○
吉田(太)
政府委員 最近の
金融情勢等につきまして
概略を御
説明させていただきたいと思います。
御
承知のように、
金融引き締め政策を始めましてから六カ月余りがたっておるわけでございます。もう申すまでもなくこの間に三回にわたりまして
公定歩合の
引き上げと
預金準備率の
引き上げ、それから実質的に非常に
影響のございます
窓口指導の
強化をいたしております。また個別的な問題といたしまして、
商社向けの
貸し出しの
抑制あるいは
土地関連融資の
抑制など、いろいろ具体的な
引き締め措置も実施してきたところでございます。こういう
引き締めの
あり方と申しますのは、これまでの
引き締めの
期間を振り返ってみましても、これほど矢つ
ぎばやに数多くの
措置が打たれたという例はないわけでございまして、いわば総力をあげて現在総
需要の
抑制ということに取り組んでおるわけでございます。
その
目的といいますものは、申すまでもなく総
需要抑制を通じまして
経済活動の行き過ぎを押える、これが
物価安定に資するということを
目的とするわけでございますが、現在までのところ
金融面と申しますか
貨幣面と申しますか、そういう面におきましては、
金融機関の
貸し出しの増勢が鈍化しておること、それから
市中貸し出し金利が急上昇しておることなどがかなり明らかに出てきておるという
状況でございます。
そういう
状況が
企業サイドにどういう
影響を及ぼしておるかということでございますが、私
どもあるいは
日本銀行は一緒になって
銀行の聞き取り
調査を行なっておるわけでございますが、大体
窓口指導の
強化というようなことを通じまして、借り入れがかなり困難になってきておるということから、各
企業とも
手元資金を極力温存しようという
傾向が出ているように思われます。このため現象的にあらわれておりますものは、
土地の
大口取引でございますとか、あるいはことしの春ごろ見られました思惑によります商品の仕入れというようなものが、春ごろほど盛んには行なわれなくなってきたということは言えるか、かように考えております。
また、このところ
預金の
伸びが鈍化しておるわけでございまして、こういう事情から判断いたしますと、五月の後半からあとに、ちょうど六月が
決算期でございます
関係もございまして、
納税資金でございますとか、あるいは
ボーナス資金の支払いがかさんだというようなことがあって、
手元資金の取りくずし、具体的には
預金の取りくずしということがかなり行なわれておるのではないか。そういう
企業が次第にふえてきておるというように見受けられます。このことは、
日本銀行が三カ月ごとに行なっておりますいわゆる
短期経済観測というものを見ますと、
企業の
手元流動性、これは御
承知のように
売り上げ高とそれから
手元現金の割合でございますが、その
水準というのは、七月から九月、これは見込みも入るわけでございますが、七月から九月には、いわゆる
過剰流動性という問題が生じました以前の、一昨年の四月から六月くらいの
水準にまで
手元流動性の
水準が戻るのではないか、こういうように見込んでおります。
こういうふうに、いわゆる
引き締め効果というものは、
金融面、資金的な面ではかなり浸透していると思われますが、今後の問題といたしましては、これが
経済の
実体活動に反映をしているということがまだ十分ではないということは、率直にやはり認めるべきではなかろうかと思います。これからの
問題点といたしましては、やはり
企業のし
ぶりと申しますか、
営業活動の
あり方と申しますか、あるいは
投資活動の
あり方という点で、より一そう慎重な態度に
変化していくような、そういうやり方をやっていかなくてはいけないということが一番重要なことである、かように考えております。
申すまでもなく、いままでの
引き締め政策はこういう
実体経済の
経済活動の大きさをいわばできるだけ縮めていこうということを
目標としておるわけでございます。そういう
意味におきましては、去る七月二日に行ないました第三回目の
公定歩合の
引き上げ、これが
公共事業の施行時期の
年度内調整というような
財政面の
措置と同時に行なったという点に特色があるわけでございまして、それだけに総
需要を
抑制していく、
実体面の
経済活動を押えていくということに、より一そう期待しておるわけでございます。
こういうことが今後
効果が出てまいりますと、
個人の
消費支出というものもおのずから堅実と申しますか、その
伸び率というものも鎮静化していくことが期待されるわけでございます。たとえば現在非常に高い
伸び率を示しております
日本銀行券の
増発基調というようなものにも
変化が出てくるのではないか、かように考えます。
もちろん、現在の最重要の課題でございます
物価の
騰貴をいかにして押えていくかということにつきましても、
物価騰貴の原因はいろいろあろうかと存じますが、
基本的にはやはり
経済活動全体の大きさ、そのところからくるところの
需要超過の
状況をできるだけ解消していくということでございますので、そういう
意味で
金融政策が総
需要の
抑制ということを
目標としておるのは、
物価安定の面で必ずその
効果が、時期的にはもちろんズレはあろうかと存じますが、出てくるもの、かように期待しておるものでございます。
そういう中で、
中小企業金融について申し上げますと、
中小企業金融は
総体としては私は順調に推移してきているのではないかと思っております。すなわち、
相互銀行あるいは
信用金庫等のいわゆる
中小企業専門金融機関の
貸し出しの
伸び率は、
引き締めを始めましてからも高い
水準を維持しております。それから、そういう
中小企業専門機関よりもむしろ大きい量を
中小企業金融に回しております
都市銀行や地方
銀行について見ましても、
中小企業向け貸し出しの全体の
貸し出しの中における
比率というものは、昨年をかなり上回る
水準でいま行なわれております。
ただ、
企業倒産が統計的にはこのところ
増加の
傾向を示しております。この辺のところは、私
どもとしても常に関心を持っておるところでございますが、その
実態などを中小公庫の
調査部あるいは興信所というものを通じて調べてみますと、どうも昨年の秋の
金融が非常に緩和してきた時期に、非常に無理な
業容拡大をはかっていたというものがこのところ行き詰まるという例が多いようでございました。健全なあるいは堅実な
中小企業が
金融引き締めのために非常に困っておられるという例は私
どもは非常に少ない、むしろそういう
状況ではなくて、
中小企業金融の疎通はいまのところは順調にいっているのではないか、これはあくまで
総体的な話でありますが、そういうように考えております。
現在の
経済活動の中で、御
承知のように
中小企業部門の
比重は非常に高くなってきております。そういう
実態があるからでございましょうが、先ほ
ども申しましたように
中小企業向け貸し出しが全
金融機関の
総体の
貸し出しの五割近くまで来ておるわけであります。そういう
意味からいたしますと、
中小企業金融を完全に
引き締めのらち外に置くということは、これは考えるべきではございませんが、これからも
中小企業金融についてはできるだけの
配慮を行なっていく必要がある、かように考えております。
なお、
住宅ローンという問題がございます。これにつきましても、今日の社会的な要請という点から考えまして、各
金融機関につきましてはできるだけ
配慮をしておるようでございまして、
貸し出し増加額の
水準は、これまでの実績以上維持する、
引き締めになったからといって従来の
貸し出しの
水準は減らさないということでやっておるというように見受けられます。
ただ、長期的な問題といたしまして、
住宅金融というものが安定的にこれからの
経済の中で定着していくという点からいたしますと、まだまだ検討する問題は多かろうかと存じます。そういう
意味からいたしますと、たとえば
金融機関が金を貸しておる、これは二十年ぐらいの
期間で貸すわけでございまして、そういう
貸し付け債権ができるだけ
流動化して、次にまた新しい要望にこたえられるように
債権の
流動化をはかるにはどうしていくかという問題もございます。あるいは
貸し付け住宅金融の
専門会社というものを育成していかなければならないという問題もございます。こういう点につきましては、今後あるいは
法改正をお願いするというような問題も含めまして、
金融制度の
基本的な問題でございますので、
目下金融制度調査会において審議を進めておりまして、できるだけ早く結論を出そう、かように考えております。
以上、簡単に最近の
金融情勢を
中心にしてお話を申し上げましたが、申すまでもなくきわめて流動的な
事態でございます。これからも
日本銀行と非常に緊密な連絡をとりまして機動的に
金融政策を行なって、一日も早く現在の
経済が安定的な
状況に戻ることを期待しておるわけでございます。同時に、長期的な問題として、短期的なそういう
景気変動にいかに対処していくかという問題とは別に、より長期的な問題として私
どもは
金利の
あり方と申しますか、
金利政策というものが、今後十年、二十年という
わが国経済社会がうまく回転していくことを考えますと、
金利政策というものが円滑に運営されなければならない、かように考えております。
そういう
意味からいたしますと、
金利政策のいわば根幹、
基本ともいえます
預金金利の
あり方について、これができるだけ硬直化しないようにしていくことも考えていかなくてはいけないのではないか、かように考えておるわけでございまして、そのためにいかにして弾力化できる仕組みを
経済の中につくっていくかということがこれからの大きな問題ではなかろうかと考えております。
そういうような
問題意識からいたしますと、たとえばこれからの
福祉社会というような
あり方から考えますと、たとえば
個人の
貯蓄というものと
法人の
事業資金というものに対して、これまで同じ
預金金利を適用していたこと自身についてもあらためて考え直すべきではないかという
問題意識を持っておるわけでございまして、こういう点でまずその礎石をつくるという
意味からいたしまして、
個人の
貯蓄性預金、
法人預金というものの分離というようなこともこれから検討していくべきではないか、かように考えておるわけでございます。
はなはだ簡単でございますが、御
説明にかえさせていただきたいと思います。