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1973-11-21 第71回国会 衆議院 大蔵委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十一月二十一日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君    理事 大村 襄治君 理事 木村武千代君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 阿部 助哉君 理事 武藤 山治君    理事 荒木  宏君       越智 通雄君    金子 一平君       木野 晴夫君    小泉純一郎君       三枝 三郎君    塩谷 一夫君       渡海元三郎君    中川 一郎君       坊  秀男君    村岡 兼造君       毛利 松平君    佐藤 観樹君       高沢 寅男君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    村山 喜一君       山田 耻目君    増本 一彦君       広沢 直樹君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君         労 働 大 臣 加藤常太郎君  委員外出席者         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         給与局長    茨木  廣君         経済企画政務次         官       橋口  隆君         経済企画庁長官         官房参事官   有松  晃君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主計局次         長       長岡  實君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         国税庁直税部長 田邊  昇君         文部省管理局教         育施設部助成課         長       西崎 清久君         農林大臣官房参         事官      山田 岸雄君         農林省農蚕園芸         局肥料機械課長 前田 耕一君         資源エネルギー         庁石油部精製流         通課長     松村 克之君         労働省労政局長 道正 邦彦君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         建設省住宅局長 沢田 光英君         自治省財政局地         方債課長    小林 悦夫君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 九月二十七日  辞任         補欠選任   木野 晴夫君     竹下  登君 同日  辞任         補欠選任   竹下  登君     木野 晴夫君 十一月七日  辞任         補欠選任   木野 晴夫君     林  義郎君 同日  辞任         補欠選任   林  義郎君     木野 晴夫君     ————————————— 九月二十七日  一、銀行法の一部を改正する法律案広瀬秀吉   君外九名提出、衆法第四一号)  二、国の会計に関する件  三、税制に関する件  四、関税に関する件  五、金融に関する件  六、証券取引に関する件  七、外国為替に関する件  八、国有財産に関する件  九、専売事業に関する件  一〇、印刷事業に関する件  一一、造幣事業に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。村山喜一君。
  3. 村山喜一

    村山(喜)委員 最近の物価インフレという問題は、石油危機と相まちましてますます深刻な状態になってまいりました。そこで、いままで政府金融引き締め政策をとりながら、総需要抑制政策ということで、公共事業等繰り延べ等も含めてやってまいったわけでございますが、約一兆円の繰り延べを正式に決定をしたということでございますが、現在どういうような実績になっておりますか、まずそれから承りたい。
  4. 長岡實

    長岡説明員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、本年度一兆円に及ぶ公共投資関係財政投融資関係繰り延べをやっておりますが、上半期末の契約達成見込み例年よりもずいぶん押えまして五五・八%といたしまして、各省、各機関等で努力いたしました結果、実績はさらに一・一%下回ります五四・七%という契約率になっております。従来の率からいたしますと、この五四・七%というのは相当低い数字でございまして、四十七年度上半期公共事業等契約率が七三・九%、四十六年度七六・七%、四十五年度六五・八%、前三カ年に比べましても非常に契約率は下回っておるということが言えると存じます。
  5. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから、契約率の問題だけではなしに、いわゆる公共事業財政投融資面からの数字で答えてください。現在幾ら繰り延べという実績になってきているか。
  6. 長岡實

    長岡説明員 ただいまの御質問が一兆四百億円の内容別にどの程度契約達成率になっているかということでございますと、いまちょっと私、手持ちがございませんので、至急調べて御報告申し上げますが、全体といたしますと、約一兆円の五四・七でございますから、五千億程度ということになるわけでございます。
  7. 村山喜一

    村山(喜)委員 私が聞いたのでは、公共事業関係財政投融資と合わせて、国のほうの純減、純繰り延べといいますか、これが七千二十八億、それに地方分が三千四百億、合わせて一兆四百二十八億、この数字は間違いないですか。
  8. 長岡實

    長岡説明員 けっこうでございます。
  9. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、これは契約を保留している分だ。したがって、様子が変っていけば、これは契約を取りかわして公共事業の着手に当たるのだというかまえの数字ですね。したがいまして、繰り延べではあるけれども、現在のところは繰り越しにする意思はない、そういうような性格のものですか。
  10. 長岡實

    長岡説明員 先ほどちょっと私、間違ったお答えを申し上げまして恐縮でございましたが、契約額につきましては別途数字お答え申し上げます。  なお、現在の御質問に対しましては、現在のところ私ども繰り延べ、いわゆる施行時期の調整という方針を変えておりませんので、経済情勢いかんによっては機動的に対処し得る態勢を留保しておるということになろうかと思います。
  11. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで山本政務次官、いまとにかく基礎資材といいますか、鉄が上がる、セメントが不足をするというような形の中で、今度補正予算も計上されるようでございますが、四十八年度の当初予算が、学校建設等については一〇%アップ処理をして、その後やりくりをしながら、単価アップ次官通達か何かで処理をした分が約一〇・九%ぐらいあったと思いますが、今度また補正予算で、それでは家が建ちませんので一〇%程度単価アップを認める、そしてそれに伴う財源措置を講じようということで、三〇%アップぐらいの形になるような単価補正と、同時に財源措置を講ずるというようなことになるようでございますが、いまの情勢の中ではたしてこれだけのものが消化できるのか、これをもう政府としては明確に結論を出してやるべき段階にきたと私は思うのです。そうでなければ、これは単なる繰り越しでございますというような腰の定まらないやり方では、このインフレの中での財政政策の運営というのはできないのじゃないか。もうはっきりそれだけの金に見合う資材というものが供給できない状態がきているわけですから、ここで予算を削減して、そして繰り越し措置をとるか、何か明確な態度をとらなければならないのではないだろうかと私たちは見ているわけでございますが、あなた方は、金さえ用意をすればそういうようなものはできるんだ、そしてまた、繰り延べをやっていかなくてもやっていけるような新たな経済情勢の発展が来年の三月までの間にあると、こういうような見通しをお持ちでございますか。その見通しがあるならば、政務次官答弁をいただきたい。
  12. 山本幸雄

    山本説明員 仰せのとおり、いまは物のほうの供給面からの制約が非常に強くなってきている。したがいまして、いまお述べになったような一部予算補正をするもの、たとえば学校義務教育関係施設、あるいは社会保障関係施設といったものは、ほんのわずかではありますが補正をいたしますけれども、全体としては、単価増によるところの事業量、つまり資材高に食われるほうの事業量はそれだけ減少をしておるものと考えるわけであります。予算措置としては増額をしない、こういうたてまえでやっておるわけであります。  そこで、いまの繰り延べなのか繰り越しなのかということになるわけですけれども予算上のたてまえとしましては繰り延べということでやっておりまして、繰り越しという形にはなっておらないのは仰せのとおりでございます。しかし、実際問題として、これはそれぞれ工期の問題もございますし、年度内にやれるかという問題もいろいろあるわけでございまして、その辺のところもよく今後考えてみなければなるまいと思いますけれども、現在のところは、一応事業繰り延べということで推移をしておるところでございます。  今後については、物資需給状況をにらみ、あるいは経済全体の状況をにらんで考えてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  13. 村山喜一

    村山(喜)委員 私たちは、物価福祉、それに国際収支の三重苦を解消するんだということで四十八年度予算にたいへんな大型インフレ予算が計上されたときに、あまりにも公共投資が大き過ぎるのではないかという指摘をしておる。現実にそういうような事態が生まれる中で、いま一兆円の繰り延べをしなければならないという事態にきておるわけですが、これはもう繰り越しをせざるを得ない情勢に私たちはあると思う。総需要抑制政策という上から、財政面からの物価鎮静化のためには、そういうような決断をしなければならない段階に私はきていると思う。それをやらないところに、自分たち政策失敗を認めない、そして物価が上がるのをこれはやむを得ないというような形で見のがしている、そこに政治の怠慢があるのではないですか。やはりもう削るべきものは削って処置をするという段階にきているんじゃないか。その大胆な政策の提示はみごとに失敗に終わったことは、客観的な事実から見ても明らかなんですから、私は、それに対応して、この際、やはりそういう路線というものを修正をする、これが物価鎮静化に役立つ財政当局がとり得る一番の措置ではなかろうかと思うのですが、そういう決意はございませんか。
  14. 山本幸雄

    山本説明員 今日の情勢は、全く物の面からの制約が非常に強く出ておるということでございまして、当然にそういった面からの予算執行ということを考えていかなきゃならないわけでございます。したがいまして、こういう繰り延べ措置によって物の需給とにらみながら予算執行をしていくという体制は、政府としても当然にとっておるわけでして、物の需給をにらまないで需要をふやすという方向でものを考え予算執行をしておるというわけではございません。考え方としては、まさにおっしゃるとおりのやり方で進んできておるわけであります。
  15. 村山喜一

    村山(喜)委員 まあ政務次官にその政治的な決断答弁を求めることは無理だろうと思いますから、これ以上の追及はやめておきますが、しかし、現実の問題はそういう状態にあるということは、あなたも内心はそういうふうな認識をしていらっしゃるだろうと思うのです。したがいまして、今日の異常なインフレ下にある状態の中で、どうしたら物価抑制物価の安定をはかることができるかという面を最大の目標にするんだというのであるならば、私は、次の通常国会が開かれた冒頭において、田中総理がそういう決断の姿勢を示されることを要求をしておきたいと思う。  そこで、この石油危機を迎えまして、第二点の質問でございますが、来年度予算編成骨格予算でいくんだ、肉づけは参議院選挙か済んでからやるんだというような新聞報道がちらほら出ているようでございます。  そこで、一体その予算編成方針というのは、いままでは内部的に、これ以内のワクの中で各省要求を取りまとめてそれぞれ査定の段階に入っていると思うのですが、それは内部的な仕事の範疇に属するわけでしょうけれども、一体、骨格予算という概念はどういう筋合いのものなんですか。そういうような方針でいかれることをすでに決定をされているわけですか。とするならば、その骨格予算暫定予算との性格の違いを、この際明確にしておいていただきたい。
  16. 長岡實

    長岡説明員 骨格予算ということばは、地方財政の場合によく使われることばでございまして、国のほうがたとえば暫定予算を組むといったような場合に、国庫補助事業がどの程度の規模になるかわからないというようなことから、たとえば前年度と同額を一応当初予算に組みまして、国の予算の全貌が明らかになったときに新たに肉づけをするといったような場合に、骨格予算と呼んでおります。そういう意味におきまして、国が骨格予算的性格予算を組んだという例は、私の記憶ではないと思います。暫定でつないだことはございますけれども、そういう意味での骨格予算をつくった例はないと思います。  それでは来年度予算はどうかということでございますが、現段階におきまして、私どもは、骨格予算で来年度予算編成に臨むという考えはございません。
  17. 村山喜一

    村山(喜)委員 とするならば、経済見通しなどをつけて、歳入面と歳出のバランスをとりながらこうやっていくんだという方針はお立てになるわけですね。とするならば、経済見通しを立てられる場合に、的確な指標というものをどうして得られるつもりですか。
  18. 長岡實

    長岡説明員 政府経済見通し経済企画庁中心になってつくるわけでございますけれども、やはり来年度予算編成時点までには、その時点で把握し得る最大限の資料に基づきまして来年度経済見通しを立てていくということになろうかと思います。
  19. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、骨格予算暫定予算ではなくて、いわゆる通常ベース予算編成をやるんだというのが政府の統一的な見解だというふうに考えてよろしいですね。
  20. 山本幸雄

    山本説明員 おっしゃるように、例年のとおりの予算編成方針やり方でやる、こういう方針でございます。  ただ、おっしゃるように、まずその前提とならなければならぬ経済見通しにつきましては、これは鋭意いま経済企画庁中心にやっております。ただ、御存じのように、石油事情という新しい要件が出てまいりましたので、たいへんにいろいろな不確定要素もございますけれども、しかし、それらをできるだけまとめて、そういう経済見通しをつくって、しかる上でやる、こういう予定でございます。
  21. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間の割り当てが三十分でございますからあまり質問ができませんが、いま消費抑制ということで、年度内減税はもちろんのこと、来年度の大幅な減税もこれまた差し控えるべきだという意見等も出ているようでございます。物価が上昇をしていく中で、家計部門赤字になっていく。そういう中から国民個人消費支出割合は、四十六年度で実質五〇・二%という統計上の数値国民所得統計年報に出ておるわけでございます。四十七年度も、これは十二月に統計的な数値が出るそうでございますが、大体五〇%程度というものは、これはあまり上下をしないのではなかろうかとわれわれは見ているわけです。その状態の中でそういうような個人消費割合が高まってくるから、これを押えるためにやらなければならない、こういう考え方をお持ちなのか。その五〇%というのは私たちは低過ぎるのではなかろうかとさえ考えているわけでございますが、一体そういうものの発想のしかたというものはどこから生まれてくるのかひとつ承っておきたいと思う。  というのは、この国民所得統計年報の中で資本形成勘定を調べてみますと、昭和四十六年度において三十一兆円の総貯蓄形成をされている。その中で、いわゆる個人貯蓄というものが十兆五千億ですか、法人の留保とそれから資本減耗引き当てに対するものが十五兆円、政府経常余剰というものが約五兆七千億、こういうような数字が出てきているわけです。とするならば、法人部門におけるところのいわゆる資本形成というものが約半分を占めている。そういうような情勢現実にはもっと強化されてきているのではなかろうかと思っているのですが、いまの統計数値が示すところによれば、個人貯蓄割合貯蓄性向というものは、こんなに物価が上昇していってもほとんど変わらないわけですね。しかも世界で一番高い貯蓄性向を持っている。このときに、個人消費支出が非常に高いから、これを抑制をするために、幾ら家計部門赤字になっても、物価調整減税年度内にはやるべきでない、来年度も大幅な減税はやるべきでない、こういう問題のとらえ方がそもそも間違っているのではなかろうかと思うのですが、政務次官、どういうふうにお考えになりますか。
  22. 山本幸雄

    山本説明員 確かにおっしゃるように、所得税の二兆円減税について、いろいろ税制調査会などで論議をしておりまする過程において、石油事情のこういう変化というものも起こってまいり、総需要抑制という観点から、需要を刺激するようなやり方は一切避けなければならない、そういう考え方からそういう慎重論が起こってきたんだろう、これは仰せのとおりだと私は思います。しかし、そういう認識はどこから起こってきたのか、これはいろいろ議論のあるところだと思いますけれども、ただいまのところ、この二兆円減税についてはやはり二の形で推進をしていきたい、そういう考え方でいま税制調査会にも御審議を願っておるわけでございまして、これを取りやめるとか、あるいは形を変えるとかという考え方は持っておらないのでございます。  ただ、当面こういう情勢でございますから、来年度、初年度はどういうふうにやっていくのかという問題については、また考え方がいろいろあるわけでございまして、その辺のところはひとつ今後の課題としてやっていきたい、こう思うわけですけれども減税そのものについては既定方針でひとつ貫いていきたい、こう考えております。
  23. 村山喜一

    村山(喜)委員 この前全国の町村議長会がございまして、その関係人たちが、私たち県内出身国会議員との対話会をやったわけでございます。そのときに、学校建設補正予算の問題やあるいは社会福祉生活基盤のそういうような建設がおくれないように、今度の国会補正予算が計上されるという話をしたわけですが、ところが、町村議長人たちが言うには、それはその予算措置をしていただくことはありがたいけれども現実にわれわれが業者に依頼をして頼む、それはまあ中小業者です。大手業者などは平炉メーカー電炉メーカー契約をしまして、非常に安い値段で鉄材等を手に入れることができますが、そういう学校の建物をつくるような中小零細企業者の場合には、そういう措置をとれません。それで、大手土建業者が手に入れる倍ぐらいの価格で引き受けなければならない。となれば、とても入札に出しても応じてくれる人はないだろう。だから、この際もう金だけではなくて、現物を政府がきちっと供給をしてくれるという体制をつくってくれない限りどうにもならないということを言っておりました。いままさにそういうような物不足状態の中にきていると思うのですが、そういうような面に対する配慮を、財政当局はどういうような考え方でおいでになるのかということをお尋ねしておきたい。
  24. 長岡實

    長岡説明員 お答えを四十八年度と四十九年度予算編成にあたっての私ども考え方に分けて申し上げたいと存じますけれども、四十八年度は確かにおっしゃるとおりの実情であろうと存じます。したがいまして、私ども年度の途中でほぼ二回にわたりまして建築関係補助単価につきましては単価アップ措置をとりまして、できるだけ実情に合わせるように指導しておるわけでございます。一方、非常にむずかしい問題といたしまして、先ほど冒頭に御質問がありましたように、公共投資全体としては抑制していかなければならないという経済情勢のもとでございますので、原則的にはその単価是正分事業量の圧縮によってカバーするということで臨んでおります。ただ義務教育施設のように、来年度までにはやはり所要の坪数を確保しなければならない、したがって事業量を減らすことができないというものにつきましては、今回の補正必要最小限度と申しますか、所要追加措置を講ずるという方針考えておるわけでございます。  来年度予算の問題につきましては、先ほど来お話が出ておりますように、私ども骨格予算ではなくて本予算で臨みたいと考えておりますけれども、その場合には、来年度主要建設資材需給見込みと申しますか、そういうようなものをでき得る限り資料を集めて推定をいたしまして、その物資面でのショートが起きないようないわゆる土木建築関係の投資的な経費と申しますか、そういうようなものの計上を考えたい、かように考えております。
  25. 村山喜一

    村山(喜)委員 もう時間がなくなりましたので、これからのインフレ下では、物不足時代における予算つけぐあいというのは計量経済学の手法を取り入れたしかたをやらなければ、これは金だけがついたって所期の目的が達成できないという時代に入ってきたと思うのです。そういうような意味で、昔やったように、これだけの仕事をやるのにはこれだけの物が要るんだというその計算方式をもう一回復活をしてもらって、的確な措置をとられるように要請を私のほうでも申し上げておきたい。それと同時に、四十八年度予算がこういう状態で一兆円も公共事業繰り延べをしなければならないような状態になったという反省の上に立って、やはり予算編成はどうあるべきかということをよくお考えをいただかなければ、これは財政面からインフレを促進をするということがいままでも十分指摘されてきたわけですから、その点は十分お考えを願いたいということを要請申し上げておきたいと思います。  最後に、吉田銀行局長、一九七二年の三月末の金融機関別預金残高が約九十二兆、それにことしの三月末の金融資産預金残高が百十六兆というふうになっておりますね。その伸び率は二一%の増ですが、この中で個人預金伸び率がどういう割合になり、法人伸び率幾らになっているのか、その数字を明らかにしていただきたいのと、そういうような状態の中で法人企業が、先ほど国民所得統計の中でも私数字指摘いたしましたが、資本形成勘定の中においてはまあ十五兆が法人に帰属をする、個人預金のなには十兆程度、こういうような流れ方ではたしていいのかどうかということをもう一回全体的に洗い直していかなければならない段階に来ているのではなかろうかと思ったのでその数字を申し上げたわけですが、それに対してどういうようなお考えであるかを簡潔に説明を願いまして、私の質問を終わりたいと思うのです。
  26. 吉田太郎一

    吉田説明員 いま御指摘金融資産の中での個人法人の分け方という御指摘でございましたが、たとえば郵便貯金でございますとか、そういうものについて必ずしも個人法人ということを厳密に分けることがむずかしいので、正確な統計としてはお答えしにくい。ただ、こういうことからいたしますと、日本銀行がつくっておりまする資金循環という統計がございまして、それに個人部門法人部門がどのように分かれておるかという統計はございます。それで見ますと、これは非常に長期的な傾向を示すものでございますので、四十年から四十七年と、それから三十年と四十年代というように比較してみますと、たとえば三十年代と四十年を比較してみますと、個人が六・一倍、法人が七・六倍のふえ方を示しております。これに対して四十年から四十七年の比較をとってみますと、個人が三・三倍、法人が三・一倍、かようになっており、むしろ個人のほうが最近はふえている傾向になっているようには思います。  ただ、先生の御指摘のように、所得の分配のあり方としてはたしてそうなっておるかどうかとなりますと、むしろ国民所得ベースの分配率の問題だろうと思います。そういうことからいたしますと、個人の分配率は多少低くなっておるということは言えるかと思います。こういうことはやはり福祉社会の実現と申しますか、あるいはこれまでの高度成長という経済の中で非常に生産力化しやすい部門に資源を投入していって経済をしてきた、これは法人という手段を通じてそういう経済の回転が行なわれてきた、そういう高度成長という中でのいろいろな矛盾にわれわれは今日当面しておるわけでございますので、当然そういう行き方は、経済の、社会の中のあらゆる仕組みについて考え直していかなければならない、それがわれわれ現在直面しておる問題ではなかろうか、かように考えております。
  27. 村山喜一

    村山(喜)委員 これで終わりますが、全国銀行とそれから相互銀行、それに信用金庫部門の一年間の個人預金伸び率を計算してみると、大体八兆円、それに法人関係は十一兆円。それだけではございません、そのほかの金融資産の問題もありますし、金融資産以外の土地を大企業、大法人がどれだけ取得をしたのか、あるいは株をどれだけ取得をしているのかというような問題全体の法人部門とのつり合いを考えてみますと、確かに法人のほうに富が集中をし過ぎているということが指摘できる統計的な数字がこの数年来出てきたようでございまして、いまおっしゃるような方向の中で、私は、やはり福祉社会に転換をしていく場合にはどうなければならないかということをマクロ的な立場から政策全体の中できちっと位置づけをしていただくように、特に山本政務次官に要請を申し上げて、質問を終わります。
  28. 鴨田宗一

    鴨田委員長 武藤山治君。
  29. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 政務次官、いま村山委員質問をした、物価上昇による単価の上昇で請負工事ができないというような状況である。その事実関係は大蔵省も十分認識をしているようでありますが、その問題について、もうちょっとこまかい点で確認をしておきたいと思うのであります。  先ほど長岡さんは、わずかであるが補正をする、四十八年分についてはすでに二度単価の見直しを命じた、ただし、事業量自体はふやしていない、いまの事業量の中で単価だけ補正をすれば、結局学校などの場合にはそれは不可能である、したがって、公立の学校については別に考えている、こういう話でありますね。  実は私どもの地元で小学校四校、本年度着工して工事をいま現にもうやっている。その中で、ことしの六月ごろ契約をした会社と十月ごろ契約した会社では、単価がべらぼうに違うわけであります。それは卸売り物価の最近の上昇の推移を見ましても、鉄鋼の場合、四十八年五月が前月比〇・九、六月が一・七、前月比ですよ。七月が三・一、八月が四・九、九月が四・九、十月は一・二とやや落ちつく傾向でありますが、鉄鋼がこのように前月比でべらぼうに上がっておりますから、鉄鋼材が予想した六月ごろの契約とはお話にならぬという実情にある。それからセメントの問題も、六月の一番低いときは前月比〇・一が、七月〇・六、八月が一・四、九月が二・三、十月が一・八%というぐあいに、セメントと鉄鋼の値上がりがべらぼうですね。さらに大企業の生産される工業製品、アルミサッシや何か、そういう金属製品というようなものを見ると、これはべらぼうに上がっている。金属製品などは四十八年五月が〇・七、その翌月からは一・三、二・三、一・五、二・四、三・六。したがって、校舎を請け負った業者が、たとえば早いのは六月ごろから大体契約をしていますね。六、七、八月ごろ契約した小中学校の建築については、特別に何か配慮をしなければならぬ。これについては過去二回の単価の引き上げの中で救済措置はとられているのか、とられていないのか。とられているのですか。
  30. 長岡實

    長岡説明員 先ほど私、年度途中で、二回にわたりまして単価改定をしたと申し上げておりますけれども、最初は六月に、公立文教施設で申しますと一一%ぐらいの単価の上積みをしたわけでございます。これにつきましては大体八月一日付でやっておりまして、先ほど武藤先生おっしゃいました六月ごろからの契約については一律にこの単価アップを及ぼすということにいたしております。  さらに、それでもなおかつ、ただいま御指摘がございましたように、建築資材等の値上がりがとどまらなかったものでございますから、十月一日以降の新規契約に、再改定の単価を、これも約一割でございますけれども、適用することにしまして、その場合、それ以前の既契約分につきましては、その時点で残工事量がございますので、その残工事量に応じまして、やはり単価引き上げ等の調整措置はとることにする。通常の場合でございますと、一度契約いたしますと、あくまでこれは請負契約でございますから、既契約分はそういう措置はとらないわけでございますけれども、ただいま御指摘がございましたような、いわば一種の異常な値上がりでございますので、そういうものにつきましても、残工事量等に応じて所要調整はとるようにということで文部省と話をいたしております。
  31. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 十月一日以降の手直しの場合、一応何%手直ししようというのですか。六月の場合は一一%上積みした。今度は、十月一日以降の分は幾ら上積みするのですか。
  32. 長岡實

    長岡説明員 これはいろいろな構造がございますけれども、代表的なものは鉄筋コンクリートの建物でございますが、一〇・八%です。
  33. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、六、七、八、九月の間に契約をして、工事を現にやっている場合ですね、その場合には、六月以降だと大体二一・八のアップを認めるということになりますか、六、七、八月ごろ契約した業者については。
  34. 長岡實

    長岡説明員 単価のとり方でございますけれども、実は四十八年度予算を組みます際にすでに四十七年度に比べますとある程度単価アップがはかられておりますので、四十八年度予算単価、当初に予算に組みました単価は四十七年度単価よりは、このような異常な値上がりは想定いたしておりませんでしたけれども、ある程度単価是正をはかっておりますから、ものによって違いますが、これがおそらく七、八%はあろうかと思います。それに、第一回の単価是正が一一・一でございますか、それから第二回が一〇・八、これだけのものがだんだん乗ってまいります。そういたしますと、ただいまの六−八月ごろに契約をしたものについてはどうかということでございますが、その契約者に対しましては、四十八年度予算に織り込んだ単価アップと第一回目の単価アップ一一・一については当然単価は引き上げられますし、なおかつそのような業者で十月以降に残工事があるものについては、既契約分といえども残工事量等を参考にいたしまして第三回目——第三回目と申しますか、年度途中の第二回目の一〇・八%の単価是正も反映されるということになろうかと存じます。
  35. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その是正の財源は、地方公共団体に対しては交付税でいくのですか、国庫補助金で新たに追加として出すのですか。今度の補正予算の中にそれを織り込むのか、補正予算の中に織り込むとすれば、総額幾らぐらい補正予算に織り込むか、この点明らかにしてください。
  36. 長岡實

    長岡説明員 公立文教施設については補正予算に織り込みます。一般的な公共事業等につきましては事業量を圧縮いたしますが、公立文教施設については、国庫補助部分は補正予算で追加計上をし、地方負担分については交付税で手直しをする、こういうことになろうかと存じます。  いまのところ、補正予算に計上する単価不足分と申しますか、その追加は、公立文教施設で約五十一億でございます。
  37. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 長岡さんのいまの説明、これがやはり地方自治体に徹底していないですね。あとで、参考のためにこの八月一日付の通達をぜひ手元にいただきたいと思うのであります。  というのは、私どもの地元では、地場の中小土建業者が小学校を請け負ったけれども、鋼材は上がっちゃう、セメントは上がっちゃう、工事できない。ぼくが市長に談判してみると、いや、それは国のほうから金がくるというはっきりした保証がなければとても手直しできない、契約しちゃったんだからどうにもならない。だれが一番被害を受けるかというと、来年から子供が学校に入れないということが一つある。同時に、請け負った業者がみなつぶれちゃう。もうすでにうちの地元では、二、三日のうちにつぶれるのですよ。というのは、金があれば問題ないですよ。高くなったからといって、銀行へ飛び込んで三千万貸してくれ、赤字分だけ借りようとしても、銀行は御承知のように金融引き締め、びた一文も出さない。これでは、せっかくいま小中学校の改築を全国あちこちやっていても、おそらく足利だけの問題ではなくて、全国的に市長村はたいへん困っていると思うのですね。だから、これは緊急を要するのですよ。もうこれは年明けてなんていったら、ばたばた請け負った善良な業者がこの物価インフレの犠牲になる。これはどうしたらいいか。政務次官、ここらひとつ迅速に通達を出して、とにかく何らかの方法で、国が必ず責任をもってめんどう見るから、一時市町村は何とか早急に手当てせい、市町村の独自にやってよろしい、そういうきちっとした信頼できる通達というものは出せないものなんですか。政務次官のひとつ御見解を承りたい。
  38. 山本幸雄

    山本説明員 仰せのように、確かに建設資材の騰貴というものによる中小建設業者のお困りというのはよくわかるわけなんです。特に鉄鋼が非常に上がっておる。鉄鋼の中でも、口径の小さい小形棒鋼が非常な値上がりをした。その小形棒鋼につきましては特別の措置がしてございまして、これは契約約款の中に、異常な値上がりをしたときはその請負代金の変更ができるという約款もございますので、これを動かしましてすでに手当てがしてあるわけでして、特に鉄鋼については、請負金額の中に含まれる価格については一応措置できたのじゃないだろうか。ただ、非常な物不足ということがあり、偏在をしておる。特にこの小形棒鋼については、メーカーが非常に零細な業者の方が多い、それを掌握するのがたいへんむずかしい、こういうこともありまして、中小業者がたいへんお困りになったということは確かにあると思います。いまお話しの、特に事業費はもう原則はふやさない、結局事業費をふやさなければ、単価アップになれば事業量が減る、そういうことでやるほかない。ただ、先ほど申し上げるように、学校社会福祉施設については別扱いにしようということでやっておりまして、いま文部省を通じてそういう趣旨も末端市町村に徹底をさせておるという段階でございます。
  39. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 金が幾ら出るかということがわからぬと、末端の市町村は財源不足で、文書だけいったのではなかなか手がつけられぬ、これが実態なんですよ。だから、そういう問題は早く片づけないと、これはもう来年の入学期に大騒ぎになる。いま政務次官はまあ鉄のほうは心配ないと言うけれども、とんでもない話ですよ。私が個々の業者の仕入れた値段をずっと調べてみたら、ひどいのはわずかこの三、四カ月で二倍半になっておる。だから、そういう状況というものをすみやかにやはり手当てできるように、これは希望をしておきます。  時間がありませんから次の問題に移りますが、先ほどの次長の答弁で、金の措置は五十一億円今度の補正予算で組むんだ、こういうはっきりした金額も示されたので、すみやかにひとつ末端市町村が安心して契約にさらにプラスできるような措置がとれるように、各省とも特段の御努力を願いたい。  第二の問題は四十八年度補正予算の問題でありますが、いよいよ政府は一日から通常国会を召集する。この中で四十八年度のただいま申し上げましたようなインフレによる手直しの予算も含れであろうし、米価の問題もあるだろうし、公務員の給与の問題等々いろいろあると思いますが、本年度の自然増収は約一兆五千億円くらいある。これはうしろにいる大倉さんも、主税局の見通しでは大体そのくらいは出るだろう、こういうお話でありますが、補正予算の規模はどのくらいにしてこれはまだ大ざっぱな概算でありましょうが、どんな項目に割り振りをしようとするのか、こういう試算はいまどんな程度なんですか。これは長岡さんのほうですか、政務次官ですか、どちらかひとつお答えを願いたいと思います。
  40. 長岡實

    長岡説明員 お答え申し上げます。  補正予算の内容につきましてはいま鋭意計数整理をいたしておりますので、ごくラウンドな金額で申しますと、先ほどおっしゃいましたように自然増収が一兆五千億、それで補正の規模は一兆円を下回るというくらいの規模を考えておりまして、裏から申しますと、五千億を上回る金額を本年度発行を予定しておりました公債の減額に充てたい、かように考えております。  一兆円を若干下回る補正規模の中身といたしましては、大きなものは、公務員の給与改定に伴う給与費の追加額、それから食管の繰り入れ、それから先ほど来お話がございました公立文教施設等の単価是正の追加といったようなことがおもでございまして、金額的にはそれ以外に非常に大きな比重を占めますのは、自然増収がございますと当然その三税の三二%分は地方交付税の追加になりますので、地方交付税が約四千二百億円くらい追加が行なわれるといったようなことがおもな内容であります。
  41. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それはおもなものでしょうが、小さいもので、この前大蔵大臣はここでわが党の高沢委員質問に答えて、年度内に失対事業などの単価も上げなければならぬ、それから社会保証関係物価上昇というのを手直ししなければなりません、やります、こういう答弁を大蔵大臣はこの席でやっておるのでありますが、これらは補正予算でどうなりますか。
  42. 長岡實

    長岡説明員 先ほど申し落としましたが、たとえば生活保護費の関係あるいは生活保護基準の引き上げ、失対事業費の追加等につきましても、今回の補正で若干の補正措置がとられるということになろうかと思います。
  43. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その補正措置は、失対と生活保護基準だけをとらえてみた場合、何%くらい見ようというような議論をいましているのですか。
  44. 長岡實

    長岡説明員 生活扶助費で申しますと、当初四十七年度に対しまして一四%増の予算を組んだわけでございますけれども、その後の物価上昇その他を考えまして、緊急に十月から五%追加の方針を打ち出しまして、これをあと追いして補正で埋めるというかっこうになると思います。
  45. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それでは、補正予算はいよいよ近いうちに国会に提出をされますからこの程度にいたしまして、政務次官、来年度予算編成の大まかな姿勢と申しますか、いま政府考えている来年度予算編成というのはこういう骨格でこういう姿勢でやりたいのだ、その大まかなところをひとつ御発表願いたいと思います。
  46. 山本幸雄

    山本説明員 先ほども申し上げましたように、来年度例年のパターンで予算編成に臨む、年内に予算編成をやりたいという方針でございます。経済見通しがまず先行するわけでございますが、これをいま鋭意経済企画庁で計算しておる。大蔵省側としましてもいろいろの数字を検討をしておるわけでございますが、いずれにしろ来年度予算規模としてはできるだけ圧縮をするという方針でやらなければならない。本年度予算の来年度へ移行する当然増の経費も相当見込まれますので、予算規模はある程度圧縮していくということであれば、当然増を差し引けばあまりゆとりはないということでございます。  また一方において、例年と違いまして、先ほど来のお話しのように、物資需給という面をにらんで、物資需給に伴う予算というものの編成をやらなければなりませんから、この今回の石油事情も含めて、来年度主要建設資材、たとえば鉄鋼、セメント、骨材あるいは木材、塩化ビニール、塩ビ製品、そういったようないろんな主要生産資材が一体どれくらいの供給ができるかということもしっかりにらんで、それを今度は民間の消費あるいは官公需はどれくらいになるかというようなこともいろいろ物の面の計算をしっかりやって、そして予算を組まなければならない、こういうことでございまして、もう一つ端的に申せば、物の需要を伴うような支出についてはできるだけ抑制をしていく、公共投資については慎重に考えていかなければならぬ、こういうおおむねの姿勢であるわけであります。
  47. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次官、だいぶ大まかな点でも大まかなのが落っこっちゃっているけれども減税はどうするのですか。二兆円減税、総理は絶対やる、われわれも通常国会でやれということを三、四月の段階政府にずいぶん追及をして、来年は来年はということでことしは逃げられちゃって、年内減税はやらぬ、そういう減税の問題、国債の問題、こういう問題にあなたは全然触れていない。ちょっと政務次官として全体を把握する能力に欠けている答弁ではながろうかと思うのでありますが、それはさておいて、長岡さん、大蔵大臣は来年度予算編成方針を打ち立てる前に、各省からの要求を前年比二〇%から二二%増ぐらいの範囲で来年の予算規模を考えるというようなことを前々から言っておったですね。その際には石油問題はまだ起こっておらなかったわけです。現時点でも、各省からの要求は前年増二〇%という大蔵大臣が一、二カ月前に発表した基本的原則、これは曲げないのですか、それとも今日の時点では、そういう予算規模ではないぞという変更の傾向にあるのか、その辺はどのようにいまなっておるのですか。
  48. 長岡實

    長岡説明員 まだ大蔵大臣も来年度予算の規模も何%ぐらいの増加割合に押えるかということを明確には申し上げていないと思うのでございますけれども、気持ちとしては、とにかくでき得る限り圧縮したいということでs、その気持ちのあらわれがたとえば二二%といったような数字で表現をされたのだろうと思います。  率直に申しまして、来年度予算編成で私どもいま夜おそくまでやっておるわけでございますけれども、一番大きな問題は、社会保障費の当然増加というものが非常に大きな負担になりそうでございます。したがいまして、それを考えますと、巷間伝えられるがごとき低い予算規模ではたして押え込めるかどうか。ということは、社会保障費は弾力性のない経費でございますから、これをのみ込みながら、一方その他の経費に強烈なしわ寄せをして財政規模を圧縮するということにもおのずから限界がございますので、私どもできるだけの努力をして押えたいとは思いますけれども、まあある程度の規模にはならざるを得ない。ただその場合でも、十分に国民に御説明がつくような内容のものにしたい、かように考えている次第でございます。
  49. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 企画庁が経済見通しをどう立てるかが出ないうちはなかなか大蔵省としても試算できない、それはわかるのでありますが、大蔵省はさいふを預かっていて、出るほうは当然増はこのくらいになるということは積算できますね。いまの積算でいくと、当然増というのは大ざっぱにいって総額どのくらいになると思われますか。
  50. 長岡實

    長岡説明員 まだ実は変動的な要素がございまして、先ほど大事なことを申し忘れましたのは、現在の石油問題が一体来年度経済にどういう影響を及ぼすかといったようなことについては、まだいま詰めている段階でございますので、そのような要素が別にあるという前提でございますけれども、一応いま私どもが把握しております当然増経費というのは、二兆二千億を上回るのではないか。従来二兆円を上回ると申しておりまして、そのあと二兆二千億円程度になるのではないかということを申し上げたことがあろうかと思いますけれども、それをさらに若干上回るのではないかという程度の感じでございます。
  51. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次官、いま主計局次長は当然増二兆二千億ぐらい、あるいはそれをちょっと上回るかもしらぬと言われたのですが、いまの景気の動向から見て、大蔵大臣以外の人が、来年は二兆円減税は取りやめるべきだとか、企画庁長官などが言っておりますね。閣議で閣僚の中でそういうことを言う人が出てきている。われわれは、いまのインフレのときに大衆はもちろんインフレの犠牲を受けているのでありますから、これはやはりいまのふところぐあいを、インフレを鎮圧できるなら別ですよ、できないのでありますから、その犠牲を緩和するという意味から、やはり大減税は当然やらなければならぬ、庶民の立場を守ってやらなければいかぬと思うのでありますが、政務次官どうですか。二兆円減税所得税中心減税、これを引っ込めるなど断じて許せぬという決意ですか。それともぐらぐらと幾らか動揺しているのですか。あなたの率直な見解、決意のほどをお聞かせいただきたい。
  52. 山本幸雄

    山本説明員 先ほどもお答えしたわけですけれども、先ほどは予算編成方針はどうなるかというお尋ねでしたから減税の問題までは申し上げなかったわけですけれども、いま次長から御説明しましたように、当然増が二兆二千億以上にもなる。予算規模をかりに大蔵大臣が何%増と言うたにしても、それはまだ大臣としても確信のあることではないし、まだそれは非常に流動的であるということではございますけれども、巷間伝えられるような伸び率考えても、ほとんどもうあまりゆとりがないという予算編成に私はなるように思います。  減税の問題は、所得税二兆円減税というものはたいへんいい構想であって、私はこれはぜひ実現をさせたい。特に制度、仕組みとしてはぜひこれを仕上げていきたい。ただ先ほども申しましたように、今日の経済はまさに異常な状態になってきておりますから、これがどう推移していくのかという来年度見通しも、私は非常に大切なことではなかろうかと思います。政府としては、物価を総需要抑制ということでぜひ安定させるということでやっておるわけでして、そういう見通しに立てば、できるだけいまつくっておりまするような初年度の案で貫いていきたいと考えるわけでございます。
  53. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 減税はぜひ押し通していただきたいと思います。  企画庁の物価局長、いらっしゃっていますか。——小島さん、再三物価の問題で、どうもいつも同じようなところをまだ堂々めぐりしていてすかっとした気分になれないのでありますが、物価の番人として小島さん、ここ旬日の世界情勢や資源問題等の変化で、物価問題の動向というものも、一カ月前にわれわれがここで議論したときとは情勢が変わってきたような気がいたしますね。小島さんの諸資料を総合しての判断では、物価問題というのは現時点はどういうところが最も危険信号で、いつごろになればこの危険信号が片づいて、卸売り物価は大体何月ごろには横ばい、停滞になるだろう、消費者物価は何月ごろになれば停滞するだろう、そういうような見通しといいますか、少し物価問題についてあなたの見解を率直にひとつ承りたいと思います。
  54. 小島英敏

    ○小島説明員 石油問題が発生いたします前の段階でどう考えていたかということを、まずお話し申し上げたいと思います。  現在の日本の物価騰貴というのは、ある意味では慢性的な部分と急性的な部分が合併症を起こしていると思うわけでございまして、その意味では去年からちょっと異常な事態になってきたわけですけれども、その前の事態というもの、卸売り物価のほうは確かに安定しておりましたが、消費者物価というのはやはり成績のいい年で四%台、悪い年は七、八%、平均すると五、六%くらいは上がっていたわけでございまして、これはやはり生産性の上昇率格差からくる物価騰貴という定説になっておりまして、なかなかこれは一朝一夕には解決できない、相当根気よく構造対策等をやらなければいけない部面でございます。その意味では消費者物価——物価安定ということばは、厳密に解しますと、上昇率ゼロにならなければほんとうの意味物価安定ではないと思いますけれども、その意味では私どもは、消費者物価についてはどうしてもある程度の趨勢的な上昇というもの、つまり慢性的部分というものは否定できないわけでございます。  したがって、当面の私どもの目標とするところは、何しろ去年から出てきた急性部分をいかに早くなくしていくかということが緊急課題ということで考えていたわけでございます。その意味から申しますと、四月から総需要調整をはじめとして物価対策が進められて、中東戦争なかりせば、卸売り物価につきましては十月以降かなりいい方向に向かい始めていた。上昇は続けておりましたけれども、だんだん上昇率が鈍ってきて、年を越すと景気が相当ダウンするのではないかという見通しがむしろ一般的になり始めていたわけでございまして、だんだんに卸売り物価のほうは鎮静の方向に向かう。  それから消費者物価のほうは、やはり卸売り物価と消費者物価の間のタイムラグがございますし、それからことしは何といっても消費者物価が非常に上がりましたものですから、公共料金を非常に抑制的に扱いまして、全然ストップというわけにはまいりませんでしたけれども、米価、米の売り渡し価格も本年度内据え置き、国鉄もいろいろな経緯がございまして一年間延びるということで、本年度に関する限り、公共料金の平均値上げ率というものは一般に比べますと非常に低くなっているわけでございます。これはどうしても翌年にある程度あとを引く性格がございますから、したがって、来年度上半期くらいは公共料金の関係はかなり高く出る可能性があるということを考えますと、かりに卸売り物価は年末から来年にかけてかなり横ばい的になっていったとしても、消費者物価のほうはもう半年くらいは後遺症的なものが残るのではないかという感じを持っていたわけでございます。  それが最近の中東戦争からきた石油危機問題によって、かなり基礎的な条件が変わりつつあるわけでございまして、特に消費者物価のほうは、現在の石油規制がございましても消費財に関しては減産させないという基本方針で進んでおりますから、消費者のほうがあわてて買い急ぎをするというような、いわゆる仮需要が変な動きをしない限り、消費者物価について特に事態が非常に深刻になるというふうには現段階考えていないわけでございますけれども、卸売り物価のほうは、やはり今度の石油規制の結果、石油とか電力の割り当てがどうしても大企業のほうに大幅にしわが寄る形になっておりますから、そういたしますと、鉄鋼をはじめとして生産財関係の生産量がかなり減っていくことになるわけでございまして、そういたしますと、やはりそれに伴って総需要のほうをさらに調整してマッチさせない限りは、どうしても卸売り物価は基調的にまた強くなる可能性が大きいわけでございます。もちろんこういう事態になりますと、設備投資というようなものはどうしてもある程度鎮静化する動きが出てまいると思います。というのは、無理に設備投資をいたしましても、燃料がなければ操業できないわけでございますから、それならば、長期を要する投資は別として、来年度中に稼働できるようなつもりで投資をするというような動きは、かなり鎮静化する動きが当然出てくるわけでございますけれども、そういうこともある程度は期待できるわけでございますが、生産量の全体に見合って需要をうまくマッチさせるためには、やはり相当政策的に総需要調整をもう一段強化しなければいけない。それによって卸売り物価の上昇を極力排除しなければいけないということで、現在検討を進めている次第でございます。
  55. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかし、いまのお話でいきますと、生産量が石油不足でダウンをするから卸売り物価が上がる、そうすると、ますます心理的にも消費者物価に波及効果を及ぼして、物価高はおさまらぬ。これに、何かこれだという目玉は見当たらないのですか。たとえば物価局長がテレビ番組を二時間ぐらい独占して、国民に真相を訴える。物価局長じゃもう消費者が信用しませんか。総理大臣じゃ全然信用ゼロで、そんなこと言ったって言うことを聞かぬ、インフレをあおるようなものですね。日本でだれかいないのですかね、この人を通じて国民の心理状況を少し引き締めて転換をする。  あるいは、これは政務次官にお尋ねしますが、日本という国は言うなればアメリカというママさん、これは異常な子供思いで、日本という肥満型奇形児ができちゃって、いつもママさんの手を握って歩いていた。ママさんがどうも今度は中東戦争で、もうママさんにすがっていたってどうにもならない。さあ、おまえ一人歩きしろという状態に置かれつつある。こうなると、この肥満児一体どうしたら健康で健全な歩行ができるのか。これは一体、政務次官、どうしたらいいとあなたは感じますか、政務次官としてあるいは副大臣として。こういうものはどうですか、何か見当たりませんか。
  56. 山本幸雄

    山本説明員 総理大臣に聞くようなことを聞かれたわけですけれども、今日まで日本は非常な高度成長ということで、需要があれば供給は伸びてくるという成長に次ぐ成長ということで伸びてきたわけですけれども、この石油問題がこういうことになる前から、国民福祉というのは一体何だという反省がある。したがって、きれいな空、きれいな水のもとで、多少便利さが落ちても、あるいは国民生活の物質的な豊かさというものがそれほどでなくても、やはりほんとうの国民のしあわせ、福祉というものの道はあるんだという、そういう一つの選択が行なわれようとしておったと私は思うのですが、そのやさき、こういう石油問題という経済的な一つの異変を起こすような事態になってきた。  そこで、これさえあればという、そういう頓服薬のようなものは、私は何もないだろうと思います。要するに、いろいろな政策を総合して、その総合的な結果が物価問題なら物価問題にあらわれる、そういうふうに思うわけでございます。したがって、そういういままで伸びに伸びてきた、その伸びが、経済成長の面においても、国民生活の物質的な豊かさの面でも、この辺で少し足踏みをする、少し前に戻ったような感じになる。しかし、そこにまたほんとうの福祉という問題を考え国民のほんとうのしあわせというものを求めていく道がある、こういうふうに私は思っております。
  57. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 時間があと十五分でありますから、政務次官とここで論争していると時間がなくなりますので、不満でありますが先に進みます。  アメリカは中東戦争でイスラエルに味方をし武器を売っていても、アメリカの石油というのは、輸入は国内総需要のわずか七%ぐらいでしょうから、しかもアメリカは、いま世界で一番の石油産出国でありますから、アメリカはどうにかなりますね。しかし、ママさんは何とかなるけれども、肥満児のほうは食わずにやせて、何とか体調を整えろということなんですね。そうなると、これは外交の問題ですね。インフレの問題物価の問題、物不足の問題は、結局は物価局長幾らお願いしてもどうにもならぬ。これは結局外交問題であるということに突き当たるような気がいたすのであります。  通産省の資源エネルギー担当のほうでは、この石油問題これからの推移はどうなるだろうか。わしらにはどうにもならぬ、政治権力を持った者にこうしてもらわなければどうにもならぬのだという率直な悩みがあると思うのです。通産省はこの石油問題はどのように見通され、今後どういう対処をし——いまのところは、肥満児はとにかく減食をして少しやせよう、こういう政策ですね。いま出ているいろいろな、配給制にしようとか価格をどうしようとか物統令をどうしようとかいうのは、そういう傾向なんですね。いわゆる縮小再生産の方向だね。大体、国民にそういう苦痛と不安を与えない方法でこれを処理するというのは、これはやはり大きな政治問題であり、外交問題である。日本の存立の問題である。これを一通産省の課長に質問するほうが酷だろうと思いますよ。思うのだけれども、私もいまどうも焦燥感にかられて、国民の一人としてやるせない気持ちをどこにぶつけたらいいのか、全く政治家の一人として恥ずかしいような心理状況にいまある。そういう立場から、あなたに、石油の現状と今後の見通しで、こうしてもらえればいいのだがという何かあったら、心境のほどを聞かしてもらいたい。
  58. 松村克之

    ○松村説明員 通産省の精製流通課長をしております松村でございますが、いまの先生の御質問は非常に大きな問題でございまして、御指摘のように、私で十分答弁できると思っておりませんが、現状を申し上げますと、先生御承知のように、現在の原油の削減率は大体一六%くらいということでございます。ただ一六%と申しましても、情勢は非常に流動的でございまして、一月以降の契約についてはさらに削減することあるべし、こういった事前のノーティスが各社ともきている、こういう状況でございます。したがいまして、私どもとしては一応一六%カットという前提で検討いたしておりますが、さらに今後情勢が変わることはあるだろう、こういう予想は立てているわけでございます。  今回の閣議決定におきまして、大企業向けは一〇%のカットをする。それから中小企業その他についてもある程度の削減、適正な削減と申しますか、合理的な節減をしていただく。また民生用等については、これは消費者の方の自発的な使用の合理化ということの呼びかけをいたす、こういったことを政府としておきめになったわけでございます。私どもは、大体その線に沿いまして現在生産、需要というものを合わせるべく努力をいたしております。現在の段階で進みますと、やはり一月以降の段階において、原油輸入動向が現在流動的であると申し上げましたけれども、その状況によりましては、さらに需要の縮小ということが必要になろうかと思います。
  59. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 松村さんにこれ以上聞くのは酷かと思いますが、新聞によると、石油関税をこの際引き下げて輸入がもっとしやすくなるようにということまで出ているけれども、そんなことやったところで、出す方が、供給する側が絶対量を押えてきているということですから、関税を下げても意味がないような気がするのです。ただし、インドネシアとかほかの地域、中東以外から買う場合に関税障壁がないほうが楽だというのか、そこらの感じが私にもよくわからぬのです。ちょっと大蔵省にこれを教えてもらいたい。関税引き下げするのかしないのか。また、する場合の——来てないのかな。来てないとすればこれは無理ですが、いずれにしても、関税をかりに重油の場合一切撤廃する。撤廃をした場合に、今度は石炭対策の予算、それから石油発掘の予算、これが全部石油関税から出ているわけでありますから、これらの事業というものをどうするかという問題も出てくる。そういうような観点から、この石油関税について、今回の石油戦争と関連して大蔵省は何か検討をしているのですか。これはだれかおりませんか。呼んでないのならよろしいです。  次に、時間があと十分でありますから、金融情勢についてちょっと銀行局長にお尋ねをいたします。  最近たいへん金融引き締めがきいてきた。新聞などの報道によると、過剰流動性というのは、大体過去一年半ぐらい前に出た外為を通じての散超というものはやや吸収し切れた、これからがいよいよ金融引き締めがきいてくる事態である、こういう新聞報道などが見られるわけでございますが、ごく最近の銀行協会の調査やあるいは興信所の調査を見ると、倒産がたいへんふえてきております。銀行協会の銀行取引停止処分の状況を見ても、四十年以来三位の記録である、この傾向は一そう拡大をされている、こういう状況でありますが、金融はゆるめるような事態にはない。しかし、中小企業はばたばた倒れる。これをそのまま放置はできない。一体、銀行局としては、中小企業の倒産状況についてどんな手だてを考えているのか。特に中小企業対策ですね。  またもう一点は、大蔵大臣は長野の市長選挙のときに、一−三月には卸売り物価は安定をする、こういうめどだ、こういう新聞記者会見をやって発表しているのでありますが、大蔵省の見る卸売り物価の安定、そしてそれは金融引き締めとのかね合いでたいへん重要でありますが、そういう見通しについては、どの辺で一応横ばいになるだろうという予想をしているのか。この二点をひとつ銀行局長からお聞かせを願いたいと思います。
  60. 吉田太郎一

    吉田説明員 まず最初に最近の金融情勢でございますが、大筋といたしまして、先生の御指摘のように、いわゆるマネーサプライという面から見ますと、全体の通貨量の供給というのは、単に日銀券ということだけではなくて、預金通貨の増勢を含めまして減少しておるわけでございます。過剰流動性という問題が非常に感覚的な表現であるだけに、これが適正水準なりやいなやということについては一がいに断じ得ない問題だろうと思いますが、いわゆるひところのことしの初頭からいたしますと、流動性というものは非常に低下していると思います。そして、その過程におきまして、いわばおそらく日本銀行始まって以来の引き締めの強さというようなことを現在やっておると申して差しつかえないかと思います。  ただ、従来の引き締めと特徴的に違いますのは、経済の構造がその点強くなってきたということでもあろうと思いますが、従来でございますと、大企業のしわが中小企業にもろにかぶってきたというのがいろいろな計数からあらわされておりますが、今回は、総体的には、企業間信用が中小企業にそのしわを寄せ得ないような条件が幾つかあるということが特徴のように思われます。手元流動性の見通しにつきましても、大企業五十社を比べてみますと、年末には一カ月を割るというような見通しに日本銀行の統計ではなっておるという状況でございます。しかし、何と申しましても全体の需要を押えていくという金融政策でございますので、今日、国民経済の中で半分のシェアを占めております中小企業が、その外に立つということは非常にむずかしい。この点につきましてはできるだけの御協力をお願いせざるを得ないことだ、かように考えております。  倒産の問題というような問題が、これから年末にかけてさらに増加のきざしがあるのではないかと私は考えております。その倒産の内容等について興信所などの調べ、分析によりますと、これまでの経営のふくらみ方が非常に異常であった企業が最初に倒産の波をかぶる、それから最近は物不足による倒産というのが増加してきている、こういうことでございまして、総需要を押えていく、要するに、供給にバランスのとれた形で需要を押えていくという姿勢はこれからもとり続けなければならない、かように考えておりますが、十二月は特にそういう意味では非常にむずかしい時期だということから、このほど政府におきましては、中小三機関につきまして、従来は二千億を割る程度の千九百億程度の財投の追加でございましたが、今回はそれの七五%増ぐらいに当たります三千四百億の資金の追加をきめております。また中小機関のみならず、各全国銀行及び相互銀行、信用金庫におきましても、年末金融の目標は昨年末を確保するということで中小企業に資金を回していこうという姿勢でやっておるようでございまして、幸いいまのところでは、中小企業に向ける金の比率というのは昨年を上回る三四、五%ということで推移しております。私どもは、全体の中でできるだけ健全な企業にしわの寄らないようにということでやっていきたい、かように考えております。  なお、第二の卸売り物価につきましては、先ほど物価局長から御答弁申し上げましたように、卸売り物価について短期的にこれが好転するということを前提として政策考えていくことはむしろ危険である、かように考えております。むしろ石油問題を契機として、供給量全体が削減される中で、需要をできるだけそれに応じて合わせていかないと、物価に転嫁される動きがよけいに強くなるということを心配しております。そういう意味からいたしますと、やはり卸売り物価についてはむしろ警戒的な見通しをもって臨むべきではなかろうか、かように考えております。
  61. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 銀行局長、いま物価がこうどんどん上がりますと、中小企業の取り扱う量そのものがそうふえなくとも、単価が上がっているために、資金量というのは非常に大きくなるわけですね。したがって、前年の十二月末ぐらいまでは中小企業金融のワクを許すといっても、実際は中小企業の取引の金額というのは、もう物価の上昇によってたいへんな金額に伸びるわけですね。そこらをやはりきめこまかく金融政策考えてもらわぬと、中小企業は資金繰りがどうにもならぬという状況に相なると思うのであります。そういう点のきめこまかい配慮を今後ひとつ検討願いたい。  それから最後に、大倉審議官にひとつ税の問題で、時間がありませんので端的に伺います。  少額貯蓄の利子非課税の問題、マル優の問題でありますが、財形貯蓄を通じて、個人消費抑制するという意味からも預金に吸収をするというねらいもあり、さらに、今日の物価インフレによる預金の減価という問題についても配慮しなければならぬ等々を考慮すると、このマル優を一挙にかなり上げなければならぬ。ぼくは新聞の間違いじゃなかろうかと思うのですが、総理大臣がこの間、一千万円まで非課税、こういう実は演説をぶっていますね。大蔵省としては、どの辺までを来年度の免税点にしようと考えているのか、これが一点。  それからもう一つ、特に中小企業の中以下、まあ零細法人、こういうものの納税を、十二月決算で納税をするというような場合、あるいは十二月のこの一番資金の繁忙のときに納税をしなければならぬ時期のもの、こういうものについては六カ月間ぐらい特に中小企業のものを先へ納税を猶予する、こういうような制度もこういうときには考えてやらないと、中小企業がばたばた金融難でまいってしまうのじゃないか、私は実はこういう心配をしておるのでありますが、この二点について、最後にあなたのほうのいま作業をしておる状況をお尋ねして終わります。  せっかくお呼びをいたしておいて申しわけないのでありますが、外国にある日本人学校建設についての補助金の問題ですね。特に、たいへんいま投資が盛んで、企業が外地にどんどん進出をして、子弟の教育にたいへんな問題が起こっている。特に日本人の非常に多いブラジルなどでは、これはたいへんな騒ぎになっている。こういう問題については、あとで資料でひとつ御報告を願いたい。  それから銀行局、この間、滋賀銀行、それから京都銀行でああいう不祥事が起こったのでありますが、国民はたいへん興味を持ってあの新聞をずっと読んだのであります。あの九億何千万をうまい手口で支店長をごまかせるこの銀行のあり方について、ちょっと疑問を持ったのでありますが、この滋賀銀行、京都銀行の不祥事の中身を、ひとつあとで係から御報告を願いたい。この二つは、後日でけっこうです。  大倉さんにだけ、最後に二点……。
  62. 大倉眞隆

    ○大倉説明員 お尋ねの第一点でございますが、私どもやはりこの機会に少額貯蓄の非課税限度を引き上げるほうが適当であろうということで、現在作業を進めております。現在ございます制度は、御承知のように、郵便貯金の百五十万円、いわゆるマル優の百五十万円、財形の百万円、国債別ワクの百万円、合わせまして五百万円ということでございまして、総理が何かの機会におっしゃったと申しますのはその合計額のほうで、これを一千万円にするという考え方もある、あるいはもっと思い切ってもう一つ倍、二千万円というのもあるというようなことをおっしゃったようでございます。幾らがいいのかというきめ手がある話ではございませんが、あまり大きな金額は、ある意味ではまた大衆には縁のないことでもありましょうし、退職金の非課税限度でございますとか免税点とか限度を上げるときに倍、こういうのが普通のやり方ではなかろうかとか、いろいろなことを考えながらいま内部で議論をいたしております。大体見当として一千万円くらいのことはこの機会にはやってもいいのではないか。もう少し広げてもいいという判断が出ますかどうか、なお検討を進めておるという状況でございます。  ただしその場合には、財形のように乱用の危険が全くない制度は別といたしまして、やはり先ほど申し上げている郵便貯金、銀行のマル優それぞれに、仮名預金とかいろいろな問題を裏に含んでおります。その点についての是正の方策がないか、あわせて研究をいたしておるというのが現状でございます。  第二点の法人税の納付のことでございますが、これは御指摘のように、中小法人の中では一年決算の十二月決算というのが非常に多いように承知しておりますが、こういう法人の方の納付期限というのは実は二月末、いまの制度でもさらに三カ月延長、いわば三月一日から五月の末までに資金繰りをして納めていただくというような制度にすでになっておりますので、これをこれ以上延ばすことが必要かどうかということになりますと、これはやはり中小企業金融をどう持っていくかということのからみになろうかと思います。そういう御指摘があったということを十分念頭に置きました上で研究をいたしていきたい。いまのところ五カ月でございますから、だいじょうぶではなかろうかという気がいたしております。
  63. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それでは時間ですから、これで終わります。
  64. 鴨田宗一

    鴨田委員長 増本一彦君。
  65. 増本一彦

    ○増本委員 午前中は大臣もお見えではありませんので、きょうは、私は大きい問題よりも個別に、いまここでどうしても緊急対策としてとってほしい、今日の再三指摘されておる異常なインフレ物価高の中で、どうしてもこれだけはやってほしいという問題についてだけ政府考えを伺って、ひとつ善処を要請したい。そういう観点から、若干与えられた時間お伺いしたいと思うのです。  一つは、先ほども若干お触れになりましたけれども、公立の小中学校の新増設のための措置の問題なんですが、御承知のように、当初総事業量が四百四十万平方メートルである。それが八月一日以降一一・一%補助率を引き上げるということで、実質的に今度総事業量のほうが逆に一〇%ちょっと削減されるというような結果になっているわけですね。私のほうは、主としてそのために助成対象から漏れてしまって、人口急増地域で小中学校を来年度を目ざして建てようと計画していたのに建てられなくなってしまった、これをどうするかという問題でひとつ政府の見解をお伺いしたいのです。  もう補正予算のほうも大詰めで、これまでとられたことを前提にしてさらに一〇・八%補助率を引き上げる、そういうことになっているようですけれども、もう一つ検討をしていただきたいという立場に立ってお伺いしたいと思うのですが、まず、いまちょっと触れましたこの経過に対する認識でよろしいのかどうか、ひとつ文部省のほうから、その経過の説明と現状をお話し願いたいと思います。
  66. 西崎清久

    ○西崎説明員 文部省の助成課長でございますが、ただいま先生からお話しのございましたように、公立小中学校の本年度事業量は、当初予算におきまして四百四十万平米でございます。その当初予算で出発しておったわけでございますが、単価の積算におきまして、お話が出たかとも思いますが、物価上昇率を六・四%で見込んでいたという姿で当初予算をセットしておりましたところ、昨年以来木材の高騰が相次ぎましたので、それらを勘案いたしまして種々検討の結果、八月一日付で約一一%の単価改定をしたという経緯になっております。  この年度途中の単価改定に必要な財源といたしましては、やはり公営住宅とかその他各種の公共事業も共通でございますが、面積減をしてまかなうという考え方で、約四十万平米の減をしたわけでございます。私どもとしては、この四十万平米の減が、直接に学校の建築なり児童生徒の収容に影響がストレートに及ぶということでは非常に問題があるということで、その対策といたしましては、まず校舎等の買い取りという補助があるわけでございます。これは先生も御承知のように、公社、公団等で建てかえ施工をしておりまして、一年据え置きであと二年分割で買い取るというのがあるわけでございます。こういうものはすでに学校が建っておるということで、四十万平米減の中でまずそれをまかなっていこうというのが第一点でございます。  それから第二点としましては、危険改築あるいは学校統合というのがございまして、これは二年計画なり三年計画でやるのがあるわけでございます。これは千五百平米、千二百平米というようなものもございますが、たとえばことしはそういう次第で少しがまんしてもらって千平米にする、来年は二千平米を予定したい。そういうふうな年度間の調整ということもやっております。  それからもう一つは、若干債務負担的な要素になるわけでございますが、二年計画ぐらいでやるものについて、来年度の採択ということを予定して補助事業としては延ばしていただくというふうな考え方で、四十万平米の減をまかなっておるというふうな経過がございます。  ただ、先ほどお話が出たかと思いますが、今回の再改定にあたっては、補正予算で御審議いただくわけでございますが、これ以上の面積減はとうてい不可能であるということで、補正予算案に再改定分を計上していただくというような考え方で、作業を進めておるわけでございます。  以上でございます。
  67. 増本一彦

    ○増本委員 総事業量を四百四十万平米から四百万平米ぐらいに減らされたときに、助成認可の基準として、一設置者につき小学校一件、中学校一件を原則とするというような、そういう基準はお引きになったのですか。
  68. 西崎清久

    ○西崎説明員 お答えいたしますが、私どもといたしましては、人口急増地域については、プレハブ解消ということが昨年以来の大きな重点目標でございます。そういう意味では、一昨年、それ以前から、プレハブ校舎というのが三千、四千、四千五百というふうにふえてまいったわけでございますが、昨年からの努力によりまして、このプレハブの数は、ことしは五月期において減る傾向になってまいりました。そういう意味で、急増地域に対する小中学校の補助においては、一市町村一小学校、一中学校というふうな考え方はとっておりません。  ただ、屋内体育館につきましては、これは校舎と異なりまして、ある程度、一市町村で一つあるいは二つというふうな他とのバランスの関係での振り合いというものを考えまして認定を進めておるというふうな実情にあることは事実でございます。今後この点につきまして、件数上その他の努力をし、要望が満たされるように努力はしてまいりたいというふうに思っております。
  69. 増本一彦

    ○増本委員 この人口急増地域のそれぞれの市町村で、補助資格がありながら総事業量を減縮したために査定で認可がおりなかった、この比率ですね。おりたものとおりないものとの対比、これは大体どのくらいになっておるのですか。
  70. 西崎清久

    ○西崎説明員 ただいまの先生のお話しの内容としては二つに分けられようかと思いますが、第一点といたしましては、補助基準面積というものと、それから補助認定面積というものがあろうかと思います。と申しますのは補助資格面積をオーバーして実施をされる場合に、私どもといたしましては補助資格面積までの補助しかできないという点が一つあるわけでございます。  それから第二点といたしましては、三年前向き整備というのを昨年から実施しておるわけでございますが、この三年前向き整備は、三年後の児童生徒を予定して、以前から校舎だけは建てておこうという制度でございます。  まず第一点のほうの補助資格面積と実施面積の差につきましては、今年度予算におきまして二〇%の基準面積改定をやっております。したがいまして、最低限度必要な学校建築の姿といたしましては、補助資格面積で十分である。私どもの現在の立場としては、ほぼ十分ではないかという考え方を持っておりまして、それを越えて教育的に熱心におやりになる市町村の考え方ももちろんあり得るわけでありますが、この点についてのパーセントは、現在計算としては出しておらないわけでございます。  それから第二点のほうの三年前向き整備のほうにつきましては、本年度事業量の縮小があったために、これを二年前向きにがまんしていただくという部分も若干はあったと思います。しかし、そう大きな数字として私どもが計算しておるような経過にはなっておりませんので、その点につきましても若干あろうかと思いますが、数字としてお答えいたしますのにはちょっと私いま数字を持っておりませんので、お許しをいただきたいと思います。
  71. 増本一彦

    ○増本委員 補助資格をオーバーして建てられた分については助成ができない。この問題については前からいろいろ議論のあることだし、いまここで緊急にこれをこうせいといって議論するよりも、補助資格の範囲内であるのに削られたために困っているという問題のほうがより緊急ですから、その問題だけにきょうは限って、先の問題は留保しますけれども、私が調べたところだと、東京の三多摩地域を見ますと、八王子市で認可を受けたのが申請をしたうちの三九%、東久留米市の場合だと第一次で三三%で、これでは困るというので、さらに市長を含めて文部省にいろいろ日参をして、ようやく全体として七〇%くらいになった。  そのほか、ほかの人口急増地域、首都圏全体を見ましても、人口急増地域ですから来年またたくさん小学生がふえる、中学生もふえる、こういうことで、すぐにでも入れものである校舎がほしいのに、校舎が建てられないという実態なんですね。こういう点は、文部省としてきちんと調査をされ、把握されていらっしゃるのか、その点はどうなんですか。
  72. 西崎清久

    ○西崎説明員 ただいま先生から東京都下の市町村のお話をいただいております。確かに先生おっしゃいますように、経緯といたしまして、東久留米などを例にとりますと、第一次認定におきましては四〇%弱でございましたが、これが非常に実情としても問題があるということで、別に日参をしていただいたからというわけでは決してないわけですが、東京都とよく御相談をいたしまして、約八〇%弱まで東久留米については見ておるという実情にあります。  ただここで申し上げたいと思いますのは、私どもも、補助事業を進めていく上におきまして、市町村でのいろいろな御都合があるとは思うわけでございますけれども、都道府県にも御相談なく、私どものほうにも耳に入れていただかないうちに、どんどん作業を進められる場合があるわけでございます。この作業を進められる場合、二通りありまして、必要やむを得ず作業を進められる場合と、しかしこれはベターであるからとにかくやろうという場合とあろうかと思います。問題なのは前者のほうでございまして、前者の場合については、私どももできるだけ、これは児童生徒の問題でございますから、国の補助事業としてもこれを拾っていくということに努力をするべき問題だと考えております。   〔委員長退席、木村(武千代)委員長代理着席〕 結果といたしまして、事情やむを得ずやったものについて若干、補助事業漏れというものが出てきておるものが事実あろうかと思いますけれども、その点につきましては、全国的な振り合いというものもございまして、東京都下の市町村で若干問題の残っておるものもあろうかと思いますので、今後につきましてはその採択について十分努力してまいりたいというふうに思っております。
  73. 増本一彦

    ○増本委員 いま、あなたは東久留米の場合で八〇%近くとおっしゃったけれども、校舎の場合で七件申請して五件オーケーになっている。やはり七〇%ですよね。八王子、東久留米、ここは特に人口急増地域ですよ。そうでなくても超過負担や財政負担であえいでいるのに、これがいまの段階で目標の四〇%とか七〇%しかできない。一体これはどうしたらいいのだ。こうなると財源もないですから、実質的に工事ができないわけですね。こういうように査定で助成の認可がおりなければ、起債も認められないわけですね、その点はどうですか。
  74. 西崎清久

    ○西崎説明員 ただいま私が申し上げましたのは、面積で八割弱と申し上げたわけでございまして、学校数にいたしますとそのような数になろうかと思いますが、私、いまの記憶では大体七八%くらいになっておろうかと思います。  それから、ただいま先生の御質疑の起債の点でございますが、補助事業につきましては、補助対象としたものについて自治省のほうで起債をつけていただくという仕組みになっておりますので、補助対象にならない場合には、原則として起債対象にならないということになっております。先生のおっしゃるとおりでございます。
  75. 増本一彦

    ○増本委員 そうすると、プレハブの校舎あるいはすし詰めの教室で、特に来春から新しいランドセルをしょって胸をふくらましてくる新入生にほとんどの場合しわ寄せがいくわけですね。午前中の授業だけで給食を食べて帰る、そういう小さな子供たちだけが一番しわ寄せを受けるわけでしょう。これをいまの時点でどうにかできないものですか。そういう実態を踏まえて、ひとつ大蔵省のほうでもこういう点はお考えになって、それでもなおかつ補正では、ただこれまでのあれを引き継いで、当初四百四十万平米であったのが四百万平米に結局実質的には減っちゃって、それにコストの上のせをはかるということだけでよいものかどうか、こういう点は検討されたのか、ひとつ文部省と大蔵省、両方からお答えをいただきたい。
  76. 西崎清久

    ○西崎説明員 私どものほうは、八月当初に九十数%の認定を済ませておるわけでございますが、その際に四十万平米の減についての取り扱いは、都道府県を通じまして市町村と十分御相談しております。そういう意味で、これは来年度繰り延べるもの、これは買い取りであるので来年度以降に処理したいというふうなことや、それから先ほど申し上げました危険あるいは統合等における年度間の振り割りというふうなものも相談いたしまして、四十万平米の扱いにつきまして今年度事業といたしましては一応こなしとしてのセットをしたという経緯になっておるわけでございます。  ただ、先生おっしゃいますように、プレハブ校舎の解消という問題につきましては、当然今後努力をいたさねばなりませんが、これは私ども大いに努力はいたしておりますものの、三階建ての校舎でございますと、たとえばプレハブの教室が三つなりあるいは六つというふうに、学校建築の構造的な問題で、数がそろうまではちょっと建築に取りかかるのを留保するというふうな市町村もあるわけでございまして、そういう場合は申請も出てまいらないというふうな点もありますので、私どもとしてはそういうことがないように、プレハブについてはできるだけやるというふうなことで、本年度予算執行もやったつもりではございます。そういう意味で、今後の努力課題としては残っておりますが、四十万平米のこなしといたしましては、本年度事業として一応済んでおる形として私どもは理解をいたしております。
  77. 増本一彦

    ○増本委員 ちょっと待ってください。そうおっしゃるけれども、たとえば八王子の場合には、三九%か四〇%くらいの実態でしょう。この場合には六割は全部アウトですね。起債もない、財源もない、建てられない。東久留米の場合には八割だからとおっしゃるけれども、こういう実態というのは、来年度年度とおっしゃっても、やはり来年の四月には新しい子供たちが入ってくるのだから、この子供たちをあたたかく迎えるというのが文部省の文教行政の一番大事な点だと思うのです。そういう実態を踏まえて、ひとつ大蔵省のほうでこれは何とかしてもらいたい、こういうところまで含めて検討をされたのかどうか、お伺いしたい。
  78. 長岡實

    長岡説明員 大蔵省といたしましては、ただいま先生が御指摘になりましたような個別のところまでは私ども十分トレースはいたしておりませんけれども、しかしそれは実施官庁である文部省と十分御相談を申し上げながら予算措置をとってきておるところでございまして、いまのところ一応私どもは、来年の春に入ってまいります新入生と申しますか、そういうものの収容にはおおむね迷惑をかけないで済むような基準で文部省で採択してもらっているというふうに聞いている次第でございます。もちろん十分とは言えません。その点はよく承知いたしておりますが、何ぶんにもいまの建設資材等の異常な値上りに対処するために、総需要繰り延べ政策の一環といたしまして、他の公共投資、これはいずれも国民福祉にもつながるような重要な事業でございますけれども、こういう事業についてはまず事業量繰り延べをして、しかも繰り延べをした後に単価の是正分はまた事業量を圧縮してカバーをしていくというような措置までとらざるを得ないような実情でございますので、私どもといたしましては、現在の文教施設につきまして、原則として繰り延べ対象からも除外し、かつ所要単価是正も異例として今回補正措置を講ずるということでお許しいただきたい、かように考えておる次第でございます。
  79. 増本一彦

    ○増本委員 ぼくが許せないと言ったらどうなるのですか。でも、それはほかの公共事業投資をどうしろとかというような議論にわたると、また大きな問題になって時間が足りませんから、その点は午後からまた荒木委員質問しますので、それに譲りますけれども、しかし、大蔵省としてもこまかい実態というのはつかんでおられなかった。文部省もそういうものを前提にしておやりになった。だけれども、人口急増地域で三〇%、四〇%しか助成の対象になっていないとか、この上コストが上がって、そして自分たちの自主財源では建てることができない、この実態をひとつどうしても何とかお考えいただけないものだろうか。許してくれとおっしゃるけれども、そういうことで済むのだろうか。ひとつ再検討をお願いできないものでしょうかね、文部省との間で。
  80. 長岡實

    長岡説明員 私どもといたしましては、文部省とも従来十分に連絡をとりながら、どのように全国で公立文教施設建設が行なわれていくかということをトレースしているつもりでございまして、現段階におきましては、今回私どもが予定しております補正措置で、来年度入ってくる新入生には何とか迷惑をかけないで済むというようなことを文部省からも聞いておりますし、そういうことで入るのではないか。決して十分とは申しませんけれども必要最小限度の坪数は満たされるのではないか、かように考えております。
  81. 増本一彦

    ○増本委員 押し問答になりますけれども、八王子の例で三九%だとか、ほかでも三〇%、四〇%、五〇%しか助成の対象になってない。いまの事態だと、これは御想像いただけると思うのですけれども、もう自治体の自主財源だけでは、いまの資材が高騰している中で起債もなしに学校を建てろといったって、残りの六割とか四割、二割とかいうようなものを建てろといったって、これはなかなかむずかしいですよね。建てられるわけがないですよ。だから、補正予算も地方自治体では組むことができない、財源がないからこれはもうどうしようか、こういう実態ですからね。ここいらの点はどの程度ほんとうに深刻に考えておられるのか。私は、大蔵省が御認識された文部省の前提というものがこういう一角でくずれているのだというふうに思うのですよ。どの程度深刻に受けとめておられるのか、もう一度課長さんに伺いましょうか。
  82. 西崎清久

    ○西崎説明員 個々の執行につきましては、私ども文部省としての責任において、各市町村からの申請、都道府県との御相談によって認定作業を進めて交付決定をしていくという姿でやっておりますので、個々の認定自体については大蔵省へ申し上げておるということにはなっておらないわけでございます。そういう意味では私どもの責任においてやらしていただいておるわけでございますが、八王子の問題を先生お取り上げいただいておりまして、その実施率のパーセントについて、私ども東久留米のような数字をちょっと記憶として持ち合わせておりませんが、若干低いということは事実であろうと思います。ただ、その低いという点において事業として学校が建たないということではなくて、都あるいは私どもへの御相談以前に事業に取りかかられて、もうすでに建ってしまっておるというものがかなりあるという実情のようでございます。  そういう意味においては、すでに建っておるものにいたしましても、私どもとしても補助事業としてできるだけ採択していくということが望ましいわけでございますが、プレハブ解消その他で建っていないものもたくさんあるというようなことなどとの振り合いも考えますれば、すでに建っておるものについての問題は、超過負担の問題としての議論になろうかと思いますが、本年度は八王子等については採択率が若干落ちておるというふうな点について、実情としておっしゃるような点があろうかと思うわけでございます。そういう意味におきましては、今後の私ども事業の進め方におきまして、いろいろな要素を加えてこの採択について配慮すべき点があろうかと思いますので、お話しの御趣旨を踏まえて、今後努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  83. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、先ほど対策として三つあげられた。その中で来年度に延ばすという三番目におっしゃった点がありましたね。だけれども、もうできるだけ早く、四月には間に合わないけれども、五月、六月とか、あるいはせめて二学期からはこういう新入生に間に合わせるようにするということになりますと、いまこういう問題点を踏まえて検討していくとおっしゃったのだから、施越し措置をいまこの段階で積極的に講じて、せめて起債だけは認める、そうして来年度にそれについての補助の助成をつけるというようなことを、いまこの段階でやるべきじゃないですかね。その点はいかがでしょう。
  84. 西崎清久

    ○西崎説明員 債務負担行為で本年度実施する事業につきましては、私どもは事務担当者会議あるいは都道府県の施設主管課長会議等を開きまして、来年度小中学校の生徒を入れなければならないような事業が債務負担行為として行なわれる場合にはいろいろ留意すべき点があろうというふうなことで、御相談をしておるわけでございます。  と申しますのは、やはり学校建築は、六カ月から八カ月というふうな期間が必要でございます。そういう意味において、原則的な躯体工事と申しますか、そういうふうなものができ、あるいは内装をやるというふうな期間と、あるいはといをつけるとか壁塗り、外装をするというふうな期間、いろいろあるわけでございまして、児童生徒を入れるということについては、ほぼ本体工事なり内装なり、設備が入れられるような工事ができれば、曲がりなりにと申しますか、児童生徒は入れられるのじゃないだろうか。そういう意味においては、債務負担行為といえども、できれば四月に児童生徒が入れるような姿としてやるということが肝要ではないか。ただ、完成といたしましては五月一日以降ということに相なる場合もこれはやむを得ない、そういうふうなお話を進めておりまして、市町村、県においても、予算の組み方とか工事の進め方においては、そういう点を留意してやるというふうな姿になっておるわけでございます。  先生お話しの施越し工事を認めるか認めないかの点につきましては、従来、公立文教施設整備事業については、年度予算における単価なり面積ということで予算をセットしてきております関係上、施越し工事の考え方をとっておりませんものですから、ことしそういう点についての必要ありやいなやも検討はいたしましたが、ただいま申し上げましたようないろいろな相談をすることによりまして、実質的な処置というものは可能になるという含みで、私どもとしては事業を進めておるという実情でございます。
  85. 増本一彦

    ○増本委員 そうすると、もっと詳しく具体的に聞きたいのですが、残っている助成の対象にならなかった分についてどうされるのですか。もっとはっきり答えてください。いろいろ相談されておる内容だけ言われて、方向がはっきりしない。
  86. 西崎清久

    ○西崎説明員 具体的に申しますと、たとえば本年度事業で補助事業として千平米を採択する、来年度事業として千五百平米を採択する予定である、かりにこういうケースといたしますと、事業量としては二千五百平米になるわけでございます。この事業が二千五百平米でA棟、B棟というふうな割合で工事が開始されるといたしますと、これは契約内容にもよりますが、B棟の千五百平米は来年度事業だから来年度から着手するということではなくて、A棟に着手するとほぼ時期を同じくして、千五百平米のほうについても工事に着手してしまうわけでございます。その場合、千五百平米のほうは若干事業量も多いということで完成が五月以降になるということも考え合わせますれば、この千五百平米については、来年度事業として採択を予定する。ただ、実際の本体的な児童生徒が入れるような完成としては四月に間に合うように努力をする。壁塗りとかといなど全体的な完成引き渡しというものが五月以降になるということは当然予定しておかなければならないわけでございますが、そういう暁には、千五百平米については来年度予算で補助事業として採択をする、こういう考え方でございます。
  87. 増本一彦

    ○増本委員 ちょっとこまかくなって恐縮なのですが、あなたの言われたB棟の千五百平米、これを建てる財源は自治体でどうしろというのですか。これは自治体独自にやって来年度助成し、起債も認めるとか、全部来年に回っちゃうわけですか。いまの時点でやるのだけは自治体が自前でやれ、こういうことになるのですか。
  88. 西崎清久

    ○西崎説明員 先生のおっしゃいます支払いの問題でございますが、補助事業として採択する場合、来年度予算で補助いたしますので、市町村としての支払いというものは来年度支払いということになるわけでございます。そういたしますと、これは市町村と業者との契約の問題になるわけでございます。市町村と業者との契約において、B棟千五百平米については市町村としては来年度支払うという請負契約を結んでいただく場合、この暁に補助事業として私どもとしては支払う。  ただ、先生がいまおっしゃっておられると思うわけでございますが、前払い金の問題とか若干の財源の手当てというものが必要になるわけでございますが、それらの点につきましては、市町村のいろいろな処置によってまかなっていただくというようなことになろうかと思うわけでございます。すべてについての財源措置を私どもとして予定をするということは若干不可能な点もございますので、そういう点については、若干不十分な点があろうかというふうに思うわけです。
  89. 増本一彦

    ○増本委員 若干どころか、これはたいへん不十分じゃないですか。つまり、いま建てようと思っても、前渡し金なりその他のものを含めてのお金が自治体にないために補正予算も組めない、これはどうしようもないと言って深刻な状態になっているときに、この点だけは自前でやれ、来年度めんどうを見てやると言ったって、いまのインフレとかいろいろなあれで、お金の価値もどうなるかわからぬという時点に、来春じゃなければ支払いがないなんというような工事を、一体工事人が請け負いますかね。そういう点から見たって、非常に現実離れしていると思うのですよ。これは全く対策になってないし、いまの時点では学校も建てることのできない政治をやっているんだというふうに私は言わざるを得ないと思うのです。だから、せめて起債は認めて財源はきちんと保証させ、ちゃんと補正予算が組めて、これで建てられると——それは起債を認めれば、あと助成か来年つくというお墨つきをもらったことになるから、ごうすれば工事人も請負の契約を結んで、大体入札にも参加してくるだろうし、そしてあなたの言われたように、四月なり五月からちゃんと新入生が入れるという事態になるのじゃないですか。そういう手だてがとられていないで、これだけは自主財源でやれ。こんなむちゃなことをいまのこの時点に、それが一体学校をつくる対策になるのですかね。そこをもっと詰めてもらいたいのですよ。  その点で、自治省からも来ていただいているので、こういう場合でも、起債というのはいまできるものなんですか。助成がつかない、しかし財源としては自治体はほしい、だから何とか起債だけを認めてもらって助成は来年でもいい。これを自治体がいま切実に望んでいるのだから、この方向でどうなんですか、できないものですか。
  90. 小林悦夫

    ○小林説明員 現在のたてまえにおきましては、義務教育の国庫負担を伴う事業につきましては地方負担額の七五%起債をもって充当する、こういうたてまえになっておりまして、施越し工事のような場合につきまして、こういうものをあらかじめ起債でつける、こういう制度はないわけでございます。
  91. 増本一彦

    ○増本委員 これはまたずいぶん冷たいね。地方自治体の理事者に冷たい処遇をするというだけじゃなくて、言ってみれば、胸ふくらまして入ってくる新入生に、新しいランドセルを買って、新しい服を着て、ハンカチを胸につるして、そうして来年の四月に入ってくる小学生に冷たい政治をやっているということなんですよ。だから、それを何とかしようということで地方自治体の理事者も苦労をしている。ところが、いまのたてまえでは施越し工事についてあらかじめ先に起債を認めるなんというたてまえをとってないから——それだったら、そういうたてまえをとれるような法改正なり、そういうことまで含めて検討ができないものなんですか。
  92. 小林悦夫

    ○小林説明員 ただいまのようなケースの場合、施越し工事というものをどういうふうに考えていくか、そういうものが地方財政というものを考えた場合に適当なやり方であるか、こういう点も含めて十分検討させていただきたいと思います。
  93. 増本一彦

    ○増本委員 検討するというのは、おやりになるというあれを含めての問題ですか。やれるかやれないかわからないけれども、ともかく検討してみるというだけでは困るのですね。いまのこういう学校も建てられないような実態になっているのをどうするかというのが、私は政治だと思うのですよ。  局長がお見えになっていれば、もっとそういうことまで含めてお話をあれしますけれども、いままでのお話だと、私ははっきりしたのは、いまこんなことをやっている限り、新しく入ってくる新入生、来年度の一年生にも新しい校舎で勉強をしてもらうという政治姿勢にいまの政府はなっていない、学校も建てられないような政治しかやってないのだ、こういうことだけがはっきりしたと思うのですね。ひとつ前向きにこの点は検討してください。実際の衝に当たっている皆さんは一番苦労されている点だと思うし、そういうお気持ちは皆さん個人としてはお持ちだろうと思うのです。いまの政治の仕組の中でなかなかはっきりとした答弁ができないということだろうと思うけれども、この点ははっきりさして、前向きでひとつ検討していただきたい。  その点いかがですか政務次官、いままでのお話を聞いて、これは直接の所管じゃありませんけれども、しかし来年度予算編成の際に、文部省から出てきたものをただ聞いて、うのみにして編成をするというだけじゃなくて、ひとつそういう実態を踏まえて、しかしその前の措置をとって、しかも補正につなげていく、こういうことまで含めてひとつ検討してもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  94. 山本幸雄

    山本説明員 結論としては、要するに入ってくる子供に、いろいろ建物が狭い、不自由だという面は多少あるにしても、とにかく収容できるというだけの施設はどうしてもつくらなければならないものだろうと思うのです。いま私も実態がどういうふうに運営されているのかつまびらかにいたしませんけれども年度を越して支払いをする、契約と支払いの年度が違っているという場合はあり得ることだと思います。いわゆる債務負担行為というものがあるわけでして、文部省のほうでおやりになっておるのはおそらくそういうお考えで、本年度では処理できないけれども年度処理できる、しかしそれをなるべく来年度の早い時期に処理をしよう、そしてとにかく新しく入ってくる子供には不自由をかけないようにしたい、そういう方針で私はやっておるものであろうと理解をしておるわけなんです。  いまいろいろ具体的に、八王子ですかの問題も御指摘がありましたので、そういう具体的な例について、またよく政府部内でも検討をさしていただきたい、こう思います。
  95. 増本一彦

    ○増本委員 私があれしたのは、もののたとえとして八王子なら八王子の例をあれしたのだけれども、人口急増地域ではほとんどそういう状態に置かれているのだ、だからこれは国政全体の問題として——八王子だけ手だてをとってくれと私は言っているのじゃないのですよ。そこのところをよくお含みいただきたいのと、それから債務負担行為があるとおっしゃるけれども、文字どおりそのことが、助成がつかないために起債ができない、だから、それを起債だけでもせめて認めて助成につなげてくれ、これが自治体の要求なんだ。これをひとつ積極的に受けとめていただいて善処をお願いしたいと思うのです。  もう時間があれですから次の問題に移ります。  ところで、公立の小中学校では、いまもう二学期の学期末、そして三学期に向けて進学指導もしたりいろいろしなければならない。それでいて寒い冬が来るということで、正常な学校教育に必要な品物、特にざら紙やトイレットペーパー、灯油、こういうものの確保に非常に苦労しているのですね。私が聞いたところですと、二百締めのざら紙が必要なので先生が町じゅうかけずり回っていろいろさがしたけれども、六十締めしかざら紙が手当てできない。学校では一度使った封筒を裏返して、そしてわざわざのりづけして張って使っている、こういう状態です。こういう問題について、国として積極的な手だてをどうしてもとってほしいというように考えているのですが、この点はいかがでしょう。西崎説明員 紙の問題につきますては、直接の主管局は初等中等教育局でございます。本日教育課程の審議会等ございまして、主管課長が恐縮でございますが、参れないわけでございますが、私打ち合わせてまいりましたところによりますと、現在のところ、文部省のほうにまで具体的に、市町村教委なり都道府県教委から紙不足に伴う手当てなり処置というものについての要望はまだ上がってきていないというふうな実情であるようでございます。  そういう意味におきまして、先生お話のような実態というものが全国的にどのような実情にあるかについては、今後の問題として主管局においても取り組むべき問題かと思うわけでございますが、お話しの趣旨につきましては、十分文部省としても留意するように努力いたしたいというふうに思っております。
  96. 増本一彦

    ○増本委員 ひとつこれも前向きに積極的な手だてをとってほしいと思うのです。  では、文部省はお忙しければけっこうです。  時間がありませんので走るようになりますけれども、次に移りまして、インフレ物価高でいわば直撃を食って極度に生活が困窮状態におちいっているのは、年金生活者、生活保護世帯、その他の低所得層の国民であるわけです。さらに、労働者も、いま冬の労働運動の中でインフレ調整手当をよこせというような要求もやっている。こういう中で、国家公務員労働者の生活擁護あるいは地方自治体で働く人たちの生活の擁護というような問題も特別に重要になってきていると思うのですが、この点についての手だて、あるいは実態調査をして、その結果どうで、これからそれに見合ってどういう手だてをとろうとなすっておられるのか、ひとつそれぞれの所管からお伺いしたいと思います。
  97. 茨木廣

    ○茨木説明員 現在の段階は、御案内のように公務員の給与は、公務員給与が先導するというわけにもまいらぬので、やはり国民の納得を得る形で給与を改善していく、こういう立場をとらざるを得ないことは御案内のとおりでございます。そういう関係上、御指摘のようないろいろ物価その他の問題が動いておるということは言うまでもございませんけれども、それらが民間給与にどのように反映をするか、そういうような事情を注視しておる、こういう段階でございます。
  98. 増本一彦

    ○増本委員 今日の時点で人事院にお伺いするのですが、情勢適応の原則というのがありますね。いままさにその情勢がどういう実態にあるのかということが非常に問題だと思うのです。それは単に民間追随で、民間の情勢を見てそれにスライドさせるような形で適応していくということで、今日の深刻な国民の生活実態にほんとうに対応しているということになるのか。そういう点から見ますと、これはぜひとも情勢適応の原則というものをやはりこの際積極的に適用されて、それに基づいて人事院勧告を出していくということも必要ではないかという点が一点。  それから、これは年金法の審議の際に大蔵省から伺ったところだと、年金生活者の実態について人事院で調査をなすっているというお話も聞いていますので、年金生活者の今日の段階での実態というのは一体どうなのか、それに対してどういう御意見なり展望をお持ちなのか。  それから、特に来年度予算との関係で、では、これについては大蔵省としてどういう方向で臨まれるのか。その三つの点についてちょっとお伺いしたいと思います。
  99. 茨木廣

    ○茨木説明員 第一点の国家公務員法二十八条の問題でございますが、これは御指摘のように、給与その他の事項は法定をされる、こういうたてまえがあるわけでございます。それらの法定されております基本事項について変更を必要とするような場合には、国会でそれを変更される、こういうことになるわけでございますが、その場合に、人事院が勧告を申し上げるというようなことに相なるわけでございます。  それについて、二項のほうにもう一つ給与については条文がございまして、毎年少なくとも一回は情勢を報告申し上げる、五%以上給与勧告する必要がある場合についてはそれをする、こういう義務づけがされてございます。したがって、毎年一回御案内のように勧告を申し上げておるわけでございますが、昨年からことしの状況を振り返ってみますと、ことしになってから急に物価が上がったというよりも、昨年の暮れごろからじりじりと上がってまいって、この四月には相当高いところに来ておったように思います。その後もやはり若干ずつ上がってきておる、これが実態であろう。最近は中東事情等から特殊な問題が入ってきておる、こういう事情であるわけでございます。  したがって、ことしの勧告の基礎になりました民間の四月の給与、これには相当春闘の状況が入っておるわけでございます。そんな関係で、一五%をこえる高額な勧告に相なったわけでございます。したがってその基礎には、すでにそのときまでのいろいろ物価事情というようなものも反映されたものが春闘にあらわれ、それをこちらのほうで調査をいたしまして給与ベースがきまっていった、こういう経過がございます。ですから、前半分のほうはもうすでに現在の給与情勢の中に織り込み済みである。でありますから、近く出ます期末、勤勉手当も、その高い勧告を基礎にしましたベースが基礎になって支払われますから、やはり昨年に比べますと相当高い期末、勤勉手当が出るということに相なるわけでございます。  その辺の事情もやはり考えないといかぬわけでございまして、年二回勧告を出すというような事情であるのかどうかということになりますと、今後ともやはり民間の推移を見ませんと、簡単には断言できないのではないか。民間の情勢をいろいろな資料から注視をしているわけでございますが、大体御案内のように八割以上の民間企業が大体四月を中心に、この春闘時期に給与改定を行なっておるのが実情でございます。あとの一割からもう少し多いかと思いますが、そういうものがぽつりぽつりその他の時期に散らばって給与改定が行なわれておる、こういう実情でございます。でございますから、私どもの基礎になっておるのが春闘のものが一番影響が大きいわけでございます。それらが最近の情勢を受けて、再度民間のほうでベース改定をやっておるかどうか。それが続々と出るというような事情がございますれば、これはまた問題があろうと思いますが、まだそういうような情勢が出てない段階でございますので、二十八条の一項を発動するかどうかという問題については、やはりよくその辺の事情を考えていかなければいかぬのではなかろうか、こんなふうに考えておる次第でございます。  それから次は、年金者の問題についてでございますが、これはまあ現実の現在の現職者と同様に、年金者についても物価その他の波はやはり同じように受けておるわけでございます。恩給法と一緒に今年もいろいろ基礎が改正をされたはずでございますが、現在のそのもらっておる実態がどういうようなかっこうになっておるかということについては、なお調査中でございまして、それから制度についても、それぞれの関係者の間でいろいろ相談をされておるように承知いたしておる次第でございます。
  100. 長岡實

    長岡説明員 来年度の年金関係予算措置の御質問がございましたけれども、まだ私ども年度予算の作業を続けておる最中でございまして、的確なお答えはいたしかねますが、御承知のように、本年の法律改正で年金額についていわゆる物価スライド条項的なものが織り込まれましたので、そういうようなものも十分念頭に置いて今後検討を続けてまいりたい、かように考えております。
  101. 増本一彦

    ○増本委員 いまの国民の、特に労働者、それから年金生活者、生活保護世帯、こういう人たちの生活実態というものを正確に把握されて、積極的にひとつ前向きな対処をしていただきたい。そういうインフレ調整手当をよこせという民間の労働者の広範な要求もやはりあるわけで、こういうものが国家公務員労働者にも反映され、あるいは年金生活者にも反映され、生活保護世帯にも反映されるというような、文字どおり国民生活擁護の立場に立って手だてをひとつ積極的に取ってほしいと思うのです。  時間がもうありませんので、あと一点だけ、ひとつついでに農民の生活と経営対策なんですが、私もせんだって陳情を受けまして、一つは、つい最近農機具類が二〇%値上がりをした。鉄骨や塩ビやその他の農業用資材、それから肥料の値上げも問題になっている。これを何とか押えてほしい。そうでなくても低収入、低所得で、その上生産費がかさんでくれば、ますます農民が困るのはおわかりだと思うのですね。この点について、いま今日の段階で、農林省はどういうようにお考えになっているか。また、そういうものを補正予算なり来年度予算に向けてどういう手だてをいま大蔵省に要求なすっていられるのか、それをひとつお伺いしたいと思います。
  102. 前田耕一

    ○前田説明員 農機具につきましては、四十七年までは農産物の価格の上昇その他に比べましてそれほどの値上がり状況は見せなかったわけでございますけれども、ここ最近におきまして、鉄鋼等の原材料それから下請工賃、これが急速に上昇しておりまして、農機具の価格が、先生御承知のとおり、かなりの額上がりそうである、こういう情勢を見せているわけでございます。米について申しますと、生産費の中の農機具費の占める割合が約二〇%弱でございまして、かなり農機具費のウエートが高いという状況でございまして、農林省としましても非常に憂慮しているわけでございます。  これに対しまして、一つはメーカーに対する指導がございますが、これは通産省でございますので、私ども農林省の立場としましては、メーカーに対する行政指導、これを十分にやってほしい、こういうことを通産省に強く要請してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  また、農林省としましても、一つは流通面で協力できないかということでございまして、流通の正常化、合理化と申しますか、たとえば非常な招待販売その他むだなサービス競争をやる、こういうことを排除する、あるいは店頭には標準小売り価格を表示して、農村の方が価格の面で自由に選択できるようにする、そのような流通面の合理化を推進してまいりたい。現在やっておるわけでございますけれどもさらに強く推進してまいりたい、かように考えております。  また、もう一つは利用面でございますけれども、農業機械の利用の経費が農業経営費の中で十分ペイできるように、それには、一つは作業規模の拡大でございます。最近われわれもやっておりますが、請負耕作あるいは作業の受委託、これを展開いたしまして、農業機械を効率的に稼働して農業経営の中でそれを消化していく、こういうふうに強力に指導もし、また事業もやってまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  103. 増本一彦

    ○増本委員 もう時間がありませんからこまかくわたれませんので、ひとつおっしゃられたような点を含めて全力を尽くしてほしいと思うのです。  もう一点は、石油問題とからんで、農業用の重油あるいは農業用機械の燃料、これが安定供給ができなくなってきている。重油が供給できなくなると、御承知のように、ハウス栽培がアウトになりますね。軽油は耕うん機の燃料だし、こういうものの値上げを押えて安定供給をはかるという、この面での農林省の方策、これはいかがですか。
  104. 前田耕一

    ○前田説明員 御承知のとおり、農業機械にはガソリンとか灯油、軽油を使いますし、ハウス等の農業施設には重油を使うわけでございまして、これらの農業用の石油製品の需要量は、四十八年度におきまして大体六百万キロリットル足らずでございまして、これらの石油製品の総需要に対しまして三%程度、ウエートは低いのでございますけれども、先生おっしゃいましたとおり、この供給の確保が農業生産に及ぼす影響というのは重大なものがあるわけでございます。  これにつきましては、すでに御承知のとおり十六日の閣議におきまして石油緊急対策要綱が決定されまして、続きまして、事務次官のこれに基づく申し合わせ事項によります細目が決定されまして、ただいま各省におきまして行政指導を展開しつつあるはずでございます。この中におきまして、私ども強く主張いたしまして、農林漁業用の石油につきましては、一律一〇%の削減というものの対象外とする、それから農林漁業用に必要な量の確保につきまして必要な措置をとる、こういうことが要綱なり細目にうたわれておるわけでございます。また、これに伴う便乗値上げ等につきまして、極力それを押えるように強い指導を行なうということにもなっているわけでございます。さらには、今後立法措置考えておられるということもございますので、農林省としましては、そういう一連の石油規制の施策を期待するとともに、今後通産省と十分な連携をとりまして、また農林省独自にも需要状況あるいは流通状況の適正な把握につとめる等、積極的に農林漁業用の石油の流通確保につきまして万全な対策を講じてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  105. 増本一彦

    ○増本委員 時間がありませんから、具体的な手だてについて何かもしありましたら、あとで資料で私のところにでも届けてください。  こういう状況で、どうしても生産費に見合う価格保障をやはりして、農業収入の安定をはかってもらうということが、これはもう一番切実な問題ですね。この点は、いまこの段階でどうなんですか。簡潔に答えてください。
  106. 山田岸雄

    山田説明員 お答えいたします。  いま先生の御指摘のとおり、農産物の生産費につきましては、いろいろと物価の上昇ということもございまして生産費が上がってくる、こういうことが考えられるわけでございますが、行政価格を決定するにあたりましては、生産事情とか需給事情、生産費物価その他の経済事情も十分勘案いたしまして、生産の確保ということ及び消費者物価の安定、こういうことも両々考えていかなければならない、こういうふうに考えております。したがいまして、今後の行政価格の決定にあたりましては、そういう生産費の上昇状況等も十分考慮していかなければならないと考えておる次第でございます。
  107. 増本一彦

    ○増本委員 最後に、これは要望ですけれども、価格保障の対象をもう一度いまの時点でさらに広げるとか、それからその価格の決定について、いま言われたように前向きで積極的にひとつ検討していただく、この点はっきりさせていただきたい。
  108. 山田岸雄

    山田説明員 ちょっといまの先生の御質問の点で、価格保障の対象という点で私もちょっと理解しにくい点があるのでございますけれども、従来から生産の確保ということは、特に最近におきましては世界の食糧事情の逼迫というふうなこともございますので、価格政策だけでなく、ほかの生産構造政策、これらの各般の施策をもってやってまいりたいというふうには考えておるわけでございます。
  109. 増本一彦

    ○増本委員 あとはけっこうでございます。  それでは終わります。
  110. 木村武千代

    ○木村(武千代)委員長代理 午後二時より再開することとし、この際、暫時休憩をいたします。    午後一時十三分休憩      ————◇—————    午後二時五分開議
  111. 鴨田宗一

    鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  112. 堀昌雄

    ○堀委員 たいへんいろんな事態が発生をしてまいりまして、本来、それでなくても国民はたいへんいろんな面で苦しんでおるときでありますが、この際、当面する諸問題とあわせて来年度予算に関連をする問題について、少しお伺いをしたいと思います。  そこで、最初に大蔵大臣にお伺いをいたしますが、いまのこの情勢の中で一番国民が求めておることは何だというふうに受けとめておられるか、それから最初にお伺いをしたいと思います。
  113. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 次から次へいろいろの問題が起こっておりますが、何と申しましてもやはり物価の安定、騰勢をとめるということが何よりの政策の最大の課題である、かように存じております。
  114. 堀昌雄

    ○堀委員 私も大臣のおっしゃるとおりに、物価の上昇を何とか食いとめてもらいたいというのが国民の最も切実な願いだと思いますが、ちょっとお伺いをいたしますが、そのことは昭和四十八年度予算を組まれるときはどうだったのでございましょうか。
  115. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはしばしば申し上げておりますように、物価の安定と、福祉国家への前進ということと、それから通貨問題の安定、国際収支のよい意味の均衡、この三つが最大の問題である。私は率直に申しまして、この同時解決は非常にむずかしいけれども、これをうまく処理していくことにおいて、それぞれ成果をあげることができる、こういうふうに考えておりました。  ところで、国際収支の問題、それから福祉国家への傾斜といいますか、こういう点については相当のメリットをあげてきた、物価の安定ということについては所期のようにはいかなかった、私は率直にかように考えております。
  116. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、実は物価が非常に上がってまいりましたのは特に四十八年度に入ってからが非常に著しい結果が出ておるわけでありますが、ちょっと企画庁の政務次官にお伺いをいたしますが、いま皆さんのほうでは、いまの物価問題についてこれからどういうふうになると考えておられるのか、ちょっと最初にお答えをいただきたいと思います。
  117. 橋口隆

    ○橋口説明員 物価は、御承知のとおり卸、小売りともに上昇を続けておりまして、懸命にその対策に狂奔しておるのでございますが、まだ騰勢は続くのではないか。率直に申し上げますと、御承知のような原油の削減によりまして、また原油の価格の値上げも通告しておりますので、今後その影響が及んで、残念ながらなお続騰を続けるのではないか、こう見ておりまして、その対策にいま非常に苦心しておるところでございます。
  118. 堀昌雄

    ○堀委員 経済企画庁がことしの四十八年度予算編成するときに経済見通しをつくっておられるわけですが、その経済見通し、いろんなファクターがずいぶん動きましたけれども、何といっても一番動いたのはこの卸売り物価の二・〇%の上昇、それから消費者物価の五・五%の上昇、これが一番よく動いておると私は思います。  そこで、これを含め、あらゆるファクターが動いておるわけですから、当然この段階経済見通しの改定というものがあってしかるべきであるし、同時に、昭和四十九年度予算を組むための、四十九年度見通しを立てるに際しては、四十八年度実績見込みというものがなければ四十九年度見通しが立ってこない、こう思うのですが、ここらについて企画庁はどういうような作業をやっておられるか、お伺いしたいと思います。
  119. 橋口隆

    ○橋口説明員 確かに仰せのとおりでございまして、修正をする必要が非常にあると感じておりまして、特に四十八年度補正予算を次の通常国会にかけるわけでございますから、そのときには当然、四十八年度経済成長率あるいは物価見通し等について報告しなければならない、こう考えております。いま準備を進めておる最中でございます。
  120. 堀昌雄

    ○堀委員 予算の提案は、私ども承知しておるところでは、十二月一日には補正予算国会に提案されると聞いておりますが、大蔵大臣いかがでございましょうか。
  121. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 通常国会冒頭にぜひ提案をいたしたいと思っております。
  122. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、きょうが二十一日ですから、あと九日しかないわけですね。大体私いまの四十八年度経済の修正は固まっておるのじゃないかと思いますが、事務当局でけっこうですから、少しその概要をお答えをいただきたい。
  123. 青木慎三

    ○青木説明員 現在数字を詰めておるところでございまして、最終的な数字までは至っておりません。私どもが非常に苦慮いたしておりますところは、石油の削減の影響がどれくらい出るかという点でございまして、この点通産省のほうから輸入の削減の見通しをもらいまして、それが産業に及ぼす影響及びその他の需要に及ぼす影響について試算の作業を現在やっておるところでございます。月末を目途に何か具体的な数字までにまとめ上げたい、こういうふうに考えております。
  124. 堀昌雄

    ○堀委員 その話は私もいまの情勢ですからわかりますが、動くのはまあ十二月、一月、二月、三月。要するに一クォーターちょっとが動くだけですね。これまでのところはもう大体固まってきておるわけですから、正確な数字は私も伺う気はありませんけれども、ラウンドナンバー程度で、大体はこんなところだというぐらいのものがなければ、私はあと九日間でそれまで全部ということにはなるまいと思うのですが、ちょっとそこらの感触でけっこうですからお答えをいただきたいと思います。
  125. 青木慎三

    ○青木説明員 石油の影響をどう見るかにつきまして関係各省との間でまだ作業の詰めを行なっておりませんので、正確な数字を申し上げるわけにはまいりませんけれども、ことしの名目の成長率が一六・四でございますが、これはいまの実勢から申しましてこれを上回る数字、約二〇になるかならぬかというぐらいの見当ではなかろうかと事務当局としては考えております。  それから実質でございますが、実質が一番石油の影響をこうむるわけでございまして、この辺につきましては見通しの一〇・七という数字よりもだいぶ低い数字になるという見込みでございます。
  126. 堀昌雄

    ○堀委員 物価はどうですか。
  127. 青木慎三

    ○青木説明員 物価はいままでの騰勢の段階からいいましても相当高いところで落ちつかざるを得ないわけでございますが、これが最近の時点に至りまして石油の輸入削減という事態になりましたので、この影響がどう出るかという点を現在私どものほうの物価局のほうで詰めてもらっておりますので、その辺の数字をもらいませんと正確なことを申し上げられませんが、まあ相当高い数字にならざるを得ないというふうに考えております。
  128. 堀昌雄

    ○堀委員 物価局長入ってもらっていますね。——参事官でいいです。物価当局のほうは調整局にはまだ出てないようだから、どのくらいの感触なのか、大体のラウンドナンバーでいいです。何もいま私、きっちりした数で議論しようというのじゃない。大体の感触を伺いたい。
  129. 有松晃

    ○有松説明員 物価見通しにつきましては、消費者物価は最近十月の東京都では昨年に比べて一三・六、それから卸売り物価につきましては二〇%というふうな数字になっておりますが、これは年間をならしてみた場合には、それよりは若干低いところで大体平均になるのじゃなかろうかというふうな感じでございます。
  130. 堀昌雄

    ○堀委員 物価ですけれども、いまあなたのおっしゃった十月の卸売り物価の二〇%なり消費者物価の一三・五というのは、いまのこの情勢では、もう少し後半上がるのじゃないか。私どもは、なるたけ上がらないようにということでいろいろな提案をしております。しかし、政府がどういう対応をされるか、これからでまだ定まっていないようですが、何にしても最近の情勢は、国民の中に非常に不安心理が満ちていますから、これは残念なことですけれども国民政府を信頼していない。政府を信頼していないから、政府が何を言ってもなかなか——政府か言ったらその逆のことをやっておいたほうが自分たちが守られる、こういうことになりかねない情勢になっていますから、あらゆる段階を通じて仮需要が前へ出るということになれば、これは物価は上がらざるを得ない、こう見るのですが、今後の物価上昇というものは、対前年比で見ても現在の一三・五から下になるとは思われないと私は思うのです。消費者物価一三・五より上がりこそすれ、これより下にはなりにくいのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  131. 有松晃

    ○有松説明員 最近の情勢で見ます限りは、年度末にかけてやはり上がる傾向はあるのじゃないかと思いますが、ただ見通しの修正という段階におきましては、やはり年度平均になりますので、その場合にはあるいはいまよりは低い数字になるのではないかというふうに考えております。
  132. 堀昌雄

    ○堀委員 私も、いまの年度平均の数字というのはこれは統計上の数字でございまして、生活実態に関係ないと思うのですよ。要するに、こういうカーブのものを平均して年度年度を比較するためにつくられるものであって、生活実態というものは、私は前から物価というものは対前年同月比が物価だ、こう認識をしてきておりますから、そういう限りでは、私は今後一三・五がやがて一四になり、おそらく一五に近づくだろう、一五をこえるかもしれない。午前中の質問でも出ていましたけれども、私ども卸売り物価と消費者物価のラグというものは大体六カ月くらいあるというふうに見ていますから、いまこの情勢で卸売り物価が二〇%前年比というので落ちつくかというと、これもちょっとむずかしい。そうすると、そのタイムラグがある限り、三月までは消費者物価はさらに上がると見るのが相当だろうと思うのです。  それはそれでけっこうなんですが、そこで大臣、そういう客観情勢を踏まえて、これから補正予算なりそれから四十九年度の一般会計予算をお出しになることになるわけですね。大臣もさっき一番大事なのは物価だ、こういうふうにおっしゃったわけですが、そこでお伺いをしたいのですけれども、要するに、予算編成にあたってこの物価を最重点に考えるということにした場合には、どういうものの考え方に立って編成をされるのか、それをちょっとお伺いしたいと思います。
  133. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず、具体的に言いますと、本年度補正予算に対処するかまえですけれども、申すまでもなく、こういう状況下でありますし、従来から財政金融政策については、いわゆる引き締めを相当に強化してまいりましたから、その考え方で、さらにきびしい態度で立ち向かってまいりたい、こういうふうに考えております。  少し一、二続けさせていただきたいと思いますが、そこでまず補正予算でございますが、これは近く御提案申し上げるわけで、まだ最終的な成案にまではいっておりませんけれども、歳入の面から申しますと、大体一兆五千億程度の増収がこれはほとんど確定的に見込まれておりますから、これをどういうふうに扱うかということ、それから規模としてはできるだけ景気の刺激にならないように、むしろそれを押えるような気持ちで編成をしていきたいと思います。  結論的に申しますと、五千億円余りは、五千数百億円になる、またしたいと思っておりますが、公債を切りたいと思っております。そして一方歳出のほうにおきましては、御案内のように人事院の勧告を完全に実施しなければなりません。それから年度内は御承知のように消費者米価を据え置きました関係から、食管の関係で相当の補てんをいたさなければならぬわけでございます。それからもう一つは、税の自然増収の大体八割五分ぐらいまではいわゆる三税でございますから、これは機械的に三割二分が地方交付税交付金になりますから、この額は相当なものになります。大づかみに申しまして、いまの三つの要素を合わせますと、第一、第二がほぼ二千億円くらいのスケール、それから第三の地方交付税交付金の関係が四千数百億になります。  そこで私の考え方といたしましては、一方においてできるだけの節約、それから予備費の削減ということをやりたいと思っておりますし、それから地方財政関係でも、地方交付税交付金の関係が相当の額に帳簿づらはなりますけれども、その使途につきましては、旧債の返還、それから借り入れ計画が行なわれておりましたものを借りないことにするとか、要するに現実に金として市場に出ないような、あるいはそのほかの基金というようなものへの繰り入れも考えておりますけれども、できるだけこれが出ないようにといいますか、平たいことばで申しますと、そういうくふうをこらすことが何よりこういう状況に対する対処の方策ではなかろうか、こういうふうな考え方でございますが、いま申しましたような歳出の帳簿づらで申しますと、大体一兆には及びませんけれども、帳簿づらは相当な額になります。しかし実体的には、こういったようなやり方をやることがまずこの補正予算に対する態度でなければならない。各省に対しましてもそういう態度で協力を求めつつあるわけでございます。細部にわたりましては、追って御質問もあろうと思いますから省略いたします。  それから来年度の問題でございますが、同様に、まず財政の規模というものはできるだけ少なくすることにつとめたいというのが何といっても第一の原則であると思います。ただ、これもざっくばらんに申し上げるわけでございますけれども福祉財政とでも申しましょうか、こういう点に重点を置いてきております関係で、福祉関係予算等の既定増が相当のものに歳出上なります。それから給与のアップということも、これはもう既定の問題でございます。それから食管会計におきましても、やはりまだ相当な根が残っておるような関係もございまして、いわゆる既定増でどうしても手のつかないものがある。それで実は、いま申しましたような給与とか米の関係とかを入れますと、四十九年度の概算要求は三〇%を相当こしておるわけであります。これは事務的の処理上、そういうものをはずしました概算要求をとった表からみますと、三〇%まではいっておりませんけれども、内容的に申しますとそういう状況でございますから、これを相当の程度に圧縮するということはなかなか困難でございますが、企画庁を中心とする経済見通しも追ってだんだんと掌握できると思いますから、物資需給関係等も十分にらみまして、たとえば公共事業費等については現実に即し、かつ物価騰貴を誘発しない、いやむしろ騰勢をとどめるようにやっていくような努力をうんとやっていかなければならない。  それから歳入の面におきまして、これは私の考えをざっくばらんに申し上げたいと思いますけれども予算の規模を少なくするという意味から申しましても、所得税減税はできるだけ大幅にやりたい。これは物価調整減税というような見方も私はできると思いますし、それから予算規模を少なくするという面からも、ぜひこれはやっていきたい。それから公債の依存度をなるべく低くするようにするというような考え方を骨子にいたしまして、そこから歳出のほうの削減といいますか緊縮ということについて、ことばは悪いですが、ざっくばらんに申しますが、締めつけていかなければなるまい。また、これが現在の国民のコンセンサスではなかろうか。  大ざっぱに申しますと、そんなふうな考え方でございます。
  134. 堀昌雄

    ○堀委員 大体お考えを承りまして、まず予算については物価の問題を最重要に考えるというお話の中で、少し補正予算の問題でお伺いをしておきたいのですけれども、先ほど午前中の質疑の中でも明らかになりましたが、生活保護と失業対策事業については補正予算で配慮がなされるように実は伺ったわけであります。  そうすると、さっきから私が物価上昇のことで触れておりますけれども、大体ことしの初めごろ、四月ごろはまだ消費者物価というのはたしか対前年比で一〇%程度、もう少し低かったかと思いますが、その程度のところにあったのじゃなかったか。ところが今日、さっき申し上げたように大体一三・五か一四くらいにきて、これが一五くらいまで対前年比でいくということになりますと、やはりこれはかなり手直しが必要だということで、そこはやっていただいておるようですが、年金生活者の問題は一体どういう取り扱いを補正でなさろうとしておるのか。生活保護、失対の方ももちろん低所得で、これは何とか緊急にしなければならぬ問題でありますが、それでは年金生活者、特に老齢福祉年金、障害者年金、母子年金の人たちというのは、これはもうそういう配慮をしなくてもいい状態にあるほど所得があると見ておられるのかどうか、この点をちょっと大臣から承りたいと思います。
  135. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 補正は、ただいま申しましたように、もう必要な最小限度のところの歳出ということを考えておりまして、その中で先ほど大どころの歳出項目を申し上げたわけですが、生活保護家庭それから失業手当関係というようなところは、まことにお気の毒な状況であって、これらのところに対しては、まあ最小限度と言えるかもしれませんけれども、若干の増加をこの際追加いたしたい、かように考えておりますが、年金については補正予算では考えておりません。
  136. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、年金生活者はその人たちに比べて生活が楽だという認識の前提でございましょうか。私が申し上げたいのは、新聞で拝見をしたところですけれども、老齢福祉年金は四十九年度は五〇%アップにしたい、いまの五千円を七千五百円にしたいというようなことが新聞で伝えられておるわけです。私どもはそれでもきわめて不十分だと考えておりますが、それにしても、これからあとまだ四カ月ですね。当初に予想しなかったような物価上昇がある中で、生活保護、失対の方と同じように、年金生活者というものは現在の世の中ではきびしい風に当たっておられるのではないだろうか。特に物価上昇は、大臣も御承知のように、所得の少ないところに一番よく当たるわけでして、一五%という物価上昇をかりに考えましても、それは平均的な国民の受ける影響であって、所得の低いところでは二〇%からそれをこえるほどの実質的なきびしさが加わってくるわけですから、もし来年度で五〇%も引き上げるということならば、これは財源がないのではありません。いまお話しのように、五千億近くのものは国債の発行を取りやめる。私は、国債の発行を取りやめられることは賛成でありますけれども、国債の発行を取りやめること、財政規模を小さくすることと、年金生活者にこの際たとえ二〇%でも三〇%でも一月一日からでも配慮を行なうということは、現在の福祉の問題を重視するということを昨年以来おっしゃっている以上、当然私は、ここも欠かしてならないものだと思うのであります。  まだ補正予算はこれからあと十日間ばかり時間があることでありますから、どうかこの点についても、ひとつ大蔵大臣の決断によって、来年度五〇%も引き上げるというお考えであるならば、その中間的なところまで、まあ五〇%上げていただけばたいへんけっこうですけれども、その他の権衡もありましょうから、しかし少なくとも生活保護、失対等の皆さんの情勢も勘案した何らかの措置が講じられてしかるべきではないか。生活保護の問題については、過去から長い経緯の中で一応の基準が定まっていますけれども、この年金関係はまことにそういう点では権衡を失した低額の年金で、現在の高物価の中では非常に困難な情勢に年金関係者はおられると私は思うのでありますが、この点についての大臣の見解を承りたいと思います。
  137. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 補正予算については先ほど申し上げましたような考え方でございまして、老齢福祉年金については、お話しのように、来年度においては五割を上げて七千五百円、それから再来年は一万円ということが前々からの公約であり、また既定方針でもございますから、この際は、四月からでございますから、ひとつ四月からの引き上げということでごしんぼう願いたい。  また、他の各種年金制度等につきましては、年度途中でこうした時期に補正の対象にするのは適当でなかろう、こういうふうに考えておる次第でございます。
  138. 堀昌雄

    ○堀委員 来年の四月までしんぼうしろとおっしゃることは、どうもこの年の瀬から寒い時期に、たいへん年金生活者に冷たい政府考え方だと私は思いますね。物価という問題を国民が切望しておるというのは、この年金生活者を含めた国民だと私は理解しておりますからね。その人たちが一番それを重要視しておるときに、それにこたえることがなくて福祉重点政策と言うのは、これは絵にかいたもちではないでしょうか。ここらはもう一ぺん御検討になる余地はありませんか。これは重大な私は福祉に対する問題、物価国民との関係における重大な課題だと思いますので、もう一ぺんひとつ大臣の御検討をいただきたいと思います。
  139. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま申し上げたことを繰り返すことになって恐縮でございますが、補正予算で老齢福祉年金の繰り上げ増加ということは考えておりません。
  140. 堀昌雄

    ○堀委員 計画は確かに一つの計画でありましょう。しかし、自民党でそういう五千円、七千五百円、一万円ということをお考えになったのと、いまの経済情勢とは、私は別だろうと思うんですね。  私はあとで人事院総裁なり労働大臣にもいろいろと伺っていきたいと思うのですけれども、私たちの受ける所得というものは、多くはみなそのときにおける経済情勢あるいは民間の賃金、いろんなものを勘案してきめるというのが私は本筋ではないかと思うんですね。そうであるから、いま生活保護について五%程度の積み増しを補正考えるということになっているのだと思うのです。そうすると、なぜ生活保護、失対の皆さんと年金生活者を差別しなければならないのか、その積極的な理由を、それじゃひとつ大臣にお伺いしたいのです。
  141. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 積極的な理由といたしましては、生活保護あるいは失対等の関係は、もう御承知のように、基準となる。パーセンテージというようなものが、他との権衡その他から申しまして最小限度、この時期におきましては五%アップということが妥当であるという理論的根拠も私はあり得ると思いますし、それからやはりその困窮の度合い等を考えてこういう措置をすることが妥当であろう、こういうふうに結論づけたわけであります。  それから老齢福祉年金のほうは、これは年度の途中から実行を本年もいたしたわけでございますから、そういう関係からしても、財源的にいってもなかなかこれはたいへんなことでございますし、それから年金制度と老齢福祉年金とは、これはもういまさら申し上げるまでもありませんが、性格が私は違っていると思うのであります。そういう点から申しましても、無拠出制の老齢福祉年金の額をこの際、お約束した状況よりも非常に繰り上げをしてここで増額をするというところまではこの際としては見送らしていただきたいというのが私の結論でございます。
  142. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大臣がお答えになりました老齢福祉年金、障害者年金、母子年金というのは、国が全部見ておるわけですね。私は、いま年金制度の中におけるこれらの年金の論議をしていないのですよ。国がなぜ老齢福祉年金、障害者年金、母子年金を見なければならないのかというところですね。これは生活保護と基本的なものの考え方においては共通の立場に立っておると私は思うのです。要するに、憲法第二十五条が保障しておるというこの考え方が裏側にあって、年金制度から除外をされておる人たちに、その人たちの最低生活を保障しようというのが老齢福祉年金であり、障害年金であり、母子年金であると思いますので、その点は、私はそのような理解に立って申し上げておるということをひとつ確認していただきたいと思いますが、これ以上時間をこれに費やすことはできませんけれども、私は、自民党政府というのは、これらの要するに老齢福祉年金その他の無拠出年金の対象者に対してきわめて冷たい、この物価上昇の中で何の配慮もしないということを国民の前に明らかにしておかなければならぬと思います。  その次へまいります。先ほど大臣がお話しになりました、自然増収年度内一兆五千億ぐらいという話でありますが、私はすでにこれは六月の初めに、大体本年度一兆四千億程度の自然増収が出ますよということを申し上げたけれども、当時主税局長は言を左右にして逃げ回ったのでありますが、今日、私の申し上げた程度の自然増収が出ることになりました。  そこで主税局に伺いますが、一兆五千億円の自然増収の中身をひとつ、所得税法人税その他についてちょっとお答えをいただきたいと思います。
  143. 大倉眞隆

    ○大倉説明員 ただいままだ最終的に精査中でございますが、ラウンドナンバーで申し上げまして所得税で五千五百億円程度法人税で七千億円程度、それから他の税で二千五百億円程度。他の税のうち非常に微細な動きがあるものは例年どおり補正にあえて計上いたしませんので、税目といたしましては、酒税、物品税、印紙収入を予定しております。
  144. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、この自然増収と減税関係をちょっと大臣にお伺いをしたいのですけれども、ことしの当初予算のときには、大体ことしの経済見通しその他の上に立って予算編成されますときには、二兆五千五百億ぐらいの自然増収があるという予想でございましたね。その予想に見合って実は所得税減税というのは行なわれたと思います。減税というのは、おおむね常にその次の年度における自然増収との見合いで実は決定されるというのが本来の仕組みだと考えておりますが、たいへん見込みが相違をしてまいりまして、所得税だけについて申しますと、結局国民予算確定後に五千五百億円税金をたくさん取られた、こういうことでありますね。この年度内に発生をした所得税の増税分は、私は、本来は全部納税者に返すのがたてまえではないのか、これはまあたてまえ論です。しかし、たてまえ論で全部返せといっても、これはやはりいろいろ実際の政治的な問題がありますから、そうはいかないと思いますが、少なくともその半分なり六割なりというくらいのものは、これは私は政府見通しの誤りによって不十分な減税を行なったということであるから、取り過ぎ分のそれらのものは、国民、納税者に返すというのが政治としての本来の姿ではないか、私はこう考えますが、大蔵大臣いかがでございましょうか。
  145. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 そこで私は、それなら年度内減税をすればいいではないかという御発想、あるいは御議論に通ずるかと思いますけれども、現下のこういったような状況下におきましては、これは四月以降におきまして、来年度の特に所得減税については、できるだけそういう点を考慮に入れまして思い切った減税でおこたえをしよう、こういうふうな考え方でおる次第でございます。
  146. 堀昌雄

    ○堀委員 私も大臣がおっしゃる思い切った減税、賛成です。減税はもう大いに思い切ってやっていただきたいのですけれども、ところが、結局いまのように物価が上がる世の中では、実はきょうのまあ千円としましょうか、それからあしたの千二百円というときに、実際どっちが問題かといいますと、あした千二百円やるといわれるよりも、きょう千円もらったほうがいい、物価の上昇のときには、国民の感覚としてはそういうものだろうと思うのですね。私は、こういう異常な物価の上昇がなければこういうふうな問題提起をしないのでありますけれども、あとでも触れますけれども、この物価上昇が国民生活に与えておる影響から、いろいろな要求がいま国民の中から出されてきておる。それにこたえる一つの方法としては、やはりこの際年内に減税をするということが、いまの政府見通しの誤りから来た増税に対して配慮をするということが相当ではないだろうか、こういう感じがするわけです。  私がいま申し上げている考え方は、何か政府はいまの予算が単年度主義というようなことになっているものですから、何が何でも区切りは四十九年の四月だ、四月まではみんながまんして待て——私がさっき年金について触れたのも、いま五〇%上げなさいということを言っているわけではないのですよ。こういうふうにやってきて、それががくんとこう上がってこうなるよりも、国民はここを少し斜めにしてもらいたい、こういう物価上昇の際だから斜めにしてもらえないかというのが、私は国民の願いだと思うのですね。そうすると、その斜めにするということが、少なくともいま五〇%ぽんと上げる前にとりあえず一月から二五%上げましょう、そうして四月から五〇%、こうなれば国民は、政府も十分配慮してくれたなという感じがすると思います。同じように、年内にひとつ減税をやる。この減税のあり方については、私どもの党が参加をしております国民税制調査会では、年内に税額控除でひとつ三万円程度のものを行なえということを提案しておられるわけでありますが、私もたいへんもっともだと思うわけであります。これに要する財源というのはそんなに大きくないわけでありまして、さっきの所得税の取り過ぎ分の半ばを充てればその処理ができるのではないかという感じがしておりますので、これらについてひとつ大臣の見解を承っておきたいと思います。
  147. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 要するに、せんじ詰めたところは、期間を相当長期に通じてなだらかな減税で早くやったほうがいい、こういう御説であり、私ども考え方は、先ほど来御説明のところも十分胸に入れて、四月から実質減税物価調整減税という名に恥じないような大幅な減税をやるということのほうがよろしい、ここが議論の分かれ目だと思います。そうして私どもとしては、一面におきまして、物価の騰勢がとどまるように全力をあげていろいろのことをやっておる。そうして今日のようなこの状況下においては、一面において減税には、かえってインフレを促進するではないかという議論もあるようなことも考慮いたしまして、これはやはり春を待って大幅のがたんとした減税でお報いすることが適切であろう、こういうふうに考えておる次第でございます。
  148. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がありませんから前へ進みますが、そこでいまたいへん大幅の減税についてお触れになったわけですが、おそらくこれは税法で提案をされ、予算にも組み込まれてくることでありましょうが、大蔵大臣はどの程度の大幅な減税を現在お考えになっておるのか、お答えをいただきたいと思います。
  149. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはよく御研究の堀さんですから、詳しく申し上げるのもいかがかと思いますけれども、やはり減税案を考えますときには、現在の税制を延ばしていけばどういう姿になるであろうかということをまず一つの基準に考えるのが普通の考え方であろうと思います。したがいまして、今年度一兆五千億円の、これが見積もり違いというおしかりを、いただきましたが、現実の姿がそうでございますが、大体こういう傾向値をかりに伸ばすとすれば、この税制が来年度も行なわれるとするならば、四兆円強と申し上げたほうがいいかと思いますけれども、四兆円は自然増収といいますか、増収になるであろうと見込まれるわけでございますね。その状況を想定の根拠にいたしますれば、二兆円の減税ということに相なります。しかし同時に、税制はその内容が本質でございますから、これらの点は十分詳細に案をつくりまして、いずれ国会に御審議を願いたいと思いますが、大体の考え方としては、所得税について申しますれば、基礎控除、勤労控除、これの定率の控除を四〇%というような率まで設けるというようなこと、あるいは定額控除の額を相当引き上げるというようなこと、それから税率にもこの際手をつけまして、同時にいろいろの補完的な考え方を入れまして、標準家計百十四万円でありましたのを、平年度においては百七十万円以上にすることを目途にして、初年度においてはこうこうという案にいたしまして御審議をいただきたい、かように存ずる次第でございます。  ですから、そういう一つの組み立て方、内容、そうしていま申しましたような前提でいけばということを前提にしての二兆円減税というものはぜひ実現いたしたい。その姿を四十九年度に当てはめて四十九年度では実現いたしたい、かような考えでございます。
  150. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの平年度二兆円の減税ということはたいへんけっこうですから、だいぶ自民党内部にも、閣僚内部にも、減税はこの際見送ったらどうかとか、時期をずらしたらどうかというような意見もあるようですが、その点は大臣、いまのお話は間違いがないでしょうね。四十九年四月一日からなさるという点をちょっと確認をしておきたいと思います。
  151. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 四月一日からぜひ実行いたしたいということで税制改正案を提案いたしたいと思っております。
  152. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでちょっと減税にあわせて少し問題を提起させていただきたいのですけれども、現在所得税法によりますと、納税額の端数が百円未満のものは切り捨てる、こういうことになっておると思います。  そこで国税庁にお伺いをしますが、現在年間の所得税の金額が一万円以下の納税者というのは、資料のある最近の時期でけっこうですが、何人くらいいて、その納税額というのは一体総額幾らになっておるのかをちょっとお答えいただきたいと思います。
  153. 田邊昇

    ○田邊説明員 ただいまの御質問について正確な数字はございませんが、たいへんラフに推計いたしますと、所得税の納税者で約四百万人、税額で約二百四十億円ということでございます。
  154. 堀昌雄

    ○堀委員 時期はいつの資料でしょうか。
  155. 田邊昇

    ○田邊説明員 昭和四十六年分の所得税につきまして推計いたしております。
  156. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、いまお聞きになりましたように、四十六年ですから、今度は四十九年、三年もたっておりますから、所得の増加状況やその他で、いまの数字と同じようにはならないかもわかりませんが、それにしても年間にいま一万円以下の納税者というのが四百万人ある。そうしてその税収は二百四十億でしたね。ということは、これは納税上の手続の問題から見ても、納税の合理化といいますか、この階層をひとつ、いま百円未満切り捨てというのを、この際一万円未満切り捨てということにすれば、わずか二百四十億円、もう少し減るのじゃないでしょうかね、該当者はちょっと減ってくるかもしれません。そうすれば、さらに金額は減るのじゃないかと思いますが、それにしても何百万人という単位であることに間違いない。ということになると、納税者の側から見ても、徴収をする側から見ても、さらにその手続をしておる企業の源泉徴収に携わっておる人たちの問題を考えてみても、私はこの処置をひとつ取り上げてもらいたい、こう考えますが、大臣いかがでございましょうか。
  157. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 最近の給与水準の上昇を反映しまして、所得税の納税者数が非常に多くなっておりますことは御承知のとおりでございます。ただいまの堀委員の御提案は、少額の減税財源でかなりの納税者数を減少できるではないかという御趣旨と承りまして、これはさすがに権威のある堀先生の御提案で、伺っておりましてもたいへん敬服するわけでございます。ひとつ前向きに勉強さしていただきたいと思います。  ただ私もなるほどいいお考えだなと思うと同時に、一万円をちょっとこえたぐらいの納税者と一万円未満の場合とで、かえって負担が逆になるというようなこともあるのではなかろうかな、こういう方式が、一つの体系、方式として、はたしてよいかなというところにちょっと疑問もあるようにも思われますけれども、しかし、私は先ほども申しましたように、大幅な減税をするということは、全体の納税者、いま三千七百万人ぐらいと考えられますが、五百万人が税から解放されることになる。これは私としては眼目の一つでもございますが、そういう発想とやはり通ずるところがあるような感じもいたします。ひとつ真剣に、前向きに勉強さしていただきたいと思います。
  158. 堀昌雄

    ○堀委員 御指摘の点は、私も承知をしておるわけです。ただ、その限界のところの人の問題と、いまのメリットですね。メリットとデメリットを比べてみますと、もうこれは問題にならないと思うのですね。だから、そこらは少し主税当局で、私も考えてみますけれども、そこをどうするかという問題をひとつあわせて、来年度税制とセットして考えてもらいたい。そういうことを頭に置きながら、来年度税制のそういう問題をも少しあわせて検討するということで、大臣からも前向きに真剣に検討したいという御答弁でありますから、この際ぜひひとつそういう方向で処理をしていただきたいと思います。  その次に、いま私は尼崎に居住をしておりますが、この尼崎というところは鉄鋼労働者がたくさんいる町であります。日ごろから鉄鋼労働者の諸君と話をしている中で、最近話が出ておりますのは、だんだん鉄鋼業についての労働者が減ってきて、もう要員確保が非常に困難になってきておる。要員確保が困難になるということは、現在の労働者が過重負担で働かなければならぬということに結果的になるわけですね。  そうすると、これは何としても少し考えてほしい問題だということで出ておりますのは、御承知のように鉄鋼業は炉がありますから、いまは四直三交代というようなことでぐるぐる回って、みな夜間の勤務、深夜の勤務があるわけです。これは炉のあるものは、ガラスであれ化学工業であれ、みなそういう傾向がありますし、その他深夜勤務には看護婦さんもあれば、運輸労働者もあります。そこでこれは、労働基準法によって現在二五%の賃金の積み増しを実は法律で求めておりますが、私はこの際、深夜労働などということは、これは本来正常な場合には、昼間働いて夜寝るというのが人間の正常な姿でありますね。愛知さんも海外へよくお出かけになっておるからおわかりだと思いますけれども、私ども海外旅行に行って一番困るのは、時差によって体の変調が起こるということですね。まず欧州へ着いた日は八時間違いますから、寝る時間と起きる時間が動きますね。たいへん変な話ですけれども、人間はある時間になると目がさめる、目がさめると排便をしたくなるというのが大体日常のサイクルになっているわけですね。これがさっそく狂ってくるわけです。だから、夜中に目がさめて便所に行きたくなるというような問題が起きてくる。それが向こうのサイクルになって、向こうからこっちに帰ってくると、これはまたまっ昼間にそういうことが起こる。これは生理現象ですからやむを得ないのですけれども、それを三日に一ぺんずつひっくり返されながら真夜中を勤務するということは、今後の労働需給との関係から見ると、生産なりサービスの問題としては、一つの重要な問題になってくるだろうと私は思います。  そこで調べてみますと、西ドイツでは、現在、単に深夜の割り増し賃金ではなくて、休日出勤についても割り増し金については所得税法で非課税という原則があるわけですから、そこについてひとつ政府として、これらの夜間勤務の人がそういうたいへん恵まれざる労働条件で働いておられることによって国民は生活の便益を亨受しておるわけでありますから、やはりそれらの問題については、当然これらの経営をしておる企業側も、大幅な割り増し賃金を支払うことによってそれらの人に報いなければなりませんが、大幅の割り増し賃金を出せば出すほど限界的にはその部分に対する課税分はふえてくるというのが、累進税率の仕組みからして当然起こることでありますね。ですから、この際はひとつこれらの、私は休日出勤まではまだ問題を提起をする気はありませんけれども、少なくとも労働基準法の定めておる深夜の割り増し手当二五%、あるいはそれ以上の深夜の割り増し手当については減税をすることが、今後の日本の国民生活を安定させるための労働条件の確保という意味では非常に重要ではないか、こう思いますけれども、大臣いかがでございましょうか。
  159. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 お話の御主張は私も理解できるわけでございます。  そこで、いま例に西ドイツの例をおあげになりましたが、実は私もこまかく勉強したわけではございませんけれども、これは西ドイツでも相当税制上の問題として論議が行なわれているところであって、現在やっておりますやり方については、私の勉強不足かもしれませんけれども、むしろ税制調査会等ではこれはやめるべきであるということで、政府側も相当税制上の問題として真剣に取り上げているようでございます。  要するにドイツで非常に問題にされている点は、一つは、そういった特殊な危険なものである、あるいは時間的に非常に異例な勤務であるというようなことの主張はわかるにしても、これがそれぞれの立場で特殊性ということがどんどん広がっていくと、税制上混乱するというのでございましょうか、あるいは別の観点から見ると、公平という観点からいっていかがであろうかというようなことで、何か最近の西ドイツの税制委員会などでは、反対が絶対多数であったというようなことも聞いたようなわけでございますし、また日本におきましても、まあこれは仮定の事実ではございますが、たとえば寒冷地手当といったようなものにまで広がってくるというようなことになりますと、やはりこれは相当問題になってくるんじゃなかろうか。これがいまお話しになっておりますように、大多数の国民がこれだけは特殊であるということがいかなる観点からも認識されるようなことであって、そして課税の公平性というようなことが問題にならない限界点がどうやって確保されるかということをはじめ、いろいろ考究しなければならぬ問題があるのではなかろうかと思います。これも堀委員の御提案でございますから、ドイツの実情あるいは日本でそういうことが行なわれ得るかどうかというようなことについて、なおいま少しこまかく検討をさせていただきたい、かように存ずる次第でございます。
  160. 堀昌雄

    ○堀委員 労働大臣、あなたは所管ですからね、労働者の勤務条件を適正ならしめる、こういうことについての私の提案、労働大臣の立場としてどうですか、お答えいただきたいと思います。
  161. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 いまの深夜の交代制の手当の問題、これはやはり立場立場によって意見が多少違うのもいたし方ないと思いますが、労働大臣、労働省としては、この問題は相当前から研究中であります。この税務の問題は、一面を取り上げますと、いま大蔵大臣から話があったように、他の面に波及するという問題でありますが、労働省としては前向きで関係方面と、政党政治でありますから党のほうだとかそういう方面と、何とかこの問題に対しましては、その立場の特殊性を考えて考慮したいという方向で進んでおります。しかし、やはりこれははなはだ言いにくいのでありますが、その点はどうぞ……
  162. 堀昌雄

    ○堀委員 もうあといいですよ、わかった。  労働大臣、じゃあもう一つだけちょっと聞いておきますが、いま大蔵大臣がおっしゃったのは、これとほかのものと関係が出てきやしないか、そしてだんだん広がっては困る。まあさいふのひもを預っておる大蔵省としては当然そういうことがあると思うのですね。西ドイツは、祭日、祝日、休日出勤も入っているのですよ。私はいまそこまで触れようと思っていない。深夜業務というのは特殊だというのはいまお聞きになったとおりですね。深夜業務というのは、その他危険手当とかいろいろありましょう、ほかに各種の手当があるでしょう、しかしそれとは異質のものだ。労働基準法で定めておることは、要するに正常な労働条件でないから割り増し賃金を出すんだということが立法の根拠ですから、その点その他のものとは区別がある。あるかないか、それだけ答えてください。もう余分なことは要らないです。
  163. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 多少労働省としては区別いたしております。(堀委員「多少」と呼ぶ)区別をしております。
  164. 堀昌雄

    ○堀委員 はい、よろしい。もう余分なことを言わないほうがいい。
  165. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 堀さん、自分ではどうとかこうとか言うけれども、そうは御制限なさらぬようにお願いいたします。
  166. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、あなたがいろいろなことを言うと、肝心なところがぼけてしまうものだから、はっきりさしておきたかっただけです。  大蔵大臣、労働大臣は区別があるという。その他のもので立法措置によって割り増し賃金とか手当を出しておるものがありますか。労働省、ちょっと答えてください。
  167. 渡邊健二

    ○渡邊説明員 基準法上では、時間外労働に対しましてはやはり同じ二割五分、それから休日労働に対しても二割五分の割り増し賃金が定められております。
  168. 堀昌雄

    ○堀委員 それだけですね。私はその法律の中で十時までの時間外、それには触れてないわけですよ。それから休日も触れてない。これはなぜかといえば、いまの国民感情からすると、それまでということはややなじまないだろう、こう思っているから、そこで限定して、その他には何もない。要するに、立法で措置されておるところの労働基準法の深夜割り増し賃金だけを問題提起しておるわけでありますから、どうかひとつ大蔵大臣も、労働大臣もこれはほかとは区別をします、こう言っていることですから、その点はまあ大蔵省の事務当局はいろいろと心配をたくさんすると思うのです。こうやったら次はこうなって、こうなったらこれはたいへんなことになる——たいへんなことにはなりませんから、その点は明らかでありますから、ひとつ十分御検討をいただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  169. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど申しましたように、なお各国の例などもよく調べ、また労働省の御意見もよく伺いながら勉強をいたしたいと思います。
  170. 堀昌雄

    ○堀委員 あとちょっと二、三簡単に申し上げておきますが、物価が非常に上がっておりますときに、私は税制対策でやれることが少しあると思います。  一つは、私どもがかねてから主張しております交際費課税を大幅に締めるということですね。要するに、交際費課税を締めることによってむだな消費が抑制をされます。これは私は、生産に関係するものでも何でもないむだな消費だと思います。最近はともかく深夜テレビの電気を切るとかいろいろなことをいっていますが、バーや何かで夜がたがたやっているむだな消費を断ち切るということは、私は国民のすべてが求めておることだと思います。社用族が主としてやっておることですが、その点ひとつ交際費課税を強化するということをぜひお願いしたい。  それから、やはりむだな消費をあおるのは多分に広告に問題があります。消費を抑制したいということならば、正当な消費を保障するためには、この際必要以上の広告もそういう意味では考えるべきだ、こう私は考えますが、この二点についてちょっとお考えを聞いておきたいと思います。
  171. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 実はこの税制改正につきましては、まず所得税について成案を得つつあり、それから法人税についても大体のところ成案を得るに近づいておりますが、まだ他の税種目につきましては検討が進んでおらない面もございますし、それから、これも率直に申しまして、歳入ですね。一方で大減税をすると同時に、増すほうもまた考えなければならぬ点もございます。ただいま貴重な御意見を拝聴いたしまして、それらも十分参考にしたい、かように考えております。現在までのところは、その中で広告税等については考えておりませんでした。いろいろ貴重な御意見を伺いましてありがとうございました。
  172. 堀昌雄

    ○堀委員 それとあわせてもう一つあるのですが、実は私、これまで税をやっておりまして非常に納得ができないのは、法人企業赤字になりますと、要するに地方税の府県民税均等割というものだけを払えば、全然税金を払わなくなりますね。ところが、これらの事務所なりあるいは事業所なりが、その地域における地方自治体から受けておるサービス、広くは国から受けておるサービスを含めて多くのサービスを受けておりながら、ともかく府県民税の均等割しか払わなくなるというのは、私はいかようにも納得ができない、こう考えておるわけであります。  そこでいま自治省も要求しておりますし、地方自治体が強く要求しておりますのが、御承知の事務所、事業所に対する課税問題でありますね。これは法人税を引き上げる、いろいろやる際にあわせてやるのはどうかという問題はあろうかと思いますが、法人税を引き上げるのは、要するに税金を払う人たちにだけ有効でありまして、赤字企業は法人税を引き上げても何ら痛痒はないのです。だから、この際私は、やはりこの事務所、事業所を地方税の財源として確保するということはきわめて適当な方向だと思いますので、これも四十九年度税制でひとつお考えを願いたい、こう思います。
  173. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは主としては自治省の所管でございますから、自治省ともよく相談いたします。  なお法人税につきまして、まあ御質問と別なことになって恐縮なんですが、法人住民税の税率は相当やはり高くしたいというようなことで、これまた自治省との間ではいろいろと検討を重ねております。
  174. 堀昌雄

    ○堀委員 私どもちょっと承知している範囲では、自治省はこれに非常に積極的だけれども、大蔵省に難色がある、こういうふうに伝えられておりますので、ひとつその点大臣から、大蔵省としても前向きにこの問題に取り組むという御発言がいただければ、この部分はこれで終わりたいのですが……。
  175. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 実はその点につきましては、どういうふうな話が事務当局同士で相談されているか、ちょっと私もうっかりして状況を聞きませんでしたので、いま大倉君にも確めたわけですが、今後の検討にまだゆだねられているようでございますから、十分今後緊密に連絡をいたしたいと存じます。
  176. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、ちょっと四十九年度予算の問題について一言だけ申し上げておきたいのですけれども、実は住宅建設というのがいま国民にとって非常に重要な課題になっておるわけですが、ことしの予算予算化された公共事業の中における約二千億余りの住宅建設の費用、それから財投で一兆二千億程度の住宅関係の費用を計上したのですが、これは一体どの程度進捗しておるのか、ひとつ主計局でも建設省でも答えてもらいたいと思います。
  177. 沢田光英

    ○沢田説明員 私どものほうは、金額の確たる資料をちょっと持ち合わせておりません。戸数の進捗状況で御報告さしていただきたいと思います。  御存じのように、私ども四十七年度来、公共住宅に関しまして非常にピンチに立っております。その事情はいろいろあるわけでございますけれども、まず公共住宅の中の非常に基本的なものでございます公営住宅の状況について申し上げます。  公営住宅につきましては、四十八年度予算戸数は十二万四千戸でございます。このうち十月現在におきましてほぼ五万戸程度の発注を完了しておりまして、おおむね五〇%弱ということになるわけでございます。ただし、これは順調なときよりもややおくれておるわけでございますが、ただ、その問題だけではございませんで、東京、大阪、この辺がほとんど発注ができない状態で、そういうことが現象としては非常に大きい。単なる進捗状態ではなしに、そういう問題をかかえた状態でございまして、このまま推移いたしますれば、おそらく十一万弱のものは発注完了ということにはなりますけれども、あとのものは問題として残るだろう、かような現在の予想でございます。すなわち東京、大阪を中心といたしました大都市で、御存じのような問題でおくれております。  それからもう一つは、主要な事項でございます公団でございます。公団につきましては、四十八年度予算は八万戸でございますが、これは四十七年度もだいぶおくれたりいたしておりますが、現在までに今年度発注いたしましたのは九千戸でございます。これも御存じのように、大都市周辺だけでやっております。ことに東京あるいは周囲三県、ここでやっておりまして、そこでの着工が非常におくれておるということで、かような状態になっておる次第でございます。
  178. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、福祉の中では住宅というのは社会保障とともに国民がいまきわめて望んでおる問題であります。ところが、私どもかねてから土地の問題について価格をある意味で凍結をするような処置をとってもらいたいという問題を、すでに建設委員会に法案として提案しているのですが、なかなかこれは進捗しておりませんが、結果的には、土地の問題が解決しないという面もあって、こういう事態が起こっております。来年度予算でこれは何とか考えられなければ、ただ公団に八万戸の——八万戸というのは、その前はたしか八万八千戸だったですね。だから、減らしてきて、その減らした八万戸が、半年たって九千戸しか建たないということでは、これは予算をつけたり財投を計画して紙へ数字を書き込んでも、何も意味がないということです。これは私は重大な問題だと思います。  特に公営住宅でも、いまお話しのあったように、一番必要としている大都市では、実は建たないのだ。これは大蔵大臣、予算上の問題を含め、単価なりいろいろな問題を含めて、どうしても真剣に考えてもらわなければいかぬ問題だと思うのです。予算を組んだらそれだけは少なくとも、それは全部建たない場合もあるでしょうが、九〇%程度が消化できるということにならなければ、何のための計画か、これではだめだと思うのですが、大蔵大臣、この点いかがですか。四十九年度予算の上に立って考えてもらいたいと思います。
  179. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私も、ほんとうにこれではだめだと思っているのです。それで四十九年度では、従来的な手法や考え方でただ単に予算を形式的に計上するとか、財投の投融資計画を計画するということではなくて、やはり謙虚に反省すべきところは反省いたしまして、相当斬新な考え方でやっていかなければならない。いま具体的にどうということについては、いま建設省や公団やいろいろな方々とも御相談をして、よって来たるところの原因は相当多岐にわたっておるようでございますから、それらの点を謙虚に反省すべきところは反省し、問題の所在点を正確に掌握いたしまして対応し、さらに積極的に克服できるような措置を、予算編成の際にも考え方を転換して立ち向かいたい、こう思っております。こういうやり方では、私は申しわけのないことであると思っております。
  180. 堀昌雄

    ○堀委員 ぜひこの福祉関連と、もう一つ、時間がありませんからちょっと省略をいたしますけれども、実は政令市九市から政府に対して、いろいろな公共施設の超過負担分についての解消を求められて、政府は、自治体がいっていることはもっともだ、こうおっしゃっておりますけれども、実は十分な処置が講じられていないというのは、けさ来の委員会の討議で明らかでありますが、これらについても、そういう内閣の答弁書を国会にお出しになる以上、もっともだといったら、それの対策がなければ、そんなもっともだなんといってそれでおしまいというのでは、私は内閣の答弁書にはならないと思いますので、ひとつその点は重ねて要望いたしておきます。  最後に、昨日、公労協が臨時賃金の要求に基づいて統一行動に入ってきておるというのは、労働大臣も御承知のとおりであります。  そこで労働大臣、大蔵大臣、あわせてまずお聞きをいただきたいのでありますけれども、いまや物価の上昇がたいへん異常になりつつある、これが第一点。物価の上昇が異常だけではなくて、先般はトイレットペーパーの不足から問題が起き、私が最近聞いておるところでは、石けん、砂糖、それから洗剤、つまりいろいろ……(「塩」と呼ぶ者あり)塩もあるようだけれども、これはまああれですが、そういう日常生活品に対する不足について、国民はたいへんいらいらしておりますね。おまけに日本の風習として、年末というのはすべての区切りをつけたいということで、師走というのは、先生も走るというぐらいに、みんながいらいらする。あらゆる条件でいらいらしておるところで、これからいまの統一行動によって国民生活にいろいろな影響が起きてくるごとは、私たちはできるだけ避けたい、こう考えるわけですね。その点は、労働大臣、同感でしょうね。簡潔に答えてください。
  181. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 そのとおり、物価の問題は、いろいろまた動揺して、買い占めなどいろいろな問題が起きて、勤労者の生活は苦しいという点は、これはよく注視いたしております。
  182. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、私はもうこの前から公労協のいろいろな問題を何回もこの委員会でやってきて非常に残念なのは、いまの公労法の仕組みがたいへんおかしなことになっていて、紛争がなければ調停が起こらなくて、そうして調停、仲裁という問題が起きない。だから、要するに、公労法というのを見ると、何かともかく問題を処理したいというときには、もう紛争を起こす以外にないというような法律のたてまえ、まあ当事者能力を奪っておる大蔵省に大きな問題がありますけれども、いろいろな問題矛盾がここに集積をして、実は現在の公労法が運営をされておる。たいへん遺憾なことだと私は思うのですね。これを改めなければならぬ。そうすると、紛争が起きなくて話がつくような処理考えなければいかぬのじゃないか。要するに、団体交渉によって、団体交渉権の認められておる労働組合でありますから、当事者との間の話し合いによってこれを解決するような道を開くのが当然私は政府としての責任だと思うのですが、労働大臣、いかがですか。
  183. 道正邦彦

    ○道正説明員 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、三公社五現業の給与その他の労働条件の問題は、基本的には当事者が話し合いをする。話し合いがつかない場合には、いわゆるストライキ等の手段に訴えることなく、三者構成の公労委があっせん、調停あるいは仲裁等の措置をとるというたてまえになっておりまして、御指摘のとおり、あくまで紛争は当事者が自主的に解決をする。つかない場合に公労委が出ていくというシステムになっておるわけでございますので、現行制度におきましても、当事者が話し合いをすることを期待するという仕組みになっておるわけでございます。
  184. 堀昌雄

    ○堀委員 それは要するに、予算総則の定めた給与総額のワク内の話はそうなっていますね。しかし、私は前段からずっとここで論議をしてきたのは、物価の異常な上昇ですね。人事院勧告を拝見しますと、人事院勧告当時における消費者物価の上昇は一〇%程度だということで、実は現在の一五・三九%でしたか一五・三六%でしたかの勧告が行なわれたわけですね。ところが、さっきから私が申し上げておるように、今日この十月でも、すでに消費者物価は二二・五をこえているような情勢になってきて、今後はますます物価上昇が続くというのは、すでに経済企画庁がここで認めた情勢です。まあおそらく十二月、一月、二月、三月と、だんだん一五%あるいは一五%をこえるような前年比の状態が生じてくる可能性がある。そうすると、たとえば人事院勧告がきめられたときの一〇%ということで見た問題に比べて、五%くらいも後半上がってくるということになれば、私は人事院勧告についても何らかの再検討がされてしかるべきだと思うし、あわせて公労協の問題についても、当初予定をした予算の総則で定めた給与総額の上に、プラスアルファの賃金を考えなければならないという異常な経済状態になっておる、こう考えるのが私は相当だと思うのですが、ひとつその点について、人事院総裁と労働大臣の見解を承りたいと思います。
  185. 佐藤達夫

    佐藤説明員 物価の趨勢は、御指摘のとおりであると思っております。私どもといたしましては、立場上当然のことでありますけれども、せっかく四月にさかのぼってやっていただいた給与の改善が、だんだんしりすぼみになっていくのじゃないかという気持ちを持つのはあたりまえのことで、そういう気持ちを持ちながら、なお今日、事態の推移を注視しておるというのが率直なお答えでございます。
  186. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 公務員の場合と民間と公企体、この関係は多少違いますが、予算のワク内であろうがワク外であろうが、当事者同士がコミュニケーションでもって、話し合いによっていろいろ妥結する。万一妥結ができない場合には、民間の場合には中労委、公共企業体の場合には公労委。現在もいろいろな年末の問題について公労委に提訴されておりますので、いま労働大臣がこうやるというような見解を述べることは、これはちょっと無理でありますので、注視はいたしておりますが、これに対して意見を述べることは、この際差し控えたいと思います。
  187. 堀昌雄

    ○堀委員 労働大臣、あなたはいま労働大臣に似合わない答弁をなさったのですよ。いいですか。あなたは、給与総額のワク内であれワク外であれ、当事者が話し合ってきめればいい、こうおっしゃいましたね。いまあなたは、予算総則なり各公社法その他、御存じですか。給与総額のワク外も当事者がきめられるのですか。ちょっとあなたのほうで答えてください。
  188. 道正邦彦

    ○道正説明員 お答えいたします。  先ほどもお答えいたしましたように、紛争がある場合にはあっせん……(堀委員「紛争の前です。当事者能力でやれると大臣言ったから……。当事者能力でやれないよ。」)そういうことでございまして、当事者間の話がつかない場合には、最終的には公労委の仲裁が出るわけでありますが、それは予算上、資金上可能かどうかという御判断は国会でお願いするということになっております。
  189. 堀昌雄

    ○堀委員 違うのですよ。いま大臣が言ったのは、給与総額のワク外であっても当事者と話してきめればいい、こう言ったのだけれども、いまの法律はきめられないじゃないですか。そうでしょう。大臣、間違っているから、あなた、間違いましたと言いなさいよ。
  190. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 いや、間違っておりません。話し合いはしますが、いま言ったように、出せない場合には、国会政府などと相談して従来もきめておりますので、ただ、政府は公労委をのけてやるという意味でなかったということを申し上げたのです。
  191. 堀昌雄

    ○堀委員 どうもあなた、正確にこの問題を理解しておられないようだけれども、時間がありませんから省きますけれども、これは大蔵大臣、まあ大蔵大臣は何も直接の関係者じゃありませんから、これは公労委が決定をされることでありますけれども、私は、現在のこのような物価情勢での賃金に対する考え方ですね、これは人事院総裁も労働大臣も聞いていただきたいのですが、どうも賃金というのは、定時に支払われる給与が基本になっているようでありますね。ところが、すでに鉄鋼では五十二万円という、これは年間手当全部でありますけれども決定が出て、おそらくいま、電機労連もストライキをかげながら大幅な年末手当要求をやっていますから、これもかなりのものが出るでありましょう。いまの国家公務員は、年末手当は二・六カ月ということになっておるようでありますけれども、どうもいまの定められた月々の給与だけを私は給与の水準の対比にとるということは、今日の情勢ではやや問題が生じてきておるのではないか。やはりこれらは、それと同じにということはなかなかむずかしいかもしれないにしても、民間におけるこれらの各期末手当その他の手当を含めて、要するに一種の給与総額として問題を比較をするということも考えないと、これは民間の処理のしかたと公務員の処理のしかたの仕組みの違いのために、公務員や公労協の労働者が割りを食うようなあり方というのは私は改められなければならないのじゃないか、こう思うのですが、労政局長どうですか。あなたのほうではそういう賃金対比のものの見方の中に、要するにトータルの総給与ですね、トータル給与というものでものを考えなければ、今日の物価上昇の中では、民間労働者はそういう年末にくればぽんとそこで何とか調整できる。しかし、公務員やいまの公労協の労働者は調整ができないというのは問題が残ると思うので、ちょっとそこをお答えいただきたい。
  192. 道正邦彦

    ○道正説明員 労働省で所管いたしておりまする三公社五現業等の給与につきましては、それぞれ公社法あるいはその他の法律によりまして給与決定の原則が定められております。その場合には、若干ニュアンスは違いますけれども、民間の給与それから非現業の国家公務員の給与を参考にしてきめるという原則がうたわれております。その場合に、給与の中には月々の給与とそれから年間のいわゆるボーナスに当たるものが含まれることは御指摘のとおりだと思います。いずれにいたしましても、そういう原則で当事者は交渉をしていただくシステムになっておるわけでございます。
  193. 堀昌雄

    ○堀委員 システムになっていても動かないんですね、システムが。人事院総裁いかがでしょうかね、国家公務員も当然、国家公務員法二十八条の情勢適応の原則というのがあるのですから。いまのような情勢で、片方の民間はそういう手当がだんだんと大きくなってきておる。なぜ手当をだんだん大きくしているかというと、これは多少民間としては景気の繁閑もあって、そのためには平常な支払いはやや低目に、しかし景気の上昇を見ながら出していこうということですから、民間としては私はやむを得ざる処置だと思うのですね。そういうことで、安定的に低位に置いておる賃金、定時の賃金を土台にして公務員や公労協の賃金がきまるというのは、これはいまの情勢適応の原則からはみ出してきているのじゃないか、私はこう思うのですが、情勢適応の原則からどうお考えになるのでしょうか。
  194. 佐藤達夫

    佐藤説明員 いまお話のトータルというお気持ちはちょっとわかりませんけれども、私どものやっておりますところを申し上げますと、情勢適応の原則の一番の柱にしておるのはやはり民間給与です。これは民間給与水準を下回わることはわれわれとしては絶対できないという立場で貫いておるわけです。  その場合に、民間給与水準と公務員給与水準とを比べます場合に、いわゆる期末、勤勉といった特別給に当たるものは、これは全部切り離して、それ自体別に向こうと比較しまして、向こうが景気がよければこっちも便乗するような、実は形が悪いですけれども、そういう形をとらざるを得ないということで、そのたてまえでやっておりますので、一般の給与と特別給とを一緒にしてという意味のトータルではありませんけれども、切り離してぴったり合わしておる。したがって、民間が景気がよければこっちのほうも実は少し割り増しになってぐる、それに合わしておるということでございます。
  195. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、ことしはわかりませんが、期末手当というのは、普通ですと年末にくるのはたしか二・六カ月でございますね。いま民間は非常に景気がいいですね。そうすると、この二・六カ月というのは動く可能性があるわけですね。いまあなたがおっしゃった、民間をにらみながら上げるというのは、動き得るということでありますね。ちょっとお答えいただきたい。
  196. 佐藤達夫

    佐藤説明員 それは例年動かしておるわけです。ただし、これは御承知のように、われわれ四月に大規模な民間調査をやりまして、そのときに前年の期末に当たるものもさらってまいりまして、そして八月に勧告をして、それを四月にさかのぼって引き上げる、これは例年そういうたてまえでやっております。(「一年おくれた」と呼ぶ者あり)
  197. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、結局いま一年おくれという話が出ましたけれども、要するに、ことしのいまの民間の年末手当とか、そういう手当が増額しますね。これは増額する。かりに来年はたいへん不況になった、向こうは下がった。そういうときには、向こうが現実にいま下がっていても、前年のやつで公務員は年末手当が上がるということになるのでしょうか。どうもそうならないのじゃないでしょうか。私は、もし必ず前年が踏襲されてくるというならば、一年おくれにしてもまあまあこれは道理がわかります。  私がトータルと言ったのは、定時の給与と別途の給与を含めてという意味ですから、一緒にしろという意味じゃないのです。含めてという考えですからね。ですから、それならば、私はやはり人事院勧告のあり方が二段階になっていいのじゃないかと思うのですよ。要するに、時期おくれにならないように、年末手当なりそういう時期の処理のしかた、あるいはその後の給与等についても——一ぺん出したというのは、八月にお出しになりますけれども、ことしのように経済情勢が異常に動いて、おまけに石油問題が発生をして、これから一−三月は政府も企画庁もまだ物価見通しが立ちません。一体どんなことが起こるかわからないといわれておるような情勢のときには、やはりそういう情勢を踏まえた情勢適応の原則が働いていいのじゃないだろうか。だから、そのやり方は、いま公務員は五%のべースアップをひとつ追加してもらいたい、第二次人事院勧告を出してもらいたい、こう言っておるわけですが、その点については、人事院総裁、こういう異常な情勢情勢適応の原則を働かせばそれはそういうふうになるのか、いま私が申し上げているように、公労協が要求しているような手当を増額するということになるのかは、これはひとつ御判断をいただくとしても、何らかの処置が必要だというふうにはお考えになりませんか。
  198. 佐藤達夫

    佐藤説明員 情勢適応の原則の骨子は、われわれとしては民間給与でございますということを申し上げました。これは国家公務員法の六十四条にもそういうことが出ておりますが、これは間違いじゃないと思います。  したがいまして、先ほど申しましたように、給与引き上げ、改善につきましては、民間の水準をがっちりとつかんで、そしてそれに合わせていくというたてまえをとっておりますから、いまの臨時的ないろいろな現象ということにつきましてもわれわれとしては注目しておりますというのは、それを申し上げたのです。民間の上がりというものが今後どういう形の推移をたどるかということを見きわめまして、そしてそれらを総合判断して、われわれとしてのまたとるべき処置がもしあるならば、それはとりますし、ほっておいたってそれは来年にはいくわけです。それはさっき一年おくれという話がありましたけれども、上がったときも一年おくれ、下がったときも一年おくれですから、これは冗談話になりますけれども、一年おくれのたてまえというのも決して不利な点ばかりでもあるまいということで、いままで公務員の皆さんにもそれを忍んでいただいておりますけれども、ことしの場合は情勢がいつもの年とはどうも違うのじゃないかという目をもって推移を注視しておりますというのが現状でございます。
  199. 堀昌雄

    ○堀委員 ぜひ私は、人事院においてもこの異常な事態に対応して——やはり国民が注視しておりますのは物価ですね。物価というのは、ただ物価じゃないのですよ。国民の生活なんですね。ただ物価が上がるということの問題ではないのです。われわれ国民の生活が苦しくなる、これをどう解決してもらうかというのが物価問題なんですから、その側面というのは、物価が上がらないようにすることも一つだけれども物価が上がる以上は、上がったものに対応して生活を守るための給与なり賃金を考えるということが、私は物価問題だと思っておりますので、ひとつ人事院総裁もぜひそういうふうにお考えを願いたいし、労働大臣も、あなたのところは公労委の事務局を持っておられることでありますから、これから年末に向かって、私がさっき言っておるようないらいらしておる国民がおるときに、これからいろいろとストライキが、皆さん方が適当な指導をされなければストライキはやむを得ずやらなければならぬじゃないか。やむを得ずこれから年末にかけてやっておるときに、不測の事態が起きないという保障は、労働大臣ないでしょう。いま一番悪い時期ですよ。国民が最もいらいらしておる時期、そのいらいらしておるのは労働者のせいじゃないですよ。政府やり方が、要するに中東に対する対処のしかた、外交問題あらゆる経済問題、すべて政府に責任のあるやり方に誤りがあってここへきて、そしてそういうのを何とか切り抜けたいと労働者が考えていまやっておるけれども、あなた方はなかなかいい返事を出さない。出さなければしかたがないから、やむを得ず実力行使に入らなければならぬ。実力行使に入ればまた処分がくるということを承知の上で、労働者はやらざるを得ないというところに追い込まれておる。そういう事実認識の上に立って、これは調停に入っておる問題でありますから、これから公労委の事務局に対しても適切な指導を行なって、こういう紛争がすみやかに解決をして、これらの要求がひとつ満たされるように政府に善処方を求めたいと思いますが、大蔵大臣、労働大臣はいかがでございますか、お答えを承って私の質問を終わります。
  200. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私は私の立場からいろいろ意見がございますけれども、いま労働大臣や人事院総裁から御意見がございましたから……。私も財政当局としての立場というものから非常な心配をもって見守っておる次第でございます。私には別の意見がございますが、あえてここで申し上げますといかがかと思いますから……。これはなかなか重大な問題です。
  201. 堀昌雄

    ○堀委員 重大な問題とおっしゃることは、確かに重大ですが、その重大のあり方は、どうか大臣、国民の側に立って考えてくださいね、政府の側というよりも。どうも私どもは、政府が何か国民と対立した形でものを考えられるおそれがあって非常に心配しておるので、愛知さんも国民の一人ですから、あなたは大蔵大臣だけれども政府の一員だけれども国民の一人であることに変わりはないのだから、どうか国民の一人としての立場も十分配慮して、重要であることについては間違いがありませんが、御配慮いただきたいということを特に要望して、私の質問を終わります。
  202. 加藤常太郎

    ○加藤国務大臣 堀さんの質問に対しては、御趣旨はよく十分わかっております。しかし、これはまあ反論すると——どうかおこらないように。当然国民の要望であるからストライキをやる。これは民間の場合には当然でありますが、公共企業体の場合には必ずしも順法闘争が、いまのやり方がいいか悪いか。国民全体の利益を考えたときに、いらいらしておるときに、マイカーは規制するわ、電車に乗ろうと思ったら順法ということに対しましては、いろいろ私も意見を持っておりますので、円満な解決をするようなことは労働大臣として望んでおりますが、いまの年末の問題に対しましては、労働大臣として、大蔵大臣からも重大な問題だから慎重にというお話があったと思いますが、私もいまこれに対して理解ある御答弁というわけにもなかなかいきません。公労委にいま調停になっておりますので、労働省の立場は当然勤労者を守る省でありますから十分それを順守するようにいたしますが、さあ手当の問題をこうするということは、先ほど労政局長が言ったように、人事院並びに民間のいろいろな問題を注視いたしまして考えております。
  203. 堀昌雄

    ○堀委員 わかりました。わかりましたが、要するに、だれも実力行使をやりたくてやっておるんじゃないですよ。労働大臣、その点はよくわかっておいてくださいね。しかし、暮らしを守るためにやむを得ずやっておるのです。いいですか。そんなやむを得ずやるようなことをやらせないのが政治じゃないですか。労働省の役割りでしょう。ひとつその点は十分心に銘じて、あとの問題の処理をお願いします。  終わり。(拍手)
  204. 鴨田宗一

    鴨田委員長 荒木宏君。
  205. 荒木宏

    ○荒木委員 いまインフレ物価高と合わせて、石油を中心にしたエネルギー危機ということが大問題になっておりますが、これは石油多消費型の産業構造といいましょうか、こういった産業構造に大きな原因があるというふうにいわれておりますが、財政政策ももとよりこの産業構造に密接な関連があるわけであります。大臣は、その財政政策の責任者の立場におられるわけですが、そういった点から、この石油多消費型の産業構造、この転換についてどういうふうにお考えになっておられるか、これをひとつ初めに伺いたいと思います。
  206. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この石油問題というのは、われわれに新たに考えるべき大きな問題を提起していると思います。その中にいま御指摘ありました、一口にいえば省資源産業開発と申しましょうか、そういう点ももちろん含まれておりますから、そういう点についても、財政政策の上でも十分対応するかまえは考えてまいらなければならない、かように考えております。
  207. 荒木宏

    ○荒木委員 申し上げるまでもなく、いま日本の第一次エネルギーの七四%は石油でありますし、そのうち九九%は輸入によってまかなわれておる。こういったあり方について、御承知のように、いま国民の世論は、大臣が言われた、新しい対応のしかたを考える。つまり従来のやり方について十分反省をして、そしてこの転換をはかるべきである。御存じのように、新聞の論調にもそういった意見が強く見られますし、また経済界においても、せんだっての産業計画懇談会では、思い切って改革しなければならぬ、こういった意見さえ出ておるわけであります。私はこの転換ということについて、大臣がこれから対応するというふうにおっしゃったその方向について、ひとつ具体的に伺ってまいりたいと思うのです。  こういった産業構造を進めてきたいわゆる列島改造計画と申しますか、それをささえた財政のあり方、端的に申しますと、たとえば道路建設があります。これは生活道路、その他さまざまなものを含んでおるのですけれども、とりわけこういった石油消費と大きな関連があるのは、言うまでもなく高速道路であり、これが重要なその一つになっておるわけですが、すでに明らかにされた政府の道路整備の計画によりますと、昭和六十年には七千六百キロ、これは閣議決定になっておりますが、大臣が先ほどこれから新しいやり方考えるとおっしゃったのは、昭和六十年には七千六百キロ、こういった幹線道路をつくることを再検討するということを含んでおるのでしょうか。この点はいかがでございますか。
  208. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 たいへん幅の広い問題でありますから、たとえば省資源産業構造ということをその一例として考えなければなるまいということを申し上げたわけです。  ところが、非常に具体的な道路計画の御質問ですが、私はただいまのところ、道路に限らずいろいろの大計画がある。五カ年計画、ものによっては十カ年計画、あるいはそれを取りまとめた社会経済発展計画といったようなものは、いわば長期的なグランドデザインであると思うのです。こういうものを、石油が足りなくなったといって足元から鳥が飛び立つように一ぺんにこれを否定するような発想は、私はいかがかと思います。しかし、その計画を実行するにあたって、たとえば四十九年度ではどこまでやるか、あるいは中止をしたほうがいいかということはまた別問題というか、実際の政策の上の問題である、かように考えるわけでありますから、私はグランドデザインについては、修正すべきところがかりにあるとすれば、ゆっくり考えればいいことである。私どもとしては当面の四十九年度に、予算の上ではどういうかまえ方でやったらいいかということをいま最大の焦点として取り上げておるわけであります。  それから、たとえば一例をあげれば、省資源対策と申しましたけれども、現在やはりこういう事態に処するために、いままでやるべかりしことで、しかも具体的に予算とか法律案が用意されておることであって、実行ができないでいることがある。いろいろの原因があったことでありましょう。  たとえば一つの例をあげれば、原子力発電というようなものは、私は、安全であり、そしてエネルギー対策としては非常に重要なものであると思いますけれども、これは一向に進んでいない。あるいはその発電設備等に対しては、周辺の地域に対してこうもやって御協力をいただきたいと思っているような法律案ども用意されているわけですけれども、これもいつ御審議がいただけるか、成立されるかもわからない。ひとつこういう時期にあらためてお互いに心を新たにして、こういったような点についてももう一度見直していただいて、そして積極的に推進をするという方向に向けていただくことが、やはり大きな対策の一つではなかろうか。こういう問題も私はあると思います。  ですから、非常に広範な点について、同時に、具体的に、きめこまかくやるべきことをやってまいりたい、こういうふうに考えておる次第です。
  209. 荒木宏

    ○荒木委員 先のことについては、これはいろいろな要素があるというふうにおっしゃったのですけれども、しかし国民は、いまインフレ物価高、資源不足、これに直面している。これは先のことではないのです。そして大臣がおっしゃった長期計画は、それが五年刻みの計画になり、その一環としていま現に道路も建設されている。高速道路の建設はいま進んでいますよ。  ですから、私は、その意味で全体の計画というものをいま新しい形に対応するような方向で政治をなさろうとすれば、当然ここに及ぶということでお尋ねしたいのでありますけれども、大臣がさしあたりいま頭にあるのは来年のことだ、こうおっしゃいますから、それでは来年度予定されておる高速道路の建設計画、これはもう五カ年計画できっちり数量がきまっておりますから、しかも三年目に入るわけですから、その刻みとしてはどのくらい違うか、これはもう見当がつくわけでありますから、この点については従来の遂行率と同じようにやっていかれるのか、あるいはこれは再検討されて、こういった事態だからうんと縮める、こういうふうなお考えなのか。いま大臣がおっしゃった来年のことについてはいかがですか。
  210. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ですから、道路計画についても五カ年計画というものがあって進行中でありますが、これらの点について一番国民が心配しているのは、将来がどうなるかということよりは、現実の今日の問題ですから、今日の国民的な関心にこたえ得るように、削るべきところは削る、延ばすべきところは延ばす、これが私は当面の対策であると思います。  そしてそれについては、たとえば道路で申しますれば、ある程度資材が必要である。まあ大づかみに申せば、公共事業費というものをどういうふうにやっていくかということになると思いますが、これはその中には土地の買収費もございますし、それから労務費もありますし、資材費もございます。そういう資材の中でたとえばセメントについてはどうであるか、骨材についてはどうであるか、こうした物資需給関係、それが民需、民間の設備投資との関係においてどのくらいのシェアで、どのくらい減らすべきものは減らしたらいいか、そういうところに立脚して、こまかく検討して予算の積算をやっていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  211. 荒木宏

    ○荒木委員 どうもさっぱりわかりませんね。伸ばすべきところは伸ばし、削るべきところは削る。それでは来年は一体どうなるのですか。国民は現在のこととともに将来のことを非常に真剣に考えている。だって国民の日本なんですから。その将来のこととあわせて、いま目の前のことも、こう財政当局の責任者としては、伸ばすべきところは伸ばし、削るべきところは削る、これでは一体どういうふうな政治になさろうとするのか、さっぱりわからぬと私は思います。  現に高速道路にしても、一般の生活道路の契約率は五三・二%です。ところが、高速のほうはそれよりも高く六〇%、どんどん伸びておる。これは一体どうなさるのでしょうか。これは削るべきところに入るのか、伸ばすべきところに入るのか。これはいかがでしょう。
  212. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この話がわからぬとおっしゃられると私も説明のしょうがないのですが、延ばすべきところというのは、たとえば工期を延ばすべきところがあるとすれば延ばす、削るべきところは削る、そういう意味で申したのでありまして、たとえば工事費の繰り延べというようなことも累次御説明しておりますように、相当工事を現にこの年度中でも延ばすべきところは延ばし、延期すべきところは延期してまいります。
  213. 荒木宏

    ○荒木委員 わかりました。日本語というものは書いてみなければなかなか真意がつかめないところがありますが、そうすると、のばすというのは、要するに延期をする、あるいは延期であるとかあるいは削減であるとか、こういったようなことで対処をしたい、こういうふうにおっしゃっているように伺いました。  これはいま高速道路を例に申し上げたわけですけれども、ほかに新幹線があります。これはもう数字や時間の関係がありますから一々申しませんけれども、さらに設備投資があります。これは今度の産業構造審議会の集計でも前年度対比三二・六%の増ということになっておりますけれども、たとえば高速道路、新幹線、あるいは民間の設備投資、沖繩の海洋博、本四架橋、こういった全体としていわば石油をうんと食うような工事、これは大臣がいまおっしゃった、大臣の言われる意味の延ばすべきものは延ばし削るべきものは削る、こういう御方針だと承ってよろしゅうございます
  214. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 新聞に報道されておりますが、沖繩海洋博についてもあるいは本四架橋の問題にしても、政府としても真剣に考えてこれを延ばす、というと、ほんとうに日本語ではどちらにもとられますけれども、できるだけ施工を将来のほうに延期をする、差し繰っていくというようなことは、すでに抽象的ではあるけれども、真剣な話が出ておるわけでございますが、これを私の立場とすれば、基本的な方針は内閣全体できめるべきものでありますが、予算の上におきましては、私はいま申し上げましたような気持ちで、これは相当抑制的に予算編成に当るべきものである、この際それが必要なことである、こういう基本的態度で、四十九年度各省から出ております概算の要求についても、連日詳細にわたっていま作業を続けておるところでございます。いずれ全体の基本方針がきまるにつれ、あるいはそれに先んじて四十九年度予算編成の作業を進めまして、年内に編成をして、新年になりましたならば、具体的内容を盛りまして御審議を仰ぎたいと思っております。  同時に、物資需給関係見通し等は、いまのところさしあたり来年三月までのところを物資官庁においても主眼として検討されておりますので、来年度中どういうふうな歩みをとるかということについては、私自身もまだ正確に見通しを掌握する段階に至っておりません。すみやかにそういったような予算編成の基軸になるようなある程度具体的な見通しというものができますように、関係各省の協力を求めつつある段階でございますから、こういう状況におきまして、有料道路については何%、沖繩博はどうするとかいう具体的なパーセテージあるいは金額をあげては御説明できる段階ではございません。
  215. 荒木宏

    ○荒木委員 そこで進めて伺いますが、新しい対応策ということに関していまあげたことのほかに、たとえば大臣、アメリカの軍隊に油を提供しておる、あるいは自衛隊がどんどん石油を使っておる、これはいかがでしょうか。国民の生活を守きものは削る、新しい対応策でやっていくのだ。こういう立場から言いますと、米軍と自衛隊の油はいかがですか。
  216. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 そういう点については、先ほども申し上げましたように、内閣全体のものの考え方というものを十分真剣に検討した結果でないと、ただいまの状況においては第一油の需給関係がさだかでないということ、いま申しましたような状況ですから、それらの点について抽象的に申し上げる段階ではないと思います。
  217. 荒木宏

    ○荒木委員 ただ大臣、総理を本部長にして緊急対策本部が設置されておりますね。たしか大臣は、その副本部長の立場におられる。これは全部の閣僚が本部員になられて、事務次官も全部関係しておられる。いわば内閣の総力をあげて緊急にこれに取り組もうということで御相談が進んでおるように聞いておりますけれども、こういったいわば不要不急といいますか、あるいはむしろわれわれの立場からいいますと、あるべからざるもの、自衛隊なんか憲法違反という判決が出ているのですから、そういった立場から、これについて、検討は当然さるべきでありますし、またその検討の結果は、最高責任者の一人になっておられるわけですから、その副本部長としてのお立場からも、この点はひとつ国民にはっきり方向を示していただきたい。
  218. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いずれ総括的に方向を示し、また具体的には、予算案その他においてきっちりとしたことを御審議を願う時期に当然なるわけですから、現在のところは先ほど来申し上げているような状況であって、軽々に抽象的に申し上げる段階ではないと思います。
  219. 荒木宏

    ○荒木委員 それでは、検討中というふうに伺っておきましょう。  そこで、先ほど申しました緊急対策会議ですか、これが閣議決定をされて対策要綱が出ておる、こう伺っておるわけであります。その中に、使用制限の問題について、石油と関連の深い産業に属する大企業については特段の指導を行なう、こういう対策要綱が出ておるのでありますけれども、これは大臣、実際にここに出ておるたとえば一〇%カットする、これを確実にやれるという手だては一体どういうことをお考えなんでしょうか。いままで、こういった大企業のいろいろないわゆる反社会的な所為というものが、国会でも論議になりました。私もお尋ねしたことがありましたけれども、しかし実際には、なかなかそれが実行されない。今度緊急の対策になっておるこの特段の指導というのは、どのような知恵、くふうをお考えでございましょうか、その内容をひとつ伺いたいと思います。   〔委員長退席、大村委員長代理着席〕
  220. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その内容はまだきまっておりません。これは早急にきめたいということで、連日連夜関係者が協議を続けておるわけでありますが、同時に、目的を達し得るような消費規制をしたいことは終局の目標でありますけれども、いわゆる戦時統制的なやり方というものはできるだけ回避すべきものである。それから、さらでだに、現在物資需給関係からいえば全然心配がないと断言できるようなものでありましても、現に一部にはとうとうたる買いだめ、売り惜しみが起こっている。そういうところにどうやって焦点を当てて、国民的な期待にこたえ得るような措置をとり得るかということは、これは非常に深刻な問題だと私は思います。  基本的な考え方は、コンセンサスは簡単にできますけれども、方法、手段というものは非常にむずかしい問題であると私は思います。したがって、これならというような考え方をできるだけすみやかに取りまとめて、そして私の一個の考え方ではありますが、野党の方々にも御協力を求め、御説明につとめ、そして国民的理解のうちに目的が達し得るようにしたいものである、こういうふうに考えておるわけでございます。
  221. 荒木宏

    ○荒木委員 事は緊急を要するわけでありますから、いま言われたいろいろな配慮はありましょうけれども、しかし、やはりその結果が大事なんでありまして、その点で特段の指導の内容で実効を期する。そのためには、立ち入り検査で結果をしっかりとつかむ。  また、続いて出されております便乗値上げを防止し、不当利得を排除するための強力な措置、この点につきましては、たとえば私どもは前々から、ひとつ原価をはっきりしてもらったらどうだ、原価をはっきりして、それを国民がみんなわかるようにすれば、おのずからその間に不当利得があるかないかがみんなわかる。単に担当の一、二の人が、手が回らないで、走り回って、結果としてはとうとうできませんでした、一生懸命やったのですけれどもというようなことになるよりも、これは国民の問題でありますから、国民全部がそれをわかるような形に持っていくのがほんとうに民意に沿った政治ではないか。こういうことで原価の調査とその結果の発表、そして前の例の売り惜しみ買い占め法案が出ましたときに、野党四党で放出命令を含む強力な措置をすべきだ、こういうことで対案を出したわけであります。   〔大村委員長代理退席、委員長着席〕 あの法案の適用については、物資の指定はありますけれども、聞いてみると、実際問題としては担当者の数も少ない。それじゃ目玉となるような業績は一体どういうものがあったのか。聞いてみれば、それはそれで見るべきものがない。ですから、大臣がここにおっしゃっておる特段の指導、強力な施策、あるいは適正な確保につとめる、ことばはまことにけっこうなんでありますが、問題は中身でありまして、いま私が申しました、たとえば原価を調べて公表する、あるいは放出命令をかける、立ち入り検査をして厳重に実施結果を監督する、こういった具体的な措置をおとりになる御意思はありませんでしょうか。
  222. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 特段といい、強力といい、これは字としてはきわめて簡単な字でありますけれども、これが実際の方法、手段ということ、どういう範囲でやるか、それから実行があがるようにするためにはどういう実務的な陣容でやるか、これは実際たいへんな大仕事であると思うのです。そこで、特段といい、強力であるということを政府としてもいうております以上は、ほんとうに万全の効果があがるようにするということで、多少時間がかかっていることは申しわけないと思いますけれども政策要綱といいますか、場合によりますればもちろん立法も必要だと思いますから、その要綱というものをできるだけすみやかに世に問いたい。しかし、同時にまた、十全の用意なくしていたずらに強権の発動というようなことが早く声だけが出ますと、かえって今日のような世相の場合には不測の事態を生ずるということも、政府当局としては十分考えていかなければならない。そういう環境の中にありまして、真剣な努力を続けているわけでございます。
  223. 荒木宏

    ○荒木委員 私どもは案を出しておるわけでありますから、ほんとうにこの目的を達するということでお取り組みならば、対案を明確に示していただきたいです。私どもはこういうふうにやったらいかがですか、これならやれるんじゃありませんか、こういっているわけでありますから。慎重な検討ということは、それはそれとしてありましょう。しかし大臣、その慎重な検討の結果、また逆の弊害ということがあります。  きのう私のほうに大阪のほうから緊急な連絡がありまして、どうも政府のとるべき措置がはっきりしない。伝えられるところによれば、物統令の適用ということもまた云々されておる。物統令の発動になる前に、十一月十五日にさかのぼって値上げをします——これはたとえば石油関連のエチレンです。五〇%値上げをしますと旭化成から言ってきたというのです。一体これはどうしたらいいのですか。第一工業からそういう通達があったというのです。そうすると、そこからもらっておる企業としては——政府のほうでは特段の指導、強力な施策、いろいろおっしゃっておるが、中身はなかなか出ない。いろんなうわさが出てくる。そうしてどんどんどんどん値上げを言ってくる。私ども野党のほうでは、こうなさったらいかがですかと、こう言っておるわけです。大臣、いかがでございましょう。
  224. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 野党の御提案になっていることも、われわれとしては十分検討の対象にいたしております。しかし、簡単にたとえば、これは野党の御意見を言っておるわけではございませんが、価格の凍結といい、あるいは先ほどお話かございましたが凡百の物資に流通の経路に及んでマル公を設定するというようなこと、これは一つの発想ではございましょうが、それが現実にどういうふうな形で国民に受け取られるか、こういうような点も実施の責任を負います政府としては、これは単なる抽象論というわけではございませんが、基本構想だけではだめなんであって、具体的な方法論が非常に大事なところじゃないかと私は思います。政府の対案というものはもうちょっと時間がかかるかと思いますけれども、なるべく早急に対案をお示しすることにいたしたい、かように考えております。
  225. 荒木宏

    ○荒木委員 私どもが言っておる趣旨、それからその効果、そういったことを十分検討されて、いまの国民の不安を解消なさる責任があります。そのことを強く要望しておきたいと思います。  当初に大臣が言われた、新しい対応策の一つとしての国内資源の活用、これはいろんなことが考えられますし、新しいエネルギー源の活用ということもありますが、石炭ですね。いま第五次石炭対策を進めておられて、大臣はその石炭特会の責任者の立場にもおられますけれども、石炭については一体どういうふうな方向をお考えでしょうか。まだこのまま第五次石炭対策の方向をずっと進めていって、炭鉱はどんどんつぶしていく、スクラップ・アンド・ビルドでいくのか。エネルギーが国内でずいぶん足らなくて輸入に依存していて、しかもそれがメジャーに握られておる、こういった事態で、イギリスだとかあるいはフランス、西ドイツの例を申し上げるまでもなく、国内の石炭産業の活用をはかるべしというのが、これは識者の説くところであります。大臣はこの点についてどういうふうにお考えなのか、ひとつ御見解を伺いたい。
  226. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 こういうふうな状況でありますから、石炭については賦存状況、それからここ十年間ぐらいの生産の状況など、一々申し上げるまでもございません。大きな期待は持ち得ないと思いますけれども、しかし、やはり国内資源の活用という点からいって、これも先ほど申し上げましたけれども考えなければならない一つの案件である。必ずしも従来のやり方がいいとはいえない点もあろうかと思います。
  227. 荒木宏

    ○荒木委員 この国内の対策の点とあわせて対外の問題ですが、いまイスラエルの外交に関して、アラブ側からECと非常に明らかな差別の扱いを受けている。このことについて、この緊急対策によりますと、外交面を含めてあらゆる努力をする、こういうふうにありますけれども、アラブ諸国に対する経済外交の努力、方針としては、いまの時点ではどういうふうにお考えでございますか。政府としてはどういうふうになさろうというのでしょう。
  228. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これも申すまでもなく日本としては非常に重要な外交政策の問題でございますから、外務大臣、外務省を中心にいたしまして、非常に真剣な努力を重ねておるわけでございます。近く政府としての方針といいますか、これが順を追うて明らかにされるはずでございます。
  229. 荒木宏

    ○荒木委員 非同盟諸国で、産油国の主権を尊重すべきだ、こういうような決議があったことは御承知のとおりです。これは大臣、どうお考えになっていますか。
  230. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それは産油国に限らずお互いに主権尊重ということは当然のことであると思います。
  231. 荒木宏

    ○荒木委員 政府の中で、イスラエル外交の点ではっきり見解を表明された方もあるわけですけれども、大臣はこの緊急対策の副本部長の立場におられて、いまアラブ側の主張しておることはよくご承知だと思いますけれども、そう言った中で具体的に方針をお出しになることはできませんですか。何を求めておるか、それに対して日本は一体どうするのだ、こういうことなんです。
  232. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど申しましたように、きわめて近い機会に、政府としての統一された見解あるいは方針というものが明らかにされるはずでございます。
  233. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣の財政担当者としての石油の問題についての御意見を伺いましたけれども、私は最後に、責任の問題をどうしてもはずすわけにいかぬと思うのです。いまエネルギーの原料がほとんど石油のほうに傾斜している。これは皆さん方がそういうふうな政策を出し、そのための財政措置をとり、その方向に経済を持っていくようにずっと進めてこられた。所得倍増がそうでしょう。列島改造がそうであります。高度成長がそうであります。そしてその中で、いま日本の石油企業の中でいわゆる英米系といいますか、メジャー系といわれる資本が四八、九%、そして残っている国内資本といわれるところも、四十五年の統計では、四千五百万ドルもメジャーから借金をしている。ですから、何のことはない、そのほうの資本に参加をし、しかもその資本に縁がなくたって借金のひもがついている。そういうふうな形で日本のエネルギーというものをずっと引っぱってこられた。そこで列島改造でどんどんそれを食ってしまうという方向でありますから、これはある新聞の表現によりますと「油上の楼閣」といっておりましたけれども、まあそういったような指摘もむべなるかなと思われるような形にまで持ってきた。きょう午前中のある議員の御質問で肥満児ということばがあり、そのことからいまの経済の実態について、国民の苦しみについていろいろ指摘がありましたけれども、この問題について大臣の御見解、財政担当者としての反省されるところはないかということを、国民の前にひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  234. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私は所得倍増といい、列島改造論といい、それなりのメリットは大いにあると思います。この点については基本的な見解が違うと思います。  それからその責任問題ですが、これは、今回の石油問題というのは日本政府の責任に帰すべきものでありましょうか。その辺にも、私はもう少し御意見を伺いませんと、私としてもお答えしにくいと思います。
  235. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣は政府経済外交の方針を示されないのでしょう。御自分のほうでは検討中であって、国民の前に明らかにする方針はまだできてないとおっしゃる。いま中東情勢をめぐってECとの間でもはっきり違いが出てきている。だとすれば、そのことは日本がとっておる政策が原因だからこそそういう違いが出てくるのじゃないでしょうか。アメリカと安保条約を締結している。武器援助をしているところと軍事同盟を結び、そして国内では、そこへ寄っかかるような形でどんどん産業を持ってきておる。それは明らかに政府の責任じゃありませんか。ですから、大臣がはっきりと、いまの田中内閣の経済外交の方針はこれであるとその内容を明確におっしゃって、さあどこが問題になるかとおっしゃれば話はわかりますよ。  時間がまいりましたからこの上の質問は差し控えますけれども、この点について国民みんなの前に、ひとつ内閣としても真剣な反省をしていただいて、そして先ほどおっしゃっておるこの対策の内容を、私どもが言っておりますところも十分くみ入れて実際の効力のあるものにし、国民が安心できるような方向でなされなければ、これは政権担当能力の問題になりますよ。いま大臣がもう少しことばを添えて言えというふうなお話でしたから申し上げましたけれども、そういう意味で申し上げたわけでありますから、意のあるところをくまれて、早急な、適切な対策を要望して、質問を終わります。
  236. 鴨田宗一

    鴨田委員長 広沢直樹君。
  237. 広沢直樹

    ○広沢委員 午前中から、基本的な問題であり、吊るしまのインフレ対策の問題について、いろいろ質問がありました。私は時間がありませんので、基本的な二、三点について大臣にお伺いしておきたいと思います。  非常に物価の上昇が続いておりますし、加えて石油問題が起こってまいりまして、非常に景気の動向というものの予測が立てにくい、こういう現状に置かれておるわけでありますけれども、現在は物の不足の深刻な不安が一そうインフレの心理をあおっているような状況です。情報化社会ですから、普通ならば当然こういった現状というものを十分国民も承知して、それに対応する対策を立てていかなければならないのですが、情報が不足している場合には、いま一部に見られるようなあのパニック的な現象というものもあらわれてくる場合もあるでしょうけれども、情報化社会の中でそういう問題が起こってくるということは、やはり政治不信といいますか、国民は生活防衛の立場からああいうような不安にかられる状況が出てくると思います。通産大臣がテレビを通じて、灯油も十分あるんだ、あるいはトイレットペーパーについても十分あるんだというようなことを言いましても、現に値が下がらないし、あるいはまた、そういう現象が続いているわけです。こういうような非常に不安な中で、企業は、いわゆる大きな企業は、非常に収益をあげている。こういうような現象が出てきております。いま最も対策を立てていかなきゃならないのは、インフレ抑制して国民生活を安定させる、これに対する政府の的確な政策、これを即時実施していかなければならないと思うわけです。  そこでまず第一番にお伺いしたいことは、政府の当初の経済見通しは相当大きく狂っております。そこで、政府はそれぞれ当初予算を立てる場合においては、いずれの機会においても、物価政策というものは最重点にしますということを言ってまいりました。ところが現実は、結果論からいいまして、非常にこういうような不安の状況がつのってきているわけです。そこで、まず大臣にお伺いしたいことは、なぜこういう異常な物価高が続いていくのか、その基本的な原因の認識をどういうふうに考えていらっしゃるのか。午前中の質問お答えの中でも、いわゆる来年度においては物価を最重点としてやっていくという話も聞きましたし、先ほども大臣は、そういうお考えお答えをしておられました。したがいまして、やはりそういう対策を立てていく上においては、その原因について的確な判断がなければならない。あらゆる物価問題というのは原因がありましょうけれども、最もその重点になる問題というものを的確に把握して、それに対する対策を立てなければならない、こう思います。そこで、まず最初にその認識をひとつお伺いしておきたいと思います。
  238. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはここ一年間の経過をたどってみましても、きわめて複雑で多様的な原因が錯綜していると思われます。で、やはり一番最初の根は、あの当時に盛んに言われました過剰流動性の問題がその一つの原因であったかと思います。これは今日では、その意味の過剰流動性というものは全然なくなって、むしろ逆の状況になってきつつあります。つまり、海外との関係からするところの過剰流動性というものはなくなってきている。しかし、その過剰流動性ということが、たとえば企業等のいわば手元資金というものが異常にふくれ上がって、そうしてこれが土地、証券あるいはその他に、そのときどきの情勢に仮需要として、あるいは投機的な要因を加えて動き出した。これが一つのインフレムードというか、インフレマインドをかき起こしたというようなところが、そもそもの現象であったのではないかと思います。これに対しては各種の対策を講じて、現象的あるいは対象別的に見れば、私はある程度の効果をあげてきているのではないかと思います。  ところが一面において、本来、国際経済的な面からいえばデフレ的な条件がかもし出されて、物価は安定すべき条件が出てきたのにかかわらず、海外の物価の異常な高騰、特に農産物、米以外の農産物は日本の輸入が非常に多い。それらを中心にする異常な価格の騰貴というようなことが直接反映してまいりましたから、本来、理論的に言えば物価動向が安定すべかりしところが相殺されて、なおかつそれを越えてきた。そこで、当初の認識のもとに手を打ってある種の効果を発揮しつつあるような状況のところに、またそうした要因が重なってまいりましたものですから、なかなか物価の騰勢はやまない。  それから今度は逆に、一年前のような過剰流動的な状況は根が根絶したといってもいいかと思いますけれども、別な意味の、国内的にやはり民間設備投資にあらわれるような内需の面における総需要が、予想以上にふえてきた。そういうところが互いに作用し合って、物価の騰勢というものが引き続いて起こっている。さらに、いろいろの原因から民間資金のだぶつきというものが国内にある。これに対する資金吸収策というものもいろいろと手を打ってまいりましたけれども、なかなか奏効しないというようなところに現状がある、こういうふうな観察を私はいたしておるわけでございます。  したがいまして、オーソドックスな財政の繰り延べ、それから金融政策の累次にわたる引き締め政策というものを相当思い切ってやってまいりまして、それはそれなりにある種の効果は生んできてはおりますものの、いま申しました非常な複雑な要素がありますために、財政や金融政策だけではカバーし切れないところがある。これが今日の実情ではないだろうかと思います。  しかし、金融は引き続き引き締めを堅持しなければなりませんし、財政においては厳粛な姿勢をあらためてはっきり明確にしなければならない、こういう態度でおりますが、同時に、あまりに行き過ぎて中小企業等にそのしわが及ばないようにというのが、今日における一番の心配でございます。  同時に、石油問題がここにかぶさってまいりましたから、石油対策については、石油問題だけではなくて、関連する方面においての国内的な物資の対策、それからあらためて財政等においても、さらに一段と抑制的な政策をとっていかなければならない、これがこれからの状況ではないか、かように存じております。
  239. 広沢直樹

    ○広沢委員 いまおっしゃったように、海外の要因もございましょうし、また国内の投機的な商品市況の上昇というものもあります。また流通段階の問題もありますけれども、やはりいまもお話の中にちょっと触れておられましたけれども政府の景気対策の誤りといいますか、これが一つ大きな原因になっているのではないか、このように私は判断しているわけであります。  いま過剰流動性のお話もありましたけれども、その過剰流動性の問題にしても、四十六年から始まって四十七年、それに加えて金融の緩和政策というもの、これは順次的確に景気の情勢というものを判断して、そういうものに対する引き締めなり的確な手を打たなければならない段階においてまで、まだまだ金融は緩和し、あるいは財政は四十七年度に続いて四十八年度も、それにまさる大型な予算を組んだ。予算委員会の当時も、われわれは、これは四十八年度予算を大型化するということは、結局インフレ予算ではないかということを指摘しましたし、当時は円問題等もありまして、やはり予算は削減すべきではないかということも強調したわけでありますけれども、その当初予算においては、それはそのまま見送りになってきたわけです。まあそういったような情勢が、やはり今日、四十八年度予算におきましても、財政を繰り延べるという手段を講じなければならない。金融においては急速な、いままでにない強い引き締めをしなければならない。しかしそれについては、先ほどからも話がありましたように、相当なラグがありますから、当然即効的な効果というものはあらわれない。それで、いま言ったようないろんな要因が加わってきて、今日のような深刻な事態というものが出てきたのではないかと思われるわけです。  そこで次にお伺いしたいことは、いわゆるそういうふうな四十八年度予算において、先ほども話があった減税の問題にしましても、あるいは予算規模の問題にしましても、当然相当縮小して、あるいは景気に対して的確な判断のもとに組むべきであったのではないかということでありますけれども、その見通しがいま相当狂ってきているということになりますと、当然その補正予算については、冒頭にお出しになる予定にされているそうでありますけれども、いわゆるインフレを阻止して、そして国民生活を守るための補正予算という性格づけをしてやっていかなければならないと思うのですが、先ほどの補正予算の内容をいろいろ質問されたそのお答えの中でも、いままでとあまりパターンが変わっていない。ただちょっとインフレ的なものに対する調整的なところは入っておりますけれども、十分その基本的な、そういういままでの財政金融政策の誤りをこの補正において調整するという意味合いのものは、含まれていないように思うわけですね。そういった政策のズレというものがやはり後々まで深刻な事態を生み出してきているのではないかと思うのですが、その四十八年度補正は、いままででは一番大型な補正になると思うのですが、その補正予算に対する基本的な考え方をまず伺っておきたいと思うのです。
  240. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 基本的な考え方は、こういう際でありますから、景気を刺激するというような要素がかりそめにも入らないように、抑制型にやっていかなければならない。したがって、一面、自然増収というようなものがございましたけれども、これは緊要やむを得ないものだけにとどめ、そして三分の一あるいはそれ以上は公債の削減、あるいは地方財政の面におきましても、交付税交付金の半分以上は旧債の償還等に充てるということ、それから政府側の節約等に重点を置いて編成をしたわけでありますし、それから内容的に見ましても、消費者米価の据え置きに伴うもの、あるいは給与の引き上げというものがその内容の重点になる。それから、まだ足りないということで先ほどもおしかりを受けましたが、ほんとうに困窮されている方々に若干の手当てのベースアップといいますか、それの増額をはかるということにとどめた次第でございます。
  241. 広沢直樹

    ○広沢委員 それは若干はそういう配慮があるようでありますけれども、基本的にやはりいままで四十七年あるいは四十八年度の景気に対する財政金融政策というものが相当タイミングのずれたやり方をやっているということが一つの原因だといま私は申し上げたのですけれども、それであるならば、当然十月でも十一月でも、その当時からいまの深刻な問題というものが取り上げられておったわけでありますから、そこにおいて、非常に景気に、そして今日のそういう物価政策に重大な影響を持っている財政金融政策というものの是正をするためにも、補正において具体的にやらなければならなかったのではないかと思うのですね。  それがいろいろな事情からおくれているようでありますけれども、それではいまのようなちょこっとした修正というのではなくて、やはり歳入の減額をする、あるいは増額の補正をするというような、四十八年度予算の修正をここでするという形が出てこなければならないのじゃないかと思うのです。国債の減額ということはありましたけれども所得税減税も、先ほど指摘があったとおり、当然四十八年度補正においてすべきでありましょうし、また法人税の増徴といいますか、それについても当然そこで考えなければならないのじゃないか。われわれは当初予算においてすでに、いま政府考えている所得税減税についても、これは当然すべきではないかということを指摘しておきましたし、また法人税の増徴についても、これは考えなければならないということを再三要求してきたわけです。ところが、現実にはそれを見送りにしているわけですから、当然補正でそれぐらいのことをやっていかなければならない。  ところが政府は、一たん予算を組みますと、それは変えないという。どうあっても変えないという。そういったところに財政運用の硬直性というものがあるのじゃないかと思うのです。財政硬直、硬直ということを盛んにいいますけれども、やはり運用といった面に非常にセクショナリズム的といいますか、そういうような問題があって、その財政運用の機動的なタイミングというものをはずしていくから、そこに景気とのズレというものが出てきて、それが今日の大きな不安の問題まで巻き起こしてきているのではないか。したがって、そういうようなあり方をまず改めて、やはり年度内において、いろいろ見誤った分については補正においてこれを是正していくというような姿勢が今後必要であろうと思われるわけでありますけれども、やはり一たんきめたものはきめたワクの中で、そこにどういう問題があろうと、それは次年度において是正すればいいんだという考え方が一つ基本的に問題じゃないかと思うのですが、その点のお考えはいかがでしょうか。
  242. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど来御説明しておりますように、一面において税収入が相当増加したということ、これは事実なんでありますが、それに対応する歳出としては、公務員の給与引き上げはどうしてもやらなければならない補正要因でございます。それから米価も当然やらなければならない補正要因でございます。これが合わせて約四千億くらいになると思います。それから、税収入があれば三税に対して地方交付税交付金を交付しなければならない、これも当然のことでございます。いずれこまかく御提案申し上げますが、そのほかに他の項目もございますが、そういったような必要やむを得ないものが歳出に出ておるわけでありまして、それ以外のものは歳入を切って一兆円以下り姿につくりたい、こう思っているわけでございます。  そこで問題は、御指摘がございましたが、なぜ減税をそれならやらないかということでございますが、これは現にもう所得税関係でいえば調定済みと申しますか、三月十五日の確定申告ということもございましょうけれども、全部入っております。それから法人税については、三月、九月の決算期は済んでおりますから、これももう全部調定済みということが言えるかと思います。  それから、そういった技術的な面を離れましても、こういった状況下において、実は減税ということについては相当反対論もございます。来年度減税についても反対論もあるくらいなんですが、これはひとつ、先ほど議論を繰り返しましたけれども、来年度において大幅な所得税減税をやる、こういうことでまいりたいと思います。  かような状況でございますから、いろいろの御意見はございますけれども、まず補正予算につきましては、別に旧来の体制にこだわって膠着しているわけでも何でもございませんで、補正すべきものを補正する、しかもこの際、景気刺激というものがこれ以上起こらないようにする、こういう配慮であるわけでございます。
  243. 広沢直樹

    ○広沢委員 あまり時間がありませんので、基本的な問題にばかりこだわっているわけにもいきませんけれども、やはり四十八年度補正予算では、当然歳入あるいは歳出それぞれについて、いままでの調整をとっていくという考え方を持っていかないといかぬ。いままでの財政のパターンというものは、補正というのは当然当初に見込んだものを是正するという程度にしかきておりません。減額補正ということは、いままであまりやったことはないわけでしょう。しかし、こういうふうな事態に来て、財政的に相当景気に対する問題があがってきて、いわゆる公共事業においても、先ほどお話があったように、大幅に繰り延べしなきゃならぬ、再繰り延べもしなきゃならぬというような段階に来ている場合においては、やはり繰り延べだというようなことだけではなくて、現実にそこを修正するという姿勢がなければ、それが政府の責任であるとかないとかという問題よりも、それに財政の運用の弾力性というものをやはり持たせておかなければならないのじゃないか。いままでにそういう例というものがあまりないわけですね。その姿勢は今後ひとつ考えていっていただきたいと思いますね。  それから、今年度は自然増収が前年度予算に比べていままでにない大体二兆五、六千億ですか、それだけを見込んで当初予算というものをつくっておりますけれども、それに加えて自然増収がまた一兆五千億もある。これは当局がそうおっしゃっていらっしゃるのですから、なるべく低目におっしゃる当局が一兆五千億もあると言うのですから、それ以上あるのかもしれませんが、それだけいままでにもう考えられない大きな自然増収というものがあること自体そのものが、当初の予算を立てる場合において、一つ問題ではないかと思うのですね。それで、これだけの見込みを残しておいてやっていこうというのは、そこに当然補正予算の場合において大きく抜本的に是正しようという考え方があるから、当初の見積もりの自然増収を小さく見積もって来たんじゃないかと思われるわけですね。われわれは以前に、総合予算主義で一年間見込んで、その中ですべて、いまの公務員の給与にしても、すべての問題についても、実勢に合うように組んでやることが必要だというふうに主張してきましたけれども、そういうように今日大幅な自然増収が見込まれるということならば、そうでないとおっしゃるのならば、今日のようなインフレ下においては名目所得が大幅に上昇しておる、実質所得というものはそれだけ伸びていない、そのためにインフレで非常に生活が困っているという状態においては、当然年度内減税というものはすべきですね。その点の言い方が、考え方というものが、非常にはっきりしないように私にはとられてしかたがないのです。あとからまとめてお答えいただきたいと思います。  それから、四十九年度予算についてもまだ具体的ななにが示されておりませんし、法案も何も出ておりませんから、きょうは方向だけを伺っておきたいと思うのですが、先ほどのお話にありましたように、緊急物価対策でその総元締めをしております経済企画庁においても、石油危機にからんで、いわゆる石油の一〇%供給削減の場合は、重要な資材の減産率というのは、粗鋼においては二〇%、エチレンにおいては一〇%、パルプにおいては一八%程度に達する、ですから、財政面からの総需要抑制を最重点施策としていかなければならぬという指摘をしている。これはいまのインフレの緊急対策の立場から、財政当局に対する強い要望であろうと思われるわけでありますが、その中で、来年度予算伸び率を当然増程度に押える、あるいは公共事業物価上昇に見合う程度の伸びで、四十八年度当初率、そういう比率を横ばいにすべきではないか、あるいは先ほど申し上げました公共事業の再繰り延べをすべきではないか。減税の問題についても触れておりますけれども、この点については、大蔵財政当局として、そこまで現在の緊急な対策としてお考えになっていることなんでしょうか。その点について、もうそろそろこれは煮詰まってきている段階だと思われますので、お伺いをしておきたい。これが第二点。  それから、あと時間が五分しかありませんから続けて聞きますので、よろしくお願いしたいと思いますが、次は二兆円減税の問題です。先ほど堀委員質問に対しまして、まあ二兆円減税はやるというようなお答えでありました。われわれは四十八年度においてやるべきだということを主張してきたわけでありますから、当然これは私たちもやっていかなければならないと思っているわけでありますけれども、最近の状況を見ますと、いわゆる経済企画庁の試算によりますと、来年度経済成長率についても、石油が一〇%供給減が続けば、これはマイナスの成長率になるのではないか、あるいは後半においてそれが回復したとしても、実質成長率は一・七%ぐらいになるのじゃないか。現在の二兆円減税を言われていた時分には、いわゆる石油問題というものを加味しないで、実質成長率は八%ないし九%というような段階考えられてきたわけですね。ですから、そういうような状況にあっても二兆円減税は必ずやるのだという的確なお答えを、再度いただきたいと思います。  それから、以前に年内減税をしろと私がこの席で強く主張したときにも、それは景気対策の関係でこれはいますべきでない、来年度において必ず大幅なその限度までの減税をやるのだ、こういうことをはっきりおっしゃっておられました。私は、その景気対策ということを考えるならば、こういうような景気動向が予測しにくい、各エコノミストそれぞれにおいても非常に予測がまちまちな段階においても、それは間違いないのでしょうなということを念を押しましたら、大蔵大臣は、それはもうやるのだと、先ほどいろいろ具体的な背景の説明がありました。これはもう時間がありませんので、当然やるべきだということを主張して、その背景の説明をしませんけれども、その点をひとつ明確にお答えをいただきたいと思います。  それから第四番目に、もう一つお伺いしておきたいことは、中小企業の対策です。いまもちょっと大臣のおことばに入っておりましたけれども、総需要抑制の中で中小企業対策をどうするかということがえらい問題ですね。これは特に年末を控えて、決済だとかあるいは決算だとか、あるいはボーナス期を控えて資金需要が非常に強いという時期に、いままでにない抑制処置をとっているわけです。何も総需要抑制を緩和しろとは言いません。物価の上から考えていけば、これは総需要抑制というものは、その動向が見きわめられるまでは、私は引き締めは続けていかなきゃならないという考えです。しかしながら、そうとは言いながら、先ほど申し上げたように、大企業はいま相当な収益をインフレによってあげている。中小企業のほうは、その大企業の下積み的なやり方も相当受けてきておりますから、今日見られるような手形の交換あるいは取引停止の問題、あるいは企業倒産の実態、こういうことから考えましても、相当深刻な状況に追い込まれてきています。  そこで、日銀当局も特別な配慮をするというような言い分をとっていますけれども、具体的にどうするかということは言っておりませんし、あるいは財政当局の大蔵省も、政府金融機関に対して相当大幅に考えたいということを示しているわけですけれども、それとて、今日の状況の中での中小企業の置かれている非常な逼迫した立場に対応できるだけの十分な施策というものは、行なわれていないように思われるわけであります。特に、いまの大企業中心の重点的なあり方、産業構造というものを、いまこそ転換しなきゃならぬ。したがって、そういう意味からも、中小企業の保護的なやり方ではなくて、中小企業を基本的に育成するという積極的な対策をいま打ち出さなければならないわけです。したがって、それに対するお考えはどういうようになっているか。  時間のようでありますので、一応続けてお伺いしましたけれどもお答えによって再質問させていただきます。
  244. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず四十九年度予算についての考え方でございますけれども物価の安定が何より重要な政策課題である、これを前提にして編成に当たりたいと考えております。そうした考え方から、予算の規模は極力抑制したい。国債依存度についてもできるだけその引き下げをはかってまいりたい。それから財源の重点的配分に徹したい。そして財政の効率化をさらに推進して、国民福祉の向上のためには遺憾のないようにつとめていきたい。基本的な考え方はこういう考え方でまいりたいと思っております。具体的な規模の数字見込み等についてはいましばらく——いま鋭意各省からの概算要求等についても細部にわたって検討しておりますので、全体の構図はまだ申し上げるに至っておりません。  ただ、第二に御指摘がございました二兆円減税でございますが、この二兆円減税につきましては、先ほども説明いたしましたように、その内容、これは一つの大きなグランドデザインであると私は考えております。給与所得控除の抜本的な拡充、基礎控除、配偶者控除、扶養控除等の人的控除を相当に引き上げて、かつ税率の緩和をいたします。そうして標準家庭においては平年度百七十万円以下を課税の対象からはずす、最低限をそこに置くということでやってまいりたい、かように考えておりますので、その構図、すなわち税法の改正案をいずれ御審議いただきたいと思いますが、その内容が的確に四月一日から実施されるように、これを基本にして歳入は組みたいと考えております。法人その他の増税関係については省略いたします。  それから、その次の金融引き締めと中小企業問題でございますが、中小企業と申しましても、総需要抑制という見地から金融引き締め政策のらち外に置くことは原則としてはできない、これは当然のことであると思いますが、同時に引き締めによってしわ寄せが中小企業に及ぶことは何としても避けなければならない、こう考えまして、これまでやってまいりました準備率の引き上げ等につきましても、あるいは対象からはずすとか、その限度を縮小するとかいうことを特別に配慮してまいりました。  それから中小企業政府関係金融三機関の貸し付け計画は、普通貸し付けだけでも一兆六千六百六十二億円の当初計画でございましたが、これだけでも昨年に比べると二割増なんでありますが、さらに円の変動相場制移行に伴いまする関連融資として二千百三十億円をはじめ、PCBの関係その他も、御承知のように累次特別の金融措置をやってまいりました。さらに、年末に際しまして三機関において三千四百億円の追加融資をいたすことに先般決定をいたしたわけでございますが、これらにつきましては、特に三機関の最高幹部と十分に情勢を検討いたしまして、これで年末はだいじょうぶと想定をいたしております。しかし、さらに状況の推移を十分見守って、適切な措置を講ずるつもりであります。  それから、試みに全国銀行の中小企業向けの貸し出し比率を見てみましても、たとえば四十八年、本年の八月には中小企業向けが三五%を占めておりまして、昨年の同期に比べますとほぼ二%近くのシェアの増加を示しております。こういう点は、日銀による窓口規制その他においても、中小企業むけの配慮が相当具体的にあらわれておることを示して去るものと思います。  それからなお、中小企業におきましては、企業間の信用膨張の傾向は見られません。手形期間や決済条件等の面で多少いろいろの動きはございますけれども、特に著しく中小企業にしわが寄せられているとは見ておりませんし、それから企業の倒産の件数は増加傾向にあります。この点はなお十分状況を注視していく必要があると思いますけれども、内容的に見ると、たとえば行き過ぎたしぶりを示した企業がここへきて行き詰まっておるとか、原材料の入手難ということが原因の相当部分であって、金融の引き締めで倒産にいってしまったというような例はあまり見当たりません。しかし、これらの点については今後とも十分注意してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  私どもの一番心配しておりますのは、今後年末にかけて引き締めの効果が本格的に全般的に浸透していくと思いますので、中小企業を取り巻く環境は次第にきびしさを増してくるであろう、こういうように思いますので、特に中小企業の今後につきましては、先ほども申し上げましたが、具体的にあるいは行政指導の面で特に心してまいりたし、こういうふうに存じて注意を怠らない、こういうふうな状況でございます。
  245. 広沢直樹

    ○広沢委員 もう時間か過ぎましたけれども、一問だけまたお伺いしておきます。  いまお話がありました中小企業の問題につきましては、やはり総体的にいま供給不足ということで、インフレ対策の上から、融資の問題についても選別融資をしなければならないんじゃないかという段階まできておりますし、なかんずく中小企業の問題については、いまの運転資金等の問題についても、窓口の規制を一斉に規制するのではなくて、そういう実情にかんがみて十分な配慮をお願いしたいということであります。  それから、二兆円減税の問題については、はっきりと景気の動向の指標まで申し上げたんですけれども、おやりになるということですから、そのとおり必ず実施していただきたい。  それから法人税の問題についても、触れておりませんでしたけれども、やはり当初計画どおり法人税の増徴というものについては的確におやりになる考えがあるかどうか、最後にお伺いして終わりにいたします。
  246. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 法人税の増徴につきましては、法人所得の税負担は全体で四九・五%ということで実行してまいりたいと思っております。これは内容的に申しますと、法人税の税率は四〇%、それから法人住民税の税率を大体一七・三か四%、それから配当軽課については四十九年度二八%、五十年度三〇%、こういう姿が最もよろしいのではなかろうか、こういうふうに現在考えておる次第であります。これは全部四月一日から施行する方向で御提案を用意しておる次第であります。  なお、それ以外に、先ほども委員から御指摘もありましたが、その他流通税的なものについての先ほどの御提案等他の税目もございますが、これらにつきましては早急に検討して成案を得たい、かように考えております。
  247. 広沢直樹

    ○広沢委員 内容的にはいろいろわれわれ意見を持っておりますけれども、それは法案が出たときに、提案されたときに議論いたします。
  248. 鴨田宗一

    鴨田委員長 竹本君。
  249. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま一番重大な問題は、同僚の皆さんからも御指摘があったように、インフレの問題であると思いますが、インフレをもっぱら推進しておる田中内閣に向かってインフレをやめろということを言うのは、馬の耳に念仏みたいなもので、あまりどうも意味がないと思うのですけれども、大蔵大臣は非常な良識の持ち主でありますから、その点に敬意を表して、二、三十分御質問をいたしたいと思います。  中東の石油の問題はまことに困った重大な問題でありますが、ある意味でいえば、田中内閣にとっては天佑神助というべきものであろうと思うのです。なぜ天佑というかといえば、田中内閣のインふれの責任というものが、石油をきっかけとした物不足供給力の不足によって物価が上がる、どっちがほんとうの原因で物価が上がったか、最後にはよくわからなくなるので、田中内閣の責任がその意味において半分軽くなる、そういう意味で天佑である。なぜ神助であるかといえば、われわれが安定成長ということを言い、政府ことばだけは言われてまいりましたけれども、新幹線を一万キロつくるとか、いや橋を四国のほうへ三本かけるとか、二兆円減税をやるとか、まじめに考える人から見れば、一体どこまでインフレについて真剣な考えを持っておられるのか、どこまで安定成長をまじめに考えておられるのか、われわれには了解ができません。けれども、今度はやろうと思ったって、石油の問題をきっかけにしてやれなくなった。ある意味からいえば、これは文字どおりの安定成長に切りかえる絶好のチャンス、と言っては言い過ぎかもしれぬが、チャンスである。そういう意味で、私はぜひこの機会に文字どおりの安定成長路線に切りかえてもらいたいものだと念願をしておるものであります。  そういう立場に立って二、三お伺いをしたいと思うのですけれども、まず、来年度予算編成の前提になるのは何といっても経済の成長、GNPの伸びぐあいについてどういうふうに見るかということであろうと思います。経済見通しというのが前提条件になるわけですが、確かにこれは、いまの段階見通しを言えといっても、政府としてもなかなかむずかしい問題はあると思います。しかしながら、財政の責任者としての大蔵大臣の立場で、一体どのくらいに見ていればいいのか。いま経営者に会って聞く場合、一番問題になるのは、来年になったら日本の経済は一体どうなるのだろう、はたして成長率はマイナスになるのか、横ばいであるのか、あるいは従来どおりの高度成長を無理やりに続けていくのであろうか、全然見通しがつかないところに、一番大きな不安と不満を持っておるわけであります。  そういう意味で、まずお伺いをいたしたいことは、下半期の経済の成長率を大蔵大臣としてはどの程度に見ておられるか。あわせて来年度経済の成長は、むずかしい条件はいろいろありますが、大体どのくらいに予想しておられるのか。その辺の感触について、これは国民もどう考えていいのかわからないで困っておるものでございますから、一つの指標あるいはよりどころを与える意味で、御答弁を願いたいと思います。
  250. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 経済見通しにつきましては、現在のところ、石油の状況等について来年三月までのところが通産省等からある程度具体的な見通しが示されつつあるわけであります。それから同時に、この年度はもう時間的に相当経過しているということ、それから補正予算につきましては、先ほど来御説明しておりますような性格であり内容でございますから、おおよその見当として、この状況下においては、補正予算としてはこの規模、内容等においてこういう情勢に対処をし得るものである、こういうふうな考え方であります。  それから、来年度につきましては、結局、成長率、これには名目成長率、実質成長率ということも十分考えてまいらなければなりません。そして財政の規模は、先ほど申し上げましたように、できるだけ少なくしたいと思いますが、同時に、数年前の日本の財政や予算と違いまして、ある意味では硬直性が強くなっておる。これはやはり民牛安定ということに重点が指向されてきているからでありまして、これはある意味では私は特徴であると思います。したがって、頭からこれを二十何%以下にしなければならぬというふうな発想は、私は当たらないと思いますが、できるだけこれは少なくしていかなければならぬ。なお、先ほども説明申し上げましたよう幅、給与の上がり方等を含めて申しますと、四十九年度予算の概算要求は、概していえば三〇%をこしております。こういう状況でございますから、頭から何十%以下でなければインフレになるぞというような抽象的な論議だけでは、私は無理ではなかろうかと思います。いずれこれは、経済の成長率そしてその内容等と予算の規模の問題とあわせて国民的に御理解をいただけるように、国会に対しまして十分に御説明をいたしたいと考えております。  せっかくの竹本さんの御質疑に対して、一〇%とか五%だとか数字をあげて申し上げられないのははなはだ申しわけございませんけれども、現状はそういうわけでございますから、御了承いただきたいと思います。
  251. 竹本孫一

    ○竹本委員 予算のことは私は実はあまり触れなかったのですけれども経済の成長率がどの程度に落ちるのであろうか、来年はどの程度に景気が続いていくのであろうか、これは中小業者をはじめ国民が一番心配しておる問題で、よりどころのない国民としては、全くどうなるか、経営の基本方針も立てることができない。こういう実情でございますので、全体としてどの程度になるかということは、やはりこれは私は政府が示してやらなければ、国民はいまよりどころを持ってない。こういう意味で、経済の下半期における成長率は幾らか、あるいは幾らぐらいと思っておられるのか。  これは変わってもいいし、非常に流動的であることもわかりますが、しかし国民としては何か指標がなければ、ガイドポストがなければ見当がつかないだろう。少し予算も削ります、しかしながら硬直しておりますから幾らも変わりませんという、これは予算の御答弁でしたけれども、しかし、全体の経済について私のほうから申し上げますが、下半期の経済成長率はおおむね三%前後、来年度経済成長率は、いろいろ情勢があるからむずかしいけれども、五、六%、こういうふうに見ることは非常に無理がありますか。この点について御意見を聞きたい。
  252. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 やはりお話しのように、ガイドポストというものは政府としてはできるだけ早く責任をもって申し上げなければならない、これはもう全くそのとおりです。しかし、それだけにいまのところ、先ほど経済企画庁の担当官から申し上げておりますように、ちょっとお待ちいただきたいと言っておりますので、私としても私見を交えて抽象的なものを申しますと、これはいろいろと差しさわりが出たり、あるいは誤解を招くと思いますので、一生懸命いまよるべき指標を検討いたしておりますから、もう少しお待ちいただきたいと思います。
  253. 竹本孫一

    ○竹本委員 できるだけ早く一つの目標をお示しになることを要望して次へ進みますが、それがないと国民のほうは、ただしっかりやっておれ、こういうことですからね、どっちを向いてしっかりやればいいか、どの程度にしっかりやればいいのか、全然見当がつかないと思うのですね。ぼくはこんな無責任というか不親切な政治はないという立場で、大臣も言われるように一つの目標を——これは目標でありねらいですから、狂うことはだれがやっても狂いますよ。野党がやったって狂うんだ。私は、狂うことを責めるわけじゃないんだ。しかしながら、何にも示さないで、ただしっかりやれとか、少しむずかしくなりますよなんというようなことでは、国民はよりどころがないではないかということを、特に指摘しておきたいと思います。  次に、予算編成についてでありますけれども、私はいままで、経済は大体三つのMが必要だということを聞いておった、マネー、それからメン、マテリアルズ、こういう三つのMが経済には必要だ。ところが、予算は御承知のようにお金だけを中心にして予算を組んだだけで、いままた経済がこういうきびしい条件になりましたので、幾ら予算を組んでみても、物の裏づけがなければどうにもならないし、労働力や技術者の裏づけがなければどうにもならない。したがって、政府もいろいろお考えがあるようでございますが、二つのことをお伺いいたしたい。  一つは、本年度予算で、物がないために、物の裏づけが不十分であるために実行ができなくなる予算が全体としてどのぐらいあるとお考えであるか。それから来年度については、予算編成について物と人の裏づけを出せということを大蔵省もおそらく要求をされるだろうと思うんだけれども、その場合には、どの程度精密なる、昔でいえば物資動員計画といったような裏づけを期待しておられるか。私はこれは非常に厳密なものを出させなければ、また繰り延べだとかなんとかいうようなわけのわからない努力をしなければならぬ。はっきりした一つの物と人の裏づけを金にはくっつけなければだめではないか。  それからもう一つ欲ばって申しますけれども、その場合に、今度はエネルギーならエネルギー、石油が足らないのですから、どこへ使えば最も国民経済上のエフィシェンシーが上がるかということについて、単に需給のバランスを合わせるということだけではなくて、ほんとうの意味の効率の高い予算編成をやるためにどういう苦労をされるつもりであるか、これを伺いたい。
  254. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 古い話になりますけれども、お互いに物資動員計画というようなことについてはある程度の経験があるわけでございますけれども、あの当時の物資動員計画とは、私は趣旨も目的も、したがって方法も違わなければならないと思います。あの当時は、陸海軍とそれから民事との争いというものが一番の根幹であった。そしてそれが日本の国運を支配したといっても言い過ぎじゃないと思います。  そこで、現在の状況におきましては、やはり新しい意味物資需給計画というものは、お金に裏打ちされなければほんとうの計画が立たない、これは全く同感です。どうかしてそういう方向が少しでも段階的に出てくることが望ましいとかねがね思っておりまして、そこで前々からお話しいたしておりますように、政府関係公共事業費は、この年度中に昨年度に比べると一兆一千億ぐらい繰り延べをいたしました。これはほかの要素もございますけれども物資関係も十分見ましたし、それから同時に、今日の状況においては、物資需給はこれまた物の関係だけではなくて価格の問題が当然あるわけでございますから、価格の問題と物資関係をにらみながら繰り延べをいたしましたから、この手法を四十九年度予算編成には援用してまいりたいと思っております。いまたとえば骨材が何トン、セメント何トン、普通鋼鋼材何トンという、私も資料を手元に持っておりませんけれども、四十九年度におきましては、各省の協力を得まして、現に査定に際しましてはかなりこれを活用いたしております。  これも数字をあげていずれ御説明できる機会があるかと思いますけれども、ただ概括的に申しますと、最近における公共事業費は、内容的にいうと、土地の購入費が六割、それから労務費が二割、二割が資材費。そして公共事業費の中の物資関係では、セメントと骨材です。それから建造物になりますと、普通鋼鋼材の所要が相当のシェアになります。したがって、一般公共事業関係ではやはりセメント、骨材というようなものが中心であるし、それから建造物関係になりますと、ある程度普通鋼鋼材等のシェアが高くなります。同時に、全体の国民生産活動の中で、これは大ざっぱに申し上げますが、七対三ぐらいあるいは八対二に近いかもしれません、何といいましても民間の設備投資のほうが圧倒的に物資需要いたします。  大ざっぱなところはそういうわけでございますが、今年度それなら幾ら物が足りないために予算が使えなかったかということについては、先ほど建設省からもお話がございましたが、これはむしろ土地の問題であると思います。それに若干の資材関係もあると思いますが、むしろ土地の問題と、それからそのほかの何と申したらいいのでしょうか、たとえていえば住民意識と申しますか、たとえば東京へ通勤する多くの人のための住宅団地というものは、近県ではこれを希望いたしません。そういうような点も、感覚的に大きな原因の一つにあげられている。しかしこの住宅問題については、資材関係だけではなくて、本年度建設の戸数などは非常に少ないわけですから、これを率直に謙虚に反省いたしまして、来年度の住宅計画にはこれらの状況予算の上に反映するように、住宅計画は抜本的に検討し直したい、かように考えております。
  255. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま大臣にお尋ねした問題は、いろいろ御答弁いただきましたけれども、私、もう一ぺん言っておきます。あらためて予算委員会等で論議してみたいと思うのですけれども物価問題を中心繰り延べられた予算も一兆円の中にはありますし、いろいろありますが、要するに物資いま大臣の御指摘になった土地の問題も含めて、そういう物的基礎が十分でないことのために予算が消化できなかったというものが具体的にどの程度十四兆円の予算の中にあるかということは、あらためてお伺いいたしますので、そのときは計数的基礎をお示し願うように要望しておきます。  それからもう一つは、大臣の御答弁にもありましたけれども、戦争中とは違いますが、相当厳密な意味の裏づけを考えないと、ことしの場合には特に事志と違って、予算の消化ができないことになるのではないかというふうに思うわけです。  それに関連して、予算編成についてもう一つだけお伺いしたいのですが、やはり一年度予算を一ぺんに組むという例の本格的な予算を来年度も組むのか、あるいは情勢があまりにも流動的であるし、田中さんの持論は通年国会だということでもあるんだから、予算についても、もう少しいまの流れに応じたような考え方のほうがむしろ健全ではないか。無理やりに一年分の見通しが立たないのに見通しをつけて、そして予算編成して、また組みかえだというようなことでは、まことにだらしがない。そういう意味で、どういうふうに分けるかということはいろいろ議論がまたあるでしょうけれども、一本で一ぺんに全部本格的な予算を組むのがいいか、あるいは二段方式でものごとを具体的に現実的に処理したほうがりこうであるか、私はやはりこれは検討に値する問題であると思いますが、大臣の予算編成についてのその点のお考えはいかがでありますか。
  256. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この問題は、いろいろ考えてもみました。結論といたしまして、やはり年度を通じて一本の予算でいく。先ほどもお話がございましたが、政府の姿勢として、国民に対しまして年度間を通じて基本的な姿勢でばちっと一年度間の計画を立てることが妥当である、こういう考え方でございます。
  257. 竹本孫一

    ○竹本委員 けっこうなお考えだと思うんだけれども、それがはたして現実に可能であるかどうかという点については、われわれは大臣以上に情勢が流動的であると思うわけですよ。無理な予算を組んだために後悔をしないように、この点はよく配慮していただきたいと思います。  そこで、いま予算の裏づけのほうから申し上げましたが、いつか私、デフレーターのことで議論をしたことがありますけれども、何と申しましても価格の問題、物価の問題が一つの安定的な基礎を持たなければ、十四兆円といってみたって、実際は十二兆円の予算であるかもしれない。また、来年度予算が十七兆とか十八兆とかいってみても、実際は消化してみれば幾ら予算でもなかったということになるかもしれない。すべての問題はやはり物価問題だと私は思うのですけれども、その物価について、この間もニューズウイークをちょっと読んでいたら、スカイロケッティング・インフレーションということばがあった。これは日本のことを書いているのかと思ってページをめくってみたら、トルコの話であったから安心しましたが、しかしながら、日本の物価は若干スカイロケッティングなインフレーションといわれるような、卸の価格が二〇%だとか消費者価格が一五%とかいう驚くべき、ロケットのような物価騰貴でございますが、この物価を安定させるということが、国土総合開発の問題についても、予算編成についても、最小限度の基本的条件だと思うのです。ところが、先ほど来いろいろ議論もありましたけれども政府の打っておられる手を見ると、どうにも間に合わない、あとあとというような感じがする。  きのうも私はタクシーに乗りましたら、タクシーの運転手がなかなか経済に詳しい男らしくて、世界で一番石油のない日本が一番石油についてなまぬるい手を打っているのは、だんなどういうわけですかというえらいむずかしい質問を受けたのですが、これがおそらく庶民の感じだと思うのですね。それは銀座の町を見ても、あるいはその他の日曜日のマイカーの動きを見ても、世界じゅうで一番石油の基礎が弱い日本が一番のんびりした石油に対する規制の措置をいま講じつつあるように、庶民もそう思っているし、私もそう思っている。  そういう点も含めて、いま一番大事なことはやはり物価を安定させるということだけれども、それについて強い法律的な基礎がなければならぬ。いろいろ考えてみると、私は物統令以外にはないと思うのです。確かに物統令には弊害もありました。行き足らざる点や行き過ぎた点、官僚のまずさ、いろいろあります。これは十分に反省をしなければならぬと思いますけれども、いまのような、ただ大臣が財界の指導者と会ってみたとか、田中さんが何か言ったとか、党首会談をやったぐらいのことでは話にならぬ。この日本の、ある意味においてはたくましいエネルギーというものが物を買い占めたり売り惜しんだりする。この動きに対して、もうだれが何といってもインフレマインドで、また値上がりをするとみんなが考えておる、それをぴしゃっと政府がそうはさせないんだという姿勢を示すためには、物統令を復活させること以外にはない。それ以外に一体何があるか。この間できたあの商品投機の、何とかしたら公表しますなんというような、女学生の作文みたいなものでは何の役にも立ちませんよ。  そういう意味で、経済企画庁の小坂長官も、私には権限がないというようなことを言われたのが新聞に出ておりましたが、確かにないんですよ。小坂さんにないだけでない、政府にないんだ。そういうことからいえば、田中内閣が物価問題に真剣に取り組もうと思えば、どう使うかということは別として、やはり法的な基礎を持たなければならぬ。また法的基礎を持たないで、行政指導でかってなことをするのはファッショである。そういうことは、法治国ではむしろ慎むべきことである。そういう点も考えて、用意すべき法律は用意すべきだ、法的手段は用意すべきだ。そういう意味で、物統令の復活と申しますか、適用と申しますかを政府考えるべきだ。しかも、党首会談をやって、次の国会ではできるだけ早く緊急措置をできるようにしたいというお考えのようでございますけれども、そういってみても、なかなかきょうやあしたには間に合わないので、大体もう物が上がってしまい、買い占めも済んだころに適用を行なうということになったのではまことに残念でありますから、やはり予算の消化の立場からいっても、物価安定のために思い切った決断が必要である。その決断の具体的なものは何か、物統令であると思いますが、大蔵大臣はいかなるお考えでございますか。
  258. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 やはり臨時的な立法が必要である、こういうふうな認識を持っております。
  259. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただいまの大臣の御認識をひとつぜひ具体的にわれわれにもわかる形で、しかもすみやかに、間に合うように具体化をしてもらいたいと要望しておきます。  最後に、政府インフレ収束について自信ありやということであります。  私がなぜその問題を出すかというと、先ほども御意見がありましたけれども、これはまたいまの田中内閣だけの責任ではない。だれがやってもむずかしい問題であり、どうにもならぬ条件がある。一つは、輸入インフレの問題である。これが全体の物価上昇に対する寄与率を四割と見るか五割と見るか、大いに議論があります。しかしながら、それが大きな影響力を持っておるということは確かに間違いない。次に、賃金その他の値上がりおるいはコストの値上がりということを考えれば、物資不足もあり、コストプッシュ・インフレーションという、そのコストプッシュもいまどうすることもできない、まずできない。そういう点がある。さらに、金融引き締めの一つ覚えでいままでやってきましたけれども、これにも大きな限界があって、これ以上公定歩合を引き上げて一体何ができるか、どこまで行けるかということを考えると、むずかしい。財政についても、財政も大臣がいま言われたように硬直化してどうにもならない、もう既成の与えられた与件というか条件が固まってしまって、どうすることもできない大きな壁がある。  そういうことを考えて、そこでさらにわれわれの立場からいえば、土地問題等について政府の打つ手があまりにもなまぬるい。その上に、田中さんが、わかって言うのか、わからぬで言っておられるのか、私にはわからぬが、とにかくインフレを押えるというのではなくて、インフレを促進する方向に一生懸命突っ走っておられる。いわば新幹線の問題にしても、減税問題にしても、あるいは四国へ橋をかける問題にしても、どれ一つとってみても、インフレを促進しないものは一つもない。だから、内外いろいろな条件を考えた場合に、それらをも含めて踏まえた上で、なお大蔵大臣は、インフレはこの内閣で収束させますと自信を持ってお答えができるかどうか、その点をひとつお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  260. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 自信を持って大いに立ち向かってまいりたい、こういうふうに考えております。
  261. 竹本孫一

    ○竹本委員 これはことばは簡単だけれども、裏つけがどれだけあるかということが問題なんですから、よく検討をしていただいて、次の機会に、国民が納得できるような、田中内閣が納得したり大蔵大臣が納得するようなインフレ対策ではないもののお示しをひとつ要望いたしまして、質問を終わります。
  262. 鴨田宗一

    鴨田委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十二分散会