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1973-06-01 第71回国会 衆議院 内閣委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月一日(金曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 三原 朝雄君    理事 奥田 敬和君 理事 加藤 陽三君    理事 笠岡  喬君 理事 藤尾 正行君    理事 大出  俊君 理事 木原  実君    理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    伊能繁次郎君       越智 伊平君    大石 千八君       近藤 鉄雄君    丹羽喬四郎君       旗野 進一君    林  大幹君       三塚  博君    吉永 治市君       上原 康助君    坂本 恭一君       山崎 始男君    横路 孝弘君       鈴切 康雄君    受田 新吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君         文 部 大 臣 奥野 誠亮君         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         建 設 大 臣 金丸  信君         国 務 大 臣         (内閣官房長官二階堂 進君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長内閣総         理大臣官房審議         室長      亘理  彰君         内閣審議官   粟屋 敏信君         行政管理庁長官         官房審議官   木下  薫君         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君         防衛政務次官  箕輪  登君         防衛庁長官官房         長       田代 一正君         厚生大臣官房長 曾根田郁夫君         厚生省公衆衛生         局長      加倉井駿一君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      穴山 徳夫君         厚生省援護局長 高木  玄君         建設大臣官房長 大津留 温君         建設省都市局長 吉田 泰夫君         建設省住宅局長 沢田 光英君  委員外出席者         法務省刑事局刑         事課長     根岸 重治君         文部省大学学術         局医学教育課長 齋藤 諦淳君         運輸省鉄道監督         局民営鉄道部長 中村 四郎君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ――――――――――――― 委員の異動 五月三十日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     澁谷 直藏君   近藤 鉄雄君     船田  中君   竹中 修一君     關谷 勝利君   林  大幹君     阿部 喜元君 同日  辞任         補欠選任   阿部 喜元君     林  大幹君   澁谷 直藏君     越智 伊平君   關谷 勝利君     竹中 修一君   船田  中君     近藤 鉄雄君     ――――――――――――― 五月二十八日  国の行政機関の休日に関する法律案大出俊君  外六名提出衆法第三八号)  一般職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案大出俊君外六名提出衆法第三九  号) 同月三十一日  靖国神社法案橋本登美三郎君外十名提出、衆  法第三二号)  休日の範囲の改定等のための民事訴訟法等の一  部を改正する法律案大出俊君外六名提出、衆  法第四〇号) 同月十六日  官公労働者ストライキ権回復に関する請願  (阿部未喜男君紹介)(第四二七九号)  同(板川正吾紹介)(第四三三四号)  同(田中武夫紹介)(第四三三五号)  靖国神社国家管理反対に関する請願外一件  (横路孝弘紹介)(第四三三三号) 同月十七日  靖国神社法制定に関する請願西村英一紹介)  (第四四七二号)  旧海軍刑法による厚木航空隊員受刑者の名誉回  復に関する請願赤城宗徳紹介)(第四四七三  号)  官公労働者ストライキ権回復に関する請願  (久保三郎紹介)(第四四七四号)  同(竹村幸雄紹介)(第四四七五号)  同(中澤茂一紹介)(第四四七六号)  同(原茂紹介)(第四四七七号)  同(長谷川正三紹介)(第四四七八号)  同(梅田勝紹介)(第四五八七号)  同外一件(小川省吾紹介)(第四五八八号)  同外三件(瀬野栄次郎紹介)(第四五八九号)  同(高橋繁紹介)(第四五九〇号)  同(寺前巖紹介)(第四五九一号)  同(谷口善太郎紹介)(第四五九二号)  旧満州開拓団員に対する恩給等通算に関する請  願(旗野進一紹介)(第四五八六号) 同月二十一日  靖国神社法制定に関する請願赤城宗徳紹介)  (第四七二九号)  同(今井勇紹介)(第四七三〇号)  同(植木庚子郎君紹介)(第四七三一号)  同外十七件(大西正男紹介)(第四七三二号)  同外二件(大野明紹介)(第四七三三号)  同(大村襄治紹介)(第四七三四号)  同外六件(片岡清一紹介)(第四七三五号)  同外三件(唐沢俊二郎紹介)(第四七三六号)  同(西村英一紹介)(第四七三七号)  同外五件(羽田孜紹介)(第四七三八号)  同外一件(長谷川峻紹介)(第四七三九号)  同外十二件(藤本孝雄紹介)(第四七四〇号)  同外一件(細田吉藏紹介)(第四七四一号)  同外一件(荒舩清十郎紹介)(第四八四〇号)  同(石井一紹介)(第四八四一号)  同外一件(稻葉修君紹介)(第四八四二号)  同(上村千一郎紹介)(第四八四三号)  同(宇都宮徳馬紹介)(第四八四四号)  同外二件(金子一平紹介)(第四八四五号)  同外六件(櫻内義雄紹介)(第四八四六号)  同外一件(塩川正十郎紹介)(第四八四七号)  同(白浜仁吉紹介)(第四八四八号)  同外三件(塩崎潤紹介)(第四八四九号)  同外十二件(住栄作紹介)(第四八五〇号)  同外四件(瀬戸山三男紹介)(第四八五一号)  同(染谷誠紹介)(第四八五二号)  同外一件(中垣國男君外一名紹介)(第四八五三  号)  同(中山正暉紹介)(第四八五四号)  同(中尾宏紹介)(第四八五五号)  同(永山忠則紹介)(第四八五六号)  同外一件(灘尾弘吉紹介)(第四八五七号)  同外三件(原田憲紹介)(第四八五八号)  同外十一件(福永健司紹介)(第四八五九号)  同外二件(福田篤泰紹介)(第四八六〇号)  同(増岡博之紹介)(第四八六一号)  同(宮澤喜一紹介)(第四八六二号)  同外六件(武藤嘉文紹介)(第四八六三号)  同外八件(森喜朗紹介)(第四八六四号)  同外二件(山口敏夫紹介)(第四八六五号)  同(木村俊夫君外一名紹介)(第四八六六号)  同外三件(渡辺美智雄紹介)(第四八六七号)  官公労働者ストライキ権回復に関する請願  (野間友一紹介)(第四七四二号)  同(米内山義一郎紹介)(第四七四三号)  自衛隊機の千歳市上空における飛行規制等に関  する請願多田光雄紹介)(第四八三九号) 同月二十四日  靖国神社法制定に関する請願中垣國男紹介)  (第四九七四号)  同外二件(井出一太郎紹介)(第五一五二号)  同外五件(井原岸高紹介)(第五一五三号)  同外三件(内田常雄紹介)(第五一五四号)  同(越智通雄紹介)(第五一五五号)  同(北澤直吉紹介)(第五一五六号)  同外五件(久野忠治紹介)(第五一五七号)  同外三件(小山長規紹介)(第五一五八号)  同外一件(早稻田柳右エ門紹介)(第五一五九  号)  同外六件(關谷勝利紹介)(第五一六〇号)  同(野中英二紹介)(第五一六一号)  同(橋本龍太郎紹介)(第五一六二号)  同(藤波孝生紹介)(第五一六三号)  同外四件(松永光紹介)(第五一六四号)  同外五件(松野幸泰紹介)(第五一六五号)  同外一件(三ッ林弥太郎紹介)(第五一六六号)  同外一件(村田敬次郎紹介)(第五一六七号)  同外十八件(森下元晴君紹介)(第五一六八号)  官公労働者ストライキ権回復に関する請願  (諫山博紹介)(第五〇一七号)  同(梅田勝紹介)(第五〇一八号)  同(紺野与次郎紹介)(第五〇一九号)  同外三件(瀬野栄次郎紹介)(第五〇二〇号)  同(井岡大治紹介)(第五一五〇号)  同(藤田高敏紹介)(第五一五一号)  東京都の軍事基地全面撤去に関する請願中路  雅弘紹介)(第五一七〇号) 同月二十五日  靖国神社国家管理反対に関する請願外四件  (河上民雄紹介)(第五二九二号)  同外三外(山中吾郎紹介)(第五二九三号)  同外二件(河上民雄紹介)(第五四三〇号)  同(山中吾郎紹介)(第五四三一号)  官公労働者ストライキ権回復に関する請願  (木下元二紹介)(第五二九四号)  同(野坂浩賢紹介)(第五二九五号)  同(山口鶴男紹介)(第五二九六号)  同(井岡大治紹介)(第五四三二号)  同(清水徳松紹介)(第五四三三号)  同(土井たか子紹介)(第五四三四号)  靖国神社法制定に関する請願木村俊夫紹介)  (第五二九七号)  同(關谷勝利紹介)(第五二九八号)  同外二件(長谷川四郎紹介)(第五二九九号)  同外七件(藤本孝雄紹介)(第五三〇〇号)  同(近藤鉄雄紹介)(第五四二九号) 同月二十九日  官公労働者ストライキ権回復に関する請願  (梅田勝紹介)(第五五七〇号)  同外五件(加藤清政紹介)(第五五七一号)  同(大柴滋夫紹介)(第五七二九号)  同(堀昌雄紹介)(第五七三〇号)  同外三件(土井たか子紹介)(第五七三一号)  靖国神社法制定に関する請願外二件(江藤隆美  君紹介)(第五五七二号)  同外三件(瓦力紹介)(第五五七三号)  同外四件(福田篤泰紹介)(第五五七四号)  同外一件(越智通雄紹介)(第五七二七号)  同(草野一郎平紹介)(第五七二八号)  東京都の軍事基地全面撤去に関する請願中路  雅弘紹介)(第五五七五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月二十八日  官公労働者ストライキ権回復に関する陳情書  外一件  (第三五六号)  公務員給与引上げに関する陳情書  (第三五七号)  恩給年金制度改善に関する陳情書  (第三五八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  文部省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一五号)  国土総合開発庁設置法案内閣提出第二三号)  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二四号)  内閣法等の一部を改正する法律案内閣提出第  二七号)  国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣  提出第八一号)  建設省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一二号)  厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第九号)      ――――◇―――――
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  この際、山中防衛庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。山中防衛庁長官
  3. 山中貞則

    山中国務大臣 このたび、文字どおりはからずも防衛庁長官就任を命ぜられました。  内閣委員会皆さま方には、わずか十カ月余り前まで長年月にわたり、与野党ともに、立場を異にしながらも真摯な議論をかわし、そして国政のために努力してまいった経験を持つ私として、皆さま方と再び当委員会国政のために議論する立場を与えられたことを光栄に存じ、かつ喜びに思います。今後、皆さま方の急遽登板せざるを得なかった私に対する御理解のもとに御叱正を賜わりまして、私どもの立場国民に受け入れられるように一生懸命努力をいたしますから、御協力を賜わるようにお願いいたします。  以上をもって就任のごあいさつといたします。(拍手)      ――――◇―――――
  4. 三原朝雄

    三原委員長 文部省設置法の一部を改正する法律案国土総合開発庁設置法案法務省設置法の一部を改正する法律案内閣法等の一部を改正する法律案及び国家行政組織法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。     ―――――――――――――
  5. 三原朝雄

    三原委員長 順次趣旨説明を求めます。奥野文部大臣
  6. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 このたび政府から提出いたしました文部省設置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、文部省内部部局として新たに大学局及び学術国際局設置し、学術国際局ユネスコ国際部を置くこととし、これに伴い大学学術局及び日本ユネスコ国内委員会事務局を廃止するものであります。  近年、高等教育への進学希望者は年々増加し、今後ともますますその傾向が続くものと見込まれております。また、大学入学者選抜制度改善など解決すべき課題が存しております。このため、高等教育拡充整備とその改革のための諸施策推進することが重要となっております。  また、学術研究振興につきましては、近時における学術研究の進展にかんがみ、長期的展望に立ってわが国学術振興を一そう充実するため研究体制及び研究条件整備改善を強力に推進する必要があります。  さらに国際化時代に対応して、教育学術及び文化国際交流を一そう推進し、わが国と諸外国との間の交流協力関係を深めていくことが緊要の課題となっております。  このような現下の課題に適切に対処し、諸般の施策を積極的に推進していくため、現在の大学学術局を再編成して、高等教育計画的な拡充整備とその改革に取り組む大学局と、新たに学術振興教育学術及び文化国際交流推進に取り組む学術国際局とを設置することといたしました。  また、学術国際局ユネスコ国際部を置き、省内に分散している国際関係行政部門を一元化して、国際関係事務の総合的な推進をはかることとした次第であります。  なお、日本ユネスコ国内委員会事務学術国際局において処理することとし、国の行なうユネスコ活動の積極的な推進をはかることといたしましたので、同事務局は廃止することとしたものであります。  以上がこの法律案提出いたしました理由及びその内容概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願いいたします。
  7. 三原朝雄

  8. 坪川信三

    坪川国務大臣 ただいま議題となりました国土総合開発庁設置法案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  近年における経済の発展に伴う人口産業の急激な都市への集中の結果、過密過疎問題が発生し、また、環境の悪化、交通難住宅難地価高騰等のひずみが深刻化いたしましたことはすでに指摘されているところであり、豊かで住みよい生活を確保するためこれらの諸問題を早急に解決しなければならないことは、いまさら申し上げるまでもないと存じます。  これらの諸問題を解決し、国民がきれいな空気と水、緑に恵まれた生活環境を享受し得るようにするためには、人口産業大都市集中の流れを転換し、国土の全域にわたって均衡のとれた発展をはかるための諸施策を強力に展開することが必要であります。’  政府は、今後、環境保全並びに土地対策及び水問題に万全の措置を講じつつ、過密と過疎を同時に解決することを主眼として、大都市の再開発生活環境施設を中心とする社会資本投資の拡大、教育文化施設整備などの施策を総合的に進めることとしておりますが、特に、交通通信ネットワーク整備、工業の全国的な再配置、地方都市及び農山漁村整備等の諸施策を強力に推進してまいる所在であります。  現在、開発行政を所管し、開発行政関係する省庁は、きわめて多岐にわたっております。これは、開発行政内政全般に及ぶきわめて広範な政策分野であることを物語っているわけであります。しかしながら、国土改造を強力に推進していくためには、十分な企画調整能力を持った総合的な行政機構がぜひとも必要であると考え、このため、新たに国土総合開発に関する行政を総合的に推進することをその主たる任務とする国土総合開発庁総理府の外局として設置することとしやのであります。  以上が、本法案を提案した理由であります。  次に、この法律案概要について御説明いたします。  第一に、国土総合開発庁所掌事務及び権限についてであります。  国土総合開発庁は、その任務を遂行するため、まず、国土総合開発に関する計画をはじめ、大都市機能改善地方都市及び農山漁村整備、総合的な交通施設の体系の整備等国土総合開発に関する総合的かつ基本的な政策及び計画企画立案することとしております。  次に、国土総合開発に関する関係行政機関の基本的な政策及び計画、特定の地域の大規模な開発整備事業にかかる関係行政機関計画並びに経費の見積もりの方針及び配分の計画等関係行政機関事務調整を行なうこととしております。  さらに、国土総合開発の前提である土地問題及び長期的な水需給に関する政策を総合的に企画立案することとしております。  また、災害に関する施策につきましても、その企画立案及び関係行政機関事務調整を行なうこととしております。  以上のほか、首都圏近郊整備地帯及び都市開発区域整備に関する法律等、各法律の施行に関する事務を行ない、また、国土総合開発法をはじめとする国土開発整備に関する諸法律に基づく内閣総理大臣権限の行使につき、内閣総理大臣を補佐する等の事務を行なうこととしております。  第二に、国土総合開発庁の長は、国土総合開発庁長官とし、国務大臣をもって充てることとしております。国土総合開発庁長官は、国土総合開発をはかるため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出及び説明を求め、さらに、重要事項について勧告を行なう権限を有するほか、特に内閣総理大臣に対し、内閣法第六条に基づく措置がとられるよう意見具申ができることとしております。  第三に、国土総合開発庁内部部局として、長官官房のほか、計画局調整局土地水資源局大都市圏整備局及び地方振興局の五局を置くこととし、土地水資源局には、水資源部を置くこととしております。  また、付属機関として土地鑑定委員会を置き、地価公示不動産鑑定士試験等の実施及び不動産鑑定評価に関する重要事項について調査審議することとしております。  第四に、国土総合開発庁設置に伴い、内閣法及び関係省庁設置法改正その他関係法律整備を行なうこととしておりますが、特に、環境保全の観点から、下水道整備緊急措置法等についても所要改正を行なうこととしております。  最後に、国土総合開発庁は、昭和四十八年七月一日から発足することこととしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  9. 三原朝雄

  10. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 法務省設置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  この法律案改正点の第一は、沖繩弁護士資格者等に対する本邦の弁護士資格等の付与に関する事務の終了に伴い同事務に関する規定を整理しようとするものであります。  改正点の第二は、現在松山市にある松山刑務所所在地が市街地化したこと等の事情により、同刑務所を愛媛県温泉郡重信町に移転すること、及び現在鹿児島市にある鹿児島入国管理事務所鹿児島空港出張所所在地が、鹿児島空港の廃止、新鹿児島空港設置により、鹿児島県姶良郡溝辺町に移転することに伴い、その位置表示を改めようとするものであります。  改正点の第三は、北海道地区における少年院に収容されている者の過剰収容状態を緩和し、矯正行政を有効適切ならしめるために、北海道樺戸月形町に月形少年院設置しようとするものであり、また、中部地区における医療を必要とする少年の収容状況等にかんがみ、愛知県知田郡南知多町に所在する豊浦医療少年院を廃止しようとするものでございます。  改正点の第四は、岩手大船渡所在大船渡港ほか八カ所における出入国者増加等に対処いたし、岩手大船渡市に仙台入国管理事務所大船渡出張所を、また宮城県石巻市に仙台入国管理事務所石巻港出張所を、茨城県日立市に東京入国管理事務所日立港出張所を、石川県金沢市に名古屋入国管理事務所金沢港出張所を、兵庫県加古川市に神戸入国管理事務所東播磨港出張所を、大分県佐伯市に福岡入国管理事務所佐伯港出張所を、熊本県八代市に福岡入国管理事務所八代港出張所を、沖繩県石川市に那覇入国管理事務所金武港出張所を、沖繩県コザ市に那覇入国管理事務所嘉手納出張所をそれぞれ設置し、一方、出入国者の減少に伴い、札幌入国管理事務所根室港出張所を、また、沖繩県那覇入国管理事務所等設置されたことに伴い、鹿児島入国管理事務所和泊港出張所をそれぞれ廃止しようとするものでございます。  改正点の第五は、市町村の廃置分合等に伴い、札幌法務局及び函館地方法務局管轄区域内の行政区画名称の一部並びに旭川刑務所交野女子学院和泉少年院豊ケ岡農工学院東京入国管理事務所木更津港出張所東京入国管理事務所直江津港出張所及び名古屋入国管理事務所名古屋空港出張所位置表示をそれぞれ改めようとするものであります。  以上が法務省設置法の一部を改正する法律案の要旨でございます。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
  11. 三原朝雄

  12. 二階堂進

    二階堂国務大臣 ただいま議題となりました内閣法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  政府が、今日の複雑化し、膨大化した行政需要に適切に対処し、強力かつ一体的な行政運営を行なっていくためには、各省のみならず、内閣みずからの機能の強化をはかる必要があることは言うまでもありません。  このため、先般の行政監理委員会の答申の趣旨を勘案し、高度なかつ専門的な識見をもって内閣総理大臣を補佐する内閣参与制度を設ける等の措置を講ずることといたすものであります。  以下、この法律案概要を申し上げます。  第一は、内閣法の一部改正であります。  その内容は、まず、内閣官房に、内閣参与三人以内を置くことができるものとし、内閣参与は、内閣重要政策に関し、内閣総理大臣に進言し、及び内閣総理大臣の命を受けて、内閣総理大臣意見を具申することとしております。  次に、内閣官房事務に、閣議にかかわる重要事項に関する基本的な方針企画に関する事務を加え、内閣審議官はこれを所掌するほか、特に命を受けたときは、内閣参与の職務を助けることといたしております。  第二は、国家公務員法及び特別職職員給与に関する法律の一部改正でありまして、内閣参与は、特別職国家公務員とし、その受ける給与に関し所要の定めをすることとしております。  第三は、内閣法制局設置法の一部改正でありまして、内閣法制局の部の名称を局に改めるものであります。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  13. 三原朝雄

  14. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま議題となりました国家行政組織法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。  最近における社会経済情勢の変化には著しいものがありますが、政府としてはこれらの諸事情に即応すべく、従来からその時代に応じて簡素で能率的な機構の整備と、適正な定員配置の実施につとめてきたところであります。  このうち定員の配置につきましては、さきに行政機関職員の定員に関する法律の制定により、新しい定員管理制度が確立して弾力的な運用が可能になり、着々その効果をあげておりますが、今回これにあわせて行政機構の面におきましても、行政需要の変動に即応した効率的な運用を期するため、行政機関の組織編成の一そうの弾力化をはかり、あわせて行政機関の組織の基準をさらに明確にする必要がありますので、この法律案提出した次第であります。  法律案内容について御説明申し上げますと、第一に、官房、局及び部は政令で定めることにいたしております。  第二は、付属機関その他の機関について、これを性格別に審議会等、施設等機関及び特別の機関にそれぞれ区分し、審議会等及び施設等機関は法律または政令で定めることとしております。  第三に、庁次長は政令で定めることとし、法律国務大臣をもってその長に充てることと定められている庁以外の庁に、その所掌事務の一部を総括整理する職を置くときは、政令で定めることとしております。  第四に、官房に長を置くとき及び局、部もしくは委員会事務局に次長を置くときは、政令で定めることとしております。  第五に、政府は、少なくとも毎年一回国の行政機関の組織の一覧表を官報で公示することといたしております。  なお、以上のほか、所要の規定の整備をはかるとともに、附則におきましてこの法律の施行期日及びその施行に伴い必要な事項については、別に法律で定めることとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  15. 三原朝雄

    三原委員長 これにて趣旨説明は終わりました。      ――――◇―――――
  16. 三原朝雄

    三原委員長 次に、建設省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  17. 大出俊

    大出委員 どうも天皇の話ばかり頭にありまして、少し間が延び過ぎて半分忘れていますけれども、事が事で非常に重要な問題だと私は思っておりますので、資料を出していただくように先般お願いしたのですが、大かたの資料をいただきましたので、問題の焦点にしぼってひとつ詰めさせていただきたい。  いろいろ考えてみましたが、何と言われてもこれは納得できない、こんなばかなことがあっていいはずはない、こう私は実は思います。事は、渋谷区にいま鉄骨でビルが骨組みだけ建ちかかっております。行って見てまいりましたが、これは渋谷区宮下公園というところの前の角に地下鉄ビルディング株式会社が建設中である渋谷ビルなるものでございまして、塔屋を入れますと十六階ぐらいになるビルでありますが、これはまた建設中止の仮処分申請等も地域住民の方から出ておりまして、基礎法律がございませんために、この仮処分申請は敗訴の形にはなっておりますけれども、これをめぐる審尋の中等で会社のほうから弁明、答弁等が行なわれておりますけれども、この中にも非常に大きな問題が実はございます。国民的な立場から考えて、こういうことが行なわれていいはずはない、こう思いますので、お答えをいただきたいのであります。  そこで、まず最初に、運輸省の皆さんのほうに交通営団法なるものをいただきたいと申し上げたら、皆さん方のほうでゼロックスをおとりになってお持ちになった。ちょっとこれは奇怪な文章があるので念を押しておきたいのですが、この交通営団法の第一章総則のところに、「目的及び法人格・関連事業」、こういう要項がございます。「第一条 帝国高速度交通営団ハ東京都ノ区ノ存スル区域及其ノ附近ニ於ケル交通機関ノ整備拡充ヲ図ル為地下高速度交通事業ヲ営ムコトヲ目的トスル公法上ノ法人トス ②帝都高速度交通営団ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ノ事業ニ関聯スル事業ヲ営ミ又ハ之ニ投資スルコトヲ得」、こうなっておるんですが、「帝国」というのは、いまこの世の中に存在をしないんだろうと私は思うのでございますが、大日本帝国とまでいいますかな。これはどうも妙な話でございましてね。第一法規出版株式会社版ということで「現行法規総覧」、これは衆議院法制局と参議院法制局が編集しておるものの中で、「71 運輸(2)」の五三八ページ。つまりこういう法規集の中で、一条、総則、目的のところがいきなり「帝国」と、こうなっておるのはどうも奇怪な感じがいたしますので、どういうことでこういうことになっているのか御説明をいただきたい。
  18. 中村四郎

    ○中村説明員 お答え申し上げます。  ただいまの「帝国」ということにつきまして、私たちのほうから先生に差し上げました資料に、そういう表示がなされておるといたしますれば誤謬でございまして、現在、東京とその周辺におきまして地下高速度交通事業を営んでおります公法上の法人といたしましては、帝都高速度交通営団というのが正式の名称でございまして、これの根拠法規といたしましては、昭和十六年に制定されました帝都高速度交通営団法というものに準拠いたしておるわけでございます。
  19. 大出俊

    大出委員 誤謬でございまして、というのは印刷上の誤り、つまりこれはあなた方は、ゼロックスをおとりになってお持ちになったんだから、現物はこのとおり書いてあるわけでしょう。そうすると妙なことになるんですが、衆議院法制局、参議院法制局が編集したやつが間違ったことを書いてあることになるんですか。
  20. 中村四郎

    ○中村説明員 ただいま申し上げましたように、法律といたしましては帝都高速度交通営団法でございまして、その中に規定されております法人としての名称は帝都高速度交通営団ということに相なっておりまして、ただいま先生に差し上げました資料に「帝国」となっておれば、それは誤りでございます。
  21. 大出俊

    大出委員 皆さんの法規集を見てくださいよ。法規集というのは、いままで衆議院法制局と参議院法制局が編集していますからね。間違いがあると思ったことは一度もないのですよ。ところが、衆議院、参議院両方の法制局が編集したものに間違いがあったということになれば、これはそう簡単にそうでございますかと言えない。あなた方は、活字で印刷してある法規集をゼロックスをおとりになって、私にお出しになった。だから、法規集そのものが間違っておるなら、衆議院、参議院の法制局が編集した「法規総覧」なんというものはうっかり信用できぬことになる。いかがでございますか。現物はそうなっておりますか。私によこしてものにだけ書いてあるんじゃないでしょう。
  22. 中村四郎

    ○中村説明員 私どもが平生用いております「鉄道六法」というものでは「帝都」になっております。それからまた、制定されまして以来法律名称としては、帝都高速度交通営団法でございます。ただいま先生がお読みになりましたコピーにとりましたものには、第一条におきまして「帝国」という表示になっておりまして、第二条以下は「帝都高速度交通営団」というふうに書いてありまして、これは誤りでありまして、直ちに訂正をいたしたいと思います。
  23. 大出俊

    大出委員 これはひとつこうしていただけませんか。法制局が編集した、たいしたことじゃないといえばたいしたことじゃないのですが、「現行法規総覧」の中に間違いがあるとなると、各省庁の皆さんが常にお使いになり、私どもも使っておる法規集ですから、ちょっと間違いましたじゃ済まぬので、これはやはりはっきりしておかぬといけません。たくさんありますからね。法制局に間違いなきものと思っておりましたが、現物が間違っておるんだとすれば、法制局の編集に間違いがあったんだと思う。そうでしょう。だから委員長、各官庁みな使っておるのですから、法規ですから、こういう間違いがあるものを編集されては困るので、御注意をいただきたい。ちょっとお願いしておきます。世の中に間違いというのはあるものですね。  そこで、これは先般るる申し上げましたから、重ねて申し上げませんが、いまの法律に基づくこの渋谷ビルといっているものですが、まずここに入られる会社はどこが入るのですか。
  24. 中村四郎

    ○中村説明員 地下鉄ビルディングが建設中の渋谷地下鉄ビルにつきましては、地上七階から十三階までは東急建設及びその関係会社、それから地上三階から六階までにつきましては事務所が入居することになっておりますが、これは東急建設がテナントをあっせんすることになっております。それから地上一階から二階は食堂、店舗、地下一階が駐車場、地下二階が控え室という建設計画に相なっております。
  25. 大出俊

    大出委員 そうすると、これはてっぺんから下まで全部東急、こういうことですな。私の手元にあります資料によりますと、この建物は東京都渋谷区渋谷一丁目十六番地所在の渋谷地下鉄ビルディング、地下二階、地上十三階、塔屋三階、こうなっておりますが、これはすべて東急並びにその関係、こういうことになる。地上七階から十三階までは先般問題にいたしました東急建設、それから一階から二階というところが食堂、店舗、あと三階から六階が事務所、テナントというのですが、これは東急がやるのでありまして、東急プレハブ、東急道路、東急産業などなどというものが入る。そうなると、これはすべて東急がお入りになる。  つまり、時価二十数億、三十億近い八百坪の土地は、これは先ほどお話がございました、帝国ではない帝都ですな、帝都高速度交通営団、ここにございますように公法上の法人、金は国鉄と東京都がすべて出している、ここが持っている。その八百坪の土地を子会社である地下鉄ビルディング株式会社が借りて、そこに地下二階、地上十三階、塔屋三階、合計十六階のものが建つ。これを全部すっぽり東急に貸す。この建設はどこがおやりになりますか。
  26. 中村四郎

    ○中村説明員 渋谷地下鉄ビルの建設につきましては、東急建設がその躯体等を請け負うことになっております。
  27. 大出俊

    大出委員 そうすると、二十数億、三十億近い八百坪の土地は帝都高速度交通営団が持っている。これを子会社の地下鉄ビルが借りて、その八百坪に塔屋入れて十六階の建物を建てる。随意契約で東急建設がこれを建てる。入るのも全部東急関係の方々ばかりが入る。こういうことになると、公の法人が持っている土地を子会社に貸す、そこに建てる会社は東急建設で、入るのも主として東急建設が入り、それから三階から六階というのも東急プレハブだの東急産業だのというところが入る。一体これを、東急のために、東急に建てさせて東急を入れてやる必要がどうしてあるんですか。  もう少しこまかく聞きたいのですが、この建設の費用の内訳はどうなりますか。幾らかかって、資金調達はどういうぐあいになさいますか。
  28. 中村四郎

    ○中村説明員 この地下鉄ビルの総建設費は二十七億七千五百万円でございまして、建設計画の中の資金調達といたしましては、入居保証金が十四億二百九十一万四千円、敷金といたしまして一億七千七百六万八千円、それから銀行からの借り入れ金といたしまして十億を予定します。自己資金として一億九千五百一万八千円、こういう計画になっております。
  29. 大出俊

    大出委員 二十七億七千五百万かかる。保証金が十四億二百九十一万、敷金が一億七千万、銀行から十億借り入れる、自己資金が一億九千万。保証金というのは、これはあくまでも保証金ですから、契約解除のときには返さなきゃなりませんね。そうでございましょう。
  30. 中村四郎

    ○中村説明員 入居保証金につきましては、預託日から起算しまして十年間据え置きまして、その後十年間に均等償還いたす内容のものでございます。
  31. 大出俊

    大出委員 十年間据え置くというのですが、それじゃ、この東急関係のところとの、たとえば東急建設との部屋を貸す賃貸契約は何年間でございますか。
  32. 中村四郎

    ○中村説明員 貸室賃貸借契約書案によりますと、昭和四十九年三月から昭和六十九年二月まで二十年間ということになっておりまして、期間満了前の六カ月前に双方異議を申し述べません場合には更新ということになっております。
  33. 大出俊

    大出委員 そうすると、東急という会社との間に二十年契約を結んだ。十年間はこの保証金は据え置きであって、残る十年間で均等償還をする。つまり全部返すわけでしょう。東急のほうは、十年間据え置き分の利子などというものは、これは損をするかもしれぬが、二十年契約である限りは、解除がない限り契約が続くんですから、金はちゃんと返ってくる、こういうことですね。ところで、この保証金というのはどこが払うんですか。
  34. 中村四郎

    ○中村説明員 この保証金につきましては、東急建設が払うことに相なります。
  35. 大出俊

    大出委員 つまりこういうことですね。そうすると、くどいようだけれども、公法人である高速度交通営団が、公的な法人が持っておる土地を、子会社の地下鉄ビルディング株式会社に貸して、その土地の上に東急建設が随意契約で仕事をとって十六階を建てる。さて、地下鉄ビルディング株式会社が銀行から十五億借りてくる。自己資金が一億で十六億調達する。そして、幾らもうかるか知りませんけれども、建設をする東急建設、ここが十四億ばかりの保証金を出した。保証金である限り、いま御答弁にありましたように、全部また東急に返る。敷金が一億。これも敷金ですから……。そして、どれもこれもみんな東急が借りる。保証金はしたがって返ってくる金でございますが、東急が出す。第一回は、四十七年七月二十七日に保証金を払っておりますが、これが二億二千四百万ばかりですね。第二回は四十八年五月三十一日、きのうですか、払っておりますな。二億二千四百四十万。そして第三回は、でき上がって賃貸契約――いま想定契約がつくられておりますが、本契約が締結をされたときに二億二千四百四十一万百六十円、これを払うことになっておりますな。合計六億七千三百二十一万ばかり払うというかっこうになっておりますね。そうでしょう。こういうことになっている。ということになりますと、あとは東急が関係会社、子会社その他みんな入れるわけですから、東急道路であるとか、プレハブだとか、そういうものがみんな入ってくるという形になっていく。  さてそこで、裁判が起こっておりますが、これは本訴までいくのかどうか知りません。仮処分の申請ですが、敗訴のような形になっております。これは日照権の根拠法規がないから。ところが、この中で審尋が行なわれておりますけれども、地下鉄ビルディング株式会社の方々、つまり里見富次さん、専務ですな、この方が裁判で申し述べております中身は、この東急建設が建てて東急が全部使うという建物。鉄道がそこに入っているわけでもなければ、地下鉄が入っているわけでもなければ何でもない。二フロアの売店だか食堂だかができるだけ。それもこのビルディングを利用する人たちの食堂であり売店である。このビルについて何と言っているかというと、「公共の福祉に寄与することを目的として制定された都市開発法の趣旨にのっとり企画されたもので、利潤追求の事業ではない」、公共事業だ。これは一体どういうことになるんですかな。東急というのは会社じゃないんですか。東急鉄道、東急建設なんていうのは公共機関なんですか。いかがでございますか。
  36. 中村四郎

    ○中村説明員 東急建設は株式会社でございます。
  37. 大出俊

    大出委員 大きい小さいの問題はありましょうが、大きくても一営利会社でしょう。一営利会社が全部使うビルでしょう。しかも公法人が持っている土地を子会社を通じて使わせてあげることになる。これは一体どこに公共性があるのですか。  もう一つ念のために承りますが、家賃はどのくらいお取りになりますか。
  38. 中村四郎

    ○中村説明員 貸室賃貸借予約契約書に添付されております契約書案によりますると、昭和五十二年二月までの三年間につきまして一平米当たり千九百十円というふうに規定されております。
  39. 大出俊

    大出委員 いまの世の中の家賃というものはたいへん高いんですよ。私のめいが東京のある会社につとめるというので、四畳半のアパート一つ借りた。家賃が月額一万六千円ですよ。これはほんとうのバラックですよ、新しいけれども。木造のバラックです。一万六千円取っていますよ。そうると、これは平米当たりに直すと千六百円からになりますよ。これだけ金をかけた建物を一平米当たり千九百十円で貸す。私にはどうもわからぬ。不可怪だ。町のバラックで、がたびしがたびしうまく締まらぬようなアパートで私のめいが借りたやつが、とても高いなと思いましたが、平米当たり千六百円ぐらいしますよ。これは千九百十円でしよう。  それで、裁判所で一体地下鉄ビルディングの役員の方々は何と言っているかというと、これはたいへんなんだ。完成後の入居者もほぼ確定していて、現在の計画変更をするのはたいへんなんだということをるる述べて、渋谷駅を間近に控え、今後非常に発展するところで、ターミナルの地域に予定されているビルで、公共性の非常に高いものだという。高いものだといっても、全部東急に貸し、ちっとも公共性はない営利企業に貸しているのですから。そして利益、採算は全く無視しているから、三年後の値上げを予定してみても、収支決算が非常に苦しい、こういうふうに述べている。そんなに収支決算がたいへん苦しい状態までして、何で公法人が持っている土地に、東急建設に請け負わして、利益の中から保証金ぐらい払えるでしょうが、保証金だけ払わして、あと何にも取っているわけではない。べらぼうに安い家賃でてっぺんから下まで貸す。公共性もへったくれもありますか。冗談じゃないですよ。こんなことができるくらいなら、町の中で店がなくて困っている人は山ほどいるんだ。何といったってその八百坪を、そこらのちっぽけな町の困っている中小零細業者に、千九百十円でお借りくださいと貸さないですか。そんなばかなことが世の中まかり通ると思いますか。何やっているんだ。話があまりでき過ぎているじゃないか。
  40. 中村四郎

    ○中村説明員 渋谷の地下鉄ビルにつきまして、その賃貸料につきましては、ただいま申し上げた額が規定されておりまして、これにつきましては、総工事費なりあるいは減価償却費、資本利子、こういったものを積み上げまして、各階層別の使用効率により各階層別の賃貸料を計算して、そうしまして平米当たりを出し、その立地条件、近傍の賃借料等を勘案して定めたというふうに聞いております。
  41. 大出俊

    大出委員 質問の答弁にならぬじゃないですか。公法人が持っている三十億近いような土地を、金一升土一升という土地を、地下鉄ビルディング株式会社なんというわけのわからぬ子会社をこしらえて、それを通して又貸しをして、わざわざ自己資本を一億持ってきて銀行から十五億借りてやって、東急建設は何も出していない。保証金だけで仕事を請け負って何億かもうかるでしょう。それで平米当たり千九百十円、二十年契約、下から上まで全部東急系統。これはあなた、東急にすれば自分で建てるよりよほど安い。これでは恐喝事件だ何だということは起こりますよ。そんなことはあたりまえのことだ。社会正義上こんたものは許せません。しかも地下鉄ビルディングの役員構成はどうなっておりますか。
  42. 中村四郎

    ○中村説明員 株式会社地下鉄ビルディングの社長は牛島前営団総裁でございます。専務は、先ほど先生申されました里見氏でありまして、元帝都高速度交通営団理事でございます。
  43. 大出俊

    大出委員 いいですか。これもふざけた話じゃないですか。取締役会長鈴木清秀さん。元交通営団総裁、旧鉄道省次官、これが地下鉄ビルディング株式会社の会長。社長牛島辰弥さん、前交通営団総裁、運輸次官。専務取締役里見富次さん、元交通営団理事、内務省元地方行政事務局の次長。取締役佐々木英夫さん、前交通営団理事東京企画調整局長。取締役石井栄三さん、元交通営団監事、警察庁長官。市村益夫さん、元交通営団理事、国鉄東京工事事務所長。木村晃一さん、元交通営団経理部長、運輸省出身。大塚末雄さん、元交通営団秘書役、運輸省出身。監査役鈴木亀太郎さん、現交通営団監事、東京都交通局長。網谷順一さん、前交通営団監事、東京都民生局長。これはそろい過ぎているじゃないですか。地下鉄ビルディング株式会社というのは、一人残らず元営団の役員の方ばかり。しかもその前身、おつとめになっていたところというのは運輸省が中心。御丁寧に警察庁の長官まで入っている。東京都の方も入っている。これではお考えになることは何だってできる。できないことはない。内務官僚の方も入っている。  こういう会社をこしらえて、営団の役員の方々ばかり集めて、営団が五千万円全額出資をしている。一体資本金五千万の会社に、どこが十五億という金を貸しますか、財産も何もないのに。随意契約で建てさせて全部東急に貸してしまう。これは明らかに公法人を食いものにしているんです。国民の税金ですよ。それで片っぽうは何だ。国鉄の再建法だ、料金値上げだ。国鉄が東京都よりはるかによけい出している。全額出資だ。そういうことをやっておいて、片っぽうで料金値上げも再建計画もへったくれもない。これで恐喝事件ぐらい起こらなければおかしいのだ。起こるのはあたりまえだ。  そこで法務省の方に承りますが、私は警察庁から御回答をいただいている。それは警察庁の方は、いまの時間に辞令が出ていて全部かわっちゃうというんです。ここに御出席になるとたんに辞令が出ると、所管外だからものが言えぬというんです。それできょうは残念ながらいない。本来なら警察庁がお読み上げになるんだそうですが、私から読んで法務省から答えてもらってくれ、こう言うのです。しかたがないから私はそのまま読みます。回答ですから、これはそういうことにするよりしようがない。   昭和四十八年三月六日内閣委員会質疑において調査方の御要求のあった件について御回答申し上げます。  一 谷島氏が喝取された金の出所についてこの人は、東急にすっぽり貸す随意契約をきめるときの東急建設の専務でございます。ところで佐郷屋さんその他に恐喝されたという。   谷島氏が取引先の岡三証券本店に預託中の株券を売却し、四十七年三月十日第一勧業銀行兜町支店長振出の小切手八枚各一千万円で岡三証券から受取り、その小切手を千代田区永田町二丁目十四番三号赤坂東急ホテル内で、片岡哲哉に交付した。(三月十日)  二 恐喝金の分配方法   (一) 片岡哲哉片岡さんという人は、この間もうすでに申し上げましたから繰り返しませんが、つまり東急の重役さんのところに、郵船の横井さんの時代にそこについていた人が、こっちにくらがえしたいきさつがありますが、前に申し上げました。この人が四千五百万円ふところにした。おなくなりになりました佐郷屋嘉昭さん、この方が二千万円ふところに入れた。実は佐郷屋さんがなくなったときに、ふとんの下からたいへんな金が出てきた。それが事件の発端です。森川茂、これも一千万円ふところに入っている。   (四) 不明五百万円この不明の金はどこにいったか承りたい。  三 東急建設のリベート問題について   本件については東京地検が処理した谷島氏の特別背任容疑事件と関連があると思われますので、法務省に連絡済みであります。だからそっちから聞いてくれという回答です。  四 中村幸雄氏について   昭和四十五年十月ごろ、東急プレハブKK(東急系列 社長谷島)の顧問に就任   元建設省住宅局長多治見高雄氏の実兄これまた法務省に聞いてくれという。これは警察庁が正式にお出しになったのだから読まないわけにいかない。  東急建設にまつわる恐喝事件  被疑者 片岡哲也  被疑者 森川茂  公判状況 検事立証はほとんど終わり、弁護人  側立証に入っている。次回四月二十六日中間がありましたからずれたわけでございますが、こういうことなんですけれども、私がいま前段に申し上げたようなばかげたことをおやりになれば、だれだってこれは、ただじゃおかぬことになる。世上の疑惑を招くのがあたりまえ。  法務省の方に承りたいのだが、この事件を一体どういうふうにごらんになりますか。
  44. 根岸重治

    ○根岸説明員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねの件につきましては、東急建設に対します恐喝事件につきましては、すでに二名の者を起訴して公判中でございますが、さらにお尋ねがあれば詳しく申し上げます。  谷島に対する背任事件等につきましては、実は恐喝事件を調べているうちに犯罪の容疑が判明いたしまして、警察では捜査をしておりません。検察庁のほうで独自に立件して捜査を進めたという関係にございますので、警察ではお答えできなかったのだというふうに了解しております。それで谷島の事件につきましては、お尋ねがあればさらに詳しく申し上げます。
  45. 大出俊

    大出委員 この間、この委員会で私は経過を全部申し述べてあります。  そこで、この東急建設という会社がどういうふうな発展状況をしたかといいますと、東急建設は昭和三十九年十二月に資本金五億で設立した会社なんです。法務省に承りたいのですが、それが四十年十二月、翌年十二月にわずか一年で三億ふえまして、八億円の資本金になる。二年たって四十二年三月に十二億円、また二年たって四十四年四月に二十億円、翌年四十五年の六月になって何と二十六億、翌年の四月になったら二十八億六千万円、同じ年の十月になったら三十七億、その翌年の四月になったら四十億七千万円、七千四百万株という株式になった。  私たちが調べたところでは、谷島さんという専務の方は、かつて同じような事件がありましたが、あるトンネル会社をつくって、そこに末端のいろいろなところから金を集めさして、株を買わしてどんどんふやしていった。その容疑が濃厚。ここにも大きな疑惑があります。確かに谷島さんの力量からいって、当時の東急建設の社長はいまの東急の会長五島昇さんです。五島さんと荒木営団総裁との間でこのビルの話し合いが行なわれたことも、ある役員の口から出ているのであります。こういう中身があって、そこにさっき名前をあげた方々が入ってきて、谷島さんをつけ回すということになっていって、いろいろな事件に発展をしていったといういきさつが、私、こまかく時間をかけて調べましたが、記録にございます。だが、私は法務省でもなければ検察庁でもございませんから、そういう意味で実は言いにくいものもございます。私はそのまま読まないわけにまいらぬから読んだのですが、あらぬ疑いを単にかけるということは避けたいと思っておりますから、前回も官職にある方々の名前を言わずに過ぎてまいりました。だが、きょうは一応回答ですから、触れておかなければ、そちらから御答弁いただきかねるので読み上げたわけですから、差しつかえない範囲でけっこうでございますから、谷島事件、恐喝事件を含めまして、特別背任横領という問題も含めまして、それから中村幸雄さんという方についても、たいへんな金ではないけれども、この方が金を流しているということを知っております。だれにということも知っております。そこら辺のところを、できれば許す範囲でお答えいただきたいと思います。
  46. 根岸重治

    ○根岸説明員 私が報告を受けております関係のことにつきまして、全部簡単に申し上げます。  まず恐喝事件でございますが、これは片岡、森川、佐郷屋の三名が共謀いたしまして、東急建設の谷島をおどかしまして八千万円の恐喝をしたという事件がございます。これにつきましては、片岡、森川、両名を起訴いたしました。佐郷屋につきましては、四十七年四月一日に死亡しておりますので、被疑者死亡で不起訴にしております。この事件は現在公判中でございますが、先ほどもお話のありました被告人質問を残しまして、検事側立証は一応終わり、弁護人側立証に入る予定になっておりまして、次回は六月十四日でございます。  なお、前回身柄のことについてお尋ねで、私お答えできなかったわけでございますが、この起訴されました両名はいずれも現在保釈されております。それが恐喝事件でございます。  それから、恐喝いたしました理由は、谷島が何か不正を働いているのではないかということを種に恐喝したわけでございますが、それの嫌疑を検察庁で調べまして、谷島が、昭和三十九年五月から四十七年七月ごろまでの間に、ほか四名と共謀いたしまして、下請会社である東亜コンストラクト株式会社との間に架空の工事の請負があったようにいたしまして、合計六千七百二十三万九千五百円という金を簿外に落として、そして会社に損害を加えたという商法違反、これを検察庁で捜査しております。この事件につきましては、起訴猶予ということで事件を処理しております。  さらに谷島につきましては、建設省の役人に対し贈賄をしたという疑いで、当時やはり検察庁で調べをいたしまして、これも嫌疑不十分ということで起訴されておりません。  それから中村という名前が出ておりましたが、この中村に対しましては、別に詐欺容疑がございまして、これも検察庁におきまして身柄を逮捕して調べたわけでございますが、この中村が谷島から詐欺をしようとして一千万円を二口だまし取ったという事件を捜査いたしました。これも結局証拠が十分つかめませんので、結局、身柄を勾留したものの嫌疑不十分ということで釈放しております。これが私の知る限り、東急建設をめぐる検察庁が扱いました事件の全部でございます。
  47. 大出俊

    大出委員 そこで問題は、なかなか複雑な事件ということになりますと、世上、なぜ一体証拠不十分になり不起訴になったのかと、首をかしげるようなことが間々ある。あるが、しかし残念ながら、それは私どもの所管でない。私が長らくかかって調べた結果としても、建設省の方々に贈賄事件があったのではないかと思われる節々がある。あなた方もそう思って調べられたんだから、私の調査の資料の中でそう思われるものがあってもふしぎではない。だがこれは結論が出ない。なぜならば、時間的なズレその他の中で証拠が完全につかめなかったという一点に尽きる。真偽のほどは、したがってわからない。あったのではないかという疑惑は残る、こういうわけです。中村幸雄さんという方、建設省の局長のおにいさんとここに書いてある。この方についても、あるところに金を持っていったという事実がある。たいした金じゃない。  ところで、つながり、縁というものを使って、なぜこの中村さんが、当時、東急プレハブの社長をしていた谷島さん、そこの顧問になったかということも、これもまた疑惑を持てば持てる。一千万の金を、初めは承知で、つまり何とかするからといって持ち出した金をそのように使わなかったら、あとになったら、おまえはうそを言ったじゃないか、おれをだましたではないかということになるけれども、本来その一千万円の金を使う先があってやったことならば、結果的には谷島さんの立場は苦しくなるからいろいろ言うけれども、これはまた建設省との関係を疑えば切りがない。そこらはみな証拠が明確でないということで不起訴になっている。これは現状です。なるほど役員の方々には、悪くとれば関係の向きに顔のきく方も何人もおられる。元警察庁長官の方もおいでになる。また内務省の方もおいでになる。非常に私はこれは不明朗きわまる。  問題は裁判の途中ですから、私は分立している権限立場から、深入りはいたしません。いたしませんが、ただ厳として残ることは、私が先ほど申し上げたように、貴重な土地八百坪、土一升金一升といわれる土地、都心の、しかもどんどん開けていくまん中の、そこらはみんな地下鉄が入ってきている。渋谷の駅のうしろのほうにある。だが公共性だけは全くない。この塔屋三階を含めて十六階の建物には、公共の用に供するものは何もない。  さて、地域住民の方々には何と説明したかといえば、皆さんがどんどん来たり何かできるようにいたしますとかなんとか言ったが、結果的に営利、採算が成り立たないということで何もつくらない。近所の住民の方々、みんなかんかんにおこっておりますよ。そして十六階ものものをこしらえて、そこらじゅう日照が奪われる。すぐ隣の建物なら勝てる裁判ですけれども、隣に何ブロックかあって、裁判を起こされた方々はその先のブロックですから。  しかも裁判を起こした方はどういう方かというと、国会の衛視さんなどもここに住んでおられるが、いまでも残念がっていますが、ワンブロック先の隣も、実はすでに東急の手のついているところなんです。そうすると、ワンブロックおいたすぐ先に十六階建ってしまうと、今度すぐ隣に建てるという合法的な理由が生まれる。間違いなく建つ。そうなれば、これはみんな引っ越したいというわけだ。住んでいる方々は一致して、都営の宮下アパートの七十世帯の方々は、一人三千円ずつ出して裁判を起こしているのです。おまけにここには児童公園がある、この建物のすぐうしろに。行って見てごらんなさい、完全な日陰になってしまいました。ここには東京都の児童公園がある。宮下町のいま建てているすぐこちら側に東京都児童会館という建物がありまして、ここが児童公園、美竹公園、こういうふうになって続いている。それが全部日陰になってしまった。こういうことまで地域に影響を与えながら、なぜこういうばかげたことをやるかという点が厳として残っている。あまりといえばこれはでき過ぎている、こういうことです。  私は、時間の関係がございますから、あらためて運輸大臣に、運輸省の関係のところはたくさんあるわけですから、承るつもりでおりますけれども、私は、この法律で規定をされております、この帝都高速度交通営団法に基づく営団、この方々の中にもたくさん親しい人がおります。組合の方々も知っています。こちらの方々に向かって何を言おうという気持ちももちろんない。これはこのままやっていただいてけっこう。だが、現にあらわれた現象形態をながめてみたときに、こういうふざけた土地の利用のしかた。公法人が使う土地、公法人の土地です。しかも公法人に入っている資金は、国鉄と、東京都、二つだけなんですから。年々補助金も出しているのですから。だいぶ最近補助金もふえております。ここまで国民の税金を使ってやっているこの高速度交通営団が、五千万円全額出資してつくった会社が地下鉄ビルディング株式会社。ほかから一銭も入っていない。その会社が親会社である営団から八百坪の土地を借りて、そこにビルを建てる。十五億金を借りてきて、一億自己資金をつくって、そこは随契で東急建設に建てさせる。問題の谷島さんが専務でして、五島昇氏が社長でしょう。そこに建てさせて、普通の建築会社なら、それだけのものを建てるなら何億かもうかりますよ。もうけさせておいて、保証金だけで安い家賃でそっくり貸してしまう。そして裁判所の記録によれば、専務の里見富次さんという方が言っている中身というものは、全く公共性の仕事をやっているので、利潤を目的にしていないという。それじゃ一体、利潤を目的にしていないですっぽり貸す相手は何だ、営利会社だ。利潤を目的にしないで営利会社に貸せば、営利会社は安く借りられるからもうかるに違いない。それだけの利権を生んでいるのだったら、東急に金を出せと言えば出しますよ、それくらいのことは。そういう関係がわかれば、恐喝事件の一つや二つ出ますよ。あたりまえだ。  こういうふざけた話を、私は幾ら方々から何と言われてみても、黙って腕組んで見ているわけにいかない。私の申し上げたことに皆さんの反論がないようだから、大臣は建設大臣でございまして、運輸省の方々は非常に多いのだけれども、しかしこれは建設省にも関係がある。なぜならば、都市開発法の趣旨にのっとって企画されたと、こういう。こんなたいへんな再開発をされちゃたまったもんじゃないです。大臣、これ、どういうふうにお考えになりますか。
  48. 金丸信

    ○金丸国務大臣 都市開発という問題は、いまの時点において、人に迷惑をかけるような都市開発はやってはならない。これは建物ばかりではなくて、道路にしてもしかりと思います。公園にしてもしかりだ。すべて人間本位に考えるべきだと私も考えます。
  49. 大出俊

    大出委員 私はここで提案をさしていただきますが、東急との間の契約を解除していただきたい。いま結ばれている契約は予想契約というものであって、本契約ではない。違約金を払えば足りる。違約金もここに書いてあります。この予想契約を解除をした場合に違約金を払えばいい。これ、払わせなさい、地下鉄ビルディングに。こんなばかげたことを、世の中の常識からも、社会正義という観点からも許せません。天下の大東急がこんなことまでして金もうげしなくてもいいはずです。契約解除してください。契約はちゃんと解除できるようになっている。用心深い。ここに、予約金額の一割五分相当の金払えばいいと、ちゃんとこの契約に書いてある。ここにちゃんとございます。  こんな不明朗な、近所の町へ行って聞いてごらんなさい。そこに住んでいる方がこの国会につとめておいでになる。その方々はまことにくやしがっている。こんなばかなことが何で行なわれていいのか。世の中押し通せるのか。皆さんはこの裁判をやりましたから中身を全部知っている。実にふざけたことをこの裁判の中で言っています。解除をしてください。  これ、きょうは鉄監局長さんですかな、中村さん。あなたのほうの所管にかかわることもたくさんありますね。大臣も、役員任命その他、あなた運輸大臣と連署でやっているのですから。あなたも承認しなければできないのですから。これは営団の総裁以下の任命は、運輸大臣と建設大臣の連名なんですよ。この計画は高速度交通営団がきめなければとても進まないのですよ。決定をしているのですよ。大臣が認めなければできないのですよ、これは公法人でございますから。まず八百坪の土地を地下鉄ビルディング株式会社に貸すことがあなたの承認事項ですよ。
  50. 大津留温

    ○大津留政府委員 帝都高速度交通営団に対する監督権は、お示しのように運輸大臣と建設大臣と共管でございますが、役員の任命事項以外の業務につきましては、それぞれ所管の事項に関連するものに分担を分けておりますので、お尋ねの問題は、運輸大臣の監督下にある問題でございます。
  51. 大出俊

    大出委員 そうしますと、東急とのこの予想契約、これを認められて、予想契約がありますから、違約すると違約金を取られるということなんですが、これは運輸大臣がお認めになった、建設大臣の所管でない。よろしゅうございますか、そういうことですか、大臣。
  52. 大津留温

    ○大津留政府委員 建設大臣の監督の分野ではございません。
  53. 大出俊

    大出委員 そうしますと、地下鉄ビルディングに営団の役員の方々が全部横すべりして入っていって、帝都高速度交通営団の総裁以下の役職にあった方々が、一人残らず地下鉄ビルディング株式会社の役員を全員で占めている。このことについて、役員に関する所管をお持ちになる建設大臣はどう考えますか。
  54. 大津留温

    ○大津留政府委員 営団の役員の任免につきましては、先ほど申しましたように、共管で監督いたしますが、退職した元役員がどこに就職するかということは建設大臣の監督下にはございません。
  55. 大出俊

    大出委員 だが問題は、五千万円の金を全額出資しているのですよ。そうでしょう。監督権のある営団が五千万円全額出資でこしらえた会社でしょう。その会社は全く関係がないですか。そんなばかなことを言ったら、この五千万というのはどこから出た金ですか。もとをただせば国民の金でしょう。そんな無責任なことはないでしょう。  しかし、きょうは建設省設置法を上げなければなりませんからね。予算委員会じゃ寝ちゃいますけれども、わが委員会ですから、わが委員会やはりかわいいですから、そういうわけにはいかない。だから、ケリをつけようと思って、つける継ぎ穂をさがしておったのですけれども、あなたの所管じゃないというなら……。
  56. 金丸信

    ○金丸国務大臣 人事の問題は共管でありますので、そういう問題を合わせまして私は運輸大臣と話し合ってみたい、こう思っております。
  57. 大出俊

    大出委員 大臣が何か言わないとどうもケリがつかないですからね。そういうお話なら、中村さんもおいでになるのですから、ひとつ運輸大臣と御相談をいただきたい。私は運輸大臣にあらためてこの契約を解除していただきたいということを要求いたしますから、御相談をお受けいただきたい。世の中がこんなばかなことを認めない。認めていない。私は営団の運営に口出しているのではないが、八百坪の貴重な土地をこういう使い方をする。運輸大臣、建設大臣共管でやってきている公法人でございますから、そういうばかなことを一営利会社に、たとえ相手が東急といえども、これは私は正しくないと思う。社会正義上許しがたい。解除の方法が明確になっているのだからやめていただきたい、こう申し上げているのですから、そのことをひとつお伝えいただいて、御検討おき願います。実はまだこれにまつわる幾つかの問題がありますが、あらためて運輸大臣のときにやります。  次の問題でございますが、戦争中に防空壕を掘ったり防火用水をこしらえた。応じなければ非国民だということで強制的につくらした。今日なおまだその残骸はたくさん残っている。これは法的に非常にむずかしい問題がからみます。御解明いただきたいということで、困っている方々がたくさんありますので、取り上げます。  案件は具体的例をあげますが、昭和十九年秋、戦争中でございます。横浜市中区根岸町三の百四十八番地、電話がございまして、六二一-四三二二。横浜でございますが、山田リウさんという方。お聞きになれば事情は全部わかります。この方の所有土地、ここに当時の警防団、消防団というような方々がお見えになりまして、これは当時内務省の所管でございますが、君の土地に防火用水を二つつくれ、自分の土地でございますから、それは困ると言ったら、おまえたちは非国民だということで、幅が三間、長さが六間半。深さはここに書いてございませんが、お話によりますと、けっこう深いもののようでございましたが、三間と六間半、この防火用水を二つつくれと、非国民扱いされて、結果的に当時の石川島播磨から二十五俵のセメントを買ってまいりまして、ここに防火用水をつくった。  ところが戦後、家が建つようになってまいりまして、それへふたをして家を建てた。三間で六間半が二つですから、深いですから、たいへん金がかかるから、それをくみ出すというわけにもいかぬので、人口がふえて住むところもないのでふたをして家を建てた。ところが四年前、下が水ですから、その家の基礎から何から全部腐ってしまって、危険状態になった。今日そういう状態に突っかい棒をかってやっておるんだそうですけれども、建て直す金がないのではない。ないのではないが、当時、どうもあまりといえば強制的に非国民呼ばわりをしてやらされて、いまになってそれを全部個人の負担で原形復旧を考えなければいけない筋合いのものか、どうも胸にとんと落ちないものがある。こういうことについて国は、ことば一つでもいいが何らかの意思表示があってしかるべきではないのかということなんですね、かいつまんで言えば。原田万太郎さんという人が当時の町内会の警防団の責任者だ。この人以下、内務省関係の方が一ぱい来て強引にやらしたというわけであります。  この防空壕の問題は、これに限らず、参議院のほうでも、官房長官、建設大臣、それに農林大臣ですか、おいでになるところで質問が出ております。藤沢から向こうのほう、神奈川県下、少し都心から離れたところには、たくさんの防空壕その他の残骸が私どもよく知っている場所にございます。風化しておりますから、いつくずれるかわからない、子供の危険な遊び場がたくさんある。町の方々や子供会が中心になって、札を立てたりしてやっているところがたくさんあります。この問題につきまして、実は行政管理庁に行政相談の形で訴えが出てきた。つまり神奈川の事務所のほうから行政管理庁のほうに、この防空壕の問題などは上がっている。  そこでこれは、法律的にどういう経過を踏んで今日に至っているかということ、所管、権限、国の責任という問題がある。そこのところを皆さんのほうにまず説明をいただきたい。
  58. 金丸信

    ○金丸国務大臣 この問題は、御指摘のように参議院で取り上げられたわけでございますが、そのときの状況は、一応そういうものがあるということについては調査しなければならないだろう、昭和四十八年度で調査をする、それでつぶすということになるならば、建設省が実践を引き受けなければならぬだろう、私はこういう答弁をいたしたわけでございますが、それに準じまして、水槽の問題も検討してそのように持っていきたい、こんなように考えております。
  59. 大出俊

    大出委員 これは私が調査室の方々をわずらわせましてお調べをいただきました。たいへんお骨折りをかけましたけれども、戦時補償特別措置法の第十七条というのがございまして、これは昭和二十一年十月十九日土曜日、官報の五九三〇号にございます。「御名御璽」と、こうなっています。どうも天皇が頭にありまして離れませんが……。つまり、この「御名御璽」と書いてあります官報の戦時補償特別措置法、ここに十七条がございますが、「この法律施行の際現に納税義務者の有する戦時補償請求権は、戦時補償特別税額を限度として、第十四条の規定による申告書の提出と同時に、消滅する」「前項の場合においては、その消滅した戦時補償請求権については、その消滅と同時に、戦時補償特別税の納付があつたものとみなす」、こういう規定があるのですね。つまりこれで請求権をなくしたのです。ここから先は想像でございますが、おそらくこのときに処理は一応済んだことにしたのだろうと思うのですね。そして建設省の前身、それから建設省、こういうことになるのでしょうけれども、いまの建設省になるときに、所管をここではずしてしまった。こういう経過になっているように思うのです。  つまり「官房総第二十八号 昭和二十年十二月十七日 第二復員省次官 各地方復員局長殿」なんということで、「海軍ノ掘鑿セル地下壕ノ處分二關スル件申進」――申し進むですか、昔のかたかな時代のものはどうもわかりませんが、というような通達、通牒などがありましたり、これは関連がございます。それから「建設院分課規程」なんというのがございまして、ここにも四のところに「建物疎開及び防空土木水利施設の殘務處理に關する事項」なんというのがございまして、つまり国の責任であったわけです。それが貯水槽、防空壕の原状回復の請求権等一切を含んでいた戦時補償請求の消滅というところにひっかかっているわけですね。  だから、実際に片がついていないのに片づいたことにしちゃったということなんで、そうすると、これは何らかの政治的措置をしませんと、片がついていない現実があるのですから、これが早計に過ぎたということになる。だからその淵源にさかのぼってこの問題を処理をしなければならぬことになる。そう思いますので、どういう措置をこれからおやりになればよろしいということになるのか、手続的なことを含めて、これは大津留さんにお答えいただきたいのですが、どう考えておられますか。
  60. 吉田泰夫

    ○吉田(泰)政府委員 ただいまのところ、建設省としては、先ほど大臣がお答えしたように、防空壕に準じて同時に防火水槽の例も、調査の上、判断いたしたいと思いますが、こういった防空壕等の取り扱いにつきましては、まず実態を把握し、確かに、戦後、一時期におきまして、建設省あるいはその前身の役所においてこれが復旧を行なった事実もございますので、いまの御趣旨を体しまして、完全に片がつけるべくしてついたものかどうか等も含めまして検討していただいた上で、国に責任があるような事態もあろうかと思いますから、こういうものについて、事実上、防空壕を埋め戻すというような事業を行なう、あるいはそれに何らかの国の手を伸べるということで処理することになるのではないかと思います。ただいま先生のおっしゃいましたような補償の関係については、申しわけありませんが、つまびらかにしておりませんでしたけれども、なおよく検討さしていただきたいと思います。
  61. 大出俊

    大出委員 ちょっと待ってください。その、つまびらかにしなかったというのはまことに困ると思う。ならば、つまびらかにしなければならぬことになる。つまびらかにいたしますから、ひとつ皆さんのほうで御検討いただきたい。戦時中の貯水槽、地下壕について、第一、軍関係についてつまびらかにいたしておきます。読んでおきますから、あとで議事録をお読みいただきたい  昭和二十年十二月十七日、第二復員省次官から各地方復員局長あてに、「海軍ノ掘鑿セル地下壕ノ處分二關スル件申進」という通達により、要旨一、原則として軍自身が埋め戻すこと。だから私は国に責任があるといっているのですよ。埋め戻すことになっておった。終わったのだという解釈でやめてしまった。終わってないのだから埋め戻さなければいけない。原則として軍自身が埋め戻すこと。それができないときは補助金を出して地方公共団体にやらせることができる。だから皆さんがやらなければ、これを誤まってはずしたのですから、処理されてないのですから、手抜かりなんですから、だからこういうふうにさかのぼって、これは地方公共団体にやらせることができるという趣旨でやらせなければいけない。これが一。これの注一は、当時危険があると判断された個所は一応埋め戻したことになっているが、埋め戻していないですね。しかし最近、都市における住宅化が山間部にまで及び、当時危険がないとして放置されたままの地下壕が今日危険ということで問題になっている。  二、陸軍にも同様の通達がある。その他、内務省は昭和十二年から敗戦時まで補助金六億七千万円の予算で貯水槽、地下壕を掘らせた。補助金支出先は不明。戦後内務省は解体され、建設院、さっき申し上げましたが、建設省の前身が設置され、その所掌事務とした防空施設の残務処理(貯水槽、地下壕)を行なうことになった。建設院のときにはこれは所管事項だった。これにより昭和二十一年度から昭和二十三年度まで処理を行ない、一応完了したことになっているが、これは完了してない。そこで、昭和二十三年七月、建設院が廃止され、あらためて建設省が設置された。そのときに、上記の所掌事務の規定は削られている。終わったことにして削ってしまったところに問題があるのですから、本来、建設院の所掌事務で、そこを確かめずに削ったのですから、本来なら建設省の所管です。先般、参議院の質疑の中では、「いなかは農林省、都市は建設省」なんということばがございますけれども、筋道は建設省です。  大臣、以上の経過なんです。間違いございませんから。経過がわからぬとおっしゃるから申し上げたのですけれども、あとで議事録を御検討願って、この経過に従って、これは国民の皆さんが困っているのですから、そういう意味で手当てをなさることが至当であろう、こう思いますので、御検討いただきたい。
  62. 金丸信

    ○金丸国務大臣 十分検討してまいりたいし、またこういうものでございますから法律をつくるということも手間どることですし、行政措置でやってまいりたい、このように考えております。
  63. 大出俊

    大出委員 次に簡単に二つ承りたいのですが、その一つ。この国会にもいろいろな法律が出されておりますが、風致地区と称するものの法的根拠はどこにございますか。
  64. 吉田泰夫

    ○吉田(泰)政府委員 都市計画法でございます。
  65. 大出俊

    大出委員 都市計画法に基づいて風致地区というものの規定がある。これも具体的な例を申し上げます。  場所は横浜市保土ケ谷区境木町、通称権太坂というところがございますが、ここで太洋不動産が宅地造成をやりまして分譲した。これが風致地区でございました。太洋不動産はそのことを知っていて分譲いたしましたから、お入りになる皆さんに、二階建て以上のものが建てられません、こういうふうに念を押して、たくさんの方々がこれを買い取って入った。したがって、二階以上のものは建っていない。風致地区の景観をそのまま呈している、こういうわけであります。ところが、この造成をするときに、付近の地主さんの持っておる土地を一緒に造成いたしまして、その造成した土地を地主さんに返した。こういう形をとった。よくやることです。その返された地主さんに太洋不動産は、風致地区でこういう条件で云々ということを言うのを当時失念していた。こういういきさつがある。  ところで、この地主さんがここに五階建てのマンションを建てるということになって、付近の住民から住民運動という形で大きな騒動が持ち上がりました。実はこれは、東京都新宿区本塩町二十三番地、田中土建工業株式会社、社長さんは田中信雄さん、専務は田中義市さん。私への説明では、田中総理の弟さん、あるいは御縁の方々だそうでございます。地主さんは若林惣一郎さんという方で、田中土建にお願いをしてここにマンションを建てろ。そういったって当時のいきさつがあるじゃないかということで、地域から太洋不動産に文句を言ったところが、それはたいへん申しわけないというので、太洋不動産がこの土地を買い戻したいと地主さんに交渉したが、がんとして売らない。田中土建がレッカー車その他を運び込んで大騒ぎが起こりまして、当時、私は建設省の局長さん二、三の方に電話でお話を伺いまして、どういう解釈をしたらいいかということで筋道を承ったことがあります。その後、レッカー車を運び出して話し合いをするということになった、こういう連絡を地元からいただきましたが、私も、どうも御縁のある方が入っておりますから、妙な政治的な騒ぎにもしたくないという気持ちもありまして、なるべく話し合ったほうがいいということにさせておるのです。  さて、そこで承りだいのは、本来、風致地区というものをどう考えていったらいいのか。どうもいまの法律規定というものは少し足りない。これだけ世の中変わってまいりました今日的事情からいたしますと、少し不満足な法律規制になっていやせぬかという気がする。私は都市計画法そのものをもう少し厳密に考えていくべきではないかという気がするわけであります。風致地区は都市計画法の五十八条でございます。風致地区内における建築の規制は政令で基準を定めることになっておりまして、高さ八メートルから十五メートル、こうなっております。十五メートルといってしまえば五階建てば建つ。そうするとこれは風致地区の用をなさない。あとは各市町村の条例が出ていることになる。モデル条例がある。そういうことでございますから、ここのところは基本的な問題として、緑を残そうではないか、風致というものを考え直していこうではないかという世上の風潮から見て、いささか甘きに過ぎる気がするのでありますが、そこらのところをどうお考えになりますか。
  66. 吉田泰夫

    ○吉田(泰)政府委員 おっしゃるとおり、風致地区の制度だけでは完全な自然環境保全はなかなかできかねるわけでございます。もともと風致地区の制度は、いわば補償なしに受忍の範囲内でできるだけ自然景観を保全しようということでございますので、建築行為を一切押えるというようなことでは、受忍の範囲外にわたる補償も要するということでございますから、そもそもこの制度は当初から、そういう建築行為、自然的景観の保全という二つの行為を受忍の範囲で極力解決しようという程度のものでございました。したがいまして、法律に基づく政令等の基準におきましても、あるいは自治体の条例におきましても、いまおっしゃったような高さ、あるいは建ぺい率につきましても、普通の地域よりは制限しておりますけれども、全く使えない、低層しか許さないということにはなっていないわけでございます。  しかしながら、御指摘のように、今日の時代、特に都市地域に緑が必要であり、積極的に拡充すべき時代になってきて、少なくとも現に風致のよろしい場所を保全するというととは最大の急務かと考えておりますので、これにつきましては、現在、別途、都市緑地保全法案というものを用意いたしまして本国会に提案しているところでございます。これも風致地区と同様、都市計画の中に緑地保全地区という風致地区と並ぶような地区を二つ設けまして、これにつきましては、非常に厳重な建築規制、ほぼ現状凍結的な規制を行ないます。非常にきついものですから、損害を生ずれば補償する、あるいは要望により土地を買い取るというような、歴史的風土とか首都圏の近郊緑地特別保全地区とほぼ同様の制度内容としたものでございますが、これを提案中でございまして、それが成立いたしますれば、風致地区の中でもさらに枢要な部分をとらえまして、その新しい地区をかけることにより保全してまいりたい、このように考えております。
  67. 大出俊

    大出委員 いまのお話は、都市緑地保全法、つまり緑地保全地区の都市計画の現状凍結だとか、いろんなニュアンスを持っている法律が出ておりますね。近郊緑地保全地区というようなものを考えて、そこの立ち木の伐採その他を規制するというようなことまで考えておられるようでありますが、そういう世上の風潮になってきたというわけですね。そうなるとなおのこと、都市計画法そのものの風致地区の規制などというふうなものも、五十八条そのものをもう一ぺん考えてみなきゃならぬ。  だから太洋不動産なんかも、行って見ればわかるんですが、現状緑地で保全されて風致地区らしくなっているところに場違いのものができる。よしんばそれが争いを起こせば建てられるものであっても、それは何とかやめてもらいたいという気持ちが宅造した会社自体にある。だから高くてもいいから売ってくれという話までしているわけですね。これは何かというと、世上そういう風潮になっているからですね。だから、この法律の規制が甘いということは検討していただくとして、できるだけ建設省側としては、本来の意に沿うように、一つの環境でございますから、破壊につながるわけですから、そういう方向にいかないような行政指導の方法をぜひ御検討いただいておく必要があろう。時過ぎればもう少しきつくなっていくんだろうと私は思いますので、どうかそういう周辺環境というものを考えていくような進め方を大臣のお手元で御検討いただきたいのでありますが、いかがでございましょう。
  68. 金丸信

    ○金丸国務大臣 御趣旨に沿いまして十分行政指導をしてまいりたい、こう思います。
  69. 大出俊

    大出委員 簡単なことでございますが、もう一点。最近の新聞発表によりますと、田中総理が公営、公団住宅払い下げという問題を建設大臣に指示されておるようでありまして、これは私は建設委員会で非常に大きな問題として扱っておりますから、けさの国対でもありましたから、これの可否については触れません。触れませんが、実情は二転、三転してきているわけですね。昭和二十六年に公営住宅法ができて以来、一戸建ての住宅はたくさん建てた。そして三十何年という時期に払い下げをやった。そのときに、隣のうちは払い下げてもらったけれども自分は金がないために買えなかった。さて買えるようになったら、大臣がかわり方針が変わって今度は一切払い下げない。過去の経過から見ると、何べんか大臣がかわるごとにころころ変わっている。だから個々のそういう不満というのはたくさんある。それを合理的に解決をするということが一つなきゃならぬし、基本的に土地の活用という意味で、これだけ土地が高くなる、これは建設大臣にも責任がありますけれども、なかなか住宅が確保できない、だから低家賃住宅というものをもっとたくさんつくっていこうという基本がある。しかし、政府政策の変更がございましたから、その間に、一つの地域をながめれば、たいへんに助かっている人と、それこそくやしくてしょうがない人と、こうあるわけですね。これは基本は基本ととして、矛盾は矛盾なんですね。  横浜なんかでも、金沢区というところの八つばかりの公営、公団住宅の方々が集まりました。何年何月に払い下げると言った、買える人は買ったが、金がなくて買えなかった人は、一生懸命金をためて買おうと思ったら、国の政策がひっくり返っちゃって買えない、こういうばかなことはないだろうというので、集まって相談が持ち上がっているという場面もある。基本的には、低家賃住宅をたくさんつくる、その必要があります。土地の広域活用もあります。ありますが、過去の経過の中での政策によって不平不満、損得が生まれているという問題は、これまたどう処理するかということを真剣に考えなければいけない。適当にこの辺をやってみようという思いつき政策じゃなしに、基本にさかのぼって、この法律ができたころにさかのぼって、一体どういう政府政策の変遷があったかということをとらえていただいて、その上でどうするかということをやはり考える必要がある問題だと思いますので、一言だけ大臣の所見をいただいておきたい。
  70. 金丸信

    ○金丸国務大臣 公団住宅、公営住宅等の問題につきまして、非常に皆さんに御心配をかけたわけでございますが、いろいろ世論もあります。また、いま建設委員会理事会をやりまして、私の真意も伝え、総理の真意も伝えまして、大体了承ができるようであるから午後二時から委員会を開こうということで、この問題については十分慎重に対処してまいりたい、こう考えております。
  71. 大出俊

    大出委員 たいへんどうも長時間にわたりまして恐縮でございましたが、最後に、私どもこの委員会が調査に参りました筑波研究学園都市、あそこの花室地区の方々からたくさんの要求をいただきまして、私、この席でずっと列挙いたしまして、それぞれ手当ての方法等について御質問申し上げましたが、以来、今日まで時間が経過をいたしましたので、大体皆さん方のほうでその後どういう手のつけ方をされたかという点。それと最後に、附帯決議を付するような理事間の話し合いになっておりますけれども、生活費がかかるというところに最終的にはつながっている。そうすると、ある意味の金銭的な手当てはいままでしてはありますけれども、皆さんの住める状態でないところに、下水道と上水道と両方とも不完全でたいへん非衛生な形になっておったり、ショッピング施設がなかったり、夜はまっ暗けで街灯もないようなところに行って、風に吹かれれば窓もあけられないようなことになっているわけです。どこに行くといったって、交通が不便ですから金がかかる。医者を呼ぶといったって、車で来るのでまた金がかかる。そういうことで、いまの手当てをしてある金では足りない。だから何とかこの方々にもう少し金銭的なことを考えてあげるという以外に、当面ないんじゃないかという気がする。だから、最終的にはそこにしぼった附帯決議になろうかと思いますが、そこらを含めて、私ども問題提起して以来時間がたちましたので、あそこにおいでになって今日なお御苦労なさっている御家族の方々のために、皆さんのほうからその後どう考えているかということについてお述べおきをいただきたいのです。
  72. 大津留温

    ○大津留政府委員 先般来、この席上でいろいろ御指摘いただいた点は、確かに居住者の方々にとっては切実な問題でございまして、私どもがいろいろ考えたつもりであっても、なお思い及ばなかった非常に大事な点でございます。その一つ一つにつきましてできるだけのことをやるべく、それぞれ進めておるわけでございますが、一番基本的な問題である下水道の整備、これがおくれますと全体の計画が進みません。幸いに、下水道につきましては終末処理場の位置も決定いたしまして、県で鋭意事業を進めていただいておりますので、その点は幸い軌道に乗ったと申すことができようかと思います。  それから、先発部隊の方々の一番気にしておられる住宅でございますが、東京と同じような形のアパートということでは全くあじけないし、また研究者にいたしましても研究に十分でないというようなことから、この宿舎のあり方につきましてもさっそく研究いたしまして、あの場所にふさわしい、研究者に適した住宅を提供するようにいたしております。なお、研究者の中には、あの場所へ持ち家を持ちたいという御希望も相当あるようでございますので、国の宿舎のほかに持ち家を提供するように、これまた検討を進めております。  そのほか、いまお示しの病院の問題、ショッピングの問題、学校その他いろいろございますが、みな切実な大事な問題でございますから、鋭意御要望に沿うように進めてまいります。
  73. 大出俊

    大出委員 たいへんどうも長時間恐縮でございましたが、いまの最後のところはぜひ一日も早くという意味で、お急ぎいただきますようにお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  74. 三原朝雄

    三原委員長 鈴切康雄君。
  75. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、さきに建設省設置法の一部を改正する法律案についての質問は終わっておりますから、質問をするのではなくして、建設省設置法の一部改正法律案に対して、一言わが党の考え方を明らかにしておきたいと思います。  昭和四十五年に、筑波研究学園都市建設法が自民党、社会党、公明党、民社党の共同で衆議院建設委員長名で提出をされ、引き続いて参議院建設委員会では、「筑波研究学園都市の建設に当っては、政府は、次の諸点について適切な措置を講ずべきである」として、六項目にわたる附帯決議がなされました。しかるに今日まで、附帯決議が全く尊重されていないばかりか、いろいろ問題を起こしておることは、さきの質疑においても明らかになっております。  また、田中総理大臣が日本列島改造計画を発表されるや、この筑波研究学園都市構想をその一環として組み込んできているばかりか、日本列島改造構想の模範的都市としてとらえてきております。そもそも、本来学園都市建設法は、日本列島改造計画とは別個の構想として推進されるべきものが、いつの間にかその趣旨から大きく離反をしております。かかる構想のもとの本案に対しては私ども反対をせざるを得ない。なお、現実の問題の処理としては、住民の方々が迷惑をこうむらないよう配慮されるべき問題であることは当然のことだと思います。  以上、一言付言をしておきたいと思います。こういうことです。
  76. 三原朝雄

    三原委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  77. 三原朝雄

    三原委員長 ただいま委員長の手元に加藤陽三君より本案に対する修正案が提出されております。     ―――――――――――――     建設省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案   建設省設置法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   附則中「昭和四十八年四月一日」を「公布の日」に改める。     ―――――――――――――
  78. 三原朝雄

    三原委員長 提出者より趣旨説明を求めます。加藤陽三君。
  79. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ただいま議題となりました建設省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してありますので、朗読は省略させていただき、その要旨を申し上げますと、原案ではその施行期日を「昭和四十八年四月一日」としておるのでありますが、すでにその日が経過しておりますので、これを「公布の日」に改めようとするものであります。  何とぞよろしく御賛成をお願い申し上げます。
  80. 三原朝雄

    三原委員長 これにて修正案についての趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  81. 三原朝雄

    三原委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  建設省設置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、加藤陽三君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
  82. 三原朝雄

    三原委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。
  83. 三原朝雄

    三原委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  84. 三原朝雄

    三原委員長 ただいま議決いたしました建設省設置法の一部を改正する法律案に対し、加藤陽三君外一名より、自由民主党及び民社党の両派共同をもって附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。加藤陽三君。
  85. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ただいま議題となりました自由民主党及び民社党の共同提案にかかる附帯決議案につきまして、提案者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     建設省設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、筑波研究学園都市移転職員の生計費が、生活環境施設の未整備のため著しく増高している実情にかんがみ、筑波研究学園都市移転手当の増額を図るべきである。   右決議する。  本附帯決議案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑を通じましてすでに明らかになっておることと存じます。よろしく御賛成をお願い申し上げます。
  86. 三原朝雄

    三原委員長 採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
  87. 三原朝雄

    三原委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、金丸建設大臣より発言を求められておりますので、これを許します。金丸建設大臣。
  88. 金丸信

    ○金丸国務大臣 本法案の御審議をお願いして以来、本委員会におかれては、熱心な御討議をいただき、ただいま議決されましたことを深く感謝申し上げます。審議中における委員各位の御意見については、今後その趣旨を生かすようにつとめるとともに、議決された附帯決議については、その趣旨を十分尊重し、今後の運用に万全を期し、各位の御期待に沿うよう努力する所存でございます。  ここに、本案の審議を終わるに際し、委員長はじめ委員各位の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表し、あいさつといたします。ありがとうございました。(拍手)     ―――――――――――――
  89. 三原朝雄

    三原委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  90. 三原朝雄

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     ―――――――――――――
  91. 三原朝雄

    三原委員長 午後一時三十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十三分開議
  92. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。受田新吉君。
  93. 受田新吉

    ○受田委員 齋藤厚生大臣さん、この厚生行政というものは非常に国民に喜ばれる行政で、この厚生行政を誠実になさったお方は極楽往生間違いなしといわれるような、ありがたいポストに齋藤先生はついておられる。そのかわり、もし庶民をいたわらぬようなことであれば地獄に転落するというほど、人を喜ばせるにはほんとうによい、国民のしあわせのための行政をいま齋藤先生は担当しておられるわけです。  この厚生省という、ちょっといま私、思いついたのですが、この省名はどこからか、ちょっとどなたか御存じの方おりますか。生を厚くする、利用厚生。社会省とかいうようなことがよいのか。あるいは厚生省というのは何だか範囲が限られたように思う。厚生、衛生。衛生といえばまた範囲が狭められるのだが、社会省とかいう名称のほうが、社会人の総合的なしあわせを守るという意味からいいように思うし、厚生ということばで御研究されたことはないでしょうね、最近は。
  94. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 昭和十二年であったと思いますが、近衛さんが内閣をつくりましたときに、現在の厚生省を設置しようという議が起こりまして、当時は御承知のように、官制大権に基づきまして省の設置ができておったわけでございますので、近衛内閣におきましては、社会保健省という官制をつくりまして枢密院に御諮詢になったわけでございます。その枢密院に御諮詢になりました際に、たぶん書経であったと思いますが、書経の中から、厚生省のやっておりまする仕事を考えて、一番適当なのは厚生。正確な文句は私は覚えておりませんが、貧しき人に食を与え、衣服の乏しい人には衣服を与え、もって民の生を厚うするなりという、こういうふうなことで、民の生を厚うするということで厚生という文字をとられまして、厚生省という文字をつけることにしまして、この官制が修正議決されまして厚生省という役所が設置されるようになった、こういうふうに承知をいたしておる次第でございます。
  95. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、四書五経を典拠にして生み出されたことばである。一般的にはなかなか理解がしにくいことばにもなるわけですね。生を厚うする。その生涯をできるだけしあわせにするとか、こういうことにもなると思うのですが、しかし、生を厚くすることにすべてが含まれると言えばそれまでですが、一般社会問題等も含んでおるわけでございまして、戦前の枢密顧問会議で承認されたという古いタイプをそのまま踏襲することが是か非かは検討を要する問題が一つあると思います。しかし、国民に親しまれた名称としてこれを取り上げておられることを一応了承して、質問を進めます。  私、非常にショッキングな新聞記事を昨日夕刊で、またけさの朝刊で拝見しました。神戸の両親なき五人きょうだいの家庭、その一番上の十九歳のおねえさんがスナックに働きながら、十七歳、十五歳、十一歳、七歳という四人の弟妹の世話をしてきた。母はその七歳になる子供が生まれると間もなく、産後の肥立ちが悪くてこの世を去っていった。おとうさんは昨年脳腫の病でこの世を去っていった。そのねえさんは、施設に預けられた弟妹たちを、ことしになって、五人きょうだいがひとつ仲よく暮らしましょうねといって、二万七千円のマンションを借りて、そこへ四人の弟妹を引き連れて、まさに母がわり、一家のあるじとしてこの十九歳のおねえさんが新しい生活に入った。ところが、きのうの朝二時ごろに、スナックから帰った直後でしょう、ガス自殺をして二段ベットの下で死んでいた。十七歳の坊やがこれを発見して警察に届けたという記事でございます。おねえちゃんは死んだといって弟妹が泣いている記事も出ておりまして、まさに次代を背負う子供たちを大事にしなければならぬ、日本の政治の貧困が縮図としてここにあらわれているような記事を拝見しました。おねえちゃんは生活に疲れた、死んでいきます、という書き置きをして死んでおるということです。おそらくこの十九歳の嬢やは、自分がスナックで働いてかせいだ金で一年生の子供の弁当もつくってやり、あるいは夜おそく帰りながら朝早く起きて、登校の手伝いをしてやったことでございましょう。あまりにもいとおしい姿ですね。このような次代を背負う子供たちに対する残酷な状態が日本の大都市にあったということ、その一事が胸を打ちます。  児童はよい環境に育てられ、人としてとうとばれ、社会の一員として尊敬されるんだという児童憲章のあの美しい文句はいまどこにあるのか。児童のためにあらゆる施策が講ぜられておるといわれながら、この憲章は一体どうしたことか。私はこの悲惨な事件を見るとき、可憐な子供たち、特にS子さんという長女が四人を引き受けて、一家の柱となって、しかも収入の多いスナックバーにつとめながら一家の再建をはかろうとして、ついに疲れてこの世を去っていったという可憐な事件、あまりにも胸を打つ事件、私、けさから頭を痛めるような事件をいま大臣にお尋ねしようとしているわけです。  かわいそうですね。あまりにもけなげな女性であった。そういう状態のときに、行政相談委員もあれば、民生委員もある。児童委員もある。厚生省の下部機構もある。にもかわわらず、この可憐な五人きょうだいの長女が、四人の弟妹を、両親にかわって悲壮な決意で戦っているこの姿に、民生委員の方も、児童委員の方も、地方行政関係の方々も何か気がつかなかったのか。私はあえてこうした新聞報道による事件を提起して、国の厚生行政の根本に触れる問題があるのではないかと思って、いま大臣にお尋ねをしておるわけでございます。
  96. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 私も先生の御指摘の新聞を拝見いたしまして、先生のおっしゃることまことに同感でございます。問題は、新聞にもありますように、小さい弟妹二人は、おかあさんがなくなったあと施設に入っておった。それをこのおねえさんが、自分から引き取るということで一緒に暮らそう、こういうことで生活を始めておったようでございます。収入の点について見ますると、日給が三千五百円ということでございますので、毎日動けば月額九万円近い収入があるということで生活保護の対象にはならない、こういうことだと思います。  そういうことで、おそらくこのおねえさんが自殺されたのは、経済的な面ということよりも、両親がいない、そういうことで、幼い弟妹のめんどうをみんな見ていくということ、これはたいへんなことだと思いますけれども、そういった精神的なもの、さみしさといいますか、そういったことが――自殺の動機というのは、社会局でも、いろいろなケースがございますけれども、非常に複雑でございまして、一律にこれが自殺の原因だというように簡単には割り切れないものがございます。ケース・バイ・ケースで、簡単に外側から想像できないものがございます。  そういうことで、自殺されたほんとうの原因がどこにあったかということは、これは外側からはなかなかはかり知れないものがございますが、確かに先生御指摘のように、私ども、社会福祉の末端の行政のにない手としまして、民生委員、児童委員の充実あるいは処遇の改善ということに力を尽くしておるのでございますが、そういった人たちにこのおねえさんが相談をされるというようなことがあればまた事態が変わったかもしれませんけれども、そういう点で確かに非常にお気の毒なケースでございますが、その原因についてはなかなか一がいに割り切れないものがある、こういう感じを抱くわけでございます。
  97. 受田新吉

    ○受田委員 局長さん、私、いまの御答弁でかわいそうな気持ちにさらになったのです。経済的には困らなかったであろうということにはならないと思うのです。十九歳の女性が日給三千五百円の働きをして、九万程度の収入があるから生活保護の対象にはならぬ、これは私、あまりにかわいそうだと思うのです。この女性は、少女にしては高額な所得を得なければならない責任感を感じてやったと思うのです。施設に預けた子供を引き取って一家五人で暮らそうよねと言ったこのやさしい母心を、われわれはもっと末端で見てあげなければならなかった。しかし遺書にははっきりと、これは正確なものではないですけれども、新聞報道が正確として見ればそうですが、私は生活に疲れました、安住の地へ行きたいという意味のことが書いてあった。これを見ると、確かにこのおねえさんは生活に疲れたんです。女手一つで四人の弟妹のめんどうを見るという過重負担を見のがしておるというところに政治の貧困があったと私は思うのです。  施設から解放されてうちへ帰られた一年生の坊やもきっと、おねえちゃんと一緒だという喜びがあったでしょうが、その施設から解放するときに行政指導が十分できておったかどうか。施設から解放するということは、もう施設の御用がなくなるという意味であるから、これをおうちへ帰しても安全かどうか、十九歳の子供にまかしていいかどうかくらいは、施設から解放するときに、当然実態を調べておうちへ帰さなければならない。おそらくこのねえちゃんは、非常な犠牲奉公、母性愛、きょうだい愛に燃えたいいお嬢ちゃんですね。こういう女性は将来家庭のりっぱな主婦になれたであろう。それが悲壮な決意で、所得の高い職場、世間ではいやがるかもしれぬが弟妹のためには自分を犠牲にして、父なきあとを敢然と戦ったと思うのです。そういう末端行政の総合的な行き届いた児童愛というようなものが何か欠けておったんじゃないか。まだ厚生省は十分末端の調べができておらぬと思いますけれども、きょうはおそらく火葬に付せられるであろうと思いますが、この可憐な四人の弟妹が姉を慕う姿を思うと、たいへんだまらない気持ちになる。どこかに政治の貧困があり、どこかに行政の矛盾があり、行き届かない点がある。これがこの文明の世の中に発見できなかったということ。  これはまだ厚生省でお調べになっている間がないと思いますから、私あえてその実情を追及しませんが、この子の家庭には私も何かの手をいま打ってあげたいなとけさから思っているのですけれども、こういう家庭にすぐ、泣き叫ぶ四人の弟妹に光と希望を与える努力を第一線でしているかどうか気にかかるのです。何か答えができますか。
  98. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 いま先生のお話しになりました家庭というのは、まさに先生が御指摘になられたとおりのことだと思います。この十九歳のS子さんという人が非常に苦労をされたということは、私どもにもよくわかります。それからまた、せっかく施設に預けていたのを、一緒に住もうと言って自分のところに引き取りまして生活を始めたあとで、私どもの行政の末端機関がそれに対してどう対処したかということにつきましても、先生御指摘になりましたように、私どもはいまちょっと調べておりますので、具体的なこまかいあれはまだわかりませんけれども、いわゆる施設から解放されたあとの、たとえば私どもの児童相談所でございますとか、そういった第一線の児童福祉機関が十分なアフターケアなり指導なりをしていなかったというのも、おそらく先生の御指摘のとおりだと思っておるわけでございます。その点、児童の福祉を所管いたしますものといたしまして、この自殺されたS子さんに対して、はなはだ申しわけないというように思っております。  行政の面で言いますと、児童相談所でございますとか、あるいは福祉事務所でございますとか、そういったようなところが、アフターケアとしてときどき行っては相談に応じ、またはいろいろな措置をしてあげるということも必要だと思います。また御指摘のように、区域に民生・児童委員というボランティアの人々もおるわけでございまして、この人たちが精神的な面では非常にささえになる大きな役割りを果たすと思うのでありますけれども、その辺の関連が十全であったかどうかということについては、確かに御指摘のような問題があったと思う一わけでございます。  私どもも、今後こういったケースにつきまして、行政の面、それから民間のいわゆる民生・児童委員というような地域活動等の面から、さらに十全な配慮なり指導をしていかなければいけないというように痛感しているわけでございます。
  99. 受田新吉

    ○受田委員 これは新聞に出た胸を痛ませる事件であったのですけれども、新聞に出ないでなおひそかに苦労している可憐なる子供たちが全国にどれだけおるだろうか、私は心配しておるのです。  いまおとなの世界の中には、土地成金、不当な高額所得者、そういう皆さんはまさに栄耀栄華をきわめて、その人生に飽くなき富のたくわえに狂奔し、日常生活に乱費しているという人がおる。それに対して、税制の点その他の対策によって、抑圧されている庶民の不幸を救うという政治の貧困が、ここへあらわれておると思うのです。これをどう改めていくかという基本的な問題は、私、当初申し上げました、厚生省といういいお役所がその重荷を背負うて、政治の貧困の陰に泣く人をなくするように全力投球をしなければならぬ。齋藤先生はその重荷を背負うて、苦難の大業をいま果たされつつあるということを御認識をいただきたい。そこで、具体的な質問に入ります。  わが国の厚生行政の中で、柱の一つとして児童福祉、これを取り上げます。さっき申し上げました児童憲章制定のとき、昭和二十四年、私これの協議委員として憲章をつくるときの責任者の一人でもあったわけですが、この児童福祉の根幹になる児童憲章を厚生省はどのようにこれを普及徹底せしめ、順法せしめる手段を講じておられるか、お答えを願いたい。
  100. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 私どもの主管いたしております児童福祉の行政、これについての児童憲章というものが、いわば憲法のような理念を示しているものであるというように解釈するわけでございますし、さらにこの児童憲章というものは、一厚生省の行政だげにとどまらないで、やはり子供に関連する、たとえば文部省でございますとか、労働省でございますとか、そういった広範の子供に関連する、子供のしあわせのために基本的な理念を示すものであるというように理解しているわけでございます。したがって私どもも、制度をつくり、あるいは制度改正し、あるいは毎年予算を要求し、これを計上するという場合に、やはりこの児童憲章の理念をもとにしてやらなければいけないというように考えているわけでございます。
  101. 受田新吉

    ○受田委員 次代を背負う子供たち、これもひとしく健康で文化的な生活を営む権利を持っておる、またひとしく義務教育を受ける権利もある。そのかわいい次代を背負う子供たちに対して、なお学校へほとんど行けない不就学児童というものがおるわけです。これは厚生省の所管の中に入ってくる。就学義務を果たしていない不就学児童、不就学の子供。これは文部省でないとわかりませんか、そうした学校へも行けないような子供、それから義務教育の課程を終える中学校の三年ごろから、社会の第一線で働かなければならないような立場で、高等学校へも行くことができぬで働いているような子供たち。こういう子供たちに対して国家は、この世に生まれた子供として、ひとしく最善の愛をささげる政治が要ると思うんですね。そうした学校の教育と、それから教育の対象になってこない立場の子供、そういう関係で学校へ行かない子供たち、また義務教育の課程を終えてすぐ第一線で働かなければならなかった子供たちに、もう一つ政府が何かの手だてをするならば、上級学校へ行ける、高等学校へ行けるであろう、高等学校からさらに大学へ行けるであろうという配慮をすれば、その天分が生かされるであろうというような立場の子供たちに対する児童行政の何か道がいまなされておるのかどうかお答え願いたい、生活と結びついた意味で。
  102. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 一般の児童の不就学問題ということになりますと、いま御指摘のように文部省関係になりますので、どういう事情でどのくらいいるかということは、ちょっと私どものほうもわかりかねるわけでございますけれども、私どものほうの関連は、いわゆる心身障害児、心身に障害のある子供について教育をどうするかという問題につきましては、これは関連が出てくるわけでございます。現在、文部省サイド、教育行政のサイドのほうで就学免除とか就学猶予という制度がございます。そういう子供たちをどうするかということで、私どもが、たとえば重度の精薄児の施設とか、そういったようなところに収容する、そこで養護、保護を行なうというようなことを従来とってきたわけでございます。  ただ、いま新しい動きといたしまして、従来はどちらかと申しますと、いわゆる心身、特に精神的に発達がおくれている子供につきましては、就学猶予、免除というようなことで、福祉的な保護をやっていくということが主であったわけでありますけれども、最近の新しい傾向といたしまして、教育というものはひとしくすべての子供に対して与えられるべきものなんで、心身障害がある子供も、心身障害ということを前提にしながら教育を受ける権利があるんではないかというようなことが強く叫ばれ、また要望されるようになったわけであります。そこで私どもも、現在、文部省との間にいろいろと協議をいたしましたり、あるいは総理府に中央心身障害者の協議会がございまして、そこで関係のところが集まって、この教育問題というものをどう発展さしていくかということを現在いろいろと検討をしているわけでございます。したがって、児童福祉の施設につきましては、施設の中に養護学級あるいは特殊学級をできるだけ設けるようにいたしまして、そこで教育を施したり、あるいは通学できる子供たちは、できるだけ施設を拠点といたしまして養護学校あるいは養護学級、特殊学級のようなところに通学させるようにというようなことを、いましているわけでございます。まだまだ十分でございませんので、これをさらに充実させるためにはどうするかということについて、現在、文部省との間で検討を重ねているところでございます。  それからもう一つ。いまは心身障害の子供についてでございますけれども、一般の子供につきましては、たとえば養護施設というような施設がございまして、そこではいままで義務教育までは、これは当然でございますけれども、受ける措置をしていたわけでございます。四十八年度の予算から高校に進学するための費用という予算を計上いたしまして、たとえば、養護施設でありますとか、あるいは肢体不自由児の施設でありますとか、そういうようなところで高校に進学し得る者については、進学できるような予算の計上を新規にいたしましたわけでございまして、そういうことで私どもも、子供たちの教育という問題には十全の配慮を払っていかなければならないというように考えているわけでございます。
  103. 受田新吉

    ○受田委員 私、厚生省の仕事の中で、いま児童家庭局長がお話をされたような心づかいをしていただいているようなことはわかるんです。しかし現実の問題として、子供たちの中には、かぎっ子といって、部屋へかぎをかけて御両親が勤務に行く、そしてかわいそうなかぎの中で帰ってみたら死んでおる、こういうようなのもある。それから、遊び場所がなくて、ちょっと表へ飛び出したばかりに交通事故で死んでいくというような社会環境は、決して子供たちにしあわせになっていないのです。児童遊園の場所をつくるというのは、これは厚生省の仕事に入りますね。児童遊園、公園、子供の遊び場のために、交通安全のためにある時間道路を開放する、こういうような総合的な厚生行政が要るんです。それから、肢体不自由とか、そういう子供さんのためには養護学校がある。しかし、精神障害のような坊やのためには、そういう施設がなかなか思うようにないし、また十分でないから、そこへ入る人数は限られておる。肢体不自由児でも限られておる。今度は、子供の世界からおとなになってきて、養護学校を卒業すると、肢体不自由児の子供は肢体不自由なおとなになってくる。もう家庭で引き取ってもらう、こういうことになってくる。子供の時期からおとなに変わると同時に養護学校から家へ帰される。大学で肢体不自由のための教育機関というのはほとんど認められていないということで、子供からおとなに転換する時点の肢体不自由の人々というものはほんとうに不幸ですね。これをもっと整えて、希望するなら全員養護学校に行け、養護施設に行け、児童福祉施設に行け。児童福祉司というお役人、児童委員という役人がおられるが、そういう方々に思い切って待遇をよくする、民生委員にも。これは地方公務員ですか、児童委員とか民生委員は。
  104. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 これは一応地方公務員ということになっております。
  105. 受田新吉

    ○受田委員 地方公務員である民生委員とか児童委員とかが、犠牲をあまりにも強いられて、安いお手当で、ほとんど自分で犠牲を払うていくようなことのないような手当もある程度つけて、充足してあげて思い切って活動していただくような形をとるべきではないか。  厚生行政の予算折衝のときに大なたをふるわれるということをよく聞いているのですが、差し繰るのには一番都合がいいというので、大蔵省が文部省とか厚生省とかに、大きななたをすかっ、すかっとふるってくるという。しかし、ことしは厚生大臣、あなたが非常に努力されて、なたのふるいぐあいが多少緩和されて、厚生予算に近来にない成果をあげたと聞いているのですが、これは近来にないですね。やはりなたがふるわれておるかどうか。
  106. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほど来の受田委員の御意見を交えての御質問、実は私も非常に胸をえぐられるような思いをして聞いておりました。両局長からいろいろお話もございましたが、昨日のこの事例、私もいま新聞を読ましていただいたのですが、その子供さんたちが施設に入っておって、かりにおねえさんが見るにしても、おねえさんのところに一緒に帰るにあたって、施設がどういうようなことを注意しておるかとか、それから一緒に暮らすようになってからあとも、民生委員とかそういう方々が十分見回ってくれておったのであろうかとか、いろいろなことが胸に浮かぶわけでございます。  それにいたしましても基本的に、民生委員なり児童委員というものは、地方公務員、そういう身分があるにいたしましても、ケース・バイ・ケースでそうしたお気の毒な家庭を親身になってよくめんどうを見てあげるという精神が、どうも少し薄らいでいるのではないかなということを、実は私は具体的にこれは知りませんが、そういう感じがしみじみしたわけでございます。  したがって私どもは、厚生行政というものは、本省ばかりで幾ら考えても、第一線が問題なんです。そこで第一線の方々が、子供さん方の福祉ということを考え、そうしたお気の毒な家庭を考え、親身に相談に乗ってあげるという気持ちを持っていただくようにしなければならないのではないか。私どもも、先ほど来お話を承って、ほんとうに感激をいたしておるわけなんですが、やはりどうしても第一線の方々の気持ちをもうちょっと指導してあげる、それがやはり一番大事なことだと思いますし、同時に、処遇の改善、これは当然政府としてなさなければならないことだと考えておるわけでございます。幸いに厚生省の予算は、前年度に比べますと比較的にことしはふえてきております。しかし、こういうふうな民生委員の方々の処遇ということになりますと、率直に申しまして、まだそう十分でないと私は思います。  それには私も、言いわけではありませんが、何といっても厚生省の予算というものは、大口がいつも健保とか年金とか、そういう方面に取られるのです。どうしても社会福祉、児童福祉のような面、しかもこれは非常にきめのこまかい手を打っていかなければならない予算、こまかいようだけれどもその関係者にとっては非常に期待している予算、そういうものがとかく落ちやすい傾向にあることは、私はほんとうに残念だと思っております。したがって、来年度の予算編成にあたっては、むしろそういう方面に今後力をいたすようにいたしてまいりたい、かように私は考えております。
  107. 受田新吉

    ○受田委員 いまの質問で追加しますが、これは児童家庭局長でけっこうですが、局長、どちらにも関係しますけれども、民生委員の手当は一体どれだけになっていて、児童委員はどれだけもらっているのか。そしてさっきのような、かわいい子供の犠牲の事件のときなどを考えると、児童手当というものに思い切った対策を立てる必要があるという問題もここで起こってくるわけです。かわいい子供たちに一人五千とか六千とかの手当が入るだけでも、この家庭は救われていたはずです。そういう問題が欠けておる、こういう問題にも発展するわけですが、いま申し上げた質問にお答えいただきたいと思います。
  108. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 民生委員は名誉職ということでございまして、実費弁償的な手当を支出いたしておるわけでございます。これは補助金ではございませんで、交付税交付金ということで交付税の中に組み入れてある、こういうことになっております。  この手当の額でございますけれども、民生委員と児童委員というのは必ず兼務いたしておりますので、合わせまして手当は、四十七年度は九千円でございましたが、四十八年度は一万三千円ということにいたしておるところでございます。そのほか、いろいろな旅費的なものということで、一人年額一千円の手当ということになっております。これは御指摘のとおり、まだまだ非常に不十分でございますが、今後ともその手当の増額にはつとめたいと思っております。
  109. 受田新吉

    ○受田委員 九千円から一万三千円、これは月額ですか。
  110. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 年額でございます。
  111. 受田新吉

    ○受田委員 そこに問題があるのですね。つまり、民生委員は名誉職だからといって、一年間に一万三千円、月に千円です。別に行動するために手当として千円。これも年額で千円でしょう。これでは、民生委員、児童委員というものが月に千円ほどもらって、奉仕とはいいながら、管内の家庭をずっと見回って歩くというのはあまりにも重荷ですよ。ここに根本的な認識の相違があるわけなので、これは齋藤先生、あまりにも犠牲をしいることになる。また、この手当が出るから民生委員をやるという人、手当でやる人は、私は任命されたくない。やはり、奉仕の精神に燃えた人、社会的にもそういう人を限定すべきです。名誉職である民生委員の肩書きを悪用するような民生委員はほしくない。本気に民生委員に生き抜こうとする人にもっと何かの手を打ってあげなければいかぬと思うのですね。これは思い切った手を打っていただきたいです。われわれ協力にやぶさかでないと申し上げておきます。  時間の関係もあるので、質問を続けますが、最近、人の生命を軽視する傾向が至るところで起こっておって、嬰児殺し、赤子を捨てて行くえ不明になっている親、まことに道徳どこにありやというような情勢です。われわれは、いま日本の国が干からびた金もうけ主義、享楽主義が横行するような国では、文化国家、平和国家としてほんとうにりっぱなものに立ち直ることができないことを感じているだけに、世界に冠たる文化国家、平和国家をつくるためには、やはり道義というものが小さい赤ちゃんのときから死の瞬間まで続いていくような国にしなければならない。道義の退廃を救う道は教育であり厚生行政である。医は仁術といわれている。これも仁というものは道徳です。金もうけ主義の薬一本の医療行政ということは間違いであって、やっぱり医師の技術を中心にした正当な報酬による医療行政というものが考えられるわけであるということもわれわれは考えておるわけですが、こうした人命軽視、道義の退廃をなくするために、かわいい子供の生命を守り、自殺というような生命を不自然に断っていくような形をなくするために、厚生行政の上で配慮しておられる諸点をお取り上げをいただきたいと思います。
  112. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 いま先生がお話しになりましたように、最近赤ん坊を殺すとか捨てるとかいうような問題が頻発しておりまして、私どもも、そういった記事を読むたびに心を締めつけられるような思いがするわけでございますが、これに対してどう対処していったらいいかという問題を考えますときに、率直に申しまして、非常にむずかしい。人の心につながる問題でございますので……。一つは、お話のように、教育という問題が根本にあるわけでございます。厚生行政の面でどういうようにこれに対してアプローチしていったらいいかということは、いろいろむずかしい問題があるわけでございます。  私どもといたしましては、たとえば子供を殺すという事件が起きたときに、何で子供を殺したか、あるいは子供を捨てた場合に、何ゆえに捨てたのかということを分析してみた場合に、最近の一つの原因といたしまして、非常に若い人が妊娠して出産をする。そうしますと、いわゆる核家族化というもののために、昔はじいさん、ばあさんが一緒にいて育児についていろいろアドバイスしたり手伝ってくれたりしたけれども、いまはそういうものがなくなってきている。したがって、育児に対する無責任というよりは、むしろ、どうしていいかわからないというようなためについに子供を捨てたというような原因もあるようでございまして、そういう点につきましては、私どももできるだけ、保健所、あるいは私どもの持っております児童相談所でございますとか、そういったところを中心にいたしまして、たとえば母親学級というようなものをつくって、若い人たちに育児の知識なり育児の観念というものを持ってもらうように努力する、とかいうようないろいろな配慮をしなければいけないと思っているわけでございます。ある程度、第一線でもこういった運動をやっているわけでございますけれども、いまの時代の要請に即応しきれるかということになりますと、まだまだ不十分なために、いまお話しのような事件が起こるわけでございまして、私どもも、こういったようなものを未然に防ぐためにどうしたらいいかということにつきましては、これからも大いに適切な対策というものを考え、またこれを推進していかなければいけないというように考えているわけでございます。
  113. 受田新吉

    ○受田委員 子供がしあわせを得るためには、学校の教育をよくする、施設をよくする、同時に就学前の子供には保育所を各所につくって、そして勤労の両親の多い家庭の子供たちを安心して保育していただけるような体制も要る、こういう一貫した政治が要るわけですが、保育所設置基準、それから保育所に対する国の助成、保育所の保母の待遇という問題、それから保育所の数が需要供給関係でバランスがとれていないというような問題の扱いは、これはやはり児童局長のほうが御担当でしたね。どういうふうな御所見を持っているのか、あわせて御答弁願いたい。
  114. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 先生のおっしゃいますとおり、最近非常に女子の就職というものがふえてまいりました。したがって、保育所に対する需要というものは非常に大きくなっております。私どもも、いわゆる社会福祉施設の中でも、この保育所というものは非常にウエートを置いて従来整備をしてきたつもりでございまして、五年計画をつくりまして、昭和五十年百六十二万という数字を目標といたしまして、現在五年計画の遂行に努力をしているわけでございます。幸い現在のところは、この五年計画に基づく保育所の整備というのはほぼ順調に進んでおりまして、五十年度末には百六十二万五千人という目標には必ず達し得るものと思っております。  ただ、現在五年計画が進行中でございまして、したがって現在では、約百三十六万人くらい、施設にいたしまして一万五千くらいの保育所が建設されて動いているわけでございます。しかしこれは、昭和五十年度を目途といたしまして現在建設を進めているわけでございます。  整備をいたします場合に一つの問題は、費用の補助の問題があるわけでございます。従来、国庫補助の額が非常に低額で少なかったわけでございます。四十七年度からこれの大幅な改善に踏み切りまして、たとえば九十人くらいの保育所をつくります場合に、四十六年度では定額で二百五十万という補助額であったわけでございますが、四十七年度はこれを五百四十万と倍額にふやしたわけでございます。もちろんこれではまだ十分ではございませんで、いわゆる超過負担というような問題になって、現在いろいろ問題が起きているわけでございます。これは私どもとしても、早急にこの超過負担の問題を解消すべく、この国庫補助額につきましても、四十八年度には大いに改善をいたしたいというように考えているわけでございます。  それから保母の給与、これは他の施設一般に働いている人たちと同じ問題があるわけでございますが、これは現在ほぼ国家公務員並みまでには引き上げ、かつ民間の施設につきましても、公私の格差の費用も予算に計上いたしまして、できるだけ逐年改善をはかっているわけでございますけれども、まだ十分とはいえない現状が確かにございますので、これは、今後ともそういったものにつきましては、私どもも改善に大いに努力をしていなければいけないというように考えているわけでございます。
  115. 受田新吉

    ○受田委員 これから今度はもう一つ進んで、成年に達した身障者の社会福祉に触れていきたいと思います。  これは、時間が進んでおるから少し要約しますが、私、非常にうれしい事業を厚生省がやってくれたことを喜ぶものですが、かねてから期待してったことで、身障者の福祉モデル都市というものをつくってもらった。つまり歩道と車道を車いすで身障者が自由に動けるようなかっこうのモデル都市をことしからつくられた。これは三カ所だけモデルにしておられるようですが、さらに広げて、身障者が自由に行動ができて、身障の身であっても生きがいを感ずるというような形のものにすべきだし、また盲人の方が押しボタンで自由に歩行できるとか、地下道でも車いすが自由に動かされるようにするとか、階段も西ドイツ式に上がっていくという。私、三年前に、衆議院の交通安全対策特別委員長として諸外国の交通安全実態を調べたときに、大いに学ぶべき各国の先例を各省へ報告をしてありますが、その一つ一つがいま片づきよることをうれしく思いますけれども、そういう施設は、交通安全の立場であったにしても、やはり厚生省がリーダーシップを発揮すべき性質のものだと思うのでず。いかがですか。
  116. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 身障者の対策といたしまして、御指摘のとおり、四十八年度に身体障害者の福祉モデル都市というものを設置する。これは揚所はわずかに三カ所ということでございまして、一カ所二千万程度の補助ということでございますが、身体障害者が自由に町を歩けるようにする、こういう対策をやらなければいかぬというのは、これはむしろ地方自治体のほうに強い要望がございます。すでに国庫補助を待たずにこういうものに着手している市もあるわけでございます。しかし、これは先生御指摘のとおり、厚生省が中心になりまして、建設省あるいは自治省というようなところも協力して、各省が協力してやるべきものというととで、建設省も最近はこういう問題に非常に関心を持ってきておられるようでございます。関係各省がみな協力してこういう対策をさらに強力に打ち出していく。まあ四十八年度三カ所でございましたけれども、非常に要望も強いわけでございます。そういうことで、今後ますますこういう対策は拡大してまいりたいというぐあいに考えております。
  117. 受田新吉

    ○受田委員 との身障者の皆さんの場合には、生まれたときから身障である方もあれば、交通事故その他後天的に障害になる方もある。しかしいずれにせよ、そのとうとい人生を守る上によけいな御苦労をされるわけでありますので、その御苦労をされる部分の不自由部分を国が非常な勇気をもって補って、むしろおつりが出るくらいに力を入れてあげていいと思うのですね。  そのことで、いまさっき私が質問したことの中で大事なことが一つ残っておるのです。つまり、養護学校から出た、成年に達した身体障害の方々、肢体不自由の方々の家庭への復帰後における家庭の負担の増大です。これに対する対処はどういうことにしてありますか。養護学校までは国がめんどうを見、地方がめんどう見よう。しかし、学校を卒業すると今度は家庭へ帰って、その不自由なからだをこなしていかなければならないという負担がここへかかってくる。これを国は積極的に、養護学校から継続した形で、その肢体不自由の、身障の成人に達した卒業後の人たちを救う道をどう考えていくかということです。
  118. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 これは確かに、先生御指摘の点は、私どもも身体障害者対策、これが児童局と社会局に所管が分かれておりまして、その間の円滑なつながりというものが十分でないということは、私はやはりわが国の身障者対策の一つの欠陥だろうと思います。私どもといたしましては、一応児童局の所管を離れました身体障害者対策といたしましては、一つは、できるだけ関係のおとなの施設をつくって、そこで職業指導その他の障害に対する対策を行なう。これが現在二百三十ばかり施設がございますが、まだ非常に不十分でございますが、そういう対策が一つあると思います。  それからもう一つは、在宅対策、これをどうするかということでございます。あるいはまた、障害福祉年金とか、あるいは障害年金、そういったものの対策もあわせてやらなければいかぬ。この身体障害者、ことに重度の身体障害者の在宅対策をどうするか。これは私どもはまだこの段階ではっきり申し上げる段階に至っておりませんけれども、私ども四十九年度予算において取り組むべき大きな問題だろうと思います。これは、重度の身体障害者、あるいは重度の身体障害児、それから老人、寝たきり老人、それで施設には入っておられない方、そういう方々に対する対策というものをどうするか。これはまだその構想が固まっておりませんけれども、私どもは四十九年度予算において取り組んでみたいというぐあいに考えております。
  119. 受田新吉

    ○受田委員 厚生大臣、いま健保法案の審査がありよるのですが、それには私、原則として触れません。年金も触れませんが、しかし、ここで大事なことは、いま局長がおっしゃったような、成人に達した重度の身障者を家庭が引き受ける。引き受けるときに必ずだれかが一人うちにいるのです。家族のだれかがついておってあげなければいかぬ。医療は必要としないけれども、その重い障害の家族をかかえた家庭の負担はたいへんなものでございますが、これは健康保険の関係にもならぬ部分が出てくるものですから、これについては、いま局長のおっしゃったのは、根本的対策を立てたい、こういう御意見です。そういう家族をかかえた家庭のことを考えて、非常な勇気のある英断で急いでこれをやってもらわにゃいかぬです。三万円以上の負担の部分は今度健保で救われることになるという案が一つあるのですけれども、それとは別の今度は新しい負担がここに入ってくるわけですね。養護学校までは学校でめんどうを見ます、卒業したらもう学校は知りませんという形になっている。その境界線。いまの二つの局の所管についても、接触をどうしたらいいかという御苦労を社会局長がおっしゃったわけでございまして、それを大臣がすかっと適切な措置をとって救済する行政をやってもらいたい。よろしゅうございますか。
  120. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 重度の心身障害児につきましては、国の施設に全員収容するという方針でできるだけ施設の整備を急いでおるわけでございますが、施設に入りたくても入れない方がまだたくさんおるわけでございます。そういうふうな重度の心身障害児をかかえておる御家庭の、精神的な苦痛もたいへんでございましょうが、経済的な負担も非常に重いわけでございまして、この問題については、前々から何とか考えなければなるまいということでございましたけれども、最近の経済状況から見て、これは思い切ってやらなければならぬというので、実は来年度の昭和四十九年度の予算編成に際して、重度心身障害児をかかえておる御家庭の、名前はまあ在宅の手当と申しますか、そういうふうなものも、この際、法律的にはよそとの関係でいろいろ問題はあるかもしれませんけれども、割り切ってひとつやろうじゃないかということで、先般来、関係局長に、これはひとつ思い切ってやろうということで指示をいたしておるようなわけでございまして、来年度の予算編成に際しては、これは一つの大きな目玉として真剣に取り組んで実現をはかっていく、こういうふうな決意を抱いておるような次第でございます。
  121. 受田新吉

    ○受田委員 それは私が多年胸に描いて、釈然とせぬものがあったのですが、大臣もそういうことで最近非常に熱を入れておられるということでございますから、期待しますから、これは必ず実行してもらいたい。思い切った金額も計上してもらいたい。  もう一つ、母子福祉で一点だけお尋ねしておきたい。  ヨーロッパその他の先進諸国家の母子福祉施策は、御主人がなくなったあとにおいて、その奥さんに御主人の所得に近い所得を与える対策が用意されておる。日本の場合はお話にならぬ低額の、今度増額するにしたって、まだ一万円をぐっと切れるかっこうで母子福祉手当というものが出ておる。準母子も同じことですね。それから子供が成人に達した後の寡婦対策というのはますます冷酷である。御主人をなくし、子供を育て、子供を育てる間に年をとって、普通の同年配の家庭婦人に比して、もうしわも苦労もにじみ出たような母子家庭。母子家庭から今度は寡婦家庭になってくると、子供が成人するともう何らの保障も何もない。こんな哀れな政治がいま日本の政治に行なわれておるわけです。厚生年金五万円という時期が来ておるわけでございますので、主人に死なれただけでもたいへんな重荷であり、子供を育成して疲れ果てて、同年配の家庭婦人よりもうんとしわが寄って寡婦時代になった、その寡婦がさらにまた新しい苦難の道を歩んでいくということに対して、せめて先進国に負けない施策をこの際勇気をもってやる必要があると私は思うのですが、いかがですか。
  122. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 年金の問題になりますとちょっと所管の局が変わってまいりますので、私からお答えいたしかねますが、しかし、ことしはたしか、母子福祉年金も四千三百円から六千五百円に引き上げられるということになっておるようでございますし、こういった年金の充実というのは、厚生省の仕事としていま努力をしているわけでございます。  私どもの局の所管といたしましては、母子福祉につきましては例の母子福祉資金の貸し付けの制度、それから寡婦につきましては寡婦に対する同じ福祉資金の貸し付けの制度というものがございまして、それを年々原資を増大いたしまして改善をはかっているわけでございますけれども、今後の問題としても、私どもも、こういったような面からも、この母子福祉の問題あるいは寡婦対策の問題につきましては大いに努力しなければいけないというように考えておるわけでございます。
  123. 受田新吉

    ○受田委員 大臣、一々大臣の御答弁を願わなくてもいいような問題ですがね。母子家庭の未亡人生活というものの苦労は、大臣、あなたの周辺にも数多く存在しているわけでして、青春を犠牲にした婦人が子供の成育後においてがくっと倒れていく、つまり御主人のある家庭と違って死亡率が高い。つまり寡婦であるという者の死亡率が高いというこの現象のことも考えて、せめて、苦労多かりし青春時代を犠牲にしてやったあなた方よ、ひとつこれからの老後は一般の老人福祉とは違った、御苦労をされた部分がプラスされるようなお手伝いをしましょうという愛情が要ると思うのですね。それをひとつ検討をしておいてもらいたい。  いま私、六法全書を見ながら、昭和二十二年に児童福祉法制定、引き続き身体障害者福祉法、そして三十八年の老人福祉法、母子福祉法と、この福祉法の制定の過程をずっと関与した議員として感無量のものがある。人生まれて死ぬるまでの間の福祉政策が着々と進んでまいりました。それ、人間の成長過程の最後に来るものは老人ですね。老人福祉法が昭和三十八年にできた。私は立党当時、いち早く老人福祉法をわが党として提案した一人でございますが、政府、各党がこれを大いに推進し、三十八年に実を結んだというこの老人福祉法、それに対する医療対策等の前進等、一応年寄りを大事にする国らしくなりました。最後にこの問題に触れておきます。  ところが、老人医療の対策が進んでくるとともに、病院にはお年寄りがわんさわんさと入院し、通院するようになってきた。病院によっては老人の入院ばかりというような繁栄、と言うては失礼でございますが、非常に病院が患者に利用されてくるようになってきた。これに対してひとつ何かいい手はないか。お年寄りだけを専門にする老人福祉病院、あるいは老人ホーム、特別養護老人ホームというもの。お医者さんを専属で置くような形の、病院に通ずるような老人ホームというようなものを設置する。老人病というのは大体限られておるわけですから、老人に都合のよい病院、老人ホームを医師を設置した形でやるとかという新構想がいま要るときが来たのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  124. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 老人福祉法に基づきます医療制度が一月に発足いたしまして、これの発足以前と比較いたしますと、先生御指摘のように、入院患者は病院によって多少違いがございます。それから地域によりまして、都会地よりも農村地帯の小病院ほど比較的ふえているような傾向がございます。しかし、当初予測しましたように、国立病院で七十歳以上の患者が全入院患者に占める割合が四月現在で一%程度、それから地方自治体の病院で一六%が一八%程度に二%上昇いたしております。これは三月現在でございまして、まだ発足から日が浅いという問題がございますので、これが対策はむしろ今後の課題であるというふうに思うわけでございます。  老人というものは、長期慢性の疾患が多いのでございますし、それからまた合併症を持っている場合も多いということで、非常に特有な姿であることは先生御指摘のとおりでございますが、一般的には病院というものは各科診療科目を備えている必要がございます。したがって、老人の持っているいろいろの疾病に対して、眼科も内科も、あるいは場合によっては耳鼻科も、それから外科的な見方もしなければならないというようなことで、老人専門病院をつくるのがいいのか、総合病院の中で老人病棟を設置するのがいいのかという問題については、われわれもかなり研究を進めておるわけでございますが、いまの考え方としては、やはりリハビリテーションというものも考えなければならない。ただ老人だから病院に入院させておけばいいというのじゃなくて、脳卒中のあとでも早目に治療しますとかなり回復いたします。したがって、このリハビリテーションの機能を持つということもあわせまして、公的の病院等を中心に老人病棟をプラスすることが、医療関係者の確保の状態から見ても、むしろ当面はそのほうがいいのじゃないか。しかし、やがては御指摘のような老人専門の病院あるいは研究というようなことも強化していく必要があると思うのでございます。  それから、御提案の老人ホームあるいは特別養護老人ホームと病院の結びつき、これは御指摘のとおり、われわれは、国立等で敷地があって県、市が要望があれば、むしろ敷地を合わせて国の機関に老人ホームを併設する、あるいは地方の病院等にもなるべく特養のようなものは病院に併設する、こういう行政指導をしてまいりたいと思っておりますので、この点はできるだけ老人福祉対策の将来を考えまして対策を講じたいというように思っております。
  125. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 関連して。  いま医務局長からたいへん注目に値する御答弁があった。私ども非常にうれしく思いますが、厚生省の医務行政の現実は全くそれと逆なことをやっている。ということは、公的病院を中心にして病棟をふやしていく指導するとおっしゃる。速記録を見てください。ところが公的病院に対しては非常な圧迫を皆さんは加えている。法律に基づいておるのでやむを得ないところもある。しかし、そういう御方針である以上は、法律改正するのか、あるいは中医協その他におけるあの圧力を解除するのか、この点をはっきりしてほしい。
  126. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生御指摘の、公的病院に対する医療法第七条の二に基づきます病床の規制措置があるのじゃないか、それに対して老人病棟をつくるといっても、これはむしろ無理じゃないかという御指摘でございますが、これは地域的に人口による段階別の病床規制制度は確かに医療法にございます。しかしながら、老人病棟の設置については、昨年十二月の医療審議会におきまして、その規制とは別に加算制度を設けることによって、地域がそういう老人病棟を設けることを申請される場合については、これを別に認めるという加算制度が一つプラスされておりますので、その点はわれわれとしては、老人対策を今後強化していくことを考慮いたして、医療審議会の御審議の結果、これは規制以外に加算制度をお認めいただいておりますので、御要望に沿えるものと考えております。
  127. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 それも承知をしておるのですが、いまあなたの御答弁で、一般的には一%だが三月現在で老人関係は二%程度というお話がありましたが、私どもが承知しておるところでは、地方の公的病院などでは老人ホームなどを併置しておるところがずいぶんあります。したがってその人たちは、今回の老人対策によって、老人ホームから病院のほうへ移りたい。また若干体質的に欠陥がある人も多いようです。したがって、どんどんそっちに移る傾向が多くなりまして、三月の調べで一%、二%という数字が、おそらくあなたのところに来ている数字だから誤りはないと思いますが、現実にはどうも非常に多い傾向が私どもには認められるわけです。したがっていまの加算制度で間に合うのかどうか。加算制度の基準がどうなっておるのか、その辺を伺いたい。現に自治体病院協議会等ではこの問題が最大の懸案の一つになっておるということは、医務局長御存じのはずだと思うのであります。したがって、これに対して単に加算制度で救済し得るのかどうか、その辺のお見通しも伺わないと、ちょっとこの問題、いまの御答弁ではたいへん調子のいいお話で喜ぶのですが、現実に十分であるかどうか。
  128. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生御指摘のその具体例になりますと、従来病院がかなり一ぱいに使っているところへ老人医療の無料化が起こった。したがって、先生のおっしゃるような小地域の診療圏の中では、具体的にお困りになっておる例があると思います。したがって、老人病棟の加算というものはやはり急ぐ必要がございますが、この加算には別に制限を設ける考えは持っておりません。しかしながら、病院運営というものと医療従事者の確保というものとをにらみ合わせませんと、せっかく建物はつくったけれども看護婦がいない。また看護婦の問題も、もちろんわれわれの重要な責任であり、重要な課題でございますけれども、そういうことを勘案しておつくりになる申請が出てまいりますれば、起債その他の問題について対応していきますので、地域性の必要の度合いに応じたものとして考えまして、決してそこに制限的なものは考えておりません。
  129. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 起債等でも、昨年度は三十億ぐらいふやして、あとから十億ぐらいで、この自治体病院の病院拡張については、お説のように看護婦さんの問題は大きな問題でありますが、一般の老人というものは、私設の病院よりは公的病院のほうが安いから、どうしたってそっちへいくわけです。そうすると、公的病院のほうは御承知のように他の患者も非常に多いわけです。したがって、いまになってふやしてもいいと言われたんだが、すでにもう公的病院には、病床拡張について非常に強い希望があったわけですから、いま制限をしてないというお話で、私ども先月ですか、公的病院協議会の総会のあったときにも、やはりこの問題が問題になった。文部大臣等も、われわれと同じにこの問題についてたいへん心配をしておるので、いまのお話でたいへんありがたいのですが、さっそく公的病院協議会と協議をして、それぞれ適正に申請を出したいと思いますが、よろしゅうございますね。
  130. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 具体的には神奈川県などでは、かなりこの加算制度を活用した具体的な申請が出てまいっております。したがいまして、具体的に申請がございますれば、これは積極的に認めていくという方向で努力をいたします。
  131. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 どうもありがとうございました。
  132. 三塚博

    ○三塚委員 関連して。  いま老人医医専門病院について受田先生から質疑がありました。受田先生の質問は、私ども内閣委員いつも傾聴して聞いているのです。非常にヒューマニティに富んだ、これからの政治がやらなければならない方向を示唆する点の豊富なものであります。そういう意味で、老人専門病院の問題について言及をされたわけでありますが、これは医療無料化が進みましてわずかの期間でありますけれども、今後この傾向は漸次ふえていくと思うのであります。特に人生の後半にあたり、社会に貢献をされたこれらの方々が最後の人生を楽しむわけでありますから、生きとし生けるもの、その生命が百年まで、あるいは千年までもと願うのは人間の常であります。それが医療の不備によって人生が縮まるということでありますと、これは政治の大きな課題であります。そういう意味で、やはり厚生省、政府といたしましては、老人専門病院をブロック的に建設するスタートにこれから立たれる。先ほど医務局長のお話では、その辺の構想もあるやにお伺いしたものでありますから関連をさしていただいたのでありますが、老人専門総合病院という構想はどの辺をめどにこれから進められようとしておるのか、この一点だけをお聞かせ願いたいと思います。
  133. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先ほどの説明がちょっと不十分だったと思いますが、イギリスの場合でもすでに例がございますように、老人だけを収容する病院というのはごく数が少ないのでございまして、総合病院の中に老人病科というものをつくったり、あるいはデーホスピタルといって、バスで朝迎えに行って夕方は家庭に帰す、その間はリハビリテーションとか治療をやる、こういう非常にいい例が外国にあるわけでございます。こういうものを踏まえて、都道府県の中心になるような場所の、それもあまり遠くから行かなければならないのはいげませんので、中心になるような都市の病院、公的なものなどに老人病棟を併設してもらうと同時に、われわれの構想としては、そういうデーホスピタル的な老人医療対策も加えたい、そういう構想を持っておりますので、少なくとも都道府県の、また国立が各府県に一部ございますけれども、地元の御要望があって、われわれの政策とも合えば、国立が利用される場合もありましょうし、国立が不十分であっても、県立のりっぱなもの、あるいは日赤なりというようなものであれば、県の計画として老人福祉対策をわれわれとともに立てて、そうしてそういうものに助成する、起債をする、こういうことでございまして、先生のおっしゃるように、専門病院というものをブロック的に大きく立てるということについては、医学の分野から老人だけに各科の先生を集めるということは非常にむずかしいものでございますから、そういうふうに御理解をいただきまして、老人福祉対策を各県単位、しかも県内でかなりブロック的にも考えなければならない、そういう構想を立てたいと思います。
  134. 受田新吉

    ○受田委員 私、お年寄りを大事にする国は道義的にも豊かな国だと思いますので、特に厚生行政の上でいま老人の皆さんに特別に老人対策を考えてもらえる病院というものを提案したわけですが、総合病院の中の老人病棟として、特別に老人だけの病棟をつくるという考え方もおもしろい構想ですから、結局は老人中心の病院になるわけですが、これは勇敢にひとつテンポを早めてやってもらいたいと思います。  それから特別養護老人ホームという、これはある意味においては病院とつながりを持ってくる施設でございますので、医師の派遣その他のつながりを密接にして、そこの老人ホームで医療も一緒に受けていかれるというような形に施設を改善することもひとつ要望しておきます。  以上で、生まれてから死ぬまでの、とうとい人生の福祉政策の一貫的な質問をさして一応いただいたのでございまするが、最後に総合的な問題点として、医療行政に対する質問を別個さしてもらいます。  医務局長さん、なかなか明快な答弁をされて、大演説になって、私たち共感を呼ぶ点がたくさんあるのですが、あなたに一つ伺いたいのです。局長さんはお医者さんを開業されてやられたことがありますか、ありませんか。
  135. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 私は大学を出てから軍務に従事しまして、復員後引き続き公衆衛生に入りましたので、ただ若干その間、兄の開業を手伝った程度でございまして、若干患者を見た経験、保健所でまた患者を見た経験はありますが、臨床経験はまずないという医師であるということを申し上げます。
  136. 受田新吉

    ○受田委員 局長先生は、医師でありながらあまり医療には当たっておられない名医であるということで、ひとつ質問をさしてもらいましょうね。  お医者さんである局長さんですから、私いつも一つの疑問を持っておったのですが、最近特にその疑問に大きな輪をかけて、日本はこの際ひとつこの疑問を解決するために積極的に乗り出すべきであるということに達したわけです。それは漢方医。漢方医というのがわが国ではいま法律的に認められていない。西洋医学のほうで今日の医学界が支配されているのですが、病気などしたときに漢方薬を飲まない人というのはむしろ少ないので、漢方薬のお世話になっている国民が大量におると私は理解するが、間違いかどうかをまず答えていただきたい。
  137. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生、ずばり漢方薬という御指摘でございますが、確かに一般的な胃腸薬というような表現になっているものも、処方の内容的には漢方に由来するものもございまして、そういう広い意味の漢方薬という解釈で受け取るならば、売薬等によってかなり日常的な保健医療をみずからしておる国民は、統計的にもかなりあると推測されます。ただ、国民医療費の中では売薬というものの占める割合というものは、総医療費が相当膨大でございますので、パーセントとしては一%を割る程度であると記憶いたしておりますけれども、実際的にはかなりの国民が、そういう意味の漢方に由来する薬品等を日常使っておるということは否定できないと思います。
  138. 受田新吉

    ○受田委員 漢方薬というのは、原料の関係から食物の延長と見てよいかどうか。
  139. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 漢方薬というようなものの私の理解は、きわめて自然な状態の中の原材料からつくるというものを原則的に考えております。したがいまして、たとえば西洋医学の中でストマイあるいはペニシリンというような化学構成的な薬品によるものは、細胞そのもの、あるいは細菌そのものを死滅させるという医療の原理に基づくわけでございますけれども、漢方薬は、われわれの理解といたしましては、日常の生理機能を高める、正常の人間が持っておる機能というものを援助する、そういうような作用というものが中心である。それによって、むしろ本人の生体を通じて病気というものに対して抵抗し、あるいは健康を高めていく、こういうような作用をすると思いますので、原理的には、先生おっしゃるように、漢方薬は、自然の材料、自然なものを、人間の知恵によって、経験によって活用するようになったものと理解しております。
  140. 受田新吉

    ○受田委員 食物を正しくからだに入れることによって健康が保持されるわけですが、そのバランスがくずれたとき、漢方薬をもってそのバランスを正すという意味においては、つまり自然の生活を助長するという意味でありますから、医の根源としては一番りっぱなものではないかと思うのですが、いかがですか。
  141. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 おっしゃるとおりだと思います。
  142. 受田新吉

    ○受田委員 おっしゃるとおりだと結論が出ました。医の理想であると。ところが、最近盛んに問題になっているサリドマイド、スモン病、こういうようなものは西洋医学の欠陥が出たものである。日本の医学は薬の使い過ぎである。過剰投薬、そういうような傾向が世界では一番高い国だと制断しますか、しませんか。臨床医家としてよりも、医学者であり行政医師でいらっしゃる先生ですからね。あえて先生と申し上げます。この問題は、私、非常に大事なことをいまから触れるわけでございますので、ひとつ総合的な判断で御答弁願いたいのです。
  143. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 日本の現在の医療の中における薬品の役割りというものについては、たとえば総医療費の中で医薬品の占める割合というものが四三%であるというような比率の面から、非常に多用しておるということが一般的に考えられております。私は決して多用しておるということを否定するものではございませんが、単なる比率の理論だけからいいますことは、要するに薬以外の他の医療に要する費用というものが諸外国と比較するときに、たとえば技術料の評価というものが低ければ医薬品の占める割合が高くなるという原理が出てまいりますから、四三%だけをもって即日本が国際的にも医薬品の多用の国であるということを結論づけることは無理だと思います。しかし、医薬品というものに日本の医療が現実にどういうふうにたよっているというか、医療がそれによりかかっているかという実態については、確かにわれわれが知っている範囲でも、諸外国よりも薬の投与が多用ということは日本は顕著であるということは事実であろうと思います。  ただし、この場合、非常に率直に言わしていただきますならば、医学関係者の原理、原則という立場からのみの薬の多用の要素もございます。医学教育におけるいろいろの検査方式の発展によりまして、患者はたとえば胃が悪いという訴えで来ましても、ただいまの医学ですと、血液を調べたりいろいろいたしますと、数十種類の検査がわずかの時間でできる。そうすると、たとえば肝臓が悪いということもわかる、あるいは糖尿に近い傾向があるということも場合によってはわかってきます。こういうようないろいろの要素のものがわかりますと、患者の訴える以上にその全体のものに対応するような投薬が行なわれる。その医療の形態というものは、昔は訴えられたものに対する対症療法的なその部分に対する治療でございましたが、検査をいたしまして非常に広範な健康障害の実態がわかりますと、これに対応しようとする薬の量も多くなってまいります。     〔藤尾委員長代理退席、委員長着席〕 それから、たとえば発熱ということから即感染症、そうすると抗生物質、こういうような結びつきの過剰な医療の警戒と申しますか、若干様子を見ることによって、検査の結果を待ってかぜか感染症であるかを区別することを待たずにすぐに抗生物質を投与する、こういうような医療の実態もあります。また医療の中で、いま言われておりまするように、国民側からの薬に対する期待も、諸外国に比べて慣習的に非常に強い関心がある。こういうことから見て、私は結論的には、先生のおっしゃる、わが国が医薬品の多用をしている国であるということを否定はできないと思います。
  144. 受田新吉

    ○受田委員 わかりました。局長、昨年、中国の長沙において、貴婦人の遺体がなまのまま保存されて出てきた。これは東洋医学の成功であると判断するかどうか、御答弁願いたい。
  145. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 これは私たちが理解する医学の勝利である、あるいはすぐれたものであるという、医学という表現と結びつけていいのか、あるいはもっと、文化という表現でいくべきか。いおゆる非常に文化的な歴史の古い国の姿として、経験と科学の合体した一つの文化のすぐれた姿が、あのような過去におけるものが現在において見出されたというふうに考えておるのでございまして、ただ医学だけと表現を結びつけるのが妥当であるかどうかは、若干疑問を持つわけでございます。
  146. 受田新吉

    ○受田委員 局長がその遺体を診断されたわけでも観察されたわけでもないからなんですが、われわれがいろいろと報道機関を通じて知るところによれば、漢方薬というものがこの中に効を奏しているとも言えると思うんです。漢方のいろいろな医薬品、そういうものが成功しておる。そうしてなまのままで脈々といまにも動くかと思うような筋肉が、二千有余年の遺体の中に出ておるということは、西洋医学ではちょっと考えられないと私は思うんです。したがって、東洋医学の長所、漢方医学というものについて日本はひとつ検討する時期が来ておるのではないか。  最近、中国ではり麻酔、はりによって麻酔薬のかわりをする新しい医療が行なわれておる。これは西洋医学ではちょっと判断のできない問題だと思うんですが、名医である局長、ひとつはり麻酔についてどういう認識を持っておられるか、御答弁願いたい。
  147. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この問題については、私は、先生が御指摘のように、まさに西洋医学と漢方医学の具体的な、端的なあらわれがこのはり麻酔の問題にあると思います。西洋医学の麻酔は、ガスその他を使いました科学的な麻酔でございまして、人間を支配する神経に応じた必要な場所にはりを施すことによって麻酔というものを期待する原理というものは、きわめて自然な人間の状態に対して、最も影響の少ない、しかも影響なしに回復し得る、きわめてすぐれた麻酔の方法である、こういうふうに理解いたします。
  148. 受田新吉

    ○受田委員 齋藤大臣、局長ははり麻酔についての共鳴論をいま述べられたわけです。そこでこの際、中国に多数の医学生を派遣して、このはり麻酔の勉強をしっかりさせて、日本医学に、苦痛を感ぜず、また薬剤を用いずして、神経を麻痺しないままで治療ができるというような、こういう新しい革命的な医療ができるならば、これはまことにりっぱなことだと思うんですが、中国に多数の学者を派遣し、あるいは学生を派遣してこの問題と取っ組ませる必要はないか。医の専門家であり、行政官でもあり、また医者でもいらっしゃる局長先生の御答弁から見て、研究のために派遣することは、政府のお金をもって派遣してもいいですから、日本の医術の進歩のためには惜しみなく国費を使うべきです。大臣の御決断を願いたい。
  149. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 日中国交回復後、日中両国の医学の交流ということが一つの問題になってまいりまして、先般来、向こうの日本の医師会と同じような方面と武見会長との間に、いまいろいろ話が進められつつあるわけでございまして、私はやはり今後日中医学の交流ということが非常に大事なことだと考えております。そうした一環といたしまして、日本の医師を向こうに派遣していろいろ勉強させる、これは私は非常に大事な必要なことだと考えておりますので、御提言になりました問題につきましては、今後中国とも十分打ち合わせながら検討させていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  150. 受田新吉

    ○受田委員 大臣から、派遣を検討する、東洋医学と西洋医学のそれぞれの長所を生かすためにもやると言われた。それから漢方医学というものは、食生活の延長、バランスをとるという意味で、からだの障害を防ぐかっこうの医療としては適切であるという局長の御答弁もあったわけですが、一般西洋医学の薬剤の使用というものは、一たび道を誤るならば死を招くというきびしいものである。こういうものであるから、もう一つ問題は、西洋医学をやる医師は常に高度の技術と知力をもって当たらなければならぬから、いいかげんなお医者さんじゃいけない。漢方医にしても同様でございますけれども、西洋医学の研究をする医師の養成は、非常に的確な技術、知性をもってやるという意味からは、いいかげんな大学教育であってはならないという意味から、いまから医師の養成についてちょっと触れていきます。  厚生省は日本の医師の適正な数をどこに置いておるか。医師と歯科医師と、それぞれひとつ適正な数値をお示し願いたい。
  151. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この問題につきましては、まず数字を申し上げますと、昭和六十年に人口十万対百五十を確保したいというのが、昭和四十五年に厚生省の医務局長から文部省大学学術局長に公式な文書でお願いした数字でございます。これにつきましては、最近の医科大学の設置の促進によりまして、ほぼ昭和六十年をもって百五十以上に達する見込みが立ちました。  歯科医師については、世界各国とも大体医師数の三分の一がほぼ必要数とみなされておりますので、ただいま十万対三十九でございますが、これも現状の歯科医師の養成でまいりますと、昭和六十年をもって五十一程度に達しますので、ほぼ百五十の三分の一、五十一でほぼ当面の目標は達成できるものと考えております。
  152. 受田新吉

    ○受田委員 厚生省のその要望に対して文部省は、ほぼ昭和六十年に十万対百五十人の目的に達するようになったということでございまするが、どういう数字でこれを満たそうとするのか。国立大学、私立大学別の昭和六十年の卒業生、その時点に死亡者等を整理した上で生き残るのがどれだけか。今度の自治医科大学とか防衛医科大学とかいう、こういう特殊の医科学生というものは、その計算の中に入っているのかいないのか。自治医科大学とか防衛医科大学というのは、厚生省の医師の計算からは別ワクになっているのかどうか。これはもう一ぺん医務局長文部省と御一緒に御答弁願いたい。
  153. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 昭和六十年までの医師の先ほど申し上げた数値につきましては、四十八年度予算で設置が予定されております静岡、宮崎、滋賀等の段階までを含んだものでございまして、そのまま推移するといたしましてでございますから、今後設置するものについては一切含んでおりません。
  154. 受田新吉

    ○受田委員 昭和四十八年度で終わった分までで、いまの旭川医科大学なんかはどうなんですか。
  155. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 旭川は入っております。で、いま申し上げた旭川、山形、愛媛はその前の段階でございまして、いま申し上げた数字は四十八年度で設置予定の候補地にきまりました静岡、宮崎、滋賀等の三つを入れた数字まででとめまして推移するとして、六十年で百五十以上に達する、こういうことでございます。
  156. 受田新吉

    ○受田委員 いま旭川はまだ審査の途中でして、きまっていないのですよ。どうですか。
  157. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この点については、われわれは需給計画の予測の数字を立てる作業としてやりまして、それでお答えいたしたわけでございますので、そのような配慮の点から申しますれば、現実に動き出したものと限定いたしますと、もう少し百五十に達する――数字は、百五十には近いようでございますけれども、いまその試算した数字は持ち合わせません。それを除く試算をしろということになりますと、いますぐ手持ちにはありませんけれども、一応そういう予定でやってございます。
  158. 齋藤諦淳

    齋藤説明員 いま厚生省から説明のありましたように、すでに新設されておる自治医科大学を含めまして、それから予算でその創設について御審議いただき、いま国立学校設置法で御審議いただいておる三校、つまり旭川、山形、愛媛、これを含めます。並びに、来年度設置準備のために準備費を計上いただいております静岡、滋賀、宮崎、それに筑波大学の中に医学関係の機関をつくる、こういう準備費をいただいております。これを含めまして昭和五十九年に百五十人をオーバーする、こういう計算になっておる次第でございます。
  159. 受田新吉

    ○受田委員 私立医科大学が毎年少しずつ出てきたわけですが、その医科大学の認可申請に対する認可は、この医師養成の目標とかね合わせてやっておるのですかどうですか。
  160. 齋藤諦淳

    齋藤説明員 いま申し上げました数字には、昭和四十八年度に開設されました独協医科大学までも含めて計算されておるわけでございます。それ以降の大学につきましては、まだいまのところ、私立大学についてはその計算には入っていないわけでございます。
  161. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、今後は昭和六十年まで、いま静岡、宮崎、滋賀まででとまって、私立は独協でとまって、新しい医科大学、医学部はつくらぬでも間に合うのだという計算ですね。一切大学は新設は要らないのだ、もうこのままで目標は達せられるといういまの御答弁ですから、新設は今後昭和六十年までない、この理解でよろしゅうございますか。
  162. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 医師の需給計画で六十年で十万対百五十という数字を申し入れたわけですが、これはどこの国も、医師の数は人口に対してどの程度確保するのが最も適切かという研究、いろいろの報告がございますが、これには一定した理念というものがなかなかないわけでございます。先ほどの、当面昭和六十年という数字を目標に立てて、そして医師の養成というものを強化し拡充をお願いしたいというのが四十五年に厚生省から申し入れた数字でございまして、当面その目標には達する、しかし将来これでいいのかどうかという問題につきましては、やはりいろいろの議論のあるところだろうと思うのでございまして、われわれも、このような問題については引き続き専門家をわずらわしながら、外国の推移等も見まして、昭和四十七年ぐらいの段階で医師一人についての人口が八百五十でありますアメリカなどは、医師一人当たり五百人が当面の目標というようなことが報道されておりますので、そういうことも含めまして、当面六十年を目標に置いて百五十を確保していただきたいということでございます。
  163. 受田新吉

    ○受田委員 それはわかります。文部省は……。
  164. 齋藤諦淳

    齋藤説明員 いま申し上げましたのは、具体的に予算で準備費等が計上されておったり、あるいは独協医科大学のように具体的に認可されたものをかたい数字として計算いたしまして、それ以降については、準備費の計上なり、あるいは申請があった場合に認可するかどうかということは慎重に検討をしてきめていきたい、このように考えておる次第でございます。
  165. 受田新吉

    ○受田委員 文部省の課長の御説明によれば、私立は独協、国立は四十八年度いまの三校で一応厚生省の要望の数字が果たされる、こういう話でしたね。そうすると、今後新設はしなくても、医師の養成は現状の大学教育で可能であるという文部省の答弁と理解してよろしいかどうか。情勢の変化というものはもちろん考えられるが、現状では医科大学の新設は必要ないと了解してよいかどうか。これは課長さんでは無理ですかね。――じゃ無理を申し上げません。  そこで局長さん、ソ連とかアメリカとかいう国、日本よりも医者がよけいおる国、膨大な地区で人口がばらばらになっておる国と、この狭い国土に大量の人間がおる国。つまり、集中的に医師が利用できる地区と、ばらばらになったところとで人数は違うですわね。そのことを計算に入れなくちゃいけない。したがって、この狭い国土日本に百五十人を目標とされたということは、相当行き届いた手が打てるわけです。狭い国土人口が多いのですから、医師の一人当たりの診療区域も行き届くし、アメリカやソ連のように、非常に広いところに百三十とか百四十おるのとは違うのです。国柄が違うのです。  そこで、問題をはっきり申し上げたいのは、お医者さんというのは都市都市へと集中して、過疎地帯にはお医者さんが少なくなっている。これはどこに原因があると思われるのか、そしてこれをどういうふうにして解決するか。これは、医務局長で答弁できるところと、政治的なお答えとがありますが、局長さんがお答えできるところをごく簡単でいいですから……。
  166. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 国土の態様というものと医療従事者の数の基準をどう置くかという問題は確かにあろうと思いますが、ただわれわれが日本の国内をながめましたときに、現状における人口十万対の各県別の医師の少ない県ベストテンの一番から十番までとってみますと、ほとんどが医科大学のない県でございます。そういう意味からは、今後、医師の絶対数というものとかね合いながら、地域医療の向上のために医科大学の設置をどこまでどういうふうにするかということは、よほど慎重に検討する必要があると思うのでございます。  で、後段の先生の御質問の、僻地あるいは無医地区等の医療確保対策でございますが、これについて従来国は、僻地で医師のいない地域、あるいは人口が相当数あっても医師のない地域等には診療所を設置する、それから人口が少数であってなお医療にめぐまれない地域には患者輸送車を回して病院に運ぶ、こういうような仕組みを考えてやってまいりまして、約二千数カ所がそのような対策を講じて約半分に減ってはきておりますけれども、まだ十分及んでいません。しかも医師の確保は常に変動して困難である。したがって次の段階で手を打ちましたのは、まず僻地の地区に近い公的な病院等を中心に親元病院を設定いたしまして、その親元病院に国から助成金を出しまして、医師をできるだけ確保しその地域医療の確保に当たろう。要するに僻地というのは、医療を僻地に持ち込むように努力すべきであって、医師を僻地に置くことは非常に困難であるという観点。それから単独の医師の医療能力というものには、最近の非常な医学の進歩からいっても限界がある、したがって国民の要望する医療というものには相当総合的な医療が要求されるということで、むしろ親元病院の強化、これがただいまの解釈でございます。それでも不十分であるという反省から、われわれは、次の医療供給体制の充実のためには、もっと拠点的な中心病院に僻地診療部のような機構を設けて、これに思い切った国の助成措置を講ずるというふうなことによって、僻地に近い親元というところがもう医師の確保が困難になっているという現状から、もっと県、市の中央に近い大病院に僻地診療の部を設け、これが健康管理等を含めたかなり専門的な僻地医療に従事していける体制を検討したらどうかというのが、今後の計画として検討しているところでございます。
  167. 受田新吉

    ○受田委員 わかりました。これは推進をしてもらわなければいかぬ。つまり、十人でも二十人でもおるところへでも、医師の派遣ができるようなかっこうにしなければならぬ。日本のどこに住んでも、どんな職業を選んでおっても、できるだけ公平な国の愛の政治が行き届くようにしなければならぬという意味では、島であっても山奥であっても、そこにお医者がちゃんと愛の手を差し伸べて治療に来てくれるという、そういう行き届いた医療行政が要るのです。お医者さんのほうでも、都市へ行けば子供の勉強に都合がいい、機械などもあって医の研究にもなる、患者も多いから所得もふえるというような経済的な打算とか、いろいろな家庭の都合などで医師は都市都市へと集中する。そんなこととは別に、医は仁術なんだから、やはり十軒、二十軒の端の山奥にでも医師が適宜巡回する。また医師にかわる看護婦などを待遇をうんと引き上げる。モンゴルという国は、大医師が普通の医師、小医師というのが看護婦のことなんです。その医師にあらざる小医師をすみずみまで置いておるわけですが、看護婦さんが、ちょっとした間に合うようなところでは常駐している。いまあなたの申されるような、中心からエリア、地帯をどう利用するかということの中に、そのことを含めた研究が必要である。あるいは学校の養護教諭、これに看護的な任務を与えて、分校などではその付近の何十人かの家族を見てあげるとかいうふうな、そんな教育医療の両方を総合的にやって、どんな山奥にも、どんな島にも医の術が及ぶようにする、特に、山奥に住んでおれば生命を守ってくれる医師に恵まれない不幸がある。しかし、山奥に生まれたから山奥で死んでいくのだという、そういう郷土愛の人が日本には多いのです。そこに医師のあたたかい注射が待っておる、愛の投薬が待っておる、そういう政治を厚生大臣、よろしゅうございますね。ひとつこれに力を入れていただきたい。
  168. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 お述べになりましたように、国民医療の基本は、日本国民はどこに住んでおっても充実した医療の恩恵を受けられるような体制をつくることが私どものつとめだと考えておるわけでございます。そういう考え方から、厚生省は厚生省なりに、無医村地域対策なりそういうことをやってきたわけでございますが、まだまだ十分でない。そこで、思い切って先般、先ほど医務局長からも答弁いたしましたように、患者輸送車、そういったようなことで患者さんを運ぶということではなしに、国公立病院にある程度の医師の余裕を持ち、輪番的にそういう僻村を回って診察して歩く、診察していただく、こういうふうな仕組みを各町村ごとに具体的に思い切った財政投資もしながらやっていけるようにしたい、かように考えておりまして、来年度の予算編成に間に合うように目下その計画整備中でございますから、私どもとしては、この問題は国民医療の上からきわめて重要な、深刻な問題と受けとめて、今後とも全力を尽くして努力いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  169. 受田新吉

    ○受田委員 大臣の誠意よくわかります、ひとつこの点は、無医村解消という大国策を推進する根本にもなるわけだし、それから医師をある期間無理にでもそういうところへ優遇して配置しておくとか、こういういろいろな施策が生まれてくると思います。総合的な施策を講じていただきたい。  最後へ近づいてまいりましたが、私この機会に……。  医業類似行為というのがあるわけです。医業類似行為、あんま、はり、きゅう、柔道整復その他の療術行為をなさる方々のために法律ができておる。しかもこの医業類似行為をなさる方々は生涯その行為をしてもよろしいということになっておるのですが、これは医務局長はお医者さんでございますから、お医者さん以外の医業類似行為も理解はしておられるとは思うのです。医業に類似した行為をするという立場でございますが、しかし、これはすでに国民の中に長期にわたって定着しておる。昭和五年以来定着しておる。民間にもさっき申し上げた漢方医その他と相似通って根強い支持を受けておる治療です。効果もあがっておる。治療をしてはいかぬといっても、治療と同じ結果が出ておる。こういう医業類似行為というものがある。これはこの方々は生涯やれることになっておる。これはたまたま占領下に占領軍からな指示が出て、苦労して、一時やめなければならぬという期限つきのときがあったのだが、国会の意思でこれは生涯やってもよいという法律ができたわけです。  こうして真剣にいわゆる民間療術を続けてきた皆さんに対して、すでに国会も、四十九年までにこの新しい営業をどうするかについて答えを出せ、こういう法律ができたわけです。この法律をすなおに受けて、厚生省にその法律案を出してもらうべきではございますが、これはできるだけ早く準備せぬと間に合わぬ。もうまたこれの関係業者は年をとっている。占領下以来二十年も三十年も苦労を重ねて余命幾ばくもないという人もある。こういう方々のために国会は党派を越えてこの法律をつくった。そしてこの人々のために法律の文句も、非常に皆さんに対する愛情に富んだ内容を持って規定してあるわけでございますから、昨年、六十八国会で通ったこの法律趣旨にのっとって、政府はすみやかに準備をして、そうした長期にわたり国民の中に定着した――その中に間違ったものがあれば、間違っているのを拒否すればいいので、りっぱな成果をあげてきておる、無害ということが明白に出ているその業種に対しては、従来の形式を尊重した形で業務が継続できるような、そういう配慮をすべきだと思うのです。あまり医務局などがむずかしい議論をして考えるような問題じゃない。局長御自身が、漢方薬の効果を大いにたたえられ、そして、西洋医学の問題について、事実上投薬が多く、注射などどんどんやり過ぎるという現実の問題も肯定しておられる。それと同じように、民間の中に長期にわたって定着したこの療術業というものは、基準にはずれておるようなものは別ですが、筋が通って、国民の保健に貢献するという筋のものは、従来の形式を十分生かした形で、本人だけでなくして、あとに業務が継承されるような配慮をすべきだと私は思うのです。  この問題は、ちょうど厚生省設置法関係であるし、すでにこのために中央審議会ができておるのに、審議会の結論はなかなか出ないという情勢の中では、やはり政治的判断と、そして行政の軽妙な扱い方、国民の声というものを十分反映した答えが要ると思うのです。あまりむずかしく考える必要はない。大臣、これはあなたの決断でできる問題です。医務局長協力してくれると思うのです。非常に理解のある局長であるということをさっきから感じておった。局長さん、あなたは名局長さんです。ひとつ御答弁願いたいと思います。
  170. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 医業類似行為の業務内容及び業として行なうことができる者の免許資格等について、必要な措置を四十九年末を目途として講じなければならないというふうに四十七年六月の改正法によって定められておることを、十分承知いたしておるわけでございます。この問題につきましては、あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゆう、柔道整復等中央審議会というのがございまして、ここで昨年来すでに五回審議をいたしておりますし、四十八年度予算にも、医業類似行為の調査費三百五十万円がこの法令を受けまして予算化されておるわけでございます。つい最近も、特にこの取り扱いの促進方について大臣から御下命がございまして、われわれの局としても、審議会の審議の促進につきまして、ただいま四十九年目途というものと審議の促進ということとのかね合いを事務的に整理いたしまして、十分御審議願うと同時に、先生おっしゃるように、確かにある程度の決断と判断を必要とするという医療関係の各方面の御意見、またこの問題に対する一つのコンセンサスとまでいかないまでも、ある程度積極的な反対というようなものも現状ではあまりございませんので、そういう点を踏まえまして、わが国にふさわしいそういう問題の導入ということで努力いたしたい、こういうふうに考えております。
  171. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この問題につきましては、実は事務当局のほうでは、法律が四十九年末ということでございましたから、四十九末までに間に合うようにということで、必要な予算を計上し準備をしておったわけでございますが、この問題は、受田先生、非常に御熱心に御主張になっておられる問題であることを私も十分理解をしており、しかも国民大衆の中に定着しておる問題でありますので、法律に四十九年と書いてあるから四十九年まで待たなければならぬという性質のものでもあるまい、いいことならばさっそくやったらいいじゃないかということで、先般も医務局長に、計画を一年早めろ、したがって四十八年末までに成案を得るようにということにいたしてございます。国民大衆の中に定着しておる問題は一日も早く解決するという基本方針にのっとって、事務当局を督励して、本年末までに成案を得るよう努力いたす考えでございます。
  172. 受田新吉

    ○受田委員 大臣、非常に明快な答弁をいただきました。医務局長をはじめ、大臣の部下としてなかなかよい協力者があって、厚生省は各局長みんな名局長、いい役所であると思います。  最後に、私、この医学のことでちょっと気にかかることがあるのですが、大学では優秀なお医者さんを養成してもらいたい。そして、そのお医者さんは優秀な医療に当たってもらいたい。一方では、医は仁術という東洋の古来の道徳も、お医者さんに頭の奥のほうで考えていただく。こういうようなものが総合的に生きて日本の医療行政が進むことを私は祈っておるのですがね。その中で、文部省の課長さん、大学でりっぱなお医者さんが養成されるためには、いいかげんな大学教育ではできないわけですが、事実、国立、公立、私立と、私立にも十分手が行き届いておるのかどうか。私学は金がないからちょっと設備ができない、そこで父兄負担が多くなる。この問題はいつか文部大臣と論議したことがあるのですが、これを一緒に合わせて、医系の大学には特に国庫補助を大幅にするとかいうような努力を担当課長としてやっておられて、それでりっぱな医学者をつくるという基本方針を守り抜くことができるのかどうか、ちょっとあなたから御答弁願いたいのです。大学局長にかわって答弁してもらいたい。
  173. 齋藤諦淳

    齋藤説明員 医学教育において、倫理的なそういう教育で十分成果をあげるためには、特に大学生でもありますので、哲学とか倫理学とか、そういう教育をするだけでは必ずしも十分身につかない、専門家はこのようにいっております。そのためには、むしろできる限り少人数教育をすることによって人間的な教育をする必要がある、こういうことが絶えずいわれておるわけであります。そのために相当の経費もかかるわけであります。国立大学、公立大学、特に公立大学につきましては本年度から助成措置を講ずることにいたしております。私立大学につきましては経常費の二分の一までを補助することにいたしておりますが、これでも必ずしも十分ではない。しかもその積算にもいろいろ問題がある。こういうことでありまして、来年度以降予算編成にあたりまして十分配慮したい、こういう態度で臨んでおる次第でございます。
  174. 受田新吉

    ○受田委員 これは医務局長に伺いますが、私、非常に敬愛しているお医者さんで、東大の医科研付属病院長をしておった石橋幸雄博士が、いま京都でじん臓の臓器移植のセンターをつくっておられるわけですね。こうしたじん臓の臓器を移植してやるというのは国立でやってもらいたいと思うのですが、これを個人的な協力者のもとに自発的にいまやっておいでになるのです。これは御存じだと思うのです。こうした国家的な意義を持つ臓器移植センターのようなものに対しては政府に惜しみなく金を使う、そして命をかけて取り組もうとする優秀な医師、そうした利益無視で国民の生命を守る重大な仕事を担当される方々には、ひとつ研究費として思い切って国庫が助成する。あるいは、そういう研究所をつくる場合には国立のものにしてあげたいというような配慮をしてもらいたいと私は思うのですがね。いかがでしょう。
  175. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 具体的に石橋先生の例をあげてのことでございますので、それはそれなりにまた研究費という面で御要望があれば検討いたしたいと思います。私のほうでは、臓器移植の研究費は、特別研究費として大体八百万程度。四十八年度はまだどの程度これを内定するかきめておりませんが、ほぼ一千万程度を考えておりますけれども、これに石橋先生のほうの御要望と合いますれば、具体的には研究助成ができるものと考えております。ただ臓器移植の問題は、法制上の問題についても過去に医務局としては検討したことがございます。なかなか困難な問題でまだ結論を得ておりません。わが国では一番多い例は、腎臓が約二百例実際に行なわれております。角膜移植のアイバンク、目の関係法律もございますし、最も整備された状態でございますが、これとてもまだわれわれの対策としてはやや停滞したような状態にございまして、いま人体実験であるとか、あるいは具体的に医学等の研究、それから患者さんに対する理解、こういうものとの食い違いの問題等がかなり大きく取り上げられております。本来研究というものはやはり絶対必要でございます。しかし患者の理解のない研究は進めることはできません。しかしながら、このような臓器移植ということは非常に重要な問題でございますから、また関係者なりその専門家というものも少ない状態でございます。研究費等についても、特定な人には研究費が及びますように配慮してまいりたい、こういうふうに考えております。
  176. 受田新吉

    ○受田委員 これでおしまいにします。援護局長来ておられますね。この間、私ここで恩給法の関係のときに質問をして、その後えらい早く厚生省は結論を出しておられる問題があるのですが、中国に遺骨収集団を派遣する。山口政務次官みずからが出かけられるというのをきのうやら承ったのですが、日中国交回復の時点から一年近くなってきたこのときに、これをいち早くということを願っていたのが、この間質問してからほどない間に実を結ぶということを非常に私はうれしく思うのです。  この機会に、そうした地域に、少数の方々でなくして大量の方々の遺骨を収集するという意味の、次から次の派遣団が招かれるような外交もやってもらいたいし、現地に慰霊碑などを建てて、別に戦争を想起する意味じゃないのですから、この地に眠るわが祖国のみたまたちよ安らかに、という慰霊碑を建ててあげる。私はモンゴルを七年前に訪問して、御存じのように、モンゴルのウランバートルの郊外になくなられた六千何人かの英霊のお墓、そこへ、みたまよ安らかに眠れと書いておいたのですが、そういうことをひとつこの際、中国大陸でなくなった英霊たちよ安らかに眠れという真心を尽くして書いてもらいたい。そして次から次とそういう派遣ができるように。またこれは、中国大陸に限らず、南の海、南の大陸、悲劇の大東亜戦争。悲しい結果ではあったが、戦争の思い出という意味でなくして、母国のためになくなられた英霊を大事にするということは、私はこれは国家の責任だと思うのです。ひとつ、せっかく壮挙を断行されるに至った機会に、援護局長としても心づかいがあろうと思いまずし、大臣もひとつ今後、こうした人道的な問題も含めた戦争の終末をつける意味からも、全太平洋地域、全中国大陸、これをひとつしっかり守っていただきたい。  それから、ソ連、中国にはまだ未帰還者がおるということになっているのです。この未帰還者の現状というのは、いま数字の上で幾らか出ているわけですから、これに対する帰還促進が可能なのかどうかもあわせて御答弁を願いまして、二時間半にわたる長時間の質問のピリオドを打ちたいと思いますので、お答え願います。
  177. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 ただいま先生からお話のありました趣旨に沿いまして、最良の努力をいたします。この遺骨収集関係で、これまでの予算では一千万とか一千五百万程度の予算でございましたが、今年度初めて二億を上回る予算をいただきまして、さっそくただいま六十人近い政府派遣団をガダルカナル方面に派遣いたしておりますし、七月にはマリアナ方面、さらに十月、十一月にはフィリピンあるいは東部ニューギニア、こういった方面に遺骨収集団を出すことにいたしております。いずれにいたしましても、ただいまお話しになりましたような趣旨で最善の努力をいたします。  なお、中国の未帰還者につきましては、現在約二千九百名ばかりおられると把握いたしておりますが、これらの方々の帰還促進につきましても、中国大使館等を通じまして最善の努力を尽くしたい、かように考えております。
  178. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 戦争が済んですでに二十八年経過いたしておるにもかかわりませず、南海の孤島その他に眠っておられる方々をそのままに放置するということは、私ども許しがたいことでございまして、一柱でも多く故国に迎えるように努力することが、政府としては当然なすべきことであると考えております。今日も努力はいたしておりますが、今日だけの措置で完了するとも思えませんので、今後とも一そう力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  179. 受田新吉

    ○受田委員 誠意ある答弁と思いまして、質問を終わりますが、いまの未帰還者の帰還については、中国へ行かれた機会に、このたびの遺骨収集を通じて未帰還者の帰還をあわせてお願いするのか。あるいは外交的に厚生省と外務省と一緒になって帰還促進をなさるのか。これだけは大事な外交問題との関連がある。戦後二十八年、まだ祖国に帰らない方々が中国を中心に二千九百人もおいでてる。この方々が日中国交回復が実現しておるのにまだ帰ってこられないということについては問題があると思うので、すみやかに帰還促進ということをどういうかっこうでなさるのかを御答弁願いたいんです。
  180. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもが把握いたしております未帰還者の数は二千九百名、そのほかに自分の意思で残留していると思われる方が千名おられまして、全体で約四千名。その二千九百名の方の中で引き揚げを希望しておられる方が三百名程度おられるというふうに聞いております。そういった点も含めまして、政務次官も行かれることでございますので、現地の状況をよく聞き、日本に帰住の目的で帰国できなくても、墓参その他で一時的に帰国したい、里帰りしたいとかいった人たちにつきましても、それが実現するように、その実態をつかんだ上で予算措置を講じてまいりたい、かように考えております。
  181. 受田新吉

    ○受田委員 それじゃ質問を終わります。
  182. 三原朝雄

    三原委員長 次回は、来たる五日火曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十八分散会