○鈴切康雄君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま
趣旨説明のありました
防衛庁設置法及び
自衛隊法の一部を
改正する
法律案に対し、
わが国防衛の
基本問題にも触れて、
総理並びに関係大臣に
質問を行なわんとするものであります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
第一に伺いたいのは、平和国家
日本にふさわしい国家目標と、平和実現への具体的なプロセスについてであります。
最近における
国際情勢は、長い過去の冷戦
時代から脱却し、新しい平和への幕あけの
時代に入ってきております。ことに、
日本の軍国主義化が内外で批判されている今日、平和国家
日本の進路を明らかにすると同時に、さらに平和に徹するその姿勢を内外に強く印象づけ、定着させる努力が、目下最大の急務であります。
しかるに、
政府の姿勢には、このような新しく胎動しつつある歴史的な
国際情勢の動きに対し、何ら積極的に対処する気魄も熱意も全く感じられないが、
総理は、現在、どのような国家目標を持ち、平和定着のための具体的な努力と相まって、いかなる進路をとろうとしておられるのか、
見解を承りたいのであります。(
拍手)
第二に伺いたいことは、平和時における
安全保障政策の重点をどこに置くかということであります。
政府は、口では平和外交、内政重視等を唱えておりますが、相変わらず日米安保のもとでの冷戦
時代の
考え方から一歩も出ず、四次防、五次防と、
軍事力拡大政策のみに狂奔をしております。
一体、
政府には、非軍事的な面を含めた、広義の総合的な
安全保障政策なるものがあるかと、そのように疑いたくなりますが、
政府の広義の
安全保障政策をお示し願いたいのであります。
過去の
防衛計画にしろ、先般の平和時の
防衛力の限界にせよ、すべてを軍事的な見地からとらえる
防衛庁まかせでは、真のシビリアンコントロールが確立されるはずのものではありません。現在の
防衛政策は、
安全保障政策なき、
防衛庁及び軍事産業界主導型の装備
増強計画といわざるを得ないのであります。
今日、平和に向かって大転換のこの時期にあたって、
わが国のとるべき
安全保障政策は、もっぱら
脅威をなくすための積極的な平和外交の推進と、歴代
政府の失政による、今日の住宅、物価、交通、公害、社会保障の立ちおくれ等のひずみをすみやかに解決し、
国民のすべてが、心から愛することのできる、社会福祉
日本建設のための内政に全力を傾けるものでなければならないと
考えておりますが、
政府の
見解を伺いたいと思うのであります。(
拍手)
第三に伺いたいのは、憲法第九条の禁止する
戦力と、四次防の
自衛力との関係についてであります。
歴代の保守党
内閣は、警察予備隊から保安隊、そして
自衛隊へと既成事実をつくり上げ、それに合わせて、憲法第九条を都合のよいように拡大解釈をしてきている事実は、ここで一々申し上げるまでもありません。
今回、
自衛のため、必要
最小限度の
自衛力は違憲ではない、
最小限度を越えなければよいのだという
政府の一方的な
見解で、伸縮自在の憲法の解釈に立って、四次防を進めてきているのであります。
すなわち、四次防においては、大型ヘリ三機を積むヘリ搭載護衛艦や、ミサイル搭載護衛艦等、最新型の艦艇を含め、約二十二万トンの勢力を持つ
海上自衛隊、また、F4EJ戦闘爆撃機、FST2改地上支援戦闘機、
ナイキ部隊等、
世界一級の空軍力に迫ろうとする
航空自衛隊、さらにまた、強力な30型ロケット、61型改戦車、作戦ヘリコプター等、西欧一流並みの陸軍を目ざす
陸上自衛隊、それらを総合すると、まさに
世界第六位か七位にランクされるような勢力になろうとしているのであります。
一体、このような
自衛のための勢力が、憲法第九条に禁止されている
戦力に該当しないなどと言えるかどうか、全く疑いたくなるのであります。四次防は、すでに憲法第九条二項に禁止する
戦力に該当するものと断ぜざるを得ないのでありますが、
政府の
見解を伺いたいのであります。
第四に伺いたいことは、四次防の戦略構想の
基本についてであります。
四次防の戦略の
基本構想は、従来からの専守
防衛のワクをはみ出し、戦術的攻勢へと変化を来たしております。すなわち、日米
防衛分担の、いわゆる
米軍のやり、
自衛隊のたての関係が、
米軍の実戦
部隊の撤退に伴って、
自衛隊がこれに肩がわりをして、戦術的なやりを持とうとしているのであります。
例をあげるならば、実質的には戦闘爆撃機ともいうべきF4EJ戦闘機や、軽爆撃機といわれているFST2改地上支援戦闘機等、攻撃性の強い機種を持つことになっております。しかも、空中給油技術の発達に伴って、これらがさらに長距離攻撃が可能なことは、今日の軍事常識であり、足の短い、長いは、
政府の一時的な言いのがれにすぎないのであります。
政府が四次防で、これら攻撃型の戦闘機の採用に踏み切ったのは、純軍事的な
検討の結果、専守
防衛ではもはや
防衛は困難であるという観点から、攻撃防御の形をとり、
航空戦力の七〇%を敵地攻撃に振り向けようとしておるのであります。
その証拠には、すでに、増原
防衛庁長官も、
わが国に対する侵攻の
意図が察知された場合は敵のその基地においてたたくこともあり得るという
趣旨を、記者会見において
発言をしております。また、
海上自衛隊では、外洋において敵を攻撃することができる耐波構造のすぐれたヘリ搭載の対潜護衛艦やミサイル搭載護衛艦、涙滴型潜水艦等、いずれも従来の沿岸警備艦隊的な性格から、公海において迎え撃つという外洋艦隊への脱皮を目ざしておるのであります。増原長官自身、それを裏づけるように、
自衛隊が戦略的意味で攻撃に出ることはあり得ない、しかし、個々の戦闘では、機先を制して敵を攻撃するのは当然のことなんだ、また、大体、専守
防衛という言い方は間違いで、戦略守勢ということなんだと、新聞記者とのインタビューで答えております。
この増原長官の戦略守勢を
基本とする
考え方は、敵の出ばなをたたくという、専守
防衛からはみ出した攻撃的姿勢を意味し、きわめて危険な
考え方であります。
このように、
日本周辺の
防衛態勢から
航空優勢、制海確保態勢へ、さらに、必要な
範囲で公海、公空での敵撃破態勢へと、
防衛範囲は無限に拡大されつつあるのでありますが、四次防における戦略の
基本は、三次防の専守
防衛型から、戦術的には、攻勢を含めた戦略をとるという方向を目ざしているのではないか。陸海空の戦略構想の
基本について、
政府の
見解を求めるものであります。
第五に伺いたいことは、
政府の総合的な核政策についてであります。
内外における
わが国の軍国主義化への批判と危惧は、主として経済大国から核武装へという懸念からきているのであります。この際、
日本の置かれた立場から
考えると、
世界における核兵器の現実と将来とを厳密に分析し、
わが国は、いかなる核兵器の保有も決してプラスにならないということの認識の上に立って、
世界の核軍縮から、核の平和利用に至る、一貫した
基本政策を早急に確立し、国連を中心に、
国際政治の場で、核兵器の危険性、その防止策等についてイニシアチブをとり、積極的に国際世論を起こすべきではないかと
考えるが、
政府の
見解を承りたいのであります。
第六に、治安出動に関する問題についてお尋ねをしたい。
四次防では、
政府の姿勢は、直接侵略と同時に、間接侵略重視の姿勢が強くあらわれてきておりますが、これとの関連で、
自衛隊の治安出動が安易になされる可能性が懸念されるのであります。
間接侵略や暴動、騒乱等の最良の防止策は、物心両面における
国民生活の安定と
向上のためのよい政治、よい行政を行なうことであります。
国民不在、財界癒着の反
国民的
基本姿勢をはじめ、
政府の失政のしりぬぐいを安易に
自衛隊の治安出動に求めるということは、かりそめにもあってはならないと
考えるのでありますが、
総理の治安出動に対する
見解を承りたいのであります。
次に、
防衛二法の
内容に関する問題についてお尋ねをいたしたい。
自衛官の
定数を約七千人近く
増員することにしているが、恒常的に三万人近くの
欠員をかかえているにもかかわらず、今回、再び大幅
増員を行なおうとする
防衛庁の
意図は、全く理解に苦しむものであります。
今後、適齢人口の大幅減少が見込まれる中で、進学率はさらに上昇し、産業界においても、求人競争はますます激しくなると思われるが、いままでの
欠員すら埋めることは不可能に近い現状にあって、なぜ十八万
体制にこだわるのか、その
理由と、将来、もし人が集まるならば、この十八万
体制をさらに拡大する計画でいるのか、
陸上自衛隊の人的限界について、どのようにお
考えになっているのか、
見解を承りたい。
また、
防衛庁の
考え方では、平時
欠員があっても、それは有事に集めればよいという
考え方のようでありますが、もし、集めることができないとすると、その行き着くところは
徴兵制という危惧が起こってくるが、私は、有事、平時を問わず、
徴兵制は憲法上絶対にとれないと思うが、念のため、
政府の
見解を承っておきたいと思うのであります。
次に、
予備自衛官を三千三百名
増員することにしているが、当初のいわゆる中曽根案では、
予備自衛官による警備連隊構想があったが、現在もその構想は生きていると判断してよいのか。それとも、海原前国防
会議事務局長のいう、郷土
防衛隊構想を
防衛庁としては
考えているのか。この際、
予備自衛官の性格、
運用、数的限界等について、いかなる構想を持っているのか、
見解を承っておきたいと思うのであります。
また、
航空総隊のもとに、
南西航空混成団を新設しようとしているが、実際は、久保・カーチス協定によって、臨時派遣隊という名称で、すでにその主力
部隊は
沖繩に
配備済みであります。昨年、
沖繩増員分を含む
防衛二法は
国会で
廃案となっているのであります。にもかかわらず、
国会の意思とは関係なく、一
防衛庁長官の訓令等によって、臨時という名称のもとに、先取り的に実戦
部隊が
配備されるということは、シビリアンコントロールの見地からも、また、
国会軽視という見地からも、きわめて重大な問題であり、この先取り的暴挙は、断じて許せないのであります。(
拍手)
とすると、白紙撤回をされるか、
総理及び
防衛庁長官の
見解を承っておきたいのであります。
最後に、この新しい平和の幕あけの
時代を迎えて、
わが国がとるべき
安全保障政策の方向は、外においては、今日の平和を定着させるための積極的な平和外交を推進することであり、内にあっては、社会福祉の充実による内政のひずみをすみやかに取り除き、民生安定による住みよい国づくりをすることが何よりも重要なことであります。
しかるに、
政府の今回の軍事
増強政策は、
時代に逆行するばかりでなく、
時代錯誤もはなはだしいといわざるを得ないのであります。
よって、四次防及びその一環であるこの法案は、直ちに撤回されることを強く要求して、私の
質問を終わるものであります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣田中角榮君
登壇〕