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1973-04-11 第71回国会 衆議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月十一日(水曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 中垣 國男君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 福永 健司君 理事 稲葉 誠一君       井出一太郎君    大村 襄治君       住  栄作君    羽田野忠文君       三池  信君    保岡 興治君       吉永 治市君    日野 吉夫君       正森 成二君    沖本 泰幸君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         法務大臣官房長 香川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         公安調査庁長官 川井 英良君         公安調査庁次長 冨田 康次君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第二局長  柴崎 敏郎君         最高裁判所事務         総長      安村 和雄君         最高裁判所事務         総局総務局長  田宮 重男君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         最高裁判所事務         総局家庭局長  裾分 一立君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 四月十一日  辞任         補欠選任   松澤 雄藏君     大村 襄治君   松本 十郎君     吉永 治市君 同日  辞任         補欠選任   大村 襄治君     松澤 雄藏君   吉永 治市君     松本 十郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件      ————◇—————
  2. 中垣國男

    中垣委員長 これより会議を開きます。  おはかりいたします。  本日、最高裁判所安村事務総長田宮総務局長矢口人事局長裾分家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中垣國男

    中垣委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。      ————◇—————
  4. 中垣國男

    中垣委員長 裁判所司法行政に関する件及び法務行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 質問は、最初は、司法修習生判事補に任官といいますか、採用されることに関連をして聞くわけなんですが、誤解をされるといけないのは、私の聞くのは、何年度のどういうことという意味ではなくて、きわめて一般論としてお聞きをすると、こういうふうに私も考えますし、そういうふうにとってお答えを願いたいわけです。そうでないというと、いろいろなあれがあっていけませんから。  そこで、お聞きしたいのは、修習生が二年間の修習を終えて終了するわけですが、ことしは四百九十二人ですか一人ですかあれしましたが、それは、終了するときに一番から四百九十何番までという順番がつくわけですか。
  6. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 本年度は四百九十一名が終了したわけでございます。それで、おきめいただきますのは、合否、合格したか合格しないかということでございまして、それ以外に別に何番というような意味順位が公表されるというものではございません。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 もちろん公表はされないし、何も公表する必要はないわけなんですが、その成績が一番か四百九十一番かまでそれはきめられて、内部にちゃんととっておかれると、こういうふうなことではないのですか。それはまあ公の席でその成績が、順番内部的にもきめられておるんだということは、これは言いにくいことかもしれないわけですけれども、私どもの聞くのでは、一番から四百九十一番までの順位というものは、公表しないのはもちろんですが、内部的にはきまって、何らかの形で資料として残されている、こういうふうに聞いているわけですけれども、そこら辺まではどうなんでしょうか、答えても別に外部に対して——ぼくが聞くのは、一般論を聞いているわけです。ことしのことを聞いているとか去年のこととかと限定されると誤解を招くんでそうじゃないので、念を押しますが一般論ですから、ある程度のことはお答え願ってもいいんじゃないですかな。
  8. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 稲葉委員もご承知だろうと思いますが、合否の判定をいたします要素と申しますか、そういうものといたしましては、二年間の修習の結果の報告というものと、それから俗にいわれております二回試験成績、この二つの要素があるわけでございます。これまでの慣例といたしまして、二年間の修習結果を研修所長から幾段階かに分けて御報告をいただいて、しかも科目としましては民事裁判刑事裁判、検察、それから民事弁護刑事弁護というような御報告をいただいておるわけでございます。それといわゆる二回試験の各科目の結果、これも幾段階かに分かれて結果が出てまいるわけでございます。そういうことから、俗にいう非常に各科目いい成績であるか、各科目悪い成績であるか、いい科目もあるが悪い科目もあるといったようなことは、これは結果的に出てまいるわけでございます。内部で全員について一番から四百何番までというような厳格な意味順位と申しますか、そういうものをつけたりするわけのものではございませんけれども、おのずと各科目いい人と各科目悪い人、あるいは中にはいいのもあるが悪いのもある、そういった意味段階的なものは分かれてくるということには相なろうかと思います。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 二回試験というのは具体的にはどういうふうにやるのかということが一つと、それからこれはフランクな話、二回試験に対するウエートのかけ方が、検事志望の場合と裁判所側が持つのとが非常に違うわけですね。裁判官の場合は二回試験が非常に大きくものをいう。そこで成績が悪かったらまず採用にならないということが一つと、それから率直な話、採用になっても、こういう言い方は悪いのですが、なかなか中央へ入れない。ことに最高裁事務総局には入れないということで、さらにことばを悪くすれば支部回り支部回りということばは悪いから訂正しますが、そういう形になってきて、二回試験というのは裁判所の場合は非常に重視する。検察官の場合は、二回試験はそれほど法務省側も重視はしないということになってくるんじゃないか。そこら辺は裁判官の場合と検察官の場合と、二回試験に対する最高裁なり法務省側の見方、これが事実として違うんじゃないですか。これは最高裁と、あるいは法務省官房長も来ておられるから、分けてお答え願いたい、こう思うのですが。
  10. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 法務省がどういうふうにお扱いになっておりますか、これは私どもつまびらかにいたしませんが、裁判所といたしましても、いわゆる二回試験というものを特段に尊重するというようなことはございません。これは戦前は、非常な二回試験尊重ということがあったようでございます。しかしそれの弊害ということも戦後いわれまして、一時は二回試験そのものを廃止しようかというふうにして筆記等を全廃した期もあったわけでございます。その後、復活いたしましたけれども、そういう意味で決して戦前と同じような意味で二回試験万能ということを考えておるわけではございません。むしろ研修所におきます二年間の平常の成績報告と、それから二回試験というものは全く同じウエートでもって全体的に考察していく。ただ新規採用いたしますいわゆる判事補新任の場合には、ほかに要素がございませんので、いま申しました研修所報告、それから二回試験成績、これ以外にものがございませんので、そういったものが一つのよりどころになろうかと思いますが、あとはまあ本人実力次第ということで、その点は、裁判所はそのときそのときの裁判官実力というものを一番やはり客観的に評価してやっておるのではなかろうかというふうにひそかにうぬぼれるというとおかしゅうございますが、自信を持っておるわけでございます。
  11. 香川保一

    香川政府委員 法務省検事採用の場合の基本的な考え方裁判所と同じだと思いますが、これはいずれも全部お互いに相談してやるわけでございませんので、よくは存じませんけれども、二回試験成績が悪いから採用しないというふうな考え方はとっておりません。試験成績その他いろいろ勘案いたしまして検察官としてふさわしい者を採用する、さような考えでございます。裁判所と基本的には何ら差異がないように考えております。
  12. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 裁判官の場合の、いま人事局長が言われた実力というかそういうふうなものは判事補になった段階で、その後の十年間にしても非常にわかりにくい。この裁判官ができるとかできないとかいうことはなかなかわからないのがほんとうなんで、それがわかるとすればおかしな話なんですね。ことに陪席なんかやっている場合に、この裁判官ができるとかできないとかいうことはそんなにわかるはずはないのだし、もし裁判長なり何なりの上申なんかの中にその成績まで出てくるということになると、これはまたおかしな話になるわけです。そこで裁判官判事補人たちからいろいろな話を聞いてみると、昔ほどでないにしても、今でも結局二回試験成績が悪かったらもう判事としては浮かばれないというか、ことに最高裁事務総局にはもちろん入れないということで、二回試験というものに非常にウエートをかけているわけですね。検事の場合には二回試験というものはそれほどのウエートはかかっていない。検事の場合には仕事の中でわりあい実力というものが認められますが、同時にそこで検事の場合には有力な親分をつかまないとなかなか上へ出世できないということになってきて、俗なことばでいえば親分というか派閥というか、そこで検事のほうは人脈がだんだんできてくる。これは実際そうなんで、検事派閥というものは昔のようじゃないかもしれませんけれども人脈と言ったほうがいいかもわからぬけれども、二回試験の持つ評価というものは非常に違うわけですね。  それはそれとして、二回試験というのはどういう試験をやるわけですか。昔はいわゆる起案というものをやったわけでしょう。いまでも起案と、それに基づいて口述試験をやるのかな。それはどういうふうになっているわけですか。
  13. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 やはり根本的にはそう変わっていないかと思いますが、昔は記録を与えまして、いわゆる起訴状判決書きの案を書かせたわけでございます。一時そういうことではなくて、記録の中から問題を指摘しまして、それに対してそれぞれの答えを要求するというやり方をいたしたわけでございます。それからそれだけでもまたあまりこまかいことを突くような形になるというような意見もございまして、今回行なわれましたのは、大体昔のように記録を与えましていわゆる起案をするというような形で行なったわけであります。
  14. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 刑事にしろ民事にしろ、記録を与えて起案するということでその人の力がわかるんですかね。実際自分が審理しているわけでも何でもないわけでしょう。裁判では直接審理だ何だかんだと言っていて、そして形式的な記録起案して、その人の力を明らかにしようといったって、これはなかなか無理な話じゃないか、こう思うんですね。私の聞いた話では、あの記録では一番良心的な修習生というのは結局再開決定を書かざるを得ないというんですね。あれだけじゃわからぬというんですよ。あれだけじゃはたして終結に熟しているかどうかわからない。結局再開決定を書いて——再開決定は職権だから別に理由を説明する必要もないかもしれませんが、再開決定を書いて出したという人がいる、そういう伝説があるのですよ。だから、あれだけでその人の力を評価するというのは無理じゃないかとぼくは思うのです。  そこで、今度の場合なりここ四、五年の間、裁判官志望の中でいつも二人か三人ぐらいは、裁判官を志望するけれども採用試験に受かってないという人がいるわけですが、どの程度いるのですか。
  15. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官を希望されて不幸にして採用にならなかった方は、四十五年の四月には三名ございます。それから四十六年が七名、昨年が三名、ことしが二名、こういうような状況でございます。
  16. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、採用にならなかったということと同時に、その前に研修所指導官なり何なりが、あなたは裁判官としては成績その他から見て無理だとかあるいは適しているとか、いろいろ話をするわけでしょう。そうすると、裁判官に適しているような性格というのはどういう人なんでしょうかね。それからまた、検事に適している性格というのはどんな人なのか、それを両方から……。
  17. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 これは稲葉委員法曹の一員としてよくおわかりいただいておることではないかと思います。結局、裁判官にいたしましても、検察官にいたしましても、在野法曹にいたしましても、いわゆる法曹という一つの大きな共通性の問題があるわけでございます。ただその中に、これはもう俗に言われることでございますが、君は検事に向いておるとか君は裁判官に向いておるというのがあるわけでございます。それでは、それを公式的なことばで定義のようにして言えとおっしゃられましても、それは非常にいわく言いがたいところでございまして、その辺はよく御了解いただいておるんではないかと思うわけでございます。教官が、君は向いておるとか向いてないということを言うんじゃないかというお話でございますが、教官のほうから積極的に、君は裁判官に向いておるから裁判官だ、君は検察官に向いておるから検察官だというようなことを申すわけではございません。ただ、五十人単位のクラスを専任に担当いたしておりますので、その受け持ちのクラス修習生から相談を持ちかけられたような場合に、教官としてアドバイスをするということは当然あるだろうと思います。その程度でございまして、こちらのほうであらかじめきめて、だれだれはどうだというふうにすすめたりするというようなものではないわけでございます。
  18. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 確かにそれはそうなんですが、判事補採用試験を受ける前に教官なりあるいはそういう人たちいろいろ話をした中で、かりにその人が成績からいって裁判官に無理だということになれば、これは何も強圧的にとか何とかいう意味ではなくて、親切に、とても実際問題として無理なら無理だということをよく話してやったほうがいいのじゃないですかね。ただ、それがまたよけいなことだということになってきても、本人がなりたいというものをあなたはとても無理だというのもおかしな話かもわからないから、限度はもちろんあるにしても、そこら辺のところの話し合いというものは現実には相当行なわれておるんじゃないですか。そういうふうに聞くのですが、それがまたちょっと限度を越す場合もあるということももちろん聞くわけですね。そこのところは実際にはどういうふうに行なわれているわけですか。
  19. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 これはごく一般的な問題としてお聞きをいただきたいと思いますが、これまでには、修習生の側からも親身になって相談をする、教官のほうも親身になって突っ込んで御相談に応じるというようなことがかなり行なわれてきたようでございます。その結果、君は裁判官を希望しておるけれどもちょっと無理じゃないか、あきらめたほうがいいのじゃないか、君は弁護士になりたいと言うけれども君の性格ではちょっと無理じゃないか、そういうこともあるわけでございまして、かなり親密な話し合いがあったようでございますが、近時そういったことが逆に、何を根拠に教官がそういうことを言うのだというふうに、教官のそういった真意が必ずしも伝わらなくて、すすめればすすめたでいけない、またやめておいたほうがいいのじゃないかと言ったら言ったで問題が起こるというようなことがございまして、教官のほうがよほどのことのない限りそういった意味の御相談に応じにくいような空気というものがあるようでございます。  このことは、いま御指摘のように決していいことではないと思います。一番いいのは、やはりそういった二年間の修習の間に御本人もまた周囲の人も、これはこういうふうになるのがいいだろうということをおのずとわかっていくような仕組みと申しますか、そういうことになるのが一番いいことでございまして、そういう少し前にございましたような雰囲気と申しますか空気と申しますか、何とかそういうものができないものだろうかということを私どももしょっちゅう考えておるわけでございますが、ここ数年はいろんなことがございまして、なかなか教官に必ずしも親身に相談に行かない、また教官のほうもそれに対して安心していろいろとアドバイスをしてあげることができにくいような状況にあるようでございます。
  20. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そのできにくいような状況ということ、問題はその原因がどこにあるかということですよね。それは時代が違ってきているし、考え方もいろいろあるでしょうから、もちろん修習生の側に原因がある面もなきにしもあらずかもわからない。同時にそれが最高裁側あるいは司法研修所側、そういうようなところにも、修習生と話しにくい雰囲気というか、そういう原因があるのではないかということが考えられるのじゃないかと思うのですがね。そこら辺は、その原因について最高裁側としての判断はどうなんでしょうか。
  21. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 いまも申し上げましたように、もう少しフランクに教官修習生に助言すると申しますかアドバイスすると申しますか、そういったことができるような雰囲気にならなければいけないということは、私どもも痛感をいたしております。  それについて、どうしてそういうふうになったのかということでございますが、まあいろいろ近時の問題がございまして、そういったことも一つの要因であろうかというふうには思いますけれども教官のほうはいわば全くフランクに手をあけて修習生がいろいろ相談に来てくれるということを望んでおるわけでございます。修習生方々も、もっと教官を信頼していろいろ御相談をいただければというふうに思っております。私どもも機会あるごとに、そういった情勢というものができますように心がけてはおるつもりでございます。
  22. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 近時いろんな事情とかいろんな原因というものがあったというふうにいまちょっと言われましてけれども、ぼくはどういうことがあったのかよくわからないのですが、どんなことがあったのですか。
  23. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 たとえば、特定団体に加入しておるから採らないのではないかとかというようなことが、これは非常にいわれのないことでございますけれども言われまして、そういうことがありますので、教官方もどうしても慎重にならざるを得ないというようなこともあったようでございます。
  24. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 特定団体というのは、どんな団体なんですか。
  25. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 端的に申し上げますと、青年法律家協会に所属する方を採らないのではないかというようなことが言われました。これはお断わり申し上げますが、私ども青年法律家協会に所属しておられるから採るとか採らないというようなことは一切考えていないわけでございますが、結果的に今回も不採用の中に青年法律家協会の方が何名おるというようなことがいわれたりいたしますと、若い方々なんか、そういうことが関連があるのじゃないかというふうに考えられがちのようでございます。そういうことじゃないということはもう繰り返し申しておりますし、いろいろな情勢から、稲葉委員等もごらんいただきますれば、そうでないということがおわかりいただけると確信いたしますけれども、若い方はなかなかそうもいかない面があるようでございます。
  26. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 青年法律家協会というのは、具体的にはどんな団体で何をやっている団体なんですか。
  27. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 青年法律家協会についてまたあらためて御説明を申し上げるということも、それほどまでのこともないのじゃないかというふうに思いますが、現実には、現在、学者、弁護士合同部会というのがございます。それから修習生の各期の部会がございます。それから裁判官部会がございます。そういったものが寄り、全体として青年法律家協会という団体があるわけでございます。いろいろの御活動をなさっているというふうに承知いたしております。
  28. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、裁判官青年法律家協会に属している人というのは、よく法律時報なんかに出ていますね。論文なんか書いたり、横浜でも何か再任拒否のときに集まりました、あれは法律家協会とは関係ないんでしたかね。いずれにしても、裁判官でも属している人がおるわけですけれども、それはどうなんですか。属してはいけないのか、別にそんなことはかまわない、最高裁としては関知しないというのか、いろいろ分け方があると思うのですけれども、どうなんですか。
  29. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 この点につきましては、当委員会でかつてそういった観点でのお尋ねもございまして、私、その際にいろいろとお答えを申し上げておるわけでございますが、裁判所法五十二条は、積極的な政治活動というものは禁止いたしておりますけれども特定政党に加入するとか、あるいは政治的な団体に加入するということ自体を禁止しておるわけではないわけでございます。ただ、これは昭和四十五年の四月でございますが、事務総長最高裁判所の一応の公式な見解ということで打ち出しておりますが、政治的な団体裁判官が加入するということは、法律的にはいけないわけではないといたしましても、裁判の公正らしさというものに対する、国民から疑惑の目で見られるおそれがあるという観点から、いわゆるモラルの問題として、そういった政党あるいは政治的な団体というものに加入することは好ましくないということを申しております。これは最高裁判所としての現在も変わらない一般的な見解でございます。
  30. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、ことに裁判官の場合、だれが青年法律家協会に属しておるかということは、最高裁としてはわかっておるわけですか。
  31. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 二、三年前までは青年法律家協会にだれが属しておるかということにつきましては、青年法律家協会の側で名簿を発行いたしておりまして、裁判官会員はだれとだれだというふうな名簿がございました。そういうことでございますので、私どももその限度ではわかっておるわけでございます。しかし、ここ二、三年、一切そういう名簿も発行されませんし、また御本人からのそういったお申し出もございませんし、私どものほうも、どういう団体裁判官のどなたが加入しておられるかというようなことを伺うということもいたしておりませんので、現在、ここ二、三年の状況としては、どなたが会員になっておられるかということは、私どもには一切わかっていないという状況でございます。
  32. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、わかったらどうするんですか。わかったら脱退するようにしろとかなんとかいうの、それは。
  33. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、裁判官モラルといたしましては、政治的色彩の強い団体に加入する、あるいは政党に加入することは好ましくないという立場を私どもとっておりますので、先輩と申しますか、としては、そういう団体に加入しないほうがいいのじゃないかということは、そういう意味で申し上げるということはあろうかと思います。
  34. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 最高裁事務総局に入っていた人が、去年ですかおととしですか、内容証明を出してずいぶん脱退したわけですね。これは各人が意を体してというか、自分判断でやったのかもわかりませんが、何も内容証明まで出して脱退届けを出さなくともよさそうだと思うのですが、最高裁事務総局では、青年法律家協会に入っている人はいないわけですか。
  35. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 現在、事務総局におります裁判官はかなり年代が若くなってまいりましたので、ちょっと正確な記憶はございませんが、現在のところ来ております期ぐらいまでのところは、どなたが入っておられるかという名簿が発行されておったのではなかろうかと思います。そういう関係で、かつて入っておられた方はたくさんございますけれども、現在も入っておられるという方は、その限度においてではございますけれども、ないのだろうというふうに私は考えております。
  36. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、青年法律家協会というのに入っていると、最高裁事務総局には入れないということが一つと、それから、入ってもいわゆる出世コースというのですか、そういうコースには乗れないということが、最高裁事務総局の中でははっきりしているんじゃないですか。それで、みんなが話し合ったり何かして脱退届けを出したのでしょう。いつごろでしたかね、去年かおととしかな、脱退届けを全部出しましたよね。それは間違いないでしょう。  もう一つ、これは聞いてはいかぬかわからぬけれども脱退届けを出さなかった人がいるわけですね。事務総局にかつていた人で、脱退届けを出さなかった人がおられるわけですね。ぼくはこれ以上のことは言いませんけれども、それはいますよ。名前は言っては悪いから言わぬけれども
  37. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 青年法律家協会そのものに入っておられる方でも、事務総局に来ていただいたほうが適当だと思われるような方については、これまでも来ていただいておったわけであります。ただ、ただいま御指摘の時点、これは四十五年の一月だったかと思います。四十五年の一月に、当時総局に勤務しております裁判官で、当時青法協に入っておられた方が大体脱退したということは、私も承知いたしております。これはそういった方々がよくいろいろ御相談になっておやりになったことだと私は承知しておるわけであります。  問題は、いまも申し上げましたように、青法協に入っておられる方が近時はわからないわけでございます。したがって、モラルの問題として入っておられないほうがいいということは、おりに触れて申しておるわけでございますが、具体的にどなたが入っておられるかということはわかりませんので、そういった問題で、青法協に入っておられるから事務総局には勤務させないとか勤務させるとかいうような問題は、今後は出てこないと私は考えております。
  38. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 古いことを聞くので、これはぼくも聞きたくないのですけれども、青法協に入っている裁判官名簿というものがどこかに出てきて、それをある雑誌が載せましたね、右翼の雑誌が。そうしたら最高裁では、これを全部買って各地裁に配ったでしょう。配ったのだけれども、そのことがわかるとぐあいが悪いというので、各地裁の事務局長自分のポケットマネーで買ったように、そこまで事務局で指示したかどうかわからぬけれども、どうもそういう答えをみんなしていたですね、事務局長は。最高裁から配られたことは、これはわからないようにしてくれというようなことをして配ったでしょう、「全貌」という雑誌を。昔のことだから、ぼくもそれ以上聞きませんけれども。そのことがわかって、ある裁判官なんか非常に憤慨していました。最高裁というのはこういうこそくなやり方をするのだということで、非常に憤慨していた。そうしたら、そういう裁判官はあまりいいところに行けないで横道に、横道でもないけれども、コースに乗らないわけだ。コースに乗らないから憤慨したのか、憤慨したからコースに乗れなかったのかというのはよくわかりませんけれども、この前総務局長も、いまはそんなことをやってないと言っておられたのですけれども、古いことだから、そんなことを聞くのもぼくもいやだ。あれは何のためにあんなことをやったのか。それが一つ。  それから何のために事務局長自分のポケットマネーから買ったというふうな指示をしたり、そういうふうな答弁を統一したりなんかしたのですか。
  39. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 これは古い問題でございますので、私も正確には承知いたしておりませんが、国会の当委員会でもその点の御質問がございまして、当時の経理局長それから当時の総務局長が、それぞれ、あれは最高裁判所で買ったものであるということの御答弁を申し上げておると承知いたしております。決して自分のポケットマネーで買ったというようなことを言えとかそういうことを、右の答弁からいたしましてこちらのほうで申し上げておることはないと思います。私、そういうような話があったというようなことも承知いたしておりません。はっきりと当委員会で、裁判官に関する非常に重要なと思われる記事が載っておるので、これは裁判所としても当然買うべきであるというふうに考えて、経理局に依頼して購入して配ったということを総務局長、これは資料担当の局長でございますが、総務局長が申し上げておるわけでございます。
  40. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 まあ古いことですし、その後そういうことをやってないという答弁がこの前ありましたからこれ以上聞かないのですが、そうすると全体として、個人的なことではなくて、各年度で判事補採用にならなかった人もいるわけですが、そういう個人の人のことを聞くという意味ではなくて、聞くのは、結局それについて本人が、なぜ自分が受からなかったのかという申し出があれば、それはある程度その人に対しては非公式にしろ発表するというか、知らせるとか、そういうふうな方法は全然とらないわけですか。とらないから、それは本人に気の毒だとかいろいろな御配慮があって、最高裁としては本人にも知らせないし理由も明らかにしないのだと思うのですが、それがかえってごたごた、混乱というか、要らざる疑惑というか、そういうようなものを招いて——要らざるか要る疑惑かちょっとわかりませんけれども、招いてくるのじゃないのですか。最高裁としては、それはいろいろなことを考えたのかもしれぬけれども、その人には、こういう理由なんだから、こうだということをある程度言ってあげたほうがいいんじゃないですか。これは絶対言わないのですか。
  41. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 どういう理由で採用されなかったかということを申し上げるかどうかということは、御指摘のようにそれぞれ利害得失があろうかと思いますけれども、それは人事の問題につきましては御本人が御希望になるから申し上げるというような個々の問題として解決すべきものだけでない面が含まれております。やはり現在のところは、理由は申し上げるべきではないというふうに考えております。
  42. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それから私の聞いた話で、これも人名は伏せますが、ある高裁所在地の裁判官が、公安委員会であるデモコースを禁止した、それに対して裁判があって、そしてそいつを取り消したとか、何というのですか、あるいは公安条例が違憲だとか、こういうような判決をしたら、この裁判官を警察の警備が尾行していたということをぼくは聞いているのですよ。裁判官の名前もぼくは知っていますけれども、それはここでは言いませんけれども。だからその裁判官の、何というかそういうふうな裁判をしたり何かすると警察の警備なりあるいは公安調査庁なりがその人のいろいろなものを調査したり何かするというふうなことが一体現実にあり得るわけですか。  この前の金沢か名古屋ですかの事件というのは公安調査庁がある裁判官のいろいろなことについて調査をしようとしたというようなことがたしかあったように記憶しているのですが、そういう点については最高裁としてはどういう態度をとり、それからどの程度の事実までを知っているわけですか。
  43. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 前段御指摘の点については全く存じ上げておりません。  それからあとでおっしゃいました、公安調査庁が女性の判事補につきまして調査をしようとした点につきましては、当時私の談話の形式をもちましてそれは遺憾であるということを申し上げ、また当委員会でもその直後にその点についてお尋ねがございまして、同様のお答えを申し上げております。
  44. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうするといまの場合、司法修習生から判事補採用になるときにその人の思想動向というか何というか、そういうふうなことについて警察の警備なり公安調査庁なりに頼んでその人の身元、あるいは形式的かもしれませんけれどもそういうふうなことは現在でもやっているのではないのですか。戦争中かもわからぬけれども、昔のことを言って恐縮だけれども、ぼくが司法官試補になるときは警察の特高から呼ばれましたよ。来てくれといわれて特高へ行きましたよ。何を聞くのかわからぬけれどもいろいろなことを聞きました。聞かれて司法官試補になった。おそらくいまでも、警備がやっているのか公安調査庁がやっているのか知らぬけれども、ある程度の身元調査というような形はやっているんじゃないんですか。何かどこかへ依頼しているんじゃないの。
  45. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 現在修習生から裁判官の御希望がございまして採用するにあたりまして、いま御指摘のような、外部に対して調査を依頼するというようなことは一切いたしておりません。
  46. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、昔はどうしてやったのかな。ぼくは現実に特高へ呼ばれたんだから。来てくれといわれて何だかわからない、行ってみたら、あなた今度司法官試補に希望しているけれどもどうなのか、いろいろなことを聞かれました。何で聞くのかわからないけれども、わりあいに丁重ではあったのですけれども聞かれたのです。それはそれでいいのですけれども、どうもいまもいろいろな形で司法修習生から判事補になるときに調査をやっているんじゃないですかね。ないと言うのですからいいですよ。ないと言うのを聞いたっていまそれ以上出ませんから。どうもぼくはその点は疑問を持つのです。  それから警察の警備が特定裁判官を尾行しているという事実。これはここで申し上げるのは、ぼくはその裁判官の名前もわかっているのですが、それをいうとその人にいろいろな問題が出てくるからぼくはいいません。  それからもう一つ最高裁事務総局にかつていて、これもあなた方名前がわかるかもしれないあるいはわからないかもわからないけれども、青法協を脱退しろといわれたけれども脱退しなかった人がいるのですよ。これ以上言うとまた悪いけれども。それでその人はわりあいに不遇な立場にあるというのですね。それは非公式なら話してもいいのです。広島の事件も非公式なら話してもいいと思いますが、そういうこともあります。それはいずれ別のことにいたします。  そこで家庭局長来ておられるのでちょっとお聞きしたいのですが、家庭裁判所裁判官、これが、率直な話、地裁との交流の中で、人によるのですけれども、家裁の裁判官に行って、それはどういうことなんですか、地裁へ半年くらいでかわる人もありますね。それから本人自身早く家裁へ行きたいということを希望をされている方、ことに若い人なんか非常に多いわけですね。あれは家裁から地裁への裁判官の交流というのはどういうようなことでやるわけですか。
  47. 裾分一立

    裾分最高裁判所長官代理者 実は、家庭裁判所につきましては、これは戦後昭和二十四年からできました制度でございまして、地方裁判所いわゆる通常裁判所に比較しまして歴史が浅いということで、いかなる裁判官が家庭裁判所裁判官としてふさわしいのかということを考えました際に、なかなかそういう裁判官を養成するということがむずかしい、長い年月がかかるというようなことがあります。率直に申しますと、実は家庭裁判所が創設されました当時は、家庭裁判所の事件について情熱を持って、一生それと運命をともにしたいというふうな裁判官裁判所にとって一番ふさわしい裁判官だというふうに考えられた時代がございます。ところが、その後いろいろ事件の処理のしかたとか何か見てまいりますと、裁判官としてやはり地方裁判所あるいは高等裁判所、またそういう裁判所においても民事であるとか刑事であるとか、そういうような事件なんかも経験し、しかも、家庭裁判所も少年事件や家事事件も経験し、いろいろな経験を積んだ方、こういう方がどうもあの仕事をしたあとの結果から見ていいのじゃないかという考えがまた台頭してくるようになったわけでございます。いま稲葉委員御指摘のように、家庭裁判所にきた裁判官がそこに定着しないで、半年あるいは一年ですぐ地方裁判所にかわるとかあるいはかわりたいとかいうようなことで、落ち着いて家庭裁判所の事件を十分身につけて体験して、そして裁判官として成長していくような、そういうようないとまもないうちにかわるということではぐあいが悪いのではないか、この御意見、私はごもっともだと思うのです。ですけれども、家庭裁判所裁判官の養成ということを考えます際には、やはりいろいろな仕事の性質の異なった事件を経験するということも必要であると思いますので、なるべく若い裁判官は地方裁判所と家庭裁判所と交流したほうがいいような感じを持っておる。もっとも期間の問題がございます。ただそれの一つの欠点は、そうしますと家庭裁判所で中心となって仕事をしていくという裁判官が、それでいなくなるということでも困りますので、これはやはり各庁にそれぞれ家事とか少年のベテランの裁判官、年輩の裁判官が配されて、そしてその下でやはり同じように仕事について、先輩の指導を受けながら仕事につける、若い裁判官はいろいろの機会にめぐまれるように交流をはかっていく、それで将来また家庭裁判所を希望するということであれば、そういう方は家庭裁判所の中心になっていただく、こういう仕組みになるのがいいのではなかろうかという考え方も最近出てきておりますので、そこら辺の利害得失というものを考えまして、家庭裁判所が今後どういうふうにあるべきかということともにらみ合わせて考えていかなければならないことではないか、こう考えております。
  48. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私の同期の人なんかで、東京家裁なんかでずっとやられておる非常にりっぱな方もおられるのですよ。  そこで、いま言われたベテランという意味で、これはぼくもこれ以上聞くのは内部のことで何だか立ち入ったことになるので聞きませんが、ベテランには違いないのだけれども……。  そこで一番困るというか問題になりますのは、少年審判のときに実際的にはあれがもう一審限り、まあ抗告がありますけれども、事実上一審限りでしょう。抗告審理だって書面審理だけで、抗告が通ったというのは、ぼくが調べた範囲ではほとんどないんじゃないですか。そうすると、個人の考え、個人差が非常に出るのですね。普通の裁判では、一審、二審で大体それが平均化してくるというか、是正される余地があるわけですけれども、非常に違いが出てくる。どこが一番違うかというと、少年院に対する考え方ですね。これは家裁の調査官は少年院に対して一つ考え方を持っておりますね。それは、ぼくはそれでいいと思うのです。それから裁判官も少年院に対する考え方が非常に分かれるわけですね。あまりこれ以上言いませんけれども、分かれてきて、たとえば少年院は国家の施設なんだから、そこへ入るのはあたりまえだという考え方を持っているというか、そういうような積極的に少年院を評価する人と逆な人と、いろいろいるわけですね。少年はもう少年院へやられるのはとにかく懲役へ行くよりつらいわけです。実際の話。あそこへ行ったら三年ぐらいいる場合もあるかな。準少年になると出られない場合がある。そういうことなので、その考え方が正しいか正しくないかというような議論はいろいろあると思うのです。理解のしかたが深い浅いもあるし、正確でない場合も、あると思うのです。そこで一番困るのは、事実上一審限りだということですね。二審、三審という形が実際問題としては全然されないわけですよね。そこら辺のところで、たとえば少年院へやられちゃう、甲の裁判官は少年院を高く評価して、そこへ入ればよくなるのだということでやっちゃう。あるいは乙という裁判官は、とにかくこれは違う、むしろ家裁で試験観察でやる、まあ補導委託でやるとかということでおいたほうが少年にとっていいという考え方でいくということと二つ、大きく分かれるわけでしょう。そうすると、それに対する不服の申し立てが非常に現在では制限されて、事実上奪われているのじゃないか、こう思うのですが、この点についてはどういうのでしょうかね、抗告はほとんど通ったことはないでしょう。まあ抗告する人もほとんどいないですね。どういうふうになっていますか。
  49. 裾分一立

    裾分最高裁判所長官代理者 いま御指摘の不服申し立てでございますが、これは制限されているとおっしゃる御趣旨が、法律上は道が開かれておるけれども事実上それが利用しにくいといいますか、されておらないという御趣旨ですと、それは御趣旨のとおりだと思います。非常に抗告事件の数が少ないと思います。それで、実は件数の上だけからいきますと、十分ご承知と思いますが、家庭裁判所の少年事件の審判すべてに抗告ができるようになっておりません。これは少年が不利益な処分を受けない、つまり不開始処分で事件が終わったという場合には、抗告が許されておりません。それで保護処分を受けた場合も、保護観察ですとほとんど抗告することがない。これは自宅へ帰って保護観察官の指導を受けるということで済みますから、拘束されずに済みますから。したがいまして、問題は、少年院に送られた場合に抗告をすることがほとんど通常であろうかと思いますが、これは数が非常に少ない。と申しますのは、家庭裁判所でいろいろ調査官が調査をし、それから裁判官が事情を聞いて審判をしていくうちに、少年自身が少年院に行って矯正教育を受けるのもやむを得ないというふうな気持ちになる場合がかなりあるというふうに私は聞いておるのでございます。もしそうでなければ、家庭裁判所裁判官は審判で少年院送致の言い渡しをするときには、必ずこれは不服の申し立て、抗告ができるんだということを告げておりますから、それを利用できるべきはずのものだ。それ以上裁判所としては手の打ちようがないのでありまして、あなたはこれに不服であれば当然不服の申し立てができますよと申し上げて、それで抗告をされないということだと、どうもそれ以上はどうしてよいのかというふうに考えるわけでございます。
  50. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私の常々感ずることは、だから少年院送致が家裁で決定されるでしょう、それに対して不服の申し立て、抗告の規定はありますけれども、これは書面審理でしょう、そして実際に家裁でその抗告が通るというのはいままでほとんどといっていいくらいないじゃないですか。統計は別にしまして、感じているところですがね。だから現実には一審限りできまってしまうわけですよ。そうすると、その家裁の裁判官性格といいますか、見方が非常に大きく出てくるのですね。たとえばある裁判官は、いま言ったように少年院というものを高く評価する。国家の施設だ、そこに入ればよくなるんだから入れるのはあたりまえじゃないかというのでどんどん入れてしまうというのがあるかと思うと、いや違う、家裁でやりたい。調査官としては試験観察で自分の手元で何とかやりたいわけでしょう。それで中間的な段階として補導委託ということになる。補導委託は、もちろん規定はありますけれども、本来補導委託というのは試験観察で調査官が主としてやって、その従的に補導委託をするというのが条文のたてまえでしょう、二十五条でしたか何条でしたか忘れましたが。実際には補導委託のしっぱなしみたいになってきて、そこで少年が補導委託の先を逃げ出すというのが多いわけですね。これはいろいろ理由がある。少年のほうが悪い場合もありますから何ともいえないのですけれども、きょうは時間ですからこれ以上やりませんけれども、補導委託にいろいろな問題があるとぼくは思うのですよ。これは別のときに聞きますけれども、ですから補導委託先の一覧表、あれは一々認定しているわけですかちょっとわかりませんが、それからこれがきわめて宗教的な色彩を持つところがあるわけですね。お寺なんかで朝起きてお経なんかをやらせるところもあるでしょう。それから朝起きてはだしでかけ足をさせるところもあるし、そういうことが必要かもしれませんけれども、いろいろな内容があって千差万別で、補導委託先に対する家裁の監督という、ことばは悪いのですけれども、監理というか、そういうようなものが事実上野放しのような状態になっているのではないかということがちょっと考えられるものですから、だから補導委託先の状況をどういうふうに最高裁なりあるいは家裁として把握をしておるのか、この点について別の日にお聞きしたい、こう思うのですよ。みんなじゃないけれども、とても逃げ出すのだ。一回くらい逃げ出した場合には、家裁ではその人によるけれども、大体もう一ぺん入れてあれする。すぐ少年院に送らないのですけれども、いろいろありますから、そういうことに関連してお聞きしたい、こういうふうに思うのですが、これは別の機会にいたします。時間があれですからこれで。
  51. 中垣國男

    中垣委員長 次は正森成二君。
  52. 正森成二

    ○正森委員 公安調査庁にお伺いいたします。  私は三月二十八日の質問で、島根県公安調査局長の梶川正勝の道交法に違反するような事実についてお伺いいたしましたね。そこでこの梶川氏の関連する事件について二日ほど前からお調べ願いたいということを申しておりましたが、ここでお伺いしたいと思うのです。  昭和四十七年の九月十四日付の各紙にも報ぜられたことですが、梶川局長が共産党の島根県委員会准県委員である浦口彦七氏の夫人の光野さん、この人に昭和四十六年の終わりごろから何回かにわたって情報提供を強く求めたというような事実があります。  私、お願いしたいのですが、委員長、以後は浦口光野さんと言わずにAさんと言いたいと思います。というのは、この方は三人の子供のある女性ですし、いろいろ名前が出てくるのはよくないので。名前は、浦口光野さんです。そういう事実がありますか。あとで詳しく聞きますが……。
  53. 川井英良

    ○川井政府委員 ただいまのAさんを協力者に獲得しようとして調査官が接触した事実がございます。
  54. 正森成二

    ○正森委員 私ども調査によりますと、このAさんが日本生命の出雲支部に入社されるときに公安調査官が出かけていって、そこの支部長に会い、そしてその後昭和四十六年の十一月ごろAさんの実兄である養子に行かれた駒川健さんを通じてこの人を保険に契約させる。さらに四十七年の三月ごろには公安調査局の局員である永戸の弟である永戸洋二、これを保険契約させるということで保険に入らせ、そして保険料を支払う場合に永戸洋二自身が払わず、またある場合には兄さんである駒川健さん自身が払わずに、梶川局長みずから、あるいは永戸とともに保険料を支払い、そして出てきたAさんに対して情報提供を強く勧誘する、こういったことをやったということが私ども調査でわかっております。こういうように島根県の公安調査局長みずからが保険料の支払いをする、そのために出かけていくということはありましたか。
  55. 川井英良

    ○川井政府委員 私どもの調べでは、最初に永戸調査官がそのAさんの勤めておる保険の代理店のほうへ出向いたという事実はございません。このAさんの兄さんである駒川健さんという人と永戸調査官とがかねて懇意の間柄であったために、その妹であるAさんが党員であるということで協力者に獲得できないだろうかということで駒川さんにいろいろ相談したところ、妹は保険の勧誘をいま一生懸命やっているので、その妹の気持ちをこちらのほうへ動かすためには、その保険に入るというようなことが適当だ、こう思うけれども、そういう方法はどうかというふうなことが駒川さんから話があって、そして永戸調査官と駒川とが相談の結果、それは駒川さんの協力のあっせんにおまかせしましょうということで、駒川さんがその妹のAさんと昭和四十六年の十一月ごろ面接をいたしまして、駒川健が五十万円の保険を契約した、こういう事実になっております。
  56. 正森成二

    ○正森委員 いま駒川健が五十万円入ったということですが、実際には百万円の、災害補償つき二百万円の保険に入ったのではありませんか。  それからまた私の質問で、何も私は永戸自身が出雲の支社へ訪れたと言っているのじゃないので、公安調査局員が訪れたことがあるかということを聞いているのです。  それからもう一つ、永戸の弟である永戸洋二が保険契約者になり、その保険料を梶川公安調査局長が支払ったことがあるかどうかについてはお答えがありません。それについて答えてください。
  57. 川井英良

    ○川井政府委員 いまの駒川健君が、私のほうではいま、災害保険契約とかなんとかということではございません、五十万円ということで報告が来ておりますが、それだけでは足らないという駒川の話がありまして、もう一口くらい、はいれないかというふうな相談がありましたために、永戸調査官としましては、たまたま自分の弟が保険契約がなかったということで、弟を説得いたしまして、弟の分として百万円の契約を駒川を通じて結んだ、こういうことでございます。
  58. 正森成二

    ○正森委員 永戸洋二の分については実際は百万円ではなしに、二百万円の災害補償つき二千万円ということに私ども調査ではなっております。しかも掛け金が幾らであったということまでわかっております。したがって、そこから逆算すれば、保険金の額もわかってくるわけですが、永戸洋二の分が二百万の災害補償つき二千万円ではありませんか。  また、もう一度重ねて言いますが、調査局員が出雲の日本生命の会社に出かけたかどうかについては、依然としてお答えがない。それについてはどうですか。
  59. 川井英良

    ○川井政府委員 私がいままで報告を受けたところでは、公安調査局員が出雲の代理店のほうに行ったという事実はございません。  それから保険料の支払いはどうなっているかということでございますが、この点は、駒川の分については永戸調査官が駒川と四回ほど面接しておりますが、その際に駒川のほうへ実費という名目で保険料を含めた金額を手交いたしております。  それから弟の分については、永戸調査官がAさんとやはり四回ぐらい面接したということになっておりますが、その四回の間に一、二回くらいは調査官が直接Aさんのほうへ支払ったことがある、あとは集金に応じて支払った、こういう報告になっております。
  60. 正森成二

    ○正森委員 いまそういうことを言われておるけれども、Aさんのつとめておる日本生命の出雲支社に公安調査官が訪れて、公安調査官だという身分を言い、名刺を渡し、そしてAさんは共産党だという意味のことを言ったということは、調査でわかっておる。私自身が出雲のその会社まで出かけて、そして内勤の事務員である青木さんという人に面接してその事実を確かめておる。ここにそのやりとりの録音テープを持っておる。そこで、私はあくまであなた方が否認されるなら、その部分をここで委員長の許可を得て再演してもよろしい。そういううそをついたらいけません。公安調査局員が、永戸とは特定しないけれども、名刺を渡して日本生命の会社へのこのこ出かけて行っておる。そしてそのあとで保険の契約を世話するということをやっている。あなたは、私がこういうように出雲まで行って現実に調べてきた、録音テープもあるということについて、あくまで行ったことはない、こう言いますか。青木だけではない。ほかに証人がおる。国会でうそをつくということは絶対許されぬ。もしうそだということになったら、あはたは辞職するか。その点について腹をきめて答えなさい、これからも順次問うていくから。何なら録音テープをかけようか。
  61. 川井英良

    ○川井政府委員 そのような事実は、私報告を受けておりません。
  62. 正森成二

    ○正森委員 報告を受けていないということと事実があったかなかったかということは、明白に別だ。だから、部下が報告をしないことがあっても、事実の場合がある。だから、あなたがいま言えるのは、報告を受けていないということだけであって、事実があったかなかったかは言えないでしょう。だから、事実を調査する、そういうことは約束できますか。報告は受けていないというならしかたがない。
  63. 川井英良

    ○川井政府委員 このケースは、先ほど御指摘のように、前からも問題になっておりますので、私も部下を指揮して相当調べたのでありますけれども、いままで私の手元には、ただいま御指摘のような事実は報告がなかったわけでありますので、私はそういうことはないものだと信じておるのでございますが、ただいまそういうような御指摘がございましたので、また次の機会までにそういう事実の有無について調査をしてみたいと思います。
  64. 正森成二

    ○正森委員 それでは伺いますけれども、この実兄の駒川健という者に対しても、あなた方は情報提供費あるいは協力費というものを支払っておりますね。それは認めますか。現に駒川健というのが妹に対して、公安調査局から迫られているから情報を何とかくれてやれ、そうでなかったら、わしは金ももらっているので困るのだということを妹に繰り返し言っておる。したがって、にいさんの好意に甘えてというようなことじゃなしに、兄の駒川健をまず情報提供者にして、次いでAさんに接近するということをやったでしょう。駒川健さんに協力費を渡したことがあるかどうか、それについてはいかがです。
  65. 川井英良

    ○川井政府委員 およそ組織の中にある構成員をいわゆる協力者に獲得するという場合に、いきなりその協力者に接近するということは、調査の実態とか実情として、ほとんどないことでありまして、その前の前提として、その組織の中に属する協力者と懇意とか、何らかの関係のある人というふうな者を通じて、そのあっせんないしは周旋によって、その協力者に獲得したいと思う人に近づくというのが、公安調査庁のやってまいりました調査の実態でございます。  本件の場合におきましても、その常道どおりになっておりまして、先ほども説明しましたとおり、Aさんのにいさんの駒川さんという人とたまたま知り合いになったということでありますので、その駒川さんをあっせん仲介者として頼んで、そしてAさんに協力方を要請するために数回にわたって面接するようになったのだということでございまして、そのつど、そのにいさんの駒川さんには仲介者としてのいろいろな労をとっていただいておりますので、四回にわたって駒川さんに、実費並びに報酬として若干の金額を手交した、こういう事実がございます。
  66. 正森成二

    ○正森委員 いまのお答えの中で若干出てきたのですが、そうすると、駒川健氏が入った保険、額については争いがありますが、その保険料というのは、公安調査局から実費弁償名義で出しておる、こうお答えになりましたね。そうですか。——うなずく。  永戸洋二の分については、これは公安調査局から出ていますか、出ていませんか。
  67. 川井英良

    ○川井政府委員 駒川の分については、七千円ずつ四回にわたって手交しております。これは、その額に争いがあると申されましたけれども、私ども調査の結果では、五十万円の保険金で、月の掛け金が五千七百円、その五千七百円の分に若干の謝礼をつけて七千円ずつ四回手交した、こういうことに相なっております。これは調査活動費から支出いたしております。  それから永戸調査官の弟が契約しました百万円の分につきまして、いま正確なあれは忘れましたが、一万円ちょっとが月の掛け金になっておりますけれども、これは兄である永戸と弟とが協力いたしまして、自分のポケットマネーで支払っている。活動費からは出ておりません。
  68. 正森成二

    ○正森委員 永戸洋二の分についても、これは公安調査局から出ておるということを、駒川健及び本人のAさんが言っております。それは公安調査局に会うのがいやだ、こう言ったときに、にいさんが、それなら会うな、保険料は彼らが出しておるのだから、そうすると保険料が払えない、契約解除になるということを言って、どうしても会わざるを得ないように、にいさんが言っております。また梶川調査局長みずからがAさんに対して、これは公安調査局から出ておるのだという意味のことを言っております。それについてあなた方はどういうぐあいに考えていますか。依然として永戸洋二の分は兄と弟が折半したのだというように言うわけですが、その折半のうちの半分は少なくとも公安調査局が実費弁償として出しているのではありませんか。
  69. 川井英良

    ○川井政府委員 お調べになったAさん、あるいはその兄の駒川さんという人がそういうふうに述べているのかもしれませんけれども、私のほうの調査では、その弟の分については一銭たりとも調査活動費から払っていない。二人のポケットマネーで支払ったということであり、当時そういうふうな工作をしてそういうふうな金を支払う場合に、ポケットマネーでそれを支払うということがどういうものだろうかということが、この調査局で問題になったというような報告さえもきているわけでありまして、この弟の分についてはすべて活動費からではなくて、ポケットマネーで支払ったということは間違いございません。
  70. 正森成二

    ○正森委員 商法六百七十四条によれば、第三者のためにする保険というのはその第三者の同意が要ることになっております。われわれの調査では駒川健の分も永戸洋二の分も公安調査庁が払っておる、こういうことになっておりますが、かりに一歩譲って、あなたの御主張のように駒川健の分だけが公安調査庁から払われたとしても、これは名目上の契約者は兄だけれども、実際上は公安調査庁が契約をして、保険の利益を受ける者は駒川健だということになるのですね。そうすると、そういうことを隠して、駒川健自身が名義上の契約者でもあるということになれば、実質上商法六百七十四条の脱法行為をすることになる。なぜならば、保険契約というのは他人の生命について保険をかけるのだから、第三者がかけられたということになれば、これはぶっそうでしかたがないわけですね。だから、そういうことを防止するために商法の規定を設けている。しかも、それを証券上明らかにするために、第三者が実質上金を払う、ある目的で金を払うという場合には、その本人の同意を証券上記載しなければならぬということになっているのです。それに対してあなた方はやっておらないじゃないですか、そういうことを。駒川健が実際上も契約をし、自分が金を払いということに少なくともなっておる。これは非常に問題じゃないですか。そういう点について、あなた方は情報提供のための便宜だ、こういうだけで過ごしてきたのですか。また永戸洋二の分は本人たちが半々に払ったと、こう言いますけれども、これもきわめて不自然なことで、あなた方は非常にばく大な金を、昨年の場合は約十億円、本年の場合は十一億円ほど予算に計上されておる。それなのにわずか一万円そこそこの毎月の保険料について、情報提供を得るためだということになっておるのに、それをあなた方が出さない。われわれの調査では、日本生命の調査員が永戸洋二のところに調べに行ったときに、奥さんは契約に入ったかどうか知らない、そんな金一体どうして払うのだろう。こう言ったということが調査の結果残っておる。私が供述の調書を取ってきている。そういう点から見てあなた方は二人ともについて公安調査庁の金から出したのではないか。そして出したとすれば、少なくとも駒川健についてはそれを認めておるけれども、商法六百七十四条との関係でそれはどういうように考えてやったのか、それとも全然考えずにやったのか、その点はいかがです。
  71. 川井英良

    ○川井政府委員 駒川健の分は活動費から支出し、弟の分は活動費から出ていないということは間違いございません。  それから、その駒川健の分でございますが、これは従来の調査の結果を見ますと、借金の肩がわりをしてやったとかあるいは月賦の代金を支払ってやったとかというようなことが、過去において問題になったことがあります。そういうような際に、こういうような問題をすべて当庁といたしましては整理いたしまして、ただいま御指摘になったような商法の規定なんかも頭に置きまして、そういうふうな形の活動費の使用方法は適当でないということを固く戒めてきております。  本件の場合におきましても、たいへんくどいようでありますけれども、あくまで調査官が保険の契約をしてやって、その金を払ってやって入ったというような形になっておるのではございませんで、これは駒川からそういうふうな話があって、妹の気持ちをあれするためには保険契約に入るのが一番いいんだ、それについては私が入ったらどうだろうかというような話があって、そこで調査官といたしましては、調査官が保険の契約をし、みずから保険の掛け金を支払うという形ではございませんで、あくまで駒川の自主性のもとに駒川が保険の契約をして、みずからが調査官からもらった実費プラス謝礼何がしかのうちから保険の掛け金を支払う、こういう形に相なっておりますので、私はこの実態、事実関係というものは商法の規定に抵触することはないものと思っております。
  72. 正森成二

    ○正森委員 いまいろいろ言われましたが、私の質問に答えていない点がある。梶川公安調査局長がみずから保険料を支払いに行ったということについてお答えはないが、その点はいかがですか。私のほうの調査では、梶川は三月、四月あるいは五月というように何回も呼び出して保険料を支払っておる。その場所までわかっておる。私は写真を持ってきた。  「はくせん」という喫茶店で会って、そして、ここで払っておる。場所までわかっておる。私は見てきたんだから。だから、梶川という調査局長が保険料をみずから支払いに行った。そしてそのつど情報提供を頼んだということは動かせない事実。その点はどうなっていますか。
  73. 川井英良

    ○川井政府委員 私のほうの調査結果によりますと、四十六年の十一月の上旬にAさんがその兄さんの家へたまたま保険の勧誘で来たので、そこで、かねて考えておりました契約を締結する話ができた、そこで今度はその結果、その翌月の四十六年の十二月の上旬に駒川さんのほうから永戸調査官のほうに連絡があって、妹があなたに会う、こう言っておるので来てくれというので、米子市内の料理店で駒川の引き合わせで、永戸がAさんとそこで会って、そこで協力を要請した。そこで、必ずしもその際はっきりした返事は得られなかったんだけれども、心証としては多分に協力が得られるのではなかろうかというふうに考えられまして、その翌年の四十七年、すなわち去年の一月から四月ごろまでの間に四回、永戸調査官がそのAさんに米子市内で面接をして、そして口頭でもって軽いいろいろのお話を聞いたということであります。ところがそれ以上の協力関係というものは成立しなかったので、永戸調査官がその上司である梶川局長にこのケースのいきさつを話して、そして局長があるいは乗り出してくれれば何とか話がまとまるかもしれないということで、去年の五月の上旬に梶川局長が直接それではAさんに会って頼んでみようということで、ただいま写真をお示しになりました出雲市の「はくせん」という喫茶店でもって、その梶川局長がAさんと面接をして、そして永戸も一緒に同席して、二人でもってさらに一そうな緊密関係を得たいということで、協力方を懇請した。しかしその際かなり気持ちは動いたようであるけれども、まだ明確なとこへいっておりませんので、今度は秋になりましてから、九月の十二日に同じ喫茶店で梶川局長がお会いしたいというところで、会うということで、そこへ行ったところが、その表に待機しておった九名くらいの人に取り囲まれて、本件の協力関係の接触について抗議を受けて、この事実関係が明らかになってきた、こういうふうな状況であります。  そこで永戸調査官は、四十六年、おととしの十一月十日から四十七年、去年の三月十五日までの間、これはそれぞれ保険金の支払い期日でございますが、四回駒川に直接面接しで、そのつど、先ほどもちょっと触れましたが、一回七千円ずつ、五千七百円の保険料に相当する実費と千三百円のプラス仲介料、謝礼、協力の報酬ということを含めて七千円ずつ本人に提供をした、こういうことでございます。  そこであとは残るのは、先ほどもちょっと触れましたが、その調査官の弟の洋二という人を保険に加入させて——その保険の加入はたしか一月くらいずれていると思いますけれども、その費用については、一回か二回永戸が直接Aさんに渡したことがあるけれども、あとは保険料をAさんに渡したことはない、これが私ども報告を受けておるこの件についての事実関係の概要でございます。
  74. 正森成二

    ○正森委員 いま私が質問をした中で、少なくとも梶川が二回Aさんに会っておるということはお認めになりました。その九月十二日に「はくせん」の前で梶川が共産党民主団体から抗議を受けたというときの写真はこれです。梶川というのはこの男だ、われわれは写真をちゃんととって持っておる。  そこで、この男に二回しか会っていないというような上司に対する報告はまっかなうそです。私どもが調べたところでは、すでに梶川が三月末に「はくせん」に保険料を自分から持ってきております。それ以外に五月にも持ってきております。また四月にも持ってきております。というように、少なくとも三回くらいにわたって梶川が、自分が電話をかけ、保険料を渡すからといって持ってきておる。  いいですか、日本生命では、御承知だろうと思うけれども、保険の外務員というのは固定給は五千円しかないのです。そのときの保険の歩合によってその月の収入がきまるということになっております。したがって保険勧誘員にとっては、募集がどのくらいあるか、それが入ったのにすぐ解約されるかどうかというのは、自分の生活にかかる財産上の重要な問題です。そこで、保険外務員としては、契約していただいた人にどうしても保険料をもらわなければならないというのが職業上の義務になっておる。それをいいことに、自分が保険契約者でもないのに、公安調査局長ともあろう者が出かけていって、保険料を払うからといって電話をかけ、どうしても出てこざるを得ないようにして、その機会に情報提供を頼む、もしそれを断われば結局保険料がもらえないということになって解約になる、自分成績が下がる、財産上損失を受けるという弱みにつけ込んでいろいろ情報提供を迫る、もってのほかじゃないか。  梶川というのが、そういうぐあいに両三回にわたって、あるいはもっと多かったかもしれないけれども自分自身が保険料を持っていったということは、本人が明白に供述しておる。私が聞いてきた。しかも本人が人間違いをするはずがないということは、われわれはこの写真を入手しておる。公安調査庁長官に梶川という男が、自分を取りつくろうためにどのように報告しようとも、永戸のような若い者だけではうまくいかないからということで、自分自身が出かけていって保険料を支払ったということは明白だ。一体公安調査庁というのは、自分以外の保険料の受け取りまでするような保険代理店にいつからなったのか。  しかも、そういうことでどうしても保険料をもらわなければならないという弱みにつけ込んで、それを払うから出てこいと言って「はくせん」というようなところへ呼び出して、そこで情報提供を迫る、こういうきたならしいやり方はすべきでないではないですか。  しかも、われわれの調査によれば、日本生命の規定では、契約をして最初の二カ月間は外務員に集金の責任があります。しかし三カ月日からは、担当地区に依頼して集金をしてもらうことができる。そこでこのAさんは、こういうふうに情報提供を迫られるということがいやだから、会社に、担当地区で集金してほしいということを依頼しておる。ところがこの永戸洋二の分について、松江市だのにわざわざ出雲で払うということを本人が言い、担当地区に集金依頼を断わらせて、そして梶川がわざわざ出てきて保険料を払い、そのつど情報提供を依頼しておる。これこそまさに、人をして義務なきことを行なわしめる、破防法四十五条にいうところの明白な職権乱用ではないか。むしろ刑法の強要罪にも該当するものだ。そういうことを一県の局長がやってもいいのか。破防法の二条、三条をこの前の質問のときに私は読んでもらったけれども、二条、三条を読むまでもなく、四十五条に明白に違反するではありませんか。その点について、部下の局長自分の身をかばいたいと思って、なるべく永戸公安調査局員を前に出して、自分は払ったことがないようにしようと思っても、それはごまかすことはできない。だから、私の受けておる報告ではというようなことを言わずに、一体何が真実であったかということを確かめる立場から、私の問いに答えていただきたい。私は事実に基づかないで言うているのじゃない。人間違いをしているのではない。明白に写真があるんだから。この写真を見せて私が聞いたんだから。
  75. 川井英良

    ○川井政府委員 およそことがらの当否を論ずる上については事実の認定が最も大切であるということは、御指摘をまつまでもなく私もよく承知いたしております。ところがこの事実の確定とか認定とかということほどむずかしいことはないのでありまして、いろいろなことがらが錯綜して出てくると思いますが、ただいま御指摘になりましたようなその事実関係を前提といたしましていろいろな結論を出されるわけでありますが、私どものほうはまた私どものほうの組織あるいは機構の全力をあげて、また、この協力者も関係しておりますので、それらの人につきましてもいろいろ現地の局員を通じまして、そしてこれがこの事実の間違いない実態であるということを信じて、ここでお答えをしているわけでありまして、私が述べております事実と、それからいま御説明になります事実との間に、かなりニュアンスの差があるようでございますので、私は何回お尋ねになりましても、要するにこの保険は各四カ月入って五カ月目に切れておりますので、保険金を支払う機会というものは合計八回あったわけですね。その八回のそれぞれについて、いつごろだれがどういうふうにして支払ったかということを確認させたわけでありますが、この駒川の分については、いずれも永戸が駒川のところへそれを届けた、こういうことになっておりまして、金額は各七千円だということに相なって、これは活動費から支払ったということで、経理の手続上もそういうふうになっております。  それから弟の洋二のほうは四回でありますが、私のほうの調べでは、この局長の梶川が保険金を持っていったということは、私のほうの調査には全然出てまいりません。いずれもその永戸の弟の分も、永戸が直接Aさんに一回か二回お渡ししたことはあるが、あとは集金をしてもらった、こういう報告に相なっております。私もこの辺のところが実態としては自然なところではないかと思ってお答えをしているわけであります。
  76. 正森成二

    ○正森委員 いま局長がいろいろ言って、それが自然じゃないかというようなことを言われましたが、そういうことではない。本人のAさんから伺ったところでも、あなた方は大体情報提供を得るためにわざわざこういう保険にまで入ったんでしょう。それは認めているでしょう。兄貴の分はわざわざ調査活動費から出しているんだから。永戸の弟の分についても、何も入らなくてもいいものを、Aさんに接近するために入っているのだから、入ったということを最大限に活用するのが公安調査庁としての役目なんだ。不届きな役目だけれども、それがあなた方の悲しい職業だ。そうすれば、保険料を支払うときに接触するというのは、むしろそれはあなた方にとっては当然なんだ。その当然なことを繰り返しやったのです。いいですか。そうして、どこで会って、だれが渡したかということもわれわれは確かめておる。少なくとも、あなたも永戸調査官が渡したということは認めておる。しかも、地区の集金人ではなしに、本人が地区の集金の人に集金してほしいと言ったのに、それをわざわざ断わって本人に会わざるを得ないようにしむけているのです。そういうことまで私らは確かめてある。あなた方は一体、公安調査局員があるいは局長——局長については若干否定しておられますが、こういうように保険金の支払いに出かけていくということ、これはきわめて不自然だということは認めるでしょう、いまあなたは地区の集金人に支払うというようなことが自然だとおっしゃったところを見れば。局員が自分のものでもない保険料を払うというようなことは、これは不自然だということを、裏からいえば認めることになる。そういうことをやっているのです。あなたは一生懸命あごをなでて、そんなことがあったかなという顔をしているけれども、部下が、自分がおかしなことをやったということはなかなか認めるはずがないのです。それをうのみにして、そうして、事実は私どもの調べではこうです、こう言っても納得させることはできない。  もう一つ聞くけれども、永戸及び梶川公安調査局長が保険料を支払ったときに保険料の領収書は受け取っておりますか。月払いの保険料領収書があるということは知っていますか。
  77. 川井英良

    ○川井政府委員 最初の、保険の勧誘に応じて、保険に入るようにいろいろな手だてをしたということは、なるほど言われるとおり、調査に協力してほしいという目的であることは、これはもう当然のことでありまして、否定する理由は全然ございません。  しかしながら、ただいま悲しい職業というふうに言われましても、私決して悲しい職業とは断じて思っておりません。私ども国家公務員として破防法の規定に基づいて調査を行なっておるわけでありまして、ただ、民間の人が何らの制約なしに行なっている調査とはかなり調査の制約の状況といいますか、実態あるいは調査の心がまえというものが違っているわけでございます。活動費を使って、公務員という立場において調査活動を執行いたしておりますので、協力者の獲得工作にあたりましても、なるべく公務員の権威といいますか、公務員の資格あるいは国民の信頼というふうなものにそむかないような方法において、調査成績は必ずしもあがらなくとも、犠牲にしても、正しい調査をすることを指導してきておるわけでございます……。
  78. 正森成二

    ○正森委員 私の時間には制限があるけれども公安調査庁長官は私の聞いたことに答えないでいろいろ自分かってなことを言うておる。私が聞いたのは、保険料領収書を出して受け取っておるかどうかということを聞いておるのに、それについては何も答えないで、悲しい職業がどうだこうだとか、自分の役所の宣伝をやっておる。きょうの答弁に一貫して見られる傾向だ。そういう不届きなことをするな。質問にまず答えてから言いたいことがあれば言いなさい。
  79. 川井英良

    ○川井政府委員 質問は二つあるじゃないですか。二つあった質問について、まず第一の質問について答えたい。続いて第二の質問に答えようとしているところに中断が入った。だから続けます。  第一の質問に対して、私どもは、調査は、ある場合においては成果を犠牲にしても正しい、間違いのない調査をしろということを指導いたしておりますので、私の確信におきましては、末端においてはいろいろなできごとがあるかもしれませんけれども、大筋においては間違いないものと確信いたしております。  これが第一の問いに対するお答えであります。  第二の、毎月の領収書をとっているかどうかあるいはそういうことがあるかどうかということでありますが、この点については私どものほうは確かめておりません。いまお答えできません。
  80. 正森成二

    ○正森委員 結局のところ、前々からこの問題について質問すると言っても、肝心のことは調査しないで、自分の言いたいことだけを言うておる。われわれの調査によれば、ここにそれと同種の現物を持ってきておるけれども、日本生命では月払い保険料領収書、こういうものを発行することになっておる。そうしてAさんはもちろん領収するためにこれを発行しておる。それを相手に渡しておる。そうしなければ、これは保険会社として、そんなものどうなっておるかわからぬじゃないですか。しかもわれわれが日本生命の出雲支社へ行って調べてきたところでは、三日以内にこの領収書を出した以上は会社へ納めなければならないことになっている。これは会社の公金として当然のことだ。その経緯もここに録音におさめてある。ところが梶川という男は、この保険料領収書を受け取り、永戸の分については毎月一万一千九百二十円、これを領収しながら、それを渡したときに、この金はあなたが便ってもいいんですよ。使ってください、こう言うておる。そうなれば、刑法上の業務上横領をけしかけておることになるではないか。これは実際上の問題として、この保険料というのは本人を買収するためにやっておるという意識があるから、こういう領収書を受け取りながらあえてそういうことを言うようになるんです。これ以外に、本人に対しては、報酬だと言うて、本人がいやがっておるものを五千円、一万円とポケットにねじ込んだりということをやっております。これはあなた方の言う報酬でしょう。それはそれでよろしい、あなた方はそれが役目なんだから。しかし、一たび、近づく手段であろうと何であろうと、会社の月払い保険料領収書というものを自分が判を押して出した以上は、これは会社のものだ。それを、この金はあなたが使ってもいいんですよ、使ってください。Aさんはりっぱな人だから、そういうことをせずにすぐ会社に納めた。しかし、納めなければ、三日たてば、少なくも月に一回は検査があるのだから、そうすれば、業務上横領をしておったということになる。会社から告発されてもしかたがない。そうして警察に万が一調べられるということになれば、この間の名古屋の公安スパイ事件のように、そのことを種に、今度はあなた方もしくは警察が情報提供者に仕上げる。それが公安調査庁の手口なんです。私はここに保険料の領収書も実物と同じものをもらってきた。そうして三日以内に納めなければ違法になるということも聞いてきた。それに対してこういうことを言う。まさに情報提供をいいことにして犯罪をけしかける犯罪者集団じゃないか。いいですか。そういうことを公安調査庁はやっておる。もちろん破防法四十五条の職権乱用だ。しかも、この点は私は調書にはあえてとらなかった。ほかの点は調書にとったけれども、「はくせん」で梶川という男はAさんに会うたときに、実際の目的はあなたではなしに、島根県准県委員をやっているあなたの御主人に接近するのが目的だ。寝物語にでも協力者になるように言ってくれぬか。御主人が肝臓が悪くて何回も入院されていることを知って、夫婦仲はいいですかとかいろいろ立ち入ったことまで聞く。そうしてあまつさえその婦人のスカートをめくって、見える見えるというようなことまで言うておる。公然わいせつじゃないですか。少なくとも軽犯罪法違反だ。そういうことを公安調査官がやる。私がそれを聞いたときに、その女性は顔を赤らめて、そうして言った。私はよほど調書にとろうと思ったけれども、党の幹部の夫人だし、それはとらなかった。しかしとれと言うなら、とってくる。不届き千万。業務上横領はけしかけるわ、公然わいせつはするわ、趣味と実益を兼ねて一体やっているのか。この事実についてあなたはまた報告を受けていないとかいろいろ言うかもしれないけれども、真実をごまかすことはできないのです。いいですか。この点について、時間がないので簡潔に、報告を受けているかいないか、もし受けていないとすれば再度調査するかどうか、その点についてお聞きしたい。
  81. 川井英良

    ○川井政府委員 ただいま仰せになりましたことは、すべて私否認いたします。そういう事実はございません。
  82. 正森成二

    ○正森委員 否認するとは何ごとです。梶川という者がすべて真実についてあなた方に報告しているということはわからないじゃないですか。上司に対して常に真実を報告するとは限らない。いやしくも国民から信託を受けた公安調査庁として、破防法二条、三条に違反し、四十五条に違反するというような事実を指摘されれば、たとえその事実の報告がなくても再度調べて、あったかなかったか調べるというのは当然ではないか。それを私が報告があったかなかったか、なかったとすれば調べるかどうかということを聞いているにもかかわらず、報告があったともなかったとも言わず、頭から否認するとは何ごとです。あなたがやったとかやらないとか、あなたがスカートをめくったとかめくらないとか言っているなら否認してもよろしい。そうじゃないでしょう。何です、その態度は。破防法の問題についていろいろ聞かれることに対していろいろ闘志を燃やしておられるのはけっこうだけれども、公安調査庁たるものは謙虚でなければならぬ。二条、三条を置いたのはその趣旨です。否認しますとは何ごとだ。われわれがこの事実に基づいて、こういう人物が局長をやっておったんでは——公安調査局というのはそんな役所じゃない。処分をし罷免することまでするのが公安調査庁長官の任務だと思っておる。しかし、その前段として確かめろと言っているのに、否認するとは何ごとだ。もう一ぺん答弁しなさい。
  83. 川井英良

    ○川井政府委員 あなたのほうでお調べになったのはもっぱらそのAさん、あるいは駒川さんという人を中心にしてお調べになったんだろうと思います。私のほうの調査はもっぱらその梶川局長ないしは永戸調査官という私どもの組織の中におる係官を中心にして実態の調査を進めているわけであります。そちらのほうで一方的と言っては言い過ぎかもしれませんが、協力したんじゃなかろうかという疑いを持って調査をされたんだと思いますが、そういう立場でAさんのお話を全面的に御信用になるか、また私のほうといたしましては公務員として活躍しておる梶川なり永戸なりというふうな調査官についてこまかくいろいろの角度から質問を発して調査をしたその結果の報告を私が信用するか、これはどちらを信用するかという問題で、断定的にこういう事実があった、こういう事実はない、こういうふうな言い方は非常に私はむずかしいと思います。  また長くなるというおしかりを受けるかもしれませんが、私のほうといたしましてはいろいろな点について調査をした結果、そういう事実はない、こういう確信を持っておりますので、そういうふうな確信を申し上げたわけであります。
  84. 正森成二

    ○正森委員 それでは私は伺いますけれども、あなたの答えを聞いておると、公務員である公安調査官は信用するけれども、それが働きかけた人間あるいはそれから聞いた人間は信用しないと一律に言っておるように聞こえる。もしそういうことが許されるとするなら、公安調査庁の問題についてこの国会でいろいろ国政調査で聞くこと自体が無意味になってくる。そういう断定的な答えをあなたはなさっていることになる。  だが、それなら聞くが、この梶川という男は自分が仮免許中であるにもかかわらず仮免許の表示をしないで運転をしておったということについてあなたに報告しましたか。しないでしょう。現実に現地の朝日新聞の記者が張り込んでおってその現場をつかまえて、新聞に載って、国会で問題になって初めてあなた方もそういう事実があったということがわかったではありませんか。すなわち、公務員というものは国民の監視の中でこそほんとうに正しい行為をやっているかどうかがわかるんです。あれだって本人報告しなかったら、そういう事実がないということになればなかったことになってしまう。しかし、あれはたまたま新聞記者も現場におり新聞にも載ったから否定することができなかった。その事実一つを見ても、本人の言うことだから、あるいは言っていないからそういう事実はないというようには言えないでしょう。  しかもあなた方は、いろいろ各方面から聞いたというけれども、情報提供者の女性に対して、スカートをめくって見える見えるというようなことを言ったり、私はまた他の女性からも確かめておる。松江市内を乗り回して楽しい楽しいというようなことを言うてけしからぬことを他の女性にもしておる。そんなことをあなた方はけしからぬことをしたかなんて聞きますか。聞かないでしょう。本人から言わなければわからないでしょう。本人はそんなことを言うはずがないでしょう。国会でそういうぐあいに問題になって聞いて初めて、良心のある人間なら言う。しかし良心のない人間ならあくまで否認する、言えば処分を受けるから。そういう性質のものです。だから、いまあなたの否認しますというような答弁はきわめて軽率な答弁だ、そう私は思う。あなたはそう思いませんか。少なくともあなたはこういうわいせつ的なことをやったかどうかという質問を発して調べましたか。そんなことはしてないでしょう。想像もしないことだから。それだったら否認しますというようなことは言えないじゃないですか。だから私はこれ以上言わないけれども、ここで否認しますというようなのは軽率だ。少なくとも報告があるかないかを確かめなかったとすれば、もう一度聞いてみるということが破防法二条、三条で厳粛に制約されている公安調査庁の態度だと思う。それについてもう一度答弁を求めます。
  85. 川井英良

    ○川井政府委員 二つ問題があって、一つは永戸の弟の関係の掛け金をそのまま使ってよろしいと言ったというようなこと、これはもうそういうことは調べまして、ありません。  それからいまのスカート云々の件でありますが、これはその場所についてもいろいろ当庁で調べておりまして、その場所はそんなことができるような場所でないということも、いま係官に聞きますと調べておるということでございまして、私どもこれ以上さらにその点について調べをするという方法もないように思います。
  86. 正森成二

    ○正森委員 三十八歳の女性が、私が現実に行ったら顔を赤らめてそういうことを言うておる。それについてあなた方はそういうことはなかったというけれども、言うてみれば梶川局長は加害者だ。一方のほうは被害者だ。あなたは長い間検察官をしておられたけれども、加害者が事実を否認し、被害者がいろいろ申し立てるというのが通常の方法です。あなた方だって被告人否認のまま起訴される場合は幾らだってあるでしょう。無実の人間を死刑にしそこねたことだってある、松川事件をはじめ。そういう点から考えれば、被害者がどういうぐあいに言ったかということはまさに重大なことです。それを情報提供者だったからとかそういうようなことをいって信用しないということになれば、あなた方は信用しない情報提供者から得た情報によって、いろいろの団体について重大な決定を下そうとしておることになる。そういうことは許されません。また私は査問に行ったのではありません。この女性に会って人間として真心を込めて聞いて、そして心がほぐれて最後に、こういうこともありましたとくやし涙を流しながら言っているのだ、そういうことを申し上げておきたい。  さらにあなた方は八月十四日、五千円の報酬を渡そうとして突っ返されてそれを日本生命の会社にまで届けに言っておる、こういう事実がありますね。それは認めますか。
  87. 川井英良

    ○川井政府委員 突っ返されたという点は私のほうに来ておりませんけれども、五千円ずつ四回渡したことがあって、そのうち一回は勤務先のところの人に、おらなかったので渡してもらうように届けてきた、そういう事実はあります。
  88. 正森成二

    ○正森委員 梶川調査局長が、池田というペンネームを使っておったことは知っていますか。
  89. 川井英良

    ○川井政府委員 使っておったそうでございます。
  90. 正森成二

    ○正森委員 ここに、「松江市池田生」という、本人が書いた実物の封筒がある。「日本生命保険出雲支部浦口光野様親展」と書いてある。「松江市池田生」、これが八月十四日に届けられた封筒です。  こういうように、本人がもらうのを、それを断わり、さらに追いかけても断わられ、今度は会社へ、掃除人にこういうのを渡しておる。そして池田というペンネームで渡しておる。一方では、一万一千九百二十円の保険料をあなたが使ってもいいのですよ、こういうようなことを言う。あなた方はそれを否認されたけれども、われわれが得ている心証では、あなた方がそういうことをなさっておる。そうだとすると、この梶川という調査局長は、これは局員なら、まだ何とも言わない。言わないこともない、大いに言うけれども。自動車で道交法違反のことはやるわ、業務上横領はけしかけるわ、公然わいせつに近い行為はやるわ、もちろん破防法四十五条の職権乱用はやるわ、こういう人間を置いておいたんでは——いいですか、女性が、国会でこういうことを言われることを承知で供述調書までつくるといったら、よくよくのことなんです。そういうことについては厳にえりを正すべきではないか。孔子さまも、「あやまちて改めざるこれをあやまちという」、こういうのです。人間だれしも、誤ることはある。しかし、それを、あやまちを認めず改めないというのがほんとうのあやまちなんです。いたずらに対抗の意識を持つのではなく、こういう点については、いやしくもそういうことを国会で問題にされることのないように、しかも局長はそういうことのないように自戒すべきだというように思うし、調査が不十分ではないかということで再度調べてみる、もしそれが事実なら処分するということが、長官として課せられた責務だというように思うが、いかがですか。
  91. 川井英良

    ○川井政府委員 具体的なケースの見方については相違はございますけれども、最後に言われました、公安調査庁長官としての心がまえ、態度という点については、私もそのとおりだと思います。
  92. 正森成二

    ○正森委員 この梶川という人物及び永戸という人物は、御主人を情報提供者にしてくれるならば二、三百万円の金を出して店を出させてもいいというようなことを、一度ならず、二度も言っている。かりにそういうことを言ったとすれば、それは、あなた方は認める行為なのか。店を出させるために二、三百万円も出すということ、そういうことも肯定できるのか、それをひとつ聞きたい。それから、そういう事実があったかなかったかということと、二つ聞きたい。簡潔に……。
  93. 川井英良

    ○川井政府委員 そういうことはとうてい認められないと思いますし、それからその事実については、当時新聞に出ておりまして、しつこく調べましたが、そういうことはない、こういうことでございます。
  94. 正森成二

    ○正森委員 そういう事実がないとすればますますけしからぬ。われわれは、そういうことを繰り返し言われたということを確かめておる。そうだとすれば、そういう意思がないのに二、三百万円やるということで、詐欺に基づいて情報を獲得しようとしたことになる。それが事実で、ほんまに、情報提供してやれば二、三百万円出すというなら、そのことの当否は別として、人間としてはほんとうのことを言うたことになる。しかし、そういうことは認められるはずもないということになれば、認められるはずもないことを言って、婦人を情報提供者にし、御主人に一つ政党を裏切らせようとする、詐欺じゃないか。それは永戸も言うておる、梶川も言うておる。そんな破廉恥なことをしていいのですか。私も、何ぼ何でも二、三百万円の金を出すというようなことはおかしいと思って、何べんも確かめたけれども、そう言った。永戸も言った。梶川も言った。こう言うておる。  もし、そういうことはあるはずがないというなら、その点をもう一度調べなさい。それは本人は否認するかもしれないけれども、そういうことをことばのあやとして、金のない共産党におるよりは店の一つでも出したらいいというようなことで堕落さしていくということになれば、もってのほか。それについても調査することを再度要求します。  時間の関係で、今度は別の件について聞きますけれども昭和四十五年の四月に、愛媛県の新居浜で、川村毅、この人間が、ある青年に、スパイを強要するというか、情報提供を迫ったという事件が報道せられました。それはあなたの在任前ですけれども、その事実については知っておりますか。
  95. 川井英良

    ○川井政府委員 突然のことでありまして、私いまその事実を承知しておりません。
  96. 正森成二

    ○正森委員 横におる部下に聞いてごらんなさい。
  97. 川井英良

    ○川井政府委員 それに関連したことは記憶があるそうでありますけれども、いま資料を持ってきておりませんので、詳しくは説明はできないということであります。
  98. 正森成二

    ○正森委員 それでは、私が事実に基づいて言いますけれども、川村ツヨシと読むのだと思いますが、愛媛の公安調査官が、新居浜市の住友化学工業菊本製造所に勤務している西村史郎という二十四歳の青年に対して近づき、情報提供を求めた、こういう事実があります。  まず第一に、四月十二日に同市の銀泉街にある泉竜角というところの二階の個室に連れ込んで、ビールと料理でもてなした上で、情報提供の報酬として、毎月幾らかの金と、場合によっては女を世話しよう、こう言っておる。  さらに四月二十四日にも、西条市の湯の川温泉のホテルに連れ込んでここで同じことを確認しておる。このときには本人だけでなしに党の他の人も行って録音テープをとってきておる。その録音テープの反訳によれば、こう言っておる。「せびろの月賦のかわりスパイになってくれと言いましたね。女の人も世話すると言いましたね。」「川村松山だったらできる。松ガ枝町へ行けば女が一ぱいいる。」松ガ枝町というのは、松山市道後にある、旧遊郭のある町です。これが録音テープに入っておる。  こういうようなことまであなた方はやるのか。これは明白に、売春防止法第六条第二項第一号に違反する、勧誘周旋行為ではないか。公安調査庁はいつからポン引き屋になったのだ。こういう二十四歳の青年を堕落させるようなポン引きまでやって情報提供を迫る。もってのほかだ。それを公費で月給を払い、その女の費用まで、情報提供費ということで公費から出す。そういうことまでしていいんですか、あなた方。また、こう言えば、私ども調査ではそういうことをしておりませんと言うかもしれぬけれども、録音テープの反訳がある。動かすことはできない。上司が、スカートをまくって、見える見えるというようなことを言うから、何をやってもいいと思ってこういうことまでやるのです。ここに行って写真を写してきた。さかさクラゲのついておるニューホテル湯の川という、ここだ。事実に基づいて言うておる。もってのほかじゃないか。長官、あなたの奥さんがかりに共産党に公安調査庁の情報提供をせいと言われ、私があなたの奥さんのスカートをめくって見える見えると言い、あなたの子供さんを共産党員がこういうところへ呼んで女を世話するから情報を言え、こう言ったらどう思いますか。しかもそれが国家の金から出ておるとなったらどうなりますか。公安調査庁というのはこういう役所だ。事実に基づいて言うておる。これについてどう思いますか。事実を調べて適当な処置をとりますか。
  99. 川井英良

    ○川井政府委員 私自身そのケースの事実関係をよくいま承知しておりませんので、十分にその事実関係をのみ込んだ上で、その御質問にお答えをしたいと思います。
  100. 正森成二

    ○正森委員 間違ってはいかぬからここに川村という男がその湯の川というホテルでビールを飲んでおるところの現物を写真を写しておる。何ならこれをあなた方に面割りのためにあげてもよろしい。いかにもポン引き屋みたいな顔しているじゃないか。ほんとですよ。初めポン引き屋かと思った。いやしくも長官はポン引き屋の親分になるのですよ。そういうことを許しておいて一体どうなりますか。事実を調べるとおっしゃるから、事実をよく調べなさい。  そこで会計検査院に伺いたい。こういうように情報提供費というようなものが乱脈に使われておる、こう私どもは思いますけれども、公安調査庁についてあなた方は簡易証明というものを認めておられるようです。そこで、時間がありませんから私からもごく簡単に伺いますが、一般的には書面検査と実地検査という二つがある。そして書面検査の中に会計検査院法に基づく規則があって、計算証明規則というのがあるようです。その十一条で、特別の事情があるときには別の定めをすることができるようになっていると聞いております。そこで、公安調査庁のこのような調査活動費について通常の検査でなしに、つまり領収書とかそういうものがなしに簡易に証明できるようになった事情、それはあなた方が指定してそういうことにしたのか、それとも申し出に基づいて承認したものか。その経緯、及び申し出があったとすればその事由についてお答え願いたい。
  101. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 ただいまお話しの簡易証明につきましては、計算証明規則十一条の特例ということで原則的な計算証明の扱いでない形にいたしておるわけでございますが、これにつきましては、規則に会計検査院のほうからの指定によってそのような特例を認めてつくる場合と、事件官庁側からの申し出を私どものほうで承認いたしまして特例の扱いを設ける場合と二通りございます。公安調査庁の調査活動費関係につきましては、昭和三十五年の三月十九日付の法務大臣から私どもの院長あての協議書がございまして、その申し出によりまして私どものほうでその特例の扱いを認めたものでございます。その申し出の内容として特例を認めてほしいという事由が述べられておりますが、要約いたしますと、この種の経費の支出というものが一般の経費の支出と違いましてきわめて機動的にあるいは迅速に支払いを行なわなければならないケースが非常に多いという経費自体の性質と、もう一つといたしましては、さいぜんから話に出ております協力者側の立場、要するに情報提供者等の協力者の氏名などが漏れますと、協力者自体の人権保持上困る場合が大いに予想されるというようなことが述べられております。これに基づきまして、私どものほうではこの特別措置を承認いたしたわけでございます。
  102. 正森成二

    ○正森委員 その法務省からの申し出の件名、何という件名ですか。
  103. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 件名は「報償費、調査活動費等の支出の簡易証明方法について」という件名でございます。
  104. 正森成二

    ○正森委員 その事由の中に、協力者の氏名が漏れたりするとか、危害を受けるおそれがあるとか、身体生命の危険にさらされることも予想されるとか、人権保持上特段の考慮が要請されるというようなことも事由の中に入っておりましたか。
  105. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 そのように述べられております。
  106. 正森成二

    ○正森委員 もってのほかだ。いま私が明らかにしたように、この調査費を使って人権を侵害しておる。それを逆に人権保持上特段の考慮が要請されるから秘密だ。秘密にしておるから逆に人権が侵害される。  会計検査院にもう一つ聞きますけれども、簡易証明の方法ですけれども、支出官がありあるいはそれの取り扱い者があると思いますけれども、それについての簡単な仕組み、公安調査庁では本庁において、地方公安調査局において、県の公安調査局において、どういう仕組みになっておるか、簡単に答えていただきたい。それは同時にいまの承認を求めている申し出の内容にもなっているのですから。お答え願います。
  107. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 簡単に御説明申し上げますと、支出の計算証明の関係は、原則的に毎月計算書に証拠書類等を添付いたしまして私どものほうに提出をしてくるというのが原則でございますが、この簡易証明の方法によりますと、計算書のほかに証拠書類といたしましては、この支出官から調査活動費を受領いたしました部内の取り扱い責任者の領収証書、これをまず第一に提出をする。この領収証書には、添付書類といたしまして、その月ごとに、その取り扱い責任者が何月何日幾ら幾らと、さらに部内の取り扱い者ごとにどういう目的で金を渡したかということを明らかにした一覧表のような明細を添付することになっております。この領収証書、取り扱い責任者の領収証書と、取り扱い責任者からさらに取り扱い者に交付した金高の支払い明細書、この二つが本院に提出される書類ということになっているわけでございます。この取り扱い責任者は、公安調査庁の本庁の場合で申し上げますと、支出官の総務部長に対しまして、取り扱い責任者といたしましては、公安調査庁の次長がなっており、さらに取り扱い者といたしましては、次長、総務部長、第一部長、第二部長という方々が取り扱い者になっているわけでございます。  以上でございます。
  108. 正森成二

    ○正森委員 地方公安調査局及び各県の公安調査局について、支出官、取り扱い責任者、取り扱い者について御答弁願いたい。
  109. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 まず公安調査局の場合は、支出官が調査局長でございまして、取り扱い責任者は同じく調査局長になっております。それから取り扱い者も同様に調査局長になっております。それから地方調査局の場合には、支出官は調査局長であり、取り扱い責任者も調査局長でございますが、取り扱い者といたしましては地方調査局長がこれに当たる、こうなっております。
  110. 正森成二

    ○正森委員 地方調査局というのは、大阪とか東京とか、八つほど置かれているものですか。
  111. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 はい。
  112. 正森成二

    ○正森委員 そうすると——逆ですか。調査局というのは上ですか。
  113. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 公安調査局が八つで、地方調査局が県にあります。
  114. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、いまの説明を聞きますと、公安調査局においては、支出官も局長なら取り扱い責任者も局長なら取り扱い者も局長だ。自分が金を出して自分がもらえる。自分がまた金を出して自分がもらう。それが会計検査院にあがってくるだけだということになれば、何人もチェックする人間はいないじゃないですか。やりたいほうだいだ。そんもなのを法務省から言うてきておる。そしてあなた方はそれに従ってやらざるを得ない。こういうことになるわけでしょう。あなた方会計検査院の専門家として、簡易証明、領収書が要らない、それについて、支出官も取り扱い責任者も取り扱い者も全部同一人物だ。しかも事柄が、橋をかけたとかなんやらというなら、かけたかどうか、橋に手抜きがあって事故が起こったかどうかということはわかるけれども、情報提供費だ、やれその場合の宿屋代だということになれば、一体何に使ったのやらわからない。それが同一人物によって報告されておるというような不合理なことが行なわれている。  そこで、それを規制するものとしては実地検査以外にないと思いますけれども、実地検査というのは、一体一年間に何カ所行なわれるのか、それについてお答え願いたい。
  115. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 昨年の例で申しますと、公安調査庁の本庁に一回、それから中国の公安調査局に一回、それから中国公安調査局の管下の島根の地方調査局に一回、計三回伺っております。
  116. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、現在一都三府四十二県ある。四十六のうち末端までおりていったのは一カ所だけだ。そうなれば、全部についてどう使われているかということをつかむのは、算術計算でいえば四十六年に一回、二つの県を調べたとして二十三年に一回、こういうことになる。それじゃ、もうやりたいほうだいじゃないですか。しかも、念のために聞くけれども、そういうぐあいに行って、一体局で何日ぐらい実際に調べますか。そしてその場合に、年度すべてを調べますか、それとも一つの月なり二月を抽出して調べますか。
  117. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 地方に参りました場合には、大体三人編成で一日の検査日というのが通常になっております。それで調査活動費の関係について申しますと、そのうち一人の調査官が約半日程度を、一年間全部という悉皆的な検査はとてもできませんので、そのうちの二月なり三月なりを抽出して内容を当たる、こういうような検査にとどまっております。
  118. 正森成二

    ○正森委員 いまの会計検査院の答弁でも明らかなように、本来の証明じゃなしに簡易証明で、しかもそれは支出官も取り扱い責任者も取り扱い者も一緒で、おのれがおのれに出してかってほうだいに使う。それをチェックする実地検査というのは、各都道府県に一年に一カ所しか行かない。しかもそれも実際の調べはたった半日で、一年全部を調べるんじゃない。これで悪いことをしなければ、これはよっぽど聖人君子が集まっているということになる。しかもその使い方がいま言ったようなことだ。こういうことは、私は国家の財政の上から言うても、決して放置することができない問題だと思います。  そこで最後に法務大臣が来られたからお願いしたい。昭和三十五年三月十九日付で「報償費、調査活動費等の支出の簡易証明方法について」という申し入れが出ており、それが承認されております。したがって、その文書を国会に提出されるように、私は求めます。それについてお答えを願って、私の質問を本日はこの部分について終わって、大臣の出席の時間が短いので稲葉さんに聞いていただき、最高裁には申しわけありませんがそのあとでまた簡単に伺います。
  119. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 提出をいたします。
  120. 正森成二

    ○正森委員 それじゃ……。
  121. 中垣國男

    中垣委員長 引き続き、稲葉委員
  122. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 時間の関係で要点だけお聞きしたいのですが、例の尊属殺の判決が出て、それに伴って刑法二百条、それとあと三つの条文がありますね。この改正についていまどういうふうに進んでおるのですか、その点について端的にお伺いしたいと思います。
  123. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 二百条に関する判決が出ました結果でございますが、これを無効とするということに結論が出ましたので、いま先生お話しのように、これを改正するという方向に向かっていくべきものであろうか、それとも二百条は改正でなくて削除すべきものではなかろうか、この二つの方法のどちらをとることが現状にかんがみて一番妥当であろうか。刑法の一般改正というものに関しまして、全面的改正を目下法制審議会で審議中でもあって、この審議会もこの問題に触れており、それからまた、政府の与党という立場から自由民主党に関する所見もございまして、これも手続的には踏んでいかなくちゃならぬ。どちらの方法をとるべきかということについて目下慎重に検討中でございます。
  124. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 改正と言ったら、刑法一部改正という意味で、私の言っているのは、二百条の削除だ。それから、尊属傷害致死、それから尊属の遺棄と逮捕ですか、三つありますね、全部で四つ、これについて、この前の委員会では、私ちょっといなかったのですが、四条文について削除をする、それがあなたの考えだということをはっきり言われたように聞いているのですが、その点どうでしょうか。
  125. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 速記録をお読みいただきますと、私は意識して言うておりますからよくおわかりいただくことと思いますが、そういう考えも一つの考えである。それから改正という考えも一つの考えである、これは省内においてまだ未確定で、決定的な要素にはなっていないんだ、こういう意味で検討していく。おまえの考えはどうであろうかということを聞かれましたので、私個人の考えをここで言うのはおかしいがというふうに言ってありますが、おかしいが、私は削除をしていく行き方のほうがよくはなかろうかと考えておる、目下検討中である、こういうふうに申し上げております。
  126. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 四条文。
  127. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 削除いたします場合は、あとは先生御承知のように、未遂に関するものがございます。それから予備がございます。それから尊属親の傷害致死がございます。それから先ほど仰せになりました遺棄がございます。もう一つは、遺棄の結果、遺棄致死傷罪がございます。それから尊属親を逮捕、監禁したという罪がございます。逮捕、監禁の結果、傷つけた、死んだ、致死傷という結果がございます。この七つの条文が関係条文か、まだほかにあるかもしれませんが、私はそう思っている。それを改正をいたします場合においては、その改正の線に従って直さなければならない、こういうふうなことを申し上げておるわけであります。前回申し上げたとおりのことはあくまでもこれは検討中というワク内のお話を申し上げたと認識をしております。
  128. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 何か後退をしたような印象を受けるのですが、それはそれで別として、そうするといつごろまでに——今度は国会は五月二十日まででしょう。これは私は早急にやらなければならないことだと思うのですが、いつごろまでにその目安がつくと承ってよろしいのでしょうか。
  129. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 急ぐほどよいと思いますが、何と申しましても、刑罰基本法である刑法の改正、一部にいたしましても、一部改正ということになりますので、これはやはり踏むべき手続を踏んで慎重でなければなりませんので、急ぐほどよい、早いほど理想であるが、なかなかそう手っとり早くは行くまい、こういうふうに、時期に関しましては——一向そんなことをやらないで、刑法の全面改正というものが目の前に来ておるのだから、刑法全面改正の時期まで待つことにしてはどうかという有力な意見が私の身辺にございます。しかし、私は早いほうがよい、最高裁の判決が出て、この重要な法律の内容を不安定なままに放任しておくというのはよくない、早いほうがいい、こういう考えは持っております。なかなか時間がかかりまして、いままだ、いつごろになればということが——この会期が延長になるかどうか、延長になるといたしましても、どれくらい準備期間がかかれば結論が出るであろうということがちょっと申し上げにくい状況でございます。
  130. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは刑法改正の法制審議会でももう結論が出ていることですし、だから、いまの段階でいつごろになるかということが言えないという理由が、いまの政府のきわめて政策的な配慮、もっとざっくばらんに言いますと、いま国会でいろいろな法案が提出されている、その法案との兼ね合いで刑法の一部改正を政府提案として出すというとほかの法案の審議に影響をする、そういうことがあるので、出しては損だということの配慮が非常に大きいのではないでしょうか。
  131. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 そこまでは考えておりません。
  132. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 どうもそうらしいですね。
  133. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 いいえ、議員各位皆さんお考えになって、この重大判決が出て、それをいつまでもほっといていいと思っている人は一人もありません。それから、審議といいましてもそう時間のかかるものでもない、立案ができて提出の運びとなるならば、私は御協力いただけるものと思っておりますから、ほかの法案に大影響があるなどということはいまのところ思っておりません。  それから、先生、申しわけないのですが、行かぬと向こうが始めないのです。何をしておるか、こういうことで。もう釈放していただけますか。
  134. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ちょっともう一点だけ。釈放というか保釈ですね。  そこで問題となっていますのは、この判決の効力、一般的効力説とか個別的効力説とかいろいろあるでしょう。それは別として、現実の問題として、昭和二十五年の合憲判決以来、いろいろこの事件でやられていますね。判決があるでしょう。それに対する救済をどうするかということですね。特にその中で一番問題なのは、法律上及び酌量減刑をやって三年半の判決というものがあるでしょう。これは普通殺人罪でいけばおそらく執行猶予になったような事件ですね。こういうふうなものをどうするかということの問題。これは政府の問題よりもむしろ立法府の問題だと思いますが、その点について、たとえば早急に全部のものを調べるとかあるいは事案によっては執行停止ということも考えなければならぬこともあるでしょう、こういう点についてはどうでしょう。きょうは時間がなくなったもので終わりますが……。
  135. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 これはものによる、つまり事案による。事案によりましてこれを救済する必要が生ずるものと生じないものと、並びに一般人を殺しておっても、このむごたらしい殺し方では死刑ということもありましょう。かりに死刑の場合をとってみましても、また有期懲役の場合でも、一般人を殺した場合と同じように量刑されているものがございましょう、それは多々あろうと思いますが、そういうものについては救済の必要はございません。いま先生仰せのように、これは救済しなければならぬものではなかろうかと言わざるを得ないものが中にございましょう。そういうものは個別的恩赦という手続で見ていく以外になかろう、ほかに名案がない、非常上告というわけにまいらない、こういうことがございます。非常上告でないと個別的恩赦に基づく以外になかろう、これならやれないことはございません。これも決定的ではございません。またおまえは後退か、こうおしかりになるが、そうではない、後退ではない、そういう案もあるということを、私の思いを申し上げておる、これも検討中でございます。どっちかということがきまったわけではございません。
  136. 中垣國男

    中垣委員長 正森君。
  137. 正森成二

    ○正森委員 矢口長官代理者、何か午後から御用事がおありだそうで、長らくお待ちいただきましたが、時間がないそうですから、簡単にお伺いします。  最高裁は公安調査庁とは違いますから、気楽にお答えください。  四月九日に司法修習生の終了式がございました。本年度は終了式が行なわれなかったのですね。伝え聞くところによると、その日の朝門前でビラをまいたからというようなことが理由になっておるようですけれども、私どものときには最高裁長官、そして検事総長、日弁連会長というものもお見えになってやったのですけれども、ビラが何枚まかれたということで終了式をやらないというような、神経過敏にどうしてなったのですか。
  138. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 二年間の司法修習を終えまして、それぞれの志望に向かって巣立っていきます重要な終了の当日でございますので、できることであれば終了式を一堂に集めてやりたいというのが私ども及び司法研修所の念願でございます。ただ、厳粛に行なわれるべき終了式が結果において混乱するというようなことになりますのも本意ではございませんので、その辺をぎりぎりまで検討されたようでございます。予定された時刻の直前の状況ということで、教官会議が御検討になり、やはりやめるべきであるという御判断に到達されたという御報告を受けております。
  139. 正森成二

    ○正森委員 私どもが疑問に思いますのは、阪口修習生が再採用になりましたが、阪口君のみは四月九日に終了証書をもらえずに、伝え聞くところによると、四月十六日に終了証書を渡すというように聞いておりますが、それはいかなる事由に基づくものですか。われわれが承知しているところでは、彼は二年前式当日のことによって罷免された、したがって、たてまえからいえば、もう修習の学習は済んでおるはずだ、しかも一月三十一日ですか二月一日ですかに再採用が発表されましたが、そのときに特別のカリキュラムか何かをお組みになったと聞いております。しかし、そうだとしましても、他の修習生が四月九日に終了するのに、阪口君のみが四月十六日になるのはいかなる理由なのか、そしてまた、いままでの経緯からして、四月十六日に無事に終了して法曹資格を獲得することができるのか、それについてお答え願いたい。
  140. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 御承知のように、阪口修習生は二月一日付で再採用ということに相なったわけでございますが、二月に入りますと、もう二十五期の修習生方々は最後の仕上げでございます。三月はもう二回試験ということで、研修所修習されるということは適当でないということであったようでございます。そこで、再採用されまして、これを現地修習の委託をするのが一番いいんじゃないかということで日弁連に研修所から依頼され、さらに日弁連はこれまで阪口修習生のめんどうを見てこられたという関係も考慮されまして、具体的には東京弁護士会の小池金市先生のところに弁護修習の委託という形で修習をやっていただくというカリキュラムをつくられたわけでございます。そこで、四月になりまして二十五期の方々が九日に終了されるわけですが、阪口修習生もその後りっぱに修習を継続しておられるということのようでございますので、研修所もいろいろお考えになりまして、大体私の承知しておりますところでは、小池事務所に修習に行かれて現実修習された期間というものを目安にされて大体二カ月ということで、その期間の終了を待って修習を終了させる、それが大体十六日ということだそうでございます。
  141. 正森成二

    ○正森委員 それでは、特別に問題があるからおくらす、場合によってはもうしばらくとめておいてやろうか、留年させようかということではないのですね。
  142. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 現在のところは、いま申し上げたとおりのことでございます。
  143. 正森成二

    ○正森委員 それではその点はけっこうです。  今度裁判官に任官する人について、先ほど稲葉委員の御質問にもございましたけれども、私ども裁判所定員法を審議しましたときにも、裁判官が非常に足らない。あなたのお答えでは、よい方さえあれば百人ぐらいまでは採ってもいいとなかなか景気のいいことを言われたので、大いに期待しておったのですが、伝え聞くところによると、本年は採用になったのは六十六名ですか、六十八名最後まで希望者があったのに二名採用されなかったということだそうでございます。私はその二名の名前もわかっておりますが、法務委員会の議事録に載るとあとで本人にいろいろ問題があってはいけませんので、頭文字K君とY君、こう申し上げておきます。それでおわかりでしょう。  それで、その二人が任官を希望されながら任官を認められなかったということになっておりますが、あなたのこの法務委員会での御質疑の答えでも、裁判官にふさわしい方に来てほしいのだ、裁判官にふさわしい方といったら何かと言ったら、いい方に来てほしいのだ、いい方とは何かと言うとふさわしい方だ、こうなるのですが、必ずしも半分以上にはこだわらない、三分の二、あるいはそれより下がる人であっても、何らか将来性があるということを認められる方法がかりにありとすれば、それは採用するにやぶさかではございませんという意味のことを言われたと思うのですね。私の記憶は正確だと思うのですが、そうだとすれば、この二名の方が採用されなかった、裁判官になれなかったというのはいかなる事由に基づくものであるか。あなたは人事の秘密は申せない、こうおっしゃるかもしれませんけれども、しかし、一方ではいい方に来てほしい、裁判官にふさわしい方に来てほしいと言うのだから、採用されなければいい方ではないのだなということにもなります。だから、言い得る範囲内であれば言っていただきたい。そうでなければまた、二人とも青年法律家協会に加入しておりますから、そのことを事由にして任命を拒否されたんではないか、採用を拒否されたんではないかということになりますので、あえてお尋ねします。
  144. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 法曹の中でも裁判官はやはりできるだけいい方に来ていただかないと私どももいけないと思いますし、また国民の方々にも御迷惑をおかけするということを日ごろ申し上げておるわけでございます。そのいい方という意味は、では具体的にどういう方かということは、ごくごく常識的に申し上げれば平均レベル以上の方だというふうに申し上げたわけでございます。それに対しまして、それではその五百人おる中の二百五十というところで切るのかというお尋ねでございましたので、いや平均レベルというのはそういう意味で申し上げるのではない、何も二百五十を一つでも割ればもう平均レベルではないということを申し上げるわけではない、要は将来性のある方であって、そして俗に言うりっぱな方であるならばどの辺ということに最終的にこだわるものではないということは、確かにこれまでも申し上げたとおりでございます。  ただ、今回お二人の方を不採用にいたしましたということの具体的な理由につきましては、これはやはり本人の個人的な問題でございますので、私が申し上げることは遠慮させていただきたいといまでも考えております。ただ、そのことを申し上げますと、いまも御指摘がございましたが、それじゃ具体的に青年法律家協会に所属しておる人だから採用しなかったのかというふうにとられるではないかという御発言がございましたけれども、はっきり申し上げますけれども青年法律家協会に所属しておられるかどうかということは全然無関係であるということでございます。それでひとつお許しを願いたいと思います。
  145. 正森成二

    ○正森委員 いまそういうお答えがございましたし、あえてその問題を深く聞こうとは思いませんけれども、私が調査いたしましたところでは、今回は二回試験成績がどうであった、こうであったということを、口述のときとかあるいは教官から直接言われるというケースは非常に少なかった、あるいはなかったと言ってもいいようでございます。しかし、あなたの別の機会での発言を見ますと、全人格的に見るのだという意味があって、それは司法試験成績、二回試験、実地研修の成績だけでなしに、たとえば大学のときの成績はどうであったかということも見るのだという意味のことを発言されておりますね。そこで私は、二回試験成績は知り得る立場にありませんから、大学時分の成績などを調べてみましたけれども、たとえばK君のほうを見ますと、一橋大学の卒業で修士課程も経ておりまして商法専攻です。大学の単位四十五のうち、優が三十三、良が十二、これは非常に優秀な成績ですね。私は一橋じゃございませんから、大学によって基準は違うと思いますが、大学院の単位を見ますと、十七単位のうち優が十六、良が一ということで、年齢も二十八歳ということになれば、通常の見方からすれば、二回試験成績は幾らだったかはわからないけれども、これは将来性がないとは言えない。あると断定することはむずかしいかもしれないけれども、ないとは言えない、こういう人物だと思うのです。もう一人のY君についても、二回試験を除いていままでわかり得た成績は中位以上である、そういうことになっておるわけですね。そうだとすると、いかなる理由でこの人たちが不採用になったのかという点についてはやはり疑心暗鬼を生むということに、いままでの答弁から見てもなってくるわけですね。修士課程で十七単位のうち十六優というのは非常に優秀ですね。ですからあえて言うわけで、何か本人を納得させられるようなこと、特にY君のほうは、ある時期には裁判官から裁判官にならないかとすすめられているのですね。そうすると、それを妨げるようなどういう事情が発生したのかということは、本人ならずともやはり疑問に思わざるを得ないのですね。それで私はあえて聞きますけれども、そういう本人の疑問、私にそういう成績まで人づてにですけれども言ってくるということは、よくよくだと思うのですね。私は大学の試験成績なんか恥ずかしくて言えないけれども、そういう点についてそこまで言っているのだということで、何か本人に、あなたは今後こういう点を気をつけなさいよと言ってやれる点があれば言ってやったらいかがですかということをもう一度聞きます。それでだめだったら、これはあなた方の人事の秘密でしょうから聞きませんけれどもいかがですか。
  146. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 大学時代の成績、司法試験成績とかというようなものも、総合的な判定の一つのファクターになることは当然のことでございます。ただ、ご承知のように、やはり何と申しましても二年間その目的で修習いたしますので、二年間の研修所における修習、それから二回試験成績、それぞれのつきました現地におけるところの成績報告といったようなものがファクターとして大きい要素を占めるということは、これは当然のことだろうと思います。私どもは、そういう全体の資料というものをそれぞれのウエートにおいて勘案された上で、慎重に御検討いただいて最終的には御決定をいただいたということでございます。  それから先ほど稲葉委員の御質問にもございましたけれども研修所教官が何といっても日常接しておりますので、こういうような採用するとかしないとか、ぎりぎりの問題になる前に、何とか研修所教官がいろいろと御本人にも努力をいただくような方向に御指導する、あるいはまた御本人にも全体の状況というものをおわかりいただけるようにするといいますか、なかなかむずかしい問題でございますけれども、そういうふうにしていっていただかなければいけないのじゃないかということは痛切に感じているわけでございます。ただ、具体的にすでに生起いたしました問題について、いまお尋ねのように正面から個々に対してお答えを申し上げるということはちょっといたしかねます。気持ちとしては十分了承いたしております。
  147. 正森成二

    ○正森委員 そういう点についてはこれ以上答えにくい問題だということですので伺いません。  それでは最後に、時間ですのでもう一点だけ伺います。  本年度は幸いなことに女性が三名採用されておりますね。その三名について、あなたはそういうことは絶対ございませんとおっしゃるかもしれませんけれども、私ども現実修習生に伺ったところでは、面接の際に全員が、婚約者はいないですね、こういって、いないですね、いないですねと聞かれているのですね。男のほうに婚約者がいないですねということはまあ聞きませんね。大体女性にそういうことを聞く。そして、結婚しません、こう言った女性がおるのです。そう言ったら、ほんとうにしませんね、こう言って一度ならず二度ならず念を押しておるという事実があるんですね。男の修習生が結婚しません、こう言ったらずばりあんた変わりもんやなぐらいのことは言うかもしれませんが、ほんとうにしませんね、ほんとうにしませんねということはまず聞かないですね。そういう事実がある。そしてその面接の過程の中で、ある教官は、去年採用した女性裁判官の中に結婚をしないと言ってしたのがいた、非常に迷惑した、こう言っておるのですね。憲法二十四条で「婚姻は、兩性の合意のみに基いて成立し、」となっておるのに、最高裁が、結婚してもらって非常に迷惑したとか、婚約者はいないでしょうねと、まるでダニでもひっついておるように聞く。結婚しませんねと、ひもでもついておるように聞く。おそらくあなたはそんなことがあろうはずがございませんと言うでしょう。答えはわかっているのですよ。わかっておるけれども、私は現実修習生から聞いたのです。火のないところに煙は立たぬ。そんなことはございません、証拠に基づいて厳格な証明と言い出すかもしれぬけれども、しかしそういうことがやはり女性の——ほんとうはそれを言うた女性の名前までわかっているのです。しかしそれは申しませんが、そういうことが言われておるということは、両性の平等というか、憲法を擁護するという意味からいっても、法のもとの平等からいっても——あんな尊属殺にしても二十八年もたたなければ違憲だと言えなかった最高裁ですから、その点についてはよくお考えになって、いやしくもそういうことがないように、ほんとうは私どもは国会でこんなことを言いたくないのです。しかし修習生現実にいろいろ言うてくれるから言わざるを得ないので、来年はこういうことがよもないように、婚約者がいないと言ったけれどもいたじゃないかとか、結婚しませんと言ったけれどもしましたねとか、子供ができちゃったですねとか、そんなことがないように、最高裁としては自戒してほしいと思います。これについてお答えは、そんなことがあろうはずがございませんと言われるかもしれませんけれども、一応御見解をお聞きして、時間でございますから終わります。
  148. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 今度の修習生の方にいろいろ伺いましたけれども、男性、女性ということでなくて、結婚しておる方はわかりますが、一応結婚される当てがあるかということは聞きました。これは宿舎等の関係で、宿舎があるところに配置してあげなければいけないだろうということなんです。いま結婚されなくても、これまでの例から、すぐあとで四月中に式をあげられたり夏に式をあげられたりするのです。そうすると宿舎がないようなところに置きますとかわいそうなんです。だから聞いたのです。もう一つこれもぜひ御理解いただきたいと思うのですが、去年男の方と女の方それぞれ全然結婚の当てがないと言われたので、別なところに配置したのです。具体的には東京と徳島ですけれども、そうしたら八月に結婚されちゃったんです。どうしたんだと言ったら、実はわかっておった、予定があったのだけれども、結婚すると言うと採ってもらえないだろうからというふうに思ったという。どうしてそんなこと思うんだと言ったのですが、男性の方が自分も異動してもらっていいから一緒に住めるようにしてくれとことしになって言われたのです。私はいろいろ考えましたけれども、そんことは決してないのですが、採ってほしいということでそういう気持ちもわからないじゃないというので、現実には女性の方を横浜に来てもらって一緒に住めるようにしたのです。そこまで配慮しておりますわけで、今回ももしそういうことがあるなら最初から一緒に住めるようにしてあげたいというだけで聞いておりますので、それは今後の実績をごらんいただければ十分証明できると思います。
  149. 正森成二

    ○正森委員 いま矢口人事局長あるいは最高裁代理者の名答弁を伺って、私も非常に心強く思ったけれども、いまの中でも出ているように裁判官志望者が過去の経歴詐称ですね、結婚することがわかっているのに、いや、しませんと言うてでも採用してほしい、結婚する相手がきまっておると言うたらそれが障害にならぬかと思うくらいのいじらしい人が裁判官になっておるのです。だからそういういじらしい気持ちを持たさないように、最高裁というところは憲法二十四条をちゃんと尊重してくれるんだという確信を持ってもらうように、修習生の扱いをしていただきたい。いまの御答弁を伺って非常に前向きの姿勢であるということがわかって安心しましたけれども、くれぐれも若い修習生最高裁というところと思われないようにしていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。
  150. 中垣國男

    中垣委員長 次回は来たる十三日金曜日午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時七分散会