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中曽根国務大臣 私はそういう発言をしておらないのです。しかし、この問題は非常に重要な問題ですから、私の
考えをこの際御答弁として申してみたいと思うのですが、鉄鋼のような、国の基幹
産業であり、指導的
産業であり、かつ
国民経済及び
わが国の
産業に非常に
影響力を持っておる
産業は、値段ができるだけ長期安定して、暴騰したり暴落したり波動しないことがまず望ましいと思います。しかし、といって
通産省が配当を何分にせよとかなんとかいう介入をすることは、できるだけ避けたほうがよろしい。企業の自由な創造力を最大限に発揚させるというのがわれわれの
考え方でありますから、自由の乱用が目に余る、そういう場合には公共の利益の
観点から、
通産省はある程度の節度を持った
行政指導ということは
考えていいと思いますけれども、その自由に対して、正常な問題について、われわれのほうが不当に介入するということはできるだけ避けるのが望ましい。そういう
基本的
観点を二つ持っております。
それで、鉄鋼の場合につきましては、かなり今期は利益があがりまして、大体先期の三倍から五倍くらい、非常に利益が実はあがってきている。そのあがったもとを見ますと、今期のうち三カ月はカルテルが入っておったわけです。それでカルテルをやるについてはいろいろ
議論がございました。また、カルテルをはずす時期についても、野党の皆さんは、
社会党、民社党、公明党、共産党、ほとんど早くはずせという御
議論がございましたが、景気の動向をわれわれはよく注目しておりまして、十二月一ぱいまではカルテルやむなしという
考えでやっておりました。だから三カ月間は今期はカルテルによって守られたという要素が実はあるわけです。しかし利益は、大体その後の景気の好調、回復によって、売り上げ増によって利益が非常にあがった。そういう要素があって、必ずしもカルテルのみに負うところではない。売り上げ及び
生産増大という点にかなり負っている。そういうことがあるわけです。
そこで、私といたしましては、そういうふうな利益があがってきたということ。一方においては、しかしカルテルが三カ月はかかっておったということ。現在それで
国会において各党から、このカルテル問題について私及び公取
委員長に毎回のように鋭い質問が寄せられておったという事実。それから企業が、特に
社会的な
影響力の多い企業は
社会的倫理性をもって処さなければならないと、経団連やそういう企業自体が決議をしたり意思表示をしておる。こういう時局柄
考えてみまして、こういう事態を鉄鋼
関係の皆さんがよく
考えていただくことは適当であろう、そういう期待感を私は持っております。
それで、鉄鋼の
状態を見ますと、いままでかなり不況が続いたために、ほとんど内部留保を吐き出して、そして非常にやせていた経理
内容、体質になっております。だから長期的に見ますと、そういう利益があがった場合には、まず第一に積み立て金等も
充実させて、将来不況が来た場合に耐え得るような体質の
充実をこの際やることが
国民経済的に見て適切ではないかと
考えられますし、また、
公害問題というものが出てまいりまして、鉄鋼も相当
公害防除についてこれから大量投資をさらにやってもらわなければならない。
公害の規制というのは今後またきびしくなっていくという状況でありますから、そういう点も
考えてもらわなければならぬ。また一面において、値段を下げるという努力もしていただかなければならぬ。物価抑制というのは今日
国民的課題でございますから、鉄のほうでもその分を引き受けてやって、インフレ克服について
協力してもらわなければならぬ。そしてカルテル問題も、いろいろ
国会であった論議を
考えてみて、ともかく三カ月はカルテルがあったために擁護されたということは、事実として結果的には否定し得ないところでもあります。
そういうような要素をいろいろ
考えてみて、鉄鋼
関係の経営者たちが良識をもって処置せられることを私は期待したい。それで、そういうことはできるだけ会社の皆さん方が各自の良識に訴えてやっていただくことが望ましいけれども、私はやはり、物価抑制という面、それから
公害に対する
対策の面、そういう面、それから将来の不況に備えて体質を強化しておくというような面から見て、利益金の処分については、そういう点を慎重に配慮されることを期待し
要請したいと思うのです。
そういうような
考えをもちまして、私は鉄鋼
関係につきましては、値を下げてください、
協力してくださいということは言いました。そして、その点については鉄鋼
関係も
協力してくれまして、三十万トン増産をやり、市中価格を鎮静させようということでやってくれ、また将来もやってくれるようにいま努力しておりますが、利益金の処分の問題については、これは企業内部にいろいろな事情もございますから、できるだけ企業おのおのの
考えでやってもらいたいと思うのですけれども、しかし
国会の内部における各党の御論議等を拝聴しておりますと、私は各会社の社長さん方が、この際、鉄鋼のようなリーディングインダストリーの
社会的地位も
考えてもらって、そしてそういう
社会的期待にこたえてもらうように利益金の処分についても慎重に配慮されることを
要請したいと思っております。将来この問題については、社長さんがどういう行動に出られるかわかりませんけれども、
情勢によっては、
通産省としてそういう意思表示をしてもいいのではないか、そう思って、目下
検討しておるというのが現
段階であります。