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1973-06-19 第71回国会 衆議院 農林水産委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十九日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 佐々木義武君    理事 仮谷 忠男君 理事 坂村 吉正君    理事 藤本 孝雄君 理事 山崎平八郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 柴田 健治君    理事 美濃 政市君 理事 津川 武一君       上田 茂行君    加藤 紘一君       笠岡  喬君    金子 岩三君       瓦   力君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    佐々木秀世君       島田 安夫君    正示啓次郎君       白浜 仁吉君    菅波  茂君       田中  覚君    高橋 千寿君       西銘 順治君    長谷川 峻君      三ツ林弥太郎君    湊  徹郎君       森下 元晴君    安田 貴六君       井上  泉君    角屋堅次郎君       島田 琢郎君    竹内  猛君       野坂 浩賢君    馬場  昇君       湯山  勇君   米内山義一郎君       諫山  博君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       稲富 稜人君    神田 大作君  出席国務大臣         農 林 大 臣 櫻内 義雄君  出席政府委員         農林政務次官  中尾 栄一君         農林大臣官房長 三善 信二君         水産庁長官   荒勝  巖君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    杉岡  浩君         警察庁警備局警         備調査官    渡辺 善門君         防衛庁防衛局運         用課長     上野 隆史君         防衛施設庁総務         部施設調査官  佐藤 次郎君         外務省アジア局         外務参事官   中江 要介君         外務省欧亜局外         務参事官    山田 淳治君         運輸省港湾局技         術参事官    大久保喜市君         気象庁観測部地         震課長     末広 重二君         建設省河川局河         川計画課長   飯塚 敏夫君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 六月十五日  辞任         補欠選任   安倍晋太郎君     島田 安夫君 同月十九日  辞任         補欠選任   小山 長規君     田中  覚君   正示啓次郎君     高橋 千寿君   白浜 仁吉君     加藤 紘一君   丹羽 兵助君     上田 茂行君  三ツ林弥太郎君     瓦   力君 同日  辞任         補欠選任   上田 茂行君     丹羽 兵助君   加藤 紘一君     白浜 仁吉君   瓦   力君    三ツ林弥太郎君   田中  覚君     小山 長規君   高橋 千寿君     正示啓次郎君     ————————————— 六月十八日  農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正す  る法律案湯山勇君外十七名提出衆法第四六  号) 同日  林業振興に関する決議の具体的実施に関する請  願(阿部助哉君紹介)(第七二七七号)  同(岡田哲児紹介)(第七二七八号)  同(枝村要作紹介)(第七二七九号)  同(小川省吾紹介)(第七二八〇号)  同(上坂昇紹介)(第七二八一号)  同(坂本恭一紹介)(第七二八二号)  同外一件(島田琢郎紹介)(第七二八三号)  同外一件(島本虎三紹介)(第七二八四号)  同(野坂浩賢紹介)(第七二八五号)  同外二件(美濃政市紹介)(第七二八六号)  同外三件(井上泉紹介)(第七三六九号)  同(村山喜一紹介)(第七三七〇号)  同外一件(小林進紹介)(第七四五五号)  同(村山富市紹介)(第七四五六号)  オレンジ及び果汁の輸入自由化阻止に関する請  願外二件(足立篤郎紹介)(第七三六三号)  造林政策確立に関する請願外三十四件(金丸信  君紹介)(第七三六四号)  同外十四件(鈴木善幸紹介)(第七三六五号)  同外一件(中村寅太紹介)(第七三六六号)  同外十九件(早川崇紹介)(第七三六七号)  同外三件(三原朝雄紹介)(第七三六八号)  同(床次徳二紹介)(第七四五三号)  同外三件(藤波孝生紹介)(第七四五四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  漁船損害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第五八号)  漁船積荷保険臨時措置法案内閣提出第五九号)  水産業協同組合法の一部を改正する法律案(内  閣提出第七九号)      ————◇—————
  2. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。  漁船損害補償法の一部を改正する法律案漁船積荷保険臨時措置法案及び水産業協同組合法の一部を改正する法律案の各案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  3. 竹内猛

    竹内(猛)委員 水産三法に関してはすでにかなり委員から質問が出ておりますし、そういうものを踏まえて、水産三法の基礎である水産業そのもの基本的な問題と将来の展望について質問したいと思います。これが第一であります。  そしてもう一つは、やがて大臣が見える段階では、この期間にニクソンの声明などいろいろなアメリカの変化があり、同時にまた、田中総理が青森で発言したような問題も含めて、非常に農業に重大な問題でありますから、それらについても大臣質問したいと思います。  まず最初に、水産業の今後の方向に関して、五十七年を展望して、農林省日本カロリー展望を出しました。二千四百五十というカロリーの中に動物性たん白というものが当然計算されているわけですが、それはどういうような形で計算をされておるのか。現在日本水産業状態は、どういう漁獲があり、どれだけ不足し、その足りない分をどのように海外から輸入し、あるいはどのような形でこれを確保しておるのか、こういう基本の問題、いわゆる日本人の栄養確保のための基本的な問題について、まず水産庁から説明を求めます。
  4. 荒勝巖

    荒勝政府委員 この日本国民食生活におきます水産物依存度は、日本が海に囲まれているということを反映いたしまして、昔から魚類国民の貴重な資源と申しますか、常食になっているわけでございますが、最近におきまして、大体この食生活洋風化ということもありまして、動物たん白質の中に占めます水産物比率は多少落ち目になってきてはおりますけれども、依然としく四十六年でございますが、五二%前後の、全動物質たん白資源のうち水産物がそういう比率を占めておるわけでございます。  また、この魚類漁獲量も逐年ただいまの段階では増大を見せまして、正式には四十六年の統計では約九百九十一万トンの漁獲高を占めておりまして、先般発表をいたしました農林省の速報では、昭和四十七年度におきましては千七万トンの大台になりまして、昨年ペルーのアンチョビーの生産実績が非常に悪かったこともありまして、名実ともに世界一の漁獲高の推移を見せておるわけでありますが、今後の需要の測定ということにつきましても、ただいまいろいろな形で試算いたしておりますが、相当増大するものと私のほうは見ております。  特に五十七年を一応目標といたしておりますが、食用魚介類需要量というものを試算いたしますと、約九百三十万トン前後というふうに推定いたしまして、これは国内の総需要量に対します自給度といたしましては、約九七%を占めておるわけでございます。  輸入量につきましても、逐年多少ふえたり減ったりしながらも、現在約四十四、五万トンという水準になっております。これは主として国内で供給ができない高級魚といいますか、特殊な魚類エビあるいはタコといった系統のものが逐次ふえてきていると思いますが、私たちとしては極力自給度を守るということで、沿岸漁業あるいは沖合い漁業遠洋漁業、それぞれバランスをとった形で漁獲努力をするように指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  5. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いまの五十七年度を見通して約九百万トンという話があったのですが、大日本水産会展望によると、五十五年を展望した場合に、一千百七十四万トンという数字が出ているのですけれども、この数字水産庁説明とはどういう関係になりますか。
  6. 荒勝巖

    荒勝政府委員 実はただいま私の答弁いたしましたのは、国民が直接摂取する魚介類で九百七十万トン前後というふうに申し上げたのでありまして、そのほかに非食用ということで、主としてえさが中心でございますが、総需要量で五百万トン、別途そういうものがあるわけであります。
  7. 竹内猛

    竹内(猛)委員 それでは、先般馬場委員質問がありましたが、これは近海関係では非常に公害が多い。そして沿岸にもそういうものが多くて、その後もたいへん新聞などには公害発表があって、近海の魚を食うこと自体が非常に心配されている状態の中で、現在の漁業法はかなり古いものであるから、漁業法を改めなければならないような状態にあるのではないかという意味の発言もあったように聞いておるわけですけれども、日本漁業発展させるために、その基本であるところの漁業法というものをそのままにしておいて、その周辺法律に手を加えるだけでいいかどうか。やはり抜本的に考える必要がないのかどうか、これはどうですか。
  8. 荒勝巖

    荒勝政府委員 漁業法につきましては昭和三十七年に大改正をいたしまして、その後漁業法自身法律的な制度としては改正いたしておりません。しかし、その後日本経済の異常な発展に伴いまして、特に沿岸漁業では、その反面といたしまして、増養殖の急激な発達があって、漁場利用形態に変更を来たしているということが一つの特徴でございますが、また一方、他産業発展に伴いまして、埋め立てとかあるいはそういったことに基因します漁場管理上の問題が非常に大きくなってきております。  さらに、公害等による漁場の喪失といいますか、そういったことがありますほか、新しい、まさに新しい問題でございますが、レクリエーション場所としての沿岸漁業のあり方ということが、遊魚といいますか、魚をつる、スポーツフィッシングというような形のものが最近沿岸では非常にふえてきておるということが、国内沿岸漁場問題としては非常に特徴的な点でございます。  さらに、沖合いあるいは遠洋漁業につきましても、国際的な海洋法会議の問題ということを前にいたしまして、沿岸管轄権の主張あるいは国際競争の激化というようなことで、内外ともにこの問題について検討すべき時期が近づいておるのではないか、こういうふうに私たちも理解しておりまして、本年度の予算で御審議願いました中に、この漁業法改正についての研究会ということの予算を多少いただきまして、数年検討させていただきまして漁業法改正に取り組みたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  9. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、七〇年代後半の日本の大きな問題は、一つは、石油とかあるいは木材とか、こういう産業資源、エネルギーの問題、原料の問題をめぐる問題があるし、もう一つは、食料というものが国際的に新しい角度から見直されなければならない段階に来ていると思う。そういうときに漁業動物性たん白というものが国民栄養の中に非常に足りなくなってきていることも事実です。畜産のほうだけでは足りない。やはり魚が補うという面が非常に多いわけでありまして、そのためには、一つは、新鮮な魚がとれる安定した漁場確保、それから安全操業、それからもう一つは、今度の法案で審議するように輸送の問題におけるところのいろいろな補償等々の問題も含めて大事だと思います。  そこで、国際問題ですね。日本を取り巻く海外の諸問題、条約が結ばれているところもあるし、そうでなく交渉でやっているところもありますが、海外の問題について日本がどうも受け身のような感じがする。これは問題はないかどうか。あるとすればどういうところに問題があるのか。この点をひとつ明らかにしてほしいと思います。
  10. 荒勝巖

    荒勝政府委員 先ほどちょっと触れましたように、最近急速に、海外におきます沿岸国沖合いに対するあるいは漁場に対する管轄権発言権増大ということが高まりを見せておるわけでございます。  過去におきまして、日本が各国との間に漁業条約をそれぞれつくりまして、従来からそれによりまして安全の確保につとめ、また日本水産物漁獲努力をしている次第でございます。大きなものといたしましては、これは外務省十分あとで御答弁願いたいと思いますが、日ソ漁業条約というのが一つの大きな問題になっておりまして、さらに日米加漁業条約あるいは沿岸国との関係では韓国との間の漁業条約ということで、さらに国連海洋法会議の中で日本としてもそれぞれの立場からこの条約に参加しておるわけでございます。そのほか、マグロとか、そういった小さな区域の大西洋の条約とか、こういったものに参加いたしまして、魚族資源の保護ということと、それから日本一定割合漁獲量確保するという二点で、国際的に相手国立場も考慮しつつ、日本としてこういった問題に対処してきている次第でございます。
  11. 竹内猛

    竹内(猛)委員 国際的な問題、日中それから日ソについては、あと大臣なり外務省に答弁を求めますから、若干先のほうにいきます。  国内においての問題として、遠洋それから沿岸それから内水面、これが占める割合、これはどういうふうになっているか。これは必要漁獲高に対するウエート、比重です。
  12. 荒勝巖

    荒勝政府委員 先ほど申し上げましたように、約一千七万トンの漁獲量日本としてはあげまして、国民食生活に寄与しているわけでございますが、沿岸漁業振興という立場から申し上げますと、およそ概括的に申し上げますと、最近は横ばいもしくは微減というふうな段階でございまして、二百五十万トン前後で過去十年間ほど推移しておる。これは私たちの見方でございますが、沿岸漁獲資源量としては大体二百五十万トンがむしろ多少とり過ぎではないか、この辺が大体の限度ではなかろうかというふうに理解している次第でございまして、残りの七百五十万トンから八百万トン近いものが大体沖合い漁業あるいは遠洋漁業という形で、世界の至るところで日本漁船漁獲をいたしまして、本土、内地に持ち帰ってきているような次第でございます。  ただ、沿岸の二百五十万トンにつきましては、国民食生活変化やあるいは所得の増大に伴う嗜好高度化というようなこともありまして、従来大衆魚といわれておりました一部のイワシあるいはそういった大衆魚みたいなものよりも、非常に高級魚であると思われるそのほかのエビとかあるいはハマチとかというふうに、魚種に対する嗜好変化が非常に強く出てきておりますので、われわれといたしましては、沿岸のおいしい虫高級魚中心として今後漁業指導をしてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  13. 竹内猛

    竹内(猛)委員 最近PCBとかいろいろな形での公害発表されました。その公害によって、漁獲があってもそれが食べられないあるいは食べてはならないというそういう量、範囲、これは二百五十万トンの中のどれぐらいになるのか。
  14. 荒勝巖

    荒勝政府委員 水産庁なり政府側立場から十分指導ができなかった関係もありますが、従来では水俣湾内の第一水俣病段階だけが水俣湾内の魚につきまして漁獲の実質的な規制を行なっておりまして、そのほかの魚類につきましては十分な被害状況につきまして調査がいたしかねておりましたが、しかし、魚類に対する重金属等汚染が非常にはなはだしいというようなことから、最近、政府部内で各方面で調査検討いたしまして、逐次その結果を公表しております。したがいまして、汚染魚によって食生活に供せられなかった数量いかんということにつきましては、おそらく四十八年度におきまして、大体漁獲規制量ということが、実質的な漁獲の操短、水揚げの減少ということが相当明確になるのでありまして、いままでは水俣湾内のみでございますので、おそらく数百トン前後が実質的な規制の対象になっておった。そのほか多少カドミウムとか何かで、あるいは水銀事件で、第二水俣病昭和電工の新潟県の問題等もありまして、内水面漁業で多少漁獲の実質的な規制を行なっておりましたけれども、これは数量の問題としては非常に過大には出ておりません。
  15. 竹内猛

    竹内(猛)委員 その場合、四十八年度で把握ができる、そうすると、その把握ができた分だけは魚をとっても食べられないのだから、その補償というものを水産庁はどういうふうに考えているのか。要するに、国が補償するのか、その公害のもとで補償させるのかあるいはその公害を出している工場そのものに対して停止をさせるのか、この辺はどうです。
  16. 荒勝巖

    荒勝政府委員 これにつきましては、従来の姿勢から申し上げますと、原因者負担原則ということで、原因者が明確になった場合におきましては、公害はすべて原因者がその補償責任を持つということで政府部内統一的に指導してきておったわけでございますが、今回の第三水俣病発表を契機といたしまして、必ずしもそれだけで漁民、特に何ら罪のない漁民に対する対策としていいのかということが非常に問題になりまして、いろいろ検討はさしてもらっておりますが、現在の時点において、先般の環境庁を中心とする会議等におきまして、政府部内におきましては何らかの形で天災融資法に準じた方向検討できないだろうか。これは融資でございますが、融資ということで一時つなぐという方向で、ただいま検討さしていただいている次第でございます。
  17. 竹内猛

    竹内(猛)委員 漁民は罪はない。融資ということになれば返すわけでしょう。そういうことではこれは了解できない。いままで魚をとった者はずっと海を守りながらやってきた。それで工場ができて汚水が流れて、その結果、魚が非常に危険なものになってきた。そしてとれなくなったときには、それに対して天災融資融資をするということでなくて、補償をするということはできないですか。
  18. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま御指摘のことが政府部内でも非常に問題になっておりまして、融資だけで一体いいものかどうかということが非常な論議を呼んでいるわけでございますが、御存じのように、この原因者が当然にその代償を支払うべきであるという見解、またこの原則といいますか、こういった考え方が非常に強く支配しておりまして、その問題の解決にはただいまのところ非常に困難な問題が多いわけでございますが、ただいま申し上げました融資につきましては、これはあくまでたてまえは融資でございますが、原因者が明確になった段階におきまして原因者がその分は当然にあとで返済の義務、そのあと始末をする、こういうふうに私たちは考えている次第でございます。
  19. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この問題については、非常に重大な問題ですから、きょうだけでおしまいにはしないで、今後この問題はやはり続けて議論をしていきますが、われわれは、少なくとも漁民責任でない、そういうものに対して借金をさせたりあるいは従来の生活が変わらなければならないようなことになったときには、当然これは国があるいはその汚水を出した会社、こういうものが負担をすべきであって、漁民にそういう負担をかけさせるべきではないということを重ねてこれは主張しておきます。意見として私は申し上げておきます。  そこで、国内におけるカロリー確保のために、内水面の話は先ほどなかったわけですが、内水面で大体十七万から二十万トンの漁獲物を見込んでいるわけだ。この内水面も最近は河川汚水等によってだんだんきびしいものになってきている。先般茨城県ではシジミがあのような交渉をしなければ解決をしない段階になってきた。こういうことが至るところにあるわけだ。内水面の今後の見通しはどうですか。工場汚水等によって内水面まで侵されてしまう、こういう心配が私はあるのです。水産庁は内水面の現状と発展方向をどう見ておりますか。
  20. 荒勝巖

    荒勝政府委員 先ほどは失礼いたしました。内水面漁獲高は、御指摘のように、最近は十六、七万トンというところまでいっておるわけでございますが、ただいま公害等、いろいろな河川汚染のため、内水面漁業も、どちらかというと、停滞、むしろ微減方向をたどっておるわけでございます。われわれといたしましては、内水面の持つ意義の重要性にかんがみまして、養殖等中心といたしまして内水面漁業振興に今後大いに努力してまいりたい、こういうふうに考えております。さらに、内水面漁業には、そのほかに遊漁の問題といいますか、都市生活者レクリエーション場所としての内水面漁業振興ということも非常に大きなウエートを占めてきておりますので、こういったことを踏まえて、内水面漁業には今後さらに力こぶを入れてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  21. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この内水面漁業についても、沿岸近海と同じように、非常に公害のおそれがあるわけですから、これに対して厳重に取り締まりをして、少なくとも内水面漁業がいまより後退することのないように、十分に注意をすることを要求します。  そこで次に、魚をとる漁業労働者の問題。この漁業労働者が農村と同じようにだんだん老齢化していく傾向にあるし、その賃金支払い形態雇用形態というものが非常におくれている。ちょうどタクシー運転手のように、ノルマ制度というものがいまだにとられている。こういう制度についてこのままでいいと思うかどうか、現在の漁業労働者実態がこのままでいいと思うかどうか、これを何とかしなければならぬというふうに考えておられるかどうか、この辺はどうですか。
  22. 荒勝巖

    荒勝政府委員 特に沿岸漁業周辺におきます零細漁業中心とした雇用労働者の問題は、経営者が非常に中小である、というよりもむしろ零細に近いせいもありまして、労働条件はあまり芳しいものというふうには私たちのほうは理解しておりません。御存じのように、ただいま御指摘になりましたタクシーノルマ制よりもむしろもう一つ前近代的な形態をとっておりまして、どちらかというと、歩合制ということで、魚をとってきても、売ってみないと、ほんとうの自分たち賃金収入がはっきりしない。五分五分とか四分六というような形で歩合制になっておりまして、こういった雇用形態では、雇用労働者として安心して漁業に従事することが非常にむずかしいというようなこともありまして、急速に近代的な雇用形態に変えるべきであるというふうな意見労働省中心にして出ておりますが、われわれといたしましても、近代的な雇用形態になるよう、この問題について今後もう少し努力してまいりたい。そうしませんと、肝心の雇用労働者確保できないという限界に突き当たっている次第でございます。
  23. 竹内猛

    竹内(猛)委員 七〇年代は人間を尊重する時代だということは、与野党ともよく約束をしておることでありますから、歩合制という最もおくれた形ではなくて、もっと近代的な雇用形態にして、やはり最低賃金を保障していくという方向に向かって、農林省、特に水産庁中心として、労働省とともにこの問題についての実態調査と、それから雇用関係近代化への方向についての研究、そして、それを一定の時期に答申するような形で出していく、そういう積極的な努力というものは考えておられますか。
  24. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま水産庁運輸省の間で検討を加えているテーマでございまして、運輸省といたしましては、船員中央労働委員会ですか、ここでこの問題の議論をいたしております。大体五十年を目標にして、漁業労働者最低賃金制確立というか、そこまで言うのはちょっと行き過ぎかもわかりませんが、最低賃金制度を何とか実現したいということで検討している次第でございます。
  25. 竹内猛

    竹内(猛)委員 次いで、日本の必要食料の魚の中で、どうしても外国から輸入しなければならないもの、日本になかなかなくて大量に輸入しなければならないもの、その種類、それから、それはどこから輸入して、どういう商社がこれに加わっているかということについてお答えを願います。
  26. 荒勝巖

    荒勝政府委員 どうしても輸入しなければならないものということになりますと、日本人の食べる魚はほとんど日本でとれておりますので、そういうものはないのですけれども、需要が非常に旺盛だということで、輸入量として多いのがやはりマグロとエビ、それから鯨肉でございます。あと、金額的にはそう張りませんが、輸入比率として高いと思われるのがタコあるいはモンゴイカ、こういったものが特徴的な形になっております。  マグロにつきましては、主として韓国船によって入れておりますけれども、このマグロは、私たちの受ける感じでは、かん詰め用のマグロ、原料用マグロが中心でありまして、いわゆる生食といいますか、おさしみ用のマグロはあまり入っていない次第でございます。それからエビにつきましては、あらゆる地域におきまして、まさに沿岸の一番浅いところでとれるもんですから、あらゆる国から入っております。それから鯨の肉につきましては、大体鯨肉を食べるのは日本だけでございますので、ソ連あるいはペルー等捕鯨をやっている国から一部輸入さしていただいております。タコあるいはモンゴイカ等につきましては、スペインあるいは大西洋の、スペインの少し南のほうのアフリカの沿岸諸国がタコ、イカの産地でございますので、こういったところから主として輸入しております。総輸入量としましては大体五十万トンくらいになっております。  金額的に申し上げますと、輸入額としましては、エビがCIFでキログラム当たり千円前後、マグロ類が二百円ちょっと、タコがキログラム当たり百五十円から七十円前後、鯨の肉がキログラム当たり百円前後というふうに通関統計ではなっております。  輸入国別ということになりますと、先ほど申し上げましたように、マグロが非常に多いので、韓国が一番大きくて、二万一千トンという数字を示しております。それから台湾からも約一万四千トン、あとアメリカあるいはフィリピン、フィリピンからは千二百トンほどというふうな形でマグロ類が輸入されております。それからエビにつきましては、インドネシア、インド、タイ、メキシコ、オーストラリア、中国、香港というふうな形になっておる次第でございます。タコにつきましては、スペインが圧倒的で、スペインの南にありますカナリア諸島あたりから輸入されておる次第でございます。  商社につきましては、これはもう零細な形で輸入が行なわれてまいりますので、多種多様な中小商社まで入っておりまして、どこの商社が多いかということにつきましては、ちょっと私のほうで資料が不足いたしておりますので、どうも一がいにはお答えしにくいのでございます。
  27. 竹内猛

    竹内(猛)委員 先般買い占めが行なわれた。木材が買い占められた、いろんなものが買い占められた。そのときにマグロが買い占められたということがいわれました。たいへん消費者は不安を持ったわけですが、やはりそういう国内で十分でなく外国からかなり輸入するものについて商社が買い占めをするということは間々ありがちだ。特に今度えさが、ペルーのアンチョビーがなかなかとれない。そうなると、えさの部分についてもいろんなことが行なわれがちであるし、そういう点において商社というものがどういう形でこれにタッチしているかということについては、全然水産庁は無関係なわけですか。
  28. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいまマグロの一船買いの問題について御指摘がございましたが、当時から、最近までも調べておりますが、このマグロの、これは輸入ではございませんで、国内漁船が長い航海を終えて帰港をする場合に、陸上の一部の大手の買い手の人と沖合いとの間で、無線の交換等による値ぎめを行ないまして、一船で一億とかなんとかという形でまるごと買い取るというふうな形になっておりまして、これは主として国内の船と国内の商社の問題だというふうに理解しております。  また、それに商社がどのようにかんでおったかということにつきましても、大体焼津を中心といたしまして、マグロのうち相当部分がかん詰めに回るわけでございますので、そういったものにつきましては、大手の企業と大手の商社との間で一船買いの動きが相当あることは事実関係として認めたわけでございますが、生食用に回るものにつきましては、大手の商社というよりも、非常に金融余力のある、あるいはそういった大手の仲買い人といいますか、そういった仲卸といいますか、そういった方々が大体一船ごとに買い占めるような風潮があったようなことになっております。  また、商社がどの程度こういった輸入ものに関与しているかということでございますが、私たち立場から見ますと、何らかの形でやはり融資とかあるいは外国との漁船関係におきましても、船を輸出するとかあるいは荷物の引き取りを行なうとかという形で、商社が保証人というような形で相当実質的に管理している場合も多いように見受けられますが、また一方、漁業法立場から、あるいは漁船の建造あるいは許可という立場から、あるいは輸出という立場から検討している限りにおきましては、証拠書類としては、商社がこれの株主になっているとかいうような形にはなっておりませんで、実質的には金融的な裏づけが強いのじゃなかろうか、こういうふうに私たち理解している次第でございます。
  29. 竹内猛

    竹内(猛)委員 やはり消費者はそういう買い占めというようなことについて非常に敏感であるし、気になるわけですね。これをないようにするということについて一そうのくふうはできないものかどうか。  と同時に、もう一つ日本は輸入をするけれども、日本水産物は輸出をしていないのか、その辺はどうですか。
  30. 荒勝巖

    荒勝政府委員 輸入もいたしておりますけれども、また一方、従来からマグロ類を中心といたしまして、対米輸出といたしましてマグロのかん詰めあるいは塩水づけというものが相当出ておったわけでございますが、これがこの二、三年来多少アメリカのFDAとの関係におきまして、何となく輸出があまり十分にいってないというのが一つの問題点でございます。さらに、かつてはイギリスを中心といたしましてカニかん詰めあるいはベニサケのかん詰めといったものが、これは相当高級な食品でございますが、これがイギリスを中心として、アメリカにもカニかん等は出ておったわけでございます。さらに、これは生鮮食料品ではございませんが、真珠等がアメリカ向けあるいは世界に向けまして、日本水産物として海外に輸出されておるというふうに私、理解しておる次第でございます。
  31. 竹内猛

    竹内(猛)委員 魚の中であるものは割り当てをする、許可をする、こういう許可、割り当てをする種類と、それからその基準、どういうところにどういう割り当てをしたか、こういうことについてどうですか。
  32. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私たち水産庁といたしましては、おもな漁業につきましては許可制をしきまして、漁業指導あるいは振興している次第でございます。  御質問の点でございますが、この許可制をなぜやっているかという本来の目的でございますが、これは資源の保存ということが一つの大きな柱でございまして、これは御存じのように、日本漁業者は非常に元気といいますか、努力をする傾向がございまして、無制限といいますか、自主的におまかせしておくとあらゆる魚をとってしまう傾向がございますので、やはり資源保存という形でこの許可をしなければならないというのが問題の一点と、それからやはり多少漁民同士の競争が激化いたしまして、紛争も多少起こる可能性もございますので、その紛争の調整ということを理由にいたしましてこの漁業法というものができておるわけでございます。  現在農林大臣が認めております許可漁業の対象であります指定漁業といたしましては大体十七種類がございます。また都道府県知事の許可漁業は、漁業法で認められているものは四種類、そのほか、都道府県の操業実態等によりまして調整規則で許可漁業としているものがあるわけでございます。  こういった漁業をするに際しましての基準といたしましては、すべて条件等を付しておりますが、法律によります適格条件といたしましては、少し長くなりますが、漁業及び労働関係法令を順守する精神を著しく欠くものはだめ。それから二番目といたしまして、漁業を営むに足る資本を有すること。また三番目としまして、使用する船舶が一定の要件を備えなければならないということ、それからさらに勘案事項といたしましては、漁業者の経営の安定の度合い、あるいは漁業転換ということもありまして、一方の漁場から強制的にあるいは転換させられる場合には、転換せざるを得ないというようなことが優先順位、それから漁業従事者の自立することが一つの勘案事項、それから経営隻数、操業の状態といったこと、それから漁業への依存度といったようなことを勘案いたしまして決定する、こういうふうになっております。  なお、多少詳細にわたりますが、農林省自身が許可しております十七種類について申し上げますと、沖合い底びき漁業一つ、それから以西底びき、それから遠洋底びき、北洋はえなわ刺し網、母船式底びき、それから大中型まき網、それから大型捕鯨、小型捕鯨、母船式捕鯨、それから遠洋カツオ・マグロ、近海カツオ・マグロ、母船式カツオ・マグロ、中型サケ・マス流し網漁業、中型サケ・マスはえなわ漁業、母船式サケ・マス漁業、母船式カニ漁業、これが農林省自身できめておるものでございます。あと都道府県知事あるいは調整規則というふうな形になるわけでございます。
  33. 竹内猛

    竹内(猛)委員 その場合に、主たる割り当てをしている業者、さっきの条件に沿った業者というものは、いま大手で六社とか七社とかいわれているけれども、それも含めてどれくらい水産庁としてはその条件にかなったものがあるのか、これはどうですか。
  34. 荒勝巖

    荒勝政府委員 総トータルが実はちょっと入っておりませんが、先ほどお話ししました沖合い底びきが四十七年三月三十一日現在で九百四十五隻、以西底びきが六百三十、遠洋底びきが三百十五隻。それから北洋はえなわ刺し網が二十二隻、母船底びきが二百六十隻、大中型まき網が四百四十三隻、大型捕鯨が十二隻、小型捕鯨が十隻、母船式捕鯨業に伴う独航船等も入れまして七十隻遠洋カツオ・マグロが千二百四十五隻、近海カツオ・マグロが千五百二十隻、母船式カツオ・マグロが四十一隻、中型サケ・マス流し網漁業が五百四十四隻、中型サケ・マスはえなわが三百六十九隻、これは現在は全部転換をいたしまして流し網に変わっております。母船式サケ・マスが三百四十二隻、これは独航船を含んでおります。母船式カニが七十二隻、これも独航船あるいは搭載船を含んでおるわけでございます。
  35. 竹内猛

    竹内(猛)委員 業者等々についてはまたいずれ基準についてはあとで資料を、これは続いて質問をする必要がありますから。  大臣が見えたから、今度は大臣のほうへ質問します。  先般五月三十日に中野食糧庁長官と相澤主計局長と田中総理大臣が話をしたことが新聞記事に出て、この委員会がかなり緊張したことがあります。そのときに大臣に出てきてもらってその真意いかんということを尋ねようとしたところが、お見えにならなかった。その後、総理大臣は青森県の参議院の補欠選挙の応援に行ってたいへん重要な発言をされました。生産者米価を二年分決定する、あるいは休耕等はやめてこれを畑地に変えていく、あるいは日中の交渉、航空協定やその他のものはそう急ぐ必要はない、こういうようなことを言った中で、特に米価問題について一〇%値上げをする、こういうような話をされたわけですけれども、これは大臣関係をしていますか、相談を受けたわけですか。
  36. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいま御質問田中総理の遊説先における発言というのは、農林省関係の重要なことについての御発言でございまするから、私もその後直ちにテレタイプを見るとかあるいはその日の新聞記事を詳細に読みました。いま御質問の大事な点は、農林大臣は承知しておるか承知してないか、その点については私は直接に承知しておりません。  ただ、いまの御質問の中に中野長官が総理にいろいろお話を申し上げたではないかということをもって、それからの関係があるのであれば、それは間接的に私はそのことを、この発言の内容そのものではないけれども、要するに、これからの米の生産調整等について中野長官が御説明を申し上げたという事実は承知しておりまするから、そういう点では、私は全然知らないとかというわけにはいきませんが、しかし、発言そのものを直接に私がいろいろ打ち合わせをして、その結果がああいう発言になったかどうかというふうなお尋ねであれば、それは私は存じておらない。  ただし、大事なことであり生ますから、その後発言の内容についてはあらゆる角度から、ほんとうはどう言われたかということをそれぞれ入手してみましたが、いま御質問されたように、米価は二年きめるのだ、休耕は云々とおっしゃいましたね。この休耕のほうは言われたと思うのです。一〇%云々、これは私のところへ入ったいろいろな資料の上からは、そういう事実は私はないように存じておるわけでございます。
  37. 竹内猛

    竹内(猛)委員 米価を二年分きめるということについては、大臣は承知をされていますか、二年令米価というこの米価のきめ方について。
  38. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 言ったか言われないかもわからないのに、いろいろ私が田中内閣の閣僚として申し上げることは、本来言えば、穏当を欠くわけであります。しかし、腹蔵なく、そういうようなことが考えられるかどうか、アイデアとかどうとかというなら別ですが、具体的に現実にそういうことがどう受けとめられるかということになれば、この節のように非常に各般の情勢の変化があって、なかなか一カ月、二カ月先も予想ができないような状況のもとにおいて、かりにそういうお話が総理とかなんとかじゃなくて、二年米価というものが考えられるかどうか、こうであれば、私はなかなか困難だ、こういうふうにお答えせざるを得ないと思います。
  39. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そのこととも関連をしますが、ニクソンがアメリカのほうで十四日の日にインフレ対策としてかどうかわかりませんが、大豆、えさ、あるいはその他のものについて一定の制限をする、真意はまだよくわからないけれども、このように、日本政府が最も信頼をして依存してきた、そういう国において、そういうことがやられるということになり、そしてこの委員会においてわれわれは常に、日本の食料の自給度を高めて国内で農民がほんとうに勇気と自信を持って農業をやるようにということを主張してきたけれども、いまのアメリカ自体がそういうふうにぐらついている。しかも中国においてもソ連においても食料が不足をして買い付けをしなければならない、えさがまた不足するというこの事態の中で、一体政府のいままでとってきた農業政策がいいと思っているのかいないのか。この辺はどうですか、ざっくばらんに言って。
  40. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ざっくばらんに言えというと、私は自分としては就任以来一生懸命やってきておるので、私のやったことを間違っています、こう言うわけにいかぬと思うのですね。それはそれでざっくばらんに申し上げたことで、しかし、時間的経緯もございますから、その間におまえも何か反省するところがないかということになれば、それは私としては御批判を受け、反省をするところに進歩もある、こう思っておりまするから、決して私が最善であるというような大それたことは申しません。  ただ、アメリカとの関係については、今回のニクソン大統領の声明というものが国内的な対策、アメリカ自身のインフレ対策である、こういうふうに私は受けとめております。そして、現に全般的に価格を抑制するという場合に、農産物については、過去は別として、押えておりません。そして押えておらぬものに対しての一つの歯どめ的な構想として自分に輸出制限の権限を議会から与えてくれ、それでもし海外の買いつけによってそのことが国内の価格に影響して価格を上げるというようなことであれば、それを何とか押えたいという、そういう考えの一環としてあの輸出規制についての権限付与ということを言われておるように見ておりますので、いまのところ、ニクソン大統領のあの言をもってして、それが直接的に日本のいまの農産物の需給の関係、これは日本側でいえば、場合によれば輸入に関係をする、こういうことでありますから、その需給についていま直ちに問題が起こるとは見ておらないわけであります。
  41. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これは議論をしたら切りのないことですけれども、ともかく政府がいままで信頼をしてきた国々の中でいろいろ異常な事態が起こって、そして変化があることだけは間違いないのですから、同時に、物があっても価格が高くなるということも間違いない、当然これは日本国内の消費者あるいはその他に大きく影響することは間違いのないことだと思うのです。こういう点について今後なお慎重に討議をしなければいけませんが、時間がありませんから、そこをさらに進んでいきますが、いま日中民間の漁業の懇談会が北京できょうあたりから開かれていると思うのですが、去年の九月に国交が回復をされて、そしてやがて一年を迎えようというときに、いまだに実務協定、航空協定から漁業協定あるいはその他の協定が進んでおらない。特にわれわれの立場からするならば、中国との間の漁業の民間協定は二十二日に切れるからこれを一年延ばすということでありますけれども、なぜ一体今日まで諸般の実務協定が進まないのか、これは日本側に問題があるのか、それとも中国側に何か事情があるのか、それとも怠慢であるのか、どこに問題があるのか、その問題点を明らかにしてもらいたい。
  42. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 問題というと、国交回復後の初めての協定のことでございますから、両国において諸準備が十分整っておらないというところに問題といえば問題がある、こう見ざるを得ないのであります。今回水産庁次長が現に中国を訪問しておるわけであります。これは両国の合意によって専門家会議をやろう、こういうことで随員もみな漁業関係の専門的見識のある方々にお出かけを願っておるわけでございます。こういうようなことが昨年の国交回復後早目に行なわれ、そして各般の用意ができてくれば、それは協定の推進の上に役立ったと思うのでありますが、何ぶんにも共同声明による国交回復で一切がっさいを手がける、こういうことであり、しかも日本側においても、中国側においても同様だと思うのでありますが、従来両国の交渉という場合には、これは外交チャンネルを通ずる、直接的にわれわれ農林省関係者が向こうの直接の関係者とすぐ話し合うというようなことは国際的な外交習慣上としてはないと思うのですね。そうすると、外交ルートからいくということになりますれば、大使館の設置もまだ間がないことでもございますし、しかもいろいろな問題をかかえておるということから、いわば時間的な制約も相当あって、共同声明では実務協定は急ごうと言ったにもかかわらず、それがおくれておるという実情ではないか、こう見ております。
  43. 竹内猛

    竹内(猛)委員 外務省のほうに聞きますけれども、大体国交の回復が九月に行なわれて、そしてこの二十二日には当然に漁業協定というものが切れて何とかしなければならないことはわかっている。そういうようなことがわかっている中で、そのまぎわになってから民間協定を延ばす、こういうこと。結局、その中には、たとえば中国のほうが資料を十分に出さない、話し合う材料を出してくれない、あるいはまた軍事警戒区域あるいは資源の内容がわからないというようなことがかりにあったとしても、なぜもっと早く、こういう問題を材料にして協定を進めて、安定的に魚がとれるような、あるいはいろいろな行き来ができるようなことをしなかったのか、何が問題なのか、その点を明確にしてもらいたい。
  44. 中江要介

    ○中江説明員 ただいま御指摘の日中漁業協定の交渉がおくれていることについての御質問でございますけれども、外務省といたしましては、日中共同声明に掲げられております実務協定の締結の交渉をすみやかに開始するという精神にのっとりまして、あらゆる実務協定の締結交渉を早く始めて、長い間正常化されなかった日中間を正常な形にするという努力をしておるわけでございまして、九月に日中共同声明が署名されましてから、いろいろ手持ちの資料その他で調べましても、なかなか中国側の事情もわかりませんし、また中国側も日本の事情について不明の点があるだろうということが推測されましたので、昨年十一月に、御承知のように、日本政府事務当局訪中団というものを組織しまして北京に行ったわけでございます。そのときには漁業関係ではただいま北京に行っております水産庁の安福次長も参加したわけです。向こうでいろいろな分科会に分かれまして、私も水産関係の分科会に外務省から出ておりましたので、つぶさに様子を見たのでございますけれども、ただいま農林大臣からもお話がございましたように、両方とも非常に相手の事情にうといということが痛切に感じられたわけです。これは中国側の水産当局の方も日本側のいろいろの事情を聞かれて質問をされて、そして日本側で、たとえば先ほどからお話の出ておりました資源保存のためにとっている措置とか漁民保護のためにとっている措置だとか、そういうことは非常に参考になるといって喜んで聴取されたわけです。また日本側でも中国側の東海黄海における操業の実情だとか、あるいは中国の水産業の淡水魚と塩水魚のウエートの問題だとか、いろいろつぶさに当局者から聞くことができたわけです。  そこで、そのときにわがほうからはむしろ積極的に、日中間の民間漁業協定が六月二十二日で切れるので、これは早く手当てをしなければいけない、たとえば日本政府としては、国会批准条約になるのかあるいは行政取りきめになるかによっていろいろ手続が違いますけれども、できることならば四月くらいには交渉に入ることができればいいがという希望を表明したわけであります。これに対しまして、中国側は、中国としても協定を早く締結することが利益になるという考えを持っているけれども、といって、それじゃいつからやろうということは言わなかったわけです。訪中団の最後の全体会議のときに、もう一度リマインドいたしまして、日本側からはできれば四月の下旬くらいには少なくとも始めないと、六月二十二日以後の日中間の漁業問題を政府レベルで軌道に乗せるのはむずかしいじゃないか、この点はどうだということを重ねて申し上げたのですけれども、中国側は検討してみましょう、そしてそのあとの打ち合わせば外交チャネルを通じてやりましょう、こういうことになったわけでございます。ことしになりまして双方で大使館が開かれまして、日中漁業協定問題を含めまして、あらゆる問題について、在外公館を通じての通常の外交ルートにおける接触が何度か行なわれておりましたけれども、現在までのところ、昨年の暮れ、わがほうから申し上げました四月中には協定を始めようじゃないかという非公式の提案といいますか、考え方に対する具体的な回答がないままに過ぎてきたわけです。日本といたしましては、そのままほっておくというわけにいかないので、実際にそれじゃいつから始めるにしろ、まだまだ始める前段階としての実情調査というか、そういう研究の面で足りない面があるので、資料をほしい、あるいはこういう情報をくれないかというようなことは、外交チャネルでおりに触れてお願いしておりましたけれども、なかなか手っとり早くいかない。この手っとり早くいかないという点につきましては、先ほど農林大臣もおっしゃっておりましたけれども、中国側にも事情があるようでございまして、私も二度ほど北京に参りましたけれども、中国政府は、国連において代表権が認められてから非常に多くの国と急に国交が樹立された、それで、いろいろの国といろいろな協定を結んでいろいろの取りきめを結ぶというので非常に追われている実情にあることもどうも事実のようでございまして、決して遷延するとか故意におくらせるとか、そういうことではなくて、両方とも小異は残して大同につくということでやろうという気がまえ、原則については全く意見の相違はないのですけれども、実務的には、日本が期待するほど、あるいは中国が期待するほどとんとんといかない面がございまして、これを打開するために、先ほど来お話しになっております水産庁の次長が北京に専門家と一緒に行きまして、今度はもう少し水産問題について集中的に意見の交換をしようということで、もし予想どおりですとい本日から始まっているかと思いますけれども、その結果を見まして、漁業資源の有効利用の面から最もいい取りきめを結ぼう、こういうことを考えておるわけでございます。
  45. 竹内猛

    竹内(猛)委員 会議が開かれておるときですから、これ以上深追いをすることはやめまして、いずれまたその段階質問します。  そこで、ソビエト関係ですね、日ソ漁業交渉の問題、これは一九五六年にロンドンで松本・マリク会談というのがあって、そしてその後ずっと平和条約というものが結べることを前提として交渉を進められ、漁業協定を結ぶということも含めて進めてきたわけだけれども、いまだに日ソ漁業協定というか、そういうものは正式に結ばれておらないで、毎年毎年漁業交渉という形でやって、常に日本が受け身の形になってきている。そして毎年、長い間話し合いをしなければきまらないという不安定な状況があるわけです。今度田中総理が近く訪ソされて、領土問題を含めた交渉をする。この交渉の中で、はたしていままで懸案事項であった領土問題が解決をし、そして漁業問題について三年とか五年とか十年とかというような一定の安定した漁獲ができるような形になるのかならないのか、この辺の見通しと、それに対する閣議あたりでの話し合い、それから農林大臣としてこれに対する期待、これはどうですか。農林大臣外務省に両方から答えを求めます。
  46. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 いま竹内委員の御質問で、漁業関係について申し上げますと、日ソ漁業条約の一志の取りきめがあって、そして日ソ漁業委員会が常置されておって、そしてその委員会において漁獲量をどうしようかという、そういう取り運びをしておると思うのです。この点は、もし間違いがあってはいけませんから長官から補足説明をしていただくことにいたしまして、現在の漁業基本になる資源状態というものについて、御承知のような豊漁年、不漁年もある。これは現実の姿ですね。資源状態というものが非常に浮動しておって、それが両国の研究の結果が三年とか五年とかを通じて大体の見当がつくということになってくればまたおのずから違うのでありましょうが、ことしあたりの両国の交渉の模様を見ましても、ソ連側と日本側との資源状態に対しての調査研究というものも相当差があって、そして協議の結果、両国の意思統一もできないが、この辺でお互いにそれじゃ折り合おうというようなことでいっておりますので、ほんとうは好ましくない姿ではございますが、現在のところ、やむを得ないと思っておるのであります。しかし、私どもとしては、少なくとも毎年毎年東京やモスクワの交渉でなく、二年か三年くらいの見通しはっきそうなものだというふうにソ連側には申しておるのでありますけれども、いまだに意見の一致を見ないというのが実情でございます。
  47. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま農林大臣からお話しになりましたように、いわゆる日ソ漁業条約というものがすでに成立いたしておりまして、ことしで十七回目の委員会を開催いたしまして、ことしの漁獲量をきめたわけでございます。ただ、その間におきまして、サケ・マスとニシンは、日ソ漁業委員会の取り扱い、大陸だな条約の問題が出てきましてから、カニとツブについては別途カニ協定、ツブ協定というものができまして、それぞれの手続を経まして漁獲量が毎年きめられるということで、毎年漁獲量決定をめぐる交渉が非常に長引きまして、非常に各方面に御心配をかけておるわけでございます。  水産庁といたしましては、しばしばこの問題について長期間の協定を結んだらどうか、毎年というのはおかしいではないかということで、数量についての長期協定の提案を再三再四にわたりまして従来から提案している次第でございますが、ソ連側といたしましては、資源評価の問題等を含めまして、この提案には反応を示さず、結論としましては、それぞれの魚種につきまして毎年度の交渉ということになっておる次第でございます。
  48. 山田淳治

    ○山田説明員 御質問日ソ平和条約日ソ漁業条約の関連につきましては、先生がおっしゃったように、一九五六年ロンドンで日ソ漁業条約交渉を行ないまして、その結果、日ソ漁業条約日本とソ連の問の平和条約の効力発生の日または外交関係の回復の日に効力を生ずるという規定がございまして、結局、その後平和条約が結ばれないで、そのかわりに日ソ共同宣言で外交関係の回復をやった結果、この外交関係が回復されたもので、日ソ漁業条約が効力を生じたわけでございます。したがって、平和条約との関連は一応この点であったわけでございますが、平和条約ができないかわりに日ソ共同宣言ができた結果効力が発生して、一応平和条約とこの日ソ漁業条約とは理論的には関連はないと了解いたします。  日ソ漁業交渉は、毎年そういった領土問題とかその他の政治的な問題とは関係なしに、双方の専門家によって、全く科学的な資源評価に基づいて毎年の漁獲量ないしは規制をきめている。こういう仕組みになっております。  なお、長期取りきめにつきましては、農林大臣水産庁長官がお答えになったとおりでございまして、わがほうといたしましては、従来機会あるごとにソ連側に対して長期取りきめの締結を要望し、最小限度二カ年間の取りきめを要求したこともございますが、ソ連側は、将来の資源評価はむずかしいということで、なかなか交渉に応じないということになっておりますが、今後とも外務省といたしましても、日ソ関係を安定した基礎に置くために、長期取りきめの実現については努力していきたいと存じます。
  49. 竹内猛

    竹内(猛)委員 時間が来たのでこれで終わりますけれども、漁業問題というのはほんとうに大事なときに来ているから、日本は主体性をしっかり持って、中国の問題についてももっと熱意を持って交渉してもらいたいし、日ソ問題についても、いま触れられなかったけれども、田中総理が行って一体どうなるのかということについても答えがなかったのですが、これは総理が出てこなければだめかもしれません。国際的にも国内的にも公害の問題やいろいろな不自然な問題がたくさん出ている中で、動物性たん白というものを、新鮮なものを確実に一億の国民に供給できるように努力してほしいということを要望して、終わります。
  50. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 米内山義一郎君。
  51. 米内山義一郎

    ○米内山委員 質問に入る前に資料を要求したいと思います。それはこの法案の審議のためにも緊急を要するものでありますので、すみやかにお願いしたい。根室沖地震の漁業被害の状況について資料を求めたいと思います。  次に、質問を申し上げます。  大臣が御出席のようでありますが、けさの新聞を見ますと、「参院大阪補選敗北自民しみじみ反省」という小見出しの記事がありまして、その中で政府首脳がいろいろなことを言われておる。二階堂官房長官は、「思い切った政策によって国民のくらしといのちを守る政党に脱皮したい」、それから鈴木総務会長は、「今や弁明している時ではない。原点に立ち返って一歩から党を築かねばならない」、こういうことを言われているので、実は私も用意しておった質問の角度を変えて、大臣からお尋ねしたいという気持ちになったわけです。  そこで、農林水産業における政策の原点というものは、一体具体的には何であるか。この話にもあるとおり、政治政策の原点というのは、国民の命と暮らしを守ることが原点だとわれわれは考えている。自民党もいまそこに初めて気がつかれたと思うのです。その考え方から言うと、農林水産業における原点とは何か、問い直してみたいと思う。大阪で負けたから都市問題だというもんじゃないと思う。魚一つの問題を見ても、われわれが東京へ来てイワシを食う値段が、青森でタイを食う値段よりも高くつく。これはやはり都市の国民の暮らしの問題でしょう。さらには、どの魚を選んでも、これにはPCBが入っていはしないか、あるいは水銀がないかといって、安心して食える食いものというのは少なくなってきている。これは命の問題じゃないか。これは原点じゃないか。なぜこういうふうになったのか。それを考えるのが原点に立ち返る思想じゃないか。これをどういう目標でやろうか、これが行政じゃないかと私は思うのですが、この点についての大臣の御見解をまずお尋ねしたいと思います。
  52. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまの御質問の御趣旨におそらく沿うと思うのでありまするが、この間うちからこの委員会で私が申し上げておりますのは、農林省国民に対して食料を安定して供給をしていくために努力をする、その食料をそういうふうに安心のできるように供給をするという中には、安全である必要がある。すなわち、このただいま問題になっておる汚染などがあってはならない、だから安定供給というその中には、安全供給ということも考えなければならぬ、そういうふうに徹していきたいということを申し上げたのを記憶しておるのでございます。  ただいま御質問がございましたが、暮らしと命を守るということを官房長官が言ったと、これはけっこうなことでございまして、政治の上で大事な課題であると思います。
  53. 米内山義一郎

    ○米内山委員 まあ、そんな程度の御答弁しか言えないだろうということは覚悟して聞いたことですが、しかし、これは大事なことなんですよ。まず、農林省としても、水産庁としても原則を明確にしてもらいたい。いわゆる国民にいい食料を、豊富に、安定的に供給するということが農林水産政策の原則でなければならぬと思うのです。ところが、いま安心して食える魚がなくなった。その原因は何かというと、環境破壊です。環境破壊の原因は何かというと、要すれば、資源乱費と申しますか、いまの高度成長から当然出た結果でありまして、この問題をもっと真剣に考えない限り、ことばでは何と言ったってこの問題は片づかなかろうと思うのです。  そこで、きょうはこの一つの問題を中心にお尋ねしたいが、長官は先ほど、これからは内水面漁業にも力こぶを入れると竹内委員質問におっしゃったが、ひとつ腕まくりしたあなたの力こぶというものをどんなもんだか聞きたいと思う。どの程度の力が入っているか、実は中身を聞きたい。いままでも力こぶが入ってきたかもしれないが、なぜそれが効果があがらなかったのか、どういうような外部的な要因のために行政施策の効果があがらなかったのか。あがらないばかりか、かえって衰退しているわけなんです。こういうことを検討しないで、力こぶを入れると言ったって、それはから振りにしか終わらない。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 たてまえ行政ではあるが、ほんとうの行政にはならぬと私は思うのです。  そこで、具体的な問題を中心に聞きますが、内水面漁業の問題です。日本水産物の消費の総量からいくと微々たるものです。だが、将来、安心して食える魚は淡水魚以外になくなると思うのです。ところが、いまはその淡水魚さえ産業廃棄物の汚染のために危険なんです。しかし、これは特徴があるのです。海の汚染というものは一たん拡散してしまうと、人間の力では容易に問題が片づかない特徴がある。ところが、河川、湖沼というような内水面の場合は、よごすことをやめさえすればなおるはずのものなんです。蒸発によって雲が出る、雲から雨が降る、それが河川となって湖沼に注ぐのですから、金をかけなくても、原因を断てば川の水でめしをたいて食えた日本に返るわけです。こういうことを考えてみると、淡水魚の問題、河川、湖沼の環境改善、維持ということは、単に水産業の問題だけではなしに、国民の死活にかかわる問題でもある。ですから、あなた方は、単に助成金をばらまいて、苦労しても効果のあがらない行政を重ねていると私は思うのです。  そこで、水産庁として、淡水魚の問題を考える場合に、どのように力こぶを入れて、あなた方の主管事務である淡水魚の環境保全のためにどういうお考えをもって対処してこられたのか、今後臨もうとするのか、これは力関係で非常にむずかしかろうと思いますが、しかし、この辺で、国民の命と暮らしを守る原点に立ち返ってこの問題に私は対処してもらいたいと思うから、お考えをお尋ねしたいと思います。
  54. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま御指摘がありましたように、内水面漁業の総漁獲量は十六万トン前後でございまして、むしろ最近は、どちらかといえば、衰退の危惧を多少持っておるというふうに考えておる次第でございます。したがいまして、われわれといたしましては、先ほども申し上げましたように、内水面漁業につきまして今後さらに力こぶを入れなければならない、こういうふうにいま考えておるわけでございますが、御指摘のように、まず内水面漁業振興いたしますためには、環境をよくしなければならない。水さえきれいに、川の水あるいは湖の水をきれいにすれば、内水面漁業振興というものは今後まだ十分に発展の可能性がある、こういうふうに最近考えておりまして、今後この方向に従いましてわれわれといたしましては努力してまいりたい。  さらに、この内水面漁業の中で占める問題といたしまして、新しくやはり国民のリクリエーションの場としての内水面振興ということも一つの大きなテーマとしてわれわれに課せられてきておりますので、こういった漁業者の問題あるいは遊漁者の問題というものも踏まえまして、われわれとしましては努力してまいりたい、こういうふうにいま考えております。  従来から、御指摘のように、内水面漁業につきましては養殖の主産地形成事業あるいは稲作転換対策事業等によります養魚の推進等で種苗の供給に重点を置いてきておるわけでございますが、こういった種苗の放流はさらに力こぶを入れて、この養殖が進みますように努力いたしますが、この内水面の環境の対策につきましても、海の汚染問題以上にこの問題はさらにきれいにしていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  55. 米内山義一郎

    ○米内山委員 若干私の経験をまぜてお尋ねしたいと思うのですが、私はいま開発で問題になっている小川原の漁業組合長を二十数年やってきたわけです。しかもこのために心魂を砕き、心血を注いできまして、昭和三十年ごろでしたか、水産庁が二年ないし三年にわたって私の経営している漁業組合を調査しまして、その段階では日本の内水面漁業の中の最高の水準に達したという評価を受けたことがあります。そのためにはやはり上流の鉱山から来る排水をいかに合理的に処理するか、湖の中の資源維持をどうするか、新しい魚種をどうするかというようなことをやり、さらには流通関係までやったことがありますが、どんなに苦労してもこれがゼロになる時代が来るわけです。特に今度のむつ小川原巨大開発は、小川原湖を工業用水源にとらなければあの開発は成立しません。そうすると、これを淡水化をするために潮どめ水門をかりにつくったとすると、沼の水質の変化が起きまして、いま鹿島開発で霞ケ浦の一部分のシジミが、つい先日の新聞を見ましても、四千トンも死滅したという事件が起きている。こういうふうなことが当然理学的に起きるんです。さらに統計を見ますと、日本河川、湖沼の漁獲高の中におけるワカサギというものは現在二千トンぐらいにしかなっておりませんけれども、八郎干拓がされるころまでは、第一は八郎潟、第二は霞ケ浦、第三は小川原湖というようなことで、この三つの湖沼だけで五千トンもとれていた。こういうものが政治のために奪われる。開発という名のもとに壊滅しつつあるわけです。これはとても技術では片づかない、政治で片づけなければならない問題です。  こういうことについて政府として、開発と水産資源とを金で比べて重いほうにつくのか。こういうものはわれわれ一代きりのものじゃないとわれわれは考えてやってきたわけです。こういう自然というようなものは、われわれはこれを先祖から受け継いだものです。そうしてさらによりよいものにして子孫に渡すんだという理念があれば、組合経営というものも発展方向へ行くんですけれども、そういうことに希望を失った場合には、もう人間には熱意がなくなる。そうして結局は開発に湖を売って、漁業権を高く売ればいいということになってくるんです。そうすると、日本のこういう自然をささえる人間的な力も物理的な力も失われるのです。これが今日開発のわれわれは一番おそれている点なんですが、具体的にむつ小川原の問題を考えた場合に、鹿島では農工両全というが、あそこでは、工業も発展させるが、残された貴重な水産資源もどういうふうに発展させるかというような具体的な案があるから十省庁会議で了解されたと思うが、いまの段階であの小川原湖を中心とした湖沼群の水産的な活用というもの、さらにはいま長官が言うような国民レクリエーションと申しますか保養の場と申しますか、そういう恵まれた自然環境というものをどういうふうに生かすことを十省庁会議で主張なさっているかどうか、いままでは気がつかなかったのかどうかを長官にお尋ねしたいと思います。
  56. 荒勝巖

    荒勝政府委員 海なり川が非常に最近急速に汚染をいたしてきまして、これは産業開発の結果のあと始末を十分にしないことによる影響ということのほか、当然に産業の導入に伴いまして、都市屎尿等を含む人口増によりますいわゆる川の汚染というようなことも相重なりまして、廃棄物あるいは屎尿投棄というようなことが相重なりまして、年々非常に汚染が進んでおるわけであります。最近の調査等によりまして非常に汚染が進んでおるということをわれわれはあらためて認識を深くしまして、急速にこういった汚染が進んでいるのを防止し、かつまた環境を改善していくという前提のもとに、いろいろな対策会議が中央で持たれましてこの問題に対処していくべく、今後一切川をあるいは海を汚染してはならないという前提のもとに、それぞれ対策会議を持って検討している最中でございます。
  57. 米内山義一郎

    ○米内山委員 おかしいんだ。そういうりっぱな案を持って対策を立てているならば、私を含めて地域の関係者、利害関係を特に深く持っている漁業関係者なり農業関係者なりにその中身を具体的に説明して、説得するなり納得を得る方法をとるべきです。国会の委員会でこんな抽象的な論議をしたって、現地では全然空気も感じ取れないのです。いままでは不十分だったが、今後はこういうふうにして調査をし、こういうことを必ずやりますというようなことがいまの段階で言えるのですか。
  58. 荒勝巖

    荒勝政府委員 この間の環境庁を中心といたします対策会議におきましても、この汚染実態を今後急速にかつ徹底的に調査するということがまず第一議題になったわけであります。それとともに、それに伴う住民の健康被害をあわせて調査するということになっておりますが、いままで十分に政府側河川なり海が汚染されてきているということは感覚的にはわかっておったのでありますが、公害問題に対するいろいろな事務の手続上のおくれから、この問題につきまして十分な知見といいますか、自分自身で調べた調査結果というものは持ち合わせていなかったということで、今回水銀問題あるいはPCB問題を契機といたしまして、全国的に急速に汚染されていると思われる、しかも特に国民の健康にとって有害と思われる地区の徹底的な調査をまずしようということになりまして、まずそれから着手していくということになった次第でございます。
  59. 米内山義一郎

    ○米内山委員 それじゃ私は具体的に要求したいことがあります。小川原湖というのは、日本の湖沼の中では非常に重要な地位を占めている湖です。霞ケ浦はあのとおりな状態になっているし、琵琶湖でさえ汚染がきびしくなる、さらに水利開発のために特産のアユの種苗の生産、維持も困難であろうと予測されるときに、国内で自然が保全されてきている重要な大湖です。  ところが、それも安心がいかないのです。実は私このごろ代議士になってきてさまざまな政府の公にした刊行物を見てみましたら、昭和四十五年に調査した資料がございます。そうして四十六年に公にした資料があるのですが、それには全国のカドミ汚染を対象に調査していますが、小川原湖のシジミにかなり値の高いカドミウムがある。その資料の上から見るならば、全国最高のものがある。ところが、私、知らなかった、県民も知らなかった。一体行政というものはだれを対象に行政しているか。生産者だけじゃない、消費する人のことも考えて行政しなければならないのですが、そういう重大な問題が、形式の面では公にされた形をとっているけれども、具体的には何らなされていない。そのくらいだから、この原因は何であり、どうしてこれを改善しようかという対策さえないのです。長官はおそらく御存じないかと思うが、昭和四十六年に公刊された公害白書の末尾の資料にこれがあるのです。あったとしたときに、水産庁として水産立場からどういうふうな緊急の対策をとり、恒久的にはどういう改善政策をとるというお考えなどお持ちなのか、これからのことをお伺いしたいと思います。
  60. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私たちの手元にもいろいろな形で、各種研究機関なりあるいはそれが公的なものであれ民間のものであれ、それぞれの段階調査された資料はいろいろな形で手元に保有してございますが、従来の調査が多少実験的といいますか、サンプル的な調査あるいは研究的な調査にとどまりまして、その調査資料に基づきまして直ちに行政アクションを起こす、行政的な対策をとるというほど、われわれとしましては資料といたしまして十分ではなかったというふうに理解しておりまして、特に最近被害が大きくなってきているというふうに思われましたPCBにつきましては、水産庁あるいは環境庁あげて行政機関みずからが本件の調査に当たったわけでございます。そして汚染状態国民にはっきりお示しすることによって、この問題の対処をしていきたいというふうに考えているわけでございますが、従来、ただいま御指摘のように、私たちといたしましては、カドミウムの汚染実態につきましても、もし必要とあらば、私たちのほうでもまた今後調査もさせていただきますけれども、従来の調査はどうもまだ十分に行政対策としては、多少資料としては不十分な点があったということで、今後全国的に調査いたします重金属を含む水銀、あるいはこういう分解の非常に困難な、人体にさらに健康的にも問題があるかもしれないPCBというふうなものを超重点的に取り上げまして、逐次汚染源の解明につとめてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  61. 米内山義一郎

    ○米内山委員 こういうものは一片の資料だけですべてをこうだというわけにはいかないわけです。だが、こういう極端なものが出たときは、それに疑いを持って、これは貝だからたくさんの蓄積がなされたのだとか、これはここに生息したからこうなのだとか、その原因になるものは何だろうか、その因果関係を明らかにし、さらに貝類のみならず、その他の魚族も調査して改善するなら改善する、こういうふうなことをやるのが人間を大事にする政治なんです。そういう危険なことは新聞では一ぱい書くが、現地にあることには触れないでいるということは、ぼくは政府は組織的に緩慢な殺人行為をやっているのじゃないかとさえ思わざるを得ない。明らかにカドミというようなものは、PCBに限らず、水銀に限らず、人体を死ぬ方向に歩ませているものなんです。こういうものに対してはもっと神経質になってもらいたい。そして政府の行政だけじゃなしに、消費者も含む全国民的な運動と申しますか要求の上にやらないと、みんな部分的で一時のがれで、根本的な解決にならぬのです。だから、私は、長官がせっかくそこまで言われるのであるから、水産庁の持っている機能を発揮して、まず小川原湖の重金属による汚染状態はどうであろうか、対策をどうすべきか、きわめてこれは重大なんです。  あの地域に、いま政府構想ですか、いわゆる巨大開発、ナショナルプロジェクトというものがある。このたび青森に行った田中総理の弁によると、あれは青森県が主体である、青森県が熱心だから政府が応援する気になった。県知事に言わせると、これは国家的開発だと言う。こういうようなことが簡単にぐらぐらしてきているわけだが、あそこにあれだけの規模の工業がかりに立地するならば、やがては十万ぐらいの都市が形成されるはずです。そうすると、あの地域の自然条件からいって、住民の都市用水と申しますか、衛生上の水はこの湖からとる以外に水源がないのです。こういうことともかかわるので、これは開発の基礎調査の上には必須の調査要件であります。ところが、いま調査するのは水の量の問題、どれだけとればどのような変化が起きるかというようなことを調べているようですが、水の質の問題は、やはり一番手近なのは魚との関係だから水産庁でやる、あるいはまた環境庁も建設省もその任務を負っているかもしれないが、長官はせっかくそうおっしゃるのだから、力こぶを入れてひとつこれの調査をやる、調査だけではなしに、直ちに対策を考えていただきたいと思いますが、御所見はいかがですか。
  62. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま私たち、環境庁中心にまず全国的な水銀の汚染状況調査というところにつきまして最後の詰めを行なっておりまして、それを早急に実施するということで、全国の汚染源の検討といいますか、非常に汚染されておるかも’しれない地区につきまして、ただいま全力をあげて対策を検討しておりまして、まず水銀の調査というところへ重点を置いている次第でございます。またPCBにつきましても、われわれといたしましては、さらに今後定期的に、その汚染状況の調査をするということになっております。  水産庁といたしましては、御存じのように、私たち立場からいたしまして、魚類汚染状況の調査、PCBあるいは水銀等によります魚の汚染状況の調査というところにしか能力もございませんので、その水質の調査というようなことにつきましては、環境庁を中心とする会議でその問題の専門家の方々にもお話をいたしまして、今後協議してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  63. 米内山義一郎

    ○米内山委員 きょうは内水面水産業中心にお尋ねをするわけですが、いまのままでいきますと、日本の内水面漁業というものは、自然界を対象とする河川、湖沼における漁業だけではなしに、養殖漁業まで壊滅的な状況に突入する可能性がきわめて強い。そこで、国としてこういう問題に対応するために、私は能力がないとは思いません、これだけ科学技術の発達した国ですから能力はないとは思わぬが、やる気がないからこうじゃなかろうかという疑いを持つわけです。これは行政の問題です。  たとえば淡水魚十五万トンという統計の中の河川、湖沼における漁獲高は五万トンで、そうしてウナギとかマス類の養殖が十万トンというが、その中でウナギの問題一つを見ましても重大ではなかろうかと思うのです。マスも同じですが、特に日本の給餌養殖といいますか、積極的に高たん白の餌料を給餌している養殖、稚魚養殖というものは、稚魚を成魚に変える漁業なわけです。ハマチもそうです。しかし、このように国際的にフィッシュミールの生産が窮屈になってきますと、とてもこれは及びがつかなくなるだろうと思う。そういうふうなことで、餌飼料の面の研究と申しますか、魚の生理、栄養、こういうふうな新しい技術が日本の淡水魚にすみやかに普及しない限り、ピンチの来ることは明らかです。  私は四、五年前に西ドイツへコイの調査に行ってきました。ドイツのコイの餌料の状態を見ましたら、たん白の内容及びカロリーの量というものは日本の三分の一、しかもたん白源として緑肥に使う豆類まで使うというような、非常に節約的な技術が一般的であるわけです。特に中国の内水面漁業というものは驚くべき歴史と現代的な発展をしておる。その際に、人間の食えるものを魚に食わせたほうがもうかるからという思想さえないわけです。それでも淡水魚はいまではおそらく四百万トンをこえておると思うのですが、こういうような発展を遂げておる。  そういう点から見ると、日本水産業における科学技術的な研究というのは、質の研究は高いが、行政を通していかにこれを拡大するか、この部分がものすごく欠けている感があるのです。これはもう、私は現場で、国の試験研究普及体制というものについて実は歯ぎしりするほど手ぬるいやり方だと、こう思い続けてきたのですが、いまの国が中心となっている地方の試験研究所を含む体制に問題を感じていないか、私はひとつ問題を提起したいことがあるから、現段階水産庁はその点についてどの程度の御認識があるかをまず承りたい。
  64. 荒勝巖

    荒勝政府委員 現在水産庁におきまして、淡水魚につきましての専門の研究所は淡水区水産研究所がございまして、ここで淡水漁業振興に資するための調査研究を専念して行なっておるわけでございます。これも場所が東京都下にございまして、淡水魚の調査研究ということにつきましては、いろいろな意味で逐次隘路が出てまいってきておりますので、全国的な形で水産試験研究所のあり方ということも含めまして、この一、二年のうちに早急に結論を出しまして、しかるべき最も適した地区にこの淡水魚の研究所を移転いたしたい、こういうふうにまず考えておる次第でございます。  この淡水魚の研究所の中で一つ人工餌飼料といいますか、えさの問題がただいま御指摘ございましたが、私たちのほうでも、従来、ただいま御指摘のように、魚を養殖するのに魚をもってするということで、ハマチ類に至りましては、一トンのハマチをつくるのに約七トン前後のほかのイワシなり、そのほかのコウナゴというふうな魚類を、何トンものなまものを使って養殖してきた次第でありますが、その結果につきましては、肥大の過程におきましてはある程度の研究成果はあったものの、私たち世界的な形で研究者が集めましたいろいろな総点検の中にありまして、ただいま御指摘のように、単なる魚を飼うに魚をえさにするという従来のあり方では、やはりコストも高くなるし、魚の健康管理上も多少問題があるというようなことで、いろいろ調査いたしておりまして、できますれば魚のえさの中に植物性のたん白を相当含有することがいいのではないかということで結論を出しております。私がふだんから聞いております話としましては、植物性たん白を中に二割くらい入れたのが効率としては最もいいということでありますが、これを直ちに漁業振興のためにそういう行政方式をとるかとらぬかにつきましては、今後さらに検討さしていただきたいと思います。この人工餌飼料の配合ぐあいといいますか、これらの問題につきましてはさらに検討いたしまして、日本の内水面漁業者あるいは養鰻業者の方々に、十分実行にたえ得るような結論を出すよう努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  65. 米内山義一郎

    ○米内山委員 実は日野市にある農林省の淡水魚研究所というものの実情は、私、かなり詳しく知っておりますが、あれじゃだめなんです。それは病理とか栄養とか生理というものをコンクリートの水槽の中で研究するにはあれであるいは事足りるかもしれませんけれども、一たんそれを現場に移す基礎的な実験をするためには、あんな水の量、あんな狭いお粗末な研究所では、日本のような国家の水産研究所としては貧弱きわまりない。私は何もぜいたくな研究所を要求するのじゃないのです。もっと広くて、そうして将来長期にわたって水量が保証されるものでなければ、県の試験場なりあるいは民間に進んだ技術を普及するためには、実験的なモデルにもならない。だから、もし内水面漁業発展を期する中心研究所ならば、まず第一に、水質と水の量の多いことを中心にしないと、日野みたいなものにしかならない。一ころは筑波に持っていくという話も聞いたことがありましたから、ばかなことを考えるものだと思ったこともあります。その点を私は特に申し上げておきたいと思います。いずれ、候補地もあると言われておりますので、私も及ばずながら、現地なども見て、御意見を申し上げる機会もあろうと思っております。  それはそれだけにして、次に、そういうふうにしてでき上がった研究の成果をどういうふうにして産業化するかという問題点なんです。官庁のやる、農学博士、理学博士の研究ばかりが研究じゃないものなんです。無数のいわゆる現場の人のたくさんの経験があるわけです。そうしてこれはまた学者の研究を自分のいままでの経験的な技術に加える。必ずしも成功するとは限ったものじゃない。失敗すれば、そこには失敗する原理的な、法則的な問題がある。だが、何のためにしくじったか、現場のわれわれには発見しかねるのです。また偶然成功することもある。なぜこれが成功したのかは法則的に理解できかねるのです。だから、これはある場合には名人技術に終わる場合があるわけです。うまく魚を養える人は養えるが、一般的には失敗する場合もある。これをどう克服するかということです。これは非常に大事です。いままでにない発見をすることよりも、あるものを発展させるという考え方がきわめて現実的なんです。行政的に正しいのです。そのためにはどうするかということです。いままでのこういう結果について、何か反省なり総括して自分たちでお気づきになっている点はございませんか。
  66. 荒勝巖

    荒勝政府委員 水産庁指導監督いたしております水産研究所、あるいは指導いたしております府県の公的な水産の試験場なり研究所、あるいは大学等その他の民間の試験研究機関をあわせまして、水産庁の技術陣は常にシンポジウムを持ち、また検討会をいたしまして、新しい技術を調査してきている次第でございます。特に従来戦後一貫いたしまして、漁獲量を拡大する、たくさんとるという観点から水産につきましてのダイナミックポピュレーションといいますか、魚の生息状態あるいはその資源状態ということの学問が急速に発展してまいりまして、これは日米加あるいは日ソの間の技術交流もありましたが、そういった魚をたくさんとるという技術に超重点が置かれて行なわれてきたのでございますが、最近の新しい水産の動向にかんがみまして、また方向というか新しいテーマを求めて最近展開しているわけでありますが、その中にありまして、養殖ということがある意味で相当研究の成果があがり、また産業的な発展の基礎になりつつあるものも出てきておる次第でございます。その典型的な例が一つエビ増養殖事業ということで、一つの大きな効果を示してきていることは事実でございます。  これを踏まえまして、われわれといたしましてはハマチの増養殖あるいはその他高級魚介類の発展ということを祈願いたしまして、栽培漁業、とる漁業からつくる漁業へということで、沿岸漁業振興のために大いに貢献してまいりたい。これらは相当研究機関で開発された技術を、いろいろ漁民の方にもお手伝い願って、普及の段階にようやく入ってきたというふうに理解している次第でございます。  さらにまた、従来からやってきておったのでありますが、サケ、マスの増養殖につきましても、従来はあまり成果があがってないように思っておったわけでございますが、最近の北海道あるいは東北地方に放流したサケ、マスが大きくなって帰ってまいります量も、実質的に効果が出てまいりまして、漁民の方々もその効果は非常に期待しておりますので、われわれといたしましては、今後こういった事業を大いに推進してまいりたい、こういうふうに考えております。  なお、ただいま御指摘のように、水産庁といたしましては、増養殖を含めて、単にアユの稚魚放流というふうな程度でなく、もっともっといろいろな形の魚種にまで魚種の拡大を行ないまして、試験研究を踏まえてまいりたいというふうに考えている次第でございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  67. 米内山義一郎

    ○米内山委員 いまの水産庁のそういう農漁政のやり方というのは、一種のたれ流しじゃないか。研究のしっぱなしなんですよ。それが現場にいってどういう実績をあげているか、成功したかしないかというものをくみ取らないのです。こういうものをくみ取って、たくさんの経験があるんだから、それを一カ所に集めて、なぜ成功したか、なぜこの地域では失敗したか、この技術は北では適用するが南ではだめだというようなことをもっと、理論的と申しますか、法則的に総括して、それをまた大衆に、現場に戻してやる、そうすると、そこからまた新しい進んだ経験が生まれてくる、それをまた集約して総括するというような機構がないわけなんです。何とか会議とか何とかシンポジウムというものはあるけれども、学者同士の、まるで大学教授がシンポジウムをやるようなことをやったって、現場では、無縁故とは言いませんが、あまり行政としては効果がないのです。その点は大学の試験研究というものと行政の持つ試験研究機関というものは画然と区別されなければいかぬ。さらには、すべては国がやるが、注文したってできるものじゃないし、非能率的ですから、北海道というような緯度の高い地域、気温の低いところあるいは東北なり中部なり九州というふうな地域に、都道府県ともっと試験研究を密接にして、共同研究、その地域の産業経済と結んだ研究発展させることをお考えになったらいかがだろうかと実は私はかねがね思っている。これは確かに私は私なりにそうすることは非常に効果的だと信じておるんだが、どうですか。そういうような方向に、せっかくできた研究をたれ流ししないで、受けとめるキャッチャーをつくる、そこからまた小さな種がまかれるというようにするならば、淡水魚には環境の問題と、こういう種苗なり病理なり栄養なり、こういうものとの組み合わせで総合的に、能率的にできる可能性ありと私は思うのですが、いかがですか。
  68. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、十分に今後心がけて私たちも普及に努力してまいりたいと思いますが、従来、水産庁調査研究部というのがございまして、研究一課の国の試験研究機関を直轄している課と、それから研究二課というのがございまして、これが普及業務をやっている、あるいは地方の試験研究機関の調整機構を担当しておったわけでございますが、今回、先日成立いたしました水産庁の機構改革の法律案が通りましたので、これを機会に調査研究部の名称を改めまして、開発研究部というふうに名称がえをするのみならず、担当のほうも、研究部門は研究課を設けまして、従来以上に研究努力いたしますが、さらに研究二課といった課を名称変更並びに内部の業務内容を変更いたしまして、開発普及課というふうに名称を変更いたしまして、ここでいわゆる試験研究がある程度目ぼしのついたものを開発段階に移していくという仕事を研究開発部で行なわせることにしたわけであります。さらに開発されたものを全面的に普及していくということで、開発と普及とを同じ課で指導体制を強化していくというふうに今後心がけてまいりたい、こういうふうに考えております。  なお、例でございますが、東北の最近のホタテガイの振興といいますか、増産は非常に目をみはるものがあるわけでございますが、これにつきましても、過去非常に成功したときもありましたが、また非常に失敗した例もありまして、失敗した例を踏まえまして、今後ホタテガイが失敗しないようにということで、調査あるいは研究陣が地元の方といろいろ検討した結果、最近におきましてはホタテガイについても死滅するのが少なくなってきているというふうなことも、ただいま先生の御指摘になりました調査と普及との結びつきということが成果を得たんではなかろうかというふうに私たちも考えておりまして、今後こういったことにつきましては、なお念には念を入れて努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  69. 米内山義一郎

    ○米内山委員 長年にわたるわが国の研究の蓄積というものは、世界的に見ても非常に水準の高いものがあります。だが、これは使わなければ宝の持ちぐされなんですよ。そういうふうなきらいを一日も早く脱却して、官僚的な技術の研究というふうなものから民主的な普及体制というものを特に要望してやみません。  それから、現在ある技術をもっと使わなければたいへんな問題があるのです。実は私、この一月に中国へ行きまして、主として農業の技術交流、民間的な技術交流の問題で十日ばかり話し合ってきましたが、そのときに中国側からウナギの稚魚と申しますか、シラスの話が出たわけです。いまのところ、そういうふうなものは商社にゆだねられている形なんです。シラスの値段というのは安ければ安いというほどのものでもなかろうと思いますけれども、せいぜい高くて六、七万というのが相場でしょう。去年あたり二十万近い値が出ている。そのために四、五年前からフランスから飛行機で輸入したという話もあるが、こういうことなど実におかしいと思うのです。ウナギは世界に十六、七種ある、こう学者が言いますが、そのうち日本で養殖にたえるウナギはいわば日本ウナギといいますか、アングリアジャポニカ一つなんです。インド洋には十種類もいるわけです。中国に行ってウナギの稚魚の話をすると、いるいる、たくさんいるという。われわれのほうではすくってアヒルに食わせている、こういうわけです。それは南のほうの話なんです。そうしますと、ウナギでないウナギが入るのです。それを商社がやっているのです。ある商社はフィリピンから入れています。これにもウナギでないウナギがかなり多いのです。金を出して買ってきて、えさを食わせて食われないウナギ、こういうことが現実に行なわれているのです。でも業者はシラスがないために、池を休めるわけにいかないから、貿易商社にだまされてやっていることしかない。日本の科学技術者は、それぐらいのことはもうずっと前から勉強しているわけなんです。こういうふうに、実際に日本の稚魚養殖の最大なるものがこういうピンチにおちいっているときに、はたで見ている水産庁はおかしい。もっと積極的にシラスの産地へ——国内ではすでにこういうふうな環境破壊のために資源は減る一方ですけれども、中国の中でも南のほうは危険なはずです。だが、北のほうは、私の聞いた範囲では、のぼってくる季節なりあるいは捕獲している場所なりで聞きますと、これはいわゆるアングリアジャポ二カに間違いないというような感じがしますけれども、見ないことには安心できない。こういう場所日本の技術者を派遣して、どうしたならばこれが——生産者である中国側もいままでアヒルに食わしているというんだから、未利用資源なんです。中国の資源としても活用し、わが国の資源としてもそれこそ安定供給をすることは何もむずかしいことじゃない、やろうと思えばあすでもできることなんです。こういうふうなことなども実はおろそかになっていると私は思うのです。その意味から、早くいわゆる漁業権とか漁業上の中国との交流だけじゃなしに、専門家、技術者、こういう関係の交流についてもやる。特に日本の養殖、養魚の場合は、コイの伝来一つを見ましても、中国大陸とは非常な地理的にも歴史的にも深い関係にありますから、大事だと思います。  それから、先ほどの高たん白の餌料だけで養魚をやるのは将来非常な問題がある。そうすると施肥漁業ということになる。日本の養鶏はいま鶏ふん公害でたいへんな困難をしていますが、これをため池なりあるいは大型湖沼なりに肥料として供給することによって、第一次的には植物性のプランクトン、二次的には動物性のプランクトン、こういうふうな形でレンギョなどの生産も考え得る。日本人は気短かですから、料理法を研究しないで、中国の魚を食ってまずいということになりますが、その次の段階では調理法の研究も必要でしょう。日本の料理屋にだって四川省から出てきているりっぱな料理の先生もいるわけです。われわれが中国で食うとものすごいうまい魚だと思うが、東京や大阪の人は見向きもしないというような段階は、これはやはり内水面漁業として見落としできない基本的な問題です。単に質的な問題だけを研究するんじゃなくて、社会的な生産者、消費者を結合させる意味でも、私はそういう多面的な、特にいま具体的に言えることは、中国の淡水魚の専門家との交流を急ぐべきであると思うのですが、もうそういう機運も可能性もあるわけですから、この際急いでいただきたいと思いますが、大臣、そういう考え方はございますか。
  70. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 後段の御質問の中国との間における淡水魚の技術交流、これにつきましては、ただいま中国へ参っております水産庁次長以下の使節団がその役目の一端もになっておると承っております。  本日たいへん御造詣深い、広範囲にわたる御意見をいただきまして非常に私も勉強さしていただいたわけでございまして、御所見のように、今後日本と中国との間における淡水魚を中心としての技術交流の上にいまの御意見を生かしてまいりたいと思います。
  71. 米内山義一郎

    ○米内山委員 公害とか環境破壊がすでに全土をおおってしまっているわけですが、特に私はこの際農林大臣にお願いしておきたいことは、やればやれる自然というものを放置して、価値の低いものにして工業に渡してやるという考え方はそもそもこれは許せないのです。われわれはどんな予算をつくったって、自然というものは新たにつくることはできない。こわすことは簡単だけれども、回復させることはむずかしい。こういう時期に、工業開発のためにああいう小川原湖のようなものを壊滅するということを前提にして、ごまかしながら開発を進めることはやめてもらいたい。これは単に小川原湖の問題じゃないのです、思想の問題、ものの考え方の問題です。これは例外だ、小川原湖だけはこれは工業開発のために目をつぶってもらいたいというような考え方はあり得ない。一人を迫害する政治というものは全国民を迫害する政治なんです。九十人は生かすが十人は殺してもいいというようなそんなむざんな考え方はあり得ないのです、民主主義社会では。だから、あくまでも自然を保護しながら、あらゆる産業が調和をとりながら——調和ということばは少し不正確で、あとで何か出そうだからやめますが、調和じゃない、どっちもやれるように、そうして力のあるものが弱いものを、近代産業が農業、漁業を力づくで倒すというようなことに対しては、私は、農林大臣が政治生命をかけて防衛していただきたいと思います。最後にその御決意を承りたいと思います。
  72. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 農業あるいは漁業、林業、農林省の所管をしておるこれらの産業を見まするときに、御指摘のような環境保全と密接な関係を持っておりまして、またその心得があって初めてほんとうの意味における農業や林業や漁業がやれるものと、このように私は心得ておるわけであります。  いま御質問の中で調和というおことばを入れられて、ちょっとそれを避けられたわけでありますが、そのおことばは私のほうでちょうだいいたしまして、国土の均衡ある開発とか調和のとれた開発ということは、かねて来私どもの申しておるところでございまして、まあ、これだけでは少し抽象的ですから、一言現実に申し上げてみますと、きょうの内水面のお話を承りまして、この面で自然環境もだんだん破壊されていって、そして水産物関係でも年々減っていく、確かにそういう傾向にあるわけでございますが、他面、その試験研究のことを非常に熱心にお説きいただきましたが、この工業の発展に伴って電力の必要も出てきて、全国に相当数のダムができた、あるいは砂防の関係で砂防ダムもできるということで、湖沼などが壊廃せられておる一面において、そういうことで人工湖のようなものも相当できておることは、これはお認めいただけると思うのであります。そういうことを考えまするときに、きょう非常に御熱意をもって言われました内水面関係の試験研究の成果というものがそういうところで生かされていく素地というものは持っておるのではないかというようなこともあわせ考えましたので、私としてはきょうの御意見を尊重して、環境を保全し自然を破壊しないように、また新たに造成されておる人工湖のようなものも生かしながら、内水面における水産業についてもこれからもっと力を入れてまいりたいと思う次第でございます。
  73. 米内山義一郎

    ○米内山委員 大臣の御誠意のこもったような答弁、まことにありがとうございます。きょうはこれで終わります。
  74. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 この際、午後三時再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後三時三分開議
  75. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。津川武一君。
  76. 津川武一

    ○津川委員 漁船保険のことですが、百トン未満の船に対して純保険料の一部を国庫が負担しております。これはいいことですが、沿岸漁業、小漁業家では五トンから十九トン未満の船が多く、事故もこうした船に多くなっております。  そこで、私は、こういう保険の重点を注ぐべきところは、弱いところ、そして事故の多いところ、こういうところへ重点を指向して国政を運営すべきだと思うのですが、いかがでございます。
  77. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま御指摘のように、この漁船保険法の本来のねらいは、零細な沿岸漁民の所有する漁船について国が再保険をかけることによって、沿岸漁民生活を今後振興していくという目的のためにつくられたものでございまして、百トン未満を前提といたしまして国が国庫負担を持つということで、百トン以上の大型漁船につきましては国庫負担を持たぬという趣旨でこの法律がつくられたいきさつがございます。
  78. 津川武一

    ○津川委員 ところが、実際に小さな船を持っている人に聞いてみたら、かけていかれない、ついていかれないと言うんですね。強く国庫負担の増加を要求しているわけなんですが、水産庁はつくるときにあれで十分だと思ったのか。私は、いますぐとはいかなくても、その方向で再検討すべきだと思うのですが、いかがですか。
  79. 荒勝巖

    荒勝政府委員 この沿岸漁業におきます沿岸漁船のあり方が、私たちの見ている限りにおきまして、最近ますます造船熱といいますか、安全な船をつくりたいという趣旨もございまして、どちらかといいますと、少しずつ大型化といいますか、船の安定性が増してきているというふうに、趨勢としてはそう見ておりまして、非常に小さな一トン、二トンというふうなほんとうに日帰りのような船につきましては、むしろ漁船保険をかけるよりもかけないような形にだんだんなってきている、こういうふうに理解している次第でございます。
  80. 津川武一

    ○津川委員 いいですか、荒勝長官、無動力船が非常に多いわけです。あなたのいまの言うことを聞けば、これなんかつぶれてしまったほうがいいとも聞こえる。私は弱いところに重点を指向すべきだと思うのです。重点を指向して、そしてあなたの言うとおり、近代化されたり装備がよくなったらこれにこしたことはない。それを待っている、だからそれにやらなくてもよろしい、こういう考え方が皆さんの中にちらつくわけですが、私は今度の場合、一番の重点は五トン未満だとか無動力船、そこのところに重点を依然として指向すべきだと思う。あなたはここのところは動力化する、大型化するからいい、こういう考え方だと思うのですが、それじゃいかぬと思うのです。いかがですか。
  81. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私の御答弁が多小舌足らずで至らない点がございましたが、私たち水産庁といたしましては、零細な漁民の所有する漁船に対しましてこの保険組合に加入することを常に呼びかけまして、そして呼びかけることによりまして小さいのがふえることを期待しているのでございますけれども、宣伝といいますか、政府側の姿勢がなお足りないために、加入者はどちらかというとあまり促進されないことについてはまことに遺憾に思っておりまして、われわれとしましては、今後努力を続けてまいりたい、こういうように思っております。
  82. 津川武一

    ○津川委員 いま長官がはしなくも言ったが、ついていけないのです。そこで、ここにもっと国庫補助をふやすべきだと思うのですが、この点はいかがでございますか。
  83. 荒勝巖

    荒勝政府委員 国庫負担割合につきましては、私どもといたしましては、機会があれば、一つの理屈さえ立つならば、ふやすという姿勢は持っておりますけれども、今回法律の御審議を願います過程におきましては、まだそういう結論というものには至っておりませんが、今後零細な漁民漁船を保育するために国庫の援助というものは何らかの形で増額されるよう努力してまいりたいと思っております。
  84. 津川武一

    ○津川委員 零細な漁船が一〇〇%加入できる方向に国の補助をふやすように検討すべきだと思うのですが、いかがでございますか。
  85. 荒勝巖

    荒勝政府委員 一〇〇%加入できるようにしたいということは水産庁のかねがねの気持ちでございますが、現実問題としてなかなかそうはいかないということを先ほどるる申し上げたのでありますが、なお今後とも零細漁船の加入ということの普及につきましては全力をあげたいと思っております。
  86. 津川武一

    ○津川委員 現実問題として一〇〇%加入させようとすれば、国庫補助金をふやせばそこで問題が片づく、私はこのことを指摘して、次のほうに移ります。  それから、漁船保険の事務費ですが、国の負担が二・八%、そういう形であとは実際の船の所有者たちが事務費を負担しなければならない。これではなかなか運営がめんどうになる。ここにもまた問題があるわけです。あなたの言われた一〇〇%近い方に加入させようと思うならば、この事務費を円滑にしなければならぬ。これをもう少しふやす方法はありませんか、気持ちはありませんか。
  87. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私たちもこの漁船保険組合の事務費の補てんにつきましては極力努力しておるつもりでございまして、わずかな金額でございますが、事務費の補てんにつきましては年々ふえてきている。ことに人件費の高騰を念頭に置きましてふやしておりまして、零細な——零細と言っては失礼ですが、保険組合の経営がまずくならないように努力しておる次第でございます。
  88. 津川武一

    ○津川委員 努力することはよろしいですが、ぜひ努力して目標を達してほしいのだけれども、農業共済では、長官、あなたも実際農林省におられたけれども、事務費の国庫補助は七二・八%ですよ。漁船保険では二・八%ですよ。努力したというなら、それはわかる。ことばとしてはわかるけれども、せめてそこいらまで近づくところにいかなければ、努力しているということにはならないわけです。いかがでございます、この二つ比べてみて。
  89. 荒勝巖

    荒勝政府委員 御説明でございますが、たとえば四十年には二千万円であった補助金が四十七年には四千三百万円というふうに逐次ふえて——逐次というか、この七、八年の間に約倍にまで事務費の補てんが行なわれておりまして、なお、これは答弁には至らないかもわかりませんが、この不足分を、さらに漁船保険中央会の持っております基金から造成されます運営費の利息の一部を、こういった事務費が不均衡で経営的に少し事務費が不足している組合に対して、特にバランス是正という意味で事務費の補てんの一助にしている次第でございます。
  90. 津川武一

    ○津川委員 大臣が来たからちょうどいいあんばいですが、大臣、いま漁船保険の事務費は国が二・八%、農業共済なんかでは七二%くらいやっている。それに対して長官が、二千万のものを四千何百万にふやしたからと言う。これはいいですよ。いいけれども、大臣として、あなたの同じ行政下の中で、片っ方は二・八%、片っ方は七二・八%、こういうアンバランスがあっていいかどうか。やはりこれはすみやかにいいほうに肩を並べさせなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  91. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これはもう御指摘のとおりでございまして、極力そういう不均衡のないように今後つとめてまいります。
  92. 津川武一

    ○津川委員 大臣、それでいいが、いままでの答弁でもなかなか実践に移されない。どのくらいの期間でこの不均衡を是正するつもりか、そこいらまで少し伺わしてもらえば私も納得できます。
  93. 荒勝巖

    荒勝政府委員 大臣がただいま申されましたように、最近やはり漁船保険組合の問題といたしまして、事務費の補てんが非常に問題になっておることは私たちも存じておりまして、これにつきましては今後ほんとうに努力してまいりたいというふうに私自身考えております。ただ、やはり従来からの過去の経緯というようなこともありまして、一ぺんに飛躍的に問題を片づけるというわけにはまいりませんが、事務費が漁船保険組合の健全な運営のために非常にネックになっているということは十分に存じておりますので、それにつきましてはほんとうに努力してまいりたいと思っております。
  94. 津川武一

    ○津川委員 大臣、長官が十分に努力するそうだ。そこで、いまここで返事を求めるのは無理かもしれぬけれども、埋めるための、均衡をとるための年次計画あたりをつくって、後刻委員会に報告してほしいと思うのです。いまここで詰めてもしようがない話になりますので。  そこで、大臣が来たので、この漁船損害補償法の一部を改正する法律案はじめ三法と関連して、漁業振興する、それから漁船の安全を守る、漁業関係者、漁業労働者の生命を守る、こういうことについて少し質問してみたいと思うわけです。  今度の問題でたくさんの改正点が出ましたけれども、漁船損害補償の問題で、基本としては、起きた事故を共済するという立場より、事故を起こさない、事故の防止に当たる、こういう対策が第一かと思うのですが、この点は、大臣、いかがでございますか。
  95. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 それは当然のことだと思います。
  96. 津川武一

    ○津川委員 とすれば、その立場から少し考えてみます。  漁船の事故は、昭和四十四年四万五千五百二十二件、四十五年五万三百九十二件、四十六年五万三千二百十件と、大体三、四千件増加しております。  そこで、その原因として、台風だとか高波などの自然現象によるものもありましょう、浮遊物、転落物などの公害ともいえるものによるものもありましょうし、海上交通のふくそうなどによる事故もあろうし、実に多種多様でありますが、ここでは海上交通からの問題を少し取り扱ってみます。  海上交通は、船舶の大型化、大型タンカーの導入、フェリーの増加、モーターボート、ヨットなどの増加、こういうもので年々増加して、四十五年には、一般船舶が二万三千九百九十九隻のうち事故で救助を必要としたものが千六件、動力漁船五万三千二百三十二隻のうち救助を必要としたものが八百十七件となっております。これらの事故で漁船が六四%なんです。そしてまた海上保安の白書によって見ても、当て逃げされているものも漁船なんです。しかも五トン未満の漁船が圧倒的に多くなっているわけです。こんなに事故が大きくなっているときに、ちょうど静岡県でこういう事件が起きています。  静岡県のマリーナ基地建設構想、モーターボート、ヨットなど一万隻を収容するマリーナ基地十七をつくる。ここはシラス、アジ、イワシ、カツオなど百余種類の魚があって、漁業資源の宝庫である。ここへ一万のモーターボートをぶち込んだら、魚もとれなくなるし、漁業もだめになる。そうして事故がうんと多くなると私は思うのです。これは阻止すべきだと思うのですが、大臣はこういうことを存じておりますか。大臣、どうです。
  97. 荒勝巖

    荒勝政府委員 実はこの静岡県のマリーナ基地の件につきましては、まだ大臣に御報告いたしておりませんので、私からかわって御報告いたします。  ただいま御指摘のように、静岡でモーターボートあるいはヨットというふうなスポーツ関係の船が非常にふえてまいりまして、これが漁船との間に非常にトラブルを起こしておるということは、静岡県からも報告で聞いております。  これにつきまして、静岡県側におきましても、当初の計画につきまして多少無理な点があったという点、それからまた、漁民側の納得を得るために今後漁民ともう少し接触をするというふうに報告を聞いております。
  98. 津川武一

    ○津川委員 大臣、いま長官から聞いたとおりです。こういう魚の宝庫の中に一万のモーターボートをぶち込む。レクリエーション場所を私たちも必要だと思っていますけれども、こういう漁船の入る魚の宝庫のところに持ってこなくてもよろしいと思うのですが、いかがです、大臣は。
  99. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 いま長官がお答えのとおりに、私、詳しい事情を存じないのでありまするが、いまの御質問から推察をいたしまして、私としても同じような見解をとりますが、実情を存じませんので、この範囲のお答えでお許しをいただきたいと思います。
  100. 津川武一

    ○津川委員 こういう漁船の事故で被害船と加害船を比べてみると、漁船が加害船となる場合は非常に少ない。被害船となる場合が圧倒的に多い。統計の示すところでは六四%。そして当て逃げされている漁船が非常に多いわけです。こういう事故では加害船が当然損害を補償すべきだと思うのですが、当て逃げで加害者がわからない場合、今度の共済は適用するのですか、いかがでございます。
  101. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま御指摘のように、原因者がはっきりしている場合は当然賠償請求権というものがはっきりしておりまして、これは当然に相手側から、裁判なり、あるいは話し合いによりましても取れると思っております。その原因者が不明という場合におきましては、これは漁船保険の対象となりまして、漁船保険組合が支払いますが、もしあとで加害者あるいは原因者が明確になった場合におきましては、請求権はそちらのほうへ留保している、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  102. 津川武一

    ○津川委員 そこで次の問題ですが、先ほど話したとおり、海上交通で、交通がふくそうしてきて非常に事故が多くなってきております。そこへ田中総理がこの間日本列島改造論を発表しました。その中でこういっています。日本経済の国際化は貨物の海上輸送をますます増大させる、そのため船舶は一層大型化せられる、五十万トンタンカーを年間千四百回も入れないと列島改造に必要な原油は運び切れない、こういっています。こういうふうに大型貨物を入れる海域として、北海道の室蘭湾、岩手の山田湾、宮城の石巻湾、石川県の七尾湾、静岡の静浦湾、三重県の伊勢湾——伊勢湾ではこの前もここで問題になった事故が起きていますが、大分県の別府湾、沖繩の金武湾など、田中総理がこの中で名ざしております。ここはいずれも漁船の多い地域であります。さらにまた、年間七億トンと推定される原油の確保に五十万トンのタンカーを入れるとすれば、楽にこの条件を満たす内湾は、陸奥、橘、宿毛、志布志の四カ所、こういうふうに指定しておりますが、これでは事故が起きて、タンカーの油でよごれて漁場がだめになる。現にこの間は新潟にもこういうことがあった。伊良湖水道にもあった。このためにどれだけ小さな漁船が損害を受けるかわからない。この事故をどうして防ぐか。この対策はあるのか。こうした船舶の航行を私は規制すべきだと思うのですが、この二点、大臣日本列島改造論のここのところをどう読んだか。これに対してどう対処するつもりであるか。このまま流すのか。海をよごしっぱなしにするのか。漁船を当て逃げされ、被害を受けっぱなしにするのかどうか。その点を、大臣明らかにしていただきたい。
  103. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 津川委員の御質問は私が推察するに、お示しの漁港、港湾等を一応現状からいろいろとお考えでお尋ねになっておるのではないか。いま御指摘のような点はすでにしばしば論議をされておるところでございまして、したがって、日本経済のこれからの発展とあわして、田中総理の構想として、おっしゃるとおりの必要性が起きてくるという場合には、それはそれに対応する施策をしながらやるべきことになる、こう思うのです。ただ、現状からいろいろと考えられる範囲ということでは、私はない。ですから、御質問にそのままずばりとお答えしにくい点がございますので、これに対しての対応策なども、いまの資料の中になければないなりにまた総理の御見解を聞くし、私は、それはいろいろ対策の上で行なわれるべきものだ、こういうふうに想像いたします。
  104. 津川武一

    ○津川委員 農林大臣、この列島改造論の方策を実施しようとしているのがいまの国総法ですよ。建設委員会にかかっているでしょう。そういう場合に、大臣としてこれに考え方を持たないというのはいけないと思うのですよ。総理に任命されたから総理の言うとおりやれたら私はこれでよいというのでは困る。何ぼ見ても、いまあげた漁港の安全を期すことは何も書いてない、これに対して、海がよごれて漁業が困るだろうという配慮が一つも書いてない。私は何回も見ましたよ。赤い線もついているし、青い線もついている、鉛筆の線もついている。見せましょうか。そういうことなしにこれをやってくるのですね。この点はいかがでございます。あなたが総理に間違いなく、漁業をいままでやってきた人たちを確実に守る、漁船の安全を守る、その中に乗っておる漁業労働者の生命を守る、こういった話をしてくれれば私は納得しますよ。だから、この点、読んだのか、どう考えているか、一番最初に聞いたわけです。いかがですか。
  105. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 いまのその冊子は私も一通りか二通りかさらっと見ております。ただ、ここで率直に申し上げておきますが、総理もこの長期の国会を通じまして、列島改造論についていろいろの御質問に、私の記憶で、速記録を見たわけじゃないですが、自分はこの列島改造に対しての下巻というか第二巻というか、福祉中心の列島改造も出したい、こういうことも言われております。だから、御指摘のように、それが完ぺきなものだとは、私、思いませんし、また総理自身もそういうことも言っておられますので、そこで、先ほどのようなお答えを申し上げた、こういうことで御了解を願いたいと思います。
  106. 津川武一

    ○津川委員 そうすると、大臣も対策を書いてないということは認めますか。
  107. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 五十万トンタンカーが年間千何百回入る云々、そしてそれについてはこういうふうな施策を講じていくというふうな記述になっておらぬということは、私の記憶にもそうございます。
  108. 津川武一

    ○津川委員 とすれば、田中総理を補佐する大臣として、その点遺憾ないように対策をつくり、これを田中総理に求めなければならぬと思うのですが、この点はいかがですか。
  109. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 こういう施策というものは、性格上見ても単年度でやるとか二年でやるとかいうものでない。しかも日本列島改造はおおむね——これも記憶でございますから間違ったら訂正をいたしますが、昭和六十年くらいが目標でなかったか。ですから、その六十年までの長期計画の中でございますから、したがって津川委員の御指摘のように、私としてもこれらの施策を遂行する上に農林漁業上必要なる措置、必要なる施策というものは当然発言をする立場にあると思います。
  110. 津川武一

    ○津川委員 そこで、陸奥湾ですが、経済社会基本計画の中で、大型タンカーを持ってくる適地が四つある、橘、宿毛、志布志、それから陸奥湾というふうに名ざされている。青森県の竹内知事はここを大型タンカーの基地にしないと言っておるが、経済社会基本計画の中にはあるのだ。これを書いた田中さんは、まだ一度もこれを否定していないのだ。陸奥湾に五十万トンの大型タンカーを持ってくる。だから問題が出てくるのですが、きょうの午前中にも長官はあのとおり陸奥湾にホタテが育っているとほめてくれて喜んでいる。ここに五十万トンタンカーをぶち込むつもりですか。これはどうです、大臣
  111. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 そういうふうに具体的にお尋ねになると、これは言うまでもなく、私が執筆をし、私が立案をしておるわけでないのですから、十分なる知識を持ち合わせておりません。たとえば現在五十万トンが入るのにふさわしい水深があるのか、それとも今後そういうタンカーが入るための港湾工事をするのか、そういうような点についての知識を、私、持ち合わせがございませんから、少しくお答えがしにくいということを申し上げたいと思います。
  112. 津川武一

    ○津川委員 知識を持ち合わせないと言われると私も質問を続けるわけにいきませんが、大臣、読んでみますよ。  「昭和六十年度におけるわが国の石油需要量を年間七億トンと推定すれば、五十万トンのタンカーが年間延べ一千四百回も入港しないと必要な原油を日本に運びきれない。これは原油を満載した五十万トンタンカーが一日に三・八隻の割合日本の港にはいる計算になる。」この五十万トンタンカーを入れる「条件を満たす内湾は、むつ、橘、宿毛、志布志の四カ所しかない。」一日に三・八隻。毎日毎日五十万トンタンカーが三・八隻入る。これに対する保障がなくて、これに対して一応竹内知事はここに入れないと言っておるが、本元のこれを書いて名ざした田中総理が、これを担当してくださる櫻内農林大臣が、まだこれなんですよ。そこで、知識を持ち合わせないという点もありますから、これをあげますから読んでくださってもけっこうです。いかがですか、これはもう一度ひとつ答弁してください。
  113. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私が運輸大臣あるいは建設大臣立場でございますると、いまこうやってお答えをする上にたいへん心もとない感じを自分自身が持つのです。ただ、津川委員のお話は、私に関連があるとすると、そういう大型のタンカーが入れば漁船に影響があるのではないか、それはさらに、きょうの御質問の最初に、小さい漁船が被害を受ける、そういうところに関連をしてくる、こういうことでありますれば、またその具体的な計画の進行に伴いまして、農林大臣としては漁船の保護に万全を尽くしてもらいたいし、かくかくのことはしてもらいたいという意見が出ていくという順序になると思うのでございます。
  114. 津川武一

    ○津川委員 私は、農林大臣として陸奥湾の中における漁業を守るために、漁船の安全のために、漁業労働者の生命を守るためにどうするかということを聞いているのです。もう一度答えていただきます。
  115. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これはすでに私のお答えで御了解願えておるのじゃないかと思うのです。それは六十年までの非常な長期計画であって、その長期計画遂行に伴って、所要のことについては、私の担当のことは担当のことで考えたいということを先ほど申し上げた次第であります。
  116. 津川武一

    ○津川委員 大臣、それから、水産庁長官、この質問は後刻別な機会において、一般案件のときにもう一度尋ねますから、大臣として、長官として対策を持ってきてから答弁していただきたい。そうでないと進みません、これは。その点ひとつ約束してもらっておいて、次へ質問を進めます。  その次は、日米の合同演習なんです、軍隊の。日米の軍事力、艦船による被害。一例として、二年前、四十六年の四月、日本海でアメリカの原子力潜水艦と日本の海上自衛隊、これは大湊の海上自衛隊でしたが、合同演習で、日本海で操業をしていた漁船が被害を受けたことがあります。そこで、こうした日米の軍事演習による漁船の被害がどのくらいあったか、これはよくわかりますか、いかがでございますか。
  117. 荒勝巖

    荒勝政府委員 残念ながら、演習に基づく漁船の被害については私たちのほうでつまびらかにいたしておりません。
  118. 津川武一

    ○津川委員 漁業の被害はわかりますか。
  119. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま手持ちの資料は持ち合わしておりませんが、一応演習によりまして漁業者が何らかの形で被害を受けるということは、それぞれの演習場ごとに計算いたしまして、毎年国庫から、すなわち防衛施設庁からその漁場に入域するであろう漁業者に対しまして補償金を支払っている次第でございます。
  120. 津川武一

    ○津川委員 その材料は水産庁にありますか。
  121. 荒勝巖

    荒勝政府委員 全材料はございませんが、防衛施設庁に要求いたしますれば、資料はいただけると思いますが、問題になっておるおもなる地区については、私のほうも直接この問題にタッチいたしまして、漁業者に対する支払いが適正になるよう指導している次第でございます。
  122. 津川武一

    ○津川委員 それは後刻私のほうに資料を出してください。いいですね。それから、防衛庁もその資料は全部出していただきたいと思うのです。  そこで大臣、私のところに、昭和四十八年五月八日、うちの岩間正男参議院議員に提出した防衛庁の資料がございます。それによると、日米協同訓練を海上自衛隊、航空自衛隊でそれぞれやって、昭和四十三年以降として、横須賀から三陸沖、津軽海峡を経て日本海、伊予灘郡中沖、九州北方及び西方海域、陸奥湾、こういう点で、三回、四回と演習を繰り返しております。そして、この横須賀から三陸沖、津軽海峡を経て日本海においては、潜水艦に対する特別訓練、そして日本側が護衛艦が八隻、航空機が七十五、アメリカ側は対潜空母一、駆逐艦六、潜水艦二、給油艦一、また陸奥湾それから伊予灘においては機雷敷設、機雷の掃海、そういうことをやっておりますが、これには護衛艦一隻、掃海母艦一隻、掃海艇十四隻、敷設艇一隻、航空機五機、水中処分班三、これは日本側、アメリカ側は掃海艇四、航空機三、水中処分班一など、日米の両方の指揮官がこれに乗って参加しております。これらはいずれも漁業水域だと思いますが、こういうことは水産庁御存じでございますか。
  123. 荒勝巖

    荒勝政府委員 その演習につきましては私のほうは実は存じていない次第でございます。
  124. 津川武一

    ○津川委員 大臣日本漁業というのは、午前中にも、この間からの話にも出ているように、日本人のたん白質を確保する上で何よりも必要なんです。それを水産庁が、もしくは大臣が、どこで合同演習をやって、どこで漁業がとめられておって、どこでどんな損害が起きて、少なくともその期間中は漁業ができなくなっております、こういうことを存じないということはないと思いますが、ほんとうに大臣は存じないのですか。
  125. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私が就任後、昨年の十二月以降に特にかくかくの演習を行なうのでというような、そういう通知というもの、あるいは参考としてそういうような場合こういう海域でどうだとかいうようなことを示されたことはございません。  ただ、私、これはしゃくし定木に申し上げると、日本は一応領海三海里ということになっておるので、従来こういう問題を予算委員会なんかで承っておるとおりに、領海外の演習などについては特に関係者に詳しい通知などがなかったのではないか、実弾演習なんかやる場合に告示があったような場合は聞いたことがございますが、いずれにしても、私の就任後に農林省関係でこういう問題があるぞという通告とか知らせというものはございませんでした。
  126. 津川武一

    ○津川委員 受け身に立って、向こうが知らせてくるまで黙っているのではなくして、いいですか、この陸奥湾で機雷封鎖の練習をやっていることをホタテ関係者が知ったら——知ったんですよ。そうしてこれを海上保安部に問い合わせたらこういう事実が出てきたんです。八月末、日時未定、陸奥湾で日米合同演習、掃海訓練を行なうため、川内漁協の田野沢沖にあるホタテ養殖施設を六月中に撤去するように、こういうことなんです。知らされるまで黙っているのではなくして、漁業振興するとすれば、漁船の安全を守るとすれば、漁民の生命を守るとすれば、大臣、これからはみずから防衛庁もしくはアメリカ軍の軍隊当局に対して、こういうことをやらないように申し入れること、こういうことを事前につかむこと、この二つが必要であると思いますが、いかがでございますか。
  127. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまの御指摘はよく私にわかりませんでしたが、この八月末というのはことしの八月末で、この六月までにいろいろ措置をとれ、こういうふうに受けとめてお答えを申し上げますならば、そのことが、海上保安庁のほうにそういう申し出が、米軍当局なのか自衛隊の関係からか存じませんが、何らかの通知があったようにいまお話しでございました。したがって、もしこれを農林漁業行政の上であやまちなきを期する上におきまして、今後そういう漁業に関する影響のある場合は水産庁にも通知をもらいたい、こういうことを、海上保安庁が先方の順序として届け出られたとするならば、海上保安庁にそのことを言うわれわれの立場がある、こういうふうに御質問に従って考えたわけでございますが、ただ、私がいまの御質問を順序よく頭の中で解釈してみてのことですから、それはことしの八月だとか六月の云々とか、そういうことによって水産庁のほうにも漁業関係のあることでありますれば、適当な措置をとるようにさせたいと思います。
  128. 津川武一

    ○津川委員 現実に陸奥湾でいまホタテがこうなっているときに、前は訓練を何日やっているかというと、十日間やるのです、いままでのところ、三回のときは。これはやめるように申し入れるべきではありませんか。いかがでございます。この点が一つ。  第二番目は、こういう問題は、受け身に立たないで、自分から報告を要求すべきだと思うのですが、この点が二つ。  それから、時間がなくなってしまったので、防衛庁にお伺いします。三回やりましたが、陸奥湾でこれは四度目。そこで、敷設した機雷の種類は何であるのか。模擬弾なのか、実弾なのか、実際に敷設したものを全部撤去したのかどうか。六月十日、機雷が青森湾に浮いてきて、連絡船も一切の船がとまりました。機雷らしいものがとまっている。したがって、あの付近に実際に過去三回やったものが何であったのか。それを全部除去したのか。これから八月にやろうとしているものがどういう機雷なのか。日米合同演習で何個やって何個撤去したのか。この点明らかにしなければ、この間みたいに連絡船がとまりました、フェリーがとまりました、漁船の動きがとまりました、こういう実情が現状なんです。  そこで、大臣に、最初に積極的に自分たちから情報を集めなければならぬ、この点はどうか。二つ目には、陸奥湾で八月末にやらせるのかどうか。抗議すべきじゃないかと思うのです。この点、まず大臣から答弁してもらいます。
  129. 上野隆史

    ○上野説明員 事実関係につきまして、先に私から御説明申し上げます。  過去五年間におきまして陸奥湾の一部で行なわれた日米の共同の掃海訓練は、御指摘のように、三回ございます。それからことしの八月に、これはまだ計画段階でございますが、陸奥湾で実施いたそうとしております訓練は、まだ米軍が参加いたすかどうか検討中でございます。  それから、この訓練機雷でございますが、これは中は石灰でございまして、爆発するものではございません。  それから、津軽海峡で浮遊しておりました浮遊機雷らしきものでございますが、これにつきましては、海上保安庁、防衛庁、海上自衛隊共同いたしまして捜索いたしました結果、ついにその正体がわかりませんでした。  ただ、この浮遊機雷らしきものは、自衛隊または米軍が訓練に使っております訓練用機雷ではないということは確信を持って申し上げられます。と申しますのは、過去五年間におきまして、この陸奥湾におきまして使用いたしました訓練機雷は、すべて訓練終了後揚収撤去してございます。  それから、この訓練機雷の危険性につきましては、先ほど申し上げましたように、中身は石灰でございまして、危険性は全くございません。  なお、訓練機雷の種類といたしましては、係維機雷、それから海底に沈底する式の機雷、この二種類に大きく分けてございます。  以上でございます。
  130. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたが、公海上のことについてはなかなかこちらの言うようにはしてもらえぬと思うのです、そういうたてまえをとっておる以上。しかし、少なくとも領海内において大きな影響のあるこういう問題については、水産庁日本の機関あるいは、その必要があれば、直接米軍の機関に対してこちらへ連絡をとるように、あるいはその影響についての万全を尽くすということは当然の道だと思います。  ただ、いまは直接とは申し上げましたが、これは緊急の場合などそういう措置をとったほうが万全だということになるのですが、この米軍の関係あるいは自衛隊関係、それぞれ海上保安庁を通じてとか、何か順序があることと思いますので、その順序を踏んで万遺漏のないようにいたしたいと思います。
  131. 津川武一

    ○津川委員 大臣、陸奥湾の合同演習は過去に三十隻以上の艦船が参加してやっている。八月はちょうどこれからホタテがその時期になってきたときに、これでこういう合同演習を、いままだアメリカが参加するかどうかわからないと言っているが、いずれにしても、艦船がアメリカが参加しなくても三十隻くらいになる。これを黙って見ているのかということです。これは当然陸奥湾の漁業を守るために、私は大臣からここでやめさせることを要求すべきだと思うのですが、この点はいかがですか。
  132. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 いまお答えしたとおりで、そういうことについて万遺漏なきを期したい。すなわち、具体的にこれは津川委員が海上保安庁ということを言われているから、あるいは海上保安庁かなと思ったり、あるいは海上自衛隊なのか、そこのところははっきりしませんけれども、それぞれの所要の機関に対して漁業を保護する意味においての申し入れなり対策は当然すべきだと思います。
  133. 津川武一

    ○津川委員 大臣、海上保安庁が、陸奥湾で八月に演習をやるというのは、今度の参議院の補欠選挙の街頭演説でこの事実を明らかにしたら、すぐ発表してきた、こういうことなんです。したがって、大臣は恒常的にこの立場をよく見て安全を守るべきだ、陸奥湾のことはわからないというからこれから調べてやるそうですが、やってすぐその対策を私たちに報告してほしい、この点がひとつ。  それから、防衛庁は演習を過去三回やった。模擬弾、演習弾、石灰を詰めている。これの性格、内容、構造、それから敷設した個数、排除した個数、これを軍の記録の中から写して報告してほしいのです。まだ懸念を持っているのです。この間から毒ガスが陸奥湾に出たとか、それから十日の朝あの事件からたいへんな事件が出ているので、私もこれは不安があったらいかぬと思うから、その点、実際に演習に使ったたま、これは実弾でないというから、実弾でなかったらその構造、裏、性格、敷設した個数、撤去した個数、こういうものを実際に文書で報告してほしいと思うのです。この点をこの次の委員会にもう一回来ていただいて、さっきの大臣のやっと一緒にもう一回質問するということを申し上げて、私のきょうの質問は終わります。
  134. 上野隆史

    ○上野説明員 ただいま御要望いただきました点は、そのように遺漏なく準備いたしたいと存じます。  それからなお、先ほどの御質問の中で、四十六年に実施されました日米共同の対潜訓練におきまして、防衛庁から事前に何も水産庁その他に連絡しなかったのではないかというふうな御質問の趣旨に受け取ったのでございますが、これにつきましては、事前に海上保安庁、水産庁に御説明申し上げまして、また大湊、舞鶴、佐世保の各地方総監部から日本海の関係各県、これは水産課を通じまして御通告申し上げたり、また新聞記者に発表したり、いろいろ手は尽くしたのでございますが、不幸にして、結果的には御承知のような結果になったわけでございます。  以上でございます。
  135. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 島田琢郎君。
  136. 島田琢郎

    島田(琢)委員 水産三法の質問に先立ちまして、一昨日根室沖に起こりました地震の関係で、急遽関係政府側の御出席を求めましたので、しばらくの間この地震の関係についてお尋ねをいたしますので、通告をいたしましたすべてを質問申し上げることは、時間的に許されませんが、あるいはせっかく用意をされておいでの皆さん方にも、御迷惑をかけるかもしれませんが、当初にお断わり申し上げておきます。     〔委員長退席、出崎(平)委員長代理着席〕  一昨日の昼に、かなりの震度を伴う地震が根室沖に実は発生いたしました。けさほどわが党の米内山委員からも、この地震の被害の状況の資料提出を求めていたところでありますが、私のところには警察庁の関係被害状況が届いておりますので、各関係省庁の被害実態調査の報告を後ほど求めたいと思いますが、警察庁の資料に基づきまして、若干の質問をいたしたいと思います。  まず、根室地震の予知といいますか予測、これは事前にできていたのかどうか、これは気象庁にお尋ねをいたします。
  137. 末広重二

    ○末広説明員 お答え申し上げます。  結論を先に申させていただきますと、予知はされていなかったと申し上げるほかないと思います。  と申しますのは、地震の予知は、いつ、どこで、どのくらいの地震が起こるかという、三つの要素を伴わなくては、実効上あるいは実用上の価値がないわけでございまして、先日の根室半島沖の地震につきましては、あの辺の地殻変動及び地震活動の両者から、われわれとしては注意をしなければならない地域という意味で、地震予知連絡会におきまして特定地域には指定しておりましたが、いつ起こるかということについては、残念ながら全然わかっておりませんでした。これは今後私どもが努力しなければならないことだと思っております。
  138. 島田琢郎

    島田(琢)委員 地震がいつ起こるか予測できないということについては、住民としてあるいは国民としても、地震国日本といわれる中ではたいへん重要な問題であります。まあ予知できなかったということを率直に言っておられるわけですから、予知できなかったのはけしからぬと言っても、これは困るのでしょうけれども、しかし、地震は予告なしにくる、災害はこういうふうに予告なしにくる。とりわけ地震はいつ起こるかわからぬという不安を、日本の国では多くかかえ込んでいるわけでありますが、北海道におきましては、かつて十勝沖の地震、これがたいへんな災害を引き起こして、この被災の救助にあたっても相当長期間を要したという、きわめて残念な経験を持っておるわけでありますが、十勝沖地震に比べて、今回の地震の規模はどの程度であったのか、重ねてお尋ねをいたします。
  139. 末広重二

    ○末広説明員 十勝沖地震の規模、地震の大きさでございますが、これは七・九でございました。今回のは一応七・二と発表されておりますが、これは地震の発生後二十分以内に行なわなければなりません津波警報のために、非常に緊急にきめました値でございまして、もう少し資料を集めまして正確にきめなければならないと思っておりますが、おそらく七・二よりは多少上回る、つまり七・二よりは大きくなるのではないかと思います。その点考え合わせますと、今回の地震は、エネルギーにしまして、十勝沖地震のおそらく五分の一くらいの地震だと推定しております。
  140. 島田琢郎

    島田(琢)委員 この十勝地震にしても根室地震にしても、これは私の地元であります。こういう地震が起こる可能性を持っている地域として、常日ごろ地震の問題については非常に神経質になっているわけでありますが、残念ながら、先ほどの御答弁の中でも、地震を事前に予知することは非常にむずかしい、こういうことを言っているわけであります。しかし、十勝沖地震の教訓を踏まえて、その後、日本の地震観測についての技術的なものはかなり高まったというふうにわれわれは聞いておったわけでありますが、それが実は技術的には依然そんなに進んでいないというふうに、印象として受け取ったわけであります。将来に向かって、こうした地震の予知をすることは災害を未然に防止するという意味では非常に重要な役割りを果たすわけでありますが、これは将来とも非常に見通しは暗いのですか。
  141. 末広重二

    ○末広説明員 ただいまは、現時点での技術水準を正直に述べさしていただいたわけでございますが、地震予知の中で一番むずかしいのは、いつ起こるかという、時をどうやって判定するかということでございます。私ども十年前から各関係機関の協力のもとに、第一次、第二次地震予知研究計画を進めてまいりまして、それはそれなりに知見が高まってまいりました。そしていま、来年あるいは再来年から第三次計画を進めたいと思っておりますが、これにつきましては、一番むずかしい、いつ起こるかということを推定するにはどういう方法によったらいいかという点につきまして、最近の進歩で、たいへん明るい曙光が見えてまいりました。私どもはこれを方法として取り上げまして、第三次地震予知計画で何とか、いつ、どこで、どのくらいなという三要素が、ある程度の確かさで言えるように、なおも努力を高めていきたいと思っております。そういう意味では、決して暗くはございません。
  142. 島田琢郎

    島田(琢)委員 一説によれば、関東横断といいますか縦断といいますか、この地殻の中に断層があって、地震に似た現象を起こすのではないかという学者の説があります。これは地震とは本質的に違うかもしれませんが、しかし、そのように地殻変動を起こす、そのことによって起こる被害、災害は、これは規模としては大体同じような状態を伴うのだろうと推測されます。  いま日本列島における地震の起こり得る可能性を持っている地域は、どのくらいありますか。簡単でけっこうです。
  143. 末広重二

    ○末広説明員 いままでの地震の歴史を調べますと、過去において大きな地震の起こった場所は繰り返して起こるということは、まずこれはほとんど確かと申し上げていいかと思います。そういう意味では、過去に大きな地震が起こった場所は全部危険であると申し上げるべきだろうと思います。重ねて同じ答弁になりますが、そこへ、いつ、次の地震がくるかということを見つけるのが眼目でございまして、過去に起こった地震、太平洋岸に非常に大きな地震が起こっておりますから、そういう意味では、北海道から東北地方、東南海、南海道の沖合いに起こる大きな地震は、また他日、いつの日にか起こることをわれわれはやはり覚悟しておく必要があると思います。
  144. 島田琢郎

    島田(琢)委員 幸い東京ということは言わなかったわけですが、関東の災害は地震といえばいつも話題になるわけですけれども、どうか一刻も早く地震予知のいわゆる適正な技術の開発というものが進んでいくように望むわけであります。見通しとしては暗くないということでありますけれども、しかし、災害が起こってからいつも戸締まりをするような状態がいままでは続いております。これはどうかひとつ十分気象庁としても、この技術開発に全力をあげていただきたいと思います。  さて、警察庁から資料をいただきましたが、これは昨日の正午までの分であって、その後の被害状況についてはまだわかっていないようでありますけれども、これによりますと、負傷いたしました人が二十六人、主として根室に起こったようでありますが、これはどういうことによってこの負傷が起こったのですか。これは警察庁にお尋ねをいたします。
  145. 渡辺善門

    渡辺説明員 お答えいたします。  負傷者のほとんどは、飛び出しによるものでございますけれども、特に重傷者二名について申し上げますと、一名は、避難途中倒れてきた木材が当たって、左腿部を骨折したもの。他の一名は、家から飛び出した際、アキレス腱を切ったものであります。
  146. 島田琢郎

    島田(琢)委員 建物の関係でだいぶ床上、床下浸水がありましたし、また実際には家屋の倒壊などはなかったのかもしれませんけれども、二百七十数戸にわたる床上、床下浸水の延べ面積はどれくらいになりますか。いわゆる浸水面積は幾らぐらいと推定されますか。推定でけっこうです。
  147. 渡辺善門

    渡辺説明員 お答えいたします。  まことに申しわけありませんけれども、延べ面積について調べた資料を持ってまいりませんでしたので、確実な数字は申し上げられません。
  148. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それでは、これは津波によって起こったのか。おそらく津波によって水かさが増したのだろうと思いますが、これは気象庁、どういうふうに見ているのですか。
  149. 末広重二

    ○末広説明員 お答え申し上げます。  この地震によりまして津波が発生をいたしまして、一番高い津波がまいりましたのが根室の太平洋岸の花咲港でございまして、ここで百五十センチ海面が上がったわけでございます。しかも、これが満潮時に非常に近かったために、防波堤を越えて水が町の中のほうへ浸入したと聞いております。これによる浸水だと私は思います。
  150. 島田琢郎

    島田(琢)委員 総理府、この総体の被害額は幾らになるのですか、昨日の正午現在で。
  151. 杉岡浩

    ○杉岡説明員 お答えいたします。  現在調査中でございますけれども、その被害状況でございますが、公共土木施設、これは道路あるいは港湾、漁港といったような公共の土木施設でございますが、十五時現在でございますけれども、八億七千万の被害となっております。あと数字がまだ入ってまいりませんが、その個所等について申しますと、公立学校の施設三十校ほど、道立あるいは市町村立ございますが、三十校ほどの被害が出ております。それから農地等でございますけれども、十五カ所、大体一億五千万。それから農作物等でございますが、これはサケ、マスの荷さばき中のものが流れたものでございますけれども、これは約三百トンで一億五千八百万。それから漁船がいま沈没、破船等も含めまして約七十七隻。それからあと諸施設、たとえば水道あるいは国鉄等につきましてはいま調査をいたしております。
  152. 島田琢郎

    島田(琢)委員 これは総理府で調べたのは本日の十五時現在ということですね。俗にその調査の機関によって被害の状況というものが変わる場合が非常に多いのです。たとえば卑近な例で申しわけないですけれども、人が集まると警察庁発表一万人、主催者発表五万人、これくらい違うわけでありますが、総理府と警察庁、そういう違いはありませんか。いま発表された八億七千万というのは、警察庁もほぼそれくらいの数字をつかまえているのか、こういう質問であります。
  153. 杉岡浩

    ○杉岡説明員 お答えいたします。  警察庁のほうの調査は人的被害、たとえば人が何人死亡あるいは行方不明、負傷あるいは家屋の倒壊がどのくらい、それから田畑の浸水がどのくらいというのを警察庁が一般被害としてとらえておるわけでございます。それでもちろん総理府のほうには、警察庁のそういった一般被害の報告と同時に、公共土木施設等管理いたしております建設省あるいは農林省運輸省、こういったような省庁からそれぞれの施設の被害の状況が報告されてまいりまして、それを集計したものでございまして、警察庁と総理府の資料が違っておるということはございませんです。警察庁のほうはそういった一般被害ということになっております。
  154. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そこで、農林大臣、いま総理府の調査の中でも農地やそれから魚、漁船に相当の被害が出ております。農林省ではどういう数字をつかまえておりますか。
  155. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいま総理府のほうでお示しの数字は、農林省のほうで取りまとめておる数字と大体見合っております。
  156. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そこで、船の被害や魚の被害が出ているわけでありますが、長官、こうした災害に対する救済といいますか、その手当てについてどういう手を打たれておりますか。
  157. 荒勝巖

    荒勝政府委員 先ほど農林大臣からお答えいたしました被害の状況につきまして、私たちのほうで手持ちしております情報によりまして被害の金額を申し上げますと、漁港関係がただいまの時点で約八カ所、金額にいたしまして一億五千五百万程度というふうに報告を聞いております。それから水産庁関係漁船の被害が七十七隻でございまして、これは津波の関係で打ち上げられたりしたので、隻数は七十七隻でございますが、金額にいたしますと七千四百万円前後というふうに一応の急報の報告を聞いております。それから漁具につきまして、大体漁網等が流れたようでございますが、五千三百万円くらい。それから花咲港の市場ですね、魚の市場が一部破損いたしまして、これが一億二千万円くらい。それからその他共同利用設備でない、たぶん個人のものだと思いますが、二千五百万円くらいの漁業関係の施設がこわれたというふうに聞いております。それから水産物につきましては、先ほど総理府の御報告がありましたように、市場に置いてありました水揚げされましたサケ、マスが約三百トン、これが一億五千八百万円というふうに被害が一応報告になっておる次第でございます。  これに対しまして水産庁といたしまして、直ちに政府調査団を政府で出すことになりましたので、その中に水産庁の漁港部の計画課長を派遣いたしまして、漁港関係の被害のほかに、水産関係全部について十分調査してくるようにという命令を私から指示した次第でございます。  さらに、この漁港等の災害復旧事業につきましては、十九日でございますが、査定官を直ちに現地入りさせまして、現地で応急工事等の協議に応ずるようにいたしておる次第でございまして、これは現在水産庁で直ちに査定に入る段階でございます。  それから漁船の損害につきましても、先ほど七十七隻という御報告を申し上げましたが、これにつきましても直ちに漁船保険中央会と合同の被害調査班を編成の上、十九日には現地入りをいたしまして、根釧漁船保険組合と協力して損害額の調査及びその対策、指導に当たりたい。また、保険の支払いになるものにつきましては、早急に保険金の支払いが行なわれるように措置いたしたい、こういうふうに思っております。  先ほど総理府並びに私から被害金額を申し上げましたが、これは道庁から統一的にきょうの午後三時までの報告を電話で確認したのでありまして、現地へ行って被害状況の確認をいたしますれば、当然にまた被害の状況の数字は変更があると思っておる次第でございます。
  158. 島田琢郎

    島田(琢)委員 港湾といいますか、漁港が一億五千万ほどの被害を受けました。これは運輸省、被害の状態というのは具体的にどんな被害が起こったのですか。
  159. 荒勝巖

    荒勝政府委員 漁港の被害につきましては、まだいま査定官が入っております段階で、直接的な報告がないので十分に明らかにいたしませんが、多少大きな亀裂と言ったら失礼ですが、そんなに大破というものではないのではなかろうか、こういうふうに理解している次第でございます。
  160. 島田琢郎

    島田(琢)委員 警察庁の船舶に関する報告書によりますと、沈没したのが三隻、あと流失一隻、櫓かい等による船、これはどういう意味か、ちょっと私わからないのですが、これが六隻、こういうことで、いま水産庁が言う七十七隻とずいぶん被害隻数に違いがあるわけですけれども、調査のしかたが違うからこういう数字になるのですか。これは警察庁でも長官でもいいですが、どちらか見解をひとつ明らかにしていただきたい。
  161. 荒勝巖

    荒勝政府委員 おそらく今回の報告の状況からいたしますと、道庁が政府に報告した数字は、根室支庁の調査の結果の報告でございまして、しかもきのうきょうと報告のたびに多少数字は異なっている次第でございます。  さらに漁船等についてえらい食い違いがあるではないかということでございますが、あの事故があった直後において、おそらく警察のほうでは沈没したものとかあるいは大破しておかへあげられてしまったというような、ほんとうにそのときの目で見た感じというものを率直に第一報として入れられたのじゃなかろうかと思いますし、私のほうは漁船保険の関係もございまして、ちょっと失礼ですけれども、いわゆる小破というかすり傷程度の部分につきましても、精密の度を加える過程で逐次そういう報告があったのでありまして、また報告の内容を多少聞きますと、使えないわけではないけれども、へさきがちょっと曲がったというような報告等も漁船の被害の中には入っておる次第でございます。
  162. 島田琢郎

    島田(琢)委員 どちらが違っているからということを私、申し上げるつもりはないのですけれども、正確な調査をされて、へさきが曲がったのもやはり被害でありますから、十分補償の措置をとられるようにしていただきたい、こう思います。  そこで運輸省も来ておられるはずでありますが、港湾の被害は今回はなかったのですか。それから道路などの決壊といいますか、ひび割れ、こういうものも新聞で報道されておりますが、そういう事実はありませんでしたか。
  163. 大久保喜市

    ○大久保説明員 運輸省港湾局からお答え申し上げます。  港湾関係のことについてお答え申し上げまして、道路関係は建設省のほうからいたします。  港湾につきましては、今回の地震では花咲港、霧多布港それから八戸港におきまして港湾施設の被害がございましたが、被害の一番大きかったのは花咲港でございます。  それで、花咲港における港湾施設の被害といたしましては、岸壁が若干前に傾くとか、あるいはエプロンの部分がクラック、ひびが入るとか、あるいは岸壁の背後が落ち込むとか、そういうような被害が若干出ておりまして、大体花咲港における被害の額といたしましては、先ほどの水産庁のほうのお答えと同様な道庁からの速報によりますと、四億二千万というような推定が報告されております。それから霧多布港についても、若干岸壁の背後にあるエプロンが沈下したとか、物揚げ場が一部傾いたとか、そういうような手直しを要する被害が出ております。その部分の被害額が、同様の報告によりますと、一千万程度、合計いたしまして四億三千万程度というふうに報告を受けておりますが、八戸港につきましては、離岸堤の一部に沈下が見られるという報告でございますが、詳細につきましては現在調査中でございます。
  164. 島田琢郎

    島田(琢)委員 これは三億違うのですが、一体どっちが正しいのですか。さっき長官は花咲港の被害は一億二千万、こう言われたが、いま運輸省は四億二千万と言いました。これは三億も違うのですか。
  165. 大久保喜市

    ○大久保説明員 私がいまお答え申し上げましたのは、運輸省所管の花咲港の港湾の被害、それから霧多布港の被害でございまして、水産庁の御答弁のほうは、たしか農林省所管の漁港関係の被害のように承知いたします。
  166. 飯塚敏夫

    ○飯塚説明員 建設省所管の公共土木施設の被害について御報告申し上げます。  直轄災害につきましては、国道四十四号線につきまして、橋梁の二カ所の千五百万円。補助災害につきましては、根室海岸の五カ所、それから根室市、浜中町、厚岸町、釧路村等の地内の道道及び市町村道合わせまして五十二カ所、合計五十七カ所、二億七千五百万円の被害でございます。直轄と合計いたしますと五十九カ所、二億九千万円でございます。これらの災害のうち、緊急に復旧を要する個所につきましてはすでに応急復旧工事に着手しておりまして、道路につきましてはすでに交通の確保をはかっておる次第でございます。  一般国道の内容について詳しく申し上げますと、ほとんどが路肩の決壊、橋梁の取りつけ部の盛土沈下等でございまして、一部の個所におきましては交通規制を行ないましたが、十八日の正午ごろには全面的に交通規制を解除しております。十八日に、北海道の前回の冬季風浪とかあるいは豪雨等による他の災害に行っておりました査定官を直ちに派遣いたしまして現在調査中でございますし、本日はまた防災課長も現地におって、これらの災害復旧の指導に当たっております。      ————◇—————
  167. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 この際、連合審査会開会の申し入れに関する件についておはかりいたします。  すなわち、社会労働委員会においてただいま審査中の内閣提出の厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、八木一男君外十六名提出国民年金法、厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、及び八木一男君外十六名提出国民年金等の積立金の運用に関する法律案の各案について、連合審査会開会の申し入れを行ないたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  なお、連合審査会開会の日時等は、社会労働委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせすることといたします。      ————◇—————
  169. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 島田琢郎君。
  170. 島田琢郎

    島田(琢)委員 建設省、いまちょっと数字を途中聞き漏らした点がありますので、数字だけ簡単にもう一度お知らせください。
  171. 飯塚敏夫

    ○飯塚説明員 ただいまの数字を繰り返して申し上げます。  直轄災害につきましては、国道四十四号線の橋梁二カ所千五百万円。それから補助災害につきましては道道及び市町村道合わせまして五十二カ所、計五十七カ所二億七千五百万円、以上でございます。
  172. 島田琢郎

    島田(琢)委員 総理府、先ほど八億七千万と言ったのは、これは全部足して八億七千万ですか。
  173. 杉岡浩

    ○杉岡説明員 お答え申し上げます。  ただいまの建設省関係の道路、それから運輸省関係の港湾、それから農林省関係の漁港、こういった三省の所管の分を合計いたしまして八億七千万でございます。
  174. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そこで、大臣、今回の根室地震に伴う災害というのは、漁船あるいは魚あるいはそれらの施設、そうしてまた畑、あるいはまたそれに従事している漁民の方々、あるいは農民の中にも若干の被害が出ているようであります。こうした災害の対策については、先ほど来、現地に係官がそれぞれ入りまして、被害の実態調査のかたわら、この対策に取り組んでいるようでありますから、その点については万遺憾なきを期しているというふうに理解をいたしております。しかし、この漁船あるいは市場の損壊、こういうものを考えてまいりますときに、直ちにこれらが復旧されませんと生産に非常に大きな影響を及ぼすばかりか、ことし一年間の水揚げもふいになるというふうな心配さえあります。したがって、この所管は総理府が総指揮をとっておやりになるのでしょうけれども、農林省としては、特に生産の部分においてかなりの被害を受けている実態にかんがみ、さらに重厚な措置をする必要があると私は考えております。これら災害に対する手当てについて具体的にはどのようにお考えになっておりますか、お尋ねをいたします。
  175. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 台風によるとか地震によるとかの災害をしばしば受けておることは御承知のとおりでございまして、それに伴いまして災害立法がほぼ備わっております。したがって、公共施設は公共施設、それから漁獲物等によって生業関係が出ますれば、それは天災融資法また保険もございますから、それぞれ災害の実情に沿って対処する方途がございますので、これを迅速にお世話を申すよう措置すべきではないかということを現在省内で話しておるところでございます。詳細は必要があれば担当官からお答えを申し述べさせます。
  176. 島田琢郎

    島田(琢)委員 時間の関係で以上をもって根室沖地震の関係質問を終わりますけれども、気象庁、先ほど地震に対しての一つの見解を述べておられたわけでありますが、まだこれでは国民の一体いつ起こるかわからないおそろしい地震に対しての不安というものは、いまの御答弁の中では解消できない部分がたくさんあると思います。どうかひとつ万全の措置をもって、地震災害の未然防止のための地震予知の技術を一そう高められるように期待をいたします。  同時にまた、総理府においても、これら災害が未然に防止できるように、起こってからの災害手当てというのは、実際には幾らやってみても万全とは言えないわけであります。地震の国の日本でもあり、あるいはまた台風の災害など、いろいろな災害が次から次へと起こってまいります。ことに先ごろは釧路のホテルが焼けてたいへんな死傷者を出すという災害なども起こりました。こういう狭い国でありますから、いつ何どきどんなところにどんな災害が待ち受けているかわかりません。これら一連の防止対策については真剣に取り組むように、私、重ねてお願いを申し上げておきたいと思うわけであります。  以上、地震災害に伴います関係省庁の皆さん方御苦労さまでした。以上で根室の関係は終わらしていただきます。  それから、続きまして水産三法に入るわけでありますが、もう時間が幾らもありませんから、ごく一部の問題だけをとらえて若干の質問をいたします。  水協法あるいは漁船損害補償法、さらにはまた積荷保険にいたしましても、全体を通じて、水産業界のあり方というものが、私自身勉強すればするほど実は非常にわからない点があります。その一つは何かと言うと、せっかく合併法ができて、その時限延長もできているのですけれども、漁業協同組合の合併促進ができない、どう考えてみても、やはりこの合併促進をはからなければならないというところに問題が逢着してしまいます。あるいは別な手だてというものはまだたくさんあるのでしょうけれども、ともかくこれらの組合再編成という問題については、必ずしも大きくすることがいいとは私は思っておりませんけれども、あまりにも実態としては整理をしなければならないような要素がたくさんあるように実はこの三法案を通して感じ取っているわけでありますが、この合併促進がなぜ進まぬのかを、この機会に、長官、明らかにしてほしいと思うのであります。
  177. 荒勝巖

    荒勝政府委員 御指摘のように、この漁業協同組合の合併が非常に進みにくいのでありますが、原因といたしましていろいろ考えているわけでございますが、やはり基本的には水産業に独特の漁業権というものがございます。いまの漁業法に基づきまして、漁業権は漁業協同組合の管理下にあるということで、合併によりまして漁業権自身の合併ということになるわけでございますが、その間におきまして合併組合間の利害の対立とか組合員同士のいろいろな気分の調整の問題というふうなこと等で、やはりこの漁業権が合併の一つのネックといったらおかしいのですが、そういった問題の基礎になっておるように思われます。  この合併助成法に基づきまして、漁業権の行使につきまして特例は設けられておりますが、なかなかうまくいかない。しかし、租税の特別措置法なり法人税、所得税等の優遇措置がなされている点もありまして、極力合併による公的な援助措置を講じておるわけでございますが、さらに合併による補助金ということが、従来財政援助という形でしてきたのですが、それも促進の一助にはなったと思いますが、全面的な援助にはなっておりません。さらに今後こういった合併に伴います活動費とか協議会の運営費ということにつきましては、助成を行なうことによって合併を進めてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  178. 島田琢郎

    島田(琢)委員 この漁業権の保有主体にしかすぎない、これは統計といいますか一つ数字を見ますと、職員が一人もいない組合が百六十二もある。組合長か専務が事務の段階にまで責任を持っていて、極端に言えば、お茶くみする女の子もいないという組合がある。お茶くみすることが事務職員のあれではありませんから、そういう言い方は当たりませんでしょうけれども、一つの例としてですが、全く職員がいない組合が百六十二もあって、単に漁業権の監視役でしかない。この漁業権という問題は非常に漁民の皆さんの生活権にかかわる問題ですから、簡単な議論をすることは差し控えなければならないのでしょうけれども、しかし、日本漁業水産業のあり方というものは、やはりこうした実務に携わる、いわゆる労働をもって生産をあげている漁民の皆さん方が、ほんとうの意味で新しい日本水産業というものをつくり上げていく原動力でなければならぬと思うし、またそうであるはずであります。ところが、単に組合はつくっているけれども、いわゆる漁業権の保有でしかない。そうであるとすれば、先ほどもいろいろ議論がありました内水面漁業あるいは浅海養殖漁業、こういったような、特にこれから種をまいて自分でつくってとらなければならぬという漁業にこれから発展していかなければならない日本漁業というものは、それだけに組織の実体というものは非常に大きな将来への足がかりと発展の基礎になるというふうに私は考えているわけです。そうしたいわゆる組織づくりというものは、やはりこういう機会に抜本的に考え方を改めていく必要があると思うのであります。これは幾ら補助金を出して太鼓をたたいても踊ってくれない、いま長官はそういう、泣き言に近いものをお話しになったと思うのでありますが、これはひとつ水産庁責任を持って合併促進をするという真剣な具体策をこの機会にやはり出すべきだと思うのです。そうでなければ、金をやるからどんどん合併しろよ、こう言っても、これはなかなかそうなりません。われわれ農業協同組合の合併促進をやったときにも、これは補助金だけで合併が促進するというものでなくて、なかなかむずかしいものがあります。しかし、置かれている現実の状態がこれでいいというふうには、末端の特に零細漁民の方々は考えていないわけであります。何とかしてこの機会に親方日の丸のサンプルみたいな漁業協同組合は、やはり組織の発展をわれわれの手でやらなければならぬ、そういう意欲は十分持っておりますけれども、なかなか定置網の親方がぐっとにらみをきかすと、もうものも言えない、そういう封建的な感じというものが漁村に非常に強くあるような感じが私はしておるわけであります。  ですから、行政庁としては、これは真剣に指導していくということが必要ですけれども、単に指導するだけではこれは進まないのですが、何とかこれだけ、一七%しか合併が進まないという実態が明らかである限り、これはしかたがないんだ、どうもむずかしくてということでは済まされないと私は思うのであります。ひとつ真剣にお考えにならなければいけないと思うのですが、この考え方はどうですか。
  179. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私たちもただいまの御指摘のとおり、この漁協の合併につきましては非常に憂慮しておりまして、やはり合併によりまして漁協の近代化、合理化をはかることによってあわせて漁民の所得並びに福祉の向上に当たってまいりたい、このように考えております。つきましては、今回の法律改正を契機といたしまして、全漁連等この漁協の問題を担当しております団体の方々とも十分に相談いたしまして、なお一そう合併については努力をいたしてまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  180. 島田琢郎

    島田(琢)委員 努力をするということでありますから、具体的なものはついに聞かれずじまいでありますけれども、まずひとつこれには真剣にエネルギーを突っ込んでほしい、こう思います。それがなくては、いかに信用事業を拡大しようといったって、百六十二も職員のいない組合があるわけでしょう。こういうところで信用事業なんかやれっこありませんよ。また今度の法案はそういうところまで拡大するという趣旨ではないようでありますけれども、しかし、やり得るという団体の規模を見ても、必ずしも私は信用事業まで手をつけて、お金でありますからあやまちが絶対ないとは言い切れないものがありますから、こういう点については、まずこの組織の再編整備ということを基本に置いて、新しい法律改正に伴う事業拡大をはかっていく、そういう姿勢が貫かれなければならない、こう思うわけであります。これは特にお答えは要りません。  次に漁船損害補償法の中で累積黒字いわゆる六十八億という中から今回三十五億を中央会を通じて交付しよう、こういうことが出されておりまして、これはわが党の湯山委員をはじめとして各委員からこの問題については触れているわけでありますから、重ねて触れるのはたいへんしつこいようでありますけれども、かつて昭和四十年にタオル一本論、われわれもタオル一本論というのは何だと実はふしぎに思っておりましたら、例は実は二百円で被保険者に還元をした、タオル一本の価だけ還元した、こういうことのようでありますけれども、どうも今回の三十五億の交付にあたっても、私はこの金の出し方についても、昨日から政府側の皆さん方といろいろ議論をしておりましても、いま一つ釈然としない。三十五億というのは、本来、最近はこんなにたまらないそうであります。過年度において累積した黒字分だそうでありますけれども、しかし、一方では純保険料を下げていっても付加保険料が上がる、いわゆる事務費の負担部分というものが非常に高まっているという実態があるわけですね。そういう実態の中からいえば、私は三十五億というのはやはり取り過ぎていたというふうに理解をするわけであります。そうではないというのかもしれませんけれども、そういうふうに理解をいたします。そうすると、これはやはり公平に分配されなければならない金ではないか、こういうふうに実は考えるのですけれども、三十五億の使途などを含めて、使い道あるいは発生の原因といいますか、過年度であっても、発生の原因はどこにあったのか。それから交付のしかたというものは、きのうもちょっと議論の中で申し上げたのでありますけれども、たとえば銀行法に抵触しないのかという問題なども、あるいはまたこれは特別会計から出すということですけれども、本来これは一般会計から支出さるべき性質のものではないかという、これは三十五億の問題とは違いますけれども、これが発生してくる過程においてそういう感じがするのでありますけれども、これらはまとめて質問いたしましたから、ひとつ一括してお答え願うのですけれども、わかりやすく、きのうも大体わかったつもりですけれども、どうももう一つ釈然としないものがありますので、長官からひとつお答えを願いたいと思うのです。
  181. 荒勝巖

    荒勝政府委員 では三十五億の問題につきまして、私たち自身、御指摘の問題点について御答弁を申し上げます。  まず三十五億円がなぜ発生したかということでございますが、これは特別会計に四十七年度末で六十九億円の一応の剰余金というものが発生しておるわけでございます。この六十九億円のうち、その中には国庫の負担金相当分も入っておりますし、また今後の特別会計の健全な運営に必要な運営資金というものも当然のものが入っておりまして、そういったものを差し引きますと三十五億円というものが妥当である。これは前回十二億円を出しましたときの査定方法と同じ方法をとりますと三十五億円になったということで、六十九億円のうちから三十五億円を、特別会計としては一応過剰余裕金であるということで、この分を漁船保険中央会に法律をもって交付するということで今回お願いしている次第でございます。  なぜそんな三十五億円も余裕金が発生したかということにつきましては、法律をもちましてこの保険料率というものをきめておるわけでございますが、それは過去十年間の保険料率の推移から見まして妥当と思われる線を出しまして、三年ごとにきめておるわけでございますが、ところが、実際に過去十年間の実績というものを計算に入れながら保険料率を出すわけでありますが、その後の漁船が非常に年々よくなってくるといいますか、堅牢になってきますし、また船も大型化いたしてまいりまして、いわゆる災害による事故が過去十年間の実績よりも年々、どちらかというと、下回ってきておる。その分が結局累積いたしまして、三十五億円の余裕金がよけいにたまるというふうになったのでありまして、これは私たちとしまして計算上そうなったことでありまして、決して不当に取り過ぎているという問題でないというふうに理解しておる次第でございます。たとえば、ことしの四十七年度末の収支で計算いたしますと、まことに収支とんとんということで、この四十七年度単年度におきましては、こういうことでとんとんとなっておる次第でございまして、今後この料率の問題につきましては、当然にわれわれといたしましては、さらにこの料率は合理化し、また保険組合の合理化も行なうことによりまして保険料率は引き下げてまいりたい。引き下げる余地は十分にある。また特に弱体な保険組合につきましては、あまり多くはございませんが、合併を促進することによりまして、健全化を急いでまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  そこで、さらに三十五億円をどういうふうに配分するかということにつきましては、これはまず無事故の報償事業を行ないたいということで、一定の基準で報償金を交付しておりまして、これがただいま御指摘のように、手ぬぐい一本かというふうな御指摘でございますが、この無事故の分については保険加入の意識を高揚するということとともに事故防止思想を高揚するということで、この制度はさらに実行してまいりたい。それからさらに漁船の事故防止のための助成金を出す。たとえば海難防止のための投光器とかあるいは浮標とか、オイル交換器というふうなものの助成事業を推進してまいりたい。それから保険金の仮払いを早くするための仮払い料を一定率で払いたいというようなことで、さらに付加保険料率の格差是正事業ということで、これが問題の事務費でございますが、組合の格差によりまして付加保険料率が非常に高いところとあまり高くないところと二通りというか、そういうふうにグループに分かれておりますので、これにつきまして組合の健全な運営に充てるため、この運営費から事務費を一部補てんしてまいりたいという考え方でございます。  なお、申し忘れましたが、この三十五億円並びに前の十二億円、合わせまして四十七億円が基金となりまして、基金には手をつける気は全然ないのでありまして、その運営利息二億数千万円をもってこういった事業に充ててまいりたい、基金は基金として最後まで保有してまいりたい、こういうふうに考えております。  なお、特別会計から年々数千万円の金額を、その年の人件費等を勘案いたしまして、事務費の補てん金を出しておりますが、これは特別会計の支出その他の事務費ということでそういう項目から事務費を出して、あわせてこの保険中央会の格差是正のための運営費の補助金と向こうの特別会計からの直接の事務費の交付金と合わせて保険組合の事務費の一部に充てるということで進めておるわけでございます。
  182. 島田琢郎

    島田(琢)委員 時間が来ましたので、私の質問は以上で終わりますけれども、せっかくの試験保険であります積荷保険、五カ年間の経過を見て、かなり内容としてはこれらの経験、試験を踏まえて実のあるものにしていきたいという姿勢だというふうに聞いております。この種試験実施というのは非常に長過ぎても問題ですし、短過ぎたらあまりいいデータが出ない、そういうこともあるのでしょうから、そういう意味では五年間というのが適切なのかもわかりませんけれども、どうか一刻も早くこれらの体験を踏まえて、試験の経過を踏まえて、安心して漁民の皆さん方が漁ができるようなそういう保険制度に充実をしていくようにしてほしい、そういう希望を最後に申し述べて、私の質問を終わります。
  183. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 角屋堅次郎君。
  184. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今月の六日に本委員会水産業協同組合法の一部改正漁船損害補償法の一部改正、さらに新法として漁船積荷保険臨時措置法案、いわゆる水産三法が俎上にのぼりましてから、いよいよ私が締めくくりの質問ということになりまして、その間御承知のような第三水俣病の現地派遣等もありましたし、また水産庁が八水域のPCB問題の発表を契機にしたいわゆる漁業被害あるいは社会問題というふうな問題等もございまして、それぞれ関係委員からは提案されております水産三法以外の当面の水産上の重大な問題についても質疑が展開されてまいりました。私は、持ち時間締めくくり三十五分ということでございますので、そのことを頭に踏まえながら、以下数点についてお尋ねをいたしたいと思います。  もともと第三水俣病問題等がなければ、国際漁業国内沿岸漁業等を含めた総合的な漁業政策の現状と問題点、あるいは将来の対策ということを前提にしながら水産三法の法案議論をいたしたいと思いましたが、時間の関係もありますので、二、三点法案に関連する前提条件の問題についてお尋ねをいたします。  まず最初、過般、国際漁業関係では稲富委員のほうから日ソ漁業交渉問題あるいはまた日中の民間漁業協定問題というようなことについてお尋ねがございまして、最近、御承知のように、水産庁の安福次長を団長といたしました政府の漁業使節団が中国へ行っておられるわけであります。この問題に関連をして、本年の二月、大臣が本委員会に対する所信表明の中で、海外問題のところで「今後における日中間の農林水産物貿易問題、漁業協定につきましては、政府間交渉を開始する準備を進めているところでありますが、」というふうに述べております。まさにそのことを実施に移されたものと判断をしておるわけでありますが、今回訪中されております安福次長ら政府の漁業使節団というものの任務は、どういうふうに大臣から付与されておるのか、どういうふうな点に御期待を持っておられるか、その点まずお答えを願いたいと思います。
  185. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 御承知のように、現行の民間漁業協定の期限がこの六月二十二日までとなっております。そこで、早い機会に政府間協定を締結いたしたいということで中国側と折衝してまいったのでございまするが、その間に中国側より東海黄海における漁業資源について情報と意見の交換を行なうための専門家会議を開催したい、こういう意向が伝えられまして、わがほうといたしましても、それが今後の協定の上に寄与することもあるであろう、また両国間の相互の理解を深める上にも有効であろう、さらには政府間交渉の進展の契機となることを期待いたしまして、安福次長以下を派遣することにいたしたようなわけでございまして、したがって、いま申し上げたことを前提として、安福次長以下が適宜先方におきまして意見の交換を行なう、こういうことで、特にこの使節団によって何か取りきめを行なってくるようにというような、そういう指示は与えておらないのであります。
  186. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 第二点の問題といたしまして、前々からいろいろな場面で議論をされております領海等を含めての、いわゆる国際漁業に関連する問題でございます。本年の二月の時点の外務省の資料によりますと、いわゆる領海の幅員の問題については、日本が主張しております三海里の領海幅員をとっておりますのが二十四カ国、四海里が三カ国、六海里が十二カ国、十海里が一カ国、十二海里が四十八カ国、十八海里が一カ国、三十海里が四カ国、五十海里が一カ国、百海里が一カ国、百三十海里が一カ国、二百海里が八カ国、以下不明のところを含んでおりますが、そういうふうにおよそ国際的な共通の広場の中で、事一領海問題ということになると、実に三海里から二百海里にまで及ぶ非常な振幅があるわけであります。しかも開発途上国の沿岸国におきましては、非常に領海の幅員の拡大を主張する向きがだんだんとふえてきておるという現状にございます。  一九七〇年の国連総会の決議によりまして、領海問題、さらに公海、大陸だな、漁業汚染防止、深海底の平和的利用等海洋のあらゆる側面に関して、既存の国際法を整備強化するとともに、必要に応じ新たな国際法を制定するため一九七三年に国連海洋法会議を開こうということがきめられて今日に来ておるわけでありますが、本年度出されました漁業白書では、実質的には一九七四年までこれらの討議がずれ込むのではないかというような記述等もございますけれども、こういった情勢の中で、いわゆる国際海洋法会議の中では、白書の中でも記述しておりますように、この会議においてわが国等が少数派の立場に立たされることが予想されるというふうなことを書いておりますが、こういった問題に対する政府のこれからの対処のしかたについて大臣からお答えを願いたいと思います。
  187. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 明年に予定されておる国連海洋法会議が、時期があるいは若干ずれ込むかとも思いまするが、この国連海洋法会議は、わが国にとってはきわめて重大な利害関係を有することは言うまでもないことであります。現在準備会議が何回か行なわれておるということは御承知のとおりでございまするが、私どもはその準備会議を通じまして従来のわが国の主張を基礎として各国への浸透につとめるよう努力をいたしてまいっておるのでございまするが、今後発展途上国との間におきましては、相互に漁業発展をはかるという立場から、漁業協力を通じて、わが国海外漁業確保をはかる体制をつくり、長期的にわが国の利益を確保するようにする、それを一つの眼目として行動してまいっておるのであります。  ただ、ただいま御指摘数字と私のほうの四十八年五月現在の数字とが違いますが、領海幅員あるいは漁業水域についての各国の主張というものが、三海里から二百海里までの間、いろいろ多種多様でございます。こういう主張の中におきまして、日本としてはどのような姿勢をとるのがよいのかということについて、これはにわかに断定的に申し上げるわけにはまいりませんが、しかし、現在最も多くの国が採用しておる領海十二海里、これがもし国際的な合意が成立するという、そういう情勢にありまするならば、従来の領海三海里の立場にとらわれることなく、この合意の成立に対処していこう、こういうような姿勢もわがほうで示しておるわけでございます。  以上のようなことで、お話しのとおり、明年の予定されておる国連海洋法会議はきわめて重要なことであり、わが国の主張につきましては、先進国に対しましても開発途上国に対しましても機会あるごとにわれわれの主張を浸透せしめるよう努力をいたし、この会議において日本としての一応の成果が得られるよう、これからも努力をしてまいりたいと考えておるような次第でございます。
  188. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最近におきますわが国をめぐる国際漁業関係は一そうきびしい条件を持ってきておるわけでありますが、それに対応いたしまして、わが国が沿岸漁業の面でもあるいは国際漁業の面におきましても、いわゆる水産日本としての動物性たん白資源を将来にわたって安定的に確保していくためにはいろいろなくふうをしていかなければならぬ。国際漁業の舞台でも、新漁場とかあるいは資源の開発とかいう点ではすでに海洋水産資源開発センターというようなものが発足をし、これが回転をする。さらに政府自身が調査船をもって基礎調査をもやるというふうなことが行なわれておりますが、今回新たに海外漁業協力財団というものが政府の助成等も含めて発足をしたわけでございますけれども、これが国際漁業の今後の日本の伸展の舞台でどういう役割りを果たそうと位置づけておられるのか、こういう点について簡潔にお答えを願いたいと思います。
  189. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 簡潔にということでございますので、前置きはさておきまして、この財団が日本としてのこれからの遠洋漁業の健全な発展をはかる上に、あるいは関係沿岸国漁業の開発振興に協力しつつ相互に漁業発展をはかる上に幾つかの業務をいたしたい。一つには、海外漁業協力に要する資金の長期無利子または長期低利の貸し付け、それから関係沿岸国において海外漁業協力に従事する専門家の確保、養成を行なう、こういうような事業をいたしながら、この財団をしてわが国の海外漁業協力の中核的な推進機関として育成強化してまいりたいと考えておるのでございます。
  190. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま御説明のありました海外漁業協力財団がどういう役割りを果たすかということについては政府の指導にもよるかとも思いますけれども、ただ、私どもが諸外国を訪れました際に、日本漁業面における技術協力とかいろいろな面では非常に大きな期待を各地で聞くわけであります。数年前に中南米等に行きましたときにも、あるいはメキシコ、あるいはペルー、チリにおいて、いろいろなところで日本漁業協力を技術的にあるいはその他の面で得たいという強い要請を私どもも受けてまいりました。また、半面、日本が中南米等の研修生の受け入れをやる。メキシコに参りました際には、三崎の国際研修センターでちょうど私も研修を受けてきたというふうな諸君にもぶつかるわけでありまして、今日のような零細漁業のきびしい情勢になってくればなるほど、こういった正しい意味における、海外の開発途上国の望んでおるところを日本の力の範囲内において積極的に指導援助してやるということが必要だろうということを、私自身も各国を訪れて痛感をいたしております。  この前私が水産三法で質問に立った際には、第三水俣の現地問題で質問を終始いたしました。これは政府でも推進会議をつくられ、タイムリーな対策をとるように鋭意いま準備を進めておると思いますけれども、きょうはこのことには深く触れません。本委員会でも漁業被害に対する小委員会ができ、これがやはり活動しなければならぬ段階でございますから、このことにきょうは深く触れません。水産庁農林省として大臣責任において現地の切実な要求に的確に答えてもらいたいということを強く要請しておきたいと思います。  ただ、こういう状況になってまいりますと、特に沿岸漁業者の関係において、一体日本沿岸漁業の将来はどうなるのだろうという非常な不安動揺というものが、今日公害の起こっておらぬ地域においてもやはり心配になっておるだろうというふうに思います。むしろこういう点では公害対策として公害の予防、公害の排除、公害にかかわる被害の救済、こういった本来の公害対策の問題については総合的な緊急的対策を講じなければなりませんが、同時に沿岸漁業振興のための積極的な攻勢的な対策というものを打ち出すことが必要ではないかというふうに私、感ずるのであります。  政府与党である自民党内においても沿岸漁業の積極的な振興対策を今日検討しておるやに聞いておりますけれども、たとえば昭和四十五年の三月から十月までの専門家の検討に基づいて全漁連の段階沿岸漁業開発対策研究会というのが持たれまして、沿岸漁業資源漁場開発の背景と対策という提言がなされております。この中で、これから二十年間に毎年百億を使い、二十年間二千億投資ということで、沿岸海域におけるところの積極的な育てる漁業の諸施設をやっていこうということが提言されておるわけでありますが、これらも踏まえながら、一方では今日起こっておる問題に対する公害の絶滅あるいは当面の緊急の救済ということをやりながら、他面においては積極的に漁場開発あるいは育てる漁業の対策の遂行ということをやるべき段階がきているのじゃないかというふうに私は思いますけれども、これらの問題に対する農林大臣としてのお考えを承っておきたいと思います。
  191. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいま角屋委員の御質問は、そのまま私として今後の沿岸漁業振興努力してまいりたい点でございます。いまとやかく申し上げる時間的余裕もないかと存じまするが、当面漁業公害対策の強化、これはもうぜひやっていかなければならないと思います。また漁場の改良、造成、さらにはことしから日本海の栽培漁業をお願いいたしましたが、そういう栽培漁業の積極的な展開等の施策を講じまして、そのことによって沿岸海域における水産資源の開発を積極的に促進をしてまいりたい。ただいまの御意見、十分参酌してこれからの施策に反映をしてまいりたいと思います。
  192. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 水産三法のうちの水産業協同組合法の一部改正の問題について一点だけお尋ねをしておきたいと思います。  これは今度の国会に出されました農林中金法の一部改正あるいは農業協同組合法の一部改正の金融関係の部面と関連する改正の内容が主でございます。したがって、預金等の受け入れの事業を行なっておる漁業協同組合、同連合会、水産加工業協同組合、同連合会に内国為替の取引をすることを認める、あるいはまた信用事業を行なっておる漁業協同組合、水産加工業協同組合に手形の割引をすることを認める、さらに漁業協同組合、水産加工業協同組合、同連合会に農林中央金庫等の業務の代理をすることができるようにするという三点が主たる改正点でありまして、このこと自身は私どもに異論はございませんが、ただ、こういう問題を漁業協同組合なりあるいは水産加工業協同組合等が実施する場合に、それだけの能力体制というものが十分備わっていくためには、今後の適切な指導、援助が必要であろうというふうに感ずるわけでありまして、これらの問題について、農林省としてどういうふうな指導援助を今後的確にやっていくのか。この点について集約をしてお答えを願いたいと思います。
  193. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまの御質問によりますとおり、これから内国為替取引、手形割引などを行なわす、こういうことになりますれば、その場合の管理体制の整備や指導監督の強化、これがきわめて重要なことでございまするが、本委員会で長官のほうからしばしばお答えを申し上げましたように、やはりこれはそれぞれの組合においてこれらの業務が実施のできる適格の組合ということが必要でございまして、内国為替取引、手形割引を扱う上におきましては、それに専従する従業員が四名以上なければならないとか、あるいは預金高が五億とか十億とかいうような一応の基準を設けたのでございまするが、しかし、信用事業を実施していく上におきまして、不正等の防止のための内部牽制体制が必要であると思うのであります。また、今後は、漁協の合併あるいは信用事業の統合等により、漁協等の信用事業体制の整備をはかり、さらには都道府県が行なう常例検査等を通じまして、適切な指導をしてまいりまして、不正等の防止のために遺漏のないようにいたしてまいりたいと思います。
  194. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 漁船損害補償法の一部改正並びに漁船積荷保険臨時措置法案関係して、若干お尋ねをいたしたいと思います。  本件につきましては、御承知のとおり、漁船保険中央会のほうで、昭和四十二年の七月から昭和四十五年の七月にかけて、漁船保険振興調査会でいろいろ検討してきた経緯がございます。さらに、その検討を受けて、水産庁で四十五年九月から四十七年五月にかけて、漁船保険制度研究会を持ちまして、そこで検討してきた経過がございます。それに基づいて、今回の漁船積荷保険臨時措置法案が提案されておるわけでございますが、その際にやはり検討された中で、船主責任保険等の問題については、これは取り残されたわけでありまして、政府は、単にことしの場合には漁船保険中央会に調査費をつけまして、数年間そこで検討してもらう、そしてその検討結果によっていわゆる試験実施に移し、試験実施の結果を待って本格実施をやろう、いわば漁船積荷保険のほうからは一歩後退をした形で船主責任保険の問題が発足する段取りになっていくわけでありますが、このいま申しました船主責任保険等の問題については、これからのいわゆる本格実施までの段階をどういうふうに考えていこうとするのか、少しくお考えを説明願いたいと思います。
  195. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまお尋ねの船主責任保険の具体化でございまするが、海洋の油濁防止に関する内外の諸規制や人身事故に対する損害賠償等、漁船の運航によって船主が負担すべき各種の責任及び費用が増大する傾向にあることは言うまでもないと思います。そのことにかんがみまして、漁船における船主責任保険は早急に実施する必要がある、われわれもそのとおり感じております。そこで、本年度から調査を行ないまして、調査の終わり次第、大体三年ぐらいの見当で具体化する考えでおります。
  196. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの漁船保険中央会の点については、湯山委員あるいは先ほどの島田委員等からも、今回の法律改正の中で特別会計の積み立て金、つまり余剰金の三十五億交付の問題、あるいは前の十二億交付と関連をした運営の問題等について、いろいろ特別会計からこういう交付を出すのが適当かどうかという問題等も含めて議論がございました。私は問題を逆に、今日この漁船保険中央会が漁船積荷保険臨時措置法案によって、試験実施として再保険事業をこれからやるわけであります。おそらくこの船主責任保険等についての調査を中央会がやっておりますけれども、これがここ数年で調査が終わりますれば、試験実施というのをやることになる。試験実施になれば、水産庁としては、当初これも漁船保険中央会で再保険事業をやらそうという考え方でございましたが、おそらくそういうことになるのじゃないかというふうに考えられます。そうしますと、これが試験実施から本格実施というときに、政府みずからが再保険事業をやるのか、あるいは漁船保険中央会がやるのかというのは、今後の問題でありますけれども、かりに漁船保険中央会自身がこれら再保険事業をやるということになりますと、法律できめられております漁船保険中央会の指導的機能のうちの中立的機能においては、やはりこういうものを受け持つようになると問題点が出てくる、あるいは今日十二億、三十五億を含めた四十七億の問題等も含めて、いずれ早晩そういった再保険事業等とも関連をして、漁船保険中央会のあり方という問題が検討の俎上にのぼるのじゃないかというふうに予測するわけでございまするけれども、これらの問題に対する今日時点における考え方はどうなんですか。
  197. 荒勝巖

    荒勝政府委員 今回の積荷保険の実施を中央会に一応暫定的に実験実施をしていただくということで今回は踏み切ったわけでございますが、五年間大体実験実施を施行しますが、あるいはいい成績が出るならば——あるいは実験については弾力的な検討が必要かと思いますが、当面五年間という考え方でお願いしておる次第でございます。  また、こういった形でさらに積荷保険を本格的に実施する、あるいはその間、ただいま御指摘になりました船主責任保険の調査期間が終わって、また試験実施の段階に移行する、こういったことによりまして、その両方の時点を踏まえまして、それを中央会に業務を委託するのか、あるいはまた特別会計が再保険業務を行なうことになるのか。こういうことにつきましては、中央会の性格も含めまして、われわれといたしましては、今後検討さしていただきたい。本日の時点で、その辺の明白なことにつきましては、まだ十分にわれわれとしては、検討も終えていないような次第でございます。
  198. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この漁船積荷保険臨時措置法案によるところのいわゆる指定組合、これが保険事業をやる、それに対して漁船保険中央会が再保険事業をやる。このいわゆる指定組合については、事務、人件費が助成されないという形になっておる。これがやはり今後の試験実施の中で問題点になるのじゃないか、おそらくこれは付加保険料でまかないなさいという考え方かと思いますけれども、これはなぜ、こういう点については運営上支障のないような配慮がもっとできなかったのかということが問題としてございます。同時に、これは漁業災害補償法の実施の前にも、いわゆる全水共による試験実施というものが行なわれまして、それから本格実施になったわけでございますが、この全水共が仕事を終わって、漁業災害補償法に切りかわる段階において赤字問題というのをどうするかというのを、私は、委員会でも議論したことがございますし、その解消のためにいろいろ私なりに努力しましたが、今度の漁船積荷保険についても、そういう最終的に赤字が出るという場合には、一体どういうふうな措置をしようとするのか。これは法案の発足にあたってお考えを聞いておきたいと思います。
  199. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま御指摘のように、今回試験実施でございますので、今後五年間にどのような赤字になりますか、黒字になりますか、その辺は今後の実験段階におきまして、多少試行錯誤といいますか、そういう形でデータを集めながら整理してまいりたいと思っておりますが、政府といたしましては、さしあたりの問題といたしまして、漁船保険中央会が今回行ないます再保険事業につきましては、四十八年度の分につきましては、一億三千万円の国庫債務負担行為というものを、この間成立いたしました予算にお願いいたしておりまして、こういう形で中央会の赤字が生まれないように指導いたしてまいりますし、また四十九年度以降の予算措置につきましても、こういう債務負担行為の問題につきましては、十分にデータを基礎としながら検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  200. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの点については、重要な問題でございますので、大臣にお伺いしておきたいのでありますけれども、これは漁業災害補償法の前に、全水共が試験実施したときにも、赤字問題の最終処理ということで、われわれいろいろ苦労したわけですけれども、この漁船積荷保険で最終的に試験実施で赤字が出た場合には、責任をもって処理するというふうに考えておられるかどうか、明言をしておいていただきたいと思います。
  201. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいま長官からお答えを申し上げましたように、一応国庫債務負担行為で一億三千万円で赤字が出ぬようにいたすよう措置をしておるわけでございまして、赤字の処理についてはそのような姿勢で、今後臨むことをはっきり申し上げておきます。
  202. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この際、漁業災害補償法の問題に触れましたが、御承知のように、漁業災害補償法は三十九年の時点で、私のほうからも私の名前で対案を出しましたが、法律案が成立をし、四十二年時点で附帯決議あるいは本法附則の検討条項というのに基づいて政府の保険事業が実施され、今日に至っておるわけですが、この漁業白書にもありますように、漁災の昭和四十六年度の推定加入率として漁獲共済一〇・三%、養殖共済二五・五%、漁具共済一一・八%、全体で一二・三%と比較的低位に今日あります。そういう点では制度内容の改善を積極的に行ないまして、魅力ある漁業災害補償法に切りかえなければならぬというのが関係者の強い要望でございますが、それと関連をいたしまして、漁業共済制度検討協議会が、漁獲共済について昭和四十八年五月に答申を出しておるわけでございます。私は、専門的な立場から内容に触れるということは、時間的な関係もありまして省略をいたしますけれども、今日時点における漁獲共済の改善方向を差し示しておるかと思います。同時に、これ以外に漁業災害補償法には養殖共済あり、漁具共済があるわけでありますが、養殖共済についても問題があるわけでありまして、こういった答申に基づく漁獲共済の改正、さらに今後の検討に基づく養殖共済を含めた改正等の問題については、明年度必ず漁業災害補償法の改正を出すという方向で取り組んでおられますが、大臣からその点についてのはっきりしたお考えを承りたいと思います。
  203. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 漁業共済制度検討協議会からの答申に基づきまして、漁獲共済については、これは早急に昭和四十九年度から法律改正を含む所要の措置をとることにいたしたいと思います。  なお、養殖共済につきましては、これは種々の観点からさらに検討さしていただきまして、必要に応じ改善の措置を講ずることにいたしたいと思います。
  204. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 まだ若干の質問すべき点もあるわけでございますが、ちょうど予定の時間にもなり、多数の委員各位が待機しておられますので、私はこの程度で総括的な質問を終わりたいと思います。  ただ、この三法については、理事会で協議された附帯決議、これはわれわれのこれからの運営にあたっての気持ち等を素案として理事会にも提案したわけでありますけれども、理事会の決定に基づいて後刻提案されると思いますが、そういった要望等も含めて、三法の運営については遺憾のない形で政府として指導してもらいたい。  なお、今回の改正では、議論をすればやはり問題点も相当あるわけでありまして、今後、船主責任の保険の問題等も含めて制度の改善についてはさらに検討を続けながら、必要なものについては改善を行なうという姿勢で対処してもらいたいと思います。  冒頭に申し上げましたように、国際漁業関係におきましても、最近は国内沿岸漁業でも、漁業自身ずいぶん問題を持ってきておりますので、水産庁長官はもちろんでありますけれども、農林大臣としても新たな姿勢でわが国漁業の伸展のために真剣に取り組むことが必要になってきている。先ほど共産党の津川君からは、軍隊の演習等による漁業の問題も取り上げられましたけれども、そういう問題も含めて考えてまいりますと、漁業者の今日直面をしている問題はきわめて多面的、しかも深刻である、こういうふうに考えるわけでありますが、これからの日本水産業を推進するにあたっての農林大臣の最後の決意のほどをお伺いをして、私の質問を終わります。
  205. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 水産三法の御審議を通じまして、種々御高見を賜わった次第でございます。現在の沿岸漁業といい、また沖合い漁業といい、海洋漁業といい、当面する問題は山積をしておるのでございますが、これらの漁業を通じての日本国民の必要な動物性たん白資源確保は、食生活上きわめて重要なことであるとともに、またこれらの水産業の重要なにない手である、現に当面しておる漁民の皆さま方の御苦労を考えますときに、今回の審議を通じての御意見を踏まえまして、今後の施策の上に反映しつつ、万遺漏なきを期してまいりたいと思います。
  206. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 これにて、各案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  207. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 ただいま議題となっております各案中、漁船損害補償法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより本案について討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もございませんので、直ちに採決いたします。  漁船損害補償法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  208. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決されました。  次に、漁船積荷保険臨時措置法案について議事を進めます。  これより本案について討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もございませんので、直ちに採決いたします。  漁船積荷保険臨時措置法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  209. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決されました。     —————————————
  210. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 この際、ただいま議決されました両案に対し、附帯決議を付したいと存じます。  案文を朗読いたし、その趣旨の説明にかえたいと存じます。    漁船損害補償法の一部を改正する法律案および漁船積荷保険臨時措置法案に対する附帯決議(案)   政府は、漁船保険事業の健全な発達を促進するとともに、漁船に積載した漁獲物等についての保険制度確立に資するため、左記事項の実現を期すべきである。     記  一 漁船保険組合の区域については、画一的な地域割りによる組合の組織を改める等漁船保険事業の適正かつ円滑な実施が確保されるよう組合の事業基盤の強化に努めるとともに、組合事務費補助の増額を図ること等により、附加保険料率の引下げ及び組合間の格差是正に努め、もつて漁業者の保険料負担の軽減に資すること。  二 普通損害保険及び満期保険の普通損害保険部分についての政府の再保険金額は、保険金額の百分の九十以下百分の七十以上の範囲内とすることを政令で明定し、政府の負う再保険責任の範囲を明確にするとともに、その設定に当たつては、組合の実情を勘案すること。  三 政府の再保険料率については、収支相等の原則に照らし、特別会計における積立金の状況をも勘案してこれを定め、そのてい減に努める等再保険事業の運営の改善を図ること。  四 漁船保険中央会に対する交付金の運用益の使途については、特に必要な事業に重点的かつ効率的に配分されるよう、中央会を指導監督すること。  五 北方海域等における漁船安全操業確保を期することはもとよりだ捕抑留乗組員および漁船については、漁船保険ならびに漁船乗組員給与保険制度による救済措置ばかりでなく、乗組員とともに漁船の早期返還の実現のため最善を尽すこと。  六 漁船積荷保険は、可及的すみやかに本格実施に移行させるよう努めるとともに、漁船船主責任保険についても、すみやかに試験実施体制が確立されるよう努め、漁業者の要望に応えること。  七 最近における一般船舶の増大による海上交通の輻そう、事故の増加にかんがみ、漁船安全操業確保のため、万全の措置を講ずること。   右決議する。 以上でありますが、本附帯決議案を両案に付するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  211. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 起立総員。よって、両案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。櫻内農林大臣
  212. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、御趣旨を尊重し、今後検討の上、善処してまいりたいと存じます。     —————————————
  213. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 次に、水産業協同組合法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。中川利三郎君。
  214. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、水産業協同組合法の一部を改正する法律案に対し、次の理由をあげて反対の態度を表明します。  その第一は、信用事業を行なう漁業協同組合、水産加工業協同組合並びに同組合連合会が新たに農林中央金庫等の業務代理をすることができる、とした点についてであります。  このことについては、全漁連をはじめ、漁協系統自体が系統の信用事業の三段階制に混乱をもたらすものであるとして難色を示していたところでありますが、私どもの調査によっても、多くの漁協では、現在でも信漁連のいわば下請機関化し、貯金のかき集めや貸し付け、その回収などに追われ、そのために本来業務に支障を来たしているところであります。沿岸漁協の幹部は、信漁連がおかに上がって単協に指図している現状を改めて、信漁連は海に来てもっと単協の信用事業を援助指導してほしいと要望しています。  このような現状の上に、さらに農林中金の業務代理まで行なわせるということになれば、単協の下請機関化に一そう拍車をかけることになることは明らかです。  さらに重視しなければならないものに、単協、信漁連を飛び越えて、中金から直接に貸し付けを受ける漁業者が、ごく限られた一部の者であることであります。これは資金貸し付けが大型に片寄り、零細、小規模漁民には貸し付けられないという従来の傾向を一そう助長するものです。また、こうした方向は現在進められている高度成長、工業開発優先の沿岸中小漁業構造改善事業によって汚染漁場と零細漁民の切り捨て策を踏襲するものであり、日本漁業の後退につながりこそすれ、発展につながるものではあり得ないと考えるからです。  反対のいま一つの理由は、この法案が漁協の基盤強化といいながら、押しつけ合併の促進を前提としていることです。  信用事業の側面から漁協と農協を比較すると、四十六年三月末現在の平均貯金残高は漁協が一億二千九百万円、農協が九億一千九百万円であり、漁協の基盤強化が必要なのは言うまでもありません。  しかし、漁協の基盤強化のための漁協合併は、昭和三十五年の漁協整備促進法、昭和四十二年の漁協合併助成法等により促進されてきたところですが、昭和四十六年度でわずか三百三件であり、見るべき合併の成果をあげていません。これは浦浦によって異なる漁業形態を持つ漁協を無理に合併させようとする政策の破綻として、また、合併によって引き起こされる圧迫に対する零細漁民の抵抗の結果として当然でありますが、現時点において、このような上からの押しつけ合併は、一部上層漁業者への権益集中という結果をもたらすものであり、沿岸漁民の真の要求とかけ離れ、沿岸漁業の真の発展につながるものではありません。  また、信用事業の基盤の弱い現段階で為替や手形割引を扱わせることは、事故の発生に伴う危険のおそれなしとしません。漁業権管理団体として漁民にとって不可欠の組織である漁協に、万が一にもこのような危険があってはならないと考えるからです。  わが党は、以上の理由から本法案に反対するとともに、独占資本本位の工業開発によって沿岸海域で引き起こされている埋め立てや公害、特にこの問題についてはPCB、第三、第四の水俣など本法案の審議を通じて明らかになったところでありますが、さらには日米の海上合同演習による漁場取り上げなどから沿岸漁業を守り、抜本的に民主的な沿岸漁業振興策を講じること、そして日本沿岸を無限に豊かな魚族資源の宝庫とすることによってのみ、「漁民及び水産加工業者の協同組織の発達を促進し、もってその経済的社会的地位の向上と水産業の生産力の増進とを図り、国民経済の発展を期する」とする水協法の目的が達せられることを強く指摘して、私の反対討論を終わります。  以上です。
  215. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  水産業協同組合法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  216. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決されました。     —————————————
  217. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 この際、本案に対し、角屋堅次郎君外三名から自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。角屋堅次郎君。
  218. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党を代表して、ただいま可決されました水産業協同組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の動議について、その趣旨の説明をいたします。  まず、案文を朗読いたします。    水産業協同組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、漁業協同組合等の金融機能を拡充し、その事業活動の円滑化を図る等のため、左記事項の実現を期すべきである。     記  一 漁業協同組合及び水産加工業協同組合の経営基盤を強化するため、自主的な合併を促進する等その育成対策を充実すること。  二 漁業協同組合並びに水産加工業協同組合の内国為替取引及び手形割引の実施については、その健全な運営を確保するため、業務執行体制の整備及び指導監督の強化につき所要の措置を講ずること。   右決議する。  これらにつきましては、委員会の審議を通じまして十分審議されているところでありまするから、この際、説明を省略させていただきます。  何とぞ各位の御賛同をお願いいたしまして、提案の趣旨の説明を終わります。
  219. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本動議に対して別に御発言もありませんので、直ちに採決いたします。  角屋堅次郎君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  220. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 起立多数。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。櫻内農林大臣
  221. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、御趣旨を尊重し、善処してまいりたいと存じます。     —————————————
  222. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 なお、ただいま議決いたしました各案の委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  224. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 次回は明二十日、水曜日、午後零時三十分理事会、午後二時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十二分散会