○岩垂
委員 日本社会党を代表いたしまして、政府提案の
地方公営交通事業の
経営の
健全化の
促進に関する
法律案に反対する立場を明らかにし、以下、その理由を述べたいと
考えます。
現在の交通事業の世界的な趨勢は、これをいわゆる
都市問題としてとらえ、具体的には、
都市計画と結合して、交通の態様を優先して
策定する傾向が強まりつつあることは周知のとおりであります。したがって、新しい市街地の開発にあたっては、相当長期の将来展望に立って交通
計画が立てられることが西欧諸国では通例となっております。この長期的な
都市計画に沿ってつくられる交通手段がいかに
都市住民の生活を利しているかは、たとえば百三十年前につくられたパリのアーケードが、あるいはまた、第二次世界大戦中にドイツの攻撃下でつくられたロンドンの
都市計画が、いまなおりっぱに活用されていることでも理解することができると思うのであります。
都市部における交通は、
都市の行政としての位置づけを持たなければならないことは、私
どもが重ねて指摘をしてきたところであります。それは、
都市機能の変化とスピード化した
都市住民の生活に正しく結合し、これをささえていく任務を交通それ自体が負わされているからであります。
以上の点を考慮して、交通を
都市問題としてとらえ、行政として見る場合、まさしく、交通に対する発想の転換が要求されていることは、当
委員会で
自治大臣自身がしばしば述べられておるところであります。その
基本的な立場に立つとするならば、この
公営交通事業の
再建に対する
基本的立場が、いわゆる自由主義経済の競争の原理を導入し、そのために一そう交通混乱を助長せしめているということについて、私
どもは強い抗議を申し上げなければならないと思うのであります。
日本の交通危機が何に起因するかは、いまさら私が言うまでもないところであります。自民党の、あるいは政府の高度経済成長政策による資本と人口の
都市集中、そのために生じた過密と過疎。過密の場合を見るならば、極度の交通渋滞と
都市のドーナツ化現象の拡大によって、交通の経済効果は著しく減退しております。過疎の問題について言うならば、利用者の激減によって経済効果が減退していることは、これも申すまでもないところであります。あるいは極度に発達したモータリゼーション、とりわけ、無政府的なモータリゼーションに対して、
自動車産業におもねり、何らの生産規制も加えることなく、
交通規制さえも遅々として進まない実情がいま告発されなければならないと
考えるのであります。加えて、基幹
道路の
整備に比して市街地
道路は依然として
整備されておらず、これが大きなネックとなっていることも周知のとおりであります。さらに、戦後の
都市再開発により、団地造成や公共
施設の建設が急速に進められましたけれ
ども、これらの住宅建設行政が交通行政とは何らの関連を持たずに進められてきたことも大きな
要因として指摘をせざるを得ないと思うのであります。政府の財政金融政策の失敗を原因として進行しつつあるインフレーションが諸
物価の騰貴を結果していることは周知の事実であり、それが交通事業の
経営を困難におとしいれていることも御理解のとおりであります。
このような
要因はことごとく
企業外のものであり、これを除去することが先決であるにもかかわらず、政府が独立採算制を固執し、安易な
料金改定と
企業の
合理化、そして、しかも、
労働者にそのしわ寄せを強めているという形における
企業内の解決にその策を求める
考えに立っている本法案に対して私たちは異議を申し述べなければならないと思うのであります。
私
どもは、今次の第二次
再建法案が、このような旧来の
方針を踏襲する限り、発想の転換を大胆に行なわない限り、真の
健全化はあり得ないと主張しなければなりません。特に指摘すべき点は、昨年七月、「大
都市交通
再建の経過と
反省」と称する報告を
提出しながら、根本的な点に対策の焦点を当てることなく、依然として、財政対策として若干の措置を講じたのみで、必要な行政的措置については、政府部内の不統一があったとはいえ、これを怠ったことは、主管省として、
自治省の重大な責任であることを強調せざるを得ないのであります。
また、ここで指摘をしなければならないことは、
都市公営交通についての無料論についてであります。その理由の第一は、交通
施設を
都市施設の一つとみなし、
公営交通事業を社会福祉政策の一環として
考える立場であり、その理由の第二は、マイカーその他の個人交通手段を大衆交通機関に移転させ、
道路混雑に伴う不経済を軽減し、さらに、ガソリンによる大気汚染、また、交通事故、騒音などの交通公害を少なくするという立場に立つものであります。この立場は、
公営企業に対する国のかかわりをもっと真剣に
考えなければならないという時代の要請を表現しているものだと言わなければならないのであります。
以下、私は、この
法律案に関連をして、具体的な問題について指摘をさせていただきたいと思います。
一つは、この
法律案の中に盛られている立場が、依然として国の責務が明らかにされていないという点、それが第一点であります。
第二点は、
再建計画の
策定について、依然として
大臣の
承認権に固執しており、これは、一歩誤れば、不当な政府の介入を招く公算がきわめて強い。このことは第一次
再建の経過から見ても明らかであることを強調せざるを得ません。
第三は、
再建債の償還に伴う政府の措置については、審議の経過で十分明らかにされたわけでありますけれ
ども、まだまだきわめて不十分であるということも指摘せざるを得ません。
四番目は、
計画遂行途次のいわゆる制裁規定が新しく設けられて、監督官庁の意向が一そう地方公共
団体に押しつけられる懸念が強くなっているということであります。
次に、交通の根本的な
再建は、本来、地方
公営企業法を社会党の主張どおりに大幅に改正し、措置すべきであるにもかかわらず、部分的な特別立法で措置していこうという
考え方ではどうにも達成できないという立場をも明らかにせざるを得ないと思うのであります。
以上、幾つか指摘をした点について、わが党の
修正案が、これだけの対案が具体的な審議の対象にならなかったことをたいへん遺憾に思います。
このことを付言しながら、以上の立場に立って、社会党は、政府
提出にかかる
法律案に対して反対の立場を明らかにし、討論を終わります。(拍手)