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1973-04-18 第71回国会 衆議院 農林水産委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月十八日(水曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 佐々木義武君    理事 仮谷 忠男君 理事 坂村 吉正君    理事 藤本 孝雄君 理事 山崎平八郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 柴田 健治君    理事 美濃 政市君 理事 津川 武一君       笠岡  喬君    金子 岩三君       吉川 久衛君    熊谷 義雄君       正示啓次郎君    菅波  茂君       丹羽 兵助君    西銘 順治君       長谷川 峻君   三ツ林弥太郎君       湊  徹郎君    安田 貴六君       井上  泉君    角屋堅次郎君       島田 琢郎君    竹内  猛君       野坂 浩賢君    馬場  昇君       湯山  勇君   米内山義一郎君       諫山  博君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君  出席国務大臣         農 林 大 臣 櫻内 義雄君  出席政府委員         農林大臣官房長 三善 信三君         農林省農林経済         局長      内村 良英君         農林省構造改善         局長      小沼  勇君         農林省農蚕園芸         局長      伊藤 俊三君        農林省畜産局長 大河原太一郎君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         食糧庁長官   中野 和仁君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  相川  孝君         外務省国際連合         局経済課長   妹尾 正毅君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  農業近代化資金助成法及び農業信用保証保険法  の一部を改正する法律案内閣提出第三四号)  農水産業協同組合貯金保険法案内閣提出第三  五号)  農林中央金庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第七五号)  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第七八号)      ————◇—————
  2. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。  農業近代化資金助成法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案農水産業協同組合貯金保険法案農林中央金庫法の一部を改正する法律案、及び農業協同組合法の一部を改正する法律案の各案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川利三郎君。
  3. 中川利三郎

    中川(利)委員 それではさっそく本日の一番バッターを承りまして、これから質問させていただきます。  いま御提案のありました農業金融四法でありますか、農協を含めまして、そういう法案の審議でありますが、これを審議するためには金融論あるいは農協論あるいはいまの農業を取り巻く情勢一般論、こういうものが全部関連してくるのでありますが、きょうは私は、主として当面する農業の全体の中の中心的な問題についてお伺いしたいと思うわけであります。  さしあたって、いまどこでも米をめぐる問題として大きく注目されていますのは、大商社による米の買い占めであります。特に大商社の米の流通市場への介入買い占め、こういうものがたいへんな問題になっておるわけです。従来、これらの問題は衆議院の物特のほうで物価サイドから大きく問題化されまして、先ほど参考人喚問なんかも行なわれたようでありますが、私は、これを農業の面から、食管法立場からひとつお伺いしてみたいと思うわけであります。  今日、商社が米の流通介入いたしまして、不当な買い占め問題が発生しているわけでありますが、なぜこのような事態が起こったのか、大臣見解をお示しいただきたいと思います。
  4. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 直接的な原因一つといたしましては、モチ米需給状況が悪くなりまして、昨年の暮れから本年にかけて、大まかにいいまして六万トンぐらい不足するというようなことで、モチ米価格暴騰する、あるいは買いあさりが行なわれる、こういうようなことから問題が始まったと思うのであります。  それからもう一つには、これは全く逆の原因でございまして、御承知の米が非常な過剰米をかかえる状況にありまして、そのために一般的な情勢が、この需給率緩和に伴う米の統制というものがあまり厳重に行なわれない、緩和されたそういうものを受けての米の流通があった。  この両極端な面からこれが合わさっての、直接的にはモチ米買い占めとかあるいは投機的な傾向などを含んでの商行為があったんではないか。その間に余っておるほうの米についてもいわゆる未検査米などの買いあさりがそれと並行して行なわれた、こういうのが今回の米の問題の原因のおもなものではないかと思います。
  5. 中川利三郎

    中川(利)委員 いま大臣から答弁いただきましたが、一つは、モチ米需給が悪くなった、不足した、こうした極端な不足状況があるということと、もう一つは、米が非常に余っておる、極端な過剰傾向にある。つまり日本農業の、特に米の分野だけをとりましても、一つには非常に余る現象一つには非常に不足する現象と、こういうものを通じながら全体として日本農業というものはだめになっていっているわけでありますが、それ自体たいへんな矛盾だと思うわけであります。前段からお聞きしますと、しからば、なぜモチ米需給が悪くなって、暴騰が起こり買い占めが始まったのか。現象面ではそういうことだというけれども、そういう現象がなぜ起こったのか、これをどのように分析しておりますか。
  6. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは本来でありますると、モチ米については結果的な判断からすると、どうしてモチ米があまりつくられなかったのかという気がいたします。モチ米については、従来でありますると、かりに不足いたしましても、特殊の用途ということでタイあたり買い付けが可能である。そういうことで、かりに需給関係が悪くても問題なくいける見通しにあったと思うのでありますが、それが若干の買い付けをしようとしてもなかなかその買い付けができない。本来補いがつけられるべきものがつけられなかったというようなことが影響してまいったわけでありまするから、今回の苦い経験にかんがみまして、これからは契約栽培考えようというようなことも申し上げておりまするが、なかなか予測しがたい事情があった、こういうことに見ております。
  7. 中川利三郎

    中川(利)委員 大臣答弁では、単なる需給関係、つまり一般的な需給の問題にすりかえているように思いますが、この場合問題なのは、日本の有数の商社がこういう投機に、モチ米でありますが、介入してきた。そういう大きな問題を含めたような含めないような、一般問題にしているような感じがするわけでありますが、それを抜きにしてはいまの事態考えることはできないわけですね。  そこで、その前提となっているものは食管法ですね。つまり食管法のいろいろな形での骨抜きが今日の事態を生み出した根本的な原因ではないか、こういうふうに私、考えるのでありますが、そこに触れないで問題の所在をあれこれ言うても、決して本質をつくものにはならない、こういうように考えますが、どう思いますか。
  8. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 食管法につきましては、需給緩和に伴いまして自主流通米制度であるとかあるいは予約限度数量とかあるいは物統令廃止するとかいうようなことが行なわれてまいりましたが、それはそれなりにその当時の状況考えてみまするならば、過剰米も出て各農村における倉庫には米があふれておる現状からして、当時はこれをどう打開していくかという大きな政治問題であったわけでございまするから、それに応ずるように、食管制度根幹をいじることなく、運営の面において現実に即した措置をしていこうということであったので、いまはそうでない面からいろいろ問題にされますけれども、その当時のことを考えてみまするならば、それだけの問題があり、それに対処したいろいろな施策であった、こう思うのであります。
  9. 中川利三郎

    中川(利)委員 食管法根幹ということをおっしゃいましたが、当時の状況の中では生産過剰だからどうしてもああいう措置が必要であった、こうおっしゃりたいようでありますね。ところが、いまは、つまりそうでないいろいろな部面から問題が発生してきておるんだ、こういう認識なわけであります。しかし、問題は、あなた方は、食管法根幹を決していじることなく、いろいろなその当時の時点での最良の方策をとった、こういう表現でありますが、食管根幹といいますか、あなたは守られていると言う、その守られている中身は何か、どのように守られているのか、食管根幹というのは一体何なのか、もう一回私に教えていただきたいと思うのです。
  10. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は国民にとっての最も重要な主食、この主食が安定的に供給されるということが一番必要なことだと思うのであります。その範囲におきましては、現在、食管制度が、政府が管理している面あるいは間接的に管理している面、国民食生活に対応する必要な米の確保というものが十分できておる、そのことを維持しておるということで、私は食管制度の本来の目的を確保しておる、かように見ておる次第でございます。
  11. 中川利三郎

    中川(利)委員 政府常識からいえば、いまの状態、つまり自主流通米買い入れ限度数量物統令、こういうように次々になくしておいて、それでもなおかつ食管法は守られておるんだ、根幹はあるのだ、こういうことでありますが、あなたの前の農林大臣足立さんなんかは、もう公然と、食管法廃止のメドがついた、そういう条件がそろったなんということを発言していらっしゃいますね。国民常識から見ますと、あなたが守っていらっしゃるというその食管というものは、事実上、骨抜きにされた、こういう認識国民常識だと思うのですね。政府常識からしますと、そうじゃないような言い方でありますが、国民的な常識として、そういう立場からいえることは、今回の異常な事態は、昭和四十四年に皆さん方自主流通米を発足させた、そのことで商社が公然と代行買いができるようになって、今日の米投機の一番最初の道を開いたんだ、こうおっしゃっていますが、このことについてはどうお考えになりますか。
  12. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほども申し上げましたように、過剰米で困っておる当時の状況考えていただきますと、すぐおわかりになると思うのです。そのこと自体農村に対しても、一体米をつくっておってどうなるかという非常に大きな問題を起こしておったわけであります。倉庫にはもうあり余るほどの米を持っておる、もうこれ以上米をつくったらどうなるかという状況にあったことは、間違いのない事実であります。しかし、そのことはどうしてかというと、もう何でもいいから米はつくればいいのである、要するに、ただ増産をしておればよろしいというような傾向が高じてまいったのでありますから、また一方におきまして、消費者のほうからいたしますと、ただ米を供給するということでなく、嗜好に合ったもっとうまい米を供給してくれたらどうかという声も起きておる。そのような事実からいたしまして、自主流通米制度というものを取り上げていこうというのが、四十四年当時の状況であったと思うのであります。これは御批判がございましても、その当時の状況からすれば、一方においてはそういうことの必要性あるいは要望というものがあったことも否定はできないと思います。
  13. 中川利三郎

    中川(利)委員 昔はそういう状況であった、だからいまの問題はそれで目をつぶれ、こういうことになるのですか。私が聞いたのは、四十四年の皆さん自主流通米制度発足、これによって商社代行買いが認められ、いまのような米投機の道を開いたんじゃないか。そうすると、あなたは、昔は食管法がそういうかっこうでやることが必要であったのだ。そのことは認めますけれども、そうすると、そのことによっていまの問題をどうするかということの答えにはならないと思うのですね。だから、そこをどうなのかということを聞いているのです。
  14. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 それは、先ほど、現在の原因の中に、やはり需給緩和によって未検査米余り米があった。こういうことが今回のモチ米不足に伴う買いあさりの対象の中にも入ってきたということは、私も認めて、申し上げておるのでありますが、しかし、それはまた、今回のように調査をいたし、それから、予約限度数量制もあることでございますし、自主流通米流通経路を明白にしておるのでございますから、今回の苦い経験にかんがみまして、それをはっきり監督してまいりますれば、正常のルートに乗せて、今度のような問題を起こさずに済むという見通しはあるわけでございますから、自主流通米制度が悪いということではなく、自主流通米制度のやり方について需給緩和というものを背景にしてのそこにルーズな面があったのではないか、こう申し上げてよろしいと思うのであります。
  15. 中川利三郎

    中川(利)委員 いま自主流通米が主として問題になったわけでありますが、自主流通米ということで大きな商社介入の道を開いて、その上に買い入れ限度数量という制度を発足させた。これで生産者サイドからたいへんなやみ米をつくり出す要因の道を開いた。さらに、物統令標準価格米以外の値段を自由にしまして、正規ルートの米に対して不正規ルートの米、やみ米を混米して格上げして売る、そういうことが一般化するような風潮を開いたことは、米穀業者サイドからやみ米というものを助長するような道を開いたし、さらに商社投機条件をつくった。全部おぜん立てをしたのが政府のこの三つの施策です。それに対して前の足立農林大臣がああいう花火を上げた。こういうことが一切の前提になっているのではないか、こう思いますが、これについてはどうお考えですか。
  16. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 物統令をはずして、そしてやみ米がどうという、ちょっといま御質問趣旨がわからなかったのですが、政府売り渡し価格はこれはもうはっきりしておるわけです。そしてその中に、相当量標準価格米として価格の形成が明白になる、これが基準になりますから、自主流通米がこの標準米から非常に高い価格になりましても、消費者にも十分判断をしてもらえる。また、非常に高いとするならば、それは一方において、そんなべらぼうなことはないという批判も出る。でありますから、物統令がないということで一がいに国民食生活影響が起きるような価格暴騰を見るわけがないわけであります。現にいろいろ問題がございましても、現在の上米中米価格推移をごらんいただきますならば、価格面において大きな問題を起こしておるとは思わないのであります。また食生活の安定の上におきましては、標準米をどこの米屋においても常時置かなければならないという義務づけをさせておるのでございますから、食生活に対する不安定もない。したがいまして、現在のこの物統令をはずした米の価格の面からの問題というものは、私は、いろいろ御批判はありましても、現実に問題がない、こう見ております。
  17. 中川利三郎

    中川(利)委員 農林大臣は、いまの自主流通米買い入れ限度数量物統令、それがすべてが適正に行なわれて何ら現実に問題がないということであれば、いま現実に起こっておるたいへんな米投機の問題をどう理解したらいいか国民は苦しむだろうと思うのです。そういう言い方国民は納得するかどうか、あなたはひとつ現実国民の声を聞いてみていただきたいと思うわけでありますが、その点どうですか。
  18. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 数字ではっきり申し上げることは長官から詳しくいたさせますが、いま問題になっておる米の投機ということについては、これは先ほどから御説明を申し上げるとおりに、モチ米の問題であります。そしてそのモチ米につきましては、その原因も申し上げまして、あらゆる努力をいたし、幸いにしてタイ国の協力も得まして現にモチ米の輸入が行なわれておるのでございまして、横ばいでずっと推移しており、一応の鎮静化を見ておるのでございます。ウルチ米等につきましては問題は起きておらないと思います。
  19. 中川利三郎

    中川(利)委員 価格の問題と流通の問題をごっちゃにしてもらっては困るわけでありまして、いまモチ米では、価格の問題で、いろいろな投機買い占めで問題になっているわけでありますが、一般ウルチ米にいたしましても、あなたがおっしゃるようなそういう厳重な政府統制の中で、たとえば秋田県平鹿郡の増田農協に見られる例のように、たいへんなことが起こっているのですよ。この起こっている事実について、あなたは、たいしたことがない——この事実内容についてはあとで私は詳しく追及するつもりでありますが、事実、一般ウルチ米についてもそういう問題が起こっているということ、また起こる要因が、皆さんがおつくりになったこういう食管法骨抜き  の中にあるのだ。いまはモチ米におもに限定されたように、社会的に大きい問題になっているわけでありますが、それがウルチ米に及ばないという歯止め、防止策というものがはっきりとられた上での御発言なら私は納得しますが、現状では、モチ米もやがてそのようになるということを、あなたはどうお考えになりますか。
  20. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 非常に大量の米を管理しておるのでございます。そして、その間に、御承知逆ざやもあるということから、いまこれから御質問されようということにつきましては、これはそういういまの制度のすきをねらっての行為で、まことに忌まわしい行為でございまして、これはいまあなたが御質問をされておる御趣旨の、その商社の買いあさりとかどうとかということよりも、逆ざやを利用しての問題でございまして、これは後ほど御質問に応じて別途お答えすればよろしいかと思いまするが、現在、政府が大部分の米を直接、間接に管理をしておって、そして国民生活に必要なその米については、別にこれは問題が起きておるわけではないのであります。このモチ米暴騰に応じて、余り米なりあるいは未検査米などを利用して、ひとつ商売をしてやれというような、そういう商社行為、そのような食管法に違反するような行為が一方において助長されることは好ましくない。したがって、それは厳重に取り締まろうということで、現在そのような方針を打ち出したのでありまするが、しかし、政府がちゃんと必要なものは現に押えておるということでございまするから、商社のそのような投機的な行為というものは、これはもう厳重に取り締まらなければなりませんけれども、そのことが国民食生活に現在大きな不安定を与えておるというふうには見ておらないわけでございます。
  21. 中川利三郎

    中川(利)委員 いまいろいろな問題がごっちゃになっているようでありますが、一つ一つ整理をいたしますと、まず一つは、いまのモチ米の問題でありますけれども、モチ米にいたしましても、国民食糧の主要なものだと私は思うわけですね。食管法をこのようなかっこう骨抜きにしますと、当然その買い占め投機が起こる、こういうことがまず予測されたと思うわけでありますが、それを予測されたかされなかったか私はわかりませんが、政府としてはどのように見ておったか、お伺いをしたいと思います。
  22. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現に行なわれておるような事態は、これを防いでいくことが必要だと思います。未然に防止したい。したがいまして、これは先生もよく御承知のように、私は就任以来、この国際的な食糧の逼迫というものが、これはいずれいろいろと国内的にも影響が出てくるぞ、こういうことで終始一貫して、食管制度——いまいろいろ御批判ございまするが、しかし、私はこの制度を正しく運営し、維持していくことが好ましいということで、あえて前農林大臣の当時のお話とは違って、この食管制度についてはいろいろ検討もしてもらい、そしてまたいい意見も出つつあるけれども、いまはそういうものを取り上げるよりも、これを正しく守っていくほうがより必要であるということを終始申し上げてきておるわけでございます。  それで、その限りにおいては、私は、見当は間違っておらなかったのでありまするけれども、一方において、遺憾ながらモチ米の問題が起き、また過去における需給緩和というものがこれに加わって、商社のああいう行為が起きておった、これはたださなければならないということで、鋭意現在努力をしておる、こういうことであります。
  23. 中川利三郎

    中川(利)委員 私がお聞きしたのは、当然食管法のいろんな手直しをいたしますと、そうした商社買い占め投機が起こるであろう、こういうことをあらかじめ予測していたのかいなかったのか。このことについてお答えをいただきたいわけであります。
  24. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は、いまお答えを申し上げたとおりに、就任以来、もうそういうことのないように未然に取り締まろうということで、いま申し上げたようなことでまいったことを言っておるのでございます。過去におきましては、これは当時の需給緩和を反映いたして——その当時の方がどうお考えになったか別として、現実にはそういうことが反映して米についての統制がゆるみがちであったということは現実でありまするので、これはいろいろ申し上げる必要もないと思うのであります。
  25. 中川利三郎

    中川(利)委員 それから価格の問題でありますが、先ほど大臣は、消費者米価についてはそんなに大きい値上がり、そういうものはないのだ、こういうお話であります。しかし、政府標準価格米はそうでありますが、皆さん方の、圧倒的大部分を占める自主流通米米価にいたしますと——私は、せんだって十キロのササニシキを買いましたが、二千五百円ですね。これはびっくりしたわけであります。  そこで、お聞きしたいことは、四十七年三月の六十八国会で、物統令をはずした場合、消費者米価値上がりすると思うか、しないと思うのかという質問国会でなされておるわけです。当時の赤城大臣は、そんな物価の問題は、心理的なこともあるし、需給のバランスがとれれば値上がりはしないで済む、こうおっしゃっておるのですね。それにはさらに追及があるわけでありますが、たとえば値上がりが一〇〇%のうち六、四か七、三ぐらいで上がるのじゃないか、こういう追及速記録を見ますとあるわけです。ところが、大臣は、私の見通しとしては、八割ぐらい上がらないつもりだ、二割はどうかなということで位置づけておる記録があるのですが、そうすると、ある時点米価と比べまして、いまは何割上がったのか。この赤城大臣のこうした見通しが正しかったのかどうか。いまあなたは、さきの政府執行者がどう言ったか知らぬけれどもと、こういうふうな言い方でいまのあなたの御所信を述べていらっしゃいますが、それでは自民党政府というものの一貫した方針の中で、また大臣の責任ある発言というものの中で問題があろうかと思いますので、こうした赤城大臣答弁なんかを見まして、あなたのいまの御発言内容と御趣旨が非常に違うように思うので、この点について御見解を承りたいと思います。
  26. 中野和仁

    中野政府委員 大臣から御答弁いただきます前に、ちょっと数字的に物統令廃止前と現在までの価格推移を申し上げたいと思います。  昨年四月、物統令廃止します前に、われわれのほうで事前調査をいたしておりますが、全国平均で見まして、上米が当時千九百五十五円、中米が千七百八十三円、並米——これは現在の標準価格米でありますが、当時統制額で千五百十円ということでございます。すでに去年の四月現在で、上米中米につきましては、自主流通米でございますので物統令統制がございませんので、それと比べてみまして現在までの推移でございますが、上米につきましては、昨年の九月末に政府売り渡し価格を改定をいたしまして、その際に水準訂正がございまして、上米につきましては八・四%、中米につきましては六・八%、それから並み米につきましては五・七%上がりました。上がりましたけれども、そのあと現在に至るまで、たとえば上米につきましては三円のアップ中米につきましては逆に十二円の下落、それから並み米は動きなしというようなことで、大体価格は、先ほど大臣お答えになりましたように、安定をしておるというふうに見ております。
  27. 中川利三郎

    中川(利)委員 あなたはいろいろ数字をあげておっしゃいましたが、問題は、物統令がはずされまして、正規の政府ルートのお米、それからやみの余り米のお米、これが混米されて格上げされて売られるというところに問題があるわけです。しかもこの量がたいへん多いというところに問題があるわけです。したがって、いまあなたがおっしゃったような公式な数字をあげても、実態として国民の買うお米の値段の高さといいますか、しかもその出回りの量から見ますと、標準価格米というのは四割、自主流通米が六割でしょう。自主流通米については、それが皆さんの帳簿の中ではどこに行ったかわかるかもわかりませんが、販売される実態、そのやり方については、先ほど言ったような混米というかっこうでやられて値段が不当につり上げられている、それを何ら規制できない仕組みになっている。そういうところから考えてみました場合に、いまのような一般的なそういうありきたりの数字の中で国民が納得するかどうかということについて、御見解を承りたいと思います。
  28. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまの混米の問題でございますが、政府標準価格米の原料として売っております非銘柄米は、自主流通米と合わせました全体の中で四五%でございます。それが末端でどうなっているかといいますと、大体全国平均でございますと三六%くらいが標準価格米で売られているわけでございます。そうしますと、数字的にいいますと、いまの九%が、標準価格米の原料で政府が売りながら末端では標準価格になってないということになるわけでございます。これが全部先ほど申し上げました上米価格まで格上げされておるということではございませんで、先ほど私が数字を申し上げましたように、原価の高い自主流通米と原価の安い標準価格米とを混米いたしまして、これがまあ大体中米になっておるというふうなことでございます。大体そういう傾向でございますが、一部あるいは安い原価のものを上のものにまぜるということは、なかなかこれは混米のことでわかりませんけれども、大体はそういうことになっておりまして、いま先生おっしゃいましたように、全部が格上げをして高いものばかり売っておる、こういうことではないというふうに思っております。
  29. 中川利三郎

    中川(利)委員 何だかわからないのですけれども、いま米屋さんでやみ米をまぜないで政府の言われたとおり売っている米屋というのは一軒もないでしょう、まず事実として。そういうことから考えまして、何か常識はずれの答弁のように聞こえますけれども、これはどうですか。
  30. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は食糧庁長官お答え申し上げたことで間違いがないと思うのです。と申しますのは、標準価格米はこれはもうお調べ願えればわかりますが、昨年政府売り渡し価格を引き上げ、消費者米価が上がったその時点から、ずっと並み米は、標準米価格は、これは価格としては横ばいで推移をしておるわけであります。  そして、いま標準米についていろいろおっしゃられましたが、これはそれぞれのお米屋さんにこれを常置させることを義務づけておるわけでありますから、もしそれがないんだということであれば、それこそ、私どものほうにも文句を言っていただいて、われわれのほうもすぐそれについては手配をする必要が当然起きてくるわけであります。  そこで、いまお話で問題は混米のことです。混米については、これはもう私しばしばお答えをしましたが、米屋というもののもう長年の習慣で混米というものは行なわれてきておる。しからば、そのおっしゃりたいところは、標準米として出ておる安いものを混米にして高く売っているんでないか、これが問題の一つだと思います。それからまた、そういうものが混米されることがけしからぬということになりますが、私どもの立場からいえば、標準米というものをいつでも消費者の需要に応ずるだけのものを用意しよう。したがって、その場合にどの程度用意をするか。過去の実績等に徴しまして、ただいま食糧庁長官の言われたとおりに、全体の中の四五%というものを確保しておく。そして、これはきちきちだったらどうにもならないのですからね。そしてその結果若干のものが残ってくる。それが数字的には現在九%程度のものが残っておる。これはしかし、昨年の十一、十二、一、二、三月ときておる間のことで大体九%残っておるんだなというふうに数字的には推計をしておるわけでございまするが、結果はどうなるかは別でございます。しかし、その九%程度残っておるものを、これが米屋さんの過去の習慣上、しかも政府としては必ず求められれば応ぜられるだけのものを確保しようという余裕を持っているんですから、そしてそれが混米される。その混米されたときに、普通の自主流通米上米としての先ほど申し上げた価格で売られておるが、中米として売られておる。それで、その中米は現在、昨年の十一月当時から比較すれば十二円下がっておるということを申し上げたわけです。
  31. 中川利三郎

    中川(利)委員 何かことばのあやというか魔術のような言い方でありますが、問題なのは、標準米が四割ですか四割五分ですか、いずれ米の大部分自主流通米に回っている。そのほかに相当量やみ米が出回っているというところに問題があるわけですね。現にたとえば、日本経済新聞なんか、毎日の相場表の中にやみ米の市中相場の毎日の動きを伝えておる。あるいは東商報という新聞がございますが、これは毎日やみ米の相場表を専門に出している新聞ですね。こういう事実から見まして、そうした通り一ぺんの何といいますか、標準価格米は常に要求だけ置いてあるというのですけれども、全体の国民食糧需要量からいいますと、政府が責任を持たなければならない、責任ある標準価格米のほうをどんどん少なくして、ほかのやみ米といろいろまぜ合える部分を多くしている。こういうやり方のところに今日の米投機買い占めのいろいろな問題の根源をつくっているというように思いますので、そういう根本的なものの考え方から出発しないと、単なる手先だけの言いのがれだとかあるいは対策になってしまうおそれがあると思うのですが、そういう根源について、より深いところからの反省なり考えなりがないのか、ここでもう一回、失礼ですけれども、伺いたいと思います。
  32. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 標準米が残って混米される、これは私の説明でおわかり願ったと思うのですね。これをきちきちにするというよりは、そうでないほうが消費者のためだと思うのであります。そうすると、長い間の習慣の混米は、これはやむを得ない。そうすると、その混米の価格問題、これは上米中米価格制度がある、こういうことになります。  それから、いまお話のいわゆる自由米の問題でございまするが、これは長官のほうから詳しい数字を申し上げてよろしいと思いますが、農家の保有米を認めておりますね。政府は所要のものを買い上げる、あるいは所要のものを自主流通米として流通させる、そういうものについてはみな予約金を出してちゃんと確保していくわけですね。しかしながら、農家の保有米が豊作の場合に、多少余裕が出る。まあ普通の場合であれば、親戚、知己に贈与したりする場合もありますが、それが先ほど来問題になっておる商社投機対象になり、またそういう自由米市も立つというようなところへ来ておったと思うのであります。これはでき得る限り正していかなければならないのでありまして、本来でいいますならば、そういう余り米が、あれば、これは倉石農林大臣当時の農業団体とのお約束で、これを自主流通米と同様に流通経路に乗せるというお約束であったわけであります。しかし、それじゃうまみがないというようなことで、やみに流されたということは非常に遺憾に思うのでありますが、私どもとしては生産目標も与えて、つくった。その上に余り米が出たとするならば、これは農家にとってのいわば出目であるので、いまの統制の上に協力をしてもらって、やはり正規の流通の上に乗せてもらうのが好ましい、またそのように今後指導してまいりたいと思っておる次第でございます。
  33. 中川利三郎

    中川(利)委員 いま何だかんだいろいろなことを言いましたが、問題は食管法にいろいろなかっこうで手をつけた。だから、こういういろいろむずかしいことや困ったことが発生したのであって、ああいう問題に手をつけなければ、スムーズに、何も事なく、政府が責任をもっていったと思うのですよ。  そういう点で私、聞きたいことは、あなた方が食管の手直しをいろいろやってきまして、一体だれがもうかったのか。農民がそれで潤ったのか、国民がそれでもうかったのか、農協がそれでよくなったのか。だれが一体これで得をしたんだ、だれのための食管の手直しであったかということをあらためて根源から聞かなければならないと私は思うのですね。だれがもうかったのですか。だれが得をし、だれが損をしたのですか。
  34. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは農家のためでもあり、また消費者立場から考えましても、現在行なわれておる食管制度というものは、これは正しいものと思うのです。いまモチ米から問題が出て、いろいろな批判があり、またそれに応じてわれわれも食管制度をちゃんとしていかなければならないということで腹をきめてかかっておるわけでございますが、この米があり余るような状況、生産調整もしなければならない状況、これはその当時生産調整も要らないのである、ダブついてもほうっておいていいんだということではなかったと思うのですね。やはりそのことは何か政治の上に反映をしていかなければならない。その政治の上に反映していく上に、安くても何でもたくさんつくればいいということよりは、良質米がよろしい、そしてそれが多少でも農家の実入りになるようにということは、当時の声であったと思うのです。したがいまして、そのことが自主流通米制度になり、また政府の買い上げというもの、予約限度制というものを設けるということの必要もあり、生産調整をやっておるのでありますから、生産目標を与えてやる、こういうことできたので、この一連の過程というものは、いまは商社のそういう問題が起きて御批判がございますが、その当時におきましては別段これという批判なく行なわれてきたものであります。  しかし、これからどうかといえば、それは今回のような問題が起きて、御指摘のように、そのことが食管制の根幹をゆるがすような問題にまで発展しかねないような傾向もなきにしもあらずということであれば、これはいまの制度をちゃんと維持していくほうがよろしいということで、いまそのような方針で臨んでおるわけであります。
  35. 中川利三郎

    中川(利)委員 そうすると、私はだれが得をしてだれが損をしたのかと聞いたわけですけれども、いまの大臣答弁では、過去の事例を引き合いに出して、米が余っているときにいつまでもたくさんつくらなくてもいいではないか、こういう論議で押し返してきたわけですね。ところが、これはほんとうは別の機会に問題にしたいことでありますが、米がなぜ余ったかということについても、これは時間を設けて政府の責任として、つまり日本の農産物の中に米以外に引き合うものがなかった、そういう政策をやってきた、米以外の農産物の価格補償は何もない、そういう中で米が余ったということも事実であります。  しかし、ここではこの問題を論議するのが趣旨じゃないからやめますけれども、実際問題として農民のためだとあなたはおっしゃった。農民の何のためになったか。たとえば減反や生産調整を押しつけられる、あるいは買い入れ制限を押しつけられて、あなたのほうの農業白書自体が示しておりますように、農業の所得、あるいはいろいろなあらゆるものが全部だめになっているという事実があるわけですね。そうすると、明らかにこれこれに手をつけたということは農民にとってマイナスだ。この事例もあとで私、具体例で申し上げますけれども、農協はどうか。これも保管料や検査料が入らなくて大マイナスになっている。その悲惨な例をこれもあとで引き続いて質問します。消費者について見ますと、あなたは消費者のためにもなったと言いますけれども、うまい米の要求があるんだからしようがないということをおっしゃいますけれども、そうではなくて、実際問題として標準価格米の量よりも自主流通米あるいはやみ米をふやすような施策制度的に保障してやっておる。また、そういううまい米うまい米と宣伝していく、こういう中でいやおうなしに消費構造がそういうものに向けられていくというところに問題があるのであって、実際は政府に高い米を買わされておる、こういう事実があるのです。これによってだれもよくならないのです。もう一回この点について、あなたがよくなったと言うなら、何がよくなったのか、少なくとも国民が納得するような御答弁をいただきたいと思うのです。
  36. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 農林省の立場からすれば、国民に対して食糧の安定的な供給ということが一番肝心なんであります。だから、余って問題を起こしてもいけないのです。したがいまして、この米につきましては、現在一方において問題はありますけれども、大半は政府が管理しておって、そして現在の米について不安定要素というものは持っておらない。安定的に供給をしておる。それから、農家にとりましても、どんどん米だけつくっておるということであれば、そこで行き詰まりが来ることは必至なんでありますから、当時農村においてはどうするのかといわれておったのですから、そこで国民に大きな負担をかけて休耕奨励金、転作奨励金を出しながら、われわれとしてはできれば転作が定着をするようにということで臨んでまいりました。現在大体その方向に行きつつあるのでございますから、あなたの御所見で言えば、農家のためにも消費者のためにも、だれのためにもならないと言うが、私どもが過去を振り返ってみて、あの米のダブついているときからこうやって安定した状況のほうへ持ってきたということで、みんなのためになっている、こう思うのであります。
  37. 中川利三郎

    中川(利)委員 つまりいまの食管のいろいろな手直しは、日本経済の矛盾というか、日本農業の自民党農政によるところの矛盾のしわ寄せを一挙に国民に、消費者あるいは農民に押しつける政府の失政のしりぬぐいであった、私はこういうように見ているわけでありますが、そういうことをいつまでも論議してもしようがありませんから、さしあたって自主流通米投機行為が入らないような仕組みをわれわれは考えなきゃならないと思うのですね。これをいま問題にしてやっているわけでありますから、どういうやり方を考えているのかということを具体的にお答えいただきたいと思います。
  38. 中野和仁

    中野政府委員 自主流通米につきましては、全国農業協同組合連合会、商人系の全集連というのが指定法人になりまして、生産者が経済連あるいは県の集荷団体を通じて米の委託をし、そしてその指定法人が販売業者あるいは実需者に売るわけでございますから、ルートは非常に明確にしております。しかも、その自主流通の販売計画は全部農林大臣が認可をするということにしておりますから、これそのものに投機行為が入るということは、これはございません。ただ、先ほどから問題にされておりますのは、酒米あるいはモチ米につきまして、いまの自主流通ルートの一部に商社が代行をやっております。このこと自体も、代行につきましては、実需者とそれから商社、代行者が基本契約を結び、そして具体的には委任状を出して個々の取引をやっておりますから、これ自体投機が入る余地はございません。  ただ、もし問題があるとすれば、その自主流通制度の陰に隠れてと申しましょうか、あわせまして未検査米を買うとかいうようなことが出てくる。これがいけないわけでございます。そこで、われわれといたしましては、いままでのこの数年間の自主流通制度の運用の経験にかんがみまして、この代行制度につきましてもう少しきちっとしたいということで、現在検討をしておるところでございます。
  39. 中川利三郎

    中川(利)委員 いま自主流通米投機行為が入らないようにと私は言いましたが、これは一つの例でありまして、たとえば同じように余り米に対してそれが横行しておることも含んで、そういうもの全体としていまの状況をつくり出しているわけであります。  代行買いの問題もいまお話がありましたが、商社の、つまり全体としてそういうやみ米が横行したり、代行買いが許されたり、いろんなかっこうで米の流通市場というものが、モチ米だけでなくて、ウルチにまで投機が入るような状況があるわけでありますが、この状況をつくり出したものが、さっき申し上げました一つ自主流通米であり、一つ物統令であり、一つ買い入れ限度数量の制限だ。この三つの根っこがある限り、あなた方がいろいろあれこれやっても決してこのような問題は解決しないだろう、救われていかないだろう。こういうふうに思いますが、その点はどうですか。
  40. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 何度も繰り返して申し上げるようでございまするが、いまの食管制度状況のもとに御指摘になった自主流通米制度とか予約限度数量制とか物統令、こういうことがあるからだめなんだということを言われまするが、これは先ほどから御説明申し上げるようないろんな事情のもとにそのような運営が行なわれてきたわけでございまして、このままの姿におきましても、今後において問題の起こる要素はない。今回の食管法に基づく調査によって実態が把握されておりまするから、この点については姿勢を正しながら今後の食管制の運用をしてまいりたい、こう考えておる次第であります。
  41. 中川利三郎

    中川(利)委員 あなたも何回もおっしゃったように、私も何回も聞いて悪いわけでありますけれども、いろんな事情で自主流通米ができたり物統令廃止された。そのいろんな事情の中でその問題にメスを入れないではやはり今後も投機がますます起こるであろうし、やみ米ももっとばっこするであろうし、ただえりを正してやればいいという問題ではないと思うのですね。そういうものを直さないで守られる食管というのはどういう食管なのか、逆にお聞きしたいわけです。  だから、具体的な中身ですね。その根源を残しておって、その根源をなくするということですから、これはたいへんなことだと思うのですよ。そういういままでそれができた経過をお聞きしたのでわかったわけですけれども、何としてそれをなくしていくかということが、私はまだいまの御説明ではわからないものですから、もう一回教えていただきたいと思います。
  42. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 もう端的に申し上げますると、今回のように、食管法に基づく調査もいたし、摘発もいたすということになりましたから、商社のほうでももう米は扱わぬ、こういうことを言っておるのでありますから、その効果は上がっておると思うのであります。
  43. 中川利三郎

    中川(利)委員 そういう現象的な、一時的なことでなく、問題の本質を聞いているので、それに対して商社がそういったから今回はもう撤退するべえ、そういう甘いことで今後農林行政がつとまりますか。
  44. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはもう先ほど詳しく御説明申し上げて、本来、皆さんのほうから御批判は出ましたけれども、いまの食管制をちゃんと維持していける、自主流通米にしても、これは長官から御説明申し上げたとおりにちゃんと正規のルートに乗るべきものである。しかし、それがどうして乗らなかったか。それは、需給緩和しておる状況のもとでそのルーズさという点は私も率直に認めておるのであって、これを正せば間違いありませんということを言っているわけです。  それから価格の問題にしても、標準価格があって、そして先ほどから上米中米並米価格推移から全部御説明申し上げて、そして中米価格がどうして出るかも、混米の割合も全部申し上げて言っておるのでありますから、御理解いただきたいと思います。
  45. 中川利三郎

    中川(利)委員 大臣、そういう甘い考えでいるからいまのような問題が起こっているのですよ。  では、ひとつ私、具体的な事例でお聞きします。いま商社はどれだけすごいことをやっているかということを、一つの例でありますけれども、申し上げます。全体的に言いますと、米の出どころ、つまり農家の庭先から農協を含めて、末端の行きつく先までほとんど独占的に支配できる体制が整ったといっているのですね。その支配がいかに強いかということは、極端に言えば、食糧庁出先である食糧事務所まで商社側の不当な行為を助けている。食糧事務所と業者側がぐるになっている。こういう例も私、持っておるのですよ。だから、この現状を少し申し上げますので、これでもあなたが言ったようなあんな程度できびしいあれができるかということをひとつ考えていただきたいと思うのですよ。  その一つは、これは北海道の旭川市の六条通の旭川米穀という会社でありますが、この会社は資本金六千万円の会社で丸紅とのつながりを持っているわけでありまして、自由米の扱い高が上川支庁の八〇%を占めるくらいの大きい会社であります。それで一回、三月初旬に食糧事務所の調べも受けていますけれども、この旭川米穀のやみ米の集め方は、この場合は持ち込みでありますが、三つのルートがあるわけですね。一つルートは、これは名前も私、全部調べてありますが、やみ専門のブローカーがおりまして、この男が庭先買いをする。一俵九千七百円くらいですね。二百円のリベートをとって旭川米穀へおさまるというルート一つあるのですね。もう一つルートは、農家から単協へ直接やみ米で売る。単協でこれをやみ米で買うということですね。九千七百五十円くらいです。この単協から旭川米穀へ売っていく、こういうルートがあるわけですね。この場合は大体一万一千円から一万二千円くらいになっています。ところで、ここでおもしろいことは、農家に言わせますと、やみ米だから検査料は要らないのだと言っているのですね。キロ当たり十円の検査料をとられるとなれば、麻袋六十キロで六百円浮くわけですよ。そのほかに、検査に通るか通らないか、何等だかというようなことでよけいな気苦労も要らないと言っているのです。三番目のルートは、いまの農協から直接旭川米穀という会社へいく間に、旭川の下請業者が入るルート。この三つのルートでやられているという事実が明らかになっているわけですね。この三つのルートをやっていきますと、この辺一帯のやみ米というものは、ここで落ちこぼれしてもこっちのほうですくわれる、こっちで落ちこぼれしてもここですくわれるというかっこうで、大部分が旭川米穀へ集まる、集まらざるを得ないというような状況になっているのですね。これが丸紅とのつながりがあるわけであります。  ここでの問題点は、いろいろな農協が旭川米穀にやみ米を売っているという事実があるわけです。ところが、それだけではなくて、道連、ホクレンですね、経済連も、必ずしも旭川米穀へ売るためではないけれども、自分は自分で売らなければ、道連そのものも維持できないわけですから、やみ米の買い集めを末端農協に指示しておるのですね。あらかたの単協はそのために自主流通米とは別にやみ米を経済連に上げているという実態があるわけです。単協はそれぞれ経済的に弱いから、経済連にやみ米を売る場合は少しでも高く売りたい。その場合、旭川米穀にはこれだけで売ったということをかけ引きの材料として使っているわけですね。ところで、道連では少なくとも安く買いたいから、そのやみ米をめぐりまして、単協対旭川米穀、単協対道連、この関係の中でいろいろな、何というか問題が起こっているわけです。こういう事実を大臣はどう考えますか。
  46. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私はその事実を承知しておりません。そこで、いまの御説明は御説明としてお聞き取りいたしましたが、ただいま担当者のほうから  お答えさせます。
  47. 中野和仁

    中野政府委員 具体的な御指摘でございますので、いまお話しございましたように、詳細には食糧庁といたしましてもまだ承知をいたしておりません。さっそく調べてみることにいたします。
  48. 中川利三郎

    中川(利)委員 第二の実例を出します。これは食糧事務所が商社買い占めに協力しているのじゃないかということです。これは茨城県の水戸に茨城倉庫という会社があります。本社は水戸ですが、倉庫はあちこちにあるわけです。それで、この茨城倉庫という会社で私、問題だと思うのは、前もって食糧事務所の次長が新聞記者に、茨城倉庫——ここには約九百トン、三十キロ入りで三万俵の米が入っているという事実をわれわれつかんだわけですね。それから、つかんだことだけ先に言いますと、食糧事務所の調査は入っていないけれども、何というか食糧事務所担当の出入りの新聞記者に対しては、その食糧事務所のえらい人が、茨城倉庫には第一次の調査ではやらなかったが、第二次ではやるぞということをあらかじめ知らしているわけですよ。このため連日地元の新聞では、あすいよいよ茨城倉庫を捜索かとか何とかいうことをいろいろ書き立てておりましたね。それから、倉庫に入っているやみのモチ米というのは、普通の麻袋に入っているのではなくて、えさの袋、肥料の袋に入っているわけですね。こういう事実をつかんで、私の秘書が四月四日の朝の九時に茨城食糧事務所を直接訪問したわけですよ。そして、その担当のえらい方とお話ししたわけでありますが、そのときにこう言っているのだな。いま言ったことを確認するために、新聞記者に第二次でやるのだということをわざわざ話して時間かせぎをさせたということに基づいて、そういう事実があったか、話したかと言ったら、その方は話したと言っているのですね。それから、それだけではない。言った順序に言うとわかりやすいからあれですが、まずそこで反町という次長とお会いしまして、いろいろ事情を問いただしたのですが、茨城倉庫の米は凍結してある、しかし、やみの米かどうかは調査していない、こう言っているわけです。まずそこです。四月四日ですよ。そこで、私のほうでは、第二次調査でやることを新聞記者に言ったことがあるかと言ったら、あると言うのです。それから三万俵入っている事実があるか。ところが、三万俵ではなくて、実際は六十キロ入り紙袋、えさ袋、肥料袋で一万五千俵だ、その所有者はだれそれということを言っておるのです。  そこで、私、問題にしたいのは、まずそういう点でわざわざ新聞記者に予告して書かせて、相手に時間かせぎさせている。それを指示したのは食糧事務所だということが一つですね。二番目には、国会議員の秘書に対して茨城倉庫はまだ調査が済んでいないと言っているのですね。そう言っていながら、四月の四日に私のほうから行ったわけですが、四月六日付の毎日新聞、あるいは食糧庁もそういっていると思うわけですが、茨城倉庫調査はすでに終わった、こういっているのです。毎日新聞でもそう書いている。これは一体どういうことかということ。それから同じ六日付の毎日新聞には、この茨城倉庫に入れておった北日本食品社長は記者会見で、丸紅とおれのほうは関係ないのだと言っている、こういうことを書いてあるのを例にして、食糧庁としてはやみ米でないことがわかったからだということで、四月五日に凍結を解除しているのですね。すぐ次の日、私の秘書が行った次の日に凍結を解除しているのですね。そういうことがあり得るかどうかということが問題なわけです。  同時に、このことで専門家に聞きましたら、一万五千俵の米を検査するためには、これがやみかどうか突き刺して調べなければならないわけですから、大体二人がかりで一週間かかるのだ。ところが、この時日経過でいうならば、二十四時間以内に一万五千俵調べたということになるのですよ。それで解除しておるのですね。こういうことが実際あり得るかどうかということですね。つまり私のほうの共産党がそこに乗り込んだものだから、あわ食って急に解除した、こういうことにもなると思うのですね。こういうことはだれが見ても、食糧庁の出先である食糧事務所が業者と癒着し、加担していることのあらわれだと私は思いますけれども、これはどう思いますか。
  49. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまのお話、ちょっと私がお伺いしておっても、私のほうに対する報告とは違う点があるようでありますから、若干詳細に申し上げますと、食糧庁は、二月の末、食糧事務所長を集めまして、倉庫調査の指示をいたしました。それが二月の下旬でございます。食糧事務所では準備を整えまして、二月の終わりごろから三月の初めにかけて調査をしたわけでございますが、御指摘の茨城の倉庫につきましては、調査をやりましたのは三月一日でございます。九百トンのモチ米を発見したわけでございます。  そこで、食糧庁といたしましては、今回の調査は、摘発が目的というよりも、流通段階で滞留をして売り惜しみ、買い占めが行なわれることを、この調査によりましてなくするということでございましたので、すでに三月の中ごろにもう一ぺん関係所長を全部集めまして、処分方針を指示をいたしております。  これによりますと、本来厳密に食管法を適用しますれば、未検査米でございますから、農産物検査法にも違反いたしますし、いけないわけでございますが、この際は、調査をした上で流通過程に問題がないといいますものは、大体実需者がもうすでにやみ米といえども買っておるというものについては、凍結をすぐに解除をするという指示をいたしたわけでございます。  ただ、この倉庫につきましては、非常に大量なものでありますから、またいま御指摘もありましたようなことがありますものですから、若干その解除がおくれておりました。その間、御指摘のように、これを一俵一俵検査することは、もともといろいろな袋に入っていたようでありますからできませんので、品位の仕分けの鑑定をいたしたわけでございます。そういたしますと大体九百トン、九百トンですから三万俵でございますが、そこにあるものの大部分がいわゆる規格外米であったということであります。そこで、品位の仕分けの確定いたしましたのは四月の二日でございまして、すでに食糧庁本庁からは、三月の末に凍結解除を指示いたしております。現物が動きました日にちをちょっといまここに持っておりませんが、私のほうから指示をいたしましたのは三月の末でございまして、先ほどから申し上げておりますように、今回の場合は、むしろ早く実需者の手に渡すということ、ただし、この場合も非常に大量でございますので、その一部は茨城に留保をいたしまして、それを零細な加工業者に分けるというところまで行政措置をとったわけでございます。
  50. 中川利三郎

    中川(利)委員 いまいろいろ言われましたが、つまり国会議員を代理する秘書が参りましたのに、わざわざ調査の済んでいるものを済んでいないと言い、あるいは新聞記者には、前もっていつ調査するかわざわざ発表させてみたり、あるいはいまやみのモチ米について問題になっていて、それを一俵一俵検査するという慎重な配属が必要なのに、まとめて何とかするということばがありますけれども、何だかまとめて料理するようなやり方、こういうことで国民が信頼すると思いますか。こういう点についてやはりいまの問題があるだろうというふうに思いますが、そこら辺はどうですか。
  51. 中野和仁

    中野政府委員 一俵一俵検査するということになりますと、いろいろな袋に入ったものを全部農家に戻して、それから既定の手続をとってやるということになるわけでございます。三万俵もありますと、農家はだれかということもなかなかわかりません。しかも、そういうことをやっておれば非常に日数がかかるわけでございますから、そこで、これは食管法を厳密に適用すればあるいはいけないことかもわかりませんけれども、この際は、未検米ですから、やはり品質鑑定をした上で早く実需者の手に渡すほうがよろしい、と同時に、やはり未検米を扱っておりますから、何がしかのこらしめということで、五十トン以上のものにつきましてはその二割を、食管法に基づく行政命令を出しまして、その実需者から別の零細な県内の業者に分けるというところまでやったわけでございます。今回の措置はそういうことでやりましたので、その点は御了承いただきたいと思います。
  52. 中川利三郎

    中川(利)委員 なぜ私がこういう問題を出したかといいますと、つまり大商社のいまのしかけ、支配網というものはあらゆる網の目を張っている。それに行政機関も加担したと疑われる節がある。それだけじゃなくて、いま第三の実例として出したいことは、製菓業者やあられ業者を、こういう会社ごと買い占めをしている事実がたくさんある。系列化はもちろんでありますが、会社そのものを買い占めている。そういうことでありますから、これは先ほど大臣が言ったように、単純な、おれは米から撤退するから問題は解決したんだということでないから、あらためて申し上げたいわけであります。  その買い占めの実例でありますが、これも自主流通米の発足や物統令廃止以来、そうした実需団体、実需会社というものが買われていっているわけですね。一つの例だけ申し上げますと、茨城県の下館市に、これは名前は伏せますけれども、年間二百トンくらいの製菓業者がありまして、そこへ経営不振のところに、もちろんこれは丸紅でありますが、それとつながる正栄食品というものがあらわれまして、これは米とは全く関係のない酪農製品の業者ですが、この会社を再建してあげると言いながら、社長を追い出し、重役を全部追い出して、いまもとの社長はおっぽり出されております。それから、もとの会社の経理課長は、これは社長のおいに当たるんですが、外交員になっております。もとの会社の専務、これは長男でありますが、八丈島へ出かせぎに行っています。しかも、この会社のいまの倉庫には、年間自分の使う量以上の相当量というものがしまわれているわけです。これが実態だということなんですね。  いま三つの例を一つの例であげましたけれども、こういうことになりますと、自主流通米を発足させ、あるいは物統令廃止する、あるいは買い入れ制限をするということが、一体どれだけおそろしい結果につながるかということをお認めいただかなければならない。その反省の上に立って新しい施策を講じなければならないというふうに、私はあなたからそうじゃないと言われても、そう思うのですけれども、この点についてもう一度お答えいただきたいと思うのです。
  53. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いろいろの事例を承りました。私どもとしても大事な問題でございますから、必要に応じてよく調査もしてみたいと思いますが、そのような事態が多少でも真実であるということになってきますと、影響するところは大きいと思うのです。私が先ほどから繰り返し申し上げておりますのは、今回の食管法に基づく調査ということから、需給緩和を背景としての米の動き、あるいはモチ米需給逼迫による米の動きというものの実態が明らかになり、また考えさせられる各種の問題が起きたのでありますから、したがって、現在の食管制をしっかり運用いたしまして、そういうことのないようにつとめよう、本来自主流通米制度というものはそういうことになるべきものでないということを申し上げておるわけでございまして、この辺を御了承願いたいと思うのであります。
  54. 中川利三郎

    中川(利)委員 さしあたり私が一つだけ申し上げたいのは、物統令廃止していますが、これをもとに戻すことはできないのか。いまのような事態を踏まえてどうです。
  55. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これもお答え申し上げておりますように、物統令を適用しないからといっての問題を予想していろいろお話しでございますが、現在の標準米制度というものが一つの指針になる。この標準米から、上米だからといってべらぼうに高く売るというわけにはいかない。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 また、それは当然多数の消費者批判の的になるのでございますし、良質米がある程度の価格を維持するということは、再三申し上げるように、そのことによって生産者の手取りも多少でもよくなり、また消費者の嗜好に応じて良質米が提供されるということは、現在の世相からいたしまして、やはりこれも国民の要望の一つの線に沿ってまいったことでございまして、こういう見地から物統令を再び適用するということは考えておりません。
  56. 中川利三郎

    中川(利)委員 いま私の質問に対するお答えの中に、私の質問の中身について多少でも真実であるならばというような受けとめ方をしていらっしゃるのですけれどもこういう問題をそうした意識の中でおとらえになっておること自体、私は問題だと思うのです。もう少し真剣になって突き詰めて考えた場合に、私はいまのような答弁はできないのじゃないかと思うのですけれども、あなたも十分わかっておる答弁でしょうから、これ以上追及しませんが、非常に遺憾だと思います。  同時に警察庁がここへ来ておるようでありますので、ついででありますから警察のほうへお伺いしますが、新聞なんか拝見しますと、丸紅に対する捜索について、いろいろな新聞の見出しだけ私、持ってきていますが、たとえば四月五日木曜日の朝日新聞、「丸紅今週にも捜索 警察庁」なんということが書いてある。いろいろ警察が事前にこういうふうなかっこうで、いまにおまえのほうやるぞ、あすやるぞということを書いてある新聞もあります。つまり、相手の商社に対して、どうかひとつものを隠してくれとか、何かそういうことを教えてやるようなやり方が、一般国民からしますと、おかしいじゃないか、やはり政府と業者あるいは警察が癒着しているのではないか、こういうことまでいわれているわけでありますが、この機会に、なぜこういう事態が生まれているのか、お話しいただきたいと思います。
  57. 相川孝

    ○相川説明員 お答えいたします。  警察といたしましては、捜査中の事件につきまして、いつ逮捕するとか、いつ捜索をするとかということを事前に発表をするというようなことは一切これまでいたしておりません。もしこのようなことをいたしますと、相手方に証拠隠滅等の行為を行なわせることになりますし、事後の捜査にたいへんな支障を来たすわけです。したがって、これらの点につきまして、私どもが、たとえば捜索の場合、捜索に着手する以前に、前もってこれを発表するというようなことは全くやってはなりませんし、現にやっておらないわけです。  今回の捜査にあたりまして各種の報道が飛びかいましたけれども、この原因はどこにあるのだろうかと私ども考えてみますと、新聞の報道にあたりましては、新聞社は現地等におきまして警察をはじめ関係者等からいろんな取材活動を行ないます。その過程で各社が知り得た、あるいはつかみ得たことをもとにして、それぞれ各社の判断でいろいろな報道を行なうことは一般に行なわれています。  今回の捜索にあたりまして、事前に警察が発表したのではないかという御指摘ですけれども、これは地元の本部長等にも、当時、私、確かめましたけれども、捜索の日時等について事前に発表したりあるいは関係記者に漏らしたり言明したりというようなことは全くありませんでしたので、御了解いただきたいと思います。
  58. 中川利三郎

    中川(利)委員 警察としてはそういうことはするはずもない、こういうことでありますね。確かに、敏腕の新聞記者がそれをかぎつけた、こういうことはあり得ると思います。あなたのほうでは、そういうことを事前に発表すれば事後の捜査に支障がある、こういうことで発表はしないのだ、こう言っていますが、そうすると、ああいうふうにどんどん書かれたら、事後の捜査にいろんな支障がいまあったわけですか、そこら辺はどうですか、実際、この場合はありましたか。
  59. 相川孝

    ○相川説明員 今回の事件につきましては、いろいろ国民の関心も高くありました。したがいまして、マスコミ関係者も早くからこの問題の成り行きというものを取り上げておりました。関係被疑者等では、おそらく相当の防衛準備をしたものと私は考えております。しかし、相手方の防衛とか保秘とかがかりにあったにしても、そういう障害を払いのけてといいますか、克服して真実を解明して、捜査を明確に進めていくということが警察の本来的な使命でございますので、今回、あのような記事で特に支障があったとは私、考えておりません。
  60. 中川利三郎

    中川(利)委員 そこで、私が聞きたいことは、これはこれでわかるわけですが、こういう問題に対しては、新聞社がいち早くかぎつける条件にあるからかぎつけるわけですが、たとえば民主団体あるいは革新団体、そういうものをおたくがやる場合は、朝の六時ごろぱっと急襲するんだ。これは秘密が漏れないようなしかけになっている。なぜ、こういう大商社になれば、新聞記者が敏感にかぎつけるようなにおいをまき散らすのか。民主団体やほかのそういうものになれば全く秘密裏に急襲する。しかも、やるのはたいてい朝の六時ごろです。私もやられたことがありますからわかっていますが、捜査方針の基準がなぜそういうふうに変わってくるのか、ついでながらお答えしていただきたいと思います。
  61. 相川孝

    ○相川説明員 今回の丸紅東京本社の捜索に限って申し上げますならば、通常、捜索は日の出から日没の間に行なうのが刑事訴訟法の一応のたてまえになっております。ですから、夜明けと同時に踏み込んでもよろしいわけです。しかし、丸紅本社の場合に、私ども事前に、何時から業務が開始されるであろうかというような点も調査いたしました。そして最も効果的な捜索を行なうためには、関係社員等が出勤し業務を開始する直前ぐらいが一番よかろう。妙なことを申し上げるようですが、たとえば自宅を捜索する場合あるいは暴力団の事務所を捜索するというような場合がありますけれども、このような場合には特に業務の開始時間等にとらわれることなく、出勤前適当な時間を選んで捜索をするということを行なっております。ですから、特に今度の場合に限って、捜索時間を出勤時間、業務開始時間にわざわざ合わせて、他のものと比べておくらしてやったものではないことを御了解いただきたいと思います。
  62. 中川利三郎

    中川(利)委員 この丸紅の問題については、社長自身が、大量のモチ米を違法に、不当に買い占めた、こういう発言を、この前以来新聞記者にもあるいは衆議院の物特委の喚問の際にも申しているわけですね。おたくはいま調査中ということでありますが、明らかに歴然とした事実がここにあるわけでありまして、そのために社会的に大きい影響を与えた、こういうことでありますが、それはそれとして、おたくの送致件数を過去ずっと見ますと、東北六県の関係で申しますと、食管法違反の事件ですが、昭和三十九年、四十年、非常に米不足なころに比べまして、四十四年、四十五年は三十分の一に減っているのです。つまり四十四年、四十五年は米の余り問題が出かかったときですね。ところが、最近、四十六年から再び送致件数がふえている。これはそうした米の需給の自然の推移としてそういうことになっているのか。そこらは、いま米不足になったから、また乗り出してきたのか。そういうことについて、あなた方はどういう基準でこれをやって、こうなったのか、教えていただけませんか。
  63. 相川孝

    ○相川説明員 ただいま、ここ数年の食管法違反取り締まり件数がだいぶ変動があるのではないかという御指摘ですが、私のところに数字がございますので申し上げますと、四十三年は百四十七件、百五十件程度でございます。それから四十七年、五年後でございますが、百三十九件、百五十件、これが去年の件数です。四十四年、四十五年、四十六年を見ましても、四十四年はちょっと落ちておりますけれども、百五十件前後、百五十名前後という検挙件数になっております。  これらの取り締まり、検挙の基準というお尋ねでございますけれども、特にこれはという基準は設けておりません。ただ、一般的に弱いものいじめや小ものいじめにならないように、流通過程における重要、悪質な違反者というものを検挙するように、あるいは取り締まりをするようにつとめております。そして警察の取り締まりなり検挙という面を通じて行き過ぎを是正するという方向で考えておるわけでございます。
  64. 中川利三郎

    中川(利)委員 米というのは大体東北六県がおもな産地でありまして、東北六県も件数の割りで私、申し上げたわけですが、大臣にちょっとお聞きしたいわけです。  先ほど言いましたように、四十四年、四十五年は、警察の取り締まりの送致件数も、三十九、四十年に比べて非常にゆるくなりまして、三十分の一ぐらいになっているのです。たとえば四十年ころは三百八十四件投機であったのが、四十五年ではただの八件くらいしかなくなっているのです。もうたいへんな減り方です。ところが、最近は、四十七年は六十五件くらいにふえてきているのですね。これは物が不足すれば投機が起こる、必ずそういう犯罪が起こる、こういうことを数字で端的に示したものだと思うのです。いま警察がこういうふうに乗り出してきているということは、米の絶対量が不足だ、こういうことの反映ですね。投機があらわれるというのはそういうことの反映だというふうに思いますけれども、あなたはこれをどう考えていますか。
  65. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 一昨年、天候のかげんで、単年度では需要供給は不足であったと思うのであります。それが反映しておるのではないかということを考えますと御質問のようなことに相なるかと思いますが、しかしながら、昨年は豊作でございまして、計画どおりに古米三十万トンを持って、それからまた新米穀年度では新米を十一月当初二百五十万トン近いものを持って渡ったと思うのでございまして、現在本年度の見通し考えましても、米の需給上に不安は全くないということを申し上げておきたいと思います。
  66. 中川利三郎

    中川(利)委員 時間の関係もありますからいいですが、秋田県平鹿郡の増田農協では、こういう問題が起こっています。  一つは、正規の政府米を、農協が配給米として政府に売って、政府から業者に売った、この業者から農協は買い戻して、さらに自主流通米として売ったという事件が一つ出ていますね。そのほかに、農協やみ米を買って業者を通じて売っている、こういうことでいまたいへんな問題になっているわけですが、このことについては前もって私が御連絡したわけでありますから、ひとつ、こういういまのあり方、これを許した背景あるいは政府のこれに対する考え、そういうことについてまず前段お答えをお聞かせいただきたいと思います。
  67. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 あらかじめお話がございまして、詳細調べてございまするので、長官から御説明申し上げます。
  68. 中野和仁

    中野政府委員 増田農協に関します事件につきまして、現在まだ警察当局で捜査中でございますので、最終的な結論は申し上げられないわけでございますが、その中間でわれわれのほうが、秋田の食糧事務所からの報告によりますと、当初はこの事件は、いま御指摘の平鹿町の自由米業者が、酒用としてその近所の開田地区から未検査米を買い入れて、それが売れないものですから、増田農協と平鹿町農協の醍醐支所に買い入れてほしいということをいって、それを農協が手数料二百円取って買った、こういうふうに聞いておったわけでございますが、その後警察当局の調べが進みますと、内容が変わってきまして、東京の雑穀商といいましょうか自由米業者、たしか二つの店と聞いておりますが、それから買い受けて、それを農協に持っていった、こういう事件のようでございます。これは先ほど大臣もちょっとお触れになりましたけれども、まさにいま食管制度によりまして生産者から買い上げた値段とそれから政府が売り渡します値段の差を利用した、もしこういう事実であるとすれば、私は非常にゆゆしい事件だと思っております。こういうことがありますれば、またこんなことはめったにないことでございますけれども、こういうことがいろいろ出てまいりますと、食管制度根幹にも触れてくるような問題だと思っております。まだ捜査の段階でございまして結論を得ておりませんので、いまどうするかということは申し上げられませんけれども、食糧庁といたしましては、その事態が判明した段階で厳正な措置はとるべきだというふうに考えております。  それじゃ、この背景はどうかというお話でございますが、やはり需給緩和しておりまして、先ほどからいろいろな御議論があるといたしましても、この事件に関する限りは、単にやみ米を扱ったということではなくて、一ぺん出ました自由米をもう一ぺん政府に売りつけたということでございますから、これは一般論では論ぜられない。先ほど申し上げました食管制度の適正な運営という面からは非常にゆゆしい問題だというふうに私は思っております。
  69. 中川利三郎

    中川(利)委員 こういう事態はめったにないことだということは、今後も起こらないということとは違うと思うのです。ましてやこういう問題が起こる背景として、そうした食管の矛盾を思うように手玉にとったということになると思うのですね。また、それに乗らなければならなかった農協現実もまた問題だと思うのです。つまり、そうしますと、自民党政府農業政策の根幹であるといわれる食管法そのものの欠陥を利用したわけですから、そこを、先ほどの論議に戻るわけですけれども、何か手当てをしないと同じようなことが起こると思いますが、その点どうです。
  70. 中野和仁

    中野政府委員 この件につきましては、食管制度の欠陥を利用したというよりも、むしろ現行の生産者米価政府売り渡し価格の差を利用したわけでございます。これを欠陥と私は申せないかと思います。
  71. 中川利三郎

    中川(利)委員 逆ざやを利用する、そういう単純なことに見えますけれども、問題は、いまの食管のあり方そのものが問われたということだと思うのです。これはどうです。
  72. 中野和仁

    中野政府委員 現在大部分の米は政府が直接農家から買いまして、それを一定のルートに乗せて消費者に渡しておるわけでございますから、そういう段階での価格関係を利用したということでございまして、先ほども申し上げましたように、こういうことは二度とさせてはならないというふうに私は思うわけでございます。
  73. 中川利三郎

    中川(利)委員 二度とさせてはならないというけれども、いまの食管法であるならば、現実に第二、第三のこういう事件が起こる可能性があるでしょう。だから、食管法そのものの、どこか枝葉のところでやっているのではなくて、根幹そのものをこれはおかしているわけであります。しかも秋田県は農業県といわれているわけであります。そういう中で起こった事件であるだけに、なおさらこれは政府自体、こういうものの起こった背景について、食管法そのものの根幹について考え直すべきときでないかということを、逆に問い直しているように思うのですけれども、そういう反省はないかということをもう一回御返事いただきたいと思います。
  74. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この事件から考えさせられますことは、現行食管制度の適切な運営をやっていかなければならないということであります。逆ざやなどを利用しての不当利得を得ようというようなことは、これはゆゆしい問題でございまして、このことをもって、皆さん方はよく食管制度を堅持せいと言われておるのに、きょうそれを改正したらどうかという御意見が出るようでは困るので、それよりむしろいまの制度を適切に運営していくほうがよりベターである、かように見ております。
  75. 中川利三郎

    中川(利)委員 私は食管法というのは、いま、なしくずしに自主流通米をつくった、買い入れ制限をつくった、物統令廃止した、このことが問題だからもとへ戻せと言っているのですよ。そのことで問題にしているわけですが、逆にあなたは、大臣ともあろう方が、そういうことをわかりながらそういうふうに言ってくるというのはお人が悪いと思います。  私はそこでお伺いしたいことは、この問題の中に農協が入っているということですね。農協が入っていることはこれは重大なことです。特に、なぜその農協がこういうものに手を出したかということを考えてみますと、一つは減反、減産で、単位農協の大きな収入源であるところの米の保管料、検査料、こういうものがなくなったということだろうと思うのですね。増田農協の場合で見ますと、四十二年産米の米穀年度末、つまり四十四年九月の倉庫に入っている在庫量はウルチ米で玄米七千七百俵あったんですよ。それがいまは昭和四十七年の年度末見込みの在庫量は七百七十俵ですね。十分の一に減っているのです。つまり農協経営の心臓部が皆さんの手直しの中で、われわれのことばで言えば、食管改悪だ、抑えられてしまっているということですね。これでは政府が、やみ米を扱ってめしを食え、こういうことを農協に教えているようなものじゃないですか。農協がどうしていいかわからないという状況をつくり出しているのは皆さんじゃないですか。そこら辺はどう考えているか、お聞きします。
  76. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは申し上げるまでもなく、米の扱い数量が少なくて、その面からの収入が減った、それによる影響がないとは申し上げません。しかし、農協の本来の使命は、ただ米の扱いだけで成り立つということでもないのでありまするから、それぞれの農協における創意くふう、また本来農協の活動ということに徹していただいていきます以上、農協の存在意義というものは十分あると思います。
  77. 中川利三郎

    中川(利)委員 大臣はそういうことを言っているから、農協やみ米に手を出すんですよ。あなた、農協にはほかの仕事もたくさんあるじゃないか、こうおっしゃるわけです。しかし、農協経営の収入の大部分というのは保管料なんです。それをやられているから、こういう状態にまで手を出さなければならなくなったということでしょう。また、やみ米を買ってきて政府管理米で売るというようなことも、そういうことに原因があるわけですね。つまり保管料かせぎですよ。それをほかの仕事もあるのにというようなことは、まことに私は無責任なあれだと思います。  そうすると、ほかの仕事はどういうことがあるかといいますと、ほかの仕事、たとえば最近の単位農協でも、本来の仕事の農業指導、農事指導よりも、最近では、いま法案でも出ていますけれども、銀行家並みの仕事を押しつける傾向がふえてきている。外国為替とか手形割引とか、そこまでいっていませんが、そういう方向に持ってきているわけですね。だから、農協職員の農業に対する知識もどんどん落ちてきているという事実があるわけです。だから、食糧事務所の職員が米の検査に参りましても、一緒に倉庫に入った農協の職員が米を見れない、米を見る技術がない、こういう状況がある。したがってめんどうくさいから、食糧事務所の検査員は、ある米を全部五等米にしてさっさと帰っていく、こういう事実があるわけですね。保管料は、御承知のとおり、一等米と五等米の中では格差がありますね。だから、みんな五等米でやっている。つまり農協職員が本来の仕事ができなくて、そういうよけいな仕事まで手を回さなければならない状況の中で、農業そのものがだんだんおろそかになってきているという事実が農協の収入減につながってきている、こういうことにもなっていると思うのですよ。そういう点についてどうお考えですか。
  78. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この過剰米のときの取り扱いを基礎にしていろいろ御論議のように受け取れるわけです。需給が均衡がとれておる、その中での保管料、米の扱いによる手数料の収入というもの、これを本来なら基礎にして考えるべきものではないかと思うのですね。それを私は第一に考えます。  しかし、先ほども申し上げたように、影響を受けておるということ、その収入が相当あったときに比較して減っておる、このことはもちろん農協のことを考えるときに、私も一応頭に置いてみる。そこで、私は、農協自体の本来のいろいろな仕事もある、また創意くふうもしてもらいたい。またさらに申し上げるならば、経営の合理化とか合併とかというようなこともしてもらいたい。また、従来でありますと、信用事業部門の収益もあったと思うのですが、このほうが最近非常に悪いようでありまするから、そういうことで農協の経営にいろいろな問題があるという事実を否定はしておらないわけでございまするが、今後における全般的な農協の問題といたしましては、これからの農協経営をどうするかということにつきましては、今後農林省の中で、専門的な見識のある方々によっていろいろ検討をしていただきたいと思っておりまするが、ただいま申し上げたところで御理解をいただきたいと思います。非常に経営が悪いということになれば、合併であるとかまた経営の合理化であるとか、そういうものもいたしながら本来の農協の活動に効果をあげてもらいたい、こういうものが私の現在考えておるところであります。
  79. 中川利三郎

    中川(利)委員 農協経営が不振なのは、つまり本来の仕事を十分やらなかったり、合併しなかったからだ、こういうふうに聞こえるのですけれども、そういうことならば、ほんとうの農業あるいは農協の民主的な発展というのは望めないと思うのです。どうして皆さんが生きていけるかという状況をつくっていくこと、それなしに、ただ合併すればいいとか、どうならばいいということでは全然次元の違う問題だと思うのです。  その問題はともかくといたしまして、いまこういう状態をつくった、余り米、つまりやみ米に流れる余り米、これを何とかなくしたいと皆さんおっしゃっていますね。なくするための具体的な手だてでどういうことがあるのか、どういう問題があるのかということで、私、考えてみたわけですが、余り米はもちろん別表示になっていますね。つまり普通の米でありながら囚人服を着せられている、そういうことですから、農民感情から見ますと、やはり納得できない状態なのだ、余り米そのものは。しかも検査が最後に回される。十一月末にもなる。出かせぎにも間に合わないから、損だとわかりながら、出かせぎを間近にしてみんなたたき売っていくというのが実態なのですね。それから国の制度としても、自主流通米には倉敷を政府が一ケ月六十五円見てくれますね。余り米にはそれがないのです。だから、長くそこに保管すればするほど損するような事態があるわけです。あるいは政府自主流通米の販売ノルマを強制して、割り当てして、ノルマを達成しないと自主流通米の金利、倉敷は見てやらないぞとおどかしている。だから、一般農協にしますと、余り米を売るチャンスがない。こういう状態に置いて、余り米をなくするとか、けしからぬといってみたところで、皆さんがこういうやり方をしていることについてどう考えているかということでお伺いしたいと思うのです。
  80. 中野和仁

    中野政府委員 余り米の発生の原因から考えてみなければいかぬと思います。その場合に、一つには、生産調整を全国的に実施しておるわけでございますが、その生産調整を各農家に対する割り当てどおりやらなかった場合は、作付はふえるわけでございますから、理論的に余り米が出るわけでございます。それからもう一つは、やはり豊凶がございますから、生産調整は一〇〇%やりましても、豊作で余り米が出る、こういうことになるかと思います。  そこで、その余り米制度というのは、やはり生産調整の実効を確保するという観点からつくられた制度でございますが、それを自由に売っていいということにいたしますれば流通過程が乱れますから、自主流通と同じ制度でやるということにして現在きておるわけでございます。ただ、御指摘のように、ことしの状況を見てみますと、二十四万トンは正規の余り米になりましたけれども、かなりの量が御指摘の正規の余り米にならないで、外へやみ米として流れておるというふうにもうかがえるわけでございます。  その場合に、一つはマル余という余り米の印をつけて区別しているという問題でございます。これは生産調整の実効を確保する観点からそういうことをいたしたわけでございます。これにつきましてはいろいろ御意見もございますので、ことし一体どうするかということで現在検討しておるところでございます。  それからもう一つは、検査があと回しになるという問題でございます。これは買い入れ限度数量がございまして、自主流通政府に売り渡す米それから余った米ということで、おととしは一番あとにしたわけでございます。いろいろ問題が出ましたので、去年の四十七年産米につきましては、個人ごとに買い入れ限度数量がございますから、政府米それから自主流通米ということで検査をいたしますけれども、その村が全部それが済まなくても、個人ごとにはその余り米の検査もやるということにいたしておるわけでございます。  それから金利、倉敷料等は余り米には出ません。それは生産調整の実効確保という観点から、余り米にこれを全部出すということでありますれば、生産調整もそれから買い入れ限度数量の意味もなくなりますので、これは同じように六十五円を出すということはなかなかむずかしいかと思います。  しかし、根本的に考えてみますと、やはり政府が当初指示をいたしました予約限度数量と、実際の政府の買い入れ量と自主流通米を足したものの差があまり出過ぎますと問題があるということで、四十八年産米につきましてはすでに買い入れ限度数量——県によって生産調整のやり方がまちまちでございますから、それの調整をまず食糧庁としてはいたしたい。それからなお出来秋になりまして、余り米が出ないものはやはり買い入れ限度一ぱいまでは正規の政府米あるいは自主流通米に乗せたほうがよろしいわけでございます。そこのくふうもいたしてみたいということを考えておるわけでございます。
  81. 中川利三郎

    中川(利)委員 いままであれこれいろいろやってきましたが、やはり政府の根本的な施策そのものの中にいろいろな問題が出ている。いままで自民党農政の中で、これも農民のためになる、あれもためになるということでやってきた。その結果が、農業白書自体が白状しているように、みんなだめになっているということですね。もう自民党農政では日本農業をまかなう資格はないじゃないか、でなければ抜本的に方針転換するよりほかないじゃないか。ひどい人はこういうことを言う。私もこれはおこったのですが、わが愛する農林省に対して、これは通産省の派遣省じゃないかというようなひどい発言まで飛び出しておる。そういう社会的な背景の中で、農林大臣の使命というのは私は非常に大事だと思うわけでありますね。しかし、単なることばのあやではなくて、ほんとうに農林行政を農民の立場または生産者立場から発展させていく。いま言っただけの時間内の問題の中でも、私はいろいろ考えなければならないことがあると思うのです。そういう点も真剣にひとつ考え直していただきたいということを申し上げます。  次の問題として、まだ時間がもう少々ありますので、物特のほうで十六日わが党の小林政子さんが、食管法違反で捜査を受けている丸紅に政府が七三年度も小麦の輸入代行を認めた事実について追及しているわけです。御承知のように、四月十一日に六商社の社長が喚問を受けていろいろその事実を認めているわけであります。ところが、この丸紅に対する七三年度の代行の認可が四月十三日なんだ。つまり二日あと皆さんのほうで認可を与えているわけですね。ところが、喚問して、社長がみずからやみ米の大量買い付けを認めている、警察もいま捜査中だ、その決定も待たないで、うろたえたようにしてこの二日あとに認可した根拠は一体何なのか、国民はなかなか納得しないと思うのです。ちょっとその辺のところを御説明いただきたいと思います。
  82. 中野和仁

    中野政府委員 現在輸入食糧につきましては、輸入食糧買い入れ要綱に基づきまして、輸入商社を指定いたしましてやっておるわけでございます。それを登録をいたしております。それは一年ごとにやっておりまして、本年の登録につきましては三月一日から十日の間に受付をやりまして、正規に登録いたしましたのは三月三十一日が済みました四月一日でございます。  いま御指摘の四月十三日にやったじゃないかというのは、これは四十八年度の第一回の小麦の輸入をやったわけでございます。これの見積り合わせをやりまして、指定商社の中から食糧庁に売り渡しの申し込みをしたというのが四月十三日でございまして、十三日に登録をやったということではございません。
  83. 中川利三郎

    中川(利)委員 第一期の買い付けをやったと言いますけれども、いま問題になっておるならば、当然この輸入物資を凍結するとかなんとかして、あとで疑惑が晴れたらあらためて差額を払うとか、政府が一たん凍結して動かさなくするとか、何らかの措置が必要だと思いますが、これについてはどうかということと、それから、やはりこういう問題になっているやさきに、登録業者だから、去年もやったからことしもやっていけるということは、これは少し不見識だと思うのです。これについてどう考えますか。
  84. 中野和仁

    中野政府委員 現在の輸入食糧買い入れ要綱によりますと、登録商社につきましては、食管法違反で処罰されたときは、その程度といいますか、その影響の度合いによりまして登録の取り消しあるいは申し込みの受付の停止、あるいは契約解除といったような措置ができるわけでございます。しかし、それは処罰されたときということですから、厳密にこれを解釈すれば、判決があってからということになります。しかし、今回の場合はいろいろ問題があるわけでございます。したがいまして、私自身もその判決を見てからということをこの前の物特でも申し上げたわけではないのでございますが、ただいま捜査の途中でございまして、それがどういうふうに結論づけられるか、それも見ませんですぐに受付を停止するとかあるいは登録を取り消してしまうというのはいささか早過ぎるというふうに思います。もう少し事態の進展を見た上で適正な処置をすべきだというふうに考えておるわけでございます。
  85. 中川利三郎

    中川(利)委員 もう少し事態の進展を見た上でということでありますが、国民感情あるいは国民世論というものもあるわけですね。いまいろいろな裁判を見ましても、公害裁判にいたしましても、当初のあれからずっと変わってきている。そしてやはり国民世論を背景にして法律も変わってきているということをあなたはお認めだと思いますが、そういうことからしますと、幾らなんでも国会で喚問を受けて、しかも社長がみずから不当なことをしましたと発言して、その結果としていま社会的にどれだけ影響を与えているかということを考えた場合に、常識としても、そのときは法律を厳密に解釈してそうするというのじゃなくて、やはりそれまでは許可を待たせるとかあるいは何かの措置をいまやらないと——判決を見てからというようなことまではあなたはきつく言わないと言うけれども、しかし、そういうニュアンスがあるわけです。その部分だけ法治国家を持ち出してくるというようなことは、まことに私は行政官のやり方としてはおもしろくないと思うのですが、もう一回御答弁をいただきます。
  86. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま申し上げましたように、現在まだ捜査の段階でございまして、どういうふうな程度の食管法違反であるかということも明瞭になりませんと、やはりこれは行政措置、行政処分でございますから、ただいまちょうど新聞にはいろいろ出ますし、国会でのいろいろな御論議等も私も承知しておりますけれども、その論議だけで判断するよりも、やはりもう少し食管法違反がどの程度のものであるかということの見通しが一応ついた段階で処置をすべきだ、そのほうが妥当ではあるまいかと私は考えております。
  87. 中川利三郎

    中川(利)委員 時間が来たようでありますが、最後に私、大臣にお伺いしたいのは、農政の最高責任者としていろいろ頭を使っていると思いますけれども、農業白書が示しておりますように、また先ほど申し上げましたように、今度は農民のためになる、今度は農民のためになるということで、次から次へやった政府農業政策が、あらわれた結果として見た場合に、もう農業所得にしろ何にしろ、いまいろいろなあらゆる皆さんのデータから見ますと、農業自体が悪くなっているのですね。これは言うこととやることと全く違うと思うのですが、なぜそういうことになったのですか。これは政策の誤りでないのかどうか、これはどう考えていますか。
  88. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 予算も成立をいたしまして、今年度の各種の施策を実行に移していこうという段階でございます。現に起こっております問題は、それなりにいろいろ原因先ほど来明らかにされておるわけでございまして、それらのことも十分考えまして、私としては全力を傾注して農政の責任者としての職務を果たしたいと思っております。
  89. 中川利三郎

    中川(利)委員 昔、戦争のとき、政府が旗を振って、またも勝った、またも勝った、またも勝ったといって、負けた日が一日もなかった。そして気がついたら、国民はみな裸になっておったということです。いまの農業政策は、今度は総合農政だ、基本法農政だというかっこうの中で、国民が最後に気がついたときには、もうまる裸になっておった。私は秋田県におりますから、いまの出かせぎの皆さんを見ておりますと、いまの政治の中でそういう感じが非常にするわけであります。  そこで、最後の質問でありますが、いま米価の要求がどんどん出されてきております。そろそろ話の種になってきておりますね。これはもちろん米価審議会がこうだということにもなりましょうが、少なくともことしの米価に対する農林大臣の心組みというか、たとえば米価をどうするんだ、値上げするのかどうか、いままでのようなことで、去年三%ですか、もう少しどうだとかというような目安がおそらくおありだと思うのですね。また、そういうことでがんばってもらわなければならない、こういうことがもう全農民の願いだと思うのです。そこで、この機会に農林大臣から、おれはこう思っているんだということを一応、ほかまかせでなく、あなた個人の見解でけっこうですから、ここに出していただきたいと思います。
  90. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 せっかくのお尋ねでございますが、現在私としては、一体いつ米価審議会に諮問をするのか、その時期をいつにしようか、現実おわかりのように、全く寧日なく、こうやって予算編成から国会で追われておる段階でございまして、まだ全く、省内におきましても、生産者米価をどういうふうにするかという検討も資料も十分寄せてない、こういう段階でございますので、まことに恐縮でございますが、きょうのところはまだ全く白紙であるということで御了承願いたいと思います。
  91. 中川利三郎

    中川(利)委員 いまの生産者米価、これに対する大臣見解をお伺いして終わりにします。これでいいのかどうか、少し安過ぎるということは、あなた前からお考えだと思うのですけれども、じゃ、それだけでもお聞きします。
  92. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 昨年、この現在の米価決定のときに私は党の政務調査会長でございまして、非常に苦労をいたしたのであります。諸般の情勢上現在の生産者米価になっておりますが、同時に、消費者米価も上げなければならなかったというような苦しい事態の中できめた米価でございまして、御不満はあったと思いますが、農民の皆さんに各種の事情からやむを得ないものと御了承をいただいたものと思っております。
  93. 中川利三郎

    中川(利)委員 では終わります。
  94. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 この際、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      ————◇—————    午後一時四十二分開議
  95. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬野栄次郎君。
  96. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農業協同組合法の一部を改正する法律案農林中央金庫法の一部を改正する法律案農業近代化資金助成法及び農業信用保証保険法の  一部を改正する法律案、農林水産業協同組合貯金保険法案、いわゆる金融四法について農林大臣並びに当局に質問をいたします。  まず最初に、農業協同組合法の一部を改正する法律案から逐次質問してまいりたいと思います。  金融機能の拡充ということでございますが、今回の改正によりまして、単協に対しては手形の割引、債務保証、内国為替取引、有価証券の払い込み金の受け入れ等、さらに農林中央金庫、信農連等の業務代理といったような新たな能力が付与されておるわけでございますが、事業能力の付与に  ついては、農協系統内部でも従来より要請はされてきたとはいうものの、今後の経済事業体制の強化等に大きく寄与することが期待される反面、その実施体制というものが未整備の場合は、事業運営の円滑化をたいへん阻害するという心配が起きてくるわけでございます。  そこで、まず手形の割引でございますが、手形の割引については、通常の金融業務より高度の知識が必要とされる、また陣容も確立せねばならない、特に審査能力が重要視される、こういうふうにかねがねからいわれております。そこで、単協に手形の割引能力を付与するということになりますと、事故発生、こういった点からもたいへん今後心配になってくるというふうに考えるわけです。そこで、資金力とか業務の執行体制等がある程度一定基準にある単協でなければ、資格を与えては心配ではないかというふうに懸念されるわけですが、こういった点について、今回の改正によって新たに取り扱うところの手形の割引については、単協に対してどういうふうな基準を考え政府は指導していかれるのか、その点からひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  97. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  単協に手形割引を認めることによりまして、やりようによっては非常にあぶないんじゃないか、手形割引というのは、ある場合には非常に危険な仕事だということの御指摘がございましたけれども、私どももその点につきましては同様な考え方を持っております。  したがいまして、今後単協に手形割引の仕事を、させる場合におきましては、やはり一定の基準以上の単協にしなければならないのではないかというふうに考えております。  そこで、それではどういう指導基準でやるかという点でございますけれども、第一に、割引店舗につきましては、貯金の規模が二十億以上、それから貸し出しの専従職員が二人以上いる組合ということを考えております それから割引の依頼人でございますが、これは組合員に限ることにいたしたいと思います。さらに割引対象手形につきましては、融通手形等は、これはあぶないわけでございますから対象にしないということでございます。それから割引限度額は一組合員当たり三千万円までというような指導基準を設けまして、誤りのないように指導したいというふうに考えております。
  98. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 貯金を二十億円以上、組合員の専従職員が二人以上ということで、いま政府考えておる大体の基準が示されましたけれども、割引をする場合に、確かにこの商品手形に限るべきであって、融通手形については当然これは問題があると思いますので、そのような方向でぜひ指導していただきたいと思います。  そこで、この法が通過すれば、職員がすぐには間に合わぬと思うのですけれども、専従職員が二名というと、かなり期間もかかるし、これも指導していかなければならぬと思うし、訓練に要する時間も要るわけですが、そういった点についての配慮はどういうふうに指導しておられるか、その点もあわせてお伺いしたいと思います。
  99. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいま申し上げましたような規模の組合になりますと、現在すでに貸し出しに専従しておる職員が四人、五人というような組合でございまして、二人以上という場合にすぐ人を雇わなければならぬというような問題にはならぬわけであります。  ただ、手形割引につきましては従来経験がございませんから、そういった職員を信連なり何なりに集めまして事前に十分なる訓練をしたい。特に、融通手形の問題、御指摘のとおりで非常にあぶない問題でございますので、そういったこととかいろいろな手形割引に関する業務につきましては、十分なる訓練を信連等において行ないたいというふうに考えております。
  100. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 末端の農協の状態を見ますと、必ずしも一がいにいえない。相当に格差がある農協もあるわけでございまして、あとでも指摘しますが、現在農協自身相当こげつき、またいろいろ問題がある農協もありますし、現に奈良県では一農協が解散せざるを得ないような状態になっておるところもありますし、今後、金を扱うということになると、ますます問題が起きてくると思うのです。そういった面で十分に訓練をしてこれからの取り扱いについては慎重を期さなければ、何千とある農協に対して間違いないともいえませんから、十分配慮していただきたい、かように思うわけです。  さらに、債務保証の問題ですが、今回の改正では、単協に対しても信農連と同様に、組合員の負担する債務の保証または当該金融機関の委託を受けた債務の取り立て、こういったことに対する事業能力を付与することになっておりますが、今後単協においてはいかなる債務保証の事例が予想されるか、その点を明らかにしてもらいたいと思うのです。従来はいろいろ食管物資の問題だとか国有地の払い下げとか、国税の延納とか、いろいろ事例があるようですが、単協の場合はどういうようなことが考えられるか。また、この債務保証をするにあたって、保証債務の管理についてもどういうような指導方針政府は臨まれようとするのか、この点もあわせてひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  101. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 単協の債務保証業務といたしましては、まず農林中金、信連等の系統上部機関の代理貸し付けに伴う債務保証、それから次に、農林漁業金融公庫、住宅金融公庫等の代理貸し付けに伴う債務保証、それから三番目には、組合員の、たとえば相続税等の延納が認められておりますが、そういった国税の延納等にかかる債務保証と、それから組合員の他種金融機関からの借り入れにかかる債務保証が考えられるわけでございます。  しかし、農林漁業金融公庫の業務代理につきましては、系統内に受託金融機関が併存することになるのはまずいわけでございます。と申しますのは、現在、信連がやっておりますので、したがいまして公庫の業務代理につきましては、現在、単協は信連の事務委託を受けましてやっておりますから、その点は従来どおり、当分の間、信連との競合がある間は、公庫の業務代理は、これを行なわないことにしたいと考えております。  なお、債務保証につきましても、行政庁といたしましては、十分指導監督をしていくというふうなことを考えております。
  102. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次は、内国為替取引のことで若干お尋ねしますが、為替業務の種類が送金為替、当座振り込み及び代金取り立てということになるわけで、最近における単協の大型化等によりまして、経済活動の拡大がなされつつあります段階で、資金決済の広域化とか、効率化ということに対処しまして、単協にも内国為替取引業務が付与されるということは当然のことだと思うのですが、農協の経済活動機能の向上等に今後大きく寄与していくのはよくわかるのですけれども、その反面、一度事故が起きたら、たいへんこれは問題になるということが懸念されます。そういったことで、この資金力及び業務執行体制等が、一定規模これまたなければ、さきの手形の割引と同じように、いろいろ不安な点があるわけです。すなわち、基盤が整っていないとやらせられないじゃないかというふうにも思えますし、また、一たん事故が起きたら、壊滅的打撃を受けるということにもなりかねないので、この点についてもどういうふうに政府は指導されるのか、その対処方針を明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  103. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 内国為替の扱いにつきましても、先ほどお話がございました手形割引と同様に、ある一定の基準以上の単協にこれを扱わせることにしたいというふうに考えております。  そこで、その指導基準がどういうことになるかということでございますが、まず第一に、繰り越し欠損金のない組合ということでございます。ただし、欠損金の補てん計画が立てられておりまして、その達成が確実と認められるということを知事が認めたというような場合には、内国為替について要望が非常に強いというような組合については認めたいというふうに考えております。それから、その内国為替取引を扱う農協の店舗に、信用事業の専任の職員が四人以上いて、事務体制が整備されているということでございます。それから、財務基準令の第五条で定める基準以上の払い戻しの準備資産を常時持っているということが必要になる。さらに貯金の規模でございますが、これにつきましては、十億以上の貯金を持っている組合というようなものを、内国為替の取り扱い店舗にしたいというふうに考えております。
  104. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 条件については一応わかりましたが、その中で、貯金規模が十億円以上を持ったものに取り扱わせるということでありますけれども、たとえば貯金規模が五億円、六億円ぐらいしか持たないという農協もあるわけです。十億円以上持っているけれども、比較的農協の内部がいろいろ心配なところももちろんたくさんありますし、五億円、六億円でも相当堅実な農協もあるわけです。最近の状況を見ますと、高速道あるいは新幹線とか、いろいろな用地買収等によって相当補償金をもらった農家が預金をしておるということで、ふくれ上がっておる農協もたくさんあるわけですから、そういったことを考えましたときに、自分の農協では、預金高は六億円ぐらいしかないのだけれども、何としても必要に迫られて、内国為替取引をさしてもらいたい、こういうふうに要請があった場合には、この内国為替取引は都道府県知事の認可になっておるわけですから、知事としても、地元であれば、何としても認可せねばならぬような気持ちになってくる。また認可をするという場合もあるのかどうか。権限はあくまで知事にありますので、その点については、どういうふうに政府は指導されるのか。そういう場合もあり得るのか。あくまでも貯金高が十億円以上でなければ絶対にだめなのか。その点も、この機会に明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  105. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいま先生御指摘のようなケースが起こってくることは、私どもは考えております。したがいまして、そういった場合に、たとえば貯金規模が十億円以下である、十億円以下であっても、非常に過去の検査その他を見ても、組合の運営は堅実である、さらに地方公共団体の公金を取り扱っておるというような、客観的に、これは取り扱い能力があると認定されるものにつきましては、ある程度弾力的な運用を考えていいというふうに知事に通達したいというふうに考えております。
  106. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その点は了解いたしました。  次に、宅地等の供給事業の事業範囲の拡大についての問題でございますが、農家は財産的土地所有という執着があるわけでございますので、これに対処して、この事業に賃貸事業及び住宅等の建設事業を加えることによりまして、農地の宅地化、工業用地化をさらに促進しよう、こういうふうにはかっておられます。もともと農協等の団体でも農住構想というのがありましたけれども、いわゆる田中総理の全国的な構想が打ち出されて、ある意味では、招かざる客といいますか、降ってわいたようにこれがあとで加わってきたということでございます。この点については、いろいろ異論もあるわけですけれども、この農協法の改正の中でも一つの大きな焦点になるわけでございまして、このことについて若干お尋ねをしたいわけでございます。  まず、政府は、この宅地等の供給事業については、従来から、組合員の委託を受けて実施する場合と、組合員から借り入れて実施する場合、組合員から買い入れて実施する場合、この三方式があるわけです。言うならば、何でもできる、こういうふうに理解できるわけですが、このことについてはどういうふうに考えておられるか。まず、この内容をこの場でひとつ政府から説明をお願いしたい、こう思うのです。
  107. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 いわゆる農地レンタル方式といわれているわけでございますけれども、従来、御承知のとおり、昭和四十五年に農協法が改正されまして、農地等処分事業ということで、農協が組合員の委託を受けて、いろいろ農地を扱うということが認められたわけでございます。その場合は、組合員の委託を受けて農地を処分することと、それから農協が買うというようなことは認められておりますけれども、農協が組合員から土地を借りて、これを人に貸すというようなことは認められていなかったわけでございます。一方、最近の農村の実情から見ますと、組合員の中で、とにかく農地を貸したい、しかし貸したいけれども、自分はそういうことをやったことはないから自信がない、そこで農協さんに頼んで、そういうことをやってもらいたいというような、組合員からの意向がかなり出てきているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、現在農協がやっております農地等処分事業のいわば延長の問題として、農地を組合員から借りる、それを貸すというような事業を新しくさせたいというのが、今回の改正のねらいでございます。
  108. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、今回の宅地供給事業でございますけれども、われわれは本来の農協がこういったことをやりますと、結局農協の基盤が弱くなる。しかも農業生産をなくしてしまう。いわゆる存立基盤をなくしていくのではないか、こういうようなことが懸念されているのも事実でございます。また、ある意味では脱農化していくのじゃないか、こういうようにもいわれている。そういったことで、これはいろいろ問題点があるわけですけれども、この問題について、いま土地の買い占めとかいろいろな農地の乱開発が行なわれている段階で、農協がこれをやりますと、民間デベロッパーよりも農協が土地計画あるいは営農計画等をきちっと立てて今後やっていくということであれば、もちろん民間デベロッパーよりも心配は少ない。また、当然対策を立ててやるということで、ずいぶん期待はされているわけでありますけれども、実際に農民のための農協でなくちゃならぬ農協が、農民の期待する方向と別な方向にいくという懸念もある。そういった意味で、脱農化していくのじゃないかといわれておりますけれども、こういったことについては、当局はどういうふうな指導を今後なさっていく考えで今回提案しておるのか。その点もひとつお答えをいただきたいと思います。
  109. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 先ほど答弁申し上げましたように、今回の宅地等供給事業につきましての改正は、従来から農協が行なっている農地等処分事業を拡充し、農地の売り渡し並びにその貸し付け及び住宅等の貸し付け、売り渡しができる道を開こうとしたものでございます。  先生御承知のとおり、農協法第一条には、農民の協同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進とともに農民の経済的社会的地位の向上をはかるということを目的としております。この点から明らかなように、農協の事業は必ずしも農業と直接関連する範囲に狭く限定されるべきものではなくて、農民たる組合員のために必要な事業は、たとえ農業と直接関係がないものであっても農協の事業として認められるというふうに解されるわけでございまして、四十五年の農地等処分事業が創設されたのも、このような趣旨に基づいて行なわれたものでございます。  したがいまして、この事業の拡充は、従来の四十五年の改正で認められました農地等処分事業の延長線上のものでございまして、先ほども申し上げましたように、一方、組合員から非常に要求が出ているということでございますので、必ずしも農協の本来の仕事の線を逸脱したものであるというふうには私どもは考えていないわけでございます。  さらに、今後の宅地開発を考えた場合に、やはり農業との調整というのは非常に大きな問題でございまして、その場合に民間のデベロッパーよりも農協のほうがその点はいいのじゃないかということを、ただいまの先生の御指摘がございましたが、私どもも農協がそういうことに立ち入って、農業振興地域におきましては、その地域の農業振興計画との調整とかあるいは地方自治体との連携を十分とりながら、農業を保持しながら、一方必要のあるところにつきましては、そういった事業をやっていくことは、必ずしも農協法の趣旨を逸脱したものとは考えておりません。
  110. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 賃貸契約を締結した場合に、御承知のように、土地にかかわる権利は、借り主側の賃借権、普通地上権といいますが、それと貸した側のいわゆる所有権、こういうものに分かれるわけでありまして、従来から慣行になっているわけですね。この二つの権利の比重というものは、地域ごとに取引慣行等必ずしも一定はしておりませんけれども、東京の場合は賃借権が七〇から八〇%程度となっておりまして、借りた側が強いわけでございます。また場所によっては、この率が五〇対五〇というところもあります。田中総理は、この賃借権の問題については、五〇対五〇にしてもらうと土地提供者もふえるのではないかということを言っておられるようでありますが、いずれにしても、こういったことが土地の流動化を大きく阻害していることも事実でございます。   そこで、農協による賃貸事業を促進するには、貸した側の保護をはかる何かの措置考えなければ、おそらく土地の提供はないのではないか。ほとんどないといってもいいくらい少ないのではないかと思われます。いわゆる借地・借家法があるわけでありまして、借りた者が保護されるという現行法でございますから、この状態でこの法案が通過した場合に、はたして実際にどれほど期待できるか、貸してくれる者があるかどうか、この点については、当局はどういうふうに見通しを立てておられますか。
  111. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいま先生御指摘のように、借地の場合には借地権の割合ということが問題になるわけでございます。そこで、農協が農民から土地を借りてそれを他に貸すというような場合におきましても、当然借地権は働くわけでございます。  そこで、地域によって確かに借地権の割合は違うわけでございますが、東京の場合は、私どもの調査でも、先生御指摘のように、大体七対三ということになっております。そこで、そういったことがあればなかなか組合員は貸したがらないのじゃないかということにつきましては、そういった面ももちろんあると思います。といって、借地法というのは相当長い歴史を持っておる法律でございますし、現在のいろいろな社会的な条件からいきまして、農協のこういったレンタル方式といわれているものを進めるために、借地法の改正をやるというような点はそれは無理ではないかというふうに私ども考えております。  そうすると、一体農家は貸すだろうかということでございますが、たとえば一例として申し上げますと、三反ないし五反の農業経営をやっておった。ところが、世代がかわって、もう経営はやらない。一方、土地は御先祖さまからずっともらったものであるから、これは売るわけにはいかぬ。しかし、その土地について一々管理するのも、特に離村したというような場合はなかなかむずかしいということで、農協に頼もうかというケースもあり得るのじゃないかということで、どの程度に利用されるだろうかということは、これはまだ現段階においては正確には予測しがたいところでございますが、私どもといたしましては、かなり利用される面もあるのではないかというふうに考えております。
  112. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この農業協同組合法の改正の中ではここらが一番問題になるところでございますが、まだ日にちをかけて審議をしていくわけでございますし、いずれ近いうちには農協中央会あるいは全農、中金等からも参考人を呼んで意見を聞き、最後は田中総理を呼んでこの点の問題については審議をするように私たちスケジュールを組んでいるわけでございますが、農林大臣としては、この問題についてせっかくの提案であるけれども、実際にはなかなかたいへんだと思うのです。鉄筋の場合には六十年、木造の場合には二十年、中間的なものは三十年というふうになっておりまして、年数等もいろいろありますけれども、実際にこういった借地権の問題等がある限り、これはなかなか土地の提供が進まない。  そこで、一つの問題として大臣にお伺いしておきたいのですが、レンタル方式の場合、この事業のために借地権保護の現行法体系を貸し主保護に切りかえることができるかどうかという問題が一つあるわけでございます。すなわち、借地法を改正しないと土地の提供はなかなか進まないのではないかという問題があるわけです。こういったことについても、これの提案にあたっていろいろ検討されて出されたものをどういうふうに考えておるのか。何でもいいから、ないよりは出しておいて通しておけば、将来わずかずつでもできればいいじゃないかという考え方はどうかと思うし、また相続の問題を考えましても、現在の三ちゃん農業という状況から見ますと、現在六十歳内外あるいは五十歳代の方が、子供も東京へ就職していない、また自分もあと農業はやらない、しかし先祖の土地だから何とか売りたくない、それでは貸そう、こういうことになった場合に、鉄筋の六十年ということになると、六十歳の人は百二十歳になるので、そんな気の長いことはいえない。しかも貸した人が途中で用途変更して、自分があるところへそれを売ろうとしても、結局七、八〇%ないしは九〇%、地域によって違いますけれども、慣行になっておりますから、法制化はできないということになっております関係上、貸した人に権利が帰属しているというようなわけでは、とても提供しない。こういうふうになるわけでございまして、この辺たいへん問題で、また農業団体でも十分詰めてないようでありますが、私たちもきょう大臣また関係者からこれを聞いた上で、議事録等をよく検討した上で今後これをもっと深く検討したいという考えを持っております。  そういったことで、大臣は、さっきから言っておりますように、この問題については提案にあたってどのように検討されて出しておられるか、大臣の率直なる御見解をこの公開の場でひとつ説明をしていただきたい、かように思います。
  113. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほど内村局長のほうから御説明を申し上げたことに尽きるのでございます。要するに、離農をしようあるいは一時農業を離れようという場合に、一体農地をどうするか。その農地に非常に愛着を持っているという場合に、農業協同組合には、レンタル方式であるならば、普通の場合と違って土地の提供がしやすいのではないか。要は農業の将来からいけば、営農を続ける者にはもっと土地が十分提供される必要がある。しかし、それもなかなかむずかしい。あるいは家を  つくるにしても土地がない。こういうようなことを考えまするときに、農協というものが中に立って農地の流動化をするということは、これは流動化を進める上においては、従来の考えよりも一つ進んでおるのではないかということから考えてまいったようなわけでございまして、いま借地権の問題などについてお触れになりまして、法律改正も考える必要があるのではないかという御指摘がございましたが、そういうような点については私どもはその必要がないという見解に立っておるわけでございます。
  114. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、一応の答弁はわかりましたが、借地権については現在は変える必要はないという見解ですね。決して追及というのではなくて、それはどういうふうな意味で、なぜ必要ないというふうに思われるのか、あとあとわれわれが審議をするのに必要でございますので、もう少しその点詳しい説明をいただきたいと思います。
  115. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 先ほども申し上げましたように、農協は四十五年の改正で農地等処分事業を始めたわけでございますが、都市周辺地域の農協の組合員の中には、土地を売り渡すことには消極的だけれども貸したいというような人はかなり見受けられるわけでございます。これらの土地の貸し付けを希望する組合員も、一方第三者と自分が直接契約をやってやるというのは不安だ、農協にひとつお願いしたいというような要望がかなりございますので、そういった意向を受けて今回改正をやったわけでございます。  したがいまして、農地等処分事業をやってみた結果、今日まで約五百ヘクタールくらいの農地が処分されておりますけれども、その事業を通じて、売るのはいやだけれども、貸したいという人がかなりいるということがわかっておりますので、そういった農家の希望というものを受けてこのような改正をやったわけでございます。
  116. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長、いま都市周辺で貸したいという人が見受けられる、そういった人がかなりいる、そういった人の意向を受けて今回法改正をした、こういうことでございますね。  それで、先ほどもお尋ねしたのだけれども、本法案が通った場合、大体どのくらいレンタルによって土地を提供する人があるというふうに見ておられるのか。いわゆる事業量はどのくらいと見ておられるのか、それを明らかにしてください。
  117. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 その点は非常に現段階においてお答えしにくい問題でございます。と申しますのは、この事業を新しく単協が始めるという場合には、それなりの定款改正あるいは取り扱い規程の承認等受けなければならないわけでございまして、多少の準備の期間がございます。  そこで、実際今度の改正が行なわれまして、事業が始められるのは四十九年度以降になると思いますけれども、一方、最近宅地並み課税の問題、その他客観情勢の変化というものがございますので、そういったことを織り込みながらどのくらいになるかということを考えなければならないわけでございます。したがいまして、現段階において、それは何千ヘクタールであるというようなことをはっきり申し上げるだけのデータを、正直のところ、私どもは持っておりません。しかし、農地等処分事業が四十六年から実際始まったわけでございますが、今日まで約五百ヘクタールの実績を持っております。したがいまして、そういったことを基礎にして考えなければならないと思っておりますけれども、事業の性格が違いますので、はっきり幾らということを現在自信をもって申し上げるだけのデータを持っておりません。
  118. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長が自信をもって答えることができないということですけれども、先ほど答弁では、いかにも自信があるような、相当たくさんそういった提供する人がある、そういう意向を受けて改正する、こうおっしゃるし、貸したいという人がかなりあるというふうに言っておるのですから、そういうことで、結局、立法にあたって、降ってわいたような、くっつけたような法案でありましたから、私も心配しておるわけですけれども、それじゃ局長、あっさり言って、くどく言う必要はないのですが、想像によってこのくらいあるということで理解していいですね。
  119. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 こういった事業は農協なり農業以外のいろいろな社会的、経済的な要因も、実際に行なう場合には、関係を持ってまいりますので、いまの段階では、何千ヘクタールになるということを申し上げるのはかえって私たちとして不正確なことを申し上げることになるのじゃないか。先ほど申し上げましたように、農地等処分事業を行なう過程において、貸したいという希望が相当あるということは事実でございます。ただ、農家がはたして実際に貸すかどうかということにつきましては、これは農家の判断の問題がございますが、そういった傾向があるということは事実でございます。
  120. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、いまいろいろお聞きになったと思います。ここでこれ以上やることは無理だと思うのでありますけれども、その辺がわれわれもいろいろ心配なので、この法案についても何とか通過させて、早く団体、農家のためにこれを反映したいという気持ちもあるわけですけれども、こういったことが問題になるので、参考人を呼んだり、最後には田中総理を呼んでいろいろ質疑をして明らかにしようと思っております。  もう一点いまの論議の中で大臣にお伺いしたいのですけれども、この問題を進めるについては、借地権の流動化を円滑にするということを何とか考えなければうまくいかぬのじゃないかということが一つ。  それから相続税の扱いを考えなければならないということが一つですね。すなわち六十歳の人がレンタル方式で土地を提供した場合に、鉄筋の場合は六十年、そうすると百二十年、木造であっても二十年ですから、六十だと八十になって、それまで生きるかどうかという心配もありますし、そうなりますと、その間に世代の交代が三回ぐらい行なわれることは当然常識考えられる。そうすると、相続税の心配が起きてくる。そういったことで、いろいろ配慮しなければとても乗ってこぬのではないかという問題が明らかになっておるわけですね。  もう一つは、借りる側の権利が強いわけですから、借りる側が、貸し主、地上権を持ったほうに対してある程度責任を持つ、国か県等で責任を持つという何かがなければ、ちょっと乗ってこないのじゃないか、こういうふうに思います。  もう一つは、かりに六十年貸しても——何か聞くところによると、東芝あたりが黒磯ですか逗子等で、今度工業用地をこういったことで話が進んでおるということを聞いておりますが、東芝だからつぶれることはないにしても、はたして六十年間その会社が、東芝によらずほかの会社でも、この流動の激しい時代につぶれずに会社があるかどうかということも予測できないのです。財閥と  いってもやはりどういうことになるかわかりませんから、その会社自体が六十年ないし三十年続くかどうかという不安もあるわけですね。倒産した場合どうなるかという問題。  そういったことを考えたときに、先ほど言いました借地権の流動化を円滑にする、相続税の問題、借りる側で何とか責任を持つということで対処しなければならぬのじゃないか。そういったことをしなければ、レンタル制というのは空文化してしまう。だから、三方式ができれば何でもできるということで、道だけあければいいというようなことでは、われわれなかなか納得できないのですが、やるからにはこうだという政府考えも聞かないことには審議もできないので、その点、農林大臣からさらに所見を承っておきます。
  121. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいまの御指摘の諸点についてはたいへん参考になる点が多いのでありまするが、これも率直に申し上げまして、今回こういう新しい試みをしようというのでありまするから、万全を尽くしていかなければなりません。これを実施する上において政令以下の段階で運用上検討する必要性も起きてくると思いまするので、ただいまおあげになったいろいろの問題点について、私は、直ちに関係法案の改正を必要とするか、こう言えば、それは必要がないのではないか。ただ、御指摘のような問題点がいろいろございますので、それらの点について対処すべきいろいろな考慮をすることは起きてくると思うのであります。それについては運用について検討いたしたらばいかがかと思いまするが、要は農協を媒体としての土地の転用と保全を計画化いたしまして、従来ある農地等処分事業にかんがみまして、関係農家の意向を生かしていく上においてこのレンタル方式というものが好ましいということで、今回の改正法の中に取り上げた次第でございます。
  122. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の制約もあるので、こればかりにかかっておるわけにいきませんが、大臣答弁も、私が一番聞きたいところがどうしても歯切れが悪いわけです。最初申しましたように、委託を受けて実施する場合、それから借り入れる場合、買い入れる場合、三つの方法ということで何でもできることになったわけですけれども、道をあけておけば先は何とかなるだろうというようなことで、確たる論拠というか、相当論議はされて煮詰められたと思うが、そういうことでなくて提案されておるような感じがしておりまして、どうもその点われわれ審議をしていく上に問題が残るということになります。そういったことでは、法案を通すのでも問題を残して、審議を急いでくれという政府側の要望でありますけれども、こういうことで手間どっていくということになりかねないと思います。とりあえずきょうはこの点についてはこれだけのことをお聞きしておきまして、また議事録等を見まして検討した上で次の機会にお尋ねすることにしたい、こういうふうに思います。  次は、賃貸事業の対象となる農地でございますが、住宅用地としては市街化区域等に限定してやるというふうにするのか、または工業用地関係では農業振興地域の農用地区域等はもちろん除外をするというふうにされるのか。こういったところは、基幹産業である今後の日本農業を守るためにも厳格な規制と指導が必要である。そうしなければ、ますます農業の大撤退作戦にもなっていく、こういうようにも思うわけでございますが、その点については農林大臣、どういうようなお考えで対処しておられますか。
  123. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 宅地等供給事業のうち、現在実施されておる委託または買い入れによる転用農地の処分事業等は、その実績から見ましても全国的に推進することが可能と見込まれるわけでございますが、宅地等の借り入れまたは貸し付けの事業は、その性格上ある程度その実施地域が限定されるものというふうに私どもは考えております。すなわち、賃貸借方式は、貸し手側には土地所有に対する執着が強く、借り手側とすれば、買い入れに比べて借り入れが比較的有利であるという条件のもとにおいて活用されるのではないかというふうに考えられるのでありまして、これを具体的に考えてみますと、農民意識が強いこととあわせて、売買地価に対する借地権割合が比較的低くて、しかも宅地等の需要者が周辺に存在する地域、こういう地域でこういった事業が非常に行なわれるのではないか。  それでは、一体どういうところかということでございますが、地方都市の周辺地域、新興住宅団地及び工業団地の周辺地域あるいは幹線道路のインターチェンジ周辺地域、こういうようなところにおいてこのような条件があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  124. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 これらの条件については十分対処して、農用地については十分確保できるようにしていただきたいと思います。  そこで、この問題に関連してですが、賃貸契約を締結するような場合、これまた将来のためにお聞きしておきたいのですが、権利金とか賃貸料についてはどういう基準できめるというふうにお考えになっておるか。これも聞いておかないと、今後の審議にまたいろいろと支障を来たしますので、そういったことについては提案にあたってどういうふうに考えておられるか。それは先々のことだから別に考えていないということなのか、その点、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  125. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 組合員が農地を貸すという場合には、やはりそれだけの必要な借り賃が入ってくることを期待して貸すわけでございます。したがいまして、ある程度適正な借り賃でなければもちろん貸さないということもございます。一方、借り手から申しますと、安いほうがいいということで、これは現在でもいろいろ一般の場合においても問題のあるところでございますけれども、賃借料の問題につきましてはそういった問題がございますので、行政庁が直接関与するわけにはいきませんけれども、取り扱い規程の承認等の場合に適正であるように指導したい。  それから権利金等の問題につきましても、地域によって額が違う、いろいろ社会的な慣行もありますので、そういった慣行に基づいてやることになるのではなかろうかというふうに考えております。
  126. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、局長、この賃貸料をいわゆる物価等の上昇によって将来いろいろ改定をしていかなければならぬということもあるわけですが、そういったことについても、いまおっしゃったように、取り扱い規程の中でいろいろと適当に指導していくというふうなことで、やはり一定期間をある程度考えてやっていくというふうに考えておられますか。その点もひとつこの機会に明らかにしておいてください。
  127. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 一般の借地契約の場合におきましても、経済事情の変動があった場合には賃貸料の変更ができるようになっておるのが一般の慣行でございます。したがいまして、今度のレンタル方式の実施につきましても、そういった点は、非常に税金が上がったとかあるいは物価が上がったというような場合には当然賃貸料の改定を請求できるというふうにしなければならないと考えております。
  128. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、農協のあり方について若干質問をしたいと思います。  まず最初に、都市農協のあり方でございますが、最近の情勢を見ますと、都市農協というのが本来の目的にこたえていない。ましてや今後宅地並み課税の自動発効によりまして、三大都市は今度はだんだん農地が住宅地化していく、または公園化、緑地化していくということが考えられますが、そうなりますと、都市農協というものがますます信用金庫的なものになっていくということが考えられてまいります。そういったことで、農協の将来ということについて、都市農協といわゆる地方農協との格差が相当出てまいりますが、近年の農協の性格そのものが、いわゆる力関係等によりまして、農民を主体とした職能組合から離脱していく、そして地域組合へと移行しつつある現状でございます。こういったことでは正常な姿でないというふうに思うのですけれども、この農協法の改正にあたりまして、今後ますます地方と都市農協との格差が開いてくる、そして農協本来の姿がだんだんなくなってくるということについては当局はどういうふうに理解をされ、またこれに対してはどう対処していかれる考えであるか、その点を明らかにしていただきたいと思うのです。
  129. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま瀬野委員御指摘のとおりのことが、現に都市周辺の農協に起きておるわけでございまして、農協本来の機能が薄れて、組合員構成においてもサラリーマン、商工業者等の準組合員の比率が増大していっているということは現実の姿だと思うのですね。  そこで、そういう信用事業にウエートがかかってきておるような農協というものをどうするかということにつきまして、これはもう農協の本来の趣旨にも相当もとるような状況になりつつある場合もあると思いますので、これらの点につきましては、これは多少時間がかかりますけれども、専門的な知識を持っておられる方々による農協制度問題検討会というようなものを早急に発足をさせまして、そのほうで十分検討をいたし、結論を得たい、こう考えておる次第でございまして、御指摘のとおりの問題点が現にある、かように存じます。
  130. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまの問題でさらにもう一点大臣にこの機会に伺っておきますが、御存じのように、農協は営農、販売、購買というのが主体でありまして、自分たちが要請した仕事をいま農協がなかなかやってくれない、そして営農指導がなかなか十分でないというような声があることも事実です。大臣もどの程度聞いておられるか知りませんが、ましてや、さっきから言いますように、レンタル制とかいろんなことがだんだん起きてまいりますと、今後いろいろと農協も忙しくなって営農指導ということが薄れてくるということも考えられる。純農村地帯では別に農協をつくったらどうかというような意見のあるのも事実でありまして、農民の皆さん方からそういう声が起きるということに対しては、やはり農協そのもののあり方ということが相当批判をされておるということのあらわれでございます。そういったことはどの程度大臣の耳に入っているか知りませんが、実際にそれでは純農村地帯で別にまた農協をつくるといっても、やはり農協の維持その他には経費が相当かかりますし、簡単にはまいらない。かといって、いまのまま農協を運営していくためには、経済行為をやって、もうからぬ仕事でなくて、ガソリンスタンドだとかスーパーだとか、自動車の修理工場等もありますし、結婚式場を持った農協もありますし、そういったようなことで、やはりどうしても経済的に収入の多いほうへ力が入っていくこともやむを得ない事情であろうとも思われます。やはりコンバインなんかでやるような営農指導というようなほうは薄れて、どうしてもそういうほうへ力が入り、農民のほうからいえば、どうしてももの足りない、自分たちの要求する仕事をやってくれないということで、そういった声がかなり地方に出、だしている。たいへんな時期にきているわけですが、こういったことについても手早く政府としても指導していかなければ取り返しのつかぬことになっていくのではないか、かように思って実は心配いたしております。そういった意味で、こういったことについては大臣、どういうふうに理解をしておられるか、こういったことを踏まえて今後の農協のあり方ということについてもどういうふうに対処をされようとしておるか、御見解を承りたいのです。
  131. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 農協における営農指導事業の重要なことは言うまでもございません。しかし、お話のように、これが非営業的な部門でございますから、営業面を非常に重視するあまり、どちらかというと等閑視されがちな傾向が一部に見られるということも事実だと思います。しかし、政府といたしましては、農業団地の育成などを通じまして農業生産の組織化に積極的な取り組みを見せる上におきましても、営農指導員というようなものが非常に重要であるということで、営農指導員の適正配置と機能の専門化に努力しておるところでございまして、営農指導というものについての重要性は強調していかなければならないと思うのであります。  それから、いま農協のあり方についてのお尋ねでございますが、農業生産力の増進と農民の経済的社会的地位の向上をはかるための農民の自主的協同組織としての基本的な性格は、これを堅持すべきものである。組合員に対する奉仕、いまの営農指導などを忘れて、いたずらに経営優先主義におちいらないよう十分指導していかなければならないと思います。
  132. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大臣、いろいろおっしゃったけれども、事実いま申し上げたようなことが、いろいろ地方を回ってみますと、話題にどんどんいま出てきておるような状況でございますので、ひとつ十分これらの問題についても指導をしていただくように、よくお願いをする次第であります。  都市農協についてもう一点この機会に伺っておきますが、最近ゴルフ場その他で乱開発がだんだん進み、この土地問題について政府は四十八年二月二十三日に信用農業協同組合連合会会長あてに大蔵省銀行局長農林省農林経済局長連名でもって「土地取得関連融資の抑制について」という通達を出されております。御承知のように、現在農業施策に金を使うにも、都市農協は一農協で五百億、六百億以上も持っている農協がございまして、なかなか金がだぶついている。中金側も金がだぶついておるというのが事実でありまして、金が余っておれば、やはり利子を得るために何とか金を消化しなければならぬということで、これまた業者に金を融通する。その業者が今度は農民の首を絞めるような、いわゆる自分たちの地元の土地を乱開発で買い占めていくというような、そういうやり方も、債券で買ったり、あるいは仮登記、こういったことで買うというようなことが起こって、あちこちでいま問題になっておるわけです。  この問題だけをやっても時間がかかりますので、簡潔に申しますが、農林省の通達によって、融資については届け出制をとっていく、こういうふうに政府考えておられるようでありますが、二月の二十三日に出された通牒でありますけれども、それ以後どういうふうに届け出があっているのか。一つもないのか、幾らあったのか。一手元にいま数字がなければ概略でもけっこうですが、どういう状況であるか、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  133. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 二月二十三日の信連会 長あて通達に基づきます報告は、全県から出ております。
  134. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それで、この通達によっていわゆるそういった大口の融資をした場合等には、あらかじめか事後かわかりませんが、届け出をするように政府はおっしゃっておるわけでしょう。二月二十三日以降今日までそういった土地の届け出があったかどうか、その点をお伺いしておるわけです。
  135. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 私どもが通達で出しましたのは、半期ごとの融資計画を、半期の最初の月の月末までに提出しろということを言っておりまして、その計画が出てきた場合に、土地関係融資の貸し出し増加率の引き下げをはかる。それを見まして、そういった土地融資が非常に多いというようなものにつきましては、これはやめなさいということで引き下げをはかるという指導をしたい、こういうふうに思っておるわけでございます。ですから、土地関連融資といいましても、たとえば農用地を取得するような場合、これは当然認めるべきでございますし、さらに信連の場合、会員及び公的な宅地開発機関が必要な宅地開発のために土地を買うというようなものは、これは認めてやってもいいんじゃないかというようなこともございますので、そういったものをよく精査いたしまして、土地関連融資の貸し出し増加率の引き下げを指導するということをねらいとしておるわけでございます。
  136. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長、それで、まだ日にちが浅いからその効果についてはわからないといえばそれまでですけれども、どうですか、効果があがっているような状況でございますか。どういうふうに診断しておられますか。
  137. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいま集まってまいりましたところでございますので、十分に精査しまして遺憾のないように措置したいというふうに考えております。
  138. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、この点について詳しくはここで論議しませんけれども、実は相当こういっただぶついた金によっていろいろゴルフ場なりまたいろいろな土地取得とか買い占めが行なわれておることも事実でありまして、大臣も十分承知だと思いますが、こういったところをひとつよく指導していただかなければ、都市農協全部が全部ではありませんけれども、資金が何百億とだぶついておりますし、中金も金があるわけですし、企業ベースに乗れば貸し出しをするわけでございますから、その点のところをよくやっていただかないと、結局、自分で自分の首を絞めることになっていくわけで、これは与党、野党を問わず、われわれ議員仲間でもたいへん心配なことだということで、理事会の前後、懇談的にもいろいろ話が出るわけでございまして、公開の席であえて当局にひとつ十分なる指導をしていただきたい、対処していただきたい、こういう意味で申し上げるのですが、大臣、これについてひとつ御見解を承りたいと思います。
  139. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 単協といわず、また信農連といわず、だぶついておる資金がかりそめにも土地投機を誘発するような融資になっていったのでは、これは現在の情勢からして、好ましくないことは当然でございまして、これらの資金が適切に必要な面に融資されていく、そういう好ましい姿に持っていきたいということも頭に置きましての今回の金融関係法の改正のお願いの趣旨でもあるわけでございます。  また現に、御指摘のような事態があってはいけないということで、ただいま御質問のようなことのほかに、経済閣僚会議などにおいても、都市銀行などに対する規制と同じように、農林中金、信連、単協というこの関係において、できるだけさような方向へ資金が流れないように抑制することにつとめておるわけでございまして、御趣旨は十分尊重してまいりたいと思います。
  140. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、いまの件についてはひとつまた別の機会にいろいろ論議をすることにしまして、そういったことでございますので、十分今後の指導を厳にやっていただきたいと思います。  もう一つ農林大臣にお伺いしますが、農協合併の問題でございますけれども、合併等によって現在大型農協が出現してきておる。そこで、従来の固定的系統三段階制の機構が次第に実態に合わなくなっているということで、組織三段、事業二段といっておりますが、県段階を抜いて事業を行なう、こういったことが地方ではいろいろと話が出ております。中央会等にもいろいろ検討を聞いてみますと、まだほんとうに煮詰まっていないようでございますが、要するに、中間手数料を取られないためにも、全農あたりからストレートに末端へ、こういうふうなことでいろいろ要望が強いわけです。そこで、こういった問題については当局としては、また農林大臣としては、どういうふうにこれを考えて対処しておられるか。  もう一つは、単協の全国加入等の問題がございまして、これは法律では認められておるわけでございます。やっていけないともいわれていないのでありますけれども、それをぜひ認めてくれという要請のあることも事実でありますが、なかなかこれは県段階の関係でいろいろありまして結論が出てない、こういう問題かと思うのでございます。  これらの問題について、今後農協のあり方という問題の上から、どういうふうに政府は指導される方針であるか、農林大臣のお考えを承りたいと思います。
  141. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 大型農協の現出によりまして、いわゆる系統三段階制についての種々批判やあるいは要望のあることは事実でございます。そこで、先ほどちょっと申し上げましたが、早急に農協制度問題検討会を設ける考えでおりまするが、その中で系統農協事業研究会のようなものも設けまして、そしていま問題になっておる事項を十分討議してみたい、このように考えておる次第でございます。
  142. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それでは時間の関係もございますので、次に、農林中央金庫法の一部を改正する法律案について、若干はしょってお尋ねをしてまいりたいと思います。  今回の中金法の改正によりまして、半ば恒久的な金融機関として存続させるというふうになるわけでありますけれども、農林中央金庫は四十五年十月の第十二回全国農協大会において、農林水産業の協同組合を基本構成員とする協同組織の全国金融機関であるという性格であらねばならないというようなことが確認されたわけですけれども、まず農林中央金庫の性格についてあらためて当局から明確にしていただきたい、かように思います。
  143. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 農林中金は、農林漁業の協同組合組織を通じて農林漁業者の社会的、経済的地位の向上をはかり、あわせて国民経済の発展を期するという、協同組合組織を前提として、この協同組合組織等に対して金融の円滑化をはかるために設立された特殊法人であることは先生の御指摘のとおりでございます。  そこで、農林中金の本来の仕事は、これらの会員に対しまして金融の円滑化をはかるということでございますので、この基本的な性格は今度の改正の場合においても何ら変わっていないというわけでございます。
  144. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、農林中央金庫が五十年の存立期間を満了して再出発するわけでございますけれども、この際新しい立法形式による全面改正をせずに、今回の改正になっております。私としてはもう当然、五十年の歴史を経ていよいよ本年十  一月から新しく再出発をして、今度は恒久的な法律になることになるわけでございますので、そういった意味から、なぜ今回この点が見送られたか、政府は全面改正を避けて通ったというふうにも思えるのですけれども、その点、どういう理由によって全面改正しなかったか、理由を述べていただきたいと思います。
  145. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 農林中金法がことしの十月三十日で五十年になるという関係から、今後の農林中金のあり方をどうするかということにつきましては、関係者の間でも二、三年前から議論されたわけでございます。その論議の過程におきまして、たとえば現在の農林中金の機能を、いわば全国の農協の信用組合の連合会というものと、一方、農林金融を扱う債券発行また特殊銀行をつくる、そういった抜本的な改正についての意見が多少あったということは聞いております。しかしながら、いまの系統金融の置かれている現状から考えて、とてもそういった抜本的改正をやるべき情勢ではないし、それは現実的でないというような話があったことも聞いております。  そういった点等も踏まえまして、政府部内におきましていろいろ検討した結果、やはり農林中金の五十年が来てそれに基づいていろいろな改正をやるという場合におきましては、基本的な性格はいまのままにしておきまして、現実のいろいろな要請に合わせるように中金に新しい機能を付与するということが必要ではないかということで、今回の改正の法案をつくったわけでございまして、基本的な性格は変わってないわけでございますから、私どもといたしましては全文改正をする必要は全くないというふうに考えたわけでございます。
  146. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 基本的な問題は変わってないから全く改正する必要はない、こういうふうに局長は言われますけれども、御承知のように、農林中央金庫法の第一章総則の第一条は、「農林中央金庫ハ法人トシ其ノ主タル事務所ヲ東京都ニ置ク」「農林中央金庫ノ組織ハ有限責任トス」とありますね。こういった第一条の中を見ましても、まあ、最近の法律ではほとんどが第一条に目的が書いてあるわけですね。内容が変わらないからいいと言われればそれまでかもしれませんけれども、せっかく五十年の歴史を経て、今度半永久的な恒久法に変えようという段階でもございます。せっかく努力していただいたのですから、第一条の目的なんかも新しい方式に直してやるべきじゃなかったか。また、かたかなになって法律が出ていますけれども、ひらがなに直してやるべきではないか。まあ、技術的に間に合わなかったのかもしれませんが、そういったことも素朴な疑問として起きてくるわけですけれども、今回改正すると、またというのはなかなかたいへんだと思うのですね。形式的に中身が変わらなければいいのだという答弁のようですけれども、その点はわれわれはどういうふうに理解すればいいのですか。
  147. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいま先生の御指摘がありました点も一つ考え方と思います。しかしながら、先ほど申しましたように、農林中金の基本的性格をこの際特に変更する必要はないというふうに私どもは考えたわけでございます。  さらに、現在の中金法は五十年前に書かれまして、当時の法形式としては、まあ、目的を置かずにああいった形で一条から始まる、全体の文脈を通じて目的を読むというような形になっておりますので、目的の規定がないから中金法の目的がはっきりしないということは法律上ないのじゃないかというふうに考えております。  それからさらに、やや法律的な話でございますけれども、産業組合法の準用の問題等もございまして、この際かたかなの法律をひらがなに変えるということは、そういった立法技術の問題もあってやらなかったわけでございます。
  148. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、いまいろいろお聞きになったと思いますけれども、このことで時間を長くとって論議しようと思いませんけれども、やはり大改正でございますね。五十年を経て今度装いを新たに出発するようなものであります。私はなぜこれを言うかといいますと、私はやはり当局が怠慢、けしからぬというふうに言いたいわけです。  というのは、これはもう極端に言えば、五十年前につくったときから今日これを変えるということがわかっているわけです。しかも中金のほうでもう三年前からこれが改正には相当努力して当局とも折衝され、いろいろやってきておる努力もわれわれはよく知っております。また政府も一年ないし一年半前からこれが改正にあたっては真剣に取り組んでいただいていることも事実です。また、一年前、一年半前から、事実もう五十年で存続期限が切れてことしこれが改正になることはわかっているのですから、そういったことは理由にならぬ。やはり立法技術の問題、あるいはこれに関連するいろいろな産業組合法等の、聞くところによると、七十くらい関連法令があるということで、これを改正するとたいへんな時日と労力が要るということから、今回まあ時間的にもたいへんなので、とりあえずこういった改正にしようというのが私は実際の経緯じゃないか、こういうふうに思っております。それはそれで率直にまたわれわれも受けとめますけれども、努力はしてもらいたいし、ぜひ装いを新たにした法案にしてもらいたかった、全面改正してもらいたかったということを、われわれ国会議員として、やはりこういう公開の席で言っておかなければ、これは今後のためにも申しわけないと思う。  そういった意味で、大臣はこれをどういうふうに理解しておられるのか、またわれわれの前にどういうふうにこれを弁解されようとするのか、答弁をいただきたい。
  149. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 おっしゃっておられることについてはよくわかりますが、しかし、また同時に、先生万事御承知で言われておるのではないかというふうに受けとめたのであります。これを根本的に新法によってすべてをやり直すというとちょっと言い過ぎになりますが、書き直すと申しますか、新立法でいくということになりますれば、それに伴うところの非常な労力あるいは手順、考えてみただけでも非常に煩瑣な面も出てまいります。そういうことから考えますると、やはり五十年の歴史のある農林中金で、その間にいろいろ手も加えてまいり、現実の姿になっておるということになりますと、また他面そういう土台の上にものごとを考えていくということも一つの行き方だろうと思うのであります。御批判は、何か私どもが非常に安易に流れてこの改正法でいったんではないかということのように受けとめましたけれども、そうではなくて、いろいろ検討の結果は、こういう歴史の上に立って、しかも起こり得るいろいろな場合を考えまするときに、この改正でお願いするほうが至当であるという判断に立ったわけでございまして、その点御了承いただきたいと思います。
  150. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣のおっしゃること、一応私たちもわかるのですが、それにしても実際、期間も前からわかっていたんだし、何とか全面改正ということが望ましいと私は思うのですが、この機を逸しますと、また簡単にはまいらぬと思うのですね。そういった意味で、櫻内農林大臣就任のときに、この歴史ある中金法の改正を迎えたわけですから、全面改正して、ひとつ後世に残してもらいたかったのですけれども、いろいろ事情があるようですが、一応承っておきまして、次の問題に入りたいと思います。  時間がだんだん詰まってきますので、あとはしょって若干聞いてまいりますが、この農林中金のいろいろな資料を見ますと、本来の業務に貸さず、関連産業にずいぶん片寄っているように思うわけですね。まあ、中金側に来ていただいていろいろ説明を聞くと、そうでないというようなことでいろいろ説明をされるのですけれども、数字の上から見ると、事実本来の業務とされる所属団体貸し付けは、資金運用全体の中で一三%、貸し付け金全体では二三・三%しか占めていないのに対しまして、関連産業貸し付けは資金運用全体の中で二八・五%、貸し付け金全体の中では五一・一%というふうに数字が出ておりますけれども、いわゆる農協、信連等で金融をやっているので、中金は結局こういうかっこうになるというふうにいわれるのか、実際に関連産業のほうに片寄っていくんじゃないか、今後もますますこれが強くなっていくんじゃないかというふうに思っておりますが、この辺はどういうふうに分析をされ、どういうふうに考えておられますか。
  151. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 農林中金の関連産業貸し付けは、所属団体に対する貸し付けに支障のない範囲において資金を農林水産業の発展に役立つように活用していくというものでございます。  そこで、関連産業貸し付けが多いではないかということでございますが、やはり農林水産業の発展のためには、農林水産業と密接な関連を持った、たとえば農林水産業の生産に必要な資材の供給や農林水産物の加工、流通の円滑化というものがなければ農林水産業自体の発展がないわけでございますから、私どもといたしましては、余裕金の運用として関連産業貸し付けを行なうということがあながち悪いこととは思っておりません。ただ、それによって本来業務に支障が出るということではこれは困ることでございますので、現在たまたま資金が非常に余っておりますから、かなりのものが関連産業貸し付けになっておりますけれども、本来業務に支障があるところまでその貸し付けがいっているというふうには考えておりません。
  152. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それはそうだと思うのですけれども、そういう傾向に数字の上でなっておりますから、これも論議すると時間がかかりますが、十分これらも検討して指導していただきたいと思うのです。  それから、農林中央金庫法の第五条に、これまたお尋ねしておかなければならぬ問題でありますが、「政府」というのがあるわけです。すなわち出資してないのに、第五条には「政府」というのがここに一カ所だけ残っているわけですけれども、これはわれわれが見ると、中金がつぶれて葬式でもするときに役に立つというぐらいしかこの場合の「政府」は役に立たない、これは取ってもいいんじゃないかという意見もあったわけですが、結局、団体等いろいろと交渉の結果、一応残してもそう支障はないからということで結局は最後は残ったという経緯があるようでありますけれども、この条文だけではどうにもならぬわけですね。かりに将来必要なことがあって、政府が出資をしてやる場合にはやはり法改正をしなければならない、こういったことが起きるわけでございまして、一応これはなごりを残すというような程度の「政府」というようなことになっているのじゃないかというように思うのですが、特にこれを削除しなかった理由について明らかにしておいていただきたいと思います。
  153. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 農林中金は農林漁業の協同組合の中枢の金融機関でございまして、これは中金法に基づく特殊法人、すなわち組合の連合体等とは法律上の性格が違うわけでございます。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 したがって、政府がその出資者となっておりますのは、政府としてこのような特殊法人としての中金というものの存立を担保するというような形で政府出資を残しているわけでございます。先生御承知のとおり、産業組合中央金庫ができましたときには政府が半分以上出資しておりましたし、ずっと戦後出資があったわけでございますが、昭和三十四年までに政府出資は償還されまして、現在全然ございません。  そこで、今後一切政府が出資しないのかということでございますが、現在の中金の状況から見ますと、政府出資をする必要はないと思いますけれども、やはりこういった特殊金融機関でございますから、その存立を担保する意味で、政府として出資の可能性を残しておくという必要はあるのではないかというように考えたわけでございます。
  154. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 まあ了解します。  そこで次は、農林中央金庫も今度外国為替業務を行なうということになるわけですけれども、中金としても従来から内国為替はやっておりましたが、御存じのように、だんだん農協も国際的になって、いろいろ外国から飼料を大量に入れるというようなことも起きてきて、当然のことだと私は思うのです。そこで、幾らベテランである中金であっても、外国為替を扱うとなるとかなり業務は多くなるし、また技術も要るわけでございますが、これらについての対処をどういうふうに中金としては対策を練っておるのか、またどういうふうに指導しておられるのか、この点は当局のお考えはどうですか。
  155. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 中金は従来内国為替を扱ってきているわけでございますが、外国為替を今度の改正で扱わせることになりますと、新しい業務が加わるわけでございます。そこで、内国為替を扱っておりますと為替業務についての基礎的な知識は十分あるわけでございますけれども、やはり外国為替ということになりますと、いろいろな違う面もあるということで、現在中金からそういった仕事に将来当たるであろうと思う者を東京銀行に派遣いたしまして、トレーニングを受けさせております。そのほか、この法律が通りまして、この事業がはっきり中金としてやれる体制が整うまでに、中金自体においても、さらに関係職員の訓練をやろうというような計画を持っているように聞いております。
  156. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林漁業者に対する直接貸し付けについてでございますけれども、農林漁業者の大口、長期の資金需要に対しては、単協、信連が現在対応しておるわけでありますが、   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 資金量または危険負担等から見て十分に対応できない面があるので、今回、中金が直貸しをするということでございますが、豊富な資金力、そして、直接、農林漁業者に中金が貸し付けできるということは、単協または信連を補完する意味では当然だと思うのですけれども、そのために、借り入れについて農協と競合してきていろいろ問題が起きる。そのためにはどういうような方向で整理をされるのか、その点、明らかにしていただきたいと思うのです。
  157. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 私どもも、ただいま先生から御指摘のあったような問題が、今後中金の農業者等への直貸を開く場合に重要な問題だというふうに考えております。  そこで、その場合におきましては、従来、農業融資につきましては、単協、信連が主として扱ってきたわけでございますので、中金は、直貸をやる場合におきまして、関係の単協、信連と十分協議をしまして、そこでそういった単協なり信連から、資金需要が大きくて対応できないからやってくれというような場合にやるべきではないか。  それから、融資条件その他につきましても、これは本来の系統の金融機能と非常に関係があるわけでございますから、そういった面との調整も十分とってやらなければならぬというふうに考えております。
  158. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 抽象的な答弁ですけれども、そこで、私たちも過去にいろいろ中金等この金融に携わったことがありますが、いろいろな公庫の例を見ましても、やはりこういう貸し付けの場合は、資金が焦げついたり、またはいろいろ事業を失敗したりするとたいへんなので、相当慎重に扱うことは当然でありますが、やはり中金として直貸をどんどんやられたのでは、農協そのものも、いろいろな今後の農振計画その他から事業の推進にも支障を来たすというようなことやら、また、地域の発展のためにいろいろな問題が起きてくると思うのです。  そこで、これらの貸し付けにあたっては、たとえば、農業政策をどういうふうに打ち立てていくかという地元の計画も一応検討してもらわなければならぬし、借り入れについては、申し込みなどを農協を経由してやるようになるものか、かといって、これはあまり強くやりますと、従来焦げついたり、いろいろ不渡り等を出した経験のある方であれば、現在はまじめにりっぱにやっていても、やはり過去の例をとったり、あるいは地元ではよく極端な例が、選挙などにまつわって感情をはさんで、あれには貸さないというようなことで、いろいろ意見書を出すにしても、なかなか通りのいい意見書を書かない、あるいはまた感情でもって、農協を経由する場合には、何とか金を出さないような意見を書くというようなことになってくると、これまた困った問題である。実質的には、中金としても、相当大口の金を直貸ということになりますと、何かそういったものがなければ、一々調べるのもたいへんだろうと思うし、かといって、それにあまり依存すると、結局また制約を受けて、ほんとうに今後事業を推進して、意欲的にまじめにやっていこうという人が、過去にちょっとした金融上の問題があったために借りられないというようなことになりますと、せっかくの道がまた閉ざされるということにもなりかねない。そういったことをいろいろ過去の経験から心配するわけですけれども、その点については、もっと具体的に、どういうふうに指導されるつもりなのか、ひとつ当局のお考えを聞きたいんです。
  159. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘のあった点は、実は私どもとしても、これは将来非常に大きな問題だろうというふうに考えているわけでございます。中金が直貸をやるということになりましても、やはり業務代理は単協に頼まなければならぬケースが多いのではないか。そうすると、単協が、どうもあの人が、特に大口——われわれが考えておりますところでは大体中金の直貸は一件一千万円くらいの規模になると思いますが、そういった大口の融資を特定の人が受けるということに対しては、単協の水平平等主義という従来の考え方がありましてなかなかうまくいかぬというようなことも起こり得るのではないか。そうなりますと、大規模経営の育成のためにこういった制度をつくってもなかなかうまくいかないのではないかというような心配があるわけでございます。  そこで、現在考えておりますことは、中金の直貸につきまして、できれば単協、信連、中金で構成される融資協議会みたいなものを設けさせまして、そこで関係者が寄り集まって十分相談してきめるということになれば、単に単協の意向だけではなくて、より大きな立場から判断ができるのではないかというふうに考えているわけでございます。しかし、いずれにいたしましても単協の意向というものを無視して一方的に中金がやるというようなことはやはり避けるべきである。ですから、系統の融資体制というものを尊重しながら、一方、現在までときどき問題になります単協の平等主義というものをある程度そういった面でチェックしながら、中金の農業者等に対する直貸というものを運用していくべきではないかというふうに考えております。
  160. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、いまお聞きになっておられたと思うが、せっかくこういった道が開かれてきたのですが、中金が相当金がダブついておりますので、この法案が通過しますと、こういったことがさっそくいろいろ問題化されてくると思うのです。現にこれはすぐ響く問題でございます。  そこで、いま局長からいろいろ答弁がありましたが、一つの例として、融資協議会のようなものをつくって関係者を集めていろいろ考えてやるというようなことでありますが、なるほどそれも一つの方法だと思います。いろいろ功罪相半ばするものがあろうと思いますけれども、いずれにしても、今後農業の発展のために有効にこの資金を使っていただきたいと思いますので、こういったことを踏まえて、十分こういった点についても、農協のいわゆる意見を聞かなかったならば、結局農協がいろいろ考えて今後構想を練っていくのにブレーキをかけるというようなことになったのでも困るし、その点を十分に踏まえて今後の対策を立てていただきたい、こう思うのです。大臣もこういうことについては、将来のためにこういうふうな考えで対処するという、一応きょうの質問はこれで終わりますので、ひとつ決意をお聞きしたいと思います。
  161. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま内村局長から御趣旨を踏まえて、融資協議会などを通じて運用の上に万遺憾なきを期す旨を申し上げた次第でございます。私も先ほどからお話を承りまして、単協でなかなか貸し付けにくい大口の資金需要者、そういうようなものに今回新たなる融資の道が開けた、その実情はときにえこひいきがあったりする場合もございましょうが、それらの点を、局長より申し上げました融資協議会などを通じて、適正な運営を期していくということによって御趣旨に沿ってまいりたいと思います。
  162. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、農業近代化資金助成法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案関係で、通告もいたしてありましたので、若干質問をいたします。  まず、この法案では、四十四年度から三カ年間の実績は、貸し付けワクの半分弱の消化をしているにすぎません。政府が今回この近代化資金で、貸し付け対象者の範囲の拡大とか、貸し付け条件緩和、それから保証保険制度の改善等をはかろうとしておられるわけでありますが、いままで、この貸し付けワクの消化等のデータを見ましても、不十分であったことをどういうふうに反省しておられるか。実際に貸し付けワクが消化できていない、こういったことについて、今後、指導を含めてどういうふうに反省されて、どういうふうにこの資金の有効なる使用について考えておられるか。その辺からまずお伺いしたいのであります。
  163. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 近代化資金のワクに対する消化率が、四十四年以降非常に悪くなったというのは事実でございます。と申しますのは、御承知のとおり、総合農政の転換にあたりまして、四十四年から資金ワクを三千億円というふうに非常に大きく広げたわけでございます。それで、資金に対応できるような体制をつくったわけでございますが、消化率が大体五割くらいということになっているわけでございます。  このように資金状況の消化が悪いことの原因といたしまして、いろいろなことが考えられますが、私どもの考えているところでは、農機具等、中期の資金が近代化資金によって融資されているわけでございますが、農機具等の施設投資が一巡していることによる資金需要の頭打ちがまず考えられるわけでございます。この点につきましては、ことしの農業白書等でも、農業機械に対する資金需要が一巡しているということは指摘されております。そのかわり、新しい機械に対する需要が起こっているということも同時に指摘しておりますが、一般的に機械に対する投資が一巡したということは言えるのではないかということでございます。  それから、規模を拡大して、近代化施設の整備拡充を行なおうとする農業者にとっては、現在の貸し付け限度がやや低いのではないか。この点につきましては、今般改正するわけでございますけれども、そういったようなことが原因になっているのではないかというふうに考えているわけでございます。
  164. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 貸し付け限度が低いということが原因になっている、そのため今回改正するということであります。いろいろこれは理由があるわけですけれども、基準金利についても今回〇・五%引き下げるということになっております。実際は、すでに金利を〇・五%下げているのは五、六件あるわけです。御承知のように、東海道メガロポリスといわれる中部圏を中心とした周辺は金利が低い。北海道、九州のように遠隔地になりますと、金利が高いというようなことで、こういったものも一つの問題になっております。いわゆる中部圏は、やはり資金量が多く集まるし、経営のメリットが出てくるし、また資金量が大きいので早く金になるということもありましょうし、低いところでは、やはりコストが高くなる、また経営の努力が足らないという点もあるだろうし、立地条件等が悪いために、結局、金利が高くなっておる。そういったことから高いのでは、農家では、ためにならぬといろいろ不平も言っておるわけですけれども、政府の説明によりますと、国が近代化資金の金利の中で、七%及び六%の金利を〇・五%下げた、こういうふうに言っているのですが、もう〇・五%下げられるのではないか、私はこう言いたいわけです。〇・五%だけでは、これはあたりまえであります。  御承知のように、国または関係団体が金利の補助をする場合の基準として、貸し付け基準金利を現行の九%から八・五%に、〇・五%引き下げて行なうことにしている、こういうふうになっておりますけれども、貸し付け基準金利というものが〇・五%下がっているわけですから、国は何も実質持ち出しはない、損はしておらぬ。一%下げれば確かに〇・五%下げたということで、農家のためになるということになるわけですけれども、〇・五%下げた、そう聞くとなかなかかっこいいわけですね。よく老齢年金で五万円年金のことが話題に出て、いろいろ問題になりますが、聞こえはいいけれども、実は中身がないということなんで、これも全然中身がないわけですね。  そういうことで、これはいわゆる〇・五%下げたと声高らかに言っておられますけれども、何ら変わりないじゃありませんか。こういうふうに理解するのですが、その点、どういうふうな見解をお持ちであるか、御答弁を願いたい。
  165. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 先生も御承知のとおり、近代化資金は、系統の資金を原資といたしまして、それに県が農協その他の金融機関と契約を結びまして、一定の資金については利子補給をする。その利子補給は三分になるわけでございますが、そのうちの半分を国が補助する、こういう体系になっております。あくまでこれは系統の原資、それについて農家が借りやすい、必要な資金項目について借りやすくなるような制度としてできているわけでございます。したがいまして、系統の金利というものが基準金利になるわけでございますけれども、基準金利につきましては、制度発足以来二回にわたって下げております。ただいまの四十七年までの金利は、四十一年につくられたものでございまして、その間約五、六年の歳月があるわけでございます。その間に、系統といたしましては、やはり経営の合理化等の努力をいたしまして、金利が下がっているという面もございますので、そうしたことを考えながら、一方、利用する農家の立場からいきますと、先生の御指摘で全然メリットがないじゃないかというお話であったわけでございますが、やはり借りる農家にとっては、五厘の引き下げというものは、これは非常なメリットになるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  166. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣にいまの件でお聞きしておきます。いま局長答弁がありましたが、最も金融の激動の中にありまして、当の農協としては、必ずしもこの金利を下げるということについては、将来のことを考えましたときには、金利を下げると、将来また金利を上げねばならぬような金融情勢のときには、また上げることはなかなかたいへんだという心配もあって、もろ刃の剣みたいなかっこうになっておりまして、いろいろそういうようなことを、私はよく事情はわかるわけですけれども、当面せっかく農家をよくするためにそれを下げてやろうということでありますから、あえて私はそういったことの政府見解を聞いたのですが、この〇・五下げるについては、農林省としては、係官の皆さんにお聞きしますと、これはほめてもらいたいのだ、ずいぶん努力したと言わんばかりの表情でございます。そういう点もわからぬではないのですけれども、いずれにしても、この〇・五というのは、国の損失ではない。しかし、農家としては、安いほうがいいわけでございますし、地方においては、特に北海道、九州等においては、資金量、借り入れその他の実績を見ましても低いわけでございまして、なおこの問題については、昭和三十六年十月十八日の農業近代化資金助成法案に対する附帯決議がなされておりまして、「農業近代化資金の資金枠を大臣に拡大しこれに伴う政府の利子補給を引上げ、末端金利が五分以内になるようにすること。」さらには、四十一年三月二十一日、やはり当委員会の附帯決議で同じような趣旨のことがなされております。それから見ますと、局長答弁でもいろいろありましたが、実際に七年ぶりにやっと重い腰を上げて〇・五下げる。ところが、これは一・〇であれば、確かに〇・五%になりますけれども、実際は、貸し付け基準金利が〇・五下がっておりますから、同じことなんですね。そういったことは十分おわかりだと思いますが、大臣、さらにひとつこういったことを十分踏まえて、金利の引き下げについては、今後努力をしていただきたい。またこの貸し付けがいろいろと時間がかかりますが、いろいろ成果が上がっていないという理由に、こういった問題があるわけでございますので、せっかくの制度が生かされますように、十分配慮、指導していただきたい、こう思うのです。その点についての大臣見解を承っておきたい。
  167. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私どもは、今回の利率の引き下げが政府としては何ら犠牲を払っていないという御指摘ではございますが、しかし、いずれにしても、ただいま御質問にもありましたように、四十一年度以降御決議もありながらもなかなか下げられなかった、こういう実情のもとに今回基準金利の引き下げに伴う年五・五%ということにいたしたわけで、われわれとしては久しぶりに金利が下げられたということで、自慢ではございませんが一応成果があったというふうに認識をいたしておるのであります。特にいま一方において金融引き締めも行なわれつつあるおりからでございますので、今回のこの引き下げは利用者にとりましては相当効果があると思いますし、また同時に、すでに御承知であられることと思いますが、金利の引き下げとともに、貸し付け限度額の改定をおおむね従来の五倍程度まで拡充をいたしたということで、両々相まって大いに利用者の方のこれからの御活用を願いたいと思っておるような次第でございます。
  168. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の制限もございますので、次に急ぎますが、近代化資金と公庫資金の分野調整のことでお伺いします。  これも農林大臣にお伺いいたしますが、きのうはマル寒、マル南法案の審議をして当委員会で採決をしたわけですが、その際農林漁業金融公庫総裁も呼んでいろいろ私もお尋ねしました。何しろ時間が詰まっておって、各委員から時間時間という声がかかったものですから、私もずいぶんせき込みまして十分な質問ができなかったのですけれども、実は農林漁業金融公庫の諸貸し付け資金と農業近代化資金制度による諸貸し付け資金とは、発足十数年を経まして、一見それぞれ定着したように見えますけれども、農家の立場からすると、制度金融を複雑なものにしているということでかねがね批判が起きております。そこで、同じ資金が公庫にもあり、また近代化資金にもあるわけで、この関係は近代化資金に早くから移せということがいろいろいわれておるわけですけれども、公庫法の業務方法書に主務大臣指定、こういうふうにあり、農業近代化資金にも同じようなことが書いてあるということで、そのままずるずる今日までなっているようであります。こんなわけで、今回農林漁業金融公庫法も当然金融関係として改正法案提出があってしかるべきだ、こう思うのですけれども、今回改正を出さなかったというのも、こういったものがあるものだから、さわらぬハチにたたりなしというか、さわらずに避けて通っている、こういうふうに思うのですが、この点、大臣どうだったのですか。
  169. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 先生御承知のとおり、公庫資金につきましては、長期低利で一般金融機関の対応困難なもの、農業にとって非常に大事な基盤整備とか構造改善の資金を出すのが公庫資金の大きなねらいでございます。近代化資金につきましては、系統資金を利用しまして、農業者の資本装備の高度化及び経営近代化のための中期の資金を出すということになっておることは御承知のとおりでございます。  そこで、現在近代化資金と公庫資金と重複していると思われるものが若干ないわけではございません。それは公庫資金の主務大臣指定施設資金、共同利用施設資金と近代化資金の農機具、建物等の資金でございます。これらの資金につきましては、見たところ若干重複しているような感じでございますけれども、やはり資金本来の機能から見れば、公庫資金であり、近代化資金であるということでいいのではないかというふうに考えておりまして、特に、一般論といたしまして、制度金融には資金項目が非常に多過ぎる、それを整理すべきだという御意見がございます。この点につきましては、やはり私どもといたしましても、利用者の立場から見ても、あまり複雑でわからないということは問題だと思いますので、将来その整理について努力はいたさなければならないと思っておりますけれども、その段階で検討すべき事項であって、現在直ちにこれによって非常に弊害が起こっているというふうには考えていないわけでございます。
  170. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長、そういうことで一応あなたの言うことはわからぬでもないが、それじゃ、お尋ねしますけれども、農林漁業金融公庫法の改正、これもぜひやってもらわなければいけない。いろんな資金の内容等を見ますと、ずいぶん前から利率、据え置き期間あるいはまた貸し付け条件等も昔のままになっておりまして、昔と現在では、木材についてもいろんな造林、あらゆる撫育またいろんな土地改良の融資の貸し付け条件にしても全部変わってきているわけですね。むしろ農林漁業金融公庫法の法改正を急いでもらいたいと私は思っておるのだけれども、いまいろいろ答弁されたけれども、結局、一緒にやるとややこしい、こういったことが起きてくるから、今年は近代化を通して一応落ちついたところで既成事実をつくって、来年度早い機会に農林漁業金融公庫法を出そう、こういう考えじゃないかと思うのです。それじゃほんとうは困るわけですけれども、そういったことで、これはこれらを含めて金融の交通整理をしなければならぬ。農林大臣は交通整理をしなければならぬと言うけれども、農林漁業金融公庫法の改正もやはり急いでやってもらわないとたいへんな問題があるわけです。大臣もわかっておられると思うが、こういう公開の席でそういうことがなかなか言えない点もあるかと思うのですけれども、実際には今度出さなかったというのは私も問題だと思うのです。これに対しては将来当然出してもらわなければいかぬと思うが、その辺を含めて大臣から見解を承りたい。
  171. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 農林漁業金融公庫法と農業近代化資金との関係におきまして、貸し出し目的のお互い重なり合っているところのある点は承知をしておるわけでございまするが、先ほど内村局長からお答え申し上げたとおりに、片方は長期の資金、片方は中期の資金というような一応仕分けをしておるわけでございます。  今回なぜ農林漁業金融公庫法の改正はやらなかったのだ、当然出すべきじゃないかという御指摘でございまするが、他の金融関係四法の場合とは、御検討いただけば、おのずからその緊急度合いも違うと思うのであります。しかし、お話しのような点についても、私どもは、これは検討するかしないかといえば、検討するほうがいいのでありまして、したがいまして、改正するとかしないとかいうことでなしに、農林漁業金融公庫法の問題点についてこれから検討するということについては、そのような方針でおるということが申し上げられると思います。
  172. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 十分お聞き取りいただいたと思うのですが、ぜひひとつ早い機会に検討していただきたいと思うのです。  いろいろ意地の悪い質問をしましたけれども、実際はそういうことでわれわれもある程度のことは推量できるわけですが、これまた急いでお願いしたいと思っております。  そこで、内村局長に急いでお尋ねしますが、この保証料の軽減の問題。これは政府はどれだけ引き下げるように指導する考えであるかということ。  それからもう一つは、保険料率の問題でありますけれども、御存じのように、これには長期借り入れ金と短期借り入れ金がある。これが全部同じ率で取っておりますね。そこで、長期借り入れ金の場合は保険料を当然そこで差をつけるという要請が強いわけですが、この点、簡潔にお答えをい  ただきたい。
  173. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 保証料については、長期のものについて引き下げるということで検討する方針でございます。
  174. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 長期のものについては検討するとおっしゃるが、あまり簡潔過ぎてちょっと……。やはり長、中、短期とこうあると思うのです。五年までは幾らで、五年以上十年までは幾らというふうにいろいろあるかと思うのですが、長期とはいつからいつまでか、そういうことをいうと、またいろいろ聞かなければならなくなるので、その点はどうか。  それから、さっき言いましたように、保証料の軽減についてどういうように指導されるか。これは簡潔にといっても、答弁せぬというのが簡潔にというわけじゃない、もちろん答弁してもらわなければ困る。
  175. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいま非常に間違ったことを申し上げました。保証料と申しましたが、保険料の間違いでございます。  保険料につきましては、現在一本でございますけれども、これを五年未満、五年以上十五年未満、十五年以上というふうに分けまして、さらにそれを近代化資金、それから一般資金も今度は保険に付することになりますので、一般資金というふうに分けまして、保証保険の料率をつくりたい。  それから、融資保険につきましても、大体同じような区分で近代化資金と一般資金についてそれぞれ料率をきめたいというふうに考えております。  そこで、この保険料の引き下げの結果が末端の保証料の引き下げに直接的にはつながりませんけれども、長期のものについては下げるということもございますので、それが反映するように指導したい。ただ、下がった分がそのままストレートというわけにはまいらない面もありますが、下げるように極力指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  176. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 与えられた二時間の時間があっという間に過ぎてしまいまして、ずいぶんはしょって質問をしましたが、若干残っておりますし、また農水産業協同組合貯金保険法については全然質問ができないような状態になってまいりました。約束の時間が参りましたのでこれで終わりますが、あらためてまた別な機会にいろいろと質問させていただくことにしまして、御協力をたいへん感謝して、質問を終わることにいたします。
  177. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 島田琢郎君。
  178. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 農業金融四法でありますが、限られた時間内において聞きたいことをすべてお尋ねするということは技術的に非常にむずかしいわけです。しかもまた、いままであるいはこれから先も、各党からそれぞれの分野にわたってこまかい質問も出されると聞いておりますから、私はごく限られた部面についてのみの質問にいたしたいと思います。  まず、どうしてもこの機会に明らかにしておきたいのは、日本農業の置かれている立場あるいは内容、こういうものが依然国会の論議を通しても明らかにされないというもどかしさを、私は国会開会以来強く持ち続けてきている一人であります。特に、先日農業白書が出されるに及びまして、それぞれ各党から質問が本会議の席上出されたわけでありますが、これに対する総理大臣並びに関係閣僚の答弁を聞いておりましても、なお一そうそうした点を強くするわけであります。特に所管の農林大臣としては、事あるごとにいわゆる日本農業の危機的状態というものをはだで感じとられておるはずの大臣ですから、思い切ってこの機会に日本の将来の展望を明らかにしながら、それに対して具体的ないわゆる政策を打ち出していってもらわなければ困る、こういうことを私は強く訴えてまいりました。  今回出されております農業金融の改正法案は、それぞれこうした日本農業の将来を決する上において非常に重要な意義と目的を持っておるものばかりであります。いままでの農業金融のあり方についても十分この機会に反省しながら、一体日本のこれからの農業を進めていく過程において、どういう金融制度がしかれなければならないかという点について明らかにしておかなければならないと思うわけであります。  そこで、まずこの農業白書でありますけれども、それぞれきびしく農業白書の問題につきましては質問も出されておりましたが、多少の重複をお許しいただきますけれども、まず白書の「むすび」で、従来の「輸出中心の産業構造から国民福祉の充実をめざす産業構造への転換を図らなければならないという重大な局面を迎えている。このような農業をめぐる社会経済環境の変化のなかで、わが国農業は、近年、生産の減退や農産物価格の停滞等による農業所得の伸び悩みと兼業農家の一層の増大、自立経営農家の戸数シェアの低下傾向など生産、価格、構造の各分野にわたってきわめて困難な問題に直面している。これに加えて、農産物の国際需給のひっ迫、国際通貨体制の動揺等激動する国際政治経済への対処を必要とするなどわが国農業と農政はいまだかつて経験したことのない困難な局面に立たされている。」と結んでおります。  そこで、私は、こうした困難な局面に立たされている農業のこれからの行く手というものは、いろいろな問題といろいろな困難な事象にぶつかっていくということを予測しなければならないと思うわけであります。それらに対応できる今度の金融政策の改善四法が、それぞれそうしたねらいを明確に解決できるという一つの責任をこの改正の中でつくり上げていくことができるかどうかという点については、全法案を通して私は非常に疑問と一つの不安を持っておる一人であります。大臣は、いささか次元の高い話でありますけれども、こうした農業金融が果たすこれからの役割りというものについて、明確にどういう認識をお持ちになっておられるかをまず明らかにしておいていただきたい、こう思うわけであります。
  179. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま白書の「むすび」を引用しての御所見を承ったわけでございまするが、これからの農業施策全般を考えてみまするときに、しばしば申し上げる基盤整備あるいは構造改善事業あるいは価格安定施策等いろいろございまするが、ただいま問題になっておりますところの農業者等のために必要な資金が適時円滑に供給されるよう金融関係法案をその趣旨にのっとって見直していく必要があると思います。  そこで、今回のこの四法改正につきましての基本的な方向としては、総合農政推進のための融資体制の確立ということが一つであります。次には農業金融の新しい事態への対応をしていきたい。それから農業金融の能率化及び円滑化をしてまいりたい。それから農業金融の機能の調整あるいは金融制度の簡素合理化をしていきたい。こういうような五つの構想のもとに今回の改正案についての検討が行なわれてきたわけでございまして、その結果がただいまお願いを申し上げておる改正法の諸点になっておる次第でございます。
  180. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そういう五つの点をひっさげて、これから日本農業のいわゆる金融という側面からの政策を進めていきたいという大臣の所信のようでありますけれども、しかし、日本農業の今日の状況、これは私がいまここでこまかに内容お話しするまでもなく、白書でもすでに明らかにされているし、またこうした農政の論議を通しあるいは国会の論議を通しても、たいへんな事態になっているということは、皆さま方否定のされないところであります。  ひとり大臣だけが、特に総理大臣は、この間の本会議でこういうことを言っていますね。農村は民族のふるさとである、これが荒廃してはあすの日本はあり得ない、まことにはだざわりのいい答弁をしております。そのとおりであります。こうした農村をつくり上げていくために今日までみんなが努力をして、知恵を持ち寄って、真剣にやってきたわけであります。しかし、現実には、農村は民族のふるさとなどという状態にいまなっていない。しかも、農村が荒廃してはたいへんだというが、すでに農村の荒廃は深刻であります。したがって、今日のこういう状況判断というものが明確でありませんと、これからの農業金融制度をどうするとかあるいは構造政策をどういうふうに進めていくとかいうことを言っても、現実のこういう問題を的確に踏まえない中では、やることなすこと、それは的確に措置できるとは言いがたいわけであります。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  そこで、私はその状況判断について、ある農水の席上で大臣にも見解を迫ったわけでありますけれども、総理大臣同様のお考えの上に立っておられるような印象でありました。私がこれはたいへんだということを言うのは、昭和三十六年に農業基本法をつくって以来、それを一つの柱として進めてきたといういまの政府の責任ある立場からいえば、それは失敗だったということを容易に言うことはできないことはわかります。しかし、やはりあやまちを改むるにというたとえもあります。私は今日の置かれている情勢というもの、全部が全部失敗だったということをきめつけるつもりはありません。しかし、大かたの農村の実情は、私が前段触れたごとき状態にある。過疎化が深刻であり、農村のにない手がどんどん離村していく、老齢化し、三ちゃん農業どころか一ちゃん農業になっている。こういうふうに農村の構成というものが荒廃を伴いながら大後退をしているという実態の中において、今後どんな金をつぎ込んでいって一も、これを蘇生させるというのは現行の金融制度の中では非常に的確さを欠くのではないかという心配を持っています。やはり借りた以上は返さなければなりません。返すだけの手だてをつくり上げなければならない。その手だてをつくり上げていくにない手がこのようにいなくなっているという現状であります。  そう考えてまいりますと、いままでのような金融だけで農村の近代化、構造改善、そういうものが目的どおりに進んでいくということはきわめて至難だというふうに私は考えます。したがって、昨日もマル寒法、マル南法の法案審議にあたって、私は、そうした農村の実情を踏まえてマル寒法のいわゆるはだに触れるような改正をお願いしたいということを申し上げたのも、この趣旨に基づくものであります。  そこで農村の実態は、さらに「むすび」の中で白書はこういつているわけであります。第一は、土地、水等の有限な国土資源の効率的利用を推進する、そのために農村というものは非常に大事なんだということを第一点でいって、第二点では、わが国農業を近代的農業として確立するために生産性の向上を一そう促進しなければならない。三つ目には、需要の動向に対応した国民食料の安定的供給をはからなければならない。これはすべて農業基本法の柱になっておるものの言いわけでありますけれども、最後の第四番目に、高密度経済社会の中にあって、農業農村の果たしている役割り、またこれから果たさなければならない多面的な役割りというものは非常に大事である。すなわち、これを詰めて言いますと、農業の価値観、農業というものをもう一度見直そうという、そういう意識のあらわれであるというふうに私どもは受けとめておりますけれども、もっと意地悪く言えば、いまさら農業の大事なことを本会議で総理大臣が弁明したり、あるいはまた白書で麗々しくうたわなければならぬということは、国民皆さん方農村の置かれている責任と立場については大いに理解しておる。それがそうなっていないから心配が起こり混乱が起こり、農村の荒廃が進んでおるわけであります。  こういう点を考えますと、私は五つの項目をあげてこれからの農業金融政策を進めていくというお考えについても、どうにも油断のならない気がしてなりません。したがって、もっとこうした実情を正確に踏まえた上で、これからの日本農業を進めていく上に、確立する上にどんな金融制度が大事かという根本の御検討がほしかったということを私は言いたいのであります。そういう認識の上に立ってこの金融四法の検討をされたのかどうか、もう一度大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  181. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほど考え方の基本を申し上げたわけでございますが、ただいまの御質問はさらにもう一つ具体的にお尋ねのようでございます。  そこで、農協の系統金融のあり方をながめてみまするに、一番考えなければならないのは、元来農業者のためにある、そういう原点に立つ必要があると思うのであります。したがって、系統資金の十分な活用を可能ならしめるような諸措置の改善をはかる必要があるということで、今回の改正の中にもそのような見地から盛り込んでおるわけでございます。農林漁業金融公庫資金等の系統金融を補完すべき制度金融についても同様のことが言えると思います。そういうようなことを念頭に置いての今回の改正のお願いであるというふうに御理解をちょうだいしたいと思います。
  182. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 くどいようでありますけれども、いま農業者の本音は、なるほどたくさん金を借りる道も開かれているし、農業金融ほど窓口の広い制度もないといわれています。しかし、これ以上いまの制度資金の中では、金を借りても払える道がない、だからできるだけ金は借りたくない、しかし有利な資金であればこれは話は別でありますけれども、いまのように借りればただ固定化されていく心配のある制度資金ではわれわれの経営がよくなるとは考えていない、こういう面が  一つあります。これは私は乳価問題あるいはビートの価格決定の段階においても申し上げたとおり、投資をした資金は払わなければならない、返さなければならないのが大半であります。その大半の借り入れ金を払える条件、それをつくってもらわなければならぬということで、同時に構造政策とあわせて必要なのは価格政策であるということを強く訴えてきたわけであります。しかし、それも裏切られている。こうなってまいりますと、新たによほどの有効な、有利ないわゆる農業金融制度がしかれない限り、農村における経営にプラスするような金融というものはそれなりに動いて  いかないというふうに私は心配しております。もうしょい切れないほどたくさんしょっている農家もたくさんいる。経営規模は拡大された。確かに構造の一面は進んだということは言えますけれども、反面、それと比例して、あるいはそれ以上の負債をしょい込んでいるという現実の中に置かれている農家も一ぱいある。  こう考えてまいりますと、日本農業金融というのは、ごく一部の国ではありましようけれども、たとえば西ドイツのような特別の金融の道もこの機会に開くという考えがなければ、こうした階層で苦しみながら努力している農家というものを救うということは非常にむずかしい、私はこういう判断一つ持っております。二分だとか五十年とかいう特別な金融制度をしくという、あるいは検討するというお考えはありませんか。
  183. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 低利の長期の資金が好ましいということは言うまでもないことであります。しかしながら、この農業関係だけが金融をになっておるのでなく総合的に金融のあり方というものを考えていきますときに、はたしてそういう飛躍的構想が妥当かどうか、これがそういうことによってほんとうに必要な面に資金が流れていくということであればけっこうなことでございまするが、またそれに伴う弊害なども一応検討していかなければならない。そういうことであれば、そういう低利の長期の資金の要るような面におきましては、できるだけ国の施策の上において補助施策をしていくというような別途の構想も出るわけでございます。  そういうことでございまして、現在金融が農業者のために十分活用されておらないという点をいろいろ検討してまいり、いまの農村のあり方も考えてまいりますと、今回の改正の中でお願いしておるような地域開発の上に、あるいはその地域の農業のためになる法人に対する融資あるいは環境面を考える面の融資というようなこともあわせながら、——御指摘のように、農家はもう借りてもなかなが返せないところまできているのだということになってまいりますと、一方において農村の地域開発が進められることによってまた農業者も農家も助かるという面もあるのではないか、というようなことで、それらの考え方も導入しての今回の改正のお願いになっておるわけであります。要するに、あらゆる方途を考え、しかもそれは全般の仕組みの中で妥当なる方策のもとに、農業の振興の上に、農業者の上に役立ちたいということで進めてまいっておるのでありまして、御質問の御趣旨からいうと、何かもの足りない点があろうかと思いますが、今回の改正によって所期の効果をあげてまいりたいと思っております。
  184. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 私は、いかに農協が金を持っていても、あるいは系統に金がだぶついていても、要は、そこに構成される組合員である農家がこの金を有効に活用できる、あるいはまたそれを経営の中に有効に生かすことができる、そういう農業金融制度でなければいけない。農家がつぶれてしまっても農協は残る、こういうふうなことではいかぬわけであります。私は全国的にそういう傾向にあるということを申し上げるつもりはありませんが、一部の地域においてはそういう事実があるいはそういう状態というものが深刻になっているということが言えます。  たとえば、例をあげますと、北海道の例でありますけれども、空知の添牛内という農協の例でありますけれども、二百戸の小さい農協でありますが、そのうちこの春に七十七戸が集団離農した。この原因は、こんな小さい農協でこの七十七戸がかかえた借金が一億以上になった。単年度であります。何年かかかっての借金ならいいわけでありますけれども、単年度で一億をこした。そのために農家自身が先の見通しも持てない、そういうようなことから集団離農するという状態になったわけであります。三分の一以上の農家が、組合員が離農するということになりますと、もうこの農協は成り立ちません。いまこの存立が危ぶまれているというのが実態であります。さらにまた南富良野農協では、構造改善事業によってパイロット事業をやりましたが、ここも一億の赤字を出した。  こういう例は、私がここで申し上げたのはほんの一例でありまして、こういう農協の実態というものが非常にたくさん出てきているということが言えます。特に米の減反政策以来農協の経営というものは非常に苦しくなっているということが言えます。ある極言する人の意見によれば、五十年度の半ばにおいて北海道の全農協は赤字になるだろうということを言われております。これは容易ならない状態にあるわけであります。そういう状態にありながら、全国的にいえば、金は、農協の系統を含めるとやがて十兆円の預金があるだろうと言われている。まさにこれは金持ちの中の貧困、そういう状態にあるとさえ言えるわけであります。私は、構造改善事業でパイロット事業に注ぎ込んだ金がどれくらいあって、そしてそれがどのようになってこんな結果になったかということを追及する、そういうつもりで申し上げているのではありません。せっかくの制度を生かし切れなかったという単協理事者の責任にも相当のウエートがあると思います。しかし、農協を構成する組合員である農家が七十七戸も将来に希望を失って大挙集団離農しなければならなくなった、こういう状態というものは、私はゆゆしい事態だと思います。このような状態というものはこれから先も決して出てこないとは言えない。そればかりか、さっき申し上げたように、北海道における農協の経営というものは非常に苦しくなって、もう赤字をかかえている農協というものはずいぶんたくさん出てきているし、五十年度の半ばにおいては全農協は赤字になるだろうという警告が、いま内部でなされているところであります。  こう考えてまいりますと、私は、こうした面を含めて、頭でっかちになってしまうということもいかぬし、また肝心の組合員が希望を失うようなことであっては、せっかくいい金融制度だ、あるいはまたこの金融制度をしくことによって農業の近代化、世界の農業に対応できるような日本農村社会をつくり上げていくことができるんだ、こう言っても、何となしにうつろに、白々しく聞こえてならぬわけです。  そこで、くどくど申し上げてきたわけでありますけれども、時間の関係で前に進みます。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕  そうした日本農業の実態というものは、いま私が申し上げたことは決して誇張で申し上げているわけではありません。私も単協の経営者の一人であります。非常に苦しい状態の中で農協経営を続けております。物価の高騰あるいはそのほかのいろいろな要因はありますけれども、いわゆる単協の管理費というのは、かつて四、五年前には、七年ぐらいたつと大体倍になるといわれたのが、いま大体三年半ぐらいで倍になります。五千万円の管理費を持っておれば、今後三年半、昭和五十年、五十一年ごろにはこの管理費は一億になるのです。そういう状態の中にいまあるわけであります。したがって、単に農協の機能を信用部門だけふくらましても、今日の農協の実態を救うことはできないという判断を私は持っております。何といっても、これを構成する組合員がほんとうに将来に向かって安心して経営ができるという状態がひとつつくられてきて、そこからいわゆる生活や経営のとりでである農協というものが大きくなり、また力をつけていく、そういう一つの積み上げでなければ、農協の信用部門がふくれ上がって、そこから金を貸したり、あるいは土地を買い込んだり、宅地をつくったり、そういうことが幾ら仕事の上でできても、今日それに対応できるような農協の機能にないということが一面で言えるわけであります。  特に先ほど内村局長と瀬野委員とのやりとりの中で、このレンタル方式を中心とした論議がありました中でも、私はつくづく感じていたわけであります。たとえば基準というのが一つありました。この基準というのは、先ほどの説明によりますと、一定規模、すなわち二十億以上の取り扱いを持っていて、しかも信用部門における専門職員は二人以上を配置しなければならない、こういうことを言っておりますけれども、私は、今日の農協の規模からいいますと、この前提としては、どうしても農協の大型化ということを考えていかなければならないと思うのです。その点については先ほどの論議の中では触れていないわけでありますけれども、かつて農協の合併促進、これは法律をつくってやったわけでありますけれども、実態としては、全国的に見てどういうふうになっているのですか、これをひとつ局長からお聞きしたいと思います。
  185. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 先生御承知のとおり、昭和三十六年に農協合併助成法が制定されまして、その後四十一年、四十五年及び四十七年——これは昨年議員提案で延長になったわけでございますけれども、三回にわたって合併助成法が延長されまして、昭和五十年の三月三十一日まで適用期限が延長されております。この間、農協合併がだいぶん進みまして、同法の適用を受けて合併に参加した組合は、昭和四十七年三月末現在の数字でございますが、八千百九十七組合、合併組合は千九百三十二組合に及んでおりまして、昭和三十六年三月末日現在の総合農協数一万二千五十組合から昨年の三月末にはこれが五千六百八十八組合に統合されております。しかしながら、御承知のとおり、なお現在小規模の組合がだいぶん残っておりますので、ただいま先生いろいろ御指摘ございましたような非常にきびしい農業情勢考えました場合に、やはり農協経営の体質改善と申しますか、合理化をはかるためには、合併を推進する必要があるんじゃないかというふうに考えております。  それからさらに、農林省及び農協におきまして、最近、広域営農団地、農業団地推進というような考え方、現に事業が進められているわけでございますが、そういった農業の確立のためにも農協の合併が望ましいというふうに考えている次第でございます。
  186. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そうすると、一定規模の組合の組合員の数はどれくらいだと考えていますか。
  187. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 現在のところ一組合当たりの平均の正組合員数は九百八十一人ということになっております。これ以外に準組合員があるわけでございますが、地域によって準組合員数はだいぶん違います。
  188. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 それは全国平均ということですか。
  189. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 さようでございます。平均の数字でございます。
  190. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 私のお尋ねしたのは、それもありますけれども、もう一つあったのは、この手形取り扱いができる組合です。農協の規模では、単に二十億ということがいわれていますけれども、さっきも議論の中にありましたように、二十億といったって、その組合の状態というものは必ずしも一定でありません。額だけで判断できないものがある。そこで、期待される農協像というか、そういう今後金融も取り扱っていける農協のあるべき姿の中の組合員数は、どれくらいを大体構想として持っていますか。
  191. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 非常にむずかしい問題でございます。農協の規模がどれくらいの規模が適正であるかということは、やはりその地帯における農業のあり方、あるいは地理的な広さとか、いろいろな条件がございますので、大体、たとえば千人の農協が理想的であるといいましても、それをめぐる農業その他、地域の広さの問題、いろいろの状況がそれにからみ合ってまいりますので、私どもといたしまして何人がこれは一番いいんだということはなかなか申し上げにくい問題ではないかというふうに考えております。  それから、先ほど二十億以上の貯金を持っている組合に手形割引をやらせるということを御答弁申し上げたわけでございますが、私どもの見ておるところでは、大体千二百六十くらいの組合がそれに該当するというぐあいに考えております。
  192. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 広域化を含めた合併という問題が出ましたから、少しこの構想をお尋ねしておきたいと思いますが、具体的にどういうふうな方向でこれを進めようとお考えになっていますか。
  193. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 組合の合併でございますから、やはり当事者がいろいろ話し合いまして合併をやるということになりますけれども、農林省といたしましては、広域営農団地くらいのサイズと申しますか、規模の農協の合併が望ましいと思っております。
  194. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 農協の問題に入りましたから、ついでにこの問題を片づけてしまいたいと思いますが、先ほどレンタル方式の中で賃借料や権利金の問題が出ました。私はこれは非常に大事なことだと思うのです。先ほど前者の質問の中でもこのことに相当の時間をかけて議論をしていたのでありますけれども、いま一つ明らかにされぬような気がするのは、やはりある一定の行政指導の基準というものがないと、いまの置かれている状態の中でそれぞれ実情に合わしてやらせる、こういうふうなきわめて民主的な方法でやるのだという意味にとれるようなことを言っておりますけれども、現実にはこれはなかなかたいへんなことだと思います。特に農協が責任を負うわけでありますし、この辺が明らかになりませんと、それぞれ農協の思惑や置かれている立場でもってこの取り扱いを進めていくということは私は非常に困難だと思います。  先ほど、取り扱い規程を設けて適正な指導をすると言っていますけれども、適正な指導とは何なのか。さらに、先ほども、こうした対象農協というのはどの辺にあるのかという質問がありました中でも、大都市周辺に大体限られるだろう、こういうことが言われていましたけれども、そうすると、いま非常に問題になっておりますみなし課税などという問題の中ではどういう関連が出てまいりますか。あるいは関連がないのかあるのか、このことも含めてお尋ねをいたします。
  195. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 宅地等供給事業につきましては、この事業を行なおうとする組合は、法律上、宅地等供給事業実施規程というものを定めまして、行政庁の承認を受けなければならないわけでございます。そこで行政庁といたしましては、規程の内容のみならず、その組合がこの事業を適正に実施できる体制を整えるかどうか等の審査もできるわけでございまして、事業の開始にあたっての適格性の確保は担保されているわけでございます。さらに行政庁といたしましては、組合が法令等を順守して事業を実施しているかどうかについて必要な報告を徴収することもできますし、またそういった組合につきまして検査もできるわけでございます。  そこで、そういうことで行政庁、単協の場合には県が指導監督を行なうわけでございますが、その指導の基準がはっきりしないじゃないかというお話がございましたけれども、宅地等供給事業と申しますか、さらにそれが借地なり借家の関係になってきました場合には、それぞれ地域によっていろいろの特殊性がございますので、そういった地域の特殊性を十分尊重しながら行なえるように指導いたしたいというふうに考えております。  それから、どういう地域でこの事業が行なわれるであろうかということにつきましては、先ほど答弁申し上げたとおりでございますが、最後の御質問の、いわゆる宅地並み課税との関係はどうなのかということでございますけれども、直接的な関係はもちろんないわけでございますが、宅地並み課税の実施によって、かりに農家がもう農業をやめて農地を宅地にしたいというような希望者が相当出てくるというようなことであれば、この農協の宅地供給事業が相当活用されるという面もあるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  196. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そこで、今度の法改正の中で、さらに四十六年にやりました農協の農地の信託という問題を幅広く取り扱えるようにするということでありますけれども、私はこの機会に一つちょっと心配を持っております。  農地法との問題でありますが、これを進めていくにあたっては当然農地法の三条、四条あるいは五条という取り扱いが出てくるでありましょうけれども、私も十数年にわたって農業委員会長をやって、いわゆる農地法の運用の衝に当ってまいりましたが、非常に困ることは、身内であるということであります。しかも農業委員会の構成の中には農業協同組合の代表者、組合長もしくはそれを代表する理事、こういうふうにこれは法律上参加を規定づけられていまして、いわゆる農協にこれからのこうした土地問題を扱わす、進めさせるという段階になってきますと、どうしてもそこに内輪の感情が起こってまいります。いままでですと、転用に対しても農業者以外に対してはきびしくこれに対処するということができました。ところが、農業者の中に、特に離農していく人たちというのはそれなりにいろいろな問題をかかえ、もっと極端な場合は、借金をかかえて離農するという人たちがたくさんおります。こういう人たちのいわゆる財産保全あるいはまたその債権保持という立場からいえば、必ずしもそれに正当に見合う土地代金あるいは施設代金とはいえない場合があります。しかし、現実にはそういう長い間苦労してきた農家の皆さんでありますから、それをやはり引き受けて農協が有利に利用あるいは売却をするということになってまいりますと、農地法もいわゆる運用にあたって非常にきびしい一面だけでこれを律することができないという状態を私はしばしば経験しております。これは農協との問題でありませんけれども、それが今度農協という立場になってまいりますと、片や農協のいわゆる経営に大きな赤字を生ずるようなことがあってはならぬというようなことも考えなければなりませんし、そしてまた信託あるいは売り払った農家の経済的な立場も守ってあげなければならぬという両面の問題がこの中に出てまいりますので、この農地法の運用というのは非常にむずかしいというふうに私は考えています。まあ、これは法律でありますからそんなことはない、法律の示すとおりにやればいいではないかということに尽きると思いますけれども、しかし、実際の運用というものはなかなかむずかしいものであります。  そういう点については、実情おわかりにならぬかもしれませんけれども、私は現場で十二年間そういう問題に取り組んで非常に苦しんでまいりました。それだけに今回のこの改正にあたって一面の心配を持っている一人であります。内部から、いわゆる農地法の運用面で法律が骨抜きになってしまうということがあるとすれば、他に波及するところの問題もあり、私は非常に遺憾な事態になるのではないかという深刻な考えを持っている一人でありますけれども、こうした点についての行政上の指導というようなことについてはどうお考えになっているか、お尋ねをしたいと思います。
  197. 小沼勇

    ○小沼政府委員 現地の実際の問題を扱っておられた経験からの御質問と思いますが、農協は農民の協同組織でございますから、今度の宅地等供給事業を行なうという場合でも、やはり農民にとって有利でなければならないと思うのです。そういう意味では、十分この農地法上の転用の規定に照らしながら、実際に農協と農民という間でございますけれども、転用基準に当てはめて考えていかなければならないというふうに思っております。  審査は御承知のとおり農業委員会を経由いたしますが、二ヘクタール以下は知事許可でございますし、二ヘクタール以上になりますと大臣許可でございますから、その意味では農業委員会の段階で決定するものではございません。私ども今度のこの改正が通りますれば、その新しい事業については、この転用の進め方についても十分指導をし、農地法の適正な運用がやれるようにつとめてまいりたいというふうに考えております。
  198. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 いや、法律の中身については私も知っているわけです。ただ、実際運用をする立場に立つと、いろいろな問題が非常にたくさん出てくる。そういう場合において、特に同じかまの飯を食っているような農協等の意見というものは、非常に無視できない幾つかの問題をかかえ込んでいる、深刻なものばかりが出てくるというのが大体通常であります。そういたしますと、法律だけをたてにとって、これをきびしくやるということができないというようなことは、いままでもずいぶんたくさんの事例に突き当たってきておりましたから、私は行政的な指導、特に農林大臣の許可がなければならないというその規定も私は承知しております。しかし、現場においてはなかなかそううまいことばかりいかない。だからこそ、農地法をめぐる問題が一ぱい起こってきているわけであります。私はここで農地法の改正の問題まで言うつもりはありませんけれども、しかし、この運用は、かなり行政の立場ででも何らかの考えを別段に持ってお進めいただかないと困るのではないかという感じがいたしておるものですから、構造改善局長の所管でありますが、ひとつ十分御検討をいただきたい。しかし、それが農民の側にとってきわめて不利だということでは、これは困るわけでありますから、その辺を十分ひとつ御調査をいただいて、実情を見きわめながら、これが運用に支障のないようにしていただきたい、それが私の申し上げたい点であります。
  199. 小沼勇

    ○小沼政府委員 現在、転用許可基準等を設けてやっておりますが、今後とも農地法の適正な運用をはかってまいりたい、かように考えております。
  200. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 私は、前段で、非常に日本農業の置かれている実態というものをきびしく実は申し上げたわけであります。この点は、大臣と私とではずいぶん認識が違う、これはきょうの議論を通しても依然そういう感じであります。しかし、私は、何といっても、このままの日本農業では、将来に向かって決して安心できるという状態にないというふうに、これは大臣がどうおっしゃろうと私はそういうふうに認識しております。そういうさ中にあって、貿易の問題、あるいはまた、世界各国が非常に農業問題に対して関心と注目をしつつあります。それだけに、私は、食料の自給という問題についてもいままでも強く申し上げてまいりましたし、自由化に対してもしつこく大臣考え方をわれわれは聞いてきたわけであります。  しかし、本会議で、農業白書の問題をめぐります中でも、総理大臣農林大臣との答弁は、われわれは非常に食い違っているという印象を強めております。農林大臣は自由化はしないと言っておりますけれども、田中総理はそういうふうに言わない。できるだけ摩擦を避けて皆さんの合意を得ながらこれをやりたい、こういうふうに言っております。内閣立場からいえば、農林大臣が幾ら自由化しないしないと言ったって、ツルの一声で、総理大臣からだめだ、やれと言われれば、これは従わざるを得ないことになるだろう、われわれは常識的にはそう判断している。ですから、われわれとしては非常に警戒をしているわけであります。特に、自由化近しということで、電子計算機の自由化を一つの突破口にされて、農業の二十四品目も非常に危うい、こういうふうな一般的観測と心配が国内に流れております。くどいようでありますけれども、本会議における総理大臣農林大臣答弁の違いというのは、一体どこから来ているのですか、これをひとつお尋ねしたいと思います。
  201. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは本会議あるいは予算委員会、またこの委員会と、私が一貫してお答えをしておるとおりなんであります。総理は大局に立って、日本の置かれておる立場から貿易の自由化と  いうお立場で、日本としてもできるだけ自由化をしてまいりたい、また摩擦なく体制を整えてやりたいと、このように申しておられるのでありまして、私は、農産物の自由化はどうか、こういうお問に対して、私は総理の言われておることも念頭に置いて検討してみたけれども、農林省としては農産物の自由化についてはこれは反対であります。できません、こう申し上げておるのであります。
  202. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 しかし、私は、農林大臣はそうおっしゃっても、非常にいまの状態の中であぶないと思っております。そこで、どうしてもこれに対する対応策というものは一面考えなければならないわけでありますけれども、この機会に国内法を整備する、あるいは新たにつくるものはつくるということで、そういう防衛の策もそろそろ検討しているのではないかという気がいたしますが、それはどうですか。
  203. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 予算委員会の席上でも申し上げましたように、検討してみろ、そのことに私が国務大臣として検討はできませんとは言えません。そこで、当初は三月中旬ごろまでにということでございましたが、三月下旬までには検討いたしましょう、こういうことで検討をいたした結果、農林省として農産物の自由化はできないということを総理に申し上げたのでございまして、いまそういう見解に立っておる私が、何か国内法の整備でもして、そして農産物の自由化でも考えておるのかと、それは全然ございません。
  204. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そこで、非常に国際的に農業問題というものが、特に食料の自給、さらにこの一月以来非常に問題になりました穀物の不足、こういう中から、各国とも、たいへんな人口の増加に対応する基本的なあるいは前向きの考え方がそれぞれの国で検討されているようであります。たまたまこの十一日から始まりましたエカフェ総会において、一般演説で各国代表が大半農業問題に触れております。それぐらいいま農業問題というのは国際的に大きな話題になろうとしているわけであります。こうした状態というものは当然日本においても真剣に考えられなければならないことであるということについては、私もそういう理解を十分持っております。しかし、この一般演説の中でわが国の首席代表として参加をしております大平外相が非常に重要な発言をしている。一つは、農業開発については各国とも真剣にやろうじゃないか、わが国もこの農業問題については真剣に取り組まなければならない、こういう意味を含めた演説をしております。私は外務大臣が前向きに日本農業考えているのかどうかまではわかりませんけれども、少なくとも世界に向かって農業必要性、大事だという点を力説した。悪口を言えば、前段からずっといままで私が言ってまいりましたこういういわゆる未整備な日本農業の実態というものの中にありながら、世界に向けての農業でもあるまいという気がいたしますけれども、しかし、国際的な状況というものの中ではまさに各国代表、日本の大平外相を含め、農業問題の重要な転機に来ている点については、私も認識を同じくする一人であります。  そこで、このエカフェ総会においてのこうした演説の背景は何なのか、農林大臣としても十分閣議等でこの問題の協議に参加をしていると思いますけれども、この大平演説の背景にあるものをお聞かせ願いたいと思います。
  205. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 当委員会でも一般質疑の中でお答えを申し上げておるところでございますが、いまの日本の実情、また幸か不幸か、私がこの任についたときからの諸情勢、その中で最も大事なことは、国際的な食料の需給の逼迫であります。そこで、私としてはそれを念頭に置いてのいろいろな方針を申し上げてまいったと思うのであります。その中には、こういうときには食管制の検討はしておるけれども、いま改正をするというようなことで混乱を起こすようなことは考えておらないとか、あるいは農地法についても検討されておるが、これも自分としてはいま考えない、要はいま日本農業が地についた方策の上に立って、表現がまずいようでございますが、ほんとうに農民が安んじて農業意欲を燃やす方向、そういうことを探求していきたいことを申し上げてまいったのであります。そのことがやはりわが国を代表する外務大臣としては、日本現状、また国際的な関係を展望する場合に、各国が相協力して農業開発をしていかなければならない、食料の増産につとめなければならないという所見に立っておられて、そのことを率直に訴えたものと思います。
  206. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 外務省の担当の政府委員にお尋ねしますが、この演説を草案された窓口ですから、いま農林大臣は直接この協議に参加をしたらしくないので、具体的にはこの草案は外務省でおつくりになったんだろうと思うのです。その認識の背景というものをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  207. 妹尾正毅

    ○妹尾説明員 お答え申し上げます。  今度のエカフェ総会で大平外務大臣が首席代表演説をされるにあたっては、日本立場から見てアジアで一番重要な問題は、特に経済という角度から見た場合何であろうかということで、外務省の内部で相談いたしました。その間、大臣の御意見も伺いましたし、農林省とも御相談申し上げております。  それで、そのときみんなが一番強く感じたことは、アジアの諸国の米不足、食料不足ということであったわけでございます。たまたま軌を一にしましてエカフェの事務局から出しました「経済概観」というのがございまして、その中でも同様に・緑の革命が非常にうまくいかなくなってきている。最初はいいと思っていたのだけれども、最近になってモメンタムを失うおそれがあるという表現を使ってございますが、そういうことが非常に強調してございまして、このままではアジアにおける貧困、失業という問題が解決しないので、緑の革命を末端まで浸透させる必要があるということを言っていたわけでございます。それがたまたま私どもが、感じておりましたことと一致いたしまして、大平大臣がその点を強く訴えられたということでございます。
  208. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そこで、今回のアジア極東経済委員会において各国の演説の中でも非常に期待を持っておるようでありますのは、いまも経済課長からお話がありましたように、米不足という問題に対する援助国の援助に非常に大きな期待を持っているということが演説の中でいわれております。そこで、この中で検討されていたようでありますけれども、米貿易基金の設置という問題が話題になっているようであります。ところが、日本の場合は非常に米がたくさんとれる国ということで、アジアにおいても、特にアジアの民族は米が主食でありますから、この米のたくさんとれる国日本に対しての期待というものは非常に大きいと思うわけです。しかし、いま日本政府としてはこの米貿易基金の設置については非常に消極的であるということがいわれております。この消極的であるという背景は何ですか。
  209. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 エカフェで提案されました米貿易基金の構想につきましては、まだその詳細が必ずしも明らかではないわけでございます。それから、一方米の援助につきましてはケネディラウンドの援助でやっておるというような事情もございますので、そうした要素を十分勘案して日本政府としての態度をきめたい、もうちょっと詳細を十分に把握してから態度をきめたいというふう  に考えておるわけでございます。
  210. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 いま一方では国内において米の減反政策がとられて、先ほど前段で長々触れました中にも、私は今日まで仲間同士で非常にさびしい議論をいたしてまいりました。これは同じ農業者で、片や米をつくり、片や米を休んで奨励金をもらって楽をしている農家があり、片一方では、昨日も真剣な論議の中で委員会できめられましたマル寒法指定地域の農家の実態、畑作農家の実態、極言をすれば、惰農をつくるものではないかとさえいわれたこの悪評高い米減反政策でありますが、最近における米の事情はまたややその事情を異にしてまいりましたけれども、みずほの国日本といわれる日本のこの米づくりというものが、世界の大きな期待と要望の中にあるというこの事実を踏まえて、再び国内にあっては米をつくる政策に転ずべきだということを主張として長い間言ってまいりました。たまたまアジア諸国あるいは世界各国からも穀物の不足、米不足が訴えられているという今日の情勢考えますときに、私は日本としてはむしろ積極的にこの米基金制度の設置に対して取り組むべきであって、意見を出すべきでないか。それが一面、仄聞するところによると、どうも投資するわりには見返りが少ない、メリットがどうも足りない。これでは——それは投資する以上見返りを期待しないということは、経済上の原則からいって当然おかしいかもしれませんけれども、エコノミックアニマルといわれ、商売や経済にかけてはがめついといわれている日本人が、こういう機会にこそ、食料の供給によって、民族の発展と新しい平和のアジアをつくり上げていくという責任を果たすべき大事なときに私はきてい  ると思うのです。それがまた国内の農業一つの大きな活気と、農民自身に経営と生活をしていく勇気を与えるという、一石二鳥のことにもつながっていきます。むしろこれは積極的に、これら内外の期待にこたえるという意味で、米の問題について取り組むべきだと考えますが、この辺について外務省、手を上げているようですから、外務省からまずお答えいただきましょう。
  211. 妹尾正毅

    ○妹尾説明員 お答え申し上げます。  アジアにおけるお米を中心とする農業生産を増大するために、できるだけの協力をすることは先生御指摘のとおりでございまして、大平大臣一般演説もそのトーンが貫かれているわけでございますが、たまたまいま御指摘のございました米貿易基金につきましては、二、三もう少しはっきりさせる必要がある点があるかと考えているわけでございます。  その一つは、先ほど農林省から御説明のございましたとおり、構想自体にはっきりしない点があるわけでございまして、たとえば金を貸すのを、輸出者に貸すのか、輸入者に貸すのかということもわからないわけでございます。ちなみに日本農業との関連で申し上げますと、これはアジアの開発途上国でつくっているところの米を、ほかの米の足りない開発途上国に持っていくということでございますから、構想自体としては、たとえばタイ米とかビルマ米をフィリピンとかインドネシアとかバングラデシュに持っていく、そういう構想なわけでございまして、先進国に期待されるのは、金を出すということだけなわけでございます。これが第一点でございます。  金を出すということになりますと、先ほど御説明がございましたとおり、従来日本が行なっているKR援助との関係あるいはWFP、世界食糧計画を通ずる援助、どちらが効率的なものかというような問題がいろいろ出てき得るのではないかというふうに考えられます。  それから第三に、この構想を支持している国の問題でございますが、こういう多角的な援助はみんながやりたい、やってほしいということが、やはり非常に重要だと思うわけでございますが、実はこの構想は最近になって突然具体的に出てきたものでございまして、いまのところ、これを積極的に支持しておりますのは、フィリピンそれからクメール——カンボジア、それからスリランカ——セイロン、この三カ国だけでございまして、あるいはそのうちにほかにもこの構想を支持する国が出てくるかもしれませんけれども、いまのところは、この米不足の三カ国が支持しているだけでございまして、アジア諸国の全般的な支持を受けるというところまでいくかどうかという見通しも立っていないという状況なわけでございます。  それで先ほど質問にございました、一般的に日本農業面における知識を活用してということでございますが、その点につきましては、大平大臣の演説の中でも、日本が経済協力、技術協力を通じて増産のために協力していくということを言っておられますし、同じ線に沿ってその農業生産の安定、増大ということだと、肥料の問題とか機械の問題とかかんがいの問題とかいろいろ出てくるので、そういう幅広い協力をやっていこうじゃないか。そのためにエカフェとしてももう少しそのことをやっていこう、日本としても全面的に支持する、こういうことになっておりますので、エカフェのほかの国が大臣考えに同調しまして、もっと農業問題を取り上げていこうということでございましたら、そこで具体的に日本の知識と経験を活用して役立たせることができるのではないか、こういうふうに考えております。
  212. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 そこで、農業問題の政府間協定の場としての農業会議あるいはエカフェ農業委員会の設置というのを提案しているようであります。これはどういう構想なのですか。
  213. 妹尾正毅

    ○妹尾説明員 大平大臣発言に基づいて御説明申し上げます。  大臣の御発言は、「これまでエカフェに欠けていた農業問題に関する政府間協議の場を持つこと、例えば農業会議の開催ないしエカフェ農業委員会の設立について検討すべきであります。」こういうことでございまして、正確に申し上げますと、設立提案よりは少し手前なわけでございます。つまり大臣が言っておられましたのは、エカフェでは従来農業をやるべきであるにもかかわらず、ほとんどやってなかった、これはおかしいじゃないか。それをやっていくためには、やはり政府間で農業問題を話し合う場を持つべきであろうということでございまして、これに最重点があるわけでございます。農業委員会と申しますと、実は非常に具体的になりまして——現在エカフェには三つの常設委員会がございます。それは天然資源と貿易と運輸通信というのがございまして、農業委員会といいますと、それと同格のもので年に一度会議を開く委員会ということになるわけでございます。実は大臣がそこまではっきりと、絶対これにしろということでおっしゃっているのではないわけでございます。とにかく場を持つべきである。たとえばほかのと同じような農業委員会というのも一案ではないかということでおっしゃっただけでございまして、そこまできめて言っておられるのではないと私は考えております。  それから、それではそういうふうに政府間協議で何をやるかということにつきましては、その前段にございまして、そこで大臣は「米を中心とする農産物の需給の実情把握と短期および長期の見通しの検討、需給の安定化のための方策の探究、増産と生産の安定化のための施策の推進等がそれであります。」ということを一つ言われまして、つまりこれは需給に関する問題と生産に関する問題を取り上げようということでございます。  また、それと関連して、経済開発全般における農業の問題ということで次に「食糧生産の増大と安定化には農業の近代化が必要であります。従来エカフェで取り上げている工業化や天然資源の開発についても、農業関連産業の育成、インフラストラクチャーの整備といった面から、もっと農業開発と有機的に結びつけるべきでありましょう。かくして、効率的な農業開発に重点を置いた総合的見地からの新たな経済開発戦略の探究こそ、エカフェに課せられた使命ではないかと考えます。」こうおっしゃった上で、いまの政府間協議の場を持つという提案をしておられるのでございまして、いま申し上げましたようなことが、大臣政府間で協議すべきであるとお考えの事項であると私は考えております。
  214. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 農林大臣としてはこうした構想に対して、日本農業の置かれている立場とかあるいは諸外国の食糧需給動向等々に対比されて、あるいは考えられて、日本が外国に向かって言う農業立場での意見としては、どういうふうにお考えなんですか。
  215. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 きょうの御質問では、米の貿易基金という具体的な問題から御質問が展開されておるようでございます。ただ、この貿易基金のほうは、先ほど外務省の担当官より御説明のように、非常に未成熟な点、また各国の協力の状態もきわめて薄い、こう思うのであります。そういうことで、この問題には日本として直ちに飛び込んでいけるような状況にはございません。  そこで、概括的な一般的な見解を申し上げますと、たとえばフィリピンにおいて、日本の技術指導のもとに、多収穫の米の生産の見通しが一応立ったというようなことがございますが、その後、またそれが行き詰まって、現在米不足の一国になっておるという状況がございます。  日本といたしましては、この米の貿易基金でわかるように、各国は金の提供のほうに重点があって、続いて日本の技術協力ということでございます。それらのことを踏まえて考えてみまするに、それぞれの稲作可能国の自主的な努力というものが伴わないとなかなか思うようにはいかないのではないか、このように観測をいたします。  また、日本が御意見のように、どんどん米をつくってこれを足らざる国に供給するという場合におきましても、現在はインドネシアにおきましても、インドにおいても、バングラデシュにおいても、フィリピンにおいても、韓国においても、米不足日本の米を輸出してくれという要望が強いのでございまするけれども、しかし、気候条件が整ってさえおりますならば、言うまでもない、タイとかあるいはカンボジアの場合でも、これから復興するベトナムにおきましても相当な生産をあげ得る国でございます。そういうことを先々見通してまいりますと、日本が発展途上国に対して米を供給することもいまの特殊な事情の上にあるのではないか。これが長期にわたって可能であるかどうかということは、過去の経緯から考えましてなかなか問題がございます。現在でもタイとの関係におきましては、日本日本米をどんどん出せば、タイのほうから批判が出るということも当然考えておかなければならないということで、いまの時点において考えられることと、多少長期的に考える場合には、だいぶその様相が違うのではないか、かように思うのであります。  御質問の中で、これから日本がもっとどんどん米をつくったらばどうか、そしてそのことを自分は繰り返し主張しておるのだという御見解も示されましたが、いまのような事情のもとに各国が日本過剰米を要望しておるという時点においては一応のお考えであろうかと思いまするが、しかし、いま申し上げたような長期的な見通しに立ちますと、なかなかそこまで、踏み切るということは容易ではない。再び過剰米をかかえて農村に混乱を起こすことはいかがかと思うのであります。幸い生産調整も三年目を迎えまして大体の見当がつき、しかも転作もだんだん定着化してきておるこの時点、これは非常に大事だと思うのであります。この際にこの傾向の上に立っての生産意欲を持っていただき、そしてこういう現実に対処しての農業振興というものを考えていくほうがいいんではないか、いまここで再び、米がどうも不足するからどんどんつくれというふうに踏み切って転換していくということは、過去の米のああいう過剰状況からいたしますると、それこそ一そう朝令暮改的な場当たりの農政になるおそれがある、こういうことで、この転作の定着状況を見ながら、順次この辺を出発点として農業意欲を盛んにしていただくような施策の推進につとめたい、このように考えておる次第であります。
  216. 島田琢郎

    ○島田(琢)委員 非常にかみ合わない議論になって、いつもきわめて残念に思っておるわけでありますけれども、私はいまの減反政策が成功をおさめているという認識——形の上では米が余らなくなってきたわけですから、これは成功したかもしれません。しかし、一面では、それによる農村の精神的荒廃を含めて非常に深刻な状態になっていることは、大臣が幾ら評価をされようと、現実にそういう状態になっているという点については私は譲れない一線であります。これをひとつ認識としてわきまえていただきませんと、これから幾ら農村に金をつぎ込んで、農業金融制度を改めて、金が農村地域でどんどん使われるようになったとしても、その効果はあがってこないばかりか、逆な現象になってしまうということを私はおそれているわけであります。少なくとも投下される資本が一〇〇%近く生きてくるということでなければこの金融というものは誤りでありますから、そういう点をまずどうしてもわきまえていただくということにきょうの質問の重点を置いたわけで、具体的にはいろいろな点が皆さんから質問もされ、明らかになっておりますから、現行法の改正についてはこの点の問題は明らかになってきていると思います。  ただ、どうしても私は、大臣と幾らやり合ってもこれはもうだめかもしれませんけれども、いまの日本農業というものがこれで絶対安心だという前提に立っている大臣認識とは私はもう非常に違う、食い違っておる。それでは日本農業の将来というものは私は大臣におまかせしておくわけにはまいらぬという気さえするのであります。その現状認識はひとつ改めていただいて、必要によっては国会が終わったら私の農場にも来てください。みそ汁ぐらいは出して歓迎をいたしますが、ひとつ農場にも一日か二日泊ってその実態に触れていただきたいと思います。農村がどんな状態にあるかということをはだで感じ取っていただきたいものだと思います。また必要によって局長クラス、課長クラスをどんどん農村の実態調査のために派遣してください。私の申し上げていることが決してでたらめではないということがおそらくわかっていただけると思います。そういう一体になった行政がこれから非常に必要になると思います。そういう中で、おそらく新しく改正されるでしょうこの金融四法というものが現実に生きてくるかどうかという判断をひとつしていただきたいものだと私は思うわけであります。  時間が参りましたので、私はここで質問を竹内委員に譲りますけれども、この議論は重ねてひとつこれからも続けていきたい。櫻内農林大臣の頭を私は洗脳しようとは思っておりません。しかし、現状認識をひとつしっかりと持っていただきたい、それで、おまえの言うのとは違うという反論をしていただきたい。どうかひとつそういうお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  217. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはどうもお聞き取り願うことについてちょっと御理解が不足しておるのじゃないかと思うのです。私はいまの農村状況というものを御質問のような立場で見ておるのじゃないのです。私はもうここで繰り返し申し上げておって、きょうも申し上げておるのは、こういう生産調整も一応定着してきた、この状況のもとから出発して大いにやろうではないか、こういうことも申し上げておるのであるし、また、最近における農業の持っておるこの公害問題等に始まった——当然ではあるけれども、国土保全であるとか自然環境保護というような重要な役割りにも立っておる。それからなお、高度経済成長に対する批判とかあるいはまた反省とかいうものがあって、いまこの時点に立ってみると、農業や林業や漁業というものはもう無限の資源であって、努力してつくっていくならば、そこに生産されてくる。だから、むしろ高度経済成長の問題からエコノミックアニマルといわれておることよりも、いまここで農業や林業や漁業というものを大いにやろうじゃないか、こういうことをいっておるのでございまして、私は、いろいろな個々の問題の上について、確かにかみ合わないところもあるように受け取ってはおりまするけれども、基本的な姿勢については、ちょっとどうも櫻内あんなことを言っているのだがあいつはというのとは違うと思うのです。それだけお答えしておきます。
  218. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 竹内猛君。
  219. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は前回に引き続いて、金融問題と農協の問題について質問をしたいと思います。  まず最初に、先ほど島田委員が言われたように、先般の本会議における農業白書の質問に際して、自民党の山崎議員が非常に率直な質問をされているのに対して敬意を表すると同時に、櫻内大臣並びに田中総理大臣のあの答弁は非常に不満です。先ほど島田委員が言ったように、農協の問題にしても金融の問題にしても、前々からこの農業問題を追及するたびに私が思うことは、日本農業というものを現在の政府は一体どういう方向に持っていこうとするのだ、このことがはっきりしない限り、個々の問題がどれだけりっぱなものが出ていても、つまるところ、それに関連をしてまいりますから、やはりこの点についてはどうしてももう一度確かめなければいけない。まず大臣にこれからの問題について、くどいようだけれども、もう一度確かめたいと思います。
  220. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 農業に対しての基本的な考え、これはただいまもるる申し上げた次第でございまして、私は就任と同時に、古いことばだが、農は国のもとなりといわれた、それだけに重要なことである、責任を感じておるというように申し上げた次第でございまするし、いろいろ御批判もありますが、私としては、この現実から出発する上におきましては、まず農村やまた農業に従事されておられる方が落ちついて生産意欲を持つようにしてもらわなければならない。きょうもいろいろ御質問があるように、米の生産調整に伴っての大きな影響は何かといえば、それは農業に従事をされる方の農業意欲を相当喪失させたという問題でございます。そういうようなことがいまこそ取り返されて、ちょうどいいぐあいに局面が展開しつつある。こういう状況のもとにおきまして、大いに農業を振興させたい、こういう立場にあるわけであります。
  221. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 どうも何べん聞いてもあまりすっきりしませんが、そこで、私はきょうは農協の問題と並びに金融の問題に入るわけです。  非常に素朴な質問大臣にしますけれども、農業協同組合の原点ということについて、大臣はいまどのように受け取られておるか。このことについてひとつ。
  222. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 農民の経済的、社会的地位の向上をはかるための農民の協同組織であるこの協同組合を通じて、お互いの連帯感に立って農業の生産を向上せしめると同時に、それぞれの農業従事の皆さんの方の所得の向上もはかっていく、こういうところにこの協同組織の本質があると思います。
  223. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それならば、そういうような原点に基づいて日本じゅうのどこかに、大臣あるいは農林省でもいいですけれども、そのような原点に近いような運営をされている農業協同組合があったら教えていただきたい。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  224. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはそのことに直接お答えするのはどうかと思うのであります。現に農業協同組合を組織して鋭意努力されておられる方々は、当然ただいま申し上げたような趣旨、目的の上に立って努力をされておるのでありますから、甲乙つけて、甲はたいへんよろしい、乙はどうもということのいえる性格のものではないと思います。それぞれが全部努力をしておると申し上げておきたいと思います。
  225. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そういうことではなくて、現に日本には六千ほどの単位農協があるでしょう。そういう農協の中で、ひとつこの農協は農林省でも表彰してあげたい、こういう農協はもっと学んでもらいたい、このような農協はもっと高めようじゃないか、こういうような農協はあるはずです。そういう農協があるかどうかということをいま聞いているのです。
  226. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 それは必要に応じて一定の基準をお示しくだされば、その基準の中にある農協はこれこれということをお示しすることはできると思いまするが、いま突然のお問いでございますので、直ちにどれどれがこの標準以上であるというふうにお答えしかねます。こういうのがあるかということをもっと詳しくお尋ねであれば、資料としてお出しすることはやぶさかではありません。
  227. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私が一番先に質問したように、農協の原点とは何かということで大臣お答えになった。そういう答えに沿って運営がされている農協があるかどうかということを質問している。だから、きわめて具体的です、私が言うのは。それがないというのはおかしいんじゃないですか、日本には単位農協というのは六千あるんですから。それくらいあるでしょう。
  228. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはいま私がお答え申し上げたとおりです。全部の農業協同組合は私の申し上げたような趣旨によって結成されて、それぞれのものが鋭意努力しておるのに、甲はそうでない、乙はそうだというようなことはいかがかとお答えを申し上げたのであります。
  229. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 どうもそういうことでは話が一つも進まないですね。たとえばあなたの島根県にも農協はたくさんあるはずですけれども、島根県の中でもどこの農協はこの面では非常にすぐれている、この面ではこっちの農協がすぐれている。たとえば生産指導をよくやっているとか、いろいろあると思うのですけれども、そういうことをわれわれは知りたいわけです。そういうことがわからぬはずはない。それじゃ農林省のほうに……。
  230. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 先生御承知のとおり、大体毎年一回くらい農林省が後援いたしまして、中央会でいろいろな角度から優良な農協の表彰をやっております。そのことからもおわかりのように、いろいろな角度から、こういう面からこの農協がすぐれているとか、そういう表彰農協等もたくさんございますので、必要があればいつでも農協名等は提出することにいたしたいと思います。
  231. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最近いろいろな傾向の中で農協商社化している。要するに、農協が生産指導を中心にやるよりも、むしろ物を集めたり金を集めたり、そして物を売ったりしてマージン取りになっている傾向が強いということが指摘されている。そのような傾向に進んでいかざるを得なかったという理由はどういうところにあるか。これはやはり農林大臣に。
  232. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 農協のあり方といたしまして、きょうもしばしばお答えをいたしましたが、営農指導的な非営業性の部門というものもきわめて大事なわけでございまするが、しかし、農協一つの経営体でありまするから、ときに経営状況考えての営利追求というものがあると思います。しかし、それが行き過ぎて、農協自体が営農指導などもすっかり没却をするというようなことであってはならないと思います。
  233. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私が問題にしているのは、農協が生産指導という本来の、大臣が最初に言われた原点からはずれて、物を集め、金を集め、これを売り、商業化していくという傾向が強い、こういう傾向についてどう思われるかという質問をしているわけです。
  234. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私、それはお答えをしたと思うのです。本来の営農指導の面もあるが、また農協も経営体であるために、そのための経営上の行為もあると思う。しかし、それが行き過ぎてはならない、こういうふうにお答えをしたわけです。
  235. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは農林省のほうへひとつお尋ねしますが、そのような傾向に行き過ぎてはならないというけれども、ほとんどが行き過ぎているという批判がある。そこで、生産指導に重点を置いて運営されている農協があったら、ちょっと教えていただきたい、出していただきたい。
  236. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 農協が経済行為だけに走っていて、営農指導を怠っているというような非難があるというお話ですが、私どもも非常に農業が縮小している都市農協等についてはそういった面があるというふうに思っております。  しかしながら、農協がそれでは営農指導を怠っているか、特に農村地帯の農協が怠っているかと申しますと、必ずしもそうとはいえないのではないか。ということは、若干数字について申し上げますと、営農指導員でございますけれども、四十年度の営農指導員は、これは総合農協で一万三千百六十三人でございます。それが四十五年度は一万五千五百十二人にふえております。ということは、最近農協がいわゆる広域営農団地というようなことで、団地を中心に農協経営を考えていこうということに力を入れてやっております。そういったようなこともございまして、営農指導を必ずしも怠っている、特に純農村地帯の農協が怠っているというふうには考えていないわけでございます。  さらに、営農指導について優良組合があったら資料を出せということでございましたら、私のほうから別に資料を提出させていただきたいと思います。
  237. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私はこの際中金法の改正に伴って農協のレンタル制度の問題などがあり、しかも、このことについてやはり一部では非常に危惧する向きがある。本来の生産指導という面からはずれて、そうして土地や建物やそういうものに手を出していくというような方向にどうも走りがちだ、こういうことについては農協の本来の仕事じゃないじゃないかというような意見もあります。しかし、私の考えでは、農協というものは、生産の共同、そして販売の共同、そして諸般の農民の関係者の生活を高めるために共同で仕事をするという意味において、そういうことはやっても差しつかえないことだと思いますが、そういう意見がある。  そこで、最近の農協傾向として、都市型の農協と純農村の中における農協と二つの型に農協が分かれるというような感じがする。そういう点で、東京の近郊の農協のように、ほとんど営農というものから離れて、土地を売った金を集めて、何億という金をためて金貸しをしている農協がたくさんあります。こういうような農協についての指導というものについてどのようにやられておるか。農業という物をつくるのではなくて、金を貸して金利を取るだけに農協という名前をつけているこの農協
  238. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 都市農協の問題は、これは農協組織の問題としては非常に大きな問題だというふうに私ども考えております。そこで、組織の中でもそういった信用事業一辺倒のような環境のものは、むしろ信用組合か何かに切りかえたほうがいいのじゃないかというような意見もございます。しかし、この問題は組織全体にかかる問題でございまして、私どもといたしましては、今年度から農林省の中に設けます農業協同組合制度の検討会で十分検討して結論を出したいというふうに考えております。指導につきましては、単協の指導は知事がやっているわけでございますが、監査等を通じて不良貸し付け等がないように十分指導してまいっておる次第でございます。
  239. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先ほどから大臣もしばしば答弁の中に、農協研究会というようなことばが出てまいりました。これはいつごろ、どういう人々によって、どんな性格でつくられるものか、その中身を少し知りたいわけです。
  240. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 農協制度の問題に対する行政庁としての接近のしかたでございますが、やはり農協というのは自主的な機関でございます。したがいまして、組織の問題につきましても、関係者がこういったような欠陥がある、だからこう改めなければならぬというふうな形で、関係者の十分納得を得なければ、農協の組織法の改正といったような問題はなかなかむずかしいわけでございます。ところが一方、社会的な要請と申しますか、そういった面、あるいは行政庁の監督の立場でも、いろいろ農協に対する考え方もあるということでもございますので、四十八年度に予算をとりました。  そこでその研究会の性格でございますが、これは法令に基づくものではございません。事実上の研究会として農林省に設けまして、まだ必ずしもその構成をどうするかというところにつきましては詰めた議論はしておりませんけれども、関係者、学識経験者等をもって研究会を構成し、そこでただいま問題になっております都市農協の問題あるいは大型農協の問題、その他農協組織全般の問題について十分検討してみたいというふうに考えておるわけでございます。
  241. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先ほど島田委員からも意見があったわけだし、私はこの委員会で初めから申し上げているのですが、現在の日本農業に関する法律というものが、かなり前にできた法律ばかりであって、いまの実態に必ずしも沿っていないとは言わないけれども、相当発展をして整理をしなければならない性格を持っていると思う。だから、これは農協の問題をやると同時に、もっと広範な、農協というものはすべて農村の諸般の問題に関係をするのですから、やはり価格の決定の問題についても、いろいろなことについてもっと深い検討をするようにその幅を広げていく、こういうことはできないですか。
  242. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘のあったような事項につきましては、政府の中に農政審議会その他のいろいろ審議会等があるわけでございます。私が申し上げました農協制度検討会は、あくまで農協の組織の問題を中心に検討してみたい。そういうことをやっておるところは、いまのところ政府の中で審議会、研究会等ございませんので、そういう点を主にやる研究会、農協の組織問題を主としてやる研究会、もちろんそれに関連いたしまして金融の問題等出てくるわけでございますが、農産物価格形成方式その他まで広げて、そこで検討することは考えておりません。
  243. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それじゃ、この問題はまた別の機会に質問します。  そこで、農協の問題でありますけれども、農協のあるべき形というところから出発をして、現在農協が主体的に非常な情勢の変化の中でいろいろ分解しつつある。にもかかわらず、本来の農協の使命というものはあるはずです。私はやはり農協は生産と消費を直結していかなければならない問題だ。要するに、生産者の共同、そして消費者の共同体につながっていって、できるだけ中間の利潤というものを排除して、生鮮な食料を消費者に確実に供給するという使命を持っていると思う。  そこで、中金法の改正の中でも、これはわが党の野坂委員からも質問があったわけですけれども、中金の資金の運用について、生活協同組合には直接は関連をしないということであったが、やはりこの際何らかの形でこれと協力し得るような、そういう行政的な指導はできないかどうか、法律的には経過的に知っていますから、行政的に指導できないかどうか。
  244. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 中金の資金の生活協同組合に対する貸し付けにつきましては、極力会員並みの扱いをするようにしてほしいということで中金に指導したいと考えております。現に、中金は札幌の生活協同組合に金を貸しております。
  245. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 続いて私は農協の問題について幾つかの提案と質問をしてみたいと思うのですが、今日この農協が中央の段階と連合会の段階と単協の段階とでは人事の交流、給与の一貫性、それがない。これは自主的につくられた組織でありますから、公務員のような形ではできないと思うけれども、少なくとも中央、地方を通じて、農協の仕事の中で働く者は、同じような条件で、同じような理想のもとに、同じような気持ちで働けるように、模範的な指導方針というか、時間は長くかかったとしても、そういうふうな方向の努力考えておられるかおられないか。
  246. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 ただいま先生から御指摘のあった点につきましては、これはなかなかむずかしい問題でございます。御承知のとおり、単協の職員、連合会の職員、中央の機関の職員、それぞれ給与ベースが違って、中央が高く、その次が県段階で、単協が一番安いということになっております。この問題について、同じような組織で働くのだからなるべく同じような賃金にすべきではないかということでございますが、一方、経営の主体はやはり単協は単協が一つの経営の主体になっている、連合会は連合会が一つの主体になっている、中央の組織は中央の組織が一つの主体であるということで、これを指導で一本の給与ベースにしろということをいってみても、これはなかなかむずかしい問題だということだと思います。  そこで、合併等を進めまして、それでなるべく賃金が同じようになっていくような形に持っていくべきである。それを指導でこうすべきだということはなかなかむずかしいのではないだろうかと思われるわけでございます。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕  それから次に、一方、最近農協でやっておりますのは、系統内部における職員の交流をやっております。こういうことは非常にいいことでございまして、特に合併農協の体制を整備するために連合会から職員を派遣するとか、あるいは実務研修のために単協の職員が全国の連合会に派遣をされるというようなことが行なわれております。  こういうことで職員間の交流が行なわれることはまことに望ましいことだと思っておりますので、こういったことを通じながら、逐次賃金水準につきましても、なるべく同じような水準に持っていくようにしなければならないとは思いますけれども、これはかなり時間がかかる問題ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  247. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これはやはり時間がかかっても、困難はあっても、同じ理想のもとに、農協というきわめて同志的な形でつくられた自主的なものであるから、公務員のような方向できめることはできないにしても、なるべくみんなが同じような待遇を受けて、同じような希望のもとに進めるような方向で働けるように、やはり大所高所から指導なりそういう援助というか、それを進めてもらいたい、こういうふうに私は思います。  そこで、農林省が農協を監査される、どの段階で監査するかいろいろあるにしても、農協の決算の中で、たとえば営農指導であるとかあるいは生産のための学習とか、農協がやるべき本来の基本的な任務に基づいていろいろ活動している。たとえば先ほど模範農協の話をしましたけれども、模範農協の名前が出てきませんが、当然私は模範農協があると思うのです。どこの地区にはどういう農協があって、こういうことをやっていて、これは確かに農協としては模範だから、ここのところを見学に行こうじゃないか、あるいはこういう専門家を呼んで学習をして、その討議を深めて、自信を持って次の営農に励もうじゃないか、こういうようなことをやっている農協があるはずなんだ。こういうことについてのいわゆる監査といいますか、こういうことについてどういうふうにおやりになっているか。
  248. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 単協の監査は県がやっておるわけでございます。私どもは県から、個々のケースではなしに、全体的なことについて報告を受けているわけでございますが、私どもとして、そういった営農指導に特に力を入れているというような組合がどんどんふえていくことは、非常に望ましいことだというふうに考えております。
  249. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 予算の中で、決算の中で、そういうようなことを何回ぐらいやらなければならないかというような、そういう積極的な指導はしているのですか。
  250. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 単協によりまして、その置かれている農業のあり方によって非常に違うわけでございますから、たとえばこれだけを営農指導に使わなければならぬというような一律の指導はしておりません。しかし、いずれにいたしましても、そういった営農指導面に力を入れていくということは望ましいことだというふうに考えて指導しております。
  251. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 やはり農林省としても、それは自主的な組合だからいろいろかってに上から指導や手を入れることは好ましくないと思うけれども、少なくとも今後のあり方としては、模範的な農協がりっぱに運営しているところを見学に行く、そうしてそれを学ぶ、それから専門家、技術者を呼んで学習をし、その中から討論を重ねて今後の日本農業の方向というものをつかみ出して、自信を持って営農に従事できる、そういう人間をつくるような指導をぜひしてほしいと思う。そういう指導がない限り、上からただあれをやれ、これをやれということではいけない。要するに、創意性のある、創造力のある農業の担当者というものをたくさんつくってほしいと思う。  そのときにやはり問題になるのは、先ほどから大臣に苦言を呈するようだけれども、何といっても日本農業の方向が明らかでないと若い人たちは去ってしまう。だから、そのこととどうしても関係がある。そのことについては、あり得べき農協の姿というものをわれわれは常に描いておりますけれども、私たちの知っている農協にも相当りっぱな農協があります。名前をあげろといえば言うけれども、ここで言う必要はない。大臣が知らないのだから特に教える必要はないから教えないけれども、それはありますよ。だから、そういうことをぜひやってほしい。そうして農業の中に光を与えてほしい、これが私の言わんとするところです。そのことについてぜひ要望しておきます。  そこで、金融の問題ですが、この前、内村局長答弁の中で、農林金融の金利の問題について、その金利は農業価格決定とかあるいは生産力とか、そういうことが基準になるのではなくて、原資の問題であると言われたわけですけれども、それならば、適正な農林金融というものはどういうものが一体適正な農林金融かということについて、これは非常に抽象的でむずかしいけれども、どういうようにお答えいただけますか。適正な農林金融とは何か、ちょっとむずかしいですか。
  252. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 これは非常にむずかしい問題でございます。  実は私が、昨年の八月経済局長就任したわけでございますが、それ以来今日までいろいろ考えておりまして、先般御答弁申し上げましたように、現在の日本農業金融の姿からいきますと、公庫資金というものは運用部資金を原資にし、近代化資金は系統資金を原資にしている、補助金と違いましてそれぞれコストのある金でございます。そのコストのある金と国の補助とをかね合わせながら、どういうふうに合理的な金利水準をきめていくかという問題ではないかと思います。したがいまして、近代化資金については、四十八年度から一般の場合は五分五厘になるわけでございますが、その場合それをどんどん下げていい、三分にできるかといいますと、やはりそこには系統資金のコストの問題があるのじゃないか。  それから公庫資金につきましても、運用部資金が原資でございますから、これにつきましてもコストがあるわけでございます。その中で、たとえば農業政策として構造改善が一番必要だ、基盤整備が大事だ、そうならば、やはりそれについては三分五厘の資金でいかなければならないということがございまして、その三分五厘の資金が現在あるわけでございます。そうするとそれに関連して、たとえば規模拡大の場合の資金はどうあるべきかということで金利のバランスというものがつくられているというのが現状で、そこでいわゆる金利体系という問題が出てくるわけでございます。  これは何が絶対的に正しいかというのは、実は非常にむずかしい問題でございまして、いろいろものの本などを見ましたけれども、現在のところ学者の人でも、こうだという決定的な理論は、残念ながら私はまだ見ておりません。それほど非常にむずかしい問題でございます。
  253. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その問題について、これからひとついろいろ質問します。  農業金融の問題で、いろいろな形のものがありますけれども、いままでの金融の中には、生活をするための短期的なあれがあったわけですが、これからの金融、たとえば大口を借りる場合には、当然投資的な、資本投下的な意味を持つわけであります。したがって、これは返さなければならないし——生活の問題だって返さなければならないんですけれども、そういう場合に、農業の金融というものが一般の市中の、たとえば中小企業金融公庫であるとかあるいはその他の工場に融資するようなものとかというものと同じワク、基準で考えることは非常に困難だということが農業金融の中にはある。なぜなら、農業というものは、投資したらすぐ翌年から生産が上がるというような、非常に回転の早いものじゃないと思うのですね。非常に回転が鈍い。  だから、農業金融というものは、どうしても低利で長期、償還が長くなければならないという宿命的なものを持っている。いわゆる工業のほうは回転が早い。農業は動物的な一つの宿命的なものを持っているわけだから、農業金融というものを同じ基準、ワクで考えるということはまずできないと思うのです。その点について、どうですか、そういう区別はしているんでしょうか。
  254. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 先生御指摘のとおり、農業と工業とでは資本の回転率に非常に相違があるわけでございます。したがいまして、農業金融の場合には、長期低利ということになっております。
  255. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 長期低利と言いますけれども、この問題もいろいろ検討してみると、たとえばいま言われた構造改善事業を一つとってみても、構造改善事業に指定されていよいよ金を借りるようになると、当然融資の基準として、国の農業政策の一つのワクの中で仕事をしなければ最終的には金が借りられないという形になる。そこで、利子補給なんかもあるわけですけれども、その利子補給を得る場合においても許可基準というのがあって、その許可基準に合わなければ貸してくれない。要するに、融資の機会を失うということになるわけだ。こういう点で国の農政が、農民が納得する農政であるならば別だけれども、いまのように、国の考え方と反対なことをしなければ納得いかないという農民がこのごろ出てきた。たとえば山口県の農協では、米の生産をやめるということを中止して、米を大いにつくれ、青森でもそういうことを言うようになりましたね。またあるところでは、農民は農林省と逆なことをやればいいという信念を持っているのがだいぶ出てきた。そうすると、許可基準に合わないから、せっかく与えられた融資も受けられないということになる。だから、何度も言うようだけれども、国の農政のワクの中でしか金が借りられないという形になりませんか。何か農民に選択の自由というものがありますか。
  256. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 制度金融でございますから、それが一定の政策意図を持って設けられている性格上、借り受け資格などについてある程度の制限を設けることはやむを得ないと考えておりますけれども、これがもうきびし過ぎますと、かえって農業者の農業経営に対する意欲なり創意を失わせるという問題もございますので、その点の運用が非常にむずかしいわけでございます。  そこで、政府といたしましては、従来から農業者の自主的立場を尊重して、借り受けにあたっては諸制約を必要最小限度にとどめるという努力はしておるわけでございます。特に近代化資金の場合には、農業者の必要とする諸施設につきましては、ほとんどの施設について融資を受けることができるというふうにしておりまして、ある程度の制約と農業者の自主的な希望との調整というのを何とかうまくとりながらやっておるというような形になっておるわけでございます。
  257. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ある農家へ行くと、機械の種類あるいは鉄骨の種類を全部指定をしてこういうものでなければ許可をしない。なるほど一方において会計監査があって検査員からいろいろ言われることもあると思うのですけれども、そういうことで、せっかく自分のところにいろいろな材料があるのに、それが使えないということを言うんですね。そして借りた金はおおむねそういう機材のために使って、実際の営農のためにはほとんど使えなかったという例が幾つかある。こういうことだとすると、これはやはりほんとうに農民の納得いくものには私はならないと思う。何とかそういう点、弾力性を持たなければいけないのじゃないか。この点はどうですか。
  258. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 補助事業に関連いたしました場合には、そういった面が全然ないわけではございませんけれども、近代化資金についてはそういうことはないというふうに考えております。特に近代化資金につきましては、そういった点が起こってはいけないと思いまして、昭和三十六年に近代化資金ができましたときの通達で、そういうような農業者等の利用しようとする施設等の取得先による差別をすることによって借り入れ者の真に希望する銘柄、種別の施設等の取得が困難になることがあってはいけないというふうに指導しておるところでございます。
  259. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、この中金の改正の問題と関連して直貸という問題があります。かなり額が高いわけですから、これに関しては直接中金が現地を見るわけではないだろうけれども、いろいろ書類審査をする。そういう中で、国のいまの農政の中で、それに沿わない場合においては断わられる心配がある。そういうことはありませんか。
  260. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたけれども、単協がいろいろ単協独自の考え方で、融資を受けようとする農民の希望をはばむということが起こってはいけないと思いまして、中金、信連、単協で融資協議会を設けさせるということで処理しようと考えておるわけでございます。したがいまして、そういった融資協議会で、これはどうも経営設計に無理があるというようなものについては、あるいは融資を拒絶されるという場合もあり得るかと思いますけれども、それが合理的である場合において断わられるということはまずないようにしなければいかぬ、そのように指導したいと思っております。
  261. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この際私は、農家のほんとうに生産をしていこうという人々が自主性と創意性をもって計画したものに対して、ぜひ金が融資できるように、あまりきびしいワクをはめないで、規格をきめないでやってほしいということを特に要望をしておきたいと思うのです。  そこでその次の問題は、先般来、高生産、高能率、そして規模拡大ということが日本農業の方向であるということを言われておる。その中で、また金融の問題に返るわけですけれども、現在の日本の平均の農地の所有というものは非常に小面積なわけで、これを拡大する。たとえば先般内村局長の試案として、農林大臣のほうからも報告がありましたが、水田の場合には四ないし六ヘクタール、あるいは酪農であれば三十頭から四十頭、こういうような形のものが一つの今後の方向だということであるとしますと、現在の金利をかりに五分五厘としても、まあ七分としても、いまの土地を取得して、そうして金利を払って経営をするということは非常に困難だ、こういうことになるわけで、たとえば反五十万の水田を買ったとして、かりに五分五厘で計算をしてみても、約三万円の金利というものがつくわけです。そして自作農創設資金をかりに借りても、これは上に限度がありますから三分五厘、残った分についてはどうしても別なところから借りなければならぬ、こういうことになるとすれば、現在の米の価格からしてみて、金利に約四割近いものを取られてしまう。償却やあるいは労働力や肥料やそういうものを差し引いてみた場合に、規模拡大をしてもこれはやれないということになる。ここに私はやはり農業金融というものが、いまここで改正をしようとしておりますけれども、なおかつ農村の規模拡大あるいは近代化に対してはきびしいものがある、こういうぐあいに思いますけれども、この点はどうですか。そう思いませんか。私は七分で計算したけれども、今度は五分五厘になる。五分五厘になった場合においても、たとえば米が反当八俵とれたとする。九千円にして七万二千円、その中から五分五厘の金利を引いてみると、やはり残ったのはきびしいじゃないですか。
  262. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 これはやや理屈めいたことを申し上げて申しわけないでありますけれども、農業生産の場合に、土地、資本、労働で農業生産が行なわれるわけでございます。規模拡大の場合には当然土地がそれだけ買われる。そこで、規模拡大をいたしましても資本装備の高度化を行なわなければ労働生産性は上がりませんから、そこでコスト等も変わってこない。ところが、そこへ投資をいたしまして生産施設の高度化といいますか、施設の近代化等行ないますと、その面からの利益が出てくるわけでございます。そうなりますと、労働生産性が上がってきて、農業所得といいますか、収益もふえていくということになるわけでございます。したがいまして、現在六ヘクタールの農地を十アール五十万で買うというようなことで計算いたしますと、確かに先生御指摘のような計算になるかと思いますが、一方、労働生産性の向上といいますか、コストの低下というような面もございますので、そういった問題も十分検討してみなければならぬ、これも一つのむずかしい問題だと思いますけれども、私どもの感じでは、通常の経営をしている限りにおいて、現在の金利体系でそう無理があるとは考えておりません。ただ、病気をしたり非常な災害が起こったというような場合には、そこで非常に計画が狂ってくるということはあるわけでございまして、そういった面はもちろん自作農維持資金その他で救済しなければならぬわけでございますけれども、普通の経営の場合、しかも新しく始めるというようなことでなくて、現在五ヘクタールの水稲農家が六ヘクタールなり七ヘクタールにするというような形の規模拡大、漸次的な規模拡大の場合において、それほど金利が大きな負担になってくるというふうにはならないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  263. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この場合、やはり私は三分ないし三分五厘であれば、それなら現在の米の価格であっても何とかやっていける、こういうぐあいに思うのですけれども、五分五厘ではまだまだきびしい、こういうふうに思うわけです。  ですから、今後この農林金融というものについて、これは農業の血液ですから、一挙にどうこうということはできないにしても、いろいろな努力をして、金利を下げ、据え置きを長くし、長期にわたる償還、そういう制度ができることが望ましいと思うのですが、西欧の農林金融について承知をしていたらひとつ。
  264. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 外国の金融制度の問題でございますが、これも先般御答弁申し上げましたように、国によって置かれている農業の事情が違うものでございますから、金融制度もおのずから違っているわけでございます。そこで、いまの国際的な、特にこれは先進国でございますけれども、欧米における金融制度を調べてみますと、イギリス型と西ドイツ型に分けることができるのではないか。それでアメリカ、カナダ等はイギリス型に属しておりますし、フランスは西ドイツ型になっているというふうに私は考えております。  そこで、どういうふうに違うのかということでございますが、イギリス型の場合には、銀行中心でございます。すなわち商業的な金利に乗らないものはだめだという考え方が貫かれているわけでございます。もちろんイギリスの場合にも、農業抵当公社というような特別な金融機関がございますけれども、農業貸し出しにおいてそういった特別な金融機関の占めるシェアは六%でございます。これは一九六七年の数字でございますからちょっと古いわけでございますが、イギリスの場合を申し上げますと、銀行が四二%でございます。それから親戚、個人が三八・七%になっております。私どもは、親戚、個人といいますと、これは非常に金利が高いのじゃないかというふうに考えるわけでございますが、イギリスの場合には、弁護士にソリシターといういわゆる事務弁護士とバリスターという法廷に立つ弁護士と二種類の弁護士がいるわけでございます。私どもの知っているところでは、そのソリシターが中に入りまして金融のあっせんをやっている。この金利は市中金利よりも安いということで、しかも六カ月の解除猶予期間を条件とする長期の貸借が多いということで、これなど国によって非常に事情が違うということのあらわれでございますが、親戚、個人が三八・七%ございます。それから商人が一〇・九%、それから農業抵当公社という、これは一つの特殊な公社でございますが、それの融資は主として農場の購入、建物の新改築、電化その他に融資するわけでございまして、償還期間も六十年以内という長いものもございます。しかし、これは原資がロンドン市場で発行される債券によってまかなっておりますので、金利は特に安いということはございません。公定歩合の変動によって規制される市場の長期金利の変動に追従しているわけでございます。それとその他の金融機関が二・五%ございまして、イギリスの場合あるいはアメリカの場合も大体同じようなかっこうになっております。すなわち、銀行が非常に農業金融に力を入れておりまして、また一般の市中金利に乗らないものはだめだという考え方をとっておるわけでございます。  それに対しまして西ドイツ、フランス、ヨーロッパの場合には、これは日本と同じように特別な金融機関によって農業金融が行なわれております。これは一九六五年末の数字でございますが、ドイツについて見ますと、信用銀行が四・二%、これは普通の商業銀行と同じようなものでございます。それから協同組合が二〇%でございます。それから貯蓄金庫という自治体の貯蓄みたいなものがございまして、それが二七・四%、それから抵当銀行、これも特別な法律に基づきましてできるものと、普通の銀行としてできるものと二つあるようでございますが、それが三八・八%、その他が九・六%、こういうことになっております。そこで、ドイツ政府は、これらの金融機関につきまして一種の利子補給制度をやっております。もちろんその場合におきましても、助成対象資金その他につきましては規模の制限とかいろいろ制限がございまして、たとえば借りられる者は主たる収入が農業によっている者でなければならないとか、かなり選別政策的な制限がございますけれども、そういうことで特殊な金融機関が農業金融を担当し、さらに利子補給を国がやっておるということで、日本にきわめて近い形になっております。  したがいまして、日本農業金融というのは西ドイツ、フランス型になっているわけでございますが、それぞれ国によりまして事情が違いますので、私は日本農業金融というものはいまの制度日本農業に最も適したものであるというふうに考えております。
  265. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最も適したというところにだいぶ声が強いのですけれども、まだ日本価格決定方式の中では価格の決定に農民自体が参加できない。やはりこれは需給均衡とかいろいろな形できまっていく、あるいは生産力の場合においても非常に労働の生産性が低い、こういう中ではまだまだ農業の金融というものは必ずしも声を大きくして言うほどりっぱなものではない、こういうふうにまず指摘をしたいと思うのです。  そこで、日本農業というものを考える場合に、アメリカ型の農業ということになると現在の数百倍の面積を持たなければならないし、それからいまのお話にあったヨーロッパ型にしても数十倍の面積を持たなければならないと思う。それで、さっき五十万という水田の価格の話を出したけれども、五十万という価格というのは必ずしもあるかどうかわかりませんが、一応そういうものを出したのですけれども、いま規模拡大といっても、ほとんどこれは不可能ですね、日本列島改造によって地価がやたらに上がってしまっている。そこで、現在の農政の中で零細な農民を農業から切り離して、その残った部分を規模拡大にしていこうというようなものの考え方がいまだに存在をしているけれども、これはやはり日本の場合においては非常に不可能であって、アメリカ型でもない、ヨーロッパ型でもない、といって日本におけるいままでやってきた規模拡大方針農業基本法から引き継いで総合農政、そして高生産、高能率農業という方向に向かわんとするこの農業の方向というものも、また日本列島改造のもとに挫折をしておるというふうに私は現に考える。  そこで、農業の中から農民をほうり出すのじゃなくて、農村の中へかかえ込んで、農業の中で働きながら、同時に労働も満足させるという方向をとらなければならぬという形で、実は農村工業導入というものをやられたわけでしょう。ところが、この間、農村工業導入の問題についてその企業の種類、労働条件、賃金、これを出してほしいという要求をしたけれども、これは出ておらないけれども、この辺は準備されてあるわけですか。
  266. 小沼勇

    ○小沼政府委員 農村工業導入につきましては、まだ始めましてから一年を経過したところでございまして、軌道に乗って進み出しているという状況でございます。  その中ですでに農村に工業が入ってきているところもございますし、種類別にもその統計は出されております。ただ、完全にその工場が運転を開始したというところもございますけれども、全部でございませんで、いろいろ準備をしているとかそういう状況のところもかなりございます。全体といたしましてようやく軌道に乗って動き出したというところでございます。
  267. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これはこの前と同じ答弁なんで、この前もそういう話をした。労働条件がどういう条件で、賃金がどうなっているかということくらいはわからないのですか。これは、そのことがわからなければ、かなり無理をして押し切った法律ですから、意味がないじゃないですか。
  268. 小沼勇

    ○小沼政府委員 数字で申し上げますと、農村地域の工業導入の実施計画策定地区数は四十六年度で百四十一でございまして、そのうちの導入済みあるいは導入の確定しておりますのが九十二ということでございます。四十七年度は二百十一が導入策定地区という見込みになっております。  導入の関係につきましては、御承知のとおり、資金融通事業あるいは導入のための特別の対策事業等を講じて条件をよくしていくということを、現在四十八年度の予算を含めまして進めるようにはかっているわけでございます。  労働条件、就業の状態等については、まだ統計的に整理はされておりませんです。
  269. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 やっぱり問題ですね。農村工業導入に対しては中金の金がかなり流れ込んでいくわけだし、そうしてこれは農地を農村からその権利を買い上げていくわけだから、したがって、これを実行するについては、労働条件と賃金がどうなっているかということは非常に大事だと思う。この問題が明確でない限り、これは話が前のほうへ進まないわけだ。農林省なり労働省なりあるいは通産省なりはこの問題についてどういうぐあいにとらえているか。この前からこのことについて私は労働省なり通産省なりをここへ呼ぼうかと言っていたところが、農林省は、いや農林省だけでだいじょうぶだという。こういう話だから呼んでないのだけれども、いまの話ではまだまだ納得いきませんね。もうすでに、四十六年度ですからね、工場がきまっているわけだろうから、そうだとすれば、どこの工場ではどういうものをつくっていて、どういう賃金で、どういう労働条件かということについてくらいはわからなければ、これは監督としてまずいじゃないですか。もし農林省でわからなければ、これは労働省に次に譲らなければならぬけれども、その辺はどうですか。
  270. 小沼勇

    ○小沼政府委員 先ほどお答えいたしましたように、工場の導入されております種類あるいは就業者の数等については調査ができておりますけれども、その就業のそれぞれについて賃金の条件であるとか、労働条件等については調査がまだでき上がっておりませんです。
  271. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 では、その調査はいつごろできますか。
  272. 小沼勇

    ○小沼政府委員 それぞれの地域についての業種別に出ておりますが、それにつきましての労働条件については、全体ということじゃなしに、サンプルについての調査は可能であろうかと思いますが、かなり時間を要するものと思います。
  273. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 かなりの時間というと、大体いつごろまでですか。
  274. 小沼勇

    ○小沼政府委員 全体の状況につきましては労働省が調査をしておりまして、二月一日現在での調査が、先ほど申しましたような工場の業種等についてあるいは労働者の数について調査がされておるわけでございますが、労働省のほうとも相談をいたしまして、この内容についてできるだけ把握いたしたいと思います。
  275. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題については私は非常に重大な関心を持っているのです。農村において土地を工場に所有権を移して、そうして土地を放した農民というのは、もう土地を放した場合にはこれは一種の。プロレタリアだ。そういうような状況の中で今度は工場を誘致するという甘い誘いをかけて、労働条件が劣悪で、賃金が低かったならば、これはたいへんなことになる。この点についてはぜひひとつ十分に内部で検討されて、いずれ別なときにこれは議論をしたいと思います。  そこでもう一つ、私は先般のこの委員会で、土地改良を進めているところで、米の増産をやろうというところで、まだ完全に終わっておらないのに、芝生を植えている農民がおる、こういうことについて調査を求めました。この点について調べたかどうか、そしてそれは妥当だという判断になったかどうか。
  276. 小沼勇

    ○小沼政府委員 先生御指摘のは、おそらく茨城県の下妻、千代川地区の芝の栽培の件であろうというふうに推察いたしますが、芝そのものの栽培については、農地法上も当然耕作の状態ということで農地に該当するわけでございます。ほかの作物あるいは花、いろいろなものがございますが、そういうものと同じように扱い得るということで、農地法の適用を受ける形になるわけでございます。  その中で、稲作をやるべく県営の圃場整備ということでございますが、換地上の問題等については、現地で解決をしたというふうに報告を受けております。
  277. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 米を増産する、こういう目的で国が四五%金を出して土地改良を進めている、圃場整備をやっている。そういうところに、そのまん中に一時利用という段階で芝を植える、こういうことは指導上全くよろしくないと思う。法律には違反をしないかもしれない。しかし、そのことはやはり考え直さなければならぬ問題だと思う。土地改良が終わって、そして登記が済んで、所有権が明確に移転をしたときにならば別です。そうではない段階でそういうことをするということは、指導がよろしきを得ない、こういうように判断をするのですが、どうですか。
  278. 小沼勇

    ○小沼政府委員 圃場整備事業で区画の拡大なり用排水路、農道の整備などやっておりまして、その中で、水稲栽培を畑作に切りかえるということができてまいりまして、米の生産調整とも関連をいたしまして、その中の一部が芝の栽培ということで行なわれているというふうに報告を受けております。この地区の中でも、畑作が可能なところにつきましては、芝の栽培を行なうということは差しつかえないわけでございまして、その点、稲作の収益と芝の収益ということでの比較論に地元ではなると思いますけれども、普通の転作の形態としても、対象として考えられるというふうに理解をしております。
  279. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そういうような指導要綱が出ているのですか。
  280. 小沼勇

    ○小沼政府委員 作物につきまして、圃場条件が整備されてまいりました場合に、水田から転作をしてほかの作物をつくるということについては認めております。
  281. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大体、きょう予定した問題はこれで終わりますけれども、農業金融の問題と農協の問題と、これは関連をして不可欠の問題であるわけだから、農協が本来の生産農協に立ち返るということをもう一度ここで確認をすると同時に、農林金融というものが依然として、今日の土地所有の段階、生産力の段階あるいは農産物価格の決定の状況から見て、必ずしもいまの農村に見合った金利ではない。今度改正してもそうではないと思うということと、それから、農業の金融に関しては年々多くの種類のものがたくさん出て、農家から見ると、あの金もある、この金もあるということで、説明はつくかもしれないけれども、借りるのに非常にめんどうだ。これは、先ほど委員のほうからもいろいろ要求があったけれども、この際単純化していく必要があるのではないか、こういうふうに私は考えるわけです。  そういうようなことを要望して、これで質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  282. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 この際、連合審査会開会申し入れに関する件についておはかりいたします。  すなわち、物価問題等に関する特別委員会において審査中の、内閣提出の生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律案及び松浦利尚君外三名提出の生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する規制措置等に関する法律案の両案について、連合審査会開会の申し入れを行ないたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  283. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定しました。  なお、連合審査会開会の日時等は、物価問題等に関する特別委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせすることといたします。  次回は明十九日、木曜日、午前十時理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十七分散会