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1973-06-26 第71回国会 衆議院 内閣委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十六日(火曜日)    午前十時十一分開議  出席委員    委員長 三原 朝雄君    理事 奥田 敬和君 理事 加藤 陽三君    理事 笠岡  喬君 理事 中山 正暉君    理事 藤尾 正行君 理事 大出  俊君    理事 木原  実君 理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    伊能繁次郎君       江藤 隆美君    越智 伊平君       大石 千八君    近藤 鉄雄君       佐藤 守良君    竹中 修一君       戸井田三郎君    丹羽喬四郎君       旗野 進一君    林  大幹君       吉永 治市君    上原 康助君       坂本 恭一君    山崎 始男君       横路 孝弘君    和田 貞夫君       木下 元二君    東中 光雄君       鈴切 康雄君    山田 太郎君       受田 新吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         国防会議事務局         長       内海  倫君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       田代 一正君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         防衛施設庁総務         部長      河路  康君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省条約局長 高島 益郎君         運輸省航空局技         術部長     金井  洋君  委員外出席者         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 六月二十六日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     戸井田三郎君   吉永 治市君     林  大幹君   正木 良明君     山田 太郎君 同日  辞任         補欠選任   戸井田三郎君     赤城 宗徳君   林  大幹君     吉永 治市君   山田 太郎君     正木 良明君     ————————————— 六月二十二日  官公労働者ストライキ権回復に関する請願  (寺前巖紹介)(第七五〇四号)  同(中島武敏紹介)(第七五〇五号)  両眼失明重度戦傷病者に対する恩給等改善に関  する請願八田貞義紹介)(第七五〇六号)  同(中山正暉紹介)(第七五七二号)  同(西村英一紹介)(第七六四〇号)  靖国神社の国家管理反対に関する請願(土井た  か子君紹介)(第七六三九号)  米軍小柴貯油施設の撤去に関する請願浅井美  幸君紹介)(第七六四一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案に関する件      ————◇—————
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について発言を求められておりますので、順次これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 総理、十五分ばかりおくれて参りましたから、あとがきまっている質問時間でございますので、どうもあまりまともな質問ができない感じがいたしますので、言いたいことを少し言いまくりたいのですが、最初に委員長、私は理事会におきまして野党四党を代表して、つまり本日二十六日に総理に御出席をまず十時からいただく、三時間やって終わったら順次きめてある質問者質問を終わる、時間があってもなくてもそこから先に審議を要求することは一切しない、したがって長年の伝統に従ってひとつ強行採決などということが行なわれないようにということで念を押したつもりなんですが、結果的に、どうも私どもの委員会、何の関係もない強行採決だと私は判断をいたしますが、さて議長あっせんで同じことをきょうやっておるわけでございまして、一つも違ってない。総理はお見えになりましたし、質問者が何人か質問時間を失ったくらいのことしか残っていない。これを称して一人芝居というのですがね。一人相撲というのです。いなか芝居大根役者でももう少しきれいなことをやると私は思うので、将来そういうことがあってはならぬと思いますが、ひとつこれは委員長に申し上げて、一言だけ何か言って受けていただきたい、気が済みませんから。いかがですか。
  4. 三原朝雄

    三原委員長 ただいまの大出俊君の御意見は、慎重にお伺いをいたします。
  5. 大出俊

    大出委員 何か言っておきませんと、抗議の場にならぬですから。  ところで、ちょっと政治姿勢ということをひとつはっきりさせませんと、防衛などといってやたら定員をふやしてみても、沖繩配置をいたしましても意味がない。そこで私は、けさ満員電車の中でかろうじて新聞を上に上げて読んでいる人のやつをひょっと見て、みんなの話を聞きながら東京に着きましたが、非常に大きく載っておるこのけさ新聞記事でございますが、「大蔵省東証へ波及 新株割当権を要求 上場便宜 国会議員関係か」というこの記事、どの新聞にも載っているのでありますが、私は実はこれは読んで、いささかまともに真剣に考え質問する意欲を失う感じが実はいたしました。そこで、もちろん長い時間かけません。せっかく総理お出かけをいただいたのですから、防衛を含む政治姿勢という意味総理の御見解をただしたいのです。  殖産住宅の株式をめぐる第二部上場の問題で、数回これは新聞記事が出てまいりました。まさかと思ったのでありますけれども、証券市場の正常な運行に責任を負わなければならぬ東京証券取引市場上場部次長新株をもらっておって便宜をはかった。千二百円の新株上場のときには二千六百円になった。確かにこれはたいへんなことです。それだけならいいんですけれども、さらにまた大蔵省証券局証券監査官がこれまた一枚かんでいる。これは株をもらっている。しかもこの新聞記事が正しいとすれば、これは殖産住宅会長——会長といったって二、三日前にやめたのでしょうけれども、東郷さんと同期の有力な政治家だっているんだなんていうことがちらほら前に朝日新聞に出ている。前からこれは新聞記事があった。国会議員にも新株の割り当て、これをばらまいている、このことがわかったと書いてある。わかったとなると、これはまた出てくる。こういう政治姿勢で何をやったって国民は信用しませんよ。けさ満員電車の中で、一人読んでいた。みんな新聞を上げられないから何人も見ている。大蔵省などというのはやめちまえ、やめちまえと言っている。これじゃ私は日本をこわしてしまうと思うのですね。  私はかつて吹原産業事件のときに、いみじくも総理大蔵大臣で、同じこの席で吹原さん等をめぐる問題で質問しました。総理は、政治家はまず身辺をきれいにしておかなければいかぬということをしみじみ痛感をいたしました、こういう答弁を当時大蔵大臣としての総理がなさったことがあります。翌日大きな新聞記事になりましたが。私は非常にこれを心配いたしますので、総理のこれに対する、これをごらんになってどういう実感をお持ちであり、政党政治最高責任者といたしましてどうこれに対処をなさるのかという点、はっきりした御見解を私はいただいておきたいのでありますが、お答えを賜わりたいと思います。
  6. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 綱紀粛正官紀粛正は最も大事なことでございまして、従来とも政府部内の粛正に対しては強くこれに対処いたしておるわけでございます。しかし、御指摘の今朝の新聞記事等を見まして、私も非常に遺憾な気持ちを持っておるのであります。事件捜査中でございますし、まだ事件の内容に対して報告を受けておりませんが、いずれにしましても、行政当局にある者がそのような容疑で逮捕されるということははなはだ遺憾でございまして、行政主管者としては、この問題を契機にして、より官紀粛正に対して周到な配慮をしてまいりたい、こう考えておるわけであります。
  7. 大出俊

    大出委員 私が知る範囲でも、まじめな町の投資家方々が、異常な株価の上昇の中でずいぶん損をしている方々がある。一面、この新聞で見る限り、操作された株価の中で、俗にいう、悪いことをする、不当な利益をあげる方々が出てくる。こういう証券行政がまかり通っているなどということを許すわけにはまいらない。しかもこれは国会議員がもしも関与するなどとなっているとすれば、これは何党に限らず重大な問題でございまして、与野党の問題じゃない。議会制民主主義に対する根本的な不信を招くことになると私は思います。だがしかし、事実であるのだとすれば、これはまさに一切の政治的な干渉などということは許されないと私は思います。だからそういう意味で、この問題はとことんまでやはり指揮権のある皆さんの分野を動員をして徹底的に究明をしなければ、私は日本という国をこわしはせぬかという気がするわけでありまして、どうかそういう庶民一般気持ちというものをいたくひとつ心におとめいただきまして、この問題に対する責任所在というものを庶民の前に明らかにしていく必要が私はあると思います。確かに捜査の途上ではございましょう。ございましょうが、やはり総理は時の政治責任者でございますから、そういう意味で、もう一ぺんそこのところは庶民の前に明らかにする、そういう姿勢が必要だと思いますので、念のためにもう一ぺんお答えをいただきたいのであります。
  8. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 基本的に遺憾であるという政治姿勢は申し上げたわけであります。またこれからも綱紀粛正官紀粛正に対しては遺憾なきを期してまいりますという結論も申し上げておるわけであります。  証券局が設置されてから約十年になるわけでございます。証券取引法また取引所法等にも定めがございまして、非常に明確な規定になっておることも御承知のとおりでございます。また証券取引所の内部に対しては外部から容喙がされないように、内規をつくって上場基準を厳正に行なっているはずでございます。けさ新聞森永東証理事長も驚愕し、遺憾の意を表しておりますように、万全の法体系の中にあってもいろいろな問題が起こるということは、きょうの問題で明らかになっておるわけでございます。違法性のあるものは当然司直追及を受けるわけでございますし、違法性がなくても妥当性のない問題もございます。そういう問題は、この事件契機にし、全貌が明らかになるに従って、法制上の不備があれば、当然また法改正として国会審議にゆだねることになると思いますし、また規則や基準欠陥がありとすれば、東証大蔵省証券局当局を督励しまして、まあ投資家というものが一部ではなく、大衆、国民全体であるという立場から考えて、今日正す必要がある問題があれば、厳重に過ぎるということはないわけでありますから、行政上も遺憾なき処置をとる機会にいたしたい、こう考えております。
  9. 大出俊

    大出委員 私は東証責任者である森永さんを大蔵省官房長時代から長い間承知しておりますが、この問題をもって大蔵省の次官以下皆さんが一人もいなくなった。担当の課長さん一人が応対に出てうなだれて頭を下げっぱなし。また森永さん自身のほうも、あり得べからざることが起こったというので、この現実をお認めになっている。そこでポイントは、証券監査官と称する地位におつきの方が、いかなる理由があるにしろ、株を取得するなどということを認められる筋合いじゃないですよ、初めから。東証上場部次長にしてもそう。それじゃこれは綱紀粛正じゃない。そこらのところを一々きちっとしておかないととんでもないことが起こる。これはいまの世相を反映しておりますね。そういう意味で、そこらのところをなぜ一体いままで明確にできなかったかという点、非常に大きな疑問を私は持つのですけれども、総理も長らく大蔵大臣をやって御経験がおありになる。そこらのところは一体何が欠陥か。直感的に総理はどうお考えでございますか。
  10. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 競馬法などでは、競馬に従事する者は馬券を購入してはならないという明確な規定がございます。しかし、証券取引法その他、まあ私、先ほど申し上げましたように、違法があるものは当然司直追及を受けますが、妥当性のないものも許されるべきではないということを申し上げたわけでありますが、銀行局につとめておる人が、これはまあ直接仕事に関係がありますが、金融機関から融資を受けてはならないという規定はないわけであります。ないわけでございますが、過去そういう例がありました。そういうことで引責した者もございます。証券行政に携わっておる者が証券に関する一切の取得をしてはならない、持っておるものを売ってはならない——売ってはならないということになると、避けがたい事象も起こるわけです。父親が死亡した場合に相続したものも売れないというような問題もありまして、なかなか法制上の措置として明確にするわけにはまいりませんが、今度の事件契機にしまして私が直感的に考えましたのは、専門家が長いところに同一の人物がおる、専門家重視ということがやはりこういう問題が起こる一つ原因ではないか。そういう問題も私は考えました。そういうものも直感的な問題であります。まあしかし、自分上場を認可しその作業に携わり、その過程におってその該当株の一部を取得したということになりますと、これは条文のいかんにかかわらずそういう意味で逮捕されたと思います。これは条文では、正規に取得してはならないという規定がないにもかかわらず涜職になるという見方、公務員法における涜職罪贈収賄罪という意味で逮捕されているようでありますから、これは事件が究明されればおのずから条文の適用も明らかになりますし、その過程において、この種のものをあずかっておる行政官がやってはならないという法制上の制度が必要であるという問題は当然出てくるわけでありますから、だからその意味で、必要があれば法制改正案等を御審議にゆだねたい、こう述べておるわけでありまして、それしかないと思います。
  11. 大出俊

    大出委員 私も実は直感的にそう思いましたから、そこをひとつはっきりさせていただきたいと思って質問をしたわけでありますが、きょうは防衛二法の問題が焦点でございますけれども、やはりこれも政治姿勢にかかわる問題でございますので、冒頭に承ったわけであります。  そこで、きょうは実は安全保障政策という意味議論をしたかったのでありますが、総理の御出席も十五分間ばかりおそくなりましたし、時間がございません。そこで具体的な問題から入ってすいりまして、最後に一言安全保障問題について承りたい。  最近の防衛庁をながめておりまして、この間私は山中さんにずいぶんたくさんの問題を取り上げて、たとえば、隊内の方々がやめたいと言ったってやめる自由もないようなことになっておりはせぬのか。たとえば脱さく対策なんというものを明確に教育編の中にうたっているじゃないかと言ったら、高瀬教育局長は、そんなことはないという。あとになっていやあるのだと読み上げた。お見えになって、脱さくがありました、入さくもございます。さくの中に入っている、人権無視ですよ、これは。脱さく対策といって、貯金をよけい持たせるなとか、私服を置いておかせるなとか、班長室に寝かせろなんて書いてある。だからこういういろいろなことが起こる。ふんまんやるかたないことが起こる。人権無視。これ見てごらんなさい、自衛隊機乗り逃げ。いまはやりの乗り逃げということばだけれども、事もあろうに、乗り逃げられておいて今度どうなったかといったら、あれから何日たったですか、幾らさがしてもわからぬですよ。情報も二十も三十もあった。一生懸命かけずり回ったけれども違った。大体自分のところのスターターボタンをぽんと押して出ていけるようになっている。整備員が乗っていってしまったそれで乗り逃げをした。乗り逃げをした飛行機全力をあげて捜査せいと長官が指示をし命令を出した。何日もたってもまだわからない。そういう能力のない自衛隊なんというものは国民血税むだ使いですよ。武器管理、これも全くめちゃくちゃです。この連絡機だって国民血税でつくっていることは間違いない。それをスターターボタンを押して出ていけるようにしておいて、かぎもろくにかかってない。全部ここに書いてある。かぎも形式だけ。しかも飲酒運転だ、乗り逃げの上に。あなた、飲酒運転で町でちょっとつかまってごらんなさい。十日も二十日もとめられる。平気で飲酒運転できるようにしてある。ビールを三本飲んだ。それを今度事もあろうに、長官が指令を出してさがせ。全力をあげてオール捜査自衛隊全力をあげても見つからない。自衛隊というのは一体どういう能力なんですか。まだ見つからないのですか。そんなあぶなっかしい自衛隊国防だなんてまかしておけやしない。この間私は、自衛隊というのはここで解散したらどうだ、あなた方がどうしても必要だというなら再建しなさい。こんな乱脈なめちゃくちゃな——沖繩自衛隊を派遣すればすぐ杉本何がしの婦女暴行傷害が出てくる。那覇警察で調べて、書類をあなたにあげたでしょう。一体このずさんな武器管理から始まる今回の自衛隊機乗り逃げ、これが民家にでも落っこってごらんなさい。長官またやめなければいかぬ。総理、こういうばかなことが、これは乗り逃げだからだけれども、幾つも次から次にある。私の手元に六つ七つ。まず乗り逃げをどうお考えになりますか。
  12. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 一言もないところでございます。兵器管理、厳重な格納等防衛庁当局全力をあげてやっておるはずでございますが、過去にも一機やりました。それで離陸寸前に落着をしたというものもあります。今度は離陸をしたわけであります。その後所在が明らかでないということは、これは理論的に考えると、五時間も航空燃料を積んでいるわけでありますから、これは飛しょう中であればレーダーにかかるわけでございますが、これは相当早く手配をしたにもかかわらずレーダーに映らなかったということは、離陸直後墜落をしておることだと思います。これはしろうとの感情としてはそういうことだと思います。墜落するとなかなか見つからないということでございまして、私はそういうことだと思いますが、いずれにしても、銃を持ち出すとか拳銃を売り払うとかというような問題ではなく、これは小型なりといえども飛行機乗り逃げでございますので、どうも私も、最高責任者として、これを契機に、国会でおしかりを受けるというようなことではなく、やはり国民の負託にこたえなければならない、こういうために何をなすべきかということは深刻に考えております。今回の問題、防衛庁としてはいろいろお答えすることがあると思いますが、そういうことではなく、以後そういうことを起こさないためにはどうするのかという問題に対しては、ひとつ真剣な検討をいたしたい、こう思います。
  13. 大出俊

    大出委員 これはばかばかしくて議論のしようがないような感じがする。しかし、これは突き詰めていくとやはりシビリアンコントロールの問題ですよ。これは内局の皆さんが知らないところでいろいろなことが起こってしまっている。この間から長い三十何時間の質問の中にそれはもう次々と出てきている。これはあと総理にきちっと申し上げますが、事実行為をもう少し掘り下げておきたいのであります。  これは三十六年でございますか、T33の乗り逃げに近い事件が起こった。今回のこの機は航続千百キロ、一つ間違えば他国に行っている可能性だってなくはない。もしこれが沖繩の104あたりに乗っかって乗り逃げでもしたというようなことになった日には、一つ間違うと他国との関係ができる。外国との問題になる。自衛隊法の七条には内閣総理大臣指揮監督権があります。八条には防衛庁長官指揮監督権があります。九条には幕僚長指揮監督権がある。これはいずれもたいへんな責任皆さんの。ここにございますけれども、このT33を乗り逃げしようとして、その寸前にわかって騒ぎになった事件がここに書いてあります。そうかと思うと、ここには四十一年でございますが、カービン銃を持ち出して持ち逃げをした。四十三年の八月にはピストル。同十四日にはジープジープまで持ち出す。これは何で持ち出したのかと言ったら、往復旅費が欲しかったというのですけれども、それにしても、こういうずさんな兵器管理というのは明らかに、いま自衛隊法をあげましたが、皆さん責任です。  そこで、二、三点承っておきたいのですが、厚木飛行場にこの間訓練後の、訓練中と言ったらいいかもしれませんが、自衛隊機不時着をした。S2F1、この厚木飛行場不時着をした飛行機。これは六月二十一日の午後九時四十七分、厚木飛行場滑走路南端から約九百五十メートルのところの草地。搭乗員、パイロットを入れて四人。宮坂三曹というのは目に傷をしまして、機体はぶちこわれた。大破以上でこれはもう使いものにならぬ。民間の被害というのは、高圧送電線をぶった切って、畑の中に百三十数平方メートル、スイカ、レタス、カボチャ、キャベツなどなどが一ぱいあるところ、めちゃくちゃです。こんなことを年じゅうやられたんじゃたまったもんじゃまいですよ。さすがに神奈川県知事津田さんも腹に据えかねて、昨日か一昨日か忘れましたが、防衛庁に、これは原因が明確になるまで飛行を中止してくれと申し入れたですよ。これは六月二十一日。  そうかと思うと、青森県ですか、この間私、質問しましたから繰り返しませんけれども、部下をひき殺して埋めちゃって、酒飲んで女のところにでも行っているんだろうなんて、一週間ぐらい平で気な顔をしていたという。その間に株を買いに行っている、もうけようと思って。それで部下を連れて飲みに行っちゃった、三十何人。そういうのがいてみたり、そうかと思うと、この間また北富士東富士と両方で不発弾民間人死傷事故が起こっている。これなんかひどいですよ。フキとりに行った。これは開放されているのですかね、この日は。ひどいもんですね。六月の十日、「フキとり父子死傷 自衛隊管理に怒り」、これはひどいですよ。渡辺辰一さんという方、次男の勝彦さんという十七歳の人の二人。これは次男の方は死んでいる。これは東富士北富士にもあるのです。二十八日、北富士、ここでも二人死傷。こういうことが次々に起こる。  もう一件言っておきましょう。ファントム空中爆発、これはどうしましたですか。このファントム空中爆発なんというものは、これはノックダウン二機目でしょう。このファントム一機、一体幾らかかるのです。二十億でしょう。これがあっさり空中爆発で二十億吹っ飛んでいる。考えてごらんなさい、この二十億という金を。第二次大戦で日本の兵隊は、私は死ななかったけれども、二百四十万人死んでいるのでしょう。遺骨収集は一体幾らしているか。この間長い質問をここでしました。答弁にならぬです。百三万人しか遺骨収集していない、二百四十万のうちで。百三十七万の遺骨が残っている。南方の海に沈んでいる軍艦の中に。収集できないはずですよ、一体幾ら金かけた。本年度まで入れたって二億二千万しか金かけてない。オーストラリアなんかは、日本の五十七分の一しか死んでいない、三万人だから。わずか終戦後三年足らずで、三億からの金をかけて一体残らず収容が済んでしまっている。そういうところには戦後今日まで二億しか金を使っていない。一機落っこちれば二十億でしょう。国民血税を一体何と心得ておるかと言いたくなる、実際に。こんなことばかり相次いで起こっているさなかに防衛二法の審議をする。するほうだってどういう気になりますか、お考え願いたい。  この一連の事件について、総理、一体どうお考えになりますか。
  14. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 遺骨収集につきましては、私が内閣首班に指名をされた後から、どうも政府がこの問題に対しては責任を持つべきである、いままで民間団体というものに補助金を出すということ自体がおかしいのであって、この遺骨収集に対しては、当然政府が主体をなし、民間の協力が得られるならば、それはそれに付加さるべきものであるという考え方に改めたわけでございますから、御指摘のような予算の問題もございますが、引き続いて遺骨収集に対しては遺憾なきを期してまいりたい、こう思います。  これはいままでどういうことであったかというと、まあ中国大陸、シベリア大陸というような非常に大きなところが全然遺骨収集ができなかったという面でそういう問題もあったようでございますが、じゃ自由にやれる南方の諸島はどうだったかと、こういうことになるわけでありますから、そういう議論をするつもりはございません。ございませんし、南方の諸島といえども、なかなか、フィリピンあたり遺骨収集がむずかしい状態もございましたが、しかし遺骨収集が国の責任であるということは、これはもう申すまでもないことであります。そういうこと自体がもう問題にならなかったと指摘されても、いかんともなしがたいと思いますから、おそまきながら遺骨収集に対しては政府の責任でこれを行なうということを考えておりますので、また国会の御協賛も得たい、こう考えております。  それから飛行機の事故の問題等でございますが、この間の厚木の問題は、天候不順ということで急遽帰投という問題だったようでございます。人命の損傷とか民家に落ちなかったというようなことも不幸中の幸いだったと思いますが、これはやはり訓練の上において、厳重に訓練をしなければならぬと思います。  空中爆発の問題その他、新型の潜水艦が沈没をして浮上しないとか、高性能の新種の飛行機を新しく採用した場合に犠牲が出るとか、これも訓練過程において避けがたい犠牲が出るということ、これはあり得ることであります。あり得ることでございますが、いずれにしても、現在の基地が過密の中に位置しておったり、考えなければならない問題、特に、訓練中高度の訓練を行なう場合には避けがたい事故だというふうに片づけられる問題でもないと思うのです。そういう意味で、事故一つ一つの内容を十分精査をいたしまして、これが事故絶滅のために万全の体制をとらなければいかぬ、こう思います。  一番問題は気持ちだと思うのです。そういう意味では、やはり国民全体が自衛隊というものの任務を理解していただく。与野党とかいう議論は別にしまして、自衛隊は国を守るために、われわれの生命、財産を守るために必要なんだ、その崇高な任務についているんだという考え方が前提にあって、そしてそういうものにこたえ得るように隊紀が振粛されるということでなければ、私はやはりいろいろな問題があると思います。そういう意味国民のコンセンサスを得たい。得るために努力をいたします。また国会においても理解をいただけるような努力を政府は当然いたします。政府は、みずから行なわなければならない規律の振粛という問題やいろいろな問題に対しては遺憾なきを期してまいりたい、こう考えます。
  15. 大出俊

    大出委員 これは幾らそう言ったところで、これだけ次々と事故ばかり起こったのじゃ、これはどう考えろと言ったって考えようがない。議論のしようがない。危なくて、それこそこらじゅうで事故ばかり起こるのを、国民血税を払って置いておかなければならぬ。これはいくら総理が理屈を言ったって百の説法何とやらで、これはだめです。  そこで、シビリアンコントロールの問題で申し上げたいのですが、総理は昨年の十月に四次防をきめるときに、十月九日の閣議で「文民統制強化のための措置について」というふうにおきめになった。私は、国防会議構成法等を通じまして、この国会に何かそれらしきものが出てくるかと思ったら、何も出てこない。総理はえらい大々的に新聞で大ラッパを吹いた。田中ラッパを吹いた。ラッパです、これは出てこないんだから。ラッパが鳴っただけで、あとになったら何もない。これじゃあなた方は、シビリアンコントロールを強化して責任を負う、この姿勢に欠ける。言うだけ言っておいて、出してもこれは通りそうもないからと思ったかもしれない。それじゃそんなことをなぜラッパを吹いたんだということになる。そうでしょう。はね返りますよ。何も出ない。そしておまけにこれに付随して内局の人をふやすなんという新聞記事が出る。そういう意味で私は、シビリアンコントロールの責任所在、これに対していささか姿勢を疑いたくなる。  そこで、沖繩に今回たいへんたくさんの自衛隊を派遣されたわけであります。だが、これは私に言わせればやみの兵隊、やみの自衛隊。法律は通っていない。しかもなぜ私がやみを強調するかというと、あなた方は国会に法案を提案された。されたんだが、国会はこれを認めなかった。認めなかったにもかかわらず、何で一体やるか。長官訓令は違法でないから、新しい部隊をつくることができるんだから、というようなことを理屈にして持っていったんだということになる。  四十七年に第一混成団などの沖繩配備に伴う増ということで千名、それから海上自衛隊沖繩航空隊等の沖繩配備に伴う増ということで、これは以下二つ千二百十八名、さらに航空自衛隊千三百七十六名、つまり三千五百九十四名の沖繩派遣の人員増を四十七年に防衛二法で出されておる。当時は山中さんは防衛庁長官じゃない。知らない。いろいろ横で言っておるけれども、当時知らないんだから。ところがこれは通らなかった。通らなかったにもかかわらず——これは国会の意思ですよ。シビリアンコントロールというのは、行きつくところは国会ですよ、国民コントロールなんだから。国会が認めないのをやっておいて、現地調査に行って、防衛二法が通らなかったらどうするんだと聞いたら、現地の司令官のえらい方々が、通ろうと通らなかろうと私どもはちゃんとやっていきますとぬけぬけと答える。私はあの司令官諸君を実は国会に呼びたい。その姿勢それ自体がシビリアンコントロールなんというものは頭にない。国会が通ろうと通るまいと、そんなことはおかまいなしにやっていくというのだから。山中さんは現地に行って調べてないからわからぬでしょうが、わしらはみんな行ったんだ。ぬけぬけと現地の司令官に答えられたらたまったものじゃないですよ。国会で何がたがた言ったって、そんなことはどうということはない。総理がシビリアンコントロールの実をあげるの、国防会議の構成を変えろとか、六十二条などを出しておりますけれども、何と何とよけいかけるんだなんということを言ったって、法律は出さないんだから。そうでしょう。これでは国会は一体何を論議すればいいんだということになる。  まず一体、この国会が否決をしているのに何でやらなければならぬ。久保・カーチスというのはあくまでも事務的合意、あなた方はそう言い抜けている。うそもありましょうけれども。その点を一体シビリアンコントロールのたてまえからどうお考えになるかということと、ここまで来ると防衛二法通りそうもなくなった。強行採決などなさるから。通らなかったらどうしますか。新聞もこれは危ないと書いてあるんだから。危ないと新聞が書いているようになっちゃったらどうされますか。沖繩自衛隊は帰しますか。いかがでしょう。
  16. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 三つに分けてお答えします。  一つはシビリアンコントロールの問題でございますが、これは国民コントロール、すなわち国会でございます。あなたがいま御発言をいただいておって、とにかく飛行機乗り逃げをされるような状態では困るじゃないか、こういう発言をしていただくこと自体がシビリアンコントロールの一番大きなものである、こういうことであります。それからあとは文民である防衛庁長官がございますし、部局制とか内局は文民でもって構成されております。また内閣総理大臣の諮問機関としては国防会議が存在するわけでありますし、国防会議の議長は内閣総理大臣が行なっております。またそれだけでは不備だというので、新しい機種の決定その他、輸入や国内産にするかいかんをきめるのはもっと専門的な知識を必要とするので、専門家会議を付置してはどうかという問題等もございます。また国会においては、内閣委員会非常に御多忙でございますから、防衛委員会というものをおつくりいただいて専門に審議をしていただくということが一番いいことである、そうすれば強行採決も何も行なわれない、前からそういう議論が与野党を問わず存在するわけでございます。また国防会議のメンバーをふやしたらどうかということでございますが、これは私どももこの国会で提案をいたすつもりでございましたが、どうも野党の皆さん、そうでなくても防衛二法があるので、どうも出してもいかぬぞということでございましたので、この間の小選挙区法のようにそんたくをして提出をしなかったわけでございますが、これは皆さんが提出を要請されるということであれば、いまからでもおそくなく、いつでも提出をいたしたい、こういうことでございます。  それから沖繩配備の問題でございます。これは法制上の問題、あなたの見方から、角度から見ればそういう見方もあります。これは私認めます。認めますが、現実問題としてやはり区別して考えなければいかぬという問題がございます。それは防衛二法案というのは、御承知のとおり昭和四十六年、七年、二度とも廃案になっておるわけでございまして、これは、防衛庁の機構全体、それから定員全体の問題として御審議をいただいておるわけでございます。沖繩問題というのは、これは現実的に沖繩の祖国復帰という新しい事態が起こってきたわけでございまして、沖繩問題というものは、現に防衛庁設置法防衛庁長官の権限の中で編成及び配置その他に対してしてはならないということではなく、これは当然他の府県がやっておるわけでありますから、沖繩も四十七県の中に返還をされた限りにおいては、沖繩だけ差別をするわけにはまいりません。そういう意味において、これは普通なら、防衛二法やいま審議いただいておりますものが以前に通っておれば望ましいことであることは事実であります。これは違法性もない、妥当性もあるということでありますから、これはもう論ずることのないことでございますが、防衛二法は通らない、しかし沖繩は返還してきたという場合にはどうするかということでございますが、どうするのだということに対して国会で御質問をいただいておるわけでございますが、それは防衛庁設置法の現行法の許容範囲内において防衛庁長官の権限ででき得ることでいたします。やりくりをいたして、いたします。こういうことでございまして、でき得べくんば、いろいろな議論が起こらないように、防衛二法案も一日も早く通していただきたい、こう述べておるわけでありますから、政府の姿勢は過去も現在も将来も一貫しておる、こういうことでひとつ御理解をいただければ、理解はよくしていただけると思うのです。
  17. 大出俊

    大出委員 一貫してシビリアンコントロールなんというものは無視すると言われたのではどうも困るのですな。国会がきめなかったのだから、だめですと言ったのだから、今回の国会がだめですと言ったら従っていただくのが私は正しい姿勢である、こう考えなければならぬと思う。  議論が長くなりますから、最後の問題に参りますが、この米ソの核戦争防止協定がニクソン、ブレジネフで調印をされたわけであります。ときあたかも総理は訪米日程をおかかえになっている。きまっていたんだと思っていたところが、延びたようでありますが、ソビエトにおいでになることも近い将来お考えになっておられるようであります。つまり非常に複雑な今日の国際関係の中で二つの焦点になる国においでになる。国民が非常に大きな関心を持つのは当然でございます。そういう意味で、まず今回の米ソ核戦争防止協定、こう新聞等が社説などで取り上げている事実について、総理の立場で、しかも訪米を目の前に控えている立場で、外交的にどういうアプローチをなさるか、非常に大きなところであります。つまりまずどういう評価をお持ちでございますか。そして日本のとるべき姿勢としてこれにどう対処なさるのか。田中総理の決断と実行で思わざる方向に行ってはなんという質問がこの間出ておりましたが、まず総理の基本的な姿勢を承っておきたい。
  18. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 二次大戦を契機にして人類も、戦争というものが人類のために不幸をもたらしても、幸福をもたらすものではないという機運が生まれるきっかけをなしたことは事実だと思います。しかしその後、世界各地における植民地から独立へというような過程もございましたので、四半世紀余の間には必ずしも平和ではなかった地域がたくさんございます。私が具体的に指摘するまでもなく、歴史の示すとおりでございます。しかし、そういう局地的な紛争は避けがたいものであるとしても、平和な方向を見出すべく人類が探求しつつあったということは事実だと思うのです。そういう意味で、両独間の話し合いが行なわれ、また独ソ条約が締結をされ、またEC各国とソ連との間に経済交流が進むというような機運ができてきました。同時に、長い戦火に荒廃しておった両ベトナムも、パリ会談を契機にしてだんだんとよき方向に転換しつつございます。定着するというまでには間があるにしても、いずれにしてもそういう状態でございます。南北朝鮮、韓国と北朝鮮の間にも話し合いが進むというような状態であり、この間の両朝鮮の代表が、大統領が発言したことは、大きな食い違いはあるにしても、いずれにしても国連の場に乗ろうという意思表示というものは非常に前向きのものであると考えます。しかし、そういう四半世紀の間にそういう人類の英知がだんだんとそうなってきましたが、これは無原則でそうなってきたとは思わないのであります。やはりバランス・オブ・パワーという力の均衡の上に立って、そういうワク組みの中でお互いが一つずつものを解決して平和の方向をさぐろうということであります。  その中で一番最後の問題として残っておるのは、核保有国の核という問題に対してどうするのかという問題が人類の一番大きな問題だと思うのです。そういう問題で、不拡散条約というような問題の批准をどうするか、各国がみんな考え、批准までに至っておらないという状態でございましたが、そういうような時代に、米ソの間で核不戦協定が公にされたということは相当な進歩だと思わざるを得ません。これは評価せざるを得ません。これが不拡散条約になり、不戦条約というよりも核軍縮につながり、核は平和利用以外に使わないという、日本の原子力利用法のような、そういうものまでに至るように努力を続けなければならないと思うのです。そういう意味では日本は、新しい憲法を持ち、核は平和以外には使ってはいかぬ、こういうことをやっておる。その面では最大の先進国だと思います。私は百四十カ国の中の最も先端を行くものだと思うのです。そういう立場から言うと、核の問題はタブーだと言っておった米ソ両国が核不戦の宣言を行なうことだけでも、平和のために大きな前進をもたらすものだ、こう理解をしておるわけであります。私も七月の末にはアメリカへ行き、九月の末から十月の中ばごろまでにはヨーロッパ及びソ連を訪問する予定になっておりますので、それまでよく勉強しながら、人類の平和というものに対して日本がどういう役割りを果たさなければならぬかという問題に対しては十分勉強しながら、平和のためにいささか寄与してまいりたい、こう考えております。
  19. 大出俊

    大出委員 時間が残り少なくなりましたから、ここで三点ばかり簡単に承って、はっきりした御回答をいただきたい。  一つは、いまお話に出ましたが、この核防条約に調印を日本がいたしましたのは四十五年の二月でございます。その前の年の十月に、皆さんの党の総務会では賛否両論ありまして、きまっていなかった。この間に社会党からもいろいろ申し入れをした経過もございます。  そこで、三つ当時条件がございました。一つは、核兵器保有国が核軍縮を推進する、そういうことになる、これが批准の条件。もう一つが、日本など非核保有国の安全が保障されること、これが二番目の条件でございます。原子力平和利用で他の批准国と日本の間に不平等があってはならない、これが三点目であります。今回の米ソの核戦争防止条約といわれておりますものは、帰りにブレジネフ氏はフランスのポンピドー氏に会いに行っておりますが、これを多国間のものにしたいというものの考え方が一つ中心になっている。ロジャーズ国務長官の事後の発表等によりますと、似たようなことが言われておる。しかも緊急協議などをめぐって、核からさらに通常戦争というものにまで広げていこうという気があることが明らかにされておる。だから半年後に再開をしようということになった。私もこの限り評価をする一人であります。  反面、二国間の核管理というものが他の中小国に与える影響という面では、インドにしても、あるいはフランスにしても、西ドイツにしても、いろいろな懸念を持っておりますが、同じ考え方に立ちますけれども、それにしても評価をすべきである、こういう考え方であります。そこで、そうならばもう核防条約は批准すべきであろう、むしろ積極的に踏み切るべき時期が来たのではないか、こういわざるを得ない気がするわけであります。それが一点、お答えをいただきたい論点であります。  それからもう一つは、この中ソ紛争という形のもので、せっかく米中接近なり日中国交回復なりという、アジア周辺における平和の方向へのたいへん大きな歴史的な動きが今日でございますが、これが中ソ紛争というような形の中でまた危険な段階に引き戻されるということはあってはならないわけであります。さっき総理もちょっと触れておりましたが、アジアの平和的な雰囲気を定着をさせる責任が特に日本にありはせぬかという気がするわけであります。この際、安保条約の問題に触れませんけれども、そういう意味では、このアジア集団安全保障構想というふうなもののイニシアチブを日本がとるべきではないのか。ソビエトにおいでになっても、このことは十分話してくるべきではないのか。このことは向こうからも提案があるのでありますから、虚心たんかいに話し合われて、それがアジアの平和ムードの定着化をねらうものであるということである限りは、おそらく領土問題、北方領土の問題などというのも、総務長官が視察に五回も行っている。現地不信。今度坪川さんが行っても、新聞が書くところによると、不信の上塗りだなんと書いておりますけれども、そういう角度からものごとが語り合われなければ、アジアの集団安全保障構想というような考え方から出発をしませんと、領土問題なかなか入りにくい歴史的な経過があるのではないかというふうに思うわけであります。このことは総理が施政方針演説のところで、外務省が慎重論をとる中であえてお述べになったはずです。「アジア諸国をはじめ太平洋諸国を網羅した国際会議の開催の可能性を検討したいと考えております」。これは総理の一月二十七日の施政方針演説の中身です。そうでございましょう。総理が意欲的にこれをあえて入れたというふうに時の新聞は報じている。だとすると、つまり今日日本の外交の姿勢というもの、独自性というもの、自主性というもの、それを確立をするという意味でも、私はやはりアジアのこの地域における安全保障構想というふうなものの考え方を基本に置かれて、ということは、この地域に利害関係のあるすべての国をいみじくも網羅するとおっしゃっておりますけれども、集まった約束でなければ安全保障はなりません。そういう意味で、いまそのことを考えてみなければならぬ時期であろう。どっちかに片寄り過ぎれば片方からたいへんな反発が来る国際環境に日本の場合にはあります。そこらのところに日本の自主性が特に問われる時期ではないか、私はこういう気がするのであります。総理の施政方針と関連をいたしますから、あわせて一体この辺はどうお考えになるのかという点。  三点目に、今回の問題をめぐりましても、つまりニクソン・ブレジネフ会談をめぐりましても、特に二大国間のいろんな意味の国際管理一つは経済であり、一つは通貨であり、一つは安全保障である。核のかさ代という議論がいま財界の中でもいろいろ出ております。こういう中ですから、かつて、この夏にハワイ会談をニクソン氏とおやりになったときに、このショッピングリストの中に、やれPXL、次期対潜哨戒機は、国産方針は十月の国防会議で御破算になっておりますから、そうするとその影響ではないか。一機四十億もするんでありますから、合計一兆円にのぼる商戦でございましょう。あるいはAEWというものはC1を改造するといっていたんだけれども、どうもそうじゃないのじゃないか。だから、その意味では今回の訪米は、経済問題が中心という以上に、安全保障の問題であり、核のかさ代の問題であり、そしてそれは防衛という意味における兵器の買い取り等の問題になっていくのじゃないかという世の中の見方がある。そういう意味で、とんでもない荷物をしょわされる可能性さえ——総理がおいでになるんで、私が行くわけじゃありませんからわかりませんが、そういう心配を持つ世論もある。そこらのところをどういうふうにお考えになっておいでになるのかという点、ぼつぼつ明らかにしておいていただきたい時期だと思いますから承りたい。
  20. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 第一点は核防条約の問題でございますが、核防条約の批准については、御指摘のとおり、核軍縮の問題とか、平和利用の問題とか、非保有国の安全の問題とか、また核の国際管理機構をどうするかというような問題があることは、御指摘のとおりでございまして、国際原子力機関と保障措置協定につき外交当局が現に折衝中でございます。そういう意味で、これがまとまればわが国も核拡散防止条約の批准は行なわなければならない、こういう考えに立っておるわけでございまして、これらは米ソの間の協定宣言もあったわけでございますから、両国首脳との間の会談では、これらの問題に対しても忌憚のない意見の交換を行ないたい、こう考えております。  第二は、アジア集団安全保障の問題でございますが、これは日本がイニシアチブをとったほうがいいという御議論もございますけれども、率直に申し上げると、米ソが話し合いの段階に入ったことは大きな前進だと思いますが、中ソの問題もございます。また米中の問題もあるわけでございます。そういう世界の三大国といわれておるものの利害がアジアに集中しておるこういう現状、そういう現状を全く無視してアジアの集団安全保障を唱えても成否が論じられないわけでございますので、そういう問題はやはり現状を十分踏まえて、将来的な、理想的なものが一体どうすればできるのかということ、これは原理はあくまでも過去のワク組みというものの中で安全が保たれておるという事実を評価しながら、やはり時の推移という中で日本も勉強していくべき問題だと思うのです。私が施政方針演説の中で述べたアジア復興会議というものは、アジア太平洋地域だけではなく、ヨーロッパのEC各国や、特にソ連、中国、アメリカというものが、このベトナム南北の経済復興というものに対して、わしは北だけだ、わしは南だけだということではなく協力をし努力をすることができれば、これは将来大きくアジアの平和に寄与できる機構になり得るのではないかということで、当面する問題としては、両ベトナムの経済復興のために復興会議の提唱を考えてみたい、こう述べたわけでございます。  それから第三の問題でございますが、これは国際的に、エネルギーの問題とか、それから国際通貨の問題とか、安全保障の問題とかいうものが議題になっておる。議題になるだけではなく、これはどんな大国でも避けて通れないような問題になっておる。これは食糧問題一つからいってもそのとおりでございます。これはやはり、鎖国政策というようなものだけではお互い自身も困るし、同時に世界の平和に寄与することもできない。やはり開かれなければならない。開かなければならないという状態が、大きく米ソの今度の会談になっておると思うわけであります。そういう意味で私も、一つ一つの具体的な問題もさることながら、日ソの間に意思の疎通をはかろうということで訪ソを考えたわけでございます。  そういう意味で、いろいろ考えられますが、しかしこれが、ただ二国間の協定だけでどうしよう、また地域的にどうしようという問題よりも、帰するところ国連機構というものが完備をされ、それで安全保障の問題に対しては国連機構中心ということになることが望ましい。これは国連中心主義はだれもいなんでおらぬところでありますから、そういうところに持っていかなければならない。いま日本を常任理事国にしなければならぬのだという意見はだんだんと理解を得つつあることは、これは理解いただけると思うのです。そうなれば新しい憲法を持ち、国際紛争を武力で解決しないという崇高な憲法をわれわれは保持しておるわけでありますし、核は平和利用以外に使ってはならない、こういうような基本的な法律を持っておる日本としての発言力、日本としての推進力というものは評価できると思うわけでございます。そういう意味で、国連中心というようなものをひとつ積極的に推進をしてまいりたい。そういう意味で、国連の分担金も相当大幅な引き上げになりましたが、甘んじてきん然とこれを納入しよう、こういう考えに立っておるわけでありますので、それらの事情も、これから訪米、訪ソ、訪欧という間には十分首脳者で意見の交換をしてまいりたい、こう考えます。
  21. 大出俊

    大出委員 外交というのは一朝にしてできるわけじゃありません。先ほどベトナム問題でと言われましたが、あの施政方針を注意深く聞いておりましたけれども、南北ベトナムの復興に触れておられますが、いずれにせよ日本の立場というものがアジアにおいて信頼をかちえなければ何もできない。そういう意味で、この網羅した会議、これをひとつ出発にしてアジア全体の平和というところに及ぼしていこうというふうに述べておられる。そういう意味で、私はやはり、アジアの集団安全保障機構というものを考えるという構想を立てて、七十年代の後半から八十年代にかけての長い展望ですべき根回しはする。そしてそういうところに、ほんとうにアジアに平和が定着をするという外交努力を日本がしていかなければ、私は、口の先で経済大国は軍事大国にならぬと言ってみたってそうはいかないと思う。だからそういう意味で申し上げたので、やはりこれは将来展望を日本の外交姿勢として持っていただきたい、そういう趣旨でございまして、米ソ紛争があるからとおっしゃるのだが、そのことによって、せっかく定着しかけている、あるいは平和の雰囲気ができてきつつあるアジアに、もう一ぺん冷戦型に引き戻されたのではこれはたまったものではございません、日本国民のために。そういう意味で、これは熟慮し、かつ慎重にそういった構想を持つべきではないか、こういう趣旨であります。  最後に、これで終わりますが、自衛隊機の事故の問題で基地の位置の問題をちょっとおっしゃっておりましたが、これは後ほど論議したいと思ったのですが、横浜市、相模原市両市から連絡がありまして、横浜市の上瀬谷というところに極東一の通信基地がございまして、これが受信基地に変わってきたところに、七艦隊の通信の司令部を入れてきた。そこに通信施設をまたいまつくり始めている。そこに自衛隊との共同使用という問題が持ち上がっている。さらにもう一つ、相模原の総合補給廠、戦車問題でいろいろございましたが、私もずいぶん苦心をしてまとめ役に回りましたが、せっかくこれは一両年で機能縮小になりそうである。市がショッピングセンターなどの計画を立てているところへ、これまた十条や赤羽の補給処との関係で、あそこに集中的な補給廠をということで自衛隊が入り込むことを考えている。二人の将軍がアメリカから参りまして、ついこの間、相模原の補給廠へ行っておりますが、内部でいろいろとった情報もあります。どうやらあそこをこれまた自衛隊の導入、共同使用、こういうことに次々になっていったのでは、これは県会で神奈川県の渉外部長が、自衛隊にその考えがなくはないということをあらかじめえんきょくに漏らした、そういう状況でございますから、地域はたいへんに騒ぎが大きくなりつつあります。そこらは慎重に願いませんと、市民の期待をまっこうから裏切るように進んでいくと、私はやはり、先ほど自衛隊国民のものにというようなことをおっしゃいましたけれども、なかなかそれはそうはいかない。これは総理の基本的な基地問題に対する考え方にからみますから、一言だけ承っておきたいと思います。
  22. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 基地は、先ほど申し述べましたとおり、基地とか補給廠とかそういうものは、市街とは関係がなかったようなところであっても、これが十年、十五年、二十年来で全く周辺が過密化してしまって様相は一変しておるわけであります。そういう意味で、できるだけ基地の集約化を行ない、また補給廠等他に転ぜられるものがあるならば他に基地を求めたいということで努力を続けていることは、これは理解いただけると思います。  いまの具体的問題に対しては私はまだ報告を受けておりませんので、この問題に対しては防衛庁当局からお答えをいたしますが、いずれにしても基地の問題、基地は日米安全保障条約という条約があり、この条約が日本人の生命、財産を守るために必要であるという立場に立っておりますと基地は必要なんです。補給廠も必要なんです。それが必要であるものならば、国民の理解を得てトラブルが起きないような状態にしなければいかぬということが原則だと思います。そういう意味で、われわれも具体的個別の問題を十分検討しながら、日米間でも話し合いをしてまいりますし、どうしてもという場合には、設備の改良を行なったり、地域住民に迷惑をかけないように、理解をいただけるように、場合によっては、われわれも基地で食っているのだから、生きているのだから、これは相関関係があるのだから基地は置いてもらいたいというところもあるわけです。そういうようになることが基地としての様態としては非常に望ましいことである、政府はそのために全力を傾けるべきであるというのが基本的な私の考えでございます。
  23. 三原朝雄

    三原委員長 木原実君。
  24. 木原実

    ○木原委員 総理に二つばかりお伺いをいたしたいのですが、この委員会審議を通じまして、先ほど総理の御見解もございましたけれども、大量の自衛隊沖繩配備、防衛上の論拠も必ずしも納得がいきません。その上に手続上の不安というものがむしろ残るような感じがするわけであります。  そこで伺いたいのですが、これから先、たとえば四次防の期間中に沖繩に第二次の自衛隊の派遣、あるいは機材、要員の増派というようなことは考えられるのですかどうですか。
  25. 久保卓也

    ○久保政府委員 二法案が成立しました場合の姿については、すでに御説明申し上げております。その後の姿についても、この委員会で御説明申し上げておるつもりでありますが、いまの計画の中には、陸上自衛隊は二法案通過後の姿から増強の予定はございません。  それから海上自衛隊については、基地隊を設定するようになりますると艦艇を数隻配置をする。これは二法案通過後の姿でありますが、それ以外には、P2J航空機を二、三機ふやすかどうかという問題がございます。——ちょっと間違えましたが、年度内に三機ふやします。六機から三機ふやします。これは四十八年度予算でそうなっておりますが、その九機から二、三機ふやすかどうかという問題が残された問題としてございます。  航空自衛隊につきましてはほとんどございませんけれども、昭和五十三年度にF104の問題が若干ございます。  以上でございます。
  26. 木原実

    ○木原委員 これからも沖繩の米軍基地、軍事施設の返還もしくは縮小を求めていくという政府の方針なんです。その際に、この米軍の軍事基地の縮小や返還に伴って、いわばその肩がわり、あるいはまたそれの条件として自衛隊の増強をはかっていく、そういうようなことはありませんね。
  27. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 沖繩における米軍が縮小されるということがあった場合、その条件として、米軍を縮小するが日本はその部分を肩がわりをしてくれというような日米間の話し合いは全くない、こう理解しております。これはもう祖国復帰された沖繩に対して、自衛隊がどのように配備されなければならないかということを日本が自主的に考えて行なうことでございますから、アメリカ軍の部隊が去るのでそれにかわる規模と力を持ったものがそのままいなければならぬということ等は関係はない、こう理解しております。
  28. 木原実

    ○木原委員 これはたとえば、そういうことで相対的に政府のいわゆる米軍による抑止力が低下をする、そういう場合も、たとえば自衛隊の武力によってそれを補っていく、こういうことはないということですか。
  29. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これも、日米安全保障条約でアメリカの協力というものを求めておるわけでございますが、いま、これは量の問題もございますけれども、質の問題もございまして、沖繩の基地というものが小さくなったからといって、アメリカ軍の極東における戦力というものが低下をしない方法というものは幾らでもあると思うのです。そこら国会でもって議論されているところでございます。何も沖繩でなくても、別のところでも、航続距離は長くなっておるし、潜水艦の潜水時間も長くなっておるのだから、こんなに地元がごたごたするところはできるだけ整理をしてもらえないかというのが日本人の地元の感じでもございますから、私は、部隊編成そのものを日本がそのまま引き継ぐとか、そういうことは考えられないと思います。  これはもう専門的な問題でございますから、これは日本自衛隊とアメリカとの間にはいろいろな勉強もしておるわけでございますので、これはアメリカ軍の極東における戦力の低下ということを前提にして議論をすることはできないと思います。
  30. 木原実

    ○木原委員 これはなかなか大事な問題でございまして、日本防衛体制というのは安保条約に基づいて云々という政府の従来の見解がございました。沖繩には主要なアメリカの抑止力が存在をしておる、これを前提にして日本防衛政策というものは成り立っているんだ、こういう見解をわれわれは聞かされてきたわけです。ですからその見解からいけば、一方で軍事施設の返還なり縮小なりを要求をしていく、相対的に抑止力は低下をしていく、それは一体だれが補うんだということになれば、自衛隊が補っていくんだ、こういう理屈になっていたわけなんです。少なくともこの委員会の中で何回かそのやりとりはあったわけです。いまになって、そういうのは総理の御見解ですけれども、われわれとしては、ともかくこの問題の多いところに、御案内のとおりの形で自衛隊が派遣をされていく。ですから、米軍の軍事施設が縮小され返還をされても自衛隊は少なくともこれ以上はふやさないのだ、こういうことはひとつ正式にお約束願えるかどうかというのが質問の趣旨ですが、どうでしょう。
  31. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 アメリカと日本というものはお互いにというか、日本防衛力というものは限界がございますから、日米安全保障条約によって補完してもらおう、こういう考え方が基礎になっておるわけでございます。ですから、日本防衛力というのは憲法で定めるワク内でなければならない、しかも最小限のものでなければならない、それから、あくまでも専守防衛でなければいかぬ、これはもう一切国際紛争を武力で解決をしてはならないということであって、全く防衛的なものでなければならないというものでございますから、沖繩自衛隊が配備されるということは、アメリカが減るので、その戦力を補うために要請されて日本の配備が増強されるのではなく、日本自衛隊というワク内におけるものであるということだけは、これはもう明らかに明言をいたしておきます。ですから、その場合、アメリカがだんだんと兵力が削減されたり沖繩から撤去されたりしたらどうなるかということは、これは日米安全保障条約を締結しておる両国でございますから、一体そのかわりにその戦力の低下というのはどういうことでもって補われるのですかというような問題をお互いが勉強している話であって、それだからといって、日本がやりますということはないのです。これはアメリカというのは、量は減っても質でカバーできる問題もございますし、また、いろいろな状態や態様の変化というものもございますので、時の推移に対応しながらの考えでございますので、これはひとつ明確にしておいていただきたい。これはもう、アメリカの基地が減る、減ることがすなわち、戦力の低下を意味するんだ、その戦力は日本が自動的に補うんだという公式では絶対ない。これは日本は、あくまでも憲法で限定された最小限の専守防衛という立場における、各都道府県に対する配備の一環として行なわれるものである、これだけは明確にいたしておきます。
  32. 木原実

    ○木原委員 しかし、日米共同作戦等の実態に即していえば、なかなかそうはいかないというところで、この委員会でも議論のあるところです。しかし、これは時間がありませんからやりません。  いま一つ総理の御見解を伺っておきたいのは、核を持っておる中国はわが国にとって脅威だとお考えになっていらっしゃるのですか、どうですか。
  33. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、北京訪問をいたしましてから、中国の核は脅威ではない、こう考えております。これは私と周恩来首相との話でございまするから、公にできるかどうかわかりませんが、悪いことではございませんので申し上げてもいいと思いますので申し上げますが、中国は核を保有しておる、しかし核は攻撃的には一切使わないと非常に明確にいたしております。私もそれに対して、日本も核を持とうとすれば、核兵器はそんなにむずかしくはありません、日本の技術水準と日本の科学の力をもってすれば、核兵器は保有できる水準にはございます、しかし憲法はこれを絶対に許容しておらない。憲法の精神というものは、そういうものを日本が持たないということだと私は理解しておるのです。それだけでなく、核を持たないという非核三原則を私ははっきりしておるので、その日本政府が核を持つような政策をとったら、多数を得ることはできないでございましょう、こうまで述べてございますから、そういう意味では、攻撃的には一切核は使わないということを言明しておりましたし、私は一切非核三原則は守ります、核戦争はやらない、唯一の被爆国である日本が、人類のためにも、核は戦力としてはこれを使用しないし、つくらないし、保有もしないということを明確にしておりますので、その点から、これはこっちを向いてはもう絶対来ない、こういう感じで、中国は核を持っておってもその面に対しては脅威ではない、こう三段論法で考えておるわけであります。
  34. 木原実

    ○木原委員 社会党の見解にだいぶ近づいてこられたようですけれども、同じ質問を私は、一昨年でございましたか、佐藤総理にいたしました。当時佐藤総理は、これは脅威である、こうその席で言明をされたわけなんです。この二年間にたいへん中国の核という問題についての日本政府の見解が大きく違ったということについて、私はやはり一つの進歩というものを認めたいと思うわけなんです。しかし総理、いまのような御見解であるならば、やはりわれわれは、アメリカの核のかさのもとにいる、そのことの問題に触れてこなければ政策的な裏づけがないんじゃないでしょうか。周総理の言明を総理が信頼をされた、中国の核は脅威でないとここで言明をされた。しかし、そうなりますと、政策的な裏づけの問題としては、しからば、アメリカの核のかさのもとにいるいまの日本の体制というものは、一体これはどういうことになっていくのかという問題が当然出てくると思うのですが、いかがでしょう。
  35. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 それは少し飛躍論じゃないかと思うのです、失礼ですが。これは核は中国だけが持っているわけではないのです。ほかの国も持っておるわけですし、いまフランスがまた南太平洋でやろうとしているわけですから。これは、いまの平和というもの、人類が平和に対して希求をし努力を続けておるということは、第二次戦後二十五年余の歳月で一つずつあらわれてきております。その尤なるものは今度の米ソの首脳会談によって核不戦協定を宣言したということに尽きる。しかしまだ、先ほど申し上げましたように、核防条約に批准するまでには相当なこれから努力を続けなければならない。この平和というものは、やはり過去のワク組みというものをそのまま認めて、その上に成り立っておるものだということを先ほどからるる申し述べておるわけでございますから、そういう意味からいって、中国の核が日本に対する脅威でないから核のかさからは飛び出してもいいんだという議論にはならない。日本は核を持っておらないのでありますから。先ほども大出議員が言われたとおり、核を持っている人はいろいろなことをやれるかもしらぬし、条約を破ってばんとくる場合も歴史にあるのですから、それは別なんです。そうではなく、核を保有しておらない国がどうして生命、財産が守れるかという保証がなければ、核防条約に簡単に批准できないというのが事実でございますから、そういう意味から考えてみても、いますぐアメリカの核のかさから飛び出してもいいんだという議論にはならないんで、日米安全保障条約は依然として必要である、こういうことでございます。
  36. 木原実

    ○木原委員 少しどうも理屈が合わないように思います。飛躍があるというのは、実際には政局を担当しておる立場からだと思いますが、ただ、前段の考え方からいきますと、ことばじりをとらえて言うようですけれども、中国の核は安全であって、しかしソ連もフランスも持っている、それはあぶないかもわからぬというふうにも聞えますから、それはきょうは議論はいたしません。しかし、中国の核は脅威でないとおっしゃったことは、これは、日本防衛政策上非常に大きなこれからの問題だと私は受けとめておきたいと思います。  もう一つ、これでもう最後にしますけれども、政府の防衛政策は、核のかさ、つまり抑止力という一つの構想、理論の上に成り立っておりますね。しかし一体この抑止力とは何だ。単純に考えてみますと、ある国が日本に核を撃ち込むかもわからない。しかし撃ち込んだら、同盟国の日本に核を撃ち込むのはけしからんといってアメリカがそこに報復をする、それがこわいから日本は核攻撃を受ける可能性が少なくなる、こういう成り立ちの上に立っていると思うのです。  しかし、これは一度ぜひ聞いておきたいと思うのですけれども、そういうことは国際間のお話としては成り立っても、実際に、たとえば日本が何かの間違いで核攻撃をされた、同盟国に打ち込んでけしからぬといってアメリカがその国に報復爆撃をやるだろうか、こう考えました場合に、多くの専門家は、そんなことはあり得ない、おそらくそのときはアメリカは第二撃の被害を受けるに違いない。いまの核の能力からいけば、一発打ち込まれればたくさんの死傷者が出るのは目に見えているわけです。そういうことになると、核抑止力という理論の上に成り立っておる防衛政策というのは、むしろまぼろしの上に成り立っておる防衛政策ではないのか、こういう考え方が少なくとも私どもの上にはあるわけなんです。国際的な話し合いとしては成り立つけれども、いざとなったときにそういうことが期待できるだろうか、こういう問題があるわけですね。あるいはドゴールもそういう考え方を持ったかもわかりません。  そんなようなことを考えますと、一方で先ほど総理は、中国の核は脅威ではない。なぜ脅威でなくなったかといえば、国交も回復をし友好関係が進んだ、理解が進んでいるわけですね。ソ連についても同様だと思います。アメリカについてもしかりだと思うのです。ですから、私のお尋ねしたいことは、従来の核抑止論という考え方の上に成り立っておる防衛政策については、そろそろ検討を要する時期が来たのではないか。先ほど大出委員も指摘をいたしました米ソ核不戦宣言の問題もございます。核政策そのものについて日本は国際的に慎重に考えていく時期にやってきたのではないのか、そう思うのですが、いかがですか。
  37. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 核防、核軍縮、核の平和利用というものに対しては人類として考えなければならぬ問題だと思うのです。これはもう、一つの国というような問題ではなくて、人類が破滅をするか生き得るかという問題にもなる。公害問題でいまいっておりますが、核戦争が始まれば、地球を取り巻く汚染というものは人類を死滅せしめることを意味するんだと思います。ですから私は、二次大戦で核というものが人類の歴史上初めて使われたということが最後であってほしいし、また最後だろうと思います。そう思いますが、現に核を持っておるということは事実なんです。核保有国が存在する中でもって、超大国である米ソの間には核不戦協定が成立したといっても、国際管理までいくのかどうかといったらまだまだたいへんなことだと思うのです。日本に対しても、原子力の平和利用で技術を提供してもいいというソ連側の申し入れもございますから、そういう意味から言うと、今昔の感にたえないぐらい時代は変わっておると思います。変わっておりますが、現実的に多くの反対があるにもかかわらず、フランスは核実験を行なおうという現実も無視するわけにはまいらないのです。  そういうことから考えますと、人類の英知というものは核の問題に対してやがて結論を出すと思いますが、そういう希望的な期待、可能性を持ちながら、現実的には国防の問題、防衛の問題の基礎を変えるというわけにはまいらぬと思うのです。現実的には、やはりアメリカの核のかさのもとにある日本、日米安全保障条約は必要である、日本自衛隊は憲法の許容する最小限度のものでなければならない、それで平和に寄与するために努力を続けるということでございまして、いまの段階において、このワク組みという中には核も入っているわけですから、その中から核を取りはずして日本防衛政策の根本を変えろというのはやはりどう考えても時期尚早であるし——時期尚早であるというのは、いつやるのか、時期を言えとまたお問いになると困りますから、この部分は削除いたしてもけっこうですが、いずれにしてもいまのワク組みという上に世界の平和が成り立つ。人類の英知はだんだんそれを完成し、完ぺきなものにすべく努力をしているのだ、日本も最善の努力をするのだ。ですから、防衛の基本を変えるような立場でないということだけは申し上げておきます。
  38. 木原実

    ○木原委員 もう時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、一つだけ要望を申し上げたいのです。  大出委員も先ほど申し上げましたように、間もなく訪米をされる。くれぐれも防衛上の負担はお持ち帰りにならないように、これが一つです。  それから、もうこまごま申し上げませんけれども、一つは、先ほど来大出委員も指摘をいたしましたいまの自衛隊の体質については、幸いにして俊敏な新長官もできましたので、思い切って洗い直してもらいたいと思うのです。国民に被害を与えてそのまままかり通るような自衛隊であったのでは、これはどうにもなりませんよ。そういう自衛隊の体質にかかわる問題についての洗い直しをぜひやってもらいたいと思います。  以上で終わりたいと思います。
  39. 三原朝雄

    三原委員長 中路雅弘君。
  40. 中路雅弘

    ○中路委員 総理は七月の末に訪米されるわけですが、最初にお聞きしたいのは、このニクソン大統領との会談の主要な議題は何なのか。特にベトナム協定以後のアメリカのアジア政策について討議を予定されているのではないかと思いますけれども、去年の八月にハワイで会談された際に、日米安保条約の円滑、効果的な実施ということをうたわれているわけですが、その後現実のアジア情勢が変わってきている中で、日米安保条約の運営についてどのような協議を予定されているのか、最初にお聞きしたいと思います。
  41. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 特別具体的な議題は現にまだ詰めておりません。おりませんが、議題がなくてなぜ行くのかということになるわけでございますが、これは会うことに意義があるということでございます。これは去年のハワイ会談から、少なくとも一年に一ぺん、できれば相互が訪問し合うようなことをして、半年に一回ずつでもお互いが意思の疎通をはかろう、そうすれば日米間における貿易の不均衡問題等で国民の間における不信感を醸成するようなことも避けられたのだ、そういう意味で、日米間においては首脳会談は少なくとも一年に一回、そして毎月でも専門家会談を開こう、こういうことになっておるわけでございます。ですからそういう意味で、もうちょうど一年ぐらいになりますので、これはやはり首脳会談を開かなければならないときが来ておる、こういう考えでございます。  特に私が非常に考えておりましたものは、対米貿易というものは三〇%越しております。アメリカの外国における多国籍企業からの貿易の輸出、輸入を入れますと、日本の総貿易の四〇%を越しておるわけです。このアメリカと正面から対立するようになったら、これは日本の経済そのものがたいへんな状態になりますので、両三年待ちなさい、両三年待てば必ず私が答えておる数字になる、こう言っておりましたら、ことしの三、四、五月で対米貿易は非常によくなりました。そういう意味で、ここらで日米間は事実に基づいて相談する必要がある。特に向こうは通商拡大法をいま審議しておるわけでありますから、ここでもってお互いが意思の疎通をはかっておらないで、また課徴金でございますということになったらたいへんなことでございますので、課徴金をやるようなことは困りますよ、事実こうなっておるじゃありませんか、ことしは二十億ドル台になりますよ、こういう問題をやはり日米の首脳部間で詰める必要があるというのが、私がいま申し上げられる日米会談の主要な問題でございまして、安全保障条約の運営の問題とか、アジア情勢とか世界情勢とか、米ソ会談はどうでしたということは当然話し合いになると思いますが、具体的にいま御指摘になったような問題を主議題としておらないということを明らかにしておきます。
  42. 中路雅弘

    ○中路委員 限られた時間ですから全般の問題についてお尋ねできませんけれども、いまお話ししましたように、昨年八月にハワイで会談されて、その中で安保条約の円滑、効果的な実施ということを約束されております。そして昨年来一貫して、この安保条約の円滑、効果的な実施、ある意味では強化を目ざして進めてこられた。この期間、日中国交回復や、あるいは台湾との断交、ベトナム協定という新しい段階にベトナム問題も来ている。あるいは総理自身がソ連を訪問される。こういう情勢の変化と、昨年以来の安保条約に関するハワイ会談での約束、こういう間の関係はどのようにお考えなのか、今後どういう考えで進めていかれようとしているのか、もう一度お伺いします。
  43. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 安保条約の問題に対しては、両国がお互いに協定をしている条約を厳守しなければならないということは言うをまちません。しかし、安保条約というものとは別に、アジアの情勢も変化しつつある、また米ソの間でも道が開けたというようなことはあるわけであります。そういう問題は、客観的情勢としてわれわれも判断をし、評価をしておることは事実でございます。しかし、それが日米安全保障条約に直接影響をもたらすような状態ではないということは、先ほどから間々申し上げているとおりでございます。日米安全保障条約というものの運営に対して、お互いが理解をしながら円滑な運営をしましょうということは、強化をしましょうということじゃないのです。その後の情勢を見ていただけば、関東地方における基地は集約されておりますし、また日本沖繩国体を開くからどうしても相当部分のアメリカの兵舎を動かしてもらわなければいかぬ、こう言ったら、それもオーケーだ、こういうことになっておりますし、岩国から三沢へ移るというのは、それは困るんだ、日本のほうへ来るよりもいまあるもので何とかしてくれないかといえば、それもオーケーだと言っているのですから、この一年間にやはり具体的な成果はあったと思うのです。ほめられるほどの成果はないにしても、少なくとも国内における基地が倍になったというのじゃなく、だんだん縮小されている。国民的世論にこたえているということでありまして、私はやはり、ハワイ会談の成果というものはあった、こういうことでありまして、今度会えば来年はもっとあるだろう、こういうふうに期待していい。期待していただくというとまたあれですが、いずれにしても私は期待をいたしております。
  44. 中路雅弘

    ○中路委員 具体的に幾つかお聞きしたいのですが、いまの日米安保条約が、これまでの歴史的な経過を見ればいろいろ明らかですけれども、極東、特にベトナムにおける侵略戦争の要員の基地としての役割りを果たしたということは、これはもう歴史上明白なことです。ベトナムでアメリカが撤退せざるを得なかったというのは、ベトナム人民の戦い、世界の平和勢力の戦いかちとった成果であるわけですから、この点についての見解は明らかに違うわけですけれども、いま日米安保条約の強化ではないんだというお話になりましたので、二、三具体的にお聞きしていきたいと思うのですが、横須賀に対する航空母艦ミッドウエーの母港化というのは、いつミッドウエーは横須賀に来る予定ですか。
  45. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ミッドウエーの横須賀寄港につきましては、時期については情報を持ち合わせておりません。
  46. 中路雅弘

    ○中路委員 秋ごろというのが出ていますけれども、まだ明確な時期ははっきりしていないわけですか。
  47. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 現在ミッドウエーは、米本土西海岸において修理、補給あるいは兵の訓練、そういうようなことをやっているというふうに承知しておりますが、それが極東地域にいつごろに帰ってくるのかということについての情報を持ち合わしておりません。
  48. 中路雅弘

    ○中路委員 総理にお聞きしたいのですが、このミッドウエーの母港化に関連して国会でもたびたび質問されていますけれども、特に核の問題で、このミッドウエーが核の持ち込みではないんだという保障はどこにあるわけですか。
  49. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ミッドウエーそのものが核兵器を搭載しておらぬ、核は持っておらぬ。これは、日米間でもってきょうだいのようなおつき合い、おつき合いというよりも命を預ける、日本人の生命や財産を守るために日米安全保障条約を結んでおる相手国でございますから、これはもう信頼に足るものである。普通ならたいへんなことであった血を流した沖繩でも、やはり日本に返すべきだという日本とアメリカとの間の二十五年の歴史というものは信頼に足る。私は日本人全体がこれを認めておられると思うのです。そういう立場から考えても、アメリカが日本の政策に反するような核兵器の持ち込みなどはやらぬと言っておるのでありますし、私は事実の上においてそれは信用できる、これはやはりお互い信頼の問題じゃないかと思います。
  50. 中路雅弘

    ○中路委員 アメリカを信頼するということだけしか保障はないわけですね。このミッドウエーが、アメリカ空母の中で一番早く核装備をした空母だということは、ジェーン年鑑なんかでも明白でありますし、ただアメリカを信頼していくんだというだけでは、とうてい国民やあるいは地元の皆さんの不安を消し去ることはできないと思う。母港と今度なるわけですから、母港になってそこにずっといる。その航空母艦がまた核装備をしている空母だということは明白なわけですから、出撃するときだけどこか遠く離れた基地へ核をとりに行く、そういうことは軍事的にも全く考えられないわけですね。私はこの点でも、この母港化の問題が核の持ち込みにつながらないという保障は、何もないじゃないかと、答弁の中でも思うわけです。  特に、横須賀の空母の母港化に伴って、先ほど大出議員から上瀬谷の問題も出ましたけれども、横須賀だけではなくて、上瀬谷あるいは厚木の航空基地、三沢——三沢には、アメリカ軍司令部が地元で記者会見をやって、第七艦隊の航空部隊の三沢の新配備を発表しているわけですから、こういう点で見れば、この母港化を中心にして各基地が強化されてきている。安保条約に基づいて、いま強化じゃないんだと言われましたけれども、第七艦隊の母港化を通じても非常にこのことは明白ではないかと思うんです。  先ほどちょっとお触れになりましたからもう一つお聞きしたいんですが、横田の問題です。これは基地の集約化だということをお話しになりましたが、横田の基地の機能、これは、時間もありませんからお尋ねする前に私のほうから話しますが、当然これはアメリカの輸送空軍基地の役割りが中心であることは明らかなわけですね。  リチャードソンの国防報告の戦略空輸に関する部分というのを読んでみますと、こういうように書かれています。「平時において前進展開されているアメリカの一般目的戦力は、抑止に欠かせない力となっているが、わが軍隊の大部分はアメリカに配置されている。したがってアメリカは、局地的に、またアメリカに展開された部隊だけで対処できない侵略に対抗するために、すみやかに追加部隊を展開できる能力を持たなければならない。この必要を満たすのが戦略機動部隊の主たる任務である」「現在の計画によれば、アメリカの戦略空輸手段は一九七〇年代を通じてわれわれの展開を満たすものに必要な基本的能力を提供することになっている。一九七三会計年度末までには、C5輸送部隊の増強を完了する予定である。これによって現役戦略空輸部隊はC5飛行隊四個とC141の飛行隊十三個で構成されることになる」ということを述べていますが、横田がMAC、輸送空軍の基地であることは明らかですし、インド洋を含めた広大なアジア全域に対する空輸機動部隊、軍事介入のできる空輸部隊であることも明らかですから、これは、日本の安全を守るというのではなくて、明らかにこの空輸部隊はアメリカのアジアにおける軍事介入の体制を貫くということなわけです。横田の集約というのは、そういう関東計画というのは、横田強化のために、しかもそれに血税を数百億円注ぎ込むという計画になっているわけですね。  私は総理にお尋ねしたいんですが、東京都のまん中ですね、一国の首都の中にこのような強力な外国の、しかも日本の安全を直接守るというよりも、主としてアジア地域における軍事介入の空輸部隊の基地をかかえているということは国際的にも例を見ないんじゃないか。この点について総理はどのようなお考えか。
  51. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 私は、横田に集約をされたということは、日米間で話し合いをし、日本国民の期待に沿って点在されておる基地を集約したものだと考えております。また日本におけるアメリカ軍というものは、安全保障条約の定めに従って、アメリカの当然の権利として、また日本も基地を提供しなければならないという義務の間によって成り立っている現状があるわけでございます。  量的な拡大ということよりも、質的な問題に移らなければならないというのは、近代防衛という面から考えて、これは野党の皆さんからも御指摘されておるわけであります。人間だけふやすのは能じゃない。これは少数精鋭のものでもってやらなければならない。しかし日本は、少数精鋭といっても、精鋭という中には攻撃的なものになるというおそれがありますから、それには制約を受けておるわけでございます。だからアメリカ軍は適用される基地の中で日米安全保障条約を前提として部隊を置いているわけでございまして、これは時代の流れによってだんだんと性能もよくなっていく、質の面において改良されていくということは、これはもう当然のことだと思うのであります。ただ、日本におる限り、日本政府は国民に約束をしておる、内外に宣明しておる基本的なものに背反してはならない。それは何か。それは非核三原則である。これは、核を持つものはいけない、こういっているんですから、もう核兵器は持ち込んでもらっちゃ困ります、こう言っているわけです。条約があるから困るんです、こう言っておりますから、向こうは、日本政府が困るようなことはいたしません、核兵器は持ち込みません、こう言っているわけですから、これはいいわけでございます。  そうすると、あとに残るのは何かというと、B52のように、戦略爆撃機というようなものが性能が高くなれば、必ずそういう議論が起こるわけです。日本自衛隊は持っていなくてもアメリカは持っているじゃないかということで、今度は沖繩の県民感情が許さないということで、だんだんだんだんとB52も沖繩から撤去するというような状態になっておる。これは事実、アメリカ軍が非常に協力をしておって、日本の国政に支障を起こさないように、国民の理解が得られるように努力をしてくれておることは、もう事実が明らかに証明しておるわけであります。ですから、アメリカ軍の集約に伴って、量から質への転化ということが——そのために集約しているんだということは、これはやはり考え方の相違であるといわざるを得ません。  もう一つ日本における基地のアメリカの性能がよくなることはアジアにおける軍事介入、そういう判断が間違いじゃないかと思います。遺憾ながらこれは私たちと反対なのです。アメリカ軍がおることによって日本の安全が保障されておるということであって、無能力の軍隊がおってもどうにもならないのです。能力ある軍隊が抑止力になり、それなるがゆえに、憲法で定める最低限の負担でもってわれわれ政府は国民の生命、財産を守りますよ、こう言えるのであって、やはりそこら見解は遺憾ながら違うのであって、アメリカ軍の日本における性能というものがよくなるということは、これは基地が倍になってよくなるのならたいへんでございますが、基地がだんだん縮小されていって、しかも核やそういうものは絶対持たないということであるならば、抑止力というものは安定的なものになっておるということに理解をし評価をしておるだけであって、遺憾ながらあなたのようなそういう判断には立てないのです。
  52. 中路雅弘

    ○中路委員 最初にこの安保条約の強化でないんだとお話になりましたから一、二の例でいまあげたわけですけれども、ミッドウエーの母港化にしても、あるいはいまの横田基地の集約の問題にしても、空輸部隊は直接の日本の安全を守る部隊というだけではない。ミッドウエーの母港化の役割りにしてもそうですが、横田の集約の場合もそうです。米軍のアジア海軍の体制、そういうものを保障していくということになるわけですから、ベトナム以後も引き続いてそういう体制が強められていく。いま質の問題をお話しになりましたけれども、そういう事態になっておるということは明らかですから、この問題について議論する時間もありませんけれども、明らかにアメリカに追随、アメリカ協調、そういう典型的な例ではないか。やはりほんとうに平和、安全を願う日本国民がこういう事態は許し得ないものだと思います。  もう一つお聞きしたいんですが、ニクソン・ドクトリンに基づいた総合戦力構想の問題ですが、これについては、アメリカの外交教書でも、あるいは国防報告でも繰り返し公表されています。  一つだけ引用しますけれども、これもリチャードソンの国防報告の中に、「総合戦力の概念はアメリカの現役、予備役と友好国、同盟国の現役、予備役が一体となって安全保障上の共通の利益を追求することを目的とした構想であるが、この概念はニクソン・ドクトリンの一つの具体的なあらわれである」。ここでいっているのは、アメリカの軍隊と友好国、同盟国の軍隊が一体となってやる、これが総合戦力構想だということです。そしてことしのニクソン外交教書を読みますと、日本の問題で、「日本は次第に通常防衛力を改善し、規模よりは近代化に力を注ぎ、火力、機動力、対潜水艦作戦能力及び対空防衛力を向上させてきた。四次防では、三次防に比べて防衛支出を倍増させることになっている。沖繩返還に伴い、現在の日本自衛隊防衛の肩がわりのため南へ移動した。これらは日本全領土の通常防衛のための自主防衛及び」、その次にこう書いてある。「戦力改善のための重要なステップである」。戦力ということばも使っている。「これは避けがたい発展であった」ということを述べていますが、ここに明らかに、自衛隊が三次防から四次防で防衛支出を倍増する、あるいは火力や機動力、対潜水艦能力、対空防衛力を向上させる、こういった戦力改善のための重要なステップ、これはニクソン・ドクトリンのもとで避けがたい発展であったという明確な位置づけと評価をしているわけですが、日本自衛隊が総合戦力構想の一翼に、アメリカのこの教書によれば明らかに位置づけられている。山中長官はこの前否定されていますけれども、日米軍事同盟と共同作戦の体制の強化が急がれていることはここでは明白だと思いますが、総理は一体この総合戦力構想に関してどのように理解をされていますか。
  53. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 アメリカが世界戦略構想を持つ、その中で総合戦力構想という具体的な問題をテーマとして検討する、これは当然のことだと思います。構想がなくして戦略は立て得るわけはありませんから、アメリカが持つことは当然でございます。しかし日本はアメリカの総合戦力構想の一環として自衛隊を増強しておるのでは全くない、これだけはひとつ明確にしていただきたい。日本は少なくとも憲法の定める最小限の防衛力を持ってするだけでは安全の保障の確保はがたい、その意味で日米安全保障条約を必要とする、こういう断定に立っておるわけでございます。ですからアメリカに基地も提供しておるということでございます。  これは、アメリカがどういうふうに考えようと、攻守同盟条約ではないのです。アメリカとヨーロッパ諸国の間に結ばれておるように、これは同盟国ということで、同盟国即攻守同盟条約を結ぶ国であるということであれば、これはいろいろな問題、あなたが指摘されるようなことが起こり得るかもしれませんが、こちらはそうではないめです。安全保障条約に明白になっておりますように、これは特に憲法の制約があるのです。日本は国際紛争を武力で解決できない。日本が危険なときにはアメリカに当然やっていただく、協力していただく。アメリカが危険になったときには遺憾ながら憲法の制約がございます。これはもう日米安全保障条約制定当時に国会で十分議論された問題でございます。言うなれば、アメリカにはあまりにも片務条約じゃないかといわれた条約であって、いま対等の立場に立って結ぶ条約であったならば、私はこんな条約ができるとは思いません。だから私たち与党や政府は、この条約はなかなかたいへんな日本にメリットのある条約である、そういうふうに理解し評価しているのです。そういう立場から、こんな再び結べないような日米安全保障条約。私たちが危険なときはあなたやってください、あなたが危険でも——これは少し言い過ぎ、どうも言いにくい話でございますが、実際そうなんです、こっちは行けないのですから。だからそういう条約というものを大事にしているのです。  そういう意味で、日本自衛隊というものはシビリアンコントロールで、国会の議決を経て、そして日本で独自な見解と立場と考え方でおのずから漸増主義をとってきているわけです。これは一貫して自衛隊法制定当時から漸増主義をとっております。ですから国民総生産の一%をこえたことはない、こういうふうにだんだん下がっておる、その率は。そういう状態でやっておるわけでありまして、アメリカの総合戦力構想とか世界戦略構想の一環として日本が自動的に賦課されているものをそのまま容認しておるものでは全くない、これだけは一つ……。  ですから、いままで日本防衛力増強に対してアメリカ側から要請を受けたことはありません。具体的にこうしてくださいという要求は全くないのです。国会でこれだけ厳密なる御審議をいただいておっても、そういうことはないのです。ですから、日本防衛力の漸増主義は全く自主的なものであり、アメリカの世界戦略構想の一環として増強されるものでは全くない。これだけはひとつ明確にしていた、だきたい。
  54. 中路雅弘

    ○中路委員 先ほど総理は、アメリカを信頼するとおっしゃっていますから、その信頼するアメリカがいっておるわけですね、戦力の改善だと。日本が総合戦略構想に組み込まれているということは、いま一、二の例をあげましたけれども、これは国防報告、外交教書では一貫してはっきり公表されているわけです。その中に組み込まれているということを率直に認められる必要があるのではないか。アメリカの力の立場を補う役割りを自衛隊が果たしている、そのための増強だということは、私は具体的な事実で明らかにされているのじゃないかと思います。  時間もありませんから、最後に一つお聞きしたいのですが、先ほどからも質問がありましたけれども、沖繩の配備の問題です。繰り返し、久保・カーチスの協定というのは国際的な義務を負わされている条約ではないんだ、取りきめだ——ただ山中長官は、先日私の質問に、アメリカのほうがそう受け取るのではないかということだということはお話しになりましたけれども、しかしこの久保・カーチスの協定、取りきめというものは、中身自身が定員の増員あるいは予算を伴うものを含んでいるわけですから、この取りきめ自身は、これは条約じゃないんだ、取りきめだとおっしゃっても、これ自身は立法事項を伴うものではないのか。条約ではないのか。これは幾ら取りきめだといっても、当然国会審議にかけられなければいけなかった問題ではないのかというふうに感ずるわけです。  もう少し整理しますと、久保・カーチスそのものは国会にかけられなければいけなかった問題だ。当然立法事項を伴うものだ。この点でも国会無視、法律に違反しているのではないか。  もう一つは、先ほどの質問のように、これに基づいて沖繩配備の自衛隊の増強、この七千人のうち半分が沖繩配備の定員の増です。それを出されて、去年もそれは廃案になった。廃案になりながら臨時という名前でどんどん約束どおり配備をする。ことしもまだ法案が審議中だ。しかし七月一日の期日の前にほぼその実体に近いものを配備される。先ほどのお話のように、私も沖繩に行ったら、これはもし法案が通らなくてもそのまま残していくんだということは、現地の司令官の連中がみんな言っていることです。この点でも国会審議を無視している。シビリアンコントロールの最大のものは国会審議です。これも違反されている。われわれは沖繩でナイキ基地を見てきましたけれども、ナイキ基地も買い取りですね。七十億からの買い取りです。臨時という名前をつけながら、海上自衛隊の場合でもりっぱな司令部の機構をつくっているのです。隊舎をつくっているのです。新しく建設しているわけです。これも予算を伴う問題です。だから、この沖繩配備の自衛隊というものは、先ほどやみ部隊という話がありましたが、二重、三重、四重にも法律に違反している。国会審議を無視しているものではないか。ほんとうにシビリアンコントロールというものを守られるとすれば、こういうものは直ちに撤退してもらわなければならないというふうに考えるのですが、総理のこの点についての見解を伺いたい。
  55. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 久保・カーチス協定は、政府が前々申し上げておりますとおり、条約ではない。これは引き継ぎをするわけですから、引き継ぎをするときの取りきめ事項、もっとはっきり言えばメモでもあるといっても一向差しつかえないわけです。メモでもよくなければ、話し合いだけでもいいのです。こんなことが日米間において行なわれないというなら、安全保障条約はどこにあるかということになるわけでございます。しかも日本政府の要請によって——あなた方は、なるべくB52はいなくなってください、早く撤退してください、基地は縮小してください、こう述べておるわけでありますから、そういうときに、ではわれわれが撤退したあと、移転をしたあとどうするんだ、こういうような話し合いをしないこと自体がおかしいのであって、話し合いをすればメモをつくる、取りきめを行なう、これは当然だと思いますが、しかしその取りきめというものは、これを実行する段階においては二つの方法がございます。二つの方法というのは、それは取りきめをそのとおりやるならこれは条約として出すということになるでしょうが、そうではなく、今度は予算は四十八年度の予算として国会審議を得て成立をしておるわけでございます。しかも法律はいま防衛二法として御審議をいただいておるわけでございます。ですからこの法案が通過しない限り南西航空混成団というのはできないのです。これをやって看板をかけたら、これは法律違反ですよ。これはたいへん法律違反でございますが、そうじゃないのですよ。これは国会をこの法律が通過しない限り絶対にやりません。しかもこの沖繩配備というものは、現行防衛庁設置法において防衛庁長官に認められておる権限内における配備をやったわけであります。沖繩が返ってきているのだけれども、あそこに全然自衛隊を置かないということになれば、それこそ政府の責任は果たせないわけであります。政府はちゃんと四十七年四月十七日に国防会議でもって決定をし、四月十八日には閣議報告が行なわれております。しかもそれだけではなく、この問題は国会で直ちに議論をしていただいており、シビリアンコントロールは十分受けておるわけでございまして、これはもう久保・カーチス協定というものは国会の批准案件であるということではないわけでございまして、私は、適法な処置をとっておるものであって、まぼろし部隊であるなどということは全く考えておりません。そういう考え方をどんどん述べられると士気にも影響しますから、だから乗り逃げも起こるというようなことにもつながるわけであって、そこらはひとつ——まじめにそう思っているのです。やはり沖繩の祖国復帰に対して沖繩県民の生命財産を守るということに対しては全国民責任だと思うのです。そういう立場から申し上げておるのであって、違法行為をやっておるとは考えておりません。
  56. 中路雅弘

    ○中路委員 時間ですからこれで終わりますが、いま司令部を置かないとおっしゃいましたけれども、実際には司令部の機能とそのものもやられているのです。私はこのことを先日質問をしようと思ったのですが、最初からスクランブルで御答弁ができなかったので再質問になっている。あらためて別の機会にやりたいと思いますが……。  最後に一つだけ要望を述べておきますけれども、この審議の中でも、たとえばこの前、楢崎議員の質問で私の前回の質問関係が明らかになりましたが、海上の防衛海域の問題についても、アメリカと話をするときに出された説明の資料ですか、メモですか、それと国会答弁が明らかに違うということが前回明らかになり、外務省を通じて訂正するということは、この席上で大河原局長も久保局長も言われた。こういう点で防衛や外交の問題が秘密外交になっている。国会答弁と実際にアメリカと話をされるのが違う。しかも、なかなかそういう資料を提出されない、資料の提出も拒まれる、これでは国会で国の防衛の問題、重要な問題を十分審議することはできない。私は、今後の審議の中で、このような資料の提出を拒んだり、あるいは国会答弁とアメリカ側に対する説明が食い違う、こういうことは絶対やらない、この点についても明白に約束をしていただきたいということを最後に述べて、時間ですから終わりたいと思います。
  57. 三原朝雄

    三原委員長 鈴切康雄君。
  58. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私、時間が非常に少ないわけでございますので、質問に対する答弁は適切に簡便にお願いしたい、このようにお願いいたします。  総理大臣、あなたは内閣の首長であると同時に国防会議の議長でもあるわけです。それと同時に自衛隊最高責任者であるわけであります。また防衛行政についてはオールマイティーの権限を持っておられる。そういうことになりますと、いわゆる武力集団の中心的な立場にあられるわけでありますけれども、そういう観点から考えますと、総理の判断というのはまことに重要な意味合いを持とうかと私は思います。そういう意味から考えて、総理のシビリアンコントロールに対する基本的な考え方、そのことについてお伺いいたします。
  59. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ちょっと失礼ですが、武力集団の中心ではなく、防衛集団の中心でございますから、そこのところひとつ……。  まあ、シビリアンコントロールというのは、日本は当然守っていかなければならぬ問題でございまして、これはもうゆめ忘れてはならないということでございます。シビリアンコントロールというものの一番大きなものは国民的なコントロール、それは国会であるということでございます。だから私は、国会に近くひとつ防衛委員会というものをどうしてもつくっていただきたい。これはもう政府提案をいたしてもけっこうですし、議員立法でもけっこうです。これはやはりシビリアンコントロールの実をあげるための防衛委員会、朝から晩まで、毎日でもやっていただくことでございますから、そういう意味でございまして、まずそれをやっていただきたいということが一つであります。  それからあとは、私が文民であるということはもう当然のことでございます。それから、国防会議のメンバーをもっとふやしたいということで、これはもうできればこの国会に提案を予定いたしておったわけでありますが、御賛成を得られないというような状態でございましたので、皆さんの御意見をもっと拝聴してからということに万全を期したわけでございます。  それから防衛庁長官は文民でございます。内局ももちろん文民統制の機構として十分その責めを果たしておるわけでございますが、しかし内局問題、いろんな問題に対しても、これから整備をしなければならない問題があれば、皆さんの御意見も十分承りながらやってまいりたい。ですから、新機種をいわゆる外国に発注するのか、国内でやるのか、少し高くても国内でやるほうが、他の新幹線の車両その他いろんなものに対する影響とか、そういうメリットがあるというような両論があるわけであります。しかし、そういう問題は政治的に判断をするよりも技術的な面から慎重に配慮することが望ましいということで、国会が終わったらということではなく、国会で十分皆さんから御意見を承って、そして専門家会議というものを開こう、こういうことを考えておるわけです。ですから、やはり政府がまじめに考えておることをひとつすなおにとっていただければ、私は文民統制というものの実はあがる。まあ、これだけ戦後一番大きな問題として、各選挙すべて防衛問題が主題になって国民の判断を仰いできたということは、やはり私は、少なくともシビリアンコントロールの実は日本防衛問題に関してはあげられておる。これだけはもう国会議論が一番ページ数が多いということを考えてみても、これは与野党を問わず、このシビリアンコントロールというものを生かすために御努力をいただいておるということに対しては感謝をいたしておるわけであります。政府もこの実をあげるために最善の努力をいたしてまいります。
  60. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛委員会については、国民の中においてもたいへんに議論のあるところでありますので、その問題はさておきまして、沖繩の配備計画について、久保・カーチス取りきめによりすでに臨時部隊が派遣されているわけであります。七月一日からアメリカから空の防衛の任務を引き継ぐということになって、もう合意をされております。それに対して政府は、沖繩配備については、例の昭和四十七年度の予算委員会でも問題になり、急遽国防会議の議を経てその久保・カーチス取りきめの配備計画を事後承認したという、そういう経過があります。そういうことが重なりますと、シビリアンコントロールがはたしてそういう形で行なわれるのは適切なやり方であるかということを私は非常に疑問に思うわけであります。少なくともあなたは、国民コントロールであり国会コントロールであるのだということであるならば、すでに軍事的なレベルにおいて合意されたものを、やむを得ず政府は国防会議できめて、そしてそれを国会にいまこうやって審議をされるという状態のこういうパターンは、はたしてシビリアンコントロールを尊重する国民的ないわゆるコントロールであるかどうかということを非常に私は疑問に思うわけでありますが、そういうパターンが今後も繰り返されるということが好ましい方向であるかどうか、それについてお伺いします。
  61. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは中路君にも先ほどお答えいたしましたが、鈴切さん、すなおに考えていただくとよくわかるんです。久保・カーチス協定というものは必要なかったかどうかというと、日米安全保障条約を締結しておるアメリカが施政権を持っておる沖繩日本に返還をするという大事業を行なうという大前提があります。そうすれば、これは日本の四十七都道府県の中の一つになるわけですから、自衛隊法は発動されること、当然であります。自衛隊法は発動されること当然でありますし、しかも今度、いままでアメリカの施政権下にあったものを日本に返還するのだから、そのときにそごのないように話し合いをしようということは、これは当然起こることであります。これは全然話し合いをしないでやったら、理事会のない委員会を毎日開くようなものでございまして、これはたいへんなことになると思うのですよ。これはそういうことであって、これは法律になくても、ちゃんと理事会というものがやれるようにお互いがやっているでしょう。そのときに、さっき言ったように、メモでもよし、とにかく協定という名前——協定という名前を使ったことはちょっとおかしいかもしれませんが、これはあることが自然であり、必要である。  その久保・カーチス・メモなるものをそのまま議題として国防会議できめたなら、それはあなたがいま御指摘されるほどの問題が起こると思います。そうでないんです。久保・カーチス協定というのは、沖繩の祖国復帰に対して、当然のこととしての話し合いを記録したものであるということであります。それは内部部局に報告されているでしょう。私たちが国防会議の議に付して、そうしてきめたのは、祖国復帰という新しい事態に対処して、四十七都道府県の一県である沖繩に対して防衛の任務を果たさなければならないということであります。しかもそれは、防衛庁設置法によって防衛庁長官に認められておる権限内の移動でありますが、もっとはっきり言うと、移動にすぎないと言っても私は過言でないと思うのですよ。移動にすぎないことではございますが、新たに復帰した沖繩に隊を配備することでありますから、国防会議の議題にすべし、こういう慎重な態度をとったということであって、久保・カーチス取りきめなるものと国防会議というものとは、やはり別々な時点において行なわれたものであるというふうに理解をし評価をしていただけば、この内閣に国会軽視などという考えはごうまつもないという過去の例に徴してもひとつ理解をいただきたい。
  62. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実は久保・カーチス協定については、これはきめられると同時に、沖繩に物資の移送をやって、それがいわゆる国会軽視であるといって、いわゆる物資を戻されたという経緯もあった。そういうことで、久保・カーチス協定はすべて国会審議に先行する形式で行なわれていたということで、たいへんに問題があるわけであります。  そのことはさておきまして、次の問題に移るわけでありますが、米ソの核戦争防止協定が締結をされたことによりまして、米ソの平和共存と安全保障を基礎に、少なくとも世界が平和への方向に向かっている。二大核大国がその合意を見た以上、私は、核抑止力の必要性というものは今後減少するのではないかと、そのように判断をするわけであります。御存じのように、四次防の防衛構想の柱となっているのは、日米安保体制の必要性の中で、米国に依存する核抑止力のことを非常に強調しているわけでありますが、そういう意味においても必然的に薄れていくということになろうかと思いますけれども、日米安保条約の検討ないしは内容の変更等について少なくとも考えるときが来たのではないか、私はそのように判断をしておりますが、総理大臣はどのようにお考えでしょうか。
  63. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほども申し述べましたように、核保有国であり、しかも世界における超大国である米ソ、この米ソのトップ会談において核不戦協定という宣言が行なわれた、これは歴史的な事実だと思います。そういう意味で、核実験の禁止とか、核の国際管理とか、部分核停条約とか、いろいろな問題が、私は、部分的にのっておったものが相当まじめな議題となって、具体性を帯びてくる一つのきっかけということは理解しておりますし、評価もしております。ただ、これは先ほど申し上げたとおり、そういいながらその反面において、フランスは現に反対を押し切って実験をしようとしておる、こういうことであって、すぐ片づく問題ではないと思うのです。ですからそういう意味で、今度の米ソ会談というものは高く評価はできますが、現実問題として、これからまだ相当な紆余曲折もあり、歴史が必要であろう。しかし、人類というものは核を持ったが、これは二度と使ってはならない、地球の汚染であり、人類の死滅である、こういう意味から、被爆国である日本は核の問題に対しては国際的場で大いに発言をし、平和に貢献をしたい、こう述べておるわけです。ですから、米ソが核の問題に対して核不戦宣言を両巨頭で行なったということが、すぐ日米安全保障条約の再検討につながるものではないということと、防衛力の漸増というものにもつながるものではない。これはもう日本の国力の培養、増大ということとあわせながら少しずつでも前進をしてきたのでありまして、これがすぐこの宣言によって影響を受けるものでない。  また、先ほどから申し上げておりますように、日米安全保障条約というのは、アメリカ側には文句があると思うのですよ。しかし日本側からいうと、私はやはり、占領政策からずっと考えてみて、お互いの一つのポイントだったなと思うのです。そんないい条約をどうして評価をしないのか、どうも理解に苦しむところでございまして、いまこの条約をつくって、アメリカはえたりかしこしと、では北大西洋条約と同じものにしようじゃないかとでも出てこられたら、それは国会議論、沸騰するところでございまして、いまの日米安全保障条約というものは絶対必要である、維持し、堅持するというのはそこにあるわけでございます。
  64. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 田中さんの考え方は、いま日米安保条約を非常に重要視されているというお考え方でありますが、それでは、日米安保条約を今後も半恒久的に維持をしていくお考えであるのかどうか。日米安保条約を必要としない、あるいは内容的に安保を変更するに値する国際情勢というものは、田中総理大臣はどのようにお考えになっておられましょうか。
  65. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 生きとし生けるものの争いというものは必ずあるわけです。これはどんなに人類が進化しても争いはあるのです。親子、夫婦の間においても争いはある。国会議員の間においてもいささかの争いは起こるということですから、これはやはり、ないということを前提にしてものは考えられない。しかも政治責任の地位にあって、国民の生命と財産の安全を保障しなければならない責任の地位にある者は、希望的観測によって政策を変えるわけにはまいりません。そういう意味から考えまして、やはり日米安全保障条約というものは必要である。それは社会においては火事もあります。どろぼうもあります。これは否定するわけにいかない。そうすると、一人が一人ずつ警官を自分の月給から払って置けないでしょう。だから警察機構をつくるでしょう。それと同じように、消防の車を一人で一台ずつは置けないから消防署というものをつくっている。これは集団安全保障体制ですよ。人類の英知が生み出したものなんです。だから、一人がやるとたいへんだから二つでやろう、三つでやろう、四つでやろう。究極の目的は国連の集団安全保障体制。それができないでおって、それで二国もだめ、三国もだめ、一国も兵器を持つな、そんな国は世界じゅうに存在しない。やはりそこに宗教と教育と現実の政治との差はおのずからあると私は思うのです。これはやはり責任を持っている者は、いまの状態において日米安全保障条約は要らないなどということを言うことは、無責任きわまりないことだと私は思っておる。ほんとうにまじめにそう思っております。自民党が勝ったから言っておるの、じゃありません。
  66. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 自民党政府の間は半永久的に日米安保条約を堅持するという体制、これはいまはからずも総理大臣の口から出たわけであります。  次は、陸上自衛官の航空機による逃亡事件ということが起こっております。武力集団である自衛隊武器管理のずさんさを立証したものであるが、国民は大きな不安を抱いているわけであります。自衛隊の内部の管理欠陥をどのように是正をするのか。単なる事故として認識するものでなく、このようなことは自衛隊に安易に武器を使用させる可能性をはらんでいると思われる。それが五・一五あるいは二・二六事件のように、一部の制服による武力行使の危険性も考えられるわけでありますけれども、最高責任者としてこの問題をどのようにとらえておるか。
  67. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 本件に関しては全く一言もありません。これはもう自衛隊最高責任者として心から遺憾の意を表します。かかることのないように可能な限り最善の努力をしてまいりたいと思います。その中には、先ほども申し上げましたように、自衛隊というものは日陰のような立場、気持ちの上だけでもそうではやはりいけないと思うのです。そういう意味国会でも議論をしていただいて、やはり自衛隊というものは必要であるとしたならば、自衛隊の職員がほんとうに国民のために生命をかけておるのでありますから、そういうことが可能になるような環境、制度というものを完備すべきだと思います。それはやはり内閣の責任であろうと思っております。官紀の振粛、綱紀粛正、この問題に対しては、部内でも十分検討いたしますし、在野の御意見も十分拝聴して、自衛隊が真に国民に信頼をされるような隊紀が確立をされ、再びこのような問題が起こらないように全力を傾けてまいりたい。
  68. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私はやはり、武器の管理のずさんさということは非常に問題になってくるのではないかと思いますので、そういう点についてこの際管理の総点検をすべきではないか。そういう危険性があるという問題については、やはりこの際チェックをして歯どめをすべきではないか、そのように思うのですが、もう一度……。
  69. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これはもういまの状態において兵器管理は十分いたします。これはいやしくも非難を受け批判を受けるようなことはいたさない。十分厳重にやります。  ただ、そこに問題がありますのは、制度上、性質上緊急に行動しなければならないというところと、兵器管理といえば、二重にかぎをかける、三重にかけるということになるわけですが、そこら管理体制の問題でもございますし、処罰をもっと明らかにするとか、武器管理責任は火気の取り締まり責任者というような責任ではないわけであります。昔は銃を捨てれば兵隊は銃殺になりましたからね。当時の本職の場合は絶対です。これは引用が悪いから委員長にお願いして削除にいたしますが、ほかの国などは武器の管理は非常に激しいわけです。ところが日本の戦後というものは、日が浅いということで御指摘を受けるような面が起こることはほんとうに遺憾です。これが、私は言いたくもないのですが、国民のほうに向かったらどうしますかということを暗にあなたは述べられておりますが、そんなことになったら、それは責めは免れるわけにはまいりません。こういうことを機会に武器の管理には徹底を期します。
  70. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四次防の策定に際して、政府は防衛力を整備するために長期計画が必要であると説明しておられましたけれども、昨今の国際情勢が平和へと大きく定着をしている現在、この問題には大きな指摘等があります。政府の立場においても、四次防を完成するとその後の増強を考える必要はほとんどないのではないかというふうに思われるわけであります。したがって、今後は長期計画による防衛力整備計画の方向を転換をすべきではないかというふうに私は思うのですが、その点についてはどうでしょう。
  71. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 防衛力というのは相手のある話でございますし、周辺の事情も十分考慮しなければなりません。また国際的な管理機構というものも必要でございます。アメリカと日米安全保障条約を締結しておるのでございますから、アメリカがどうするかということもあるわけです。アメリカがうんと力を持っておれば日本も弾力的にできるわけでありますから、そういういろいろな情勢を考えながら、しかしそのもとは、やはり自分の生命は自分たちが守らなければいかぬという気概だけは持っておらなければいかぬと思うのです一そういう気持ちを前提にしながら、国民に最も負担をかけないで合理的な防衛体制を整えなければならぬ、こういうことを基本にいたしております。  四次防が完成したら五次防は一体どうなるのか。いま、五次防とか六次防とかということ、もうそういうようなものをつくらないようにしようというような気持ちで勉強しているわけです。ですが、この四次防でもって一切やめるんだ、こういうことも申し上げられないわけです。これは最高のコントロール機関である国会の御意思も聞きながら、そうしてやつ。はりその時点において定まっていくということでありまして、いまの四次防でもって最善であり、これで終わりだ、今度は縮小傾向に向かうんだというほど国際情勢は安定しておらぬという考え方でございますので、四次防というものが整備されたその後というものは、これはもう国会の御意思や国民の意思も十分しんしゃくをしながら、政府が独走するようなことのないようにしなければならぬ。その意味でも防衛委員会はぜひ設置をしていただきたい、こういうことになるわけであります。
  72. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、今後の防衛政策というものは、少なくとも軍事面だけを強調するということでなくして、非軍事面であるところの外交、経済、それから内政、これはやはり重要視しなくてはならないだろうと思うのです。特に生活防衛が一番私は問題になっている、そのように思っております。田中内閣が発足されて六七%の支持率が、一躍、いま現在ある新聞によりますと一五%に落っこった。これも私はやっぱり、一つは生活防衛の中における物価高という問題が、これはもう非常に国民の中においては重圧的な気持ちを出しているのではないかと思うのです。そういうことで、前年度に比べまして約一一・何%上がっているという状態の中にあって、田中総理大臣はこの間、十一月ごろにはもう物価は安定するんだというような甘い見通しをされておったようでございますけれども、私は、いまの状態の諸施策によってはこの物価安定ということはとうていむずかしい問題であると思いますけれども、田中総理大臣は、その勇気と英断という考え方から、物価の問題についてはどのようなお考えを持っておられるか。どういう政策をとられるか。
  73. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは防衛というのは、ほんとうにいま御指摘のとおり、力だけを培養しても防衛の実はあげられないわけであります。これは、国際会議で発言をする、また国際機構を整備する、外交上の努力を続ける、国民の生活レベルを上げていく、国民の安定感、非常のときは国民が一丸となってこれに当たれるという体制をつくらなければ、真の防衛力が充実したことにならぬことは、これはもう論をまたないことでございます。そういう意味から、いま物価の問題、これは重要な問題でございます。物価抑制ということに対して全力を傾けておるわけでございます。  傾けておりますが、これはいろいろ物価の問題にも、しさいな観察と評価をしながら物価問題に対処していかないと、一律に物価を引き下げるという過酷な手段はとれない。これはもうとると逆な面が出てくるわけでございます。これは物価を押えるということになるとどうなるか。賃金を抑制しなさい、それから物価は凍結をしなさい、増税をしなさいというのは、これはもうオーソドックスな一ページであります。そういうのは野党からは一言も出てまいりません。自民党からも出てこないのであります。政府もまた、そのような手段はとりませんといっておるのでありますから、やっぱりそれには恒常的インフレにしてはならない。ならないけれども、いまやっておる政策を続ければ、少なくとも物価の安定に寄与することはできるという確信を持っておるわけです。それはここでもって私は申し上げれば、ソ連は約二倍半の人を持っておるわけですが、結局、一次、二次産業の国民総生産において百兆円であります。日本がこれに対して、三次産業部門をはずせば七十兆円であります。そうすれば、これだけの大きな中で、これだけの過密化した高度社会においてうなりがついたものが、二ヵ月や三ヵ月でこれをとめるような政策をとれば、必ず国民にマイナスが来ます。これはそうにきまっております。ですから、これは幾らか時間がかかるのですよ。  ですから、いま私は、土地の問題で国土総合開発法案の提案をしております。その提案をしておりますし、売り惜しみ買いだめの法案も御審議をいただいております。そして結論的には、財政の繰り延べとか、施行時期の繰り延べとか、窓口規制とか、公定歩合の引き上げとか、いろんなことをやっているわけでございまして、これでもまだ、アメリカの公定歩合六・五%というものに比べれば、五・五%、一%の違いだということを言っているのは、病人を大病にしてはいかぬけれども、急速に王手飛車というようなものが一体とれるのかとれないのかということをよく考えて、やっぱり理解していただきたいと思うのです。  私はそういう意味で、いま政府がとっておる物価政策というものに誤まりはないと思うのです。それは少なくともこういう人がありますよ。五兆一千億も出すところの夏期給与を国債で払ったらどうか、そういう具体的な案はあります。ありますけれども、私はやはり、そういう物価政策というものをいまとるよりも、国民的理解を得ながら一つずつ片づけていくという物価政策が正しい、こういう見方でいま物価政策を進めておるのでございまして、これは国会の理解も得られて政策が進めば、必ずや物価というものは押え得る、また押えなければならない、こう考えております。
  74. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま、恒常的なインフレーションにしてはいけないということでありますけれども、もうすでに恒常的なインフレーションの様相を呈してきているということを私は指摘しておきたいわけでありますけれども、最後に二点ばかりお聞きして質問を終わりたいと思います。  わが国は資源を海外に求めて平和と繁栄をはかっている。特にエネルギー資源の確保は、わが国の繁栄と成長にとって重要欠かすことのできない問題であります。今後におけるわが国のエネルギー資源等はどのように確保しょうとしているかという総理見解と、それからまた、石油緊急割り当て制が六月中旬パリで開いたOECDの中心議題となっていると伝えられておりますが、わが国はこれに対してどのように対処していかれるかという問題が一つ。  それからもう一つは、政府は新しい海洋国際法に対するわが国の態度についてすでに検討されているようでありますが、結論からいえば、十二海里説として、さらに十二海里以遠については沿岸国の漁業、鉱物資源に対する優先権を認めるという基本的な姿勢であるというふうに内容は伝えておりますけれども、水産あるいは国内産業、あるいは防衛等についてもたいへんに関連が大きいわけでありますが、その調整はどのようにされるのか。
  75. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 エネルギー問題に対しては、石油が一番大切、たいへんな状態でございます。石油に関しては、これはいままでのように、各国が別々で話をしておるというよりも、今度の米ソが話し合ったように、石油の大消費国というものはお互いに石油を使わないように協力をし合わなければならないということもございます。また産油国との間の調整も十分やっていかなければならぬ問題でございます。  日本の状態からいうと、昭和六十年には七億五千万キロリットルといっておったものが、このごろでは六億台に押えなければならない、五億五千万に押えなければならないという問題もいま真剣に検討されております。石油をただ使わないようにしようということをいってもどうにもなりませんから、それだけではなく、新エネルギーという問題も検討しておりますし、太陽熱、地熱、原子力発電というような問題もあわせて検討いたしております。そうなると、地域的な問題が起こってまいりまして、列島改造しないとだめだなという結論にもすぐつながっていくわけでございます。そういうような面から広範に検討を続けておるということでございます。そういうことが一つでございます。  それからもう一つの、公海三海里から十二海里という問題は、これは具体的な問題として国際的にそうきめれば、日本は反対することはない、これはそれに従えばいいと思います。混乱するような状態は私はないと思います。防衛上もそんな問題はないと思いますし、漁業権の問題その他に対しても、国際的に三海里が十二海里になる場合には、それ相応の基準というものもお互いが検討さるべき問題である。日本としてさして問題とするような状態にないという考えであります。
  76. 三原朝雄

    三原委員長 受田新吉君。
  77. 受田新吉

    ○受田委員 田中総理、あなたは終戦直後の混乱の中からおいでになられて、引き続き今日まで政治家として生き抜いてこられたお方です。私はまず基本的な問題として日本政治姿勢についてお尋ねを申し上げたい。  敗戦直後の祖国は、あの苦難の戦いのあと始末のために、すべての国民が非常なうつろな気持ちでありました。みなまる裸であった。引き揚げてこられた人も、国におった人も、戦いに疲れて帰った人もみんなまる裸であった。そのまる裸であった国民が、今日二十数年の政治の結論として、いまや富み栄えておる階級の方と、下町には四畳か五畳の小さな部屋で寝返りをして赤ちゃんが圧死するという悲惨な家庭も残っている。人間を大事にする政治の根本から見たならばほんとうに残念な現象が起こって、貧富の差は極度に広がっておるのです。いまあなたは総理として満一年を迎えようとされておる。庶民の中から出た総理であり、大衆に大きく期待されて、人気一〇〇%であったあなたに国民は何を求めたかといえば、この貧富の差の著しい人間無視の政治を是正してほしい、庶民政治家よ、田中さんがんばってほしいという気持ちがひそんでおったと思うのです。  しかし、この現実がますます強烈に進んでおるという、このことを思うときに、戦後一緒に国会へ出て、あなたは自民党の総理となり、私も野党の貧弱な政治家として、しかし大衆を愛し続けて今日を迎えてきた。ともに政治家として歩んだ道のりは同期間でありまして、心の中では、同期の田中総理よ、がんばれという気持ちを持って今日まで来たのでございますが、この庶民宰相の期待が裏切られたこの現実を直すためには、政治不信を改めるためには何をしたらいいかという基本問題があるわけです。それは政治家そのものが政治姿勢を正すことである、きれいな政治を行なうための金のかからぬ選挙をやることである。金をかき集めることに苦労し、当選を期するためにあらゆる苦労をするという曲がったあり方をもっては政治不信を解消できない。  そこで、まず基本的な質問をお尋ねするのでございまするが、政治資金規正法の思い切った改正、また金のかからぬ公営選挙をいかに行なうかということは、小選挙区制に狂奔する意味とは違った意味で、まず手をかけなければならない大事な問題だと思うのです。ことしの国会壁頭に私はこの問題をただしました。総理よ、国民政治不信を払拭し、すべての政治家が金集めと日常の選挙準備活動に明け暮れる、政治の本質を忘れた動きをすることをやめて、国民の代表者として真剣に政治と取っ組み、国民のしあわせのために命をかける政治家ばかりの集団が国会であるようにしようではないかと訴えたわけです。その意味で私は、この機会に選挙区制は定数是正というような問題を取り上げるべきであり、金のかからぬ公営選挙と政治資金規正法を正して、すべての政治家が、いま申し上げたような政治の本質を忘れて枝葉末節に走る現状を、本質に返すための勇敢なる措置を総理としておとりいただく、これが私、基本であると思うのです。御答弁を願いたい。
  78. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 あなたの御発言の趣旨は十分理解をいたしております。おりますが、政治資金規正法の改正も必要である。ただ政治資金規正法は、過去二十四年、あと一年で四半世紀の長きにわたって日本の頭脳を集めて検討を願い、しかも七次審までかかって検討を願ったものを国会審議にさえゆだねられないということは、はなはだ遺憾であります。結論の採否は別であります。別でありますが、好きな審議会の答申は直ちに出しなさい、きらいなものは出しちゃいかぬ、こんなことで政治の不信が取り除けるとは思いません。  私はそういう意味で、政治資金規正法というものを要請をされるならば、一括して国会の議題にのせて、その採否は国民の直接判断にたよってもいいと思うのです。私は、そのくらいな決意がなくして、小手先だけでもって政治不信が取り除けるとは思っておりません。そういうものは、私は、あのぐらい騒動があったのですから、あつものにこりてなますは吹いておりません。おりませんし、自分のなさなければならない責任は痛感しております。しかし、やはり国会がどのようなお感じであるのかというくらいなことを政治的に配慮しなければならぬ程度のことも、わきまえておるつもりでございますので、これはひとつ十分御意見を拝聴しながら考えてまいりたい。  もう一言申し上げますが、結局、政治というものは、お互いに出たころは、実際に食うに食なく一千万人の餓死者が出ようといったときでありましたが、それが今日の国民総生産と国民所得を築き上げ完全雇用をなし遂げたのでありますから、政策的には私は第一段階はりっぱに成功しておると思います。これは与野党の力でなくて、国民の力だと思っております。私はそう理解しておりますが、ただ御指摘になったように、この二、三年間ひとしからざるを憂えるという問題が非常に大きくなってきたわけです。これは、いろいろなものを持っている人と、働いている人がこれから一体どうすれば家ができるのかという問題。これは、百四十の国に比べれば日本が、アメリカを除けばほとんど最高のレベルにあることを知りながらも、どうもひとしからざるということは政治不信につながってまいる。私はそんな問題を解決できないような力ではないと思うのです。日本人がないものをつくってきたのですから、あるものを分けることができないはずはない。そういうことに対して政治の中心を置いてやってまいりたい、そういう問題に対しては野党の協力もぜひ得てまいりたい、こう考えます。
  79. 受田新吉

    ○受田委員 私は総理の発想の中でわが意を得たりというようなこともちょいちょいある。そういうことは、庶民を愛する意味の発想は、私は非常に共鳴する問題がある。いま政治資金規制も、私も選挙制度審議会の委員であったこともありまして、佐藤内閣のときに出されたあの答申に基づく案を忠実に実行していく、大骨小骨をだんだんと抜いて、骨抜きにされたというので問題になったわけで、そこにおいては、第三者の公平な判断をもとにしたものが採用されるようにされなければならない。こういうところをお互いの党利党略で考えないで、公正な判断でいけばいい答えが出ると思うのです。そういうところをひとつ……。  それから金のかからぬ公営選挙、これを実行しなければ、各地で行なわれる選挙のあの膨大な宣伝戦、あの膨大な資料戦、こういうようなことで、各家に配られた各党のあの宣伝の紙は、みんなうるさくて、いまごろはこれをかき集めてたき火にしておるというようなこの実情を見るとき、真剣にきれいな選挙からきれいな政治が生まれるという本旨に返るために、公営選挙というもののポイントをこの際ひとつお答え願いたい。党派を越えてやりたいものです。
  80. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 あなたは、党派を越えてそういうまじめな態度で二十四年間選挙制度に取り組んでこられておりますから、敬意を払っております。私もあなたが努力されたことを承知しております。しかし二十四年の過程において、表のきれいごとだけじゃだめなんだということも議論されたはずであります。これは、政治資金規制という問題と公営を広げることは、私は賛成ですよ。賛成ですが、あの政治資金規制というものは、ただ表面的に制限をする、その場合に、現に他の目的を掲げながら現実に政治活動をやっておって、大きな金を集めておる組合があるじゃありませんか。現実問題として、七十億、八十億の金を集めて、労働組合の名において政治活動をやっておる。これを全部整理しなければだめだということで二十四年間結論が出なかったわけでありますから、そういうふうに、自分の好きなことだけやって現実に合わないことをやるということが、私たちが容認できないことなんだ。  政治というものは、自由民主党が永久政権をとろうなんていうことは考えておりません。そんなことはいいことだと思いません。私はやはり、正しい相手ができて政権が交代さるべきものの中から、新しい民主政治がはぐくまれるものだと考えておるのです。私もあなたも新憲法第一回の当選者ですから、そんなことに対して人後に落ちるはずはない。にもかかわらず、自民党のパイプだけ締めればみんな喜ぶのだ、それでほかは野放しでございますというような、そういう案はもうちゃんとあなたの審議会や調査会に全部出されたのじゃありませんか。そのときには、教員の政治活動も禁止しよう、労働組合の政治活動も局限しようという議論が出ておるじゃありませんか。そういうものを全然横にして、そしてただいまの政治資金規正法だけを具体的に公開制にしろ、そういうものを多数の人たちが容認できるはずはない。  ですから、そういう問題みんな俎上にあげて、現実問題として国民の前にさらけ出そうじゃありませんか。そして税金でやれるものは幾らだということにならなければ、国民の税金だけですべてやることは官営選挙になってしまって、民主政治そのものとは逆行する。そういう意味で、そのバランスをどこでとるかということを与野党を問わず真剣に検討すべき時期に来ておると私は考えております。
  81. 受田新吉

    ○受田委員 私はこれから質問のポイントをひとつ外交、防衛に移していきますが、時間があと十分しかありませんので、質問も三十秒程度、答弁も三十秒程度で、一問について一分以内で質疑応答ができるように……。  まず、ニクソン・ブレジネフ会談による核不戦協定が共同声明で発表されたわけですが、そうした国際情勢、かつては東西冷戦の対象国であった二つが、そういう方向に行くという関係になっておる。そのニクソンが日本を訪問するという日程がいま俎上にのぼっているわけです。そのニクソン大統領の訪日については、先般も大平外務大臣の記者会見、それからインガソル在日米大使のワシントンでの発言で一応明確にされたのですが、総理はニクソン大統領をいつお迎えしょうという日程を考えておられるか、御答弁願いたい。
  82. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 ニクソン大統領は訪日の意向がございます。政府はこれを国民的な立場に立って心から歓迎をしたいということを考えております。この問題に対しては、私が訪米したときに、御都合のよろしいときにいつでも訪日を歓迎いたしますという趣旨の日本政府の意向は述べたい、こう考えております。これは前にアメリカ大統領の訪日ができなかったということもありますので、今度はやはり、いろいろなことにこだわらないで国民的な行事として迎えられるような体制を整えるとともに歓迎の意を表したい、こう考えております。
  83. 受田新吉

    ○受田委員 その日程についての見通しは立ちまませんか。
  84. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 まあ、ことしはできないようでございます。来年になるだろうということでございますが、先方の都合もございますので、歓迎の意を表し、選択はアメリカ側におまかせをするということになると思います。
  85. 受田新吉

    ○受田委員 そこで今度は、総理はアメリカを訪問、次いでソ連を訪問されるという。健脚にものをいわせて世界平和に大いに貢献しようとしておられるお気持ちは十分わかりますが、そこで問題は、ソ連を訪問される段階で、日ソの共同の問題として北方領土の問題がある。この北方領土について、私はついきのうの朝、朝日新聞を読んでみますと、坪川総務長官が北海道で新聞報道で語られたことは、「いま、チュメニ油田など日ソ経済協力が話題になっているが、これは北方領土の返還が前提でなければならぬ。経済交流も大事だが、領土を犠牲にはできない」と激しい口調で話をされたと書いてある。今日までの政府の見解は、領土問題の解決は見なくてもそういう経済協力は進めていくという方針であったようですが、坪川さんの発言は、従来の政府の方針を変えた発言になっておるのですけれども、従来の方針と変わってはいない、坪川発言は現地における住民に対する希望的観測として言われたと了解してよろしゅうございますか。
  86. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 北方領土四島の返還を求める国民の声、これは堅持してまいらなければならない。これはしんぼう強く日ソの間で交渉を続けてまいりたいと考えます。また、シベリアの開発問題等はもうすでに行なわれておるわけでございますし、提示をされておるプロジェクトも六つも七つもございます。しかもこれは、日ソ両国の利益の立場でお互いが合意を求めておるのでございますから、平和条約の問題や四島の領土問題というものと全く同一の問題であるというふうには考えておらないのです。私がいま申し上げておるように、シベリア開発は両国の利益が合致した点においてこれを実行してまいる、こういう考えでございます。
  87. 受田新吉

    ○受田委員 福田外務大臣も、北方領土については非武装化というような考えも政府は十分考えておらなければならない、日米安保条約の適用地域以外だということを考えてこの問題に取っ組みたい、こう言うておるのですが、この問題については、われわれも北方領土の返還を強く願っておるのですけれども、この領土はわれわれの当然の帰属であるとソ連もいっておる。両方の主張が違っておるのですね。それを総理が行かれるときに、この領土の従来ソ連が持っておる権利はそのままもちます、またここには軍事基地とかなんとかいう日米関係は全然ございません、非武装化地帯としてこれを守ります、こういうようなところで双方が話し合いの歩み寄りをする一つのポイントが要ると思うのですね。そういう配慮は、総理、十分心得ながら交渉に当たってもらいたい。
  88. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは外交でございまして、領土の問題でありますから、交渉やそういうものの内訳までここで言っておきまして、やれるものじゃありません。しかし領土は固有の領土であるから、返してもらわなければいかぬのだ。アメリカもちゃんと沖繩を返還してくれたじゃありませんか。日中の間でも、あれほどめんどうだと言っておったものが、私の北京訪問によって国交の正常化はできておるじゃありませんか。そして、日ソよりももっと激しい対立だと言われて、米ソもし戦わばというような本が出ておったにもかかわらず、両国首脳部はちゃんと核不戦協定を宣言しておるじゃありませんか。世の中変わっているのですよ。私は、日ソの間で領土問題が解決しないなんて思っていませんし、人類の平和のためにも、解決ができないなんて思っていません。だから、粘り強くしんぼう強くお互いが理解を求めて解決をする、こういうことであります。
  89. 受田新吉

    ○受田委員 総理気持ちはよくわかる。国民の声もひとつ十分そこに反映させてもらいたい。  総理は、御就任早々、中国との国交正常化におつとめになられたのですが、北朝鮮との国交回復については、これは韓国との北朝鮮の双方を国連に加盟せしめてこの問題の解決に当たるという立場、北朝鮮との文化交流だけではなく、やがては国交回復、北朝鮮の承認にまで進んでいくべき段階だと思うのですが、それについての御見解……。
  90. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 これは南北朝鮮において大統領が声明を出しております。この声明には食い違いがありますが、いずれにしても全く話し合いをしないという段階ではなく、相当前向きであるということは評価できると思います。日本政府としては、やはり閉ざされた社会というものはどうも望ましい姿ではない、そういう意味で開放的体制をとらなければならぬこと、また地球上の国国がお互いに交流を進めるという意味から、国連という場に、二つが同時にオブザーバーとして出るにしろ、加盟するにしろ、それは両方の話し合いできまるものでありますが、日本はじゃまをする意思なんか全くありません。日本は、これらの問題をしさいに見ながら情勢判断をして、他国の意向も聞きながら、大筋としては国際的場裏に乗ることが望ましい。そうすれば、境界を境にして話し合いをするよりも、もっとロビーで話をすることもできるじゃありませんか。そういう意味で私たちは、北朝鮮をすぐ認めるとかそういう考え方はいま持っておりませんし、これは慎重に対処しなければならぬことでございますが、国際場裏でお互いが席を持つということに対して反対ではありません。
  91. 受田新吉

    ○受田委員 私いまからまとめて質問して、限られた時間内に答弁をしてもらう、こういうことにさしてもらいたいのですが、直接防衛関係する問題です。  われわれは日米安保体制を再検討する時期が来ておる。日米安保条約は経済協力が主であって、安保条約のほうが二番目に書いてあるわけなんで、ニクソンの最近の外交教書にも、経済問題の解決なくしては日米安保体制をやめてもいいのだというふうな強烈な声明が出ている。それほどになっている段階でございますから、日米安保体制を廃棄と私は言うのじゃないのです、再検討するという段階で、日本におる在日米軍の国連的性格のものをやめていくという形の措置をとるべきではないか。つまり現に日本における国連軍の地位に関する協定がある。これはいま死文化しておるようであるが、しかしこれは事実、昭和二十九年の協定が生きておる。その協定をこの際どういう効果で処理したらいいかという問題。それから、朝鮮の南にある在韓米軍というものも国連軍の性格を持っている。その協定を廃棄することによって国連的性格がなくなる。いまや国連軍というのは世界でほとんどない。それをどう扱っていくか。これは外務当局答弁で処理してもらうことにします。そういうことで、南北朝鮮のそれぞれの立場が立っていく時期が来る。日本はそういう役割りを果たしていくべきではないか。  それから、もう一つ防衛についての基本的な問題として、第四次防衛力整備計画の中に、日米安保体制を基調とするということばがある。これは基調とするという時期ではない。こういう安保体制のほうを根元にして日本の自衛力を補完にするという時期ではない。この規定を変えるときではないか。  さらに、沖繩は長い間戦争の犠牲を受けて苦労をされておる。この間もあそこを訪問して、ほんとうに胸に迫る。防空壕の穴で死体の発掘もできないのがある。この奥には戦死をされた死体がありますよという、大田少将のなくなった壕がある。その発掘さえできておらぬ。そういう沖繩の御苦労に報いるためにも、沖繩自衛隊の配備は、沖繩の民生協力に重点を置かれて、施設隊などのようなものを派遣して、建築、家をつくってあげるとか、あるいは災害出動とかいうところに力点を置かれる、自衛隊をそこへ派遣される、そういうことであるならば自衛隊に対する理解もできる。またできれば、いつまでも沖繩は平和の島として、この国際情勢の転換の中で生きる島としてきっと私はしあわせにできると思うのです。平和の島沖繩を築くための自衛隊の配備計画には、そうした意味のものを持っていく。  最後にもう一つ、陸上十八万という部隊はもう古くさい。実際はそこまで来ぬ。自衛隊には不正事件がたくさん起こっておる。こういう時期に、せめて十三万か十四万かの少数精鋭主義に切りかえられて、定数をはみ出るほどたくさんの志願者が出て、その中から質のいい自衛隊員を選ぶようなかっこうにしないと、国民不信をますます拡大させると思うのです。国民から安心して国を守ってくれる人々であると喜んでいただけるような自衛隊にするためには、命をかける隊員だから、待遇をしっかりしてあげればいい。そのかわり、師団も九千師団、七千師団でなくして、五千師団、六千師団で少数精鋭へ切りかえていって、自衛隊に優秀な隊員が入ってくる、こういうかっこうをとるべきではないか。編成方針の転換をする時期ではないかということを考えております。  以上の諸問題を提起いたしまして、限られた時間内でそれぞれ御答弁を願う。
  92. 田中角榮

    田中内閣総理大臣 先ほどから申し上げておりますように、日米安全保障条約はこれを維持していくという考えでございまして、改正はいま考えておりません。  それから沖繩自衛隊ということに対しては、貴重な御意見として拝聴いたしておきます。  それから、防衛の基本として安全保障条約を基調にするということを、日本防衛力を基調にしていくという考えに転換をする意思は、いままだ持っておりません。それはやはり現状のとおりでございます。  陸上十八万を十三万にというお考えはわかりますが、これはもう十八万をふやさないということを考えておるのでございまして、十八万以下にするということになれば質の問題とも関連をするのでございまして、軽々には申し上げられない。ですから、十八万をこさないように努力をいたしますということで理解をしていただきたい。
  93. 高島益郎

    ○高島政府委員 国連軍地位協定でございますけれども、これは在韓国連軍の存在を前提といたしております。したがいまして、在韓国連軍が存在する限りは、一方的にこれを廃棄することはできませんが、在韓国連軍が撤退すれば、日本の国連軍も撤退し、同時に地位協定そのものは一応終了するというたてまえになっております。
  94. 三原朝雄

    三原委員長 この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後、委員会を再開いたします。     午後一時五分休憩      ————◇—————     午後四時一分開議
  95. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について発言を求められておりますので、順次これを許します。山崎始男君。
  96. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 二十二日の当委員会での質疑の打ち切り、もう申し上げるまでもありません。私は、二十二日の質問者が終わったら私の順番だといって、ある程度張り切っておったのであります。ところがきょうは、御承知のように、もう二十八日に本会議で上程されることが与野党ともきまっている。どういいますか、パンクした自動車に乗っているような感じがいたします。一ぺん葬式を出したあとで、きょうまた二へん目の葬式のやり直しをやっておるような感じで、あまり張り切った気持ち質問ができないのが非常に残念です。しかし、与えられまたした時間、まず防衛医科大学校の問題と、それから一般の防衛問題の、なるべく他の委員会と重ならないような点だけでもお尋ねしてみたいと思います。  まず最初に防衛医科大学校の問題ですが、防衛医科大学校というのは所沢市におつくりになるのですが、防衛医科大学校そのものの総金額は大体幾らでございましょうか
  97. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 前段の設置場所でございますが、現在所沢市を予定いたしております。  それから第二の問題につきましては、昨年の段階で五十一年度までに一応計画いたしておりますのが、医療器具その他、若干まだそれ以後に延びますが、総金額ざっと百六十二億ぐらいを予定いたしておりますが、いまの物価高でもうちょっと伸びるのじゃないかと思っております。
  98. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 この防衛医科大学校へは付属病院が当然建つ御計画ですが、ベッド数、それから看護婦の養成機関というものはどういうふうにお考えになっておられますか。
  99. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 第一点のベッド数につきましては、現在防衛庁といたしまして一千床を希望いたしておるわけでございます。  それから看護婦の養成問題につきましては、現在自衛隊中央病院で、三年間の養成期間でございますが一学年百五名の高等看護学院をやっておるほか、あと准看士の養成をやっておりますが、それだけではとうてい足りませんので、一学年百名の養成を並行してやっていこうという計画にいたしております。
  100. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そうすると、防衛医科大学校そのものの付属各種学校として看護婦の養成学校をおつくりになるということですね。そうしまして、一学年の定員が約八十名と聞いておるのでありますが、そうですが。
  101. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 そのとおりでございます。
  102. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 全寮制ということを聞いておりますが、そうですね。
  103. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 そのとおりでございます。
  104. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 これは入学のときは当然試験制度だと思うのでありますが、それもそのとおりですね。
  105. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 そのとおりでございます。
  106. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 それから、六カ年の間に学生一人当たりに対する国庫負担は、幾らぐらいになりますか。
  107. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 現在、全体の予算ワク等がきまっておりませんので、その額はきめかねますが、大体、経常経費といたしましては、自治医科大学校が返還金として経常経費的なものを考えております。これは入学金その他でございますが、それとちょっと比較になりませんが、返還金として一千七十六万ばかりきめておりますので、その線をあまり越えない程度というふうな考え方をいたしております。
  108. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 私が聞いておるのは、一年間の学生一人当たりに対する国庫負担額がどのぐらいになるかと聞いておるのです。
  109. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 約三、四百万という見当でございます。
  110. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 一年間の学生に対する負担額が三、四百万、そうおっしゃったのですね。そんなにかかりますか。おかしいですね。
  111. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 これは、償還金というふうな形でこれから総理府令できめていくというわけでございますが、その間の算定基礎といたしまして、まず教官その他の職員の人件費でございますとか、それから教官に伴います研究費だとか、その他医療器具器材、そういったいわゆる一人の学生を養成していく場合の経費をいろいろ算定いたしまして、それで将来一人大体幾らかかるだろうというふうな算定のもとに償還金というものを考えていかなくちゃならぬわけでございますが、そういった点から申しまして 大体いま申し上げたような見当の額が、将来総理府令できめる場合に考えられる数字じゃなかろうかというふうに考えております。
  112. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 いまから三年ほど前の国立大学の学生一人当たりの国庫負担額は、年間大体百万円前後を国が負担をしているというのが常識だったのですが、その後物価の値上がりがあったとはいうものの、三年間で三倍も四倍も上がっておるはずはないのですし、三、四百万円という御答弁はちょっと納得がいかないのですが、お間違いじゃないですか。
  113. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 直接経費といたしましては二百万ぐらいでございますが、建設費を含めますと大体三、四百万、こういう内容でございます。
  114. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 建設費までが含まれるのですか。建設費というものはある程度半永久的なものですよ。それは、初年度からこれができ上がったといたしまして、半永久的に続くのですが、それが一人の学生当たりに建設費までが含まれて勘定されたのでは、私は見当がつかないのです。
  115. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 私、先ほど三、四百万と申しましたのは建設費を含めておりまして、先生の御指摘の一人の養成費ということからいえば、やはり直接経費の二百万と言ったほうが正確だろうと思います。
  116. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 ざっと二百万ですね。  それから、全寮制と言われましたのですが、そうして試験制度。希望する学生の質といいますか、粒、実をいいますと、これを私は非常に心配をしているのです。端的に申し上げますと、実は私自身も、いまから四年ほど前に新設されました医科大学校の役員をやっておりまして、経営並びに募集、試験自体にも私は今日まで四年間関与してきている。そこも全寮制なんです。そういう立場から私お尋ねするのですがおそらく防衛医科大学校といいましたら、希望者というものは——なるほど私立の医科大学校は、御承知のようにかなりの協力金が要ります。これはもう文部省自体もある程度は認めている、金額の多寡は別にいたしまして。入学金も相当高い。防衛医科大学校の場合はもとよりそういうことはない。ありませんね。そういたしますると、お金がない父兄が、あるいは子弟が、他の官公立の医科大学を何べんも受けて、すべってすべって入れぬ者がまず来ると見なければならぬということが一点と、それから家庭的に、私立の医科大学校へ入りたくても金銭上の問題で入りにくいというフレッシュマンというようなものが、そしてしかも成績のいい者はおそらく、こんなことを言うたら失礼かもしれませんけれども、医科大学校へ、しかも防衛と名のつく医科大学校へ入ることは、実をいいますと、他の官公立の医科大学校へ入るよりは好まないと私は思うのです。そういう家庭事情や金銭事情を別にいたしますれば、気分的に。そうすると、粒のいい者はあまり志願をしないという想定がつくことと、それからもう一つお聞きしておきたいのは、各種学校でありますから、入学試験の年齢の制限はもとよりないのでしょう。そうじゃありませんか。
  117. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 先生各種学校とおっしゃいましたけれども、防衛医科大学校は、各種学校、いわゆる学校教育法に基づきます、八十三条に規定されております各種学校ではございません。これは、行政庁が行政上必要と認めましてつくる、いわゆる八十三条における特例措置でございます。いまのすでにできております防衛大学校もそれに当たるわけでございます。そういう意味で、各種学校ではございませんが、先生の御指摘の年齢制限は特に考えておりません。
  118. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 年齢制限がないといいますと、他の官公立を何べんも何べんも受けたが試験を通らなかった、といって私立へ行けば金銭的に不如意だ、こういう人が医学志願者の中には非常にたくさんいて、私らの経験でも、はなはだしいのは七浪、七年浪人しているのですというのがずいぶんおるんですが、おそらく防衛医科大学校を受験する人は、こういう連中がわっと来るようなことになるんじゃないか。そうして片一方は全寮制ということになりますと、こんなことを言いますと、私も与えられた時間あまりありませんので、こまかいことになり過ぎるかもしれませんが、寮生活の統制というものは、年の若いのと親子ぐらい違うのが入ってくるんです、これ。そういう面における管理、監督あるいは指導なんかで非常な苦心があるだろう。質問の形でなしに、時間がありませんから、私の一方的意見を吐きますが、そういう形を必ずとるだろうという想定がつくのであります。そういうことはお考えになったことはありますか。ありませんか。
  119. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 確かに先生の御指摘の点も、なきにしもあらずというふうな気もいたしますが、何しろ防衛医科大学校は、現在、私立大学の場合、御指摘のごとく多額の寄付金が課されるというふうな事実も承知いたしておりますので、そういう点から見まして、現在、防衛医科大学校では授業料は要らない、それから月々二万三千八百円の学生手当が出るというけっこうなことでございますので、相当な志願者が集まるだろう。先生の御指摘のような七浪をした人もあるいは集まるかもわかりませんが、非常にお金がなくて、医学部を希望するけれども行けないという埋もれた秀才の方々も一緒に受けるだろう、そういうふうなことで、相当の志願者が殺到するんじゃないか、そういうふうな気が私はするわけでございます。自治医科大学の場合でも、御案内のように、四十数倍というふうな受験率があったという過去の経験から徴しましても、その中から、やはり数の中でございますので、かなり優秀な学生が集まってくるのじゃなかろうかという、とらぬタヌキの皮算用でございますが、そういうふうな気がいたしておるわけでございます。
  120. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 それは、現在日本の国がお医者の絶対量が足らないということで、医科大学校の志願者は、いまあなたがおっしゃるように、非常に多いのであります。しかし、私が言っているのは、そういうふうなフレッシュマンの、頭がようてよくできる人はまず官公立の医科大学を受ける。落ちた連中で、フレッシュマンで希望してくる年の若い人もおるでしょうが、同時に非常に年の古い者が入ってくるという面、これを私はいま
  121. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 いま大臣がおっしゃったとおりで、できたら新入学生を募集する、しかもやめることも自由だといういわゆる原則がある。志願する人間は、一体返すときには将来どのくらい返さ申し上げたのでありますが、その論議は見解の相違になりますからやめておきますけれども。  そういたしますと、一点お聞きいたしたいことは、いま一人当たり年間二百万円ぐらいの養成費といいますか、それはこの法律を見ますると、六年間義務づけられて、卒業後国家試験をとったあと、九年間の義務的な面があるというふうに法文ではうたってある。そうすると、そのときに、もし途中でやめるといった場合——よろしいか。卒業はした、国家試験は通った、やめるというた場合は、償還金は一体どのくらい払うことになるのでありますか。一年なら一年たってやめるとか、二年なら二年たってやめるとかした場合に、償還金の金額をお示し願いたいのであります。
  122. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 償還金につきましては政令の問題でございますが、これは第一回の卒業生が出る時点できめないときめかねるということでございますので、現段階では、先生の御指摘の、卒業してから一年とか二年でどのぐらいになるかという点は、まだ出しておりません。
  123. 山中貞則

    山中国務大臣 これはちょっと私と局長と打ち合わせがまだできておりませんでしたが、私が責任者として答弁しておきます。  これは、入ってくる者に対して、自分たちが将来、これは義務束縛でないけれども束縛される期限、それを途中で自分自分の意思によって束縛をのがれることも自由ですから、その際にはただしどれぐらい返さなければならない、そういうことは入校の際の条件になりますので、したがって、ただいま局長が申しましたようなことではいけないので、開校いたしまするときには、その初めて入ってくる生徒たちがそれを覚悟して受験するということの準備は当然いたさなければなりません。そのためには、自治医大等の前例を当然参考にしてまいります。  なければならぬかということは、これは当然一つの条件なんであります。これは当然です。  そこで私は次に進みますが、私がこの防衛医科大学校で非常に心配することは二つあるのであります。  一点は、いまごろ皆さん御承知のように、卒業して大学へ一年か二年残った連中は、一カ月三十万円ないし四十万円でどこでも引っ張りだこなんです、これは実際言うたら。そういたしますると、大きな病院へ、実はいま防衛医科大学校を卒業して一年になる、二年になる、返還をする先金を貸してくれ、私はやめたいと言う。防衛という名前がついていると嫁さん、きらうのだ。これは冗談ですけれども、まあ国民の中にはそういう機運があるのですよ、実際言うたら。だから、あなた方は卒業して九年間おってもらいたいと言う。入った人間の自由がある。よそから引く手あまたですよ。大きな病院へ行って、返還金を貸してくれ、私はやめて出てくると言う。これを私は非常に心配するのであります。言いかえますと、卒業生の医官の歩どまりの問題を私は非常に心配するのであります。それがためにいまの返還金をお尋ねしたのであります。この問題は時間がありませんから、もうこのぐらいにいたしておきます。  もう一つ心配な点は、防衛医科大学校が、研究をされるといいますか、お医者を養成するための指導方針といいますか、何か一般の医科大学と違った特別な研究目的がおありになるかどうか、その点についてお尋ねしたいと思うのであります。
  124. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 防衛医科大学校は自衛隊の医官を養成するところでございまして、したがって、医学教育課程と、それから一般の医科大学でないところは、先回も御答弁申し上げましたいわゆる教育訓練課程でございます。この二つの課程がございまして、したがいまして、それに伴います研究と申しますのは、医学教育のためのいわゆる教育研究、あるいは診療にまつわります実際的な研究と申しますか、そういう研究が主体になる、こういうことでございます。
  125. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 私は、とにかく防衛医科大学校ならば、一般の官公立あるいは私立の医科大学以外に特別な特色といいますか、その研究内容において特色のあるものがあっていいと私は思っているのです。たとえて言えば、現在の日本全国の医科大学を見ましても、いわゆる臨床医学というものに比重が、どっちか言うと置かれ過ぎているのです。防衛医科大学校ならば衛生医学あるいは予防医学というようなものに重点を置くべきじゃないか、このようなふうに私は考えているのです。しかし、いまの御答弁聞きますと、あんまりそうたいした特徴はないらしい。  そこでお尋ねいたしまするが、実は一番国民の心配をしておりますことは、生化学兵器というものをひょいとしたらこの大学校でおやりになるんじゃないか。これはおそらく、国民が多かれ少なかれ、非常にこの生化学兵器に対する危惧の念を私は持っておるだろうと思う。なお、いままで同僚の二、三の人がこの問題で質問をしておるのを私も黙って聞いておりましたけれども、やはりそういう心配がある。これは国民の声を代表しておると私は見ているのですよ。そこで私は、これも時間がありませんから私のほうから申し上げますが、生化学兵器というものを研究されるのですかどうですか、端的にお答え願いたいのです。
  126. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 防衛医科大学校におきまして生物化学兵器を研究開発する意図は毛頭ございません。
  127. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 これは大切な点なんですから、私は重ねて大臣にお尋ねいたしますが、過日の委員会におきましても、かつて七三一部隊あたりの人体実験の問題というようなものも出てきたし、その他出てきたんでありますが、これはなるほど昔でも、旧軍医学校自体がやったというよりは、いわゆるシビリアンコントロールでありませんから、制服組の頭のかちかちの、古い頭の部隊が独自でやっているというふうに私は理解しておるのですよ。しかし国民はそうじゃないです。国民は、かりに制服組がやっても、今度の防衛医科大学校でおそらく生化学兵器をやるだろうという、おそらく十人が九人までその心配を持っているから、私は重ねてお尋ねするんであります。これは今度は大臣の責任ある答弁をひとつお願いいたしますが、いま局長は絶対にそういう研究はやらないんだと言われた。これはそのとおり受け取ってよろしいかどうか、大臣の責任ある答弁をお願いいたしたいのであります。
  128. 山中貞則

    山中国務大臣 先般も私はそのとおり答弁いたしましたし、局長答弁どおりでございますが、さらに、石井部隊等がなお衛生学校等の中に、あるいはまた、その外郭にそれぞれ生体実験等のようなものがときおりあったらしきことをしながら存在していた、この事実は、私もがく然とした事実でありますし、今度の防衛医科大学校がもし設置することが可能になりますならば、そのような残滓らしきものは一切ぬぐい去って、そして全く新しい、わが自衛隊の医官の充足のためにのみ必要な大学校にする。そして将来は、その研究成果をもって一般国民医療にも貢献できる、退役後の——退役と申すのは昔のことばですが、退官後のそういうことも将来は念頭に置いていいんじゃないか。そういうつもりでおりますから、そこの閉鎖された中で秘密の研究開発をやるというようなことは、大体認められないし、あり得ない、そういうふうにお考えいただいてけっこうであります。
  129. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 大臣の御答弁を聞きますと非常に安心できるのです。ところが大臣、私はあなたにあえて御注意申し上げるのです。ということは、数年前にわが党の岡田春夫議員が問題にいたしました御承知の有名なスリーアロー事件、三矢事件ですね。八十数人のグループでもってああいうことをやった。その中には文官はたった二人しかいなかった。あとは全部制服組。これを秘密裏にやっているというこの実態一つごらんになっても、いわゆるシビリアンコントロールという基本原則を大臣は貫かれるという立場から、いまのような御答弁になっている、憲法違反にならぬようにと。ところがまだまだ、長官、あなたの部下の二十四万の自衛隊員の中には、いわゆる昔の古い感覚の残滓がずいぶん残っているはずなんです。そこらがかってに単独で、大臣も知らぬうちにやらぬとは限らないのであります。  そこで、あなたも長う大臣をやっておられるわけじゃないと思うのでありますが、おそらく山中長官自身でも、防衛庁の内部の、そういう旧軍服組といわゆる新しい自衛隊精神、憲法に基づく新しい感覚の者との断層というものは、これは一朝一夕では払拭できないと私は見ております。したがって、あなたはよほど監督を厳重にされませんと、あなたの御答弁どおりにいくかいかないかは、まだまだその疑問は晴れません。私はそう思います。この点は要らぬ御注意かもしれませんが、私の感じ長官時代に申し上げておくわけです。おそらくあなたは相当苦労されますよ、その点においては。それを覚悟のほどでひとつやっていただきたい。  それから医科大学校の問題でもう一点聞いておきますが、所沢市は、初めは反対といったのがいまは賛成に変わったとか云々ということを聞くのですが、所沢市と、場所は埼玉県なんでありますが、埼玉県当局のこの防衛医科大学校に対する態度というものは、当然防衛庁のほうでは事前折衝をされておるはずなんでありますが、その過程において今日のような結論が出ている。時間がありませんので、要点だけで御答弁を簡単にひとつお願いいたします。
  130. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 簡単に申し上げます。  ちょうどわれわれが所沢の土地を折衝している途中におきまして、御案内のごとく知事の更迭がございまして、現在の畑知事が御就任なさったわけでございますが、畑知事はわれわれが折衝の段階で、地元の納得が一番大事だということでございまして、最終的には、御案内のごとく市議会の反対決議を撤回する決議がなされまして、署名運動も大体反対を上回る程度、四万三千ばかりとったわけでございますが、結局、最後の段階におきまして、われわれが大蔵関東財務局等の審議会において折衝する段階におきまして、畑知事は、どうせ誘致するならば一般の国立医科大学を誘致したい、こういうふうな態度を表明されたことは事実でございますが、しかしながら、地元の市長も反対から賛成のほうに回られて、しかも署名運動は、そういうふうに四万三千を上回るというふうなことになったんだからやむを得ない、こういうふうに承知いたしております。
  131. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 もう一点お尋ねいたしますが、一般の市民の患者も診療するんだということなんですが、自衛隊の医科大学校である以上、治療の主体は自衛隊であるべきものが、一般の市民を対象にしてよろしいというのは、反対をさせぬために、緩和をするために言われたんだろうと私は推定いたしますが、それはそれでいいとして、その治療たるや、一つの例をあげますが、東大の医学部では非常にお医者さんが困っておられる。なぜ困っているか。かぜをひいたのでも東大へ行け、東大へ行けということで門前市をなす、この傾向をとるのであります。したがって、あの付近へかりにも一千ベッドからの大病院ができますれば、防衛医科大学校へ行け行け、かぜをひいたのでも行こう、おそらくこういう傾向になるだろうと思うのであります。埼玉県というと日本全国で一番お医者さんの絶対量の少ないところだ。必ずそういう傾向をとる。そのときに、おたくのほうの差別待遇がありはしないかという懸念を市民が持っているのではないかと私は思うのでありますが、その点に対してはどういうふうなお考えでありますか。
  132. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 私どもの自衛隊員は、御案内のごとく三宿に陸上自衛隊の中央病院がございますし、その他各地に自衛隊の中央病院を含めまして十一、一千八百十床持っておりまして、これはみな職域病院でございまして、そのほうを利用するわけであります。防衛医科大学校というのは医師の養成機関でございますので、したがいまして、それに伴います付属病院というのは、その医者を養成するための臨床教育をやる場でございます。したがって、一般に開放するのは何ら一般医科大学と変わらない、したがって全然差別はない、こういう関係に相なろうかと思います。
  133. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そういたしますと、差別はないというふうに理解していいわけですね。  それでは、防衛医科大学校の問題はこのくらいにいたしまして、次に一般の防衛問題についてお聞きいたします。  陸上自衛隊の予備自衛官と海上自衛隊の予備自衛官は、今回の法律で三千三百人増員になるということなんでありますが、この予備自衛官というものと自衛隊そのものとは、どういう名前の変化があるのか、ちょっとお知らせ願いたいのであります。
  134. 久保卓也

    ○久保政府委員 名前の変化というのはちょっとわかりませんが、もともと自衛官としての権限のあるものが自衛官でありますが、有事の場合に自衛官の数の不足を補うもの、したがいまして、平時におきましては何らの権限を持っておりません。単に自衛隊で招集をして訓練するだけ。しかしながら、防衛出動を目前にしまして防衛招集をかけました場合に、自衛官と同じ身分を持つという制度でございます。
  135. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 確かな筋から聞くところによると、将来、予備自衛官は各都道府県へ配置するんだということを聞いておりますが、そういう計画がありますか。ありませんか。
  136. 久保卓也

    ○久保政府委員 陸上自衛隊は現在三万六千名の予備自衛官を持っておりますが、防衛二法が成立いたしますと三万九千、四次防の中では私どもの計画では四万五千名という計画を持っております。その中で、私どもが軽普通科連隊と称しまして約一千名ぐらいの部隊を二十一つくりたい。現在の三万六千名の場合には、この軽普通科連隊を十二個考えております。おおよその配置個所その他を検討しておりますけれども、ただ現在までは、単に訓練招集をしてそれぞれの職種に応じた訓練をやっておるということでありまして、いまだ軽普通科連隊を編成して、その上での訓練というのはやっておりません。したがいまして計画上だけのものでございます。
  137. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 各都道府県への配分はお考えになっておるのじゃないのですか。
  138. 久保卓也

    ○久保政府委員 したがいまして、十二個の場合には十二県でありまするし、二十一になれば二十一都道府県ということになります。
  139. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 それはどこどこの県かわかりませんか。
  140. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在考えておりますところは十二個でありますが、九州で国分、都城、四国で善通寺、中国で海田市、中部で金沢、野山、それから関東で松本、相馬原、新発田、東北で神町、多賀城、それから北海道で東千歳。それに、先ほど二十一と申しましたが、今後ふえるところを申し上げますと——これはあくまでも計画であります。幕僚研究といいますか、幕僚の作業段階でありまして、防衛庁としてきまったわけではございませんが、そういう意味でお聞き取りいただきますと、北熊本、福岡、山口、米子、伊丹、久居、高田、練馬、岩手というところであります。
  141. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 いまおっしゃったのは、四次防が通過をしたということが前提での配置計画ですね。そう解釈していいのですか。三次防じゃないでしょう。
  142. 久保卓也

    ○久保政府委員 二法案の中で三万九千名の予備自衛官がありますが、四次防で防衛庁の事務当局では四万五千名にふやしたい。その場合にこの普通科連隊が二十一カ所できる。しかしこの四万五千名というのは、実は大蔵省と話が詰まっておるわけではございませんので、今後、毎年度大蔵省と協議をし予算に計上するということで、四次防内の事務当局の計画であるということであります。
  143. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 いまおっしゃったのは、四次防の通過後におけるいまの防衛庁内部での計画である、こう解釈していいわけですね。そうなりますね。
  144. 久保卓也

    ○久保政府委員 四次防そのもので国防会議あるいは閣議で決定しました場合には、この予備自衛官の数字は出ておりません。したがいまして、国防会議あるいは閣議レベルの四次防というものは確立されておるわけでありますけれども、その細部にわたっては、これは防衛庁内のいわば作業計画でしかない。したがって、四次防が通過ということばは、この際ちょっと適当ではないのではないかと思います。
  145. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 わかりました。  それから、これは大臣にお聞きするのですが、時間の関係で、大まかなことだけ聞きますが、第四次防で総金額がざっと四兆六千三百億と記憶いたしております。この問題自体にも、私は時間があればもっと突っ込んでお聞きしたいのでありますが、二次防から三次防、四次防に至って一応表面は四兆六千三百億でありますが、金額は国庫債務負担行為その他の措置でもって先食いをしておるという、この問題に私は触れませんけれども、大まかに質問いたしますが、四次防は四兆六千三百億という金額よりふえるだろうというふうに私は見ておるのでありますが、どのくらいふえる見通しでしょうか。どうでしょうか。
  146. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 御指摘のとおり、四次防の経費見積もりをいたしました四兆六千三百億円には、人件費の上昇、つまりベースアップ、あるいは物価の上昇に基づきます物件費の上昇、これは含まれておりません。したがって、実際に予算化されます段階におきましては、当然この金額を上回ることになると思います。どの程度上回るかということにつきましては、今後の経済見通しあるいは経済情勢等に基づいて積算してまいりますので、はっきりした計算はいたしておりません。しかし上回ることは間違いないわけであります。
  147. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 その上回る概算は、いまのところではおわかりにならぬというのですが、私は大体それはわかったっていいのじゃないかと思うのです。なぜ私がこういう質問をするかというと、かりに四兆六千三百億という数字だけを見ましても、卑近な例ですが、国民赤ん坊一人に至るまで五カ年間に四万六千円負担をするということになるのですから、そういう立場から言うて、そういう金額は、皆さん方もそういつもりで、国民血税なんだから、おそらくベースアップの金額その他の人件費、諸掛かりというものは、それは先食いをして、国庫債務負担行為であるとかなんとかいうようなものでおやりになる習慣かもしれませんけれども、概算の総金額ぐらいはおわかりになってしかるべきだと思うのでありますが、いまの御答弁でははっきりしないという解釈をしていいのですか。おおよそこのくらいだと思うというぐらいの答弁はできないのでしょうか。
  148. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 たとえば経済社会基本計画、ことしの初めに政府で作成されました経済長期計画でございますけれども、この計画によりますと、一人当たり雇用者所得の年間上昇率が一二・三%という見込みになっております。そこで、これを単純に四十七年度から五十一年度までその率でベースアップが行なわれるということになりますと、約五千億円程度増加するであろうという見通しでございます。しかし、実際の経済情勢は必ずしも計画どおりにまいりませんので、これはやはり毎年の予算において積算してまいらなければ最終的な数字はわからない、こういうことでございます。
  149. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 けっこうです。私が聞いているのは、おおよそ大体でいいのですから。そうすると、大体五千億ぐらい上回ると理解していいということになるわけでございますから、それはそれでけっこうです。わかりました。  それから、現在第四次防の金額の中でアメリカへ発注をした装備関係ですね。飛行機とかその他の兵器関係といいますか、装備関係全体のアメリカあてに発注した金額と日本へ発注した金額との、これも大まかでけっこうですが、二色に分けてお知らせ願いたい。
  150. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 四次防の全体は、まだこれからあと数年ございますので、見込みになりますが、先生のいまのお尋ねを実際に国内の企業に支払う比率という見方で見ますと、かなり高い比率になってまいります。九割近くなります。ただ、国内の企業もやはり外国から部品等を買い込んでおりまして、企業が自分でそれを払いまして、こちらが買うときは日本の企業から完成品で受け取る、円で払うという形になりますし、いわゆる実際の外貨払いがどのぐらいになるだろうかという観点から見ますと、大ざっぱに見まして約二割程度が外貨で払われるのではないかという感じが現在しております。ただ、これは先生御承知のとおり、為替は変動相場制でございますので、実際にどの程度今後動くのか、その辺の積算はきわめてむずかしい段階でございますが、現状で見通せば大体そのぐらいの数字ではないかというふうに考えております。
  151. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そうすると、いまの概算でいきますと、日本の国内の企業に払う金が八に対して外国へ払う金が二というふうに理解していいということですね。そうでしょう。
  152. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 はい。
  153. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 実は、私はこういう体験を持っておるのです。昭和二十九年でしたか、三十年でしたか、たしかそのぐらいです。私の実に親しい自民党の——名前は言いません。もういま死んで、おりませんし、名前を言うのは控えますが、これは特別な関係がありまして、きょうだいみたいにしておった仲です。その人から私は、山崎君、実はいま自民党の内部では軍需産業をやる法案を秘密裏に計画しているんだ、そのときに社会党はそれに対してどういうふうに思うか、もとより反対だろうが、君、その火消しの役をやってもらえぬじゃろうかというような、まあきょうだいのような間柄ですから、打ち明け話を聞いたことがあるのであります。それはもとより日の目を見るはずがありません。そういたしましたら、いまから四年ほど前、三年ほど前でありましたか、たしか経団連の会長が公開の席でもって憲法改正論をぶったのであります。当時、新聞は大きく取り上げておりました。経団連の会長、大企業の団体の会長が公開の席で憲法改正を唱えたのはそれが初めてだ、こういうことなんであります。これは私の勘ぐりかもしれませんが、昭和二十九年前後にそういう事態が一つあった。  それからまた、昭和二十九年から三十年にかけては、これは私は時間があれば大臣にお尋ねしたいのでありますが、言えるか言えぬかわかりませんが、私が一方的に言いますけれども、現在の憲法九条というものは、これをつくるときには、自衛のためにも一切の軍備、武力というものは放棄するというのが、当時、憲法の大精神であったのであります。それが昭和二十九年から三十年、ちょうど三木武吉さんが自民党の総務会長時分でありましたか、吉田内閣のときに予算委員会で、自衛のためならば最小限度の軍備を持ってもいいんだという。これは予算委員会でもずいぶん論議されたものです。初めは憲法をつくるときには、自衛であろうと何であろうと持っちゃならぬのだ。現に憲法九条の条文の中に、「日本國民は、正義と秩序を基調とする國際平和を誠實に希求し、國權の震動たる戰争と、武力による威嚇又は武力の行使は、國際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」。これをすなおに読んでみた場合に、自衛のためならよいということばは、実際いいますと、ここから先も書いてない。どこにもないのです。そして「國権の發動たる戦争」ですから、おそらくこれは宣戦布告のことを言うんじゃろうと思うのであります。そして「武力による威嚇又は武力の行使は」ということで、憲法九条はAとBと分かれている。そうすると、国際紛争というものと局地戦争ということを私は言うておるんだと思うのでありますが、国権の発動と同時に国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄するという、ここらのニュアンスを見ましても、いまの自衛隊というものは、われわれの党の立場といたしまして、もうこれができたしょっぱなから違憲立法だという立場を今日までとり続けてきている。  御承知のように初めは警察予備隊。その当時われわれは、これはしまいには軍隊になるんじゃ、カエルのオタマジャクシじゃ、いまになるぞと言うておったら、今度は保安隊に変わったですか。その次に自衛隊に変わった。二十九年から三十年前後には、自衛のためには持てるんだというふうな憲法解釈にぐっと変化してきたのであります。そして今日に及んでいるのです。でありますから、私がいま言うちょうどその時分に、そういう論争があるさなかに、いわゆる軍需産業を起こすんだ、その法案を内々準備しおるんだと言うたことばが、三、四年前に、たしか経団連の会長じゃったと思いますが、憲法改正を堂々とやるべきだと言った。公開の席です。これはいわゆる現在の大資本、大企業が、いまの飛行機や弱電機や製鉄ぐらいじゃ満足できない。とどのつまりは軍需産業を大っぴらに法案化して、これを国民に遠慮なくやりたい。憲法がある以上それができない。できないから憲法改正をやるべきだということばになってきている。この裏には、憲法改正をやって軍需産業を興そうという大資本の野望が私は隠されておると思うのであります。  多少話が横に入りましたが、私は大臣にお聞きしたいのでありますが、その前に一点、国際法上の領海の問題でありますが、これがいまの三海里が十二海里に云々、それで来月、国連におけるこの会議の準備会がある。それに対して日本政府も云々ということを聞いております。そこで、いままでの三海里を十二海里にし、ここで私がお尋ねしたい要点があるのはいわゆる海底における資源。日本のような海洋国ですから権益がたくさんあります。いわゆる漁場である。そのときに領海を三海里を十二海里に広げる。その上へ持ってきて、領海でなくとも既得権益として、二百海里までの沖合いならば認められるんだとかいうふうな話があるのでありますが、これは防衛問題に非常に関係がありますので、その間の経過をちょっと外務省のほうからお知らせ願いたいと思うのであります。
  154. 高島益郎

    ○高島政府委員 来年の四月から五月にかけまして、チリのサンチャゴというところで国連の主催します海洋法会議が開かれます。これの準備といたしまして、過去二年ほどいろいろな国連の委員会で準備をいたしてまいりました。領海問題はその一環でございますけれども、いま先生の御指摘の問題は、領海の先の水域をどういうふうに扱うかという問題がこの準備段階で非常に大きい問題になっております。特に、いまいわゆる開発途上国が主張しておりますのは、先生の御指摘のとおり、二百海里に及ぶ水域につきまして、漁業資源それから海底の鉱物資源、これにつきましては沿岸国が主権を完全に行使をする、こういう主張をいたしております。これですと、世界の公海の約三分の一程度が全部どこかの沿岸国に主権が属してしまうというふうなことでございますので、わがほうといたしましては、沿岸国の主張はある程度認めるにいたしましても、完全な管轄権でなくて、何らかの優先権を認める必要があろうかという立場から、こういう開発途上国の要望に対しまして、先進国としての立場からいろいろ調整の努力をいたしております。もとより、現在の段階におきまして、来年の海洋法会議における見通しを述べ得る段階ではございませんけれども、領海は十二海里で大体まとまりそうであるけれども、その条件といたしまして、領海の先の水域についての沿岸国の相当強い主張をある程度認めなければおさまらないというのが現状でございます。
  155. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そこで大臣にお尋ねするのですが、いままでの三海里が十二海里に今度はきまるらしい。そればかりでない、私がお尋ねしたいのは、十二海里以遠における管轄権というものが、これはまあ国連でもし来年きまった場合に、それもいまのところは二百海里とかなんとかいっているのですが、一体防衛長官として、自衛の範囲というものは、その二百海里の先まで入るのですか、入らないのですか。
  156. 山中貞則

    山中国務大臣 まず、自衛の範囲は領海、領空、領土ということがもう原則でありますから、したがって、領海が三海里から十二海里になったら、それは当然領海の範囲の拡大として十二海里は入ると思います。どうも今度の国際会議の開かれる場所は、チリといいます南米諸国の中の一国で、あそこら二百海里を強硬に主張しているところですから、その周辺二百海里の主として漁業専管水域の話をしているようでありますけれども、当然これには地下資源の問題も入ってくるでしょうし、大陸だな論争にも及ぶでしょう。そういうようなこともありますが、しかし、日本の唱える三海里というものは少数国におちいりつつあるということも事実であります。かといって、二百海里が多数を占めつつあるということはまた事実でない。要するに、ほぼ十二海里ぐらいのところで落ちつくのではなかろうかという見通しは持っておりますが、それは当然において、十二海里になった場合において、領海が十二海里になったというのでありますから、領海内の日本の専守防衛の範囲というのは三海里から十二海里に広がる。かといって、それに伴って特別に艦艇なり航空機なりを別途必要とするということは、いまのところ考えておりません。
  157. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そうすると、十二海里に広がれば、それは従来の三海里から広がったのだから、そこは防衛の範囲内に領海として入ってくるということはわかります。わかりますが、それが従来とは変わって管轄権という一つの権利というものが与えられるのだということになった場合に、一体入るのか入らぬのか、私もちょっと非常な疑問があるのでお尋ねするのですが、それはさまっても管轄権は入らぬといういまの大臣の御答弁から解釈すれば、そういうふうに理解していいわけですね。
  158. 山中貞則

    山中国務大臣 私は、自衛はまず領空、領海、領土と申したわけですから、その意味においては、三海里が十二海里になれば自動的にそうなる。しかし自衛の範囲ということになれば、これはまあ空もそうですけれども、海においても、いろいろと御議論がありますように、各国においてもそのところは明確ではありませんし、日本の場合にはことに、専守防衛と通俗いっております憲法の許容する範囲内の守備範囲ということでありますから、決して相手方に脅威を与えるような距離ということは想定してはならないということで、先般も、たとえそれが航路帯であっても一千マイルということであって、数百マイルないし一千マイルという表現はおかしいということで、ここで訂正もアメリカ側に申し入れて了解をとったということまでやったぐらいでありますから、その点はきわめて慎重にやっております。したがってわれわれとしては、領海の外の漁業専管水域と申しますか、そういうものが二百海里に延びたところで、それは直ちに自衛の範囲であるとかいうような境界線とは関係のないものだというふうに考えておいたほうがいいんではないかと思います。
  159. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 それではまた別の方面からもう一、二点お尋ねいたしますが、いわゆる憲法に基づいてあくまで自衛のために日本は武力行使するのだということなんでありますが、大臣は、将来かりに局地戦争というものが、これはきょうの田中総理答弁を聞いておっても、ないとは限らぬということなんでありますが、その場合に、それはあるとすれば、当然海外派兵をしないのだという大前提がある以上、日本の内地というふうに解釈しなければいけないのでありますが、その点は、大臣は私と同じように、もし将来局地紛争というものがある場合には、日本の国内に限定されるというお考えに間違いないでしょうね。
  160. 山中貞則

    山中国務大臣 それは、日本のいわゆる独立、主権というものに対して、それを急迫不正の手段によって侵害しようとするという行為でありますから、内地という表現は、いま日本は外地を持っておりませんから、したがってまあ通俗的にいう本土という意味でもありますまいから、要するに日本の国土というものの中に上陸なり、あるいは降下なり、あるいは火砲が撃ち込まれたりという状態でなければ、それはいわゆる局地紛争とはいわないのだというふうに限定するのは少し狭過ぎるのではないかと思うのです。そういう完全に予測される状態が日本の周辺において日本に対して向けられている、しかもそれが攻撃の開始があったというときに初めて自衛権というものが認められる、脅威のみに対して対処することは許されないということだろうと思うのです。
  161. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そうすると、日本の国内だけとは限らないということもあり得るということですね。
  162. 山中貞則

    山中国務大臣 そうとられると、今度は国外ということが一方に出てきますので、そうじゃなくて、日本の領土というものが急迫不正の手段によって侵害されようとするという状態のときには、あながち日本の領土といういわゆる領海なり土地なり、土の上ですね、そういうものに戦闘行為が発生するときでなければならぬということはきわめてむずかしいので、こちらから戦端を開くことは、たとえ日本のためであってもそれはやらないということになっておりますから、自衛権の行使は相手方が明確に日本の主権を脅かすための攻撃を開始したとき以降でありますから、したがって、そこらの点が限界であって、日本の国土というものの中でなければ自衛権の発動はないということにはならぬと思うのです。
  163. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そうすると、海外派兵もあり得ることですか。
  164. 山中貞則

    山中国務大臣 その国土以外というのは、相手の国土というものはもちろん含まないわけですから、したがって相手の領海、領空、領土に対しての攻撃というものは日本は持たないわけです。かりにそういうことをしなければ日本はつぶれちゃうという場合には、これは予想しちゃいけないことですが、安保条約を、私たちはアメリカの力というものを念頭に置いているわけでして、そこはわれわれの守備範囲をはるかに離れているということでありますから、海外派兵などということはもちろん考えておりませんし、相手国の領土はおろか、領海、領空というものに対しても、日本側が攻撃あるいはその他の戦闘行為というものを持つことはあり得ないのだということははっきりしております。
  165. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 第四次防衛計画がかりに昭和五十一年に完成いたしますると、これは核兵器の持つ、持たぬの関連がございますが、日本は非核三原則でそういうことはあり得ない。そこで私がお尋ねいたしたいのは、核兵器を持っておる国と持たぬ国と世界各国にたくさんございまするが、四次防完成後は、日本の自衛力といいますか、簡単に軍備力ということばでわかりやすく言いますが、世界第何番目ぐらいになる見通しですか。
  166. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは、外国の軍事力と日本防衛力を比較するのは非常にむずかしいのでありまして、ただ、かりの比較といたしまして、人数、トン数、機数ということで比較いたしますると、いま手元に数字がありませんので、あとで訂正をするかもわかりませんが、陸上自衛隊の十八万というのは、十七、八位、二十位以内の程度。それから航空自衛隊の、現在は九百機足らずでありますが、四次防完成時でありますと約八百機になりますが、これでたしか十二、三位ぐらいであったと思います。海上自衛隊が、四次防が完成いたしますると二十一万四千トンになりますが、これでたしか七位か八位か、そんな程度だと思います。
  167. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 もう時間がありませんから先を急ぎますけれども、いまの憲法下において、海陸空の自衛隊がかりに武力紛争に介入するという事態は、いま日本の国内ということばを私は使いましたけれども、多少の語弊があるようでございますが、いずれにしましても、日本の領空、領海、まあ総括して日本の国内ということばで言うても間違いじゃないんじゃないか。海外派兵やらないんですから。と思うのでありますが、そのときに局地戦争、局地紛争というものはないとは限らない。そのときに日本が、キリスト教精神でもって、右のほおを張るんなら左のほおを出すということはせぬのだ、自衛のためにはやはり手段を講ずるんだということなんでありますが、いまの、第四次防完成後においては世界第何位というお話を聞きますと、私が、自衛隊を発動する、比較的あり得るかもしれないというものは、そういう局地的な諸外国からの攻撃というよりはむしろ治安維持ということのほうがあり得るウエートが大きいんじゃないかというふうな気がするのです。  私は、もしそうであると仮定いたしますると、膨大な軍備費を使ってこれより以上拡大をするということには非常に疑問を持つものであります。これは憲法論は別でございますよ。実際論として非常に疑問を持つものであります。したがって私は、一朝事があったときには——これは局地紛争であろうと何であろうとですよ。先日も、山中大臣御答弁のように、かりに石油資源一つでも、ソ連がスイッチを持っているんだから、とめたらどうするか、守れぬじゃないかという御答弁だった。私も同感。かりに一朝事があったら、私は、日本の国のいわゆる過去の、昭和二十年までの世界大戦を体験をした者の立場から言うたら、いまの自衛隊がおったところで、それはアメリカの核のかさに保護されておるんだからそれは安心なんだ、物資の面もその他の面も安心なんだという安心感を持っておられたら、私は大違いだと思うのであります。  そういう前提で私はお尋ねするのでありますが、私は、ほんとうの防衛というものは、ただ自衛隊だとか何だとかいう、そのことだけでなくて、いわゆる近代戦争というものは非常に幅の広いものなんだ。端的に言いましたら、食糧であるとか熱資源はもとより、その他の一切の物資の関係、これに対して、防衛計画の中に非常の場合のそういう物資に対する御計画があるかどうか、私はその点を一言お尋ねしたいのであります。
  168. 山中貞則

    山中国務大臣 これはまさに、現在の世界はむしろ距離ではなくて時間であるという時代になりますと、そういう問題は、一国のみでもって、自分たちの必要とするエネルギー資源をはじめとする生活必需物資、食糧まで含めたそういう確保というのはきわめて困難であることは、アメリカ自身ですらマラッカ海峡を守れないといっているのです。一方において、日本はソ連から、チュメニ油田の話がまとまれば年間二千万キロリットルぐらいの油ももらえることになりそうでありますし、あるいはまたサハリンの天然ガス、こういうエネルギー源をソ連に仰ぐ。そうすると、ソ連はもちろん仮想敵国でもなければ何でもありませんが、そういうふうに多方面から国民の生活のための必要な物資というものを仰ぐようになってまいりますと、もうバルブを締めるだけでのどを締め上げられるわけですから、したがってもう結論的に言うと、一国のみでもって——特別な広大な条件を持っているような、広大な底辺を持っているような生産能力のある国は別としても、いまアメリカが日本に対して、打って変わって農産物の輸出を規制しようとしたり、あるいはまた中華人民共和国やソ連も、自由主義諸国から穀物を買ったり、そういうふうにかつての冷戦、東西対立抗争というものとは違った交流が食物についても行なわれております。ですから、生存のための条件はまず生きることじゃないか、それならばそのための必要な物資をどう確保できるのだということになりますと、これはもう一国のみではちょっと不可能であるし、そういう意味の、われわれは日本だけが諸外国から締め上げられるというような意味の局地紛争に対処する能力はないのじゃないか、そういう気がいたします。
  169. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 極端な表現をいたしますが、ソ連は御承知のように非常な軍事大国です。それですらソ連をとっちめるのは小麦の輸入の道を断ったら一ぺんにまいってしまう。これは軍事評論家が言うております。これは極端な表現でしょうけれども。毎年毎年不作が続く。要するに食糧ですね、小麦、これの輸入というものを断ったら困るのだといわれております。それから第一次世界大戦、第二次世界大戦を経験したイギリスのごときは常に、万一のことがあったときにはこの物資はイギリス国内で生産できる、これはどうしても生産できないというものを区別して、そうして生産できるものはある程度は計画的な備蓄をしてとっておく、そうして生産できないものは何々国から輸入をする、こういう必要生活物資というものの区分をやっておるというふうなことを聞いておるのであります。  私は、日本防衛庁自体、そこまで防衛ということに重点を置かれるのならば、いざ飛行機じゃ、戦車じゃ、兵器だというようなものだけに頭をとられてばく大な金を投じるということ以外に、そういうふうなもう少し高度なといいますか、範囲の広いといいますか、大きい次元からの計画があってしかるべきだろう。なるほどアメリカの核のかさについておれば、万一のときには食糧は入れてくれるだろう、ガソリンも送ってくれるだろう、だから自衛隊の増強だけやっておったらいいのだというような感覚があり過ぎるような気がしてならぬのであります。まあそれはあまり話が大きな話になりますから、私、打ち切ります。  いずれにいたしましても、自衛隊そのものの使われるお金というものは、極力最小限度にとどめてちょうだいしたいのであります。これが国民感情であります。かりにファントム一機あれば、小学校、中学校、五百人くらいの定員の学校が、土地は別といたしまして、建築費だけでおそらく三十くらい建ちます。たしかおたくの初代環境庁長官が、予算折衝のときに環境庁関係をはねられて、ファントム一機あったらなあと言って嘆かれた。これも大きく新聞に出ました。覚えていらっしゃるだろうと思うのであります。それが素朴な国民感情。同じ大臣で、席を列しておる環境庁長官自体がファントム一機あったらなあと言ったこのことばは、これは国民の素朴な声だと思っていいと私は思うのであります。  そういう立場から私は申し上げたのでありますが、どうぞ山中長官御在任中、ぜひそういう方向をとってもらいたい。要望いたしておきます。いまの防衛庁内には、背広の下によろいを着ておる連中がまだだいぶおるはずでありますから、あなたもおそらくやりにくいだろうと思いますけれども、あなたのさきの答弁に間違いのないように、十分管理、監督、指導をやっていただきたいのであります、これでちょうど時間となりましたというか、時間が来ましたので……。
  170. 久保卓也

    ○久保政府委員 ちょっと数字を訂正いたします。  先ほど記憶で申し上げて不正確でありましたが、御説明申し上げますと、これは四次防が完成しましたときと、それから七二ないし七三会計年度、つまり七三会計年度ということでありますが、それの数字で申し上げますと、陸上部隊は日本は二十三位になります。それから海上自衛隊は七位になります。航空自衛隊は十六位になります。  以上です。
  171. 山中貞則

    山中国務大臣 前置きを落としましたので、日本の場合のそういう艦艇、飛行機数、公員、そういうものだけで比較をしたらということでありますので、軍隊としての性能が、日本自衛隊は根本的に他国と違って、欠けておる点を伴っておるわけでありますから、これは単純なる計数上の比較であるということでお受け取りいただきたい。念のために申し上げます。
  172. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 ちょっとお断わりいたしますが、入学に年齢の制限なし、いまの時点でそう考えておりますが、今後募集の段階で、法案がもし通過いたしますならば、その点きめなければならぬわけでございますので、長官とも御相談申し上げまして、防大は現在十八歳から二十一歳ということに相なっておりますが、防大と医科大学とはちょっと性格が違いますので、その点、いまの段階では年齢制限はかけないつもりでございますが、なお、長官と御相談申し上げましてきめてまいりたいと考えております。
  173. 三原朝雄

    三原委員長 木原実君。
  174. 木原実

    ○木原委員 長官に、防衛政策上の認識について、初めに一つ二つお伺いをしておきたいと思います。  午前中に総理が、中国の核は脅威ではない、こういうふうに受けとめているのだという発言がございました。しかも周総理の、中国の核は第一弾は絶対にやらないのだ、こういう話まで引用されてのはっきりした言明であったわけなのです。これは私は、たいへん大きな御発言だったといまでも考えているわけなのです。従来防衛庁は、少なくとも表現のニュアンスは違いますけれども、中国に核が存在をするということは、防衛上に大きなウェートを占めた、念頭にあった、その上で政策を展開してきた、こういうふうに認識をしていると思うわけなんですが、その辺はいかがですか。従来防衛庁としては、中国の核についてどのような認識を持っていたか。
  175. 久保卓也

    ○久保政府委員 中国の核について脅威を感ずるかどうかという御質問けさありまして、いまそれに関連した御質問でありますが、正直申し上げまして、中国の核の脅威について、防衛庁内では必ずしも統一した見解があるわけではございません。しかしながら、私ども計画立案者、防衛局長といたしましては、たまたま総理お答えになったのですけれども、中国の核を格別脅威というものと考えておるわけではない。したがって、それを念頭に置いて防衛力整備計画を考えるとか、あるいは防衛計画を立案するとかいうことにはなっておりません。
  176. 木原実

    ○木原委員 それはおかしいですね。おととし佐藤総理は、あなたたちの当時の最高責任者は、中国の核は脅威であるとここで言ったわけです。それを防衛庁は必ずしもそういう認識でなかったというのはおかしいじゃないですか。
  177. 山中貞則

    山中国務大臣 これはちょっと言い方の問題もあると思いますが、日本の現在の国の安全を守り独立を守るための脅威でない核としては、安全保障条約締結相手国としてのアメリカの核は、まさか日本に対する脅威とは受け取れないわけですし、われわれ国会決議まで踏まえた国の最高の政策としての、持たず、つくらず、持ち込ませずということからいえば、アメリカの核兵器といえども、日本の国内においては、日本国民の日常生活なり、あるいはあることによる外敵の脅威というもの等が考えられるので、日本には置いてもらいたくないし、持ち込ませないし、つくらないのだという政策がありますから、その意味において、日本の置かれている原則は、脅威でない核兵器というものがあるならば、それはアメリカの兵器日本に対しては脅威は与えないという前提において安保条約というものを私どもの立場では結んでおる、これが基礎だと思うのです。しかし午前中の総理の御発言は、一国の責任者として外国に行かれて最高の責任者と会われて、そして中国の保有する核というものが日本に対して脅威を与えるものでないということを確信して帰ってこられたということでありますから、これは私はやはり、最高の総理御自身の判断というものは私たちはすなおに受けて、それに対して、日本というものは中国から核の脅威を受けることはないんだという前提の考え方に今後立っていかなければならないのだなということを、そばにおって考えました。
  178. 木原実

    ○木原委員 おそらく総理の発言の中には、日中の国交が回復をした外交上の成果についてのある意味での自信というようなものが、あるいはおありではなかったか。私も時間がなかったものですから、深追いをしなかったわけですけれども。しかし、それにいたしましても、きょう総理出席をなさったのも、四次防作成過程で佐藤総理がここに御出席なさったのも、いずれも防衛政策上の最高の責任者として出席願っているわけですから、その責任者からそういう認識についての御発言があった。そうしますと、私は防衛政策について、理念の問題としても、認識の問題としても、やはり一定の変化があってしかるべきだ、こういうふうに考えているわけです。中曽根長官は別のところで、中国に核が存在をすることを念頭に置いて四次防の原案云々、こういう御発言もなさっておるわけなんです。ですから私どもは、当時、四次防の作成過程の中でも、中国に現実に存在をし、しかも開発をされておる中国の核について、日本の政府はこれを一定の脅威として受けとめながら防衛政策をやっているんだ、あるいはまた、日米安保体制というものを基調に置いて対処するのはそのためだろう、こういうふうにわれわれは考えていたわけなんです。したがいまして、その辺の認識が少なくともこの二年間の間にかなり大きな変化が来たということになれば、当然防衛政策上もしくは四次防の遂行過程の中で変化があってしかるべきだ、こういうふうに受けとめたわけなんですが、いかがですか。
  179. 山中貞則

    山中国務大臣 きょうの田中総理の発言は、相当な時間いろいろ言われましたけれども、一番大きな問題はそれだったのじゃないかと思って私は聞いておりました。かといって、私たちはもちろん、仮想敵国を持たない、こう言っておるわけでありますから、中国の核というものに対して言及した中曽根構想というのは、いわゆる四次防原案とあなたもおっしゃっているんですから、消えてなくなった構想、すなわち前期、後期十カ年というものを踏まえたいろいろの議論をしたときの話でありますから、そのときのことはもう消えていると私は思うんです。  しかし、自衛隊の最高の指揮監督者は総理であります。その総理が、自分政治責任者として、一国の生命、財産を極端にいうと預かっている立場にもあるわけですから、その方が確信を持って、中国の核は脅威でない、自分が実感を持った、確信したと言われるのでありますから、自衛隊として、わが防衛庁として、最高の指揮監督者のそのような公式の場における御発言でありますので、当然そのようなことを前提にして今後私たちも考え方というものを展開していかなければならぬ、さように思います。
  180. 木原実

    ○木原委員 しかもきょうの総理の発言は、あたかも米ソの核不戦宣言などが協定をされたというたいへんホットな動きを背景にした、そういうことを考えますと、総理もそのことについては、動きは存じなかったわけじゃない。外交上の問題としましてもあるわけですが、しかし核抑止ということは、いずれにしましてもわが国の防衛政策上のある意味では一番高いレベルの問題だと思います。そのことについて新しい発言があった。  そうなりますと、外交政策上の問題もさることながら、やはり防衛政策上の問題としても、受けとめ方や認識や、あるいはまた四次防の中で、核抑止に機能をするという想定、もしくは安保の関係を補完をしていくような部分について何らかの検討に入る必要があるのではないのか、こんなふうにも考えるわけですが、いかがでしょうか。
  181. 山中貞則

    山中国務大臣 これはちょっとまた次元が違うのじゃないでしょうか。核抑止力というものは、これは日本は持てないものをアメリカが持っておることによってバランスが保たれておる。したがってそのことは、本日の総理の発言があったからといって、わが国がアメリカの核抑止力というものにもう依存しなくてもいいということにはならない。このことは、総理もたしか、飛び出すというような表現なんか使われたようでありますけれども、やはり同じようなことを言っておられましたから、私はそのことは正しいと思いますし、その総理の指揮監督に従っていきたいと思います。
  182. 木原実

    ○木原委員 これは局長に伺いたいのですが、中国に存在をしておる核、あるいはまたは開発が進んでいるとわれわれは聞いておるわけですけれども、中国にある核の状態について何か知識をお持ちですか。
  183. 久保卓也

    ○久保政府委員 中国の核能力、核戦力というものについては、必ずしも証明されたものがあるわけではございません。いろいろな数字がございます。したがいまして、その中で比較的穏当なという感じのもので申し上げますると、現在時点で中国がIRBM、MRBMの段階で約五十くらい。それから核爆弾を搭載し得るバッジャー、TU16が百数十機でありましたか、その程度というものを持っているであろう、そしてICBMがいわゆる運用可能になるというのは七〇年代の末期であろう、ここ二、三年のうちにはそれは困難であろうという見方を伝えられております。大体おおよそはそんな方向ではなかろうかという感じを持っております。
  184. 木原実

    ○木原委員 運搬手段の面からいきますと、かなりまだ限定をされ、そういう意味では、たとえば米ソの核の能力に比べて、いわゆる軍事的脅威というものについてはランクが下がる状態にあると思います。しかしかりに、地理的にわが国が存在をしておる、そういう関係から見れば、中国の持っておる核の影響下に、やはりある意味ではわれわれは必然的に置かれているという姿は現状でもありますね。どうでしょうか。
  185. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは米国の首脳部の議会証言にも出ておりまするけれども、アジアの諸国の大半は、キロ数をちょっと忘れましたが、数千キロのIRBMの範囲内に入っている。二、三千キロであったかと思いますが、その範囲内にあるということを申しております。
  186. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、わが国がアメリカの核抑止力に依存をしておるという関係は、少なくともわれわれの近隣諸国で核を持っているのは中国とソビエトとアメリカということになるわけでありますから、そうしますと、アメリカの核抑止力に依存しておるというのは、少なくとも一つは中国であり一つはソビエトである。これは子供でもわかることなんです。したがって、わが国の核抑止力という場合には、当然やはり中国の核を念頭に置いて抑止力に依存をしておる、理論的にこうなりますよね。従来はそうだったんでしょう。
  187. 山中貞則

    山中国務大臣 それは、たとえば今度は逆に、ニクソン・ブレジネフ会談というもので核戦争防止協定というものが取りきめができていますね。そうすると、お互い同士が使わないのだから、今度はアメリカもソ連も核を持たないでいいかというと、実はそうじゃないようでして、やはり、ヨーロッパに展開したNATO軍の核、あるいはまた別にワルシャワ条約軍の核、あるいは潜水艦のポラリスその他ポセイドン、そういうものに対する話というのは、具体的なところまではまだなかなか詰まっていないような気がします。しかし、お互いが核を持って戦争をすることはもうやめようじゃないかという合意、そしてその合意は、お互いが取り結んでいる二国間あるいは地域間協定というものについても、お互いがそれを相互に守っていけるようにしようじゃないか、あるいは場合によっては、一般戦争にまでそういうことが及んでいって平和の方向に行けるようにしようと、こう言っておるわけですから、そうすると今度は、ソ連のほうもアメリカ自体が脅威じゃないのだ。日本のほうは、いま中華人民共和国のことは午前中総理が言われた。ソ連のほうは、肝心のうしろのほうの、われわれがたよっていると言っているアメリカが、にこにこ笑ってもうやらないということをきめたんだから、そうすると、われわれも完全に要らないということになるかというと、実は米ソ両首脳の話し合いの中でも、それぞれの結んでいる地域あるいは二国間というものはやはり念頭に置いてものを言っているように、私としては読んで一応受け取っております。  したがって、核抑止力というものは、私たちはこれを現実に発動されることによって自分たちが安全を願いたいというものであってはならないと思うのです。そういうことが背景にあることによって抑止力の発動というものが現実になされない状態、バランスのとれた状態の中に置かれることがすなわち抑止力の真のねらいである。それが安保条約であって、軽々しく発動されることを期待するようなものであるならばこれは危険である、私たちはそう観念せざるを得ないと思いますので、その意味では、総理の御答弁のように、やはり総理のお考えが、中国の保有する核は日本に対して脅威ではないと自分は信じた、そうおっしゃるのでありますから、そういうことを私たちも信じなければいけませんし、総理が最高の指揮監督者でありますから、その御意見に従ってわれわれも進んでいかなければなりませんから。かといって、イコールそれは同時に、安保条約そのものである核抑止力というものをやめたらいいというところまでは、総理がやはり論理の飛躍とおっしゃっていたようなことを、私も同じように考えます。
  188. 木原実

    ○木原委員 私も、あなた方にいますぐやめたらというふうには申し上げるあれはありません。ただ、もっと具体的に申しまして、沖繩にかつてメースBというのがございました。これは明らかに中国本土に対して照準を定めた一つの抑止力でございましたね。核に対する核の抑止力と私どもは受け取ったわけなんです。メースBは撤去をされました。しかし、じゃ嘉手納に存在をしておる、活動をしておるB52ならB52、その他のある種の偵察機その他、いずれも中国の核をある意味では念頭に置いた活動をやっておるのではないかともわれわれは推定をしておるわけなんです。とれから沖繩の基地の撤去を政府は求めていく。嘉手納がいつ返ってくるかということについては、これはなかなかあなたのほうでも問題があるかと思いますが、しかしわれわれは、撤去をしてもらいたいという要求を持っているわけですね。  そのようなことを考えますと、総理けさのような御発言をなさった、そういうことになりますと、私たちは、アメリカが日本の国内に展開をさせておるある種の抑止能力、機能というものについても、そういう立場から今度は撤去なり縮小なりを求めていく根拠ができたんではないのかな、こういうふうに考えたのですが、どうですか。
  189. 山中貞則

    山中国務大臣 沖繩のメースBはやはり古くなりまして、確かにあれは、中国の開発というもので、とてもああいうしろものを置いてみたところでしょうがないということで、メースBについては、そういう意味で下がったんだろうと私は思います。しかし、後背地のテニアンあたりに展開される基地は、はたしてメースBの撤去とどういう関係になるのか。これらは、世界戦略、極東戦略でアメリカのふところ深く入ってみなければわからない観測でありまして、これはよくわかりません。わかりませんが、しかし日本の将来の希望を、私たちがいつも安保条約でもそれを前提にしておりますように、国連というものが、世界の国々が、そういう紛争や、あるいはまた武力による威嚇等によって生存権が脅かされるような状態でない状態をつくることを目的として、そういうことが可能になった場合において、私たちはもうこういうものは要らなくなるのだろうということを言っておりますように、われわれの希求し望むところは、それは私たちも、核のかさも要らない、あるいはまたどこかのところが攻めてきた場合にはという想定もする必要のない、全地球人的な状態というものが、少なくともこの力の社会において、宗教、文化は別でありましょうが、つくり上げられる日の早いことを念願する、このことは私たちはもう共通の意識だろうと考えます。
  190. 木原実

    ○木原委員 いずれにいたしましても、中国の核が脅威でないということは、ある意味では、外交政策の前進をした成果の一つだろうと私は思います。そうであってほしいわけです。核が現実に隣の国に存在をしていても、それが脅威と感じないような関係を持つということが、何よりも最大の防衛政策だと思うのです。そういう意味で私は総理の発言を歓迎をしたいと思うのです。  しかし、それならば、それについての防衛政策上の変化というものが裏づけとして伴っていかなければならないのじゃないのか、こういう次の課題を考えているわけなんです。しかし問題は、たいへん大きな問題ですし、私どもも、総理の認識を前提にして、これから少し考えて、別の機会にこれはまた少しやってみたいと思います。私どもとしては、けさ総理のこの時期における御発言というものを大事に受けとめて、これからの防衛政策について考えていきたい、こんなふうに考えておるということを申し添えておきたいと思います。  それからいま一つ、やはり脅威という問題なんです。これは長官、新任早々なんですが、国民のきわめて素朴な考え方として、平和になっていくムードが強い中で、どうして自衛隊だけがどんどん大きくなっていくコースを歩いているんだ、こういう批判があるのは御存じのとおりだと思うのですね。それに対して防衛庁の答え、政府側の答えというのは、いや大勢からいけば、もう直接侵略が起こるというようなそういうものはないけれども、しかしそれは定着したわけではない、ましてや局地的な紛争、万一の場合の問題というものがないという保障は一つもない、それだから四次防も必要なんだ、こういう説明が繰り返されてきたわけです。しかしそれは、どう考えましても自衛力の増強が必要だという前提に立った上でのものの言い方であって、ある意味では何も言ってないにひとしいような感じがするわけなんです。本来、武力であるとか抑止力であるとか軍事力であるとかというようなものは、動いている政治の中で、あるいは情勢の中で、必要ならば大きくもなり小さくもなるという幅があっていいわけです。しかし、われわれの場合は、これはもうこの十数年来直進的に高度成長を続けてきている姿がある。そこにわれわれの不安もあるし、国民の不安もあるわけですね。  そうなりますと、伺っておきたいのですけれども、一体、安定した緊張緩和といいますか、そういう状態というのは、つまり相対的に武力を避けていってもいいと考えられるような状態というのはどういう状態なのか、これは素朴な質問ですけれども、長官のお考え方をひとつ聞かしてください。
  191. 山中貞則

    山中国務大臣 アメリカは確かに、ベトナム戦を何とかかんとか切り抜けたといいますか、どろ沼から足を引き抜くことができて、したがって、徴兵制も志願兵制度にしようというような議論が起こっておるようです。そういうことでアメリカとしては、実質上そういう地上軍的なもの等を中心にした変化もあらわれると思いますが、日本の場合において、いままで繰り返し述べてきたことが、私たちとしてはやはり緊張緩和が定着する方向、すなわち、南北朝鮮も完全に半島の韓民族として統一が達成され、あるいはまた台湾海峡も平和裏にあるべき姿におさまり、そして中ソの間も平和、安穏に昔の一枚岩といわれたような仲と申しますか、要するに冷戦構造の仲でない新しい友好国としてのそういうものが定着をしていく、そしてアメリカがソ連、中国を含めて、いまの核戦争もやらない、あるいは戦争もわれわれは絶対にやらないし、周囲の国にもやらせないというような状態等、これをやっていけば、たとえばソ連がかつて提唱を一ぺんだけしまして、あとわかりませんが、アジアにおける集団安全保障と申しますか、中立地帯構想、こういうものも、じゃ中華人民共和国はそのソ連の構想に入るのかということになると、そこに現実にはきわめてむずかしいと思われる問題があるように、やはり定着というのには、日本を取り巻く国々が大体全部安心だという状態になってくれたときに、日本はきわめて喜ばしい、緊張の状態がもうなくなった、定着をしたといえるときになるのではないでしょうか。これは人によって非常にいろいろとその段階差があると思いますけれども、究極的には国連の平和維持機能が完全に機能するときということでいわざるを得ないと思います。
  192. 木原実

    ○木原委員 これはもう議論はこの辺でやめますけれども、先般来、同僚議員が質問した中にも、たとえばリチャードソンの報告を読んでみますと、アメリカの国防白書は毎年新しいことばや標語を出すのですが、それにいたしましても、アメリカ側の認識というのは、ベトナム後のいまの時点の中でも、総合戦力構想というようなものを出し、あるいは縦並びの二頭立ての馬車で行くんだというようなことを言い、そういう観点から、日本の自衛力、防衛力というものについての、ある意味では期待と要求を持っていることがはっきりしているわけですね。ですから、そういう構想の中に客観的には組み込まれているのではないのかという質問が先般ございました。  しかし、そのようなことを考えますと、やはり情勢を見ておりますと、主観的な考え方はともかくとして、かなり日本防衛政策は一つの転機に来ているのではないのか。関係の深いアメリカとの関係を見ましても、あるいはけさのような総理の発言をたまたま聞いてみましても、何かここに防衛政策上の一つの転機が訪れてきているのではないのか。この情勢の認識にもし誤りがあると、何か棒のように日本の自衛力はただ躍進、躍進で大きくなっていく。それが一体何をもたらすのかということについて、私どもはまた不安を覚えたわけなんです。ですから私は、そのような観点で、少なくとも日本防衛政策が、情勢から見ると確かに一つの転機に来ているんだという認識を持つわけなんです。  また、そういう情勢に応じての認識がなければ、防衛政策なんというものは生きたものになりませんね。情勢がどうあろうと、きめたものはやるんだ——それはあなた、軍事力なんというものはより強くより速いようなものがほしいのはあたりまえなんです。ですから四次防にしましても、ありていにいえば、実際に制服なら制服の人たちがこういうものがほしい、そういう何かいわば現場からの要求が土台になって、それが戦略見積もりになったりいろいろな計画になったり、そういうものを積み上げてやってきているわけですね。ですから国会でわれわれがいままで、私ども長いことこの防衛審議に参加をしてまいりましたけれども、何か一番かなめのところが出ないわけですね。四次防がなぜ必要だということについては、政治的な見解やいろいろな見解は政府側からあるわけなんですが、実際にそれじゃファントムはなぜ百五十機でなければならないのか。百機でどうだ、その根拠は必ずしも明らかでない。けさほど総理からも、防衛委員会をつくってどうだという詰がありました。防衛委員会でもつくったら、それでは戦略見積もりのようなものまで出して、どうだといってわれわれに相談をくれるのかといったら、そうじゃない。装備なら装備についても一番肝心なところが隠されたまま、その結果についてこれだけのものが要るんだから予算を何とかしろと、これだけのことで審議をやっているわけですね。ですから、こちらも何言ってるんだという形で、何か見つけ出してきて、どうですかと、こういう議論になるわけなんです。  だから、わが国は軍事力はないんだ、軍隊ではないのだというならば、話は少しそれますけれども、あまり秘密があっても困るのですね。これはコミュケーションにならないわけです。ところが従来は御案内のとおり、長期の見積もり、戦略見積もりから始まりまして、多くのものが少なくともわれわれの前にも隠されていて、そしてこの出てきた結果だけについてどうだと、こう出されているわけなんです。これでは防衛力のあり方について審議をするのには非常に資料不足だ、こう考えるわけですね。ひいては自衛隊国民の中で孤立をしていって、必要か必要でないかといった次元の議論が延々として続く、こういうことになっているわけなんです。したがって私どもとしては、少なくとも見たところ、この防衛政策のあり方についてわれわれとしてたいへん考えなければならない時期に来ていると、こういう認識があるわけですから、それならばそれに対応して、少なくともこれからの防衛政策の展開にあたっては、もう少し国会の側にも協力を求める意味でやはりざっくばらんな問題を出してもらう。あるいはまた制服の指向するところについても、これは皆さん方がチェックをする立場にあるわけですけれども、同時に制服の権限と、やるべきことと、判断をしてはいけない部分と、いろいろはっきりしている面もあると思うのです。きちんと押えて防衛問題を俎上にのぼして、大事な時期に来ていると思うだけに、この論議のあり方についてもぜひ政府側でも考えていただきたい。こういうことを実は今度の防衛審議を通じましても痛感をいたしたのですが、その辺の感じはいかがでしょう。
  193. 山中貞則

    山中国務大臣 党は違っても、木原さんのいまの基本的な考え方というものは私も同感であります。まだ私が就任して日も浅うございますが、私の姿勢というものも少しはわかってもらえるようになってきたと思うのですが、私は自衛隊というものを閉鎖集団に追い込んではならないと思っているのです。やはり厳然としていま議論はあっても存在しておる。しかも自衛集団ということを総理が言われましたけれども、やはり武器を手にし得るまとまった唯一の集団ということになりますと、それを自閉集団として追い込んでいくことはいけない。だからやはり、存在する以上はそれを国民の前になるべくオープンにして、開かれた集団であるようにしなければいかぬ。それがまた国民の信頼と理解をかちうる第一歩だと私は思うのです。信じております。  したがって、先ほども山崎先生が、山中君、君はいまから苦労するぞとおっしゃったのですが、私はそう苦労しないで、制服の中に私も入って会議もいろいろと持ったりしながら、そしてやはり、開かれた集団として国民の前で、明るい、みんなが自分たちの、ちょうど駐在所のおまわりさんに道を聞くような、身近な、ほんとうの法を自分たちの生活から守ってくれる人はおまわりさんというような感じはほぼ定着しておると思うのですが、そういうふうに自衛隊というものを見てもらう日を、なるべく早くっくり上げたいというのが念願でありますので、外交上とかいろいろの特別な問題があり得ることは私もわかっておりますが、なるべくオープンにして、国会審議というものも、お互いの党は違いますけれども、国民のためにどうあったほうがいいのかという議論は、ぜひ私もそうしたいし、自衛隊を率いる者としてそういう姿勢を貫いていきたいと思います。
  194. 木原実

    ○木原委員 もう時間の節約上議論は少しやめまして、具体的なことを二つ、三つお伺いをして終わりたいと思いますけれども、実はきょうは空の関係を二つ三つ伺いたいのです。  一つは、けさほどもちょっと問題がございました、ファントムの爆発事故がございましたが、この前後にP2Vの遭難といいますか、事故がございましたですね。資料を少しいただいておるわけなんですが、あの対潜哨戒機ですね、おととしもございましたし、この二年ほどの間に三件ばかり事故を起こしております。この事故を、資料をいただいたので御説明は要らないと思うのですが、下総のP2V、この事故の原因というか、この概況についてかいつまんでひとつ報告してくれませんか。
  195. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 一昨年下総の第四航空群のP2Vが、着陸の直前に立ち木にぶつかりまして、右翼端のタンクを滑走路上に落としました。そのあとバランスをとるために、左翼端のタンクを海上に投棄するために海上に出ましたが、約三十分後事情不明の原因で海没をしたというのが事故の概況でございます。  推定の原因といたしましては、滑走路の北端の四、五百メートルのところに街路灯がございまして、その街路灯を滑走路灯と見間違えたという推定が一番公算が多いというふうに考えられます。二次的には、その立ち木に衝突をして機体に一部損傷を負ったまま洋上に出て、その間さらにそのきずが大きくなったか、あるいは非常に不安定になって、操作を誤って海没したというふうに考えております。
  196. 木原実

    ○木原委員 事故のケースは違うわけですけれども、四十六年七月のP2V、それからこの間硫黄島の近辺で海に突っ込んだ。ケースは違うわけなんですが、これは御説明もあったのですが、そしてまた資料もいただいているのですが、それ以上の原因追跡はやっておりませんね。
  197. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 ただいまの硫黄島の件でございましょうか。
  198. 木原実

    ○木原委員 いや、両方とも、私どもいただいた資料、御説明いただいた以上の……。
  199. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 御説明を申し上げた……。
  200. 木原実

    ○木原委員 いや、これはいいです。私は、本来ならばもっと詳細な事故調査報告をいただきたいという気持ちを持っているわけです。  しかし、これはきょうの問題にはしません。ただ、たとえば四十六年七月の事故例の場合、まさにおりようとしていて立ち木にひっかかった、そのときにタンクが落ちたというんですね。これは燃料のほとんどなかったからのタンクだと思うのです。ですから、あのときになぜ滑走路へおりなかったのかと、こういう疑問があるわけなんです。バランスを保持するために海上に出たというのですが、両方ともそれはからだったと思うんですね。だからおりればおりられた。少なくとも現場の人たちもそう言っていた。特別な指示を出してわざわざ海まで飛ばしたのじゃないのか、こういう感じもするわけなんです。だから、ここでは操縦ミスみたいなかっこうになっているのですけれども、しかし、管制上のミスがあったのではないかという疑問も持つわけなんですが、その辺はどうなんですか。
  201. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 当時、燃料タンクには非常に燃料が少なかったということは事実でございます。しかしながら、おそらく。パイロットはそのときに、着陸復行ずるという方法をとるか、あるいは海上へ出てタンクを捨てて、そうして立て直して着陸をするか、あるいは他の飛行場に行くということを考えておったと思いますが、いずれにいたしましてもこのときに、われわれの反省事項としては三十分間あったわけです。その間に飛行機から何ら地上に通信がなかった、また地上からは飛行機を支援する指図をしなかったという点は、非常に問題があるというふうに考えております。その点につきまして、事故対策としては、緊急の場合の措置ということについてもう一度反省をし、措置を徹底するという対策を講じております。
  202. 木原実

    ○木原委員 このときはパトロールを兼ねていたのですか、訓練というんですけれども。
  203. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 このときの訓練は、夜間洋上航法訓練でございまして、約七、八時間飛行いたしまして、夜中の三時ごろ帰ってきたわけです。
  204. 木原実

    ○木原委員 パトロールを兼ねていたのですか、それは。
  205. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 パトロールというのは対艦哨戒訓練というふうに理解いたしますが、パトロールを兼ねておったと思います。
  206. 木原実

    ○木原委員 そういう場合は、こういう飛行機にはどんなものを積んでいるのです。
  207. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 P2Vは対艦哨戒用の器材といたしましては、レーダーが一番大きな器材でございます。そのほかロケットというようなものも積んでおります。
  208. 木原実

    ○木原委員 地上に落ちた場合に大きな爆発を起こすようなもの、爆雷のようなものは積んでいるのですか。
  209. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 爆雷は積んでおりません。
  210. 木原実

    ○木原委員 じゃ、普通のロケットだと思うのですがね。ただ、それにいたしましても、たとえば四十六年七月のことを一例にあげているわけですけれども、どうもはなはだ不可解な要素が多いわけなんです。しかしわれわれはそれを追及する材料がない。現場で話を聞いてみると非常に不可解。しかもその後の報告というものも、そう言ってはあれですけれども、推定による原因だとか何だとかというものしか出てこないわけなんですね。  そうなりますと、長官自衛隊の中の飛行機の事故、これは資料をいただきましてもかなり多いわけです。長官は先般の御発言の中でも、小さな事故の一例といえどもおれのところに上げてみたと、こういうふうにおっしゃっておるわけなんですが、飛行機の事故はかなり多い。これは訓練が激しいということの証左だと思うのですが。ただ、事故を起こしたときには、やはり相当な追跡をやらなくちゃいかぬと思うのです。しかもこの委員会は、運輸省の関係で航空事故調査委員会設置法という法案の審議を控えておるわけなんです。民間の事故調査についてはかなり詳細な資料が出まして、私どもとしましても、それに基づきいろいろな探究ができるわけであります。ところが、自衛隊の事故調査のあり方というのは、先ほどの話じゃないのですけれども、非常に閉鎖的じゃないかと思うのです。つまり部内でやってしまうわけですね。部内でやってしまうということは、自分のところで起こった事故を自分のところでまとめてしまうということにもなりがちなんです。そういうことではたして事故を教訓として生かし得る余地が残るのかどうか、こういうことなんですね。被告と原告が一緒になって調べてやってしまうわけですから。なれ合いと言っちゃ悪いんですけれども。そういう事故調査のあり方というのは一考を要するのではないかというかねての疑問を私は持っているのです。いかがでしょう。
  211. 山中貞則

    山中国務大臣 ごもっともですが、水没をしてしまいますと、なかなか生存者がおりませんために——生存者がおる場合は比較的わかりやすいのですが、それが究明しにくい点があると思います。さらに、たとえばこの間の千歳の事件等は、まあ幸い人には被害がなくて済みましたけれども、これは地上に機体がございましたので、操縦士は落下傘が開き切らずに死んだわけでありますが、その原因を徹底的に調べた結果、尾翼の制御翼のシャフトが折れたんじゃないかということに大体究明できましたために、残り十一機全部シャフトを取りかえまして、そして地元の県、それから市長さん、市議会、周辺の人々の御了解、大体こういうことだったようです、全部取りかえましたということで、おおむね、それならば飛ばないわけにもいかぬだろうからという御了解をいただいて、じゃ一機、ずつだいじょうぶかというテスト飛行をやりなさい、それが全機だいじょうぶだったら、まあ来月に入ったら訓練再開もよかろうという地元の御了解も取りつけたようでありますが、二度とそういうことの起こらないようなやはり徹底した原因究明をして、そういうふうに地域の方にも御説明しますと納得もしていただけるわけで、私たちとしてはそれを隠すことがかえって——隠すことはないわけですけれども、海中に落ちた場合なんかにはわからないこともありますが、隠したりなんかしますと、地元の人たちがとてもあぶなくて飛ばせないという空気、これはもう今日一般的な環境にありますから、基地周辺の御協力を得るためにも、国民の理解を得るためにも、またとうとい自衛隊員の生命を失わないためにも、この原因究明は徹底的にやる。これは事故報告のみでなくして、そのあとは徹底的に追跡して報告をあげさしております。したがって、そのような誤解の生じないようにやれると思いますので、きちんとやってまいりたいと思います。
  212. 木原実

    ○木原委員 これは長官、申しわけないんだが、ことばの問題ではなくて、私どもは民間の事故の問題を少し調べてみましても、たとえば羽田沖で海におっこちたやつだってけっこう引き揚げまして、これはいろいろな問題が起こるぐらい、まあそれでもわれわれは問題があると思っているんですが、やっているわけですね。ですから、自衛隊内における事故調査委員会というのが常設されているかどうかわかりませんが、私は、少なくとも第三者によって客観的に証言ができる、たとえば自衛隊といえども、被害を受けた人、あるいは乗員でなくなった人、そういう人たちの遺族なり何かが告訴するといったような場合にも、十分にたえられるだけのものを持っていなくちゃならぬと思うのです。教訓として残す分はもちろんです。それからまた器材なら器材に致命的な欠陥があるということになれば、特に自衛隊の場合は思い切ってその廃棄ができるわけですから。民間の場合は、企業の関係その他があって事故調査でなかなか原因が究明しにくいという妙なこともありますけれども、自衛隊の場合はやろうと思えば思い切ってできるわけですから、それだけにやはり自衛隊の中には、航空事故なら航空事故について権威ある、あるいは第三者が見て少なくとも納得のいけるような、そういう事故調査の追及委員会をやはりきちんと設けるべきではないのか、こういうふうに考えるのですが、いかがでしょう。
  213. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 事実関係で私から申し上げますが、防衛庁長官の訓令をもちまして、各幕僚長が事故調査をして長官に報告をするという仕組みになっています。そうして各幕僚長はそれぞれ監察官を長とする事故調査委員会を常設で設けております。そこにかけて報告する。その報告を内局が受けまして、重要な事故につきましてはさらに審議をして、場合によっては差し戻す。あるいは数年前の金沢事故のような大きな事故につきましては、次官を長とする調査委員会を臨時に設置をして、内局が加わって調査を行なうという方法もとっています。
  214. 木原実

    ○木原委員 これは、責任者が事故追及の調査の責任者になるのはいいんですけれども、問題は、やはり技術的にも権威のあるメンバーを選んで、やはりきちんと対応すべきだと思うのです。特に、資料をいただいておりますけれども、自衛隊飛行機の事故というのは決して少なくはありません。しかも、これから空の関係というのはいろいろな意味で広がっていくわけですから、これはぜひ要望をしておきたいと思うのです。  そこでもう一つ伺っておきたいのですが、ファントムの爆発というのは、あれはどういうことになっているのですか。
  215. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 五月一日に事故が起こりましてから、直ちに現場の調査及びその調査報告を受けまして、ただいま申し上げました航空幕僚監部に設置をされております調査委員会審議をいたしました。それと並行いたしまして特別点検の項目を九項目あげまして、約三週間にわたりまして全機総点検をいたしております。さらに米空軍及び米海軍のファントムの事故例を取り寄せまして、それを分析いたしまして、その面からも事故の原因の推定を行なっておりますし、なお現在進行中でございますので、結論が出るまでにもう少しかかると思いますが、想像されるものとしては、エンジン系統または燃料系統に原因があったものであるというふうに現段階では考えております。
  216. 木原実

    ○木原委員 このファントムの事故の調査に当たっておるメンバーはどういう人たちですか。
  217. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 これは、航空幕僚監部の監察官をはじめといたしまして、防衛、装備、技術系統の課長クラス、それから三菱及び石川島の技師を加えまして、機材面の調査は拡大した形で行なっております。
  218. 木原実

    ○木原委員 ファントムといえば十万時間飛んで九・何%というように、過去の事故例はたいへん少ない。そういうことではたいへん安全度が高いということが売りものの戦闘爆撃機、これがまことに壮烈な、しかも組み立てて二機目がああいう事故を起こした。これもある意味ではたいへんなことだと思うのですね。ファントム計画全般について影響を持つような問題だと私は考えたわけなんです。ところがそういう事故を起こして調査をやられる。ここでも、いま三菱もしくは石川島の技師の関係者、こう言っておるのですが、三菱や石川島、特に三菱重工なんかは、これを組み立てた工場ですよね。石川島についてもしかり。つまり被告ばかりが集まっているわけなんです。裁判官はいないわけです。これはどうですかね、そういう調査のあり方は。きびしくやるというのならば、逆に競争会社のきびしい指弾を受ける、そういう関係のところからの技術者なり専門家なりを招聘してでもやる必要があるんじゃないでしょうか。自分のところで組み立てたのですから、これはどうしたって、どんな科学者といえどもある段階のところでは、この程度のという気持ちが動かないという保証は何もないわけですね。だからそういう事故調査のやり方というのに私は非常に疑問を持つわけなんです。どの程度の調査をするのですか。
  219. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 先生の御疑問はある面においてはもっともだと思いますが、御承知のように自衛隊防衛庁長官を長とする公の機関でございまして、航空機の安全ということは自衛隊員の生命にも関係いたしますし、また自衛隊の力というものにも関係いたします。したがいまして、その面において事故の原因究明及び安全対策というものについてはきわめて真剣な態度で臨んでいるわけでございます。それから今回のファントムの事故は、御承知のように新機種でありますし、また非常に高価なものであるということで、事故が起こりました直後、防衛庁長官から各幕長に口頭指示を出されたときにも、特にファントム原因究明については内外に疑念を残さないように徹底的にやれという御指示も出ております。  そこで、この飛行機は何ぶんにも日本では、使いましてから現在八百時間ぐらいしか使っておりません。事故機は百時間ぐらいですが。アメリカでは約三千二百機、世界のそのほかの国を合わせますと三千七百機ぐらい、約十年間使っておりまして、空中火災等につきましてはすでに百数十の例がございますので、そういうものを分析をすることによって原因の究明はかなり正確にできるんではないかというふうに考えております。
  220. 木原実

    ○木原委員 いまファントム訓練はやめているのですね。
  221. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 原因を究明して有効な対策が講ぜられるまでは停止をいたしております。
  222. 木原実

    ○木原委員 組み立てのほうはどうですか。
  223. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 現在、四十八年度に入りましてから月大体二機の平均で納入する予定を立てておりましたが、現状では、原因が解明するまでその納入も全くストップをいたしまして、さらに十分会社側でその内容を検討するということで納入はさせておりません。ただ、生産のほうは継続的にやりませんと、技術者の離散でありますとか、あるいは材料費がますます割り高になるとかいう点がありますので、基本的な製作は一応コンスタントに続けさせております。納入はさせておりません。
  224. 木原実

    ○木原委員 防衛局長、これはいつごろきっちりした結論が出るのか、そのめどのお示しは別にないわけですが、これはあるいは新幹線の事故と同じで、私どもが見ましても、事故というのはいつも予想の範囲を越えるわけですけれども、それにしてもたいへんショッキングな事故だといわざるを得ないわけです。場合によれば、ファントム配備の計画について検討し直してもらわなければならないような、そういう事態が起こるのではないかということも考えられるわけです。これはいずれにしましても権威ある結論を待った上での判断だと思うのですが、いまのお話ですと、ともかく結論が出るまでは訓練も納入も停止をするということなんですね。それが非常に悪い結論が出た場合には、配備計画全体について再検討しなければならぬと思うのですが、どうですか。
  225. 久保卓也

    ○久保政府委員 F4というのは、いまも大西参事官から説明がありましたように、非常にいい飛行機で安定した飛行機であります。ただ問題は、これを大部分国産をしておるというところに問題があるわけでありますから、私どもといたしましては、一応問題の究明に全力をあげていただいて十分な自信を得るということをまず前提としまして、その上で計画というものは変えるつもりはないというのが今日の考え方であります。
  226. 木原実

    ○木原委員 これは三菱で組み立てたわけですから、もし組み立ての過程に何かがあったとか何だとかというようなことになりますと、生産のあり方その他については考えていかなければなりませんね。どうですか。
  227. 久保卓也

    ○久保政府委員 このF4のプロトタイプ、つまりアメリカでできているものについては自信があるといえると思います。ただ、これを国産しているというところに問題があるわけでありますから、したがいまして、プロトタイプと同じものができるという確信ができるまでは、私どもは、計画そのものが変わるということじゃなくて、計画が遅延するということになるのではないかと思います。
  228. 木原実

    ○木原委員 組み立ての過程に問題が出てきたということになりますと、これはまた別の問題が出てきますね。つまり生産のあり方、これはほかの機種の購入の形にもある程度影響してくるのじゃないかと思うのですね。御案内のように、アメリカからまるまる買ってきたほうが安くつくじゃないかという議論が一方にあるわけです。ですから、これはまたやや推測の入る問題が出てくると思うのですが、その辺は影響ありますかどうですか。
  229. 久保卓也

    ○久保政府委員 いまのところ最終的な結論を得ているわけではありませんけれども、私どもとしては、やはりもともといい飛行機でありますし、わが国の航空技術水準も相当高いのでありますから、アメリカのと変わらないものがいずれ自信を持って生産の見通しが立つという前提に立ち得るならば、計画は特別変更するわけではございませんけれども、しかしその自信を得る時間が長くなれば、それだけ配備の遅延というものが予想されるということになるかと思います。
  230. 木原実

    ○木原委員 これは長官、くどくは申し上げませんけれども、いずれにいたしましても、ファントムの事故というのは非常にたいへんな事故だと、私どもとしては認識をしておるわけです。先ほどのP2Vその他の飛行機の事故、それからファントムの事故。一つここでのわれわれの要求としては、自衛隊内の航空機の事故については、少なくとも客観的に、あるいは第三者が見ても納得のいけるような権威ある事故調査の方法を確立してもらいたいと思うのです。閉鎖的ということばがありましたけれども、どうも私ども見ておりまして、自衛隊内部でやってしまうという側面があります。しかしファントムの場合は、これは組み立てたばかりの飛行機ですから、民間の製造に携わった企業の技術者等を現在も入れておるそうですが、これもおかしいと思うのです。つくったところの技師が来てどうだこうだと言うのは、私はおかしいと思うのです。だから少なくとも、調査に当たるメンバーにいたしても、調査の方法にいたしても、疑念の残らないような体制を早急に確立をしてもらいたい、こういう要望を申し上げておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  231. 山中貞則

    山中国務大臣 原則賛成で、実行についてちょっと問題がありますのは、やはり兵器については、そうたいして秘密でない部分だけの兵器ならこれは何でもないのですけれども、航空機というのは精密資材ですから、やはりそこらのところは、搭載しておりますいろんなものもありますし、そう完全なオープンというわけにもまいりません。しかし、そこらのところは、先ほど来おっしゃっていらっしゃることが、とうとい人命を乗せて飛んでいる飛行機が落ちた場合は、自衛隊員といえども国民、少壮有為の青年でありますから、そういうことのないようにしてやれというお気持ちでありましょうから、私はすなおに受け取って、どのようなことが御希望に沿えるような形になるか、これはひとつ検討さしてください。
  232. 木原実

    ○木原委員 よけいなことですが、一つだけつけ加えておきますと、運輸省が事故調査委員会をつくりたい、こういう法案を出しているのです。私どもはできることならば、かなり大規模な事故調査委員会をつくってミリタリーの部分もこの調査対象に入れる、こういうようなことにしたほうが、国民が納得いくんじゃないかという実は考え方を持っております。しかし、これは私どもの考え方であって、実際には運輸省が省内に新たに事故調査委員会というものをつくりたい、こういう形で来ているのです。いずれにしましても事故の問題について世論がきびしい。まして自衛隊の場合は直接税金でまかなっておるもの、いろんな制約の中での問題があると思いますから、ぜひひとつ調査の方法については万全を期してもらいたい、こういう要望を申し上げておきたいと思います。  それから、もう一つこの機会にぜひ伺っておきたいと思いますのは、運輸省からもお出ましを願いましたけれども、空域の問題なんです。具体的な話が出ておりまして、成田の開港がいつになるのか、だれかに聞いてみないとわからぬということなんです。あるいは年度内といい、あるいは来年じゅうには開港じゃないかという時期を迎えているわけなんですが、成田の空域の設定という問題があるわけなんです。そこに百里の空域とのある意味では競合ですね。かねて懸念をされていたのですが、その問題がそろそろ出始めている。そこで、自衛隊のほうからどうなんだという話を聞きましたところが、幾つかの案あるいは一定の案をお持ちのようなんです。それで、訓練空域を鹿島灘から房総沖にかけましてかなり大きなやつを設定したい、こういう考え方を伺ったのですが、この訓練空域の設定について、まず自衛隊としての、防衛庁としての基本的な考え方というのをひとつ伺いたいと思うのです。いかがでしょうか。
  233. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、私はあるいは自衛隊のほうから恨まれているかもしれないのですが、雫石事件がありました際に、運輸省に事故調査委員会を置いてもいかぬ、防衛庁に置いてもいかぬということで、総理府で預かりました。そしてその結果、訓練空域というものを原則として自衛隊は海上ということにいたしました。そしてジェット空路その他をきちんと高度に分けて、幅その他定めまして、それに対して、海上に出るための自衛隊機は海路を設定して、そこ以外に飛ばない、いろいろなことをこまかく定めたわけです。いま防衛庁長官になってみますと、私がそういうことを直接指図したわけでありませんが、やはりそういう民航優先という考え方をとったために、自衛隊の空の訓練というものが、往復にえらい時間をとられまして、なかなか精度維持に日中の限られた時間の中で困っておるという話を聞きまして、いまのところ気の毒なことをしたという気も少しないではありません。これは率直な話です。そこで、今後もやはりそういう姿勢を貫かなければならぬと思います。そういたしませんと、二度と雫石上空みたいなことがあってはならないわけでありますから。  現在の成田の問題は、訓練空域の問題と申しますよりも、むしろ成田空港が完成した場合における進入あるいは出発の経路というものを運輸省のほうで一応いろいろ考えておられる。ところがそこには百里の既存の私どもの自衛隊の空の基地がある。それはすでに進入経路その他いろいろと空域を設定して、影響のない状態でやっておるわけでありますが、そこで両者競合するような空域にならないような方法はないかということで、いま相談しておりまして、これは私もまだ最終的に、防衛庁の意見はこうだということを言っておりません。運輸大臣のほうにも純技術的な問題として相談をまずさせようということで相談しておりまして、いま事務段階で双方、運輸省の航空局と私どもの事務当局との間で相談を詰めております。そう特別に両方が角突き合うというような問題にもなっていないように思います。
  234. 木原実

    ○木原委員 私は成田にどうも関係が深いもんですから、いろんな意味で注目をしていたわけなんですけれども、意外に過密なんですね。成田開港いたしまして、どういう経路を通りましても、かなり民間が過密な中で航路設定しなくてはならない、こういう状態が前提としてあるわけなんです。一時、運輸大臣橋本さんであったか、大橋さんであったか、いや、あそこに国際空港をつくっても、百里というのはそのうちに移転をしてもらうとまでは言わないけれども、ウエートはそう高くはないんだ、それは国内のことだ、アメリカとの関係じゃないんだから話は幾らでもできるんだよ、こういう話を実は聞いたことがあるのです。しかし、いざということになってみますと、その後何年か経過するうちに、私どもが見ましても、百里の基地の持つウエートというのがある意味でたいへん高まった。ファントム配備で、おそらく首都警備という任務を持って、当時の運輸大臣の想定をした以上にウエートが高くなってきているという感じがするわけなんです。当然、そういうところから訓練空域がかなり広範囲な、広い分野の御要求がある。これはある意味では、防衛庁の立場に立てば当然だということになるのです。しかし、そこで原則をはっきりしてもらわなくてはならぬことは、何といっても安全第一ですから、しかも雫石事件を教訓として、民間優先でいくと当時の佐藤総理が大きな声で言明されたわけですから、その原則だけはぜひ貫いてもらいたいと思うのですが、どうですか。
  235. 山中貞則

    山中国務大臣 そうするつもりでおりますし、時の運輸大臣が橋本さんであったかどうか私も知りませんが、これは国内問題で、自衛隊と運輸省という相談が、これがお互いに一歩も譲らないという相談であっては断じてならないと思うのです。したがって、そのお互いの進入、発進の航路を中心にした空域ですね、こういうものが両者話し合いができないはずはないと思っておりますから、また、いまのところ両者、百里を移転しなければだめだという案も出てきておりませんし、そこらのところで話はつくものと思っております。いまおっしゃったように、ことに国際空港でありますから、そういう民航優先ということは、私どもは心にきめて協力してまいりたいと思います。
  236. 木原実

    ○木原委員 事務段階で大西参事官なり、きょうは運輸省の金井部長にも来てもらっておりますけれども、話を聞いてみますと、自衛隊の要求がある意味じゃ訓練空域が非常に従来よりも広がっていく、そういう御要求を防衛庁のほうでは出している。そうしますと調整の問題が残っておる、こういう話なんですが、この調整の方法を聞いてみますと、結局は、何といいますか、時間差、民間機が飛ぶ時間と自衛隊訓練する時間、もう一つは高度差で調整する以外にないだろう、こういう話なんです。これはまあ技術的には可能だし、あちこちやっていることだから問題はないだろう、こういう判断が運輸省の側にもあるようなんです。しかし、これは平面図で見ますと、成田から銚子のほうへ出ていく、その銚子の鼻先にかなり広範囲の自衛隊訓練空域がでんとあるわけなんですね。今度はその中に廊下をつくって、そこを民間機が幾つか航路を見つけて飛び出していく、こういう形になっている。ですから、技術的には可能であり安全度は決して低くない、こういう判断でありましても、これは私ども見まして、まるで自衛隊訓練空域というのが銚子沖で通せんぼをしているような形になっておる。これは何とかならぬのかという感じがするわけです。これは百里基地のファントムの運用その他のあらかじめの想定というものがあるだろうと思うのです。それにしても、国際空港のへさきにこういう訓練空域がかなり広い分野にある。しかもこれが、FとかE1とかE2とか、幾つもそういうものがある。そういうものの中には、さらに米軍の空対空の演習場みたいなものが設定されておる、こういう形ですね。そうかと思うと、こっちのほうには、ミッドウェー母港化に伴ってチャーリーという米軍の空域がある。こういう形になっていきますと、百里、成田、羽田、その奥には横田がある、こういう形になっておる。これは一体どういうことになるのだろうかというのが、私どもしろうとですからわからぬ面があるわけですけれども、それにしても過密過ぎるじゃないか。事務レベルの話し合いは話し合いとして、何とか思い切った措置をとらなければ、大騒ぎをしてつくった飛行場、これだけやられますと機能的にうんと狭められると思うのです。  さしあたって、成田空港の便数というのは、まあ五十年で百五十回ぐらいだ、そういう設定が行なわれておりますけれども、しかし、あれが政府が想定しておるとおりの国際空港に完成をして、将来便数がふえるということを計算いたしますと、いかんせん、これは時間差や高度差だけで調整がつくものかどうか、こういうことも考えられるわけなんです。そうすると、百里の基地をどいてもらうか、あるいは訓練空域を全然別のところに設定をしてもらうか、相当思い切った空域設定についての考え方を想定をしておきませんと、当面はともかくとして、非常に困難な問題に逢着するのではないか、こういう感じを持っているのです。どうですか、これはむずかしいあれなんですが……。
  237. 山中貞則

    山中国務大臣 私は、その問題はあまり困難視いたしておりません。要するに、国際空港としての成田というものがオープンいたします場合に、文字どおり国際空港ですから、世界じゅうの人が日本に来る場合に成田に降りるわけですので、それらのところに、自衛隊の存在というものが脅威になっているというような航空路というものは絶対にあってはならない。そう思いますから、そういう姿勢で話し合いをするならば、私は可能だと思いますし、そういう指示も事務当局にしております。もしそれが、妥協の産物がかえって危険を生むようなことでありますならば、私と運輸大臣との間に政治的な話し合いで解決してもよろしゅうございます。
  238. 木原実

    ○木原委員 これはむずかしい問題なんですが、運輸省の技術部長にもおいで願っているのですが、この段階で運輸省の事務当局として考えていることを少し説明してくれませんか。
  239. 金井洋

    ○金井政府委員 先ほど防衛庁長官からお話もありましたように、雫石事故以後、民間機と自衛隊訓練機を完全に分離するということで訓練空域をつくろうとして現在まで来ておるわけですけれども、分離のしかたとしまして、空域を平面的に完全に分離する方法、それから高度を分けてお互いに訓練民間が使用する方法、それから時間的にある時間を限って訓練を認める、要するに平面的な分離と、高度的な分離、時間的な分離、こういう三つの方法が考えられております。  御指摘のように百里の沖合いは、成田への進入、成田からの出発という便数が非常に多うございますので、はたしてそういう出発、進入経路があるところに、いま言ったような三つの考え方による分離が民間機に支障のない範囲内で可能かどうかということをいま検討しております。  さらにもう一つ、分離の方法としまして、二重、三重に、双方、訓練のほうのパイロット、あるいは民間のパイロットがもし万一訓練のことを忘れておるような場合でも、衝突は未然に防ぐような二重の担保の方法をつくることが望ましいわけで、そのためにはレーダーを置いてかなり監視するとか、そういうふうなことを含めて可能かどうかということも検討しておりますが、現在までのところまだ解決しておりませんで、事務レベルで調整中でございます。
  240. 木原実

    ○木原委員 時々事故が起こるわけですから、万一のことを考えて二重の担保をとっておくというようなことになりますと、これはまた、空域の設定につきましても、かなり幅といいますか、ゆとりをとらなくてはならぬ。しかし、どうも私どもしろうとで考えまして、あまりゆとりがあるようにも考えられないわけなんです。  ついでに伺っておきますけれども、この間、米軍が空域を要求してきておりますね。幾つかあるわけですが、この房総沖に設定をしたいという要求についてはどういうお考えですか。断わるのですか。断わったらどうですか。
  241. 金井洋

    ○金井政府委員 房総沖の、いま御指摘になったチャーリー海域の南に、たぶんミッドウェー母港化に伴うものだと思いますけれども、空域を要求してきております。これについてはいま検討しておりますが、ここもグアム、それからウエーキへの航空路がありますし、さらに三宅島を通って成田へ入るもの、それから成田から三宅島を通って香港、台北のほうへ行く航空路、それがありますので、そういう十分な保護空域をとるという前提に立って考えておりますが、これもまだ解決のめどが立っておりませんので、さらに検討しております。
  242. 木原実

    ○木原委員 八方ふさがりというのはこのことじゃないかという感じがするわけです。空は広いと思っておったのですけれども、なかなか過密なんです。  そこで長官防衛庁側の訓練空域設定の地図を私どもいただいておるのです。非常に簡単な地図なんで、どこがどうというあれがむずかしいのですけれども、これは何か根本的に動かすという方法はないものですかね。百里を中心にしまして従来の空域の問題もある。これはちょっとあれなんですけれども、鼻先に三つの訓練空域を設定しよう、これが防衛庁側の基本的な要求なんですね。民間優先ということならば、いろいろな支障はあるでしょうけれども、空域を動かすか、他に何か思い切った管制上の措置をとるとか、たとえば管制の統合をやるとか、何かやはり相当な措置をとってやらなければ、これはちょっと安全上の問題ですから、だいじょうぶだと言われたってしょっちゅうニアミスがあるわけですから、将来のことが案じられるわけですがね、これはどんなものでしょうか。事務当局のほうの考え方は、大体こういうことで何とか調整できないだろうかということで詰めているのだそうですけれどもね。
  243. 山中貞則

    山中国務大臣 これはまだ運輸省のほうも、最終的に成田空港の発進、進入経路というものをきめていないわけです。したがって、それらのことも踏まえながら相談をしておりますから、原則はあくまでも、いやしくも国際空路というものに対して、自衛隊が支障のあるような空域設定ということはやらないという原則で話し合いをすれば、まとまると思います。
  244. 木原実

    ○木原委員 そのまとまり方の問題なんです。これは確かに先ほど来お話がありますように、高度差、時間差でまとめるというようなことなんです。それから二重の担保の余地をとっておきたい、こういう運輸省側の見解もあり、おそらく図上での話し合いというものは、これは同じ官庁同士ですからできないとはいいません。しかし、でき上がったものが、私たちがああそうですが、これはだいじょうぶだと言えるものがはたして出てくるのかどうかということについて、私は疑問があるわけなんです。事務段階で双方から私も話を聞いてみたんです。なるほど合理的な面がないわけではありません。しかし、長官おっしゃるように、国際空港、その鼻先に訓練空域があって、まとまったのはいいけれども、しょっちゅう何か高度差の穴を飛ばされているというような状態。時間差なんていいましても、確かに計算の上ではできると思うのです。しかしながら、これはなかなか言うべくして困難な事態も出てくる可能性があるわけです。  だから、あれこれ考えますと、ある程度の話はできるでしょうし、できなくちゃならぬのでしょうけれども、でき上がったものがはたしてだいじょうぶなのかという問いに答えられるものができる可能性というのは非常に乏しい。だから私は、それならば訓練空域をほかのところをさがすか、あるいはまた次善の策として管制上の一元化のようなものをはかっていく余地があるのかないのか。それも、たとえば成田と羽田、あるいはまた横田の問題が入ってきますし、むずかしい問題があると思うのですけれども、少なくとも民間空域の中に自衛隊も管制下に従っていく、そういうきちんとしたものができれば、あるいはそこにより安全度の高い措置が講じられはしないか、こんなような感じもするのですが、どうでしょうか。
  245. 山中貞則

    山中国務大臣 まず、国際航空路の安全性というものは、国家的な命題として確保しなければならぬ。でないと、世界じゅうの人が、あそこの飛行場におりるのには——外国は軍というでしょうね。軍の空域との間にきわめて危険な場所を通り抜けなければならないのだということが、操縦士からいえばすぐわかるわけです。そういうことが広がった場合にはたいへんなことになりますので、これはまず、運輸省の国際航空の必要な路線がまだきまっておりませんで、それもいろいろ考えているようですが、そういうものを運輸省が最終的に希望します路線に対して、私どもはまず国際航空路の安全優先ということでやってまいりますから、いまのところ、技術的にもまだ両方とも具体案を出していないわけでありますので、ただ、こういうところではどうなのかという相談をしているようでありますから、これは目的を絶対に安全な国際空港への進入路を確保するということに置けば、私は、おおむねその目的は達成される方法はある、そう信じております。
  246. 木原実

    ○木原委員 くどいようですけれども、おっしゃるように、航路がきまらないのも結局空域の調整ができないからきまらない面があると思うのです。幸いにして、成田の空港の開港がおくれましたからゆっくりやってもいいわけなんですが、しかし、おいおいそうはいかぬだろうと思うのです。いままでの運輸大臣の言明によりますと、いまごろは成田から飛んでいなくちゃならない。これはわれわれが反対したからだというのでしょうけれども、しかし、時間があるからといって、どうせ開港することになれば、一番大事な問題はこれなんです。いまたとえば成田周辺の開港した場合の騒音対策というものができているのです。しかし、これがきまらないことには、ほんとういいますと騒音対策も立たないわけです。コンテの作成のしょうがないわけですから。ですから、いまは架空の上に立って、この辺はやかましいだろうということで騒音対策をやっている。そういう形で、考えようによりますと、たいへん大きな問題を残したまますべてがうしろに回っていく、そういうかっこうになっているのです。  ですから、長官がおっしゃるように、原則として少なくとも国際空港の安全ということを第一義に考えて、それに対して自衛隊も運輸省の方針に協力をする、こういうふうなことで調整をはかっていくんだということをひとつ確認してよろしいですか。
  247. 山中貞則

    山中国務大臣 そこまで言われますと、私は再三誠意を披瀝しているんですが、運輸省がきめ切らないのは自衛隊のためだということは、実はそうではありませんで、運輸省の中にもいろいろと事情があるようであります。したがって、その運輸省の中の事情等もよく踏まえながら、それに対して私どもが協力をしていくということにしたいと思うんです。これ以上はやはり運輸大臣の政治的ないろいろな問題があると思います。私のほうからは、もうそれ以上立ち入って申し上げません。
  248. 木原実

    ○木原委員 私どももこの成田空港に反対してきたんですから、成田空港供用開始にならなければ一番いい。いまはあそこに国連大学を誘致したらどうだという話を進めているのですが、それもそうなんです。しかし、これは何が何でもやるというんですから、やるんなら、雫石の二の舞いのようなことがあっちゃいけない、それだけなんです。それだから、空域の設定については少なくとも民間優先で、それに対して自衛隊が協力するというかっこうのほうがいいじゃないか、こういうことなんです。それならば事務段階でいろいろ示されておる案についても、根拠はあるんでしょうけれども、しかし、民間優先ということならば、訓練空域を移すなり、場合によれば私は百里の基地の機能も低下しろと言いたいところなんですが、しかし、そのことも含めて次善の案は考えられないだろうか。  それからまた、管制上の措置についても、これは将来にわたる問題ですけれども、やはり管制の一元化というような形の中でより高い安全度を民間のために提供をする、そういう用意があるのかないのか、こういうことを、ぜひ聞いておきたいということなんです。
  249. 山中貞則

    山中国務大臣 何べんも申し上げておりますとおり、木原委員姿勢でいかなければならぬ、私らはそういう姿勢をとるべきだ、そう思っております。
  250. 木原実

    ○木原委員 もうこれで時間だいぶ過ぎましたから終わりますが、ときどき、雫石のときもそうだったんですが、自衛隊が臨時に空域を設定しますよね。そういうときの基準のようなものは、ちゃんと内規か何かにあるんですか。
  251. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 雫石の場合には、第四航空団の訓練準則というものがございまして、その中で航空路あるいはジェットルート等、民間機の航行のひんぱんに行なわれるところを制限空域というふうに指定をしておりまして、原則としてそこを使わないというふうに定めております。
  252. 木原実

    ○木原委員 私は聞きたいのは、あのときもそうだったんですが、臨時に空域を設定したというんですね。そして何か先月でしたか、松島隊の土橋さんとかいう方の法廷での証言というのによりますと、空域を設定した、この辺だろうといって五本の指で押えた、こういう形で空域の設定をやっている。どうもざっとしているんだなという感じがするわけです。訓練空域を設定をする場合のきちんとした基準、そういうものがあってそしてそれはきびしく守られる、そういう措置になっているんですかどうですかということを聞いているんです。
  253. 久保卓也

    ○久保政府委員 雫石事件のときには、まさにそういうような事態がございました。したがいまして、その反省に立ちまして、運輸省と防衛庁とが協議をしまして、訓練空域については、民間機の航路、それから管制能力その他あらゆる技術的条件を踏まえて、この高度、この空域については自衛隊が使用してよろしいというふうに特定に指定してあります。そして「航空情報」に記載をして、民間機も自衛隊機も十分周知させられているという特定の空域しか使っておりません。したがって、それ以外には自衛隊のほうで随意に使うということはできません。
  254. 木原実

    ○木原委員 それは雫石のたいへん大きな犠牲の上にそういう措置がとられたということは、これは一つの前進だったと思うんです。いずれにいたしましても、そういう形で訓練空域の設定、それから空域全体の設定についてはやってもらいたい。もう私どもが見ましても意外に過密である。そして、自衛隊のほうにはそういう措置をとられたということですから、くどくは申し上げませんけれども、おれのほうはいざというときにはやるんだ、ややこういう気持ちがやはりあるんじゃないかという心配があるから申し上げておるわけなんです。したがいまして、この問題につきましては、ぜひ先ほど来長官が繰り返しおっしゃいましたような形で、できるだけ民間の安全のために協力をするんだ、そういう姿勢でひとつぜひ対処してもらいたいと思うんです。  それから、管制上の問題等につきましても、私は、できることならばやはり関東空域の管制を一元化していって、より安全度の高い措置が講じられるような、それについてもぜひ自衛隊側でもこれは勉強してもらいたい、こういう感じを持っておるわけです。  あらましそういうことなんですが、最後に、そのことに関連をしてもう一つ伺っておきたいことがございます。いっか佐藤総理が雫石のあと、たとえばブルー14なんかについても返還を求めると、かなりはっきりした言明があったわけです。これは外務省のことになるわけですけれども、アメリカの専用空域の問題についていろいろ問題があるわけです。十幾つの新しい訓練空域、専用空域の要求があるという話もございましたし、総理はそういうことをおっしゃったのですが、その後一向米軍専用の空域についての返還とかなんとかということが進んでおりません。そんなようなことを考えますと、これから各地にアメリカのほうが要求をしておる空域についてはどういう方針で対処していくのか、これは運輸省のほうからひとつお聞かせを願いたいと思います。
  255. 金井洋

    ○金井政府委員 御指摘の米軍から要求のあった訓練空域につきましては、すでに決定した防衛庁訓練空域を一緒に使ってくれということで協力を求めておりましたけれども、米軍のほうの関係もございまして、新たに昨年の九月から十カ所プラス一カ所の新設ということで要求してきております。それにつきましても、先ほども申し上げましたように、民間機に支障のない範囲内で設定することが可能かどうかということで、まず、要するに民間を第一に優先させるということで検討しておりますが、現在までのところ、まだ一カ所も設定しておりません。まだ検討中でございます。
  256. 木原実

    ○木原委員 新しく要求してきておるところについては大体断わるつもりですか。
  257. 金井洋

    ○金井政府委員 昨年の九月に十カ所プラスーカ所の新設ということで要求してきておりますけれども、そのすべてについて検討しております。まだ現在までのところ何の解決もしておりません。したがって一カ所も正式には決定されておりません。まだ検討しております。
  258. 木原実

    ○木原委員 終わります。ありがとうございました。
  259. 三原朝雄

    三原委員長 東中光雄君。
  260. 東中光雄

    ○東中委員 私は、自衛隊の性格についてきょうはお聞きしたいと思っておるのです。  私どもは、自衛隊は対米従属の人民弾圧の憲法違反の軍隊だ、こう思っています。同時に、アメリカの極東戦略の中に組み入れられた、ある程度責任分担をさせられた侵略的な性格を持っているのじゃないか、こう思っています。政府は、これは専守防衛だ、仮想敵国も持たないんだ、こういう体制でありますが、仮想敵国を持たないということを、これは何回も国会でも答弁されておるわけですが、現在ももちろんそういうふうに主張されると思いますが、そうでございますか。
  261. 山中貞則

    山中国務大臣 一番最後のところはそうですが、前のほうは、私どもはそう思っておりませんで、人民弾圧とかいう気持ちじゃなくて、人民の生命、財産を守るというつもりでおります。
  262. 東中光雄

    ○東中委員 仮想敵国を持たないということですが、演習における仮設敵で特定の国を想定した、あるいは特定の国の軍隊を想定したそういう演習をやっているのではないか、こう思うのですが、そういう点はございませんか。
  263. 久保卓也

    ○久保政府委員 私どもでは必ずしもそう思っておりません。
  264. 東中光雄

    ○東中委員 必ずしもそう思っていないということですが、これは昭和四十三年の三月十六日、衆議院予算委員会での質疑でありますが、演習で仮想敵国を想定した演習はやっていない、今後ともいたしませんということで、この想定の中にサハリンなんかの地名が入っておって、そういう質問に対してその事実を認めるとは言われないまま、しかし、いま指摘されたような「演習想定状況はあるかもしれませんが、仮想敵国を想定した演習は、今後ともいたしません」と当時の増田防衛庁長官答弁をされておるわけですが、こういう姿勢、これはいまもとっておるということですか。
  265. 久保卓也

    ○久保政府委員 もちろん当時からの思想は今日も変わっておりません。
  266. 東中光雄

    ○東中委員 演習における仮設敵部隊の装備、編成等を明らかにするための防衛庁内部にある訓練資料という本がございますね。ございますか。
  267. 久保卓也

    ○久保政府委員 仮想敵と申されましたが、対抗部隊の甲、対抗部隊の乙といったものの内容を定めておりまする訓練資料はございます。
  268. 東中光雄

    ○東中委員 いわゆる演習における仮設敵部隊の編成、装備について定めておる、いま言われた訓練資料でありますが、これは私たち要求したのですが、出されないのですが、なぜ出されないのですか。
  269. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在、対抗部隊とこちらの部隊との関連で演練をすることによりまして、わがほうの戦闘態様、対応策というものが推定されるということで、個人的にはともかくとしまして、公表するという筋合いのものではなかろうというふうに判断をいたしております。
  270. 東中光雄

    ○東中委員 この訓練資料というのは、いわゆる秘密文書でもなければ取り扱い注意の文書でもないというふうに聞いておるのですが、そうじゃないですか。
  271. 久保卓也

    ○久保政府委員 秘密といいますると、なるべく程度を高めるという必要もありましょう。したがいまして、一般の訓練資料というものを秘密に指定しない場合も多いわけでありますが、ただ、だからといってそれを自由に公表する筋合いのものでもまたないというようにも考えております。
  272. 東中光雄

    ○東中委員 これは長官にお聞きしておきたいのですが、長官が総務長官のとき秘密文書が問題になりました。秘密でも何でもない、あたりまえだと長官が思われるような文書でも、省によっては秘密の判こをぼんぼん押しておるというのもあります。こういう発言をここでされましたことがありますが、いま言っておる訓練資料の場合は、その秘密文書の扱いもしていない。取り扱い注意という扱いにもしていない。そして訓練における仮設敵部隊の中に仮想敵国を予想して、あるいは特定してやっておると思われるそういう内容はその訓練資料の中にはあるので、私たちはそれを見せろという要求を防衛庁へしたわけです。ところが、いま防衛局長の言われるような、一般に公にする必要はない。それは一般に公に市販する必要はないでしょうけれども、国会審議で、そしてこの自衛隊の性格についていままでも何回か論議されてきておる問題についての、その訓練資料をなぜ秘扱いでもないのに出さないのか。これはどうしても私、納得いかぬわけですけれども、長官、その文書の扱いについて一体どうお考えになっておるのか。
  273. 山中貞則

    山中国務大臣 そのときは私自身、総理府において秘密文書は一切なくしました。そういうことはやったのですが、いまの問題は、それに従って各省庁それぞれ極秘、秘とか取り扱いをきめたと思います。防衛庁も、私ついてすぐそのことを調べたのですが、いまのような場合は、御質問があれば答弁はいたさせますが、その資料そのものを出せということについては、やはり実際の戦闘と申しますか、そういう甲と乙との部隊とが、すぐれた装備を持つ隊に対する戦い方はどうするとか、具体的なものが書いてあるわけでしょうから、そういうものはどうでしょうか。答弁はさせますよ。しかし、資料で出せと言われたって、それは秘密でないから、秘の判が押してないから出さないというものではなくて、扱いが秘であるという意味の、そういう意味では扱いを秘にはしてないということですから、御質問があれば当然局長は、おそらくすると思います。
  274. 東中光雄

    ○東中委員 秘密文書ではないわけです。秘密文書は、あの規定に従ってその指定をしてこそ形式的秘というのは成立して、そして実質的な秘があるかどうかというのは、これはまた別の問題であります。形式的な秘密扱いもしていない、取り扱い注意というふうにもしていない。そして自衛隊訓練をやる場合に、相手のことがようわかっておったのではぐあいが悪いと言うけれども、自衛隊は、たとえば第七師団が訓練をやるときには、第七師団と第五師団の一部——五師団のほうが仮設敵部隊になるわけですから、逆の場合だってあるでしょう。だから自衛隊の中ではみんな知っていることですね。木を持って、買えるのじゃないかというようなことを言っておる人もありました。だから自衛隊の中では、訓練上そのことをみんなが知っておったら困るというような性質のものではない。国会へ出して何にもおかしくないのだったら、こういうことでやっていますんや、ああそうか、言っているとおりになっているな、これならいいわけです。ただそれを隠しちゃうということになると、これはぐあい悪いものを仮設敵部隊の中に想定をしているから、だから隠しているのだ、こうならざるを得ぬわけです。その点、だから長官の言われているのは、私の言っていることとちょっとかみ合ってないので、これは良識ある総務長官のときの答弁を貫いてもらって出してもらうべきだ、こう思うのですが、どうでしょう。
  275. 山中貞則

    山中国務大臣 東中さんと私とはかみ合うのですよ。しかし共産党と自民党となると、なかなかかみ合わないのですね。だから、そういうところでなかなかややこしいのですが、答弁では満足しないとおっしゃるなら、東中さんにはお見せしてもいいということでどうでしょう。みんなに全部配らなくても、あなたにはお見せする、それならいいでしょう。
  276. 東中光雄

    ○東中委員 これは訓練資料を見せていただくということですね。それでは、それを見せてもらうことにして、いまここで、私のほうで入っておる資料についてお聞きしたいのは、七〇年の北海道における七師団演習、それから七一年のヘリボーン演習ですが、そのときに、これは共産党に見せたのではなくて、現場で報道関係者にいろいろ紙を張り出して説明をしたのがあるのです。その説明したものの中に、演習部隊編成、仮設敵部隊編成というのがあります。これは写真にとってあります。これではなかなか読みにくいので、仮設敵部隊編成の符号並びに記号を読める程度にこれを拡大しました。これはあらかじめ言うてあるのですが、局長のほうでいまお持ちですか。
  277. 久保卓也

    ○久保政府委員 持っております。
  278. 東中光雄

    ○東中委員 これ、同じものかどうか、ちょっと見てください。——これは現場で写真をとったものを、読みやすいように拡大したものということなんですから。いま御説明によると、このうちの一部がないなんと言っておられるけれども、一部がないといったって、現場の写真そのものなんですから、これはちょっと見てくださいよ。写真のうちの一部に書き込めるというような性質のものじゃないわけですから。これはびょうで打ってあって、隊舎であるということは明瞭なんですね。よろしいですか。  じゃ、その基礎の資料が一緒であることを前提にしてお聞きしますが、これは符号、記号で書いてあるので、一般が見ればわからない。報道関係者の人も特別に勉強している人でなければわからぬ状態で見過ごされたのだと思うのですけれども、これによりますと、たとえば砲兵大隊というのがあります。その砲兵大隊の下に記号があります。12H(10H)×4とあります。12Hというのは一体何かということ。
  279. 久保卓也

    ○久保政府委員 百二十ミリあるいは百二十二ミリのハウザーですから、りゅう弾砲になります。
  280. 東中光雄

    ○東中委員 その下に15Hというのがあります。これは何ですか。
  281. 久保卓也

    ○久保政府委員 百五十もしくは百五十五のりゅう弾砲であります。
  282. 東中光雄

    ○東中委員 百二十二ミリりゅう弾砲というのは、日本国ないしアメリカなんかで持っておるかどうか。これはソビエトの装備ではありませんか。
  283. 久保卓也

    ○久保政府委員 ちょっと私も調べてもらったわけでありますけれども、12Hというのは、ソ連、それから東欧の諸国、それから台湾、シリア、イラク等若干の国が持っております。
  284. 東中光雄

    ○東中委員 要するにソ連製の兵器を使用している国ということですか。そうではございませんか。
  285. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは個々の兵器よりも、この編成装備の性格からお入りいただいたほうがよろしいのではないかと思いますけれども、少なくとも12Hというのをソ連が持っておることだけは確かであります。
  286. 東中光雄

    ○東中委員 15H、百五十五ミリりゅう弾砲も同じでありますが、その次に移りますと、機甲偵察大隊というのがあります。そこにはLTK(61TK)×6こうなっておりますが、LTKというのは一体何でありますか。61TKというのをカッコで閉じてあるのはどういう意味なのか、説明していただきい。
  287. 久保卓也

    ○久保政府委員 偵察中隊にはLTKつまりライトタンクが二台あるということでありますが、あるいは六一式、これは自衛隊の六一式戦車のことであります。
  288. 東中光雄

    ○東中委員 ということは、LTK、軽戦車、ソ連のPT76ということであって自衛隊にはない。61TK、これが自衛隊の戦車である。軽戦車ではないけれども、それに代用させておる。だから仮設敵としては、LTK、ソ連の軽戦車を相手にしているのだが、実際には61TKという形で自衛隊のやつで使っておる、こういうふうに読むべきだと思うのですが、そうではございませんか。
  289. 久保卓也

    ○久保政府委員 このライトタンクは、必ずしもソ連のものと特定しなくてもよろしいわけでありまして、要するに偵察中隊というものはライトタンクを持つのが適当である、これは世界的な趨勢であります。フランスでは確かM13でありましたか、非常によろしいのがあります。わが国も将来の開発の対象としては考えたい。しかし、現在自衛隊が持っておりませんので、対抗部隊としては六一式戦車をもって代替をしておる、こういう意味であります。
  290. 東中光雄

    ○東中委員 対戦車隊の120Mというのがあります。(107M)×4、120Mというのは何ですか。
  291. 久保卓也

    ○久保政府委員 百二十の迫撃砲でありますが、ソ連、東独その他の東欧諸国、それからフランス、西独、インド等が持っております。
  292. 東中光雄

    ○東中委員 自衛隊は持っていない。アメリカも持っていない。ソ連が持っておるものだということであります。  さらに、その同じ対戦車隊の中で、57AAG(37G)×2となっています。この57AAGというのは何ですか。
  293. 久保卓也

    ○久保政府委員 五十七ミリのアンチ・エア・ガンでありますから、対空機関砲でありまして、ソ連圏それからインドネシア、シリア等その他若干の国が持っております。
  294. 東中光雄

    ○東中委員 さらにその下に100ATG、百ミリ対戦車砲がありますが、これも日本にはない。ソ連及びソ連圏が持っておるだけじゃないですか。
  295. 久保卓也

    ○久保政府委員 百ミリのアンチ・タンク・ガンはそのとおりであります。
  296. 東中光雄

    ○東中委員 それから一番下の欄に重迫小隊というのがあります。ここに82M、いわゆる八十二ミリ迫撃砲がありますが、これも同じではございませんか。
  297. 久保卓也

    ○久保政府委員 82Mは、そのままであれば東欧圏でありますが、81Mは米国も持っております。
  298. 東中光雄

    ○東中委員 その部分は82M(81M)×2、こうなっておるわけですから、カッコの中のはアメリカなりが持っている、あるいは自衛隊が持っている、しかし82Mというのは持っていない、こうではございませんか。
  299. 久保卓也

    ○久保政府委員 そのとおりであります。
  300. 東中光雄

    ○東中委員 さらに、その右側の小隊の符号の下に書いてある57G、57ミリ対戦車砲、これも同じではありませんか。
  301. 久保卓也

    ○久保政府委員 五十七ミリのガンは、やはりそうであります。
  302. 東中光雄

    ○東中委員 さらに、そのほかにも部隊の戦力点数表というのがあるわけですが、同じように、あるいはそのほかにも加わっておりますけれども、そこに書いてあるのでは、いわゆるソ連製の、あるいはソ連軍が持っておる装備、これが入っています。  ですから、いままでことばとして、仮想敵国は考えていない、あるいはサハリン等の、あるいは三矢作戦計画では北朝鮮の地域、それが仮想敵国ということばを使っておって、それは適切でないということになったのでありますけれども、訓練の実際で、演習部隊が相手にする訓練の対象になっておるのは、これはもともとソ連の兵器である。それがイランへいわゆる援助なんかで出ていっていることはあり得るでしょうけれども、本来、ソ連の兵器の性能ですね、あるいはソ連の兵器を対象にしているということは、これはもう明瞭だと思うのですが、たまたま一つ軽戦車が入っているという問題じゃないわけです。そういう点で、これは演習ですから、敵の火器の能力を、たとえば演習の戦力点数を統裁官がつける場合にも、その能力というものを前提にして審判というものはやっていくわけですから、そういう点になれば、具体的には特定の国、ソ連を相手にした、あるいはソ連の装備を前提にした演習をやっておるということになるわけですから、いままでの想定の中でちょっとことばが出てくるという問題ではなくて、これは非常にゆゆしい問題だと私は思うのですが、ソ連の装備を前提にした編成を組んで、それに対して演習をやっているというのは、特定の国を相手にして実際の演習をやっている、こういうことになると思いますけれども、いかがでしょうか。
  303. 久保卓也

    ○久保政府委員 仮設敵あるいは対抗部隊が特定の国、すなわちソ連であるというふうにおきめいただきたくないわけであります。そこで、自衛隊が侵略に対処する場合に、相手方がどの程度のものであるか、ある程度想定をいたしまして、その場合に応じた訓練、演習をやるわけでありますが、その場合に、たとえば装備の近代化されました機械化部隊、それから自衛隊の装備とそれほど変わっておらない普通科、歩兵の部隊、これと歩兵の師団、この二種類を設定をして考えまして、そこで近代化された部隊を想定しました場合に、もちろんアメリカもありますし、ソ連その他もありましょう。そういった場合に、ある種の対抗部隊をつくる場合のマキシマムの装備、つまり近代化された場合のマキシマムの装備がどういうものであるかということを一応の基準として考えるわけであります。そこでその基準から、現実に演習をやる場合にはどういうものをどの程度削除するか、これは相手の国をどこであるということを想定しての上ではありませんで、こちらの装備も考えながら特定の部隊をつけ加えたり減らしたり、あるいは装備をつけ加えたり減らしたりということで、あくまでも基準基準でありまして、マキシマムのそういったものを訓練一つの手段として考えているにすぎない。  これは、私は単に答弁でこう申し上げているだけではございませんで、この訓練資料「演習対抗部隊」というものをつくりました場合の指示がございまして、これは簡単でありますから、二、三読ましていただきますと、「訓練資料「演習対抗部隊」起草に関する細部指示」という中に、一つは「起草の目的」といたしまして、「教育訓練に使用する対抗部隊(主として師団以下)の編制・装備及び戦術・戦法等について明らかにするため、「対抗部隊」を改定する。」、そしてその中身は何だということになりますと、「対抗部隊は甲、乙の二種とし、その編制・装備については、諸外国の師団等の編制・装備及び米軍教範「対抗部隊」(六六年版)を参考とする」、こういうふうに書いてありまして、もともとソ連のものを基準にして対抗部隊をつくるということではございません。いろいろな装備を考えながら近代化された機械化師団を一つ基準考える。その場合に、ソ連の装備がきわめて近代化されておりますので、多く取り上げられておるということでありましょう。
  304. 東中光雄

    ○東中委員 私が言うのは、たとえば対戦車隊で百二十ミリ重迫撃砲をわざわざこの仮設敵部隊の装備にしている。しかし実際には百七ミリの重迫撃砲である。訓練をやる場合に百七ミリの装備を相手にしたのではぐあいが悪いので、実際にないのだけれどもわざわざ百二十ミリに想定をする。しかもそれはソ連が持っておるソ連圏の装備である。こういう形で、私がいま指摘したこの仮設敵部隊編成の中の重要部分の装備というのは、全部ソ連ないしソ連圏の装備になっているということになれば、いま局長が言われているような訓練資料の中でどういう説明をしておろうと、それは第一見せないからいかぬのだけれども、あらかじあ要求したのだけれども見せなかったから、そういうことを書いているということは私は知りませんけれども、しかし、どういう説明をしようと、わざわざソ連の装備を仮設敵部隊の装備にするというのは、これは明白にソ連軍との戦争を前提にした演習ということにならざるを得ない。演習をやる上で百二十ミリでなければ、百七ミリでは演習ができないというふうな性質のものでは私はないと思うのです。それをわざわざ百二十ミリにしているということは、実際にソ連を演習の相手として、そういう装備を持ったものに対する、あるいはソ連軍に対する演習をやっているということになるわけです。  長官、これば局長の技術的な説明よりも、わざわざそういうふうに書いているということを、きわめて常識的に考えればいいことだと私は思いますが、どうお思いになりますか。
  305. 山中貞則

    山中国務大臣 あなたの御質問の意図されるところは何かよくわからないのですが、演習というものは絶えずやらなければならぬのだし、装備をばく然と持ってぼんやりめしを食わしておくわけにいかぬのですし、やはり自分の国土、民族の生命、財産というものを守るためのいろいろな演習は、陸においても、空においても、海上においても、あるいはアメリカの潜水艦を一応仮想敵の形にして、そして日本側がそれを索敵したりあるいは攻撃したりするような演習もするのでしょうし、演習の上でたまたま装備がソ連のみが持っておるものが入ったからといって、やはり日本よりかすぐれた——いまのは陸上の演習ですから、陸上のすぐれた破壊能力ないし威力を持つ兵器を持つ部隊を相手にした場合を想定して演習をすることが、それがソ連に対する敵国扱いとか、仮想敵をソ連に据えて自衛隊があるのだというものとは違うので、演習はいろいろな形でやってみていいんじゃないかと思うのですが、それはいかぬですかね。
  306. 東中光雄

    ○東中委員 あなたは軍隊の経験があるのかどうか知りませんけれども、アメリカの潜水艦相手に演習をやっている。それはそのとおりでしょう。しかし、そのときにアメリカの潜水艦の能力を想定してやるんじゃなくて、ソ連の潜水艦の能力を想定してやっているということになったら、それは問題でしょう。いまここでやられていることは同じことなんですよ。相手にしている兵器は、これは七師団演習の場合は、五師団の迫撃砲二門なら二門、実際にやっているのは百七ミリである。ところがそれを百二十ミリに想定をしている。わざわざソ連の兵器に想定をして訓練をやっている。ここを問題にしているのです。私は何も演習するなとは言っているのじゃないのです。やったってしょうがないと思っています。それが仕事なんだからやるかもしれません。しかしその場合に、わざわざ実際にあるものと違うソ連の兵器を想定してやっておるということがこの説明の中で出てきている。これは初めてです、こういうことが明らかになったのは。それはまさにソ連軍を想定して、実際にそうではないものを相手にしながら想定してやっているのじゃないか。これは事実そうなんですから、そうしたら、特定の国の装備、編成を前提にしてやっているということになるじゃないですか。特定の国を相手にしないんだということは、これは国会で何べんも言ってきた。その点で長官、どう思われるかとお聞きしているので、答えをそらされたらいかぬと思うのです。
  307. 山中貞則

    山中国務大臣 いや、そうしてないですよ。日本防衛は専守防衛であって、外国を攻撃するものではない。脅威を与えるものでもない。国際紛争解決の手段に使用するものでもない。しかしながら、日本がもし攻められた場合において自分たちはどのように戦うかという場合においては、あうゆる場合を想定しなければならぬわけですし、いまのは、たまたまそういう装甲師団と申しますか、そういう機械化部隊というものの演習でしょうけれども、そうでなくても、あるいはまた水ぎわでそれを退けなければならない場合において、われに数倍する舟艇あるいは艦載砲、あるいは上陸軍というようなものを、外敵を迎え撃つ場合の想定演習などというものも当然しなければならぬ。それが専守防衛だと思うので、日本の国内に、相手のどこの国であるかわかりませんが、上陸をしてきた最もおそるべき敵が装備しているものを、各国いろいろなすぐれた兵力があるならば、そういうものを想定してこういう演習をするというのは、何もそれが自衛隊がどこかの国を仮想敵にしてやっているということとは直接には結びつかないことであって、演習そのものはいろいろな場合の想定をする必要があると私は思うのです。これは実は私のほうはしろうとで、あるいはそう言っていることが間違いなのかもしれませんが、私は、演習というものはいろいろな場合を想定して演習するのがほんとうだと思うのです。
  308. 東中光雄

    ○東中委員 いろいろな場合を想定しているのではなくて、仮設敵部隊の装備はこういうものとしてやっている。その組み合わせばいろいろな場合があるから、まさにあなたの言われるように、組み合わせばそのときによって、演習の規模によっていろいろ違う。そのとおりです。しかし装備自体は、ソ連の装備を前提にしてやっている。特定の国の軍隊の装備を前提にしてやっている。これはまさに特定の軍隊を実際において仮想敵にしていることじゃないですか。そこを言っているわけです。
  309. 山中貞則

    山中国務大臣 それは、ソ連のほうがこの問答を聞いたら、おそらく笑い出しちゃうんじゃないですか。とても私どもが太刀打ちできるようなはずないのであって、ソ連なんかを仮想敵なんかにして自衛力を育てるのは、それはとてもできないことですから。ただ、万々が一、日本の国土というものがじゅうりんされるという場合においては、いろいろな各国の装備しておるものとか、考えられる近代戦というものを、自衛の範囲内において自分たちがどのような戦闘が展開できるだろうかということをやっていることの一環にすぎないのだ、私はそういうふうにとるのですけれども、どうしてもそういうふうにとらなければいかぬのでしょうか。
  310. 東中光雄

    ○東中委員 いままでの論議で、たとえば四十三年の先ほどちょっと引用した国会論議を見ても、特定国を対象にするような演習、訓練、こういったものは仮想敵国を持つことに通じていくので、演習といえどもそういうことはやらない、いたしませんということになっているわけです。しかし実際、いままでこの仮設敵部隊の装備については、たまたま資料がなかったからだれもわからなかったわけです。見てみれば、こういう形でソ連の装備が仮設敵部隊になっている。こうしなければ演習できないというようなものでもない。実際に仮設敵部隊として動いているのは、そうでないもので動いているのだから。それをわざわざそういうふうに想定するというのは、観点がそこへ据えられているということで問題になるわけです。  こういうことをやらなければ専守防衛自衛隊訓練が、いま長官の言われるように、とてもソ連に及びもつかぬというのだったら、なぜわざわざそれを想定するのかということになるわけです。これはやめるべきだ。いままで言ってきた経過からいえば、国会答弁からいけばこれはやめるべきだ。なぜわざわざ百二十二ミリというやつを想定にしなければいけないのか。それで訓練をするわけです。それは自衛隊員は百二十二ミリのりゅう弾砲を相手にして戦う、それはソ連の装備であるということは知っている。当然そういう方向へ向かって、ソ連を仮想敵国にしてやっていくということになる。私たちは、仮想敵国を持たないということを政府が言うてきたのだから、そしていままで国会で言うてきたことからいえば、これはそれと矛盾するということを言っているのであって、なぜ、わざわざソ連の装備のものに、演習をやっているときに、実際に相手方、仮設敵側が持っているのはそうでないのに、そういうふうにやっているのか。
  311. 山中貞則

    山中国務大臣 言おうとしておられることもほぼわかります。わかりますが、しかし、日本がどこかの国を仮想敵にして連日連夜練摩が要るというようなものじゃないので、やはり自分たちの自由と独立というものを守るため、最悪の場合に自分たちがどのように戦い得るかという、そういう専守防衛の中の演習をやるのですから、自分たちよりもすぐれた装備の場合は想定しないで自衛隊の装備しているものだけを相手にしてやっているのじゃ、これはやはり上達もしないでしょうし、やはり自分たちよりかすぐれた装備を持っておる国はたくさんあるでしょうから、そういういろいろなものを、仮想の考え方の、演習上の、図上の——持ってないのですから、図上の実際上の配置というものをしておきながら演習をする、これは私はふだんの訓練の正常な姿であって、それがソ連に敵意を持つとか、あるいは日本の自衛力はソ連に備えてあるのだとかというような意味にはつながらないのであって、どのように訓練するかという問題のワク内だ、私はそう思うのです。
  312. 東中光雄

    ○東中委員 あのね、百二十ミリの重迫撃砲と百七ミリの重迫撃砲と、これは装備が違いますよ。そして一方はソ連が持っている装備だけれども、百二十ミリを想定することと百七ミリを想定することで、一体演習にどれだけの違いが起こるのですか。あるいは、たとえば12H百二十二ミリりゅう弾砲と百ミリと、これはどれだけ違うのかということになれば——これは編成そのものについては、たとえば空挺連隊があるかないかということ、空挺連隊がある部隊を想定して訓練をやることが必要な場合もあるだろうし、そうでない場合もあるだろう。空挺連隊というのは、韓国では持ってないかもしれない。そういうことを議論しているのではないのですよ。この百二十二ミリと百ミリとりゅう弾砲の装備が違うことによって、一体訓練にどういう違いが起こるのか。起こりはしないのですよ。わざわざソ連の装備を出してきて、そしてここへあげているということに私は問題があると言っているのです。そういうものを仮想敵にしているわけですよ。実際に演習をやるときにあるのは、百二十二ミリじゃなくて百七ミリでやっているのだから……(「仮定なんだからそれでいいじゃないか」と呼ぶ者あり)だから、そういう特定の国を仮想する、仮定することが、それでいいのではないかというのではなくて、それが問題になっているのです。仮想敵国にするというのは、まさに仮想するわけですよ。
  313. 山中貞則

    山中国務大臣 私は仮想敵国と言った覚えはないのですよ。それはりゅう弾砲によって到達距離、破壊力、それは違いますから、したがって、それに対して展開するときに、火砲の威力の到達距離、破壊力、そういうものに対応する展開のしかた、そして展開をしてそれに対応する、劣勢な火器をもってどのように対応して戦闘できるかというようなことをやっているわけでしょうから、そのことがソ連を敵視しているなんということには全然つながらないことであって、演習上にはいろいろな場合を想定して、図上作戦なり、あるいはまた実地の演習なり、そういうふうなものをやるわけですから、そのこと自体が、私は、ソ連を敵国軍として想定しているものではない、そう思います。
  314. 東中光雄

    ○東中委員 仮想敵国にしておるということの論拠で、たとえば三矢作戦計画では、あの図上演習では、はっきりと北朝鮮あるいはソ連軍を仮想敵にしておった。そういう問題が今度は日常的にやられている訓練の中では、これは中隊とか連隊単位ではなくて、あるいは方面隊とまでいかないまでも、相当大きな七師団の演習とかヘリボーン演習でそういう体制をとっている。そこが問題なんです。  だから、防衛局長、これは、こういう装備にしなければ、百二十二ミリでなければ百七ミリではぐあいが悪い、わざわざソ連のそういう装備を仮想敵としてあげなければいけないという実質的な根拠というのをお聞きしたいと思います。
  315. 久保卓也

    ○久保政府委員 この編成、装備からいきますると、比較的重装備になっております。したがいまして、自衛隊の装備に比べれば、ただいま長官答弁されましたように、到達距離にしましても、破壊力にしましても相当違ってまいります。そこで演習のときには、もちろん御存じのように審判官がいまして、この情勢のときにはどちらが有利という判断をしなければいけません。そうするときに、その装備はどの程度のものをどの程度持っているかということが一つ基準になるわけで、その場合に、演習でありますから、相手方の装備が劣弱な場合もありましょうし、非常に優秀な場合もありましょう。非常に優秀な場合に、したがってこちら側が非常に苦しい場面に遭遇した場合のことも演習のうちに考えなければいけない。いつもイージしな場合だけが演習の対象であってはいけないということで、対象がたまたまきつい場面をとった。これはあくまでも、前に申しましたように基準でありますから、そのとおりを常にやるということではありません。基準から下げる、しかし最大でもその程度までであるということであります。  したがいまして、私どもとすれば、この仮設部隊のそのスタイルといいますか、全般の特徴をほんとうはとらえていただいたほうがよろしいわけで、個々の兵器議論されますとおかしなことになるので、たとえば、百二十ミリにかえて百七ミリでもできるじゃないか、こうおっしゃいますが、もし百七ミリでここに書かれて、いま東中議員の論法をとれば、仮設敵あるいは仮想敵国が自衛隊になり、米軍になり、あるいは韓国軍になってしまうと、これまたおかしいわけであります。したがいまして、個々の兵器をとってどうこうというのは適当ではないんではないでしょうか。
  316. 東中光雄

    ○東中委員 個々の兵器をたまたま一つか二つを言っているのではなくて、ここで出されているのは、しかも北海道でやられているこの七師団演習にしろヘリボーン演習にしろ、非常に大きな、特にヘリボーン演習なんというのは、自衛隊始まって以来の大きな演習でしょう。そういう演習の中で、仮設敵部隊の主要な装備はほとんどソ連の装備でやっている。(「それでいい、それでいい」と呼ぶ者あり)これは自民党の諸君の中には、いま言っているように、ソ連を仮想敵にやったらいいんだ、こういう考え方の人がいるわけです。それが実際にやられている。そうだとすれば、いままでの国会答弁と全く違うじゃないか、このことを言っているわけです。現に自民党の不規則発言ですけれども、そう言っているじゃないですか。それでいいんだ、そうするんだと言っている。それに基づいてやっているのじゃないですか。どうです。
  317. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは演習でありますから、軽い演習もあれば、中くらいの演習もあれば、非常にきつい演習もあります。常に同じような、たとえば自衛隊の装備でもって、それを基準にしてお互いが対抗演習をやっているというだけではないわけで、外国がわが国に来るかもしれないという、そういう想定のもとにやるわけでありますから、特定の国ということではありませんで、きつい場合もあればゆるい場合もある、いろいろなケースを考慮しながら、最大の場合でもこういった基準であるというにすぎないわけであります。
  318. 東中光雄

    ○東中委員 外国の軍が来る場合ということを前提にしている。しかし、そこに来るという部隊を、ソ連の装備の部隊にしているところに問題があると言っているわけです。     〔「問題ないよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  319. 藤尾正行

    ○藤尾委員長代理 静粛に願います。
  320. 東中光雄

    ○東中委員 委員長、のべつまくなしのこの不規則発言をやめさしてくださいよ。審議妨害じゃないですか。(「質問がおかしいのだよ」と呼び、その他発言する者あり)のべつまくなしに言っているじゃないですか。     〔「質問がおかしいのだよ、第一」と呼び、その他発言する者多し〕
  321. 藤尾正行

    ○藤尾委員長代理 静粛に願います。
  322. 東中光雄

    ○東中委員 審議妨害をやめさせなさい。
  323. 藤尾正行

    ○藤尾委員長代理 静粛に願います。
  324. 東中光雄

    ○東中委員 不規則発言をやめさせてください。——議事妨害をとめてください。言おうと思えばこういうことで……。
  325. 藤尾正行

    ○藤尾委員長代理 静粛に願います。
  326. 東中光雄

    ○東中委員 問題は、こういった審議妨害のような発言によって質問を押えようなんというのは、まことに自民党の諸君もさもしいことだといわざるを得ぬわけであります。  私はいま、具体的に初めて出されてきた問題について聞いているわけです。それの評価もわからない。防衛局長はさすがにわかっていらっしゃるようでありますけれども。これは実際上の仮設敵部隊を、ことばでは言わないで事実で、演習の中で、ソ連軍を相手にした、仮想敵にしたそういう訓練をやっている。いままでの国会答弁とも明らかに矛盾します。一般的にこういう基準を設けてやっておるということを先ほど言われておりますが、これは一つ基準だということ。いつもそれでやっているわけじゃないが、基準だということを言われておるので、そういう特定の国の装備を基準にしてやっているということが非常に問題なんだということを申し上げておくことと、それから先ほど言われた訓練資料を見せていただいた上で、時間がありませんので、さらにこの問題について機会をかえて質問したいと思います。  それで、四次防の大綱の中で、「防衛力の向上については、とくに周辺海域防衛能力および重要地域防空能力の強化ならびに各種の機動力の増強を重視する」としていますが、周辺海域の防衛能力を強化すべき周辺海域というのはどの海域か。
  327. 久保卓也

    ○久保政府委員 まさにこの委員会で問題になりました数百海里という問題であります。本土周辺数百海里の範囲内の問題であります。
  328. 東中光雄

    ○東中委員 その問題については、私が昨年の三月三十日に予算委員会質問をしました。そして防衛局長は数百海里ということを言われた。しかし、そのときの答弁は、抽象的だから具体的にきめますということを言っているわけであります。江崎防衛庁長官も言っています。久保防衛局長はこう言っている。「おおよそ日本列島の周辺について数百マイルあるいは五、六百マイルということであります」「具体的な周辺海域というものは今度の四次防の検討の過程において検討してまいりたいと思います」。江崎長官は、「そのあたりはいま御説明しておるように、もうちょっと時間をかしてください。具体的に検討してまいる予定でおります。具体的にきめたいと思っております」。具体的に言ってください。
  329. 久保卓也

    ○久保政府委員 国会議論が必ずしも私どもが思ったようにならなかった面は、この周辺海域のことばの中に航路帯を含めるかどうかということが、あまり明確にならないまま議論した場合もございます。常にではありませんが、そういう場合がございます。そこで、周辺海域ということばで私どもが事務的に考えております場合には、やはり数百海里ということばが適当であろう。で、航路帯を設ける場合、これはたとえばマラッカ海峡とかインド洋とかいう問題もありますので、これは明確にしたほうがよろしいのではなかろうかということが頭にあったわけであります。ただ、そのころの答弁で、当時の江崎長官が六百海里ということを言われたことは確かであります。私は、長官には数百海里ということばがよろしいと申し上げたのですが、長官がたまたま六百海里ということを言われたわけで、そこであと考えてみましたけれども、やはり周辺海域という場合に、これを具体的な数字、五百とか六百とかいうことに特定するのはやはり適当ではないんじゃないかということで、今後も数百海里でまいらせていただきたい。  しかしながら、航路帯を設定する場合、常に設定するとは限りませんけれども、設定する場合に、千マイルがいいのか、八百マイルがいいのか、あるいはいまは千マイルの範囲内でと申しておりますが、以前であれば千三百海里という説もございました。そういうようなことで、この航路帯については、誤解を避ける意味におきましても特定の長さにしたほうがよろしいのではないかということを考えております。山中長官もこの問題に関心を持たれて、自分で直接話を聞いて検討したいということを言っておられますので、なお今後の検討課題になっております。
  330. 東中光雄

    ○東中委員 あなた、ここの委員会審議云々の前に、去年の段階で、先ほど言ったように、「おおよそ日本列島周辺について数百マイルあるいは五、六百マイルということであります。ただし、たとえば日本海でありますとかあるいは東シナ海でありますとか北のほうでありますとか、そういうところはおのずからまた幅が狭まってまいるわけでありまして、具体的な周辺海域というものは」今後検討してまいります、もう少し時間をかしてくださいというのが江崎長官のそのときに言われたことばであります。それから一年余りたっているわけです。いま言われていることは、このときの国会答弁から一つも進んでいないじゃないですか。このときに言われている、たとえば、日本海でありますとか、東シナ海でありますとか、こういうことについては少し狭まってくる、それは具体的には検討を進めます。検討されたのなら、いまここでその結果を示さるべきであるし、検討されていないのだったら、そう答えてもらえはよろしい。
  331. 久保卓也

    ○久保政府委員 日本海とか東シナ海とかいうのは、比較的そうむずかしいわけではございませんが、つまり距離が短いからでありますが、南のほうについては五、六百海里ということを申したことも、その答弁にありましたように、確かにございます。しかしその後、やはり特定の数字を周辺海域ということばで申すのは適当ではなかろう。繰り返しますけれども、ただし航路帯を設定する必要がある場合には、こちらのほうは検討する必要があるであろうというのが今日の状況であります。
  332. 東中光雄

    ○東中委員 このときの答弁では、当時の江崎長官は、「領空、領海、その周辺を含むわけです」「これも後刻四次防策定のときに具体的にお示し申し上げたいと思います」。四次防策定がされたときには具体的に何も示されなかった。これは全く国会の論議はたなざらしになっているということであります。議事録にはっきり載っています。「四次防策定のときには具体的にお示し申し上げたいと思っております」、こう答えているのです。これは私の質問に対して答えているのです。しかし、四次防策定の中で大綱のあと出されたものには、何も出ていないじゃないですか。選挙がありました。だからそういう機会もなかったということもあるでしょう。少なくとも策定された今日、その四次防に基づいて防衛二法を出しておられるのですから、具体的にお示し願いたい。これは前の防衛庁長官答弁でありますから、当然継承されたはずの新防衛庁長官お答え願いたいと思います。
  333. 山中貞則

    山中国務大臣 江崎大臣の間にもう一人増原長官が入っておりまして、その問題は実は直接継承しておりませんが、しかし、周辺海域並びに航路帯というものについては、ただいま久保局長が申しておりましたように、また先日の委員会でも、数百海里というのは周辺海域のことであって、千海里の場合はそれは航路帯の限界というふうに言っておりますから、まあ少しの違いはあっても、ほぼそういう線で考えているということになっているんじゃないでしょうか。しかしその問題は、たとえばマラッカ海峡議論なんかが一部ありましたから、私になってそれは明確に否定をいたしました。それはたしか楢崎委員大出議員でしたか、どなたかの質問に対して答えておきましたけれども、大体明確になりつつあると思います。
  334. 東中光雄

    ○東中委員 四次防策定のときに具体的に示します、こう言って何も示されていないということを指摘しているのであって、ここで質問しても、そういう経過は明らかにされていない。防衛庁というのはその場のがれでやっていくのかということにならざるを得ぬわけです。四次防策定前であったから、四次防のとき四次防のときということで、策定のときに示します、こう言ったけれども、そのままになっておるということを私は指摘をしているわけであります。  そこで最近の「防衛の実態防衛庁ビッグ4との対談」、小谷秀二郎氏の本でありますが、これで、石田海幕長がこういうふうに言っているのです。「アメリカが日本に対して最も期待しているものは何かと言ったら、やっぱり対潜能力でしょうね。その対潜能力を含む三海峡の防衛なんていうのは、わが国に対して非常に期待しているものの一つでしょうね。というのは、三海峡は戦略態勢からみても、非常に大事な出口であり入口でありますから、わが国がたまたま与えられた極めて有利な地形を利用して、対潜作戦の一つである海峡防衛に重点をおいてやるということは、共同作戦の実を挙げる上からいっても大事なことだろうと思います」、こう言っているわけです。アメリカの強い期待、それに応じて共同作戦の実をあげる上からいって、三海峡防衛は非常に大切なんだ、こう言っていますが、いわゆる防衛海域というのはこういう考え方でやっておられるのかどうか、防衛庁考え方をお聞きしたい。
  335. 久保卓也

    ○久保政府委員 一番最後に防衛海域ということばをお使いになったように思いましたが、防衛海域ということばの問題もありますけれども、この場合はそれは直接関係ございません。すなわち、三海峡については、わがほうの監視能力というものを十分に持っていて、どういう艦艇がどういうふうに通るかというような情報能力等は十分に持つ。それに対して、またさらに別途、いわゆる対潜能力、つまりASWの能力というものが要請されている。これは、もちろん専守防衛日本としてきわめて必要でありまするし、間接的には米国にも寄与するであろうということはいえようかと思います。
  336. 東中光雄

    ○東中委員 対潜能力を含む三海峡の防衛、これはわが国に対して非常に期待するものだ、そういうアメリカの意向の認識の上に立って、しかも三海峡はアメリカの戦略体制から見て非常に大事な出口であり入口である。どこからの出口であり入口であるのか、お伺いしたいわけです。  そして、わが国がたまたま与えられたきわめて有利な地形を利用して、そして海峡防衛に重点を置いてやる。これは制服の人が言っていることでありますが、防衛庁としてこういう考えでおられるのか。シビリアンコントロールなんですから、防衛庁の最高の——最高じゃありませんが、総理大臣に次ぐ責任者である長官にお聞きしておきたい。
  337. 山中貞則

    山中国務大臣 それは、アメリカが言わなくても、自分たちの海峡は自分たちで監視、警戒、守るというのはあたりまえのことではないでしょうか。
  338. 東中光雄

    ○東中委員 宗谷海峡もそうですが。
  339. 山中貞則

    山中国務大臣 宗谷はそうやと言うわけにはいかぬようですな。津軽、対馬はわが国の国土内における海峡ですが。ただアメリカから見れば、あるいはその三海峡の中には宗谷海峡が入っているのかもしれませんが、わが国の周辺海域ということにおいて、何もソ連領というところまでを日本側がやるわけじゃありませんので、その意味日本側の守備範囲というのは、いつも言っておりますように、おのずから専守防衛の範囲に限定されるということであります。
  340. 東中光雄

    ○東中委員 三海峡防衛の三海峡の中に宗谷は入るわけでしょう。三海峡防衛と言っている場合に、それは宗谷海峡が入るのですね。
  341. 久保卓也

    ○久保政府委員 一番の重点は、いま長官申されましたように、津軽、対馬ということでありますが、三海峡という意味では宗谷も入ります。しかし、どの程度、どういうふうに防衛するかということは、わが領土の端に当たりますので、津軽とか対馬とおのずから違った面が出てまいります。
  342. 東中光雄

    ○東中委員 三海峡防衛というのは、何も石田海幕長が初めて言っているんじゃなくて、江崎長官当時にも三海峡防衛ということを言っています。対馬と津軽が中心で、宗谷はつけ足しだなんて言ってないのです。三海峡ということで言っておるのです。ということは、いま読み上げた文章によっても明白でありますがへ石田海幕長の言っていること自体、防衛庁としてそういう考え方でおられるのかどうかということを聞いておきたいわけです。
  343. 久保卓也

    ○久保政府委員 具体的なことばそのものが、防衛庁考え方と同じであるかと言われると困るわけであります。ただ、私どもとしましては、津軽あるいは対馬の両海峡はきわめて重要な海峡であり、さらにそれに次いで宗谷も重要である。しかしながら、地勢的な関係上、おのずから防衛のしかたというものは異なってくる。しかし私どもは、日本防衛の場合にはその三海峡について配慮しなければならないということは、そのとおりだと思います。
  344. 東中光雄

    ○東中委員 昭和四十七年三月三十日の衆議院予算委員会における江崎長官答弁では、「わけても沿岸海域、三海峡、こういった重点的なところに海の力を注いでいくというふうにお受け取りを願いとうございます」。これは海幕長の言っていることと全く同じなんです。わけても三海峡——宗谷は別です、二海峡、宗谷もちょっと関係がありますというようなことを言ってない。長官の言われるように、宗谷はそうやとは言えないというふうなことは言ってないわけです。その点を……。
  345. 久保卓也

    ○久保政府委員 一般論的に言った場合に、三海峡を防衛するということばは適当かと思います。しかしながら、東中先生のように、先ほどの装備とソ連とを結び合わせて非常に厳密に御解釈になるということでありますると、私どもも答え方を慎重にしなければならないということになります。
  346. 東中光雄

    ○東中委員 厳格にお聞きしていきたいと思います。  問題点を別の角度からお聞きしますが、昭和四十六年十二月十七日の参議院決算委員会で、潜水艦探知機について、LQO3は多芯ケーブルを使用して、昭和四十三年に津軽海峡に二基設置している。それだけでございます。そのほかに、潜水艦探知機はミルとヘラルドとCCHがある。そしてミルは磁気による音波の探知で、ヘラルドはアクチブによる音波の探知だ。CCHはパッシブでございます。これは東京湾とか佐世保方面に使用しておる、設置をいたしております。こういう答弁をしているわけですが、潜水艦探知機はこの四種類だけなのか、そのほかにもあるのかどうかということ。そうしてこのときの答弁はそのままいまも維持されるのかどうか、これをお聞きしておきたい。
  347. 久保卓也

    ○久保政府委員 探知機材につきましては、いまおっしゃいました種類でありますが、LQO3につきましては、その後ワンセットを対馬海峡に設置しているはずであります。
  348. 東中光雄

    ○東中委員 昭和四十五年七月二十五日から四十六年十一月三十日までの間八回にわたって、大洋海底電線株式会社、OCCから総額二十七億三千三百三十六万七千円、総量四千二百トンの同軸海底ケーブルを購入している事実は、これは防衛庁も認められて、それを前提にして、このケーブルはどこに布設されたか、何の目的で布設されたかということについてははっきり言われなかった。その点について、これはどういうように使っているかということをお聞きしたい。
  349. 久保卓也

    ○久保政府委員 将来、潜水艦探知機材の性能向上ということを考慮に入れまして、現在の場所よりもさらに適切な場所にこれを布設する、いま個所数は非常に少ないわけでありますので。そういう関係もありまして、設置場所についての調査研究を行ないたいということで、場所につきましては、対馬あるいは津軽その他の重要港湾の付近に設定をしておるわけで、具体的な場所については御容赦を願いたいと思います。  その任務としましては、そういった将来の性能向上に対処しまして、海水の温度でありますとか、音波の伝搬状況でありますとか、雑音の状況、水深、それから塩分の状況、そういったような具体的なデータを調査する、そういった任務を持つ機材を設置することになっております。
  350. 東中光雄

    ○東中委員 ここでは音波の伝搬性についても調べるということでありますが、音波の探知そのものはやらないというわけですか。これは音波の伝搬性についてもやる、潮流についてもやる、水温についてもやる、それから塩分の度合いについてもやる、そして同時にいわゆる聴音もやるということではないのですか。
  351. 久保卓也

    ○久保政府委員 いわゆる聴音装置、つまり一般的にいえばソーナーということでありますが、これは将来設置をする、そのための準備ということでありまして、そのための必要ないろいろな性能、その水域におきます、あるいは海底におきます各種の状況データ、そういうものを集めることになっておる。具体的な器材そのものは私ちょっと存じませんけれども、目的としてはそういうふうに聞いております。
  352. 東中光雄

    ○東中委員 昭和四十六年五月三十一日付で、海上自衛隊大湊地方総監から青森県知事あてに道路占用許可申請書が出されて、同年六月三日に道路占用許可書が出されております。このときに直径五十五ミリのケーブル布設ということが書かれていますが、このケーブルは何のケーブルですか。
  353. 久保卓也

    ○久保政府委員 承知いたしておりません。
  354. 東中光雄

    ○東中委員 防衛庁がここへ布設をしたこと自体は知っておるわけですか。
  355. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは調べてみればわかると思いますけれども、私、いま承知いたしておりません。
  356. 東中光雄

    ○東中委員 それでは角度を変えますが、最近、昭和四十八年四月十日付で、海上自衛隊大湊総監部防衛部長の名前で小湊漁協組合長あてに、裏内海岸水域における工事について、電纜布設がえ及び埋め戻し工事等についての承諾申し入れともいうべき文書が出されておりますが、これは御承知ですか。
  357. 久保卓也

    ○久保政府委員 津軽には、先ほど申し上げましたようにLQO3が入っているわけでありますが、それが古くというよりも、オーバーホールをする必要がございまして引き揚げたそうであります。そこで、さらにそのLQO3の設置を変えるかどうか、あらかじめ海底のいろいろな状況を調べた上で設置をしたいということで、その観測機材の設置について地元の漁業組合に了解を求めているというふうに聞いております。
  358. 東中光雄

    ○東中委員 LQO3はすでに引き揚げたのですか。
  359. 久保卓也

    ○久保政府委員 私が聞いている範囲ではそう申しておりました。
  360. 東中光雄

    ○東中委員 昭和四十六年の五月に陸上に設置をした部分は、ここに写真がありますけれども、埋めてその上に防衛庁という標識がずっと立っている。はっきりとこの写真にも出ておりますが、「防衛庁」というのが立っている。これは約一・五キロにわたってずっと布設されたままです。それを知りませんか。
  361. 久保卓也

    ○久保政府委員 私は承知しておりませんけれども、引き揚げたのは海底部分でありまして、海底にありました機材とケーブルを引き揚げたのであって、たしか陸上部分は変わっていないようにも聞いたと思います。
  362. 東中光雄

    ○東中委員 海底ケーブルの補強と称していま新たに布設しょうということで、当該漁協が反対をし、青森県の漁協連合会が反対をしている。そういう問題が起こっていることは知っていますか。
  363. 久保卓也

    ○久保政府委員 承知をいたしておりますし、心配いたしておりますし、地元にまた御了解を得ようと努力しているようであります。
  364. 東中光雄

    ○東中委員 そこまで知っておって、そして四十六年に入れたことを知らない。四十六年の五月三十一日付の道路占用許可申請書、そしてすぐに六月三日に許可されておる。しかもその使用年月は昭和四十六年九月二日から四十九年三月三十一日まで、まだ来年のことです。そして布設された分をいま布設がえをしようと思って心配をしているんだというふうに言う防衛局長が、この前に布設されたこと、それも知らない、そんなこと言えるのですか。
  365. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 ただいま防衛局長が申し上げましたのは、私の記憶では、四十三年の九月にLQO3がここに入れられております。約四年で大体オーバーホールの時期が参りますので、たしか昨年の六月にこのLQO3は引き揚げて現在一オーバーホール中でございまして、LQO3そのものは全くいま入っておりません。そのことを申し上げたわけであります。
  366. 東中光雄

    ○東中委員 LQO3のことを私は聞いているのではないわけです。四十六年五月三十一日に防衛庁が出しておる青森県知事あての道路占用許可願いによってケーブルを布設した。そのことについて聞いたら、LQO3のことを防衛局長は答えておる。それは装備局長によれば、もっと前の話だ、こう言っておるわけです。全然話が違うじゃないですか。
  367. 久保卓也

    ○久保政府委員 私があるいは誤解したかもしれません。いま漁業組合で問題になっていることについて御質問になったように思ったのですが、そうであれば、私どもはそれはLQO3のつけかえと申しますか、それの事前準備の問題でありまして、いまの道路使用の問題は、もちろんあったわけなんでしょうけれども、全然私は承知いたしておりません。
  368. 東中光雄

    ○東中委員 それでは、いま言われているLQO3の布設場所をはっきり言ってください。場所がはっきりすれば、いま言っていることとの違いがはっきりするでしょう。
  369. 久保卓也

    ○久保政府委員 そういったものを一般に申し上げる筋合いめものではないと思いますので、御容赦願いたいと思います。
  370. 東中光雄

    ○東中委員 道路申請許可願いは場所を示していっているじゃないですか。場所を示さなければ占用許可願いを出しょうがないじゃないですか。そしてまた、いま言っている最近の漁協に出してきている問題にしても、場所は特定してなければ、漁協に一体何を言っているということになるのですか。何かわからぬことを漁協に言っているということになるのですか。何という不誠実な答弁ですか。現に出しているじゃないですか。漁協に出しておって、それをここでは言えない。それが防衛庁国会審議に臨む態度ですか。
  371. 久保卓也

    ○久保政府委員 LQO3を設置しておる場所を申せとおっしゃいましたが、LQO3というのは聴音をする機材そのものでありますので、海底の適当な場所に設置をしてあるわけであります。そこで道路使用というのは、ケーブルが陸上部分のどこを通っているかという問題でありましょうし、あとは漁業組合との関係は海底ケーブルの問題であって、LQO3という特定の端末がどこにあるかということは申し上げにくい、こう申したわけであります。
  372. 東中光雄

    ○東中委員 電纜布設がえ及び埋め戻し工事をやるという場所を言っているのです。
  373. 久保卓也

    ○久保政府委員 政府委員のほうでは承知いたしておりません。
  374. 東中光雄

    ○東中委員 この場所、どの辺であるかということも全く知らない、そしてただ承諾してもらうことを希望しておる、そういう態度で臨んでいるわけですか。
  375. 久保卓也

    ○久保政府委員 この種の技術的なことは、通常の場合は幕僚監部にまかされておるわけであります。しかしながら、その問題が一般市民との間にいろいろな問題を生じた場合には、防衛庁内局としても問題を承知しておる必要があるということで、現在の段階では、大湊地方総監部で地元のほうといろいろ折衝しているということでありますので、私どもは問題があるということは了承しておりますけれども、具体的な細部のところまでについてはまだ報告を聞いておりません。
  376. 東中光雄

    ○東中委員 それでは本題に入りますけれども、昭和四十六年五月から百二十二日間にわたってのこの埋設工事がやられた。しかも、これは地元の人たちも参加をしています。そして、そこへ入れられたケーブルの太さは直径約八センチ、地元のその作業に参加した人の説明では、二寸七分ぐらいと手で形を示して言っています。作業中に隊員が話していたのでは、これで松前とつながった、こう言っています。そして、ことしから新たに一本を入れると言っている。こういう状態になっておる。内局は全然そういうことは知らないということ、そういう答弁をされるわけですね。
  377. 久保卓也

    ○久保政府委員 そうではありませんで、先ほどはしQO3のお話を申し上げたわけで、その前に御質問になりました一昨年の末の沖特でしたかでの御質問、それから決算委員会での御質問との関連で申し上げれば、それは先ほど申し上げたような海洋観測の機材を設置する、それは将来潜水艦の聴音装置を設置すべき適地をさがすための調査活動であるということを申し上げたわけで、それは津軽のLQO3とは別のことであります。
  378. 東中光雄

    ○東中委員 私が言っているのは、その問題と、そしていま現にやっておる問題と、あわせて言っておるわけであって、OCCから持ち込んだ、沖特並びに決算委員会で一昨年に問題になったケーブルは、まさにこの竜飛崎から少し下がったところのこの地域で、裏内という部落で作業をされた、そのこと自体ではないか、こう言っているわけであります。
  379. 久保卓也

    ○久保政府委員 他の地域と同様、ここにおきましても、そういったケーブルの設置が、いま申し上げた観測機材のために設置されているであろうことは想像いたします。しかし、それが何日間であったり、ケーブルの大きさがどうであったり、それは私どもの知っておるところではございません。
  380. 東中光雄

    ○東中委員 四十六年の五月三十一日に許可申請を出した。この四十六年の六月段階、あるいはそれからあとの百二十二日間の作業をやられた、これは事実あるわけです。そしてそれが引っ張り込まれたということについては、これは現場の人が、地域の人たちがみな見ているわけです。しかも、この漁協の人が見ているわけです。だから、LQO3の問題とは違って、時期的にいえばLQO3の問題はもっと前だといま装備局長が言っている。私が言っているのは、だからLQO3の問題ではなくて、四十六年の夏から秋にかけての作業の問題について言っているわけです。それについてはあなたは全然知らぬとおっしゃるけれども。
  381. 久保卓也

    ○久保政府委員 LQO3は別のことで、そこで海洋観測機材を設置するためにケーブルを布設する、こういうことは行なったろうと思います。それが四十六年の五月以降であったか、百二十二日間であったか、そういう具体的なことを存じておらない、事業そのものについては承知いたしておる、こういうことであります。
  382. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、小泊村の裏内という地域、問題の漁協のあるところですね。そこで一昨年そういう設置をやったこと、それは局長はいま、ありましたと言われたのですか。あったろうというふうに言われたですが……。
  383. 久保卓也

    ○久保政府委員 津軽海峡の近辺におきましてそういうことがあったろうと思います。ただし、場所が小泊村あるいは袋内という地名については、私ちょっと承知いたしておりません。
  384. 東中光雄

    ○東中委員 LQO3、具体的な潜水艦探知機の所在地は、その探知機の置かれている所在地は言われませんけれども、その引かれていることについては先ほど言われた。いまあなたの言われる観測機ですね、それの所在地は、これは特に隠しておかなければいかぬというようなものですか。
  385. 久保卓也

    ○久保政府委員 やはり将来の潜水艦の聴音装置を設置する場所ということときわめて密接な関連がございますので、これはやはりわが国の防衛上、あまり議論といいますか、公開の場所で議論すべき問題ではないというふうに思います。
  386. 東中光雄

    ○東中委員 ここで目撃されている事実によれば、五百人ぐらい乗れる大きな船が沖に停泊をして、そして三、四隻あるいは二、三隻の舟艇が出てきて、先ほど言った二寸七分ぐらいのそういう電纜を引いた。しかもその電纜は海底から引いて、それをずっと一・五キロ引き上げた。これは非常に重要であります。多芯ケーブルならば、上から埋設してきた分と途中でつなげばいいわけです。しかしこれはわざわざ海からずっと引き上げた。その作業に参加をしている。それを埋めたあとが先ほど言った写真に載っておるわけであります。これは同軸ケーブルを海に設置をして海底から引き上げた。そして調査室へ置いているということになると思うのですが、その点はどうでしょう。
  387. 久保卓也

    ○久保政府委員 海中にいまの測量機材を置くわけでありますが、そこからケーブルを引くわけでありまして、そのケーブルを引く場合には、自衛隊では今日「つがる」という艦艇を利用してございます。おそらく艦艇を見たというならば、その「つがる」であったろうと思いますが、ケーブルを引く関係上、技術的なことはよくわかりませんが、海中にあるその機材と陸上とを結ぶ必要は当然あろうと思います。
  388. 東中光雄

    ○東中委員 それではOCCからここへ持っていく——これは参議院で論議されたことをもう繰り返しませんけれども、「つがる」に積んで持っていった。これについては、ケーブル輸送について何回も打ち合わせ会議をやっています。自衛隊が入り、アメリカ軍が入り、そしてOCCの技術者が入って、そしてここでこの輸送についての打ち合わせ会議をやっています。昭和四十四年十二月十五日付のOCCの技術部第二技術課が出しておる文書がここにありますが、輸送するケーブルはSBケーブル・システム・ナンバー四、内容はLPAAP型ケーブルとAAP型ケーブルを一条としたケーブル約百五十トン、三条、輸送先は北海道函館、同松前、青森県大湊、またはこれらの周辺区域内の指定された場所、こうなっていますが、こういう作業をやられたことを、これは装備局長は知っているでしょう。
  389. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 ただいま先生のおっしゃいましたOCCの第何課とかいうのを、私は実は見ておりません。ただ、OCCは御承知のとおりアメリカのシンプレックスという会社と技術提携をしておりまして、またシンプレックスの親会社がたしかウエスタン・エレクトリックであったかと思いますが、いずれにいたしましても、この同軸のケーブルに、特に海洋観測調査用でございまして、日本ではほとんど経験がないということで、シンプレックスの技術というものはどうしてもOCCには必要だったと思います。  そういう意味で、従来からいろいろのそういう技術提携をやっている会社と同様に、現地の人たちが——現地というのはアメリカの本社でございますが、その人たちが来て、製造とか布設とかいう問題につきまして、技術提携上の応援をしたということは当然あり得ることだというふうに考えております。
  390. 東中光雄

    ○東中委員 それについては、自衛隊の市原一佐あるいは林一尉、これも出席をし、在日米海軍の参謀第三部のダリンブルという大尉も出席をして、そしてやっておりますが、そういう打ち合わせ会議をやった、その議事録もここにあります。そういう経過でやったことは認められますか。
  391. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 いま突然先生から御指摘を受けまして、何日、いつどういうような会議をやったか、この席でつまびらかに存じませんが、調べてみます。ただ、うちの関係者が出ましたということは、いま申し上げましたような、布設の点におきまして私どもにそういう技術が全くないというところから、会社関係者、アメリカ側の技術者、それぞれ全部関係者が集まってそういう会議をやったということは、やはりあり得ることだと考えております。
  392. 東中光雄

    ○東中委員 ここには、それぞれの出席者がみずからサインしたやつのコピーがあるわけですけれども、一九七一年五月七日、OCCの神奈川プラント工場でやっておる。  ここではっきりと申し上げておきたいんですが、装備局長は、そういうことはあり得ると言われた。だからこのやり方は、会社と防衛庁の市原一佐と在日米海軍の参謀第三部のダリンブル大尉も出席して、そういう形でやることは布設についてはあり得る、こういうように言われたんですね、初めてだから。ところが、これは布設だけでないわけであります。製造面について、この機械を製造するについて、ニッティングマシンというのをアメリカからOCCへ持ってきて、これでこの電纜の製造をやっている。そういう経過になったということは知っていますか。
  393. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 実は機械の名前、私、技術者でありませんので、またその機械が入ったということは、ちょっとこの段階で、申しわけありませんが存じません。調べてみます。
  394. 東中光雄

    ○東中委員 このニッティングマシンというのはUSネービープロパティという、ここにそのもの自体を持ってきていますが、マークが張りつけてある。OCC工場でのニッティングマシンに張ってあったものであります。しかもそれは番号がついている。九三五八九、それから〇〇〇二九八、これは一貫番号がついておるのは〇〇〇二九五から〇〇〇三一四、二十台のこの機械がUSネービープロパティというマークがついている。米海軍所有の工作機械がこの民間の工場に置かれておる、こういう関係。買ったのでも何でもないんですね。わざわざこういうマークがついている。アメリカの機械でやられているということですが、そういう体制でこの作業を進めたということですか。
  395. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 いま申し上げましたとおり、この機械の名前を知りませんために、どのようなところにこれが使用されたのかわかりませんが、い、ずれにしましても、OCCとしまして、これまで海底ケーブル、いわゆる同軸ケーブルはつくっていたと思いますが、やはり仕様がいろいろとやはり変わった点がそれぞれの同軸にはあると思います。ただいま先生の御指摘のように、AA下でありますとか、APAAPとか、各種の仕様があると思います。私どもが発注しましたのも、細いものは三十ミリから太いものは八十ミリというのは前回も申し上げたとおりでございますが、そのようなものを私どもはできるだけ経済的な価格で買っていきたいということが当然われわれの責務でございまして、そのために会社と商議をやりまして、予算がつけられまして、それで買ったわけであります。したがいまして会社側が、それをその程度の値段で防衛庁に納めるには、やはり  シンプレックスその他と、どの程度の技術料を払ったか、これは私、存じませんが、そういう面から機械の導入とかということはやはりあるかと思います。その点は会社の問題であろうかと思います。
  396. 東中光雄

    ○東中委員 アメリカ局長にお聞きしますが、横浜にあるOCCという会社、これは防衛庁の海底ケーブルを製造する会社でありますが、この会社に、USネービープロパティ、そして一貫番号が入っている、要するに米海軍の所有の工作機、これが二十台ある。こういう軍の所有の工作機ですよ。そういうことは一般にあり得るのか。それからどういう形で入ってくるのか。いかがでしょう。
  397. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 横浜のOCCに米海軍の工作機があるというその事実につきまして、私、承知しておりませんので、調べさしていただきます。
  398. 東中光雄

    ○東中委員 その事実については調べてもらいたい。いまはなくなっています。なくなっていますけれども、あったという事実はこれは明瞭ですから。  問題は、私が言いたいのは、米海軍の所有という工作機械なんですよ。わざわざUSネービープロパティという金属製の表示を張りつけてあるのが日本の工場に置かれている。基地でも施設でも何でもない。そこで聞いているわけです。そういうことが普通にあり得ることなのかということであります。
  399. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 それがいつごろでありましたか、時期を教えていただければありがたいと思いますが、USネービープロパティというプレートがついておったということで、アメリカ海軍の財産そのものであるのか、あるいは払い下げ物品であるのか、あるいは別の形のものであるのか、そこらの事情を私、承知しておりませんので、そういうことがどうしてあったのかということについて、ただいま的確なお答えができないのが残念に思います。
  400. 東中光雄

    ○東中委員 この海底ケーブルについてちょっと装備局長に聞いておきますが、リピーターがついておりましたね。——うなずいておられるから、ついていたことは事実なんですが、このリピーターは防衛庁がOCCから買うたのですか、あるいはどこからどういうふうにしたのか、それをお聞きしたい。
  401. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 リピーターにつきましては、どの程度の間隔でリピーターをつけるかということが、電線の長さにすぐ関係いたしますので、実は何個かということを明確にお答えできないわけでございますが、リピーターは日本ではっくれませんので、これはたしか私の記憶では、無償供与の品物であったのではないかと思います。
  402. 東中光雄

    ○東中委員 OCCから買ったのか、あるいは無償供与というのはどういう意味なのか、はっきりしておいていただきたい。
  403. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 OCCから買ったものではございません。
  404. 東中光雄

    ○東中委員 これはここに送り状があるのですが、この送り状によりますと、この出荷機関は太平洋対潜艦隊の司令部、COM・ASW・FOR・PAC、こういうマークというか、出荷機関についての符号があります。それから送り先はATTN・COM・NAV・FOR・JAP・R五七〇〇六、在日米海軍司令部リチャード中佐となっています。このリチャード中佐はOCCにいつもじっとおった。だからこの品物は、米軍の本国から在日米海軍の司令部のリチャード中佐あてに送って、そこでこの人がOCCの中におって、つくられた同軸ケーブルにリピーターをつけている、こういう形になっているわけですね。いま無償供与と言われましたが、そういうことですか。
  405. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 無償で供与されたと記憶しております。
  406. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、いまOCCでつくったケーブルというのがここにありますけれども、この同軸ケーブルを自衛隊はOCCから二十七億幾らの金を出して買った。そして海水や塩分や、あるいは潮流なんかを調査するのだ。二十七億ですよ。そしていままで使われたことのない、こういう同軸ケーブルであります。しかも深海用のやつもある。深海というたら一体どのくらいのところをいうのか、千メートルも千四百メートルもの深度のあるところでこそ使うのが深海用であります。しかもこれを接属するリピーター、増幅するリピーターはアメリカのものである。まさに海幕長が、先ほど私に言ったとおり、アメリカの期待にこたえて、それに協力をして、そして三海峡を防衛するのだと言うた。この情報量は、専門家に聞けば、実に六十回線の能力を持っている。装備局長、首を振っているとおりであります。そういうことになれば、千メートル、千四百メートル以上の深海が日本の領海のどこにありますか。ありはせぬじゃないですか。(「太平洋は広い」と呼ぶ者あり)そうです。太平洋は広いのです。宗谷海峡も遠いのです。深いのです。そこまでこれを持っていっているということじゃないですか。その点は装備局長どうでしょうか。
  407. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 ただいま先生お持ちのが、実は自衛隊のかどうか、私それだけではとてもわからないと思いますが、いま先生が御質問になられました一つの点は、深海用の被覆の薄いやつがあるということでございますが、同軸ケーブルを使用する場合には、私どもの聞いているところでは、深海用、浅海用という……(東中委員「もう少し大きく言ってください、不規則発言が多くて聞こえぬから」と呼ぶ)必ずしも深海、浅海というそれぞれの用途を明確にした使用区分というのは、厳重なものではないというふうに実は聞いております。たとえば深海の場合にはかなり軽いですし、それからまた値段もかなり安いというのが事実でございます。それから取り扱いもかなり軽便であるということ。それから前回、一昨年の暮れですか、防衛庁から説明いたしましたとおり、私どもの使用方法はかなりこれを分割して使っておりますので、しかもそれが試験的に、潮流の激しいところとか、あるいは非常に音波特性のむずかしいところとかいうところに、いろいろと置きまして試験を続けるということで、恒久的なものではございません。せいぜい二、三年くらいの使用で私どもは最初からこれを計画したわけでございます。したがいまして、その場合には、何も高い、重い、取り扱いの不便な浅海用のもののみを必ずしも全部用意することも適当ではないと思いまして、私どもは、かなり軽い、いわゆる深海用といわれまするものを買いまして、それを分割して一般の領海内部で使っているという事実でございます。そういうことだけ御説明いたします。
  408. 東中光雄

    ○東中委員 このSBプロジェクト・ケーブル構成という、これは会社側の文書でありますが、これによりますと、AAP、AP、CP、HP、こういうふうに分かれておって、A、C、Hという記号によって深さを分けておる。そして会社の記録によると、A型は三百五十ひろ以下、C型は三百五十ひろから七百ひろ、H型は七百ひろ以上の深さのところに置くのだということになっている。だから、いまここに持ってきておるこの一番小さいものですね、これはOCCでつくった、そして皆さんに納入した、そのOCCの会社のものです。そしてしかもこれをつくるについては、機械は日本にないからということで、先ほど言ったニッティングマシン、わざわざ米海軍所有の機械を持ってきてつくっている。リピーターもない。こういうことになればまさに深海のもの。しかもこの記録によると、長さは三丈あって、短いものでも、記録によれば、正確に言いますと百七・六八一ノーチカルマイル、ケーブル糸のナンバー2は百七十八・九五一ノーチカルマイル、そしてまた最後の一番長いのは六百二十・四〇一ノーチカルマイルと具体的に書いてある。リピーターの数までちゃんと書いてある。こういう具体的な資料があり、そしてここに具体的なものがある。まさにこれは七百ひろ以上の深海にはわせるものだということになれば、領海内ではなくて遠く約一千キロメートル、ここまでの遠いところまで布設をしている。しかもそれはリピーターで結合をしておる。わざわざアメリカから借りてやっている。海峡の防衛どころではなくて、まさに日米共同作戦の実をあげるためだ、こう海幕長自身が文書で言っているわけです。(「被害妄想だ」と呼ぶ者あり)被害妄想ではなくて、それを意図しているということを海幕長が言っているのだ。そういう問題をここではやっている。国会では全くその点についての内容を明らかにしない。この点は一体どうですか。
  409. 久保卓也

    ○久保政府委員 私どもは、周辺海域については防衛を充実する、これは三次防も四次防も大綱の中にそううたってあります。その周辺海域というのは数百マイルであるということは申しております。  ところで、いま問題になっているものは一般的な周辺海域の防衛というよりも、重要港湾、重要海峡、そういった、これは二次大戦のときの潜水艦の蝟集状況をごらんいただけばわかるわけでありまするけれども、やはり商船の集まるところには潜水艦も集まるということでありまするから、そういった観点を考慮しながら、海域を選定しながらやっておるということと御理解いただきたいと思います。
  410. 東中光雄

    ○東中委員 それでは装備局長、先ほどちょっと言われたのですが、リピーターは日本ではっくれないようなものだ。そういう非常に高性能のもので、それをわざわざ一九七一年段階、この時期になってアメリカから供与を受けた、こういうように言われたわけですよ、海底の調査をするために。リピーターというのは増幅ですから、三海里の領海内とあなたは先ほど言っているのだけれども、領海内の中でわざわざアメリカから、この戦後二十年以上もたった時期に供与を受けてつけなければいけないような、そんなリピーターが要るということは、これは技術的には考えられぬことですね。しかもこれだけの大きな同軸ケーブルを使っておる。このリピーターをわざわざ供与を受けたということ自体からいっても、領海内だというのは全く信用できない、こう思うのですが、その点について、領海外であってもそのことについては言えないというなら、それはそれでよろしい。しかし、領海内に寸断をしたんだ、そんなことを言うのだったら、これはあまりにも牽強付会、そう思いますが、いかがでしょうか。
  411. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 ただいまの先生の御指摘のリピーターでございますが、日本の近海、海峡、港湾、それぞれ海底の事情、潮流、特に音の伝搬特性というものを明確にキャッチするというために、私どもはこれまで使っていなかった同軸ケーブルを使いまして、特に同軸ケーブルを使いました理由も、同軸ケーブルは周波の分割が非常に容易でありますし、それを一括してまた地上局に持って帰るという特性がありますので使うわけでございますが、そういう点でリピーターが必要な場合もかなりあるという私どもの技術的な面からいいまして、ないものを供与を受けたというように考えております。
  412. 東中光雄

    ○東中委員 私たちは、この点についてはよく調べました。そんな領海内でやるんだったら、これはそのときの積み出しのときの写真ですが、これだけの大きなはしけが一体必要か。まさに先ほど言ったように、千キロメートル、こういった長さのものを使うからこそ、こういう大きなはしけをわざわざつくって、やぐらまで組んでやっているのですよ。(「小さ過ぎる」と呼ぶ者あり)ものを知らないでこういうことを言うふまじめな態度というのは、私は、日本自衛隊のあり方として、皆さんがまともに取っ組む姿勢をとっていない、何とかごまかそうという姿勢をとっているというふうにしか考えられない。現に、製造したところのこの会社の書類自体の中で、はっきりとここに出ているのじゃないですか。あなた方はその内容については、ニッティングマシンさえ知らぬというじゃないですか。知らぬというのだったら、実際にここにあるもの、この資料で言うならば、まさに千キロメートルの長きにわたる。ケーブルのシステムの第三、これの長さは、大湊周辺に持っていって、そこから、こういう深海のものを含めて、そして千キロメートルに及ぶところまでこういうものを設置している。宗谷海峡ではないですか。まさに三海峡防衛を日米協力でやるのだと言っているじゃないですか。そして日米協力の、リピーターまでアメリカからわざわざこの時期になって無償供与を受けている、こういう事態であります。  それじゃここではっきりとしておきたいと思います。海底ケーブルというのはどこにあるかというのは、地域の漁民ならわかります。この袰内の地域から出されておる海底ケーブル、これは漁民が石と石との間をまたぎますからひっかかるのですよ。だから、どこにあるかというのは大体わかる。防衛庁は、三海里以上、領海以上には出ていない、こう言うのだったら、それ以上に出ているのは防衛庁には全く関係のないものだというふうにここで宣言されている、そうお聞きしてよろしいか。
  413. 久保卓也

    ○久保政府委員 従来、布設しておりまするのは領海内であります。しかし、これは先ほどから申し上げておりまするように、どういう場所が一番適当であるかということは、海底の状況によって変わってまいります。したがいまして、領海外に設定することを私ども否定するわけではございません。領海内で適地がなければ領海外に適地をさがすということもあります。したがいまして、調査をする場所というものは移動するだろうと思います。
  414. 東中光雄

    ○東中委員 この前の江崎長官答弁では、領海外には出ておりません、絶対と言った。だから、いまもその江崎長官答弁をそのまま、先ほど来のお話では維持されているように思うのですけれども、私たちは、いま申し上げたように、このケーブルの性格からいって、会社の資料からいって、そしてリピーターの性格からいって、そういうことはあり得ぬということを言っているけれども、どうしてもそういうふうに強調されるのだったら、それならそれでよろしい。領海以上に及んでおるものは、これは防衛庁のものではないということを言われた。かつて旧海軍のあのソーナー、これを戦後に漁民が買い上げてスクラップにしたことがあります。だからさがそうと思ったらさがせます。その点も含めて、領海外には現在のところは出ておるものはない、こういうふうに言われる、その点をはっきりとお聞きしておきたい。
  415. 久保卓也

    ○久保政府委員 将来の問題として、いま申し上げましたように、海底の状況によっては領海外に出ることはあるということは申し上げておきます。そして現在の段階では領海である。ただし、この点だけは念を押しておきたいと思いまするけれども、海底にも海流がございまして、私どもが領海に設置したのが動く可能性をここで否定するわけにはまいりません。これは事実であります。
  416. 東中光雄

    ○東中委員 私が言っているのは、潮流でちょっと動いた、そんなことを言っているのじゃないのです。非常に長い一千キロ近くいっているのですから、三海里の領海と全然けたが違うのですから、それを否定するのだったら——いま答弁は、否定されたというふうに聞かざるを得ぬわけですけれども。だからその点は、防衛庁の問題ではないということをはっきりと——これからのものはあるかもしれない、それは郵政大臣の許可をもらってやるということも言われているわけですから、いままで許可をもらって領海外に出したものはないということ、これはここで確言をされる、そう聞いてよろしいですね。私は信用せぬけれども、そう聞いてよろしいですね。
  417. 久保卓也

    ○久保政府委員 今日までのところでは領海内であります。
  418. 東中光雄

    ○東中委員 時間が来ておりますから質問は終わりますけれども、結局は、領海の専守防衛という、そういうことを主張するために、実際にやっておることと違うこと、それを国会答弁するのは私は非常によくないと思う。  これは防衛庁長官に最後にお聞きしておきたいわけですが、この同軸ケーブルを使ったのはこれが初めてであって、しかもOCCではこの注文の分を渡して、これは全部機械は取り払った、そういう条件だからこそ、われわれはこういう資料がわかってきたわけです。ですから、そこで出されていることというのは、動かしがたい米軍の送り状とか、USネービープロパティのプレートとか、こういうもので性能を検査していっているわけであります。海峡を防衛する、しかも三海峡を防衛する、しかもアメリカの強い期待だ、日米共同作戦のためだ、こういうふうに海幕長は言い、防衛庁長官もそう言っている。そういう状態の中で、非常に公海の奥深く、しかもおそらくは他国の領土に、領海に非常に接近するところまで、こういう海底ケーブルによる、単なるソーナーではなくて、ソーナーの分析が的確にできるために必要な資料、海流とか水温とか、あるいは塩分の度合いなんかもあわせて収集する、そのための同軸ケーブルを設置している。こういうことでありますから、これは一国会で事実を明らかにしない問題という点で重要な問題があるだけではなくて、これはまさに日米共同作戦、アメリカのアジア戦略の中に組み入れられて、まさにそれに協力をしてやっている、こういわざるを得ないわけですが、その点について長官の最後の見解をお聞きしておきます。
  419. 山中貞則

    山中国務大臣 これはもう事務当局が答えていることで尽きると思いますが、しかし、これは誤解のないようにいたしませんと……。何も攻撃用の兵器ではないのであって、そういう海陸空いろいろな情報の一環でありましょうから、領海、領海外の論争、これはあなたそうでないとおっしゃっているようですが、私は事務当局のほうを信頼いたしておりますし、他国を攻撃する意図を持っているものでないということだけは、これは明らかだと思うのです。
  420. 東中光雄

    ○東中委員 質問を終わりますが、シビリアンコントロールということを言われるのならば、実際に海幕長が言い、そうしてこういう具体的な問題が出てきている、それについて、これはどういうふうにやったか知らないと言っているのですか一ら、そういう状態ではシビリアンコントロールなんてできやせぬです。事はこういう非常に異常な問題ですから、千キロに及ぶそういう海底ケーブルを設置して、他国の領海にも及ぶ、そういう点については調べて、そうしてはっきりするものはする。ただ何となしに政府委員の言うことを信用しますということではなくて、具体的に調べられることを強く要請しておきたいと思います。
  421. 三原朝雄

  422. 山田太郎

    山田(太)委員 いよいよきょうの質疑の私がしんがりでございますが、割り当ての時間が半分以下になったということは非常に残念に思っております。諸般の事情から万やむを得ないとはいいながらも、その点、きょう用意した質問を全部言い尽くせないことになるのが残念でございますが、したがって、前置きとか、あるいは注釈等はできるだけ省いて、質問を行なってまいりたいと思います。  そこで私は、政府がとっておる現在の自衛隊増強政策については、私どもと見解を異にしております点が十分あります。これは御承知のとおりです。しかし、現実に三十万人近い実力集団たる自衛隊が存在する以上、その事実認識の上に立って、民主主義の理念とも関係するところのシビリアンコントロールの問題について、系統的にお伺いし、かつ若干の問題を提起して、本来ならば総理にお伺いするところの問題点もあります。しかし、それをも含めて、きょうは新任の山中長官見解を承りたいと思っております。  そこで、まず最初に長官のシビリアンコントロールについての基本的な考え方といいますか、姿勢といいますか、これについてお伺いしておきたいと思います。  当然のことでございますけれども、文民統制の基本的な原則は、憲法の九条あるいは憲法の前文、これがやはり基本でなければならないというのは当然のことでございます。しかし、世上よくいわれますように、背広組であるから、文民であるからといっても、中には制服組以上の好戦的な人もおるわけです。いい例ではありませんが、ヒットラーなどはその最たるものではないかと思うのです。世界にもそのような例は多々あります。そういうことから、非常にいい例ではありませんけれども、やはり端的に申し上げさせていただくという立場から、大臣は、基本的理念において当然自由と平和を求めていく人物でなくてはならない、こう思いますので、最初に申し上げた、長官のシビリアンコントロールについての基本的な姿勢といいますか、考え方、それをまずお伺いしておきたいと思います。
  423. 山中貞則

    山中国務大臣 最終的にはシビリアンコントロールは国会に存在する、そう思います。しかし、一方憲法において、政府の側においても、第六十六条第二項で、国務大臣は文民をもって充てる、こうなっておりますから、当然防衛庁長官たる国務大臣も文民であるということになるわけであります。したがってまた、当然に文民である内閣総理大臣が最高の指揮監督権を持っておるということが、まず基本的な姿であろうと考えます。  さらに、具体的な展開をいたしてまいります場合のあり方としては、制服並びに内局というものが防衛庁の中にきちんと区分けができておりまして、制服限りでもって国の基本的な、国防会議に付さなければならないような問題を決定することはできないというようなことがありますし、さらに国防会議においては、国防会議並びに国防会議議員懇談会等の議を経ながら、最終的に閣議決定された方針をもって主要なる装備その他について決定をしてまいります。  したがって、それらの点において文民のコントロールというものはきちんとなされておると思いますが、たとえば、さらに行動を展開する場合等においても、いろんな場合において最終的に総理大臣が、防衛出動に例をとるならば、国会の承認を得て国防会議の議を経て決定をすることがたてまえでありますし、開かれてない場合は、参議院のみの場合は参議院。衆議院が解散されておる場合でありますね。そうでない場合はすみやかにこれを国会に承認を求めて、その承認が得られなければ直ちに防衛出動も撤収しなければならぬというようなことで、きちんと歯どめが法体系の上からもできておりますし、防衛庁設置法あるいは自衛隊法というものも、国会において定められた法律としてわれわれはそれを順守するということで、雑多に並べましたけれども、一応思いつくままに、このような形で文民統制はきちんとなされておって、私たちはそれを順守しておる、そう考えております。
  424. 山田太郎

    山田(太)委員 長官のその御答弁によりまして、防衛出動の面、あるいは治安出動等の面はまた後ほどお伺いするといたしまして、やはり自衛隊の運営について、その基本は自衛隊の威力といいますか、あるいは機能といいますか、自衛隊の役柄上、機能あるいは威力というものをまず重視しなければならないというふうな場面が当然あるやもしれません。しかしやはり、長官考え方といたしますと、少々威力あるいは機能が低下しても国会の民主的な統制というものを重視するお考えであるかどうかということも、重ねてお伺いしておきたいと思います。
  425. 山中貞則

    山中国務大臣 もちろんそのとおりでございますし、今回は、ぜひ通してもらいたいと願っております防衛二法といわれる、定員あるいは装備、あるいはそれに伴う隊の編成、こういうようなもの等は、過去二年、予算上は措置されて定員もありましても、国会で最終的な御承認を得られていませんので、結局は、それらのものは予算上あって実際には存在しない、艦艇の就役等はありましてもそれに対する充足ができないというような実情が現在しておる事実でも、明瞭にそれを物語っておるものと私どもは考えます。
  426. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで、きょうの本会議の前に総理も、先ほど長官お答えになったように、シビリアンコントロールの一つの立場の中として、いわゆる国会のコントロールはもちろんですが、内局の立場の人は全部文民である、そういうふうな総理答弁もあったのを聞いております。またいまの長官お答えの中にもそれがあったわけでございますが、そこで、内局は文民であるということの必要性は、やはりシビリアンコントロールのためであるという意味の御答弁だったと思います、ふえんしていくならば。  そこで、法的な面で少々お伺いしておきたいと思いますが、吉國法制長官見えておりますか。——そこで法制長官にお伺いいたしますが、きょうの総理大臣の御答弁にも、またいまの長官の御答弁にも、内局は文民であるというお答えです。そこで私がお聞きしたいのは、先ほどの御答弁にあった憲法六十六条の二項、この「文民」の解釈というものを法制長官からお伺いしておきたいと思います。
  427. 吉國一郎

    吉國政府委員 憲法第六十六条第二項は、「内閣総理大臣その他の國務大臣は、文民でなければならない」と規定しております。そこで、同項で国務大臣の資格を文民に限定いたしました趣旨は、国政がいわゆる武断政治と申しますか、そういうようなものにおちいることがないようにということを念慮したものであろう。これは憲法制定の当時におきましても、この「文民」の解釈をめぐっていろいろな議論がございました。その当時は、旧職業軍人の経歴を持っていた者であって軍国主義的な思想に深く染まっている者、そういう者は文民ではあり得ないというような解釈をいたしておりました。  その当時、憲法制定の当時におきましては、御承知のように、武器を用いる組織といたしましては、若干の警察隊があっただけでございますが、その後いろいろ法制も変わってまいりまして、警察予備隊ができ、保安隊となり、さらに自衛隊となりました今日におきましては、その解釈もおのずから変わってまいりまして、先ほど申し上げました憲法の精神から考えますと、自衛官が制服のままで国務大臣になるということは、憲法が、国政がいわゆる武断政治におちいることがないように念慮したという精神から申しまして、好ましくないのではないかということで、たしか昭和四十年ぐらいであったかと思いますが、佐藤内閣時代に従来の解釈を変更したことを国会で申し上げまして、自衛官は文民にあらずという解釈を当時の法制長官から申し上げて、佐藤内閣総理大臣もそのとおりであるということを御答弁申し上げまして、その後はずっと、自衛隊というような武器を用いるような組織体の中において、その本来的な職業上の地位を占めておる者は文民とは解することができないということが政府の見解と相なっております。
  428. 山田太郎

    山田(太)委員 そういたしますと、自衛官は文民にあらずと、こういうことですね。
  429. 吉國一郎

    吉國政府委員 自衛官は文民とは解し得ないということでございます。
  430. 山田太郎

    山田(太)委員 くどいようですが、自衛官をやめたらもう直ちに文民になれるわけですか。
  431. 吉國一郎

    吉國政府委員 それはそのとおりであろうと思います。
  432. 山田太郎

    山田(太)委員 そういたしますと、ただ自衛官をやめさえすれば大臣にもなれるという解釈も成り立つと思います。しかし、その点を多く言うわけじゃありません、きょうは。  そこで、法制長官は非常に緊急な御用事をお持ちのようですから、法制長官にお伺いしたいところだけ前もって先にお伺いしておきたいと思いますが、その点ひとつ、大臣御了承しておいてください。  先ほどの総理の御答弁あるいは長官の御答弁、それによると、内局はやはり、シビリアンコントロールの立場から文民でなくてはならない、あるいは文民であるという答弁があったわけです。その点について、現在の防衛庁の内局は課長以上は全部文民になっておりますか。
  433. 田代一正

    ○田代政府委員 防衛庁の課長以上はもちろん文民でございます。自衛官ではございません。
  434. 山田太郎

    山田(太)委員 それはどういう理由からですか。やはりきょうの総理の御答弁あるいは長官の御答弁のような、シビリアンコントロールのその立場から文民である、そう解釈してよろしいですか。
  435. 田代一正

    ○田代政府委員 お答えいたします。  ただいまおっしゃったようなことだと思いますが、法律的に申しましても、防衛庁設置法十八条を読みますと、防衛庁の職制には、御案内のとおり参事官——参事官というのは局長クラスでございます。課長クラスは書記官でございます。書記官はその中から課長が出る、こういうことが明記してございます。したがいまして、書記官という名称を考えますと、これは一つの身分上の地位でございます。自衛官は書記官になれないというぐあいに解釈されるからでございます。
  436. 山田太郎

    山田(太)委員 そうすると、法制の上からいっても、課長以上には自衛官はなれない、こう規定されているというわけですね。
  437. 田代一正

    ○田代政府委員 そのとおりでございます。
  438. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで、一歩立ち入るようで恐縮でございますが、先ほどの、自衛隊の前の保安庁、この保安庁法には、十六条においてちゃんと、課長以上の禁止ということが明記になっております。ところが、防衛庁設置法十七条—十九条になると、この点は明確になっていない。その辺の意図するところはどういうところですか。
  439. 山中貞則

    山中国務大臣 私がいままで、就任して以来勉強しました範囲では、保安庁法のその趣旨は、法律の上では明確になっておりませんが、そのまま尊重してきておりますので、課長以上にはない。しかしながら、いまあなたの言われました第十九条では、「長官は、必要があると認めるときは、陸上幕僚監部、海上幕僚監部若しくは航空幕僚監部又は第二十九条に規定する部隊若しくは機関に所属する自衛官を内部部局において勤務させることができる」「2 前項の自衛官は、その職務についてはその勤務を命ぜられた部局の長の指揮監督を、その身分上の事項についてはその所属する幕僚監部又は部隊等の長の監督を受けるものとする」、こういうことで、内局全員が、いままで議論してまいりました意味の文民ということには法律上はなっておりませんが、しかし、管理職、いわゆるある意味の決定権、指揮権を持つ——内局ですから行政上のですね、そういう責任ある地位には、この条項を利用しても全然つけていないということを守っている、そして今後もそれは守っていきたいということであります。
  440. 山田太郎

    山田(太)委員 私のお聞きしたかったのは、このように変えた意図は何だろうかということを聞きたかったわけです。
  441. 田代一正

    ○田代政府委員 旧保安庁法十六条六項の規定の中に、「長官次長、官房長、局長及び課長は、三等保安士以上の保安官又は三等警備士以上の警備官の経歴のない者のうちから任用するものとする」という規定がございます。この時代におきましては、これは私の想像を言ってたいへん恐縮でございますが、文民という意味が必ずしも当時明確じゃなかったという問題もあるでしょう。それからやはり、そういった経歴のあった人を課長にするということ自身も非常に問題があるのじゃなかろうかという配慮が当時働いて、こういった規定ができていたのじゃなかろうか、こういうぐあいに考えられます。
  442. 山田太郎

    山田(太)委員 いまのお答えでは非常に明確じゃありませんね。その当時もうすでに文民の解釈というのははっきりしておる。いまの法制長官お答えになったとおりです。まあしかし、この点は時間の関係ではしょりますけれども、その辺の意図は何するところかということは、また別の機会に深く立ち入って質問していきたいと思いますから……。  そこで、法制長官に次のことをお伺いしておきましょう。前文は省略します。時間の関係で端的に聞きますが、現在の憲法の立場からいって、現在の軍需産業を国営にすることができるかどうか、憲法の論理的解釈から。
  443. 吉國一郎

    吉國政府委員 自衛隊の使用する武器の製造を国営において行なうということについては、憲法上これを禁止する規定は見当たらないと思いますので、政策上の当否はいろいろ御議論のあるところだと思いますが、憲法上の問題としては、これが許されないということはないと思います。
  444. 山田太郎

    山田(太)委員 長官、いまお聞きになりましたように、国営でやるということは法的にはできると解釈してもいいということですが、その点について、長官は政策的にお答えになると思いますが、その点はどうでしょう。
  445. 山中貞則

    山中国務大臣 まあ、できるかもしれません。それは片山・芦田内閣ですか、石炭の国管というのをやりましたからね。あれは管理ですから国営じゃありませんが、それは軍需産業を国営にするということをやって、不可能じゃありますまいが、じゃ軍需産業というものを分離して、会社のそれぞれの、航空機でも民間のものもつくっているでしょうし、軍用というのはおかしいですけれども、結果は自衛隊用ですね、というものに納めるところだけを、各社から全部強制的に削ってそして会社をつくらせるという、そういうことも現実にはなかなかむずかしいのじゃないだろうか。また私たちは、経済理論ですけれども、自由主義経済の上に立って政党をつくっておりますので、統制経済的なものをやる意思はありませんし、したがって、国家管理会社とかいうようなものをなるべくつくる意思はありません。必要があるならば、国として直接やらなくても、公社、公団というようなもの等はそのかわりにつくっておるものというふうに、私たちの考え方としてはお受け取りを願ったほうがよろしいのではないかと思うのです。
  446. 山田太郎

    山田(太)委員 いまの長官の御答弁をお伺いしておりますと、公社、公団的にはやり得る可能性があるという意味ですか。私の聞き違いであったら……。
  447. 山中貞則

    山中国務大臣 いや、民間企業を国が没収をして国家の企業にするというようなドラスチックなことは、私たちはしない政党である。したがって、それをかりにやる必要がある場合には、いまのところの形式でいうならば公社、公団みたいなものが、私たちの現在望んでおる政治の基本的な考え方からは浮かんでくるものである、そういうことを申し上げたわけです。
  448. 山田太郎

    山田(太)委員 どうも明確にならぬのですがね。国で、いわゆる兵器あるいは装備等の工場といいますか、言うならば旧砲兵工廠のようなものですね、そういうふうなことをやる意図はないかあるかということを端的に答えてもらったほうが早いです。
  449. 山中貞則

    山中国務大臣 防衛庁自体が兵器産業と申しますか、兵器製造部門をみずからやるかということですか。ちょっといまのところ、そういう検討もしておりませんが、まあ、いまのところやる意思はないというのがほんとうだと思います。
  450. 山田太郎

    山田(太)委員 唐突な質問だったかもしれません。しかし、きょうはもう前置きをはしょっていきますからね。  そこで、ついでにお伺いしておきます。それに関連して、いまの軍需産業というのが適当かどうかはことばは別といたしまして、兵器とか装備、そういうふうなものをつくる会社、それを国が買収するということは法的にはできますか。これは法制長官
  451. 吉國一郎

    吉國政府委員 これは買収と言われましても、自由な契約に基づいて買収することは、これは相手が承諾する限りにおいては差しつかえないと思います。
  452. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで、あわせてお伺いしておきましょう。いまの平和憲法下において徴兵制度をしくことが可能であるかどうか、これも端的にお伺いしておきます。
  453. 吉國一郎

    吉國政府委員 いまの憲法のもとにおきましては、いわゆる徴兵制度をしくことはできないと思います。
  454. 山田太郎

    山田(太)委員 その論拠をお伺いしましょう。
  455. 吉國一郎

    吉國政府委員 徴兵制度と申しますのは、国民として兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度であろうと思います。つまり軍隊を平時において常設をいたしまして、これに要する兵員を毎年徴集をして、一定の期間訓練をして新陳交代をさせる、それによって戦時編成の要員として備えるという制度をいうものであろうと思います。そういうものであるといたしますならば、一般に兵役といわれるような役務の提供は、わが憲法の秩序のもとで申しますならば、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らして当然に負担しなければならないというふうに社会的に認められるようなものでないのに、義務としてそういう義務を負荷されるという点にその本質があると思います。そのような徴兵制度は、憲法の、まあいろいろ議論があると思いますが、まず第一には十八条、それから第十三条等に問題があると思います。憲法のどの条文に当たるかはいろいろ議論のあるところでございますけれども、いずれにしても、憲法の許容するところではないというのがその論拠でございます。
  456. 山田太郎

    山田(太)委員 一たん有事の際はできますか。
  457. 吉國一郎

    吉國政府委員 一朝有事の際というまた定義の問題になるかもしれませんが、いわゆる有事の際に、全体の国民が立ち上がって国を守るというような場面がもしありといたしまするならば、そういうものが徴兵制度になるかどうか、これはちょっと議論のあるところだと思いますが、いずれにいたしましても徴兵制度、制度という限りにおきましては、わが憲法のもとにおいては、平時であろうと有事であろうとを問わず許容されるところではないというふうに考えております。
  458. 山田太郎

    山田(太)委員 制度ということばを抜いて、徴兵ならできますか、一たん有事のときは。
  459. 吉國一郎

    吉國政府委員 たとえば災害の場合におきまして、その災害に対処するために、一定の住民に特定の義務を課するというようなことが現在認められております。そのような有事の際に、これはまあ自然の災害ではございませんが、人為的な災害でございますが、災害という点においては同じだと思います。その有事の際に、災害対策基本法で認められておりますような義務を課すると申しますか、そういうような一定の役務を課するということがはたしてできないかどうか、これは問題があると思います。
  460. 山田太郎

    山田(太)委員 もっとはっきり言うてください。
  461. 吉國一郎

    吉國政府委員 その点については、現在の災害対策基本法で、災害救助のためあるいは災害に対する諸般の措置をするために、一般の住民に対して一定の義務を課することは認められております。そのような同種の義務を課することまで現在の憲法が禁止しているかどうか、これは一応別だと思います。  そうじゃなくて、一般の住民に対して祖国防衛のために兵器をとって一定の役務を提供すべしということをやること、まあ徴兵だと思いますが、そういう姿の法制を用いてその義務につかせるということは、やはり憲法上もできないことであろうと思います。
  462. 山田太郎

    山田(太)委員 ちょっとあやふやな答弁だったですが、最後の点は、一たん有事のとき、災害でなしに防衛等について、そのときにもいまの憲法下においては徴兵はできないという明確な断定ですか。ちょっとあやふやだったですから、その点をはっきり聞いておきましょう。明確にしてください。
  463. 山中貞則

    山中国務大臣 私が答えましょう。(山田(太)委員「政策的でなしにね」と呼ぶ)いや、違いますよ。憲法第十三条、「すべて國民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に對する國民の權利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする」。これはまあ「公共の福祉」が入っていますから、その場合においてはおかしくなるですね。若干の疑問がある。しかし今度は第十八条で、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」。これは明確です。「又、犯罪に因る處罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」。さらに問題は第十九条にも及ぶかもしれません。「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」。ここまでも私は読んでもいいと思うのです。  まあ、こういうような一貫したものを考えると、いかなる場合であっても、徴兵というような形でもって、制度でも——制度は法律がなきゃできませんし、憲法を改正しなきゃ制度はできないといっているわけですから、徴兵というような行動はとれないというのがいまの憲法の基本じゃないでしょうか。
  464. 山田太郎

    山田(太)委員 内閣法制局長官、その点ひとつ、あやふやでなしに明確にしておいてくださいよ。そうすると、いまの長官答弁が政府としての答弁、こう解釈していいですか。
  465. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほども申し上げましたように、いわゆる徴兵と申しますものは、平時であろうと有事の際であろうとを問わず、憲法上許容されないものであるということで私の答弁にいたします。
  466. 山田太郎

    山田(太)委員 その点、法制長官、明確にしておいてくださいよ。  そこでこれは、なぜそこまで、追い詰めてということではありませんが、しつこく聞いたかといいますと、憲法解釈が非常に変わってきているわけですね。  これは念のために一例をあげておきましょう。それは昭和二十七年十月、最高裁で開かれた行政事件担当の裁判官会同がございました。ぼくの話がすぐ徴兵にいくわけではありません。そのときに、軍需産業を国で買収するなどということはできないとなった、三権分立の原則に反せずして。もしそのような場合、予防訴訟、専門的な用語で言うならば義務確認訴訟といいますか、義務づけ訴訟といいますか、そのような過去の事実があるわけです。ただ、その当時軍需産業などというものは存在しなかったから、こういうふうな詭弁を弄する人がありましたけれども。ところが、それがもうすでに現在変わった解釈になってきている。そういう点から考えて、ときによって憲法解釈が変わってしまうようなことがあってはならぬ。少数意見といえども——せんだっての労働問題のときのように、少数意見が最高裁で今度は逆になったのです。したがって、内閣法制局長官の明確な答弁をいただいておるわけでございます。その点をまず御了承しておいていただいて、まだもう二点ありますけれども……(吉國政府委員委員長、いまのがちょっとわからないので」と呼ぶ)ぼくが聞いているのです。ぼくが質問しているのだ。おかしなときに手をあげてくれては困ります。  そこで、法制長官にもう一点お伺いしておきたいことは、核の問題です。過去の参議院の内閣委員会でございましたか、わが国の現在の憲法下において核兵器を所有することもできる、これは今度の国会の予算委員会で問題になった総理答弁の問題がありますが、また同時に、状況によっては他国の基地をたたくこともできるという答弁もあるわけです。この点はお伺いしておくだけですが、憲法的な解釈の問題において、これは可能でありますか。
  467. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいまの第一の問題の、核兵器も場合によっては持てるというようなテーマでございましたが、これについては、わが国の自衛隊の組織といたしまして、自衛のため必要な組織というものは、自衛のため必要な最小限度の実力を保有することは憲法上可能である。その自衛のため必要な最小限度のものといたしまして、もっぱら防御用に使われるような武器であるならばもちろん問題なく持てるという一つのテーマがあるわけでございます。その防御用の兵器という中で、核兵器が最近いろいろ発達をしてまいりまして、いわゆる水素爆弾でございますとか原子爆弾というようなものがもちろん核兵器でございますけれども、そうじゃなくて、将来進歩をいたしまして、非常に小型のもっぱら防御専用というような核兵器があるといたしましたならば、これは防御用の核兵器として保持し得るということを、今国会の衆議院の予算委員会においても、また参議院の予算委員会においても、総理からも答弁をいたし、私からも申したわけでございます。その意味で、全く防御用ということであれば、核兵器であろうと、一般の兵器であろうと持てるのだということでございます。  それから第二の、敵の基地をたたくことができるかどうかという問題。これは昭和三十一年に、当時の船田防衛庁長官から答弁を申し上げた筋でございますが、自衛権の発動と申しますのは、わが国に対して急迫不正な侵害が行なわれて、これに対して他にこれを排除する手段がないという場合に、最小限度の範囲内においてその侵害を排除するために自衛権が発動できるのだという議論から発展をいたしまして、その侵害の手段といたしまして、わが国土に対して誘導弾等によって攻撃が行なわれたという場合に、その誘導弾の攻撃をそのままにしておいて、いわば座して自滅を待つというような状態にならなければならないというのが憲法の趣旨とするところではないだろう、そのような攻撃を防ぐために、万やむを得ない場合には、先ほど申し上げました自衛権発動の三要件から申しましても、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとることは可能であろう、その手段の一つとして、誘導弾等による攻撃を防ぐために、他に手段がないと認められる限りは、誘導弾等の基地をたたくことも全く法理上の問題としては自衛権の範囲内に含まれて可能であるということを、昭和三十一年の二月二十九日に、本院の内閣委員会において当時の船田防衛庁長官から答弁をいたしております。その後、昭和三十四年三月十九日にも、同じような答弁を伊能防衛庁長官からいたしております。これも、他に手段がないという場合において、やむを得ない最後の手段として必要最小限度の措置をとる、その必要最小限度の措置として誘導弾等の基地をたたくことも、法理上は可能であるということを申しております。
  468. 山田太郎

    山田(太)委員 その問題については、これはまだ質問を……。
  469. 吉國一郎

    吉國政府委員 ちょっとつけ加えさせていただきます。  先ほど防御用の核兵器の問題について、これも憲法上の法理論として申し上げたわけでございまして、憲法上は防御用専門の兵器であるならば、核兵器であろうと通常兵器であろうとを問わず持てるのだ、したがって、防御用の核兵器というものがもしありとするならば、それは憲法上保有することは可能であると申したわけでございますが、もちろん非核三原則は政府の従来とも厳守しているところでございますので、絶対にそういうものを持つことはございません。また、原子力基本法におきまして、原子力の利用は平和的利用に限定されておりますので、先ほど申し上げましたのは憲法論として申し上げた、だけでございまして、現段階においてそういうことはあり得ないということでございます。
  470. 山田太郎

    山田(太)委員 法制長官にお伺いしたのは、法理論としての立場でお伺いしたわけです。いまのあと答弁は、これは長官が答えるものです。(山中国務大臣「言わせたのです」と呼ぶ)長官法制長官をして言わしめたという話ですから、その点はきょうは了解しておきましょう。  そこで、この問題についてはまた他日、これは非常にふえんする問題がありますので、そこでお伺いします。きょうは用意しておりますが、別の機会にいたします。法制長官、きょうはけっこうです。  そこでいよいよ本題に入って、きょうは、冒頭に申し上げたように、次々質問をふえんしていくのでなしに、系統的にざっとひとつ新任長官にお聞きしておきたい、シビリアンコントロールについて。  そこでまず国会とシビコンの問題です。その問題について、先ほどお話がありましたように、シビコンの根本はやはり国会のコントロールであるという御答弁です。ところが、その国会論議のために、積極的に論議の素材となるべき資料がなかなか提出されない。また二つ目には、すなおな答弁というものがなかなか出てこないというのが、このたびの当内閣委員会においての質疑を通しても明確な点が多々出てきております。いわゆる秘扱いといいますか、この点が非常に多いように思うわけですね。そこで現在の秘密扱いの文書等の数も実はお伺いしました。ところが、防衛庁から出していただいた書類を見ましても、防衛秘密、庁秘、この二つに分けてありますけれども、庁秘の件については四十六年以前は集計していない。昨年でございましたか、外務省のあの秘密文書事件以来、防衛庁にしても、この秘密文書の秘密指定の乱用をできる限り戒める、そういうふうな通達は出しておりますけれども、減っていないのですね。しかも四十六年以前はわからぬという。この過去の問題はともかくとして、これからの長官としての方針をお伺いしておきたい。
  471. 山中貞則

    山中国務大臣 私としては、なるべく国会において公表できないような意味の秘密書類というものを少なくしたい、そう思っておりますし、事実、内閣委員会審議が始まりましても、与党席から少し不満の声が出るような姿勢でもって、質問者がその文書がなければ質問できない場合において、外交的に支障が若干はあっても、なるべくそれを便宜に供したこともあります。したがって、今後、私は自衛隊を開かれた集団にしたい、こう思っておりますし、防衛庁自体もまた全体が、国民に対して閉鎖集団であってはならぬ、そういう気持ちでありますから、特別の軍事上の秘密事項も、これは確かにあります。兵器の秘密その他は一般に公開すべきものでないものもありますから、そういうものとか、あるいは外交交渉の途中における問題とか、あるいは対外的にそれを公表しない約束であったもの等以外のものは、なるべく国会の御審議の便に供したいというふうな姿勢で、今後その整理統合を進めてまいります。
  472. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで、次には一つだけお聞きしておきます。  先ほど、しょっぱなの長官の御答弁の中にも防衛出動の問題がありましたが、この防衛出動と国会の問題について次にお伺いしておきたいと思いいます。  この出動命令の起案者といいますか、この出動命令の手続、経路、そういうものについてひとつ具体的に、しかもあまり長くならないでお答えしていた、だきたい。
  473. 久保卓也

    ○久保政府委員 だいぶ以前に防衛庁と内閣官房と協議したことがあるようでありますけれども、どうもうまい手続ではないように思いますので、現在さらに検討を進めております。  現在考えられますることは、防衛出動命令でありまするから、防衛庁の内局で一応起案をいたしまして、そのものは防衛出動を下命してよろしいかという、次の別紙にその防衛出動の命令の内容を書きまして、それを内閣官房に提出をして、内閣官房はそれをもとにしまして、閣議に出す前に国防会議に、これは内閣総理大臣がでありますけれども、内閣総理大臣国防会議にはかる。そしてその国防会議の結論と、それから防衛庁の準備しました起案の内容とが合致しまするならば、それを閣議にかけまして、閣議で了承を得られましたら、内閣総理大臣が別紙につけました命令そのものをあらためて自衛隊に命令として出す。その命令として出す場合の起案は、私どもは内閣官房ではなかろうかというふうに思っております。  こういった手続につきましては、まだ内閣官房の了承を得ておりません。私どもの思考過程として、そういうふうに考えてはどうかなというふうに思っております。
  474. 山田太郎

    山田(太)委員 はっきり最後は聞こえなかったのですが、内閣官房のまだ了解を得ていないということですか。そういうことですね。  そこで、自衛隊法七十六条の一項によって、先ほど長官の御答弁にもありましたけれども、国会の承認を得る、このときに特に緊急の場合というのがありますね。特に緊急という場合と単なる緊急という場合、それからもう一度特に緊急の場合の国防会議あるいは閣議との関係はいまお話がありましたから、単なる緊急との相違、こういうものはどういうものですか。
  475. 久保卓也

    ○久保政府委員 この防衛出動を命じます場合には、国会の承認を得るのがたてまえであります。ぜひとも国会の承認を得べきでありまするけれども、現に武力攻撃が日本に加えられたといったようなことで、日本の国益を守るためには直ちに対応策をとらねばならないといった場合には、国会を召集する手続が若干かかりましょうから、それを待ついとまがないということになりますので、結局、単に緊急というよりも、事実上国会の承認を得るにいとまがないような大きな武力攻撃があったというふうに抽象的にしか申し上げられないのでありまして、具体的にどういう場合が「特に緊急の必要がある場合」かということはなかなか申しがたい。  しかし、少なくとも憲法なり法律なりの趣旨から申しまして、こういうものを広く解釈すべきではない。やはりあくまでも国会の承認を得て防衛出動を下令するというのがたてまえであり、万々一の場合でしか、そういった「特に緊急の必要がある場合には」というのはないのではなかろうかというふうにしぼって考えるべきであろうというふうに思います。
  476. 山田太郎

    山田(太)委員 長官、いまの答弁を聞いていてもわかりますように、非常に抽象的なわけですね。いまだかつて発動したことのないというものでありますけれども、非常に抽象的であるということは、やはりときによっては、長官がそうだというわけじゃありません、しかし乱発される可能性はそこにあるわけですが、その点についてはどのようなお考えですか。
  477. 山中貞則

    山中国務大臣 これはもう乱発される可能性は全くないようにしてあると思うのです。七十六条の原則が、まず国会承認というものがなければならぬ。衆議院が解散されているときは、憲法第五十四条の緊急集会による参議院の承認というものを得なければならぬということがもう大前提であります。  そこで、「ただし、特に緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで出動を命ずることができる」。しかしながら、その第二項で、そのただし書きの規定、いまの「ただし、特に緊急の必要がある場合」、その場合によって、「国会の承認を得ないで出動を命じた場合には、内閣総理大臣は、直ちに、これにつき国会の承認を求めなければならない」。そしてざらにそれを受けて第三項で、もし国会がその場合に不承認の議決をした場合には、「出動の必要がなくなったとき」というのもありますが、「直ちに、自衛隊の撤収を命じなければならない」、こうなっておりますから、このただし書きの「特に緊急の必要がある場合」というのは、久保防衛局長答弁しましたように、国会の承認を得る手続というものを経るにもう時間的に全く不可能である、しかし緊急不正の侵害というものがわが国に現実に行なわれている、そのときに、国会の承認手続を待ってその間は全然防衛出動しないでいるということは、国の責任者としてできないことだという場合であります。それがある日突然降ってわいたように始まるものではないので、それにはそれなりの、そういう緊急につながるような行動というものが予測をされなければ、突然起こるわけではありませんから、その前提として当然待機命令とかいろいろなことがあるわけでありまして、そういう徴候も何もなしに、国会の承認も経ないで出動させるということがあり得るというのは、全く予想できないような緊急な事態の場合とのみ限定して考えるという解釈でいけば、何か少しおかしな総理でも、さっきあなたはヒットラーの例をあげられましたけれども、そういう者でもなっていない限りはあり得ないことだ、そういうように考えます。
  478. 山田太郎

    山田(太)委員 この点については、まだふえんしていきたい問題があります。しかし、きょうは系統立ってお伺いしておくという立場から、次は治安出動です。  ほかの問題は省きますが、「命令による治安出動」の場合は、二十日以内に国会の承認を要する、すなわち事後承認になっておりますね。それはよく論ぜられるところでございますけれども、自衛隊の隊員といえども同じ日本人でありますし、また対象になると思われる立場の人もやはり同じ日本人でありますし、いわゆる同じ日本人同士の問題になってくると思います、通常。そこで、やはり国会の事前承認とすべきではないかという意見が非常に強いわけですが、この点についてのお考えを承っておきたいと思います。
  479. 山中貞則

    山中国務大臣 私は、法律上は二十日以内に国会に付議しろ、承認を求めろとなっておりますから、一応この法律というものはこれでいいのだと思いますし、事実上、治安出動でもこの場合には、「間接侵略その他の緊急事態」ということがまくらになっておりますから、いわゆる直接侵略及び間接侵略という意味の間接侵略というものにウエートがあると思うのですね。しかし、一般国民同士に銃を向けるとか、そういうような事態ということは、現在の日本の国内において考えられもいたしませんし、したがって、ずいぶん前に議論になりました指揮官心得ですか、そういうものをつくること、そのことが第一。じゃ、日本人同士にそういうような出動をかけることがあり得るのかという誤解も生むから、非常に大切なことではあろうけれども、それはやめるといういきさつがあったように私は承知しております。  そういうことから考えて、そういう場合には事前に国会の承認を得るような必要性があるような気もいたしますが、いまの法律ではそうなっております。あなたの御意見は、私としては、この点については傾聴いたす点があると思います。一般の治安出動の場合、間接侵略以外の場合ですね。
  480. 山田太郎

    山田(太)委員 じゃ、その点について、いまの現法律においては事後承認になっておりますけれども、これを国会の承認を得るようにしたほうがいいんじゃないかというお考え長官にはあるのですか。検討に値するという意味はですね、間接侵略以外の場合という一言がついておりましたけれども、その点もう一ぺんお伺いしておきたいと思う。
  481. 山中貞則

    山中国務大臣 私は大体、「命令による治安出動」というのは間接侵略が重点だと思います。しかし、「その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもつては、治安を維持することができないと認められる場合には」ということも書いてありますから、そのところだけをとらえて言うならば、あなたのおっしゃる御意見、国会との関係、これは山田太郎議員の御意見を私は傾聴いたしますと言っているので、いま改正するとは言っていないのです。
  482. 山田太郎

    山田(太)委員 私もいま改正するというふうに言うたわけじゃないのです。傾聴ということは、やはり尊重という意味を含めての傾聴という意味でしょう。(山中国務大臣「耳を傾ける」と呼ぶ)耳を傾けただけでは、これは自分の意見は一つも入っていないわけですな。やはり答弁というものは非常にニュアンスが多々あるものです。  そこで、委員長からの要請もありますし、時間的な面もありますので、またこれは他日順番にお伺いしますが、要請による治安出動の場合と、それから内閣とシビコンの問題、国防会議とシビコン、防衛庁段階における内部のシビコン、こういう問題を順次一応系統立ってシビコンの質問は続ける予定で、三時間たっぷりあるつもりだったわけですが、それがきょうはできないということは非常に残念ですが、また他日お伺いしたいと思っております。  そこで、これでやめるのじゃない、まだ時間がだいぶあるわけですから、横須賀の空母母港化、この問題に関連して若干具体的な問題も質問しておきたいと思います。  まず、この横須賀の空母母港化の問題については、いろいろな疑問やあるいは問題が起きてきております。やはり第一は、ベトナム以後の米国の極東戦略の考え方、あるいは第二点としましてはニクソン・ドクトリンによる経費節減と、それに伴う基地の拠点化による在日米軍基地の全般的なあり方の問題でありますが、この問題については、これまで予算委員会等々で十分論議されておりますので、私はひとつ、在日米軍の家族の居住問題という点に的をしぼって、数点お伺いしておきたいと思います。  そこで、これは常識的な質問で恐緒ですが、質問を運んでいく順序としてお伺いしておきますが、在日米軍の家族の居住の法的な根拠をまずお伺いしておきたい。
  483. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定の第一条に定義がございまして、その一条の(c)項に、「家族とは」ということで定義がございます。第九条の第一項に、「この条の規定に従うことを条件として、合衆国は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族である者を日本国に入れることができる」、こういう規定がございまして、これに基づきまして、在日米軍並びにその軍属の家族が日本国への入国が認められておる、こういうことになりますが、入国にあたっての手続その他は、第九条に引き続いて規定されているわけであります。
  484. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで、この在日米軍の家族の入国と一般外国人の入国に際しての違いといいますか、比較してどのような特権があるわけですか。
  485. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 入国並びに居住に関しましては、第九条の二項に、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外するということになっております。もう一つは、外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される、こういうかっこうになっております。
  486. 山田太郎

    山田(太)委員 もう少し具体的に詳しく教えてください。
  487. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 入国、滞在、登録、こういうふうな問題に関しましては第九条の規定があるわけでございまして、一般の外国人でございますと、まず入国にあたりまして査証の取りつけを必要といたします。その適用の除外が一つあります。並びに、一たん入国いたしますと、登録及び管理に関しまする日本国の法令の適用があるわけでございますが、在日米軍家族の場合には登録の義務を除外されておる、こういうかっこうでございます。
  488. 山田太郎

    山田(太)委員 第九条ですね。
  489. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 第九条であります。それから第十三条の規定によりまして課税からも免除されている、こういうかっこうになります。一般の外国人でございますと、日本国におきまして滞在中の所得に関して、日本国の法令に従う課税が行なわれるわけでございますけれども、第十三条の規定によりまして、その面での免除が規定されているわけであります。
  490. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで、やはり地位協定の十一条はどういうことになっておりますか。
  491. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 十一条の規定は、関税並びに税関検査の免除の規定でございまして、合衆国軍隊の構成員、軍属並びにその家族は関税並びに税関検査の免除を受ける。ただし物の輸入に関しましては、たとえば十一条の三項に規定がございますように、引っ越し荷物でありますとか、身の回り品でありますとか、あるいは必要とします自動車の輸入並びにその部品の輸入、こういうものに限って免税が認められている、こういうかっこうになっております。
  492. 山田太郎

    山田(太)委員 いまアメリカ局長のおっしゃるのは、この十一条の「ただし」というのは(a)、(b)、(c)ですね。
  493. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 十一条三項(a)、(b)、(c)ということによりまして、こういうものにつきましては関税その他の課徴金を免除される、こういうかっこうになります。
  494. 山田太郎

    山田(太)委員 この十一条三項の(a)、(b)、(c)は関税を免除されるのでありますね。
  495. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 そのとおりであります。
  496. 山田太郎

    山田(太)委員 そうしますと、この十一条三項の在日米軍の家族ですね。私はいま家族にしぼって言っている。家族でなくともいいわけですが、この家族が入国のときというのは、今度やはり横須賀の空母母港化について一千世帯の人が間もなく入ってくるわけですが、そのときに際してもやはり同じことが出てくるわけです。この(a)、(b)、(c)以外のものといったらどんなものですか。この十一条三項の(a)と(b)と(c)、これは読むのは省きますけれども、この(a)と(b)と(c)以外のものというのはどういうものなんですか。あわせて、時間が長くなるから、じゃ関税をかけたことがあるのか。どんなものをかけておるのか。
  497. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 十一条三項(a)と(b)と(c)におきまして、関税免除を受けますのは、家族が日本に引っ越しをしてまいりまして……。
  498. 山田太郎

    山田(太)委員 それを言っているのじゃない。それはいま聞いた。それ以外のものといったら何ですか。何をかけておるのですか、実際に。
  499. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 それ以外のもの、たとえば日本に居住しております家族が米本国から引っ越し荷物以外のもの、あるいは身の回り品、そういうもの以外のものを大量に日本に輸入してくるというようなことがかりにあるとしますれば、これは課税の免除の対象にはなり得ないものであります。
  500. 山田太郎

    山田(太)委員 ぼくの聞いておることを答えてください。じゃ何が課税の対象になっていますか、この(a)と(b)と(c)以外に。具体的な事例あるいは資料があったら出してください。
  501. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 (a)と(b)と(c)以外のものということでございますが、その点につきましては、具体的なことは関税当局と御相談いたしまして、具体的ケースを調べてみたいと思います。
  502. 山田太郎

    山田(太)委員 今度のアメリカの外交教書等によっても、安保条約の肩がわり、あるいは負担を日本に肩がわりさせようというふうな強力な意見があるわけですが、それと匹敵するというものじゃありません。しかし、私の調べた範囲内では、この十一条の三項の(a)と(b)と(c)以外は、これだけは関税が免除になるけれども、それ以外のものは関税をかけるんですよと法文上はなっておるわけです。いまアメリカ局長の言われたとおりです。ところが、これ以外のものといったら何なんだ、何をかけているのだ。一応いま家族に限って言いましたから、在日米軍の家族が入国するときに、その関税を何にかけているのだとこれまでのものを調べてみた。何もないじゃないですか。ただし書き、ただしこれ以外は関税がかかるというふうに法文はなっておる。あるならちゃんと資料を出してください。
  503. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 これ以外のものについて具体的にどういう事例が従来あったかなかったか、そこらにつきましては、関税当局に相談いたしまして調べさせていただきたいと思います。
  504. 山田太郎

    山田(太)委員 この地位協定によってちゃんと確認しなければならぬということがあるんですよ。この地位協定に確認しなければならぬという条文があるんです。在日米軍の家族、それはただ単に関税だけの問題じゃありませんが、ちゃんとあるのです。全くかけていないにひとしい。それは御存じですか。それは知らないという御答弁と解釈いたしますけれども、ところが、外務省はちゃんとこれを確認しなければならないという法文になっている。
  505. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ですから、在日米軍の家族が日本で居住いたします際に、まず引っ越し荷物、身の回り品等を持って日本へ参ります。その上で、日本に居住しております際に必要とする通常日用の所要品につきましては、無税で輸入を認めなければならぬ。それ以外のものにつきましては、この規定に従いまして課税をされることになっておりますが、それじゃ具体的なものにつきましてはという御質問につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、関税当局に実情を調べてもらいたいと思っております。
  506. 山田太郎

    山田(太)委員 ちゃんと確認しなければならないことになっているのですよ。それを確認していないということが一点。それから全く関税はかけていない。私の調べた範囲ではそうなっている。ということは、占領中と全く同じだ、空文にひとしい条文になっているということです。もし過去五年でもいい、資料があるならば——私の調べた範囲内ではないが、あるならば出してもらいたいということをひとつ要求しておきます。  じゃ次に移ります。そこで次に、これは質問するからと言って予告してありますから、答弁が出るはずです。在日米軍の日本に居住する家族の世帯数及び人員は確認されていると思いますけれども、これは幾らぐらいですか。
  507. 高松敬治

    ○高松政府委員 人員で約五万一千でございます。
  508. 山田太郎

    山田(太)委員 では次いで、わが国の施設内にある家族住宅は幾らありますか。
  509. 高松敬治

    ○高松政府委員 全部で一万三千五百三十四戸でございます。
  510. 山田太郎

    山田(太)委員 これは沖繩県を含んでいますか。
  511. 高松敬治

    ○高松政府委員 沖繩を含んでおります。
  512. 山田太郎

    山田(太)委員 じゃその次にお伺いしておきたいのは、次の質問の設定上、横須賀及びその周辺に居住する海軍関係の家族住宅。
  513. 高松敬治

    ○高松政府委員 正確な数はちょっとつかみにくいのでございますが、大体約一千世帯、三千名ないし三千五百名というのが私どもの持っておる数字でございます。
  514. 山田太郎

    山田(太)委員 じゃついでに艦名とか何を言ってください。
  515. 高松敬治

    ○高松政府委員 艦名と申しますと……。
  516. 山田太郎

    山田(太)委員 オクラホマとか……。
  517. 高松敬治

    ○高松政府委員 それはちょっとわかりません。
  518. 山田太郎

    山田(太)委員 それがわからないではね。(「簡明に願います」と呼ぶ者あり)簡明に願いますというのは非常にいいしゃれですね。それがわからぬで施設庁といえるとは、これは驚き入った話です。ここにちゃんとありますよ。一応それは当然、この答えより以上のものが出てくると思った。それがわからぬというのではね。大体一千世帯に近いというのはこれは合っています。  そこでこの夏、来月か再来月か知りませんが、ミッドウェーの乗り組み員の家族が一千世帯。これは、これまでもたびたび答弁の中に出ておったことでございますけれども、この一千世帯の多くの家族が入っていくわけですが、それの対策、住宅の対策というものはどのようになっていますか。
  519. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ミッドウェーの家族約千世帯が横須賀並びにその周辺に居住をしたいということを米側から言ってまいりました際に、米側が言ってまいりましたのは、このかなりの部分は米軍の施設、区域内に居住できるし、また施設、区域内に居住できない者につきましては、横須賀並びにその周辺の地域で民家を米軍が私契約で借り上げた上で居住をさせたい、こういうことを言ってきております。  なお、先ほど横須賀におりまする軍艦の名前をと、こういう御質問でございましたけれども、現在家族を住まわしておりますのは、巡洋艦のオクラホマシティーの家族、それから第十五駆逐隊に属しておりまするミサイルフリゲート艦一隻、それからミサイル駆逐艦一隻、通常駆逐艦四隻、合計六隻の軍艦の家族、こういうことになります。
  520. 山田太郎

    山田(太)委員 アメリカ局長のほうがよく知っているということですね、結果から言うと。  そこで、いまの基地内に居住させるという予定は、何世帯というのがわかっておりますか。
  521. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 具体的な数についてはまだ承知いたしておりません。  それから家族の居住につきましては、六月の末ごろまでに数世帯、七月以降逐次入ってくる、こういうことを言ってきておりますけれども、その具体的な数についてはまだはっきりしたことがわかっておりません。
  522. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで、これもつけ足しでございますけれども、米軍の場合、家族の居住の好みは、私の聞いた範囲内では基地内に住宅をかまえるのを好んでいるようです。中には基地外の人もありますけれども。その点を考えたときに、現在、本筋とは離れますけれども、これは陳情があることでございますから、ぜひ要請をしておきたいわけですが、この横須賀周辺という立場で葉山町があります。この葉山町に約四百世帯の在日米軍の家族が住宅をかまえております。これによって葉山町が一年間に四千万円とか六千万円を負担しているという実情は、町の経費に非常にこたえている。毎月百円のごみ収集費は毎月もらっているけれども、このごみ収集の毎月百円もらうということで四百世帯の数がわかったそうです。私も現地へ行ってみた。ところが住民税をもらうわけにもいかぬ。その点四千万円か六千万円の損失になっている。ところが基地交付金はもらうわけにはいかぬ。  あるいは、これと同じような例で陳情が来ているのは、山口県の大島町の場合です。これはもちろん私の選挙区じゃございません。これは四十六年米軍の飛行機が三回も四回も落ちています。そうして爆音にいつもさいなまれているところでございます。ここも基地交付金をもらうわけにはいかない。岩国とは違います。基地周辺整備費ももらえない。こういう点について、これは長官、何とか措置してあげなくてはならない実情じゃないかと思うわけですが、ひとつこれは長官のほうからお考えを伺っておきたいと思います。
  523. 山中貞則

    山中国務大臣 防衛施設周辺整備法、基地交付金だけでは、私も、今日のように、地域の地方自治体の行財政というものが、やはりサービス面というものを要求される環境が強くなってまいりまして、収入がほとんどない場合におけるサービス面の需要というものに市町村が圧迫されていく。いま私は、基地が全く関係のない町村のことまでは念頭にはないわけでありますが、これから法律の審議もいただきますし、来年に向かって検討を開始したいと思っておりますのは、現在は固定資産税あるいはまた建築物、そういうようなものによって算出の基礎が成り立っておりますから、そうすると、滑走路ないしはその付属物が町村の一部に若干あるけれども、離着陸の騒音はまともにその町だけがかぶるという町なんか、これは防音工事は、それは役場とか学校とかしておりますけれども、今後一般の運輸省の空港なんかでは緑地帯その他のこともありますし、また今度は、住宅移転や防音等のことも当方も考えますけれども、もう少し一般の行財政の面で何か影響度というようなもので考えられないものだろうかということで、まだこれは私、取り組んで間もありませんので、まとめていま申し上げる内容を持ちませんが、来年度予算編成等に向かって、必要ならば法律等を改めて、もう少し基地の実態に即して、それによってデメリットを受けておる町村に対して何らかの措置を講ずる必要があるのではないか、こういうような気がいたします。  いまの葉山町の問題は、先般、大出委員もたしか言われたと思うのですが、そのときも私は、これはまた異例なケースであると思って聞いておりました。これはひとつ外務省のほうも、外交取りきめによってそういうふうに入ってきたわけでありますから、これははたして当方の基地関連のものとして取り上ぐべきものなのか、あるいは外務省自体がむしろ町村に何らかの形で行財政上の——電気ガス税も納めませんしね。そういうようなサービス面は、水道もその他も全部同じょうに、むしろよけい使うわけですから、そういうようなことを考えた場合に、これは無視できない問題だと思いますので、ある部面は外務省もカバーしてもらいませんと、私どものほうで、基地周辺整備の基地交付金というものだけではどうしてもかぶりにくい地域が出てくると思いますから、これは今後相談をして、実情に対処するような方法を何か考えてみたい、そう思います。
  524. 山田太郎

    山田(太)委員 長官の来年度予算を目ざしての努力を強く要請しておきたいと思います。と同時に、外務省にという長官のお話もありましたが、ひとつアメリカ局長から、その点についての答弁もお願いしておきたい。
  525. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定の規定によりますと、すなわち第十三条の二項の規定によりますと、国及び地方公共団体に対して納税の義務を負わない、こういう問題が、まさに葉山町で四百家族というふうにいわれる米国軍人並びにこの家族の世帯についてあり得るわけでございまして、この問題につきましては、ただいま山中長官から御答弁ございましたように、外務省といたしましても、在日母米軍家族のことにからむ問題でございまするから、防衛庁、自治省その他関係当局とよく相談してまいりたい、こういうふうに考えております。
  526. 山田太郎

    山田(太)委員 これは早急にやっていただくよう外務省にも強く要請し、要望しておきたいと思います。  そこで、先ほどの本題に戻りますけれども、空母ミッドウェーが入港し、在日米軍の家族としての一千世帯に対しての基地内の住宅ですね。この住宅の新築は、これはわが党の伊藤前議員が四十五年八月十八日の当内閣委員会質問をしております。その答えには、米軍自身がその費用を負担するということになっておりますが、その答弁のとおりであるかどうかということを一ぺん確認しておきたいと思います。
  527. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 ミッドウェーの家族のために、特に住宅の建設等を日本政府側に要求しておりませんので、アメリカ側としましては、現在米軍の基地内にある住宅、ないしは基地の外にみずからが求めるという形で、その需要を満たすものであるというふうに承知しております。
  528. 山田太郎

    山田(太)委員 もう一ぺん確認しておきますが、基地内は米軍において新築をするということですね。それから基地外にも米軍において賃貸住居を求めていく、そういうことですね。
  529. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 基地内に米軍がみずから新築するという話は聞いておりません。先ほど御答弁申し上げましたのは、現在、横須賀市長井、あるいは横浜市内等にあります施設、区域内の住宅、ないしは施設、区域外にみずから住宅を求めることによってその需要を満たす、そのために新たな住宅の建設の要求を日本政府に対してはしていないということであります。
  530. 山田太郎

    山田(太)委員 再度確認しておいたのは、この前の予算委員会において答弁があやふやな面がありました。もうあと五分しかありませんから、その点を煮詰める時間はありませんけれども、これはもう一ぺん他日煮詰めておきたいと思います。そこでもう一点、最後の五分にお聞きしておきたいところは、ことばも端的に言いますが、いわゆるリロケーションですね。このリロケーションの法的根拠というものを私さがしてみたのですが、この法的根拠というのはどこにあるわけですか。
  531. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定二十四条第一項に米側が経費を負担すべきもの、第二項に日本側が経費を負担すべきものということが規定されてございまして、リロケーションにつきましては、政府が累次国会で御答弁申し上げておりますように、地位協定二十四条二項に基づきまして、代替施設の提供を日本側の費用の負担において行なうものである、こういうことを申しておるわけであります。
  532. 山田太郎

    山田(太)委員 そうすると、リロケーションの定義というのはどういうものですか。
  533. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 特定の場所に提供しておりました施設、区域を、別の場所に日本側の要請に基づいて移設する、その場合の代替の提供をリロケーションと称している、こういうことになります。
  534. 山田太郎

    山田(太)委員 そういたしますと、施設なり家屋なりを日本側が要請して代替として建てて提供する、こういうことですね。ところが、この二十四条の一項なり二項なり、これは私が私なりに勉強してみて、やはり先ほどおっしゃったように、二条なり三条なりを受けてくる。そこで、この二条あるいは三条によって、米軍がやれるべきものがちゃんと示されておるわけです。そしてそれに対して、二十四条の一項の「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される」、こうあります。そうして「2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか」と、ここは経費の負担がうたってあるわけです。リロケーションの定義をいまアメリカ局長からお伺いしたわけですけれども、その定義によると、日本が負担すべきものというのがこの二項の経費の負担である。これはリロケーションの根拠にはなってないじゃないですか。
  535. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 いまお読みになりました二十四条一項の次の第二項には、「日本国は、第二条及び第三条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権」、カッコいたしまして定義がございますが、「をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供し」、すなわち合衆国に経費的な負担をかけないで提供するということでございまして、いわゆるリロケーションの場合にはまさに、合衆国に経費の負担をかけないで日本側が移転先の施設、区域を代替施設として提供する、こういうことになるわけであります。
  536. 山田太郎

    山田(太)委員 ぼくが言ったことをよく聞いていないようですね。この二条、一ぺん読みましょうか。前のほうを略して、「「施設及び区域」には、当該施設及び区域の運営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む」。これは米合衆国が日本において二条によってできるというものです。そうしてこれは「定着物」となっておるわけです。これは経費の分担であって、いわゆるさっきいうリロケーションじゃないわけです。リロケーションじゃない。さっきあなたはリロケーションの定義をおっしゃったじゃないですか。施設があって、まあ建物があって、そうしてこれを日本の要請によってこっちへ移ってもらう、そのときに建てて提供する、これがリロケーションだというのだ。ところがここは金です。金だけの問題をいうておるんです。経費の分担をいうているんです。建物の代替をいうておるわけじゃないです。一例を建物にいうならば、代替をいうているわけじゃない。代がえをいうているわけじゃない。この辺がどうも不明確のようでありますので、この点ははっきりした見解というものを示してもらいたいと思う。ちょっと勉強してみたってわからぬのだ。リロケーション、どこだろうか。いまあなたのおっしゃった二十四条二項もよく勉強してみたけれども、そのリロケーションの定義に従っても出てこないんですよ。
  537. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定二十四条は経費の分担に関する規定でございます。(山田(太)委員「金です、金の分担です」と呼ぶ)したがいましてリロケーションという形で新たな代替施設の提供は、二条一項(a)によりまして、日本側が米側に対しまして施設、区域を提供することに相当するわけであります。地位協定のどこにも、確かに代替あるいはリロケーションということばは出てないことは、御指摘のとおりでございますが、リロケーションというふうに称せられておりまする代替施設の提供は、第二条一項(a)に相当する提供になるわけであります。
  538. 山田太郎

    山田(太)委員 それはおかしいですよ。二条一項の(a)は、よく読んでくださいよ、これは提供する分です。じゃ二条二項あるいは三項。返してもらって、それで今度新たに提供するというのですよ。これはリロケーションじゃないですよ。
  539. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定二条の二項には、施設、区域についての取りきめの再検討をうたっておりますけれども、そのあとに、「施設及び区域を日本国に返還すべきこと又は新たに施設及び区域を提供することを合意することができる」というふうに、新たな施設、区域の提供についても規定いたしておりますし、さらに、その次の第三項には……(山田(太)委員「それは返してもらうことです」と呼ぶ)必要でなくなったときには返すということが規定されているわけでございまして、い、ずれにいたしましても、二条一項、二項、三項、これを総体的に読んでいただきますと、施設、区域を一たん日本が提供いたしました場合にも、日米両国においていずれかの要請のあるときには、その取りきめを再検討いたしますし、その再検討の結果、返還もあるし、また新たに施設、区域の提供もあるということがはっきり規定されているわけであります。
  540. 山田太郎

    山田(太)委員 いや、はっきりしてない。リロケーションは、さっきあなたがおっしゃった定義のとおりです。自分でおっしゃったんですよ、これは。この定義のとおりがどこにあるのです。リロケーションじゃない。これは返してもらう分は三項。提供する分は(a)。二条二項、提供する分です。返してもらって、そうしてまた今度新たに、別の分ですよ、提供するのは。同じもの、一代替じゃないじゃないですか。変な解釈しないでくださいよ。そんないいかげんな解釈で関東計画なんかやられたらたまったものじゃありませんよ。
  541. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定二条一項(a)によりまして施設、区域の提供をいたすわけでありまするけれども、一たん提供いたした施設、区域につきましても、日米双方は絶えずこれを再検討するということが二条二項できめられているわけでございます。しかもその結果、日本国に返還される場合もあり、また新たに施設及び区域を提供することを合意することができる、こういう規定があるわけでございまして、一たん提供した施設を未来永劫変えないなんということにはならないわけでございます。  さらにまた、代替ということばが見当たらないということを御指摘でございますが、その点はまさにそうでございますが、施設、区域の提供の実態を見ました場合に、まさに代替というのは、二条一項(a)によりまして提供する施設と変わりがないということになるわけであります。
  542. 山田太郎

    山田(太)委員 まあアメリカ局長はよくカワズに小便だといわれる。もうどこ吹く風かというてね、りっぱな答弁者だという。有名なわけですが、このことばは悪かったら、失礼だから取り消しますがね。  そこで、いまおっしゃったように、はしなくも、代替ということばはない、あなたもおっしゃったように。地位協定にもないものを、どうでも解釈できるような判断によって、一例をあげるならば関東計画二百二十億円、一説によれば五百億円あるいは一千億円ともいわれております。国民の税金です。どうとでも解釈できるようなそういう条文によって国民の税金をむげに使われたのでは、国民はたまったものじゃない。その点を明確にしていってこそ、真の国民の意思を尊重することになると思うんです。時間がないから……(「要望して終わりだ」と呼ぶ者あり)要望じゃない。要望じゃありません。解釈はてんで間違っておるんです。どうとでも解釈できるような、そういうひねくり回したような解釈をして、それでいわゆる無理難題に応じていくというふうな姿勢——ぼくの無理難題と言うておるのは、当局の無理難題に応じていくというふうなことがあっては相ならぬということを強く言うておきたい。そこで、この点は疑問がまだ晴れてないんです。約束の時間が来たから質問終わりますけれども、これは他日明確にしてもらいたいと思います。先ほどの在日米軍の入国に際しての関税の問題もあわせてひとつ明確にしてもらいたいということを強く要求しておきたいと思います。
  543. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 代替施設の提供について御疑念がございますが、地位協定の規定に基づきまして、政府としては従来代替施設の提供を行なってきております。これは地位協定二条一項(a)、二条二項、この規定によりまして何ら規定に反するものではないというふうに考えておりますし、なるほど代替ということばそのものは地位協定の中にございませんけれども、内容的には、あるいはその態様は地位協定二条の規定に合致するものであり、またその経費の負担につきましては、地位協定二十四条二項の規定に基づいて全く合法的に行なわれているものであるというふうに政府は考えているわけでございます。  また、家族の関税あるいは入国時の税関の取り扱いにつきましては、実態につきまして関税当局によく照会してみたい、こういうふうに考えております。
  544. 山田太郎

    山田(太)委員 時間が過ぎましたので以上で私は質問を終えますけれども、いまのアメリカ局長答弁では、論理、つじつまがさっぱり合わない。どんな解釈でもできるような、そういう答弁をしておるわけです。その点ひとつ、このやりとりを聞いていらっしゃった防衛庁長官に、この点についての見解といいますか、そういうものを一応お伺いしてきょうは質問を締めたいと思います。
  545. 山中貞則

    山中国務大臣 私は地位協定第二条第二項というものだと思っております。しかしそれは、代替ということは、あるいは代替提供ということは、あるいはアメリカのほうの英文でリロケーションというものがないわけでありますから、そこのところは実際行為としてそういうふうに読んでいるわけでありましょう。しかも私どものほうがその建設工事というものの予算も執行もやるわけでありますので、そこらのところは、法的な解釈の面でもきちんとするように、私のほうも外務省と相談します。
  546. 山田太郎

    山田(太)委員 いまの長官の御答弁によって、法的な解釈もきちっとするということでございますから、それもあわせてお願いして質問を終わりたいと思います。  じゃ、以上です。     —————————————
  547. 三原朝雄

    三原委員長 この際、木原実君、木下元二君、山田太郎君、受田新吉君から発言を求められておりますので、順次これを許します。木原実君。
  548. 木原実

    ○木原委員 社会党を代表いたしまして、防衛二法案に反対の討論を行ないたいと思います。  この法案の中身になっております自衛隊沖繩派遣ということにつきましては、沖繩復帰の前後において御案内のとおりたいへん問題がありました。国会の意思としては、一たびこれを否決をいたしておるところであります。  ところが、久保・カーチス協定といういわゆる事務レベルの協定を一つのてこにしながら、すでに四千八百名の自衛隊が現地に派遣をされている。この法案は言ってみれば、国会の意思を無視して、そして事後承認を求めるという手続——今朝来の総理見解表明を聞きましても、この手続上の重要なシビリアンコントロールにかかわる問題についての疑念を晴らすことができません。しかも沖繩県民の自衛隊派遣に対する強い反対の意思は変わっていないわけであります。これは単に地元県民の感情というには、あまりにも深刻な事態があると考えるわけであります。少なくともその根拠の中には、沖繩防衛上の論拠が必ずしも明快ではございません。  私どもは第一に、このような観点から、今度の自衛隊の増強計画並びに南西航空混成団の編成等を含めましたこの法律案に反対をするところでございます。  それから、この法案の中には、防衛医科大学校の新設という問題が出ております。すでに論議がかわされましたように、教育基本法をはずれまして、いわば防衛庁が恣意の立場で医科大学を新設をする、すでにこれ自体が前提が間違っているのではないのか。これらの疑念につきましては、これまでの質疑の中でも、同僚委員から繰り返し指摘をされたところでございます。しかも、防衛医科大学という、ある意味では特殊な医科大学校をつくること。同僚委員の指摘にもございましたように、かつて旧軍隊が石井部隊というようなものを編成をし、生化学等の残酷な実験をやったという伝統が現に生きていたという事実も指摘をされておるところであります。そういうようなかかわりを考えますと、防衛医科大学の新設に対しましては、手続上の問題や、あるいはまた将来の運営等にわたって賛成するわけにはまいりません。  また、この法案の中にございます予備自衛官の増強の問題でございます。これも御案内のとおり、警備連隊構想に当然つながっておるわけでございまして、この警備連隊の構想なるもの、いざというときにはたして一体どこに銃口を向ける役割りを果たすのか、いままでは少なくとも自衛隊の人員補強の面をやるのだ、こういうことに相なっておりますけれども、しかしながら、私どもは多くの疑念を持っておるわけでございます。  総じて、御案内のように、防衛問題につきましては、ようやくわれわれの近隣諸国の中に穏やかな風が吹き始まった時期に……。
  549. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。
  550. 木原実

    ○木原委員 防衛庁自衛隊のみが増強を、しかも長期にわたった計画のもとに増強が行なわれるということについては、多くの国民に疑念があるところであります。私どもとしましては、この法案が通ることによって、これから先ストレートに自衛隊の増強が行なわれることについても、多くの不安と疑問を禁じ得ません。  私どもとしましては、以上のような理由からこの二法案に反対をし、少なくとも、現在存在をする自衛隊が、体質の面で、あるいはまたその運用の面で多くの欠陥も露呈をしておる、そういう面についても指摘をしてまいりました。あるいはまた、アメリカとの関係における共同作戦の分野において、オメガ通信の問題や日米共同作戦の問題についても、同僚委員から具体的な事例をあげてきびしい追及を行なったところでございますけれども、いずれも、わが国の防衛上、ある意味では独立にかかわる面で、これまた問題を残しておるところであります。  したがいまして、最後の問題といたしましては、これからの現在の自衛隊の運用につきましては、体質の改善や、あるいはまた真の意味で国の安全の保障を実現していくために、自衛隊がどうあらねばならないか。私どもとしては縮小の方向に、廃止の方向に歩んでいくべきだと考えておるわけでございますけれども、以上のような意見を申し添えまして、反対討論を終わりたいと思います。
  551. 三原朝雄

    三原委員長 木下元二君。
  552. 木下元二

    ○木下委員 私は日本共産党・革新共同を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対するものであります。今回の法改正は、アメリカのアジアにおける力の政策への同調、協力を前提として、米極東戦略の新たな再編に積極的に呼応する立場からの自衛隊の増強であり、さらに、日米安保条約のより効率的な運用と日米軍事同盟の侵略的強化を強引に推し進めるものであり、断じて許すことのできないものであります。  まず、指摘すべき第一点は、自衛隊員の増員についてであります。  今回の改正による総計六千九百八十八名に及ぶ自衛隊員の大量増員のうち、約半数近くは沖繩配備のための増員であります。これが沖繩米軍の肩がわりを約束した久保・カーチス協定の実施のためのものであることは、質疑を通じて明らかにされました。  ことに、陸上自衛隊の増長千名は沖繩配備の要員で、この増員を含めて陸上自衛隊沖繩配備部隊は約千八百名となり、火砲を特別に強化した特殊な編成のもとに、米軍基地の防衛と県民弾圧の部隊として発足することになるのであります。(発言する者あり)  海上自衛隊の増員三千六十五名は、対潜作戦を主任務とした初のヘリコプター積載護衛艦「はるな」の配備、あるいはコマンド・コントロールシステムの着手など、海上自衛隊の質的、量的強化の人的裏づけとなるものであります。  さらに、航空自衛隊の増員二千九百十八名は、うち二千百四十五名を沖繩配備のため新たに設置される南西航空混成団で占めております。この部隊は、米軍に肩がわりして、沖繩での防空任務を引き継ぐもので、沖繩配備部隊の主力をなすものであり、F104戦闘機二十五機などからなる第八十三航空隊、ナイキ部隊である第五高射群、四つのレーダーサイトを受け持つ南西航空警戒管制隊、那覇基地隊などの部隊を統轄する方面隊に準ずる部隊であります。  また、統合情報機能強化のための増員は、四次防の重要課題である情報収集機能の強化を目ざし、自衛隊が肩がわりした稚内電子情報基地など、スパイ機能の拡大強化をはかるものであります。  これらのことは、結局、四次防達成に不可欠のものとして、現在すでにアジアの反共国家の中では最強の軍隊に成長している自衛隊を、装備の面でも、人員、部隊編成の面でもさらに大幅に強化し、アメリカのアジア戦略の重要な部分を補完することをねらったものであることは、質疑を通じても明らかにされているところであります。  第二は、防衛医科大学校設置の問題であります。  これを設置する真の目的は、質疑を通じても明らかになったとおり、自衛隊が自前で多数の軍医をつくり出すことによって、自衛隊の質的強化に資するとともに、将来における軍事医学の研究に、米軍との協力のもとに大きく道を開こうとするものであります。これは、まさしく医学、医療の軍事化につながるものといわざるを得、ず、断じて許すことはできません。  また、防衛医科大学校の卒業者に、大学医学部卒業者と同様に医師国家試験の受験資格を与えることは、教育基本法の精神に反するだけでなく、現行教育体系を著しく破壊するものであります。  以上指摘したような自衛隊の大増強計画は、国民にばく大な犠牲と負担をかぶせるばかりでなく、日本とアジアの平和と安全を脅かす対米従属の軍国主義全面復活に通ずる危険きわまりない道であります。  今回の防衛法改正案に、全面的に強く反対するとともに、対米従属、国民抑圧、憲法違反の軍隊である自衛隊を直ちに解散し、隊員の平和産業への転職を国家が保障すべきことを主張するものであることを明らかにして、日本共産党・革新共同を代表しての私の討論を終わります。
  553. 三原朝雄

  554. 山田太郎

    山田(太)委員 私は、公明党を代表いたしまして、今回提案されました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について反対の討論をいたします。  わが国の安全保障の目標は、憲法第九条の戦争放棄の精神と絶対平和主義に基づく国民的合意を確立し、全世界に平和憲法の精神を宣揚して、世界平和を目ざすものであると考えるものであります。したがって、安全保障政策は、国際緊張を醸成している諸要因を除去するために、多面的な平和外交を最も重視しなければならないにもかかわらず、政府の姿勢には、新しく胎動しつつある歴史的な国際情勢の動きに対し、何ら積極的に対処する気魄も熱意も全く感じられないばかりか、国際情勢逆行の軍事力増強政策をとっていることを率直に指摘しなければなりません。  歴代政府の失政による今日の住宅、物価、交通、公害、社会保障の立ちおくれ等のひずみをすみやかに解決し、国民のすべてが心から愛することのできる社会福祉日本建設のための内政に全力を傾けるべきであるにもかかわらず、ただまぼろしの脅威を想定して軍事力強化のみの政策をとっている政府は、時代錯誤もはなはだしいといわざるを得ません。  四次防における戦略の基本は、三次防の専守防衛型から、戦術的には、攻勢を含めた戦略をとるという方向を目ざしているといわざるを得ない。これはまさに憲法の拡大解釈の上に立って防衛力増強を合法化する何ものでもありません。  自衛官の定数を約七千人近く増員することにしておりますが、陸上自衛隊においては、恒常的に二万五千人近くの欠員をかかえているにもかかわらず、その上一千名の定員を増員し、十八万体制を維持しようとする防衛庁の意図は、全く理解に苦しむものであります。  航空総隊のもとに、南西航空混成団を新設しょうとしているが、実際には久保・カーチス協定によって臨時派遣隊という名称で、すでにその主力部隊は沖繩に配置済みであります。臨時という名称のもと先取り的実践部隊が配備されているということは、シビリアンコントロールの見地からも、国会軽視という見地からもきわめて重大な問題である。  防衛医科大学の新設についてでありますが、教育基本法に基づかない大学校の卒業者に対して、学校教育法所定の医学コースを経た者と同様に医師国家試験の受験資格を与えることは、現行教育体系を著しく破壊するものであり、とうてい容認できない。  新しい平和の幕あけの時代を迎えて、わが国がとるべき安全保障政策の方向は、外においては、今日の平和を定着させるための積極的な平和外交を推進することであり、内にあっては、社会福祉の充実による内政のひずみをすみやかに取り除き、民生安定による住みよい国づくりをすることが何よりも重要なことであります。しかるに、政府の今回の軍事増強政策は時代に逆行するばかりでなく、時代錯誤もはなはだしいといわざるを得ないのであります。  以上の理由から本法案に強く反対し討論を終わります。
  555. 三原朝雄

    三原委員長 受田新吉君。
  556. 受田新吉

    ○受田委員 私は、民社党を代表して、いわゆる防衛二法案、ただいま審議されておりますこの二法案に反対の意思表示をいたします。  民社党は、もともと国土、国民を守るための最小限の自衛措置を認め、その裏づけの自衛力を認めております。同時に、現在おかれているこの日米安保体制については、国際情勢のあまりにも大幅に前進する緩和の方向にあるこの時点で、わが国に駐留する米軍及びその基地を、平時、戦時を問わず、駐留なき安保条約の体制に即時切りかえるべきであることを提唱しております。  そうした立場から見て、この二法案を見まするときに、自衛力の増強を計画し、そしてバンデンバーグ決議に基づく日米安保条約、並びにわが国の防衛力整備計画の中で、国力、国情に応じて漸増するという精神からこの増強計画を進めておられるのであります。しかし現在の日本の国情は、決してこれを増強する大勢にはありません。少なくとも外交の努力によって紛争を防止するのが根本的な使命であります。そしていまわが国の国情から言うならば、これを増強されようとする自由民主党の方々に対して、これを廃止の方向に持っていく、廃止しようとする野党もあるわけでございまして、増強する政党と、そうしてこれを廃止する政党が互いに政権交代するときの悲劇を考えても、わが国の国情は決して楽観できるものでありません。  そういう意味から私は、この機会に自衛力を増強する計画をおやめになられて、むしろ質的に十分内容を充実して、数をもって威力を示そうという方向から、たとえば陸上において十八万を計画される、これに執念を持っておられる方針を一てきせられまして、質のよい、ここに内容の充実した、少数精鋭の自衛力を整備されるという方向をお考えになるべきではないか。そして装備の上においても、とかく油断をすると攻撃的性格を持つような、そうした兵力、装備でなくして、専守防衛他国から見ても侵略の意図の全然ないことが保証されるような形に、国際的に安心してもらえるようなそうした体制に切りかえるべきではないか。  沖繩におきましても、せっかく祖国に復帰した沖繩県民の長い間の御苦労に報いるためには、平和な島として沖繩を将来長く守ってあげる形からも、沖繩に配置される自衛隊が、アメリカの肩がわりのような久保・カーチス協定でなくして、この機会に沖繩の再建のために、民生協力の部隊が陸海空において、そして災害出動等においても十分お役に立てるような形のものが、ここに配置されるというものであるならば、われわれは協力にやぶさかではございません。そうした軍事的目的のためでなくして民生協力という形で沖繩を守ってあげるのが、この時点におけるわが祖国の使命ではないかと思うのであります。  以上の観点から、この機会に、自由民主党のこの防衛二法案に対する態度、内容的にこれを少数精鋭に切りかえる、そして国民合意の上に立つ自衛隊として、これがりっぱに国民の支持の上に立つような方向へ考えるべきじゃないか。そういう意味におきまして、増強計画に一切反対、そして内容的に国民の合意の上に立つ自衛力として、国民の信頼の上に立つものを十分育成すべきである。とかく事件を起こして国民の信頼を失うような形、しばしば更迭する長官のそうした形において、政治不信にもつながるようなこういう形でなくして、国民の信頼の上に立つ、整備され縮小された形における自衛力というものをここに再検討していただく意味におきまして、遺憾ながら反対の意思表示を申し上げた次第でございます。
  557. 三原朝雄

    三原委員長 これにて発言は終了いたしました。  この際、念のため確認をいたします。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
  558. 三原朝雄

    三原委員長 起立多数。よって、賛成多数で可決されたことが明確になりました。  次回は、来たる二十八日木曜日午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後十一時三分散会