○中曽根国務
大臣 エネルギー問題は一九七〇年代、八〇年代にかけての
日本の大問題の
一つであると思います。産業構造審議会が数年前につくりました予測によりますと、
昭和六十年には約七億トン
程度の石油が要るであろうという予測を立てました。最近、経済企画庁が立てた経済社会基本
計画によると、それより多少減っておるようでございますが、通産省に関する産構審の答申はそういう線で出ております。いずれにせよ相当のものが要るということである上に、
アメリカが同じころおそらく五〇%以上は輸入しなければならぬという情勢に変わってくる見込みでございます。そうなると、
アメリカのある専門家が私に試算した数字を示してくれましたが、そのころ
アメリカの石油の購入資金、外貨払いが約二百億ドルから二百五十億ドルぐらいになるだろう、
日本が百五十億ドルぐらいから二百億ドルくらいになるだろう、ECが二百億ドルくらいになるだろう、これらが中近東そのほかに出ると思われると、そういうことを実は試算として言っておりました。
そういうようなことになってまいりますと、これは相当油の値が上がってくるという危険性、可能性もございますし、また
日本と
アメリカが主となって世界じゅうの油を買いあさるという競争が出てこないとも限りません。そのころの
アメリカの需要量が約十三億トンとかいう話です。まあその数字が正確でないにせよ、かなりのものが出てくるということはいわれます。その上に世界の石油戦線に変化が起こってまいりまして、いわゆるパーティシペーションオイルというものがここに出てきたわけでございます。油の原産国がその出てきている油の半分は自分がまず持ち分として取得する、そういう政策を決定いたしまして、それがいまだんだん二五%から五〇%にまで
伸びているということになります。そうすると、いままでいわゆる英米国際石油資本が握っておった油の量は減ってきて、その原産国が支配する油の量がふえてくる。これをだれが買うかという勝負になってきます。そこで、
日本にとってはそういう油を確保する必要がある、それで六十年ごろには、
日本の必要とする油の大体三割ぐらいは
日本が自分で手当てした油を確保したい、そういう一応の目標を立てておるわけでございます。そういうスケジュールを考えてみまして、現在はたしか一二、三%
程度でございますが、かなりの努力をする必要があります。そういう需給がきちきちになってくるということと同時に、いまのように、パーティシペーションオイルで産出国の発言力が強まる。その上に産出国は、あまり一ぺんに掘ってしまうと長続きしませんから、掘り出しを制限して、長期間にわたって少量ずつ出していくという方向にいく可能性もございます。現にそういう徴候もございます。そうなると供給量も減ってくるという形にもなりかねない。
そういうさまざまな変化を考えてみますと、いわゆるメージャーといわれる世界石油資本が持っておる油についても
日本が進出するし、また産油国が持っているいわゆるパーティシペーションオイルについても
日本は進出するし、また新しい油田を
開発輸入という形で国と協力して新しく
開発してもよし、そういうあらゆる
方法を講じて油を手当てしようとしておるわけです。それを主として、国際協調と多面的に世界じゅうからこれを獲得して、安全保障的な要素も考慮しておく。産業安全保障と申しますか、そういう考慮もとっておく、そういう考えで出ておるわけでございます。で、いま中近東に八割以上かぶっておりますけれ
ども、この比率をもっと拡散する必要もあります。でありますから、シベリアであろうが、アラスカであろうが、南米であろうが、あるいは極地に近いところであろうが、そういう可能性を目ざして
日本は採算に合う範囲内において国際協調を主にして出ていくこと、そういう政策にしたわけです。
そこで、その
一つとして、アブダビ石油について、
アメリカ、フランス、イギリス等が持っていた株の中から三〇%を
日本が取得をして、主としてイギリスのBPから譲渡を受けまして、イギリスは北海に油を発見いたしまして、そうしてそちらの
開発に力を入れる。そうすると、イングランドに近い場所でありますから、アブダビのような遠いところの株を放して、そして近いところから入手する、そういう政策転換も多少あったのでしょう。それで、
日本側はその三〇%を手に入れまして、いわばメージャークラブの片すみに入ったようなわけでございます。このことは、将来メージャーズたちが国際的にいろいろ相談をする場合にも仲間にも多少入るという形にもなって、情報とかコミュニケーションの上にも非常に便宜が出てまいります。それと同時に、また一面において、今度ジャパンラインがアブダビの原産国のパーティシペーションオイルを取得したわけです。しかし、この取得については、多少国際的秩序の上からどうかと思うようなことがありましたが、とにかく取得いたしまして、
日本がいま渇望している低硫黄の油が入りましたから、ある
程度秩序を規制してそれも入手するということにいたしました。そういうふうな形で、そのほか、インドネシアからも、あるいは将来オーストラリアからも、あるいはシベリアからも、できるだけ多面的にいまから油を手当てしておこう、しかも低硫黄の公害のない油を確保しよう、そういう考えに立っていま申し上げた三〇%を目標にやっているというのが現状でございます。
いまのエネルギーの需給
関係から見ますと、どうも世界的に見ると油の値は高くなっていく可能性があると思うのです。ですから、いまわりあい採算がとれると思われるものでも、アラビア太郎がアラビア石油をやったときには、あんな悪い条件でよくも割り込んでやった。しかし、外国からは多少非難されたようですが、いまとなると、あれが普通の
基準になってしまう。おそらくああいうようなことがいま行なわれているのではないかという気もいたします。したがって、国際秩序を乱さない範囲内において、
日本の油資源を確保するという意味において、私たちは積極的に、あまりむだを起こさないような考えに立って、今後とも努力していきたいと思っておるわけであります。