかっているのだけれども、ただ、一体どうして同じ公的病院といいながら差別をしておるのか、その理由を私は聞いているわけであります。自治体には交付税がいっているから特別めんどうを見る必要がないというのか。これは厚生大臣に聞かなければならない。  自治大臣には、一体自治体病院に対する地方公共団体の一般会計からの繰り入れの状況に比べて、交付税による措置はどのようになっているか。先ほどのお話では、若干増税になるから病院の経営はできるというふうな御答弁であったかのように聞こえますけれども、そういうような形、これは自治体の赤字財政で、みな廃止するとか企業改革とかたいへんな全国的な問題がいま起きていますけれども、一体それで解決できるとお考えになっているのでrか。自治大臣、考えが甘いのじゃないか。明確にひとつお答えいただきたいと思います。
  178. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 さっき実情を率直に申し上げたわけですが、要するに、自治体病院というものの内情が非常にむずかしくなっておるということは、もうよくわかるのです。特に所管省として同情に値する数々があるということは思っております。それはさっき申し上げたとおりです。  ところが、この病院自体も合理化のための十分努力を払ってもらいたい。それから、もともとが市町村が責任を持ってつくったわけですから、この病院の総体的な配置等からいいまして、多少重複したり、ほんの隣同士にあったりというようなことで、患者の絶対数との比率が必ずしも円滑に分散配置されておるとは言い得ない。かれこれいろいろ事情もあります。事情はありますが、この地域社会に果たしておる役割りというものは非常に大きいわけですから、そこで、交付税の伸びに従って自治省としてはできるだけのめんどうを見てきた、これは一生懸命やったというわけですね。しかし、今後これを一そう充実させ、合理化させていくという前提もとにあるならば、これは国からも助成を受け、県側にもひとつ助成をしてもらい、また、それに対しては自治省としても応分の考えといいますか、金額的な配慮をするというような形で進めていきたいというので、現在事務的に折衝中、こう申し上げたわけであります。
  179. 小林進

    ○小林(進)委員 東京都は四十七年に、都下の市町村病院に対して一ベッド当たり年間十七万五千円、大阪府も同様に三万五千円を補助しておる。これは端的にいって、自治体病院は独立でやれないという何よりの左証だと思います。ところが、東京都や大阪だからこれはできる。一般の県、特に県立や市町村立でとても自治体がこういう補助金をやるわけにはいかない。あなたは地域を視察しておるから合理化せいと言われますけれども、私はその考え自体間違っておるのではないかと思っております。人間の大切な命を扱う医療機関が余分にある、これは私は考えを別にして、もっと財政の面で国がめんどうを見るべきだと思っておる。なぜ一体こういうところへ特別交付税なりあるいは目的税なりの形でもう少し手厚い国の処置ができないのかどうか、これは厚生大臣に聞いておきます。  大体厚生省というものはまことに悪い。病院といえば国立病院、自分たちの幕下にあるだけが病院だと思っておる。そうした考えなんだ、厚生省というのは。これは官僚の悪いくせなんだ。看護婦には、どうも深夜作業をするから、ひとつ三百五十円から一千円の深夜手当をやろう。看護婦といえば、国立病院の看護婦しかいないと思っている、あなた方。だから三万人だという。看護婦は三万人じゃないんだ。民間、自治体合わせて全部の看護婦の数は二十七万なんです。そういう人たちのことを全般的に考えないで、いわゆる自分たちの勢力下にある国立病院の看護婦だけ一千円の深夜手当をやって能事終われりとしておるけれども、一体自治体の中につとめておる看護婦にはその深夜手当は要らないというのか。それに対しどういう処置をする。民間の病院だって、いまいろいろ健康保険の点数制度というものがあって、保険料がちゃんときめてあるならば、民間だって看護婦の料金はそれに準じて上げなければならぬけれども、現在の医療制度の中にはその費用も出てこない。ならば厚生省は、看護婦と銘打ったら、自治体につとめている看護婦、民間の病院につとめている看護婦、それを全部やはり一律に、同等に、深夜手当がいくような方策を講じなければならぬけれども、それが一体講じてあるのかないのか。そうすれば今度は、一体医療に従事しているものは看護婦だけじゃない。看護婦だけが深夜起きて患者を見ているわけじゃない。やはり看護婦と同等に宿直員もいるだろうし、あるいは医薬の担当者もいるだろうし、あるいは朝番もいるしおそ番もいるし、やはり深夜に準ずるべき作業に従事している医療担当者というものが病院にはみないるのですよ、あなた。何言っているのですか。それは看護婦だけじゃない。それを看護婦だけを千円にして、あとの医療従事者――担当者はお医者さんですが、医療従事者というものに対して何もめんどうを見ないというこのへんぱな行政です。厚生省というものは出れば出るほどますます奇々怪々だ。これを一体どう考えられますか。いまの二つの問題を明確にひとつ……。
  180. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えを申し上げます。  病院に勤務されている方々の処遇を考えることは、管理者としてのつとめであるわけでございまして、厚生省所管におきましては、国立病院、療養所等において、病院経営のために看護婦の夜勤の問題を何とか解決しなければ、ベッドがありましても看護婦がないというようなことになってはたいへんなことになりますので、それで千円に増額をいたしたわけでございます。  そのほかの病院はどうされるかということでございますが、それぞれの病院の管理者が自主的に処遇は決定せらるべきものであると考えておりますので、市町村その他の公立病院におきましても必要であるということならば、そういうことが望ましいと考えておる次第でございます。
  181. 小林進

    ○小林(進)委員 もう時間が参りましたが、まことにいまの答弁は不満でございまして納得できません。また、この問題は断固反対をしていかなければならぬ問題でありますけれども、時間でありますからこれで終わります。  いま一つは、戦時軍法会議にかけられて、いまでも囹圄者の立場で泣いている人たちがたくさんあります。この問題も御質問するつもりでしたが、時間が参りましたのでこれでやめます。  それから労働行政について、労働大臣、あなたに対する質問がたくさんあったのでありますけれども、後日に譲ることにいたしまして、きょうはこれで終わることにいたします。(拍手)
  182. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  次に、松本善明君。
  183. 松本善明

    松本(善)委員 昨日、わが党の不破議員の質問に対して、ベトナム問題についての政府考え方が、アメリカのいうことをうのみにしておる、あるいはそれすらも十分研究してないということがずいぶん明らかになりましたけれども、この際私は、ベトナムの問題について若干さらにお聞きをしておきたいと思います。  昨日の答弁の中で政府は、アメリカのベトナム民主共和国に対する武力攻撃を正当化するものとして、トンキン湾事件の例を持ち出しました。しかし、このトンキン湾事件につきましては、アメリカの上院外交委員会が七〇年の四月十日に全会一致で、いわゆるトンキン湾決議、一九六四年にニクソン大統領に武装勢力の使用を含めた一切の措置をとることをきめた決議でありますが、この決議を廃棄しているということがあります。政府の言い分によりますと、トンキン湾事件を契機として、ベトナム民主共和国に対する武力行使を正当化したわけであります。アメリカ自身がこういう事態になってきておるということについて、昨日の答弁との関係で、一体政府はどういうふうに考えているのか、総理や外務大臣はどうお考えか、お聞きしたいと思います。
  184. 大平正芳

    ○大平国務大臣 きのう不破さんの御質問に対しまして、ベトナムの紛争におきまして、アメリカの軍事介入というものをどう理解しているかということでございましたので、これは国連憲章のワク組みの中の自衛権の発動であるとアメリカは説明しておるし、日本といたしましてもそう理解しておるということでございました。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕  そこでその場合、それでは米国の介入が国連憲章上の認められた自衛権の発動であるということのためには、武力の進攻に対抗することでなければならぬのだが、北側の行動でそういうものは何かという意味の御質問がございました。実は私どもベトナムの戦況につきまして、当事国でございませんので詳しくは存じませんけれども、一九六四年のトンキン湾事件というものがその一つに当たるのではないかという御答弁を申し上げたわけでございます。私ども、この国連憲章上の自衛権の発動の具体的な行動が、行き過ぎであったかどうかというようなことを判定する材料を持っていないわけでございますので、全体としてそのように理解しておるという立場を申し上げたわけでございます。
  185. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣、よく質問を聞いてお答えいただきたいのでありますが、私がお聞きしましたのは、いまも言われましたトンキン湾の事件というものについて、一九六四年にやりましたそのトンキン湾決議というのを、七〇年の四月十日にアメリカの上院外交委員会が全会一致で取り消しているわけです。そういうことが起こっておることについて、昨日来の答弁をあなたはどうお考えになるか。私は当事国でないから知らないというようなことで済まされないと思う。日本からベトナムにいろんな出撃をし、そして日本のアメリカ軍の基地がベトナム侵略の根拠地に使われているということは公知の事実です。知らないでは済まされないというふうに思うのです。このトンキン湾決議が取り消されたこととの関係で、政府はこの事態をどうお考えになっておるか、お聞きしたいわけであります。   〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕
  186. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ベトナムの事件はたいへん不幸な事件でございまして、長く続いて、これが一日も早く収拾されることをわれわれも期持いたしてきたわけでございますが、アメリカにおきましても四、五年前からこれの収拾を模索し始めたようでございまして、全体としての軍事的オペレーションの範囲も、だんだん狭めてまいったというような経過をたどっておるようでございます。  ただ、くれぐれも申し上げたいのでございますが、トンキン湾事件というところで、現場をわれわれ検証したわけではございませんし、そのことが、いまあなたの御指摘によりますと、ずっとあとになりましてアメリカにおきましてそういう措置がとられたということを伺ったわけでございますが、それほどそういうことがいいか悪いかという判定をする立場に、私どもはないわけでございます。  ただ、あなたの言われるように、そういう取り消しが行なわれておるようなことについて、政府はどう考えるかと聞かれますならば、しかくこの事件は不幸な、複雑な経緯をたどった事件でありまして、われわれといたしましては、当事国にとりましてもたいへん苦しい、きわめて晦渋な事件であったに違いあるまいという感想を持ちます。
  187. 松本善明

    松本(善)委員 総理に伺いたいのでありますが、私どもはベトナム侵略戦争に協力するなということを、再三再四たびたび言ってきたわけです。いま外務大臣は、トンキン湾決議が取り消されているということについて、廃棄されているということについて、初めて知ったかのような答弁をされておりますけれども、いままで政府が言っていた、またやってきましたベトナム侵略戦争への協力、これの責任はきわめて重大だと思うのです。その問題について責任は感じないかどうか、私は総理に最後にこの問題について伺っておきたいと思います。
  188. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 アメリカがベトナム戦に介入したということは、アメリカの意思で出たものではなく、南政府要請に従って出撃等を行なったわけでございます。このアメリカの行動は、国連憲章五十一条のワク内のものであると、こうアメリカも言っておりますし、また安保理事会にも報告をせられておりますので、日本もそのように理解をしておりますと、こうきのうも述べておるわけでございます。しかも、日本の基地の問題につきましては、安保条約締結の当事国であるのは日本でございますので、これが基地のアメリカ軍使用ということは、認めなければならない立場にあるということを御理解いただきたい。
  189. 松本善明

    松本(善)委員 総理答弁によりまして、私は、日本政府が自主的な判断を持たずに、アメリカの言うことはすべて正しいということだけで動いているということはますます明らかになってきたと思いますが、きわめて遺憾であるということを申し上げて、次の問題に入りたいと思います。  ベトナム民主共和国との国交樹立の問題でありますが、この点につきましては、昨日外務大臣は、南ベトナムには、和平取りきめにもあるように、一つの別の勢力が存在するということで、サイゴン政府が、そういう支配において制約を持っているということを考えておかなければならないという趣旨答弁をされました。これは、南ベトナム政府、チュー政権というものが限定つきのものであるし、もちろん北にはとうてい支配は及んでいないということを述べたものだと思いますが、同時に総理大臣も、南ベトナムの現政府と日本政府との間には正式な外交関係がある、しかし、この和平協定によって、明確に北に政府が存在するという事実は確認をしなければならないわけだと、こういう趣旨答弁もされました。  こういうふうに答弁をされました以上、このベトナム民主共和国との国交の樹立というものは、どうしても考えなければならないはずではないかと思います。この点については、総理どういうふうにお考えになっているか伺いたいと思います。
  190. 大平正芳

    ○大平国務大臣 現にサイゴン政府を承認している国も、北越政府を承認している国もございます。いま、一つの民族が一つ政府を持つという十九世紀以来のような段階でございますならば、問題はきわめて簡単でございますけれども、いま仰せのようなベトナムの状況に照らしまして、わが国もどこの国も、そこに存在する政権のうちの一つを選ばざるを得ないというような状況に事実上なっておるわけでございまして、わが国としていま、南の政府と国交を樹立しているわけでございます。  しかしながら、仰せのような事態でございますので、今後この北の政権とどのような取り組み方をしてまいるかということにつきましては、これからいろいろ検討をしなければなりませんので、とりあえず接触を持つべく連絡をとっておるところでございまして、今後これをどうするかという問題につきましては、世界各国の出方、国連の態度等々いろいろ見ながら、慎重に考えてまいらなければならない課題だと思っております。
  191. 松本善明

    松本(善)委員 ベトナムのチュー政権は、われわれはかいらい政権だと思っていますけれども、政府立場からしても、チュー政権がベトナムの北部に支配を及ぼしているわけではない。これは昨日も答弁をしたわけであります。  そうすると、ベトナム北部にありますこのベトナム民主共和国との国交樹立というものについて、これは障害となるべきものはないはずであります。なぜそう遅疑逡巡するのか、何らかの障害があるのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  192. 大平正芳

    ○大平国務大臣 平和条約を締結した当時、わが国は全ベトナムを代表する政府というたてまえでベトナム共和国政府、すなわち南の政府と国交を結び、その後それを相手といたしまして、全ベトナムを対象とする賠償協定も結んだという経緯を持っておるわけでございます。  そういう過去をわれわれは背負っておるわけでございまして、これから北との取り組み方を考える場合におきまして、そういう背負った荷物につきましてどのように処置してまいるかというようなことも含めまして、いろいろの意思の疎通をはかってまいらなければならない。そういう意味で、とりあえず接触を持とうといたしておる段階でございます。
  193. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣は、いまのベトナムにおける唯一合法の政府がチュー政権だと考えているのですか。そう受け取られかねないような答弁であったので、お聞きします。
  194. 大平正芳

    ○大平国務大臣 過去においてそういう資格のある政府として、われわれは国交を結んできたという段階がありました。しかし、今日におきましては、南ベトナム政府というものの支配には制約を持った状況にあるということは、きのうも不破さんの御質問に答えたとおりでございまして、そういう政府であるということを念頭に置いて、これから処置してまいらなければならぬと考えております。
  195. 松本善明

    松本(善)委員 そういたしますと、過去の認識と現在の認識とは変わってきたわけですから、当然に国交の樹立についても別の考えをしなければならない、こういうことになるのではありませんか。
  196. 大平正芳

    ○大平国務大臣 したがって、どのような取り組み方をするかについて、いまいろいろ検討中でございまして、その一つの手始めといたしまして、北側と接触を持ってみたいと考えておるところです。
  197. 松本善明

    松本(善)委員 ベトナム停戦協定におきましても、はっきりとベトナム民主共和国とアメリカ合衆国が調印しているわけです。非常に端的にお聞きいたしますが、外務大臣は、ベトナム民主共和国という国の存在を認められるのですか。
  198. 大平正芳

    ○大平国務大臣 一つの政治的エンティティーであるということを、否定するわけにはいかぬと思います。
  199. 松本善明

    松本(善)委員 総理大臣に伺いますが、ベトナム民主共和国との国交樹立について、一歩進めてお考えになるお考えはありませんか。
  200. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま大平外務大臣が述べましたように、復興の問題その他あるわけでありますし、もうすでに外務省の一課長が、この問題が終結しない前にハノイを訪問しておるという事実もございます。これから接触を続けてまいるということで御理解をいただきたいと思います。
  201. 松本善明

    松本(善)委員 どういう状況が生まれれば、国交樹立という方向に進むというふうにお考えになっているか、現在の時点でお考えになっていることを伺いたいと思います。
  202. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま取りきめができ上がって、それが実行に移ったわけでございますが、今後この状況がどのように推移してまいりますか、将来のことでございますので、私どもは、円滑にかつ着実にこれが実効をあげてまいりますことを期待いたしておるわけでございますが、そういう状況の展開を見ながら考えるべき問題でございまして、いまから申し上げるのは、やはり時期が熟しないのではないかという感じでございます。
  203. 松本善明

    松本(善)委員 これは一つのフィクションであります。南ベトナムのチュー政権を唯一合法政権と認めるという形で外交関係を持ってきておるから、それとの関係において、ベトナム民主共和国との国交樹立ということが当然のことであるにもかかわらず、言を左右にしてこれを避けておる。この誤りというのは、中華人民共和国についてすでに経験済みのことです。台湾の蒋介石政権を唯一合法の政府ということに認めてきたために、長期にわたって日本の外交に損害を与えてきたことは明らかだと思います。これと同じ誤りをこのベトナムについてもやろうとしている。また、これは朝鮮に関する事態についてもそうであります。韓国を唯一合法の政府として認めた日韓条約のもとで外交関係を続けてきている。このような関係が、アジアで緊張の激化をつくり出しておるわけです。  私はさらにお聞きしたいのは、朝鮮民主主義人民共和国との国交についてはどうお考えになっているか。田中総理もとでの閣僚であります久野郵政大臣は、朝鮮民主主義人民共和国で国賓として待遇をされました。この朝鮮民主主義人民共和国との国交樹立についてはどうお考えになっているか、お聞きしたいと思います。
  204. 大平正芳

    ○大平国務大臣 松本さんの御議論は、たいへんりっぱで潔癖でございますけれども、事態のほうがなかなかやっかいなんでございまして、私ども、日本の過去を背負い、将来を考えながら、国益を守っていく上においてベストの道を、重い足取りで考えておるわけでございまして、したがって、非常に潔癖なお立場から申しますと歯がゆくてしようがないのだろうと思うのですけれども、そのあたりは、政府が過去の重い荷物を背負って歩いておる立場も、御了解をいただきたいと思うのでございます。  それで、北朝鮮との間の問題につきましても、たびたび国会を通じても申し上げておるのでございますけれども、去年の七月四日、南北の間に平和的手段での統一ということを目ざした実質的な話し合いが、第三者的力の介入でなくて始まっておるわけでございますので、この対話がどのように進展してまいりますか、そしてそれについて日本が、ともかく少なくともじゃまをしないようにしなければいけないのじゃないかという立場にわれわれはおると思うのであります。  そこで、いまの態度といたしましては、接触を漸次拡大していくということで、文化とか学術とか体育とか、あるいは経済というようなところから接触を広めていく姿勢をとっておるし、現にそれを実行いたしておるわけでございます。政治的な接触を持つというところまではまだ腹がきまらない、そういう状況でございます。
  205. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、統一するまでは国交の樹立の問題はできないというお考えですか。
  206. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは別の問題でございましょうけれども、ドイツにおきまして東西両独の間に和解ができて、そして遠からず両独が国連に加盟するとかいうような状況が出てきまして、わが国におきましても、東独との関係につきまして、いま国交を結ぶために接触を始めておるわけでございまして、そういうような、日本として踏み出していいような条件が熟してまいりますならば、またそういう条件が熟するのを私どもも期待をいたしておるわけで、そういうことができない間、あまり軽率なことはできないのじゃないかというように考えております。
  207. 松本善明

    松本(善)委員 それで先ほど私は、そういう条件とはどういうことかということを伺ったわけであります。いまそういうところに踏み出す条件というのは、朝鮮の場合はどういう場合、ベトナムの場合はどういう場合であるか、簡明率直にお答えいただきたいと思います。
  208. 大平正芳

    ○大平国務大臣 簡明率直に申し上げますならば、日本が国交を結んでいいと決心がつくときだと思います。
  209. 松本善明

    松本(善)委員 これはもう全く国民を愚弄する答弁以外の何ものでもないと思いますよ。まじめに日本の外交について国民の前に政府の所信を明らかにして、そして批判を受けるというような態度が、全くないということの証明ではないかと思う。私はきわめて不謹慎な答弁ではないかというふうに思います。  私は次の問題をお聞きしたいと思いますが、昨日総理はポツダム宣言の問題について答弁をされました。わが党の不破委員が、ポツダム宣言で太平洋戦争を侵略戦争と定義づけており、日本はこれを受け入れたではないかというのに対して、ポツダム宣言を受諾しなければならないような国情だったからだ、当時は宣言を修正するような力もなかったというようなことを言われました。総理は、一体ポツダム宣言のどういうところを修正すればよかったというふうにお考えですか。
  210. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 過去の戦争でいろんな国々にたいへんな迷惑をかけたり、損害を与えたりしておる歴史的事実に対しては、いまのわれわれとしても深い反省をしなければならないということは、そのとおり考えております。日本が多少過剰防衛に過ぎたという説をなす人もありますし、また、少し被害妄想ということで、要らないところまで兵を進めて、そのために困難な状態をもたらしたのだという説をなす人もあります。いろんなものもございます。  しかし、ポツダム宣言そのものはイエスかノー、全く日本が修正を求められるような状態になかったことは、これはみんなが認めておる事実だと思います。ミズーリ艦上における無条件降伏そのものに対してもイエスかノーであって、日本に発言の機会や発言の余地が与えられなかったことも歴史上の事実でございます。だから、向こうが協議を行ない、成案を得たものを日本に対して、無条件にこれを受け入れるかどうかという問題に対して、無条件降伏を行ない、無条件にこれを受け入れたというのが歴史的な事実だと思います。  私は、二十余年、四半世紀余の歳月を経た今日、これをどのように修正をすればよかったのかといっても返らぬことでございますし、そのような考え方を勉強いたしておりません。ただ、端的にあの中の過去の侵略に対して云々ということを引用されて、日本が行なった過去の戦争すべてが侵略戦争であった、こう理解をしておるか、こういう御質問に対しては、これはやはり後世の歴史が判断をする問題であると思いまして、私は、公の立場にあるいまの状態において、そのように直ちに答弁をし、判断をすることは、がたい状態にあります、こうすなおに述べておるのでありますから、そのように御理解を賜わりたい、こう思います。
  211. 松本善明

    松本(善)委員 いま総理は、すべてが侵略戦争でなかったということを言われたわけです。(「そういうふうには言わなかった」と呼ぶ者あり)それではどういうふうに言われましたか、もう一度正確にお答えいただきたい。(「相手にも責任があるんだ」と呼ぶ者あり)いま、不規則発言ですけれども、相手にも責任があるのだという話が出ましたけれども、そういうことですか、明確にその点についてももう一度お答えいただきたいと思います。
  212. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 いま申し述べましたように、もうすでに四半世紀前のことでございます。戦争は、その前また四半世紀にわたって行なわれたことをさして、すべてに対して日本が行なった戦争を侵略的なもの、日本が行なった侵略戦争はと、こう断定をいたしております。これは、戦勝国が断定をしたものでございます。日本人はそれに対して異を唱えたり、日本人の意見をいれられるような余地も状態にも置かれておらなかったということは、歴史的な事実であります。  そういう問題に対して、いま私に、ポツダム宣言に書いてあるとおり、過去の日本が行なった戦争のすべては侵略戦争でないのか、侵略戦争だと思うか、そういう御質問でございましたから、私は、それに対して端的にお答えはできません、それは後世の歴史が判断するものだと思います。これはいろんなことを言わないほうがいいかもしれませんが、しかし、ほんとうにイエスかノーかという状態においてこれを無条件に引き受けざるを得なかった事態、無条件に引き受けたのであって、日本の意見があの中に、表現の一条にも一句にも用いられておらないということは歴史的な事実であります。  そういう意味で、私は、現在の公の立場において、日本が行なった過去の戦争というものを、ポツダム宣言に書いてあるように、無条件降伏の文書に引用されたように、その戦争が侵略戦争であると、私が判断ができる立場にないということだけを申し上げたわけであります。
  213. 松本善明

    松本(善)委員 私は、日本がこのポツダム宣言を受諾して、そして憲法を新しくし、そして新しい政治が始まっていると思います。それは過去の反省の上に成り立たなければならないものであります。これは過去のことについてお聞きしているのではなくて、現在の田中総理の政治姿勢の問題としてお聞きしているわけであります。  これは、いま総理は日本のすべての戦争というふうにたいへん広げてお答えになって、答弁に幅を持たせられたような気がいたしますが、第二次世界大戦は、いわゆる八紘一宇ということで世界制覇を目ざしてやった日本の侵略戦争ではありませんか。そうはお考えになっていないということでありますか。
  214. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私がいまの立場で、侵略戦争でありますと断定的に申し上げられる立場にない、こういうことは事実であります。そういうことを理解いただきたい。
  215. 松本善明

    松本(善)委員 それじゃパールハーバー、真珠湾攻撃はどうですか。私は、この問題についての総理答弁というのは、これからの日本の政治の方向についても非常に重要な問題だと思うのです。それについてはどうお考えになっていますか。
  216. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本は新しい憲法を持ち、私もこの間施政に関する演説で申し述べましたように、国際紛争を武力で解決しないという世界に類例のない憲法を持ってきたことは、正しい道であったと信じます。政治の大前提を世界に宣言しておるわけであります。しかも、憲法の許容する範囲内の最小の防衛力を持つだけであって、非核三原則や徴兵をしないとか、諸外国に攻撃のおそれなどごうも抱かせないように、平和国家として日本は新しい道を歩んでまいります、国際協力もいたします、南北問題に対しては、日本の持てる経済力や技術力をもって応分の協力も援助もいたします、経済大国になっても軍事大国には絶対になりません、日本のこれからの方針考え方というものは、過去の戦争に対して各国にいろいろな御迷惑をかけました、再びこういうことはいたしません、損害をかけたことにはおわびいたします、こういう非常に、だれでもが理解できる日本の新しい政治の姿勢、これは過去の歴史を踏まえておることはもう当然理解がいただける、こう思うわけでございます。
  217. 松本善明

    松本(善)委員 端的にお伺いしたいと思いますが、ポツダム宣言には、無責任な軍国主義の駆逐ということがいわれております。戦前の日本の政治が軍国主義であったということをお認めになっているかどうか、この点について反省をされているかどうか、お聞きしたいと思います。
  218. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、まだ戦前は政治やそういうものに対して関心もなかったし、政治の中にもおらなかったわけでございますが、その後のいろいろな勉強によって、戦争が終わるまでの日本の中には、軍国的風潮やさまざまな事実が存在しておったことは理解をいたしております。
  219. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、戦前の軍国主義の存在を認識をし、そういうものは一掃するというお考えでありますか。
  220. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 過去の事実の上に立って日本は、ただすべきはただし、反省すべきは反省をし、新しい理想に向かって前進を続けていきたい。その理想の道は平和の道である、こういうことでございます。
  221. 松本善明

    松本(善)委員 次の問題をやりたいと思います。  自衛力の限界について昨日答弁申されました。この限界は四次防よりも大きいものになっておる。ということは、四次防以上の軍備の拡張を考えているということでもあろうかと思いますけれども、さらに、この平和時ということの内容が非常にあいまいにされておりますために、限界限界だといって提示をしたけれども、いつでも変わり得るような、そういうものになっておるのではないか。平和時というものを正確に定義をすることができるかどうか、その点について伺いたいと思います。
  222. 増原恵吉

    増原国務大臣 昨日御説明をしましたように、今日の国際情勢が大勢としては緊張緩和の傾向にあるものと考えまして、このような今日の状態を平和時と規定をすることといたしました、こういう御説明を申し上げたわけでございます。  そうして、「このような平和時は、わが国及び関係国の平和外交努力が続けられ、内政諸施策が推進され、かつ、日米安保体制の有効に維持されるという前提に立って、今後とも続くものと考えてみました。」と御説明をしておるわけでございまして、こういう状態でなお存続し得るものという考えもとに、平和時というものを一応考えたわけでございます。
  223. 松本善明

    松本(善)委員 そういたしますと、今日の状況ということを考えているということになりますと、これは当然のことながら、将来起こり得る事態ではいつでも変わり得るようなものとしか考えられないと思いますが、そうですか。いま緊張が緩和をしてきたという認識を述べられて、そういう今日の現況におけるものが平時だと言われたのですから、将来についてはいつでも変わり得るということになると思いますけれども、どうですか。
  224. 増原恵吉

    増原国務大臣 従来アジアにおきましてもいろいろと緊張要因があったこと、御承知のとおりでございます。それが最近、特に二、三年の状態において、緊張緩和という状態になってまいりました。先ほど御指摘になりましたベトナムの問題なり、南北朝鮮の話し合いの問題なり、そういうものは緊張緩和の問題としてわれわれは受け取るわけでございますが、こういうものが、いまの話し合いが全然とまっちまって、また前の状態に返るというふうなことには私どもはならないことを期待しておりまするが、そういう形において、この平和時というものは、そう簡単に変わっていく、平和時でない状態に変わるというふうに予想をしないでおるということでございます。
  225. 松本善明

    松本(善)委員 予想ということで答えられましたけれども、しかし、いまお話を伺っていますと、たいへんばくたるものでありまして、何か事があればいつでも変わるという可能性を十分に秘めているように思うわけです。現在以上の確たる定義というようなものはできないということですね。できないというふうに理解をしてよろしゅうございますね。
  226. 増原恵吉

    増原国務大臣 できないというおことばをどういうふうにあれしますか、申し上げましたように、いまの状態という、ある意味においてはっきりしたものを緊張緩和の傾向にあるものとして、これを平和時というふうに申し上げておるわけでございまして、いま予想し得る状態というものは、この緊張緩和の傾向というものがさらに続いていき、そうしてさらに定着をしていくであろうと思われる――定着の問題を別にしましても、こういう緊張緩和の状態は続くであろうということを考えまして平和時というふうなことばを使ったので、もとより、この平和時ということばはなかなかむずかしいことばでございまするが、現在の事態を平和時、それは緊張がだんだん、最近の二、三年においても緩和をしてきたというこの現在を平和時と考える、そうしてその平和時はいろいろの、現在行なわれておるような努力によって続いていくものであるというふうに見るものとして平和時を考える、こういうことでございます。
  227. 松本善明

    松本(善)委員 私は、いままでの答弁を聞いてみますと、結局において、できるだけはっきりしたことを言わないでおこう、軍備の増強についていつでも手を縛られないようにしておこうということ以外は、昨日からきょうへかけての答弁から読み取ることはできません。アメリカの力の政策が終わっておるわけでもありませんし、その政策のいかんによっては、いつでもまたそれを越えた軍備の増強ということが考えられるようになっておるということを指摘をし、それはきわめて国民に対して誠意のないものであるということを指摘をして、次の問題に移りたいと思います。  立川への自衛隊の移駐の問題についてお聞きをしたいと思います。  立川への自衛隊の移駐について、防衛庁のリーフレットなどでも、これは全面返還までの暫定移駐であるということをいっております。日米安保協議委員会では、三年間で立川基地を全面返還する予定だということをいっております。そうだとするならば、もし全面返還がそのとおりであるとするならば、自衛隊の移駐の根拠というのは失われてきておるのではないかと思いますが、その点についてはどういうふうにお考えになっておるか、お聞きしたいと思います。
  228. 増原恵吉

    増原国務大臣 先般の日米協議委員会において立川地区の返還が約定されたわけでございますが、これが実現をいたしますると、一部は民有地でございまするが、大部分は国有地である。現在自衛隊が災害復旧等のために部隊を配置をしたわけでございまするが、そうしてこれを使っておりまするもとの飛行場と申しまするか、このところも返還になるわけでございます。返還になりますると、国有財産審議会でございましたかの審議によりまして用途をきめるということになりまするので、返還になりました時期に、あらためて将来にわたって使っていく問題を協議をしてきめなければならぬ、協議をしてきめよう、そういう意味で申し上げておるわけでございます。
  229. 松本善明

    松本(善)委員 この移駐の問題については、さらにいろいろ言いたいことがありますが、この当面の問題として、平和利用計画を策定するために立川市が行なう基地内の立ち入り測量調査を認めるべきであると思います。この点と、それから全面返還までの過渡的な段階でも、道路や広場の一時的な使用を無条件で市民に認めるべきではないかと思います。そういうことをおやりになる考えがあるかどうかお聞きしたいと思います。
  230. 長坂強

    ○長坂政府委員 お答え申し上げたいと存じます。  平和利用の地元の立川市のお考え方、それにつきましては、実質的にこの三年の間に全面的な返還を見るということで一歩の前進があると思うわけでございます。そういうことにつきまして、これは国有財産が大部分でございますので、所管省である大蔵省との御相談ということも、立川市とされてはおやりになったほうがいいんじゃないか。そういう際に私どもとしては、いろいろな立川市に対する御協力というようなこともできるのではないかというふうに考えております。  それで実は、昨年の十二月の二十七日、立川市長さんが当庁にお見えになりました際も、私どものほうから、そのようなことも含めましての意味でございますけれども、いろいろ市長さんともお話し合いをいたしたいし、市長さんのほうからお出かけくださるならば、いつでも御相談にも応じましょうというふうに申し上げてございます。  それから、返還前の地元の住民の方々あるいは児童の方々の一時的な基地使用と申しますか、活用と申しますか、そういうようなことは、実は米軍の管理下にございましたときにおきましても、立川祭りと申しますか、そういうような市の催しなり市民の催しにおきましても、在日米軍側で日を限りまして、日曜日などやっている事例がございます。これは、日米間の共同使用の形態にいまこの基地がありますわけでございますけれども、そういうことにつきましても、私どもとしては御相談に応ずる考え方でおりますので、御相談を受けたいと思っております。  それからもう一つ、立ち入りの調査のことでございますが、これはいわゆる平和利用というお考えからのそういった立ち入り調査が必要な段階が、つまり、私どもとまずそういうような平和利用についてのお話し合いというものが行なわれて、その上で実際に立ち入りということが必要になってくるという段階がまた来るであろうと思いますので、そういうときは、庁内におきましても、また米軍とも相談いたしまして、必要な便宜はお取り計らうことができるのではないか、このように思っております。  以上でございます。
  231. 根本龍太郎

    ○根本委員長 東中光雄君より関連質疑の申し出があります。松本君の持ち時間の範囲内でこれを許します。東中君。
  232. 東中光雄

    東中委員 立川基地の自衛隊の強行移駐について総理にお聞きしたいのですが、昨年の三月二十一日に、立川移駐問題で当院の内閣委員会総理大臣に対する各党の質問が行なわれました。そこでは佐藤総理がはっきりと、この問題は「とにかく話し合いをつける、」話をつけるということ、話し合いのために努力するというのではなくて、話をつけるということを言われて、各党とも、話をつけないままで強行するということはしないという趣旨理解されて、ずいぶん問題になったわけですけれども、一応終わったわけであります。そのときの佐藤総理答弁は、「とにかく話し合いをつける、これでなければならないと思います。」「十分話し合を尽くす、それだけ政府も余裕を持って交渉するつもりです。」話はつける、「真に話し合って、そうして結論を見つける、」こういう答弁だったわけですが、今度は、努力をしたけれども話し合いできなかったのだというだけのことで、話はついていない、そして強行されたわけであります。しかも内容的に言いますと、暫定的なものだという印象を与えるビラ、リーフレットを立川市で配っておられますけれども、正式に防衛庁として立川市に出した文書では、立川への自衛隊の移駐はもっぱら災害救助、災害出動を目的にするものである、こういっていますが、一月十六日の内閣委員会質疑では、目的、主観はそうであるけれども、たとえば木更津や練馬の陸上自衛隊と同じように、立川にいる自衛隊の任務は、治安出動も、また防衛出動も、そして付随的なものとしての災害出動もする、ほかの基地におる部隊と変わるところはないということをお認めになっておるわけです。  ですから、これは当然のことだと思うのですけれども、市民に、いわば平和時だから災害出動が目的なんだ、しかももっぱらそれが目的なんだというようなうその宣伝をやりながら、話をつけるということをやらないで強行した。これは内閣の責任継承の原則からいっても、当然、佐藤内閣国会ではっきり言われたことを、尽くさないままでやったというのは許されぬと思うのですが、総理のその点についての考えを明らかにしていただきたい。
  233. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、佐藤前総理がどのような場所でどのような明確な御発言をなされたかは承知しておりません。しかし、いまあなたに御指摘を受けまして、そういう事実があったことを承知いたしました。  ただ、この立川移駐に対しては、所要の手続、地元との了解工作等、万遺憾なき措置をとりておるのだろうなということは、これはいろいろな過程においてただしたわけでございます。いま佐藤前総理の御発言が御披露されましたが、そういう事実ということに対しては、政府委員も十分理解しておったと思います。  地元市長との話し合いという問題に対しては、これはこちらのほうで政務次官と会おうという内諾を得て立川まで出向いたしましたが、諸般の事情によって直接会うことができなかったということもあったようであります。その後も防衛庁の係官は、何回か接触も続けたり、またいろいろなことを企てたようでありますが、諸般の問題があって会えなかった、こういうようなことでありまして、過去におけるいろいろな問題に対して、踏まなければならない手続は全部踏んだものでございますという前提に立って、閣議はこれを了承したわけでございます。しかも、その閣議においても、治安出動その他という問題に対していろいろな御議論がありますが、そのようなことが起こるような状態にないということで、治安出動を主目的にして移るものでないというように、防衛庁長官もしくは防衛庁関係者が述べたと思います。  それから、いま東京で関東震災のようなものが起こったらどうなるのだろう、そういうことがないということを予測できない状態にあって、災害出動、救助出動というために対しては、政府は万全の体制をとらなければなりません。そういう意味で、今度のヘリコプターの移駐は災害出動がおもな目的でございますと、こう私は理解をしたことは間違いではないと思います。この問題に対していささか不勉強であったかしれませんが、そのような明確な発言があったということは私は初めて承知したわけでございますが、私たちにいろいろ報告をした過程の問題に対しては、防衛庁当局と、この問題に関連をした当局から補足的に答弁をいたします。
  234. 東中光雄

    東中委員 佐藤総理の段階で、これはずいぶん予算委員会でも問題になり、内閣委員会に預けるということになって、論議をされて、二回内閣委員会に来られて、最後に、これは話をつけると、先ほど読んだように言われた。そういう経過ですから、それを総理が御存じないままで、手続を尽くしてきたんだろうと言われても、それは前提を御存じないのだから。話し合いのために努力をしたということ、これは何回も防衛庁当局は言っていますけれども、努力するとは言ってないのです。話をつける、こう言っている。  それからもう一つ、いま災害出動、災害救助がおもな目的と言われましたけれども、そうじゃなくて、実際にはもっぱら災害救助を目的とする部隊なんだ、こういう説明なんですね。しかし、練馬の部隊も、木更津の部隊も、どこの部隊も全く任務は一緒なんだということも、この間の審議で認めておられる。任務が一緒だったら目的というのは主観じゃないですか。そういう点でいうならば、話し合いをつけてない。そうしたら、話し合いの過程で当局の言っていることは、事実でないことを言っている、ほかと違う特別なものであるかのように言っておったという点で、これは少なくとも前に問題になった問題なんですから、これはこのままでほっておくというのは非常によくないことだ。  同時に、総理は、大都市周辺には置かぬようにしたほうがいいんじゃないかという趣旨の、これは正確には、閣議の席に私はおりませんから知りませんけれども、そういう趣旨発言をされたと伝えられておりますし、そういう点から言っても、立川の問題というのはもう一回再検討をされて、もとに、話をつけるというところに返る、当然のことではないか、こう思うのですが、いかがでございましょう。
  235. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 自衛隊法に基づく部隊でございますから、部隊の任務そのものは法律で定める任務を持っておるということは、どこにおってもそのとおりだと思います。  ただ、宇都宮から立川へなぜ配置がえをするのかという配置がえの主目的は、宇都宮に置いては災害等が起きた場合救助活動に不便である、その目的を達成することはなかなかむずかしい。東京も非常に大きいものでございますから、その意味で立川に移ることが災害救助出動等にはたいへん役に立つと思います、人命の救助のためには役に立つと思います、それが配置がえのおもな理由でございます、こう述べておるのでございまして、それはそのとおりだと思います。  それで私は、佐藤前総理発言防衛庁当局が行なった問題については、これはあとから防衛庁当局から御説明をさせます。  私が、この問題が閣議で了承をせられました後に、都市化現象というものが非常に激しい状態になっておって、いままであるものに対しても、周辺住民との間に、よほどの調整を行なったり、理解を求めるようにしなければならないというときであるから、大都市の中に移ってくる問題とか、また統合の問題とか、現在存在する基地の様態等に対しては十分配意をして、国民の支持と理解が得られるように防衛庁当局考えてほしいという私の個人的な考え方、私の意見を述べたのでございまして、その間の事情は私が述べたのでございますので、私が申し上げるとおりでございます。
  236. 東中光雄

    東中委員 立川の問題、いま総理の言われていることは前提が違う。前回の佐藤総理の言ったことを知らぬとおっしゃっているのですから、いわば国会で言うたことについて知らぬままで進めてこられたということで、その前提に戻ってこれは再検討さるべきだ。そうでなければ、防衛庁の見解が変わったというのではなくて、佐藤総理が言っておったことを総理が知らぬままで閣議が進められた、これははなはだもって遺憾だ、こう思うわけであります。この機会に再検討を要請しておきたいと思うのです。  同時に、立川問題もそうでありますが、一連の  いわゆる関東計画によっていま基地の縮小整理がやられておるわけであります。そういわれておるわけですが、実際には横田基地への集中、そして基地集約をやって強化していくという方向になっている。  横田基地についてお聞きしたいのでありますが、サイミントン委員会会議議事録の巻末資料によりますと、第六五及び第六一〇軍事空輸支援中隊が配置されているということが書かれています。これらの部隊はいわゆるMAC、空輸軍団でありまして、本部がアメリカ本国のイリノイ州にあります。これはいわゆる空中から兵員、物資を輸送する、そういう世界的な規模での米軍の戦略的な輸送部隊でありますから、サイミントン委員会で言っていることを見ましても、横田基地にこのMACの部隊、ニスコードロンが配置されているということは、日本の安全に寄与するという安保条約とはワク外の、西太平洋全域にわたっての、たとえばC5Aギャラクシーによる、あるいはC141スターリフターで、戦車を含めて資材、兵員を輸送する、そういう基地として横田というのは残されている。横須賀のあの空母の母港化とあわせて、むしろそこへ集中して強化されているというふうに私たち考えるわけですが、横田基地の実態、そしてそれは安保条約の日本の安全というふうなものとは全く関係のないものだということを思うわけですが、外務大臣いかがでしょう。
  237. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この間の安保協議委員会で合意いたしましたいわゆる基地の整理計画でございますが、これは東中さんは集中強化であるという評価をされるわけでございますけれども、確かにこれは集約でございますけれども、強化であるとは私は考えておりません。いろいろの在来の施設、区域を整理しまして横田に集約して、余ったところを返してもらうわけでございますので、そういう集約ではありますけれども、強化であるとは考えておりません。横須賀につきましても同様でございまして、あれはたびたび申し上げておりますように、一つの家族計画でございまして、ミッドウェーの任務が変わったとは承知いたしていないわけでございますので、性格といたしましてはそのように御理解をいただきたいと思います。  そして、横田に配備されるといまあなたが御指摘になりました部隊の機能という点につきましては、つまびらかにいたしませんから、専門家から答弁させます。
  238. 久保卓也

    ○久保政府委員 横田にありまするものはいろいろございますけれども、いま御指摘のものはアメリカ本国にあります輸送空軍の指揮下にあります第六一〇軍事空輸支援中隊、スコードロン、そのほか極東空輸指揮所としまして第二二空軍司令部、リタッチメント一二というもののほか気象関係、救難関係それから偵察関係というものがあります。これらは支援の機能を持つ部隊でありまして、私どもの知っている範囲では、配備されている航空機は気象偵察、ウエザーの飛行機が三機あるというふうに承知いたしております。したがいまして、これらの基地機能を維持する各種の部隊が、日本及び極東の安全に寄与するということは間違いないと思います。  ただし、米本国の指揮系統下にあるということと、これらの基地機能がどういう任務を果たしているか、すなわちアメリカ本国の指揮下にあるといいながらも、基地機能そのものは、あるいは基地機能を維持するそれらの部隊が、日本の安全及び極東の安全に寄与しているということは、別個の問題であろうというふうに思います。
  239. 東中光雄

    東中委員 C5Aギャラクシーがことしの六月までに世界的に増強を完了するというふうにいわれています。そしてそれがこの横田にも配備されている。それから極東の範囲とかいうような問題ではなくて、西太平洋全域にわたる、いま言われた空軍気象偵察分遣隊にしましても、高々度偵察を西太平洋全域にわたってやる、こういう形で配備されている。そういう点でのそれが装備の面でも強化され、これは集約されて、部隊が、住宅がそこに密着している、そういう点で強化されていっているということであります。この実際の横田におる空軍の任務からいって、その機能からいって、安保条約との関係で、安保条約、私たちはこれは認めませんけれども、それさえも越した西太平洋全域を行動範囲にしているという点については、外務大臣どうなんでございましょう。
  240. 大平正芳

    ○大平国務大臣 あなたの言われることが、安保条約の取りきめに背反しているというようには私は理解しておりません。
  241. 東中光雄

    東中委員 時間がありませんから次に移りますけれども、これは理解の問題ではなくて、事実がそうなっているということについて指摘をしておるのだということをはっきり申し上げておきたいと思います。  もう一点だけお聞きしたいのですが、いわゆる米軍基地の移転費の負担の問題であります。これはたとえば関東計画でいきますと、非常にひどい事態が起こっています。調布の関東村米軍住宅基地を横田に移す、その移転費を負担するという問題が、この間の安保協議委員会でも出ておるようでありますけれども、もともと関東村米軍住宅基地というのは、ワシントンハイツにあった米軍施設の代替施設ということで、昭和三十六年に約百億五千万円を出してつくった。それからワシントンハイツが返還されたのは三十八年も末であります。それからまだ十年もたっていない。今度はそれを移転するということになると、横田の基地の中につくる米軍の住宅あるいは娯楽施設あるいは劇場、こういうものまでも含めて、移転費ということで負担をしていく。しかも、この住宅施設というのは全くぜいたくをきわめておるというふうにいっていますし、移転については庭石から植木までというふうなことまでアメリカ側が要求してきたというふうに伝えられておるわけであります。こういう移転費を次から次へやっているわけですが、負担をしているわけですが、実際関東村の例でいえば、この住宅基地の移転について米側が一体どれぐらいのことを要求してきて、そしてそれについてどういう結論になったのか、その結論になった金額の対象ですね、対象物は一体どういうものなのか、これをまず明らかにしていただきたい。その上で、その移転費の支出の根拠についてお聞きしたい、こう思います。
  242. 高松敬治

    ○高松政府委員 いまお話がございました関東村につきましては、オリンピック選手村及びその関連公共用地ということで、オリンピックの際にワシントンハイツあるいはリンカーンセンターの返還を受けて、そのかわりにあそこにつくったものでございます。  その細部につきましてはあれでございますが、横田に今度関東計画によってつくります住宅は二百七十五戸でございます。現在関東村には住宅が八百八十戸ばかり、それからそのほかの独身寮十二棟その他いろいろございます。で、横田につくります住宅の二百七十五を残してほかを返還するか、これはほかの立川基地その他についても同じような考え方があったわけですけれども、しかし、いろいろそういう部分的なものを残すよりは、この際はそういう都市近郊、首都圏の大きな米空軍の住宅施設については、いっそ全部きれいにして返還を受ける、そういうことで横田の中に二百七十五戸をつくろう、こういう計画になっているわけでございます。そういう点ではいろいろ私どもも検討いたしましたが、やはりああいう関東村は現在は非常に開けた場所になっておりまして、これは一括してきれいに返還を受けたほうがその後の利用価値も非常に高いであろう、こういうふうに考えたわけでございます。
  243. 東中光雄

    東中委員 横田の基地の中へ劇場あるいはPX、娯楽施設、そういうものも含めて国民の税金で、米軍の基地の中へ日本の政府がそういう施設を建てるということ、それを米側が要求してきた。それに必要な金額は一体何ほ要求してきて、そして幾らに落ちついたのか、これを簡単に明瞭に言ってください。
  244. 高松敬治

    ○高松政府委員 いろんな経過がございまして、最後に落ちつきましたところでは、住宅につきましては各いろんな基地の住宅約二千五百十二戸に対して先ほど申し上げたような二百七十五戸をつくればいい、こういうことに落ちつきました。それから、あと住宅以外の事務所、倉庫、学校、病院、それから劇場があったかと思いますけれども、その他いろいろございます、付属施設、厚生施設というようなものが。それが大体でございますが、約七十万平米各地にありましたものを横田に集約統合いたしまして十一万五千平米ぐらいのものにする、こういうのが最終の大体の結論でございます。予算額にいたしまして約二百二十億、これを三カ年計画で実施する、こういうのが現在の計画でございます。
  245. 東中光雄

    東中委員 総理にお聞きしておきたいのですが、米軍が現に使っている基地、横田基地の中へ米軍の劇場も含んだ、娯楽施設も含んだそういう建物をつくるのに、日本政府がアメリカから言われて、それに三カ年計画にしろ二百二十億という金を使って建設をしていくというようなそういう姿勢ですね、これは日本国民としては納得できませんよ。米軍にそういう娯楽施設までつくる、そういうことは、私、要求されたものは何でも受けていくという姿勢になっているからではないか、こう思うわけですが、その点、政府の姿勢をはっきりしていただきたい。
  246. 大平正芳

    ○大平国務大臣 施設の移転、集約に伴う代替施設の建設は、いわば地位協定から申しますと、施設、区域の追加提供でございまして、地位協定の二十四条二項によりまして、日本側が負担すべきものであると考えております。もっともそういう経費にいたしましても、地位協定三条でアメリカが負担して悪いというわけじゃないのでございますけれども、このたびのことは日本側で要求いたしまして、そのように米側と協議いたしておるわけでございますので、私どもといたしましては、最小限度日本側が負担すべきが筋であると思いまするし、また、国民理解を得られるものと考えております。
  247. 東中光雄

    東中委員 地位協定二十四条二項を言われましたが、二十四条の一項には米軍を維持することに伴うすべての経費はアメリカが負担するということになっている。劇場をつくる、娯楽施設をつくる、その他建物を基地の中へ新たにつくっていく、それも日本の義務だということで金を出していく、こういう解釈は地位協定の解釈をうんと、何といいますか、肩がわりして払っていくような体制になっているということであって、米軍を維持することに伴うすべての経費は、これは米軍が負担をするということになっているわけです。米軍を維持することに伴うすべての経費、それを政府としてはどういうふうに解釈しているのですか。
  248. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま申しましたのは、施設、区域の提供を私が申し上げたわけでございまして、その施設を維持してまいるということは米軍がやっておるわけでございまして、事実地位協定であなたのおっしゃるとおりになっているわけでございます。  いま問題になっておりますのは、そういう施設を、現にあるものを整理、集約いたしまして移転をする、すなわち代替施設をつくるということは、施設の提供であるというように私が申し上げたわけでございます。
  249. 東中光雄

    東中委員 施設を維持する経費は、米軍が負担するというようなことは地位協定には書いてない。米軍を維持することに伴うすべての経費ということになっているわけです。その解釈をうんと縮めちゃって、そしてアメリカに対して、基地内の施設は、アメリカが要求すれば安保条約六条によってあるいは地位協定によって、日本政府は全部負担をしていく義務がある、そういう解釈をしておられるということになると思うのですが、地位協定はそんなにもアメリカに従属した形でやっていくものかということをはっきりさしておきたい。
  250. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定二十四条の解釈の問題でございますので、私から答弁さしていただきたいと存じます。  先ほど外務大臣から、地位協定二十四条二項によりまして日本側が経費を負担すべきものとしまして追加提供の御説明ございましたけれども、地位協定二十四条一項に関しましては、つまり地位協定第二十四条第一項で、日本側が負担するものを除くすべての経費について、合衆国軍隊を維持することに伴う費用を米側が負担する、こういう規定でございます。したがいまして、二十四条二項によりまして日本側が経費を負担すべきものといたしまして、先ほど来御議論ございます関東村の住宅その他を横田に集約することに伴う経費を、日本側が代替施設の提供というかっこうで負担するわけでございます。
  251. 東中光雄

    東中委員 時間がありませんが、代替施設の提供の問題もそうでありますし、それから、たとえ現に米軍が使ってきたそれが老朽してきたからといって、それの改修をやる、それも日本の国民の血税でやっていくというふうな形に、いまの政府の解釈でいけばなってきます。現に岩国の基地についてもそういう問題が起こってきている。アメリカがいわゆる防衛負担の肩がわりをニクソン・ドクトリンで要求している。その線に沿って地位協定で日本側が負担する部分をどんどんふやしていく、そういう解釈にいま立っておられるという点で、私は非常に大きな問題があると思いますが、時間がございませんので、きょうはその点だけを指摘して、私の関連質問は終わりたいと思います。
  252. 松本善明

    松本(善)委員 民主主義の問題について若干伺いたいと思います。  選挙のたびごとに定数是正が問題になり、そして本委員会でもすでにこの問題については論議をされ、本会議でも論議をされておりますが、総理に伺っておきたいのは、この問題につきましては、選挙制度の全体との関係で考えるという趣旨答弁をされておる。この定数是正の問題については公職選挙法の別表に、「本表は、この法律施行の日から五年ごとに、直近に行われた国勢調査の結果によつて、更正するのを例とする。」と明記をされておる。これが二十三年間にわたってサボり続けられてきたというのがいまの実態なんです。これは選挙制度の改革をしなければできないことではなくて、現行選挙制度のもとで当然に実施をしなければならない問題だと思います。この点については総理はどういう認識をしておられるか、伺いたいと思います。
  253. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 現在のように選挙区の定数の不均衡をそのままにしておくことは、よろしくないことだということは原則的に考えております。しかし、いつも申し上げておりますように、選挙区制の問題とかいろいろな問題で結論を得ないまま今日に至っております。一部その極端なものに対しては、多少の是正が過去において行なわれました。行なわれまして、五人が六人になり、その六人区は三人区二つに分かれて、東京の一区と八区に分かれたというような例もございます。これらの問題に対してはいろんな問題がございます。都市集中ということで選挙人の、有権者の移動が急速に行なわれたということもございますし、中には地域代表制をとっておりますので、地域の問題も加味すべきであるというような強い意見もございまして、極端な議論をする人は、面積比率も入れなければいかぬじゃないかというような意見も存在するわけでございます。  しかし、いま御指摘があったように、不均衡をこのまま放置のできる問題ではありませんので、国民的世論にこたえていくためにも、定数是正を含めて公職選挙法の改正問題等に対しても十分勉強してまいらなければならない、こう考えております。
  254. 松本善明

    松本(善)委員 これは選挙制度全体を変えるということとの関係でいきますと、いつまで延びるかわからないと思うのです。これは公職選挙法の別表を変えさえすればできることなんです。この点について、他の選挙制度の改革と関連させないで、いま国民が選挙のたびごとに切実に要求しているのですから、これだけを切り離してやるというのが当然ではないか。法律の要求はそういうことではないかということを私は聞いておるのであります。その点については、政府は、選挙制度全体を改革しなければ、このままでほうっておいてもいい、その成案が得られなければこのままなんだ、こういう考えでいるかどうか伺いたいと思います。
  255. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 総理から率直なお話がありましたが、要するに人口移動によってふやさなければならない地区ができたことは、これもう事実です。事実ですが、さてそういうことになりますと、過疎地帯の問題がいま非常に議論の対象になっておりまするように、減った地域の定員はどうするのだ、こういう問題がひっかかってきます。  たとえば、この間の選挙で言いますると、兵庫五区、これは全国平均が二十一万三千百六十七人ということになっておりまするが、兵庫の一人当たりは十一万二千七百一人、これも当然、三人区でありまするが二名にしなければならないということになる。そうすると、ふやしていく場合に総定員をどうするかという問題がまず出てまいります。それから減らすという場合に、一体現在の中選挙区と俗に呼ばれる三人から五人の地区をどういうふうにしていくか。小選挙区ということが第七次選挙制度審議会の、答申ではありませんが、いわゆる答申に類するものと考えられる報告の中にも出てきておりますね。そうすると、やはりこういつた問題をひっくるめて考えませんと、ただいたずらにふやせばいいというものではない。  したがって、総理がしばしば申し上げておりますように、選挙制度全般の問題とにらみ合わせて、そして国民の意向が正確に反映されることが望ましいですから、そういうことを望みながら、各党の御意見も聞きながら対処していこうというのが私どもの態度でございます。
  256. 松本善明

    松本(善)委員 自治大臣に伺っておきたいと思いますが、中選挙区、いわゆる三人ないし五人というのは、何も現行法では拘束されているものではない。むしろ拘束されているのは定数を是正しなければならぬということなんです。いまの総定員の問題についても、これはふえればふやせばいいわけなんです。単純な作業でできることなんですよ。いまもっともらしく御説明をされましたけれども、しかし、いま話されたことだけを聞いてみましても、これは単純作業でできないことではないのです。その中選挙区問題についても拘束がないでしょう。私のいま申し上げたことについての御意見を伺いたいと思います。
  257. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これ、そうではございませんですね。やはりこの選挙区割りというのは法律にゆだねられておるわけで、したがって、ここで最終的にはきめることになるわけです。したがって、三人から五人までぐらいの選挙区を例とするというような形でたしか法律に書いてあるわけですが……(松本(善)委員「ない、ない」と呼ぶ)いや、選挙区割りの付記に、最後のところにですね。ですから、それは例として今日まできたわけで、たとえば前回に定員増をいたしましたときには、六人になるところは三人、三人と二つに分けたというような例に見ても大体そういうことなんです。ですから、ふやすところがあれば、国民の側からいくならば減るところもあるべきじゃないか、こういうことも当然の議題として出てくるわけであります。で、はたして簡単に減らしていいのかどうなのか。この地域割りの歴史的なよって来る長い一つの習慣、そして経緯、こういったものを無視して、ただ定員をふやせばいいというものではないというふうに考えております。
  258. 松本善明

    松本(善)委員 法律では、そういう三人ないし五人というようなことは書いてないです。書いてあることは先ほど読みましたようなことであります。別表を改正しさえするならば、いまの問題は全部解決ができるわけです。政府がそういう提案をすればできるわけなんです。それをサボっているのがいままでの経過なんです。何か定数是正の問題になりますとむずかしいことを言って、そしてたいへん困難なことのように言っておりますけれども、そうではない。法律の要求どおりになすべきことなんです。もう一度御答弁をいただきたいと思います。
  259. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いま資料を取り寄せましたが、この別表のところにずっと三人ないし五人――別に三人-五人でなければならぬとは御指摘のように書いてありません。しかし、三人、四人、五人という選挙区があって、最後のところへ、「本表は、この法律施行の日から五年ごとに、直近に行われた国勢調査の結果によつて、更正するのを例とする。」というわけですね。その「例とする。」というそこをあなたが言っておられるわけですが、ところがその「例とする。」ものはやはり三人、四人、五人と、こういう形になら、ざるを得ない。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)いや、これは従来の長い経緯からいいまして、前回もじゃなぜ六人区を設けなかったのか。これはやはり三人、三人区ということにしたわけでありまして、二人区をつくっていいのか。それからまた第七次選挙制度審議会の答申によれば、報告という名を使っておりますが、報告によれば、小選挙区制が望ましいということをいっております。そればかりかもっと言うならば、この人員の問題については、選挙制度の問題とからんで総体の問題として処理されることが望ましいという、これは第三者の諮問機関がそういう意見をわざわざ付しておる。これなどに見ましても、ただ人口が移動して調密になったから、そこをふやせばいいというふうに断定するのは早計であるというふうに思っております。
  260. 松本善明

    松本(善)委員 自治大臣が全く法律を知らないんですね。こういうことで一体いいのか。選挙制度を……(「知っておるんだ」と呼ぶ者あり)知っておって言っているとすればますます悪いですよ。選挙制度審議会の答申との関係ではないのです。この別表を改正すれば全部解決できるものなんです。確かに三人ないし四人あるいは五人と選挙区ごとに書いてありますけれども、これは六人になってはいけないというようなことは一つもないのです。そういうような努力をすればこの問題は解決できるわけなんです。  私は、総理に最後に、この点についての法律どおりやるという問題、それをどう考えるか、これをぜひやらなければならぬという問題をどう考えるかということと、もう一つ、第八次選挙制度審議会についてどう考えているか、この二つを総理にお聞きしたいと思います。
  261. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 第八次選挙制度の問題については、まだ担当大臣から報告を受けておりませんから、これは自治大臣からお答えをいたします。  第一の問題、定数是正の問題が必要であるということは私も認めております。認めておりますが、これはいまも自治大臣が述べたとおり、いろいろな過去の審議会の答申等もございますし、もう一つめんどうなのは、先ほど申し上げたように地域制をとっておるということで、やはり地域の代表ということを前提にいたしておりますので、人口だけではなく、あなたは現行法の中の別表だけ手をつければいいのだ、こういうことを言っておりますが、別表に手をつけるときには、他の問題に対しても手をつけなければならないという意見が多数にあるのです。自由民主党全部そうなんです。そこに問題があるのです。ですから、自由民主党は定数是正を必要とするということは認めております。認めておりますが、そういう改正をするときには小選挙区制を考えてみたらどうかと、こういう問題がありますので、だからわれわれもこの問題に対して早急に結論を出せないのだ。多数政党がちゃんとそういうことを言っておるのです。ですから、過去においてそういう問題があり、しかも、参議院の定数を改正する場合には全国区制を廃止すべしという有力な議論もあるのです。だから、そういう問題がからんでおりますので、現状のままでいいのだとは考えておらないのです。国民的な不満、これを直さなければならないということは十分あなたと同じ考えに立っておるのですが、そういう多数意見も存在し、かつてゲリマンダーと言われたけれども、小選挙区法を提案したこともあるのです。そういう歴史の上に立って今日を迎えておるのでありますので、だからやはり、先ほども自治大臣が述べたように、各党の御意向も十分考えながら、自民党多数でございますから、小選挙区法をすぱっとやって、数はひとつ五年ずつで直そうではないか、こういうような意向をそのまま私は立法することはできないのであります。  ですから、皆さんの御意見も十分拝承しながら、日本の民主政治、議会制民主主義の大本に触れる問題でありますので、早く是正しなければならないということと、そして現状を十分踏まえてい  い結論を出してまいりたい、こう言っておるのでございますから、これらの多数の自民党やその他の、面積割りも入れなさい、この公職選挙法に手をつけるんならそういうこともしなさい。しかも、政治資金規正法の中とか公職選挙法のいままでの改正の中には、政党中心ということになっておるのです。政党中心の活動をだんだんふやしていこうということで改正されてきておりますが、政党中心でもって活動するならば、小選挙区であって、そうして各党の代表が政策で争うべきである。中選挙区のままで政党活動をずっと拡大をしてきたことは、誤りではないかという意見も広くあるのです。ですから、政府には定数是正の問題だけではなく、定数是正に手をつけるならば、そういう根本的な問題に対しても手をつけようという議論がございますが、しかし私は、少なくとも自由民主党が有利になるからとか、自由民主党が圧倒的にそういう意見を支持しておるからといってそれをとることはできない、こういうことで慎重に検討をしておる段階でございます。
  262. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 第八次選挙制度審議会を発足させるのかどうか、こういうお尋ねにつきましては、いまそういう考えはございません。それは、御承知のように本来答申という形であの報告がもたらされるべきであったわけですが、にわかに国会が解散されるというようなことから、各党代表の議員が資格を失ったというようなことから報告の形になった。総会で十分議せられたと言えないような点もないわけではありませんが、相当権威のある、尊重していい報告が出ておりまするので、まずこれに基づいて十分検討をし、いま総理も申し上げましたような方向を十分留意して、選挙法の改正全体を見てみたい、こう思っております。
  263. 松本善明

    松本(善)委員 総理のような意見でいけば、選挙制度の改革問題とやはりからめて考えてみる、これでは私は定数是正の問題は進まない。私どもの言っているのは、法律どおりやれということであって、別表を改正するならばこれはできることなんです。法律のほかのところをいじらなくても、別表は五年ごとに改正することになっておるものです。にもかかわらず、これを私たちの提案どおりおやりにならぬということは、これは政府が法律違反をあえて犯しているということだということを指摘をして、別の問題に移りたいと思います。  私は、昨年の通常国会予算委員会で、学園における暴力の問題を取り上げました。早稲田大学における革マルの暴力によって登校さえできない学生があるということを問題にいたしましたが、そのときに、セクト間の問題でむずかしいというような答弁もあり、きょうもまたその趣旨のことが言われました。  私は、そこで重大に思いますのは、そういう口実のもとに実際上は何もされてこなかった。私が取り上げたのは昨年の四月でありますけれども、その後昨年の十一月八日には早稲田で殺人事件が起こっております。私が提起をしましたときに直ちに、あるいは文部省、あるいは国家公安委員会、こういうところが直ちに処置をとっておるならば、このような犠牲者を生まなくても済んだのではないかと私は思います。このことについての政治責任をどのようにお考えになっておるか、お伺いをしたいと思います。
  264. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 まず、私からお答えを申し上げます。  暴力の事犯をなおざりにするなどというようなことは、これはあり得るはずがございません。したがって、警察としては、少なくとも今回のあの早稲田の事件のごときは、治安と日常の平穏な生活に彼らが完全に挑戦をしたものというわけできびしく取り締まろうということで、従前もいまも変わりない態度で臨んでおります。
  265. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 いま、セクト間の対立でむずかしいという答弁があったようにおっしゃいましたが、私、その答弁は存じておりません。しかし、事実セクト間の激しい対立が行なわれているわけでございます。たとえば、文学部が革マルだとか、あるいは法学部が民青だとか、いろいろいわれておるわけでございますし、これらのセクトが学外のセクトとも密接に関係を持っておるわけでございます。そういうことで荒れに荒れているわけでございます。幸いにしてこのごろでは、激しい乱闘が起こった場合に警察を導入する、そういうことにつきましての警察アレルギーも漸次解消しつつあるんじゃないだろうか、こうも思うわけでございます。この間、早稲田大学の中で学生部長が学生に両腕をかかえられて構内を連れて回られている、そういう写真を私が見まして、学園の中で暴行、脅迫が行なわれているのに、これがそのままに見過ごされておる、たいへんなことだという感じを持ちました。同時にまた、いま早稲田大学の責任者の一人は、これでは学校当局が警備力を持たなければとても秩序を維持できない、こういうことも言うているわけでございます。  私は、こういう事態を考えますと、乱闘が起こった場合に警察を導入するだけじゃなしに、現在、いまの早稲田大学に警察のパトロールを頼むべきじゃないか、それ以外には秩序を維持できないじゃないかと、こう思うのでございまして、ぜひ日本共産党の御賛成を私は得たい、このことを提案申し上げたいと思います。
  266. 松本善明

    松本(善)委員 文部大臣が事態を何ら認識をしてないということは、もうきわめて明白です。私は、時間があればそれを詳細にいたしますけれども、時間がありませんので、これ以上はこの問題はやりませんけれども、実はこれに関係をして申したいことがあります。  これは、部落解放運動の中でもその暴力事件というものが起こっておるわけです。この問題を聞きたいのですが、吹田の市長の榎原さんという人が、診断書の写しを私はここに持ってきておりますけれども、この榎原市長が、外傷性頸部捻挫と前頸部擦過傷の病名により、今後約十日間の通院加療を要すという診断書をもらって、これは昨年の九月二十七日に起こった事件であります。で、九月十八日に吹田市の寿保育園というところで、解同の大阪府連の幹部が、子供がけがをしたことを差別であるということを口実に、保母を深夜まで帰宅をさせずに脅迫をするとか、保母を帰宅させるために市当局に要請に行った吹田市の労働組合の人の三名に集団暴行を加えるとかいうようなことが起こり、そういうような経過の中で二十七日に、吹田市の解放会館というところで、保母五名と父母の会の代表五名とが懇談会をする、それに市長が立ち会うということになった。ところがそのときに、その解放同盟の一人の人がやってきて、どう責任をとるのだというようなことを言って市長に襲いかかって、結局けがをさせたということなんです。  私は、ここで総理に聞いておきたいと思いますのは、自治体の市長に対して公然とこういうような暴行が加えられて、しかもこの加害者は何ら処罰もされてない、逮捕もされてない、こういう事態を一体どう考えるか、総理にお聞きしたいというふうに思うわけです。
  267. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私が担当ですから、私が先に申し上げます。  これは自治大臣という面からも関係いたしますし、国家公安委員長としても関係するわけでございますが、かりそめにも市民の信頼を得た市長が暴行を受けるなどということがあっていいものじゃありません。したがいまして、当然警察当局としては厳重にこれを取り調べするというたてまえでやっておるわけです。  ただ、いまお尋ねの事件は、私も赴任以来報告を詳細受けたわけでありまするが、御承知のように、現在刑事訴訟法は証拠第一主義ですね。そこで、この暴力行為があったということについて、まず被害者である市長さんに、大阪府警ではぜひひとつ実情について御説明を願いたいというので再三御連絡をしておるわけですが、どういうものか、この被害者である市長が御出頭いただけない。あるいはこちらから参りまして、しかるべきところでお話を聞かしてもらいたい、これはまたあとに因縁が残ってもお困りでしょうからというわけでお呼びかけをしても、会っていただけないというのが実情です。そのほか、当時これを目撃しておったというこの参考人、これらにも呼びかけをするのですが、どうも事情聴取が不能であるというような形で、現に加害者が逮捕されない。一体どうしてだという詰問であるわけですが、被害者自体がなぜ出てよく説明をなさらぬのか、また捜査当局に御協力が願えないのか、私どもとしてもはなはだこの点は遺憾に思っておるわけでありまして、今後、もしこの事件に御関係がおありであるならば、被害者に警察当局に御協力をいただいて真相がもっと究明されるように、そして証拠第一主義が貫かれるようにしていただけると、たいへんこちらとしても責任が果たしやすい、こう考えております。
  268. 松本善明

    松本(善)委員 それには経過があるわけです。この前にもその市長が暴行をされて市役所が占拠をされているというような事態が起こり、あるいは前市長にも暴行が加えられる、そういうことがずっと一貫して行なわれながら何ら処罰もされない、逮捕もされてない、こういうことがあるわけです。  たとえば、一九七一年の六月七日に、榎原市長を糾弾すると称して、約六百人の解放同盟員が、殺してやるというようなことを叫びながら庁舎に押しかけて、市長を七時間不法に監禁をし、市長室には三、四十名の者が乱入をする。立錐の余地もないような状態なんです。一緒にいた四人の弁護士は外へ押し出すということです。そこで市議会は流会になり、そして共産党の松本一郎という市会議員は加療七日間を要する負傷をするということも起こる。あるいは一九六九年の六月三日から六日にかけては、前市長の山本治雄氏、この人の自宅に解同の大阪府連五、六百名が家を取り囲むあるいは侵入をする、四日の夜から五日の朝にかけて夜通しどらをたたき戸をたたいて、いやがらせや脅迫をやる、市長宅で燃料用に積んであった割り木を無断で持ち出してかがり火をたく、庭の中にテントを張り、それから水道もガスもとめ、電話も切ってしまう、こういう事態があってもそのままになっている。  そういうような状況の中で、市長は政治的な判断もありましょう。あるいはいろいろな、市民に対して告訴をするとか、そういうことについて考えるとか、いろいろな問題があろうと思います。私はしかし、そういうことのいかんにかかわらず、市長がどのような態度をとろうとも、市長は単に個人ではない。住民から支持を受けて出た市の代表者です。これが暴力を受け、そしてこれはこの権威が傷つけられるというようなことがあって、どうして民主主義が守られるか。私は市長の態度のいかんにかかわらず、警察はもちろんそういうことがあったならば、直ちにそれは十分に、その程度の証拠資料を集めることは、市長が何も申されなくても可能なことであります。当然にやらなければならないことだと思いますけれども、その点はどう思われますか。
  269. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私、冒頭に申し上げましたように、そういう暴力行為というものは徹底的に取り締まるべきであるというふうに考えております。ただ、このケースは、まあきわめて例外的といいまするか、市長及び関係者一切が捜査に協力をしてくれない。いかにも残念に思っておりますが、いま一々例示をされました件については、警備局長も来ております。関係者もおりまするから、詳しくその当時の警察側から見た状況について、ここで時間があれば申し上げます。
  270. 松本善明

    松本(善)委員 私は、ここで問題にしておきたいのは、市長側の態度いかんにかかわらず、十分に事情を調べることは可能であります。そしてそれを防がなければならない。この点についての考え方ですね。先ほどは市長側が協力してくれないというようなことを言ってやっていますけれども、私はそれは十分に、なぜそういうことが起こるかということは考えられることだと思います。(「自分で告発すればいいじゃないか」と呼ぶ者あり)だから、これについての態度を厳正にとられるということを望んで、私はもう一度答弁を求めて質問を終わりたいと思います。
  271. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いま事務当局の意見も聞いてみましたが、前にお読み上げになったくだりについてはだいぶん異論があるようです。しかし、この問題についてはどうも捜査に全然協力がいただけない。いかにも困った。そこで、いま不規則発言もあったようでありまするが、こういう事態はやはり暴力を憎むというたてまえからいうならば、告訴をしていただいて、司直の手によって黒白をつけるということも可能なわけでありまするから、そのようにせられたいと思っております。
  272. 松本善明

    松本(善)委員 終わります。(拍手)
  273. 根本龍太郎

    ○根本委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。      ――――◇―――――
  274. 根本龍太郎

    ○根本委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  来たる五日、阿部昭吾君の質疑の際、日本放送協会会長の出席を求め、意見を徴したいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  275. 根本龍太郎

    ○根本委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決定いたしました。  次回は、来たる五日月曜日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十九分散会