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1973-07-18 第71回国会 衆議院 文教委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月十八日(水曜日)     午後二時十九分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 内海 英男君 理事 塩崎  潤君    理事 西岡 武夫君 理事 松永  光君    理事 森  喜朗君 理事 木島喜兵衞君    理事 長谷川正三君 理事 山原健二郎君       有田 喜一君    上田 茂行君       坂田 道太君    染谷  誠君       床次 徳二君    林  大幹君       深谷 隆司君    三塚  博君       山崎  拓君    嶋崎  譲君       山口 鶴男君    山中 吾郎君       栗田  翠君    有島 重武君  出席国務大臣         文 部 大 臣 奥野 誠亮君  出席政府委員         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         総理府総務副長         官      小宮山重四郎君         大蔵省主計局次         長       辻  敬一君         文部政務次官  河野 洋平君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         自治政務次官  武藤 嘉文君         自治省行政局公         務員部長    植弘 親民君         自治省財政局長 鎌田 要人君  委員外出席者         総理府人事局参         事官      吉田 哲朗君         大蔵省主計局主         計官      加藤 隆司君         文教委員会調査         室長      石田 幸男君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十七日  辞任         補欠選任   深谷 隆司君     粕谷  茂君 同日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     深谷 隆司君     ――――――――――――― 七月十四日  東海道本線高架事業用地として伊場遺跡の一部  使用に関する請願斉藤正男紹介)(第八六  一〇号)  障害児教育推進に関する請願嶋崎譲紹介)  (第八六一一号)  同(有島重武君紹介)(第八六四三号)  同(勝澤芳雄紹介)(第八六四四号)  同(栗田翠紹介)(第八七一七号)  同(長谷川正三紹介)(第八七六三号)  養護教諭全校必置に関する請願内海英男君  紹介)(第八六四五号)  国立学校設置法等の一部を改正する法律案反対  に関する請願瀬野栄次郎紹介)(第八六四  六号)  同(小濱新次紹介)(第八六八三号)  同(寺前巖紹介)(第八七六二号)  学校教育水準維持向上のための義務教育諸  学校教育職員人材確保に関する特別措置法  案撤回に関する請願岡本富夫紹介)(第八  六四七号)  同(小川新一郎紹介)(第八六八四号)  同(栗田翠紹介)(第八七一六号)  四年制大学における養護教諭養成制度確立に関  する請願米内山義一郎紹介)(第八七六四  号) 同月十六日  東海道本線高架事業用地として伊場遺跡の一部  使用に関する請願足立篤郎紹介)(第八七  八七号)  同(大石千八紹介)(第八七八八号)  同(木部佳昭紹介)(第八七八九号)  同(栗原祐幸紹介)(第八七九〇号)  同(佐藤孝行紹介)(第八七九一号)  同(坂田道太紹介)(第八七九二号)  同(塩谷一夫紹介)(第八七九三号)  同(染谷誠紹介)(第八七九四号)  同外三件(竹本孫一紹介)(第八七九五号)  同(田中正巳紹介)(第八七九六号)  同(谷川和穗紹介)(第八七九七号)  同(床次徳二紹介)(第八七九八号)  同(西村直己紹介)(第八七九九号)  同(松永光紹介)(第八八〇〇号)  同(山崎拓紹介)(第八八〇一号)  四年制大学における養護教諭養成制度確立に関  する請願外七件(塩川正十郎紹介)(第八八  〇二号)  私学に対する公費助成増額等に関する請願(勝  澤芳雄紹介)(第八八〇三号)  同(木島喜兵衞紹介)(第八八〇四号)  同外二件(小林信一紹介)(第八八〇五号)  同(嶋崎譲紹介)(第八八〇六号)  同外一件(長谷川正三紹介)(第八八〇七  号)  同(山口鶴男紹介)(第八八〇八号)  同(山中吾郎紹介)(第八八〇九号)  障害児教育推進に関する請願内海英男君紹  介)(第八八七一号)  同(塩崎潤紹介)(第八八七二号)  同(山崎拓紹介)(第八八七三号)  国立学校設置法等の一部を改正する法律案反対  に関する請願瀬野栄次郎紹介)(第八八七  四号) 同月十七日  東海道本線高架事業用地として伊場遺跡の一部  使用に関する請願足立篤郎紹介)(第九〇  三九号)  同(井原岸高紹介)(第九〇四〇号)  学校教育水準維持向上のための義務教育諸  学校教育職員人材確保に関する特別措置法  案撤回に関する請願新井彬之君紹介)(第九  〇八七号)  国立学校設置法等の一部を改正する法律案反対  に関する請願外一件(瀬野栄次郎紹介)(第  九〇八八号) は本委員会に付託された。 七月十六日  私学振興に関する陳情書  (第  四七六号)  教育予算増額に関する陳情書  (第四七七号)  女子教職員育児休暇立法化に関する陳情書  (  第四七八号)  公立義務教育学校学級編制及び教職員定数  の標準に関する法律の改正に関する陳情書外二  件(第  四七九号)  幼児教育振興に関する陳情書外一件  (第四八〇号)  文化財保護のための土地取得費国庫補助等に関  する陳情書  (第四八一号)  国立学校設置法等の一部を改正する法律案反対  に関する陳情書外四十一件  (第五五三号)  国立学校設置法等の一部を改正する法律案等反  対に関する陳情書  (第五  五四号)  国指定文化財保護及び管理に関する陳情書  (  第五五五号)  岡山大学工学部土木工学科新設に関する陳情  書(第五  五六号)  建築資材値上がりに伴う小、中学校建築費の財  源補てんに関する陳情書  (第五五七号)  公立小中学校寄宿舎舎監制度確立に関する  陳情書  (第五五八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  学校教育水準維持向上のための義務教育諸  学校教育職員人材確保に関する特別措置法  案(内閣提出第六六号)      ――――◇―――――
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  学校教育水準維持向上のための義務教育学校教育職員人材確保に関する特別措置法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。有島重武君。
  3. 有島重武

    有島委員 いわゆる人材確保に関する特別措置法案、この法案についての質疑をさせていただくわけでありますが、その前にちょっと、先日文部大臣日教組槙枝委員長会談なさった。そのことについての御報告、簡単に承っておきたいと思います。  この委員会でも再三にわたりまして、行政担当責任者である大臣と、そして現場の教職員方々、その代表といいますか、あるいはその教職員組合の中では一番大きいものである日教組委員長が、会談なさるべきではなかろうかということを御提案も申し上げておりましたが、それが実現されたわけで、その成果を一通り御報告いただければ幸いと思います。
  4. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 一昨日、五時から一時間半、日教組代表五人の方々お話をしたわけでございます。同時に、お話し合いをするについては、話し合って詰めて結論を得ることのできる問題もあるだろうし、なかなか簡単には結論のつきにくい問題もあるだろうから、その場合にはお互い意見の食い違いを明確にすることにしょう。そのためには、ばらばらに外に発表することも問題があるから、一緒に記者会見に臨んで、話し合った結果を発表しましょう、こういうことで記者会見させていただいたわけでございました。  話し合いの第一点は、教職員処遇改善の問題でございまして、教職員は十七年たつと行政職の人よりも悪くなっていく、この格差はぜひ是正したいのだというお話がございまして、私も大賛成だ、努力をしていきたい、こう申し上げたところでございまして、高等学校先生給料表が別になっていることについては、一本化したいというお話がございましたが、これは国会でそのような仕組みをつくられたことであるので、お話があったということにしておこうじゃありませんかと申し上げました。  次に三法案のことに話が移りまして、一つは筑波大学法案のことでございました。日教組側では、この法案では教育研究干渉を受けるというお話がございましたのに対しまして、これは東京教育大学の新しい構想を実現させるものだから、大学自治を守るためにはこの構想を実現させるべきだ、こう申したわけでございました。それに対しまして、その教育大学で新構想をつくられる過程にいろいろな干渉が加えられている、こういう判断のようでございまして、それに対しまして、五学部のうちの文学部が、四十二年移転を決定して以後は、評議会文学部代表を送っていない、民主的な社会では考えられないことだという提起をいたしましたが、それについては同感気持ちを表しておられたように私は受け取りました。  人材確保法案につきましては、日教組側ではこの法案の必要はないんじゃないかという疑問がございましたのに対しまして、一〇%程度のものをどうこうするということであるなら格別、私たちはもっと大きな給与改善考えているわけだから、そういうことになると人事院では何かよりどころがないとお困りになるのじゃないだろうか、かえってそういう場合には他の職種からの反発もあるだろうし、混乱を来たすのじゃないだろうかということを申し上げました。もう一つは、給与労使交渉によってきめられるべきだ、こういう主張がございました。それに対しまして私は、労使交渉ということを考えておられるとすれば、組合の側にスト権があるという認識なのかと言うと、そうだということでございました。そうであるならば、労使対等という意味使用者側にはロックアウトの権限を認めるということになるが、そういう性格のものではないんじゃなかろうか、やはりいまの仕組みが一番いいのじゃないかという式の話をしたわけでございます。さらに五段階給与を目ざしているのじゃないかというお話がございまして、そういうことは一切考えておりませんよということを申し上げたのございました。  次に、教頭法制化の問題につきまして、こういう権力の座をつくってもらうのがいやなんだというお話がございました。それに対しまして、私が、子供のときから教頭さんというものはいたじゃないか、ことにまた国会においても、学校教育法には養護教諭は掲げられているけれども、養護助教諭は掲げられていない、掲げるべきだという御質問を私も受けたりもしているのだ、寮母、実習助手等についても同じだというお話をいたしましたら、そういうものは掲げてもらってけっこうなんだけれども、教頭だけはいやだ、こういう式の話があったりしたところでございました。同時に、なぜいやなのかということに対しまして、教頭職をつくればまたそれで給料表ができるというお話がございましたので、私はそんなことは考えておりませんよ、こう申し上げたのでございました。  それから次に、処分の回復の問題について話がございました。私はスト権ストの指令というものを今後一切しないということならば、一切こういう問題は雲散霧消してしまいますよ、こう申し上げました。それに対しまして、スト権があると自分たち考えているのだということでございました。そうすると、秩序を破る、破った場合には処分が行なわれる。秩序を破るおそれが残っているのに、処分だけを回復するわけにはいかないじゃありませんかということで、これはそういう意味で、お互いストライキに対する考え方が食い違っているということでございました。  最後に私は、あなたたち中教審路線粉砕とか、文部省考えは一切不穏当だというようなことはおっしゃらないでくださいよ、中教審の答申の中にもいいことをたくさん書いているじゃありませんか、いいことはいいこととして、悪いことはどんどん批判しようじゃありませんか、私も日教組批判をどんどんさせてもらいますよ、しかし、日教組は一切悪いとは思いませんよという話をいたしまして、同時に、文部省日教組とは手をつなぐべきだ、国民の立場に立って手をつないで、初めて国民教育充実をはかることができるのだということを申し上げましたら、両者とも同感だということでございましたので、両者と本記者会見において御報告させていただいたということでございました。  そして、今後とも話があるならばどんどん持っていらっしゃいよ、どんどんお会いをして話も伺おうじゃありませんか、こう申し上げたのが大体の経過でございました。
  5. 有島重武

    有島委員 著しい対立点が幾つかあったんじゃないかと思いますが、そういったことについて、今後もこうした会談を定期的にお続けになるお考えがあるかどうか、この次の会談はいつごろになると考えていらっしゃるか、そういった点はいかがですか。
  6. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまも申し上げましたように、話があればどんどん持っていらっしゃいよ、伺いますよ、こう申し上げたわけでございまして、お互いにそうしようということでございまして、定期的ということじゃなしに、必要に応じて話を伺ってまいりたい、こう思っております。
  7. 有島重武

    有島委員 それでは、人材確保法案のなるべく要点だけをやってまいりたいと思うのですけれども、なかなかわかりにくいところがたくさんありますので、教えていただきたいことがある。  人材と申しますけれども、私、個人的には人材ということはあまり好きじゃないわけなんです。人間材料にして、何かの一つ目的のために——それは人間材料になるということは、客観的に見ればそういうことはあるかもしれませんけれども、私は人間というのはそれ自体が目的だ、そんなふうに思っているわけなんです。ただ、ここでもって「人材」とあえてお書きになったのですけれども、どういうような意味で「人材」ということばをお使いになっていらっしゃるか。人材確保する、いま確保しなければならぬということになりますと、現在では人材確保できてないという問題にもなると思いますけれども、確保という問題を除いて、どういうのが人材と思っていらっしゃるのか、その辺から承っていきたい。
  8. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 たびたびお尋ねがございまして、お答えをさしていただいているのでございますけれども、やはり人材といいましても、教育界に望ましい人材という意味だろう、こう考えているわけでございます。そういう意味におきまして、深い愛情使命観を持っていらっしゃる方々、そして一般的な知識に加えて専門的な知識、同時に、教育のことに当たるわけでございますから、教育的な技術を身につけている方々、これが教育界に望ましい人材じゃございませんでしょうかと申し上げさしていただいておるわけでございます。
  9. 有島重武

    有島委員 さっき日教組の話が出ましたけれども、たとえば教員組合活動なんかに熱心な者ですね、こういった者をやはり人材の中に入れてもらえるのか、そういう者は人材として好ましくないというようなことがおありになるのかどうか、その辺はどうですか。
  10. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 人材という表現の問題と、いまおっしゃった組合活動に熱心であるか熱心でないかという問題とは、異質のことばだ、こう私は考えております。
  11. 有島重武

    有島委員 いまあえてこの法律を出されるということは、人材確保に著しい困難を感じていらっしゃるということであろうと思うのですね。その人材確保についての困難の現状と申しますか、それからどうしていま困難なのか、その辺についてはどのようにお考えになっていらっしゃるか。
  12. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 人が将来にわたる職業を選択する場合には、いろいろなことがかみ合っていると思います。社会的な評価一つでございましょうし、個人個人が持っている適性も一つでございましょうし、あるいは処遇ということも一つでございましょうし、いろいろなことがあろうかと思うのでございます。現在の傾向を見ておりますと、教育学部を目ざす方々が若干減りぎみである、同時にまた教育学部を目ざす方々の学力といいましょうか、そういうものが、他の学部と比べた場合には落ちぎみであるというようなこと、あるいは男性の希望する者が少なくなってきているというようなこと、いろいろなところから将来を心配しているわけでございます。現在の先生につきましても、父兄の中にはいろいろな批判も生まれたりしているわけでございますので、この際教育界人材確保されるように積極的な施策を行なっていかなければならない。そのためには、処遇の問題についても抜本的な改善をはかっていくべきだろうし、また社会的評価なりあるいは資質充実なりについても、それなりの施策を行なっていかなければならない、こういうような考え方で御提案を申し上げているわけでございます。
  13. 有島重武

    有島委員 もう一ぺん伺いますけれども、人材確保が困難であるということ、その一番の理由は、社会的評価が下がった、それだから人材確保されにくいんだ、そういうお考えですか。
  14. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 社会的評価の問題もございましょうし、処遇の問題もあろうかと思います。もっぱら法案は、具体的には処遇のことを目ざしているわけでございますけれども、このことを通じて、また社会的評価にもよい影響を持ってくることができるというふうに思っております。
  15. 有島重武

    有島委員 いま社会的評価処遇だ。その二つだけですか。人材確保が困難な理由をいま伺っているわけです。
  16. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 この法案の目ざしているのはそうでございますけれども、そのほかに、たびたび申し上げる、海外に五千人の方々を派遣するとか、あるいはもっと教養を高めるための施策を講ずるとか、総合的な施策を行なっていかなければならない、こう思います。この法律案の目ざしているものも、その中の一つでございます。
  17. 有島重武

    有島委員 私が伺っているのは、人材確保がしにくい、困難である、その理由をどのようにお考えになっていらっしゃるか、どのように把握していらっしゃるか、そういうことを伺いたいわけなんです。  それで、大臣先ほどからおっしゃっているのでは、社会的な評価が昔の状態とは違う、下がってきたということが一つありましたね。それから処遇の問題であるということを言われました。その二つだけですか。
  18. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 社会的評価ということになりますと、やはり資質が、社会的評価に値する資質を持つ者でなければならない、そういう点についても問題があるということを先ほど申し上げたわけでございます。そのほか、先生方を養成する場合に、どのような人を教師として迎えるのか、できる限り四年制の大学を卒業した人たち教師充実するようにしていきたいというようなことにもしているわけでございますので、そういう面についても、それが可能になるように拡充をはかっていかなければならないというような問題もあろうかと考えておるわけであります。
  19. 有島重武

    有島委員 やや角度を変えますけれども、在職の教育職員資質ですね、現在の教職員方々資質について、大臣はどのように評価なさっておるのですか。
  20. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 総体的には、熱心に努力を続けていただいておるわけでございますけれども、中には世間が先生について信頼しにくいような意味意見も出されたりしているわけでございまして、そういう点については、たいへん憂慮いたしておるわけでございます。かりそめにもそういうことば父兄の間から出ないような教育界にしなければならない、そういう意味で、一段の充実をはからなければならないということであります。もっと露骨に申し上げますと、この間も申し上げたので、言いにくいことばでやめようと思っておったのですけれども、有島さんまた首をかしげられるので申し上げますが、たとえばデモシカ先生というようなことばがあるわけでありますが、そういうことを考えますと、私たちはたいへん心配するわけでございます。あまり言いたくないことばで、またお尋ねになっていやだなという気持ちを持ちながら申し上げておるわけでございますけれども、私は、教育界に対していろいろな批判があるというようなことを、私の口から申し上げることはできるだけ避けたいなという気持ちを深くするものでございます。
  21. 有島重武

    有島委員 そこで、現在人材確保できない理由というものを、ではどのように考えていったらいいのかということを、もう一ぺんもとに戻したいのですけれども、先ほど大臣おっしゃいましたように、人材という教育職員の中の人材、それは四つおっしゃったようでしたね。一つ愛情である、一つ使命観である、それから知識である、もう一つ教育技術である、こういうことを言われた。それでどうして教育愛情を注げなくなっていくのか、こういう問題があると思うのですね。私の知っている限り、デモシカ先生といわれるような方であっても、初めて学校へいらっしゃってお子さん方を前にしたときには、やはり非常な情熱を持たざるを得ない御様子です。これは例外なしに、お子さん方を前にすると、ようし、やっていこうというお気持ちにはなるらしいのです。ところが、数年を経て、そうした愛情というものが何となく枯渇していくということも多いようでございます。こうしたことがどうして起こってくるのか。それから使命観というようなこと、それから教育に関する知識知識は経験によって減るということはないのであって、ふえていく一方であろうかと思うのです。ただし、それをふやしていこうという向上の速度というか、そういったものが非常に緩慢になって、惰性の中に置かれてしまうということはあるようでございます。それから技術。こういう四つあげられたわけです。  最初の問題に戻りますけれども、どうして現在人材確保が困難であるのか。これは社会的評価が低いから、処遇が悪いから、だから愛情もなくなり、使命観もなくなり、知識惰性になって技術も進まない、このようにお考えになっていらっしゃるわけですか。
  22. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 有島さんのお話を伺っていますと、教育界というものをどういうふうにしたいのかという、まずその点についての認識お互い議論しておかなければいけないのじゃないかと私は思うのでございます。私たちは、いまの教育によってやがて次代をになう人たちを育成してもらうのだ、言いかえれば、教育界日本国家社会命運を託しているのだ、だからこの教育界に、すぐれた人材が集まっていただいて、将来不安のないような教育界をつくり上げていきたいのだ、こういう観念のもとに人材確保考えておりますので、現状教育界考えているわけでもございませんければ、戦前の教育界考えているわけのものでもございません。私たちの時代において、将来ほんとに不安のないような教育界をつくり上げていきたいのだ、ほんとに日本国家社会命運を託する教育界にしたいのだ、そのような熱意を持ってこの法案を出していることに深く御理解を賜わりたいと思います。  あとのほうの問題については、政府委員のほうからお答えをいたします。   〔委員長退席西岡委員長代理着席
  23. 岩間英太郎

    岩間政府委員 ただいま先生からお尋ねのございました問題につきましては、これは一口に申しますと、たとえばNHKの調査にございますように、社会的貢献度でございますとかあるいは社会的評価というものは高いのにもかかわらず、待遇がよくない。したがって、先ほど来大臣が申しておりますように、すぐれた方々がほかの分野に行かれて、教育界に来られる方が少なくなりつつあるのじゃないか。これは世界的に見ていわゆる超工業国家といわれるような国々では、やはり教員の質的な低下というのが傾向としてあらわれているわけでございます。  そこで、たびたびこの国会でも引き合いに出されておりますように、ILO・ユネスコの教員の地位に関する勧告というのがございますけれども、その中で、教員の経済的地位というものを高めなければいけないというようなことがいわれております。特に先ほど来お話ございますような、教員の社会的地位でございますとか、それからその尊敬される度合いとか、そのほかいろいろな要素の中で、そういう要素に作用する一番大きな原因というのは、やはり経済的な地位なんだというようなことも述べられておるわけでございます。今回の待遇改善につきましてもこれがきめ手でないことは、これは有島先生もたびたび御指摘になっているとおりでございますけれども、そのILO・ユネスコの教員の地位に関する勧告の中でもいわれておりますように、いろいろな要素を左右する一番大きな原因が経済的地位と申しますか、処遇にあることは一般にも認められていることではないか。それを通じまして、ほかにのがれがちな、教員としてふさわしい資質をお持ちの方が、確保できるようにというのが私どもの願いでございます。
  24. 有島重武

    有島委員 いまILOのお話が出ましたから、もう少し局長からいまのお話、しっかり伺いましょう。いまの経済的な問題、それからあと二つか三つございましたね。
  25. 岩間英太郎

    岩間政府委員 原文の翻訳、ちょっと違いがあるかもしれませんが、ILO・ユネスコの教員の地位に関する勧告の中で、教員の給与につきまして、「給与は、教員の地位に影響を及ぼす諸種の要素中特に重視されるものとする。現在の世界の情勢では、教員に認められる地位又は敬意、その任務の重要性についての評価の程度等の給与以外の要素が、他の類似の専門的職業の場合と同様に、教員の置かれる経済的地位に依存するところが大きいからである。」というふうな表現があるわけでございます。
  26. 有島重武

    有島委員 いま給与に限っておっしゃったわけですけれども、ILOの勧告の中では、教員の専門職としての自立性というようなことがあったんじゃないかと思うのです。それから教員団体の発言力といいますか、あるいはどの方面に関与することができるかというような問題、そして三番目に給与の問題、経済的な地位ということがあったんじゃないかというのが私の記憶でございますけれども、もう一ぺん局長お願いします。
  27. 岩間英太郎

    岩間政府委員 これはかなり長文の勧告でございまして、先生が御指摘になりましたように、各方面に対しまして勧告がなされているわけでございます。  その一が「定義」、二が「適用範囲」、三が「指導原則」、その指導原則の中に、ただいま先生の御指摘になりましたように、教職は専門職と認められるものとするというふうな定義があるわけでございます。  それから四番目が「教育の目標及び政策」、それから五番目が「教員養成」、それから六番目が「教員の継続教育」、七番目が「雇用及び分限」、ここには教員の採用等に関するものがあるわけでございます。  それからその次が「教員の権利及び責務」、それからその次が「効果的な教授及び学習の条件」、その次が「教員の給与」ということでございまして、まあ教員の給与に関するところを御披露申し上げたわけでございます。  さらにその次には「社会保障」、それからその次には「教員の不足」、それから最後に「最終規定」というふうなことになっております。
  28. 有島重武

    有島委員 先ほど大臣が言われましたように、この法案をめぐって、人材確保ということを考えていく上には、一体日本教育をどうしていこうかという、その基本問題にさかのぼらなければならないとおっしゃった。私も非常にそう思うのです。ですから、そのさかのぼったところで一発きめてしまえば、法律が多少あっちこっち気に入らぬものであろうとも、そこの辺でもってはっきりしていれば、これは役に立つんじゃないかと思うのです。その辺がはっきりしておりませんと、非常に心配であるということになるんじゃないかと思うのです。  それで、いまも局長のお答え、最後にはずっと羅列しておっしゃったけれども、給与のことについていまやっているんだから、そのことをまずやってくれというようなことではなしに、さっきの一番最初にさかのぼりまして、愛情をすり減らしてしまうのはどの辺にあるのか、それから使命観をしぼませてしまうのはどの辺にあるのか。そういったことはお金の問題だけでないことがあるんじゃないかと思うのですね。たとえば教育に向かっている人たちが、ほかの方々と比較して——ほかの方々といいますと、経済界にそれぞれ雄飛されている方々と比較して、おつき合いしてみた上で、やはりやや経済的には恵まれない場合もあるし、それから恵まれている場合もありますけれども、そういった経済問題以上に、身銭を切ってでも子供たちを育てていこうというような、そういう傾向は、ほかの方々よりか持っていらっしゃる方がいまでも多いんじゃないかと私は思うのですけれども、大臣いかがですか。そういった感触は、どういうふうに考えていらっしゃいますか。
  29. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私もそう思っております。それをさらにより一そう高いものに持っていきたいというのが念願でございます。やはり少しでも資質にすぐれた方々を迎え入れたほうが、より多くそういうものについても期待を強めることができますし、同時にまた、処遇改善することによって、それだけの熱意を持っておる人たちが、日々の生活なり、将来の生活なり、不安を感ずることによって、すり減らすことのないようにしていかなければならないというふうに考えるわけでございます。
  30. 有島重武

    有島委員 愛情や使命感をすり減らす条件ですね、それはお金の問題もあるでしょう。社会的評価の問題もあるでしょう。そのほかにどういうことがあるとお思いになりますか。
  31. 岩間英太郎

    岩間政府委員 やはり教員の方々も家庭をお持ちになって、この中で社会の一員として生活されるわけですから、家庭的に特に経済的な面で御苦労がない、つまり後顧の憂いがないということは、私は一つ、仕事に打ち込める要因ではないかと思いますけれども、ただいま先生が御指摘になりましたように、仕事が実際に円滑にいく、あるいは自分の考えていることが実現をされるという要素の中には、それ以外にいろいろあると思います。たとえば一クラスの子供の数でございますとか、あるいは施設、設備の整備でございますとか、そういうものが十分であり、また手の届くものでございましたら、それは先生の御指摘のように仕事に打ち込んでいける、情熱もわく、あるいはそれが自分の能力以上のものでございましたら、それは大いに心身をすり減らすということにもなろうかと思います。したがいまして、給与ばかりでなくて、私どももいろんな条件整備ということは、これから考えていかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  32. 有島重武

    有島委員 大臣に伺いたいんだけれども、人材確保する、いままでそうした愛情を持ち、使命観を持ち、知識を持ち、技術を持ち得る人材が、どこかに流れていってしまっていたんだ、だからこれを呼び寄せなければいかぬのだ、そういう一つの視点があると思います。しかし、もう一つは、現在すでに人材が——人材といいますか、そういう潜在的な能力を持っていらっしゃる方はいるんだ、それをはばんでいる要素がある。経済的な要素も一つはある。ほかの要素もある。となりますと、今度新しく人材らしき方、成績のよろしい方といいますか、そういった方がお入りになってきて、それで学校に何年かおつとめになる。それが、人材をたくさん連れてきたはずなんだけれども、やっぱりいままでと同じになってしまったというのじゃつまらないと思うのですね。それで、経済的な要件もたくさんあるのだけれども、何かほんとうにやりがいをそこなっていくような阻害条件というものを、行政当局としてはもっとよくお考えにならなければいけないのじゃないか、観察なされなければいけないのじゃなかろうか。   〔西岡委員長代理退席、委員長着席〕  そういった阻害要件がそのままに放置されておりますと、幾ら給与を上げても、やはり人材が、いま大臣考えていらっしゃるような、こうしたことにはなかなかなり得ないのではないか、そういうことを思うわけでございます。  具体的に申しますと、大体生徒さん方を扱っていて、生徒さんを評価しなければならないという問題が起こるわけですね。通信簿のほうは、ある程度の評価をしておっても、あと父兄方々と、おたくのお子さんはこういった点はついておりますけれども、こういう点ではすぐれているんですよ、しっかりなさいと激励することはできるわけです。しかし、いまの教員の方々が一番困っているのは、学校に保存されてしまう指導要録というのですか、ここに点数を入れなければならない。一人の子供をワクに入れて評価するということについては、非常に当惑を感じられるということを私はしばしば聞きます。大臣もそういったことを聞いていらっしゃいますか。あまりお聞きになっていらっしゃいませんか、大臣
  33. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 現在の教育界人材が導入されているか、されてないかという、現在についての評価の問題もございましょうけれども、とにかく私たちは、いまの姿をさらによりよいものにしていきたいということでございますので、そういう意味で御理解をいただきたいと思います。  同時にまた、教育界日本命運を託していく、それなりに努力しなければならないことが、処遇の問題だけじゃないことも言うまでもございません。当委員会におきましてもいろいろな問題を御論議いただいているわけでございます。学校のカリキュラムの問題についても、いろいろ御論議があり、知育、体育、徳育、調和のとれた人間をつくらなければならない。そのための変更についても御議論があったわけでございますし、またいま評価のことでお話がございました。絶対評価がいいかあるいは客観的評価がいいかということについても、いろいろございましょうし、あるいは学歴偏重、入試中心、受験勉強中心の教育になっているじゃないかというような批判もございます。あるいは学校の施設の整備の問題もございます。いろんな問題があるわけでございまして、いろいろ御論議いただいているわけでございますので、そういう問題について、全体的に水準を高める努力文部省としては当然していかなければならない。それは深く考えているところでございます。
  34. 有島重武

    有島委員 私が伺っているのは、情熱を、愛情を、使命観を阻害してしまう一つの条件として、幾つかいろんなことがあるでしょう。いまおっしゃった、施設、設備が悪いから、情熱や使命観がしぼんでしまうということもまずあるかもしれない、そういうふうにお聞きになっていらっしゃるか——私の聞いている範囲では、いろんな悪条件の中で一生懸命やっていらっしゃる先生方たくさんいらっしゃるわけでございまして、やはり使命観を持ち、愛情を持ち、技術を持ってやっていらっしゃる方も大ぜいいらっしゃるんですね。それは向上したほうがいいですよ。向上するようにわれわれも努力しておりますよ。それで教育そのものに非常に機械的な要素といいますか、いまたまたま一つぼくはこういった問題をお聞きになっていますかと大臣に伺ったのは、指導要録の問題ですけれども、そのことでもって先生方が非常に困惑を感じているということはお聞きになっていらっしゃいますか、あまり聞いていらっしゃいませんか、どっちですか。
  35. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほどもちょっと触れましたように、絶対評価と客観評価の問題については、いろんな議論のあるところでございまして、いまのようなお話もしばしば議論になっているところでございますので、十分に伺っております。
  36. 有島重武

    有島委員 大臣評価のしかたが相対評価、絶対評価いろいろある、そういうことを言っているんじゃないのですよ。お子さん方に対して、何か固定的な評価を記録として残さなければならないということについて、非常に矛盾を感じるのだとうようなこと、それは愛情から出たことばなんです。使命観から出たことばでもあるのです。それから技術と申しましても、いわゆる選別技術じゃなくて、子供たちの中からどのような可能性を伸ばしていこうかという本格的な教育技術という立場から見て、そういうことで何か非常に矛盾を感じていらっしゃる。そういうようなお話を、大臣はじかに聞いていらっしゃるかどうか。どうですか。
  37. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど客観評価という表現を使いましたが、絶対評価がいいか相対評価がいいか、あるいはそれを将来に残すことになった場合に、先生方の悩みがつきまとうとか、いろいろ九話を私も伺っております。また入試の問題もからんだりいたしまして、どういう評価のしかたがいいかということについても当委員会でも御議論をいただいているところでございますので、現状におきましては、父兄に通知するものと学校に残すものと、また学校に残すものにつきましても、どこまで外からの要望に対してこたえるかというようなことにつきましても、それぞれ適当な指導をしているというのが現状だろうと思うわけでございます。いずれにいたしましても、子供の評価ということは、たいへん困難なことであることは、私も十分理解のできる点でございます。
  38. 有島重武

    有島委員 本来正しいものが困難であるというのならまだいいわけですね。ただ、いまの子供さん方の評価ということだけに限りませんけれども、行政的な始末がいいといいますか、報告がしやすいといいますか、管理がしやすいというような視点から発せられた措置、それは行政のお立場から見るとどこまでいっても完ぺきなんで、それが困難であろうとも、それではそのラインをまたどのように変更しようかというだけのそういうようなものに教員の方々は非常に矛盾を感じるのだということを、いまのお答えの中では全然お気づきになってないような感じがいたします。そういった点で、局長さんにしても大臣にしても、長年文教政策に携わっていらっしゃるので、教育のことはすみずみまでよく御存じだと思うのですけれども、そのわかっているつもりのことが、かえって現場に働いている方から見ると、本来の使命観を圧殺され、愛情を枯渇させというようなことが起こっている。非常に不幸なことなんですけれども、その辺を今後考えていっていただきたいということを私は申し上げたいわけなんです。  これはぼくも、ことばでもって言いにくいので、どういうふうに話していいかよくわかりませんけれども、たとえば大器晩成というのがあるでしょう。いまの教育制度の中では、大器晩成なんというのはあまり浮かばれないのですね。悪く言えばおませというか、こまっちゃくれているというか、気のきいたというか、大体そういう方々がどうでもいい点になるというか——点なんかどうでもいいといえばそれまでなんですよ。ところが、点なんかどうでもいいというシステムになっていないわけですね。それから将来の可能性、これも非常に緩慢に育つ子供と、急速に育つ子供、その急速に育っている子供でも、いろいろ停滞もあるのですけれども、その一断面をとらえて報告し、永久に保存しなければならない。そういうことは、上から見ればたいしたことはないと言うかもしれませんけれども、入りたての若い先生方は、そういったことで非常に悩むわけです。悩んでいて、最後にはこんなものはどうでもいいといって投げ出してしまうと同時に、何か自分たち向上心までもすり減らしていくような、何と言いますか、大臣はさっきせっかく人材の要件として愛情使命観知識技術と言われましたが、ほかにもあるだろうけれども、大臣はそう思っていらっしゃるからそれでもって言いますが、そういうような阻害条件が現在の行政の中にすでにあるのではなかろうかということを私は提言したいのだ。そんなことはないと言わないでください。そういうことがあるのかしらと思ってください。  もう一つ、そのことから言いますと、東京都はこの間選挙がありましたけれども、東京都民に対してのアンケートというものが出るわけですね。いま住みいいか住みにくいか、道がほしいのか公園がほしいのか緑がほしいのか、そんなことが出ます。そうすると、大体都民はいま道よりも公園をほしがっているのだとか、高層建築よりも大体二、三階か四階程度までをほしがっているのであろうとか、そういったことの大体の趨勢がわかるわけですね。アンケートというものは弊害もあるでしょう。しかし、ある程度の読みができるわけですね。教員に対して、教員がいま何を苦しんでいるか、何を不満に思っているか、何を伸ばしたいと思っているか、こういうことについての総合的なアンケートを、お出しになったことがありますか。
  39. 岩間英太郎

    岩間政府委員 ただいま先生もおっしゃいましたように、私どもは教育を長い目で見るというふうなことでやっているものでございますから、アンケート調査というか、意識調査になりますと、その当面のことはただいま御指摘になりましたようによくわかることがございます。   〔委員長退席松永委員長代理着席〕  前に、一学級の定員はどの程度がいいかというような調査もやったことがございますけれども、たとえば子供が六十人のときには、五十人くらいがいいのだというふうな結果も出てまいりました。五十人になりますと、四十人がいいのだというふうな結果も出てまいりました。そのときどきの先生方のお気持ちというものは、正確に把握ができるわけでございますけれども、長期的にものを考えます場合には、先生もただいま弊害もあるとちょっとおっしゃいましたように、アンケート調査というのは、やはり的確につかまえることがなかなかむずかしい場合がございます。しかし、先生がおっしゃいましたように、傾向はわかります。これが一番大きな点だと思いますけれども、そういう意味で私ども個々の問題については、いままでいろいろやったこともございますが、総合的に先生方がどういうふうな考えを持っておられるか、そういうものもこういうふうな待遇改善の機会を利用いたしまして、今後的確に把握するというふうな方向でまいりたいというように考えております。  また、ただいま先生が御指摘になりましたように、私ども行政官でございますから、観念的にはいろいろな知識を持っております。先ほどの評価の問題にいたしましても、大臣、私、そういうふうな知識は持っておりますけれども、しかしながら、はだで感ずるというふうな点がどうしても欠けるわけでございます。そういうことがないように、私どもも日ごろから気をつけておるつもりでございますけれども、どうしてもそういうふうな点がございます。これは私どもの欠点として、今後とも十分その点には気をつけていきたいというふうに考えております。
  40. 有島重武

    有島委員 いまのアンケートのことでありますけれども、六十人のときには五十人がいいと言って、五十人のときには四十人がいいというように変化するということですけれども、さっきの都民の意識調査なんということも当然でございまして、毎年変わってまいります。毎年やるということはいいことなわけなんです。それから地域的にも変わっております。同じ東京都内でも、ずいぶん違います。そういうことがあってもいいんですね。今度はアンケートの読み方を修練すればよろしいわけなんです。そのときにお願いしたいことは、そのアンケートの設問、フラーゲをつくるときに、教員の方々とよくお打ち合わせになって質問をおつくりになるべきじゃないかと思うのです。そうじゃないと、行政ベースのおぜん立ての上に、さあ右か左か、こうやられると、国会でちょうど法案を突きつけられて、賛成か反対かとやられているのと同じような結果に、また窮地におとしいれてしまうんじゃなかろうかと思うのですね。そういったことを含めまして、本来はそういうようなほんとうの、それこそ民主的努力とでもいうのじゃなかろうかと思いますけれども、その積み上げの上にこういった法案は出てきてもよろしいかと思うのですけれども、そういった資料がいままでは示されてない。おくればせながら今後はそういったことをなさったらばよかろうと私は申し上げたいんだけれども、大臣いかがですか。ここでお約束いただけますか。
  41. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 必要な調査は当然しなければならないことだと思います。随時、またいろいろお教えもいただければしあわせだと思います。
  42. 有島重武

    有島委員 当然しなければならないことだとお思いになります点は、そうおっしゃいましたが、いままで当然しなければならないことをやらなかったわけですから、今後はいたします、そういうことになりますか。そうしてその際、私言いましたように、教員の方々とよく相談されてそういったことをやっていくということ、いかがでしょうか、大臣、もう一ぺんお答えいただきたい。
  43. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 政府委員のほうから答弁させていただきます。
  44. 岩間英太郎

    岩間政府委員 今度の給与改正につきましては、これは前の稲葉文部大臣教職員方々との話でも、基本的に待遇改善ということについては異議がなかったわけでございます。また、私どもがモニターを使いまして世論調査をいたしましたところ、教員の待遇改善というのはぜひ必要だというふうな方が、七割以上占められたというふうな実績もございます。私どももそれなりに、関係の方々の御意見を聞いてまいったつもりでございます。  それから設問について、ただいま先生から御指摘ございましたように、そういうふうな意識調査で一番大事なのは、やはり設問だろうと思います。これが間違いますと、調査そのものが意味がなくなるというふうなことでございますので、そういう意味では、十分そういう点につきまして、気をつけていきたいというふうに考えているわけでございます。
  45. 有島重武

    有島委員 しつこいみたいだけれど、大臣に伺います。定期的に教員の待遇改善を目ざして、あるいは日本教育をほんとうに実りあるものにするために、特に、教員あるいは父兄あるいは子供たち、それから同じ設問を行政官の方々に同じようになさってもいいのじゃないかと思うのです。その意識のギャップというものを明らかにしていく、明らかにそれを読み取っていく、そういうことが今後はぜひとも必要なんじゃないかと私は思うわけなんです。それで、そういうかまえの上に、一番最初に話題になりましたけれども、教職員組合方々とのお話し合いということも起こってくるんじゃなかろうかと思うのです。それで、しっかりしたお答えをいただきたいと思うわけでございますが、大臣いかがですか。
  46. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 随時必要な調査をしていると思うわけでございますけれども、加えてしなければならないいろいろなことをいま御提案になっておるわけでございますので、その点につきましても、事務当局のほうでも今後さらに努力をしている、こう申し上げているわけでございます。また、それらの進め方について、必要に応じ聞くべき人に調査の方法なり調査の項目なりも伺ってまいるということも大切なことだ、かように考えます。
  47. 有島重武

    有島委員 たいへんぼくはしつこいみたいで申しわけないと思いますけれども、すべきであるということですけれども、やるという御決断を一言承りたいのです。必要なことであろうと思いますとか、こういうふうにさしてとか、すぐその方向にいきますけれども、まず大臣の御決断を一言ぴしっといただきたい。
  48. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま初中局長に伺いますと、十分検討させていただきますとこう申しておりますので、私も事務当局の結果を待ちたいと思います。
  49. 有島重武

    有島委員 事務当局に検討させて、その結果を待つというのもけっこうでございますけれども、大臣文部省の指導者であって、政治家でいらっしゃるわけですから、必要であるものはこうするということでもって、これはあんまり政党にかかわりなしに、どんな政党が政権をとってもしなければならないことだと思うのですよ。そういったこととかかわりなしに、まず大臣がそういうことはする、だからやりなさい、こう事務当局にお申しつけくださることではなかろうかと思うのですけれども、いかがですか。ちょっと歯切れが悪いような気がいたしますので、お差しつかえなければ、そういうことは今後やっていくぞと、そう言えませんか、ここでは。
  50. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 有島さんの御提案でございますから、非常に重要な御提案だと受け取って、よく調査させていただきたいと思います。検討させていただきたいと思います。
  51. 有島重武

    有島委員 検討した上でもって、やるということになっていただければいいのですけれども、実を申しますと、これは昭和四十二年の六月であったかと思いますけれども、私は同趣旨の質問を当時の劔木文部大臣にいたしました。そのときはするとおっしゃったのです。いま検討の段階じゃないと思うのです。すでに始めていらっしゃるわけです。珍しいことではないわけです。それが行政ベースだけでもって始められれば、あれは誘導尋問みたいじゃないかということをまた言われるかもしれない。そういうことはかえっておもしろくないかもしれない。対立を深めるようなことがあってはなりませんけれども、おそらくいまの場合ですと、日教組だけでもってそういった設問をして、意識調査をやって、こうこうだといっても、文部省は認めなかったし、文部省調査は頭から中教審だ、こうなりそうな感じがいたしますもんで、これはよくお話し合いをなさって進めていくべきじゃないかということを一つ進んで申し上げているわけなんです。これは検討の段階を進めて、必ずやっていただきたい、こう思いますが、いかがですか。
  52. 岩間英太郎

    岩間政府委員 確かに、劔木大臣のときに有島先生からお話ございまして、調査することを約束されたようでございます。いま御提案は、その当時のことを私よく存じませんでたいへん失礼いたしましたけれども、御提案につきまして当然やるといたしますと、これは予算的な裏づけその他も必要になるわけでございます。誠意をもって検討するということを大臣が申されているわけでございますから、私どもその線に沿いまして必要な措置をとってまいりたいというふうに考えます。
  53. 有島重武

    有島委員 人事院総裁にちょっと伺いたいのですけれども、人事院はかねて教職員の待遇についての給与体系というものは、特別に考えたいということを言われておったというように伺いますけれども、いつごろからそういうお考えを持っていらっしゃいましたですか。
  54. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 何年何月何日というようなものではございません。しかし、手早いところで申し上げさせていただきますと、三年前になりますか、教職調整額でだいぶここで御薫陶を受けまして、そのときからおりあるごとにそういう気持ちを御言明申し上げて、おそらく御記憶いただいておるだろうと思います。
  55. 有島重武

    有島委員 これはたてまえ論になりますけれども、人事院としてはこの棟の法律がなくても、新員の特別な給与体系をつくることは不可能ではないわけですね。
  56. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 もちろん不可能ではございません。ただし、御承知のように、従来私どもの堅持しております行き力は、官民の総合格差というものをとらえまして、その中でのやりくりの形でやっておりますために、ずいぶん従来も教員の方々の待遇改善には給与面においても努力をしてまいりましたけれども、その努力をいたしますについては、前に、前回でしたか申し上げたこともございますけれども、行政職なり何なり他の職種の人たちの分け前を犠牲にして、こちらへ積み重ねなければならないというようなやりくりでやってきておりますものですから、どうしてもそこに限界がある、伸び伸びしたことはできませんでしたということは事実でございます。
  57. 有島重武

    有島委員 ただし、というその後段のほうは私、別に聞いたわけではないので、この種の法律がなくても教員の特別な給与体系をつくっていくということは可能である、それだけ私は確認しておけばよろしいわけでございます。  それからいままでの質問とちょっと重複するかと思いますけれども、文部省といたしまして、このことばを使えば、人材確保するためには、この給与法案のほかにどのようなことを最小していかなければならないというふうにお考えであるか、その総合的な御構想ですね、これを大臣から承っておきたい。
  58. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど申し上げさせていただいたとおりでございまして、やはり教職を魅力あるものにしていく。そのためには今回海外に五千人の方に出ていただき、世界を見た目で日本人の教育に当たってもらうということも考えているわけでございます。同時にまた、教育問題を整備していくということで、先ほど来論ぜられてまいった問題もあろうかと思います。同時にまた、教員養成の制度そのものを充実していくということも大切なことではなかろうか、かように考えているわけでございます。
  59. 有島重武

    有島委員 そういったお答えは、いままでの質疑の中でも幾つかありましたけれども、もう少し整理して、このことと、このことと、このことだけは、とにかく人材確保をする上に——この給与だけではないのだということは、再三言っておられるわけです。次の問題としては、このことはしていくのだ、次はこのことをしていくのだ、そういった御構想は、はっきりしたものはないのですかあるのですか。
  60. 岩間英太郎

    岩間政府委員 この問題につきましては、私どものほうでいま調査会をお願いいたしておりまして、そこで総合的に検討していただこうということをやっているわけでございます。しかしながら、当面の問題としましては、教員だけについて申しますと、教職に魅力を持たせますために、ただいま大臣から申し上げましたように、海外派遣の問題、それから研修の問題、それに伴う代替教員の確保ということで、ことし一億の予算措置をしたというふうに方向が一つ出ているわけでございます。  それからもう一つは定年制と申しますか、の問題につきまして、教職をいま勧奨退職で去られました方々のそれから先の問題があるわけでございまして、この問題をどういうふうに解決するか、いままでの教職のいろいろな御経験を生かして、さらに社会のために働いていただきたいというふうなことも考えているわけでございます。つまり教職に入られる際に、ひとつ魅力を感ずるためには、やはりいろいろな条件がございます中で、待遇改善というのが一つの大きな要素じゃないか。それからお入りになった方々につきましては、これは海外研修とかあるいは長期研修、そういうものがやはり必要じゃないか。それからさらに教職を去られる方々がなお従来の御経験を生かして社会で活躍されるというふうな道を開く、少なくとも教職員個人につきましての処遇の中では、そういうふうな考え方をしていったらどうかというふうに考えているわけでございます。  それからなお、それ以外に職場の環境をよくしていくという意味で、教職員の定数の改善、それから学級編制改善、それから施設の充実、設備の充実というふうなことで、教職そのものに力を入れていただくために支障がないようにしていくということも必要ではないかというふうなことでございます。
  61. 有島重武

    有島委員 これは非常に重要なことでありまして、たとえば海外の研修について御構想があったようでありまして、これは四十八年五月の教育委員会月報というのに出ておるのを見たわけですけれども、何か二週間程度の短期派遣なんかもやるようでございますけれども、これは人数がたいへん多くなるので、こういったことも避けられないことかもしれませんけれども、何かいわゆる農協さんの見物みたいなことに——それもやらないよりもよろしいかもしれませんが、もう少しこれはねらいをはっきりしてなさるべきじゃなかろうかと思いますし、それからこれが何となくえさになって、それでこれは文部省考えると、たいへん大きな人数だということになりますけれども、学校一校当たりに考えてみますと、何年かの間に一人とか二人とか三人とか、そういうことになりまして、じゃだれを今度出していくかということは、これはその学校、またその当該地区の教育委員会ということになると思うのですね。そうすると、教育委員会というところはほんとうは民主的な運営をしているはずですけれども、現実には、いま公選問題をここで持ち出すわけじゃありませんけれども、その運用面が、実際的には教育委員長さんその他の教育委員さんよりも、委員長さんのほうが実権を握っていらっしゃる、これはそういった現状もございますね。そういったコントロールにこれが用いられるのではないかというようなこともささやかれている、これは御承知ですね、こういったことが問題になるのじゃなかろうかということは。すでに御承知の上でもってやっておられるのか、ははあそういうことは絶対にないはずでございますとおっしゃるか、その辺はどのような認識を持っていらっしゃいますか。
  62. 岩間英太郎

    岩間政府委員 五千人の海外派遣の大部分は、これはことしから始めたわけでございまして、私どもも一回ことしやってみまして、まあその結果によってやり方等についてはさらに考えていきたいということを考えているわけでございますけれども、ただいままでに参りました方の御意見を聞きますと、二週間程度ではございましたけれども、非常によかったというふうな御意見でございます。またその期間も、あんまり長いと、かえって疲れて効果があがらないんじゃないかというふうな御意見もあることはございます。まあいずれにしましても、ことし一年の実績を見ましてやり方については考えていきたい、そういうふうに思っております。  なお、人選等につきましては、これは各都道府県の教育委員会におまかせをしているわけでございますけれども、それについて、一件だけストライキに参加した教員を除外したということで問題になっておりますが、それ以外のところでは、いま問題になっているというふうなことは聞いておりません。まあ非常に多くの先生方も注目して見ておられますから、何か教育委員会が間違ったことと申しますか、恣意的なことをやりました場合には、当然それはいろんなところにはね返ってくるものだ、公正にやっていただけるものだというふうに考えているわけでございます。またそういうふうな問題点がございましたら御指摘いただきまして、これがほんとうに日本教育界に喜んで受け入れられるようにさしたいというふうに私どもは考えているわけでございます。   〔松永委員長代理退席、委員長着席〕
  63. 有島重武

    有島委員 大臣、いまの人選のような問題でございますけれども、これはずいぶん、大臣のようなお立場からお考えになれば、何をわがまま言っているのだ、一生懸命こっちがやってやっているのにと、そんなお気持ちじゃないかと思うのですけれども、教員のほうの立場から見ますと、これが一体教育界なんだろうかというような、非常に矛盾、疑問をお感じになるような種になる場合がしばしば多いようでございます。これは国体なんかの人選の問題のときにも起こっております。それが表面立って何か世間で騒がれた、ないしは法に触れたなどという、その段階にまでなってこなければ平気だというんじゃ困るわけなんです。そうしたようなささいな、上から見ればささいなもやもやのようなものが、まさに先ほどの愛情を枯渇させ、人材としての資格を四つ言われましたけれども、その使命観に疑いを持たせ、そしてその知識の吸収といいますか、成長をとどめ、投げやりにしていくような、そのマイナス要件のうちにそういったことも入っているんだというようなこともお考えいただきたいと思うのです。ですから、まだ目には見えてこないけれども、いろんなものがあるのだということは、よく知っていての上でもっていろんな配慮はしていただきたいと思うのです。大臣のお考えをちょっと承っておきたい。
  64. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私も相互不信というようなものがかなり強いものがあるということを、先般も日教組方々話し合いをいたしまして感じを持たせていただきました。ことに、今度の人材確保法案につきましては、五段階給与を目ざすものじゃないか、こういう指摘がいまだに消えていない点からも、そういう点を感じております。いま、五千人の先生方の海外派遣、これでつろうとしているんじゃないかという疑問を有島さんから投げかけられまして、はっとして私は聞いておったところでございます。私たちは、そんなみみっちいことを少しも考えておりません。望ましい先生である限りは、一定期間勤務されると全員海外を見ていただきたい、そして日本人の教育に当たっていただきたい、こう考えているわけでございまして、ことしは五千人でございますけれども、この人数をふやしていきたい、こういう考え方に立っておりますことをぜひ御理解をいただいておきたいと思います。
  65. 有島重武

    有島委員 善意でやっていらっしゃるということは私は認めるんですよ。認めてもいいわけです。だけれども、こっちが善意でいるんだから向こうも善意でそれを受け取れといっても、なかなかその間にいろいろなことがあって、かえってそれが人材となるべき人たちを圧殺しているようなことも起こっておるのだということは、やっぱり御配慮いただきたいとぼくは言っているわけなんです。  それで、先ほど五段階のお話が出ました。この委員会でも何べんか出ました。その五段階そのものについては私は触れたくはないけれども、一体どうしてそういうような、大臣のほうから見れば勘ぐりですね。そんなことはありません、こうおっしゃるのはそれはいいんですよ。だからもう一歩突っ込んで、どうしてそんなような発想が出てくるんだろうか。たとえば筋をたどっていけば、中教審がああだこうだありますよ。それにしても、どうしてそんなようなことが起こってくるんだろうか。これはイデオロギーの差であるというようなことで一足飛びに行かないで、いままでの、そう申し上げては失礼だけれども、筑波のときにも、こっちが一生懸命やってやっているのに、それがわからぬのは不勉強であるとかけしからぬとか、そういったような御発想じゃなしに、ほんとうに歩み寄って、しかも、それを的確につかんでいかれる。そしてそれをほんとうに一般化して行政化するためには、ただそういった個々の実感だけではどうにもなりませんから、そういったものを助けるという形なり何なりをお使いになるべきじゃなかろうか、そんなふうに私は御提案申し上げていたわけです。  それから、人事院にもう一ぺん伺います。私どもは、三年に六カ月ほどの有給休暇制をそこに入れるべきじゃなかろうか、給与改善だけじゃなしに、そういったことを考えるべきじゃなかろうか、そういったことを御提言申し上げておりました。これはいまはもう、大学出た学生さんたちが就職を選ぶ場合にも、確かに一面いえば大企業、しっかりしたところ、給料の高いところ、そういったところを望んでいらっしゃることも事実でしょう。しかし、その一面に今度、給与のいかんを問わず、その場でもってどのくらい今後いろんな研修ができるだろうかというようなことを条件にしていらっしゃる方も、非常に多くふえていらっしゃる。また研修というような制度的なものではなしにしても、それでどのくらい自分を人間としてみがいていくことができるだろうかというような視点から、職業を選んでいらっしゃる方もいるようであります。おそらく給与の問題以上に、私たちは思いますのにいまの若い方々、少なくとも教育界に身を投じていこうという、そのことがどういう理由からであろうとも、デモシカであろうが、意欲的であろうが、そういう教職員になられた方々が、自分の研修ということについては非常にやっぱり案じていらっしゃる、これは事実だろうと思うのです。  ところが、その研修というのは、これが自主研修というのはちょっとおっ放しにしておいて心配だという御心配も、行政のほうにはおありになるだろうし、それから、そうかといって各教育委員会でもって主催していらっしゃる研修は、これが何か将来校長になろう、それから教頭になっていく一つの登竜門のように扱われている場合があってみたり、あるいは純粋に教育知識技術を研修していこうとするところであっても、その収容人数が非常に少なかったりということがあると思うのですね。文部省のほうではおそらく研修ということについて、これからいろいろ、予算措置上あるいは制度の上でもって十分な措置をしていきたいという姿勢は、いまも示されているんじゃなかろうかと思いますけれども、先生方が望んでいらっしゃるのは、そういったきめられた研修というよりも、自発的に大学の聴講生になってみたい、あるいは社会の中で、アルバイト的にでもいい、もう一ぺん働いてみて——確かに教員というのも社会のうちには違いありませんけれども、ちょっと浮き世離れした社会のように外からも見えますし、教員の方々もそういったことでもって、ちょっと危惧を持っていらっしゃる場合もいまはおありのようです。と申しますのは、社会の変化が激しいから、子供たちがどんどんどんどんいろいろな知識を外で吸収してくる、それに追いつけない、あるいは父兄方々と会っても、先生という権威の上にいるから尊敬はしてくれるけれども、一個の人間としてつき合ったときには、何か時代おくれしたようになっているのじゃなかろうかというふうにあせりも感じていらっしゃるようです。そういったことから考えますと、かなり長期的な研修、しかもその研修期間はあまり制限を加えないで、何でも自由にやれというような、有給休暇というほうが近いかもしれない、そういうものを私たちは御提案していたわけです。人事院としては、その有給休暇のことについてどのようにお考えになり、評価なさるか、お聞かせいただきたい。
  66. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいまのお話は、かねて貴重な御示唆として、われわれも傾聴しておったわけでございますが、しかし、何ぶん相当徹底したお話であり、かつまた、お話しのように、よほど徹底しないと意味がない、中途はんぱでは意味がないんじゃないかという問題がそこに一つ根本的にあるわけでございます。そして、ただいま後段でお述べになりましたようないろいろな、われわれとして考慮すべき、あるいは検討すべき点も含んでおりますので、問題意識を持ちながら、今日それに踏み切ろうという決断は得ておりません。御承知のように、週休二日制の問題が近ごろ  ホットトピックスになってまいりまして、たいへん内幕の話を申し上げますけれども、これがまた学校教育との関係、かね合いなどもありまして、文部省でも非常に御苦労になっていらっしゃいますし、目下私どものほうで週休二日制のほうにとらわれている面もございます。何から何まで正直に申し上げますが、貴重な御提案として十分意識はしておりますけれども、いま結論を申し上げるという段階には、残念ながらまいっておりませんということでございます。
  67. 有島重武

    有島委員 大臣は先ほど不信感ということをおっしゃいましたけれども、こうしたことは不信感の上からは絶対に出てこないことなんですね。おっぱなしていけば何をするかわからないという不信感からすれば、そういうことは出てこないわけなんです。不信感というのは教職員側から文部省のほうにもあるわけですけれども、鏡に映したように、文部省側、行政側からも教育に対して不信感がやはり相当おありになると思う。これは、言いかえれば、非常に責任を感じていますから、国民から預かった税金を使い、国民から負託された教育という大事な事業を預かっているのだからということにもなりますけれども、子供だって、あんまり過保護でもって、全部管理して取り締まりをしたらいい子は育たないのであって、その子供を育てている先生方もある程度——ある程度というより、いままでよりも大幅に進んだ程度において信用してみて、そこに多少のまずい事件が起ころうとも、大きな方向でもって伸び伸びとしたものにしていくということ、これは大臣も望まれるところじゃないかと思いますので、ここで英断を下すようにとは申しませんけれども、その方向でもって御検討いただいたらよろしいんじゃないかと私は思います。大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  68. 岩間英太郎

    岩間政府委員 ただいまのお話は、研修の問題だと思いますが、私ども本年度の予算を編成するに際しまして、先ほど申し上げましたように、大臣に長期研修の代替教員一億円をとっていただいたわけですが、現実にこれを受け入れる側としましては、教育研修所、それから大学というふうなところが考えられるわけでございます。教育研修所は、各県では年間二十五名から三十五名くらいということでございますし、それから大学は、御案内のとおりこれから世の中に出てくる学生を養成しておるわけでございますから、実際にそういうふうな長期研修を受けられる方々を受け入れるだけの準備が整っていない、またそういうかまえになっておらないというふうなことがございます。  そこで、私どもとしましては、これを初めから受け入れるような、たとえば大学院でございますとか、そういうふうなものをむしろ教員養成としては考えていただいて、その上でやりませんと、長期研修と申しましても人数が非常に限られてくるということでございます。しかしながら、いままでいろいろお話もございますし、これに着手しようということで一億円の予算で代替教員を確保して、長期研修ができるように道を開いたわけでございます。この問題につきましては、先ほど人事院総裁からもお話がございましたように、基本的な問題というものを頭の中に置きながら、当面どうしていくかという問題について取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  69. 有島重武

    有島委員 せっかくの局長のお答えですけれども、いま人事院総裁はお気づきになったかもしれませんが、このくらいギャップがあるわけですよ。思い切っておっぱなしてみろと言うわけです。ところが行政側としては、ここにいらっしゃい、ここに来れば安全だ、そういうような研修所をつくらないとどこへ行ってしまうか心配だ、またよそから批判されても困る、そういった発想から出られないわけですね。それで、私はあえて大臣、と申し上げたのですが、文部省の局長さんとしてはそれでいいと思うのですよ。ただ、将来御英断いただきたいと言っているのは、行き先の心配をするよりも、もっと教員方を信用して、一ぺんおっぱなしてみたらどうかということなんです。だから、どの教員に限らず、たとえば三年に一ぺんは長期研修を持って、どういうふうに過ごすか見ていましょう。それで、研修所はこれだけあるけれども、人数としては入り切れませんよ、そういうことでもいいんじゃないかと思うのです。これは多少乱暴な意見かもしれませんけれども、何か閉ざされたシステムの中でただ配置がえをしていくというような発想、そういった発想は、まさに非教育的なものであり、愛情をそこない使命観を枯渇させていくというようなことにつながるんじゃなかろうかと、私は申し上げたかったわけなんです。これはすみからすみまで管理していくという方向ですね。そうではなくて、教育をほんとうに生き生きとしたものにし、風通しをよくするといいますか、あるいはもっと伸び伸びしたものにしたいという先ほどの大臣お話、そういったことも行政のからを破ったような発想ですね。これもやはり教員の方々とよく協議なさった上でおやりになったほうがよろしかろうと思いますけれども、御提言申し上げたい、そういうわけなんです。大臣の御所見を承っておきたい。
  70. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 教育の研修への自主的な努力を導き出すような環境を整備していくべきだという御趣旨のお話だと思うのでございまして、それについては全く同感でございます。どのような方法でそういう方法をつくり出すかということではないかと思います。海外派遣などもまさにいまおっしゃっているところに適合しているんじゃないかという感じがいたします。  同時にまた、先生方の余暇がふえてくるという場合には、そういう努力も期待することができると思います。ただ、まとめて時間をあげたから自主的な研修への努力ができるかということになりますと、やはり自主的な研修の努力ができるような環境をつくってあげる、そういう意味で初中局長がお答えしたのだ、かように考えるわけでございます。おっしゃっていることはよくわかりますので、そういうことに配慮しながら、研修への道をふやしていくということで考えていきたいと思います。
  71. 有島重武

    有島委員 環境をつくってあげるというような御配慮、これもたいへん御親切なお考えであろうと思うのです。そういったこともたいへんけっこうでございますけれども、研修の環境をつくっていくというのが、何か海外なりどこどこに、こういった団体を組んで、こう持っていくのだ、事件が起こったら責任はだれだれ、こういうふうにいつもなると思うのですが、私が申し上げているのはそうじゃなくて、もっとオープンにしてしまって、文部省がつくった研修環境ではないところでも、これは研修とは言いがたい、場合によればアルバイトをしてしまって、全く研修などではなくて金もうけをしておったということがたとえ起こっても、それは基本的に教育に志しているということがあれば、それでもって必ず子供の教育の上にいい結果をもたらすのじゃないかというようなくらいの考え方を私は持っておるわけなんです。ちょっとここで大臣のお考えになったのは、さっきのお答えでは、やはり行政のワクの中に押し込めておくという印象をどうしても払拭できないように思うのですけれども、私の申し上げている意味がわかりませんか。行政のワクから思い切って解放してあげるという、そういうような期間を、期間というのは、オーガニゼーションという意味の機関じゃなくて、そういうような日数的な時間ですが、時間をつくってみるということが、将来これは大切な問題となるのじゃなかろうかというふうに私は思うわけなんですけれども、おわかりになりますでしょうか、私の言っている意味が。わかりにくいですか、大臣
  72. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 有島さんの気持ちはよくわかっているのですけれども、具体的な方法がよくわからないのです。同時に、私たちも現職の先生方大学大学のようなものをつくりまして、そこで一定期間自由に勉強してもらおう、そういうものをつくりたいということもいろいろ論議をしている最中でございます。
  73. 有島重武

    有島委員 こういうことです。学校の教室からは解放してどこかに研修さしてあげましょう。そういった一つのワンステップがあると思うのです。それはやはり文部行政のワクの中でやっているわけですね。今度はもう一つの自己研修ないしは有給休暇といって行政ペースからも一ぺん解放してあげるということが可能ではなかろうか、そういうふうに二段階のことをいま申し上げていたのですけれども……。
  74. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 現行制度の中で有給休暇をおとりになり、自分で勉強する、たいへんけっこうなことじゃないかと考えます。
  75. 有島重武

    有島委員 そのたいへんけっこうなことを、かなり長期に確保してあげるということが、近い将来たいへん大切なことになるでありましょう。それが人材確保の大きな要件になるのではなかろうかと私は考えておりますし、いまここで決断せいということじゃありませんけれども、これは御検討いただきたい、お考えおきいただきたいことでございます。よろしゅうございますか、大臣
  76. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 よく研究していきたいと考えます。
  77. 有島重武

    有島委員 もう時間が来ましたからそろそろやめますけれども、最後に福岡の歯科大学のことをちょっと伺っておきたいと思います。  事件の経過についてはもう報道されたことでございますが、ここで問題になると思いますのは、贈賄でもしなければ大学の認可が得られないというようなことが現実にあったんでしょうね。となりますと、福岡の歯科大学の設置については、何か相当な欠陥があったんでしょうか。その点について、きょうは大学局長来ていらっしゃらないけれども、できれば大臣から御感想を……。
  78. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 背景に、私は自分の子供を医学部、歯科医学部に進ませたいという大きな需要があった、こう思います。またそういう背景もございましたので、四十五年から私立の医科大学、歯科大学だけで二十一校も認可を受けているわけでございます。そうしますとなかなかそれだけの先生をそろえることがたいへん——おそらく大学設置審議会でこの学校も一ぺんは取り下げを求めているわけであります。だから、そういうことでは認可申請をされた当局者は、かなり苦労しておられるのじゃないだろうかということを、その間にそういう意味でかなり無理な手段に訴えようとされたことが出てきたんじゃないだろうかというふうに、こういう推測を私としてはいたしておる次第でございます。
  79. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  80. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。
  81. 有島重武

    有島委員 いま需要が非常に大きいのだ、医師不足である、こういう現実を踏まえて、文部省としても非常にご苦労なさっていると思いますけれども、来年度の国公立の医科系あるいは医科歯科系といいますか、こういったことについて、特別にいまこうしなければならないというお考えはおありになると思うのですけれども、その辺はいかがですか。
  82. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 本年度の予算の中に四十九年度以降、四つの医科大学をつくらせていただきたいという提案をいたしたわけでございます。そういたしますと無医大県、医学部もないし、医科大学もない県が九県残るわけでございます。この九県につきましては、解消を目途に、国公立の医科大学の設置をはかっていきたい、こういう計画で考えられておるわけでございます。
  83. 有島重武

    有島委員 あわせまして、これは社会労働のほうの問題かと思いますけれども、現代医学のあり方そのものについてもやはり総合的に考えていかないと、ただ人数だけどんどんふやせばいいという、これは一つの需要に従ってやっていくという考え方もありますけれども、もう一ぺん医学をこのようにしていくのだというような方向性を持たなければならないときがいま来ているのじゃないか。そういった視点からもう一つ考えいただきたいと思います。  それから、そういった視点を総合的に研究して、これは文部省もかんでやっていくのと同時に、当面の問題としては、来年四校などということではもうほんとうに足りないにきまっているのですから、もう一ぺんお考え直しいただいて、さらにもっと拡大もし、充実もしなければならぬのじゃないか。いま文部大臣よりすでにきまっておることの説明でございましたけれども、こうした事件を通しまして、もう一ぺんこれは今後、夏の新しい予算要求の時期を前にして、もう一ぺんお考えになるべきじゃないかと申し上げたい、そういうことでございます。
  84. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 現在すでに計画のできましたところで、厚生省が従来から言っておられます、人口十万に対しまして医師百五十人、歯科医師五十人の供給が満たせるのでございます。満たせるのでございますけれども、今後さらに私立の医科歯科大学については、認可は慎重を期したいけれども、九つの無医大県の解消を目途に、国公立の医科大学は増設をはかっていきたい、こういう考え方でおるわけでございます。  同時に、お医者さんさえできればいいわけじゃございませんで、看護婦その他の技術者の養成のことも大切でございますし、   〔委員長退席内海(英)委員長代理着席〕 まずそういう面につきましては、今回も東北大学に設置させていただきましたけれども、医療技術短期大学部に編成がえをしたわけでございますけれども、こういうものも次々に準備の整ったところからつくっていきたいという考え方で進んでおるわけでございます。より根本的には、医療制度に問題があろうかと思います。また、医療保険制度に関しましては抜本的な改革が多年叫ばれてきておるところでございますので、こういう問題と並行して、やはり医師のモラルの確立というようなことも非常に大切な問題になってきている、私もそんな考え方でおるものでございます。
  85. 有島重武

    有島委員 医師の数については、日本としては絶えず先進諸国と比較をして足りないとか足りておるとかということをいっておりますけれども、東南アジアの国々なんかは、もうまるでたいへん低い程度の状態にあるわけでございまして、いまの日本の医科教育ということから考えますと、むしろ東南アジアの若い方々日本にいらっしゃい、医科教育日本でまかなってあげるというくらいの何か大きな構想をもって進めていかなければならないんじゃないかと私は思うわけです。どうしても、現在の日本の需要だけでもってアップアップしているということですね。そこから一歩踏み出して、また何か構想をお持ちになることが必要だ、一面広く考えればそういうことだと思います。  それからもう一つ深く考えていくということになりますと、いまの西洋から渡ってきたそうした医学のあり方というものが、もう一つ考えられなければならないんじゃないだろうか。これは国民の、事健康ということを思ったときに、お医者さんがふえることが健康を確保することかどうなのか、そういったような問題も広がると思います。そういったことをどこが考えてくれるかということになりますと、やはり中心になるのはほんとうは文部省がその推進力になってもらいたいようなふうに私は望むわけであります。
  86. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 何人くらい医師を養成していくべきかということにつきましては、やはり厚生省の意見に私たちとしては従わざるを得ない、こう思うわけでございます。しかし、これからは厚生省の要請以上の養成をはかることになるわけでございますので、九つの県の無医大県の解消、それは厚生省が考えておった人数よりもこえていくことになるわけだけれども、やっていきたいということについては厚生大臣の了承も得ているわけでございます。厚生省につきましては、いま有島さんのおっしゃっているようなことも十分踏まえて、そうしてなお医師の数をふやしていきたいのだ、こうあるべきだという線を明確にされることを私としては期待していきたい。また、それなしに、厚生省と考えが食い違ったままに文部省学校の増設をさらに一そう進めていくということになりますと、若干政府部内の意思不統一ということになりますので、やはり基本的な責任は厚生省も負ってもらいたいなという気持ちは抱いておるわけでございます。お気持ちはよくわかっており・ます。
  87. 有島重武

    有島委員 厚生省の要請だけでなしに、また食い違うこともなしに、そこはお話し合いの上でもってやっていただきたいということでございまして、しかも厚生省だけじゃなしに、外務省のほうとも、科学技術庁のほうとも、そういったような総合的なことがどうしても一つあって、それで進めていらっしゃるということが必要だと思うのです。  それからこの間水増し入学につきまして、百二十人のところに二百八十人の学生さんが入ってしまった。入ってしまったらば、もうこれは文部省としては手がつけられようがないのだ。それだから、そうやかましく文部省が責めないことにすれば、これはそういったこともやかましく取り締まるようなひとつ条例なり何か制度をつくっていかなければならないというようなお話があったようでございますね。私はあまりそういった条例なんかをつくったり、そういったことをやかましく管理する制度をつくるということは反対です。取り締まりによってそういうことを解消していこうということではなしに、従来水増しがあったとしても十人、二十人程度のことであった。それとても、ほんとうはいいことではありませんけれども、そういうことを取り締まりによって何か処罰していくというような方向というのは、教育界の中にそういうものを持ち込んでくるというのは、あまり上策ではないように思います。それもさらに御一考いただきたいと思いますが、これはお答え要りません。終わります。
  88. 内海英男

    内海(英)委員長代理 山口鶴男君。
  89. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 人事院総裁が、八月の初旬に予定されております人事院勧告を控えまして、たいへん多忙だというお話を聞きました。したがいまして、最初に人事院総裁お尋ねを集中をいたしたいと思います。私は、この教職員給与を決定するにあたりまして、他の公務員と違って、教職員給与のきめ方の歴史を拝見いたしますと、どうも異常だったんではないだろうかという感じがいたすのであります。国家公務員法また一般職の給与に関する法律を拝見いたしますと、人事院の権限が書いてございます。人事院の問題につきましては、ここで私が申し上げる必要もないと思うのですが、マッカーサー書簡に基づく公務員の労働基本権が一部制限をされましたその代償措置として人事院が生まれた。そういう中で人事院が生計費あるいは民間の給与その他を勘案いたしまして、毎年給与の勧告をするという形で公務員全般の給与がきまってきた。他の公務員諸君についてはいずれもそうだったろうと思うのでありますが、事、教職員に関しては、どうもそうでない歴史があったと思います。具体的に言えば昭和二十八年当時自由民主党の赤城宗徳君外二十三名の提出によるいわゆる給与の三本立ての法律というのが議員立法として提案され、これがしゃにむに国会を通って成立をいたしました。そしてまた今回この法律国会にかかっているわけでありますが、人事院の設立の趣旨あるいは人事院の権限その他考えていけばこんな法律は全く必要がないのであって、佐藤さんさえしっかりしておればりっぱにこの問題は片づいてきたはずだと思うのですが、どういうわけか知りませんが、こういうような人材確保法案なる法律案を私ども審議しなければならぬという立場に立っておるわけであります。  そこで、お尋ねしたいのですが、昭和二十八年議員立法であのような法律提案をされました。それに対して当時人事院はどのような考え方であり、またどういう態度をおとりになったのか、それをまずお答えいただきたいと思うのです。
  90. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 二十年前のことで、私自身は関係しておりませんけれども、承知しておりますところでは、昭和二十八年の七月に人事院から一般の給与、当時の給与準則にかかわる勧告を国会と内閣に勧告いたしておったわけであります。その中に、もちろん教員の給与に関しましても、人事院考え方が盛り込まれておったわけであります。そこにいまお示しの議員立法の提案がございました。そして、その議員立法の提案が成立したということになりますけれども、この給与準則の関係の勧告そのものは、全体的に職階制を基本にしたというような点もございましたでしょうけれども、それはそのままの形では結局成立はいたしませんで、実質的な賃上げの分だけが成立したというように考えておりますが、要するにそういう非常に複雑な経過のもとに、いわゆる三本立ての体制ができ上がった。当時の速記録を開いてみますと浅井総裁であったと思いますけれども、滝本給与局長が、やはり御審議において質問を受けております。その趣旨はあまりはっきりした露骨なことは言っておりませんけれども、要するに人事院としてはこの給与準則に関する勧告の中で教員のことは一応うたっておる。そして給与準則に基づくその勧告をどう措置されるかということは、実は三本立ての法案よりもあとにずらされておるわけであります。そういうタイミングの関係もあって、またあとはあとという一つの余裕もあったせいかもしれませんけれども、あまりはっきりしたことは言っておりませんけれども、とにかくわれわれはわれわれとしてこういう案を考えておりますということは主張しておるわけです。そこで、われわれ当時の給与準則に基づく教職員関係の給与を、当時の人事院はどう考えておったかといいますと、俸給表の上では三本になっておるわけです。しかし、小中学校先生高等学校先生は、実質的にはずっと同じ扱いをしておったということでございますから、成立いたしました三本立ての法律とはその点が違っておるということは事実でございます。
  91. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、当時人事院としても、教師給与改善については考えておった。考えておったにかかわらず、自民党の赤城宗徳君あるいは益谷秀次君外二十三名の人たちが強引に議員立法を出したために、率直に言えば人事院はメンツはつぶれた。しかし、準則を勧告する過程で、からくも人事院の意向というものが若干ではあるが反映をした、こういうわけですね。  具体的に教師給与は一体どのように改善しようと当時人事院考えておられたんですか。
  92. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 さっき申しましたように、一、二、三の表には分かれておりますけれども、すなわち高等学校先生の分、それから中小学校先生の分は一応表は別になっておりますけれども、大学を出た方の初任給のひっかかりのところは、高校の先生のほうは一号俸で七千八百円という初任給でなっておるわけです。ところが中小学校先生の関係は、大学出の人で——とにかくそういうことがちょっと違いますけれども、詳しいことは給与局長から御説明させますけれども、そこの出だしのところの数字がちょっとずれているだけで、あとはずっと何号俸、何号俸というのは、みな同じ数字が盛り込まれておる。一口に言えば実質的に同じ扱いをしておったと言わざるを得ないというようなことになっております。しかし、私とっさにこの表を見てやっておりますので、給与局長からひとつ答えさせていただきたいと思います。
  93. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 昭和二十三年以来の教員給与につきましては、中小学校高等学校先生給与といたしましては原則として同一学歴、同一初任給ということで同じカーブを上がりまして、しかし一番の最高のところにまいりますと中小学校先生高等学校先生とが違うという形になっておったわけでございます。それが同じ俸給表で取り扱われておったというのがいわゆる三本立て以前の話でございます。それが私どもの検討といたしまして、いわゆる職階制に基づく給与準則の作業の結果といたしまして、従前と実質は同じ内容でございますけれども、形式的に中小学校の俸給表と高等学校の俸給表を分ける、実質は同じでございますが、形式は分けるという形のいわゆる三本立ての勧告をいたしたわけでございます。その後、いわゆる三本立て法案というのが出たわけでございますけれども、その内容といたしましては、初任給は同一学歴、同一初任給というのは同じでございましたが、若干ある等級、つまり当時で申しますと四級から九級までの間におきまして、一号俸中小学校より高等学校を有利にするという、途中において有利にするといったような形が含まれておったということでございます。
  94. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 他の教職員以外の職種について、議員立法でいわば給与改善措置が行なわれたというような例が、今日まで他にございますか。
  95. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 御承知の例の寒冷地手当に関する法律がございます。これがそうです。
  96. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 諸手当ではなくて、本俸に関する問題についてあるかと、こういうふうに質問しているわけです。
  97. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 それはないはずでございます。
  98. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いまだかつてない。  それから同じように聞きますが、法律をもって勧告をしなければならないというような法律が、教職員以外の他の職種について今日まで国会提案された例がございますか。
  99. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは御承知のとおりに、国家公務員法の二十八条ですか、五%以上増減する必要のある場合は、人事院は勧告しなければならないと書いてございます。
  100. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 しなければならないと二十八条でなっておるから、そういうようなおかしな法律は、今日まで出たことがなかったということですね。  佐藤人事院総裁お尋ねしたいと思うのですが、どうして教職員給与の問題に限って、いまお触れになりました、法律に規定された人事院の勧告の権限を、侵すといえばあるいは反論があるかもしれませんけれども、とにかく制約を加えるような、あるいは議員立法で人事院の勧告権というものを無視するようなものが、教職員給与に限ってのみ行なわれたし、また現に行なわれようとしているということに関して、御感想というものはありませんか。
  101. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 別段感想めいたものはございませんけれども、基本的に申し上げさせていただきたいのは国会の立法の形でいきます場合に、われわれがこれに対して抵抗感を持つということは基本的な態度としては許されないことで、この間ちょっと申しましたように、これは昔の憲法でいえば不敬罪に当たる、国権の最高機関がおやりになることに対して、好ましくないとか、おれたちの権限をどうしてくれるというようなことは申すべき立場でない、私はそういう点では憲法意識に徹しているつもりでございます。したがいまして、法律の形でこれをおやりになることを、すべて阻止するとかなんとかという立場はとれませんけれども、一番大事なことは、その立法過程において、提案された原案そのものに対するわれわれの見解というようなものは、これはまだ案でございまして、国会の御意思の確定する前でございますから、その段階においてはどしどしわれわれの意見を述べさせていただく、したがいまして、われわれの賛成すべきものであれば、もちろん今度の法案もそうですけれども、大いに賛成してまいりますけれども、たとえば、かつて私の在任中においても、あまり賛成できない法案が出されたこともありました。そういうときには、極力われわれの意の存するところを申し上げて、御納得を得て、幸いにしてその場合においては御納得を得ましたから、われわれの考えるところと一致した形で法案が成立いたしました。したがいまして、法案の成立の過程においては、はばかるところなくわれわれの信ずるところを申し上げて、そして国会の御参考にするということで徹しておるわけでございます。
  102. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 よくわかりました。いま審議をいたしておりますこの人材確保に関する法律案法律案作成の過程では、当然人事院にも御相談があっただろうと思うのです。そのとき、佐藤さんとしては、一体どのような御意見を申し上げたのですか。率直な、当時の人事院としての考え方を、ひとつお述べをいただきたいと思うのです。
  103. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは文部大臣から意見を聞かれましたから、「文部大臣奥野誠亮殿」という形で答えております。この内容も言ってもいいと思いますから、そのとおり読みます。   標記について、下記のように回答します。      記   貴案については、その内容の一部ににわかには精確な判断を下しかねる点もあるが、教育職員給与改善については、当院として、かねてから努力してきたところであり、かつ今後の改善についてもその必要性を認めているところであるので、教育職員給与について特別に改善を図るという貴案の根本の趣旨には異存はない。 文章を読めばそういうことです。
  104. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 委員長にお願いしますが、資料としていまお読み上げになりましたその当時の文書を配付をしていただきたいと思います。  そこで、お尋ねしたいと思うのですが、人事院としては、かねてから教職員給与改善について努力してきたし、今後も努力するにやぶさかではない、こういう趣旨が書いてあるんですね。であれば、このような法案は出す必要はないというのが真意だったわけですね。お述べにはなりませんでしたが、人事院は勧告権がある。また勧告しなければならぬ義務もある。しかも、人事院としては、教職員給与改善はかねてから努力してきたし、今後も大いにやろうと思っているのだ。とすれば、何もこんな法律がなくても、人事院としては幾らでも勧告はいたします、というのが、いまお述べになった趣旨でしょう。そういうふうに理解してよろしいわけですね。
  105. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 いま読みました趣旨は、それに限るわけではないわけです。けっこうなことであるということは、もちろんそうですけれども、しかしただ、法律なしでやっていただきたいというのか、ぜひ法律の形でやっていただきたいというのか、私どもとしては法律のほうが好ましい、これははっきりそう考えております。それはまあなしでも、理論的にはお金さえあればこれはできることですから、根本論としてはそうでありますけれども、今度のような場合になりますと、法律の形ではっきりしたお墨つきの形にしていただきますと、われわれの作業として実は非常にやりやすいところがある。この間突破口というような、ちょっとよけいなことばを使いまして、大げさな表現はいたしましたけれども、他の行政職との関係その他において、こういうお墨つきをいただけば非常にぐあいがいい。したがって、ほかの公務員の方々にも喜んでいただける結果が、容易にこれによって実現する。ちょっと邪道でありますけれども、何も便乗というようなけちくさいことじゃなくて、基本的な問題としてそうあると、われわれとして非常に力強いという気持ちがいたしまして、正直に申しますけれども、今度のものは、どうも法律でやっていただくに越したことはない、これが一番だということで、文部大臣には非公式にはそういうことを申し上げたのでございます。  それから文章のわかりかねるところがあるということ、ちょっとさっき読みましたけれども、これはよけいなことを読んだと思いますけれども、わかりかねるところはわかりかねるところで、われわれは法律が成立すればわがほうの自主的な独自の判断で解釈いたしますから、わかりかねるところはあってもちっともかまわない、われわれの正しいと信ずる読み方をすればいいわけですから、ただ階もない、五の字もないということもありまして、われわれとしては全面的に賛成をしておるわけでございます。
  106. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 このわかりかねるというのは、具体的にどこですか。   〔内海(英)委員長代理退席、委員長着席〕
  107. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 三条の規定ですか、三条で何か一般の行政の公務員の給与水準との関係に言及している条文がございます。これはどうも文章があまり精密じゃない。ちょっとこれは技術的の批判になりますけれども、それは率直にここでも御議論になりましたから、文章がじょうずだとごらんになるかどうか、これはわれわれもちょっとわかりにくいなということを申し上げておるわけです。しかし、それも先ほど申し上げました、何も、それによってわがほうがかく解すべきだというふうに独自の見解でいけば、勧告するのはわれわれが勧告するのですから、この法律に対する独自の解釈権は私どもが持っておるという気がま身を持っているから、これは心配には及ばないことです。  それからもう一つは、「計画的」——この間、暗殺計画とか、非常に不穏なことばを申し上げましたけれども、これは「計画的」ということばがどうしうことを意図しているのかということも、これだけの文章じゃどうもはっきり——悪い計画じゃないことははっきりしているんですよ。これは五の字の関係はありませんから、それは絶対安心ですけれども、さあそのあと何十%、一〇〇%まで上げろという計画なのか、どういう計画かよくわからないということを率直に申し上げただけでございまして、この計画も、この間ちょっと御答弁申し上げましたように、「国は、」とありますから、国の一つの機関として人事院も存在しておりますから、国権の最高機関、「国は、」でありますから、何も私ども一人であくせく心配する必要はない、考えてみれば、よけいなことを言ったものだという気もいたしますけれども、率直な感想を述べさしていただけば、文章の上では明快を欠くところがあるだろう。しかし、計画としても悪い計画でないことははっきりしておる。これだけはだいじょうぶです。
  108. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 元法制局長官から見て、どうもいかがかと思うような法律を出した文部省は、その点では反省をいただくことがいいじゃないかと思いますね、先輩を大いに尊敬する意味において。  大臣に聞きますけれども、「計画的にその実現に努めるものとする。」この計画は、具体的にどういう計画ですか。
  109. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 文部省から予算要求いたしましたのは、将来五割の引き上げを行ないたいのだ、さしあたり二割五分の予算要求ということで大蔵省に折衝したわけでございます。最終的に今年度一〇%ときまったわけでございまして、その際に、これだけではないのだ、将来引き上げていくんだという意味で、何という表現を使いましたか、計画的に給与改善を行なっていくんだという意味の申し合わせをしたわけでございます。その申し合わせのことをそのまま法案に盛り込ましていただいたわけでございます。要するに一〇%ということは、ことしそれだけで終わるものじゃないんだということを法律の上でも明確にさせていただいた。結論は、いま研究調査会で調査を進めていただいておりますので、その調査の結果を待ってきめるわけでございます。いずれにいたしましても、そういう意味でことしだけで終わっているわけじゃない。今後なお引き続いて改善をはかっていくんだということでございます。
  110. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、結局、文部大臣と大蔵大臣との間でかわした念書がありますね。「教職員処遇の抜本的改善については、昭和四十八年度を初年度とし、年次計画を立ててこれを実施する。」この念書に「年次計画」というようなことばがあったので、したがって、その法律の附則の二項に「計画的にその実現に努める」ということばを入れたということですね。とすれば、当然念書もかわして、年次計画で改善することになれば、その計画は、初年度として本年度は二五%の要求したが、一〇%に終わったわけですね。そのあとは、一体、どのような具体的な数字で計画的に改善をしようとしておられるのですか。
  111. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 その結論を、四十七年度、四十八年度と二カ年計画で、文部省教職員給与改善の研究調査会を設けておりますので、結果を待ってきめたいということでございます。
  112. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうすると、いまは白紙だということですか。
  113. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 文部省からの要求の過程などからお考えいただきましたらわかりますように、大幅な引き上げを行ないたい、一〇%よりも、もっと大きな引き上げを行ないたいということでございます。
  114. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 文部省が発行しました「これからの学校教育 中教審答申一問一答」、こういうのがあります。これを拝見いたしますと、問四十三「答申は、すぐれた教員を確保するため、どのような方法を提案していますか。」「教員の初任給を一般公務員に比べ三〇〜四〇%高くするとともに、校長の最高給を一般行政職の最高給まで到達できる道を開くなど、給与その他の処遇を抜本的に改善する方策を提案しており、」一般行政職の最高給といえば、これは東大総長の給料ですね。そこまで「到達できる道を開くなど、給与その他の処遇を抜本的に改善する方策を提案しており、これらの教員の資質向上処遇改善に関する各般の施策を総合的に講ずることによって、」云々と書いてあります。  それから問四十五「答申が提案した教員の給与改善の内容は、どのようなものですか。」いろいろ書いてありますが、「一般公務員に対し三〇〜四〇%高いものとし、なお、校長の最高給は一般行政職の最高給(事務次官、局長などの指定職の俸給)まで到達できる道を開くこと。」などと書いてあります。  そうすると、先ほどのお話を聞くと、五〇%まで持っていきたいというようなお話でしたね。当面二五%、将来は五〇%、これを見ると三〇%ないし四〇%。一体どれを信用していいのかわからぬのですが、どうなんですか、ほんとうの文部省気持ちというものは。
  115. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 文部省が正式に大蔵省に予算要求をいたしましたのは、将来五割で本年度二五%という要求でございました。これらにつきましては、各方面の御理解をいただかなければなりませんので、研究調査会で結論を急いでおるところでございます。
  116. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 人事院総裁のお時間もお忙しいようですから、この問題はしばらくおいて先に進めましょう。  そこで、大臣にまずお尋ねしたいのですが、本日は七月の十八日ですね。当七十一特別国会の当初の会期は五月二十日まで。六十五日間、当時の中村衆議院議長のことばをかりれば常識的な会期延長幅ということで、七月二十四日が当七十一特別国会の最終日ということになっています。そして国会では、この国会国民の皆さまから出た請願の処理についても、当然会期の一週間前にはこれを打ち切るということから、議運の理事会で七月十七日をもって請願の受け付けば打ち切るということを決定いたしました。といたしますと、当特別国会の会期は余すところわずか六日間ということになります。六日間では、この人材確保法案が衆議院を通り、参議院を通って成立するということは、全く不可能だ、かように考えます。物理的にそうでしょう。ですから文部省も、いただきました文部広報というのを拝見したのですが、昭和四十八年五月二十三日、文部広報の五百七十一号「人材確保法案の理解のために」というやつですね。一番最後に「もし不成立なら」と書いてあるわけでありまして、なるほど文部省というのは、頭がよろしい方がそろっているせいか、国会に対する見通しもよろしい。成立しないことが十分あり得るということを、五月二十三日の段階ですでに察知をせられておったと考えまして、非常に敬意を表するわけでありますが、文部広報もこういうことを予測して書いておられる。会期の状況もいま申し上げたとおり。しかも参議院は、お互い御案内のようなきわめて不正常な状態にございます。とすれば、大臣どうですか。この人材確保法案は今国会で成立することは不可能であるというふうにすでにお考えになっておると思うのですが、いかがですか。
  117. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 この法案の趣旨につきましては、私は積極的な御賛成をいただけるものと深く期待いたしておりますし、この国会はまだ相当な日数がございますので、必ず成立させていただくものと深く、強く期待いたしております。
  118. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 法案がいいか悪いかということは、お互い認識の問題ですから、これはここでやりとりすることは一応やめましょう。このあとの質疑でその点を明らかにしたいと思います。  ただ問題は、お互い会議員として、大臣もそうですが、国会の運営というものにはそれぞれ長い間携わってきたわけで、おのずから国会運営の常識というものはあるのです。そしてさっき言いましたように、きょうが七月十八日なんですから、残っているのは十九、二十、二十一、二十二日は日曜ですから、あと二十三日と二十四日、その期間は五日ですよ。そしていま衆議院で質疑が始まってやや半ばになるか、こういう状態でしょう。まだ衆議院の審議で当然、三日や四日かかるのは常識だろうと思いますね。そうすると、もう定例日は二十日一日しかないでしょう。あと衆議院の定例日はないのだから、衆議院を通るということは大体もう不可能だ、こう思わざるを得ないでしょう。そこへもってきて、また参議院さんというのがあるわけですからね。良識の府たる参議院があるわけですから、そうなれば大臣、どうなんですか。常識的に考えて、この国会、この法案が通らぬということは、これは一〇〇%というと大臣に悪いからいいませんが、九九・九九%くらいはもう不可能だ、こういうことになるのがあたりまえじゃないですか。いかがでしょう。
  119. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 これは、見解の相違かもしれませんけれども、私はここの委員会における論議の経過を見ましても、この法案は不適当だというふうな結論は出そうにないように思うのでございまして、私は、この論議の経過を顧みますと、賛成をしていただける、こう思いますし、まだ相当な日数もあるわけでございますので、必ず成立させるように御協力を得たいもの、これは山口さんに心からお願いを申し上げておきます。
  120. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私は、内容がいい悪いというのはしばらくおきましょうと言っているのですよ。残っておるのは、結局六日間しかないわけです。そのうち日曜が一日あって、衆議院の文教の定例日は一日しかない。そういう中で通ることは、物理的に不可能ではないだろうか。そういうことに対する大臣の——大臣国会運営には長い間携わってきたわけで、しかも、自民党の総務局長として党務にも十分携ってきたわけですからね。そういう意味ではおのずから国会運営の常識というものがあるわけですから、当然常識的な判断というものがあるだろうと思うのです。内容がいい悪いというのは、これから議論しましょう。それはおきましょう。そういう国会運営の今日までの一つのルールというものですね、しかも、参議院がまだ残っておるという中で、大臣の御認識はどうだろうか、こう聞いておるわけなんですよ。
  121. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、いろいろな法案が最終日一日で両院とも議決されたというものをたくさん承知しておりますので、まだまだ成立を期待していける、かように存じておるわけであります。
  122. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 国会には、たくさん法律が出まして、確かに大臣御指摘のようなケースのあることを私は否定いたしません。ただ、この法律は衆議院本会議で趣旨説明が行なわれ、自民党、社会党、二人の質問者が立って、そして総理大臣及び文部大臣等から答弁があった法案です。いわば国会の扱いからいえば重要法案です。そういった、本会議の趣旨説明まで行なった法案が、いま言ったようなケースになることはきわめてこれは希有なことであると言っていいというのが、これまた私は国会の常識だろうと思うのですね。そういう点、いかがですか。
  123. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 どうもこれは、見解の相違ということになってしまうのかもしれませんけれども、やはり日本教育界日本国家社会の将来の命運を託しているところでございますから、格別の充実をはかりたい、こういう理解が深まってくれば、同時にまた、五段階給与を目ざしているのじゃないかというようないろいろな疑念もありましたけれども、たびたび申し上げましたように、相互の不信感が原因になっておるのではないかということも言っておるわけでございますけれども、こういう問題も解けてまいりますれば、積極的な御賛成をいただける内容のものではなかろうか、こう思っておりますだけに、決して私は望みを捨てていないわけでございます。
  124. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 どうも私の質問に、大臣まっこうからお答えにならぬで、内容のことはあとでやろうと言っておるのに、内容のことばかり強調しておられますけれども、水かけ論になりますからやめておきましょう。  佐藤人事院総裁も、かつて法制局長官として、国会にはずいぶん長い間御関係をされたわけです。いま私と大臣のやりとりを聞いておったと思うのでありますが、こうなりますと、今国会の成立の可能性というものはきわめて少ない。まず審議未了、廃案になるか、あるいはそういうことはほとんどないと思いますが、場合によっては国会処理のしかたとしては継続審議になるか、二つのいずれかであろうと思うのです。そうした場合、当然もう人事院総裁としては、特に長い間の法制局長官として国会運営にも携わった佐藤さんとすれば、当然いま私が申し上げたようなことについては理解がいくと思うのです。  さて、そこで私がお尋ねしたように、人事院とすれば、昭和二十八年のころから教職員給与については改善努力をしてきたし、今後も積極的に改善努力をしたいというお気持ちを持っておるだろう。そうしてまた、先ほどお読みになりましたような文書も、文部省に提示をされた。現在の人事院も、教職員給与改善について、積極的な御意思をお持ちになっておる。しかも人事院は、私が申し上げるまでもなく、国家公務員法二十八条あるいは一般職の職員の給与に関する法律の第二条によって、国会、内閣に対して給与の勧告をするりっぱな権限をお持ちになっておられる。といたしますならば、この国会、この法案が通らぬで審議未了、廃案あるいは継続審議になった場合、人事院としては、教職員給与を抜本的に改善したいという御熱意を、どのような形であらわすおつもりでありますか、それをお聞きをいたしておきたいと思います。
  125. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 昔、法制局長官をやっておりましたけれども、いま最も私どもこの法案に対しての情熱を持っておりますのは、人事院総裁として情熱を持っておるわけであります。それはすなわち、この法案に書いてある中身は、全部人事院にまかせるということでございます。要するに、人事院を全面的に信頼されての法案でございますね。したがいまして、私どもの立場からいうと、人事院の信頼度に対しての国会の御判定のテストだと考えることもできるわけです。これが流れたら、もうわれわれに対する信頼度はゼロになってしまうという思い詰めた気持ち一つ。  もう一つは、教員の方々が喜ばれるばかりでなしに、ことばが足りませんから詳しく説明はできませんけれども、これをきっかけにして、いわゆる便乗のようなさもしい形でなしに、基本的に、  一般の公務員の待遇改善のこれは一つの布石になるんだという、これは一般の公務員諸君がまた大きな期待を持っておりますから、そういう立場からいいますと、これは是が非でも通していただかなければならぬという気持ちを持っておるわけであります。  そういう気持ちの、立場のわれわれに対してのいまのような御質問は、当選をねらっておる者に対して、おまえ、もし落選したらどうするかというようなお尋ねと同じでありまして、まだ投票日までには十分ございます、ぜひ御声援を願います、ぜひ当選させていただきたいというのが偽らざる心情であります。よろしくお願いいたします。
  126. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私も、県会の選挙二回、衆議院の選挙五回やりましたから、落ちたらどうするということを聞かれたこともございます。ですから、それはいろいろあるわけですよね。ですから問題は、通ることもあるし通らぬこともある、いずれかなんですから、それはもう佐藤さん否定なさらぬだろうと思います。通らぬ場合は継続審議か廃案か、これも国会の手続からいえばはっきりしておるわけですよね。ですから、それは人事院総裁のお気持ちはわかりますよ。お気持ちはわかるが、しかし、いま言ったように、国会運営の常識からいえば、九九・九九%くらいは無理だということは、これはもう予見されるのですから、子うしたことに対して、どうしますかということなお尋ねするということも、これは国会議員としての当然私は権利だろうと思うんですね。ですから、ひとつお答えをいただきたいんです。
  127. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 もし私が国会議員でもあれば、あるいはフランクにお答えできるかもしれませんけれども、私は不幸にして国会議員ではありません。しかして、私の基本的の精神は、先ほども申しましたように、国会至上主義の立場に立っているということから申しますと、国会の審議権というものはわれわれのくちばしをいれるべき、また彼我批判すべきものではありません。国会の御審議権にかかわることを、こうなったらどうだ、ああなったらどうだということを申しますと、去る五月にも、何か問題があったようなことになりますし、これはきわめて不遜なことだし危険なことであるということで、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  128. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 だから、審議をすれば、与党の諸君にもわれわれ野党にも審議権があるわけですからね。審議権の行使は、成立をするという形であらわれる場合もあるのですよ。また逆に、小選挙区はじめ、あくまでも阻止する、成立に反対をするというかっこうで審議権を行使する場合というのはあり得るわけです。野党の場合は、残念ながらこの法案を流すというかっこうで審議権を行使するというのが、これはすべてではありませんけれども、そういう場合があり得ることは、佐藤人事院総裁もよく御存じのとおり。だから、当然すべての法律、そうでしょう。この法律が通った場合に、一体どのような行政措置をするか、行政指導をやるかというようなことは、国会でもずいぶん議論になる。通らなかった場合、一体どうかというようなことも、これまた当然議論になるわけです。これはどこの委員会だって同じようなことで、どこの委員会でもそういう議論はいたしますよ。ですから佐藤さんとして、何もそのことについて、通らなかった場合をどうするというようなことを言うことが、これは国会の審議権に対する干渉であり不当なことだというようなことにはなりませんよ。  五月十幾日といえば、これは江崎自治大臣国会で発言したことをおさしになるのだろうと思うのですが、これは国会の会期延長あるいは小選挙区をどうするこうするというときに、小選挙区に対する提案のしかたについて発言をした。特に国会の会期延長については、政府が、二階堂官房長官が、国会の会期延長は考えておりません、こう言っているときに、会期延長になった場合を想定して発言をされたからこれが問題になったのであって、法案が通った場合どうするか、通らなかった場合どうするかというようなこととは全然性質が別なことですから、だから、その点はひとつ賢明なる佐藤さんですから、あつものにこりてなますを吹くということがありますけれども、何もなますを吹く必要はないのであって、佐藤さんがお答えになったからといって、私がそれをでっかい声を出して、けしからぬというようなことは決して申しませんから、ひとつフランクにお答えをいただきたいと思うのです。
  129. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 百方なだめていただきましたけれども、私どもとしてはもう思い詰めております。まだまだ会期もございますし、ぜひ成立させていただきたい、その一言に尽きるわけでございます。
  130. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 かつて上州前橋で学校にも学ばれた先輩佐藤さんでありますから、これ以上はあまりお答えしたくないものを無理にお尋ねするのも恐縮だと思いまして、遠慮しましょう、これ以上お尋ねするのは。他の人に聞きましょう、それでは。  さて、そこで佐藤さんに、ほかのことでお尋ねしたいと思うのですが、今度人事院勧告は一体いつなされますか。八日以前に勧告を出したいということは言われておられるようですね。しかも、人事院の勧告の例を見ますと、閣議の日に勧告をされるのが例になっています。したがって、八月八日以前の閣議のある日を調べますと、八月三日の金曜日と、それから八月七日の火曜日ということになります。いずれの日に勧告をお出しになる予定でございますか。これが一つ。  それからいま一つは、勧告の幅はどの程度になる見込みでございますか。今日までの例を引いてお尋ねしたいと思うのです。ことしの公労協の給与改善が定昇込みで一七・四九%ですね。定昇は除きますと、一四・七四%ということになります。人事院勧告の幅は定昇抜きでありますから一四・七四%、これが一応の目安になります。従来の勧告を見ますと、この公労協の定昇を抜いたアップ率プラス〇・一%ないし〇・〇一%であります。といたしますと、従来の例からいけば一四・八四%ないし一四・七五%というふうに類推ができます。大体その類推で当たっておりますかどうか、この点をひとつのお聞かせをいただきたいと存じます。
  131. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 たいへんうがった、かつ耳寄りなお話を承らせていただきまして、非常に参考になります。私どもの気がまえといたしましては、できるだけ早く勧告を申し上げたい。昨年は十五日でございましたけれども、ことしはもう極力、統計局の作業がこれはたいへんなネックでございますけれども、総務長官以下統計局長にも十分お願いして急いでいただいて、少なくとも五、六日ぐらいは絶対スピードアップしていただけるだろうと思っております、まだ確証は得ておりませんけれども。したがいまして、われわれとしては、できればいまから書けるところはどんどん書いて、パーセンテージはもちろん書けませんけれども、それ以外の不動文字は書いておくくらいにして、七月一ぱいくらいに出せたらどうだろうというようなことで、それくらいの気魄を持っていまやっております。したがいまして、この御答弁が済んだらすぐ失礼させていただきますけれども、そのくらいの意気込みでやっておりますけれども、これは確かに万一ずれることもありましょう。  そして閣議の日までお教えをいただきましたですけれども、閣議の日ということは、実は前にずっと、悪いことばでありますけれども、実施期日が切り下げられている、値切られているというようなことをいいましたけれども、切り下げられてきておりました。そのときからわれわれは、勧告をお出しするときには、少なくとも両院議長、少なくとも総理には直接私がひざ詰め談判でお目にかかって、ぜひこれは完全実施をしてほしいということをすわり込んでお願いするということがあって、閣議の日を選べば大体総理はおられるだろうということでやっておったわけですけれども、大体最近の傾向は完全実施の方向に安定してまいりましたし、そう無理に閣議の日にどうということをして総理をつかまえなくてももうだいじょうぶじゃないかという面が一つあるわけです、気を許すわけじゃありませんけれども。したがいまして、あまりそこにはとらわれなくてもよくはないかな、早ければ早いほどいいんじゃないかなという気持ちでおることだけを申し上げさせていただきます、日にちはわかりませんけれども。  それから上げ幅も、たいへん有力な御参考になるような幅をお示しいただいて、そこまでいけばいいなと思っておりますけれども、これは先ほど申しましたように、統計局でまだ集計が出てまいりません。われわれ手に汗を握って待っておるわけです。われわれは、公労委の裁定がどうであろうと、われわれの調べました世界的に精密を誇るこの民間調査に即して厳正なる勧告を申し上げるつもりでございますから、御期待をお願いいたします。——ただいま政府委員から耳打ちがありまして、そこまでいけばいいなというのは誤解を生ずるから、それは取り消してくれということでございますから、これははっきり取り消させていただきます。
  132. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 たいへんいい取り消しでございまして、それはけっこうです。私どもとすれば、  一五%の大台に乗るように強く御期待を申し上げておきましょう。  そこで、それは一般職を含めた全体の勧告ですよね。そして次に第二段として、この法律が通れば、法律にのっとっての勧告、法律が通らなければ、人事院独自の、従来、昭和二十八年以来、教職員給与改善について非常な御熱意を持っておられる人事院として、当然その熱意がほとばしってこの勧告が出ると期待をするわけでありますが、そのように理解をしてよろしゅうございますか。
  133. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ぜひこの法律を通して、人事院に対する御信頼を実証していただきたいというのがお願いでございます。
  134. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 「遅くとも昭和四十九年一月一日から同条に定める優遇措置の計画的実現のための給与改善が行なわれるように必要な勧告をしなければならない。」こうなっているわけですから、結局八月勧告よりは、法律が通った場合でもずれることは明らかですね。ともあれ、人事院としては、その通った通らないということを前提にすると、また佐藤さん口が重たくなりますから、それは抜きにして、ともかく教職員給与改善については、八月以降いずれかの日に勧告をすることを人事院考えておる、こう理解してよろしいですね。その時期はいまのところいつごろでございますか。これもあわせてお答えをいただきたいと思います。
  135. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 大体のことしの勧告のスケジュールは、先ほど申し上げたとおりで、急いでおりますから、できればきょうにでも可決して参議院に送っていただくということになりますれば、あるいは間に合うかもしらぬと思いますけれども、先ほどのようなスケジュールをずらさない限り、これは率直に言って二段階にならざるを得ない。法案が通った暁において——法案が通らないことは予想しませんから、これははっきり申し上げさせていただきますけれども、法案が通った暁において、二段階になることもあり得る、まあそういうふうに申し上げてよろしいと思います。
  136. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 通った暁においてということを盛んに言われるのですけれども、世の中には、不測の事態ということもあるわけですからね。あれだっていつ——実は二十日の日に、地方行政委員会が中心となって、「東京消失」という大災害を予想した映画を別館で映写する予定になっておりますから、皆さんひとつごらんをいただきたいと思うのでございますが、そういう不測の事態だってあるのですから、法案だって通ることもあるし、通らぬこともあるわけですからね。そうすると、そうそういろいろカッコ書きをおつけにならぬでもよろしいのではないか。要は、教員給与改善について、八月以降人事院としては、しかるべき時期に勧告をすることを考えている、かように理解してよろしいわけですね。
  137. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 そのためにも、ぜひ成立さしていただきたいというお願いでございます。
  138. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこで、総理府にお尋ねしたいと思うのですが、総理府は、公務員給与全般について責任を持っている官庁ですね。当然、今度の人材確保法案提案をする際におきましては、文部省から総理府に御相談があったろうと思います。当時総理府としてのお考えはどのような考え方でございましたか。
  139. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 次の時代を背負う青少年を教育する人材確保する本法案について、私たちとしては、人事院の勧告を待ってやるということで、たいへん賛成いたしております。
  140. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 人事院の勧告を待ってやることはいいわけですが、このように人事院に勧告をしなければならないという法律を政府が国会提案をすることに対して、公務員給与全般に責任を持っておる総理府としてはどのようなお考え方であったか、そのことを聞いているわけです。
  141. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 先ほど申しましたように、やはり人事院の独立性ということは非常に重要である。しかし、反面、青少年の教育ということを考えていくと、安んじて教育ができるということはたいへん重要なことであるし、そういう意味でも本法案については最初から賛成でございました。
  142. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この法案には賛成であったということですね。  それではお尋ねしたいと思うのですが、いま公務員制度審議会で、公務員労働者の労働基本権等について議論をしていただいております。事務局は総理府がやっておるのだろうと思うのですけれども、公務員の労働基本権、ストライキ権へ団体交渉権をどうするということもございましょう。また、職員の給与決定の原則についてはどうあるべきかということについても、当然御論議があることを承知しているわけでありますが、総理府としては、現在のこの人事院勧告の体制といいますか、労働基本権を公務員の労働者から奪ったその代償措置として人事院というものを設け、勧告制度というものを設けた、こういう制度を、総理府としては将来とも守っていこうという、総理府としての考え方を持っておいでになるのですか。その点、どうです。
  143. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 この辺については、公制審がいま審議中でございますので、私たちとしては、団結権、交渉権等々については、公制審におまかせいたしております。その答申を待って考えさせていただきたいと思います。
  144. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 わかりました。  それで、給与決定について、このような形の法律一つ提案されたわけです。通るか通らぬかは別でございますが、提案された事実は、これは何人も否定することはできません。そうなりますと、今後各省から、たとえば看護婦さんの給料については人事院がこう勧告をすべきである、あるいは医者の給料についてはこういうようにせい等々の問題は、これは当然私は将来問題になると思いますよ。そうなりますと、職員団体とあるいは政府とが話し合いをする、一致する場合があるでしょう、一致した場合には、それでは給与条件その他について改善措置を講じましょう、ついてはこのような法律をつくって、人事院に勧告をしなければならないという法律を出すようにいたしましょうというような形が、私は次から次へと起こってくるだろうと思うのですね。また起こってくることは、私ども、必至だろうと思うのです。また、これはあとで自治省に——まあいま自治省に聞いてもいいと思うのですが、自治省も同じことでして、地方公務員の給与については国家公務員に準ずる、これが一つの原則ですね。同時にいま一つは、その地域にあります人事委員会がいろいろな調査をして、議会あるいは首長に対して勧告をいたします。こういうかっこうで、将来、何々市の首長と、それからこの職員団体とが話し合いをするというような、意見がたまたま一致した、とすれば、今度は条例で、人事委員会はこういう種類の勧告をしなければならない。こういう条例を提案をする、当然あり得ると思うのです。こういうことについては、総理府並びに自治省としては、これについてはけっこうであるということであれば、当然いま言ったような事態が起こることについては大賛成であるというふうに理解をしていいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  145. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 総理府といたしましては、今回の法案が、教育の重要性を考え提案されておるものであり、各省からそういう法案が出ることは考えておりませんし、また考えられないと思っております。
  146. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 まあ自治省のほうはあとで伺いましょう。  考えられないと言うのですが、これは、教育については重要だ、だから教員について勧告をせいということになっておりますね、この法律は。ところが、重要だという問題は教育だけじゃないでしょう。たとえば先ほど例に引きましたような看護婦さんだとか、お医者さん、あるいは警察官とか、いろいろな職種がありますね、公務員には。そうしました場合に、先ほど福岡歯科大学のことが問題になりましたが、ああいうことは論外といたしまして、とにかく人間の生命を守るということはこれは大切なことだ、その人間の命を預かるお医者さんの使命たるや、これまたきわめて重大であるということは、何人もこれは否定しませんでしょう。とすれば、そういうものに対して、抜本的に給与改善をしろと言うことは、これは理論的に当然あっておかしくないと思うのですよね。そういうことが出てきはしないかと考えられるのは、私は常識だろうと思うのですよ。ですから、教育が重要なことは、私ども、否定いたしません。他にも重要なものがあるでしょうから、とすれば、そういうものについて、これが例となって、どんどんこういう種類の法律が——まあ、どんどんというのは言い過ぎだと思いますが、将来出てくるということになれば、人事院勧告の体制というものに対して、人事院の勧告によって公務員の給与がきまるということに対して、人事院を制約する法律がどんどん出るということになれば、私はいままでの給与決定の原則というものが当然変わってくる、かように思わざるを得ないと思う。そういう意味お尋ねをしているわけでありますから、お答えをいただきたいと思います。あわせて自治省からも、この地方公務員の場合についてお答えをいただきたいと思います。
  147. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 先ほどから申し上げましたように、教育の重要性、私も教職に十三年ばかりついておりますが、そういう意味でも安心して次の世代をしょう青年をつくるということは、やはりたいへん重要なことである。また先生のおっしゃいますような生命の問題等々ございますけれども、それは人事院の独立性を保つためにそういう法案は出すべきでないというのが総理府の考え方で、ただ、教育の重要性から考えて大きな布石をしていくということは重要なことであり、かつその上人事院の独立性を保っていくということで本法案にわれわれは賛成しております。
  148. 武藤嘉文

    ○武藤政府委員 地方公務員の場合も、国家公務員の場合人事院の勧告がありまして、それに準じて行なうわけでございますし、それからいま御指摘のとおり、人事委員会が——条例に基づいてやるわけでございますから、そのときにこういう例と同じような形がどんどん出てきた場合ということでございますけれども、結果的にそういうものがもし出てくれば、当然それぞれの地方自治体において人事委員会がそのような形で勧告をし、そして条例をつくってやっていく、こういうことになろうと思います。しかし、それはあくまでもそういうものが出てきたという前提のもとでございます。
  149. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 せっかくの小宮山さんの御答弁ですけれども、教員の場合はいい、あとの場合については、総理府は反対だと言われましたね。そのとおりなんですか。とすれば、教育が大切なことは私はわかりますけれども、現行制度の中で、じゃ教職員給与に関してだけは賛成で、他については一切反対だというその理論的な根拠というのは当然お示しをいただかなければならぬと思うのです。その点はいかがですか。
  150. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 反対と申し上げましたけれども、現在考えていない、また今後各省がそういうことをしないだろうということを予測しておるだけで、特に教育については、私も先ほど申しましたように、非常に重要だということで本法案に賛成し、かつ人事院の独立性を保つということで、この法案に総理府としては全面的な賛成をいたしておるわけでございます。
  151. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いま各公務員の組合の諸君は、諸外国の制度からいえば、公務員労働者も労働基本権は当然あるべきなんだ。アメリカにしろ、ヨーロッパの国々にしろ、公務員労働者がストライキ権を制限されている例はない。アメリカにしてもあるいはイタリーにしても、おまわりさんまでストライキ権をお持ちになっておられる。そういう時代に、わが国だけがいつまでも公務員労働者の労働基本権というものを制限することは不可能だということは、もう常識になっているだろうと思うのですね。そういう中で、当然職員団体と当局とが話し合いをした上で賃金というものはきまっていく、それがあたりまえなんだ。したがって、現在の労働基本権が制限された中での人事院勧告によって公務員の賃金がきまるといういまの人事院勧告の体制というものは、やがて消滅をするだろうというふうに考えることも、これは常識だろうと思います。私はそういうことを政府の当局もそれぞれ心の中ではお考えになっておられるだろうと思うのです。  そこで、文部大臣お尋ねしたいと思うのですが、奥野さんは長い間自治省の財政局長あるいは事務次官をされました。地方公務員の制度その他についても非常に通暁しておられる。そういう中でこのような法律を出すということは、現在政府がとっている公務員労働者の労働基本権を制限して、そして給与決定については人事院勧告を待ってやるという人事院勧告の体制というものに、いわば穴をあける道を開くものであるということをお考えになって、当初はこの法案に必ずしも積極的な御賛成ではなかったと実は承っておるわけでありますが、その点はいかがでございますか。
  152. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 国の政治のウエートをどう置いていくかという基本的な問題だ、かように考えるわけでございます。この法案人事院の自主的な勧告権限、いささかも制約を加えていない、また人事院の自主的な勧告権限も、法律によって与えられているわけでございます。先ほど来たびたび申し上げますように、日本国家社会命運教育界に託しているんだ。だから、教育界充実したい。そういう考え方国会において明らかにしていただく。その中で人事院に自主的な勧告権限を行使していただきたい。従来のたてまえと少しも変わりはないわけでございますから、おっしゃいますように、人事院の自主的な勧告権限に穴をあけるというふうにはいささかも考えていないわけでございます。
  153. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうおっしゃられれば承っておきましょう。  そこで、自治省の政務次官にもお尋ねしたいと思うのですが、自治省としてはもしこの法律提案されますと、これが一つの例になって、結局自治体において、この職員については人事委員会が勧告なさるときに、ひとつ優遇措置を計画的にやれというようなことが出てくるかもしれない。また場合によっては、職員団体と首長との間で交渉が行なわれる。そして一致したものについてそれを条例として議会に提案し、人事委員会に対して一種の拘束を加えるということになることをおそれて、当初この法案については必ずしも賛成ではなかったというふうに漏れ承っているのでありますが、自治省としての御態度はどうだったでしょうか。
  154. 武藤嘉文

    ○武藤政府委員 決して反対ということではございません。ただ、私どもといたしましては、実際問題、この法案によっていろいろ生まれてまいります地方自治体の財政負担、こういう問題を考えたり、いま御指摘をいただきましたように、他のいろいろの地方公務員にどう影響するのか、こういうことを議論したことは事実でございますけれども、それだからこの法案に反対であるというようなことは決してございません。
  155. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 懸念はしたというわけですね。よくわかりました。  必ずしも各省の間でこれについてはもろ手をあげて賛成というようなことじゃなかったわけですよ。小宮山さんもいろいろおっしゃられたけれども、さらに総理府としても懸念があったろうし、また自治省としても懸念があったろうしというのが実態だろうと私は思います。そういうことは、この際私どもとして、少なくとも懸念を表されたという事実があったということだけを明らかにいたしておきたいと思うのです。  さて、そこで文部大臣お尋ねしたいと思うのですが、去る十六日でございますか、久しぶりにといいますか、一年ぶりに文部大臣日教組とが会見をされ、話し合いをされたということを承りました。たいへんけっこうなことだと思います。私は、この法案について懸念をするのは、少なくとも事前に文部省としても教職員給与改善について、それぞれ御計画というものがあったろうと思うのですね。また先ほどの有島委員質疑の中でも、前の稲葉文部大臣もそのことを積極的に表明されたことがあった。とするならば、この法律をお出しになる前に、日教組なら日教組文部大臣とがお会いになって、教師の地位に関する勧告、これもしばしば話題になりましたが、ここにも、教師を専門的な職業として十分遇する給与体系が必要だということが書いてあります。そういう趣旨にのっとって、どうやって改善をしたらいいかというようなことを率直に話し合いをして、そしてもちろん話し合いの中で一〇〇%お互いけっこうでしょうというふうにまとまることもあるでしょうし、まとまらぬこともあるだろうと思います。しかし、少なくとも話し合いを十分やって、その結果で、教職員給与改善措置についてはこうしようじやないか、それについて人事院に対して勧告をしてもらおうじゃないかというような形の法律案を出すことについて、ほぼ合意をして、そして法案が出されてきたということになれば、私はまたおのずから違った様相になっただろうと思うのです。そこで、過去のことをいろいろ言っても始まりませんから、今後のことについてお尋ねしたいと思うのですが、今後率直に職員団体と文部大臣とがお会いになるということを、大いにおやりになったらいいのじゃないかと私は思うのです。特にそれを言うのは、自治労という組合があります。これに対応する役所は自治省ですね。ところが、よく文部省がいわれた理屈の中には、職員団体が当局と交渉する、その場合は市町村である、市の職員団体連合体である団体が、大臣交渉しなければならぬということは、法律には何も全く書いてないじゃないか、こういうことをいわれたことがあるように記憶しております。ところが、自治労と自治大臣という関係と、日教組文部大臣というのは、私は全く同じだろうと思うのですね。あえて言えば、文部省日教組の方が、会う理由というのはあるだろうと私は思います。大学先生というのがおりますからね。これは国家公務員であって、その日教組大学先生方と、それから文部大臣とがお会いになるのは当然だし、また大学先生方が入ってつくっておられる日教組と、それから文部大臣が会うのは自然だろうと思うのです。そういう意味では、文部省日教組のほうが、より会って話し合いをしておかしくない。しかるに、現実の状況はどうかと見ると、江崎自治大臣自治労とは、江崎自治大臣が就任してからもう四、五回会って話し合いをやっている。また話し合いをやったということが、テレビに出たり、新聞にでっかく出たりというようなことはありません。会うのがあたりまえになっているから、新聞も報道しないのだろうと思うのです。私はむしろそういう形に日教組文部省との間がなることが当然じゃないかと思うのですね。そういうことについて奥野文部大臣のお考え方はどうですか。
  156. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は教職員の団体、日教連その他とたびたびお目にかかっております。日本教職員組合との関係におきましては、十六日に初めてお目にかかりました。それなりにやはりむずかしい事情があるということは、私は御理解いただけると思うのでございます。先日、話し合いをいたしましたあとで、今後も遠慮なしにどんどん話を持っていらっしゃいよ、伺いますよ、こういうことを申し上げて別れたところでございます。
  157. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 特に奥野文部大臣は、自治省の役人としての経歴も長い、自治省の事務次官もされた。そして自治労と自治省との関係についてもよく御存じである。とすれば、いまのお答えは、それはいろいろの過去のいきさつはあったでしょうが、今後大臣のお気持ちとしては自治労と自治大臣の関係以上に、日教組文部大臣とが率直に話し合いをする、そういう方向に持っていきたい、それが奥野文部大臣気持ちである、かように受け取ってよろしゅうございますか。
  158. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 十六日に会いましたときに、国民の立場に立って日本教育充実考えていこうじゃありませんか。その場合は、文部省日教組ともに協力し合わなければならないのじゃなかろうか、こう申しました。日教組側も全く同感だ、こういう話でございました。そういう意味合いで、積極的に話し合いをしていってけっこうでございますし、そのことば望ましいことだ、こう思っております。
  159. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ぜひ奥野大臣のそういう気持ちが現実の姿としてあらわれるように、強く御期待を申し上げておきたいと思います。  そこで、今度はお金のことについて若干お尋ねをしたいと思うのですが、昭和二十八年給与三本立ての際に、当時幾らの経費がかかったか調べていただいたわけでありますが、昭和二十八年度、これは昭和二十九年一月から三月、ちょうどこの法律が予定しているのと同じように、三カ月間を昭和二十八年度では必要としたわけです。地方財政計画計上額が当時三億六千万円だったようであります。当時は、平衡交付金の制度でありました。ですから当然二分の一が義務教育費国庫負担金で措置される。残りました半分が平衡交付金、当然地方財政計画上措置されるということだったろうと思います。昭和二十九年度、これが平年度化された場合に幾ら必要だったかというと、十億七千万円必要だったようであります。ちなみに昭和二十八年度の当時の地方財政計画の規模が一体どのくらいだったかということを調べてみました。そうしますと、地方財政歳出規模、これは実績であります。実績が一兆六百九十八億だったようです。大臣はお詳しいですから、実績と地方財政計画との間には、相当な乖離がある、大体二割くらい違うということは御存じだと思うのです。とすると、当時の地方財政計画の規模は大体八千億円程度だったろうと思うのです。そのときのこの十億でありますから、地方財政に相当な影響を及ぼしたろうと思うのです。当時これだけの経費をどのような形で昭和二十八年度、二十九年度においてはやりくりをいたしたのか、だいぶ古いことで恐縮でありますが、自治省の財政当局のほうでわかっておればひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  160. 鎌田要人

    ○鎌田政府委員 お答え申し上げます。  昭和二十八年度の分、すなわちただいま申されました三億六千万でございますが、これにつきましては、当時地方財政平衡交付金の時代でございました。第二次地方財政計画の修正計画というものでございまして、このときに二割の基本給のアップその他年末手当の一・五カ月分の支給、こういったのがございまして、その他もろもろの要素を含めまして、百四十五億七千万の地方負担の増を来たしたわけであります。これに対しまして、財政平衡交付金の増七十六億、地方債の増十五億、これは特別道路整備事業とかあるいは二十九年度中学校生徒増による建築費の増、こういったようなものがございました。そういうもので十五億、残りの五十四億七千万は地方税の自然増収でございます。それからこれが平年度化いたしました昭和二十九年度の地方財政計画は九千六百五十三億でございまして、このときにおきましては御案内のとおり平衡交付金から交付税に移行をいたしました当時の地方税三千四百七十四億、地方交付税千二百十六億、こういうもとにおきまして、基準財政需要に算定をして交付税を通じて措置をした、こういうことでございます。
  161. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 当時のことはわかりました。  そこで、文部省自治省にお尋ねすればいいんだろうと思いますが、この法律の裏づけになっております予算は、公立小学校教員について給与の一〇%の三カ月分に相当する百三十三億、及び養護学校の、小中学校先生方に対する見合いの先生方に対する経費として二億円、それから国立学校特別会計、国立学校の小中学校先生方の分として一億四千六百万円、計百三十六億四千六百万円計上してあるようでありますが、国立学校の場合はこれは国費で見るわけでしょうからこれは一応おきましょう。問題は残りの百三十五億、これに対して残りの半分ですね、義務教育費国庫負担法でこの分だけ持つわけでしょうから、当然地方負担というものがあるわけでしょうが、それは本年度の地方財政計画に算定をされておるようでありますが、この金額はお幾らでありますか。  それからさらに文部省自治省にお尋ねしたいと思うのですが、これを平年度化した場合の義務教育費国庫負担法に基づく国庫支出金が何ぼ必要であり、これに伴う地方財政の必要経費は平年博化の場合一体幾らになるわけでありますか。この点をまず数字ですが、お聞かせをいただきたいと思います。
  162. 武藤嘉文

    ○武藤政府委員 地方の分を私から申し上げます。  本年度の地方財政計画の中で地方負担分としては百四十五億を計上いたしております。平年度化をいたしますと六百七十七億と見込んでおります。
  163. 岩間英太郎

    岩間政府委員 平年度化いたしますと、国の予算では六百四十三億二千八百万でございます。
  164. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 相当な金額が必要になるわけですね。  そこでさらにお尋ねしたいと思うのですが、文部省は計画的におやりになると、こういっているわけですね、いまのところ白紙だといっているんですが、しかし、当然昭和四十九年度は、ことしの一〇%が平年度化されただけではなくて、ある程度これを積み上げることは考えておられるわけでしょう、明年度の地方財政計画にも関係することですからね。しかも、八月末には、文部省としては予算要求もされるということで、当然事務的な作業もやっているわけでしょう。一体幾らぐらいの金額を明年は要求をされようといたしておるのですか。とすれば、それに対して地方負担がおよそ幾ら要るということも、これまた想像がつきますので、お答えをいただきたいと思うのです。
  165. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど来たびたび申し上げておりますように、文部省内の教職員給与改善の研究調査会の結論を待ちたい、こう考えておるわけでございまして、文部省としては、引き継いで予算の要求をしていきたいという考え方に立っておるわけでございます。いずれにいたしましても調査会の結論を待ってから方針をきめ、各省間に連絡をとりたいと思っております。
  166. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 八月末をもって予算要求をするというのが常識ですよね。そうしますと、もう七月ですから、事務的な作業は各省でやっておられるだろうと思うのです、明年度予算要求については。とすると、この分は保留をして、教職員給与の検討委員会ですか、というものが答えを出してから第二列車で、八月末以降においてこれは追加として要求をされる、こういうふうに文部省はお考えになっていらっしゃるわけですか。
  167. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 予算要求の最終は八月末でございますので、それまでに結論が出ればしあわせでございますし、結論が出ない場合には、要求は要求、さらに結論の出た上でそれを変更するということになるのではないかと思います。
  168. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 今年度の地方財政計画で、地方負担分として計上したのが百四十五億、平年度化された場合を想定いたしますと六百七十七億が地方負担として必要だということですね。ことしの地方財政計画、地方交付税の総額は二兆九千七十四億四千八百万円でありますが、そのもとになっております国税三税は八兆五千六十九億でありますから、交付税率一%が八百五十億ということになりますね。そうしますと、来年度必要なこの地方負担分というのは平年度化されただけで六百七十七億ということでありますから、その上に積み重ねられることがいまの文部大臣の御答弁からもうかがえるわけです。一体幾らこれが積み重なるかということはわかりませんけれども、ふえることは間違いないとすれば、交付税率一%に近い金額を地方負担としては必要だということになるだろうと思うのですね。御案内のように地方交付税法では百億異動した場合は交付税率について検討しなければいかぬ、こういうことがございます。また明年度の地方財政は、田中総理が一兆円減税とか一兆二千億円減税とかいろいろなことをいっています、そういう中で明年度の地方財政は相当たいへんな時期になるんじゃないかというふうに考えます。奥野文部大臣も長い間の経験から同じような認識をたぶん持っておられるだろうと思います。そうした場合に自治省の財政当局としては、これだけの、交付税率一%になんなんとする明年度必要な地方負担、これに対して自治省としてはこのやりくりに相当苦労をされるだろうと思いますが、それに対して自治省としてはどのようなお考え方を持っておられますか、あわせてお聞かせをいただきたいと思うのです。
  169. 武藤嘉文

    ○武藤政府委員 私ども、この問題だけでなく、来年度の地方財政は、もうよく先生御承知のとおりで、いろいろの財政需要がたくさん出てまいりまして、非常に大きな問題だろうと思っております。また一面、いま御指摘のように、来年度は所得税の大幅減税が行なわれるといたしますと、それに伴いまして交付税の金額がこれによって削減されるということも非常に心配されるわけでございます。もちろん、一面また法人税が増税になる予定でもございますので、その面における増加ということもまた考えられようと思いますが、私どもといたしましてはその辺をよく踏まえて、交付税率の改定を含めて、地方財源をいかに確保するかということで正直頭を悩まし、場合によっては交付税率の引き上げをぜひお願いをしなければならぬのじゃないか、こう考えておるわけでございます。
  170. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大蔵省の辻主計官もおられるわけですが、実は予算編成のさなかに辻さんにお会いをしたことがございますが、財政当局とすれば当然このような法律、当然これに必要な財源措置ということもすぐお脅えになっておるわけだろうと思うわけですが、必ずしも事務当局として、このような法律についてにわかにもろ手をあげて賛成というようなお気持ちではないように、実は当時お会いをしたときの感じでは推察をいたしたのであります。大蔵省として、このような法律、これに伴う財源措置についてどういうお考え方でありましたか、お答えをいただきたいと思うのでありますが、同時に、ただいま自治省から申しましたように、明年の地方財政はなかなかたいへんである。所得税減税もある。次官は言われなかったが、これに伴って当然住民税の大幅減税も行なわざるを得ないと思います。そういう中で、国の施策に伴う地方負担分というのは、これまた非常に激増することも予想される中での明年度地方財政は、なかなかやりくりたいへんだ。そういう中で大蔵省としては、明年度平年度化いたしました場合、文部大臣がおっしゃられたように、さらにこれは上回るわけでありますから、そうしますと、交付税率一%にもなんなんとするこの地方経費というものについて、大蔵省としてはどのようなふうにお考えでありますか。また、どのように措置をすることを考えておられるわけでございますか。お答えをいただきたいと思います。
  171. 辻敬一

    ○辻政府委員 教員給与改善の問題につきましては、財政的に見ましても重要な問題でございますので、予算折衝の過程におきまして、私どもいろいろな見地から検討を加えたことは事実でございます。法律につきましては、最終的には教員の処遇改善ということに対します国の基本方針を明らかにするということで、法律案提案して国会の御判断を仰ぐことが適当であるという判断に立ちまして、ただいま御審議をいただいております法案提案をさせていただいているわけでございます。  それから財源措置につきましては、先ほど山口委員からお示しのございましたように一〇%に相当いたします、額の三カ月分といたしまして、総額百三十六億四千六百万円というものを計上いたした次第でございます。  それから、地方財政に与える影響の、四十九年度以降の問題につきまして御指摘があったわけでございますが、まだ、ただいまの段階では、具体的に申し上げ得る段階ではございません。また、給与改善の具体的な内容いかんにもよるわけでございますけれども、いずれにいたしましても地方税、地方交付税等の一般財源の見通しの問題もございますし、経費の優先度に応じました財源の重点的配分ということもございますので、国、地方を通じます財政事情を総合的に検討いたしまして措置を考えていく所存でございます。
  172. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこで、さらにお尋ねしたいと思うのですが、今年度の地方財政計画では、百三十五億見合いの経費につきましては、単位費用の算定にあたりましてはどういう形で計上してございますか。道府県分の教育費、その中の小学校費、中学校費に対してどのようになっておりますか。  それからあわせて文部省お尋ねしたいと思うのですが、どうも今日までの当委員会の議論その他では、この法律は小中学校先生方給与改善について勧告をしろということになっておりますが、本会議の御答弁等では、当然そうなれば高等学校にも影響するであろうということを言っておられるわけですね。そうしますと、今年度において一月から三月まで高等学校先生方給与改進についても期待をしておられるようであります。その場合の経費は一体どのようになると考えておりますか。  また、それに対して自治省にお尋ねしたいと思うのですが、単位費用の積算基礎は、高等学校費についてはどのような措置がなされておりますか。措置がしてないというならば、将来どのような形で心要な経費を地方財政計画上措置するお考え方でありますか。あわせてお聞かせをいただきたいと思います。
  173. 鎌田要人

    ○鎌田政府委員 お答え申し上げます。  ことしの地方負担分目四十五億でございますが、この内訳は小学校九十一億五千三百万、中学校が五十億一千万、それから盲・ろう・養護学校、これが三億四千四百万でございます。  これを標準団体に置き直してみますと、標準団体におきまして小学校一億五千八百万、中学校九千八百万、盲・ろう学校三百十三万という計算になります。これを、道府県の小学校費でございますと、給与費は教職員数を測定単位といたしております。中学校また同じでございます。盲・ろう・養護学校でございますれば、生徒児童数を測定単位といたしております。これで割り返しまして、えらいこまかい話で恐縮でございますが、小学校が単位費用二万二千六百十五円、中学校二万一千七百八十七円、盲・ろう学校四千八百二円、こういうことで措置をいたして、近く交付税の本算定を行ないまして、この算定をされました額が地方団体の手に渡る、こういうことに相なっておるわけでございます。  それから高等学校分でございますが、高等学校分につきましては、これは法律あるいは国の予算措置は、義務教育学校についてでございますので、高等学校については、措置をいたしておりません。これの所要額、初年度ということになりますと、八十億見当のものが必要になろうかと思いますが、この分につきましては、もし年度内において同様の措置をとられるというごとに相なりますれば、これは別途所要の財政措置を講じなければなるまいというふうに考えておるわけでございます。
  174. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 たびたびお答えをしていることでございますけれども、高等学校等につきましても、義務教育教員との関連において、給与改善の勧告をいただけるものと期待をいたしておるわけでございます。勧告があった場合には、大蔵大臣は予備費等で措置しましょう、こう言ってくれているわけでございます。
  175. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 忘れましたが、幼稚園も当然期待をしているわけですね。幼稚園の経費はどうなりますか。幼稚園については交付税上、「その他の教育費」でしょうけれども、それは一体どのような考え方でありますか。
  176. 鎌田要人

    ○鎌田政府委員 幼稚園につきましても同様の考え方で、措置をいたしておりません。したがいまして、同様の措置が講ぜられるということになりますと、別途財源措置を講じなければならない、こういうことでございます。
  177. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 高等学校、幼稚園については、改善措置は地方財政計画上見ていない、小学校費、中学校費については見ているということであります。  そこで、こまかい話になりましたからさらにこまかいことを二、三お尋ねしたいと思うのですが、かつてお尋ねをいたしました文部省の地方教育費の調査ですね、これを拝見をいたしますと、特に道府県の教育費の基準財政需要額に対する実質の比率、建築分も含めた総額について比較した場合、建築分を除いた額について比較した場合、議論いたしまして、どうも市町村分については集計その他でだいぶそごがあったようだ、こういうお話でございましたが、府県の場合は当然各都道府県の教育委員会が集計をされたのでしょうから、これはあまり間違いはないだろうと思うのですね。  それをずっと拝見をいたしますと、先生方給与がよく反映をしているものは建築分を除いた額について比較した場合だろうと思います。小学校、中学校ずっと見てまいりますと、特に小学校におきましては佐賀県が比率が〇・九〇なんです。基準財政需要で見ております額に比べて実際に支出されておりますのが九割だ、九〇%だということであります。私は、こういうことではきわめて遺憾じゃないかと思います。同じような数字をあげれば、埼玉県が〇・九六、千葉県が〇・九七、こういう状態です。  それからさらに中学校を見ました場合、佐賀県のごときは〇・八九。基準財政需要額で組んだ額について八九%しか見ていない。さっき給与改善費については交付税上どうなっているかということを聞きまして、財政局長からお答えがあったわけでありますが、問題は、せっかくそのような措置をやっても、このような数字を見れば、府県が全く、国がせっかく措置した額すら使い切っていない。あえていえば、不当に少ない給与しか払っていない、こういう現状だろうと思うのです。私はこのような法律を出す以前に、少なくとも文部省は——これは昭和四十六年度の調査ですからね。佐賀県のごときは中学校において実質がわずか〇・八九だ、小学校が〇・九〇だ、こういうものを改善をするということについて、むしろ初中局長さんは熱心になってしかるべきじゃないかと思うのですよ。こういう状態を長い間放置しておいて——一体どうして、このような数字がいつまでも出ているのを放置しておったのか、非常に私は奇異に感ぜざるを得ないと思うのです。初中局長さんでけっこうですから、お答えいただきましょう。
  178. 岩間英太郎

    岩間政府委員 私どもの手落ちでたいへん恐縮でございますが、佐賀県の場合には分子と分母を間違えまして、数字が間違っておりました。正確に申しますと、佐賀県の場合は一・一一が小学校の場合でございまして、中学校の場合は一・一二というふうな数字になるわけでございます。他の県につきまして、御指摘のございました青森、埼玉、千葉につきましては御指摘のとおりでございますけれども、千葉、埼玉の場合にはいわゆる過密現象によりまして若い教員がふえておるというふうな点、それから青森につきましては、その当時の特殊な事情によりまして退職金が非常に少なかったというふうな点でこういう数字が出ているわけでございます。
  179. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうやたら違った数字のものをしろうとに出されては困ると思うのですね。正誤表は一体つけてよこしたのですか。私もこれはもらったばかりなんですが、正誤表というのは見なかったですな。
  180. 岩間英太郎

    岩間政府委員 たいへん申しわけないことでございますが、最近その間違いを発見いたした次第でございまして、まだ正誤を出しておりません。その点はおわびを申し上げたいと思います。
  181. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 あとは間違っておりませんか。大体分子と分母を間違えるというのは、小学校の少なくとも四、五年になれば、そういう間違いはあかぬということになるわけでしょう。文部省のこういう資料については、私はもう一切信用せぬことにしますよ。これは一体どこが違っているのか全部教えてください。
  182. 岩間英太郎

    岩間政府委員 その他の点につきましては間違いはないと思います。数字そのものは合っているわけでございますけれども、その比率の出し方を間違ったということでございまして、たいへん申しわけない次第でございます。(「弘法も筆の誤りだ」と呼ぶ者あり)
  183. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 弘法も筆の誤りだというので、ごくまれに間違うのであればいいのですけれども、小中学校についてこの前聞いたら、これも集計の間違いがずいぶんあった、こういうお答えがあったわけですよ。文部省調査をやっている人は一体だれなんですか、責任者は。
  184. 岩間英太郎

    岩間政府委員 これは文部省の官房の調査統計課でやっているわけでございます。
  185. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 では、官房長さんのほうですね。官房長さんに、この数字の間違いを全部訂正して、資料を私のところに持ってくるように要求しておきますから……。そんな間違ったものばかりで出されて、何ですか、大体。大臣、どう思いますか。とにかく文部省学校先生方、いろいろ教育のこともやっているのでしょうが、理数科というものは教育の中でも、昔からその柱でしょう。そういうイロハの間違いを文部省が平気でやっておる。それが文教の府でございますなんということが言えますか、一体。大臣、今後そういうことについては厳重にやってもらいたいと思うのです。しかも大臣は、繰り返しいうように、こちらのほうは権威なんですから、その時代にやはりこういうものについては、きちっとした体制をつくっていただきたいと思いますが、大臣のお考えを聞いておきましょう。
  186. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 どうもたいへん恐縮な感じがいたしております。地方行政に明るい山口さんから、この前市町村の教育費と市町村の教育基準財政額の比較についての御指摘がございました。そのときに自治省の協力を得ましていろいろ当たってみましたところが、集計の誤りというよりも個々の市町村が出してきます数字、この取り方に問題があったようでございまして、したがって検収については自治省も協力をしてやろうということになったようでございまして、先般御報告申し上げたとおりでございます。今後権威のある調査書になりますように特別な努力も払いたいと思います。御指摘いただいたことをむしろ感謝し、また反面、深く恐縮に感じております。
  187. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 少なくともこれは府県のですからね。府県の場合は、教育委員会がやるわけでしょう。教育委員会が——佐賀県の教育委員会はどうか知らぬが、分子と分母を県の教育委員会が間違えた、こんなことが第一、通りますか。少なくとも県の教育委員会は、高等学校の入試等について問題を作成するところでしょう。市町村の教育委員会が間違ったということなら、まあまあかんべんしてもいいと思うのです。しかも、集計の過程で間違うということはあり得ることでしょう。しかし、少なくとも都通都道府県の教育委員会が分子と分母を間違えた、そのようなことが大体通ると思うのですか。私はそういうことは、文部省、もっと徹底的にきちっとさせてもらわなければ困ると思うのですよ。
  188. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 たいへん恐縮いたしております。どこで間違ったかということもよく追跡をしておかなければいけないと思いますが、今後、先ほど来御指摘のように、権威のある調査書として、ずさんな点が一切なくなるように努力をしてまいります。
  189. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 高等学校費を見ますと、青森〇・九二、岩手〇・九六、宮城〇・九四、秋田がひどいですね、〇・七八です。山形が〇・九五、福島が〇・八四という数字でありまして、〇・九台あるいは〇・八台がずいぶんたくさんございます。秋田の〇・七八なんというのは、一体どういうのですか。基準財政需要額で高等学校先生方の経費を見ておる。そのわずか七八%しか支出をしていない。こんな形で秋田県の高等学校先生方の待遇というものが今日までなされてきた。私はこんなことは話にならぬと思うのですね。だから私は、こういう法律を出す以前に、もっと、こういった数字が少なくとも一以上になっている、こういう状態をつくってから、このような法律は職員団体とよく相談をしてからおやりになったらいいだろうと思うのですね。前提がどうかしているのではないかと思うのですが、いかがですか。これも分子と分母の違いですかな。
  190. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま御指摘になりました件、さらに当たってみたい、こう思います。  教職員給与の基準財政需要額は、統一単価を使ってではありますけれども、一〇〇%見込んでくれているようでございます。一〇〇%見込んでくれているとしますと、基準財政需要額よりも決算が少なくなる県がかなり出てくることは当然じゃないか、かように思うわけでございます。給与は学歴、経験年数できまってくる。同時にまた、年齢構成が県によってかなり違ってまいります。同時にまた、どんどん先生をふやさなければならないところは退職者が少ない。いろいろ退職者によりまして退職手当の額が出てくるわけでございますので、そういうこともあったりするわけでございまして、ただ給与だけの面で見ますと、地方公務員のほうが、国家公務員よりもすべて高いと申し上げていいと思います。学歴、経験年数によりまして比べて申しますと、高い。ただ構成が違いますから、反面統一単価を使っておりますので、県によって実質単価と基準財政需要額によって増減が出ること、これはやむを得ない、かように思います。ただ、その差の大きい団体におきましては、やはり個別に当たって事情を調べてみる必要があると思いますので、御指摘がありました差の大きな県につきましては、どういうところに問題があるかということを文部省としても調査をしてまいりたいと思います。
  191. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣と局長けっこうですよ、あとはいいですから。  そこで、お尋ねしたいと思いますが、きょうは地方制度調査会からいただいてきた地方公務員の給与水準の比較、昭和四十三年ラスパイレスの数字を拝見いたしましたら、道府県一・〇八という数字ですよね。地方公務員のほうが国家公務員より若干ではあるが高いのが常識です。そういう中で——文部省の役人は、局長や大臣おらぬでもだれもいなくなるわけじゃないでしょうから、文部省の人に聞きますが、少なくとも〇・七八なんということは、これは理屈に合わないですよ。たとえその当該県の先生方の職員構成、年齢の若い方が多かったとかいたしましても、これほど違うということはあり得ぬ。当然こういう数字を文部省お出しになった以上は、秋田県の高等学校先生方給与状態は一体どうなっているのかということは精査して、その原因はどこにあるのかというぐらいは調べておくのはあたりまえなんですね。調べてありますか。どこに原因がありますか。
  192. 岩間英太郎

    岩間政府委員 まだ私どものほうで、そういう調べをいたしておらないわけでございますけれども、これはただいま大臣からもお答え申し上げましたように、私どもとしましては、御指摘ございましたので、十分調べてみたいというふうに考えております。
  193. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 御指摘があればこれから調べるというのは、どういうことなんですか。せっかく国費でもってこれだけの調査をおやりになるのでしょう。この調査をやる目的は、少なくとも基準財政需要額は、その府県で十分使われているかいないか、国が予算上措置したものに対して、地方が教育を重視するたてまえから、十分予算措置をしているかどうかということを、いわば調べたいからこそ、こういうややめんどうな調査をおやりになるわけでしょう。とすれば、調査はやった、やりっぱなしということですか、文部省はすべて。こういう整理統計か何かやって、どうなんですか。そこに私は文部省の姿勢があると思うのです。国会で問題にならなければ調べないということは……。せっかく国費をかけて調査をやってもやりっぱなし。地方府県の教育が一体どうなっているかというようなことはかまわぬと、そういうふうにとられてもしかたがないですよ。どうなんですか。せっかくこういう調査をやって、今日まで教育財政の向上に対しては何ら使っていなかった、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  194. 岩間英太郎

    岩間政府委員 調査目的は、ただいま先生御指摘になりましたように、やはり基準財政需要額に対しまして、実際に支出した教育費が少ない、そういうところに対しましては、そこにどういう原因でそういうようになったのか、またそれを改善していくためには、どういうふうな方策をとったらいいかというような資料のためにやっておるわけでございまして、したがいまして、私どもは今度の調査につきましては、十分原因を調査いたしまして、そういうふうなことに役立てるようにいたしたいというふうに考えております。
  195. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 こういうずさんな数じゃ困ります。ひとつ小学校費、中学校費、高等学校費、一以下の県についてはどこに原因があるか全部調べておいてください。そういうことでなければ、教職員の待遇を改善するとかなんとかいったって、全くしり抜けじゃありませんか。この問題はそのデータが出るまで質問を保留しておきます。  委員長、別の機会にゆっくりやらしていただきます。  それで次に、したがって話題をかえますが、塩崎さんが過般ここで質問しておられるのを拝聴いたしておりました。給与を上げるばかりじゃだめじゃないか、この人材確保するためには、もっといろいろな点を配慮しなければいかぬという御指摘をしておられました。私はたいへんにすぐれた御意見だと思って尊敬をして聞いておったわけであります。教職員の住宅等が、一体小中学校先生方、全国どうかということを考えれば、たいへんお寒い状況だろうと思います。大体教職員数に対して教職員のいわば公舎といいますか、そういう公立の住宅というのが何%ぐらい現在できておるのですか。
  196. 岩間英太郎

    岩間政府委員 ただいまちょっと資料が出ませんので、後刻先生のお手元に届けるようにいたしたいと思います。
  197. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 出ました資料で、またゆっくり議論をさしていただきましょう。保留しておきます。  さらにお尋ねしますが、その際の御意見の中で、定年を延長したらどうか、こういう御意見がございました。現在地方公務員の定年制というものはございません。しかし、勧奨退職というのがございます。私はこの年齢を大いに引き上げていくことが、自民党の委員さんからの御指摘のいわば真意ではなかったかと思います。小中学校先生方、ただいま全国各県でどのような形で勧奨が行なわれておりますか。男女差について、ございますか。お答えをいただきたいと思います。
  198. 岩間英太郎

    岩間政府委員 現在の各県の勧奨退職年齢でございますが、小学校の教員では六十歳以上が八県、五十八歳から五十九歳が十四県、五十六歳から五十七歳が十七県、五十五歳が七県、なお七県におきまして、勧奨退職年齢に男女差を設けておりまして、女子の勧奨の年齢は五十四歳から五十歳というようになっております。  中学校の場合には六十歳以上が八県、五十八歳から五十九歳が十四県、五十六歳から五十七歳が十七県、五十五歳が七県、これは小学校の場合と同じでございますけれども、男女差を設けておる県が七県でございます。  それから高等学校の場合には六十歳以上が十七県、五十八歳から五十九歳が十九県、五十六歳から五十七歳が八県、五十五歳が二県、男女差を設けている県が四県でございます。  なお、先ほどちょっとお答えが間に合いませんでした教員の住宅事情でございますけれども、自宅から通っております者が全国で五七・三%、それから父母と同居しております者が一一・四%、教員住宅におります者が七・五%、公営の住宅におります者が六・八%、借家・間借りが一四・九%、下宿が二・一%、そのような状況になっております。
  199. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 あわせて自治省にお尋ねしたいと思うのですが、この小中学校先生高等学校先生に見合うのは府県の職員だろうと思うのです。府県の職員の勧奨年齢と小中学校先生方あるいは高等学校先生方の勧奨年齢は、どの程度の違いが現在ございますか。男女差についてはどうですか。あわせてお聞かせいただきましょう。
  200. 植弘親民

    植弘政府委員 いま教育職員につきましては文部省からお答えがございましたように、おおむね五十八歳から六十歳くらいというのが非常に多いわけでございますが、この傾向は県について見ましても、おおむね五十八歳から六十歳というのが多いようでございます。約半数がそういうところでありますが、一々、県と教育職員と対照したものはございませんので、そういうような具体的な県ごとにはどうか、ちょっとわかりませんが、まあまあ大体似たような傾向じゃないだろうかという感じがいたします。  それから男女差につきましても、一部あると思いますが、いま資料がございませんので後ほど調べてお答えいたします。
  201. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 せっかく自民党の委員のほうからも、こういったものも優遇しなければいけない、こういう御意見があるわけです。とすれば、府県の一般職員よりも、教職員の勧奨退職年齢は相当高くなければならぬ。でなくちゃいかぬだろうと思うのです。それを文部省自治省両方でけっこうですから、各府県別に対比をしたものを早急に提出をしていただきたいと思うのです。その際、そのことはまた議論をいたしましょう。  資料が出ます前にお尋ねしておきたいのは、これは文部省に聞きたいと思うのですが、五十五歳が小学校で七県ですね。それから中学校で七県、高等学校で二県もあるわけですね。私は、こういうことではしかたがないのじゃないかと思うのです。五十五歳といえば、民間の通常の定年と同じ年齢ですよ。しかも、民間は御案内のように、いまや定年が逐次高められつつある状況です。そういう中で、依然として五十五歳で勧奨をやっておるというのを、いままで文部省は放置しておったのですか。これをもっと引き上げろということで、指導を積極的にやっておったのですか。それをお答えいただきたい。  次いで、男女差です。憲法十四条あるいは地方公務員法第十三条で、性別で差別をしてはいかぬということが書いてあります。私は、こんなものは憲法違反であり、地公法違反であると思うのですよ。それが男女差をつけるのが小学校七県、中学校で七県、高等学校で四県もあるというのです。これは地公法違反だという指導は文部省はやっておるのですか。また、自治省もそういうものはやっておるのですか。文部省自治省に聞いておきましょう。
  202. 岩間英太郎

    岩間政府委員 御案内のとおり、定年制の延長、特に教員の定年制の延長につきましては、総理の施政方針演説の中にも言われているとおりでございまして、それを受けまして、たびたび委員会大臣からも御答弁申し上げているわけでございますけれども、教員の勧奨退職は六十までともかく延長するようにしたい。さらに定年制ということを考えれば、六十五までは教職の経験を生かして働かせるような道を開きたいというふうなことを申されているわけでございます。私どもといたしましては、そういう方向で本年度からそういう県につきましては定数上の特別な配慮もいたしまして、これを引き上げていくというふうな方向で進んでいるわけでございます。さらに今後とも、そういう方向で進みたいというふうに考えております。  なお、男女差につきましては、御指摘ございましたように、これは本来あるべき姿ではないということで、男女差の撤廃につきましても各都道府県を指導していくということにいたしておるわけでございます。
  203. 植弘親民

    植弘政府委員 先生御承知のように、勧奨退職制度は人事管理運営の立場から、本人の意思を前提といたしまして、一般的には退職手当の割り増しといったかっこうでやるわけでございます。したがいまして、若干の府県におきまして男女差があると申しますが、実際問題といたしましては、それぞれの団体の人事管理の実態に即して、職員個々の意思を尊重してやるわけでございますから、その点では一律かつ強制にわたらない限りは適当であろうというふうに、従来から考えてまいっております。
  204. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 しかし、現にこういう資料が出てきていることは、一律に男女差が行なわれているということでしょう。私はそういうことについては、地公法上まずいということは、きちっと指導していただかなければならぬだろうと思うのです。文部省は、この点はやはり地公法上まずいということを言われたわけですから、明らかに地公法違反であるという形のきちっとした指導を、各県地方の教育委員会にやりますか。男女差については、これをきちっとお考えいただかなければいかぬだろうと思うのです。  それから五十五歳というものについて七県もあるということは、私はおかしいと思うのです。こういうふうなことは、一体どういうふうな指導をやり、なおかつ五十五歳というのがいままで残っておるのか、そういう経過を私は御説明いただかなければいかぬだろうと思うのです。どうですか、その点は。
  205. 植弘親民

    植弘政府委員 地公法の問題から先にお答えいたします。  男女差の問題について、なるほど、十三条「平等取扱の原則」から見てどうかという御議論はあったと存じますが、最近の判例等でも、男女差によるところの機能、労働能力といいますか、認められる例もあるようでございますし、直ちに十三条違反になるかどうかにつきましては、法制局その他とも十分協議いたしたいと思っております。
  206. 岩間英太郎

    岩間政府委員 私ども地方公務員法違反ということで指導するということではないわけでございますけれども、実質的に現在男女の間に差があるというのは、やはりいろいろの点で問題があるということで、これは私どものほうで、その是正方について指導してまいりたいというふうに考えております。  なお、五十五歳というふうな低い勧奨退職年齢があるということでございますけれども、これは一つにはいわゆる過密過疎の現象で、特に過疎県におきましては、教員養成大学を出ます人たちの採用が、非常に困難になっておるという事情がございます。やはり教育界で新陳代謝をする、しかも、教員養成大学で希望を持って学んでまいりました者を採用する道を開くというふうな点から、各県とも年齢の引き上げにはたいへん苦労をしておるようでございます。また現実にことしから一年ずつ延ばしていくというふうな県が具体的に出ております。これは私どものほうでできるだけ手を差し伸べて、六十まで引き上げるような方向でいきたいというふうに考えておるところでございまして、私どもの指導あるいは各県の努力というものをもう少し見ていただきたい。六十歳に向かいまして、私どものほうで強力な指導をしていきたい、またそれに伴う措置をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  207. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 法制局と協議するというのですから、その結果を待ってまた議論しましょう。またその場合には、法制局にも来てもらいまして、質疑をいたしたいと思います。  では、保留をいたしましたことを除きまして、本日は終わっておきたいと思いますが、私は、このような法律を出す、そのこと自体、いままで政府がとってきました、この労働基本権を公務員は制限をする、そのかわり代償の措置として人事院を置き、人事院勧告を待って給与をきめるという、従来の、政府が取り来たった人事院勧告体制というものを、みずからが否定をする。そういう意味では、政府の一貫性を欠くところの、手続的にいって、問題のある法律だと思います。またそうではなしに、教師の地位に関する勧告あるいはヨーロッパ各国の状況に見合って、十分職員団体と話をして、この給与というものはきめていくんだ、こういう原則に立つとするならば、私は、この法律を出す以前に、当然日教組文部大臣との間で十分な交渉をやって、合意を得てからこういう法律は出すべきである、そうでなければ、先ほど申し上げた趣旨からいって、きわめて矛盾をするのではないだろうかというふうに思います。  さらに、各県の教職員給与の実態等、あるいは勧奨退職の状況等あるいは住宅の状況等、いろいろ数字を出していただきますと、このような法律を出す以前に、文部省がこの先生方の待遇について、より人材が集まるようにするための手だてについて、欠いた点が非常に多い点を指摘をしないわけにはいかないと思います。その点はきわめて遺憾であります。これらの問題につきましては、保留をいたしましたので、あらためて十分議論をいたしたいと思います。  以上をもちまして、質疑は一応終わっておきます。
  208. 田中正巳

    田中委員長 次回は来たる二十日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十二分散会