○倉石忠雄君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま上程されました
内閣不信任案に対しまして、
反対の討論を行なうものであります。(
拍手)
私は、
日本の
議会制民主主義のために、健全なる
反対党がすくすくと伸びられることを長い間念願をいたしておった一人であります。(
拍手)
ただいま成田社会党委員長がここでるるお述べになりました。私はあの成田君の御演説を拝聴して、こういうお考えの方には、われわれにかわっていただいて
政権を担当していただくことはとうていできないというまことに残念な気持ちでありました。(
拍手)
諸君、皆さん、私は、きょうの
不信任決議案は、おそらく全国のテレビあるいはラジオにおいて、多くの
国民が静かに聞いておられるでありましょう。この
人々は、私がいま申し上げた観測とほとんど同じ感じを得られた者が圧倒的多数であろうと思うのであります。(
拍手)
昭和四十八年の八月に中立機関であります財団法人公明
選挙連盟で発表いたしましたものを見ますというと、「
昭和六十年ごろの
政権を担当する
政党は若い者ほど自由民主党であると思っている。」(
拍手)「自由民主党
支持者は比較的年齢が高く、高所得者で大都市よりも農村地帯というのが常識であるが、十二、三年後の
政権担当の
政党は、文人では年齢が若いほど自由民主党が多くなっている。また非常におもしろい事に、大都市ほど
政権担当
政党は自由民主党という人が多いので驚くのである。大都市で自由民主党の凋落がうわさされているにもかかわらず、
昭和六十年の
政権は依然として自由民主党にあると考えているのは、一体何を意味しておるであろうか。」
私どもはただいまここで、成田君から自由民主党について種々御批判がありましたので、第三者の公平なる
国民がこのように考えているということを参考に申し上げる次第であります。(
拍手)
一昨日、本院において、北方領土の返還に関する
決議案が全会一致で決定いたしましたことは、
諸君の御記憶に新たなところであります。この全
国民の意思を代表する決議は、国家を代表して欧州、ソ連に使いされる
内閣総理大臣に対してはこよなきはなむけであり、
国民の熱願を込めた涙ぐましき激励のことばでもあります。
田中内閣総理大臣が、この全
国民的輿望をになって、みずからその交渉に当たるべく、近くソ連に向かって旅立たれんとする今日、この
決議案に賛成を表された野党の
諸君が突如としてその
政府の
不信任案を
提出するというがごときは、いかに野党の
諸君が党利党略のために心の平静さを失ったるにせよ、まさに
精神分裂的行為であり、公党としての品位をみずから傷つけるものでありまして、
日本の
議会政治のために、私は
国民の一人としてまことに慨嘆にたえないのであります。(
拍手、発言する者あり)
そもそも、
内閣の
不信任案とは、みずから
政権を担当する能力と資格のある
政党が
提出してこそ意味があり、何ら
政権担当の実力も準備もなく、現実を無視した観念論に終始して、はかないまぼろしの民主連合
政権構想の夢を追うておられるような
人々が、初めから否決されることの明らかな
内閣不信任案を
提出することは、
憲法に定める厳粛なる意味の
不信任案をいたずらに党利党略のだめにもてあそぶものであって、
国会の権威をそこなうこと、まこと遺憾千万であると存ずるのであります。(
拍手、発言する者あり)
ことに、今回の唐突なる
不信任案の
提出は、参議院においてまさに
審議が終わらんとする
防衛関係
法案、筑波新大学
法案の
成立を牽制しようとするはかない抵抗手段であり、これほど無意味な
不信任案はないのでありまして、私が本案に
反対する第一の
理由はこれであります。
次に、
田中内閣は組閣以来一年二カ月余りになりますが、この間あげました成果はまことに大きいものがあります。(発言する者あり)
ここで、先ほど問題になりました小
選挙区論について、成田君はいろいろな小
選挙区論についての御批判をなさっていらっしゃいましたが、皆さん、
世界の各国で、およそ
議会政治を行なっておる国で、小
選挙区でない国がどこかにあるでありましょうか。どこにそんな国がありますか。ソビエト・ロシアや、中国大陸の人民大会が
国会であるないは別問題にいたしましても、あれらの国ですらなおかつ、代表は一つの
選挙区から一人だけ選ばれるシステムであることは御存じのとおりであります。
われわれは、将来、
議会制民主主義完成のために、こういうことについて真剣に考え直さなければならないのでありますが、私は、この一年二カ月余りの間に
田中内閣が行ないました成果の中で、たとえば対外的には、次第に悪化しつつありました日米
経済関係を改善して、両国間の親善協力の基礎を一そう強固にし、また、多年の懸案でありました日中国交正常化に成功し、さらに、日ソ平和条約締結の基礎固めにみずからソ連を訪問されようとしておるのでありまして、一年有余の短い期間にこのような外交上の成果をあげ得たことは、野党の
諸君といえども、これを否定し得ないところであると存じます。(
拍手)
また、内政においても、高く評価すべき諸
政策を着々と
実行いたしてきております。
田中内閣は、組閣とともに、
公害のない、均衡のとれた国土の
発展と
人間性豊かな
福祉国家の建設を目ざす国土総合開発計画、
人間福祉優先の諸
政策の推進、国運
発展の基礎となる教育の刷新
充実を
中心とする施政の方針を定め、この方針に従って四十八年度予算を編成するとともに、必要なる
法律案を
国会に
提出いたしたのであります。御
承知のように、五万円年金、五千数百億円の大幅減税はすでに実現を見ましたが、これらは従来の
政府がなし得なかった大きな成果であります。(
拍手)
ただ、ここで私がはなはだ遺憾に存じますことは、豊かな
福祉社会の建設、
公害のない国土の
発展、地価抑制の基本となるべき国土総合開発関係立法や、教育振興の前提となるべき教員優遇
法案等の
重要法案が、野党
諸君のいわれなき
反対のために、せっかく十分な予算措置をいたしましたにもかかわらず、また十分に
国会審議期間があったにもかかわらず、この
国会での
成立が不可能になりましたことであります。
このため、当面の緊急課題である過密是正と
公害解消の抜本対策や地価抑制措置、あるいは教師の待遇改善がおくれ、それだけ
国民の利益がそこなわれることになったのであります。
私は、社会党その他の野党の
諸君が、
内閣の
責任を
追及する前に、
国民の利益を犠牲にして省みることなき、みずからの反
国民的行動を深く反省すべきであると思うのであります。(
拍手)糾弾されるべきものは
内閣ではなく、党利党略に終始し、国政の
発展を阻害しておる野党であります。(
拍手)
私がこの
不信任案に
反対する第二の
理由はこれであります。
この機会に、
国民の最も関心の深い
物価問題について、野党の
諸君の反省と協力を求めたいと存ずるのであります。
いまや
物価問題は
世界的な問題であり、各国ともにその対策に苦慮いたしておることは御
承知のとおりであります。わが国におきましても、
政府の真剣な努力にもかかわらず、いまなお安定の域には達しておりませんが、昨今ようやく
政府の対策の実効が見え始め、その
上昇速度が鈍化し、品目によっては横ばい
状態になってまいりましたことは、
諸君よく御
承知のとおりであります。
われわれは、
責任政党の
立場から、
昭和四十九年度予算の編成に取りかかっておるのでありますが、私ども自由民主党は、
政府と十分な連絡をとりながら……