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1973-05-10 第71回国会 衆議院 内閣委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年五月十日(木曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 三原 朝雄君    理事 奥田 敬和君 理事 加藤 陽三君    理事 笠岡  喬君 理事 中山 正暉君    理事 藤尾 正行君 理事 大出  俊君    理事 木原  実君 理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    伊能繁次郎君       越智 伊平君    大石 千八君       近藤 鉄雄君    旗野 進一君       林  大幹君    三塚  博君       村岡 兼造君    吉永 治市君       上原 康助君    和田 貞夫君       木下 元二君    山田 太郎君       折小野良一君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      坪川 信三君  出席政府委員         総理府総務副長         官      小宮山重四郎君         総理府恩給局長 平川 幸藏君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君         沖繩開発庁総務         局長      岡田 純夫君         沖繩開発庁振興         局長      渥美 謙二君         通商産業政務次         官       塩川正十郎君         通商産業大臣官         房長      和田 敏信君         通商産業省貿易         振興局長    増田  実君         通商産業省企業         局参事官    三枝 英夫君         通商産業省重工         業局長     山形 栄治君         通商産業省鉱山         石炭局長    外山  弘君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 佐伯 博蔵君         通商産業省公益         事業局長    井上  保君         労働省職業安定         局失業対策部長 桑原 敬一君  委員外出席者         厚生省援護局援         護課長     入江  慧君         建設省計画局技         術調査官    三浦 孝雄君         自治省行政局公         務員部福利課長 佐野 政一君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 五月九日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     稻葉  修君   近藤 鉄雄君     安倍晋太郎君   三塚  博君     安田 貴六君   吉永 治市君     佐々木秀世君 同日  辞任         補欠選任   安倍晋太郎君     近藤 鉄雄君   稻葉  修君     越智 伊平君   佐々木秀世君     吉永 治市君   安田 貴六君     三塚  博君 同月十日  辞任         補欠選任   竹中 修一君     村岡 兼造君   鈴切 康雄君     山田 太郎君   受田 新吉君     折小野良一君 同日  辞任         補欠選任   村岡 兼造君     竹中 修一君   山田 太郎君     鈴切 康雄君   折小野良一君     受田 新吉君     ————————————— 五月八日  国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣  提出第八一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二二号)  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  四一号)      ————◇—————
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  通商産業省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出かありますので、これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 この通産省設置法に関しましては、審議の過程でたいへん時間をいただきまして恐縮でございましたが、石炭の問題が、外局ができるということのために、所管の客観的に見たウエートが変わってくるというようなこと。それから長期石炭対策についての答申がございますが、この五次答申採炭量確保という問題。また、わがほう流に言えば、かって政府がたいへん政策の重点に置いた炭鉱また炭鉱労働者が、世の中の物価上昇の中でたいへんどうも賃金その他について悪い条件に置かれているというふうなことで、今回の提案理由の説明にもございますように、生産第一主義あるいは輸出第一主義といわれたものを、今回の機構改革の中で大きく転換をはかりたい、いわば福祉経済の方向に向けていきたいという意欲が実はある。こういうこととからみまして、石炭関係の問題についてはっきりした決着をここでつけておきたい。こういう、産炭地与野党議員皆さんなり、あるいは商工部会等方々の御意見もございまして、エネルギー総会対策という意味での討論もしなければならぬというようなことでございましたので時間をいただきましたが、どうやら採炭量確保等に関する法案衆参両院を通ったようでございます。火曜日に炭労なる労働組合も徹夜で交渉を朝までやりまして、何とか当面がまんのできる賃金の水準も出てきたようでございます。この間、主管庁通産省側からもたいへんな御協力をいただきまして、これについてお礼を申し上げておきたいと思うのでありますが、この石炭問題は、やがてそれほど遠い将来ではない時期に、エネルギー総合対策の面でもう一ぺん石炭を見直してみなければならぬ時期が来るのかもしれぬという気さえするのでありますから、そういう意味で、何とか五次答申なるものを踏まえてきめこまかな対策をぜひひとつ立てていただきたい、こう思うわけでありますが、最終的にここらについて大臣から御決意のほどをお述べ置きをいただきたいのであります。
  4. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 石炭問題の重要性につきましていろいろ御指摘、御指示を賜わりまして、まことにありがたく存ずる次第でございます。  政府とてたしましても 第五次答申の線に沿いまして、二千万トンを下らざる、この意味は二千万トン以上ということでございますが、その線を今後とも確保していくために、不退転の意味でいろいろ政策を強力に推進してまいるつもりでございます。  従来から石炭鉱業に対しましては、坑道の掘進、新鉱の開発、保安の確保等につきまして、補助金交付あるいは長期無利子の融資石炭供給体制整備につとめてまいりましたが、石炭鉱業資金、経理の改善をはかるため、累積債務の財政による肩がわり安定補給金交付等を行なってまいりました。今次の対策におきましては、各種助成措置におきまして、総額六百八十億円にのぼる第三次債務肩がわりの新たなる実施、それから坑内骨格構造整備拡充補助金補助率の四〇%から七〇%への大幅引き上げ、石炭鉱業合理化事業団による近代化資金融資率の五五%から七〇%への引き上げ、同事業団による運転資金融資制度新設等によりまして、その大幅な拡充を今回もはかったところでございます。これから政府といたしましては、労使一体政府一体となりまして、五十年度二千万トン以上の供給確保するように万全の努力を払う所存でございます。  なお、資源エネルギー庁石炭部というものができまして、格下げではないか、こういう御懸念もあると思いますが、資源エネルギー庁は、これは外局として長官を置く資源エネルギーを総括すべき中心センターになるわけでございまして、そのもとに石炭部が置かれるわけでございます。現在、鉱山石炭局の中に石炭部がございますけれども局長のもとにおける石炭部というものよりも、むしろ公益事業局も一緒に吸収した資源エネルギー庁石炭部というほうが、公益事業局を吸収いたしますということは、ある意味においては、電力やそのほかに対するにらみもさらにきくということでございまして、そういう意味において、石炭部となりましても、従来に比べて力が衰えるということはなく、むしろ強まるものであるとわれわれは考え、そのように実施していきたいと思うわけでございます。
  5. 大出俊

    大出委員 採炭量確保という問題は、いまに始まった問題ではないのでございますが、炭鉱経営それ自体に問題がありまして、端から廃鉱、廃山という形になってしまうというところに一番大きなネックがあったという気がするのでありますが、いまの御答弁の中に、そこらのことも含めてきめこまかく手当てをしていくのだ、こういう幅を広げたのだという御答弁が実はございましたから、ぜひひとつ、その線で全力をあげて手当てをしていただきますようにお願いをいたしまして、これは立場は違いますが、おのおの産炭地をかかえておられる方々にすれば大きな政治問題でもございますので、当然そういう要求が出てくることだろうと思います。ようやく大方の御賛同をいただきましたので、この法案に賛成できるという立場になりました。どうかひとつ、そういうことで前向きでお進めをいただきますように、お願いを申し上げておきたいと思います。  そこで、お忙しいところお出かけいただきまして恐縮なんでございますが、公取高橋委員長、お見えをいただきましたが、これは先月の二十三日に、私この席で中曽根通産大臣幾つかものを申し上げまして、特に商社の扱っております各種生活必需物資をめぐりましての大きな世論の波の中での政治課題といいますか、あわせて公正取引委員会皆さんにもお出かけいただきまして、幾つか私の所見も申し述べて、この際手を下すべきではないのか、手を組んでいたのではいけないのではないかという点をだいぶしつこく申し上げたのでありますが、このときの皆さんの御答弁は、疑わしきものが何がしかあるとしても立証できません、立証できないのでどうしても手を下しかねると、簡単にいえばそういう答弁でございました。しかしこれは日本でも、コングロマリットなどといわれるところまでいっているかどうかは別として、アメリカにも国際企業、多国籍企業があるわけでありますから、これを上院が取り上げて、私の知り合いであるチャーチ議員などが、調査委員会をつくった責任者委員長になって、議会が取り上げて調査になり、特にこれはITTなどの問題もございまして、特に世論がわいたわけでありますけれども、つまりこの中心的な課題は何かというと、私的独占禁止法という分野からどうこれを規制するかという論点でございます。  だとすると、私的独占禁止法の法文をながめてみましても、幾つかこれに該当すると思われるものはあるわけでございますから、当然、公正取引委員会が緻密な調査を始めてしかるべきである、むしろおそ過ぎるのだという意見を述べておきました。そうしたところが、翌日、高橋委員長のほうから、記者会見だったと思いますが、ある新聞取り上げ方からすると、疑わしき点があるから、立証をし得ない段階だけれども手を下したいのだ、調査をしたい、こういう意味の発表がございました。中曽根さんに質問をしたあと、私、農林大臣櫻内さんに質問をいたしまして、さらに経済企画庁長官小坂さんに質問をしたわけなんですけれども、ここで再度お出かけをいただいて、二十三日にいろいろやりとりを長時間にわたってしたのだけれども立証できないからと言っておられたあなた方が、高橋委員長の名をもって商社に対して、疑わしきものこれあり、立証できないが調査をしたいという言う方をされたが、たいへん私はけっこうなことだと思うのだが、と言って確かめてみましたところが、いや実はあれは新聞がかってに書いたのだ、わがほうの委員長はそう思っておりません、二十三日に答弁を申し上げたことを一歩も出ているわけじゃございません、こういう答弁が出てまいりました。私もいささかあきれたのであります。  そこで、また蒸し返したような議論になりましたが、けさの新聞等をながめてみる限りは、今度はどうやらやる気におなりになったのではないか。私はあのときに、これだけの法律をかかえていて、いろんな言い方はあるけれども、つまり姿勢の問題ではないのかということを言っておったのですが、どうやら少し前向きにお進めいただける感じがする。しかし、これはたいへんおそきに失したという気がするのでありますが、また新聞がかってに書いたんだとおっしゃるかもしれぬので、今度は全部の新聞が書いているのですけれども、それでも新聞がかってに書いたとおっしゃるかどうか。委員長じきじきお出かけいただいたというふうに申し上げたのですが、お見えをいただきましてたいへん感謝を申し上げますが、はっきりひとつ姿勢についてお答えをいただきたいと思います。
  6. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 せっかくのお呼びにかかわらず私がいままで参りませんで、たいへん申しわけなく思っております。  本日の新聞は、これは各紙とも大体同じような書き方をしておりますので、これは私が昨日、定例記者会見でありますが、申し述べたことをそのように取り上げたものと思います。私がしゃべりましたこととおおむね一致しております。少しはニュアンスの差がございますが……。  ただし、ここでお断わり申し上げますのは、たとえば先月の二十三日でございますか、新聞が、これはただ一つ新聞でありますが、トップ記事であります。今回問題になりましたいろいろな商品投機と称せられるもの、投機というか、買い占め、現に通っております買い占め法案関連をすると思われる品目についての調査、そういう問題ときのう私が申し上げたのとはちょっと話が違う。つまり二つあるわけでありまして、最初の点は、その商品投機と称せられるものについて商社側独占禁止法違反の疑いありやという問題でございまして、その点については、法律第四十条でいままでその端緒をつかむためにいろいろと努力して調査をしてまいりましたが、遺憾ながら直ちにいま独占禁止法に直接抵触するというふうな事態はなかなか端緒がつかみにくいということを申し上げておったのでありまして、したがいまして、あのときの新聞は、実は当方の意思には若干かかわりなく出てしまいまして、いわば新聞に載って、非常に他社記者からも、話が違うじゃないがという抗議を私は受けました。それはそうではないんだ、同じことをしゃべったはずだけれども、私がしゃべったんじゃない、私の部下の責任ある者が会見を申し込まれてしゃべったのが、実はちょっとひねられて出たというかっこうでございまして、見出しのほうと中身ともちょっと違うというふうに私は思います。  ですから、その点につきましては、現段階におきましても、なお私ども調査をゆるめておりません。そういう品目別の問題についても、たとえば木材についていわゆる買い占め売り惜しみの事実はないのかという点は、なお調査の手をゆるめておるわけではありません。いままでのところといえば、直接には、いわゆる不当な取引制限と思われる、つまり価格協定とか売り惜しみ協定とか、そういうふうなことをしている筋はどうもつかめないのであります。遺憾ながら私ども調査ではつかめない、こういうことを申し上げたわけであります。  ということとはまた別個に、商社活動全体として見ますと、明らかに一口に申しますれば、まあ行き過ぎと思われる面が多々ある。それはもうつとにいろいろな経済界の人からも指摘されておることでありまして、突き詰めて申しますれば、巨大化になって非常に力が強くなり過ぎる。これがいろいろな面で、たとえば外国におきましても、今回、羊毛の値段を、外地において、オーストラリアにおいて著しくつり上げた。これは明らかに日本商社、実は現地法人でございますが、これは同一体とみなすべきである。それから国内木材不足したというけれども、その輸入の過程においては、むしろ途中までは少なくなっておりまして、国内価格が上がってからにわかに買い付けを急ぐ。そういうことからアメリカ等木材を向こうで著しくつり上げてしまった。これは国際的なひんしゅくを買う問題ではないか。そういうことも一部の大きな業者、総合商社と称せられるものがそれに介入しておりまして、それらの行動が国際的な非難を浴びるということにもなるし、かねがねエコノミック・アニマルと称せられる日本経済活動に対する非難も、相当な分はそういった商社活動にあるのではないかということもあります。  しかし、これらは直接私どもがいま直ちに独禁法違反として取り上げるべき問題ではございませんが、そうなった、いままで巨大化して力が強くなり過ぎたということを探ってみますと、やはり金を大きく借りて他社の株式を保有する、そうして、これらとの支配関係とかあるいは関連、少なくとも事業上の関連を深めていく。そうして大きな集団となっていく。これはまあ言ってみれば、新聞にもありますように、小さな財閥復活を思わせるものがある。独占禁止法には、持株会社の設立は禁止するとありますけれども、これは主として、持株会社をやるのが、他の業を行なっているものがついでに持株業務をやっても、そのことだけではこれは触れないと書いてありますが、しかし気持ちの上では、多分にそれはひっかかるものがあるわけであります。ですから縦横十文字、あるいは産業界においても、流通経済だけではなくて、産業そのものについても非常に深入りしておる、それは一種の支配力を蓄えるものではないか。独占禁止法目的は、過度の事業支配は防止しなければならぬということをまず第一条の前提にうたっておるわけであります。  このいろいろな競争を行なう場合に、商社間の競争は、これはもう過当競争といっていいほどに思うのです。ですから、その点において競争しているかという点からいえば、これはもう十分競争しておる。しかしその競争が、いわゆる総合商社以外の普通の産業会社、あるいは商取引会社を含めまして、その中における公正かつ自由な競争というものに対して相当な阻害要因になっておるのではないか。支配力があまりに強くなり過ぎますと日本経済の足をひっぱることになるというふうな観点から、これはどうしても放置しておくものではない。そろそろこれらに適当なブレーキをかけてしかるべきではないか。非常に巨大化して、ほんとうの意味における財閥復活となるようなことになれば、これはそのときになっては手がおそいわけでございます。こうなるとまた非常に荒っぽい手段をとらなければならぬし、それにはいまの独禁法では不足でございます。ということも予想されますので、早い時期に、いまごろの段階から手を加えていくのが至当ではないか。こういう点から、商社の総合力、総合的な力というものについていろいろ調査をいたしました上で、それに対して現行の独禁法範囲でも、不公正と思われるようなことがあれば、ある程度それをチェックする、手をつけていくということが考えられる。そういう点でこれから十分な調査を行なっていきたい、こういう趣旨でございます。
  7. 大出俊

    大出委員 せっかくお出かけをいただきましたので、お話をいただいた真意についてはわかりました。  ただ、わからぬ点が幾つかございますから、分けて承ってまいりたいと思いますが、独禁法のたてまえからすると、たとえば三条なら三条というものに触れて、どういうワク組み企業を押えていかなければならぬかという側面があります。  ただ、一つだけ最初に承りたいのは、寡占価格なら寡占価格というものが構成をされる。はたしてこの公正取引委員会役割りとは何か。公正かつ自由な競争というのがたてまえですね。この目的に反する、たとえば独占価格ができ上がっている、あるいは寡占価格の形成が見られる、こういうことは公取の主要な任務の一つですから、押えていかなければならないことになる。  この場合に、独禁法違反かどうかという意味を厳密にとらえますと、そこに寡占価格がある、独占価格があるということでは、現在の公正取引委員会立場からすれば手を入れられない。つまり、独占価格寡占価格が構成されていても、それを構成するに至る過程メーカー間の協定があったという立証が行なえなければ公正取引委員会はものが言えない、こういうたてまえだというわけですね。  そうすると、現に寡占価格があり、独占価格が、あり、この間、私は一つ例をあげたのですが、例のカメラの東京のほめ合い会。カメラの新製品を持ってきて、各メーカーが集まって部品その他についていろいろなことを言い合う。あれだけのいいものをおつくりになったら、おたくは幾ら幾らじゃお売りにならぬでしょうなと言って始める。つまり言うならば、これは一つの形の変わった協定です。この間その話を例にとりましたら、おいでになった方が、いや実はあそこに手を入れたのは私ですという話になりましても、私もいささか認識不足だったわけですけれども、つまり、そういう確証を得なければものが言えないというシステムは、ひっくり返して言えば、公取というのは限られた範囲しか人がいないのですから、やみ協定あるいはやみカルテルみたいなものが幾つもあって、寡占価格とか独占価格が構成されていても、その事実をつかみそこなえば、寡占価格独占価格は平気で横行することになる。これはいたし方ないというお考えで事済むのですか。これは、公正取引委員会立証できなかっただけで、いまのほめ合い会ではありませんけれども、現にそういう事実がある、そして独占価格寡占価格ができている、だがしかし、公取はその独占価格寡占価格が形成される間のメーカー間の協定過程立証し得なかった、だからいたし方ございませんというのでは、これは私は抜本的に考え直さなければいかぬことになる、まずこう思っているのです。そこらのところは委員長はどうお考えになりますか。
  8. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 いまの、事実関係を私のほうの法律と結びつけなければならない、まさに仰せのとおりなんです。ですから私どもは、いわゆる寡占管理価格と称せられるもの、寡占対策をいまの法律のままでやるとすればどういう方策があり得るのか、いまの法律の中でそういうものをチェックするのに全く方策がないと言えるのか、この点についていま十分検討中でございます。  いまここで申し述べることはむずかしいのでございますが、しかしこれは、実は管理価格問題だけをとらえまして——管理価格というのはわかりやすく言えば、いまおっしゃられた、明らかに独占的な協定価格がある、寡占的な協定があるのにかかわらず証拠としては把握できない。これは、容易にわけのわからないような方法でやって、何一つ物的証拠が残っていなければ、たとえばこちらがそういうものを呼びまして、そういうことがあったでしょうと言っても絶対に供述しないわけです。相手証拠がないとわかっておれば、供述しなければいいわけです。たいへんどうもそういう点については、私ども独禁法が施行されてだいぶ長いこと取り締まりをやってまいりましたが、相手のほうもだんだんとりこうになりまして、ちょっとやそっとでは正直なことを言わないというようなことになっています。そういう点では私どもは、非常にいらだちを覚えると申しますか、焦燥感を持つことはたいへんなものなんでございます。  それに対してどういうふうな新しい手法を用いるべきかということになりますと、たとえば、証拠がなくても事実がある、繰り返してそういうふうな値上げが行なわれたり、それも一斉に値上げを行なったりという事実が、二年か三年に一ぺん必ず行なわれているというふうなことが過去何回も見られる場合に、一体これをどう見るか。それは現象だけで管理価格協定と認定してしまう、推定してしまうというふうにするかどうか。  これはいま、おかしなことですけれども、私どものやっているのは経済事件でございますから、言ってみれば、これに対する私どものほうの勧告とか審決ということは行政的な司法裁判であります。行政的な司法裁判の変形であると考えていいと思います。そうしますと、行政的な事件でありましても、やがては、向こうに不服があれば、証拠がないからという理由で上級裁判所に訴えていく。そうしますと、証拠がなければ疑わしきは罰せずということに実際になってしまう。ですから、普通の刑事事件におけるような、はっきりした物的証拠がないと負けてしまうというふうなことではなしに、もう少し実際上軽い証拠でもいいのではないかと私ども考えております。しかし、はたしてそれが認められるかどうかということは司法部内の問題になるわけですから、そういう点についてもよほど注意を払わなければ、具体的な事実でわれわれは負けてしまわなければならぬ。  そういうことになりますと、職員も鋭意努力をして調査をし審査をしたが、どれもこれもから振りであった、こうなっては困りますので、そういうことについては、こういうふうな証拠がある——私どもは軽々しくこういうことに触れたくありませんけれども、どうしても万やむを得ない、しかもそれの弊害が目に余るということであれば、最終的には法律に何らかの手直しを加えざるを得ないかと思います。  しかし、それをやる前に、まずいかに対処するかという方法論について、実は寡占対策として具体的にどういう点をどうチェックしたらいいか、まずどこに着眼してどこを押えるか。弊害と同時に弊害でない面もあるわけなんです。なまじこれは寡占である、寡占であるといわれるために、なかなか値上げがしにくいというふうな面もありますが、しかし、それはそれといたしまして、私どもは、何も価格規制そのものを目的としておるんじゃなくて、相互に事業者が協定を行なっていろいろとやることについてこれを排除するのが使命であると考えておりますので、そういう目的に対してどういうふうな有効な手段があるかということを考えている。これに対していまの法律でできるか、あるいはどうしてもできないか、できなければ何らかの手段を講ずる必要があるか、こういうことを含めて十分に検討をいたしておる次第であります。
  9. 大出俊

    大出委員 いまの問題にからみまして、これは、いまの高橋さんの答弁は、言ってみれば非常に古くてかつ新しい問題なんですね。いまに始まったことじゃない。  私は、かつて北島さんが公取委員長をおやりになっているときにこの問題を提起したことがある。当時チョコレートの問題がやかましい時期でございまして、ココアパウダーなる原料が半分くらいに下がった、大カンの自由化をしましたから。この時期にやたらチョコレートメーカーがものをつくったわけですけれども、当時、市販価格二十円で売っていたチョコレート。明治、森永、不二家、グリコなどという大手四社、五番目は長崎屋だ。ところが、二十円のチョコレートが六十個一つのボール箱に入っていまして、一ボール九百円。建て値というのですね。建て値九百円。だから、これは逆算をすると、二十円売りのチョコレート原価は十六円五十銭、利益は三円五十銭、つまり利益率に直して一割七分二厘。これを売っている小売り屋さんは二割三分から二割五分の税金がかかる、こういうふざけたことになっております。この間に還元リベートが三分から一割二分くらいある。リベートの問題が一つ、建て値という問題が一つ、これは一体何だ、公正取引委員会の分野ではないのか。建て値というその制度、これは何年たっても、どこもかしこも、四大メーカーは九百円、ずっと変わらない。これは一体何なのだと責めてみたことがある。いずれにしても、相手が大きいからということだが、大きいから済むという問題じゃない、これは。やはり情況証拠が明確ならば、それについて手が入れられるということになっていなければ、いまのように、うまくやったところは口をぬぐって知らぬ顔している。しっぽ出したところが公取につかまって手が入ってきて、下げなければ、変えなければならぬことになる。これではあまりといえば不公平な話で、消費者の立場からすればたまったものじゃない。  にもかかわらず、いまになってなおかつ、この問題は公正取引委員会立証できなければどうにもならぬ問題ですと言っているのでは、私は、公正取引委員会意味はない、あってもなくても一緒だということになる、極端にいえば。だから、これについては、情況証拠が明確ならば手が打てるところまで法律の手直しをしなければ私的独占禁止法というものがあっても意味がなくなってしまう。そこまで実はいわざるを得ぬ。十年来この問題を私は取り上げているのだけれども、ほっておけない問題だ。  ところが、いまなおかつ検討中だということに至っては、いずれにしても、まあ、高橋さんおやりになってまだわずかだから、高橋さんの責任だと言うわけではないが、責任継承の原則これありといわざるを得ぬわけでありまして、そういう意味で、なおかつ検討中という御答弁は、私はふに落ちぬわけです。納得いたしかねる。最後におつけ加えになった、何とかこれは手直ししなければならぬかもしれぬというところを手直しをする、そういう決意がここまで来れば必要だ、こういう気が私はするのですが、いかがでございますか。
  10. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 確かにこれは古くて新しい問題といいますか、公正取引委員会管理価格という問題を言い出したのは昭和三十八年ころで、これはアメリカで起こったことがそのまま日本に入ってきた。この点は、管理価格について各国の制度もしっかり私どもは検討している。検討中ということについては、何年も同じことを言っているじゃないかと言われるが、私は、いいかげんなつもりでなしに、何とかこの辺ではっきりさせなければいかぬ。はっきりさせるということは、何らかの規制手段を打ち出す必要があるのではなかろうかというふうに思います。そういう点から、その場しのぎのことばとしてではなくて、現に私どもの内部で、まあ事実をお調べいただけばわかるわけでありますが、営々としてやっておるわけであります。  ですから、どういう角度からこういう問題を取り上げるか。寡占のあり方とか管理価格のあり方についても、実は一様ではないのです。一様ではないところに深い問題がある。いろいろ例がございますが、非常に困りますのは、寡占の度合いが非常に進みまして、そして独占というものにひとしいような場合がございます。現にそれは競争の結果なんですから、しかたがないといえばいえるのですけれども、それが困るのです。  というのは、だんだんにシェアが拡大する側の企業は、むしろコストが人件費増なども吸収してなおかつ低下することもある。ところが、シェアがダウンしていく、そのあおりを食ってシェアを食われていくほうの分は、コストが上がってしまう。だから赤字になってしまう。全く同じ価格で売っているものが、一方では相当な大きな利益を出し、一方では他社は赤字であるというふうな場合、これをいかに規制するか。法律は別としまして、規制の方法がむずかしいわけです。  この場合、一律で価格の引き上げを押えているというだけでは対策にならない。また、差別的に価格を認めるということも、どちらを高くしてもこれはむずかしい。赤字の会社のほうを高くするということは、言ってみれば、売れない商品のほうを値段をつり上げることになる。これでは消費者がたまらない。逆に、むしろ売れているほうの値を引き上げさせたほうが競争上はいいのかもしれませんが、はたしてそういうことがまかり通るか。同じような商品であるが、ブランドに対するイメージがまるで違うということから、いつの間にかそういうイメージがっくり上げられてしまう。そうしますと、そちらのほうに高い値段で売るようにということをかりにさせることができたとしましても、これははなはだしく不合理じゃないか。そうすると、ますます品物に差があるのだということをイメージを確認したような形になるということもございます。そこで、いま価格の面で申しますと、私どもは価格そのものを直接扱っている責任官庁ではありませんけれども関連は大いにございます。そうすると、同じ物については大体同じ価格が自然に形成されるというのが避けがたいわけですね。チョコレートの例を引かれましたが、よほど品物が違えば別ですが、そうでなければ、大体他社の価格を見て自社の価格をきめる。そうでなければ競争になりませんから、そういう傾向はございます。そういう価格と価格が自然に同一価格になってしまうということと、協定があるかどうかという問題これに対してどういう手を打つかという問題たいへんかね合いがむずかしい問題ですから、むずかしいからほうっておくのかというと、そうはいかないだろうということですね。一方でどんどん自然に優良なほうのシェアがますます拡大して、最後にはほんとうの意味の独占になってしまって、他社はほとんどみな脱落してしまう、こういうことは、独占禁止法のたてまえからいっても、そういうものを防止するということが必要なんだという認識があるはずでございますから、そういう前提がある限りこれは自由にはいかない。  どういう手段をもってそれに対処するかというのが、いま私どもは研究しているわけです。いままで長年、職員が苦労しましてまとめたいろいろな管理価格に対する調査がございます。いまはその調査段階ではなく、そういう調査でいかに対処をするかということを調べている、検討しておる、こういう段階でございますので、いま直ちに法律がどうのこうのというのは、私としてはまた、責任ある立場として軽々しく申すことはできませんので、その点はよろしく御了承願いまして、しばらく私どもの検討のあり方を見ていただきたいと思います。
  11. 大出俊

    大出委員 この国会、この委員会で私、四回目の質問になるんですけれども、初めて高橋さんから、確かに寡占価格なり独占価格が存在をする、その過程立証ができなければ、法律上のたてまえは手の打ちようがない、だから法廷維持ができなくなる、やってしまっても。それに対しては、したがってそれでいいというのではなくて、前向きで検討はしているので何らかの手を打ちたい、何とか何らかの手直しが必要だと思う、これははっきりした御答弁でございますから、ようやくそこまでの御答弁が出てきたわけですけれども、私は、いまの最後のつけ加えられたお話の中には、いささかもって納得しがたい点がある。  なぜかというと、いまの最後の話は、そう違ったものをつくっているわけではない、たとえばチョコレートにしても、市販二十円のチョコレートなら建て値九百円に並んでしまうという場合もあり得る。いわゆるこれはプライスリーダーシップというやつですよ。カラーテレビのときにたいへん大きな騒ぎが起こった。ところが、しきりと当時唱えられたメーカー側の主張は、いまのお話と全く一致している。同じような基礎でつくってくるんだからそう違うはずがない、一つの大きなシェアを持っている企業が価格をきめると、右へならえ、みんなでならってしまってこういうことになるんです、同じ価格になるんです。いわゆるプライスリーダーシップというのはその辺から生まれてくる。  ただ私、いましゃべっていながら思い出したんですが、関東学院大学においでになる大門さんは、もと公正取引委員会におられた方ですけれども、この方が、カラーテレビのときにものを書いておられましたが、プライスリーダーシップなる理論がまかり通ったとすれば公取は要らない、寡占価格なり独占価格なりが形成されるということを押えるきめ手がなくなってしまう、当時こう言っておられる。けだし私はそのとおりだと思うのです、そう言ってしまえば。だから、公取の目の届かぬところで、同業同種の企業なのですから、何らかの顔を合わせる場所があるはずであります。そこでこのくらいだということになったとすれば立証できない。それを称してプライスリーダーシップなんだという言い方をしてしまえば、大門さんの説のとおりになってしまう。それが困る。だから、そこまで掘り下げて、どうするかということでなければならぬはずだと私は実はこの点は思っている。だから、そこらのところをもう少し突っ込んで、公取委員会のお立場でどうするかというところまでいかなければならぬ筋合いだ、こう思うのですが、いかがでございますか。
  12. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 いまおっしゃられた、管理価格がすべていわゆるプライスリーダーシップによるものかどうかはちょっと問題があるわけです。このごろ外国で使われていることばに意識的な平行行為ということがございます。コンシャスパラレリズムといいますか、これは、だれがリーダーということはないけれども、お互いに横をにらんで、暗黙のうちに一つ協定価格みたいなものをやるということがある、これが寡占の場合には多い。しかし、寡占でなくて、一部に比較的大きなシェアを持っているリーダーがおりまして、それに群小のものがたくさん続いている場合には、その大手一社の行動が他に波及する、これを私どもはプライスリーダーと言っておるわけでございます。  先ほども申しました意識的な平行行為というものについて、私どもは価格の面からこれを取り上げなければならない。だけれども、いわゆる寡占の中のそういう管理価格と申しましても、先ほども申しました、繰り返すようでありますが、価格対策だけではうまくいかないものもあるのではないか、それにはどういう手段が適切であろうか。それはまたやはり、社会的に現段階で受け入れられるものでなければなりません。私ども考えておりますのは、あまりにも独占禁止法をやたらに強くするだけが能じゃない、そういうことをやることが経済のプラスになるかマイナスになるかはよく判断しなければならない。私どもは、常に外から見た公取というものに対して、自分としてはその中に没入してしまうと、とかく独占禁止法を非常に大きなよりどころにしてしまって、ほかのことを忘れがちである、そういう感覚になりたくない、なるべく客観的に見て、公取はいかにあるべきか、独占禁止法はどう運用されるべきかということも考えながらこれらの問題を処理していきたい、だからそういう点を考えなければならない。ただ単に一つの現象をとらえて、いいか悪いか、それが客観的に見て許さるべからざることである、相当な規制を受けてしかるべきことであるとみながら考える、そういうふうな点まで考えながら検討しておるというわけでございますので、よろしくお願いいたします。
  13. 大出俊

    大出委員 時あたかも十大商社、といっても日綿一つだけ抜けているわけでありますが、大手九社の三月期決算が明らかになったという時期に、高橋委員長ものを言われておる。つまりきのうの記者会見だったと思うのですが。このことは、決算結果が出なくたって予測は全部あったわけですから、わかっていたことであろうと思うのであります。  特にいま木材を取り上げてものを言っておられましたが、私はかって、公取の方にそこに来ていただいて、木材の問題を幾つか指摘をしたことがあるのですけれども、これは実は昭和四十五年ころからなのです、調べてみると。インドネシアの東カリマンタンに東カリマンタン森林開発株式会社という会社を、南方材の一つの大手の安宅産業がつくったのは昭和四十五年です。これに七億ばかり金を入れて、その国の認可を得た会社をつくった。また日商岩井なんかも南方材を多くやっておりますが、パンインドネシア・インダストリーなんという会社をつくっている。この会社は何をやっている会社かといえば、商社が森林を買ってしまっているわけです。まさに東カリマンタン森林開発株式会社の名のとおり、森林を買って木を切るというその会社に現地人を雇って、木を切って運搬をして船積みをする、こういう会社です。だから、東カリマンタンで木を切れば、これが大阪の影浦なら影浦の木材港にどのくらいの期間かかって着くかというのは、もう長い実績ですから見当がついている。そういう状態です。  私は林野庁の福田長官に、昨年の十一月に、商社買い占めではないかと言ったら、そんな大出さん、木材なんて大きなものは倉庫にとても入らない、買い占めようがないはずです。そういうのんきなことを言っていたって、森林を買っちゃっているわけですから、それを一カ月、切って船積みして大阪に輸送するのをおくらせれば、五割五分をこえてしまっている外材のシェアですから、当然国内の材木の価格は上がるに違いない。そのことは、何も安宅産業のみならず、日商岩井にしても、その他の材木を扱う商社にしても、同じようにおくらしている。同じようにおくらしているという状況証拠が明確に出ているのに、だから国内材の価格がはね上がるのはわかっているのに——これを共同行動だと書いているものもある。これは皆さんだってごらんになっていると思うけれども総合商社年鑑というのを経済新報が出しております。あれをずっとお調べになればわかりますけれども、共同行動だという形が出てきている。そういう状況証拠があるのに、これに手も足も出ないというので、こんなに値段が上がって、結果的に新聞に、安宅産業なんていうのは三七三という、前期に比べて倍どころじゃないのです。たいへんなべらぼうな利益があがっているのに、その結果を見て、しかも私的独占禁止法の条文に基づく調査ではない、聞き取りの形で協力を求めるという形で調査をするなどということでいいのかどうかという点、私はせっかくここで、前向きに公取委員長がみずからはっきりものを言っていただいたことにはたいへん共感を持つわけですけれども、何と言われてもどうも納得できない点がある。結果的に木材でこれだけもうかったということは、これはどこの新聞もみな書いている。このことはわかっていた。にもかかわらず、いまになってなおかつ、たいへんどうも消極的なものの言い方になっておるというのは一体どういうわけか。たとえば私的独占禁止法三条というものがある。ここらあたりを、十大商社を例にとれば、九割をこえるシェアを持っているわけですから、一体どう考えたらいいかという点、どうお考えになりますか。
  14. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 木材についていろいろ問題がありますが、これは一口に言えば、木材の場合だけは全部の商社に共通することですが、商社のリスクで輸入を行なっているわけです。ですから、いまの安宅産業の例はいろいろ現地で伐採をおくらせるという問題、これは私どもどもはようつかみません。どのくらい毎月輸入したか、どれだけ販売したか、最後はどうなっているかという点を調査しております。そういう点からいって、一応輸入して到着した段階において、商社が買い手と契約する例になっておるわけです。契約はそれから起こる。輸入の契約というものは一般的に、直接自分でやっているものもありましょうけれども、そういうのはむしろ一部でありまして、外地で、アメリカあるいはソ連等で原木を契約するわけです。原木を契約した段階においてまだ値上がりしていない。それが日本に到着してみたら、そのときはわかっているわけですが、日本の中の原木の値段も上がっておる。それは初めは製材から起こったわけです。これは私ども調査の一端を申し上げるわけですが、製材の値段が八月ごろから動き出してきている。ところが原木は十一月になって動き出したわけです。そういう事実があります。ところが、その後の輸入の情勢というものは、特に減ってもいないし、昨年の暦年で申しますと、全般の輸入スペースは若干低かったのではないかと思います。これは低くするような見通しであったようです、どういうわけか知りませんが。どうも需要の盛り上がりを考えない。  これはすべての点で、見通しが誤っているのは何もその点だけじゃありませんで、私どもは、不況カルテルのほうでさんざんおしかりを受けたように、見通しを誤っておるわけです。そんなに爆発的にいろいろな需要が飛び出してくるとは思わなかった。木材などは明らかに、実際の需要が次々と盛り上がってきて急激にふえてきた。それが製材から原木、丸太に及んだ。買い付けたものが入ってきておる価格を見ますと、安い価格で入っておるわけです。それが二月ごろになりますと、だいぶ輸入価格が高くなってきたのです。しかし、高くなるに従いまして売り値が上がってくる。だから、安いときよりも高くなったときのほうが、さやがはるかに大きい。極端な場合には、米ツガの例でいえば、一万数千円だったものが二万円をこえたら、今度はさらに売り値のほうではその上に五千五百円積む。かつてはとんとんであったということなんですよ。全くとんとんであるし、四十六年の暦年をとりますと、むしろ逆ざやであった。これは自分のリスクでもって仕入れているものですから、場合によっては、売るときになると買い手が少なければ、値下がりしてしまいます。そういうふうに逆ざやであった時期もある。そういうときと比べるとたいへんな増が生じて、木材による利益が非常に目立つ。ほかのものは大体においては委託販売が多い。だから、リスクを負わないかわりに、もうけもそれほどべらぼうに上がらない。木材は特に目立ったわけでございます。  そういうので、外地で契約した時期に対して、到着時においては値段は同じでございます。輸入価格は上がっていないのだけれども、売るほうの値段はどんどん上がってきたというのでぼろい利益が出た、こういうことでありますが、それはそれといたしまして、いまのこれからの調査方法について、せっかくやるのに手ぬるいじゃないかとおっしゃられましたが、私どもは、商社については今度の調査はだいぶおつき合い願っております。いろいろな点で四十条によっていろいろなデータを出してもらっておりますが、いまさら私ども、もう感じから申しまして、全体のワク、価格の面でのワク、たとえばどれだけ株を持っているかというふうなこと、それからどのような金を借りておるかというようなことは、実はデータとしてはすでにあるわけでございます。有価証券報告書もございますし、その他の資料によってもすでにわかっておる。ですから、その中で内訳はどうだということを数字の上でとる分については、別に四十条というようなことを言わなくても、大体とれるのではないか。御協力願えるでしょう。商社の方も、これだけ批判を強く受けておられますから、いまさら協力しないとは言わないということで、あえてこの際商社の方にも——ただ、私どもはまるで検察庁が被告を調べるような形ではなしに、実態をお互いによく調べ合ってやっていただいて、どうすればいいかというようなことについても、商社側意見も十分聞きたい。そういうことでございますから、いきなり四十条で罰則つきの権限を突きつけるというよりは、協力を願うという姿勢のほうが万事うまくいくのじゃないか。しかし、必要とあれば四十条でいつでも、相手が応じない場合、協力しない場合には書面を出して、いつまでに提出してくださいということはできるわけです。  そういう意味でございますから、何ら意識的に手ぬるい調査をするということはございません。ただ、かなりの日数を要するということはやむを得ません、商社の構造があまりにも複雑でございますから。さしあたり対象としては六社程度を考えざるを得ない。十社全部に及んでいくよりも、典型的な上位六社くらいを対象に考えていけばいいのではないか、こう思っております。決して手ぬるい措置をとっているということはございませんから、御了承願いたいと思います。
  15. 大出俊

    大出委員 私どもは政治の場に籍があるわけでありますから、そういうものの見方、考え方をするのですが、与党、野党うんぬんではなくて、商社投機行為などというものは、やはり国民の皆さんの政治不信につながっているわけでありますから、それだけに、この際き然とした態度というものが、将来に向かって——こんなにたいへんな木材の利益があげられたということも、あるいは株の操作に基づく株式利益などというものも、広い目で見て国民各層がそれだけ大きな負担をさせられているわけであります。銀行ローンその他でやっとこさっとこ自分のうちを建てたという方も、当初の見積もりから比べると、三割も四割も、ときには七割も高いということでうちを建てているわけでありますから、その個人の支出はつまり不当な支出なんです。これが今回の商社利益になってあらわれているわけです。  過去のことはしかたがないという形になるのかどうかということについても、きょうの投書欄を見ると、土地の問題その他建物の問題に触れておりますが、政府には頼まない、われわれでやろうじゃないか、あばれ込んでも何してもやろうじゃないか、そういうのまで新聞が取り上げる世の中なんですね。そうだとすると、これはきちっとものを言って、きちっとやってもらうということでないと納得できない問題が出てくる。四十六条で検査、調査という権限がおありになるのだから。そうならば、商社をただす意味で、過去についてものが言えないなら、そういう態度できちっとやっていただかないと、国民の側から見れば、公取とか何か知らないけれども、適当に聞いて調査するのではないか、何をやっているのだということになりかねない。  そういう点が、あなた方のほうも、今日の世論というものもお考えをいただいて進めていただきたいものだという気がしたので、さっきのようなことを申し上げたのですけれども、いまのお話で、世論もかくのごとき状況にあるから、四十六条などを持ち出さないでも、商社の側で、公取がものを言えば、出すものは逃げずに出すだろう、こう言うのですけれども、これは中曽根さんのところでお調べになったのだと聞いたわけですが、検査、調査の権限がないとおっしゃる。たまたま食管法だけは、廃止するという雰囲気が多分にありましたが、残っていたから十三条に基づく強制調査ができるということ。ならば公取も、そこにある条文なんだから、なぜおやりにならないのかという疑問を持ちますので、その点を確かめたいわけなんですけれども、それで万全な調査がおできになる確信がおありなんですな。
  16. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 たとえば一つ商社をとらえて、その商社活動をすみからすみまで全部掘り下げる、こうなるとたいへんなことなんです。その必要はない。それは、われわれのほうが目的とするのは、巨大化によってそれが他の事業に対する支配力を隠然と強化しているのではないか。それはこまかい点でいえば、これこれの点を規制すればよろしいのだ、そういう目的を持ちまして、独占禁止法の発動の能力の中で規制し得るものをまず考える。それはまだきまっておりません。きまっておりませんが、それにふさわしいだけの資料を集める。資料だけではありませんで、その実態を調査するということでございますから、多少の日数はかかりますが、そういうある特色を浮き彫りにするというためには万全の措置をとるということでございますので、その点はおまかせを願いたいと思います。
  17. 大出俊

    大出委員 先ほど、調査の一端だということでお話ございました。これは木材の例でいえば、福田林野庁長官ども、全くもって将来の展望、方向感覚なしに林野行政をやったのではないのか、そうおっしゃられてもいたしかたない、見通しを誤りましたと、率直なお話でございました。だがそれだけでは済まない。たとえばいま、発注があって委託買いをする、ところが木材はみずからのリスクでおやりになった、こういうお話なんだが、そこに資金的な余裕がなければできない。  そこで、これは通産省の統計なんですけれども、貿易業態統計表というのがある。これを見ると、昭和四十一年、一円の資本に対して千六百六十四・九円、これは借り入れ金です。千六百六十四倍なんですが、これが四十六年に二千三百五十九・四、これは学者がおあげになっている数字ですが、貿易業態統計を見てみたら、なるほどそうで、これは通産省の資料なんです。そうするといろいろな理由があります。ありますが、相当豊富な資金ができた、これだけは間違いない。だから相当な独自こ買い付けもできる、売り控えもできる、結果的にはこういうことになっている。きわめて単純に言えば。だから、そこらのところもはっきりしてきているわけですから、そこらまで含めて公正取引委員会立場でどうするか。言うなれば、総合商社といわれるだけに、多峡にわたり生産段階にまで大きな支配力を持ってしまう。コングロマリットなどということばが出ておりますけれども、だとすれば、そこまで公取が、記者会見委員長がものおっしゃったわけでございますから、国民の立場に立って相当な期待をしたいと思うのですけれども、どの程度の期待をしてよろしゅうございますか。
  18. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私ども総合商社の行動全体について直接規制するという立場にはない。ある程度企業活動というのは自由でなければならないと思います。統制経済をたてまえとすれば別ですけれども、自由な経済というたてまえのもとでございまして、私どもはそれがいいと考えておりますので、必要な限度において、悪い方向に走っていくのをチェックするということでございます。  ただし、いまの調査そのものについては相当な決意で取りかかりたい。そうでなければ、新聞記者会見で私が、あれほど大きく書かれるとは実は思っていなかったのですけれども、たまたまほかにあまり記事がなかったから大きく出たのかもしれませんけれども、それは別といたしまして、私どもは、いま御指摘になったような、特に借り入れ金ですね。借り入れ金は、これは何かほかの委員会ですか、出ておりますが、有価証券報告書のほうから見ましても、たいへんな金額でございます。私どもからいいますと、地方銀行を二つぐらい重ねたものを一社が借りておる、こういうような現状で資本金はあまり大きくない、そんなことが堂々といつまでもさらに拡大しながらまかり通っていいんだろうか。なぜそういうところにだけ、いろいろな国民の預金が集積されたものがどんどん貸し出されていくのか。一方にはそのとばっちりで十分な借り入れを受けられない。  これは銀行行政の問題でありますから、直ちに貸し出しの面から云々ということではありませんけれども資金調達の面から、何ゆえにそれだけの資金を必要とするのか、調達した資金を何に使っているのかということをやはり調べる。これも目的の中の大きな一つの項目でございますから、そういう点からいいましても、商社が行き過ぎではないかと私ども申しました中に、言ってみれば、ごく平たく言うと、なぜ小さな資本金で、よそならばとうてい借りられないような借り入れができるかという仕組み、これはいままでそれでまかり通ってきたんだけれども、そのあり方がどこまでも続いていくのでは困るのではないか。そしてまた、それがさらに、国民経済の中のシェア、全体としての企業集団としてのシェアがますます拡大されていく、いずれかの集団のもとに入らなければ活動もできないということになったのでは困るのだ、こういう見地でございますから、商社の持っている資金調達力というものに十分着目してまいりたいと思います。
  19. 大出俊

    大出委員 最後ですが、私もいろんな角度から調べてみましたが、たとえば大豆の例をとりましても、これは三菱商事が二一・四%の輸入シェアを持っている。三井物産が一二・一%。だから、三菱、三井、住友という旧財閥系は入っておりませんが、二社だけで九割からの輸入ですけれども、三三・五%を握っている。それだけじゃないのです。なお徹底していることは、三菱商事を例にあげますと、販売先は全部系列グループになっている。具体的な名前をあげてしまいますが、たとえば、横浜にございます横浜油脂、あるいはリノール油脂、あるいは日清製油、みんな三菱商事の完全な資本系です。そうすると、圧倒的なシェアを持っていて、輸入してきたやつを落とす場所は全部ある。そこまでのことになるということには、私は非常に大きな危惧を感ずる。明確な市場支配になる。だから、つり上げなんということはできませんけれども、やる気になれば相当なことができる仕組みにすでになっている。そういうふうに仕組まれている。まさにしかけができている。  かと思いますと、飼料だって、私どものところに電報が殺到して、高くてどうにもならぬという。調べていると、コーンとマイロ。マイロというのは、御存じのとおりコウリャンの一種ですけれども。三菱と三井、この二つで、コーンのほうが二九・一%、マイロのほが三五%、これだけ握っている。そうすると、異常な飼料の値上がりと、この大きなシェアを押えているものとの関係がないはずはない。これは当然なことであります。小麦なんかでも、三井、三菱の二つでまず二一%、丸紅と伊藤忠で一五・六%。だから上位四社で三六%、現実はこうなっている。ブロイラーなんか調べてみると、三井が、四十五年からでございますが、四十五年ですでに年間生産羽数、一羽、二羽といいますから羽数ですが、六千万羽、全国出荷の二一%を握っている。これに丸紅と三菱が続いている。  ここまで来ると、これはやはり、いまお話がちょっとありましたけれども公正取引委員会一体何をしているんだという世論というものがある。だから、記事がないからあんなに大きく書いたんだろう。こうおっしゃるけれども、記事がないのではない。公正取引委員会高橋委員長になって、まず田中総理と相談されたんでしょうけれども、びしっとおやりになった前例があるので、期待たいへん大なるものがあった。だが、世の中こういう大騒ぎになっているのに、どうもさっぱり出てこぬじゃないか、何をやっているんだというところに、委員長が前向きでずばっとおっしゃったから、これこれというので、記者方々が鉛筆を減らして書いたということだと思います。  だから、そういう意味で私は、どこまで期待ができますかという聞き方を、たいへん御無礼な聞き方だけれども、したわけでありますが、こういう形になっていることは、もう調査されて御存じのはずでございますから、結果的に出てきたものが、脱兎のごとく始まったはずですけれども処女のごとく終わったということになりますと、またまた世論が、政府公取はもう頼まないということになってきますから、その辺のところは、いまお話しになりました方向でひとつしかと万全の調査をしていただいて、なるほどそうか、けしからぬということに世論がなって、その意味で、おっしゃる意味の、法の手直しだ云々だという前にものごとを平常に復するということになれば……。ただし木材なんか見ますと、えらい高値で定着している。まさにそれだけの作用をすでにやってしまった。やってしまったあとで公取皆さんがそういう言い方をされるところに、なお大きな不満が残りますけれども、ひとつその辺の御決意のほどをもう一ぺん念のために承っておきたい。
  20. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 いわゆる買い占め等の問題につきましては、新たに法律が提案されて御審議をお願いしておる最中でありますから、それはそれなりの別途の法律が必要であるということは、私どもはかねがね申しておったわけであります。そういうものを直接取り締まるだけの適切な権限は私どもにはない。しかし、独占禁止法違反の疑いがあれば、それはそれに対応した処置をとります。その問題については実はうまいネタが出てこないものですから、公取は何をしているんだというふうに非難を受けておりまして、これは私どもは、そういう非難も、事実そういう感情としてはしかたないのであります。ただ、事実は事実でございますから、私は、あえて権限をはるかに越えた行動に出ることは慎みたいと思っただけであります。  しかし、今回の総合商社調査というものは、いいかげんな気持ちでやるのではなくて、これは別途にいわば日本経済の構造的な問題として取り上げたい。非常に何か話がでかく聞かれるおそれがありますから恐縮でありますが、一時的な問題じゃないんだ、もっと長く長期的に展望しましても、これは放置できないんだという感じであります。ただ、いかにこれをチェックするかという問題は別個に考えるとして、まず実態を把握するということでございますから、そういう点ではできるだけのことをやっていきたい、かように考えます。
  21. 大出俊

    大出委員 中曽根さん、ひとつ、むずかしい問題でございますが、それは百も承知なんですが、先般一ぺん大臣に承った二十三日の件もございます。この輸入商品と申しますものは、月報などもあるわけでございまして、もう少しその気になっていただければ、行くえがわからぬわけでもないわけでありますから、そういう意味でひとつ、公取がせっかくそこまでの調査をなさるというわけでございますので。さっきの資金の問題なんかでも、貿易実態統計というのは通産省の資料でございます。どうかひとつ、確かに強制的な権限が通産省にございませんけれども、この行政指導という面では大きなお力をお持ちなんですから、公取のそういう姿勢とともにお考えいただきまして、国民が納得する方向に行政面で推し進めをいただきたい。お願いをしておきたいと思います。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今後とも公取とも連絡をとりまして、物価の安定、国民福祉の向上に商社活動が役立つように懸命に努力をいたしてまいるつもりでございます。
  23. 大出俊

    大出委員 どうも高橋さんありがとうございました。  坪川さん、お待たせして申しわけないのですが、沖繩の海洋博の問題は、ほかならぬ通産省が所管の官庁でございまして、実は私のところにもいろいろな意見が現地からも、また他のほうからも来ております。そこで、先般、坪川さんが沖繩の視察にお見えになったのはいつでございましたか。
  24. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 たしか三月の二十四、二十五、二十六と記憶いたしております。
  25. 大出俊

    大出委員 このときに、沖繩開発庁の長官がほかならぬ大臣でございますから、たくさんの現地の陳情その他もこれあり、海洋博協会、正式には博覧会協会ですか、大浜さんがやっておられる。ここらあたりからの事情をお聞きになったようでありますが、これは五十年というのだけれども、ちょっと五十年というわけにはまいらぬ、一年延期をせざるを得ぬかもしらぬということを、公式におっしゃったわけじゃないが、そういうことをちらっと非公式な場でおっしゃったという。だから公式に言ったというのじゃないのですよ。非公式な場でぐちが出たかもしれないと思うのですが。それは開発庁長官なんだから、いまの四面楚歌、たいへんぐあいの悪い沖繩の現地の状況から見て、これは延期をせざるを得ないのかもしらぬという空気が多分にあるのとあわせて、延期してもらいたいという意見も現地では多分にある。ここらをまず、長官行ってごらんになって、あっちもこっちも八方ふさがりのところをおながめになって、あとから中身を申しますけれども長官の何となくしゃべったのをここに書いておりますけれども一体どういうふうにお感じになりますか。
  26. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 いまお話しになりました、公式でなくして非公式に、そうした問題に対する消極的な、一年延期すべきではなかろうかというお話があったと思います。これは、おことばを返すようなことでございますが、非公式であれ公式であれ、私は沖繩の海洋博を延期するなどということの気持ちはみじんもございませんし、非公式に私はそんなことを語ったことは決してございません。神明に誓ってこれは皆さんに申し上げておきたい。何らかのあれではなかろうかと想像するのでございますが、一方の、なさんがための一つ目的のために、えさに使われたのじゃないか、こういうふうな気持ちがいたしておりますほど、私は海洋博の推進には非常に積極的な熱意を燃やしておりまして、これは沖繩の開発のための一つの起爆剤になることである、またこれが沖繩開発の跳躍台になるのであろう、こういうふうな信念を持ち続けておるのであります。  したがって私は、沖繩担当の開発長官といたしまして、いわゆる海洋博のために沖繩の振興、経済開発計画というものが阻害される、デメリットがそこに集中されるということを一番憂えておりまして、あくまでも、いわゆる祭典のための開発ではなくして、開発のための祭典としてのりっぱな国家的な、世界的な一つの催しであるというような観点で推進いたしておりまして、過般の沖繩若夏国体にも参りまして、知事あるいは関係市町村等の各位にも夜お会いをいたしまして、屋良知事も、私がちょっと心配いたしました若夏国体が、想像以上に成果をおさめ、そうして沖繩と本土とが一体となって、若人の方々を中心とした、ほんとうに沖繩県民のバイタリティーここにありということを示されたあの若夏国体に深い感動を持っておって、知事に対しましても励ましを申しましたが、知事もそのときも、これを一つの大きい跳躍台として海洋博に取り組みますから御安心願いたい、私もぜひそうあってほしいということを強く激励もし、また高く今度の国体を評価いたしながら、政府といたしましても、この問題についてはいささかの動揺もなく不動の体制でおるから、中曽根担当大臣もその意気であり、近いうちにはぜひ見たいとも言っておられるのだからひとつというようなことで、長い答弁になりますけれども、施設部会、物価部会に対しましても、積極的なる指導体制を整えておりますので、これはひとつ御理解を願いたい、こう思っております。
  27. 大出俊

    大出委員 先ほどの問題で時間をとりましたから、中心点を四つ、五つ承っておきたいのでありますが、まず、いま天地神命に誓ってなどと、熊野神社に誓詞を奉納したときにそういうことを言うのでありますが、そう天地神命に誓われなくてもいいので、あとからぼつぼつ承りますけれども、まず中曽根さんが担当大臣ですから承りたいのであります。  正式の名称は海洋博覧会協会ですか、この中身というのは、ずいぶんたくさん通産省方々がおいでになる。部長級以上九人のうち、通産官僚は事務総長の越智さんはじめ四人、課長さん以上で三十一人のうち十人が通産省、こういうわけでありますから、まさに通産省がやっているような感じのする中身でございます。  そこでまず、土地の問題は、ずいぶんこれは土地をつり上げた結果になったという気がするのでありますが、現在、買収予定地などをどのくらい消化をされて、残り三%という話が出ておりますけれども、大体どういう見通しをおつけになっておられるのかという点。  それから道路も、実は私も沖繩には何べんとなく行っておりますので、地域事情をよく知っている一人でございますけれども、これもまた、たとえば沖繩本島内で最も交通渋滞の激しいところというのは、つまり海洋博の客を輸送するところになりますけれども、那覇−嘉手納間、ここはたいへんな交通渋滞。今日でもそうでありますが、ここらのところを含めまして、米軍基地との関係も大きくございます。どんなふうな話に今日進んでいるわけでございますか。  それからまた、沖繩の海洋博をやるにあたっての人の問題。順調にものごとが進んでいくのには人員を確保しなければなりません。そこらの問題は一体どういうふうに進んでいるのかという点。ここらのところを、まずどの程度まで、どう把握をわれわれがすればいいのかという実情をひとつお話をいただきたいと思います。
  28. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体いま第二次マスタープランを策定中でございまして、総事業量からすると、いろいろなものを含めまして二千億円程度の総事業量になり、五万人くらいの人間を必要とする、そういう荒い、大ざっぱな計画をまず立てまして、それを一々具体的に需要を満たすために、具体的な計画をさらに策定しておるところでございます。また推進しておるところでございます。具体的な点につきましては、政府委員から御答弁申し上げます。
  29. 三枝英夫

    ○三枝政府委員 お答え申し上げます。  まず最初の御質問でございますが、会場用地の取得状況でございますが、これは会場用地に関しましては、海洋博協会の要請を受けまして県が取得に当たっておる、この範囲通産省の仕事としてやっておるわけでございまして、地主数全体といたしまして三百七十二件でございますが、現在契約率は九六%にまで進んでございます。未契約が十数件ございます。これは主として、その会場用地の地元の方も若干ございますけれども、外の方あるいは不在地主というような方もございまして、この辺の方々との最終の折衝をいま県として鋭意やっていただいておるということでございます。実際上の工事はこの夏場以降の開始という予定でございますので、それまでにはそれを完了させたいということで、鋭意県に要請している次第でございます。  那覇−嘉手納間の道路の問題につきましては建設省から、労務者対策確保の問題につきましては海洋博推進対策本部の施設部会でお取りまとめいただいております。沖繩開発庁のほうからお答えがあるかと思います。
  30. 三浦孝雄

    ○三浦説明員 道路につきましてお答えを申し上げます。  お話がございましたのは国道五十八号でございますが、この国道五十八号につきましては拡幅すべき区間も多いわけでございますが、拡幅以外にいわゆる局部改良も含めまして全般的に改良整備をする予定でございます。四十七年度からこの拡幅工事に一部着手いたしておりますけれども、実際の作業は設計、測量が四十七年度中心でございまして、現在、全区間でこの設計がほご完了いたしました。一部、局部改良をいたすべきところにつきましては、すでに着工いたしておるところもございますが、一般的な拡幅につきましては未着工でございます。しかし、おおむね準備ができましたので、今月には着工したいということで準備を進めているわけであります。  用地問題でございますが、これはこの間ずっと交渉を進めてまいりました。現時点で全面的な解決はまだ不十分でございますけれども、用地が解決しました区間から実際に着工ができるという見通しを持っておるものでございます。  簡単でございますが御説明といたします。
  31. 渥美謙二

    ○渥美政府委員 労務の点でございますけれども、私ども推進本部の関連施設部会におきまして、労務、いろいろな建設資材、この辺の需給の見通しと、それをどういうふうに供給してまいるかという対策を検討中でございまして、一応先般まとめたものがございますが、これは海洋博関連事業ということだけではございませんで、四十八年度の沖繩県における一般の公共投資、それから民間投資、そういうものをあげて推定をしたわけでございます。その過程におきまして、大体、労務者は全体の事業につきまして五万人くらい必要ではないか、そのくらいの見通しを立てております。これの供給をどうするか、こういうことでございますが、いろいろな数字がございますが、四十七年度で建設関係で四万人前後の労務者が使われている、こういう実績がございます。不足のものにつきましては、さらに県内で現在なお活用すべき労働力がございますし、不足分につきましては他府県の協力を得て、労働省が中心になって潤滑な供給をはかってまいりたい、かような方針で考えております。
  32. 大出俊

    大出委員 私がこれに触れた理由の一つに、幾つか理由があるのですが、いま最後の答弁にございました人の問題ですね。五万人、こういうのですが、まああとから四万二千人なお県で調達をする、こういうのですけれども、これは一説には、各都道府県の安定所等をフル回転させる。万博方式ですね、そうなると。人を集めたいという計画があってどうも表に出てくる。これもどうもむちゃな話なんです。千キロから離れているところでありますから、万博のようなわけに簡単にいくかどうかという問題がある。そこらのところは、ほんとうにそういうことをおやりになるのかどうかという点。  それからもう一つ。旧来、復帰前に、パイン畑であるとか、あるいはその他の畑等で外国人労働者を使っている前例がある。突貫工事をするという意味ではその必要があるのだという、現地の関係者のほうのものの考え方が徐々に表に出てきている。そうなると、これは復帰をしたのですから、これは入管法その他の関係も出てくる。労務提供という形で外国人労務者を入れてくるということは、そう簡単にできる筋合いのものではないはずであります。まずそこら一体どう考えておられるのか。よしんば特例法でもおつくりになるというならば、これは事、重大でございまして、一つの前例になってしまう、そう考えざるを得ない。そうすると法務省、労働省等々関係がございますが、そこらのところは、私は先々のたいへん大きな心配をいたしますので、いまから、考えがあるならある、ないならないと、これははっきりしておいていただきませんと、あとでまた物議をかもすことになる。そういう意味で、まずここいらのところをひとつはっきりしていただきたい。いかがでございますか。
  33. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 海洋博の労務対策の問題でございますけれども、先ほど御答弁ございましたように、海洋博を含めまして、沖繩関係工事で必要量は大体五万人となっております。建設関係にお働きになっておる方が四万ちょっとだというふうに私ども掌握いたしております。  私ども、原則といたしましては、先ほどのお話にございましたように、沖繩には安定所その他に求職者がたくさんおられるわけでございます。こういう方々に職業訓練を実施いたしまして、できるだけ県内の労働力の有効活用をする。それによってできるだけ完全雇用に持っていくというような政策目的を持っておりますので、そういうことで進めてまいりたいと思います。  それから五万人の中には、先ほどお話がございましたように、海洋博関連工事の全部ではございませんが、一部になるわけでございますけれども、しかし、もし万一いろいろな需給の調整をいたしましても足りない場合には、この沖繩海洋博というのはやはり国家的な意義の深い仕事でございますので、全国的にもちろん労務需給は逼迫いたしておりますから、そう簡単にはまいりませんけれども、大阪の万博の例にならいまして、できるだけ、また技能労働力が現地にないわけでございますから、そういう面の御協力をぜひ各県にお願いしたい。そういうことで一応の目標数等も示しまして、各県に御協力を求めることにいたしたい、こういうふうに考えております。  なお、外人労働力の問題につきましては、四十八年度を初年度といたします雇用対策基本計画というものを労働省で策定いたしておりますが、一月三十日に閣議決定をいただきました場合に、外人労働力の問題につきまして、わが国の現在の雇用状況から見て、当面やらないというような方針を立てて御了解いただいております。その考えでこの沖繩問題についても対処いたしたい、こういうふうに考えております。
  34. 大出俊

    大出委員 そうすると、まず一つは、建設労働者の実態調査報告なんというのを各県からおとりになる計画ですか。そしていまのお話のように、国家的事業だから協力をしろという呼びかけをして、技能労働者その他を中心にして沖繩に送り込みたい、こういうわけですか。
  35. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 各県に協力を求めることにいたしたいと思いますが、その場合には、相手が人間でございますから、あくまでも正確な数字に基づかなければならない。したがって八月以降、入札が行なわれまして具体的な職種別の必要数が出てまいりますので、そういうものと供給能力というものを十分詰め合わせまして、慎重な検討をした上で各県にいろいろと指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  36. 大出俊

    大出委員 そうすると、これはまた、その面からくる本土その他における、いまでもずいぶん、人が足らないという面の、中小零細企業を含めて困難がございますが、まだまだ海洋博にたいへんな建設労働者が必要であるということでそれに拍車をかける。これは大阪の万博のときにも、私、横浜ですからなおのことですが、万博に基づく嘆きがあり過ぎたわけです、物は高くなる、人はいなくなる、どうにもならぬという。土地なんかでも、建設予定地という声が出なかったときは、三・三平方メートル当たり十セントですから、三十六円。この土地がいま幾らかといいますと、ここに具体的なものがございますけれども、何と三・三平米三十六円の土地が現在二万五千円から三万六千円にはね上がっているのですよ。土地の価格が千倍をこえている。坪当たり三十六円のが何と二万五千円から三万六千円、千倍を越えているところへもってきて、各県から、いまお話をだんだん聞いてみると、この八月ごろまでに建設労務者実態報告書というのをあなたのほうはやっぱり出されるというのですね。そうして需給状況その他をながめて各県に協力を求める、つまり集めてもらうというわけでしょう。そうすると、四万二千ぐらいしか現にないということになると、それだけでも八千人からの人間がいま本土から海を渡って向こうに抜けてくる。そういうことまでしなければいけないのかという気がする。  いまあなたは、そんなのんきなことを言っているけれども従来の慣行があって、サトウキビ刈りだ云々だということになると、台湾や韓国から出かせぎ労働者が海を渡ってきた。その先例がある。相当な数に達していた時代もある。入管法で、労働のための入国は、国内の失業者をふやさない云々ということも含めて認めていない。現地の関係方々の中には、特例法をつくってでも労働力の不足をまかなわなければ五十年ということにはならぬという、皆さんの側に相当深刻な意見がある。もしそういうことにまでなると、これは非常に大きな問題をあとに残すことになる。土地は上がり過ぎる、物価は上がり過ぎる、人は足らなくなる、こういうところへもってきて外国人労働者まで入れてくるということになると、これはたいへんな政治問題といわざるを得なくなる。私はどうもそういうことに進んでいきそうな気がするのでありますけれども、ここに通産大臣、開発庁長官おいでになるのですけれども、ここらのところをしかとそういうことはないと言い切れますか。
  37. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 沖繩におきましては、特に物価の問題と労働の問題が確かに心配でございます。しかし政府といたしましては、あらゆる手を講じまして、全力を注いで目的どおり達成する考え方でございます。さきに開発庁長官が行きましたが、私も、できるだけ早期に現地へ参りまして督励していきたいと思っております。
  38. 大出俊

    大出委員 私きょうは、先々のことがありますので、そこだけ念を押しておきたいという気持ちでものを申し上げたんで、こまかい中身もございますけれども、時間の関係もございますから、確信を持っておいでになるということですから、その確信がおくみにならぬようにひとつ……。  私は、そこまでしなければならぬのかという気が痛切にするんです、正直に言って。そんなにまで無理をして、そっちこっちに、それこそ万博のときのような騒ぎを起こしてまでという気がする。まあ私どもの党のほうも、最終的にいろいろ検討している時期でございますからこれ以上申し上げませんけれども、いまの確信があって党内でということでございますから、そういうことでひとつ当面お進めおき願いたいと思います。  それからもう一つ、別な問題がございますが、承っておきたいのは、原子力発電が非常に大きな日程にのぼってまいりました。昨日も科学技術特別委員会で、原子炉安全審査会に属する学者の方々なり在野の学者の方々なりをお集めなさって議論をなさっているわけでございますが、資源エネルギー庁ができるこの時期に、実は、原発、つまり原子力発電問題をめぐりまして、これまた将来の問題がございますので、幾つか念のために承っておきたいことがあります。  そこで、東海村の二号炉の問題をめぐりましておのおの審査結果が出たわけであります。この問題をめぐっていろいろな現地の動きがございまして、安全性という問題などを含めてやはり相当な反対の運動も続いている、こういうわけでございますが、まず、その原子力発電というものはいま何カ所ぐらいになっておりますか。だんだん承りたいんですが、とりあえずお答えをいただきたいんです。
  39. 井上保

    ○井上政府委員 現在稼働いたしておりますものは五基でございまして、キロワットで約百八十万キロワットでございます。
  40. 大出俊

    大出委員 この茨城県の東海村の第二号の発電所が出力にして百十万キロワットですね。最大でございましょうな、これは。これを含めて五基だ、こういうお話でございますが、これが一体これからどういうふうに進められてまいるということになるのか。この際、将来展望と申しますか、そこらをまずお述べをいただきたいわけであります。
  41. 井上保

    ○井上政府委員 先ほど申し上げましたように、現在稼働中のものは五基、百八十万キロワットでございますが、現在、建設計画中のものがたくさんございます。十数基ございまして千数百万キロワットの計画でございますが、先ほど先生御指摘の東海村はいま建設中でございまして、先ほどお答えしました五基のうちには入っていないわけでございます。現在、電気事業関係の許可、認可の一部が終わりまして、建設に入る段階でございます。
  42. 大出俊

    大出委員 委員長も時間を気にされておるようでございますから、これも何点か聞いてあとに譲りたいのでありますが、だがしかし、実はこれはたいへん大きな問題があるように思います。何よりも必要なことは、現地の皆さんに安心をしてもらえるかどうかという点なんでございまして、またこの辺についての対策がたいへんにおくれているような気がする。金もかけていないような気がする。もう少し国がそういう点についての先行投資をする必要があるのではないかという感じが実はする。  きのうの科学技術特別委員会のやりとりを聞いておりましても、安全審査会その他に籍のある方々はだいじょうぶだと言う。ところが在野の学者の方々は、異口同音に反対論を唱える。これは明確な対立であります。なぜ一体同じ学者間でかくのごとく大きな対立を招来をするのかという点、ここをまずあなた方は一体どうお考えになっているのかということ。  それからもう一つ、現地の茨城県あたりの県の予算その他をながめましても、わずかに三十万円だとか、その方面の予算というものはそのくらいしか組まれていない。汚染観測車などというものを最近現地の県が調達しております。これなど調べてみましても、七十万円ばかりかけてやっと観測車を用意した。しかしそれを運営していく金をこれから捻出しなければならぬ。それがないから、観測車は買ったけれども観測に入れない、実はこういう情けない話であります。どうもそこらが行政という面で見てどうなのか。  これだけ学者間に大きな対立が出てきたりしているのだから、現地の方が心配するのはあたりまえであります。在野の専門的な学者が心配の声をあげている。安全だ安全だといいながら汚染対策というものがなっていない。別な面では、事故があったらどうするかということまで相当深刻に心配されている。そうなれば、現地の方々が心配をするのはあたりまえであります。そこらあたり、どうしてもう少し金をかけてやらないのか。県が貧乏財政でこういう苦労をしているのに、いいと言ったり、特段の手をお打ちになっていないのはどういうわけなのか、さっぱりわからぬのですが、そこらもあわせてお伺いいたしたい。
  43. 井上保

    ○井上政府委員 原子炉の安全審査の問題でございますが、これは先生御承知のとおり、科学技術庁、通産省、特に科学技術庁の原子力委員会に安全専門審査会がございまして、そこへ日本で一番権威ある先生にお集まり願いまして、そこで審査していただきまして、そこの答申に基づきまして電気事業関係の認可をやっていくということでございますし、それからまた、関係の地元の同意その他の問題につきましては、電源開発調整審議会に各省集まりまして、安全性その他の問題を検討いたしまして、なお地元の知事の御意見を伺いまして、その御同意を得て電気事業関係の許認可に入る、こういう体制をとっておるわけでございます。東海村の場合もそういうことで進んでまいっております。  それから地元の対策の問題でございますが、これも先生御承知のとおり、東海村のあの地域につきましては、茨城県を中心といたしまして、これははっきり記憶しておりませんが、約二十五億程度の金をかけまして地帯整備を事前にやっておりまして、実はそれを一つのモデルにいたしまして、今度、発電用施設の周辺地域整備法案というものを今国会に御提案いたしておるわけでございます。そういうことで進めてまいっております。
  44. 大出俊

    大出委員 あまりよく聞こえないのですけれども委員長が時間を気にしておりますからあれですが、なぜこういうふうに在野の学者たちの間で意見が分かれるのかということについて、はっきりした御答弁がないように思います。よけいなことはいいですから、どういうふうにそこをお考えなのかという点。きのうのやりとりをここであらためて再現はいたしませんが、どうしてこれだけ違うのか。若狭湾の大飯だって、何の心配もないと言う学者がおるかと思えば、これは安全審査会の側におる方ですが、そうでない方々は、そう言ったって長い目で見た場合に、明らかに放射能をかぶっておると言う。あるいは汚染処理等の問題をめぐって、それでも安全だと言い切れるか、そんなことはないという言い方の学者がおいでになる。はっきり対立をしておる。だとすると、これはいかに行政の側でも、万々安全で間違いないんだと言い切れぬわけであります。英国のウインズケールの例の事故もございます。原子力潜水艦の問題がありましたので私も何度か質問を重ねてきておりますから、ここで多くを言いません。あらためて申し上げませんけれども、つまり万々安全だといって地元を説得し得ていないならば、それに対する措置があっていいはずである。にもかかわらず国が金をかけようとしないのはどういうわけだろう。原子力発電を考えるならば、その場合に先行投資をして、地元の方々に、なるほどこれならばというところまで、なぜおやりになろうとしないのか。これはたいへん大きな社会問題だろうと思うので、そこらのところを承りたい、こう申し上げたのですけれども、これも何かぼそぼそと言っておられたが、さっぱりわからぬ。  それからもう一つ廃棄物の処理という問題ですが、東海村の例をあげれば、ドラムかんに入れて保管しておくだけでしょう。そうでしょう。さっきのお話では、将来に向かって原発をどんどんやっていくんだというわけですから、そうすると至るところドラムかんの山になるだけですな。これは国際的に見て完全な処理方法が出てきてはいない。だから一生懸命廃棄物をドラムかんに入れて置いておく。汚水をいろいろ処理する方の着物についた、放射能をかぶったのがそのまま歩いているなんて書いた新聞の記事まで東海村の場合にはある。そうしたら、中には、放射能は少しぐらいあったほうがいいんだという人が出てきた。これはずいぶんふざけた話でね。それは確かに天然の放射能はありますよ。だから地元の人の手紙によると、地元へ行って聞いてみてもだいじょうぶだというんだが、しかし片っ方に事故があった場合はとかなんとかいろいろ書いてある。だから、これは長い目で見れば、奇形児ができるのか何ができるのかわからないということになっている。そのままに捨ておくという手はない。  そうすると、廃棄物の処理というものは一体どういう方向でいくのかという点を明確にしなければならぬ。それは、三千メートル、四千メートルの日本海溝だとかタスカロラ海淵に沈めろなんていう意見もあるけれども、保管しておくだけで一体どうするつもりなんですか。そこらのところの明確な判断もなければ将来展望もないままに、しきりに許可をして進めていくという姿勢である。通産省は、将来の電力といいエネルギーの不足という面からここでどんどんやっていくんですと言うだけで、何ら手を打たない。それで済むものではないと思うので、私は時間がないのでまとめて言っているのですが、一体どう考えているのか、はっきりしていただきたい。
  45. 井上保

    ○井上政府委員 放射能の影響につきましては、先生御指摘のとおり、学者間にいろいろ意見がありますが、政府といたしましては、その間の意見をいろいろ聞きまして、特に放射能が、全然ゼロではないわけでございますけれども、天然の放射能等に比べまして放射能の量が非常に少ないということで、これは安全であるという結論に従いましていま話を進めているわけでございます。ただ、放射能はやはりできる限り少ないほうがベターでございまして、これは世界のいろんな基準がございますが、その基準よりもさらに低くなるように、でき得る限り低くするように、いろんな措置を関係の業界に指示しまして、実際は許容限度よりはるかに低いものを維持しておるというようなことでございますが、そういうことで実際の影響はない、こういうふうに考えて電気事業法の許可をいたしているわけでございます。  それから先行投資の問題でございますが、そういうことでございますので、先行投資といたしましては、先ほど申し上げましたように、東海村につきましては、いろいろ道路をつくったりあるいは森をつくったりというようなことで二十五億程度の金をかけてそういう地帯整備をやってきております。その他の地区につきましては、今後はそういうことで、周辺地帯整備というようなことも考えまして、監視施設等も大いにつくっていくということで前向きに進めていきたいということでございます。  それから廃棄物の問題でございます。おっしゃるとおり、現在まだドラムかんに詰めて置いてあるわけでございますが、変な言い方でございますが、そういうスペースはまだ相当ございますし、なお科学技術庁その他で、海洋投棄をするとか、あるいは陸上でどう処理するかという今後の方針につきましては、鋭意検討いたしておる最中でありまして、その結論に従いまして処置をしていくということに相なるかと思いますが、いまのところはスペースに置いておるというのが現状でございます。
  46. 大出俊

    大出委員 あなたが言っているのは宙に浮いているんじゃないですかね。ドラムかんに詰めて置いてあります、その置くスペースはまだございますという。あなた、これからどんどん進めていこうというのに、スペースがあるからいいといって、そこらじゅうスペースにしておいて、廃棄物はみんなドラムかんに詰めて保管しておくということになったら、海洋投棄するといったって日本だけで海洋投棄できない。船に載せて持っていって捨てるといったって、これは国際的な騒ぎになっちゃうでしょう。そうなれば、そこらのところも皆さんの側で詰めなければ、それはいつになったって地元が納得しない。年百年じゅうそういうトラブルが起こっている。じゃあ大臣、これを政治的にどう判断するのか。どんどん進めていけということだけで、地域に起こっているいろんな問題はしょうがない、そういうわけにはいかぬですよ、これは。これは大臣どうお考えになりますか。
  47. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 学者間の意見の相違は、私の乏しい知識で考えたところによりますと、大体、危険論をおっしゃっているのは物理学者が多いようです。藤本教授以下大体物理系統に属する方です。それから科学技術庁系統の中にはもちろん物理学者もおりますけれども、工学系統あるいは化学系統のわりあい実際エンジニアリングをやっていらっしゃる方が多いようでございます。それで私の考えでは、物理学者は非常におもんばかりが深くて、いろいろあらゆる場合について心配をなさる。ところがエンジニアリングの関係の方は、そういう実際のプルーブンといいますか、ためされた結果に基づいて安全性があれば、人間の社会においてはそれは許容限度として認めるべきである、そういうある程度の確率論を根拠にして安全性というものを考えておるのではないかと思うのです。やはり人間社会においては、ためされた確実性ということをたよるということによってものを進めていかない限り、あまりあらゆる場合について心配論ばかりしておると文明は進まない、そういうことにもなり得るわけであります。その辺の見解の差がああいうところへ出てきているんだと、非常に大ざっぱな議論で恐縮でございますが、そういうことだと私は思っております。  しかし、この両論ともわれわれとしては傾聴しておかなければならぬ議論でありまして、やはりいろいろ長い期間を考えたおもんばかりということも考えなきゃなりません。たとえば炉から出てくる低レベルの放射能の問題というものも、原子力発電ができてからまだ十年かその程度のものでありますから、それが幾世代にわたってどういう影響が出てくるかというようなことは、まだ証明されたことでもないわけであります。でありますから、周到な用意を持って着々とそういう対策を積み重ねていく必要はあると思うのであります。現在の原子力行政が万全であるとは思いません。次々にやはり考え得る対策を確立しつつ進めていくという嫌虚な態度でこの問題を進めていくべきだと思います。  それから、ウエーストデスポーザルの問題につきましては、これはおっしゃるとおり、なかなか国際的な関連もございます。東海村等、あるいは原子力発電会社等にあるもの等は、われわれが炉心を見にいったときにはいたスリッパのビニールの袋とか、あるいはそういうところで使ったちり紙とか、そういうものまで全部一応詰めて、そして保管してあるために、ドラム管が数としては非常に多くなっておるわけです。しかし、これらをそのままにいつまでも放置していいという問題ではございませんので、いまから、これらの問題をどう科学的に処理していくか、これは真剣に検討しなければならぬことでございまして、科学技術庁においてもやってもらっておるところでございます。われわれとしても、関連庁といたしまして、その点はできるだけ早期にこれの解決策を進めていくようにしていきたいと思います。
  48. 大出俊

    大出委員 結局、大臣が言っているのは、とりあえず科学技術庁関係の学者は、この実験の結果に基づいて許容量を認めていくんだ、がしかし、物理学者系統の方々が言っていることも、遠い将来に向かっての実験データがあるわけではないんだから慎重にと、どっちがどうなんだかさっぱりわからないですがね。断わって言っておられるから、それ以上詰めません、時間もございませんから。  しかし、現に現地で住民の皆さんのたいへん大きな心配がある、これだけは事実であります。近代文明がいろいろなしわ寄せを人体に与えていることもまた事実であります。だとすれば、やはりどれだけ注意をしてものごとを検討してみても悪いということにはならぬ。だとすれば、そこらのところをとらえて、やはりたくさんの住民の皆さんが大きな心配をしているという現実に立ってものごとの処理に当たるということが必要だろうという気がする。これも時間の関係がございますから、一応の答弁をいただきましたので、機会をあらためてひとつ科学技術特別委員会等で承りたいと思うのです。  最後に、兵器輸出、武器輸出という問題で、具体的な問題幾つかございますので、はっきりひとつ承っておきたいのであります。  いま通産省でとっておられます武器輸出、兵器輸出の原則、法的な面を含めまして、何べんか私も質問をいたしましたが、あらためてひとつお述べをまずいただきたいわけであります。
  49. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 お答え申し上げます。  わが国からの武器の輸出につきましては、これは国際紛争を助長するようなことは厳に避けるべきでございますので、政府といたしましては、従来から武器輸出三原則を設けまして、非常に慎重な態度でこれに対処しておるわけでございます。御存じだと思いますけれども、武器輸出三原則といいますのは、次の三つの場合には原則として輸出をしないということでございまして、一つは共産圏諸国向けの場合、二番目は国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合、三番目は国際紛争の当事国またはそのおそれのある国向けの場合、以上の三つでございまして、具体的には輸出貿易管理令の運用でこれを運用していく次第でございます。
  50. 大出俊

    大出委員 そうしますと、これは言うならば政策ですね。政策的にこういうところには輸出をしない、こういうことでございますな。
  51. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 これはもちろん政策でございますけれども、現実の運用は個別の輸出案件ごとにチェックをいたしまして、具体的な運用の基準でもあるわけでございます。
  52. 大出俊

    大出委員 別に輸出貿易管理令に以上の三原則が書いてあるわけではない。したがってこれは政策ということになる。そうですな。
  53. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 そういう意味ではそうでございます。
  54. 大出俊

    大出委員 そこで、一、二承りたいのですけれども、ニューヨークで連続発生しているブラック・リベレーション・アーミーなる方々の警官襲撃事件、本年一月に起こった事例でありますが、パトカーを襲撃した。警官が反撃をして撃ち合い、現場に残っていたのがAR180でございましょうか、ライフル。銃身に、ここには「H工業」と書いてありますが、これは豊和工業でございます。「日本においてカリフォルニア州コスタ・メサのアーマライト社のために製作した」と英文で刻んであった。ニューヨーク市警が調べたところ、確かにアーマライト社が豊和工業に下請生産をさせていた。そして米国に輸入したもの。そしてアーマライト社の販売したものを犯人は大陸横断をしてニューヨークに持ってきて使った、こういうことであります。  これはあとの問題ございますけれども、とりあえずここで、一体どのくらい日本から豊和工業はこのライフルAR180を輸出しておるのか。あなた方一々チェックするといまおっしゃいましたが、チェックをなさっているのだからおわかりだと思う。どのくらい輸出しておりますか。
  55. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 豊和工業からアーマライト180の輸出は三年にわたっておりまして、四十五年に八百十二丁、四十六年二千五十丁、四十七年が四百丁、合計三千二百六十二丁でございます。
  56. 大出俊

    大出委員 ここで承りたいのですが、この豊和工業というのは、主として何をつくっているのですか。
  57. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 豊和工業といいますのは、一番主力は繊維機械をつくっておるわけでございまして、繊維機械におきましては、豊田自動織機と並びまして日本の二大メーカーでございます。その他豊和工業は、いま御指摘のライフル銃におきましても日本一の生産量の会社でございまして、大まかに言いまして、そのほかいろいろなことをやっておると思いますが、繊維機械とライフルということだと私は承知しておるわけでございます。
  58. 大出俊

    大出委員 この自衛隊用の六四式の小銃、これは豊和工業の製品でございましょう。一手販売でございますな。一手でやっておる自衛隊の六四式の小銃、どのくらい生産しておりますか、御存じですか。
  59. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 六四式の小銃は、御指摘のとおり豊和工業が生産いたしておるわけでございますけれども、数量につきましてはちょっと手元に資料ございませんで、明確に申し上げられないわけでございます。
  60. 大出俊

    大出委員 あわせてAR18という小銃がございます。これは完全な自動小銃です。これは一体どういうふうなものでございますか。御存じでございますか。
  61. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 AR18といいますのは、やはりアーマライト社の設計にかかるものでございまして、これは小銃でございます。ちなみに、これを改造いたして180といたしたものが先ほどのライフル銃でございますが、このAR18の小銃は、豊和工業が、防衛庁用に十五丁、それから見本輸出といたしまして十二丁、計二十七丁を生産しただけでございまして、その後生産を中止いたしまして、現在は生産をいたしておりませんです。
  62. 大出俊

    大出委員 このニューヨークで起こった事件のときに、ここに放棄していった現物のクリップというのが、AR18のマークのついたものを使っている。これは一体どういうことになりますか。
  63. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 私、詳細にその事実を存じ上げておりませんので、申し上げかねるわけでございますけれども、おそらく一部部品的な共通部分というものは、一つ会社でございますので、共通に生産をして、それを共用したということがあるのではないかと推測いたしておるわけでございます。
  64. 大出俊

    大出委員 このAR180とAR18とはどう違いますか。
  65. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 これは一般的に小銃と猟銃との違いでございますが、一番ティピカルな差異は、小銃は発射が全自動式に相なっておるわけでございます。猟銃はこれが全自動でございませんで、大体五発ぐらいが個々に出ますような、半自動といいますか、そういうことに相なっております。  それから、当然のことでございますけれども、小銃は武器でございますので、着剣装置が設計上内蔵されておりまして、その他いろいろとございますけれども、一番大きな違いは、発射の自動性の問題と着剣装置、この二つであろうかと思います。
  66. 大出俊

    大出委員 時間がありませんから、こまかいことは言いませんが、このAR180なるものが問題になって、これを調べたアメリカの弾道局の主任の警部補であるルイジという人の談話がここにございますが、AR180というのは、スポーツ用という名目で合法的に日本から民間ルートで米国に輸入され販売されているものだが、こんな銃はスポーツ用どころか完全な殺人兵器だ、これは狩猟用どころのものじゃないと、にがり切ってそう言っているのです。  それから、これはAR18をあとから申し上げますけれども、AR180というのは、おっしゃるとおり半自動で、弾丸が二十発入っているクリップを突っ込めばレバー操作の必要がない。引き金を引くだけで、ガス圧力によって発射装置が動いて、早撃ちができる。銃床はプラスチック製の折りたたみで、短くして隠して持っていけるようになっている。銃口に三つの裂け目が入っているので、発射光とガスを拡散をし、撃ってもどこから撃ったか正確にわからないようになっている。ざんごうから射撃をしても土ほこりが舞わない。敵に悟られぬためのしかけがしてある。このライフルが正々堂々とハンティングやスポーツなどということで使われるなんというばかなことがあっていいはずはない。しいて言えば、特殊な人を殺すハンティング以外に使い道はない。平和な社会では使えない銃である。〇・二二三という口径はM16と同じだ。こういうふうに載っているのですね。  それで、おたくのほうの、この新聞に載っているのは、通産省の重工業局の航空機武器課の調べによると、猟銃の輸出は四十四年十万丁、四十五年十万丁、四十六年十三万丁と次第にふえてきている。特にこの高性能ライフルの輸出増が目立っている。そうして輸出量の七割以上がアメリカ向けだ。武器輸出ということになれば、いまの三原則で取り締まれる。チェックができる。だが、武器輸出ということでなく許可申請が出てくるから、やむを得ず認めている。したがって、これが悪用されるというならば何かこれは考えなければいかぬ、こういう言い方をしていますね、おたくのほうで。こういう事件がなおまた起こる可能性が当然ある、これだけ輸出していると。アメリカ側の専門家が、平和時に使える銃じゃない、ざんごうの中に入って相手を撃つ人殺しの兵器だと言っている。ここまでのことが明らかになっているということになるとすれば、私はここらの問題については、当然これは考え直してみる必要がありはせぬかという気がする。ひとつ間違ってこれが外へ流れて事件でも起こったらたいへんです。流れない保証はない。  そこで、豊和工業とアーマライト社の関係ですが、アーマライト社という会社のやつを調べて、これは古い資料で、人は違いますが、私は前におたくの皆さん質問したことがある。古い資料を引っぱり出して見てみた。AR18というのは、八百メートル離れても鉄かぶと、鉄帽をすぽんと撃ち抜いてしまうだけの威力がある。たいへん短い銃だ。ところが180と性能の面ではそう変わらない。その当時これは禁止すべきだという意見を私が吐いたことがある。いまのお話では禁止したというのですから。だが、突っ込むクリップはAR18を使っているということになると、どうも私は、アーマライト社というのは、ライセンスその他を与えて、あとはそっちのほう、おたくで開発しなさい、費用は出します、そのかわり開発されていい性能のものができたら、一括当社を経由しなければ売れないですよという契約を結ばせる。豊和工業もそういう契約を結んでいる。そういう性格のものです。そうなると私は、このマーアライト社を通じてどういうルートで、つまりアメリカの専門家のいう人殺し用の兵器がどこに流れていくかわかったものではない。まして最近、紛争当事国といわれるところでは武器集めに懸命なんですね。どこかでこんなものが飛び出した日には、それこそ国際的にえらい騒ぎが起こりかねないというので、私は非常に大きな心配を持ちます。  したがって、この点はあなた方のほうで、猟銃だというからしようがないから許可をしているという言い方になっているのですから、危険を承知なんですから、だとすれば、これは生産している会社の経営の状況もございましょう、一ぺんにいけないと言えないのかもしれませんけれども、AR18は禁止をされたのです。かつて私は質問をした。だから、そこらのところを考えてみる。見本をやっただけでえらい騒ぎが起こって、引き合いもたくさんあったのです、AR18に。タイからえらい人が日本に来たときも、その目的は何だったかというと兵器だったという話もある。ましてわが国は、これは私はあとから気がついたのだけれども、武器輸出の苦い経験がある。フィリピンに賠償の中に入れてということで、四十一年だったと思いますが、銃弾プラント、弾丸をつくるプラントをフィリピンに持っていっておる。これはたいへんな数ですよ、製造量としては。しかも、工作機械という名目であなた方は認めている。だから私は、ここまで来ると、日本の武器輸出の問題はもう一ぺん振り返ってみる必要さえあると思っている。そういう意味で、いまの問題は何らかの対策を早急に立てるべき筋合いだと考えるのですが、いかがなものですか。
  67. 山形栄治

    ○山形(栄)政府委員 猟銃、ライフルでございますけれども、これはいま世界的に非常にハンティングのレジャーといいますか、盛んになりまして、世界的に出荷がふえておるわけでございます。しかしながら、いま先生のお話のとおり、AR180というような使われ方をいたしますと、これは非常に問題だと思います。ただ、ここで念のために申し上げておきたいのは、AR180はあくまで生産段階では猟銃でございまして、五発の連発半自動でございます。ところが、非常に改造の可能性が高いのではないかという感じを私持っておりまして、いろいろと検討すべき点が多いかと思いますけれども、今後、猟銃において性能が小銃と著しく近いようなもの、かつ改造の可能性が非常に高いもの、こういうものにつきましては慎重に基準の改定等も行ないまして、チェックをいたしていきたいと思います。  なお、ちなみにこのAR180につきましては、いま御指摘のとおりいろいろな問題がございましたので、昨年の七月に豊和工業は生産を停止いたしまして、かつ輸出契約も全部ストップいたしておりますので、現時点では豊和工業からAR180の輸出がなされるということはあり得ないような状態に相なっておりますので、念のため申し上げておきます。
  68. 大出俊

    大出委員 この武器輸出の問題は三原則がありますが、さっき申し上げたように政策でございますから、念のためにつけ加えておきますが、AR18が開発されたのは四十一年でございますね。あれからだいぶたっております。これをとめましたら改装してAR180にしたのです。これも私はいささか穏当を欠くと思っておる。これまただから、とめたらまた似たようなものができ上がりかねない。そういう点はほしがっている銃器なんですから。アラブ紛争もございます。十分これは気をつけてもらわなければならぬと思う。  それから、さっき私が申し上げましたのは昭和四十二年でございますが、四十二年に銃弾プラント十六億四千九百万円相当、年間生産能力千五百万発、これがフィリピンに送られています。これはフク団などのゲリラがあるということで行っている。これは日本側は再三これを断わっている、当時の記録によると。つまり紛争の可能性がある国だからということでですね。ところが、日比賠償その他の協定関係でねばられて、結果的にプラント輸出をなさっている。当時の記録を見ますと、金属加工機械ですか、こういうことで許可をなさっている。こういうこともあります。したがって、これは十分いまの点はお気をつけいただきたい、こう思います。  大臣、十分御配慮いただいているとは思いますけれども、こういう国際的世相でございます。日本の技術というのはかくて非常に高いものがあります。かつて見本輸出しただけでも大きな騒ぎが起こった先例もある。したがって、あと、豊和工業の18を困るじゃないかということを私どもが言ったらやめた、しかし180ができたというような形になっていかないように、物議をかもしたあとからじゃ間に合わないですから、十分慎重な御配慮いただきたいということを最後に申し上げて、御所見をいただきます。
  69. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘のとおり、豊和工業の製品はかなり優秀な小銃等つくっておるようであります。したがいまして、これらのものがかりそめにも国際紛議の種にならないように、われわれは輸出にあたりましては慎重な配慮をなして、御期待にこたえたいと思います。
  70. 大出俊

    大出委員 終わります。
  71. 三原朝雄

    三原委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  72. 三原朝雄

    三原委員長 ただいま委員長の手元に加藤陽三君より本案に対する修正案が提出されております。
  73. 三原朝雄

    三原委員長 提出者より趣旨の説明を求めます。加藤陽三君。
  74. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 ただいま議題となりました通商産業省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付いたしてありますので、朗読は省略させていただき、その要旨を申し上げますと、原案ではその施行期日を「昭和四十八年四月一日」としているのでありますが、すでにその日が経過しておりますので、これを「公布の日」に改めようとするものであります。  よろしく御賛成をお願い申し上げます。
  75. 三原朝雄

    三原委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  76. 三原朝雄

    三原委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  通商産業省設置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、加藤陽三君提出の修正案について採決をいたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  77. 三原朝雄

    三原委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  78. 三原朝雄

    三原委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 三原朝雄

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、このように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  80. 三原朝雄

    三原委員長 次に、恩給法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  81. 上原康助

    ○上原委員 今回提案されております恩給法等の一部を改正する法律案について若干お尋ねしたいわけです。   〔委員長退席、藤尾委員長代理着席〕  すでに同僚委員のほうからいろいろお尋ねもありましたので、部分的には重複する面もあろうかと思うのですが、基本的な点についてまずお伺いをしたいと思います。  恩給法の改正の経緯というのがかなりあるわけですが、一体、今後の恩給制度に対して、政府はどういう方向づけをしていかれようとしておられるのか。具体的に言いますと、恩給法の二条ノ二の解釈といいますか、に対する基本的な考え方について御見解を賜わりたいと思うのです。
  82. 平川幸藏

    ○平川政府委員 まず前段におきまして、ただいまの御質疑は、今後、恩給法の基本問題についてどういう考え方で処置していくか、こういう御質問でございますが、御承知のように、恩給は公務員が忠実に国家に勤務した場合、その公務員または遺族に給する金銭的な給付でありまして、いわゆる国家補償的な性格を持っております。この考え方は過去の長い歴史の中につちかわれてきたものでありまして、基本的にはこの性格を変更することはやはり適当でないと私は思います。ただ、御承知のとおり、戦後、恩給法とうらはらにありまする官吏制度もずいぶん変わってまいりました。そういうことで、必然的に恩給法もそういう影響は受けざるを得ない。受けて当然ではなかろうかと思います。ただ、御承知のように恩給法は昭和三十四年で終わっております。すでに十三年前にこの適用者はいなくなりました。一部昭和三十七年まで地方公共団体におりますけれども、数はごくわずかでございまして、三十四年で大多数の人は恩給法の適用を受けなくなった。現在在職者で受けている人はいないという客観的な事情もございまして、今後考える場合に、やはり過去の制度を基本的にいじくっていくという方向は望ましくない、このように考えているわけでございます。  御指摘の問題の中心点は、恩給の年金の実質価値をいかに安全にかつ高度な保全をやっていくかということかと思います。要するにスライド制の問題がやはり基本だと思います。で、御承知のように、スライド制につきましては、昭和四十三年に恩給審議会の答申が出ております。これは二年がかりで出たわけでありますけれども、その結論は、年金たる恩給の実質価値の保全というものを中心に恩給法二条ノ二の運用のしかたとして出されているわけでございます。それまでは運用の方針が必ずしも一定しておらなかったわけでございます。昭和四十一年には、御承知のように、消費水準方式というのをとりましたし、その他恩給の年額の三本立ての仮定俸給というような方法もとりましたし、いろいろな試行錯誤と申しますか、あちこちを歩みながらやってきたということで、実は恩給受給者にとっては、政府ははたしてどういう指標でどの程度やってくれるのかという、その点についての不安感があったわけでありますが、恩給審議会は少なくともこれに対して一つの回答を与えたわけでございます。  その回答は、御承知のように、物価と公務員給与を組み合わせまして、まず物価は全面的にこれを見ていく、なおかつ物価と公務員給与との間に格差がある場合におきましては、そのうちの職務給的部分は除いた生活給的部分を上積みしていくという、いわゆる恩給審議会方式が確立されたわけであります。  この方式自体についての御議論はいろいろありまして、これでは不十分ではないか、あるいは職務給的部分をカットするのはおかしいではないかといういろいろ御批判はありましたが、しかし、当時といたしましては、恩給受給者が何によってどの程度まで上がるのかというめどがつかない状態のもとにおいては、一つ考えではあったと思います。それで約四年間ほどスライドしてまいったわけでありますが、実は当委員会においても、こういうやり方については、はたして二条ノ二基本的な解釈として正しいのかどうかという御意見もあったわけであります。  そういう客観的な事態の推移等も踏まえましては、御承知のように二条ノ二には、「年金タル恩給ノ額ニ付テハ国民ノ生活水準、国家公務員ノ給与、物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動ガ生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ速ニ改正ノ措置ヲ講ズルモノトス」、こう書いてございますが、この運用のしかたといたしましては、むしろ、本年度とりましたような、公務員給与によって改善していくということが最も適当な方法ではないかという御議論も、この委員会でもずいぶん展開されました。われわれはそういうことを踏まえまして、本年度から公務員給与によりまして改正する。しかも時間的な格差が二年半ありましたものを、本年度は一挙に四十六年と四十七年度の二年分を改善しまして一年の短縮をはかったような次第であります。御指摘の点は、今後もこのような方法でやるのかどうかという御意見でございますが、今後ともこういった考え方で努力してまいりたい、このように考えております。
  83. 上原康助

    ○上原委員 いま長々と御答弁いただいたのですが、もちろん私もずぶのしろうとで、恩給問題は全然わかりませんが、今回の出された趣旨の概要説明を見てもわかるように、昭和三十七年までは、おっしゃるように、公務員賃金のあと追い方式をとっておるわけですね。その後、四十年に一律に二割増額をして、さらに四十二年には、七十歳以上、六十五歳以下七十歳未満、そして六十五歳未満という三本立て。おっしゃるように試行錯誤。そしてまた四十四年からは恩給審の答申。これはもちろん、本委員会における附帯決議等の面もいろいろ御考慮に入れてのことだと思うのですが、そういう経緯を踏んできているわけです。性格としては国家補償的なものだ、あるいは身分法的な恩給制度だから、それを根本的に変えるわけにはいかないのじゃないかという御見解のようですが、しかし、恩給といいましても、年金にしましても、社会保障の一環として位置づけていかなければいけない基本的な面があると思うのです。  問題は生活保障をどうするかということだと思うのです。特に老後の生活保障。そういう面からすると、専門の方々がごらんになっても、恩給法というのは、ほとんどわからないなんていわれているほど、繁雑さ、しちめんどくさいことがいろいろ書かれておる。法律というのは、もっと単純明瞭に国民に、該当者にわかるような内容でなければいけないと思うのです、内容面からしても、あるいは制度面、思想面、発想面からしても。  社会保障の位置づけとして、恩給制度というものも、特に五万円年金ということが大きくクローズアップされている段階では、この間も指摘がありましたが、もっと発想の転換がいま迫られているのじゃないかという気がするのです。その点についてはどうなんですか。
  84. 平川幸藏

    ○平川政府委員 ただいま先生が御指摘になりました発想の転換という意味を私なりに理解いたしますと、やはり恩給の本質はたとえそうであっても、たとえば恩給受給者が二百七十三万人おりますけれども、そのうち六十五歳以上の人が約九十五万人おるという一つの現実がございます。それから、確かにこれは加算制度からよって来たる結果でございますけれども、たとえば在職年が非常に短い人はやはり恩給額が低い。しかし、それは恩給法からくる当然の帰結であっても、低いということについてはやはりおかしいではないかという反省もございます。  そういうような、いま二つの例をあげましたが、私自身も、そういう点につきましては着目いたしまして、恩給の精神といいますか、本質といいますか、ことばにとらわれるわけではございませんが、そういうものを変えるということは、やはりこれは過去の果たしてきた制度でございますから、この存在根拠をなくするということになりますので、そこまで考えることは私は行き過ぎではないかと思いますが、いま言ったような客観的な事実もございますから、しかもその事実は必ずしも看過し得ない事実でございます。そういうことを考えますと、やはり何らかの社会政策的と申しますか、それは、ことばの使い方によっては社会保障的と言ってもいいと思いますけれども、そういう政策がかなりの程度介入しても差しつかえないのではないか。現実において、実は昭和二十八年に軍人恩給復活以後で、ございますが、非常にそういう色彩も入れてきております。  たとえば一つの例を申し上げますと、昭和三十三年までは大将の一項症と兵の一項症は恩給額が異なっておったわけでありますが、それを一本にいたしまして階級差をなくしたというようなことでございます。それから最近に至りまして、公務に基因いたしまして、それによって死亡したいわゆる公務扶助料の階級差を、少尉まで一律に二十九万六千百六十円という金額で一つにまとめております。少尉までやりますとほとんど九割までがこれに該当しますから、そういう意味におきましては、われわれといたしましては、社会保障的といいますか、社会政策的な色彩をかなり思い切って入れておるつもりでございます。
  85. 上原康助

    ○上原委員 基本的な方向づけについては、単なる身分保障的なものじゃなくして、社会政策的あるいは社会保障制度の変化といいますか、改善にも合わしてやっていかれるのだというお考えはお持ちのようですから、一応理解しますけれども、ここで私が議論をするのは、平和憲法下で大将とか兵隊とかいうことを論ずること自体も、非常に問題があるような気がするわけです、立場上は。しかしそれは、そういうことじゃなくして、やはり老後の生活保障という面でこういう恩給問題をとらえたい、そういう視点に立って私は議論をしておりますので、その点、理解をしていただきたいと思うのです。  そこで、ちょっと具体的な面に入りたいのですが、先ほども少しお触れになっておりましたが、それじゃスライド制の制度化については、今後そういう制度化をしていくおつもりなのか。これまで、スライド制にすべきだということは、本委員会でも数回にわたって附帯決議なりなされているわけですね。若干そういう面が取り入れられているわけですが、その制度化というのは、もうほぼ確定をしたと見ていいのかどうか。先ほども言いましたように、これまでも二転、三転、いろんな改善が恩給法の改正においてなされてきているわけですが、そういった面は制度化と見ていいのかどうか。この点いかがですか。
  86. 平川幸藏

    ○平川政府委員 先ほど先生も御指摘になりましたように、過去におきましては、経過的にいろいろあちこちの道を歩いておったということは言えると思います。その間におきましては、実は調整規定のある場合もありましたし、ない場合のやつもあったわけであります。正式に申し上げますと、この調整規定の二条ノ二ができましたのが昭和四十一年でございます。したがって、四十一年以降の問題としてとらえなければならないと思います。四十二年は実は恩給審議会が設けられた年でございまして、その間、恩給審議会の答申が終わるまで待てば老齢者が非常に困るということで、四十二年はさしあたってああいう方式でいったわけでございまして、恩給審議会の答申が出る前に、その当時、中間答申と申しますかが出まして、それに基づいてやったわけであります。したがいまして、現在、二条ノ二の具体的な発動につきましては、やはり恩給審議会の答申以後と、こう考えていただいていいと思いますが、その運用のしかたを審議会に答申を求めること自体がおかしいではないかという率直な御意見もあったわけであります。というのは、これは政府側が解釈してやればいいのではないかというような御意見もあり、われわれといたしましては、一応やはり、審議会に答申を求めた以上は答申を全面的に尊重していかなければならないということでやってまいったわけでありますが、先ほど申し上げましたように、いろいろな御意見、あるいは当委員会の審議の経過等を踏まえまして、実は二条ノ二の解釈といたしまして、ずばり二番目に「公務員ノ給与」と書いてございますから、それにより改善していくことが最も適当であるということをわれわれは考えたわけでございます。したがいまして、むしろこれは結果論のようになってはなはだ申しわけないのでございますが、結果論としましては、やはり現在のわれわれが提案いたしておりまする公務員給与によって恩給を改善していくということは、二条ノ二の解釈としては一番すなおではないかというように考えます。したがいまして、今後ともこのスライド規定二条ノ二自体は、これはりっぱな規定だと私は思いますが、これ自体を改正することはやはり考えておりません。問題はいかにこれを具体的に推進していくかということだけだと思います。
  87. 上原康助

    ○上原委員 私が申し上げているのも、二条ノ二をどうしなさいということじゃないわけですね。その運用をいかにするか、具体化していくかということは最も肝要じゃないかと思うのです。  いまの点とも関連するわけですが、恩給審の答申に基づいて今回の改正案も一応出てきているわけですが、そうしますと、公務員給与にスライドをさせた改善方式。もちろんこれは物価問題等もあると思うのです。そういたしますと、この改善方式というものは、もう一応定型化したと見ていいのかどうか。先のスライド制との関連もあるわけですが、今後も、公務員賃金が人勧なりに基づいて改善をされていく場合は、恩給そのものもそれにスライドをして随時やっていくのか。その方向づけというのは、もう今後は恩給法というのはこういう方向で改定をしていくのだという方向づけがなされたと見ていいのかどうか。一応今回は恩給審の答申に基づいてやったのだが、公務員賃金がいろいろベアのアップ率の問題とか変化があった場合には、恩給をそれに即スライドしていくというわけにはいかないということに逆戻りとか、また、もっと公務員賃金よりも先んじてやっていくような方向があるのかどうか。一応方向づけとしては、恩給審のそういった答申というものを受けて定型化していくといいますか、方式化していくというとらえ方でいいのかどうか。その点はいかがですか。
  88. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 非常に大事な問題でございますので、私からお答えいたしたいと思いますが、恩給年額の調整につきましては、御承知のとおりの恩給法第二条ノ二の規定の運用により今回の考え方に基づいて今後ともこの方針で努力してまいりたい、既定の方針として進めてまいりたいということをはっきり表明申し上げて、御理解いただきたいと思います。
  89. 上原康助

    ○上原委員 いまの長官の御答弁は、先ほどの局長答弁より少しうしろ向きなんですね。恩給法の二条の方向だけでということになりますと、公務員賃金が改定をされていった場合のはっきりした方向づけがなされることにはならないわけですね。従来から二条ノ二はあったわけなんだが、先ほど言いましたように、あと追いをしてみたり、三本立てにしてみたり、恩給審の答申に基づいてやるんだということだったり、定着した、一定したこれからの方向づけというのは、恩給改定については一体どうするのか。私が申し上げているのは、公務員賃金にスライドをし、あるいは諸物価の値上がりも勘案してやっていくというふうに、その方向づけを理解していいのかということなんです。
  90. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 いま申しましたように、定着した方針として、物価及び公務員の給与等を基礎に置いての今回とった措置を、今後はぜひとも守っていきたい。局長の申しましたとおりで、何ら退いた立場での発言でないことを御信頼願いたいと思います。
  91. 上原康助

    ○上原委員 一応、行政的なルールとしてそれが確立をしたというふうに理解をしていいわけですね。
  92. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 そのとおりでございます。
  93. 上原康助

    ○上原委員 これも関連するかと思うのですが、例の加算年金額の問題ですが、今回の場合に、七十歳以上はすべての加算に算入になっておるわけですね。しかし、六十五歳以上は年限が最短年限までだ、あるいは六十歳以上六十五歳未満は減算されているというふうになっておるわけですが、せんだってからの委員会のいろんな議論を聞いてみましても、どうも上厚下薄——もちろん、上を上げる、七十歳以上全額認める、加算をしていくということはいいですよ。しかしやはり、そういう格差をつけずに、減率をするんじゃなくて加算というものはやるべきじゃないかという気がするわけです。今回はまあ財政上のいろんな問題もあったかとは思うのですが、下のほうにたくさんの該当者がいらっしゃるわけで、われわれとしてはむしろそこが問題なんで、加算年金額の算入方法の改善の見通しというのはお持ちでないのかどうか、御説明いただきたいと思うのです。
  94. 平川幸藏

    ○平川政府委員 加算の仕組みを、その理由を簡単に説明しながら申し上げますと、まず先生が指摘されましたように、加算制度というのは割り増し制度なんです。たとえば戦地へ行くとか危険な業務がある。昔、結核というのは非常に危険でございましたから、結核の病棟におるような人たちは加算がつくというようなこともございます。まあ率直に申しまして、一種の給与、手当で見るものを年金で見たというようなところもございます。いずれにいたしましても、それは加算割り増し制度でございまして、戦前は年齢のいかんにかかわらずすべて金額計算の中に入っておったわけであります。ところが、昭和二十一年に軍人恩給が廃止になりまして、再び昭和二十八年に復活になったときにおきまして、はたして加算というものをどう考えていくべきかということについていろいろ議論があったわけであります。いま私がちょっと申し上げましたように、従来、たとえば危険業務とかあるいは危険な地域における給与というものを恩給で見ておったというようなことでございます。戦前においては給与で見なかった。ところが戦後、そういうものは給与で見るべきであるという思想の転換がございました。したがいまして、加算制度というのは、軍人恩給が復活した昭和二十八年には文官も全部なくなったわけであります。したがいまして、本来ならば、軍人恩給が復活するときに、加算というものを全くなくするという考え方もオーソドックスな考え方としてあったわけでございますが、しかし、せっかく軍人恩給が復活する以上は、かつて裁定を受けた人だけは資格を認めてはどうだろうか、そういうことで認めたわけであります。ところが、かつて恩給を受けた人のみならず、まだ恩給を受けていない人にも資格を認めようというようにだんだん拡大をされまして、それでただいま提案しておりますように、七十歳以上の人に対しましては加算の金額計算の中に入れていこうということになりまして、これは率直に申し上げまして、一つ老齢者対策であると考えていただいてけっこうであると思います。  ところが、いま申し上げましたような考え方で加算をやっておりますが、その段階としまして、実はいろいろな制約があるものでございますから、年齢によって区分いたしまして処遇してまいったわけでございます。それ、で、六十五歳から七十歳までは、いわゆる短期在職者の人につきましても十二年分の恩給を無条件にやるという、いわゆる加算減算率の制度の撤廃をいたしたわけであります。それから六十五歳から六十歳までは、これは今回の改正案に出ておりますけれども、減算率を文官並みに百五十分の二・五にした。それから六十歳から五十五歳までの減算率を従来どおり百五十分の三・五にした。それから五十五歳から五十歳まではその額の七割、五十歳から四十五歳まではその額の半額というように、実は五歳刻みになっておりまして、非常に複雑な制度になっておりますが、これはいろいろ制約がございまして、その間においての処遇でございます。  ただ、基本的な考え方といたしまして、昔の恩給制度の特色であります加算というものをどういうように見ていくか、若年者まですべて及ぼすべきものかどうか、この点につきましては、われわれも、諸外国の制度、あるいは恩給内部における矛盾等もいろいろ考究しておりますけれども、相当限界があるんじゃないかというような感じがいたします。ただ、現在の七十歳でいいのかどうかという点につきましては問題がありますけれども、これを下げていきますと、影響するところも、まあ、だんだん下がってきますから、そういう点においてどういうバランスになるのか、これは非常にむずかしい問題でございますが、これは相当慎重な検討を必要とするのではないかという個人的な意見を私は持っております。
  95. 上原康助

    ○上原委員 おっしゃるように、加算はもちろんいろいろ問題があろうかと思うんです。四カ年行ったら十六年にするとか、十二年にするとか、確かに恩給制度からするとどうも納得しかねる面があるわけですよね。しかし、一応制度化した上にさらに格差をつけていくということも、これまた該当者にしてみれば問題があると思うのです。そういう内部操作的な点が一番問題なのかというと、そうじゃなくして、私はむしろ、恩給局は財政的な面にこだわっているんじゃないかという気がするんです。そこはどうなんです。
  96. 平川幸藏

    ○平川政府委員 率直に申しまして、財政的な面だけではございません。そういう面の制約もあると思いますが、先生も先ほど数次にわたって御指摘になっておりますが、われわれも、その許容限度においては近代的な年金制度を取り入れていこうという前向きな姿勢になりつつあるときにおきまして、この加算制度というのは各国にもないわけではございませんが、このように大幅な制度で入れられておる年金制度は実はないんです。そういうことを考えますと、たとえば極端なことを申し上げますと、はたして四十五歳の人までにこの制度を拡大することがいいかどうかという基本的な点についての悩みが、率直に申し上げまして実はあります。そういう点におけるわれわれ自身の理解のしかたにおいて、解決点をまだ見出していないというのが率直なところでございます。
  97. 上原康助

    ○上原委員 おことばを返すわけじゃありません。私は何も、四十五歳とかそういう極端な議論をしているのじゃないのです。厚生年金は六十歳なら六十歳、六十五歳なら六十五歳ときめられているわけです、共済組合法なら共済組合法。そういうものを下限にしてこの加算問題にしても検討に値することじゃないのかという問題指摘をしているわけですよね。まあ七十歳以上の方、老人対策というような考え方もあろうと思うのですが、そういう面でこれも定着化していくということは、やはり問題があるのじゃないのか。ぜひ御検討をいただきたいと思うのです。  それと、先ほどの話と関連するのですが、せんだっても年金の遡及の問題について若干議論があったような気がするわけですね。たとえば公務員賃金にしましても、人勧どおり四月一日にさかのぼるには相当の年限がかかったわけです。ようやく昨年の四月一日からなった。そういう意味で、この年金のスライド制をやる、あるいは公務員賃金改定を参考にしてやっていくという方向づけがなされた以上は、遡及実施ということも検討をしていいんじゃないかという気がするわけですね。もちろんすぐ一挙にできないにしても、段階を踏んでそういった改定というものもやはり必要であろう。該当者にしてみれば、何で公務員はさかのぼるのに、われわれ公務員であった退職者についてはそういうものが適用されないのか、という御不満なりあれはあろうと思うのです。その点についての御検討はどうなっているのか。もう少しはっきりした態度をお聞かせいただきたいと思います。
  98. 平川幸藏

    ○平川政府委員 現在、恩給の給与実施は十月になっておりますが、その理由はいろいろございますが、事務的なことを申し上げて恐縮なんでございますが、今回二百七十三万恩給受給者に対しまして相当大幅な改定をいたしました。しかも改定するときにいろいろな作業が一緒に加わりますから、相当準備期間が必要であります。そうしますと、大体ぎりぎり見まして十月実施ということが事務的に限界になるわけでございます。  しかし、それではさかのぼってもいいんではないか、実施は十月であっても給与のさかのぼりをやればいいではないかという御意見だと思いますが、この点につきましては、確かに先生の言われたとおりでありまして、実は従来は二年半おくれであったわけです。せめて四月まで半年を縮めたらどうだという御意見が実はあったわけでございますが、われわれといたしましてはさらに半年縮めまして一年縮めたわけでございます。   〔藤尾委員長代理退席、委員長着席〕 一年縮めた結果、やはり十月であることば間違いございませんが、御承知のように年度が一年繰り上がっております。それをさらに六カ月縮め、あるいは六カ月でなくても三カ月縮めたらどうだ、こういう御意見だと思いますが、こういう点につきましては、われわれとしてはできるだけ努力はしてまいりたいと思います。確かにこれについて意見があろうはずはございませんが、いろいろ折衝する向きもございますから、今後できるだけわれわれとしては努力してまいりたい、このように考えております。
  99. 上原康助

    ○上原委員 ぜひひとつそのあたりも努力をしていただいて、なお充実した制度——もちろんその制度というのは、ほかの年金との関係における一本化の問題も将来出てくるでしょう。そういうものも含めてですが、遡及の問題についても特段の御配慮をいただきたいと思うのです。  そこで、この恩給法との関係において、昨年でしたか、沖繩関係の該当者についての法律改正もなされたわけですが、沖繩関係の該当者には全然不利益は与えていないのかどうか。その取り扱いといいますか、そういう面はどうなっていますか。説明をしていただいて、二、三点またお尋ねをしたいと思うのです。
  100. 平川幸藏

    ○平川政府委員 沖繩関係につきましては、復帰に際しまして、基本的には、沖繩における官公庁あるいは民間団体等の意見も、全面的にいれて改正いたしました。これは詳しい経過は申し上げませんが、昭和四十七年度の改正で五項目入っております。この五項目の中には、あまりこまかいことは申し上げませんが、基本的には在職年の通算と俸給のとり方、この二本が中心点になっておりますが、特に俸給のとり方におきましては、御承知のように、恩給は最終の退職のときの俸給をとるのが原則になっております。当然それは沖繩にも適用さしていただいたわけでありますが、そのほかに、実は沖繩の実態をわれわれよく調査いたしまして、単に退職時の俸給をとるだけでは不十分である、やはり現在の俸給に三号上げる、そのどちらかの選択制を実はやったわけでございまして、端的に申し上げますと、これは非常に沖繩の実態を考えた措置である、このように考えておるわけでございます。そのほかこまかいいろいろな点がございますけれども、これは御質疑によりましてお答えいたしたいと思いますが、沖繩に関する限りはすべて拾い上げまして、単に官公庁の意見だけではございません。民間の意見でも十分私、拝聴いたしました。それに基づきまして全面的に取り入れたわけであります。
  101. 上原康助

    ○上原委員 復帰後、該当者については、制度の一体化と同時に、すべて意見は拾い上げて措置をなさったという面で手抜かりは全然ないということだと思うのですが、若干問題があるような気がするわけです。それはもちろんまた、いろんな政府立場での御見解もあると思うのですが、承りたいのですが、例の琉球大学の職員、教官の件なんです。おそらく政府のほうにも陳情書が行っているかと思うのですが、恩給法の適用面で、元南西諸島官公署職員が恩給法の適用になっていなかったということで漏れた方々がおられるわけですね。この点については、どういう取り扱いをなさったのか、またどういう御見解を持っておられるのか、説明をいただきたいと思います。
  102. 平川幸藏

    ○平川政府委員 琉球大学の職員で恩給法を適用すべかりし人がおるではないかという御質問でございますが、実はこれは率直に申し上げまして、私のほうへ文書で陳情書が参りましたのは昨年の暮れでございます。復帰後でございます。私どもが昭和四十七年に措置をいたしましたときには、この問題は実は出ていなかったわけでございます。それはとにかくといたしまして、この問題点を私は私なりに見ておるわけでございますが、あるいは先生の御意見と若干違う点はあるかもわかりませんが、この陳情の趣旨は、琉球大学は、御承知のように、昭和二十五年に米国民政府の布令三十号に基づきまして設置されたものでございますが、その後、経過は省略いたしまして、昭和四十一年に引き継がれまして琉球政府立大学になったという経過がございます。その当時、六、七人だったと思いますが、実は恩給適用者がおられまして、琉球政府に入られ、それから昭和四十一年までおられた方は共済制度に引き継がれたわけでございます。ところが、その前にやめた方について何とか処遇をしてくれというのが問題の内容であると思います。  この問題につきましては、実は元南西諸島官公署職員等の身分、恩給等に関する特例というのがございますが、それを受けて政令がございます。復帰時におきまして、直接アメリカ合衆国の管理機関に所属しておった機関であるもので政令で指定するものは全部引き継いだわけです。一例をあげますと、たとえば琉球の貿易庁、琉球農林省、琉球郵政庁、気象台、それから簡易裁判所、琉球上訴裁判所、こういった人たちはアメリカの直接管理下にあったわけでございまして、これが復帰と同時にこちらに引き継がれた。そういうものについては政令で指定されておるわけでありますが、問題は、こういう官公署と同じ性格を持つかどうかということ、やはり基本的には最後はそこに落ち着くと思います。  実はこの陳情が参りましたのが昨年の十一月十一日でございまして、私ども研究はしておりますが、まだ深く研究はしておりませんが、少なくともこの陳情書で見る限りにおきましては、いま直ちにここで、いま申し上げました六つないし七つの官公署と同じ性格を持つものであると断言する段階には至っていないわけでございます。
  103. 上原康助

    ○上原委員 それは、すぐここで確たる御答弁を求めるということでもないわけですが、問題があるという点を指摘をしておきたいと思うのです。  それと、御理解いただきたいことは、確かにおっしゃるように、琉球大学の開設といいますのは二十五年の五月ですね。それで一九五一年に米国民政府令三十号が公布された。さらに五二年の二月に琉球教育法に基づいて琉大のある程度の位置づけがされた。しかし琉大の管理法が設置されたのは一九六五年なんです。さらにまた、おっしゃるように四十一年七月から年金制度ができたというような経緯があって、結局、昭格二十五年から四十一年の間は法人組織だったから、その間におやめになった教官については適用できない、引き継げないわけです。しかし、琉大の性格なり沖繩のああいった特殊な事情から考えますと、当然、継続勤務年数として恩給適用の年数に入れるべき筋合いのものだと私たちは理解をするわけですよ。  そういう面で、現地からの陳情が出されるのがおくれて、まだ十分な御検討をなさっていないということですが、そういった琉大の性格の問題あるいは沖繩の置かれておった特殊な事情というようなことをお考えになれば、ここに名簿も出されておりますこの十名の方々は、沖繩の戦後の教育をほんとうにになった長老の方々なんですね。初代の学長をした方さえいらっしゃるわけなんです。こういう人々が、四十一年の七月一日以前、六月三十日までにおやめになったからといって、恩給の適用を受けない、年金の適用を受けないとなると、これは該当者にとっては大きな損失だし、教育関係者にとってもやはり忍びがたいことだと思うのです。そういう面についてはぜひ御検討いただいて、何らかの措置を講じていただくように要求をしておきたいと思うのです。これは重要な件ですので、長官は特に沖繩担当の大臣でもありますから、そういった事情を御理解いただいて前向きに対処していく、検討していくという御答弁をぜひいただきたいと思うのです。
  104. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 先ほどからの上原委員の御指摘の問題非常に重要な問題でもございますので、十分前向きな姿勢で検討を進めたい、こう考えております。
  105. 上原康助

    ○上原委員 ぜひひとつ恩給局で早急に御検討いただいて、結論を出していただきたい。結論を出すということは、含めるという結論を出していただきたいということですから、ネガティブの結論じゃないですから、その点、念を押しておきたいと思うのです。  これもいまの件と関連する問題ですが、やはり旧沖繩県市町村吏員恩給組合該当者に対する年金問題ですが、今回、自治省のほうで法律改正を出して手当てをする手はずを整えておるやに聞いておるのですが、旧沖繩市町村吏員で恩給組合に属しておった方々のいわゆる行政分離前の年金の取り扱い、通算についてどういう対処をしておられるのか。私たちが陳情を受けておるところによりますと、かなりの件数にわたって行政分離前の勤務年数が通算にならない、そういう面で大きな不利益になるというようなことですが、この点に対しての自治省あるいは政府対策の現段階における経過というもの、あるいは今後どういう方向でやっていく考えなのか、説明をいただきたいと思うのです。
  106. 佐野政一

    ○佐野説明員 沖繩の恩給組合条例でございますが、これは本土の各市町村と同じように、沖繩県におきまして、当時、市町村吏員で恩給組合を組織いたしまして、その恩給条例で年金制度を設けておったわけでございます。この組合が米軍上陸と同時に消滅しておるわけなんです。ただ、その当時、相当の退隠料等の受給権を有しておった人がおるようでございますが、実は復帰の時点までには具体的な内容がはっきりしませんで、その後調査いたしました結果、退隠料等の受給権者が百二十八名、遺族扶助料が十四名、一時金が四百八十八名、合計六百三十人ほどこの給付の該当者がいるということが判明したわけでございます。  それで、今回、地方公務員の共済制度を改正する法律案を御提案いたしておるわけでございますが、その法律案の中で、地方公務員等共済組合法の長期給付等に関する施行法の一部を改正いたしまして、この沖繩の恩給組合条例の適用を受けた人たちの中で、行政分離の日前におきましてすでに受給権の生じておる人については年金を支給する。それから、その行政分離後、沖繩の公務員の年金制度が施行される前日までに町村の職員として退職された人で、その恩給条例がなお効力を有しておった、こういうふうに仮定した場合に、年金の受給権を生ずる人、あるいは年金年限に達しないで一時金の受給資格の生ずる人、この人については今回年金を支給しよう、これを沖繩県の市町村職員共済組合が支給するということにいたしておるわけでございます。この給付額については、ことしの十月から給付するということにいたしまして、年金については本土復帰の日以後の分を支給しようということにいたしておるわけでございます。
  107. 上原康助

    ○上原委員 そういたしますと、今回の法律改正で、該当者のそういった要求については大体満たされたというお考えですか。そのように理解してよろしいですか。
  108. 佐野政一

    ○佐野説明員 現地からの要望等につきましては、これによって十分考慮いたしたい、このように考えております。
  109. 上原康助

    ○上原委員 こまかい点は、いずれまた、お尋ねするなりお伺いをしたいと思うのですが、こういった旧市町村職員の問題にしましても、戦後処理の一つだと私たち見ているわけですね。政府が独自で法律改正を出したというのはそれなりに評価をいたします。ですから、該当者が漏れなくその法律改正の恩恵といいますか、その制度下に入るように、ぜひ現地側とも十分御連絡をとっていただいて処置を講じていただきたいと思います。  そこであと二、三点あるのですが、援護局と恩給局にお伺いしたいのですが、いろいろ調べてみますと、一時恩給なり傷病恩給ですか、そういった面の事務的な処理がかなりおくれている面があるわけですね。この間もお願いをしていろいろ調べていただいたんですが、最初に申し上げましたように、この恩給問題というのは、非常に事務的な繁雑さがあり、また、専門家でないとなかなか書類づくりやいろいろのむずかしさがあるということも承わっているのです。  そこで、こまかい点は申し上げませんが、この際、沖繩の恩給関係、援護金なり弔慰金の未裁定分を総ざらいしていただきたいと思うのです。これだけ未裁決のものがあるということで、ぜひ調べてもらいたいということで陳情が来ているわけです。一部はすでに関係者にお願いをしてやっているわけですが、これは恩給局長でもいいが、長官お願いしたいことは、開発庁にこういった、たとえば昭和四十三年あるいは四十二年ごろ書類を提出をしてまだ裁決されてない、未解決だというようなものが相当たまっているわけです。そういうものについて、ただ県側の厚生部にまかすのでなくして、政府から長期出張で少し担当官を派遣をして、洗ってみて、早急に該当者に対してはその処置をとるということが、私は必要じゃないかと思うのです。その点について、もしどれだけたまっておるという数字なりがありましたら説明をいただきたいし、この間資料をあげましたように、相当数あるわけですから、それについて政府で責任をもって、この際現地側とも連絡をとって処理していただきたい、こういうふうに思うのですが、開発庁なりあるいは恩給局、援護局、どういう事務処理をしておられるのか、あるいはどれだけ滞留しているのか、ひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  110. 平川幸藏

    ○平川政府委員 総理府のうちの恩給に関する部分だけお答え申し上げます。  実はここに沖繩県だけの手持ち件数を持っていないのですが、この前、先生の御指摘がありましたので、私、調べたわけです。その資料をきょう持ってこなかったのですが、調べた結果によりますと、恩給局に関する数字といたしましては、傷病恩給を中心にして調べましたが、われわれのあれでは、沖繩は全国平均の大体百分の一程度と見ておりますけれども、手持ちの件数はたしか傷病恩給が二十六件だったと思います。平均以下の滞留率でありまして、処理といたしましては、普通恩給は大体二カ月、傷病恩給は、場合によっては、本人に照会したり、あるいは他に診断を求めたりということで、若干延びるということもありますけれども、所定の期間内に私のほうは処理しております。ただお断わり申し上げなければならないのは、恩給局に入る前に、多くの書類は主として沖繩県あるいは厚生省を通じて来ますから、その間にやりとりが相当あるものと思われます。そういうことを全部ひっくるめての問題につきましては、私、お答えする権限がございませんが、要するに、入りました以後につきましては、行政管理庁からの勧告もございますので、できるだけ早く処理しておりますし、そういう方向で今後やっていきたいと思います。  問題は、事務処理についての長期の援助はどうだという御意見かと思いますが、私のほうも、復帰前、復帰後におきましても、数回にわたりまして職員を派遣しておりますが、できる限りにおいて御協力は申し上げたい、ただしできる限りでございます。われわれといたしましても、いろいろ問題がございますので、可能な限りやりますが、場合によりましては、現地から出向いていただいて、マン・ツー・マンで御指導も申し上げたい、このように考えております。
  111. 入江慧

    ○入江説明員 厚生省の援護局で担当しております遺族等援護法の関係についてお答え申し上げます。  私どものほうの遺族等援護法によります年金の請求につきましては、現在、障害年金四十二件、遺族年金十八件、遺族給与金二十四件、計八十四件の手持ちがございます。ただ、先生先ほど御指摘のありました未処理分という中には、現在の八十四件と申しますのは、資料がすべて完備しておりまして、実際に処理の過程に乗っておるものでございますけれども、そのほかに、私どものほうに出てまいりました書類が不十分なために、それの補完を沖繩県当局を通じまして沖繩県の市町村にお願いしている部分がございます。この部分につきましては、沖繩県の特殊性を踏まえまして、私どもとしましても、処理にあたっては特別に配慮しているわけでございますけれども、その中で、特に不十分であるためにお願いしているものがかなりあるのではないかと思います。この点につきましては、ブロック会議等を通じまして指導を行ないましたり、あるいは個別に職員を派遣しましたり、あるいは、あちらから県の職員の方が上京しましたりして、適宜打ち合わせしてやっておるわけでございますので、今後とも先生の御指摘の趣旨に従いましてそういう方向で努力いたしたい、かように考えておる次第であります。
  112. 上原康助

    ○上原委員 ちょっと私、件数のあれを持っておったのですが、見当たりませんので……。とにかく、いま八十四件と何件ですか、三十何件とかおっしゃっているのですが、それ以上に未処理の面があると思うのです。もちろんそれは、復帰したから全国一律にブロック的にやるということもいいかと思うのですが、何しろ従来の復帰前の事務処理の面の滞留なり、先ほどお話しの国体やら海洋博やらで追い回されて、市町村も県も、とてもそこまで手が回らぬというような実態なんですよ。そういう面で私は、こういった戦後処理的な問題については、単なる市町村から上がってくるのを待つ、あるいは県側がルートを通してくればそれを処理するというようなことではなくして、もっと親身に関係者が行政指導するなり事務のスピードアップをしていくということが必要だと思うのです。その面で申し上げているわけですから、その点、関係局で洗い直していただいて、人員配置が必要であれば配置をするし、散歩がてらに二、三日行って帰ってくるというのではなくて、少し腰を落ちつけて向こうで実態を調べるのもいいことだと思うのです。そのくらいのことをやっていただきたいと思うのです。  そこで、実は委員長お願いですが、私は、鹿山事件、この問題をきょう取り上げてその後の処理がどうなっているかお伺いしたがったのですが、ここで聞くとかなり時間がかかる気がしますので、あらためて時間をとっていただきたいのですが、もしよろしければきょうはこれまでにとどめたいと思います。
  113. 三原朝雄

    三原委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  114. 三原朝雄

    三原委員長 速記を始めて。
  115. 上原康助

    ○上原委員 それでは、本委員会でも何べんか過去の久米島事件についてお尋ねをして、被害者に対してはそれ相応の措置をとるという前総理府総務長官の御答弁なんかもあったわけですね。きょうちょっと忘れて法務省は来ていただいていないのですが、一体、久米島事件について、その後、政府関係局はどういう処理をしたのか。また被害者に対しての補償といいますか、援護、そういった面の措置はどうなされているのか。説明をいただきたいと思います。
  116. 岡田純夫

    ○岡田政府委員 いまのお尋ねの問題につきましては、法務省、それから厚生省当局等ともしばしば協議いたしてまいりました。法務省のほうは、主として鹿山事件の加害者といわれている人についてどう考えるべきかというふうな観点から検討してもらったわけでございますけれども、この問題につきましては、何せ終戦近い時点での問題でありましたので、時効にかかっておって、刑事の面からも民事の面からも無理であるというふうな回答を私どももらっております。  それから国家賠償法というような問題からも検討いたしましたが、これは国家賠償法施行後の問題を対象にいたしておりますので、施行前の問題につきましては対象にならないというふうな法律のたてまえになっておりますので、これも、国家賠償するかしないかは別問題として、法律上無理だといったようなことであります。  それから、そういう問題は別としまして、いわゆる被害者の方についての措置でありますけれども、被害者の方の問題につきましてはできるだけ調査をいたす。できるだけと申しますか、そういう事件が非常に不幸な事件で沖繩の方々の心に影響のある問題でありましたので、できるだけ緊急に措置をいたしたいということで調査を進めてまいりました。  それで、久米島事件につきましては明確になっておりまして、被害者の方が二十名おられる。その方々の遺族に対する受給措置ということになりますけれども、それにつきましては、いわゆる遺族等援護法によりますところの年金給付、あるいは弔慰金、あるいはそれ以外にいわゆる戦闘協力者でなくなった方につきましては、昭和三十七年に閣議できめまして見舞い金を差し上げるというふうな措置をいたしてまいりました。そこで、残られた方々についてどう考えるかということでございますけれども、要するにこれは、従来措置してきたのと同じように、その対象の方で受け取られるべき遺族の方がはっきりしていればいつでも差し上げる。それにつきましては、県のほうと十分協議いたしまして、その実態を県のほうでも調査してもらいまして、手続を経て出していけるものならば、残った方々についてもいつでも予算的措置を講じたいという態度でございます。
  117. 上原康助

    ○上原委員 いまの御答弁に対するこまかい点はまたあとでお伺いしますが、大臣に一点お伺いしておきたいのですが、私が聞いたところによりますと、前総務長官の山中さんは、この久米島事件については事務引き継ぎの重要案件の一つだということでぜひ処理をさせたいということだったかと思うのです。したがって、長官が開発庁長官あるいは総理府長官に御就任になられる時点において、この久米島事件の取り扱いについてはいろいろお話し合いがあったかと思うのですが、どのように長官として、遺族の補償の問題、あるいはこの鹿山事件について今日まで指示をしてきたのでしょうか。ちょっと大臣立場での御発言を求めたいと思います。
  118. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 私の前任者である本名開発庁長官からも、事務引き継ぎの場合の重要な問題として引き継ぎされましたことは事実でございます。その引き継ぎされました要点については、いま局長が申し上げましたとおりの事実をそのまま引き継ぎを受けたということに相なっておりますので、御承知のとおりの被害者のうち措置の済みました八人に対しましては、それぞれ法的根拠によって措置を講じ完了いたしておる。残された方々に対する問題については、また遺族が判明し次第同様の措置を講ずるという方針であることを表明申し上げておきたいと思います。
  119. 上原康助

    ○上原委員 どうも前長官の本名さんを忘れて申しわけないのですが、私が言ったのは、山中長官から本名長官へまたさらに引き継がれていると思うのです、いま御答弁のありましたように。そこで、これはいろいろ経緯がありますので、こういった問題をうやむやにしたくないという私の立場と、けじめはやはりつけなければいけないと思うのです、問題を提起した以上は。  そこで、先ほどの御答弁ですが、国家賠償法の適用はできないという見解というのは法務省の御見解ですか。その点は、関係省庁で相談するというのが会議録にもありますように、いろいろなさったと思うのです。その点、きょう法務省をお呼びしていないのですが、あらためて聞く機会もあると思うので、念を押しておきたいと思うのです。国家賠償法の適用というのはできないという結論を出したというふうに理解していいのかどうか。
  120. 岡田純夫

    ○岡田政府委員 この点につきましては、法務省、厚生省、沖繩開発庁、三者しばしば会合いたしました席で、国家賠償責任については、この事件は、国家賠償法、これは昭和二十二年十月二十七日に施行になっておりますが、その施行日以前の事件であるため、この事件がかりに違法不当の権力行使の事案だとしましても、国家には賠償責任はないと解されるというような見解に到達しているということであります。
  121. 上原康助

    ○上原委員 さきに引用いたしましたが、山中大臣もやはりここで、これは四十七年四月二十五日の沖特での議論ですが、わが党中谷議員の質問に対する御答弁の中で、今後、法務省、その他厚生省、私どもの恩給局、いろいろの関係がございますから、各省庁相談しながら具体的なケースについて、これは国家賠償であるか、あるいはそれに対する遺族扶助料なのか、いろいろ検討していきたい云々というような御答弁をなさっているわけですね。さらに、もし国家賠償法が適用できないとなると、立法措置が必要であればそのことも考えるべきであるという御答弁もしているわけなんです。そういたしますと、いまの御答弁からしますと、国家賠償法は昭和二十二年、それ以前の事件なんで、該当しないという立場になりますと、じゃあ具体的には、先ほど大臣、二十名のうちで八人についてはどういう補償をしておるのか。また残った十人に対しては誠意を持って償いをしたいということもおっしゃっているわけですね、私の質問に対して。そういう面からしますと、もうすでに一年余経過してきたわけですが、具体的にはどういう処置をなされるのか、ぜひひとつこの際はっきりさしていただきたいと思うのです。
  122. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 非常に大事な問題でございますが、山中前総務長官、開発庁長官がどうしたことでどういう発言されたかということば、私つまびらかではございませんけれども、一応、現行法によってそれぞれの措置は講じ、完了を終わっておる。また残りの方々に対しては判明次第個々の措置を講ずるということになっておりますので、そうした段階でひとつ誠意をもって努力する。したがって、いま私たちが、これのみに対する対象としての特別立法を講ずるとか、あるいはそうした問題に対してさらに国家賠償法の問題等に検討を加えるというようなことは、当然いまの現行法によって適用する用意が政府においてあるということでこれは御理解をいただきたい、こう思っております。
  123. 岡田純夫

    ○岡田政府委員 考え方、方針はいま大臣のおっしゃったとおりでございますが、措置の内容と申しますか、個々について申し上げます。  小橋川共晃さんにつきましては、昭和三十五年に遺族給与金を裁定いたしております。それから同じ年の三月に弔慰金の裁定をいたしております。それから安里正二郎さんにつきましては、三十七年に公務扶助料の裁定をいたしております。それから糸数盛保さんでございますか、それにつきましては、三十五年に弔慰金の裁定、四十四年に特別弔慰金の裁定をいたしております。それから宮城英明さんにつきましては、三十三年の五月に公務扶助料の裁定をいたしております。それから宮城英明さんの内妻、これはちょっと遺族不明のほうに属しますのでいたしておりません。中村渠明勇さんにつきましては、三十年に弔慰金の裁定をいたしております。それから四十一年には特別弔慰金の裁定、そういう状況でございます。
  124. 上原康助

    ○上原委員 予鈴がなったようですし、これまた沖特でも議論できると思いますので、その資料は一応あとで出してください。  ただ、いずれにしましても、いまおっしゃるのは、軍人、軍属、おとなに対しては補償しているわけだが、三歳の赤子も実際には殺されたわけです。そういった被害者に対する問題はまだ全然検討されていないんじゃないかという気がしますので、久米島の二十名の方々に対して、そういう措置をした方々は、それなりにまだ中身の検討があると思うのですが、そのほかの事件もあったわけですね。それを含めて早急にひとつ措置を講ずるように要求をしておきたいと思うのです。この点は質問留保です。
  125. 三原朝雄

    三原委員長 この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後委員会を再開いたします。    午後二時十五分休憩      ————◇—————    午後三時二十九分開議
  126. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木下元二君。
  127. 木下元二

    ○木下委員 まず基本的なことからお尋ねをいたしますが、先日の中路議員の質問でも触れられた問題でありますが、そもそも恩給とはどういうふうな性格を持っておるのかということであります。社会保障制度の一部ではないのかどうか。先ほども上原議員の質問にもお答えがありましたけれども、恩給についてのいろいろな学説がありますが、そういうことはともかくといたしまして、恩給行政の衝に当たるものとして、この恩給の本質なり性格をどのように御理解されているか、簡単でけっこうですからお願いいたします。
  128. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 恩給の意義等については、恩給法に格別な規定はございませんけれども、公務員が国家に忠実に奉仕し、また奉仕したことに対してその公務員の遺族に国が補償する、あるいは奉仕した人に対して国が補償してやるという給付でございますから、実質的には社会保障とは相違するものだろうと考えております。
  129. 木下元二

    ○木下委員 恩給局の平川局長が恩給という雑誌の中でお書きになっているんですけれども、「恩給のもつ二つの性格、即ち純潔性と自己保存性が共によって立つ精神的支柱は共同社会としての国家を保全することと、それに直接奉仕するものの国に対する忠誠とであり、国家とそれに奉仕するものの両者の相互試行によるより高次なものへ昇華するための多くの重要な政策のうちの一つの制度が実は恩給制度なのである」、こういうふうにお書きになっているんですけれども、非常に高邁な理論で、しかも難解でありますが、この雑誌には、その内容は必ずしも総理府恩給局としての公式の見解ではないというふうにありますけれども、恩給行政の責任者である平川局長の行政に対する姿勢をお示しになっておるのではないかと思うのです。しかも平川局長はこの中で、「今や社会的に恩給がその独自の道をあゆむことについて批判や非難もきかれない」、こういうふうにあります。しかし、一銭五厘の赤紙でいやおうなしに、自分の生活を犠牲にしてまで引っぱられた兵士とその遺族に対しましてはわずかな額しか支給しないでおいて、旧将校などの職業軍人に対しましては優遇しておる現在の恩給制度にそのような考え方があらわれておるのではないかと思います。この点は一体どのようにお考えになっておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  130. 平川幸藏

    ○平川政府委員 具体的な点についてお尋ねがあったわけでありますが、恩給の本質といたしましては、私、別に高邁に書いたわけじゃございませんが、抽象的に書いたものですから、そういう表現になりましたが、やはり社会保障でないということを一つ言いたかったわけであります。ただ問題は、恩給の実際に果たしている機能を見ますと、社会保障的な面も相当あるということは認めます。たとえば、いま一例を引かれましたが、恩給受給者の中で非常に低額恩給がある、それば主として階級の低い者ではないか、こういった人たちにどう考えるんだという御質問だと思いますが、確かに先生の言われるとおりでございます。  なぜそういうことになるかといいますと、恩給制度の特色から出てきておるわけでございますが、一例を申し上げますと、俸給が実は八十二号俸まである。したがって八十二あるわけでございますが、在職年が三年から四十年まで約三十七段階ある。しかもその間にいろいろな加給制度なり、恩給特有の、本来ならば給与で見るべきようなものを恩給で見ているために、非常に複雑な制度になっておりまして、そういうのを組み合わせまして恩給年額が出ておるわけです。恩給は国家の補償であるということをいま副長官が言われましたけれども、その補償の度合いというものは、この法律の性格から考えますと、やはり在職年と最終俸給によってきまる。したがって、非常に短い在職年の方で低い仮定俸給の人は、結論としておのずから恩給額も低くなるということは、これは恩給法の性格から来ておるわけであります。  ところで、戦前におきましてはそれで一応ピリオドを打ったわけでありますけれども、戦後においては、そういうことで放置するわけにはいかない。そこでわれわれといたしましては、たとえば六十五歳以上の者に対しましては、加算につきましては加算減算率を撤廃するとか、あるいは公務扶助料におきましては倍率を高くするとか、あるいは少尉まで実際上階級を廃止するとか、こういうようないろいろな制度をとりまして、実質的にも機能的にも、その果たす役割りが社会保障的なものに近いような仕組みを考え出したわけであります。これは戦後的な一つの操作でございます、はっきり申し上げまして。  こういうことで、われわれといたしましては、いま先生が言われましたような、いわゆる恩給的な性格というものを、これは本質自体を変えるわけにはまいらないと思いますけれども、その果たす機能の上においてできるだけ社会政策的な面を導入していくということについては十分考えていきたい。現在までも果たしたつもりでありますし、今後とも考えていきたい、このように考えておるわけであります。
  131. 木下元二

    ○木下委員 その恩給の本質的な問題はあとから伺いますが、いまここでお尋ねしておるのは、軍人恩給の問題、特に高級将校などの職業軍人に対する優遇の問題であります。一九四五年七月二十六日に、申すまでもなくポツダム宣言を日本は受諾をいたしました。その後、戦争を放棄し、民主主義が保障された主権在民の憲法をつくりまして、そうして新しい日本の政治が始まったわけであります。戦後二十数年たつわけでありますが、すべての制度なりあるいは行政といったものは、この間多くの問題点はありましたけれども、過去の深い反省の上に成り立ったものであると考えます。私はこの過去のことについて質問しておるのではなくて、過去の侵略戦争のあやまちを、反省の上に立ってどう恩給行政に生かしていくかという問題であります。  さきの予算委員会での不破議員あるいは松本議員の質問に対しまして、田中総理は、ポツダム宣言を受諾しなければならないような国情であり、当時は宣言を修正するような力もなかった、すべてが侵略戦争ではなかったんだというような答弁をされておるわけであります。まさに事実に立脚しない、歴史を裏側から見るような答弁をしておるのであります。こういった政府首脳の考え方が旧高級将校などの職業軍人に対する恩給上の優遇措置となっておるのではないか。なぜ職業軍人の恩給は優遇されておるのか、このことを伺いたいと思います。
  132. 平川幸藏

    ○平川政府委員 おことばを返すようでございますが、実はその点についての理解が先生と若干食い違っておるのじゃないか、私はこのように考えます。というのは、私のほうでは職業軍人を特に優遇しておるつもりはございません。御承知のように恩給というのは、たとえば中尉であろうと大尉であろうと、その階級に応じて処遇するだけの話でありまして、特に職業軍人なるがために処遇をよくしているということは毛頭ございません。たとえば履歴等を見ましても、職業軍人であるかどうかは一切私のほうではわかりません。兵隊に入りまして以後しかわかりませんから。そういうことでございまして、むしろ逆に、ことしの加算恩給の金額計算に七十歳以上の人は算入するという制度がございますが、これなんかでも、実は本来ならば、職業軍人を優遇するならば五十年まで算入できたわけです。それを私のほうでは文官並みに四十年までで切ったということは、むしろ職業軍人を、こう言ってはなんですが、むしろ結果としては冷遇したというようなことになるわけでございまして、事実、統計的に申し上げますと、職業軍人という履歴は私のほうではわかりませんが、いまかりに少佐以上を職業軍人であるというように仮定いたしますと、二百五十四万のうち三万四千人しかいないわけでございます。一・三%でございます。しかもこれは故人も入れましてでございますから現存者はもっと少なくなりますが、要するにその程度の分しか占めておりません。先ほど申し上げましたように、要するに階級あるいは俸給そのものが法律できまっておるわけでございまして、むしろわれわれといたしましては、下のほうの底上げに努力してまいっておるということを再々申し上げましたが、下のほうの階級というのはやはり赤紙召集者である、こういうふうに理解していいのではないかというふうに私は考えております。
  133. 木下元二

    ○木下委員 高級将校は職業軍人の範疇ですけれども、常識的な意味で伺っているのですけれども、あるいは高級将校というふうに言ってもいいと思うのですが、そうしたものに対して優遇はしていないと言われるのですが、これは少なくとも、社会的に見て、客観的に見て私は言っておるので、あなたが言われるように、恩給の基本である退職時の俸給であるとか、あるいはこの軍人の場合の仮定俸給、こういったものと在職年数を基礎としてきめるんだ、だから当然出てくることであって優遇ではない、こう言われるのですけれども、これは非常に私は問題はあると思います。  その前にちょっとお尋ねしたいのですけれども、この日本が、先ほども言いましたように、ポツダム宣言を受諾したことによってすべての日本軍は解散し、なくなったと思うのですが、そして旧軍人の階級もそれに伴って当然なくなっておるというふうに理解しておるのですが、それはそれでいいんでしょうか。あるいは違った見解をお持ちでしょうか。
  134. 平川幸藏

    ○平川政府委員 一般的にはもちろんそれでいいと思いますが、ただしこの問題につきまして、私は、有権的に軍隊について制度的にこうなったと言う立場にございません。したがいまして、その点につきましては、軍隊組織はもちろん組織としては一般的になくなったわけでございますが、私どもとしては、軍人としての身分を言っておるわけでございます。
  135. 木下元二

    ○木下委員 問題は軍人の場合の仮定俸給のきめ方ですね。これに問題があるように私は思うのです。法律できまっているからしかたがない、こう言われるともう身もふたもないのですが、そういう法律のきめ方がどうかということで議論しているのですから。それで、大将の場合は七十二万六千円、兵の場合七万九千八百円というふうに九倍以上も違う、こういうのが現実にあるわけでしょう。これが基礎となってこういうふうな恩給の格差が生まれておる、こういうことです。  公務員一般の場合は恩給の適用を受ける。この場合は退職時の俸給を基礎として恩給がきめられる、これは法律できまっているからそうなるんですけれども、この問題について、これもこれまでいろいろ議論がありますけれども、物価はどんどん上がっていくが、恩給はそれに伴わない。したがってあとに退職した者との間に格差が生まれてくる、こういう問題があるわけです。あとに退職した者との間に不均衡を生ずる。その不均衡、あるいは不合理と言ってもいいと思いますが、その問題について一体どう考えられるかということです。  これは前の平川局長の国会の答弁があるわけですけれども、こういうふうに言っておられる。退職してしまえば職にあった当時の責任と義務はなくなるのだ、だからやむを得ない、こういう考え方が示されております。もう少しそのまま引用いたしますと、退職時の俸給を基礎にして恩給を計算することの意味ですね、その問題についてこう言っておられる。「これは私の考えでございますが、現実に国家に対して寄与しているわけでございませんから」、やめた後はですね。「したがって御本人としては、国家に対してかつて持っておった、地位に応じたような義務感あるいは責任感がないのは当然だと思います。また国家としても、かつてその地位にあった内容に応じた義務を要求することはできない。これは当然かと思います。なぜならば、現在その職についていませんから、その職に伴う責任と義務というのは、国家とその御本人双方において、現実的になくなるということは否定し得ない事実であると思います。したがいまして、それを割り引くということではございませんけれども、かつての退職者である恩給受給者に対しては、その責任と義務に応ずる内容のそういった経済的な意味が、完全にはなくなりませんけれども、なくなることは理論的には考えていいのではないか、私はこのように考えます。」こういう一節があるのです。つまりこの考え方でいきますと、軍人の場合の仮定俸給を定めてこういうふうなひどい格差を設けるということ自体が、はなはだ問題ではないかと思うのです。大将も兵もその当時はそれぞれの義務と責任があったわけですけれども、それがなくなったわけでありますから、したがってこういう点からいいましても、こういうふうな大きな格差を残しておくことには問題がある、これが第一点であります。  さらに第二点として重要なことは、旧軍隊は、先ほども申しましたように、なくなったということです。これはある官職が廃止されて姿を消したというような問題ではありません。その場合は恩給の支給はあるのでしょうけれども、そういうものとは私は違うと思うのですね。軍そのものがもう根こそぎその価値を否定されて解散をしてなくなったのです。大将も将校も下士官も兵もなくなったわけです。私も実は軍隊に行きまして復員して帰ってきました。復員したときには、倉庫からいろいろなものを分けてもらいました。しかし階級章だけはちゃんととられて返上したわけですけれども、返上して復員しているのです。そういうふうに階級も一切否定されて軍隊というものが解散をしておるわけです。だから厳格な階級制をしかれた軍隊そのものが許されないものとしてその存在を否定された、こういうふうに考えざるを得ないと思います。にもかかわらず、仮定俸給といったものをつくり出して、その価値が否定され消え去ったはずの階級制、軍隊をそのまま反映したような恩給制度になっているということです。年老いた軍人、ことに生活困窮者に対して生活保障的な措置を講じる必要はあろうと思いますが、そういうことと問題の本質が違うわけですね、この問題は。  それから、さらに第三点として申したいのは、最初局長も言われました恩給の性格あるいは本質と関連する問題ですけれども、恩給というのは国家に対して忠実に勤務したことに対する給付なんだ、こう言われるのですが、それには大きな前提があると思うのです。国家のために忠実に尽くした、つまり国家的な利益に貢献したということだと思うのです。たとえば、国家と国民を重大な破局に導いた者に対して恩給を支給するというのでは、これは国民感情に合致しないわけです。国民を奈落の底に突き落としたかつての戦争遂行に重要な役割りを果たしてきた高級将校などのいわゆる職業軍人に対して、国家に対して忠実であったという理由で恩給を支給する。これはさっきも言いましたように、社会保障的な意味で支給するというならまた別ですけれども、そうでなくて、そういうふうな高級将校に対して、国家に対して忠実であったという理由で恩給を支給する、しかもひどい格差のある優遇措置を講ずる、ここに私は大きな問題があると思うのです。この点は私は理解できない。私だけじゃなくて、たくさんの国民が理解できないと私は思う。いま三つの点を申しましたけれども、こうしたことについてどういうふうにお考えでしょう。
  136. 平川幸藏

    ○平川政府委員 お答えいたしますが、その前提といたしまして私の説明を補足いたしますが、まず仮定俸給の問題で、上と下が相当格差があるではないか。確かにそのとおりでございますが、ただ、客観的な現在の状態を申し上げますと、現在は兵の仮定俸給が三十四万九千円でございます。それから大将の仮定俸給が二百四十万円でございまして、その格差は六・八倍です。先生が御引用になりましたのは昭和三十年ごろの仮定俸給だと思います。それは確かに十倍近いということでございますが。さらにさかのぼって申し上げますと、戦前におきましては大将の仮定俸給が七千五百円でございました。それから兵の仮定俸給が六百円でございますから、十二・五倍でございました。逐次低減の傾向を示しております。これはまさに先生の御指摘になった考え方を、十分ではございませんが、ある程度反映している、私はこのように考えておるわけでございます。  次に、審議会の形式、やり方につきまして私が発言したことについて、かつてそういう状態であってもいまはそうじゃないじゃないかという義務と責任の問題について御引用がありましたが、私から弁明させていただきますと、これは恩給審議会方式というスライド方式があったわけでございます。それは物価と国家公務員の給与を二本の柱にいたしまして、スライドといたしましては、まず物価の上昇分だけは全部見る、それからなおかつ物価と公務員給与の間に格差がある場合におきましては、その間の四割をカットいたしまして六割だけを上積みする。六割というのは生活給的改善部分であり、四割というのは職務給的部分である。その職務給的部分は、現在の恩給受給者はかつて公務員であっても現在公務員ではないから、職務と責任の内容に基づく職務給的部分というのは均てんする必要はないんではないかということの説明として申し上げたわけであります。したがいまして、上下の格差の問題として申し上げたわけではございません。  ところが、この審議会方式につきましては、先ほど申し上げておりますように、当委員会の御審議なりあるいは各方面の意見を聞きつつ、このたびのような公務員給与によって改善をするという方式に変えさせていただいたわけでございまして、実はその説明は、いまから申し上げますと、確かにその当時の審議会方式の説明であったわけであります。その点ひとつ御了承願います。  最後に、基本的には、先生がいま申されましたように、戦争遂行について意識的に協力した、あるいはむしろ指導的な役割りを果たした、そういった人たちに対する恩給についてはやるべきではないのではないかというふうに受け取りましたが、実は恩給というのは、客観的な条件によって給付するということでございますから、先ほど福長官が申しましたように、忠実に勤務しということの一つの例を申し上げますと、裏返して申し上げますと、たとえば忠実に勤務しなかったという例を取り上げますと、在職中に禁錮もしくは懲役の刑に処せられますと、恩給法五十一条によりまして、引き続いた在職年につきまして、従来ずっとつとめてきた在職年につきまして、これはカットされるわけです。それは逆に言いますと、忠実に勤務したということの反対の表現でございますから、そういった場合には恩給を給付しないという説明でございます。したがいまして、主観的に本人が国家に対して協力したか、あるいは戦争政策を遂行したか、そういったことについてはわれわれとしては関知しない。少なくとも恩給法は関知しないような仕組みになっております。その点はひとつ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  要するに、恩給という制度も、ただいま申し上げましたように、相互の間におけるバランスの問題もございましょう。そのバランスの感覚というものが、時代によっては必ずしも同一のものではなくて、逐次変化する可能性もございます。そういうことを考えながら、やはりいろいろ社会的な要請等も入れながら考えていくべきだということについては、私もそのように考えます。
  137. 木下元二

    ○木下委員 私は、戦争に協力した者に対して恩給をやるべきではないということは言ってないのです。よく聞いていただきたい。私は、かつてのあの忌まわしい戦争に重大な協力をした者、あるいは指導的な役割りを果たした者、そういう者に対して、国家に対して大きく貢献をしたということで、そういう意味の恩給をやるということは、これは国民感情から見ておかしいではないか、こういうことを言っているのです。だから、恩給というものを社会保障的な観点からとらえて、年老いた人たちに対して、たとえ旧軍人であっても恩給を支給する、これはけっこうなことだと思うのです。そうではなくて、いまあなたが言われるよりに、恩給というものは、そういう国家的利益に奉仕した者だ、そういう角度で恩給をとらえて、そしてなおかつ、旧軍人、戦争指導者に対して、国家のために尽くしたんだということで恩給を支給するということになると、これは私たちとしては納得しがたいものがある、こういうことを言っているのです。  まあ、それはけっこうですが、特に申したいのは高級将校らの職業軍人は、これは一〇〇%とは言えませんけれども、本人の意思によって軍人になったわけであります。当時、軍国主義の世の中では、自分の意思とかかわりなく軍人にならざるを得ないような教育が行なわれ、さらにそういった政策がとられ、天皇陛下のためならばということで帝国軍隊に組み入れられていったわけであります。そういった、当時の天皇制によりまして一片の赤紙で強制的に兵にさせられた労働者、農民、漁民、学生など、あらゆる階層の国民はそのことによってばく大な被害を受けておるのであります。このような誤った侵略戦争に強く反対した日本共産党員、民主主義者、学者は、絶対主義的天皇制のもとで、非国民としてとらえられたり、あるいは殺されたりしたことは、これはもう歴史が示すところであります。戦後、軍国主義から民主主義の新しい政治が行なわれ、このような侵略戦争は二度とすまいとして今日まで来たわけであります。このような今日、いまだに旧帝国軍隊の階級が恩給の中に生きている。これは私はもうすべて平等に改めるべきではないかと思います。先ほど、だんだんと改まってきておるということを言われました。幾らかよくなってきてはおるようでありますけれども、抜本的にこの点は洗い直すべきではないか、私はこう思うのですけれども、いかがでしょうか。
  138. 平川幸藏

    ○平川政府委員 実は赤紙召集者に対する恩給の改善の問題でございますが、諸外国の例を申し上げますと、もし日本のような場合において諸外国で恩給を給付しているかと言いますと、それは給付しておりません。というのは、日本は御承知のように、加算恩給という特殊な制度があるわけでございます。戦地へ一年行きますと四年に換算されるわけであります。したがいまして、三年行きますと十二年に換算されて恩給年限に達する、こういうことでございますから、考え方によっては、むしろそういう人たちは非常に優遇した。いままさに先生言われたような、結果としてはそういう趣旨が入っておる、私はそのように考えます。したがいまして、制度的に見ると、これは日本の固有な制度でございまして、ほかの諸国の制度におきましては、もし日本と同じような状態であったならば恩給が受けられなかった人が多数出ておるというのが現状でございます。そういう意味からいきますと、むしろ結果といたしましては、そういった趣旨において、非常に下級のクラスの人たちに対して処遇をしておる。処遇のしかたとしては不満足な面はあろうとは思いますけれども、そういうことはいえるのではないかと私は思います。
  139. 木下元二

    ○木下委員 さっきも指摘されましたように、いまだに大将と兵との間には六・八倍という大きな格差があるわけです。しかし、先ほども私が指摘しましたように、もう終戦のときに階級的な軍隊というものは、一切の価値が否定されてなくなったわけでしょう。しかし、それをいまだにそのまま残して、そういう階級制軍隊の存在を反映したような恩給制度をつくっておるということには、これは問題があると思うのです。ひとっこれはよくお考えいただきたいと思います。いまのお話を聞いておりますと、だんだん差がなくなっていく、これはけっこうだと思うのですが、そういう方向で行くことが正しいとお認めになるのか、あるいは差を設けておくことが必要だというふうにお考えになっているのか、ちょっと私はよくわかりにくかったのですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  140. 平川幸藏

    ○平川政府委員 結論として、上下の差が全くなくなるということは私、考えておりません。それは必ず限界があると思います。その限界はどの程度かということは、いまここで申し上げるわけにいきませんけれども、またそこまでまだ検討が進んでおりませんが、われわれといたしましては、限界に近づきつつあるほど相当社会政策的な配慮はしておる、こういうことでございます。
  141. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、そういう格差をもっとだんだんとなくしていく方向に進んでいくんだ、限界はあるにしてもそういう方向で行くんだということはお認めになるわけですね。
  142. 平川幸藏

    ○平川政府委員 先ほどの私の答弁、ことばが足らなかったと思いますが、そうではなくて、やはり限界はあるんだということを結論として申し上げました。その限界はどの程度かということはわかりませんが、相当限界に近づきつつありますから、今後、先生がどの程度考えておられるかわかりませんが、思い切った格差の解消というものがあるかないかという御質問であれば、それはあまりない。ただしその限界は、これは数字的な問題でございますから、いまここで数字をもってどの程度が限界であるかということは私お答えできませんが、これも社会的ないろいろな情勢の変化にもよると思います。しかし、われわれといたしましては、最終結論といたしまして、上下の格差を全くなくするというような状態は考えておりません。
  143. 木下元二

    ○木下委員 この前の憲法記念日の日に一部の人たちは、自主憲法制度を叫んで集会を開いておりましたが、田中総理の決断で提出をされようとしておる小選挙区制によりまして、自民党単独政権を絶対的なものにし、憲法を改悪しようとする策動もあるわけであります。このように、この旧軍人恩給につきましては、自民党政府が軍国主義復活の露払いとして利用されておるわけであります。そういう観点から申しまして、この旧高級将校などの職業軍人に対する優遇制度はやめるべきである、このことを私は強く要請をいたしておきます。  それから次の質問でありますが、これは少しわかりにくいのでお尋ねするのですが、どうもこの恩給法は、さっきから言われておりますように、わかりにくい法律で、お尋ねしたいのでありますが、恩給法によって恩給を受ける者と、それから国家公務員共済組合法による退職年金の支給を受ける者とがあるわけでありますが、この区別はどこから生まれておるのでしょう。特にいわゆる文官ですね。公務員の場合に、共済組合法の適用を受ける者もおる、一方、恩給法の適用を受ける者もおるという区別の理由ですね。それをちょっと伺いたいと思います。
  144. 平川幸藏

    ○平川政府委員 正確に申し上げますと、恩給法の適用を受ける者もおるし、同時にまた共済組合法の適用を受ける者もいるということはありません。というのは、昭和三十四年十月でもって、一般的には恩給法適用者は共済組合の長期組合員に強制的に適用されたわけでございます。それから地方自治体におきましては、昭和三十七年十二月に強制的に切りかえられたわけであります。強制的に切りかえられましたので、昭和三十四年九月三十日現在におった人につきましては、その後引き続いて共済組合員となるわけでございますが、引き続いた者に対して共済組合法を適用はするわけでございますが、ただ恩給法としての既得権を保障する必要がございますから、三十四年九月以前の在職期間なり計算方法につきましては、すべて恩給法の条件をそのまま持ってまいりまして共済組合法に書いております。したがいまして、昭和三十四年十月を境といたしまして恩給が共済に切りかえられた、こういう表現が一番適切かと思います。
  145. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、恩給法の二十条にずっと羅列して書いてある公務員ですね。これはどういうことになるのですか。
  146. 平川幸藏

    ○平川政府委員 したがいまして、これは、三十四年十月、ないしは地方公務員ですと三十七年十二月、それまでにやめた人はこれの適用があるということであります。
  147. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、三十四年まではそういうふうに区分けをされておったことになるでしょう。そういうふうに、公務員であっても別々の扱いがされておったということの理由はどういうことなんでしょう。一方で共済組合法の適用があり、一方で恩給法の適用がある。公務員の身分によってそういう区別があったわけでしょう、三十四年までは。
  148. 平川幸藏

    ○平川政府委員 先生の質問の御趣旨は大体理解いたしました。こういうことかと思います。それは三十四年十月までは恩給法の適用しかないわけでございます。三十四年十月以降は共済組合法の適用しかないということでございます。三十四年十月までの、なぜこういうことを書いたかといいますと、たとえば雇用人等は公務員ではなかったわけでございまして、それを排除するためにこういう規定を置いた。要するに、限定的に公務員の種類とは何ぞやということを書くためにこういう規定を置いたわけでありまして、この人たちはすべて恩給法の適用者であります。したがいまして、同時に共済組合法を適用されるということはございません。三十四年十月以降になりますと共済だけの適用になります。ただし、これは期待権でございますから、三十四年十月までの利益を保護するために、すべてそういう人たちに対して、従来の上限なり計算方法等をそのまま新しい法律に書いたわけでございます。
  149. 木下元二

    ○木下委員 三十四年までは、公務員関係であっても、いわゆる官でなくて雇用人の場合は恩給の適用がない、官の場合に恩給の適用があるという、そういう差別があったわけですね。それは公務員の職場の現実の仕事の内容、職務からいいますとほとんど変わりがないというところが多いと思うのです。ところが、そういう官か雇用かという、そういった身分的な差異によって、恩給法の適用があり、あるいは適用がないということになっておったわけですね。それは一体どこから来ているのでしょうか。どういう形でそういうことになっておるのでしょうか。簡単でけっこうですから……。
  150. 平川幸藏

    ○平川政府委員 それは御承知のように、恩給法は官吏に対する年金でございますが、雇用人は官吏からはずされておりますから、そういうことになっております。
  151. 木下元二

    ○木下委員 それじゃちょっと答弁になっていないようです。法律できまっているからそういうことになっているのではなくて、私はもっと実質的なことを聞いているのです。私から言いますと、結局、あなたも書物に書いておりますけれども、恩給を受ける者というのは国家に対して忠誠を尽くすんだ。このあなたの恩給の本にも書いてある。国家に対し忠誠を尽くすべく拘束された者に対する給付なんだというふうに書いてあるのですけれども、あなたのお考えは、恩給とは本来特にそういう忠誠義務のある者に対して給付される、これが恩給だという考えと違うのですか。
  152. 平川幸藏

    ○平川政府委員 先生も御承知のように、従来、戦前の行政法におきましては、官吏組織令というのがあったわけでございます。官吏服務紀律とか官吏の分限令というものがあったわけでございます。その官吏が一般的に次のような義務を持っておるわけです。これは行政法的な一般の見解でございますが、まず第一に服従の義務というのがございます。これは一応法令に従う、あるいは上司の命令等に従うという義務でございます。第二は忠実の義務というのがございます。忠実の義務というのは、単に法令に従うのみならず無制限に国家の利益を配慮する、そういう潜在的な義務を負う。そういう義務だということをいわれておる。これは一般的な通説でございまして、私が言っているのではございません。その二つの義務、しかも拘束された身分においてそういう義務を持つ者が官吏である、いわゆる判任官以上である、こういうことであります。この判任官に適用される年金が恩給である、こういうことでありますから、二段論法として結局、恩給はそういう官吏に適用される年金だから、官吏というものはそもそもどういう義務を負うかというとこういう義務を負う、したがって国家に対してそういう忠誠の義務を尽くした公務員に対して給付する年金である、それが恩給になるわけであります。
  153. 木下元二

    ○木下委員 そこで、戦前のことを言われましたけれども、戦前はいま言われたように、官吏服務紀律というものがあって、そういった忠実の義務というものがきめられておったと思いますが、戦後は官吏服務紀律というものは効力を失ったと思います。そういうふうな忠誠の義務とか忠順の義務というものはなくなっておると思うのです。判任官とかなんかということでなくて、公務員関係から一切そういった古い価値観念は否定されておるというふうに私は理解しておるのですが、その点はどうでしょうか。
  154. 平川幸藏

    ○平川政府委員 先ほど私、答弁を落としましたが、雇用人は恩給という年金の法律の適用を受けませんが、戦前からたとえば共済制度があったわけです。したがって、別のグループの共済の年金法があるわけであります。旧令共済といいまして、たとえば国鉄とかそういったところでは、雇用人の期間で相当長い勤務をした人に対してやはり処遇しなければならないというので、年金法があったわけでございます。現在もこれはございます。ございますというのは、たとえばベースアップになりますと、恩給と大体同じようにベースアップされております。したがいまして、要するに一切処遇がされてなかったわけではございませんで、そういう法律があって手当てされております。戦後は、いま先生が言われましたように、公務員制度というのは広く大きなワクになりましたから、そういう点はありますけれども、したがって共済組合法が生まれてきた、こういうことでございまして、何も雇用人には全く手当がなかったということではございません。
  155. 木下元二

    ○木下委員 私が質問しておるのは、戦後における公務員関係から、いまあなたが言われたような忠順とか忠誠の義務といったものはなくなっておるのではないか。戦前にあったような、官吏服務紀律といったようなものもなくなっておるし、雇いとか雇用とかいうことでなくて、公務員関係すべてからそういうふうな観念はなくなっておるのではないか、こういうことを聞いておるんですね。ちょっと私の質問に答えてもらいたいと思います。
  156. 平川幸藏

    ○平川政府委員 実は、恩給という年金の法律を通じて公務員制度についての御質問なんですが、これは現在の公務員制度についての答弁としましては、私、人事局でないので、これは無理だと思うのです。私自身が恩給局という局長を拝命しておりますが、これは年金を扱っておる局でございますから、現行のいわゆる公務員組織といいますか、公務員制度というものについて、私が有権的にここで発言することは適当でないと考えます。
  157. 木下元二

    ○木下委員 いや、あなたが何かそういうふうな忠誠義務がいまだにあるかのように言われるから、私は聞いておるんですよ。特にあなたの書物にも書いておられるし、いまのお話の中にも、そういう国家に対して忠誠を尽くしてきたことに対する給付であるというお答えがあったと思うんです。ですから私は、一体戦後の公務員関係においてそういうふうな観念はなくなっておるのではないかということを聞くのは当然のことなんです。ですから、あなたの恩給局長としての御理解の程度でけっこうですから、一体どういうふうに理解されておるのですか。
  158. 平川幸藏

    ○平川政府委員 私、実は先ほど申し上げましたように、現在の国家公務員法について、主管法律でございませんから有権的には申し上げませんが、私の個人的な意見として申し上げますと、これは現在、国家公務員は全体の奉仕者として、国家に忠誠あるいは忠実に勤務する義務は当然あると思います。
  159. 木下元二

    ○木下委員 私は、あなたが忠誠とか忠実とかいうことを言うから、言っておるんですね。戦前も同じように言われておったんです。旧官吏服務紀律というのがあった。それと同じように、それじゃ戦前と戦後と公務員関係は同じかということになってしまうので、聞いておるんです。これは、たとえば職員が任命にあたって行なう服務の宣誓というのがあるんですよ。その服務の宣誓を見ましても、これは人事院規則で明らかにされておりますけれども、忠誠なんということばは使われていない。「誠実且つ公正に職務を執行することを固く誓います」ということばになっておるんですよ。こういう公務員関係においては、戦前のような忠のつくことばを使うのは、私は半世紀ほど時代感覚が狂っておるんじゃないかと思うんですよ。この公務員関係の行政法関係の学説なんかでも、もう現在では、忠誠とか忠順義務なんということは言っておりません。誠実義務ということばを使っておりますね。忠誠というのは、どうも穏当を欠くと思うのです。この点はいかがでしょう。誠実というふうに改められる気はないのかどうか。
  160. 平川幸藏

    ○平川政府委員 私、先生におことばを返すわけではございませんが、恩給制度は実は明治七年から来ております。公務員制度改革までおそらく八十年か百年近い歴史を経ていると思います。その間、恩給法は大正十二年にできたわけでありますが、その前に官吏恩給法、軍人恩給法、こういうようにずっと前から来ております。そのことを私は申し上げているわけでございまして、そのことについての御見解かと思いましたので、私そういうことを申し上げたのでございます。  現在において、私が先ほど申し上げましたように、有権的な解釈をしろということについては、私は責任を持てないということを再三申し上げまして、現時点において、この時点において、はたして公務員とは何ぞや、どういう義務を持つかということについては、私はこれ以上申し上げる資格がないので、あるいはまた答弁を申し上げると誤解を生ずるおろれもございますので、私はこの程度でひとつごかんべんを願いたいと思います。
  161. 木下元二

    ○木下委員 あなたは恩給局にいられ、しかも戦前からいられて、非常に恩給の権威であるということですけれども、ただ恩給のワクの中だけでものごとを見ておるということになると、これはまた非常に問題だと思うのです。木を見て森を見ないと申しますか、やはり公務員制度、特に戦後新しく出発をした公務員制度、そこから立脚をして、その基盤の上に立って恩給制度というものを見なくては、とんでもない間違いをおかす危険もあると思うのですね。そういう意味から私はあなたに特に要望いたしたいのは、公務員制度について根本的にひとつ検討、考え直していただきたい。特にいまの忠誠といったこと、これは単なることばの問題ではないと私は思います。ひとつよくそういったことについて検討をいただきたい。このことを要請しておきます。
  162. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 先生の御趣旨、よくわかりました。忠実ということばと、局長は誠実ということばを混同して使っているようでございますけれども、国に誠実にサービスするのだというような考え方で、今後とも恩給制度に積極的に取り組んでいきたいと思っております。
  163. 木下元二

    ○木下委員 そういう答弁がございましたので、その点はけっこうですが、最後に一つだけ聞いておきますが、国家公務員法の百七条というのがありまして、この一項には、退職年金制度の樹立、実施が政府に義務づけられております。それからその二項で、「前項の年金制度は、退職又は死亡の時の条件を考慮して、本人及びその退職又は死亡の当時直接扶養する者のその後における適当な生活の維持を図ることを目的とするものでなければならない」、こういうふうにうたわれておるのです。この規定は、これは恩給法の適用を受ける公務員に対しても少なくとも準用されてしかるべきだと私は思うのです。この点はどうでしょう。どう考えられておりますか。
  164. 平川幸藏

    ○平川政府委員 実はこの規定は、少なくとも共済制度は現行の制度でございますから、これは直接ストレートにいけると思います。ところが私のほうの年金は、恩給法という厳然たる法律がございますから、これが基本的な根拠法規でございますから、この恩給法によって対処していくということでございます。
  165. 木下元二

    ○木下委員 それはそのとおりですけれども、私はこの規定が準用されるのではないかと聞いているのです。特に、改正されたのですけれども、その改正の前はたしか、一項、二項の「年金制度」、これは「恩給制度」ということばであったと思うのです。改正前は「恩給制度」であったものが、特に公務員共済組合制度がつくられるということを予想して、「退職年金制度」というふうに改まったように私は理解しておりますが、そういう経過もありますし、当然これは準用されるべきものではないかと思うのですが、特に、これはもう多くの方から指摘をされておりますように、恩給法の適用を受ける人たちがごく低額で恩給が押えられて、生活に困窮をしている、こういう人たちが続出をしておる、こういう状況であります。こうした問題が放置をされておるということは社会的にも許されないと思います。私は、社会的にも許されないばかりではなくて、法的にもきわめて問題であると思うのです。  その法的にも問題である理由といたしまして、この国公法の百七条の二項というのは、退職年金制度というものは生活保障を目的とするものだという趣旨なんですよ。そうでしょう。「適当な生活の維持を図ることを目的とする」、こういうことなんです。国公法では、国公法の適用を受ける公務員に対しては、こういうふうに生活保障を目的とした退職年金制度がつくられる。ところが、一部に恩給法の適用を受ける者が残っていて、その者に対しては百七条の二項の適用がない。直接は適用ないでしょうけれども、その準用すらないということになりますと、これは法のもとの平等の取り扱いにも反しますし、その精神から申しましても、当然これは準用されてしかるべきだ。そういうことになりますと、恩給法の適用を受ける者がきわめて低い水準で生活にも困っておる、そういう状態で放置をされておるという二とは違法状態ではないか、あるいは少なくとも法の趣旨にもとるものではなかろうか、こういうふうに私は考えざるを得ない。この点について所見を最後に伺いたいと思います。
  166. 平川幸藏

    ○平川政府委員 実はこの規定は、昭和三十四年に恩給法が共済組合法に切りかわりましたときに変わっておるわけでございます。したがいまして、先生が言われる意味におきまして、厳格な意味において準用ということを法律的に理解しますと、それは準用はないということでございます。  問題は、改正になる前の法律の百七条でございます。これは、「職員であって、相当年限、忠実に勤務して退職した者に対しては、恩給が與えられなければならない。  前項の恩給に関して必要な事項は、法律によってこれを定める。公務に基づく負傷若しくは疾病に基き退職した者又は公務に基き死亡した者の遺族に対しては、法律の定めるところにより、恩給を與えることができる」という規定でございます。それから百八条にも「目的」がございまして、そのときの表現といたしましては、「退職又は死亡の條件に感じて、その後において適当な生活を維持するに必要な所得を與えることを目的とするものでなければならない。」という似たような条文がございます、確かに。この条文の中でいろいろどう読んでいくかということでございますけれども、やはり退職したときの条件ということがここに明確に書いてございます。この条件というものは、私が先ほどから申し上げておりますように、給与、退職時の最終俸給と在職年ということによって算出した額ということに私はなると思います。  問題は、在職年が非常に低いということになりましたときに、あるいは退職時の俸給が非常に低いときにおのずから恩給が低額になるわけでありますが、これをどうすべきかという問題は別個の問題だと思います。したがいまして、それにつきましては、できるだけ底上げの方法で改善していくように努力すべきであるとし、またわれわれとしても、そのような努力をしておるつもりでございます。まだ不十分ではあると思いますが、今後ともさらに努力してまいりたい、このように思います。
  167. 木下元二

    ○木下委員 いまの国家公務員法百七条の問題ですが、厳格な意味では準用がないというふうなここを言われましたけれども、その点の論議はいたしませんが、かりに厳格な意味で準用がなくても、この精神というものは当然生かされるべきだと思うのですね。この百七条の二項には、これは「本人及びその退職又は死亡の当時直接扶養する者のその後における適当な生活の維持を図る」。「その後における」とあるのですね。つまりこれは退職後の生活保障をするということなんです。もちろん、現実に共済組合法の適用を受けておる者がどうかという問題はありますけれども、法のたてまえとしては、生活保障を見ていく、こういうことになっているのです。ところが一方、恩給法の適用を受ける者はそうではないのだ、そこまでは要請されていないのだということになると、これはおかしなことになると思うのですよ。そうでしょう。同じ公務員であって、恩給法の適用を受ける者はもっとレベルが低くて生活保障はないのだ、一方ではあるのにこちらのほうではないのだということになると、これは憲法的な問題になると思います、もしそういう解釈でいるとすれば。ですから、一方において、百七条二項によってこのような生活保障の法律規定があれば、少なくとも恩給法の適用を受ける公務員に対してもその精神は準用されるべきだ、そういうふうな法の精神に基づいて運営を進めてもらいたい、これは当然のことですよ。そのことを特に要請して私は終えますけれども、何かそれに対して、いや違う、百七条はあっても恩給法は独自にいくのだというような解釈があるとすれば聞かしてもらいたいと思います。
  168. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 いまの先生の御討論、たいへん私も同感だと思いますし、恩給というものが公務員の退職後の生活のささえであるということは事実でございます。そういうことで、私としても今後とも恩給年額の改善ということに努力して、少なくとも生活のささえとなるような形に持っていきたいと考えております。
  169. 木下元二

    ○木下委員 終わります。
  170. 三原朝雄

  171. 大出俊

    大出委員 この間、三時間余にわたりまして、珍しく私、この今回の法案には賛成できない、端的にいえば反対だということを申し上げたいわけなんですが、それぞれ論点を明らかにしておるつもりでございますから、いまさら繰り返して申し上げるつもりもないのでございますけれども、ただ、出していただいたこの資料をながめてみまして、この間どなたか質問しているのを聞いていたわけですけれども、どうも少し平川さん、あなた率直でないですな。やはりこれは率直に言うていただきませんと、私どもがここで審議して法律を通す以上、やはり恩給受給者あるいはそれにかかわる方々に対する責任がある。なぜ最低保障というものの引き上げが抜けたのかということについて、それはかくかくしかじかの理由であるということの説得力ある答えをしなければならぬ。おたくがいろいろ答えておられる中身が答えにならぬ。答えにならぬ答えを恩給局長はいたしましたと言って説得はできない。ですから、そういう意味でひとつ資料を出していただきたい、こういうふうに実は申し上げたはずなんです。あなたの答弁は議事録をお読みいただけばわかりますが、何で一体最低保障の引き上げを考えなかったのかということに対して、軍人だけに行ってしまう、簡単に言えばそういう言い方をされた。そうじゃないはずだと言ったのだが、いやそういうことになると言う。それならば私は資料をと、こういうふうに申し上げたわけであります。  そこで、この資料をながめてみて、確かに軍人のところは九七・一%、こうなっておるわけですね。「最低保障額引き上げの該当人員及び所要額試算(普通恩給三十万二千四百円、普通扶助料十五万一千二百円とした場合)」とあるわけですね。そこで文官、これが三八・八%。三十万二千四百円、こういうかっこうで最低保障をするとすれば該当者が三八・八%ある、こういう理解でよろしいんだ。このことは言いかえれば、三十万二千四百円以下の方々が文官の中に三八・八%おるということなんです。間違いないでしょう。そういうことですね、現実に。そうすると、三十万二千四百円に最低保障が引き上げられれば、文官恩給受給者の中で三八・八%の方々が影響を受けて、つまり引き上げられて三十万二千四百円のところまでいくというわけです。いわく、助かるというわけです。つまり、あなた、いろいろおっしゃったけれども、相当なこの該当者があることになる。  そこで、何か最後に分かれておりますが、いわゆる細目のほうの文官、これが二九・二%、教育一四・二%、待遇職員六八・四%、警察職員八四%、そうして旧軍人という一まとめに最後になさった中で、旧軍人が九七・一%である、こういうわけでございますな、そうでしょう。  そこで私は、旧軍人と、こう一口で言うんだけれども、ここに集中してしまうと、こうおっしゃるのだけれども、確かにそれは数字から見れば九七・一%、集中してしまいます。だから、そんなことを言ったってなかなかそういうわけにはまいりませんと、この間一生懸命皆さん質問にお答えになっていた。しかし、大東亜戦争というのは何年やったのですか、まず聞かしてください。
  172. 平川幸藏

    ○平川政府委員 昭和十六年十二月八日から、終戦の日が二十年八月十五日でございますから、約四年弱でございます。
  173. 大出俊

    大出委員 満州事変からどのくらいになりますか。
  174. 平川幸藏

    ○平川政府委員 たしか昭和六年だと思いますが、約十四年弱でございます。
  175. 大出俊

    大出委員 昭和六年から昭和二十年までということになりますと、これは算術計算していただけばいいのですから、二十から六引きますと十四でしょう。まん中引っかかったって十五年でしょう。そうすると、一番最初に満州事変始まったといって召集食った。私も召集だけれども、召集食って大東亜戦争の終わりまで全部居続けていたという人がかりにあったとしたって、在職年数は十五年しかない。そうでしょう。戦争が終わっちゃったのだから、それ以上いっこないのだから。だから平均四年ちょっとでしょう、この軍人恩給該当者は。そうすると、最低保障の中心は何かといえば長期在職者ですよ。文官の恩給納金を払ってきた方々は十七年ですよね、最低は三三・三三だから。共済長期を払った人が最低は二十年ですよね。そうすると、いわゆる文官、いまで言う公務員という解釈からすれば、そこまでいかなければ該当者はいないわけですよ。そうでしょう。まあそれは加算だ何だというのを別にすれば……。  そうすると、つまり年限を限ってものを考えれば、この該当九七・何%というんだけれども、ほとんどなくなっちゃう。長期在職者というふうに限ればない、ゼロ。さて職業軍人が残ったとしても、職業軍人の方々は最低保障がほとんど要らないんだ。そうだとすると、九七・一%である、こうおっしゃって、だからそこに集中するからというけれども、それは私は理屈にならぬ理屈だ。そういうものの考え方じゃ、まじめに一生懸命役人稼業をやってきて、今日九千五百人も生活保護を受けているなんというばかなことになっているのですから、解釈はできない、こう私は思う。だから、こういう数字をお出しになっても、そのことについて説得力ある回答ということにならない。つまり、今回最低保障の引き上げをお考えにならなかったという理由にはならない、こう私は思う。  ここのところを、もう少しざっくばらんに、こうこういう、こうしてこうだったということ。まさかこんなに上がるとは実は思わなかった。ところが藤尾さんあたりが、威勢のいいのがずっと押しかけて大蔵省から金を取ってきた。気がついてあっちのほうがやめたでしょう。しまった、しまった、と思ったが手直しがきかず、これを称してあとの祭という。言うなら言うではっきりしていただけば、来年なら来年びしっときめていただければ説得はできますよ。これは党主導型の予算獲得なんというのは初めてなんだ。あそこまでやったことはないんだ。そうでしょう。だから、それならそれでわかるんだけれどもそこらがあいまいだと、ましてどのくらいございますかと聞いたって、資料がないなんということを言っていると納得しにくいですよ。ざっくばらんに言ってくださいよ。
  176. 平川幸藏

    ○平川政府委員 先生の言われました事情もあると思いますが、もう一つ実は私個人的に感じておりますのは、軍人はいま言ったように、職業軍人、ないしは長く海軍には志願兵で行った人があるわけですね。いわゆる特務士官。こういう人たちは、もう二十年近く在職年を持っておりまして、案外数が多いわけです。実は金額三十万二千四百円でございますが、われわれがいままでやってきまして、厚生年金の定額部分が二十六万八千八百円になるんですが、その金額を私いろいろ各方面から聞いたわけです。そのとたんに頭に浮かびましたのは、実は十二年以上の軍人さんが三十万二千四百円ないしは二十六万八千八百円になりますと、その下の十一年のところが、最高もらっても、加算減算を撤廃しましても十一万円しかないんですが、そうしますと、二十六万からでは十五万の差、三十万からでは、約三分の一ですから十九万円の差があります。これを実は何とかしなければならぬのじゃないかということで、そのときに実はそういうワンセットでやらないと、片方だけ走りますと、片方のほうを改善するチャンスを失うのではないか。実はこれは率直な意見でございますが、こういうことで実は見送った事情もございます。先生最初言われました事情もございましょう。これは党の関係もございますから。実はそういうことでございます。
  177. 大出俊

    大出委員 率直にそう言っていただければこれはわかって、そうだというものならこれはやむを得ない。恩給局にとってみれば天変地異が起こったようなことだ。だから、いにしえは恩給局といっていばっておられても、矢倉さんの時代ですよ、平川さんの時代じゃないんだが、まことしやかに、三本立て仮定俸給表でございます、年寄り優遇だなんと言ったって、何のことはない、中に入ってやっているのはみな大蔵省なんだから。だから大蔵省主導型恩給の組み立て方式をこしらえて、大蔵省主導型で大蔵省から金を取ってくるんだから、大蔵省そのものが出てきてやっているようなものだ。だから、兵の十六号一万円というのを年間十二万円にするということ。ところが、そうはならないで、ABCに分けて、一番年の多いところを一万円にすれば一万円年金になるということで、逆算して三本立て仮定俸給表をつくってしまったというふざけたことを、まことしやかなことを矢倉さんがおっしゃるから腹が立つ。できないことはできない、こうだったということをいえば皆さんにわかる。  だから、そういうことにおさめていただいて、あとおっしゃる理屈、これも問題があるのです。私はこの前取り上げましたが、ここに手紙をもらっておりますしするので、この間例に引きました、神奈川県横浜市南区弘明寺町百五十四番地というところにお住まいの磯崎敏郎さん。おすし屋さんですが、この方は、海軍におられてたいへん苦労された方であります。昭和十七年九月一日に横須賀の第一海兵団に入団した。そうして水兵長におなりになったのが昭和十九年の十一月十五日、そして二十年の九月一日に二等兵曹になった。下士官です。そして二十年の十二月二十九日に横須賀に帰ってきた、こういうことなんですね。この間いろいろなところに行っておりまして、この人の一時恩給請求で出たものが差し戻された。それで私のところに手紙が来たわけでございますが、計算をしてみたら、これはあとで私は附帯決議をどうしてもつけていただきたいと思うので重ねて申し上げるのですけれども、どうも非常に気の毒なケースであります。  四十八年の二月七日でございますが、差し戻されて云々ということになりまして、調べてみましたら、二等兵曹、つまり下士官になられておりますのは二十年九月一日で、在職が二十年十二月二十八日ですから、この間が四カ月、それでこの加算が九月まで三カ月加算、それから十月−十二月までが一カ月ずつの加算、合計三カ月。だから、九月が三カ月と十月−十二月の一カ月ずつの加算、計三カ月、足すと合計六カ月。だから、二十年九月一日から十二月までの四カ月と加算の六カ月でぴったり十カ月、そうなると実在職年数は三年四カ月ある。三年四カ月あるんだが、下士官になられて帰ってくるまでが十カ月しかない。一年あれば一時恩給でしょう。二カ月足りない。しかし実在職年数は三年四カ月現にある。これがゼロなんだから。そうすると、これに二カ月、これは計算のしかたなんですが、一時恩給に該当すれば三万の金がもらえるわけです。ところが、わずかこんなことでゼロとなると、三万円がゼロなんです。ゼロと三万円では、三万倍片方はもらうわけです。どこかで恩給は切るわけです。そうでしょう。議員立法も三十幾つあるんだから、手直しをそのたびにしたのだから、どこかで切って、切ったところの上下を比べれば、ゼロと三万円になってしまう。  おたくのおっしゃる最低保障をとれば、そことの断層ができるというが、この断層は常にある。いままでの恩給の歴史というのは、一つ手直しをすると次の不均衡が出てくるからまた直す、ということをやってきているんじゃないですか。これはあなたは百も承知でしょう。だからそういう意味では、最低保障を考えるにあたって、断層があるから、だから考えなかったということにはならぬのですよ。これは理由にならぬ。断層をいりもつくってきたんだから。そうでしょう。  だから私は、この問題もついでですから申し上げますが、実在職年数が三年、ここから取り上げて七年未満、ここまでのところについて何とかしろというのです。これは先例もあるわけです。加藤さんの質問のときに、坪川さんが何も知らないで適当なことを答えるから私も腹が立つのだけれども、そうではなくて、六十五国会で、昭和四十六年五月十二日、ここで三項目で「旧軍人に対する一時恩給の支給に関しては、引き続く実在職年が三年以上七年未満の兵に対しても、前向きの検討を加えること」と入っている。これは大決議ですよ。一ぺんだけじゃないのです。かつてやってもいる。二十八年のころの基準でやっておりますよ。そうでしょう。  だとすると、こういう矛盾はやはり断層があるがゆえの矛盾なんだから、あとで手直しをする。そして恩給というのは生活給方式に徐々に変わってきた歴史があるんだから、やがてはなくなるのですから、新しく軍人恩給ができるわけじゃないんだから、ここらのところはすなおに、前向きでもう一ぺん各党の皆さんお願いをする。これは加藤さんの御質問にもあった。前に例があるんじゃないかという指摘まであったんだから、木で鼻をくくったようなことを言わないで、ここらももう一ぺん附帯決議をつける努力をされていただいて、そして皆さんはこの問題について、この次には、何とか三年以上のところを見てくれる一時恩給ということ。これは幾らでもない。ただ数は多いということはありますよ。ありますが、数が多いということは、それだけ必要なんだから。全額じゃないのです。この人たちは執念なんだ。一銭五厘で出征兵士で行ってきて、二カ月で片方は一時恩給をもらっているのにおれはもらえない、そんなふざけた話があるかということになる。無理もないでしょう。だから、その執念は認めて、それは二万円であっても三万円であっても、三年四カ月兵隊に召集をされて行ってきたという実績の上に立っての金だから、本人は納得できぬ。そういう意味では、これはぜひひとつ前向きで御検討いただきたい。だから先ほど最低保障の断層の話を持ち出されても、そうでございますかと申し上げるわけにはまいらない、こう思います。  しかし平川さん、だからといって、いまの平川さんの理屈、わからぬわけではない、私もだてでやっておるのではないから。だから、いまの断層をなるべく少なくする。あるいは、長期在職者のみならずもう少し手前の者をどう救うかということは、技術的に必ずしも不可能ではないと私は思う。だから私は、この間、こんなのなら恩給局で使っていただければ手伝いましょうかと申し上げたのですが、その辺は官僚の知恵でしょう。お考えいただけぬですか。そこのところはいかがですか。
  178. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 先生のおっしゃること、よくわかります。今回私たちが提出しておりました改正については、先生も御承知のとおり、恩給制度全体の問題の中で、スライドという問題、それから老齢化の問題、そういう問題が主体でございます。例の一時恩給の問題については、私ども考えないではない。先生のおっしゃるとおり、われわれも前向きでぜひ次には実現をしていきたい、そういう考え方でおります。
  179. 大出俊

    大出委員 政務次官の小宮山さんのほうで、一時恩給についても前向きで考えたいというお話でございます。それから、先ほど来のやりとりの中で二つ理由をおあげになった。一つのほうは、最低保障について恩給局長はお認めのようでございますから、そういう事実を踏まえていただきまして、断層をどうするかということは私もよくわかっておりますから、せひそこは知恵を御発揮をいただきまして、何とか来年はこの問題をもう少し掘り下げてください。いまは不満が残ると思いますよ。  ちょっとここで必要上申し上げておきますが、この間私はここでものを申し上げましたが、最低保障というのは、年額でいきまして六十五歳以上十三万四千四百円。これは、厚生年金の定額部分と、御存じのとおりプラス比例報酬部分、こうなっているわけですね。六十五歳未満の方々が十一万四百円、これが厚生年金の定額部分なんですね。そこで今回の場合は、厚生年金の定額部分が十一万四百円から二十二万八百円に改定をされる。これは通ればそうなるわけですね。比例報酬部分が二万四千円から四万八千円になった、こういうことになる。そうすると、現行の十三万四千四百円は二十六万八千八百円だ、こういうことですね。共済のほうが現行の十五万円。この十五万円の基礎が、厚生年金十三万四千四百円プラス扶養家族一・五人と見て一万五千六百円、こういう計算になっておる。これが合計十五万円。これが厚生年金のほうが倍の二十六万八千八百円。扶養家族のほうの一・五が三万三千六百円で、上がった。合計三十万二千四百円ということになったというわけですね。  この辺が表に出てこの国会を通るわけですから、そうだとするとこれは、厚生年金、共済をながめて恩給受給者は、この間私の質問で明らかになっておりますように、何と生活保護を受ける方々が九千五百人も存在をするという、たいへんどうもみじめなことになっておるわけでありますから、そういう意味で、たいへんこれは片手落ちではないかという意見が出るに違いない。なぜならば、私は最初質問いたしましたが、各党の皆さんが、ニュアンスはおのおの違いますが、みんなここに論点が出てくるわけでございますから、そういう意味で、それをすなおに受けていただいて、ぜひこれは政務次官に伺いたいのですが、次の段階で、いまここで附帯決議か何かの御相談を、議会側としては皆さんのほうとさせていただいて、つまり政府としてはすなおにそれを受けていただいて不満の解消をはかる。つまり実際の恩給の支給額を上げていくということにお考えをいただきたいと思います。いかがでございますか。
  180. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 確かに先生のおっしゃるように、生活保護を受けている方が九千人もいらっしゃる。恩給そのもの自体がやはり生活のささえであるということであります。そういう意味でも、今後とも前向きに検討をしていく必要があります。ただ、先生も御承知いただきたいのでございますけれども、今回、恩給制度そのものに新しい形で盛ってまいりましたことは多としていただきたいのでございます。
  181. 大出俊

    大出委員 これは恩給法の二条ノ二というものを入れて法律改正をお出しになったときに、これは一体調整規定なのか、スライド規定なのかという大きな論争を私はしたことがある。そのときに、山中さんの時代でございますが、まず有権解釈というものがなければならぬ、法案提出したんだからその有権解釈が政府になければならぬ、一体何なんだ、わかりませんと言ったわけだ。ふざけた話でして、恩給審議会をこしらえます、二条ノ二の規定をどう読むかということも含めて恩給審議会に答申を求めるようなばかなことはないのですよ、初めから。だから私は大蔵省主導型だと言う。答申が出た。結果的に三本立て仮定俸給表は直した。そうして委員長の新居さんがここに来られて、政府が諮問したんだから、答申を出したんだからお認めになるのはあたりまえでしょうと答弁された。こういういきさつがあって、それでもなおかっ法律上の手直しを皆さんはせざるを得ない。ただ計算の方式だけ、物価中心になっておったものを、三回当委員会が附帯決議をつけて、現職の公務員の賃金に合わせるべきであるというのをつけて、ようやくことし、いいかげんにしびれが切れたところまできて二三・四%ということになった。こういうわけですから、その意味では逆にこの委員会の労を多としていただきたいと私は実は思っておるのです。  これはずいぶん苦労したのです。皆さんのほうはちよいちょいおかわりになってしまう。私や受田さんはかわらずに十年やっているのですから。伊能先生もおいでになりますが、これはかわらないのです。だから、われわれの努力も多としていただいて、さらにひとつ、この間どなたか質問をしておられましたが、公的年金制度調整連絡会議ですか、総理府でやっておりますが、あれもどこが頭かしっぽかわからぬばかみたいなことをまだやっておる。そんなことはどうでもいいですから、やはり先にいなくなってしまう人をかかえておる恩給局だから、少なくとももう法律の手直しというぐらいは来年はしていただく。ことしだって春闘で公務員の賃金は、おそらく八月の勧告は一三%をこえるでしょう。物価のほうは、政府はやれ五・五%で押えるということだから、物価スライドなら五・五%だ。ところば公務員の人事院勧告なら一三%をこすのです。だから、これは公務員の現職の諸君の賃金にスライドをさせる、そういう法律的な手直しをして、なお時限のズレがありますから、これは全く詰めるということで、十月一日ではなくて四月からやるということに恩給はしていただく。そこまで持っていっていただかぬと本物になりませんな。いかがでございますか。
  182. 平川幸藏

    ○平川政府委員 先ほどからいろいろ御指摘いただき、従来からも御指摘いただいておるわけですが、われわれといたしましても、この議会においていろいろ審議されましたことにつきまして、いつも反省し勉強はしております。したがいまして、事務当局としては真剣に努力をしてまいりたい、このように考えます。
  183. 大出俊

    大出委員 せっかくの御労作をいただいて感謝しているのですが、ここに「新給与実施前に退職した者の恩給額調べ 総理府恩給局(公務員の種類 文官)」というのがございます。私、この間長い質問を申し上げたときに、二十三年以前に退職された方々についての問題を取り上げたわけなんです。その理由は、天皇の官吏の時代から国家公務員法という形の体系に変わったわけでございますから、数々の制度が変わった。この出していただいた資料、私は注文をつけました。六回の是正がある。これは皆さん方の御答弁が四回とおっしゃるから、そうではない、六回のはずだと申し上げたのですけれども、六回の是正があった、そのことは認めているのですよ。認めているんだが、ほっておかれて是正するんだから、その間は低く押えられていたわけです。そういう意味で、もう一ぺん総合的な是正が必要ではないかということを申し上げて、属人的に、サンプル調査式に、また各種の職種がございますから、そこらもひとつ当たっていただいて出してもらえませんかと申し上げた。そしてたいへんよくわかる資料をいただきました。  私は、時間がございませんので詳しく読んでないのですが、この第一ページの、退職年月日が十六年六月十六日で、退職当時の俸給年額が千二十円、月額が八十五円の俸給をもらっていた方、この方が昭和二十五年一月に二十一号俸でございますね。この方が昭和四十六年十月の第六次是正で三十六号になっているのですね。かくて十五号上がっているわけですね。その次の、昭和十九年一月十二日退職、年額千三百八十円、月額百十五円の俸給をもらっていた方、この方は二十五年一月に二十七号、四十六年十月で四十一号、こういう上がり方であります。したがって、これは十四号上がったという勘定でございましょうね。その次は、皆さん、表をお持ちでございますから読み上げませんが、こういうふうにずっと当たってみましたら、その次が十号、その次が七号、その次が四号、その次が十五号、その次が十三号、その次が八号、その次が四号、その次が五号、こういうふうになっておりますね。これによりますと、俸給年額、月額の高い方々のところを落しているわけですね。低いところのほうをよけい拾っている。拾っているのですが、同じランクを見てみると、一号、二号のズレがやはりある。損している人がこの中に出てきている。なぜこうなるかというと、一つ基準をきめておやりになって、属人的に全部当たっているわけじゃないからなんです。おおむね低いところを救ってきておりますから、その意味では総体的に是正されているということになるのです。これはあらためて私こまかく当たってみますけれどもね。  だがしかし、この中に不合理がないわけではない。つまり、段階的に上げられておりますから、過去の損失というものもある。だから、そこらのところを考えて、先に向かってもう一ぺん総体的な不合理是正が必要ではないかという気がする。二十三年以前の方々からいまいろいろ文書その他が来ております。こういう方々のいろいろな不満、これを満足に全部解消することはできません。できませんが、可能な限りの最終的な総合的な不合理是正ですよという打ち出し方をされて、この中で、同じランクにならなければならぬところが一号落ちていたり二号落ちていたりというのがありますから、そういうものを含めての総合調整を、不合理是正の形で一ぺんやっていただく。これは、附帯決議云々ということは特に申しませんが、次の機会までにぜひ恩給局のほうで御検討いただきたい。六回の是正をしたんだが、なおかつ、女の先生方が集まってどうであるかとか、いろいろ意見があります。  ところで、この中身をながめてみて、マルがついているのが女子の先生だと思うのでありますが、ここにあらわれた限りでは、女子の先生で二十三年以前に退職された方々は比較的に救われているという気がするのです。だがしかし、これは私ども、もう少しこまかく当たりますから、ここらのことも御研究いただきたい。そういうことで、総合的な不合理是正をやろうという気持ちの中で結論を求めて、いろいろな不満が二十三年以前に相当ありますから、相当な年配の方々ですから、ひとつ最終的な拾い直し、当たり直しをお願いしたい、こういう希望を持っておるのですが、いかがでございますか。
  184. 平川幸藏

    ○平川政府委員 この不均衡是正につきましては、われわれは、制度的といいますか、理論的にはできるだけ精密にやったつもりなんでございます。しかし実際は、こうやって見ますと、長期在職者の中でも、たとえば二十五年以上の者についてはさらに積み上げるということになっておりますが、そういうやり方は目が荒いものですから、結局、適当であるかどうかという問題も確かにあろうと思います。マクロとしましては、全体としては、私は最終的に終わったつもりであったわけなんですが、個々に見ますと確かに問題はあろうかと思います。ただ、問題があるかどうかについての認識も、これからやはり検討しなければいかぬと思います。こういう問題は事務当局がやらないとなかなかやれない問題でございますから、われわれが真剣な態度でやることが一番大事かと、このように思います。  なお、女子公務員につきましても、これではサンプルがまだちょっと足りません。私のほうには資料がございませんので、府県に照会しなければなりませんが、できるだけ多くのサンプルを集めましてもう少し実態的に調べてみたい、このように考えます。
  185. 大出俊

    大出委員 私も、何回かの是正の時期に、議席がございまして議論をした一人なんですが、それでもなおかつ、たくさんの方々から、二十三年以前の、この間、私、手紙を読み上げましたが、そういうのが出てまいります。したがって、そこらのところも、私ども調べようにも、皆さんがやるようにスタッフがいるわけじゃないので、なかなかどうも都道府県まで手を伸ばしてやっていくわけにはまいらない。そこで、実はこういうぜいたくな資料要求をしたのです。おかげさまで、これだけでもけっこうわかります。ですから、いまお話がございましたように、総合的、総体的な、六回の上に立って最終的にもうこの辺で納得してもらうんだという形の是正が必要のような気がするわけでございますので、ぜひひとつ資料をお集めいただいて、お互いに審議をしてきた仲の一人でございますから、できれば私にもお見せをいただいて、何とか全体的な不満の解消に当たりたい、そういう気持ちでございます。いまの御答弁のように、ぜひひとつ前向きでお進めをいただきますようにお願いをいたしておきたいのであります。  それから、最後でございますけれども、この間くどいように申しましたが、実は、その後の質問を開いておりまして、やはり似たようなニュアンスの御発言もございました。それは、つまり二三・四%ものも大きな恩給改定を迎えたわけでありますから、それなりに努力をしてきた。お互いに、これはまあよかったなということで、小宮山さんああいうふうにおっしゃいましたが、それまたわからぬわけではないのです。そういう時期だけに、もう少し平均値をかけるということでなしにやる。現職の公務員の人事院勧告だって、俸給表をつくるときには、たとえば八等級の三号あたりに格づけをされる新高卒の方の場合、一六%上がっておるわけですね。指定職の甲だ乙だというところは六%ぐらいに押えているわけです。つまり上薄下厚の割り振りを人事院はしている。そうでないと、これはもとになる単価がうんと違うわけですから、平均値をかければ格差は開く一方です。それがずっと続いてきたわけですから。先般例をあげましたが、そこらのところは、皆さんのほうで考えていただかなければならぬ筋合いであり、二十三年以前の問題の是正だって、結果的に見てみると、低いところ、月額八十五円なんというところが十六号も上がっているわけです。二百三十五円なんというところは四号ぐらいになっているわけですから、そこらのところも、現実の問題としてはそういう形になっているわけでございまして、長年平均値をかけ続けてきたのだけれども、ぽつぽつこの辺で、現職のほうはそうじゃないですから、そこらについても考え方を変えていただけぬものかという気がするのですが、最後に承っておきます。
  186. 平川幸藏

    ○平川政府委員 この前、先生の御質問にお答えしましたように、御質問の点は、確かに御指摘のように、理論的な問題としても、また現実的な要求といたしましても、私どもよく理解ができるわけなんです。ただ問題は技術的な問題もかなりあると思うのです。これは先生のほうが特によく御承知のように、俸給表も十五ぐらいありますから、そういったものをとういうような形で導入するのか、あるいは導入しないのか、単に荒い目でやるのかどうか。荒い目でやりますとまた不均衡が生ずるし、とにかく検討する意図は実は前から持っておりました。先生から御指摘がありまして、そういう点につきましては、私としてもさらにもっと精密にやらなければいかぬという気持ちで反省しております。どうかひとつ、こういう状況でございますから、今後とも私ども勉強いたしますので、そういう点で御了承願いたいと思います。
  187. 大出俊

    大出委員 数々の難問をかかえて、公務員恩給というものも、軍人恩給を含めまして、さっきも質問が出ておりましたが、いまだにどうも、公務扶助料をもらうようなことになっても、なおかつ兵だ、大将だ、中将だというのがまかり通っていいのかという、生活という問題を中心に考えれば考えるほど、そういう問題もあるのです。だが、そこまで手を伸ばさぬまでも、せめていま申し上げたような点は御配慮願わないと、そういう意味のいまの社会環境に合わない。つまり恩給の理論というものがいまだに続くということも考えものだと思って申し上げているので、たいへんたくさん難問がありますけれども、なおひとつどうか前向きで御検討いただきまして、大方の不満の解消に当たるという御努力をいただきますように、最後に政務次官にお願いをいたしまして、御決意のほどをお述べいただきたいと思います。
  188. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 先生のおっしゃる意味は十分わかっておりますし、今回は大きなワク組みの直しであり、今後ともその不公平を直していく。私自身の個人的な考えではございますけれども、恩給制度というのはやはり社会保障的な性格を十分持たせざるを得ない、そういう意味でもきめのこまかい政策をやっていく所存でございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
  189. 大出俊

    大出委員 最後に一言だけ、これは別なことを言わしていただきたいのですが、これは小宮山さんに予算の分科会のときに、動物の保護管理法につきまして、これは内閣委員会理事会で、私がというのじゃなくて、皆さん方が取り上げていろいろ論議したときに、鯨岡さんなり山口敏夫さんなりのほうから、技術的な問題だからあなたのところでやってくれぬかとおっしゃられたので、お引き受けしてやってきたのですが、そこで所管官庁がということになりまして、三年前には総理府ということになったことがある。その後あいまいになっておりましたので、ひとつはっきりしていただけぬかということを、齋藤厚生大臣のおいでになるところで次官に聞いたことがある。お二人で相談をして、つまり総理府と厚生省が相談をしてきめる、しかし総理府が妥当だと思うというのが齋藤さんの当時の言い分で、その後二、三のやりとりがございまして、先ほど総務長官にその話をいたしましたら、聞いておらぬというわけです。したがって、聞いておられぬとなると、政務次官が出席なさっておられたわけですから、これまたたいへん意外なことになる。そうなると、いまここで御答弁いただきましたが、総務長官に話してないなんということになると、これまた困る。したがって、いまの一番最後につけ加えた一件は、やはりあのときのいきさつ、雰囲気もございますので、しかと受けとめていただいて、所管官庁はここだということにしていただきませんと、私どものほうも非常に困るので、その辺のところはここで御答弁いただければよろしゅうございますし、そうでなければ、後ほどでも御連絡いただくようにしていただきたいと思います。
  190. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 動物愛護の問題については、この前の予算分科会のときに、環境庁が適当であろうと私、申し述べましたが、環境庁のほうが異論を唱えました。このときに厚生大臣は環境庁がいいだろうという話でございました。いま各省呼びまして、なかなか受け手がございませんけれども、何とかまとめていきたいと考えて、鋭意努力中でございます。その上、大臣の御決裁をいただきたいと思っております。そういうことでございますので、法案その他の問題についても、内容についても検討を始めております。御了承願いたいと思います。
  191. 大出俊

    大出委員 この間、自治省の皆さんの御意思がなかなか明確でございませんでしたから、江崎自治大臣にお目にかかりまして詰めた話をいたしましたが、江崎さんのほうも、どうも国際社会の仲間入りをいたしかねるなんという欠けたところがあったのではまずいと思うということで、結果的に、事務当局は当局として、大臣として御協力申し上げる、こういうことでございました。したがって、これ以上各省にものを言うところがないのです。全部話してしまいましたから。したがって、問題は所管の官庁をおきめいただければ、つまり各党の皆さんに御相談を具体的にして提出の運びをとれるようになるわけなんですが、そこだけ残っておりますので、ひとつ早急にお詰めをいただきたい。お願いをいたしておきますが、よろしゅうございますか。
  192. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 総理府は調整機能だけ持っております。総理府という話は前から聞いておりますけれども、では実際これを受け持った場合にどうするのだという心がまえもございません。その辺各省とも相当詰めませんと、厚生省が一番そういう関係を持っておりますけれども、厚生省、環境庁あるいは自治省とも相談して、早いところで担当省をきめたいと思っております。
  193. 三原朝雄

    三原委員長 次回は、明十一日金曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十八分散会