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1973-06-29 第71回国会 衆議院 内閣委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十九日(金曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 三原 朝雄君    理事 奥田 敬和君 理事 加藤 陽三君    理事 笠岡  喬君 理事 中山 正暉君    理事 藤尾 正行君 理事 大出  俊君    理事 木原  実君 理事 中路 雅弘君       伊能繁次郎君    江藤 隆美君       越智 伊平君    大石 千八君       近藤 鉄雄君    竹中 修一君       丹羽喬四郎君    旗野 進一君       三塚  博君    吉永 治市君       上原 康助君    和田 貞夫君       木下 元二君    鈴切 康雄君       受田 新吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君  出席政府委員         法務大臣官房会         計課長     住吉 君彦君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省矯正局長 長島  敦君         法務省保護局長 高瀬 禮二君         法務省入国管理         局長      吉岡  章君         運輸省航空局長 内村 信行君         運輸省航空局技         術部長     金井  洋君  委員外出席者         警察庁刑事局参         事官      小林  朴君         法務省刑事局総         務課長     筧  榮一君         法務省刑事局刑         事課長     根岸 重治君         法務省刑事局青         少年課長    村上 尚文君         法務省刑事局公         安課長     俵谷 利幸君         外務省アメリカ         局外務参事官  角谷  清君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 六月二十九日  辞任         補欠選任   佐藤 守良君     三塚  博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  航空事故調査委員会設置法案内閣提出第一一  号)  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二四号)      ————◇—————
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  航空事故調査委員会設置法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  3. 木原実

    木原委員 この航空事故調査委員会設置法につきましては、昨年ほぼ原案に近いものが提案をされまして、私どもとしましても、ほとんど逐条的にその際に御意見を申し上げたという経緯がございます。そのあと質疑の中で出ました問題等につきましてそれぞれ話し合いを進めてきた、こういう経緯もございます。したがいまして、きょうは新しく出てまいりました原案につきまして、幾つか問題点について私のほうから御質問申し上げまして、大臣のほうの御見解を賜わりたい、こういうことで進めてまいりたいと思います。  ただ、初めに申し上げておきたいわけでございますけれども、私どもとしましても、かねてから、たいへん航空事故、しかも大きな航空事故が多発をする、こういう傾向。それからいま一つは、それらの事故調査あたりまして、一言でいえばたいへん時間もかかる、あるいはまた調査結果についてやはりとかくの問題が残されるやにも見られる、こんなようなことから、やはりきちんとした事故調査の体制をつくって、しかも調査が次の事故防止に当然つながっていく、こういう機能の高い、しかもいろんな事情にとらわれない、独立性の強い事故調査委員会をつくるべきだ、こういう考え方を持っていたわけでございます。そういう観点からいたしますと、率直に申しまして、この制度また不十分、全体的にそういう考え方も持っておるわけであります。しかし、そうかといいまして、一挙に大きな制度ができるわけのものではない。したがいまして、これらの制度に必要な私どもの御意見を申し上げましてベター制度を発足させたい、こういう考え方でおるわけでございます。  しかも、航空事故調査仕事、作業の内容というものを考えますと、何と申しましても、技術的に、もしくは科学的に、たいへん精密な、高度なたとえば航空機、そういうものが事故を起こすわけでありますから、それに対して事故原因なり何なりというものを探査していくということは、これまたたいへんに高い水準の学術的もしくは技術的な能力を要請をされる。いろんな面から見まして、むずかしい問題があるわけであります。  ただ、その中で特に強調をして御意見を賜わりたいのですが、この制度独立性運輸省の中に航空事故調査委員会というのをつくる、しかしながら、事故の態様によってはやはり行政の姿勢が問われる場合だってあり得る、あるいは行政上のミス、こういうものも問われることがあるわけであります。そうなりますと、場合によれば運輸大臣責任が問われるという場合に、運輸大臣指揮監督下にある委員会が、はたして国民の納得できる調査ができるだろうか、意見具申ができるだろうか、こういう問題も考えられるわけでございます。したがいまして、運輸省の中につくるわけでありますけれども、公正な、科学的な水準の高い、第三者の納得のいく結論を出して、やはり果敢に、是は是、非は非として対応できるようなそういう独立性をこの委員会運用の面においても与えていかなければならない、こんなふうに私どもは考えるわけでございます。  長くなりましたけれども、この委員会のこれからの運用にあたって独立性強調をしたいと私どもは考えるわけですけれども、その辺につきましての大臣の御見解をいただきたいと思います。
  4. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 非常にごもっともな御意見だと思いますが、この航空事故調査委員会は、各国にも例がございますように、航空事故原因を究明するための調査を行なう機関でございまして、こういう機関がない場合には、当然運輸大臣として責任をもってその内容調査しなければならぬ義務があるわけでございます。独立機関、たとえば公取委員会とかその他の、若干のそういう委員会性格ももちろん考えなければなりませんけれども、これはやはり一つ行政機構の中で行なう機関でございますから、私はこれで差しつかえはないのではないかと思っております。  しかもこの内容でございますけれども運輸大臣が、その事故調査やり方とか内容につきまして指図をするわけではございませんで、これはこの法律に書いてあるところに従いまして、厳正公平に独自の見解をもって事故原因探求をするわけでございまして、こういうものでございますから、裁判所のような性格とだいぶ違うと思います。やはり行政機関の一種、しかも運輸大臣が本来やるべき事故調査のある部分を、特別の組織をこしらえて——いまお話になりましたように、そのときになって一々こういう事故調査委員会をつくるのではもうおそい。ふだんからしょっちゅうそういったものを見ておりまして、事故が起こった場合には、適時なるべく早く結論を出すような、そういう組織にしてもらいたい。また、できればふだんから、事故の発生を防止いたすためのいろいろな意見が出てまいるでありましょうから、そういったものについては運輸大臣に勧告もしてもらいたいし、意見も出してもらいたい、そういうような運用にしていくのが理想的ではないかと考えまして、お話の点はよくわかるのですが、そういう運用を絶対にしない、独自の考えで事故原因探求する、こういう性格法律の面でも強くあらわしていただいて、そこでこの機関運輸省のやはり付属機関として認めていただきたい、こういう趣旨でございます。
  5. 木原実

    木原委員 大臣のおっしゃることも、ひとつこの制度の限界として理解はできるわけなんですが、ただ私ども、最初にこのことについて御確認をいただきたいということは、制度論としましてはいろいろあるわけなんです。特に私どもの党の中には——たとえば諸外国の例などを見ますと、アメリカにも同様の委員会がある。しかし、機構的にも独立権限の上からいっても、たいへん大規模で、かなり権限の強い形のものにしてあるわけですね。そのようなことをあれこれ考え合わせますと、どうもやはり私どもとしては、運輸省の中に置くのが適当なのかどうか、実はこういう議論前提がございまして、たとえば運輸省の中に置くにしましても、海難審判のような制度もある、あるいは裁判所とつながっていくような側面も必要じゃないかと、いろいろ入り口の制度論として議論があったわけなんです。しかし、ある程度この問題についての整理をして、一応私どもはこの制度ベターなものにしてやっていきたいという前提があるわけです。ただ、それにしましても、これからこの制度運用されていく過程の中で、変なことばですけれども、あるときには運輸大臣指揮権発動をやって都合の悪いことを消したんじゃないかという疑惑がかりに持たれるようなことになれば、制度は死んでしまうわけですから、しかも、国が負うべき責任によって事故が起こるという可能性は絶えずあるわけですね。たとえば飛行場の整備が悪かったとか、あるいはレーダーのなにがあったとかいいますと、当然国の責任が問われる。  こういうようなことを考え合わせますと、この法律ことばの中にある、たとえば「公正な」とか「適確に」とかやや形容詞のことばがあるわけですが、これを制度として貫徹していくためには、同じ運輸大臣指揮監督下にあるわけですけれども、しかし、制度運用にあたっては、相対的な独立性、公正な——それは国に対しても公正な原因探求ができるように、そういう運用上の配慮といいますか、そういうものが非常に大事になってくるんじゃないかと思うのです。これが運輸省の一部局だ、こういうことでまいりますと、どうしてもその辺が鈍ってまいりまして、この制度が死んでしまう、こういう懸念があるものですから、ここに問題を提起しておるわけですが、先ほど御答弁いただきましたことは、それはそれでよろしいのですけれども、これからの制度運用にあたっては、相対的な独立性をきちんと保障していくといいますか、そういう御見解をいただきたい、こんなふうに考えるわけです。
  6. 内村信行

    内村(信)政府委員 大体さっき大臣が申し上げたことに尽きておると思いますが、私から若干事務的な補足説明をさしていただきます。  私も、木原先生がおっしゃるように、こういう事故調査機関というものが独立してしかも恒久的に設置される、それで公正にやっていくということは全く賛成でございます。  実は、現状を申しますと、事故調査というものは、航空局の中に事故調査課というものがございまして、そこでやっております。大きな事故がございますと、特別に臨時に事故調査団を編成してお願いしておりますけれども行政機構の状態としては航空局の中でやっておるというのが実情でございます。これはほかの国の例を見ましても、アメリカあたりでは運輸省の中に外局的なものとしてNTSBというものがございますが、これは運輸省の中に入っております。それからほかの大部分外国の場合には、運輸省の中に、しかも航空局の中に事故調査課というものが設置されて事故調査をやっているというのが実情でございます。しかし、私どもといたしましては、先生御指摘のように、航空保安業務をやっております。管制もやっております。飛行場管理もやっております。そういったことからして、何か事故があった場合に、私自身が事故原因関係者となる場合があり得るというふうに考えております。その意味におきまして、特に私どもといたしましては、何か我田引水になるような結論を出さないようにということは注意して厳正にやっているつもりでございます。でございますけれども、やはり外から見ると必ずしもそういう目では見られない、また、機構なり制度としてはこれが必ずしもいいものではないというふうなことで、制度としては少なくとも航空局から切り離すべきであろうということで、航空局から切り離しまして、運輸大臣のもとに直属の付属機関として設けたということでございます。  そこで、さらに一歩進めますと、むしろ総理府あたりに持っていったほうがいいのではないか、あるいは単なる付属機関ではなくて外局の形にしたほうがいいのではないか、そういう御議論もあるようでございますけれども、いろいろ議論と現実とを兼ね合わせて考えてまいりますと、やはりこの際運輸省の中に置くのが妥当であろう。  それから外局はどうかという問題でございますが、これにつきましては、先ほど大臣から申し上げましたように、これは一つの事実を探求する、事実を見きわめるということが使命でございまして、行政処分とか、あるいは司法処分とか、そういったような処分をいたすわけではございません。したがいまして、いわゆる三条機関ではなくて八条機関として設けたわけでございます。  そういった意味から、ほかの立法例等から見ましてそういう形をとったわけでございますが、運用につきましては、先生の御趣旨まことにごもっともでございまして、運輸大臣人事権任命権はございますが、これは両院の同意を得るということになって公正な形で任命されてまいります。任命されるからには、事故調査内容については一切あげておまかせする、運輸大臣は一切口を差しはさまぬというようなたてまえで運用してまいりたい、こう思っております。
  7. 木原実

    木原委員 これは、大臣、適切に運用、またそれを保障するための措置法律の上でも明らかにしておいてもらいたいと思うのです。  冒頭に大臣から御答弁いただきましたけれども、実は航空全般について国もしくは行政が関与する分野は非常に多いわけでございます。あとで私は空域の問題を少しお尋ねしたいと思っておりますが、たとえば空域の設定によって避けられるべき事故が起こるということが結果的に出てくる場合だってある。飛行場の設備、運航、あるいは膨大な航空法の規則というものがございまして、それに準拠して運航していて、なおかつ事故が起こるというような場合だって往々にしてあるわけですね。そうなりますと、同じ運輸大臣が認可を与えた、それにのっとってやっていて事故が起こった、そうなりますと、行政上の責任なり何なりというものが触れてくるものがあるわけですね。ですから、国民の側といいますか、第三者から見ると、被告の立場にある者が同時にまたその調査をやっていくということになると、内部でなれ合いになってしまうのではないかという懸念というものは絶えずあるわけです。しかも事故ということになりますと、不特定多数の方々に非常な犠牲と迷惑をかけるのは明らかでありますから、やはり国民の前に、公正な運用が行なわれている、こういう姿を運用の中でとっていくということがこの制度の死活にかかわる問題だ、こういうふうに考えるわけです。  そこで、これは前回もいろいろこれらの点について御議論申し上げたわけですが、私どもとしましては、いま大臣なり航空局長の御答弁を参酌をしながら、できましたらこの法律の中に一項目起こしまして、少なくとも任命される委員長以下の人たちが独立して職権を行使できるというような意味の修正なり何なりを私どもとしてはしたいという考え方があるわけですが、いかがでしょうか。
  8. 内村信行

    内村(信)政府委員 私ども原案提出者立場でございますから、いま申し上げたように、独立性というものは確かに必要である。いやしくも事故調査内容については運輸大臣航空局、もちろん運輸省側としては一切口を差しはさむべきでないということは完全に正しいと思っております。しかし、原案提出者といたしましては、その点は運用上でしかるべくできるだろうというふうに考えておるわけでございます。御趣旨は私は全然反対ではございません。その点につきましては、議員の皆さま方においてしかるべき御意向をお持ちでございますれば、その国会の御意見に従うのは当然であろう、こういうふうに考えます。
  9. 木原実

    木原委員 これはこの法案原案でまいりますと、委員組織のところあたりに当たるかと思いますが、第五条、委員長及び委員任命につきましては「両議院同意を得て」、こういうことになりまして、当然国会責任を分担をするという形になるのですが、ただいまの問題と関連をいたしまして、構成員欠格条項といいますか、罷免の問題については、たとえば任命をされました委員長及び委員人たちは、適格条件を満たしていて任命をするわけですけれども、その経過の中で問題が起こったとき、たとえば罷免権みたいなものはどういうことになるのでしょうか。
  10. 内村信行

    内村(信)政府委員 第五条に書いてございますように、委員長及び委員任命は「両議院同意を得て、運輸大臣任命する」。それからあと罷免の場合でございますけれども、これは七条にございます。「委員長又委員が第五条第四項各号の一に該当するに至ったときは、これらを罷免しなければならない」とございます。「第五条第四項各号」というのは、禁治産者であるとか、あるいは禁錮以上の刑に処せられた者とか、あるいは航空運送事業者その他関係を持っている役員、それから従業員、こういうものでございます。これは法定のいわゆる欠格事項でございますから、こういう場合には法律罷免しなければならないということは当然だろうと思います。そのほかに「運輸大臣は、委員長若しくは委員心身故障のため職務の執行ができないと認めるとき」、あるいは「職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない行為があると認めるときは、両議院同意を得て、これらを罷免することができる」、こうなっております。この際は法律で当然罷免すると  いうわけじゃなくて、その状況いかんによって、裁量によりまして大臣罷免をすることができる、ただし、その場合に両議院同意を得なければならないというふうなことが法文に書いてあるわけでございます。
  11. 木原実

    木原委員 実はこの問題は、委員長以下の委員独立性をできるだけ付与せよ、こういう意見を申し上げまして、相対的な独立性をできるだけ保持して運用させたいという御答弁があったわけですが、その裏側の問題といたしまして、将来の運用にかかわる問題になるものですから御見解をいただいておきたいと思うのですが、たとえばここに、罷免しなければならない、そのためにはこういう条項を欠いたとき、こういうことがあるのですが、実際問題としまして、これらの中で、罷免に値する、このようにはっきり法律条項に触れてくる場合はきわめて明確なんですが、触れるすれすれのところの問題があるわけですね。たとえば心神喪失というとおかしいのですが、そういうような場合はなかなか判断がむずかしい。あるいは行跡その他についてもいろいろな問題が起こった、そういうような場合に、これは当然大臣判断をして罷免するかどうかというふうなことになるわけなんですが、この判断というのは実際にはむずかしい側面が出てくると思うのです。ですから、たとえば国会罷免に値する、こう判断しても、そのときに大臣罷免しなかったというふうなことが起こり得るわけなんですね。ですから、罷免しなかったときには一体どうなるんだ、こういう問題が起こり得ると思いますので、つまり一方で独立して仕事をやってもらう、こういうことですから、他面ではまた、委員人たちに対してもきびしい措置というものが伴わなければならないと思うのです。独立して職権を行なわせるということになりますと、裏側の問題としては、その責任というものはきびしく追及されなければならないということが同じウエートであると思うのです。したがいまして、お尋ねをしておるわけですが、実際問題としてはなかなかことばに出しにくい問題があろうかと思いますけれども罷免措置、それから罷免をしなければならないというような問題、法律上の明文はこういうことになるわけですが、運用過程の中でそのきびしさをきちんとしていく、こういうことについての考え方、用意を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  12. 内村信行

    内村(信)政府委員 おそらく木原先生のおっしゃった御趣旨は、第七条の罷免の中で、第一項のほうは、これは法律上当然であるから問題はない。第二項の場合にはいわゆる運輸大臣自由裁量行為になる。特に心身故障とか職務上の義務違反、これはある程度明白になってまいりましょうけれども、「その他委員長若しくは委員たるに適しない行為があると認めるときは」、これは相当大幅な自由裁量じゃないか、その場合に大臣の恣意によって罷免されるというふうなことがあってはいけないだろう、こういうことが御趣旨だろうかと存じます。  私どもは、運用といたしましては、やはり委員会というものを中心として委員会が独立して動いていく、こういうことを想定いたしておりますので、委員会の中のどなたかの委員がほんとうにその職務に適しないというふうな判断をした場合には、事実行為として、運用上の問題といたしましては、その委員会、もちろんその当該委員を除く方々でございますけれども、そういった委員長なりほかの委員方々の御意見を承って、皆さんがそれはもう罷免すべきであろうというふうなことが客観的に言える場合に罷免措置をとる。めったにこういう罷免措置はないと思いますけれども、そういうふうな場合がかりにあるとすれば、こういうような運用をいたさなければならぬ、こういうふうに思います。
  13. 木原実

    木原委員 これは繰り返すようですけれども、他方で独立性を与えて、そして責任のある仕事をしてもらうわけですから、他の面では当然責任の重さというものを追及する側面というものがあってしかるべきだと思います。その中にまたあいまいさが残りますと、独立性そのものが保持できない、こういう関係になっておりますから、これは局長おっしゃいますように、これから運用の中で、少なくとも裁量の幅のあるところについてはきびしい措置で臨む、こういう態度を明らかにしておいてもらいたいと思います。それでよろしゅうございますね。  それから、問題があれこれいたしますけれども、第三条の中の「航空事故」、これは航空法規定をされておる事故、こういうことになっているのですが、この事故規定はただ航空法規定だけによるわけですか。
  14. 内村信行

    内村(信)政府委員 そのとおりでございます。
  15. 木原実

    木原委員 ICAOの中に事故調査の方式その他詳細なものがございますね。これは当然準用されるわけですか。
  16. 内村信行

    内村(信)政府委員 いまの航空法によりますと、事故調査対象となる事項は、「航空機の墜落、衝突又は火災 航空機による人の死傷又は物件の損壊航空機内にある者の死亡又は行方不明その他運輸省令で定める航空機に関する事故」こうなっております。運輸省令の中では、たとえば転覆倒立、横倒し、翼端接地胴体着陸、あるいは爆発、発動機、プロペラの脱落、こういうふうなことが書いてあります。書いてありますが、大体ICAOの基準において考えてまいりたい、こういうふうに思っております。
  17. 木原実

    木原委員 明白な事故という場合には、これはだれが見ましてもすぐ調査対象にするわけですが、大小の小のほうですね。おそらく委員会調査対象にするかしないかは決定するということになるわけですが、調査対象にする事故だと判断するのは、調査委員会通報があって、そしてそこで、調査対象にしようとか、あるいはこれは調査対象にしなくても別の分野措置ができる、こういう判断は結局委員会の中に権限があるわけですね。
  18. 内村信行

    内村(信)政府委員 航空事故が起こった場合には運輸大臣から委員会通報するとなっておりますけれども、従来は運輸大臣がその通報を受けておるわけでございまして、これはICAOに従ってやっております。したがって、今回の航空事故調査やり方は、全部当然のこととしてICAOの準則にのっとってやるということを考えております。
  19. 木原実

    木原委員 次の問題に移りますけれども、第九条の委員会の服務の項目、「委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職務を退いた後も、同様とする」、以下三項にわたって規定があるわけですね。特に秘密にかかわる問題なんですが、これは国家公務員法の規定をここに準用をした、そういう経過ですか。
  20. 内村信行

    内村(信)政府委員 さようでございます。国家公務員法には秘密保持の義務がございますが、今回の委員の場合には特別職の方でございますから、直ちに国家公務員法の適用はございません。したがって、そういった意味でここに秘密保持義務をあげたというのが趣旨でございます。
  21. 木原実

    木原委員 予想されます委員長以下委員人たちの構成を考えてみますと、たとえば大学の先生委員にお願いをする。任期を一期やられてまた大学にお戻りになった、そうなりますと、在任中にいろいろな事故を手がけられて非常に貴重なデータも得られた、退任をなさって大学に戻ったあと、それをデータにして研究を広げられて何か発表する、こういうようなことがあり得るわけだし、またいろいろな水準をアップするために、そういうことがあってもいいと私どもは思うのです。ただそのときに、この秘密条項にかかわって、そういうことまで拘束をされてしまうということになりますと、ある意味ではせっかくこの委員会で得たものがそのままお蔵になってしまう、こういうことが考えられるわけなんです。したがって、ここで「秘密」ということ、たとえば調査にあたって基本的な人権に関すること、かかわりのあったさまざまの人の人権プライバシーに関すること、こういうようなことを漏らさないということは、ある意味では前提でございますけれども、しかしながら、調査にあたってさまざまの物理的な諸関係、これまた企業秘密その他の問題もあるんでしょうけれども、それらについては、これをきびしく適用するということはいかがなものであろうか、こういう感じがするわけですが、その辺はどうでしょう。
  22. 内村信行

    内村(信)政府委員 大体、この秘密保持の義務を置いたということは、先ほど申し上げたように、国家公務員法上から持ってきたということもございますが、むしろ事故調査の本来の考え方といたしまして、事故調査というものはあくまでも真実を探求しなければならぬということでございます。したがいまして、そのためには、たとえその関係者はいかなる方がおられましても、あるいはその関係者にとっては秘密のことであっても、真実を言ってもらいたい、そのかわり、秘密を知っても委員の側としては秘密を絶対に漏らしません、そういうことによって初めて真実が発見できる、これが大きな趣旨でございます。それによりまして初めて、いわゆる関係者を保護し、それによって協力を得てはんとうの真実の探求ができるというふうなことを考えての趣旨でございます。したがいまして、これに申しておるいわゆる職務上知り得た秘密と申しますのは、必ずしも公の秘密のみならず、個人的な秘密あるいはプライバシーというふうなものがございまして、当然これは秘密を守らなければならぬ、こういうふうに思います。  ただ問題は企業秘密でございますが、確かに企業の経理とか内容とか、こういったようなものは企業秘密でございまして、これは外に漏らすべきではないと思います。しかし、直接事故に関連いたしまして、たとえば、今回の事故の場合にはエンジンがこうであったとか、あるいはそのほかの足回りがどうであったとか、こういうふうなことが調査の結果出た場合には、これを企業秘密として保護するという意味は毛頭ございません。これはむしろはっきりといたしまして、調査の途中からでもそういう事実が明らかになれば、刻々と関係者に知らせまして直していく、こういうふうな性質のものでございまして、こういったものは秘密とは考えておりません。少なくとも事故調査関係すること、事故原因関係すること、これは秘密として漏らしてはならぬというふうに私どもは考えていないわけでございます。  それからもう一つ先生おっしゃいましたように、仕事に従事している間はともかく、その後やめてからいろいろな論文などを書く場合もあるでしょう、そういうようなことでございますが、その場合もやはり、秘密に対する考え方はいま私が申し上げたところでございます。特にその場合には、これは何々会社がこうであるとかいうような表現をしなくても、こういうある一つの例の場合にはこうである、こういう例もございますというような表現もあると思います。こういった点は、やはり個々の委員方々の良識の判断にまかせたいというようなことにいたしまして、秘密保持義務というものはそういうふうな解釈でまいりますが、秘密保持義務そのものは置くべきであろうというふうに私は考えております。
  23. 木原実

    木原委員 これまた委員の活動にまたがる面が、局長おっしゃるように非常に多いと思うのです。常識的に考えてみまして、おっしゃったように、この委員会は秘密を守ってくれるから、たとえば自分のプライバシーにかかわることも、あるいは企業にかかわることもここでは全部出す、したがってそういう側面について、厳重にこの委員会もしくはこの委員人たちあとまで秘密を守っていくということは、この委員会の機能を保持するために非常に大事なことだと思うのです。しかしながら同時に、そういう活動を通じて知り得たことによって、事故の真実を探求すると同時に、それを土台にして今度は再び事故が起こらないような予防措置に発展をさせていく仕事があるわけですね。したがって、事故の真実を追求をしていって次の改善のために資するんだ、そういう側面にわたる部分はたぶんに技術的なことだと思うのです。それは企業内容一あの航空会社は事故が起こるのはあたりまえだ、あの経営形態は直さなければならないというような問題は出てくるでしょう。しかし、それよりも一番大事なことは、航空機そのもの、あるいは航空施設そのもの、そういったものについての欠陥が出てくるというような場合は、これはプライバシーや基本的人権にかかわる側面ではないわけですから、できるだけ国民の前にも知らされて、ある意味では当然のことですから、次の改善に資するためのものについては、秘密ということで委員の活動を狭めないような配慮が必要じゃなかろうかという、そういう区分けのところをある程度明らかにしておいてもらいたいと思うのですが、どうですか。
  24. 内村信行

    内村(信)政府委員 大体、この法律におきましても、事故調査の結果というものは経緯及び理由、そういうものをつけて公表するということになっております。その趣旨からいたしましても、いま先生のおっしゃったような、将来これが事故防止に役立つだろうというふうな技術的な問題、そういったものはいわゆる秘密に属さないというふうに私は考えます。むしろ、プライバシーとか、基本的人権の問題とか、そういうことを漏らすことによってその当該個人が非常に迷惑をする、いわゆる進歩発展というようなことに関連なしに非常に迷惑をこうむるというようなことについては、直実の探求のためには厳重に秘密を守らなければならぬ、これが趣旨であろうと思います。
  25. 木原実

    木原委員 これはついでに聞いておきますけれども調査過程の中で、権限にかかわる側面の問題ですけれども、たまたま企業秘密という問題が出たのですが、企業秘密というものについての統一的な見解というのは政府側にあるんでしょうか。これは通産省の分野だと思うのですが、この委員会としては、企業秘密を乗り越えて探求していく権限が少なくともあると思うのですが、その辺はどうでしょうか。企業秘密というのはずいぶん使われるのですけれども、政府側に何か統一見解のようなものがあるのですか。
  26. 内村信行

    内村(信)政府委員 私、たいへん申しわけないわけでございますが、企業秘密についてどういうものであるか、統一見解は存じておりません。たいへんその点は申しわけないと思います。
  27. 木原実

    木原委員 ただ私どもとしては、ほかの分野のところで通産省の人たちといろいろな議論をした経過もございます。たとえばコンビナートで石油会社の爆発があった、企業秘密はない。たしか中曽根通産大臣だったと思うのですが、そういう答弁が別の機会にあったのです。行ってみますと、やはりパテントの関係で非常に企業としては秘密にするという契約を当事者同士で結んでいる、しかしながら事故が起こってそのときに、たとえば消防とか通産省の調査とか、これは立ち入って検査をやって、その間には企業秘密はございません、われわれの行政上の活動を制約するものはございません、ただそれを公表するということは道義的に行なわないというような意味の話が別の場所であったのを承知いたしておるわけですが、そういう事柄が正しいとすれば、少なくとも事故調査委員会調査する場合には、企業秘密という壁によってはばまれるということはないと考えてよろしいですね。
  28. 内村信行

    内村(信)政府委員 私も、事故調査委員会としては当然その壁は破って真実探究できる、ただしそれを外部に漏らすかどうかということは別問題であり、これが委員会の秘密事項ではない、こういうふうに考えるわけであります。
  29. 木原実

    木原委員 いろいろと複雑な機能を持っておるたとえば航空機等については、それぞれの企業によって守っているところがあると思います。ただ、社会的に事故という形で一つの制約を与えている、あるいは改善の措置を公の場で講じていかなければならないといったような場合には、企業秘密というのは主として考えられないで従として考えられていく、こういう解釈でおきたいと思うのですが、これはいいですね。
  30. 内村信行

    内村(信)政府委員 私は当然そうだと思います。
  31. 木原実

    木原委員 それから、少し逐次的になりましてあれですが、これは第十一条ですか、非常勤で専門委員を置く、こういうことになっているのですが、いままでの事故調査の方式を見ておりますと、たとえば大学の先生事故調査をお願いをする。そうしますと大学の先生方が、御自分の教室なり、ある意味じゃかなり広いスタッフをもって参加をされる、こういうケースがあったと思うのですね。しかし今度はこういう制度になるわけですから、それが期待をされない。こういうことになりますと、専門委員を少なくとも学識経験者の中から選んでお願いをする、こういうことになるのですか。これは非常勤で委嘱をするということになるのですか。委嘱をするのはどこが委嘱をするのですか。たとえば運輸大臣がお願いをするのか、それとも委員会がお願いをするのか。あるいは委員会で選考をして運輸大臣がお願いをする、こういうことになるのですか。任命の手続、その辺はどうでしょう。
  32. 内村信行

    内村(信)政府委員 専門委員任命につきましては、この専門委員は一般職の国家公務員でございますから、その任命手続は、国家公務員法によりまして運輸大臣任命するということに相なるかと思います。
  33. 木原実

    木原委員 その際は委員会でお願いをする、たとえば人選といいますか、そういうことをやるということになりますか。原案ではそうじゃないのですね。
  34. 内村信行

    内村(信)政府委員 確かに私ども原案では、いま申し上げたようなことから運輸大臣任命ということになっておりますが、実態から申しますと、これは当然事故調査委員会の手足となっていろいろ働いていただく、委員会の足らざるところを補っていきたいというようなことがございますから、運用上といたしましては、当然、こういう人がいいでしょう、こういう人がいいでしょうという委員会意見を具体的に承って任命いたすべきであろうというふうに考えております。
  35. 木原実

    木原委員 専門委員は何人ぐらいお考えになっていらっしゃいますか。
  36. 内村信行

    内村(信)政府委員 予算上は七名を想定しております。
  37. 木原実

    木原委員 七名が適当かどうかという判断が私にはできないわけなんです。ただ考えられますことは、専門委員ですから、たとえばエンジンの専門家もいらっしゃるでしょうし、あるいはパイロットの経験のある人とか、いろいろな分野が必要になってくると思うのですね。その場合に、職能的な代表、たとえばパイロットの代表というようなものは想定をされますか。
  38. 内村信行

    内村(信)政府委員 私はおそらくそのときのケース・バイ・ケースによると思います。と申しますのは、委員全体が委員長を含めて五名でございますか、そのうち常勤の方が三名でございます。これは去年の予算のときには二名でありましたが、先生方いろいろ強い御協力を賜わりまして、おかげさまで常勤を一名ふやすことができました。そのほかに事務局がございまして、この事務局は事務局長以下十九人かと思います。そのうちで事故調査官というのが、首席事故調査官を含めまして十名。これも去年の予算では九名が、一名ふえまして十名にしておると思います。したがいまして、委員会といたしましては、非常勤の委員の方、それから事務局長以下のスタッフ、こういった者が常におられて仕事をしていただくわけでございますが、何か大きな事故があった場合には、非常勤の委員方々をお願いする、あるいは専門委員をお願いするということでございます。したがいまして、いわば専門委員方々は、いわゆる委員とか、あるいは事務局内のスタッフ、そういったもので足らざるところを補っていただくということになると思います。したがいまして、その事故の態様なり何なりによって、ケース・バイ・ケースによって、委員方々と御相談いたしまして、こういう人がいい、こういう人がいいというふうなことになりますので、ある場合にはパイロットが入る場合もありましょうし、あるいは整備員が入る場合もありましょう。ある場合は心理学系統の方が入る場合もありましょうし、これはそのつどさまざまなケースで具体的に考えてまいりたいと思います。
  39. 木原実

    木原委員 そうしますと、専門委員任命というのはそのつどということですか、たとえば、あらかじめ一年なら一年非常勤でお願いするというかっこうではなくて。どうでしょうか。
  40. 内村信行

    内村(信)政府委員 私どもはそのつどと考えております。ただ、大体あらかじめ委員方々と御相談いたしまして、候補者名簿的なものをつくっておきまして、あわせてそのつど必要な際にお願いいたしたい、こういうふうに考えております。
  41. 木原実

    木原委員 そうすると、いわば常置的なメンバーがいるわけではない、非常勤というよりも。たとえばほかの審議会の委員をお願いするという形式じゃなくて、この事故はかなりたいへんだ、これならば専門的な知識を集約しなくちゃならない、そのときになって、それではこれは心理学の先生が必要だといった場合に心理学の先生にお願いする、こういう形ですね。
  42. 内村信行

    内村(信)政府委員 そのように考えております。
  43. 木原実

    木原委員 まあ、そういうものがいいかどうか、たいへん機動的にはなると思います。何人かのリストを持っていて、その事故の姿に応じてお願いをしていく、こういうことですね。  ただその場合に、これはちょっとさかのぼりますけれども、五名の委員先生方、これは考え方がいろいろあると思うのですが、いわばやや専門的な航空関係方々、しかし、ときによれば全然しろうとの方でも、いわゆる公正な判断のできるような方々でも、私どもはいいのではないかと思う。それは長年、たとえば航空関係に携わってこられた方々とか、学術的な成果のある方々とか、いろいろな方が考えられるわけですが、この委員はおおむね五名の方々です。いろいろな分野方々が考えられるわけですけれども、すべて必ずしも専門家でなくてもいい、ただ社会的に公正にものごとの判断のできるというような方々であってもいいのではないか、こういうふうに考えるわけなんです。この専門委員の置き方につきましても、五人の委員方々性格や御専門の関係と微妙に関連をしてくると思いますね。そうしますと五名の委員方々は、おおむねくろうとの専門的な方々をお願いするというお気持ちなのか。それとも、ややしろうとの方であっても、社会的に公正な判断ができる、御勉強願えればその問題について少なくともとらわれることのない判断ができる、こういうような人たちをお願いするのか。その辺についてはどうですかね。
  44. 内村信行

    内村(信)政府委員 実はその辺まだ詰めた考え方は持っておりませんが、ここでは個人的と申し上げさしていただきまして、あえて私の個人的な考えから申しますと、やはりある程度の技術の専門家が必要でございましょう。と同時に、技術が全然なくちゃ困りますが、全体の委員の中には、必ずしも技術ということではなくて、むしろいま先生が御指摘されたような、高度な知識を持ち、公正な判断ができ、全体を総合的にまとめて判断ができるというふうな方もあるいは必要ではないかと思います。  ちなみに外国の例を言いますと、アメリカのNTSBあたりでも、場合によっては、司法官の出身であるとか、あるいは行政官の出身であるとかいうような方も入っておるようでございます。したがいまして、そういったことを総合的に考えてまいりたいというふうに考えます。
  45. 木原実

    木原委員 五名の委員方々に協力をして活動する専門委員ですから、委員としてたとえば弁護士が入ってこられたような場合、専門委員の方たちのあれがそれによってかなり違ってくると思います。委員の方たちが高度な専門的な知識をお持ちの方々でしたならば、専門委員を委嘱する場合のスタッフのあれが違ってくるような感じがいたします。しかし弁護士さんだとか、いわば航空関係については判断力はあってもしろうとという方々が、大ぜい委員の中にいらっしゃるということになると、ここのところがかなり違ってくる。こういうことでお尋ねをしたわけなんです。しかし、いずれにいたしましても、これはほぼ七名くらいを予定して、多数のリストを持っていて、そのつどお願いをする、こういうことですね。私どもとしましては、委員会権限を与えておるわけですから、委員会の中で適切と思われる人たちに委嘱をして、そして運輸大臣任命をする、こういう形に持っていってもらいたいと思うのですけれども、どうでしょう。
  46. 内村信行

    内村(信)政府委員 考え方先生のおっしゃるとおりであろうと思います。運用上そういうふうにいたしたいと私どもも考えております。
  47. 木原実

    木原委員 事故調査にあたっては複雑なケースが考えられるものですから、専門委員といわず事務局のスタッフということになろうかと思うのですが、事故調査官の問題です。これは委員もしくは専門委員を助けながら、それこそ常時事故調査の体制を整えるスタッフなんですが、事故調査の専門官というのを置くのでしたね。
  48. 内村信行

    内村(信)政府委員 事故調査委員会の事務局の中には、先ほどもちょっと触れましたけれども事故調査官というものを置きます。首席事故調査官が一名、その他の事故調査官が九名、合計十名の事故調査官を置くことにいたしております。
  49. 木原実

    木原委員 ちょっと話はそれますけれども、中央に事故調査委員会ができるわけですが、地方には、この事故調査委員会につながっていく、何といいますか、事故調査を専門に仕事をするという人たちは、いまのところ置かないのですね。
  50. 内村信行

    内村(信)政府委員 残念ながらそこまではまいりませんで、地方には事故調査の専門家は置きません。
  51. 木原実

    木原委員 そうしますと、飛行場その他にそれぞれ航空局の出先もあるわけなんですが、それらの中に、事故調査委員会と常時連絡をとるようなスタッフは置けるわけですか。
  52. 内村信行

    内村(信)政府委員 事故調査専門ということには相ならないかもしれませんけれども、当然そういうふうな者はおると思います。と申しますのは、第十六条に「運輸大臣の援助」という項目がございますが、この場合には、事故調査委員会が、事務局のスタッフを含めましても、ある場合においては不足である。特に飛行機の事故というのは、全国非常に広範にわたって起こる可能性があるわけでございます。そういう場合には、立ち上がりを早くして事故現場の保存を確実にするとかいうこともございましょうし、あるいは事故調査に入ってからいろいろな応援をしなければならない場合もございましょうし、地方の航空保安事務所あるいは航空局等におきまして、一応そういった場合に備える人物は考えておるわけでございます。
  53. 木原実

    木原委員 話は少しそれますけれども、やはりある意味では網の目のような形が大事だと思うのです。おそらく事故調査ということになると、最初の発見と最初の現場の確認といいますか、あるいは現場の保存、このようなことがたいへん大事になってくると思うのです。この事故を見つけた場合の通報義務といいますか、そういうことを含めて通報をお願いする分野はどういう分野ですか。たとえば海上保安庁にお願いをしておくとかなんとかいうようなことは考えませんか。つまり他の諸官庁との連携の問題ですけれども
  54. 金井洋

    ○金井政府委員 まず、御質問にお答えする前に現状について御説明いたしますと、現在救難調整本部というものがございまして、これは各空港事務所、たとえば羽田とか千歳とか大阪とか、そういうところに航空局長名で置くようになっておりますし、現に常設されております。この救難調整本部は、警察庁、消防庁、海上保安庁、防衛庁と関係省庁が全部構成員になっておりまして、事故のときにどういう処置をとるか、どういう連絡方法をとるか、夜間、昼間おのおの分けて、通信方法、連絡方法全部きめております。こういうものは将来も当然残るわけでございまして、事故調査委員会ができた後においても、この救難調整本部が捜査、救難に当るとともに、事故の連絡ということもやるわけでございます。さらに、この救難調査本部から連絡を受けた運輸省の各空港事務所は、航空保安業務処理規程というものがあり、これには本省あるいは地方航空局への連絡方法、大臣までの連絡方法、こういうものを事こまかに定めておりますので、事故調査委員会ができた後も当然この規程に従って連絡通信手段がとられることになります。
  55. 木原実

    木原委員 直属の機関が地方にないということは、私は将来の問題として多少不安を感ずるわけなんです。それほど事故の問題というのは、起こったとき大騒ぎをしますけれども、本来は用がないほうがいいわけです。たいてい大騒ぎをしまして、そのときはたいへんだたいへんだということになるのですけれども、本来は、常時事故の起こらないような措置を含めて、地方に網の目のようなスタッフがほしい、こういう感じかするわけです。しかしこれは将来の問題として私は残しておきたいと思います。いまの体制がそれで十分かどうかということについては、何がしか不安と疑問が残りますけれども、せっかく事故調査委員会が発足するわけですから、きちんとした網が少なくとも日本の領海、領空の中には入っているという姿がほしい、こういう意見だけを申し添えておきたいと思うのです。  そこで、話が戻りますけれども、事務局のスタッフの中に一名の首席専門調査官を置かれる、その下に専門官がおるわけなんですが、これは十何名でしたかね。
  56. 内村信行

    内村(信)政府委員 首席が一名と、ほかが九名でございます。
  57. 木原実

    木原委員 これもまた判断の基準というのは必ずしもあるわけじゃないのですが、ただ、いままで起こりました事故の態様などを見ますとたいへんに複雑です。それに航空関係というのは技術の進歩が非常に早い。そうなりますと、このスタッフの人たちでカバーできる一つは範囲の問題、一つは質の問題、そういう問題が出てこようかと思うのです。ですから、合計それぐらいの専門家の人たちではたしてすべてカバーできるのかどうかという問題は考えれば切りのないことですけれども、適切かどうかという問題は、これはやはり問題が残ると思うのです。私どもとすれば、やはり念には念を入れてカバーできる範囲が十分にこなせるように、そういう十分のスタッフを置いてもらいたいということが一つ。それから質の問題がありますから、これは職員の人たちの絶えざる研修、これを何とか制度的に保障をしていく、そういうものがほしいと思うのです。ですから、せっかくでき上がりました事故調査の専門家の人たちの質的な向上の問題について、研修の制度のようなものを設けるかどうか。それから、スタートは首席以下十名で出発をするわけですけれども、態様によっては、やはりカバーする範囲を十分にこなしていくだけのスタッフを置いていく、こういう先の問題と、それから質の向上の問題について、ひとつ見解を出しておいてもらいたいと思います。
  58. 内村信行

    内村(信)政府委員 まことに先生のおっしゃることはごもっともであると私ども考えております。まず量の問題でございますが、これは先ほど申し上げましたように、前の予算の場合には九名でございましたけれども、一名ふやしてもらいました。これは定員上わずか一名ではございますが、行政管理当局あるいは大蔵当局も、こういうことについては相当な理解を示してくれたと思います。それから常勤の委員が一名ふえたことも、これまた相当の理解を示してもらったと思っております。  さらに今後の問題といたしましては、なるべくこういう仕事が忙しくならないことが非常に望ましいわけでございますけれども、現実の問題といたしましては、やはりことしのような例がございますと、もう現在の事故調査官ではとても足りないというふうな実情でございまして、そこで今後の方向といたしましては、まず事故をなくするということにわれわれ行政当局は最大の努力は払いますけれども、万一事故のあった場合を考え、また平生からもいろいろ外国事故調査の事例等を見て調査研究する必要がございますので、そういったものについては将来とも量もふやしてまいりたい。  それから質も、おっしゃいましたようにこれは相当やはり技術的な専門家でございますから、特に航空事故というものの調査は、航空の一部だけを知っていればそれでいいというのではなくて、やはりシステムとしての全体を知りながら、かつ事故調査の経験というものを生かしてやっていくというふうなことが必要でございます。そういった意味から、研修というようなこともぜひやらなければいかぬと思っております。現在も現実に事故調査官の数名を年々研修に出しております。将来もこういったことについて研修を進めてまいりたい。あるいは国内の研修、あるいは海外の研修ということはやってまいりたいというふうに考えます。
  59. 木原実

    木原委員 それはぜひそうお願いをしたいと同時に、これは原案にもないわけですけれども飛行場周辺での事故、それからまた飛行場の開設、運営等については国の責任もかなりあるわけですから、やはり将来は、主要な飛行場には専門の事故調査官が配置をされるというような姿がほしいと思うのですが、いかがでしょうか。
  60. 内村信行

    内村(信)政府委員 先ほどの御説明を、ちょっと私、間違っておりましたが、定員上は現在十八名の事故処理専門官というものが各おもな飛行場、たとえば札幌となっていますが、これは千歳だと思います、それから東京、大阪、福岡、沖繩等に二ないし四名ぐらいずつ配置をされておるようでございます。ただ、これにつきましても、やはり将来の問題としては、事故調査委員会の網の目というものがほんとうは望ましいのでございましょう。そういう方向で将来はいくべきだとは存じますが、さしあたりのところは、そういうことによって対処をしてまいりたいというふうに考えます。
  61. 木原実

    木原委員 それから、これは局長もちょっとおっしゃいましたように、何もないときが一番いいわけなんですが、しかし、いざ起こりますと、事故の姿によってはたいへんな人手を要することもございます。そうしますと、そのときは運輸省の庁内のほうで援助の体制というものは従来はあるだろうと思うのですが、こういう制度ができましたときの応援の体制ですね、それはどうでしょうか。
  62. 内村信行

    内村(信)政府委員 実は率直に申し上げまして、そこまで考えておりませんでした。と申しますのは、一面において、これは独立性ということを非常に考えなければならない。そういう意味から、地方におきまして手足になって働くというようなことはあり得るわけでありますが、はたして本省で応援体制をとるということが理論的にいいことかどうか、その辺もう少し研究さしていただきたい、こう思います。
  63. 木原実

    木原委員 確かに、おっしゃられれば、微妙なところだと思います。ただ、いま専門官として首席以下十名ということになりますと、事故の姿によりましてはかなり複雑な事故が起こる。それからいろいろなことが想定されるわけですけれども、姿によっては、やはり同じ航空局ということになるのでしょうけれども、少なくとも技術的な応援体制なり何なりということが要るのではなかろうかという感じがするわけです。ちょっと、十人という数字が考えようによっては小さい、考えようによっては適切、いろいろどうでも解釈できるわけですからよけいなことを申し上げておくわけですが、おっしゃるように、確かに独立をして仕事を行なう、こういうことでやっているわけですから、片方から応援だといって全面的に関与していくというようなことになれば、また問題が別になってくると思うのですが、しかし、事故が起こった場合の仕事というのは、考えようによってはかなり複雑多岐にわたる面がありますから、これはひとつ問題として考えておいていただくということにいたしておきましょう。しかし、私どもとしましては、どうも十名というのは、スタートとしてはやむを得ない側面がありますけれども、地方に専門的な事故調査官を置いていく、こういうことを含めて、将来の問題としては、質の強化と、それから量の強化については十分考えておいていただくのだ、こういう意見をこの機会に申し上げておきたいと思います。  それから、この人たち権限の問題です。これは調査委員会全体のことにもなるわけですが、やはり行政的な立場で立ち入っていくわけですが、ただ事故調査にあたっては、たとえば刑事捜査といいますか、警察の捜査というものも当然並行してあるわけですね。その場合、優先権がどちらにあるかという問題があると思うのです。一方では、警察的な責任を追及していくのだ、こういう立場からの捜査だし、それからこちらのほうの捜査というのはやはりそれとは趣を異にしておる。こういうことですから、捜査の方法ももちろん違うわけです。ただ、現場がある、そこに警察も入ってきている、それからこの専門委員会も入っていっている、そういう場合のまず大事なことは調整。第一次調査権といいますか、そんなものはどのようにお考えですか。
  64. 内村信行

    内村(信)政府委員 事故調査官の権限でございますが、これは第十四条におきまして委員会権限がずっと並べてございます。その第二項で「委員会は、必要があると認めるときは、委員長委員又は事務局の職員に前項各号に掲げる処分を、専門委員に同項第二号に掲げる処分をさせることができる」ということがございますから、こういう権限を持って仕事をするわけでございます。そこで確かに、事故があった場合に、警察のほうはいわゆる刑事訴追という面からの捜査をいたします。私どもはそれとは全く違って、事故の真実は何であるかという真実探求のための調査をいたします。そういった意味で、二つの行政調査と警察の捜査、これは全く異質のものであって、本来全然別個のものであるというふうに考えております。  ただ、しかし、先生御指摘のように、その捜査なり調査対象になる人、物というものは、やはり同一のものにダブってくるというふうな現実がございます。そういった意味で、これについてはどういうふうに調整するかというふうなことについては、警察のほうとも十分打ち合わせをいたしまして、その辺そごのないようにいたしたいというふうに考えているわけでございます。
  65. 木原実

    木原委員 これは、あとのほうに黙秘権その他の問題もございまして、刑事上の責任を問われるときは、たとえば黙秘権というものがある。しかしこの場合にはやや態様が異なる、こういう姿になっておりますからね、捜査の方法ももちろん違ってくると思うのです。ですからこれは、現場に入っていって、警察のほうも権限があるわけですから、その辺の調整はいろいろ複雑なことがあろうかと思うのですが、これだけの権限を与えているわけですから、第一次の調査権みたいなものはきちんとするという形で調整をしておくのが妥当ではなかろうかと思うのですが、どうでしょうか。
  66. 内村信行

    内村(信)政府委員 そのような方向で調整をはかってまいりたいと思います。
  67. 木原実

    木原委員 ただその際に出てまいりますのは、ここで調査いたしました結果というものがたとえば裁判に使われる、こういう問題についてはどうなんですか。この委員会調査というのは、言うまでもなく刑事責任を追及する調査ではありません。しかし、この結果をたとえば訴訟の資料として使わせないのか、使ってもいいのか、その辺はどうでしょう。
  68. 内村信行

    内村(信)政府委員 この委員会の行なう航空事故調査は、先生おっしゃいましたように、航空事故原因を究明する、そして事故の再発を防止するための行政調査でございます。それに対しまして、原因関係者の刑事責任を追及するという犯罪捜査があるわけでございますが、これは全然別個の問題である。したがって私どもは、先ほども申し上げましたように、いわゆる真実探究のためには秘密を守ってあげますよ、そういうことによってあなたも真実を話してほしい、こういうようなことでございますから、これがむやみに外に出て、あるいは刑事訴追を受ける場合の証拠となるというふうなことになりますと、事故調査の本来の目的から見てやはり望ましくないというふうに私は考えております。もちろん司法権その他高度のものでございますから、あらゆる場合にそれをやっていくかどうかということは一応問題がございますが、原則的な考え方といたしましては、そういった証拠書類を出さない。供述につきましても、その供述者の同意がなければ出さないというふうにするのをたてまえにしてまいりたいというふうに私ども考えております。
  69. 木原実

    木原委員 そういうようなことは、条文の中に制度的に保障しておりましたかね。たとえば裁判の証拠として使わないというようなことについてはありましたか。
  70. 内村信行

    内村(信)政府委員 それは条文の中に保障はないかと思います。
  71. 木原実

    木原委員 やはり将来の問題として大事なことだと思うのです。おそらく一番権威のある調査結果が出る。そうしますと、警察にしましても、裁判所にしましても、どうしてもその結果に依拠するということは避けられないと思うんです。その際でも、証拠としてこの結果を使わせない、あるいはまた供述についても拒否することがあり得る。そういう意味では、司法関係との独立関係はきちんと保持していく、こういうことですね。
  72. 内村信行

    内村(信)政府委員 公表したものにつきましては援用されてもけっこうだと思います。おそらく先生のおっしゃっているのは、公表に至るまでの各個人の供述とか、そういうふうなものを証拠として援用できるかどうかということであろうと思いますが、こういった問題につきましてはいろいろ微妙な問題があると思います。したがいまして、いま直ちに一刀両断的にこうでございますと結論を申し上げるのは困難かと思いますが、その辺、私といたしましては、先ほど申し上げたような精神でもって進んでまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  73. 木原実

    木原委員 警察から協力を求められることがあると思うのです。事故の態様によりましては、刑事責任が初めから起こると考えられるような事故だってかなりあるわけですね。そういうような場合でも、おそらく警察側もしくは司法の側からの協力が求められる。そういうときはどうでしょう。
  74. 内村信行

    内村(信)政府委員 それはやはり事故調査とは全く別の問題としていただきたい。ただし、技術的な鑑定を依頼されるような場合には、その鑑定に応ずるというようなことはございます。
  75. 木原実

    木原委員 それから関係者の問題なんですが、事故が起こりましたときは、まず犠牲になられた方たち、被害を受けられた方たち、たとえば遺族関係、そういう関係一つ片っ方に出ます。それから片方には、事故を起こした航空会社なら航空会社の関係が出ます。あるいはそれに伴う人たち関係が出る。こういうふうなことがほぼパターンとして考えられるのですが、一番大事なことは先ほど申し上げました秘密の問題ですけれども、同時に、この委員会調査をするその調査の結果はもちろんですけれども、経過を適切に明らかにしていく、つまり情報を豊富に提供していくという側面がどうしても必要になってくるんじゃないかと思うのです。  というのは、遺族としては、被害を受けたわけですから、この事故について、たとえば補償の問題その他のことをめぐって申し立てをしたり、それから調査についてもこうしろという、少なくとも被害者としての権利はあると私は思うのですね。そういうような人たち立場を救っていくという前提一つあるわけなんですが、調査過程の中で関係者に適切に情報を与えていく、こういうことについてはどうでしょうか。まあ秘密の問題とやや関連もしてきますし、それからすべてが終わるまでは外に出さないという考え方もあるでしょうし、いろいろなケースがあると思うのですが、私どもとしては、公正に調査を行なっていくという前提に立てば、途中経過をある程度明らかにしていく、明らかにしながら事を進めていく、こういう姿が望ましいと思うのですが、どんなものでしょうか。
  76. 内村信行

    内村(信)政府委員 この点、外国の例などを見ますと、大体終わるまでは発表しない、全部完結してから発表するというようなことが例のようでございます。先生のおっしゃることも一理はあるかと思いますが、一方におきまして、個々的に発表いたしてまいりますと一たとえば全体を見ないで一部だけで見る。もちろん、事故の経過というものは逐次やってまいるわけでございますから、その一部だけが出ると、それに固執して、新聞等世論におきましては、相当な憶断をするというふうなことがある。それから、かりにそれに損害賠償というふうなことがからみますと、それによってかえって、こういうふうな結論に持っていってほしいというような圧力がかかる場合がある。あくまでも航空事故調査委員会というものは、精神的な圧力とかそういう社会的圧力というものからはっきり遮断されているもので、そして真実を自由に探求していくということが望ましいと思うのであります。その点、先生のおっしゃることは、お気持ちはよくわかりますが、その経過を逐次発表するということは、私はあまり適切ではないんではないか、こういうふうに思います。  ただ、事故調査によりましては、いままでの例によりましても、三年も五年もかかるというふうなこともございます。そういう場合にはあるいは中間発表ということも必要かと存じます。これはまたケース・バイ・ケースでございますが、逐次そのつど発表するというふうなことは私たちは差し控えたい、こういうふうに考えております。
  77. 木原実

    木原委員 それからこの場合は少し違うのですが、委員会調査過程の中で、部外の人たちから意見を聞いたり、あるいはまた援助を受けたりしなくてはならないケースというのが出てくると思うのですね。専門の人たちに委嘱をして調査に当たったにしましても、問題によってはそういう場合がある。あるいはまた、関係者がその事故について何か申し立てたいという場合、たとえば発見者あるいはその現場を見た人、あるいはあの飛行機についてはこうだったというような意見を持っている人たち、そういう人たちから意見を聞いてさらに十分な調査ができるような資料を得る、こういうことはあり得るわけですね。
  78. 内村信行

    内村(信)政府委員 この委員会は事実調査を行なうわけでございますから、そういった意味で、まあ専門委員制度を活用するとかいうことにおいて一応これはできると思いますが、さらに委員会判断におきまして、こういった事故はもう少し専門的な角度から意見を聞いてみたいとか、あるいは、こういった事故について意見を述べたいというような意見の方がおありになればそれを聞くということは、当然あり得てしかるべきだというふうに思います。
  79. 木原実

    木原委員 事故のケースがスケールが大きい場合には、社会的にも非常に大きな影響を与えるわけですね。それからまた、その事故に関連してさまざまな意見を持つ人たちもいる。たとえば委員会結論について不満を持つ人たちが出た場合には、これはあとの問題ですけれども、しかし、調査の進行のしかたについても関心を持っている人たちがいる。やはりこの委員会は真実を追求していくという意味でやるのはいいのですけれども、しかし同時に、公正にやっていくという側面は、第三者に、社会的に容認される調査でなければならぬと思うのですね。いわゆる学者の人たちの学術的な研究ではありませんから、社会的に納得してもらえるという経過がやはり必要だと思うんですね。結論についてそのように認めてもらうと同時に、経過においても、なるほど公正な調査をやった、ある意味では衆知を集めて結論を出した、やはりこういうことをやったのか、それで初めて社会的には納得をしてもらえるような要素が出てくると思う。ですから、少なくとも調査の経過の中でも、ある意味では社会的にこの委員会が閉鎖的に孤立をして仕事をしていくというだけではなくて、関係者から意見を聞く、あるいはまた社会的な有識者からも意見を聞く、そういう機会というものを設けないと、社会的な衝撃が大きいだけに、事故調査委員会だけが閉鎖的に真実を追求したというだけでは、この問題が納得をしてもらえない側面が出てくるんじゃないだろうか。そこで私どもとしては、そういう意見を聞く機会をしばしば持つべきではないのか。運用過程の中でそういうことを保障をしたらどうだろうか、こういう考えを持つのですが、どうでしょうか。
  80. 内村信行

    内村(信)政府委員 確かに総英知をあげて真実を探求するという意味におきましては、いろいろな角度からの御意見がございましょうから、そういう御意見を十分承ることは、これは必要だろうと思います。ただそれは、私といたしましては、せっかくおまかせした委員会でございますから、そのために両議院同意のもとに、これならばほんとうに科学的、公正な判断ができるだろうということを信じておまかせした委員会でございますから、まずこの委員会判断にゆだねる。その委員会判断において、そういうことが必要である、そういうふうな場合も当然予想されましょうと思います。公正に判断する方々でございましたら、自分たちでわからない分については特に専門家の意見を聞こうとか、そういうことは出てくると思います。それは委員会の御判断におまかせをしまして、それによってやはり英知を集中していただく。それによって、最後に公表いたします場合には、事故調査の経過も明らかにいたしますし、それから認定した事実、事実を認定した理由というものもはっきり出すわけでございますから、そういうことによって、その公正、妥当な委員会を御信頼申し上げて、その判断によってやっていただいたらいかがであろうかというのが私の考えでございます。
  81. 木原実

    木原委員 委員会運用の中で考えるというのですが、この種の仕事というものは姿勢の問題にかかわってくると思うのです。アメリカなんかの制度の中では、たとえば公聴会を設けるというふうな制度があります。これはやはり、社会的に仕事をしていく者の責任としてやっていくんだ、こういう行政の姿勢があると思うのですね。まあ一般論を申し上げて恐縮なんですが、われわれの国の行政の中では、責任のある結果を出すんだからおれたちに仕事をまかせておけ、こういう姿勢がともすれば多いわけなんです。しかし、少なくとも航空事故というような、この四、五年の間に起こりました幾つかの大きな事故の例を見ましても、これは事故調査委員会でありませんけれども、いままで私たちがやはり疑問を持ちますのは、「ばんだい号」にしましても、羽田沖の問題にしましても、幾つかの大きな事故調査に当たった人たち仕事ぶりや仕事の結果について必ずしも満足をしていない、こういう経過があるわけなのです。ただ、役所の仕事が忙しくなってきたから、この部門はひとつ独立をさせて、役所の中で、事故調査といったらあっちだよというふうなことだけでこの制度ができるものだとは私たちは考えたくないのです。少なくともこの五、六年の間にたいへんな航空事故が続いた。その調査に当たられて、役所としてもさまざまに経験をされたと思うんですね。そのようなものを踏まえ、この制度をつくり、そういう近い過去の調査の経験等を踏まえて、より万全な調在の体制をつくろう、こういうふうなことだと考えたいわけです。  そういう考え方に立ちますと、やはり幾つかの大きな航空事故調査の経過、結果、いずれも私たちはいまでも意見を持っているわけなんです。ですから他の方々の中でもいろいろな意見があると思うのです。そういう経験からいいますと、やはり委嘱をされた権限を持った委員会人たちが一生懸命やられるのはいいわけなんですが、しかし一生懸命やられる過程の中で、異なった意見なり、あるいは他の専門委員に委嘱をされなかったけれども、ほかに専門的な意見を持っておられる方々がたくさんいるわけですから、そういう人たち意見なり何なりというものを吸収しながら、あるいは社会的に判断力を持っている人たち意見を具申できる場所、なかんずく遺族の人たちは私は権利としてあると思う。事故調査委員会にそういう人たち意見というものがやはり吸収をされていくという経過というものは、これは公正に、それから納得のできる結果を出すためにも必要でないのか、運用として大事じゃないのか、こんなふうな感じを持つのですが、どうでしょうか。
  82. 内村信行

    内村(信)政府委員 私も、先生のおっしゃるように、この一つ委員会というものが閉鎖的になって、われわれが正しいと思えばもうだれが何と言ってもだめだというふうな態度でいくのはよくないと思います。したがいまして、あらゆる方々のあらゆる角度の御意見というものをできるだけ伺って、そういったものを十分にそしゃくして、その上で一つ結論を出すというふうなことが必要であろうかというふうなことについては、私も異存はございません。そういった意味において、学識経験者なりほかの方々の御意見を伺うことは必要であろうかと思います。  ただ御遺族の問題であります。御遺族の方々は、私は心情としてはそれはよくわかります。この原因はどうだったのだろうかということは、心情としては非常によくわかるわけでございます。しかし事故調査の目的は、あくまでも事故原因探求をして事故の再発を防止するというところにあ
  83. 長島敦

    ○長島政府委員 医学的な詳しいことは私はよくわかりませんが、いずれも現に治療を受けておる段階でございます。
  84. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 それはその刑務所に配置をされている医師の治療を受けておるということですか。
  85. 長島敦

    ○長島政府委員 さようでございます。
  86. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 隣に国立療養所があるわけですし、保菌者としてならば、むしろそちらのほうに入れなければならないのじゃないかというふうに思うのですけれども、全員三名とも治療中であるということですか。
  87. 長島敦

    ○長島政府委員 三名とも現にここの医師の治療中でございます。
  88. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 大体お聞きしたいことは終わるわけですけれども、最後に大臣にお願い申し上げておきたいと思うのです。  先ほども申し上げましたように、地域住民あるいは町当局も、移転をしていただきたいという方向でいままで考えてこられた。いまお聞きしますと、移転してくれるのじゃなくて拡充だということです。かなり大きなものになる。そういう点を考えて、やはり私どもとしては、現在いる三名の受刑者、その方々は熊本刑務所なり何なりに移っても特段のあれがなければ、むしろ移転をしていただきたいという立場におるわけです。いまお話がありましたように、熊本刑務所長さんとの間で話が進められ始めたようですけれども、これから市街地としてどんどん発展をしていく環境にあるわけですので、地域住民の意見とか町当局の意見等を十分聞いた上で拡充にしろ移転にしろやっていただきたいというふうに思うのです。その点について大臣から最後に御答弁いただいて終わりたいと思います。
  89. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 坂本先生仰せの御心配よくわかります。本来この刑務所の移転とか拡充とかいうことはなかなかむずかしい問題でございまして、法務省の方針といたしましては、極力地元の代表者、自治体の皆さまの御了解をいただきました上で、無理のないように善処をしたいという方針をとらしております。ことに本件問題は、改築ができ上がりました上は、城野から多数の者、その他全九州からたくさんの人が収容され、膨大に数もふえるという事態が結果において出てくるわけでございますから、こういう場合においては、なおさら地元住民の皆さんを代表する自治体の皆さんとの間に十分の懇談を詰めて、そうして御了解をいただき、御協力をいただく上でこの工事を実施したい、そういうふうに努力をすることをお誓い申し上げます。
  90. 坂本恭一

    ○坂本(恭)委員 これで終わります。
  91. 三原朝雄

    三原委員長 木下元二君。
  92. 木下元二

    ○木下委員 私はまず、田中内閣が強引に推し進めようといたしております日本列島改造計画と、それに伴う法務省での仕事量の増大、労働者への負担のしわ寄せ、こうした事態が起こっておりますので、そうした問題について質問いたしたいと思います。  昨年、田中総理がいわゆる列島改造論を発表しましたのと同時に、全国で土地の買い占め等が異常なまでに進んで、地価の高騰を招いております。共産党が調査をいたしましたところによりますと、日本列島改造のもとで大資本の土地買い占めが異常に進んでおりまして、地方自治体、農業団体、不動産関係者等の協力を得まして、昨年末からことしの五月末までに行なった調査によりますと、大資本に買い占められた土地の面積は四十七万ヘクタール、実に国土総面積の一・二八%を占めております。東京都の総面積の二倍、同じく大阪府の二倍半の面積に相当するのであります。しかもその約九割が未着工のままで値上がりを待っているという状態が起こっております。こういったこととあわせまして、たとえば農地の宅地並み課税等による離農、あるいは公害等による移転など、政府のとり続けております高度経済成長政策のもとで、土地などの移転が非常に多くなっておるのであります。  そこで質問いたしますが、全国で扱う登記件数は昭和四十七年度で何件か、また十年前に比べてどの程度増加しておるか、この点を伺いたいと思います。
  93. 川島一郎

    ○川島政府委員 お答えをいたします。  昨年度、つまり昭和四十七年度における登記件数でございますが、甲号事件、これは登記簿に記入を要する事件でありまして、所有権の移転とか抵当権の設定、こういう種類の事件でございますけれども、その件数が、昨年一年間、全国の登記所の件数を合計いたしますと、二千百二十一万七千九百二十五件二千万件余りとなっております。  次に乙号事件、これは、登記簿の謄抄本の請求でありますとか、あるいは登記簿の閲覧といった関係の事務でございますが、昨年一年間で二億二千二百六十万五千八十六件となっております。  これを十年前と比較いたしますと、甲号事件におきましては、十年前の三十七年度が一千七万五千七百三十一件でございますので、そのほぼ二倍強というところでございます。それから乙号事件のほうは、三十七年度が五千八百八十万六千三百五十件でございますので、おおむね四倍に達しておる、こういう状況でございます。
  94. 木下元二

    ○木下委員 私のほうの調べと若干食い違いがあるのですが、まあけっこうです。相当な伸びを示しておると思います。  いま甲号事件と乙号事件と区別して言われましたけれども、平均いたしますと、これは数字でなくてパーセントで言うと、昭和三十七年度を一〇〇とすると昭和四十七年度は二七一という数字になっておるのですが、おおよそそういうことになりますか。
  95. 川島一郎

    ○川島政府委員 甲号と乙号は事件の性質が違いますので、処理に要する労力、時間もだいぶ差がございます。したがいまして、分けて申し上げたのでございますが、形式的に両方の事件を一括いたしてみますと、昭和三十七年度を一〇〇といたしました場合には、四十七年度におきましてはその約三倍半に達しておるということでございます。
  96. 木下元二

    ○木下委員 相当な伸びを示しておるわけですが、それでは、この登記に従事しておる公務員労働者の数は十年間でどの程度伸びているでしょうか。
  97. 川島一郎

    ○川島政府委員 法務局職員のうち登記事務に従事している職員について申し上げますと、三十七年度の登記従事職員の数は七千三百三十八名、四十七年度が八千六百七十七名でございまして、増加率は一八%となっております。
  98. 木下元二

    ○木下委員 登記件数の伸びは十年間で甲号、乙号平均しますと三五〇%になるのですが、公務員労働者の伸びはわずか一一八%ですね。この実態について大臣はどう思われますか。
  99. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 登記事務が、一口に申しますと、お聞きのように激増しておる状態でございます。しかるに登記関係職員の数は、ごらんのとおりのみじめな状態でございます。年々歳々、このことを具しまして大蔵当局に増員の要求もたいへん力を入れてつとめておるのでございますが、増員関係というものは予算折衝中の難関中の難関に属する問題で、なかなかうまくまいりません。先生に御理解をいただくおことばをちょうだいして、たいへんうれしいのでございますが、今後とも力を入れて人員の確保に最善を尽くしたい、こう考えております。
  100. 木下元二

    ○木下委員 登記所で働く労働者の人たちがたいへんな労働強化をしいられておるということなんで、これは何としても改善しなければならないと思います。  ここに五月十七日付の朝日新聞があります。西日本本社のものでありますが、この記事にはこう書いてあります。「開発のあおり病人続出 事務量ふえ過労に」、これが見出しであります。鹿児島の法務局職員が入院がおくれて死亡したという事件も出ております。そしてこの記事には、「開発、土地ブームのひずみは、所有権移転などの登記手続きを一手に引受ける法務局まで押寄せている。鹿児島地方法務局管内の出張所では、処理件数の異常な増加から職員に入院患者が相次ぎ、手当てが遅れて死んだ人も出ている。ブームのかげで、こうした悲劇はまだまだ続きそう」、こうあるわけであります。この記事の中には「鹿児島市は断言できませんけれども、いずれにせよこの委員会が構成されますと、委員会の運営規則とか議事規則なりというものが委員会責任においてつくられていくわけでございます。そういった際も、委員会としてはそういうふうなことも考慮しながら、一体どういうふうにしていくかということを検討してもらいたい、こういうふうに考えております。
  101. 木原実

    木原委員 わかりました。これは何らかの形で委員会が社会的な責任を果たしていくという側面から関係者意見を聞くようにやってもらいますと、こう私は意見を申し上げておきたいと思います。それから、それにつきましては適切な情報の提供をしなければ意見が聞けないわけでありますから、そのこともあわせて運用の中で考えていく、こういうふうにお願いをしておきたいと思います。  それから公聴会の問題、こだわるようですけれども、公聴会という表現がいいのかどうかという問題もあります。制度的に議会等がやる公聴会、これもなかなかなじみません。非常に日本ではむずかしいやっかいな問題だ、こういうこともあると思うのですが、公聴会ということは制度的な経験が乏しいわけですけれども、社会的な衝撃が大きい問題であるだけに、私はやはり、それこそ関係者ということにしてもよろしいと思うのですけれども、広く社会的にこの事故についての意見を聴取をする。その聴取した意見を聞くことによって、それを踏まえながら委員会が公正な調査に当たるのだ、こういう姿勢はやはり事故調査委員会の公開性もしくは社会的な責任、公正、こういうようなものを保持する上で必要な要件ではなかろうか、こういうふうに考えるわけなんです。そうしませんと、ただ専門の役所の人たちがやった、おれたちは何にも知らなかった、えらい先生方がやったのだから、間違いないだろう、しかしどうもおかしいぞというようなことになりますと、それにやはり運用の経過の中で、どうしても制度というものが閉鎖的に、あるいは孤立をする姿になっていく心配があるのではなかろうか。その歯どめのためにも、公聴会というものを私は制度として保障しておいたらどうか、こういうふうに考えるわけなんです。
  102. 内村信行

    内村(信)政府委員 その点、私、実は非常にむずかしい問題があると思います。で、一つは確かに公聴会制度というものがいまの日本の現代社会にいかになじんでいるかいないか、こういうことでございます。目的といたしましては、先生おっしゃったようなこと、確かにけっこうであると思います。それで、いろいろな機会にその関係者意見を十分吸収して、それによって公正な判断を行なうということはけっこうだと思いますが、この公聴会を行なうという場合に、いかなる時点でいかなる方法でいかなる場所でやるかというふうなことに相なりますと、これは相当いろいろな問題がございます。たとえば、先ほどちょっと申し上げましたように、極端に申し上げますと、一々事故の経過を発表するということになりますと、いろいろな予断、憶断が入ってまいりまして、かえって事故調査の性質を曲げるようなことにもなりかねない場合もある。公聴会のやり方によっては、世間の取り上げ方によってかえって真実が曲げられるおそれがなきにしもあらずという場合もあり得るかもしれないということで、直ちに公聴会が悪いというふうに考えているわけではございませんけれども、しかし、ここにおいては相当現代の日本社会における現実というものを踏まえてどう考えたらいいかという問題がやはり残るのではないかという気が、私は率直に申していたします。
  103. 木原実

    木原委員 確かに制度的にはなじんでいない側面があります。公聴会というものの運用や概念につきましても、したがって、きちんとした模範的な議会の例があるわけですけれども、あまりございません。ただ社会的な事件だけに、広く社会的な意見を吸収していく、そういうものが制度的にないと、これが一つ行政機関としてその分野の中だけで事が運ばれていってしまう、こういうおそれがあるわけです。  そうしますと、話をちょっとあれいたしますけれども、遺族の人たち意見を聞くという場所は全然ないわけですね、公聴会がだめということになると。
  104. 内村信行

    内村(信)政府委員 そういうことなんでございますが、遺族の方々の御意見事故調査については聞く必要はないと思っております。
  105. 木原実

    木原委員 ただ私は申し上げたいのですけれども、これは学術調査じゃありません。出た結果については遺族は非常に大きな利害関係を持ちます。それから、自分の肉親を犠牲にしているわけですから、私は、事故調査にあたっては遺族としては発言をする権利があると思うのです。これらの人たちは、多くの場合は事故原因とかなんとかいうことについて知識を持ち合わせていない方かもわかりません。しかし、遺族としては、事故の態様によっては、調査の方法なり何なりについて意見を持っておる人たちが当然出てきてしかるべきだし、ある意味では権利を持つと思うのです。しかし、この制度全体の中で、遺族の人たちがかりに公聴会のような場所も与えられないということになれば、その場所は全然ない。そうすると、一番深い関係者というのは何よりも遺族ということになるわけですが、これの意見を聞く場所がないというのは、やはり社会的に問題になってくるんじゃなかろうかと思います。もっともわれわれ政治家の発想と行政担当者の発想はだいぶん違いますが、どうでしょうかね。
  106. 内村信行

    内村(信)政府委員 私も心情的には先生のおっしゃることはよくわかるのです。しかし、事故調査委員会の目的というものはそういうことではないので、やはり専門的な知識を持った方々が専門的にその真実を探求し、そして事故の再発を防止するということに基本の目的があるわけでございますから、その面におきまして、むしろ遺族の方々は民事訴訟の問題でその問題は片づける。やはりあくまで賠償問題と切り離すということが真実探求のためにはむしろいいのではないかというのが私の考え方でございます。
  107. 水原敏博

    木原委員 それは問題を限定していえば局長おっしゃるとおりなんですが、それはこの間のモスクワ事故の問題につきましても、遺族の人たちの話を私どもずいぶん聞く立場にありました。ずいぶん言い分を持っておられますね。飛行機の運航その他について。ビジネスでずいぶん外国を歩いている方たちは、航空関係についてはわれわれ以上に詳しい。そして、あのときはこうであったという、たとえば運航なら運航の計画についてはずいぶん詳しく問題を持っておられる人たちもいる。それは自分の肉親を失っているわけですから、ある意味では傾聴に値するあれなんですね。どこの会社がどの程度の飛行機を飛ばしていて、あの飛行機に乗ったんじゃあぶないぞというのがビジネスマンの中なんかではあるわけなんですね。それくらいかなり知識を持った人たちがいるわけなんです。これは当然補償の問題については救済の措置が別個にある。ですが、この調査にあたってはこの辺を調査してくださいよ、あえてこの会社については事故調査委員会がよほどこの辺を洗わないとほんとうの原因は出ませんよというようなことは、率直にいって遺族の人たちから聞くわけなんです。しかも相当な知識を持たれ、社会的な判断を持たれる人たちが多いわけです。ですから、そういう単純な訴訟の額のつり上げというような問題だけではなしに、そういう要素というものが現実にあるわけなんです。たとえば、いままでの役所の中にあった事故調査やり方というのもたいへんに問題がある、こういう批判も当然出てくるくるわけです。ですから私どもは、そういう意味の社会的な発言に対して耐えられるだけの事故調査委員会にしていきたいと思うのです。ですから、言い分のある人は全部聞きましょうというものがないと、結局、しようがないから大臣のところに面会を求めていったりして、しかし、大臣には聞いてもらったけれどもというようなことになりがちでしょう。だから、せっかく制度としてできるならば、これは専門的な知識を持たれとでございますので、その御要望がございました。四番目は「被疑者の逃亡は絶対になきよう厳重なる設備をすること」。それから五番目は「被疑者の収容人員は定員(一五〇名)以上、絶対に収容しないこと」。そのほか六番目といたしまして、「建築物の窓、その他の構造については、充分な配慮をなし、外部を覗き見などないよう遮断する」。この六つの条項を認められるならば現在地改築に応じましょうという文書が参りました。  この件につきまして、法務省といたしまして検討いたしました結果、一月三十日付で官房長名で尼崎市長に御回答いたしております。それは、「本年一月二十六日付貴職から務法大臣あてお申し越しのありました要望事項については、十分これを尊重のうえ工事を実施する所存でございますので、今後とも何卒よろしくご協力を賜わりますよう、お願い申し上げます」ということでございます。この件で尼崎市長、地元の皆さん方の御了解が得られましたので、工事を行なって現在に至っておるというところでございます。
  108. 木下元二

    ○木下委員 経過はわかりました。実は私はその住民の人たちからいろいろな不満を聞いているのです。私は住民の方とも会って話をしましたけれども、いま言われたようなことは初めて聞くわけなんですよ。特にその篠田市長とそういう話がされ、そういうふうな六つの項目にわたりまして話し合いができたということは初めて聞きました。いま住民の人たちと話し合いをということを言われましたけれども、市長は住民代表だからと言われればそれまでですが、地元の住民の人たちと一体話はされたのでしょうか。地元の住民の人たちの中にはそういったことを知らない方々がたくさんいるのですよ。だから聞いているのです。
  109. 水原敏博

    ○水原説明員 実はこの件につきまして、私、過日二十四日、日曜日でございますが、この施設を見せていただきましたおりに、その道すがらでございましたので、工事場を見てまいりました。そのときに案内してもらったのがここの支所長でございます。支所長から、昨年の秋ごろから暮れにかけてはこの近所の人たちもいろいろ言い合いました、いろいろな要望がございまして、再三にわたっていろいろ折衝いたしました結果、いまでは非常に仲よくなりました、施工につきましても、たとえばくい打ちがございます、くい打ちの際にも近所にはたいへん御迷惑をかけますので、いろいろな配慮をいたしました。たとえば天幕でございましょうか、テントの布でございますね、これを敷地周辺に全部張りめぐらしまして、そしてできるだけ騒音などの害がないようにという配慮をいたしました、しかしこれでも音は相当に聞こえます、振動も伝わりましょう、しかしそういうふうな配慮をいたしましたので、地域の近所の人方から、ここまで法務省が研究し努力をしていただいておるんだから、これ以上はもう無理を申しませんというふうに、非常に現在ではなごやかな関係にあります、という話を聞きました。私たいへんうれしく思いましたけれども、そういうわけで、その当時は何回も地元の人たちと直接折衝していたということを聞いております。
  110. 木下元二

    ○木下委員 それは去年の年末ごろでしょう。そのころであって、その後一時そういう話があったということを住民の人たちも聞いておったようですが、その後一体それがどうなったかさっぱりわからぬのですよ。ボス的とは申しませんけれども、一部の人たちと話をされるということで進められたように私は聞いているのです。やはりこういう問題は、その付近の全住民に影響するところが大きいわけですから、できるだけ全住民にわかるような形で進めていただきたい。これは今後の問題がありますので、今後とも移転とかあるいは改築の問題が起こりますので、そういう点を法務省としましてはぜひとも留意をされて進めていただきたいと思います。この鉄筋の高い建物ができますと、日照権の問題、あるいは電波障害、あるいは風紀上の問題、いろいろ問題があるわけですから、この点は特に留意をいただきたいということを要望いたします。  いま市長との約束の中で、日照権の問題、電波障害などをなくすということを言われましたが、これは五階建てのものができるわけなんで、そういう被害の問題が改築された後に現実に起こる可能性があるのですが、そういう問題が起こった場合には、これは当然十分な補償がされるべきだと思いますが、この点は大臣、いかがでしょうか。
  111. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 補償以前に、障害を取り除く設備を行ないまして努力をいたします。それでもなおかつ障害が起こるという場合においては、この補償問題についても、地元の皆さまとの間に地元の代表者だけでなくて、いまおことばのような、地元全体の住民の皆さんとの間に懇談を遂げて解決をしたい、かように考えます。
  112. 木下元二

    ○木下委員 けっこうでございます。  質問を変えますが、法務大臣に伺いたいのですが、法務局または地方法務局に人権侵犯事件が係属をしておる場合に、それに関連した訴訟が提起されます。損害賠償あるいはそのほかの訴訟もありますが、そういうときに、その法務局または地方法務局に係属をしておる人権侵犯事件はどのように取り扱われるのでしょうか。あるいはどのように取り扱われるべきでしょうか。大臣に伺いたいのです。一般的なことです。
  113. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 人権侵犯が起こって、人権局が発動しておるその中途で訴訟が起こって、訴訟事件として裁判所に係属をしたという事態が起こりますと、どのような事情がありましても、即時人権侵犯の取り扱いは停止しなければならぬ、どのような事件があってもこれは急ぎ停止しなければならぬというように理解をしまして、そういう指導を、私になりまして特にしておるわけでございます。  間々ございます。ちょいちょいございます。それは一体どういう理由なのかというと、司法裁判所が裁判、審理をしていらっしゃるその同じ事件を、行政府の立場にある法務省人権局が発動すべきものではない。それは、たいへん大げさなことばを使って恐縮でございますが、憲法でいう司法権独立を侵犯する、こう考えられるおそれが出てくるということでございますので、裁判にかかりますと、刑事、民事両方でございますが、刑事、民事両方の裁判にこれがかかりますと、あるいは非訟事件手続法によります裁判がかかりますと、司法裁判所の管轄に着手をされた瞬間以後は調査を打ち切る、こういう方針をとらしておるのでございます。これは厳格にやっておるのでございます。
  114. 木下元二

    ○木下委員 それは一体いつからそういう方針でやられておりますか。
  115. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 ずっと以前からの方針と、私になりましてから、司法権独立のことが非常にやかましい男でございますので、特に力を入れておりますが、ずっと以前からその方針であると理解しております。
  116. 木下元二

    ○木下委員 ずっと以前と言われるのは、いつごろからか、わかりますか。
  117. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 人権擁護局発足以来の方針が大体その方針であるとお聞き取りをいただきたい。
  118. 木下元二

    ○木下委員 人権侵犯事件が係属しておりまして訴訟が起こるケースというのは、いろいろなケースがあると思うのですね。たとえば、甲が被害者として人権侵犯の申告をしておる、そして裁判所にその加害者である乙に対して損害賠償の訴訟を起こす、こういうケースもあるでしょう。あるいは逆に、甲が人権侵犯として申告をしておる場合に、加害者である乙が、そういうふうな人権侵犯はないということを理由に、そういうふうな申告をされたことに対して、それは違法な申告であるということで慰謝料の請求をする、そういうふうに逆に乙のほうから訴訟を起こすというケースも考えられる。そうすると、加害者の態度、加害者の出方によって、その法務省の扱っておる人権侵犯事件がストップする、こういうことにもなるわけです、そういう場合は。  だから、私はいま言われた趣旨は、これはすべてということでなくて、やはりケース・バイ・ケースという意味で言われたのではないかと思うの中ではございますけれども、見通しといたしましては、百里の基地は首都防衛にはぜひ必要だというので、この機能をゼロにするにはもちろんまいりませんが、お互いに両立するようにということで、航空路の設定の問題も含めまして、両方で具体的な話をいたしておるのでありますが、防衛庁のほうも、国際空港であって、民間の航空路が非常に大事だということにつきましては、非常に理解を示しておるのでございまして、結論はまだ申し上げる段階にまでいってないですけれども、相当程度防衛庁に譲歩をしていただくような結果にならざるを得ないだろう、そういうふうに私は考えております。
  119. 木原実

    木原委員 大臣、われわれ政治の場にある者としましては、政治的な妥協ということはほかの分野についてはよくあることで、また大事なことだと思うのですが、ただ空域なんということは、どうも足して二で割るというわけにもいきませんし、政治的な妥協だけでは、事、安全に関する問題ですから、やはり科学的、もしくは技術的にかくかくだということがどうしても前提だと思うのですね。安全ですから、やはり百二十点主義でないとだめだと思うのです。  そこで、局長に伺っておきたいんですけれども、たとえば成田で空域を設定する場合に、防衛庁がどうあろうということは別に、運輸省として必要な空域、これはおそらく、飛行機の機種であるとか、便数であるとか、いろいろなことによって当然必要な範囲というものができてくるわけですね。それについての何か空域の設定の方針なり考え方というものはちゃんと出ているわけですか。
  120. 内村信行

    内村(信)政府委員 これも先ほどのあれで、まだ最終的に決定したわけではございません。大体現在までの百里の区域というのは、利根川のやや東側までずっと来ているわけです。これを相当北のほうに押し上げていただいて、鹿島臨海工業地帯のもう少し上のほうまで押し上げていただくというふうなこと、あるいはその高度においてある程度押えていくというふうなことで、スペース的な分離というものは考えております。したがいまして、成田空港が開港になりました場合には、まず当初は両方それぞれが、進入管制ないしターミナルレーダー管制、あるいは飛行場管制というものをやっていく、そのときははっきりと空域のセパレーションをつけておくということが初めの考え方でございます。  それから、さらに将来の考え方といたしましては、むしろ、その両飛行場が比較的接近しておりますから、いわゆるコモンISRといっておりますけれども、成田のほうも百里のほうもあわせて共通に管制をするという方向を考えております。ただ、そのためには施設の整備あるいは人員の養成というものが必要でございますので、いま直ちにはまいりません。ある程度の年月が必要でありますけれども、将来は、そういう形におきましてもう少し効率もあげてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  121. 木原実

    木原委員 共通管制というのは、管制の一元化というのは、これは多少問題が残るにしましても、安全度からいえば望ましい方向だと思います。ただ、それまでの経過、過程があると思うのですね。いつ開港するかという時期の問題はいろいろあるでしょうけれども、さしあたっては別の管制で進めざるを得ないわけですね、何年かは。  その場合に、いま距離の問題が出ましたが、百里と非常に近いわけですね。滑走路からの距離といいますと、成田と百里の間は十五、六キロですね。しかも成田の横風用と対になっている感じがするのですが、その辺の考え方はどうですか。  ちょっと接近し過ぎておりまして、実は御案内のように、成田問題でほかのことでがたがたやっておりましたけれども、歴代の運輸大臣も、百里の管制の問題というのは、まあこれは国内問題だから話はどうでもつくというくらいの気持ちでおったわけです。私たちもそれはそうだろうということでおったのですが、いざ開港ということを念頭に置いて空域の設定というふうに刻んでいきますと、百里は近過ぎますね。向こうの滑走路が成田のほうを向いている、横風用と、こういうことになっている。だから向こうから舞い上がりますと、たぶん十五、六キロだと、これはもう、あっという、一分とか二分とかという範囲ですね。これ、非常に気になるわけですけれども。いま横風用はまだできていませんけれども、いずれは横風用をつくるおつもりでしょうし、使うことになると思うのですが、どうでしょうか。
  122. 金井洋

    ○金井政府委員 御指摘のように、成田と百里は非常に近うございますが、現在約十五キロよりちょっと多うございます。しかし、いずれにいたしましても非常に近いわけでございまして、先ほど局長から答弁しましたように、将来は一元的に成田で進入管制をするというふうにいくのが望ましいわけでございます。ただ、当初はやはり分離して管制せざるを得ません。現在まだ横風用滑走路はできておりませんので、方向は、成田のほうは大体南北、それから百里のほうは大体これに直角に交わるような滑走路ですけれども、大体二十五キロから二十八キロくらいありますので、その間、ボルタックという保安施設がございますけれども、そのボルタックあるいはレーダーを使って利根川の北のほうから百里へ進入するということは可能でございます。ただ、可能でございますけれども、民間機の安全を最優先にしまして、もう少し北のほうへ動かしてくれないか。それから高度も、現在二万三千フィートまで使っておりますけれども、その高度も下げるようにしてくれないかというふうなことで折衝しております。  これは、百里の飛行場の上空、つまり百里の空域についての問題ですけれども、そのほか、先ほども申し上げましたように、鹿島灘沖の訓練空域というものもございます。この訓練空域についても、百里の空域と同様に現在折衝中で、両方の飛行場の機能が安全に果たせるようにいま折衝中でございます。
  123. 木原実

    木原委員 これはよほどあれをしないことには、考えてみると、おそらく高度だとかあれで調整をするのでしょうけれども、いかんせんやはり近過ぎるという事実関係がありますからね。だから、それはたとえば時間でやるといいましても、飛行機のことですからおくれることもありますし、管制が一元化されれば、いろいろな技術的な要因が排除されると思うのですが、なかなか容易なことじゃないと思うのです。  ただ、それに関連いたしまして、局長さっきちょっとおっしゃいました飛行コース、したがって、さしあたって開港時一年なら一年の間に飛ぶ便数だとか機種だとか、そういうものから必要な空域というものが割り出されてくると思うのです。それに基づく方針というものは、もう運輸省ちゃんと持っていらっしゃるのでしょう。どうですか。
  124. 内村信行

    内村(信)政府委員 大体の案はございます。まだはっきり最終的にきまっておりません。しかし危険は絶対にございません。
  125. 木原実

    木原委員 それは持っておられて、おそらく防衛庁のほうと交渉されておると思うのですけれども、私はやはり、これは民間優先という政府の方針があるわけですから、それはきちんとした形で出してもらいませんと、大臣の前でたいへん申しわけないのですけれども、政治家同士というものは、まあおまえの都合もあるだろうということで、足して二で割るでいいのですけれども、足して二で割った結果がたいへんなことになったのでは、これはたいへんですから、やはり運輸省の方針、たとえば飛行コース、機種、便数、こういうようなものからある程度機械的に、これだけのものが必要だというものが出てくると思うのです。だから、それをどう確保するかということだと思うのです。  防衛庁のほうはなぜこれだけの空域が要るのかという問題については、なかなか防衛庁のほうははっきりしません。必要だといえば何もかも必要なんです。しかし、いままで説明を聞いてまいりましたこの案からいきますと、廊下をつくったり、さまざまに訓練空域の中をかいくぐって民間機が飛ぶ、こういう経過になっているわけですね。時間差、高度差といいますけれども、時間差については、特に外国便なんかしばしばこの時間がずれることだってありますしね。それから高度差の問題にしましても、管制上の問題がありますが、これだって相手はたいへん活動的な飛行をやっておる、しかも非常事態みたいな場合だってしょっちゅうあるという形で訓練しているわけですが、片一方はたいへんのんびりと飛んでおる、中にはあまり事情のわからないパイロットもいるというようなことですから、これの扱い方については、もう原則として運輸省がきちんとした方針を持って、その上で防衛庁のほうに譲歩してもらう、これが安全の道だと私は思うのです。  ですから、この必要な空域の確保ということについて、できましたら、私はきょう、飛行コースや機種や便数の計算についてはおおむねどんなお考え方を持っているのかということを伺いたかったのですが、これは出ないというのならやむを得ませんけれども、どうですか。
  126. 内村信行

    内村(信)政府委員 まだ先生のおっしゃるほど正確な飛行コース、便数というような資料ができておりませんけれども、私ども先生がおっしゃることと全く同じ趣旨で、民航の安全ということをまず第一に考えております。  先ほど技術部長からも説明申し上げましたように、まだ最終結論を得ておりませんが、実は防衛庁のほうも私どもの言い分をよく理解してくれまして、実はほんとうの技術に携わっている者に言わせると、気の毒なくらい譲歩してもらっているというのが実情でございます。それにつきましても、ともかくお互いの立場を立て合い、なおかつ安全というものを完全に確保するということが必要でございますから、そういった意味において十分今後調整いたしまして、安全の確保については万遺憾なきを期したい、こういうふうに考えております。
  127. 木原実

    木原委員 時間がありませんので、簡単なことを端的にお伺いしておきたいのですが、待機空域については何か考えていらっしゃいますか。場所はありますか。
  128. 金井洋

    ○金井政府委員 待機空域、訓練空域、それから進入のコース、出発コース、こういうものは全部含めまして、何回も申し上げておりますように、民間航空の安全を最優先に考えて、そして時間とか高度の分離の方法もありますけれども、さらに、パイロットが忘れたような場合、あるいは管制官の通信がおくれたような場合であっても、なおかつ衝突しないように、二重、三重の担保の方法を考えてやっております。もちろん待機経路についても方法、場所その他について案がありますけれども、まだお見せする段階にまで煮詰まっておりません。
  129. 木原実

    木原委員 それから、これはちょっと話は違いますけれども、羽田−千歳の国内便、これを何か五十一年ころまでに複々線にしていくという計画はおありなんですか。
  130. 金井洋

    ○金井政府委員 空港整備、それから保安施設の五カ年計画によりまして五十年度までに複線化や複々線化という構想はございます。現在そのための地上の保安施設を五カ年計画に従って建設中でございます。
  131. 木原実

    木原委員 これはだいじょうぶですかね。結局、便数がふえるということが根拠なのですが、これは非常に過密な中でこれだけやっていくわけなのですけれども、その場合に一体何便くらいまでなら安全に飛べるのか。複々線になってどのくらい飛べるのですか。
  132. 金井洋

    ○金井政府委員 複々線になればどのくらいの便数まで飛べるのかということでございますけれども航空路の管制上の分離というかセパレーション、これは五マイルとか二分間隔とか同一高度の場合にきまっております。それから高度が違えばまた同時刻に出発させることもできますけれども、それと同時に、航空路のキャパシティーだけで便数の多い少ないがきまるわけではございませんで、御承知のように、空港のキャパシティーによってある程度制限されておるわけです。現在、航空路を延ばすこと自体は、特に便数をふやすということよりも、もちろん、管制上の管制官のロードを減らすこととか、安全を確保することとかというのがまず第一でありまして、便数をふやすためということではございません。その前に、便数をふやすためには、まず空港の施設のキャパシティー、それから成田と羽田とが両方使えるようになるとか、そういうことを考えた上でないと、航空路自体は直接便数増には寄与してまいりません。
  133. 木原実

    木原委員 そろそろやめますけれども、結局、空域というものに対する考え方ですね。これだけの空域がほしい、必要だ、こういうふうに運輸省でお考えになった場合、その場合にはどういう条件を満たしてこれだけの空域がほしい、こういうふうに出てくるのですか。つまり一定の空域が必要だとお考えになるわけですね。その際にその根拠になるものはどういう条件があげられるのですか。その辺のことを聞かせてくれませんか。
  134. 金井洋

    ○金井政府委員 ただいまの御指摘は、訓練空域空域の広さのことではないかと理解しておりますけれども、訓練空域の場合には、使用する飛行機、それからどういう種類の訓練を行なうのかということによって、速度だとか、それからたとえば失速試験をするなんといいますと、ほんとに失速させますと約千メートルとか二千メートルくらいある高度から下まで落ちますので、それだけの厚さとか高度が必要でございますけれども、ただ単に操縦練習するという程度のものであればそれほどではございません。したがって、これは使う機種、訓練の内容、こういうものによって空域をきめておることと思います。
  135. 木原実

    木原委員 いずれにいたしましても、時間差、高度差というような形で国際便を飛ばさなくちゃならないというのは、たいへん不安の要素があります。したがいまして、これらの問題につきましては、私どももこれからもう少し勉強させてもらいたいと思いますけれども、最高の安全度を確保してもらうようにやっていただきたいと思います。  それから、最後になりますけれどもアメリカ関係のものはこの前もちょっとお伺いいたしましたけれども、これはH4とかH6とかかなり広い分野がありますね。あれは何なのですか。
  136. 金井洋

    ○金井政府委員 米軍から要求になった訓練空域のことですけれども、その詳しい内容については、私どもは外務省を通じてよく聞いておりませんけれども、一応、米軍の基地に近いところ、たとえば岩国あるいは横須賀というような基地にできるだけ近いところに訓練空域がほしいという要請を受けております。ただ、何のためにあれだけの広さなのか、それから番号のふり方、そういうものについては詳しく聞いておりません。
  137. 木原実

    木原委員 これはおそらくは管制空域のことだと思うのですけれども、関東周辺にH4とかH5AとかH6とかいうかっこうであるわけですね。管制上の措置じゃないかと思うのですけれども、米軍のほうの管制は大体横田が中心になって、百里の場合も、今度自衛隊のほうでほしいといっている扇型になっているFですね、この管制は百里じゃなくて横田の管制の中に入るのですか。どうですか。
  138. 金井洋

    ○金井政府委員 百里空域につきましては、百里の進入管制と飛行場管制は、運輸大臣が防衛庁長官に委任しております。それから横田につきましては、これは米軍にまかせております。したがって横田と百里とは全然独立に全く別にやっております。したがって、自衛隊が要求しております鹿島灘沖合いの訓練空域、これについては百里が責任をもつわけでございます。
  139. 木原実

    木原委員 わかりました。では、管制でH4とか5とか6とかいうのがあるのですが、これは米軍のほうの管制ですね。御記憶がないでしょうか。
  140. 金井洋

    ○金井政府委員 詳しいことは聞いておりません。
  141. 木原実

    木原委員 そうですが、わかりました。  最後に一つだけ伺っておきたいのですが、パイプラインの問題 いろいろ問題があるのですが一問だけにしておきますけれども、油の輸送の費用がたいへんかさむというので、石油連盟あたりからは、鹿島から揚げた場合たいへんかさ高になった分をどうするのだ、こういう声が聞こえてくるわけですが、上がった分はどこがかぶるわけですか。公団がかぶるわけですか。国がかぶるわけですか。あるいは供給する企業がかぶるわけですか。その辺はどうですか。
  142. 内村信行

    内村(信)政府委員 いまその辺公団といろいろと詰めておる問題でございますけれども、やはり基本的に考えれば、ガソリンと申しますか、航空燃料の燃料代というものは、それを飛ばす航空会社がかぶるというのが基本的な原則であると思います。外国の例と比べましても、高いところもあり安いところもありでございます。ある程度高くなっても、外国にはもっとより高いところもございます。したがいまして、一時的に公団がそれを立てかえるというようなことはございましょうとも、最終的にはやはり航空会社のほうでそれに使う燃料は負担するというのが基本的な原則ではないかというふうに私は考えております。
  143. 木原実

    木原委員 もう時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、そうしますと、いまの問題は原則として企業にかぶってもらう、こういうことですね。それがたとえば航空運賃その他にはね返ってくる問題はまた別ですね。
  144. 内村信行

    内村(信)政府委員 それは国際線の問題でございますから、国際線の運賃についてはIATAのほうで全部総まとめにしてやっております。したがいまして、その分が直ちにはね返るかどうかということはわかりません。
  145. 三原朝雄

    三原委員長 加藤陽三君。
  146. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 航空安全、航空事故の防止ということは、国民として取り組まなければならないたいへん大事な問題だと思うのでございます。その意味で、今度の調査委員会法案も私どもは非常に評価しておるのでありまして、この会がほんとうに厳正な調査ができますようにということをねらいにして、この法案の審議に取り組んでまいりたいと思うのでございます。  その前に、航空事故の防止につきましては、航空事故調査委員会も大事でありますけれども、やはり国の行政機構とか設備とか要員とかいうふうな面において十分に対応できておるだろうかという基本的な問題について、ちょっとお伺いをしたいのであります。  時間の関係で質問を要約しながらまいりますので、まず第一に機構の問題でございますが、昨年管制保安部をつくられ、また安全監察官を置かれた。これも一つの進歩だと思う。しかし基本的に考えますと、いま自衛隊がたくさんの飛行場を持っておるわけです。進入管制とか着陸誘導管制などをいま自衛隊がやっておるわけでありますが、アメリカなどは連邦航空庁が軍と民を一緒に航空交通管制をやっておるというふうに聞いておるのですが、航空交通管制は一本化することのほうがいいのじゃないかと私は思うのです。そういう点は大臣どうお考えでございますか。
  147. 内村信行

    内村(信)政府委員 ちょっと大臣が御説明申し上げる前に事務的に補足いたします。  おっしゃるとおりに、航空交通管制というのはやはり一元的にやる必要があると思うのです。そこで、現在航空法上どうなっているか申し上げますと、先生御承知と思いますけれども、これは全部運輸大臣が一元的にやることになっております。ただ、防衛庁、自衛隊の飛行場につきましてはその管制を委任する。そして委任された範囲内においての飛行場の管制なり何なりをやっていただいておるわけでございますが、その際にも、管制官の資格とか技量、そういったものについては共通の試験制度をもって運用する、あるいはその運用状況についても事後見さしていただくというふうなことで、つまり委任に対して法律上は統制ということばを使っておりますけれども、委任申し上げてその結果、その委任が完全に行なわれておるかどうかというふうなことをこちらもしょっちゅう拝見させていただいておる。それで統一的な運用をはかっておるということでございまして、現在の形でも、これが一元的にやられておる形というふうに考えております。外国においても大体そういうところが多いのではないかというふうに考えます。
  148. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 私も現状は知っておるわけなんですけれども、現状でいいのだろうかという疑問が前からあるわけなんです。それはそれでけっこうですが、やはり将来、航空庁とかなんとかいう前から運輸省も考えていらっしゃる組織、これは私は、やはりこれだけ飛躍してまいります航空交通行政を考えますと、何か行政のほうがおくれているというような感じがしてならないのですが、大臣のお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  149. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 私も久しぶりで航空行政に携わったのでございますけれども、今日の日本の航空行政は非常に分量も多くなっておりますし、内容もまた充実しておりますし、今後のことを考えますと、おっしゃるように、行政機構につきましても根本的に考えないと、いまのままでは処理しきれないくらいの仕事がたくさんございます。非常に不足だと思います。非常に御同情のあるお話を伺いましたが、私もこれは運輸省における一番大きな問題の一つとして取り上げなければならぬと思います。同時に、今度は調査委員会設置法案を出しておりますけれども、全体を見まして、どうも航空法その他関係の法令がはたしてこれでいいだろうかというような、根本的には私も非常にいろいろの意見を持っておるわけでございまして、今度は航空法の一部改正を出しておりますが、これは技術的な問題でございます。もっと全般に考えなければいけないだろうということも一つの問題でございまして、今後、そういう方面につきまして法体系を整えるということ、それからいまおっしゃった、もう少し実際の事情に合ったような現実に合ったような機構を整えるということ、両方とも非常に必要ではないかと思っております。
  150. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 次に、航空保安設備ですけれども、五カ年計画をもってやっていらっしゃるというふうに承知をしておるわけですが、昨年の状況は、昨年この本委員会において、私、航空局長さんから承ったことがあるのですが、その後、航空路監視レーダー、これは四十九年中にできるのだ、日本の全領域をカバーするようになるというようなことをお聞きしたように思うのですが、そのとおりに進んでおりますか。
  151. 内村信行

    内村(信)政府委員 昨年御説明申し上げましたように、五カ年計画の中で全国を航空路監視レーダーでおおいたいということで現在進めております。ただこれは、四十九年度中に何とかしてハードをつくってしまいたいということで極力やっておりますが、実は相当困難な問題もございます。と申しますのは、まずサイトをきめなければいけないわけでございますが、大体山の上とかそういうふうなところでございまして、そのためには道路をつけなければいかぬというふうなこともございますし、今日の時代でございますから、皆さんの御了承を得ないとなかなかそれができません。そういった意味で、われわれとしては極力努力いたしておりますが、一つ管理要員の不足、そういったようなこと、土地を買収したり設計したり監督をしたりする職員が非常に不足でございます。そういった意味で、予算はございましても、人の面でなかなかそれがはかどらぬというのが偽らざる実情でございます。  ただしかし、そういうふうなことはございますが、私どもといたしましては、極力四十九年度中にはこれができ上がるようにしたいと思っております。さらに五十年度以降におきましては、そういった航空路監視レーダー、それを情報処理いたしまして、それでもって、実際に管制部におきましてレーダーを見れば、どこの飛行機がどういうふうに通ってどこへ行くというふうなことが目の前に映る、それを見ながらやっていくというふうなことをフェーズ・ツーと申しておりますが、そういうことを五十年度ないし五十一年度くらいでやってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  152. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 いま人の問題が出ましたけれども、昨年の際も、五十年までに航空交通管制官を千二百人充足するのだというふうなお答えがあったように思うのですが、充員の状況はいまどうなっておりますか。
  153. 内村信行

    内村(信)政府委員 おかげさまである程度の定員がとれまして、昭和四十八年度の定員は九百六十四名になっております。ただ残念ながら実員のほうはなかなか養成が追いつきません。実は沖繩のほうにも出さなければなりませんし、センターのテークオーバーがございますし、なかなか追いつきませんで、残念ながら九割強というような充足率でございます。さらに残りの三百数十名、これをさらに五カ年のうちに確保していきたいということで考えておるような次第でございます。
  154. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 たいへんむずかしい問題だと思うのでありますけれども、ぜひやってもらわなければならぬ。幾ら施設をつくってもどうにもならぬと思うのです。保安設備五カ年計画の地上設備VORとかTACANとかいろいろなものがございますけれども、こういうものは予定どおり進んでおると考えていいですか。
  155. 内村信行

    内村(信)政府委員 大体予定どおり進んでおりますが、ただいま申し上げた用地取得等の問題で若干おくれぎみなことは否定できないと思います。極力がんばりたいと思っております。
  156. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 その次にお伺いしたいことは、今度事故調査委員会をお出しになるわけですが、いままで大体のことは伺っておるのですけれども、そのつど調査会をつくって調査をなさって、その結果を答申というようなことで発表なさっておるわけですが、この調査結果の報告で、事故防止の上でこういう点は役に立ったというようなことがございましたら、例示的に二、三お話をいただきたいと思います。
  157. 内村信行

    内村(信)政府委員 現在までのところ、事故調査をやりまして勧告が出ておりますのが、例の「ばんだい号」の事故、それから雫石の事故の二件ございまして、これにつきましてはすでに結論が出まして、勧告を受けております。勧告の詳細につきましてはあとで技術部長から申し上げますけれども、それによりまして、その勧告どおり私どもは着々進めております。これはやはり航空安全上大いに役立っておると私どもは考えております。
  158. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 それでは、法案内容について若干お聞きしますが、先ほど木原委員から私が伺いたいと思ったことをほとんど聞かれましたので、その点は略しまして、補充的に足りないところを伺ってまいります。  第五条の委員任命のところですが、「科学的かつ公正」という表現になっておるわけですが、「この科学的かつ公正」、わかったようなわからぬような気が私はするのですがね。科学というのは大体客観的なものじゃないでしょうか。むしろ技術的かつ公正というふうな意味かなあというふうに思うのですが、趣旨とされるところを御説明願いたいと思います。
  159. 内村信行

    内村(信)政府委員 たいへんむずかしい御質問で、答弁に窮しておるのが実情でございますけれども、科学と申しましても、自然科学、人文科学、社会科学、いろいろあると思いますけれども、そういった意味では技術的と若干意味が違うのではないかと思います。少なくとも、ものごとを客観的に考えられる能力と知識のある方というふうな意味ではないかというふうに思います。ただ、「公正」というものは、不偏不党、どこにも片寄らず中立な公正に進んでいける、こんなふうに申し上げるほかないと思います。
  160. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 いまのお答えはいいんですが、それは「科学的」という表現で適当かどうか、私ちょっと疑問に思いましたけれども。  それから、十四条の委員会権限のところですが、これは、委員会はこれこれの「処分をすることができる」と書いてありますね。この委員の中でやはりいろいろお考えがあろうと思うのですよ、こういうふうな調査をしたいと。これは委員会としてでなきゃできないのですか。委員会の中の委員の方の独自の見解で、自分はこういうふうな調査の進め方をしたいと思っても、委員会としてまとまらなければできないという意味ですか。どうですか。
  161. 内村信行

    内村(信)政府委員 これは、やはり判断委員会でございます。第十四条第一項で「委員会は」云々「次の各号に掲げる処分をすることができる」と書いてございまして、その次の第二項の項で「委員会は、必要があると認めるときは、委員長委員又は事務局の職員に前項各号に掲げる処分を、専門委員に同項第二号に掲げる処分をさせることができる」と書いてございますので、もともとは委員会の命によって専門委員にしても事務局にしても動く、こういうことになっております。
  162. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 そうしますと、やはり委員会できめなければ、各委員は独立して自分の考えに従って調査を進めていくということはできないというわけですね。委員会が委任するのでしょう、これは。
  163. 内村信行

    内村(信)政府委員 さようでございます。ただ、これは今後、その委員会の中でもって、委員会の議事規則なりあるいは運用規則というものが出てくると思いますから、その際にその辺は明らかにされることだろうと思います。
  164. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 その次に同条の四号、五号ですね。提出物件とかいろいろ物件についての権限がきめられてありますが、これは警察の権限との関係はどうなるのでしょうか。ちょっと木原さんもお聞きになっておったようですが、警察のほうが先に押えたいというふうな場合には、具体的にどういうふうになるのでしょうか。
  165. 内村信行

    内村(信)政府委員 それはやはり両方の立場もございますので、それについてはよく警察と相談をしながら円滑にやってまいりたいということを考えております。
  166. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 これは第一項第三号に「関係者に出頭を求めて質問する」とありますね。これは罰則がついていましたね。この関係者は、自分の会社の不利益になるようなことは、なかなか質問に答えにくいような事柄も出てくると思うのですね。それはどういうふうにお考えになりますか。何だか罰則を適用していいとは私は思えないのですね。
  167. 内村信行

    内村(信)政府委員 ただこれは、先ほどの木原先生の御質問にもありましたが、非常に微妙な点もありますけれども、私どもは、やはり事故調査というものはあくまで真実というものをやっていかなければならぬ、そのためには逆に、秘密を守りましょうということで担保してまいりたい。これは虚偽の陳述などについても、もちろんそれは当然罰則がございます。ただ、この問題で黙秘権があるかないか、こういうのが一つの問題だろうと思います。憲法上、黙秘権というのは当然認められた権利でございますから、いやしくもその御当人がそういうことを答弁して、それによって刑事訴追を受けるではないかというふうな見解から、これに対して答弁をしないということは、第十四条でも破れるものでもございません。それは当然前提にしての上で、そうでないものについては答弁を求めるというふうに考えております。
  168. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 それからこの権限のところで、外国の飛行機の場合を考えましてちょっと私、疑問が出てきたのですが、たとえば外国の飛行機が日本に来た、事故を起こした、その場合に、外国人のパイロット、ナビゲーターでもいいでしょう、呼んで報告を徴する、これは出さなかった場合には罰則があるのですよ。こういうことは国際法上認められますか。
  169. 内村信行

    内村(信)政府委員 これは一項の規定事故調査権限がはっきりきまっておりまして、事故調査についての権限を持つ国は事故発生国であるということになっております。これに対して、飛行機の登録国、これは代表者を出せる、そういう権利がございます。それから航空機の製造国、これはもし事故発生国が同意するならば代表を出し得る こういうことになっております。そういった意味で、あくまでも事故発生国というものがこの事故調査権限ある当局であるということがICAOでもはっきりしておりますから、それによっていまの問題も解決する問題だと思います。
  170. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 ちょっと私はおかしいと思うのですね。たとえばアメリカの飛行機が日本を飛んでいる場合、アメリカの飛行機の中で行なわれている法律アメリカの法でしょう。違うですか。事故を起こした飛行機が飛行機でなくなれば別ですよ。だから、事故の程度によりますけれども、ちょっとどこか損傷してまた飛んでいった、やはりこっちで調べなければいかぬという場合に、アメリカ人のパイロットにこっちへ来て報告せい、報告をしなければ罰金かけるということは、これはだいじょうぶですか。
  171. 内村信行

    内村(信)政府委員 これはやはり、先ほど申し上げたたてまえになっておりますが、たとえばアメリカ航空機が飛んでまいりまして羽田で事故を起こしたというものは、やはりパイロットを呼んで事情を徴するということはやっております。やはり領空と申しますか、領土内で起きたものについては、その事故発生国が権限を持つということは徹底した議論だろうと私は思っております。
  172. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 いや、そこまではわかるのですよ。私が言うのは、その場合に罰金はかけられるかということなんです。これは法制局のほうがいいのかもわからぬけれども、ちょっと私、法律上疑問に思っているのです。お答えできなければあとでもいいですがね。
  173. 内村信行

    内村(信)政府委員 ちょっと私、あまり専門的にお答えできませんけれども、おそらく国内における刑事事件として取り上げられれば、そういったこともできるんじゃないかと思います。
  174. 新谷寅三郎

    新谷国務大臣 これは船の場合でも同様だと思いますね。これは外国にいる人たちに刑罰を適用はできませんけれども、これが領海内に入ってきた場合には、それは刑罰の対象になっていれば、調べたりあるいは罰則を適用するということは、これは船でもやっておりますから、私は飛行機においても同様だと思うのです。
  175. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 じゃ、それは了解しました。いいでしょう。  その次に、第十五条に「航空事故の発生の通報」というのがございますが、この間、昨年のこの委員会の審議のときにも非常に問題になったニアミスの問題を非常に取り上げたわけですけれども、いままでニアミスとして報告されたものがどのくらいあるのか。大体ニアミスについては、この調査委員会運輸大臣通報するのかどうかという点をお答えいただきたいと思うのです。
  176. 内村信行

    内村(信)政府委員 ニアミスは事故の中に概念は入っておりません。これはICAOでもそうでございます。したがいまして、ニアミスの通報事故調査委員会にはなされません。
  177. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 それはわかりましたが、ニアミスの発生状況。
  178. 内村信行

    内村(信)政府委員 ニアミスの発生状況につきまして、昭和四十六年の七月、例の雫石の事故が発生したわけでございますけれども、それ以後現在まで、いわゆる異常接近の報告があったのは五十七件でございます。その詳細を調べました結果、いわゆる所定の管制間隔が足りないというふうなもので、いわゆるコンジェスチョンと申しておりますが、そういったようなものもございまして、これはほんとうのニアミスである、危険性があったというのは大体十件程度でございました。それが発生の件数でございます。
  179. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 次に十八条の「原因関係者意見の聴取」という規定がありますね。これは、原因関係者に「意見を述べる機会を与えなければならない」と、こうなっておるわけですね。この「関係があると認められる者」というのは、どの範囲を考えていらっしゃるのですか。
  180. 内村信行

    内村(信)政府委員 これは大体、パイロットが生きている場合はパイロット、あるいはその製造者あるいは整備関係、あるいはその目撃者等、いわゆる関係者でございます。これは第十四条の第一項第一号でありますが、「航空機の使用者、航空機に乗り組んでいた者、航空事故に際し人命又は航空機の救助に当たった者その他の航空事故関係者(以下「関係者」という)」というふうにございますので、ほぼこれに類似したものではないかというふうに考えております。
  181. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 「その他の航空事故関係者」とあるわけですよね。これは、「意見を述べる機会を与えなければならない」ということになっていますと、調査を終える前に一定の範囲の人の意見を必ず聞かなければいかぬのでしょう。範囲を確定しておかないと、あとで問題になるんじゃないでしょうか。
  182. 内村信行

    内村(信)政府委員 お説のとおりでございます。その点につきましては、やはり省令なりなんなりではっきり限定する必要があると思います。
  183. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 報告書の問題ですが、先ほど木原委員もお聞きになっておりまして、中間的な報告はやらないんだというお答えでした。それも考え方だと思うのですが、たとえば調査をしておる段階で、きわめて明瞭な航空機のミスが部品のミスでも何でも出てきたというふうな場合は、事故はいろいろな総合的な原因で起こるんでしょうから、それだけではないにしても、そのことだけははっきり報告したほうが航空事故を防止する上で役立つんではないかというふうな気がするのです、いまの質疑応答を聞いておって。いかがでしょうか。
  184. 内村信行

    内村(信)政府委員 私はこれはこう思っております。事故調査を行なっております場合に、当該事故関係があるかどうかわからない、しかしこういう点は事故につながるおそれがあるのではないかというふうなことが発見される場合が多々あると思います。そういった場合は、常に事故調査が終わるまでもなく、そういったことを関係者通報いたしまして注意をさせる。たとえば、そういう機体を持っておるところとか、あるいはメーカーであるとか、あるいは航空会社とか、関係者通報して至急改良するという方法をとるべきものである。必ずしもこれは一般に公表するかどうかは別にいたしまして、関係者にすべて知らせて改善するということにいたしたいと思います。
  185. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 それはそれでいいでしょう。それから報告書の作成ですね。ちょっと私、聞き漏らしたのですが、少数意見というものは載せるんですか、載せないんですか。
  186. 内村信行

    内村(信)政府委員 これは必ずしも法律には明定してございませんが、私といたしましては、当然少数意見というものがあれば、それは明らかにすべきであろうというふうに考えております。先般の「ばんだい号」の事件についても少数意見を明確に付してございます。
  187. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 それから先ほど木原委員との質疑の中で出てきましたけれども、これは民事、刑事の裁判の証拠として扱うかどうかという問題ですよ。このアメリカの連邦航空法ですか、これは「事故及びその調査の報告書の一部又は全部は、報告書に記載された事項から生じた損害賠償に関する訴訟に証拠として認められたり、又は使用されたりしてはならない」と、こう重日いてある資料をいただいたのですが、これは公表される前の個々の調書の段階で私はやはり出すべきじゃない。あなたの先ほどの御答弁は、公表されたものは証拠として使われてもしかたがないんだというふうな御意見でしたが、私はちょっとこれは心配なんですが、この点はもう一ぺんお伺いいたします。
  188. 内村信行

    内村(信)政府委員 その点は、先ほど御答弁申し上げましたように、本来この事故調査というものと民事、刑事の賠償、これは全然違うものでございます。したがいまして、その調査経過におけるいろいろなこと、そういったものはやはり証拠として援用されることは避けるべきであろう、こういうふうに考えております。調査結果として出したもの、これはあるいは裁判所なり何なりの判断として援用されるかどうかということは裁判所の問題であろうということでございます。
  189. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 それから、この事故が起こりますと、それに伴って当然、営業停止処分だとか、あるいは免許の取り消しだとか、いろいろな行政処分が起こると思うのですね。この行政処分運輸大臣がおやりになるわけですが、この行政処分調査会との関係はどういうふうに考えておられますか。
  190. 内村信行

    内村(信)政府委員 これは私は特段の法律関係はないと思います。事故調査委員会結論事故調査委員会結論、それから運輸大臣が当該事故の場合にどういうふうに判断してどういう行政処分をするかということは、これは法律的には関係ないことであります。ただし、実態論としては事故調査委員会結論というものを参考にすることはございます。あるいは行政についても勧告があれば、これを受け入れてやることはあろうと思います。
  191. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 たてまえとしてはわかるのですが、しかし実際問題としては、もし運輸大臣行政処分がこの調査委員会の報告と違うようなことになりますと、たいへんむずかしい問題が私は起こると思うのです。その辺はよくお考えになって処分なさるのでしょうから、これ以上は申し上げません。  その次に二十一条の委員会の建議の規定、これは事故のあったときにやるのですか。必要と認められたときはいつでもできるのですか。たとえば、来年度の予算でどうせいとか、あるいは来年度どういう法律をつくれというふうなことまでこの二十一条で委員会は建議できるというようなお考えですか。
  192. 内村信行

    内村(信)政府委員 二十条の勧告のほうは、事故調査を終えた場合に行なうということでございます。この建議のほうは、事故調査自身とは関係ございませんで、委員会が必要ありと認めるときはいつでも建議できるというたてまえになっております。
  193. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 法案のほうは大体それでいいのですが、もう一つこの法案に関連いたしまして気になりますのは、国際航空が非常にひんぱんになってまいりまして、たとえば、日本航空が昨年ですが、モスクワやインドで事故を起こしたわけですね。先ほど答弁を聞いていますと、あれは条約か何か知りませんけれども、発生地主義で事故の発生した国が調査を担当するのだ、こういうふうにおっしゃいましたけれども、そういうことかと思うのだけれども、たとえばモスクワの場合は日本人がたいへん犠牲者を出しているのですね。ソ連の調査だけでいいのかということなんです。遺族の心情、また日本国民としても、ソ連の調査はこうなったのだということから、これはこうだということだけで済まされないと思います。日本の航空機事故をなくする意味からいっても、日本自身もこの調査に積極的に関与できないか。ことに、こういうふうな調査委員会をつくるのでしたら、そういう気持ちがしてならないのですが、これはどうでしょう。
  194. 内村信行

    内村(信)政府委員 先ほど申し上げましたように、ICAO規定事故調査権限ある国は事故発生国、ただし、その航空機の登録国はこれに対して参加を認められているわけでございます。そういう権利があるわけでございます。したがいまして、今度のニューデリーの場合におきましても、わが国からは政府代表としてここにおります技術部長事故調査課長が本件の事故に参加しております。それからまたソ連の際にも同様に、事故調査委員会はソ連の責任において設けたわけでございますけれども、それに対してわが国の事故調査課長外二名を参加させまして、これに日航の職員も参加いたしまして、一緒に事故調査をやったようなわけでございます。  しかし、こういうふうなことはできますけれども、最終的に事故調査の結果について、責任をもってこれであると推論をし得るのは、権限がある——もちろんその場合には、こちらが意見を言うことができますけれども、最終的に結論を出し得るのは権限ある事故発生国ということになっております。しかし、それまでの間私どもも、その事故調査に対しては、航空機の登録国の権利というものがございますから、それによりまして十分一緒に事故調査に立ち合っておるわけでございます。
  195. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 これは日本の飛行機が事故を起こすのですから、関係者もいろいろおるわけですよ。関係者考え方などでも、ソ連ならソ連の発表はどうも納得できないというふうな場合にはどうなるのでしょう。どういうやり方が残っていますか。
  196. 内村信行

    内村(信)政府委員 これはソ連の問題でございますから、ソ連には事故調査に対する再審というふうな制度はおそらくないと思います。したがいまして、民事の問題、刑事の問題は、これは別といたしまして、事故調査に関する限りはこれで終了ということにならざるを得ないと思います。
  197. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 これは条約でそうきまっておるわけですか。
  198. 内村信行

    内村(信)政府委員 そのとおりでございます。
  199. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 それじゃ、条約できまっておるとなれば、私もやむを得ないと思うのですけれども、何かやはり将来もっと考えなければいかぬのじゃないかと思います。その場合だって、日本の刑事裁判の管轄権などは及ぶわけでしょう。パイロットのミスだったら、パイロットは業務上過失致死でも何でも問われるわけでしょう、日本の法律で。事故原因調査についてだけは日本としては何も関与できない、外国の政府の発表のままだということでいいのかという気持ちがしてなりません。しかし、これはいまのお話で、条約でそうなっておるとおっしゃるのですから、いまこの際申し上げてもやむを得ませんので、また私どもよく考えてみたいと思います。  質問を終わります。
  200. 三原朝雄

    三原委員長 この際、暫時休憩いたします。本会議散会後、委員会を再開いたします。     午後一時二十一分休憩      ————◇—————     午後四時五十一分開議
  201. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三塚博君。
  202. 三塚博

    三塚委員 それでは、一番大事な法務省の設置法改正ですから、この際に、この改正案に関連をしてお伺いをしておきたいと思います。  設置法二条には、一体的に遂行しなければならない責任を負う行政機関ということで、第一番目に、「検察に関する事項」から十一号設けられております。特に法務省が行なわなければなりませんことは、憲法十四条に規定しておる法のもとにおける平等、こういうことであろうと思うし、この精神を受けてやられる「人権の擁護に関する事項」、これこそまさに最大のものだと考えます。特に、かって封建制、専制時代、政治的な権力による圧制、あるいは経済的な力による圧制、そういうものから民主主義が生まれ、そのものから法が生まれ、法のもとに平等だという思想が確立した。そういう意味でひとつ御質疑を申し上げたいのでございますが、昨今、組織による暴力、そういうものも一つ大きな社会的な話題を起こしておると思うし、あるいは言論による圧力ということで、無実の人がイメージによって事実上世の中から葬り去られねばならぬというような事件等もあります。  本日は、この設置法条項に対する質疑の前に、本山製作所という会社が宮城県仙台市にございますが、この労働争議は、本衆議院におきましてもたびたび取り上げられております。私は、労使の問題でありますからこの件には言及をいたしません。本問題に関連をいたしまして起きました人身事故、暴力傷害、それに関連をいたしまして、私からいたしますと、法務省、人権を守るのに欠くる点があるのではないかという危惧を持つものでありますから、本件について御質疑を申し上げます。  そこで、労働争議はさておきまして、本件につきまして大体五十六件ないし六十件といわれる暴行傷害事件、告訴、告発が両方から出されております。その告訴あるいは警察独自の捜査、検察独自の捜査の中でやられた問題について、どのように現在進行しておるか、まずその点をお聞かせいただきます。
  203. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 具体的事件の目下捜査中の捜査事件でございますので、おそれ入りますが公安課長から答えさせていただきます。
  204. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 お尋ねの点につきまして御説明申し上げます。  本山製作所の争議をめぐりまして発生いたしました刑事事件でございますが、警察で現在なお取り調べておるものが十五件、警察の捜査が終わりまして仙台の地方検察庁が受理いたしましたものが本年の六月二十九日現在で四十六件、九十名、こうなっております。  このうち、検察庁におきまして、捜査の結果、犯罪の容疑が認められた者一名につきまして公判請求をいたし、一名につきましては、少年でございますので家庭裁判所へ送っておる、こういう事情でございます。その他の事件につきましては、なお捜査か行なわれておる、こういうことでございます。
  205. 三塚博

    三塚委員 十二月十二日の事件と、こういわれておるのです。簡単に委員各位の御了解をいただく上で経過を一分ほどで申し上げますと、この本山製作所の争議というものは、第一組合から分離をいたしました同盟系の組合がございます。なぜ分裂をしたかといいますと、第一組合の闘争方針についていけないということで分離をいたしました。分裂をした組合員が約三百四十名、残りの組合員が三百名以下であります。そういう中におきまして、第一組合による、いわゆる合法的と称されておるようでありますが、そういう行動によりまして、会社が非常な業務遂行上ピンチに立ったわけであります。そういうことから、ガードマンといわれる会社を雇い入れる、その仕儀に至ったわけであります。  この経過についてはこれ以上言及いたしませんですが、問題は、その後に起きたわけでございまして、十二月十二日、社会党県会議員団数名を先頭にいたしまして、支援労組の団体の支援をいただきまして、団体交渉の申し入れをやると同時に集会をやられたのが事実であります。そこで会社側は、業務遂行上でありますから、これ以上のラインからお入りをいただくことは御遠慮いただきたいということを、当然の行為としてお願いを申し上げたのです。それに対して、社長以下経営者にお会いしたいということでありますから、それであれば、数百名の方を一挙に会うということは常識上でき得ないので、数名の代表によってお会いをするのでという回答を申し上げたのでありますが、その回答に耳をかさず、そのまま会社の構内になだれ込んで入りました。その結果そこにトラブルが起きたのが、十二月十二日の事件でございます。  そこで、その事件の中で逮捕者が出るわけでございますが、会社側及び第二組合の方々を含めて五名逮捕されました。それで、入りました方々、第一組合のメンバーでございますが、この方々は三名逮捕、若干時日に開きがございますが、いずれにしても逮捕されたわけであります。逮捕されますと、御承知のように、四十八時間警察の勾留がございます。そうしてなお捜査上必要だということであれば検事勾留がありますことは、御案内のとおりでございまして、ここで奇怪なことが起きておるわけでございます。会社側はそのまま検事勾留が認められて、引き続き勾留の上、年末寒いその時期に検事によって取り調べが進行するわけですが、当然私どもが見て、法に違背をしながら、入っちゃいけないというのに力づくで押し込んだ側の方々のうち、最も悪質だと思われる三名の方か逮捕されたのでありますが、わずか二日間の警察勾留だけで、検事に向けてさらに勾留の要求をいたしましたのに、この方はすぐ釈放されたという、こういう事実がございます。  事の起きた原因は、集会を催し、集団の圧力をもって団体交渉を要求し、これを阻止したラインを割って中に入り込んだ、その中で起きた事件でございます。言うなれば、原因はあくまでも集会を持った側にあり、県会議員を筆頭としたその多くの集団群にあったと認定をしなければならぬのに、こういう、言うなれば片手落ちといわれるようなことが行なわれておるわけでございますが、この件について、こちらは釈放され、そうでないほうは寒いのに十日も勾留されておったということはどういう経緯なのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  206. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 お尋ねの件は、昨年の十二月十二日に、御指摘のような事実で、本山製作所におきまして、第一組合側の労組員及びこの支援に参った人たち、これと会社側の職制あるいは第二組合の人たち、この間でトラブルが起きまして、その間に暴力事件が発生した。その中には御指摘の地元の県会議員がおられて、これが約三カ月のけがをされた、こういう傷害事件があったわけでございます。  これにつきまして、警察のほうでは捜査をいたしまして、十二月の十二日から十六日ごろまでの間に容疑者を四名逮捕いたしたわけでございます。これは御指摘の会社側の方になろうかと思いますが、これらにつきましては、罪を犯したと疑うに足る証拠がございまして、勾留請求をして取り調べをして、そのうち一名が起訴されたということでございます。その後さらに捜査が続けられまして、本年の一月に入りまして、会社側と申しますか、第二組合側の者が一人と第一組合側の者が三名逮捕され、そして一月の十日ごろに送致されてまいったわけでございますが、その際に証拠を検討いたしましたところ、これらにつきましては勾留請求をするに足る十分な証拠がないということで一両方、第一組合側も第二組合側の者につきましても釈放して、在宅で取り調べをすることになった、こういう経緯になっておるものでございまして、検察官といたしましては、勾留請求するに足る証拠がある者につきましては、法律に従いまして裁判所に勾留請求をし、勾留状の発付があった者につきまして勾留の上で捜査を続けて処理をした、こういうことになっておるわけでございまして、この関係の八名につきましては、一名につきまして公判請求がされており、その他につきましては、釈放されてなお捜査が続けられておる、こういう状態になっておるわけでございます。
  207. 三塚博

    三塚委員 しからば、勾留請求があった場合、勾留の必要なしということで釈放される要件をひとつお聞かせ願います。
  208. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 検察官が事件の送致を受けました場合に、まずその者が罪を犯したと疑うに足る相当な理由があるかどうか、つまりこれを認めるに足る証拠があるかどうかというような点が第一の判断事項になるわけでございます。それに続きまして、この事件の事案の内容、たとえば、暴行の程度であるとか、あるいは傷害の程度であるとか、こういった事件の内容、この事件におきまして当該被疑者がどういう役割りを果たしたか、その役割りあるいは地位、こういった状況を考え、さらにまた捜査の必要上拘束して取り調べる必要があるかどうか、こういった点を考慮して勾留に付すべきかどうかということが判断されるわけでございます。
  209. 三塚博

    三塚委員 公安課長さん、私、地元ですし、この事案は、先ほど前段にも申し上げましたように、労使の紛争についてとやかく申し上げる立場には私はございません。その紛争中に起こされた傷害事件、これの処理についてお伺いをしているわけです。ですから、その点をまず頭の中に入れておいていただきます。  そしてこの事件を担当した警察官はこう言っているのです。引き続きこれは検事勾留をして証拠調べをしなければならない確実な容疑がある、こういうことのもとに検察庁に申請をしているわけです。この内容は暴行傷害です。この人によってけがを負うた人もおるわけです。鈍器様のもので頭を打たれて鮮血にまみれてぶつ倒れたわけですから。県会議員が三カ月のけがをされたという課長さんのお話ですが、私も地方議会におりましたから、その後の県会議員諸君の話も、党は違っても仲がいいものですから、聞いております。その内容は申し上げません。暴行傷害を加えて、そして血まみれでぶっ倒れる、さらに足げりにされる、そのことがいろいろな証言で完全に認定をされて、警察官は確信をもって、法の正義を実現するためにやらなければいかぬということで検事さんに出したのです。それが釈放になった。警察官はこう言っているのです。名前は言いませんが、一生懸命こんなに捜査をし、正義を実現しょうということでやったのに、検事さんによって一蹴されるということでありますと、何のために捜査をしておるのか、基本を疑いたくなります。そしてまた傷害を受けた御本人、家族は、これだけのけがを負わされて、しっかりとわかっておりますのになぜ検察庁はこれを取り調べないのでしょうかと、最初は警察が片手落ちだということで警察を恨んだわけです。何回か身内の人が警察に抗議を申し込まれたわけですが、しかしそれは、検察庁のほうでそういうことで釈放されたのです。こういうことなんですから、いま課長さんの言われている釈放の事由には該当しません。この点どうですか。
  210. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 御指摘のように、こういう事件は捜査を行ないます上で非常にむずかしいものでございまして、こういう事案が起きました背景等を十分に明らかにし、かつ現場におきます犯行状況というようなものを十分に明らかにした上で、警察から送致されなければならないわけでございます。それにつきまして、警察官が非常に苦労して証拠を収集されておるということは、現場の検事も十分承知しておるわけでございまして、それを踏まえてなおかつ十分な証拠があり、これをもって裁判官の勾留状が発付されるものであるかどうか、さらには捜査を続けて起訴することができるかどうか、こういったことも慎重に検討いたしまして、この件は勾留すべきであるかどうかというようなことをきめ、その上で身柄の拘束を続けるかどうかということを判断するわけでございます。警察におきまする捜査も十分検討し、それを前提としながらなお捜査を続ける、捜査の段階の手順をきめるということになるのでありまして、しかしながら、その段階におきまして勾留できるかどうかといった点が大事なことでございまして、現場の判断では、この場合は勾留請求しないでやらざるを得ない、こういうことになったんだろうと思っておる次第でございます。
  211. 三塚博

    三塚委員 どうも課長さん、現状を知らぬようですから、あとで調べて御報告してください。本件に関して、当会社の使用者である社長と担当の総務部長、そのほか担当の課長が、その真意をこの担当の検事さんに聞いておるのです、どうして私たちのほうの社員だけが逮捕、勾留されたか。だれが見ても、この被疑者は一番暴力的だといわれている人なんですよ。同盟に加盟している三百四十名の諸君が、あれは一番悪いんだという。かっときて、いつでも暴力でみんなこれにやられているのです。三十四件告発状が出ています。皆さん傷害を受けている。ぶんなぐられた、けがした。だれが見ても一番暴力的な方なんです、この方は。その暴力的な方が釈放されて、善良な諸君が四名勾留を受けた。これはその会社、その周辺の方々の客観的な判断の上で出たことばなんです。それで、この社長は一カ月前に、非常に苦悩して死んでしまいました。  それでお伺いするのですが、この検事さんにお会いしたときに、なぜ片手落ちな処置をされるのですかということに対して、検事さんは明言しているのです。取引をしたんだ、こういうことなんです。この種複雑な労働事件、いろいろな方が入ります。この本山事件の紛争が長引いた大きな原因に反戦系かある。東北大学を中心にして、学都の仙台ですから、そこもごたぶんに漏れずゲバ学生が巣くっております。この諸君がこの争議を支援をしておるのです。だから、そういう方々組織的な暴力でやれなかったのか、こういう疑念が善良な——同盟系の諸君というのは、常識的に非常におとなしい労働者の諸君です。総評の中にもおとなしい方がおられますけれども。(「一言多いよ」と呼ぶ者あり)なかなか最近はそうでないような傾向もあるようであります。事、人権に関することですから、私はあえて提言をしている。質問を申し上げているのです。取引をした、こういう発言をされておる。  ここに非常に不可解な問題を持つのです。これは本山事件だけに限らず、そういうスタイルのものを私どもたくさん聞いておる。法の正義を実現をしなければならぬ警察、検察庁。裁判所までとは申し上げません。連日のデモ、その当事者の居宅に対するデモ、シュプレヒコール、とんでもないことを書いたビラをたくさん張られる。そういうことの中で、もし法の正義が曲げられるようなこと。特に、検察官という第一線において正義を実現するためにやらなければならぬ人が、かりそめにも取引をしたというようなことを、一人じゃありません、三人おられるところで発言をした。これで国民の信頼が検察庁に集まりますでしょうか。私はそこに重大な問題があると思うのです。おわかりであれば御答弁いただくし、現地のことでなかなかわからぬというのであれば、後ほどこの件について御報告をいただきたい。
  212. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 御指摘のように、捜査の過程におきまして外部的な勢力と申しますか、事件の関係以外の方に気がねをいたしまして取引をするというようなことがあっては、たいへん遺憾なことでありますし、そういうことはないと私ども信じておりますが、御指摘の点につきまして、現地に聞き合わせましたところ、担当検察官の話ではさようなことはなかった。ただ、会社側の人が見えたときに、証拠があれば出してくださいということは言ったということでございます。以上です。
  213. 三塚博

    三塚委員 課長、私よく調べているのです。あなた以上に詳しいのです。ですから私は、そういう答弁だと非常に困るのです。野党の皆さん長くやることがお得意ですけれども、私、端的に問題の中核に触れて御質疑を申し上げておるのです。(「どうも一言多いな」と呼ぶ者あり)言多いといわれるけれども、完全に長いのですから。  いま冒頭に申し上げました、政治的な圧力とか経済的な圧力、そういう時代は過ぎたのです。いま一番こわいのは組織的なそういう圧力なんです。町のダニの暴力なんです。それ以上にこわいのは組織的な圧力です。善良な人は、連日連夜そういうことで押しかけられますと、まず奥さんが音をあげる、子供が音をあげるのです。ですから、こういうところに対してはき然とした態度でいきませんと、やりたいほうだいやっても、警察はつかまえるけれども、検察庁に行くと釈放されるのだということなんですよ。  ですからこの諸君は、たくさん傷害事件を起こしておるのです。一つだけじゃないのです。ここにふろしき一ぱいにあるのです。一々読み上げません、私は。そういうのと取引をした。取引の内容はどういうことかというと、証拠提出を条件に取引しておるのです。中央法律事務所の何とかいう弁護士。今度も沖繩の弁護士関係設置法の改正が出ていますが、この人がお立ち会いのようです。証拠を提出いたしますということだったので、証拠の保全の見通しが立ったから、検事さんもそういうことだったと思うのです、善意に解釈しますと。この証拠、提出されましたですか。
  214. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 私がただいま申し上げました、現地に確認いたしまして、証拠の提出を求めたというのは会社側の人に求めた、こういうことでございまして、ほかにも一般的に行っておるかもしれませんですが。したがいまして、会社側の方と取引した……(三塚委員「会社側じゃないですよ」と呼ぶ)この取引の内容というのはよくわからぬのでありますが、そういう事実はない。ただ、証拠は双方から提出されたいということは言ってあるそうでございます。
  215. 三塚博

    三塚委員 しからば、これは後ほどお調べください。  それじゃ、警察が捜査を終わって、検察庁に約五十六件のうち七〇%書類が回っておりますが、もうだいぶ時間がたっておるのですけれども、その書類を、もう一回はっきり件数を申し上げてください。
  216. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 先ほど申し上げましたように、検察庁で受けました総件数は四十六件、九十名でございます。そのうち処理が終わっておりますのは二名でございまして、一名は公判請求をしてある、一名は家庭裁判所に送ってある。残りにつきましては、双方の関係者でございますか、なお捜査しておる、こういう状態でございます。
  217. 三塚博

    三塚委員 第一組合の方も告訴しておるのですから、これは皆さん警察に呼び出しを受けますと、とるものもとりあえず、十二時に来いと厘十一時ごろから行って待っているのです。そちらは全部調べを終わってしまった。こちらのほうは、傷を受けた諸君が出された案件、県会議員の三カ月、こう言いましたが、中に生きのいいのがいるのですよ。それにぶんなぐられたやつがいるわけだ。けがしたのもいるわけだ。それで、ぜひ調べたいということで出頭をお願いをするわけですね、容疑について調べたいから来てくれと。どなたも来ないのですよ。県会議員さんは、県会が忙しいと言って来ない。県会なんというのはいつまでもやっているわけじゃない、国会と違って。大体二週間や三週間。それでほかの諸君も出頭に応じません。ですから警察は調べようがない。応じなければ、その問題は検察庁に回っても処分を受けないで済むということであったら、たいへんな問題。警察は平均して五回出頭を要求しているわけです。出てこない。一回要求すれば来るだろう。しかし一回言っても来ない。二回目ば来るだろう。二回目、来ない。三回目。三回目のころというのは、二十日間くらい過ぎますから、もう逮捕状請求できない。ですから、出向かぬものですから、やむを得ず五回催促をしておる。出頭に応じられないので、本人の証言は得られないということで、状況証拠と被害者の方の証言と、そういうものと一緒に検察庁に送っているわけです。これが残された案件のほとんどですから、これの処理をきちっとやるということがきわめて大事なことだと思うのです。  労働争議であろうと何の騒動であろうと、現実にここに傷害事件が起き暴行事件が起きて、そのことによって非常な被害を受けておるわけですが、その人に対する法の保護はきわめて軽くというよりか、全然ない。片一方の勢いのいいほうがそのまま釈放される、あとは取り調べが進まぬ、出頭しなければやむを得ない、こういうことでは法治国家じゃないですよ。やりたいほうだいやったほうがいいんだということになるのです。国会も、この間の議長の差し戻しありましたが、一度採決したものをまた確認するようなことをやっている。これもけしからぬ。この辺なんです、課長さん、大事なことは。もうこれ以上課長さんは現地のことわからぬようだから、どうぞお調べをいただきます。  それで法務大臣、私の言っていることは決してうそじゃないのですから、やはりこういうことが大臣の信頼する忠良な部下の中の不注意によってかりに起こされておるということでありますと、現実に具体的な例を一つ私はあげましたが、これはたいへんな問題だと思います。憲法十四条、何回も申し上げるようですが、国民は法のもとに平等なんですから、どういう立場にあろうとも、どういう職業であろうとも、これは同等に法律というものは適用されなければなりません。うしろに支援団体がたくさんおる、気に食わないとすわり込みをやられる方々がたくさんおる、そういう人の場合は釈放されるというイメージを国民に与えたとしたならば、これはたいへんな問題だと思うのです。この点について最後に大臣見解を伺っておきます。
  218. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 三塚先生の御意見をただいま承っておりまして、思うことを率直に申し上げるのですが、あなたがお尋ねになっておるお尋ねに対して、私の部下である公安課長は、一般論、抽象論でお答えをしておる。ぴんとこないのですね。尋ねておる人の胸にぐしゃっとくるようには答えはできない。これはしかたがない。これは間違っておるのかというと、そうじゃないのです。いやしくも刑事被告事件として調べがあり、被疑者として調べております捜査中の事件については、こういう理由で逮捕いたしました、こういう理由で身柄の拘束をいたしました、これはこういう理由で身柄の拘束は必要でなかったのだ、逮捕しなかったのだということの理由を具体的に事情をあげてお話しすることは許されぬ。もしそれをやればたいへんなことです。捜査がぴしゃっととまってしまうということになることが、国会開聞以来今日までの原則でございます。その原則で、先生熱心にお尋ねになるのに、私がここで聞いておりましても、お答えをしたい、こう思う心がありますが、具体的に、こういうわけで、こういう事情で逮捕をいたしました、こういう事情で逮捕ができなかったということを申し上げる自由がない、こういうわけですね。そこで先生のおしかりがある。そんな不公平なことでいいのか、公平厳正なるべき検察、一体何をしておるのかというおしかりがあると、さようでございますかと言って頭を下げておるよりほかに、ものの言いようがないのが検察の態度でございます。これはどうかひとつ、事件が起こっております場合に、事件が捜査に入っておりますと、それ以外やるべき道がないので、昔からそういうように国会で取り扱いをいただいておるのだということを、どうぞこの点はひとつ腹から御理解をいただきたい。私がいいかげんなことを言って、先生のおしかりを免れていこうという考えは実はないのです。私はずばりものを言う男で、ずばりものの言えないところではものを言わぬ男なんですね。そういうぐあいに私は徹底した男です。よいかげんなことを言って、おしかりを舌をくくっていこうなどという考え方は私はない。  そこで本件、私が理解をしておるところによりますと、この事件は、第一組合、第二組合、御承知のようにありまして、これにたいへん複雑な関係を持ちますのは、ガードマンが関係をしてきておる。そして双方の間にいろいろな出入りが行なわれまして、これに付随して非常に数多くの暴力事件、傷害事件が起こっておる。双方で告訴のやり合いをやっておる、こういう複雑な事件でございます。こういう事件を、ここでこういう事情で逮捕をしました、こういう事情で逮捕をしなかった、これが正しかったのだということを分けて申し上げることができないということが、私のほうもまことにつらいところでございますが、どうかお許しをいただきたいのは、厳正公平に事件をやっております。これ以前も何度か国会に出ておりますので、国会でそういうお声があって、こういうふうに御質問があったというようなことも現地には伝えてございます。非常に厳正公平にやれ、一切にこだわらず、一切に遠慮せずに厳正公平な態度でやれということの指示が与えてありまして、厳正公平な態度でこれを最後まで終始していく考えでございますので、どうぞ、お気にさわる点はございましょうが、検察の公平な態度というものに御信頼をいただきまして、おまかせをいただきたい。不公平なことは決してやらしませんから、どうぞお願いをいたします。
  219. 三塚博

    三塚委員 御信頼申し上げるのです。法務大臣の人柄は、九段宿舎のきたないところでふろへ一緒に入っていますから、よくわかるのです。お人柄は九段の村長さんですから。捜査上の秘密は言えないことも、私もしろうとながら百も承知です。百も承知でありながら、なおかつこれを言わなくちゃいけない。それは国民が、検察庁の取り扱いが、警察官もそう言っているのですが、片手落ちである。そこに問題があるのです、大臣。私は、捜査の内容をどうだこうだなんて聞いておりませんよ。いやしくも公安検事たるものが、会社の社員の人命を預かっておる責任者である代表取締役以下担当部長、担当課長が行かれたところで、取引をしたなどということが言われていいものかどうか、この点を私は問題にしているのです。こういう点で、明敏な、練達な法務大臣の部下がそういうことをしたということは、これはきわめて残念なことだと私は申し上げているわけです。九牛の一毛、アリの一穴のゆるみで全部ぶっこわれるのですから、昔の人はうまいことを言ったものです。その点をひとつ肝に銘じて指揮監督されることを御要望申し上げますから、大臣のお人柄を信じて答弁は求めません。  あと、以下この法務省設置関係のやつは次回に譲らしていただいて、野党の諸君があわてているようですから、この辺でやめさせていただきます。ありがとうございました。
  220. 三原朝雄

    三原委員長 上原康助君。
  221. 上原康助

    ○上原委員 提案されております法務省設置法の  一部を改正する法律案の中で、沖繩関係の改正条項もありますので、その点と関連をして二、三点お尋ねをしたいと思います。  まあ私は、法律というのは守るべきものであるという程度は理解をしておりますが、全く法律のしろうとでありますので、別に法律論をやろうとは思いません。しかし、復帰前後の沖繩の人権擁護あるいは県民生活とのかかわり合いでいろいろな問題が惹起をしてきていることは、大臣をはじめ関係者御案内のとおりだと思うのです。そういう事実関係をあげながらお尋ねをしますので、できるだけ明確な御答弁を求めたいと思います。きょうはきわめて簡潔に、早目に切りあげたいですから、ここでしゃべるよりもほかでしゃべったほうがためになりそうですから、協力したいと思います。  最初に、設置法の一部改正の中で、いわゆる入国管理事務所の出張所の増設の点が触れられております。金武港出張所の増設、それに嘉手納出張所というふうにうたわれているのですが、具体的に、この金武港出張所というのは、正確には場所はどこなのかということ。また嘉手納出張所というのは、私の理解では、おそらく嘉手納空軍基地、いわゆる空港だと思うのですが、その点について御説明をいただきたいと思います。——この資料にあるでしょう。一五ページにあるでしょう。もう一ぺん読みましょうか。「沖繩県石川市に那覇入国管理事務所金武港出張所を、沖繩県コザ市に那覇入国管理事務所嘉手納出張所をそれぞれ設置」すると一五ページに載っていますね。これを具体的に説明していただきたいと思います。
  222. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 御質問は、金武港の場所及び区域でございますか。
  223. 上原康助

    ○上原委員 はい。
  224. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 それから二番目が、嘉手納出張所のやはり区域でございますか。
  225. 上原康助

    ○上原委員 はい。事務所の設置する場所。
  226. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 と申しますのは、地理的に沖繩県何郡何町ということでございましょうか。
  227. 上原康助

    ○上原委員 金武港出張所というのは、金武港というのはどこの港ですか。嘉手納出張所というのは、嘉手納空港に管理事務所を置くのか。区域を聞いておるのじゃないのです。
  228. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 金武港につきましては、沖繩県石川市字富森原でございます。これはもちろん海港でございます。それから嘉手納は沖繩県コザ市字上地でございます。
  229. 上原康助

    ○上原委員 この富森原というのは、現在はどういうところなんですか。それから嘉手納の何チですか。
  230. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 コザ市字カミチでございます。
  231. 上原康助

    ○上原委員 コザ市ウエチのことですね。
  232. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 はい、そうです。
  233. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、嘉手納空港内に置くということではないわけですな。それを最初にお尋ねしました。  金武港のこの富森原というのですか、私でも正直に言って具体的に場所がわからないのですよ。だからどこに事務所をほんとうに設置するのか。まあ上地というのはコザ市にありますよね。
  234. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 金武港は海港でございますし、嘉手納は空港でございまして、詳しい番地は、金武港は富森原の二六二八の二でございますし、嘉手納が上地の四六八でございます。
  235. 上原康助

    ○上原委員 この両出張所で取り扱う事務量というのはどうなっているのか、あるいは職員の配置というのはどの程度なのか、説明いただきたいと思います。
  236. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 金武港につきましては、入国審査官が一名でございますし、入国警備官が舟艇要員を含めまして四人でございます。嘉手納につきましては、入国審査官六名、入国警備官三名、計九名でございます。
  237. 上原康助

    ○上原委員 増設をする理由といいますか、増設をしなければいけない根拠というのは、入国管理業務の増加によって出てきたと思うのですが、いまの人員配置なりその程度の規模で十分可能なのかどうか、その点はどうお考えですか。
  238. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 現状におきましては、この程度の人員で可能であるという確信をもちまして、こういった人員配備をいたしておる次第でございます。
  239. 上原康助

    ○上原委員 入国管理事務の対象となるのはおもにどういう方々ですか。国籍別に言いますと米人が多いと思うのですが、そういうことでしょうか。具体的にもう少し説明してください。
  240. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 こういった海港におきましては、港に入ってまいります外国船の船員及び、もし乗客がおりましたら乗客がその対象となる次第でございます。それから空港におきましては、この場合はおそらく米軍関係の者が多いかと思いますが、地位協定の該当者以外の者の出入りに対して入国審査を行なうということでございます。
  241. 上原康助

    ○上原委員 空港における入国対象者は、地位協定の場合はこの出入国管理対象にならないのじゃないですか。
  242. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 ただいま申し上げましたように、地位協定該当者以外の外国人ということでございます。
  243. 上原康助

    ○上原委員 以外の該当者が復帰後どの程度いるのかということが一点。それから、米国人を含めて、本来入国管理事務所を通して入国すべき第三国人が、軍人軍属を装って入国をしている傾向はないのかどうか。その点について調査なり審査をしたことがあるか、お答えいただきたいと思います。
  244. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 米軍基地に出入りいたします地位協定該当者の数につきましては、もちろん米軍側でチェックいたしておりまして、その数はわがほうに事後通告がありますが、地位協定該当者以外の者が米軍基地を通して出入りいたします場合には、わがほうでこれをチェックするというたてまえになっておりまして、これに関しましては、わがほうは適正にその出入国のチェックを行なうという体制を整えるつもりでおります。
  245. 上原康助

    ○上原委員 私も十分調査をしたわけではないのですが、仄聞するところによりますと、特に南朝鮮、いわゆる韓国あるいは台湾のほうから、本来ならば出入国管理事務所を通して入国すべき人々が、軍人軍属を装って基地内に直接出入りをしているということがあると聞いているわけです。それはまたあり得ることだと思うのです。そういった面の監視といいますか、審査というものも、復帰した現段階においてはきびしくやるべきだと思うのです。ですから、今回名護、コザ、石川に出張所を置くことによって、これらの、ある面では不正な入国手続に対しても規制をしていくことができるのかどうか。その点はぜひきびしくやるべきだと思うのです。復帰後これまでそういう例はないのですか。
  246. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 先生御指摘のとおり、米軍基地を通りまして地位協定該当者以外の者が出入りする、それが日本の入管当局の目を通らずに出入りするということでございますと、われわれがせっかく入管行政を厳正にやっております中で大きな抜け穴になるということでございますので、われわれといたしましては、そういう事態が絶対に起きないようにということで十分配慮いたしまして、そういう事態の起きない体制を整えたいというふうに存じております。
  247. 上原康助

    ○上原委員 その点、私らの立場でもいろいろ調査を進めておりますし、かなり疑惑が持たれている節があります。したがって、政府としてそのことに対する対策を十分やるように強く求めておきたいと思います。  次に、少年院の問題で少しお尋ねしたいのですが、現在の少年院の実情というのはどうなっているのか、また問題点というのはどういうものがあるのか、ひとつ御説明いただきたいと思います。
  248. 長島敦

    ○長島政府委員 先生御承知のとおり、沖繩が復帰いたしましたときには少年院が一つでございまして、男子、女子の少年院の区別がございませんでした。そこでこれを二つに分けまして、男子少年院、女子少年院というふうにいたしました。  その次にございました問題は、施設につきまして不備な点がございましたことと、それから、収容少年の数が相当ございました上に、医療を要するような少年とか、特別少年院に送られなければならないような非常にむずかしい、非行が進んでおります少年とか、あるいは中等少年と申しますか十八、九歳、それと十五、十六というような者が一緒に入っておりまして、処遇上も非常に困難がございました。そこでとりました措置といたしましては、一方では、男子少年院、女子少年院を分けたことに伴いまして、早急に必要な施設の整備のためにいろいろな営繕作業をいたしました。同時に、収容いたします少年につきましては、長期の医療を要するようなむずかしい少年は、内地の医療少年院に持ってまいりました。それから特別少年という非常に非行度の進んでおります少年、また中等少年の中でたいへんむずかしい少年、あるいは同じ施設に二回も三回も入ってきた少年というのを内地へ移しました。その結果、現在では中等少年と初等少年という比較的質のいい少年たちになってまいりまして、収容少年も適正な規模になってきたというふうに考えておるわけでございます。今後、ますます処遇を充実いたしまして矯正の実をあげたいがように思っております。
  249. 上原康助

    ○上原委員 いまお答えがありましたように、いろいろ調べてみますと、確かに復帰後、施設面、教官の数あるいは教育面においてもかなり改善をされたあとがうかがえると思うのです。しかし、残念ながら、沖繩の社会環境からして、少年犯罪というのが復帰前から非常に多いし、復帰後もあとを断たない。むしろふえている傾向にあるとさえいわれているわけですね。  そこで、もう少しお尋ねしたいのですが、最近の少年犯罪の傾向についてはどういうふうにとらえておられるのか、もし資料がありましたら説明をいただきたいと思います。
  250. 筧榮一

    ○筧説明員 沖繩におきます少年事件の概況につきまして御説明申し上げます。  復帰前におきます沖繩の少年事件の傾向を一口に申し上げますと、昭和四十一年をピークといたしまして、その後は漸減と申しますか、少しずつ減っておるというのが復帰までの状況でございました。復帰を境にしましてどのように変わったかという点でございますが、昭和四十六年の少年事件の総受理人員数を申し上げますと七千七十八件になっております。これに対しまして、昭和四十七年、これは一月から十二月まででございますので、復帰を間にはさんでおりまして、これが四千八百五十六件、トータルにおきましては二千二百件ほど減少ということになっております。  しかし、内容を検討いたしてみますと、道路交通法違反、これが昭和四十六年に四千八百十六件でございましたのが、四十七年には二千二百四十件、二千五百件ほど減少いたしております。さらに悪質と申しますか、重要犯罪でございます刑法犯を比較いたしてみますと、昭和四十六年が二千百二十九件に対しまして、昭和四十七年は二千四百七十四件、三百件ほど刑法犯においては増加いたしております。総数においては確かに減っておりますが、実質的にはあまり減っていないというように考えられるわけでございます。  それから、それに付加いたしますと、沖繩の少年犯罪、これを本土の少年犯罪と比較しまして気がつきますことは、沖繩の犯罪における少年の占める割合、これが本土における同様のものと比較いたしますと、非常に高い率を示しておるということでございます。業務過失を除く刑法犯について比較をいたしてみますと、昭和四十六年、本土が少年の占める割合が二九%でございますが、沖繩においてはこれが四一%という数字を示しております。さらにその内容、年齢等を見ますと、沖繩においては、年少少年の犯罪、特に粗暴犯の率が高いということが、比較いたしました場合に言えようか、概況そのようになっております。
  251. 上原康助

    ○上原委員 私の手元にある資料も、若干その数字は違いますけれども、傾向としてはそういう内容になっておろうかと思うのです。  そこで、なぜこういう少年犯罪が多いかということ、あるいは本土と比較して、単に件数が多いというだけじゃなくして、その犯罪の中身というのがむしろ問題だと思うのです。凶悪犯、殺人、強盗、婦女暴行、恐喝、そういうのも成人の犯罪にまさるとも劣らない。たいへん残念なことですが、そういう状態であるということ、なぜこういう社会環境になったかということを、私たち政治の場にいる者も、あるいは行政をあずかる、特に司法行政を担当する方々も、私は十分心すべき点じゃなかろうかと思うのです。  そこで、先ほどお答えがありましたように、復帰してから、特別少年院、あるいは身体、精神障害の少年院にいる少年については九州各県の施設に送って、いろいろ更生教育、補導をやっているということですが、その数と、現に九州各県に送って後の素行なり更生のあり方というものはどうなっているのか、いま少し明らかにしていただきたいと思います。
  252. 長島敦

    ○長島政府委員 九州管内に送りました者は、そのときどきの医療措置等によりまして、部分的に一人、二人送りましたのは除きまして、集団的に昨年の八月に二十五名送りまして、昨年の十月中には合計三十名送っております。したがいまして、集団的に送りました者は、五十五名でございます。そのほかに沖繩に御承知の少年鑑別所がございますが、そこで鑑別をいたしまして少年院送りになりました者のうちで、ただいま申しましたような、医療少年院あるいは特別少年院へ送ったほうがいいという判断をいたしまして直接内地の少年院へ送った者の数がございます。この数は、やはり復帰のときから本年の五月までの計算でございますけれども、全部で五十二名ございます。これらの少年は、福岡の少年院、中津の少年学院、人吉の農芸学院、大分の少年院、佐世保の少年院というところに入っております。これらの少年院に入りましたときに、沖繩から参りました少年たちは、多少生活になれないと申しますか、ことばも多少違う点があるようでございますが、そういうことで当初は順応に少しとまどったということもあったようでございますけれども、幸いにして九州の少年院の子供たちが非常に理解があると申しますか、受け入れが非常によろしくて、完全に融和したというふうに聞いておるわけでございます。  その後、九州の少年院から仮退院あるいは退院いたしました場合には、原則として全部少年院の側で沖繩までこの少年をお送りして、沖繩のほうで御家族に引き渡すというふうな配慮もいたしておりますので、更生についてはかなりうまくいっておるというふうに見ておるわけでございます。
  253. 上原康助

    ○上原委員 もちろん、この種の少年たちの更生、補導あるいは教育面というのは、単に少年院の教官やそういう関係者だけにまかすというわけにいかないと思うのですね。社会的なあたたかい思いやりというのが必要ですし、同時に社会環境の浄化というのがもっと大事かと思うのです。ただ復帰後、復帰前ですと少年院は、御承知のように逃亡者が多く出たとか、いろいろな事件が頻発しておったのですが、先ほども申し上げましたように、幸いに社会的にも理解が深まり、該当者の少年も非常に更生に励んでいるということはいい傾向だと私は思うわけですが、まだまだ、家庭裁判所に送られてくる少年少女をあたたかく受け入れて、医学的、心理的に鑑別をして更生教育をしていく陣容が不十分じゃないかというのが関係者の指摘であると同時に、また要求でもあろうかと思うのです。そういう意味で、本土に送り出せばいいというようなことではなくして、ある面では、郷愁感を覚える親元を離れるというようなことでかえって更生にわざわいをするということも、なきにしもあらずだと思うのですね。そういった親、心というものも私は必要じゃないかと思うのです。そこいらを含めて、この少年院問題に対する改善策というのはもっときめこまかく、そして政府の立場でやるべきだということを申し上げておきたいと思うのです。  それと施設の件ですが、現在の施設は借用地だと思うのですよ。当然国で買い上げるか、あるいは国の財産にしていくべき筋合いのものだと思うのですが、そういう御計画についてはどうなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  254. 長島敦

    ○長島政府委員 最初に少年院の将来の運営の方針でございますけれども先生御指摘のように、少年の更生と申しますか、これには何と申しましても地域社会の理解が必要でございますし、ことに少年の場合は家族関係が一番重要でございます。したがいまして、できるだけ私どもも、少年の場合は沖繩の少年院へ置きまして、そこで社会復帰させるというのがよいと考えておりますが、それには、現在の事情からいたしまして移送いたしておりますけれども、今後も、医療を要する者とか特殊な者は除きまして、なるべく沖繩のほうも職員その他十分充実したいというふうに考えております。  その次に施設の関係は、会計課長がおりますので……。
  255. 住吉君彦

    ○住吉政府委員 ただいまの沖繩少年院の敷地は、御指摘のとおり借地でございます。したがいまして、自前の土地、国有地にするためにいろいろの方策がございます。ただ、敷地を買収するということになりますと、地主さんの御意向もございますし、かたがた、先ほどお話もございましたように、少年院の現在の施設そのものが必ずしも十全の施設でございませんので、その施設整備とあわせまして、国有の土地を取得してそこに整備をするというのも一つの方法かと思いますが、後にまた御質問があろうかと思いますけれども、片や沖繩刑務所の問題もございますので、矯正局とも十分協議をしまして、また現地の御意向も承りまして、できるだけ早い時期に整備された施設を持ちたい、こう思っております。
  256. 上原康助

    ○上原委員 最近、本土でもそうだと思うのですが、あとで刑務所の件についてもお聞きしたいのですが、こういった少年院あるいは刑務所というのは、どちらかといいますと、次第に過疎地域であっても都市化されて人口が稠密化していくという傾向の中では、移転問題というのが本土、沖繩を問わず各県で出ているのですね。少年院の場合も、移転をしてもらいたいという地域住民あるいは市からの要望もたしかあったかと思うのです。そういう意味で、いまの御答弁は、施設、設備の面でいろいろな充実強化をはかっていくという前提を踏まえながら考えていきたい、市なり関係地主の方々とも相談をなさるという場合は、移転ということも前提にお考えになっているというふうに解してよろしいですか。
  257. 住吉君彦

    ○住吉政府委員 移転ということも、一つの構想としてあわせ考えて整備計画を立てるべきであろう、こう思っております。
  258. 上原康助

    ○上原委員 この点であと一点。いわゆる少年院の医療面ですね。たしか看護婦さんが一人でお医者さんはいないのじゃないかと思うのですが、そういった医療面の従事者というのはどうなっているのですか。
  259. 長島敦

    ○長島政府委員 御指摘のように、少年院のほうには専任のお医者さんがおりません。それで嘱託医という形で、お願いすればいっでも来ていただけるというお医者さんを持っておるわけでございます。
  260. 上原康助

    ○上原委員 現在のあれで、専任はいなくても委託をして、それほど支障はないということですか。
  261. 長島敦

    ○長島政府委員 専門の医療分類課長に聞いたのでございますが、支障なく現状は動いておるということでございます。
  262. 上原康助

    ○上原委員 沖繩は一般の医療行政さえ非常にお粗末な状態で、こういうところまで手が回らないという面もあろうかと思うのですが、しかし、少年院であろうが、刑務所であろうが、やはりそれぞれのまた人権擁護ということもあるわけですから、そういった面も特段の御配慮をひとつ要望しておきたいと思います。  次に、いまも若干お話が出たのですが、例の沖繩刑務所の件なんです。これも、あまり多く申し上げないでも実情については御案内だと思いますが、施設、設備が非常に老朽化している。独房というのですか、囚人がいる房の屋根も雨漏りをするというような、刑務所にしてもあまりひど過ぎる刑務所じゃないかというのが一般の言い分なんですね。私は入ったことはないからわかりませんが、これではちょっと度が過ぎるのではないかと思うのです。そういう設備の問題と、根本的には補修がきかないということもあって、那覇市をはじめ関係者から、御案内のように強い移転問題が出されているわけです。いまですと那覇市のどまん中にあの刑務所が横たわっているという状態で、環境からしても、都市計画からしても早急に移転を迫られている点なんですが、移転問題は基本的な問題で当然お考えになっておると思うのですが、それまでの応急対策としても、雨が漏るとか、あまりにもひど過ぎるということについては、やはり考えねばいけないことじゃないかと思うのですが、その点どうお考えですか。
  263. 住吉君彦

    ○住吉政府委員 御指摘のとおり沖繩の刑務所は、その建物その他の工作物のほとんどが大正の末年にできたもので、早急に整備をする必要があるということでございます。復帰後直ちに、舎房、工場等の便所、浴槽、ボイラー、職員宿舎、これの改修をしたところでございますけれども、今年度も引き続き舎房の雨漏り、給配水設備、ボイラー等の補修を現に実施しております。ただしかし、お話しのとおり補修にも限度がございまして、片や移転ということも当面の懸案になっておりますので、そういうことを十分踏まえた上で将来の整備計画を立てていきたい、こう存じております。
  264. 上原康助

    ○上原委員 それと、ここも現在その収容人員は、いただいた資料によりますと五百四名ですか、おるということですが、やはり囚人の中には、精神病患者というよりも精神障害の囚人もおるということで、医療面がほとんどなされていないという状態らしいですね。そこいらの状況はどうなんですか。
  265. 長島敦

    ○長島政府委員 沖繩刑務所の医療面でございますけれども、御指摘のように、これも設備その他がたいへん不備でございましたので、順次整備につとめておりまして、今年度に入りましてから、レントゲンでございますとか、それから歯のほうの治療の機械でございますとか、そういう機械を入れまして整備いたしております。この沖繩の刑務所では現在お医者さんが二人おりまして、そのほかに薬剤師が一名、エックス線の技師が一名、衛生検査技師が一名、看護婦が三名おりまして、数からいいますと、人員的にはかなり充実しているわけでございますけれども、従来は機械設備その他が不備でございました関係で、十分に機能が発揮できなかった点もあったかと思います。  なお、病人によりましては、この医務施設だけでは処理できないのがございまして、御承知のように、精神病その他の者はすでに何回も本土の九州のほうへ移送しておりますし、それからこういうお医者さんでまかなえないような病気が発生いたしました場合には、外のお医者さんあるいは病院へ持っていくということもできるように予算措置が講じてございますので、何とか間違いのないようにやりたいと思っております。
  266. 上原康助

    ○上原委員 それと、いわゆる外国人の収容人員は何名なんですか。
  267. 長島敦

    ○長島政府委員 外国人の収容状況でございますが、今年の四月末現在でとりましたところ、刑がきまって入っております者が六名でございまして、裁判を待って未決で入っております者が四十四名でございました。
  268. 上原康助

    ○上原委員 その国籍の内訳はどうなんですか。
  269. 長島敦

    ○長島政府委員 正確な統計資料を持っておりませんが、私いつもこういう統計を見ておりますけれども、ほとんどアメリカ人でございます。
  270. 上原康助

    ○上原委員 ほとんどアメリカ人だという答弁でいいのですよ。そうでしょう。ほとんどアメリカ人なんだ。何も遠慮する必要ないんだ。それで、当初、沖繩刑務所としては、大体米人といいますか、外国人の収容人員は三十名前後じゃなかろうかということで、独房なりいろんな設備を改善をしたと聞いているわけですが、同じ刑務所でも、一方は水洗便所をつくり、いろいろ部屋をきれいにしてあげる。それは一時問題になったということも聞いたんですが、生活水準が云々ということで、刑務所に入れられてまで差別を受けるのかということもあったのですが、そのことがいろいろ意見の分かれるところでありまして、議論するつもりはないのですが、当初皆さんが予想しておった以上に軍人の、米国人の犯罪というものがふえてきているということは事実だと思うのですね。傾向としてもいま増加をしております。そうしますと、結局収容人員の面で、いま収容定員からいうと若干余裕もあるようですが、そういった特別に外人向けの収容房をつくっていかなければいかないということになる場合に支障がないのかどうか。その点の対策はありますか。
  271. 長島敦

    ○長島政府委員 ただいま応急的に講じております対策は、第一に、刑が確定いたしますと、すみやかに横須賀のほうへ移送するということで収容者を減らすことを考えております。もう一つは、それによりましても、なおどんどん未決がふえてまいりますので、将来の問題としまして、いまの沖繩刑務所が移転いたしました場合には、緑地帯の部分を除きまして一部残る土地が出てくるわけでございます。その部分にできれば拘置区を独立させまして、外人拘置区、日本人の拘置区というものを建て直しまして拡充整備したいというふうな希望を持っております。
  272. 上原康助

    ○上原委員 そこで、ちょっと大臣にお尋ねしたいのですが、先ほどから、少年院の問題なり、いまの沖繩刑務所の実情等お聞きになったと思うのですが、最後に外人事件について触れたいのですが、特に刑務所の移転問題については長い間の懸案事項なんですね。琉球政府時代からぜひ移転をしたいということでしたが、やはり財政問題がある。また、刑務所というのは本来国の行政範囲のものですから、沖繩県だけでやるべきでもないし、またやれる能力もないわけです、財政的に。特に那覇市のどまん中に刑務所があるということは、社会教育環境からしてもいろいろあるし、中に入っている人だって、それでは落ちついてやろうと思えないと思うのですね。むしろ周囲をのぞいて、出たいという気持ちにかられるでしょうからね。そういうことを考えた場合に、早急に国として沖繩刑務所の移転というものを考えるべきだと私は思うのですね。先ほどちょっと御答弁あったのですが、この移転についてどの程度政府としてお考えになっておられるのか。もっとほかにもこまごましたことがあるのですが、そういう実情を踏まえて、ぜひひとつ大臣責任あるといいますか、明確な御答弁を賜わっておきたいと思うのです。
  273. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 非行少年の問題につきましては、たいへん御理解と御同情のあるおことばをいただきまして、たいへん喜びといたします。しっかりやります。  それから刑務所の問題でございますが、仰せのとおり、那覇の町のまん中に刑務所があるということは困ることで、それで地元の御要望もありますので、幸いに四十八会計年度ですでに予算的な措置もできております。移転先の候補地をできるだけ探しまして、これには地元の那覇市にもひとつ御協力をいただきまして、現に協力をしてくれておりますから、さらに御協力をいただきまして、ぜひこれを移転の方向に持っていきたい、熱心な本日の先生のおことばの御期待に沿うようにぜひ移転をさせたい、こういう決意でおりますから、どうぞ地元の皆さんからも、移転先の候補地を得られやすいようにひとつ御協力をいただきますように、先生からもお伝えをいただきたいと思います。
  274. 上原康助

    ○上原委員 いま、たいへん御熱意のある御答弁であったと思うのですが、確かに、最初に申し上げましたように、刑務所の移転となると、移転先のほうが今度受け入れがたいというような社会状況です。かといってどうしても移転をせねばならない。そういう意味では私たちも協力をしていく上にやぶさかでありませんし、特に裁判所と刑務所が一緒に重なり合っているというのも、敷地がなくてそこにつくったということですが、そういう状況等も踏まえて、大臣のいまの御答弁が実を結ぶように、特段の配慮を求めておきたいと思います。  あとちょっと、こまかい点ですがお尋ねしておきたいのは、御承知のように、復帰後、土地の買い占めあるいは物権の移動等というのが非常に多くなっておる。そういう意味で登記事務というのがかなり停滞をしているということを伺っているわけですね。職員の不足などもありましょうし、あるいはそういった事務面のふなれということもあろうかと思うのですが、こういう実情については掌握しておられるのか。また、登記業務そのものが相当停滞をしているということは、即県民生活なりいろいろな面に影響していくことだと思うのですが、その実情についてお聞かせいただきたいと思います。
  275. 川島一郎

    ○川島政府委員 沖繩におきましては、いわゆる本土復帰の後におきまして、公共事業が拡大強化される、あるいはまた、民間企業が進出するといったような事情もございまして、登記事務が非常にふえております。御指摘のとおりでございます。それからまた、沖繩は復帰当時に、制度が変わるということでもなかったのですが、どっと急激に事件が出たという事情もございまして、非常に登記事務が混乱したことがございます。そういうことで、復帰直後から登記所は相当な滞貨をしょい込んだという形があったわけでございます。法務局におきましては、その後いろいろ努力いたしまして、その滞貨のほうは漸次解消してきているということでございます。しかしながら、昨年復帰後の事件の件数を見てみますと、その前の年に比べまして相当な増加を示しておることは事実でございまして、本年に入りましてもその傾向はやんでいないという実情でございます。  そこで、登記所の陣容でございますが、人員もさることながら、内部の機械化、能率化といった面におきましても、復帰前の本土の登記所と比べますと、設備等において相当劣るものがあったわけでございます。そういった面につきましては、現在いろいろ機械を運び込んだりいたしまして事務の改善につとめております。  なお、人員の点につきましては、これは御承知のとおり全国的な問題でございまして、法務省といたしましても、登記事務の従事職員をなるべく増大したいという方向で努力いたしております。
  276. 上原康助

    ○上原委員 公務員の数というのは法律できめられておりますから、確かに沖繩だけ特別にというわけにもいかぬでしょうが、ただ、大臣もお聞きのように、登記事務だけのことではないのですね。裁判所だって検察庁だって登記所だってそうだと思うのです。復帰をしたから即本土並みだという観念でいろいろやろうとしたって、長い間の吹きだまりなり制度の違い、あるいは事件の件数が多いというようなこと等があるわけですから、そういう面では、特別な人員の配置、陣容の充足というのはもっとやらなければいかぬと私は思うのです。特に登記業務の場合は、私も十分調べておりませんが、各市町村なりいろいろな面で苦情が出ているのは事実なんです。そういうことについても、もっときめこまかくやっていただかないと、復帰前のほうがむしろスムーズにいっておったとか、いろんなことが県民から出ているわけですから、そういうことのないように、この面についても省全体でお考えいただきたいと思うのです。  あと一点、これは単に法務省だけのことではないと思うのですが、地籍の確認ですね。いわゆる地籍調査。公簿、公図に漏れた方々がずっと不利益を受けている面もあるわけですね。軍用地施設内の確認ができないというようなこと、これは経企庁なり法務省、防衛施設庁が関係すると思うのですが、特に登記の問題あるいは地籍の確認という面では、法律上法務省の管轄でやらなければいけない問題もあると私は思うのですね。そういうことについて、法務省としても、ひとつ積極的に解決をしていく、改善をしていくということでなければいけないと思うのです。これに対して法務省としては、どの程度理解され、またこれからやっていこうとしておられるのか、もしお答えがありましたらいただいておきたいと思うのです。
  277. 川島一郎

    ○川島政府委員 沖繩の土地問題というのは非常に深刻なものがあるということは、私も重々承知しております。登記所におきましては、図面を備えて、そして登記簿と同時に保管して一般の閲覧にも供しておるという制度があるわけでございますが、戦後、所有権が非常に混乱したということがございまして、登記所が現在引き継いでおります地図というのは、不正確なものが非常に多いようでございます。そういうものは、申請がございますれば、個々的にそれを訂正していくという措置をとっておりますけれども、非常に広大な地域にわたって土地の境界がはっきりしないという場合は、個々の登記所においてはなかなか手に負えない問題でございます。  この問題につきましては、復帰前に琉球政府が土地調査法に基づくいろいろな調査をなさっておったわけでございまして、その関係仕事は、復帰後におきましては、これは経済企画庁の関係になりますが、国土調査の事業であるとか、あるいは国土調査にのせることが無理であると思われるような分につきましては県のほうで予備調査をなさっておられまして、そういった調査側面から協力をしていくという体制をとっておるわけでございます。
  278. 上原康助

    ○上原委員 この間もお尋ねをしたんですが、特に軍用地内の地籍の確認となりますと、立ち入りの面については外務省でしょう。実際のあれは経企庁がやるかもしれませんし、得てしてむずかしいことは、やれ経企庁だ、やれ外務省だ、やれ施設庁だということで、いつまでたっても取り残される、というより取り残されてきているわけですよね。そういうことのないように法務省としてもひとつやっていただきたいということですから、これは要望として大臣もぜひ御理解いただきたいと思います。  あまり時間を取らないつもりでしたが、やっている間にたってしまっていますので、最後に米軍犯罪についてお尋ねをしたいと思います。最近の米軍犯罪の状況というのが一体どうなっておるのか、ひとつなるべく中身のある答弁をいただきたいと思います。
  279. 根岸重治

    ○根岸説明員 お答え申し上げます。  復帰後の昭和四十七年五月十五日から本年の三月三十一日までの間におきまして、検察庁で受理いたしました事件は二千八十二名でございますが、そのうち、起訴いたしましたのが六百十一名、不起訴にいたしましたのが八百三十名ということになっております。
  280. 上原康助

    ○上原委員 それは復帰後一年ですか。
  281. 根岸重治

    ○根岸説明員 統計がごく最近のは参りませんので、五月十五日から、つまり復帰後から本年の三月三十一日まででございます。
  282. 上原康助

    ○上原委員 いま御答弁いただいたのは交通事故を除いた刑事犯のことですか。
  283. 根岸重治

    ○根岸説明員 交通事故及び道路交通法、全部入っております。全事件でございます。
  284. 上原康助

    ○上原委員 どうも件数がかなり違うんですがね。私の手元にありますのによると、五月十五日から、いわゆる昨年復帰してから今年三月までの外人犯罪件数は、十カ月で総数約五千二百件、交通事故などを除いた刑事犯でも三千九十一件ということになっているんですが、それはどうなんですか。
  285. 根岸重治

    ○根岸説明員 先生の資料はどちらで入手ざれたのかは存じませんが、私が申し上げておりますのは、沖繩那覇地方検察庁で受理いたしました合衆国軍隊の構成員等の犯罪についてでございまして、繰り返しますが、昨年の五月十五日復帰後本年三月三十一日までの受理件数は二千八十二名になっております。
  286. 上原康助

    ○上原委員 那覇検察庁でまとめた資料だということですので一応それを前提にしてもいいと思うのですが、とにかく外人事件、いわゆる米軍犯罪が異常に多いということは否定できないと思うのですね。そこで、なぜこういう事件が起きるのかということについて、検察庁なり警察庁は一体どうとらえておられるのか。また、これも先ほど言いましたように、単に件数だけが多いとか少ないということじゃないんですよ。犯罪の内容の問題だと思うのです。いまの件数の中で、いわゆる凶悪犯といわれるものはどの程度なのか、そういうことについてももう少し説明をしていただきたいと思います。
  287. 根岸重治

    ○根岸説明員 凶悪犯でございますが、殺人につきましては七件、それから強姦致死傷事件が十二件、傷害事件が九十五件、強姦事件が四件、大体凶悪犯というのはそのような数字になっております。
  288. 上原康助

    ○上原委員 検挙率は大体どの程度ですか。
  289. 根岸重治

    ○根岸説明員 法務省のほうからはちょっと検挙率というのはわかりません。
  290. 上原康助

    ○上原委員 警察庁はどうなんですか。
  291. 小林朴

    ○小林説明員 犯罪が米軍が起こされた犯罪かどうかということがわかりませんので、発生に対する検挙率というものはとれていないわけです。
  292. 上原康助

    ○上原委員 そんな答弁では納得できませんよ、これは。先ほどの御答弁でも二千八十二名あったというわけでしょう。外人事件というのが今年三月末までに二千件余り、それに対する検挙率さえも警察庁なり法務省はつかんでいないのですか。
  293. 小林朴

    ○小林説明員 私、数字はよく存じませんが、結局、検挙率と申しますのは全刑法犯に対するものでございまして、アメリカの軍人がやった犯罪かどうかということかわからないわけでございまして、それに対する検挙率というものは出てこない、こういうことでございます。
  294. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、警察庁は沖繩における——本土でもいいですよ。本土でも、米軍人軍属の犯罪については特別の統計というのはとっていない、邦人も含めて込みでやっているということですね。
  295. 小林朴

    ○小林説明員 検挙した事件につきましては、米軍人かどうかということはわかるわけでございますが、発生しておる事件そのものが、米軍人が犯したかどうかというのはわからない、こういうことでございます。
  296. 上原康助

    ○上原委員 では、米人が犯した罪の検挙率というのはどうなんですか。あるいは逮捕をした件数ですね。
  297. 根岸重治

    ○根岸説明員 検察庁が受理した事件につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
  298. 上原康助

    ○上原委員 ですから、外人事件の受理したのは二千八十何件ですか、あるわけでしょう。それについて、では送検したもの、実際に事件として起訴されたのはどうなっているのですか。
  299. 根岸重治

    ○根岸説明員 先ほども申し上げましたが、起訴しました人員は六百十一名でございます。
  300. 上原康助

    ○上原委員 私が指摘をしたいことは、本土に比べて、沖繩のそういった米軍犯罪事件、軍人軍属を含む事件の検挙率にしても、あるいは起訴、不起訴にするような率にしましても、本土の約半分以下だといわれているわけですよ。ですから、私が法律がわからぬからといってごまかそうと思っておるかわからぬが、もっと親身に、一体沖繩における米人事件、外人事件というものがどういうことになっているのかに対しては、資料的にも実際的にも提示をするのが政府の責務じゃないかと思うのですよ。ややもすると何か隠したがるところに、ますます疑惑というものが生まれるということです。その点、大臣どうなんですか。
  301. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 警察が捜査、検挙をいたしましたものを検察に送致される。そこで検察がこれをどう取り扱っておるかということについてのこまかい数字は記憶にございませんが、大体の私のメモは、道路交通関係がべらぼうに多うございますが、道交法関係のものを除きまして、いわゆる一般刑事事件という表現で申しますと、内地の起訴率は、新規受理いたしましたもので起訴をいたしますものは大体五割内外でございます。しかるところ、残念なことでありますが、沖繩地域で起訴をいたしました起訴率は四割内外で落ちておるのでございます。この数字を詳しく何割何分何厘と申し上げかねるのでありますけれども、五割と四割、こういうことでございます。
  302. 上原康助

    ○上原委員 最初にも断わりましたように、別に法律的にどうのこうのということではなくして、私は、実際にそういう傾向にあるということ、なぜ捜査の壁があり、検挙、あるいは起訴にするにしても、不起訴にするにしても、なぜいろいろなハンデがあるかということをむしろ問題にしたいわけですよ。  それには、いろいろ陣容の問題もあるでしょう。ある面ではまた言語の問題もあろうかと思うのですよ。さらに根本的な問題というのは、復帰前からの外人の優越感、あるいはアメリカが一方的に裁判をしてきた過程において、県民の人権というものが、ことばはきついかもしれませんが無視されてきた、そういう傾向の中で、外人犯罪というものがあとを断たないという状況というものは、私は、法律論というよりむしろ人道的立場からもなくしていくべきだと思うのです。その点を指摘をしたいわけですよ。確かに法律論でいえば、それは事件が起きたから全部逮捕する、起訴にするということにはならぬでしょう。いろいろ手順を踏まなければいけないし、そういうことはわかりながらも、なぜ交通事故にしましても、いろいろな外人事件というものが日常茶飯事のように起きているかという、その県民の受ける印象というものはぬぐいがたいものがあるわけです。  そこで、そういう状況の中でいろいろな殺人事件なり戦車事件なりが起きているわけですが、その件についても四、五回、この委員会でも、あるいはまたせんだっての法務委員会でも、御専門の立場からいろいろ議論をなさっておられることも、私も会議録をざっと目を通してみました。きょうは深くは入りませんか、この件について、例の金武ブルービーチで起きた安富祖ウシさんの事件も、いわゆる第一次裁判権は、地位協定十七条二項の二ですか、三項の二ですかに基づいて、第一次裁判権をアメリカが行使する、それで公務中の事件だということで不起訴のまま刑事責任は問わない、しかしそれは中間報告であって、最終的なものではないという答弁をせんだっての委員会ではやっておられましたが、その後はどうなっているのか、まずお答えいただきたいと思います。
  303. 根岸重治

    ○根岸説明員 先日の委員会におきまして中間報告であるということを申し上げたわけでございますが、その後六月二十五日になりまして、米軍側から、この事件につきましては刑事上及び行政上の処分をしないという旨の最終決定を六月二十二日にしたという旨の通知を検察庁が受けております。なお、那覇の検察庁におきましては、やはり六月二十五日に、事件を第一次裁判権なしということで不起訴処分にしております。
  304. 上原康助

    ○上原委員 そういたしますと、この戦車轢殺事件は最終的な結論が出されたという解釈をとっておられるわけですか。その立場にあるわけですね。
  305. 根岸重治

    ○根岸説明員 さようでございます。
  306. 上原康助

    ○上原委員 そこでもう一ぺん確認をしておきたいわけです。事件が起きたのは四月の十二日ですね。アメリカ側が最初に、那覇地検でもいいし、こういう事件があったという通告をした日はいつだつたのか。さらに、第一次裁判権をアメリカが行使をするという通告をしたのはいつだったのか。
  307. 根岸重治

    ○根岸説明員 事件発生後、米軍側から日本に対しまして通知がございましたのは、四月十九日が最初でございまして、そのときに、本件は公務中に犯されたものであること、及び米軍側において第一次裁判権を行使するという通告をしてまいりました。これが最初でございます。
  308. 上原康助

    ○上原委員 その次はいつですか。
  309. 根岸重治

    ○根岸説明員 五月二十五日に米軍側が、中間的なものとして、本件につきましては、その段階においては刑事責任を追及するだけの資料が得られないという旨を通告してまいりましたのが五月二十五日でございます。さらに六月の十八日でございますが、那覇の検事正より米軍側に、本件についての最終処分はどうなったかという問い合わせをいたしましたが、それに対しまして、まだ処分は決定しておらないという返事を当日受けております。これまでが前回申し上げたことでございましたが、その後、先ほど申しましたように、六月の二十五日に最終的な処分をしたという連絡を受け取っておるわけでございます。
  310. 上原康助

    ○上原委員 そういたしますと、日本側からアメリカ側の通告に対して催足といいますか、をしたのは六月十八日ですか。一回きりですか。
  311. 根岸重治

    ○根岸説明員 さようでございます。
  312. 上原康助

    ○上原委員 そこで、二、三点お尋ねしたいのですが、これも法律論なりあるいは協定だけをたてにとると、そういう結果になったんだということになるかもしれないですがね。しかし、どう考えても釈然としないわけですよね。といいますのは、四月十二日は立ち入り許可日だったわけでしょう。立ち入り許可日に事件が起きて、一人の人間が、御婦人が生命を失ったということ、その関係においては因果関係というのは全然ないのかどうかというのがやはり素朴な疑問としてわくのですよ、これは法律論というより。  さらにいま一点、これももう少し詳しい資料もいただけるかと思ったのですが、私がせんだっての委員会で要求した資料の中では、非常に読みやすい資料をいただいてたいへん感心しているのですが、これによりますと、立ち入り禁止区域であることが明示されている金武ブルービーチ、わざわざこういうことをアメリカ側が言ってきたということを概略書いてあるわけですね。立ち入り禁止が明示されている金武のブルービーチ区域で起きた事件だからとなりますと、推測すると、安富祖ウシさんが立ち入ったのが悪いというふうにも解釈されるわけですよね。よもやそういう解釈は警察も法務省も検察庁もしていないとは思うのですが、しかし、こういう文面からすると、何か地位協定の十七条でいう刑特法の二条には、アメリカの禁止区域に入った者が悪いのだという、アメリカ側がそういう解釈をとっているのか。私はこれは、ある意味では法律論から見ても非常に重要な問題だと思うのです。この点についてはどういう見解をとっておられるのか。こういう議論はなさったのかどうかということ。  いま一つは、これにもありますけれども、日本側から、いわゆる公務外であったという反証が直ちになされなかった、提出がされなかったということを米軍は非常に強調しているように受け取るわけですが、たとえ反証が出されなかったにしても、いわゆる刑事訴訟法第三百十八条でいう裁判官の自由心証主義との関係はどうなるのか。反証できなかったから公務中であった、いわゆる刑事責任はないのだということだけでいま葬り去られようとしているわけでしょう。しかし、裁判官の自由な意思によって、客観情勢、当日が立ち入り日であったというようなことを含めても、なお過失ということはないのかどうか。私は、公務中であったかどうかというものよりも、公務中であっても人間の価値というものは成り立つわけでしょう。そういう面については、しろうとで考えてもまだ釈然としない。きわめて疑問があるわけですよね。その点は、検察庁なり警察としてはどういうふうに反証なさったのかどうか。
  313. 根岸重治

    ○根岸説明員 お答え申し上げます。  まず第一の点でございますが、警察庁から提出されました資料にどのような表記になっておるか存じませんが、那覇の検察庁からの報告によりますと、検察庁でいろいろな送られた資料等を総合した結果、那覇の検察庁におきましても、本件について、いわゆる業務上の過失事件としてかりに日本側が裁判権をとったとしても、起訴するだけの証拠は見つからないという趣旨の連絡が参っております。これは単純に、立ち入り禁止区域に入ったということだけで過失がないと申しているのではございませんで、その場から、ほかの者たちと一緒に、米軍側に出てくれと一ぺん言われて出たのに、被害者だけが現場にいつの間にかそっと戻っていったとか、いろいろな状況があるようでございまして、現地からもそのような報告が私どもに参っております。  それから公務の問題につきましては、現在の制度を少し申し上げますと、公務証明書を米軍側が発しましたときに、現地の検察庁におきましては、これは公務でないという証明があげられない。言いかえると、公務中であるという認定はこれはやむを得ないという判断に現地の検事正が到達しているわけでございます。ただ、一言つけ加えますと、米軍側が公務証明書を出したからといって、日本側が、それは直ちに公務であるといって絶対的に従わなければいけないというシステムではないのでありまして、先生が御指摘のように、もし日本側が、これは公務中でないから日本側に第一次裁判権があるというふうにいたしました場合には、日本側で裁判に回しまして、最終的には裁判所が公務であるかどうかを判断する、こういうシステムになっておるわけでございます。ただ、本件につきましては、それに対する反証を出すことができない。むしろ演習中であったので公務であったことは明らかだった、こういうふうに検察庁としても認定したわけでございます。  古い例でございますが、ジラード事件というのが起きたことがございますが、あのときに米軍側は公務だと言い、日本側は決して公務ではないという主張をしまして、日本側の主張を通して起訴した事例もございまして、決して米軍側の公務という判断に盲従しているのではないのでございます。
  314. 上原康助

    ○上原委員 公務であったかどうかという立証は、いまおっしゃるように、確かに演習をしておったということで、第一次裁判権の行使の関連においては、反証するのは非常にむずかしいかもしれない。しかし、かといって、事件全体の概略といいますか、客観的に見ても立ち入り日であったということ、そういう面からしても、全然米側に過失がなかったということで刑事責任が問われないということの及ぼす社会的影響というもの、そこを私は当然指摘されてしかるべきだと思うのですよ。法律論争は私もしろうとですからあまりわかりません。しかし、しろうとで考えても、やりようによっては、一人の人間の生命の大事さというものを考えた場合に、もう少し打つ手はあったのじゃないのか。この点を強く指摘したいわけですよ。  さらに、死人に口なしといわれ、ここにもいろいろ書いてありますが、高く茂った草陰にうずくまっていたとか。ほんとうに安富祖さんが高く茂った草陰にうずくまっておったのかどうか。一体だれが確認したのか。もちろんそれは、当日一緒におった人々から聞いてそういうことになったのかもしれませんが、この米側から出された報告書というのは、あまりにも話ができ過ぎていますよ。こういう点は私はやはり納得がいかないのですよ。  ですから、せんだっての法務委員会でもいろいろ御議論があって、大臣の御発言があったということも、この会議録を読んでわかりますが、大臣、やはりこういうことは、法律論の問題あるいは協定上の壁、私はむしろ安保条約、地位協定というものがガンだと思うのですね。おそらく良心のある裁判官であっても、検察官であっても、警察官であっても、これではというあれがあると思いますよ。そういう意味で、いまの安保条約下における地位協定というものは、もう少し考えてしかるべきじゃないのかということまで、私たちは指摘せざるを得ないのですよ。  もうこれを議論しても、これ以上あといい御答弁も出ないようですが、大臣、いまのやりとりを聞いておられて一体どう思われるのか。これだけで事が済むということでは、なくなった人に対しても、遺族に対しても、県民感情、国民感情からしても、私はこのままで済む問題じゃないと思うのですね。これに対する大臣の御見解を賜わっておきたいと思います。
  315. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 先生法律論はやるんじゃないと、こう仰せになるのですけれども法律論も一通りお聞きをいただかないと、次のことばが出ないのであります。  法律論としましては、公務の証明が出ておりますが、それは公務でない、何を言っているんだという反証は、本件事件についてはあげ得ない。あげないのじゃない、あげられない、こういう事情であるということが一つございます。  しかしながら、法律論を離れた議論をいたしますと議論はできる。これはこのままで黙って引き下がる手はない。それはどういう理屈かというと、きわめて簡単な話が、立ち入り禁止の場所であったことは承知しておるけれども、当日は立ち入りが許されている。立ち入りが許されておるということは一体どういうことかというと、立ち入りを許しております以上は、その地域の安全確保ということについては米側が責任を負うべきものである、安全を確保するために力を尽くしていなければいけない。尽くしていない結果、法律的には文句はいえないにしても、殺されておるという事実が出ておるではないか。法律を離れたる論議をすれば、これは損害賠償なり慰謝料なりお見舞いなり、何か誠実な方針を米軍がとるべきものである、おとりなさいという交渉はいたすべきものである、こういうことが法律を離れたる論議ですね。法律論としてはやむを得ない事情にあった。いいかげんにアメリカに遠慮しているということは事実ありません。あくまでも究明すべきは究明して、ジラード事件のように、複雑な経緯を経ました結果、ついに第一次裁判権は放棄をして日本で処理ができております。そういう事例もございますので、この事件をいいかげんに処理したということはございません。法律論を離れた議論を、日本の言い分を立てれば、いま私の言ったようなことが常識論として言える。アメリカもこれは否定しないであろうと思いますね。
  316. 上原康助

    ○上原委員 その点については、政府で申し入れる御決意がありますか、いま大臣がお答えになった後半の部分について。
  317. 根岸重治

    ○根岸説明員 刑事事件外のことは、私の立場からはちょっとお答えいたしかねると思います。
  318. 上原康助

    ○上原委員 そこで、私は、法律論としても、しろうと流に考えても、いまおっしゃることだけで必ずしもそう済ませられる問題かという疑問は持ちますけれども、しかし、御専門の立場でそういう御見解が出ている以上、まあやむを得ないということばは使いたくありませんが、それでも納得いたしません。だが、いまの大臣の後半のお答えを一応評価をして結論を急ぎたいと思うのです。  今度の事件もさることながら、先ほど私が言いましたように、やはり地位協定のそういった捜査権あるいは裁判権の問題が一番大きなポイントだと思うのですね。この種の事件は今後も起こらないという保証はありませんよ。いま何らかの手を打っておかないと、また同じ議論を繰り返して、善処しますとか遺憾な事件でありますとかいうことで、結局、殺され損、ひかれ損ということになっちゃう。これではどうにもならぬわけですよ。  そこで提案をしたいことは、去る三月十八日に起きたコザのホステス殺し事件も、結局うやむやのまま、明らかに黒じゃなかろうかという有力な容疑をかけられたまま除隊をし、アメリカに帰ってしまったわけです、容疑者が。これではどうも、邪推をすれば、逮捕されて裁判にかけられるかもしれぬから、その前に除隊をしてアメリカに帰しておけ。沖繩では前にそういう例がなかったわけじゃないのです。そういうようなことを考えました場合に、協定上はそうであっても、少なくともこの種の事件については、黒か白かはっきりするまでは滞在してもらうということぐらい、政府は申し入れて日米間でできると私は思うのです。そういう面については、外務省ももう少し考えるべきだし、法務省としてもお考えになるべきだと思うのです。そうでもしない限り、この種の事件というものは、解決の糸口、あるいは公平な裁判なり処理というものができかねるのじゃないかという気がします。その点についてぜひ御考慮をいただきたいし、検討いただきたいと思うのですが、どうなんでしょう。
  319. 角谷清

    ○角谷説明員 ただいま御指摘の件につきましては、法務省のほうからお答えいただいたほうがよろしいのかと思いますけれども、当該の件につきましては、私の了解しておりますところ、アメリカ側といたしましても、日本側の取り調べに協力いたしまして、除隊すべき日を一応予定しておりましたけれども、それを延ばしまして、その間、日本側の官憲によりまして十一回にわたって取り調べを行なった。しかしながら、その取り調べの過程におきまして、日本側としては、これを犯人と断定するに至らずして、いつまでもそのまま放置して引き延ばしておくことは、これはまた人権問題でもありますし、そういうような関係で、一応除隊を引き延ばしてもらったけれども、やはりある限度というものにおいて、取り調べは本人については取りやめて結局除隊したというふうに理解しておりまして、要するにアメリカ側がしゃにむに除隊させたということではなかったと聞いております。
  320. 上原康助

    ○上原委員 そういう申し入れに対して一時延ばしたということは、新聞報道などによりますとありますよね。三月の十八日に事件が起きて、五月の二十五日にはさっさと帰っているわけでしょう。もちろん私は、いつまでも引き延ばせとは言いませんよ。ある面では、コザ署は有力な証拠を握って、逮捕まぎわだったということもいわれているわけですよ。しかし、たとえそうではなかったにしても、犯罪を犯したであろうと嫌疑をかけられているアメリカ軍人がのうのうと帰るということに対する県民感情、国民感情というのは、別の角度から指摘できるわけでしょう。そういうことに対しては、やはり白か黒かはっきりするまでは、もう少し政府として積極的に打つ手は打つ。先ほどもそう言っておられますが、打つ手を打っていない面もたくさんあると思うのです。ぜひ御検討いただきたいと思います。  そこで、まあ終えますが、最初から申し上げましたように、少年の非行問題にしましても、米軍犯罪にしましても、大臣もうとくとおわかりのように、やはりあれだけの膨大な軍事基地があるがゆえに起きる犯罪であり、事件なんですね。そういう面からすると、沖繩の基地問題とか、そういった人権問題というのは、単に、外務省とか、あるいは施設庁、防衛庁とか、そういうところにまかすのでなくして、人権擁護の立場から考えても、私はもっと軍事基地のあり方、米軍犯罪に対する政府の姿勢というのは、全体的に積極姿勢というものを確立してしかるべきだと思うのです。  そういう面できょういろいろ申し上げましたが、ぜひひとつ大臣立場でも、そういう方向に問題解決ができるように御配慮いただきたいし、もし大臣のお答えがあるならば聞いて、質問を終えたいと思うのです。
  321. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 先生のお説は深く理解をいたします。大体、先ほど答弁の中にありましたように、復帰をいたしました昨年の五月十五日から本年の三月までの間に米軍の——米軍ばかりじゃありませんが、米軍人軍属、その家族、米軍関係の起こしました事件というものが二千八十二件に及んでいる。その同じ時期に日本国内でどれだけ起こっておるのかというと千六百四十七件しか起こっていない。日本全体で千七百件しか起こっていない。米軍は二千件こえている。この数字は間違いありません。この事実を見ても先生の御所論を裏づけする。  何が原因で一体こういうけしからぬことになるのかというと、国会のことですから遠慮をせずにものを言えば、米軍の日本人に対する人権思想——法務省は人権ということを持っておりますから、これを深く私は思うのです。日本国民に対する人権思想というものが軽過ぎるのじゃないか、もっと米軍当局も人権思想というものをしっかり高揚して、日本人に対する見方というものは尋常な姿であってもらわなければいかぬ。日本国内全体より、同じ期間の間に沖繩だけでより多くの事件が起こっているなんということはもってのほかじゃないか、こう私は考えるのでございます。これは米軍において深く考えていただきたい。協力してりっぱな国柄をつくっていかなければならぬ日米両国の間柄としては反省が足らぬのではなかろうか、こう考えざるを得ないのでございます。  そういうことでございますので、がまんすべきところはがまんをして、譲るべきところは譲っていくということでございますが、人権問題だけはそうはいかぬ。この事件に関しましては、先生仰せのごとく、しっかりした態度をとりまして、外務省とも十分な協力をいたしまして、遠慮をせずに主張すべきは主張する、こういう態度をあくまでもとっていきたい、こう考えます。
  322. 上原康助

    ○上原委員 いま大臣のお答えがありましたように、特にこういった人権問題に対する県民の感情というのは根深いものがありますから、私はさすがに法務大臣ことばだといま非常に共鳴いたしました。そのおことばが実をあげるようにひとつ御努力をいただきたいということを強く申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  323. 三原朝雄

    三原委員長 受田新吉君。
  324. 受田新吉

    ○受田委員 田中先生、あなたは法務大臣二度のおつとめです。したがって、前任時代の法務大臣としての施策、それをどうこなしていくだろうかを深く反省し、足らざるを補い、新しい構想を持っていま法務大臣の任務をおつとめになっておられると思いますが、ひが目であるかを御答弁願います。
  325. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 お説のとおりの決心でございます。不敏でございますが、一生懸命にやっております。
  326. 受田新吉

    ○受田委員 国家行政組織法上、法務省といけ役所は、内閣総理大臣の直接の所管である総理府をトップにして何番目の地位にあるか、順序がどこにあるか、御記憶でございますか。
  327. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 建制、つまり制度を建てるたてまえ、建制的な意味からは、法務省が各省中第一位にあります。
  328. 受田新吉

    ○受田委員 イエス、そのとおり。したがって、内閣の新しい構成がされると、内閣総理大臣の次に法務大臣が書かれる。人これをもって副総理と誤解する人もある。また、それほど順序では、国家行政組織法のたてまえから、内閣総理大臣の次に法務大臣があり法務省があるわけです。非常に重い使命を持った役所であること、つまり各省の中のトップ法務省に勤務される公務員の方も、その栄誉をになうてしっかりやっていただきたいことをまず申し上げておきます。  そこで法務大臣、あなたは私が前任の第一回の法務大臣のときにお尋ねを申し上げて、夢をどう持っておられるかをお尋ねしたことを御記憶であろうと思います。私は死刑廃止論者です。人命を強制力をもって断つ殺人は、たとえ罪を犯した者といえどもとるべきでない、こういう主張者です。当時、罪刑法定主義の立場から、あるいは勧善懲悪論の立場から、いろいろと論議をさせていただいた御記憶がよみがえってこられると思うのですけれども、死刑という制度は、超一流国になった今日、各国いろいろ議論はありますけれども、日本は死刑廃止の先べんを打つ刑事政策が実行されてしかるべき国である。しかし、たまさか変なやつがおって、こいつは殺さなければならぬというような者もおりますが、それは過重労働によって、長期にわたる大きな苦痛を味わわすことで、生命を断たなくてもそれに充当させることができるとも思います。  そこで、いまの死刑制度というものは、日本政府として非常な残虐な殺人方式がとられておる。まずそのときに、もっと軽く死刑の執行ができるような方法はないかといろいろ論議して、大臣は、電気を通ずることによって殺す方法がないかといま検討しているという。これは大臣御自身も、刑の執行の場を十分検討して結論を出したいという御答弁があったと思います。  刑事課長さん、ちょっとお尋ねするのですが、死刑の執行の着手から実行までの過程を、ごく端的に御説明を願いたいのです。
  329. 長島敦

    ○長島政府委員 死刑が執行されます場合には、本人を刑場へ連れていくわけでございますが、普通刑場には入り口のところに、仏教を信じている方には仏壇がございますし、キリスト教の方にはそれに似たあれがございますが、そこで最後の祈りをささげるわけでございます。それから刑場のほうへ入っていくわけでございますが、もし私、説明が間違っておりましたら係から訂正いたしますけれども、そこで目隠しをいたしまして、首にロープを回すわけでございます。別室のほうに看守が普通三名おりますが、そこにボタンが三つございまして、三名の看守が同時にその三つのボタンを押すわけでございます。そういたしますと、刑の執行を受ける者の立っております床の板が落ちるわけでございます。ちょうど両方の棒が立っておりまして、その間のつなで、からだが落ちるものでございますから、首が絞められるということで執行されるわけでございます。地下のほうには刑務所長と医者がおりまして、検事も立ち会っておりますが、実際に死刑の執行によって死亡したかどうかを確認をいたすわけでございます。  非常に厳粛な場でございまして、私自身は実は立ち会ったことがございませんので、あるいは誤ったことを申したかもしれませんが、私の理解しておりますところでは、いまのような手続で執行されるわけでございます。
  330. 受田新吉

    ○受田委員 刑の執行担当局は矯正局ですか。
  331. 長島敦

    ○長島政府委員 死刑の執行の命令が大臣から参りますと、それを受けまして、検事のほうから死刑の執行命令が出るわけでございます。執行の責任者は刑務所長でございます。したがいまして、刑務所と申しますか、拘置所でございますけれども、そこの中に死刑執行場というのが設けてあるわけでございます。
  332. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、矯正局長の指揮監督権によって刑務所長が動くという行政組織ですね。
  333. 長島敦

    ○長島政府委員 死刑の執行につきましては、大臣の執行命令によりまして検事が動きまして、刑務所長がそれによって、執行の責任を負うということでございます。
  334. 受田新吉

    ○受田委員 刑務所長を監督する局長はどなたですか。
  335. 長島敦

    ○長島政府委員 死刑の執行問題につきまして一般的な監督権は持っておりますから、たとえば設備の問題でございますとか、執行の際に問題を起こさないように、できれば非常に安定した気持ちで安らかに死ねるような配慮とか、そういうことについて日ごろから指導するのは矯正局長責任でございます。
  336. 受田新吉

    ○受田委員 安らかに生命を断つ段階まで見守っていく行政上の責任者であられる矯正局長でもある。そうすれば、安らかに死ねるか安らかでないか、そういう現場を当然見られなければいけない地位にあられるのが矯正局長だと思うのです。大臣もその意味で、死刑の執行の場をつぶさに見られて、安楽にこの世を去っていくその死に顔が、ほんとうに恨みに燃えているか、つまり宗教の力で安らかに死んでいるか。  西郷さんの法務大臣のときに、三月七日、私、忘れておりません。大阪の拘置所でひとり刑の執行を受けたその青年は山口県の青年で、平素非常に着実な人間であったが、金が足りないというので、紙の行商人を未成年の子供と一緒にやった。ところが、未成年のほうがそれを殺したということを陳弁したけれども、未成年者のほうは少年法の適用を受けるというので、成年に達したほうが刑の執行を受けて、ともにおった一人は懲役刑で済んでおる。こういう若い人であるだけに、再審の請求などを受けさせるのにも、何とかしてやりたいと思ったときに、西郷さんはあっさり印判をついて執行をされた。執行がされたあと私に届いたはがきを大事にしております。クリスチャンの信仰に生きたようで、はがきの中に、先生、長い間お世話になりました、私はただいまより天国に参ります、私の家族をよろしくお願いします、というはがきをいま大事に持っております。彼がきれいな気持ちになるために、広島から大阪に移されたその前後を、ひまさえあればちょいちょい立ち寄って差し入れなどもした青年だったわけです。  私は、そういう経験を持っているだけに、死刑の確定者といえども、常に平安の心をつちかう努力を必要とし、また刑の執行も、首をつるわけですから、直ちに精神もうろうとすると思いますけれども、首つり、絞首刑でいくというようなことはほんとうに残虐であるから、刑の執行方法なども十分検討する。それは法務大臣からそう言われておりました。それで刑の執行方法などを検討する付属機関が、いまここに幾つもある中のどれになるかお尋ねしてみたいのですが、担当局長である以上は、刑の執行はどういうものであるか現場を見に行かれる必要がある。それを、おそろしいというのはわかるのですけれども、こわいこわいということはいけないと思うのです。歴代の矯正局長で執行の現場を見られる担当局長、見られないままで任を去られた局長が何人おられるか、私いささか不満です。長島さんのような紳士でいらっしゃるお方も、しかし担当局長である間には、所管の刑務所長が立ち会っておっても、いかに安らかに死んでいくか、その処理、死に方にもっと安らかな方法はないか、十分研究するように。担当者だけにまかせておりましたのでは、改善ができないと思うのです。局長としてその現場を近く見られるかどうか、御答弁を願いたいと思います。
  337. 長島敦

    ○長島政府委員 まことに仰せのとおりでございまして、就任後まだ日が浅うございまして機会がございませんでしたが、ぜひ一度私は厳粛な気持ちで見まして、一人でも多く安心立命して執行できるようにくふうをしたいと思います。
  338. 受田新吉

    ○受田委員 私がいま申し上げた青年には、子供が一人と妻がおる。そのあとをいま完全に見守ってあげておる。人目を避けてクリーニングをやっている。それを人がかれこれ言うから位置を変えた。妻には罪はない。子供にも罪はない。私は行くたびに、その奥さんと子供を激励してやっている。そしてそのきょうだいを。みんな死刑囚の家族だというので人が寄りつかぬが、私はそれを進んでやっていっております。御命日には墓前にお参りしてあげるようにして、その遺族が死刑囚の家庭として悲惨な人生にならぬように配慮しておるつもりです。これは、法務省としてもそこを十分考えられて、そのなくなっていく人の最後までを神聖に扱う。人間の死です。よし死刑囚といえども、とうとい人命を終わる瞬間、そのあとを守っていく、遺体の処理等も礼を尽くしていく、こういうところまで見届けていただいて、その処理が法務行政上の大事な行政一つとして、何か改善の道がないかを御研究願いたい。  法務大臣、いま申し上げたとおりです。あなたのサインによって生命が消えていく。その消えていく生命に安らかなれと祈る。再びかかる事件が起こらないように、その霊よ安らかなれ。そしてなくなった遺族にも、法の厳重な制裁のもとに、法の規定であなたのだんなは生命を失われたが、あなた方には何ら罪はないのです、どうぞ強く生きてくださいという激励を送るような法の執行者が私は必要だと思う。犯罪人の家族が泣いて遺体を引き取っていく場面は、私は想像にかたくない。そのときに、安らかに法のもとに御主人はなくなった、罪を憎んで人を憎まず、どうぞ御遺族よ強く生きられよという配慮をやっていただいて、そこまで見届ける法務行政が私は要ると思うのです。大臣、御見解を。
  339. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 まことに胸迫る思いで承りました。御説のとおりにやっていきたいと思います。
  340. 受田新吉

    ○受田委員 刑の執行ということについて、法務省の御配慮をしていただくことを大臣局長も言明されたので、次に話を移します。  刑の確定をした人々で、まだ刑の執行ができていない人がいまどれだけおるか、数字をお示しをいただきたい。
  341. 長島敦

    ○長島政府委員 これは昨年の十二月三十一日現在でございますが、死刑が確定いたしまして未執行の状態にあった者が四十七名でございます。
  342. 受田新吉

    ○受田委員 帝銀事件の平沢なる者は、刑の最終確定がされて何年たっておりますか。
  343. 長島敦

    ○長島政府委員 約十八年くらいだと思います。
  344. 受田新吉

    ○受田委員 この長期にわたって刑の執行ができない理由はどこにございますか。
  345. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 十八年ということが私の頭脳のメモにありますほどに、実はこの事件は心配と同情をしておるのでございます。何しろ本人が、自分のことですから熱心なんでありますけれども、たいへん法律をよく研究をしておりまして、何と再審の願い、恩赦の願いを提出すること十数回に及んでおります。現在恩赦についても、再審の最後のものにつきましても審査中でございます。  御承知のとおり、死刑の判決が確定をいたしますと、法務大臣は六カ月以内に刑の執行を命じなければならぬというたえまえでございます。「但し」というただし書きがそこにございまして、再審の願いとか非常上告だとか恩赦の願いとかいうものがあった場合には、理屈があろうがなかろうが、その願い出がだめならだめとの結論が出てくるまでは、右六カ月の間には算入しない。それは別の期間だ。一口に言いますとそれだけ延ばすということですね。そういう事情がありまして、再審十数回、恩赦数回の願い出をしております。その間は執行ができない。賢い男でありまして、結論が出た瞬間にまた申請をするそれが終わったころにまた間髪を入れず申請するという申請のしかたをしてまいりますので、法規の精神を尊重すれば、そういう事情が続いておる限り執行ができない、こういうことになっております。執行のできない理由はそれでございます。
  346. 受田新吉

    ○受田委員 そうした再審請求、恩赦の該当者としての申請、こういうことの知恵を持った者は死刑の執行ができない。そういう知恵やら、知恵をかしてくれる人のない者は早く刑の執行を受けるという、ここに大きな矛盾があると私は思う。私は、いまの大阪の拘置所で刑の執行を受けたその青年に、何かの形でひとつ検察当局とでも相談してやろう、大阪へ行こうと思うているうちに、ああしまったと思った、そのはがきが来たときに。しまったと思って、そのときに残念でならなかったんです。その青年の拘置されている最初の拘置所の看守が、あの人を何とか救ってあげてくれないかというので、ひとつ書類を取り寄せようとして準備をしておったときです。  私は、そういうことを考えると、生命を断つことはそう早くやらないで、拘置所が満員になってきたという場合でも、できるだけ刑の執行について、そういう者もおるということである以上は、何かその人のために力をかしてやる手はないか。とにかく生命を断つことについては、最終決定、執行の前にあとう限りの配慮をすべきであると思うのです。そうしてそのうちに年をとって病気になる、病気になって余命幾ばくもないという判断ができたようなときには、自然の死を待って刑の執行をしないでおくというような配慮が私、要ると思うのです。病人であって早く殺してくれと本人が言ってまいりましても、安楽死という問題等もありますが、しかし、これは年寄りであるし長いことはない、あるいはこの病気はガンでそう遠くない間に死亡するというめどがついたなら、治療しながら刑務所で、刑の執行を待つことなしに自然の死を待っていくというような配慮をしていただくべきであると思うのです。  殺された側からの遺族から見れば、あいつ早く殺したいと思うけれども、罪を憎んで人を憎まず、刑が確定された後においても、そういう配慮を法務大臣はなさっておかれる。歴代の法務大臣が刑の執行の印判を極力遠慮をされるということが、そういう配慮から来るものであるとするならば、私はとうといものであると思う。西郷さんはあっさりばっさばっさ印判を押したらしい。私いまでもそのことを痛恨に思っているわけです。  そこでもう一つ、学生の暴動、暴力行動の問題で、刑事事件として考えられるような場合の暴動で、たとえば日比谷の公園の中において大挙暴動を起こし、松本楼を焼いた。そういうときに、少年法の適用を受ける未成年の大学生と成年に達した者との限界をつけますか。どうですか。
  347. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 これはどのような事情がありましても、少年法の命ずるところによって、年齢だけは適当に処置をするということができません。少年法どおり処理をする以外に道はございません。
  348. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、きわめて極端な例を申し上げますが、少年法によって、二十歳に達した者を夜の十二時をもって二十歳と判断するかどうかです。
  349. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 行為のときをもって少年法の適用をいたします。ただし、先生お説のような場合には、情状としてこれをくむ。たった一日、何時間ということであります場合には、情状酌量の温情を傾けることはできる、またそうすべきであると存じます。
  350. 長島敦

    ○長島政府委員 ちょっとただいまの点でございますが、ただいまの少年法は、家庭裁判所の裁判官が審判をします時点におきまして、年齢が二十歳未満であるかどうかで少年法の適用の有無が変わるわけでございます。
  351. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 行為どきと申しましたのを訂正いたします。
  352. 受田新吉

    ○受田委員 その時点で二十歳に達するというわけでありますと、行為の時点で二十歳未満、そして家庭裁判所の審判の時点までゆとりがある。そうすると、二十歳をこえる者が相当出てくるわけですね。どうですか。
  353. 長島敦

    ○長島政府委員 まれにそういう事件がありまして、たとえば十九歳でもうすぐ二十歳に近いころに犯罪を犯しまして、警察、検察庁を回って家庭裁判所へ回りますと、もう二十歳をこえているというような場合がございます。そういう場合は、家庭裁判所からまた検察庁のほうへ、おとなになったからということで事件を戻してまいりまして、検察庁のほうでおとなの事件として処理いたします。起訴すべき者は一般の刑事裁判所へ起訴いたし、起訴猶予にする者は起訴猶予にするということで検事のほうへ処分が移ります。
  354. 受田新吉

    ○受田委員 それは法律のたてまえとして、予備、着手、実行という事件があって、たとえば日比谷などではそういうことが起こったのですが、放火を計画して、そして着手した。しかし、いよいよ火をつけて燃えてしまったのはもう二十歳に達した翌日の一時ごろであった。殺人でもそうですね。十九歳のきょうはぎりぎりだ、あすになったら二十歳の成年になる、だかちいまのうちに人を殺しておけば少年法の適用だということで、あるいは意識的にやる不心得者がおるかもしれません。十一時予備、十一時半から着手、やっと殺し終わったのが翌日の午前一時、そういうのがあるかもしれない。そういうことをやはり法務省、検察当局は計算に入れておかなければならぬ。法の趣旨はどこにあるのか。姦淫の場合もそうですね。婦女子に暴行を加える不心得者がいて、着手が満十九歳で、実行を終わったときが翌日の二十歳をこえたというようなことも想定できるわけです。たまたま十九歳のうちで実行できなくて翌日に回った、そういう場合もあるわけですが、そういう場合は検察当局は十分心得て、つまり意図的にしておるかどうかということも考えなければいかぬ。  学生暴動などは、ちょうど年齢がその辺にあるものですから、そこにかねがね事件が起こってくるのです。日比谷事件などはちょうど夜から朝にかけてやったから、五百人も六百人もおれば相当数の者がちょうどその辺におるはずです。そういうことは法はきちっとやって、情状酌量というものはあるけれども、その中に不心得者がおるとしたならばきびしく処断するという、そこに法と道徳とのかね合いをりっぱにこなす法務省であっていただきたいと要望申し上げておきます。  そこで、少年犯罪は漸増の傾向にあるかどうか。その犯罪の性質等もごく端的に指摘して、御答弁を願いたいのです。
  355. 村上尚文

    ○村上説明員 最近の少年犯罪の動向でございますが、検挙した数で申し上げますと、昭和四十五年に前年より若干増加いたしましたけれども、四十六年、七年と多少減ってまいっております。ところが、数においては減っておりますけれども、中身をつぶさに検討いたしますと、年少者、つまり年の若い者の犯罪がふえております。それから年長者、つまり十八歳、十九歳の者の凶悪犯がかなりふえております。それから最近の特色といたしまして、従来は貧困かあるいは欠損家庭が少年犯罪の原因であるといわれておったのでございますけれども、最近の状況を見ておりますと、両親がそろっておる家庭で、中流以上の比較的恵まれた家庭の子弟の犯罪がふえております。  動機を見ますと、さした動機もなしに、いわば犯罪そのものに対して興味を持ってやる、型で言いますと遊び型非行と申しておりますが、最近そういった遊び型非行がふえております。  従来から、少年犯罪の集団的傾向がいろいろ指摘されておるわけでございますが、最近もグループを組みまして、たとえば万引きを行なうとか、そういった集団犯罪を行なう型の少年がふえております。
  356. 受田新吉

    ○受田委員 法務当局は少年法を改正して、年齢を十八歳に引き上げるという計画をお持ちかどうか。これは裁判所側の見解等もあっていろいろと議論がされているところでございます。いまお話を承って、年少者の犯罪が多い、集団暴力というようなものも考えられる、集団犯罪というようなこともある趣でございますが、この少年法の改正という長く論議されている問題について、法務省の御意見を承りたい。
  357. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 いま事務から御説明いたしましたような動向でございます。そういう動向で十八歳、十九歳、少年にとっていえば上の年齢にある者、ここに凶悪な犯罪がふえる傾向になっている。こういうところから申しまして、少年法の改正をお願いいたしまして、十八歳と十九歳、この二年間の少年は、青年層と書いておるわけでございますが、青年層をこの二年間のものについて設けたい。どんな扱いをするのかというと、おとなと子供の中間的な扱いをしたい。青年層と申しております。これが少年法改正のねらい中のねらいでございます。  しかし、各方面の意見を聞いてみますと、具体的に申し上げまして、裁判所の方面におかれてはなかなか熱心な御反対がこれに対してございます。弁護士会方面においても容易な情勢ではない。非常に困難な情勢にあるけれども、何とか私たちの考えておりますところを、説明を尽くしまして、誠意を傾けて御了承を得て、そしてこれを国会に提出する時期を選びまして、少年法の改正を思い切ってやりたい念願でございます。腹一ぱいの念願を持っております。
  358. 受田新吉

    ○受田委員 青少年課は、青少年の青年と少年をどういうふうに分けて考えられるのか。青少年と一貫して考えていくのか。青少年課長
  359. 村上尚文

    ○村上説明員 青少年課で申しております少年は、もちろん二十歳未満の者でございます。それから青年と申しますのは、二十歳をこえましたいわゆる若年成人でございまして、少年の成人になりました者の少し上の年齢の者……(受田委員「何歳ぐらい」と呼ぶ)二十四、五歳ぐらいまでを普通若年成人、そういっておりますが、その年齢層の者を考えております。
  360. 受田新吉

    ○受田委員 二十五歳くらいまで。少年の下の限界はどこですか。
  361. 村上尚文

    ○村上説明員 刑事責任年齢でございますのは十四歳でございますから、普通十四歳以上を考えております。
  362. 受田新吉

    ○受田委員 それ以下は青少年課の対象と考えないか。
  363. 村上尚文

    ○村上説明員 これは普通児童と申しておりまして、主として厚生省のほうの御所管になろうかと考えております。つまり十四歳未満の者でございますと、犯罪を犯しましてもいわゆる刑事責任はないわけでございまして、つまり検察庁のほうといたしましても、もちろん起訴はできないわけでございます。
  364. 受田新吉

    ○受田委員 民法第三条に成年齢の規定があるわけです。この成年齢については、いまの少年法との関連もあるのでございますが、すでに二十歳から選挙権も持っておるような段階になっておるのであるが、ソ連などは十八歳を成年齢としておる。これを少し若く引き上げていくというような検討はやっておられるのですか。
  365. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 民法上の行為能力の限界が、御承知のとおり二十になっておる、その年齢を引き下げるという計画はただいまのところございません。
  366. 受田新吉

    ○受田委員 天皇及び皇太子は十八歳をもって成年とするとある、これとの差を申していただきたい。
  367. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 天皇、皇太子十八歳、民法は二十歳、それをどういうんですか。
  368. 受田新吉

    ○受田委員 主権在民のいまの御時世でしょう。だから天皇、皇太子は十八歳をもって成年とすると書かれている以上は、いまはひとしく主権在民の中に天皇も皇太子もいらっしゃるわけです。したがって、天皇や皇太子は十八歳という成年齢の規定がある以上は、一般の人にも十八歳という規定を設けてもいいのじゃないか、こう私は申し上げているわけです。
  369. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 天皇、皇太子も国民の一人である、憲法のたてまえはそうなっておりますね。そういうことでありますから、そう区分けはしてあるけれども、これを同様に扱ったらどうかという先生の御意見、御意見として承っておきます。
  370. 受田新吉

    ○受田委員 どうですか、疲れられましたか。疲れていなければ気楽に質問します。時間はいいですね。  それではひとつ大臣大臣非常に愉快なお方ですから、私あなたを敬愛しておるのですよ。そこで、法務省は日本の法律の番人をする役所でもあるわけだし、公の秩序、善良の風俗を十分守っていただける大事な役所でございますから、できるだけきちっとした法体系を樹立する心がけを持っていただきたいという意味で、この問題を十分検討してもらいたいのです。世界の動向もそういう方向へ行っておるという意味と、少年法の問題もそこで自然に解決するのです。つまり民法第三条の改正による問題の処理があるわけです。このほうからの御検討をされることで、裁判所その他が自然に草木が風になびくがごとくにいくわけですから。  そこで次は、私が非常に気にしているのは、いま指摘しました少年の犯罪を何とか少なくしていきたい、次代を背負う青少年を美しい社会環境で守っていかれるような形に政治を持っていかなければならぬ。その青少年が犯罪を起こすのは社会環境の悪さ、政治の悪さというものがやはりどこかにあるわけですね。そうした青少年がすくすくと伸びていく、児童福祉法でも、あるいは児童憲章でもうたわれているような社会環境をつくってあげる、それを国務大臣として、他の厚生行政等もあわせて、青少年犯罪の防止に、総理府の青少年対策本部等とも打ち合わせをされて、常に関連の役所が密な連絡をおとりになって対策をおとりになることを要望したいのでございます。  そこで、少年の場合の犯罪、十四歳以下は厚生省の所管で、法律対象にならぬということでございますが、そういう子供たちからあわせて、法務省は十四歳以下はノータッチ、どこかで悪いことしたらそれを厚生省でめんどう見てくれればいいんだというようなことでなくして、そうした事実犯罪を起こしたことそのものは、たとえ子供といえども、国の法律を犯したということの深い反省をさせる努力はする。法務省は無責任であるとは私は思わないが、十四歳に満たざる子供の犯罪は厚生省の所管であって、補導すればいいんだということで済むかどうかです。青少年課長の事務当局として、十四歳以下の子供が犯罪を実際に起こした場合にはどう扱いをなさるのですか。
  371. 村上尚文

    ○村上説明員 先ほどもお答えいたしましたように、刑事責任年齢は十四歳ということもありますけれども、もちろん法律上の訴訟はないといたしましても、われわれも当然それに対しましては関心を持っておるわけでございまして、先ほども厚生省のほうの御所管と申し上げましたけれども、あるいは警察のほうも御関与されるかもわかりません。あるいは総理府にございますところの青少年対策本部におきましても、これは関心を持っておるわけでございます。われわれといたしましても、関係機関と連絡をとりまして、十四歳未満の者に対しましても、非行を犯さないように、あるいは環境浄化に気を配るように、十分意は尽くしておるつもりでございます。
  372. 受田新吉

    ○受田委員 これは保護局の所管になるわけでございますが、矯正局と重なってもくるわけでございますが、そうした保護司、保護観察官の任務についてお尋ねしてみたいのですが、保護司と観察官のきわめて端的な任務をすかっと申していただきたい。同時に、そこに属する人員がどれだけあるか、数字をお示し願いたいのです。
  373. 高瀬禮二

    ○高瀬(禮)政府委員 保護観察官と保護司の任務でございますが、御承知のように、保護観察官と民間の篤志家であります保護司が相協力いたしまして、保護観察を行なっておるわけでございます。  人員でございますが、現在、保護観察その他の事件処理に実際に当たっております保護観察官は五百六十七人でございます。そのほかに管理職の者、所長、課長等は別にございます。現実に事件処理に当たっておりますのが、ただいま申し上げました五百六十七人でございます。現在、保護観察を実施いたしております対象者は、全国で七万八千四百二十一人でございます。保護観察官一人当たりにいたしますと約百四十人を見ておる、こういう状況でございます。保護司は、現在四万六千人でございます。
  374. 受田新吉

    ○受田委員 四万六千人と五百人台、これは八十人に一人の割合にしか観察官はいないわけです。この少数で間に合うのですか。この少数でこの大事な使命が果たされますか。いまのは全国でございましょう。
  375. 高瀬禮二

    ○高瀬(禮)政府委員 さようでございます。  ただいま先生から御指摘がありましたように、実際に事件処理に当たっております保護観察官は五百数十人でございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、民間の篤志家、ボランティアであられます保護司さんの御協力をいただいておるわけでございます。御協力をいただきまして、先ほど申し上げました対象者につきまして保護観察を実施いたしておるのでございますが、何ぶんにも、ただいま先生御指摘のような割合になってまいりますので、私どもといたしましては、何とかくふうをこらしまして、これだけの人員でできるだけすぐれた効果をあげていかなければならないということで、いろいろとくふうをいたしながら実施をいたしておるわけでございます。  たとえて申しますと、対象者の中で、処遇が特に困難な者、それに比べますとそれほどでない者とがあるわけでございます。そうした者をいろいろな角度から分類をいたしまして、処遇の特に困難な者につきましては、保護観察の専門家でございます保護観察官が重点的に当たる。全部保護観察官だけでやるというだけの人員はございません。ございませんが、関与する度合いを高めてまいりまして、保護司さんとやはり御協力いたしまして実施をするなども、その一つやり方になっておるわけでございます。
  376. 受田新吉

    ○受田委員 社会を明るくする運動などと称するのが各地域で起こっております一私の郷里でもそういう運動が起こっております。これは保護司の皆さん、なかなか本気でやっておられる。ところが、その四万と称せられる保護司の待遇は、国家は幾らお手当をされておられるか、数字をあげてくださいませ。
  377. 高瀬禮二

    ○高瀬(禮)政府委員 ただいまお尋ねの保護司に対する予算面の措置でございますが、保護司の活動に対しまして予算面で措置いたしておりますのは、一番大きなものは実費弁償金と申しております。保護司さんが保護観察を担当いたしますと、その担当いたしました件数一件につきまして、月に幾らということで支給をいたすわけでございますが、必ずしもたいへん多い額ではないのでございますが、現在三段階に分かれておりまして、一番高いのが千七百円でございます。次が八百八十円、次が七百八十円、三段階でお払いいたしておる、こういう形になっております。  このほかに、さらに環境調査調整費というのがございまして、これは先生御承知と存じますが、現在刑務所その他の刑事施設に収容されておる者につきまして、将来仮釈放になりました場合の帰住先の予定地があるわけでございます。その帰住地、帰住先の環境を調査いたしまして、仮釈放に支障を来たすというようなことがあります場合にはそれを調整していく、こういった仕事も保護観察官、また保護司が担当いたしております。そうした費用につきましては、別途これも、報告一回につき三百七十五円というようなことでございますが、そうしたものをお払いいたしております。
  378. 受田新吉

    ○受田委員 実費弁償以外の本俸はないのでございますか。
  379. 高瀬禮二

    ○高瀬(禮)政府委員 ございません。
  380. 受田新吉

    ○受田委員 大臣、問題が一つあるのです。保護司はこれだけ苦労しておられて、社会に明るい運動を起こそうという立場で、そうした対象人たちを守ろうとする苦労をされる実費弁償が三段階で千円前後しかないのです。これでは保護司の名が泣きますよ。これはやはり法務大臣、あなたが御在任中に、この社会をほんとうに明るくして、犯罪のない社会をつくるために保護司に積極的に——保護司もある程度名誉的な意識を持っておるのですから、実費とかいうものにとらわれないでしょう。しかし、保護司といえども、やはり一つの身分は、どういう名称ですか。国家公務員……。
  381. 高瀬禮二

    ○高瀬(禮)政府委員 非常勤の国家公務員であります。
  382. 受田新吉

    ○受田委員 国家公務員なんです。国家公務員にこのわずかな実費弁償で、仮釈放したときにもほんとうに一握りです。ほんのたばこ代にしかならぬですよ。ちょっとでも食事したらすぐ消えてしまうような金額です。もちろん対象人員が多いけれども、ほんとうに犯罪のない、明るい世の中をつくるためには、保護司が自腹を切らない程度にする。いまの千円前後のお金で御苦労さんというのはあまりにも哀れです、国家公務員に対して。大臣、英断をふるっていただきたい。
  383. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 たいへんありがたい御激励のおことばで、感激にたえません。実情を申しますと、私の所管には、このほかに人権擁護委員というものもございます。(受田委員「私も同じことをいま言おうと思ったのです」と呼ぶ)同様のことでございます。それから私の所管外には、はなはだしいものは命をかけて働いておる民間消防団がございます。こういうものは、いやしくも仕事の中身から、もうこのまま放任しておくべきものではないということを考えるのでありまして、ただいま局長が読み上げました数字でも、本年に入りまして、これで増額になったところでございます。そういうことでございますので、今後は、先生の御趣旨を十分念頭に置きまして、最善を尽くして大蔵省に折衝をいたしたいと存じます。
  384. 受田新吉

    ○受田委員 どうも筋の通った要求のほうが削られて、とんでもないところにばく大な金が使われておる日本の財政計画というものに、私は危惧を抱いているわけです。こうした目に見えないところでいま努力している方、人権擁護委員しかりです。そうした立場方々にせめて国家は、あなた方にきわめて御期待し御苦労を感謝しておりますよという程度の措置はしてあげなくちゃいかぬですよ。これに対しては野党といえども反対する野党は一つもないです。私がいま指摘したことについては、全党をあげて超党派で、世の中を明るい、文明国家らしい国ぶりを示していただきたいと思っている。そのためには、総額にしても、四万程度からの人だといえども、いまの千円程度を一年間計算してみなさいませ。四万で五億か六億じゃないですか。わずかなお金ですよ。ほんのもう十億、二十億奮発すれば、小さな飛行機が一つ節約されるだけで、そのほうの保護司が全面的に全国で意気込みが高くなるという大事な政治の一つですね。そこに少年たちに明るい将来が開けてくる。文明国家の子供として生まれてよかったと生きがいを感ずる子供をつくろうじゃないですか。お願いしておきます。  次に私は、懲役刑、禁錮刑の執行を受けた後に社会に復帰する人々、この人々の中に再び犯罪を重ね累犯の実績を積んで一生涯を刑務所で暮らす人もおる。刑務所の中において社会復帰の準備に不足はないか。職業の点その他作業の問題等で、そうした社会に出たときの措置も考えながら、またときには、よく働く模範囚に対しては、月給ということはちょっとできませんでしょうが、ごほうびを相当にやって、出るときには、社会復帰の最初の転業資金ぐらいはいくようになれば、刑の執行を受けて、おれは罪の償いは刑務所でやった、これからは生まれかわってやるぞという勇気が出るはずですね。刑務所から出た人間として社会で冷たい目をもって見られないような配慮を、今度は社会の一般の人もしてあげなくちゃいかぬ。職業安定所もそういう人に対しては、また変わった角度から骨を折って就職あっせんをしてあげる。そこにおいて、総合的に見たら犯罪はどんどん減ってきますよ。すべて愛情ですよ。真心ですよ。法務行政の深い受情があるならば、社会にそうした犯罪を重ねていく人もだんだん減ってくる。われわれが外国で、特に北ヨーロッパのデンマークやスウェーデンなどを見て、そういう配慮がされている国々を知っているだけに、日本の国には、そうした刑余者の処遇、在刑務所時代の処遇、そして生まれかわった気持ちで、社会に罪をほろぼす上で倍の働きをしたいというような心組みを持つ、そうした政治、行政が要ると思うのですね。  大臣、いまの世の中にどこか欠けたものは何か。人間の真心が欠けている。行政官もそこの配慮が要る。そしてそこに財政的な措置がちょっと前進してより効果があるならば、そこにこそ勇気を持って、思い切った財政措置をとるというような形が要るのですね。私の真心が大臣には十分にわかると思うのです。御決意のほどを……。
  385. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 決意をいたしまして、最善を尽くしたいと思います。
  386. 受田新吉

    ○受田委員 私、これ以上は申し上げません。いまの大臣のすなおな御決意を実行に移していただきたい。実行です。  法務行政には、国民にほんとうに喜ばれる幾つかの問題がある。法務省というと何だかいかめしい役所に見えるが、そこに多くの人を喜ばせる大きな課題をかかえた役所ですから、これは庶民の、大衆の役所である。法務大臣をやり法務政務次官をやると次の選挙に落ちるというジンクスがあるといわれているが、あなたはよく当選されました。(笑声)だから、そういうことであなたが御在任中に、多くの人を喜ばせる役所としてひとつ大きなお働きを願いたい。  それでは次に最後の問題です。入国管理局長さん、御苦労さんですが、ひとつ前のほうへ。  吉岡先生、あなたは外交官として、長い間、世界の多くの国々を知っておられるわけでございますが、日本に一番近い国、遠くて近い国に朝鮮民主主義人民共和国があるのです。ここの皆さんと韓国の皆さんとは、その法律的基礎において、条約の基礎において、日本にお住まいになるのに、協定永住と一般永住とがございまして、そこに区別されておる。しかし、いまはもう国際的にも、双方が国連に加盟しようということをわれわれも要請しようというようなところまで来たわけで、非常に情勢が変わってきておるわけでございますので、北朝鮮の皆さんの処遇について、南朝鮮とあまり差がないような形に縮めていく努力をされる必要があると思いますし、具体的な問題として、年末には墓参に帰りたいという里帰りの皆さんの要請などは、ことしは思い切って数をふやしてあげる。また朝鮮から日本へ、芸能、スポーツなど、豊かな文化性を持った、人間性を持った方々が来るというような場合には、喜んでこれを迎え入れるという事務的な処理についてお気持ちを伺い、最後に、この問題について深い関心を寄せておられる大臣から御答弁を願いたいのです。
  387. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 ただいま先生の御発言のとおり、朝鮮半島をめぐる情勢は、特に昨年の七月以来緩和の方向に向かっておるやにわれわれも観測しております。したがいまして、その情勢の進展に伴いまして、入管行政の上でも漸次北朝鮮との往来の面においても制限を緩和いたしております。  特に、御指摘のございました人道上の問題で、在日朝鮮の方々が朝鮮半島の北の部分に帰りたいという御希望に対しましては、昭和四十年から一昨年までは、数字を申し上げますと、四十年に三名、四十三年に六名、四十五年に六名、四十六年に二十七名でございましたが、昨年は六十三名許可いたしておりますし、本年に至りましてはすでに九十二名を許可いたしております。特に、昨年までは春秋の機会に墓参という名目で二回だけ帰っておりましたが、今年に至りましては、人道上のケースである以上、その必要性がある場合には随時これを認めるということにいたしまして、その方針にのっとって現在再入国を許可しておる次第であります。
  388. 田中伊三次

    ○田中(伊)国務大臣 朝鮮が南北に分かれておりますが、南との関係は、北と違います点は承認国、北は未承認国。どのように私が北に同情を持ちましても、承認国と未承認国を同様に取り扱うという行政は許されません。許されませんが、ただいま先生ことばのこと、事いやしくも人道に関すること、この関係は国境を越えるべきものだ。人道条項と仰せになる場合においては、再入国においても、また北からおいでになる場合でも、話は違いますが、かりに南北ベトナムからおいでになる場合でも、国境を越えて処理をすべきものである。これは、日本は道義の国家を建設しょうとしておるということであるならば当然のことである、こういう考え方を微力ながら貫いて徐々に来ておるのが現状でございますので、ただいま当該担当の局長から御説明を申し上げましたように、今後は、第一に再入国の問題に重点を置きまして、より大幅に再入国を認めていきたい。どうすれば認められるかという気持ちで、前向きの姿勢で大幅にこれを認めていきたい。  それから続いて、北鮮から日本においでになります場合におきましても、人道、あるいは人道に準ずる学術、音楽、スポーツ、こういう関係におきましては、この入国を許すことに極力力を入れたい、これを実行していきたいと思っております。
  389. 受田新吉

    ○受田委員 時間も進行しておることでございますから、質疑の通告をしてある他の局の局長さんたちに対する質問は、一応これでやめます。御指摘した多くの問題は、それぞれ私からの質疑通告の趣旨にのっとって御処理を願いたい。  法務大臣、法務省という役所は、ほんとうにそうした大事な国民のためのお役所です。裁判所の所管は別ではございますけれども、裁判のテンポを早めていくとか、検察行政についてはできるだけ人間を大事にして、罪を憎んで人を憎まず、法と道徳のつながりを——検事はおそろしい人、検察官はこわい人ということではなくて、あなた方のほんとうの味方ですよという印象を与える検察行政。  それから、いまあなたのお役所には、数多くの付属機関があります。付属機関について、一々任務をどう遂行されているかということなどについても私お尋ねしたかったのですけれども、これはやめます。法制審議会などは百何回も会合しておられるということだが、そこにおる委員の皆さんも精励恪勤してもらって、そうしてりっぱな成果があがるように、無用の機関として付属機関が空白を嘆くことのないように、無用な機関があれば整理をして有効な機関にこれを切りかえて、二つを合わせて一つにするとか、たとえばいまの副検事とか検察官の考試の問題などはできれば一つにして、その比較検討をしていく必要があるならばそういうものを配慮する、そういうようなことで、ひとつ行政の妙味を国務大臣兼法務大臣として御努力いただくことを要望して、これでおきます。
  390. 三原朝雄

    三原委員長 次回は、来たる七月四日水曜日午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後八時十一分散会