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1973-04-12 第71回国会 衆議院 内閣委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月十二日(木曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 三原 朝雄君    理事 奥田 敬和君 理事 加藤 陽三君    理事 中山 正暉君 理事 藤尾 正行君    理事 大出  俊君 理事 木原  実君    理事 中路 雅弘君       伊能繁次郎君    越智 伊平君       大石 千八君    近藤 鉄雄君       竹中 修一君    丹羽喬四郎君       旗野 進一君    林  大幹君       三塚  博君    吉永 治市君       上原 康助君    坂本 恭一君       山崎 始男君    和田 貞夫君       東中 光雄君    鈴切 康雄君       正木 良明君    受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         農 林 大 臣 櫻内 義雄君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         総理府人事局長 皆川 迪夫君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         宮内庁次長   瓜生 順良君         防衛政務次官  箕輪  登君         防衛庁長官官房         長       田代 一正君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         経済企画政務次         官       橋口  隆君         経済企画庁長官         官房長     高橋 英明君         外務大臣官房長 鹿取 泰衛君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省条約局長 高島 益郎君         農林省構造改善         局長      小沼  勇君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         食糧庁長官   中野 和仁君         水産庁長官   荒勝  巖君         運輸省船員局長 丸君 幹一君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  相川  孝君         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         外務省アメリカ         局外務参事官  角谷  清君         国税庁直税部審         理課長     久世 宗一君         労働省職業安定         局業務指導課長 加藤  孝君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 四月十日  辞任         補欠選任   鯨岡 兵輔君     伊能繁次郎君     ————————————— 四月七日  米軍小柴貯油施設撤去に関する請願近江巳  記夫君紹介)(第二二九二号)  福岡県芦屋射爆場の自衛隊使用計画撤回に関す  る請願諫山博紹介)(第二二九三号)  非核三原則の立法化等に関する請願諫山博君  紹介)(第二二九七号)  同(紺野与次郎紹介)(第二四〇八号)  靖国神社国家管理反対に関する請願青柳盛  雄君紹介)(第二三六八号)  同(荒木宏紹介)(第二三六九号)  同(諫山博紹介)(第二三七〇号)  同(石母田達紹介)(第二三七一号)  同(浦井洋紹介)(第二三七二号)  同(金子満広紹介)(第二三七三号)  同(神崎敏雄紹介)(第二三七四号)  同(木下元二紹介)(第二三七五号)  同(栗田翠紹介)(第二三七六号)  同(小林政子紹介)(第二三七七号)  同(紺野与次郎紹介)(第二三七八号)  同(柴田睦夫紹介)(第二三七九号)  同(庄司幸助紹介)(第二三八〇号)  同(瀬崎博義紹介)(第二三八一号)  同(田代文久紹介)(第二三八二号)  同(田中美智子紹介)(第二三八三号)  同(多田光雄紹介)(第二三八四号)  同(谷口善太郎紹介)(第二三八五号)  同(津金佑近君紹介)(第二三八六号)  同(津川武一紹介)(第二三八七号)  同(寺前巖紹介)(第二三八八号)  同(土橋一吉紹介)(第二三八九号)  同(中川利三郎紹介)(第二三九〇号)  同(中路雅弘紹介)(第二三九一号)  同(中島武敏紹介)(第二三九二号)  同(野間友一紹介)(第二三九三号)  同(林百郎君紹介)(第二三九四号)  同(東中光雄紹介)(第二三九五号)  同(平田藤吉紹介)(第二三九六号)  同(正森成二君紹介)(第二三九七号)  同(増本一彦紹介)(第二三九八号)  同(松本善明紹介)(第二三九九号)  同(三浦久紹介)(第二四〇〇号)  同(三谷秀治紹介)(第二四〇一号)  同(村上弘紹介)(第二四〇二号)  同(山原健二郎紹介)(第二四〇三号)  同(米原昶紹介)(第二四〇四号)  旧海軍刑法による厚木航空隊員受刑者の名誉回  復に関する請願大橋敏雄紹介)(第二四〇  五号) 同月十日  靖国神社国家管理反対に関する請願荒木宏  君紹介)(第二四五六号)  同(諫山博紹介)(第二四五七号)  同(石母田達紹介)(第二四五八号)  同(浦井洋紹介)(第二四五九号)  同(金子満広紹介)(第二四六〇号)  同(神崎敏雄紹介)(第二四六一号)  同(木下元二紹介)(第二四六二号)  同(栗田翠紹介)(第二四六三号)  同(紺野与次郎紹介)(第二四六四号)  同(柴田睦夫紹介)(第二四六五号)  同(庄司幸助紹介)(第二四六六号)  同(瀬崎博義紹介)(第二四六七号)  同(田代文久紹介)(第二四六八号)  同(田中美智子紹介)(第二四六九号)  同(多田光雄紹介)(第二四七〇号)  同(津金佑近君紹介)(第二四七一号)  同(津川武一紹介)(第二四七二号)  同(中川利三郎紹介)(第二四七三号)  同(中路雅弘紹介)(第二四七四号)  同(中島武敏紹介)(第二四七五号)  同(野間友一紹介)(第二四七六号)  同(林百郎君紹介)(第二四七七号)  同(東中光雄紹介)(第二四七八号)  同(平田藤吉紹介)(第二四七九号)  同(不破哲三紹介)(第二四八〇号)  同(正森成二君紹介)(第二四八一号)  同(増本一彦紹介)(第二四八二号)  同(松本善明紹介)(第二四八三号)  同(三浦久紹介)(第二四八四号)  同(三谷秀治紹介)(第二四八五号)  同(青柳盛雄紹介)(第二五五二号)  同(諫山博紹介)(第二五五三号)  同(田代文久紹介)(第二五五四号)  同(東中光雄紹介)(第二五五五号)  同(三浦久紹介)(第二五五六号)  同(山原健二郎紹介)(第二五五七号)  同(米原昶紹介)(第二五五八号)  同(勝澤芳雄紹介)(第二五五九号)  同(兒玉末男紹介)(第二五六〇号)  同(柴田健治紹介)(第二五六一号)  同(田口一男紹介)(第二五六二号)  同(平林剛紹介)(第二五六三号)  同(横路孝弘紹介)(第二五六四号)  同(青柳盛雄紹介)(第二六〇二号)  同(荒木宏紹介)(第二六〇三号)  同(諫山博紹介)(第二六〇四号)  同(石母田達紹介)(第二六〇五号)  同(梅田勝紹介)(第二六〇六号)  同(浦井洋紹介)(第二六〇七号)  同(金子満広紹介)(第二六〇八号)  同(神崎敏雄紹介)(第二六〇九号)  同(木下元二紹介)(第二六一〇号)  同(栗田翠紹介)(第二六一一号)  同(小林政子紹介)(第二六一二号)  同(紺野与次郎紹介)(第二六一三号)  同(柴田睦夫紹介)(第二六一四号)  同(庄司幸助紹介)(第二六一五号)  同(瀬崎博義紹介)(第二六一六号)  同(田代文久紹介)(第二六一七号)  同(田中美智子紹介)(第二六一八号)  同(多田光雄紹介)(第二六一九号)  同(谷口善太郎紹介)(第二六二〇号)  同(津金佑近君紹介)(第二六二一号)  同(津川武一紹介)(第二六二二号)  同(寺前巖紹介)(第二六二三号)  同(土橋一吉紹介)(第二六二四号)  同(中川利三郎紹介)(第二六二五号)  同(中路雅弘紹介)(第二六二六号)  同(中島武敏紹介)(第二六二七号)  同(野間友一紹介)(第二六二八号)  同(林百郎君紹介)(第二六二九号)  同(東中光雄紹介)(第二六三〇号)  同(平田藤吉紹介)(第二六三一号)  同(不破哲三紹介)(第二六三二号)  同(正森成二君紹介)(第二六三三号)  同(増本一彦紹介)(第二六三四号)  同(松本善明紹介)(第二六三五号)  同(三浦久紹介)(第二六三六号)  同(三谷秀治紹介)(第二六三七号)  同(村上弘紹介)(第二六三八号)  同(山原健二郎紹介)(第二六三九号)  同(米原昶紹介)(第二六四〇号)  同外一件(勝澤芳雄紹介)(第二六四一号)  同(坂本恭一紹介)(第二六四二号)  同外三件(柴田健治紹介)(第二六四三号)  同(田口一男紹介)(第二六四四号)  同(平林剛紹介)(第二六四五号)  同外二件(横路孝弘紹介)(第二六四六号)  米軍小柴貯油施設撤去に関する請願田中昭  二君紹介)(第二六四七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一九号)  国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出第九四号)  防衛施設周辺整備等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一〇五号)  農林省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一〇号)  在外公館の名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第八号)      ————◇—————
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案及び防衛施設周辺整備等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。     —————————————
  3. 三原朝雄

    三原委員長 順次、趣旨説明を求めます。小坂経済企画庁長官
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ただいま議題となりました経済企画庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  物価問題は、国民の最大の関心事であり、日本経済が当面している最も重要な課題の一つであります。また、今後社会保障の拡充や生活環境整備、豊かな地域社会建設等による福祉指向型の経済社会の実現が強く望まれておりますが、物価の安定は、そのためにも、欠くことのできない前提条件であります。以上にかんがみるとき、物価に関する総合的な施策を一そう強力に推進することが今日特に必要であります。  この法律案は、このような観点から、経済企画庁において物価行政を強力に推進するため、物価局を新設するなど所要の機構・権限整備、強化をはかろうとするものであります。  次に、その要旨を御説明申し上げます。  第一は、物価局を設けることであります。  現在、物価対策関係各省庁においてそれぞれの所管行政の一環として進められており、経済企画庁は、それらの関連行政物価政策の視点から総合調整するとともに、物価に関する基本的な政策企画立案する機能を国民生活局において果たしておりますが、現下の物価事情に対応して物価政策を的確かつ強力に推進するため新たに物価局を設置し、国民生活局から物価に関する事務を分離、所掌させようとするものであります。  第二は、物価に関する基本的な政策企画立案及び推進に関連しての経済企画庁長官権限等についての改正であります。  すなわち、経済企画庁の任務に物価に関する基本的な政策企画立案及び推進を明記するとともに、必要があるときは、経済企画庁長官は、関係行政機関の長に対し資料の提出及び説明を求め、また物価に関する基本的な政策に関する当該行政機関の重要な政策及び計画立案について勧告をすることができることといたしております。経済企画庁長官は、この勧告をした場合には、関係行政機関の長に対し当該勧告に基づいてとった措置の報告を求めるとともに、内閣総理大臣に対し内閣法に基づく必要な措置がとられるよう意見具申をすることができることといたしました。  なお、これらの改正とあわせて、審議官の定数を二人から一人に減ずるなど所要改正を行なっております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  5. 三原朝雄

  6. 坪川信三

    坪川国務大臣 ただいま議題となりました国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  本年三月一日、人事院から国家公務員法第二十三条の規定に基づき、国会及び内閣に対して、最近における通勤による災害発生状況及び通勤公務との間の密接な関連性等にかんがみ、職員通勤による災害を受けた場合には、公務上の災害を受けた場合に準じた補償を行なう等の必要がある旨の意見申し出がありました。政府としましては、その内容を検討した結果、この意見申し出のとおり国家公務員災害補償法の一部を改正する必要を認め、この法律案提出した次第であります。  次に、その内容について概要を御説明申し上げます。  まず第一は、従来の公務上の災害に加えて、通勤による災害についても補償等を行なうことができるように、この法律の目的を改正することとしております。  第二は、補償等対象とする通勤範囲についてであります。すなわち、この法律案において通勤とは、職員勤務のため、その者の住居と勤務場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいうものとしておりますが、職員がその往復経路逸脱したり、往復中断した場合には、その逸脱または中断の間及びその後の往復は、この法律案にいう通勤とはしないこととしております。ただし、その逸脱または中断が、日用品の購入など日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により行なうための最小限度のものである場合には、その逸脱または中断の間を除き、その後の往復通勤として認めることとしております。  第三は、通勤による災害にかかる補償等の種類、支給事由及び内容についてでありますが、これらについては、公務上の災害にかかるものに準ずることとしております。  第四は、費用の負担についてでありますが、通勤による災害にかかる療養補償を受ける職員は、初回の療養に際し、二百円の範囲内で人事院規則で定める金額を国に納付することとしております。  第五は、他の法令による給付との調整についてでありますが、通勤による災害に対し、療養補償休業補償または葬祭補償が行なわれる場合には、国家公務員共済組合法健康保険法等によるこれらに相当する給付は行なわないこととし、年金たる補償が行なわれる場合において、国家公務員共済組合法による給付が行なわれるときは、当該給付との調整を行なう等、他の公的給付との間における必要な調整を行なうこととしております。  第六は、葬祭補償について、その額を通常葬祭に要する費用を考慮して人事院規則で定めることとするほか、所要規定整備を行なうこととしております。  以上のほか、特別職職員等についても同様に通勤による災害にかかる補償等を行なうため、附則において、特別職職員給与に関する法律等改正することとしております。  なお、施行期日等については、通勤による災害に関する規定は、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律施行の日から施行し、同日以後に発生した事故に起因するものについて適用することとし、その他の規定はこの法律の公布の日から施行することとしております。  以上、この法律案提案理由及びその概要を御説明申し上げました。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  7. 三原朝雄

  8. 増原恵吉

    増原国務大臣 防衛施設周辺整備等に関する法律の一部を改正する法律案提案理由及び内容概要について御説明いたします。  自衛隊及び駐留米軍行為等に起因する各種障害防止軽減等につきましては、昭和四十一年に制定されました防衛施設周辺整備等に関する法律に基づき必要な助成等措置を講じているところでございますが、関係住民生活の安定及び福祉の向上のため、これらの施策をさらに充実する必要があると考え、ここにこの法案を提案いたすこととしたのであります。  この法律案内容について御説明申し上げますと、国は、自衛隊等の航空機の離着陸等のひんぱんな実施により生ずる音響に起因する障害が著しいと認めて防衛施設庁長官が指定する防衛施設周辺の区域に当該指定の際現に所在する住宅について、その所有者等がその障害防止等のため必要な防音工事を行なうときは、その工事に関し助成措置をとるものとしたこと等であります。  以上、法律案提案理由及び内容を御説明いたしましたが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願いいたします。
  9. 三原朝雄

    三原委員長 これにて趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  10. 三原朝雄

    三原委員長 農林省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  11. 木原実

    木原委員 大臣にお伺いをしたいのですが、きのうは食管法違反ということで丸紅の本社が捜索を受けるということがございました。農林省自身告発によるものでして、大量のモチ米などを操作をしていたという疑いが持たれているわけであります。また、その丸紅責任者を含めまして、同じく昨日、代表的な商社責任者たちが本院に参考人として呼ばれまして、各党の追及を受けるということがございました。しかも、そのかかわるところは、米であり、木材であり、魚であり、大豆であり、あるいはまた農地の転用などを含めた土地の問題だ、こういうことになりますと、そのいずれもが農林大臣所管にかかわるところだと思います。行政責任者としてどういうふうに考えているのか、まずその所感をお伺いしたいと思います。
  12. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 過剰流動性に伴っての買い占めあるいは投機というような、いまわしい行為が頻発をいたしましたことはまことに遺憾しごくに存ずるわけであります。農林省といたしましては、ただいまおあげになりましたそれぞれの種目に対応いたしまして、各種措置を講じてまいったのでありますが、おおむね投機等状況が鎮静化してまいってきておると思います。  現在、モチ米のように、司法当局の手にゆだねたような問題がございますが、この種の問題につきましては、司法当局によって事態が明らかにされまするならば、それに応じて食管法に基づくいろいろな措置は講じてまいりたいと思うわけでございまするが、私としては、今回の事態を省みまして、今後この種の行為によりまして国民に御迷惑のかからないよう、農林省としてのでき得る限りの対策を講じてまいりたい、このように基本的には考えておる次第でございます。
  13. 木原実

    木原委員 この問題点について、司直の手が入った段階だ、こうおっしゃるわけですけれども、たとえばモチ米買い占め投機的な操作が行なわれた。食管法行政の元締めとして行政上の責任ということはないのですか。
  14. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは食管法違反疑いがある、こう見て告発をいたしたのでありまするから、それはそれといたしまして、しからば行政当局の手落ちがあったかなかったかということにつきましては、これはなかったとはいえないと思います。ただ、しばしばお答えを申し上げておりますように、需給の非常に緩和された事態の中から起きた問題でございます。そして最近における国際的な食糧逼迫から起きて、またモチ米自体の昨年度の下期以降の需給逼迫ということが反映して起きた問題でございまするので、私が当初考えましたのは、食管法違反で当然追及をいたさなければなりませんが、また、それによって現に起きておるモチ米の非常な暴騰というものに拍車をかけるような事態を憂慮しなければならない。非常にその辺のところも苦心したところがあるわけでございます。しかし、このような事態を招いたということにつきましては、農林省内部監督などに不行き届きな点があったと存ずるのでございまして、この辺につきましては、省内でよく検討いたし、それぞれこのような事態のないようにこれからの行為を戒めてまいりたい、このように思っております。
  15. 木原実

    木原委員 世論の中にも、商社等買い占め投機に走る、確かにけしからぬことですけれども、行政上、政治上の責任というのは一体何だというきびしい批判があるわけであります。特に、問題になりましたモチ米などの投機に流れやすいということは、多少ともこの種の仕事に携わっておる者につきましては、ある意味では常識なんですね。ところが、実際に農林省告発した分野だけについても、あるいはそのほか逐次明らかになりつつある点からいたしましても、かなり大量のものが動かされているわけですね。監督というものは一体どういう形で行なわれていたのか、あらためて疑問を感ぜざるを得ないのです。需給緩和のおりからでもありというおことばがございましたけれども、それにいたしましても法の基準というものはあるわけですね。告発にいたしましても、何か受け身の形ですね。食管というものについて、国民食糧を安定的に供給をするという行政当局のあり方としては、もうはなはだ疑問にたえないわけなんです。省内で検討をしてこれからの、ということはございましたけれども、その辺の責任についてだけはひとつ明確にしてもらいたいと思うのです。いかがですか。
  16. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 食糧の生産の状況を考えていきます場合に、現に余り米があるということは、需給の上から見られるわけであります。それが未検査米としてあって、その未検査米モチ米自主流通米としての扱いの中で買いあさられた、こういう事態であります。本来そういう余り米は、これは自主流通米と同じように扱うよう倉石農林大臣当時に取りきめをしたのでありまするから、そういうようなルートに乗るべきであったと思うのであります。それが未検査米として、自由米として流れたということでございまするから、食糧事務所の末端においての監督が十分でなかった、こういうふうに見られまするので、今回の経験に基づきまして、今後そのような事態が起きないように適切な指導をしてまいりたい、こういうふうに思います。
  17. 木原実

    木原委員 商社等がいわゆる米に手を出し始めたのは、ほんのここ数年のことですね。しかも私どもは、御承知のように、いわゆる自主流通米の制度、食管法がなしくずしに緩和をされていく、こういう事態の中で、口をすっぱくして、事は国民の主食にかかわる問題なんだ、だからもしこれをくずしていけば必ず米が投機対象になるだろう こういうことは野党はほとんど、ニュアンスの違いはありましても、少なくとも口をすっぱくして言ってきたことなんですね。ところが不幸にして、もう何年も経ないうちに早くもこういうことが行なわれた。しかも商社等のやり口を見ますと、今度のことは入り口で問題が押えられた。将来にわたって食管法がおそらく廃止をされて自由化されていくだろうという予見のもとに、その布石のために動いたという形跡さえもあるのですね。そうしますと、行政の中で米に対する食管法上の対策緩和をされていくのに符節を合わせて、すでに商社が米の市場支配に乗り出してきたんだ、こういうふうに考えざるを得ない側面があると思うのですね。食管法の問題についてはこれからどうするつもりですか。
  18. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は就任以来、この食管法の問題については繰り返し申し上げておるところでございます。食管法についての研究をいたしておりまするが、またその研究の中には、運営上取り上げていいような結論も出つつあるようにとれまするけれども、ちょうど私の就任と同時に、国際的な食糧逼迫という事態がございましたので、いま食管法改正するということになれば、それに伴って起きる問題のほうが大きい。せっかく研究、検討はしてもらっておるけれども、私としては、食管法改正をいたさないということをもう就任直後から申し上げてきておるわけでございます。  また、今回の事態にかんがみまして、自主流通米の制度も、これは御承知のように、間接的に米の統制をいたしておるのでありまして、これが正規のルートで扱われておる限りにおきましては問題はないのでございまするから、私といたしましては、食管法をいじらない、それからいまの制度をちゃんとやっていく、こういうことでこれから対応してまいりたいということをしばしば申し上げておるわけであります。
  19. 木原実

    木原委員 米という問題についての、あるいは主食確保ということについての農政上の位置づけというのが、はなはだあいまいであった。確かに米が過剰になった。過剰になったから減反政策も——まあ、あまりさかのぼっては申しませんけれども、少なくとも、われわれから見ておりまして、場当たり農政というものが続いてきた。その中で食管制度もゆさぶられてきた。いろいろな事情があるわけですけれども、一つには農政の基本がゆらいでいた。特に日本の農政の中心に米があるのは久しい問題ですけれども、米という問題について、今度はどうやら食糧事情が逼迫をしてきた、きのうまでは余剰米をかかえて四苦八苦した、ところが今度はどうも形勢が悪くなってきたというように、右往左往ですね。しかも大臣御承知のように、農業、農家なんというものは、毎年のその日暮らしではやっていけない仕事なんですね。やはり長期に米なら米についての位置づけを行ない、食糧という観点からも、農政の基本というものをきちんと打ち立てていって、その中で、たとえば食管の制度をどうする、こういうふうに刻んでいかなければならないのですが、今度の問題は、そういう意味では農政の根本的なあり方についても問われている、こういうふうに私は考えるわけなんです。  あまり言いたくないことですけれども、今度のことについて見ましても、たとえば買い占め等に協力をした民間の食糧会社、その中には、残念ながらかつて農林省に職を奉じた人たちがいわゆる天下りで入っているというようなことを考えますと、そう言っては悪いのですが、何か行政上の乱れ、それからまた市場支配を目ざす企業の動き、両々相まって米を食いものにした。もっとも米は食うものですけれども、まことに農政の根本が乱れ、食管施策が乱れ、そこに投機の道を開いていく、そういう側面があったのじゃないかと思うのです。やはり責任の所在を明らかにするということの中に、そういう問題についてもきびしく追及をしてもらいたいと思うのです。そして、米の位置づけ、農政の根本の立て直し、こういうことについてぜひひとつ勇断をふるってもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  20. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 お話の御趣旨、よくわかりました。私はただいまのお話のような心づもりでずっとこの米の問題に対処をしてまいりましたし、また、農政にいたしましても、及ばずながらこの機会に、農民の民さんに生産意欲を大いに持っていただき、この大切な国民食糧の安定供給のための一翼をになって努力をしていただこうということで、誠心誠意事に当たっておる次第でございますが、ただいまのお話により、さらに一そうその決意を新たにいたしてまいりたい、こう思います。
  21. 木原実

    木原委員 問題は米だけではもちろんないはずですね。いま問題になっておりますのも、世上いろいろと指弾を受けておる問題には、先ほども申し上げましたように、木材の問題があり、あるいは魚の問題があり、えさの問題もある。その流通過程はこれまたはなはだ不安定といいますか、そういう状況が見受けられるわけなんです。今度の現象としてあらわれました問題を通じて考えましても、どうも流通関係というのは不安定だ、それをただ商社のモラルに期待をするというだけでは、言うまでもなくたいへん不十分だと思うのです。モラルなんというものだけで、精神的なことだけで解決される問題ではない。どちらかといえば商社マンというものは、それぞれ経済の法則というものもある、あるいは大きな資本の論理というようなものが働くのは、ある意味で当然なわけですね。しかも大きな資本力をかかえる商社等がこの不安定な流通過程の中に介入してきた、そうしたときには、これはもうモラルを持てというほうが無理なんです。それならば、流通の過程の中にきちんとしたルールを定めていく。必要なのはルールなんです、あるいは政策だ、こういうことになるのですが、流通という側面についてこれからの、抽象的な話になりまして恐縮ですけれども、改善の御決意なりお考え方なりを初めに伺っておきたいと思うのですが、いかがですか。
  22. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 何事にもルールというものは必要だと思います。特に、国民食糧を扱う、あるいは生活必需物資を扱うという上におきましては、そういう基本が正しく行なわれていなければならないと思うのであります。農林省といたしましては、米については食管法、生糸についてはまたそれに応ずる法律がございます。この法律に応じての措置措置でございますが、また行政の面から姿勢を正していける面もございますから、それらをあわせて行ないますとともに、ただいまお願いをしておる買い占め、売り惜しみ等に対する緊急措置法をまた生かしながら、流通面におけるルールの確立については一そうの努力をしてまいりたいと思います。
  23. 木原実

    木原委員 農林省は、前回の設置法の大幅改正にあたりまして、消費・流通にウエートを置いた行政に進んでいくのだ、こういうことでございました。その席で当時の農林大臣の赤城さんが私に言った。私はそういう方向はよかろうと言った覚えがあるわけであります。そしてそれから一年たちまして、何のために一体機構改革をやったのか。消費・流通の方面にウエートを置いてひとつ国民に喜ばれる農林省になっていきたい、こういうお話があったのですが、一年たちましてこういう問題が起こってまいりますと、そういうためにやった機構改革なんというものは一体何だったのか、あらためて疑問を感ぜざるを得ない。ですから、私はきょうお見えなら、米は大臣からお話がありましたけれども、大豆にいたしましても、木材にいたしましても、魚にいたしましても、生糸にいたしましても、今日、問題にされているような問題を引き起こした各部局の責任者のそれぞれ決意でも聞かなければ、設置法の審議に入れないような気がするわけです。過去一年間、農林省としてはかなり大幅な機構改革をやった。そして新しい決意のもとに、それぞれの部局に局長さんはじめ責任者がついた。そして世上農林省にかかわるさまざまな問題が流通・消費に関連をして提起されておる、こういう事態の中で、大臣の姿勢もさることながら、一体各部局の責任者は何をしていたのか、こう申し上げたいのですが、どなたか、こういうことでございましたという弁明があれば聞きたいのですが、いかがですか。
  24. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 せっかくお願いをした農林省設置法改正というものが効果をあげていないというきびしい御批判でございます。それは私をはじめ各責任者が謙虚に聞かなければならないところだと思います。  実は私が就任をいたしまして、最初に農林省の機構改革のことについて聞きました。それはいまはっきり記憶しておらないのですが、たしか、人事の発令、具体的な機構の改革の発足は十二月六日でございます。そこで私が二十三日ですから、ちょうど選挙中に機構改革が行なわれ、そして選挙後の第二次田中内閣の組閣ということになりまして、そして私は、いまの機構の改革に一番最初に非常に関心があって、これはどういうことかということで、いまちょうど御質問のようなことで、今回は農林省としては重点が流通面を非常に尊重して局が変わったという説明を聞いたわけでございます。これは弁解ではございませんが、そういう機構の改革直後に私の就任ということでございましたし、また同時に、そのころ予算の編成あるいは国会ということで、実はせっかくお願いした機構の改革もまだ地についておらないというきらいがあると思うのであります。そういうところからただいまおしかりを受けておりまするが、私としては、今後せっかくのこの機構改革を十分生かすようにつとめたいと思いまするし、また責任者に対してもただいまの御趣旨をよく徹底さしていきたい、こう考えます。
  25. 木原実

    木原委員 いま審議対象になっておる水産庁の機構改革、これについても私は同じことがいえると思うのです。水産庁としては諸般の情勢の変化に対して効率的な行政をやっていくんだ、こういう御趣旨で、久しぶりの水産庁内部の部局の改正についての提案がなされておるわけなんですね。しかし、国民の立場から見ましたら、納税者の立場からしましたら、行政が能率をあげてやってくれるのならそれはけっこうだろう、しかしそれをやって、ではたとえば魚の値段が一円でも安く安定的に国民の食ぜんに乗せるごとができるのかどうなのか、これが聞きたいところだと思うのですね。だから、水産庁の機構改革も、私ども、皆さん方の御決意があればとやかく言う筋合いの問題ではないと考えているのですが、これからの問題としまして、水産庁のかなり大幅な、久しぶりの内部の機構改革が行なわれる、これをやれば一円でも安く魚が国民の食ぜんに乗せることができるのかどうか、あらかじめ皆さんの決意を伺ってからでないと中身に入れないと思うのですが、いかがですか。
  26. 荒勝巖

    荒勝政府委員 今回、水産庁の大幅な機構改革をお願いしているわけでありますが、この法案の趣旨につきましては、先ほど大臣から、先般、提案理由の御説明を申し上げましたとおり、まず国内におきましては、魚類の環境の改善を行なって安定的な生産を確保いたしたいということと、海外におきましては、世界的な漁業につきましての専管区域の拡大というふうな動きに対しまして、何らかの形で日本の漁場を確保いたしてまいりたいというのが本来の趣旨でございます。その中にありまして、水産物に対します国内の需要はやはり依然として非常に顕著でございまして、約一千万トン近い水産物に対する需要がある。さらに向こう五年ほどの間に千三百万トン前後の需要があるのではなかろうか、こういうふうに考えております。これは現在、国民の動物たん白資源の約五二%の摂取を必要とするという考え方なり、そういう実態を踏まえておるわけでありますが、われわれといたしましては、あらゆる努力を払いまして安定的に漁獲量の拡大をはかってまいりたい。そうすることによって国民の必要とする水産物の確保ができるのではないか。そういう形になりませんと、需給が非常に逼迫しますと、国民の非常に必要とする魚類でございますので、あるいは暴騰することもなきにしもあらずということで、まず生産の安定的な拡大あるいは確保ということを大前提にいたしまして、それらに伴いまして、さらに流通面あるいは消費面の安定的な拡大というふうな形で消費者に十分対応してまいりたいという形で、消費・流通につきましても十分今後努力してまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  27. 木原実

    木原委員 もちろん水産行政の問題は単純ではございません。長官がお述べになりましたように、生産の分野あるいは漁獲量の減少、あるいは流通過程の中のさまざまな問題がある。ただ、一人一人の国民にとりましては、何のために役所が存在をしているのかといえば、ともかく安い魚、いい魚が安定的に供給されること、そのことに尽きると思うのです。専門ばかということばがありますけれども、行政の分野の中でも一番の根本は何かというと、特にこういう現状ですから、世上さまざまな問題が出ておる時期ですから、やはり、行政の最終の末端に落ちついていく問題は何かということだけは、きちんとひとつ押えてやってもらいたいと思うのです。その部分部分をとれば、その分野にそれぞれの問題があります。行政はその中にさまざまな形で介入をしていく問題もありましょう。しかし行政全体としては、落ちついていく先は、ともかくいい魚を豊富に安く提供するということに尽きると思うのです。行政の姿勢がとかく生産者のサイドに片寄ったり、あるいはまた、その過程の中にあるさまざまの力関係の中に片寄っていく分野、複雑にあると思うのですね。しかし、一番の行政の原則は何かということだけは、特にこういう際ですから、きちんとひとつ踏まえてやってもらいたい。それが私どもがこの問題を審議するにあたっての大前提だ、こういうことを申し上げておきたいと思うのです。  そこで、少しばかり水産のことについてこれからお伺いをしたいと思うのですが、先般のこの委員会におきましても、いわゆる一船買いの問題が同僚の委員によって出されました。これはほかの委員会等においても二、三問題が提起をされたところなんですが、いわゆる一船買いは、行政的には結論はどうするつもりですか。
  28. 荒勝巖

    荒勝政府委員 マグロの一船買いにつきましては、これは多少経緯と申しますか、歴史がございまして、昭和四十四年ごろから、大型仲買い人、あるいは輸出用の原材料としてのマグロを取り扱っている一部の商社の方々から、こういった一船買いの動きが始まったようでございます。これにつきまして、私たちのほうといたしましては、マグロの冷凍技術が非常に高度に発達した、四十度前後の超低温の冷凍技術の確立というようなこともありまして、品質の管理上非常によくなったということがそもそもの出発点ではなかろうかと思いますが、こういったことがいままでは、むしろそんなに消費者なりあるいは国民経済に重大な悪影響を及ぼしているものとは私たちは見ていなかったわけでございます。  と申しますのは、こういった輸出用の原材料を中心として始まったものですから、当然港に揚げる、そのままストレートに工場へ持ち込んで加工され、あるいは冷凍マグロをまたそのままアメリカへ再輸出するというふうな形でございましたし、また一般の消費者用のなまでおさしみにするようなマグロにつきましては、一匹一匹やはり品質のチェックをしないと、大量の売買では品質上何らかの支障があるということで、あまり大量の売買はできないというふうに聞かされておりましたし、そういう状況にございましたので、われわれとしましては、こういったことはだんだんある部分においては是認しておったといいますか、むしろある面では、生産者のサイドからいいますと価格の不安定がないということで、ある程度陸上と沖合いとの間にあらかじめ適正な価格で価格の取りきめが行なわれて、一船ごとにそのまま取引されたということで、生産者のほうも、あるいは消費サイドのほうも、価格の安定という面では、どちらかというと歓迎しておられるような風潮もありましたし、したがいまして、われわれといたしましても、それについては是認というか、むしろ今後そういった方向に進むのではなかろうか、こういうふうに見ておったわけでございます。  しかしながら、ここへ来まして、やはりそれが買い占めというふうな方向に万が一動くならば、われわれといたしましては重大な関心を持たざるを得ないというふうに思っているわけでありますが、幸いにいたしまして、こういう生鮮食料品であるという関係もございまして、われわれも今回相当調査をいたしましたけれども、買い占めて売り惜しみをしているというふうなかっこうのところまではまた発展していない。新しく何らかの動きが出てくると、したがいまして正常なルートにこれを持っていかなければならない、こういうふうに私たち考えておるわけでございます。(「長官、甘いぞ」と呼ぶ者あり)特に、主として仲買い人の方々の間でも、大型の仲買い人の方が、あるいは市場の中でも大量に買い取られる、一船買いをされておられるという傾向もございまして、仲買い人の資金力の不足といいますか、大きい仲買い人と小さい仲買い人との間に格差が出てきているということにむしろ問題として注目をいたしておりまして、今後、仲買い人の方々が資金力が豊かにできて、みんな各仲買い人が対等の立場で取引ができるようにすれば、こういった流通経路はある程度確保されるのではなかろうかということで、そういう方向でただいま検討させていただいておる、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  29. 木原実

    木原委員 少し考え方が甘いんじゃないかという同僚委員からの発言があるわけなんですが、どうも一船買いについては、価格も安定をすることだし、生産者も喜ぶことだし、いいんではないかといって是認の方向で来ていた、こういうお話がございました。しかし、買い占めかどうかということの判定については、これはいつも微妙な問題があると思うのです。ただ明らかな事実がたくさん出ているわけですね。可能性としてもいろいろな危険な問題が存在をする。  たとえばマグロについて価格の安定ということをおっしゃいましたけれども、しかし、ここ半年くらいの価格の動きを見ておりましても、高値安定ですね。安くなっていない。これは需給という問題がバックにあるかもわかりません。しかし、あとで申し述べたいと思いますけれども、一船買いをやるというような形のやや大きな資本力、その背景の中には、もっと大きな資本力、こういうものが市場の中に介入をしてきた、その力は結果において買い占めをやるような方向に働かざるを得ない、こういう問題として一船買いの問題があらためて出てきているわけです。ですから、いま零細な仲買い人の人たちはマグロを買うことができない、品薄になってきている、こういう状態が起こったから一船買いの問題がにわかにクローズアップされてきているわけです。しかも実際には、二、三報道されたところによりましても、ともかく冷蔵庫にかなり大量のものを入れている、それで市場には魚がない、当然価格は高値に目ざしていく、こういう状態が現実に続いているわけです。そういう状態があるわけですから、一船買いの問題というのがあらためて問題になってきているわけです。だから、長官、一船買いについてはいまいろいろおっしゃいましたけれども、これからこの規制をしていくのか、行政上の指導としてどういうふうにやっていくのか、その結論を伺いたいと私はいま申し上げたのですが、いかがですか。
  30. 荒勝巖

    荒勝政府委員 多少舌足らずでございましたが、むしろわれわれといたしましては、水揚げ港におきます仲買い人の方々に、非常に格差がこの経済事情を反映して出てきておるというのは、これは認めざるを得ないのじゃないか。従来から零細な仲買い人の方は、一匹二匹という形でせりで買っておられたようでございますが、水揚げ側、生産者側のほうが経済的にも逼迫しておりますので、大量に一度に市場に出しても引き取ってもらいたいという要望もやはり非常に強いわけでございます。また、大量に出したときに暴落という形では、生産者側としても、たいへん長期の、一年近い航海をかけてとってきたマグロについて、そういった暴落でははなはだ困るというようなこともありますので、われわれといたしましては、大型仲買い人、あるいは小さな零細な仲買い人も、ここで何らかの形で共同で荷受けできるような価格の安定と、それからまた、そのマグロの市場におきます、水揚げ地における確保という観点から、できますればこの仲買い人の方々に資金力を付与しまして、あるいは信用力をつけまして、あるいは共同で荷受けができるようにする。小さい方がお互い競争してやっておられるというのでは、やはりなかなかマグロそのものが確保しにくいのじゃないかということで、今後、行政指導といたしましては、統制というような形ではなくて、大型の仲買い人の方と同じ対等の立場でマグロが買えるような資金力を付与していく、あるいは大量のマグロが水揚げされてもそれを十分こなし得るだけの資金力といいますか、経済力を付与してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  31. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 関連。  いま長官のお話は、まあ一般論としてはわかるのですが、われわれしろうとですが、先年、おととしでしたか、中央卸売り市場法を改正しましたね。あのときに私は経済局長に、生産者と消費者の間に立つ市場、この中に、生産者の生産価格を確保したり、消費者にはできるだけ安い安定した供給をするという、安い安定したということばが入ってないで、流通を円満にやるんだということだけしか入ってないではないかということをずいぶん指摘した。  実はこの間、東京の中央卸売り市場の仲卸の連中に話を聞いたわけですよ。そして市場法の中で、ぼくらしろうとじゃわからぬですが、いわゆる買参制度がある。買参制度について従来は許可制であったものを承認制にした。承認制というのについては非常に条件をダウンしたわけですね。そして一船買いのものが、船からもう一ぺん一船買いをしても、荷受け機関には必ず入ったことになるんだそうですね、これは。それで原則として、一ぺん荷受け機関に入ったものはまた同じ市場には出てこないたてまえが、皆さんのほうでは法律的にも規制されておる。ところが、ダミーか何か別な名前でまたそれが卸売り市場へ出てくるというような、二度も三度も手数料を取られるようなシステムが現に存在しておる、こういうことではいかぬのだ。だからわれわれは、二十キロ、三十キロもあるようなマグロを一匹見れば、ちょいとどこか切って見ると、その品質や、何に向くとかなんとかということがすぐわかるんだが、荷受け機関がトンネルで通しちゃって、船からそっくり冷蔵庫へ入っちゃっていれば、別のダミーか何かの会社でもう一ぺん卸売り市場へ出てきても品物はわからない。それを最初の荷受けのときに、船からおろすときに、どこかちょこっと傷さえつけておけば、これは一ぺん荷受け機関のものを通ったんだということでわかるんだが、その辺の一船買いの大手商社か、あるいは大手の仲買いか何かが、現在、去年あたりからの実情では、あなたが意図しているようなかっこうではなくて、品薄の高いときにだけ出して売ろうという形にマグロなんかは非常に変形をしてきた市場の実情だ、こういうんです。  そうすると、それに対して皆さんのほうは、今後どういう行政指導をなさり、市場法その他でどういう措置をなさるのか、これは明確にしないと納得しない。市場の中ですら不安、不満が起こっているということをどうお考えになるか、御解明願いたい。
  32. 池田正範

    ○池田政府委員 ただいまの伊能先生からお話がございましたのは、俗にいうピンポン買いという売り方でございます。これは東京都の条例によりますと、六十三条でございましたか、四条でございましたか、ピンポン買いは禁止いたしております。したがって、何と申しましてもこれは、法律で明文があるかないかということではなくて、卸売り市場というのは、いま御指摘がございましたように、公正な価格をとにかくきめるということが第一の機能でございますから、売る側が同時に買い側に回るというようなことは、これは絶対避けなければならない。したがって、公正機能に対していささかでも疑いが持たれるようであれば、これは法律の四十五条によって、公正な価格形成が保たれないというおそれがある場合ですから、当然これは取引に規制を加えなければならぬというようなわけであります。  おそらくいま問題になっておりますのは、具体的例としては、この間東京都の都議会で問題になった、十人くらいの卸関係の業者が洋上に出ていって、無線機か何かで向こうに入ってくるものを先につかまえて、一船買いで取引をしていられるのですね。それを市場の荷受け人、卸売り会社に売りつける、委託する。そうすると卸売り人はそれを買って売るという疑惑が一つございました。これは直ちに調べたのでございますが、仲卸業者がそういうことをやっておるという事実は、当時その件につきましてはございませんで、ただ売買参加者の中に、何人かの者が共同で出資して一船買いをやる会社を別につくったのに当時参加しておったという事実がございまして、これは、そういう自分が出したものとおぼしきものに自分がまた入札へ参加をするという形は、これは絶対いかぬということで、東京都とも話し合いをいたしまして、それに入らないように措置いたしております。  問題は、仲卸業者が、自分の東京都なら東京都の区域の中で卸売り人以外からかってにものを買ってはいかぬということは、これははっきりきまっておるわけですね。それをもし買うとすれば、これは当然法令違反になる。それから卸売り人が、自分で売ったものをまた買ったり売ったりするということは、これは禁止されておる。これがいけないということははっきりしておるので、見つかれば処分ということになるわけです。  ところが、ここで問題になりますのは一般の買参であります。一般の買参というのは、当然市場の中で仲卸業者から買ってこれを分荷するということでございまして、大口もございますから、自分で消費するスーパーみたいなのもございますけれども、そういうものが逆に卸売り会社とか仲卸業者に対して売るなんということは、これはさか立ちしておるわけでございまして、そういうことは実は法律の中では考えていない。ましてや、さっき水産庁長官が申し上げましたような、産地のほうまで出かけていって、それが逆に出荷者側にまわるということに対して、卸売市場法の規定の中にそれを盛り込むということは当然法域の外で、考えていないわけであります。  したがって問題は、現在何ができるかということになりますが、先ほど木原先生にも申し上げたように、単なるモラルではなく、制度の上で、ルールの上で何ができるかということになりますならば、いま申し上げましたような不公正な売買というものが実質的にいまの卸売り市場を支配する、それがために価格が不公正になるおそれがあるというような実態が明らかになれば、例の市場法四十五条にひっかけて売買規制をやるということが、いまの法律体系の中でわれわれのし得る一つの方法だと思うわけです。  そこで、いま東京都と、この問題につきましては、特に最近マグロにつきまして非常に一船買いがやかましい様子もございますので、一体どういうふうになっているだろうかということで、いま実は調査をいたしまして、価格の動向を調べてみたわけでございます。そういたしますと、マグロ以外のものに一船買いがあるかどうかという問題を含めて考えますと、多少御批判は別に出てくるかもしれませんが、当面問題になっておりますのがマグロでございますので、キハダマグロを中心にして、スルメイカとかサバとかマアジ、これは、四十五、六年に市場法を直します以前と最近における相対的な比価は一体どう動いているかということを調べてみますと、一番上がっておるものはむしろサバとかマアジでございまして、大衆魚でございます。そしてこれが、昭和四十五年を一〇〇にいたしまして、四十六年の市場法改正当時の前後を見ますと、マアジが九四・五に逆に下がっておりますのが、四十八年の二月現在で一四〇・七。それからサバが同じように、四十五年一〇〇でございましたのが四十六年も一〇〇、四十八年の二月は一四二・五。それからマグロは四十五年一〇〇であったのが、四十六年に一〇三・七、現在は一三〇・八というように、この問題に関して一船買いが非常に叫ばれてまいりました四十六年以降の動きを見ますと、相対的な比価は必ずしも上がっていない。そういう意味から、先ほど水産庁長官の申し上げたような、一船買いがじかにこの問題に響いているということを考えつくのがおそかったというお話をしたわけでありますけれども、それは確かに一つあったと思います。ただ今後、たとえば出荷者側が市場の外側に出て会社をつくって売り込んでおいて、自分が中のほうの買参に入って、せってせり上げるということをやろうと思えば、これは物理的に可能性としてはあるわけであります。そこはもう厳重にやらなければいかぬというので、これは私どもとしては、各都道府県と連絡をとり合って、そういうことがいささかもないように十分注意してまいりたいと考えておるわけでございます。
  33. 木原実

    木原委員 私がこれから質問をしようとする問題を伊能先生にやっていただきましたけれども、尊敬する伊能先生は私どもの隣の選挙区でございますから、与野党一致で問題だと言っていることだけは、これは大臣もとくと腹の中に入れておいていただきたいと思います。  一船買いの問題をもうちょっと伺いますけれども、私どもが一番問題にしたいのは、いま伊能先生が具体的なことでおっしゃいましたけれども、こういう形になりますと、いわば自然な市場の中の需給の流れの中で価格が形成されていくという市場の機能というものがこわされていく。仲買い人の中に格差の問題がある、こうおっしゃいました。まさにこのことばを裏返していえば、それは格差があって資本力が大きいところがあえて市場の価格形成機能さえも左右する、そういうおそれがある行為ではないのか、これをわれわれは問題にしているわけなんです。ですから私どもは、安定した供給をはかるという観点で、一船買いがベターだ——必ずしもそうはおっしゃいませんでしたけれども、そういう側面の問題がある。少なくとも是認をされてこられたのだ、こういうことなんですが、これはたての一面でして、私どもが一番問題にするのは、繰り返すようですけれども、需給の自然の流れの中で価格を形成していくという市場の一番のかなめのところに大きな資本力が介入してくる、そういう手だてに使われているのではないか、それが問題だ。したがって、前半、長官がおっしゃいましたような意味での一船買いについての認識というものは、そういう観点かちすると、あまりにも事態を甘く見ているのではないか、実はこういうことを申し上げたかったわけなんです。  ですから、問題にしてまいりますのは、いま伊能先生からもお話がありましたように、現実にそういう行為が行なわれて、大量に一船買いという形で仕入れられたそのことが、現実にあるいは品薄という形になってあらわれ、あるいはまた高値指向という形であらわれ、現実に市場の価格操作が行なわれているのではないか、これを問題にしているのです。だからその辺についての認識を改めてもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  34. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私が冒頭申し上げましたのは、いままでは市場に対しての重大なる悪影響があるとは思えなかったということを申し上げたのでございまして、昨年末以来のこの一船買いの動きにつきましては、やはりわれわれとしては、重大なる関心とともに、これに対する何らかの今後の対策が必要ではなかろうかということを申し上げたのでございます。と申しましても、食品流通局長もおられますが、いま直ちに市場法を改正して云々というふうなところまでまだ検討が進んでない。われわれといたしましては、やはり今後、こういった冷凍食品が場合によっては投機対象になり得る可能性も持っておるということで、これについての十分な警戒を怠らないような対策を制度として打ち出したいということを検討しておるということを御理解願いたいと思います。
  35. 池田正範

    ○池田政府委員 ただいまの問題点で、市場関係から申し上げますと、東京都の条例では、マグロが一船で入る、一船ではせらせないということになります。全部、魚種別、魚体別に区分をいたしまして、それを一トンくらいの単位で小口に分けて全部せらせるという形をとっているわけであります。前はそれがなかったわけであります。ところが、どうもそれをつけましてから逆に荷が逃げるというような状況もございまして、したがってこれは、卸市場の中だけの問題としてこれを扱いましても、なかなか限界がございます。したがって、水揚げ地から以降、消費地の卸市場までの全部を一環として、相互関連を持って考えなければいけないのではないかというふうに私どもは考えますが、先ほど申し上げましたように、私どもとしては、その中へ入ってきた一船で買ったものを一船単位でせらせるということになれば、当然金のないものはせり落とせないということになるのですが、それではいけないというので、小口の分割ということを一応いま条例規定の中に盛り込んでやるということになっておりますから、むしろそういうふうな形になっても荷がどんどん入ってくるという形を確保するということにつなげていきませんと、市場の中の規定というものは生きてこない、こういう問題があると思います。
  36. 木原実

    木原委員 そうおっしゃいますけれども、たとえば築地市場なんかで話を聞きますと、もう全量買いがあたりまえになっているというのですね。そういう取引の実態がある。一トンという規定があるにもかかわらず、全量買いが普通になっていて、ときどき、一トンですよという注意がある。そういう取引実態もあると思うのですね。  ですから、市場のそういう取引実態などを勘案をいたしますと、一船買いもある程度許容をしていくということになれば、必然的に大きなところが支配をしてくる。長官が先ほど、それでは零細な仲卸業者に経済力をつけるように指導したいというようなことをおっしゃいました。だから、取引の改善と、それから局長から、荷を運び込まなければいけませんから、それとつなげるというお話もございました。具体的にそういう取引実態を踏まえて、一船買いに対してはどういうふうな規制をするのか。あるいはまた取引実態の改善についてはどういうふうにするのか。あるいはまた、長官がちょっとおっしゃいましたような、仲卸業者に対する格差の是正についてどういう施策を講じていくのか。具体的に何かお持ちでございますか。
  37. 池田正範

    ○池田政府委員 水産庁が申し上げましたいわゆる仲買い人というのは、産地側の仲買い人でございます。したがって出荷者側でございます。私が申し上げております仲買い業者は市場法にいうものでございます。  そこで、市場法のサイドから申し上げますと、先ほど申しましたように、とにかく不公正な価格形成が行なわれることを避けなければならない、それから売りと買いが混淆されることを避けなければならない、これが市場法の原則でございますので、したがって、そういうおそれがある場合には、これは都は直接の市場監督、開設者、責任者でございますが、私どもよく連絡をいたしまして、そういうおそれがないかどうかを常時見ておる。そして、おそれがあれば随時それを訂正させていくというのがいまの市場法のもとでできることでございますので、これは十分指導を強めてまいりたいと考えます。
  38. 木原実

    木原委員 念を押しておきますけれども、たまたま問題になりました一船買いというような形のものがあるわけですが、これについては、それでは、規制をするとかなんとかという考えは、いまはございませんね。
  39. 荒勝巖

    荒勝政府委員 一つの例でございますが、具体的にいろいろ調べてまいりますと、陸上と沖合いとの間で無電の連絡によりまして、適正な価格で折り合いがつきますと、港へ寄港いたしましても、港ごとに多少性格が違いますが、市場外でむしろ産直といいますか、産地、生産者の間の直結みたいな形で市場外の取引契約が行なわれる。これにつきましては、現在の時点におきまして、卸売市場法の適用といっても、なかなか法律的にはそれを禁止するものがないわけであります。これらの点まで含めまして、われわれとしましては、そういったもののあり方についてもう少し検討させていただきまして、それが非常に重大な悪影響があるかどうかということをもう少し見きわめまして、あるいは規制の対象にするかどうかにつきまして食品流通局とも御相談申し上げたい、こういうふうに思っております。
  40. 木原実

    木原委員 しかし、長官、ことばを返すようですけれども、いままで大体是認の方向で見ていたわけですね。そしてここへ来ていろいろこの問題が出てきた。すでに問題が出ているわけですね。その問題をわれわれがサイドで見ておって、いけないと思う面が出てきているわけですね。だから、もう少し様子を見て規制の対象にするかどうかというお考えは、これまた私どもとしてははなはだ不満ですね。すでに問題が出ているわけなんです。ですから、この問題が出た側面についてはきちんとした姿勢をとってもらいたい、こう私どもとしてはいわざるを得ない。たとえば一船買いをする、それがどういう影響を市場の価格という問題について与えていくか。これは詳しくいえばいろいろな事例がありますけれども、いろいろな点で問題が明らかになってきつつあると思う。いまはそういう問題が出た段階なんです。それだから、規制なら規制、あるいは行政上の指導なら指導、取引の改善なら改善について、何か当局としても案を持ってもらいたい。そういう時期に来ていると思うのですね。そうしませんと、いま伊能先生もおっしゃいましたような取引の実態に問題がつながっていかない、こういうふうに私は判断するのですが、いかがですか。
  41. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私の申し上げたことは、現在の法律体系では、産地において市場外に水揚げされるものについては適用の方法がないということを申し上げたのでございます。それから、なお調査させていただきたいと申し上げたのは、そういった市場外に水揚げされたマグロが明らかに買い占めあるいは隠匿されたというほど、われわれといたしましては現在証拠を持ち合わせていない。一部ある港につきまして大手の商社の方が介入されている点は認めておりますけれども、これは一部の港でございますが、それは工場用、いわゆるパッカー用のマグロを中心として取り扱われておりまして、直ちに生食用あるいはおさしみになるようなものまで全部買い占められているがどうかにつきましては、どうもわれわれとしてはまだ十分そこまで証拠がつかめていないということでございます。特に問題になりますのは、産地市場の中に揚がりました分につきまして、大型仲買い人と小型仲買い人の間の企業間の問題といたしまして、大型仲買い人が買い占めというか、相当確保されている、小さな仲買い人の方がそれでは手が出ないということになっておりまして、特にこれは三崎港の問題でございますが、その大型仲買い人の方の背後関係までいろいろ調べておりますけれども、具体的に買い占めという形といいますか、大手の商社の人がそのうしろにあって糸を引いているというふうなものではなくて、むしろ豊富な資金力にものをいわせて、あるいは当該市場のマグロを一船買いという形で独占的に売買されている点が問題ではなかろうか、こういうふうに考えておりまして、公平をそこで期したいというのがわれわれの考え方でございます。
  42. 木原実

    木原委員 話がいろいろ飛びますけれども、昨日も物特で問題にされているわけですが、具体的に三菱商事と名前があがっておりますけれども、量がどれだけあるかは、商社のほうで調査して資料を出すと申しておりますけれども、現実にそういう商社が介入してきて、買い占めと見られるストックをやるような傾向といいますか、形勢があるわけです。しかもその背景の中には、たとえばこれから先の問題になると思うのですけれども、マグロならマグロの輸入という問題については、たとえば韓国等のマグロ漁業等がたいへん盛んになってきた。コストが当然安い。そういうマグロの輸入の割り当てですね。そういう問題があるわけですが、輸入の権利を得たかなりの資本力を持った水産会社か、あるいは商社がその割り当てを受けている。この輸入の根っこを押え、そして魚を押える、そういう方面にも大きなところは力を及ぼしていっているわけですね。市場外ではこの取引について規制のしようがないというお話がございました。そうでしょう。しかし一方では、輸入なら輸入については、かなり大手が魚を押え込んでいるという形勢がある。そしてまた現実の問題として、どこかの港に一定のストックをやるようなかまえが見える。そしてもう一つ市場外の取引がある。こういうような形になってまいりますと、マグロならマグロについての流通というのは、かなりさまざまな大きな企業や商社等が介入していく中で、これから先のことを考えましても、流通過程の中でそういう大きな資本力の介入、支配というような問題がもっともっと激化をしてくるだろう。こういうふうに判断せざるを得ないのです。  そういう情勢を片一方に置いていまの問題を考えてみますと、せめていまここで問題になってきておる一船買いに基づく市場機能のある意味では撹乱といいますか、そういう問題については、きびしい行政上の措置なり指導体制というものをつくらないとたいへんでございますよ、こう申し上げているのです。だから、流通はたいへん複雑ですけれども、全体の動きを勘案をしながら、私どもとしては、たまたま問題になってきておる一船買いの中に何が問題かということをるる申し上げておるわけなんです。  それじゃ、具体的なあれがないようですから、それについての姿勢だけ、考え方だけでも聞かせていただきたい。そういう大きな資本の介入から何を守っていくのか、市場の機能というものをどこまでも堅持をしていくのか、そういう観点からのお答えをいただきたいと思うのです。いかがですか。
  43. 荒勝巖

    荒勝政府委員 まずお答えいたしますが、マグロにつきましてはすでに自由化されてございまして、輸入ワクのことにつきまして、割り当てワクの権利とかそういったものは一切ございませんで、まさに自由化、自由に輸入されておる次第でございます。  それから第二点の問題でございますが、まだ十分庁内におきます検討も終わっておりませんが、いずれにいたしましても、不当にマグロの価格が暴騰、暴落を来たしまして、生産者にも消費者にも重大な悪影響を及ぼすことだけは絶対に避けてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。また、それとともに、消費者に安定的な価格で流通が公平に行なわれ、また消費者価格も極力安定した価格で流通いたすような観点から、産地市場につきましても、また消費地の卸売り市場につきましても検討をさしていただきたい、こういうふうに思っております。
  44. 木原実

    木原委員 流通局長に伺いたいのですが、先ほど伊能先生から出されました問題があるのですね。どの程度役所が調べられておるかわかりませんけれども、ある意味ではたいへんなものです。ですから、東京都が六十四条に基づいてのいろいろな指導なりなんなりやっておりますけれども、実態はもう入り乱れているというのが現状だと思うのです。  問題は、どこからそういうものが出てくるのかというと、伊能先生が触れられましたように、買参の承認制という問題にやはり返らざるを得ない。これが広げられた背景の中には、私ども市場法の改正等のときにも聞きましたのは、たとえばスーパー等の大口の消費者に対しても門戸を開くべきだ、こういうたてまえがあったと思うのですね。その限りでは私ども、それはそうか、こういうことだったわけです。ただ、承認制に切りかえたために、少なくとも買参の数がふえましたね。せりをやるものがふえれば当然高値になるのは、これは物理的な法則みたいなものです。そればかりか、買参権を得るために、私どもが見ておりましても、さまざまな企業がいわばダミーを使って買参権を得て、せりに参加をしておる。中には、先ほど局長のことばの中にもありましたけれども、売るほうと買うほうが一緒になる、荷受け会社から月給をもらっておる者がせりに参加をしておる、そういうような実態があるわけですね。だから、買参の権利がある意味では乱用されているという側面がある。なぜ乱用になるのかといえば、さかのぼって考えれば、買参の権利を広げた売買ということについては一定の理由があったわけですが、しかしそれが裏目に出た。だから、買参の承認制というのに踏み切った背景の中に、市場が乱れる根源があったのではないかと私ども考えているわけです。先生そうでしょう——伊能先生だってそうだって言っているのです。どうですか。
  45. 池田正範

    ○池田政府委員 先生が御指摘になられたことが、全くそのことがないかどうかということについては、まだ一年有余でございまして、もう少し様子を見ないといかぬ面もあろうかと思います。かといって、せっかくこの法律の根源でございました公開性の原則をまたもとのところに戻すということは、むしろ退歩の方向につながりますので、私どもといたしましては、先ほどから申し上げておりますように、法四十条のたてまえを厳重にとにかく守って、いやしくも売買が混淆されるがごとき、大原則に抵触するがごときことがダミーの名においてやられておるという実態があれば、これはもう遠慮会釈なく取り締まっていくという形をとるのが、いまの市場法のたてまえであろうかと思います。  特に、先ほどからのお話の中で、一つは一船買いをされましたマグロが、中央卸売り市場の窓口のところで右向け右をしてしまって、市場に入らずしてよそへ行ってしまうという例があるのではないかというお話もあったようでございます。これは、先ほど最初に申し上げましたけれども、卸売り業者がその区域の中でかってにどこへでも売るということは、これは禁止せられておるわけです。また仲卸業者が卸売り人以外のだれからでもかってに買うということも禁止されておるわけです。したがって、東京都の区域の中にかりに入ってまいりますと、卸売り業者なり仲卸売り業者なりは見つからないでやればどうかという問題は別にいたしまして、これは法律上の規制の対象になるわけでございます。先ほどから申し上げておるのは、むしろ買参の問題でございます。したがって、買参自体がそういうことまでやるということを予想しなかった現在の制度のもとでございますので、これは先ほどから御議論の対象になっておる法四十条のたてまえを原則にして厳重に指導をやっていく。  それからもう一つは、産地の市場の場合には、これは当然中央卸売り市場の中に入るわけですから、したがって都道府県知事がその第一線の監督に当たるわけでございます。そこで、これは法律の六十九条で報告聴取もできますし、それから場合によっては勧告もできるわけでございます。したがって、実際に中央市場といま話題になっておるような市場との関連において、いま先生御指摘のようなことがもう少し具体的になってくれば、具体的な勧告なり何なりすることによって、知事にある程度の措置行政指導でとらしていくという方向も打ち出していかなければならぬということも考えております。
  46. 木原実

    木原委員 これはもっと機動的に動いてもらいたいと思うんです。市場の中でちょっと調べましたら、もうそういう問題がごろごろしているんですね。確かに第一線は知事ですよ。だから、取引の実態というものについてもっと機動的に入っていけば、条例や法のたてまえに照らしてみても明らかに違反をしたものが横行しておる。それがまた市場の機能を乱しておる。消費者サイドから見ても、ゆゆしいことだと思うんですね。それだけに、必要があれば勧告と、こうおっしゃいましたけれども、もういまの実態は、勧告を出してきちんとした姿勢を示す時期に来ておるわけです。先ほどから繰り返すようですけれども、一方では大きなところが資本力にものを言わせて、さまざまな市場の機能の中に介入してきておる、それを受けてそういう取引の面で大きな乱れがある、そういう実態が明らかなんですから、これはすみやかに指導の体制をとってもらいたいと思うんです。  それからもう一つ伺いますけれども、荷受けのほうが、先ほど伊能先生がおっしゃいましたけれども、二度口銭取っておるわけですね。黙認をしておるというのか、歓迎をしておるわけじゃないでしょうけれども。そういう荷受け側の姿勢についても、取引の実態に照らしてやはりきちんと指導すべき点は指導をしてもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  47. 池田正範

    ○池田政府委員 ただいま御指摘の二度口銭というのが、実はどういう形でとっておるのか、よくわからないのですけれども、もし現実に卸業者が一ぺん荷受けしたものをもう一ぺん自分が扱うという形になりますと、当然それはピンポン売買になってまいります。そうしますと、これは当然条例違反でございますので、そういう問題が具体的につかまえられれば、それは直ちに処置しなければならぬというふうに考えております。
  48. 木原実

    木原委員 これは、私のところへ時間の催促が来ましたから、あまり詳しく申し上げられませんけれども、少し取引の実態を調べてみてください。そうしますと、いろいろなあれが出てきます。少なくともいまの段階で問題点を洗い出して、そうしてきちんとしたことをやりませんと、これはちょっとたいへんなことになりますね。そういう危惧があります。だからそのことだけは強く要望しておきたいと思うのです。  それから、市場の機能の中で私どもが一番大事だと思いますのは、先ほど来申し上げておりますように、やはり価格形成の機能だと思います。これは、せりという伝統的な方法で行なわれているわけです。ところが、このせりが、いま申し上げましたように、買参が開かれ、せり人の参加が多い。中にはやはりダミーをしょっておる。自分の会社を持っておる。あるいは荷受けのほうから給料をもらっておる。需給の流れを見て公正に価格を形成をしていくというのが、市場が存在する一番根本的な機能だと思うのです。ところがそれが、先ほど来申し上げておるように、乱れてきておるところに問題があるわけなんです。だから、せりのあり方について何か改善をしていかなければならないと私どもは日ごろ痛感をするわけですが、お考え方ございますか。
  49. 池田正範

    ○池田政府委員 申し上げますまでもございませんが、新しい法律改正点の主要な柱の一つは取引の改善、合理化ということがございます。特に公正と安定性を加味した取引をやるというのが新しい法律の中心でございます。そのために、委託集荷、いわゆるせり販売というものを原則にしながら、さらに実際の価格のつくようなものについては、定価販売をするように相対取引をやるというふうなことも加えたわけでございますが、先生の御指摘の、いまのせりそのものについてむしろ問題があるということでございますが、その中には、現行法の中で法律上許さるべきでないことを裏でやりながらせりを阻害しておるという例と、せり制度そのものが持っておる欠陥というものと、この二つに分けて考えなければならないというふうに考えます。  裏側に回っていろいろやることにつきましては、監督を厳重にして、そういう実態があればえぐり出してこれを処罰する以外に手はないのですけれども、これは先ほどから申し上げておるような、ダミーのような形で売り手が買い手に回って価格をつり上げるようなばかなことをやれば、市場法は当然死んでしまいますので、これは監督を厳重にするということで、先ほどおしかりを受けましたけれども、私どもとしては、今後さらに気を入れまして監督に厳重を期したいと考えております。  それから、せりそのもののあり方のことでございますが、これはいろいろやり方があると思います。あると思いますが、長い間の卸売市場審議会の議を経まして、多くの専門家や一般の学識経験者の方々の意見を聞いた上で、やはり公正なせり、取引価格形成機能というもの、その地域においては生鮮食料品の場合、せり取引が第一義的なものであろうというふうなことできめられたという経緯もございます。したがいまして、たとえば、せり人自身がどうも公正じゃないじゃないかとか、あるいは買参の中に、先ほど申し上げたように、多少月給をよそからもらっておる疑いのある人がいるじゃないかとか、そういうような問題があるために、せりが行なわれましても、一般から見て、どうも公正な価格でせり落とされていると思えないといったような事態がかりに出てくるといたしますれば、これは直ちに中身を洗わなければならない。御承知のように、せり人につきましては、これは卸売り業者から分離しろというような意見も一時ございましたけれども、これにつきましては、取引機構がやたらに複雑になってしまうのではないか。第三者として特別にそこで独立させる——行司部屋をつくるようなものでございますけれども。それから、卸業者を単なる認定機関にしてしまうと、集荷、販売しないで、あぐらをかいて眠り口銭をとるだけの機関になってしまうのじゃないかというようないろいろな話がありまして、現在のようにいろいろ登録制度をしいて厳重にやるということで、試験も受けさせるようなせり人を置いたわけでございますので、私は、制度自体の問題というよりも制度が運用される過程において何かそれを利用して好ましくない行為というものが介在しておるのじゃないか。だとすれば、もし私どもが知らぬことがあれば、 いろいろおしかりをいただきまして、正すべきは大いに正していきたいというふうに思います。
  50. 木原実

    木原委員 私どももやはり公正に運用してもらいたいということなんです。極端に言いますと、国民の日常の生活がせり人の指先にかかっているような場合があるわけです。それだけに、せり制度はせり制度でよろしいわけですけれども、それならば公正に扱ってもらいたいということに尽きるわけです。ところが、本来アンパイアの立場にある人たちがそれぞれバックがあるというようなことではやっていけない、こういうことなんです。だから、たとえばせり人ならせり人については、資格を厳重にして口銭制にしたらどうか、こういう意見もあるわけですが、口銭制度論はどうですか。
  51. 池田正範

    ○池田政府委員 ただいまも申し上げましたように、せり人を独立の第三者機関に仕立て上げるという案も、新法制定の際にはいろいろ議論されたものの一つでございますけれども、先ほど申し上げましたような市場取引機構に対する複雑性の問題、あるいは荷受け機関としての機能の範囲の問題、活動の範囲の問題企業意欲の問題等いろいろ考えまして、せり人というものを一応現在の形に落ちつけたわけでありますが、現市場法におきましては、そのせり人の公正化と資質の向上ということが非常に大事であるというふうなことで、法律の四十三条で卸売り業者が認定するせり人は農林省令で定める基準に従って開設者の登録を受けた者でなければだめだというふうに厳重に規制をいたしておるわけでございます。したがって、現在の法令上のたてまえからいたしますと、せり人というのは十分それにたえ得るだけの資格、素質を持ったものであるというふうに私ども考えておるわけでございます。なま身の人間でございますから、あるいは中には、先生御指摘のような疑いをかけられておる者があるかもしれません。そういう者はやはり十分再教育をするなり、どうしてもだめならそれを市場の機能から分離するなりということを、ケース・バイ・ケースの問題としてはこれは考えていかなければならぬ問題だと思います。
  52. 木原実

    木原委員 念を押しておきますけれども、買参、それからせりに参加をする者、特にこの買参の承認制の問題。ワクが非常に広がった、そこにいろいろな問題が介入をしている。これについては、法を改められない、こうおっしゃいましたが、規制についてはきびしい措置をとる、取引の実態を洗って措置をする、こういうふうに解釈してよろしいですね。
  53. 池田正範

    ○池田政府委員 御指摘のように、法律改正に伴いまして、売買参加の承認の方向を卸売り市場の公開性を増すという点に重点を置いて改正したわけでございますから、私どもといたしましては、これがやはり新しい法律の中の一つの大事な柱である。これをやめるということではなくて、これはこれで存続させながら、問題になる点をむしろ規制を強化していくという方向で検討すべきであろうというふうに考えておる次第でございまして、また売買参加者に対する取引の適正化については、運用面でもしそういうふうな御指摘のような形のものがございますれば、これは第一義的には開設者が常時監督することででき得る範囲と私は考えますので、これは十分ひとつ監督を厳重にする。もし厳重な監督が期待できない場合は、先ほど申し上げましたように、農林省のほうから随時直接市場に出かけていって、そして問題点をえぐる。最近は魚以外の問題もいろいろと市場についてときどき出てまいりますので、問題が起こりますとすぐ、これは報告を求め、あるいは措置を求め、同時に私どもも直接出かけていって検査をするといったようなこともあわせて最近はやっておりますが、なお一そうその点については努力をしたいと考えます。
  54. 木原実

    木原委員 それでは、この機会にもうちょっと伺いますが、長官に伺いたいのですけれども、マグロの話が出たついでなんですが、マグロの資源状況はどうなんですか。これは少し乱獲の気味があるのじゃないですか。
  55. 荒勝巖

    荒勝政府委員 マグロの資源状態につきましては、大きく分けますと、いわゆるマグロとわれわれが言っております大型マグロとカツオの小型のマグロと両方ございますが、これらは、世界じゅうの大体年間の総魚獲量が百五十万トン前後ということで過去三、四年は推移してございます。しかし、そのうちでもいわゆる大型のマグロ類とわれわれが言っておりますものについては、資源的に見て、漁獲量としましてはほぼ最高の水準に達しておる、これ以上の漁獲努力というものは差し控えねばならないのではなかろうか、こういうふうに世界各国でもいわれておりまして、日本といたしましても、そのために、太平洋の熱帯マグロ条約、あるいは大西洋の国際条約等に参加いたしまして、マグロの資源保存のために努力している次第でございます。  また、カツオ等の小型のマグロ類といわれるものにつきましては、従来、ほとんどこれは日本がいわゆるかつおぶしの材料として利用してきたようなものでございますが、まだ世界的に、インド洋あるいは太平洋の南部等には、かなりの未利用のカツオがございまして、これらにつきましては、資源的にも十分把握しておりませんが、相当まだあるということで、日本といたしましては、大型のマグロから逐次こういったまだ資源の豊富なカツオ類のマグロの漁獲に今後努力をしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  56. 木原実

    木原委員 十年単位ぐらいで見ますと、一日操業をすれば十五トンも十六トンもとれた時代があった。いまは一トンまでいきませんね。そういう意味では、十年単位ぐらいで見ますと漁獲量がかなり減っている、こういう調査もあるように承っているわけです。資源保護についての水産庁の姿勢は、かなりやってはいらっしゃると思うのですけれども、他の分野についてもそうですけれども、もう少しやはり金もつぎ込む、あるいはまた、漁獲の方法や何かについても方針を立てかえるというように、この時期に資源保護という観点を行政の中でもっと強く打ち出していきませんと先が案じられるのではないか。あるいはまた、国際的な会議その他の中でもしばしば、日本はとることはとるけれども資源保護について弱いのではないかという指摘があるやにも承っております。あるいはまた、日ソ漁業交渉につきましても、ことしあたりかなりきびしい規制案がソ連側から出ておりますけれども、しかしその背景の中には、共通の問題として資源保護の観点、それについて日本側の姿勢が伝統的に弱いのではないか、こういうような感じもするわけなんです。  そこで、具体的なことをひとつ申し上げたいのですが、マグロにつきまして、たとえば三月の初めに築地の市場に小さなマグロ、大体十五キロぐらいだといいますからおそらく幼魚でしょう、そういうものが飛行機で送り込まれてきたというのですね。それにはさすがに値をつけなかった。しかし、この種のものが築地の市場に送り込まれてくる。あるいは大阪には一船、そういう小さなマグロを積んだ船が入ったという話も聞いておるのです。そうしますと、御案内のようにマグロは大体七歳ぐらいで産卵期に入るというのですが、あまり小さなやつを、どういうかげんか知りませんけれども、持ってくるというようなことになりましたら——これは日本自身がいろいろ船団の規制とかいろいろなことをやっているに違いないでしょうが、それを裏切ってそういうものがどんどん入ってくる。あんまりひどいから、こんなものが入ってくるようなら不買運動を起こそう、こういう声が市場の中でもあがっているくらいなんですね。そういう事実があるのです。そういうやり方に対して、船団の規制、自主規制その他いろいろの話も聞いておりますけれども、そういう面での漁獲の方法なりあるいは規制なりについて、お考え方ございますか。
  57. 荒勝巖

    荒勝政府委員 最近におきますマグロの資源状態が、先ほども申し上げましたように、もう大体最高水準に達しまして、このまま放置すればマグロの将来につきまして相当憂慮すべき段階だというふうに、水産庁といたしましては考えている次第でございます。国際的にもそういう評価が出ておりまして、そのために、水産庁といたしましても、カツオ、マグロの関係の生産者に対しまして、若年のマグロについては特にとらないようにということで、昭和四十六年からそういう行政指導をいたしますとともに、この関係業者の間でも、自主的にそういう自粛をされておられるようになっております。  ところが、ただいま御指摘のありました若年マグロにつきましては、これは豪州を非難申し上げるわけではございませんが、豪州の国民の間に、日本と違いまして、あまりあぶらの乗っていないマグロを好む食習慣がございまして、そうなりますと、若年の若いマグロだとあぶらがないということで、昔から豪州の周辺の漁業者の方々は、どちらかというと若年マグロをとられて、それを食用に供しておられるということがありまして、それをたまたま日本の一部の方が買い付けられて、こちらへ輸入されておるというふうに聞いておりまして、これらにつきましては、われわれといたしましては、先般、豪州へ農林省関係者が参りました際に、大使館でもそういうことを議題として豪州側と話をいたしまして、極力そういったものを買い付けしないようにこちらとしては指導しておるわけでございますが、われわれといたしましては、先ほど御指摘のように、マグロ資源というものはやはり高価な資源でございますので、今後とも長い将来にわたって保存しながら日本人がこれを有効に利用するように努力してまいりたい。これはまさに御指摘のとおり、われわれといたしましてもこれについては厳に戒めてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  58. 木原実

    木原委員 ところが、いろいろ背景を聞いてみますと、こちら側にも問題があるようなんですね。たとえば、そのマグロが直接そうであったかどうかは別にいたしまして、豪州の現地の人たちに日本の商社等が網を貸す、船を貸す。そして長官のお話にありましたように、向こうの習慣に基づいたような魚をとらせる。つまり、自主規制のようなものをやっているそのワク外に今度は入っていって、そして現地民にそういう融資なり、あるいは網を貸す、船を貸すという形で魚をとらしているわけですね。そういうことになれば、いま商社の問題がいろいろ問題になっておりますけれども、幾ら自主規制をやり行政指導をやっても、そのワク外で今度は現地民にそういうものをとらして日本にそれを運んでくるということでは、これはやがてたたかれるもとですよ。そういうことがやられている。しかもそれを運んでくる船は、業界の団体の役員の船を貸そうという話が出ている。何をやっているのだということになりますね。ですから、業界サイドとはいろいろとおつき合いもあるかと思いますけれども、それこそモラルとルールをきちんとして、とらないものはとらない。それから、豪州とそのほかの、日本の漁業に比べれば資本力、技術その他の面でもかなりおくれているというようなところに、そういう形で、名前はていさいよくいえば合弁ですけれども、しかしそういう形までやって買いあさる、とりあさる、これをやったのでは袋だたきになると思うのですね。どうですか、そういう商売をやっているのですけれども。
  59. 荒勝巖

    荒勝政府委員 小型マグロの件につきましてただいま御指摘ございましたけれども、水産庁といたしましては、この小型マグロのごときものにつきましては、これはあくまでわれわれとしましては、こういうものを輸入する、あるいは捕獲するということについては反対でございまして、これについてはそういう指導はいたしておりますけれども、御存じのように、外国の土地におきます規制まで、法律論としましては規制の手が届かないというところで、何となく現地で、先ほど御指摘にありましたような日本の一部の商社が、技術なり資本を提供して小型のマグロを購入しておるというふうな風聞も聞いておりますので、現地の大使館にもその点は十分に、現地の買い付けされる方々にそういうことのないようにという指導はいたしておりますけれども、今後ともさらに、きょうの御指摘も含めまして、われわれといたしましては、なお一そうきびしくこの問題については対処してまいりたい、こういうように思っております。
  60. 木原実

    木原委員 一方では国際会議その他で、たとえば漁区の問題、あるいは漁獲量の問題、いろいろと制約を受けるわけですね。ところが御承知のように、合弁という形で日本の資本が出ていく、よその国と提携をする、そして規制のワク外にある国の人たちに魚をとらせる、そしてそれを日本に運んでくるというふうなことをやれば、私は国際的な信用問題だと思うのです。合弁というやり方、異なった国の提携をして会社をつくるということ自体については、これは別の問題があろうと思うのですけれども、そうしますと、抜け道抜け道と歩いているんじゃないか、こういう感じがするわけです。ですから一方では、先ほど来問題がありますように、いろいろの問題で規制がある。そのワクをくぐり抜ける方法として、合弁会社というような方法を通じて買いあさっておる、とりあさっておるというようなことになれば、これは法律がないからといっては済まされない問題があると思うのです。まさにモラルとルールの問題だと思いますから、そういう側面についても、これはにわかに規制の方法は私も思い浮かびませんけれども、しかし指導の方法としては、そういうやり方については反対だという長官のおことばもございましたけれども、かなりきびしい措置をとってもらいませんと、やがて魚が食えなくなるんじゃないかと思います。どうですか。
  61. 荒勝巖

    荒勝政府委員 まさに御指摘のとおりでございまして、われわれといたしましては、小型マグロの若年のものまでとるというようなことにつきましては、まさに日本のためには何にもなりませんし、また世界的にも信用を失墜するような原因になりますので、これらにつきましては今後ともほんとうに努力してまいりたい、こういうように思っております。これらにつきましては、こういうことに関係されている方々に対しても、今後厳重に注意を喚起したいと思っております
  62. 木原実

    木原委員 もう時間がないそうですから、あと十分ばかり時間をいただいたので、ちょっとほかの問題を伺いたいと思います。  実はこのあと外務省の関係で質問することがあるのですが、領海の問題です。われわれは三海里というあれを持っているわけですが、最近は国によっては二百海里というような案が出されたり、特にこれは中国との関係ですね。漁業協定の実務協定に間もなく入るという段階だと思うのですが、領海の問題についてはどのように考えているのですか。何かきちんとした考え方があるのですか。また日本の三海里というのは現状でよろしいのか、その辺についての考え方をまず伺いたいと思います。
  63. 荒勝巖

    荒勝政府委員 この領海の問題につきましては、日本といたしましては、これは御存じのように三海里ということで従来からやってきているわけでございますが、明年になりますか、明後年になりますか、海洋法会議というものがございまして、この中で領海及び漁業専管区域の問題について国際的なコンセンサスというか、意見の統一をはかるという必要性があるということで、現在重要な議題になりつつあるわけであります。これにつきまして、いつまでも日本といたしましては三海里に固執するわけではございませんが、また一方的に領海の幅を拡大するというわけにもまいりませんが、ただいまの現在の日本側の考え方といたしましては、多くの国が採用している領海十二海里を統一的な規則として確立することについて国際的なコンセンサスといいますか、合意が成立するのであれば、日本といたしましても、従来の三海里の立場にとらわれることなくこの立場を支持してまいりたい、こういうように考えている次第でございます。
  64. 木原実

    木原委員 あまり時間がないので先を急ぎますけれども、中国との漁業協定ですね。実務協定の準備の段階だと思うのですが、問題は幾つかあると思うのです。一つ伺っておきたいのは、民間協定がいろいろあったわけですが、その中で問題になるだろうと思いますのは、たとえば軍事警戒水域、あるいはまた作戦水域といいますか、そういうものを民間協定の中では尊重をする、したがってそこには船は立ち入らない、こういうような条項があったのですが、いままで公海上に中国側の設定をしたものについては何かお考えをお持ちですか。
  65. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日中の漁業交渉につきましては、まだ具体的に何ら交渉をいたしておらない実情にあるわけでございますが、ただいまお尋ねのようなことは、これは漁業に関する国際慣習からいたしますると、今回、中国側がどういう考えに立って主張をされるか、にわかに判断はできませんが、従来の慣習上から言うと、そういう地域というのはいかがか、こういうふうに思うのでございまするが、いずれにしても両国の間で友好的に交渉をいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  66. 木原実

    木原委員 もう一つ伺っておきますけれども、いままで漁船が拿捕されたというような事件がございました。損害があったわけですが、その損害の補償については、漁業協定の交渉等の中では出ないわけですね、共同声明の中で請求権は放棄しているという問題等もございますので。どういうふうに扱いますか。
  67. 荒勝巖

    荒勝政府委員 中国との間に、あるいは漁業協定なり、あるいは平和条約なりを締結するような事態も、だんだん近づいておるわけでございますが、それとともに、あるいは場合によりますと、中国に拿捕されました漁船に対する補償問題というものが国内問題としてあるいは出てくるのではなかろうか、こういうふうに考えております。これが中国側に対して請求権があるかどうかというふうな問題については、ただいま外務省とも十分検討はいたしておりますけれども、一応いまのところ、まだその辺につきましては結論は得ていない、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  68. 木原実

    木原委員 被害は、船にしましてどれぐらいあったのですか。
  69. 荒勝巖

    荒勝政府委員 日中の拿捕の船舶につきましては、現在まで百八十隻の船体でございまして、乗り組み員につきましては二千百七十五人になっております。
  70. 木原実

    木原委員 時間がございませんので、水産庁につきましては、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。  一つだけ、おかのほうのことをこの機会に、簡単ですから聞いておきたいと思います。  質問の通告を申し上げましたので、御判断をいただけたと思いますけれども、例のゴルフ場。千葉県の柏市から我孫子市にかけましてのいわゆる土地改良区に対して、株式会社太平洋クラブが、約五百ヘクタールほどですが、レジャーランドにしたい、レジャー施設をつくりたい、こういうことで買いあさりといいますか、買収に入っているという問題があるわけなんですが、これにつきましては、市や県のほうから本省のほうにも、いろいろ問い合わせその他があったのではないかと思いますが、結論からいいまして、どういうふうに扱われますか。もうだめということですか。
  71. 小沼勇

    ○小沼政府委員 千葉県の柏市と我孫子市にまたがります地域で、土地改良区で現在県営の圃場整備事業を一期と二期に分けて実施をしております。その実施をやっているところへ、土地を購入したいということで現地に入ったようでございますけれども、これについては、千葉県のほうの報告によりますと、県議会でも農林部長が、これについての転用を認める考えはないような回答をしておられるようでございますが、私どものところに、まだ転用の申請とかそういうことは一切参っておりませんで、大体、関東農政局が国の分を扱うことになるわけでございますが、現に土地改良事業をやっているようなところにゴルフ場をつくるということは、私どもとしては認めがたいという考え方を持っておりまして、もし申請等が出てまいりますれば、厳に審査をして処置をしなければならない、かように考えております。
  72. 木原実

    木原委員 これは大臣にぜひ聞いておいてもらいたいと思うのです。農地にかかわる問題なんです。  千葉県柏市から我孫子市にまたがる一画に利根土地改良区というのがございます。もともと利根川の遊水地で、面積は一千百三十三ヘクタール。現在は去る昭和四十四年から五カ年計画で県営の圃場整備計画が進められているのです。国が四〇%、県が三五%、受益者が二五%という負担で合計十億円の仕事を進めているのですね。ところがこの土地に対しまして、株式会社太平洋クラブというのが、柏市にある土地を国際興業というのに委託をいたしまして、当該地の未整理地区約五百ヘクタールの賃貸契約を土地改良組合に申し入れた。そこには、大規模な百八十ホールのゴルフ場、それにサイクリングコースだとかテニスコートだとか遊園地をつくってレジャー基地をつくりたい。条件は、二十年の賃貸契約で一アール当たり二十万円の権利金を支払う、地代は十アール当たり年額三万円として五年ごとに値上げをする、離作補償金を同じく十アール当たり十万円を支払う、こういうようなことですね。地元の農協もだらしないと思うのですが、この話に乗りまして、一部の農民が土地の提供に応じた、ざっとこういう問題なんです。  この土地というのは、いままでずいぶん国が金を入れてきたわけですね。戦後のことなんですけれども、遊水地だったものですから、建設省は五億円ほど使っておりまして、工事をやる。農林省自身も、何億円かの金を使って地域内の設備の工事をやる。そういう経過を経て、ようやく洪水の恐怖からのがれて、やれやれということで圃場ができかかった。美田になったわけですね。そこへ今度は、たまたま都心から四十キロ程度のところだというので、そういうゴルフ場等をつくろう、こういう形で乗り込んできたわけなんです。これは農林省がなめられていると思うのです。国がこれだけの税金を使ってようやく美田になってきた。農民諸君の中にも、これからは農業をやったってしようがない、これだけ補償金をくれるならへたに米をつくっているよりもいいわいというようなことで、何十人の方はそれに応じたということなんです。農協は先頭に立って買収のために地区内を歩いた。さすがに利根の改良組合は、けしからぬと言って反対の陳情を県等に行なっている。こういう事情があるわけですね。  ゴルフ場等の規制については、与党の中にもたいへんきびしい御意見があるようにわれわれも承っておりますけれども、こういう事態を私ども目の前にしますと、農林省というのがなめられているような感じがするのです。そういうやり方に対しては、言うまでもないことなんですか、きちんとしたきびしい措置をとってもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  73. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいまお話を承りまして、また手元にある資料を拝見いたしますと、県費また国費、相当なものを入れて優良農地として整備されつつあるものと観察されるわけであります。そういうことでございますから、これが、ただいまなかなかじょうずに地域住民に呼びかけをしておるようでございますが、具体化するためには、当然農地転用、こういうことになると思うのです。しかし、その場合におきましては、私どもとしては、これに対して許可を与えるような考えは持ちません。これはその処理に当たるのは県当局でございましょうが、県当局においても、農林省に対する連絡の上では、あくまでも優良農地として引き続き確保していくはっきりした姿勢をとっておるようでございますので、御安心願いたいと思います。
  74. 木原実

    木原委員 最後でございますけれども、長期にわたって国民の多額の税金がこの農地には入っているわけですね。農民諸君が、百姓はやっていけない、そういう土地をかりに転用するというようなことがあっても、こういう際においては、それこそ国が先買い権を持つとか、あるいは公共の団体等が確保するとか、そういうふうに扱ってもらいたいと思うのです。そういうルールをぜひ確立をしたいと思うのです。  あまり申し上げたくないのですけれども、そういう土地を買いに出ておる太平洋クラブなるものの背景が気に入りません。これは野球のオーナーになったというような大きな会社なんですが、社長は小宮山さんといいまして、おにいさんは平和相互の社長、弟さんはわれわれの同僚である小宮山君なんですが、しかも発起人の中には、岸信介さんとか与党のそうそうたる人たちがおる。会長には藤井丙午さん。石井光次郎さんも、体協の会長という形で名前を連ねている。どうもおもしろくないですね。そういう財界あるいは時の与党の有力者をバックにして、しかも国が多額の税金をつぎ込んできた優良農地を、名目はともあれ買い占めてしまおう、そういうことですから、これはひとつ農林省農林大臣としても、あまりそういうことになめられないで、きちんとした形で農地については守っていく。かりに転用が必要になってくれば公共の用に供する、そういう原則で対処してもらいたいと思いますけれども、いかがですか。最後に伺いまして、終わりたいと思います。
  75. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほど申し上げたことで尽きておると思うのでございますが、特にこれは優良農地として確保いたしたいということで、圃場整備事業もあとわずかのことで完成するのでありまして、農林省としては計画どおりに完成をさせたい、このように考えております。
  76. 木原実

    木原委員 どうもありがとうございました。
  77. 三原朝雄

  78. 中路雅弘

    中路委員 水産庁関係の設置法の問題ですから、特に近海の漁業に非常に大きな影響を持つ漁業の操業制限法といわれております地位協定に関係する国内法、この法律について最初に幾つかお尋ねしたいと思います。  この漁業操業制限法の第一条ですが、「内閣総理大臣は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づき」と書いてありますが、この「安全保障条約に基づき」というのは、他の関係の国内法では、第六条とかいろいろ条文が明記されていますが、この漁業操業の制限法といわれている中の「安全保障条約に基づき」というのは、第何条に基づくのかということを最初にお尋ねしたいと思います。
  79. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 特に条文は明記されておりませんけれども、安保条約においてわが国がアメリカ軍のわが国の駐留を認めているわけでございます。その直接の規定は六条だと思います。
  80. 中路雅弘

    中路委員 法制局の角田さん、第六条ですね。そうしますと、第六条に基づく地位協定の二条と理解していいわけですね。
  81. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 そのとおりでございます。
  82. 中路雅弘

    中路委員 それでは、その次にお伺いしますが、そのあと、「日本国にあるアメリカ合衆国の陸軍、空軍又は海軍が水面を使用する場合において」となっておりますが、この「水面」というのは、法的な観念はどういうことですか。
  83. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 ちょっと御質問の趣旨があるいは取り違えているかとも思いますが、まず、たとえば領海であるとか、あるいは公海であるとか、そういう観点からの区別という点で申し上げれば、その両方を含んだ水面であろうと思います。それから同時に、内水面とか、あるいは港湾とか海面とか、そういう区別の観点からいえば、やはりそれらのすべてを含む趣旨であろうと思います。
  84. 中路雅弘

    中路委員 ちょっと、文章はあとでまたお聞きしますが、関係があるので飛ばしまして、そのあとに、「基づき水面を使用する場合において、必要があるときは、農林大臣意見をきき、一定の区域及び期間を定め」というのがありますが、この「一定の区域」というのは、どういう区域ですか。
  85. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 これは当然水面の一定の区域ということだろうと思います。
  86. 中路雅弘

    中路委員 いま水面のことについてお尋ねしたときに、領海、公海が入るとおっしゃいましたね。ここでいう「一定の区域」というのは、水面でお答えになったのと同じ意味ですか。
  87. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 そのとおりであります。
  88. 中路雅弘

    中路委員 最初にお伺いしましたこの「安全保障条約に基づき」というのは、第六条、地位協定二条というお答えですけれども、それに基づいて一定の区域を定めるという区域の概念というのは、これは安保条約に基づいた区域という区域に入るのですか。その点はどうでしょう。
  89. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 この一条の読み方は、実は前にも一度議論が出ておりますけれども、いま御指摘の「基づき」ということばは、「日本国にある」という、その「ある」だけにかかるわけでございます。結局、「アメリカ合衆国の陸軍、空軍又は海軍」というものの修飾句として「安全保障条約に基づき日本国にある」、それだけで「基づく」ということばは切れてしまうわけであります。あとの「水面を使用する」というのは、そういう修飾句のついたアメリカの軍隊が水面を使用するということでございますから、必ずしも安保条約に基づく施設、区域として提供する区域の範囲とは条文上一致していない、こういう見方をすべきであると思います。この条文につきましては、実は昭和三十五年の五月四日の日米安保条約特別委員会におきまして、当時の法制局長官の林政府委員がそのような答弁をいたしております。
  90. 中路雅弘

    中路委員 「日本国にある」という、そこでいう「日本国」というのは、日本国の、わが国の施政権のもとにある領域ということですね。「日本国にある」という、そのあなたが言われたことは、もう少し私、正確にしたいのですけれども、施政権のもとにある地域、領域ということになるのじゃないですか。
  91. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 これは、アメリカ合衆国の陸軍、空軍または海軍が日本国にあるということで、ちょうど地位協定の第一条に、「「合衆国軍隊の構成員」とは、日本国の領域にある間におけるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍に属する人員で現に服役中のものをいう」というような表現がございます。それとほぼ同じような趣旨で、俗にいう在日米軍ですか、そういう観念は法律上ございませんけれども、まさに御指摘のように日本国の領域にある、しかし、その行動の範囲とか、実際の動く範囲とか、そういう意味ではございません。つまり、アメリカ合衆国の陸軍、空軍、海軍の本来の性格として、たとえば、ヨーロッパにあるものとか、韓国にあるものとか、そういうものと区別する意味で、日本国の領域にある、こういう意味でございます。
  92. 中路雅弘

    中路委員 もう一度お伺いするんですが、安保条約や地位協定での区域といった場合には、土地または公有水域、これが単独で提供された場合の観念を区域といっているわけだと思うけれども、それに間違いありませんか。
  93. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 施設、区域という使い方が常にされておりまして、安保条約地位協定では、いわゆる施設、区域のうちの区域ということばを切り離した使い方は別にいたしておりません。常に施設、区域として一体として使っております。したがって、いま御指摘の区域ということばが、安保条約上のことばとして言われたのではなくて、俗な意味で施設、区域の広がり、そういう意味でお尋ねになったとすれば、まさに施設、区域として土地なり公有水面のその区域、そういうものが御指摘のものに当たると思います。
  94. 中路雅弘

    中路委員 先ほどそれでお話しされておりますけれども、この第一条は続いているわけですね。「安全保障条約に基づき」云々とあって、「一定の区域及び期間を定めて」ということになるわけですから、当然安保条約に基づいて一定の区域、期間を定めて漁業の操業を制限したり禁止するということができる法律なわけですね。だから、ここでいう区域というのは、もう一度お尋ねしますけれども、いま私がお話ししました安保条約に基づく地位協定に基づく施設、区域——あなたは続けておっしゃいましたけれども、その概念でしか理解できないわけですね、この第一条を理解する場合。それをここだけどうしてその区域じゃないのだとおっしゃるのですか。
  95. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 先ほど申し上げたことが御理解いただけなかったようでございますけれども、アメリカ合衆国の陸軍、空軍、海軍が条約に基づいて日本国にいるという、つまりアメリカ合衆国の軍隊の修飾句として、安保条約に基づき日本国にいる軍隊をさすんだ、ということが「基づき」にかかるわけですね。先ほど言ったように、韓国にいるアメリカの軍隊とか、ヨーロッパにいる軍隊じゃございません。しかし、アメリカのそういう、俗にわかりやすく申し上げますが、在日米軍の水面を使用するという場合は、その水面には修飾句はかかってないわけでございます。したがいまして、この水面というのは、必ずしもいわゆる施設、区域として提供された区域に限定されていないであろう、こういうことを申し上げたわけであります。
  96. 中路雅弘

    中路委員 これは国内法ですね。最初に「内閣総理大臣は」云々、こういう場合において「必要があるときは、農林大臣意見をきき」ということになっているわけですね。だから日本の総理が農林大臣意見を聞いて一定の区域及び期間を定めるわけですね。これは当然日本国の施政権のもとにある区域ですね。区域についてのみ、そういうことはできるんじゃないんですか。
  97. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 これは一般的に申しますて、法令の適用範囲の問題ということになると思います。これは法令によりまして、いわゆる地域的運用範囲と申しますか、地域的に限定されるものと、それから属人的な適用範囲と申しますか、そういう二種類の法令の適用範囲の基準があるわけです。この場合、漁船というもの、あるいはあとで御質問が出るかと思いますが、漁船の操業というものを制限し禁止し、あるいはそれに対する補償をやろうという法律でございますから、日本の漁船の行為を制限するいわば属人的適用範囲としては、日本の漁船が領海内において操業する場合だけを制限したり禁止したり、あるいは逆に言えば行政権はそれにしか及ばないという考え方は、現在の法制の上ではとられてないと思います。現に、私、専門家じゃございませんけれども、漁業に関するいろいろな奨励の法律あるいは制限の法律、いずれも日本国の漁船という点に着目いたしまして、その行為自体は、公海における行為というものを適用の対象にしている例は幾らでもあります。
  98. 中路雅弘

    中路委員 あとでまたお聞きしたいのですけれども、昨年のやはり内閣委員会で角田さんが答弁なさっていますけれども、「公海、公空に属する分を安保条約に基ずく施設、区域として提供することはできない」ということを御答弁されているわけですけれども、そうしますと、この第一条でいう「一定の区域」あるいは「水面」というのは、この中に領海部分も公海部分も入っているというお答えですか。
  99. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 そのとおりでございます。  なお、ちょっと補足して申し上げたいと思いますが、昨年、御答弁申し上げたことは全然変わっておりません。そのとおりでございます。この漁業制限法というのは、わかりやすく言えば、半分は安保条約の系統にのっかって半分はある意味ではのっかってない。地域的にはそうであります、水面の地域。しかし、そもそも米軍の行為に伴う漁船の操業にかかわる問題という意味で、米軍の行動に伴うという意味では安保条約の系統だ、こういうふうに言っていいかと思います。しかし、法律の厳密な体系から言えば、普通の安保条約に伴ういろいろな特別法が出ておりますけれども、それはもう明らかに施設、区域にのみ適用があるような法律になっておるわけでして、この法律はそういう意味ではないと思います。したがいまして、実は罰則もついてないというような非常に特殊な形になっております。
  100. 中路雅弘

    中路委員 外国の船は当然自由に入れるわけですね。しかし日本の国内法ですからね。たとえば公海で演習をやるという場合に、当然漁業の安全や航行の問題で、関係国がそれについていろいろ話し合いをされるというのはあると思いますけれども、しかし公海を国内法によって操業制限したり禁止したりということができるわけですか。
  101. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 外国漁船に対してはこの法律対象にしてないわけで、先ほど来申し上げておるように、属人的適用範囲と申しますか、日本国民の、つまり自国民の自国漁船を対象に置いて制限しているわけですから、それは場所は公海であってもできる、こういうことです。現に、あるいは農林省のほうから実態をお聞きになったほうがいいんじゃないかと思いますが、漁業制限に関する取り締まり規則がいろいろあると思いますが、それらはいずれも公海に及んでいるはずであります。
  102. 中路雅弘

    中路委員 それでは、あとでまたこれに関連してお聞きしたいのですが、もう一度念を押しますと、この第一条でいわれている「水面」あるいは「一定の区域」というのは領海も公海も含んでいるのだ、そういう法律なんだということでいいわけですね。
  103. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 そのとおりでございます。
  104. 中路雅弘

    中路委員 問題はちょっとあとにまた回しますけれども、ここで「内閣総理大臣は、必要があるときは、農林大臣意見をきき」ということが書かれてありますが、具体的にお尋ねしたいのですが、いま漁業が制限あるいは禁止されている地域、一つの例をあげますと高知の沖のリマ海域ですね。この地域は漁業にとってどういう地域ですか。
  105. 荒勝巖

    荒勝政府委員 この高知沖のリマ水域は、南方から流れてまいります黒潮と沿岸の水とのちょうど交錯する地点にございまして、漁業としては戦前から、特にカツオを中心にいたしました非常にいい漁場というふうに私たちは理解している次第でございます。
  106. 中路雅弘

    中路委員 農林大臣にお聞きしたいのですが、いまのお話のように、非常にいい地域であるということでありますが、たとえばリマ海域だけに限ってお尋ねしますと、その地域について、「内閣総理大臣は、必要があるときは、農林大臣意見をきき」とありますが、農林大臣にこの地域の漁業の操業あるいは禁止について意見を聞かれたことかあるわけですか。
  107. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 具体的なことでございますから、ただいま長官のほうからお答えさせます。
  108. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、意見農林省から出しておるわけでございます。
  109. 中路雅弘

    中路委員 どういう意見を出されておるのですか。
  110. 荒勝巖

    荒勝政府委員 きょうはその当該区域についての意見書は持ってまいっておりませんので、御質問に答えないかもわかりませんが、沖繩が四十七年五月に復帰いたしました際の意見書を、私、例として持ってまいっておりますので申し上げますが、「一、漁業者の安全操業を確保すること。二、制限水域に生活を依存している漁業者に対しては適正な補償を行ない遺憾のないようにすること。三、制限水域に関し関係漁協から正当と思われる意見申し出があったときは、施設庁長官は水産庁長官と協議の上解決をはかること」、こういうふうな、これは御質問のあれとちょっと違うのですが、沖繩復帰の際の農林大臣意見がございます。
  111. 中路雅弘

    中路委員 沖繩の場合のいまおっしゃったところもそうですけれども、近海の漁業にとってはすべて非常に重要なところですね。その地域を使用するということについては、当然、農林省あるいは水産庁として、日本の漁業を守るという立場から強い意見を述べなければならないと私は思うのですが、この問題についてももう少しあとにしまして、ここに「一定の区域及び期間を定めて」というのがありますが、この期間というのは、当然漁業との関係の問題があると思うのですね。漁業が非常にたいへんな時期というのは、同じ使用でもその期間ははずしてもらうとか、そういうことがあると思うのですが、これは施設庁長官にお聞きしたいのです。  たとえば、リマ海域、あるいはチャーリーとかゴルフとか、沖繩のホテル・ホテル訓練区域、こういった米軍の区域におけるいままでの使用実績といいますか、訓練の実績、それについて資料の提出をお願いしたわけですけれども、非常にふざけた資料が出ているわけですね。その地域については常時制限区域だから、このリマ海域についてはそのつどの演習通報がないので使用日数は明らかでない、という資料が出ましたけれども、このリマ海域だけとってお尋ねしてみたいのです。これは常時制限区域ですか。
  112. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 常時制限区域にはなっておりますが、演習日といたしましては、週のうちの原則として月曜日から金曜日まで午前六時から午後六時までというふうに、演習の時間として期間を区切っております。
  113. 中路雅弘

    中路委員 いま言われたことは官報の告示でも出ているわけですね。それで、私のほうで使用実績の資料を要求すれば、常時制限区域であるからもう一切わからないんだということだけで、いまおっしゃった官報でもすでに出ている。期間も月曜から金曜までということになっているわけです。こういうふざけた資料を出されたんでは、私たちも検討することはできないわけですね。これはお返ししますけれども、あらためて、この地域におけるそういう期間、それから使用実績についてわかる資料をもう一度提出していただきたいと思うのです。
  114. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 リマ水域等の常時制限水域につきましては、われわれのほうとしましては、従来から演習の実態を把握したいということで、再三アメリカ側とも折衝した経緯がございます。しかしながら、これらの水域というものが常時制限水域となっている経緯と申しますか、当初の趣旨と申しますのは、米軍が、リマの場合、月から金でございますけれども、そういった期間中は随時使用できるという形で制限をせざるを得ないということで、日米間の合意で今日まで運用してきたわけでありまして、アメリカ側に使用の実績等問いただした場合、アメリカ側としては、その個々の訓練の実態、実績等については、米軍の立場としては明らかにすることができないということを言っておりますので、ただいま御要望の点につきましては、常時制限水域に関しましては、残念ながら、御提出いたしました資料以上のものを差し上げることは、おそらく今日の状態ではできないと思います。  ただ、沖繩の場合に日数が出ておりますのは、沖繩の復帰に伴いまして、訓練水域について日米合意いたしましたときに、訓練日につきましては、一応原則としてどういう期間かということを定めながら、なおそのつど演習通報を十五日前にアメリカ側から出させるという方式をとりましたので、沖繩に対しては、御提出しました資料の中にも把握できた日数を記載しているわけでございます。
  115. 中路雅弘

    中路委員 いずれにしましても、いまいただいた資料は、そういう常時制限の中でも、事実上は月曜から金曜と書かれているわけです。官報でも告示されている。それ自身も資料としていただけないわけですから、わかる範囲であらためて資料を出していただきたいと思うわけです。  この第一条に戻る前に、こちらのほうからもう一度お聞きしたいのですけれども、告示の問題ですね。これはやはりこの前の十月ですか、内閣委員会で、調達庁の三十六年の四月十九日の告示、あるいは防衛施設庁の四十七年六月十五日の告示、こういったものが論議をされたわけですけれども、この告示は明らかに、日米安保条約、それから地位協定に基づいて施設、区域の提供地域ということで出されているわけですね。間違いありませんか。
  116. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 昨年の十月の委員会のときに御指摘ありましたように、従来出ております告示の前文にございます表現におきまして、安保条約六条、それに基づく地位協定二条の施設、区域として以下のものを提供するという表現がございまして、その中に公海上の水域の部分も入っていたことによって、あたかも公海上の水域が地位協定二条の施設、区域かのごとく受け取られたという点は事実でございます。
  117. 中路雅弘

    中路委員 もう一度私は角田さんにお聞きしたいのですけれども、たとえば三十六年の調達庁の告示第四号、これは「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二条の規定によりアメリカ合衆国が使用を許されている施設及び区域」——決して施設と区域を一緒に並べているわけではないのですよ。「施設及び区域」と書いてある。「の名称は次のとおり変更された」というふうに書かれてありますけれども、先ほどの漁業制限法の第一条も、同じように日米安保条約の第六条に基づく地位協定第二条に基づくんだと言われた。そしてここで「区域」とあるわけですね。これは先ほど答弁されましたけれども、この調達庁告示で出ている前文と全く同じじゃないですか。もう一度聞きます。どうして違うんですか。
  118. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 私が先ほど申し上げたことはちっとも間違ってないので、むしろこの調達庁告示なり現在の防衛施設庁の告示のほうが表現的には不適当である、こういうことでございます。
  119. 中路雅弘

    中路委員 それでは、私、調達庁にお聞きするのですけれども、これが問題になったのが去年の十月ですね。そしてそのときに、たとえば増原防衛庁長官はこういうように答弁されておるわけです、急ぎ検討して適切な処置をとると。また、きょうお見えになっていませんけれども、大河原アメリカ局長も、検討するということを約束されているわけですけれども、それから約半年以上たっています。どのような検討が行なわれたのか、それをお聞きしたいのです。
  120. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 昨年の十月以来、告示を行ないますのは私どものほうの防衛施設庁でございます。防衛施設庁がその告示の内容を、従来適切を欠いていた部分を明らかにする具体的な告示の表現の方法、扱い方等について、今日まで外務省等とも協議を重ねながら作業を続けてまいったわけでございまして、そういった点を明らかにした告示を、ただいまもう作業は大体終局の段階に入っておりまして、近く告示をもってこの点を明らかにした形で出す予定でございます。  その作業の内容といたしましては、今日までいろいろ時日を要しましたのは、在日合衆国軍隊にその使用を認めております水域が、領海と公海にまたがるもの、あるいは公海だけのもの、いろいろございますが、特に沖繩におきましては、陸上の施設に接続しました訓練水域、領海と公海とにまたがる水域を一括した形で使用を認めている形態のものがかなりあるわけでございます。こういったものをどういうふうに扱うか、どういうふうに一つの水域を公海と領海で区別した形で適切に表現するか、そういった点についての事務的な詰めが今日までかかったわけであります。いずれにいたしましても、非常に早い機会に、従来の適切でなかった表現を改めた告示を出す予定でございます。
  121. 中路雅弘

    中路委員 私は、先ほどのこの漁業操業制限法の第一条も、法体系としては非常に疑問があるわけなんですけれども、それはいま一応さておいても、告示については法制局も、告示のほうが間違いだと言っておられるわけですね。法律に照らしても間違いなんだということを言っておられるわけですね。法治国で間違いだということが指摘されている。それでは、いま表現の問題では、間違いな告示はすぐ取り消すというのが、まず前提にならなければいけない。あれから六カ月たっていますね。いまの間違った告示をまずどうして取り消さないのですか。
  122. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 表現そのものが適切でないということと、公海上のその水域を米軍が引き続き使っていくという必要性、その実態とのからみ合いから考えまして、告示を取り消しました場合、それでは一体、その公海上における米軍の演習行為というものが公海自由の原則で引き続き行なわれるでありましょう。それに基づきますところのわが国の利害というものとの調整がその間に中断するということで、せっかく、日本近傍の公海にもアメリカの軍隊が随時恣意的にいろいろな場所を使うということをむしろ制限して、一定の区域を指定して演習を行なわせようという趣旨にももとることになりますので、告示を取り消すと同時に、やはり公海上の使用ということについて明らかにしたものを同時に出す必要がある、そういうふうに考えているわけであります。
  123. 中路雅弘

    中路委員 全くふざけた答弁だと思うのですよ。あなたたちは二十年間間違った告示をやってきたわけです。公海も安保条約に基づいた施設、区域の提供であるかのような印象を与えてきたわけですね。実際には公海上の問題は、いま法制局で言われたように、それは漁業の安全とか航行の問題があって、そこで演習するならいわばお知らせするということになりますね。だから入っても刑事罰にはならない。しかし、安保条約や地位協定に基づいて提供の施設、区域については、入れば当然刑事罰になりますね。そういう告示をあなたたちは二十年間やってきたわけです。そして漁民に多大の被害を与えてきたわけですね。リマ水域だけをとってみても、いままで二十年間何十億という被害だといわれている。だから高知の県議会でも、何回にもわたって、この問題については討議にもなり決議もされている。  私はこの際もう一度お伺いしたいのですが、こういう二十年間にわたって間違った告示がされて漁業に非常に大きな被害を与えてきた、こういう問題については、水産庁や農林大臣はどうお考えですか。
  124. 荒勝巖

    荒勝政府委員 公海におきますアメリカとの間の演習地域の問題につきまして、水産庁といたしましても重大な関心を持っておりまして、防衛庁あるいは防衛施設庁、あるいはその関係県、あるいは関係の漁民の方々の代表というものと、再三にわたりまして協議いたしまして、漁業の支障が少しでも改善されるようにわれわれとしては努力しておりまして、しかし、どうしても解除がむずかしいというようなことになりますれば、またその点につきましての補償金の増額ということにつきましても努力している次第でございます。
  125. 中路雅弘

    中路委員 補償金の問題の前に、安保条約に基づいて提供された領海内の施設、区域でしょう。当然ですね。公海の場合は、日本の漁船の安全や航行の問題ですね。それから漁業の安全の問題。そういった点の扱いになるわけですから、これは別の問題ですね。それが実際には施設の提供のような告示がされている。それについて二十年間、漁業を守っていかなければならない立場にある水産庁の皆さんがいまのような姿勢では、私は非常に困ると思うのです。  続いて施設庁にお伺いしますけれども、アメリカと検討しているというのですが、どうしてこの告示の取り消しの問題で日米合同委員会——お聞きしますけれども、どういう条約に基づいて、またどういう内容を日米合同委員会は取り扱う委員会なのですか。
  126. 角谷清

    ○角谷説明員 日米合同委員会につきましては、これは地位協定の第二十五条に規定がございまして、ちょっと読まさせていただきますと、「この協定の実施に関して相互間の協議を必要とするすべての事項に関する日本国政府と合衆国政府との間の協議機関として、合同委員会を設置する」。したがいまして、ただいま読み上げましたような目的をもちまして、二十五条に基づきましてこの委員会が設置されておる次第でございます。
  127. 中路雅弘

    中路委員 あなたは二十五条のあとを読まれないから読みますけれども、あとに書いてあることが私は大事だと思うのです。ここで協議されるのは「日本国内の施設及び区域を決定する協議機関として、任務を行なう」というのが書かれていますね。だから、公海の演習の問題をどう扱うかということは、当然日米合同委員会で協議する対象ではございませんね。日本国内における施政権の及ぶ領海や領空における施設の提供、そういった問題について協議をする機関だと思うのです。それを、いまの間違った告示をどうするかということで、どうしてアメリカと話す必要があるのですか。
  128. 角谷清

    ○角谷説明員 ただいま先生御指摘の後段でございますが、まさにこの委員会の主要な目的、これは日本国内の施設及び区域に関連するものでございますけれども、条文を申し上げますと、ここに「特に」ということが書いてございまして、必ずしもそれ以外の目的ないし任務を排除するものではございません。本件につきましては、もちろん日本国内の施設及び区域そのものではございませんけれども、しかしながら、米軍の行動でありますし、大きな意味におきまして安保条約との関連があるわけでございますから、その意味におきまして、合同委員会において討議する、話し合うということは、必ずしも排除されないという次第でございます。
  129. 中路雅弘

    中路委員 法制局の角田さんにお聞きしたいのですけれども、明らかに日本国内における施設や区域について協議をすると日米合同委員会について書かれているわけですけれども、公海上の問題について日米合同委員会で協議をするというのは、この二十五条の解釈でやれるわけですか。
  130. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 これは、いま外務省のほうから答弁いたしましたことを結局繰り返すことになると思いますが、若干補足的に申し上げますと、合同委員会の設置の目的あるいは所掌事項としては、二十五条一項の前段で包括的に規定しているわけです。そのうち特に施設、区域については必ずこの合同委員会で協議をしてやりますよということを、さらにメンションといいますか、いっているわけですから、そういう意味において、全体としてこの合同委員会が何をやるかというのは、むしろ二十五条一項の前段のほうの解釈の問題だろうと思います。
  131. 中路雅弘

    中路委員 しかし、施設の提供や区域を確定する、こういう問題については、「日本国内」におけるというのが書かれているわけです。公海というのは施政権が及ばない地域なわけです。二十五条の法の性格が、施設や区域の問題については、頭にはっきりと「日本国内」におけるということが書かれてあるわけですから、いまの角田さんの解釈というのは、この日米合同委員会で協議する問題について、非常に拡張されて不当なお答えになっているのじゃないですか。
  132. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 また同じことを言うようで申しわけありませんが、二十五条一項の前段と後段とを区別して私は読んでいるわけで、いま御指摘の問題は、後段において「日本国内の施設及び区域を決定する協議機関として、任務を行なう」と書いてあるわけです。その上に「特に」と書いてある意味は、全般的にこの協定の実施に関し協議を必要とするすべての事項についての両国の間の協議機関として合同委員会は機能いたしますということをまず包括的にいっておいて、その上で特に、そのうちの一部である日本国内の施設及び区域を決定する協議機関としての任務は、ほかの機関ではありません、合同委員会でやりますよということを強調して書いたのが後段です。ですから、この後段だけで合同委員会の任務といいますか、性格というものを結論づけるわけにはいかないと思います。
  133. 中路雅弘

    中路委員 いまの二十五条の解釈は、それも非常に拡張された不当なものだと思いますけれども、しかし、いずれにしてもこの告示は施設の提供や区域の提供ではない、公海の問題ですね。協議するかどうかということについて、私はこの解釈について意見は違いますけれども、しかし公海上の問題は、施設の提供や区域の提供の問題として協議する対象の問題ではないと思うのですが、それはどうですか。
  134. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 おっしゃるとおりだと思います。なお、ちょっと補足して申し上げますが、たとえば、施設、区域と関係はございませんけれども、火薬を米軍が輸送する、そういう場合に、日本国内の施設、区域外を輸送するわけでございますが、その場合に日本には火薬類取締法の規定があるわけです。これは米軍には適用にはなりませんけれども、しかし尊重しなければいけないということで、そういう問題について、実際に米軍が火薬を輸送する場合にどんなような基準でやるかというようなことも、この合同委員会で相談してきめられるということでございます。したがいまして、施設、区域以外のことで合同委員会でいろいろ協議していることは幾らもあると思います。
  135. 中路雅弘

    中路委員 私の聞いているのは、施設の提供、区域の提供という問題、これと公海上の使用の問題とは、おっしゃるとおりに別な問題ですね。したがって私は、施設の提供の問題は、安保条約に基づいて、それが漁民にとって非常に耐えがたい不当なものであっても、一応法的には領海の場合、提供区域としてあるわけです。しかし公海の場合にそういうことはできないのだ。施設の提供という形ですね。ということはこの前の論議からはっきりしている。しかも、先ほど言いましたように、それから半年以上たっている。私は、領海を使うということについては、あなた方が提供されているのですから、その分まで取り消せといま言っているのじゃないのです。しかし、明らかに法的にも間違っている公海の提供、これについては、協議をしなくても間違った告示なわけですね。アメリカと協議しなくても、あなた方自身がやられた問題です。アメリカと協議する必要はないわけです。日本の国内の法律に照らして間違っていることですから、それはアメリカと協議しなくても当然その部分は取り消すということができるわけですね。いまここで、告示で公海の部分が施設の提供としていままでやられてきた、それは取り消すということをはっきり言えないですか。
  136. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 アメリカとの関係におきましては、講和条約発効の時点から、公海の部分に関しては、安保条約の日本の領土、領海、領空内の施設、区域とは違った性格のものであるということは、お互いが協議の場で十分認識されて今日まで来ているところでございます。たとえば、昨年の五月十五日の沖繩復帰に伴いますところの告示の中におきましても、前文におきましては、まさに二条に基づいてアメリカ合衆国軍隊の使用を許す区域という表現は使っておりますが、たとえば公海上にありますホテル・ホテル、マイク・マイク等の水域につきましては、提供区域ということばは使わずに、指定区域ということばを使った経緯等もございます。しかし、いずれにしましても、告示全体をかぶります前文におきまして、地位協定二条に基づき合衆国軍隊の使用を認める、あるいは許す施設及び区域という表現を使っている以上、表現上は全体にかかるというふうに解釈されるという点はごもっともでございます。そういった点で、表現は当然改めるべきであると思います。したがって、先ほども御答弁いたしましたように、それを改めると同時に、米軍が引き続きそれを使用する必要性、それに関連します日本国の立場というものを明らかにする取りきめというものをそのとき同時に出す必要がありますので、そういった点の作業をあわせて近く行なうということにしておるわけでございます。
  137. 中路雅弘

    中路委員 表現の問題を私は先ほどから言っているのじゃないのですよ。間違った告示をされているわけですね。公海についても、あなたがおっしゃったように、あるいは法制局も言っておられるように、これは間違っているのだ、公海を安保条約に基づいて、地位協定に基づいて、施設、区域として提供するということはできないのだ。公海で演習をやる場合は、日本がそれに同意するかどうかという問題ですね。あるいは漁業の問題も関係がありますから、当然話し合わなければいけないでしょう。しかし、それはそれの問題として、告示は明らかに施設の提供としてやられているわけですよ。そしてそれがいままで二十年間続いてきて、漁民はそのために処罰を受ける。安保条約に基づく告示であれば、これは刑事のほうも適用されるわけですから、そういうことで苦しんできたわけですね。だから私は、その告示は公海の部分については間違っているんだから、少なくとも間違った告示は取り消す。日本の法律に基づいてやられているわけですから、どうしてあなた方が出した告示の扱いまでアメリカと相談しなければいけないのか。アメリカが演習するといった場合には、それはそれで話をされたらいいわけでしょう。それを私が言っているのです。  私は、きょう、この前答弁されている大河原アメリカ局長さんがお見えになっていないので、あなただけに、いまこの場で取り消せと言うのは酷かもしれないと思います。その点で委員長にお願いしたいのですけれども、できましたら、この二十年間間違った告示が続いてきた問題で、問題が提起されてから、法制局が間違っているとおっしゃってから半年以上たっている。いままだそれについて検討中だ、作業中だとおっしゃっているわけですから、私はこの点について、増原防衛庁長官もこの前、急ぎ検討して善処するという回答までされているわけです。これをもう一度、直接の答弁者であった大河原アメリカ局長が出席された機会に、外務省関係のときでもまた発言する機会もあると思いますから、いまの問題について保留させていただいて、あらためてその問題について御質問をしたいと思うのですが、そのように取り計らっていただけますか。
  138. 三原朝雄

    三原委員長 さよう取り計らいます。
  139. 中路雅弘

    中路委員 約束の時間をなるべく守りたいと思いますので、最後に一つだけ、さっき弾薬のことをお話しになったので、きょうちょっとお尋ねするつもりはなかったのですけれども、外務省も施設庁もおられるので、一言だけお聞きしたいのです。  いま問題になっております、私の選挙区でもある池子の弾薬庫の問題です。御存じだと思いますけれども、これは二年間にわたって遊休施設だというふうにいわれてきたわけですね。そして全市をあげてこの返還の運動をやっているのはよく御存じだと思います。きのうも、逗子の市長さん、市議会議長さんが私のところに来られて、弾薬輸送だけは何とかやめることにしてくれ、あの危険な市街のまん中を火薬のマークをつけてここに連日搬入されているわけですけれども、この問題について神奈川の県議会やその他でも質問された場合には、たびたび、あの弾薬庫にはもう弾薬は入ってないんだという報告があったそうですけれども、しかし、ことしの一月に、横浜の市議会の基地対策委員の人たちがあの中を視察したときに、向こうの司令官が、あの中には施設の四〇%に高性能の弾薬が貯蔵されているということを視察をした一行に話をしている事実もあるわけですけれども、あの池子弾薬庫に弾薬がいまどの程度貯蔵されているのか。それから、いま搬入されていますけれども、この問題について施設庁のほうにお伺いしたいと思います。
  140. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 池子弾薬庫は、これこそ地位協定二条に基づいて提供しておる施設でございます。そしてこれを弾薬庫として米軍が使用するということは当然なことだと思います。ただ、しかしながら、その弾薬庫の中にどのくらいの弾薬が貯蔵されているかということを、施設庁の立場としては、随時それを知る方法は今日までございません。したがって、現在、池子の弾薬庫の中にどれだけのトン数が貯蔵されているかという具体的な数字も承知しておりません。
  141. 中路雅弘

    中路委員 いままで県議会でも逗子の市議会でも、二年半にわたって、弾薬庫は遊休施設だ、貯蔵されてないということがいわれてきたわけですね。どのくらい入っているか、量の問題についておわかりにならなければ、弾薬庫は使われている、また弾薬庫がいまあるのだ、それともいままでなかったところへ新しく搬入されているのかどうか。その点はどうですか。
  142. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 弾薬庫の施設が遊休であるということと必要でないということとは、おのずから別の性質のものであろうと思います。確かに御指摘のとおり、あの弾薬庫は、従来は米陸軍の管理する弾薬庫であったわけでありますが、昭和四十五年の七月一日から海軍の管理する弾薬庫になったわけであります。そこで、海軍の管理する弾薬庫になって、その時点におきましては、従来、衣笠の弾薬庫、これはすでに返還になっております。この衣笠の弾薬庫、あるいは浦郷の弾薬庫等にありました弾薬が、池子に搬入されて使用されていた実情は当時ございました。ただ、その後昭和四十六年に入りましてから、一部弾薬が陸送あるいは海路でもって他の場所に移されていったという状況も、当時私ども承知しております。しかし、それによりまして、その後、池子に引き続きどのくらい残って今日まできているか、そういった点については、私ども、先ほど御答弁いたしましたように、残念ながら承知しておりません。
  143. 中路雅弘

    中路委員 この問題は、あらためてまた外務省、施設庁がおられるところでお聞きしたいと思いますので、これで終わりますけれども、先日も、私も分科会で大平外務大臣に、横須賀の空母の母港化の問題についてもお聞きしたら、家族対策だけだというような御答弁をされていましたが、いまのお話のように、海軍のほうに移管されてから新しく変わってきているわけですよ、実際には。母港化という問題が、あの周辺の弾薬庫の使用まで含めて新しい基地の拡張といいますか、使用の強化というものとつながっている非常に重要な問題だと思いますので、あらためてお伺いしたいと思います。ただ、池子の弾薬庫の立ち入り調査について、私は外務省を通じてお願いしているわけなんで、ぜひともこの問題について向こうのほうから至急に返事をいただくように外務省にもお願いして、一応きょうは、先ほどの保留した分をあらためてまた御質問したいと思いますが、終わりたいと思います。
  144. 三原朝雄

    三原委員長 午後三時四十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時三分休憩      ————◇—————    午後三時五十八分開議
  145. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  在外公館の名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  146. 木原実

    木原委員 あとで同僚の委員から関連質問がございますので、私の質問はできるだけ簡略にいたしたいと存じます。  この法律によりまして新しく北京に大使館ができる。去年の共同声明以来具体的にも歩み出したことで、いいことなんですが、これは大使館ができた場合に、人員構成や規模はどれくらいになるのでございますか。
  147. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 昨年度、四十七年度におきましては定員が二十名でございまして、四十八年度から二十九名を増員いたします。したがいまして合計は四十九名の定員になっております。それでは実員がどうかということを申し上げますと、現在二十名の人員が配置されております。
  148. 木原実

    木原委員 いずれ将来は領事館をつくる、たとえば広州とか上海とか。そういう計画はまだでございますか。
  149. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 これは先方の希望とわがほうの今後の状況を見て検討すべき問題だと思いますが、いまの時点では、先方にも希望がないようでございますし、わがほうにもその予定はございません。
  150. 木原実

    木原委員 これは大臣にお伺いしたいのですけれども、共同声明以来歩き出したわけですが、日中の平和友好条約といいますか、この基本条約については、何か段取りあるいは展望、何かお考えでございますか。
  151. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは、たびたび本院におきまして御報告申し上げておりますように、締結交渉をしようという両国の合意はできておるわけでございます。それが第一の合意でございます。第二は、これから先の日中関係の安定のためにやろうという目的も双方で合意を見ておるわけでございますが、いつからやるかということにつきましては、また、どういう内容を具体的に盛り込むかということにつきましては、まだ相談はしていないのでございますが、両院の御決議の御趣旨もございますので、大使の交換も終えましたわけでございますので、外交ルートで今後先方と話し合って、双方の都合のいい時期に取りかかりたいものと考えております。
  152. 木原実

    木原委員 特別に長引くというような状況はございますか。大体の時期的なめどにつきましてはどんなふうにお考えですか。
  153. 大平正芳

    ○大平国務大臣 特に急ぐつもりはございませんが、特に遷延さすつもりもないわけでございまして、いまから双方の相談にかかっているわけでございます。
  154. 木原実

    木原委員 まあそういうことなんでしょうが、基本条約を考える場合の眼目になるものはどんなものをお考えでございますか。
  155. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、どういう中身を盛り込むかということにつきましては、短期間の折衝でございまして、話し合いはしてないわけでございますが、共同声明には、今後の日中関係の準拠すべき幾つかの原則が盛り込まれておるわけでございます。案ずるに、この原則を具体的にどういうように条約にふさわしいものにしてまいるかということが基本になるのではないか。内政不可侵とか、あるいは相互の不可侵とか主権の尊重とかいうようなことが盛り込まれておるわけでございますが、そういったことを条約的にどのように具体的に表現して、長きにわたる安定した関係を条約的な基礎のもとに置くか、そういうことが眼目になるのではないかと私は想像しております。
  156. 木原実

    木原委員 共同声明の中に、たとえばアジアに覇権を求めずというようなことばがありました。過去のいろんなことを反省をし、将来にわたって再び覇権を求める等の行為をしない、こういう意味の共同声明の合意だろうと思うのですが、こういうものがたとえば基本条約の中に盛り込まれるという精神的なことでいくのか。条約の中にそういう考え方をきちんと反映をさせるのか。ある意味では、日中の間に提携ができる、基本条約ができるということは、アジアの全局に及ぼす影響というようなものもあると思うのです。そういうようなことから考えまして、特にアジアの中に覇権を求めずという共同声明の中の文言、そういうものが生かされるのかどうか、お考え方がございましたら聞かせてください。
  157. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これも先方との相談のことでございますけれども、私といたしましては、あれはあくまでも政治原則ではないかと思うのでございまして、条約にそういうことを盛り込むべきかどうかということにつきましては、なお検討を要するのじゃないかと考えております。
  158. 木原実

    木原委員 いろんな交流が始まっているわけですが、御案内のように、廖承志さんが間もなく日本にお見えになる。会見の御用意はございますか。
  159. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先方にその御希望がございますならば、私もお目にかかりたいと思っております。
  160. 木原実

    木原委員 報道によりますと、中国の外務大臣の訪日を希望するというようなことが伝えられておりますけれども、外相御自身がたとえば年内に中国を訪問される、こういうようなお考え方がございますか。
  161. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういう予定は持っておりません。
  162. 木原実

    木原委員 何か定期に閣僚級の会談をやりたいという当方の希望が向こうに伝えられた、こういうふうにも承っておるわけでございますけれども、そういうものが実現をした上で、たとえば向こうの外相を呼ぶ、大平外相が向こうに出かける、こういうことになるのでございますか。それとも、それは希望であって、それはどういうことになるかまだわからないから、先のことはわからない、こういうふうに受け取っていいのか。その辺についての、つまり外務大臣級の交流ないしはその会談、こういうものをどういうふうにお考えになっているのか、御見解を聞きたいと思います。
  163. 大平正芳

    ○大平国務大臣 姫鵬飛外相の訪日、日本招請は、そういうこととは全然関係がないわけでございまして、外交上の礼儀であると心得ております。
  164. 木原実

    木原委員 さしあたって実務協定が行なわれておるというふうに承っているんですが、さしあたっては航空協定、いろいろ断片的に報道があったわけですが、航空協定について現状はどうなっているんですか。何か台湾との航空路の問題その他をめぐって問題が残されているというふうに聞いておりますけれども、残っておる問題は何なのか。
  165. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 先般わがほうから予備折衝団を北京に派遣いたしまして、主として航空協定の協定文の意見の相違点を両方で詰める、これはかなり進んでおります。なお、その後外交ルートを通じまして、さらに技術的な問題点について調整を行なっております。  なお、協定文の中に入る実体的な一部分といたしまして、付属書に、路線の問題、以遠権の問題がございますが、これは双方の高度に政策的な問題点として調整していかなければならない問題があると思います。  なお、協定文と直接関与いたしておりませんが、一種の政治問題として日台路線の問題も関連はいたしてまいりますが、そこら辺のところは、双方の感触を打診し、さらに今後円満な解決に持っていきたい、かような状況にある次第でございます。
  166. 木原実

    木原委員 御承知のように、原則についてはかなりきびしい国柄でございますね。台湾の航空路の問題は、やはりそれだけの問題ではない。つまり、共同声明以後、国交回復後の台湾の位置にかかわるような問題について、まだやはり日本側の措置がおくれているのではないか、こういう感じをわれわれも持つわけです。したがいまして、台湾の航空路をどうするかということについては、きちんとしたわがほうの側の結論ないしは措置を講ずべき時期に来ているのではないか。それが伴いませんと、外交上の問題としましても進展がむずかしいのではないかと考えているんですが、どうですか。
  167. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 私たちは、航空協定に関しましては、日本の国益を十分に踏まえまして、また日中の友好精神をそこなわない範囲内において、できる限り日台関係の実務関係を維持していきたいという希望を持っておるわけでございまして、その辺、どういうところで円満な解決をはかるか、いろいろな角度から検討しておる。日中間の国交正常化におきましては、大同について小異を残すということでございましたので、そこら辺をさらに詰めていかなければならない、こういう状況でございます。
  168. 木原実

    木原委員 小異で済むかどうかですね。いろいろおっしゃいますけれども、具体的にどうするんですか。ともかく台湾とも往来はあるわけですから、だからその範囲でそういうものを残すのか。残したままで向こうと交渉が妥結、到達するというお見通しなのか。それとも、この際やはり、たとえば台湾系の航空路については、これをもう切ってしまうのか。その辺の決断の時期に来ているんじゃないですか。どんなふうにお考えですか。
  169. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日台間の今日の空路による交流はたいへん繁忙をきわめておるわけでございまして、これを切ってしまうというようなことは私は望ましくないことでございまして、何とか維持したいということで最善の努力をいたしたいと思っております。
  170. 木原実

    木原委員 デリケートな問題だから、しかも交渉中ですから、ここであまり詰めることはいたしませんけれども、しかし、いずれにいたしましても、私どもの感じでは、国交回復が行なわれたあと、経過的な措置として一時的に台湾とのそういうものがあっても、これは常識の範囲ということでいいのだけれども、しかしそれが固定をしていくようでは、これは廖承志さんのことばの中でも、ナンセンスだというふうなことばがあったように記憶をいたしておるわけなのです。したがいまして、大臣のおことばですと、往来もひんぱんに行なわれているのだからこれは残していきたいのだ。しかし、その上でなおかつ妥結の見通しがおありでございますか。非常に私ども気になるところなのですね。
  171. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういう問題を、逃げられない課題として政府が背負っているわけでございますので、せっかく御声援をお願いいたしたいと思います。
  172. 木原実

    木原委員 詰めることはやめましょう。もう一つ実務協定につきまして、漁業協定の問題があると思うのです。民間協定が六月に切れるというような事情もあるやに聞いておりますけれども、これはもう交渉に入っていらっしゃるのですか。漁業協定はこれから急ぐおつもりですか。いかがですか。
  173. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 水産関係当局及び関係者と現在鋭意わが方の方針を固めておりますが、ほぼでき上がってまいりましたので、先方に申し入れまして、早急に政府間交渉を行ないたい、かように考えております。
  174. 木原実

    木原委員 そこで幾つか問題、気になるところがあるのですが、けさもちょっと水産庁のほうにも聞いてみたいのですが、一つは領海の問題があります。わが方の三海里という問題も、やはり国際的に現状でいいのかどうかということにもかかわってくると思うのですが、御案内のように、中国は十二海里ですか、そういう説をとっておりますけれども、これは尊重をしていく、そういうお考えですね。
  175. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 中国のほうが一九五八年の九月でしたか、領海を十二海里とするという宣言を発しました際に、わが方は一応三海里説をとっておりますので、これは認められないという旨の発表をしております。ただ現在、先生御指摘のように、世界の多くの国におきまして、十二海里説をとっておる国もありますので、そういった問題に対しましては、今後適当な場で慎重に検討していく必要があろうか、かように考えております。
  176. 木原実

    木原委員 もう一つ水産にかかわる問題で、現在、民間協定等によりますと、中国側が公海上に軍事警戒水域ですか、あるいはまた軍事航行禁止区域といいますか、そういうものが設定をされておる。これは民間協定の中では、自主的にその海域の中には入らない、船を入れない、こういうことで尊重をするということで国交未回復の期間過ごしてきたと思うのですが、漁業協定を結ぶにあたって、それらの問題についての措置はどういうふうにお考えですか。
  177. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 現在、黄海のほうに軍事警戒区域、それから杭州湾の近くに軍事航行禁止区域、それから台湾海峡近辺に軍事作戦区域というものを設定いたしまして、航行禁止区域はもちろん一切航行禁止、警戒区域は先方の関係機関の了承、許可をとれば入ってもよろしい。作戦区域は自己の責任においてやりなさい、入らないことをおすすめするというような、三つの種類の軍事区域というものが民間協定においては設定されておりますが、これらの具体的な内容、今後の見通し、どうするかは、先方と今後政府間交渉に入りまして、十分話し合って円満な解決をはかりたい、かように考えております。
  178. 木原実

    木原委員 いろいろむずかしい問題がその辺ににも出てこようなと思いますが、もう一つ漁業に関連する問題で、御承知のように、いままで中国側に漁船が拿捕された問題がございました。けさほど伺いますと、百八十隻にのぼる船が過去において抑留され、もしくはものによっては没収されたという問題が起きているわけですが、これは当然補償の問題が国内的な問題としてもあるわけですね。しかし共同声明によりますと、請求権というのは向こう側も放棄されておる。そういうようなことがからんできておりますので、過去に起こったそういう漁船の拿捕等に対する補償等についてはどんなふうにお考えですか。
  179. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 共同声明とはこれは直接関係のないところであろうかと了解いたしますが、当時の拿捕された船の領海侵犯事実があったかどうかという点が問題であったのが、実態等も現在におきましては不明な点が多うございますので、そういった点を、政府間交渉にあたりましては、十分双方の資料を調べて意見を交換し、また日本の国内の補償の問題は、これは外務省のほうでは所管しておりませんので、水産庁のほうと相談いたしまして考えていただこう、かように考えております。
  180. 木原実

    木原委員 そうしますと、過去のそういう拿捕事件その他については、漁業協定を結ぶ場合の実務協定を交渉していく上で議題にはなる、こういうことですか。
  181. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 どういうことであるのか真相は明確にいたしたい、かようには考えております。
  182. 木原実

    木原委員 いずれにいたしましても、実務協定を積み上げながらすみやかに合意に達するような基本条約締結を急いでもらいたい、これがこの法案に関しましての私どもの要望でございます。  それから同時に、少し別のことでこの際お伺いしたいのですが、これは天皇の御訪米に関することでございます。いろいろ新聞紙上等で報道されているわけですが、天皇訪米についての問題は一体どうなっておるのですか。   〔委員長退席、藤尾委員長代理着席〕
  183. 大平正芳

    ○大平国務大臣 かねてから日米間におきましてこの問題が話題になっておったわけでございまして、アメリカ側といたしましては、陛下を御歓迎申し上げたいという意向が非公式に寄せられております。そういう状況でございますが、事はお上のことでございますので、陛下の御判断、皇室の御判断の問題でございまして、私どもといたしましては、いろいろの条件が整い陛下が訪米されることになるとすれば、それは日米友好関係から申しまして、たいへんけっこうなことだと考えております。
  184. 木原実

    木原委員 そうしますと、これはアメリカ側から要請の話が最初にあった、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  185. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日米間の首脳の接触が何回か過去において持たれたわけでございまして、その間の話題としてこれが出たわけでございますが、私がいま申しましたように、アメリカ側は最近に至りまして、御歓迎申し上げたいという意向が伝えられておるということでございます。
  186. 木原実

    木原委員 話題になったというのはたいへんあいまいなことばなんですが、日本側から、天皇の訪米についてはどうかという打診を初めにしたのか。アメリカ側の発意で、御歓迎申し上げたい、こういうふうに言ってきたのか。その辺はどうですか。断わっておきますけれども、この委員会は、宮内庁等につきましてもいろいろと審議をする委員会でございますので、私どもたいへん関心を持っております。
  187. 大平正芳

    ○大平国務大臣 正式の外交的交渉の問題にはまだなっていないわけでございまして、私がいま、お尋ねがございましたから、非公式にそういう経緯になっておるということを申し上げたわけで、まだ政府と宮内庁との間の正式な接触はないわけでございますので、これ以上私は申し上げる自由を持っていないわけでございます。
  188. 木原実

    木原委員 私は、天皇の訪米ということにつきましては、いろいろな意味で重要な問題だというふうに考えておる一員でございますけれども、しかし、この話が過去両国の首脳の間で話題になった、日本側から要請をアメリカ側にしたのか、アメリカのほうから歓迎をされたのか、訪米についての是非を決するときにたいへん何か判断の一つの材料になるのではないか、こういうことでお尋ね申し上げたのですが、なかなかお答えをいただけませんけれども、もし訪米をされるということになれば、その目的はどういうふうに考えたらよろしいのですか。外務大臣の御判断をお聞かせ願いたいと思います。
  189. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本友好親善の意味合いでたいへん歓迎すべきことと私は考えます。
  190. 木原実

    木原委員 報道によりますと、宮崎に行っておられる天皇がお帰りになりましたら、外務大臣が宮内庁の長官とその問題でお会いになるという報道を見ておるわけでありますが、これはお会いになりますか。そのときに宮内庁のほうに外務大臣から要請を申し上げるのですか。都合を伺うのですか。
  191. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、皇室の御判断の問題でございまして、政府から要請するとか云々の問題ではないと考えておるわけでございます。ただ陛下の御訪米というようなことになりますと、一つの公的な行為でございますので、内閣としても、そういうものとして対処してまいらなければならない立場にあるわけでございまして、いずれそういう連絡というものは、そういうことになれば宮内庁と内閣の間で持たれるのは当然の道行きであろうと考えておりますが、いまのところ予定はございません。
  192. 木原実

    木原委員 天皇はお元気だという話を当委員会でも聞いておりますけれども、すでに七十歳をこえられて、宮崎の植樹祭におきましても御疲労の趣があった、こういう報道などを聞いておられるわけです。そういう御状況の中で訪米をひとつお願いをする、こういうことになればなかなか私はたいへんだと思うのです。そういうことであってもなおかつ御訪米をしなければならないのか、してもらいたいのか。天皇御自身の御判断がどこにあるのかは別にしまして、たいへんなことだと思うのですね。これは都合ということの中に入るわけでしょうけれども、そういう状況を一方において考えますと、訪米の問題がにわかにクローズアップされてきておるということの中には、この際にできればということをことばをつけますけれども、行ってもらいたい、こういうふうに大臣はお考えでございますか。
  193. 大平正芳

    ○大平国務大臣 お断わり申し上げておきますが、政府から御要請申し上げるということではないのであります。皇室の御都合によることでございますので、諸般の事情が許して皇室のほうで御決断があられるということになりますると、たいへん歓迎すべきことだと心得ておりますと申し上げておるのです。
  194. 木原実

    木原委員 天皇が海外に旅行をされるということは、これは言うまでもなく個人ということですが、同時にまたたいへん公的な行事になることは言うまでもございません。また、別の意味で政治的な波及という問題も考慮に入れなければならないと思うのです。したがって、訪米をなさるということについて考えました場合に、たとえばヨーロッパ旅行をなさいましたときには、これはある意味では、天皇御自身のやはり個人的なと申しますか、なつかしい御旅行だったという側面もあると思うのですが、しかし訪米となりますと、私はやはりどうしても二重の意味で政治的な意味を持つことになるのではないかと判断せざるを得ないわけなんです。  と申しますのは、日米間にはさしあたって政治的な懸案事項が多過ぎるわけですね。通商の問題にしましても、あるいはまた通貨の問題にいたしましても、あるいはまた、ベトナム後のアジアの情勢の中で、アメリカの極東政策ないしは極東戦略という、こういうものが一つの変化の時期を迎えておる。これに対して日本の国内の対応策ということが、いろいろとまさに論議を呼びつつあるわけです。あるいはまた、一番根本的な問題としまして日米安保条約、是非はともかくとしまして、国論がなお二つに割れたまま。こういうようなさまざまの日米間に当面横たわっておる政治的な課題、こういうものを踏まえて考えますと、やはり天皇の御訪米をなさるということになると、いやでもそれらの政治的な問題——もちろん直接タッチするわけではありませんけれども、そういう日米間の中にある懸案の問題を離れて判断することはできない。そういうふうに考えますと、いまのような問題をかかえた時期にあえて天皇の御訪米があるということになると、どうしても、日米間の問題を一定の方向に向けて、国民の目をそちらに向けさせる、こういう効果といいますか、影響といいますか、そういうものがある。はたして、そういう政治的な問題が渦巻いておる中に、天皇の訪米ということを設定をするということがいいことか悪いことなのか。あえて天皇を政治の場に結果的には引きずり出すことになるのではないだろうか、こういうふうに考えるわけなんですが、外務当局の責任者として、その辺の御判断はいかがですか。
  195. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ということとは無関係でございます。もしあなたの言われるように、いまの時期が適当でないという意味で消極的に考えるとすれば、それはまた非常に政治的なことになるわけでございまして、日米間の問題というのは、私ども、とりわけ経済関係において緊張を呼んでおる問題が数あるということは、いわば当然の道行きと考えておるのであります。   〔藤尾委員長代理退席、委員長着席〕 百四十億ドルにのぼる貿易をやっておる二国間におきまして、問題がないなんというのがむしろおかしいわけでございまして、当然あり得ることでございまして、それは両国の理解と努力で解決しなければなりませんし、また解決し得る問題であると思っておるわけでございます。陛下の御訪米の問題は、それと次元を異にした問題であると私は心得ております。
  196. 木原実

    木原委員 当然でございまして、たてまえとしましては、国事にかかわらないということですから、政治の中に天皇が介入するようなことはあり得ないことです。しかし、私が申し上げたいのは、結果において、そういう渦中に天皇の持っておる影響力というものが使われるのではないのか。そうなりますと、やはり一定の政治行為の中にあえて訪米ということで天皇を出してくる、そういう結果になりはしないか、こういうふうに考えるわけなんです。私どもは、言うまでもないことですけれども、国事行為にわたるかどうかは別にいたしまして、政治の中に天皇が出るということについて危惧の念を持つし、反対をすると、こういうことなんですが、その辺の見解はいかがでしょうか。
  197. 大平正芳

    ○大平国務大臣 政治的な色彩を帯びることのないように考えなければならぬというのは、全くあなたと同様の見解を持っておるわけでございます。そういう問題として私どもは考えていないわけでございまして、その立場で対処いたさなければならぬと考えております。
  198. 木原実

    木原委員 それでは伺いますが、宮内庁長官とお会いになる、そのときは、天皇の御訪米についておそらく御都合を伺うということになるのでしょうけれども、政治的でないというならば、アメリカに旅行したいと宮内庁の側からの発意があって内閣に相談があるというならわかるのですね。しかし、どうもいままでの流れからいいますと、日米両首脳間の話題になって、そのプロセスははっきりいたしませんけれども、その辺から話が出て、ある意味では宮内庁に問題を持ち込んで、どうですか、こういう姿になっていると思うのですね。それ自体がたいへん政治的なことじゃないかと思うのです。  この委員会でも、過去に天皇の海外旅行という問題について同僚の委員からいろいろな発言がございました。たとえば、アメリカに行く問題につきましても、先年ハワイの移民の百年記念ですか、そういう行事のようなときがあった。そういうときに天皇にお出ましを願ったらどうだというような発言もあったと思うのですね。だから、そういう範疇ならば、私どもは、政治の場に天皇が出るわけではない、御旅行をなさるなら賛成だ、こういう気持ちを持ったわけなんです。しかし、今度の場合は、まず日米両国の首脳間に天皇御訪米の話題があって、それから流れてきて、そして今度は外務大臣が宮内庁に御都合を伺う、こういうシステムになっているのですね。だから政治的じゃありませんか。
  199. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たいへん誤解があるようでございますが、私のほうから、宮内庁にお目にかかりたいという点を申し入れておるわけでは決してないわけでございます。公の問題でございますので、いずれそういう問題として内閣が宮内庁との接触を持たなければならぬ場面も出てこようかと考えておるだけでございまして、先ほど申しましたように、政府が御訪米を要請申し上げる、そういう趣旨のものではございませんし、私が宮内庁長官にお目にかかるべく先方の御都合を伺っているわけでは決してないわけでございます。
  200. 木原実

    木原委員 いずれにいたしましても、天皇の御訪米ということにつきましては、時期の問題ということよりも、先ほど申し上げましたように、日米間にさまざまな深刻な問題をもかかえておる。しかも、たとえば日米安保条約などをめぐって世論が大きく分かれておる。そういうふうなさまざまなことを考慮に入れまして、そういう問題を持っておる両国間の中に、天皇の訪米によって何らかの効果を期待するということは、期待はあってもよろしいわけですけれども、少し政治的に過ぎはしないのか。御訪米なさるならば、個人の御資格で自由に行けるように何か手助けをするというのが内閣の使命ではなかろうか、こんなふうに考えておる一人です。したがいまして、天皇訪米の問題につきましては、どうも落ち目になった田中内閣の景気浮揚策ではないかという批判もございますが、そこまでは私どもも考えたくはございません。しかし、天皇という存在をあまりにもなまなましい政治の世界に引き出すということについては慎重の上にも慎重であってほしい、こういう考えでおりますので、見解を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  201. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま仰せになりましたとおりの姿勢で対処しなければならぬと考えております。
  202. 木原実

    木原委員 大出委員から関連ということで質問がございますので、終わりたいと思います。
  203. 三原朝雄

    三原委員長 大出君。
  204. 大出俊

    ○大出委員 この間の二十九日でございますが、外務大臣に、二十九日はちょうど米軍の完全撤退の日でございましたから、ベトナム戦争終了後のアメリカの新しい極東戦略、あるいは世界戦略といっていいものがある、したがって、それについての認識をかちっとしておきませんと、これからの外交全般の問題に大きな影響があるので承りたいのだということで質問しましたが、大臣なかなかとぼけるのがうま過ぎるわけでございまして、私は、大平さんという人はもっと人がいいかと思ったら、えらい人の悪い方だという気がしたのですが、翌日アメリカがものを言うのをわかっていてあなたはお答えにならない。私のところには共同通信の方々がお調べになった資料が手元にあって聞いたのです。  これは実は、空母の母港化の問題、あるいは第七艦隊の新たな抑止力というものの見方、あるいは韓国、フィリピンあるいはタイ、日本等におけるアメリカの兵力また役割り、そこらが、新しい国防長官になりまして、国防報告の形で議会に出されている。こういう状態でございましたから、私、知りませんといって押し通されたのでは、たいへんこちらは迷惑な話でございます。したがって、当時まともな御答弁をいただいていないのと、また皆さんのほうで、調査をさせていただきたいとお話しになったものと幾つかございますので、とりあえずその点をひとつ明らかにさせていただきまして、冒頭に申し上げたアメリカの新しい戦略構想とからめまして、横浜の隣の逗子の池子でございますが、これは横浜とも一部地域が分かれておるわけでありますが、この池子弾薬庫、これは東日本で一番大きな弾薬庫でございます。ここに再三にわたり弾薬の搬入等がございまして、そこらの心配もあって、私は先般ミッドウエーの問題等とからんで聞いておるわけでありますが、そこらのところをきょうは的確な御答弁をひとついただきたいと思っておるわけであります。  最初に、いままで何回かこの十年間の間に質問をしてまいった問題なんですけれども、横浜にMSCという、米海軍省極東管区軍事海上輸送司令部というものがございまして、ここがいろいろな調達をしておりましたが、ここで人の調達をいたしまして、直雇いで日本人を、日本−韓国−フィリピン−台湾−ベトナム−タイ、こういうふうに結ぶ米軍需物資の輸送に従事させた。昭和四十年ごろの計算でいきますと、二千八百総トンLSTで二十八隻、日本人の船員が約千八百人、これが減ってきておりまして、最近では十三隻で約六百四十人、こういう縮小のされ方でございます。これは当時、メコン川をさかのぼるLSTが沿岸からの銃火を浴びてたいへんな目にあって、命からがら逃げて帰ってきた。死にそこなったわけですが、かつて私はその方にも会って、御本人がこういうふうに言っているんだがということで質問したことまであるのであります。日本という国は主権国家でございますから、日本人である限り、その方々にもそれ相当の権利があり、国にも義務がある、こういう相関関係があるはずであります。  第一は、船に乗るのですから、本来ならば運輸省が船員手帳なり何なりという形で何らかの措置をしなければならぬ筋合いなんです。それから、アメリカの輸送司令部がかってに雇うということについても、何らかのチェックが要るはずなんです。それからまた労働省関係の方々にも、労働関係法規の適用の問題を考えてしかるべきなんです。また全駐労関係の基地におつとめの皆さん方との関係から見ても、大きな目でみれば、何かそこに公平の原則がなければならぬことになる。ところが全く何もしない。何をやったかというと、まず外務省が一般海外旅行者扱いで旅券を発行する。これはある意味で海外派兵ですよ。そして出入国ビザというのは、そこから先は米軍に準じた扱い方をするということで、国防省発行の非戦闘員身分証明書が支給されたという形ですから、出入は自由でございます。  こういうふざけた話はないのでありまして、外務省も大きくからんでいるわけでありますから、この点は一体どうなんですかと承ったところが、一切わからないと言うのです。しかも、戦い済んで日が暮れて、ぱらぱら首になっている現実があるというのに、労働省も何も考えようとしない。本来、船員手帳等を渡すべき運輸省も何もやってないから、経験が資格の上で載っていかない。そこに持ってきて、離職者対策という形において、これは米軍なんですから、防衛施設庁あたりだって何か考えなければならぬ筋合いだが、これが何もしない。しかもぱらぱら首切られることに一言も異議を差しはさまない。その結果、艇長は二十七万くらいもらっているはずでありますけれども、この方々の税金だけは取り上げるというふざけたととを放任はできません。だから承ったのだが、さっぱりおわかりにならぬ。それで、調べるとおっしゃったのだから、調べた結果はどういうことか、直ちにお調べをいただき、あわせてどういうふうに対処なさるのか。私は横浜におりますので、雇われたところはあそこですから、ぱらぱらと打ち首になって出ていくのを私は見ておられません。いかがでございましょう。
  205. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 前回のこの委員会でも、LSTの問題について御質問がございましたし、その後、衆議院の予算委員会におきましても、この問題が御議論ございました。御指摘のとおりに、直接雇用の形で米軍に雇われておりますLST関係で働いておる方々が、昨年十二月末の数字では六百七十八名、ただいま御指摘のとおり現在約六百四十名ということでございますけれども、身分関係から申しますと、御指摘のとおり確かに船員法の保障はない。海外に出かけます際には、一般旅券を持って、一般旅券の保持者というかっこうで、海外にMSCに基づく物資の輸送を行なってきた、そういうかっこうになるわけでございますけれども、他方、米軍が使っております形が直接雇用というかっこうでございますので、地位協定の十二条の関係から申しますと、施設庁は主として間接雇用の対象となります基地労務者を提供するという関係でありますので、それにも直接かからない。一方、船員法の適用がないという関係で、運輸省は直接これのめんどうが見られない。さりとて地位協定の関係から申しますと、国内の労働法規はそのまま適用があるわけでございますから、労働省の関連が当然出てまいりますけれども、一般的に申しますと、外国の船で働いている船員と同じような身分関係にあるということで、その辺でいかに労働省が労働者の身分の保護について関与してくるかという点について若干問題がある。さらにまた、所得税の関係から申しますと、地位協定に基づいて所得税の課税の対象になる。こういうふうなもろもろの問題がございまして、関係各省にまたがるところが多いわけでございます。  そこで、たとえば所得税の問題につきましては、先般、衆議院の予算委員会におきまして、愛知大蔵大臣が、この問題について実情調査の上善処するということを御答弁になっているわけでございますし、国内官庁におかれて、LSTの従業員の方々をいかなる関連からとらえていくかということにつきまして、現在各省それぞれの立場において御検討いただいている状況でございます。
  206. 大出俊

    ○大出委員 そうなれば、つまり何もやっていないということでしょう。これはいままで私が何回も質問している。日本には政府があるじゃないか、日本人じゃないか、あぶないところに行って、命からがら帰ってきている連中がいるのに、何ら手を打とうとしないのはどういうわけだ。戦争をしているのですよ。あのとき大河原さんはアメリカ局長ではないけれども、何べんも繰り返し取り上げている。ところが、いまのお話を聞いていれば、税金の問題は愛知さんが善処すると言ったという。どう善処するのですか。これは日本人でしょう。それで運輸省は、船員法の適用なんだけれども、どうも船員手帳を発行しているわけでもない、だからこれはどうにもしようがない。施設庁も、直雇いだからどうにもならない。外務省は、調べてみたらそういうかっこうでございましたという。それでおっぽっておけと言ったって、一日たてば一日その人の生活があるのだから、何か働こうとするでしょう。職業訓練だ何だといったって、関係法の適用だって、労働省はまだ検討中でございますという。そんなことは、外務省、あなたのほうは、ベトナム戦争では腕を組んでのほほんと見ていたのだから、とっくの昔に各省に指示をして、外務省がイニシアチブをとってやらなければならないことじゃないですか。アメリカが雇ったのでしょう。アメリカに申し入れることだって必要じゃないですか。終わったからといって何でばたばた首切るのだと言わなければならないじゃないですか、施設庁に関係ないならば。駐留軍労働者で基地で働いている方々だって、給付金の問題等、私たちは苦心惨たんして議員立法でやってきたじゃないですか。日本人でそういう状態に置かれて、命を的にやってきて、結果的に職を失う、税金は取られる、どうすればいいのですか。そんなばかな話がありますか。
  207. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいま一番最後に税金の問題をお取り上げでございましたけれども、この問題については、現在大蔵省において具体的な検討を行なっているというように私どもは承知いたしております。税金以外のほかの問題につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、関係各省にわたる問題でございますので、それぞれの各省において、国内法等の関連に基づいて具体的な検討をお願いしている、こういう状況でございます。
  208. 大出俊

    ○大出委員 のんきなことを言われちゃ困るですよ。私が質問したのは先月の二十九日ですよ。そうでしょう。きょうは十二日です。もう半月じゃないですか。半月たって、やめさせられた人は一体どうすればいいということになるのですか。検討中というのは、ことばの上ではうまいことばだけれども、何にもしていないということですよ。現にこの方々は何にも受けていないということですよ。税金だって、善処しますというだけで、何も善処されていないというわけですよ。大体、早急に検討するなんて言ったって、一体何をやっているのですか。
  209. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、関係各省にわたりまして、この省が専管、あるいはこの省が主として主管ということが、必ずしもはっきりしない面がございますので、具体的に各省にお願いいたしまして検討をやっていただいている。税金の問題というのはきわめて具体的な問題でございますから、この点につきましては大蔵省が、いかなる措置をとるべきか、とり得るかということを検討しているということを御答弁申し上げておるわけでございます。
  210. 大出俊

    ○大出委員 みんな検討じゃないですか。大蔵省の方がお見えいただいたはずなんですけれども、何か言うことがあったら言ってください。労働省の方がお見えになっておったら、何か言うことがあったら言ってください。そんなべらぼうなことがありますか。無責任きわまる。そんなことなら、労働省なんて要らないじゃないですか。
  211. 久世宗一

    ○久世説明員 LSTの乗り組み員の方々は、現在の所得税法の趣旨からいたしますと、国内に住所を有する居住者と認められますので、その国内において支払いを受けられます給与については、所得税法の規定によりまして、所得税を源泉徴収するということに法律上なっておりまして、この前の大臣の御答弁にもありましたように、種々検討いたしたわけでございますが、現在の所得税法のもとにおきましては、LSTの乗り組み員の方々がいただいておられます給与につきましては、免税とか減税措置については、いまのところ法律規定上無理かというふうに考えております。
  212. 大出俊

    ○大出委員 大河原さん、善処でも何でもないじゃないですか。法律どおりやるということでしょう。善処というのはよく対処することでしょう。よく処することでしょう。いまの話は、国内に住居があるのだから、これはLST乗り組み員の方々は源泉徴収をすることになっております、それ以外に方法はありませんでは、善処もヘチマもないじゃないですか。そんなことは聞かなくとも法律上きまっておる。そうすると何もしないことになる。そんなべらぼうなことがありますか。考えてごらんなさいよ。あなた方だって官庁におつとめなんでしょう。そんな無責任な不人情な話はないでしょう。税金については愛知さんが善処すると言った。それも法律どおりでございますということになれば、何にもしないことだ。どなたか、ものを言う気のある方はおいでになりませんですか。
  213. 加藤孝

    加藤説明員 LSTの問題につきまして、労働法規全般の適用関係につきましては、まことに申しわけございませんが、現在なおけんけんがくがく議論をしておる段階でございます。  ただ実際に、LSTをおやめになりまして、そして新たに職業につきたいということでおいでいただくならば、その方につきましては、これは年齢によりまして若干区別が違いますし、それからどういう職種を希望されるかによって違いますが、もう一度たとえば日本国の船員になりたい、こういうような形でおいでになりますれば、これは運輸省の船員安定所において就職のあっせんを申し上げる、こういう形になると思うのです。  それから、もう船はやめる、いわゆるおかにあがる、こうおっしゃる方につきましては、労働省の公共職業安定所におきまして就職のあっせんを申し上げるわけでございますが、この場合、年齢が三十五歳以上の方でございますれば、おそらく船からおかにあがられる方については、新しい職種転換というのですか、職業訓練を受けられないと、なかなか新しい職場にも転換がむずかしいだろうということで、そういう三十五歳以上の方でございますれば、一応、雇用対策法というものに基づきまして、これは予算単価の平均でございますが、毎月三万二千円程度の手当を差し上げながら、半年ないし一年間、職業転換のための訓練をして差し上げることができるだろう。それからまた、そういう職業訓練という形でなくて、直ちに実際に職場につきたいという方でございますれば、これは最初から就職という形はなかなかむずかしゅうございますので、ある事業所を御紹介申し上げて、そこで半年間その事業所でいわば訓練を受けながら、その事業所の職場適応訓練というものを受けられる。その間、やはり雇用対策法に基づきまして、毎月三万二千円程度の手当を差し上げまして、再就職への道を開いていくというような方法があるわけでございます。  それから四十五歳以上の方でございますと、中高年齢者就職促進のための法律がございまして、それに基づきまして、毎月やはり職業指導というものを半年聞いたします。この場合、毎月二万五千円程度の就職指導手当という手当を差し上げながら、再就職のための御相談を申し上げる。そして再就職をされます前提として、その間職業訓練が必要である、あるいはまた、事業内の職場適応訓練が必要である、こういうことが出てきますれば、先ほど申し上げましたと同じような金額、期間の訓練制度を設けて、そういう制度の適応が可能であるというところまでは行っておりますが、たいへん申しわけございませんが、そのところ全般についてのあれにつきましては、現在なお検討中でございます。
  214. 大出俊

    ○大出委員 それは皆さんの省から、そこから先踏み込まぬでくれというお話がありましたから、これは遠慮してもいいんですけれども、私も実は、全駐労の皆さん、基地におつとめの方々の場合に、もう何年にもなりますけれども、臨時措置法をつくる提案をしまして、ようやく雇用奨励金、当時八千円。中小企業におつとめであれば、その雇われる中小企業の社長さんに毎月八千円差し上げる。それから就職促進手当、当時二万二千円、それをその間差し上げますということを、議員立法で各党満場一致御賛成いただいて通したことがある。だからこれは、そういう例もかつて申し上げまして、これは黙認をしているんだから、直接雇われる、危険地域に行くことはわかっている、死んだらどうするんだ、日本人じゃないか、戦闘地域に行っているんだから、メコン川のぼっていくんだから、タイまで行くんだから、そうだとすると、そういう場合にそこらまで含めてそれをどうするかという法律手続も考えておいてもらわなければ困るということも何べんも言った。ところが、終わっちゃってこういう状態、なおかつ何もしないという、そういうふざけた話はない。いま初めて課長さんから、この席でこの辺のところは言えるということを聞いた。  こういう時間でございますから、この問題、こまかく一つずつ実はやっていこうという気があったんですけれども、皆さんのほうでまだ五里霧中でいるところを私のほうで提案してもしようがないので、いまのところあたりを一つの基本にお考えいただいて、どこが一体責任を負うのかということを考えていただく。運輸省もふざけた話でございますけれども、これはずいぶん長い期間でございますから、船員としての経験が相当になっているわけですよ。それならば、船員法なら船員法に基づいて資格を認めておいてあげないと、船で続けるといったって、これはまた困るいろいろな問題が出てくるんですよ。だから、そこらのところまでのぼって、労働省中心になってお考えいただくならばそれでもいいんだけれども、早急にそこのところは対策を立てていただいて、そうしてこの方々に、都道府県を通じて、横浜市なら横浜市を通じてもけっこうですが、ものを言っていただけばすぐつながる。平均的に年齢的にいえば大体四十歳くらいですよ。だから、あなたのおっしゃる三十五歳未満と四十五歳以上の中高年齢者の関係法律のまん中にいる人がずいぶんいる。そこらもお考えをいただいて、一体どういうふうにするかということをおきめいただいて、それを表に出していただきたいのです。  そうしないと、県だって市だってどうしていいのかわからぬ。そうでしょう。神奈川県だって、人材銀行みたいなものを持っておって、いろいろな世話はできる。できるけれども、国の基本がはっきりしなければ、横浜市だって、それは私ども関係のあるところだから、やれと言ったらやるけれども、国が一体どうするかをはっきりしてくれなければやりようがない。そうでしょう。しかもこれは生活にかかわるのだから、そんなのんきなことを言っていないで、これは急いでくれなければ困る。税金のほうも、あたりまえのことを言うなら、何も愛知さんが善処するなんて、そんな大きいことを言わなければいいんだ。そこらのところは、これは大臣、外務省も直接的に旅券を出しているのですから、関係ないんじゃない。だからこれは、きょうは大臣お一人しかおいでにならないのだから、早急にひとつ関係の各省といまの問題の決着をつけて、のんきなことを言ってないでくださいよ。早急にこれは閣議でも何でもいいですからお話しください。そして、こういうときこそ決断と実行でいかなければいけないのですよ。そうでしょう。そうしていただけませんか。大臣、いかがでございますか。
  215. 大平正芳

    ○大平国務大臣 かしこまりました。
  216. 大出俊

    ○大出委員 もう二つ承っておきますが、一つはミッドウエーのこの横須賀の母港化の問題にからみまして、このミッドウエーという船、空母には、どんな機種の飛行機がどのくらい載っておりますかと聞いたら、わからぬというお答えでございましたから、まあ施設庁の関係の方々がおいでになったのですが、防衛庁ということでございませんでしたから、私もそれ以上申し上げませんでしたが、お調べをいただき、御検討をいただいてはっきりさせるというお話でございましたから、どんなふうなものがどう載っておるのかということ、ひとつそのお調べいただいた結果をお知らせいただきたいのです。
  217. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 この前の御答弁で私、ミッドウエーが艦載機七十五機搭載ということを申し上げたのを記憶しておりますけれども、ミッドウエーの搭載機の内訳につきましては、F4Bが二十四機、A7Bが二十四機、A6Aが十二機、KA6Bが四機、このほかヘリコプター三機、偵察機三機、こういうふうなのが一応私ども承知している数字でございます。  先般のこの委員会におきまして、インペリアルビーチあるいはアラメダ、そこら云々という具体名の御指摘がございましたけれども、現在ミッドウエーはアラメダに帰投いたしまして、そこでオーバーホールの最中ということでございますので、具体的な具体名は私どもはまだ承知いたしておりません。
  218. 大出俊

    ○大出委員 この間、私、第七艦隊の搭載機は、ダグラスA3Bであるとか、A4Eスカイホーク、これは岩国なんかにおりますが、あるいはA5Cとか、これはビジランティーといいますが、あるいはA6Aイントルーダー、F4Bなどの機種をあげまして、いずれもこれは核を搭載できる。しかも、かつてアメリカの議会における当時のアメリカの太平洋統一軍司令官のフェルト大将などは、アメリカの上院の外交委員会で、アメリカと日本、タイ、韓国、この同盟の目的は、中国が全面戦争を起こすのを抑止することに重点が置かれている、もし全面戦争が起こったら、日本海からインド洋にかけて米太平洋軍は有効適切に戦うというようなことを前段で述べまして、最後のところで、したがって第七艦隊と第五戦術空軍——戦術空軍は日本、韓国、沖繩でございますが、第十三戦術空軍、フィリピンでございます。及びグアムの第三戦略空軍は核兵器で武装されているというふうなことを述べまして、第七艦隊は常にそういう意味で核装備をしているということを言っているわけですね。  これは、だいぶ前に論争したことが一ぺんございましたが、そういう前提に立って、第七艦隊の特にミッドウエーが横須賀に母港という形で定着をするとすれば核の問題が当然出てくるはずだがと、こういう意味の質問をいたしましたら、大河原局長いわく、アメリカ側に対して核に関して注意を喚起した。そうしたら、核については持ち込まない、こういうことを答えた。だから御心配要らない、こういう答弁でございました。これは一体だれがそう言ったのですか。注意を喚起したというのは外務省の常用語ですから、それはそれでいいとして、だれがどこでそういうことを言ったのですか。
  219. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 昨年の十一月に在京米大使館を通じまして米側から、横須賀に通常型空母一隻の家族の居住を認めてもらいたい、こういう要請が参ったわけでございます。そこで、通常型空母ということになりますと、具体的にはミッドウエーだという話を言ってまいりましたので、通常型空母すなわちミッドウエー、これは核兵器搭載可能の空母であるということでございまして、日本側としては核兵器の持ち込みは認めない、また持ち込みをする場合には事前協議の対象となるという原則的な了解につきまして米側の注意を喚起いたしました際に、米側はその従来の日米間の核兵器に関する了解については十分念頭に置いて、この空母の家族の居住並びにそのためのミッドウエーの横須賀寄港を申し出たものであって、日本側の従来の核政策に反するものではないということを申したわけでございます。
  220. 大出俊

    ○大出委員 念頭に置いてと、こういうことだけなんですね。これは文書でございますか。それとも口頭でございますか。
  221. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 米側から口頭でそういうふうに確認いたしております。
  222. 大出俊

    ○大出委員 そういういいかげんなことじゃ困る。私が質問をしたのは三月の二十九日でございますが、ちょうど同じ三月の二十九日に横須賀で第七艦隊の旗艦のオクラホマシティの艦上で第七艦隊司令官のジェームズ・L・ハロウエー中将が記者会見をいたしました。ちょうど私が質問をしている時間。ジェームズ・ハロウエー中将は新聞記者の皆さんに何と言ったかといいますと、一つ、ベトナム戦争で海軍が国力の重要な一環であることが証明をされた。この点をまず強調された。第二点、第七艦隊の役割りは西太平洋の公海に存在して同盟国に対していつでも米国が支援する決意のあることを示すことという役割りを力説をされた。三番目に、第七艦隊の機能を効率化するのに在日基地はきわめて重要かつ使用価値があり、このことは引き続き変わることはない。沖繩基地機能についても将来ともに全く変化はない。こういうことを発表いたしまして、これに対して記者の方々の、核兵器を保有しているのではないかという点についての質問が集中をした。これに答えて第七艦隊の司令官自身が、ハロウエー中将自身が否定も肯定もいたさないと一言一言慎重に答えた。否定しない。第七艦隊の司令官ですよ。あなたは念頭に置いたと言うけれども、念頭に置いたことを口頭で聞いたからって、司令官は、核兵器を持っていればたいへんだという認識をみんな持っているから、質問すれば否定も肯定もいたさない。できない、しない、これは一体どういうことになるのです。
  223. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 第七艦隊のハロウエー司令官が、核兵器について否定も肯定もしないという答えをいたしましたのは、米側の標準的な応答ぶりをそのまま迷べたというふうに私、了解いたしております。つまり米政府あるいは米軍人は、核兵器の所在について質問を受けた場合にコメントをすることを認められておりません。したがいまして、標準的な回答ぶりは肯定も否定もしないということに終始しておるわけでございます。
  224. 大出俊

    ○大出委員 だからものを言いたい。司令官自身がそう言っているのに、あなたのほうのルートで、口頭で念頭に置いたなんてなことで済まされては困る。明確にやはりこれは、あなたのほうでもう一ぺん、現場でたくさんの記者の方が聞いているわけだから、どう念頭に置いたのか、これは文書で明確にしてください。原子力潜水艦が入ってくるときだって、エードメモワールだとかいろいろなものをこしらえた。原子力潜水艦じゃないのです。これは国際的にだれが考えても、核搭載可能でありかつ核を積んでいると認識をされている。ジェーン年鑑を見たってそうでしょう。あなたはこの間そう言ったでしょう。わざわざこんなものを、核をおろして出てくるばかはない。時間がないから立証するのはあとにしますけれども。だからそうだとすれば、それに対しては横須賀市民の身になってごらんなさい。そんないいかげんなことじゃ済みませんよ。明確にしてください、これはひとつ口頭でなんていいかげんなことじゃなくして。いかがでございましょう。
  225. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 核の問題につきましては、一九六〇年の岸・アイゼンハワーの共同コミュニケで、「大統領は、総理大臣に対し、同条約の下における事前協議にかかる事項については米国政府は日本国政府の意思に反して行動する意図のないことを保証した」ということを明確にうたっておるわけでございまして、沖繩返還の交渉に関連いたしまして、たとえば、一九六八年の佐藤・ニクソン共同声明、その後の沖繩の返還交渉そのもの、また沖繩の返還協定、いずれの場合におきましても、米側は日本政府の核に関する政策に背馳した行動をする意図のないことをたびたび確認いたしております。したがいまして、政府といたしましては、米国政府は、日本政府のこのきわめて重大な政策、その問題について日本政府の意思に反して行動する意図がないことと考えておるわけでございます。
  226. 大出俊

    ○大出委員 岸・アイゼンハワーの共同声明なんてものはぼくも百も知っていますよ。知っていますが、それならば、原子力潜水艦の入ってきたのは何年でございますか。
  227. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 一九六四年だったかと思います。
  228. 大出俊

    ○大出委員 三十八年でしょう。それならばアイゼンハワーの声明以後でしょう。声明があるからいいということにならないのですよ、この種の問題は。だからあのエードメモワール等の中には触れてはいます。いますが、原潜寄港という問題をとらえてあらためて文書にして出している。そうでしょう。だとすれば、ミッドウエーの母港化という問題なんですから、しかもこれはオクラホマシティーだって空母でしょう。駆逐艦が六隻、一年前に来ているでしょう。そうだとすれば、やはり第七艦隊の主力なんですから、あなたのほうで、それについてはそれなりの手順を踏んで明確にしなければ、反対運動が激化するのはあたりまえじゃないですか。そのくらいの配慮をしないという法はないでしょう。いかがですか。大臣、この点は。
  229. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この点につきましては、この前の委員会でもあなたとの間でやりとりがあったわけでございますが、私といたしましては、いま政府委員から御答弁申し上げましたとおり、安保条約並びに関連取りきめの順守につきましての日米最高首脳の確約というものを信ずる以外に道がないと考えておるのであります。何となれば、安保条約そのものばかりでなく、日米両国関係自体、根底におきましてはやはり信頼関係でございますので、相手がこれに違反するかもしれないおそれがあるというような状態におきまして、こういう大事な取りきめを円滑に運用してまいるというようなことは私は不可能だと思うのでございます。アメリカがそう確約している以上、アメリカがその責任にこたえてちゃんとやってくれておるという信頼の上に立って事を処理いたしてまいりたいと考えております。
  230. 大出俊

    ○大出委員 それでは現地が納得しようがないことができ上がる。だから、ミッドウエーというものは年内に、とハロウエー司令官が言っておりますから、今年末ということを言っておるのですから、まだ時間があります。これはやはり原潜寄港のときにも、同じ横須賀ですから、さんざん核の問題は大きな問題になっている。だからこの種の問題については、政府がまさに慎重に対国民を説得するという意味を含めて、ミッドウエーの母港化について、その心配はないのだという説得力のある形のものをぴしっとつくらなければ、そうでなければ、これは現地の皆さんというのは、原潜寄港ということでもさんざっぱらいろいろなことがあったのですから、なかなかおさまりのつく筋合いのものではない。そのくらいのことは政府がやるべきだ、こう私は思いますよ。大きな騒ぎになって、もめて、それからといったっておそい。やはりそういうところはきちっと政府がやるべきものはやる、これが私は正しいと思う。当然なことだと私は思う。原潜寄港のときだってつくったんです、ちゃんと。そうでしょう。それ以上のことになりますよ。原潜は常時、これはあらためて質問しますが、いまたいへんな出入の激しさでしょう。だとすれば、その上にミッドウエーの母港化ができ上がる。先に進めてもとに戻りますけれどもね。  ところで、リチャードソン国防長官になってから議会に出された国防報告がございますね。この日本についてのところ、これをあなたのほうはどういうふうに受け取っておられますか。
  231. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 リチャードソンが上院の歳出委員会並びに上院の軍事委員会におきまして、一九七四年度予算及び七四年−七八年の年度計画ということにつきまして報告をいたしておりますけれども、その報告の中で、日本との関係につきましては、リチャードソン国防長官は、太平洋においては日本との安全保障関係が引き続いて重要であるということを述べているわけでございますけれども、一般的に申しますと、アジアの関係については、ニクソン・ドクトリンの適用にもかかわわず、アジア地域の不安定は続くと見られ、米軍の駐留がしばらくの間は引き続いて必要であろう、こういう見解を述べておるわけでございます。
  232. 大出俊

    ○大出委員 三月二十八日だったかと思いますけれども、リチャードソンは国防報告を歳出委員会並びに軍事委員会に出されておりますが、この中身、これはいまから私申し上げますけれども、皆さんのほうと食い違う点が出てくるかもしれない。いつもあることですが……したがって、あなたのほうで訳されたものをあなたのほうからいただいて、私のほうにある訳を私のほうで考えて、そこでやらないと、違った点が出てきた場合に、これはことばの違いですからしようがない。だから、その点は前置きをしておきます。  この日本についての幾つかの問題点の中で、第一はいまお話がありましたが、太平洋地域で大きな重要性を持っているものは日米安保関係だ、簡単に言えば。そういう趣旨の指摘であります。第二に、アジアの同盟諸国に対する米国の抑止力あるいは抑止状態がくずれた場合の反撃力として、十分装備された一定の兵力を海外に維持することが必要である、こういう指摘があります。もう一ぺん言います。アジアの同盟諸国に対する米国の抑止力あるいは抑止状態がくずれた場合の反撃力として、十分装備された一定の兵力を海外に維持することが必要である。三点目、ここでいう十分に装備された一定の兵力維持の意味を日本に当てはめてみると、陸、空の在日米軍は実戦部隊はおらないで第七艦隊の海軍部隊が存在するだけである以上、具体的には横須賀、佐世保に母港を備える第七艦隊の半永久的維持が必要ということになる。  この間、私は大臣に、母港化ということはどういうことなんだ、半永久的なアメリカの中心的な基地ではないのか、アメリカのポスト・ベトナムという意味における戦略配置はそうであると言ったら、大臣、あなたは、私はそう受け取っていない、ただ単かる兵員の交代だ、年百年じゅうミッドウエーが横須賀にいるのじゃないと言う。そんなことはあたりまえです。陳列しているのじゃないのだから、出たり入ったりするでしょう。だからそれは間違いだ。そうじゃないのです。アメリカのベトナム以後における極東戦略の中心的な配置、つまり重点基地である、あるいは最も重要な基地である、そういう認識を相手方はしているのじゃないかと私は先月の二十九日に申し上げた。前の日にこの歳出委員会と軍事委員会に新しい国防長官リチャードソン報告が出ているわけですから、それを私は申し上げた。  もう一ぺん言いますが、アジアの同盟諸国に対する米国の抑止力あるいは抑止状態がくずれた場合の反撃力として、十分装備された一定の兵力を海外に維持することが必要である、こう指摘をしている。そして、ここでいう十分に装備された一定の兵力の維持の意味を、これは日本について言っているわけですから、日本に当てはめてみると、陸、空の在日米軍は実戦部隊はいない、第七艦隊の海軍部隊が存在するだけである以上、具体的には横須賀、佐世保に母港を備える第七艦隊の半永久的維持が必要だ、こういっている。明確じゃないですか。なぜあなたのほうは、兵員の交代だけでございますなんてことを簡単におっしゃるのですか。こういうことはもう少し的確にやはり世の中に明らかにしておく必要がある。あわせて外務省の見方を明確にしておく必要がある。そうでなければいけないのですよ。いかがでございますか。
  233. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいまの冒頭に若干の留保をつけて御発言でございましたけれども、三月二十八日にリチャードソン国防長官が上院の軍事委員会で行ないました報告の中には、日本に関して四行、先ほど私が申し上げましたように、太平洋における日本との安全保障関係の重要性を指摘したくだりがあるだけでございまして、横須賀、佐世保あるいはそれとの関連においての母港化の問題については、全然言及がないわけでございます。したがいまして、私もそのような記事、報道を見た記憶がございまするけれども、これはその報道を送った記者がリチャードソン報告をそのように解釈して送ったものではないかというふうに考えるわけでございます。
  234. 大出俊

    ○大出委員 そのように解釈して送ったのじゃないのですよ。あなたのほうでお調べいただけばすぐわかりますが、そのように解釈したのではなくて、このリチャードソン報告に基づいて、リチャードソン氏はじめ関係の方々に直接会って、この点についてちゃんと全部質問しているのです。だから、あなたのほうもそこまで御存じならばお調べいただけば明確です。それはあなた方は、文書に書いたら、これはたとえば三行か四行書いたって、その重点というのは一体何だということになれば、たいへんな背景がある。あたりまえでしょう。だから冒頭に私は断わりを申し上げておる。だから、あなたのほうでの受け取り方と私のほうの受け取り方が違えば、それはあなたのほうからあとで出していただいて、私の見解と違うところを明らかにすればいいと、こういうふうに申し上げてものを言っているわけですから。  リチャードソン報告というものを、直接、なぜこういうことなんだということで、向こうにいる記者ですから、当たって説明を全部聞いている。一人が聞いているんじゃないですよ。そうすると、向こうのリチャードソン氏はじめ関係の方々の説明は、これはつまり日本についてなんですから、日本に当てはめるとこういうことになる。今度の母港化というものは、大臣が言うように簡単に、兵員の交代でございます、そんなけちなものじゃないのです。これは、先ほど私が申し上げたハロウエー中将の言っていることも、全く同じことを言っている。もう一ぺん中心的な点を指摘しておきますが、これは横須賀でしゃべったんですから、海の向こうじゃありませんから、間違いないことでございます。第七艦隊の司令官のジェームズ・L・ハロウエー中将。第一の点は、さっき申し上げましたように、重要な海軍というものが見直された、たいへん重要なものである、そういう証明がベトナム戦争の結果なされた。二番目は、第七艦隊の役割りは一体何だ、西太平洋の公海、ここに存在する同盟諸国に対していつでも米国が支援する決意のあることを示すこと。つまりこれはどういうことかというと即応能力ですよ。有事即応能力です。つまりアメリカの国防省関係者、リチャードソン氏以下が説明している。つまり、アジアの同盟諸国に対する米国の抑止力あるいは抑止状態がくずれた場合、反撃力として十分に装備された一定の兵力を海外に維持することが必要だという考え方なんだ。ここに言っている、西太平洋の公海に存在している同盟諸国に対しても米国が支援する決意のあることを示すこと。第七艦隊の機能を効率化するのに在日米軍基地はきわめて重要である、使用価値がある、このことは引き続き変化はない。即応能力というものを維持する考え方なんだということなんですよ。  外務大臣、あらためて承りますけれども、空母の母港化というものは、単なる兵員の交代、そうしかあなたはお考えにならぬのですか。
  235. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この間御答弁申し上げたとおりの評価を私は依然いたしておりまして、私の見解に変わりはございません。あなたが言われるのは第七艦隊の機能についての御説明でございますが、確かに第七艦隊は西太平洋水域におきまして就役いたしておるわけでございまして、アメリカのいう抑止力を形成する大きな役割りを果たしておると思うのであります。第七艦隊の機能は大事であるということ、それからリチャードソン証言の中に、日米安保体制というものは引き続きメジャー・インポータンスだというように書いてあること、それは私もそのとおり拝見しておるわけでございますが、大出さんと私の違いは、それを横須賀の今度のミッドウエーの家族の居住と結びつけられて、横須賀の第七艦隊の機能がこれで非常に強化されて反撃力の跳躍台になる、そういう企てなんだというようにあなたが評価されておるように私は受け取るわけでございますが、私はそうはとらない。何となれば、西太平洋水域におきまして、私もよく知りませんけれども、何ばいかの航空母艦が就役しているわけでございまして、これが一定の期間参りますと、本国のほうへ回航して補給もしたり休養もしたりして、また出向いてくるわけでございまして、もし家族が横須賀並びにその周辺に住まっておるということになりますと、西太平洋水域から横須賀で補給し休養して、また活動水域に出るということになりますと、うんと距離が短縮されるわけでございまして、リチャードソンの証言にもありますように、アメリカにすれば戦費を可能な限り節約しなければならぬという趣旨から申しましても、三ばいのところが一ぱいで済むことができれば、それはアメリカにとってそういう選択をすることも私は考えられることでございますので、そういう意味で家族計画なんだというふうにぼくはとっておるわけなんで、せっかくの御指摘でございますけれども、その点はあなたと私と評価が違います。
  236. 大出俊

    ○大出委員 そういう答弁をいただければ、これは議論できるわけですけれども。たまたま大河原アメリカ局長さんが、先ほどそういう記事を見たことがあるというお話ですからたいへん好都合なんですが、いま見たことがあるとおっしゃっている記事は、私も一ぱい調べましたが、一つしかない。共同通信の記事ですよ。共同通信の高橋さんという特派員が向こうから打ってきた電報です、中身というのは。これは実は長いのですよ。ちょっと申し上げます。いまの大平さんの言っていることもある。つまり、いまメージャー・インポータンスとか書いてあるとか言っていましたけれども、それは一体何だと調べなければ、やはり記者の役割りはつまらない。あたり前でしょう、どこの記者だって。  そこで、私がさっき言ったように、十分に装備された一定の兵力を維持することが必要である。これはいま大臣が言うのと同じ認識をぼくも持っているのですが、今度の国防報告のいままでときわめて違った特徴は何か。それは第七艦隊による抑止力なんですね。これがポスト・ベトナムという形の中のアメリカの軍事戦略の中心になっているのですね。これをはっきり表に出しておる。いままでいろいろレアードさんのやつもありますけれども、そのことを端的に浮き彫りにした国防報告というのは珍しい、初めてだ、これが特徴です。第七艦隊の抑止力というものをたいへん高く評価している。中心に据えた。その認識は私はあなたと何も変わっていない。  そこで、私のほうもここから変わるのは何が変わるのかというと、日米安保体制の軍事的な抑止力、これは沖繩返還以後の中心点はどこにいったかというと、第七艦隊の駐留なんですよ。横須賀だけではないのです。第七艦隊というものが西太平洋に駐留をする、それが今度の国防報告の中心になっている。これは共同通信の記者の方もそういうふうに打ってきておられる。アメリカの議会内には、米軍の海外駐留を縮小して、いまお話があったが、軍事費の削減をはかろうとする動きが非常に強い。その空気の中で、有効にそれをどういうように処理するか。ニクソン・ドクトリンが出てくるわけですが、そこで一つは、半年ごとに空母が本国に帰るというのは、それに伴う膨大な経費が要る、だからまずこれを節約しよう、半年ごとに帰らない、これを節約をする。そうして二番目に、あわせて兵員の士気というものを高めよう。三番目に、その結果として有事即応能力というものは、あるいは有事即応体制というものは、時間の短縮もございますが、非常に高まるというものの考え方が中心に置かれている。ということになると、日本に母港がどうしても必要である、こういう論法なんですね、体系的に見ていくと。そうすると、日本のミッドウエーの母港化というものを含めて第七艦隊が駐留をする。それをいま大臣が言いましたが、時間の問題を含めまして、要するに第七艦隊の即応能力を高めるという手段なんです。そうすると、幾つも方々にありますが、フィリピンがありあるいは日本がありますけれども、中心は一体どこへいくかというと、非常に大きな中心の一つが横須賀に来る。だから第七艦隊の旗艦のオクラホマシティーだっている。駆逐艦が六隻いる。だから、オクラホマシティーだって、ミッドウエーだって、そうでしょう。そうなると、横須賀のいまのこの新しいミッドウエーの母港を中心にしての体制というものは相当な能力を持つことになる、こう見なければいけない。  あなたのほうは、そこのところを何とか逃げておかないと横須賀の母港化の問題でめんどうなことになるから、一生懸命、兵員の交代だけ、交代だけ。そこが大きな食い違いです、あなた方の。いまにものごとはだんだんはっきりしてきますから。ここまで申し上げておきますが、あなたの認識は、それは間違いです。
  237. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま現に第七艦隊が持っておる抑止力、そういったものはどういうものであるかという問題と、今度の横須賀の、あなたのほうは母港化と言うし、私のほうは家族計画だと言っておるのでございますが、これが一体それを強化するものであるかどうかという判断の問題でございますが、私はどうも、いま大出さんのずいぶん論理的な解明がございましたけれども、そこが納得ができないわけでございまして、何も私もかたくなに、大いに無理でもおれはこれを守らなければならぬなんという、そんなさもしい根性は持たないわけでございまして、ありのままの事態がこういうものではないかと、私はすなおに考えておるわけでございます。たいへん見解が違いまして恐縮でございますけれども、私どもの見解としては御理解をいただきたいと思います。
  238. 大出俊

    ○大出委員 そこのところはすれ違いますが、答弁はそういうことにしておきましょう。  ところで、池子の弾薬の搬入問題でございますが、具体的に順次承ってまいります。時間はよけいはかけませんが……。  まず、きのう米海軍が発表いたしました、この中身は七つございますが、実はこの該当の逗子市にいたしましても、市長さん、あるいは議会筋の責任者の方々、さらには横浜、わずかの地域をここへ持っておりますから、こちら側も、また神奈川県も、県知事はじめ次々に、相当強い口調の、だんだん強い口調の声明が出されたり、抗議の意思表示がありましたりしております。そこで、あなた方は、この継続使用ということを初めから知っておられたわけでございますか。いつ継続使用ということについての御認識をお持ちになりましたか。
  239. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 池子の弾薬庫は、従来、米陸軍が使用しておった弾薬庫でございますけれども、一昨年秋の日米間の合意に基づきまして、米陸軍が池子を海軍に主管を転換するということになりまして、昨年の十月に池子が海軍の弾薬庫として使われることになったわけでございます。その際、関連といたしまして、池子の離れ地に、逗子の市街地に近いところに従来管理のための施設がございましたけれども、この飛び地にありまする管理施設を新しい池子の弾薬庫の中に移設する、こういうことになりまして、その移設作業が昨年の暮れに終わりまして、当該離れ地は日本側に返還されたわけでございます。その池子の弾薬庫が陸軍から海軍に移管されるという段階におきまして、日本側は、米海軍が池子の弾薬庫を今後海軍の弾薬庫として引き続きずっと使用していきたいという希望を承知の上で、これを地位協定に基づく施設、区域として提供をしたわけでございます。
  240. 大出俊

    ○大出委員 そうしますと、具体的な日にちを言いますと、日米合同委員会で管理施設の約六万平米の返還が合意されたのは、これは昭和四十六年十月二十八日でございますね。このときでございますか。
  241. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 御指摘のとおりに、池子の弾薬庫の移管という問題につきましては、四十六年の十月に合同委員会で合意を見たわけでございます。  なお、これに関連いたしまして、従来、三浦半島における施設、区域につきましては、その整理統合につとめてまいったのでございまするけれども、その間、久里浜の倉庫地区、追浜の海軍航空隊施設、衣笠の弾薬庫等の返還が実現したわけでございますけれども、特に弾薬庫の関係につきましては、海軍が従来衣笠の弾薬庫を使用しておりましたものを、先ほど申し上げました池子の弾薬庫を陸軍から譲り受けるに伴いまして、衣笠を日本側に返還するということをきめまして、昨年の二月に衣笠の弾薬庫が日本側に返還されたわけでございますが、一方、一昨年十月の合意に基づきまして、池子の弾薬庫内の管理施設の整備につとめまして、昨年の秋にこの移設作業が完了。そこで政府は、先ほど申し上げました、市街地にありました飛び地の分は日本側に返還、池子は海軍に移管されたというかっこうで今日になっているわけでございます。
  242. 大出俊

    ○大出委員 だから、あなた方が、アメリカが継続して使っていくということをはっきり御認識になったのは、四十六年の十月二十八日の日米合同委員会で六万平米の返還を合意したときに、そういうふうにあなた方はお考えだったかと聞いている。
  243. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 御指摘のとおりでありまして、池子の弾薬庫を米陸軍から米海軍へ移管するという方針がきまりました段階から、池子は米海軍が今後使っていきたいという希望を日本側は承知しているわけであります。
  244. 大出俊

    ○大出委員 ならば、その時点ですでに返還はない。これは第七艦隊が半恒久的だといっておりますから。だとすれば、これは第七艦隊との関連における——私は何もミッドウエーのことをとやかく言っているわけではない。第七艦隊の関連におけるこの池子の弾薬庫というものは、半永久的にアメリカ海軍が使うのであるという御認識をお持ちになったということになる、いまのお話ならば。まずそれならば、ずいぶんあなた方はひどいことをされる。私はさっき、大平外務大臣をもう少し人のいい方だと思っておったがそうでない、と申し上げたのだけれども、このころわかっておるものを、気を持たせるようなことをあなた方が言うものだから、逗子の市長さん、正直な人だから、見てごらんなさい、あの新聞を。六万平方米が返ってくる、わが世の春で間もなくこっちも返るからということになっている。諸所方々みんなそうです。昨年の十二月二十六日でございましたか、横浜市の側の住民組織である返還のための団体、大胡さんという方が責任者でございますが、防衛庁にお伺いしたことがある。あなた方は、いま池子の弾薬庫は弾薬はからでございまして、貯弾ゼロでございます、したがいまして、危険手当も警備員に払われておりません、こうお答えになるものだから、この方々も、いや、これで間もなく返還だわいというので、帰ってきてそう言っている。あなた方は腹の中でとっくの昔に、四十六年十月の合意の段階から、陸海軍入れかわる、衣笠はだから返すんだから、この管理棟の六万平米というのは返還をする、そうしてこっち、本体のほうにリロケートをするという、その考え方のときにちゃんと、これはずっと使っていくのであって、返還なんということは将来ともあり得ないとわかっていて、わざわざ出かけていく人たちが次々あるのに、おまけにそこには関係市町村が全部あるのに、何で一言もそれをおっしゃらぬのですか。弾薬が運び込まれてから大騒ぎになって、方々聞いてみれば、情報がないということを言う、回答で。私は県の渉外部に聞いてみた。市の渉外部にも聞いてみた。情報を得ていないと言う。外務省に聞いても、防衛庁に聞いても、情報を得てないと言う。得てないじゃない、四十六年の十月にちゃんと得ている。あなた方、合意してきめている。そういうふざけた話がありますか。大臣、いかがですか。これは納得できませんね。
  245. 大平正芳

    ○大平国務大臣 大出さん、私は政府はもうこんりんざいうそを言っちゃいかぬと思うのです。うそ言ってその場を逃げてみたって、政府という大きなずうたいはどこへも引っ越すことはできません。だから絶対にわれわれは、国会ばかりでなく、対民間におきましても、どこにおきましても、プレスに対しても、うそを言っちゃいかぬと思っておるのでございまして、うそであったということでありましたならば、これはたいへん政府の落ち度でございまして、指弾されなければならないと私は思うのでございます。  ただ、あなたが言う、陸軍の管理から海軍に管理がえになったという事実は、いま政府委員がお答え申し上げましたように、そういう事実は知っておった。しかし、これは解除になっていないわけでございまして、アメリカがいつでも使える状態にあるわけなんでございまして、そのアメリカの日々の使用、管理の状況というものを政府がよくつかんでいなかったということに対して御注意であったら承りますけれども、そのときには、いついつこれはちゃんと入ることを知っておって黙っておって、それで民間を瞞着しておったというような御指摘であれば、ゆめゆめそんなことは考えていないわけですから、その点は御理解をいただきたいと思うのです。
  246. 大出俊

    ○大出委員 たいへん重大な御答弁をいまいただいたのですが、この間に、池子の全面返還を求める団体からおのおの何べんも出かけていって陳情しているわけですよ。文書を持っていって、早急にこの本体の全面返還をしていただきたい、ベトナム戦争の終息の段階でもありと。昨年末でもそうです。  あなたのほうの答えはちゃんとここにある。何とお答えになったかというと、これは、施設庁に大臣のいる前でお答えいただきたいのですが、いや、池子はいま遊休化しておりまして貯弾ゼロ、弾薬はゼロでございます。だから警備員にも危険手当等は払われていない、そういう趣旨の答えをしておられる。責任者はそう報告をされている。そういうふうに言わないで、遊休化していると言っているんですから。遊休化して二年半にもなるんだから、しかも貯弾がゼロ、だから危険手当も払われていない、こういうことになっているという言い方をされれば、その方々は返還近しと思って帰るでしょう。その報告をしているわけです。だから、逗子の市長さんがかんかんになっているのも、そこにある。遊休化されている、危険手当も払われていないと、みなそう聞いているわけだから。  だから大臣、そこで、そうではなしに、陸軍から海軍にかえた時点で、とてもじゃないが、これはそういう状態にございませんと、あなた方がなぜおっしゃらないのですか。だれもそう言われて帰ってきておる人はいない。だから、どこだってそう報告しているから、そんなばかなことがあるかということになる。市民だってそうですよ。私は記者の方々にも聞いてみた。私の秘書もやって、町の方々も調べてみたけれども、もうこれは間もなく返還だ、二年半にもなって、搬入もされない、搬出もされない、二年半にもなるからやがて返ってくるとみな期待を持っている。何と池子の弾薬庫というのは逗子市全体の一五%あるのですよ。狭い逗子の町の中で一五%ですよ。そうでしょう。リスが飛んで歩く、植物的にもまさに学問的にたいへん貴重なものが一ぱいある、そういう地域です。だからみんなそういう期待を持っていた。だから、どなたに聞いたって、今度のこの問題で憤慨にたえぬという人ばかりですよ。市民に聞いてみて、当然だとかそう思っていたとかいう人は一人もいない。そうでしょう。あなた方がそういう認識を早くから持っていたならば、逗子の責任者である市長にも、逗子市議会にも、あるいは横浜から行った市民団体にも、なぜ明確に言わないのですか。施設庁からまず聞きたい。平井さんいかがですか。
  247. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 私が最近直接地元の方とお会いした機会がございませんので、私どものほうのだれかが、もしいま御指摘のような点で地元の方にそういう印象をお与えしたとしたら、はなはだ残念であったと思うのでありますが、御存じのように、この池子の問題につきましては、途中、私、一時施設の仕事をはずしましたが、返還問題につきまして直接担当してやっておりましたのは私でございます。池子の弾薬庫が陸軍から海軍に切りかわる前から、そのもっと前をたずねますと、逗子の市長さんをはじめ市民の皆さんたちが、池子弾薬庫を全面的に返還してほしいという御要望は、昭和二十九年以来運動として続けられているわけです。この御要望を踏まえて、かねがねわれわれ米軍と折衝していたわけでありますが、陸軍が管理している時代にも、返還するわけにはいかない。そこで、せめて六万平米ほどある離れ地にある管理部門だけでも早く返還するわけにはいかないのか、こういうことで折衝を続けていたわけでございます。それで、おおむね陸軍との間に話がつきましたころに、あの施設の管理が海軍にかわったわけであります。そこで、あらためて陸軍と海軍を含めまして管理部門の移設についてはどうなるのかという話し合いをいたしまして、海軍も地元の要望にこたえて、管理部門は本体のほうに移設することによってお返ししましょうということになったのです。そこで、そのお話を踏まえて地元とお話を私いたしましたときに、全面返還については海軍に移管された後も当面期待することはできない、海軍は引き続き使うのでできないが、せめて管理部門だけは返すということで話はついた、当面これでごしんぼう願いたい、そういうことで地元ともお話をいたしてまいりました。  それから昨年も、遊休ということばに当たりますかどうか、少なくとも弾薬庫の本体のほうの使用状態が比較的閑散になっておるのを踏まえて、地元から御要望がありましたときに、私はあらためてそのとき米軍に、こういう状態で今後どうするのかということを確かめたことも記憶しております。そのときにも米軍は、いまこういう状態だけれども近いうちに使用したいのだ、使用する計画も持っている、ただ具体的な時期等についてはまだきまっていないという話がございました。この点も市長さんにはお伝えてしていたわけです。  ただ、私、察しまするに、遊休の期間というものがここ一年有半続いておる状態から、地元の方たちの間におのずから、こういう状態なので、管理部門だけではなくて、本体の返還も可能であろうという御期待というものが強くなってきたという市民感情、そういったものがあったことは私も十分推測できるわけでありまして、そういう点と、返還ができないという私どものほうのお伝えした姿勢との間に、あるいはギャップがあったのではなかろうかと思います。
  248. 大出俊

    ○大出委員 委員長、時間かけないでやろうと思っておりますので、読み上げたりなんかしませんが、該当の市が出しておりますものの議論の中身も、横浜市の基地特別委員会の中身も、県のも全部私ここに持っている。全部読んでみました。ところが、県当局、市当局の説明は、みな返還間近しという認識を持って説明しているのですね。だからこの時点でもみなそう思っていたと言っているのです。市長も助役も、あるいは市議会議長も、また特別委員会委員長もみなそうなんです。それから陳情に来た団体はみなそうなんです。そうなると市民感情だって、もう間もなく返ってくるとみな思うのはあたりまえです。二年半も使っていない、そうでしょう。鉄条網が張ってあるところも腐って、入れるようになっている。そうでしょう。そうなると立ちぐされになるままのようになっているわけですから、そうなればだれが考えたって、これは間もなく返ってくると思っているところに、弾薬が運び込まれた。それも市当局にも県当局にも——市当局は二つありますよ。横浜の地域だってあるのです。金沢区六浦にあるのです。どこにも何の連絡もない。しかもあとで聞いてみると、一時間前に所轄の警察署に通知があった。通訳が来て言ったというだけなんです。  そういう非常に不親切な、対市民感情もお考えにならぬやり方というものは、これは許しがたいと私は思うのですよ。この間の横浜のノースドックの共同使用だってそうですが、私はひどい目にあいましたよ。平井さんに直接言いましたから言いませんけれども、重ね重ねまた今回もです。だから、弾薬が入ってきましたというので面くらったのは、逗子の市長であり、市議会の議長や県知事以下であり、横浜市の市長。横浜市だって市の区域の中にあるのですよ。池子というのは三十六万平米ばかり金沢区に入っているのですよ。一言も連絡がない。一時間前では市民に知らせる方法もない。そういうばかげたことを何でおやりになるのですか。市民感情に火をつけるだけじゃないですか。これはどうしてそういうことになったのですか。
  249. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 池子の全面返還がむずかしいという事情につきましては、実は第六十七国会で池子弾薬庫の返還に関する請願八件、これが採択されております。これに対しまして、政府は昨年の五月十六日に閣議決定を経まして、総理大臣名で衆議院議長に回答いたしております。その回答の中身は次のとおりでございます。「池子弾薬庫の一部(管理地区約六万平方メートル)返還については、すでに昭和四十六年十月同地区内にある施設を弾薬庫地区に移設することを条件として返還することが日米間で合意され、現在、実施中の移設工事が完了次第返還される予定である。しかしながら、池子弾薬庫の弾薬庫地区(約二九二万七、〇〇〇平方メートル)については、米軍はこれを将来とも使用する意向を有しており、現在のところ返還される見通しはない」。これは昨年五月の回答でございます。その間、先ほど施設庁の施設部長から御答弁いたしましたように、現実には池子は使われておらなかったという事態は確かにあったわけでございまするけれども、今回の輸送につきまして、米側といたしましては、日米合同委員会の合意に基づいて進められておりまする手続に従いまして、弾薬輸送について神奈川の県警当局に通知を行ない、成規の手続に従って輸送を行なったということを申しておるわけであります。もちろん、その間に地元に対する連絡がなかったというふうなことからして、市民感情が非常に刺激されたということについては、これは残念なことには思っておりますが、手続的には瑕疵はなかったというふうに考えます。
  250. 大出俊

    ○大出委員 警察庁の方、六日からですからね。そうでしょう。七日は休んで八、九ですね。そうでしょう。六、八、九日。六日はだれからどういう連絡を受けたのですか、具体的に。
  251. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  六日の場合は、前日に米海軍横須賀基地火薬部のほうから、一応、日向弾薬庫から池子弾薬庫に弾薬の搬送をしたい、こういう一般的な連絡がありまして、そして当日の午前八時ころ文書でやや具体的に、十時ころ米軍の車両で運びたいという申し入れがあって、それぞれの処置をとったということでございます。その後九日、十日とさらに三回行なわれたわけでございます。その前も、前日、大体次の日行なうということで、当日、さらに具体的に時間等を通告が来ておるということでございます。
  252. 大出俊

    ○大出委員 だいぶこれは違うのですが、そうするとこれは、六日の場合で言うと前日の何時ころですか。電話か何かあったのですか。これで六日に運んだのですか。いま前日とおっしゃるのですから、五日になりますね。五日に電話かなんかあったのですか。
  253. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 一応午前中に連絡があったということでございます。
  254. 大出俊

    ○大出委員 それはどういう連絡ですか。電話ですか。
  255. 相川孝

    ○相川説明員 電話で連絡がありましたのか、文書ではなかったと聞いておりますけれども、実は私、さだかに確かめておりませんが、おそらく電話ではないかと考えます。この点、後ほど調べてみたいと思います。
  256. 大出俊

    ○大出委員 それで、当日はどういう人がどういうところに来ておるわけですか。所轄の警察じゃないのですか。
  257. 相川孝

    ○相川説明員 先ほど警備局長からお答え申し上げましたように、四月六日、四月九日、四月十日の三回、当日に輸送が行なわれているわけですが、六日の場合、九日の場合、十日の場合、それぞれ田浦警察署に文書で、運搬の日時、あるいは使用車両、あるいは荷物の種別、それからルート、区間、これらを記入いたしました通報を受けております。
  258. 大出俊

    ○大出委員 通報というと、だれかが文書を持ってきた、通訳の方なんかが持ってきた、こういうことですか。
  259. 相川孝

    ○相川説明員 三回の場合とも、米国の海軍横須賀基地、田浦、兵器部長の少佐の階級の方ですけれども、この人のサインのある書面、これは正確に言いますと、あて先は明確に書いてございませんでした。しかし警察署へ持ってきたものですから、公安委員会あての通報と私ども理解いたします。そしてその書面を持って田浦警察署に連絡が行なわれているわけです。このとき来た人は、その少佐の人であるか、あるいは代理の通訳の人であるか、さだかに調べておりません。
  260. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、その前の日のやつは警察署じゃないのですね。前の日のは県警ですか。
  261. 相川孝

    ○相川説明員 前の日も田浦警察署に対する電話通報であると存じます。
  262. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、前の日に電話通報があって、いまの書類を持ってきたのは運び込む一時間前、新聞は全部そう書いてありますが、よろしゅうございますね。
  263. 相川孝

    ○相川説明員 先ほど警備局長からお答えしましたように、四月六日の場合、午前八時ころでございます。それから九日の場合も午前八時ころ。それから四月十日の場合は、やや早くて七時四十五分ころと記録されております。
  264. 大出俊

    ○大出委員 九時四十五分ころから運送が始まっておりますから、一時間ちょっと前ですね。これは非常に不親切きわまる。所轄の警察に前の日電話があったというのは、私は聞いても知りませんでしたが、確かめてみますが、電話があった。それなら県当局は知っているはずだが、だれも知らない。そうでしょう。それは一時間ちょっと前に持ってきた、騒ぎになった。県に聞いても市に聞いても、全く知らない、所轄署に行っているというだけで。だから市民に知らせる方法もなければ何もない。そうでしょう、これは。  大臣、いまお聞きになっておわかりのように、こういう通報のしかたというのは、一体あなた方はそこまで御存じですか。そういう通報のあり方なんかについてもあわせて承りたいのですが、もう先へ進めますけれども、大臣に承りますが、そうすると、これから先もう半永久的にこの弾薬庫は使っていく、それは当然のことだ、そういうことですな。
  265. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは、いま米軍に使用を認めた、現に使用を認めた施設であって、そして米軍が所定の手続を経まして輸送が行なわれているという以上は、手続上米軍に手落ちはないわけなんです。だから私の立場では、本件輸送をやめてくれという私のそういう立場ではないことは御了解いただきたいと思うのでございますが、しかし、あなたが御指摘のように、これは市民の方々が大きな期待を持っておられた。それから長い間半遊休的な状態にあったというような関係で、これは地元の関係に米軍に難くせをつける理由は一つもないけれども、といって、それじゃどうして市民の方々に御理解を得るかということですね。全く私も困り切っているのです。それで、どのようにこれを処置してまいるか、ともかくいままでの経緯をよく調べた上で、十分現地の方々とも御相談、話し合いをしてどうしても御理解をいただかないと、これは私のほうで、これをどけとか、今後搬入したらいかぬぞとか、そういう立場にないので、全く困っておるわけでございますが、ほんとうにこれはだれに聞いてもいい知恵はないと思うのです。それですから、現地の方にどこまで御理解をいただくようにするか、ひとつ精一ぱいやってみたいと思います。と同時に、現在はそういう状態でございます。今後これをどうするかという、これは全体の基地問題というのはまた別にあるわけでございますけれども、それはそれとして、当面起こっておる問題を何とか処理しないといけないと思って非常に苦心しておるところでございます。何とかたまには私側の立場にもお立ちいただいて、御協力を願えればしあわせと思います。
  266. 大出俊

    ○大出委員 これは簡単に承りますから、ぽんと答えていただけばいいのです。時間はかけませんが……。  大臣はそうおっしゃるが、そう簡単にいかない事情がある。理由を申し上げますと、昭和二十二年にこの弾薬庫は爆発をいたしまして、当時の新聞記事を調べましたが、これ一部しかない。見つからなかったのですが、ここにございます。それから私の秘書に頼んで現地に行かせまして、当時の大爆発に関する、その弾薬庫の周辺においでになる方々を、端から当時の事情を聞いて歩いた。これがここにたくさんございます。  時間がかかりますから簡単に言いますが、当時の新聞のこの記事によりますと、昭和二十二年に大爆発事故があって、ここに載っております。只川さんという方ですが、すぐそばで雑貨商を営んでいる方が話している中でも、小学校一年のころ、あのときのおそろしさはまだ明確に覚えている。昼ごろ大きな音とともに黒煙や火柱が立ちのぼり、窓ガラスが全部こわれ、みんな山や海のほうに逃げた。大爆発は、当時、市の話によると、「弾薬庫内の火薬庫七棟と火薬六百トンが吹飛び、山林一平方キロが火災になった。市民に死傷者はなかったが、付近の住宅がこわれ、荷車を引いて市民が逃げまどうなど大変な騒ぎだった」ということを記憶している。  そして今回の場合は、交通事情が昔と全く違う。そして弾薬庫の周辺まで全部家ができてしまっている。こういうことで、この弾薬庫の搬入について最後に書いてありますが、別な市民の方は、搬入の事前の通報もなく、情報はすべて一方通行、市長らは即時使用中止を求めて、立ち入り調査をさせろということですわり込めというわけですね、市長も弾薬庫に。当時の大爆発を経験した方はそう言っている。私の秘書が調べたのによりますと、六百トンの弾薬が爆発して七棟が吹っ飛んで、当時のこの弾薬庫をつくるときにいろいろ働いた人の話によりますと、全部で二百の横穴を弾薬庫の山に掘った。いまでもその穴をそのまま使っている。昔の海軍ですから、C1からC200まで穴がある。ここに弾薬を入れる。Xという穴がある。ここは弾薬以外の発煙筒を入れる。全部分かれている。二百まである。そして爆発したときの重力がここに集中するように設計上はなっていて、だから爆発をすると、火薬の山を飛ばす、吹き上げる。まわりに保安林がある。ところが当時の火災というのは、その弾薬庫は吹き飛んじゃって、保安林一帯からその外まで山が火災になってしまった。ところがいまは、隣は京浜急行ですけれども、弾薬庫の山だけ残って、そのぎりぎりまで政府が住宅開発をやってしまいまして、びっしり家です。こういう状態になっているから、現地の人に聞いてみると、当時の規模以上のものが入っていて、爆発をするとすれば住宅まで吹っ飛んでしまうんじゃないのか。現に二十二年のこのころから考えると、こんなあぶないところを使わせておけますか、というのが現地の諸君の言い分です。たくさんありますから読みませんけれども、そういう中身です。  しかも通路が八キロございますが、この八キロの通路は浦郷から船越を通り、そして国道十六号線を横断する。国道十六号線は、夏なんかは海水浴客でそれこそ通れないところですよ。国道十六号ですから、全部両側は八キロ家です。そして一番狭い隧道がありまして、六メートル足らずの隧道、新沼間隧道という六メートル二十センチ、これを通って入ってくる。  こういう状態の中で、おまけに住宅が密集しておりますから、この日の状況を見ますと、四十五の主婦の方が言っていますが、弾薬の車が入ってくる。先導車が一つある。先導車が一つあるということは、皆さんと火薬取り扱いの米軍との議事録によりますと、鋭感度の弾薬になる。その場合は先導車がつくことになっている。そのすぐ隣を、知らないから幼稚園帰りの子供さんが三々五々歩いている。そこのところを弾薬を積んだ車が先導車を一台つけて入ってくる。こういう状態なんですよ。そうすると、私は国内の火薬取り締まり法規等から見ても問題があると思うのですよ。まず車の幅、ここから三・五メートルなければいけない。そうでしょう、火薬取り締まり法規からいけば。一番最後に総理府令がございますが、この総理府令で細部をきめておりますけれども、繁華街または人ごみを避けることになっている、国内法規では。火薬類取締法の十九条、ここで、運搬する場合には、さっきちょっとお話がありましたが、国内の手続でいけば都道府県公安委員会に届け出る。そうでしょう。公安委員会はその火薬の性質その他を調べて、まずいということになれば、通路変更であるとか、人ごみや繁華街は避けろという指示をして、荷形その他まできめて運ばせるわけですね。米軍との関係で、私ここに持っておりますが、皆さんの合意事項というものはそこまでこまかく細部を規定していない。そうすると、国内法というものをやはり中心に考えると、どういう手続をとって米軍と接触するかは別、やはり繁華街、人ごみというのは避けなければならぬということになっているのだから、幼稚園帰りや小学校帰りがぞろぞろ通るところを、先導車を置いて鋭感度の火薬。これは議事録では先導者がつくことになっているのだから、先導者がついている。そういうものを運び込むのをそのまま捨ててはおけない。まして市民感情をさかなでという感じになっている。だから、逗子市が反対の横断幕を一ぱいぶら下げて、立て看板をたくさん立てている。この状態は一つ間違うと第二の戦車闘争になる。きっかけが一つできればすぐそうなる。激しい市民の方々は、一生懸命市長やなんかに、市長を先頭に弾薬庫にすわり込めという。いまそういう状態ですよ。そうなると、一方通行であまりにひどいじゃないかということですから、三日間にわたって百五十トンから百六十トンくらいの弾薬が運び込まれている、そうなるとおさまりがつかない。  そこで、二つだけ聞いておきたいのですが、警察関係の皆さんのほうは、人ごみのところを通ってはいかぬことになっている国内法規がある。片方に火薬類取り扱いに関する日本と米軍との合意事項がある。両方を対比したときに、米軍の車で運び米軍が運転するならば、これは治外法権だ。日本の運送人を雇えば、これは日本の国内法規に従うことになっているんだから、やりようはある。いまのところは米軍の車で米軍の軍人が運ぶんだから、いきなり警察が、こらっと言うわけにいかない。いかないけれども、取り締まり法規の通念上、だれが考えても、場所的にもあぶないのですから、しかも十六号国道を横断をし、しかも京浜急行を横断する。そこは六メートルないのですよ。そういうところがあるところを平気で運んでくることを許しておけるか、一般通念として。その点をひとつお答えいただきたい。  それから大臣に、そのお答えの結果により、いささかもって私は、昭和二十二年ごろとは違うんだ、びっしり家が建ってしまっている、一年間に十万人もふえる横浜周辺ですから、そのことをひとつお考えをいただいて、市民感情というものを踏まえてあなたのほうで善処を御検討いただく。時間がかかることはやむを得ぬとしても、そういう努力をなさる。それが筋ではないかというふうに私は思うのですが、いかがです。警察のほうからお答えください。
  267. 相川孝

    ○相川説明員 お答えいたします。  先ほど先生の御指摘のように、米軍の弾薬類の輸送に関しましては、昭和三十五年十二月六日に日米合同委員会の承認がございまして、御指摘のようないろいろな安全措置をとるということになっております。そして私ども警察のほうには、国内の業者が米軍の委託を受けて搬送する場合には火薬類取締法の全面的な適用ということで、これは御指摘のように、私どもか運搬証明書を出しまして、それを携帯しまして、私どもの指示に従って安全な運送をいたします。米軍の場合には、先ほどから御指摘がございますように、通報をすることで足りる。しかもそれも、いまの合同委員会の承認によりまして、二千ポンド以上の弾薬を搬送する場合は、日本国の当局に通報しなさいということになっているわけです。この点は御指摘のとおりですが、そして、国内法の危険火薬類あるいは弾薬物等の運搬の際の安全措置と、米軍が弾薬を輸送する場合の安全措置、これは別であってはやはりいけないと思います。しかし、法規の適用につきましては、現在、火取法に明文もございませんし、先ほども述べました合同委員会の承認事項に従って安全を期待し、警察としてとることのできる最大限度の必要措置はそのつどやっております。  たとえば今回の場合でございますと、先生先ほど経路を御指摘になりましたけれども、この間に私ども警察としては、安全を確保する意味から八名の警察官を要所、要所に立てました。そしてルートはわかっておりますから、そこで必要な交通整理をしたり、あるいは通行者に対する誘導なり指示をしたりして事故防止の万全をはかったわけです。  現実にはそのほかに、日向の弾薬庫から出発する前に警察官が現場に参りまして、たとえば、先ほど私、通報が二時間前ぐらいに来ておると申し上げましたが、文書の中に、たとえば弾薬を運ぶということが書いてあるのですが、具体的に申し上げますと、どういう荷物を運搬するかという項目の欄に、砲弾及びその推進薬というような表記があるわけです。そしてその種別等が必ずしも明確でないわけです。そういう場合に私ども警察では、弾薬庫前から出発する前に、警察独自でその車両を点検、確認をいたしまして、何インチの砲弾がどのくらいの数量載っているかというのを確認して必要な安全措置をはかるというふうにしているわけです。したがいまして、国内法の適用ずばりではございませんけれども、私どもとしましては、国内法の適用を受ける業者が運ぶと同じように、できるだけの必要な安全措置をとっているということを御了解いただきたいと思います。
  268. 大出俊

    ○大出委員 将来に向かって二つだけ承って終わりますが、いま御説明いただいたのは、ここにございますからわかっておりますが、この中で働いている皆さんのお話を承りましたら、日向の弾薬庫、浦郷からこっちのですね。つまり黄色と赤のしるし、二つになっていますね。それで浦郷などにありますものは、赤い色のしるしのものばかりであります。聞いてみますと、今回運ばれたものは黄色のしるしのもの、これが主である。この黄色いしるしのものは浦郷にはない。そうすると、どこかから持ってきたことが予想される、そういう面がある。近く輸送船が二隻着くんではないかという予測も現場の方々はしている。となると、この弾薬は一体どこからどう運ばれて、どこのものがやってきたのかという点で大きな疑問がある。浦郷には弾薬が六万トンあるそうです。その六万トンを運ぶということのなのか。どこか別なところから弾薬を持ってきているのか。近い将来二隻船が着くというのだが、そこらはどうなっているのか。そして弾薬輸送は三回。きのうは米軍が、発表があるからやめたのでしょうけれども、きょうを含めて今後どういうふうに運んでいくのか、そこのところをまず明確にしていただきたい。
  269. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 私ども、浦郷にありまする現在の貯蔵量、格納量、これを承知いたしておりませんけれども、米軍がいま浦郷から池子に運んだもの、まだ運ぼうと計画しているものは、海軍の輸送船が本国から持ってきたものである、こういうふうに承知しております。
  270. 大出俊

    ○大出委員 今度のものは。
  271. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいま御指摘の、なお輸送船が二はい云々ということにつきましては、承知いたしておりません。
  272. 大出俊

    ○大出委員 それは、ベトナムから持ってくるといえば、ベトナムは弾薬がなければ困るところでしょうから、持ってこないだろうと思うのですが、そうなると、本国か、あるいはグアムか、あるいは台湾か知りませんけれども、浦郷にない色の弾薬を運んでいるわけですから。そうすると、いま御答弁のように、どこかから持ってきたものになる。局長いまそれをお認めになったようですけれども、そうだとすると、池子にいままで貯弾量ゼロと言っていたのですけれども、いまどのくらいあって、そこへ三日間でどのくらい運んで、これからどのくらい運べば気が済むのですか。地元はこうなっているのですから、そこのところをはっきりしてください。
  273. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 三日間の輸送量は合計で約百五十トンです。それから、米海軍が昨晩発表いたしたところによりますと、ベトナム戦争に関連した行動上の必要に基づいて、最近の池子における貯蔵量は非常に少ない量であった。それで、ポスト・ベトナムの状況において、第七艦隊の通常の訓練並びに行動に必要な量を池子に貯蔵するという目的を持っているものである、こういうことを言っておりますので、すでに運び込まれた百五十トンが全体計画のきわめて一部であるというふうに考えられますけれども、全体の計画量については承知いたしておりません。
  274. 大出俊

    ○大出委員 わかりました。それじゃ、全体のごく一部であるということになると、全体の大部がこれから運び込まれることになる。  そこで、大臣に最後にひとつ申し上げたいのですが、さっきいろいろ申し上げましたように、私のみならず、地元の皆さんにしても、これが全く第七艦隊の位置づけと関係がないことはない。ミッドウエーと言うと、またミッドウエーと直接云々ではないとおっしゃるでしょうけれども、ミッドウエーも間違いなく第七艦隊の一部でございますから、そういう意味では関係がなくはない。第七艦隊の支援ということなんですから。ミッドウエーも第七艦隊の一空母でございますから。そうなってまいりますと、そういう性格であるということ、これが一つ。その点は国のとらんとする方針と私どもの言うことと食い違ったにしても、それはそれとして将来の問題として残して、当面の問題をどうするか。さっきお困りになっているとおっしゃるけれども、私の立場に立って協力せよとおっしゃるけれども、いかんともこれは協力しがたい。ほかの相模原その他の問題のときには、中にはやむを得ぬという人もいたけれども、今度のこの問題に関する限りは、事故もあり、しかも途中でまたさっき申し上げるのを忘れましたが、小学校の生徒まで涙をぽろぽろこぼすような事件が途中であったのです。ここに新聞記事等がございますけれども、これはたいへんな白煙が立ちのぼり、太陽も見えなくなっている。それで「基地の白煙、町をおおう 白昼、横浜(磯子、金沢など)で せき込む子、かすむ太陽」ということで、讀賣新聞の四十五年五月十九日、新聞のゼロックスがこうございますけれども、たいへんなんだ。大騒ぎになったこともある。この基地は札つきなんですから。  そういうことで、何と言われても、当時の昭和二十二年ころと違う地域状況。たいへんに住宅も密集してきてしまっている。どだいあそこに弾薬庫などを置くべき場所でない。そこまで市は発展してきている。なおかつ市の全市域の一五%を占めている。市の発展のためにも何ともならぬ。そういう中で二年半使われていませんでしたから、市民は返してくれるものと思い、市当局もそう思っていた。神奈川県知事は本年一月に、そこらのことも踏まえて、ことしは神奈川県内の基地は一けたにしてみせる、こういうことをおっしゃった。池子についても楽観的にお考えになって、したがって、新聞記者会見のときには非常に困っておられる。そういう状態に至るところなっている。それをあえて押し通そうとなさるならば、筋でないところで、これは実は第二の戦車闘争めいたことになりかねない危惧がありますので、正直申し上げて私はさんざ苦労しましたから、そうそうことを私は政府主導型で起こしていただきたくないのです。そういう意味でこれはいますぐ回答をいただこうとは思いませんけれども、早急にひとつ御検討いただきたい。何とかひとつ、これは逆にそういうトラブルをまだ起こさぬでいただきたい。これはお願いしたいのですが、いかがでございますか。
  275. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、まず何としても地元との間で十分話し合って御理解を得るようにしなければならぬと思いますが、あなたが御指摘になりましたように、基地が置かれた当時と今日の状況、周辺の事情がいろいろ変わっておるという御指摘もありまして、そういうことで私ども基地全体をいろいろ検討を始めておるわけでございまして、いま御指摘の件については、なお検討さしていただきますけれども、ただ、返還というような点について淡い期待を持っていただかれますとかえって迷惑になりますから、その点は、現在におきましては、アメリカ側に使用を認めておるわけでございまして、管理につきまして成規の手続がとられている以上、少なくともアメリカ側の手落ちは一応ないわけでございます。日本側において、この問題を今後どのようにして解決してまいるか、せっかくあらゆる角度から検討を進めなければならぬと考えております。
  276. 大出俊

    ○大出委員 これで終わりますが、鉄条網は破られている。人が出入りできるのです。だから、意のある人が、どういう人が世の中にいるかわかりませんから。従業員をふやしておるのはわかっておりますけれども、それでも全部で五十一人しかいない。犬の世話をする人、パトロールをする人、あとは弾薬その他の係がある、こうなんですから、運び込んだ、何か不測の事態があったらどうするかという心配まで地域の人たちはしておりますので、ひとつ地域の住民感情というものを踏まえて、私ども、一ぺん池子の中に入れていただいて、どういうふうになっているか調べてみたい。したがいまして、その点は外務省が所管でございますので、この席で明らかにさせていただきますので、ひとつ委員長、このままで捨ておけない事態に発展しかねませんので、何か不測のことがあったら責任を負いかねますので。そのままで二年半使っていないのですから、そういうところに入れてだいじょうぶかという問題がある、専門屋に聞いてみると。だから、そこのところも踏まえて一ぺん外務省で、私どもそこに入れていただきたい、調べさせていただきたい、見せていただきたい、そういう意味で御検討いただきたいのですが、いかがでしょうか。
  277. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 お申し出は相談させていただきます。
  278. 大出俊

    ○大出委員 それじゃ、どうも……。
  279. 三原朝雄

  280. 東中光雄

    東中委員 天皇の訪米について若干お伺いしたいのですが、先ほど外務大臣は、米国側から、天皇訪米について歓迎申し上げたいというふうにかねがね言っておったんだ、日米間の首脳の何回かの接触の中でそういう話し合いが出たんだ、こういうふうに御答弁があったわけですけれども、これはアメリカ側から話が出されたというふうにお聞きしていいわけですか。
  281. 大平正芳

    ○大平国務大臣 アメリカ側がそういう意向を持っておると私は承っております。
  282. 東中光雄

    東中委員 アメリカがそういう意向を持っておるという状態をいま大臣言われているのですけれども、私お聞きしたいのは、アメリカのほうからそういう話を首脳会議なんかで出してきた経緯をお聞きしているわけであります。これは別に秘密にされることでもなければ何でもないと思いますが、経緯としてはアメリカ側から出てきたことだというふうに大臣の御答弁を聞いてよろしいですか。
  283. 大平正芳

    ○大平国務大臣 首脳会談でこのことが正式の議題になったと私は聞いておりません。私が申し上げたのは、日米首脳の接触の中でこういう陛下訪米問題というのが話し合われたというように聞いておるわけでございまして、アメリカ側は陛下を必から御歓迎いたしたいという希望を持っておるように承っております。
  284. 東中光雄

    東中委員 一昨年の九月に天皇がアンカレッジへ寄られたとき、ニクソン大統領からそういう意向が伝えられたとか、昨年の六月及び本年の一月に来日したキッシンジャー大統領特別補佐官も、そういう意向を日本の政府側に伝えられたというふうに私たち聞いておるわけですが、そうではないのですか。
  285. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは一々記録を読んでみなければわかりませんけれども、私が御答弁申し上げたとおり、日米間の接触を通じてこの問題が話題になり、先方がそういう希望を持たれておるということと私は承知しておるのでございます。
  286. 東中光雄

    東中委員 宮内庁としては、どこからそういうことをお聞きになっているわけですか。要するにアメリカ側が天皇の訪米を歓迎するという趣旨でいま問題になっているわけですけれども、そういう経緯に至った宮内庁側としての発端はどこにあるのですか。
  287. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 一昨年の九月に天皇陛下がヨーロッパ諸国を御訪問になる途中、アンカレッジにお寄りになってニクソンに会われました。そのときにニクソン大統領が、陛下をお招きしたいという意向を陛下に直接口頭で言われたようであります。それからその後、昨年の春でしたか、アメリカのアグニュー副大統領が日本に見えまして、宮中で午さん会がありまして、そういう席でも、天皇陛下においでいただくことを望んでいると言ったということもあったようであります。それからその後キッシンジャー氏が日本を訪問しておりますけれども、その際には、これは政府のほうへ行かれた際に、ニクソン大統領が天皇陛下のアメリカ御訪問を歓迎しておると言っておられるということを伝えられたことを、政府筋からわれわれは聞いたのであります。そういうようなこともございます。
  288. 東中光雄

    東中委員 そうすると、アメリカから再三、いま次長のお話では三回ですが、そういう意向が伝えられてきておるということになるわけですが、宮内庁としてはどういうふうにお考えになっているのですか。
  289. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 われわれといたしましては、こういうふうにお招きしたいということも、口頭の非公式ではありますけれども伝えられておりますので、将来適当な時期には、天皇陛下がアメリカを御訪問になることはけっこうなことだろうというふうに考えておりますけれども、その適当な時期ということについては慎重に検討したいということでございます。
  290. 東中光雄

    東中委員 そのお招きというのは、天皇の私的旅行ですね。静養にいらっしゃいというような意味の私的旅行のお招きなのか。あるいは、非公式であるけれども、公式に出てくるのはまだ先のことであろうけれども、非公式と言っておる趣旨は、それは天皇の公的な行為のものとして宮内庁ではおとりになっているか。その点はいかがですか。
  291. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 先方では、天皇陛下がイギリスとかベルギーとかヨーロッパの諸国を御訪問になりました、そういうような御訪問をアメリカにもしてほしいということをおっしゃったのだろうと思います。
  292. 東中光雄

    東中委員 だから、それは公的な行為なのか、私的旅行なのか、どっちなんですか。
  293. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 それはいろいろの解釈がありましょう。しかし、これにつきましては、公的な国の経費で御旅行になるという趣旨のものと考えております。単に内廷費のお手元金で御静養においでになるものとは違うというふうに考えております。
  294. 東中光雄

    東中委員 ニクソン大統領の訪日について、計画なり、あるいはそれを歓迎するというような意向なり、そういうものを日本政府としてはアメリカ側に出しておられる、あるいはそういう意思表示を何かの形で伝えられておられるというようなことかあるのですか。
  295. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これもまだ非公式の段階でございまして、日米間の接触におきまして、大統領が御訪日いただければ、それはたいへん歓迎するところであるということは伝えてあります。先方も、その希望は持っておるけれどもことしは無理であるというような反応は、いまございます。
  296. 東中光雄

    東中委員 ニクソン大統領が初めて天皇招待の意向を明らかにしたとき、昭和四十六年の十月四日だと思うのですが、そのときに当時の福田外務大臣は、天皇訪米の動きに関連して、これは記者会見でありますが、ニクソン大統領が先か天皇が先かということだが、佐藤首相は、日本が世話になったのだから天皇が先で、その答礼としてニクソン大統領が日本を訪れるというふうに考えている こういうふうな見解を当時明らかにされているわけです。大平外務大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。
  297. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この問題はまだ公式の問題になっておりませんので、皇室の御都合が伝えられなければならぬわけでございまするし、アメリカ側におきましても、大統領の訪日問題というのは、アメリカ自体としてもお考えでございましょう。どちらが先かあとかというようなことは、まだ問題にするのは早いのじゃないかと思っております。
  298. 東中光雄

    東中委員 どっちが先かということを問題にするのには早いけれども、この二つをいわばセットにして、あるいは当時の福田外務大臣の発言では、答礼としてニクソン大統領、こういうふうに言っておられるわけで、そういう意味ではまさにセットになっているわけです。当時の佐藤総理もそういうお考えだということが出ているわけですけれども、田中内閣も、具体化していない、どっちが先かということは公式にきまっているわけではないということは、そのとおりでございますけれども、やはりその二つの問題を考えていらっしゃるわけですね。
  299. 大平正芳

    ○大平国務大臣 一般的な問題といたしまして、外交というのは大きく言って総合的に展開されるわけでございまして、これは一つの交際でございますから、儀礼上相互的な意味を持つものでないというわけにはいかぬだろうと私は思うのであります。ただ、いまそれぞれの御都合がおありなわけでございますので、これをパッケージにして計画をするというような、そんなことを考えておるわけではございません。
  300. 東中光雄

    東中委員 一九七一年十月の天皇の欧州諸国訪問について、当時福田外務大臣は、日本にとってECとの関係強化が必要になった段階でこの訪欧が行なわれて、日本政府にとって大きな成果をあげることができた、こういう所感を発表されております。これは宮内庁も御承知だと思うのですが、宮内庁もそういうふうにお考えになっておったわけですか。
  301. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 宮内庁としては、政治的な面のことはあまり考えておりません。儀礼的な点で考えております。
  302. 東中光雄

    東中委員 大平外務大臣、この前の天皇訪欧について福田外務大臣がそういう発言をされておりますけれども、政府としては、この前の天皇訪欧についてはそのようにお考えですか。
  303. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それは、私ども政治のレベルで考えるべき問題ではない、次元を異にする問題だと思っておりますが、陛下の御訪欧あるいは御訪米というようなことは、わが国と友好関係を結んでおる国々との間の高い意味の友好関係の増進にとりまして、たいへん好ましいことであると判断しております。
  304. 東中光雄

    東中委員 当時、福田外務大臣は、いま申し上げましたように、ECとの関係強化が必要になった段階で行なわれた、これは日本政府にとって大きな成果であると言われた。これはずいぶん率直な感想というか、それを外相として言われているわけですから、お茶飲み話で言っているわけじゃないのです。前回の訪欧の際も、外相がそういうふうに評価されておったことは、宮内庁も御承知でしょうね。
  305. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 そういうようなことは新聞記事で拝見いたしました。
  306. 東中光雄

    東中委員 あらためてもとへ戻りたいのですが、憲法第四条で、天皇の行為については国事行為のみに限られる、国政にわたる行為はやってはならないという趣旨規定がありますけれども、いま進められている天皇の欧米というのは、憲法でいっている天皇の国事行為というふうにお考えなのか、そうでないとお考えなのか、宮内庁の見解を明らかにしていただきたいと思います。
  307. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 憲法で限定されておりますのは天皇の国事行為でございますから、この国事行為という中には入っておりません。
  308. 東中光雄

    東中委員 それは憲法の国事行為ではない、しかし公的な行為だ——外務大臣、先ほど公的な行為だというふうに言われたと思うのですが、訪米についての天皇の行為の性格は、外務省としてはどういうふうにお考えになっているのか、宮内庁としてはどういうふうにお考えになっているのか、お聞きしたい。
  309. 大平正芳

    ○大平国務大臣 宮内庁と同様に、国事行為ではないとわれわれも判断いたしております。しかし、あなたか御指摘のように、これは公的行為であると見ております。
  310. 東中光雄

    東中委員 国事行為ではないわけですが、機関としての天皇は、憲法第四条によれば、「この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ」ということになっているわけですから、天皇個人が私的に行動される、これはとやかく言っているわけではないわけで、公的な行為ということになれば、「国事に関する行為のみを」、「のみ」というふうになっているわけですが、そういう点についてどうですか。
  311. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 そこに「国事に関する行為のみを行ひ、」それからあとに「国政に関する権能を有しない」というのが第四条にありますが、これに関しまして、国事行為、それからほんとうの純粋の私的行為というのがございます。陛下が植物とか生物の研究をなさっているのがまさに純粋の私的行為で、その中間に、象徴というお立場でなさる事実行為がある。たとえばいまお話しになっています、この前ヨーロッパへ御訪問になったり、それからいまも宮崎のほうの植樹祭においでになったり、地方旅行においでになったりしておりますが、そういうのは象徴というお立場におられる方の行為である。権能というような法律的な力を持つということではありませんけれども、事実行為としてなさる行為である。それで、一応占領下に憲法の施行が発足しましたが、それからいろいろ解釈がずっと長い——そういうふうに現在ある程度定着をしておるというふうにわれわれ思っています。憲法学者でありませんので、憲法論のむずかしいことはちょっとわかりかねますけれども、定着していると思っています。
  312. 東中光雄

    東中委員 私は、いまここで憲法論の議論をしようと思っているのじゃないのです。ただ、憲法が制定されたときに、当時の憲法制定の担当大臣だった金森国務大臣が、天皇の国政に関与しない、国政に関する権能を有しない、国事に関する行為のみを行なうというこの規定が「あるが故に天皇は一般政治の上に超越せられ、種々の紛糾の渦中に御入りにならぬと云うことが明かになるように思われます」。これは、一般政治の上に超越するんだということ、それから渦中に入らない、この二点を言われて、そしてさらに、こういうふうに言っています。実際運用の上において、天皇の行為が「政治の行為と同じことになって、出発点は何であろうとも結果に於て、政治の働きと同じことになると云うような解釈が出来ました時に、果して左様なことが憲法上少くとも妥当なことになり得るであろうかと云うことが、これが問題になろうと思います」。それから、天皇の行為自体が、政治的行為をやろうということで主観的に動いたのでなくとも、政治の渦中に入ってしまう。あるいは、いま読みましたように、政治の働きと同じことになるというような解釈ができる場合は、それは憲法の趣旨からいって問題になるんだ、こういうふうに言っているわけですが、当時の福田外務大臣が、日本にとってECとの関係強化が必要になった段階で行なわれて、日本政府にとって大きな成果をあげることができた。これは明らかに政治的に効果をあげることができたということを言っておられるわけですし、それからいまの時点で、アメリカ側から要請というか、歓迎の意思表示というのですか、事実上の招待が何回も繰り返されている。先ほども言われましたけれども、貿易通商の面で、あるいは安保条約の面での問題で、いろいろ日米間のこういう問題があるわけですね。そういうときにキッシンジャー補佐官が来て、外交的にもこれを使って、外交ルートを通じて、天皇の御招待を事実上申し出てくる、これは、政治的に影響を与える行為という意味では、国政に関係してくる行為、天皇をそこへ利用しているという結果になっちゃう。これは憲法の趣旨からいって、国事行為に限って行なう天皇、それを象徴天皇ということにしておるわけですから、その範囲から越えていく憲法上の問題が出てくる、こう思うのですが、単なる事実行為あるいは私的行為でないという点でこういう訪米はやめるべきだ、そういう意味で使うべきではない、天皇をそういうふうに使うべきではないというふうに思うのですが、外務大臣あるいは宮内庁の御意見をお聞きしたい。
  313. 大平正芳

    ○大平国務大臣 欧州の場合も、今度のアメリカの場合も、わが日本国の象徴としてのお立場におられる陛下をお迎えしようということでございまして、いやしくも政治の御介入をお願いするというふうなものでは決してないわけでございます。福田さんがECとの強化というようなことについて言及されておりますが、私も申しましたように、これは、われわれがやっております政治の次元と異なる次元におきまして、日米間あるいは日欧間の友好関係が増進され、あるいは固められるということは歓迎すべきことであるという趣旨のことを、そういうことばで表現されたと私は思うのでありまして、あなたが引用されたように、金森博士のおことばにもありますように、厘毛も政治的にこれを云々というようなことは厳に慎まなければならない、私どもは厳粛にそう考えております。
  314. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 宮内庁といたしましても、先ほどお読みになりました憲法制定当時の金森さんの御意見というものは、これはわれわれとしても、十分われわれの中に方針として持っていながらその問題を慎重に考えていかなければならぬ、こう思っております。
  315. 東中光雄

    東中委員 大統領との天皇の会談というものも、今度の準備されている問題の中には入っているわけですね。その点ひとつ確かめておきます。
  316. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まだ皇室の御都合が考慮されておる段階なんでございまして、そのところまでお話がいっておりません。
  317. 東中光雄

    東中委員 もしそういう会談をやられるとすれば、これはやはり公的行為として行かれるのだから、公的な会談になるわけですね。そういうものとして考えられていくわけでしょう。その点は宮内庁どうでしょう。
  318. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 会談というような表現はちょっと不適当なんじゃないか。会話をかわされる、お話しになるということだと思いますが、これはやはり日本の象徴としての天皇として相手の大統領と会話をかわされるということであって、それは公的行為であるか。いかにも公的行為という表現にこだわっておられるようにお聞きしますけれども、やはりその部分は、どういうふうなところでそういうふうにおっしゃいますのか、私ちょっと理解しかねるのですが、要するに、単なる御趣味としての私的行為とは違うし、中間のものである。経費はやはり国の経費でなさるような象徴としての行為であるというふうに考えております。
  319. 東中光雄

    東中委員 趣味の話をするのだったら、それは公的な行為ではない。その訪問は、天皇の内廷費といえども国費ですから、私的な収入ではないわけですから。そういう意味では、公的ということについてとやかく言っているのではなくて、いま言っているのは……(「そこまで立ち入る必要があるのか」「天気がいいと話しに行くんだ」と呼ぶ者あり)天気がいいでしょうということを言いに天皇がわざわざ行くのか。そのためにわざわざ首脳会談でそういう打ち合わせをやるのか。そういうものから……(「つまらぬ質問をするな、核心に入れ」「禅問答みたいだ」と呼ぶ者あり)委員長、不規則発言をとめてください。何ですか。
  320. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。(「みんながわかるように質問したらどうだ」「明快に、明快に」「全然わからない」と呼ぶ者あり)不規則発言をやめてください。
  321. 東中光雄

    東中委員 公的行為だ、私的行為ではない、じゃ国の機関としての天皇の行為になるわけでしょう。象徴天皇としての公的行為だという見解ですから、国の機関としての行為だ。相手は国の機関としてのアメリカ合衆国の元首であるニクソン大統領と会う。機関としての行動だったら当然公的な行為じゃないですか。そういうことがどうもわからぬ人がおるらしいけれども、公的な性質のものだったら公式の会談になるのはあたりまえじゃないですか。趣味の話ではないというふうにあなたが言っているから、私的なものではない、そういう意味では公的な会談ではないか、こう言っているわけです。そういうものを予定しているのか。話し合っているか話し合わぬかというようなことは、これは物理現象でしょう。その点はどうですか。
  322. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 私の表現が悪かったので誤解されているかと思いますけれども、その趣味の点は、純粋に私的なと申しましたのは、その際、趣味の話ではなくて公的なお話をなさいますというお話を申し上げたのではありませんで、普通、外国からお客が見えて皇居で御会談になるような、そういうことをなさるんだと思いますけれども、そういうときには、いまもお話が出ましたように、相手の国のお天気の模様も聞かれたり、それから生物の問題を聞かれたり、植物の話も聞かれたり、いわゆる普通の世間話で、これはいわゆる政治問題についてはお話しにならないというたてまえをとっておられるのでありまして、そういう意味で、お話しになるそのことは公的な会談というものじゃないと私は思います。ただ、御旅行全体が天皇というお立場でおいでになりますものですから、単にたとえば葉山のほうへ生物の採集においでになるのとは違うということを申し上げたわけであります。
  323. 東中光雄

    東中委員 だから私の言うのは、今度の訪米で考えられておることは、国の機関としての天皇の公的な行為になるのか。そうでなくて、機関を構成するオルガントレーガーとしての天皇個人が旅行するということとは明白に違う。だから前者でないのかと聞いておるし、その前者の会合の中で、そのときに天候のあいさつをするのかどうか、こんなことはおはようございますというのと同じことで、そういうものとは違う。だから機関としての行動でしょうということを言っておるわけです。その点はどうですか。
  324. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 私も先ほど申しましたように、憲法学者でないので、なかなか正確なことは言いにくいわけですけれども、要するに、象徴としての天皇のお立場で向こうの大統領も会われて話をされるわけです。しかし、話す内容は普通の世間話で、政治にわたらないというふうにされておると私は聞いております。私が知っておる範囲でもそうでございます。
  325. 東中光雄

    東中委員 元首の親書の交換というのがある。それは手紙ですよ。普通のことばでいえば手紙だ。しかしそれは違うでしょう。元首の親書の交換というものは意味が違うでしょう。そこの内容に何が書いてあるか。それに時候のあいさつが書いてあるか書いてないか、そんなことにかかわりなく違うでしょう。いま私が聞いておるのは、公的な行為として機関としての天皇の訪問ということを計画されておるのかということを聞いておるのであって、その話の中身について聞いておるわけではない。その点はっきりしてください。
  326. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 いま御親書なんかの話がちょっと出ましたけれども、そういう問題の内容でも、われわれ知っておる範囲では、政治問題に触れておらないので、よく地震があったりしますとお見舞いなんかいたします。(「そんなことは聞いてない」と呼ぶ者あり)そういうこともありますので、誤解があるといけませんからちょっと申し上げますが、いまアメリカを御訪問になるかどうかという問題、そのこと自体がまだ公式でもない、慎重に検討している段階ですから、あまりとやかく申し上げるとかえって誤解を受けるのではないか、こう思います。
  327. 東中光雄

    東中委員 とやかく言っておるのはあなたのほうで、私のほうが聞いておるのは、公的な機関としての行為でしょう。あたりまえのことじゃないですか。それを言っておるのであって、その内容についてとやかく言っておるのは、あなたのほうが言っておるのでしょう。何を話しにいくのかということを聞いておるのじゃないのだ。立場は象徴天皇という機関としての行動、公的な行動、これは明白でしょう。あなたはそれを明白にしておけばいいじゃないですか。そういうものとしていろいろ検討しておる……。
  328. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 これは私の話し方がまずいから、非常におわかりになりかねるのかもしれませんけれども、要するに象徴という天皇のお立場でおいでになるのです。しかし、国事行為でないから、国政に関する権能にわたらないというようなことでおいでになるということ、それを公的な行為だというならば、そういうことも言えると思います。
  329. 東中光雄

    東中委員 外務大臣にお聞きしておきたいのですが、いま準備されておるのは公的な行為だと言われたのですが、天皇という機関と、その機関を担当しておられる個人をやはり天皇といっていますから、内閣委員と、それを担当する個人とは違いますから、分けやすいのですけれども、いまの場合は、個人としての天皇じゃなくて、機関としての天皇の公的な訪問ということについていま準備を進めておられる。アメリカ側から要請が来ておるのもそういう趣旨であるということは、お聞きしておいてよろしいですね。
  330. 大平正芳

    ○大平国務大臣 アメリカも、日本国の象徴として公の立場にある陛下をお迎えしたいという御意向であると承知しておりまして、問題は、皇室の御都合によることでございまして、御検討されておることと推察いたします。
  331. 東中光雄

    東中委員 この問題についてはこれで終わりますけれども、要するに公的な行為ということになれば、これは公的な行為の天皇は、結局、憲法上は国事行為のみを行なうというふうになっているのだから、これは範囲を明らかに逸脱することになるというふうに私たち考えますので、それを逸脱した形でそういう方向で準備していくということになれば、これは要するに政治の中へ引っぱり込んでいくことになってしまうので、田中内閣として、あるいは宮内庁として、そういう行為はやるべきではない。私的な天皇の行為をいまとやかく言っているわけではないという点をはっきりと申し上げておきたいと思うわけです。  あまり時間がありませんが、横須賀の海軍施設とミッドウエーの母港化の問題で若干聞いておきたいと思うのです。  いま横須賀にいるアメリカの海軍施設ですが、この主要部隊は、在日米海軍司令部と艦船修理部、海軍補給廠、海軍病院があると聞いているわけですが、施設庁、そうですか。
  332. 久保卓也

    ○久保政府委員 横須賀にありまする米軍は、在日米海軍司令部、横須賀の艦隊基地隊、米海軍基地隊、海軍補給廠、海軍施設本部、艦艇修理廠、海軍病院、第七潜水戦隊司令部、西太平洋艦隊訓練群等であります。
  333. 東中光雄

    東中委員 ここで基地の機能ですけれども、どういうふうになっていますか。
  334. 久保卓也

    ○久保政府委員 最大の機能といいますのは、やはり艦艇の修理及びいわば家族などがいることによりまする、ある種の意味での根拠地と若干の艦艇の根拠地ということが言えようかと思います。
  335. 東中光雄

    東中委員 艦隊のいわゆる支援基地、そういう意味での根拠地ということじゃないですか。
  336. 久保卓也

    ○久保政府委員 さようであります。
  337. 東中光雄

    東中委員 オクラホマシティーの乗員は、いつここへどの程度移ってきたのですか。乗員の家族ですが、これはどこから移ってきたのですか。
  338. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 オクラホマシティーの乗り組み員の家族は、一九六八年の十一月以来、約三百八十世帯が横須賀並びにその周辺に居住いたしております。どこからかと言われますと、ちょっと承知しておりません。本国からだと思います。
  339. 東中光雄

    東中委員 第十五駆逐戦隊の六隻の乗り組み員が来たのはいつでございますか。
  340. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 一昨年、つまり一九七一年の秋以来であります。
  341. 東中光雄

    東中委員 その数はどうなんですか。
  342. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 世帯数約六百でございまして、ほとんどの家族は基地内に居住いたしておりますが、約三十世帯が基地外に居住いたしております。
  343. 東中光雄

    東中委員 ミッドウエーは、いつ、どれくらい来る予定ですか。
  344. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ミッドウエーは、乗り組み員家族約千世帯というふうに承知しておりますけれども、乗り組み員の家族はまだ居住いたしておりません。時期についてもまだはっきりわかりません。
  345. 東中光雄

    東中委員 オクラホマシティーの根拠地は横須賀になるのですか。どこになるのですか。
  346. 久保卓也

    ○久保政府委員 根拠地というのが正確ではございませんけれども、その乗り組み員の家族が居住をしている場所、主たる場所という意味でいえば、オクラホマシティーのそれは横須賀になろうというふうに思います。
  347. 東中光雄

    東中委員 根拠地とか本拠地とか母港とかいうふうに普通軍艦についていわれますけれども、それはどういう概念なのか。同じだということ、つまりことばは違うけれども、母港というのは本拠地であり根拠地であるというふうに、これは愛知外務大臣も答弁されておるわけですけれども、一般に軍艦の根拠地、母港というのはどういうものをいうのですか。
  348. 久保卓也

    ○久保政府委員 これはなかなかむずかしいわけでありまして、たとえば空母などがかりに横須賀に家族を居住させましても、それの大修理、定期的な修理はアメリカ本国へ帰ってやります。三、四年に一度帰ってやるわけでありますが、その場合でありますと、西海岸ですとおそらくアラメダというところになろうと思うのですが、それを根拠地というわけにもまいらない。といたしますと必ずしも、根拠地であれ、母港であれ、正確な定義があるというわけではありませんで、一般的な艦艇の主たる寄港地といいますか、そういうもの。それから乗員が上陸をし休養をする、しかも家族がいるといったようなところを、通常の場合、根拠地あるいは母港と言っていると思います。なおその際に、ある程度の修理ができ、それから若干の補給物資をそこで積み取れるというようなところを含めて、そういう場所であろうというふうに思います。
  349. 東中光雄

    東中委員 そうしますと、横須賀は在日米海軍司令部がありますし、補給廠もあるし、修理部もあるし、それから家族がそこに住んでいる、いま言いましたオクラホマシティーあるいは第十五駆逐戦隊、あるいは今度来るであろうミッドウエー、いわゆる根拠地あるいは母港というふうに言って、通常の用語からいえばそういうふうになるのじゃないですか。
  350. 久保卓也

    ○久保政府委員 いわゆるとおっしゃいましたが、いわゆるということばをつければ、そういうような表現でもよろしいのではないか。といいますのは、厳密に根拠地が何であれ母港が何であれ定義に沿った解説ができないので、いわゆるということばをつけていえば、それでもよろしいのではないかと思います。
  351. 東中光雄

    東中委員 ところが、いわゆるということばをつけた母港とか本拠地とか根拠地という概念以外には、正式の概念がないのですから、これはまさにこの祭にいわゆるをつけるだけのことであって、ミッドウエーの場合は三年間横須賀港から出て西太平洋で行動し、補給の必要がある、あるいは休養の必要がある、あるいは部分的な補修の必要があるという場合には横須賀港に帰ってくる、家族もそこにいるから、こういう関係になるわけでしょう、いま予想されているのは。家族がそこに移った、それから横須賀の施設、区域の機能からいって、そこにある基地の部隊からいってそういうことになるのではないですか。
  352. 久保卓也

    ○久保政府委員 なぜいわゆると申し上げたかと申しますと、日本の海上自衛隊では、たとえば根拠地とかあるいは母港ということばを使っておりませんので、アメリカで正確な定義があればその定義に反しているのではないかという懸念を申し上げたわけでありますが、俗にいわゆる母港あるいは根拠地と言われても適当かと思いますけれども、日本側でそういうことばが正式な概念として使われておらないという意味で明確な答弁を避けたわけであります。
  353. 東中光雄

    東中委員 愛知外務大臣は、前のエンタープライズが来た当時、国会でずいぶん問題になりまして、これはいわゆる寄港なんだ、出ていって作戦してそこに戻ってくるという、いわゆる補給、修理、それから休養、こういういわゆる母港あるいは根拠地、あるいは本拠地というものとは違うんだと、寄港との区別ということでそれを盛んに国会で論議をされているわけです。それから、いま大平外務大臣が、まあ住宅がここにできただけだと、こうおっしゃいますけれども、いままで国会の論議で言われてきた——日本の国会での論議ですよ。アメリカでの定義はどうか知りませんけれども。そういう法令があるかないかは別として、日本のいままでの国会での論議からいえば、寄港ではなくて、こういう状態になることを母港、あるいは本拠地あるいは根拠地というふうに言ってきたわけですから、そういう意味で今度のミッドウエーの家族移住というのは、横須賀をミッドウエーの母港にする、根拠地にするということなんだ。これは率直に外務大臣、認めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  354. 大平正芳

    ○大平国務大臣 マザーポートとかホームポートとかいろいろ俗語があるわけでございまして、あなたがおっしゃるように、母港とは何ぞやという定立した慣行語はどうもないようでございます。ただ、家族が住んでおりますから、いままでミッドウエーが横須賀なり佐世保なりに寄港したこともございますけれども、横須賀に寄港する頻度は多くなると思いますし、そこで修理もしたり補給もしたりすることになるわけで、そういう実態はあなたの御指摘のとおりでございます。ただ問題は、この本委員会で議論いたしておりますのは、そういうようなことをすることが第七艦隊の戦略的強化をねらったものであるかどうかということについて、いや、そうではないんだというのが私どもが申し上げておることでございますし、いや、そうなんだと言って御主張されておる向きもあるようでございますが、そういう見解はわれわれはとらないと申し上げているだけです。
  355. 東中光雄

    東中委員 われわれ言っていますのは、第七艦隊がアメリカの本国から出てきて、あるいは半年たったらまた向こうに帰っているという状態だったのが、今度はその基地機能を、第七艦隊の西太平洋における行動自体は変わってないとしても、日本を中心にしてやっていく。いままでは向こうへ帰った。ところが、日本から出ていって、日本へ帰ってきて補修したり修理したり、あるいは休養したりする。ここから出ていったり帰ったりするということで日本の横須賀は強化されておる、こう言っておるわけです。日本と関係のないところでアメリカがやっておるのだったら、それはアメリカがやっておるわけですけれども、この移住を認めること、そして補給機能なり補修機能なり司令部があるというふうなことから見て、そういう意味では日本の横須賀が、ニクソン・ドクトリンにいう責任分担でここが強化されて、ここから動いていくということになっていく、これが大きな変化だ、こう言っているわけですから、そういう点では、外務大臣の言われていることは、私どもの言っていることを否定されているわけではなくて、同じことを言っていらっしゃると理解するのですが、そうじゃないですか。
  356. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そのことを私は家族計画だと言っているのです。
  357. 東中光雄

    東中委員 そうなると、ことばだけの問題ですね。専門家の防衛局長は母港と言っている。世界じゅうどこへ行っても、日本の新聞を見たってどこだって母港と書いてある。母港というようなことを知らないというのはよほどどうかしている。(「新語だ」と呼ぶ者あり)これが新語だなどと言うのは、よほどどうかしている。本拠地とか根拠地というのはこの国会で言っている。これが何か新語だというようなことを言うのは全く違う。   〔発言する者あり〕
  358. 三原朝雄

    三原委員長 不規則発言はやめてください。
  359. 東中光雄

    東中委員 よろしい。いわゆるというのは、法律できまっていることばではないから、世間一般に使われておる、そういう意味でのいわゆる根拠地であり、本拠地であり、母港である。それを外務大臣は、何と言いましたかな、それこそ新語なんだ。家族計画ですか、ということばで言われているだけなんだということだと思うのですが、きょう、もう時間がありませんから、その点だけを確認して終わりたいと思います。
  360. 三原朝雄

    三原委員長 受田新吉君。
  361. 受田新吉

    ○受田委員 この外務省関係の二つの法案の直接関連する問題はあと回しにして、先に外交問題のポイントについて外務大臣の信念をただしてみたい点がございます。  あなたは、昨年、田中総理と御一緒に中国へ行かれて、日中の平和への一つの拠点を築かれた功労者であります。ところが、現に中国政府自身は、日本のいま置かれている日米安保体制、そういうものに対してはどういう考えを持っているのか。アジアにおける現戦力、権力政治の仕組みをそのままにしておいて、そして日本と中国の間の友好親善をはかりたいと考えておると判断してよいのかどうかを、あなたが直接日中国交回復に乗り出された当事者であるだけに、お尋ねを申し上げておきたいのであります。
  362. 大平正芳

    ○大平国務大臣 中国がアジアの安全保障体制にどういう構想を持っておるかということにつきまして、私はつまびらかに知りません。ただ、わが国とアメリカとの間に結んでおります日米安保条約につきましては、何らこれに触れることなく共同声明を合意できたわけでございまして、その限りにおきまして、理解は持っておられることと推察します。
  363. 受田新吉

    ○受田委員 現に日米安保体制、これは国連憲章第五十一条の規定に基づく集団二国間の安全保障体制。五十三条には敵国条項が規定されてありまして、これに基づいて、中・ソそれからソ連・北鮮、北鮮・中国と、こういう日本を仮想敵国にした同盟条約があるのですね。この現実、つまり国連憲章の五十三条の規定に基づいた条約は有効と認められるような形になっている現体制のままで日中友好親善を一そう深めていくという形、これは正常な形かどうかをお尋ねしたいと思います。
  364. 高橋英明

    ○高島政府委員 先生の御指摘は、中ソ友好同盟条約、これが国連憲章のいわゆる敵国条項に言及しているので、これと今回の日中共同声明による日中国交正常化は矛盾するのではないかというお話のようでございますけれども、いろいろ形式論あるいは法律論等になりますと、そういう議論もあるいはあるのかと思いまするけれども、今回は、先ほど大臣の御答弁にございましたとおり、日米安保条約あるいは敵国条項に言及したような中ソ友好同盟条約、そういったものに一切触れることなく政治的にも解決したということでございますので、昨年の日中国交正常化にあたって、そういう条約論あるいは法律論について全然両国とも触れなかったということが実態でございます。
  365. 受田新吉

    ○受田委員 北京以後のアジア情勢は著しく緊張緩和の方向に向いている。これはもうわれわれもこれを現に認め、さらに今後もそれを大きく進めることを期待しているわけですけれども、米、中、ソ三極外交の今後の見通しの中に、日本の外交路線はどこへどの道を選ぶのかということは非常に大事な問題だと思うのです。米、中、ソ三国を中心とした多極外交、その中で日本はいま安保体制の日米間のこの形をこのままにし、また敵国条項が残ったままであり、日本を仮想敵国として中国とソ連が条約を結んでおる、北鮮と中国も結んでおる、北鮮とソ連も結んでおる、この形を何かの形で打開する努力をされるのかどうか。具体的には、敵国条項というものは国連憲章の中から削除するという努力がまず一つ要ると思うし、日米安保体制の形を何かの形でゆるめていくというふうな道もある。米、中、ソ三極外交の中でわが国の選ぶ外交路線はどこか、いま私が指摘した問題を含めて御答弁を願いたい。
  366. 大平正芳

    ○大平国務大臣 基本的には、わが国といたしましては、すべての国と友好親善関係を保ちたいと存じておるのでございまして、いま御指摘の三大国ばかりじゃなく、すべての国と変わらない友好関係を維持発展さしていかなければならぬと考えております。  第二に、日米関係というのは、日本にとってその中でも一番大事な関係だと考えておるわけでございます。さればこそ、日ソ国交再開にあたりましても、また日中の正常化にあたりましても、この関係に触れることなく道を開いたわけでございまして、今後この日米間のかたいきずなの上に立ちまして、私どもといたしましては、日本の国益を踏まえて外交をそれぞれの国と精力的に展開してまいりたいと考えております。
  367. 受田新吉

    ○受田委員 今度、東西両ドイツが国連に加盟するというような機会があると、この枢軸国を敵国とした敵国条項というものは、国連の条約の中から抹殺していいものではないか、そういう外交努力を、こうしたアジアの緊張緩和の時点で実際に推進していくべきではないか。これは私、平和外交を進める上において非常に大事な問題だと思うのですが、事務的処理としては条約局長でけっこうです。政治的な判断は外務大臣に御答弁を願いたい。
  368. 高橋英明

    ○高島政府委員 国連憲章第百七条にいわゆる旧敵国条項がございまして、わが国はこの問題につきまして、前から国連憲章改正の際には必ずこの条項を削除するようにという基本方針を持っておりまして、いろいろ関係各国ともそういう点について打ち合わせをしたこともございます。  ただ解釈といたしまして、国連の加盟国になった暁には、日本は当然そうでございますけれども、この旧敵国条項は適用がないということは、これは加盟国の中で一般の見解でございますので、あとは形式的に第百七条を削除するという措置が必要であるという観点からわれわれいろいろ努力しておる次第でございます。  ドイツにつきましても、近く、ことしじゅうには当然東西両ドイツともこれに加盟いたすわけでございますので、日本と同じような立場になろうかと考えております。
  369. 受田新吉

    ○受田委員 東西両ドイツと日本とは違うのです。日本は国連にとっくに加盟しておる。それが国連憲章の中の敵国条項の適用を受ける国になっているというのは、これはちょっとおかしい話ですね。いままでなぜこれを放置しておったか。東西両ドイツの加盟で解決する問題ではなくして、日本はとっくに加盟しておるのです。
  370. 高橋英明

    ○高島政府委員 私の御説明が少し不十分だったかと思いますけれども、日本はこれに加盟したときにおいて、この旧敵国条項は日本に関しては適用がないというのが国連加盟国の一般の見解であるということを申したわけでございます。またドイツにつきましては、今回国連に加盟する段取りになるわけでございますので、その時点において、国連憲章との関係では旧敵国条項は適用がなくなるということでございます。
  371. 受田新吉

    ○受田委員 現に中ソを中心とした三つの日本を敵国とみなす条約が存在していますね。これはどうなっておるのですか。
  372. 高橋英明

    ○高島政府委員 存在しておることは事実でございます。それでまた、締結した当時において、ソ連あるいは中国はそのような解釈をとったということも事実でございます。
  373. 受田新吉

    ○受田委員 事実である事実が今日残っておるわけですね。抹殺されていないじゃないですか。
  374. 高橋英明

    ○高島政府委員 私の申しておりますのは、国連憲章第百七条そのことについて、将来国連憲章改正の暁には、これを形式的にも削除する必要があるという立場でいろいろ努力しているわけでございまして、中ソ友好同盟条約あるいは北朝鮮と中国との条約、そういった条約は、それぞれ当事国の間の条約でありまして、わがほうとしてどうするということはできない問題ではないかと思います。
  375. 受田新吉

    ○受田委員 国連憲章の規定にその敵国条項が存在するからそういう条約ができた。日本は日米安保条約の中に特定の敵国を指定してありません。ところが中ソ条約等には、日本を仮想敵国と明記してある、その点を私は指摘しておるわけです。
  376. 高橋英明

    ○高島政府委員 先生の御指摘のとおり、通常、相互援助条約あるいは日本のような安全保障条約は、すべて国連憲章第五十一条の集団的自衛権を組織化したものだというふうにわれわれは考えております。しかし、その例外といたしまして、ソ連と中国との間の友好同盟条約とかはそういう形式になっておりませんで、旧敵国である日本の侵略の可能性という観点から条約が起草されているという点は事実であります。
  377. 受田新吉

    ○受田委員 その事実をそのままにしておく筋ではない。日米安保条約の中には、ソ連を、中国を明記してないですよ、仮想敵国として。その片手落ちがあるわけです。その片手落ちをまずなくする必要があるのではないかと私は言っておるのです。
  378. 高橋英明

    ○高島政府委員 先生の御質問の趣旨は、中ソ同盟条約につきまして、何か日本が特別な措置をとる必要があるということでございましょうか。
  379. 受田新吉

    ○受田委員 条約の中に日本を仮想敵国とちゃんと明記してある条約が国際間に存在しておる。ちょっと読んでみてください。
  380. 高橋英明

    ○高島政府委員 そのくだりは中ソ友好同盟条約の前文にございまするけれども、「日本帝国主義の復活及び日本国の侵略又は侵略行為についてなんらかの形で日本国と連合する国の侵略の繰り返しを共同で防止することを決意し」云々というくだりでございます。
  381. 受田新吉

    ○受田委員 いまの状態の中で、日本を侵略国と見、それが復活することをわざわざ断わって明記してある規定を削除をすることは、私は非常に大事なことだと思うのです。それは外国のやっていることであるからおかまいはないという考え方は、外務省としてははなはだ私は遺憾だと思う。それは、国連憲章五十三条の規定がそれへ及んでおる、五十一条の規定でやったものじゃない、五十三条の規定からスタートしておる、私はそう判断するが、間違っていますか。百七条ともう一つ五十三条……。
  382. 高橋英明

    ○高島政府委員 いろいろこういう集団安全保障条約の法的な地位につきまして見解はございます。ただいま先生御指摘の憲章五十三条というのは、いわゆる地域的取りきめに関する規定だと思います。これは、わが方といたしましても、日米安保条約自体は、ある意味ではこの地域的取りきめの一種であるという解釈もできるという考えでございますので、もちろん広い意味では中ソ友好同盟条約も含めまして、いわゆる集団安全保障条約というのはすべて地域的取りきめの一種である。したがって第五十三条のワク内のものであるという考えに立つわけでございますけれども、ただ日米安保条約の場合には、より的確に言いますと、集団的自衛権そのものを組織化したという意味で第五十一条に基礎があるという考えでございまして、一応、中ソ友好同盟条約はその五十一条に言及しておりませんので、そういう意味では、第五十一条に基づくものではなくて、むしろ第五十三条、先生おっしゃるような地域的取りきめの一種であるというふうに考えております。
  383. 受田新吉

    ○受田委員 そうした五十一条と五十三条の関係で、中ソ同盟条約というものは五十三条を根拠に考うるべきものだと私は思うのです。したがって、いまの時点、アジアの緊張が緩和して平和なアジアが築かれようとしているときに、わざわざ日本を侵略国とにらんだような形の規定が現に生きている条約というものは、これは国連において何とか根底の敵国条項を削除することによって抹殺してもらいたい。日米安保条約の中には、相手の国が侵略国になる、帝国主義が復活するというようなことを書いてありません。外部のということになっているわけなんです。そういう意味においては片手落ちですよ、これは。外務大臣、条約局長のお説の中には外交努力の不足が多分にひそんでおる。日本は国連憲章の中からいち早く敵国条項を削除する努力を国連総会のほうでやるべきである。これについては、条約局長、日本の努力がいままでにされなかった事実は、そういうことをもっと早く解決したかったと思っていない。反省はないのですか。あたりまえのことだと思っておるのですか。
  384. 高橋英明

    ○高島政府委員 先ほどから御答弁しておりますとおり、私ども、憲章に旧敵国に関する条項が第五十三条と第百七条にございまして、この条項は国連憲章改正の機会には必ず削除したいということで、従来から各国との間にいろいろ話をしたこともございますし、現在も、この点については憲章改正の第一目標に掲げておる次第でございまして、私ども、そういう意味で努力をしておらないということでは決してございません。
  385. 受田新吉

    ○受田委員 努力をしていても、努力の結果があらわれておらぬじゃないですか。残念ですが……。
  386. 高橋英明

    ○高島政府委員 これは先生も御承知のことと思いますけれども、国連憲章の改正につきましては非常に困難な問題がございます。特に五大国、安全保障理事会のうちの常任理事国の中に非常にその点について強い反対を持っておる国がございまして、わが国といたしましては、何といたしましてもこの五大国の賛成を得なければいかなる改正もできません。そういう意味で、従来から国連憲章改正については、非常に外務省におきましていろいろ努力しておりますけれども、そういう強烈な反対にあっていままで成功しておらないというのが事実でございます。
  387. 受田新吉

    ○受田委員 現実にはそういう壁もあるわけで、それを外交努力で解決するということが日本外交の本髄でなければならぬのです。日本外交は非常に弱いです。  私はもう一つ、これへ関連して、このたび田中総理はソ連のブレジネフ書記長から親書で訪ソの要請を受けておられる。さらに田中首相はアメリカからニクソン大統領によって訪米歓迎の要請を受けておられる。外務大臣、この田中首相が行かれるとき、あなたは御一緒に行くかどうかということと、ソ連を訪問しアメリカを訪問するときには、何をポイントにして外交成果をあげようと目ざしておるか。それぞれの国の立場からの御答弁を願いたい。
  388. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま、受田君も御案内のように、世界は首脳外交が重視される段階になっておりまして、最高首脳が絶えず意思の疎通をはかっておく必要があると考えております。したがって私は、田中総理におかれても、事情の許す限り御招請を受けておる国につきましては、精力的に御訪問をお願いしたいと考えております。しかしながら、この問題は、国内を含めまして全体の政治スケジュールをどのように編み出してまいるかの問題でございまして、政府ではまだ具体的なスケジュールをきめるに至っておりません。国会の審議の推移を見ながらこれから吟味しなければならない課題でございます。しかし、かりに訪ソあるいは訪米というような問題になった場合、政府としては最善の用意をしてかからなければならぬのは当然と思いますけれども、いまここで御披露申し上げるまでにはまだ固まっておりません。
  389. 受田新吉

    ○受田委員 たとえば米国に行けば、懸案の解決とか、経済摩擦を何とか解決するとか、いろいろ目標があると思うのです。またソ連を訪問するときには、北方領土の返還にも同時に強い要請をするとか、そういうものも全然考えていないのですか。ついばく然と親善旅行をなさるのですか。
  390. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いろいろ具体的な訪ソあるいは訪米というような場合になってまいりますと、先ほど申しましたように、十分準備をしてかからなければならぬと思っておりまして、あなたの御指摘になりましたような問題も、当然吟味して対応策を考えながら行かなければならぬのは当然と考えております。
  391. 受田新吉

    ○受田委員 吟味して考えるというのは、味わうわけですか。
  392. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まあよく検討するという意味でございます。
  393. 受田新吉

    ○受田委員 やはり一国の総理が外務大臣を伴うて——外務大臣が御一緒に行かれるか行かれぬかわからぬですね。ちょっとその点。
  394. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは、そういう訪米、訪ソ自体がまだきまっておりませんので、私がまた随行を命ぜられるかどうか、そのあたりも当然きまっていません。
  395. 受田新吉

    ○受田委員 外交には一つの夢があるし、国際平和の確立ということへも貢献しなくちゃならぬし、日本国の国民の、国家の強い要請もあわせてこれを解決する努力をしなければならぬ。親善旅行で国費でゆうゆうと漫遊して帰られたんじゃ、これは意味がないわけです。漫遊ということはよもや考えてはいませんでしょうね。
  396. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それほど安易には考えておりません。
  397. 受田新吉

    ○受田委員 私は、大平外務大臣は幅の広い外交を進めておられるお方であるから、もう一つ今度は、総理も東南アジアという国々を訪問していいと思うのです。東南アジアの諸国、開発途上の諸国家というのは、当然これは日本が関心を持って、アジアの平和の基盤づくりに東南アジアの諸国を訪問されるということは必要だと思うのです。これは好ましいことであると思うかどうか、御答弁願いたい。
  398. 大平正芳

    ○大平国務大臣 全く同感です。
  399. 受田新吉

    ○受田委員 その同感に基づいてひとつ。  法務大臣の言質から南ベトナム解放戦線の招請問題が論議されたわけです。法務大臣はよろしいと言う。南ベトナムの解放戦線の政府というものは、首府がどこにあって領土がどういうふうになっておりますか、ちょっとお答え願いたい。
  400. 大平正芳

    ○大平国務大臣 正直なところ、つまびらかにしておりません。
  401. 受田新吉

    ○受田委員 そのつまびらかにしてない国との招請問題が出ておるというのは、何かを拠点にして論議されなければならぬと思うのですが、外務大臣自身がつまびらかにしてない、国土がどれだけでその首府がどこであるかというようなこともわからぬようなことでは、外務大臣としては、これは合格か不合格かの論議にも影響する問題でございまするが、これは非常に大事な問題が国会で堂々と論議されておるわけです。いかがですか。
  402. 大平正芳

    ○大平国務大臣 受田君も御承知のとおり、国会で政府が申し上げておりますのは、これからのインドシナ政策、とりわけベトナム政策は、せっかくでき上がりましたパリの和平協定を踏まえて考えていきたいということを申し上げておるわけでございます。  このパリの和平協定というものには、いまあげられました南ベトナムの臨時革命政府というのは、当事者としての立場を持っておるようでございます。で、私どもがかかわりを持つのはその辺でございまして、この当事者が、一方の当事者であるサイゴン政府、わが国と外交関係を持っておるサイゴン政府と相はかり和解をしまして、第三勢力を含めて和解評議会というものをつくって、将来の南ベトナムの政治形態というものをつくり上げていくということがパリ協定にうたわれておるわけでございます。したがって、この両当事者は和解をしなければならない間柄にあるわけでございます。南ベトナムの将来についてお互い相談しなければならぬ立場にあることだと私どもは承知するのでございまして、南ベトナム革命政府とわが国とのかかわり合いは、まあそういうものとして処理してまいらなければならぬと思っておるわけでございまして、パリ協定をかがみといたしまして、それにたがうことのないような処理のしかたをしてまいらなければいかぬと考えておるのでございまして、具体的なケースが出た場合は、そういう基本的な考え方を踏まえた上で具体的処理をしなければならないと考えております。
  403. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、南ベトナムの解放戦線、つまり臨時革命政府は国土を南ベトナムと見、そして首府をサイゴンと見ておるのか、あるいはほかに構想があるのか、これはどう判断されるわけですか。
  404. 大平正芳

    ○大平国務大臣 正直なところ、どこに首都があるのか私よく存じませんけれども、南ベトナムの一つの勢力としてパリ協定の当事者になっておるということは承知いたしておるわけでございまして、パリ協定というものをベースにいたしまして、私どもは、これについての対応のしかたを考えていかなければならぬのだということを、あなたにお答えしておるわけです。
  405. 受田新吉

    ○受田委員 当事者ということになれば、国土はどこだ、首府はどこだという一応の根拠が日本政府としても考えられてしかるべきである。ところが、国土がどうなっておるか、首府がどこにあるかわからぬというようなことで、外務大臣、つまりまぼろしの国であるというような形に見ておるわけですか、国土とか首府の問題については。
  406. 大平正芳

    ○大平国務大臣 パリ協定には当事国とは書いてないのです。当事者と書いてあるわけでございまして、そういうものとして私どもは認識して、パリ協定をかがみにいたしまして対応のしかたを考えていきたいと申し上げておるわけでございます。
  407. 受田新吉

    ○受田委員 当事者ということは、もちろん当事国と共通する問題……。
  408. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いや、それは書いてないのです。
  409. 受田新吉

    ○受田委員 それは書いてないといっても、当事者がどこに根拠があるかがわからぬようなばく然とした見方というのは、これはおかしいのです。当事者の責任者はどこにおるかくらいのことははっきりしておかなければいかぬですね。外交路線をしいていこう、つまり招請関係を樹立しようというときには、招請状をどこへ出すわけですか。パリへ出すのですか。
  410. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私のほうは、南ベトナムではサイゴン政府との外交関係を持っておるわけでございまして、私どものほうから南ベトナム臨時革命政府とかかわりを持つつもりはないのです、こちらは。向こうから何かのかかわり合いが出てきたとすれば、これはパリ協定をベースに考えましょうということを非常に明快に答えているつもりなんです。
  411. 受田新吉

    ○受田委員 明快に答える以上は、日本国に対する交渉というものが根拠を持ってくると見なければならぬ。どこからかわからないところから航空郵便で来るとか、どこかの大使にそれを依頼するとかいうような問題でなくて、一応当事者というものにはちゃんとした住居、そしてその地域というものが考えられておるはずなんです。どこに何かおるやらわからぬものから突然手紙が来るというような考え方そのものには一つの非常に大きな問題がある。まあこれはこのままにしておきましょう。  そうしてもう一つ。日中国交回復して共同声明を出した時点で、日中の間における平和友好条約というものはどういうスケジュールで今後組むという見通しを持っているのか、御答弁を願いたい。見通しをひとつ。
  412. 大平正芳

    ○大平国務大臣 本委員会でもたびたび御答弁申し上げておるわけでございますが、共同声明では、両国が日中平和友好条約の締結交渉をしようということで合意しておるわけです。しかし、いつからしようというところまでは、まだ相談ができておりません。それからまた、どういう内容を盛るかにつきましては、過去の清算は共同声明で一切済んだ、これから将来にわたって長き友好関係の条約的基礎をつくるようにしようじゃないかという点に合意いたしておりますけれども、その具体的な内容につきまして、どういう順序で、どういう事項を盛り込んでいくかというところまで双方はまだ話し合いをいたしていないのが現時点のことでございます。しかし、国会の決議にもありましたように、その締結を急ぐようにという御趣旨もございますので、大使の交換を終えたことでございますので、これから外交ルートを通じまして、双方都合のいい時期に相談に入るというようにいたしたいものと思っております。
  413. 受田新吉

    ○受田委員 この条約締結までに当然航空協定の締結というものが途中で出てくる。このスケジュールはどうですか。
  414. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは目下日中間で交渉中でございまして、政府におきましても、部内においていろいろ問題点を検討いたしておる最中でございます。
  415. 受田新吉

    ○受田委員 私これに関連して、今度の在外公館の法案のほうに入る問題として取り上げたいことがあるのです。  北京に大使を派遣した。当然、航空協定をいま締結する運びになっておる。広州が一つの拠点になる。それから上海という日中の友好親善を深める拠点、日本人もたくさん行く拠点、そこへ同時に総領事館というようなものを当然置くできであると思うのですが、総領事館の設置はこの法案には用意されていない。いかがでしょう。
  416. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まだ双方そういう話にいっていないわけでございまして、将来いくとしても、相互主義に基づきまして、日中両国相互にバランスのとれた行き方をしなければならぬと思いますが、いままだ先方の希望も出ておりませんし、私どものほうも、いま広州その他に総領事館を置かなければならぬという実務上の必要も当面ないわけでございます。将来の問題だと思っております。
  417. 受田新吉

    ○受田委員 むしろ日本から提唱してもいいわけです、こういうものは。広州の交易会などという拠点もできてきているわけですから、そういうものは当然こちらの一つの夢を実現させる。日本人の生命、財産、身体の保護をはかる拠点は、総領事館を置けば、当然広州とか上海とかはその適格な町である。このくらいの考え方は日本外交の上にもうちゃんと含みがなければならぬと思うのですが、どこがどうなるかわからぬがということでなくして、総領事館を置くとすれば広州とか上海とかは非常に重要な町である。その認識も全然ないのかどうかです。
  418. 大平正芳

    ○大平国務大臣 おっしゃることはよく理解できますけれども、一応当面差し迫って必要はないという状況でございまして、北京大使館で大体カバーできるといまのところ考えております。しかし、あなたが言われるように、将来、上海、広州等に日本の在外公館というものの設置は十分考えられると思うのでございますが、その場合は、日中双方相互主義でございまして、あなたのほうがここに置くならば私のほうはここに置くというやりとりから相談していかなければならぬわけでございまして、将来の課題だと考えております。
  419. 受田新吉

    ○受田委員 大平先生は、のらりくらりとまことにのんびりした御答弁をされるわけですが、一応そういう構想ぐらいは日本は持って外交交渉を進めていかれる必要があると思うのです。結果論で論議するのでなくして、過程の中で、当然総領事館というものをすみやかに設置して、いま必要がないというような段階でなくして、法案が成立して後にやるのでなくして、事前にちゃんとした準備体制をつくっておかなければいかぬわけです。こういうふうに法案となって、それを承認する段階のときには、もう来年ということになってくる。その時点で何かしておかなければいかぬというようなことが起こってくる。交渉で当然それは出てくる。  私はここでもう一つ外交問題として、天皇陛下の海外御旅行の問題ですけれども、これは当然触れておかなければいかぬのですが、いま大平さんは、天皇の海外御旅行は象徴たる天皇の御旅行であって、一切政治的なものはない。憲法の第一章の天皇の条項を見ますと、国事と国政がはっきり分離してあるが、よく考えてみると、国事の中にも政治的なにおいがするものが出てくる。しかしそれを国事と割り切ってある。そこで外務大臣、天皇陛下の海外へ御旅行されるときに、ヨーロッパもそうですが、今度アメリカを訪問されるとするならば、海外は天皇を元首としての礼をもって迎えるのか。たとえば出迎えの儀仗兵等は一国の元首に対する礼としてお迎えしているのかどうかです。それはあなたが一番よく知っておられる。
  420. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私の理解では、日本国の象徴としての天皇の公の立場を考慮されて処遇されておることと思います。
  421. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと元首というのは、たとえばお迎えする礼砲というのは天皇の場合と違う。天皇を象徴として迎える礼砲と元首を迎える礼砲と、そういう儀式、これは外務省の儀典長がおられるとなおよくわかるのですが、外国が日本の陛下をお迎えする場合には、日本国を代表する元首としての礼をもって迎えておるのか、象徴を迎えるときには大砲の撃ち方が違うのか、これもひとつあわせて御答弁を願いたい、これは外交の問題ですから。
  422. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私もそういう儀典的なことをよく承知しないのでございますが、一応調べさせていただきます。
  423. 受田新吉

    ○受田委員 私は天皇陛下が海外へ旅行される場合に、儀式としては元首として迎えられるのではないかと思うのです。しかしそれは、日本側は象徴の天皇であるという解釈、外国側は元首として解釈する。外務省はそういうときに、たとえばすでにおととし陛下のヨーロッパ諸国の訪問をされたときの記録等があるのですが、ヨーロッパの国は日本の元首として陛下を迎えたのかどうか。記録の上ではどうなっているか。象徴をお迎えしたとなっておるか。元首としての礼を尽くしたのか。  それから、日本の場合には、元首は天皇陛下であるのか、あるいは総理大臣か。大平先生も総理大臣になったときに、あなたが元首になるのかどうか。そのことも研究しておかなければいかぬと思うのです。御答弁願います。
  424. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本国の天皇陛下の特殊な御地位は、最近、各国におきましてもよく理解されておりますから、陛下をいわゆる統治権の総攬者たる元首として迎えられるとは思いません。日本国の象徴として、公のお立場における最高の地位にある方として受け入れられておるものと理解いたしております。
  425. 受田新吉

    ○受田委員 そうしたら、日本国の元首はだれでしょうか、大平先生。
  426. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは日本国の憲法に問わなければならぬわけでございますが、私、憲法学者じゃございませんけれども、私の理解では、いわゆる元首という地位は日本国憲法にはないように思います。
  427. 受田新吉

    ○受田委員 元首という規定は憲法にないのです。しかし、一国を代表する地位にある人は一体だれか、つまり元首に相当する地位の人はだれですか。
  428. 大平正芳

    ○大平国務大臣 受田さんのおっしゃる代表という意味はどういうことを言われるのか、私にはわからないのです。きょうも私は、エカフェ総会におきまして日本国を代表したわけです。ですから、代表という意味をどのように言われておるのか、ちょっと理解しかねます。
  429. 受田新吉

    ○受田委員 いずれの国も元首というのがあるわけです。日本は、陛下は象徴である、そして政治の最高責任者は総理大臣だ、こういうことになっておるわけです。しかし、いずれの国も、元首のない国はないわけなんです。日本は元首に相当する規定は憲法にないけれども、海外から見た場合に、日本の元首はだれかということになるわけなんです。外交上の代表としてあなたが海外に行かれる場合は、これは外務大臣でいいでしょうが、外務大臣は日本の元首とはだれも見ちゃいないのですからね。そうなってくると、元首というものの存在を否定するということですか。そうしたら、海外から見た日本は元首のない国だと日本の外務大臣は宣言したと、国際的に放送してもよいかどうか。
  430. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本国の憲法は元首の規定を持っていないと思います。したがってそこから御判断をいただきたいと思います。
  431. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、元首という立場、ことばはいろいろあろうけれども、日本国には元首がない、こういうことを世界に放送したと外務大臣の言明を了解してよいかどうかです。
  432. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは、私が言うとか言わぬとかの問題ではないのでございまして、日本国憲法がそうきめておるわけでございます。
  433. 受田新吉

    ○受田委員 憲法はどうきめておるわけですか。日本は元首がない国だときめておるのですか。
  434. 大平正芳

    ○大平国務大臣 元首に関した規定を持っていないと承知しております。
  435. 受田新吉

    ○受田委員 私は国際間の認識として、外交関係などでは、もちろん外務大臣、全権大使というものが、一国を代表するということがいえます。しかし、世界の国々の中に、一国の元首というものがない国がほかにあるかないか。これもやはり外務大臣だから知っておらなければいかぬのですが、事務当局からでも、世界の国で元首のない国はどこどこなのかをいまから教えてもらいたい。条約局長でもいいです。
  436. 高橋英明

    ○高島政府委員 憲法上の問題にも関連いたしますので、日本の場合、いわゆる国際上の観念としての元首に相当するものは何かという点につきましては、私もちょっと正確に責任ある御答弁ができないのが残念でございます。
  437. 受田新吉

    ○受田委員 世界の国々を外交交渉でつないでおられる外務省が、世界の国々で元首と称するもののない国がどこかわからぬというのはおかしいことだね。これは外務省がつかまえておかなければいかぬのです。憲法学者がつかまえるのじゃなくして、外務省がつかまえておらなければならぬ。そのために外務省という役所があり、条約局長がおり、国連局長がおるのです。世界の国で元首のある国とない国とを分離できないような外務省では、はなはだたよりない。それでは答弁を保留して、世界の国で元首がない国はどこかくらいは調べて、次の法案が通過、採決される段階で、元首と称する責任者がおる国とおらぬ国とをここで御通報願いたい。  もう一つ、陛下の海外旅行ですが、これは政治責任ということでなくして、国際親善という意味で御旅行されることは当然しかるべきだと私は思います。これは一々、政治的に関係しておるとかせぬとかいうことでなくして、政治に関与しないような努力を続けながら、海外に御旅行されていくこと。私は特に、陛下御自身が長い間海外旅行のできない、非常にさびしいお方であったということを当委員会でもしばしば主張してきて、国事行為委任法等も提唱した一人でありますが、日本国に天皇の国事行為があるために海外にちっとも旅行できない不幸な陛下に、まだあまり老衰しておられない段階で旅行していただく、これを親善の目的をもってやられるということは、当然積極的にやられていいことだと思うのです。これは政治目的に陛下を御利用申し上げるようなことを一切やめて、そういう形をとっていただくべきだ。そのときには、天皇お一人でなくして皇后さんも御一緒に旅行していただく。これは非常にほほえましい関係でございますので、そういうことは適時、政府自身も宮内庁も、ひとつ力を合わせて、陛下に多くの国々に親善旅行をしていただくように進めていっていただくべきだ。  ただ、私ここで指摘したいのですが、スウェーデンのように、国王御自身が町を自由に散歩されておる国をわれわれよく知っておる。日本の場合には、陛下が皇居から出られるときには非常に警戒が厳重だ。アメリカという国の警戒の問題については懸念がないのかどうか。訪米されるについても、陛下が御安泰のような、アメリカのニクソン大統領以下が完全に陛下の生命、身体を守ってくれるような体制でお迎えをするということになるのかどうか。そういう場合に外務大臣として非常に大事な責任があるわけですから、ひとつ御答弁を願います。
  438. 大平正芳

    ○大平国務大臣 アメリカの大統領から、心から御歓迎申し上げたいという御希望が寄せられております。そこから御判断をいただきたいと思います。
  439. 受田新吉

    ○受田委員 私は日本の国情というものを考えるときに、スウェーデンあるいはデンマークの国王が市内を自由に散歩される、ああいうような姿の陛下であっていただきたいと思うのです。ほんとうは警戒を厳重にしないで、少数の警備の人が軽く陛下を守ってあげる程度にしておくべきだ。ところが日本では、総理大臣が歩かれるのでも、私そこの首相官邸をしばしば見ておるが、たいへん厳重な警戒で、一般の通行をとめて、総理のお通りだ、こういう形です。外務大臣が旅行されるとき、ボディーガードがついていますか、ついていませんか。
  440. 大平正芳

    ○大平国務大臣 国によっても多少相違があるようでございますけれども、一応の警戒はされておるように思います。
  441. 受田新吉

    ○受田委員 警戒があるために非常に不自由を感じられることもあろうと思うのですがね。これはほんとうは警戒がなくて自由に歩けるようにしたい。  私、シンガポールを訪問したときに、リー・クアンユー総理、リー・コンチョル副総理がわれわれと一緒に行動するのに、だれもついてこない。もう自由に総理や副総理がわれわれと一緒に行動しておる。ほほえましい感じを持ったのですが、日本の国情、日本の国民性、こういうものはやはり平和で明るい国づくりという意味で、陣頭に立つ政府御自身の要路の責任者が、厳重な警戒でなければ外出ができぬということを一歩後退させて、無防備ということは困難かもしれないが、一人二人ぐらいでがまんしてもらって、あまり厳重なかっこうでなくて行けるような政治をやってもらいたいのです。(「賛成」「賛成」と呼ぶ者あり)共鳴者がたくさんいるようですが、そういう意味で、陛下が海外旅行をされる、また国内の旅行をされるときに、平和に徹しておられる陛下に、陛下の御自由が十分に保たれるような形で行けるような警戒の方法を検討してもらいたい。これは宮内庁長官にかわって次長にひとつ御答弁を願いたい。
  442. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 天皇陛下の国内御旅行の場合の警衛警備ということでございますが、これにつきましては、われわれといたしましては、その際に一般の国民との間の親密な関係を深められていくことが大切でありますから、必要以上の警衛、警備をしないようにというふうに、警察にお願いいたしております。しかしながら、警察のほうとしますと、いろいろな裏面情報がある。いろいろな者がときどきあるものですから、したがって、やはりある程度の警戒は責任上やらなければいけないということをいっております。しかし、いろいろな裏面情報なんか聞かしてもらいますと、そういうこともあるのかなということもありますが、必要最小限度にとどめていただくということでいまやっておる次第でございます。
  443. 受田新吉

    ○受田委員 瓜生さんは、かつて日露戦争の際の第二艦隊司令官瓜生外吉先生の血筋を受けたお方である。そういう意味においては、非常に謹厳な、宮内庁におられる役人としてごりっぱだと思います。ところが、警察が陛下の御外出等にあまり厳重な警戒をして、象徴天皇御自身が国民から遊離されないように、国民に溶け込むような配慮をされたことはいまの御発言でわかるのですが、これはもっと徹底し、陛下以外の皇族の方々にもあまり窮屈な思いをさせられないように。また、それを不心得者がおってということになれば、一般国民がこれを阻止するような雰囲気をつくらなければいかぬと思うのです。そういう国情をつくっていただきたいのです。平和で明るい国づくり、文化国家、平和国家らしい国にしていくためには、そうした陛下あるいは総理、閣僚皆さんのそういう外出のときに、あまりにも厳重な、一般国民の通行も禁止して非常に急ぐ。病院の車はあのときはどうなるか。交通関係ではそれも一応阻止しておる、ほかの道路を通っていくというような形で、あまりにもきびしいやり方をしておる。これは国務大臣たる大平先生、ひとつ閣議で、われわれ閣僚をあまりにも厳重な警戒で擁護してもらいたくない、もっと開放的な形で国民の中に溶け込ましていただきたいという主張をしていただいて、日本の国が警戒厳重な国家であるという印象をできるだけ緩和するように私は要請したいと思うのです。  もう時間も進んでおります。そこで、陛下の外遊についてはアメリカだけということになっておるのか、ほかの国はどうなっておるのか、いかがですか。陛下の訪米が実現した場合には、ほかの国もあわせて旅行されるのか。たとえばアメリカに行けば、カナダという国もあればメキシコもあるし、また南米まで足を伸ばされれば、日系人が六十万もおって陛下を心から歓迎する国家もある。そういうのもあわせて考えていくのか。また、新しく計画を立て直すのはなかなか困難であるから、御旅行の際にはおついでに親善外交をやっておかれる必要があると思います。
  444. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御訪米ということがかりに実現するような場合には、自分のところにも御訪問をお願いしたいという国があるわけでございますけれども、本体の訪米問題自体が、目下皇室のほうで御都合を御検討中でございますので、まだその問題につきましてどうこうするというお答えを申し上げる段階ではございません。
  445. 受田新吉

    ○受田委員 瓜生さん、陛下の御健康は海外旅行の際に数カ国を御旅行されても耐え得ると御判断されますか。アメリカから御招待されたら、もう一カ国がせい一ぱいであるというような御健康上のことも考慮して、私は宮内庁が御判断をされてしかるべきだと思うのですが、いかがでしょう。
  446. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 天皇陛下はお年のわりには非常にお元気でございます。しかし、数年前から比較いたしますれば、幾らかお年もお年ですから、あまり御無理な日程は組んではいけないというふうに存じております。あまり長い期間ではなく、またその毎日のいろいろの日程もあまり詰まっていないように配慮する必要はあると思います。まあそういうことでございます。
  447. 受田新吉

    ○受田委員 私、そう御無理な日程をつくって差し上げるべきではない。だから、代表的な会合へ顔を見せられるというような形でアメリカへ行かれたら、カナダへもメキシコへも、オリンピックをやった関係もあるし、おいでをいただきたいという気持ちを持っておる国には、せめて二日くらいの日程を追加されれば片づく問題です。わざわざ何回も御旅行ができないとなれば、その日程を簡略にして、数カ国を御旅行されるという方法をとれば私はいいのじゃないかと思うのです。そのくらいのほうが、陛下御自身も、できるだけ多くの国と親善をしたいというお気持ちがあると思うのです。いかがでしょう。むずかしゅうございますか。
  448. 大平正芳

    ○大平国務大臣 よく承っておきます。
  449. 受田新吉

    ○受田委員 私、大臣に今度はこの法案に直接関係する問題を数点、短時間でお尋ねをします。  外務大臣、あなたは婦人外交官というものを少しつくられたらどうでしょうか。海外へ行っても婦人外交官というものはりょうりょうたるものだ。やはり男女同権です。女性は外交官として適任でないと判断されるかどうかの御答弁を願いたい。
  450. 大平正芳

    ○大平国務大臣 婦人外交官の道を閉ざしているわけではございませんで、現に婦人として外交官をりっぱにやっておる方もあるわけでございまして、道を閉ざしているわけでは決してありません。
  451. 受田新吉

    ○受田委員 現にキャリア外交官が何人おられるか。男性と女性の数の比率の上でお示しを願いたい。
  452. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 婦人外交官のいわゆるキャリア、上級試験に合格しまして在外公館で現に書記官の職をしておるのは一名でございます。しかしその他、在外にいま勤務しております婦人の職員は十五名おりまして、合計十六名おります。男性はすなわちそれ以外でございますが、大使を含めまして、在外の職員は総計が千三百六十九名でございます。そのうちに先ほどの十六名の婦人の方が含まれるわけでございます。
  453. 受田新吉

    ○受田委員 最近大いに奮発して十六名になったということです。千三百六十九名中十六名というのは女性を尊重したと言えるか、御答弁願います。
  454. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 先ほど大臣から御説明がございましたように、外務省の人事当局といたしましては、試験その他の採用に際しまして、婦人を区別しているわけではございません。志望する数からいいましても、やはり男性のほうが圧倒的に多いという事実が、まず採用、合格に影響するわけでございます。ただ、婦人外交官に適した仕事とか職務の種類もあるわけでございますけれども、国によりましては、婦人外交官が働きにくいような場所が、たとえば中近東の一部などにはあるということがございますので、配置その他につきましては、やはり婦人について特別な考慮をしなければならないかと思っております。
  455. 受田新吉

    ○受田委員 北ベトナムのビン外務大臣などは女性ながらあれだけ大活躍をしておる。すばらしいと思うのです。それに比較して、日本には大使、公使というものの中には一名も婦人がいない。しかも千三百有余名の中でわずか十六名というのが暁の星のごとく点在しておる。この状態は、男女同権のわが国としては問題で、外交官は男性でなければだめだ、女性には門戸が閉ざされておる閉鎖状態。これは、大平さんのような幅を持った方が外務大臣をやっておいでになる間に、婦人の欲求不満を解決するためにも、海外に婦人に出てもらおうということを考える。蓮見事務官のような人を、もっと外交の畑へでも、在外勤務者にでもしていくというような形でいけば、女性というものは欲求不満を解消し、女性にも道が開けるということにもなるのです。そういうところで、キャリアであろうとノンキャリアであろうといいのです。別に上級職をとらなくても、中級または一般のそういう資格のない立場で採用するとかいう道をとられてしかるべきです。大公使などにも、われわれが見ても、日本から一人や二人の女性外交官を抜てきするぐらいの人材がたくさんおると思うのですよ。外務大臣、英断をふるってみませんかね。
  456. 大平正芳

    ○大平国務大臣 霞が関のドアは婦人にも開放されておるわけでございまして、私ども多くの御婦人が志望されることを期待します。
  457. 受田新吉

    ○受田委員 それから、大公使などは、これは試験採用者でなくても、特別任用すればいいのですね。大公使はキャリアから出た者でなければならぬということはないのですから、人材を発見して、女性でやるほうがむしろいい国があるので、そういうところへは女性の外交官を、外務省の形だけでなくして、幅広く人材を発掘するという努力を、ひとつ外務大臣、やっていただきたいですな。いつまでも古いからに閉じこもってはいけない。私は、この女性の外交官の養成をする予算でもどんどんとれば、婦人の外交官志望者はたくさん出ると思うのです。上級職にとらわれないで、婦人外交官の養成機関を十分外務省の予算で確保して、養成してはどうですか。婦人外交官の養成機関を設けるというぐらいの雅量はないのですか。
  458. 大平正芳

    ○大平国務大臣 せっかくのおことばですが、そうするとまた男女同権でなくなりますから、公平に取り扱いたいと思います。
  459. 受田新吉

    ○受田委員 男女同権でないというけれども、その場合の男女同権の議論はここへ適用できないわけです。婦人の立場を尊重しながら外交官の養成をするということは、男女の比率が非常に違うのだから、その中にむしろ婦人の地位を高め、婦人外交官を養成するというワクが新しく出たから今度は男性が差し繰られるという意味じゃないですよ。男性だって女性外交官がたくさんできれば歓迎するはずですよ。そういう意味で、男女同権というか、この著しいアンバランスを是正するために、婦人の外交官を大いに募集すれば応募してくるのです。ところが、男性の中にちょっぴり入ったのではたいへんだから、応募していない。そういう制度をつくれば必ず出る。これは特別の措置で防衛庁は婦人自衛官の道を開いている。そういうようなことで外務省も当然やっていいわけです。まああまり言うとお気の毒ですから、それじゃやめましょう。  そこで、通訳というのは、あれは婦人のほうがいい場合が多いのじゃないですか。どうですか。
  460. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 現在本省におきまして、各国語につきまして通訳をする事務官を置いておりますけれども、いまのところはすべて男性でございます。しかし、先ほど申しましたいろいろな試験のうち、中級試験、それから語学研修生試験につきましては、婦人の方が相当志望され採用されているわけでございますので、特殊な語学について非常に能力のある婦人の方があらわれれば、もちろん通訳としてつとめていただいてけっこうであると思います。
  461. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ、これに関連するのですが、アタッシュという、つまり専門の駐在官というようなものをもっと特色を発揮させる必要がある。これは経済、商務、それから防衛の関係もそれに入るわけですが、全部外交官にして、在外公館の長、大公使がそれを握っておる。したがって、商務専門でやろう、経済専門でやろうと思っても、大使が待て待てと押えれば、みな書記官にされてしまって骨抜きになっているから、思い切った活動ができぬ。円切り上げのときなども、総理みずからがだいじょうぶ、だいじょうぶと言うて、そういう時期は来ないのだと言明しながら、わっとやられた。こういうところは、そうした経済外交の敗北でもあると私は思うのです。そういう意味からも、一般外交官がとろっとしている間に抜けたところがたくさんできるという意味から、こうした専門駐在官という制度を置くべきではないか。これは外務大臣としては、所管からはずれるので、自分の命令に服する人間のワク外へ出るので、残念だとおぼしめされるかどうか、御答弁願いたい。
  462. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ほぼあなたが言われたとおりになっておるわけでございまして、各省庁から有能な人の参加をいただいておりまして、各在外公館の大使のもとで、そういう専門のアタッシェが働いておるわけでございます。いまの配置の状況に各省もそう御不満はないものと私は判断いたしておりまして、どうやらあなたの御指摘されるところまでほぼ来ているように思います。
  463. 受田新吉

    ○受田委員 私が申し上げているのは、外交官でない専門駐在官ですよ。外務大臣の命令で動く書記官とか理事官というものでなくて、つまり大蔵省のロンドン駐在の商務駐在官、こういうようなかっこうで外交官に切りかえておる。いま各省から外務省に出向しておるのですよ。警察とか農林省からも、文部省からも少数行っておる。大蔵省、通産省、みんな海外へ行くときは身分が書記官、そういうものに変わってしまっておる。外交官になっておるのですよ。専門駐在官じゃない。つまり外務大臣の指揮監督を受け、また在外公館の長の指揮監督を受ける外交官になっておる。外交官に身分が切りかえられておる。これは防衛だってそうなんです。この点をいま私、指摘しておるので、外務大臣在外公館の大使などの指揮監督を受けないで、通産省から出た駐在官、大蔵省から出た駐在官として独自の活躍ができるようにする。これは外国に商務官制度というものがある。外務省事務当局、外国の例をひとつ出してください。
  464. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 ただいまの問題でございますけれども、わが国におきましては、先生御指摘のとおり、各省から来られる方は在外公館において書記官、参事官というような外交官としての地位を得ておるわけでございますけれども、外交官としての地位を得ておるということは、それにふさわしい特権を有するわけでございますし、活動もそれだけしやすいわけでございますので、そういう活動上の便宜を一方で享有しつつ、他方においては、やはり相当の方が在外公館に配置され、事実上それぞれの分野で独特の活躍をされているというわけでございまして、各省の方も現在の制度でこれはやはり一番いいという御判断でございますし、われわれとしてもそのほうがいいと考えております。  先生御指摘の外国の例でございますけれども、これは東京の在外公館を調べればわかるわけでございますけれども、各省やはりアタッシェということで在外公館の大使のもとに置く例が多いわけでございます。それ以外の場合は非常にまれでございますし、いわゆるほんとうの専門的な一部の事務を取り扱う以外の権限を有してないと了解しております。
  465. 受田新吉

    ○受田委員 その一部の権限を有してないというのは、日本と同じという意味に解釈してよろしゅうございますか。日本の同じような外交官の特権の中にあって陥没しておる、そういう形と見てよろしゅうございますか。私の指摘しているのは、その専門の活動情報収集活動、そういうものに、外交官として頭を押えられておるのは、逆にマイナスをかせぐ面がある。独自の活動を押えられておるのだから。それを私は指摘しておるわけです。そういうのが海外はどうなっておるか、よその国はどうなっておるのか、私はその点を言うのです。全部外交官になっておるのですか。
  466. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 全部が外交官になってない国もございますけれども、大部分の場合には、やはり外交官として在外公館の中におりまして、そして大使の指揮を受けているのが多いわけでございます。そうでない場合には、むしろ、民間の代表であるとか、あるいは半官半民の形の団体の代表ということでございまして、政府機関そのものを代表して海外に駐在する例は非常に少ないと考えております。
  467. 受田新吉

    ○受田委員 その制度は日本独自の制度として少ないとおっしゃるが、そういう制度で生きておる国がある。そういう国を一部まねていいのです。全部やれとはいいませんけれども、各省から一人ずつくらいはそういうのを出したほうがおもしろい。そういう新型をやるべきだと私は提案しておるわけです。  そこで、防衛駐在官というものもある。これも書記官で行っておる。その防衛駐在官という任務は在外公館の長の指揮を受けておる。昔は駐在武官というのがいましたね。駐在武官は大使の指揮を受けておったかどうか、あわせて答弁して現状を御説明願いたい。
  468. 久保卓也

    ○久保政府委員 完全に大使の指揮下の外にあったかどうか存じませんけれども、少なくとも陸海軍省から指示が行っていたことは確かであろうと思います。現在は完全に外務省の、あるいは大公使の指揮下にあるということでございます。
  469. 受田新吉

    ○受田委員 大公使の指揮下にあって自衛官たる身分だけは残っておる、こういうことですね。そこで、これをもし専門の駐在官にするとするならば、自衛官の海外派兵ということになるのかどうか、法的根拠もあわせて御答弁願いたい。
  470. 久保卓也

    ○久保政府委員 自衛官が海外に大公使館でなくて勤務している例がアメリカにありますけれども、これは通常の物資、兵器などの調達関係で行っておるわけで、憲法上の解釈としましては、武力行使のために外国に派遣されるのが海外派兵であるという解釈でありまするから そういったものは、当然いわゆる海外派兵のうちには入っておりません。
  471. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、自衛官が海外に駐在して情報収集等をするという場合、自衛官として駐在しても海外派兵にはならぬという解釈ですか。
  472. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在でも自衛官という身分を持っております。外務省と兼務でありますので、したがって当然憲法違反にはなりません。海外派兵という範疇には入りません。
  473. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、いまの自衛官という身分だけがあって、その身分は生きておるわけですね。外交官であり自衛官であると、こういうことですか。
  474. 久保卓也

    ○久保政府委員 以前は兼任と申しておりましたが、現在併任と申しております。
  475. 受田新吉

    ○受田委員 自衛官が書記官を併任するという辞令になっておるのですか。ひとつ辞令の形式をおっしゃってください。
  476. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 自衛隊施行規則がございまして、それに基づきまして、外務省の職員に併任できる、兼職できるということになっておりますので、その規定に基づきまして、自衛官が書記官もしくは参事官という併任になっております。実際おりますたとえばアメリカとかイギリスとかという場合には、一等書記官ということになって、それが防衛駐在官という公の名称を持ち、さらに一佐とか二佐とかいう自衛官の併任、兼任になっております。
  477. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、防衛庁長官の指揮監督も受け、外務大臣の指揮監督も受けるんですね。
  478. 久保卓也

    ○久保政府委員 その点は、身分上及び実務上、仕事の上での監督権限は全部外務大臣あるいは大公使のもとにあります。
  479. 受田新吉

    ○受田委員 防衛庁長官の指揮監督権はどういう形で及ぶのですか。
  480. 久保卓也

    ○久保政府委員 通常の場合はございません。したがいまして、外務事務官といいますか、外務職員の身分を離れるときにまた防衛庁長官監督権限が復活をする、こういうことでございます。したがってその間眠っているという形であります。
  481. 受田新吉

    ○受田委員 休火山ということですか。
  482. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは通常の官庁間でも同じでありまして、主たる活動の根拠がほかの兼任になりました場合に、主たる活動の根拠が他の省に移れば、その省で指揮監督が行なわれる。そうでありませんと、やはり指揮系統が二途に出てはまずいということであろうと思います。
  483. 受田新吉

    ○受田委員 自衛官の活動が海外で行なわれるのですが、従たる活躍は自衛官として活躍が行なわれるということがいまの御判断のようですが、従たる活躍が自衛官として海外で行なわれておる、こう了解していいわけですね。
  484. 久保卓也

    ○久保政府委員 そうではございませんで、外務省職員として防衛情報を収集するという任務をその兼任者は持っておるわけでありますから、これは外交官あるいは外務職員としての任務であり、それがひいては防衛庁の役に立っておる、こういう構成になります。
  485. 受田新吉

    ○受田委員 アタッシェの立場から言うと、防衛専門官として外交官でない駐在をしても、海外派兵にはならないと解釈していいのですか。
  486. 久保卓也

    ○久保政府委員 当然そのとおりであります。
  487. 受田新吉

    ○受田委員 防衛の駐在官はそれでおきましょう。時間が迫っておりますから、もう二問だけで短時間に能率をあげて、九時にはかっちりやめます。約束の時間を果たしますから。  そこで、海外で兼摂大使というのがおるのですね。これははなはだ変なもので、専任大使でなくて兼摂大使でがまんしている国がある。これは専任に切りかえるべきだ。そして特に向こう側が兼任だからこっちも兼任にするというやり方でなくして、平和外交を推進する日本は進んで専任一本にするというやり方にしてはどうなんですか。人間がおらぬのですか。
  488. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 先生御指摘のとおり、本来は兼任ということでなく本任の大使を置くべきでございますけれども、戦後、外交再建以来、順次外交の範囲を拡大していったわけでございまして、現在、在外総領事館その他の代表部を含めまして百四十公館ございます。しかもその百四十公館が、特に後進国の場合には、人数が四人以下という非常に少ない定員で活動をしているわけでございまして、その少ない定員を充実させながら、同時にまた多数の独立の公館を建設いたしますことは、定員の上でも非常に問題がございますので、順次拡大していきたいという所存でございます。
  489. 受田新吉

    ○受田委員 定員の問題、これは専任を置くために必要であれば定員をふやしていいわけです。われわれ野党も、協力しない党もあるかもしれませんが、協力しますよ。それは外交路線を確立する意味において専任大使にする。兼任というのは片手間にやるのだから、われわれが海外旅行に行っても、兼任がおるというので行ったら、それがわからぬ。在外邦人だって生命、財産の保護も十分できないという片手落ちが起きるわけです。専任を目標にして、最終的には専任一本でやるという腹があるのかどうか。
  490. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 先ほど申しましたように、現在、実館を置いておりますのは百四十でございますけれども、依然として兼轄が四十四あるわけでございます。この四十四のうち、実際、実館を置かなければならない、あるいはすぐ置く必要があるというところは、やはり全部でございませんで、順次その兼轄をなくしていくという方針ではございますけれども、場所によっては、必ずしもそこに実館を置かずに、隣接国からカバーするということでいいところもあるのではないかと考えております。
  491. 受田新吉

    ○受田委員 ナウル島という島が独立国家になって、日本と大使の交換をやって外交関係が樹立した。このナウル島は南太平洋にある島で、総面積が二十一平方キロでございますから、一里四方ぐらいしかない国で、人口が約六千七百人。大統領が日本にやってきたわけですね。この国を訪問するときに一体どういうふうなやり方をするのですか。人口が六千七百人しかおらぬでも、やはり大使を置き、書記官を置いて、燐鉱石等のなにをやるというのを目標とするかどうか。
  492. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 私が申しましたのは、まさに先生がいま提起されたような問題点があるわけでございまして、現在オーストラリアにおりますわがほうの大使が兼轄してやっておりますが、ほかにも兼轄のところがあるわけでございますので、そういうような場合には、あるいは兼轄のほうが実際的ではないかというふうに考えております。
  493. 受田新吉

    ○受田委員 兼轄といえども、そこを旅行する人にとっては、在外公館の人が一人もおらぬような国に行くのは、これはまた一般住民の漂流して行ったような人たちが困る。だれか常駐の者が一人おらなければいかぬのです。大使がいなくても書記官が、領事が一人おる、どこの国も一人だけは置くという、それをなぜやっておらぬのですか。全然おらぬ国があるのです。専任を必ず置くということにしておいたらいい。大使でなくても書記官は専任がおるというふうにしたらいい。
  494. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 いま先生が御提起なされましたような方法で解決するべく、われわれは事務的に検討を開始しております。
  495. 受田新吉

    ○受田委員 事務的に検討を開始して早く実現するように、強力な要請をいたしておきます。  最後に移住問題で一言だけ答弁を要求して質問を終わりたいのですが、私は、移住局がだんだん下がってきて、中南米・移住局、そして今度は領事移住部という形になって、だんだん押し込められて、日本の移住政策はまさに退廃の一路をたどっておるという、こういう状態の中で、海外で苦労されておる日系人たちに希望を持たせるということが非常にむずかしくなってきた。ここに領事移住部長が来ておられますが、領事移住部長として移住政策にもっと積極的に取り組んでいくべきだ。移住者に対する融資の問題、こういう問題でもひとつ思い切って予算のワクを広げる。また奥地移住者に対しては、地域開発の幹線道路の舗装などを考えてやる。同時に移住者の子弟を日本へ呼ぶ。その人数をうんとふやして、日本で教育してまた移住地に返す。移住地と日本と密接な連絡をとる。これらの国に日本語を教える学校をどんどん増設する。こういう思い切った措置をとって、母国語を忘れるような移住者の日系人であっては、私はたいへん残念なんです。そういう点で移住政策に思い切った措置をとる。  いま、私が一、二具体的な例をあげたんですが、そういう問題などにもつと予算を思い切ってとって、この移住政策に思い切って力を入れる必要があると思うのです。領事移住部長から一言答弁をもらって、大臣、海外移住事業団に対しての予算の割り当てなども非常に少ない。こういう海外移住者の子弟は母国に非常に思いを寄せておる。その思いを寄せている移住者の子孫をしっかり守っていく。南米などでは、大統領の候補者をわれわれが予想するような状態になっておるときに、ひとつ勇敢な移住地の母国への要望を果たす努力をしてもらいたいのです。時間を短く九時に終わるように、お二人で御答弁を願います。
  496. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 ただいま移住問題につきまして御指摘がございましたが、確かに移住というものが昔と性格が変わりまして、昔は日本の過剰人口のはけ口というふうに考えられたわけでございますけれども、ここ十年ばかり移住者は、御承知のように昔と比べると確かに減っております。ただ、新しい傾向といたしましては、昔のように家族持ちが行くというのは減りまして、独身の人が行く、しかも相当部分の人は技術者の人が行く、こういうことで移住は依然として続くもの、われわれはそのように考えております。しかも移住というものは昔と違いまして、やはり日本という国に物足りないと申しますか、自分でもっと自分の力を発揮してやってみたい、そういう非常にエネルギーにあふれた若い方々が行く、こういうことで、われわれは新しい移住の道を見出しているわけでございます。もひろん、従来移住者として海外に行っておられた方々、この人たちは現地で非常に苦労しておられますので、われわれとしましては、この人たちの援護というものはどうしてもやっていかなければいかぬ、年々そういう金もふやさなければいかぬ、このように考えておる次第でございます。  そこでさっき御質問のございました融資の問題でございますけれども、融資の金額は毎年ふえております。例をあげて申しますと、昭和四十四年から現在までの五年間に五〇%ふえております。  それから教育の問題でございますけれども、教育につきましては、日本人は御承知のように非常に教育熱心でございまして、われわれは移住事業団から、そういう現地で教育が必要なところにつきましては、現地の法律のワク内でございますけれども、学校をつくりまして、校舎をわれわれが建て、現地の先生にはいろいろな手当を差し上げる、あるいはバスをやるとか、そういうことで移住者に対する教育も非常に力を入れております。  それからなお日本語の教育でございますが、最近非常に日本語を勉強したいという希望がございまして、現在、ドミニカとパラグアイ、それからボリビアには日本から事業団が先生を派遣しまして、これは巡回して日本語を勉強さしております。なお日本語の勉強につきましては、どのようにしたらいいか、目下検討いたしております。  それから、さっき道路とかいろいろな問題をおっしゃいましたが、それはおそらく移住地をもっとよくする、環境を整備するという問題と思いますが、これは御承知のように、いまの学校のほかに、たとえば一水道を引くとか、電気を引くとか、道路をつくるとか、そういうようなことをやっております。もちろん、各移住地がございますので、全部一ぺんには思うようにまいりませんけれども、逐次大事なところからやっておるようなことでございます。  移住者に対する援護というものにつきましては、今後ともわれわれとしては、力を尽くしたい、それから若い方の移住者につきましても、これが出ていけるような体制をつくりたい、かように考えて努力いたしております。
  497. 受田新吉

    ○受田委員 一言大臣から……。
  498. 大平正芳

    ○大平国務大臣 移住政策につきまして激励をいただいてありがとうございました。移住者がその国のよき市民になるように、そしてまた母国日本に対して変わらない思い出を持っていただくように、十分気をつけて配慮してまいりたいと思います。
  499. 受田新吉

    ○受田委員 皆さん御苦労さまでした。
  500. 三原朝雄

    三原委員長 次回は、明十三日金曜日、午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後九時一分散会