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1973-06-07 第71回国会 衆議院 農林水産委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月七日(木曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 佐々木義武君    理事 仮谷 忠男君 理事 坂村 吉正君    理事 山崎平八郎君 理事 柴田 健治君    理事 美濃 政市君 理事 津川 武一君       金子 岩三君    小山 長規君       田中  覚君    丹羽 兵助君       西銘 順治君    長谷川 峻君      三ツ林弥太郎君    湊  徹郎君       森下 元晴君    井上  泉君       角屋堅次郎君    竹内  猛君       野坂 浩賢君    馬場  昇君       湯山  勇君    諫山  博君       中川利三郎君    坂口  力君       瀬野栄次郎君    神田 大作君  出席政府委員         農林省農蚕園芸         局長      伊藤 俊三君         水産庁長官   荒勝  巖君         水産庁次長   安福 数夫君         海上保安庁次長 紅村  武君  委員外出席者         環境庁企画調整         局公害保健課長 山本 宜正君         環境庁水質保全         局企画課長   松田豊三郎君         環境庁水質保全         局水質規制課長 太田 耕二君         大蔵省関税局輸         入課長     片山  充君         文部省初等中等         教育局職業教育         課長      中西 貞夫君         厚生省公衆衛生         局栄養課長   土井 敏男君         厚生省公衆衛生         局保健所課長  山中  和君         厚生省環境衛生         局乳肉衛生課長 岡部 祥治君         厚生省医務局総         務課長     山高 章夫君         林野庁林政部長 平松甲子雄君         通商産業省鉱山         石炭局石油業務         課長      根岸 正男君         運輸省港湾局技         術参事官    大久保喜市君         労働省労働基準         局補償課長   山口  全君         自治省財政局財         政課長     土屋 佳照君         参  考  人         (愛知農林部         長)      蟹江 良嗣君         参  考  人         (愛知漁業協         同組合連合会会         長理事)    水越 幸雄君         参  考  人         (三重県副知         事)      後藤 土男君         参  考  人         (三重漁業協         同組合連合会会         長理事)    宮原 九一君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 六月七日  辞任         補欠選任   熊谷 義雄君     田中  覚君   鈴木 善幸君     森下 元晴君   林  孝矩君     坂口  力君 同日  辞任         補欠選任   田中  覚君     熊谷 義武君   坂口  力君     林  孝矩君     ————————————— 六月六日  オレンジ及び果汁の輸入自由化阻止に関する請  願外十四件(栗原祐幸紹介)(第六〇九九  号)  同外四件(正示啓次郎紹介)(第六一〇〇  号)  同外十九件(松澤雄藏紹介)(第六一〇一  号)  同(塩谷一夫紹介)(第六一六一号)  同(三池信紹介)(第六一六二号)  同(足立篤郎紹介)(第六三〇七号)  同(木野晴夫紹介)(第六三〇八号)  同(田村良平紹介)(第六三〇九号)  同(保利茂紹介)(第六三一〇号)  造林政策確立に関する請願外六件(愛知揆一君  紹介)(第六一六三号)  同外十六件(伊藤宗一郎紹介)(第六一六四  号)  同外八件(内海英男紹介)(第六一六五号)  同外六件(大石武一紹介)(第六一六六号)  同(中尾宏紹介)(第六一六七号)  同外六件(長谷川峻紹介)(第六一六八号)  同外七件(三塚博紹介)(第六一六九号)  同外一件(森喜朗紹介)(第六一七〇号)  同外七件(赤澤正道紹介)(第六三一一号)  同外九件(加藤紘一紹介)(第六三一二号)  同外八件(黒金泰美紹介)(第六三一三号)  同外六件(篠田弘作紹介)(第六三一四号)  同外五件(島田安夫紹介)(第六三一五号)  同外五件(住栄作紹介)(第六三一六号)  同(中尾宏紹介)(第六三一七号)  林業振興に関する決議の具体的実施に関する請  願(赤松勇紹介)(第六一七一号)  同(勝間田清一紹介)(第六一七二号)  同(八木一男紹介)(第六一七三号)  同外一件(安宅常彦紹介)(第六三一八号)  同(久保三郎紹介)(第六三一九号)  同(神門至馬夫君紹介)(第六三二〇号)  同外一件(柴田健治紹介)(第六三二一号)  同(田中武夫紹介)(第六三二二号)  同(辻原弘市君紹介)(第六三二三号)  同(堂森芳夫紹介)(第六三二四号)  同(中澤茂一紹介)(第六三二五号)  同外七件(芳賀貢紹介)(第六三二六号)  同(原茂紹介)(第六三二七号)  同(広瀬秀吉紹介)(第六三二八号)  同(古川喜一紹介)(第六三二九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  農林水産業振興に関する件(伊良湖水道にお  ける西独貨物船メリアン号」とタンカー「  日聖丸」との衝突事故により生じた油の流出に  よる漁業被害状況問題並びに漁場汚染及び漁業  補償問題等)      ————◇—————
  2. 佐々木義武

    佐々木委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  本日はまず、伊良湖水道における西独貨物船メリアン号タンカー日聖丸との衝突事故により生じた油の流出による漁業被害状況問題について、参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、愛知農林部長蟹江良嗣君愛知漁業協同組合連合会会長理事水越幸雄君、三重県副知事後藤土男君、三重漁業協同組合連合会会長理事宮原九一君、以上四名の方々でございます。  参考人各位に申し上げます。参考人各位には御多用中にもかかわらず、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとう存じます。  本問題につきましては、参考人各位のそれぞれの御立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の都合上、まず御意見をお一人約十分間程度で順次お述べいただき、その後、各委員からの質疑にお答えお願いいたしたいと存じます。  御意見の開陳は、蟹江参考人水越参考人後藤参考人宮原参考人の順序でお願いいたします。  それでは、蟹江参考人お願いいたします。
  3. 蟹江良嗣

    蟹江参考人 愛知農林部長蟹江でございますが、本日は、先生方にはきわめてお忙しい日程をおさきいただきまして、タンカー日聖丸沈没に伴います流油事故、特に漁業関係被害の問題につきまして、その事件概要をお聞き取りいただく機会をお与えいただきましたことを、まずもって厚くお礼申し上げます。  なお、本日は桑原愛知県知事にお呼びをいただいたのでございますが、あいにく六月定例県議会を控えておりまして、補正予算査定中でございますので、知事、副知事とも出席できませんことをお許しいただきたいと存じます。  まず、タンカー日聖丸沈没事故概要でございますが、お手元にお配りをさせていただきました要望書の中ほど一一ページにございますように、去る五月三日の夜、二十三時五十分ごろでございますが、伊勢湾の第二灯標付近、すなわち伊良湖灯台からほぼ真西二・九キロの地点におきまして、西ドイツの貨物船メリアン号、一万一千三百九十一トンでございますが、これと小型タンカー日聖丸、九百九十一トンでございますが、この両者が衝突をいたしました。衝突とともに日聖丸沈没をいたしたのでございます。沈没をいたしました日聖丸にはC重油が千八百六十九キロリットル積載されておるのでございまして、沈没とともに積み荷のC重油流出をいたしまして、伊勢湾口三河湾に広く拡散いたしますとともに、渥美半島先端伊良湖港、福江港、恋路ケ浜伊良湖海水浴場など一帯に大量の油が漂着をいたしました。また一方、伊勢湾口から外洋に漂流をいたしました流出油は、潮の干満あるいは風向き等によりまして、知多半島の先端の師崎から美浜町沿岸にも漂着をいたしまして、関係漁民住民に多大の被害を与えたのでございます。  このような流油防除責任体制といたしましては、海洋汚染防止法によりますと、沈没をいたしました日聖丸船主にあるのでございまして、第四管区海上保安本部の積極的な御活躍によりまして、船主から委嘱を受けましたサルベージ会社の手によりまして、連日沈没船からの流出油防止作業が続けられたのでございまして、ようやく先月末その作業がほぼ完了をいたしたのでございます。  なお、沈没をいたしました日聖丸早期引き揚げお願いいたしておったのでございますが、今月の末までに引き揚げ作業完了する予定であると承っておるのでございます。  愛知県といたしましては、事故発生の翌朝、日の出とともに県の水質調査船あるいは漁業取り締まり船現地派遣をいたしまして、実情の調査に直ちに取りかかりますと同時に、県庁内に日聖丸流油事故対策本部を設置いたし、また渥美町、南知多町の二カ所に現地本部を設けまして、地元漁民方々、また一般住民方々の御協力をいただきまして、流出をいたしました油の防除処理に全力を尽くしてまいったのでございます。  流出油防除作業にあたりましては、実は昨年の七月、伊勢湾のほぼ同じ個所におきましてリベリアの貨物船グランドフェア号沈没をいたしまして、やはり大量の油を流出いたしましたので、この経験を生かしまして、県といたしましては、昨年のグランドフェア沈没事故後、このような事故に備えましてオイルフェンスなりあるいはオイルキャッチャーあるいは油処理剤、こういうものを購入備蓄をいたしておったのでございまして、これらをも活用いたしまして、昨今ようやく防除作業がほぼ完了をいたしたのでございます。  今後に残された問題といたしましては、多額にのぼります漁業関係被害、ことに伊勢湾三河湾魚介類、海草類の宝庫ともいわれておるわけでございまして、漁業関係者の受けました被害はきわめて大きく、現在漁業協同組合連合会を中心といたしまして被害額取りまとめ中でございますが、先ほど申し上げましたように、昨年のグランドフェア号によります補償問題もいまだ未解決でございますだけに、補償問題の解決にあたりましては、漁業関係者と県が一体となりまして、この解決に当たっておる最中でございます。  具体的な漁業関係被害といたしましては、ちょうどアオノリ生産最盛期でもございますし、またワカメなどの油汚染によります摘採不能、さらには油の汚染によります漁具あるいは養殖施設等の使用不能などの実害のほかに、漁場油汚染に伴います操業の自主規制等によります、いわゆる休漁によります漁獲量の減少あるいはまた魚価の低落、さらには伊良湖港内への流油漂着によりまして、港内にございます魚市場の開設不能などの損失被害があるのでございます。これらの被害の詳細につきましては、後ほど愛知漁業協同組合連合会水越会長から御説明を申し上げたいと存じます。  また、流油防除作業従事をいたしました漁民一般住民方々は、五月末現在をもちまして延べ二千四百六十四人に及んでおるのでございまして、また流出油防除従事をいたしました漁船等延べ三百二十四隻に及んでおるのでございます。これらの防除作業に要しました賃金あるいは船舶借り上げ料等につきましては、当然原因者たる船主が補償すべきものではございますが、県といたしましては、とりあえず本月の一日、この所要額約千六百余万円を予備費によりまして貸し付け金として地元の町に貸し付けをいたし、協力をしていただきました漁民住民方々に支払いできる措置を講じた次第でございます。  また、今後このような事件に備えまして県といたしましては、海上保安本部あるいは地方海運局、その他国の出先機関を含めまして、海上流出油対策研究会を設置いたしまして、このような事故発生防止応急活動の際の作業分担明確化などを研究をいたしますとともに、流出油防除資器材備蓄数量の増強などの措置を今後とってまいりたい、このように考えております。  しかしながら、このような事故の再発の防止、さらにはこのような事故が万一再発いたしました場合の措置、ことに補償問題につきましては、今回もそうでございますが、外国船関係をしていることでもございまして、国際的な問題もはらんでおるわけでございます。ひとり県段階のみではとうてい解決し得ない問題がきわめて多いのでございまして、このため、お手元にお配りをしてございますように、四項目にわたります要望事項取りまとめまして、農林省水産庁はもちろん、運輸省海上保安庁自治省等関係各省お願いをいたしておる次第でございます。  この中で特にお願いを申し上げておりますのは、要望書の八ページにございます損害補償の問題でございまして、第一には補償代位制度確立、第二には補償基準明確化、この二点を特にお願いをいたしておるわけでございますが、このような補償問題は、政府におかれましては各省にまたがる問題でもございますので、この窓口を明確にしていただきますと同時に、特に一昨年新潟港外に起こりましたジュリアナ号事件の際には、各省関係官によりまして補償問題の研究会もおつくりいただいたというように承っておるわけでございますので、今回の事件につきましても、政府におかれまして、このような措置をおとりいただきますよう特にお願いを申し上げておる次第でございます。  以上、きわめて簡単でございますが、日聖丸によります流出油事故概要並びにこれに関連をいたしますお願いを申し上げたのでございますが、なお詳細につきましては、先生方の御質問に応じましてお答えをさしていただきたい、かように存じますので、よろしくお願いを申し上げます。どうもありがとうございました。
  4. 佐々木義武

    佐々木委員長 次に、水越参考人お願いいたします。
  5. 水越幸雄

    水越参考人 愛知県の漁業協同組合連合会会長水越でございます。  今次の小型タンカー船日聖丸沈没事故発生以来、いち早く衆議院農林水産委員会の諸先生におかれましては、多大の関心を寄せていただき、いろいろと御配慮を賜わっておりますこと、まずもって愛知水産業界代表いたしまして厚く御礼申し上げる次第でございます。  まず、日聖丸沈没事故概要でございますが、ただいま私のほうの農林部長さんから詳しくお述べいただきましたので、重複を避けまして省略さしていただきます。  ただ、事故発生以来、本連合会といたしまして、あるいは県内の地元関係漁協皆さんがどのような措置をとってまいりましたかということを一応御報告申し上げたいと思うわけでございます。  事故発生当時は、御案内のように、ちょうど飛び石連休に際会いたしまして、連絡の不十分な点もございましたけれども、いち早く県におかれましては現地に、渥美地区あるいは知多地区対策本部を設けていただきまして、いろいろとさいはいを振っていただいたわけでありますが、われわれ当漁連あるいは地元漁協皆さんといたしましても、これに参画しまして、あるいは地元の第四管区海上保安本部地元町当局等の横の連絡もとりまして、日夜防除作業あるいは情報の伝達等に奔走してまいったわけでございます。  現場応急措置といたしましては、もっぱらそういった流油現場処理作業従事したわけでございますが、これらの問題に関しまして、特に県あるいは中央に対する要望行動といたしましては、五月十六日に知多関係、これは関係漁協カ組合でございますが、関係二町の代表が、それから五月二十二日におきましては、渥美地区関係の一町、八カ漁協代表方々がそれぞれ上京をいたしまして、農林省運輸省あるいは環境庁文書をもって陳情申し上げたわけでございます。  これに関連しまして、むろん本会といたしましてもこれに同行いたしまして、また本会といたしましても大体同様の内容をもちました文書、本日御配付申し上げてございませんが、それをもちましてそれぞれのところに陳情申し上げたわけでございます。  陳情内容につきましても、すでにお配り申し上げてあります県の陳情書内容と大同小異でございまして、特に沈没船早期撤去、あるいは今後の事故絶滅についての恒久対策、あるいは現在要しました防除費、あるいは現在あるいは今後起こり得る漁業補償の問題の解決ということにつきまして、国または県の積極的な御指導とごあっせんを陳情申し上げてまいったわけでございます。  先ほど流油による本県漁業者のこうむりました被害状況につきましては、農林部長さんから概略説明していただいたわけでございますが、少し補足説明させていただきます。  御高承のように、あの事故の起きた伊良湖水道周辺は、ちょうど外海と伊勢湾あるいは三河湾と連携する唯一の水道になっておるわけでございます。一般船舶の交通はもちろん、あらゆる魚族の外から中へ、あるいは中から外へ去来する唯一の魚道になっておるわけでございます。したがいまして、あの伊良湖水道周辺を取り巻く内外の漁場というものは、愛知県はもとより三重県にとりましても、いずれも県内的には唯一漁場である、漁場価値があるというところでございます。私のほうだけでも、あの周辺で大体金額にしまして十五億ぐらい揚げているのじゃないかと思うわけでございます。  ちょうど事故の起きました当時の前後、すなわち四月ごろから五月ごろと申しますと、ちょうど外洋のほうからあらゆる種類の魚が湾内に産卵のためあるいはえさを求めて回遊してまいる、そして秋になれば外洋に去るというような回遊を繰り返しておるわけでございまして、ちょうどあの辺には天然の漁礁等がございまして、かっこうの好漁場を形成しているために、ちょうど春先の上りあるいは秋の下りのときは、あのあたりにはかなり魚族が停滞して、好漁場を形成しておるというところでございます。  ちょうどそういった場所に昨年度はグランドフェア沈没事故あるいは今回の日聖丸沈没事故が起きたわけでございまして、あの周辺につきましては、それぞれ要望書にも書いてございますわけでございますが、ちょうどコウナゴ最盛期にも当たっておりまして、あの辺のコウナゴを目的とする船びき網漁業あるいは一本釣り、刺し網まき網等の一番好漁場に当たっておるために、事故発生したためにあの辺一帯流油漁場化した。それがためにあの辺一帯漁労作業ができなくなった、あるいはまたこれに伴う流油防除作業従事するために、自発的に単協ごとあるいは業種別団体ごとに出漁を停止してそういう方面に当たったというような期間があるわけでございますが、そういった期間の甚大な生産収入減というものが被害としてあげられるわけでございます。  特にあの事故が起きましたところから至近距離にございます渥美半島渥美周辺におきましては、もろにこの流油のかたまりを受けまして、付近海岸一帯汚染されたわけでございます。ちょうど福江湾アオノリの、先ほどもお話にございましたように、まだ盛漁期が続いておったアオノリ被害問題アサリが油くさくなって採取できなくなったとか、あるいはあの辺ずっと海岸地帯は地びき網の引き揚げ場であり、あるいは夏は海水浴場になっておるわけでございますが、こういった海岸が三十センチから五十センチまで深く油のために汚染され、これが解消のためには二、三年を要するのではないかともいわれておるほどの打撃を受けたわけでございます。  さらに伊良湖岬周辺は、ちょうどいい岩礁地帯でございまして、根つけ水産資源が豊富にあるところでございまして、まっさきにワカメがいわゆる収穫皆無というような状態になったとともに、イセエビ、サザエ、アワビ等、それぞれ饒産しているところでございますが、これが漁場の、いわゆる潮間帯地帯が一せいにそういうような深い、濃い油の汚染を受けた。  これに対する駆除の問題でございますが、あわせてこれに追いかけるように、やはり多量の処理剤をまいておるわけでございます。これがあまりに多量に使っておるために、これが毒性が低いといえども、量的にかなりの量を使用しているために、はたして二次公害発生がありはしないかという心配漁民の間には心配の種として残っておるわけでございます。  これらの被害につきましては、私の漁連といたしまして、昨年度グランドフェア事件がございまして、先ほど部長からも御説明していただいたように、いまだに問題が解決していないわけでございます。これは両船とも外国船であったために、なかなか交渉がらちがあかないということで延びておるわけでございますが、これにつきましては、最近ようやくその損害査定につきましても鑑定人査定を受けまして、私のほうとしても弁護人を依頼しましてやはりやっていかなければならない。ただ、民間団体だけで相手側会社と交渉しても一向にらちがあかないということがわかりましたので、そういう手続をとっておりますので、いずれ解決すると思いますが、いずれにしましても外国との関連がございますので、長期化するおそれがあるのではないかと思うわけでございます。  そういった経験を生かしまして、今回につきましては特に三重県との関連もございますので、漁連といたしましては、三重漁連と連携をとり、それぞれの県の指導はもちろん全国漁業協同組合の担当の指導を受けまして、そして専門弁護士を委嘱しまして、この問題の解決に当たっていくということで、現在、被害調査につきましては取りまとめ中でございまして、被害額についてはまだこの席では申し上げられませんが、いずれそういった段階解決をはかってまいろうということになっておるわけでございます。  大体私からいままでの漁連がとってまいりました行動あるいは漁業被害概要について申し上げたのでございますが、今後の要望事項につきましても、すでに部長さんからも述べていただきましたし、この問題に関しましては後ほどそれぞれ三重県側からもおっしゃっていただくと思います。大体似た問題が多いかと思うわけでございますが、特に気づいた点で強く申し上げたい点は、漁業救済制度確立でございます。  先ほどもこの点につきまして触れていただいておるわけでございますが、漁業補償代位制度確立あるいは補償基準明確化、あるいは政府間海事協議機関、いわゆる国際機構の中において採択されるところのいわゆる流油被害に関する条約の問題を日本政府としても早期批准をしていただきたいというような点はもちろんでございますが、御案内のように、最近特に、この流油問題ばかりじゃなく、全国各地に汚水の公害の問題が大きく報道され、報道関係をにぎわしておるわけでございますが、われわれ伊勢湾に生計を立てる漁民といたしましても、いつ何どき伊勢湾あるいは三河湾汚染水域としての指定を受け、いわゆる死の海としての宣言を受けるかもわからないというような不安にかられながら、毎日生産にいそしんでおる、従事しておるという状態でございます。したがいまして、今回の相手方のある問題につきましても、やはり早期解決のためのつなぎといたしまして、何か基金制度を、国あるいは県、地方自治団体あるいは企業体を入れた基金制度の確立によって救済をしていただきたい。特に相手方のわからない引き逃げの問題産業公害の不特定、いわゆる複合公害等については特にこの救済制度の急務をわれわれとしては痛感するわけでございます。  それから水産資源の回復でございますが、先ほど伊良湖周辺の資源が壊滅的状態になっておるのじゃないかという心配をしておるわけでございますが、愛知県といたしましてもあの辺は——すでに発足しております海洋水産資源開発促進法に基づきまして、それぞれの県におきまして水産の資源についてはここだけは確保しておこうじゃないかという指定海域の指定をそれぞれ各県とも作業をしていただいておるわけでございますが、なかなかこれは各省との意見の調整の関係で、いまだに愛知県におきましても——まあほとんどの県が県内における指定区域がまだきめられていないという状態でございます。そのさなかにおいて、われわれ愛知県としては、あの辺は根つけ資源のこれからの育養、培養ということについては特にはかっていきたい地帯であったわけでございますので、こういった促進法に基づく各県の指定海域につきましても、国会におかれましては、そういった各省の壁を取りはずして早く指定していただけるようにひとつお願い申し上げたいと思うわけでございます。  それから、現場における流油作業につきまして、その対策といたしまして、これも各県ともいろいろ出していただいておるわけでございますが、オイルフェンス、吸着剤等、これはいずれも荒天の場合、若干波が立った場合はほとんど効果をあげることができないという状態でございます。できれば、そういった波浪にもたえる、現場において油と水とを処理できる大型の油処理船をつくっていただいて、そういった危険な場所にそれぞれ配置していただくというような措置を、国においてお考え願えないかというように思うわけでございます。  以上いろいろと述べましたのでございますが、後ほど諸先生からお聞きの点がございましたら、知っている範囲でお答え申し上げたいと思うのです。よろしくお願いいたします。失礼いたしました。
  6. 佐々木義武

    佐々木委員長 次に、後藤参考人お願いいたします。
  7. 後藤土男

    後藤参考人 私、三重県副知事後藤でございます。知事がやむを得ない会がございまして、私、かわりまして御説明にあがりました。  平素から農林漁業振興につきまして格別の御高配を賜わりまして、この席をおかりしましてお礼を申し上げたいと思います。  また今回の日聖丸事故につきまして、私どもの被害の状況をお聞きいただきます場を持っていただきましたことに対しましても、心からお礼を申し上げたいと思います。  被害の状況につきましては、先般来愛知県さんのほうからいろいろお話がございました。また私どものほうから資料としてお配りもしておりますので、簡単に申し上げます。  最初は、湾内におきます油は、おもに愛知県さんのほうに漂着しておりましたので、三日以後しばらくの間は、県といたしましてはその状況を注視していたわけでございます。何ぶんにも油は一分間に一リットル程度の流出でございまして、最初はかなり出ましたが、そのあとはその程度の流出でございまして、かなり長期に続いたわけでございます。これは計算いたしますと、三年半も続く、このような状況でございましたが、その油が漸次湾口あるいは湾外へ流れ出るに従いまして、南東の風が吹いてまいりまして、湾内におきます油は三重県の鈴鹿市から松阪市のほうに吹き寄せてまいりました。また湾外にあります油は、志摩半島のほうに流れ、さらには回りまして熊野灘沿岸、主として南勢町、南島町のほうに漂着してまいりました。この結果、伊勢湾から志摩半島、熊野灘にかけまして、海岸線で延長約二百六十キロメートル、被害の市町村四市七町一村、このような広い範囲にわたって被害を与えたものでございます。  直ちに海上保安本部のほうも警戒をしていただきましたほかに、県といたしましても、漁業取り締まり船あるいは漁業調査船を動員いたしまして、さらにはヘリコプターによってその状況を監視したのでございますが、油がこのようにして流れてまいりました五月六日に至りまして、三重県といたしましても、タンカー事故対策本部を設置いたしまして種々の対策を講じたわけでございます。  油につきましては、愛知県さんと同様、オイルフェンス、オイルマットあるいはむしろ等を利用いたしまして、また化学処理剤も利用いたしまして、これらの対策を講じたわけでございますが、現在のところではむしろが一番効果があったように聞いております。  このような油の付着によりまして起こりました被害は、おもなものを申し上げますと、第一には、出漁を中止いたしましたことによりまして、漁獲が減少したという損失でございます。私もさっそく沿岸部に行っていろいろ話を聞いたのでございますが、大体三日ないし四日ばかりは漁業を休んだようでございます。  次には、沿岸部にございます海藻を主とする根つけ資源で、ただいま愛知県さんのほうからもお話がございましたが、このようなものが汚染によりまして損害をこうむりました。  次には、養殖をいたしておりましたカツオのえさのイワシが汚染によりまして斃死をいたしました。  熊野灘沿岸におきましては、御承知のように、ハマチの養殖が盛んでございますが、このいけすが汚染をいたしまして損害を受けました。  次に、定置網漁業をいたしましたところが、この油が参りまして網についた、あるいはそれによって、魚類が油を飲んで汚染をされた、こういうようないろいろの損害をこうむっております。  このほか私どもといたしまして心配しておりますのは、魚貝類が、まだはっきりとした実情がわかっておりませんけれども、油の処理剤の毒性がもし残っていたならば、今後ゆゆしい問題になるのではないか、このように心配をしております。  現在のところは、被害額は、漁業の粗生産額の減少がおそらく一億七千万円程度ではなかろうか。このほか油の防除あるいは清掃、こういうものに用した費用が千二百万円程度かかっておりまして、今後もさらに被害の集計につとめたいと思っております。  このような観点に立ちまして、愛知県さんにならいまして融資制度を近く実行いたしたいと検討中でございます。  以上のような状況でございますので、油の被害対策といたしまして国のほうにお願いをいたしたい点が若干ございます。お手元にお配りいたしました資料がそれでございます。補足的に説明を申し上げたいと思います。  最初に、汚染海域における水産資源のすみやかな回復措置お願いいたしたいと思います。先ほど来いろいろ御説明がございましたが、たとえば海藻類、これはちょうどただいま海藻類が胞子の状態でございまして、成熟期に当たっておりまして、かなり汚染が著しいところでは母草を移植したり種つけ等をしなければならない。あるいはそのほか、イセエビ、アワビ、こういうような根つけ資源に及ぼす影響も心配されております。  第二番目には、漁業被害対策基金の創設及び融資制度の改善をお願いいたしたいと思います。  被害対策基金につきましては、後ほど宮原漁連会長のほうから申し上げたいと思います。  出漁できない漁業者の経営安定資金につきまして、農林漁業公庫資金の中で、貸し付け限度額三十万円以内、年利五分、現在こういう制度がございますけれども、これを五十万円に引き上げ、利息も無利息にしていただきたいというのが私たちのお願いでございます。  第三番目は、災害対策費に対しまして特別交付税等の財政措置お願いいたしたいということでございます。今回の事故流出した油が重油でございまして、比較的に単一のものでございましたが、これがたとえば揮発分の多い原油でございますと、被害はさらに広がりまして、また甚大な被害が予想されるわけでございます。こういうような状況でもございますので、地方自治体の対策費につきまして特別交付税等の財政措置が講ぜられたならば幸いかと存ずるのでございます。  第四番目には、毒性のない油の処理剤を開発していただきたいということでございます。先般お話がございました昨年七月のグランドフェア号事故あるいは今回の事故、いずれの場合におきましても、油の処理剤漁業の二次公害という立場から、先ほども申し上げましたが、たいへんいろいろの問題をあとに残すようでございますので、将来の問題として、これをぜひ無害な処理剤を開発していただきますようお願い申し上げたいと思います。最近におきましてかなり改善されてきたという話も伺っておるのでございますけれども、従来市販されておりました有毒な処理剤もかなり使用されていると聞いておりますので、この点御配慮をいただきたいと思うのでございます。  第五番目には、伊良湖水道の航行の安全を確保していただきたいということでございます。これは先ほど愛知県さんのほうからもお話がございました。内容はそのとおりでございます。  それから第六番目には、海上に流出しました油の回収船を配置していただきたいということでございます。これにつきましても宮原漁連会長のほうからお願いを申し上げることになろうかと思います。  第七番目には、沈没いたしましたタンカーを早く引き揚げて撤去していただきたいということでございます。どうやら今月中にはその運びになるというふうに伺っておりますが、先ほど申し上げましたように、一時間に六十リットル、このような緩慢な勢いで油が出ております。これは計算いたしますと三年半も被害が続くという状況でございます。幸い最近海上保安本部その他の御努力によりまして、油の流出を食いとめる作業が進みまして、この流出量はきわめて減ってきたというふうに伺っておりますが、いずれにいたしましても、漁民にとりましては爆弾をかかえているような状況でございますので、一刻も早くこのような沈没船を処理していただきたいと思うのでございます。何ぶんにも深さが七十五メートルという非常に困難な作業であることは重々承知してございますが、この点御高配をいただければと思います。  このような事故につきまして、私どもといたしましてはたいへん心配をしておるわけでございます。今回はわずか八百トンの内航タンカーでございました。また積み荷もC重油でございましたので、火災、こういうような心配はなかったわけでございますが、これがかりに二十万トンクラスの原油を搭載いたしました大型タンカー事故であったとするならば、これはゆゆしきことになるのではないか。特に火災等の心配もあるわけでございます。こういう点につきまして、今後このような事故を繰り返さないようにお願いを申し上げたいと切に考えるのでございます。昨年の七月それからことしの五月、このような事故が繰り返されたわけでございます。  さらには、実は昨日でございますけれども、これは小さい船でございますが、第二共和丸という約五百トンぐらいの船でございますが、苛性ソーダを積んだ船が、湾の外でございますが志摩郡の和具町の付近で座礁をいたしました。幸い油が少し漏れた程度でございます。苛性ソーダは現在荷物の積みかえをしておる最中でございますけれども、このような危険な毒性のあるものが、もし万一沈没によって海岸その他に悪影響を与えたならばと考えますと、非常に心配でたまらないわけでございます。私ども地方自治体といたしましても、こういうような対策につきまして今後もさらに努力をいたしたいと考えておるのでございますが、何とぞ国会の皆さま方におかれましても格別の御高配をお願いいたしたいと思います。  以上、簡単でございますが、概況を御説明いたしました。
  8. 佐々木義武

    佐々木委員長 次に、宮原参考人お願いいたします。
  9. 宮原九一

    宮原参考人 三重漁連宮原でございます。  去る五月の十五日に、政務御多端のおりから、現地の視察をいただけるということで待機をいたしましたが、国政の関係で非常に残念でございます。しかしながら、本日こういう機会をお与えいただきましたことにつきまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  なお、三重県の対策本部と呼応しながら私ども漁業団体がとってまいりました措置なりあるいは要望等につきまして、なるべくいままでの参考人の皆さま方との話の重複を避けて、二、三申し上げてみたいと存じます。  まず第一は、漁業被害対策基金制度といったようなものをすみやかに制定していただきたいということに関連して申し上げてみたいと思います。  私どもの連合会を中心とする漁協は、今回の日聖丸事故発生と同時に、県に設置されました対策本部と緊密な連携をとりながら、まず第一に漁場並びに海岸汚染防除をするということ、そういうことのために一斉に操業を停止してその作業に当たる。さらに二番目には、加害者に対する求償体制の確立を急ぐということが第二番目。それから三番目に、その他整理したものをもって関係所管庁に陳情申し上げる。こういったおおむねのスケジュールに基づきまして行動を開始したわけでございます。  特にこの求償活動につきましては、民法七百九条の条項を適用していただくということで、被害者側が挙証責任がある現在の法律体系のもとでございますだけに、盛漁期の漁場を目前に控えながら一斉に休業をして、その実態把握につとめねばならぬという矛盾にまずぶつかった次第でございます。また、相手の船が外国船である。しかも日聖丸との間の理非については、今後始まる海事審判にその帰結を待たざるを得ない。こういった状態で、加害者がだれかということの把握もできないままに被害の実態を究明していくという問題、それからそれをどういう形で相手方にぶつけていくかというようなことにつきまして、最も必要な初動の時期に、法制的にあるいは制度的に何らのささえもないということに対しては、これは今後起こる問題としてもたいへん重大な問題ではないかというように痛感をいたした次第でございます。そこで、私どもはやむを得ず、愛知漁連と連携をとりながら、特に全国漁連の積極的な指導をいただきまして、まず最初に取り組みましたことは、われわれ側として相手方と交渉をする代理人を選定するということでございました。これとても権利者が漁業者であるという点あるいは漁協であるという点から、それらの委任状をまず取りつけるということに相当の困難な問題を経験いたしたようなわけでございます。次いでメリアン号の船長なり船主なりが被害者側と交渉するための日本における窓口をつくらせるということが二番目でございまして、その代理人に対して、さらに油の流出によって生ずる漁業被害あるいは中和剤使用による資源の減少、清掃費用、漁場の復旧費用といったような、それらをひっくるめた油濁賠償についての一切の権限を与えよということに対する委任状を出させる交渉といったものがございます。さらにまた、メリアン号が修理の上、十数日のうちに日本国土を離れるといったようなスケジュールがございましたので、今後の補償交渉を有利に導くためには、どうしてもメリアン号を担保として日本国内に差し押えるという必要を痛感したわけでございまして、それらの措置をとるという強い態度のもとに、向こう側に開設された代理人との間に交渉を進めたわけでございますが、それらの経過につきましては、部数が不足をいたしてまことに恐縮でございますけれども、全漁連の封筒に入っております資料の中に二、三交渉の経過、委任状をとった経過等の書類を同封させていただいておりますので、ごらんいただきたいと思います。  西独船としては、本船を日本に差し押えられるという非を悟って、弁護士に対して四億円以内での交渉権限を与える保証書を差し出して出港をさせた。こういったような措置をいろいろととってまいったわけでございます。  さらにまた、被害額につきましては、従来われわれ自体がつくったものについては客観性がないということで、その信憑性なり客観性なりを持たすために、国際的に認められた海事鑑定人被害者側が雇い入れをいたしまして、その鑑定人によって現在正確な被害の数量をはじいておるといったような状況でございます。  このように多額の直接被害を受けました上に、清掃のための費用と時間、さらに補償要求のための出費といったものが積み重ねられていく漁業者といたしましては、これらの対策のものはもちろんでございますけれども、原因者が不明なものも含めて、漁業に対する救済のための基金制度といったようなものを速急に御検討をいただきたいという点でお願い申し上げるわけでございます。  もう少し申し上げてみますと、一九五七年の海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約、一九六九年の油濁損害に対する民事責任に関する国際条約、一九七一年の油濁損害を補償するための国際基金の設立に関する国際条約といったような、それぞれ相互に関連する国際条約をすみやかに御批准いただいて、それに関する国内の法律を御整備いただくならば、こういった事故に対する初動の体制もまことにすみやかにできるのではないか、このように考えられます。あるいは、そういう法律整備を急ぐとともに、アメリカがやっております水質改善法といったようなものを制定願って、自然破壊なりあるいは漁業への損害に対する多額の罰金を科するというような考えを打ち出していただくならばまことにありがたいと思っております。しかも、そういう状態ができることによって、行政サイドによってそれらの初動措置お願いできるという点をこの機会に強くお願い申し上げます。  次いでお願い申し上げたいと思いまするのは、今回の事故を契機に、伊良湖水道が狭いから事故が多いのだということで、伊良湖水道の暗礁を爆破して航路を広げるという議論が最近出てまいっております。しかしながら、今回の事故はもちろん、従来における伊勢湾内の事故のほとんどは、その水道内では起こってないわけでございまして、水道が狭いからかえって安全弁の役割りを果たしておるのだということも言えるわけでございます。先ほどからも話のありましたように、愛知三重両県下の最も優秀な漁場でございますほかに、水産資源の保護、培養の面からも、あるいは暗礁が持っております消波効果からして、離島の住民の生命、財産が守られておるといったような問題からも、その暗礁の果たしておる役割りは、航行の安全弁という面を含めてまことに多いものがあろうかと考えるわけでございまして、私どもといたしましては、この問題が出ましたならば、これはこれでからだを張って反対をしていきたいという決意を持っておりますことを、何とぞこの機会に御賢察をいただきたいと存ずるわけでございます。  次に、事故を未然に防止する対策につきまして二、三お願いを申し上げます。  先ほどはアメリカの水質改善法についてちょっと触れたわけでございまするけれども、強制保険制度をとるといったようなことを含めて、自然を破壊するものにはそれを償うための罰金を科せるということで、事故発生が割りに合わないものであるというような観念を全船舶に植えつけるといったような体制が、事故未然防止の最大のきめ手ではないかというように考えております。さらにまた強制水先区の設置だとか、あるいはまたパイロットの乗船を義務づける、さらには夜間並びに視界不良時における航行を規制する、あるいはまた航路管制所を設置するといったような諸対策をお急きいただきたいとともに、先ほども話のありましたような強力な油回収船等の伊勢湾に対する常設もぜひともお願い申し上げたい、このように考える次第でございます。  以上、簡単に申し上げたわけでございますけれども、最後にお願い申し上げたいと思いますのは、いまなお沈没船から、少量ではありまするけれども、油の流出が続いております。五月三十一日現在で使用いたしました中和剤の総量は十八リットルかんで二万三百七十かん、キロ数に直しますと三百六十六キロリットルでございます。日聖丸の積載量が千八百七十キロリットルでございまして、大体その三分の一くらいが流れたのではないかというように見てみますと、流出油の半分以上の処理剤が使われたというわけでございまして、これらの無害のものの開発等につきましても特段の御検討をいただきたいと思いまするが、いずれにいたしましても、早期に沈船を引き揚げるという対策を推し進めていただきたい、このように考えてございます。  この機会に、まことに恐縮でございまするけれども、事件発生以来第四管区保安部を中心としてとっていただきました諸対策につきまして、三重県の漁民代表して厚く御礼を申し上げまして、私の陳述を終わりたいと思います。
  10. 山崎平八郎

    ○山崎委員長代理 以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 山崎平八郎

    ○山崎委員長代理 参考人並びに政府当局に対する質疑の申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  12. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 愛知三重の県の担当の責任の参考人並びに両県の漁連会長参考人皆さんには、たいへんお忙しいところを本委員会の要請に基づきましてわざわざおいでをいただき、参考人としての御要請をいただきましてまことにありがとうございました。  御承知の、五月三日の伊良湖水道におけるタンカー日聖丸沈没の今回の事故につきましては、本委員会においてもいち早く現地調査に行かなければならぬという話し合いになりまして、去る五月十五日に現地に出かけるということを決定いたしておったわけでございますが、当時の国会情勢も若干ありましたが、前日の夕刻まで、災害問題は別であるということで、私ども関係者の者といたしましても各党それぞれ一緒になって何とか行こうではないかということで努力をいたしましたが、若干ふぞろいがございまして、やはり委員会から行く以上はふぞろいではいくまいということ等の判断をいたしまして、中止になって、受け入れ体制をつくっておられた両県の関係者の皆さんにまことに申しわけないことだったというふうに思っております。やはり国政調査で行くということをきめた以上、それにかわるべきものとして、両県からそれぞれ責任の担当者を呼んで、正式に委員会として意見を聞くことは最小限必要であるということで、今回のおいでを願うことになったわけでございます。  ただ、本委員会参考人意見を聞いたあとの審議といたしましては、関係大臣あるいは関係省のそれぞれの担当責任者というものを呼んで総合的に質疑を行なうという点については、いずれあらためてというふうな形になっておりますが、たまたまきのうから本委員会に水協法の一部改正をはじめといたしまして水産三法が提案をされ、きのう、さらに来週以降に引き続いて議論をされますので、その中でこういう問題もとらまえて総合的に議論をいたしていきたい、こう考えておるわけでございます。  そこで、そういう前提に立って、きょうはせっかくおいでになっておる参考人方々に、幸いな機会でありますので、若干の点を御質問申し上げておきたいと思うわけでございます。  まず、先ほどもお話しございましたが、今回の四十八年五月三日の西ドイツ貨物船メリアン号タンカー船の日聖丸との衝突事故の問題が当面の大きな問題でございますけれども、先ほど来両県の参考人からお話しの昨年の四十七年七月三日のリベリア船のグランドフェア号とオランダ船のコラティア号の衝突事件の問題、これがまだ補償請求中で懸案になっておるわけでございますが、関係者から、この問題の現状がどの程度になっておるかという点について簡潔に、どなたでもけっこうでありますから、お話しを願いたい。
  13. 蟹江良嗣

    蟹江参考人 私からお答えを申し上げたいと思います。  昨年の七月リベリアの貨物船グランドフェア号沈没をいたしまして、これは貨物船でございますが、その燃料油が流出をいたしたわけでございます。その流出いたしました総量は約二百六十トン近い数量でございます。これにつきましては、防除作業は、現実にはグランドフェア号の海事鑑定人を通じまして、防除資器材の現物給与さらには防除作業従事をしていただきました漁民なり住民の日当、こういった経費につきましては即刻お支払いをいただいたわけでございまして、残っておりますのは、やはり漁業関係の損失補償の問題でございます。  これにつきましては、やはり両方の船主に対しまして、事故後さっそく被害の総額を、概算でございますが、まとめまして請求をいたしてまいったわけでございますが、やはり衝突事故でございますだけに、文書による請求だけでは相手が応じてくれない現状でございます。お互いに他に責任をなすりつけるというような関係にございまして、しかもこれが外国船でございますために、こうした損失補償の請求につきましてはきわめて難航しておる現状でございます。したがいまして、私ども県といたしましても、現在漁連と鋭意その問題を詰めておる段階でございまして、文書による請求だけではどうしても解決し得ない現状でございますので、あらためて海事鑑定人を依頼いたしまして、具体的な損失補償の額の詰めを現在いたしております。それによりまして正確な補償額を算定いたしまして、訴訟もあえて辞さないというような態度で今後請求を進めてまいりたい、このように考えておりますので、御了承いただきたいと思います。
  14. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最近のタンカー関係事故を若干見てみますと、いま申し上げました伊勢湾グランドフェア号事件、これは昨年の七月三日、今回の、参考人からいろいろ御意見のあります、ことしの五月三日のタンカー日聖丸事件の問題もありますが、さらに一昨年の十一月三十日のジュリアナ号事件、これは新潟県の沖の問題、これも現在係争中になっておる。さらに、千葉県沖の一昨年の十二月四日の明原丸の事件、これも現在係争中というふうなことで、先ほど参考人の両漁連会長からもお話しのように、なかなか、漁業者として大きな被害を受けたけれども、現実に加害者の関係漁業補償の問題等が決着がつくというのには、従来の関係から見ても、相当な日月を要する、ばく大な経費も要するというふうな経緯が現実にあるわけであります。  そこで、この問題に関連をして、水産庁等でもけっこうでありますが、先ほど参考人から出ております漁業被害対策基金の創設というふうな問題については、どういう姿勢で取り組んでおられるかという点、いずれ大臣その他を通じて問題を明らかにしていきたいと思いますが、どういう取り組みをしておられるかという点について御答弁を願っておきたいと思います。
  15. 安福数夫

    ○安福政府委員 お答えいたします。  昨今、油濁の問題、今回のような事件だけが問題ではございませんで、各地でこういう事件が頻発してまいる、そのほか、あるいは水銀であるとかPCBであるとか、あるいはカドミウムであるとか、そういった公害問題が頻発してまいっております。これに対しましては、現行の制度なりワク内でのできるだけの一つの予算措置なり、そういった形で対処しておりますけれども、だんだん事態が拡大的な傾向にあるわけでございまして、現在の制度なりあるいはワクなり、そういったところではどうしてもこれは対処し得ない、こういう段階にそろそろ来ているのではないだろうかという認識を持っております。また、かたがた、先ほど参考人からもこういった面についての西独への要求が非常に強い。このケースだけではなくて、全国的にそういう声を私どものほうにぶつけられておることを十分承知いたしておりますので、そういった問題を含めまして、非常に幅の広い、根の深い、いろいろ制度的にはむずかしい問題もございます。関係各省にわたるという問題もございます。したがいまして、私どもは私どもの立場で、そういった問題について鋭意検討はしている段階でございます。そういったものを踏まえまして、こういった問題を今後の問題として対処してまいりたい、このように考えております。
  16. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 先ほど来要請がございましたように、今回の日聖丸を早期に引き揚げるという点については、私どもも地元関係者とともに、あるいは海上保安庁その他関係省にも、ともども連れ立って要請をしてまいりましたが、この問題については、大体技術的にはもちろんなかなか困難だけれどもできるということで、ぜひこれはやらなければならぬという話になっておるわけですが、この点ひとつ、海上保安庁等から、現実にどういう段取りで引き揚げをすることになるのか、明確にお答えを願っておきたいと思います。
  17. 紅村武

    ○紅村政府委員 お答えいたします。  先ほど参考人の方からお話がございましたように、流出油の処理によりまして、現在流出しております油は、非常に微量になってまいっております。微量にはなっておりますものの、やはり流出が続いているわけでございます。やはり根本的には、これを早期に引き揚げるのが一番いいというふうに私ども考える次第でございます。  そういうことでございますので、先般海洋汚染防止法に基づきます防除措置命令を出しますとともに、船主に対しましては、引き揚げるように行政指導をいたしました。そういった要請に基づきまして、船主のほうといたしましても、引き揚げるという決心をいたしまして、現に、すでに現地のほうに引き揚げの関係者が到着しておるはずでございます。ただ、天候の模様その他で、あるいは若干おくれておるかというふうに聞いております。また今後も、あるいは若干おくれることがあるかもわかりませんけれども、私どもといたしましても、六月一ぱいには引き揚げが完了するように、今後ともさらに強力に指導を続けてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  18. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 さっき宮原さんのほうからもお話が出ておりましたが、相手側のほうは、ローガン・岡本・高島法律事務所の弁護士の根本博美さんを代理人に決定をして、この問題に対する委任事項の委任状が正式に出されておる。同時に、お話しになりましたように、この船舶差し押え等の問題に対応して、相手側としては、四億円を準備して、そして今後の相談に応ずる体制をつくろう、こういうふうにしておられるわけですが、こちら側の関係は、パイプとして、両漁連が直接全漁連との関係においてやるわけですが、これは代理人に対するこちらの対応の組織体制は、どういう形になるわけですか。
  19. 宮原九一

    宮原参考人 全漁連を通じて成田健治さんという弁護士を正式に依頼をいたしまして、各県漁連並びに漁協あるいは漁業者に至るまでの委任状をとって、一切の権限を代理人におまかせする、こういうことでやっておりますが、着手料あるいは成功報酬が非常に、話の過程では多額になってきておりますので、最終的には、西独の船でございますので、和解ができるのではないかという期待はしておりますものの、諸般の事例からして裁判まで持っていくということになれば、当面漁民が負担しなければならない費用というものは膨大になるのではないかというような点で、その辺につきましては、まだ詰めていない。ただ、成田弁護士にいま交渉を一切まかしておるという状況でございます。
  20. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは従来の場合も、今回の場合もそうでありますが、被害額をきめる場合に、鑑定人ももちろん設けてやるということになるわけでありますが、全体的に漁連でそれぞれ関係の組合、関係のところ等で推定をするものをオーソライズされるものとして、国として、たとえば国の試験研究機関あるいは県段階の試験研究機関等を含めて、やはり全面的な協力、バックアップ体制というものがなければいかぬわけですけれども、そういった問題に対しては、国としてどういうふうな方向でこれにタイアップをするのか、これは答弁としては、きょうは水産庁関係からひとつ御答弁を願っておきたい。
  21. 安福数夫

    ○安福政府委員 なかなかむずかしい問題でございまして、現在、政府としてそれを直接的に受ける、こういう体制にはなっていないと思います。ただ問題は、非常に高度な法律的な、国際関係もからむような問題でございますので、そういった質問なりあるいは私どもの詰めなり、そういった問題は十分相談にあずかりたい、そういう態度で現在おる次第でございます。
  22. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この間、水産庁長官のところに関係者とおじゃましたときにも、これは国の水産試験の関係、あるいは県の水産試験の関係、双方バックアップをして、これらの問題についてはやはり協力体制をとりたい、こういうふうに言っておったわけですけれども、その辺のところ、何か少し積極性が足らぬのじゃないですか。再度お答えを願いたい。
  23. 安福数夫

    ○安福政府委員 失礼いたしました。  こういう問題につきましては、今回の場合はそれには直接タッチした経緯はないようでございますけれども、非常に客観的な立場でそういった被害額の算定というのは必要でございますので、直接的には県なりそういうところでそういう問題が詰められる問題だと思いますけれども、必要に応じて私どものほうもそれをバックアップする、そういうことは十分考えております。
  24. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 両漁連会長に一言ずつさらにお伺いをしたいのでありますが、何しろ十分の時間ということではなかなか意を尽くせない点が多かろうと思います。現実に五月三日の事故発生以来今日まで各般の対策をとるのに非常に忙殺をされてまいりました。一体要約して言うならば、漁連として、あるいは第一線の漁協として、漁業者として、県の関係は別といたしましても、中央の政府、あるいはわれわれの側にこの点とこの点だけはぜひ速急に対策を講じてもらいたい、あるいは手を打ってもらいたいというふうな点については、すでに述べられた点の中に十分意を尽くされていれば別でありますけれども、この機会にそれぞれさらにお述べをいただきたい、こういうふうに思います。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  25. 水越幸雄

    水越参考人 愛知漁連としてただいまの御質問にお答えしたいと思うわけでございます。  こういった被害の頻発に関係漁民としては全くあきあきしておるわけでございますが、特に今回の事故につきましても、先ほど宮原会長から言われましたように、事故というものは、ああいった航路筋を設けたところで起こったのでなく、それをはずれてから起こっているという問題、それからいままで伊勢湾三河湾のいわゆる湾内漁船というものは、私のほうで言わせれば、湾奥地帯のほうは海面の埋め立て等によって、産業政策によって、むしろ漁船の数は絶対数としては減ってきておるわけでございます。これに反比例していわゆる海上輸送の量がふえ、船腹は増大して、海難事故の原因のもとというものはほとんどそういった一般船腹で、漁船が関係しておるというのはごくわずかな例でございまして、むしろ被害のほうに回っておるほどでございます。したがいまして、こういった海難事故の問題は、そういった産業政策のいわゆる代償としてわれわれが犠牲になっておるというふうに漁民の者としては感じ取っておるわけでございます。  したがいまして、いろいろなこういった問題に関連する漁業者が招かざる被害を受けたことにつきましては、あげて国が根本的にひとつ解決を責任を持ってやっていただきたい。いろいろな制度問題等も申し上げましたが、当然これは国のほうで率先してやってもらうべき問題ではないかというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、前回の海上交通安全法の通過の際の附帯事項にもいろいろとうたわれておりますが、そういった附帯事項等の実施につきましてはまだ十分でないように聞いておるわけでございますが、少なくとも伊勢湾伊良湖水道並びに港内に関する船舶のふくそうのために漁業者が圧迫を受けるというようなことでなしに、そういった観点をはずして根本的にその海上の海難事故防止について考えていただきたい。強く漁民の側としての心情としては申し上げたいところでございます。  以上でございます。
  26. 宮原九一

    宮原参考人 今回の事故について集約して一言だけ申し上げれば、伊良湖付近の海底の状態油汚染によってどうなっておるかということの解明を急いでいただきたい。その結果、必要な対策をすみやかに講じて、再び魚類生息地として生き返るような検討をお願い申し上げたいということでございます。
  27. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま両漁連会長からお話しの点は、先ほども触れられましたように、伊良湖水道のところというのは、伊勢湾の内海のほうに入ってくる魚族、あるいはまた外へ出ていく魚族、そしてあの辺のところは一大魚礁的な役割りを果たしておるそういう魚族の生息地という点でも、漁業関係者としてはきわめて重要な地点に当たっておることは先ほど来お述べのとおりでございます。  そこで、これは主として海上保安庁になるかと思うのでありますけれども、全般的な参考人の陳述の中にもありましたように、海上交通の伊良湖水道を含めての伊勢湾の内海と外との船舶の錯綜というもので、海上交通安全法の関係は政令を整備して本格的に近く実施の運びになるわけでありますが、そこで、今回の事故にかんがみて、たとえば大型漁船、巨大船というものの狭水道の通行については、特に夜間の問題については航行をきびしく制限すべきであるというふうな問題であるとか、あるいは外船等の問題がもちろん含まれるわけでありますけれども、伊良湖水道を通るときに水先人をきちっと立てて、そして安全航行をやるというふうな問題であるとか、そういった伊良湖水道関係を中心にしたこれからの交通安全の対策について、現地から要望の出ておる点にどういうふうにこれから対応していこうというのか、これらの点について考え方をお聞きしておきたいと思います。
  28. 紅村武

    ○紅村政府委員 お答えいたします。  伊良湖水道は狭水道といたしましては長さは必ずしも長くはございませんけれども、ただいま先生おっしゃいましたように、その周辺に丸山出、こずかみ礁あるいは朝日礁といったような岩礁がございまして、こういったものの関係でやはり航海の難所であるということは間違いのないところでございます。  こういった事実にかんがみまして、従来とも第四管区海上保安本部におきましては所要の安全確保のための警戒の対策をとっておいたわけでございます。ただいま先生御指摘のように、ことしの七月一日からは海上交通安全法が施行になるわけでございます。この海上交通安全法が施行になりまして伊良湖水道というものが設定されるわけでございます。私どもといたしましては、この海域には常時一隻の巡視艇を配備いたしましてパトロールをさせる、そして安全を確保したいというようなことをまず第一に考えております。  それから伊良湖の、場所はまだ最終的にきまっておりませんけれども、やはり狭い航路でございますので、航路管制をする、そのために航路管制所を新設するということを考えております。  それから、ただいま先生の御指摘になりました点と関連をいたすわけでございますが、大型船の夜間航行の問題でございますけれども、現在のところ伊良湖水道を夜間に通過する大型船というのは必ずしも多くはございません。ただ、私どもといたしましても、現在一般的に夜間航行を禁止するということは考えておりませんけれども、特に非常に危険を及ぼすおそれがあるといったような大型船につきましては、そのときの状況によりまして航行時刻の変更を指示する、こういうようなことをいたしたいというふうに考えておるわけでございます。  それからもう一つ、パイロットの問題でございますけれども、これは実は船員局の所掌でございまして、船員局からお答え申し上げるのが筋かと存じますが、便宜私からお答えさせていただきますけれども、おっしゃいますように、船舶交通の状況につきまして地理不案内の船、特に外国船はそういう船になるわけでございますが、そういう船にはパイロットを乗せることが望ましいということは言うまでもないところと存じますけれども、しかしながら、伊良湖水道につきましては、現在水先区がまだ設定されておりません。それからまた正規の水先人の配置もされていない現状でございます。そういった状況でございますので、水先人の乗船を指導するというためには、まず体制の整備からかかる必要があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  29. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの水先人の問題、水先区の設定問題は、関係県からの要望の中でも強く要請されておる一項目であることは御承知のとおりでありまして、これらの問題については、両県の要請に即して今後対応策をとってもらいたいということを私からも強く要請をしておきたいと思います。  さらに、今回のタンカー事故の場合も、先ほど両県の県当局の責任者からもお答えのように、実際問題として波その他いろいろな状況等もあって、必ずしも油の回収のためのいろいろな防除措置等について有効な手段になり得なかった。したがって、この際、伊勢湾のような相当船舶の危険のあるものが通行するところにおいては、流油回収船というふうなものをひとつぜひ設置するような形をとってもらいたい、これも大型のもの、高性能のものをぜひやってもらいたい。こういうものに対する政府関係の対応策としては、どういうふうにこれからやられようとしておるのか、この点についてもお考えを聞いておきたいと思います。
  30. 大久保喜市

    ○大久保説明員 お答えいたします。  流れ出ました油の回収につきましては、やはりそれを回収する特殊な船が必要でございますが、現在のところ、国といたしましては四十八年度の予算におきましていわゆる油回収船というものを作業船整備費で建造することを予定いたしまして、予算を計上してございます。これは、実は海洋汚染防止法のたてまえからしましても、第一義的にはその原因者が回収するというのがたてまえでございまして、私ども作業船整備費でつくりますのはそういうことを意図したものではございませんで、まあ緊急時というよりは、むしろ原因がわからずどこかで油が漂っている、いわゆる原因者不明のそういうものを回収することを目的としたものを予定して計画しているわけでございます。それで、現在港湾法の改正を御審議いただいているわけでございますが、これが通りましたら、さっそく予算の執行をしまして、四十八年度中に建造したいと考えております。何ぶんにも特殊な船でございますので、いろいろ技術的に問題がございます。それで、いまその技術的な研究を進めております。  それで、緊急時の問題につきましては、なおいろいろと私ども考えなければならない問題もあろうと思いますが、これは海上保安庁等とも御相談申し上げたいというふうに考えておる次第でございます。
  31. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは原因者が主体的にという考え方の問題とは別個に、タンカー船のこういう衝突あるいは油の流出という問題は、初動における対策が迅速にいくかどうかということがあとの漁業被害その他の問題に対して大きな関連を持ってくる問題でありますから、やはり公害防止と環境保全というそういう意味からも、国自身でも考え方として、原因者がどうするというような問題以外に、やはり初動におけるところのそういうものをとる、環境保全の対策も積極的に進めるというふうな点から、必要最小限と言っては何ですけれども、緊急のものには直ちに手の打てるという体制は、やはり行政の責任においてもとるべきであるというのが基本だろうと私は思うのですね。そういうことで、積極的にこの問題についても取り組んでもらいたいというふうに思います。  きょうは、いずれにいたしましても、参考人の御意見を承るというのが主体のような形になっておりまして、農林大臣その他関係省の責任者も参っておりませんので、いずれ総合的には別の機会にお聞きをするということで、私の持ち時間は十二時四分までということでありますので、この程度で終わらしていただきたいと思います。
  32. 佐々木義武

  33. 坂口力

    坂口委員 参考人皆さん方にはたいへんお忙しいところを御出席をいただきましてまことにありがとうございます 今回の事故に対しましての御努力にまず感謝を申し上げたいと思うわけでございます。  いま角屋先生から総論的にいろいろとお話がございましたので、もう少し突っ込んでいろいろと御意見を承り、関係庁の皆さま方の御意見をお聞きしたいと思うわけでございます。  先ほど角屋先生から両漁業組合の先生方に対しまして、一言で言えば、何が一番困ったかというような御発言がございましたが、県当局を代表してお見えになりました後藤参考人、それから愛知県の蟹江参考人のお二人に対しまして、県当局として、こういう事故が起こったとき、特に今回の事故が起こったときに、最も御苦労なすったことをただ一つあげるならば、これだけはどうしても言っておきたいということがございましたならば、再度ひとつ御発言をいただきたいと思うわけでございます。
  34. 後藤土男

    後藤参考人 県といたしましては、先ほどるるいろいろとお願いを申し上げたわけでございますが、根本的には、このような事故の起こってしまったあとの被害という形では、もう漁民のおそらく大部分の方が損害を受けたままで、補償に、先ほどお話がございましたように、長い間かかる、こういうようなことになってしまうわけでございまして、ぜひ事前に防止するための措置をいろいろお願いしたい。先ほどのような油の回収の問題であるとか、あるいは無害な回収剤を使っていただくとか、こういうような事前防止措置をぜひお願いしたい、これが私どもの切なる気持ちでございます。
  35. 蟹江良嗣

    蟹江参考人 愛知県といたしましても、ただいま三重県から御発言ございましたように、やはりああいう狭い水道でございます。昨年に続いてもうすでに二回こうした流出事故が起こっておるわけでございまして、さらに繰り返しこうした事故が起こらないという保障はないわけでございます。この七月から海上交通安全法が施行にはなりますが、海上交通安全の規制につきましてもっと強い規制をぜひお願いをいたしたい。そうすることによりまして、今回の事故を反省してみましても、単に水道が狭いということだけが原因ではない、かように存じます。あるいは暗礁の問題等もございますが、現に暗礁にぶつかってこの事故が起こったわけでもなくて、やはり船長の船の誘導の姿勢なり、そうした基本的な問題もあろうかと思います。こうした事故が起こりますと、特に、今回の場合はタンカー船でございまして、しかも千八百キロからの重油が積載されておるという情報を私ども夜中にお聞きをいたしまして非常にびっくりいたしたわけでございます。幸いにいたしまして、ごく一部の空気穴から流出したり、多少の亀裂から油が流出した程度で、被害といたしましてはさほど大きくないというような結果に相なったかもしれませんが、千八百キロの重油が全部あの一面に流れ出したということを想定いたしますと、とても現在の体制では対応し切れないのじゃないか。もう打つ手がないというふうに言わざるを得ないと思います。そういう意味におきまして、三重県のほうからもお話がございましたように、こうした事故が二度、三度繰り返し絶対起こらないような措置をぜひお願いいたしたい、かように思います。
  36. 坂口力

    坂口委員 ただいま両県からお話しございましたとおり、一度起こってしまってはもうどうにもならないということでございます。  そこで、これは二度とこういうふうなことを繰り返さないためにどうしたらいいかということでございますが、一つは、先ほどもお話のありました油の回収船の増設の問題がございます。これは先ほども緊急時のものだけだというようなお話がございましたが、私はこれはどうかと思うわけでございます。こういうふうな事故は、どれぐらい注意をしておりましても起こることはないとは言えないわけでございますし、やはり緊急時のためにどうしても国として油の回収船というものは持っていなければならないと私は思うわけでございます。  そこで、現在何隻あって、今後これをどういうふうに増設していくかというスケジュールがありましたら、ひとつお示しをいただきたい。  それからもう一つ、私は回収船等につきましては、たとえば大きい石油コンビナート等を持っておる企業に対しては、こういう回収船をみずから持つということを義務づけるべきであるという考え方を持っておりますが、それに対するお考えをお聞きしたいと思います。
  37. 大久保喜市

    ○大久保説明員 お答え申し上げます。  先ほどお答え申し上げましたように、現在のところ、国としては油回収船を所有しておりません。それで、四十八年度予算におきまして、二船団建造すべく予算措置がされておるわけでございます。それで、民間のほうでお持ちの分につきましてはちょっと、私、存じ上げませんが、私ども国でつくります分につきまして、いろいろアメリカの例その他も調べまして、どういう方法でやればいいかということにつきまして検討中でございますが、使う場所その他によりまして非常に技術的にいろいろな問題がございます。それでいま、まずとりあえず今年度その作業船整備費で二船団を整備し、使えるようにしたいということを考えておりますが、これは先ほど申し上げましたように、平常時といいますか、原因がわからないものが流れ出た場合にそれを回収するということを主にしておりますけれども、しかし、こういう道具ができますれば、これを配置しておりますれば、緊急時にそれを利用するということも可能だと思います。その運用方法等につきましては、これはでき上がるまでの過程におきまして、海上保安庁等ともよく御相談して考えてまいりたいと思っている次第でございます。  なお、民間のほうにつきましては、ちょっと、私、存じ上げませんので、私の答弁はこれまでにしていただきたいと思います。
  38. 坂口力

    坂口委員 それから、安全確保の問題でございますが、どうしてもこういう事故が再発をしないために手を打っていかなければならないと思うわけでございますが、外国船の場合に、何と申しますか、ダンプ運航と申しますか、非常に荒っぽいのが多いというようなことがいままで再三いわれております。これは一説によりますと、海図等も十分に用意をしていないようなのが中にはいるというようなことも報道されたりいたしております。私はやはり外国船に対しても、もっときびしい態度で臨むべきであると思うのですが、その点に対しての保安庁としての御意見をお聞かせをいただきたいと思います。  それから、先ほどの油回収船の増設の問題とは別に、タンカーの構造そのものについても検討を加えていくべきじゃないか、万が一事故が起こったとき、その中に入っているのが全部からっぽになるまで流れてしまうような構造では困るのじゃないか。やはり一部がこわれても、他のこわれてない部分からは流れ出ないような構造というものを今後考えていくべきじゃないかということを思いますが、その点につきましても関係当局の御意見をお伺いしたいと思います。
  39. 紅村武

    ○紅村政府委員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘になりましたけれども、外国船がいわゆるダンプ運航をするというような事態、これは皆無ではないと思いますけれども、現実の問題としては、そのように多いとは私ども考えておりません。ただ、外国船の場合、どうしても乗り組み員が地理不案内でございまして、そういったことに起因する事故というものは、確かに御指摘のとおり相当多いわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、あらゆる機会をとらえまして、今度の海上交通安全法につきましてもPRをいたしますと同時に、海上交通安全法だけでなくて、海難防止思想の普及徹底ということに努力をしてまいりたい。それからまた、外国船だからといって、そのためにいわゆる取り締まりの手をゆるめるというようなことは毛頭考えておりません。  それから次に、ちょっと先生の御質問の筋からははずれるようなことになりましてたいへん申しわけないのでございますが、先ほどの油回収船の問題でございます。  国としてどうするかという問題につきましては、先ほど港湾局の技術参事官からお答え申し上げたとおりでございますが、民間の状況を申し上げますと、私ども石油コンビナートのあるところには大型タンカー事故対策連絡協議会というものを指導してつくっておるわけでございます。こういったようなところで油回収船というものを備えつけさせるというふうに指導をいたしておりまして、今月で大体十一隻ぐらいの油回収船が就航するという予定になっておると聞いております。ただ、この油回収船につきましては、残念ながら、完全なものといったものはまだ開発されておりません。したがいまして、これはもちろん海上保安庁だけの問題ではございませんけれども、今後とも完全なもの、性能の優秀なものを開発するということに鋭意努力を続けますと同時に、さらにこの協議会を通じまして油回収船の隻数をふやすというふうに指導してまいりたいというふうに海上保安庁では考えておる次第でございます。  それから次に、タンカーの構造の問題でございますが、これもちょっと海上保安庁ではなくて、船舶局の問題になるわけでございますけれども、現在そういう方向で検討が行なわれておるように私ども聞いておる次第でございます。
  40. 坂口力

    坂口委員 時間がございませんので先に進ませていただきます。  先ほど宮原参考人からいろいろお話がございましたが、その中で米国のような水質改善法をつくるべきだという御意見がございました。事故を未然に防ぐためには、事故がいかに高くつくかということを知らしめる必要があるという御意見、私、全く同感でございますが、これに対する関係庁の御意見、それからもう一つは、伊良湖水道の海底の状況の調査がぜひ必要だというお話がございましたが、これに対していまどうお考えになっておるのか、この二つ、お答えをいただきたいと思います。
  41. 松田豊三郎

    ○松田説明員 環境庁の水質保全局でございますが、ただいま参考人の方からお話がございましたが、私どもとしましては実は初めて伺いまして、まだ検討はいたしておりません。しかし、そういうふうな根本的な問題についてやはり十分な検討がなさるべきであろうというふうに考えますが、具体的な問題につきましてはなお研究いたしたいと考えております。
  42. 坂口力

    坂口委員 もう一点お聞きいたしました海底の状況の調査につきまして……。
  43. 大久保喜市

    ○大久保説明員 お答え申し上げます。  伊勢湾口の部分、非常に複雑な地形になっておりまして、しかも外海の波が来るところでございまして、海底の地形の詳細を調べるということに技術的にもいろいろ問題がございまして、実は私どものほうの出先でございます第五港湾建設局におきまして、四十三年度以来湾口部の海底の地形の調査等をやっております。しかしながら、広い範囲の全般的な調査海上保安庁の水路部が海図のかっこうでつくっておるわけでございますけれども、私どもはむしろもう少しこまかいところで調査をやっておる状況でございます。ただ、実はこの調査伊勢湾の湾口部が昔からよく海難があるものでございますので、戦前だったと思いますが、朝日礁の除去というような工事に関連してやって以来、地形の状況がよくわからぬ点がございます。そういうことの引き続きということで調査をやっておりましたので、実はこれが一部の方々から湾口部の航路開さくという問題とからんで反対を受け、途中でストップしている状況でございます。
  44. 坂口力

    坂口委員 海底が複雑なのは昔から複雑なんでして、いま始まったことじゃないわけですけれども、今回の事故等によって起こった災害の現状についての調査が今後どう進められるかということを私はお聞きしておるわけです。時間がございませんので簡単にお願いします。
  45. 大久保喜市

    ○大久保説明員 たいへん失礼いたしました。  私どものほうではいまの被害の海底の状況は調査いたしておりません。
  46. 坂口力

    坂口委員 今後それをどうされるかということをお聞きしているわけです。いまされておりませんから。
  47. 安福数夫

    ○安福政府委員 ちょっと御質問の趣旨が理解しかねたのでございますが、油が出て、海底にその油がへばりついている被害の状況はどうか、こういうことでございますか。
  48. 坂口力

    坂口委員 今回の事故で海底におけるその汚染状態あるいはまた水産物に対する被害の状況がどうなっているかということについての調査
  49. 安福数夫

    ○安福政府委員 今回の事故が起きまして早々に、県からの要請もございますし、私どものほうも事の重大性を十分認識しておりまして、水産庁としても係官を現地派遣して災害の実態なり被害の実態なり、それに対する対応のしかたにつきまして十分承知いたしております。ただ、油の状態が海底でどういうふうになっているかというところまで現在まだ承知はいたしておりません。ただ、海浜地域なりあるいは漁具被害なり、それから災害としましては、たとえば定置網漁業なり刺し網漁業なり、そういった漁業が操業不能になったというような関連被害の状況につきましては、目下さらに県当局でその集計、整理を進められている、こういう段階でございます。
  50. 坂口力

    坂口委員 ぜひひとつ早期の調査お願いをしたいと思います。  時間がございませんが、一昨日でございましたか、公害のほうで質問させていただきましたが、そのときに、先ほどもお話がございました漁業被害対策基金制度の問題、これにつきまして三木長官にお尋ねいたしましたところ、三木長官は、そういう方向でやはり検討しなければならないであろうというような御答弁でございました。そう私、理解をいたしておりますが、この漁業被害対策基金制度、こういったものをどうしても創設していかないことには、問題が解決するまでの間のつなぎがどうにもならないと思うわけでございます。これに対しましてもう一度水産庁のほうの御見解を賜わりたいと思います。  それからもう一つ、これは自治省のほうになると思いますが、先ほど特別交付税の問題が出てまいりました。これもどうしても財源措置を講じていかなければならない問題だと思いますので、自治省のほうにそちらのほうはひとつお伺いをしたいと思います。
  51. 安福数夫

    ○安福政府委員 現在こういった事故の場合の一つの対策としまして、現行の制度を前提としまして、あるいは経営資金なりあるいは極端な場合には生活資金の問題もございます。そういった問題につきましては、現在のワク内でできるだけのことをしてまいりたい、こういうことで、県当局でケース・バイ・ケースに応じましてそういう措置をしてまいっているわけでございます。ただ、これも一つの現行制度の限界なりワクの問題がございます。したがいまして、こういう問題は非常に長引くという問題がございますから、それに対しましては、現在の制度では必ずしも対応できない、こういう認識は私ども十分持っております。ただ、これにつきましては、水産だけの問題ではなくて、やはり関係いたします省庁がだいぶございますので、この問題についてはそれぞれの立場で十分検討し、お互いにそういった連絡を密にしながら検討を加えてまいりたい、このように考えております。
  52. 土屋佳照

    ○土屋説明員 今回のような事故のために海洋の汚染防止とかあるいは油の防除といったようなことでいろいろと費用がかかるということでございましょうし、その負担につきましては、本来原因者なりあるいはまたその関係の省において負担はしていただかなければならないと思っておりますけれども、ただ、現実問題といたしましては、当然に関係の地方公共団体においてもそれに関連するいろいろな経費というものを要するということは承知をいたしております。したがいまして、そういった事情も十分調査をいたしまして、特別交付税の配分時期において事情をよくお聞きをいたしまして、その団体の財政事情等も考え、必要なものについては特別交付税で考慮いたしたいと考えておる次第でございます。
  53. 坂口力

    坂口委員 もう少し突っ込んでお聞きしたいのですけれども、時間が来てしまいましたので、あと一問だけお許しをいただきたいと思います。  実は四月の二十五日に、この事件の起こる前でございますけれども、私、公害特別委員会でこの油汚染の問題をやらしていただきました。そのときにも、この緊急体制について、もしも多量の油が事故等で流れ出るようなことがあったときにどうだということを聞いているわけなんです。そのときにこの処理剤の問題でお聞きいたしましたが、そのときの御答弁では、魚に影響のない処理剤を開発するように指導しておりまして、だんだんとそういった製品ができつつありますというふうにお答えになっておりますが、現在の段階でこれはそう言えるのかどうか。現在の処理剤等については、大学等の研究なんかによりますと、かなり毒性が強い、二次公害のおそれもあるということがいわれているわけであります。二次公害のあるものであれば、結局、油を取ったけれども、それに使った処理剤のためにまたやられたというのではどうにもならないと思うわけです。その辺の現状と今後の見通しについてひとつお答えをいただきたいと思います。
  54. 紅村武

    ○紅村政府委員 お答えいたします。  油処理剤の問題は実は私どもの大臣官房の所掌でございまして、官房のほうからお答え申し上げるのが筋かと存じますが、本日官房のほうが参っていないようでございますので、便宜私からお答えさしていただきます。  ただいま先生御指摘ございましたように、この油処理剤は、開発当初に比べますと、ずっと毒性が低くなっておるということは事実でございます。しかしながら、まだ完全に無毒であるか、あいは二次公害という懸念が全然ないかという点につきましては、必ずしもないという保障は現在のところございません。私どもといたしましては、運輸省におきまして去る二月の初めに油処理剤の使用基準というものをつくりましたことは御承知いただいておるとおりでございますけれども、その基準におきまして、油処理剤の規格あるいは使用方法といったものにつきましての基準を通達いたしておるわけでございます。従来使用されておりましたものよりも毒性の相当改良されたものを使用するというようになっておるわけでございます。そしてまた、こういった基準に合うものも、現在のところ、私どもの聞いておるところでは、三十五種類開発されておるというふうに聞いておるわけでございます。しかしながら、なお化学的にまだ検討を要する点もございますので、四十八年度予算におきましても研究費を認めていただきまして、引き続き学識経験者に検討をお願いいたしておる次第でございます。
  55. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。
  56. 佐々木義武

    佐々木委員長 諫山博君。
  57. 諫山博

    ○諫山委員 海上保安庁の方にお伺いします。  昨年グランドフェア号事件が起こって、またことし同じような事故が起こるというのは、私たちから見たら重大な問題です。新聞を見ますと、ここは魔の難所だというような表現が使われておるし、また全国で四番目のラッシュ航路だというようなことも指摘されているわけであります。だとすると、昨年の経験から見ても、こういう事故が起こるのじゃないかということは当然予想されたのではないかと思います。この点いかがでしょうか。
  58. 紅村武

    ○紅村政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、昨年に引き続きましてまた本年も衝突事故が起きたということは、海上保安庁といたしましてもまことに残念に考えておる次第でございます。  ただ、今回の衝突事故の原因につきましては、まだ事案が捜査段階にございまして、最終的な結論に達しておりませんので、いまどういう結論であるかということは、申し上げることはお許しをいただきたいのでございます。  今後の問題といたしまして、この種の事故を絶滅いたしますために、先ほど角屋先生にもお答え申し上げましたとおり、七月一日からの海上交通安全の施行を機といたしまして、巡視艇の当該海域への常時配備あるいは航路管制所の新設、それからまた航行時刻の調整といったようなことを行ないまして、事故の絶滅に万全を期したいというふうに考えておる次第でございます。
  59. 諫山博

    ○諫山委員 この問題で各新聞が一致して指摘しているのは、大型船の航行を規制すべきだという点です。この点について海上保安庁としては何らかの計画があるのかどうか、お聞きします。
  60. 紅村武

    ○紅村政府委員 お答えいたします。  大型タンカーの航行を一般的に禁止するということは、現在はできないのでございますけれども、これもただいま申し上げましたように、七月一日からの海上交通安全法の施行を機といたしまして、航路管制を実施いたします。それからまた速力制限も実施をいたしたいというふうに考えております。それからさらに航行安全の確保のために、必要とあれば航行時刻の変更指示といったようなことを実施いたしてまいりたいというふうに考えております。
  61. 諫山博

    ○諫山委員 この問題で、もう一つ論議の対象になっているのは岩礁爆破であります。この点について海上保安庁としては何らかの検討をしたのか、あるいは一定の方向を持っているのか、御説明願いたいと思います。
  62. 大久保喜市

    ○大久保説明員 お答え申し上げます。  難所であるということでございますが、伊勢湾のあの広い海域は、いろいろな意味での利用可能性に富んでいるということで、今後の船舶通行の増大ということを考慮した場合に、何らかの形であそこの航路の安全を確保しなければならないということで、そこの改良計画について私どものほうの出先の第五港湾建設局が中心になりまして調査をいたしてまいりました。  しかしながら、現在のところ、実は第四次港湾整備五カ年計画の中で、安全対策のために一応そこの航路の整備の費用を計上はしてございますが、計画として具体的に着手する段階まで至っておりません。調査が中途の段階で、漁民方々はむしろ困るというような強い御要請がありまして、調査を中断した状況になって今日に至っております。
  63. 諫山博

    ○諫山委員 調査を中断したというのは、岩礁爆破というのはやらないことにしたという意味でしょうか。
  64. 大久保喜市

    ○大久保説明員 これは、あの地域は、三重県と愛知県が囲んでいる地域でございまして、あの周辺地域全体の今後の利用開発といいますか、そういうことのためにどうすればいいかということは、やはり両県の関係者の方々の御意思によって、それを反映してきめるべきものではないかと考えております。  そういうことで、一部そういう反対の御意向もございますので、現在のところいかにするかということは、両県の関係方々の御意思がはっきりするまでは見合わせておるということでございます。
  65. 諫山博

    ○諫山委員 私たちの党の地元の組織は、いろいろうわさされている岩礁爆破に反対しています。この問題について、海上保安庁としては、地元の県の意向を尊重したいということのようですが、愛知農林部長は、愛知県の意向を御存じでしょうか、御説明願いたいと思います。
  66. 蟹江良嗣

    蟹江参考人 伊良湖におきます暗礁爆破の件でございます。先ほどから愛知県側あるいは三重県側から御説明申し上げておりますように、あの地域はきわめて優秀な魚類の宝庫でございます。愛知県といたしましても、年間約十五億からの水揚げが毎年予定されておるところでございます。したがって、私どもこの問題につきましても、県の内部でいろいろ検討はいたしておりますが、まだ具体的に、この調査の問題につきまして、第五港湾建設局のほうから直接県のほうに何のお話もございません。ただ、数回にわたりまして、県の漁連のほうへ協力方の要請があったというお話はお聞きをいたしておる程度でございます。したがいまして、やはりこの問題はたしてあの岩礁を爆破しなければ航行の安全が保てないかという問題まで、慎重に御検討いただきたいというふうに考えております。  かりにどうしてもあの岩礁を爆破するということになりますと、やはりそれだけの宝庫が失われるわけであります。漁民の生活の維持も私ども考えてまいらなければなりませんので、それにかわる人工魚礁をつくるというような問題も出てまいるかと思います。実は県といたしましても、渥美半島の外海に毎年数千万円を投じまして人工魚礁を設置いたしておりますけれども、これに比べますと伊良湖水道におきまする暗礁は、きわめてスケールの大きいものでございます。かりにあれに相当する魚礁をつくるといたしましても、相当の事業費がかかるわけであります。しかも先ほどお話が出ておりますように、あそこは潮流の流れが非常に激しいだけに、またいろいろな種類の魚類も集まるというような地理的な問題もございまして、単にそうした人工魚礁をつくるだけで解決し得る問題かどうか、その辺の検討も必要かと存じます。  そういう意味で、県といたしましては、この問題につきましては慎重な御配慮をお願いいたしたい、かように考えております。
  67. 諫山博

    ○諫山委員 いまの問題について、愛知漁連水越会長に御説明願いたいと思います。
  68. 水越幸雄

    水越参考人 お答えいたします。  岩礁爆破の問題につきまして、先ほど三重県の宮原会長さんからも、その必要がないということの理由についていろいろとあげていただいておったわけでございます。私どものほうも全く同感でございます。この問題に関しましての調査等につきましては、二、三年来、これは両県漁連を通じて関係漁協に対する要望でございますか、そういったことがございましたけれども、そういったような理由で調査すらもお断わり申し上げるというような態度を堅持してきておるわけでございます。
  69. 諫山博

    ○諫山委員 私は岩礁爆破の問題についてそれぞれ関係者の御意見を聞いたわけでありますが、海上保安庁としては地元の県の意向を尊重したい、地元の県はやはり漁民皆さん方の立場を尊重したいということのようです。そして漁民としてはこれには反対ということですから、ぜひ海上保安庁もこの点は尊重していただきたいと思うわけです。  さらに、被害の問題ですが、昨年のグランドフェア号被害補償について漁民の人たちから相当大きな請求が出されていたけれども、いろいろ県との折衝の中でそれが狭められて、なかなか被害の特定が難航しているという話を聞いたのですが、その経過はどうなっているのか、愛知漁連の方から御説明願えないでしょうか。
  70. 水越幸雄

    水越参考人 お答えいたします。  昨年のグランドフェア号沈没に伴う重油による関係漁業に及ぼした被害につきましては、当漁連のほうで取りまとめて、いままで相手方の船主側の弁護人文書をもって、面接して交渉を重ねておったわけでございますが、何ぶんにもわれわれ民間団体対そういった法定弁護人方々の話し合いでは、いつもわれわれそういった法律的知識の未熟のために適当にあしらわれておる。たとえばいままで両船ではそれぞれお互いにわれわれが原因者でないと言っておるわけです。特に沈んだグランドフェア号は、どちらかと言えば、過失の多かった船でございますので、また原因者になっておるわけでございますが、それからの回答では、相手方の船、コラティア号が原因の責任者だ、よしんば私のほうが原因責任者となった場合でもそれにこたえるだけの財力がないというような、冷たい回答がわれわれとの間にやりとりされておるわけでございます。もちろんこの問題は両船主に対して請求申し上げてきたわけでございますが、これではらちがあかないということでございまして、新しく鑑定人を頼みまして、最近ようやく漁業被害状態の結末をつけていただいたわけでございますが、当初われわれ漁連といたしましては二億三百万程度の請求をしておったわけでございますが、今回の鑑定人査定で出ますと、大体二千五百万から三千万ぐらいになるんじゃないかということになっておるわけでございますが、この内容の食い違いにつきましては、われわれ漁業者の立場になりますと、その休業補償の問題いわゆる休んだために収入が減ったという問題こういった問題については、今後両弁護士等の、あるいは民事に取り運んだ場合、きわめて信憑性について欠ける内容も多いという点等で、請求額どおり、額面どおり認めていただくということが困難であるという問題等がありますが、しかし、それから魚価が低落した問題、その当時、そういった汚染のためにその周辺でとれる魚価、あるいはその辺を通る遠くの漁場から、外洋から帰ってきた船につきましても、やはり各地の市場がそういうものを影響して、間接的に魚価が低落したという例があるわけでございますが、そういった魚価の低落という問題も、なかなかこれは裏づけ資料が困難な場合が多いわけでございます。そういった点等が非常に割引されてしまうということでございますが、これなどもやはりわれわれ漁民感情としては、そういった大事件が起きたときは、期せずしていろいろな問題をなげうって組合員が一丸となって自主的に操業を休むといった場合に、そういう相手方から見た場合は、ある程度それはかってに休んでおるんじゃないかという点、あるいは裏づけが不十分だということで、非常に減額されるという問題があるために、そういった差額が生じたわけでございます。われわれ心情としては、やはりそれだけの被害を受けたと感じ取っておるわけでございますけれども、これからそういった問題は今後の補償の問題に非常にいい教訓になったかと思っておるわけでございます。
  71. 諫山博

    ○諫山委員 いま会長さんが指摘された直接間接の損害というのは当然補償さるべきだと思います。ところが、それがいまなお補償されてないというのはやはり重大な問題です。そして今度の事故に関してこの漁民の補償をどうするのかということが愛知県議会でいろいろ論議されたようです。ことしの五月十五日の中日新聞を見ますと、県が代位弁済ということばが出てきます。そして、県としては第一次の責任は何と言っても国だから、国にこの責任はとってもらいたい、それができないとすれば、県が代位弁済を考えたいというようなことを県議会で言っておられるそうです。この中には企業の責任は触れられておりませんが、県が代位して被害者の救済に当たるということが県議会で出たようですが、この問題は現在どうなっているのか、愛知県の方に御説明願いたいと思います。
  72. 蟹江良嗣

    蟹江参考人 私からお答え申し上げます。  今回のケースにつきましては、漁業関係者が直接受けました、あるいはとった魚類が油で汚染していわゆる魚価が低落した問題、あるいはまた現実に操業できなかったいわゆる休業補償的なもの、いわゆる漁業損失補償的な問題は今後相手方と十分折衝してまいりたいというふうに考えておりますが、とりあえず、油が流出をいたしまして海岸なりあるいは港湾その他の地域を汚染いたしまして、これを放置いたしますとさらにその汚染の範囲が非常に広がってまいりますので、私どもといたしましては、先ほど御説明申し上げましたように、現地にそれぞれ現地本部を設置いたしまして、そこが中心になりまして地元住民なりあるいは漁民方々の全面的な御協力をいただきまして油の防除作業を実施いたしたわけでございます。  この防除作業従事していただきました処置につきましては、これは本来の原因者たる船主に請求できる性質のものではございますが、その費用の支払いがおくれております。特にこうした事故は今後ないとも限りません。やはり県といたしましても、こうした事故が万一起こりました場合、それぞれ地域の住民の方あるいは漁民方々の御協力をいただかなければこうした場合の体制は実際とれないわけでございますので、そうした面も考えまして、この防除作業従事されました方々の日当、いわゆる賃金でございます、あるいは漁船を借り上げまして防除作業を実施いたしましたので、そうした経費につきましては、とりあえず県が地元の町に貸し付けをいたしまして、町がさらに漁業関係の団体なりあるいは住民方々貸し付けるというような形で、いわゆる防除作業の経費だけは貸し付けという形で一応処理をさせていただいております。  本来、代位弁済というような制度をとりますと、法律的にも非常にむずかしい問題がございます。現行制度だけでは取り上げ得ないわけでございまして、あくまで制度的に何とか解決お願いしたいということで、今回お手元にございます要望書にもいわゆる代位制度確立ということをお願いいたしておりますが、先ほど申し上げましたような状況から、とりあえず防除作業の経費につきましては、貸し付け金というような形で予備費で今月の一日付で処理をさせていただいております。総額が約千六百万円でございますが、そういう形で処理をさせていただいておりますので、御報告申し上げます。
  73. 諫山博

    ○諫山委員 海難事故の場合には、いわゆる大企業による公害と違って加害者が非常に明白です。昨年の場合も今回の場合も加害者ははっきりしています。そして膨大な損害が出てくるわけですが、これがいまの民事裁判によってしかなかなか解決できないというのは非常に問題があると思います。きょういろいろななまなましい事実を御説明いただきましたから、私たちもこの立場を十分くんで、被害の完全救済あるいは不備な法律については立法措置も考慮するというようなことで解決したいと思います。
  74. 佐々木義武

  75. 田中覚

    田中(覚)委員 私は予定をいたしておりませんでしたが、ただいまお許しを得ましたので、一言だけ申し上げたいと思います。  先刻来参考人の各位の陳述や、また角屋先生はじめ各党の委員の御発言を聞いておりまして、感じましたことは、どうもこの問題について、国のほうの受けとめ方と地元の気持ちとの間に大きなギャップがあるのではないか、たいへん失礼な言い分でございますが、端的に申し上げれば、国のほうではそれほど深刻に考えておられないのではないかということであります。今回のこの事故は海上で起きたことでございますが、もしこういう油の流出事故がかりに陸上交通で起きたと仮定いたしましたならば、国のほうは、現在救済の施設だとかあるいは制度だとかそういうもののあるなしにかかわらず、一日を争って緊急に対策を講じなければならぬような事態に追い込まれたのではないかというふうに思うのであります。海上で起き、しかもその被害が海底に潜在をしておる、そのために、深刻に受けとめられない、すでに事故が起きてからもう一カ月も経過をしておるわけでありますが、いまなお研究する、検討するといったような段階にとどまっておるのじゃないかというふうな感じがいたします。しかし、この問題は、そういう軽易な問題ではもちろんございませんし、また伊勢湾だけではなく、伊勢湾よりももっと過密な京浜、阪神、さらには殷鑑遠からず、新潟県等においてもああいう事故が起きて、いまだに完全に解決を見ておらない。  そういうことでございますし、あすにもまた起きるかもわからない事故であるだけに、国のほうで早急に、真剣にこの問題を取り上げていただいて、地元からいろいろ御要望のございました問題について速急な結論を一日も早く出していただきたい。私は与党の立場から、具体的なことは時間がございませんので申し上げません、ただそのことだけを一言要望いたしまして、私の発言を終わりたいと思います。
  76. 佐々木義武

    佐々木委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  委員会代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)      ————◇—————
  77. 佐々木義武

    佐々木委員長 この際、委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。  有明海等における水銀等による環境汚染に伴う漁業被害調査のため、本委員会から現地委員派遣いたしたいと存じますので、衆議院規則第五十五条により、議長に委員派遣の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 佐々木義武

    佐々木委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、派遣地、派遣期日、派遣委員の選定等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 佐々木義武

    佐々木委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  この際、午後一時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十三分休憩      ————◇—————    午後一時四十七分開議
  80. 佐々木義武

    佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  81. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 まず時間を十分に守ってもらいたいということを委員長並びに委員皆さんに言っておきます。  私は前回に引き続いて農村の教育の問題、それから後継者の問題、それから病気の問題等々について関係者から答弁を求めたいと思います。  最初の問題は、農村の教育の問題でありますけれども、前回も何べんか質問をしておきましたが、特に今度の場合、農芸局校の教科書の中に農業協同組合に関する科目が入っておらなかったということで、前回それを文部省のほうに検討してもらいたい、こういうことを要求しました。その後いろいろ検討した結果、どのようにその中で取り扱おうとしておるのか、こういうことについてまず文部省のほうからお答えを願いたいと思います。
  82. 中西貞夫

    ○中西説明員 お答え申し上げます。  竹内先生御指摘のように、農業協同組合がわが国の農業及び農村の発展に果たす役割りは非常に大きいわけでございます。そこで、高等学校におきます農業教育、特に農業科、園芸科、畜産科、蚕業科などの技術者を養成する学科におきましては農業経営の科目の中で、また農家を経営する婦人を養成する生活科では農家経営の科目の中で農業協同組合の意義、役割り、事業等について指導いたしますとともに、学校農場におきます実験、実習を通して農業協同組合の実務に役立つような学習を行なうことにしております。中でも、いわゆる自営者養成農業高等学校、これは独立の寄宿舎を持っております農業局等学校が多いわけでございますが、そこにおきましては、農業協同組合に関する実際的な理解を深めるため、学校経営の組織の一つとしまして学校農業協同組合を設置し、体験を通して学習できるように指導している学校もたくさんございます。そういうことでございますが、なお、この教育の重要性にかんがみまして、今後一そうその内容の充実強化をはかっていきたいと考えております。
  83. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 全国の各市町村に農協がある。そうして、農協の子弟が農業の高校に行っているわけだから、どうしても農業の協同組合というものを科目の中に入れて、そうして農業の中における協同組合の位置というものを明確にしながら教育をしていくということについて、なお私はそれを強く要望をしておきたいと思います。  そこで、続いて農林省の農業教育、農民の教育ですね。農業ということよりも、農民教育の問題です。それと文部省の農業教育との問題のかかわり合い、関連、これはどういう扱いになっておるのか。これは農林省のほうから、この点をお聞きいたします。
  84. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 お答え申し上げます。  私どものほうといたしましては、近代的な農業経営を担当し得る農業後継者の育成確保というようなことで、文部省のほうでやっていらっしゃいます農業高校にたいへん期待をいたしておるわけでございます。文部省のほうでも農業高校の充実ということに努力をされておると承知をいたしておりますが、私どものほうは農業改良普及事業というようなことの運営にあたりまして、農業高校との連携というものにも配慮をいたしております。  在学者に対しましては、農村青少年活動促進事業の一環といたしまして、地域農業に関する討論会を開催するというようなこととか、あるいは先進農家を訪問するとかというようなことを、普及員が出かけていきまして、農業高校の学生といろいろな検討会だとかをやる時間を持ってもらいまして、学校教育との連携事業を実施しておるわけでございます。  また、農業高校を卒業された在村の青少年に対しましては、農林省における農業者大学校もございますし、また各都道府県、それから民間団体によります農村青少年活動促進のための研修施設につきましての各種研修事業を行なうことにつきまして、私どもとしてもいろいろ促進にあたっておりますし、また、その他集団活動を通じまして農村青少年の育成につとめているというふうなことでございます。
  85. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 文部省のほうとの連絡、連携というものについて、これは何か常時保たれているわけですか、その点はどうですか。
  86. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 具体的な教育、末端での教育の問題が中心でございますので、私どもの出先の普及員というものが末端のそれぞれの学校で具体的に、ただいま申し上げましたような活動を行なっておるということでございまして、私どもから常時文部省のほうに連絡をとるというようなことは特にはございません。
  87. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は農村地区から出ているものですから、農業高校が普通高校というような形でやっているようなところもありますけれども、ともかく農家の子弟が多いわけです。近くそれらを教えている高校の先生と一ぺん自分たちの教えた予供が何を問題にしておるかということを整理して、なお別の機会に日を改めて農村の教育のことだけに限っていろいろ問題を提起しながら質問をしていきたいと思います。  きょうは、教育の問題は大体その程度にして、次に問題にしたいのは、農村における四Hクラブを中心とする若い者の運動について、どのように農林省がささえていくか。その一つとして、四Hクラブが、この前質問したときに、非常に少なくなった。少なくなった原因についても若干の答弁があったわけですけれども、もう一度四Hクラブが縮小してきたという原因についてお尋ねしたいと思うのです。
  88. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 昭和三十五、六年ころから農村の青少年が急速に減少してきまして、これは都市化の進行でありますとか経済の急速な発展ということに伴いまして農村社会が変貌してきたということであります。そういうようなことに伴いまして、四Hクラブ等が減少してきたというように私どもは考えておるわけでございます。
  89. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いま大体どのくらい四Hクラブがありますか。三万くらいですか、それとも四万くらいありますか。
  90. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 私どものほうで把握しております農村の青少年クラブ組織は、四十六年で六千二百八十一ということになっております。この構成に参加いたしております若い方々の数は十二万五千人程度でございます。
  91. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私のところに要請されているいろいろな要請を整理してみると、まず四Hクラブのような運動もぜひやらしてほしいけれども、もう一つは、先ほど局長からも答弁があったのですが、国内において先進的な農家に実践的な学習に行きたい、そうしてそういうところを学んで帰って来て、また自分の家の農業というものに対して新しい方向で進めたいということを希望しているのがいます。現に山形県の農家の人が私の実家にも来て、何日か寝泊まりをして経験をして帰っていって連絡をとるというのもありますが、そういったような国内における青年の交流というものに対して、農林省はこれを援助する、積極的にささえる意思があるのかどうか、計画があるかどうか。
  92. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 ただいま先生からお話がありましたように、農業の近代化を推進するためのにない手というような若い人たちを国内の先進の農家に留学研修をさせまして、必要な高度な技術を習得させるというようなことは非常に重要なことだと私ども思っております。私どもも農村青少年研修教育事業の一環といたしまして、各都道府県、関係団体が行ないます農村青少年先進地農家留学研修事業というようなものに対しまして助成を行なっておるような次第でございます。こういったことにつきましては、ただいま先生御指摘がございましたように、私どもも重要なことだというように考えておりまして、こういったものの拡充ということをこれからも努力をいたしたいと思っております。
  93. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 福岡県あたりでは非常によくやっているわけですけれども、それの予算なり計画なりというものをもう少し詳しく御報告してもらいたいということと、続いて、海外に農村の青少年が見学に行きたい、研修に行きたい、こういう希望を持っております。この点についても若干の計画があるようでございますけれども、このような国の内外の交流というもの、農民の交流をやって、そうしてそこで仲間をつくり、お互いに気持ちを合わせながら、自分たちの悩みを話し合いながら農業を考えていくというような、そういう若い者をたくさんつくるような方向で努力をしてもらいたい。これに対して予算がどうなっておるか、どのくらいの計画があるのか、これもぜひ聞きたいのです。この二つの点について予算上の措置農林省のほうから出してもらいたい。
  94. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 最初の先進地留学、国内留学についてでございますが、これにつきましては予算額は四十八年度二千五十六万二千円ということになっております。対象人員が千五十二人ということになっております。ちなみに、前年は九百十六人で千八百七十八万九千円ということでございました。  それからその次に、農村青年の海外研修の問題でございますが、これもお話しのように、私どもといたしまして、海外のいろいろな農業技術あるいは海外の農業情勢というものを学んでくるということ、これは農村に残る若い世代の人たちの視野を応げるというような意味からもいいことであるというように考えまして、一つには、昭和二十七年からやっております農村青少年海外派遣事業をずっと維持してやってきております。それからさらに、四十六年度から、これは短期の研修でありますが、米国、ヨーロッパに派遣して、地域の諸事情を視察させるというような、いわゆる農村青少年国際交流研修事業というようなものもやっておるわけでございます。  予算等につきましては、最初の青少年の海外派遣事業でございますが、四十八年度は三千百九十五万五千円、それから後者の青少年国際交流事業は一千万円の予算を計上しておるような次第でございます。
  95. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 計画があるのはけっこうですけれども、予算の規模からいえば非常に小さい。青年が期待をしている額からいったらきわめて小さいもので、モデルとしてやられるのはけっこうだけれども、もし本気にやるんだったら、もっと予算を大きくして、もっともっと青年の気持ちに触れるような方向でがんばってもらいたいと思います。  そこで、先ほども言ったように、農村の教育の問題で、国が計画をするもの、県が計画をするもの、自主的にやるものとあるわけですけれども、千葉県の館山に千葉県の農村中堅青年養成所というのがあるのを御存じでしょうか。
  96. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 県の施設がございまして、これに対しまして国もその施設の設置につきまして助成を行なっておるはずでございます。
  97. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その養成所の教育の方向なりなんなりというものに対する農林省の評価はどういうことになるか、ちょっと聞きたいと思います。
  98. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 各県におきますそういった農業研修施設というもの、従来からもわれわれそういったものの充実をはかっておるわけでございますが、ことに千葉県の場合には相当研修をいたしております。青少年を海外に派遣するというようなこともやっておるように聞いております。これは先ほど私がお答え申し上げました予算の中で、そういった人たちの海外派遣というようなものも助成をいたしておるわけであります。  いずれにいたしましても、こういった県でやっております事業、それぞれの県でそれぞれの特色を持たして、それぞれの地域の農業というものに合わせてやっておる、こういった青少年の研修事業というものを私どもは今後も推進したいというふうに思っておる次第でございます。
  99. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いまの局長の答弁ではどうも十分じゃないのです。千葉県の青年養成所というものは非常に特徴があるのです。その特徴はどうかというと、農村青年を留学させて、三カ月間は一般教育をやる、いろいろな教育をやる。そして三カ月間はその地域の中の優秀な先進的な農家で実習をさせる。帰ってきて六カ月は、学問で学んだこと、実地で学んだことを自分のうちで実践をしていく。たしか年に百人くらいのものですけれども、そういう形のものをつくって、それが農村の中で活動しているというのが千葉県の農村青年養成所の実態なんです。自治体の中にそういう研修があるのですから、これはぜひ参考にしてもらいたいと思うのです。そして学習なりそういうものはやはり人間対人間の信頼がなければだめなんです。そういう意味で、千葉県に補助金を出しておるなら出しておるように、千葉県の教育の資料を取り寄せて検討してもらいたいと思います。  そこで次のほうに移りますが、農村におけるところの改良普及事業あるいは生活改善事業というものは、非常に重要な仕事だと私は思っておるのです。ところが、最近どんどん人員が減らされてしまうし、老齢化しておる。特に生活改良普及員は広い合併した町村の中に、一・四町村くらいに一人しかおらないという状態です。これではほんとうに親切な指導はできないと思うのです。あるいはまた改良普及員にしても、広範なところにわずかしかおらない。しかもこの人たちは、ほんとうに農村の末端で農民に接する立場にあるから、一番苦労しておる農林省の仲間だと思うのです。こういう人たちの年齢構成も高いし、そして仕事は非常に重要だし、それから活動の範囲は広い。この点について人員が減っていくというのは一体どういうわけですか。これは補給できないものかどうか。五%削減ということが行なわれておるからそれに準じていくのだということかもしれないけれども、重要性があるところがどうして減るか、その辺のことが私にはどうしても理解ができない。
  100. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 一般的な行政機構というものをできる限り縮小するということで、この普及員の数につきましても五%削減というようなものがかぶってきておるわけでございます。私どもはそういった中にありまして、普及活動の質を落とさないようにいたしますためにいろいろな努力をいたしております。  ただいま先生から、大きな地域で普及員の数が少ないという御指摘がございましたけれども、私どもとしては普及所の広域化というようなことに努力いたしておりまして、それに機動力を与えるというようなことで、普及活動の質が落ちないように努力をいたしておるような次第でございます。  なお、普及員の第一線で働いておられる方々、たいへん苦労なさっておられるわけでありますので、私どもも、その定数の確保あるいはやめられた方の補充というようなことには全力を尽くさなければならないというように思っておる次第でございます。
  101. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題もきょうだけで終わるわけじゃなくて、今後もこの問題について私はいろいろこまかい問題を通じて、改良普及事業それから生活改善事業については、特に農林省だけではなくて、これは大蔵省にも問題を提起していきたいと思っておるわけです。  ついでに、農民の健康の問題に関してぜひ厚生省と農林省のほうから聞きたいわけですが、十年前の農村における病気と、最近の病気との傾向、この傾向について著しい変化があるかどうか、このことについてまずお尋ねしたいと思います。
  102. 土井敏男

    ○土井説明員 御説明をいたします。  農村地域におきます住民の疾病の変化でございますが、厚生省で実施をいたしております国民健康調査から、七大都市その他の市町村を使っての統計で類推をしておるわけでございますが、これによりますと、いま先生おっしゃいました十年ということではございませんが、昭和三十九年から四十六年までの七年間の数字がございます。これで見ますと、農村を多く含みます町村グループは、必ずしも有病率では他のグループよりは高くなつてはおりません。いま申しましたように、農村が都市部に比べまして特に病気が多くなったと判断することはむずかしいわけでございますが、ただ、三十六年当時に比べますと、現在の四十六年で見ましたところ、都市部も農村部も病気をしておられるという方の数はふえておるわけでございます。これは並行してふえておるような形になっております。  以上でございます。
  103. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その病気のおもな原因ということについて聞きたいわけですけれども、と同時に、これは厚生省のほうに聞きたいんですが、日本の国民が、一人がほんとうに文化的な生活ができるというカロリーというものは、どういうものが適当かどうか。五十年を目標にして答申をしたものによると、二千百五十という形になっておる。農林省のほうでは、五十七年を目標に二千四百五十カロリーというものを先般報告で出してあるわけですけれども、それは年次も違うし、中身もかなり検討しなければなりませんけれども、厚生省としてどういう組み合わせで、どのような仕組みをもって、このカロリーで日本の国民の生活が文化的にできるというその内容はどんなものであろうか、この点についてお聞かせを願いたいと思います。
  104. 土井敏男

    ○土井説明員 御説明いたします。  前段の病気の件でございますが、農村におきまして、都市と比較いたしてみました場合、やはり脳血管疾患、高血圧、腰痛、神経痛等が割合としては多く見られます。これは、生活、労働環境の問題、食生活習慣の問題等にやはり関係あるものと考えておるわけでございます。  また後段の健康な生活を営みますに必要な栄養の所要量ということでございますが、先生御指摘ございましたように、現在私ども持っておりますのは、昭和五十年を目途といたしました栄養所要量並びに基準量等でございます。  これは国民が健康な生活を送るための栄養所要量といいますものは、年齢別、性別、労作別等でそれぞれ計算をされているわけでございますが、国民の全体的な平均といたしまして、この栄養基準量という平均値を求めますならば、昭和五十年度におきまして二千百五十カロリーである、こういうふうになっておるわけでございます。  この積み上げになりました栄養素の割合でございますが、この考え方は、たん白質カロリーといいますものを一三%、脂肪カロリー等は約一七%として基礎計算がされておるわけでございます。なお、たん白質総量の中に占めまする動物性のたん白質の割合、これは四五%程度でございます。それから総カロリーの中に占めます穀類カロリーでございますが、これが約五五%程度、これを中心にいたしまして、ただいま申し上げました栄養基準量といたしまして二千百五十カロリーというものを計算いたしたわけでございます。  以上でございます。
  105. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そうした場合に、現在の国民の摂取量の現状は、その基準に照らしてどういうような状態にあるのか。それから現在の日本の生産する食料の中で何が一番不足しておるのか、何が足りないか、この点はどうですか。
  106. 土井敏男

    ○土井説明員 お答えをいたします。  昭和四十六年に実施をいたしました国民栄養調査によりますと、摂取カロリーで見ますならば、二千百五十カロリーを少し上回りまして、二千二百七十ないし八十カロリーくらいになっております。このカロリーを得ますために食べております食事の中身を見ますと、現在特に五十年を目標としました食料構成から見ますと、一部ビタミン類が少し不足をしておるという調査結果になっております。  以上でございます。
  107. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先般、私の茨城県で、農協が農民の健康調査をしました。これは五千五十八名の健康調査の中で、最終的な結論にはまだ至っておりませんが、健康である、要治療ではない、医者に行かなくてもよろしいという判断をされた者は千六百十九名、残りの三千四百三十九人という者は何がしかの病気にかかっている。それを三段階に分けて、要治療者というのは千三百、要精密検査が六百三十三、要観察が千五百六、こういうふうに分かれるわけです。そしてその病気の内容は、血圧の疾患が第一、その次は貧血、心臓、皮膚病、伝染病、内分泌、そういう順序になっているわけですが、非常に循環器系統の病気が多いわけです。この原因というものについて厚生省のほうでは、先ほどの答弁の中でもありましたが、労働が激しい、重労働である、それに比べて摂取している食料もカロリーが十分じゃないし、休養も十分でないという日本の農村の現状の非常にきびしい状態をここに反映しているのだと思うのです。茨城県はこういう結果が出ているのですけれども、全国の状況、これが農林省のほうから見た場合あるいは厚生省のほうから見た場合どうなっているか、この点について報告を願いたいと思います。
  108. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 私の手元で持っております調査、もちろんこれは厚生省のほうから出た調査を利用しているわけでございますけれども、農家世帯、非農家世帯両方あるわけでありますが、熱量では農家世帯もほとんど同じ程度の、先ほど厚生省からお答えがありました程度の熱量をとっております。  この中で農家のほうが非農家に比べてどういう差があるかということを申し上げますと、動物性のたん白、脂肪、カルシウム、ビタミン類が少なくて、それに対して炭水化物が多いということになっております。これは農家では米麦等の食品摂取が多いということでありまして、こういったことが栄養摂取に片寄りが出たり、あるいは消化器系統の負担になるというようなことであります。  それから、病気のことがちょっとお話に出たわけでありますが、私どものほうで調べておりますのは、これは生活改良普及員からのいろいろな情報でありますが、先ほど先生が御指摘になったような高血圧等の循環器障害、それからハウス栽培によるハウス病、農薬による影響あるいは大型機械によるけがというようなものが最近出てきております。  それからまた、農村において特にもう一言づけ加えておきたいと思いますことは、昔と違いまして、病気それ自体の発見というものがかなり容易になってきたことがあろうかと思います。従来、潜在的には病気であったけれどもわからなかったというものが、最近医学が発達している、農村における医者の数もふえる、あるいは農村における検診というようなことも発達してくるということで、比較的病気がはっきりしてきたというようなこともあろうかと思いますが、先ほどのような病気が出ておるということが言えると思います。
  109. 土井敏男

    ○土井説明員 ただいまの栄養の摂取の状態でございますが、これは農林省のほうからも御説明ございましたように、私ども実施をいたしております国民栄養調査で調べた結果でございますけれども、動物性のたん白、カルシウム、鉄、ビタミン類が非農家に比べて少ないという状況でございます。国民健康調査の中で、特にいま先生御指摘になりますような疾病としては、先ほど申し上げました循環器疾患でございますとか腰痛、神経痛等は数字でもって多いわけでございますけれども、その他の疾病は特に多いということが出てきておりませんので、それ以上のこまかい数字はございません。
  110. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで問題は、そういうような六割から七割に及ぶ病人あるいは半病人のような状態の農村に対して、どういうふうな処置をとっておるのか、とられようとしておるのかということだと思うのです。日本は経済が成長して世界で二位とか三位とかいっておりますけれども、実際医療なんかのあれについて見れば非常に少ない。たとえば昭和四十五年の調査では、人口十万人に対して日本の場合には医者が百十四人しかおらない。ソ連では二百十五名、アメリカでも百五十人いるという、こういう状態でまず医者が少ない。その医者も、無医村地帯がいままだ相当全国にあるはずだ。せっかく学校を卒業して農村に行った医者が都会へ帰ってしまう、看護婦もおらない、こういう状態で農村に対する治療、手当、これをどうするか、どういうふうにされようとするのか、  この点についてひとつ答弁を願いたいと思います。
  111. 山高章夫

    ○山高説明員 農村地帯の医療機関、医療関係者の点でございますが、これは先生御指摘のように、確かに農村地帯は病院、病床も少のうございますし、医療関係者も都市部に比べますと非常に少ないわけでございます。この点の対策が実は私ども数年来の悩みと申しますか、問題点であるというふうに思っておるわけでございます。特に無医地区を有する市町村が千以上ございます。無医地区数にいたしますと約二千五百ございます。  こういった地域に対する対策としまして、従来無医地区の医療確保のための対策として、巡回診療であるとか患者輸送であるとか、それから診療所の設置であるとかいうこと、あるいは病床不足地域に対する病床増床の場合の補助とか、そういった施策を続けてきたわけでございますが、なかなか十分に目的を達成いたしておりません。約二千五百の無医地区のうち半数は何らかの対策の対象になっておりますが、まだ千幾つかは残っておる。私どもそういうところを重点的に今後対策を進めていきたいというふうに考えているわけでございます。
  112. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 ただいま厚生省のほうからお答えがあったわけでございますが、厚生省のいろいろな施策と並行いたしまして、私どものほうも従来から、農民が健康で農業生産従事して文化的な生活を営むことができるようにということで、生活改良普及員が日常活動の一環といたし嘉して、栄養改善あるいは生活環境改善等の指導を通じて疾病予防を行なっております。特に昭和四十年度から農山漁家健康生活管理及び家族労働適正化特別事業というようなものをモデル地域で実施をいたしておりまして、農民の健康管理、労働及び環境の改善、体力づくりのための濃密指導というようなことも行なっておりまして、今後もこういうような事業を通じて農民の健康の維持というようなことに努力をいたしたいと思います。ちなみに四十年度から始めまして、三百四十三カ所につきまして実施をいたしておる次第でございます。
  113. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いま両者の担当からいろいろ実情を聞いたわけですけれども、農業基本法で、外国の食料で農業が破壊をされて、そして今度は重点の工業で農村自体が破壊をされ、そこへ持ってきて今度は人間がこわされておる。いま日本の農村は三つの立場からこわされてしまっている、こういう状態なんです。いま話を聞いてみても、現に病人が七割もおるのに無医村がある、そしてモデル地区でやっておるということでは非常におそいと思うのです。現状からいってみておそい。  そこで、われわれに要求されておることは、少なくとも一年間に一ぺんは農村に住んでいるすべての人の健康診断をやってほしい。そのためには一人六百円の予算があればできる。四千万の人間がおるとしても二百四十億です。その二百四十億の金があればこのことはできるわけなんです。そういうものをやる意思があるのかどうか、そういうものを考えておられるかどうか、これはどうですか。
  114. 土井敏男

    ○土井説明員 御説明いたします。  特に健康管理対策といたしまして、疾病の予防対策と健康増進対策というところに私ども力を入れておるわけでございますが、御指摘がありましたように、特に医療機関の少ないところにおきまする対策といたしまして、農村地域住民の健康管理のために、従来からガンの検診車でございますとか、それから健康管理指導車等の整備ないしは運営費等の助成をしてまいったわけでございますが、昭和四十八年度、本年度の事業といたしまして、農村の地域住民の健康診断の強化をはかるということで、農村地域にございます公的医療機関に農村健診センターを設置しようということでございます。ここでは特に成人病検診を中心にいたしました機器の整備、それから個々のセンターまでの受診者を輸送いたします移送車、それに運営費の一部も補助をしていきたいというのが一つの考え方でございます。  それからまた、市町村の事業に対しまして、従来谷間になっておりました四十歳から六十四歳までの方につきまして、循環器疾患を中心にいたしました成人病検診を無料で実施をする事業に対しましても国庫補助を出したいということで、ことしから取り組むつもりでございます。  以上でございます。
  115. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 努力をしていることは認めるけれども、ともかく予防医学というもので、病気が出てからではおそい、農村の人たちは病気になってもほんとうに倒れるまで働くわけですから。こういうような状況の中でまだまだ不十分だと私は思うのです。これは農林水産委員会だけの議論ではなくて、たとえばいまあまり必要がない、いまも墜落するようなファントムなんというのを十四機買っただけでもすでに二百七、八十億になる。こういうようなものは、私に言わせれば、むだ金なんです。それだけの金があるならば、一人六百円、それで四千万人の農村に住んでいる赤んぼうから年寄りまでの健康診断ができるのだから、これがどうしてできないかということについて、私は農林水産委員会だからそういう議論をするのはどうかと思うが、予算委員会などでやるべきだと思うのですが、この問題についてはぜひもっと前向きに取り組んでほしいということを要望しておきたいと思うし、それがどういうふうにやられたかということをいずれ別な機会に質問をしていきたいと思います。  そこで、農村におけるところの農機具による事故ですね。それに対して労働者災害補償保険法の認定でありますけれども、これが非常にきびしくて、自走式の農機具でなければこれに対する災害補償が与えられない、こういう状態になっているのですが、今後この農業におけるところの事故、もっと農業を機械化していくわけですから、その機械化していく中で事故が起きる、その事故に対してもっと対象をふやしていく意思があるのかないのか。  もう一つは、先般、四十五年の十二月に農業機械化審議会から、「農業機械化の推進上当面している重要問題について対処すべき農業機械化施策の方向についての答申」というのがあったはずです。その機械化の中でも、農機具の事故に対するそれについては農林省は積極的に取り組んでいくべきだというような要望があったと思うのですけれども、それらも含めて労働省と農林省からお答えをいただきたい。
  116. 山口全

    ○山口説明員 お答えいたします。  農業従事者の労災保険の適用につきましては、御承知のとおり、雇用関係のある者は当然に適用になります。雇用関係のない自営業者の適用につきましては、特別加入の制度で適用していることは御承知のとおりでございます。特別加入者にありましては、一般の雇用労働者と同様の保護を必要とする、つまり危険度あるいは使用する機械、作業内容等に照らしまして、当然適用を受ける一般雇用労働者と就労の実態が類似しているということに限定されて、その範囲の対象者が適用になっておるわけでございまして、そういうものを具体的にとらえるのに、特定の危険と思われる機械を使用する従事者というふうに限定しているわけでございます。  当初、先生御指摘のとおり、自走式農業機械ということに限定して適用してまいったわけでございます。最近農業機械の利用による災害が増加している、これに対する要請も強くなっております。現在労災保険の面におきましては農林省と打ち合わせいたしまして、その後開発されている機械の普及度、さらにはそれによる災害の発生状況等を農林省のほうに明らかにしていただくように御依頼申し上げております。その結果必要があれば、機械の範囲について拡大することも検討してまいりたい、かように考えております。
  117. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 御指摘のように、昭和四十五年の十二月に農業機械化審議会から「農業機械化の推進上当面している重要問題について対処すべき農業機械化施策の方向についての答申」というものが出ておりまして、その中に農業機械化の安全と保守整備のことが触れられておるわけでございます。これも御案内のとおり、農業機械が普及するに伴いまして、機械による事故というものが増加をいたしております。そういったことを背景にいたしましてこのような答申がなされたわけでありますが、その中で農業機械化の安全に関する事項といたしまして、安全に対する啓蒙、機械化の徹底、それから農業者に対する災害補償制度の周知徹底、農業機械の安全装備基準に基づく指導、対策の実施、及びこの基準の基礎となる農業機械の安全性についての研究体制の強化というようなことが指摘されておるわけでございます。私どもといたしましては、この指摘事項の趣旨というものを十分尊重いたしまして、従来から安全施策の強化ということにつとめておるわけでございますが、具体的には農作業の安全対策事業の実施を強化いたしまして、移動教室等を開設いたす等によりまして、農作業安全の啓蒙普及、それから労災保険の特別加入制度の周知徹底につとめますと同時に、農作業安全に関しまして、農業者に対する啓蒙及び指導の統一的な基準として作成いたしております農作業安全基準、及び安全性の向上をはかるための農業機械の構造装備等についての基準として作成いたしております農業機械安全装備基準、二つ基準があるわけでありますが、その基準につきまして、その対象機械の拡大と内容の拡充をはかるというようなことをやっておるわけであります。  そのほか災害補償制度につきましては、労働者災害補償保険法の特別制度の対象となっております機種の拡大ということにつきまして、現在労働省と鋭意協議中であります。  ただいま労働省からもお答えがあったとおりでございまして、その結果をまちまして、農林省としましては、労働省と緊密な連携のもとで、こういったものをさらに周知徹底しまして普及をはかっていくというようにいたしたいと思っておるような次第でございます。
  118. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 きょうは特に農業、ものを生産する人間の問題を中心にして茨城県で健康調査をやったその内容からいろいろ質問したわけですが、先ほども言ったように、日本の農業というものが貿易の自由化の中でこわされ、そして農村が工業のために公害や何かでこわされて、それで人間のからだがこわされていくというような非常にきびしい状態の中で、いまの話の中でもわかるように、非常にややこしい基準をつくって、その基準、基準でいくと、とてもむずかしくて農家はどうにもこうにもならない、こういう形になるわけですから、農民にわかりやすい単純な方式で、そして安心をして機械が使えるようにしてほしいし、それから農業改良普及員あるいは生活改善普及員、生産農民に部落の末端で一番関係をする、かかわり合いを持っているそういう関係者がどんどん減っていく、減らされていくという、こういうことはどうしてもしのびないことだと思う。  それからもう一つは、無医村、農村のすみずみに診療所がない、医者がない、こういうことではどうも先が心配なわけですね。  ですから、きょうはもう時間がありませんからこれ以上申し上げませんが、早急に、農民のからだがこわれないようにこれを予防して守っていく、こういう立場から多くの諸般の問題に取り組んでもらいたいことを特に私は要望をしたいと思うのです。  きょうは一般の質問ですから、大臣もいないことですから、特にこれはこの委員会で、委員長を含めて、こういう問題をまた別な機会で農民の、人間の問題について取り上げるような機会をつくってもらいたいと思う。そしてほんとうにこの農林水産委員会というものは、食料の自給という、ものを確保すると同時に、ものをつくる人間のことも真剣に考えているのだということにしなければ、日本の農村から若い人たちはだんだん消えていってしまうだろう、こういうふうに考えますから、ぜひこれをお願いをしたい。  時間が参りましたから、私はこれで終わりますが、よろしくひとつお願いをしたいと思います。終わります。
  119. 佐々木義武

    佐々木委員長 野坂浩賢君。
  120. 野坂浩賢

    ○野坂委員 林野庁林政部長ですか、伊藤局長にもあとでお尋ねをしますから、お帰りにならないようにお願いします。それから大臣にもおいでいただくようにお願いをいたしましたが、参議院の内閣委員会出席をしなきゃならぬということでおいでをいただいておりません。  私は、去る五月の十日に林野庁長官代理に質問をして、木材の価格を押えることはできなかった、こういう御答弁をいただいたわけでありますが、その際に資料を要求をしてちょうだいいたしました。しかし、不十分な資料でございますので、その後さらに検討を深めております。  私はまず質問をしたいのは、今日の物価上昇、しかも昨日は大工、左官の皆さん方が丸紅飯田に押しかけて材木の放出を要求しております。価格の低落を要求しております。しかも木材は物価高の今日一番大きなウエートを占めておる。しかも大手の商社は三五三%というような不当な利得を得ておるというふうに私は思っております。  そこで、木材の状況から考えますと、外材は内地材を上回って五五%にも及んでおります。これについて林野庁としては輸入木材に対する関心は非常に大きいと思います。そしてその価格の推移についても異常な関心をお持ちだと思いますが、その辺についての御見解をまず初めに承っておきたいと思います。
  121. 平松甲子雄

    ○平松説明員 ただいま先生御指摘のとおり、国内の森林資源は、戦争前から戦争中、戦後にかけまして手入れが怠られておったということもございまして、蓄積が非常に乏しい状態になっておる。一方、需要のほうは、国民経済の成長に伴いまして、増加をするということでございまして、ますます需給のギャップが開いてまいる。その需給のギャップはこれを外材によって補うというような形になっておりますので、先生御指摘のとおり、外材の国内の木材の需給に占めるシェアが五〇%を突破するというような状況で最近推移しておりますし、今後まだ二十年ばかりはこの数字は増大するというふうに見ておるわけでございまして、そういう大きなシェアを占める外材の供給なり価格なりというものについては、私ども、先生から御指摘をいただいたわけでございますけれども、絶大な関心を有しているわけでございます。
  122. 野坂浩賢

    ○野坂委員 非常に関心をお持ちですし、一般の国民、特に所得の低い労働者の持ち家等に関しては、労働者、消費者の皆さんは異常に関心を持っておったということは事実であります。それ以上に当面の責任者であるあなた方が関心を持つのは当然だと思いますが、東京の木材市売問屋協同組合連合会の調べがありますが、たとえば米ツガ柱が去年の七月の十日には二万四千五百円ですね。ソ連のエゾの平割りは二万四千五百円ですね。これが十一月、十二月になりますと、米ツガは二万四千円のものが五万五千円にまでなっておりますね。ソ連のエゾは平割りで二万四千円のものが六万五千、六万三千というふうに非常に推移をしております。異常な状況であります。  そこで、私どもがお尋ねをしたいのは、この間は商社が価格の操作をした疑いがある、こういうふうに言いました。しかし、林野庁のほうはそれに対しては御答弁をいただくわけにならなかった、押えることができなかったということでありましたが、私は商社が価格の操作を行なってきた事実があろう、こういうふうに思っておりますが、それについて林野庁としては、関係官庁とも連絡をとって、どのような措置をされたのか。また、価格を操作されたと私は思いますが、どのようにお考えになっているか、伺いたい。
  123. 平松甲子雄

    ○平松説明員 昨年の木材価格の騰貴につきましては、昨年の前半は四十六年に引き続きまして木材価格は低迷をいたしておったわけでございまして、ことに四月までは対前年比下落をするというような状況になったわけでございます。これはニクソン・ショック以来の国内の景気調整という面がございまして、景気が停滞しておったということであろうと思いますが、四月以降少しずつ価格が堅調になってまいるということでございましたけれども、そう大した動きはなかったわけでございますが、十月に入りまして著しい騰貴を来たしたということでございます。  この原因を私ども探求いたしまして、いろいろ考えてきたわけでございますが、ちょうど昨年の後半に景気が回復に向かいまして資金が非常にだぶついておった。そういうようなことから、住宅ローンの条件の改定あるいは貸し出し金額のワクの増大というようなこともございまして、住宅ローンの融資の量が前年に比べて二倍にもなるというような状況がございまして、建築資金が前年に比べて二割から三割伸びる。ことに昨年の十月から十二月にかけまして増勢が著しいというような状況がございまして、御承知だと思いますが、木材の供給につきましては、国内につきましても外材につきましても労働力の関係、資源の関係その他ございまして、供給についてはわりあいに硬直的でございます。そういうようなこともございまして、増大する需要に供給が対応できなかったということで価格が上昇したというふうに私どもは考えておるわけでございますが、それでも昨年の十月以来そういうふうな形の価格の上昇気配を察しまして、外材の輸入の増大ということと、それから国産材につきましては、国有林材の早期搬出あるいは民有林材の早期搬出というような形で、供給増大についての手段を講じたわけでございます。それでもなお増大する需要に追いつくことができませんで、価格が御指摘のような形で上昇をいたしたわけでございます。  その際に外材の輸入価格と申しますか、輸入された外材の国内の価格につきまして、先生御指摘のように、商社が輸入いたしました価格と、それから問屋さんなり製材工場に売り渡した価格との間に相当な開きが出た、その結果商社に著しい利益を生んだということは御指摘のとおりでございます。この点につきましては、先ほど申し上げましたように、私どもは木材の価格が需要先導型で形成されたということによって招来されたんであろうというふうに考えるわけでございますが、やはり商社が木材を輸入いたしました価格というものは半年から三カ月くらいの間に輸入し、あるいはソ連材につきましては一年前に契約したということでございますので、かなり低水準である。自由経済でございますから需給関係で価格がきまるということがございましても、なおコストとしては安かったというふうな事実があるわけでございますから、私ども商社を呼びまして、マイホーム実現という意味においての木材の重要性ということを訴えまして、価格の抑制、適正な価格の形成ということをお願いいたしたわけでございますが、先般の委員会でもお答えしましたとおり、私どもの要望がそのまま実現しないというような形で、先生御指摘のような価格の開きができたということでございます。
  124. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私は価格操作をしたかと聞いておるのです。それはどうです。
  125. 平松甲子雄

    ○平松説明員 木材の商社の入荷と出荷の状況なりあるいは在庫の状況というものを見ておりますと、大体順調に出ております。外材の輸入量も四十七年は前年に比べて一割五分前後増加しておるというようなことでございまして、私どもといたしましては、商社がみずから価格を操作するというようなことでなしに、やはり需要先導ということで買いあさるということから、そういうような形の価格上昇が招来されたんではないかというふうに考えておるわけでございます。
  126. 野坂浩賢

    ○野坂委員 あなたから資料をいただいた分だけで読みますと、たとえばいま私がお話ししましたように、米ツガは四十七年の五月は一万四千九百三十円のときに入れてそれよりも下回って売らなければならぬという事態ですね。しかし、いま言いましたように、十一月ごろからは同じような金額で仕入れをされておる、そうですね。一万七千円程度で仕入れたものが二万一千六百円になり、十二月は一万七千六百七十円が二万四千七百円で売られ、一月には二万円のものが二万九千百円で売られ、二月も仕入れは同じで二万九千百円でやられる。ソ連材等も、いま言いましたように、十一月からは九千八百円のものが一万八千円になり、十二月は九千五百六十円のものが二万五千円になっている。これはいままでの推移とは違って、需要と供給ではなしに、いわゆる商社の皆さんが需要が一割ないし二割増大したと言いながらも、実際問題として契約するといっても、いままでの四十六年、四十七年の統計もあなたはお持ちだろうと思いますが、このような推移というものは、商社は二%ないし三%しか利益は得ていないということを言ったのですが、現実にピーク時からは大体五割から六割、そういうふうなところまで利潤を得ている。これが価格操作でなくて何なんだ、私はそう思えてなりません。そのような事実があなた方のいわゆる書類で明らかになっておるわけですから、そういう点についてはやはり反社会的行動ではないか、この実績表から見ればこういうふうに言わざるを得ないのです。それについての御見解、そのとおりですか。
  127. 平松甲子雄

    ○平松説明員 ただいま先生御指摘の輸入価格と製材工場渡しの価格との関係につきましては、輸入価格につきましては径級なり長級なり品等というもの全部を込みにした価格でございますし、工場渡しのものは特定の級のものでございますから、必ずしも両者を比較することはできませんけれども、両方を並べながら時点の比較をいたしてまいりますと、確かにその両者の関係において商社が有利な販売をしておるということは、私どもも認めておるわけでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、商社がたとえば昨年の十月なり十二月までに販売をいたしました木材につきましては、これはおそらく契約関係から申しますと、昨年の四月なり六月ぐらいに契約をしたものではないかというふうに考えられますので、国内の価格も安かったし、輸入をした国の価格も安かったということで、安い価格で手に入れた。国内のほうは、先ほど申し上げましたように、需要が急増した先高の見込みである。流通側のほうでは、昨年の前半に材価が弱含みであるというようなことでございますから、流通業者の常として在庫を減らしておった、それが高くなりそうだということで在庫を増加させようとする。そういうふうなものも加わりまして需要が急増したということによって、価格関係で需給が逼迫したということから価格が上昇した。それが輸入丸太についての需要の増大を来たして、工場が買う価格が上がったということでございまして、その間に商社が何らか人為的な操作をしたというふうな形のことも、あるいは推定としてあり得るかもしれませんけれども、私どものいろいろな聞きとりなり調査なりということでございますと、品物はわりあいに順調に出ておるということでございまして、その間に売り惜しみをしたというふうな形のものは存在しないというふうに認められますので、その間の価格操作はなかっただろう。  ただ、先ほども申し上げましたように、仕入れ価格がわりあいに安い価格で仕入れられておるということでございますので、国内の価格を適正にするという意味において、マイホーム実現という住宅政策の実施という観点から協力を求めたわけでございますけれども、それについては残念ながら協力が得られなかったという結果におちいったことを先般申し上げたわけでございます。
  128. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私が五カ月間で単純な計算をしますと、十一月から三月まで商社のもうけというものは、米ツガだけで輸入トン数はこの間申し上げましたから申しませんが、一立米当たり平均七千六百円になっていますね。そうすると、輸入の五カ月間の分で換算いたしますと、いわゆる輸入と工場渡しの分の金額の差が七千六百円ですね。安宅産業というのは利益が二十二億三千万、日商岩井二十九億四千七百万、丸紅二十億二十万、日綿実業二十六億六千万、伊藤忠十八億八千万、これはソ連材のエゾマツを除いてです。こういうように非常に大きな利益があった。だから、新聞紙上にも書かれたと私は思うのです。  そこで、あなたのほうに私が質問をして、五月の二十五、二十六日ごろに商社の総会が一斉に開かれていますね。大体十二分から二十五分で終わっておりますね。ほんとうに政府は、あるいは林野庁あるいは通産省は、そういうところに申し入れをしたのだろうか。というのは、もうけられるときにもうけなければだめだ、こういう空気ですからね、話は。物価をこれから押えていくには、その担当の省庁が本気になっていかない限りできないので、このような利潤追求だけに終始をするということは物価抑制に大きく影響があろうし、また、政府皆さんにはやる意思がない、むしろ企業と結んでおるではないかというふうに言われてもしかたがないと思うのですが、どのような警告をし、今後どのような措置をしようとするのか、林野庁並びに、通産省もおいでだと思いますから、これについての考え方を聞きたいと思います。
  129. 平松甲子雄

    ○平松説明員 私どもといたしましては、先ほども申し上げましたとおり、商社が仕入れをいたしたであろう価格と販売されておる価格との間に相当な開きがあるということで、物価政策上もあるいは住宅政策の推進という点からも好ましくないということでございまして、年末から年初にかけまして数回にわたって、商社の連中を呼びまして、その点について協力を要請したわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、需給関係の逼迫の強さということから協力を得られなかったということでございますが、その後、世論の批判も相当強うございまして、商社についての反省は相当行なわれておるんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。  また、価格の関係につきましても、世界的に建築需要が強まっておるということ、日本が産地市場で相当強く買いあさったということから産地国いずれも価格が上昇しておるということで、現在の時点では、買い入れ価格と国内に持ってまいります売り渡し価格との間にはほとんど開きがないという程度のものさえ出てきておるというふうなことでございます。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 こういう状態でございますけれども、今後、先生から御指摘のございましたような事態が再現しないようにということで、私どもは努力をいたしたいと思います。  先般の商社の利益というのは全く空前のことでございまして、ああいうふうな需要の異常な逼迫というものが今後起こった場合にどういうふうな形で対処するかという点につきまして、政府としても、そういう場合の対処の方針として、今国会に、生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律案というものを提出いたしておるわけでございまして、そういうふうな形のもので法的には措置をいたすことにいたしておりますし、また、法律の手段ということでなくても、先ほど申し上げましたような形で指導を行なってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  130. 野坂浩賢

    ○野坂委員 通産はおいででありませんか。
  131. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 通産は、石油しかきておりません。
  132. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それではやむを得ません。大蔵省はおいでですか、関税は。  私は、大手の商社の決算書は、上場しておる会社は大蔵大臣に出さなければならないということで、もらったのですが、十分検討することができず、たとえば勘定科目内訳明細書なり所得税の申告額、そういうものとどうも合わぬ、そういう点が多々見受けられます。さらに、いま私は数字を並べ立てて、七千六百円の立米当たり差異を出したのですが、これの輸入価格というのは、CIF価格なんですね。林野庁からもらったのはCIF価格です。だから、言うならば、百四十五社の、木材を輸入する業者の平均値がこのCIF価格として出ておる。だから、一つ一つの商社の輸入価格というものをこれで承知することはできません。  この間、五月の十六日に、神戸で豚肉の輸入にあたって、四百六十円でほんとうは仕切ったものを、四百八十一円七十銭で税関に届けておる、そして関税法違反等で摘発されておる、こういう事態がありますね。こういうようなことで、木材にはほとんど九七%程度関税がかかっていないわけですから、そういうことだってできないことはない。  そこで、物価を押えるために、大蔵省なり林野庁なり通産省は、連携なり連絡をとって、全力をあげて物価を押える、こういう意味で、各商社別の輸入価格というものを検討されておると思うのですが、その状況と、このCIF価格よりも十大商社は安いか高いか。私は安いと思うのですが、それについて知っておられればお話をいただきたいと思うのです。
  133. 片山充

    ○片山説明員 一般的に申しまして、輸入貨物について申しあげますと、輸入申告というのがなされるわけでございまして、輸入申告には、所定のものが申告されるほかに、必要なインボイスその他の証拠書類がついておるわけでございます。われわれはそれを審査をいたしまして、必要な場合には現物の検査もいたしますけれども、間違いがないと認めれば許可をするということをやっておるわけでございます。  先生御指摘の価格につきましては、貿易統計というのをつくっておりまして、大体毎月取りまとめまして、品別、国別あるいは国別、品別という形で公開をいたしておるわけでございます。御指摘のように、個々の取引ごとの、いつ、だれが、どういう価格で、どこから、何を入れたかといったようなことになりますと、これは営業上の秘密にわたることもあろうかと思うわけでございまして、御案内のように、一定の分野の事柄につきましては、公務員の守秘義務というのがございまして、これを公開することはごかんべんいただいておるというのが実情であるわけでございます。
  134. 野坂浩賢

    ○野坂委員 といいますのは、たとえば商社は半期ごとに決算になっておりますね、いわゆる十月一日から三月三十一日までですね。この間に、たとえば日商岩井は一千億の、前年対比借り入れ金が増加しておりますね。伊藤忠にしても八百三十億円にのぼっております。一方、資産勘定から見ますと、商品というのは一千五十億程度ありますね。たとえば伊藤忠は未着商品としては八十億、膨大な金額にわたっております。だから、これはいわゆる売り渡し原価が記載されておるわけではなしに、仕入れ原価が資産勘定としてあがっておるわけですから、非常に膨大なものだと思います。この中で木材は幾らあるかということは、勘定科目内訳明細書を見なければできぬと思いますが、これはいま私たちはもらうことはできませんでした。これについても、林野庁等は十分検討して——新聞紙上を見ますと、三カ月から七カ月あるという話まで書いてあります。これは私はよく調べておりませんからわかりませんが、そういう実態と、借り入れ金の増大と、どこにその金が行っておるかというのは隠せるだけ隠しておる。たとえば価格変動準備金あるいは圧縮記帳引当金、海外投資損失準備金、資源開発投資海外市場開拓準備金、為替損失金、こういうことで、為替差益というようなものはいままであっただろうと思うのに、全然ない。為替差損というのは何十億も今回は出されておる。こういう経理が非常に多い、決算書を読んでみますと。だから、その中で木材等も含んで、あるいは農林省関係の大豆等も含んで、生糸等も含んで、十分御検討をいただく必要があろう、こういうふうに思います。ただ単に通産省なり大蔵省にまかせっぱなしということではなしに、木材関係を担当する林野庁に本気でこれを検討してもらわなければならぬと思いますが、その決意いかん。
  135. 平松甲子雄

    ○平松説明員 先生御指摘のとおり、私どもといたしましては、国民経済に占める木材の地位というものを考えまして、適正な材価が形成されるようにということで、でき得る限りの手段を尽くして努力をいたしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。ただ、商社の中におけるいま先生御指摘のような項目につきましては、木材の需要を担当しております林野庁だけではなかなか実現はむずかしい。要求いたしましても知り得ないということもございますけれども、私どもは私どもなりの努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  136. 野坂浩賢

    ○野坂委員 貸し倒れ引き当て金等がもうすでに百三十二億にも及んでおるし、しかも今回伊藤忠等は貸し倒れ償却として二十九億五千万、こういうふうに損費として落としておる。こういうところに私は非常に問題があるような気がします。時間がありませんから、これはこの程度で終わります。  次に、去る五月十五日に、アメリカにおける木材輸出規制法案の提出をめぐってわが国においても一〇%の自主規制を行なうという閣議決定がされました。これはもちろん林野庁がそれの当面の責任者でありますから、外材輸入の商社の皆さんと話し合っておると思いますが、一〇%の規制はこれからどうやるのか。新聞等によりますと、世論の圧力によって価格が一応安定の方向に向かおうとしているけれども、そのためにこの一〇%規制で要らざら経費を使わなくて、競争しなくてやれるんじゃなかろうかというふうに、むしろ安堵感を持っておるというようようなことをわれわれも伝え聞いております。そういう意味で、一〇%の規制の具体的な方法はどのように進めるか、お伺いをしたいと思います。
  137. 平松甲子雄

    ○平松説明員 先ほど木材の輸入のことについて申し上げました際に触れたわけでございますが、日本が木材を輸入いたします際におもな給源といたしましては、針葉樹につきましてはアメリカ合衆国にその半分を仰ぐというふうなことでございまして、いままでの事例に徴しますと、景気がよくなりまして国内の木材の需要がふえますと、そのふえた分について米材の輸入が増大しておるというのが実態でございます。  四十二、三年の際にもその問題がございまして、米国の市場を撹乱したということから、米国でモース法という法律が通りまして、アメリカの連邦有林からの丸太の輸出は百六十万立米に押えるという法律が現在あるわけでございまして、これが二回ほどの延長がございましてことしの末まで有効であるという法律でございます。その法律があるわけでございますが、昨年の秋以降日本がアメリカ市場に買い進んだということがございまして、アメリカ自身でも四十五年から四十七年の二年間に建築着工が六割も伸びるというようなことがございまして、アメリカにおける木材の価格が上昇しておる。  そのアメリカの木材価格の上昇は日本の買いあさりによるものだ、日本に対する輸出によるものだ、だから本材の輸出、主として日本を目的としたわけでございますけれども、日本に限らず木材の輸出を規制しろという法案が八案ほど米国の国会に上程されております。その中で最も有力な法案はタックウッド法案と申しまして、一九七四年から四年間でアメリカからの丸太の輸出を二五%ずつ落としていってゼロにするという法案でございます。  そういう法案が出ておりまして、これがアメリカにおける製材業者、ホームビルダーと申しておりますから、大工さん、それから自然保護論者、そういう方々の支持によりまして、どうも法律として成立しそうだ。で、アメリカ政府としては、そういう法律が通りますと、自由貿易を推進しようという立場から必ずしも好ましくないということで、日本に対して、日本側で輸入をある程度規制してほしいというふうな要望があったわけでございます。それを受けまして日本政府といたしましては、国内の需要が逼迫しておりますけれども、なお、アメリカにおいて先ほど申し上げましたような法案がそのまま法律になるというような事態を考えますと、日本の国内の木材の需要は非常に逼迫するようなことになるということを考えまして、先月の十五日に閣議決定のような形で、日本が自主的に木材の輸入を規制しようというふうに定めたわけでございます。  大体現在のところは、七月一日から来年の六月三十日までの間にアメリカからの丸太の輸入量を九百五十五万立米に押えようというふうなことを考えておるわけでございまして、それをことしの十二月までと来年の一月から六月までの二つに分けまして、そのおのおのの期別の輸入数量をきめます。そういうことにいたしますと、四十八年一年間の輸入量は、大体前年に比べて六%ぐらい落ちるということになろうかというふうに考えるわけでございます。  その輸入規制の手法としてどういう手法をとるかというお尋ねでございますが、その点につきましては、貿易管理令による輸入事前許可制というものを採用してやってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  138. 野坂浩賢

    ○野坂委員 長々とありがとうございました。  時間がありませんのでお尋ねをしたいのは、その一〇%の自主規制というのは、会社にとってはどうなるかということですよ。いままでの実績主義でいくのか——まあ田中総理は中小企業の振興を言い、通産相その他も中小企業の振興を言っておるわけですが、実績主義でいけば百四十五社、約百五十社に及ぶ商社のうち十大商社で五六%もそのシェアを占めておるわけですから、中小企業の振興ということには当たらない。たとえばその方式として平均五〇%、実績五〇%、こういうような方向でいくのか。また、その方向でなければ中小企業の育成強化ということはできぬ、こういうふうに思うんです。林野庁は事前に業界と相談をした、このような事実があるわけですから、それについてどのような考え方か、明らかにしてもらいたい。
  139. 平松甲子雄

    ○平松説明員 貿易管理令による輸入事前許可制によって対処してまいるということで大体通産省との間に意見が一致いたしておりまして、その割り当てをするというのは通商産業大臣の権限に属するわけでございますから、お答えは通商産業省のほうからしていただくのが妥当かと思いますけれども、現在、私どもと通商産業省との間で割り当て方式について協議をいたしておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、商社に対する割り当てのほかに、製材工場でございます需要者に対しても割り当てを行なうというような方向で実施してまいりたいというようなことで協議をいたしておる段階でございます。
  140. 野坂浩賢

    ○野坂委員 一番ポイントのところがよくわからぬのです。私は三十五分までなんであと十五分しかないんです。  それで、具体的に言って、需要者その他のほうにも割り当てをしますということですが、いわゆる実績と将来の政策から見て、中小企業にはウエートを持たせる。それはどこまでか。そして大手は約六〇%を占めておるわけですから、それならば、いつまでもその実績が続くと中小企業の振興というのはなかなかできない。そういうことを踏まえて、どの程度有利になるかということを通産省からお答えをいただくのが筋かもしれませんが、相談をされたり業者との相談にも当たっておられるわけですから、その点をもっと詳しくお話しをいただきたい。
  141. 平松甲子雄

    ○平松説明員 私どもは先ほど申し上げましたように、需要者割り当てという制度を併用してまいりたいというような形を希望いたしておるということでございまして、需要者割り当てということは、製材工場でございますから、製材工場に対して、組織化された製材工場であって、従来商社から直接に購入しておった実績のあるものというものについては少なくとも需要者割り当てをしてほしいということでございまして、商社のほうは通商産業省の所管でございますから、その方面の割り当てをどういうふうな形でおやりになるかということにつきましては、おそらくそういう割り当てのいままでの手法に従ってやられるのではないかというふうに考えております。
  142. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いままでの手法というと、実績主義ですか。
  143. 平松甲子雄

    ○平松説明員 いままでのやり方について私どもで承知いたしております限りにおいては、大体実績主義に多少ニューカマーに対する保留分を保留しておくというようなことが、ほかの物資についても一般でございますので、大体そういうようなことになるのではないかというふうに推測をいたしております。
  144. 野坂浩賢

    ○野坂委員 通産省は石油の関係しかおいでになっておりませんが、委員長を通じて、この問題については通産省から正式にどのような考え方であるかということを、文書回答をいただくように委員長お願いをしておきます。よろしいですね。
  145. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 承知しました。
  146. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、伊藤局長にお尋ねをしますが、いまちょうど私たちのところは田植えが終わったところでありますが、このごろ軽油、灯油等で、田植えあるいは耕運機、こういうものを使う、ところによって非常にそういう油が足らない。五十リットルくらいでかんべんしてくれというようにスタンドの諸君たちが言い出します。これら農業に要する機械等はそのような支障が将来ないかどうか、担当の局長としてはどのような措置をしておるか、お尋ねをしたいと思います。
  147. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 最近、石油関係の製品、ことに農業用に使いますものが逼迫をいたして、日本全国であちこち問題を起こしたわけでございます。これは農業機械の場合には軽油がおもに使われるわけでございますけれども、軽油は、B重油が公害対策というようなことでA重油に切りかえていく、A重油をたくさん使用するということで、同時に生産されます軽油分が減少して軽油の供給が減ってきたというようなことのようでございます。  いずれにいたしましても、こういった石油関係の製品、私どものほうではトラクターでありますとかあるいは乾燥施設等の農業機械あるいは施設の熱源というようなことに使う不可欠なものであります。こういったものが足りなくなりますと、農業生産に重大な影響が来るというようなことは先生御指摘のとおりでございまして、私どもも事態を憂慮いたしまして、実は四月の二十日に私、農蚕園芸局長名をもちまして通産省の鉱山石炭局長、それから石油関係のメーカーの団体でございます石油連盟の会長あてに、農業用のこういう石油製品の確保というようなことで特に御尽力願いたいということの要請を申し上げたわけでございます。通産省のほうにおかれましても、こういった事態のもとで、軽油及びA重油でございますが、そういったものについて増産をするように石油の精製メーカーに対しまして指示をしてくださっております。メーカーのほうも、そういったことからフル操業をやっておりまして、その結果、最近では、こういった品不品の傾向も逐次改善されつつあるというように私どもは承知をいたしておる次第でございます。
  148. 野坂浩賢

    ○野坂委員 通産からおいでをいただいているわけですが、これからの石油の展望について開陳をいただきたいと思います。
  149. 根岸正男

    ○根岸説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘がありましたように、昨年度の末ごろからいろいろ順法闘争あるいはオペックのDD原油の引き取りをめぐる問題とかそのほかエトセトラありまして、いろいろ需要家に御迷惑をかけたということは事実でございまして、たいへん申しわけないと思っております。  それで、特に軽油の事情を中心にして申し上げますと、軽油はそういうようで鉄道輸送の問題がございまして、トラック輸送というものが非常に増大してまいりまして、われわれ供給計画で考えていた以上の需要が出てまいるどいうような問題が出てきておりましたので、三月から石油精製各社に増産を指示いたしました。その結果、ただいまも農林省のほうからお話がありましたように、その間においても農林省から非常に強い御要望その他もございまして、これは当然なことでございますので、われわれとしてもそういう農繁期にどうしても必要とする燃料については優先的にそういう地方に配送するというようなことも指示して対応してまいったわけでございます。  長期的な展望といたしましては、ただいま申し上げましたように、需要動向あるいは需要構造というものが多少以前より変わってきておるという事実を踏まえまして、今後もいまの増産体制を維持していくつもりでございます。そういうことで、われわれとしては、特に在庫状況というものが重要な指針になるものでございまして、この各月末の在庫状況を詳細に監視しながらただいままで増産を進めてきておるわけでございますが、おかげさまで石油精製各社努力しました結果、五月二十八日現在の在庫状況で約百万をこすようなところまでようやくたどりつきました。これは正常在庫として考えますと、大体もう一息で完全な正常在庫になるという状態まで回復したと思っております。いまの在庫状況は、先ほど申し上げました旺盛な需要をカバーしてかっこれだけ在庫を積み増したという状況でございますので、このような努力をしばらく続けてもらえば、十分今年度の需要をカバーしていけるものではないかというふうに考えておるわけでございます。
  150. 野坂浩賢

    ○野坂委員 まだいろいろ質問したいことがありますが、せっかく根岸課長がおいでですから、いま問題になっておりますし、田中総理の訪ソ延期その他日米合同経済委の問題等ありますが、西シベリヤのチュメニの原油受け入れの問題について、五月二十六日の新聞にあなたの名前が載っておりますね。あなたの名前が載って、私の出身地である鳥取県境港市にいわゆるその中継基地を設ける、有力な候補地じゃないかという話もありますね。これについての是非と、それから運輸省がおいでだと思いますが、運輸省の第三港湾建設局長竹内良夫氏が三十日、三十一日においでになって、美保湾に人工島をつくる、それで正式に両県の知事に対して、経済効果のある総合開発計画をやりたいから調査をさせてほしい、その全貌は、人工島をつくっていわゆる石油中継基地及び石油関連産業、そういうものをやるかどうか、あるいはレジャーでやるかどうか、こういうようなことがされておるということが新聞に報じられております。非常に地元では混乱をしておるようですが、その構想と考え方、そして運輸省がそういうレジャーについてまで調査をするものかどうか、それらについての構想をこの際、時間がありませんが、御報告をいただきたい。
  151. 根岸正男

    ○根岸説明員 お答え申し上げます。  いま先生御指摘の二十六日の毎日の夕刊に、非常に大きくチュメニの原油受け入れについての基地建設構想ということで示されているわけでございますが、これはただいま通産省ではこういうような計画はまだ全然検討しておりません。  それから、そのようなことがございますので、私が境港市が有力候補地にあげられているのは事実だと言ったというふうに書いてございますが、まだそういう事実は私、存じておりません。  通産省としてこういう大きなプロジェクトをいままだ何にも検討してないのはおかしいじゃないかという御疑問もあるかと思いますが、われわれとしましては、御承知のとおり、チュメニ原油の受け入れにつきましていま基本的な問題を詰めており、これからいよいよ詳細な詰めに入るというような段階でございまして、原油の受け入れを——はっきり数字もきまっておりませんけれども、三千万ないし四千万という大量の原油を受け入れるというようなことになりますと、そういうこまかい条件がわかりませんと、どこへどういうふうに受け入れるかという計画も立てられないわけでございまして、われわれとしては、そういう詰めが終わりました段階で、あらためてこういうようなことは考える必要があるかと思いますけれども、いまの段階では考える手がかりといいますか、ベースといいますか、そういうものがございませんので、こういう計画は全然まだ考えておりません。
  152. 大久保喜市

    ○大久保説明員 お答え申し上げます。  先生もう御承知のことと存じますが、港湾の開発、管理の主体は、港湾法によりまして、港湾行政は地方自治体の主体性を尊重する精神で進めることになっております。境港は鳥取県と島根県とで一部事務組合としての境港管理組合をつくりまして、その組合が港湾を管理しております。境港は鳥取、島根両県を背後地とした重要な港湾でございまして、新産都市の中核港湾という重要な役割りを持っている関係上、その境港を中心としたこの周辺地域の開発につきましては、港湾管理者の事務当局及びこれの構成母体であります両県当局から、これまでも第三港湾建設局長は専門的な立場での意見を求められてきていた事実がございます。一方、第三港湾建設局は瀬戸内海の海上交通の安全対策検討のためのいろいろな調査を進めてきておりまして、その幾つかの考え方の一つとして、たとえば日本海沿岸の港湾のシーバースを利用して瀬戸内海沿岸地域の石油需要を満たす、こういうような考え方が成り立ち得ないだろうかどうだろうかというようなことを、きわめて初歩的な段階での技術的な検討はやったことがございます。そういうような状況のもとに、五月二十六日の新聞記事で、境港にシーバースをつくり、チュメニの石油を陸揚げして瀬戸内海に運ぶ構想、これを運輸省が検討しているというように報道されまして、実は私どもも驚いたわけでございます。いま申しましたように、まだ運輸省の構想というようなものではございませんで、私どもといたしましては、第三港湾建設局の検討中の問題としましてもまだそういう説明を受けておらないのが現状でございます。ただ、現在、運輸省といたしましては、四十九年度から港湾整備五カ年計画を改定したいと考えておりまして、現在各港湾管理者に五十三年度までの実施すべき港湾整備計画の案を提出を求めております。その過程で、たまたま、五月の二十九日と私、聞き及んでおりますが、鳥取県知事とほか一、二の地元の方と第三港湾建設局長が米子市でお会いになったようでございまして、その席で先ほど御指摘のような、何か第三港湾建設局長が意見を述べたというふうに報道されたわけでございまして、私どもとしましても事実がどういうことであるかということをさっそく問い合わせましたところ、新聞の記事のほうを読みますと、大体局長の話したことに近いのでございますが、見出しがちょっとニュアンスが違っているようでございます。  それで、ここで私どもが局長から聞きました真意を御報告いたしますと、境港を中心とした地域社会の所得水準を引き上げるためには、地域開発を総合的な観点に立って進めるべきであり、自然環境を保全し、生活環境の悪化を極力押え、漁業等の他の空間利用との調整をはかりつつ開発を進めるということが必要である。そういうような観点に立っての工業開発の可能性の限界、こういうようなことを調査する必要があると考えるということを述べたようでございます。たとえば、ということで例示しまして、かりにシーバースが考えられるとしても、これは五月二十六日の新聞記事を引用してのことだと思うのでございますが、シーバースが考えられるとしても、石油産業もあわせて考えるような大規模埋め立てをするかどうか、またそのようなものは全く考えないで、レクリエーション中心の開発をしていくか、あるいはまたその中間的ないろいろな段階があろうと思いますが、そういうようなことをやはり検討する必要があるのではないか。しかし、いずれにしても具体的なビジョンを描くについては住民の意思を十分反映させてきめるべきで、工業開発だけを前提にすべきではないということを、竹内局長は専門的な立場から、これまでいろいろ手がけた経験を足場に、知事さんに申し上げたというのが事実だということでございます。  それからレクリエーションのことにつきましては、これまでもレクリエーション港湾といいますか、ヨットハーバー等につきまして、たとえば湘南港、オリンピックのときに江ノ島にヨットハーバーをつくったり、その後国体の開催地でヨットハーバーをつくったりしてきておりますし、今後もやはり港湾環境整備というようなことで、今後の福祉需要の増大ということにわれわれとしても対処していかなければならない、そういうふうに考えておる次第でございます。
  153. 野坂浩賢

    ○野坂委員 もうこれで終わりますが、参事官、地元ではこういう新聞が出ておるのです。一段全部使って、これなんです。この内容は二十九日に鳥取、三十日に島根県に行って、こう言っておるのですよ。「美保湾に公害のない油基地を建設するための調査をさせてほしい」、中身は「同局長は美保湾を埋め立てて人工島を造り、公害を出さない石油基地を建設する。そのための調査として、人工島を造った場合、自然景観がどう変わるか。またどんな工場が進出し、」云々と書いて、これについてアメリカのコンサルタントに依頼して調査する、こういうことを言っているのです。だから、非常に具体的に出しておる。だから、漁協の諸君は大挙県庁に押しかけておるのですよ。あなたが言っておるようなそういう事態に地元はないですよ。非常に重大な問題として取り扱われておる。あなたのはただ、行ったついでに半ばいいかげんにものを言ったというようなものの言い方ですけれども、そうじゃないですよ、それだけ権威のある人なんですから。これは全然そういうことはなかったということなんですか。あったけれども、まあ話として将来の開発計画等をいろいろ話し合った中で、たまたま話が出たということにしては、通産省の根岸さんの問題もいま全然知らぬ、あれはでたらめだというような話もありましたが、そういうことが一連の動きとして出ておる。そして、これは一昨年ごろから話があったことなんです。そういう点については、何らそういうふうな計画なり動きというものはほんとうにないんですか。  時間がありませんから、それで打ち切りますが、もっと真相があれば話してもらいたいし、竹内局長に行ってこれを話せと言われたのが運輸大臣なのか、港湾建設局長なのか、全く自分一人で行ったものか、何ら本省のほうは連絡はないのか、その点についてもあわせて御報告をいただきたい。
  154. 大久保喜市

    ○大久保説明員 お答え申し上げます。  いまの、竹内局長が鳥取、島根に行きました点は、大臣の指示を受けて行ったものではございませんで、先ほど申し上げましたように、港湾整備五カ年計画の改定をするにあたりまして、いろいろと地域の問題がございます、そういうようなことで意見を求められた、それで行ったわけでございます。  それで、いまの工業開発の限界ということでございますが、実は経済企画庁の予算で調査調整費というのがございます。その調査調整費というのは、いろいろ開発計画をする上において調査しなければならないものを調査費を投じて調査をするわけでございますが、その調査費を使って開発の可能性の限界というものを調査してはどうかということを竹内局長は申し上げたそうでございます。  それからアメリカのコンサルタントというのは、これはあそこの地域ではございませんで、違う地域で、たまたまこれまでの日本のいろいろ開発の計画の調査というやり方とは非常に違った形での調査をやった実例がありまして、それを知りまして、やはりこれからの開発計画をするにあたりましては、その地域の住民方々がどういうことを望んでいるか、どういうことを希望しているかということをよく整理しまして、それをコンピューターを駆使しまして、その条件を満たすような開発のあり方というのはどういうことであるかということをやる、そういう手法だそうでございまして、そういうような手法がここの場合にも応用できるのではないかという提案をしたように聞き及んでおります。
  155. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これで終わりますが、竹内局長が行った真の目的は、経済企画庁のその調査費の話だけで行ったんですか。これは、これをやらせてくれというふうに正式に県に申し入れたというふうに私たちは理解しておりますが、そうではなくて、調査費の使い方について話し合ったということなんですか、ただ単に。一言だけでいいですから、答えてください。
  156. 大久保喜市

    ○大久保説明員 お答えします。  主としてその調査調整費のことと聞き及んでおります。
  157. 野坂浩賢

    ○野坂委員 終わります。
  158. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次に、諫山博君。
  159. 諫山博

    ○諫山委員 水俣病について質問します。  第三水俣病が発見されたことは私たちにとってはたいへんなショックです。危険性があるのじゃないかと予想して、調査して患者が出てきたのではなくて、ここならだいじょうぶだろうという立場から、水俣湾と比較的対照する地域として有明町を選んだ。ところが、この有明町から患者が出た。こういう経過でありますから、もっと被害が拡大するのではないかという心配が出てきたのは当然です。そして私たちの心配が不幸にして裏づけられて、熊本県の宇土市ではすでに二名の死亡者が出ていたということも発表されました。この水俣病問題では他の委員会でも論議されたし、この委員会でもいろいろ討論されたようでありますから、私は魚の問題漁民に対する補償の問題を中心にお聞きしたいと思います。  まず水産庁お答え願いたいのですが、第一次の水俣病あるいは今度発見された第三水俣病によって漁民がどれだけの被害を受けてきたのか、その金額は幾らになっているのか、つかんでおられましょうか。
  160. 安福数夫

    ○安福政府委員 お答えいたします。  前後二回にわたりまして水俣湾の漁獲の自主規制という名の漁獲停止が行なわれたわけでございますけれども、その間被害総額につきましては、私どものほうでは必ずしもはっきりいたしておりません。これは県自体も操業の実態なりあるいは操業の期間なり、そういったことがどうなるかという関係が必ずしもはっきりしないということで、現在におきましては総額についてはつかんでおらないという状態でございまして、実態を踏まえまして、県とも十分連絡をとりながら、被害総額はつかみたい、このように考えております。
  161. 諫山博

    ○諫山委員 水俣湾における漁民被害というのは、この二、三年来起こったことではありません。ずいぶん前から水俣の漁民被害を受けているわけですが、これは調査をしたけれども、被害がつかめないでいるというのでしょうか、それとも被害調査はまだしていないのでしょうか。
  162. 安福数夫

    ○安福政府委員 第一次は三十二年ですか、三十三年から三十九年にわたってかなり長期間にわたりましてそういう自主規制的なものが行なわれた、こういうふうに承知しております。その間の全損害額につきまして必ずしも私のほうに県から参っておりませんで、その実態につきましてははっきりいたしておりません。今回の第二回目の場合には、われわれといたしましても、今後どういう実態になるかということを十分県とも連絡をとりながら、今後の問題として被害の実態を把握することに努力したい、このように考えております。
  163. 諫山博

    ○諫山委員 公害がこれだけ世間で騒がれているのに被害の実情もつかんでいないというのはあまりにも怠慢過ぎます。  そこで、さっきの私の質問に関して、漁民被害はどれだけかという問いに対して、自主規制を対象にして考えておられるようなことばがあったのですが、自主規制による漁獲減だけが水俣病の被害と理解されているのでしょうか。
  164. 安福数夫

    ○安福政府委員 こういう自主規制によりまして、直接、間接の被害があると思います。直接的には、漁業がやられない、こういうことでございますから、漁獲の水揚げが減る、それに関連いたしまして、とった魚の価格も下落する。こういう問題が直接的な漁民の受ける損害だろうと私ども考えます。  また、そのほかに、間接的な問題といたしましては、そこでは漁業ができない、そういう関係で、あるいは外のほうに漁業を転換していく。その間に、それがプラスマイナスどう働くかという問題。確かにこれは、経過的には、なれない漁業従事するという場合には、おそらくどうしても間接的なその面での損害が出てくる、あるいは精神的な問題もあるだろう。いろいろ派生する問題が、かなりの分野にそういう間接的な損害被害、こういうものが出てくる、こういうふうに私どもは考えております。
  165. 諫山博

    ○諫山委員 水俣病による漁民被害というのは簡単なものではありません。自主規制によって魚の漁獲高が減る。もちろんこれは損害です。しかし、それ以外にもさまざまな種類の損害があるわけです。そして、この点を正確につかむことなしには、私は漁民に対する完全な対策は生まれてこないと思います。  いまのところ、水産庁としては、永俣病による漁民被害をほとんど掌握していないようですが、現在そのための作業を進めているのでしょうか。
  166. 荒勝巖

    荒勝政府委員 どうもおそくなりまして……。  水俣病による漁民漁獲量の減収といいますか、そういう被害の状況については、従来特に調査をした経緯はございませんので、実態はあまりつかんでおりません。
  167. 諫山博

    ○諫山委員 いま実態をつかんでいないというのは、私はまことに怠慢だと思います。  現在実態をつかむ努力をしているのかどうか。しているとすれば、いつごろそれがわかるかということをお聞きします。
  168. 荒勝巖

    荒勝政府委員 県のほうにそういう調査を依頼していることは事実でございますが、県からまだいただいておりませんので、特に調査はいたしておりません。
  169. 諫山博

    ○諫山委員 私は、正直言って、あきれているのです。これだけ騒がれているのに、被害を掌握していない。それどころか、いまなお被害を掌握する努力をしようとしていないというのは、何ごとですか。  新聞を見てみると、やれ立法措置がどうだの、いろいろなことが書かれています。しかし、被害をつかもうとする努力なしに、何が実りますか。この点、長官としてはどう考えているのか、御説明下さい。
  170. 荒勝巖

    荒勝政府委員 実は、私のほうの調査といたしまして、水俣の今後の、並びにこの第三次と申しますか、水俣病の発生ということで、水銀による魚類の汚染状況をもう一度有明海あるいは不知火湾を含めまして早急に調査をいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  171. 諫山博

    ○諫山委員 この問題で、現地では漁民が県庁に押しかけて、被害の要求をする。この間は、国会にも現地漁業組合の代表が来て、政府にもいろいろ陳情したはずです。共産党にも陳情に来られました。そして、私は漁民代表の方からなまなましい実情を聞きました。ところが、これから調査するつもりだ、というのは、私はまことにけしからぬと思います。この実情は私は率直に地元に知らせます。  そこで、いつごろまでに調査を終わるつもりか。また、その場合、調査の方法として、どういう損害を調べるつもりなのか、御説明願いたいと思います。
  172. 荒勝巖

    荒勝政府委員 先般、この第三次水俣病の発生いたします前後に、熊本へ私たちの担当官も参りまして、またその前後でございましたが、三木環境庁長官もお出でになられたと思います。また、その後熊本の知事もお見えになりまして、早急にこういった被害についての対策を講ずるということで、四点ないし五点ほどの御要望を私たちはいただいた次第でございます。それにつきまして私たちといたしましては、原則的に何とかして応援をさせていただきます、当然また政府としてもこの問題は県と十分に協議の上で実行いたしますということで、早急に県から具体的な考え方について数字を基礎にしてひとつ提出していただきたい、そうすれば、私のほうとしても早急に対策をしていきます、こういう話になっております。  その中に、水俣湾の従来の第一次水俣病の関係でございますが、被害に対する援助のあり方ということが四点ほど要望があったことについて、私たちは検討させていただきたい、こういうように思っております。
  173. 諫山博

    ○諫山委員 私の質問は、いつごろまでに被害調査を終わるのか。またその場合、調査する被害内容は、どういう被害を考えているのか。直接、間接さまざまな被害があるわけですが、いつごろまでに調査を終わるということは、ここで約束できませんか。
  174. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私たちといたしまして、水俣の問題の魚類の被害状況につきましては、環境庁を中心にいたしまして現在分析方法の検討をいたしておりまして、これにつきましては、早急に結論を出して、水俣の水銀の汚染状況を調査いたしたい、こういうように考えております。  また、それに伴います漁民方々漁獲量の減少等の被害状況につきましては、これは県を通じて早急に出していただくように督促いたしたい、こういうように思っております。
  175. 諫山博

    ○諫山委員 最近の新聞を見ていますと、農林省のことばかり出ていますよ。お米のことが出る、木材のことが出る、魚のことが出る、野菜のことが出る。農林省というのはいま時の省になっているわけです。これほど問題は深刻になっているのに、いままで水俣病に対して農林省が何一つ取り組もうとしなかったということを、私は非常に遺憾に思います。  私は初めに申し上げましたように、水俣病に関する漁業補償を中心に質問するつもりでした。ところが、被害を掌握していないというのであれば、責任ある回答が出てくるはずはないではないですか。きょうの新聞には、この漁業被害の問題で立法措置を考えたい、今回会にもこれを上程したいというようなことが書いてあります。これだけを見ますと、農林省もいよいよ漁民のことを考えてくれたか、こういうふうに人は受け取ると思います。しかし、いまの答弁の内容は何ですか、これは。だとすれば、きょうの新聞記事というのは、あれは人気取りの発表にすぎないのかというふうにならざるを得ません。  いずれにしましても、すでに第一次水俣病、第三次水俣病で漁民が数億の被害を受けていることは明らかです。この被害に対して、いままで加害企業なり、国、自治体からどの程度の補償がされているのか、御承知でしょうか。
  176. 荒勝巖

    荒勝政府委員 この第一水俣病の発生後の水俣湾の漁業の補償につきましては、県から聞きましたところ、これはチッソのほうで補償が行なわれておるというふうなお話でありましたので、私のほうといたしましてはそのつもりで指導しておったわけでございます。と申しますのは、私たちの政府部内におきます一つの姿勢といたしましては、原因者負担の原則という原則で政府はまいっておりますし、またその線で従来からそのほかの被害につきましても指導してきておりますので、私のほうはそういうことで終始してきた、こういうふうに御了承願いたいと思います。
  177. 諫山博

    ○諫山委員 いまの説明もきわめて重大です。第一水俣病の被害に対しては、チッソがすでに賠償しているから、賠償問題は解決しているという立場ですか。
  178. 荒勝巖

    荒勝政府委員 賠償といいますか、問題が全部片づいておるとは私のほうも思っておりませんでした。ただ、第一水俣病が発生してから、実は私たち水産庁といたしまして、県からもその補償の問題についてあらためて深い御要求もなかったというようなこともありまして、従来、この問題はおおむね片づいておるのではなかろうか、こういうふうに理解しておった次第でございます。
  179. 諫山博

    ○諫山委員 私は率直に言って憤りを覚えています。あなたはこの間熊本地方裁判所で水俣病の判決が出たのを知っているでしょう。あの中でチッソが患者に支払った金がどういう評価を受けたか知らないのですか。いわゆる見舞い金契約に対して熊本地方裁判所がどういう判断を示したか知りませんか。
  180. 荒勝巖

    荒勝政府委員 新聞を読ましていただいた限りにおきまして、この裁判の結果が、チッソの支払った額並びにその内容については十分でないというふうに判決は書いてあったというふうに理解しております。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  181. 諫山博

    ○諫山委員 判決の立場はそういうことではありません。あなたは水俣病を人ごとのように考えていたと思います。見舞い金契約は無効だといっているのです。公序良俗に反する、民法第九十条に従って無効だ、かりにチッソが一切解決したと主張していたところで、そういうことは無効だといっているのが水俣病の判決じゃないですか。あなたのさっきの答弁を聞いていると、公害企業であるチッソが金を払った、だから基本的には第一次水俣病については解決している、こういう立場で何でこの行政がやれますか。どう思いますか。
  182. 荒勝巖

    荒勝政府委員 漁業補償についての補償問題がチッソと地元漁民との間で行なわれており、またそれがいままで私たちのほうに、非常に不当であるというふうな異議と申しますか申し立てもございませんでしたし、県からも強いいろいろな御説明もなかったので、ある程度進んでおったのではなかろうか、こういうふうに理解しておったというふうに御理解願いたいと思います。
  183. 諫山博

    ○諫山委員 あなたの答弁を言いかえると、こういうことです。患者さんたちは強い運動を起こして、強い要求をした、しかし漁民の人たちは別に不満の声もあげない、たいして要求もしていないようだ、だから関心を払わなかった、こういうことじゃないですか。あなたが熊本でそういうことを言ったら、袋だたきにされますよ。そんな簡単な問題じゃないのです。  そこで、あらためて質問いたします。  自主規制ということばがあなたの口から出ました。これは漁民が自主的に漁獲を規制しているのですか、それともだれかが求めているのですか。
  184. 荒勝巖

    荒勝政府委員 この自主規制と申しますか、私たちのほうでは、これは法のあるいは不備かもわかりませんが、かりに汚染を受けた魚の海域が発見されたといたしましても、これについて私のほうで、漁業法の立場では、どの条文を適用いたしましても、禁止の規定がない。いろいろと政府部内でも検討いたしましたが、しいて言えば、食品衛生法に基づく販売の制限もしくは規制しかないというようなことで、漁獲の制限ということについては自主規制という形でお願いする以外に手がないのじゃなかろうかということで、従来から話し合いの中で態本県庁と話し合いをして、自主規制という形で漁業協同組合に指導した、こういうふうな経緯と理解しております。
  185. 諫山博

    ○諫山委員 ことばは自主規制であるけれども、態本の知事の要請の従って漁民が規制しておるのですから、結果的には規制が強制されたことになると思います。そしてこの自主規制なるものによって漁民が大きな被害を受けておることは当然です。これに対してはだれかが補償しましたか。
  186. 荒勝巖

    荒勝政府委員 先ほど申し上げましたように、政府といたしましては、原因者負担の原則ということで従来からそういう姿勢でございますので、当然にチッソのほうで補償されるべきものというふうに私たちのほうとしては理解しておった次第でございます。
  187. 諫山博

    ○諫山委員 当然補償さるべきものと理解していたのはけつこうですが、いままでの分は補償されましたか。
  188. 荒勝巖

    荒勝政府委員 先ほど御説明したように、十分な補償が行なわれておったとはいまの段階においては思っておりません。
  189. 諫山博

    ○諫山委員 環境庁のほうにお聞きします。  いま水俣病に関する漁業補償で質問しましたが、水産庁としては漁民に対する補償は基本的には済んでおる、不十分さはあるけれども、基本的にはチッソが補償しておるという立場のようですが、環境庁はどう理解していますか。
  190. 山本宜正

    ○山本説明員 私、公害による健康被害の救済の問題を所管しております。したがいまして、漁業補償全体についてのお答えをすることはたいへん私としてはむずかしいわけでございますが、いままで聞いたところでは、漁民等が必ずしも十分な補償を受けていないということを声としては聞いております。
  191. 諫山博

    ○諫山委員 私はこの委員会に水俣の漁民がおられなかったことを非常に残念に思います。率直にこういう実情を私は見てもらいたいのです。そして、近く農林水産委員会現地に視察に行くそうですから、そこで同じようなことを言ってきなさい。みんながどういう反応を示すか、政府は、一貫して漁獲を禁止することはできない、これは食品衛生法上そういう仕組みになっていないというふうに言われているのですが、販売を禁止することはできるが漁獲を禁止することはできないというのが農林省の見解ですか。
  192. 荒勝巖

    荒勝政府委員 農林省といいますか、水産庁関係法規を調べた結果の結論でございますが、水産関係の法規では、漁獲の規制をすることはできない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  193. 諫山博

    ○諫山委員 販売についても質問しましたが、いかがでしょうか。
  194. 荒勝巖

    荒勝政府委員 これは先ほど申し上げたので触れなかったのですが、私たちの感じでは、食品衛生法による規制が根拠になるものと理解しておる次第でございます。
  195. 諫山博

    ○諫山委員 つまり販売は禁止できるが漁獲は禁止できないという意味ですか。
  196. 荒勝巖

    荒勝政府委員 そのように理解しておる次第でございます。
  197. 諫山博

    ○諫山委員 厚生省にお聞きしますが、食品衛生法では販売の用に供する食品または添加物の採取、製造などは云々というふうに掲げられて、採取も禁止しているように読めるのですが、魚をとるのはこれに当たらないのですか、見解はいかがでしょう。
  198. 岡部祥治

    ○岡部説明員 食品衛生法では販売の用に供するための採取、製造という書き方でございます。なお、先生御存じのように、特に営業につきましては、業として食品を製造し、販売しときめられておりまして、「但し、農業及び水産業における食品の採取業は、これを含まない。」と規定をしておるわけでございます。
  199. 諫山博

    ○諫山委員 厚生省にさらにお聞きします。  販売は禁止できるという立場のようですが、販売を禁止すれば当然損害を受ける人が出てきます。販売を禁止されて損害を受けた人に対する補償はどうなっているのでしょうか。
  200. 岡部祥治

    ○岡部説明員 食品衛生法のたてまえでは、販売の禁止のために損害を受けたものの補償ということには規定がございません。
  201. 諫山博

    ○諫山委員 政府は禁止はするけれども、それに対するしりぬぐいはしないというのはずる過ぎると思います。禁止をする以上は、当然それに対する損害をどう解決するかという問題を取り上げなければならないはずです。憲法第二十九条にそのことを規定しています。この点についていま非常に論議が燃え上がっているわけですが、厚生省としては改めるという方向で検討しているのかどうか、お聞きします。
  202. 岡部祥治

    ○岡部説明員 食品衛生法のたてまえは、一応営業者が違反等のために公衆衛生上危害を及ぼすおそれのあるものを原則として禁止しておるというような経緯がございますので、現在までそういう問題について十分な検討は行なわれておりません。
  203. 諫山博

    ○諫山委員 水産庁長官にもう一度お伺いします。いま私が指摘した問題、漁業法や食品衛生法などのいろいろな問題について現行法上不備があるから新しい法律をつくりたい、しかもそれは遠い将来ではなくて、本国会にこれを上程するようにしたいということが、きょうの新聞に報道されています。そういう方針が農林省で出ているのでしょうか。
  204. 荒勝巖

    荒勝政府委員 実は私といたしましてもけさの新聞を見たのでございますが、当農林省といたしましては、きのうもこの委員会でいろいろな御質問があったわけでありますが、確かに現在の漁業法のたてまえからいたしますと、先ほど申し上げたように、禁止という措置をとる条文が見当たらない。といって直ちに新しく規制問題を何らかの形で行なうかということになりますと、先ほど問題にもなっておりますように、補償の問題が当然一つの、まあ裏表といいますが、議論の対象になるので、いま水産庁でもたいへんな論議を呼んで議論している最中でございます。まだそれについて確実な検討は終わってないということをこの委員会では申し上げたつもりでございますが、いずれにしても、ほっておくわけにはいかないのではなかろうか、こういうふうに私は考えております。
  205. 諫山博

    ○諫山委員 私はきょうの西日本新聞をここに持ってきました。見出しは「汚染魚介 捕獲規制や補償の立法化 水産庁方針今国会に提出」、これが見出しです。そして中身はいま言ったように、漁業法や食品衛生法などを改正するのでは無理があるから、思い切って独立立法を考えている、しかも本国会にも提出したい考えであるというふうに書かれていますが、これは誤報ですか。
  206. 荒勝巖

    荒勝政府委員 早急に検討いたしたいということは申し上げたつもりでございますが、また現在議論を呼んでいるということも申し上げたつもりでございますが、あとで速記録でお調べ願ってもけっこうでございますが、この国会中に提出するということは申し上げた記憶は実はないのでございます。
  207. 諫山博

    ○諫山委員 一週間前も田中総理の発言をめぐって新聞記事が問題になりました。そしてあれは新聞がかってに書いているのだということですが、きょうの答弁もどうも同じような結論に落ちついたようです。  そうすると、いまの法律が非常に不備だ、何とかしてこれを完全なものにしたいということだけははっきりしているようですが、どの点に不備があるとお考えですか。
  208. 荒勝巖

    荒勝政府委員 現在の漁業法というものを私たちの立場で理解している限りにおきまして、漁業法は漁業振興なりあるいはその紛争の調停といいますか、そういう漁業調整ということをたてまえとして一般的法律体系が仕組まれておりまして、第一条の法の目的もごらん願えばそう書いてあります。したがいまして、公害によって汚染された魚が発見された場合、その水域についての規制を行なうというふうなことについては、法体系としてどうもなじまないのではなかろうか、私たちの内部の議論ではそういう議論がございまして、われわれとしましては、漁業法の一部改正ではどうも無理があるしたがいましてこれは別の体系で検討しなければならないのではなかろうかというふうに、いまの時点におきましては理解している次第でございます。
  209. 諫山博

    ○諫山委員 この問題の考え方は、基本的には完全な補償を要件とした漁獲禁止、販売禁止だと私たちは考えていますが、この点いかがでしょうか。
  210. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私たちのほうも公害の問題について、とかく最近の発生状況が非常に多様性あるいは複雑な形をとって出てきておりますので、そういった全般的な公害問題も頭に浮かべながら先ほどの法律問題に対処してまいりたいと思っておりますが、今回の水俣病の水銀中毒といいますか、第三水俣病のような場合の魚類の水銀による汚染ということにつきましては、私たちといたしましては、この補償という場合におきましても、やはりたてまえといたしましては原因者負担の原則というものが、いまの時点におきましては、そういう立場で表現せざるを得ないのではなかろうか、こういうふうに考えている次第でございます。
  211. 諫山博

    ○諫山委員 こういう文章があります。濃厚に汚染された水俣湾内外の魚介類の捕獲、販売は、漁民や鮮魚商に対する十分な補償を前提として直ちにやめること、これに水産庁は賛成でしょうか。
  212. 荒勝巖

    荒勝政府委員 水産庁といたしましては、やはり何度も申し上げるようでございますが、あくまで原因者が相当はっきりしているというものにつきましては、原因者負担の原則ということで整理さしていただきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  213. 諫山博

    ○諫山委員 私も原因者負担の原則というのは賛成です。しかし、問題は第三水俣病の問題です。この場合は、まだ最終的には加害企業が確定していません。こういう場合、水産庁としては漁民に対する補償をどう考えていますか。
  214. 荒勝巖

    荒勝政府委員 この前申し上げましたように、原因者が明確な場合におきましては明らかに原因者負担の原則でございますが、先ほど申し上げましたように、公害というのが非常に複雑多様性な形をとってきておりますので、その原因者が明らかでない場合の対策ということをどうするか。また、かりに原因者が相当はっきりしておっても、何らかの事由によって原因者が、あるいは支払い能力がないといいますか、支払うことができないような事態も場合によっては考えられましょうし、また相当長期にわたる支払いということも考えられる。こういったことをどういうふうな形で問題を整理していくかということが、私たちの公害問題に対処する法律論として非常に内部で論議を呼んでおる。あるいは御質問の趣旨と少し違うかもわかりませんが、たとえば瀬戸内海の赤潮のように、どうも私たちから見れば、やはり相当な公害による結果だ、こういうふうには理解しておりますが、あれが非常に不特定多数の原因によって発生したものというふうにいたしますと、原因者がもう一つはっきりしない。この問題をではどうするかというようなことが現在問題になっておりまして、原因者がはっきりしないからといってそれがまた直ちに、そのかわり政府なり政府関係機関がその支払いを、補償を行なうかというふうに論理が変わることにつきましても、まだ相当検討すべき余地が残っておるのではなかろうか、こういうふうに考えている次第でございます。
  215. 諫山博

    ○諫山委員 この問題で私たちの党の議員団は、政府に正式に申し入れ書を差し出しています。この申し入れ書には、補償は汚染者負担の原則に従いチッソが負担することを前提として、政府、県が必要あれば補償の立てかえ払いを行なうことという内容を盛り込んでおります。加害者が負担するというのは大原則です。この加害者がはっきりしないような場合には、政府や県が補償の立てかえ払いをするということを考えろという申し入れです。この点はいま水産庁で検討中だそうでありますから、ぜひ私たちの提案を御検討いただきたいと思います。  ところで、いま水俣湾では魚はとられていませんか。
  216. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私たちの県から聞いています報告によれば、水俣湾内では漁獲がされていない。かりにそれはとれました場合におきましても、チッソのほうでそれを補償しておられるというふうに報告を聞いている次第でございます。
  217. 諫山博

    ○諫山委員 水俣湾では魚はとっているのですか、とっていないのですか。
  218. 荒勝巖

    荒勝政府委員 組合によりまして自主規制という形でとってない、こういうふうに報告を聞いている次第でございます。
  219. 諫山博

    ○諫山委員 この点正確につかんでいるのですか。あなたの発言では、とっていたとすればチッソが負担することにしていると言うから、とっているようにも聞こえるし、しかし、問題は水俣湾だけではないわけです。水俣湾というのは小さな一つの湾でしょう。そしてあそこではボラとか、いろいろ泳ぎ回る魚がおります。そうすると、あの狭い水俣湾だけを自主規制して、それで効果的な対策と言えましょうか。
  220. 荒勝巖

    荒勝政府委員 このつい最近までの、第三次水俣病が発生する前のこの四月くらいまでの経緯でございますが、その時点におきましては、水俣湾が問題であって、多少その周辺にも影響力があるということで、政府部内では、それを埋め立てもしくはしゅんせつで改善していくという方向で検討しておったいきさつがございますが、今回の第三次水俣病が発見されましたことを契機といたしまして、今後さらに広範な地域にわたりまして水産資源の汚濁状態を判断の上、さらに広範な形で埋め立てを行なうかどうかということが、新しく現在環境庁を中心として論議を呼んでおる次第でございます。
  221. 諫山博

    ○諫山委員 私はそんなことは聞いておりません。あの狭い水俣湾だけで漁業を規制したところでたいしたことはないじゃないかと聞いているんです。たとえば第三水俣病の発生源と見られている日本合成の宇土工場と有明町とどのくらい離れているか、知っていますか。
  222. 荒勝巖

    荒勝政府委員 地図で拝見さしていただいております。
  223. 諫山博

    ○諫山委員 日本合成の宇土工場の廃液が有明町までもよごすとすれば、はるかに膨大な水銀を流したチッソの危険性というのがさらに広範囲だということは子供にもわかるでしょう。あの狭い水俣湾だけを自主規制するというのは、子供だましにはなるかもしれません、世間をごまかすものにはなるかもしれません。しかし、水俣病の発生を予防する措置としてはほとんど意味がないじゃないですか。いかがですか。
  224. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私も熊本医大で今回発表されました有明あるいは不知火湾を含む汚染状況の報告は読ましていただきましたが、その中におきましても、過去において非常に汚染された痕跡があるというふうなことで、その原因者が何であるかということについてはまだ明確に熊本医大の報告にも書かれてなかったというふうに理解しておりまして、この問題はやはり政府水産庁のみならず政府全部で原因は究明するとともに、魚がどの程度さらに汚染されているかにつきましては、水産庁といたしましても調査を早急に開始いたしたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  225. 諫山博

    ○諫山委員 私は率直に言って、水産庁のあまりにも消極的な、あまりにも逃げ腰の態度にあきれています。私は水俣に行って何回となく漁民と話し合いをしてきました。あの人たちは毒を含んでいるような魚はとりたくないと言うのですよ。しかし、食うていくためにはとらざるを得ない。だから、自分たちの希望としては、もっと広範囲に漁獲を禁止してもらっていい。それのほうが安心だ。しかし、もちろんそれには十分な補償をしていただきたい。これが漁民の率直な声です。あの広い不知火湾のほんの小さな一角、ここで魚はとっていけませんよと言ってみたところで、貝類ならそれできき目があるかもしれません。海をぐるぐる泳ぎ回っている魚に対して何の効果がありますか。しかもあそこはボラとかタイとか、いろいろ泳ぎ回る魚が非常によくとれるところです。だから、私はいまの答弁で見る限り、水産庁が本気に水俣病に取り組んでいるとはとうてい考えられません。  そこで、この問題に対して環境庁としてはどう考えておられるのか、お聞きしたいと思います。漁獲規制の問題です。——相談しないと結論が出ませんか。環境庁として独自の立場を説明しなさい。
  226. 山本宜正

    ○山本説明員 公害保健課長としましてお答えいたします。  私のほうで、漁獲規制という問題につきましては、特に指示なり県の指導なりということが実はできないわけでございます。したがいまして、今度の問題につきましては関係省庁で連絡をしながら、それぞれの責任体制に応じて指導なり対策をとっていく、こういうことにしているわけでございます。
  227. 諫山博

    ○諫山委員 私が聞いているのは、いまのままでは危険じゃないかということです。あの狭い湾については、強制力のない自主規制が行なわれている。しかし、膨大な不知火海というのは野放しだ。これではますます患者が広がるんじゃないかということを聞いているのです。環境庁、どうですか。
  228. 山本宜正

    ○山本説明員 武内先生の報告書並びに武内先生の見解を私どもが直接聞いたわけでございますが、現在のレベルにおける不知火海——もちろん水俣湾周辺は除きますが、不知火海及び有明海の程度の魚の汚染では問題がない、こういうぐあいに武内先生はおっしゃっておられます。
  229. 諫山博

    ○諫山委員 いま新聞で報道されているのは、熊本県とか福岡県が有明海の魚はだいじょうぶだだいじょうぶだと宣伝している、しかし、熊大の研究陣はそんなことは言った覚えがないと言っているのですよ、有明海について。まして不知火海について、環境庁はあの水俣湾の周辺以外は危険性がないという立場で行政を担当しているのですか。あの水俣湾のほんの一角だけを漁業規制すれば、魚が幾ら泳いで回ろうとも、そんなことはたいしたことでないと思っているのですか。これも重大なことですから、責任ある答弁をしてください。
  230. 山本宜正

    ○山本説明員 重ねたお答えになるかと思いますが、私ども、武内研究班の報告につきましては、現地に参りまして武内先生から直接お聞きいたしました。その内容といたしましては、いま申し上げましたように、水俣湾及び恋路島の周辺は、多食することについては危険があると思うけれども、不知火海及び有明海については危険はないというような表現をしておられましたので、それを受け取ってお答えしたわけでございます。
  231. 諫山博

    ○諫山委員 共産党の大会決定では、公害というのは緩慢なる殺人だというふうに規定しています。そして、いまの農林省環境庁の説明を聞いていて、この緩慢な殺人行為が現在もやはり公然と熊本県で行なわれているということに私は憤りを感じます。  常識で考えてみてください。海はずっとつながっているのですよ。魚は泳ぎ回っているのです。佐賀県の水産試験場の研究によると、水俣湾で放った魚が長崎県の五島でとれているでしょう。タイが泳ぎ回っているのは常識じゃないですか。あの狭い一角だけ自主規制をしております、それでけっこうでございますというようなことで、水俣病がなくなりますか。おそらく新しい患者が発見されるだけではなくて、新しい患者が現在も生まれていると思います。こういう状態に対して、第一次の責任を負わなければならないのはもちろん加害企業です。しかし、それに対してもっときびしい対策をとることのできる水産庁環境庁が、ほとんど効果的な対策を打っていない。そして、新聞だけにはいかにも何か非常にすばらしいことでもやっているような宣伝がされているということを、私は憤りをもってきょう聞きました。皆さんは、今度水俣に行かれたら、いまのとおりのことを率直に言っていただきたいと思います。どのくらい皆さんが攻撃を受けるか。いまのわが国の公害の問題というのはそういうなまやさしい政府の姿勢で解決できる問題ではありません。環境庁農林省も、私たちが政府に対して申し入れた文書を熟読して、もっと抜本的な対策を講じていただくように要求して、質問を終わります。
  232. 佐々木義武

  233. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 水俣病対策並びに第三水俣病等につきまして、環境庁をはじめ関係各省庁に質問いたします。  水俣、新潟に続きまして有明海に第三の水俣病が発生していたという報告が、去る五月二十二日、熊本大学第二次水俣病研究班班長武内忠男医学部教授から熊本県の沢田知事に提出されまして、世間は驚いてこれを受けとめたわけであります。この報告は、同研究班が熊本県の委託を受けて四十六年から二年がかりで行なった「十年後の水俣病に関する疫学的、臨床医学的ならびに病理学的研究」の最終報告となっておるわけでありますが、事実、私たちも、まさかと思ったことが報道されましてショックを受けたわけであります。その間の経緯はテレビ、新聞、ラジオ等でもるる報道されて今日に至っておりますが、直ちに私は、去る五月二十三日、三木環境庁長官に七項目の申し入れをいたしまして、翌二十四日から二十五日の二日間にわたって現地をつまびらかに調査をしてまいりました。もちろん福岡県の大牟田三井東圧の関係も調べてまいったわけであります。また来たる九日から十一日の三日間、当委員会でも現地被害をつまびらかに調査いたしまして、検討することになりましたが、この調査を前に、国においても現在対策をとって鋭意努力しておられることも私は承知しておりますけれども、事が事だけにたくさんの問題を含んでおります。そういったことで、限られた時間内で重要な点を、以下はしょって質問申し上げますので、関係当局は責任ある明快な答弁をされるように、まず冒頭にお願いをするわけです。  最初に、これは環境庁並びに各関係省庁にお伺いしますが、今回の武内教授のこの研究発表について、どういうふうに評価し、受けとめておられるか、この点からひとつ率直に簡単にお答えをいただきたい。
  234. 山本宜正

    ○山本説明員 これは熊本県から熊本大学に委託しました研究でございまして、私ども前年の分につきましての報告書も読ましていただきましたが、今回、五月二十二日に熊本県がその第二年度の結果を発表したわけであります。私どもも事の重大さに驚きまして、急遽武内先生から直接具体的な調査報告の内容を聞くために現地におもむきました。研究班といたしましても、いわゆる比較対照のために患者が出ないであろうと推定した有明町から水俣病によく似た症状の患者が出ているということでございますし、今後の有明海の汚染の問題に関係がございますので、そういう意味で行政的に直ちにいろいろなアクションをとらなければならない、かように受けとめたわけでございます。
  235. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の関係環境庁代表して聞きますが、今回の武内教授の研究発表は高く評価しておられますかどうですか。
  236. 山本宜正

    ○山本説明員 当然のことながら、耳をかさなければならない重要な報告だと存じております。
  237. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 環境庁並びに厚生省等の対策がいろいろとられておりますが、この責任体制はどうなっているか。これは水俣病にかかわらず、有明第三水俣病、また全国各地にいま発生をしておりますが、それらを含めまして、今後水銀汚染等によるこういったものに対する責任体制はどうなっているか、明確にお答えいただきたい。
  238. 山本宜正

    ○山本説明員 今日公害対策につきましては環境庁におきまして調整機能を持っておるわけでございます。従来もまた今後も、今日この報告書に基づく水俣病の対策につきましては、関係いたします省庁といたしましては環境庁、厚生省、通産省、水産庁それから建設省、運輸省、こういう多岐にわたっております。したがいまして、現在環境庁の企画調整局及び水質保全局におきまして、関係の省庁の相互の連絡を緊密にはかる意味での各省連絡会を催しておりますし、また現地にいたしましても、この武内報告書につきましては、熊本県のみならず福岡県、佐賀県、長崎県という各県にわたりますので、これらの県につきましてもそれぞれの分野に応じた担当者を集めまして、対策についての協議を進め、遺憾なきを期していくという責任体制になっております。
  239. 山中和

    ○山中説明員 公害問題はかつて厚生省から環境庁へ移ったわけでございますが、厚生省といたしましては、国民の健康の問題ということで、保健確保のために全面的に努力する覚悟でおります。今回の水俣病の例をとりますと、方法論といたしましては、環境庁が中心となって、現在も関係五県と協力体制をとっておりますが、厚生省の分限としましては、魚介類の基準の問題それから健康診断にかかわる保健所の協力の問題、それから専門医の問題、そういう問題に対して全面的に他の省庁ともどもに当たる覚悟をしております。
  240. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に伺っていきますが、先日五月三十日に環境庁で、有明海で発生した第三水俣病の原因究明と今後の対策を立てるための連絡会議が開かれております。一部報道されておりますが、いろいろ今後の対策を、われわれも検討する上であらあら承知はしておりますけれども、先般の国の調査の結果とそれから今後の対策、こういったものについて、本日おいでになっている関係省庁から、こういったことで今後スケジュールを組んでやるということを、要点を簡潔に、明快にひとつお答えをいただきたい。
  241. 荒勝巖

    荒勝政府委員 まず水産庁からお答えいたします。  水産省といたしましても、今回の熊本大学の発表が非常に私たちとしては驚くべき結果が出ておりますので、これにつきまして早急に、この水俣湾のみならず、今回、水銀量が相当出された地区につきまして、有明湾あるいは不知火海を含めまして、全面的に魚類の汚染状況について調査をいたしたいと思います。なお、あわせて全国的にやはりメチル水銀で汚染されておると思われる地区が関係省庁間で地点が出されておりますので、それらにつきましても同時に調査をいたしたい、こういうふうに思っております。
  242. 山本宜正

    ○山本説明員 先般の報告を現地に行きまして聴取するときに、すでに関係の省庁の担当官も一緒に参りまして、報告書の内容をつぶさに聞いたわけでございますが、その後、先生の仰せのとおり、三十日には関係の各県及び関係各省庁集まりまして、今後の対策についての基本的な方針並びに具体的な対策についての柱を確認し合ったわけでございますが、ごく簡単に申し上げますと、基本方針といたしましては、まず住民の持っている不安の解消、第二番目には原因の究明、第三番目には障害者の早期の発見、こういう方針でございまして、具体的な対策といたしましては、まず有明海の環境調査の実施、有明海沿岸の住民、特に漁民についての健康調査の実施、汚染原因の究明、魚介類の水銀についての安全基準の設定、有明海、不知火海の魚介類の摂取についての指導、水銀汚染地域についての再点検、救済方法、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法による地域指定の検討、それからこの問題原因究明の調査委員会の設置、非常に簡単に申し上げますと、そういったような点を関係省庁と協議し、各県とも協議しながら進めていく、かようにいたすことにしております。
  243. 岡部祥治

    ○岡部説明員 水銀によります魚介類汚染が水俣湾のみならず各地にも見られるというようなことから、食品中の水銀の許容基準と申しますか、魚介類の摂取についての基準というようなものについて、現在専門の学者を集めまして鋭意検討中でございます。
  244. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上一応承りまして、次にお尋ねしたいと思いますが、けさもテレビで報道されておりましたし、新聞紙上にも一部報道されておりますが、国立衛生試験所毒性部が二年がかりで行なった、水銀の許容基準をきめる実験結果がまとまりて発表されております。世界保健機構(WHO)の要請で行なわれておったわけでありますが、サルによる水銀中毒の実験は世界でも初めてであるということで、今回の調査によりますと、厚生省ではこの実験結果から、水銀摂取量の基準は、サルに対する六十倍の安全率を見込んで、成人一日当たりメチル水銀で〇・〇三ミリグラム、総水銀量で〇・〇五ミリグラムにきまる公算が強い、こういうふうにいっておられるようですが、この点を確認をしたいのと、厚生省は水銀の暫定基準をきめるということで、先般来当委員会でもいろいろと議論してきたところでありますが、六月中にもこれをきめる方向でいろいろ検討しておられるようでございます。成人一日当たりの摂取基準をメチル水銀で〇・〇三ミリグラム、総水銀で〇・〇五ミリグラム程度とするようなことで検討されておるのか、いつごろこれがまとまるのか、また今回のこの国立衛生試験所の調査結果の発表についてはどういうふうに受けとめておられるか、この席でお答えをいただきたい。
  245. 岡部祥治

    ○岡部説明員 国立衛生試験所におきまして、食品中の水銀の許容基準設定につきまして、これは欠くことのできない実験でございまして、水銀の慢性毒性実験を、サルを用いまして現在実施中でございます。さらにこれは少なくとも今年度一ぱい、衛生試験所といたしましても、このような実験は再現することができる実験ではございませんので、なるべく長く飼いましてこれを観察いたしたいということでございます。したがいまして、これの最終的な結果を得まして本格的な基準というものが作成されるわけでございますけれども、今回の事件にかんがみまして、国立衛生試験所の池田部長はもちろんでございますが、現地の武内先生はじめ専門の学者を早急に集めましで、すなわち五月三十日、続きまして六月四日、さらに来週の十五日に再度開く予定にいたしております。  この暫定的な基準をつくりますために、この中間的なものでもまとめてこれを参考にいたしたいということで、現在国立衛生試験所で四十六年からやっております中間的なものをまとめておる最中でございまして、それにつきましては専門家会議でさらに評価いたしまして、水銀の暫定的な許容基準あるいは摂取の基準ということを検討する予定にいたしております。
  246. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 六月十五日に再度開いて暫定的な基準をつくるための検討をするということでありますが、最終的には若干時間がかかるようですけれども、大体の見通しも立っておりませんか。六月の十五日の結果によっては、六月二十日ころには暫定基準をきめるとかどうとかいうことになるのでしょうか。  御存じのように、現在水銀汚染による基準というのがないために、水産庁としても、いわゆる漁獲の禁止あるいはまた、いろいろと国民に不安を与えるものの判定がなかなかむずかしいということも、いろいろ問題点があるわけですが、こういったことがはっきりしていないということで、いろいろ問題をかもしております。厚生省としても鋭意努力しておられると思いますが、この場で、どういうふうな見通しなのか、なるべく早く中間発表的なものをやってもらいたい気持ちでもありますが、慎重にやるべきことも十分わかりますけれども、その点、見通しはどうですか。
  247. 岡部祥治

    ○岡部説明員 私どもといたしましても、早急に暫定的でも何らかの結論を得たいということで鋭意努力いたしておるところでございますが、先生御承知のように、いろいろな専門的な立場からの御意見もございますので、十五日の結果を踏まえまして、目標といたしましては六月中をめどにいたしまして、いま作業をしておる最中でございます。
  248. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その際、新聞報道によるも、厚生省は水銀の暫定基準としていろいろ検討してこられたと思いますけれども、六月中をめどにということでありますが、成人一日当たりの摂取基準をメチル水銀で〇・〇三ミリグラム、総水銀で〇・〇五ミリグラム程度とすることというふうに報道されていますが、大体そういうふうなことで、新聞報道されておるようなことで検討しておられるのでしょうか。その点は、新聞報道は厚生省の考え方と全然違うというふうに反論なさるのですか。その点もちょっとお答えいただきたい。
  249. 岡部祥治

    ○岡部説明員 これは一つの試算をすればということでございまして、この試算のしかたが専門家によりましていろいろ評価があろうと思いますので、先ほど申し上げましたように、次の専門家会議におきまして十分検討する予定にいたしております。
  250. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次は、有明海の魚について武内熊大教授がいろいろ意見を述べておられますが、昨日も衆議院の公害対策並びに環境保全特別委員会参考人として陳述されておられます。先ごろ沢田熊大県知事が有明海の魚介類の安全宣言をしたことに触れられて、有明海の魚介類には少なくとも〇・一PPM以上の水銀が含まれており、危険がある、特に妊婦や幼児については厳密な基準が必要だろうとの意見を述べておられます。  どの程度水銀が含まれていると危険であるかということなんですが、漁民など、毎日魚介類を食べる人と、そうでない一般の人との比較では、条件が違うわけでありますけれども、一般的には〇・五PPMのものを一年以上摂取すると危険だと考えられる、こういうふうにも武内教授は言っておられるのですが、これについて水産庁並びに厚生省等はどういうようにこれは受けとめておられますか、御回答をいただきたい。
  251. 荒勝巖

    荒勝政府委員 実は私の水産庁におきましては、この衛生上の問題につきましてはあまり十分な判断能力がないのでございますが、すべて厚生省の御見解というものをわれわれといたしましては信ずるわけでありますが、先般発表されました、有明海を中心としたこの武内先生の発表の中に採用されたデータ等を見ますと、われわれといたしましては、水俣湾内の汚染はやはり激しい、それから水俣湾外の汚染も、それよりは少し少ないようですが、やはり汚染は相当ある、こういうふうに見ておったわけでございますが、その他の地区につきましても、多少でこぼこはございますが、若干高いと思われるのがいわゆる有明海の湯島沖あたりのデータが少し悪いのではなかろうか、こういうふうに見ておるわけでございます。
  252. 岡部祥治

    ○岡部説明員 武内先生の御見解でございますけれども、これも先ほど申し上げましたように、この専門家会議の中に武内先生も入っていただいておりますので、それらの点につきましてさらに十分他の専門学者との意見の交換をし、評価をいたすことにしております。  なお、先ほど申し上げましたように、先生御指摘のように、多食者でございますとかあるいは乳幼児、妊産婦等への影響というものがまだわかっていない点がございますので、この水銀の許容基準というのは慎重にやらなければならないものでございます。しかしながら、現時点におきまして、いろいろ慎重にやっておりますと時間がかかりますので、先ほど申し上げましたように、暫定的なものでもよいからなるべく早く結論を得たいということで、鋭意努力いたしておる最中でございます。
  253. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 水銀の許容限度の問題については、暫定基準を早急にきめるということで努力しておられると思うのですが、従来政府にこういった許容限度を伺いますと、よくスウェーデンの例をとられて対比されたりするのでありますけれども、この機会に一言申し上げておきますが、スウェーデンと日本の立場はかなり開きがあるわけで、度合いが違うわけです。魚の汚染されておるぐあいも違うし、またスウェーデンはあまり魚を食べない、日本は魚をたくさん食べるというようなことがいろいろございますので、各国のいろいろな許容限度等にらみ合わせていろいろと論議されておりますけれども、そういったことはもう十分おわかりのことだと思いますが、日本は日本でやはり思い切ったこういった基準をきめて、早く対処しなければ、だんだん時がたっていって、知らず知らずの間に、有明海一円の人たちのみならず、内陸面の熊本市民または京阪神はもちろんのこと、魚をいろいろ市に出して食べている範囲は、自然のうちに水銀が蓄積されるということで心配なわけであります。そういったことで十分対処していただきたい。  そこで、この熊大の武内教授はさらに、有明海の魚介類の安全性を確かめるためには、少なくとも魚介類を年四回チェックする必要がある、ただ一回のチェックではこれは危険である、そしてまた、いままでの調査の結果から見ても、自分としては一度も安全であるということは言っておらない、また確認もされていない、こういうように言っておられます。しかるに、熊本県知事は安全宣言をいたしております。もちろん知事としては、私たちも同様でありますが、現地のあの魚をとらなければ生活できない苦しい状態、また魚によって生活を営んでいる方たちが、唐突にあのような発表になったのでは——神戸でベラのせりが中止された、試験の結果影響がないということでせりが開始されてほっと一息ついたものの、漁獲高は減る、価格も半額に落ちるということで、たいへんな騒ぎなわけですが、この安全宣言でほっと一息ついて操業している現状でありますけれども、反面、熊大武内教授のいろんな陳述の内容、御意見を聞きますと、やはり事、生命にかかる問題であるので、取り組みの姿勢としては早過ぎたのではないかという意味のことをおっしゃっているし、また地元の有識者の意見等を聞きましても、少し軽率過ぎたのではないか、また、漁民が売らんかなの姿勢であったがためにこういったことになったんじゃないかというようなことも消費者側からはいろいろ言われておって、まだ不安の色はぬぐえない状態でございます。この点慎重にやるべきだということも言われておりますが、暫定基準もいずれきまることでありましょうが、実際問題として、この点についてはどういうふうに水産庁は受けとめておられるのか、その点はお伺いしたいのであります。
  254. 荒勝巖

    荒勝政府委員 厚生省の、暫定的かどうか存じませんが、今回あらためておきめになる基準につきましては、私たちといたしましては、これは誠実に受けとめてまいりたいと思っております。これはやはり人命にかかわる問題でございますので、この問題については当然、さっそくその結論を待って、われわれとしては次の行動に移らざるを得ないのじゃなかろうか、こういうふうに思っております。  それとともに、われわれといたしましては、この有明海あるいは不知火海におきます魚介類汚染状態が、はたして新しい基準に対しましてどのような結果が出るかということにつきましては、われわれといたしましてはあらためて早急に再調査いたしましてその結論を出したい、こう思っております。
  255. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 御承知のように、この水俣湾または恋路島周辺、これは魚がたくさんとれるところです。いわゆる高級魚から大衆魚、たくさんとれます。有明海もしかりであります。特に今回被害が起きた有明海のあの赤崎では戦後天皇陛下も行幸されて、あそこをごらんになっていただいた場所でもありまして、魚の豊富なところであります。  そういったことから、先ほども論議されましたが、今回漁獲のいろんな規制が、県または地元漁業者の間において自主規制等行なわれつつありますが、御存じのように、規制をいたしますと、その規制の場所は、もちろんプランクトンもわくわけでありますから、魚がどんどん寄ってきて食べる。魚をとらなければもちろん安全であるから、いわゆる禁漁区と同じになりますので、魚が寄ってくるわけです。そうすると、御存じのように、魚は回遊します。あの不火知海のいわゆる海流とまた有明海の海流とはおのずから宇土半島と天草を境にして潮流が変わっておるということは、常識からいっても、また学者もそういうふうに言っております。また、こういうことは今後環境庁水産庁等で海流調査あるいは底質調査等をなさるわけで、明らかになっていくと思いますが、現に水俣並びに恋路島、こういった一体を規制しても、魚は国境がないわけですから、どんどん周辺に集まってまいります。御承知のように、葦北郡の田浦町、芦北町、湯浦町、津奈木町あるいは天草郡の沿岸、八代郡または八代市、宇土市、宇土郡の三角町から不知火町、飽託郡、あるいは福岡、長崎、佐賀等、問題になっておりますように、関係のところに魚は回遊してくる。そこで、熊本県でも、田浦町、芦北町等を中心として、あそこの漁協の方、漁民の方もたいへん心配されて、自分たちは安全宣言が出たから魚をとって売ることには心配ないにしても、実際問題、国民に害を及ぼすとなれば、地元の人はやはり心配な魚は不安になったり、またいわゆる他に売るというようなことで良心もとがめる。だから、どうしてもプランクトンが発生して、禁漁区みたいに水俣湾、あの周辺だけ規制しても、魚は回遊してくる。現に第三水俣病で汚染源が宇土工場あるいは三井東圧ということが一応マークされていろいろ論議されておりますが、そういった関係汚染が広まってくれば、魚は自由に回遊するわけですから、やはり規制するならば、相当広範囲に規制をする、と同時に補償もする、生活保障もしてあげる、漁業補償もする。こういったことで立法措置もするというようなことで、十分対策をとらなければ心配であるということで、ほんとうに勇気あるまじめな陳情もあっております。こういったことを思いましたときに、今回水俣湾並びに恋路島等の規制問題にからんで、この点をどういうように思っておられるか。また、水産庁あるいは環境庁としても、そういったことをずっと思いましたときに、相当広範な規制ということも考え、規制するからには、その裏打ちとなる補償、対策を立てなければならない、かように思うわけですが、その点について関係各省庁から、どういうように考えておられるか、ひとつ御見解を承っておきたい。
  256. 荒勝巖

    荒勝政府委員 今回の汚染されておると思われる地区につきまして、私のほうといたしましても、魚体の汚染状況につきましては、先ほど来申し上げているように、早急に調査を開始したいと思っておりますが、それとともに、当然に魚の回遊経路等につきましても、あるいは多少時間をとることになるかとも思いますが、あらためてこの点につきましては技術陣を動員いたしまして調査いたして、両湾にまたがる回遊状況につきまして突きとめてみたい、こう思っております。その結果でないと、どの程度の広範な形の規制の区域になるのか、また魚がどの程度の範囲内で回遊するのかということについて、この席で断定的にいま申し上げるのは少し早いのではなかろうかと思いまして、その結果を待って、われわれとしましては対策なり見解を申し上げたい、こう思っております。
  257. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、もちろん自主規制も当然のことながら、そういった広範にわたっての規制等を急がねば、やはり知らず知らずの間に漁民は、安全宣言があっているわけでありますし、やはり漁獲をするわけです。そうすると、結局、市民もまたこれを食べるということになってくる。もちろん漁民も救わねばならぬ。市民も救わねばならない。いわゆる生命の尊厳から当然のことであります。そういったことで、こういったことは実にむずかしい問題でありますが、私は早く調査して規制すべきは規制し、そうしてその裏打ちとなるところのいわゆる生活保障、または、規制したならば規制したで漁業補償もする、そのためのつなぎ資金、あらゆる低利、長期の金を融資する、政府も早くそういったことを確立してやらなければならない、かように思うわけです。そこで、規制だけをする、これは悪政ではないか。やはりその裏打ちをして初めて善政ということになるではないかということで、私たちも地元ではいろいろ釈明をしておるわけです。  先ほど申しましたように、魚をとるなということは、これはもう漁民に死ねということになりますので、漁民としても良心がある限り、いろいろその点を心配し悩んでおるのも事実でありますし、安全宣言があったにもかかわらず、やはり一まつの不安、いろいろ良心をとがめる問題があるということで悩んでおるのも事実であります。そういったことに対して、国のあたたかい早急なる対策がなされねばならない、かように思うわけです。武内教授も有明海については一度も安全であると言ったことはないとはっきり言っておられますし、数値は低いがたくさん食べると危険でないとは言わぬ、こういうふうにも言っておられます。すなわち、微量汚染がはっきりわかっている段階であるがゆえに、このように武内教授も慎重な発言をなされておる、このようにわれわれは受けとめております。水俣病の第一人者であるところの武内教授がこのようにいまの時点で言っているわけですから、必ずしもこれが安全とばかりは言えない面もあるわけです。いわゆる行政が立ちおくれていることはもう武内教授もはっきり、またわれわれも認めて指摘をしているところであります。  そこで、早く対策を立てて出荷をすべきであるというようなことをわれわれは考えておるのです。というのは、一方では規制をする、一方では漁民を生活の窮地に追い込むということでは片手落ちになりますので、やはり規制をするからには、広範囲にまた規制を広げていくためにも、はっきりと漁民が安心して生活ができるように生活の保障、それから漁業補償の問題そのために原因者がわからぬうちはつなぎ資金として低利、長期の金を融資することは当然でありますが、地元としてはやはり国がこういった漁獲物を買い取る、そしてこれを流通機構に乗せる、こういったことが大事じゃないか、こういったことを真剣に水産庁は考えるべきであると私は思うのです。たとえば現地に大型冷凍冷蔵庫を早急につくって、そして漁民がとった魚を買い取る、それをサンプル調査をして、これが安全であるとなったならば、初めて流通経路に流していく、そうでなかったら流通経路には流さない、あぶないものは全部それを買い取って、コンクリート詰めにして埋めるとかいろいろ方法はあるようですが、そういったことにする。さらに、大型冷凍倉庫をつくって、専門の検査機関等を設けて、それで常時検査をして国民も安心するように、また漁民にも心配をかけないようにする、こういった対策等と早急に立てるべきじゃないかと私は思う。  武内教授も一方でこういった水俣病の委託を受けて調査をした、いわゆる本来業務がありながら、しかもこういった水俣病の問題に取り組んできた。漁民を救うためにやったことが、他方では危険であると指摘をすることが漁民を逆に苦しめるという矛盾になるということで、たいへん苦しい立場におられます。  これが判明した場合、いわゆる次々患者が見つかったりまたははっきりと汚染地区がわかってきた、今後の調査でわかってくる。すなわち今回の調査はたまたま有明海の中でも有明町だけの調査でありまして、まだ日本合成の緑川河口とかそのほかの町村は有明海周辺にはまだ一ぱい残っているわけですから、こういったところの調査をし、健康診断をした結果だんだん患者が出てきますと、その救済措置について完全に処置しないとこれは問題である。そうなってくると、ますます範囲が広がればその規制をせねばならぬ、そうしてまた対策を立てなければならない。こういうふうになってきますので、焦眉の急務として、先ほどから申し上げましたように、大規模冷蔵庫等をつくるなり専門の検査官を置くなりして、とった魚を安心して食べられるような、いわゆる流通ルートに乗せるための対策を具体的にやるべきである、こう思うのですが、この点についてはどういうふうに考えておられますか。もう一回ひとつ国民のために答えていただきたい。
  258. 荒勝巖

    荒勝政府委員 一つの大事な御提案だと思いますが、私たちといたしましては、早急にまず水銀の含有状況並びにその汚染状況の調査の結論を早く出しまして、そういったある程度食用にたえ得るような状況であるかどうかにつきまして、今後判断した上でなおひとつ検討させていただきたい、こういうふうに思っております。
  259. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣がきょうは参議院のほうに行っておられるということでこちらに出席ができませんでしたけれども、農林大臣にもよく伝えていただいて、私個人としてもまた申し上げておきますけれども、水産庁長官では現在その程度の答弁しかできないかもしれませんが、これは相当深刻な問題でありますし、前向きに検討するということでございますので、十分ひとつ対処していただきたい。これは有明海、水俣のみならず全国にこれは通用する問題である、かように思っております。  次に、先ほどからも答弁がありましたが、有明海の魚の回遊状況、現在どの程度水産庁でつかんでおられるか。まるっきりわからぬのか。大体どういうふうになっておるというふうにつかんでおられるか。これを調べないと抜本対策にならぬです。魚のいわゆる生態をどういうふうにつかんでおられるか。また、これが時期によっても違うし、また魚の種類によっても違うということになるわけですので、どうかその点、この機会に、現段階でどの程度掌握しておられるのか、御説明いただきたい。
  260. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私、技術者でないので、これにつきましてはまた別の機会に詳細に担当技術者からお答え申し上げますが、全然調べてないことはない、ある程度調べたものもございますが、今回のような有明あるいは不知火海にまたがる広範な状態についての調査をあまりいたしていなかったものですから、この点については結論というか、断定的な御意見は差し控えたい、こう思います。  一応総括的と申しますか、何か非常に概論的に申し上げますと、西海区水産研究所におきまして調べましたところ、不知火海において主要魚種の回遊状況を調査した結果では、不知火海から有明方面へ回遊するものはあまりないというふうに考えられておる次第でございます。
  261. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 こういう重大な問題が起きておるときに、さっきから指摘しておりますように、こういったことをある程度水産庁長官が答弁できないようじゃ困るわけですね。かといって、怠慢と一がいに言えない面もあるかもしれません、専門的な問題もあるから。しかし、ある程度こういったことは調べて、現段階ではこうだということを明確にしていただかないと、地元は深刻なんですから、またこれを文句ばかり言っていると時間がたちますので、これは十分調査をして、大体こういうことだ、いま調べたらいつごろまでにできる、こういうふうに言ってもらいたいのです。大体この回遊調査、いつごろまでに結論が出る見通しでありますか。  もう一つは、この汚染調査について、汚染地図をつくれということをわれわれは申し入れもしておったのですが、第一次の調査のときにこういうことがはっきりしておれば、二次、三次とこういったことは起きなかったと思うのですが、これはずいぶんおくれておる。これは大体いつごろになるのか、大体いつごろを目標にしてやっておられるのか。この二点、急いで回答をいただきたい。
  262. 荒勝巖

    荒勝政府委員 汚染状況、これは直ちに調査をいたしますが、その結果につきましては、ほんとうに早くわかり次第結論を発表させていただきたい、こういうふうに思っております。  ただ、回遊魚の状態につきましては、前回の調査ももう十年以上前の調査でございますが、その時点におきましてもやはり相当の長期間かかってようやくわかったようなことで、若い魚をとらえましてタグをつけて放流するものですから、やはり結論的に研究者が発表するには相当な時間を要するのではなかろうか、こういうふうに考えております。
  263. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、これはひとつ重大な問題として地元で特に要望の強い問題でございますが、患者の健康診断をやるにあたって、相当数あるものですから、認定業務を国でぜひやっていただきたいという問題でございます。熊本県知事は、第十六回の熊本県公害被害者認定審査会、これは会長には武内教授がなっておりますが、この答申に基づいてきのう新たに六十七人の水俣病患者を認定されました。うち死亡者が二人あります。そうして二人の方を有機水銀による影響はないと棄却しております。これで熊本県の認定患者は四百九十五人になりまして、死者七十二人となり、鹿児島県の六十三人と合わせますと認定患者は五百五十八人、死者七十六人と膨大な数になったのであります。今回の六十七人の大量認定は、今回は特に初めてでこんなに多かったわけですが、六月四日現在すでに九百四人が認定申請をいたしております。申請ペースに対していわゆる認定ペースが追いつかないということで、地元ではたいへん危惧の念を抱いておりまして、早期救済を目的とする公害被害者救済法の趣旨と現実の著しいズレが問題になっております。国も十分わかっておられると思うのですが、したがって、現在認定は、二カ月に一回、百名以内の審査しかできないというのが限度であります。すでに第三水俣病がこういうように発表されまして、沿海でいまのところでは九万人以上に及ぶ健康診断が必要である、こういうようにもいわれている。まさにパンク寸前で、これではお話にならない。たいへんなズレでございます。熊本、鹿児島、長崎、佐賀、福岡と、五県にもまたがっているというようなことでございますので、これは国のほうでもぜひひとつ、認定業務を早急に国でやってもらいたい。やらなければもうどうにもならぬ。これは水俣のみならず全国の問題でもありますし、これはぜひとも講じていただかなければ、たいへんなおくれをとる重大な問題である。現地に行きまして調査をしましても、新聞記者、各報道機関からも、これに対して強い要求と質問が殺到してまいります。また、知事関係者も、こういうことは一番頭が痛いといって悩んでおられます。医師にも限度があります。その医師をどうするかというような問題があるわけですが、これに対してどういう対処をしておられるのか、環境庁、これに対する答弁をいただきたい。
  264. 山本宜正

    ○山本説明員 私どもも県からこの問題につきまして強い陳情を受けておるわけでございますが、現在の、公害に係る健康被害の救済法におきましては知事に認定権がございますので、国がこの認定業務につきまして直接携わることにつきましては、法律改正を必要とするわけでございます。たいへんむずかしい問題でございます。  この問題につきましては、現在、審査をする専門の先生というのが、御承知のように、水俣病につきましては熊本県の熊本大学、それから新潟大学というところの限られた先生でございますので、この推進につきましては早急な方法というのはなかなかとりがたいわけでございます。  しかしながら、新しく起こりました第三の水俣病の問題につきましての住民の不安を解消するという健康診断も必要でございますので、この問題につきましては、本日環境庁の中で、関係県を集めまして現在議論しておるところでございますが、私どもといたしましては、厚生省を通じまして全国の公立の医療機関あるいは文部省、それから自治体病院協議会というような関係の向きにお願いいたしまして、熊本県の、現在やっております、今後やらなければならない健康調査につきましての応援という問題を詰めてまいりたい、かように考えておりますので、今後、それとあわせまして、認定業務の促進ということにつきましては、県とも十分協議いたしまして何らかの応援体制を講ずることによっての促進をはかってまいりたい、かようにお答えする次第でございます。
  265. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま答弁ありましたように、いまようやく検討を具体的に若干されつつあるようですが、もう手ぬるくてどうしようもない。これはたいへんな問題ですからね。応援体制を整えつつある、きょうも会議しているということでありますが、今回の熊本の、認定審査の対象となった九十人の中でも、医学的資料不足などで答申保留となった方々が二十一人もあります。こういったものも医者の不足から起きてきていまして、ほんとうに不安がっております。そういったことで、これは国で認定業務をやらなければどうにもならぬということでありますので、早急にひとつ国でこの認定業務をやるということを確立していただきたい。  それと同時に、いま答弁ございましたが、厚生省も全国に、医療機関関係またその他の関係にも連絡をとって対策、応援措置をとるということでありますが、ぜひやってもらいたい。口では健康診断あるいはまた被害者が多いと言っておりますが、ほんとうに地元では不安なんですよ。今回の第三水俣病の患者を見ますと、普通と何ら変わりない。われわれが行って、あなた水俣病だそうでほんとうに御同情申し上げますと言うと、かんかんにおこって、毎日仕事をしている、何もどうもないんだ、こう言って、何ら変わりない。いわゆる水俣病のあの悲惨な重症患者をわれわれは見ておりますから、今回の第三水俣病の患者は、あれから見ると、中症とか軽症に当たるわけで、普通見ても、何らわからないわけですよ。それがだんだん年をとってある時期に来れば症状が起きるということを、熊大の武内教授もはっきり言っておりますが、われわれしろうとが見ても、また幾らさがしても、水俣病患者ということははっきりわかりません。現地の新聞記者も、たんねんに患者をさがして記事にしようと思って調査しているのを私はよく承知しておりましたが、実際に軽症または中症の患者であるために、なかなか発見できないのです。いわゆる医学的精密検査でなければ発見できないのです。武内教授は、応援願う医師について、医師によっては精密検査は多少無理かもしれぬけれども、医師であればすぐにできると判断するので、鹿児島方式なども検討し、あるいは全国の医師に呼びかけて健康診断をやっていただきたいと言っております。さらに、応援願う医師に対しては、医師の将来に資するために、病理学の研究等を十分にすることができるように配慮することが大事で、そのために、水俣に、先般来、環境庁も言っておりますが、世界一の水俣病研究センターをつくって、そこで研究もできる、勉強もできる、知識の向上もできる、治療法も十分にある、こういったことをすれば、将来医師もこれに十分足を向けていただくであろう、また協力がいただけるであろう、こういうことも言われております。  医師の不足については、十分対策をしてもらわなければどうしようもない、もう苦境に立たされております。今後われわれ当委員会で、現地へあさってから行きまして、このことが一番焦眉の急務として陳情があることは間違いないのでありますが、これに対しては十分ひとつ大臣にも申し入れいただいて、国で認定業務をやるということをやっていただきたいと思いますので、再度環境庁からこれに対する見解をさらに承っておきたい。  また、それとあわせて、いまの水俣に研究センターをつくるということを急いでいただきたい、そのように思うのです。
  266. 山本宜正

    ○山本説明員 先ほどお答えいたしましたように、国で認定業務というのは、実は現在の法律体系ではできませんので、県が行なっております認定業務に対して応援をするという方法で対処していきたいというお答えにとどまるわけであります。  なお、先般私どもの長官が現地を視察いたしまして、水俣病についての研究、医療、福祉ということの対策を講じるためのセンターというようなものをひとつつくったらどうかということでございますし、地元からも強い声がございまして、現在私ども、各般の方々をお集めいたしましてはその方策について検討いたしております。そういう段階でございますので、御理解いただきたいと思います。
  267. 山中和

    ○山中説明員 先生お説のように、認定にあたりまして第三次検診がやはり一番問題になっております。そこへたまってきてしまう。そういうことで、本日、環境庁から申しましたように、私もそこへいま出まして協議を重ねたところでございますが、厚生省としましては、これはつまり神経内科のほかに、眼科とか耳鼻科とか、その専門医が必要なわけでございます。やはり具体的な協力といたしまして、厚生省傘下の国立病院からこの協力体制をとろうということで、本日そういう協議をいたしました。九州にも十六ばかりの国立病院がございますが、それぞれいろいろな科目を持っておりますが、やはり地元に近い病院に重点を置きまして、いわゆる第三水俣病として広まればそれだけの専門医の必要がございますから、順次それを関係県と相談しまして、具体的にそういう派遣なりあるいは来てもらうなりというようなことの対策をとりたいと思っております。
  268. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この問題はもうたいへんな問題になっておりますので、環境庁も厚生省も、また関係各省、ひとつ——何も水産関係漁民ばかりじゃないのです、一般の市民もこの水俣病の危険性があると思えるのです。そういうことでひとつ、なまぬるいことではなくて、早急な、しかも実際にそれが実施できるようにやっていただきたい。国で認定業務ができなければ、それをできるように研究せよというわけだ。同時に、その間は、いわゆる援助措置を十分やって、どういうふうに具体的に医師に呼びかけて、そしてどうするか。水俣研究班の武内教授、熊大を中心に、どういう体制で、具体的にいつまでにどういう人を派遣してやる、またそのときのいろいろな手当、いろいろな問題もあるだろうし、いろいろな条件があると思いますけれども、いわゆる国民の健康を守ると同時に、不安をなくするという意味からも、早急にやっていただきたい。やっておられるだろうと思うけれども、いまの答弁では何となくなまぬるい感じを受ける。われわれ基本問題だと思いますので、ぜひとも、やっておられる上にもさらに強力に進めていただきたい、このことを申し上げるわけであります。  そこで、時間もだいぶ迫ってまいりましたので、いろいろありますが、あと大事な問題を若干お尋ねしておきます。  調査の結果、原因者を明確にすることは当然でありますが、これは若干まだ真犯人、元凶がわかっていないということで、いまそのための調査が逐次進められることは当然でありますけれども、原因者がわからぬ場合、すなわち犯人がわからぬというときのために、ぜひ制度をつくるべきじゃないか、かように私は思って提案をするわけです。これは特に水産庁または関係省庁にも御検討いただきたいわけです。漁業被害者がいまたいへん問題になっておりますけれども、対策基金というような制度を、すなわち救済制度をつくったらどうかということを提案するわけです。  今回もいずれは原因者がはっきりしてくる。また、水銀汚染は全国的に広がっている。第三水俣病に限らず、全国各地での水銀汚染をはじめ、きょうの午前中も三重県のタンカー問題がいろいろ論議されましたが、あの場合は原因者ははっきりわかっています。その他公害は多くなっています。すなわち魚介、ノリ、真珠養殖でも被害が大きくなってまいりました。水産国日本という名に恥ずるような、いわゆる公害が続出しておりまして、いま漁民はたいへん苦境に立たされております。こういうことを思いますときに、水俣病並びにこの第三水俣病のこういった問題が起きた機会に、ぜひともひとつ転業資金等をも含めた漁業被害対策基金、こういった制度を、すなわち救済制度を早急に考えるということが大事じゃないか。これはおそきに失したと思うのですが、これに対する見解を承りたい。
  269. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいまの御提案につきましては、われわれといたしまして、こういう原因者不明の場合の対策ということがいま政府部内でも非常に論議を呼んでおりまして、原因者負担の原則というのは守りつつも、こういった不明の問題をどう取り扱うかということが非常に問題になっております。  さしあたり現在の私たち水産庁の立場におきましては、たまたま今回四十八年度予算で初めて実現を見ております農林漁業金融公庫の、漁業のための漁業経営安定資金制度というものが、今回創設といいますか、新しくできまして、一人当たり五十万円まで、あるいは生業資金なり経営安定資金なりという形で、つなぎ的な融資をごあっせんするという形のものがございますので、これを御活用願いたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  270. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 漁業被害対策基金については、ここで即答できないかと思いますが、これはひとつ今後も機会あるごとにお願いしてまいりますが、十分ひとつ農林大臣とも協議されて、検討を進めていただきたい、かように思います。  次に、特別立法の措置の問題これについても私、一言やはり触れざるを得ませんが、被害漁民の生活保障を目的とした特別立法を早急に講ずべきである。かように私は思うわけです。政府もその方向で検討しておるように承っておりますけれども、熊本県では、生活資金としてつなぎ資金を最高二十万まで当面考えておるということは、知事がいろいろ申しております。何としても早い機会にこの特別立法をつくっていただきたい、かように思うわけです。ちなみに申し上げますと、第三水俣病の汚染源としてほぼ決定的となっております日本合成化学工業熊本工場に対して、熊本県飽宅郡天明町の海路口漁協など緑川周辺漁協住民約三千戸のつなぎ資金として、総額三億円、一世帯十万円の漁業補償を要求しておるのであります。工場側はこのほど二千万円を融資するという旨回答したようであります。漁協側は、一戸当たり七千円にしかならないので、何の足しにもならぬ、人をばかにするなといって、会社側に誠意が見られないといって相当憤っております。七つの漁協では県に協力を求め、今後漁協、工場県の三者で話し合うということになっておりまして、同漁協長は、さらに、工場側は一企業の出せる程度と言っておるけれども、それは企業の脅迫ではないかといって憤りをさらにエキサイトしております。これらの実情を見ましたときに、国、県、こういった立場も見のがすことはできないのであります。特別立法措置を早く立てて、漁民救済に臨まなければたいへんなことになる。これぐらいの金ではどうにもならぬわけでございまして、この点についていつごろをめどにこういったことをやるのか。冒頭お聞きしましたように、責任体制を明確にしていただきたいわけでありますが、今国会にできなければ、臨時国会等が開かれれば、早急に秋の臨時国会を目標にやると考えておられるのか、その点もあわせてお答えいただきたい。
  271. 荒勝巖

    荒勝政府委員 今回第三水俣病が非常に突如として、私たちはショックな形で受け取った関係で、急にこの問題をただいま論議させていただいておりまして、さしあたりは何か現在の法律を適用して、あるいは活用してというふうに考えておったわけでありますが、やはり何らかの形で、こういう公害にからむ対策につきましては、当然新しい検討をしなければならない、こういうふうに考えておりますが、いつまでということでのお尋ねでございますが、議論を開始したという段階でございますので、この点についてはまだ的確な御返事はいたしかねる次第でございます。
  272. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、水産庁長官にもう一点ちょっとお伺いしておきたいことがあるのですが、熊本県は、六月四日、県の経済委員会で、水俣湾内と水俣湾外一部海域の漁獲禁止について、緊急対策と恒久対策を明らかにしておるのです。この点ちょっと漏れましたのでお伺いしておきますが、緊急措置として漁獲禁止区域の決定、二つには禁止区域内の魚介類の一斉除去と処理、三つには監視体制の強化。恒久対策としては、電気網の設置、金網による遮断等を含め、水産庁に照会研究依頼をして、地元漁協公害局とも協議をして、最も効果的な方法を一日も早く講ずる。いわゆる禁止区域にからみ合って、魚の回遊をシャットアウトするということであります。さらに禁止区域として、明神岬の突堤と恋路島北端を結ぶ線、七つ瀬周辺を含みますが、その結ぶ線と、恋路島針の目崎−柳橋を結ぶ線、約五百万平方メートルを禁止区域にしておりまして、先月二十七日から自主規制を始めた地元水俣市漁協の禁止区域よりやや狭くなったようになっております。しかもこれはブイ十個を海上に浮かべて禁止線を明示する。次には禁止区域内の魚介類の一斉除去をやる。底びき網が最も効果的であるが、反面海底のへどろをかきまぜることによる二次汚染心配されるので、回遊魚のアジ、イワシ、ボラについてはまき網、船びき網、囲い刺し網、定着性のガラカブ、ベラ、タコ等は、磯立て網、大型あんこ網、こういったものを使用してやろう。そして県の水産課では、船十三隻、四十人を出漁させれば三日間程度でその禁止の網を張った中の魚介類を一掃できる、こういう計画を考えておるようです。  それで、県もいろいろ対策を考えておりますが、こういったことについて水産庁はいろいろお聞きになっていると思う。またこれに対する監視体制も県ではいろいろ考えておるようでございますが、どのように承っておられるか、これに対してはどういうふうにお考えであるか、簡潔に御答弁いただきたい。
  273. 荒勝巖

    荒勝政府委員 県のほうからの御連絡によりますと、こういった六月四日のただいまの県議会のお話の点につきましては、県でただいま早急にいろいろな案を用意いたしまして水産庁に近くおいでになる、こういうふうな連絡がありまして、中身につきましてはまだ十分私たちは承知していない次第でございます。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  274. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 中身は十分承知していないということでありますが、大体いまのようなことでこの禁止区域については十分対処できるというふうに水産庁長官は思っておられますか。全然そういったことも検討つきませんか。こういったことは問題にならぬというふうに思われますか。どうですか。
  275. 荒勝巖

    荒勝政府委員 やはり魚獲を禁止するだけだと、水銀で汚染された魚がいつまでも存在しておりまして、また回遊するおそれもある、湾外に出ていく可能性もあるということで、水産庁内部の技術陣の見解といたしましては、この水俣湾のこういった水銀汚染魚はやはり何らかの形で捕獲処分にしたほうがいいのではないか。  なお、別な話でございますが、PCBで汚染されました一部の狭い区域の湾内の漁業の対策といたしましても、やはりみな殺しといいますか、極力捕獲して、何らかの形で処分したほうが、今後新しく身をきれいにするための一つの手段としてはいいのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  276. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいまのことを県の対策としていずれ当局にも検討、打ち合わせに来ると思いますが、十分ひとつ意見を聞いて対処していただきたい、こう思います。  次に、簡単なことを若干お聞きしておきますが、この水俣病の治療方法について現在これが明確でない。すなわち、魚はとるな、食べるな、こういうようなことでありますが、これは要望であります。いわゆる現在までに食べた方、または今後も有明海の魚を食べていくわけですが、今後の問題として治療方法というのは従来どおり変わっていない。また究明されていないと思うのです。それで今後の治療方法、こういった問題。またこれをどういうように究明しておられるのか、対策はどうなのか、その点をひとつ環境庁からお答えいただきたい。
  277. 山本宜正

    ○山本説明員 水俣病の治療といたしましては、これがたいへん神経系統の病気でございますので、一たん神経の損傷が起こりますと、これは現代の医学では回復しないという意味できわめて悲惨な病気なわけでございます。水銀の中毒の急性期でございますと、これを排せつするような薬が過去にもございましたし、これからも幾つか発見されることと思いますが、そういう意味で、予防的な措置としての水銀の摂取をきめるという意味でいわゆる安全基準というものがつくられているわけでございます。先般の武内報告書の中にも一部新たなる治療の効果を示す薬の記載がございます。しかしながら、新しい薬につきましては、これは厚生省のほうで新薬として使う場合に、薬としてのもう一つの側面として、やはり毒性の問題というのが実はあるわけでございまして、この両面を十分検討しないと、水銀の排せつに有効であるということだけで取り上げるわけにいかないというのが現在の薬の考え方でございます。そういう意味では、私ども今後専門の先生方研究を促進するということで治療薬についての発見を期待していこう、かように考えておるわけでございます。
  278. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間も経過して申しわけないですが、もうあとわずかで終わりますけれども、重要な問題でありますし、当委員会調査にあたってはまたいろいろこういったことで答えねばならぬと思いますのでお聞きしているわけですが、いろいろ論議された中でもこういったことがまだはっきりしていないし、第三水俣病の新しい発生によってこういったことがたいへん地元では心配になっておるわけです。いま歯切れの悪い答弁でありますが、こういった対策を早く確立しなければたいへんなことになると思います。そういった意味で、ぜひひとつ国民が安心できるような治療方法、また治療の究明等を早急に発表していただくように強く要望しておきます。  あと環境庁に。御承知のごとく、五月二十三日に三木環境庁長官に七項目の申し入れをしましたときにも、今回の第三水俣病をはじめとして、全国で五十八社、七十六の全国の水銀使用工場があるわけですが、早急に総点検を必ずしますと約束していただいたんですが、この総点検はすでに開始されていますか、いつごろから始めるのですか。もう開始されて進めておられるかどうか。その点明快に、確認しておきたいのです。
  279. 太田耕二

    ○太田説明員 全国の一斉点検につきましては、すでに予備的な調査を通産省で、アルデヒド、塩化ビニール、それから苛性ソーダにつきまして、地方の通産局を動員してすでに実施しているわけでございますが、環境庁といたしましては、関係各省とともに、その実態、実質的に、水質、底質、プランクトン、それから魚介類等につきまして、できるだけ早く、大臣からの指示、命令では今月下旬からというふうな命令をいただいているわけでございますが、私どもといたしましては、できるだけ早く一斉点検を実施すべく現在検討、打ち合わせ中でございます。
  280. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 総点検については今月下旬からということですが、下旬を待たず一刻も早く開始をしていただきたい、かように思います。  もう一点、環境庁にこの機会に最後にお聞きしますけれども、武内教授のいろいろな調査を見てみますと、県の委託を受けて今回調査をしましたが、武内教授は、本来業務を持ちながら相当な圧迫、また電話による妨害等も受けながら、国民の健康を思い、生命のとうとさを感じて一生懸命その任に当たっておられます。先ほどから言いますように、漁民のためにやったことが、漁民をかえって苦しめて申しわけないが、しかし、自分たちが言ったことは正直に受けとめて実行していただきたい、そうして早急に対策を立てていただきたい。そうしないと、自分たちもやりたくてもなかなかそれが進まなければ、今度はいろいろ批判を受けるということで、たいへん苦境に立たされておられます。それと同時に、調査研究費がとても少なくて、自分の調査をするについてもポケットマネーを出してやっているというようなことで、ずいぶん困難な中に不平も言わずに黙々とやっておられる。本人はおっしゃらないけれども、われわれがそばから見て感ずるわけです。何も地元の教授だからというのではなくて、武内教授に限らず、ほかの教授もそうでありますが、今回の調査は八班に分かれて百名以上の方が研究に当たっておられます。そういったことを考えますときに、研究費等の応援についてもできるだけ国でめんどうを見てあげるというようなあたたかい考えがあってしかるべきだと思うのですが、この点についてはどうでしょうか。
  281. 山本宜正

    ○山本説明員 私ども環境庁におきましては、公害による健康被害の問題について、いわゆる人間に対する影響ということの研究につきましては、たくさんの先生お願いしているわけでございます。水銀の問題につきましても、武内教授をはじめといたしまして、今後は全国的な学者を結集したグループによってこの研究お願いしようという考えを持っております。従来も私のほうで研究費を持っておりまして、いろいろな先生に水銀問題についての研究お願いしたわけでございます。特に今後は、その辺につきまして特に重点を置いた予算の獲得をし、本年度につきましても、でき得べくんば、わが省の中にあります調整費を支出するような方向で検討を進めてまいっているわけでございまして、十分研究していただけるようにお願いしたい、かように思っているわけでございます。
  282. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまありがたい答弁がございました。調整費等の支出を考えている、十分研究はできるようにしたい、また学者を網羅してグループ等をつくって全国的な問題として検討したいということでございますが、当然そうだと思います。おそきに失した感がありますが、ぜひそういうふうにしていただいて、一日も早く安心して研究ができるようにやっていただきたい。こういう金こそ思い切って使っていただきたい。そう何兆円というばく大な金じゃありませんので、こういった金は十分支出してやっていただくことを、国民の健康を守るためにぜひひとつお願いしたいと思います。  最後に、要望を申し上げて終わりにいたします。  以上いろいろ論議してまいりましたが、この短い時間では十分これを詰めることはできませんし、冒頭申しましたように、当面問題になっている中の緊急の問題等を含めまして、この公開の席で明らかにすべき問題をきょうは御質問申し上げました。大臣が参議院また他の委員会等に行かれておいでいただけず、大臣の答弁をいただけませんでしたので、十分ひとつきょうの論議の内容は伝えていただき、対策を早急に立てていただいて、国民が安心して生活できるように救っていただきたい、かように思います。  そこで、要約しまして、第三水俣病の発生で今後どうするかということについて若干まとめて申しますと、まず発見された患者の医療、補償による救済、同時に不知火海、有明海沿岸住民の徹底した健康調査や患者のいわゆる掘り起こしをやっていただきたい。これは九州五県、関係省庁の協力によって早急に着手してもらわなければならぬ問題である。  次いで、汚染源の早急な究明、いわゆる元凶を突きとめていただきたい。と同時に、汚染物質の排除をお願いしたい。水俣湾のヘドロ処理も当然であります。  さらに不知火海、有明海の魚介類の安全基準の設定。その前に暫定基準ということでありましょうが、これは早急にやっていただきたい。  また、魚介類の売れ行き減少等によって漁民がたいへん生活に困っているので、こういった切実な問題に対して漁民救済の手を延べていただきたい。そのためには、さっき言った基金制度の問題だとか特別措置法の問題だとかいろいろありますので、十分考慮していただきたい。  さらに、大きな問題としては、第三水俣病の発生で全国的な水銀汚染の危険が出ておりますので、先ほど申しましたように、五十八社、七十六の全国の水銀使用工場の総点検をやっていただいて、これらも含めて十分対策を立てていただく、研究グループに対する援助、あるいは医者の確保といったことも重点的に努力をしていただく、また国でできるようになれば、こういった患者の認定業務をやるような方向で、これまたできないというのじゃなくて、さらにひとつ検討していただきたい。かようにお願いする次第です。  重大な時期になっておりますし、地元としてはたいへん心配な問題でありますので、時間がかなり経過しましたが、長時間御協力を感謝し、特に地元の切実な大事な問題をはしょってきょうは御質問申し上げましたので、よろしくひとつ早急な対策を立てて安心できますようにお願いを申し上げて、質問を終わります。
  283. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。   午後五時五十三分散会