○島田琢郎君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
政府より
説明のありました
昭和四十七年度の
漁業白書について、
田中総理並びに
関係大臣に対し
質問をいたします。
白書は、ことしもまた
漁業をめぐる現状のきびしさを訴え、その中で幾つかの
課題を示していますが、
漁業発展を阻害するこうした
条件を排除する具体的な
姿勢に欠け、
国民の期待する良質な動物たん白
資源の安定的
供給という面に依然多くの問題を残していることを、私は、まず強く
指摘をしたいと思います。(
拍手)
すなわち、白書では、九百九十万九千トンと昨年に続きその生産量がふえ、世界第二位の
漁業国としての面目を維持しているとしていますが、
漁業を取り巻くその
環境の悪化は、ますます深刻さを増しています。特に、
沿岸における
漁業は、油かすなどによる海面汚染、たれ流しのヘドロによる海底堆積によってその漁場が失われつつあり、加えて、水産
資源に対する
沿岸国の管轄権が拡大強化されるなど、
わが国の
漁業をめぐるこうした状況は、ますます不利になっているといわなければなりません。破壊されつつある
沿岸漁場の生産力を回復するとともに、遠洋漁場における
わが国の伝統的利益を守ることは焦眉の急を要すると考えられますが、予算面においても、また具体的な
政策展開においても、積極的な
姿勢が見られないのは、まさに
政策怠慢といわなければなりません。(
拍手)昨年の
漁業予算は、農林予算の中のわずか五・九%、六百五十億円にすぎず、これでは
わが国漁業が当面するきびしい
課題に対処することはできないと、われわれは強く
指摘をしてきましたが、ことしもまた五・六%、八百五十億円にとどまっており、海の
資源を育て、
環境を守るなどという
政府の言い分は、またもやお題目にすぎないことを露呈しているといわなければなりません。(
拍手)
総理は、
日本の
漁業の
あり方について、この際いかなる考えを持っておられるのか伺いたい。
生産第一主義、大
企業中心の
経済成長
政策は、重要な
沿岸漁場を奪い、
公害のたれ流しによって魚の生息を許さず、
漁業労働力の異常な流出を引き起こし、
日本漁業の発展を阻害していますが、これに対処される
総理の所信のほどをまず承りたいと思います。
近年、
国民の食
生活の高度化と多様化は、
生活水準の
上昇に伴い激変しつつあります。とりわけ、生鮮魚介類に対する
需要の
増大は食料支出の
伸びを上回っているといわれますが、その
資源においては、イワシ、サンマの一部を除き、全般的には楽観を許さないばかりか、むしろ悲観的でさえあります。すなわち、海面生産量の四〇%以上を占めるといわれるアジ、サバ、スケソウダラは、その
資源において低下の
傾向にあるといわれていますが、こうしたものが
資源において行き詰まりになることを、一応想定しておかなければなりません。
政府の長期展望でも示すごとく、
昭和五十二年に二千百四十万トンの
需要量に対し、
供給量を九百五十万トンとしており、残り一千二百万トンの不足が見込まれる中で、
資源の
確保と生産の拡大は密接不可分の
関係の中にあるだけに、この対策の具体性を期待するのは
国民の世論といえます。
さらに白書では、とる
漁業から育てる
漁業への
転換を強調していますが、これは長いこといわれてきたことでありますのに、依然定着していないというのが一般的な見方であります。
この際、この養殖
漁業の展望と深海
漁業の
開発を含めて、農林
大臣の所信を
お尋ねしておきたいと思います。
次に、海洋の
環境をめぐる問題について
お尋ねをいたします。
沿海と内水面漁場は、排水と都市下水、ふん尿や廃棄物などの流出や堆積によってその汚染の度を強め、その被害はますます
増大しつつあります。海洋汚染
防止法、水質汚濁
防止法などの
公害立法がありながら、その運用の的確さを欠き、一向に解決されず、さらに
環境破壊は進むばかりであります。したがって、
関係地域における漁民や
住民の不安は、解消されないばかりか、
増大しつつあります。
特に、瀬戸内海の
環境保全の問題は、
国民的関心事でもあります。
日本を代表する景観地として、また高級魚の
沿岸漁場としての瀬戸内海の汚染、汚濁は、いまや
日本の
公害の縮図ともいわれ、海外の旅行者からまで
指摘されているありさまであります。ハマチの赤潮による死滅事故など、瀬戸内海における
公害問題はあとを断たない状況であり、こうしたことから、昨年以来、この瀬戸内海の
環境保全のための特別立法の動きともなっているのであります。わが党としても、これらの要請にこたえて、今次国会に、瀬戸内海
環境保全対策特別
措置法を提案しております。
政府は、瀬戸内海の水質一斉点検の結果をこの際明らかにし、早急に解決すべき問題点を洗い出し、
公害諸立法の機能化をはかるべきと考えるが、
環境庁長官よりお答えをいただきます。(
拍手)
さらに、いま、愛媛県の伊予三島市において近く着工する運びになっている臨海埋め立てによる土地造成
事業は、第二次
公害が必至であるとして、燧灘一帯を漁場とする香川県三豊漁連や
地元住民から
反対運動が起こっておりますが、この
計画の中止と、ヘドロ拡散による第二次
公害の
防止の保障については、
政府としてどのような考えと態度を示そうとしているのか、あわせてお答えをいただきます。(
拍手)
また、大型タンカーの航行についての
規制が必要であるとの
観点から、昨年、海上交通安全法の成立を見たところでありますが、これらによる事故の重大性にかんがみ、さらに一そうの
規制措置が必要と考えます。この際、思い切った航行制限を行ない、この種の事故を未然に防ぐお考えはありませんか、
政府の所信を承っておきます。(
拍手)
漁業をめぐる自然
環境破壊は、申すまでもなく、
政府の無
計画な
地域開発政策にあることを重ねて強く
指摘するところでありますが、
各種の
計画や立法がしり抜けにならないためにも、現存の
公害諸立法の補強が必要であり、特に、
沿岸における重要な漁場に一日も早く青い海が取り戻されていくための
措置を望むものでありますが、
総理の決意のほどを伺っておきます。(
拍手)
また、青森県むつ小川原における
原子力船の問題は、現地漁民が
生活権にかかわる重大事として強い
反対があるのでありますが、これにどう対応するお考えなのか、あわせてお答えをいただきます。
次に、水産物の価格と流通について
お尋ねをいたします。
国民の動物性たん白質摂取量は、欧米諸国に比べてまだかなり低い水準にございますが、動物性たん白質は、
わが国においては、畜肉の需給逼迫などの背景から、水産物に五〇%以上依存する
傾向はさらに一そう強まると考えられますが、その価格において、まことに矛盾だらけといわなければなりません。すなわち、
昭和四十六年の水産物の生産地価格総合指数は一七八・九%で、前年を八・二%上回ったが、消費者価格の総合指数は一七八・八%で、対前年比では一三・六%と、依然
上昇を続けております。生鮮食料品の重要な地位を占める魚介類が、産地の豊凶と無
関係にある
状態は、消費者の何としても納得のできないところであります。
物価対策にきめ手を持たない
田中内閣でありますが、この際、複雑な流通機構を根本的に改革し、生産漁民も消費者も一様に求めている、この魚価安定を含め、生産対策一本やりの
漁業政策を改め、流通、消費にわたる総合
施策の
確立を、それこそ
総理の決断と実行を強く望むものであります。(
拍手)
さて、船底一枚下は地獄といわれるきびしい職業に従事する海の男たちは、きょうも南の黒潮と戦い、流氷の海にいどみ、家族と別れて北洋の荒海にその身をゆだねながらがんばっているのであります。
漁業は、自然の水域で採捕し、養殖をする
産業であり、自然のきびしい影響を受けることが少なくありません。しかも、その大部分は零細な基盤の上に立つ
沿岸漁業者であり、中小
漁業者であります。危険を
承知でも出漁しなければならない
状態さえあるのであります。気象や海流の変化、
漁業資源の変動などによって、絶えず不安定な状況にあるとさえいえます。このようなきびしい
条件と特殊な
環境の中で食料生産の重要な一翼をになっている漁民の身分保障とその漁村
環境の
保全は、
漁業振興の上できわめて重要なものであり、この世界で生きる人々の社会保障
制度の充実の必要性は、いまさら言うまでもありません。家族を置いて遠く航海し続ける漁民の人たちの保障は、他のどれよりも重厚でなければなりません。
しかるに、
漁業全体から見て、共済
制度一つをとってみても、その普及状況さえ十分とはいえません。また、加入率も非常に低率であります。この際、これら
漁業災害補償
制度、漁獲共済、養殖共済
制度の抜本的な改正をやるべきであります。
さらに、白書は、
漁業経営の動向に触れ、漁民が前年比で四・四%、この十年間で二五%も減ったと
報告しています。特に、重要な
日本漁業のにない手たる若年層の流出により、漁村もまた農村と同じように老齢化、女子化が進んでいるのであります。最近の朝日新聞の夕刊紙上のグラビアで、千葉県館山市相浜の老人船団が報じられていますが、何と悲壮ではありませんか。
このような
状態は、いかに漁村における
福祉対策がおくれているのかを意味するのであります。漁民年金を一日も早く実現させ、安心して経営ができるような十全の
措置によって後継者対策に本腰を入れ、こうした
漁業を取り巻く
条件の
整備をはかるべきと考えますが、これに対しどのように取り組もうとされるのか、
総理大臣と農林
大臣の御所見をお伺いいたします。(
拍手)
最後に、国際
漁業問題に対し、
政府に
お尋ねをいたします。
北洋
漁業は逐年きびしさを加え、ことしは豊漁年であるにもかかわらず、日ソ間における交渉は難航を重ね、三月一日から始まった
漁業交渉が最近ようやく妥結を見、出漁するに至りましたが、ことしは、特にカニの全面
規制をはじめ、サケ・マスの禁漁区の拡大など、きびしい情勢の中で、長期にわたって交渉が行なわれてきました。妥結の状況から見て、来年以降はさらにきびしくなると予想されており、その母船団数の現状維持も危ぶむ声さえあります。なぜこのように、交渉を重ねるたびに縮小を余儀なくされるのでありましょうか。
政府は、日ソ
漁業交渉に臨むにあたって、
資源問題について、ソ連に十分対抗できるだけの科学的根拠を持っているのかどうか。また、北洋の
漁業資源問題については、日ソの共同調査が必要であると考えます炉、御
見解を聞かせていただきたいと思います。
これら一連の問題を含め、わが党は、日ソの
漁業関係を根本的に立て直す必要があるとの考えの中から、両国間の平和条約締結がその
基本であるとの主張を持っております。それがまた、
国民の悲願といわれる北方領土問題をはじめ、安全操業への新しい道あけとなると考えるとき、最も緊急にして重大な問題であると信じます。外務
大臣のこれらに対する方針をお示しいただきたいと思います。(
拍手)
また、日中国交回復にみずから中国へ飛び立った
田中総理、あなたは近くソビエトへ出かける予定であると聞いておりますが、その際、平和条約締結の方針に
基づく具体的な話をされるお考えがありますか、この際、
総理の御
見解を承っておきます。(
拍手)
次に、日中民間
漁業協定について
お尋ねをいたします。
東シナ海や黄海の
漁業資源の捕獲や安全操業などをきめているこの日中民間
漁業協定は、六月下旬で期限切れになりますが、これに対し、先ごろ
政府は暫定延長の方針をきめたと伝えられていますが、暫定延長とはいつごろまでをさすのか、また、この間全く民間にまかすとの方針であるのか、今後
政府間協定への切りかえ問題を含め、農林
大臣のお考えを
お尋ねいたします。
さらに、国連の拡大海底
平和利用委員会における国際海洋法の制定にあたり、専管水域、領海二百海里を主張する中南米諸国の動きが活発化する中で
わが国の態度が注目をされていますが、
政府はこれに臨む態度をどのように持とうとされておるのか、担当
大臣の
見解と所信をお聞きいたします。(
拍手)
以上、私は、ピンチに立った
わが国の
漁業をめぐる若干の問題について、
政府の
見解を求めたのでありますが、国際的な食料問題が再
検討を迫られている重大な時期でもあり、国家百年の大計の上に立って、これらの懸案の諸問題に積極的に取り組まれることを強く要求して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣田中角榮君
登壇〕