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1973-09-12 第71回国会 衆議院 大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年九月十二日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席小委員    小委員長 森  美秀君       越智 通雄君    萩原 幸雄君       村岡 兼造君    村山 達雄君       平林  剛君    広瀬 秀吉君       荒木  宏君    竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵省証券局長 高橋 英明君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君  小委員外出席者         大蔵委員長   鴨田 宗一君         大 蔵 委 員 木村武千代君         大蔵省理財局国         債課長     宮崎  尚君         自治省財政局地         方債課長    柴田 啓次君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融及び証券に関する件      ————◇—————
  2. 森美秀

    ○森小委員長 これより金融及び証券に関する小委員会を開会いたします。  金融及び証券に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。平林剛君。
  3. 平林剛

    平林委員 きょうは私から、最近の金融証券状況について、初めにお伺いをいたしたいと思います。  すでに日銀の公定歩合の第四次引き上げが行なわれ、最近では政府緊急物価対策の発表などございまして、高層ビル規制あるいは自動車の割賦販売条件の強化、財政繰り延べなどが行なわれました。いずれにしても、高騰する最近の物価を鎮静させるために消費抑制をはかるということに主眼が置かれておると思うのでありますが、その効果はすでにあらわれつつあるか、今後の展望を見て、どういう形で浸透していくと思うかという点を、まず銀行局長あるいは証券局長のほうからそれぞれお伺いいたしたいと思います。
  4. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 いま御指摘のございました累次にわたります金融引き締め効果ということについて、私どもの考えておることをできるだけ簡潔に申し上げたいと思います。  まず、御承知のように、引き締め政策効果と申しますのは、申すまでもなく、原理的にまず金融面を通じてあらわれてくることだろうと思います。大きく申しまして、現在までのところ、そういう金融面における効果というものについては、かなり引き締め効果というものは出てまいっておるように考えております。ただ、いま先生の御質問にございますように、そういう金融面と申しますか、貨幣面における引き締め効果が、実際の経済動きにどういうふうに影響してくるかという問題がその次にあろうかと思います。  まず、そういう貨幣面といいますか、金融面における効果ということについては、まず貸し出し金利というものが四月以来急速度に上昇してきておりまして、前回及び前々回の引き締めの同じ期間を比べてみますと、格段の金利の上昇ということになっております。  これと同じように、銀行貸し出し増加につきましても、これは主として都市銀行でございますが、都市銀行を中心としてきわめて顕著に鈍化しております。これはもう御承知のように、日本銀行窓口規制というものを月を追って非常にきびしくやっておりましたその結果だと思いますが、都市銀行につきましては、昨年の十月−十二月くらいの期間でございますと、二六%近くの貸し出し増加が急激に衰えてまいりました。これにならいまして、地方銀行相互銀行信用金庫も同様の経過をたどっております。ただ、相互銀行信用金庫については、増加額そのものは非常に高い水準増加をしておりまして、これは中小企業専門機関であるという観点から、ある程度の高い水準増加ということについては、むしろ私どもとしては特にこれを規制するというような考え方はとっておりません。  そういう金融面におきます政策効果というものは、企業の側におきましては漸次出てきておるように見受けられまして、先ほど申しました企業活動実態面ということよりは、むしろ企業財務面と申しますか、金融面におきましては、手元流動性減少してくるという状況が出始めているように思います。いわゆる手元流動性の取りくずしという形が五月の後半ぐらいから出てきたのではなかろうか、かように考えております。特に七月から八月以降は、銀行融資態度がきびしくなってきたということから、まだ一部の企業でございますが、たとえば商社というようなものにおきましては、有価証券の売却を始めてきたというようなことから、資金繰りの繁忙感が見られております。  若干数字にわたりまして恐縮でございますが、主要企業手持ち流動性比率というものを見てみますと、いわゆる過剰流動性という問題が発生いたしましたその直前の時期、四十六年の四月から六月の時期だと思いますが、この辺の流動性比率と申しますのは一・一三という数字でございまして、これがいわゆる過剰流動性の時期におきましては、ピークには一・三二というような状況になっておったわけでございますが、七−九月の時点、まだ九月は終わっておりませんが、予測を含めて申しますと、大体一・一一、要するに過剰流動性発生直前の姿にまで戻っておるのではないか。これが十月から十二月に入りますと、さらに若干落ち込む、かように考えております。  また、法人預金を取りくずしていくという結果から、金融機関預金、いわゆる実質預金といいますものは、このところ顕著な減少傾向を示しております。  これらを総合してみますと、いわゆるマネーサプライ、いわゆる現金通貨とそれから預金も含めましたマネーサプライ増勢というものについても、増加傾向が鈍化してきた、かように見られるわけでございます。実質預金減少というものはこのところ非常に顕著でございまして、都市銀行におきましては、六月、七月、八月と三カ月にわたりまして預金純減になっておる、こういう状況が出ております。マネーサプライのほうを見ましても、ことしの一月ぐらいから漸次伸びまして、四十八年の四月、すなわちことしの四月は、ピークとして二六%という増加率を示しておりましたが、自後五、六、七とその数字減少数字を示しておりまして、七月では二四・二%という程度増加率まできております。  こういうふうに金融面におきます引き締め効果というのは、まあ着実と申しますか、順次浸透をしてきた、かように考えておりますが、問題は、これからこういう傾向が、貨幣面と申しますか、金融面を越えて経済実態活動にまでどれだけ影響していくかということが、これからの一番の関心事でございます。それは先生も御指摘のとおりでございます。その辺につきましては、まだ私どもが計数的に御説明を申し上げるほどの統計的基礎はございません。したがって、そういう意味では目立った影響というものを具体的に申し上げる段階にまでは至っておりません。  ただ、日本銀行が八月十日ごろまでにまとめましたいわゆる三カ月ごとにやっております日本銀行短期経済観測というようないわば聞き取り調査あるいはアンケートというようなことで、各企業に今後の投資計画というものはどうなっておるかという状況を聞いてまいりますと、やはりそういう実態面投資活動についても従来の計画を修正していくというきざしが見え始めております。これは特に八月十日ぐらいで締め切ったわけでございますが、その後においても電話などでさらにそれを弱目に修正するというような連絡もかなり十日以後あったというような話を聞いておるところから見ますと、そういう実体経済面における設備投資動きというものは今後はかなり具体的な姿となって出てくるのではなかろうか、かように思います。  そういういわばアンケート的な調査で調べましたところでは、石油精製でございますとか、一般機械でございますとか、非鉄、それから建設不動産といったところでは、五月に調査したころから比べますと、その後かなり修正して、いわば弱気の修正の投資計画にしておるというようでございます。  もう先生には釈迦に説法でございますが、わが国経済特徴というものは非常に同調性の強い経済であると私どもは考えております。強気が一たび支配すれば強気が強気を呼ぶという形で経済全体が動き始めます。一たび弱気が支配すれば弱気弱気を呼ぶという形になって経済の姿が変わっていくというのが、過去の姿であったように思います。もちろんそれをもって今後の動向を一がいにきめつけるわけにはまいりませんが、やはりそういう傾向というものはわが国経済の持つ特徴であろうかと考えます。それで今後、現に新聞などで報道されておりますように、一部の市況商品というものについてはかなり弱含みの傾向が見られておるというようなところから、十月から十二月に入りましては、かなりこの景気が冷え込むおそれもあるのではないか、あるいはそういう実体経済動きかなり渋目動きに変わっていくということは十分期待し得られるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  5. 高橋英明

    高橋(英)政府委員 金融引き締め効果ということと証券界ということはどうかというお尋ねかと思いますが、まさに証券界金融引き締め効果がもろに出ておるといいますか、影響を受けておるといってもいいかと思います。昨年は、御承知のように、たいへん金融緩和というものがバックにございまして、株式市況も空前の活況を呈し、あるいは増資どもかなりの額、一兆二千九百億というような大きな増資も行なわれ、また社債等発行条件もどんどん下がっていくというような状態でございました。ところが、ことしに入りまして引き締め効果が出てまいりまして、むしろ先ほど銀行局長からお話がありましたように、法人買いというようなことで買われておりましたのが、いろいろ売りに出されるというようなことから、公社債市場が非常に乖離現象が起きるというような状態になってまいっておりますし、それからまた、株式市況も御案内のように、最近では一億株を割るというような不振といいますか、そういう状態が続いておるわけでございまして、金融引き締め政策というものの効果は私も証券界のほうには相当程度響いておるということが申せようかと思います。  ただ、私のほうの証券界は二面性を持っておりまして、資産運用の場というのと資金調達の場というのがございます。資産運用の場というのは、運用資金というものがだんだん窮屈になってきてまいっておりますので、そう活況を呈するということはないかと思いますが、もう一つ資金調達の場としての役割りがございます。銀行窓口引き締められますると、企業は苦しまぎれにといいますか、そういう意味証券市場資金を調達するという動きが出てまいります。もちろんそのためには、発行金利といったようなものが上がっていくわけでございますが、日本企業はむしろ金利にそれほど神経質じゃございませんので、量という問題でやってまいりますので、これからの証券界の問題といたしましては、社債起債額の増大とかあるいはむやみやたらな増資といったようなことが行なわれる懸念がある。そういった意味からいいますと、片一方貸し出しを締めておって片一方でそういうことでしり抜けになってはいかぬというようなことが、私どものこれからの行政として注意していかなければならない点であろうか、こう思っておる次第でございます。
  6. 平林剛

    平林委員 大体のお話を承りました。ただ金融引き締め政策効果というのはいまお話しのようにあらわれてきておると見られますが、それが経済実態活動にはまだどうあらわれてくるかわからない、これが結論だと思います。  最近の国際的な景気動向などを見ましても、なお国際的なインフレはおさまりそうもないという状況から見ると、引き続きこの考え方というのは堅持をされていくことになると思います。そうなった場合に心配をされますのは、一つ中小企業という点でございますが、そうした点につきましては先ほど中小企業金融機関については、ある程度貸し出しは鈍化しているが増勢そのものかなり高いということをおっしゃったわけですが、きめのこまかい対策が必要だと考えています。これについてはどういう措置を考えていますか。
  7. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 仰せのように、現在わが国中小企業生産能力と申しますか付加価値は、わが国経済全体に占める割合がもう半分になってきております。したがいまして、こういうものがやはり経済全体の動きと別であるということにはならないかと思いますが、しかし、そういう重要なウエートを占める中小企業については、いま御指摘のとおり、できるだけきめのこまかい政策をとっていくべきだろうということは全く私どもも同感だろうと思います。  そういうことからいたしますと、まず全体として考えた場合に、私ども考え方のきめ手、ものさしとして見ていくべきものは、各金融機関貸し出しの中における中小企業比率というものが低下しないようにということが一つものさしではなかろうか、かように考えております。これにつきましてはむしろこれまでの引き締めということには見られないほど望ましい数字で推移しておるように考えております。昨年の六月で全国銀行中小企業向け貸し出し割合は三三%でございましたが、これがことしの六月で三五%となっております。さらにこの外にあります中小金融機関、その中でも相互銀行信用金庫につきましては、これは全部中小企業と考えていいわけでございますが、それぞれ三〇%にまたがる、相互銀行でございますと二七%、信用金庫でございますと三一%程度貸し出し伸びが見られておりまして、都市銀行の二二%の貸し出し全体の伸びに比べますと、中小企業に対する金融量的供給という面についてはこの傾向を維持するように努力してまいりたいと思います。  なお、このほかに企業間の信用膨張という問題がこれまでの引き締めの過程においては見られたわけでございます。金融引き締めかなりの強度にかかわらず、現在までのところでは手形期間の上で、あるいは決済条件の面で特に中小企業しわ寄せが及んでおるということは比較的少ないのではないかと考えております。中小企業売り上げに対する債権比率というものは大体三・四から三・五で推移いたしております。手形期間につきましても、これは東京信用金庫協会の調べによりますと、前回引き締めでございますと、大体百二十日をこえるような手形期間でございます。現在六月のところではまだ百十日くらいの期間というように見られております。  ただ、問題は企業倒産件数増加傾向にございます。これはひとつ私どもとしても関心を払っていかなければならない問題だと思います。そういう意味でその内容等についてできるだけ把握したいと考えておりますが、非常に大ざっぱに申し上げて恐縮でございますが、よくインフレ倒産というようなことがいわれておりますが、いわゆる原材料が手に入らないというようなことからのしわ寄せという問題が今度の新しい特徴のように見られます。  それから何よりも大きな今回の倒産の中の特徴といたしましては、やはり非常に伸び過ぎた企業がここへ来て行き詰まったという傾向のものが見られます。これはいわゆる赤字倒産という現象金融緩和の時期に続いておったわけでございます。採算的には赤字であるが、金融的にはつないでおったために残っておったというようなものも中にはあるわけでございます。そういうものがこのところに来て一種の整理淘汰というような形で問題に直面したという問題、この辺のところは特に不動産といったところの業種に多いように思います。この辺はできるだけ健全な企業にそういう問題が及ばないようにということで考えていかなければならないと思います。  先ほど申しました民間金融機関貸し出し比率に対する私ども関心と同様に、政府金融機関におきましてもできるだけのことはすべきである。したがいまして、今回財政繰り延べという中におきましても、国民公庫中小公庫と商工中金、いわゆる中小機関貸し出しにつきましてはその対象外にしていくというようなことをやっておりますのも、先ほど御指摘のような考え方からやっておるわけでございます。今後金融面でいろいろのそういう問題が出てくる場合におきましても、そういう同様の姿勢で臨んでまいりたい、かように考えております。
  8. 平林剛

    平林委員 中小企業の問題で企業間の信用膨張というのが総体でいまどのくらいになっていますか。
  9. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 企業間信用比率という形で見るのがいま御質問の御趣旨にお答えできるのではなかろうか、かように考えております。それは売り上げ高債権比率ということで見ますと、三・四六というのが七月から九月期におきます、九月期は予測を含めましての大体の見通しでございます。この数字というのは大体そう変化していない、これまでの四十七年の一−三から見まして若干の低下ではございますが、大幅には変化していない数字である、かように考えております。
  10. 平林剛

    平林委員 そこでちょっと実際の中小企業者の声を代表する形で申し上げますけれども金融引き締めが継続されていくということになりますと、先ほど来お話があったように、企業の中には、いままでの流動性を取りくずす、つまり預金を引き下げていく、株を売っていくというような形で切り抜けようとする動きが出てくる。また当然従来の経験からいきますと、手形期間が延びていくというような形になってくるわけであります。ですから、金融引き締めてまいりましても、金融面からは政府の大方針である消費抑制という形は数字としてあらわれてまいりましても、今度は中小企業の立場から見ると、大きな企業のそうした行為が中小企業しわ寄せされて、手形期間が長くなっていくというようなことで、結局いわば割りが悪くなるのは中小企業だけだ、こういう声が非常に強いわけであります。  そこで、手形の問題をもう一度いままでの常識、商慣習商法などの規定を離れて考えるべきじゃないかという議論が出てきておるわけであります。どういうことかというと、大体仕事をしてそしてその代金を手形でもらうというのは合わぬ、しかも百十日とか百二十日間という長期間仕事をして品物を納めても支払い手形でもらって、期間が非常に長い。こういうことになれば、結局金融引き締めのときの犠牲者中小企業だ、こういうことになるわけです。そこでこの手形の問題を、これは商法関係もありますけれども、もう一度全般的に見直してもらえぬかという声が非常にあるわけです。  非常にとっぴな考え方かもしれませんけれども、元来大企業中小企業仕事をさせておいて、それを手形で払うというのはけしからぬ。しかも手形でもらうというと、もらった中小企業はこれを銀行なりその他の機関割り引いてもらわなければならぬ。本来ならば利息をつけてもらわなければいけないものを自分が利息を払うようなかっこうで割り引き手数料も取られる。こういうことは非常に不公平だ。大きな企業がわがまま過ぎる。  だから、手形発行については、すべて日本銀行かあるいは日本銀行の指定した金融機関発行することにして、その発行するときには一定の手数料なり何なりを取って、そこで発行された手形はどこでもそのまま額面どおりもらえるという仕組みにひとつしてもらえぬか、こういうような声が強いわけであります。この点については銀行局長金融という面から見てどういう御見解をお持ちでしょうか。
  11. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 非常に斬新なと申しますか、いわば日本経済全体に影響する非常に大きな構想なものでございますので、いまのお話だけで私どもちょっとお答えしがたい感じがございます。どういう仕組みでどういう場合にということ、あるいはこれは非常に私の個人的な感じが入らざるを得ないお答えになるわけでございますが、銀行依存という戦後の日本的な特徴というものが、三十年代から四十年代にかけましてかなり民間流動性が高くなり、せっかく金融機関との癒着というものが離れていくという、ある意味では非常に望ましい姿というものとそういう関係とをどう考えていくか。先生はおそらくそういう理念はあっても現実に非常に銀行に縛られているではないかという現実的な御認識から御議論だろうと思いますが、どういう仕組みになっていくのか。これはいまも先生お話しのとおり商法そのものにも影響がある問題でございまして、通産省の中小企業庁などでもそういうことをどう考えていくかということと兼ね合わせてひとつ研究させていただかざるを得ない。むしろ具体的な段取りというものがどういうことになるのかということによっては、非常にプラスにもなり得るかもしれませんが、同時にマイナスにもなり得る、かようなものではなかろうか。非常に突如伺いましたのでざっぱくなお答えで申しわけございませんが、以上であります。
  12. 平林剛

    平林委員 私の言うのは、別に大企業悪人に仕立てたり金融機関悪人に仕立てたりというつもりはないのですけれども、しかし考えてみると非常に不公平じゃないか。中小企業の場合には、いろいろ仕事をした上、約手を乱発されて、しかも非常に長期間でそれを握らせられる。つまり大企業中小下請企業支払いを延ばした上に長期の約手をかまして、そこで利益をあげていく。今回の場合は金融引き締めの苦しみをそっちへ転嫁させるということになりますが、逆に言えば、それだけ利益を温存しようとする大企業のいわばわがままですね。その上に、今度はその約手をつかませられると、どこかで割り引いてもらわなければいけませんから、金融機関に持っていけば、金融機関手数料を収奪する——このことばはあまり適当でないかもしれませんが、それでまた弱い者をいじめて銭を取る、こういう仕組みであります。そこで、これは金融政策の面から見ても、一方で金融引き締めたりしても一方でしり抜けになるということになれば、本来の意味経済の調整なり抑制なりは果たし得ないということになりますね。だれかが泣くだけに終わってしまって、これではほんとう意味政策じゃない。  そこで私は、極端なことを言えば、発想としてはこういう期間は、約手はひとつ使用禁止するくらいの強権——乱暴な言い方ですが、一ぺんにやるわけにいかないから、少なくとも第一市場に株を出しているような会社には適用させる。そういうところから始めていく。全部にやるというと大混乱が起きるかもしれない。逆にこれで救われる者も中小企業の中にはないとは言えません。そこで、大きな企業というようなものはまずこういう時期においては約手の乱用をやめる、約束手形の使用は禁止するくらいの措置をとっていったらどうだろうか。それを今度は第二市場にまで広げていく。こんなような、いわばしろうと的な質問ですけれども、何かどこかでそういう問題を根本的に検討する必要があるのじゃないだろうか。  またもう一つの方法としては、現在約手の量は非常に膨大です。さっきは数字でおっしゃったけれども信用間膨張というのはGNPに匹敵するくらい大きいわけでありますから、経済の変動のときに金融引き締めほんとうにきくかきかないかというのも、ここにも問題があるわけですね。そういうことを考えますというと、たとえばデパートで商品手形を出すときは、政府は先にお金を取ってしまってやるでしょう。それと同じように大企業約手を払うときにはまずその分を、何%でもいいですよ、先に税の形で取って約手発行させる。大企業約手発行するメリットがあるわけですから、その分をかわって政府が税として受け取る。中小企業にその一〇%とか二〇%の約手を割るための経費を負担させないで、逆に大企業に負担させる。政府はそれを税で取っていく。こういうことになれば、政府の財源もふえますし、それから大企業約手を乱発しなくなりますし、中小企業約手割り引くために損をしないで済む。支払いを遅延された上にさらに割りが悪いということから救われるということになりますね。  こんなことを考えますと、商法の問題ではありますけれども金融サイドからこの問題を真剣に検討する必要があるのじゃないか。そういうことがいま政府がやっておる消費抑制の本質的な解決につながる、私はこう考えるのであります。政務次官、こういう考え方というのはいかがですか。これはほんとう中小企業の人たちの血のにじむような体験の中から出てくる一つの発想なんですね。これひとつ政務次官、御見解を承っておきたいと思います。
  13. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 いままで局長からお答えしましたように、現在のこの自由主義経済下における根本に触れたような非常に大きな問題、企業間の信用ということで出すものでございますから、土台はこの信用ということだと思います。いまいろいろな御提案がございまして、特に先ほど大企業手形を出しますときに、その手形発行額から大企業が何がしかのマイナスを負担するようなことにしたらどうかというお話がありました。たいへん発想としては、私はおもしろいと失礼ながら個人的には思うわけであります。こういう金融引き締めのときに中小企業しわ寄せがいかないようにというのは常に言われてきたことでございますし、また政府もそういう配慮をしてきた、こういうことでございますけれども、仰せのように私は率直に申してなかなか思うようにならぬ、今日までもきていなかったと思うのでございます。そういうこともひとつ反省しながら、お話しの点もよくひとつ検討をさしていただきたいと思います。  ただ、こういう問題は経済全体の運営といいますか、経済全体の運びの中での一つの大きな一こまという見方をしなければなりませんから、どうしても全体の運営、運びの中でこれがそういうことにした場合に、どういうまたその作用あるいは反作用が起きるかということも十二分にひとつ考えてまいりたい、こういう気がいたすわけでございます。たいへん個人的な感じを申し上げて失礼でございますけれども、そういう感じがいたします。ただ、どこまでも中小企業しわ寄せがいかないようにということだけは、政府としても十二分にひとつ考えてまいりたい、こう思っております。
  14. 平林剛

    平林委員 私は、結局わが国のいまの経済インフレの悪化から救う、そして物価の高騰を押えるには、いわゆる余剰の流動性、これを回避する以外にはないと思う。  そこで、たとえば大企業法人税を大幅に引き上げることによってそれを吸収するということも一つの方法ではないだろうかという提唱をいたしておるわけでありますけれども、それも必要である。同時に、いま言った約手の問題についても、私はこれは公正な取引ということを実現すること、それからいわば手元流動性と称してあばれまわっておる資金が、土地や株その他に買い占めあるいはそういうものを先取りするような形で富の不公平が拡大しておる大企業の横暴というような点を是正させるチャンスでもある。同時に、富の不公平というものをこういう措置によって正していくという役割りも果たすのじゃないだろうか。かつ今日の金融逼迫時において苦しむ中小企業に対する一つの重要なきめ手にも相なるというので、これは宿題でございます。  政府において十分検討していただきたい。近いうちに私また今度は大臣にこれと同じことを質問するつもりでありますから、そのときまでの宿題ということでひとつ御検討をいただきたい。それができないならできない理由を、そういう構想について検討するなら検討するということについての姿勢をはっきり示してもらいたいということをひとつ宿題にさせてもらいますから、きょうはこの提言だけをいたしまして、この問題は終わっておきたいと思います。  それから次に、この間から大蔵委員会でも問題になっておりましたが、公定歩合を引き上げるということになりますと、金融機関貸し出し金利増加させて、いわば貸し出しを押えていくという役割りでそれをやりましたが、一面から考えるというと、金融機関はそれだけ利益をふやすということになる。  物価がこんなに高くなっているときに、それでは今日の高度成長の資金協力者としての大衆預金ですね、これに対してはどうするのかということで、預金金利の引き上げの問題が議論されておりましたけれども、どうも最近何かしりすぼみみたいな形で何だかわからないようなかっこうになりましたけれども、これについてはどういうふうに進んでおりますか。
  15. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 銀行預金金利につきましては、もう申すまでもなく、これは長期にわたって経済影響を与えるわけでございます。一年定期あるいは二年定期といった関係のものもございますので、必ずしも短期的な公定歩合と連動するものではない、こういうことは基本的にはございます。  ただ、世の中の金利水準全体が高くなっていく場合、やはりいまも御指摘のございましたように、仕入れとそれから売り手の関係でございますから、その関係については適正に考えていくべきである、こういう考え方をとっております。  そういうことからいたしますと、公定歩合の引き上げに伴いまして、それが市中金利に波及し、いろいろの金利影響してくる。貸し出し金利影響すると同時にコールの金利といった面もございますし、あるいは長期の金利といった面もございます。この辺のところは、現に事業債の金利の改定がこのほど行なわれたというのも、その一つのあらわれでございます。こういうものが金利水準としてほかにどう波及していくかということを見ながら、預金金利についての判断をすべきではなかろうか、かように考えております。一般論で恐縮でございます。
  16. 平林剛

    平林委員 そのことに関連して、大蔵省としてはその一つの方法として法人預金と個人預金とを分離して、そうして金利の弾力化をはかっていくというような構想が伝えられたのですけれども、それをいつから実施するか、こういうことなんです。
  17. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 預金金利の弾力化ということは、かねてから念願の問題として研究のテーマでございます。ただ、そういう問題意識をあらわす一つの例示といたしまして、預金法人と個人に分離し、それに応じて金利のあり方を考えていけないかということを一つの例示といたしまして、私どもは研究しております。これについては、単に観念上の問題だけではなくて、実務上の問題あるいはそれの影響するところといった点から、現在研究を進めておるわけでございます。  特に具体的に考えられる問題といたしましては、現在の預金の中の過半が個人預金である、特に中小企業金融専門機関におきましては、それの七割程度が個人預金であるというような実態がございます。それから特に中小法人につきましては、その預金が家計の預金であるかあるいは事業の預金であるか、実際の運用にあたってはたしてどれだけの識別ができるかというようなトラブルの問題もございます。あるいは税務との関係企業会計との問題といった点もございまして、はたして法人と個人という形で分離していくのがいいかどうか、あるいはそれ以外の方法もあり得ないかということで、これを現在研究しておるというのが正直のところでございます。いずれはこういう問題でございますので、金融制度調査会などにも十分御審議を願うわけでございます。  この問題は、たとえば発想とするところは、一つ金利の弾力化ということで、今後できるだけ預金金利についても微調整が行なわれていくようにしていくことがこれからの経済の運営にいいことではなかろうかという考え方一つございます。それからもう一つは、やはり家計の貯蓄については、大衆貯蓄についてはできるだけこれを優遇していくべきだという発想がございます。  その二番目の問題としては、個人預金全部に及ぼされていいかどうかというような問題についても、これはやはり問題として考えなければならないことでございまして、ほんとうのねらいとする第二の零細な大衆の貯蓄をいかにして優遇できるかという点からもう一段くふうができないかというようなところで現在研究しておるのが実態でございます。
  18. 平林剛

    平林委員 私は、最近の金融機関や大蔵省の話を聞いておると、金融機関というのは何だ、銀行とは一体何ぞやという根本的な原理をもう少し再検討する必要があるのじゃないか。私は、これは素朴な国民の声から考えてみますと、いまのように物価が上がってしまって、そして預金金利よりも高くなったんじゃ、これはばかばかしい、こういうようなことになったらもうおしまいですよ。ですから、経理その他の点でも、それぞれの金融機関によっては事情が違うでしょうけれども、根本に、いまの社会における金融機関とはどういう役割りを果たすべきかという点で、預金者との関係はもう一度根本に返って考え直してもらわなければいけないと思うのです。  ところがつい一年前までは、福祉金融だなんといって、そちらの方面については大衆に迎合するとか大衆にサービスするようなことをやってみて、それをしきりに一生懸命やっていたのに、一年たたないうちに今度は消費者ローンを上げる。それは消費抑制のために必要だから上げるんだ。公定歩合は三回、四回と上がったのに、預金金利を上げたのは二年ものの定期も含めて一回、こういうようなことで、預金者のほうはほっぽりっぱなし。今日そうした声が高くなったのにかかわらず、依然としてまだはっきりしたことをやらない。先行するのは消費者ローンの金利の引き上げ。いまに住宅ローンなんぞも金利の引き上げ、こういうことになったら、一体金融機関に対して今日まで預金をしてきて、いわば政府経済政策の手助けをした人たちに対しては、まるであべこべの措置をやっておるということに相なるわけなんでございまして、私は考え方があべこべになっているのじゃないだろうかと思うのですよ。  これはどうも銀行局長と話をしていてもあれですけれども、あなたの頭の中には、いや、じきもう下がるのだ、公定歩合第四次の引き上げで来年の三月か四月ごろになれば景気の面にも効果があらわれてきて、自然に金利もまた今度は逆に下がるような情勢になるのだというような勘定が頭の中にあるのでしょうか。私はその点はちょっと預金金利をあいまいな形に延ばしていく腹の底にはそれがあるのじゃないだろうか、こう思うのですけれども、その点はいかがです。
  19. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 現在の引き締め政策ができるだけ短期に終わる、終わりたいという期待でやっておることは事実でございまして、一日も早くこの引き締め政策が解除されるような実体が早く実現してほしい、かように思っております。ただ、その辺のところについては、先ほど来申し上げておりますように、まだそういうきざしが必ずしも見えてないというところでございまして、今後どのぐらい引き締めを続けていくべきかということについてはいま明らかに申し上げられないのは非常に申しわけございませんが、これまでの引き締めというものは一番長い時期が一年と三カ月でございました。こういう引き締めを長く続けておるということは経済にはやはりそれなりの弊害が出てくるということで、過去の引き締めを振り返ってみますと、大体一年ぐらいで終結をしておる、こういうふうに考えております。  今回につきましては、はたしてどうなるか。鋭意私どもとしてはできるだけ短期にこれが終わることを期待したいと思っております。  ただ、先生の御指摘預金金利まで下がるべきだというように私どもは考えておるのだということでございますと、それは実は私の説明が不十分でございましたところからきておるところでございまして、これまでの経済の回転の中で、金融機関資金を供給する方とそれを利用する方との利益の配分が、これから福祉社会というような考え方に入ってまいりますと、より多く資金の供給者に配分すべきであるという考え方からいたしますと、預金金利というものについては、単に経済動向が変化したからすぐ下げるべきであるという論理にはならない、かように私は考えておるわけでございます。  したがいまして、将来下げにくいから上げることをためらっておるというように受け取られるということは、私そういう意味で申し上げたわけではございません。あくまで金利の問題として考えていって、ただこの問題は、御承知のように、いわゆる大蔵大臣が発議するという形になって表に出てくる問題でございますので、私どもといたしまして、現在の段階におきまして、もしも預金金利を上げるべきであると考えたならば、今日この際において発議すべき問題であるというふうに考えております。先生指摘のような考え方で、将来の金利水準を見通した上で決断が下されるという性質のものではなかろう、かように考えております。
  20. 平林剛

    平林委員 結局いまの金融引き締めはできれば短期で終わりたい。だから、かりにある時期がきて、公定歩合を引き下げるというような場合であっても、預金金利はそのまま据え置くという考え方があるのだということを言っておると思うのですね。しかし、そんなに甘い情勢かどうかというのを私は指摘をしたいわけなんです。今日の情勢から見て、また政府の今日までの物価抑制政策から見まして、いつも思惑がはずれてきたわけでございますから、結果的にはこれだけ国民の中から強い批判と希望が出ているのにかかわらずそれが実現をしないで終わってしまうということになりはしないか、そのことを言っておるわけなんですよ。  私は、それでは聞きますけれども消費者ローンを上げるというようなこと、これを日本銀行が指示しましたけれども、これは私はあべこべだと思う。消費抑制ならもっとほかにやることがある。交際費だとか広告費だとか、そういうのとあわせてやるというならともかく、つい一年前までは消費者、庶民金融に力を入れるというのが、一年もたたずしてまた変わってしまう、ぐるぐる変わる、こういう考え方についても私は問題があると思う。同時にもっと問題なのは、住宅ローンもまた金利を上げるなどということになる。これはどうなんですか、そういう考え方があるのですか。
  21. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まず、消費者ローンについて御説明させていただきますと、もともと消費者ローンについては金利規制という形で指導はいたしておりません。ただ先ほど先生が御指摘のように、金融機関がこれから単に預金をお預かりするだけではなくて、預金を利用してもらうという立場での大衆化という方向は今後の基本的な方向である、そういうことからすると、こういう消費者ローンはできるだけ拡大していくのだということが最近における金融機関考え方であったように思います。私どもといたしましても、それはいいことであるということで指導をしてまいったわけでございます。ただ、こういう引き締め下において、それもあくまで別ものであると考えていいかどうかという段階が今日の段階ではなかろうか、かように考えているわけでございます。現在、消費金融の残高といたしましては、四十八年の六月に約一兆三千億ございます。この中の一兆は住宅資金でございまして、残りのいわゆる消費者ローンといいますのは約二千億というのが都市銀行の姿でございます。これを全国銀行で見ましても大体そういう形でございまして、約二兆九千億の消費金融の中で住宅資金は二兆五千億である。残りの四千五百億が消費者ローンでございます。その中で自動車というものが千五百億でございます。あと大きなものは電化製品、電気製品にかかわるものが千二百億、要するに三千五百億のうちの二千七百億を上回るものが乗用車と電化製品である。残りの無目的のローンというのはまだ残念ながら三百億くらいである。これが現実にはやはりレジャーである。私はレジャーをけしからぬと言っている意味ではございませんが、レジャーあるいはゴルフの会員権、こういう実態でございます。  そういうことから判断いたしまして、消費者ローンについて住宅金融と同様の扱いをしてこれを優先していくべきものであるかどうかということからいたしますと、消費金融についてもこの際企業金融同様に協力してもらいたいという形で、日本銀行はその指導をしておるわけでございます。その結果、消費金融金利というものも金融機関に聞いてみますと、十月ぐらいからは上がるのではなかろうかというふうに言っております。もっともこれはそれぞれの金融機関がサービスという意味で各自がきめておるたてまえになっておりますので、いわゆる一律に引き上げるというようなかっこうにはならないと思いますが、ぼつぼつと上がっていくだろう、かように考えております。  次に、住宅金融金利の問題でございますが、これはもう御承知のとおり、現在金融制度調査会の住宅金融部会で金利のあり方も含めまして御審議をいただいておるわけでございます。その中での大きな考え方といたしましては、一つは、住宅金融金利というものはどうあればいいかということが一つの問題でございます。それはすなわち一律に規制していくのがいいか、あるいは金融機関の競争にまかしていくほうが金利をより安くできるかどうかということが一つのものの考え方の論点でございます。  基本的にはできるだけ住宅金融金利を低く据え置くためにはいずれの方法をとればいいのかということで研究は進んでおるわけでございますが、御承知のように、住宅金融は全国あらゆる金融機関がやっておるわけでございまして、これを一律に規制してしまいます場合にはどうしても高いほうへさや寄せされる形で、一番コストの高いものにさや寄せされることになりがちでございます。もしもそれをそれ以上に低く押えます場合には、ある地域の金融機関はもう住宅ローンを出せないというような状況になってもいけませんので、できるだけ競争をしてそういうさや寄せが起こらないようにという意味からすると、むしろ自主的にきめていくべきではなかろうかということが大体の考え方でございます。これは都市周辺の金融機関とその他の金融機関の場合もございますし、あるいは大銀行と小銀行という場合でもコストが違うということから、むしろ低いところはできるだけ低くきめられるような体制にしておいたほうがいいのではないかというのが一つの問題点でございます。  それからもう一つ考え方は、それではその金利の変動をどういうふうに考えていくべきかということでございます。これは諸外国の例などいろいろ調べて、研究が進み、議論が重ねられておるわけでございますが、下げる場合にはできるだけ下げさせていくべきであるということから、下げる場合にはもう下げる場合の基準はつくらないで、ただどうしても、これも金融の一環でございますから、全体の金融の姿の中から上げざるを得ない、上げないと量との関係において問題が起こってくるというようなときには、それを上げる場合には国民の納得をしていただく基準以外はかってにしてはいけない、こういう考え方が大体煮詰まりつつあるわけでございます。  そういう場合に、国民の納得を得やすい基準は一体何かといいますと、やはり銀行のコストが上がった場合であるということが一つの基準になるのではないか。その場合に金融機関は全部上げなくてはいけないのだという指導ではなくて、そういう場合には上げることもやむを得ないであろう、それ以外の場合にはかってに短期の金利、公定歩合が上がったからといって貸し出し金利を上げるというようなことがあってはならない、預金金利の変動以外は市中金利の変動とは切り離して考えるべきではなかろうか、かような考え方が現在の金融制度調査会の中の議論の大宗でございます。  ただ、これはまだ結論は必ずしも出ておりません。住宅金融についてその他の面がございまして、貸し付け資金をいかに豊富に用意できるかというようなこととのかね合いで最終的に結論を出したい、こういうことが金融制度調査会の御意向でございまして、早ければ十一月、場合によっては十二月ぐらいにそういう全体についての答申をいただいた上で、住宅金融金利についても各銀行はそれに従う、こういう段取りにしたいと考えております。したがいまして、現在の段階においては、特に住宅金融金利についてはこれを動かすということは、たとえ預金金利の変動があっても、答申が出ない間はそういうことは考えていないというのが実情でございます。
  22. 平林剛

    平林委員 予定の時間が経過しましたから結びますけれども、いずれにしても、私は、預金金利を上げないでおいて、そして庶民金融金利を上げる、あるいは住宅ローンは金利を上げるという傾向は、これはいまの国民が希望しておる道筋とはあべこべになっておる。それから、つい一年前までは、庶民金融ということで各金融機関とも太鼓をたたいて宣伝をしたのに、今日の公定歩合引き上げを契機にしてまたそれを逆戻りするのは、あまりにもこれから向かうべき国民福祉の方向と反していやしないか。同時に、消費抑制と言うならば、私は基本があると思うのですね。これがきめ手と言うならば目をつむりましょうけれども、そうじゃない。それがきめ手ではないのに、そこだけが先走りをするということは問題だ。住宅ローンについては特に私は注目したい。  きょうはもう時間の関係がございますからこれ以上言いませんが、現在の住宅ローンの金利でも私は高過ぎると思う。これについてはまたあらためて大蔵省のほうから説明を受けたいと思っています、その基礎だとか根拠だとかということについて。それからまた議論をしていきたいと思っておりますが、特に私は消費者ローンの金利を上げるというのは、消費抑制とは言うけれども、この間通産省が出しました割賦販売の条件強化ということで消費抑制が行なわれつつございますけれども、特に割賦販売の主体が自動車ということから考えて、消費金融は上げてもらわなければ企業のほうの、つまり自動車企業の割賦販売の条件とのバランスがとれないというようなことで、かりにも消費者ローンを上げるというような企業の都合によるところのバランス論、そういうことでやっているのだという批判もあるということは頭に入れておいてもらいたいですね。きょうはそれ以上言いませんけれども、そういう批判もあるということは頭に入れて、やはり福祉金融というものは、これからも、こういうときだから下げてしまうということになったら、また一歩前進することがなかなかむずかしいから、そうしたものについては政府においても必要な指導は指導としてしてもらいたい、また国民の中にはそういう声もあるということを頭に入れて行政をしてもらいたいということを希望いたします。  もう一つの問題やりたかったのですけれども、時間がございませんからあらためてやることにいたしまして、きょうはこれで終わらせていただきます。
  23. 森美秀

    ○森小委員長 荒木宏君。
  24. 荒木宏

    ○荒木小委員 いま政府のほうでは四十九年度予算につきまして概算要求の提出があり、主計局のほうで調整作業に入っておられるようですが、この時期に各地方公共団体から地方財政改善についての要望が非常に強く出されておることは、皆さんも御承知のとおりだと思います。  そこで、地方財政の財源の一つであります地方債の問題について、金融行政上配慮すべき点はないのかどうか、こういうことについてお尋ねをしたいと思うのでありますが、政務次官が途中で御退席のように伺っておりますので、初めに政務次官に、地方債の取り扱いについての金融行政の基本は一体どこにあるのか、この点の御見解を伺っておきたいと思います。
  25. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 全体の経済の運営の上におきまして、金融あるいは財政、そういったことが非常に大きなファクターであるわけですが、資金の需要という面からすれば、地方債もやはり相当大きな需要を持っておるわけであります。またそこからいろいろな需要が、物の需要というものも生まれてくるわけであります。今回の財政の問題として公共事業の繰り延べなどいたしましたが、それらについても地方財政の面からも同じような協力をする、こういうことであります。具体的に地方債が発行されるという場合に、これらの資金の需要は、一つ政府資金もございますし、あるいはまた縁故債的なものもあります。特に縁故債の面は一般の金融市場にその需要が出てくるわけでありまして、そういう意味では、私は全体の金融と地方債との関連は相当密接であろう、こう思うわけであります。したがって、全体の金融を考える場合にも、やはり地方債という問題は一つの重要なファクターだ、こう思います。
  26. 荒木宏

    ○荒木小委員 いま地方財政とその中で占める地方債の関係、それから地方債に対する銀行との関連、金融との関連、これが重要だということを伺ったのでありますが、私がお尋ねをいたしたいのは、いま福祉ということが言われておりまして、実際に地方行政の中で住民の福祉を直接に担当しておるのは地方公共団体であります。地方公共団体が福祉増進のためにその財源の一つとして地方債を発行いたしまして、縁故関係その他で公募も含めて市中金融機関といろいろと関係ができてくる。  その場合に、それについて福祉増進のために金融機関は地方債引き受け事務取り扱い上協力すべきである、こういった基本的な方針を持っておられるのか、あるいはそれとも別の御方針がおありになるのか。いま最後に次官がおっしゃった重要だという意味の内容、方向をお示しいただきたいのでございます。
  27. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 御質問の御趣旨を私なりに理解させていただいてお答えさせていただきますが、確かに地方債はほかの事業債その他と同様に、やはり一種の広い意味での金融市場債券でございますので、金融全体の中でそれをいかに調和していくかということが、一つのものの考え方として非常に大事なことは、先生指摘のとおりであろうと思います。  現実の問題といたしまして、そういう債券全体をどの程度発行していくかという問題は、いろいろの具体的な見通しというものをそれぞれの所管のところが立てておるわけでございまして、たとえば地方債については地方債計画というようなものも所管のところであろうかと思います。そういうものが事業債の計画なりあるいは銀行貸し出しとの中でうまく調和していくようにということも、確かに計画的な手法が確立されていけば非常にそれは望ましいことでございますが、それを適正にという形でそういう計画性をもってやっていくという総合的な手法というものが、なかなか現在の段階では開始されていないというのが正直なところ実情ではなかろうか。金融面から見る意味でのそういう実情ではなかろうか。  ただ、財政というような点からの地方財政の地方債計画あるいは証券局が行なっております証券市場での事業債の発行計画というようなものがそれぞれあって、それを全体の日本銀行資金調整という形で、事後的にこれを調整していって矛盾が起こらないようにやっていくというのが、現在の金融の姿といっていいのではなかろうか、かように思っております。  地方債のあり方という問題については、はなはだ申しわけございませんが、私の所管でございませんので、責任のあるお答えはできませんので、ひとつ御容赦願いたいと思います。
  28. 荒木宏

    ○荒木小委員 地方財政あるいは地方債の計画全体についての御質問を申し上げたのではなくて、それにかかわり合いを持ってくる金融行政の側面、つまり金融市場全体の中で地方債を消化する機能を金融機関が担当しておることは事実でありますから、その中に今度の予算編成にあたって掲げられた福祉の増進、具体的には保育所をもっとほしい、あるいは学校、公営住宅をもっと建ててもらわなければ困る。それの重要な財源であります地方債の資金調達を担当しておる市中金融機関、ここに対して監督機関として福祉の面が通っておるのかどうか、このことをお尋ねしたわけであります。  具体的な問題を提起して質問を続けたいと思うのですが、これに関しては、全体の資金量の問題あるいは資金源、また利率の問題、いろいろあると思います。しかし私はきょうはこの地方債の取り扱い手数料の問題について政府にお尋ねしたいと思うのでありますけれども、まず、これとの対比で、国債の取り扱い手数料、これは御案内のとおり、引き受け手数料、利払い、償還の各手数料は法令の規定によりまして大蔵大臣が定めることになっておりますけれども、まず、四十八年度において国債の取り扱い手数料総額が幾らになっておるか、これをお示しいただきたいと思います。
  29. 宮崎尚

    ○宮崎説明員 四十八年度の国債事務取り扱い手数料の総額は、百三十億三千四百万円でございます。
  30. 荒木宏

    ○荒木小委員 そこで地方債についてお尋ねいたしますが、自治省がお見えのようでありますのでお答えをいただきたいのですが、地方債の場合には、国債以外に、登録手数料あるいは受託手数料、さまざまな名義でさまざまな手数料徴収が行なわれておるのでありますけれども、四十八年度予算におきまして、この地方債の取り扱い手数料総額、これはいかほどになっておりますか。
  31. 柴田啓次

    ○柴田説明員 地方債は、御案内のように、政府資金引き受けのものもございますし、公営企業金融公庫引き受けのものもございます。民間資金に消化を依存しているものといたしましては、市場公募地方債あるいは縁故債というようなものがあるわけでございます。市場公募地方債につきましては、その手数料は統一されておりますけれども、縁故債につきましては、それぞれ地方団体と借り入れ先の金融機関の間で個別に協議をしておりまして、全国的に統一されたものはないわけなんでございます。  お尋ねは、地方財政と申しますか、地方団体の総予算の中で、手数料の額が幾らかということなんでございますけれども、これは私どものほうで、たとえば地方債の中で証書発行——債券発行の形式によらない証書貸し付けのような場合には、手数料というものはございませんし、その証書発行の量が何ほどあるか、あるいは手数料の中でも発行時にかかりますところの引き受け手数料あるいは受託手数料というのは、これはそれぞれの団体の発行額について、それぞれの団体の単価をかければ計算できるかもしれませんが、たとえば登録手数料というのは、登録をする比率が何%かによって違いますし、あるいは元金償還、利金支払いというのは、それぞれの元金償還時あるいは利金支払い時にそういうような手数料が出てくるわけでございまして、私どものほうで、たいへんあれなんでございますけれども手数料の総額が幾らかというのを計算したものはないのでござ  います。
  32. 荒木宏

    ○荒木小委員 国債の場合には、先ほどお話がありましたように約百三十億、地方債の場合にも、これは地方財政計画作成の上で、地方予算をごらんになればすぐわかるわけでありますから、ぜひ試算というふうな形ででも実態を把握していただきたい、そういう作業をひとつお進めいただきたいということで、ひとつ私のほうの計算をいたしました試算を申し上げたいと思うのですが、昭和四十八年に東京都では、これは予算の上で明示されておりますが、四十九億二千七百三万四千円、これは地方債取り扱い手数料、純額ですね。一方、東京都の起債分が全国の地方団体の中で占めております起債総額との割合比率、これが確定額として出ております昭和四十五年をとりますと、約十三・九倍、もちろんこれは、この数字をそのまま取り扱い手数料比率に流用することには問題があると思います。しかし、おおよその見当をつける意味でこれを援用いたしますと、全国の四十八年度地方債取り扱い事務手数量総額は六百八十四億八千五百八十万二千円、つまり数百億という額が事務取り扱い手数料として支払われている。四十八年の東京都におきます利子総額に占める手数料比率は、五・三%であります。  ですから、自治省もよく御案内のとおり、超過負担の解消をはじめ、地方財政の要望が改善の方向で非常に強く出されておるおりからでありますから、ひとつ実態を正確につかんでいただきたい。そうしていただけるかどうかということと、この取り扱い手数料は、地方財政の改善の上からもできるだけ少なくしていくという方向が望ましいというふうに思うのですけれども、これについての御意見を伺いたい。もちろん、各地方によって事情は区々でございます。また、従来の取引慣行その他市場におけるいろいろな要素があることは、これは各面から指摘されておるとおりでありますけれども、しかし、行政の方向として、地方財政の担当者のお立場としては、実態をつかんで改善をしていくということが望ましいと思うのでありますが、御意見を伺いたい。
  33. 柴田啓次

    ○柴田説明員 手数料の実態がどれぐらいあるかというのは、先ほど申し上げましたとおり、いろいろ複雑な要素がございまして、私どものほうで正確に資料を提供できるかどうか、むずかしい問題があるのじゃないかと思うのでございますが、ただ、いま東京の試算から全国で六百八十四億になるというようなお示しがございましたけれども、東京の場合は特に銀行との間の縁故関係が薄いというようなこともございまして、手数料というような形が非常に大きくなっているというようなこともございます。全国の数字は、おそらく、いろいろ試算をいたしますれば、もう少し少ないのじゃないかという気がするのでございます。  それから、私どもは、先生指摘のとおり、手数料というものはできるだけ低いということが望ましいと思うのでございます。発行者の側の地方団体のほうも手数料を低くしたい、私どもも地方財政を見る立場からは、手数料が低いほうが望ましい、さように思っているわけでございます。ただ、これもいろいろ銀行と地方団体との間の縁故関係の態様だとか、あるいはそれぞれの団体の一回ごとに出します発行量とか、いろいろな事情がありまして、個別に交渉されてきめております。これまた私どものほうでこれを統一的に低くするというようなこともなかなかできかねるわけなんでございます。私どもの意見といたしましては、繰り返して申し上げるようでございますが、できるだけ手数料の負担が軽いことが望ましいというのは、御指摘のとおりでございます。
  34. 荒木宏

    ○荒木小委員 そこで銀行局にお尋ねをいたしますが、国債については、引き受け、償還、利払いの手数料が支払われる。この支払われる根拠についてお尋ねをしたいのでありますけれども、たとえば償還手数料、これは現在幾らときめられておって、その支払いの根拠、そしてその支払いの実態、内容、これは一体どういうところにあるか、ひとつ明確に示していただきたい。
  35. 宮崎尚

    ○宮崎説明員 かわりまして申し上げます。  先生指摘のありましたような手数料支払いの根拠といいますのは、国債に関する法律によりまして、起債に関するもろもろの必要な事項というのは、大蔵大臣が定めることになっておるわけでございます。それを受けまして、現実に国債を発行する場合には、現在の体制は、金融機関証券会社で構成されるシンジケート団に引き受けてもらって、それでその一部を民間に売り出されるという形をとっておりますので、事実的にはその引き受けの相手方であるシ団と現実的な交渉といいますか、意見を聞くということをいたしまして、それで具体的なきめ方としては、国債の持っている公社債の中における評価等を踏んまえて、バランスを考え、かつその手数料の性格からいきまして、当然それは償還なり利払いなりに関連して必要な経費の補償という意味でございますから、人件費とか物件費とか通信費とか立てかえ金の利子というような具体的な条項を一応試算をいたしてみまして、それを償うような範囲で、先ほど申しました国債の評価を踏んまえてできるだけ低い線で交渉をしてきめて、それを具体的な通達にするという形をとっております。
  36. 荒木宏

    ○荒木小委員 償還手数料が決定される筋道、それはいま伺ったわけでありますけれども、私がお尋ねしておりますのは、国債ニ関スル法律によりますと、大蔵大臣は必要があるときに国債に関する事務をきめることができる。ですから、ここにはそれだけの料率を出しましょう、その料率についてはこれが適当である、必要であるという必要性の根拠ですね、そういった判断が当然なければならぬと思うのであります。ほかとの対比とかあるいは金融機関の意見とか、いろいろありましたけれども、大蔵大臣が告示をするのでありますから、自主的な判断というものがどうしてもなければならぬ。いま言われた人件費とか通信費、これは一方で利率をきめておるわけでありますから、利子収入がありますね。公債の利子による収入がある。それ以外にいま貸し出し金の利息ということもおっしゃったのですけれども、私が伺っておるのは、たとえていえばいま償還手数料を取り上げた場合に、一体それが、いま告示では十銭でありますけれども、そういった実費がそれだけかかるのかどうか、あるいはいまおっしゃったような実費用がもとだとするならば、そういった試算がなされておるのかどうか、そこのところをひとつお尋ねをしたいと思うのです。なお、国債の場合には登録がほとんどでありますから、そういった場合には償還については特に特別のそういったいま御指摘になったような費用は実態としてはかからないのではないか、支払い場所の明記もありますから。そういう意味合いから、この償還手数料という問題の実態が実費をもとになされておるというような筋合いに伺ったのでありますが、その内容についての検討の有無をひとつお示しをいただきたい。
  37. 宮崎尚

    ○宮崎説明員 私が先ほど申しましたのは、きめる場合に二つの基準に基づいてきめておると申し上げましたが、その第一は、公社債市場におきましては各種類の、各銘柄の公社債が出ておるわけでございます。それは市場において扱われる塔のでございますから、市場における評価というものが伝統的、沿革的にできていると思います。それを前提にいたしまして、国債の発行者の立場から申せば、国債の持っている安全性とか確実性とか流動性とか、それから発行額、それから消化の態様等を考えまして、できるだけもちろん有利に、全体のバランスを考えて低目にきめる。  ただその際に、一つの試算といたしまして——試算と申し上げておりますのは、たとえば国債の利払いなり償還なりをいたす事務が行なわれるわけですが、その事務に要する費用というのを具体的に正確に計算するということは、ある一つのことを抜き出すわけですから、たとえば金融機関における人員の配置とか、やっている仕事の内容とかというものを考えてみますと、それ一つを抜き出しまして正確に数字を出すということは非常にむずかしいと思います。しかしながら、一応償還手数料とか利払い手数料の場合にはそういう一つのサービスが行なわれるわけでございますから、相当いろいろな仮定が入りますけれども、一応先ほど申しましたようなそういう人件費とか物件費とか通信費とか、関連して起こってくるであろうものを試算はいたしております。  ただしかし、これはそれによって正確な額が出るという保証のあるものではございませんので、一応参考にいたしまして、力点はやはり国債の公社債市場における評価というものを踏んまえて発行者としてできるだけ有利に、バランスを考えて低目にきめるというのが実態でございます。  それから、先ほど先生がおっしゃいました、国債は登録債が圧倒的に多い、しかし登録債は支払い場所を指定してあるし、それほど経費がかからないのではないかという御指摘がございました。それは確かにおっしゃるとおりだと思います。この場合、お考えいただきたいのは、その登録手数料をきめるきめ方というのはいろいろあると思うのですけれども、現在わが国公社債市場においてきめられている手数料というのは料率主義でございます。料率主義というのは、額面たとえば百円につき幾ら。たとえば国の場合ですと額面百円につき利払い手数料二十銭、償還手数料十銭というふうにきまっておりまして、これは私、全体を知りませんのですけれども、私の知っている範囲では、すべてこういう料率主義のきめ方をしていると思います。  それではほかにどういうきめ方があるのかということを考えますと、件数主義というのがございます。件数主義というのは、金額の多寡にかかわらず——多寡にかかわることもございますけれども、金額の多寡にかかわらず、どちらかというとかかる手数は同じである。したがって、かかる手数は同じであるから、件数を単位にして、一件当たりたとえば五十銭とか八十銭とかいうきめ方がございます。ただわが国の場合には公社債市場における手数料のきめ方が料率主義でございますから、その慣行にのっとりまして、国債の場合にも料率主義を適用をしているわけでございまして、料率主義を適用する限り、先生のおっしゃるような登録債の場合、しかもロットの非常に大きい登録債もあることでございますから、その場合の支払いの手数はそんなにかからないのではないかという議論が出てくるだろうと思います。それはおっしゃるとおりだと思います。  しかし、それでは手数があまりかからないのであれば件数主義でいったらどうかという御指摘が出てくることがあるかと思いますが、件数主義を適用するというのも一つ考え方ではあるのでございますけれども、考えてみますと、この件数主義というのはいろいろ問題がございまして、実際採用されていない。その最大の理由は、もしかりに登録債なり券面なりの多寡にかかわらずかかる手数は同じであるというような考え方に立って件数主義的なきめ方をいたしますと、たとえば国債を売る人はこまかい券面でたくさん売る。それから登録する人は単位当たりの登録を低くして、たとえば極端な例を言いますと、一億円の登録債の場合には十万円を千件やるというようなことが起こってきて、必ずしも合理的ではない。したがって、おそらくそういうことなんかもあって実際に公社債市場における手数料等のきめ方は料率主義になっておるのだろうと思います。  料率主義を採用した場合には、確かに先生のおっしゃるように額が大きい、まとまっている、手数はかからないのではないかという御疑問が出てくると思いますが、料率主義をとる以上どうしてもそういう問題が残る。それでは件数主義を採用したら合理的になるかと申しますと、私が申し上げましたように、必ずしもならない。そこはやはり公社債市場における一つの慣行といいますか、そういう形できめられているのだろう、そういうふうに考えます。
  38. 荒木宏

    ○荒木小委員 わかりました。つまり償還手数料は一口に言えば手間賃のようなものである、それの算定方法としては料率主義が合理的ではないかと思っている、こういうふうに伺ったのでありますが、そこで銀行局長にお尋ねをしたいのでありますが、もしそうだとすれば、国債の手間も地方債の手間も公債処理の手間としては同じではないか。また料率主義をとるのが合理的だとすれば、たてまえとして料率採用ということはそれなりに是認できるとしても、料率の数字を変える必要はさらさらないのではないか。端的に言えば、国債で大蔵大臣が償還手数料は十銭であるということになれば、地方債もそういう扱いとして理論的に考えてもいいのではないか。実際の市場の縁故の場合の過去のいきさつでありますとか、あるいは実勢でありますとか、これはありましょう。ありましょうが、これは一応おくとして、理屈の上では同じ公債である国債と地方債、手間賃と料率、同じように考えてもいいのではないか、こういうふうに思うのでありますが、いかがでしょうか。
  39. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 はなはだ申しわけございませんが、この問題は証券市場の問題でございまして、実は証券局長あるいは理財局長がお答えをすべき性質のものではなかろうかと思います。  ただ、私の立場で最大限にお答えさせていただくといたしますと、私の立場は、金融機関を監督しておる立場である。したがって、こういう国債あるいは地方債の発行市場における引き受け者側と発行者側の一方の金融機関、その金融機関の立場であって、これは証券会社あるいは発行者との間の交渉によってきめられる、あるいはその手数料制度についても長年の間の慣行あるいは国際化された経済の中で外国の証券市場との慣行も含んでやっていく、そういう性質のものではなかろうか。したがいまして、私としては、この手数料制度がいかにあるべきかということについては、責任をもってお答えする立場にないということをひとつお許しいただきたいと思います。
  40. 荒木宏

    ○荒木小委員 証券局の関係が退席されていますから、いまの御答弁はそういう意味合いで伺いますけれども、しかし、理屈の上で考えていかがですか。同じ証券を扱うのに、手間という問題をいうなら、取り扱い者は同じですね。同一の金融機関が国債にしても地方債にしても、これは扱うときにその扱いの手数料を変えることは一体どういうことなんでしょう。つまりいまおっしゃる慣行とか、あるいは従来の力関係とかありましょう。しかし、本来考えられる理念の基礎として、根拠としてはどうなんでしょうか。地方公共団体は、これは言うまでもなく公法人であります。福祉がいわれておりますときに、そういった点が実際に銀行局の監督下にある銀行のやっておる金融業務として、国債については大蔵大臣がきめておる。そうすると、考え方としては地方債についても同じであるべしということで、それの実現の方法あるいはそれの指導の方法、これはいろいろありましょう。しかし、そのもとのところについての考え方、これは取り扱い機関銀行である以上、現に銀行がそれをやっておる以上、銀行局長としては全く所管外ということはないと思うのです。その点についての考え方の基本についてひとつ伺いたい。
  41. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 考え方の基本という点からいたしますと、地方団体もあるいは事業会社も市場においては一つ発行者である。したがって、これを引き受けるサイドとの間の交渉によってきまるべき性質のものではなかろうか、かように考えております。したがって、これを引き受ける側と発行者側と協議という形にならざるを得ないものではなかろうか、かように考えております。
  42. 荒木宏

    ○荒木小委員 そういたしますと、銀行局としては、こういった債券の発行、それに関する利率でありますとか、あるいは取り扱いの手数料、これは全く市場の実勢に放任をして、何ら規制の対象とする意思はない。もっと端的に言いますと、臨時金利調整法という法律がありますけれども、あれは銀行局の所管ではない。あの金利の中には、御案内のように、利率もあれば取り扱い手数料もあります。しかし、あれは銀行局のほうで利率をきめて指導されるわけでしょう。だとしたら、その間にやはり指導の方針といいますか、法律による指導規制というものがきめられておるわけでありますから、そういった点について全く実勢放置というのは法律のたてまえに反するのではないかと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  43. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 臨時金利調整法は、御指摘のように金利類似のものについてもできるだけこれをコントロールできるように体制を整えたというのが、実際問題として出発点においてはそうであったわけであります。ただその後証取法が改正されまして、銀行が一般有価証券の引き受けができなくなったということもございまして、有価証券の引き受け手数料についてはむしろ金利の外にあるものである、こういう考え方で今日まできておるわけでございます。
  44. 荒木宏

    ○荒木小委員 それは少し不正確ではないでしょうか。御案内のように、一般業務の中からはずされておりますけれども、証取法の六十五条の二項で銀行が取り扱うことができる証券の種類をはっきりときめられておる。ですから、その分についてはやはり金融機関の対象となっており、引き受け、償還、利払いすべて現にやられておるわけであります。しかもその分については臨時金利調整法の対象の範囲内に含まれておるということは実定法で明記されているじゃないですか。現に法律でこれをやりなさいということになっておるのにやらないということになると、むしろ法律のたてまえに反するということになると思うのですが、私はそこまでいきますと国債と同じに扱うのがいいかどうかという基本的な問題が一つと、あわせてそれについては法律の規定があるにかかわらず全く放置をする意思なのか、このことをお尋ねせざるを得ないと思うのでありますけれども、証取法の六十五条の二項の関係と、それから臨時金利調整法の関係とどういうふうに理解をしておられますか、これをひとつ伺いたいのです。
  45. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 この臨時金利調整法には、必要があるときにはこういうものをきめる、こういうことでございます。したがって法律に書いてあるからそれを運用してないのはけしからぬという御趣旨であるとするならば、その必要があるかどうかという問題の考え方の理念の問題だろうと思います。一つにはいまも御指摘の証取法というものの精神が、いわゆる六十五条というように表現されておりますその基本的なものの考え方、法の理念的基礎がございまして、一つにはそういう証券の問題について、この臨時金利調整法については証取法の運用の理念の中で考えていくというのが基本的な姿勢ではなかろうか。この辺は私、証券局長からお答えすべきことであろうかと思いますが、私はそういうふうに想像しております。  そこで、なぜそれではそれは別の問題として臨時金利調整法で別途きめるべきではないかというお話については、その必要があるかという問題は、単に実際上の必要という問題よりは、私は理念的な問題があろうかと思います。こういう有価証券の引き受け手数料というものが具体的に統制を受けるべき性質のものであるかどうか。ここはやはり貸し出し金利についても最高限度をきめる中で市場原理に従ってこれがきめられていくというたてまえがとられていくのと同様であって、できるだけそういう規制を少なくしていくというのが、やはり臨金法ができまして以後のものの考え方ではなかろうか、それが証取法というものとオーバーラップしておればやはり現在のような協議によってきめられていくという、そういう市場法則によってきめるという形をとっておるのではなかろうか、かように考えております。
  46. 荒木宏

    ○荒木小委員 はっきり申し上げておきたいのでありますけれども、私が証取法の六十五条の二項と臨金法を援用したのは、そのことが決して銀行局の所管と無縁ではない、このことを言いたいためにその法律上の根拠として指摘をしたまででありまして、臨金法上の措置を直ちにとるべしとかいうようなことを言っておるわけではないわけであります。いまお話しのように、その必要があるときというふうな表現があったのですけれども、そうだとしますといまの福祉優先という政策、これを行政の各面で実現していくという必要性、あるいは先ほど自治省の担当者から地方債引き受けの手数料はできるだけ少ないのが望ましいと、政府機関の内部からもそういった要望があるという必要性、この必要性を無視して、では他にこれをきめないというふうな必要性は一体どういうところにあるのか。これを市場放任することによって受ける利益は一体だれのためなのか。金融行政といいますものは、先ほど来いろいろお話がありましたように、金融機関は直接の規制対象にしておるのでありましょうけれども、その中でやはり全体の行政の目的を達するように、いろいろと勘案されなければならぬ、御案内のとおりでありますけれども、いまそうだとすると、自治省のほうで言われた必要性ですね、それを見るための基本的な考え方として、償還利払い手数料の実体は一体何であるか、こう伺ったわけであります。  ですから、いまの自治省から言われた取り扱い手数料については少ないほうが望ましい、こういうふうな要請、必要性、それから国債課長から発言がありました実体は手間賃なんだ、こういったことから見て、公債であるこの地方債の手数料についてどうごらんになっているか、あらためて伺いたいと思います。
  47. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 発行者等の立場としては、手数料はできるだけ低いほうが望ましい、こうおっしゃっておるのは私は当然だろうと思います。そういうことは、やはり金融市場の情勢の中で、発行需要とそれから応募の需要というものの中のネゴシエーションの中できまっていくことではなかろうか、それは単に金利のみならず手数料についても、そういう実態を背景として、個々の具体的な協議によってきめられるべきものである、かように考えております。
  48. 荒木宏

    ○荒木小委員 それでは自治省にお尋ねをいたしますが、本年の三月、東京都、大阪府をはじめ十八団体の、立場はよくわかりませんが、自治省がその関係を一応代表するような資格で、日本興業銀行との間でこの取り扱いの料率をめぐって交渉があったように聞いておりますけれども、その目的とその結果、これについてお答えいただきたいと思います。
  49. 柴田啓次

    ○柴田説明員 御指摘は、市場公募地方債につきましての引き受け手数料その他手数料の引き下げの問題だろうと思うのでございます。御指摘のございましたように、これまで引き受け手数料は一円六十銭、受託手数料は二十銭、当初登録手数料が十銭、元金償還手数料が四十銭、利金支払い手数料が一円二十銭であったわけなのでございます。これは、三十一年からこういう手数料の率になっておったわけでございますが、当時の発行団体は八団体でございますが、その八団体が努力をいたしまして、その手数料を引き下げたのでございます。四十八年四月から、先ほど申し上げました引き受け手数料につきましては、二十銭下がりまして一円四十銭、それから受託手数料が五銭下がりまして十五銭、それから当初登録手数料は二銭下がりまして八銭、それから元金償還手数料が二十銭下がりまして二十銭、それから利金支払い手数料が九十銭下がりまして三十銭、こういうふうに手数料が引き下げられたわけでございます。これは発行団体、関係団体が努力をいたしまして、こういうふうに下がったわけでございます。
  50. 荒木宏

    ○荒木小委員 自治省は全く関係されなかったのですか。
  51. 柴田啓次

    ○柴田説明員 市場公募地方債の手数料というのは、どの発行団体にあっても同じにきまっておりますが、あくまでもこれも発行する団体と金融機関との交渉の問題でございます。
  52. 荒木宏

    ○荒木小委員 いま自治省の当初におっしゃった方向に沿って、自治体はいろいろ努力をして交渉しておるわけでありますけれども銀行局長は、とにかくその点については全く銀行局として検討すべき必要を感じておられないかのような発言に伺ったのですけれども、私は、もしそうだとしますと、実態をもう少し究明する必要があるのではないか。たとえば、指定金融機関はもとよりですけれども地方税収入を取り扱っている。その地方税収入を取り扱う指定がある場合に、当該金融機関としてのメリットの問題、これを若干自治省に伺っておきたいのですけれども、たとえば東京都のような場合、地方税を収納してそれを都に実際に渡すまでの間、手続処理期間がありますね。その間は利息をつけないで、平均して数日ぐらいのようですけれども金融機関がその金を運用することができる。つまり窓口で収納される、あるいは自動振りかえで落とされる、その場合に、実際都の手に渡るまでに、金融機関の手に数日間滞留をする、それには利息がつけられていない、そういったようなメリットが実際には金融機関の実態としてあり、地方税収入は巨額にわたりますから、日数は数日でありますけれども、それによる、つまり無利子による運用益というものは、当然計数上も計算されるべき筋合いであります。  いまこういったことに伴って、たとえばこれは地方税収入と直接の関係はないかもしれませんけれども、受信料であるとか電気、ガス、水道でありますとか、あるいは家賃から授業料に至るまで、自動振りかえというふうな形での指摘をしました。地方税の寝かしといいますか、そういった関係で隠れたメリットがある、そういったようなことが一方であれば、これは銀行局長が先ほどおっしゃったように市場実勢ということ、それはそれとしても、その上にこの手数料の問題を再検討すべき実態があるのではないか。  この問題について自治省が手数料の額を把握して、下げるのが望ましいと言っておられるわけですけれども銀行局としてもその方向に沿って再検討なさる御用意があるかどうか、これをひとつお尋ねしたいと思います。
  53. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 先ほど私の御説明で、多少実態のあれが間違っておる点があったように感じますので、多少訂正させていただきます。  地方債の引き受け手数料の決定は、発行団体と証券会社等が話し合ってきめる、そしてそれに関与しておる金融機関は、受託会社の立場としての金融機関である。したがって引き受け者としての金融機関と、それから受託機関としての金融機関とは必ずしも一緒ではないのだという問題でございます。いま引き受ける金融機関、たとえば何々地方銀行といったのが受託銀行である場合には、手数料の決定に参加しておるようですが、要するに発行団体と証券会社等と受託会社である金融機関、こういう形で、たとえば興銀なんかが受託金融機関の場合には非常に多いわけです。そういう形で、この場合の受託会社は債権の保全というようなこと、あるいは利息支払いといった、いわば間接的な形で参加して、三者が協議しているという実態であるようでございます。  なお、そういうことを踏まえて、いま引き受け金融機関というものは、それぞれの地方団体の公金取り扱いという形から非常に恩恵を受けておるのではないか、だからそういうことを加味して、手数料についてできるだけ便宜を供与すべきである、こういう御主張ではなかろうかと思います。私はそれは全く同感ではございます。そういう性質のものではございますが、さりとて、だからといってそういうことが全然無視されておるかどうか、それはむしろ手数料の交渉あるいは引き受ける量、あるいはこの場合はむしろ公募債でない場合に多いわけでございますが、縁故債の引き受けといった点で、銀行のほうも地方公共団体についてはできるだけの配慮を与えておるというのが実情であって、それがバランスされたところでいろいろの協議が具体的な項目の成果になってあらわれてくるのではなかろうか、かように考えるわけでございます。お互いが相補完し合った関係というのはそのほかにも幾つかあろうかと思いますが、基本的にはやはりこういう手数料というのはやはり発行者の一つのあれとして協議の上できめられるべきものであるというのが、やはりこういう証券市場の基本的な考え方であるように思います。
  54. 荒木宏

    ○荒木小委員 いまの御答弁の中で、私はいま言っておりますのは償還利払いをまず取り上げて言っておるのでありまして、引き受けの関係はこれは時間があればなお続いて申し上げよう、こう思っておるのでありますが、しきりと金融市場の実勢ということで事業債と同じようにとられるのですけれども、しかし公共団体といいますものは全く設立の目的それから資金の使途、そういうのが性質が違うわけでありまして、国債の場合には大蔵大臣がきめる。だとすれば、地方公共団体の地方債は事業債と同じ方向で考えるべきものなのか、それとも国債に準じたような方向で考えるべきものなのか、私が聞いておるのはこういう点でありまして、地方のいま言われたメリットその他を含めて考慮されるのは賛成だ、こうおっしゃっている。だとすれば、その方向をさらに進めて地方財政の改善ということもあり、福祉の増進ということもあり、また地方債の性格ということもあり、そのことを事業債と同じような方向で考えるのはこれは問題ではないか。  もちろん資金量その他についても配慮されなければならぬことはもちろんでありますけれども、そういったことを踏まえて、時間が来ておりますから最後にまとめて伺いたいのでありますが、まず第一点として、いま金融引き締め、総需要抑制ということがいわれておりますが、この地方債の引き受けについての資金量ですね、巷間伝えられるところによりますと、一般の企業金融の方向、企業金融資金量を減らすような形で地方債のほうへ金が回ってはぐあいが悪い、こういったような意向が銀行局のほうから流れたのではないか、こういうことを言う向きも耳にしたわけでありまして、そこで一つは地方債の資金量確保についての銀行局の指導なり、これをまず第一点として伺いたい。  それから、地方債の性格、とりわけ地方公共団体の公共目的、それといまの福祉優先の政策との関連、そういったことを取り扱い手数料の中に検討するにあたって考慮して検討される用意があるのかないのか。この料率の問題と、それから資金量の問題、それから地方債の性格について、銀行局として金融機関指導の上で国債に準じたものとして考えておるのかあるいはそれはもう営利目的の利益率、これをあげておる企業と同じように考えておるのか、その三点について最後に伺いたいと思います。
  55. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まず、資金量の点でございますが、現在の引き締め下で日本銀行で指導しておりますのは、窓口融資ということでございます。それは貸し出し指導はとどまっておりまして、こういういわゆるその他の資産の運用については特に規制をしておりません。したがいまして、特に引き受けで減らしてほかに回せというような指導ではなくて、むしろほかの貸し出しのほうを押え、あとの運用を、それを国債に運用するか地方債に運用するかあるいはその他の運用資産に回すかどうかということは、これは個々の金融機関の判断の問題と考えております。  それから、福祉優先の立場から地方債を営利並みに考えておるかどうかということは、これはむしろ私がお答えをするといたしますならば、これはやはり債券の一種である以上は、その債券が国債と事業債の中間として、たとえば手数料料率その他がランクが行なわれておるということが実態ではなかろうか。それは国債といえども福祉を持っております。国債の中にも、あるいは狭義の福祉以外の事業債的なものもございます。地方債についても同様だ。その辺のところは一つの目的別になかなかできないところに現在の経済の体制、むしろそういうことをやらない、むしろ全体としての何と申しますか経済の原則の中でできるだけうまくいくようにという体制として現在考えられておる、そういう問題ではなかろうか。実態はむしろ国債とそれから事業債の中間にある信用度の高い銘柄のものであるというのが、金融的側面から見る地方債の姿ではなかろうか、かように考えております。
  56. 荒木宏

    ○荒木小委員 この料率の問題再検討の上にあたって、その福祉優先という、かりにいま中間というように承ったのですが、その立場が正しく反映されるように指導する用意があるかどうか。このことに関連して、局長も御存じのように、今度の国会の当初の所信表明、これは国際収支の問題と物価の問題にからんで福祉優先ということを行政の最高責任者である総理が言われたことはよく御存じのとおりだと思うのです。そしてその中で、それを担当しておる地方公共団体が資金的に関係庁である自治省に対して改善方をさまざまな形で要望しておることもまたきょう出席しておられる自治省関係者はよく御承知のとおりだと思うのです。  ですから、そういう面で、金融の担当者は金融の面だけ見ておるということでは、結果としては当初に総理が福祉優先ということを言っても金融の側面では通らないということになる。ですからそういった点で、実際に福祉優先ということを掲げるなら、あるいは物価の安定も同じでありますけれども、そういうことを掲げるなら、行政のいろいろな面で斉合的にそれが通るような形で十分に配慮されるべきである。もちろんその一つの部面だけで解決されることではありませんけれども、私はそういった面でいまの金融行政の実態がいまの答弁でそれなりに反映されていると思いますし、これは国民の立場から見まして事実をはっきりと指摘をし、改善方は今後ますます要請をしていかねばならぬというように考えております。  そこで、最後に要望でありますけれども、いまの実勢はそれとして、いろいろな面で金融行政がなされておるわけでありますから、そういう際にきょう指摘したことを念頭にとどめてひとつ十分に金融行政の上で配慮されるべきである。その点についての局長の所見、所感を一言伺って、最後に要望を申し上げておいて終わりたいと思います。
  57. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 総理の演説をお引き合いに出されましたが、そういういわば政策の方向ということが私どもそれに従うことは当然だろうと思います。そういうことは金融機関といえどもやはり公共的色彩がきわめて強い金融機関でございますかち、当然それの配慮の中で負担をしていき、あるいは協力していくということは、あらためて総理の演説があろうがなかろうが当然のことだろうと思います。金融機関はそれではいままで協力してなかったのかというような感じの問題ではなくて、よりよく今後努力していくというために銀行を監督をしておるものとしてもできるだけ努力しなさい、こういう御激励と承る意味におきましては私は全く同感だろうと思います。  ただ、個別の問題について監督権を発動して指導しろというお話でございますれば、それは多少は違う。いわば監督権の行使としての指導ということとしては、この問題はただその側面からだけ見るべき問題ではなかろう。むしろ今後の経済運営のメカニズムがどうあるべきかという全体の中で判断されるべきことではなかろうか、かように考えております。ただ、金融機関が私企業ではありながら公共的色彩の強い性格のものであることは申すまでもございませんので、そういう意味では、福祉社会の実現のために精一ぱいの協力をすべきであるということは、全く同感でございます。
  58. 森美秀

    ○森小委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十一分散会