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1973-02-02 第71回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二日(金曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 根本龍太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小澤 太郎君    理事 小沢 辰男君 理事 田澤 吉郎君    理事 湊  徹郎君 理事 阪上安太郎君    理事 辻原 弘市君 理事 谷口善太郎君    理事 山田 太郎君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君       伊能繁次郎君    臼井 莊一君       大野 市郎君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       小平 久雄君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       塚原 俊郎君    灘尾 弘吉君       野田 卯一君    野原 正勝君       福田  一君    保利  茂君       細田 吉藏君    前田 正男君       松浦周太郎君    松野 頼三君       宮澤 喜一君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    大原  亨君       北山 愛郎君    小林  進君       田中 武夫君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    細谷 治嘉君       安井 吉典君    津金 佑近君       中島 武敏君    不破 哲三君       岡本 富夫君    正木 良明君       安里積千代君    小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         農 林 大 臣 櫻内 義雄君         通商産業大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         郵 政 大 臣 久野 忠治君         労 働 大 臣 加藤常太郎君         建 設 大 臣 金丸  信君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       江崎 真澄君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田佳都男君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君         防衛庁長官官房         長       田代 一正君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省保険局長 北川 力夫君         厚生省年金局長 横田 陽吉君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林大臣官房予         算課長     渡邉 文雄君         農林省構造改善         局長      小沼  勇君         農林省農蚕園芸         局長      伊藤 俊三君        農林省畜産局長 大河原太一郎君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         通商産業省貿易         振興局長    増田  実君         通商産業省企業         局長      山下 英明君         通商産業省重工         業局長     山形 栄治君         通商産業省鉱山         石炭局長    外山  弘君         通商産業省公益         事業局長    井上  保君         運輸省鉄道監督         局長      秋富 公正君         建設政務次官  松野 幸泰君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省都市局長 吉田 泰夫君         建設省道路局長 菊池 三男君         建設省住宅局長 沢田 光英君         自治省財政局長 鎌田 要人君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      佐々木 直君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月二日  辞任         補欠選任   森山 欽司君     宮澤 喜一君 同日  辞任         補欠選任   宮澤 喜一君     森山 欽司君     —————————————本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 根本龍太郎

    根本委員長 これより会議を開きます。  昭和四十八年度一般会計予算昭和四十八年度特別会計予算及び昭和四十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。中澤茂一君。
  3. 中澤茂一

    中澤委員 昨日の問題の防衛問題、総理答弁を聞いておりましたところ、冒頭、私はとおっしゃっております。その私というのは、一体総理大臣の私なのかあるいは国防会議議長の私なのか、いずれの私だかちっとも明確じゃない。田中個人の私なのか。その点をきのうのいきさつから冒頭一応お聞きしておきたい、こう思うわけです。
  4. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私はと申し上げたとおり私でございます。私が防衛庁に対して勉強を依頼したわけでございます。そして、その私の依頼に対して防衛庁から報告がありましたので、私はこう考えておりますとこういうことでございますので、それで御理解を賜わりたい。
  5. 中澤茂一

    中澤委員 どうもそれは簡単に御理解ができないわけです。というのは、少なくとも私は、政府というものは一体のものであり、連帯のものである。それは任免権総理にありますよ。首切ったり、かってにかえる権利は総理にありますよ。しかしながら、政治責任はこれは一体化されているものだ。そうなれば、防衛庁長官の言ったことが総理個人の私ということであれば、それならば防衛庁長官も無責任答弁であるし、総理答弁もまさに無責任答弁だと思うのですよ。その辺を一体内閣一体性というものを、政治的連帯というものを総理はどう考えておるのですか。
  6. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 内閣連帯して国会責任を負うということでございますから、私の発言というものが内閣総理大臣としての発言として理解をされることは当然だと思います。当然であります。
  7. 中澤茂一

    中澤委員 総理大臣発言とすれば、総理大臣個人というものはないですね。総理大臣というものは内閣主宰者であり最高の責任者ですからね。政府を代表する者、こう解釈してよろしいですか。
  8. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は現に内閣総理大臣の職にありますから、私の発言個人的発言と区別をせられることは当然であります。しかし、内閣の正式な意思として決定するには法律所要手続をとらなければならないことは当然でございます。私は内閣総理大臣でございますし、その職にありながらもいろいろな発言をいたします。院外においてもいろいろな発言をいたします。この発言がすべて内閣決定によるものでないということもあることは御承知いただけるわけであります。国防会議議長としての正式意思決定ということになれば、国防会議の議を経てきめなければ、国防会議議長といえどもきめ得ないわけでございます。過程においていろいろな考え方もし、いろいろな試案も出し、いろいろな考え方も述べて国民の批判を求めるということは当然存在することを理解していただきたい。
  9. 中澤茂一

    中澤委員 とにかくこの問題は、四次防を上回る五次防に足を突っ込んだ、きのうの防衛庁長官の平和時における戦力の発言なんですね。ですから、これは私は重大だと思うのですよ。われわれ社会党とすれば、そういう四次防さえわれわれは否定しておるのですから、五次防に踏み込んだようなそういうものは当然了解できないわけです。そういう点について、政府の部内、これをささえる自民党の中においても意見がいろいろ混乱しておるのではないか。たとえば、きのうの二階堂君の発言は完全に否定、それから宮澤さんの質問を聞いていると何だかこれもちょっと意見が違うというような、これをささえる与党内部において相当意見が分裂しておるという感じなんですね。だから、総理を代理する官房長官が、これは全然政府見解じゃないという否定をするなら、これは一体どういうことかというのが私のほうではけさ議論になっておるわけです。その辺をひとつ明確にしてもらいたいと思うのですね。
  10. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 防衛庁長官に対して勉強をお願いしたのは、私の立場によって行なったものであって、所要手続を経て閣議決定等によって行なったものではありません。これは各大臣に対してもこのようなことを研究してもらいたいということは間々申し上げるわけであります。きのう宮澤君の発言に対して、外貨の活用に対して外為特会法の改正などについても考えてはどうかということに対しては、そういう必要もあると思います、こういう発言もしておるわけであります。これは各省大臣に対して勉強を求めたり、いろいろな対案に対して幾つかの対案を求めるということは絶えず毎日やっておるわけであります。しかし、この防衛庁長官に対する平和時における防衛目標防衛力限界というような問題は、国会でその後議論になり、報告があればこれを国会にお示しをいたしますということを述べておるわけでありまして、きのうお示しをいたしたわけであります。示したものに対して、私にどう考えておるかということでございますから、きのうの朝報告を受けて、直ちに御質問をいただいたきのうの段階において、これを尊重し妥当なものと私は考えておりますということを述べたのはすなおなことであって、国民皆さま理解できると思うのであります。そういうことでひとつ御理解を賜わりたい。
  11. 中澤茂一

    中澤委員 まあその問題は、いずれわが党としてはあとでやるといたしまして、いろいろ四次防とからんで五次防まで先取りしたあの計画というものは了承できません。今後の問題としてそれはやるといたしまして、私は、この総括質問の終わるまでに——こういう不明朗な形で、何が何だかわからぬような形というものはわれわれ社会党としては了承できないわけです。  そこで私は委員長に要望いたしますが、総括質問の終わるまでに何らかの、いま少しまとまった政府見解というものを私は出してもらいたい。国民も非常にこれは不明朗だと思うのです。しかも五次防にまで足を踏み込んでおる計画というものは国民も私は了承できないと思うのです。だから、どうかそれは委員長において、総括質問終了、そこまでにいま一度政府の統一的なはっきりした見解をひとつ委員長が取りはからっていただきたい、こう要望いたします。
  12. 根本龍太郎

    根本委員長 ただいまの要望につきましては、後刻理事会等にはかりまして善処したいと思います。
  13. 中澤茂一

    中澤委員 まあそういうことで一応私としては了承しておきましょう。  そこで、きのう北山さんが財政経済問題中心のものができなかったわけで、私は、財政経済中心にこれから政府の所信を聞きたい。  まず第一に田中総理に伺いたいことは、予算編成過程で、ああいうばかなことはもうやめたらどうかと思うのです。御承知のように、この編成過程におけるあの騒ぎというものは何ですか。しかも調整財源というものは今年の場合千五百億しかない。千五百億といえば総予算の一分強でしょう。その調整財源の千五百億だけ残しておいて、これを全国から何万という人が東京へ上がってきて、ことしなどは東京旅館ホテル全部満員なんです。私も実は沖繩から来た人に宿を取ってくれと頼まれまして、どこへ電話をかけても予算陳情満員なんですよ。こういうばかな非科学的なことをやめるべきである。しかも、千五百億の中は御承知のように九百億は道路財源で、あとの六百億を奪い合うためにああいうばか騒ぎを、東京じゅうひっくり返すような騒ぎをやるという、予算編成のあの過程の最後の詰めの方式はやめるべきだと思うのです。六百億なんというものは総予算からいったら〇・三か四でしょう。それをああいう、各省折衝課長局長、次官、大臣、全く見ていれば、これはチンドン屋騒ぎですよ。日本政治がこういう非科学的なことをやっておるところに私は国民不信があると思うのです。だから、ああいう予算編成というものはもうやめると、政府予算編成権があるのですから。もしあれをどうしても政府は継続したいというなら、少なくともわれわれ野党側要求も受け入れて、千五百億ばかりではない、一兆五千億、一割ばかり残しておきなさい。それでわれわれ野党側要求もごもっともだと思うものはこの一兆五千億の中で調整していきましょう。これならば予算国民的合意というものは成り立つわけですよ。そのいずれかの道だと思うのです。一兆五千億残して、予算折衝過程野党側意見もどんどん入れて国民合意予算をつくるのか。ああいうばかな、千五百億を残して、東京じゅう旅館ホテル満員泊まり場所のないような、あの陳情費だけで何十億でしょう、こういう不合理な予算編成はもうやめたらどうか。私も実はことしも正月から来ていて、全くもうしまいにはあほくさくなっちゃうですよ。六百億、〇・三か四の予算の奪い合いで東京じゅう何万という人で埋めて、国会周辺自民党周辺交通麻痺じゃありませんか。この付近、タクシーでも何でもみな集まっちゃう。あれをひとつ、どうです総理。これは大蔵大臣じゃないですよ。あなたは決断実行の人だがら、よろしい、来年からやめますと、決断しましょう。
  14. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 予算に対しては、申すまでもなく八月三十一日まで各省大臣大蔵大臣に概算の要求をし、大蔵大臣対案をつくって閣議に付議するということになっております。この閣議に付議するまでの原案の策定過程においていろいろな請願陳情等が行なわれておるわけでございます。憲法及び法律請願の道を民主政治の最も大きなものとして取り上げておるわけでございます。そういう意味で、国民大衆予算編成過程においてみずからの意思を反映せしめようという行動に対してこれを制約するということは、これはできません。できませんが、いろいろ御議論がございますように、東京じゅう旅館がというような現状、これが望ましい姿であるかどうかということに対しては、いろいろ民主政治というものを完成する過程においてお互い勉強していかなければならぬ問題だと思います。これは政府自民党が集めておるのじゃありません。ここをひとつ明確にお願いをいたしたいと思うのです。これは(「役人がやっておるじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、役人がやっておるということがあればそういうことは正します。(発言する者あり)そういうことがあればもう——私はないと思いますが、各省役人などが集めておるという事実があれば、これはもう政府として正してまいりますが、国民予算に対するみずからの意思の反映という手段としての上京、請願陳情というものを阻止するわけにはいかぬわけであります。いずれにしましても、野党の皆さんの御協力も得ながら、もっと効率的な予算編成ということを絶えず勉強していかなければならぬものであるということに対しては十分勉強してまいります。
  15. 中澤茂一

    中澤委員 いや、勉強のことを言っておるのじゃないのだ。決断実行のことを言っておるのですよ。それは荒舩君なんかも、そうだ、大賛成だと言っておるでしょう。与党の中だって賛成があるんじゃないか。それは実際、あれをやっておる人はみなあほくさいと言っているですよ。与党議員も、何だ、こんなあほくさいことをと。だから、それは来年はあの過程のああいう騒動は、私は、もしどうしても民意を吸収するというなら、それは各団体代表自民党三役と話し合う、これ以外の陳情は一切受け付けない、これも一つの手だと思うのですよ。そうすれば、その人たちだけ来ればいいわけだ。ほかは有象無象と言っちゃ失敬だけれども、それは失言だけれども、ああいう騒ぎはよしなさいよ。同時に各省大臣に言っておくが、だめですよ。いま私のほうから役所が動員しているじゃないかと言うんだけれども、ことし特にひどかったのは厚生省です。こういうことはだめですよ。現に役所が動員しているのですよ、団体に対して。これが通りそうもないから来てくれないかとかやっているのですよ。だから各省大臣も、ほんとうに心あり、日本政治をもっとよくしようという人は、そういう人はやはりああいうことはやめてくださいよ。事実やっておる、役人が。これがあぶないから何の団体来てくれとやっておる。こういうばかなことはお互いにもうやめようじゃないですか。そういうことを私は特に冒頭要求しておきます。  そこで、列島改造というこういうたいへんごけっこうな本を読ませていただきました。この本は、まことに新しい日本がこれででき上がれば、これは極楽日本になりますが、一体この列島改造というこれは、あなたの私見でしょうが、そういう方向政策をお進めになる所存ですか、その辺をちょっと伺っておきたい。
  16. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 お示しになりましたその列島改造論なるものは私の著書でございます。これはしかし、私がかつて自由民主党の都市政策調査会長でありましたときに、都市政策大綱の名において国土総合開発総合利用都市改造政策等を党議として決定をしたわけでございます。それを、テンポの速い時代でありますので、時代に合わせながら修文をしたり例をあげたりという意味で世に問うたわけでございます。非常に大都市に対する過密の状態世界的傾向でございまして、日本もその例外たり得ないというよりも、その過密は超過密というような状態でありますので、このままに推移せんか、われわれの生活はむしばまれて、高い成長のおかげを受けてわれわれが望ましい生活を続けることはできない。その意味で目を転じて俯瞰的、鳥瞰的に見たときに、狭いながらもまだ日本には利用できるものはたくさんある、そういう考え方一つの前提を置きまして一〇%の成長を続けるとすればこうなります、八・五%ならこうであります、七%ならこうでありますというような一つの案を基準を置きまして、そして計算をしたものでございます。これが成長率が半分になっても、いままでのように無制限な都市集中というものは可能ではない。公害の問題や、また電力の問題とか水の問題とか土地の再配分の問題とか、きれいな空気ということを考えるには、どうしても流れを変えて国土全体に目をはすべきである、こういう考え方一つ考え方を述べたにすぎないわけであります。
  17. 中澤茂一

    中澤委員 この本を一読させてもらったけれども、農業がいままさに崩壊しつつあるわけですね。そうすると、列島改造をやった場合、日本農業というものは一体どうなっちゃうのですか。この農業編が約九ページある。これを読んでいると、これをやれば農村が全く楽園ができるようなことが書いてある。楽しい農村であると。しかしそんな現実がこの政策遂行で可能なのかどうか、農業問題というものは一体どうなっちゃうのですか、この列島改造を推進すると。特に私は交通ネットワーク、これが日本農業崩壊を促進すると見ておるのです。日本農業はますます崩壊過程を早めていく、そう私は見ておるわけですが、総理はそういうことはないとおっしゃるのですか。
  18. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 その中には一つ方向示しておるだけでございます。しかし将来の日本農業のあり方というものは、国会の審議を通じ、これからお互いが積み重ねて、理想的な農村地帯をつくらなければならないということは言うをまたないわけでございます。その七、八ページに及ぶような描写だけで将来の農村理想像というものが描けるものだとは考えておりません。ただ、このままにして都市集中ということを是認しますと、農業崩壊するおそれがある、こういうことを述べております。それはアメリカでは一次産業比率が四%、拡大ECでは平均六%くらいになっておりますが、やはりある程度の長期見通し計画に立って、一次産業の位置づけを考えていかないと、自然の流れにまかせておりますと、これは都市にすべてが集中をされて、農業というものは全く過疎であり、しかも二次産業や三次産業と比べて高収益を受けることができないという、これはアメリカをのぞいてほとんど一様にそうであります。どうしても収入の面から恵まれない一次産業から人はどんどん出ていく。日本も三ちゃん農業といわれておったような時代があります。これは三ちゃん農業が二ちゃん農業になり老人農業になってしまうというようなおそれがあります。ありますので、そうではなく、過密なもう限界をこしておると思われるような二次産業や三次産業を俯瞰的、鳥瞰的に見て国土全体に及ぼすことによって専業農家はどうする、兼業農家はどうなる、少なくとも農業人口相当数が半年間も大都市に出かせぎに出なければならないような事態を正さずして、私は理想的農村などは論じられないと思うのです。そういう意味農村というものの理想図をかきながら、やはりかくためにはどうしても列島改造、そうでないと日本の地形、地勢上の制約から考えて、すべてを五町歩、十町歩ずつにして、農家人口がいまの十分の一になればいいのだというような計算で、とてもアメリカ式の農村の見通しなどを立てられるわけがありません。そうすれば農村の現状というものを把握しながら、二次、三次産業をどのように組み合わせることによって望ましい一次産業、その中に農業というものがどうなるかということを考えていくべきだ、そういう考え方農業の将来というものを考えておるわけでございまして、日本では国際的に対応できる農業、それから二次産業、三次産業と同じように年率一五%に近いような賃金アップというような農業というものがほんとうに農業だけですべてできるのかというと、地域的にはむずかしい問題が存在することは御承知のとおりでございます。そういう意味農業に対してはまた農林大臣からも御答弁申し上げますが、理想的な農村というものをつくっていこう、こう考えたわけでございます。
  19. 中澤茂一

    中澤委員 総理答弁過多症だよ。時間制限があるのだよ。何も人の聞かないことをべらべら言ってもらう必要はない。ぼくの聞いていることは、列島改造をやったら農業はどうなるのだと言っておるのですよ。  じゃ、具体的に聞きましょう。交通ネットワーク一つの目標でしょう。これによれば、高速道路が一万キロでしょう。それから新幹線が六千キロでしょう。一万六千キロでどれだけの日本の高生産農地がつぶれるという計算をしておりますか。あなた、この数字がわからなかったら農林大臣でもいい、どれだけつぶれるか、それだけでいいんです。
  20. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 いま私の名前で数字がわかればということでございますが、ただいましっかりした計算したものはございません。
  21. 中澤茂一

    中澤委員 全くそれは無責任じゃないですか。今度の予算というものは列島改造というものを相当盛り込んだ予算ですよ、道路の伸び率を見ても。その場合、もはや列島改造のスタートをこの予算で始めるわけでしょう。その段階において、高生産農地がどれだけつぶれるかわからないと言う。一体四十八年度予算というものは、列島改造を主体にしている予算じゃないですか、私に言わせれば。それが全然何もわからぬ。そういう科学性と合理性がないところに日本政治の問題があるんですよ。それは総理の私見だから、私もこのことだけで問題を追及していこうとしているんじゃないのです。しかし日本農業がここまで崩壊してきたじゃありませんか。これは三十五年からです。池田高度成長経済を出したときから、日本農業崩壊過程に入っちゃった。現に、農業所得が——出かせぎ所得のほうが六割になっちゃったでしょう。農業所得は四割でしょう。なぜこうなったかということを、ほんとうに真剣に考えてきた人がいますか、大臣の中で。私は、一応皆さんに原則論を教えておきますよ、どこに問題があるかということを。というのは、三十五年の池田高度成長経済で出したGNP、所得倍増計画というものは、二つの経済原則を持っているわけです。  一つは何かといえば、経済合理主義の原則を持っているわけです、所得培増のためには。それは否定するんじゃないですよ、GNPを上げるためには、この原則がなけりゃ上がっていかぬのだから。いま一つは、資本効率化原則というものをがんと三十五年に据えたわけですよ。これが農業崩壊の原因なんですよ。農業というものは、経済合理主義の適用できない産業なんです。合理主義をやるには、たとえばここでこの灰ざらを千個つくれる機械があった、中小企業でも。技術改革で二千個の機械ができておる。直ちにこれを振りかえれば二千個できるわけだ。生産性は倍に上がるわけです。合理化はできるのです。農業は、米は年に一回しかとれないんですよ。まあ麦がつくれるところで二毛作だが、これは政府が自由化したから麦なんかいまつくる者はいない。約二百万町歩近い耕作可能面積が、いま放棄されておる。この経済合理主義原則には農業というものは適合しないんだ。これを、農業まで企業として強引にはめたところに、三十五年から崩壊過程へ入ってきている。いま一つは、資本効率化原則というものは、農業にはこれはどうしても適合しない。たとえば土地改良をやった、構造改善をやった、じゃその次に、四石の米がその翌年から八石とれるかというと、とれないんだ。同時に、資本回転率というものは絶対ないんだ、農業には。工業やあるいは商業でも、ある程度資本回転率がありますよ。ところが農業というものは、絶対、資本回転率がないんだ。一年に一回しか米はとれない、リンゴもとれない。農産物で二毛作があるところは、そんなものは日本で西南暖地の若干しかないんだ。だから、農業政策の基本は一体どこから出発するかといえば、まず経済合理主義原則と資本効率化原則をはずしたところから農業政策が出発しなければ農業というものは成り立たないのだ。だからアメリカのような大企業農業、御承知のように一農家が三百町歩、五百町歩やっておる農業でも、政府は保護政策をとっておるじゃないですか。小麦の価格支持政策をくずさないじゃないですか。企業農業でさえそうであるのに、日本の零細農業というものがいまのような形でGNP主義を進められていったから、こういう結果が出てきておるのですよ。だから農林大臣、どうです、基本的に、そういう基本的な問題を把握してないから農業政策が立たないのですよ。だから農業基本法——十二年前この国会で、しかもこの予算委員室で、政府の出した農業基本法と私がつくり上げた農業基本法と一週間にわたって、われわれがそっちへすわって論戦をしたんだよ。こういう方向農業を持っていく以外方向はないじゃないか。そうして、おたくのほうの農林委員の諸君も、その八割がここで論戦して、なるほどそれ以外ないのかもしれないという、首肯しておるんですよ。だからあの農業基本法そのものが、いま言うとおり経済合理主義と資本効率化原則というものをはめているからだめなんだよ。これを取っ払うという考え方、そこから新しい農業政策が出発するんですよ。保護政策をやらないで農業というものは何で生きていきますか。まずはそれから日本農業崩壊しておる。保護政策をやっておるのなら、何で一体農業で食えないのだ。なぜ十数年間、基本法をつくってから政府は見向きもしなかった。私は、農民の立場からそんなことは了承できないのだ。しかし、いまからやるとしても一体どこから出発点にするのか、何を出発するのか。小手先の保護政策ではどうにもならない段階に農民は追い込まれておる。だから基本的に今後の農業政策というものを、この二つのワクをはずしたところから出発しましょう、そこから問題点の発展が出てくるのですよ。どう思いますか、農林大臣
  22. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 中澤委員の御所見を交えてのお話は、日ごろ承っておるので、私にもよく理解のできるところであります。  そこで、就任後間がないのでありますが、私がたびたび申し上げて恐縮なんでございますが、昨年十月に農業団体の関係の方あるいは学織経験者の方々によって、御承知の「農産物需給の展望と生産目標の試案」を公表をしておりまして、それでこれをもとにしてこれからの農業をやっていこうということにつとめておることは、たぶん御承知だろうと思うのであります。その中で私のいま一番問題にしておるのは、一体自給率をどこに置くかということでございまするが、大体この試算でいきましても、七〇%以上のところを目標にしておるようでございますが、私自身としては、昨年来の国際的な食糧不足の状況から、日本農業あるいは日本国民生活に影響しておる点から考えると、飼料をもできるだけ自給するような方向でもう少し自給率は高くしたほうがいいのではないか、そういう気持ちがあるわけでございます。そういう一応の眼目を置いた中において、自給率が七三、四%であれば、その中でやる農業については、お話のとおりに保護的な要素が非常にふえていくことは当然であると思うのです。それから、現に価格安定制度も主要農産物の七割程度を対象にしてやっておるので、きょうの中澤委員の前提は、いかにも日本農業が異常な崩壊をして、もうだめになっておるというようなことが前提になっておりますけれども、実際は、私はそうじゃないと思うのですね。農村の皆さんの御努力で非常なお米の増産ということで、需給がアンバランスになった。その行き過ぎをどうしていくのかということから、そこにこれを転換して、他の必要な、需要の増大する農産物のほうへ持っていこう、それについては十分保護もしていこう、こういう姿勢をとっておることを御了解いただきた  い。  それから、先ほど私に、高速道路や道路のことから、どれぐらい農地が壊廃するのだということですが、私のほうの立場からいえば、いま申し上げた生産目標も一応どの程度の農地の壊廃になって農地が変わっていくかという計算は、農林省のほうの立場からは出ておるので、もし必要があれば後ほど数字は申し上げます。ただ、道路そのものずばりで、私の名前を言われたから、率直に、私は存じ上げない、こう申し上げたので、御了承を願いたい。
  23. 中澤茂一

    中澤委員 それは農林大臣日本農業崩壊していないと言うけれども、じゃ一体この膨大な出かせぎは何で出るのですか。それは一部都市近郊農業の畜産に転換した、たとえば養鶏とか養豚とかそういうことに相当大規模投資した農家は、これは農業として成り立つ可能性は私も認めていますよ。総体的日本農業全体をぼくは言っているんですよ。一部のことを言っておるのではないんですよ。だから、そういうふうに事実上もうそれは農民として食えないという事態ですよ、これはまさに崩壊じゃないですか。だからこれを社会保障で救うなら救うで、一つのりっぱな政策なんですよ。それならば農民年金なんて、あれは何ですか、あの年金は。あれで農民がどうして食えますか。二十五年たってあれで食える農民がいますか。だから、どうしてもこれは一部はもう社会保障で救わねばいかぬというなら、そういう政策をりっぱに立案すればこれはりっぱな一つ政策ですよ。それもやらない。何もやらない。出かせぎに行って、困る人はそっちで働いて食っていきなさい。ひとつも愛情のない農政じゃないですか。それを私は言っておる。つまらぬ補助金は私は知っていますよ。そんなものは日本の農政転換になりますか。だから、基本的な立場から農政転換をどうするかというんですよ。  そこで、あなたいま自給率、自給率と言ったが、自給率を向上させるにはどうするのですか、政策的に。どうしたら自給率は向上しますか。百五十万町歩放棄されているこのいま裏作のできる水田を、かつてのようにどこを汽車に乗っても春は水田に麦が全部植わっている、ああいう形にすれば自給率は上がってきますよ。そこでさっきあなたは、ほかの生産のほうへ転換させた——じゃミカンはどうなっていますか、転換させたミカン。ことし何ですか、あれは。そういうふうに常に農民は不安と動揺と混乱の中にあるんですよ。それは政府政策が貧困だからこういうことになってくるんじゃないですか。要するに、生産に計画性を持たせないところに欠陥があるんじゃないですか。自給率をどうやって上げますか。自給率のまず上げる根本をひとつ伺いましょう。答弁は簡単にしてくださいよ、あと財政問題がうんとあるんで。
  24. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 中澤委員のぺースに巻き込まれるとなかなか答えがしにくいのですよ。しかし出かせぎの問題は、先ほど総理が言われたように、それだから農工一体的な高能率の農村で行こう、特にあなた方が指摘しておるように、過密過疎というものは大きな問題なんだから、それを解決する上にも必要なんで、そこに日本列島改造の妙味もある、こういうことを御承知いただきたい。  それからミカンのことは、これは確かに私ミカンの実態を、計画の作付とどうだというと、やはり正直にいって作付は相当進んでいます。だからこれはやはり、米がいけない、それ果樹ということの、結局みんながやむなくそこへ行ったということです。しかしミカンの場合は、私言いにくいことなんですが、今度農林省のほうを統計情報事務所にしていただきましたね。これは情報が早く、そして農業団体協力を得ていただけば、早目に摘果をしてそして対応する方法があったと思うのですよ。しかしそれがちょっとうかつだったと思うのです。  それからいまの自給の問題は、これは先ほど私そのためにわざわざ申し上げたので、価格安定制度も大体七割の農産物を対象にしてやっておって、それであなたのおっしゃるとおり、その自給の範囲の中は保護政策はこれは当然だと思っているのですから、その面のほうの政策を遂行していきますから、稲作を転換しても成り立つように何とかしむけていきたい、こういう考えでおります。
  25. 中澤茂一

    中澤委員 櫻内さん、そんな、おれにしらばくれたって通用しないんですよ。というのは、農安法なんというのは、最初農安法をつくったのは、ぼくは農林委員で、価格安定をやらなければいかぬからということでっくり出した法律なんですよ。あの価格でだれがっくりますか、あなた。基準価格というものを、生産費をある段階まで上げればつくりますよ。それを上げればつくるのに、価格はいつも経済合理主義の原則から、外国価格と見合いながらの低水準価格にしてあるのです。そこに経済合理主義のガンがあるというのです。だから、何も高いものを日本の農民がつくらぬでもいいじゃないか、外国の安いものを買ってくればいいじゃないか、これが終始一貫した政府の態度でしょう。だから農安法が価格安定、引き上げが入っているなんと、そんなことを言ったら笑われますよ。入っていたってそれはただ品目が入っているだけであって、価格基準というものがあんなでたらめなものでどうして農民がつくりますか。もしもあなたがそう主張なさるならば、価格安定法の基準を徹底的に洗ってみましょう、そうしてある程度日本の農民の零細経営の中での生産に間に合う価格に最低保障を引き上げましょう。それならば農民はつくりますよ。そういうことでだんだんだんだん日本農業というものは重大な問題になってくる。あなたは自給率七〇%などと言うけれども、米以外一体どうなっていますか。  これはこのごろあなたの役所からちょっと出させてみたものです。これは簡単な問題じゃないのです。重大な問題に五年、十年後はなってくるんですよ。現に国際連合食糧機構はどういう議論をしていますか。三十年後に人類が七十億になったとき食糧はどうなるのだと議論しているんじゃないですか。ことしのいま大豆が大問題になっている。なぜ大豆が問題になっておるか。日本の自給率はどうなっていますか。これはあなたの役所から、ちょっと持ってこいといってきのう持ってこさしたのです。大豆は三百三十二万トンが必要量なんですよ、日本は。その中で、つくられているのは十二万二千トソなんです。三百二十万トン輸入なんですよ。これ、自給率どうやって上げますか。私が重大だと言うのは、今後国際インフレは食糧から出ると私は見ているのです。現にそうでしょう、木材の暴騰は何で出ました。まさに国際インフレの一環じゃないですか。日本の需要が膨大だ、いままで買っていたのがだんだん外国の木材が少なくなった、輸入量が少なくなった。木材大暴騰で大騒ぎでしょう。家を建てる人はもう家を建てられないじゃないですか、庶民大衆は。今度大豆でしょう。一応自給率をちょっとおもなものだけ見ても、いま小麦の国内生産量は四十四万トンです。国内消費量は五百二十万六千トンですよ。そうすると十分の一の小麦しかつくられていないわけです。大麦は三十六万四千トンしかつくっていない。必要量は百五十五万六千トンですよ。これ、どういうんですか。自給率なんていわれる数字じゃないですよ。これがまだ二割、三割あって、これから政策で自給率を向上させるというなら話はわかりますよ。なたねは二万三千トンしか生産がないです。必要量は四十三万トンですよ。これも十分の一以下です。それから大豆がいま言ったように十二万二千トンで三百三十二万トン、三百二十万トン足らないわけです。その他の豆類も、雑豆ですね、これが日本の生産量二十九万五千トンです。これは北海道中心の、帯広農業が雑豆中心ですが、必要量は六十一万三千トンなんです。だからお正月のおせち料理の中に入っているもので国内のものはないんですよ、もう。全部外国の輸入品なんです。それから濃厚飼料、いろいろな計数があって、これは農林省で出したんだけれども、ぼくはちょっと疑問があって、議論すればこんなことで長くなるからやめますが、濃厚飼料は五百六十万九千トン、この見方は非常に甘いんだよ、私に言わせれば。それはおくとして、必要量は千四百十一万五千トンになっているのです。必要量というか、最初最も近い数値をとらしてみたのです、どのくらいになっているかという。これで自給率向上なんていえますか。だからこれは重大な問題なんですよ、農業問題というのは。いまのうちに本気で政府が取っ組まれないと、十年後には私はたいへんな事態になってくると思うのです。大豆自体でもはや目をさまさなければいかぬでしょう。早く大豆の国内自給量を少なくとも二割なり三割までは引き上げる、それには価格政策をどうするかとか、そういうことをもっときめこまかく具体的に手を打っていかぬと、この自給率を皆さん見てどう思いますか。  このごろ重大な事態があったのですよ。皆さんお知りの人もあるが、去年九十日の海員ストライキやったでしょう。まさに日本の豚と鶏は餓死の直前に来たんですよ。それをなぜ私が知っているかというと、全農連が日本の飼料の六五%のシェアを持っているわけです、かつての全購連が。これがいま十日間でもう底をついてしまった。船は入ってきているが、荷揚げできないのです、九十日ストで。いま一月ストライキをやったら、日本の豚や鶏は全部餓死なんです。そういう事態が現実に去年あったんです。だから、食糧とかこういう問題というものを、いま一度各閣僚諸公も基本的に頭をかえて考え直さないとだめですよ、こういうことをやっていては。しかも、今後どんどんとソ連の凶作による被害が——もはや明らかに全部小麦価格の大暴騰が始まっているでしょう。だから、日本経済そのものが食糧によって外国経済の変動をそのまま頭からかぶってくるわけですよ、この自給率じゃ。だから、これは農林大臣ばかりの問題じゃない。総理、あなた、夢みたいなことばかり言っていないで、農林大臣にどうするということを基本的に建て直させなさい。これに幾ら金をつぎ込んでもいいですよ。さもないと食糧というものを——きのう北山君も、戦争できぬのかという話で食糧問題を取り上げたが、そういう角度もあるけれども、これはえらい時代になってきているんですよ。だから、そういう点において、思いっ切り農業投資にぶち込もう、そういう態度を政府がとらない限りは、この自給率向上なんというものは問題にならぬですよ。だから、それは単に、自給率向上というのは農民がよくなりゃいいという問題もあるが、そうじゃなくして、世界の中の食糧——私は十年後には農家でなければ嫁に行かないという人がぼつぼつ出てくると思う。なぜそう言うかというと、これは食糧が国民不安の大きな原因になってきますから。だから、そういう点をよくひとつ政府は考えなくてはいかぬと思う。これは答弁はあなた方長くなるから、基本だけ教えておきますよ。  そこで次に総理に伺うが、この列島改造の中で特に——私は、これはあなたの私見だからそう問題にしたくないけれども、この中で、国際情勢から農産物をどうしても輸入する、自由化を推進するということが書いてあるわけです。今後もこの自由化推進政策というものはどこまでも進めますか。農産物ですよ、工業品じゃないですよ。
  26. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 南北問題がいま人類平和の維持のために非常に重要な問題に移りつつあることは御承知のとおりでございます。そういうためには、ケネディラウンドの推進に対してはわが国もこれに協調してまいったわけでございますし、新国際ラウンドの提唱も行なっておるわけであります。そういう意味で、国際的な分業という中には、やはり開発途上国で一次産業比率の非常に高い、言うなれば明治初年の日本のような立場にある国から農産物を入れるように、そうしなければ、世界で、人類の中で最もたくさんの人々をかかえる開発途上国の生活の向上ということは期しがたいのだ、いまこういう国際的な趨勢の中にあることは御承知のとおりでございます。しかし、いま御指摘になったように、今世紀末には人類が困るものは主食と水だろうということは私も承知しております。そういう意味で、列島改造を書くときも、日本農業、主食というようなものの確保ということが大事である、しかし、さっきも御指摘があったように、やはり一次産業というものは、二次産業や三次産業に比べてはどうしても収益が低いので相当な保護政策をしなければならないということでございますが、それは列島改造のように、二次、三次産業と地域的に共存ができるようになれば、そうすれば農家の所得も相当増大をするのだ、こういうことを述べておるわけでございます。でありますので、国際的な要請、趨勢にもこたえなければならない。しかし、やはり国民をまかなわなければならぬ主食に対しては、当然自給率を上げていくという基本的な考え方を守っていかなければならぬだろう、特に飼料その他ことしは相当な問題が起こっておりますので、いままでのものに付加して広範な意味勉強してまいりたい、こう思います。
  27. 中澤茂一

    中澤委員 三十三品目のうち農産物は二十四品目ですね。この品目、こんなものを読んでいればまた時間がかかりますのでやめますが、この二十四品目を完全自由化してどれだけのドルですか。どれだけと推算していますか。
  28. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは自由化の問題のときいつも問題が出るわけでございますが、全部自由化しても五億ドルくらいだろう、五、三、千五百億ないし二千億程度のものだと思います。しかし、姿勢の問題でもっていろいろいわれておるわけであります。これはいま東南アジア諸国等からもいわれておりますのは特恵関税の問題と自由化の姿勢という問題でございます。先進工業国の最もトップをいっておるアメリカとヨーロッパの間でも、この一次産品の自由化の問題が一番の争点になっておるというようなことでございまして、金額的にはそれほど大きなものではないような感じでございます。
  29. 中澤茂一

    中澤委員 それは学者によっていろいろな——経済学者が数字をはじき出していますよ。最低の学者は大体電子関係全部含めて三億五千万ドルくらいと見ている人と、最高見ている人で四億二千万ドルくらい。それがいまの九十億ドル黒字を出す中で、この農民の二十四品目は、私の推算ではおそらくせい、ぜい二億五千万ドルと見ておるのです、自由化しても。そんなものが九十億ドル黒字の中で、経済合理主義原則を貫いてこれを全部自由化したって、それが日本の外貨均衡のために何の役に立ちますか、私は役に立たぬと思う。しかも、経済合理主義の原則を貫くなら、これは自由化せざるを得ないでしょう。だから、先ほど前提に言ったように、農業というものは資本効率化、経済合理主義のワクをはずして考えなさいというのは、私はそれを言っておるのですよ。だから、農林大臣、この自由化は与野党を問わず議員の地帯では非常に反対が多いわけだ。国際的に見ても二十四品目の非自由化品目があって何が悪いのですか。フランスやイタリアだっていま十九から二十あるでしょう。各国みな十九から二十前後あるでしょう。何でこれを自由化しなければならぬ理由があるのか。どうも少し日本政府はそういう点になると弱腰になってくるのですね。だから、もっとき然として——やってみたってせいぜい二億五千万ドル、国際収支の均衡になんかこんなものは役立つものではないのです。だから、これは断固として、あとの品目の自由化はしない、これを明確にしないと、去年の秋から、あのグレープフルーツからどうです、あの騒ぎ。それは農民が不安にさらされているからなんですよ。だから、ここではっきり、農林大臣どうです、自由化はもうやらないと明言してくれぬか。これは国際的に決してひけ目を感ずる必要はないのですよ。世界じゅうどこだって自由化——アメリカだって自由化していないじゃないですか。アメリカだって非自由化品目をうんと持っているじゃないですか。その辺を日本政府の態度として、き然たる態度をとったらいいでしょう。どうです、農林大臣
  30. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 おっしゃるとおりに、私は農産物の二十四品目の自由化というものが、それほど大きいウエートではないと思っております。しかし、貿易の自由化、資本の自由化ということについては国際的な大きな理想でございまするから、ですからその理想は理想として了解しながら、私は農林省の担当責任者ですから、かりにアメリカ側からこれこれを自由化できぬかという具体的な問題になれば、それの一つ一つについて、私の承知をしておる、なかなか自由化の困難であるということは明白に言うつもりでございます。
  31. 中澤茂一

    中澤委員 これははっきりしないから年じゅう農民は不安におびえているのですよ。ちょっと何か新聞に出るともう大騒ぎになっちゃう。だから、これはもうあとはやりませんと農民にも約束し、外国が何といってきてもあとはやりません、できません、これでいいと思うんです。そういう主体性を持ってください。  そこで、列島改造——私見だから私はあまり列島改造で問題にしたくないが、さっきあなたの答弁の中で、一〇%に上げていけば大体六十年には一兆ドル経済日本で成立する、こういう考え方でしょう。総理、どうです。
  32. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 その問題は間々申し上げておるのでして、一〇%と計算をすると三百四兆円になります、八・五%なら二百四十八兆円というような、一つの試算をした場合——それは考え方を申し上げますと、公害とか、それから都市の無制限な流入を抑制しなければならないんだという強調をするためには、どうしても高い数字でもって計算をしたほうが説得力があるわけであります。これはもうそれにきまっております。昭和二十九年から三十九年まで十カ年間は一〇・四%平均であったわけです。しかも三十五年から四十五年の十カ年をとりますと一一・一%という高い成長率が続いたわけでありますから、そういう過去の数字をとって計算をすればこうでございます。だから、そういう意味で試算をした数字でございますので、三百四兆円にしようということではございません。近く、政府が求めておる長期経済計画にはもっと低い数字が出ると思いますので、それは全く試算数字であるということでひとつお考えいただきたい。
  33. 中澤茂一

    中澤委員 それは試算数字でいいですよ、私は本気にあなたとこれでけんかしようと思っていないので。しかし、こういうことは考えられませんか。これは同じ政府の機関、政府が出したのですが、中央公害対策審議会が出しているのですよ。もしあなたの構想で列島改造を進め、再び生産中心経済政策をとっていくならば公害はどうなるだろうかというものを出しているわけです。中央公害対策審議会が出しているわけです。これでやりますと、昭和六十年まで実質平均八・四%の経済成長を続けていけば、所得が現在の三倍になる。これは一兆ドルになるということです。いま三千億ドルぐらいですからね。そのかわりに、大気中の硫黄分は四十五年当時の三・六倍、トン数にして七百二十万トンが大気中へ放出される。七百二十万トンの硫黄分が日本の空へ出てくるわけですね、放出される。それからBOD、これは水のよごれるバロメーターですな。酸素欠乏量です、早くいえば。それはいまの約三・三倍、二千百十万トンにはね上がる。そうなればもうほとんど川に魚というものは住まなくなっちゃうわけですね。それから都市のごみの量はどのぐらいになるかといえば、四十五年の二倍で約八十万トン毎日ごみが吐き出されるだろう。こういう報告を中央公害対策審議会が出しているのです。これは、八・四の成長率で一兆ドル経済ができる六十年の公害の数字なんですよ。どう思いますか、総理お互いに生きていられますか。
  34. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私もそういう考え方列島改造論を書いたわけでございます。現に東京や大阪でもって大気中に放出をしておる物質の量、おそるべき量でございます。ですから、無制限な都市集中はここでストップをかけなければならないんだという数字として引用しております。それに近い数字を引用しておるわけでございます。でありますので、重化学工業中心の工業から知識集約的なものにならなければならないと思います。しかもそれだけではなく、石油の消費量や原材料の消費量やを考えますと、いまのままの状態で推移するならば、自由世界の海上交通量の三〇%近くを運び込まなければならない。そういうことはもう不可能でありますので、その意味で知識集約的な産業、付加価値の高いものに変えていかなければならないと思います。これはだんだん変わっておると思います。思いますので、これは数字の上でも、生産が上がっても輸入原材料があまりふえないということの調査をしてみますと、だんだん付加価値の高いものに移りつつあるということが一つございます。もう一つは、海外で、海外から原材料そのまま供給するよりも、現地で工場をつくり、二次製品として持ち帰ってくれるようにという強い要請がありますので、海外における工場の建設ということも進められるわけであります。もう一つは、列島改造という、自然の浄化力ということをやはり考えなければならない。東京でもっていま石炭火力発電所はつくれるわけはありませんが、北海道では石炭火力の発電所がまだ可能であるということで、これはまた議論を巻き起こすかもわかりませんが、そうではなく、やはりそういう意味列島改造国土総合利用というものがどうしても必要だということに思いをいたしてその本を出したわけでありまして、ほんとうに六十年にそんなになるということなら、これはもう、六十年や七十年で日本生活が終わるわけはありません。これは一%ずつ経済を伸ばしてもこれからまだ永久に伸ばしていかなければならぬということを考えると、やはりいまにして計画的な国土の改造、産業構造の改善ということに力をいたさなければならない、こう考えております。
  35. 中澤茂一

    中澤委員 どうも総理答弁過多だ。ちょっと直してくれよ。だめだ、そんな、あなたがあまりしゃべっていて質問時間がなくなる。  じゃ、本年度予算を聞きますがね、本年度予算は明らかに調整インフレ予算じゃないですか。——いやいや、成長率にからんでいるんだから総理答弁だよ。——これは明らかに調整インフレを意図しているじゃないですか。この膨大なものは。私が四十年にこの予算委員会で指摘したことがそのままいま続いてきているじゃないですか、高成長が。それで、そのインフレ起動力になるのは何かといったら企業間信用と土地だと、私は四十年と四十一年に指摘しているじゃないですか。あなた、四十年にここで大蔵大臣で、このごろ速記録を引っぱり出してみたら、それは十分注意いたしますなんて答弁している。何を十分注意したですか。インフレ起動力は、擬制資本がこういうふうにインフレ起動力になっているのじゃないですか。しかも本年度の予算はこういう膨大な予算を組んで、一体これはいいのですか。まあ、日銀総裁もお見えになったから御意見も聞きたいが、これは大体、政府関係機関一切含めてみると、GNPの半分近くになると私は計算している。時間がないからこまかい推算はできないですけれどもね。政府の本予算が十四兆でしょう。財投が六兆でしょう。両方合わせれば二十一兆でしょう。そこへ地方財政がいつも国家一般財政と見合っているわけですが、これが十四兆ありますよね。だから、そういう地方財政を加えれば大体三十五兆ですよ。大体一般会計と同じに率は並行しているのですよ。そのほか、前にも問題にしたように特別会計、それからこの予算に出ておる政府関係機関、それから地方特別会計、事業団、これを全部集計したらおそらくGNPの半分、五十兆近くになるんじゃないですか。時間があれば私集計してみようと思ったのだが、予算書がおそく出ているから時間がないから集計できないけれども、これは明らかにインフレ予算じゃないですか。これはインフレじゃないですか。現に国際インフレの余波で大豆が上がる。それ以外に政府が公共料金の一斉値上げをやるじゃないですか。これでインフレにならないという保証はどこにありますか。——総理大臣一言答弁して、それからあとあなただ。違うよ、総理大臣がやって、あとあなたがやってもらう。
  36. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いろいろお話がございますが、本会議等でも申し上げておりますように、GNPの現状、それから安定成長率ということを中心に考えまして、一般会計でまず申し上げれば、GNPに対しては一三%の規模である。これは決して前年度に比較して大きなものとは私は言えないと思います。それから、こういう時世におきましては、財政を通して資源の配分を調整していく、このことが一番眼目であると思います。ですから、それを象徴的にあらわすものは、財政の機能が国民経済全体の中にどういう配分を占め、これが昨年までとの傾向と比べて今後どういうふうにしていくかということが象徴的に重点でありますが、たとえば政府の振替支出が国民経済の配分の中で多くなってきている、それから政府の財貨サービスの購入の伸びというものが国民経済全体の伸びとほぼ同等である、こういう点からいうて、私は財政の面からインフレの要素があるとは思いません。  それから第二には、よく議論になるところですが、公債の規模あるいは発行の考え方、これも現在の日本の金融情勢等からいいまして、民間資本をむしろ吸収して、そして財政を通して資源の配分を調整をし、方向を変えていくということがいまこそ重要なときではないだろうかと思いますが、そういう方向をとったわけであります。同時に公債の規模自身も、いろいろの御意見もあり、考えなければならぬところもありますから、その発行の規模、財政に対する寄与率といいますか、これは一七%を割って、昨年度よりはずっと低くしている、こういうところで二兆三千四百億円ということをはじき出して、しかもこれが建設公債、市中消化ということでその規模をきめたわけでございますから、財政の面からインフレの要素というものはない、あるいはむしろそれを起こさぬように積極的に配慮する。ただ、昨日もいろいろ御意見がありますように、そこだけからくるインフレムードという問題ではございませんから、地価の問題、株の問題その他に対しましては総合的な対策を行なっているということが眼目であることに御留意をお願いしたいと思います。  時間があれば幾らでも御説明をいたしたいところでありますが、答弁は短くせよということでございますからこの程度にとどめます。
  37. 中澤茂一

    中澤委員 大体、愛知さん、あなたが言っていることは、大蔵省の非常に経済学を勉強している局長さんの答弁みたいですよ。現に証拠があるじゃないですか。どうするんですか。インフレマインドというものはもう定着しつつあるのですよ、日本に。その一つの証拠というのは土地、株、それから近ごろは骨とう品、絵画。金のあるやつはここへ全部殺到しているじゃないですか。去年五十万円で買った絵がいま百万になったなどと言っている人が一ぱいいるじゃないですか。これは一つのインフレマインドが国民の中に定着しつつあることを問題にしているのですよ。これを個々に株をどうするんだとか、その対策はもちろん私は否定しませんよ。やらねばいかぬことだ。おやりなさい。しかし、このインフレマインドが出ているところにこの膨大な予算がからむから、インフレ予算だと断定しているのですよ。現に証拠があるじゃないですか。それでもインフレじゃないですか。どこまでも抗弁するならひとっこれで大いに議論しましょう。インフレじゃないですか、この予算は。
  38. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま申しましたように、予算の編成についてはインフレを起こさないようにということを眼目にしておるわけですし、これは十分説明ができると思います。しかし同時に、インフレマインドというか、インフレムードが出ておるということを私も否定いたしません。それはそれなりに大いに対策を総合的に強力にしていかなければならない。同時に、予算というものに対しては全国民的ないろいろの願望がございますことば、冒頭にお話もあったとおりなんであります。特に社会資本の充実、社会保障の充実ということについては、ほんとうにこれは全国民の願望だと私は思うのです。これを取り入れて、インフレを起こさないように予算を編成し、かつ国民的な要望にこたえるというためには、ある程度の規模の予算でなければならないということは、私はこれはもう政治的にも当然の責務であろうと思うのです、そういう予算を編成することは。こういう点を考え合わせていただけば、私が前々から申しておりますように、三つの大きな課題に対して同時に解決する。国内均衡も国際均衡も十分に考えていかなければならない、インフレも克服しなければならない、そして福祉社会を建設しなければならない、列島改造を大いに推進する、こういういろいろの要請を同時に解決する。一少なくとも財政考え方、構想というものを、こういう機会に構造改善と申しますか、これをやっていくというところに意欲を持って取り組んでいかなければならないというのが私は現在の立場であろうかと思います。
  39. 中澤茂一

    中澤委員 とにかくあなたは大蔵大臣だから、インフレと言うのはまずいという。ちょうど福田さんと四十一年にやり合ったとき、赤字公債をどこまでも否定しているんだ。そんなものは、公債は赤字ときまっているのに。それと同じで、立場はわかるから言いたくなければ言わないでいいですよ。現実にインフレは進行しているということですよ。  そこであなたは、社会福祉と円対策と、全部三つ一回に解決する予算だ。そんなものが解決できますか、この予算で。社会福祉予算だという看板を掲げている。これはまさに羊頭狗肉じゃないですか。このごろ私は総年金を洗ってみたのだ。一体どれだけの社会福祉なんだと洗ってみたらこういう数字が出ているのですよ。年金重点にやったというが、いま年金は御承知のようにみんなで九つあるわけですよ。九つの制度があるわけです。この中で、ちょっと読んでみますと、厚生年金五百二十七億、それから船員保険が二十六億、国家公務員共済百八十五億、公共企業体が百四十四億、地方公務員が四百九十六億、私立学校が九億、農林漁業が二十四億、国民年金が拠出制九百六億、無拠出制二千八十六億、これを全部合わせて四千四百三億です。これが何で福祉予算ですか。総予算の何%になりますか。これが年金予算であり福祉予算だというのは、国民は納得しませんよ。この中で当然、国家公務員、公共企業体、地方公務員、これはもう使用者が政府、自治体なんだから、これは八百二十五億あるわけですが、当然、こんなものは使用者なんですから払うべき数字です。それを引いてみますと三千五百七十八億、これが年金予算ですよ。これが何で一体年金重点、福祉重点予算ですか。まあそのほかいろいろあることは私も認めますけれども。だから今後このインフレムードが進んでいく中で、どうして国民全体に、老後はもう国の政策で安心なんだと、こういう体制をこんなことでつくれると思っていたらとんでもない間違いですよ。総予算の何%になりますか。政府の当然負担すべきものを引けば三千五百億しかないですよ。だから、それが福祉予算の看板を掲げられるとたいへん迷惑なんですよ。そういうことじゃない。  われわれ社会党としては、この円対策というものでは切り上げ反対という立場をとっております。なぜ反対かといえば、中小企業は、ようやく三百八円になって何とかいけるぞという体制になったとき、また切り上げをやったならば、これは中小企業がたいへんだ、そういう立場からわれわれも切り上げ反対の立場をとっておる。政府も切り上げ反対の立場をとっておる。しかし、私はこの予算、じっと見て、感じでくることは、切り上げせざるを得ないところへ追い込まれるのじゃないかということを予想して組んではしませんか。大蔵大臣どうです。
  40. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 切り上げ反対の御意見には私も賛成でございます。  まず、社会保障関係についていろいろ御意見ございましたが、これは初めて二兆円を相当オーバーいたしました、簡単に一言だけ申しますと。それからウエートの問題ですが、ほぼ全予算の一五%に近づいた。これはもう画期的なことであると私は思います、現在の与えられた条件下においては。それから社会保障というものについての考え方についても、私は大いに意見がございますが、これは省略いたします。  それから調整インフレということがよく言われますけれども、あるいは切り上げと調整インフレと二者択一というような考え方は、私は理論的にもおかしいと思うのです。いわんや私どもは切り上げは考えておりませんが、この考え方は、国際的な均衡のために国内均衡を犠牲にするという考え方であって、私は先ほど申し上げましたような考え方から、そして円対策、すでにきまっておりますようなことを強力に推進していくことによって、調整インフレというようなことではなくて、安定した経済状態がつくり上げられる、それに向かってとにかくひたむきに前進することである、これが現在の心がまえである、私はかように考えております。
  41. 中澤茂一

    中澤委員 それはあなたはそう言う。一々それに反論していてもしようがないけれども、それは二兆円こえたことは事実ですけれども、これは十一月に、「国民総支出の社会目標別分類」というのを経済企画庁が出しておるのですよ。それを見ると、少なくとも三十五年、四十年、四十五年度の民間、政府の支出がどういう目的に振り向けられたかという計数整理をやっておるのですよ、経済企画庁が。そうすると、国民生活に関連する投資はきわめて少ない。たとえば四十五年度の場合、投資総額六兆一千八百六十九億円のうち、三〇・五三が生産関連の国土開発、その他交通、通信が二〇・八六、それから生活関連の住宅建設が七・八七、教育文化が七・八五、それから生活関連の国土開発、環境ですね、これが二・八、病院、保健所建設、健康増進は二・二九、社会保障充実が一・七四、レクリエーションが一・一八、全部合わせて二割七分くらいなんですよ。これは前の予算ですが。  そこで、いまあなたがそう言うからちょっと反論だけしておきますが、結局今度の予算を分析すれば、何といっても道路なんだ。列島改造なんですよ。列島改造が三六・五%ですね。最高の伸びです、列島改造が。それから住宅が七・五ですよ。いま庶民が一番苦しんでいるのは住宅なんですよ。これが七・五ですよ。それから生活環境整備、これが若干伸びて八%ですよ。だから道路づくりが、これらを合わした五倍以上になっているのですよ、ことしの予算は。これはまさに土建主導型予算といってもいいんじゃないですか。土建屋さんの主導型予算である、こういうふうにいってもいいんじゃないですか。そこで愛知さんは、そんなばかなことはないとおっしゃるでしょうか。そういう予算分析なんです。
  42. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 そんなばかなことはないとまでは申し上げませんけれども、事実を申し上げますと、たとえば公共事業費をただいま御指摘になったんだと思いますが、なるほど道路も伸びておりますが、こういう点に御注目願いたいと思います。  たとえば公園に対しては、実額は、長くなるから省略いたしますが、六七・八%昨年より伸びております。上水道、廃棄物処理七一・一%、下水道で五七・一%、住宅が三五・一%、現在の二兆五千七百五十七億円の公共事業費の内訳を、昨年度と比率をとりますとさようなことになっておりますところには、私は意欲をお認めいただきたいと思います。  それから、その前にちょっと言及されましたが、長期計画というものは、御承知のように政府としてもいま鋭意策定中でございますが、その中で、先ほどちょっと申し上げましたが、振替所得の対GNPの構成比は、現在六%までなかなかいかない。これを八・八%に五十二年度にはぜひ引き上げたいというのが、これが社会保障長期計画の懇談会等でも議題になっておる点でございますが、政府の長期計画の上でも、ぜひこの構想は長期計画の上に生かしていきたい、かように考えているわけでございます。  なお、もう一つつけ加えますと、社会保障費の関係の一般会計の関係は、先ほど数字を申し上げましたが、これは特別会計もほかにございますから、さらに実額がふえることを一言補足いたしておきます。
  43. 中澤茂一

    中澤委員 あなたの数字というのは、それはわかるんだよ。全部合わせればそうなるんだよ。ところがここに一つ問題があるんだよね。どういう問題があるかというと、公共関係というものを全部国民の税金でまかなうわけだ。住宅とか生活環境整備を全部財投でまかなって、両方合わせればあなたの言う数字になってくる。それは財投関係は住宅が三一・五増ですよ。生活環境整備が五四%増ですよ。厚生福祉費が三四%増ですよ。これを全部合わせれば、一般会計と財投では、そういうあなたの言うような数字になる。そこに私は問題があるというんです。資本の利益になるのは国民の税金でまかなっていこう、国民生活のものは国民の貯金でまかなっていこう。財投でまかなっているじゃないですか。そういう予算のごまかしをやってはいかぬ。財投の原資というものは全部国民の積み立て金じゃないですか。まあ、そういうことだけにして、時間がありませんからもうよしますが、そういうことで国民をごまかすようなことをやっておってはだめだ。もう国民はもっと深くものを見ていますよ。それが選挙に明確にあらわれたじゃないですか。だからそういうことで、実は社会党としてのインフレ予算の反対という立場からの基本論があるんですが、とても時間がありませんので、日銀総裁もお見えになりましたから、日銀総裁にお伺いいたします。  私は、今度の財投のこういう膨大な予算の組み方が、これはとてもどうにもならなくなってくる。経済成長もまあ一二、三%にことしはいっちまうんじゃないか。そうなったらインフレ加速化にいよいよ速度をかけていく。その場合に、金融政策でこれを押えることを考える以外に方法がない。この予算を、われわれの言うことを聞いていま一度修正するなりやり直そうというなら話は別だが、それはもうあり得ない。そうすると、金融政策でこれをどう押えていくか、これについて、はなはだお忙しいところ恐縮ですが、佐々木さんのほうからひとつ御答弁を願いたいと思います。
  44. 佐々木直

    ○佐々木参考人 最近の日本経済情勢を考えまして、いままで輸出に向いていた労力、資材、こういうものを国民生活の向上に向けるということが非常に大事であるという考え方からまいりますと、どうしても社会福祉のための政府予算はふくらまざるを得ないのです。しかし、一方におきまして、いままで輸出に向いておった資金は、これは抑制ができるはずでございます。いままでのように、国民生活の向上に必要なものを全部国内で生産する、さらに、その余剰を輸出に向けるというような考え方で設備投資をいたしますと、国内で公害の問題その他も起こりますから、この際は、公的部門と私的部門の資金配分を変えてまいりまして、私的部門の資金配分を抑制していく、特に大型の設備投資を抑制するということが、今後の金融政策の上で必要であると思います。そうして、もしそのために物資の需給にアンバランスが生じますならば、そのときには外国から製品を輸入してくればよろしい。そうすれば国際収支の問題もある程度調整ができますし、国内における需給の逼迫も回避できる、こういうふうに考えます。したがいまして、これからの金融政策は引き締めの方向で進んでいくことに相なるものと考えております。
  45. 中澤茂一

    中澤委員 総裁、そうおっしゃるが、具体的にお伺いするが、引き締め政策をやるには、いま準備率変更をやりましたね、これが一つあります。それから債券売買オペレーションがありますね。それから公定歩合の引き上げがありますね。いま一つ窓口規制があります。この四つですね。どこに重点を置いて今後金融政策の引き締めをやっていくつもりですか。
  46. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ただいまお話がございましたように、引き締め政策実行にはいろいろな方法がございます。今般、預金準備率の引き上げを実施いたしましたのは、最近における金融市場その他における流動性が増大しておるという点に着目いたしまして、資金の吸収を行なったわけでございます。  基本的な政策といたしましては、もう一つ公定歩合がございます。公定歩合の引き上げ、これもそのときの情勢いかんによりまして考えてまいらなければならないと思いますが、窓口指導の問題は、こういう基本的な政策を背景といたしまして、主として大きな金融機関の貸し出しの増加額の実態を押えていくものでありまして、これはいま申し上げました二つの手段と並行して行なわれるべき性質のものだと思います。  それからもう一つ、オペレーションでございますが、オペレーションは、日常の金融市場の資金の需給変動に対して行なうことが中心でございまして、それを重ねてまいりまして、最終的に総体としての資金の過不足の調和をはかる、こういうことでございまして、それぞれ役割りが多少ずつ異なっておる面があると思います。したがいまして、今後どれをどういうふうに使っていくかということにつきましては、そのときの情勢によって選択してまいる必要があると思います。
  47. 中澤茂一

    中澤委員 総裁、このごろのオペレーションで、大体引き揚げは、まあ二千五、六百から三千億の準備率操作ですね。そうすると、一体流動性というものは、これもいろいろ人の見方によって違いますが、大体四兆から四兆五千億くらいと見ている人が多いのですね。過剰流動性ですよ。だから、この準備率操作だけではどうにもならぬですね。このごろ、あれだけ上げてみても、せいぜい吸収が三千億でしょう。十分の一吸収できないわけですね。この過剰流動性をどうやるかということを処理しない限りは、いまのインフレマインドというものは、私はおさまらないと思う。  だから、金のあるやつは全部株だ、土地だ、骨とう品だ、ゴルフクラブの会員権だと、これは集中しているわけです。だから、この過剰流動性を総裁はどのくらい日銀として見ているか、まあ最低四兆はあるだろう、これをどうやって引き揚げるかというところに金融政策のポイントを合わせなければいかぬわけですね。そうすると、オペレーションは、私の聞く範囲では、もうほとんどないそうじゃないですか。まあちょっとはあるけれども、オペレーション操作の吸い上げというものはない、そういうふうに聞いておりますが、どうやってこの四兆円の過剰流動性というものを吸い上げていくのか、これを至急吸い上げない限りは、このインフレマインドというものはいよいよ国民大衆全体の換物思想に変わってくると私は見ておるのです。どういうふうな金融政策がございますか。
  48. 佐々木直

    ○佐々木参考人 過剰流動性がどれだけあるかということ、この計算は実は見方によりまして非常に分かれておりまして、どういう金額をもって正しいとするか、これはただいまのところ、われわれとしても決定版と申しますものはなかなかないわけでございます。  ただいま四兆円ぐらいあるというようなお話でございましたが、実は、昭和四十六年と四十七年の外為会計の払い超過は、合計いたしまして約六兆円でございます。しかし、この間におきまして、日本の全金融機関の貸し出しの増加額、これはまだ四十七年の数字が固まっておりませんが、三十数兆円にのぼるものと思います。しががいまして、外為会計の払い超過即過剰流動性の金額というふうには考えられない。また、各人が持っております預金というものをもってこれを過剰流動性というわけにもいきません。それからその増加額をつかまえて議論することもできないわけでございます。したがって、そういう点について何をものさしとしますかと申しますと、たとえば、四十七年におきましては、財政は外為会計の払い超にかかわりませず、総体ではやや揚げ超でございます。したがいまして、その間における日銀券の一年間の増発額とその引き揚げ超過額を加えたものがむしろ資金不足になっておる、こういう状態でございます。したがって、四十七年に関します限りは、売りオペによって資金を引き揚げるということではなくて、逆に資金の供給が必要であったという状態であります。  いまの三千億円の準備預金の積み立て額と、それから流動性の過剰額との関係でございますけれども、理屈になりますけれども、銀行が自分の資金を日銀に三千億円引き揚げられますと、三千億円を基礎にして行ない得たであろう貸し出しの増加額がそれだけ抑制されるわけでございます。それで、準備金に対して貸し出しの増加額は数倍になるのが普通でございますので、これの正確な倍率ははっきり申し上げかねますけれども、何倍かの資金に抑制効果は持つものだ、こう考えております。したがって、この金額をいま実施中でございますから、この実施の効果がどう出るかを見て次の対策を講ずる、考えるべきだと、こういうふうに思っております。
  49. 中澤茂一

    中澤委員 まあ私にも、過剰流動性の問題を一体為替の面からどうするか、いろいろ考えがあるのですけれども、何しろ二時間しか時間がないものですから、まあそのことはもうよします。  そこで、総裁にはっきりお聞きしておきたいことは、四十六年八月のニクソン・ショックのときに、一体なぜあのとき三百六十円買い続けをやったのか、その理由はどういうことなんですか。どうしてあのとき市場閉鎖をしなかったのか、これを私は、いまでもこれはたいへんな問題だと思っているのです、おととしの問題ですけれども。どうして市場閉鎖ができなかったか。これが日本の外貨ポジションを高度に飛び上がらせた第一の原因なんですね。もしあのときばっと閉鎖したら、いまの外貨準備は最低限度に見て四十億ドルは少なかったわけです。あのときやっていたら、いま日本の外貨準備は百億こえてもしれたものじゃないかと思う。時間があれば、為替政策全体の政府の失敗をここでつきたいのですが、どうしてあれは閉鎖できなかったか。その理由をお聞きしたいのです。
  50. 佐々木直

    ○佐々木参考人 四十六年八月のときに、日本が為替市場を開いたままにしておきましたことは、私ども、いまから考えますと、いろいろやり方もあったかとも思いますけれども、あのときの考え方は、やっぱり日本というものはドル圏の中でいままでずっと仕事をしておりまして、対外取引はほとんどみんなドルでやっております。したがって、その為替市場を閉鎖する場合、そのことによって日本の為替取引が非常な障害を受ける。それをおそれたことと、それからもう一つは、一たん閉鎖いたしますと、それを再び開きますときには、何らかの措置を行なった上でなければ開けない。そういうことを当時非常に考えまして、そういう見通しなしに締めてしまいますと、結局、ずっと長く市場を締めてしまって為替取引ができないということが、あのときとしては最大の関心事でありました。したがって、そのときに閉鎖すべきかどうかについて、夜おそくまで非常な議論をいたしまして、結局そういう結論に達した、こういうことになっております。
  51. 中澤茂一

    中澤委員 これは明らかに、日本のいまの過剰ドル問題というのは、為替政策の失敗が、こういう結果として出ておるのです。あのとき少なくとも、断固閉鎖すべきだったのですよ。それならば、ポンドのときはどうして閉鎖したのですか。ポンドフロートのときは閉鎖したでしょう。だからあのとき断固閉鎖をすれば、最低限見て、あのとき買ったのは四十億ドルでしょう。それも問題。だから明らかに為替政策そのものに失敗して、こういう過剰ドル問題を出している。あのときびしつと締めていれば、百億ドルか百二十億ドルが、いまの日本の外貨ポジション限度じゃないかと私は見ているのですよ。  だから、金融政策はいつも先手先手を打ってもらわぬと、こういうインフレ膨大予算をつくったものを金融政策で締めるといえば、もう総裁は首をかけて断固として政府と対決しなければだめです。日銀の中立性と自主性というものはどこまでも守る。日銀の役割りは何かといえば、通貨価値の安定、これだけです、中央銀行の役割りは。最大の使命です。この通貨価値の安定をはかるにはどうすればいいのだ。政府が何と言おうとも、断固として日銀の中立性と自主性を守って、国民に御迷惑をかけないようにするというのが、日銀の基本的な態度でなければならぬと思うのです。宇佐美さんのときも大失敗した。株が暴落して会社が崩落した。日本銀行史にない汚点を残した。私はあの四十一年に宇佐美さんに鋭く言ったのですが、明らかにあれは日本の中央銀行史に汚点を残している。このときも、これによった赤字は一体どのくらい出ているのですか。そしてこれを売り込んだ、約十社ですよ、銀行、商社、この資金がいま土地投機にこのときから飛び出しているのですよ。だから大きな被害を国民に与えているわけですね。このとき日銀の損害は、三百八円と三百六十円、一ドルにつき五十二円。この損害処理はどうなさいましたか。
  52. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ただいまの御指摘の欠損は、日本銀行が持っておりました積み立て金をもちまして償却いたしました。
  53. 中澤茂一

    中澤委員 数字はどうなっていますか。私も数字を持っておりますが、どのくらいの損害額を出したのか。  それから外為の分は、一体どうなっておるのか。これは政府だな。大蔵大臣、外為の損害は、一体どうなっているのか。日銀の損害は幾らであって、その中のどういう金額をどういう処理をなさったのか。それを具体的に数字でひとつお答え願いたい。
  54. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 政府委員から答弁させます。
  55. 林大造

    ○林(大)政府委員 外国為替資金特別会計法の第八条によりますと、「外国為替等の価額の改定に基いて生ずる利益又は損失は、外国為替資金の評価益又は評価損として整理するものとする。」という規定がございます。その規定によりまして、昭和四十六年度に生じました外国為替資金の評価損は、評価損として整理してございます。
  56. 中澤茂一

    中澤委員 大蔵大臣、それじゃ答弁にならぬじゃないですか。幾らであって、今年度会計の中でどう処理しているかということを聞いておるのですよ。この会計でどういう処理をしているかと聞いておるのですよ。
  57. 林大造

    ○林(大)政府委員 外国為替資金特別会計予算の中には評価損として資金の中に整理してございますので、歳入にも歳出にも計上はされておりません。ただ、関係の付属諸表の中に評価損として整理してございます。
  58. 中澤茂一

    中澤委員 大蔵大臣、金額を聞いておるんじゃないか。外為関係、問題ですよ、こんないいかげんな処理をして。——日銀さんでもけっこうです。どうぞ、総裁。
  59. 佐々木直

    ○佐々木参考人 あのときの損失が四千五百八億円でございます。これを内部留保とその期の利益で埋めまして、なお多少の内部留保が残っておった、こういうことでございます。ただ、この四千五百八億円の計上にあたりましては、一年をこしますドル債権につきましては、そのときには償却いたしませんで、一年の期限が短くなって一年以内に入るつど償却していく、こういうやり方をやっております。
  60. 中澤茂一

    中澤委員 日銀総裁に伺いますが、こういうことで一体いいんでしょうか。日銀という中央銀行、発券銀行が、こういうことで一体いいんでしょうか。私はこういうことを今後も——例の株会社、つぶれればすぐ日銀が直貸しをやってみたり、こういう閉鎖をすれば、これはだれがもうけていますか。結局銀行と商社で、大体私が調べてみると、おもなところは十社ですよ。十社がもうけたものを日銀がかぶっていくという形は、一体いいのですか。私は、そういう日銀の基本的なあり方を問題にしておるのです。
  61. 佐々木直

    ○佐々木参考人 為替相場の変動によりまして外貨準備に損失が起こり、あるいは利益が起こるということは、これは為替相場が変動する限りはやむを得ないことでございます。したがって、円がもし切り下げになりますれば、日本銀行には非常に利益が出るわけでございます。しかし、国民の持っております円の対外購買力は落ちるわけでございますから、国民一人一人の持っておる円の点から申しますと、国民は損する、そういう性質のものでございますので、いまの市場閉鎖前後における買い入れ額のいかんの問題はあると思いますけれども、為替相場変動に基づきます中央銀行の外貨資産の損失あるいは利益というものは、別の観点からお考えいただかなければならないと思います。
  62. 中澤茂一

    中澤委員 それは閉鎖すれば——あのとき十日間で大体あれでしょう。あのときフロートの間の十日間で二千二十五億でしょう。少なくともあのとき閉鎖すればこれはなかったはずですよ。それで総額で四千五百八億でしょう。だからそれを売り込んだ銀行と商社ですね。このとき閉鎖すれば、銀行と商社はそういう不当利得はなかったはずですよ。だから私が問題にするのは、土地売買に商社、銀行が飛び出したのは、この資金から始まっているのですよ、ずっと私、調べてみると。だから国民に被害を二重、三重に与えているわけですね。それが土地投機の大きな根源になってきているのです。ここからこの利益を商社が一斉に株と土地へぶち込み始めた。現にこのごろのあれを見ても、汽船会社が五百何億買って二百九十億処分して五十五億利益を出したとか、丸紅が三十億の利益を出したとか、この資金がみな起動力になっている。だからこれはもうたいへんな問題だと思うのですよ。  だから、まさに通貨価値維持の番人をやるべき日銀が日本のインフレをますます助長させたといっても、私はそう言い過ぎじゃないと思っているのです。だから、少なくとも日本銀行総裁であるあなたは、き然たる自主性と中立性を保ちなさい、政府が何と言っても断固としてやるときはやる、首をかけてやることがあなたが国民に感謝される理由なんです。この失敗は明らかに国民に大きな被害を与えた、こう判断しても私はいいのだと思います。  だからそれ以上追及いたしましても、それはまだ問題あります、この内容について。だけれども、それは時間もありませんし、もう省略しますけれども、外為関係のほうは大蔵大臣、どうなっているのか。数字を聞いているのにかってな答弁してちゃだめですよ。
  63. 林大造

    ○林(大)政府委員 四十六年度中の評価損益のしりは四千百十六億円でございます。これが四十七年度に繰り越し評価損として処理されました。
  64. 中澤茂一

    中澤委員 昭和四十八年の外国為替売買差益は四千五百二十一億か、四千六百二十一億五千四百万か、この数字違うのか。
  65. 林大造

    ○林(大)政府委員 四十七年度の外国為替の評価損は約七億円でございます。これは四十七年度においては為替のレートの変更は行なわれませんでしたし、また、この七億円と申しますのは、IMF関係のSDRあるいはIMFに対する出資等の関係で生じました事後的な評価損でございます。合わせまして四十八年度への繰り越し評価損として予定しております金額は四千百二十三億円でございます。
  66. 中澤茂一

    中澤委員 どうも大蔵大臣北山君がきのう問題にしたけれども、これは福田さんのとき、だいぶ北山君とぼくと問題にしてわりあい改正したのだ。内容を改めたのだ。これは内容がちっとも——ましてやおととい出してきてこれを調べろなんて、こんな膨大なものを調べようがないのだ。この方法はきのう北山君も言ったように、答弁要らぬけれども、変えにゃだめですよ。  それからいま一つ、ついでに問題点を指摘しておきますが、例の昭和四十一年に福田さんとここでさんざん論戦した問題だが、この予算書類ですよ。四十八年度に発行を予定する公債の償還計画表、これの内容は、昭和四十八年二兆三千四百億。これ、償還計画ですか。起債計画じゃないですか。これ、償還計画ですか。二兆三千四百億返すのですか。表題は償還計画と書いてありますよ。しかし、これはだれにわかりますか。国会議員のだれに、これを読んでこれが償還計画ということがわかりますか。これはどういうことなんです、大蔵大臣
  67. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この問題については、四十年から四十一年にかけて御論議がありましたことは私も承知いたしております。  そこで、これはお話しすると長くなりますが、財政法四条によって、正確にいえば、四条一項ただし書きによって発行するところの建設公債の償還計画については、財政法の六条で規定がございますが、この予算書の中に掲げられてある償還計画は、その後も専門的な検討もいたしまして、この財政法四条、六条の関係からくるところの償還計画としては、ここに掲げてありますように、当年度でいえば、昭和五十八年度の償還額二兆三千四百億円に対しまして満期で償還をするということがここに書かれてあり、そして国債整理基金に繰り入れる前年度初めの国債総額の百分の一・六相当額の財源、それから「財政法第六条に基づき若しくは」云々と書いてあります。これらの法律等に基づいて処理をいたしますということをここに書きますことが、実体的におきましても必要にして十分であるという専門的な見解が多いものでございますから、十分誠意をもって検討いたしました結果、前例に従いまして、かくのごとき予算書を提出いたしたわけでございます。  なお、これには、この説明書にもございますように、法律の根拠も書いてございます。財政法第六条あるいは国債整理基金特別会計法第五条の規定に基づいて云々というわけでございまして、押えるべきところは十分押えてあるつもりでございます。  なお、これは御質問以外のことになるかと思いますが、国債の発行それ自体の条件、たとえば利率とか、表面発行価格とか、期限とかいうようなことは、国債ニ関スル法律、いわゆる国債法第一条に基づきまして大蔵大臣にこれを御委任を受けているわけでございます。したがいまして、その条件等は、公社債市場あるいは金融情勢等によりまして大蔵大臣責任においてきめます。そういうことでございますことも公債の性質上御理解がいただけることと存じます。
  68. 中澤茂一

    中澤委員 全然償還計画ないじゃないですか。年度末残高が出ているだけじゃないですか。年度末残高。これを受けて、基金特別会計の条文を受けてこっちへ出ているわけだ。償還計画、どこにありますか。こんなもの私は断じて了承できませんよ。ことしは償還第一年次だから私は言うのです。ちょうど七年でしょう、四十一年から。それじゃ、ここに出ている残高の中の明細を出してください。
  69. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 問題が二つあるようでございます。昭和四十八年度に発行を予定しておりますものにつきましては、償還計画はただいま御説明したとおりで、政府としては、これで適法であり、必要にして十分である、かように考えております。  それから借りかえ債等のことをお話かと思いますが、これにつきましても借りかえ債というものは、たとえば日本銀行引き受けのものを借りかえるというところは、国債整理基金特別会計法で、予算総則に入れて御審議を仰いでおりますから、この点も問題はないと思います。
  70. 中澤茂一

    中澤委員 さっきは、あなたに局長さんの答弁だと言ったが、いまのその答弁じゃ課長さんの答弁に下がっちゃったですよ。この国債というものは国民の借金でしょう、次の世代を背負う諸君の。その借金を、こういうことをやって法的にさえごまかせれば幾らでもごまかしていこうという、それが私はしゃくにさわるのですよ。そんなばかなことがありますか。なるほどこの整理基金特別会計法の五条を受けてここに説明が書いてある。説明が書いてあるが、だれが見てこれを償還計画といいますか。ことしの起債額が書いてあるだけじゃないですか。何でこんなものが償還計画ですか。それで下に、特別会計の条文がここにあるからいいと。そこで今度は特別会計のほうを調べてみれば、四十八年のは現在高が書いてあるだけじゃないですか。四十一年の償還計画というものはないじゃないですか、この中のどれだけを出したんだという。だからこの分類表を出しなさいよ。残高の中で四十一年のをどれだけ償還したんだ。
  71. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ですから、繰り返すようでありますが、昭和四十八年度に発行を予定する公債の償還計画表は、これはあなたの御意見からいえば償還計画表ではないとおっしゃるけれども、これは財政法その他の法律に基づいて償還額がここにはっきり書いてあれば、昭和五十八年度にこれだけ償還いたしますというのが、これで私は法制的にいう必要にして十分なものであると考える次第でございます。  それから、国債及び借り入れ金の状況に関する四十六年度末の現在高その他につきましては、償還年次表に関する調書が別に添付してあります。
  72. 中澤茂一

    中澤委員 じゃ金額を言ってください。四十一年のは、七年ですからことし第一次の償還年次ですよ。幾ら償還するのですか。七千三百億出しましたよ。四十一年度に七千三百億出して、赤字公債でここで大論争を福田さんと私やったでしょう。その四十一年度の七千三百億はことし償還年次でしょう、四十八年予算で。
  73. 橋口收

    ○橋口(收)政府委員 お答え申し上げます。  昭和四十年度に発行いたしました歳入補てん債につきましては、四十八年の二月までに全部現金償還をする予定で予算を組んでおります。四十一年に発行いたしました国債につきましては、四十八年度の国債整理基金特別会計の予算で、借りかえ債といたしまして、五千九百五十八億円、この公債の収入金を予定いたしております。  先ほど大臣から御説明がございましたように、百分の一・六の予算に基づく繰り入れがございますので、それの七年分で大体一割程度の原資があるわけでございますから、一割程度の現金償還を予定いたしまして、残りは借りかえをする、そういう計画でございます。
  74. 中澤茂一

    中澤委員 その数字がないじゃないですか、償還の数字が。ここへ出すのがほんとうでしょう。これを受けてこっちへ出したんだから、予算書の中にないじゃないですか。どこにあるんです、そんな数字が。数字はどこにある。
  75. 橋口收

    ○橋口(牧)政府委員 償還計画につきましては、先ほど大臣からお答え申し上げたとおりでございますが、ただいま口頭で御説明いたしましたことにつきましては、資料として提出をいたします。
  76. 中澤茂一

    中澤委員 そんな資料提出なんて、そういう国会を無視して、この予算書を国会議員が調べても何が何だかわからないという、こういうことで国会審議をしろといったってできません。
  77. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 御質疑に対して私の答弁がちょっと足りなかったかもしれませんが、よくわかりました。四十八年度に発行するものについての償還計画というものは、これについても御不満であることは先ほどの御質問でわかりましたが、これはもうこれ以上の方法はないと思います。  それから現在までの、ことし償還が始まりますものにつきましては、十分ひとつ数字をあげて御説明をいたしたいと思います。(「計画を出せと言っているん」だと呼ぶ者あり)計画を出します。
  78. 中澤茂一

    中澤委員 こういうでたらめな予算書を出して、そしてこれを見れば残高が書いてあるだけで、四十一年度分を幾ら償還するとか、内容を一つも書いてない。当然そういうごまかしをやらずに——ここへ基金特別会計の法律の条文だけ書いて、これが償還計画だなんて、だれがこんなもの認められますか。冗談じゃないですよ、だめだ。   〔発言する者多し〕
  79. 根本龍太郎

    根本委員長 静粛に願います。
  80. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 四十八年度に発行をする公債についての償還計画は、先ほど詳細に御説明いたしましたように、私は、法律的にもこれで適法であるし、それから四十年から四十一年にかけての御議論も十分検討いたしましてこういう措置をいたしたわけでございます。  それからもう一つの、今年度から償還をいたしますものにつきましての償還の計画につきましては、詳細にひとつ御説明をさせていただきたいと思いますし、書類の上でもこれをはっきりいたします。問題は二つございます。その問題が二つあることを明確にいたしておきます。
  81. 中澤茂一

    中澤委員 だめですよ、こんなでたらめなもので審議しろといったって。国会軽視もはなはだしいよ。
  82. 根本龍太郎

    根本委員長 中澤君に申し上げますが、あなたの持ち時間は終了しております。
  83. 中澤茂一

    中澤委員 委員長、こういう国会軽視をするということなら、私は断じてこれは審議を続行することはできませんよ。なぜと言えば、わざわざ、この財政インフレをおそれるために、財政法は第四条の二項で、「その償還の計画国会に提出しなければならない。」といって、明確に財政法四条二項は規定しているのですよ。それをこういうでたらめなものを出して、基金特別会計の法律条文だけ書いて、そこでこっちを調べてみると、四十一年債の償還をするのです、ことしで七年ですから。四十八年度予算で当然償還しなければならぬ。その償還の数字さえも、これを見てちっとも明確じゃないのだ。だから、こういう財政法四条の議会財政民主主義の原則をくずす問題なんだよ、これは。金額の問題じゃないんだよ。そういう議会軽視をやる審議には私は応じられません。そして大蔵省の局長さんの答弁のような、ただ事務的に法律上何でも疑義がなければいいじゃないか。それじゃ国会が、国民の代表としてわれわれが——この公債がいま六兆でしょう。毎年二兆から三兆出していって膨大にふえていくとき、国会議員さえも償還の内容がわからぬという、そういうでたらめなやり方は断じて了承できません。処理してください。
  84. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど申しましたように、四十八年度に発行するものについての償還計画表というものに御不満があることは、御意見としては私はよくわかります。そして、その御意見のよって来たるところは、財政法で、償還計画を示さなければならないと規定されてあるからであります。そしてその点はかつて国会でも御論議のあったところでございますから、政府としては、財政審議会等で十分専門的な御意見も徴しまして、やはりこの出し方で適当であろう、こういう考え方でございましたので、前例に従って、四十八年度の償還計画表というものはこういうものを提出いたしました。この点は、政府としてはこれが正しい行き方であると思います。  それからもう一つの問題、四十一年債の償還につきましては、お手元にございます「財政法第二十八条による昭和四十八年度予算参考書類」この中に、九ページに書いてございますが、これではまだよくわからないという御意見でございましたから、これにつきましてはできるだけ詳細に、書類を具して御説明をいたすことにさせていただきたいと思います。
  85. 中澤茂一

    中澤委員 そこで委員長、これは四十一年にこの委員会で大問題になったんですよ。だから、少なくとも議員が予算書を調べてみたら、四十一年度分は七千三百億のうち幾ら償還するんだ、自来七年間こうやってきたのはこう償還するんです、そういう明細なものが出なければ、これは審議できませんよ。  そこで、私の委員長に対する要望としては、こういうずさんな予算では——ほかにもまだあるんです。時間がないからやらない。ほかにも問題がまだこの中にあるんだ。こういうことで国会軽視をやるのなら、これはまさに官僚によるところのサル芝居をわれわれは議会でやっていることになるんですよ。私は断じて了承できませんから、質問は保留します。  いま一点委員長要求しておくのは、ただ資料を出して説明しますでは、私は了承できません。予算書の追補で償還計画を明確に出してください。それはなぜ私が主張するかといえば、明らかに財政法四条は、健全財政というたてまえから、償還計画を提出しなければならぬと義務づけておるじゃありませんか。それをこういうインチキきわまることをやって、これでわれわれに審議しろと、何でこれが審議できますか。私は質問を留保して、予算書としての償還計画の追補を要求しておきます。その処理の方法は委員長に一任いたします。
  86. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 念のために繰り返して申し上げておきますが、四十八年度の発行の分につきましては、私は、御不満であるという御意見はわかりますけれども、しかし、これはいままでの方式を踏襲し、かつ政府としては誠意をもって検討いたしましてこの方法をとりましたのでございますから、この点については、私は遺憾ながら考える余地はないと思います。  同時に、いま一つの四十一年債の償還の計画につきましては、十分御説明をいたしたいと思います。
  87. 中澤茂一

    中澤委員 私は四十八年のことを言っているんじゃないんだ、四十一年の……(愛知国務大臣「わかりました」と呼ぶ)だから、それを予算の追補として明確に出しなさいと言っている。
  88. 根本龍太郎

    根本委員長 ただいまの御要望につきましては、後刻の理事会において協議の上、善処したいと存じます。  中澤君の質疑は、保留分を除いてこれを終了いたします。  午後一時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十五分休憩      ————◇—————    午後一時七分開議
  89. 根本龍太郎

    根本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  総括質疑を続行いたします。不破哲三君。
  90. 不破哲三

    ○不破委員 私は政府に、わが国の内政及び外交の問題について質問をしたいと思うのでありますが、最初に取り上げたいのはベトナム問題であります。  このベトナム問題といいますのは、先ほどベトナムに関する協定が結ばれまして一つの転機が参りましたが、これはただ国際情勢の一つの事件というようにわれわれ見るわけにはいきません。と申しますのは、この戦争は第二次世界大戦が終わってから世界が経験した最も長く、最も大きな戦争であったと同時に、これに対して私たちの国である日本が、いわば首までつからされた、そういう戦争であるからであります。そしてまた、この戦争の経験を経て私たちは、日米安保条約というもののもとでアメリカがアジアで戦争を起こした場合に日本はどのような役割りをさせられるのか、それからまた、そういう問題に対して自民党政府がどういう態度をとるのか、この点が具体的な事実をもって経験され、証明された。そういう点でも、私どもはこの問題から教訓をくみ取ることが、これからの日本の外交を語り、アジアの平和を語る上で非常に重要である、こういう見地から総理に率直な、過去及び現在、将来についての見解を伺いたいと思うものであります。  第一に伺いたい点は、今度結ばれましたベトナム協定によりますと、ベトナム問題の解決の方法として、北にはベトナム民主共和国がある。それから南にはサイゴン政権及び解放戦線の政権がある。この三つの政権の存在を前提にして、南の問題はアメリカの介入なしに、二つの当事者の交渉によって南の統一をなし遂げる、統一政権をつくり上げる。それから続いて、ベトナム民主共和国と南に生まれる統一政権との交渉によって、平和的な手段でベトナムの再統一をなし遂げる。これが今度の協定によってきめられたベトナム問題解決の基本的な方向であろうと、こう考えております。  この協定、こういう和平の合意が成り立ったことに関して、総理国会の席上あるいはこの予算委員会の席上で、政府としてもこれを歓迎する、この合意を歓迎するということを繰り返し言われましたが、その前提に立って伺いたいと思いますのは、こうやって今度の協定の基礎として確認された北及び南の三つの政権に対して、日本政府は外交上どういう関係に現在立っておられるのか、それからまた今後どういう関係に立たれるつもりなのか、この点についてまず伺いたいと思います。
  91. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおり、今度の和平取りきめの構造は、御指摘のとおりでございます。そのように政府理解いたしております。  その前提に立ちまして私どもは、南ベトナム政府とは外交関係を現に持っておりまするし、今後も続けてまいるつもりでございます。北に政権がありますことは承知いたしておりますが、北との間におきましては、近い機会に接触を持ちまして、日本との間のもろもろの問題についての意見の交換をいたし、将来この政権に対してどういう取り組み方をするか考えてまいりたいと思っております。この協定の中にうたわれておる解放勢力の存在は、隠すべくもないと思うのでありまするけれども、この勢力との接触は考えておりません。
  92. 不破哲三

    ○不破委員 いまの外相の答弁で、一つは南の問題について、ベトナム協定、政府が歓迎される、あるいは尊重されるといわれているベトナム協定では、二つの当事者、統一政権は二つの当事者の協議により、来たるべき選挙を通じてやられるということが明瞭になっておりますけれども、その点については、いまの外相の答弁ですと、この二つの当事者のうち一方とだけの関係を続けるというふうに言われたと思います。これは一つの問題でありますが、その問題に入る前に私が伺いたいのは、いま大平外相は、わが国は南のサイゴン政権と外交関係を持っていると言われました。この外交関係が結ばれたときの事情を考えますと、これも今国会で、この国会の場で何べんも言われたことでありますが、サイゴンの政権を南の政権として日本は承認する、あるいは南ベトナムの代表政権として認めるという態度はとられなかったはずです。全ベトナムを代表する正統政権としてこれと関係を結ぶ、全ベトナムを代表する正統政権としてこの国と協定を結ぶということが言われているはずでありますが、その見解は現在でもお変わりないでしょうか。
  93. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その当時述べた見解は、その当時において、仰せのとおりの見解を持っておったことは間違いございません。ただ、いま御指摘のように新しい和平の取りきめができた、新しい事態が発生いたしたことは念頭に置いて、これから対処していかなければならぬと考えます。
  94. 不破哲三

    ○不破委員 そうしますと、過去においてはサイゴン政権というものを南北両ベトナムの代表として関係を結んだ、しかし今度の協定ができたので、その見解を改めるというわけですか。
  95. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いまベトナムの事態の収拾につきまして、ようやく達せられた和平の取りきめというものが実現いたしまして、それを軸にいたしまして事態が収拾されようといたしておるわけでございますので、それに留意しながらやってまいるのは当然のことでございまして、過去において私どもの政府がとりました態度は、新しい事態の展開を見ながら考えていかなければならぬ課題だと思っております。
  96. 不破哲三

    ○不破委員 そうしますと、現在の時点では、サイゴン政権が南北ベトナムを代表する政府だという見解は、とられていないというように考えていいわけですか。
  97. 大平正芳

    ○大平国務大臣 現実にサイゴン政府が全ベトナムを支配していないばかりか、南ベトナムの地域におきましても一つの勢力が現存しておるという事態であることを頭に置きまして、そしてこれがそういう事態である状態を、和平取りきめのラインに沿いまして統一ベトナムヘの道をいまから歩んでいこうという状態にあるということを頭に置いて、今後の取り組み方を考えなければならぬと考えております。
  98. 不破哲三

    ○不破委員 私さっぱりわからないのですけれども、国と国の外交関係あるいは政府政府の外交関係というものは、きわめて重大なものであるはずなんです。それでサイゴン政権との日本の関係にしましても、ただ横にあるのを見て、あれをいろいろ論評するということで関係が成り立っていたわけではないわけであります。たとえばインドシナの、特にベトナムの諸民族との日本の戦争状態、これは政府はいままでサイゴン政権との平和条約調印によって解決したのだということを言われていました。それから五九年の国会では、賠償問題も、サイゴン政権との賠償問題で全ベトナムの分が解決したのだというふうに言われていたわけであります。ですから、これは日本側がサイゴン政権を全ベトナムを代表する政権として扱って、それによって日本の戦争によって起こった義務も、すべてサイゴン政権との交渉で全ベトナムの分が解決したというたてまえで、すべての外交を進めてきた。  しかも、その五九年に日本が賠償協定を結んだ当時というのは、南ベトナムではゴ・ジンジェム政権の時代でありまして、そのときに全ベトナムにその支配権が及んでいなかったことは明瞭であります。ジュネーブ協定であの境界線ができて、そのあとでゴ・ジンジェム政権というのが、いわば総選挙をやることを無視してかたまってきたわけですから、そのときに、政府はあえて南のサイゴン政権が全ベトナムの代表だ。そのときには、議事録をいま振り返ってみますと、北にはベトナム民主共和国があるけれども、あれは交戦中の政治団体にすぎないということまで政府は言われているわけです。  いま大平外相は、その当時の見解は過去の見解であって、新しい協定が結ばれた時点で問題を考え直すというふうに言われたと、よく考えればそう理解するのですけれども、そうなれば、いままでそういうたてまえで日本が結んできた諸条約や条約上の関係、一体これをどうされようとしているのか、そのことまで突き詰めて問題を考えなければ、ベトナム問題に対して日本の外交が責任を負う態度を出すわけにいかぬというふうに考えるのですが、それらの点はいかがお考えでしょうか。
  99. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御指摘のように、その時点におきまして南ベトナム共和国政府との間に条約を結びまして、全ベトナムに対する賠償の問題を南の政府を相手に処理したということは隠れもない事実でございまして、そのことは、いまそれをどう・いう姿で変えようということを考えておるわけではないわけでございまして、これは全ベトナムを代表していない政府とそういう賠償上の取りきめをいたしたことの問題性はありまするけれども、日本政府が過去においてやったことを、いまここで否認するというつもりはないわけでございまして、問題が残っていることはよく承知いたしておりますが、新しい和平取りきめのこれからの実行の推移を見ながら、いろいろな問題がございますにつきましては、それに対しまして、この和平取りきめができたということを念頭に置いて漸次処理していこう、こういうつもりでおるわけでございます。
  100. 不破哲三

    ○不破委員 そうしますと、過去においてサイゴン政権を全ベトナムを代表する政権として賠償協定を結んだ内容には、問題性があったというふうに言われるわけですね。
  101. 大平正芳

    ○大平国務大臣 法律的にはそこで一応処理はついたわけでございますけれども、政治的問題性は残っているというように承知いたしております。
  102. 不破哲三

    ○不破委員 残された問題性をどのように解決するつもりなのかということについては、これからもお聞きするつもりでありますが、それなら、現在政府が外交関係を結すんでおるサイゴン政権については、これはだれをどのように代表する政権として今後関係を続けるつもりなのか、その点を次に伺いたいと思います。
  103. 大平正芳

    ○大平国務大臣 新しい和平取りきめの中で、南ベトナムにある政府として南ベトナム人民の自決権というものをいまから打ち立てていく当事政府としての立場、そういう立場を念頭に置いて考えていきたいと思います。
  104. 不破哲三

    ○不破委員 そうすると、南ベトナムに住んでいる南ベトナム人民全体を代表する政権とは考えられないわけですね。
  105. 大平正芳

    ○大平国務大臣 南ベトナムではいま、和平取りきめにもありますように、一つの別な勢力が存在するということでございまして、サイゴン政府が、そういう支配におきまして制約を持っておるということは考えておかなければいけないと思います。
  106. 不破哲三

    ○不破委員 アメリカのニクソン大統領は和平協定のあと、サイゴン政権が南ベトナムの唯一正統の代表だという立場を言明しましたが、いまの大平外相の見解はそうではなくて、現在サイゴン政権が支配している地域の代表政府だというふうに考えている、そう受け取ってよろしいでしょうか。
  107. 大平正芳

    ○大平国務大臣 わが国は南ベトナム政府と外交関係を持っているわけでございますが、この政府の支配につきましては、そういう問題を持った状況にあるということを念頭に置いておるということを申し上げたまででございます。同時に、もう一つの解放勢力につきましては、私どもいま関係を持つという考えはないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
  108. 不破哲三

    ○不破委員 そこで、田中総理に伺いたいのですが、いまの外相とのやりとりでもおわかりのように、日本政府のベトナム問題に対する外交上の態度がきわめて不明確なんです。問題性が至るところにある。つまり、かつてはサイゴン政権を全ベトナムを代表する政権だということで、日本とベトナムという国の間の関係を全部処理してしまった。ところが、今度のベトナム協定によって、そういう事情が、いわばこの点でも虚構のものであったことが明らかになって、現実には北を代表することはもちろんできない。南においても、今度の協定では、二つの当事者があるという状態が明らかになった。しかし、その政権との外交関係が、日本がかつて全ベトナムを代表するものとして、つまり一地方政権ではなしに、ベトナム全体の代表というたてまえで結んだ関係が、その南の一つの政権との間に残っている。この問題について明確なことを、はっきりと態度を整理しない限り、日本がインドシナの問題に関して正確な、あるいは筋の通った外交上の関係をこれからとっていくということは、非常に困難だと考えますけれども、こういう問題について総理はどういうお考えでしょうか、責任ある見解を伺いたいと思います。
  109. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 現に見られるベトナムの状態のように、世界各地における状態は、しかく過去の考え方や律し方ではできない複雑なものを持っている面がたくさんあります。そういう意味で、公式論で割り切れない現実があることは御理解いただけると思います。これはかつて中国の問題にもございましたし、いま南北朝鮮の問題に対しても同じような問題が存在するわけであります。そういう意味で、南ベトナムの現政府日本政府との間には正式な外交関係があります。そして、かつてサンフランシスコ条約当時は、日本の独立を認めたものは南ベトナムの現政府でございます。そういう意味で、当時は南ベトナムの現政府は、南ベトナムだけではなくベトナム全土を代表する唯一の政権として日本政府は認定をし、交渉を持って今日までに至ったわけであります。  しかし、この和平協定によって、明確に北に政府が存在をするという事実は確認をしなければならないわけでございます。アメリカもそういう意味で協定を行なったわけでございますし、もうわが外務省はすでにこの政権の存在を認めて、外務省の一課長が北を訪問した歴史的事実もございます。そういう意味で、現時点においてはベトナムには二つの政権が存在をし、その一つ、在来から外交関係を持っている南の政府とは、これからも外交関係を進めてまいります、こう言っているわけです。そして北との接触はどうかということでございますから、北に対しても接触は拡大をする方向にあると思います、こう述べておるわけでございまして、政府の現時点における考え方は、いま外務大臣が述べたとおりであり、私が述べたとおりだと思います。  しかし、これからベトナムがどのように統一をしていくのかということは、事態の推移を見詰めながらいかなければならないと思います。かつて戦時中、フランスのヴィシー政府を認めるというような問題もありましたし、こういう国内情勢によって変化が行なわれてくるわけでございますから、各国がこれらの現象に対してどういう判断を示すかという問題ともあわせ、日本はベトナムの将来に対処していかなければならないというのが、現時点における政府の考えであります。
  110. 不破哲三

    ○不破委員 この問題は結局、いま田中さんも中国問題とよく似ているという発言がありましたが、あの中国問題で日本側が、アメリカの言うままに台湾の蒋介石政権を正統政権だと認めてきたために、中国問題の解決が非常におくれた。同じようにこのベトナム問題で、ジュネーブ協定であれだけ明瞭に問題が提起されながら、あくまで南のサイゴンだけを全ベトナム代表政府という立場に立って進めてきた。私はこの面でも、対米追従外交というものが日本外交を非常にむずかしい境地におとしいれているその実例だと思うのです。  非常に複雑で割り切れないと言われるけれども、前から問題は複雑なんです。その複雑な問題を無理やりにアメリカの言うままに割り切ってしまって、賠償問題から何から、実際には代表する能力がない政権との間に片づけてしまうという態度をとったのが、今度の結果になってあらわれているわけです。  私はそこに、今後さらに具体的な日本の外交問題として、現実にぶつかってくる問題としてたくさんの問題があることを指摘して次にいきたいと思いますが、最後に一つその点に関連して念を押しておきたいのは、今度のベトナム協定で、外部からのベトナムヘの介入という問題については非常にきびしく禁止されております。その点で一つ伺いたいのは、いままで在日米軍基地を米軍に貸与だという名目で、いろいろな意味でサイゴン政権のために利用するということがあったのは周知のことでありますが、この協定が成立された後には、二度と米軍基地が、どんな名目にもせよサイゴン政権のために利用されるということはないはずだと思いますが、その点念のために伺っておきます。
  111. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私ども政府として、和平取りきめができ上がったことを歓迎し、またこれが着実に実行に移されまして、あの和平取りきめが描いておるブループリントに従いまして事態が解決し、定着を見ていくことを希望しているわけでございます。  すなわち、一番力点は、和平取りきめなるものが着実に実行されていくことが一番大事だと考えております。その場合、いまあなたの御指摘になりましたのは、その和平取りきめには、外部の介入は許さないという、いずれの国ともかってな取りきめはできないという趣旨のことが盛り込まれておることは、よく承知いたしております。しからば今後、米軍基地を提供いたしておりまする日本政府の立場で、ベトナムに対しまして全然基地との関連を持つべきでないじゃないかという御指摘でございますが、その点、和平協定の実現の中で停戦が行なわれ、兵力の引き揚げが行なわれ、あるいは武器の漸減が両当事者の間で行なわれていく段階におきまして、既存の武器の取りかえというようなこと、あるいはその修理の取りかえというようなことが起こるか起こらないかというところが、一つ私はあなたの御質問の中でひっかかる点でございまして、そういう和平協定を着実に実行してまいる上において、それに貢献するという性質のものであれば一あるかどうかという点がその場合の判断の一つの基準になりはしないかというように考えておるのでございます。  何となれば、相模原の補給廠から戦車等を搬出する場合にも、政府といたしまして、原則としてこれからベトナム向けは搬出はないのだというようにお約束をいたしたわけでございます。その原則としてということばをわざわざ挿入いたしましたゆえんのものは、双方の兵力の削減を実行していく場合の入れかえというケースが起こり得るかもしれないということを懸念いたしまして、正直にあのように書いておいたわけでございまして、その点だけがちょっと私には気にかかるわけでございますが、仰せのように、戦いを前提にし、あるいはそれ以外の新たな兵器の補給基地になるというようなことは毛頭考えておりません。
  112. 不破哲三

    ○不破委員 そうすると、こわれた戦車が出てきた場合に、相模原からまた新しい戦車をサイゴン政権のためにベトナムに送り込む、やるつもりなんですか。
  113. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たとえばタンクに例をとりますと、何台か、幾らあるか知りませんけれども、兵器である以上は、両方とも使用可能な状態にあるということだと思うのでございますが、そういうものを一つずつ減らしていくという過程におきまして、修理の問題が全然起こるか起こらないか、そのあたり、一点私は疑問に感じておるところでございます。
  114. 不破哲三

    ○不破委員 それは、起こるか起こらないか外相が疑問に感じるというのではなしに、日本側がほんとうに、今度の協定の精神に従って介入しないで、南の問題も、二つの政権が存在するという状態のもとでこれが統一されることを望み、今度の協定の精神に従って南北が再統一されることを望むというのであるならば、日本の側の態度として、そのようなことに基地を許さないという態度をとるのが当然ではないでしょうか。いままででも、ベトナムのそういうような問題に日本の基地を利用することが非常に重大な問題になっていたわけですから、この協定ができたあとも、いわばそういう名目で日本の基地がベトナム問題の介入に、軍事基地に利用される、これは私は非常に重大な問題だと思うのです。それについて問題があるかないかではなしに、政府としての責任ある態度をお聞きしたいと思うのです。
  115. 大平正芳

    ○大平国務大臣 冒頭に申し上げましたように、一番大事なことは、和平取りきめが着実に実行に移されるという状態を保証して差し上げる、そういうことにお役に立つということであれば望ましいと思うわけでございまして、そういうことは兵器の入れかえというようなところで起こり得るか起こり得ないかということを、私いま心配しているということでございます。したがって、そういう申し込みが現にあるというわけじゃないのです。したがって、そういう申し入れがあった場合に、それがほんとうに和平取りきめの実現に役立つかどうかという点は十分吟味してかからなければならない問題だと思います。
  116. 不破哲三

    ○不破委員 いまの問題は、先ほども言いましたが、大体サイゴン政権との関係というのは、全ベトナムを代表するというたてまえがあるから日本側がとってきたわけですね。このたてまえがくずれて状態が変わった以上、しかも南でも二つの政権の一つだということになった以上、いままでどおりの関係を続けるのはおかしいはずなんです。いままでどおりの関係を続けて——いま田中さんは二つの政権と言われましたが、実は三つの政権が認められている。三つの政権のうちの、しかも南の一つとの関係を従来どおりの外交関係だと考えて維持していくところからいろいろな矛盾が生まれるわけで、私はこの際政府に、そのことを含めて、従来とってきたベトナム政策の前提がくずれたのですから、この外交関係そのものも再検討する。そしてこの和平協定の精神に照らして日本はどのような外交関係をとるのが一番適切なのか、この問題について、問題性があるとか、それから今後の推移に応じて、複雑な状態に応じて考えるとかいうことではなしに、今後のインドシナ政策を進める上の最前提の一つですから、この点についての明確な見解を出すことを求めたい。  それからまた、軍事的な介入の問題に関しては、在日米軍基地をそういうことのために、その二つの当事者の一つであるサイゴン政権だけのために利用するということは、だれが考えてもこれは不当な介入になるわけでありまして、あの和平取りきめというのは、そういう点について、これ以外は軍事力の増強を認めないという、いわば禁止、制限条項なんですから、交換するために大いに協力しろということを別に義務づけているわけじゃないわけですから、そこまで申し込まれもしないのに取り越し苦労されて、それでもうこの点は協力しなければいけないのではないかということを日本の側から先に立って考える必要がない問題だ。そういう点で、インドシナ問題に対する明確な態度を外交態度としてこの国会で表明されることを、問題点が残らない態度を望みたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  117. 大平正芳

    ○大平国務大臣 和平取りきめの精神並びにその取りきめの内容というものの実現を基盤といたしまして、今後日本の取り組み方を考えていきたいと思います。
  118. 不破哲三

    ○不破委員 この問題は残りますが、次に移ります。  これは総理に聞きたいのですが、ベトナム協定の最大の問題というのはどこにあるかというと、総理も民族自決権ということを施政方針演説や答弁の中で非常に強調されましたが、ベトナム問題の解決はやはりベトナム人民の民族自決権による以外にない、このことが確認されたのが一番重大な内容だと思うのです。しかもその中で、あれだけの軍事介入をやりながら、結局アメリカの軍事介入が不当だったということが実際には協定の中で明らかになっている。  つまり協定が民族自決権を認めた主要なものは、たとえば第一条でいいますと、「アメリカ及び他のすべての諸国は」と、アメリカの名前を名ざしでジュネーブ協定を尊重しなければいかぬということがまず第一条できめられている。なぜきめられたかといえば、この前のジュネーブ協定が結ばれたときに、アメリカはこれに調印しなかった。それからこれに対して守る義務を負わなかった。これが今度の介入の原因になったから、第一条では「アメリカ及び他のすべての諸国は」と、わざわざアメリカの名前をあげて、ジュネーブ協定の尊重の義務を第一条で義務づけている。それから第四条では、「アメリカはその軍事介入を続けず、南ベトナムの内部問題に介入しない」と、干渉しない、アメリカがいままでやってきた軍事介入を続けるな、それからまた今後も介入するなということがわざわざ第四条まで取りきめられている。それから第五条、第六条では、アメリカの軍隊と軍事基地の撤退を義務づけている。これがベトナム人民の自決権を保証する上での最前提として、アメリカの介入の中止、今後継続しないということが認められたという点が、自決権という場合の最大の内容だと思うのです。この点は、もういわばこういう協定の形でアメリカも合意をして、国際的に決着をつけられた問題だ。そこに私は、ベトナムに限らず今後いろいろな世界の外交問題を考える上で、民族自決権ということの尊重は国連憲章でうたわれておりますが、世界や日本がくみ取るべき最大の教訓があると思うのです。  ところがこの点では、実はいままでの日本政府の態度というのはそうではなかったわけですね。これも国会の席上繰り返し言われたことですけれども、アメリカがやっている軍事介入というのは、これは北からの侵略に対する集団的な自衛措置だ、だからこれは正当なものだという態度を田中さんの前内閣ですが、佐藤内閣当時にも繰り返し国会で表明されて、だから協力をするんだということが言われていた。しかし、過去は過去として、この和平協定がこういう形で調印されて、これがいわばベトナム戦争の決着として国際的にも確認された現在、私たちは、この軍事介入問題について一定の結論を、どの立場の人にせよ出すことができると思うのですけれども、総理に伺いたいのは、このアメリカの軍事介入問題ですね、これについて現在でも田中内閣は、過去に佐藤内閣がとったように、これは正当であった、やむを得ないものであった、あるいは正義の自衛行動であった、こういう見解をとられているのかどうか、これを伺いたいと思うのです。
  119. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 きのう宮澤質問に対してもお答えをしましたとおり、第二次大戦終幕後、世界各地においていろんな事件が起こっておるわけであります。第一次、第二次のベルリン封鎖問題もその一つでございますし、また南北朝鮮、三十八度線を境にした争いもその一つでありますし、また米ソ直接戦うかと世界を震憾させるようなカリブ海のキューバの問題の緊張もありました。そして四半世紀にわたって続いたベトナム問題があるわけでございます。アメリカはいままでは、ある時期には、口は出すがなかなか手は出さない国だということもいわれておったわけです。国際連盟をつくりながら、みずから入らないで、アメリカ・モンローに閉じこもったという歴史はそれを明らかにしております。そういうものが、第二次世界大戦に幕を引かなければならないというときから、南フランスヘの上陸になってあらわれ、またその後朝鮮戦線に国連軍が出動したり、ベトナムの問題に対して、南ベトナム政府の要請によってアメリカ中心にした各国が兵を出したりという歴史的な事実というもの、そういうものに徴して評価をしたり判断をせざるを得ないと思うわけでございます。アメリカだけでもってこの戦争が四半世期にわたって長引いたものだとは思わない。中ソのような大きな——表には出なくとも、そういう大国同士のいわゆる東西の接点における現象であったということは、世人何人も認める事実でございます。そういう意味で、この問題が円満に解決をするかしないかということは全人類が見守っておった問題である、私はそういう理解をしておるのであります。そういう意味で、アメリカの大統領の北京訪問になり、モスクワ訪問になり——私はあの時代から、ベトナム問題は早期に片づくことが望ましいという考えと同時に、やはり根本的に接触をしなければ片づかぬ、このような現象があらわれた以上、私は必ず片づく、こういうような個人的な確信を持ったわけでございます。あのような悲惨な状態が四半世紀にわたって行なわれ、しかもそれがベトナムの統一だけではなく全人類の一つの節目になる、新しい自由を守っていく、そしてお互いが平和な生活を守っていくための一つのけじめになることを心から祈っておるわけであります。ですから、アメリカ軍が出たことが侵略であるというようなことをいま詰めて考える、しいて議論をすることに意義はないと私は思います。そうすれば、いろいろな東西の接点における歴史上の事実を並べ立てるだけにすぎないということになりますし、アメリカが侵略し、領土の拡張の意思がないというのは、二次大戦にあれだけの犠牲を払いながら沖繩を無償で返還をしておる。領土的野心は一切持ってない。これは全世界においてそういう事実があったことにも言及せざるを得ないわけでありますから、私たちはそういう議論をするよりも、ベトナムというものが、これからほんとうに民族自決、ベトナム人のベトナムとして再生をしていく、望ましいベトナムが形づくられることを真に望み、日本もできるだけ、可能な限り最大の協力を惜しまないということが正しい評価だと考えております。
  120. 不破哲三

    ○不破委員 田中さん、国際連盟から訪中、訪ソまでいろいろ並べましたけれども、私が伺ったことには答えてないんです。ベトナムに五十四万の軍隊を派遣し、それから南北ベトナムに自分の軍隊であれだけの爆撃をやり、第二次大戦中にアメリカが全世界で使ったものの二倍半をつぎ込んだというのですから、これは相当なものです。あれだけの介入をやったのはアメリカであって、ほかの国ではないんですから。この軍事介入が正当かどうかという問題は、これはベトナム戦争を考える場合、ここから田中さんが言うように今後の教訓を引き出すという場合、非常に重大な問題なんです。しかもこれは、地球の裏側で起こったことではないし、国会でいままで議論されなかったことじゃない。いままで国会で、ベトナム戦争に関連して日本の基地の役割りがこれでいいのか悪いのかということが議論されたときに、いつでも持ち出されてきたのがこの議論なんです。アメリカの軍事行動というのはそういう正当な行動だからこれに協力するのは安保条約上当然だ。ですから私たちは、これは単に過去のことを論評する歴史家として振り返るというだけではなしに、まさに安保条約を結んでいる日本として、日本の今後にもかかわる問題としてこの問題は詰めて考える必要がある問題なんです。  ですから私は端的に聞くのですけれども、五十万の軍隊を出してあれだけの軍事介入をやって、今度の協定では、こういう軍事介入はもうやめるべきだということが結ばれたわけですが、この軍事介入に対しては、いまだに、いままで自民党政府がとっていた態度と同じような評価をされているのかどうか。あなたは、本会議での代表質問の答えには、アメリカがそういうことを言っておりますというように、アメリカの主張を紹介されたにとどまりましたが、その主張をいまでも正しいと思っておられるのかどうか、正しいと思って紹介されたのかどうか、その点を伺いたいと思うのです。
  121. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 最終的の結論は、後の歴史が評価し決定することだと思います。しかし、現時点において考えることは、国連憲章五十一条によって、集団安全保障という名のもとに、南政府の要請に基づいてアメリカ軍が出動したことは事実であります。私はそういう問題に対してはそのとおり理解しております。
  122. 不破哲三

    ○不破委員 それなら何に対して国連憲章五十一条を発動したのですか。国連憲章第五十一条には外部からの武力攻撃に対してというように限定されてありますけれども、どういう侵略行為があったのですか。
  123. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その問題が問題になりましたのは、トンキン湾におきまして一九五四年に北側の機雷に触れてアメリカの軍艦が損傷をこうむったということが問題になりまして、それがその後国連に報告されて安保理事会が持たれた経緯で御承知と思います。そこで、本来国連が実力がございますならば、そこで有効な行動を起こして問題を処理する立場にあるわけでございますが、遺憾ながら国連はそこまで熟した力を持っていない。したがってやむを得ず国連憲章に認められた自衛権を発動せざるを得なかったというように私どもは理解いたしておるわけでございます。
  124. 不破哲三

    ○不破委員 大平外相がそういう理解だとすると、あまりにもお粗末だと思うのです。アメリカが軍事介入をしてトンキン湾にいたから事件が起きたので、トンキン湾事件が起きたからアメリカの軍隊が派遣されたのじゃないのです。事態そのものがそういうことでしょう。介入してそこにいなければ事件は起きませんから。だから、いまのお話は二重に違っているのですけれども、アメリカの軍事介入が始まったずっと以前なんです。大体米軍援助司令部が設けられたのがトンキン湾事件の二年前ですから。  それから、トンキン湾事件そのものについても、確かに国会であなた方は、これはアメリカの自衛行動だ、やむを得ないものだと言いました。そのアメリカの軍艦が——機雷じゃなくて魚雷艇ですよ。いま機雷と言いましたが、そこら辺も不正確な知識じゃ困ると思うのですが、ベトナム側の魚雷艇に攻撃された、だから自衛行動をとったのだと言いました。それはやむを得ない措置であると当時椎名外相が答えました。しかしそのことを、そのときアメリカ側の説明をいままでうのみにして信じているとしたら、私はあまりにも日本政府は無責任だと思うのです。  あのトンキン湾事件については、たとえば国防総省の秘密報告ですね。あれからあとでこれも公表されて、実際にはあれがどんな事態だったかということがすでに明らかになっているわけですよ。国防総省自身が報告しているように、あれは自衛行動と言っていたけれども、実はトンキン湾事件が起きる前に、ウエストモーランドが指揮する部隊が、北ベトナム領の島、ホンメ島とホンニュー島というのに上陸作戦をしかけた。つまり、アメリカが先に上陸作戦をしかけて、そういう状態が起きた中であのトンキン湾事件がいわば事後に起きたんだということが、国防総省の秘密報告でも明らかになっているわけなんです。ところが日本政府が、そういう点でもいまだにアメリカ側のその当時の言い分だけをうのみにして、あれは自衛行動だったという態度をいままでとっているとしたら、しかもそれに基づいて日本の基地の使用やなんかをアメリカに認めているのだとしたら、私は非常にこれは日本国民に対して無責任な態度だと思うのです。ですから私どもは、ベトナム問題に関してはありとあらゆる事実が明らかになっているわけですから、その事実の上に立って、アメリカ政府の言い分ではなしに、日本政府責任ある判断を聞きたいと思うのです。
  125. 大平正芳

    ○大平国務大臣 われわれの判断といたしましては、国連というものが、第二次大戦のあと、人類の英知を集めてできたわけでございますが、この国連に加盟した国は、戦争というものを非合法化いたしまして、加盟国が取り得る軍事行動というのは、国連自体がとるか、あるいは国連憲章に認められた自衛権の行使しか認められていないという仕組みの中でアメリカが行動しておるというように理解いたしておるわけでございます。で、個個の軍事行動というのは、北爆をはじめ、私どもは現地を調査いたしまして、これが行き過ぎじゃないかとか、どうであるとかいうようなことにつきまして、これはいろいろ議論があろうと思いますけれども、そういうものを判定するのは国連の仕事でございまして、私どもの立場、私どもはそういう方便を持っていないわけなんでございますので、政府としては用心深く、個々の軍事行動を支持するというようなことを申し上げたことはないと思います。しかしながら、これは冷たい仕組みがそうなっておるということを申し上げておるわけでございますが、しかしベトナム戦争は、仰せのように、人類が経験した非常に重大な事件であるということをわれわれが否認しておるわけじゃ決してないわけでございます。政治的にも社会的にも、これは人類の命運にかかわる大きな問題であったと思います。したがって政府は、この事態の早期の収拾ということにつきまして絶えず要望し続けてまいったわけでございますし、安保条約の取りきめを持っておるわが国の立場といたしましても、絶えずアメリカに対しまして早期の収拾を要請し続けてまいったわけでございます。
  126. 不破哲三

    ○不破委員 大平さんは慎重に、評価をしないというように言いますけれども、いままでの日本政府の代表は決してその点慎重ではないので、たとえばトンキン湾事件が起きたときには、椎名外相は外務委員会で、アメリカ側がとった行為は自衛権の範囲内である、やむを得ないものであるというようにはっきりこれを支持する評価をしております。それから六五年の二月に北爆が始まったときにも、これについて、これは正当なものだということをやっぱり国会ではっきり答弁をしている。正当な自衛の措置であるというように評価をしている。あるいは六六年に爆撃をハノイ、ハイフォンに拡大したときにも、これは戦争を拡大するものではなくて紛争を終結させるための措置だということを国会答弁している。つまり日本政府は、アメリカがベトナムで軍事行動をやるたびに、これに対して、あなたはいまになったら、われわれは情報がないからよくわからないと言われるけれども、そのときには全部支持しているわけなんです。支持して、それについても日本政府の安保条約による協力、それをそれで合理化してきたわけなんです。ですから、幾らことばで慎重だと言われても、実際に日本政府がとってきた態度は、少なくとも、アメリカの個々の軍事行動にわたっても、これを支持してこれに協力するという立場を明らかにしてきたわけですね。ところが、いまになって、協力はしたけれどもその根拠というものはあまりはっきりしてないのだということであるならば、これまた非常に無責任なことになると思うのです。ですから私は、そういう過去の責任を明らかにする上からいっても、一体、この田中さんの言われる半世紀にわたる戦争が終結しようとし、それがしかも一定の国際的決着が協定という形でできた時点で、今までのアメリカの軍事介入、これに対してはどういう問題点があったのか、これが正当であったのかどうか、この点についての明確な判断が必要なわけですね。その点について判断するだけの材料を持っていないというのでしたら、そうお答えいただいてもけっこうなんです。
  127. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ベトナムの戦争をどう見るかという問題につきましては、軍事的にも政治的にも社会的にも道義的にも、いろいろな角度からこれは評価ができると思いまするし、先ほど総理も言われましたように、歴史家が権威ある判断をしてくれるものと思います。けれども、いま私どもの立場は、申し上げておるのは、アメリカの行動は、国連の仕組みの中で、その加盟国としてのアメリカのとった行動であって、加盟国のとり得る行動というのはこういう行動しかとれないものである。そしてアメリカは、そういう自衛権、国連憲章上認められた自衛権の行使としてやったものであるということを説明しておる、そういうものとして私どもは理解しておるという私どもの立場を申し上げたわけでございます。何となれば、私どもは不破さんが一番問題にされておりまする安保条約上の問題を考えるにつきましても、安保条約自体がやっぱり国連憲章のワク組みの中で設けられました自衛権の行使の一つの形態なんでございまして、したがって、安保条約上の約束をアメリカと持っておるがゆえにベトナムとのかかり合いができてくるわけでございますので、その一連のかかり合いを、私どもはそのような立場を踏んまえた上で基地の提供を認めておりますと、こういうことを終始政府は言ってきているわけでございます。個々の軍事行動につきまして、政府がこう言ったではないかとか、あるいはだれだれがこう言ったではないかというような御指摘がございましたけれども、こういう御指摘につきましては、そういう全体の文脈を通じて御判断をいただきたいのでございまして、私どもは個々の軍事行動について判定するような材料は持っていないわけでございますので、全体としての軍事行動は自衛権の行使のワク組みの中のものであるということを理解しておるという立場を申し上げておるものと私は思います。
  128. 不破哲三

    ○不破委員 自衛権の問題からいきますと、総理もそこに国連憲章をごらんのようですが、国連憲章第五十一条にはこういうように明確に書いてあるわけですね。ともかく武力攻撃が発生したときに、これに対して各国が固有の、個別的及び集団的自衛の権利を持つ、つまり武力攻撃に対して自衛の行動があるわけですね。どんな行動でも自衛という名前さえつければ何でもやっていいということじゃないわけです。ですから、あなた方が、アメリカの軍事介入が国連憲章に基づく自衛行動だというならば、どのような武力攻撃に対しての行動であったのか、そこを理解しないと理解したことにならぬわけですね。そこをどう理解されたのかいま理解されているのか、それを伺いたいと思うのです。
  129. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ベトナムにおける北の南に対する武力攻撃というものが出発点だというようにアメリカは説明をいたしておりますし、私どももそのように理解をいたしております。
  130. 不破哲三

    ○不破委員 それはいつ行なわれたんですか。
  131. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その一番の出発点は、先ほど申しました六四年のトンキン湾事件であったように私は記憶しております。
  132. 不破哲三

    ○不破委員 だから私は言うんですよ。日本の外交をあずかっている外務大臣が、ベトナム戦争に関して子供でも知っていることを知らないというまま答弁されているのでは、私はかなわないと思うのです。アメリカの軍事介入が行なわれたのははるかに昔ですけれども、公然とアメリカが軍事司令部を設けたのは六二年なんですよ。六二年に介入し始めたことを六四年の行動で説明するというのでは、これは歴史家だって泣くと思うのです。後世の歴史家だって書きようがないですよ。一体、いつ北からの武力攻撃が行なわれてアメリカが大軍を派遣して軍事介入をやるようになったのか。すでに、ケネディが暗殺されてケネディ政権が終わるときに、アメリカは、万をもって数える軍隊を送り込んでいたんですから。その点どう考えておられるのですか。
  133. 大平正芳

    ○大平国務大臣 南越の要請によりまして、米国が軍事顧問団を一定数送り込んでおったことは承知いたしております。
  134. 不破哲三

    ○不破委員 では、六四年のトンキン湾事件で攻撃されたのは軍事顧問団なんですか。
  135. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それはアメリカの軍艦であるというように聞いております。
  136. 不破哲三

    ○不破委員 このような状況では、もしそれで日本政府アメリカのベトナム戦争に対する態度を説明して理解しているんだとしたら、これはもう実に論外だと思うのですよ。総理一体いかがお考えですか。何の武力攻撃に対する自衛行動だとお考えですか。
  137. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 国連憲章五十一条には、明確に加盟国が武力攻撃を受けた場合の自衛権に対して規定をいたしております。そしてまた、加盟国が行なった行為に対しては、安保理事会に報告をしなければならないという、事後措置に対しても規定をいたしておるのであります。ベトナム問題は、御承知のとおり、長い歴史、四半世紀にわたる歴史、こういっておりますから、この問題に対しては、フランスが手を引いて、そのあと南の政府の要請に基づいて南の政府の自衛権、この五十一条に基づく自衛権の発動ということで、加盟国であるアメリカの援助を求めたわけであります。アメリカだけではなく、韓国も現に軍隊を派遣しておるわけでございます。そういうふうに、南ベトナム政府がとった行動そのもの、またアメリカ政府が南政府の要請に基づいてベトナムに出動した事実に対しては、安保理事会に報告をされて了承が得られておるわけでございます。でありますから、アメリカの行動は国連憲章五十一条に基づく行為である、こうアメリカが言っておるわけでありまして、それは私たちも、この国連憲章五十一条の規定に基づいて考えるときに、国連憲章五十一条に該当する行為であるというふうに理解できる、こう政府は明確に答えておるわけでございます。
  138. 不破哲三

    ○不破委員 一つ伺いますが、じゃ、その武力攻撃というのはどこからどこに対してあったんですか。
  139. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは南政府が北からの攻撃ということでありますが、これはいまの四者の協定にも、アメリカは現に大きな軍隊を出しておりますし、しかもアメリカが協定の当事者でありますから、アメリカその他の国々はとこういっておるように、これが、先ほども述べましたように、常識的に、東西の接点に起こった幾つかの現象の一つであるということは、世界周知の事実じゃありませんか。そうでなくて、アメリカの軍隊があれだけの長期にわたって、あれだけのものを持ち込んで、そうしてこれだけの長い間北がささえられるわけはないのです。そういう事実というものに対して南が武力攻撃と判断をし、アメリカに援助、応援を求めたということは理解できる、こう言っておるわけです。
  140. 不破哲三

    ○不破委員 田中さんの答弁は、アメリカ側の説明よりももっとだいぶ先へ進んでいますよ。アメリカが六二年に司令部を設けたときに、アメリカ以外の外国の軍隊が北に入っている、だからその武力攻撃だというような説明をした文章はただの一つもありませんよ。だから、あなた方はみんな何でもあとのことで前のことを説明しようとするから歴史がおかしくなるのですよ。  あなた方が言わないから私言いますけれども、あのときに北からの侵略の証拠だといってアメリカや南ベトナム側が出したのは、いまの解放戦線に連なる国内の運動なんですよ。これがもう北からの侵略の証拠なんだということを言って、これに対する自衛行動だということを言って、司令部の設置や軍隊の派遣を合法化しようとしたのですね。しかし、その立場が正しいのかどうかということは、今度の協定で決着がついている。解放戦線というのは南の一つの当事者として、これは当然の南の勢力だと、それからまた、サイゴン政権と並んで、これから南ベトナム問題を解決する南の勢力だということがアメリカも合意してはっきり承認したわけですから。こうなると、いままで政府が論拠にしていた集団自衛という行動そのものが全く今度の協定で根拠がなくなるわけですね。今度の協定で侵略を排除したとすれば、アメリカの介入を排除するという規定があるだけで、解放戦線を南から一掃しろなんということは全然協定にないわけですね。これが第一の問題ですよ。  それから第二に、田中さんは、アメリカの集団的な行動は安保理事会に報告されて了承を得たと言いますけれども、一体安保理事会がいっそれを了解したのか、そういう決定をいつ行なったのか、それを説明してください。
  141. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 この五十一条にありますとおり、承認ということは言い過ぎだったようであります。報告をしなければならない、報告をしてあるということであります。
  142. 不破哲三

    ○不破委員 報告は一方的にできるのですよ。だから、報告したからといって、その行動が認知されたことにならないのです。だから、報告したから国際連合が国連憲章に基づく行動として合法化したと、これはまた非常な理屈にならないことでありまして、私は、その点でもいまの国連憲章を云々する議論というのは成り立たない。いまの議論でもわかりますように、日本政府アメリカ側の行動を正当化する理由というのは非常に薄弱だ。  それからまた、問題をいえば、大体南からの要請といわれますけれども、ジュネーブ協定というものそのものが一九五四年、これは五四年なんです、トンキン湾事件じゃなくて。ジュネーブ協定が五四年に結ばれて、これで実はいまのようなベトナム問題解決の道が定められていたわけですね。二年以内に総選挙を実行する、南も北もそれぞれ独立の国にならぬ、総選挙を実行して統一する、南だけの総選挙じゃなくて、北を含めた統一選挙をやって統一するということをきめられていたわけですね。それで、それぞれの政府は外国との軍事同盟を結ばぬ、外国に軍事援助を求めないということもきめられていたわけなんです。しかし、その総選挙ができなかったから、できないで南がああいう軍事政権を固めて、アメリカの軍事介入を求めたから今度の問題が起きたわけですね。そこら辺のいきさつは御存じですか、大平外相。
  143. 大平正芳

    ○大平国務大臣 一応は承知しています。
  144. 不破哲三

    ○不破委員 それから、これに関連する次の問題ですが、あなた方は、ベトナム戦争についてはコメントする立場にないということを盛んに言われますけれども、ところが日本の場合には、これはコメントしないと困る立場に置かれているのです。世界のほかのどこの国よりも日本は、このベトナム戦争に関連してアメリカがとる行動、それが正義のものであるのか、平和のものであるのか、これを判断しなければいけない立場に一番置かれている国なんです。なぜかといいますと、先ほどから外相や総理が言われますが、安保条約をアメリ功と結んでいる、基地を提供している、だから安保条約のワク内でアメリカ日本の基地を使うのだと言われますね。しかし、安保条約、われわれは反対ですけれども、あなた方が結ばれている安保条約のたてまえからいっても、アメリカの基地の利用は、どんな目的にでもかってに利用していいというものじゃないはずなのです。第六条には、これも御承知でしょうけれども、よく覚えてないといけないので読み上げますと「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」に基地を提供すると書いてあるわけですね。何でもいいというわけじゃないのです。安保条約の条文からいっても、目的は限定されているのです。よく政府に聞きますと、ベトナム問題は極東の平和に関係がある——関係があるだけでは基地の利用は正当化されないのです。同じ関係があるといっても、平和を破壊するように関係するのだったら、これは安保条約の条文からいっても正当化できないわけでしょう。極東における平和及び安全の維持に寄与するかどうかという判断を、これは日本政府が主権国家として基地を提供する以上、これは実際にしなければいけないはずです。日本周辺に戦争がある、この戦争がどういう性格のものであるのか、この戦争がどうなるのが平和に役立つのか、そういう判断をして、初めてその戦争の基地に日本をすることができるはずだと思うのです。  ですから、重ねて聞きますけれども、いままで日本政府がベトナムにおけるアメリカの戦争行動に基地を一貫して提供してまいりましたが、一体このアメリカの戦争行動が、北爆を含めて、極東の平和の維持に役立ったと考えているのかどうか、これをいま協定が締結された時点で明確に伺いたいと思うのです。
  145. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たびたび政府が申し上げてまいりましたとおり、あなたがおっしゃるとおり、極東の平和と安全に寄与するため、あるいは日本自体の安全のために寄与する場合にだけ基地は使用できるものであるということは、あなたの理解と全く私も同様でございます。  それで、たびたび政府が申し上げておりますとおり、ベトナムにおける紛争という問題は、極東の安全と無関係でないというのが日米双方の共通の認識でございまして、そういうことで安保条約の基地提供との関連を考えておると御承知いただきたいと思います。
  146. 不破哲三

    ○不破委員 やはり質問したことに答えていただかないと困るのですよ。安保条約のもとで提供したと言われるが、日本を基地としてやったアメリカのベトナムでの軍事行動が、極東の平和を維持するに役立ってきたといまでも考えておられるかどうか、端的に伺いたいのです。
  147. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いろいろなことがありましたけれども、和平の取りきめが実現するというような事態になったことを私どもは評価いたしております。
  148. 不破哲三

    ○不破委員 協定論を聞いているんじゃないのですよ。日本政府アメリカの北爆その他に基地を提供してきた。それがいまでも極東の平和のための行動であったと考えるかというのです。
  149. 大平正芳

    ○大平国務大臣 お断わりしておきますが、日本の基地を直接提供しているわけじゃなくて、それぞれ制約のもとにやっておりますことは御案内のとおりでございまして、日本の基地からいきなりベトナムの戦闘に参加するというような場合は規制されておることは御案内のとおりでございます。いずれにいたしましても、そういう過程を経まして不幸なベトナム戦争が続いたわけでございますけれども、日本の安保条約上の基地の使用を認めたというようなものも含めて、一連の全体の行動が和平を招来したというように私どもは考えております。
  150. 不破哲三

    ○不破委員 和平というのは、アメリカがああやって軍事介入をやめさせたから成り立ったわけですね。それが今度の協定の中身なんですよ。その、いまあなたが言われたアメリカの軍事行動をどうやってやめさせるかというのが、和平の中身だったわけですね。その軍事行動が極東の平和のために役立っていたのかということを伺っているんですよ。それは役立っていたと考えられるわけですね。イエスかノーか、はっきり聞いておきたいのです。
  151. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ベトナムの戦争を日本の基地が全部背負っておるわけでは決してないのでございまして、これは多くの要素が結合された行動であったわけでございますから、私どもは、この日、本の立場がベトナムの戦争を大きく左右したというようにうぬぼれておりません。けれども、一九六八、九年ごろからだんだんとベトナムの戦火、軍事行動が縮小過程に入ると、それとうらはらにベトナム化計画が進んでまいりまして、南北の軍事的な均衡もほぼとれるようになったことも、今度の和平取りきめを実現する一つのベースになったのではないかと思うのでございまして、和平にこれが全然寄与していない、むしろ非常にこれをじゃました、あるいは事態を非常に悪化させたというようには評価はいたしておりません。
  152. 不破哲三

    ○不破委員 この問題、もう一ぺんあとで、安保条約に関連して伺いましょう。  ベトナムの最後に一言伺いたいのは、田中総理がインドシナの和平会議について施政方針演説で述べられました。これは和平協定に述べられている国際会議とは別のことを考えているのですか。
  153. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ベトナムの戦後復興、ベトナムというような長い間かかった悲惨な戦争が終結をして、これからベトナムがよりよいベトナムをつくるために努力を続けるわけであります。その場合、近隣諸国はもちろんのこと、日本も含めて世界の各国がこれが復興、民生安定とか経済復興とか、そういう南北ベトナム全体が望ましい姿になるためにわれわれがしかるべく協力ができるような復興会議のようなものが望ましいとだれが——日本が提唱すると、また日本経済的に進出をしてくるということもいわれるでしょうし、いろいろな国々がどういう状態で提唱するかは別にして、可及的すみやかに復興会議のようなものがつくられることが望ましいという基本的な考え方を述べたわけでありまして、そういうものがだれの提唱にかかわらずできてくれば、日本も積極的な協力をしてまいりたいということを申し述べたわけであります。
  154. 不破哲三

    ○不破委員 アメリカがベトナムで侵略をやったことも認めない。アメリカが結局手を引かざるを得なくなって協定を結んだ現在でも、これは集団的自衛の行動であったといってそれを正当化する。それからまたそれに日本が基地を貸して——実際には日本の基地がなければベトナム戦争できなかったわけですから、その点では一番深い共同——悪いことばで言えば共犯の役割りをしているのに、それについても反省しない。それからまた、外交関係でも、全ベトナムを代表する政府としてサイゴン政権と関係を結んだのを、事態が狂ってきても根本から転回しようとしない。そういうような態度のままで日本一体これからのインドシナ問題に積極的な役割りを果たし得るとお考えですか。
  155. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 日本は押しつけがましく復興に協力したり、そういうことは考えていません。しかし、世界の各国が、まさに恩讐を越えてということばを私もちょっと思ったのですが、そういう状態でベトナムの復興に私は協力をすべきだと思います。私は、そういう意味で、日本も批判されるような立場ではなく、日本の真意が真に理解されるような状態において積極的な協力を続けてまいりたいということであって、何でもかんでもすべて割り切って、公式論で割り切ってどっちかにしなければいかぬというような、しかく国際情勢は簡単ではないのであって、お互い相当長い間けんかをしてきた間でも、やあやあということだけで協力することがあるじゃありませんか、いいことは私はそういう姿勢を出して一向差しつかえない、こう思っております。
  156. 不破哲三

    ○不破委員 私は、日本がインドシナ問題で積極的な発言をしようと思うなら、やはりいままでのその態度を根本から反省する必要があるということを、共産党は代表質問でも指摘したのでありますが、そういう態度では、平和会議を提唱されても、これは全く役に立たないと考えざるを得ないのです。  ただ私、この議論をやっていまして、どうも田中総理や大平外相と私どもあるいは国民の間では、侵略とか干渉とかい与問題についてずいぶん考え方が違うようだということを非常に感じました。ですから、この点についていわば総理が言われる複雑な問題ではなしに、もっと単純な例でもう一ぺん伺いたいと思うのです。  総理は、去年の予算委員会で、わが党の松本議員の質問に答えて、過去の中国に対する戦争をどう考えるかという質問に対して、過去の戦争について侵略戦争と断定できるものかどうか、いまの立場で言えないと答えられました。それから二カ月くらいたちましたが、現在ではどうでしょうか。過去の中国に対する戦争について、あれを侵略戦争とお考えなのか、それとも別の戦争と考えているのか。現時点での考えを聞きたいと思います。
  157. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は北京を訪問し、日中国交正常化を行ないましたときに、かって日本日本の軍隊が中国各地でたいへんな御迷惑をかけました、損害をかけましたことについて深い反省をいたしてまいりました。そのときも周恩来首相も言われましたが、過去は過去のこと、お互いはこれから今日の世界に生きるお互いとして、やはり将来に望みを託して、お互いが二度とそういうことをやらないという考え方が前提にあれば、お互い向上、前進することができるじゃないかという考え方が、日中国交の正常化ができたことだと思います。  日本がかつて中国大陸に兵を出したという事実、これは歴史的な事実でございます。この問題をいまあなたが言うように、端的に侵略戦争であったかどうかということを求められても私がなかなかこれを言えるものじゃありません。これはやはり将来の歴史が評価をするものでございまして、私たちはもう再び戦争はしないという新しい憲法を持っておるんです。だから、あなたからそういうことを言われても、何かまた今度私が逆にあなたにものを聞いても、これは悪かったことでございます、絶対的反民主主義でございましたというような、そういうことまで、はっきり言い得るものと言い得ないものがあると私は思うのです。少なくとも、いまの私が述べた考え方、これはやはり再びそういうことがあってはならないという強い決意、そしてもう一つは、正確に認定をするとすれば後世歴史の上で評価をされるものだ、こう申し上げる以外にはありません。
  158. 不破哲三

    ○不破委員 中国との間でどういうやりとりがあったか、これは一つの問題であります。しかし、日本自身が今後侵略戦争をしない、あるいは今後侵略戦争に加担しない、こういう立場をとる日本国民の立場、あるいは日本の国の政治の立場を考えるならば、日本自身が過去に犯した戦争がどういう性格のものであったか、これについて明確な判断を持つことは当然のことであります。ですから、そういうことをまあまあまあ、やあやあやあということで済ますようでは、日本政治をになう政治家の資格がないと私は思うのです。ですからあえて聞くのです。あの問題は、総理がベトナム戦争複雑だと言われましたが、もっとそれよりも単純なはずであります。日本が中国の国民意思に反して中国に軍隊を派遣して、中国の領土を占領して、あるいは自分の言いなりになる政権をつくる、こういうことをやったわけですから、これについては国際的な判定も日本国民の結論も出ておるはずなんです。  それなら総理にもうちょっと伺いますが、たとえばアメリカに対する戦争、それから東南アジア諸国に対する戦争、これも侵略戦争とはいま断定できないというお立場ですか。アメリカに対する戦争、日本がやった過去の戦争です。つまり太平洋戦争全体、これを侵略戦争とは考えないという立場ですか。
  159. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 過去に行なわれた日本の戦争、これは日清、日露、いろいろな問題もあります。しかもその上に大東亜戦争と銘打たれたものもございますが、それをいま私があなたの質問に答えて、侵略戦争であったかなかったかという端的なお答えは後世史家が評価するものであるということ以外にはお答えできません。
  160. 不破哲三

    ○不破委員 しかし、日本は戦争が終わったときに、ポツダム宣言というものを受諾して、それで一定の決着をつけたはずであります。あの宣言の中には、過去の戦争が侵略戦争であったことについて明確に指摘をしておりますが、それを否定されるわけですか。
  161. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ポツダム宣言を受諾しなければならないような国情だったのです。またポツダム宣言を修正するような力はなかったのです。そういう事態においてポツダム宣言を受諾しておるという歴史的な事実、それを全部否定するものか、こういうような質問をされても、私がそれに的確なお答えができないということはおわかりになると思います。私が今度立場をかえて、別なものをあなたに質問してもお答えできない場合も私はあると思います。
  162. 不破哲三

    ○不破委員 私どもへの質問はいつでもおやりいただけばけっこうですが、きょうは私どもが政府質問しておる番ですから、私ども革新の勢力がそちら側にすわるようになったら大いに田中さんにしてもらったらけっこうです。  しかし、私はこの問題はたいへん重大な問題だと思うのです。というのは、戦後の日本政治体制というのは、日本がやった太平洋戦争、これが侵略戦争であったことの反省の上に成り立っておるのです。それからまた、国際連合を中心にした国際的な体制は、日本がドイツやイタリアと結んでやったあの世界戦争が、全体として侵略的な戦争だった。それを二度と起こさせないという前提の上に国際連合が成り立っておるのです。ところが、その世界の政治日本政治も成り立っておるいわばいまの政治の基本的な前提を総理大臣否定される。ああいうきわめて明瞭な侵略戦争についても、これは後世の歴史の判断に待つ。政治家というのは後世の歴史の判断に待つものではなしにみずから歴史をつくるものであります。現在の瞬間において何が正しくて何が間違っておるかということを判断しながら進むのが政治家ではありませんか。それが、このような重大な問題に対して後世の歴史に待つということであいまいにして、つまり過去の日本がやったあの明瞭な侵略戦争に対しても態度を明らかにしない、あるいはこれを肯定する。そういうような態度をとっておる人が日本総理大臣になり、日本の自衛隊の責任者である、あるいはアメリカとの軍事同盟の相手のにない手であるということになったならば、これは国際的にもあるいは国内的にも、日本の軍事的な進路について多くの人が不安や疑念を持つのはそれだけでも当然だ、これはきわめて重大な問題だと私は思います。この重大性を指摘して、過去の侵略戦争に関してさえこれだけ判断が出ない政府ですから、そういう政府がいま日本のまわりに起きているベトナム問題とかという問題について、明確な答えを出し得ないのは、それからいえばあたりまえかもしれませんけれども、これが日本政治の今後にかかわる非常に重大な問題だということを私は指摘して、次に安保の問題について話を移したいと思います。  総理は、本会議の代表質問に対して、私どもが三年前のアメリカのサイミントン委員会、あそこでのアメリカのジョンソン国務次官の証言を聞いて、アメリカ側が、現在、われわれは、通常兵力による日本の直接の防衛に直接に関係する兵力は、陸軍にしろ空軍にしろ、日本に持っていない。通常兵力による日本の防衛はもっぱら日本責任だというふうに述べているくだりを引用して、米軍の性格について質問したところ、このジョンソン発言は問題がないという答弁をされましたが、在日米軍の性格というものは、こういうものだというように理解をしていいわけですね。
  163. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この安保条約六条に規定してあるように、日本の安全と極東の平和と安全に寄与するために基地を米軍に提供を許しておると承知しておるわけでございまして、日本の安全を度外視いたしまして、極東の安全だけのものであるとは考えておりません。
  164. 不破哲三

    ○不破委員 目的を聞いているわけじゃないんです。米軍が日本の安全と極東の平和に役立つ役立ち方をどう考えているかという問題であります。それで、その点についてジョンソン国務次官は、通常兵力による日本の直接の防衛、これは在日米軍の任務ではない。もう一ぺん言いますと、通常兵力による日本の直接の防衛は全く責任日本にあって、もう一ぺん言いますと、「われわれは、通常兵力による日本の直接の防衛に直接に関係する兵力は、陸軍にしろ空軍にしろ、日本に持っていない。」ということをいっているわけです。それで、われわれが日本に置いてあるのは、むしろ日本周辺諸国との軍事的な取りきめ、これを果たすために日本に基地を置いてあるのだという説明をジョンソン国務次官も当時のマッギー在日米軍司令官も繰り返し述べているわけです。それについて総理は、これは問題がない、それは米軍の駐留のもたらす抑止力が極東の安定のための大きなささえであり、つまり、日本の直接の防衛じゃなくて、極東内のささえになっている、在日米軍が。それがわが国に及び周辺地域の平和の維持に寄与できるという共通の認識なのだというように総理答弁されました、これでいいわけですね。
  165. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 アメリカの高官が、アメリカの議会その他で証言をされたことに対して一々私がコメントする立場にはございません。ございませんが、国会の審議で過去もそうでありましたが、アメリカでこういっているじゃないか、日本政府のいっていることと食い違っているじゃないかということをよく指摘されますが、日本政府は、日米間に締結をせられておる日米安全保障条約の各条章に基づいて考えておるわけでございます。ですから在日米軍に基地を提供しておる。在日米軍に基地を提供しておることが日本の安全のためにまた周辺の平和のためになるのだ、こういう考え方をずっと持ち続けておるわけでございまして、まあアメリカでどういう立場でもって言ったのかわかりません。これはきっと日本のためにだけやっているというなら、日本にもっと国防費を負担させればいいじゃないかというようなことになるかもしれません。どういう立場で言ったのか。これは日本だけではなく、アメリカの極東地域に対する平和維持のためにというふうに言ったのか、私はさだかにしません。その前後も全然承知をしないで、私たちが、ジョンソン次官がどう言ったから、だれがどう言ったからというのではなく、少なくとも在日米軍、日本に置いている、基地を提供しておるという事実は、日本のためにこの日米安全保障条約の条章にあるとおり、効力を持つものであるという強い信念を持っておるわけであります。
  166. 不破哲三

    ○不破委員 総理が、あのサイミントン委員会の議事録というのは、これは日本の在日米軍の機能や実態の問題に関して、アメリカで一番いわば集中的に議論された問題で、それについて全然読んだこともないといわれるのは不勉強のきわみだと思いますけれども、しかもこれは外務省提供の文書でありまして、われわれは外務省から提供されて読んでいるわけですから、それぐらいはひとつ読む義務が総理あると思いますけれども、この中では繰り返しいっているわけですね。それで在日米軍の性格論なんです。目的はこの安保条約にあるとおりでしょう。しかしその目的を果たすために自衛隊と在日米軍の間で、どんないわば分担になるのかということに属する問題だと思います。それについて、これは在日米軍の責任者であるマッギー司令官も言い、それからジョンソン国務次官も言うということで繰り返しこの委員会を通じて述べられているのは、われわれは、通常兵力による直接の防衛はわれわれの任務でないという点であります。総理は、いつもアメリカの言うことは、先ほどの議論でも無条件に信頼されているようですが、この問題に関してだけは、この証言を持ち出すと、どうもアメリカの言うことはわからぬというようなことを言われるのは私は非常に一貫性を欠くと思うのですが、それなら形を変えて伺いたいと思います。  よくあなた方は、在日米軍は自衛隊の足らざるところを補う戦力だというように言われますが、じゃ、日本の自衛力のうちのどういう部分が足りなくて在日米軍は何をになっているのか。何が足らないと判断してそれを在日米軍に依存しているのか。その点について、これは日本政府自身の判断ですから、当然答弁ができると思いますが、伺いたいと思います。
  167. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 いまの日本の自衛力につきましては、陸海空それぞれ整備の段階にあると申し上げておりまして、そのことはいままでの考え方といたしましては、いわば一朝事あるときの周辺の能力を想定をした場合に、日本の陸海空の能力では十分防衛の任務を尽くしがたいというふうに申し上げておったわけでございます。そうして当初においては御承知のように、米軍も陸も空も海も相当のものを日本に駐留をさしておったという状況でもあったわけでございます。しかしだんだん申し上げておりまするように、現在考えておりまするのは、われわれとしては日本の自衛力を最小限度のものとして整備する一面、安保条約に基づくアメリカ協力というものと組み合わせて、これによって容易には日本に攻撃をしかけることができないという形、すなわち抑止力あるいは日本に攻撃をかけるというような意思の起こらないようにするという形におけるものを日本の自衛力としても整備をしてまいろうという考え方でございます。したがいまして、これを補完をしてもらうというアメリカの陸海空の兵力も、そういう意味合いにおけるもので、御承知のように陸はほとんどおりません。海も日本に駐留をするという形とは言いがたい形で第七艦隊がおるということでございます。空は若干のものがおるわけでございます。しかしこういうものを日本の自衛力と組み合わせて防衛ということを考えるならば、抑止の力あるいはそういうふうな意思が容易には起こらないという形のものとしてこれをわれわれが考えることができるであろうというのが、ただいまの私どもの自衛隊を整備するについての安保条約に基づく米軍への考え方でございます。
  168. 不破哲三

    ○不破委員 これもさっぱりわからないのですけれども、じゃ結局何が足りなかったのですか。防衛庁長官、私が聞いているのは、日本の自衛力のどこが足りないから頼んでいるのかという点なんですが、結局何が足りなかったわけですか。第七艦隊ですか。
  169. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 申しましたように、具体的な脅威を想定するという考え方は発展的に乗り越えたというとことばが語弊がありまするが、申し上げたように、侵略が容易には起こらない、あるいは侵略をするような意思が起こらないようにしようという意味で、日本の陸海空、自衛力を整備をしてまいりました。陸は一応十八万ということで打ち切りということを相当前々から考えておるわけですが、海、空等は、これは状況によりましては脅威と申しまするか、周辺の能力と申しまするか、そういう方面から考えまするならば、この場合日本の空、海の自衛力では不十分であるという、そういう意味の判定はもちろん成り立つわけでございまするが、それを具体的に、それでは空と海、空をどれだけ、海をどれだけというふうな考え方をしないで、包括的に私どもは日米安保体制、米国の日本におりまする、主として空、海の勢力、その他アジアにおりまする勢力、場合によりましては急遽本国から送り得るもの等を総括をして、やはり容易には日本に対する攻撃が起こらない、攻撃をしようとする意思が起こらないというものになる、そういう意味の自衛力を日本としては整備をしてまいろう、こういうことでございます。
  170. 不破哲三

    ○不破委員 日本の自衛力の問題はあとで伺いますけれども、要するにこういうことですか。直接の侵略を想定した場合にはそういうことが容易に起こらないような自衛力は日本の力で保持したい、周辺に手を出すことはできないから、その分をアメリカに依存するということですか、いまの御説明は。
  171. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 毛頭そういう趣旨ではございません。
  172. 不破哲三

    ○不破委員 ですから私が聞いているのは、増原さんの先ほどの話ですと——きのうの話もそうですが、自衛力の日本の整備の限界のほうは、これは容易に日本への侵略が起きないように充実するという話でしたね。そうするとアメリカのほうは要らないわけでしょう。それを日本の自衛力が足らざるところを補うというなら、アメリカには何を頼んであるのだ。日本の防衛を頼んである以上、頼んでいることがあるでしょう。何にもわけがわからないで、頼みますという話をしているわけじゃないでしょう。だから、日本の防衛のためにアメリカに基地を置いてもらっているのなら、一体どういう役割りを、日本の自衛力では足りないからアメリカに頼むのか、それくらいははっきりしていないと、安保条約や在日米軍が日本の防衛のためのものでありますとはいえないと思うのです。それに比べればアメリカのジョンソン次官の説明のほうがよほどはっきりわかるわけですが、どうでしょう。
  173. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 日本の自衛力の整備あるいは昨日御説明をいたしました平和時における防衛力限界、自衛力の限界というものは、御説明もいたしましたように、日米安保体制というものを背景に持っての考え方でございます。平和時ということと日米安保体制というものを背景に持っての考え方でございます。申し上げた平和時の日本の自衛力が整備されたら安保体制は要らないという性質のものではございません。しかしそういう形で日本の防衛、自衛を考えます場合には、やはり一応、日本が安保体制に期待するものは陸海空のうち海、空ということに主点があるというふうに申し上げてよいかと思います。
  174. 不破哲三

    ○不破委員 海、空と言いましたが、たとえば空ですね。在日米軍で日本の防空の任務をになっている米軍の空軍部隊がありますか。
  175. 久保卓也

    ○久保政府委員 今日岩国の海兵隊を除きまして、陸も空も第一線部隊はございません。したがいまして、現在日本にあります米軍は、第一線部隊は、岩国なりあるいは横須賀のものを除いて、ございませんけれども、いつでも第一線部隊が派遣し得るという体制はとっておる。そういうことによって、日本の安全に対する抑止力であり、かりにそれが破れた場合にも米軍の支援体制ができるということになります。
  176. 不破哲三

    ○不破委員 沖繩の戦術空軍は日本にはいないのですか。
  177. 久保卓也

    ○久保政府委員 いま本土のことを申し上げましたが、沖繩にはございます。ただし目下は、機数は忘れましたけれども、約二個スコードロンは台湾のほうに移駐しております。あと若干残っておると思います。
  178. 不破哲三

    ○不破委員 防衛庁長官の話とだいぶ違うわけですね。海、空はアメリカにかなりたよるんだと言いましたが、いま防衛局長に聞くと、空は大体第一線部隊はほとんどいないんだ。だいぶ話が違いますが、どうでしょう。
  179. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 現在おるものとしてはいま久保局長の説明をしましたとおりでございます。しかしこれは、万一の場合を考えたときということのお話になりますと、何としても陸の日本に対する救援ということはたいへん困難であるというふうに考えられるわけでありまして、空、海による救援というもののほうが主たるものになるであろうというふうな意味合いを申し上げたのでございます。
  180. 不破哲三

    ○不破委員 多少具体的に聞きましょう。  政府は、先日、アメリカの第七艦隊の空母のミッドウェーの横須賀を母港にすることをきめられましたが、これも日本の安全を考えての処置でしょうか。
  181. 久保卓也

    ○久保政府委員 日本及び極東の安全に寄与するものと考えます。
  182. 不破哲三

    ○不破委員 この第七艦隊のミッドウェーというのは、作戦海域はどこでしょうか、範囲。
  183. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいま御指摘ございました空母、ミッドウェー、これは先般日米間におきまして横須賀を母港として使用することについて日本側は差しつかえないということを言っておりますけれども、米空母ミッドウェーが横須賀をいわゆる母港として使いますことは、ミッドウェーの乗り組み員の家族の横須賀周辺における居住を認めるということでございまして、ミッドウェーそのものが日本の防衛に直接云々という関係にはございません。もちろん第七艦隊所属の空母といたしまして、広い意味におきまして日本を含む極東の平和と安定を目的とするミッションを持っておるということは言えるかと存じます。
  184. 不破哲三

    ○不破委員 これまただいぶ答弁が違うわけですね。私がミッドウェーの母港化が日本の安全に寄与するための措置かと聞いたら、先ほど防衛局長はそうだ。ところがいまアメリカ局長は違う、家族対策である。まあそれはいいでしょう。  じゃ、防衛庁長官に聞きますが、この乗り組み員の家族を横須賀に持ってくるということは、ミッドウェーの作戦行動上はどういうような変化が生まれるのか。それから横須賀を根拠地にしたミッドウェーが、どれだけの海域を作戦対象として行動するのか、この二点について明確に伺いたいと思います。
  185. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 久保防衛局長からお答えを差し上げます。
  186. 久保卓也

    ○久保政府委員 横須賀に家族を居住させることは、休養あるいは家族の面会等のために一々本国に帰らなくて済むということであります。これは具体的に月の数を計算したものもございますが、大体いま記憶しておりまするのは、横須賀に家族を居住させ、そこに寄港するということであれば、本国に帰りまする場合よりも三分の二くらいのロスをそこで吸収し得るということであったと思います。そしてまた、このミッドウェーの作戦海域といいますか、行動区域、行動海域につきまして私存じませんけれども、第七艦隊の一部ということでございますので、当然広範囲にわたりまする場合は西太平洋及びインド洋にわたると思います。
  187. 不破哲三

    ○不破委員 政府は問題を家族対策だと、田中さんもたしか本会議でそう答弁されました、そういうように問題を非常に小さく見せておりますけれども、私はこの問題をそういうようなごまかしでいわば国民の前を過ぎようとする、ここに非常に大きな問題があると思うのです。いま久保局長の話であるように、このミッドウェーというのは第七艦隊の主力空母で、しかも作戦海域は西太平洋から——太平洋全域からインド洋にまで及んでいるのです。それで、なぜ今度の母港化が生まれたかということは、これは去年のレアード長官の国防報告ですね、この中に非常にはっきり書いてあるのです。海軍が検討している戦力増強の新しい措置の一つとして、前進展開した機動部隊の海外母港化がある。この措置によって、われわれは家族別居の悪影響なしに——この意味では確かに家族対策です、悪影響なしに平時のわれわれの兵力水準をもっとよく活用できることになろう、これはいまの第七艦隊の兵力水準を活用できるようにするためにとられた措置だ。それで、いま具体的にいわれていることを言いますと、たとえばいままでだったらミッドウェーというのは六カ月間太平洋水域で活動する、そうするともう本国に帰らなければいけない。それで空母の交代をやって、そういうことであった。ところが今度横須賀が母港化になると、大体三年間は太平洋水域で自由に活動ができる。つまり、いままで六カ月交代でやっていたものが、今度は横須賀を根拠地にして三年間太平洋及びインド洋水域で活動できるようになる。これは名実ともに横須賀がそういう第七艦隊の攻撃空母の根拠地になる。以前の国会の論議でも、一時寄港の場合とそれから根拠地として使われる場合と、これは厳重に区別するということを、たしか愛知さんが外務大臣のころだったと思いますが、政府答弁されたことがあります。それだけの重要な問題だと思いますが、その点防衛庁長官、この問題について、その大きな意味をどうお考えでしょうか。
  188. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 家族を横須賀周辺に置くという意味の母港化ということで考えまして、これは主管は外務省でございまするが、検討の上これは特別に、何と申しますか、施設を提供するというふうなことも不要であるということのようでございまして、そういう意味の母港化に同意をしたということでございます。
  189. 不破哲三

    ○不破委員 しかし、子供の話じゃないんですね。家族を移すということが具体的な中身であっても、実際に果たす役割りは、家族を移すことによって家族まで移った根拠地が横須賀にできるわけですから、いままではアメリカのサンディエゴを根拠地にして一時日本を中継地に使っていたミッドウェーが、今度は日本の横須賀を根拠地にして太平洋作戦、インド洋作戦をやることになる。その点についてどうお考えかと伺っているんです。
  190. 大平正芳

    ○大平国務大臣 根拠地ということになりますとミッドウェー空母の任務が変わる、そしてその指令が横須賀を通じて行なわれるというような意味にわれわれはとっていないのでありまして、ミッドウェーの任務というものは従来どおりである。横須賀に寄港する頻度は、確かに家族の面会、補給等でふえるわけでございますけれども、任務は変わらない。言いかえれば、いままで三ばいの空母を必要としておったところを一ぱいで済むというような性質のものであるというように承知しております。
  191. 不破哲三

    ○不破委員 横須賀には、すでに第七艦隊の旗艦であるオクラホマシティー、これも横須賀を母港にしておりますね。つまり司令部も横須賀にある。それからミッドウェーも、その護衛隊である駆逐艦隊も、横須賀を母港にすでにしている。つまり一つの機動部隊、一つの攻撃部隊が全部横須賀を中心にして行動する、こういう状態が実は生まれるわけで、これはだれが考えても非常に重大な事実なんです。  それからもう一つ伺いますけれども、イギリスのジェーンの海軍年鑑、これは軍艦の調査としては非常に世界的に権威のあるものでありますけれども、このジェーンの海軍年鑑を見ますと、一番新しいものでありますが、ミッドウェーについて、一九四九年の初めに核兵器を貯蔵し装備するように改造された、世界で最初の核攻撃力を持った軍艦であるということが書かれておりますけれども、この点について政府はどういう事実を御存じでしょうか。
  192. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ジェーン年鑑に空母ミッドウエーの性能その他について詳しい記載がございます。その中に御指摘のとおりに、ミッドウェーはまさに核装備ができる空母であるということが記載されてございますけれども、核兵器のわが国の持ち込みにつきましては、事前協議の対象とされていることは御承知のとおりでございますし、空母ミッドウェーがわが国との事前協議なしに核兵器を搭載してわが国に寄港することはない、こういうふうに確信いたしております。
  193. 不破哲三

    ○不破委員 この点でもミッドウェーが横須賀を母港にするという点は、これは非常に事態を変えるわけですね。つまり横須賀を母港にすることによって、三年間はアメリカ本国に帰らないで活動をするという作戦体系になるわけです。いままででしたら、六カ月ごとに本国に帰る。ところがこれからは約三年間にわたって、横須賀を母港にして本国に帰らないで太平洋水域で活動する。それがレアード国防長官の構想している、アメリカの艦隊の前進展開の新しい方法なんですね。そうなりますと、第七艦隊というのは以前から全艦隊が核武装されているという疑念を非常に強く持っている部隊でありますが、その一つの部隊が今度は横須賀を根拠地にするわけですから、この点では核装備の疑念が非常に濃厚にならざるを得ない。ここに一つの重大な問題がある。ただ、いままでどおりアメリカは約束を守るであろう、ただその口約束だけ、あるいはその抽象的な信頼だけで問題は片づかないということを、私はこの点でも指摘をしておきたいと思うんです。  それからもう一つ伺います。政府が今度乗り組み員対策ということで、攻撃型空母のミッドウェーの母港化を認めましたが、大体ミッドウェーというのは四十五年に就航した航空母艦で、そう寿命は長くないといわれておひます。アメリカの第七艦隊自身が、エンタープライズに続いて原子力空母をこれからニミッツとかアイゼンハワーとか、次々と四隻建造する計画を持っている。攻撃型空母の主力がこれに置きかえられるということが、大体避けられないだろうというようにもいわれております。第七艦隊の攻撃型空母の母港にするという決定を今度政府はしたわけですけれども、これは一体ミッドウェーに限るのかどうか、それから将来起こってくる原子力空母の母港化という問題に対しては、これは認めないということをはっきりここで約束できるのかどうか、その点を防衛庁長官あるいは総理大臣に伺いたいと思います。
  194. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まだそういう相談を受けておりませんから、お返事のしようがございません。
  195. 不破哲三

    ○不破委員 それでは困るのです。相談を受けたときには、たいてい国会に相談しないで黙って引き受けちゃうのですから。たまには、こういう重要問題ぐらい、相談を受ける前に、日本政府のこういう態度はこうだと示せないのですか。
  196. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 米側からいわゆる母港化の話が持ち出されてまいりました段階におきまして、米側から横須賀に、家族を居住させたい空母は通常型空母であるということを言ってきております。
  197. 不破哲三

    ○不破委員 そうすると、将来、この通常型空母以外の原子力空母が問題になったときにどういう態度をとるかということは、いまの日本政府として言えないということですか。
  198. 大平正芳

    ○大平国務大臣 お話し合いがありました場合には慎重に考えます。
  199. 不破哲三

    ○不破委員 それで、今度は、このミッドウェーの行動に関する問題ですが、去年の国会で空母の行動ということがたいへん問題になりました。たとえば、アメリカの第七艦隊に所属していたコンステレーションが、たしか去年の四月だったと思いますが、横須賀から出港した。出港して、そのままベトナム戦争の北爆に参加をしたということがありました。そのときに、日本政府を代表して、たしかそのときは福田外相だったと思いますが、そういう問題や、あるいは岩国からのファン下ムの発進の問題に関連して、航空母艦が日本を根拠地にして直接戦闘作戦行動に出るような場合を含めて、事前協議の問題を再検討するということをたしか約束されたことがあると思うのです。つまり、いままでは、そういう空母がある日本の軍港から出る、出るときには戦闘作戦行動の命令を受けていなかった。港を出たとたんに作戦命令が出たんだから、これは事前協議にかからないというような話で、大体すべての問題が片づいていたわけですね。ところが、今度、横須賀が第七艦隊のいままでより以上の根拠地になるということになると、この問題が一そう重大になってくると思うのですけれども、去年の国会で外務大臣が約束された事前協議問題の洗い直しという問題、これはその後どのように取り組まれているのでしょうか。
  200. 大平正芳

    ○大平国務大臣 前内閣当時国会で問題になりました、そして政府のほうでお約束いたしました事前協議の洗い直しは、当時政府からも申し上げましたように、事前協議のワク組みの変更というようなものではなくて、現在のワク組みがどのように運用されているか、それにつきまして日米間に理解の違いがあるかないか、そういった点を洗い直してみるという趣旨のものであったと思います。これを引き継ぎまして、その後鋭意米国側と協議をしてまいったわけでございまして、一月二十三日の安保協議委員会にその協議の結果を持ち寄りまして、両国の政府の共同の発表をいたしておいたわけでございます。これによりまして、御案内のように、事前協議のワク組みの運用につきましての基本的な理解にそごはなかったということでございまして、もちろん、これには、いま不破委員が御指摘のように、従来国会で問題になりました空母の問題とか、あるいは海兵隊の出動の問題とか、そういうような事前協議との関連において問題になりましたことは、その問題点と、国会を通じて政府が説明しておることを先方に説明し、先方との間に了解の違いはなかったわけでございますので、基本的ワク組みにつきましては了解に相違はなかったということを再確認したということを発表いたしたわけでございます。  しかし、安保条約の運用におきましては、事前協議にかからない事案につきましても十分のこなれた理解がないと円滑な運用ができませんので、制服を含めまして、運用協議会というものを日米双方でつくりまして、これは随時協議の一つの形でございますけれども、そこで随時精力的な協議を続けまして、双方に理解の不一致がないように円滑な運用をはかりたいというようにいたしたわけでございます。
  201. 不破哲三

    ○不破委員 外相がワク組みと言われるのは、交換公文で規定された三項目が事前協議の対象になるということでしょう。問題は、去年の国会でも問題になったのは、その三項目のワクを最大限に解釈をして、もう大体、横須賀から直接ベトナム沖へ行って北爆に参加をしようが、それは戦闘作戦行動の命令があとから出たのだから問題はないのだ、あるいは岩国からファントムが直接ダナンの基地へ移動しようが、最初移動するときには南方への移動ということだったから、これは問題がないのだということで、実際に日本から行なわれるいろいろな戦闘作戦行動への参加も全部事前協議のワク外にされた。そこに一つの問題があって、それについて、この現状でいいかどうかということをたしか検討することになっていたはずですね。そこには沖繩からの空中給油の問題もありました。そうすると、いまの外相のお話ですと、そういう点は従来どおり全部事前協議の対象外ということで日米双方が意見が一致したということでしょうか。それとも、これからさらに協議をして、その点についてはもっとシビアなきびしい取りきめをするということなんでしょうか。
  202. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御指摘のような、国会等を通じまして問題になりました事案につきまして政府が従来説明をしておりましたこと、そのことと米国側の理解の間にそごはなかったということで再確認という表現にいたしだわけでございまして、したがって、事前協議のあの三項目のワク組みに触れないで、運用上の問題について理解にそごがないというようにいたすのを、洗い直しというように私どもは理解いたしましてやったわけでございます。したがって、これを再検討するというようなことはいたしておりません。
  203. 不破哲三

    ○不破委員 これはずいぶん前の国会の話と違うと思うのですね。安保条約が改定をされてから十二年になって、これは実際にベトナム戦争に安保が使われて、それで日本が事前協議の約束を歯どめだ歯どめだと言われていたけれども、さっぱり歯どめにならぬ。そういうことが国会で問題になって、これがなるものかどうなのか洗い直してみようというのがこの前のきまりであったはずなんです。ところが、それを、いままで日本政府が説明したとおりのことをアメリカに説明して、それでいいということになったというのであれば、これは何も洗い直しとか再検討とかいう必要はなかったはずなんです。これだけ日本の基地がアメリカの戦争行動に利用されていながら、ただの一度も十二年間事前協議にかからないということ自体、まさにあれの空文化を示しているわけですけれども、そのまま今後ともいこうというわけですね。基本的な点の再検討は、日本政府としても、日米間でも、協議する必要はないと考えられるわけですね。
  204. 大平正芳

    ○大平国務大臣 安保条約並びにその関連の取りきめは一つの全体をなしておりますので、私どもとしては、これをそのまま手がたく維持してまいりたいということでございます。
  205. 不破哲三

    ○不破委員 じゃ、伺いますけれども、その事前協議にかからない性質の米軍の行動ですね。要するに全部なんですが、いままでアメリカ日本を基地として動いた、この行動は、日米間で実際にはどう処理されていますか。
  206. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それは事前協議事項ではない。したがって、アメリカとしては、基地を使用する権能は持っておるわけでございますけれども、日本側から、基地周辺の問題その他を考えまして、このように自制をしてもらいたいという交渉は随時随時に協議をいたしてまいったわけでございまして、いつも問題になりましたB52の嘉手納飛来の問題にいたしましても、天候上等で万やむを得ない緊急避難の場合だけに限る、天候回復とともに即時退去してもらいたいというようなことを申し入れ、先方の同意を得て、そのように実行しておりますように、これは事前協議事項にかかりませんけれども、安保条約の円滑な運用をはかっておる点におきましては、私どもは、事の大小にかかわらず取り上げて、円滑な運用をはかってまいりたい。それは今後も一続けてまいるつもりでございます。
  207. 不破哲三

    ○不破委員 たとえば横須賀からもアメリカの空母が出動する場合、この米軍、空母の出動などについてはどういうふうになりますか。これは全く日本政府には通告のないものですか。それとも、事前に通告があって、帰港あるいは出動、そういう問題について相談のあるものでしょうか。
  208. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 米軍の行動につきましては、一々必ず事前に日本側に通報ということにはなっておりません。
  209. 不破哲三

    ○不破委員 私は、ここに、非常にこの仕組みに重大な問題があると思うのですね。さっきベトナムの問題で私伺いましたが、アメリカ日本が基地を提供しているのは、これは安保条約のたてまえからいっても、日本の安全と極東の平和を維持するために提供しているんだというわけですね。その限りにおいて、安保条約によって日本責任を負っているはずなんです。ところが、そこから出ていったアメリカ軍が、たとえば不当な戦争行動を起こすというような場合、これはその戦争に対して日本が基地を提供することになるわけですから、当然、日本政府としての責任というものが生まれてくる。したがって、日本を基地としたアメリカの行動に関して、いまの仕組みですと、事前協議の条項にかからない限りは、日米間の協議の対象に大部分はならない。ところが、事前協議の協議の対象になるというものについては、政府側も極力広げて、いままでの十三年間の実績でも、ただの一度も事前協議の対象になったものがないということになりますと、日本を基地にしたアメリカの行動というのは全く自由ということに事実上なるわけですけれども、一体政府は、その日本を基地としたアメリカの行動が極東の平和の維持に役立つかどうかということの保証をどこに求めているのでしょう。全くそういう点で、いわばフリーハンドで、自由にまかしてある状態になるわけですけれども、その点をどこに求めているのか、それを伺いたいと思うのです。
  210. 大平正芳

    ○大平国務大臣 在日米軍の行動を規制するものは三つあると思うのです。一つは、やはりこれは国連の憲章全体がかぶっておると思うのです。もう一つは、地位協定の制約を受けていると思います。それから第三は、いま御指摘の事前協議なんでございまして、事前協議条項は、御指摘のように、確かにこれまで協議を受けたことは一度もないわけでございますし、この間の協議委員会におきましても、今後事前協議にかかるようなことが予想されないであろうというような双方の認識も展望もあとで発表いたしたわけでございます。しかし、これは、あなたがおっしゃるように、事前協議条項というようなものが空文化し、死文化してしまったということを意味しないわけでございまして、こういうものがあるという前提で、その規制の中で在日米軍が行動いたしておるわけでございまして、この行動の幅が事前協議にかからないということでございまして、事前協議があるということは、私は無言の大きな規制力を持っておると思うのでありまして、これが直ちに空文化したというようには御理解をいただかないようにお願いしたいと思います。
  211. 不破哲三

    ○不破委員 総理は、この間、力による対立の時代が終わったというように言われましたが、私は、いまの日本アメリカの基地の状態、米軍の状態を見ていると、とてもそんなことは日本の現実とはかけ離れていると思うのですね。たとえば、先ほど言った空母ミッドウェーの母港化という問題にしても、これはいままでなかったことで、それが西太平洋からインド洋に至る作戦海域を持った第七艦隊の基地に日本が今度なる。あるいは、いま沖繩に海兵隊が帰ってまいりましたし、岩国にも海兵隊の飛行隊が帰ってまいりましたが、この海兵隊がどんな任務になっているかというと、これは日本の防衛などという任務じゃなくて、これはもう有名な西太平洋全域を行動対象とする作戦部隊ですね。それから、横田に今度、関東計画といって、アメリカの飛行機を、部隊を集中するそうですが、これはMACといって、やはり西太平洋全域のアメリカの空軍部隊に対する補給を主任務にした部隊が横田にはすわる。つまり、いま政府が、これから緊張緩和だとか、もう安保は象徴化するんだと言いながら、アメリカに提供しようとしている部隊というのは、空軍についても、海軍についても、あるいは海兵隊という地上戦力についても、自衛隊の一部をになって日本の安全に寄与するどころか、まさに、ジョンソン国務次官が言ったとおり、太平洋からインド洋に至るまでの海域で、あるいは地域で戦争をやるための部隊、初めからそういう任務づけられた部隊を日本は置いているわけですね。ですから、この部隊の極東での行動というものがどれだけ日本の力で規制できるのか、いわばここにすべてがかかっているわけですね、実際に。ところが、いま外相の説明を聞いても、これは安保条約のワク内でやっているんだからということになる。  私は、そこで政府に伺いたいのです。そういうような、西太平洋からインド洋まで至るような、それを作戦海域にし、作戦空域にし、それを作戦範囲にするような部隊をあなた方は安保条約によって基地提供しているわけですけれども、この部隊が極東で極東の平和に反するような行動をやった場合、一体日本政府としては、その部隊に基地を提供している責任ですね、これをどう果たそうとしているのか。それとも、そういう部隊は絶対に極東の平和に反するような行動をしない、横須賀から出ていって、横須賀を基地にしている航空母艦がアジアの地域でそれに反するような行動をしないということを無条件に言えるのかどうか。そこのところを伺いたいと思います。
  212. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ベトナム戦につきましていろいろ御注意があったわけでございますが、ベトナム戦におけるアメリカ軍の行動が極東の平和と安全に寄与するものであったかどうかという評価の問題につきまして、政府と不破さんとの間には大きな理解の距離があるようでございますが、これは、基本的には、この行動が極東の平和と安全に寄与するという判断、そういう判断の基礎になければならないことは当然でございまして、今後、あなたが御指摘のように、アメリカ軍の日本を基地としての行動がどのように展開されるかよく存じませんけれども、それをいまから見ていく場合に、日本政府として、それが極東の平和と安全に寄与するものであるという、そういう安保条約の趣旨、それを十分踏まえた上で私どもは考えなければいかぬと思うのでございまして、具体的な事例が、将来のことでございますから態様がわかりませんけれども、心がまえとしてはその趣旨に忠実に判断してまいらなければならぬと思います。
  213. 不破哲三

    ○不破委員 この問題ですね。先ほどの政府のベトナム問題に関する答弁を聞いても、とても、アメリカのやる行動に関して、自主的な判断をもって、責任をもって対処したということはだれが聞いても考えられないような答弁だったわけです。つまり、アメリカ政府がこう言っているからそれに従う、そういうまさに盲目的な、盲従的な態度だった。そういう態度で今後とも政府が臨むのであったならば、この安保条約が、私どもが指摘をしているように、平和に役立つどころか、まさに極東の平和を破壊するための場所にわれわれの国土をしてしまう、そういうものになることは明瞭だと思うのです。私どもはここに安保の基本的な問題点があることを指摘して、時間もありませんので、次の問題に入らせてもらいます。  昨日、防衛庁長官は、平和時の自衛力についての見解を出されました。この点について若干の質問をしたいと思うのです。  ここで言われる平和時という問題ですね。総理あとで、国際情勢に大きな変化がない限りこの線を守ると言いましたが、ここで言われる平和時というのは何なのか。平和時にいうのがなくなるのはどういうときなのか。日本に直接の攻撃があるときなのか、それとも、日本に対する攻撃が急迫するときのことを平和時でなくなるというのか、その点について、まず、見解を出された長官の見解を伺いたいと思うのです。
  214. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 防衛力限界を考えまする場合に、これはたいへんむずかしい問題であるということを申し上げまして、平和時ということで防衛力限界を研究してみろ、考えてみろという指示を受けたわけでございます。平和時は、昨日申し上げましたが、私どもが第一番に平和時ということを考えますのは、今日の国際情勢が大勢としては緊張緩和の傾向にあるものでありまして、そう想定をするわけでございます。このような今日の状態を平和時と考える。「このような「平和時」は、わが国及び関係国の平和外交努力が続けられ、内政諸政策が推進され、かつ、日米安保条約体制が有効に維持されるという前提に立って、今後とも続くものと考えてみました。」かように説明を申したのでありまするが、これは今後とも続くものと考えてみましたと同時に、こういうわが国及び諸外国の平和外交努力が続けられ、内政諸政策が推進されて、日米安保条約が有効に維持されて続いていくものと期待し、希望をするという意味も持っているわけでございまして、どういうところが平和時でなくなるかという限界をちょっとここで申し上げることはなかなか困難でございまするが、明瞭に緊張緩和の傾向がなくなった、緊張激化の状況がアジアにあらわれるというふうになりますときは、いわゆる平和時ではないということであります。
  215. 不破哲三

    ○不破委員 そうすると、日本に対する直接の戦争の脅威や攻撃がなくても、緊張緩和とあなた方が言われる傾向が緊張激化に変わるというような場合には、もうこれは役に立たないわけですね。
  216. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 さように考えて平和時というものを頭にかぶせたわけでございます。
  217. 不破哲三

    ○不破委員 そうすると、ちょっと始まりも聞きたいのですけれども、大体、いま言われる平和時はいつごろから始まっているのですか。自衛隊の創設以来二十年近くになりますけれども、この二十年間で、あなたが平和時と言われる状態は大体どこら辺の見当ですか。
  218. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 不破委員の御質問、いつもたいへんむずかしいのでありまするが、大体におきまして、御承知のように、一昨年ニクソン大統領の訪中、訪ソの声明があり、その後順次これが実行に移され、わが国も中国と国交正常化を行なうというふうになりました事態、それに伴いまして、もとより重大なベトナムにおける停戦の実現、南北朝鮮の対話の進行というようなものがありまするが、こういう事態を緊張緩和の事態ととらえた。まあ、これがきっかけでございまして、そういう緊張緩和の傾向にあるもの、これが続いていくということを平和時というふうに考えたわけでございます。
  219. 不破哲三

    ○不破委員 そうしますと、一番最初に日本政府が四次防の計算にとりかかったのは平和時以前のことになるわけですけれども、平和時でない状態につくられた四次防の計画よりも、最近の平和時に必要な自衛力のほうが大きいのはどういうわけですか。
  220. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 こまかくは防衛局長から説明をさせまするが、四次防というのは、いわゆる第四次防衛力整備計画でございまして、四十七年度を第一年度とし、五年間の防衛力整備計画でございます。これは、平和時という頭をかぶりました日本の自衛力、防衛力整備の限界と申しますか、私どもは、これはめどというふうに申すことがいいかと思いますが、これは一応の限界でございまして、そういうことでございまして、四次防は、いまわが国に存在します自衛隊にとって動かすことのできないと申しますか、明確な決定を得ました防衛力整備五カ年計画でございます。これはそれとは趣の違うものでございまして、平和時という事態における日本の自衛力、防衛力整備の限界といいますか、めどと申しますか、そういうものでございます。
  221. 不破哲三

    ○不破委員 そうすると、この平和時の自衛力は、四次防から五次防を想定したものですね。
  222. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 いままでずうっと一次、二次から四次防まで参りまして、先般の臨時国会においても、四次防で自衛力は十分かというような御質問がありまして、まだ十分とは防衛庁では考えておりません。それじゃ五次防をやるかという御質問がありましたから、五次防をやるようになりましょうというふうに私がお答えをしたことがございます。しかし、これは、いままで私が四次防を決定をしていただく経過に考えてみましても、第四次防衛力整備五カ年計画というような形で決定をいただき、これを皆さまにお示しをし、国民に説明をすることが適当であるかどうかということは、先般の国防会議議員懇談会でも御意見があったところでございます。したがいまして、この四次防以後の防衛力整備について、何と申しますか、五次防をやるかどうかということは決定をいたしておりません。しかし、四次防が済めば、いわゆる平和時の防衛力整備はできたのかと申されますると、四次防が終わりました段階でできますものは、基幹部隊と申しますか、基幹的なものは陸海空とも大体そろいまするが、たとえば海におきましては、四ないし五護衛隊群というふうなことを申し上げておるわけでございまして、四次防が終わりましたときに平和時の防衛力整備のめどというものが全部でき上がるものではないということでございます。しかしながら、将来は五次防ということでやるかどうか、これはこれから十分に検討をいたしてまいるという課題でございます。
  223. 不破哲三

    ○不破委員 特に、海上の問題では、いま防衛庁長官も言われたように、四次防よりも約七万トン近く上限で見れば多いわけですが、一護衛隊七万トンというのは何を想定されているのですか。
  224. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 御承知かと思いまするが、船は、いま大体八隻を一護衛隊群といたしておりまするが、これが最初つくりましたものは大体千七百トンというところでつくっておりまするが、ぼつぼつ艦齢がまいりまして、三次防から四次防にかけましてもうつくりかえていくようになります。これはその後の、何と申しまするか、兵器の進歩と申しまするか、レーダーその他の通信、捜索装備のあれと申しまするか、だんだんやはり二千トン程度あるいは二千五百トン程度というものにする必要があるということになりまして、これは護衛隊群の、何と申しまするか、近代化という形で近代化されたものは、最初のものよりはトン数が多くなるということでございまして、二十五万トンと申しまするのは、現在の四護衛隊群が現在の進行の状況で近代化をされますると大体二十五万トンになる。二十八万トンと申しまするのは、四ないし五と申しておりまするものは、五になりました場合に二十八万トンになる、こういう意味合いでございます。
  225. 不破哲三

    ○不破委員 その五になるものの内容は、どういうものを想定しているのですか。
  226. 久保卓也

    ○久保政府委員 四次防が完成いたしましたときの艦艇トン数は二十一万四千トンであります。したがいまして、あと三万有余というものを考えておりまするのは、ただいま防衛庁長官は四群と言われましたが、そこはちょっと間違っておりまして、二十一万四千トン、つまり四次防が完成しました場合に持っている艦艇のすべてにわたって近代化を行なった場合に、約二十五万トンぐらいになる。たとえば、これは護衛艦も各種艦艇があります。いま長官は、千七百トンの例をあげられましたが、これが二千五百トンになる。といいますのは、四次防までで考えられている艦艇で代替した場合であります。四次防までで想定しておらない艦艇で代換するということではございません。つまり、最近まででつくっている新しい艦艇で代替するとそういうことになるということで、たとえば三千トンの船は三千六百トンになる、あるいは千六百トンの潜水艦は二千二百トンになる。そういうことで、護衛艦の護衛隊群及び地方隊の船、それから潜水艦の隊群すべてにわたってそういった意味での近代化を行なうと、約二十五万トンになりますということであります。
  227. 不破哲三

    ○不破委員 そうすると、新しい護衛隊群及び新しい艦艇は考えていないということですか。
  228. 久保卓也

    ○久保政府委員 二十五万トンと申します場合には、四次防までで考えておる艦艇であります。それからあと一隊護衛隊群をつくりまする場合は、現在考えておりますものは、いま四護衛隊群が持っておるものと同じ内容を考えております。
  229. 不破哲三

    ○不破委員 総理に伺いたいのですけれども、総理はきのう、この平和時の防衛力をめぐる見解を、これは国際情勢の大きな変化がない限り守るためにやるという話をされました。ところが、私いま防衛庁長官から伺ってみますと、この平和時という概念自体ですね、四次防というのは五年、あるいは五次防というのを合わせて十年になりますが、こういう長期計画が問題になっているのに、平和時というのは、どうも昨年日中国交回復がされた時点、あるいは今度ベトナム停戦が実現した時点、これがようやく平和時になるようで、まさに国際情勢の局面局面の変化に応じるような概念だ。これが戦時に対する平時の概念ならまだ私は意味があると思うのです。ところが、いまの長官の話を聞きますと、これは戦時に対する平時の概念ではない。国際情勢のきわめて流動する状況についてのいわば特定の評価ですね、これと結びついたものだ。それならば、国際情勢の評価が変わり、あるいは緊張激化とあなた方が判断するような現象が生まれれば、いつでもこの限界が廃棄されてもやむを得ないというものになる。これではいままで国会で問題になった、自衛隊を一体どこまで増強するのだ、その限界示してくれという国民の要望にもこたえることができないのではないか。これが第一点です。  それから第二点は、しかもそういうきわめて特殊な、ごく最近、自衛隊二十年の歴史がありますけれども、今度のベトナム停戦で初めてそういう状況が生まれたというような、この状況に結びつけた計画であって、なおかついま問題になって、まだ四次防決定もされてもいない、国会でこれから議論の対象になるその四次防を上回るものが、いわばそういう状況での限界として出されている。それで先ほど防衛庁長官が言いましたように、四次防でもこの自衛力の限界はまだいかないのだ、それから情勢が変わればまたこれよりもふやすことは当然だというようなことになると、これが国民が求めあるいは国会で問題になっていた自衛力の限界という問題についての回答だというふうにはとうてい思えない。それを政府が十分な検討もなしに、防衛庁長官見解総理見解として、これを守るために努力するというようにきのう言われたわけですけれども、その点について、一体総理が、いま言うような問題点を含むこの見解を、十分政府の長の立場で検討、吟味されてきのうの発言をされたのかどうか、ちょっと伺いたいと思います。
  230. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これはいつも申し上げておりますとおり、四次防問題等が起こりましたときに、私が、どこまで一体際限なく日本防衛力が拡大されるんだというすなおな不安が起こると思うので、できれば平和時の防衛力限界というものに対して勉強してくれないか、こう言ったことであります。私はそのとおり述べておるのであります。で、そのときは防衛庁当局も、非常にむずかしい問題でございます、たいへんむずかしい御下問をいただきましてと、こういうことだったのです。さあそれはどうしてだ。それは戦時編成とか平時編成とかということではなく、平和時という、平和時の防衛力限界というものは相手のあることであるし、国際情勢の変化というようなものもありますし、そういう意味で、時の移り変わりの非常に激しい現時点において、平和時という定義をどうきめるかという問題が第一にめんどうなんです。  そういう意味で、方程式というようなもののない限り、平和時における防衛力限界というせっかくの御指示にこたえられるかどうかわかりません、こういうすなおな答弁があったのです。私も確かに、政治責任者としてはあらゆる意味国民理解を求めなければならない、そのためにはあらゆる角度から努力をしなければならぬ、どんなむずかしい問題でもできるかできないかということを踏まえて勉強すべきであるということでこれを求めたわけでございます。この問題が新聞に報道され、それで国会で、平和時の防衛力限界というものに対して求めたのか。求めました、しかしこういうことでございました。それはいつできるんだ。一日も早くつくるように望んでおります、しかし、なかなか話を聞いてみるとむずかしい問題のようであって、いますぐできるものでもないようでございますということを、るるずっと順を追って述べておるわけであります。  参議院におきまして防衛庁長官が、いま勉強しておりまして、できれば年末までには何とか一つの案を出したい、結論を得たいと思いますということに対して、私は、むずかしい、むずかしいと聞いておりましたが、いまの防衛庁長官発言を聞いて、そんなに進んでおるのかということをいま感じましたと、こう述べておるわけであります。私はそのとおり述べておるのです。それが年末までにできなくて、きのうの朝、まあ中間報告はございましたが、きのうの朝数字というものを入れたものをこの委員会の前に報告がありました。ありましたが、きのうはこれを政府決定にしなさいということでございますが、やはり一つの前提を置いて考えた平和時ということでございますし、これをすぐ政府案として決定できるようなものであるかどうかという問題に対しても、さだかに私の結論が出せないような状態でありました。  そういう意味で、各党でも御相談していただいたと思いますが、そういう意味で私としては、私が求めたものであり、私が任命した防衛庁長官が、私の要請にこたえて結論を出してきたものでございますから、私は平和時において、この前提を持った平和時における防衛力の目標というものに対しては、これを妥当と認めてまいりたいと考えます。これは日本人的にすなおに申し上げたわけでございまして、これは私の言うとおりでございますので、いまから考えるともっともっと専門的な意見を、常時こういうものはもっともっと勉強してもらうべき問題であったかもしれません。これは国会に対して、私も防衛庁長官も、何かすぐにでも御答弁を申し上げられるようになれば申し上げます、こういうものが積み重なってきてきのうの朝になってしまった、こういうことでございましてこの事実は事実としてひとつ御理解を賜わりたい、こう思います。
  231. 不破哲三

    ○不破委員 そうすると、総理の平和時についての考えは、いま防衛庁長官が言った見解ですね、緊張激化が生まれたらこれは当然変わってくる。それから平和時というのは、いままでの経験でいえば、少なくともニクソン訪中計画発表からベトナム協定を含めてこういう状態になった、これが前提であって、この前提が少しでも変われば限界そのものが変化してくるという点は、大体いまの長官の説明どおりお考えなんですか。
  232. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 私の御説明がまずかったかと思いますが、平和時というのはいつごろから考え出したか、四次防をやるときには平和時でいいというようなことを考えてなかったろうという御質問に対してお答えをしましたので、四次防の原案ができましたのは、いわゆるニクソンの訪中等からそういうような一連の緊張緩和の傾向のある前であったわけです。そのあとでこの一連の緊張緩和、しかも相当の緊張緩和の重大なものがだんだんと出てきた、最近にベトナム停戦という重大な、そうして大きく希望したものが出てきた、このいまの状態は平和時でございますと、こういうふうに御説明を申し上げたのでございまして、きのう総理も、国際情勢に大なる変化のない限りというふうに申されて、この防衛庁の案を妥当と思うというふうに申されましたが、この平和時でない時期というのは、ちょっとどこかに何があったらというようなことではございませんで、緊張緩和のいまの傾向が大きくくずれると申しまするか、緊張緩和の傾向が、方向を国際的に、アジア的に変えるというふうなときであったときは、これは平和時ではなくなる。そうちょこちょこと平和時であったりなかったりするように変わるというものではない。まことに説明がまずいと思いまするが、御了承を願いたいと思います。
  233. 不破哲三

    ○不破委員 総理も同じ見解ですか。
  234. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私もきのう申し述べましたように、大きな変化ということでありますから、防衛というのは国民の生命と財産、自由と独立を守る、こういうことであって、国民全体の問題でございますから、これは状況が変わる、大きな国際的変化ということに対しては、これは皆さんも理解ができるような状態ということであろうと私は思います。  だからそういう意味で、きのうも申し上げましたように、私としては、私が依頼をして、私が任命をした防衛庁長官が出した結論でございますので、現実軽々に変えていくというようなことではなく、これを平和時において、この前提が変わらない限り、平和時における防衛力の目標というものは妥当であろう、こういう意思を明らかにいたしておるわけでありまするから、その意思を明らかにしておった結論にウエートを置いて考えていただきたい。
  235. 不破哲三

    ○不破委員 結局、きのう発表をしてもらいましたけれども、いまいろいろ答弁を伺っても、これは自衛隊の増強に限界づけてワクをかけたものじゃなくて、自衛隊の四次防以上の増強をいわば合理化するといいますか、推進するというか、そういう数字としか思えない。つまり、平和時の自衛力の限界と言いながら、それ自体が問題になっている四次防以上のものである。しかも、国際情勢に大きな変化と言いますけれども、先ほどは長官は緊張激化があらわれたらというように言いましたから、この大きな変化というのは、別に日本が直接戦争にさらされる、あるいは日本に直接進攻の危険があるというようなものではなしに、日本周辺の国際情勢についての一つの評価だと思うのですけれども、そういう評価によってまたこれが変化される、そうすればさらに大きな防衛力整備の目標が出ても当然だという議論を、いわば内に含んだものであって、私はこれが簡単に政府決定になりでもしたらたいへんだ。四次防でも大問題なのに、それ以上の防衛力増強計画を、いわば中身のないまま、結論の数字だけのまま決定するようなことがあれば、これはまさに軍備増強計画ではないか。  それで、特に最近、私がその点でこの問題を考える場合にどうしても考えざるを得ないのは、政府は何べんも否定をされますけれども、アメリカの側で、日本は当然安保条約上の分担をもっとやるべきだという声が、この数年来非常に強くなっている。それで現実にそれが第七艦隊任務の分担であるとか、そういうことまでが日程にのぼって議論されている。こういう状況の中で、今度の四次防以上の増強計画というものが出されているという点ですね。これは私は、決して政府が言うような自衛の問題ではない。やはりアメリカの要請に基づくそういう軍事的な計画の一翼をになったものだというふうに判断せざるを得ないのですけれども、そういう問題と考えざるを得ないということを最後に述べまして、この問題は打ち切りたいと思います。  そうして最後ですけれども、時間がだいぶなくなりましたので最後に経済問題で、物価の問題について一つの問題だけを伺いたいと思うのです。  政府は、物価安定がいま日本の国の政治の最大の課題の一つだということを、総理も関係閣僚も何べんも強調をされますけれども、政府が発表した経済見通しといいますか、特に本会議では経済企画庁長官が政策目標だと言いましたが、本年度消費者物価上昇を五・五%にする、これが政策目標だと言われました。  そこで伺いたいのですけれども、総理は施政方針演説の中で、これまで物価上昇が五%台で推移してきた。これは決していいことだと思って言われたわけじゃないと思うのです。物価が引き続いて上がっている、五%台へ上がってきた、これは重大な問題だという気持ちで指摘されたと思うのですね。実際に六〇年の昭和三十五年からずっと物価統計とってみても、大体いままで平均すると毎年五%台なんです。この毎年五%台の物価上昇が国民をこれだけ苦しめているときに、田中内閣が生まれて、それで最初の年度に消費者物価の上昇を五・五%にするというのでは、これは物価値上げをそのまま続けてやるということを言っているのと同じじゃないか。これがほんとうに物価安定を、国民の前に最大の課題の一つとして約束している政府の姿勢なのかどうか。もしほんとうに物価安定について政府が手を動かして、政府の力で消費者物価を押えるという気持ちが少しでもあるのなら、五%台の物価上昇を肯定するのではなくて、これを四%台に押えるとか、あるいはもっと決断実行をもって三%台に押える事業に挑戦をしてみるとか、そういう目標を打ち出すのが当然ではないかと思うのですけれども、その点、総理国民への約束の問題として、本年度の消費者物価に対してどういう目標をやろうとするつもりなのか、この点を伺いたいと思うのです。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
  236. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 七二年度を通じましては、消費者物価は四・五%程度でまいったと思いますが、しかし、いままで主要工業国とは違う面の一つとして、卸売り物価は横ばいもしくは非常に微増ということでありましたが、去年から特殊な要因があり、特殊な一部の銘柄であっても卸売り物価が相当上がっておるということであります。きのうの宮澤質問にもございましたとおり、二%に卸売り物価を押えるというには、もうすでに今年前半までのもので下五%を食われておって、俗にいうげたが一・五%もあるということで、消費者物価の状態を考えますと、四%台で押えるということはなかなかむずかしい問題でございます。まあ政策を行なわなければ、物価は五%半というものをこすかもしれない、そういうような情勢にありまして、五・五%に消費者物価の目標を置きました。少なくともそこまでで押えるように、各般の施策を講じなければならないという強い決意を表明したものでございます。  まあ西ドイツその他、昨年度の消費者物価八・二%というような高いものもございますし、また海外で平価の切り上げ等を行なったために、いろんな日本に輸入するものがそれだけ高くなっておるものもあります。海外要因もございますので、まあ五・五%という政策目標として、これがこれ以上にしたくないというためには、全力を傾けなければならぬという考え方でございます。
  237. 不破哲三

    ○不破委員 時間もありませんので問題点を簡単にしぼって伺いますけれども、政府がもう五・五%の物価値上がりは避けられないという立場で政治をやられるというのでは、私はこれは物価安定のための政治とはいえないと思うのです。このいままでの五%台の物価値上がりを、これを押えるという立場がここには全然あらわれていない。つまり、これは政府が物価安定を目ざすのじゃなしに、ことばではそう言いながら、実際には物価の値上がりを促進する、ただ無策であるというだけでなしに、促進する立場に立っているといわざるを得ないと思うのですね。そういう点で私は、ほんとうに政府が物価の値上がりを押えるつもりなら、これは最小限やるべきではないかと思う点を二つだけ伺いたいと思うのです。  一つは、田中さんに伺いたいのですが、国鉄の問題ですね、政府は今度国会に出されようとしています。ところが、今度の国鉄再建計画で問題なのは、ことしの値上げを問題にしているだけではなしに、国鉄再建計画というものがそれに付帯をして閣議でも了解をされている。   〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕 それで、今後十年間にことしを含めて四回の値上げをやろうとしている。私ども計算してみますと、この四回の値上げを累計すると、大体六十数%にのぼる値上げが十年間に国鉄運賃でやられることになる。そうしますと、これは年率にすれば五%台の値上げを、政府がもう当然のこととして国鉄問題に関してやろうとしていることになると思うのです。私は、政府がそのときどきの値上げだけではなしに、先まで含めて十年間に四回もの値上げを避けられないものとして予約をして、それを前提にして再建計画を組むということは、きわめて異常なことであり、こういう計画を長期的に組みながら物価安定の政策をやるということは、まことに無責任だ。  こういう国民の公共料金というものは、物価全体を左右するものでありますけれども、ほんとうに物価安定の立場に立って国鉄問題を考えるというならば、今後十年間に四回もの値上げを前提にするような再建計画というのは、それだけでも落第ではないか。そういうことを一方でやりながら物価安定を努力すると言っても、これは全く空   ではないかというのが第一点であります。  それから第二点。これだけは伺いたいのは、最近の日銀券の増発の激しさであります。これはきのうの国会でもいろいろ議論になりましたが、日本の日銀券の増発というのはたいへんな勢いで、それで特にこれが実質経済成長率をはるかに上回って増発されている、これが非常に重大だと思うのです。詳しい統計、ここであげる時間がありませんけれども、最近の十年間の物価の値上がりと日銀券の増発の度合いを、あるいは表やグラフにして調べてみても、日銀券の増発が経済成長率成長の度合い以上に大きくふえる場合には、必ずそれが消費者物価に反映している。これは事実が示すところであります。  それで、ヨーロッパ諸国、EC諸国の物価対策から見ても、たとえば昨年蔵相会議でやられましたけれども、物価を押えるインフレ対策の第一の問題として、日銀券の増発を経済成長率プラス四%に押えるということが一致してとられているわけですけれども、この面に関しては全く政府は無策といわざるを得ない。きのうの討論でも、その増発はいろいろな原因があってインフレの促進にはならぬのだということを単純に言われておりますけれども、これは全く経済の常識外のことだといわざるを得ない。そういう点で、政府が物価の値上がりを押えるという点でほんとうにやる気があるのならば、この日銀券の増発の騰勢ですね、これをせめてEC諸国で問題になっているような実質経済成長率プラス四%ぐらいの範囲まで押えるという抜本的な政策をとらなければ、私はインフレの根本的防止策にならぬと考えるのですけれども、この点を実行するつもりがあるかどうか、以上の二点についてだけ、政府の直接やるべき施策の範囲内で、当面の長期的な物価値上がり傾向に対して押えるための緊急の手段として、当面二つだけここで主張したいわけですけれども、こういう点についての政府見解を伺いたいと思います。
  238. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 国鉄につきましては、昨日も申し上げましたからあとで申し上げることにいたしまして、日銀券の問題につきましては、私どもも非常に大きな関心を持っております。確かに最近の数量は相当の注意を要する状況になっております。しかし同時に、いわゆる通貨数量説ということは必ずしもわれわれのくみしないところでございまして、累次申し上げておりますような金融政策、これは一口に申しますれば、目的的の引き締めを相当強行してまいりたいと思いまして、すでにいろいろの手段を講じております。こういう点が効果を示すのにつれて、全体的に通貨の数量というものは減少してくる、結果においてさような方向に向けていくということで、今後適切な措置を進めてまいりたいと思っております。  国鉄につきましては、お話のとおりでございますが、十年間で何とかこれはりっぱな経営ができるようにしなければならない。、これには現在までいろいろと吹きだまっておる赤字の累積も相当な額でございますから、政府も十年間で一般会計だけでも四兆円に近い助成をいたしますし、財投も九兆円をはるかにこえる助成をいたします。国鉄にも大いにがんばってもらう。そしてその運賃の値上げ幅というものは、全体の消費者物価に対する影響率というものは〇・四%程度以下と思いますから、その程度に押えて、そして一面におきましては全体の価格体系の中から妥当であるというところで押えて、国鉄の経営改善、サービスの良質化というところとあわせて、やはり十年間かかって国民的な御協力で再建をいたしたい。特に国鉄の任務は非常に重大でございますから、新幹線の拡充ということも必要なことでもありますし、あるいはまたローカル線等につきましても、過疎過密の解消ということからいっても必要なことでございますから、これらのいろいろの要請を十分各方面から検討いたしまして、この十年間の再建計画というものをつくったわけでございます。この辺のところを十分事情を御了承いただきたいというのが、昨日も申し上げましたが、私どもの国民に対する訴えでございます。願いでございます。さような考え方でございますことをもう一度明らかにした次第であります。
  239. 不破哲三

    ○不破委員 経済の問題はあとあとの討論に譲りまして、以上の指摘だけにとどめますが、全体を通じましてより痛感しますのは、田中総理が、新しい時代には新しい政治ということをことばでは強調されながら、実際には過去の外政問題についても内政問題についても、過去の自民党政治の起こした諸結果や、もうすでに後世の歴史家をまたないでも、現在の歴史で破産が証明されているいろいろな誤った立場について、何ら真剣な反省を加えようとしない。そこから私は新しい政治が生まれないという点であります。そのことを強調して、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  240. 根本龍太郎

    根本委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。  次に、正木良明君。
  241. 正木良明

    ○正木委員 公明党を代表して質問いたします。  昨日来問題になっております防衛力限界という問題について、まずお聞きをいたしておきたいと思います。  けさの中澤質問で、この予算委員会の総括質疑が終了するまでに、あらためて政府見解を出すというような提案がございまして、その結果お出しになるような話を聞いておりますが、この点はいかがでございますか。
  242. 根本龍太郎

    根本委員長 正木君に申し上げます。  理事会でこれを御相談することになっておりまするが、まだ具体的な結論を出すまでには至っておりません。
  243. 正木良明

    ○正木委員 それじゃあらためて総理にお伺いをいたします。  きのう、きょうのいろいろの質疑応答を聞いておりまして、防衛力限界については政府見解としたくないというようなお考えが非常に濃厚ににじみ出ておりますが、やはりそういうふうなお考えのままであるか。そうとするならば、どういう理由で政府見解というふうにできないのか。と申しますのは、やはり総理が、国会を通じて国民の前で政府見解として防衛力限界を出したいというふうにお約束をなさったのですから、その点について伺いたいと思います。
  244. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 間々申し上げておりますとおり、これは私が、四次防等に対して国民の中に、無制限に防衛力が拡大されるのではないかというすなおな不安感があると思いますので平和時における防衛力限界というものが研究され、国民の前に明らかにすることができれば、幾ぶんでも国民の皆さんに安心をしていただける、理解をしていただけると、そういう前提に立って防衛庁に頼んだのであります。頼んだのでありますが、防衛庁は、平和時という定義そのものがむずかしいのです、しかも相手のある話であります、流動する国際情勢ということを考えると、御意思に沿えるかどうかなかなかむずかしい問題でございます、しかし、せっかくの指示でありますから勉強いたします。これが新聞報道となり、国会議論をされ、平和時における防衛力限界というものはいつ一体できるのか、こういうことでありまして、できるだけ勉強を詰めて早くつくりたいと思います、こういうことをすなおに述べてまいりました。できたら国会で御報告をいたします、こういうことになっております。  これは、閣議決定に基づいて私が防衛庁長官に指示したものでもありませんし、また、国防会議その他の場においてこの問題を提起したわけでもありません。全く政治責任者として、防衛力というものは必要不可欠なものである、しかして国民の支持と理解を得られなければならない、そのためにはどんなことでもしなければならないというような考えから、私的に勉強をお願いしたのでございます。それが十二月の末になり一月になり、ようやくきのうの朝正式な報告があったわけでありますが、私も防衛の専門家ではありません。ありませんが、先ほども述べましたとおり、防衛庁が努力の結果つくってくれたものでございますので、私としてはこれを尊重しなければならない、尊重したい、こういうことを申し上げたわけです。それも、国会の審議がとまる、中断をするという状態においていろいろお話をしていただいて、そしてその結果、私がどうしても国会意思にこたえなければならないという羽目になって、私は慎重に考え、私の責任においてきのうの発言をいたしたわけでございます。これを政府決定とできるかどうかということに対しては、非常にむずかしい問題であるだけに、もっともっと勉強してみなければならない問題であるというのがただいまの心境でございます。
  245. 正木良明

    ○正木委員 このことは正直なのかどうかわかりませんが、ある意味では非常に重要な問題を含んでいるのであって、この防衛庁見解総理個人ということになりましょうか、いわゆる閣議決定がございませんから、また国防会議決定がございませんから、総理個人ということになるのでしょうが、そういうふうに自分が追認したのは、国会の審議がとまっておったからやむを得ずそうしたのであって、そうでないときにはそれはやれないのだというふうにもとれるわけです。これは非常に重要な問題であって、これはもう国会を通じて政府考え方というものは常に国民の前に明らかにしなければならないわけでありまして、国会がとまっている状況であろうと、とまっていない状況であろうと、それは常にその姿勢は持ち続けていただかなければなりません。したがってこの点は、ひとつ総理から訂正をしておいてください。
  246. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 事実を申し述べたのでございますが、しかし、いずれの経過をたどろうとも、私が国会の場を通じて国民皆さまに申し上げたのでございますから、私の申し上げた発言どおり私は守ってまいりたい、こう思います。
  247. 正木良明

    ○正木委員 私は、この防衛庁見解といいますか、この問題が、ただ防衛庁だけの問題としてここに総理を通じて報告されたということに問題があると思うのです。もちろん私どもの党と政府自民党とは、この防衛力の問題については大きく見解を異にいたしますが、しかし、政府自民党も私どもも一致している点は、戦後の教訓として、シビリアンコントロールというものについては、これは十二分に尊重しなければならないところであろうと私は思うのです。それを、自分が限界という形で防衛庁勉強させた、その結果が出た、そしてそれを防衛庁見解のままでやろうと思ったけれども、それでは前の約束の違反になるので、自分個人としての追認をするというような形でおさめようとした。私はここに非常に大きな不安を持つのは、これではたしてシビリアンコントロールというものが全うされるのかどうかということ、それが非常に大きな問題だと思うのですが、総理はどういうふうにお考えになりますか。
  248. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私の意思に基づいて防衛庁長官勉強していただいたものを報告を受けた段階でございます。きのう受けてこれを政府決定になさい、こう言われても私は軽々にできないのであります。それは私は、事、防衛庁の問題でありますから、ああいうふうな状態になりましたけれども、各大臣に対してはいろいろな問題を指示しております。検討を命じております。それは、いろいろな状態を想定をして、結論を出して報告をしてきておるものもございます。しかし、そういう問題を全部国会で御報告申し上げ、このように検討いたしておりますと、全部報告どおり、これを政府決定にしなければならないということになれば、これは検討も勉強も求められないということになるわけでございます。  しかも、シビリアンコントロールということは、御承知国防会議という制度がございます。最後には国会がございます。国会が一番大きな最終的な文民統制の機関である、私はそう感じております。だから、防衛庁から私に報告をされたものが、そのまま政府決定に持ち込まれるというようなものでないということだけは、これはもう事実でございます。しかし、いろいろな経緯をずっとたどってまいりまして、きのうの段階において、みずから求めたこの種のものに対してどう思うのか、結論を出せという国会の御意思でございますから、私は、私が任命した防衛庁長官勉強の結果は尊重し、妥当なものだと思いますと、こう私の責任で申し上げざるを得ないのでございます。この事情は御了解いただきたいと思います。
  249. 正木良明

    ○正木委員 総理は、問題はだいぶ違うということを御認識いただきたいのです。一般の行政に属する政策的な問題をいろいろ検討をお命じになるということと、それからこの防衛に関する、特にシビリアンコントロールが強調されておる問題を御指示なさるのとは別でありまして、一切のものについて指示をしちゃいかぬなんという暴論を申し上げているわけではないわけです。したがいまして、そこに、総理がおっしゃったように、シビリアンコントロールというものが必要であるということは、もう多くを申すまでもなく、あの苦い私たちの戦争の体験から、議会制度さえ軍部の暴走によってくつがえされてしまうというような苦い経験を二度と繰り返さないために、文官優位でこの問題を処理しなければならないというところから起こってきたことであります。  したがいまして、これはもう制度として、少なくとも国防会議というものがシビリアンコントロールの機関としてあるわけであります。同時に、総理がおっしゃったように、最終的には国会がそれをチェックするという機能は、これは重大なものであると思いますが、それまでに当然経なければならない手続さえ経ていないというところに問題があるのでありまして、総理がおっしゃるように、時間的に非常に余裕がなかったからきのうはそういうことにしたんだというならば、時間さえあるならばこの問題は——われわれはこれは賛成と言っているわけじゃありませんけれども、少なくともそういう手続というものをちゃんと経るというようなお気持ちがあるのかどうかということを、再びお聞きしたいと思います。
  250. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 きのう出された報告は、一つの前提を置いてつくられたものでございます。しかし、日本防衛力がどういうものでなければならないか、その最小限、国民の負担を最も少なくして行なわれなければならないものはどういうものであるかということは研究しなければならぬことは、絶えずこれからも研究しなければならぬことであります。きのう私は、少なくとも防衛庁長官から報告を受けたものを守り、妥当なものと考えておりますという、私の心境を率直に述べたわけであります。これは、私も公の立場で拘束を受ける発言であると考えております。しかし、それだからあそこまでやっていいんだというようなことを考えておるわけじゃないのです。ですから、あのままのものを国防会議にかけ、政府案とするん、だというような考えは持っておらないのです。  しかし、防衛力限界というものがほんとうに重要なものであるだけに、これからも防衛庁でも、また国民皆さんにも、国会の御意見も承りながら私も勉強を絶えず続けてまいりたいということだけは事実でございます。これはきのうのものを、さあっときのう九時に報告を受けて、九時半に国防会議にかけ閣議にかけというなら、これは問題は指摘される面があると思いますが、そんなにできる問題ではない。事の性質上ほんとうに慎重に考えなければならない問題であるということできのう申し上げたわけでありますから、事情を御了解いただきたい。
  251. 正木良明

    ○正木委員 それは、いま申し上げたように、時間がないから無理かもしれなかったが、今後これを国防会議の議題として、正式に決定するというおつもりがあるのかどうかということをいまお聞きしておるのです。
  252. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 きのう申し上げましたように、国防会議決定としたり内閣決定とする意思はありません。しかし、この種の問題に対しては、絶えず勉強しなければならない重要な問題であるという認識に立っておるのであります。
  253. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、われわれはこの問題を審議するにあたっては、政府考え方ではなしに、一防衛庁見解として審議をしなければならないということですか。
  254. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 防衛庁がつくったものであります。しかし、私はそれに筆を加えてはおりません。おりませんが、きのうの状態において、私が依頼をして防衛庁から答案が出たのでありますから、私はこの問題に対しては、尊重をし、妥当でございます、こう私の意思を正確に述べておりますから、私はこれに拘束を受けると思いますということを明確にいたしております。
  255. 正木良明

    ○正木委員 これは、やはり法律に定められた重要な国防会議の議案であろうと私は思うのですが、そうであるにもかかわらず、それを国防会議の議案には絶対いたしません、防衛庁から出たのを私個人が追認して、それで国会で審議をしてくださいというのは、非常に私たちにとってはふに落ちないと思うのですが、その点どうでしょうか。
  256. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 本件を政府決定とするという意思が確定をすれば、これは当然国防会議の議を経てきめなければならぬ案件であると思いますが、防衛庁から出され、きのうこの席から申し上げましたあの案は、国防会議にかけ、政府案として正式に決定をするものではない、またその意思もありませんということは明確に申し上げておきます。
  257. 正木良明

    ○正木委員 そうするとこれは、私たちはこの防衛力限界という問題について、将来政府案としては相当内容が修正されるかもしれないというような形で審議しなければならぬということになるわけなんですが、それじゃ私たちは、この防衛力限界問題は審議の対象にできなくなるということになるのですが、これはどうですか。
  258. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 防衛力の整備に関しましては、漸次防衛力を整備するという方針のもとに、四次防問題は現に御審議をいただいておるわけであります。平和時における防衛力限界という問題は、国会審議の過程において御発言があり、勉強の結果はどうなっておるということに対して、勉強の結果はいまだまとまっておりません、まとめるつもりはあるのか、防衛庁長官は、まとめるべく努力をいたします、そう言っておるのですから、すなおに考えていただきたいのです。それがきのうの朝私のところに出たのです。ですから防衛力限界というものは、これは私がなぜこの挙に出たかといいますと、間々申し上げておりますように、国民理解を求めるためにはあらゆる角度から努力をしなければならない、その一つである、こう言っておるのであって、法律でもって防衛力限界を示さなければならぬとか、そういうような制約のあるものであればこれは問題であると思いますが、しかし皆さんは、あれを政府案と決定するということよりも、あれでも大きいのだという御議論もきっと存在するわけです。いま現に共産党の代表は、こういうものを決定されては困るのだ、四次防にさえ反対するにもかかわらず、四次防よりも大きい数字が出されておるものを政府案と決定されたらわれわれは反対である、こういう御意見もあるのですから、やはりそういう立場で広く国民的な御検討を願いながら、防衛力整備に万全を期するということでいかなければならない。私はそれが正しいことだと思っております。
  259. 正木良明

    ○正木委員 この問題についての賛否の問題を、私はいま問題にしているのではなくて、また四次防に対する賛否の問題をいま問題にしているのではなくて、あなたがすなおに考えてくださいというならば、総理のほうもすなおに考えていただきたい。そうでしょう。あなたはいまもおっしゃいましたけれども、この防衛力限界というものを自分も出すべきであると考えたのは、この四次防の審議の上において、どこまで軍備が拡張されるかわからないから、そのためにはある歯どめを置き、その限界というものを政府の考えとして示さなければならないから、あなたが防衛庁にお命じになって政府の案をつくらせたのではありませんか。ですから、その四次防の問題とこの防衛力限界というのはきわめて密接な関係があるわけです。いいですね、それは臨時国会からの、ずっと通じての議論がそのような方向に向き、また田中総理もそのようにお考えになったからこの問題が起こってきたのです。にもかかわらずあなた方は、四次防の問題だけ審議すればいいのです、この防衛力限界という問題については、防衛庁見解は出されましたが、政府案ないしは国防会議決定の案というものについては、将来どういうふうに修正されるかわかりませんというような形で、この国会の審議が進められるわけがないじゃないですか。
  260. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 防衛力限界というものが、一つの仮定を置いてつくられた結論であります。そういうものを政府案として決定する段階にない、こういうふうに言い直してもけっこうです。(「あなたは出すと言った」と呼ぶ者あり)お出しをしました、きのう。お出しをしたわけであります。これは、すなおに防衛庁は、きのうの朝、私に最終案を提示したわけであります。それでもう三十分後にはこの会議が開かれたわけであります。私はそういう意味で、どんなに皆さんに言われてもあの案を……。
  261. 正木良明

    ○正木委員 すりかえちゃいけない。ぼくは時間をかしますから、それを政府案にしたり、またないしは国防会議決定事項にする意思がありますかと聞けば、あなたは、時間があってもそれはできぬと言ったじゃないですか、いま。時間があればできるのですか、それじゃ。
  262. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 前提条件が一定のものはありません。でありますから、初めから防衛庁は困難な作業でございます、困難な作業でございますが、しかし総理が、国民理解を求めるためには努力をしなければならない、その努力の一環として勉強してくださいということに対してはこたえるように全力をあげます、こう言ってきのう案を持ってきたのであります。ですから、これを政府案として決定をせよといっても、私には自信がありません、政府案としては。これは政府として閣議決定をしたものじゃありません。私から申し上げたのであります。そしてその答案を得たわけであります。その答案を君は一体どう考えるのか、どう判断をするのか、こういうことでありますから、私が発案をし、私が任命をした防衛庁長官が努力の結果得た成案でございます。私は専門家ではありません。しかし、この最終的に報告をされた案に対してどう考えるかといえば、私は尊重し、妥当なものと思わざるを得ません、こう私の真情を吐露しておるわけであります。  だから公においては、公の席上における発言でありますから、私としては、少なくともこの発言に対して拘束を受けるであろうということは申し上げておるわけでございまして、これからは広範にわたって勉強を続けなければならない問題であることは事実でございますが、いま出されておるあの案を政府案とすることはできませんし、また、前提を定めることがたいへんであると防衛庁自身が言っているのでありますから、これはまた法律か何かに基づいて審議会でもつくっていただいて、そして広範な意味国会が御決定をいただくというようなことであるならば、それは政府案として決定しなければならないという場合もあるかもしれませんが、現時点においてお求めになっても、政府がこれをいたしますということは述べがたいのであります。
  263. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、これは防衛庁田中総理大臣個人の案であるというふうに理解してよろしいでしょうか。
  264. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 防衛庁の案であることは事実でございますし、報告を受けた私は、この席上で、尊重しなければならないし妥当だと思います、こう言っておるのですから、私個人、田中角榮というだけではなく、私が内閣の首班の地位にございますから、私としては当然拘束を受ける、こういうことで、田中角榮個人でございまして、公の責任は全くございませんというような考えではございません。
  265. 正木良明

    ○正木委員 もう一度確認しておきますよ。そうすると、ここに並んでいらっしゃる防衛庁長官とあなたを除くほかの閣僚は、この問題については責任がない、防衛庁長官とあなたにだけはこの問題については責任がある、こういう案が出されてきたと理解してよろしいですか。
  266. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 出てきた案は、防衛庁長官から私に報告をされた案でございます。防衛庁は庁議を経てきめておるものでございましょうから、防衛庁がこの問題に対して拘束を受けるということは、これはもう拘束を受けます。しかも報告を受けた私が自身、内閣総理大臣の職にありながら、その妥当性とそれを尊重する意思を明らかにしたわけでございますから、私と防衛庁はこれに拘束を受ける、これはもう事実でございます。また、内閣連帯して国会責任を負っておるわけでございますので、これは閣僚個人ということではありませんが、少なくとも田中内閣ということであれば、おのずから責任が存在することは言うをまたないわけでございまして、そういうことはもう当然なことでございます。
  267. 正木良明

    ○正木委員 これはどう考えたっておかしいですよ。それはきわめて巧みにこの言いのがれをしようとなさっているということはありありわかりますが、しかし、ますます窮地におちいっていらっしゃるような感じがいたします。この問題は、このあと総括質問で渡部議員がいたしますのでそのほうへ譲りますが、しかしこの問題は、きわめて私は重要な問題だと思うのです。そういう形でなしくずしに、この防衛庁の制服の抵抗というものに抵抗しがたい形で政府協力をしていく、そのたびにシビリアンコントロールが目に見えない形で徐々にくずれていく、これが非常に重要だし、このことが結局、国民に対して大きな責任を負う政府が、その責任を全うできないことになるのではないかというふうに私は心配するわけです。  だから、総理が最初防衛力限界について防衛庁にその検討をお命じになったことは、私は明らかにそれはそれなりの善意から出発していると思います。しかし、結果的にはそうではなくて、防衛庁の制服に押し切られて、そうして総理までがそういうふうな形でこの問題をぼやかしてしまおう、そんなどっちでもとれるような話をこの公開の席上でテレビを通じて全国民の前でなさるということは、私は田中総理のために惜しみますよ。そんなばかな話はないです。政府案として閣議にかけるかと言ったら、かけない。それじゃあなたと防衛庁長官だけの責任ですかと言うと、いや、内閣連帯制ですから、ないというわけにはまいりませんというような、そんないいかげんな答弁は私はないと思います。しかし、このために貴重な時間がどんどんつぶされていきますから、これはこの辺で……。
  268. 山田太郎

    ○山田(太)委員 関連。ただいまの総理答弁を聞いておりましても釈然としないわけです。非常に自語相違のところもありますし、この点については、重大な問題でございますし、さきの中澤委員理事会に留保したものとも同様のものでもありますし、この点についての質問は留保して、ひとつ委員長において、理事会等においてそれを取り計らうように決定されたいと思います。
  269. 根本龍太郎

    根本委員長 この問題につきましては、中澤委員の要望とあわせ、理事会で協議することになっておりまするので、御了承願います。
  270. 正木良明

    ○正木委員 それでは内政問題に移りたいと思います。  今度の四十八年度予算を福祉型の予算であるというふうに、非常に声を大にして強調なさっていらっしゃるわけですが、総理総理が四十八年度予算を福祉型の予算であるというふうに定義づけられた理由をまずお聞きしたいと思います。
  271. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 四十八年度予算の編成にあたりましての特色は、要するに資源を財政を通して配分をしたい、そして福祉重点にしてまいりたいという考え方でございまして、この点を総理から福祉型予算と言われたものと理解をいたしております。
  272. 正木良明

    ○正木委員 経企庁長官、この点についてどうでしょうか。
  273. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 他の機会にも申し上げたことでございますけれども、やはり従来の一つのパターンがございまして、そのパターンが経済成長優先というようなパターンでありましたものを、財政中心といいますか、公共投資とかあるいは個人消費とかあるいは個人住宅投資、そういうようなものに非常に重点を置かれておる。かたがた物価関連におきましては、政府の財貨サービス購入の伸び率と名目GNPの伸び率が一六・六とか一六・四ということでほぼひとしくなっている。そういう点で財政が非常に中立的であり、しかもその内容が、いま申し上げたように公共投資中心できている。そういう関係になっているということで、大蔵大臣と同様に考えております。
  274. 正木良明

    ○正木委員 私が思いますのは、いまお二方の御意見をお聞きいたしましたが、それは直ちに福祉型というような金看板をあげるには、内容は非常にお粗末なものであるというふうに私は考えるわけです。  それで、この問題に入るのに、非常に高級な経済理論を振り回しての議論をしても、なかなか国民はわかっていただけないだろうと思います。むしろ私は、いま庶民感情として、いまの政治を、いまの経済生活をどのように考えているのだろうかということから質問をしていきたいと思いますので、総理はじめ閣僚の皆さん方も、そういうおつもりで御答弁をいただきたいと思うのです。  福祉型予算ということになりますと、どうしてもやはりこの中で、社会保障が占める額というものがどの程度かということが非常に問題だと思うのですね。これはもう御存じのとおり、予算規模が非常に大きくなりましたので、社会保障給付費関係におきましても、前年度予算の伸びということになりますと、これはまあある程度総予算の伸びよりも上回っているということは事実でありますけれども、この占める割合というのは、池田内閣当時から全然変わっていないといってもいいくらいな一四%台なんですね。こういう点、厚生大臣どうでしょう、はたしてこういうことでほんとうの福祉というものが実行できるかどうかということをまずお聞きしたいと思います。
  275. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えを申し上げます。  社会保障を担当する大臣といたしましては、昭和四十八年度の予算は非常に飛躍的に福祉型の予算だと考えております。すなわち、御承知のように一般会計の伸びが二四・六に対しまして社会保障は二八・八、総額にいたしましても厚生省所管が、十四兆二千億のうち七分の一ということでございますから、私はやはり相当な額になっている、かように考えておりますし、同時に内容的に見ましても、やっぱり国民が社会福祉のうちで要望しておりまする幾多の問題の解決ができたということだと私は思うのでございます。  すなわち、今日までおくれておりました所得保障のうちの年金、すなわち厚生年金、国民年金について五万円年金を実現する、さらにまた老齢福祉年金について思い切って五千円にし、さらには五十年度には夫婦で二万円、一万円にしよう、こういうことでございますし、さらにまた健康保険につきましても思い切った、いままで手のつけることのできなかった福祉改善、家族の給付率を引き上げるといったふうな問題、それから非常に国民の要望しておりまする老人対策につきましても、老人医療無料化というものを推進する、ことしの一月からは七十歳でございましたが、来年度からは六十五歳まで引き下げて老人医療の無料化をやっていこう、それから医療の面では、御承知の難病、奇病問題について思い切って対策を講じていこう、こういうわけで、国民の望んでおることが具体的に盛り込まれておるということでございますから、私は、福祉型の予算だと申し上げることができると思うのでございます。
  276. 正木良明

    ○正木委員 厚生大臣、これはあと一つ一つこまかくやりましょう。これは、あなたがそういうふうに自信を持っていらっしゃるというならば、これからの日本の福祉行政なんて全く心配でしょうがありません。あなた方が要求された予算も相当にわたって削られてもおるわけですから、これはあとで詳しくやりましょう。  私は、素朴な庶民感情として、新聞で福祉元年といわれたり、また政府がたびたび生産第一から国民生活、福祉第一に転換するんだということを、だまされ続けながらわらをもつかむ思いで期待をしておるわけなんですが、やはりその期待にこたえるためには、構造的に変えていかなきゃいかぬのじゃないかと思いますね。そのために必要なことは、私は所得の再配分ということが、もっと財政的に明確に、その機能が十分働くように行なわれていかなきゃならないのにもかかわらず、これはやはり今度の予算ではできていないというふうに感じます。こんなことは釈迦に説法で、あえて説明する必要がないかもわかりませんけれども、要するに、持てる者から足らない者のほうへ配分をし直すというのが、やはり社会保障の基本的な考え方ですから、そうすると、やっぱり取るところからはっきり取ってもらわなきゃいかぬのではありますけれども、今度の予算ではそういう点が実に不明確です。取るところからは全く取っていないということです。もちろん、私はこの今度の四十八年度予算をインフレ型の予算だというふうに考えておりますが、ただ予算規模が大きいからという算術的な考え方で、これがインフレ型の予算だということじゃなくて、その中の構造的な問題が非常に大きな問題を含んでおるということです。  要するに、法人にしろ法人税の問題があります。高額所得者からの所得税の問題もあります。そのほか、いろいろ税制上、当然取らなきゃならないところから税金を取らずに——確かに社会福祉が進むと予算額がふくれると思いますけれども、その足らずをどこから持ってきたかというと、全部国債でまかなおうといたしておりますね。こういう問題がまさにインフレを激化していくのでありまして、そういう意味からいうと、結局、この中で社会福祉の占める構成比というものが相変わらず少ない。その上に、所得の再配分というものが明確に行なわれない。しかもインフレが高進して、物価がどんどん上がるということになってまいりますと、庶民にとって、また社会的弱者といいますか、弱い立場にある人たちにとって、この四十八年度の予算というものは、ほんとうに福祉型の予算として国民に報いているものではないと私は考えるわけなんですが、この点についてどのようにお考えになりますか、大蔵大臣
  277. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはお話しするとたいへん長くなりますから、なるべく簡単にお答えいたしたいと思いますが、具体的に御質問の趣旨を私が解釈をしてお答えすれば、まず税の問題が一つあると思います。  これはすでに御説明いたしておりますように、所得税で申しますならば、課税最低限が標準の家庭で百十四万九千円のところまで参りました。これはとにかくいままででも、百三万円のところでも欧米に比べまして進んでいるくらいだといわれていたわけでありますが、これを一〇・七%引き上げた。これは、勤労者を中心にする相当な減税の規模であると私は考えます。そうして、平年度で申し上げまして、増減税を考えずに減税の規模だけで申しますと、所得税と住民税で六千四十億にのぼるわけでございます。この規模というものは、近来行なわれた減税といたしましては最大のものであるということは、客観的にも言えることであると私は思います。  それから、法人に重課すべきである、これが持てるところである、こういう御趣旨であると思いますけれども、法人につきましては、これは全体の政策の問題もございますけれども、なるべく重課したほうがよろしいでございましょう。ただ、これは税率の問題だけではございませんで、課税所得を拡大するということが当面必要なことである。しばしば御指摘もございましたし、また現在の日本経済政策の進路から考えましても、たとえば産業関連の措置であるとか輸出奨励的に結びつくものであるとか、いわゆる特例措置を廃止をいたしました。この関係だけでも、平年度では一応四百億円と考えておりますが、それよりは相当高い重課になるのではなかろうかと私は想像いたしておりますが、さらに固定資産税の調整がございますから、この面からの重課も相当なものでございます。  さらに今後におきましては、土地に対する譲渡税、これらの関係も相当な重課になる。場合によれば、土地の譲渡に関連する問題としては、将来七〇%の高率の課税に、法人の実効税率を合わせますとなる、こういうふうな配慮をいたしておるわけでございます。  そうして、一方において公債の問題でございますけれども、やはりインフレ懸念、それから現在の金融情勢は、一昨年来非常な激変をしているわけであります。先ほど来もしばしば御指摘のように、民間資金が過剰流動をしておる。こういう際には従来の公債政策だけではなくて、つまり従来は景気調節のために公債を使うという考え方がございましたが、これからは新しい資源配分ということと、それから当面においては過剰民間資金の吸収によって、財政的に民間部門から公的部門にこの資源を配分するということによって福祉国家建設の道に進むことができる。しかも、公債といえばインフレという観念が、ともすると従来お互いにわれわれの頭にございましたから、そういう点も考えて、昨年度までの公債の依存度よりも相当低目にいたしまして二兆三千四百億、そうして市中消化、建設公債と、二原則をあくまで守ることにいたしたわけでございます。  こういうわけでございますから、いま御質問の一番の重点であるところの福祉国家に向かうような切りかえをしなければならぬ。まさにそのとおりで、この予算の編成についての基本的な考え方をそういう点に置いたわけであります。  それから、規模が大き過ぎるというお話ですが、これは一般会計の歳出でも福祉関係予算に、二兆円を初めてこえるような予算を組みますのには、ある程度大型でなければ国民的な要望にこたえることはできないわけであります。しかも、その規模も昨年度に比べて二二%、決してこれは多くない。この辺にいろいろと配慮したところがございます。そして振替支出が昨年度に比べますとことしは相当上がっておるということが、インフレにもならない、しかも社会的な要請にこたえ得るというところに、一つの眼目を置いておりますわけで、これらの点は十分御審議をいただきまして、われわれの苦心いたしておりますところもひとつ御理解を進めていただきたい、私はこういうふうにお願いをいたすわけでございます。
  278. 正木良明

    ○正木委員 私は、大蔵大臣、算術的に規模が大きいからどうのこうのということじゃなくて、その内容の構造がインフレ傾向であるということ、インフレを促進する方向にあるということを指摘しているのです。それで確かに減税は行なわれました。しかしこの減税も、いわゆる自然増収の額から比べると、当然過ぎるほど当然の減税だと私は思います。もしかりにこの減税を行なわないということになれば、これはたいへんなことで、国民の不満は起こってくるわけですからね。この減税は、政府は誇らしげにおっしゃいますけれども、私どもはまだ足りないくらいだというふうに考えておるわけです。  それよりも私は、どうして取るべきところから取らないのか。たとえば法人税が三六・七五%ですけれども、これをだんだんに上げていこうというお考えがあるようでございますけれども、このようにいわゆる過剰流動性といわれるくらい資金がだぶついて、そうしてどんどん換物に向かっておるというような状態の中で、この法人税をもとの四〇%、に戻すということをめどにして、少なくともことしは三八%ぐらいの税率を賦課しなければならなかったと私は思うのです。しかもさらに、輸出の問題が国際収支の黒字の問題で大きく国際的な問題になっているときに、輸出税制の問題にしたって、これは三年間にこれを漸減していこうという、漸減というよりも漸増といいますか、優遇措置をだんだんになくしていこうという考え方であるということ、こういうところを、私は先ほど申し上げたように、当然取るべきところから取っていないというところに大きな問題があるのであって、取るべきところから取りもしないで、金が足りないというのでむやみに国債を発行するというところに大きな問題がある。ここに大きなインフレ性がひそんでおるし、これはむしろ、いわゆる国民生活にとっては福祉に逆行するという結果になるのではないか、こういうことを指摘しているのです。  この法人税の問題、それから輸出税制の問題、それからいわゆる株の譲渡益に対する無課税の問題等々、この点についてもう一度お答えいただきたいと思います。
  279. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 おことばを返すようですけれども、福祉に逆行するということは私は承服できないのでありまして、お考えの方向とわれわれの考えの方向は一致していると思います。幅の問題、それから実行の可能性の問題、こういう点で御意見が私の考えと分かれるところかと思います。  法人税はつきましては、先ほど申し上げましたとおりで、拠率を引き上げるということも一つ考え方でございましょう。これは将来の研究課題であると思います。とりあえずのところは、皆さまが一番問題にされるし、また政府としても別途の政策的な考慮から申しましても、特例措置というものはこれをやめるということで、課税所得が拡大するわけでございます。この方面から相当の税収もあがるわけでございます。  それから、昨日も御質問がございまして申し上げましたが、この株式の配当、それからそれと個人と法人の関係、法人と子会社の関係、支店の関係ということになりますと、これは実行上あるいは理論上二重課税というようなことにもなりまして、いろいろ検討はいたしておりますけれども、実際の具体性を帯びた税制として実行することが適切でありやいなやという点について、私もまだ問題があると思います。御意見は十分伺ってまいりたいと思います。  要するに、先ほど申しましたように、私は逆行ではなくて、方向は同じなんです。ただ方向の幅が、あるいはスピードがまだ足りないのではないか、こういうふうに私は御意見理解いたしまして、そういう角度、観点に立ちまして、今後いろいろと御意見を伺ってまいりたいと思います。
  280. 正木良明

    ○正木委員 私が逆行と言ったのは、要するに、たとえば国債一つを取り上げてみても、四十八年度の予算を見ますと国債費が七千億ですね。おそらく来年は一兆になるのではないかというふうな感じがいたします。いわばその大部分は利子なんですが、国債の利子だけでも四十八年度に七千億払わなければいかぬ。こういうことがずっと積み重なってくれば、これはもう明らかにインフレ傾向といわなければならないだろうと私は思うのです。  そこで、インフレの定義なんということを問答いたしますと、また小坂長官といろいろなことで意見がぶつかり合うかもわかりませんので、私の考え方を申し上げますが、庶民感情として、国民の持っておる感情として、インフレというのは何かというと、要するに、金の値打ちがもうなくなってきたということだと私は思うのですよ。要するに、五・五%の消費者物価の上昇率がすでに設定されておりますけれども、まあ努力目標であり政策目標だから、できるだけそこまでいかないようにしようということでしょう。でしょうが、少なくとも年度当初に、物価の上昇率を、預金利子を上回った五・五%なんというものを掲げたのは今度が初めてです。  こう考えてくると、庶民の考え方とすれば何が起こるかというと、金にはもう値打ちがないのだから物にかえておかなければだめだという考え方が起こってくるのです。これはインフレマインドなんというような程度のものじゃないのです。それがもうどんどん進んでおるわけです。それを加速度をつけようとしているのではないかと思われるぐらいなのが今度の四十八年度の予算だから、こういうふうにインフレがどんどん進んで、物価がどんどん上がってくれば、むしろこのことは、いわゆる福祉行政というものに逆行する結果ができてくるのではないかと私は申し上げているのです。ここに大きな問題があるのですが、この点どうですか。
  281. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 国債とインフレということは、お話しのように一般の多くの方々にはなかなかおわかりになれない点かとも思いますから、あらゆる機会に御説明をいたしており、これからも御説明するつもりでございますが、戦争中とかあるいは終戦後とか、どこの国にもございましたけれども、全く疲弊こんぱいしてどうにもならぬというときに乱発されたような公債というものを頭に描いて、公債といえばインフレと、これはある種の学者などもいまでもそういう説をなす人がございますが、これは私は間違いだと思います。むしろ現在のようなときに公債を適度に発行して、そして民間のいわばだぶついた資金を吸収して国民の望むような方向に使うということが、この際とるべき新しい考え方である、私はかように考えます。  そして、それなら国債費がかさむばかりではないかというお説がございましたが、これは二兆三千億をきめますときにも、将来計画も十分考えまして、これは別な話になりますが、いずれ近い機会に今後の長期計画経済社会発展計画をおそらく政府としても発表することになると思いますが、それとの関連も持ちまして、今後の日本経済のあり方、そういう点からいって国債費というのが十分吸収されると申しますか、償還ができる、さらに重圧を加えないようにするという考え方でございますが、公債をどの程度発行するかというようなことは、これはその年次における特殊性によるものであって、これは、たとえば自然増収が多いというようなときには、公債の発行はできるだけしないようにという考え方ももちろん考えの中に取り入れたわけであります。ある考え方からいえば、私は、今年度などはもっと公債を発行してしかるべきではなかったかと思いますが、そういう点も考えましてこの程度にとどめて、昨年度の公債依存度よりも低くしたわけでございます。決して公債を発行したということはインフレではなく、むしろインフレ対策である、こういう点が、私は御理解を願いたい点でございます。
  282. 正木良明

    ○正木委員 それは、大蔵大臣のおっしゃる国債発行がインフレ対策であるというのは、いわゆる市中にだぶついておる金を吸い上げるためだといま御説明があったが、そのことが論点の一つだと思いますが、私の申し上げているのは、それより先に税金で取れるものをどうしてお取りにならないのかということです。これだってやはり引き上げることには変わりないじゃないですか。そうしてやるべきことをちゃんとやって、なおかつ公共事業等の建設にどうしても必要な国債だというならば、それはまだ話はわかります。しかし、取るべきところから税として取らないで、いわゆる大法人や高額所得者はそのままにしておいて、そうしてその収支相償わないものを国債だけにたよろうとしていることが、インフレを高進させていく原因だと私は言っているのです。そのほうを手をつけないで、国債で市中の余剰資金を吸い上げればそれでインフレにならないのだという考え方は、決して私はくみすることはできません。  そうして同時にこのことは、もっとことばをかえていえば借金政策ということです。これはわれわれ個人でも同じことなんです。借金政策というものはインフレ待望になるのです。小坂長官はインフレマインドということを警戒しなければいかぬのだ、あまり必要以上にインフレの不安をかき立ててはいかぬのだと盛んに強調なさる。しかし、口で言う言わずにかかわらず、こういう借金政策それ自体はもうインフレ待望になってくるのです。そうでしょう、銀行から金を借りて物を買っておけば、その利子よりも物価の上昇のほうが高いという意識が国民の中にずっと出てくれば、全部物に買いかえてしまおうという考え方が優先的に出てきます。土地、株式、絵、宝石。ぼくの知っている人で、そういうことをやろうにも資金がないものだから、いつかは金もうけできるだろう、いつかは値段が上がるんじゃないかということで、記念たばこのあき箱を集めている人がいますが、そういうことがもう全部国民の風潮になってしまった。金で持っているより物にかえなければいかぬのだという考え方がどんどん出てきた。これがインフレなんです。しかもこの人たちが待望することは、もしかりに借金でその物を手に入れたとするならば、インフレがどんどん進んでくるに従って借金の負担が軽くなるということになるのです。これは、どう考えたっておまえさんの議論は壮語過ぎるとおっしゃるかわかりませんが、国民の心理というものを解剖してみればそういうものです。われわれ個人でもそうなんですから、国がそういう大きな取るべきところから取らないで、国債でどんどん収支相償わして予算規模を広げていくということになれば、これはもう自然的にインフレ待望ということにならざるを得ないと私は思うのです。
  283. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま申しましたように、結局、ですから議論は幅とスピードの問題だと私は思うのです。私も取るべきところからは取るべきである。したがって法人につきましても、先ほど申しましたとおり相当の重課を行なっておるわけでございます。そして一方で減税を大幅にやる。  それから、これは普通のいわゆる——ここでまた公債論が出てくるかもしれませんが、普通にいわゆる赤字公債ではございません。これは公債を発行しないでも、それはやれる方法もございましょう。しかし、要するに今日の日本の国力というものは非常に大きなものになったわけです。この国の力というものの配分を正木さんも言われるような方向に変えていく、これを着実にバランスをとりながらやりたいというのがわれわれの考え方でございまして、要するに向かうべき方向においては私は変わりはないと思う。幅の問題だと思います。ですから、幅の点についてのいろいろの御批判は十分ちょうだいして、将来の施策の参考にいたしたいと思います。
  284. 正木良明

    ○正木委員 ということになると、私の説に賛成ということになる。そうすると、これは福祉型予算ではなくて、インフレ型予算ということになっちゃうのですが、そうなんですか。
  285. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私の申しますのは、今後日本としては、いままでは何でもかんでも輸出でやる、何でもかんでも働いて、そして外国へ輸出してドルをかせごうというような風潮があったとするならば、それをためていくどころか、ここで方向を転換して、内需中心といいますか、福祉国家の建設といいますか、そこへこの充実してきた国力を——ここで流れを変えよう、こういう考え方においてはあなたに賛成であります。公債がインフレに、四十八年度に関する限り、われわれの計画いたしました公債というものはインフレには通じません。この点は意見が違います。
  286. 正木良明

    ○正木委員 いま、方向としては賛成だと大蔵大臣おっしゃったわけです。総理、どうですか。私がいま申し上げたインフレ型予算であるとかなんとかは別の問題として、これから進むべき方向としては、所得の再配分機能というものをもっと充実させていくということについてはどうですか。
  287. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ちょっとその前に。  先ほどから消費者物価の値上がりの話が出ておりまして、私どもの企画庁の申しました五・五という政策目標、非常に高いじゃないかというお話がございましたが、実は、御承知のことと思いますが、四十五年度の消費者物価の値上がりが七・三でございまして、四十六年が五・七なんです。昨年、四十七年のところはいまのところ五・三と、こうきているわけですが、どうもいまのところの状況を見ますと、あの五・三というのでおさまりましたのは、生活必需物資、ことに生鮮食料品が非常に安く出回ったということがございましてそういう事情が生じたのですが、それが、明年そこまで期待することがなかなかむずかしいんじゃないかということで五・五と押えておりますが、ぜひこれはひとつ中におさめていただきたい。四十五年などは七・三までいっているのでございますから。  私は、いま正木さんのおっしゃったいわゆるインフレ気がまえといいますか、換物思想が一部にあるというのは、全くおっしゃるとおりだと思うのです。何とかしてこれを打ち破らなければならぬ、こう思っています。ただ、国内のことで政府にいろいろ御鞭撻をいただくことは当然でございますけれども、さて、外国は一体どうなっているんだろうかということも、ちょっと御参考までに申し上げておきたいと思うのでございます。  これは……(「そんなのはわかっている。時間を食うだけだ」と呼ぶ者あり)いや、ちょっと簡単に言いますから聞いてください。これは日本の場合、七三年の見通しで申しますと、わが国は一〇・七の成長率を考えております。しかし……(「経済企画庁というのは何をやっているんだ」と呼ぶ者あり)これは企画し、目標を与えるわけですから、日本だけでひとりよがりを言ってもしょうがないわけでございます。外国の事情も御説明したいと思いましたけれども、なんでございましたらまたあらためて……。
  288. 正木良明

    ○正木委員 そういう中で、卸売り物価が異常に高騰したり、換物思想が国民の一部にとおっしゃいましたが、一部どころじゃなくて、たいへんな問題が起こっているのです。  それで、農林大臣にお聞きしたいのですが、最近の大豆の問題ですけれども、私の聞いた情報では、これはある種の思惑が働いて投機が行なわれておるのではないかということがいわれておるのですが、この点、ちょっと実情をおっしゃっていただけませんか。
  289. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 お答え申し上げます。  正木委員が御指摘しておるような傾向は、最近の大豆の値上がり状況からいうと、明らかにその傾向はございます。私が就任後の十二月二十五日当時が、六十キロ当たり、仲間相場で中国大豆が四千五百円、そして、年が明けて一月十日が四千八百円でございますが、十六日ごろから上がりだしまして、このときが五千四百六十円です。二十日に七千二百円、二十五日に一万二百円、二十七日一万二千円、三十日一万五千円と、こういうふうに上がってまいってきておるのであります。  御承知のように、大豆はアメリカものが九割、中国のものが一割でございます。その入荷の状況を見ますると、実際はアメリカも不作でございまして、平均してみますると十分ではないのでありまするが、最近の十、十一、十二の三カ月をとってみますると、昨年と同じ程度の入荷になっております。ところが、入荷の不足しておるのが中国関係でございまして、これは二十四万トンほどの七二年の約定があるわけで、そのうち十四万トンの友好商社ものは入ったのでありますが、覚書貿易のほうが、なお六万五千トン程度入るべきものが入ってきておらない。そこでこれは、こういう状況から、中国のほうにお願いをいたしまして、北京の大使館を通じての要請に快く応じて、計画としては一、二、二万トンずつさっそく送ろうということで、一月は終わっておりますから、押せ押せにはなりましょうが、協力を得て、大体順調に入ってくる予定なんであります。それから、この一−六月の大体の大豆の供給の見通しを申しますると、これはもう計画でございまするから、ここで詳しい数字を申し上げずに——昨年よりも相当よけい計画しておるのです。こういう状況からいたしますると、ただいま申し上げたような急騰するという原因が十分つかめないのですね。それで、私どもとしては、今後の見通しが大事でございまして、一番大きい取引になるアメリカの実情などを調べてみますると、幸い昨年の、買い付けが殺到しておるような状況から、作付面積もふやすということでございます。また日本に対しては、長い取引先であるので、ひとつ古い友人を忘れずに出そう、こういうことでございまするから、見通しも悪くないのであります。  そういうことで、お話しのように、思惑需要が一方にあるんではないかと、こう思わざるを得ない。まことに遺憾に思っておる次第でございます。
  290. 正木良明

    ○正木委員 農林大臣、緊急的な対策はどういうふうになさいますか。
  291. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 対策につきましては、ただいま申し上げましたように、第一は、中国に対して協力を要請して、これは先方の御協力を得た。それから、ただいま申したように、一月十日ごろからちょっと気配を見せておりまして、そしてアメリカのほうは、御承知のようなソ連の買い付けが影響しておるということで、もうすぐその段階で、大豆はひとつ順調に出してもらいたい。また、そのころ牛場大使も日本に来ておられましたので、いろいろな話がありまして、それよりも日本がほしいものを大いに協力してくれというようなことで、そのときからもう手を打ったのでございます。  それから、大豆、なたねの特別交付金の制度がございまして、これはその制度がありまするがために、流通経路を一応はっきりさせておるものがございます。これは北海道ものでございまして、これはすぐ手が打てますので、北海道庁あるいはホクレンに対して協力を求めまして、現在すぐ押えたのが一千トン、それから大体集荷できる量が四千トンある、こういうことでいま五千トンを押えたという状況にございます。  こういうことと、それから先ほどちょっと申し上げたように、上半期の需給を昨年よりも大幅に供給をふやすよう、すでに計画も立っておりまするから、これらの施策が総合されていきますならば、先々の見通しも、アメリカがそういうふうに作付け面積もふやそうというのでありまするし、必ずしもことしがアメリカも中国も不作というようなことにならぬという、そういう見通しが、思惑者がこれはまずいぞというようなことにいってもらえれば、次第に緩和するのではないか。一応所要のものについては、できるだけとうふとかみそとか、そういう方面に行政指導で乗せるようにしたい。  それからもう一つ、油糧会社が、これが相当量使うのでありますから、この油糧会社、油のメーカーに対して協力方を要請して、これも快く了承を得ておりまするが、このほうの数量はまだはっきりつかんでおりません。
  292. 正木良明

    ○正木委員 思惑が行なわれたか行なわれないかということの調査は、おやりになっていらっしゃいますか。
  293. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これはたいへんむずかしいことでございまするが、この商品取引所、ここのほうで傾向がつかめるわけでございまするが、ところがこの取引所における状況というのは、現物の取引をずっと下回っておるのです。しかし、これがもし思惑の原因であってはいけない、こういうことで、このほうは一月十六日、十九日、二十二日というふうにいろいろ制限をお願いいたしました。  たとえば、この証拠金でございますね、それは一枚というのは大体十五トンでございますが、それについて普通なら三万五千円の証拠金を積むのを、これを当限は百万円に、それから先物を五十万円にというようなふうに、取引所のほうについては手を打ちまして、それで七月限以降のものはいま取引停止をしております。こういう面からは、こういうところにもし思惑があってはいけないというところには手を打っておるのですが、残念ながらもっとそのほかに、目に見えないところで金が動いて思惑しておるということであると、これはなかなかっかみにくい、こういうことでございます。
  294. 正木良明

    ○正木委員 総理、お聞きになっておわかりになったと思いますが、私がここで一番心配なことは、いままで土地だとか株式だとかいうほうへ向いておった余剰資金が、もしかりにここで大きな思惑が行なわれたとするならば、いよいよ消費物資へ向いてきたということです。国民生活に最も関係ある物資へ向いてきたということは、これはたいへんなことだと思うのです。これは証拠のつかみようがないという農林大臣の話でありますから、証拠がつかめないのかもわかりませんけれども、しかし、われわれが政治責任を持つと言うならば、この点についてはもう十分な事前の警戒をしていただきたい。しかも、これが大豆だけではなくて、ほかの、たとえば政府はなしくずしに食管制度をくずして、お米の自主流通米をどんどんふやしておりますが、聞くところによれば、減反政策で非常にお米の生産量というものが下がってくるかもわからない、もしかしたら思惑の対象になるのではないかというようなことが、もうすでにささやかれております。もしかりにこういう国民の主要食糧である米にまでこういう思惑が働いてくるということになれば、これはもうたいへんなことになるだろうと思うのです。  それには私は、いろいろ方法はあるだろうと思いますけれども、まず第一に、先ほどから申し上げているように、だぶついておる資金を吸収するという方向ですね。しかも、それはいわゆる国債という借金だけではなくて、やはり税という形で国が取ってしまうというような考え方もどんどん進めなければならないでしょう。そのほか技術的にはいろいろ方法はあるだろうと思いますが、そういう点について、国民生活に最も密接な消費物資に、この思惑が向いてきたというふうにわれわれは感じなければならぬだろうと思うのです。私は、別に誇大宣伝するという意味ではなくて、そういうふうに考えて、事前に適切な手を打っていただきたい。これはもう特に私から総理にお願いしたいわけですが、いかがでしょう。
  295. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 土地に対しては、税制をやっても効果がないのではないかというような御意見もある反面、専門家の間には土地は妙味がなくなるということで、土地に対する投資というものは、融資の抑制と両面から非常に締められておるということは、現実に私も感じております。しかし、他に何か投資を求めるということでありますと、商品市場は非常に小さいので、左右するには非常に簡単なわけであります。私は、この前の閣議で通産大臣及び農林大臣に対して、ある意味においては商品市場というものが投機の場になっておるということ、場合によってはっぷしたほうがいいのじゃないかという議論さえもささやかれておるというちまたの声に耳を傾けざるを得ない、だからそういう意味で、商品市場に対しては十分なメスを入れてほしい、こういう指示をしておるわけであります。米に対して、米は大量なものでありますから、米にまですぐ手が回るというようにはいかないと思いますが、やはり過剰流動性といいますか、資金の余裕を持っておるというものから何らかの方法で吸い上げるということを考えなければいかぬだろう。  この間その意味で、手元資金が一番潤沢であると思われる大企業二十数社、異例なことでございますが、社名を明らかにして日銀の手形買い取りの規制を行なったわけでございます。それだけではなく、窓口の規制というものも、土地に対しては非常に強い規制を行ないましたから、それが商品市場や生活必需品に回るということでは困りますので、これはもう現状の把握につとめながら金融的に締めていくということでなければならない、こう思います。この間も水道用のパイプが買い占められたのじゃないかといううわさがありましたので、直ちに通産大臣に調査をしてほしいという旨を述べておるような状態でございまして、こまかい問題に対しても細心な配慮をしていかなければならぬだろう、こう思います。  いま、税ですぐ取り上げるということをいっても、なかなかこれはむずかしい問題でございますし、問題は、そういう余力があるというのは、やはり金融が緩慢であるということだと思います。今度は一−三月、輸入期でありますし、相当な揚げ超期でありますので、もう少し状態を見てということではありますが、しかし、こまかい問題に対しては調査を進め、金融界の協力も得て、不当な商行為が行なわれないように特に配慮をしてまいりたい、こう考えます。
  296. 正木良明

    ○正木委員 この点は、ぜひ強力にお願いしたいと思います。  と同時に、このことはもう先ほど申し上げたように、換物思想というものが相当徹底しておる。余った金をどういうふうに物にかえてふやしていくかという考え方に全部続いていくわけです。したがって、この問題については、やはり予算の執行にあたってもよほど考えなければならぬ問題が多分にあると思います。  そこで、厚生大臣に社会保障の問題について少しお聞きをいたしておきたいと思うのです。  先ほど社会保障の問題が、今度の予算では飛躍的に伸びたので大満足だというようなお話がございました。こんなもので大満足してもらっちゃ私は困るわけでございますが、まず最初に基本的なことでお聞きしておきたいのですが、おそらくここの前では、私は不満だというふうに反乱は起こせないからそうおっしゃったのだろうと思いますけれども、私は、どうしてもやはり欧米並みに、少なくとも社会保障給付費対GNP比は一五%ぐらいまで持っていってもらいたいという気持ちが非常に強いわけです。その点について厚生大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。  と同時に、それも一ぺんにというわけにはなかなかまいらないでしょう。そのためには、どうしてもやはり計画が必要だろうと思うのです。そういう意味では、きのう宮澤さんは、与党質問でありましたけれども、そういう点について強調なさっていたように私は思いますが、この点ひとつ明確に厚生大臣からお答えいただきたいと思うのです。厚生大臣になるのか、経済企画庁長官になるのかわかりませんけれども、まず厚生大臣から……
  297. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えを申し上げます。  本年度の予算について大満足というのではないので、社会福祉の問題というのは理想が遠いと私は思います。十四兆の中でこの程度ならまあまあではないか、こういう意味であることを御了承願っておきたいと思います。  社会福祉の問題につきまして、国民所得との関係で申しますれば、私は個人的には、GNPから申しますと、相当、もう少しいまよりも多くしていただきたいなということを、将来の目途として考えております。  なお、社会福祉の問題につきましては、やはり長期的な計画というものが必要であるわけでございまして、新長期経済計画というものが近くきめられるということを承っておりますが、その中におきまして、経済計画の中の社会保障の位置づけや、あるいは資源の配分についても相当大規模なものが期待されるのではないかというふうに承っております。  そこで、そういうふうな長期経済計画ができますれば、さらにまたそれを、五年計画でございますから、各論的に、やはり具体的に計画をきめていくということが必要だと思います。所得保障の問題、医療保障の問題、社会福祉の問題。そこで、来年度におきましては、ただいま御審議中の予算の中にも入っておりますが、そういう各論的な長期計画をきめる懇談会を厚生省の中でつくりまして、そして計画的に推進してまいりたい、こんなふうに考えておる次第でございます。  なお、先ほど正木委員にお答えいたしました中で、老人医療無料化の推進という中で、六十五歳まですべての人々に年齢を引き下げるかのごとき発言をしたような感じがしますが、寝たきり老人だけでございますので、その点ははっきりと申し上げておきたいと思う次第でございます。
  298. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 簡単に申し上げますが、経済審議会が大体この八日ごろ結論を出すようになっておりますが、その中でやはり厚生関係、福祉関係の長期的な問題を取り上げるというふうに考えておりますが、審議会の議論の中で、大体八・八%ぐらいという意見が出ております。  先ほどちょっと申し上げようと思ってやめましたけれども、わが国の経済成長率とかあるいは失業率、あるいは賃金の上昇率、こういうものは欧米各国に比べまして非常にいいことは御承知のとおりでございますが、しかし、福祉関係がこれは非常に劣っておると率直に思いますので、これはもっと大きく上げたい。アメリカは低いのでありますが、ヨーロッパの国の一〇%以上のものに上げたいと思いますけれども、やはり順を追うていかざるを得ないような状況もございますし、いま申し上げたような八・八程度のものに、まずしていくというふうなことがよろしかろうかと考えておるわけでございます。
  299. 正木良明

    ○正木委員 長官、いつをめどですか、それは。
  300. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 一応のめどでございます。私はまだこれを審議会の結論前に申し上げることをはばかっておるわけですが、大体そういうような意見が多いということを申し上げておるわけでございます。(「昭和五十二年」と呼ぶ者あり)五十二年までです。四十八年を起点といたしまして、五十二年までです。
  301. 正木良明

    ○正木委員 そういう対GNP比が八・八%で、五年後の昭和五十二年を目途として行なうということですね。そうすると、私が要望している約半分ちょっと上回った程度なんですが、これはどうなんですか。
  302. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 振替所得をいっているわけです。国民所得ではございません。
  303. 正木良明

    ○正木委員 その内容は、まだこまかいことはわかりませんか。——そうすると、振替所得というのは年金、恩給という程度のものなんですがね。そのほかの社会保障というものについては、どういうふうにお考えになっていますか。
  304. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 医療、年金その他の社会保障、それぞれ具体的に出るように考えておりますが、いずれ審議会の結論を……。
  305. 正木良明

    ○正木委員 振替所得じゃありませんね。
  306. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 振替所得以外のものですね。振替所得というのは……。
  307. 正木良明

    ○正木委員 振替所得八・八%じゃないのですね。
  308. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 振替所得が八・八%——ちょっと局長から答弁させます。
  309. 正木良明

    ○正木委員 振替所得八・八%というのと、全部入ったのが八・八%というのと、全然違いますよ。
  310. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 ちょっと補足的に申し上げます。  ただいま長官から申し上げましたのは、いわゆる政府から個人への移転支出、つまり振替所得といわれるものでございまして、その内容として、年金、それから医療関係等がもちろん入るわけでございます。  その具体的な水準等につきましては、できるだけ具体的にあらわしていただこうということで審議会のほうで御議論いただいておりまして、近く発表される際にはその内容も出てまいる、こういうことでございます。具体的に何が何%というふうにはちょっと出しにくいと思いますけれども、目標水準として、たとえば年金であればこういう過程を経てどのぐらいになるというようなふうに示したいということで、一応案がつくられております。
  311. 正木良明

    ○正木委員 それでは、その問題は近く出るようでございますから、そのときに譲りたいと思います。実際外国の例と比べますと、非常に低いということがいろいろいわれておるわけでございまして、これは例をあげれば切りがないので、私はきょうはそれは省略をいたします。  さて、昭和四十六年度を初年度とするところの厚生省の社会福祉施設緊急整備五カ年計画というのがございますね。これがなかなかうまく進んでいないということでございますが、これの完成時、計画が完全に実行できたとして、その時点でのわが国の水準というのは、こういうヨーロッパ福祉先進国と比べて、どの程度になるかということをまずおっしゃっていただきたいと思います。
  312. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 社会福祉施設の緊急整備計画につきましては、四十六年度から着手いたしておりまして、四十六年度から、寝たきり老人の施設、重度身体障害者の施設、重症心身障害児施設、保育所、こういったふうな全種目につきまして五カ年間に整備をはかっていこう。今日までのところ、四十七年度末で申しますと、総体で申しますと八〇・八、大体八〇%目標を達成いたしております。ただ、その中で、寝たきり老人施設、保育所——保育所などは特に進捗状況がようございまして八七%という非常に進捗率がいいわけでございますが、その中で多少おくれておりますのは、重症心身障害児の施設が多少おくれております。それは建物だけでは済みませんので、医療関係者を確保するというやっかいな問題がございますので多少おくれておりますが、総体的には現在すでに八〇%に達しております。  そこで、来年度におきましては、施設整備につきましては百八十三億予算がついておるわけでございまして、来年度は主として重度身体障害者、それから重症の心身障害児、そういう多少いままでおくれているところに全力投球をいたしまして、来年度、昭和四十八年度末で八六・七くらいまで持っていける、こういうことでございますので、予定どおり五十年度までに、一応緊急整備五カ年計画は完成することができると思います。  しかし、先ほどもちょっと申し上げましたように、経済審議会における新五カ年計画、長期五カ年計画というものが近く審議会から出ると思いますので、それは、先ほど申し上げましたように、年金、医療、社会福祉と、こうございますので、それとにらみ合わせながら、その時点において必要があったならば改定をしていくということが必要になってくるんではないか、かように考えておる次第でございます。
  313. 正木良明

    ○正木委員 ちょっとお話は、八〇%というのは単年度、四十七年度が八〇%という意味ですね。そうでしょう。
  314. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 四十六年度から始まりました全体計画の八〇%を、すでに四十七年度末に完成できておる、こういうことでございます。来年度はさらに施設整備で百八十億の予算がありますので、全体計画の中で、来年度にはすでにもう八六%まで完成することができる、こういう意味でございます。
  315. 正木良明

    ○正木委員 私の計算と違うのですがね。全体は三千五百十億であるということは間違いありませんね、五カ年計画。四十六年度八十三億ですね。四十七年度百二十億、そうして四十八年度は百八十三億ですね。そうすると三百八十九億で、三千五百十億と比べてどうなんですか。八〇%というのはどういう意味ですか。
  316. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 四十七年度は百十一億、四十八年度は百八十億という金額になっておりますが、施設の個所数がすでにそれだけ完成できておる、すなわち収容する人数もそれだけ見込めるようになっておる、こういう意味でございます。
  317. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、三千五百十億の五カ年計画というのは修正されるわけですか。ちょっとこの辺、向こうでもいいですから、詳しい人が話してください。
  318. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 三千五百億の残りの金は、四十九年度、五十年度で出す、こういうことになるわけでございます。
  319. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 数字でございますので私から説明させていただきますが、三千五百億というのは国庫補助ばかりじゃございませんで、県費の補助とか、あるいは各種の地方債、そういうものを全部ひっくるめまして五年間に三千五百億、こういうことでございます。先生御指摘のものは国庫補助だけでございますので、それとはちょっと数字が違うということでございます。
  320. 正木良明

    ○正木委員 四十八年度で予算要求は、老人、重症の心身障害児、保育所、児童館、老朽施設の建てかえ、こういう問題で二百二十五億要求なさっていると思いますが、これが百八十三億に削られたわけですね。この百八十三億で、厚生省が当初目標としておったものは充足できるわけですか。
  321. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えを申し上げますが、当初厚生省が大蔵省に要求いたしましたのはお話しのとおり二百二十億でございまして、きまりました予算は百八十三億であったと思いますが、これは先ほども社会局長からお答えいたしましたように、起債その他等の金を合計いたしますと大体五百億ということになりまして、大体この程度でございますれば、いま私が申し上げましたような点に重点を置きながら施設の整備ができる、かように考えておる次第でございます。
  322. 正木良明

    ○正木委員 この問題は、もっと詳しく年金の問題等をやりたいんですが、時間の関係がございますので、総括質問の第三陣の大橋君にこれは譲ることにいたします。  きょうは特に国鉄の総裁に来ていただいておりますので、この国鉄の問題をまずやりたいと思います。  まず、経企庁の長官にお聞きいたしますが、一昨年の十二月に作成された総合交通体系、これはわが国の交通政策の基本になるものであるというふうに私どもは一応認識しておりますが、それでよろしいでしょうか。
  323. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 その中におきまする国鉄の役割りといたしまして、大都市交通の緩和、これに大きく期待いたしておりまするし、それから、地方におきまする大量貨物輸送というものについても、大きく期待をしているわけでございます。
  324. 正木良明

    ○正木委員 そこで総裁、この国鉄の再建案ですね、これについて、前回の要綱と今回の要綱と変わっておるのは、一つは、重要なのは、地方閑散線といわれる、いわゆる赤字線ですね、赤字線なんて言うとまた地下鉄なんて言い出すから、地方閑散線、これは五年以内に撤去するというふうに前の要綱は、しかも、これは総合交通体系の趣旨に従ってそのような形になっているにもかかわらず、今度新しく出されたものについては、これが大幅に変更されて、むしろ、こういうことばが適当であるかどうかわかりませんが、前回の要綱は縮小整理型であったのに、今度は拡大型というふうに大幅な変更がされておりますが、この理由は何でしょうか。
  325. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 前回の地方交通線の問題につきましては、御指摘のとおり、大体三千四百キロぐらいを五年間でやめたい、こういう案でございました。それを一挙にやめるわけにまいりませんから、五年間に少しずつやめていく。したがって、残る分につきましては、政府並びに地方公共団体からある程度の補助をする、こういう案でございました。その後それは、いま御指摘のとおり、いわゆる総合交通体系の中で国鉄の占める地位というものは、いわゆる都市間の高速輸送と、大量貨物輸送と、それから大都市の通勤輸送と、大体この三つに限定されたわけでございますのでそういう案ができたわけでございます。  その後、昨年、いろいろな経過をもちましてあの案が廃案となりました。昨年の御審議の過程のことをいろいろ考えてみますと、その問題が非常に大きな問題として諸先生方から論議されました。そしてどの先生方も、無理して赤字ローカル線をやめてはいけないという強い御希望があったふうに私は記憶いたしております。かたがた政府も、最近の新しい状況のもとで、いわゆる過疎過密対策、ことに過疎対策という面から、鉄道というものの過疎地域における使命をもう一ぺんここで再認識しなければいけないということは強くいわれたわけでございます。したがいまして、前回の総合交通体系の中から、過疎地域におきましても、将来あるいは近い将来にこれが過疎対策として使えるものについては、これをしばらく存置して、そしていずれ過疎過密解消の手段に使いたい、こういうふうに変わったというふうに私は了承いたしております。  したがいまして、今回の案の中では三千四百キロというような膨大な撤去計画をやめまして、そして、大体一年間に約三十キロ、十年間で三百キロくらい、これは全く鉄道としての役に立たないものが相当ございます。これはやめる。しかしその他のものについては、将来の過疎過密対策の一環としてこれを持っていく、やっていくのだということに変わったわけでございまして、その点が、いまの御指摘のように、いわば変更になったといいますか、鉄道の、ことにローカル地域における鉄道の使命を、ここで再検討されたというふうに私は了承いたしております。
  326. 正木良明

    ○正木委員 この点について、総合交通体系との関連は、経企庁長官どうでしょうか。
  327. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 地方閑散線の整理の問題につきましては、やはり地元の了解を得るといいますか、自治体の了承のもとに撤去を考えろということでございましたので、予算ないし計画の点からいいますると、了承を得るという前提のもとにおける計画を、そういうことを無視して金額だけ上げるということは、実態にそぐわないのじゃないかという点で、しかるべしと考えたわけでございます。
  328. 正木良明

    ○正木委員 問題は、こういう国鉄再建なんというような大きな問題が、一年くらいで方向が百八十度ともいうべきような大きな変わり方をしたというところに一つは問題があるわけです。今度の国鉄再建計画が、でははたして今後も、この五カ年間、十カ年間全然変わらないでこのまま持続できるのかどうかということについては、私は非常に大きな疑問を持つわけなんですが、そういう意味で、この国鉄問題、さらにそれを大きく拡大した総合交通体系の問題というのはもういわくつきのものでありまして、特に、四十六年度においては総合交通体系というものをつくることが先決であるという議論が非常に強かった。その後、四十七年には総合交通体系ができ、それに基づいて国鉄の再建計画が打ち出されて、しかも、四十八年度にはそれががらりと変わる。こういうことでは、この国鉄問題というものは将来どうなっていくのかということについて、非常に不安があるということは基本的にある問題です。  しかもこの中で、先ほどの物価の問題にも関連がございますが、要するに、この十年間に四回の値上げということをもうすでに冒頭から予定をしておる。公共料金がやはり何といっても主導して物価を引き上げていくということは、ある程度大きな役割りを果たしておるわけでありますから、こういう問題にも一つは問題点があると思うのですが、この点について、国鉄総裁、どうなんですか。これはもうこのままいこうという御決意があるわけですか。御確信があるわけですか。
  329. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまの御質問、今回の計画の中で、十年間で今度を含めました四回の値上げ、それをやる自信があるか、こういう御質問だったというふうに拝聴いたします。
  330. 正木良明

    ○正木委員 いや、そうじゃなくて、計画は変更しないで……。値上げの確信じゃないですよ。
  331. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 わかりました。計画変更につきましては、やはり私、去年ずっと国会の審議を拝聴いたしておりまして、どの先生からも、ローカル線を廃止すべきじゃないという強い御意見が承れました。もっとも学者の中では、むしろ純粋に交通機関として見た場合には、鉄道の使命というものは、ある一定以上の輸送のロットがなければむだだという意見もございます。しかし、そういう鉄道の単なる経済性から見た使命、それから新しく、いわゆる過密の解消、過疎の解消という見地から、もう一ぺんここで交通機関を見直すという見地と、若干食い違いがあるということがこの問題の発端だと存じます。  純粋にただ経済性だけから申しますれば、これは何と申しますか、いわゆる赤字の多いところはやめたほうがいいと、そういうことが言えると思います。しかし、やはり鉄道の持っている公共性と申しますか、そういう面から見て、しかも地域住民の方が一切やめちゃ困る、絶対に困るとおっしゃるものを、私のほうだけの学問的な理論でもってやめることがいいかどうかということは、昨年の国会の審議を通じまして、非常に私はひしひしと身にこたえたわけでございます。したがいまして、その点につきましては、しかしながらそれによって生ずる、何と申しますか、国鉄経営のロスというものがどうしてもございます。すなわち、赤字のところを無理やりに運営するわけでございますからそのロスはございます。したがって、そのロスを含めての政府財政援助はぜひしていただきたいということは、私は強く政府にお願いいたしました。一〇〇%とは申しませんが、そういうことも含めまして、今度全体的な政府の援助がふえたというふうに私は了承いたしております。
  332. 正木良明

    ○正木委員 お聞きのとおり、企画庁長官、そのようにもうこの計画は今後も堅持していきたいという総裁のお話です。これは先ほど長官からお話がございましたように、この総合交通体系の中で国鉄の占める地位というものについての使命を大きく限定をいたしまして、この案が、交通体系がつくられておるわけなんですが、こうなってまいりますと、この総合交通体系の中で国鉄の占める地位というものについての役割りを、ある程度総合交通体系の中で変更していかないと、これは首尾一貫しないというふうに考えますが、これは変更なさいますか。
  333. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そうではございませんで、大都市における旅客並びに地方都市間の、まあ中央も含めて全部の大量の貨物輸送ということが国鉄の使命でございますけれども一、いま私が申し上げたように、地方閑散線についての撤去という問題はやはり地元の了解がなければならぬ、こういうことがあるわけです。総裁が申しましたように、強権をもって国鉄がはずしにかかるというわけにいきませんものですから、それ相応なりの努力もし、了解を得られたときにははずしていく。そのための予算というものは、またそのときにつくであろうと考えるのであります。だから全体に変わるということはございません。さように私は了解しております。
  334. 正木良明

    ○正木委員 ちょっとよくわからないのですが、総合交通体系の中ではこれを変える必要はないというふうにお考えになっている。ただ、その中にただし書きとして、地元の了解が必要だというふうに書いてあるから、地元の了解が得られなかったのだからそれはしようがない。しかし、総合交通体系のものの考え方というものは大幅に変えられたと見るべきですよ、その中での国鉄の役割りとしては。これはやはりそういうふうにこだわらずにお変えになるか、もしくは、もしそうであるならば、私は、総合交通体系の中での国鉄の役割りというものは、むしろ総合交通体系から離れた、独走をし出したのだというふうに判断しなければならないと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  335. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 在来線の整備の問題でございますが、これは、「現在路線のうち、その特性に適合しないと認めらるる路線については順次自動車輸送に転換するものとし、その具体的な計画を策定する」ということでございまして、その具体的な計画の策定を待って考えているわけでございます。したがって、先ほど申し上げました総合交通体系の中における国鉄の地位というものは、この計画が、昨年度の計画と多少内容が変わっているといいますか、金の配分が変わっているということによって、内容が変更しているというふうには考えていないわけでございます。
  336. 正木良明

    ○正木委員 これはものの考え方として、つじつまが合わないと思うのですよ。そういうただし書きがあるからというので、ただし書きを生かすというような言い方では私はおかしいと思うのです。どうしてもやはり、私はこの総合交通体系で、国鉄の再建計画が変わらないなら総合交通体系を変えるとか、それとも、もうこれとは無関係だ、むしろこれは列島改造論に合わせて、国鉄再建が方向転換をして走り出したんだというふうに考えざるを得なくなってくるのです。この点は、運輸大臣どうですか。
  337. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 経企庁長官が総合交通体系につきましてお答えいたしましたのは、その当時の総合交通体系をつくるときの閣僚協議会の空気をお伝えしたものだと思います。ただ、その総合交通体系の中にも、御承知のように、ローカル線につきましては選択をして整備をするという字を使ってございます。具体的にどの路線をどうするということは、もちろんこれは書いてございません。でございますから、そういう意味では、総合交通体系の中でローカル線をとらえて規定をしておりますることは、いま国鉄総裁が申しましたようなことも包含され得るものだと考えておるのでございます。  ただ、具体的な計画につきましては、昨年廃案になりましたあの提案、あの提案のときには、仰せのように、地方の閑散線につきましてはなるべくこれを廃止するような方向で考えようということでございましたけれども、この点につきましては、国鉄総裁が申しましたように、その後、国会における審議の経過等を十分に参酌いたしまして、そうしてわれわれといたしましても、ただローカル線で閑散である、非常な赤字線であるというものを、国鉄の考えだけでこれを廃止してしまうということはいかがであろうかということで、今度は、基本的な方針は変わりませんけれども、一線一線それを審査をいたしまして、そうして、このローカル線は赤字ではあるけれども将来の国土開発に役立つであろう、あるいは過疎地帯の過疎現象を激化しないようにするのには役立つであろうというようなことを考えまして、その点を地元と十分相談した上で処理をしよう。それで、どうしても自動車交通のほうに依存をする、そうして鉄道の本来の使命が失われてきているというような実態を備えまするローカル線につきましては、これは地元の了解を得て廃止するような方向で考えようということになったわけでございまして、総合交通体系の基本方針はあまり変わりはないと私は了解しておるのでありますが、それを解釈適用いたします場合に、昨年の提案とことしの提案は、その点において若干違いがあるということは事実でございます。
  338. 正木良明

    ○正木委員 そうじゃなくて、いわゆる赤字閑散線、地方閑散線というものについては、できるだけ廃止の方向へ持っていこうというのが交通体系の中の考え方なんです。しかし、それをゴリ押しできないから、地元で反対があればそれは実行できないであろうということを言っているだけなんであって、ものの考え方流れというものは、それを廃止するという方向に向いているのです。  同時にまた、この交通体系の中では、「鉄道敷設法に基づく予定路線を再検討する。」というふうにいわれている。前総理国会で、そのことを再検討するのだというふうに約束をなさっている。にもかかわらず、今度の再建計画では、むしろ新線がどんどんどんどん予定されているというような状況でしょう。要するに、交通体系の中の考え方は、できるだけそういうものはやめていこう、そして代替輸送に変えていこう、新線の敷設についても再検討しよう、積極的に推進するのじゃなくて、推進しないという方向で考えられているわけですね。そういう流れがやはり総合交通体系の中にあるわけです。にもかかわらず、それと全然違う方向へ今度は再建計画が向いておる。赤字線の是非は別として、この考え方というものに大きな矛盾を残したまま進めていくのかということを聞いているわけです。
  339. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 総合交通体系の中で、これは御承知のように、「在来線鉄道の選択的整備」ということばが使ってございまして、これには先ほど御説明を申し上げたような意味のことが書いてあると思います。ただ、昨年の廃案になりましたあの提案と今度の提案では、若干違うところがあることは事実でございまして、この点につきましては、昨年の国会における御審議の経過を十分考えまして、実は、きょうは閣議でもって了解をしていただきまして、いま国鉄総裁が申し上げましたような事柄を閣議であらためて了解をしていただきまして、その方針に基づいて、今後この閑散線について処理をするということにしておるわけでございます。
  340. 正木良明

    ○正木委員 私は、総合交通体系はこういうふうに百八十度計画が変更されても、どちらにでも解釈できるようないいかげんなものだというふうに考えて、この問題を打ち切ります。あとの料金等の問題、財源等の問題については、いずれ一般質問でわが党の委員がお尋ねすることにいたしたいと思います。  さて、物価問題全般についてやりたかったのですが、あまり時間がございませんので、一つだけ、卸売り物価に非常に影響があったと思われる鉄鋼の不況カルテルについて通産大臣にちょっとお聞きをいたしたいのですが、通産大臣の前に、公取の委員長いらっしゃっていますか。  昨年の六月、不況カルテルの延長をいたしておりますが、私がいろいろの資料で承知いたしておるところにおいては、あの六月では、すでに景気が復調、価格も復調いたしておりまして、むしろ延長の必要がなかったのではないかというふうに考えておりますが、その点いかがですか。
  341. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 鉄鋼の不況カルテルでございますが、二つございまして、高炉の側と、平電炉と称する比較的小型の会社のものとがございます。いずれにも共通の問題がございますが、昨年の六月の時点、そういう時点におきましては、高炉の場合でいえば、稼働率は八〇%を十分に割り込んでおりましたし、価格の点からいいましてもコストを割っておる。ただし、これはカルテルの対象品目でございまして、対象品目はほぼ普通鋼鋼材の三分の二ぐらいに当たっております。  なお、それから平電炉の側でございますが、これは十月に三カ月間だけ延長を行なっております。その時点において検討の対象となりました八月、実際に確定的につかめたのは八月でありますが、九月のものを推測いたしまして、八、九月ともいずれもまだ、稼働率からいえば七〇%そこそこというふうな状態でございましたし、コストと販売価格との関係においては、まだコストのほうが上回っているという状況でございましたので、三カ月間延長を認めました。  ところが、その後の情勢変化でございます。大体十一月ごろから、十一月の終わりと申し上げてよろしゅうございますが、市中価格が——市中価格と申しますのは、大手の高炉メーカーの場合には、ほぼ八割はひもつきと申しまして、特定のユーザーにある契約で売られておりますが、このほうは上がっておりません。それから、要するに大手のメーカーといわず、中小の平電炉メーカーの価格も、メーカーの価格の段階では幾らも上がっておらない。ところが、問屋及び商社の間の相場が非常に暴騰といいますか、毎日騰貴する段階でございまして、予想外にその段階から需要が強くあらわれまして、不況カルテルの中でこれに対処するために増産を要請しましたし、出荷を非常に強く要請いたしました。しかし、なおかつその市中の相場を冷やすという段階まで至らずに、十二月になってカルテルの期限が切れ、それで現在廃止した状態になっておる次第でございます。
  342. 正木良明

    ○正木委員 私は、この六月の時点で再延期したということは、非常におかしいんじゃないかというふうに考えるのですよね。いまも御説明がございましたけれども、去年の六月あたりからはっきり市況も回復いたしましたし、特に鉄鋼の卸売り値段も、一月から三月まで二・二%、四月から六月まで一・七%の上昇、また市中価格でも、厚板十九ミリが三万二百五十円から四十七年六月には四万五千七百五十円と上昇をいたしておりますし、現に会社が利益を出して、どんどん配当をしておるというような状況が生まれてきておるわけですね。   〔委員長退席、田澤委員長代理着席〕 そういう点で、再延長を認めたというのは私は非常に疑問があるというふうに考えておるわけでありますが、これまたやっていると時間がありませんけれども、これは私は非常に不満だということ。  そこで通産大臣、十二月にこの不況カルテルは終わりを告げましたが、このあと、いわゆる従来とほぼ性格的には同じような形で、ポストカルテルが続けられていくということが伝えられておるわけでございます。しかも、それに対して通産省は相当なバックアップをしておるということでございますが、こういう点について、これが価格へ及ぼす影響というものは非常に大きいものがあるというふうに考えるわけです。  というのは、従来こういうものは価格競争をしてシェアを広げていったのが、不況カルテルによって、競争をしないでそれぞれのシェアを守りながら利益を確保するという態勢に入った。それが法律的にも認められておるという状況から、その法律的な保護はなくなったけれども、それと同じ状態を続けていって、価格競争をしないでシェアを守り、利益をあげていこう、そうして利益が薄くなれば、いわゆるプライスリーダーとしての価格上昇で他の会社がついてくるという寡占価格の、管理価格といいますか、それの典型的な形をとりつつあるということですね。こういう点について、通産省はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  343. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 鉄鋼につきましては、去年の暮れぐらいから値が上がってまいりまして、通産省としてもほっておけませんから、約百万トンの増産をさらに業界に要請いたしました。それから一−三月では、前年同期に比べて二五%増の増産を要請して、それをいま実施しているところでございます。  鉄鋼のような基礎資材は、長期的に安定することが好ましいことでございます。いままでの例を見ますと、業界でシェアの競争をやりまして、どうも設備投資を過剰にやった気味がなくもありません。そういう過去の経験にかんがみまして、通産省としてはある程度ガイドラインをつくって、そして基礎資材である鉄鋼が暴騰して国民の皆さんに迷惑をかけないように、だがしかし、カルテルをやめた以上は公正競争をしなければなりません。法の範囲内においてそのような安定政策をとるということが好ましいと思ってやっておる次第でございます。
  344. 正木良明

    ○正木委員 事実、ガイドポストで生産の目標を掲げるということは、いまの法に触れないそうではございますが、しかし実際問題としては、形としてはカルテルがそのまま続けられていくというような方向になるわけですね。これはいろいろ議論があって、水かけ論になるかもわかりませんが、これを防ぐ方法というのは、やはりいわゆる先導的な役割りをつとめる寡占企業の中での中心企業が値段を上げて、それにほかの同種業者がついてくるという、例のプライスリーダーといわれるものですが、これは何としても防がれなければならないと私は思うのです。これは鉄鋼だけではなくて、ビールの問題もありますし、しょうゆの問題もありますし、いろいろ生活必需品の中にもそういう形であらわれてきておるわけなんですが、こういう点について公正取引委員会としては、いまの独禁法の範囲内ではいはっきりした証拠があがらない限りこれを取り締まったり、これを規制したりすることはできないということでございますが、現行法の中でこれをやっていくというような方法はありませんか。
  345. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 独禁法の範囲内でやり得ることと申しますと、やはりこれは価格なら価格、数量でも同じでございますが、協定が行なわれたことを立証しなければなりません。立証しないものを、立証できないものを、たとえばある話だけで、あるいは形の上だけでこれを独禁法違反ときめつけることは、いまの法律のもとでは不可能でありますし、また法律的に申しまして、証拠のないものを取り締まるということは、指導としてはできるかもしれませんけれども、罰則を設けてこれを取り締まるというふうなことは不可能ではないかというふうに私は考えますが、証拠のないものを罰することができないと同じように、経済事犯についても、証拠が全くつかめなかった場合に、これを違法ときめつける——違法であるということは、当然処罰の対象にも最終的にはなり得るわけでございます。そういうことがかなり困難ではなかろうかと思います。  ただいまの鉄鋼のような場合ですと、私どもは、実は先ほど申し上げませんでしたが、鉄鋼の十二月の段階での稼働率は、実質的には九〇%をこえております。でありますから、これから年間に若干生産力の増加も高炉では行なわれますけれども、むしろ需給の逼迫がなお続くのではないか。だから、これを、生産を押える方向で指導するのではなくて、生産をふやす方向で指導していただきたいというふうに考えております。
  346. 正木良明

    ○正木委員 そこで考えなければならぬのは、現行の独禁法ではそれの措置ができないとするならば、アメリカではもうすでに、そういう立証主義といいますか、そうではなくて、情況証拠でそれを審判の対象にできるということになっておりますが、そういうふうな形に変えていくか、もしくはこの前野党が共同で提出をいたしました寡占価格の取り締まりに関する法律案というものを検討してみる、こういう点、公取委員長としてはどうでしょうか。あなたは、そういうプライスリーダーというような問題は、きわめて自分たちとしては、公正取引委員会としては不都合なことであると思っているが、しかし、現行ではそれが取り締まりできないのだというのか、それとももう初めから投げているのか、どっちかですね。その点をお答えいただきたいと思います。
  347. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 現行ではできないということは、先ほど申しました。   〔田澤委員長代理退席、委員長着席〕 と同時に、新しく法律を設けて公取に権限を与え、そしてそのプライスリーダー的な行為、事実上形の上で見れば明らかにこれはカルテルではないかと思われる場合がございます。そういうものに対して、私どもが十分にその証拠を把握できないために、これをとめることができないという点ではたいへん不満ではございます。私どもとしては不満ではございますが、ただ、先ほども触れましたが、法律的に見てどの程度まで可能になるかという点はたいへんむずかしいのでございまして、その辺は私としては、先ほど申し上げたとおり、かなり困難ではないかというふうに感じております。
  348. 正木良明

    ○正木委員 法理論からいえばそうであるかもわかりませんが、実際国民の目に映るのは、ビールでもある会社が値上げをした。それから一週間、十日の間にほかの会社がばたばたと同じような値段に全部値上げしてしまう。鉄鋼も同じようなことが言えるし、しょうゆの価格もそういうふうに言えるわけなんですがね。これは国民の目から見てどうしてもおかしいということになるわけですね。アメリカは独禁政策が進んだ国だとはいわれておりますが、情況証拠といいますか、そういう話し合いが行なわれたか行なわれないかというような証拠が直接に手に入らなくても、結果的に見てそういうことが行なわれたのではないかというようなときには、それを審判の対象にしていくという、こういうことが、やはり日本でも行なわれていかなくてはならないのじゃないかと思います。  公害裁判においても、挙証責任の転換ということが非常にやかましくいわれているわけですが、少なくとも私は、もし情況証拠があって、公正取引委員会が審判にかけて、そうでないというならば、むしろこっちが証拠を見つけ出すというよりも、向こうにそうではなかったという証拠を出させるぐらいのやり方というものをしなければ、ほんとうの意味において、この寡占企業におけるところの価格の値上げというものについては、やはり国民はどうしてもふに落ちないという感じを持つに違いないと私は思うのです。そういう点は、積極的にそういう方向公正取引委員会としては取り組んでいきたいというお考えがございますか。
  349. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 お考えの、明らかに客観的に見ればこれはカルテル的行為ではないかというふうな場合に、現在の独禁法では手も足も出ないということでは、確かにおもしろくないことでございます。現在でも立ち入り検査等をいたしまして、その結果もうほとんど全部それは物証をあげた場合にのみこれを審決の対象にいたしておりますが、その際、情況証拠というふうなものもできるだけ証拠として証拠の中に採用するということをしております。  ただし、その挙証責任を、先ほどおっしゃられましたように、やらなかったという不作為の挙証責任を相手方に持たせる、こちらは客観的にしたと認める、やらなかったというならやらなかったことを証明せいということはたいへんむずかしいことでございますので、これらの問題についてはなお私どもも十分検討してまいりたいと思いますし、結果的には、なるべく御趣旨に沿うような政策がとり得るようにすれば、一そういまよりもうんとよろしいのではないかと思います。  ただ、管理価格全体については、これは非常に問題がございまして、ある一社だけが非常に利益を得ている、しかし、次の二番目の会社はほとんど利益が出ない、それで同じ価格で売っているというふうな事例もございまして、一がいに管理価格即膨大な、それによって利潤を得ているというふうにもなりませんので、実態も十分考えた上で処理しなければならぬ問題だ、管理価格についてはそのように考えております。
  350. 正木良明

    ○正木委員 こういう物価に関連したいろいろな問題について、巷間通産省がどうしてもやはり業者の肩を持っているんだというふうな考え方が非常に行き渡っているわけです。そういう点について、通産大臣は、いま私が申し上げたように、こういう寡占企業における管理価格等の問題、こういう問題についてどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか、お考えを聞きたいと思います。
  351. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 寡占企業の管理価格の問題は、国会でもしばしば御論議のあるところでござ・いますので、われわれは、少なくとも通産省が企業べったりというような印象を与えることのないように、公正な取引を行なえるように、今後とも指導していくつもりでございます。
  352. 正木良明

    ○正木委員 少し前後いたしましたが、先ほど生産増加の要請を鉄鋼業界にしてあるというふうにおっしゃいましたね。こういう意味で、今後そういう、むしろ生産を押えるという方向ではなくて、生産を拡大させるという方向で価格競争の中へ持ち込んでいくというようなお考えは、通産省としてございますか。
  353. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは、昨年の後半期から鉄鋼価格が急に上がってまいりましたので、卸売り物価対策の一つとして総理からもいろいろ指示がありまして、緊急対策としてやっているところでございます。やはり鉄鋼のような国の基礎産業であるものは、できるだけ長期的に安定して国民経済の基礎を安定させるということは大事であると思いますので、ガイドライン政策というのは私は必要ではないかと思います。
  354. 正木良明

    ○正木委員 もう時間もだいぶ迫ってまいりましたので、建設省はいらっしゃいますね。政務次官いらっしゃいますか。——ちょっと住宅問題についてお聞きをいたします。これも私は大きく政策転換をしたのではないかというふうな感じを今度の予算で持つわけなんですが、一つは、いわゆる公営としての賃貸住宅をふやしていくという方向から、むしろ民間自力の方向に向いてきたというふうに私は考えておるのですが、その点どうでしょうか、建設省。
  355. 沢田光英

    ○沢田政府委員 お答えいたします。  ただいまの御指摘は、民間の住宅建設のほうに主力を置いてきたのではないか、こういうことでございますが、私ども、住宅政策は、四十六年度から出発をいたしております五カ年計画に従って第三年度をやっておるわけでございます。これの大体四割が公共関係の施策である、六割が民間、かようなことで年度割りをやってございます。  したがいまして、公共関係のものが三百八十万戸ということになります。この三百八十万戸につきまして、今度の四十八年度の予算案を含めまして進捗度が五五%になります。これは当初私どもが予定をいたしました予定に順調にきております。したがいまして、これは公共も力を入れる、民間も最近ではこの一年ばかりだいぶ建設が盛んでございますが、これもまた金融政策等で質のよいものにする、かような政策をとっておる次第でございます。
  356. 正木良明

    ○正木委員 私のほうの手元の資料では、三百八十万戸の公共住宅、これは間違いございませんが、四十六年度は四十九万二千戸、四十七年度が五十万四千九百戸、四十八年は、これはまだこれからですが五十三万七千三百戸こういうふうになっているというふうに思うのですが、どうですか。
  357. 沢田光英

    ○沢田政府委員 先生の申されます数字は、いわゆる公営住宅、公庫住宅、公団住宅、これの小計、すなわち建設省所管のものの小計で、これが四十六年度が四十九万二千、それから四十七年度が五十一万七千、四十八年度が五十三万七千、かようなかっこうでございます。
  358. 正木良明

    ○正木委員 あなたのところはどう違うのですか。何が入っているのですか、あなたのところは。
  359. 沢田光英

    ○沢田政府委員 そのほかに、建設省所管でございません政府その他の関係の公共の、たとえば年金福祉事業団だとか厚生年金だとか、それから雇用促進事業団、そのほか地方公務員の住宅等がございます。それらを合わせまして公的資金、かようなことになってございます。
  360. 正木良明

    ○正木委員 四十七年度の公営並びに公団住宅の進捗度というのは、どういうふうになっていますか。
  361. 沢田光英

    ○沢田政府委員 四十七年度の進捗度につきましては、公団住宅につきましては、大体年度内発注が五〇%程度と推定されております。  それからまた公営住宅につきましては、三大都市圏、これがまあ非常に問題なんでございますが、そのほかを含めますと九〇%程度になりますが、三大都市圏については七六%程度に年度末でなろうというふうに予想をしております。
  362. 正木良明

    ○正木委員 その理由は何でしょうか、うまく進まないという。
  363. 沢田光英

    ○沢田政府委員 これは大きく申しますれば土地問題、それから地方財政問題、それから地方行政問題等だと思います。  まず、私がいま申し上げました三大都市圏、ことに東京、大阪等でございますが、この辺ではまず土地の入手難がございます。その次にございますのは、たとえば東京の近県などでは、結局人口増を非常に問題にいたします。県の計画等の人口を上回る、さようなことで人口がふえるのは困るというようなことを申されておるところがございまして、団地が入りますときにいろいろと問題が出て折衝が長引く、かような状況がございます。それからもう一つは、団地が参りますと、それに関連いたします道路、下水、学校その他の公共施設をつけて環境をよくする、かようなことになります。これに対します地元の地方公共団体の負担というものが、地方財政に相当大きな影響を与える、かようなことで、そういうふうな問題を総合いたしまして、特にこの一、二年進み方がおそくなったということでございます。
  364. 正木良明

    ○正木委員 総理、確かにいまおっしゃったとおり、都市においては、公営住宅や住宅公団の住宅建設については、いまおっしゃったとおり土地の入手難と地価の暴騰、それに加えて関連公共事業のための経費が非常にかかるということですね。こういうことが非常に大きな問題になって、むしろ公団住宅お断わりという、大規模団地をお断わりするというような地方公共団体がまあずいぶんふえてきているわけです。住宅局長はああいうふうにお答えになりましたけれども、確かに今度は、いわゆる住宅金融公庫や厚生年金の掛け金をしている人ですね、そういう人たちの融資を大幅にふやして、結局、自分の力で家を建てたい人はもうどんどんお建てなさいという方向、これはまあどう見ても、去年よりもたった三万幾らしか建設省所管の住宅建設をふやさないで、そっちの方向へふやしたというのは、どう考えてもやはり公営住宅、公団住宅、いわゆる政府施策住宅の方向よりも、自力建設を慫慂するという方向にいったものだと私は思うのです。  私はこれは、自分は自分なりの家がほしいという人にとっては朗報であろうし、それは決して一〇〇%悪い政治だとは思わないのだけれども、しかし、いまやらなければならないことは、やはりこういうときこそ政府責任をもってそういう賃貸住宅をどんどん建てていくという方向でなければならないのにもかかわらず、政府や地方公共団体が土地を入手することができないからというので、それを国民個人に責任を振りかえてしまう。そういう形で、はたしてそれじゃ政府ができないのに国民が実際に自分で宅地を入手することができるかというと、決してそうではないわけですからね。これはやはり、私はある種の政府国民に対する逃げであり、責任転嫁だ、こういうふうに思うのですが、総理、どうです、この点。
  365. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 公営住宅、特に公団住宅が大都市において建設難になっておるということは事実でございます。いま端的に住宅局長から述べましたが、五〇%というのであります。特に一番住宅が不足しておる東京や大阪で五〇%しかこなせないということは、そこに何かあるということを考えなければなりません。だから、そういう根本的な問題にメスを入れるということでないと、現実問題として五〇%しか建たないということでございますから、これは解決をしなければならぬわけであります。  これは、公営住宅法制定時代からそういうことは論議されておるわけであります。公営住宅法は二十年前に議員立法をもって行なわれたものでございます。私はその提案者の代表でございます。衆参両院において当時相当反対があったわけであります。財政をもって特定の人の利益をはかってはならないという学者の反対もございました。しかし、当時家を持たない、爆撃でもってどうにもならなかった市民は、俗にいう法律で許される災害者応急住宅とか、ちょうど舞鶴に引き揚げ者住宅が公費で建てられておりました。言うなれば、都市人たちは一時収容をしなければならないということで、公営住宅を建てて不特定多数の人に提供しても、憲法違反ではないという答弁を求められたことがあります。  そういう歴史をもって公営住宅法が現存するわけでございますが、やはり大都市においては、いままでのように平面的にどこまででも畳が広がっていくような制度をとっておる限り、こういう問題に逢着するのはこれは当然のことであります。これはもう神奈川県に行っても、それから千葉県に行っても、埼玉県でも、入居はお断わりということでございます。今度は建てる団地に対しては、県内の申し込み者を全部入れて、余ったものは東京都民を入れてけっこうだ、これは当然そういうふうになると思うのです。ですから平面的に、千葉県がだめなら栃木県に、埼玉県がだめなら群馬県にというような平面的なものの考え方を踏襲しておる限り、いまの問題に逢着するのはこれはもう当然のことでございます。  そういう意味で、都市政策などに提供しておりますのは、外国で行なっておる公営住宅であります。これは、公有地をやったり、不良街区の改良をやったりということであります。そういう意味で、東京なども全面的な区画整理を行なうべきだ、こう考えていろいろな案を問うておるわけでございますが、いま逆な方向になっております。平家建てが現存する、これは既存の権利である、自然の採光、通風をさえぎるような建物は許さぬ、こういうことでございます。こういう条例をつぐろうという運動が起こっております。こういう限りにおいては非常にむずかしい問題であります。だから都有地、ちょうど早稲田の電車の車庫をこわして大きなものを建てておるというようなものが東京の中には幾ばくかあります。ありますけれども、やはり不良街区を改良するというようなことを思い切ってやるということでなければならないし、また、住宅公団などが五〇%、四〇%、これは場合によっては三〇%に落ちていくと思う、いまの制度のままなら。  そういうことで、都市改造公団のようなものにしてはどうかとか、これを労働者住宅とか特定な低所得者の住宅とかいうものに限るべきであるという議論も当時から存在しておる。現行公営住宅法をつくるときには、労働者住宅法と厚生住宅法と建設省の考える公営住宅法を合わせて一本にしたわけでございますから、そういう歴史的事実もあって、やはり都市改造のために一時移転をしなければならない人の収容住宅というような、ちょうどあのハワイでやっておるようなそういうものをもって改造するか、何か新しい手法を取り入れない限り、私はやはり非常にむずかしい問題である。これは、公費をもっと上げてもなかなかむずかしい問題であろう。最後には土地収用という問題が出てくるわけでございますが、これもだんだんと平面的に距離が遠くなるということであって、根本的に考えるような問題であろう。しかし、四十八年度予算にはとてもそういう問題を実現することはできません。これは、きょういみじくも住宅局長が五〇%でございます、四十八年度のものは四〇%しか施行できないかもしれませんというような状態に対して、ではどうするのかという考え方を、やはり国民的な世論を背景にしてやらないと、なかなか全面的な区画整理、これはもう一定以上高くしなければならぬ、ここの高さを押えるのではなく、低さを押えなければ住宅は提供できないという現実に転換をせざるを得ないわけでありますから、そういうものはやはり国民理解ということを求めなければならないと、こう思っております。
  366. 正木良明

    ○正木委員 これは私は、いま総理がおっしゃるように、日本列島改造論を待っておられぬわけです。ですから、もう早急に片をつけなければならない問題でありますし、私の調査したところでは、住宅公団の場合、東京管区、東京都と千葉県を所管するところでは、十五団地のうちで一つの団地しかまだ用地買収が済んでいないというような実情なんですね。かくもひどいわけです。と同時に、受け入れの地方公共団体、またそれを実施する地方公共団体がいま一番困っていることは、一つは関連の公共事業ですね。学校を建てたり、公園をつくったり、道路をつけたり、保健所をつくったりするような、そういう関連公共事業について、国の手当てというものが非常に少ないということです。だからこういう問題を、やはり一つは片方で解決しなければならないということと、用地取得についても、用地費がどんどん上がってくる。これも建設省にきょう聞こうと思ったのですが、時間がありませんのであとに譲りますけれども、きのうの新聞発表によると、もう四分の一をこえるぐらい用地費と補償費に費やされておる。四十八年度はそれをもっと上回るであろうというような予測が建設省から出されております。  ところが、公営住宅を建設する地方公共団体が、一種住宅については二分の一、二種住宅については三分の二の国庫補助金、これは超過負担をいわずにそれだけありますけれども、用地費については補助金がない。こういうことじゃ、実際地方公共団体がみずから実施することもできないでありましょうし、実施することをみずからやっても、関連公共事業のために、その団地からあがってくるいわゆる住民税等の税収は、十年、二十年たったっておそらく回収できないだろうというのが現状ですね。こういうことは別にいま事新しく起こったことではなくて、もう大規模団地が建設されるときには、いまから十五年も前からこの問題が常に問題になっているのに、一向に解決されてきていないわけです。  だから、むしろ私は、今度の政府政策でそれができないから、いわゆる政府施策の住宅を去年程度にしておいて、むしろ民間自力でどんどんやらせようという政策それ自体、無原則に家を建てていくというようなことが一つは起こるかもしれないということ、と同時に、そういう人たちが自分たちで家を建てても、やはり関連公共事業をやっていかなければいかぬということです。そういうことから考えてくると、やはりこの住宅問題で、この用地費の問題、また関連公共事業の問題、と同時にまた大きな立場からの用地取得の問題、これはもう土地対策の中に大きく踏み込んでまいりますけれども、そういう問題を解決しなければいけない。ただ、政府が今回の施策として、民間自力というところに大きな重点を置く方向転換をしたということは、私はやはり何といっても間違いであったのではないかというような感じが非常に強くするわけであります。  あっという間に時間が過ぎてしまいまして、聞きたいことはもっとたくさんあるわけでございますが、ずいぶん飛び飛びで申しわけございませんでしたが、いずれまた、きょうは基本的な問題だけをお聞きいたしましたが、深い問題については、わが党の他の委員がお聞きすることになると思います。  以上をもって終わります。
  367. 根本龍太郎

    根本委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十六分散会