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1973-03-28 第71回国会 衆議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月二十八日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 佐々木義武君    理事 仮谷 忠男君 理事 坂村 吉正君    理事 藤本 孝雄君 理事 山崎平八郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 柴田 健治君    理事 美濃 政市君 理事 津川 武一君       安倍晋太郎君    上田 茂行君       江藤 隆美君    笠岡  喬君       金子 岩三君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    小山 長規君       佐々木秀世君    白浜 仁吉君       菅波  茂君    丹羽 兵助君       西銘 順治君    長谷川 峻君       増岡 博之君   三ツ林弥太郎君       湊  徹郎君    森下 元晴君       安田 貴六君    井上  泉君       角屋堅次郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    湯山  勇君      米内山義一郎君    諫山  博君       多田 光雄君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君    林  孝矩君       稲富 稜人君    神田 大作君  出席国務大臣         農 林 大 臣 櫻内 義雄君  出席政府委員         農林政務次官  中尾 栄一君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林省農蚕園芸         局長      伊藤 俊三君        農林省畜産局長 大河原太一郎君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         農林水産技術会         議事務局長   中澤 三郎君  委員外出席者         国税庁直税部所         得税課長    系  光家君         農林大臣官房審         議官      下浦 静平君         農林省畜産局衛         生課長     信藤 謙蔵君         農林水産技術会         議事務局研究管         理官      伊藤 隆二君         自治省行政局選         挙部管理課長  佐藤 順一君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 三月二十八日  辞任         補欠選任   金子 岩三君     上田 茂行君   吉川 久衛君     増岡 博之君   正示啓次郎君     江藤 隆美君   諫山  博君     多田 光雄君 同日  辞任         補欠選任   上田 茂行君     金子 岩三君   江藤 隆美君     正示啓次郎君   増岡 博之君     吉川 久衛君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本てん菜振興会の解散に関する法律案(内閣  提出第六〇号)  農林水産業振興に関する件(乳価及び豚肉価  格安定に関する問題等)  飼料緊急対策に関する件      ————◇—————
  2. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  昨日に引き続き、乳価及び豚肉価格安定に関する問題等について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  3. 島田琢郎

    島田(琢)委員 きょう私が質問をいたしますのは、昨日の美濃委員に続いて保証乳価の関係についてお尋ねをするわけですけれども、私はまず、ぜひ大事な政府政治判断を仰ぎたいという気持ちから、大臣出席を実はお願いしていたわけですけれども畜産局長もお見えになっていないのですが、私のこれからお尋ね申し上げることについて的確にお答えいただけるでしょうか。
  4. 中尾栄一

    中尾政府委員 的確にお答えする努力をいたします。
  5. 島田琢郎

    島田(琢)委員 決して政務次官でだめだということを申し上げているのでありませんけれども、私も、ことしの乳価は、日本酪農の将来をきめる非常に重大な時期に立っている、こう思っております。したがって、相当な決意を私は要求をしたいわけですし、政務次官、将来の大臣になる人なんでしょうから、しっかりとひとつ、政治のこれからの転換をおやりになるという気持ちお答えをいただきたいということを冒頭にお願いをしておきたいと思います。  そこで、第一点でありますが、端的に申し上げて、最近の酪農情勢について、ひとつ酪農家戸数頭数、それから生乳生産状況、これらについて最近の五カ年くらいでけっこうですから、統計的な数字を、その伸び率減少率等を含めてお示しいただきたいと思います。
  6. 下浦静平

    下浦説明員 お答えいたします。  まず戸数でございますが、全国ベースで申し上げますが、昭和四十三年におきまして三十三万七千戸でございましたものが、四十七年度になりまして、二十四万三千戸ということに相なっております。  それから頭数でございますが、同じく過去五年をとって申し上げますが、四十三年度百四十八万九千頭、これが四十七年度には百八十一万九千頭ということに相なっております。  次に生乳生産量でございますが、四十三年度四百一万六千トン、これが四十七年度には四百九十三万七千トンということに相なっております。
  7. 島田琢郎

    島田(琢)委員 増減率等については、いまの比較で推定がつくわけでありますが、そこで、政府昭和四十年に第一次酪農近代化計画を立てましてその達成努力をした、こういうことになっておりますけれども、その第一次酪農近代化計画示します数字についてひとつお示しいただきたいと思います。
  8. 下浦静平

    下浦説明員 第一次酪農近代化計画でございますが、これは四十年の十月に公表されたものでございまして、目標年次四十六年度でございます。飲用向け需要量見通しが四百七十一万トンでございました。これが実績といたしまして、二百六十六万四千トン、達成率は五六・六%でございます。  次に乳製品向け需要量でございますが、見通しといたしましては、百九十四万六千トンということでございますが、実績は百九十九万七千トンということに相なりまして、達成率は一〇二・六%ということでございます。  それから生乳生産数量でございますが、目標は七百九万六千トン、これは実績といたしまして四百八十二万トン、達成率六八・八%ということでございます。  それから経営の指標でございますが、これは複合経営土地条件制約のある地域土地条件に恵まれている地域、こういう三形態に分かれておりますが、複合経営によりますものが五頭以上、土地条件制約のある地域が十頭以上、それから土地条件に恵まれている地域が十五頭以上ということでございますが、こちらの経営の面におきましては、ほぼ目的は達成されたものと見ております。
  9. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それでは重ねて質問しますが、第二次酪農近代化基本方針をお立てになった。前段でいま審議官は、ほぼその目標達成した、こういうことを言っておりますけれども、しかし、頭数においても乳量においても、四十六年の実績というのは目標相当大きく割っている、こういう事実になっているわけですけれども、新近代化基本方針によってそれが修正されております。その第二次近代化基本方針目標実績と比べてひとつお示しをいただきたい、こう思います。
  10. 下浦静平

    下浦説明員 新しい酪農近代化計画でございますが、これは五十二年度を目標年次としたものでございまして、トータルで申し上げますと、生乳生産量八百十四万五千トンでございます。ただいままでの年次、四十六年度までの実績を申し上げますと、四百八十四万トンということになっておりまして、年率でいたしまして計画は七・九%の伸びということに相なっておりますが、実績は約三%の伸びということになっております。
  11. 島田琢郎

    島田(琢)委員 第一次、第二次の酪農近代化方針に沿って日本酪農というものを進めていくという、そういう努力をしようということで、これは生産者も含めて真剣にやってきたわけでありますけれども、しかし、いま審議官がお示しになったように、第一次近代化計画においては完全にこれは目標達成することができなかった。したがって、大幅に手直しをして新酪農近代化計画希望をつないでいる、こういう実態にあると思うわけでありますが、しかし、その第二次近代化計画の中でもすでに四十六年の、いま示されました実績において計画の半分にもなっていない、こういう事実にあると思うわけであります。しかも、先ほど戸数頭数生産量において明らかになったごとく、昨年の国内における酪農生産そのほかの低下というものは、将来の計画達成の上において非常に心配される赤信号であるというふうにわれわれは受けとめているわけでありますが、この認識について、ひとつ政務次官、どうお考えか、考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  12. 中尾栄一

    中尾政府委員 先生の御質問は、最近の酪農の危機問題というものを率直にどのようにはだで受けとめておるかという御質問と思うのでございますが、乳用牛飼養頭数は、昭和四十七年二月には、飼養戸数の著しい減少もありまして、戦後初めて前年の水準を下回ったことは、先ほど申し上げたとおりでございます。また、生乳生産は、四十七年には二%の伸びと、近年ではかなり低滞しておりまして、乳廃牛屠殺も前年と同様に高い水準示しているところから、酪農の前途について、先生のおっしゃるとおり、危惧の念を持つ向きも十分あるわけでございます。しかしながら、考えてみますると、一戸当たりの平均飼養頭数は着実に一歩一歩増加しておるわけでございまして、また乳廃牛屠殺も、高いとはいいながら、その増加率低下傾向にございます。今後これ以上生乳生産伸び低下することはないものと予想されておるわけでございます。  今後の酪農そのものが、零細飼養者離脱が続くということも考えられますけれども、このような離脱による減少分飼養規模拡大でカバーをするということも必要でございますし、また、このために、四十八年度において、水田飼料の作付の促進並びに飼料の基盤の強化とか生産体系高度化を促進するという酪農団地の育成などにつとめたり、規模拡大のための乳用牛の導入などを推進したり、さらに草地開発をしたりというような推進力によって、加工原料乳による不足払い制度の適切な運用や牛乳流通円滑化など、各種の施策を一般的に拡大強化することによって、酪農のより一そうの振興につとめていきたいというのが、私ども考えておる政策の一端でございます。
  13. 島田琢郎

    島田(琢)委員 この近代化方針示している中で、こういう鈍化状態にあり、あるいはまた低迷の状態にありながら、政務次官は剛毅に、将来の日本酪農心配ない、こういうふうに言っているわけでありますが、これは私は非常に認識が甘いし、また、極端に言えば、間違っていると思うのであります。いまその中で具体的に触れられた、乳牛屠殺傾向というものは前年に比較して落ちているし、頭数伸びについては心配ない、乳牛資源確保はだいじょうぶだ、こういうふうに言い切られたわけでありますけれどもほんとうにそうかどうか、ひとつ、私がこれから示すことにお答えをいただいて、それから私なりの反論をしていきたい、こう思うわけであります。  酪農家戸数が、先ほど示されたように、四十三年、五年前に三十三万七千戸あったのが、四十七年には二十四万三千戸と落ち込んだ。これはたいへんな落ち込みであります。近代化計画で、あるいは離農の見込みの中でも、農家が、とりわけ酪農家がこれくらい減っていくということは、いままでにないことであります。そういう点を考えてまいりますと、農業近代化を進めていく上において、それはある意味においては機械化によってカバーできるとはいいながらも、やはり農業という産業は、あくまで人がいなくては生産をあげることもできないし、また農村のすべての近代化を含めた農村社会を守り切っていくことはできない、それが世界共通の観念であるはずであります。ところが、このように牛乳生産をやろうとするそのにない手がたいへんな勢いで離農しているという現状を見たときに、農家は減るけれども乳牛頭数維持することができるし、生産も予測どおり進めていくことができるという判断を持っていることはきわめて危険だ、そういうふうに私は考えております。  そこで、酪農の主産地であり、基地といわれる北海道離農実態をお示しいただきたいと思います。
  14. 下浦静平

    下浦説明員 お答え申し上げます。  北海道におきましては、戸数で申し上げまして、四十七年が三万三千九百戸ということに相なっておりまして、これは四十一年の数字が四万六千七百戸でございますので、約一万三千戸の減少ということでございます。ただ、その中を見ますと、規模の小さい階層ほど減少率が高いということになっておりまして、一−四頭層におきましては、四十一年二万四千三百戸でありましたものが、四十七年には七千二百戸になっております。それから五頭から九頭層、これも四十一年に一万五千戸ございましたものが八千八百戸でございまして、従来はこの五ないし九頭層までが減りまして、十頭層以上の階層増加をしておるという傾向が見られたわけでございます。ちなみに、十五頭層から十九頭層で申し上げますと、四十一年七百戸でございましたものが、四十七年四千四百戸。それから二十頭から二十九頭層でございますが、これは四十一年二百戸しかございませんでしたものが、四十七年は三千八百戸に相なっております。三十頭層以上におきましても同様で、四十一年わずか百戸でございましたものが九百戸に増加をしておる、こういうことでございます。ただ、先ほど申し上げました五頭から九頭層、それから十頭から十四頭層というところがいわゆる階層分岐点ということで四十五年まで推移をしてまいったわけでございますけれども、四十六年からはそのいわゆる階層分岐点というものが一階層上がりまして、十五頭層以上につきまして増加を見ている、十四頭層以下につきましては減少を見ている、こういう事情に相なっております。
  15. 島田琢郎

    島田(琢)委員 いま審議官は、離農はあったけれども、構造の変化が拡大の方向に向かって進んでいるので、先ほど政務次官が言ったように、頭数維持はできる、こういう判断を持っているということを裏づけられたんだと思うわけであります。しかし、規模を大きくしなければならなくなったその理由については後ほど触れるわけでありますけれども、私は、農業のにない手、特に農村にあっては年齢的に非常に若い人たちがいなくなって、逆に経営規模は大きくなっていっても、労働の質的な面から考えますと、非常に低下をしているという事実があるわけであります。したがって、一律に数字だけでおしなべて判断をするということはきわめて危険である、こういうふうに考えております。  そこで、いままでいろいろと質問をいたしましたし、その中で明らかになってまいりましたのは、政務次官がおっしゃっているように、戸数は減っても頭数維持は絶対にできる、日本酪農の将来にいささかの心配もない、こういうふうにおっしゃっている点については、私はだめ押しですけれどもほんとうにだいじょうぶだとお考えかどうか、もう一度ひとつ確信のあるところをお聞かせいただきたいと思います。
  16. 中尾栄一

    中尾政府委員 最近の現象面などをとらえてみましても、中間、ミディアムの立場から考えますと、下部が脱落をしていく、減少していくということが顕著に出ているような感じもいたします。  先ほど青年たち離脱が激しいというおことばでございまして、これは、事こういう乳牛に関係する青年のみならず、一般の農家現象面にも適切にあらわれてきている現象であることは先生の申すとおりでございます。ここのところずっと数%近くの減少農家にあって、昨年あたりの減少は八%から九%であるとさえいわれている減少でございますが、その一つの要因には、社会現象の面も、これはもちろん農家が非常に住みにくくなっていくという事実も見のがすことのできない一端でもございましょうが、同時にこれは社会的な現象面一端にも責任がある。と申しますのは、これはあくまでも社会現象生活圏だけの問題でなく、たとえば農家農村というと、非常に暗いじめじめしたような感じ、あるいはうら悲しいような感じにマスコミでもあるいは社会現象でもとらえられておる。都会というと、何やら非常に立身出世できるような、あるいはまたすぐにでも栄達できるようなイメージが若い層にもかなりみなぎっていく、この傾向はあるのでございます。そういう意味で、昨今これまた、Uターン現象などで多数の青年がまた自分離脱した村に戻っていくという傾向は見られている現象ではございますけれども、そういう点は何やら社会現象の面から、農村青年たちも、あるいは農村おかあさん方も、自分の娘は都会のほうに嫁に差し上げたい、しかし自分のむすこには都会から嫁に来てくれというような、そういう現象面もこれは否定できないことでございまして、いささかなりとも青年離脱していくということは、ただ乳牛の取り扱いがいやだということだけではない、いろいろな多角的な要素もあることもこれまた知っていただきたいと思うわけでございまして、決して責任回避の問題ではございませんけれども、多角的にとらえていくべき問題のような感じもするわけでございます。
  17. 島田琢郎

    島田(琢)委員 どうも政務次官と私、話していると話がかみ合わなくなってしまいまして、いささかじりじりするわけでございますけれども離農、特に若い人たち農村を離れていくということは、いまの社会的な環境の中で自然そうなっていく、そういういわゆる感覚的なものが多いんだ、こういうふうに言っておられるように聞こえるのです。私自身も牛を飼っております。いまの状態考えてまいりますと、若い人たち離農していく、いわゆる牛飼いをやめて都会に出ていこうとする。それは単純に都会空気にあこがれるとか、そういうものでは決してない。それはもう農村のほうがはるかに空気もいいし、環境もすばらしいものですから、幾ら若い人たちだって農村に住みたいという希望皆さん持っているわけであります。ところが、そこに居つくことができないという、そういう条件農村内部に、いわゆる経営内部にあるからそういう傾向になっているんだ。これはひとつ政務次官認識を改めていただきませんと、いまの流行みたいなものだというふうにきめつけられたのでは、これは農村青年はとても浮かばれません。そういうものではありません。  ですから、この北海道の、特に酪農基地といわれる北海道において、先ほど審議官示したように、五年間に一万三千戸も酪農家が減ったという、それは成り立たなくなっている。特にしわ寄せを多く受ける頭数の少ない、規模の小さい農家離農傾向が激しくなった、そして大きいものは比較的離農しなかった、こういうふうに統計的には出ておるでしょうが、中身をもっと分析しますと、大きい人は多くの投資をして借金を払うこともできないから、さらに経営を大きくして借金のあと追いをしなければ成り立たなくなっているという現実のあることも、経営の中身なり、よくひとつ踏まえておかなければならぬ大事な要素なんです。  そこで、私は、政務次官認識をひとつ改めていただきたいと思いますけれども、どうもその認識の誤った考え方をお持ちの背景には、最近、事務次官牛乳乳製品課長北海道酪農実態調査に行かれたようです。この御両氏の帰ってこられた復命をもとにして自信をお持ちになっているのではないか、こういう感じがしますが、課長なり事務次官はそういう復命大臣にされたのかどうか、必要によってはこの復命書の公表をしていただきたい、私はこう思っているわけでありますが、政務次官お答えになっているその背景が、そうした実情を実際に見てきた人たち復命を基礎にしてそういう自信をお持ちになっているんだとすれば、これは一体何を調査されたのか、ほんとう北海道実態に触れて克明に調査をしてきたのかどうか、その辺私はきわめて疑問に思いますので、その辺のいきさつをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  18. 下浦静平

    下浦説明員 先般私ども牛乳乳製品課長北海道派遣をいたしまして、北海道酪農現状というものを見てきてもらったわけでございます。北海道につきましては、不足払い制度が発足いたしましてからたいへん目ざましい伸び酪農において示しておりまして、四十二年から四十五年にかけまして対前年の伸び率が一〇%以上という伸び示したわけでございますが、四十六年、四十七年とその生産伸び鈍化をしておるという状況でございます。こういう状況のもとに現状を見てきてもらったわけでございますけれども、帰りましての報告では、根釧十勝地方酪農状態調査したわけでございますが、酪農の多頭化を進めます段階では、設備投資の負担から経営相当に苦しいものである、それから負債額増高のみならず、経営者の精神的な苦痛を強めているという認識を持った、こういうような報告を受けておる次第でございます。
  19. 島田琢郎

    島田(琢)委員 課長現地実情調査に出したというのは、私ども現地では、これは農林省北海道酪農状態というものに相当心配をしてこの実態調査に来てくれたんだ、こういうふうに率直な受けとめ方をしております。それだけに、北海道酪農をやっている人たちは、何とかしてこの酪農で生きていきたい、長い間北海道の大事な資源条件などを生かして努力をしてきて、今日のような状態の中で、単に経営の収支が合わないことだけで離農するということは非常に情けない、残念だ、こういう切実な訴えを、調査をされた行く先々で生産農民から訴えられているはずであります。  とかく、私は、皆さんがそうだということを申し上げるのはきわめて不見識であるかもしれませんけれども農林省から、あるいは各省から派遣をされても、ほんとう実態調査する、ほんとうの事実を受けとめて帰られるということがきわめて少ないというふうに、われわれは残念に思っているのです。ある課長なんかは、いや北海道へ行ったら、島田さん、非常に空気もうまいし、道路もよくなって、見える農家の家なんかもとてもりっぱになりました、すばらしい車が庭先に置いてあって、農家生活はよくなりました、という感じで受けとめて帰ってきているようであります。これはもう、いわゆるアメリカへ行って小便をして帰ってきた、アメしょん式のものでありまして、そういう調査であっては逆効果にしかならない。しかも、案内する側にも問題がある場合もあると思いますけれども、いい農家だけ案内する、それをもってすべての酪農家実態がこうだという認識を持たれては、これは非常に困るのです。  ところが、今回のその課長調査は、かなり庭先に長ぐつばきで入っていって、率直な農家の意見を聞いてきているはずであります。それをすなおに復命されていれば、北海道酪農のいまの置かれている状態というものはまさに危機的な状態にあるというふうに受けとめられているはずだ、私はこう思うのであります。審議官のいまのお話ですと、通り一ぺんの、何か頭数だとか、いわゆる数字的なものをつかまえに行ったような印象にしか実は聞こえません。そんなのではなくて、原局課長が行かれた。ほんとうにこのときこそ農林省のお役人に率直ななまの声を聞かしたい、これは農家皆さん方がそういうふうにおっしゃっておられたことを私どもは聞いていて、それはたいへんいいことをしてくれた、こういうふうに考えておりましたけれども、どうもその復命をして、そんな通り一ぺんの復命では、私は、北海道酪農実態ほんとうにはだで感じているかどうかに多くの疑問を持ちます。  だからこそ、政務次官が先ほど、心配ありませんと言って、胸を張っておっしゃっておられる根拠はそこにあるんだというふうにいま推測をしているわけです。これはひとつ改めていただいて、必要ならさっそくにでも、北海道酪農実態をもう一度、幾日かかってもいいからつぶさに、ほんとうに底辺で努力をしている酪農家実態を調べていただきたい、私はまずそのことを申し上げておきたいと思います。  さて、そこで先ほどの話に戻りますけれども政務次官はたいへん大事なことを言いました。いわゆる乳牛資源の確保は心配ない、これはきわめて歯切れよくそうおっしゃったわけであります。私は、この点がいま非常に心配されている点で、第一点では、離農状態というものを心配しております。酪農のにない手である、いわゆる若年労働力の移動。その次には、やはり乳牛資源の確保というものが非常に心配されている。四十七年の十二月までの傾向政務次官はそう判断されているのかもしれませんけれども、年明けて四十八年正月以降のこの肉不足に伴う、ホルスタインを中心とした乳牛資源の肉移行というのはたいへんなものです。この辺の事情をひとつ、三月一ぱいのものはないかもしれませんけれども、一、二月のこの傾向数字でお示しいただきたいと思います。
  20. 下浦静平

    下浦説明員 お答え申し上げます。  乳廃牛屠殺頭数の動向でございます。先ほど政務次官が御答弁をされましたように、四十七年におきましては、大体四十六年と……(島田(琢)委員「四十七年はけっこうです、四十八年の一、二月です」と呼ぶ)横並びというような状況になっておりますが、四十八年に入りましての数字を申しますと、乳廃牛屠殺頭数は、一月、二万七千四百七十一頭、これは対前年同月比九九%でございます。二月、二万八千四十一頭でございまして、同じく九六%というぐあいになっておりまして、若干落ちぎみの傾向示しております。
  21. 島田琢郎

    島田(琢)委員 この数字で見る限り、先ほど政務次官が言われた発言を裏づける数字になっているわけでありますが、しかし、従来、肉の活用といいますか、肉供給のための資源傾向というのは、四十六年までは肉用牛が五五%だといわれた、ホルスタインを中心とした乳廃牛の肉用化というのは四五%、こういうふうに実はなっておるわけでありますが、四十七年からは逆転をした、こういうふうに実はいろいろな立場からわれわれは説明を受けているわけでありますが、そういう数字になっていますか。この比率をひとつ、四十七年一年間の傾向をお示しいただきたいと思います。
  22. 下浦静平

    下浦説明員 四十七年の数字について申し上げますが、成牛の屠殺頭数でございます。成牛、計といたしまして百八万七千頭、そのうち肉用牛が五十三万三千頭でございまして、乳用牛が五十五万三千頭、おおむね半々というような数字になっております。
  23. 島田琢郎

    島田(琢)委員 ことしに入ってからの乳廃牛屠殺状態というのは、どうもいま審議官が示されたのとはわれわれ数字の上でだいぶ違いがあるようでありますが、これはつかまえ方によって違うのかもしれませんから、この論議をやっても対立するかもしれません。しかし、全国的ないわゆる感触として、肉資源が非常に足りなくなっている、この事実は明らかであります。何となれば、一月に、生まれたてのホルスタインの雄牛が大体一頭当たり生体にして五、六千円であったものが、一月の末から二月にかけてこれが十倍にはね上がっている。すなわち、万になったわけです。四万円あるいは五万円という高値に実はなっているわけであります。私は、この牛の肉の値段が高い安いということを言うつもりはありません。そうではなくて、このようにいわゆる高くなったという背景は、肉資源が足りないという、そういうものが背景にあるからだろう、あるいはまた、いまはやりの投機などというものがあるのかもしれませんが、まあ、なま肉のことでありますから、投機などということで推測するのはきわめて早計であるかもしれません。したがって、私はやはり率直に言って肉資源が枯渇状態にあるということが、今日のこの肉の高騰を招いている大きな原因であろう、こう思っているわけであります。そういう中でとりわけ乳用牛の不足というのはたいへんなものでありますから、これはもう年間十万トン以上の肉を輸入しなければならぬという実態にある。最近は日本のホルスタイン乳牛の肉質というものが非常に見直されておる。そういう中から、そうした前段の要素と、それらを含めて非常にホルスタインが屠殺されていくという傾向が強まっていく。これは統計数字ではそうなっていても、現地あるいは全国にいま感触としてあるのはまさにいま申し上げたとおりの状態にあるというふうに判断して私は誤りないと思っております。  そこで、大事な乳をしぼる牛が肉になっていくということは、先ほど前段で酪農近代化基本方針あるいはまた昨年の暮れに農林省がお出しになった農畜産物の需給と生産の動向、こういうものによって昭和五十七年には国内における牛乳、乳製品の自給率を九七%に引き上げよう、こういう計画を持っておりますけれども、これはとても達成はできないだろう。政務次官はそれらの計画達成は決して心配ないのだと、こういうふうにおっしゃっておりますけれども、いままで申し上げてまいりました離農傾向頭数減少乳量のいわゆる伸び悩み、さらに大事なホルスタインが肉になっていくというこの現実、それから農村の特に第一線で生産に従事する質的な労働力の変化、こういうものを組み合わせて推察をいたしますと、私は、胸を張ってこの目標達成はだいじょうぶですとこういうふうに言い切ることは絶対に危険であるというふうに考えております。いままでの質疑の中から、政務次官、どういうふうにお感じになりましたか。もう一度お答えをいただきたいと思います。
  24. 中尾栄一

    中尾政府委員 先ほどから先生の御指摘一々十分参考に聞いておりまして、私もいろいろと認識を新たにして考えなければならぬ面もあるやに感じますが、いかんせんいわゆる下部の減少がはなはだしいという先ほどの御指摘、私もまたそれを指摘申し上げたわけですが、この点については、あくまでもその減少をどのように防いでいくかということを前向きに検討していかなければ相ならぬという必要性を特に感じた次第でございます。
  25. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そこで、政務次官は、あまり歯切れはよくありませんけれども、いま置かれている日本酪農実態は安心することはやはり危険だ、こうおっしゃったと思うのであります。私はもっときびしく情勢を分析する必要があると思うのです。  そこで、なぜこういう状態になったか。大事な若い人たちが牛飼いを捨てて都会に流れていく。そしてまた残った農家借金のあと追いで経営拡大をせなければならぬ。経営拡大をやろうとすれば、借金はまた雪だるまのようにふえていく、こういう現実をかかえて非常に現地の、現地のといいますか、農村にあっては、酪農家がいまたいへんな時期を迎えている。こういう危機を招いたのは、私は率直に申し上げて、いわゆる農基法農政以来の構造政策に誤りがあったということは、これは後ほど私はきびしく指摘をしたい点でありますけれども、もうすでに農林省政府は耳にたこができるほど聞かされていると思うのでありますが、異常に低い乳価、ここに原因があったということは、これはもう識者の一致した見方であります。いま世論の中でも、低乳価であるということを新聞でも書き立てているわけであります。したがって、私はいろいろな要素はあるけれども、やはり構造政策は借金のかさをふやして、そして経営を苦しい状態に追い込んだという結論以外に何もできていない。したがって、この時期においてどうしても必要なのは、価格政策がかなり思い切ってなされなければ、せっかく政府がおやりになった構造政策も生きてこない。そればかりか、たいへんな農家をたくさんつくっていって、最後は離農したくてもしようがないという状態にまで追い込んでしまう、そういう危険性を持っているというふうに私は思います。この低乳価であるというこのことばに対しては政府は非常に抵抗するかもしれません。しかし、私は、ここでいろいろなことを申し上げる必要もないほど乳価水準というものは他の物価に比べて異常に低いということだけは事実だと思います。これはお認めになりますか。次官、どうですか。
  26. 中尾栄一

    中尾政府委員 慎重に答弁すべき問題かと思いますが、まず担当官から答えさせたいと思います。
  27. 下浦静平

    下浦説明員 加工原料乳の保証価格につきましての水準の問題につきましての御質問でございますが、加工原料乳の保証価格につきましては、いわゆる加工原料乳地帯の酪農の安定再生産の確保ということを主眼としてきめてまいる、そういうことでございます。そこで、全国的には、先ほど来お話を申し上げ、あるいは御指摘をいただいておりますように、乳牛相当数の減少を見ておるところでございますが、いわゆる加工原料乳地帯につきまして、乳牛頭数の推移をながめてみますと、四十六年七十九万五千頭でございましたものが、四十七年には八十万五千頭というぐあいに、一万頭の増加ということに相なっておりまして、必ずしも保証価格が低いために乳牛頭数減少していくということではないように考えております。
  28. 島田琢郎

    島田(琢)委員 一つ希望がございますけれども、限られた時間のやりとりでございますから、ひとつ的確にお答えをいただきたい。余分なことはけっこうですから、どうなんだということについて、ひとつ率直な御答弁をいただきたいと思います。  そこで、いま審議官お答えになったこととは私は非常に認識を異にしております。ずばり私はいまの日本の物価水準からいって、いまの保証価格四十五円四十八銭は超低乳価である、そういうふうに私は実は考えております。したがって、そういう認識の上に立って、これから私は中身の若干の部分に触れて政府考え方を聞きたいと思うわけであります。  その前に、私は政務次官に一つ。従来われわれ乳価の問題を取り上げる時期というのは、これはもういまごろになるわけでありますけれども、こうした乳価問題をみんなで論議するときに、非常にわれわれ不都合だと思うのは、いまのこの畜産振興審議会の酪農部会に諮問をする時期というものが、非常に意図的に国会論議もできないような状態の中で、ぎりぎりの告示時期まで延ばしてしまう。これはちょっと意地の悪い言い方でありますけれども、どうもそういう感じがいたします。ですから、きのうもわが党の美濃委員から資料の問題について提出を求めていても、いまの段階ではまだこれを出すことはできません——それじゃ、一体いつ出すのかといえば、あしたはおそらく審議会に出すわけですから、これは国会に出せないということは言えないと思いますから、あすは出てくるでしょうが、それから論議をしたのではほんとうの審議にならぬと私は思うのです。  そこで、これは私の来年度以降における希望でございますけれども、法律の許せるぎりぎりの段階で、もっと審議会にかける時期を少なくとも三月の十五日から二十日ぐらいの間にかけるように、こういうふうなひとつ誠意ある検討の時期を見越した審議会での諮問にすることができないであろうかということを考えております。この点はどうでしょうか。これは次官にひとつお尋ねします。
  29. 中尾栄一

    中尾政府委員 先生の御指摘のとおり、技術的には確かにそのような観点も十分考察に入れなければいけないという感じがいたしますので、その点は十分前向きに慎重審議、検討申し上げたいと思います。昭和四十八年度の乳価算定資料を提出して、また、審議会をもっと早急に開催できないものかという御希望であり、また御内容であったと思うのでありますが、審議会の開催時期につきましては、保証価格等の算定に直近時点までの物価の動向を織り込む方式を採用しておるために、その作業の完了を待って開催せざるを得ないということから、毎年年度末に開催することになっておるわけでございまして、意図的にやっていることでは決してないことをここであらためて御了解願いたいと思うわけであります。まことに先生のおっしゃることは十分鋭意検討する課題として取り上げていきたいと思っております。
  30. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そこで、そういう問題を長々とやっておりますと時間がありませんから、それはまたひとつ別な時期にこの席で私は議論をしたいと思っておりますが、前向きに検討したいという御答弁がありましたので、私はこれを誠意ある政務次官お答えとして歓迎をいたしておるところでありますから、十分ひとつ御検討をお願いいたしたいと思います。  そこで、私は前段で、保証乳価は超低乳価である、超低価格であるということを申し上げました。それはなぜかということについては昨日の論議の中でも出されておりますから、そのことをいまここで蒸し返してお話をすることを差し控えたいと思いますが、特にそういう中で毎年問題になりますのは労賃の問題でございます。この労賃は、かつては飼養飼育労働、管理労働、それから同じ牛舎の中の仕事でも二つに分けていて、さらには飼料作物の部分についてはさらに低い労賃を採用するということ、それをようやく生産者側の皆さん方から非常な注文があってこれを直した。直したけれども、まだ依然として残っているのは飼料作物労働の関係でありますが、私はこの飼養飼育、管理労働の評価のしかたについても依然これが改善されないばかりか、その労賃の格差というものは一般製造業労賃あるいは普通の労働労賃とはますますその差が開いていくばかりであって、この点については私は非常に過酷な状態に据え置いているというふうに判断をしております。これはもう農民の皆さん方生産者皆さん方も一番不満に思っている点であります。何となれば、きのうきょうのいわゆる農業の経験者ではございません。普通常識的にいえば、もうベテランであります。二十年、三十年、四十年という長いいわゆる経験と技術を積み上げてきた農民の労働力であります。これを製造業労賃の五人規模の労賃に据え置いたり、あるいは臨時雇用労賃に据え置いたりするようなそういう不公平な取り扱いということは、これはもう絶対に許されない、私はこう思っているわけであります。これはひとつ思い切った改善をことしあたりはしていただきたい。  そこで、あす審議会に出されます諮問案の中でどういう労賃を採用しようとしておられるのか。これはひとつこまかに数字をあげて——それ以外のことまで触れるということはできないとおっしゃるでしょうから、私はその問答で時間を食うよりも、端的にことしの労賃の労賃評価はどの水準を取り上げようとしているか。それくらいは、もうきょうですから、おっしゃっていただきたい、こう思うのです。
  31. 下浦静平

    下浦説明員 お答えいたします。  計数につきましては、お話のございましたとおり、目下計算中でございますので申し上げられませんが、飼育労働に関する労賃につきましては、従来とっております方針に従いまして、加工原料乳地帯の五人規模の製造業労賃に置きかえまして、それをさらに直近三カ月の物賃に置き直した数字というようにいたしたい考えでございます。
  32. 島田琢郎

    島田(琢)委員 もう数字は言えるのでしょう、何ぼ、何ぼですと。これは全部こまかに言えということでありませんから、労賃評価は何百何十何円を採用いたします——いまのおっしゃった部分というのは調べればすぐわかるわけですね。ですから、これはひとつはっきり教えてください。
  33. 下浦静平

    下浦説明員 先ほど来申し上げておりますとおり、なお鋭意今晩までかかりまして作業を続けておりますので、ただいまの段階では申し上げかねるのでございまして、御了承をお願いいたしたいと思います。
  34. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それはおかしいじゃないですか。いまおっしゃったのは、こういうものを取り上げてやりますと、こうおっしゃったのですから、それは何も今晩考え数字を振りかえるという筋合いのものじゃないじゃありませんか。一つの統計数字によってやるわけですから、その採用される水準の労賃というものはもうこれは明らかになっているわけですね。ですから、何百何十何円であるというふうにお答えになったって差しつかえないじゃないですか。それとも今晩また手直しをするというのですか。
  35. 下浦静平

    下浦説明員 おことばを返すようでたいへん恐縮でございますけれども、なお作業中でございますので、御了承をいただきたいと思います。
  36. 島田琢郎

    島田(琢)委員 どうもそれはおかしいですな。審議官、あなた、勘違いしていられるのでないですか。どのものをとるかということをこれから検討するというなら、私はこんなことは言いません。さっきの、もう一度言ってください。どういう規模のものをとる、こうおっしゃったんですね。それは統計なり何なりで明らかになっているわけでしょう。これは私のところにだって数字はありますよ。どの規模をとるのだというならば、私のほうで調べて、ああ何百何十何円だなと、こうなるわけでありますけれども、それじゃ、狂っていては困りますから、この労賃評価はこの数字を採用いたしますというのは、これはもうきょうだってあすだって、あるいはもっと早くだって、その考え方さえまとまっていれば、示したっていい数字じゃないでしょうか。ちょっと私の質問を誤解されているんじゃないでしょうか。
  37. 下浦静平

    下浦説明員 たびたびの御質問でございますが、今晩までかけまして数字を固めるという段階でございますので、この点をお含みおきを願いたいと思います。
  38. 島田琢郎

    島田(琢)委員 どうも私は納得できないのですけれども、時間の関係があるから、これ以上のことについては、また別な質問に移って、ひとつそこからだんだん引き出しましょう。  それでは、乳製品のいわゆる安定指標価格の中における労賃ですね。これは明らかになりますね。説明するまでもありませんが、安定指標価格というのは、乳業者の製造経費と生産者に対する支払い分とを含めて安定指標価格というのはきめられるわけですが、乳業の製造経費の中にある労賃、四十七年は何ぼになりますか。
  39. 下浦静平

    下浦説明員 ただいま御指摘の労賃につきましては、全体の経費としてとらえておりまして、単価としてはとらえておりませんので、その点御了解をいただきたいと思います。
  40. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それでは、四十七年の保証価格をきめたときのこの説明資料の中で、四十六年をひとつ聞きますけれども、この中の製造販売経費としては、原材料費、労務費及び経費、一般管理費といろいろありますけれども、この中に労務費は幾ら幾らというのがあります。バター、脱粉、全練、脱練、全粉、こういうふうに分けて、それぞれ労務費というのがこの中にはじき出されております。たとえば、バター一キロについては三十五円六十七銭が労務費だ。ただし、労務費及び経費とありますから、この部分の労務費は、一時間当たり何ぼになっていますか。
  41. 下浦静平

    下浦説明員 単価としての内訳は実際につくっておらないそうでございます。
  42. 島田琢郎

    島田(琢)委員 しかし、農林省保証乳価の諮問をあすするのに、こんなにわかり切ったこともまだ調べてないというのは、これはおかしいじゃないですか。審議官、わからないのなら、今井君、あなたはわかるのだから答えなさいよ。これは、私に対する侮辱なのかわかりませんけれどもほんとうにはっきりしておることを聞いているのですよ。それも答えられぬということはおかしいじゃないですか。それでは納得できないですよ。
  43. 下浦静平

    下浦説明員 実際、単価としてのとらえ方というものはしておりませんので、トータルということでとらえておるということでございますので、御了解をいただきたいと思います。
  44. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私はあす出す資料を聞いているのではないのですよ。去年の審議会に諮問したときに出した資料の中身を聞いているのです。審議会でこういう質問が出たら、審議官、これはどうするのですか。審議会で答えられるけれども、国会では答えられないというなら、国会軽視ですよ。私は絶対に納得できない。あしたのものを聞いているのじゃないのです。
  45. 下浦静平

    下浦説明員 製造費、販売費、それから一般管理費、それぞれの労務費ということでやっておりますので、単価としてのとらえ方はしておりませんそうでございます。
  46. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それでいいですよ。じゃ、それを出してください。
  47. 下浦静平

    下浦説明員 先ほどお答えいたしましたようなことで、それをそれぞれ製品に直してあるそうでございまして、単価としての出し方はしておりませんそうでございますので、御了解をいただきたいと思います。
  48. 島田琢郎

    島田(琢)委員 だから、私はきょう、審議官、あなたでお答えできるかいと聞いたのです。もしあれだったら、いま食肉部会が開かれてそっちに行っているのでしょうから、あらためて大臣なり畜産局長に来てもらって話を聞かなければ、私は納得できません。  私のほうから教えます。昨年この審議のときに全中の松村常務からこの質問が出されております。そのときに、食品製造業三十人規模で時間当たり労賃は三百八十七円八十銭と答えている。それを私に答えられないというのはおかしいじゃないですか。これだけ明確にお答えになっている。これは議事録に載っていますよ。調べてみてください。しかし、国会で私が質問したら私に答えられないというのはおかしいじゃないですか。私は納得できない。
  49. 下浦静平

    下浦説明員 ただいまのお話は昨年の審議会で出たそうでございますが、やはり先ほど来私が申し上げておりますようなことで出せませんので、御参考までに製造業三十人規模の労賃単価を申し上げた。それが三百八十七円八十銭であるということのようでございます。
  50. 島田琢郎

    島田(琢)委員 どうもこんなことで時間がかかって、私もまことに残念なんですけれども、これは資料として農林省が畜産振興審議会酪農部会に出しているのです。どうも意地悪い質問をしているようですが、なぜ、国会でわれわれが論議をすると、そうやって知らぬ存ぜぬ、話せませんで逃げるのですか。何か足元をすくうと思っているのでしょうか。私はそうじゃなくて、ほんとう皆さん方が、酪農のいまの状態の中で保証乳価を上げてもらわなければどうにもならぬ、もう死んでしまうという切実な訴えをされているのです。次官もお聞きになっているでしょう。  いまメモが参りまして、午後から大臣出席するそうでありますから、では、この問題は保留にいたします。しかし、私はどうも許せないのは、去年これだけはっきり審議会で答えておきながら、ことし私が質問したら私に答えられないというのであれば、これは国会軽視だと言わざるを得ませんから、その点はどうも私は納得できません。  それじゃ、次に進みます。そこで、私は、これもおっしゃれぬのではあれば、私のほうから一つの統計数字に基づいてお示ししておきますけれども、大手乳業は時間当たり労賃というのは平均して大体五百円です。五百三円ぐらいになりますけれども、まあ五百円です。私ども酪農家の立場からいえば同じ白い乳の生産、加工に携わっているこの関連産業なんだから、いわゆる乳業メーカーに従事する労働者の労賃と生産農民の労賃というのはせめて同じくしてほしい。これは長い間の主張でございます。これは耳にタコができているぐらい御存じいただいている点であります。これぐらいはっきりしているわけです。これは私はでたらめの数字を申し上げているのではありません。統計数字に基づいて、こういうことになっております、こう言っているわけでありますから、これは私のほうから逆に教えておきます。この労賃を何としてもいま申し上げたような形で直してもらわなければ、加工乳のそのほかの数字を幾らひねくり回しても、生産者が、農民の皆さんが要求している七十四円十七銭を実現することはもうできないと思います。したがって、こういう重大な要素ほんとうに思い切って手直しをするという考え方がなければだめだ。答弁をいただいていると、長々と答弁をされてしまって時間ばかりかかりますから、私は、私のほうからむしろそういうことをある程度教えて、そういう理解をいただきたいということをお願いをしておきます。  そこで第二点目は、ことしは、いまの四年も五年も六年も据え置いてきている安定指標価格は当然変えなければだめだ、こう思います。いまの安定指標価格の中におきます市場価格の実態はどうなっておりますか。簡単に、バターとか脱脂粉乳、その程度でけっこうでありますから、時間の関係で詳しくお話をしていただくことはできませんので、そうした重要な品目だけ市場価格の推移をお示しいただきたいと思います。
  51. 下浦静平

    下浦説明員 お答え申し上げます。  バターにつきましては、四十七年二月から四十八年一月まで、これは八百二円ということに相なっております。それから脱脂粉乳でございますが、これは同じ期間で一万百四十二円、こういう事情でございます。
  52. 島田琢郎

    島田(琢)委員 非常に実態にそぐわなくなっているということがそれによって明らかであります。ことしは思い切って改定する、そういう考え方がありますか。
  53. 下浦静平

    下浦説明員 安定指標価格につきましては、市場の状況等もよく踏まえまして十分検討いたしたいと思っておりますが、また反面、物価等に及ぼす影響等も勘案しなくてはならないと思っておりますので、あわせまして十分検討いたしたいと思っております。
  54. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そこで、問題になりますのは、安定指標価格の改定についてはいま通り一ぺんの御答弁でありまして、私はもっと詰めなければいかぬと思って具体的にお聞きしたいわけですけれども、それはひとつおきまして、   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 現行の基準価格は、そうした面から考えて、妥当ないわゆる水準にあると判断しておりますか。
  55. 下浦静平

    下浦説明員 昨年度きめましたものは、私どもなりの計算をいたしましてきめましたものでございますので、妥当なものであると考えております。本年度につきましては、安定指標価格において申し上げましたと同様、基準価格につきましても十分検討をいたしたいと存じております。
  56. 島田琢郎

    島田(琢)委員 この基準取引価格は、不足払い法ができて以来、むしろ乳業の経営の中で保証価格が隠れみのになるというか、そのことによって非常に乳業の経営実績というものがよくなったとさえいわれているわけです。そういう判断については農林省としても十分内容を調査されておるはずでありますから、的確に持っているのだろう、こう私は思うわけでありますが、特に日本の三大大手乳業の経営実績というのは四十二年の不足払い発足以来の状態としてどのようになっているか、簡単にひとつお示しいただきたいと思います。
  57. 下浦静平

    下浦説明員 四十三年当時の過剰時代におきましては、安定指標価格よりも下回った価格で市場価格が形成されたという時期がございましたので、そのころから比べますと、昨今ではよくなっておるというぐあいに考えております。
  58. 島田琢郎

    島田(琢)委員 毎年乳製品協会などから乳価の改定の時期になると申し入れがあるようでありますが、ことしはどういう申し入れがありますか、あるいはありませんか。
  59. 下浦静平

    下浦説明員 三月に入りましてと思いますが、申し入れがございました。私の記憶では、たしか安定指標価格と基準取引価格についての申し入れというぐあいに記憶をいたしております。
  60. 島田琢郎

    島田(琢)委員 乳製品協会からこういう申し入れがあったのであります。保証価格も上げてはだめだ、基準取引価格も上げるべきでない、安定指標価格も現水準に据え置くべきだ、こういう趣旨の申し入れがあったようです。もちろん政府はこの申し入れに左右されるなんということは私どもはごうも考えておりません。き然たる態度でおやりになるだろう、こう期待をしておりますけれども、しかし、私は乳製品協会がこんな申し入れをするというのはまことに思い上がりもはなはだしい。現状を的確に認識をしておるならば、一番大事な生産がどういう状態になっておるかということを考えれば、牛乳の原料がなくては成り立たないメーカーが、事もあろうに、保証価格にまで文句を言うというか、もう上げてはいけないなどという圧力をかけるというのはけしからぬ。これは日ごろの農林省の指導が悪いのだろうと思うのですけれども、そういうようなことを言わせるような長い間の安定指標価格の据え置きだとか、あるいは基準取引価格の据え置きに近いような状態、こういうものがそういうことの状態で乳業の発言力を強めているような、そういう印象を私は受けるのです。これは、厳重にこういう問題については指導していただきたい。  そこで、ことしは、審議官がおっしゃっているように、基準取引価格、安定指標価格の中身はあるけれども、思い切ってこれを改定するということを真剣にひとつ検討していただきたい。私はお願いを申し上げておきます。  持ち時間がなくなってしまいまして、まだいろいろな質問があったわけでありますけれども、最後に一つだけ。  きょう申し上げたのは、私は労賃部門と、そのほかにまつわる若干の問題についてのみ保証価格算定にあたっての考え方を聞いたにとどまっているわけでありますが、このほかに、償却費という問題は非常に多くの問題をこの中に含んでおりまして、私はこの論議だけで一日やってもいいくらい問題をたくさん含んでいると思うのです。保証価格の中における償却費の部分というのは、もちろん牛の個体の問題、農具の問題、それから建物の償却の関係、こういうものというのは、実態の中で非常にそぐわないようなものになっているという点は、政府もすでにそのことにある程度お気づきになっているというふうに聞いております。これはひとつ後ほどの論議にまかすとして、こういうものも含めて、四十八年度の保証乳価は、昨日、政務次官から非常に前向きにことしは取り組みたい、こういう答弁がなされております。  ここで私は、具体的に生産者皆さん方が最低の要求価格だと言っている七十四円十七銭は妥当な要求だ、こういうふうにわれわれは判断いたしておりますが、政府はどうですか。
  61. 下浦静平

    下浦説明員 生産者の団体側の算出によります乳価の引き上げにつきましての御要望単価でございますが、これは算出の基礎なり考え方なりにかなり違った観点がございまして、一がいには申し上げかねるところでございます。
  62. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私の持ち時間がなくなりましたから、私は最後に、前段で私はいろいろな答弁をいただきまして、そういう印象の中からやはりわれわれが心配していることが依然これからも続いていきそうな気配であります。そこで、私は、日本の食料政策のあり方というものについて、この時点でひとつ——牛乳問題だけではありません。すべての農畜産物あるいはすべての食料の問題について、その政策にいわゆる発想の大転換をしなければならない大事な時期に来ている、こう思います。私は途中でも指摘をいたしましたが、農基法農政の誤り、これは率直にひとつ政府もお認めになるべきだと思います。そして、一連の構造政策が今日のいわゆる酪農やそのほかの農業の危機を招いているというこの事実も、これに目をおおうべきではないのです。したがって、思い切った価格政策をここに出して、少なくとも、もうこんなに少なくなってきた農家でありますから、これをこれ以上減らすようなことがないように、そして若い人たちが安心して生産努力することができるように、ぜひ新しい思い切った農政の確立をこの機会にお願いをしたい、こう思います。  その第一弾として、四十八年度の保証乳価は七十四円以上の決定をすることによって、私は置かれている酪農の危機を乗り越えて、政府が出されております目標に一歩近づけることのできる手だてになると信じております。どうかひとつ、あすの審議会に提案をされる中身については、けさほど来私からいろいろお尋ねをいたしました点は、私なりに非常に理解のできない点がたくさんありますので、また大臣出席を求めるなり畜産局長出席を求めるなりして、もう少し具体的にお聞きしたい、こう考えております。  ただ、最後に申し上げておきますが、政務次官は誠意を持ってお答えになっているということについては、私はそれを否定しておりません。ただ、大臣と十分きょうのやりとりを御相談いただきまして、誠意を持って——きょうここにお見えになっている皆さん酪農家です。死ぬか生きるかというせとぎわに追い詰められて、ほんとうに真剣な、まなじりを決してわれわれの生活を守らなければならぬという意気に燃えて皆さん方上京されているわけです。私は不測の事態などが起こることを期待しておりませんが、生きるか死ぬかまで追い詰められたら、ネズミだってネコをかむというではありませんか。どうかひとつ酪農家の危機を救うために、中尾政務次官に思い切った手腕をこの機会に発揮していただいて、櫻内大臣とともに日本農業を守るためにがんばっていただきたいと心から御期待申し上げて、私の質問を終わります。
  63. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次に、諫山博君。
  64. 諫山博

    諫山委員 きのう来の質問で、酪農農家の数が急速に減少したということが明らかになりました。こういう結果が生ずることを農林省としてはもともと予想していたのであるかどうか、それとも予想しない結果が出たのか、御説明願いたいと思います。
  65. 下浦静平

    下浦説明員 お答え申し上げます。  先ほどの島田先生の御質問で、酪農近代化計画という問題が出ました。これは四十年からそういう計画でございますが、ただいま第二次の新しい計画になっておるところでございます。それで、先ほど来のやりとりをお聞きいただいた経過からおわかりいただけるかと思いますが、私どもはやはり酪農というのは農業の基幹的部門を将来占めるだろう、現に占めつつあるわけでございますが……。
  66. 諫山博

    諫山委員 簡単にしていただきたいと思います。予想していたのかいなかったのか。
  67. 下浦静平

    下浦説明員 ということでございましたので、予想はしていなかったところでございます。
  68. 諫山博

    諫山委員 予想していない事態が生じたとすれば、その点について農林省はどういう責任感じているのか。またどういう是正策をとろうとしているのか、御説明いただきたい。
  69. 下浦静平

    下浦説明員 四十五年後半以来こういう現象が出てきたところでございますので、私どもも十分反省をいたしまして、酪農問題に関する研究会を省内に設けまして、いろいろと各方面の県やその他の方々の御意見をいただいたところでございます。それに基づきまして四十七年度予算からいろいろ酪農に関する振興対策をやろうということでやっておる次第でございます。
  70. 諫山博

    諫山委員 農林省が予想しないほど酪農農民が減少したという事実が明らかになりましたが、この大きな原因の一つとして、いわゆる低乳価政策があったというふうには考えていませんか。
  71. 下浦静平

    下浦説明員 農家戸数が減るということは予想はしておったところでございまして、これは酪農につきましても例外ではございません。ただ、低乳価によるものではないかという御質問でございますけれども、これは先ほどもお答えいたしましたとおり、全国的には減っておるわけでございますが、加工原料乳地帯だけをとってみますと、これは昨年一年の経過でございますが、ふえておるという状況でございますので、価格ばかりに原因があるものとは考えておりません。
  72. 諫山博

    諫山委員 私も価格ばかりが原因だとは言っておりません。安い乳価が大きな原因の一つではないかと聞いておるのです。いかがでしょうか。
  73. 下浦静平

    下浦説明員 農家側からの感じといたしましては、確かにそういう考え方があろうかと存じております。
  74. 諫山博

    諫山委員 保証価格が非常に安いことが問題になっていますが、四十七年度は前年度に比べてどれだけ保証価格が上がっているのか、四十六年は前年度に比べてどれだけ上がっているのか、パーセントで御説明願いたいと思います。
  75. 下浦静平

    下浦説明員 四十六年度は前年に比べまして七十五銭の引き上げでございます。それから四十七年度におきましては一円の引き上げということになっております。
  76. 諫山博

    諫山委員 私はわざわざパーセントで示してくれと言っております。  時間がかかりますから、次の質問をいたします。同年度の労働賃金の上昇率あるいは消費者物価の上昇率に比べて、保証価格の上昇率はどうだったでしょうか。
  77. 下浦静平

    下浦説明員 ただいま御指摘の上昇率に比べまして、高いとは申せない数字でございます。
  78. 諫山博

    諫山委員 いまの問題を、労働賃金とか消費者物価の上昇に比べて保証価格の上昇率がどのくらいおくれているか、計算したことはありませんか。示してもらいたいと思います。
  79. 下浦静平

    下浦説明員 ただいまここに数字を持ち合わせてございませんので、後ほど御連絡を申し上げます。
  80. 諫山博

    諫山委員 正確な数字はお持ちでないようですが、お話にならないぐらい低いということは御承知でしょうか。
  81. 下浦静平

    下浦説明員 かなり低いことは承知をいたしております。
  82. 諫山博

    諫山委員 これだけ激しい物価高の中で、またその中で労働者の賃金もそれなりに上がっているという状況の中で、保証価格だけが極端に上昇がおくれているという問題をどう考えておられますか。これで酪農農民がやっていけると思いますか。
  83. 下浦静平

    下浦説明員 酪農経営につきましては、先生御承知のとおり、過去におきましてかなりの合理化が行なわれてきているところでございます。したがいまして、一〇〇%そういうような考え方は私どもいたしてはおらないところでございます。
  84. 諫山博

    諫山委員 保証価格というのは、加工用の牛乳をつくっている農民にとっては商品の価格でしょう。この価格が消費者物価に比べてお話にならないぐらい安いというので、農家経営がうまくいくはずがないじゃないですか。そこで、観点を変えて、同じ期間に乳書本が支払う基準取引価格はどういう推移を示したのか、これは保証価格の上昇とどういう関係にあるのか、御説明願いたいと思います。
  85. 下浦静平

    下浦説明員 四十六年度におきます基準取引価格の上昇は、前年に比べまして三十二銭でございます。それから四十七年度におきましては同じく三十六銭ということになっております。
  86. 諫山博

    諫山委員 いま四十六年と四十七年について金額の指摘がありました。農林省の資料によりますと、四十六年度に保証価格はわずかに一・七%しか上がらなかった、同じ四十六年度、基準取引価格は〇・九%しか上がらなかった、こういう数字のようですが、違いますか。
  87. 下浦静平

    下浦説明員 正確にはじいておりませんが、大体そんな感じかと存じます。
  88. 諫山博

    諫山委員 そうすると、酪農農民の受け取る保証価格は一・七%しか上がらなかった。同じ時期に乳業資本が支払う基準取引価格はそれよりか率の低い〇・九%しか上がらなかった。つまり酪農農民が受け取る金額よりか酪農資本家が支払う価格がずっと安くなっているというような結果が出てきませんか。
  89. 下浦静平

    下浦説明員 基準取引価格の計算の基礎になる安定指標価格が変わっておりませんので、政府の負担部分が結果的にはふえておるということであります。
  90. 諫山博

    諫山委員 回りくどい説明ですが、政府の負担部分がふえたというのは、酪農資本の支払いが少なくて済むようになったということですか。
  91. 下浦静平

    下浦説明員 先ほど申し上げました数字だけは支払い分がふえておるわけでございます。
  92. 諫山博

    諫山委員 そうすると、この不足払い制度の運用というのは、酪農農民の生活を保護するというよりか、むしろ乳業資本を保護するというような運用になっているように見えますが、どうでしょう。
  93. 下浦静平

    下浦説明員 私どもは決してそうは考えておりませんので、安定指標価格を適正な水準にきめまして、そこから出発をいたしまして、製造、販売経費等に吟味を加えたものを差し引きましたものを基準取引価格ときめておるわけでございます。
  94. 諫山博

    諫山委員 ことばでは乳業資本の保護ではないというふうに言われますが、数字は明らかにそのことを証明していると思います。  ところで、さっき北海道酪農農民の実情を調べたという話がありましたが、ことしの三月二十日の「日本農業新聞」に北海道東部の中標津農協の詳しい実情が報道されております。これを見ますと、農協の正組合員戸数が四十八戸、そして平均の負債額が七百万円だ。そしてこの新聞記事の見出しは「しぼるほどかさむ借金 崩壊寸前の原料乳地帯 低乳価こそ元凶」というようなことばになっておりますが、そういう状態であることを認識されておられますか。
  95. 下浦静平

    下浦説明員 ただいま御指摘になりました新聞の記事は私、読んでおりませんが、北海道酪農につきましては、全国規模よりもかなり規模が大きいという事実がございます。しかも年々その規模拡大のペースがかなり早まってきておりまして、いわゆる多頭飼育に進んできておるということでございます。それに伴います土地、資本の投入ということが当然考えられますので、そういう経営上の苦しさということはあろうかと存じております。
  96. 諫山博

    諫山委員 私が読み上げた「日本農業新聞」の記事というのは、あまり信用できないというふうに理解されておるのですか。大体、いま北海道酪農というのはこういう状態になっているのだという認識をお持ちでしょうか。
  97. 下浦静平

    下浦説明員 その新聞の記事が信用できるかどうかということではございませんで、北海道酪農という問題につきましては、私ども非常に大きなウエートを置いておりますし、今後も置くべきだと思っております。その反面、先ほども申し上げましたような経営上のいろいろな問題が出てきておるというぐあいに認識をいたしております。
  98. 諫山博

    諫山委員 この乳価、豚価の問題で、東京で酪農農民の決起集会が行なわれました。そして自民党の代表があいさつをすると、やじり倒されてあいさつができないというような状態です。もっとも共産党の私にもやじが飛びました、早く政権を取れというやじが飛びました。これは自民党の酪農政策に対するきびしい批判の声だと思いますが、政務次官はこういう状態になったことに対してどう考えておられるのか、御説明願いたいと思います。
  99. 中尾栄一

    中尾政府委員 ただいま先生の御指摘になられましたことは、いささかなりとも政治的問題でございますので、そのような御声援があったことは、政党としてはまことに喜ばしいことであった、私も他党を非常にうらやむ思いで見ておるのでございますが、決して自由民主党もそれに対して反省することなくやっておるわけではございませんで、前向きにこの問題は考えていかなければならないし、同時に、この問題は慎重にとらえて、農家、農民のためにこそ農林省があるので、その農林省のたてまえというものを踏まえて私どもは行政に任じておるわけでございますから、その行政の上に立って、私どもは指導方針を誤らないように考えていくべきであるという意識を持つ次第でございます。
  100. 諫山博

    諫山委員 政務次官にもう一つお聞きします。  保証価格の上昇率を見てみますと、昭和四十五年度がわずかに〇・五%、四六年度がわずかに一・七%、四十七年度がわずかに二・二%、四十八年度がどうなるかというのはこれからの問題ですが、この物価高の激しい現在、これで酪農経営が安定すると思っておられますか、それとも物価高の被害というのは北海道のほうにはあまり及んでこないだろうとでも思っておられるのでしょうか、御説明願いたいと思います。
  101. 中尾栄一

    中尾政府委員 ただいまの御質問は、保証価格を上げていくべきであるという考えをお持ちかどうかという御質問にとらえてよろしゅうございましょうか。
  102. 諫山博

    諫山委員 同時に、いままでについて反省はないのかということも御説明願いたい。
  103. 中尾栄一

    中尾政府委員 この保証価格の問題は、もう私も、特に政務次官を拝命して以来多角度にいろいろ承っておるのでございますが。確かに昨今の物価現象並びにまたその投機的ブームといわれるような昨今のこの動きなどを背景にして考えますると、当然それにちなんで、また並行して、このものを勘案すべきであるという考え方に私は立つものでございまして、反省の材料には十分しておるつもりでございます。
  104. 諫山博

    諫山委員 いま乳牛乳牛として利用するのではなくて、牛肉のために殺しているということが非常にうわさされております。農業新聞なんかでは、乳牛の三分の一が一年間に殺されたのじゃないかということさえ書かれております。この実情を農林借としてはどう把握しておられるのか、また、こういう事態が起こってきた原因は低乳価と関係がないと思っているのか、御説明願いたいと思います。
  105. 下浦静平

    下浦説明員 屠殺の関係でございますけれども、これは先ほど島田先生の御質問お答えしたとおりでございまして、確かに高い水準にはあるわけでございますが、昨今では横ばいから下降ぎみというぐあいになってきております。したがいまして、この牛肉の強い需要に対する一つの現象ということは、御指摘のとおりあろうかと存じておりますが、この乳価の問題との直接的な関連というものはさほどないのではないかと存じております。
  106. 諫山博

    諫山委員 きょうこの席には酪農農民がたくさんおられます。あなたの発言を納得できましょうか。牛肉が高いからそうなったんだ、乳価が安いからじゃない、こう言われるのですか。もう一ぺんその点を御説明願いたい。これは政務次官から御説明ください。
  107. 中尾栄一

    中尾政府委員 この問題は担当官にまず説明をさせてみたいと思います。
  108. 下浦静平

    下浦説明員 価格の関係がないとは私、申し上げておりませんので、直接的にはさほどのからみはないという申し上げ方をしたわけでございます。ただ、牛肉価格が、非常に強い需要にささえられまして強含みに推移いたしておりますので、先ほど来論議をいたしました下層階層の脱落の際に市場に出るという傾向ではないかというぐあいに考えております。
  109. 諫山博

    諫山委員 乳牛乳牛として利用せずに、殺して牛肉にするというのはたいへんなことだと思います。農家にしてみれば、血の出るような思いでそういうことをしているはずです。この問題について、主たる原因は牛肉が高いからだという御説明のようですが、これでは農林省の反省というのは全く見られません。こういう状態が出てきているのを正常だと思っているのか、またどういう方向で是正しようとしておられるのか、農林政務次官に御説明願いたいと思います。
  110. 中尾栄一

    中尾政府委員 先生のおっしゃるとおりでございまして、確かにその点はいささかなりとも私どもがそのような基本路線に立って考えているとするならば、十分反省しなければ相ならぬと思うのでございます。以後その点は十分に考慮したいと思っております。
  111. 諫山博

    諫山委員 乳牛乳牛として利用する、また乳牛乳牛として利用するような価格を保証する、これが酪農政策の基本だと思いますが、この点について次官に御説明願いたいと思います。
  112. 中尾栄一

    中尾政府委員 そのとおりだと思います。
  113. 諫山博

    諫山委員 そうなりますと、保証価格というのは大幅に引き上げなければならない。いまのような保証価格が続いている限り、農業新聞によれば、日本酪農は崩壊するのじゃないかといわれているわけですが、そういう観点から保証価格の決定を検討されておると聞いていいでしょうか。
  114. 下浦静平

    下浦説明員 先ほど来いろいろ御指摘のございます酪農をめぐります昨今の諸現象頭数減少なり戸数減少あるいは生乳生産の停滞というような事実は事実として私どもよく頭に置いて今回の乳価決定に当たるというつもりでございます。
  115. 諫山博

    諫山委員 先刻来酪農農家戸数が激減したということが問題になりましたが、同時に、昨年度あたりから乳牛の飼育頭数も停滞ぎみだ、場合によったら減少しているという結果があらわれているようですが、いかがでしょうか。
  116. 下浦静平

    下浦説明員 御指摘のとおりでございまして、乳牛頭数につきましては、四十六年二月一日現在で百八十五万六千頭が百八十一万九千頭と四十七年二月一日現在でなっております。
  117. 諫山博

    諫山委員 政府酪農振興ということを非常に強調しております。ところが、農家経営戸数が減るだけではなくて、乳牛自体が減少するというのはたいへんなことだと思います。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 こういう事態を農林省としては予想していたのか、それとも予想しない事態が生じたのか、どちらでしょうか。
  118. 下浦静平

    下浦説明員 先ほどもお答えいたしましたとおり、予想はしておりませんところでございます。
  119. 諫山博

    諫山委員 その原因はどこにあると考えておられるのか、またどういう方向でこの状態を是正しょうとしておられるのか、御説明願いたい。
  120. 下浦静平

    下浦説明員 この問題の原因でございますけれども、やはりいろいろな原因があろうかと存じますが、先ほども申し上げましたとおり、全体的には多頭化が非常に進んでまいっております。したがいまして、一頭ないし四頭の階層あるいは五頭ないし九頭の階層というものがだんだん減少してまいりまして、上の階層がふえているということでございますが、従来はその下のほうの階層が減ってまいります分を上のほうの階層がカバーをしてまいったという現象があったわけでございますが、この乳牛頭数減少という事態につきましては、それは上のほうの階層が下のほうの減少をカバーし切れなかったという現象が出てきた、こういうぐあいに考えておるところでございます。したがいまして、今後ともいろいろ酪農振興対策をはかっていかなければならないと思いますが、飼料基盤の整備なりあるいは生産団地の育成というようなことを通じましてじみちにやってまいりたいと考えております。
  121. 諫山博

    諫山委員 一言で言えば、いままでは小さな酪農農民が次々とふるい落とされた、一昨年、昨年あたりから大きな酪農農民も行き詰まり始めた、こういうことのように見えます。そうすると、酪農行政というのは初めから終わりまで全部失敗だらけだったという結論になると思いますが、次官はこの点いかがお考えでしょうか。
  122. 中尾栄一

    中尾政府委員 御指摘のとおりの現象面と受け取れると思いますが、多頭化現象が非常に増大しておる昨今でございますだけに、そのような現況が起こることと判断しております。
  123. 諫山博

    諫山委員 こういう状態が出てきた大きな原因の一つが、保証価格が安過ぎることにあるというふうには考えていませんか。
  124. 下浦静平

    下浦説明員 価格の点もあろうかとも存じますけれども、先ほども申し上げましたとおり、加工原料乳地帯、一道四県でございますが、ここにおきましては乳牛頭数はなお増加傾向にあるということでございますので、直接的なからみはさほどないのではないかというぐあいに考えております。
  125. 諫山博

    諫山委員 保証価格というのは直接的には加工用牛乳の問題のようですが、しかし、これは飲用牛乳についても非常に大きな影響を持っているというように私ども考えています。保証価格を安く据え置くことによって、飲用牛乳の価格を安くするという作用を持っていることは明らかです。その意味では、いま問題になっている保証価格をどのくらい引き上げるかということは、日本酪農経営全体にとって非常に中心的な重大な問題です。これが例年〇・五%しか引き上げられないとか、一%、二%しか引き上げられないというのではお話になりません。これでは日本酪農が崩壊するのではないかという心配を持たれるのは私は当然だと思います。その意味では、この保証価格というのは十分生産費を償うような価格にすべきだ、当面米並みの労働報酬が得られるべきだと私たちは考えております。  そこで、現在のこの保証価格は米並みの労働報酬と言える状態になっているのかどうか、この点を御説明願いたいと思います。
  126. 下浦静平

    下浦説明員 米は、先生御承知のように、食糧管理特別会計がございまして、全面的に政府管理のもとに置かれておるものでございます。牛乳につきましては、そういう米の立場とかなり違う面があるわけでございまして、米並みの価格の構成ということには現在のところなっておりません。
  127. 諫山博

    諫山委員 一時間当たりの労働報酬が、お米の場合には幾らであり、保証価格の場合には幾らであるということを御説明願いたいと思います。
  128. 下浦静平

    下浦説明員 たいへん恐縮でございますが、もう一度おっしゃっていただきたいと存じます。
  129. 諫山博

    諫山委員 一時間当たりの労働報酬が、お米の場合には幾らであり、加工用牛乳をつくっている酪農農民の場合には幾らであるという説明です。
  130. 下浦静平

    下浦説明員 一日当たりの家族労働報酬で申し上げます。酪農の場合には二千百十九円でございます。それから水稲の場合には二千三百八円、こういうことに相なっております。
  131. 諫山博

    諫山委員 一日当たりの家族の労働報酬が、米と酪農農民では一日平均二百円ぐらい違いますね。これは酪農農民全般についての数字だと思いますが、保証価格の場合はどうなりましょうか。
  132. 下浦静平

    下浦説明員 ただいま御指摘の計算はいたしておりませんので、後ほど差し上げたいと存じます。
  133. 諫山博

    諫山委員 農業基本法で果樹とか畜藤の振興というのが叫ばれました。そしてお米をつくらなくてもやっていけるような農業ということが政府から盛んに奨励されたわけです。ところが、現在の実情を見てみますと、酪農農民の場合には米並みの労働報酬が保障されていない。概略一口の家族の労働報酬が二百円ぐらい違うという結果が出ているようですが、この問題を正常な状態とお考えなのか、それとも是正すべきだと考えておられるか、政務次官にお聞きしたいと思います。
  134. 中尾栄一

    中尾政府委員 その数字の上ではとても正常とは思っておりません。
  135. 諫山博

    諫山委員 いまの状態を正常でないと考えておられるなら、どういう方法で是正されるつもりか、御説明願いたいと思います。
  136. 中尾栄一

    中尾政府委員 酪農の基本的な態度を十分に見きわめまして、一歩一歩農業基本法に基づいて前進をさせていくことだと思っております。
  137. 諫山博

    諫山委員 解決はきわめて簡単です。牛乳の価格を引き上げるということが一番簡単にできる、また直ちにしなければならない解決策です。そのことを要求してたくさんの人たちがきょうも傍聴に来ておられるし、また決起集会なども開かれているわけです。この点を農林省としてはもっと本気で考えなければならないと思います。  さらに、農業に対してどのくらい政府が金を使うのかということも大きな問題です。私たちは軍事費のために金を使ったり、一部の大企業のために金を使うのではなくて、社会福祉あるいは農業の発展というようなことにもっと金を使わなければならないと思います。  そこで、私の手元に昭和四十六年度に農業就業人口一人当たりどのくらいの農業予算が組まれたかという各国の調査資料があります。これを見ますと、アメリカの場合には農民一人当たりの予算額が六十二万一千円、イギリスの場合には四十五万七千円、フランスは三十七万四千円、西ドイツは二十二万三千円。ところが日本の場合はわずかに八万六千円。つまり日本農業関係予算というのはアメリカの七分の一、イギリスの五分の一、こういう状態のようですが、この点はどう考えておられるのか、政務次官にお聞きします。
  138. 中尾栄一

    中尾政府委員 確かに大きな差であることは、率直にこの統計の中では認めなければならぬと思います。ただ、単位当たりの問題点等は私も研究をしておりませんので、お聞き及びしておきたいと思います。
  139. 諫山博

    諫山委員 四次防の計画に膨大な金を使うということが今度の国会でも問題になりましたが、農業予算が農民一人当たりアメリカの七分の一、イギリスの五分の一、その他のヨーロッパ諸国に比べてもお話にならないというのでは、農家経営が成り立たなくなっていくのは当然だと思います。その点では、これは自民党の誤った農業政策のために、いまの深刻な農業危機が生じたと思っております。  この問題に関連して養豚について少しお聞きしたいと思いますが、養豚についても養豚の飼育戸数が激減しつつある傾向が出ているようですが、この点はいかがでしょうか。
  140. 下浦静平

    下浦説明員 お答え申し上げます。  養豚の飼養農家戸数でありますが、この五年くらいを申し上げます。四十三年におきましては飼養農家戸数五十三万六百戸でございます。四十七年におきましてはそれが三十三万九千七百戸、こういうぐあいに相なっております。
  141. 諫山博

    諫山委員 豚の飼養戸数が激減した。しかし、一面では飼育頭数増加傾向にあるというのがこの十年間の大体の傾向のようですが、それにしても昨年あたりから飼育頭数伸び悩みの状態にあるということが数字であらわれております。この点については農林省としてはこれでいいと思っているのか、何か是正策を考えておられるのか、御説明願いたいと思います。
  142. 下浦静平

    下浦説明員 豚肉の問題でございますけれども、豚肉は日本の食肉供給の中で四割近いシェアを占めておるわけでございまして、今後も非常に重要な物資であるというぐあいに認識をいたしております。したがいまして、今後とも養豚も伸ばしていかなければならないというぐあいに考えておりますが、ただいま御指摘の点につきましては、大体二点あろうかと存じております。  一つは環境問題でございます。養豚経営をめぐりまして水質の問題あるいは悪臭の問題等が最近かなり出てきております。これが養豚経営を阻害する一つの原因ではないかと思います。もう一つは繁殖部門の伸び悩みでございまして、なかなか国内の強い需要についていけないという点がございます。したがいまして、養豚につきましては、この二点につきまして重点的に今後いろいろな施策を講じてまいりたいと存じております。
  143. 諫山博

    諫山委員 さっきからの討論の中で、ことしの三月、乳製品協会から牛乳の価格について申し入れがあったということですが、これは例年行なわれていますか。
  144. 下浦静平

    下浦説明員 例年来ておるそうでございます。
  145. 諫山博

    諫山委員 乳製品協会というのはどういう企業によってつくられている組織でしょうか。
  146. 下浦静平

    下浦説明員 乳業会社が構成メンバーになっている団体というぐあいに承知をいたしております。
  147. 諫山博

    諫山委員 森永、明治、雪印というような乳業資本が急速に利潤をふやしている。特に不足払い制度が発足して以来、利潤率の増加が急速になったということがいろいろ問題になっております。この実情について御説明願いたいと思います。
  148. 下浦静平

    下浦説明員 乳業につきましては実はいろいろ消長がございます。先ほども島田先生の御質問お答えをいたしましたが、過剰の時代にはいわゆる余乳の処理というようなことが出てまいりまして、なかなか製品が売れない、こういう事態があるわけでございまして、ちょうど四十二年、三年ごろの過剰時代におきましてはあまり経営はよくなかったかと存じておる次第でございます。ただ、昨今は生乳はかなり需給が逼迫ぎみでございますので、安定指標価格を上回る市場価格が形成されておるという状況でございますので、若干経営といたしましては好転をしたような傾向ではないかと存じております。
  149. 諫山博

    諫山委員 不足払い制度が実施されたのは昭和四十一年度からですが、雪印の四十年度における帳簿上の純利益は四十億円。ところが、不足払い制度が実施された四十一年度は五十一億円にふくれた。同じく明治の場合が帳簿上の純利益は四十年十九億七千万円が三十五億六千万円にふくれたという数字が発表されております。この一、二年どういう状態になっていましょうか。
  150. 下浦静平

    下浦説明員 ただいま手元に資料を持ち合わせておりませんので、後ほどお届けをいたしたいと思います。
  151. 諫山博

    諫山委員 乳業資本が不足払い制度発足を一つの契機にしてたいへん利益をふやすようになった。そして毎年こういう会社が価格決定の時期になると政府に申し入れをするということが明らかになりましたが、政府に対して申し入れをするだけではなくて、こういう大企業が膨大な政治献金をするようになったというのも、最近の大きな特色ではないかと思います。  そこで、自治省の人にお聞きしたいと思いますが、この三年間くらいで乳業三社がどのくらい政治献金をしたか、政治献金を受けた相手方はどういう団体、どういう個人であるのか、御説明願いたいと思います。
  152. 佐藤順一

    ○佐藤説明員 あらかじめお尋ねがございましたので、官報公表事項の中からこれを見てみますと、森永乳業につきましては、四十七年上期三百六十三万円、四十六年五万円、四十五年ゼロとなっております。明治乳業につきましては、四十七年上期三寸六十三万円、四十六年二百万円、四十五年八十万円となっております。雪印乳業につきましては、四十七年上期三百七十万円、四十六年百五十万円、四十五年百万円となっております。
  153. 諫山博

    諫山委員 いまの数字を総計しますと、四十六年度で乳業三社が三百五十五万円政治献金をした。四十七年度の上半期で一千九十六万円政治献金をしたという数字になりますが、献金を受けた先はどういうところでしょうか。
  154. 佐藤順一

    ○佐藤説明員 手元に四十七年上期の官報がございますので、これについて見ますと、これはいずれも乳業政治経済研究会に寄付をいたしたということに公表されております。
  155. 諫山博

    諫山委員 乳業政治経済研究会というのは、私の聞きなれない団体ですが、どういう組織ですか。
  156. 佐藤順一

    ○佐藤説明員 自治省に対する届け出におきましては、この政治団体の性格は承知いたしておりません。
  157. 諫山博

    諫山委員 農林省側に聞きますが、これはどういう団体ですか。
  158. 下浦静平

    下浦説明員 私ども先生からお話がございますまで全く存じておりませんでしたのでございます。それでお話がございましたので調べてみましたところ、ただいま自治省から御答弁のありましたようなことにつきましてはわかったという段階でございます。
  159. 諫山博

    諫山委員 昨年の上半期だけで一千九十六万円も政治献金がされる。そして一方では、毎年乳価決定時期になると、乳業会社が政府に対していろいろあつかましい申し入れをするというのはきわめて重大な問題です。私たちとしては、この申し入れと政治献金が決して無関係だとは受け取れません。しかも政治献金の額というのは年々たいへんな勢いでふえているのです。ことしの上半期は昨年度に比べて約三倍。おそらくこの政治献金というのは、われわれの常識からいえば、自民党かあるいはそれに近いところにしかいかないだろうと思います。この問題を政務次官はどう考えられるのか、御説明願いたいと思います。
  160. 中尾栄一

    中尾政府委員 先ほどの先生の御指摘の中に、この乳価問題をめぐりまして政治的な発言が非常に多々感じられたのでございますけれども、私も、先ほど担当官から答えましたように、この問題に限っては全く存じ上げておりません。  同時にまた、それが自民党であるのではないかという憶測も、これまた揣摩憶測にすぎない感想ではないか、こう感ぜられるのでございまして、私はその発言はまた折り返し先生にぜひともひとつお差し控え願い上げたい、こう感ずる次第でございます。
  161. 諫山博

    諫山委員 私の推測が間違っているかどうか、あとでけっこうですから、ぜひこれは農林省のほうで調査していただきたいと思います。調査の約束できますか。そして自民党筋でなければ、いまの私の発言は改めます。調査約束できますか。
  162. 下浦静平

    下浦説明員 できるだけの調査をやってみたいと存じます。
  163. 諫山博

    諫山委員 一九七〇年度の経済白書の中に興味深い統計が出ております。それは牛乳一合飲むのに労働者がどれだけの時間働かなければならないかという統計です。七〇年度の経済白書によりますと、アメリカの労働者は一分間働けば牛乳が飲める、西ドイツの労働者は二分間働けば牛乳が飲める、イギリスの労働者も二分間でいい、フランスやイタリアの労働者は三分間働けば牛乳が飲める、日本の労働者は六分間働かないと牛乳一本が飲めないと書いてあるのです。これは経済白書です。こういう状態を改めていくなら、牛乳の消費量というのは飛躍的に発展すると思います。そしてこういう状態が続いている一つの原因は、日本の労働者の低賃金、もう一つの原因は乳業資本が牛乳の消費者価格を意識的につり上げている。そしてこのことが一方では雪印や明治、森永の利益をふやし、一方では日本酪農を崩壊に追い込もうとしているという原因だと私は考えております。こういう問題について政務次官の見解をお聞きしたいと思います。
  164. 中尾栄一

    中尾政府委員 先生の御質問は、いささかちょっと私自身も理解でき得なかったのでございますけれども、まことにおそれ入りますが、あと一度申していただければありがたいと思います。まことに申しわけございません。
  165. 諫山博

    諫山委員 一九七〇年の経済白書によりますと、日本の労働者は六分間も働かないと牛乳が一本飲めない。アメリカの労働者は一分間でいい。西ドイツの労働者は二分間働けば牛乳が飲める。イギリスやフランスの労働者は三分間働けば牛乳が飲める。つまり日本人にとっては牛乳というのは貴重品になっているわけです。こういう状態が出ている一つの原因は、労働者の賃金が安過ぎる、もう一つの原因は、大企業が乳価をつり上げているということにあると思います。この状態が改められれば、日本酪農というのはもっと発展していくんじゃないか、牛乳の消費もふえるはずだ、こういう問題です。
  166. 中尾栄一

    中尾政府委員 外国の例はいま私も初めて承ったわけでございますが、確かに、私も欧米に何年かおりました関係で、非常に牛乳がよく飲まれていることだけは、日本では見られない現象だと私も記憶にとどめているわけでございます。これはもう乳飲み子のころから牛乳が全く日常生活の中に入っておるという生活環境でございますだけに、日本の場合も戦後の傾向としてはそれがやや顕著に欧米並みに見られつつあるという昨今であると私も感じておった次第でございます。  確かに御指摘のとおり、労働賃金も安い、これも一つでありましょう。また同時に、そういう製造メーカーにおけるその問題点等も昨今とみに問題になっている点でもございましょうから、そういう点も十分考えていかなければならないという感じ方で受けとめております。
  167. 諫山博

    諫山委員 私たちはもともと牛乳を飲用牛乳と加工用牛乳に分けて差別取り扱いをするということ自体に反対です。そうしなければならない合理性は全くありません。特に、同じ牛乳でありながら、加工用の牛乳だというだけで非常に安いという問題は私はどうしても理解できません。その点ではいまの制度自体が改められるべきではないかと考えておりますが、それにしましても、いまの制度の中でももっと改善すべき点が幾らもあると思います。  一番大きな問題は、何といっても保証価格が安過ぎるということです。しかも、この保証価格が安いというのは、まさに日本酪農経営を崩壊させるというところまで来ております。ですから、私は、生産費を償う生産乳価という原則に従って、保証価格を大幅に引き上げるということがいま緊急に必要だと思います。この点では、農民団体から具体的な金額まであげて要求が出ております。豚価についても同様です。この点を十分考慮しながら、これからの乳価決定を行なっていただきたい。  同時にまた、乳業資本に対しては過保護ではないか、保護され過ぎているのではないかというのが私の率直な感じです。そのことは、不足払い制度のもとで乳業資本がどのくらいもうけているかということを見ただけでも明らかです。しかも、酪農農民には低乳価を押しつけておきながら、去年の上半期だけで一千万円をこすような政治献金をするというようなことは、私はどうしても是認するわけにはいきません。  その点では、日本酪農農政というのは根本的に改められるべきだと思いますし、また差し迫っておる乳価、豚価についても、いままでのような、ただきまり切った数式で計算だけをするというのではなくて、根本的な対策を立てる必要があると思います。特にいま飼料問題が非常に深刻になりました。どのくらい飼料が値上がりするのかわからないという状態でありますから、この点を当然これからの乳価の決定には大幅に取り入れるということが必要になると思います。そういう問題について、最後でございますが、政務次官の見解をお聞きしたいと思います。
  168. 中尾栄一

    中尾政府委員 諫山先生の先ほど来言われておりまする考え方というものの基本は、私は一つも否定するものではないし、同時にまた、基本的な見解というものは遂行すべきものであるという考え方にむしろ立っておるのでございます。  たとえて言うならば、先ほど乳業資本の非常に過保護であるというおことばでございますが、私は昨今の現象を見まして、そういう乳業資本であれ何であれ、投機的な現象を呈しておりますこういう資本家形態というものは徹底的に断固なくすべきものである、私はそういう観点に立っておるのでございます。  これは個人的な考え方を申して恐縮でございますけれども、これは農林省として変わりはないという感じが私はしております。なぜならば、農林省はあくまでも農民あるいはまた農業行政あるいはまた農業生産者というものを対象に、農林省というものがこれだけの人数を擁してあるわけでございますから、あくまでも日の当たらない農民に日の当たる場所を、またほんとうに救われない農業にあくまでも私たちは救いをという、根本的な態度、理念をもってこの問題を追及していくことにはやぶさかではございません。農林省の一員とてその気持ちは一つも変わらずに持っておることと思います。しかし、いかんせん、御承知のように、昨今の現状を見ますると、農林行政の不行き届きも多々見られることは、先生が先ほど御指摘したとおりだと思うのでございます。その点は私どもも十二分に反省すべき問題点は反省いたしまして、そしてこれをまた政策の上に、行政の上に反映していこうということにおける態度も、これまた私どもはお約束できょうと思うのでございます。  先ほど来、私ども乳価の保証価格というものを設定でき得ないということに対して、何やらいろいろと御詰問がございましたけれども、決してそういうものではございませんで、私どもも、皆さま方からいただきました御意見は、審議会にも十分に反映する覚悟と気持ちだけはできております。そういう意味におきましては、農林省並びに自由民主党といたしましても、私どもの知っておる限りにおいて、あくまでも農林行政のために施策をやっておる政党であることも、これまた私の行政の立場からも、まあ諫山先生には御反論を申し上げなければならぬ立場であるという感じがするわけでございますが、決して私は反論をするわけではございません。しかし、あくまでも政党というものは、いわゆる議会政治の中にあってお互いに歩み寄りながら、意見、見解を発表し合いながら煮詰まっていくものを農林省がとらえていく、そういう方向づけの中で農林省の政策を断行していくつもりでございますから、どうぞさようにお心がまえをお持ちいただければ幸いでございます。
  169. 諫山博

    諫山委員 あとは大臣質問いたします。
  170. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 中川利三郎君。
  171. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それではさっそくお伺いしますが、四十八年度の加工原料乳保証価格や豚価安定基準価格をめぐりまして、いま全国の農民の方々は死活の問題としてその成り行きを見ているわけであります。  先ほど虎ノ門の久保講堂で開かれました全国農協の代表者大会もそうでありますし、その他各地でそういう集会が開かれているわけでありますが、特に私が申し上げたいのは、北海道の根室、釧路と並ぶ大酪農基地である天北の小林喜代治さんという方でありますが、この方は去る三月六日、おりからの吹雪を突きまして、稚内の宗谷農業会館で開かれた大会に出て、低乳価にあえぐ農民の実態を訴えた。ところが、そのふんまんの声が半ばにして、突然その場にくずれ落ちて倒れ、そのまま息を引き取ったというのです。「日刊酪農乳業速報」によりますと、その模様について、ぎりぎりの線まで追い込められた全酪農民の心情を物語るように、国に対する恨みを込めた死であった、こう報道しているのであります。  そこでお聞きするのでありますが、今日の畜産危機をもたらした、そして無数の善良な小林さんをつくり上げているこの責任は、多頭化経営規模拡大に追い上げて、その前提である飼料基盤やいろいろな施策を一貫して怠ってきた自民党にあるということは、もはや今日の常識と思いますが、まずこれについて当局の御答弁をお聞きしたいのであります。
  172. 下浦静平

    下浦説明員 お答え申し上げます。  先ほども諫山先生の御質問お答えをしたところでございますけれども北海道酪農については、私どもも今後の日本全体の酪農に占める地位というものに非常に注目をしておるところでございまして、従来からも飼料基盤の整備あるいは生産団地の育成というようなことを通じましてやってまいったところでございますけれども、今後とも大いに力を入れて努力を続けてまいるつもりでございます。
  173. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そんな月並みな答弁でだれがいま納得しますか。あなた方は畜産基盤の整備と言いましたけれども、需給の見通しだとかいろいろなものを見るたびに、だんだん少なくなってきているのが現状でないですか。そういう答弁で納得する人は畜産経営農家の中には一人もいません。もっと責任ある答弁をしてください。
  174. 下浦静平

    下浦説明員 飼料の全体の需給につきましては、中小家畜が非常に伸びてまいったということに伴いまして、農厚飼料のウエートが非常に高くなってまいった。したがいまして、相対的に粗飼料のウエートが低く出るということはございます。ただ、大家畜につきましては、これはどうしてもえさを主体に置かなくちゃなりませんので、良質粗飼料というものに主体を置いた施策をやってまいるということでございます。
  175. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いずれにしても、いまお話しした善良な農民、小林さんのような方を次から次へとあなた方はこさえておるのですよ。このことについて責任をあなた方は認めるかどうかということを聞いておるのです。
  176. 中尾栄一

    中尾政府委員 先ほど先生の言われましたおことばの中に、お一人の農民を犠牲になしたということを承りまして、先生の御心痛と同様に、私も為政者の一員といたしまして深く感ずるところがございます。自由民主党の農政も農林委員会もともどもひとつお互いに意見を開陳し合って考えていくべき問題であるという考え方に立ちます。
  177. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 この問題の責任を私は自民党政治責任でないかということを聞いているのです。それに対して農林水産委員全体の責任に転嫁するというようなことでなくして、自民党はこのことについて——小林さんという一人の人じゃないんですよ、たくさんの小林さんを生み出しているんですよ。このことについて責任をどのようにお感じになっているかということを聞いているのです。
  178. 中尾栄一

    中尾政府委員 どうも先生の御論法を聞いておりますと、小林さんのそのような致命的なあり方は、自由民主党がそのように持っていった、こういうような考え方から、それをどのように反省しておるのかという御質問をなさっておるように感ずるのでございますけれども政治というものは一つの政党だけでやっているものではないということから、私はこういう問題点は、農業考えておる立場でそれぞれお互いに責任感じ合おう。特に私どもは現在為政の立場でございます。行政を握っておる立場でございますだけに、その点における反省は十分した上での御答弁であることを十分御認知いただきたいと思うのでございます。
  179. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 自民党に申し上げるけれども、今日の国民の声を政府は何と聞いているかということですね。特に農林水産委員会みなの責任とあなたは言うのですけれども、このとおりだれもおらぬじゃないですか。こういう状態の中であなた方はどういう責任をとったかということ、いま農民を殺すような政治になっているじゃないか、このことについてあなたの反省はどうなのか、政府当局の反省はどうなのか、このことを聞いているのです。
  180. 中尾栄一

    中尾政府委員 先ほど申し上げましたとおり、私個人といたしましては、中川先生の御心境そのままでございます。同時にまた、自由民主党といたしましても、当然この問題に対しては責任感じてあたりまえのことであると私は感じております。
  181. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 最近の新聞の見出しを見るだけでも、畜産農家現状については「食鳥組合ついに転業」三月十九日付農業新聞、徳島の例です。「大麻ブロイラー株式会社一万五千羽鶏舎十三むねのうち四むねを“サンダル工場”へ」サンダルの工場になったという。「牛肉高騰、乳牛もつぶせ」三月十五日毎日新聞です。「えさ代高騰“モウいけません”」宮城県の例です。とにかくいろいろな見出しだけでも読めば、これは明らかに政府の、自民党の失政のあらわれだと思うのです。あなたはいま十分責任感じていると言いましたが、それであるならば、その責任を償うような形でできる限りの対策をすることが最大の課題だと思いますが、そういうことについてどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思うのであります。
  182. 中尾栄一

    中尾政府委員 飼料の異常事態と申しましょうか、政府はどのような措置を考えまたその措置をとってきたか、こういう御質問かと思いますから、私自身も少しくその問題点について申し述べてみたいと思います。  過剰米及び政府の操作飼料の三月から六月までの間における緊急の集中売却というものはすでに先生御承知のとおりだろうと思いますが、二番目の問題といたしまして、配合飼料格安定基金に対する助成、さらに第三番目といたしまして、畜産農家の負担軽減のための低利融資等について検討中であると前の委員会で大臣答弁がありましたとおり、近来鋭意政府部内では検討を続けておりまして、二月二十七日に、政府操作飼料約二十五万トン及び過剰米約五十万トンの三月から六月までの間の緊急集中売却を決定いたしました。さらに農協系統の配合飼料格安定基金及び農協糸以外のものにつきましても基金を確立いたしまして、これらの基金に対する出資等の助成もなしたわけでございます。さらに畜産農家飼料購入資金の一部についての低利資金の融通措置の実施、これは融通総額は二百二十六億円、利子補給額は十七億円になるわけでございますが、などを内容といたしまして飼料の緊急対策を決定いたしました。  このうち、先ほどの一番最初に述べました放出米につきましては、すでに三月には緊急用として過剰米二万八千トン及び政府操作の麦類を同じく二万八千トン売却したところでございます。  さらに二点目の問題につきましては、農協系以外のものについて三月十二日、社団法人の全日本配合飼料格安定基金の設立を許可いたしまして、既存の農協糸の基金とともに三月から九月までの補てんの充実に伴う助成措置について現在手続を進めている最中でございます。  三番目の問題につきましても、関係方面との調整を完了いたしまして、具体的手続をとっておるところでございます。  さらに最後には、国際通貨の調整に伴いますフローティングのメリットをできるだけ配合飼料価格に反映せしめるよう鋭意指導を行なっていこう、こういう考え方に立っている次第でございます。
  183. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私のほうで時間の配分を間違えまして、私、もう少しで終わることになっているようでありますのであれですが、まずお伺いします。  あなたは、三月から六月までの間に集中払い下げをする。三月中には古々米を二万八千トンやった。政府操作飼料、大麦その他も二万八千トンだ。これがいま、目の先四千何百円上がるという状況の中で、どれだけ効果があるということを期待したのか。そのことが一つと、同時に、三月から六月までやるとするならば、その日程表、つまり三月には何ぼ、四月には何を何ぼ、五月には何ぼ、六月には何ぼというかっこうで畜産農家の前にその放出計画を明らかにすべきだと私、思いますが、この点についてそういう用意があるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  184. 中尾栄一

    中尾政府委員 その点については、担当に答えさせたいと思います。
  185. 下浦静平

    下浦説明員 第一点の問題でございますが、三月に売却をいたしました過剰米二万八千トン並びに麦類二万八千トンにつきましては、四十七年度予算におきます単価で売却を行なっております。  それから、とりあえず三月にはいま申し上げましたような数量の売却を行なったところでございまして、まだ四月、五月、六月にそれぞれ月ごとに幾らにするかという数字の詰めはやっておりませんが、ただいま四月分につきましてどうするかということを検討いたしておる段階でございます。
  186. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いま四月から値上げすることがわかっていながら、それの対策用として三月に出したものは、古々米についていえばただの二万八千トン、これでどれだけの効果があるか、どれだけ皆さんの立場に立ってこういう数字を出したのか。これは農民の皆さん方にしますと、非常に思いやりのない措置であるというふうに考えざるを得ないわけですから、これについて私は非常に不満だと思うのです。  同時に、今後払い下げをする分についてはまだ計画を立てておらない、どうするかわからない。それでは先行きの不安は消えないわけですから、いまの情勢だったら、政府は最大の責任感じているというならば、当然月ごとの放出計画を明らかにすべきだ。これは当然です。それが政治というものじゃないですか。まだそれをやっていないというのはどういうことですか。
  187. 下浦静平

    下浦説明員 ただいま先生御指摘の点は、一応の売却計画といたしましては、三月分を除きました部分につきまして四、五、六と均等に売りたいと考えておるわけでございますが、なお、その間の需給の動向を見きわめる必要がございますので、早急にきめたいと存じております。
  188. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あわせて二つほど申しますが、わが党は、古々米につきましては百五万トンを放出して、いま農民の方々の生き死にかかわる問題なんだから、五十万トンなんてそんなことでなくて、百五万トン全部出したらいいじゃないか、こういうことを提言しているわけでありますが、政府はなぜ五十万トンにこだわるのか、この点についてお伺いしたいということと、もう一つは、各農協の倉庫に行きますと、台つき米という米がありますね。農協の倉庫の下敷きになって幾ぶんよごれている米です。これが何も使いもされないでそのまま放置されているという状況なんです。秋田でもこれが約二千トンあります。この台つき米、一番下にある米ですね。この米を別ワクにして放出する、こういうことにすれば、それだけでもたいへん皆さんが喜ぶことになると思いますが、そういう準備はないかどうか、お伺いしたいと思います。
  189. 下浦静平

    下浦説明員 ただいま御指摘のございました台つき米につきましてでございますが、私どももできるだけ、何か事故品のようなものでもないのかということで、物量的に問題が出そうだという話が出ましたときから、食糧庁のほうにも相談をかけておったような経緯がございます。ただいま御指摘もございましたので、食糧庁側ともよく相談をいたしてみたいと存じております。  それから、飼料用に払い下げます過剰米の数量でございますけれども、これは食糧庁の計画では六十一万何千トンかの計画を四十八年度に持っておるわけでありまして、そのうちの十何万トンくらいをさらに徳用米に充てたいというような計画でございまして、つまり差し引きいたしまして五十万トンということになっておるわけであります。
  190. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 時間の関係もありますので次に進みますけれども、いま農民の人たちは安くて早く大量の政府緊急放出を願っておるわけです。これについて、前回、値段の問題で農水委員会での質問に対して大臣は、そのつどそのつど法律をいじくるということは感心しない、別途に安くよい方法を考える、こういうふうに答えているのですね。いま特別立法する以外に別途によい方法というのは、私ら何ぼ探して考えてみたけれども、ないと思うのですよ。どんな方法を考えついたか、お聞かせをいただきたいと思います。
  191. 中尾栄一

    中尾政府委員 実はきょうその審議会が開かれておる最中でございまして、私、まだその報告を承っておりませんので、後ほどまたひとつ報告させていただきたいと思っております。
  192. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 この前の委員会でこの問題が問題になって、大臣はそう答えておるのですよ。四月からまた値上げするのですよ、あと二、三日うちに。そういうときになって、きょう審議会が開かれておるからそれからだというようなことは、審議会だって当局の原案がなければ審議ができないでしょう。そういう面でどういう方法をいま考えておるのかということを聞いておるわけですから、審議会の答申待ちだということでなくして、あなたのほうの原案をお話しください。
  193. 中尾栄一

    中尾政府委員 大臣が現在参議院のほうの予算委員会に出ておるのでございますが、大体今月中にそのめどをつけて、四月中にはひとつ公表していきたいという旨を参議院のほうでも発表されておるようでございます。その方向づけの中で農林省考えていきたい、こう考えております。
  194. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私も、時間がオーバーで、これでやめますけれども、あと大臣に対する質問を留保する、そういうことで終わらしていただきたいと思います。
  195. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 林孝矩君。
  196. 林孝矩

    ○林(孝)委員 最初に、昨日きょうと議論されました中で、認識の上において一致しているかどうか、その点を確認しておきたいと思います。  問題点の根本は、いわゆる日本の置かれている立場、すなわち昨年来の世界の食糧事情の急速な悪化、それに伴うところの穀物価格の異常な高騰、それが飼料価格の高騰となり、またそれ以外に労賃、物材費の上昇、そうしたものが一体となって現在の畜産に与える影響が非常に大きくなってきた。そういうときに乳価、豚価の問題が符節を合わせて起こっているということで、酪農業の農民の人たち、そうした人たちの声は、いま非常に逼迫した状態の叫びとなってあらわれておる。こういう状態に対して、今日までいろいろな角度から政府に対して酪農農民の方たちのための行政というものに対する強い要望があった、このように私は理解をするわけです。それに対する政府の答弁は、一貫して、こうした現状というものを認識している、そして前向きに慎重に検討するということが繰り返されてきたわけでありますけれども、これは毎年行なわれることであるという点、それからさらに将来の展望ということから考えて、同じような答弁が再びまた来年も繰り返されるというようなことがあってはならないし、またそういう事態が来年も続くようなことになりますと、非常に、本年に輪をかけた大きな悲劇がそこに生まれてくるということを憂慮するものであります。  したがいまして、こうした現状認識において、昨日、きょうと議論されました結果、最初に政務次官にお伺いいたしますけれども、当委員会の委員質問、その背景にある現状というものを、同じ土俵の上で認識されましたかどうかという点、その点をまず確認したいと思うわけであります。
  197. 中尾栄一

    中尾政府委員 おととい、昨日、きょうと、それぞれの政党を代表いたしまして御質問がなされたわけでございまして、もちろん質問の内容が違えばまた質問しておるニュアンスもいろいろな意味で違っておったと思いますけれども、私どもはそれを十分各政党としての意見をそんたくいたしまして、われわれ農林行政に少しでも反映すべきではないかという考え方で聞いておった次第でございます。
  198. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、率直に言いまして、要望もわかり、現状もわかった、じゃ、なぜその要望にこたえることができないのか、そういう点が非常に疑問に感ずるわけですが、御答弁願いたいと思います。
  199. 中尾栄一

    中尾政府委員 きょう、昨日、一昨日と承りましたことは、直ちに各省に持ち帰りまして、各省の中におけるまた局に持ち帰りまして、それぞれ意見を反映しておる最中でございまして、あくまでも前向きにこういうものはとらえていくべきである、国会審議は尊重すべきものであるというたてまえを踏まえて考えておることをまた申し述べてみたいと思います。
  200. 林孝矩

    ○林(孝)委員 質問の中身に入りますが、最初に、これは質問が重複するかもしれませんけれども、四十八年の飼養頭数についてまずお答え願いたいと思います。
  201. 下浦静平

    下浦説明員 お答えいたします。  家畜の飼養頭数の統計の御質問と思います。ただいままで出ております統計は、四十七年の二月一日現在の数字でございまして、それ以降の数字はまだ出ておりません。四十八年の分につきましては、たぶん四月ごろ出るのではないかと存じております。
  202. 林孝矩

    ○林(孝)委員 どのように考えられているか、わかりましたらお答え願いたい。
  203. 下浦静平

    下浦説明員 乳牛につきまして申し上げますが、これは私ども大体技術的に推定ができることでございますので、そういう推定を行ないましたところ、おおむね横ばいぐらいのところではないかと存じております。
  204. 林孝矩

    ○林(孝)委員 四十七年度の飼養頭数は、四十六年に比較しますと二%減少ということになっておりますけれども、これはどういう理由によるものなのか、見解を承りたい。
  205. 下浦静平

    下浦説明員 これも先ほど来いろいろ議論があったところでございますが、私どもといたしましては、従来多頭化現象が進んでいく過程におきまして、下層階層離脱に伴います家畜、その分の家畜が上層の残ります農家に置きかえられていくという経過を繰り返しながら多頭飼育が進んでまいったという経過がございますが、昨今ではどうも、その階層分岐点が上がるに伴いまして、上のほうの階層が、いま申し上げましたような下の離脱してまいります階層をカバーしきれなくなってきたのではないか。したがって、そういうところから頭数減少が起こったのではないかというぐあいに推定をいたしております。
  206. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、政府が「農産物需給の展望と生産目標の試案」の中で、昭和五十七年の生乳生産量八百四十八万二千トン、そのように生産目標示しているわけでありますけれども、この目標達成するためには、毎年五%以上の生産上昇が必要だ、私はそのように思うわけです。ところが、現実の飼養頭数というのが減少しておる。はたしてこの「農産物需給の展望と生産目標の試案」の中にある昭和五十七年度の生産目標八百四十八万二千トンが、このままの状態達成できるのかどうか、政府見通しが誤っているのではないか、そのように思うわけでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
  207. 下浦静平

    下浦説明員 お答え申し上げます。  昨年の十月に公表いたしました「農産物需給の展望と生産目標の試案」、この数値についてのお尋ねでございますが、確かに先生御指摘のとおり、昨今の酪農状況からいたしますと、私ども相当腰を据えてやっていかないとなかなか達成がむずかしいのではないかと存じております。特に最近では、多頭飼育のもとになります土地なり資本なりの問題が相当大きな問題になって出てきておる現状でございます。したがいまして、ただいま申し上げましたように、酪農振興対策につきましては、政府といたしましても相当本腰を入れて、一つ一つじみちな施策の積み重ねによりましてやってまいらなければならないと存じております。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  208. 林孝矩

    ○林(孝)委員 相当本腰を入れてやっていかなければならない、これは当然のことだと思います。はたしてできるかどうかということが、酪農農民の人たちにとっては非常に重大な問題であると思うわけです。なぜそうしたことに不安を感ずるかといいますと、今日までの経営が、いわゆる将来の安定というものを考えますと、その効果、結果論的に見て、逆の実態があらわれておる。ほんとうにこのままついていって、あるいは現在の経営をそのまま続けていって、はたしてこれを生業として成り立たせることができるかどうかという点に非常に不安がある。不安になったというのは、やはり今日までの経過にあると私は思うわけであります。したがいまして、いま安心してこうした職業を続けていくということを考えますときに、こうした目標に対して政府がどういう具体的な方策を持って、またこうしていけば必ず達成できますよというものを示し、そういうゴールのテープを切るまでの経過というものを具体的に明示してやることが、私は一番安心した農業というものを営んでいくことができる唯一の方法じゃないかというふうに考えるわけです。その点について具体的な、そういう安心して酪農をやっていけるという方向、施策というものを明示される考え方があるかどうか、それがはっきりすれば目標達成できるとか、あるいはもうこれは転業しなければならないとかいうような判断が、それが大きな基準となって得られる、私はそう思うわけですけれども、いかがでしょう。
  209. 下浦静平

    下浦説明員 一つの例で申し上げますが、今後酪農につきましては、特に地域特化と申しますか、そういう傾向が順次進んでいくのではないかと考えられる次第でございます。そこで、来年度予算から初めて芽を出す予定になっておるのでございますが、私ども畜産基地構想というものを一つ持っております。これは相当規模な地帯に畜種複合と申しまして、あるいは酪農あるいは肉牛、酪農が中心と考えていいのではないかと思いますが、それに養豚なり養鶏なりを組み合わせまして、そこから出ますふん尿を草地に還元するというような形で、ひとつ団地づくりをやっていこう、新しい基地づくりをやっていこうというような構想を持っておりまして、これを逐次拡大をしてまいるつもりでおります。そういうことで一つの大きな生産団地の育成ということを通じまして、労力の節約なり、生産性の向上なり、そういうことをはかってまいるということが一つの行き方ではないかと存じております。  ただ、市乳地帯におきましても、これはかなりまだ酪農といたしましては力が残っておりますので、その面も無視をすることはできませんので、これらとあわせまして市乳地帯の振興もはかりながら酪農振興をはかっていくというのが基本的な態度であろうかと存じております。
  210. 林孝矩

    ○林(孝)委員 基本的な態度なりあるいは将来のそうした方向というものをまず定着させる端緒となるのが今回の乳価、豚価の決定だと思うわけです。私が要望したいことは、その端緒となる今回の乳価、豚価の決定にあたって、そうした将来の安心という行政の実証として、酪農農民の方々の要望が十分反映される、そうした証拠を示していただきたい、これが要望でございます。  それから、最近の牛肉の高騰、それから飼料の値上がり、こういうものが重なりまして、先ほども議論されましたけれども、乳用の牛が肉用に殺されておる、こういう問題がありました。これがいわゆる酪農基盤の崩壊につながるのではないかという心配は私も同じでございます。こういう原因を農林省はどのように判断されておるか、その点についてお伺いしたいと思います。
  211. 下浦静平

    下浦説明員 これは先ほどのお答えの続きになろうかと存じますけれども、先ほど一−四頭層ないし五−九頭層、この階層の脱落という現象を申し上げましたが、それがかつ上層の階層でカバーしきれないというようなことを申し上げましたが、従来は下の階層の家畜が市場に出ることなく、上位階属に吸収をされて規模拡大がはかられたということがあったわけでございますけれども、昨今の牛肉価格の強含みというような現象ともからみまして、それが市場に出ていくというような傾向が出ておるというぐあいに理解をしておるわけでございます。
  212. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そういう原因に対して乳価の大幅アップという要望があるわけでありますけれども、こういう状態が継続していくということになりますと、乳価のアップもどの程度引き上げるものなのかということが次に問題になってくるわけであります。これは先ほどから議論されておりましたから省略いたしますけれども、飲用乳と加工乳の価格についてお伺いします。  結論からいいますと、この価格差が二十円以上になる、こういう状態をどういうふうに将来方向づけようとされておるのか、そう点についてまずお伺いしたいと思います。
  213. 下浦静平

    下浦説明員 お答え申し上げます。  今年に入りまして、一月の中旬に飲用乳価の引き上げが行なわれております。これは七円五十銭引き上げられましたので、その関係でただいま先生御指摘の格差と申しますか、これがただいまでは二十一円ちょっとになっておるかと存じます。ただ、これは今回、明日きめられます加工原料乳価格の問題とからみますけれども、これで引き上げが行なわれますれば、またその分だけ縮まる、こういうことに相なるわけでございます。  大体この二つの価格というものは、一つは加工原料乳地帯の酪農農家の再生産を確保するという観点からいたしまして、生産費をもとに計算されて出てくるという仕組みでございますし、片方の飲用乳価の価格形成の仕組みでございますけれども、これはその地域地域の需給の実態に応じまして、乳業者と酪農家の相互間できめられるという取引価格でございまして、そもそもは、本来的にはあまり関係のない価格体系でございます。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕  これはどのくらいの格差が一番いいのかという点につきましては、いろいろ意見がありまして、一がいに申し上げられないと思いますが、飲用乳価格のほうは、どちらかといいますと、市乳地帯でございますので、その市乳地帯におきまする労賃なり輸送費等の問題がございますので、ある程度の格差はこれはやむを得ないのではないか、当然あってしかるべきものではないのか、こういうぐあいに考えております。
  214. 林孝矩

    ○林(孝)委員 飲用と加工原料乳の公正化という観点からお伺いしますけれども加工原料乳の保証価格の大幅なアップはもう当然なことであります。飲用乳についても不足払いとすべきではないか、こういうことを考えるわけでありますけれども、この点はいかがでしょう。
  215. 下浦静平

    下浦説明員 これは先生よく御承知のとおりでございまして、飲用乳につきましては、いままで非常に順調に伸びてまいってきております。そこで昭和四十一年に至りまして、何と申しますか、余乳と申しますか、過去におきましていろいろそういう方面での問題が起こったわけでございまして、今後の牛乳生産の確保という観点からいたしまして、そちらの面のささえというものが必要である、こういう観点からただいまの加工原料乳の価格差補給金の制度ができておるということでございます。一方におきまして、飲用乳の問題について考えますと、食品といたしましての地位でございますが、これは確かに栄養食品でございますし、栄養食品という地位については変わりはないと考えておりますが、昨今の食品の多様化と申しますか、非常に食品に対します需要が多元化いたしておりまして、ほかにもいろいろと重要な食品があるわけでございます。したがいまして、この飲用乳だけにつきましていま御指摘のような施策をとるということはなかなか困難ではないかと考える次第でございます。
  216. 林孝矩

    ○林(孝)委員 昨年の社会労働委員会の決議では、三年後を目途に飲用牛乳は生乳と濃縮乳にすべきである、そのようにうたわれております。ひるがえって現在の不足払い制度を見ますと、最終的に飲用に向けられる生乳でも、一度バターあるいは脱脂粉乳等に製造されると不足払いの対象となる。この決議、いわゆる三年後を目途に飲用牛乳は生乳と濃縮乳にすべきであるというこの決議のような事態になりますと、国費の節約、これは当然そのようになると思いますし、また同じ財源でも非常に効果が大きい、そのように考えられるわけでありますけれども、こういう問題に対してはどのように対策を考えているのか、お伺いしたいと思います。
  217. 下浦静平

    下浦説明員 確かに御指摘のとおりでございまして、来年度北海道に濃縮乳の工場が二工場建てられる計画になっております。これにつきまして政府といたしましては助成をするという予定にいたしておる次第でございますが、先ほども申し上げましたとおり、市乳地帯にもなお力が残っておるという状況でございますので、加工原料乳地帯から市乳地帯へ大量に流れてくる、それに伴いまして牛乳の流通自体が非常に混乱を生ずるというようなことにつきましてもできるだけ慎重に考えなければならない話ではないかと存じております。ただ、その辺の関係につきましては当事者間で相談がなされて取りきめられるという筋のものであろうかと存じておりますが、先ほどの濃縮乳の工場の建設に伴いまして、これは大阪方面のほうに出る予定になっておりますが、全国的に生産者団体によりましてこの濃縮乳の需給調整をいたすという一つの考え方がございますので、これにつきましても政府といたしまして助成をいたすという予定にいたしております。
  218. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に、飼料作物関係の家族労賃、これを農業日雇い労賃で評価がえしている。こういうことは実情に合わないと考えるわけですけれども、飼育労働と区別せずに、すべて製造業労賃で評価がえすべきである、そのように私は思うわけでありますけれども、この点はいかがですか。
  219. 下浦静平

    下浦説明員 この点につきましては昨日以来いろいろ御議論があったところでございますが、この飼育労働関係につきましては、やはり一年じゅうにわたる毎日、毎日の労働である、それから非常に長時間拘束されるという関係がございます。いわゆる周年性、拘束性ということばでいわれておりますが、それに加えまして乳をしぼるということでございまして、これは人を雇えばできるというものでもございません。かなり特殊な技術を要するということでございます。したがいまして、そういう観点に着目をいたしまして製造業労賃への評価がえをいたしておるわけでございますが、飼料作物のほうにつきましては、これは一般の耕種農業とほとんど差異がないということでございますので、ただいまの評価ということでやむを得ないのではないかというぐあいに考えております。
  220. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、話がまた少し戻りますけれども飼料の高騰というものの影響が非常に大きいということで、私は、政策的に飼料生産をどうするのかという点についてお伺いしておきたいわけでありますけれども、今日までの当委員会の議論の中で飼料需給安定法の運用ということが具体的に御答弁がございました。しかし、その中身についてはまだ答弁がございませんので、その中身についてお伺いしたいのが一点と、それから輸入依存ということで非常に直撃を受けるという立場にいま日本が置かれているわけです。もちろん行政的に飼料生産していくという手段が考えられておりますけれども、たとえば来年あるいは再来年、こうした近い将来に現在と同じような国際的な飼料不足という問題が起こらないとも限らない。そうしたときに現在の政府の政策というものはそれに間に合うかどうかということを分析しますと、とてもじゃないけれども、間に合わない。そういう最悪の状態考えますと、現在の政府の政策あるいは飼料需給安定法の運用、そういうものだけではたしてまかなえるものなのかどうかという点が非常に不安であるわけであります。この点について明確にお答え願いたいと思います。
  221. 下浦静平

    下浦説明員 第一点でございますが、ただいまございます飼料需給安定法、これによります運用、その運用で急場しのぎをやってまいろうというのが当面の緊急対策でございます。これはいわゆる食管物資でございます麦類を扱っておるわけでございますが、これは本来的にはほとんど単体中心に運用をしておるわけでございますけれども、今回に限って配合飼料用として緊急売却を行なうということにいたしております。これは確かに、おっしゃいますとおり、緊急対策でございまして、恒久的にはなかなかできない話でございます。  そこで、千七百万トンに及びます配合飼料の問題ということに相なるわけでございますけれども、これらにつきましては、いま申し上げましたようなことではなかなか対処しがたいという感じがございますので、今後備蓄をどういうぐあいに考えるか、あるいは開発途上国での開発輸入というようなものをどう考えるかということにもなっていくのではないかと存じております。もちろん国内で麦なりトウモロコシなりの生産をどう考えるかということもございますけれども、いま申し上げましたような問題が輸入飼料については出てまいるわけでございますので、これらにつきましては、私ども今後前向きで検討を進める考えでおります。
  222. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私の質問の趣旨がおわかりになったと思いますけれども、いわゆるこの問題は価格だけの問題として当面の困難を回避したりあるいは乗り越えるというようなことではなしに、やはり政府として畜産政策の根本にメスを入れてやらなければならない、そういう段階にきているということであります。そういう意味において抜本的な対策というものを立てていただきたい。  もう一点は、これは昨年の夏、南九州を中心に原因不明の牛の早産、流産、死産あるいは奇形、そういうものが発生をいたしました。以来それが範囲を広域的に広げて発生しつつあるという現状であることは御承知のとおりだと思いますけれども、その実情政府として掌握している調査を発表していただきたい。
  223. 下浦静平

    下浦説明員 発生の実情実態を申し上げます。昨年の夏ごろからでございますが、宮崎県、鹿児島県を中心にいたしまして、後に熊本県にも及んでいますけれども、牛の流産、早産、死産、それから、持ちこたえまして生まれてまいりますものに異常子牛、これは奇形のものでございますが、そういうものが出るという現象が起こっております。そこで、関係県は北は茨城までいっておりまして、合計で二十県でございます。  発生頭数を申し上げますと、一万五千七百八十八頭ということになっておりますが、昨年の十二月それからことしの一月あたりをピークといたしまして、二月からは急速にこれが減少をいたしておるというのが実態でございます。
  224. 林孝矩

    ○林(孝)委員 豚はどうなっているのですか。いまのは牛ですか。
  225. 下浦静平

    下浦説明員 はい、牛です。  もし、お許しを得ますならば、専門家でございます畜産局の衛生課長が参っておりますので、そちらから御答弁させます。
  226. 信藤謙蔵

    信藤説明員 昨年の九月以降に豚の死流産も多発しておるというような報告がございまして、農林省といたしまして主要な子豚の生産県につきまして状況調査したわけでございます。その結果、宮城県、福島県、茨城県、群馬県、静岡県などの各県におきまして九月から十月にかけまして流産が多く見られたということが判明いたしたわけでございますが、牛の死流産の多発地域でございます九州方面には豚の発生は出ていないわけでございます。従来、豚の死流産、特に黒子が出ますが、これは日本脳炎によることが非常に多いわけでございまして、特に妊娠をいたしまして初めて夏をこします豚が日本脳炎のウイルスを持ったカに刺されますと非常に高率に流産をするということがわかっておりましたので、初産ばらみの豚につきましては、日本脳炎の予防注射を受けるようにいままで進めてきたわけでございますが、昨年の秋には初産ばらみでなしに、二産、三産のものにまで流産が多いということでございます。その原因を家畜衛生試験場を中心といたしまして調べたところ、やはり原因の大部分が日本脳炎でございまして、それにバルボウイルスというものが一部加わっておることがわかったわけでございます。  このような現象がどうして起こったかということでございますが、近年日本脳炎の流行が非常に減ってまいりまして、従来は一夏越した豚は翌年には日本脳炎に十分に免疫をしておりましたので、こういった状況はなかったわけでございますが、昨年、一昨年あたりから、日本脳炎の流行が非常に下火になってまいりましたので、一夏をこしました豚でも日本脳炎の免疫状態になっていないということが判明してまいりましたので、本年はこういった二産、三産の豚につきましても日本脳炎の予防注射をすすめまして、このような流産が多発しないように予防していきたいというふうに考えております。
  227. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この問題は、一つは先ほどから申し上げております酪農民の人たちが、やはりこれも死活問題となって非常に困惑した状態にある、もう一つは、消費者にとってもこういうことによる食肉の減少というものはやはり物価の高騰を呼び起こしていく要因となる、こういうことが懸念されるわけであります。したがって、こうした畜産農家の不安また消費者の不安というものをなくすために、原因究明はもちろんのこと、対策を立てなければならない。  いつも感ずることでありますけれども、非常に原因究明あるいは対策等がおそい。現在の状態というのは非常に情報化時代でもあり、またスピードをもって処理されなければならない問題がたくさんある中で、こうした農林行政の処理のしかたというものは非常に後手後手になっておるという印象を強く受けるわけでありますけれども、こういう不安をなくすための対策、そうして問題処理をスピード化するために政府はどのようなことを考えておられるのか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  228. 下浦静平

    下浦説明員 お答え申し上げます。  原因究明でございますけれども、これはただいま家畜衛生試験場を中心といたしまして、関係地域の大学等とも密接な連絡をとりながら、鋭意全力をあげておるところでございますが、現在までのところでは、奇形の子牛から二種類のウイルスを分離いたしております。引き続きまして、奇形子牛からのウイルスの分離につとめますとともに、すでに分離をいたしましたウイルスを含めまして、牛の早流死産、奇形児発生の原因になると考えられます三種類のウイルスにつきまして、妊娠牛を用いましての接種試験を実施することによりまして確認を急ぐということにいたしておる次第でございます。  それから、これはどうやらウイルスらしいということでございますので、家畜伝染病予防法に基づきまして消毒なり巡回指導なり、それから調査と申しますか、そういったようなことを関係県の家畜保健衛生所を通じましてやっていただくべく、現在そのような指導をいたしております。  さらに、家畜改良事業団というのがございます。優良な凍結精液の配付を行なっておる機関でございますけれども、ここを軸といたしまして、この流産をいたしました牛への種つけに対しまして、この凍結精液の無料配付というようなことを手配中でございます。  なお、親牛を金をかけて導入をいたしまして、子牛が流れてしまったということで、金を借りました者が非常に償還に支障を生ずるというようなことも考えられますので、その辺の条件緩和につきましても関係の金融機関に要請を行なっております。
  229. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまの御答弁の中に、再生産に支障を来たさないための配慮があったわけでありますけれども、要請の内容についてはっきりとお答え願いたいと思います。
  230. 下浦静平

    下浦説明員 これは流産をいたしました母体、母牛は非常に健全でございまして、流産後に種つけをいたしますとすぐつくというような状況のようでございます。したがいまして、これはとかく売り急ぎをするというような傾向にもなりがちでございますので、売り急ぎを防止いたしますとともに、その種つけ奨励をやろうではないかということでございまして、ただいま申し上げました家畜改良事業団、これは非常に優良な凍結精液を持っておりますので、二回分の種つけに要する凍結精液を、これは直には乳牛でございますけれども、肉牛につきましても、各県のそういう機関との緊密な連絡のもとに、この家畜改良事業団を通じまして無料配付を行なおう、こういう構想でございます。
  231. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまの種つけの問題と、いわゆる財政的な再生産に対する援助、いわゆる金融機関に対する要請、この内容はいかがですか。
  232. 下浦静平

    下浦説明員 大体先ほど申し上げました家畜改良事業団の無料配付ということをいたしました場合、関係地域の全体で千六、七百万円を要するのではないかと存じております。これは無料配付をいたすということでございます。  それから金融機関への要請でございますけれども、これは先ほど申し上げましたような事情にある農家があり得る話でございますので、これはケース・バイ・ケースでそれぞれの金融機関で御考慮をいただくということで要請をいたしておるところでございます。
  233. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私に与えられた時間が来ましたので、あと一間で終わりますけれども、これは政務次官にお伺いします。  中国産食肉の輸入について今後どのような取り扱いをされる意向なのかという点、この質問をもって終わりたいと思います。
  234. 中尾栄一

    中尾政府委員 ただいまの御質問は、中国産食肉の輸入が禁止されているけれども、今後の取り扱いはどうか、こういう御内容かと思いますが、中国におきます家畜衛生状況につきましては、過去三回、すなわち昭和三十一年と四十年並びに四十一年にわたりまして、民間団体によります家畜衛生調査報告及び国際獣疫事務局等の資料によりまして、漸次好転していることが明らかになりつつございますけれども、いまだに口蹄疫の撲滅が国際的にも確認されておらない段階でございます。したがって、国内防疫事情も、詳細についてはなお不明な点もございます関係で、牛、豚等偶蹄類の動物の肉類につきましては輸入を禁止しまして、防疫の万全を期してきたところでございます。この点はすでに先生も御承知のことと思いますが、農林省といたしましては、中国産生肉の解禁につきましては、いま衛生的見地からの技術上の問題の解明が基本的条件考えておる次第でございます。  このために、昭和四十七年十一月に派遣されました日本政府事務当局の訪中団を通じまして、技術交流の必要性を提案いたしましたところが、中国側は非常に快く了解しているという段階でございます。したがいまして、今後両国間の家畜衛生技術者の交流並びに家畜衛生情報の交換などを行ないまして、これを積極的に行なうと同時に、全体的な検討をもこれまた進めていくこととしております。中国の家畜衛生状況が漸次好転しているというようなところから、昭和四十六年にいわゆる家畜の輸入を、成畜の輸入を解禁いたしまして、昭和四十七年には肉畜について輸入条件を緩和いたしまして、この旨すでに中国政府には連絡済みでございます。  なお、余談でございますが、先般FAOのパーマ事務局長がお見えになりましたときにも、中国の帰りに寄ったわけでございまして、私ども農林省当局がこれを迎えたわけでございますが、その際にも、まだ中国からこちらのほうに出していくというのには時間的余裕もあるのではなかろうか、それからまだ牛にいたしましてもまた家畜全般にわたって、肉食用というよりも、いささかなりとも耕作用に使われているという中国の現段階でございますだけに、すぐにというわけにもならぬであろうという見通しは承っております。念のために申し上げておきます。
  235. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 瀬野栄次郎君。
  236. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昭和四十八年度の乳価豚肉価格の問題について農林省当局に質問いたします。  三月二十六日に虎の門久保講堂において全国農協代表者大会が行なわれまして、乳価豚肉価格要求がなされたわけでございます。私も当日、党を代表してごあいさつを申し上げてきたわけでございますが、この大会は例年にない活気に満ちた、また北海道、熊本、九州の酪農地帯から多頭飼育をやっている方、また農協の代表の方というように、すごい熱気のこもった大会でございまして、各党からもそれぞれごあいさつがあったわけでございます。  きのう、きょうにわたっていろいろ質疑がありまして、ほとんど問題の焦点がしぼられて質疑がされておりますが、きょうは私も、ぜひこの委員会でこういったことを問いただしていきたいということで、いままで出てない問題等を中心に取り上げて、いまから限られた時間内に要望をかねて質問を申し上げたいと思います。  いよいよ三月二十八日には畜産振興審議会の食肉部会が十時から、また二十九日には同じく十時から酪農部会が開かれるということで、月末までにはいよいよ価格の告示ということで鋭意当局も審議をしておられるところでありますが、この告示を前に、ぜひひとつ以下申し上げることを織り込んで、十分畜産農家にこたえる価格を決定されるように、強く最初にお願いをする次第であります。  そこで、簡潔に質問いたしますが、昭和四十七年度「農業観測修正見通し」が出ておりますね。これは御承知のように、農林統計協会の印刷によるもので、編集農林大臣官房調査課、年に四月と十月ですか二回出るということで、上半期の見通しと下半期の見通しを述べて、いろいろわれわれ農業に携わる者に指針を与えておるものでございます。これは政務次官、読まれたことがあるか、十分御承知であるか、また権威あるものであるか、最初にこれをお尋ねいたしたいと思います。
  237. 中尾栄一

    中尾政府委員 非常に権威あるものと思います。
  238. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 これは権威あるものには違いないわけでありまして、政務次官もそうおっしゃいましたが、この見通しを見ますと、二〇ページに農業生産の資材価格という欄がございまして「年度当初の見通しでは、四十七年度の農業生産資材の農村価格は、前年度をわずかに上回ると見通した。その後の動向をみると、資材全体としての上期の価格はおおむね見通しどおり推移しており、下期も前年同期をわずかに上回るものとみられるため、四十七年度の農業生産資材の農村価格は、当初の見通しどおり前年度をわずかに上回るものと見通される。」これからが大事なんですが、「類別に、当初の見通しとくらべると、前年度をわずかに下回るとみた飼料の価格はやや下回るものと見込まれ、わずかに上回るとみた肥料および農薬、やや上回るとみた農機具の価格は、おおむね当初の見通しどおり推移するものとみられる。また、やや上回るとみた畜産用動物の価格は、かなり上回るものと見通される。」そしてその次に四十七年度の上期の農業生産資材価格という項目の中に「主要なものについてみると、飼料価格は、海外における飼料穀物の需給緩和や通貨調整を背景に輸入原料が値下がりしたため、工場建値が四十六年度後半から四十七年度初期にかけ、三回にわたって引き下げられたことによって、年度当初から弱含みに推移し、四−七月間では前年同期にくらべ七・二%下回った。」こういうことが書いてあります。全部読むわけにいきませんが、要するに、この権威ある「農業観測」、われわれもまたこれを目標にいろいろと対策を立てておるのですが、まさにこれと逆な結果が資料その他によると出ておる。こういったものが乳価また豚価にも大きく影響してくるわけでございますので、この資料の見通しの甘さというか、農林省の大きな誤り、こういったものについて当局はどういうふうに考えておられるか、まずお答えいただきたい。
  239. 下浦静平

    下浦説明員 お答え申し上げます。  配合飼料価格の工場建て値の問題でございますが、これはただいま先生お読み上げになりましたとおりでございまして、実は昭和四十六年の暮れから三回にわたりまして工場建て値の引き下げが行なわれております。その合計はトン当たり五千円くらいに及ぶ建て値の引き下げが行なわれておるところでございます。したがいまして、当然それは四月から七月までの価格に響くということであります。ただ問題は、先生御指摘の点は、昨年の八月以降からの国際的な飼料穀物の値上がりということでございまして、それが影響をいたしまして本年に入りまして一月以降、これは全農でございますけれども、配合飼料価格の建て値の改定、これは引き上げでございますが、これが二度にわたって行なわれております。この二度の引き上げというのは、合計で八千円ということに相なっておるわけでございます。
  240. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官、いまの件に関連してですが、この農業見通し、これはもちろん十月からの見通しを十月二十日発行でもって出されておるわけですね。上期を踏まえて十月に出されておる。同じく二〇ページのところ、「大豆の価格は、年度当初の見通しでは、強含みに推移するとみたが、北海道での生産が大幅に増加するとみられることなどから、ほぼ横ばいに推移するものとみられる。」こういうふうに書いてあるわけですね。これは農協も農家もみんなだまされたというわけですね。だから、政府責任である。ほんとうにこんな権威あるものがこういう見通しでは困る。いろいろ言いたいけれども、時間の関係もあるので、一つ指摘しておくわけです。どうですか。これは十分反省して、もう価格値上げに反映してもらいたいと思うから申し上げるのです。
  241. 中尾栄一

    中尾政府委員 瀬野先生の御指摘のとおり、その二〇ページの項目は私も詳細にいま手元で読んでおるわけではございませんけれども先生の御朗読になりましたとおり、まことにそのような不手ぎわがありましたことは十分反省いたしますと同時に、またそういう問題点が今後ともないような方向に鋭意努力を払っていかなければならぬと為政者として特に痛切に感ずる次第でございます。
  242. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 不手ぎわがあったことを認められて十分反省するということでございますが、また後ほど農林大臣にも質問する機会が、時間がございますので、その機会にまたいろいろお尋ねすることにします。  今度の問題で、これももう時間の範囲内で聞いておきますが、えさが上がったからといって肉屋が豚肉の小売り価格を上げている。生産者の手取りがまだ上がっていないのに、どうしてこう上げているんだということが大会のときにも懇談でずいぶん話が出ました。世にもふしぎな新物語だ、生かさず殺せというのが現在の畜産政策ではないか、転換をするためには、どうか要求どおり実現をしてくれということで、ずいぶんと強い要請があったのですが、えさが上がったといって肉屋さんがいろいろ小売り価格を上げているという事実と、それから生産者の手取りがまだ上がっていないのに、どういうわけでこれは上がるかということについては、政務次官はどういうふうに認識しておられるか。こういったことを全然わからずにおられるのか、ひとつ簡潔にお答えいただきたい。
  243. 中尾栄一

    中尾政府委員 先ほどの答弁の中にも申し上げましたのですが、いささかちょっと足らない点もございます点は、確かにそういう標榜する問題点には幾つもの問題点を残しておるものと思います。しかし、何せ農林省は自然現象を相手に戦う唯一の、十幾つかある省の一つでございます。やはり天候その他世界的な供給、需要の関係から考えますと、先ほどのような問題点でも、大豆一つとらえましても、ソ連が意外に暖冬であった問題であるとか、さらにまた中国やその他においてもたいへん大きな不作があったということからこういう事態が発生したことも、これまたひとつ同じ農業にいそしむ瀬野先生でございますから御了解のほどをこいねがいたいと思うのであります。  いまの豚肉の問題点につきましては、これはひとつ担当官から答えさせていただきたいと思います。
  244. 下浦静平

    下浦説明員 昨今豚肉の価格が若干上がっておりますことは御指摘のとおりでございます。したがいまして、三月に入りましてから関税の減免措置ということで輸入の促進につとめておるところでございます。ただ、御指摘のとおり、これは飼料価格が上がったからというところには直に結びつかないのではないかと私ども考えております。主たる原因は豪州から毎年十四、五万トンと思いますけれども、入れておりましたマトン、羊の肉でございますが、これが非常に高騰いたしまして、加工用の肉、これの手当てに非常に支障を来たしたというようなこと、これがかなり響いているのではないかと存じております。小売り店にはしかるべく指導をいたしたいと存じております。
  245. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 約束の時間もありますので、最後に要望なり、それからまた質疑を含めて申し上げますので、ひとつ政府の確たる御返事、答弁をいただきたい。そして畜産農家に対するあたたかい価格決定をしていただきたいということを申し上げたいのです。  政府算定方式の問題点といえばいろいろあるのですけれども、原生産費を正しく算出するということが一つの大きな問題であります。すなわち保証価格を低くするため原生産費を低く算出しているのではないかという疑問が聞かされているわけでございまして、政府はこのような疑問を生じないように原生産費を正しく算出していただきたい。それから飼育家族労働は全国平均ベースで評価する、こういうように、ぜひやってもらいたい。また自給飼料生産労働にも製造業労働を適用すること、いわゆる製造業の労賃と同じように適用してもらいたい。これもきのうから論議されたわけでありますが、ぜひこれをお願いしたい。それから最近の飼料の価格の値上がりを適正に価格に反映させること、これは先ほどいろいろ農業見通しから申し上げたことでございまして、異常なまでにも値上がりしておるわけでございますので、ぜひひとつこれを十分反映していただきたい。それから厩肥の評価、これについても厩肥を副産物に計上することに疑問を持っておる生産者も多くなっていますので、副産物として計上する厩肥は利用された分のみとすべきである、こういうふうにひとつ御検討いただきたい。それから集送乳経費と取り扱い手数料、これについても実態に即して引き上げるべきであるということを十分踏まえて、どうか価格決定また告示にぜひひとつ農家の要望を反映をしていただくようにお願いしたいと思うのです。これを要するに、原料乳保証価格は生産費・所得補償方式によって農協関係では七十四円十七銭をぜひひとつ認めていただきたい。  それから豚肉安定基準価格については、再生産の確保を旨として、きびしい酪農、畜産経営実態を反映すべく決定していただきたいというのが今回の要点であり、また委員会でもこれを強く申し上げている結論である、こう思います。  毎年のことでありますが、昨年もこの委員会で質問していろいろと問題にしたわけですけれども、過去三年間にわずかな値上がりで、これでは酪農民もいよいよ今度の値上げによっていわゆる生きるか死ぬか、全く離農するかどうかという分かれ目に来ているということで、先ほど林さんの話にもありましたように、たいへんな深刻な問題も起きております。これに対して政務次官大臣にかわる強い価格決定に対する、農家にこたえる決意を披瀝していただいて質問を終わりたい、かように思います。
  246. 中尾栄一

    中尾政府委員 きょう、昨日、一昨日と三日間にわたりまして、この乳価問題をはじめ多岐にわたります農業問題の行く末、並びに現況を案じました問題点が討議をされました。特に先生も最後に力強く、現在のがけっぶちに立っておる酪農というものを一体どうするのか、政府もここらを踏まえてやれという仰せでございますが、先生の先ほど数項目にわたられまして述べられました一項目一項目を存分に検討し、存分にひとつ前向きの対処をするべく善処していく方向でやっていきたいと思う次第でございます。さらに価格の決定等も、今月末に肉並びに乳価、すべてきまってくると思うのでございますが、その審議会にも先生方の述べられましたお志を存分に反映するべく、私、政務次官といたしましても努力を続けるつもりでございます。また、そのような方向に鋭意努力を続けていくことをもお約束させていただきまして、私の答弁にかえさせていただきたいと思います。
  247. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官の決意のとおりお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  248. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 神田大作君。
  249. 神田大作

    ○神田委員 まず、次官にお尋ねしますが、これは農林大臣が来てからもうちょっとお尋ねしたいと思うほど重大な基本的な問題ですが、いままでの各委員さんからの質問で、牛乳並びに豚肉とその他畜産行政に対しまして、日本はこれから畜産を中心としたところの農業拡大振興をはかるということは、もう数年来これを申しておるのであります。しかしながら、今日の状況はこれと反比例をいたしまして、畜産関係の振興ははかられておらない。しかも年々衰退をしようというような傾向に来ている。これは日本農業にとりまして非常に重大な問題と思いますが、これに対しまして政府の基本的な考え方をお尋ね申し上げます。
  250. 中尾栄一

    中尾政府委員 私は必ずしも農業の専門家ではございませんけれども農業行政というものを見ておりますと、いまや日本は大きな曲がりかどに来ておることは、何人も否定できないという感じがいたします。特にこの日本の国土の中のわずかな、三〇%近いほどの狭隘な土地に一億になんなんとする人口が住んでおる。しかも、なおかつその狭隘なる土地はアメリカのカリフォルニアの三分の一にも満たないという土地である。その日本にアメリカの一億九千万といわれておる人口の二分の一弱の人口が住んでおるということからしても、自給自足の観点からいたしまする農業の基本から考えますると、当然いろいろな問題が起こってくるであろうという感じがいたします。  したがいまして、日本農業というものは、どうしても外国の生産物というものに対応しながら生きていかなければならぬという一つの宿命を抱いておるわけでございまして、それだけに私はこの日本農業の中におきまする家畜あるいは酪農と申しましょうか、この問題点はなるべく日本が自力の中でまかない得る範囲においては私どもは十分これを育成し、また健全に発展を遂げていかなければ相ならぬ、その義務も責任もあろうかと思うのでございます。その方向に私ども農林省はいまからも鋭意努力をしていかなければ相ならぬことである、このように心がけておる次第でございます。
  251. 神田大作

    ○神田委員 日本の国土が狭いということはいま初めてわかったことではなく、これはわれわれも十分承知しておる。しかしながら、いま予算委員会で資料が提出されておりますが、この山林原野がゴルフ場として一体どのくらい買い占めされておるかということは、一部の資料、しかも四十七年八月現在の資料しか出ておりませんから、これは問題でないから私はこれを取り上げませんが、膨大な山林原野がゴルフ場として使用されておる。いかに狭いとはいいながら、畜産を振興する上において適切な施策をすればこれはできることなんです。それをやらないのは政府の怠慢である。数年来にわたるところの、口では畜産振興をとなえながら実質的には引き合わないような農業をやっておる。これはいろいろな意味において畜産業がやっていけるように、そういう農業政府はめんどうを見なければならぬ、保護政策をしなければならぬ、他国と対抗して、やはり日本の食料の少なくとも八割を確保するというためには、ある程度の膨大な資金を国の財政の中から投入しなければならぬ。そういう問題をさておいて山はかってに業者に売りほうだい、山林は荒れほうだい、そして畜産は年々減少していく、足らない分は外国から輸入する、こういう話はわれわれ農民としては聞いておられない。その点についてどう考えるか。
  252. 中尾栄一

    中尾政府委員 神田先生の一言一言が身にしみるほど私も同感でございまして、それが行政の不行き届きであるという点は私ども十分反省していかなければ相ならぬことであるというふうに感じております。そういう観点に私どもは行政を行なっていきたいと考えております。
  253. 神田大作

    ○神田委員 これは大臣が来てから大臣に念のためにただしたいと思いますが、今度の問題にいたしましても、乳価の問題あるいは肉豚の価格問題等について、生産者からは飼料が非常に値上がりしておる、人件費も上がっておる、これではいままでのような肉豚の支持価格あるいは加工乳におけるところの過不足払い等においてはとてもやっていけない。これに対して皆さんのところへもだいぶ陳情がきておるだろうと思います。これらに対して政府は、もうきょうあたり畜産審議会をやっておるだろうと思いますが、どのような態度で臨まれるか。一体この危機に瀕しておるところの畜産を守るためにどのような考えを持っておるか、その点をお伺いしたいと思います。
  254. 下浦静平

    下浦説明員 お答え申し上げます。  日本酪農なり養豚経営なり、これは昨日からいろいろ御議論がございましたとおり、いろいろな問題をかかえておるわけでございます。特に酪農につきましては生乳生産の停滞あるいは飼養頭数減少というような事態がございます。それから養豚につきましても、これは公害関係あるいは繁殖豚経営伸び悩みというような大きな問題があるわけでございます。したがいまして、私どももよくその辺の事情を踏まえまして今回の価格決定に臨むつもりでおります。  それから、なお飼料の値上がりその他の問題でございますけれども、これらにつきましても、よく現状を踏まえまして、織り込めますものにつきましてはできるだけ織り込んだ決定をいたしたい、こういうぐあいに考えております。
  255. 神田大作

    ○神田委員 抽象的な答えしかあなたにはできないのだろうと思いますが、この農林省の資料に生産調査が出ていますが、肥育豚につきまして人件費その他において、われわれから考えると、非常に低い価格で算定されておるようでありますし、それから牧草地等も、現在の牧草地は一頭について一反五畝の牧草地が要るが、この基準は九畝、一反歩足らずというような基準のようでもありますし、これらの点についてもわれわれ畜産業者といたしましては納得のいかない点がたくさんあるわけです。このままでいけば、とうていわれわれの要求するところの価格の保証はできないのだろうと私は思いますが、そうなりますと、これはいまでももう牛乳は、素牛が三十万で、三十万の素牛を三年ないしよくしぼって五年しぼる。それでもって物価がどんどん上がっておるからとても合わぬ。それならば肉にして売れというようなことで、乳牛の増大どころか、乳牛はだんだんと減ってくる。しかも子牛は一年に一頭しかできないからして、なかなか急には出てこないというようなことになると、これは畜産の振興どころか、畜産の縮小につながっていく。この問題について、今後消費者にとりましても肉の価格が上がってくる、重大な問題がすぐ目の前に惹起すると思いますが、これに対しまして、畜産経営をやれば生活ができるのだ、子供の教育もできるのだ、あるいは若い青年も畜産に熱が入るのだ、こういうためには思い切った価格の支持政策をやらなければいまのところ間に合わない。この点についてどう考えます、局長。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  256. 下浦静平

    下浦説明員 加工原料乳の保証価格につきましては、加工原料乳地帯の酪農経営の再生産を確保するという観点からきめるということにいたしておりますので、ただいま先生御指摘のように、十分その再生産の確保につきましてはでき得るような価格形成ということを考えてまいりたいと考えております。  それから養豚でございますけれども、養豚のほうは、これは生産費の使い方でございますが、加工原料乳の保証価格とはいささか趣が異なっておりまして、生産費の指数を使いまして価格をはじくという仕組みになっております。これを需給実勢価格といっております。したがいまして、その指数の四十八年度におきます見込みをはじきまして、先般出ました生産費との比率を求めまして計算をするということに相なっておるわけでございますが、四十八年度中のその生産費の見込みを出します際にあたりまして、十分その辺の考慮を払ってまいりたい考えでございます。
  257. 神田大作

    ○神田委員 それからこの資料によると、これは昭和四十七年度ですね。今度は四十八年度なんです。一年に物価というものは相当上がっている。四十七年度を基準としたこういう資料でもってことしの価格の算定をすれば、一年ずれるわけだ。一年ずれるということは、今度の場合なんかはえさがたいへんに暴騰するわけですし、しかもえさの質が落ちるわけです。聞くところによると、古々米等を粉末にするために乳牛等の流産とかあるいは受胎率等が落ちているとかあるいは肥育の成績が悪くなっておる。畜産の飼料の内容が変更したために、これら豚につきましても牛につきましても、肥育の状況が悪化しておる、しかも価格が上がる、一年ずれておる、この問題、どう考えます。
  258. 下浦静平

    下浦説明員 お答え申し上げます。  生産調査はある年の七月から翌年の六月までということで調査をいたしておるわけでございます。したがいまして、四十七年度の生産調査と申しますのは、四十六年七月から四十七年六月まで、その期間の生産費でございます。したがいまして、ただいま先生の御指摘の点もございますので、従来からその価格を直近三カ月間の農村物価賃金調査によりまして修正をいたしまして、できるだけ近い価格水準に引き直しておるわけでございます。  なお、豚肉の価格を算定するにあたりましては、これはビッグサイクルがございますので、過去五年間の数字の平均値を用いておりまして、さらにそれを先ほど申し上げましたような生産費の置きかえというような手続もいたしておりますので、かなり直近のところまでは織り込めるのではないかと存じております。  なお、飼料につきましては、本年に入りましてから一月及び三月というような値上げでございますので、その辺を十分勘案いたしまして織り込むということにいたしておる次第でございます。
  259. 神田大作

    ○神田委員 これは問題は、これを基礎にした率の掛け方なんだ。これは私はまだこまかく計算しておりませんから、どういう数字をどういうふうにしてやりくりするかわからぬが、米の生産調査と同じように、いろいろと数字の魔術でもってやるわけでしょう。そうなりますと、生産者が要求するような数字は、これは数字の魔術でもってごまかされてしまう。そのために政府は理屈を合わせる、それはけっこうだ。けっこうだけれども、実際はもう損すればやらぬことはさまっているのです。損しながら、こういう畜産のようにむずかしい技術を要する、しかも汚水あるいはその他の公害によって痛めつけられておるようなものに——豚を飼っている人や牛を飼っている人、鶏を飼っている人のそばへ行くとぶんぶんにおいがする。豚あるいは鶏、牛を飼っている人の家には若い人は嫁さんにいかない。ぼくも農家の人からずいぶんと、ぼくのところは大頭数飼っているんだから何とか世話してくれぬかと言われる。いや、あそこの家へ行ったら鶏ふんがくさくて、あるいは牛がくさくてどうにもだめだといって、嫁さんが大体いかない。そういうような環境の中において、畜産業者というものは目に見えない犠牲を払いながらやっておる。これは、そういう点を勘案して、公害でもってくさい思いをするけれども、そのかわりそれだけ価格がいいあるいはまた暮らしがよくなる、生活が豊かになるというのなら話がわかるけれども、そういうくさい思いをしながら、損をしながらやるのは、これはいなくなるのはさまっておる。日本の畜産はだんだんと衰亡してしまう、崩壊してしまう、これは重大な問題である。  こういうことに対して、私は、数字の魔術を使わずに、今度の畜産の価格決定にあたっては、今後の日本の重大な問題でございますから、十分配慮をしていただかなければならぬ。そうしなければ、これはとんでもないことになってしまう。と同時に、この問題をどれだけ政府・自民党の諸君が認識しているかということは、私は日本農業の将来をトする重大な問題であると考えるので、今日ほど日本の畜産農業にとって重大な時期はない、こう考えますが、これに対しまして次官はどう考えますか。
  260. 中尾栄一

    中尾政府委員 神田先生の御指摘のとおり、まことに切々として訴えられました。そういう情感の伴うお話は、私どもほんとうに胸を締められる思いでございます。特に、先ほど投機的な対象としてゴルフ場の問題等が出されたわけでございまして、全く現在の社会の中でこの投機的ムードと申しますか、まことに一触即発的に、しかもなおかつ一瞬にして、すわっていながらにして投機的な大もうけをするなんという、こういうムードのただよった社会の中では勤労意欲などはなくなっていく社会になっていく、堕落していく社会になるということは、先生の御指摘を受けるまでもなく、私も同感でございます。そういう意味を持ちまして、全く公害に悩まされ、いろいろの苦しみに耐え忍びながら日本の畜産振興のために御努力をなさっている方々に対しては、どんなにか私は日の当たる方向にひとつ位置づけたいという気持ちを持っておるのだということも、私の気持ちの上では十分考えておるわけでございまして、ぜひとも審議会にも先生のそのような御意見等を反映させていく努力を鋭意つかまつりたいと思っている次第でございます。
  261. 神田大作

    ○神田委員 次に、食肉の流通過程について少しくお尋ね申し上げます。  先ほどのだれかの質問に対しまして、たとえば肉豚の場合、五〇%まで生産者で、あと五〇%は流通過程において占められるという御答弁があったようであります。五〇%か六〇%かそこのところは聞きはぐりました。これは食肉生産者が市場に出す、市場からこれを枝肉として問屋なり小売りに出す、小売りから消費者に渡る、そういう割合、あるいはそういう過程、いきさつはどのようになっておりますか、お尋ね申し上げます。
  262. 下浦静平

    下浦説明員 お答え申し上げます。  これはちょっと年次が古うございまして恐縮でございますが、昭和四十五年の五月に私ども現地調査をいたした結果でございます。  まず牛肉でございますが、これは生産者手取りがパーセンテージで申し上げまして六六・九%、それから問屋マージン三・八%、小売り店マージン二五%、その中間におきまして若干の手数料等がございますが、合わせて一〇〇%、こういうことに相なっております。  それから豚肉についてでございますが、生産者手取りが六〇・三%でございます。それから問屋マージンが一・七%でございまして、小売り店マージンが三二%、合わせて一〇〇%、こういう調査結果に相なっております。
  263. 神田大作

    ○神田委員 だいぶ古い資料ですね。それは四十五年ですか。いまから三年も前の資料しかないのですか、農林省には。
  264. 下浦静平

    下浦説明員 ただいまのところはこの資料が一番新しい資料ということに相なっておりますが、傾向といたしましては、さほどの変化はないものと考えております。
  265. 神田大作

    ○神田委員 大体そういうことが畜産行政として間違っておる。三年前の資料を持ってきて答弁をする。あなたたちは一体何をやっておるのですか。あなたたちはそういうことをやる商売じゃないですか。三年も前の資料を持ってきて、そんなことでぼくに説明したって、ぼくは納得しませんよ。大体生産者が五〇%から六〇%だ。それ自体に問題がある。生産者がくさい思いをしてえさを食わせ、そうして三カ月間も六カ月間も育て、あるいは肉牛の場合は五年間も飼育する、そういうような苦労を朝から晩までやっておる。豚や牛やあるいはブロイラー、鶏卵をやっておるような人たち農村の会合なんか出たためしがない心えさをやらなければといって必ず夕方帰ってしまう、あるいはお昼ごろ帰ってしまうというような労働をやっておる者が、五〇%や六〇%で、その間で取引をしておる人たちが四〇%であるというような、こういう流通機構の改善をせずして、生産者生産価格を上昇させるようなことは不可能だ。これはいわば業者、大商社が中心となりまして売り惜しみ、買いだめをやっておる。これは業者のもっこ持ちをするような行政であると言っても過言ではない。三年前の資料なんかわれわれ聞くわけにいかぬから、直ちに四十八年一月三十一日現在の資料をつくって提出してもらいたい。委員長に要求いたします。
  266. 下浦静平

    下浦説明員 新年度に入りましてから、最近の実態につきましてさっそく調査をいたしまして御報告をいたしたいと思います。
  267. 神田大作

    ○神田委員 私は、この流通問題等につきましてはいろいろ問題がありますし、問いただすところがあります。大業者によっては、いま子牛が足らぬということで、子牛の買い占めをやっておるというようなことも聞いておる。金があれば何でも買う、もうかれば何でもやる、畜産にもその魔手が入っておる。こういうような重大な段階にあって、業者に振り回されるような畜産行政をやってはならぬ。生産者を守る畜産行政でもって初めて日本の畜産は伸びてくる。ところが、日本の畜産行政はややもすると業者本位の畜産行政をやっておるとわれわれには思われる。そういう点において、いまの生産者手取りの問題と流通過程の不明朗さ、これに対しまして、時間がありませんから後刻また詳しく質問を申し上げると同時に、資料の提出を待って私はこの問題を追及していきたいと思います。  次に、ブロイラーです。ブロイラーにつきましては、いま畜産安定法の適用を受けておらないようでありますが、この点についてはどうお考えになっておられますか。
  268. 下浦静平

    下浦説明員 ブロイラーにつきましては、最近の飼養頭羽数は一万五千程度でございまして、非常に大規模経営を行なっているというのが実態でございます。しかも、その経営につきましてはかなり多くの部分がいわゆるインテグレーションという形で、あるいはえさのメーカーでございますとかそういうものがえさの提供をし、生産物を引き取るというような、一種の契約生産みたいな方式で行なわれているというのが現状でございます。したがいまして、これはなかなか畜産物価格安定法の対象には乗りにくい品目ではないかと存ずる次第でございます。
  269. 神田大作

    ○神田委員 このブロイラーは大企業、大羽数のブロイラーの経営者が多い。確かに最近は多くなりました。しかし、その間に、農業をやってブロイラーをやっておった幾多の者が、自分の先祖伝来の土地や山林を売り飛ばして、犠牲を払ってブロイラーをやって損しておる。そしてついにやっていけなくなって、結局大企業がそれを——私がここで名前をあげることはちょっと遠慮しますけれども、いわゆる大商社系が大規模なブロイラー経営に乗り出して、そして零細な、農業をやりながらブロイラーをやった農家のブロイラーをつぶしていったわけです。それを見て見ぬふりをしていたのが畜産行政の大きな欠陥であったと思う。それはあるときは高くなりあるときは安くなる。そしてそれにたえられない者はつぶれていく。つぶれていけば、いまはブロイラーの需要というものは非常な勢いでもって増しておるのでありますから、今度は大企業がそれに乗り出して経営をすれば安定するにきまっておる。安定するにきまっておりますけれども、しかし、養鶏とかブロイラーというものは農業なんです。農業としてこれを成り立たせていくことが日本農業振興させる一つの大きい方法なんです。水田をやらせながらブロイラーをやらせる、水田をやらせながらあるいは肉豚をやらせる、水田をやらせながらあるいは酪農をやらせる、水田をやらせながら養鶏をやらせる、それでもって日本の零細農業は生きていく。ところが、ブロイラーは大企業がやっておるのだからかまわないというような、そういうことで一がいにこれは一蹴されるべきものではないのであります。  そこで、ブロイラーにいたしましても商品でありますから、あるときは高くなり、あるときは安くなります。そういうことに対して価格安定政策というものは必要なんです。また、これは肉豚の価格が下がったときに政府が買い上げて備蓄し、上がればこれを放出するというような制度がブロイラーにも必要なんです。あらゆる食料に必要なんだ。食料というものはそのときそのときの天候によって、工業生産品でありませんから、不作なときもあり、あるいはまた大量生産で豊作になる場合もあるし、いろいろの事情によって費凶が出てくる。それをプールしその上下をなくす、それが政治というものなんだ。そういう意味合いにおいて、このブロイラーに対しましても価格安定政策を行なうべきことは当然であると私は思うのだが、この点に対しまして、政務次官、どう考えますか。局長に言ってもしようがないから、政務次官から政治的観点に立っての答弁をしていただきます。
  270. 中尾栄一

    中尾政府委員 神田先生の御指摘のとおり、昨今商社等の目に余るような現況が逐一起こっております。特に商社が、先生が名をはばかられましたけれども、大商社そのものが介入するというよりも、小さなダミーみたいな形でかいらいを使うことによって買い占めを行ない、あるいはまた放出をときにする。これは目に余るものがあると私は感じております。これは徹底的に糾弾すべきである、そして徹底的にこれをやるべきである、私は一行政官の立場としてもそう思っております。そういう方向の中にこそ政治の新しい行き方があり、また、政治として当然やらなければならない偏差をなくしていくという方向づけが生まれてくるのであろう、私はそう考えております。  そういう意味におきまして、ブロイラーの点などにおきましても十分検討いたしまして、そのような基本的な考え方は全く神田先生のおっしゃるとおりだと思っておりますので、そのような問題点を一緒に気持ちの上で分かち合いながら、このような不当な業者は徹底的に痛めつけることに何のはばかりを持つものではないということを確約させていただきたいと思います。
  271. 神田大作

    ○神田委員 私の言うブロイラーを畜産安定基金の中に入れろということについてはどうお考えになります。
  272. 中尾栄一

    中尾政府委員 担当官にちょっと答えさせたいと思います。
  273. 下浦静平

    下浦説明員 ただいま、ブロイラーにつきましては全農系でブロイラー価格安定基金というような制度がございまして、それでブロイラーの値下がりにつきましてのカバーをいたしております。したがいまして、自主調整をやっておる段階でございますけれども、今後必要に応じましてこれらの基金の拡充等につきまして私どもといたしましても考えてまいりたい、こういうような考えでおります。
  274. 神田大作

    ○神田委員 どうもさっぱりわけのわからないような答弁で、いま少しはっきりとブロイラーを畜産価格安定基金の中に入れるとか入れないとか、入れられなければどういう理由であるとか——これは畜産物には違いないし、このウエートは上がってきているのです。これは日本の畜産行政にとって大きな問題なんです。いま少しはっきり言ってください。
  275. 下浦静平

    下浦説明員 先ほど申し上げました理由のほかに、実は畜産物価格安定法の対象になかなか乗りにくいという点がなお二点ほどございます。一点は、豚肉のように卸売り市場による取引を通じましての価格形成がなされていないということが一つでございます。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 それからもう一つは取引規格でございます。いまだに規格取引も行なわれていないという現状でございますので、この辺の推進をはかっていく、ブロイラー市場の整備なり規格取引の推進をまずはかっていくというのが先決ではないかと考えておる次第でございます。  価格安定につきましては、先ほども申し上げましたように、価格安定基金というものがございまして、値下がりいたしました場合のカバーをいたしておりますので、私どもといたしましてもこの強化拡充につきましてはやぶさかではないということでございます。
  276. 神田大作

    ○神田委員 畜産安定法の指定食肉としてブロイラーも入れることについて前向きで検討するということで了解してけっこうですか。
  277. 中尾栄一

    中尾政府委員 ひたすら前向きに努力をするつもりでございます。ただいまの問題は、法律改正の問題か政令改正かわかりませんけれども、その方向で考えられるものならば私どももその点は十分詰めて研究いたしまして爼上にのせたい、こう考えております。
  278. 神田大作

    ○神田委員 時間が来たから……。ただ前向きで考えるということだけでは何とも不十分でありますが、次官がこの席上で前向きに考えるということは、私としては、指定食肉としてやっていきたい、こういうように解釈をいたします。  また鶏卵の価格等についても、これは豚肉、牛肉と同じですから、この価格についてもいまのような百六十三円かその程度のあれではどうにもやっていけない。いまの市場事情その他の事情からしてやっていけない。その点についても十分な考慮を願って、養鶏でもってやっていけるような——養鶏農家はいまみんなつぶれかかっている。一カ月にあれほど商品価格の下がるものはないし、十年来あれほど上がらないで食料需給に貢献しているものはない。卵ほど上がらないものはないのです。これについても十分な御配慮を願いたいと思いますから、こういう点について一言だけ御答弁を願いたいと思います。
  279. 下浦静平

    下浦説明員 鶏卵価格の問題につきましては、ただいまの御質問の趣旨に沿いまして十分検討いたしたいと存じます。
  280. 神田大作

    ○神田委員 それでは、まだ時間があるようでありますから、備蓄制度についてお尋ね申し上げます。  いま肉が足らぬというので小売価格等も上がっておる。上がっておると、外国から輸入をする。輸入のできるうちはけっこうだろう。何とか間に合う。しかしながら、世界的に食肉の供給が不足した場合は、これはどういうことになりますか。いまのような現状のまま進めば牛肉はたいへんなことになると思いますが、これらについていかなる対策をお持ちでありますか、お尋ね申し上げます。
  281. 下浦静平

    下浦説明員 牛肉に対します需要は非常に強いものがございまして、先生御指摘のとおり、毎年消費量が上がっておるという状況でございます。ところが、一方におきまして国内生産でございますが、これがなかなか容易ではございませんで、停滞ぎみであるということでございまして、その面を補いますために輸入が年々、これも御指摘のとおりふえているという現状でございます。そこで、これはFAOなりその他の国際機関の推定が過去に出ておりまして、これからの国際的な牛肉の需給もかなり逼迫するであろう、場合によりましては、遠い将来にはオセアニア州くらいしか輸出余力がある国はなくなるのではないかというような推定も出されておるところでございます。したがいまして、これらに対処いたしますためには、できるだけ国内の肉牛生産というようなものの振興をはかってまいるということが一つでございまして、私どもといたしましても、昨年以来、予算措置につきましてもかなり配慮を加えましてやってまいったつもりでございますけれども、今後ともその辺は十分再検討をやり直しいたしまして対処をしてまいりたい考えでございます。  それからもう一つは乳牛の雄子牛の問題でございますけれども、これは昭和四十年代に入りましてからかなり利用が始まったものでございまして、現在ではおおむね四〇%程度の利用率まで上がってきたと存じておりますが、これもできるだけ利用をしていただくというようなことで、この振興につきましても配慮を加えておるところでございまして、これらにつきましても国の助成の対象にしておる事業も二つ三つあるということでございます。今後とも国内の牛肉生産につきましては十分に配意をいたしまして、需給に即応した対策を講じてまいりたいと存じております。
  282. 神田大作

    ○神田委員 御存じのように、和牛あるいは乳牛にいたしましても、ほとんど一頭しかできない、大量生産はできない。足らなかったら、急に工場の生産みたいに残業をやってふやすということはできない。あれは幾ら残業をやったってふえない。だから、そういう問題については一つの見通しというものは政府は立てなければならぬです。大体現在の頭数、それに対する飼育頭数、あるいはどのくらい先になればどのくらいになるか、またどのくらいの需要が必要であるかという見通しを立てた上における長期計画によってこういうことはやっていかなくちゃならぬのですね。ことし足らぬから、ことし急いでやれといったって、外国から輸入するほかない。外国でもできないということになれば、小売り価格が高騰し、今度はほかの食料品にも大きな影響を及ぼすというようなことで、私はこれらの需給計画に誤りがあったのではないか、またそれらに対する指導が不十分であったのではなかろうかと思いますが、その点、局長はどう考えておられます。
  283. 下浦静平

    下浦説明員 農産物の長期的な見通しにつきましては、農林省といたしましても、昭和四十三年でございましたか、農産物需給の長期見通しというものをつくって、それを目標にいたしまして、生産対策その他も講じてまいったということでございます。その中に食肉類も入っておるのでございますけれども、最近におきまする畜産物に対しまする需要の非常な強さというものがございまして、確かに先生の御指摘のように、若干私ども見通しを上回ったという傾向はございます。
  284. 神田大作

    ○神田委員 国税庁からわざわざ来てもらっておるから、一点だけ……。  というのは、酪農に対する課税、それから肉豚に対する課税、この課税の標準を簡単に説明してもらいたい。これは質問する時間がありませんが、それをもとにして次の機会に質問したいと思いますが、聞くところによると、私はこの課税が画一的であって、しかも私が先ほど言ったように、乳牛に対しましては、自給飼料の作物の反別は一反五畝必要であるというのが、税務署では九畝程度しか見ておらない、そういうところで課税の過重さがあるのではなかろうかと思いますが、その点についての基準ですね、それをお答え願うと同時に、それらに対するこまかい資料を、ひとつ委員長に要求しますが、課税の基礎資料を出していただきたいということを求めます。御答弁願います。
  285. 系光家

    ○系説明員 お答えいたします。  ただいまの御質問は、養豚とか酪農につきまして画一的な課税をしているのではないかといったような御趣旨だったわけでございますけれども、私どものほうは、大きな取り扱いをしておられる方々につきましては、当然税務署といたしましては、一年間の総収入金額から実際にかかった必要経費を控除してその事業所得を出すといったような実額主義をとっておりまして、その点におきましては個々人によって答えが違ってくる、実際に合った課税をするというたてまえをとっております。  しかしながら、小さい方につきましては、一々記録もしてないという場合もありますので、これは標準課税をしておるわけでございますけれども、この場合に全国一本でやっているのじゃなくて、一つの県あるいは一つの税務署単位ぐらいで実際の調査をいたしまして、それからそれぞれの団体からの意見も伺いまして標準をつくって、そうして開示をして課税をしているということでございまして、必ずしも画一的にはなってない、こういうふうに考えております。  それから、実際にどうなっているかという点でございますけれども、いま申し上げましたように、各署管内あるいは各県別にやっておりまして、国税庁でその数字を全部とっておりませんので、なかなか全国の数字を申し上げにくいわけでございますが、たとえば栃木県を例に申し上げますと、繁殖豚につきましては、子豚が二カ月ものである場合には、繁殖豚一頭当たりでございますけれども、四万八千四百円とか、あるいは子豚が三カ月から三カ月半のものであります場合には養殖豚一頭当たり十万三千二百円といったような計算ができておりまして、これの標準につきましては、税務署とかあるいは県ごとに、それぞれの業者の方々にも団体を通じまして開示をしているわけでございますが、さらにその同じような資料を提出することはできるかと思います。
  286. 神田大作

    ○神田委員 税務署の関係はあとの機会に質問させていただきます。
  287. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 稲富稜人君
  288. 稲富稜人

    ○稲富委員 乳価の問題に関連して一点だけお尋ねしたいと思います。  今日乳価の問題がいろいろ論議されておりますときに、この際、牛乳というものに対する規格を農林省としては決定する御意思はないかどうかということなんです。なぜかといいますと、御承知のとおり、今日われわれは生乳の消費を拡大しなければいけないと思いますが、ちまたに牛乳の入らないコーヒー牛乳であるとか加工乳が非常にはんらんいたしております。これに対する取り締まりは、もちろんこれは厚生省になるわけでございますが、牛乳の規格がないために取り締まることができないので、色づき牛乳のごときは単なる名称をつけた清涼飲料水として扱っている状態であります。これはどうしても牛乳の規格をきめなければ、あるいはこれを薄めて加工乳とする、こういうようなのがちまたにはんらんいたしておりますので、この機会に、そういう御意思はないのであるかどうか、当然やるべきだと思いますが、これに対する考え方を承りたい。
  289. 下浦静平

    下浦説明員 お答え申し上げます。  牛乳の規格につきましては、ただいま厚生省のほうの食品衛生法に基づきます乳等省令によりまして、脂肪分等を中心に定められておるところでございます。ただ、この脂肪分中心で定められておりますのがはたしていいのかどうかという観点からいたしまして、私どもといたしましては無脂同型分に中心を置きましての規格というものが考えられないかというようなことで、たしか昨年来調査をいたしておるところでございます。その調査結果がまとまりましたところで、また厚生省等ともよくお打ち合わせをいたしたいと存じております。  なお、表示の問題等につきましては、これは農林経済局の所管でございますので、帰りましてよく相談をいたしたいと存じます。
  290. 稲富稜人

    ○稲富委員 これはずいぶん長い間論議された問題でありますけれども、油脂分にだけ拘泥いたしますと、ヤシの油を入れて油脂分と見せるし、それだから、牛乳というものはこれだけの含有量を持たなければいけないというふうにやらなければ、あるいはさっき言いましたように、コーヒー牛乳と称する牛乳がほとんど入ってない、こういうものがちまたにはんらんする。これを一般の消費者は牛乳を使用していると思って飲む。これがために牛乳の消費量がふえない。こういうようなことがある。これをしばしば厚生省に取り締まりなさいと言うと、牛乳の規格がないから取り締まり対象にならないんだ、ただこれはコーヒー牛乳と称する清涼飲料水として取り扱っているだけだというのが厚生省の解釈なんです。今日乳価の問題がこれほど論議されているときでございますから、やはり農林省としては厚生省にまかせないで、農林省自体が牛乳というものはこういうものを牛乳と称するんだ、こういうことをはっきりしてやらなければ、いま申しましたように、ちまたには薄い牛乳、濃い牛乳、こういうような二通りの牛乳がはんらんするという問題になってくる。これはひとつこの際、農林省として方針を立ててこの対策をやるべきである、こう私は考える。厚生省にまかせるのじゃなく、牛乳の生産というのは農林省だから、農林省からまず規格を立てるべきである。食品衛生法によって取り締まるのは厚生省でもいいのだけれども、牛乳に対する計画は厚生省にまかせないで農林省でやるべきだ、かように私は考えますが、いかがでございますか。次官からひとつ。
  291. 中尾栄一

    中尾政府委員 私も先生の御説明を聞いておりまして、全くそういうことかなと思って聞いたのでございます。ほんとうにそうだと私も思います。牛乳だといって売りながら、牛乳ではない。これはある意味においては欺瞞みたいなことになるわけでございます。ただし、これは厚生省、農林省、それぞれの所管の問題にもなりまするから、十分この問題点は詰めてみまして、そして検討材料にいたしまして善処していく方向に私は指示を申し上げたい、こう思っております。
  292. 稲富稜人

    ○稲富委員 それではひとつ強くそれを要望いたします。これはもう十年前から論ぜられている問題でありますから、まだ今日依然としてありますから、この際特にその点、前向きなんということじゃなくて、現実の問題として早急に取り組んでいただきたいということを強く要望して、私の関連質問を終わります。
  293. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 本問題に関する残余の質疑は後刻行なうことといたし、この際暫時休憩いたします。    午後三時三十二分休憩      ————◇—————    午後四時十一分開議
  294. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  日本てん菜振興会の解散に関する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。櫻内農林大臣
  295. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 日本てん菜振興会の解散に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  日本てん菜振興会は、昭和三十四年に、当時のてん菜に関する試験研究の状況等にかんがみ、わが国におけるてん菜の品種の育成等を早期に達成するため、日本てん菜振興会法による特殊法人として設立されたものであります。  日本てん菜振興会は、設立以後現在まで、わが国に適したてん菜の優良品種の育成を中心に試験研究等の事業を行なってきておりますが、最近に至り、三百をこえる育種素材を整備するとともに、外国の優良品種をしのぐと思われる品種も育成されつつあり、かなりの成果をあげたものと評価されております。  このように、日本てん菜振興会による試験研究は一応当初の目的を達成するに至っており、今後は国において過去の研究成果を踏まえつつ適切な研究体制をとることによりてん菜に関する試験研究を支障なく行なうことができると認められますし、また、特殊法人の整理統合に関する政府方針もありますことから、この際日本てん菜振興会を解散するとともに、以後のてん菜に関する試験研究は国の北海道農業試験場において行なうこととし、この法律案を提出いたした次第であります。  次に、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、日本てん菜振興会は、この法律の施行のときにおいて解散することとし、その資産及び債務はそのときにおいて国が承継することといたしております。なお、この法律は昭和四十八年七月一日から施行することといたしております。  第二に、日本てん菜振興会の解散に伴う所要の規定の整備を行なうとともに、必要な経過措置を定めることといたしております。  以上が、この法律案の提案の理由及び内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  296. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 以上で本案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  297. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。美濃政市君。
  298. 美濃政市

    美濃委員 ただいま趣旨説明のありましたてん菜振興会の解散に伴いまして、若干の質問をいたしたいと思います。  まず第一点として、てん菜振興会でてん菜研究所をつくりまして、主として北海道のてん菜の品種改良を行なってきたわけでありますが、この法律によりますと、七月一日から実施ということになりますが、従来てん菜振興会で行なってきたこの品種改良の予算と、七月一日以降国が行なうという予算、この対比をお聞きしたいと思います。国が直接やるようにして予算を増加するのか、あるいは少なくするのか、あるいは試験研究を利用する設備とかそういうものの増強、こういうものに対する考え方計画をお聞かせいただきたいと思います。
  299. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいま手元には四十七年度と四十八年度の予算の比較表がございますので、まずこれを御参考に申し上げます。  昭和四十七年度の日本てん菜振興会試験研究費は三千七百万円でございます。昭和四十八年度におきましては、日本てん菜振興会試験研究費に三カ月分として七百万円計上いたしまして、承継後の国立北海道農業試験場試験研究費九カ月分として三千百万円、計三千八百万円の予算措置でございます。  なお、研究体制について申し上げますと、解散前、日本てん菜振興会てん菜研究所は、研究員三十二名でうち五研究室十九名でございます。国が引き継いだ後の国立北海道農業試験場てん菜部は研究員三十二名、うち五研究室は二十一名、こういうことになっております。
  300. 美濃政市

    美濃委員 もう一つ答弁が落ちておりますが、設備等の改善は国に引き継いでどういう計画になったのか。
  301. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 お答え申し上げます。  設備関係につきましては、建物設備、機械施設、圃場等すべてそのまま引き継いで、従来からの物的な体制そのまま引き継いで、研究の内容もほぼ同じ規模のものをやっていくようにしております。
  302. 美濃政市

    美濃委員 ただいま大臣から人員について概要の話がございましたが、もう少し具体的にお聞きしたいのです。現在人員から何名引き継いで、新規採用があるのかないのか、その関係をもう少し具体的に人員の引き継ぎをきちっと説明していただきたい。
  303. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 お答え申し上げます。  二名だけが御勇退になるというように承っておりますが、それ以外の方は全部引き継ぐ予定でございます。
  304. 美濃政市

    美濃委員 この引き継ぐ条件で一、二お尋ねしますが、まず第一に、人間には生活がついております。てん菜研究所から引き継ぐ職員の給与であります。給与の関係が国に移ってどういうふうになるか。現給保障して引き継ぐのか。それとも国に引き継ぐと現在の待遇を上回るのか下回るのか。これを説明していただきたい。
  305. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 お答え申し上げます。  国のほうに引き継ぐ職員につきましては、国の職員で、その引き継がれる方と大体同学歴であるとか同経験年数でありますとか、あるいは同じような能力を持ったような方々がおられるわけでございますが、そういう方々とのバランスをとって引き継ぐということになろうかと思います。その場合には、いまのてん菜研究所の給与水準というものは国の試験研究機関の給与水準よりも若干高目になっておるわけでございます。したがって、その分だけは国に引き継ぎました場合に減るというようなことがあるわけでございます。  ただ、国と比較して、こういう特殊な法人の給与水準というものは、一般的に若干特殊法人のほうが高目にきめられておるわけでございますが、これは年金とかなんとかというものの条件が国の公務員のほうが若干手厚になっております。そういったことの差を勘案いたしますと、おおむね適当な水準になるのではないかというように考えております。
  306. 美濃政市

    美濃委員 年金関係はどうなりますか。現在どういう年金にこの職員は入っておって、それが年限継承されて引き継がれるのかどうか。
  307. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 引き継ぐことになります。
  308. 美濃政市

    美濃委員 いまはどの年金に入っておるのですか、ここの職員は。公務員年金に入っておるのか、どういう年金に入って、どういう基準で年限を公務員年金に継承するか、その経過をちょっと具体的に説明してもらいたい。
  309. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 お答え申し上げます。  特殊法人の職員の年金は、厚生年金保険法に基づき支給される老齢年金ということに相なっております。  これと国家公務員共済組合法に基づき支給される退職年金、こういうようなことの比較に相なるわけでございます。この場合に、厚生年金の場合よりも国家公務員の共済組合の年金のほうが高いということに相なっておるわけでございます。これはあとで資料で差し上げてもけっこうでございますが、こまかくなりますけれども、加入期間三十年ということをとりますと、国家公務員の場合には六万一千六百円、厚生年金保険の場合には二万四千円ということになります。加入期間二十年をとりますと、厚生年金のほうが一万六千円、国家公務員の共済組合のほうが四万四千五百円、こういうふうな数字に相なっております。
  310. 美濃政市

    美濃委員 それを継承するときに、どういう形で継承されるかということをちょっとお聞きしたい。国立に来ると公務員年金に変わるのでしょう。ですから、厚生年金の加入期間をどういうふうに見るのか、概要でよろしゅうございます。特例措置があるのか。その年限が継承されないと当該職員はたいへんだと思う。厚生年金を一ぺん解約して新たに公務員年金に加入するというのでは、職員としては非常に困るわけです。ですから、厚生年金を公務員年金に期間継承して引き継がなければならぬでしょう。その概要を聞きたい、こう言っておるわけです。
  311. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 お答え申し上げます。  年金につきましては、通算年金通則法という法律がございまして、てん菜振興会の職員の期間と国家公務員の期間とが通算をされるということになっておるわけでございます。
  312. 美濃政市

    美濃委員 厚生年金の年限は通算されるわけですね。通算されて公務員年金へ引き継ぐわけですね。その場合、厚生年金期間の計算は、具体的に給付が開始される場合、安い厚生年金の率で計算され、公務員年金に入った年限は公務員年金で計算されるということになるのか。それとも、これから先、年金給付年齢に該当して退職した場合、公務員年金で厚生年金の通算期間を全部払われるのか。どういうふうになりますか。
  313. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 通算されました場合の年金は、厚生年金保険と国家公務員共済とからそれぞれの加入期間に見合った金額が支給される、こういうことになります。ただ、いま年齢が非常に若い方が二十六名程度いらっしゃるわけですが、こういう方は国家公務員共済のウエートが非常に高くなるに違いありません。こういう方ばかなり有利になるのじゃないかと考えております。
  314. 美濃政市

    美濃委員 次に、提案説明の中で、優良品種の育成事業を行なって、そして「外国の優良品種をしのぐと思われる品種も育成されつつあり、」こういっておりますが、現在のところ、外国という対象国との関係もございますけれども、いまだ根中糖分、いわゆるてん菜の含糖は国際水準よりも低いわけです。これはどうしても北海道の気候なり土壌条件に適合するもの、そして収量、糖分——糖分は高くても収量が低ければ生産者がそういう品種の選択はできません。両方合致した品種をさらに開発していかなければならぬと思う。輸入品種ではもう限度にきておるのではないか。外国の種を安易に輸入してみても、やはり土地条件、気象条件に必ずしも合致しませんから、品種によっては、その国では非常にりっぱな生育を遂げておるものでも、日本に持ってきてつくるとだめだ、こういうものもあります。  そうすると、この仕事は欧州諸国と比較してもいま歩どまりで二%低いわけですね。この二%低いという原因は品種にあると私は思うのです。ビートの内容が、調べてみると含まれておる糖分に差がある。これをどうしても解決しなければならぬ。この二%というのは、昨年三十七万トンですが、三十七万トン砂糖が生産されると、歩どまりが二%ということになれば、金額にして約四十億近い差があるわけですね。それはいまのところ政府買い入れになっておりますから、そういうものを解消するには、この研究は非常に金は——四十億という経済性が一年で違うわけですから、予算は三千万や四千万じゃなくて、もっと必要であれば予算を増加して、真剣に世界水準の品種開発に研究を続けていかなければならぬと私は思うわけです。それだけの意気込みを持って国が引き継いで——引き継いだあと、日本の場合、こういう試験研究あるいは品種の開発ということについては、予算を編成するときになると、何か大蔵省あたりはややもすると予算上阻害する傾向があるわけです。こういう面をやはり今後の体制としてきちっとしていかなければならぬと思いますが、そういう農林省の腹がまえ、それから、今後絶対心配ありません、必ずそういう方向に向かって北海道向けの世界的標準の品種開発は必ずやります、これは断言できますか。そういう意気込みで国が引き受ける、こういうことになっておりますか、どうですか。
  315. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 ただいま先生御指摘になられましたように、その国、土地の気象条件に合った品種というものを持つことが必要であろうかと思うわけであります。そういう意味におきましててん菜振興会というものが昭和三十四年に設立をされた。白来いろいろな研究をしてきております。  てん菜というような他花受粉のものにつきましてはなかなか期間がかかるわけでございますが、最近ようやくいいものが出てまいりました。御案内と思いますがTの一〇一三というような単胚品種、これは糖分も収量も外国産のものに負けないようなものが出てきております。ことにこれは単胚種でございまして、省力的なてん菜であるということでもございます。こういうものを今後伸ばしていく。一代雑種を使っていくわけでございますけれども、こういうようなものをつくっていきまして、そして農家にそれを供給していくということが一番必要なことではないかと私ども考えておるわけでございます。  そういう意味で今回国のほうに引き継ぎましても、そういう過去の研究成果というものを十分踏まえた上で、しかも研究の質を落とさないでやっていくということがわれわれの責務ではないかというように私ども考えておる次第でございます。
  316. 美濃政市

    美濃委員 次に、てん菜振興についてお尋ねしたいと思いますが、第一に、過般農林省の「試案」が出ました。これを見ても北海道におけるてん菜の収量のトン数は、昭和五十七年までにはかなりの増加を見込んでおります。昨年の状況を見ておりますと、原料の処理が現在の施設で飽和状態になってきた、もう能力一ぱいになってきた。これから先どういうふうにしますか。このてん菜振興策が進み、あるいは十アール当たり収量が伸びて、いまの工場で処理能力が足らなくなってきた。これに対する対応は、新設工場をそういう時期に考えるのか、あるいは現在の工場の能率アップをするのか、基本的にどういう方向で進めようとしておるか。
  317. 池田正範

    ○池田政府委員 御指摘のとおり、昨年かなりビートの収量が増加いたしまして、これに対応するための処理にかなり時間が手間どったわけでございます。ただ、昨年の異常天候とビートの二次生長を含めてかなり糖分の低い大根の量がふえたというようなことから、その処理に手間どったことは確かでございますけれども、ここ二両年の間は、私どもの通常の見通しからいたしますと、現在の製糖設備の能力でこなし縛るものというふうに考えております。しかし、その後におきまして、いま御指摘の将来の見通しからいたしますと、十年間でかなりの、約百万トン近い国産糖の増収を見込んでおるわけでございますので、当然現在の製糖設備では間に合わないということになりますので、これは逐次合理化を進めまして、全体の設備を、特に十勝あるいは北見といったようなところを中心に設備増強に力を入れていかなければならぬというように考えておる次第でございます。
  318. 美濃政市

    美濃委員 その設備増強とは、いまその段階ではないですけれども、しかし、展望から見れば、いま局長が答弁したような計画、いわゆる展望になっておるわけです。それは新設工場を考えるのか、工場をそうふやさないで能率アップを中心として行なうのか、どちらを将来の問題点として検討しておるかということを聞いておるわけです。
  319. 池田正範

    ○池田政府委員 御承知のように、製糖企業は自由企業でございますので、あとでやりたいと言って手をあげてくるものがないという保証はございません。その意味で、新しいものが入らないのだというふうにいまから申し上げるのは早計だと思いますが、しかし、全般的に見ましていまの北海道のビートの生産状況なりあるいは現実にそれを処理しております製糖企業のいままでの歴史的ないきさつというふうなものを考えますと、私どもの望ましい形態としては、いまありますところの三つの大きな製糖工業がそれぞれ設備の拡充によって合理化されたコストによって運営される、それで将来の増産部分がまかなっていかれるというふうな形になっていくのではないかというふうに一応推定をいたしておる次第でございます。
  320. 美濃政市

    美濃委員 次に、昨年のてん菜の含糖その他から見て——これは糖分がいい年もあります。率直に申し上げて、糖分のいい年は生産者が損する、歩どまりが高いですから。昨年のようになると、私ども聞いておると、たとえば歩どまりが政府が買い入れ糖価をきめた基準よりも下がる。これはかなり深刻な状態になるのではないか、こういうことを私ども心配しました。そして売り戻し差損を引き上げるとかいろいろな対策をやったわけですが、そのときに何か水分の多いビートだと言うから、生産者から少し戻させればいいのじゃないかというような、これは冗談だと思うけれども、冗談にもせよ、そういう話が出るのはおかしいと思うのですね。ですから、これから先、てん菜の受け渡し条件は糖分買いにするのか、それともまだしばらく斤量建てを続けるのか。その買い入れ法は量で買い入れをしていくか糖分買いにするか、この検討はどうなっておりますか。
  321. 池田正範

    ○池田政府委員 御指摘のとおり、昨年の実例からにわかにてん菜の買い入れを糖度によって行なうべきではないかというような指摘が出てきておることは事実でございますが、いやしくもすでにきまりました契約をさかのぼりまして一部戻せというようなごときは、これは先生御指摘のとおり、おそらく冗談であろうというふうに私ども考えております。しかし、その冗談の底には、ことしのようなできからいたしますと、おそらく大根だけ多くて砂糖が歩どまらないという結果に対して、これを製造いたしました製糖工業の採算が非常に悪化するという形に追い込まれたことから一部出てきたことばであろうというふうに考えております。  しかし、わが国のてん菜の栽培は、御承知のように、まだ歴史が非常に浅うございまして、しかも農家規模その他から考えましてもなお低収であるというようなことから、工場も主として農家の増産ということに最大限の努力をして、少なくとも工場が成り立っていくための最低規模の原料を獲得するということに農家の最大限の協力を求めてきたという歴史的経過がございますので、これを無視して急にというわけにはなかなかまいらぬという事情もあろうかと思います。  しかし、最近栽培技術というものも非常に向上してまいりまして、いわゆるヘクタール当たりの収量といったようなものも、昨年の例を引くまでもなく、ほぼ欧米の水準に近づいてきておる。そういうふうなことから、今後は生産面の努力が、砂糖の原料というてん菜糖の本来の性格に立ち返って糖分の向上をはかる方向に進むという必要性、これはやはり率直に認めざるを得ないというふうに考えますが、しかし、砂糖分の多いてん菜をつくった農家と、少ないけれども大根の量だけは多いてん菜をつくった農家との間の所得上の格差というものがある程度あってもいいんではないかという批判というものは、当然将来的にはある程度考えていかなければならない。  そこで、これまで従量取引であったてん菜を糖度取引に改めるというためには、いま御承知のように、中間受け渡し場所での糖度の確定問題は、やろうとしても事実上なかなかむずかしい技術的問題が含まれておりますが、そういった取引形態やあるいは糖度の実態を十分に調査いたしまして、とにかく関係者が十分理解した上で実施に移すというふうな形で切りかえられていくことが望ましい。いわばこの問題に対する両者の間の熟度と申しますか、理解というものが前提に立って発展していくということが望ましい。御承知のように、道庁でもてん菜の取引制度調査会というのを四年ほど前からやっておりまして、これについての一応の調査結果も出ておりますので、私どもこれらを参考にいたしまして、いま申し上げましたような両者の間の十分の了解を踏まえて、その方向に持っていく時期が熟すればその方向を考えるべきであるというふうに考えておる次第でございます。
  322. 美濃政市

    美濃委員 きめられました時間が参りましたので、本日はこの法案についての審議でございますから以上で質問を終わりますが、いずれ昭和四十八年度産てん菜価格の決定も近いわけでありますから、四十八年度価格、それからこれからの振興問題につきましては、日をあらためて別の機会に十分お尋ねしたいと思います。  本日は、以上で終わります。
  323. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 津川武一君。
  324. 津川武一

    ○津川委員 大臣は砂糖の消費量がこれからどうなっていくと見ておるか、これをまずお伺いします。
  325. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 たいへん常識的なお答えをして恐縮でございますが、従来から文明度が上がれば砂糖の消費量はふえる、いわば現在の私ども生活の向上に伴いまして砂糖の消費量はふえる傾向にある、こういうふうに申し上げていいと思います。
  326. 津川武一

    ○津川委員 大臣の言われるとおり、かなり消費がふえております。  そこで、このふえておる消費を輸入でまかなうのか、国内生産でまかなうのか。私は砂糖の自給率を上げていかなければいけないと思います。今度の大豆の問題、今度のえさの問題を考えたときに、ふえていく消費量に対して、絶対量だけでなく、国内生産の自給率を上げるべきだと思うのですが、大臣もそのように考えますか。
  327. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 最初に従来の経緯を見ますと、砂糖の自給率は昭和三十年代の一〇%程度から現在の二〇%台へ高まってきていると思います。なお、私どもとして昨年十月の「農産物需給の展望と生産目標の試案」では、十年後に二六ないし二八%、大体二七%前後を目標としておるわけでございまして、四十五年度の実績が二三%でございますので、今後なお自給率をふやすということにつきましては、ただいま申し上げた目標に沿って努力をしてまいりたいと思います。
  328. 津川武一

    ○津川委員 絶対量がふえる、自給率も上げるとなってくると、国内生産をもっとふやさなければなりません。  そこで、大臣が言われたとおりですが、それをどこで、何の砂糖の種類でふやしますか。
  329. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 サトウキビは、申し上げるまでもなく、沖繩県の主要作物でございます。また、てん菜糖は北海道における主要作物であると思いますし、今後におきましても、この北海道あるいは沖繩県、また沖繩県に近い鹿児島県などにおきまして増産をはかる必要があるのではないかと思います。
  330. 津川武一

    ○津川委員 てん菜糖ではどうです。てん菜糖もふやす必要があると思いますが、もっとふやすつもりはありませんか。
  331. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 てん菜糖につきましては、先ほど自給率で申し上げましたが、昭和五十七年までに、四十五年に対比いたしますと作付面積で五万四千ヘクタールから七万七千ヘクタールに、しこうして十アール当たりの収量も上げたい、こういうことで、四千三百十キログラムを四千九百七十キログラムの引き上げ目標にいたしておるわけでございまして、その結果は、生産量を二百三十三万トンから三百八十二万トンへ持っていく、こういうことで、これからの努力をいたしたいというわけでございます。
  332. 津川武一

    ○津川委員 とすれば、いまの試験研究体制でいいのかという問題です。私は、もっと試験研究体制を強化しなければならぬ。絶対量がふえる、そのふえていく絶対量の中でさらに自給率を上げるとなれば、試験研究をやらなければならぬ。ところが、いま大臣の提案理由の説明に、大体目的を達したからもう解散してもいいという局長はT一〇一三という品種が出たと言う。この品種は出たが、まだ北海道でさえ定着していない。これは現にいいものができましたよ。これを定着さしてふやしていくとすれば、もっと必要だと思う。  その次に、大臣、三十五年だか六年だったか、鹿児島と宮崎でてん菜糖がだめになった。岡山県でもだめになった。それは御存じでしょう。そのときの試験研究がまだ足りないから、だめになった。試験研究を強めて、いまみたいな体制でT一〇一三などという形のものを、そこに適するものを——先ほど前質問者もほんとう日本の国土に適したものをと言った。  ここでもう一度、鹿児島、宮崎、そして岡山、岩手県の北半分、青森県の東半分でだめになったてん菜のこと。トルコあたりでは、暖地にてん菜糖、ビートをつくっている。そして自給率は八〇%。根本的にやろうとすれば、暖地で、もっと南でこうしなければならぬ。一〇一三がまだ北海道ですっかり根づいてない現状で、そしてさらに、こういう体制をもって、いま大臣が言ったとおり、絶対量を上げて、自給率を上げていくとすれば、もっともっとやらなければならぬ。  私は、この解散には賛成ですが、ほぼ目的を達したという考え方、それは足りない、もっとやるべきだ、こう思うわけです。てん菜の試験研究にもっと拡大すべきだと思いますが、この点、大臣、どうです。
  333. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 技術的な話がございますので、先にちょっとお答えさせていただきたいと思います。  過去における暖地及び北東北てん菜につきまして、作付の振興をはかりましたわけでございますが、それぞれの理由がございましてうまくいかなかったような点があったことは事実でございます。  ことに暖地におきましては、早期水稲と結びついたてん菜ということを考え、また北東北におきましては、畑作地帯を特に中心に考えたわけでございますが、南のほうにつきましては、水稲の早期化というのはなかなか困難であったというようなこともございます。北のほうでは、水田化がかなり早く進んだというようなこともありまして、てん菜がなかなかうまくいかなかったというようなこともあります。  ただいま先生御指摘のように、試験研究の問題であるというような御指摘でございますが、そういう点もあったかもしれませんけれども、それだけではなかったような気がいたします。  それから、私どもといたしまして、やはりこういった問題について試験研究をきちっとやっていくのが必要であるというのはもとよりのことでございます。T一〇一三ということを申し上げましたけれども、それだけでなくて、後続のものも高反収、それから高糖度のものも続々出てきております。先ほど申し上げましたように、てん菜の品種を一つつくり上げるというのはなかなか日数がかかることでございますが、ともかくかなりの努力が実を結びまして、新しい品種も次から次に出てきておるようなわけでございます。それをいかに普及に回していくかということも、これからのわれわれの責務であろうかというように考えておる次第でございます。
  334. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 試験研究の重要性は御指摘のとおりでありまして、今回の場合は、提案理由でも申し上げましたように、特殊法人の整理統合という政府方針に基づいて、しかも幸い北海道農業試験場へ引き継ぐのにちょうど適しておるというようなことからでございますから、決して試験研究をおろそかにするというふうにおとり願わずに、またそういう他の意味もあるということを御参考にしていただきたいと思います。
  335. 津川武一

    ○津川委員 そこで大臣、トルコはかなりあたたかい、御存じのとおり、てん菜がよく育つ。日本のほうで、九州のほうでトルコのてん菜、失敗したんだよ。このとき試験研究がそこにいってなかった。アメリカの品種が中心、そのときの試験研究は。私は青森県でてん菜がだめになったから、その事情をよく調べたんです。そのとき、熱帯性とはいかなくても、暖地における、九州における適種、これをつくるならば、トルコに劣らないほどいけたわけです。いまT一〇一三をつくって、アメリカのものとヨーロッパのものをつくってやったわけだね。今度その試験研究にもう一度トルコなどのものを入れるなり、行ってみて、試験研究することによって、私はそこにもっと自由化を進めていけると思うのです。この点の大臣の見解をひとつ聞かせていただきます。
  336. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 暖地におきますビートの問題につきましては、てん菜の振興会でも研究をいたしております。熊本に支所をつくりまして、そこでいろいろな研究をいたしまして、ある程度の品種ができてきておるわけでございます。先生御指摘のように、ヨーロッパにおきましても暖地のビートがございます。ただ、それがいきなり日本に向くかどうかということの点もございますが、御指摘の点もございますので、私どもよく研究させていただきたいと思います。
  337. 津川武一

    ○津川委員 鹿児島でだめになったという。私は熊本県の試験場へ行ってみましたよ。てん菜振興会の態度がいけなくてできない。現実に人も減らされて、できていけなくなった。そこで大臣、この点は考えてみるかどうか、暖地のてん菜の試験研究。もう一度大臣から答えてもらいます。
  338. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほど伊藤局長からの御説明を申し上げたような経緯にございまするけれども、率直に申し上げまして、暖地の分ということについてはなかなか研究もむずかしい面もあるというように聞いておりまするが、せっかくのおことばでございますので、なおよく検討させていただきます。
  339. 津川武一

    ○津川委員 いや、儀礼的な返事は私は要らないの。問題は具体的なんだから。トルコあたりの品種を取り寄せて試験研究をやって、研究してみるかどうか。これで成功しておる。それを答えていただけばよろしいのです。
  340. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 なかなか私の客観的判断だけではお答えしにくい面があるようでございます。従来暖地で成功した、失敗した——そのトルコの場合は成功しておる例でございましょう。また日本の場合は失敗した例でございましょう。しかし、それには単純に品種だけの問題でもないというふうに聞いておるのでございまするので、先ほど申し上げたように、せっかくいまいろいろと御意見を出されておるのでございまするから、そこで私はそういう御意見も検討してみよう、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  341. 津川武一

    ○津川委員 トルコだけでなく、ヨーロッパの南のほうにできている、これを大臣、検討してもらう。この点、やれるかやれないか、もう一回私は質問を保留する。この次、適当な機会にもう一度、大臣も研究して——私のほうは調べている。その点で調べていない状況の話をされても困るから。  そこでもう一つ。三十四年にこの法律ができたときに、ビートという一つの品種だけを取り上げてやるのは国の試験研究所としては適当でない。  二つ目は、従来の試験研究所にはてん菜に関する技術者が少なく、広く民間から集めるには公務員給与では低いという待遇上の制約があってこうやった、こういう形のことが提案理由になっているわけです。この問題がいま解決されているかどうか。解決されているならばよろしい。これが一つ。  もう一つ。ようやくあの試験研究所でてん菜の世代更新が二回できるようになったのです。これは非常によろしい。ところが、ほかの大笠あたりの試験研究所で世代更新が非常に困難になっている。せっかくあの研究所で世代更新ができた。そこで、ほかのものの研究が世代更新のためにてん菜のこの試験研究所になだれ込む、使う、こういう形のものが出てきやしないか。したがって、てん菜試験研究のほうがおろそかにされはしないか、これが心配なんです。そこで私は、あらゆる試験研究所、特に大豆、具体的に言うと、帯広の国立の試験研究所、ここに世代更新を早めるための施策を講じてやらなければならない。この点心配なのが一つございます。  第二番目には、最近の稲の試験研究、大臣も御承知のとおり、耐寒性の研究はほとんどとまっています。増産するような品種がとまっておる。これは必ずしも米の増産が必要でない、うまい米をつくるためにという試験研究に国の政策で変わった。さあ、今度てん菜研究所がこっちに移ったときに、国の施策で北海道の試験場の一部に組み入れられてしまって、その本来の試験というものが影響されていかないか、こういう心配があるわけであります。この点を事務局が答えるなら答えて、それからあとで、それに対する大臣の所見を伺います。
  342. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 お答え申し上げます。  確かに御指摘のように、てん研ができました趣旨がございまして、そのてん研が相当の成果をあげまして入るということになった場合に、御指摘の問題は依然として残っておるわけでございます。したがいまして、入りましたてん研てん菜部の機構なり陣容は、ほかの単品の作物に比べて優位にあるような研究体制にあるのは事実でございますが、しかし、現在、まだ北海道農業が持っておりますてん菜の問題というのは国のレベルにいわばスローダウンしていいほどには解決していない問題であります。従来どおりの研究を続けたい、こう思います。
  343. 津川武一

    ○津川委員 そこで、てん菜は単品としては一番いい研究をやっている。ほかのものが落ちている。だから、大豆あたりを単品のビートまで上げる必要がある、このことを大臣はどう考えているかということが一つ。  それからもう一つは、試験研究の技術者の問題でてん菜研究所をぼくは現地に人をやって調べてみた。実際てん菜はあるからつくらなければならないんだ。試験研究をやる。これも人が足りないのですよ。これも人件費が低い。試験研究がとまってしまう。全国の実際の耕作をする試験研究員が足りないことが一つ。人夫賃、手間賃が足りない、このために試験研究がやられてない点が一つある。それから今度は、国立のものに組み込まれたときに、単品としてここだけが進んでおるから、ほかのものを持ち込まれる心配はないか、この三つのことを大臣から答えていただきます。
  344. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 一つは研究のための実際の耕作者に不足する、こういう面、そういう実情にあるということから御心配の御質問だと思うのでございます。さような点から研究に支障があるということではいけないのでございまするが、何ぶんにも国立の試験場ということで定員等に関係をする方々であるとたいへん問題であると思いまするが、しかし、耕作者であるということであれば、それはまたいろいろな便法があるのではないか、こういうふうに御質問に伴って考えたのでございます。  それから、ほかのものをどんどん持ち込まれるのじゃないか、単品によるいろいろな試験というものが持ち込まれるという御心配のようでございましたが、その辺のことは御心配のないようにつとめてまいりたいと思います。大体以上です。
  345. 津川武一

    ○津川委員 大臣、一つだけ。大豆の研究を単品のてん菜並みに上げる必要があると思うのですが、これ一つだけで大臣に対する質問を終わります。
  346. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 大豆の研究について先ほどから熱心な御意見でございましたが、私どもとしてもその点は努力いたします。
  347. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 瀬野栄次郎君。
  348. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日本てん菜振興会の解散に関する法律案について農林大臣質問をいたします。  まず、日本てん菜振興会昭和三十四年に国の試験研究機関とは別に特殊法人として設立され、現在まで試験研究を行なってきているわけでありますが、今回それを国へ移管しようとする理由、これは何であるか、そのことからまずはっきり説明を願いたい。
  349. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これは先ほど提案の趣旨説明で申し上げましたように、一応の成果をあげてまいった。それと特殊法人の整理ということで、ちょうど北海道農業試験場にこれを引き継いでやることがしかるべきではないか、こういうことで今回の措置をとろうということでお願いをしておるわけでございます。
  350. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 なるほど提案理由の説明の中に「日本てん菜振興会による試験研究は一応当初の目的を達成するに至っており、今後は国において過去の研究成果を踏まえつつ適切な研究体制をとることによりてん菜に関する試験研究を支障なく行なうことができる」というふうに説明があったわけでございますが、北海道においては成功し順調にいっておるわけですけれども、この暖地ビートについては、南九州の熊木、鹿児島、大分、宮崎等においては農家の所得を増すということでずいぶん期待が持たれ、また当時私も県会議員としてこの推進を極力はかってきた一員でありますが、早期稲作のあと作として大いに奨励をしてきたわけです。ところが、農林省の奨励にもかかわらず失敗に終わった。当時われわれはずいぶんと批判を受けたわけでありますが、このことについて大臣は、当時は大臣じゃなかったわけですけれども、暖地ビートは完全に失敗であった、こういうふうに認識しておられるか、その点明確にお答えいただきたい。
  351. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 先ほどもお答え申し上げたわけでございますが、暖地のてん菜につきましては、畑作経営の改善をはかる作物といたしまして、また暖地におきます早期水稲のあと作ということでたいへん有望ではないか、また、ことに九州での畜産との有機的な結合によって地力の維持増進でありますとか経営の体質の改善がはかれるのではないか、そういうような期待もございまして、暖地ビートの推進ということに努力がなされたというわけでございます。昭和三十二年ごろから中、四国、関東の一部で試作が開始されました。一時は二千町歩近い栽培面積となったわけでございますが、水田へのてん菜の導入、水田の早期作、要するに、通例は早期化するということでそのあとへのてん菜の導入というものが進まないというようなことから、作付が伸びなかったというようなことがございます。ほとんどの県では昭和三十七年度で試作が打ち切られまして、鹿児島県のみが比較的最後まで残ったわけでございますけれども、その後においてもなかなか反収があがらなかったということ。それから、あったかいところでございまして病虫害の発生も多いというようなことがございまして、作付面積が伸びてまいりませんで、生産量計画を大幅に下回るというようなことがございました。片やまた、砂糖の値段が長期低迷化をいたした時期にちょうど遭遇いたしまして、製糖企業の進出も中止するというようなことで、はなはだ残念であったわけでありますけれども昭和四十年度をもって生産奨励というものが中止されまして、ほかの作物へ転換された、こういうことになっておる次第でございます。
  352. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま説明がありましたように、暖地ビートは失敗でありましたね、どうですか、大臣
  353. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまの伊藤局長の御説明でおわかりのように、実績があがらなかったのでありますから、これは失敗と判断してよろしいと思います。
  354. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 何も大臣にわざわざ失敗したと言わせなくても失敗なんですが、あとの質問の関係があるので私は、ぜひはっきりと答弁をいただきたかったわけです。  それで、伊藤局長からも答弁がありましたけれども、事務的な問題あるいは当局に対する質問大臣質問のあとでまたやることになっておりますから、大臣に対する質問ということで限られた時間で質問します。以下大臣お答えいただき、大臣がお答できないところは後ほど事務当局にお聞きいたしますので、そういうふうにお願いしたいと思うのです。  よくいわれることでありますが、農林省が言うことと反対のことをやったほうがうまくいく、こういうことをよく全国的に言うわけですね。これは何もビートに限らず、ほかの問題もそうですが、だからといって、何もかも農林省が言うことが間違っているとは申しませんけれども、やはり農林省となると末端農家は一生懸命それを信用してやるという、またそうでなくちゃならぬと思うのでありますが、えてしてこういうことが失敗するということになると、農家の打撃、ショックは大きいわけですね。大臣農業には詳しいわけですから、これのみならずよく知っておられると思うのでありますが、こういうことがしばしば行なわれるということでは農家はたまったものではありません。今度の乳価、豚価の問題にいたしましても、午前中からだいぶ議論がありましたが、飼料の値上がり等が、農林省の十月の需給見通しによれば値上がりはしない、むしろ下がるほうだという見解が出ている。ところが、とんでもない結果が出てきたというようなことで、農林省はもっと真剣に取り組んで見通しも立て、こういったものを農家に普及する場合には真剣にやってもらわなければいかぬわけです。そういうことで、これに限らずこういったものを農家の収入源として奨励することは今後もあることですから、真剣に取り組んでいただかなければならぬ。失敗したらたいへんなことになる。この振興会も十数億円の資本金を入れて相当な金を使って、また県でも相当な経費を使ってやったというが、完全に失敗した。こういったことじゃいかぬ。今後のこともあるので十分反省の上に立って、今後こういったものの指導、奨励にあたっては十分対処をする、こういったことについて大臣から決意のほどを承っておきたい。
  355. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 たいへん貴重な御意見で御指摘をいただきました。何ぶんにも日本農業も開放経済下にございまして、単なる国内的な視野だけではもうやっていけないむずかしい事情にあるということは御了承いただけると思うのであります。それだけに、御意見のとおりに、これから国際的にも国内的にも広い視野の上から、あらゆる情報の上に立って対処していかなければならないと思います。少なくともいま御指摘のような、今後農業をやられる方々が国の指導によって大きな失敗へ持っていかれるというような事態は、私どもとして誠意をもってさようなことのないようにつとめてまいりたいと思います。
  356. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昭和三十六年度から昭和四十四年度までの間に熊本市の郊外に、大臣も御存じのとおり、同研究所の支所がありまして、これは四十五年でしたか、県に売却して現在は処分されておりますが、全国でも熊木と北海道ということで、私もすぐ地元なんですが、県でも一生懸命に誘致をいたしまして暖地ビートの研究所ができたわけです。これもあらためてつくるということになるとずいぶんとたいへんなので、これを解散せずに研究所を持ちこたえてきたのですが、経費その他の関係からどうしようもなくて、結局四十五年に県が買い取るということでなくなったわけでありますけれども、そのときに暖地ビートの初秋まき用として、これは品種の名前ですが、「支七号」それから「はづき」「はるまさり」、この三つの新品種が発見されたことも事実であります。こういったものはトルコの品種等とかなり接近した品種ではないかということもいわれまして、相当期待を持っていたわけですけれども、今度北海道に一カ所いわゆるてん菜部ができるわけです。国のほうで管理することになりますけれども、こういったせっかくできた品種については今後どういうふうにこれを維持していくのか、これは立ち消えになってしまうのか、その点ちょっと心配しておるのです。いろいろな経費を使ってつくって、この二つの品種は比較的いい品種だったわけですけれども、この機会にどういう扱いをされるのか、お聞きしておきたいと思うのです。
  357. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 てん菜研究所の熊本の支所が昭和三十六年に設置されましてから四十四年までに、先生お話しのように、優良な品種の「はるまさり」とか「はづき」あるいは優良な系統の「支六号」「支七号」というものを育成いたしております。このうち「支七号」というのは北海道においても非常に優良だというようなことがわかりましたので、「きたまさり」という名前になりまして稲作転換に良好な品種としていま使われております。また「支六号」「支七号」はすぐれた育種世代として活用されておりまして、先ほど来話がありました「T一〇一三」の育成にもこれが活用されておるような次第でございます。  なお、「はづき」でございますとか「はるまさり」というようなものにつきましては、品種保存事業の一環としまして、現在てん菜研究所で保管されております。振興会が解散後も、北海道農試で引き続き維持をしていくというようにいたしたいと考えております。
  358. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今回のこのてん菜振興会で、財産の処分だとかあるいは国が引き継ぐところの債務、こういったものについてもいろいろあるわけですけれども、時間の約束がありますので、それらはあとで事務局にお尋ねすることにしまして、最後に大臣に一言お尋ねしておきます。  このビートが寒冷地作物として適しているということはもう当然でありますけれども、まあ、暖地ビートの場合もございますし、将来再びビート栽培をするというようなことが暖地でもないとも限りません。こういったことを踏まえまして、やはりいろいろ砂糖の需給というような面からも考え合わせたときに、今回は、振興会は解散して、北海道にてん菜部を設けて、国が移管を受けてやっていくということになりますけれども、将来以降についてはどういうふうに考えておられるか、またビート振興のための対策、こういったものについては大臣はどのように考えておられるか、その件をお聞きしたいと思います。
  359. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 暖地ビートの問題につきましては、先ほど御答弁を申し上げましたように、トルコの例をおあげでの質問で、検討すると申し上げておるわけでございまするが、実際はなかなか、トルコの生産量ども見ますると、それほど思ったような成果があがってないように思うのでございまするが、しかし、せっかくの御意向でありますので、よく検討さしていただきたいと思います。  なお、これからのサトウキビ、てん菜のことにつきましては、自給率を高めて増産をしていこうということで、特にてん菜については、先ほど五十七年の作付面積あるいは反収、それから生産量等について申し上げまして、現在よりも自給率を筒めていく、こういうことで、前向きに増産のために努力をしてまいりたいと思います。
  360. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 残余の質問は後ほどまた約束の時間内で当局にお尋ねすることにしまして、大臣に対する質問は若干残りましたけれども、後ほどの質問でお伺いすることにしまして、以上で一応質問を終わります。
  361. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 神田大作君。
  362. 神田大作

    ○神田委員 大臣にお尋ねしますが、時間の関係もありますから、その他の人の場合は私の指名に応じてお答え願いたいと思います。  このてん菜の作付は、ここ数年来どのような状況になっておるか。一体ふえているのか減っておるのか。それとも、今後はこれらに対しまして農林省直接で指導、研究をするというが、そういうことがはたして可能であるかどうか、この問題についてお尋ね申し上げます。
  363. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 この三年ぐらいの北海道におけるてん菜糖の生産の推移を検討してみまするに、たとえば昭和四十五年で五万四千二十九ヘクタールのものが四十七年では五万七千百六十六ヘクタールと、面積はそういう推移をいたしております。それからヘクタール当たりの収量は、四十五年四十三トン、四十六年で四十トン、四十七年四十八トン。まあ、これは天候のかげん等があったと思います。それから生産量では、四十五年二百三十二万トン、四十六年二百二十万トン、四十七年二百七十五万トン。四十七年の歩どまりは先ほどから非常に問題になっておりますが、いま手元には出ておりませんが、四十五、四十六年では一五・〇五%、一五・五三%ということで、栽培農家戸数だけは四十五年三万三千二百二十戸が三万六百八十九戸、二万九千三百十戸というふうに減っておりますが、他の面におきましては順調に推移しておる、こう思います。
  364. 神田大作

    ○神田委員 いまの農林大臣の答弁を見ますと、たいへんにこれはふえておるというようなわけにはいかぬ。徐々にはふえているようではありますが、耕作瀞の数からいうと減っておる。いろいろの農業からいいましても、これは当然だろうと思いますが、小規模経営ではこれはやっていけない。しかもてん菜の場合はいわゆる輪作がきかない。ここにてん菜の農家収入に対して大きな問題があると思いますが、この輪作というものは、たとえばたばこの場合にいたしましても、ほかの作物にいたしましても、輪作ができるような検討というもの、研究というものがなされておったわけですが、こういうような研究は実際問題として検討されておったのか、それともこれは不可能であるのか、今後はこの輪作というようなものができるのであるかどうか、この点をお尋ね申し上げます。
  365. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 もし間違っておりましたらば、技術的のことで補足説明をしてもらいまするが、てん菜は冷害に対して抵抗力が強い作物である、こういうことで畑地の地力維持をはかるための合理的な輪作物であるということで、寒冷地の畑作農業経営上重要な作物というふうに私どもは理解をしておるわけでございます。ただいまのお尋ねのことが、今後輪作に適するかというようにも受け取れましたが、さようでありますれば、輪作に適しておるという一応判断に立っております。
  366. 神田大作

    ○神田委員 これは技術的な問題だから、——私は北海道のてん菜は輪作ができないということが最大の欠陥であると聞いておりますが、その点は技術者でけっこうですから、御答弁願います。
  367. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 輪作の形も、イモ、豆、牧草、てん菜というようにぐるぐる回すようなかっこうもございます。てん菜は非常に肥料を食いますので、あと非常に土地がよくなるということもございます。
  368. 神田大作

    ○神田委員 それで、きょう配られた資料によると——委員長、大体こういう資料をきょう肥るというのはまずいので、今後注意してもらいたいと思う。きょう審議中に、てん菜振興会の解散に関する参考資料としていま配られたって、急いで見たってそんな質問はできっこない、神さまじゃないのだから。少なくとも二、三日前に配るように委員長のほうから注意してもらいたいと思います。  それで、この中にその使命を果たしたというようなことが書いてあるようでありますが、先ほどもほかの委員からも質問されたように、団地におけるところのてん菜は成功していないのですね。これは失敗に終わったわけでありますが、はたしてこの使命を果たしたから解散をするのか、それとも、実際は農林省の外郭団体を整理しなくちゃならぬというので、このてん菜振興会というような力の弱いものがまず第一にやり玉に上がって、解散を行管のほうからの強い要請によってしたのであるかどうか、その点をお尋ね申し上げます。
  369. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これは提案理由の趣旨説明で申し上げましたように、日本てん菜振興会の試験研究が一応当初の目的を達しておるということで、特殊法人の整理という角度から見ると、まあ、あそこは一応いっておるのだから、しかも国の北海道農業試験場に引き継いでも決して試験研究に支障はないじゃないかというようなことから、これは政府方針として勧奨された、すすめられた、こういうことでございまするし、またそういう勧奨を受けた私どもの立場からいたしまして、国の試験場のほうで引き継いでいける。ことばをじょうずに言えば、発展的解消というようなことばででも表現できるかと思うのでありますが、そのことは別といたしまして、そういうふうに継承もしてもらえるということから、けっこうではないかという判断に立ちまして、今回のこの法案の提案になった次第でございます。
  370. 神田大作

    ○神田委員 だいぶ大臣も苦しい答弁のようでありますが、私も、それは外郭団体を簡素化するというような趣旨もあったろう、こう思いますので、その点は追及しませんが、日本の砂糖が輸入にたよっておる。てん菜とかあるいはサトウキビを増産して国内の砂糖原料を増強するということは、私は一つの日本の国策だろうと思うのです。そういう意味から申しますれば、これはもっと強化して、ほかの国でも暖地てん菜の成功しておる国もあるのですから、あるいはまた北海道等においても、今後のやり方においてはこれは増産できる可能もあり得る。すべて砂糖が今日外国からの輸入によって、砂糖六社が不況によって不況カルテルを結ぼうかというような段階のときに、国内におけるところのてん菜あるいはサトウキビ等の増産には十分な力を入れてしかるべきであると考えるのでありますが、この点について大臣はどう考えますか。
  371. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 自給率の向上につきましては鋭意つとめてまいったところでございまするし、また昭和五十七年を目標にさらに現在、四十五年で自給率二三%を二七%見当へ拡充してまいりたいという方針に立っておるわけであります。本年度の予算をごらんいただきましても、てん菜大規模集団産地推進事業とかてん菜輪作畑改良事業とかてん菜共同育苗施設設置事業とか甘味資源生産振興事業とか、いろいろと各種事業を講じてまいるわけでございまして、先生の御指摘のとおりに、甘味資源の自給率向上のためには、この上とも鋭意努力をいたしてまいりたいと思います。
  372. 神田大作

    ○神田委員 しかもこのビートのかすは、酪農にとってはなくてならない非常に重要な飼料なんです。現在日本飼料は国外から輸入しておる。国内自給の点からいってもこれは大事な資源でございますからして、そういう点も十分考慮され、今後これが解散されましても、これらの振興に対しまして農林省当局は責任を持ってその使命を果たされることを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。御答弁を願いたいと思います。
  373. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 現在飼料が非常に高騰しておりまして、飼料についての万般の施策を講じてまいらなければならないその一環の中におきまして、このてん菜糖のいわゆるかすが飼料に好適であるという御指摘、そういう面からもてん菜糖の増産あるいは甘味資源の自給率向上についての御意見につきましては、私としても全く同感でございまして、その御趣旨に沿って努力をしてまいりたいと思います。
  374. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 島田琢郎君。
  375. 島田琢郎

    島田(琢)委員 大臣まだ時間があるようですから、ちょっと私一つお尋ねをします。  これは全質問者が、皆さんが口をそろえておっしゃっていることは、てん菜振興会の解散の理由で、功成り名を遂げた、ほぼその目的を達した、だから廃止するのだ、こう言っているわけですけれども、しかし、私は正直いうと、そう思っていないのですよ。ですから、こういう説明というのは、私は状況判断、ビートの置かれている立場というものを非常に甘く見ていられるのではないかという気がしてならぬのです。  そこで、なぜ私がそういうことを言うかというと、一つは、このてん菜振興会ができましたときの三十四年に一応砂糖の需給の長期目標というのをお出しになっているわけですね。これによりますと、てん菜糖で昭和四十三年、十年後に四十万トン生産する、つくるのだ、こういう目標を立てておるわけです。ところが、昭和四十三年には一体幾ら生産されたかといいますと、二十八万九千トンであります。約三十万トン、これが一つです。  それからそのときの面積は一体幾らになっているのか。目標が幾らで、四十三年に実績は幾らになっているのか、これが一つお尋ねしたい点であります。  それから新品種のお話が出ておりますが、T一〇一三は一月に優良品種の指定をされました。しかし、実際これが農家に普及されるまでにはまだ相当の時日がかかるのではないかと私は見ております。したがって、振興会の役割りからいえば、これらの生産、配布が完全に行き渡るというところに一つの役割り、目的を置いておりますから、それもまだ中途はんぱだ。なるほどてん研の品種改良についての一つの画期的なものとして一〇一三が出てきたということについては、その試験研究の成果として私は評価をいたします。しかし、振興会本来の目的であるところのものがまだ完全に達成されていないわけです。それが三つ目です。  それから振興会の役割りの中に企業の安定ということがあります。現在の糖業、いわゆる企業がほんとうに安定しているかどうかということについて、私はまだ若干の疑問を持っているわけです。したがって、こういう役割りも残されているわけですし、すでに四十三年の計画が実際には達成されていないわけですから、今後少なくともおくれている四十万トンの確保ということについて全力をあげなくちゃいけないと思うのです。そうすると、自然面積のさらに飛躍的な拡大ということにも力を入れなければならない点じゃないかと思うのです。  以上申し上げた五点を総合して考えてみますときに、ほぼその目的を達した——ほぼと言っていますから、そのほぼの尺度というものはいろいろあるのでしょうけれども、その目的を達したからこれを廃止するのだという言い方は、私は将来非常に大きな問題を残すような気がいたします。というのは、皆さんがこもごもおっしゃっていることは、設立のときに民間のわれわれ生産者の意向も反映できるような形でつくった振興会なりてん研が、国に移ってしまうと、どうしても雲の上に行ってしまう。したがって、ほんとう生産者も含めて一丸となってビートの振興をはかるということについての責任の分野があいまいになってしまう。特に国というのはとかくそういう傾向になりがちだ。こういう一つの事例の中から皆さん心配しているわけなんです。これは絶対心配ないというふうに大臣はいままでもお答えになっていらっしゃるようですけれども、私はまことにしつこくて悪いけれども、もう一度大臣いらっしゃるうちに、それはもう絶対そういうことはないのだ、これは本日の農水の国会論議の場において、ぜひ大臣の所信を伺っておきたい、こう思って足どめをいたしました。お願いをいたします。
  376. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私は御質問の点は二つの角度から見ていただきたい。試験研究そのものと、農業の中におけるてん菜農業のあり方と、これを二つに分けて見ていただきますと、試験研究のほうについては一応の当初の目的を果たして、しかもこれを国の機関のほうに引き継ぐにきわめて好適な国立の北海道農業試験場がある。こういうことで、そのほうで遺漏のないようにしていこう、こういうことでございます。  それから、この振興会をつくった当時の目標から現状はどうかということで御批判がございましたが、これは御指摘のとおりでございます。四十三年度に国内産四十万トンの目標ということには、現在遠く及んでおらないということでございまして、これからのてん菜農業につきましては、先ほどから本年度の予算のことも申し上げ、あるいは御質問に応じて今後の長期見通しに立っての自給率の向上等も申し上げたのでございまして、足らざる点については鋭意努力をする考えでございます。  なお、品種の育成についての試験でT一〇一三のお話でございましたが、そのほかにT一〇一七、T一〇二一というように逐次育成されつつあるのでございまして、従来のてん菜振興会が相当な成果をあげてきたその事例として申し上げておるのでございますが、試験研究をこの振興会を解散することによってやめるのではなく、これからも支障なく行なうことができる、こういう前提に立っておるわけでございますので、これらの諸点を御理解をちょうだいいたしたいと思います。
  377. 島田琢郎

    島田(琢)委員 次官おいででしたね。ひとつ大臣にかわって次官にお尋ねをいたします。  いまの大臣お答えと提案理由の説明の中で私、申し上げているのは、確かに「日本てん菜振興会による試験研究は一応当初の目的を達成するに至っており」云々とありますから、試験研究の分野に限って一応の成果をおさめたのだという判断に立たれているのだというふうに私は受けとめております。しかし、さっき私が申し上げたこのほかの問題、これは日本てん菜振興会が果たさなければならない役割りで、その役割りの大半は終わっていない。一〇一三についてだってまだ問題はあります。これは後ほど技術会議の事務局長にもお尋ねしようと思っているのですが、そういう判断で、一応の成果というか、当初の目的を達成したからそれを今度はおれのほうでやるのだという、こういうことはもっと前向きに、いま大臣はこれ以上のことをやると育ったのだから信用せよ、こういうことだと思うけれども、どうしても末端の生産農家心配しておりますのは、国に移ってしまうと手の届かぬところに行ってしまって、われわれの期待するようなことにならないというのが、どうも国立のすべてのことにそういう傾向があるような気がしてならぬ。これが皆さんの非常に心配しておられることなんです。それで北海道の特用作物であり、いまは基幹作物にもなっているこのビートが、生産農民皆さん方も真剣にこのビートをどうしようかということで取り組んでおられるわけですが、このよりどころが遠くなってしまって、いままでのようなわけにいかぬのではないかという、その辺の心配が末端にはまだ根強くあります。だから、去年まで廃止をめぐって非常に大きな論議が末端にありました。私も実は道てん菜協の常任委員としてこの問題に取り組んでおりました。徹底的にこれは反対しなくちゃいけないということで、当初はみんなで、絶対にそういうことにならぬようにしようということで、幾度となく上京運動もした経過がございます。特にビート糖業協会もこれについてはきわめて強い反対を示したわけですね。それなんかも、私は糖業の置かれている不安定な経営というものはまだ依然解消されていない。だから振興会の果たす役割りというところについてはもっと重厚なものが必要だというやさきにこれが廃止されるということであります。廃止されて、私、質問になりますけれども、確かにてん研は国立農試に移管されるけれども、従来までやってきたてん菜振興会の役割りというものは一体どこがどのようにやるのかというものがきわめてあいまいだと私は思うのです。ですから、いま申し上げたこういう五点ばかりじゃなくて、ほかにもたくさん役割りはありますが、この役割りを完全に果たすというのはどういう機能とどういう方法でおやりになるのか、その辺もひとつ明確にしていただいて、いわゆる移管、廃止をするという理由の中の当初の目的を達したというその事項にひとつお答えをいただきたい、こう思って、少し長い説明を加えながらお尋ねをしているわけであります。
  378. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 事務的な問題についてちょっと御説明申し上げたいと思います。  てん菜振興会を設立した目的は、研究者と資金を集中いたしまして、諸外国に比較して立ちおくれていた日本のてん菜に関する試験研究の水準を早急に向上させる、そしてわが国に適した優良品種を育成するんだ、こういうことが目的でございます。こういうおもな目的のもとにいろいろな努力が積み重ねられて、あるいは試行錯誤のようなこともございましたけれども、ともかく先ほど先生も御指摘のようないい品種も出てきておるわけでございます。そういう新しい品種が出てきただけではございませんで、組織的な養成、研究者層というものが非常に厚くなった、てん菜の育種についての施設というものもほぼ整備されてきた。それから病虫害の問題がかなりはっきりしてきたというようなことが言えると思います。それから先ほどのいわゆる単胚品種でいいものが出てきた、こういうようなことがございまして、やはり私はこの成果というのは、てまえみそでなくて、正直、評価をしてよいのだろうというように考えておるわけでございます。  先生御指摘のように、てん菜振興会がやっておりましたいろいろな業務、その業務について、試験研究はなるほど北海道農試が引き受けるかもしれないけれども、あとの苗の配布の問題、そういったような問題とかその他てん菜に関するいろいろな問題についてしっかりしなければだめじゃないか、ほんとうにだいじょうぶかというような御心配と思います。これは私どもは、てん菜振興会をこの際解散いたしましても、そういうものにつきましては道とか農業団体とかその他道協の団体だとか、そういうようなところがやはり責任を持ってやるようにしなければいけないというように考えております。御心配の点は私ども十分よく承知をいたしておりまして、そのために鋭意努力をいたしておるような次第でございます。
  379. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そうした機能は、農業団体なり、ビートのことですから北海道庁、いわゆる道にまかしていきたい、こういうお話でありますけれども、私、北海道の道民の一人として、そういうことを言うと天つばみたいな話になりますけれども、まことに出先の行政としてはビートの問題については、私ども耕作農民の立場からいえば、不満が一ぱいあるのです。ですから、ストレートにいまの機能を道なら道にやらせるということは、よほど行政的な指導がしっかりしないと、それこそ責任が希薄になってしまって、従来よりも非常に大きな後退になってしまう危険性を持っている。これは私はひとつ鋭く局長にも申し上げておきたいし、これを踏まえて出先の道のしりっぺたをたたいていただいて、しっかりした、振興会の機能を上回るように、責任を明確に出先の行政機関に負わせていただきたい。負わせていただきたいというとおかしいのですが、私も道民ですから、帰っていって、しっかりやれと道に言うのがあたりまえなんですけれども、どうもとかくそうならない。だから、せっかくの移管の時期ですから、これはひとつしっかりその辺の機能とルートというものを明確にしていただきたい。私は基本的にこの法案を通さないということを言っているのじゃない。心配だから申し上げているので、ぜひひとつそういう点をはっきりしていただきたいと思います。  それから、時間がないので先急ぎをしますけれども、予算を見ますと、解散時における一般会計の帰属資産の問題がございますけれども、これは総額で十三億一千百三十八万円、こうなっていますし、農林省が提出しました解散時における資産見込みは十三億八百八十二万円ということで、二百五十六万円というズレがありますね。これは一体どういう性格のものでしょうか。  それから、立ったついでに一緒にお答えいただきますが、もう一つは、民意の反映をどういう形でやるか、これは非常に大事なことなんです。前段で私、心配があるということを言ったのは、国になっちゃって手の届かないところに行った、生産農民や関係者の声が的確に反映しない。それは道を通じてやればいいのだとおそらくお答えになるかもしれませんけれども、試験研究というのは率直に農家がその試験場に行って、そしていろいろな注文や、あるいはまた一緒に研究をするというような体制づくりがビートに関してはなければならない。ビートばかりではありませんけれども、なぜ私はそういうことを言うかというと、せっかくT一〇一三ができた。しかし、試験研究で品種をつくる責任は国が持ったけれども、配布をしていくいわゆる原種、原々種の問題から、種をとって配布をする、そういう過程においても相当明確なルートがなければ、あのように風一つ吹けば非常に雑交しやすいのがビートの種でありますから、せっかく単胚の優良品種をつくったけれども自分のところの畑に植えてみたら、似ても似つかない一〇一三であったということでは困っちゃうのです。ですから、そういうことなんかも十分責任を持っていただくということがないといかぬのですが、これはやはり生産者の声というものが試験研究の場においても的確に反映されるということが私は必要だと思うのです。ですから、こういう点なんかはどういうふうにおやりになろうと考えているのか。ついでですから、この二点、一緒にお答えをいただきたいと思います。
  380. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 前半のことにつきまして私からお答え申し上げたいと思います。  解散時の財産の見込み額と昭和四十六年の決算との間の差額、二面五十七万円ほどございますが、その差額はどういうことなのかという御質問と思います。  四十六年末の正味財産額は十三億一千百三十九万円でございます。解散時の残余財産の見込み額は十三億八百八十二万円ということでございます。これは、この期間における時間的なズレがございますが、この期間におきます資産の増減、解散に伴う退職手当の支払いというようなことから出ておるわけでございます。
  381. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 お答え申し上げますが、国の研究機関が地域対応として地域農家との間に交流がないというような御批判はしばしば承るわけでございますが、もともとすぐれた研究成果の普及、実際の農業経営において利活用をはかるという場合には、御承知のように、制度としては県の普及制度との関係がございます。どちらかというと、これまで研究機関自身もそういう制度にたよって、直接的に農家と接触するということがやや消極的といいますか、はばかってきたような点があるのも事実でございます。しかし、それではいけない、そういう制度によるということだけではいけないということで、具体的に申しますと、ただいまお話にございましたようなてん菜に関します運営審議会の問題はもちろんでございますが、四十八年度におきましては、各試験場におきまして研究者と農家との座談会、あるいは農家を御招待申し上げていろいろ試験研究者と農家経営との関係を検討しながら研究に生かしていくということを具体的に計画しております。特に北海道の場合には、地域対応ということにおきましては、ほかの地域の試験場よりむしろベターに今日まで運営されてきたということもございますが、なお一そう御趣旨のような指導を研究機関自身がまずやるようにしていきたい、こういうように考えております。
  382. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そこで、国が負担すべき債務、その内容についてひとつお示しをいただきたいと思います。簡単でけっこうです。
  383. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 てん菜振興会の解散に際しましては、債務は一切残さないように十分注意して整理するようには指導してまいるつもりでございますが、万一解散後において債務が残った場合においては国がこれを引き継いで整理するということにいたしたいと思っております。
  384. 島田琢郎

    島田(琢)委員 次に、さっきもう少し私お聞きしておきたかったのですが、てん菜振興会の役割りの中に、てん菜糖工業の経営の安定をはかるための事業を行なうという一項があるのですが、これはそういうものを道にやらしていてもちゃんといきますか。その点自信がおありですか。
  385. 池田正範

    ○池田政府委員 てん菜振興会が解散されましたあとの現在の糖業界の安定の問題でございますが、御承知のように、ことしはかなりてん菜の生産量がふえまして、全体としての操業日数も約百三十日をこえる限度にまできております。西欧等の実例からいたしましても、大体百二、三十日というのがビート工業の場合の一応の目安になっておるようでございますので、大体ことしあたりの大根の量、これは歩どまりは別にいたしまして、大根の量といたしましては、大体いまの施設とことしの大根の量というのはほぼ経済操業度に見合ったような形にまでなってきておるということは言えるかと思いますが、しかし、今後全体としての目標年次に従って全体の生産量がふえてまいりますというと、当然そこで操業度というものの限界を越えて、施設の拡充というようなことをしない限りかなり無理が出てくることも考えられますが、現段階におきましては大体安定の方向に向かっておる。  ただ、この場合に、操業度以外に糖価の水準の問題がございます。これは国際的な糖価の動向等とのかね合いがございまして、御承知のように、最近若干回復はいたしましたけれども、なお国内の市況は非常に悪いというふうなことから、それに引っぱられまして国内糖価というものは思わしい採算点にいかない。これは先生も御承知でしょうが、最近そういうこともおもんばかりまして市価参酌といったようなことを特に実施したというような経緯もあるわけでございます。
  386. 島田琢郎

    島田(琢)委員 端的にお尋ねしますけれども、いままでの三十二名でこれからもやろうというお考えですか。増員するお考えなどありますか。
  387. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 三十二名で研究を続けたいと考えております。
  388. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私は三十二名で、これからさらに前向きに試験研究、あるいは先ほど私が指摘をいたしました原々種圃場あるいは原種圃場の管理、あるいは種の配布に至るまで、それらを適正に運用していくという上では三十二名の人員では当然やっていけない、こういう感じがします。ですから、前向きにこれと取り組むという大臣の答弁もありますから、私はやはりこの人員については十分ひとつ検討していただきたい。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  さらに、三十二名の皆さん方が国家公務員として今度身分が移されるのですけれども、その場合、先ほど美濃委員からもお話をしておりますけれども、給料そのものは一五%程度のダウンになる。一五%というと、十万円もらっている人が八万五千円にダウンということになるわけです。これは一万五千円も給料が減るんじゃ、何ぼ国家公務員になったって、おれはそこじゃ仕事ができぬということで、せっかく技術を持った大事な職員がよそに移っていくというようなことがあっては、増員どころか減員になってしまう、あるいは機能の低下になってしまうという心配を私は持っております。この辺もひとつ、しっかりした考え方を持っておられるのだと思いますが、簡単でけっこうですから、お答えいただきたいと思います。次官、どうですか。
  389. 中尾栄一

    中尾政府委員 先生の御憂慮なさることはしごくごもっともだと思います。大臣も前向きに解決していきたいといいましょうか、検討していきますという御姿勢のようでございますが、同様、私ども並びに当局も、三十二名の各位が給料の一五%もダウンしていくというようなことによって支障を来たす、すなわち、先生の御指摘のとおり、機能が低下をしたりあるいはまたよその職場に職場を求めて移動されるというようなことが万々あってはならないと心得ておりますので、そのような方向づけの上に立って善処をしていかなければ相すまないことである、このように考えております。
  390. 島田琢郎

    島田(琢)委員 穂の問題についてお尋ねをいたしますが、国立農試では、それは役割りとしては品種の開発あるいはそれを定着させるための重ねての研究、こういう分野に限られるだろうというふうに常識的には判断をいたします。しかし、先ほども私、触れたように、ビートというのは非常に雑交しやすいものである、こういう性質を持っているものでありますし、これが農家まで配布されるのには、やはり監視体制というものが相当必要だと私、判断しております。したがって、これをどういうふうに今後おやりになろうと考えているのか。先ほどは、おそらく局長はそれも含めて道にやらそうと、こういう意味だろうと受けとめておりますけれども、この種の問題というのは非常に重大な問題なんです。在来種ありあるいは輸入種あり、いままた単胚の国内の優良品種が出てきた。これらの取り扱いというのは、必ずしも一定のルールに従ってきちっとしているわけではありません。メーカーが手をつけている部分あるいは農協がやっていること、いろいろまちまちないわゆる宣伝でもってこれが農家に配布されているというのが実態であります。しかし、長い間やはり適正な適地適作の趣旨に沿って、品種もそういう基本に立ってきちっと種が農家に配布されていくということがなされなければ、そこに営利の目的やらほかの目的などを含めてビートの種の配布やあるいは耕作奨励などが行なわれるということは非常に危険であるというふうに私どもは見てきております。実際にわれわれやっていまして、いい品種だからというのでつくった。さっぱり自分の土壌には合わなかった。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、秋口になってビートの種代を要求されたら、目の玉が飛び出るほどの高い値段であった。こういうふうなことで、きわめて不統一の中に種というものが取り扱いされている。この際、こうした機会でありますから、種もきちっとしたルートに乗せて、ルールに従ったレールに乗せてやっていくのがほんとう意味のビートの振興に寄与する、私はこういう考え方を持っておりますが、この考え方に対して、ひとつ技術会議の事務局長でも、局長でもけっこうですが、お答えいただきたいと思います。
  391. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 お話しのとおり、せっかくいい品種ができても、それがまざっちゃったりして、どんな品種が行くのかわからないというようなことでは、たいへん困るわけであります。北海道におきますてん菜の品種の選定の問題につきましては、道がてん菜の地域別の適用基準を定めまして、普及所でありますとか道の支庁、そういったようなものを通じまして、地域に最も適した品種が農家によって選定されるように指導をいたしております。  また、農家に対する種子の供給は、農家の品種別の需要に基づいて、道がつくりますてん菜の種子需給計画というようなものに即しまして採種圃における種子の生産計画的に行ないまして、農家希望する品種を安定的に供給できるようにしておるわけでございます。  また、てん菜の種子につきましては、採種に高い技術水準を要するというようなことでございますので、品種的にすぐれたものを農家に安定的に供給するというような体制を確立する必要がございます。そういう意味で、昔は原々種、原種の生産は道がやっておったわけでございます。てん菜振興会が設立されまして、これを担当するようになったわけでございますが、今回、解散するようになりますと、やはりこれをどうするのだという問題が当然起こってまいります。御心配の点も私、十分わかるわけでございまして、これは先ほども申し上げましたように、今後、ことに国内産の優良品種を普及していかなければなりませんから、そういうような普及に伴いまして、何といいますか、できる限り公的な機関が計画的に配布していくというようなかっこうが一番望ましいというように考えております。先ほども、道がというようなお話が先生からもございましたが、私ども、道がやってくれれば一番いいと思いますが、まだ必ずしも現段階におきましては十分受け入れ体制ができているとは思われてないような点もございまして、この点につきましては、先ほども申し上げましたように、道と農業団体、それから糖業関係、そういった関係の方々でよく相談しまして、支障なく行なわれるようにしていかなければならない、そのとおりでありますから、十分注意をしたいと思っております。
  392. 島田琢郎

    島田(琢)委員 その点はそういう努力をひとつしていただきたいと思うのですけれども局長、いま、きょうこの法案が通って廃止決定です。それなのにまだそういう問題が残っているじゃないですか。だから、私はその点きちっとぜん立てされて、やはり法案が提出され、心配は一切ないぞ、こう言ってくださるのであれば、私は生産農家皆さんも安心できると思うのですよ。ところが、もう四月一日から廃止になる、しかしまだそういう問題が残っておる。どうもやり方が後手後手でいかぬと思うのですね。そういう点がきょうのこういう公式の場で明確になっていれば、よしわかった、われわれは反対していたけれども、国がこれをやるということに理解をしようではないかということになると思うのです。そういうものがきちっと整理されて、その疑問だとか疑惑のベールがはがされないと、依然として生産者皆さんはたいへん心配されると思うのですよ。  それから、前段でお話しされた点は、きわめて教科書的な話ですけれども、私はその教科書をきちっと踏まえて、ほんとうにどこがやったらいいのかということを十分ひとつ道、農業団体それから糖業、こうした皆さん方生産者を含めて、よく話し合いをされて、少なくともこれが実施に移されるまでは鋭意努力をされて、この辺の整理をしていただいて、すっきりとした形で——せっかくいままで十何年の長い間努力をしてここまで積み上げてきたてん研の機能が、国に移ったことによって大後退になってしまったということでは、私はここで論議をした一人として非常に責任感じなければならぬ、また責任を負わなければならぬということになります。ですから、ひとつそういうことがないように、しっかりしたビートの振興対策に本腰を入れて取り組んでいただくように、これは中尾政務次官、よろしくお願いします。私もきょうのこの法案にまっこうから反対して申し上げておるのではなくて、くどいようですけれども、そうした心配をひとつぜひ取り除いていただいて、北海道の大事なビートの振興が目的に沿って的確に行なわれていくように、生産農民の一人として私も期待をしておるものですから、くどくど申し上げたような次第です。簡単に政務次官の所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  393. 中尾栄一

    中尾政府委員 先生の御意思、御趣旨を十分体得いたしまして、そのように善処したいと思っております。
  394. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 津川武一君。
  395. 津川武一

    ○津川委員 最初の目的を達したという執拗な答弁でございますけれども、設立当時に、ビートという一つの品種だけを取り上げてやるのは必ずしも適当でない、国の試験場としてはそれは適当でない、だから、特別な研究所をつくるということになったのです。とすれば、今度は国立の試験場になったときに、いまやっておる研究員たちにビートだけの研究に専念させる保証があれば、試験、研究も落ちない、ほかのものをやらせるとすればここで試験、研究が落ちると思いますが、この点は、いまの人たちをビート研究に専念させることができるかどうか。私は専念させる必要があると思いますが、いかがでございますか。
  396. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 専念させていくつもりでございます。
  397. 津川武一

    ○津川委員 もう一つ、この研究所ができたときに、従来の試験研究所にはてん菜に関する技術者が少なく、広く民間から集めるには公務員給与では低いという待遇上の制約もあり、人を集めるのに困難なので、特殊なものをつくり、俸給も待遇もよくした、こういうことですが、これからてん菜専門の研究員が確保できる、そういう保証がございますか。この専門的な研究員を養成する計画示していただきたいのです。
  398. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 てん研がこれまであげてまいりました業績の上に立って順調な研究成果をあげていくためには、やはり御指摘のように、優秀な研究者の確保をはかっていかなければならないと思っております。具体的な養成計画というものは持っておりませんが、現在、てん研があげた成果、そこからそのまま国の研究員に移っていただく方々の活動によりまして、できるだけ後続者があるような方向で活動していっていただくような指導をしてまいりたい、こういうように考えております。
  399. 津川武一

    ○津川委員 魅力ある研究が実ると研究者は集まってきます。この点が一つ。もう一つには、どうしても後継者を養成する計画を持たないとものが充実していったためしはありません。いま計画を持たないというのですから、持たなければならないと思いますが、重ねて答弁をお願いします。
  400. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 いま計画を持たないと申し上げましたのは、具体的な計画を持たないということでございまして、御趣旨のことはよくわかっておるわけでございます。もちろん、現在ある国の研究機関におきまして、てん菜に限らず、どのような部門においても、先生の御指摘になるようなことが必要だということでございまして、農林省の研究機関としては、やはりそれなりの後継者を得ているというふうに考えておりますので、てん菜研につきましてもそうなくてはならないし、そうあらせたい、こういうように考える次第でございます。
  401. 津川武一

    ○津川委員 国の試験場における職員の待遇でございます。先ほど一五%、二〇%ダウンの問題が出ましたが、一体に昇進というのか、官庁における上の地位につくとか、名誉職、栄誉職というか管理職というか、こういう位置が試験研究者に少ない。このところが試験研究者がなかなか岡の研究所に集まらない一つの重要な原因でございますが、今度国に移ったことによってそういうポストが減りませんか。
  402. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 今回、てん研の職員の方々が研究者として国の研究機関に参りました場合に、御指摘のような不安はないというふうに考えております。
  403. 津川武一

    ○津川委員 今度皆さんが配りました参考資料の中に、いままでてん菜研究所は庶務課、農場管理室、育種部、栽培部、育種部に三つの研究室、栽培部に二つの研究室があった。これを今度北海道農業試験場てん菜部に移す。業務科が一つ、いままであった試験研究室が五つ、こういうことになります。在来のてん菜研究所には、農場管理室には室長がおります。それから育種部には部長が一人おります。栽培部にも部長がおります。この室長、部長は格下げになるわけでありますか。試験研究所の所員として、定年退職するまでに最後に行く一番いい職というのはその試験研究所の所長ですが、これはなかなか得られない。せめて部長になるということが試験研究所の所員の人たち希望で、このことが試験研究所を維持していく上において大事な、職員を励ましていく一つの職種です。この三つを今度は削るつもりですか。この点が一つ。  もう一つは、機構が縮小されると業績が落ちると私は思います。農林省北海道てん菜部に行くとこのとおり機構が縮小される、このことはいけないと思います。少なくとも北海道農業試験場に現在の機構と現在の地位を確保すべきだと思います。これはむしろ次官のほうから聞いたほうがよろしいかと思いますが、この待遇、機構の縮小をどう考えますか。
  404. 中尾栄一

    中尾政府委員 機構図を申し上げてまことに恐縮なんでございますが、先生もお手持ちであろうと思いますが、九ページに相なります。育種部、栽培部並びに庶務課があるわけでございます。これは要するに育種部と栽培部はなくなるわけでございまして、必然的に九ページの右隣にございます北海道農業試験場てん菜部に移るということになるわけでございますが、目下のところ所長は定年でおやめになられるということでございまして、まことに現実的な話でございますが、そういうことになっておりますので、先生の御憂慮なさることはごもっともでございますが、何といいますか、現実的な処理という点におきましては、定年退職ということも相まちまして、一応スムーズにいくのではないかというふうに私ども考えております。  ただ、詳細にわたりましては担当から答えさせたいと思っております。
  405. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 お答え申し上げます。  御質問の趣旨は、もちろん具体的な人の問題でなくてポストの問題と思います。当然てん研究所長というポストはなくなるわけでございますし、部が一つになるわけでございますけれども、研究者の待遇の問題といたしましては、通常の行政部局と違いますので、私たちはその処遇改善という観点から、部長という職制以外に同じ待遇を受け得る主任研究員制度というものをとっておるわけでございまして、これは格といたしましては部長と同じでございます。  研究機関におきましては、できるだけこういう部門の拡充をはかることによって御指摘のような研究自体に張り合いを持つような措置を講じておりますが、なお具体的には、その人々の性格なりあるいは任務の方向との関係でそういう主任研究員の定数というようなものの拡大をはかっていきたい、こういうふうに考えております。
  406. 津川武一

    ○津川委員 次宮、先ほども申し上げましたように、試験研究所における待遇のしかたというものは、いい試験研究所をつくる、試験研究所の必要な部門をつくる、その部門の責任者になって、試験研究者が自分がリードして皆さんと一緒にやっていくというこの体制が必要なんです。ここにこそ試験研究の情熱が生まれてくる。  いままでのてん菜振興会のあれで言うと、事務局に局長一名、次長一名、研究所に所長一名、育種部に部長一名、栽培部に部長一名、これが全部とられてしまう。いま主任研究員をそのようなかっこうにすると言うけれども、国家公務員に対する待遇はそういう職種と号俸で考えていかなければならない。それを待遇するなどと言っていては事が済まされない。この点どう考えるか、これをもう一回明確に答えていただきたい。  それからもう一つ、次官、その図を見てください。いままでは育種第一研究室、育種第二研究室、育種第三研究室とあって、育種部は育種部としてまとまってその仕事は一つのチームワークができているはずです。それから栽培第一研究室、栽培第二研究室、これも栽培部として一つのチームワークができている。これをばらばらにして五つの研究室にしてしまう。これは何と抗弁しようが研究体制の弱化なんだ。したがって、今度北海道に移った場合の北海道農業試験場てん菜部という機構は、これはもう一回考え直さなきゃとうてい承知できないと私は思うのです。この点はいかがでございますか。
  407. 中尾栄一

    中尾政府委員 津川先生の御指摘は、人間関係の問題からいきまするとまことにごもっともな話かと思います。特にある国においては、平等というものを非常に主張するあまりに立場というものよりも——たとえて言うならば、お隣の中国などにおきましても、階級制度というものはそう大きく偏差を持たれておらないというような軍隊制度だそうでございますけれども、人間の本能的な立場からいきましても、一つの立場を与えられると申しましょうか、そこにおける自分自身の勤労意欲並びに自分自身に与えられておるその研究テーマに対する情熱というものは、その職責に応じていやが上にも燃え上がるということは必然でございまして、先生のおっしゃるとおりだと思うのでございます。  しかし、室並びに部二つ、それが今回の場合はすべて研究室という五つか六つの分野に分けられて、それに複合されてしまうことはいささかおかしいではないかという御指摘だと思いますが、この問題における職域の立場の処遇改善という問題は、別の角度で考えていく問題であるような感じもいたします。そこで、現実の段階ではこのような方向にセットをしたわけでございまして、これは私の職域から答弁をするよりも、局長自身に答弁させたほうが妥当な答弁ができるような感じもいたしますので、あと一回局長を出させます。
  408. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 御指摘のように、現在までてん研には育種部と栽培部と二部ありまして、これが一部になるわけでございます。しかし、これを引き受ける私たちといたしましては、先ほどもしばしば申し上げておりますように、この二部が一部になることによって、機構縮小、即、研究能力のマイナスが生ずるというようなふうには考えないのでございまして、二部が一部になりましても、もちろんてん研の研究部が北海道の国立農試に入るというようなことは、単にそこに入るということでなくて、やはり農業という全体の計画におきまして、場内にいろいろな部がございますから、そういう総合的な力、協力、討議はもちろんでございますが、この一つの部自身が二つの部より機能が落ちるというふうには考えておりませんし、またそういう運営はしたくない、こういうふうに考えております。
  409. 津川武一

    ○津川委員 次官、好ましくないことをなぜあなたはやるのです。道理からいくと、私のいま言ったとおりしなければならぬ。その道理をなぜ引っ込まして無理なことをやっているかということが一つ。  それから、事務局長に聞くのは、五人の主任で話をされるよりも、二人の部長と五人の主任のほうがどれほど研究体制が熱心に討議されるかわからない、外に対する権威もあるかわからない、予算を請求するときも、どれほど大きな力になるかわからない、この状態をそぐわけです。したがって、これはもう一回てん菜部の機構を考え直す必要があると思う。その考えがあるかないかを一つ。  それから、次官の話で聞き捨てならないのは、階級に差別があるとかいろいろなことを、私が共産党だからそんなことを言っていると思います。私たち共産党は、現在の日本は資本主幾の世の中です、そこにいきなり社会主義を持ってこようなんて考えていない。そんなことで茶化さないで、私たちは資本主義の中を民主化していく、だからこそ言っているのです。それを皮肉にとられるようなことばは、次官、これはやめてもらわなければならない。
  410. 中尾栄一

    中尾政府委員 決して皮肉でも何でもございませんで、先ほど先生御指摘の、あくまでも勤労意欲というものを重点に置いて考えていくという施策は、全く私も同感であるということからそのような方向づけを言ったわけでございまして、皮肉におとりになっていただきましては私も困惑するのでございます。あくまでも私どもの言っておりますのは、これを一応国に移管するのでございますから、てん菜部という一つの部を中心に、その部長のもとにこのような五つか六つの研究室に分けていくということの方向づけででき得るという、そういう方向づけの中にわれわれは決定したことでございますだけに、御認容と同時に御協力のほどをこいねがいたいということでございます。
  411. 津川武一

    ○津川委員 おたくが出したこの資料、このとおり強行するというなら、私は賛成の態度も変えなければならぬけれども、このまま強行しないで、考えるというならばまた話を進めていきます。これはこのまま強行するつもりですか。
  412. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 このとおりにしたいと考えております。
  413. 津川武一

    ○津川委員 だから、皆さんのところにまだ問題がある。たとえば、今度一五%、二〇%ベースダウンだ、そこで理事長の俸給が月額三十七万円、理事が三十一万円、監事が二十八万円、技能職の一番のトップの一等級の二十五号が最筒で十二万八千四百円、研究職の一番最高の一等級の二十一号が二十一万五千百円、こういうふうな形で試験研究員を差別待遇してきたのがこのあれだ、この差別待遇が、せめて部長とか室長とかそういう形で報われておった。今度こういう形で差別待遇をしておいて、さらにまたこれをやるのかということです。したがって、この主任研究員たちの部署を削ったら、せめて待遇においてこれに報いる方法はないのか、報いるべきだと思うのです。いかがでございますか。
  414. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 先ほどお答え申し上げました主任研究員制度の問題は、具体的にてん研の職員の方々に国の試験機関に入っていただく場合の具体的な措置として申し上げたわけでございませんで、制度としてそういう制度があるし、そういう優遇のしかたが現在あるので、それを拡大していきたいということが、また先生の御質問の御趣旨に合うというつもりで申し上げたわけでございます。
  415. 津川武一

    ○津川委員 重ねて聞きます。研究職員を、その国家公務員における地位において下げて、俸給において下げて、この状態で試験研究ができるかという皆さんの正直な感情、気持ちを開きます。これに対して、この研究員たちの研究にどう報いるかという方針を、くどいけれども、もう一度聞き返さなければならない。次官、どうです。
  416. 中尾栄一

    中尾政府委員 先ほど大臣も御答弁なさったそうでございますが、待遇の一五%云々の問題につきましては、あくまでもそのような形で、いままで取っておった俸給が一五%ダウンする、すなわち十万円が八万五千円になってしまうというような方向づけの中で、勤労意欲がなくなっていくというような疎外的ムードだけは絶対に排除していくような方向に、私どもも鋭意前向きに努力すると大臣は答えられたそうでございますが、その方向で私どもは解決していきたいと思うのでございます。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 また機構の問題におきましても、そのような方向で、私たちは一応トライアルの段階で考え合ったことでございましょうから、その問題ではひとつ御協力のほどをこいねがいたいと、重ねて申し上げた次第なのでございます。
  417. 津川武一

    ○津川委員 トライアルなら私は了承します、まだ変わり得るということですから。  そこでもう一つ、最後の問題は、ビートのトップ、バルブ、あのとったあとの残り、これは粗飼料としてまことにりっぱなものなんです。えさがこのとおり問題になってきたときに、ビートというものが持つあの粗飼料としての役割りは、私は非常に大きいと思う。となれば、試験研究は、根部の糖分ばかりでなく、葉というものをもっと大きくする、こういう研究が必要であると思うのですが、これはいかがですか、これが一つ。  もう一つ、時間がもう二、三分しかないので、質問だけ重ねます。ビートはほんとうにいいものです。土壌が肥える、そのあと輪作したものによろしい、非常によろしいものです。だが、輪作に時間がかかる。理想的に言うと五年に一ぺん。あと四年は何かを植えなければならない。この輪作の作物があるならば、これが価格保障されるならば、ビートはもっともっと伸びる。ところが、輪作の一番のものは大豆なんだ。一俵三千三百円なんだ。反収二万円にならない。そこで、輪作作物の研究、輪作作物の価格保障があるならば、私はビートは非常に大きな将来があるし、この点でえさとしてどう考えて、えさとなる部分を育てていく試験研究がどうなのか、輪作の作物の品種改良や、価格保障などはどうなのか、これだけ聞いて質問を終わります。
  418. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 てん菜に関する研究といたしましては、現在のところ、根に関する部分に重点を置いて研究していることは事実でございまして、御指摘のような葉の部分に関して、しかもその葉が農業経営全体の中におきまして、輪作体系の中におきましてどういう機能を果たすべきかという観点からはまだ研究しておりませんが、そういう御意見は先の問題としてそういうことがあると思います。これは単に研究自身として余力があればそういうことかもしれませんけれども、やはり現実にそれがどこまで農業経営の相手に取り込まれるか、その条件というようなものを考えますと、なかなか早急にどうしなければならないという問題かどうか、ここですぐお答えできないような要素があると思いますけれども、御意見を承っておきたいと存じます。
  419. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 輪作作物の生産振興というようなことを同時に考えろというお話はまことにそのとおりでございます。私どもそういった作物の生産基盤の整備、それから生産対策、構造対策というものも含めまして、全体を含めて飼料生産振興をはかっていかなければならない、かように考えております。
  420. 津川武一

    ○津川委員 輪作作物の野菜についてはまた別な機会をあらためてお尋ねいたします。  これで終わります。
  421. 山崎平八郎

    ○山崎委員長代理 次に、瀬野栄次郎
  422. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日本てん菜振興会の解散に関する法律案について農林省当局に質問いたします。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕  農林大臣に先ほど種々質問をいたしてまいったのでありますが、技術面または事務的な面もございますので、そういったものについて当局に質問いたしますが、まず、先ほど農林大臣は暖地ビートは完全に失敗だったということを答弁した。もちろん大臣が言われなくても、事実失敗に終わったわけです。熊本、大分、宮崎、鹿児島、また他の県もありますが、特に南九州においては、農家はたいへんな痛手を受け、被害を受けたわけでございます。こういったことについては再び失敗を起こさないように、今後農林省もこういった指導、奨励にあたっては十分対処していくということでございましたが、その理由に作付が伸びなかったとか反収が上がらなかった——もちろん作付が伸びないと反収も上がらないし、大幅に生産も下回ったのであります。砂糖の価格が低迷化したというのはいろいろな理由があるわけですけれども、南九州の早期稲作のあと作としてずいぶん農林省の奨励を受け、期待をされたわけですが、残念なことにこのような結果になりました。  そこで、私はまず最初にお伺いしたいことは、暖地ビートが日本では全然望みないと、こういうふうに当局は考えておられるか、その点をまず明らかにしていただきたいと思うのです。
  423. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 暖地ビートにつきましては、過去の経験というようなことに照らしてみまして、やはりかなり困難性があるのではないかというような感じを私どもは持っております。
  424. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 伊藤局長はたしか私の記憶では前にはイタリアのローマに駐在しておられたというふうに聞き及んでおるわけですけれども、イタリアにおいてあなたは、暖地ビートなんかは担当されて十分承知しておると思うのです。単に今回のこのことのみならず、外国も歩いて知っておられると思うのですが、それらを踏まえて、将来砂糖の自給という問題、それから畜産の飼料がずいぶん逼迫してきている。粗飼料としてこれをぜひ使おうという面から見ましても、やはりあれだけ、十数億を使って研究してきましたこの事業が今回解散をする、私もこの法案の振興会の解散については賛意を表するものでありますけれども、この機会にあらためてお伺いし、国民の血税を使ってやってまいりましたこの振興会の解散にあたって、将来のためにも、何かの一つまた希望をつなぐ道を残しておきたいということもございますのでお尋ねするわけですが、イタリア等を回られ、またトルコあたりでは成功しておるわけでございますので、そういったことから、将来粗飼料としてまた砂糖の自給というようなことが考えられないとも限らない。そういった場合に、あなたは外国を回られてどういうように感じておられるか、率直な意見を聞いておきたい、かように思います。
  425. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 私は技術の専門家ではございませんので、その点はお許しをいただきたいのでございますが、やはり地中海沿岸と九州というものとを比べました場合に、かなり土地条件が違うように考えます。温度があるいは似通った点がございますけれども、他の作物との関係あるいは雨量の関係、そういったものをいろいろ考えますと、かなり事情が違うような感じもいたします。したがいまして、日本の西南暖地におけるビートの生産というのは、私としてはかなりむずかしい点があるような感じを受け取っております。
  426. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大臣もまた伊藤局長も完全に失敗を認められたので、将来は期待が薄いというような答弁のようでありますが、それじゃ、あらためてお伺いしますけれども、てん菜研究所は熊本と北海道、先ほど大臣にも申し上げたわけですが、私の住んでいる近くにあるわけですけれども、暖地ビートの初秋まき用の「支六号」「支七号」「はづき」「はるまさり」この新品種は開発されたことは事実でありまして、その中でも「支七号」は北海道へ持っていったら有望であった。そしてすでに「きたまさり」という名前に命名されて、現在播種されておる、こういうことでございます。そこで「支六号」「はづき」「はるまさり」こういった品種についてはどういうふうにして品種を保存していかれるのか、全然もう品種保存をされないのか、その点明確にお答えいただきたい。
  427. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 てん菜に限らず、農作物につきまして育成しました品種の保存につきましては、そのまま保存していくシステムが各作物についてございますので、てん菜の場合におきましても、同じように完全な保存をはかっていけることとなっておるわけでございます。
  428. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そのまま完全に保存をしていくということでありますが、それはどこでその品種を保存していかれるのですか。
  429. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 新たにできます北海道農業試験場のてん菜部において保存していくわけでございます。
  430. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今回、国が管理する北海道農業試験場のてん菜部ができるわけですが、この解散が認められれば、北海道農業試験場のてん菜部でこれを管理することが有利であることは当然でありますが、そこで私がお聞きしたいのは、暖地ビートとしていわゆる南九州でこの新品種が発見され、その新品種を育成してきたわけです。確かにこれはあと作として新品種はよかったわけですけれども、いろいろな諸般の事情から失敗に終わったわけですが、暖地ビートとして品種を開発したものが、あの寒冷地の北海道の試験場でこれを維持して、先ほど言われたように、そのまま完全に保存していくということだけれども、そういう気候の違うところでできるものかどうか。そんなに簡単にできるか。暖地と寒地との差が相当強いわけですから、その点はひとつ十分考えて発言をしてもらいたいと思う。いま発言に来るときにずいぶん考え考え来られたんですが、その点、会議録に残るわけですから、ひとつその辺は気候の寒暖の差なんか全然心配なく試験が続けられ、品種の保存ができる、こういうふうに理解していいのですか。
  431. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 てん菜の場合には、特に先生心配になっておられますようなこともなく保存できる性質のものだというふうに考えております。
  432. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 保存できるものだと思いますでは困るのだが、現に「はづき」「はるまさり」の品種は現在育成して保存してあるのですか。その点はどうですか。
  433. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 お答え申し上げます。  完全に保存されるようなシステムができ上がっておるわけでございます。
  434. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 完全に保存するシステムができ上がっておるということですが、どこにでき上がっておるのですか。どこで品種を保存して栽培しているのですか。まさか去年とった種を、五年も六年も古種を保存するわけはないと思うのですが、どういうようになっているのですか。それとも立ち消えてしまったのですか。
  435. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 専門的なことでございますので、担当の管理官が来ておりますから、お許しを得てお答えさせていただきたいと思います。
  436. 伊藤隆二

    伊藤説明員 一般に種子の保存ということにつきましては、わが国では、諸外国に比べましても非常に気を使って保存をしていることになっておるわけでございますが、てん菜におきましても、そういうふうな南のほうのものを北につくるというふうなことにつきましては、かなりの注意を払いながら実際にやっておるわけでございます。実際にこれからもてん菜の品種を改良する仕事というのは続けていくわけでございますけれども、そのためにはどうしてももとの母本になる品種がなければならないわけでございます。そういうことでもって、品種改良をやる場所におきましては、数百という品種を完全に保存しながら品種改良の仕事をしなければ、品種改良そのものの仕事ができなくなるわけでございます。そういうふうな意味におきましても、南のほうでつくりました品種は完全に保存して、品種改良に利用するわけでございます。
  437. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 伊藤理官ですか、わかったようなわからぬようなところがあったんだけれども、要するに、素朴な質問のようですけれども、南と北では相当寒暖の差があるわけで、暖地向きのビートと寒冷地向きのビートというのは当然分かれているわけです。牧草にしても暖地向きと寒地向きとがあるわけですよ。それを間違うと収量が少ないわけです。そのために国の試験場が一生懸命研究しているのですけれども、それもぼやぼやしているといい草地の改良ができないということで、農家も困ったり畜産振興家も困ったりするわけですから、ビートについても、あれだけ膨大な金を使って、一応国がいいといって奨励をしてやってきた。せっかくいい品種もできたわけです。これを保存していこうと思えば、やはり暖地に適したビートなんだから、北海道に一カ所の試験場てん菜部ができ、それへ持っていったときに、保存ができるのかどうか。それとも、できないでもしようがない、暖地ビートについては、将来必要が生じた場合にまたあらためて研究しようとおっしゃるのか。いまおっしゃるように、相当母本が要るわけですから、三十九名ですか、職員がそのまま移管されてやっていくにしては、かなり膨大な作業になる。こうした場合に、品種の保存が困難になるんじゃないか、そう思うわけです。そうしたときに、せっかく暖地で発見した「はづき」「はるまさり」または「支六号」「支七号」というようなもの、「支七号」についてはすでに北海道で「きたまさり」になって開発されているのでけっこうですけれども、品種がはたして維持できるかどうか。国民のものすごい税金を使って育成して、今回振興会を解散するといっても、その品種そのものが、日本に適したいいものが見つかったことは事実でありますから、もったいない、申しわけない、こういうふうに思うからあえて聞くわけですが、そういうふうにわかったようなわからぬような返事では困るわけです。  完全に品種の保存ができるかどうか。さっきは完全に保存できると言いましたけれどもほんとうにそうかどうか、その点を確かめておきたいのです。責めるわけじゃないのです。日本の将来のためにまたビートが必要になってくるときもあるかもしれない、また、飼料が非常に足らぬのですから、粗飼料としてぜひこれを使いたいという希望もあるわけです。休耕、転作も今後またいろいろ問題が起きてくるのですから、何か飼料用としてこれを栽培するということも考えられるわけであります。ですから、そういう面で聞くわけです。早くこの法律案を通して解散してしまう。皆さん方、この解散をするのはおそかった。理事とか何とか、あぐらをかいている幹部たちをやめさせることもなかなか困難だったというようなこともありまして、農林省にしても苦心の策で、今回の解散はおそかったけれども、これをするためには相当圧力を排除して努力して、今日こうして解散にやっとこぎつけた、むしろほめてもらいたい気持ちだろうと、私は言いたくないけれどもあえて言いますが、そういうことを考えてもっとまじめに答えてもらいたい。
  438. 伊藤隆二

    伊藤説明員 ただいまの御指摘の点につきまして、一般に普通の品種でありますれば、品種の維持ということは、非常にざっぱくに取り扱わなければ、日本では問題がないわけでございます。  ただ、先生が御指摘になる点で問題であると思われますのは、てん菜の品種というのが、ものによりましては、いわゆる合成品種であるとかあるいは一代雑種の利用とか、そういったかなり複雑な育種技術をとってでき上がっているものである、そういうふうな意味合いでむずかしいというふうにおっしゃるのだと思うわけでございます。そういうふうなことにおきまして、確かにほかの作物に比べれば、それこそうっかり農家の手にまかぜておいたり何かすれば、先ほども御指摘がございましたように、ある品種が必ずしも特性を十分に維持していけないというふうなかっこうになることが目に見えているわけでございますけれども、そこのところは、技術といたしましては、もうすでに南のほうの品種を北のほうでつくりましても、そういうふうな特性が変わっていくということも防ぎ得るわけでございまして、そういうふうな技術を持っておりますので、完全に維持することができるというふうにお答えしたわけでございます。
  439. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官、いまいろいろ論議を聞いておられたと思いますが、いまお聞きのとおりでございまして、きょうは解散に関する法律案が採決になるわけですけれども、私のところで長年研究所をやってきて、この研究所を四十四年に閉鎖するまでにはいろいろありました。私も当時県会議員としてこの問題に取り組んできたわけですが、ずいぶん圧力を受けて悩んだ上、県へ建物その他を譲渡したという経緯があるわけで、それをほじくるわけではありませんけれども、このてん菜は完全に失敗でございました。かといって、これは失敗したからといって臆病になることは困るわけですけれども、今後農林省は十分こういったことに対処して指導、奨励もしてもらいたいし、せっかくあれだけの膨大な金をかけてきた暖地ビートでありますので、やはり品種の保存その他については当局も指導していただいて、また北海道てん菜部にも十分と配慮していただいて、こういったものはまたいずれ将来使うこともあるでしょうし、正確に保存することについていろいろ努力してもらいたいと思うわけです。その点について、農林大臣にかわって政務次官からの御見解を承りたい。
  440. 中尾栄一

    中尾政府委員 瀬野先生の、県議会のころから取り組まれた非常に専門的なてん菜問題であるということを聞き及びまして、さもありなんという感じがしたのでありますが、あくまでも先生の御意思を尊重いたしまして、せっかく改良でき得た品種は維持でき得ますように、私どもも指導、監督に当たっていきたいと思っておる次第でございます。ありがとうございました。
  441. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、当局にお尋ねしますが、試験研究事業の実績でございます。育種方法に関する試験、品種の育成に関する試験、栽培に関する試験、病理に関する試験、こういったものについてはいままで試験をやってきた成果を踏まえて今後十分検討していかれると思うのですけれども北海道のてん菜部ができた場合に、従来の試験結果を踏まえて十分対処し得るかどうか、またこの実績についてはてん菜のまとめた本が何か発表してあるものか、その点この機会に承っておきたいと思います。
  442. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 先ほど来しばしばお話が出ておったわけでございますが、てん菜振興会が設立以降てん菜の試験研究のために非常に努力をしてまいりまして、その積み重ねで大体最近かなりいい品種のものが出てきておる、これから普及しようという段階になったわけでございます。また同時に、栽培、病理の問題なんかにつきましてもいろいろな研究が成果を見ておりまして、褐斑病の防除のための新しい薬の開発というようなこともできてきまして、これが品種の導入の面にもかなりの大きな影響を与えてきておるわけでございます。そういうようなことの試験研究の成果は、日本てん菜振興会で出しております資料等にたくさん入っておるわけでございます。
  443. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 あと時間の許す範囲で若干お尋ねしておきますが、今回の解散によって日本てん菜振興会には研究所に三十二名、事務局に七名、含めて三十九名の職員がおられるわけです。これらの職員の処遇については万全を期すべきものであると、こういうふうに考えておりますが、処遇の方針はどうしておられるか。もちろんいままでと違って国家公務員になるとベースがダウンするわけでございまして、聞くところによれば、国家公務員の立場になるので現在よりもそういう面では身分も安定するから喜んでおられるという面も聞くのですけれども、実際その職についた場合に、いままでと違って相当給料がダウンするわけでございますから、そうすると、やはりこういった試験研究をしていく上に熱意がこもらない、また真剣味もなくなってくるというようなことになっては心配するわけですけれども、十分対処していかれるやに聞いておりますけれども、その点ひとつ明確に答弁をいただきたいと思います。
  444. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 てん菜振興会の研究所の職員につきましては、先ほど来いろいろお話し申し上げておりますように、原則として北海道農試のほうに移っていただくようなことを考えております。  その格づけにつきましては、これも先ほど御答弁申し上げましたが、試験場の他の職員とのバランスというものも十分考えながら措置をいたしたいと思っておるわけでございます。  また事務局の職員につきましては、本人の意向というようなものも考慮しながら農林省が就職のあっせんというものを行ないまして、解散後の処遇上に不安はないように措置をする所存でございます。この問題につきましてはすでにいろいろなところと話し合いを進めておりまして、大部分まずは問題ないというように私ども考えております。
  445. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私が聞いているのは、いまおっしゃったことももちろんですけれども、国家公務員になりますと、今度は給料がかなりダウンするわけですね。そうすると、立場が国家公務員ということで安定した立場になりますので、その点では資格がはっきりするということで喜んでおられるようにも聞いておるけれども、一たんてん菜部に移って落ちついて参りますと、やはり生活の面ということを考えますと、給料のダウンしたことがいろいろ障害になってきて、わずか三十二名の陣容で今後大きな暖地ビートの分まで含めて研究をしていくということになってまいりますと、やはり意欲という問題が起きてきて、試験成績その他にも影響してくるということも考えられるので、その点十分配慮していただきたい。またそういう面にも職員の身になって考えていただきたいということを申し上げたわけでございまして、将来ベースアップするなり是正するなり十分考えていただきたいと思います。解散の法律案の審議で最後のときでありますから、そういったことを今後のために申し上げておくわけですから、十分配慮していただきたい。強く要望しておきます。  次に、日本てん菜振興会には解散時において十三億円余の残余財産が生じるわけですが、これの処分はどのようにされるか、簡潔に答弁いただきたい。
  446. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 一般会計に引き継ぐことになるわけでございますが、研究所の施設それ自体は北海道農試が引き継ぐ、こういうことになります。
  447. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 研究所だけで十三億じゃないと思うのですが、農試が引き継ぐことはわかっております、提案されておりますからね。十三億のすべては、全部引き継ぐということに理解していいのですか。
  448. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 財産でございますが、解散時の残余財産は、現金、預金、有価証券で十一億円、建物、機械器具等で二億円、合計十三億円でございます。てん菜研究所の建物、研究所の機械器具はそのまま北海道農試のてん菜部が引き継ぎまして、従来どおりてん菜に関する試験研究のために使用するということになります。現金、預金、債券等につきましてはすべて国が引き継ぐ、一般会計に繰り入れるということでございます。
  449. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、昭和四十六年度末より解散時のほうが正味財産が若干減る見込みになっておりますね。これはどういうわけですか。
  450. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 これは先ほどもお答え申し上げたわけでございますが、その昭和四十六年末時点と、それから解散時におきます時点との間のあるいは退職手当の支払いというようなこともございます。そういうようなこと、その他減価償却、いろいろと資産の減耗があるわけでございますが、そういうようなことが差額の原因になっております。
  451. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 国が引き継ぐ債務には具体的にはどういうものがあるのですか。さっき言われた有価証券、建物とか言われましたが、大体先ほど言われたようなことですべてでございますか。
  452. 伊藤隆二

    伊藤(俊)政府委員 債務につきましては解散時点で、なくしてしまうというたてまえでございます。一番大きな債務は、退職金の引当金というようなものが一番大きな債務でございます。これは解散時に支払ってしまうというようなことにいたします。したがいまして、たてまえとしては債務は引き継がないようなかっこうになる。ただ、そう言いましても、あるいはひょっとして残っておるようなことがないとも限りません。そういうようなこともおもんばかりまして、一応もしそういうような債務がかりに残りました場合には、それは国のほうが一般会計で手当てをする、こういうことになります。
  453. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今回の措置は一応私も了としますけれども、国に引き継ぐと、予算等の制約によって試験研究の水準がずいぶん低下するという心配等がいろいろいわれておりますけれども、実際に先ほどからいろいろ論議してきましたように、かなり今度は、民間から離れまして雲の上の仕事みたいになってくるということで心配するわけですけれども、その点については十分な配慮をしておられるのか、その点ひとつ明確に答弁いただきたいと思います。
  454. 中澤三郎

    ○中澤政府委員 今回のてん研の引き受けにつきましては、研究体制、研究制度、勢力の規模、それから施設一切従来のものを引き継いでまいります。したがいまして、同時にそうした引き継いだ人的、物的な体制の上に立ちまして、てん研が行なってまいりました研究成果を進めるというふうに考えておりますので、万が一にも研究水準低下を来たすというようなことをしたくないし、またさしてはならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  455. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官に最後にお尋ねしますけれども、いまの件ですけれども、ちょっと最後がわからなかったのですけれども、要するに、いろいろ引き継ぎの問題等も私も別途説明を聞いておるのですけれども、公開の席ではっきりと議事録に残しておきたいということから、いま最後の若干の質問をしたわけですが、実は予算等が、国のほうへ移りますと、かなりきびしく制限をされてくるということになりかねない。そうなりますと、人員も少ないし、また仕事も相当広範な仕事になってくると思いますし、一カ所に集中してまいりますので、そういうことはないように、十分今後北海道の発展のため寒冷地ビートとして、また暖地ビートとしても将来何かの機会にこういったものが必要になってくることもあろうかと思いますので、十分予算化に配慮をされて今後充実されていくようにこの機会に強く要望もし、お願いもしておきたいという意味で、要するに、国の予算等の制約によって試験研究の水準が落ちるということのないようにやっていただきたい、こういう意味で申し上げたわけでございます。  最後に政務次官からの御見解を承って、質問を終わりたいと思います。
  456. 中尾栄一

    中尾政府委員 ただいま担当官からも説明に及んだのでございますが、あわせまして私のほうからも一言申し上げてみたいと思うのでございます。  国に引き継ぐと将来の予算の制約の関係から相当試験研究の水準低下するのじゃないか、ごもっともな御質問かと思うのでございますけれども、農政の先導的役割りを果たすべき試験研究の重要性はよく承知しておりまして、従来から必要な関係予算の確保には特段の努力を傾けてきたことはすでに先生御承知のとおりだと思うのでございます。そしてまた、近年相当にそれも充実した成果をあげてきたことも先ほど来大胆並びに私、さらに担当官を通じて御説明をしたとおりでございます。今後におきましても必要な予算の確保には努力を惜しまない所存でございまして、てん菜関係の試験研究については、北海道農業の占める重要性にかんがみまして、今回の引き継ぎにあたりましては、もちろん将来にわたりましても予算の確保、充実はこれ倍旧につとめるように努力をいたしまして、そして試験研究の向上をますます期していく所存でございますし、先ほど来津川先生並びに瀬野先生の御心配でございます、国家公務員になったことは、いささかなりとも恒常的な安定的な要素にはなっても、給料そのものの体系が一五%も下げられていくというようなことに危惧感と不安感はないのかという御指摘も十分踏まえまして、大臣も先刻答弁なさいましたように、前向きに検討させていただきまして、善処をはかりたいと思う次第でございます。
  457. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 これで質問を終わります。
  458. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  459. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もございませんので、直ちに採決いたします。  日本てん菜振興会の解散に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  460. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決されました。     —————————————
  461. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 この際本案に対し附帯決議を付したいと存じます。  案文を朗読いたします。    日本てん菜振興会の解散に関する法律案に対する附帯決議(案)  日本てん菜振興会の試験研究業務を国が引き継ぐにあたり、てん菜の寒冷地適作物としての重要性にかんがみ、政府は、特に左記事項に留意しつつ、てん菜の生産振興を推進すべきである。      記 一 日本てん菜振興会から国に引き継がれたてん菜の試験研究業務について、必要な試験研究費等の確保を図り、試験研究の水準低下しないよう努めること。 二 日本てん菜振興会の職員の処遇については、不安のないよう万全を期すること。 三 てん菜の生産振興のための施策の拡充を図るとともに、特に、今後、優良国内品種の健全な普及を図るため、種子対策の強化に努めること。  右決議する。 以上でありますが、本附帯決議案を本案に付するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  462. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議についての政府の所信を求めます。櫻内農林大臣
  463. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨を尊重いたしまして、慎重に対処してまいる所存であります。     —————————————
  464. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 なお、ただいま議決いたしました本案の委員報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  465. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  466. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 午前に引き続き、農林水産業振興に関する件の調査を進めます。  この際、飼料緊急対策に関する件について決議をいたしたいと存じます。  本件に関しては、各党の理事間におきまして協議願っておりましたが、その協議が整い、案文がまとまりました。  便宜委員長から案文を朗読いたし、その趣旨の説明にかえたいと存じます。    飼料緊急対策に関する件(案)  最近における配合飼料価格の高騰がわが国畜産業に与える影響は極めて深刻なものがある。  よって政府は、当面の価格抑制のため、過剰米及び政府操作飼料の払下げ価格を大幅に引下げるよう緊急措置を講ずべきである。  右決議する。 以上でございます。  ただいま読み上げました案文を本委員会の決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  467. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 起立総員。よって、さよう決しました。  この際、ただいまの決議に対し、政府の所信を求めます。櫻内農林大臣
  468. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまの決議につきましては、その趣旨を尊重して極力努力してまいる所存であります。
  469. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 ただいまの決議について議長に対する報告及び関係当局への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  470. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう取り計らいます。      ————◇—————
  471. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 次に、乳価及び豚肉価格安定に関する問題等について質疑を続行いたします。島田琢郎君。   〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着帯〕
  472. 島田琢郎

    島田(琢)委員 ようやく農林大臣をつかまえることができまして、たいへん午前中重要な質問をしたわけでありますけれども、まず私としては、非常に時期が時期だけに、もう少し政府のきちっとした見解を承っておきませんと、これからの保証乳価決定にあたって非常に問題を残す、こういうように判断しておるわけであります。時間が限られておりますので、次の二点だけお尋ねをしますので、明快な御答弁をお願いいたしたいと思います。  その第一点は、いよいよあすに畜産振興審議会の酪農部会を控えておりますが、この際保証乳価政府原案の提出をひとつ求めたいと思いますが、大臣、これはぜひ出していただきたいと思うので、私の要求に対して応じられるかどうか、お答えいただきたいと思います。
  473. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 島田委員のせっかくのお申し出でございますが、私としては最後まで大蔵当局との間で折衝をいたしたい、こういうことで、本日もこの委員会が済み次第、私ども全力をあげて財政当局の理解を求めることになっておりまするので、せっかくのお申し出でございますが、私どもの最後までの努力をさせていただくことに御協力をちょうだいいたしまして、資料の提出につきましては、この際は差し控えさしていただきたいと思います。
  474. 島田琢郎

    島田(琢)委員 過去においても審議会前に資料を出したことはありませんか。
  475. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 歴代農相はただいま私が申し上げたようなことで終始しておるようでございまして、ただいま事務当局に聞きますところ、従来お出しをした例はないということでございまして、まことに恐縮でございますが、御了承をお願いいたしたいと思います。
  476. 島田琢郎

    島田(琢)委員 ところが、あるんですよ。昨年ですね。審議会の朝ですけれども、自民党の農林部会の朝めし会に、審議会の開会前であるにもかかわらず、資料が出されている。これはどうですか。
  477. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいま担当者から聞きましたところ、それはただいま私が申し上げたこととちょっと違っておったと思います。前段申し上げましたように、最後まで努力をさしていただく、そしてその努力の結果、諮問をする朝でき上がってそういうことがあった、こういうことでございます。そういう次第を御了承願います。
  478. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それでは全然言っていることが違うわけですね。絶対に出せない。これは大臣がお見えにならぬ午前中、私はもうあすなんだから、全部の資料をストレートで見せろとは申し上げないが、労働費の評価について用いようとしている根拠ぐらいは示してもいいでしょう、こういうふうに追ったのですが、前例がない、審議会に出す前に出したという事例はないので、これは出すことはできません、こういうことでありましたから、私はあのとき時間もありませんで、この問題については重ねて後ほど大臣がお見えになってからそれでは具体的にひとつ質問をいたしましょう、こういうことで保留をしたわけですが、これでは全く国会における答弁としては私は納得できないのです。前の日であろうと当日であろうと、審議会の前に出しているという事実がありながら、出さないというのはおかしいじゃないですか。いまからでも私は昨年の事例に基づいてこの資料の提出を求めます。
  479. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほどお答え申したように、諮問案が最後まで財政当局とも折衝してそしてまとまった結果、いま御指摘のような事実があった、こういうことを申し上げておるのでございまして、そのまとまった段階でその際に委員会があるというようなときに、私が出せないということはそれは言えないと思うのです。いまの場合は、これからこの委員会が済み次第、財政当局との間で折衝して最後まで努力をする、こういうことで先ほど申し上げておるわけでございまするから、この辺の御了承をいただきたいと思います。
  480. 島田琢郎

    島田(琢)委員 それでは、私は、財政当局、大蔵省との折衝をまだこれから控えているので出せない、だとすれば、昨年三十七銭アップで諮問をしたその諮問案がその後一円になった、それは財政当局とは昨年の今晩のうちに一円アップを含めて話し合いを進めていたということでしょうか。その点どうですか。
  481. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これはいろいろな場合にこういうことがいままでにもあったと思うのですね。と申しますのは、政府としての諮問は諮問でございまするが、諸般の情勢からこれを受けての党側の動きというものもございまして、その結果がどうしても党がこれで了承できないというようなことから、最終的に諮問の案とは結果が違う、こういう場合はいままでにもそういう例があると思うのでございます。あらかじめそういうことを予想して折衝する、そういうことは私はあり得ないと思うのです。
  482. 島田琢郎

    島田(琢)委員 おっしゃるとおりです。私もそのことを申し上げているのではないのです。それは責任ある立場で自民党が話をして政治加算をした。私はこの政治加算には問題はありますよ。しかし、きょうは限られた時間ですから、このことに深く触れることは避けますけれども、話し合いをするという、昨年話し合いをしたときは三十七銭の問題で財政当局と話し合った。しかし、これじゃおさまりませんよという含みもこの中に含めて話をしていたという感じがするから、そうであれば、財政当局との話し合いというものが絶対金科玉条のきめ手ではない。だとしたら、きょう出したって同じじゃないですか。財政当局の話し合いはいままでだって何回かやっているじゃないですか。だとすれば、一応のものは出しても私はいいのではないか、そう思うから申し上げているわけです。
  483. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これはやはり政府側は政府側としてベストを尽くすべきものだと思うのですね。最初からいろいろなことを予測しての行動というようなことは責任を全うする上においては私はいかがかと思います。私としても、省内の担当者としても最後まで努力をするのがしかるべきであって、そのことがまたその後におけるいろいろな動きの上に私は努力というものが反映するのではな  いかという気もいたしますが、そういうことで、私としてはどうしてもいまはこうですというような、そういういわば私としてそう軽率な言動をと  るべきものではない。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 やはりあくまでも誠意を持って努力するということが、これが私らに与えられた責務ではないか、  こう思うのでございます。
  484. 島田琢郎

    島田(琢)委員 いや、大臣責任ということは、それはあなたのおっしゃることについて、私はこれは否定はいたしません。しかし、言いたいのは、審議会が乳価をきめていく上における最高の機関だという認識を持っているのじゃないかという気がひとつします。まあ、政治加算をしたという問題がありますから、そのことは否定されるかもしれませんけれども、私は国会で、このガラス張りの中で国民の皆さん方が納得いくような論議を尽くすべきだ、それをひとつ言いたい。それが、どうも審議会を隠れみのにして、いつの間にか国会論議を素通りして、自民党の本部へ持っていって、そして政治加算と称するものできめる。この辺が、自民党から出ている農林大臣ですから、やはり政党の圧力ということについては感ずるでしょうけれども、その前に大胆が正確に情勢を判断されて、正規にはじくとこれしかならぬけれども、いまの酪農の置かれているきびしい情勢を踏まえたときに、これだけはこの際出さなければ日本酪農の崩壊になる、そういう判断というものはおありになると私は思うのです。ですから、党から言われたから政治加算をしたということは、これは悪いくせになっていると私は思うのです。やはり農水の場で、国会論議を通して、ガラス張りでひとつ徹底的に皆さんの期待にこたえるような乳価というものを論議しようではないですか。私は、そのルールはひとつことしから戻してほしいと思うのです。何か申し上げると、これは法律にも審議会と並行して国会に資料を出すことになっておるから一切出されません、こうおっしゃるのですが、そんなに四角四面な定木の中でやるということは、いまの酪農の置かれているこの状況を打開していく上において決してプラスにはならない、むしろマイナスになると私は思うのです。大臣も御承知のように、何千という人たち乳価の問題で上京されておるわけです。北海道から六百人も来ております。生きるか死ぬか、皆さんも真剣です。午前中も私は政務次官にそのことを強く訴えたわけです。そういう点を考えますと、いまここで一つのルールだとか規則だとか不文律だとかいってやり合うことに多くの時間を費やすことが私はもったいなくてしかたがない。ほんとう意味の論議をしようではないですか。そのことを私は訴えたいのです。その考え方はどうでしょうか。
  485. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 国会で非常な御関心をお持ちいただいて、本日のみならず、予算委員会等におきましても、また、参議院のことを口にしてはいかがかと思いますが、国会内の参議院のほうにおきましても加工原料乳価についての真剣な御論議が行なわれておる。そして、そのことはそれなりに反映をしておるものだと私は思うのです。第一が私にいたしましても、国会のこの模様を十分念頭に置いて、へたなことはできない、何としてもがんばらなければいけないという決意をいたしておるのでございますから、決して皆さまの御意見を無にしておるわけではございません。  それから、これはもし間違っておれば訂正させていただきますが、大体諮問のほうは、その内容として相当はっきりしたものでいたしておると思いますが、答申のほうにおきましては、従来はっきり幾らにすべしということよりも、各種の諸条件について答申のある場合が多かったのではないか、こういうふうに記憶をしておるわけでございまして、そういう点から言えば、最終的な価格の決定が、それは政治加算という批判もあるかもしれませんが、いろいろな事情が反映して党側がこれでは了承できないというようなことで、積極的に大蔵当局との間の、いわば政府当局を鞭撻する意味の折衝によって最終的な結果が出た、こういうような場合が多いんではないか。いずれにいたしましても、この委員会における皆さんの御論議を十分体して私としては行動をいたしてまいりたい、こう思います。
  486. 島田琢郎

    島田(琢)委員 まあ、間違っていればということの前置きですからあれですが、これは大臣認識が違いますよ。はっきり数字をあげているのですよ。ただ、答申は、いま大臣おっしゃったようなきわめて抽象的な答申になる場合がある、少数意見を付記するなど。これは答弁は要りませんが、間違いであることだけ認めてください。それは間違いですから、私の言うとおりなんです。  それで、時間がありませんから局長に一つだけ、労賃評価についてですが、私は午前中にこういう質問をいたしました。昨年の安定指標価格の中における製造経費の中の労働費というのは一体幾らになっているのですか、これは乳業メーカー全部調べる責任がありますから、わからないとはおかしいじゃないかと私は午前中言ったのですが、これはわからない、あるいはお知らせすることはできないと言うのです。ことしのことは幾らやっても出てきませんでしたから、それじゃ、昨年審議会に諮問したときの安定指標価格算定における製造経費の労賃部分は一体幾らで算定をしましたかと聞いたが、ついにこれは明快なお答えがなかった。ですから、私は、それなら教えてあげますといって教えた経過があるのです。これはもう一度、ひとつ責任ある局長からはっきりお答えください。
  487. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 午前中、審議会等の事情によりまして直接島田先生に御答弁できなかったわけでございまして、恐縮に存じておりますが、労務費についての労働時間その他のこまかい資料でなくて、労務費全体のつかみ方というような……。(島田委員「いま何ほだと言っていただけばいいのです」と呼ぶ)それは、単価とかその他というのは明らかでないというようなことを承知しておりますけれども、少々お待ち願います。
  488. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私の質問がわかりませんでしたか。安定指標価格をきめますね。そのときのバターならバター、粉乳なら粉乳のコストの中に労賃があるのですよ。それが幾らなんですか、昨年諮問したときの単価は何ぼですかと聞いたのです。これは今井君そこにおるから、昼前答えたので、そんな時間をかけるのはもったいないから申し上げますけれども、三百八十七円八十銭なんですよ。ぼくのほうが局長よりわかっているというのは、正直言って困るのですよ。三百八十七円八十銭なんです。これは首をひねられるかもしれないけれども、畜審委員の全中の松村常務が昨年の畜審の中で質問しているのです。それに資料を出して答えているのですよ。これはもうわかったらいいのですが、酪農も乳業も関連産業であり、同じ白い乳に携わっているものなんだから、保証乳価をきめるときにもこの三百八十七円八十銭をなぜ使おうとなさらぬのか。そこを聞きたいから午前中から——きわめて簡単な話ですけれども、それを出せるとか出せないとか、あるとかないとか言ったものですから、大事な時間を浪費して肝心なところに触れないで終わってしまったのです。こうした考え方をこの先もとるお考えがないのですかあるのですか、それをひとつイエスかノーかだけで答えていただいて、私の質問を終わります。
  489. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げますが、先生が御指摘の数字は、たしか昨年の記憶を思い起こしますと、乳製品の製造販売経費の中は、労働費の総額を企業側から報告をとりまして、これを精査してきめておりまして、労働費総額でございます。したがって、松村委員が当時単価の御要求がございましたが、この点については資料がないので、食品工業の平均の労賃単価を資料としてお出ししたというようにわれわれは聞いておるわけでございます。
  490. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そういう経過を私、聞いたのではなくて、これを少なくとも最低——こんなことでは納得できないのですよ、全然納得できない単価ですけれども、せめて公平の原則を貫いていただきたい。これは切実な酪農民の願いがあるのです。だから、同じ関連産業である乳業と生産者が同じ労賃単価であってもいいじゃないですか。これはきわめて常識的ですし、国民の合意を得られる最低の数字だと思っているのです。だから、それをおやりになる考えはあるのかないのか。ことしやる気がなくとも、将来前向きに検討するならする。私のほうが答えを言ってもらうのに、まるでこっちが答弁要旨を書いているようなことになってしまいますけれども、時間の関係でそういう質問のしかたをしているのです。どうですか、それも全然やる気はありませんか。
  491. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 各種の算定方式の前進、改善については、各方面の御意見を今後も聞いて検討しなければならないわけでございますが、本問題については、評価がえの問題で事柄が相当慎重を要しますので、なお検討を続けさしていただきたいと思います。
  492. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そんな慎重にやらなければならぬものですか。国民の皆さん方に聞いていただいても、それはあたりまえだと皆さん言うのですよ。それは鉄鋼産業のうんともうかっているところとか、銀行でうんともうかったところの労賃と一緒にせよと言っていない。雪印や森永や明治で働いている人たちの平均労賃と、ほんとうに乳をしぼっているわれわれの労賃単価を同じようにしてくれ。この要求はなお慎重を要するというのじゃ、日本酪農は、局長、これはとても守れないし、つぶれますね。そんな不公平なことをおやりになっていて、公平にやってくれといったら、それもなお時間をかけて慎重にというのでは、だれにたよって日本酪農あるいは酪農家皆さんが生きていけるのですか。こんなことぐらいは前向きに検討してくださいよ。  あと、美濃委員質問がありますので、私はきわめて不満足でありますけれども、まだあすあさって決定までは時間がありますので、再度質問をすることにしまして、質問の全部を保留してきょうは一たん終わります。
  493. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 美濃政市君。
  494. 美濃政市

    美濃委員 大臣にこの段階で一言お尋ねをいたしたいと思いますが、三月十日の予算委員会の物価、商品投機あるいは円対策等の総括締めくくりのときに、ことしの飼料の暴騰部分は、えさ対策と価格と両面で措置するという、これは速記録がありますが、大臣が答弁をしております。これはパリティには出てきません。緊急事態が発生しているわけです。  第二の問題は、異常な商品投機等が加わりまして、物価が異常に高騰してきております。このえさとこれらを合わせて、ことしの乳価決定にあたっては、普通の年とは違うと私は思うのであります。  それから第三点。この統計資料によれば、三十頭以上の飼育農家の一日当たり労賃は五千八百円となっておりますけれども、この中で大きな違いが起きております。それは、いつも私が指摘しております保証乳価の体系、すなわち地代、資本利子は、たとえば具体的に例を申し上げますと、百トンの牛乳を生産するに、この体系で計算しますと五十万しか——地代、資本利子とありますから、借り入れ金の元利償還財源を保証しておりません。しかし、現実に規模拡大で、酪農は御存じのような設備投資が多く伴うものでありますから、大体百万ないし百二十万、元利償還を要する負債になっておるわけです。ですから、金融政策と保証体系の問題の食い違い、これが七十万あります。三十頭規模の飼育農家になれば七十万ないし百万、これがこの経費に出ておりません。それを引けば、その償還をすれば五千円などという賃金にならないと思います。ですから、最近では、五十頭、六十頭、大規模飼育農家になった人が全部牛を売ってしまう、過重な労働と負債に対応できないという問題が出てきております。ですから、過般の久保講堂でやったときの大会に四千人も五千人もの全国の畜産農家の代表がいたずらに上京して、血の叫びをしておるものではないのです。ほんとうに崩壊寸前になっておる。そういうことがあります。  それから、依然として修正されない家族労賃の低評価、これをこの際解決しなければ、日本の畜産、酪農というものは崩壊に瀕してきておる。経営を持続することが困難になってきておる。これは大臣もそれぞれ要請なり陳情も受けておることですから、どこまで把握して最終決定をしようとするか。そして先ほどの島田委員に対する答弁では、これから財政当局と相談するというのでありますが、相手のあることですから、その相談の結果については別といたしまして、しからば何%アップで最終の詰めに入るのか、これはこの委員会で大臣が言えないということはないと思います。何%アップでこれをやらなければならぬと思う、これだけの大臣の決意だけは、もう直前でありますから、ここでぜひ聞かしていただきたい。  以上について答弁をお願いいたします。
  495. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 御専門でございますので、負債についての償還等に触れておられます。この点は私の答弁のあとで担当の局長に補足をしてもらうことにいたしまして、私は、ただいまの御質問の御趣旨は十分理解ができます。  労務費のとり方などについてきびしい御批判もございまするが、元来保証価格の決定の大原則は、生産条件や需給事情その他経済事情を考慮し、再生産を確保する。これを労務費がどう、地代がどうということで、担当の責任者としては、こまかく計数的に財務当局といろいろ折衝しなければたらない。これはやむを得ないことであると思うのです。しかし、その価格決定の原則ということな考えまするときに、一応の計算は計算である。しかし、諸般の情勢というものをどういうふうに織り込むか。これはこまかく織り込んで積み上げていくということがわかりいいことではございまするけれども、しかし、またいわゆる政治加算的なことも、この価格決定のたてまえの上から、おそらく最終的に財政当局もそこまでおっしゃればやむを得ませんということになることではないか、こう思うのです。私が政治的な発言というか判断を申し上げてまことに恐縮でございまするが、そこらに私などの最後まで努力のできる要素と申しますかが残っている、こういうことで、先ほど来最後までの努力をさしていただきたいということを申し上げておるわけであります。  そこで、御指摘のケースにつきましては、局長のほうからお答えさせます。
  496. 美濃政市

    美濃委員 時間がありませんから事務的な答弁は要りません。いま大臣の答弁を聞いておって、私の言っておるのは、政治判断にいく前に、この統計表を見ても、大きないわゆる経緯の把握が欠けておる。今日苦しんでおる農民の状態は、この統計表どおりの収益があがっておるのであればこれほど深刻にはならないのです。この統計表そのものにミスがあるというよりも、計算されているものには大きなミスはないと思いますけれども、家族労賃の低評価以外にはそう大きなミスはないと思いますけれども、ただいま申し上げたようなことが経費から抜けておるわけですね。ですから、そういう点を踏まえてもう一回大臣のほうに、何%上げなければならぬと考えて最後の折衝に入るか、これを聞かせていただきたいと思うのです。
  497. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 現在の酪農経営実情からいたしまして、過去の値上げ幅をずっと検討してまいりますときに、従来のような値上げ幅ではとうてい私か責任を持って納得してもらう、こういうことができないということで、何%ということは、私、申し上げにくいのでありまするが、従来のようなことでは私の責任を果たせないということで、諮問の場合におきましても相当大幅なことで臨みたい、こういうことでございます。
  498. 美濃政市

    美濃委員 時間になりましたので、それではその大幅を期待して質問を終わりたいと思いますが、もう一つ、そうすると、明日諮問するこのいわゆる政府原案は、何時ごろできますか。ということは、もう一つつけ加えますが、これはあすもまた委員会があるわけですから、できて、私どもも朝食会を開いたら、そこへ持ってきますね。同じ衆議院議員ですから、片一方へは持ってくる、片一方へは持ってこないということはないでしょうね。あす私どもは朝食会を開きまして段取りをつけますから、そこへ持ってきますね。
  499. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 最終的に何時になってまとまるかということは、にわかに予測はできません。予測ができるならばまことにけっこうなんでありまするが、できませんが、もし審議会前にお示しする時間的余裕がありますれば、それは私として善処いたします。
  500. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 多田光雄君。
  501. 多田光雄

    多田委員 私は、いま論議になっております加工原料乳の保証価格の引き上げ、これが非常に急務であるという問題について、主として大臣にお伺いしたいと思います。大臣がこの問題について答弁されたのは初めてだと思いますので、昼の質問と若干ダブる点がありますけれども、重ねてお伺いしたいと思います。  日本国民の主要なたん白源の一つである牛乳そしてまた乳製品、さらにまたそれを生産している酪農民、この日本酪農業の将来の発展から見て、今回のこの保証価格を引き上げるかどうか、またそれをどれだけ上げるかということは、至大の影響を持っていると思いますので、この点について特に大臣に伺いたいのですが、大臣はいま私の立場としても従来とは違うというような意味を述べられましたけれども、これはかなり大幅に引き上げるということですか、それを伺いたいと思います。
  502. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これはもう早ければ一両日中に結論が出るのでございまして、その結果をござんいただければおのずから御判断ができると思うのでございますが、私は従来よりは思い切った措置を講じたい、そういうことで折衝したい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  503. 多田光雄

    多田委員 なかなかその額を先ほども委員が追及してもおっしゃらないわけですが、従来の額というのが七十銭、八十銭、一円です。その結果、今日北海道をはじめとする酪農民の生活、営農がどうなっているのかということを考えれば、かなり大幅な引き上げをしなければ、これが酪農民を殺すことになるというように私ども考えております。そこで、この加工原料乳生産者補給金等暫定措置法によりますと、ここにはこう書いておりますね。「農林大臣は、物価その他の経済事情に著しい変動が生じ又は生ずるおそれがある場合において、特に必要があると認めるときは、保証価格等を改定することができる。」といっておりますが、大臣が従来と違って上げるということは、かなり大きな変動があったというように考えてのことですか、それとも政治的圧力があったからやむを得ないということでやられることですか、どうですか。
  504. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これは先ほどはっきり申し上げましたように、私としては、価格決定についての方針がはっきり示されております。生産条件、需給事情その他経済事情を考慮し、再生産を確保することを旨としてきめるように、こういうことでございまして、現在の諸情勢の中にございましても、私はこの姿勢を守っていくならば、私の責任を果たせるものであると、こういうふうに認識しておるわけでございます。
  505. 多田光雄

    多田委員 ここにはもう一度読みますと、「物価その他の経済事情に著しい変動が生じ」と、こうあるわけです。確かに算定のルールはあると思います。それはなければなりません。しかしながら、その基礎となる経済情勢の著しい変動、これはたとえば酪農民の月から見て、あのえさがかつてない膨大な騰貴をしております。物価も上がっています。しかも円・ドルの海外からのいろいろな圧力もある。そういう点からいって、これは著しい変動とひとつ見られませんか。
  506. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 お示しの法文でございますね、これはちょっと担当者から御説明をさせていただきます。
  507. 多田光雄

    多田委員 いや、よろしいです。それでいま私の言った変動の問題について——違うというのですか。じゃ、簡単に説明してください。
  508. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 簡単に御説明申し上げますが、ただいま質問をいただいております加工原料乳については、加工原料乳不足払いに関する法律、法律の名前は正式に申し上げませんが、その法律の第十一条第五項で保証価格、基準取引価格、第一項の数量、これは限度数量、安定指標価格等は毎会計年度、当該年度の開始前に定めなければならない。これを今度きめるわけでございますが、先生御指摘の物価その他の著しい変動というのは、年度途中でえらい変化が起こった場合に改定し得る余地がある、改定するということでございまして、今回決定する問題とは直接関係がないわけでございます。
  509. 多田光雄

    多田委員 それじゃ、大臣に私はちょっと政治的に考えてもらいたいことがある。実は一昨日、きょうも傍聴に来ておられますけれども北海道から六百名の酪農民の人が来られていて決起集会を開かれた。そこである酪農民の方が立ち上がって、ことしもし乳価が上がらなければ、来年の参議院選挙で流れを変えよう、賛成の者は立ってくれと言ったところが、三分の一近い人が立っているのです。お笑いになるだろうけれども、つまりそこに酪農民の方々の真剣な悲願と生活苦、営農苦があるのですよ。そこで、午前中、今日の北海道酪農民の牛の頭数が減ってきている、それから酪農家戸数が減ってきている、生産量が減ってきている。これは先ほど政府側も認めていることなんです。しかもその原因は、予想しなかった事態であると言っている。昼の答弁です。そこで、このような深刻な事態に立ち至った原因は一体何だと思いますか、大臣
  510. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 北海道酪農家皆さんの御苦労につきましては十分理解をしておるつもりでございます。特に先ほども質問がございましたが、非常に多額な負債を持っておられまして、それの返済についても事を欠くような窮迫した状況にある。私はこの点につきましては、いませっかく北海道庁を督励いたしまして、早くはっきりした事態をつかみたい、そしてその負債の返済についての具体的な対案を講じたいと考えておるのでございます。  ただ、おことばを返してたいへん恐縮なんですが、きのうも予算委員会で古田委員に御説明を申し上げましたが、全国平均でいきました場合と北海道の場合を考えますときに、非常な御努力によって四十五年、四十六年、四十七年と飼育頭数にしても生乳生産量にいたしましても、それぞれ北海道の占めるシェアというものはずっと上がってきておると思うのでございます。それから飼育頭数で見てまいりました場合でも、十頭から十四頭の酪農家の場合は、これは四十五年に比較して四十七年には下がっておりますけれども、しかし、それ以上の場合におきましてはいずれも規模戸数の動向としてはふえておるのでございます。そういうようなことで、総合的に見まして、非常な御苦労はちょうだいしておるけれども、しかし、それだからといって、私どもから見て、北海道酪農についてわれわれの施策よろしきを得まするならば、今後においてそう悲観すべきものではない。過去、ここ三年ほどを見ても多少ずつはよくなってきておる、こういうふうに見ておるような次第でございます。
  511. 多田光雄

    多田委員 施策がよろしければ、農民がこのようにまなじりを決して遠い北海道から六百名も押しかけてきませんですよ。それから、ほんとうに施策のよろしきものが行なわれるという信頼があるならば、こうまで騒ぎはしない。そしていま生産の減退あるいはまた離農、これがどのように深刻になっておるかということを大臣はやはり知らない。たとえば北海道の生牛乳生産伸び率が、全国平均に比べてみて、前年同期に比べて初めて落ち込んできておるのです。しかも子牛その他をいま売っている。三分の一が売られたろうとさえいわれておるのです。そういう深刻な事態なんです。十勝では、北海道離農率は全国一といわれておるのですが、そのまた全国一の中でも、北海道離農者の中で最近では八〇%から九〇%が酪農民なんです。この原因は一体何なんでしょうか。昼は、答弁に立った審議官は、牛がいなくなったので牛肉が高くなっただろう、こういう農民を侮辱したことを言っておるのです。牛肉が高くなったのではないのですよ。問題は、乳価が安くて、しかもやり切れなくなってきている。連年の負債をかかえてきている。あの道東に住む天北では、資料によれば、一戸平均六百万の負債だといわれておるのです。一体この原因は何でしょうか。私は、農民に払う乳価の低さ、ここに一つの大きな原因がある。もちろんその背後には飼料の暴騰、そしてまた負債の累積、諸物価の高騰、これらがあります。しかし、最大の原因の一つとして乳価が安い。だから、いま乳価を上げてほしい、こうきておるのですが、大臣、そう思いませんか。
  512. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 前段のほうの北海道酪農業の皆さん方のことにつきましては、先ほど私、申し上げたように、早急に実態調査報告を受けまして、特に負債の返還等についての御苦労がある、これには対処をしたいということを申し上げておるわけであります。  それから、乳価の問題につきましては、きょうこうやっておそくまで皆さん方にも熱心な御論議をちょうだいし、また私も先ほどから何べんもお答えをしておるように、私としても最善の努力をいたしまして、そして何とか皆さんの御期待に沿うような結論の出るように最後まで努力をする、こういうことを申し上げておるのでございまして、御指摘のような認識につきまして、私は十分皆さんのおっしゃることを心得て行動いたすつもりであります。
  513. 多田光雄

    多田委員 時間があと五分しかありませんので次に移りたいと思いますが、私はそういう意味で、一円とか、二円とかいうのではなくして、酪農昂の生産費を償うような大幅な引き上げをしなければ、食料基地北海道であるとか酪農業の北海道であるとか、こういわれていても、実際に北海道の三期計画でも目標年次には農民を半分に削る、こういう計画さえあるのです。そうすれば、決して皆さんが言っているように、そのように順調なものではない、そのきざしがいま出ているということを強調して、特に今回の大幅引き上げに特段の配慮を払ってもらいたいということを、私は農民とともにこれをひとつ訴えたいと思います。  そこで、次に申し上げたいことは、北海道は全国の原乳の七〇%、これを生産しているのです。そしてまた道内生産の八七%が原料乳なんです。だから、北海道の人がとりわけ深刻な打撃を受け、そしてまた真剣になっているのは、そこに一つの理由があるのです。大臣、よく覚えてください。  私がいまだにわからないのは、この原料乳と、それから一般の市販している飲用の牛乳、これの価格差をつけていることです。これについても、農林省の方々は、これは遠隔の地であるとか都市から離れている、いろいろなことを述べられておるが、これはやはり私は雪印、明治、森永など、乳業資本のベースの問題ではないか。遠隔地であればあるほど、思い切ってそれを配慮をしなければ、北海道や九州熊本、ここの加工用の乳をしぼっている農民がたいへんだ、こう思うのです。その点どうでしょう。
  514. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 御専門であられるので、私が御説明申し上げるのはいかがかと思うのでございますが、市乳はその地域地域の事情を踏まえて価格形成が行なわれてくる。この原料乳については、先ほど来申し上げるような方式できまってくるのでございまして、たてまえが違っておって、そういうことによっての差ということでございまするので、これを同じようにするということにつきましては、行政を担当しておる私どもの立場からいうと、なかなか至難なことだと思うのです。そういうところで、何べんも申し上げて恐縮でございますが、生産条件、需給事情その他経済事情を考慮し、再生産を確保することを旨として、この加工原料乳のほうの保証価格をきめる、そういうところで、計算は計算であるが、しかし、いろいろと考慮を払いながらするということで、なるほど出ておるものを比較してお取り上げになるとおっしゃるようなことになろうかと思いまするが、私の申し上げていることについてもひとつ御理解をいただきたいと思うのであります。
  515. 多田光雄

    多田委員 生産者が苦労して生産した牛乳、これをメーカーが、いま言った三大メーカーを中心にして、いわゆる乳製品をつくったりあるいは市販の牛乳を売っているわけですが、東京で売られている市販の牛乳がどういう牛乳か。飲んでも牛乳の味のしないような牛乳が売られておる。しかも、きょう昼、自治省も答弁しているけれども、あるいはまたわが党の諫山委員が指摘したように、この三大メーカーの利潤というのは膨大なもなんです。一々もう数字をあげる必要もない。しかも先ほどあげた政治献金が、昭和四十五年、六年、七年と急速に増強している。これだけの利益をあげているのです。しかも生産者と直接話し合う飲む牛乳の値段についてはある程度、これもわずかですが、高く出している。私はこのメーカーが支払い能力あると見ている。  そういう意味では、基準取引価格、これを思い切って上げてみたらどうですか。なぜならば、思い切ってこれを上げないと、これが足かせになって保証価格の足をひっぱる。保証価格の低さが基準乳価のまた低さの足をひっぱっている、こういう相関関係をなしていることははっきりしているのです。どうでしょうか、それを思い切って上げることはできないでしょうか。
  516. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 基準取引価格につきましては、実情に即して引き上げることを申し上げておきます。
  517. 多田光雄

    多田委員 そこで、また条文で、先ほどの措置法の二十三条、ここにこういうのがあります。これも間違いでないと思うのだけれども、「農林大臣又は都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、加工原料乳若しくは指定乳製品その他第二条第一項の政令で定める乳製品の生産者、販売業者若しくは輸入業者」輸入業者にはカッコがついておりますが、「に対して必要な事項の報告を求め、又はその職員に、これらの者の事務所その他の事業場に立ち入り、その帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。」と書いてある。そこで、この三大メーカーの帳簿その他価格の構成その他について立ち入って調べてみる、そうしてほんとう生産農民の立場を守る、こういう思い切った措置をとることができないでしょうか。そのことがまた当面問題になっている物価値上げその他にも私は有効な作用をすると思うのですが、どうでしょう。あなたは有力な方だと聞いているのですが、それくらいのことを思い切っていまやらないと物価値下げはできないし、そしてまたほんとうに大企業の優遇措置——この優遇措置ということは先ほど中尾次官もそういう傾向があるということを述べておるが、それを思い切ってとめることはできないと思うのですが、どうでしょうか。
  518. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 法律に基づいて行動を起こす、こういう場合には、やはりそれだけの条件が整っておらなければ、ただ立ち入り検査をするのだ、こういうことには私はいかないと思うのであります。  そこで、先生のおっしゃるようなことが立ち入り検査の前提になるかどうかということにつきましては、この法律のたてまえからまいりますと、たとえば基準取引価格などにつきまして、どうしても納得がいかないというようなことがございますれば、それに伴ってこの法律の発動をするということも考えられると思うのでございますが、いまここで御意見をちょうだいいたしまして、直ちにそれでは御意見のとおり発動して立ち入りします、こう申し上げにくい点もございます。これはあくまでも正しく諸般のことが実行されることを望む法律上の条章だと思いますので、この辺はよく私としても考えさせていただきます。
  519. 多田光雄

    多田委員 時間が来ましたので、最後。  私もこの二、三日、上京しておられる農民の方々の切実な、ときには涙を流して訴える酪農民の気持ち、しかも家族の一員のように思っている腹に子供の入っている牛を売る、あるいは男牛を売る。局長、いま首をかしげているけれども、農民に聞いてごらんなさい。それが、この「日刊酪農乳業速報」を見ても、どこでもやられている。つまり、乳をしぼるよりも、牛をいま肉用に売ったほうが、汗を流して一年間働くよりも利益があるからなんです。ここまで苦しんでいるのです。しかも最後には離農です。どんなに口で日本の食料産業を守る、あるいは酪農を守る、こう言ってみても、自由化の波が押し寄せてくる、飼料が上がる。この中でほんとう酪農民を守るためにいま大事なことは、あれこれの話よりも、当面農民が最も望んでいるもの、一番生産でその先頭に立っている、農民サイドで考えているこの乳価を上げてもらいたいということ、これにひとつ大臣、真剣に耳を傾けて、思い切ってこの際上げていただきたい。私も北海道出身でありますが、皆さんと一緒に特にこのことを強く強調して、私の質問を終わりたいと思います。
  520. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 瀬野栄次郎君。
  521. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 乳価並びに豚肉価格問題について農林大臣質問いたします。  昨日から本日にかけて数回となくこの論議をしてまいりましたし、私も午前中、午後と質問してまいりましたが、いろいろ論議は尽くされておるわけでございまして、いよいよ明日は酪農部会が十時から開かれる。きょうはすでに食肉部会が開かれたわけでございまして、畜産振興審議会も大詰めにきておるわけでございます。  去る二十六日には、乳価豚肉価格要求全国農協代表者大会が虎ノ門の久保講堂で行なわれまして、私も例年参加をし、いろいろ激励のことばを送っておるわけでありますが、今年は特に熱気あふれたものがございました。聞くところによると、当日は一時からの開会でありましたが、午前中北海道から六百名も来ておられる。また九州の各県からも、いまだかつてないたくさんの方が見えて、熱心に討議をされ、現に、価格がきまらぬうちは帰らないということで、連日国会にも陳情に波状的に見えております。そのことを見ましても、いかに酪農家が一生懸命、今度の価格によって今後の成否を問われる、また離農するかあるいは続けていくかという大きな岐路に立っているということで、いまだかつてない真剣な様相をうかがえるわけです。農林大臣も、先ほど私が質問して別れて出ていかれるときに、エレべーターの前で代表の方からつかまって、立ったまま陳情を受けておられる姿も見受けましたが、至るところで大臣に懇願するように、たくさんの方が陳情されることも十分承知だと思うのです。  それで、もうくどいことをいろいろ申し上げませんけれども、いよいよこの委員会が終わりますと、大臣もさっそく財政当局と折衝をまた続けられる。理解を求めるためにやられる。大幅なことで臨みたい、また従来よりも思い切った措置をしたいということでたびたび答弁をされておられますが、私は素朴な質問を最初にしたいと思います。  農家並びに農協団体が今回のいわゆる原料乳価の保証価格をキロ当たり幾らで要求しているかということは、大臣はいろいろ陳情を受けられたから知っておられると思うが、すぐ答えられますか。わかっておられますか、すぐ聞かずに。
  522. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 生産者団体の要望は七十四円十七銭、こういうことでございます。
  523. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 豚肉安定基準価格はキロ当たり幾らを要求しているか、これは御存じでございましょうか。
  524. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これは五十五円アップと記憶しております。
  525. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 だから、キロ当たり幾らでございますか。平均は幾らで、それを基準として上物はどういうふうに言っておりますか。
  526. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 キロ当たり四百十五円でございます。
  527. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 キロ当たり四百十五円というのは上物のことでありまして、三百八十七円を基準価格として、これに見合った価格で上物を決定しろというのが農協団体のいわゆる要望であります。大臣、実は失礼な言い方だけれども、この二つしかないわけですからね、根本的な問題は。一々お尋ねにならぬでもそれはわかっていただかないと、あれだけ熱心に陳情も来る、エレベーターの前でまたお聞きになられて、参議院、衆議院と行ったり来たり、大臣もたいへんなことはよくわかっておりますが、血の出るような叫びで三つの条件を基礎にして、農業団体も衆知を集めて、そして労働賃金の問題から飼料の値上げ問題、いろいろなものを算定してこういう価格を出して要求しているわけです。かりにこのとおりにならぬにしても、いわゆる日本農業団体がどのような要求をしているか、また主管大臣として十分それを検討し、知った上でいろいろ検討してもらわなかったら、われわれはだれを味方にだれをたよりに今後農政をやっていくかということになるわけです。そういった根本姿勢といいますかそういったことが、よもやと思いましたけれども大臣にもつい私、聞いてみたわけです。いろいろなことはきのうきょうずいぶん聞いてありますので、大臣には素朴な質問ほんとうに失礼な言い方だけれども、そういったことからまず認識をしていただいて、検討していただいて、ほんとうに基準価格を決定してもらわなければならぬ、かように思うわけです。  それで、農協団体では原料乳保証価格をキロ七十四円十七銭で要求しております。大臣も、いよいよ大詰めになってきておりますし、いろいろの立場からなかなか発表できない段階でいろいろなデーターの提示がないわけですが、一生懸命努力していただくことはもちろんであろうと思うけれども、この価格について十分検討して、価格を上位に、また値上げの幅を大きく検討してもらいたい、こう思うわけですが、その点については農家の苦痛にこたえて十分検討されると思うのだが、あらためて大臣の決意を私も聞いておきたい、かように思うのです。
  528. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私の手元にも、ただいまお話しの申し入れあるいは要請書等みなこうやって持っておる次第でございますが、政府の諮問の基礎になる価格算定のあり方につきましては、先ほどから繰り返し申し上げておるところでございまして、たとえば七十四円十七銭に上げろ、こういうことにつきましては、生産費及び所得補償方式をとる、こういうことで計算のたてまえが違っておるのでございまして、そういうことで、私どもとしては従来の方針のもとに、またそのたてまえで十分いまの実情に即しての最終的の結論が得られるもの、こういうことで、計算は計算として財政当局との間で極力折衝いたしますが、最後の結論は結論として、従来も皆さんが御承知のような経緯で決定をしておるのでございまして、そういう意味合いで私としてのでき得る限りの努力を最後までするということを申し上げておるわけで、御了承いただきたいと思います。
  529. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もちろん最後まで努力をしていただくことはもう当然でありますが、大臣はいろいろ資料を見ておられると思いますが、農業団体からこういったことを言ってきておるわけですよ。「四十一年以降、不足払い制度に基づく加工原料乳保証価格は、いちども農民の要求をみたしたことがなく、しかも四十三年以降は、五年間でわずか二円九十六銭、一年につき六十銭の手直しという全くの据置き状態を続け、」また現に三年間で一円九十六銭しか上がっていないわけですね。十分わかっていると思いますが、あらためて言わざるを得ない。「反面、労賃・資材価格は毎年一〇%以上の値上りをきたし、生活費も続騰中であります。こうした政策の結果は一〇%をこえる酪農家戸数の脱落、乳牛資源の枯渇、もしくは一戸当たり数百万円の負債累積となっております。」大きい農家では数千万円という負債をかかえている状況であります。「こうした矢先に、国際的な飼料穀物の需給悪化と価格の暴騰ならびに業者の買占め等により四〇%に及ぶ配合資料価格の大暴騰をもたらそうとし、酪農・畜産農民は三重の苦しみを受けています。酪農家の負債は乳価安の資材高政策に起因し、今次の飼料大暴騰もまた食糧政策の基本である穀物需給を放棄してきた政府責任であります。」こういうことで豚価格の基準も三百六十八円をいわゆる平均価格としてこれに見合うものを決定していただきたい。こういって、乳価、豚価の要求を、先ほどから申し上げたように、しておるわけであります。  そこで、十分これを踏まえた上で私、もう一点お聞きしておきたいのですが、実は午前中にもいろいろ審議官に聞き、政務次官にも答えてもらいましたが、農林省が発行している「昭和四十七年度農業観測修正見通し」というのがあるわけです。もちろんこれは権威のあるものである。四月と十月に出しておるわけですが、この中にもいろいろ書いてあるわけですが、二〇ページのまん中より下のほうにイとして「大豆の価格は、年度当初の見通しでは、強含みに推移するとみたが、北海道での生産が大幅に増加するとみられることなどから、ほぼ横ばいに推移するものとみられる。」そしてまたその横に農業生産資材価格について書いてある。全部読むと時間がかかりますが、要するに、農林省見通しの甘さ、大豆や飼料の価格が横ばいということで十月に立てた見通しがずいぶんと甘いわけです。畜産農家、農協等もこういったものを信用してそしてこれによっていろいろな計画を立てて、多頭飼育等の計画をしておるわけですけれども、こういった状況を見ましても、全然的はずれのことになっている。こういったことも一つは原因して、飼料の値上がりによって酪農農家、畜産農家等は塗炭の苦しみを受けているわけであります。そういったことの積み上げによって乳価、豚価にしても引き上げなければどうにもならぬ、例年にないような今回の状況でございます。そういったことを思いましたときに、これはおそらく政府責任があるわけです。大臣はこういった需給見通しをよく御承知であるかどうか。またこういった見通しの甘さというものに対してどういう反省をしているのか。ほんとうにこういった畜産農家の壊滅的な状況考えたときに、今回の対策費ではいままでにない大幅な値上げに努力し、そして農家にこたえる。そして農業のいわゆる三本の柱といわれる米、畜産、果樹の中で大きな部門を占めておりました畜産部門に大いに力を入れていただく、こういった決意を大臣は述べていただきたい。そうしてあしたの価格決定の答申を受けた暁には、月末までに十分に農家に告示していただく、このようにわれわれは強く要望しお願いしたいわけなんです。そういったことについて大臣から最後に、ひとつ農家が安心するような大幅引き上げについての決意をお聞きしたい、かように思います。
  530. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 農業観測の点につきましては、御指摘のとおりに、情勢が大きく変わっておるということでまことに遺憾に存ずる次第でございます。また今回の乳価にしても豚価にいたしましても、価格決定に際しましては飼料価格の高騰については十分織り込んで配慮する考えでございます。  私は、実は就任直後に、国際的な需給の逼迫ということからこれはいろいろ問題があるぞということで、飼料については国内自給率も引き上げるくふうをいろいろとしていかなければならぬということを繰り返し申し上げてまいっておる次第でございまして、ただいまるると各般の情勢についての御指摘でございました。それらにつきましては、私としても十分考慮に置きまして最後まで努力をいたしたいと思います。
  531. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大臣の十分なる処置を期待しまして、以上で質問を終わります。
  532. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 神田大作君。
  533. 神田大作

    ○神田委員 非常に重要な問題でございますので、私ども大臣には再三お願いしてあるわけでございますが、もうきょうが最後です。この畜産問題について、今度の不足払い並びに肉豚の安定基準価格の引き上げについてあなたに申し上げる機会がもうおそらくないと思います。  私は十五年間農協の組合長として第一線に立って、皆さん日本農業は米作と畜産、これでやっていく以外に方法はないのだと言って、酪農を、養鶏とあわせて養豚を奨励した。ところが、最近になって牛がだんだん減っていく。だんだんふやすのじゃなくて、減っていくのはどんなわけだ。引き合わないから、やれないじゃないか。しかし、金は借りている、借金は払えない。全部やめたくてもやめられないから、やむを得ず乳の出の悪いのを一匹二匹と売りながら打開していくというのが現実なんです。だからして、日本の乳業を現在相当拡大しなければならぬわけなんです。日本におきましてはこれだけの山を持っておるのであるからして、畜産振興でやっていかなければ日本農業というものは成り立たないわけです。ところが、先ほども言ったとおり、ゴルフ場やレジャー用にはどんどんと山林が開放されるけれども、これら酪農のためにあるいは肉豚、養鶏団地として発展しない大きな原因は、価格の問題である。私はそういう意味合いにおいても、きょう、おそらくあすにも決定される肉豚の安定基準価格の引き上げあるいはまた加工原料乳保証価格の引き上げ——鶏卵の基準価格の改定、これは今後機会がありますから私は詳しく申し上げますが、私のところは養鶏団地として何人かの人が先祖からの財産をつぶしながらやっておる。飲乳、原料乳の不足払い制度の確立、これらの問題と畜産安定法の中にブロイラーを指定食肉として入れるべきである、こういう問題、この畜産一般行政に対して、今日ほど私は日本の農政が危機に立っておるときはないと考えます。数字的に言うと時間がありませんから、私は先ほど申し上げましたので申し上げませんが、これらに対して普通の考えで、いままでのような価格決定の方式で、官僚と言っちゃうと申しわけないが、俗に官僚さんの出す資料をもとにして農林大臣がやすやすとそういう決定をされるならば、これは日本の畜産農業の崩壊はもう火を見るよりも明らかです。これは重大な段階に来ておるということをぜひ賢明な櫻内農林大臣は察知して、思い切った値上げをすることによってこれを守ってもらいたいということをまずお尋ね申し上げます。
  534. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 もうたいへん恐縮でございます。お頼み申し上げますと言われるとたいへん痛み入る次第でございまするが、お話しのとおりに、価格という問題が生産意欲に密接な関係があるということはもう言うまでもないことでございまするし、過去の経緯を考えましていろいろと御批判の出ておることも十分承知をしております。したがいまして、この段階におきましては、明日が加工原料乳の保証価格の諮問をする日でございまするので、この点についてはわれわれとしてあとう限りの努力をいたし、畜産農家のお考えに多少でも沿い得るように万全を尽くしたい、こう考えております。
  535. 神田大作

    ○神田委員 私は、党人閣僚としてその真価を発揮する重大な時期に大臣は来ておると思うのです。これは数字で——私は差しさわりがあるといけないかもしれませんけれども、そういう方にこういうことを望めない。しかし、少なくとも大臣が大衆とともに生きてきて大衆の政治をやっている以上は、現在の日本農業の危機はもう百も承知のわけであります。それを一足す一は二というようなそういうようなことをせずに、思い切った日本農業振興させる基礎をこの際つくってもらいたい。そのためにはえさの問題等もあります。えさの問題、先ほども委員会で可決になりましたこの問題、それと同時に、私たちは今後飼料の需給に対して、いままでのような外国に依存することをいつまでも続けておって、外国が不作であれば各国におじぎをしながら、どうかえさをください、あちらの国へえさをくださいといったような、こういう農業をやるべきではない。これはたとえ日本の財政を投げ出しても、自給飼料の確保のためには、決断を下して、休耕地等を余して草だらけにしておるようなものにもっとちゃんとした、えさをつくってもさしつかえないような奨励金を出して自給飼料をはからなければ、日本はもう米以外は外国から全部もらうんだからいいんだという考えを持ったならば、これは百年の計を誤る重大な時代がくると思うのであります。そういう点についてもひとつ大臣の決断をお願いいたしたいと思います。
  536. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 現在飼料の需要は非常に大きな量になるのでございまして、私としてでき得る限りその自給率を高めるということについては何ら異存はございません。ただ、従来の経緯を考えますときに、濃厚飼料の原料につきましては、アメリカを中心としての安定的な供給を得ておったわけであります。そのことは言いかえますならば、国内産よりも非常に安く海外からの供給を得ておった。これが昨年のああいう気候異変のことからソ連、中国の大量買い付けによって、輸送の面であるとか、その他一時的なアメリカの気象状況が悪いというような影響を受けて、それが大きく日本飼料に影響を与えたという次第でございますが、自給率をどんどん高めながらも、なおかつ現在開放経済下にあるのでございますから、ある程度の海外からの供給というものも考えの中に入れておってもいいんではないか、こう考えるのでございます。しかし、基本的にはまず国内においての供給を得る、御趣旨の線に沿って十分な努力をして、その足らざるところをいま申し上げたようなことで、相当価格も安く安定的な供給を得られるとするならば、そのことも決して酪農家にとって悪いことではないのでございますから、あまりこれは画一的に考えずに、原則は国内自給率をでき得る限り高めていこう、こういう考えに立っております。
  537. 神田大作

    ○神田委員 最後に、私、大臣に申し上げますが、いままでの審議会、ずいぶん審議会というものもたくさんあります。畜産振興審議会等もあります。しかし、この審議会が、先ほども申した人がありますが、いわば政府の言いのがれの隠れみのになるおそれがある。これら審議会にかこつけて政府責任のがれをするようなことがあったならば、これはゆゆしい問題であります。  そういう意味合いにおいて、審議会の答申に対してもき然たる態度をもって農林大臣日本の畜産農業を守るための決断を下されることを私は強く要求いたし、答弁を願って、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  538. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私どもは法的に設置されておる審議会のことでございまするので、その答申は、これを尊重してまいる考えでございまするが、尊重をして、さらにいろいろな最終的な配慮、判断というものは、これは私ども責任において行ない得られるところでございまして、そういう点で、ただいませっかくの御意見をちょうだいしておりまするので、それらのこともわれわれとしては頭に置きまして、畜産農家酪農農家皆さんの御期待に沿うように、最後まで努力をいたすことを重ねて申し上げて、お答えといたしたいと思います。
  539. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 次回は明二十九日、木曜日、午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後八時五十一分散会