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1973-08-29 第71回国会 衆議院 大蔵委員会 第48号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年八月二十九日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君    理事 大村 襄治君 理事 木村武千代君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 阿部 助哉君    理事 武藤 山治君 理事 荒木  宏君       宇野 宗佑君    越智 通雄君       大西 正男君    金子 一平君       栗原 佑幸君    小泉純一郎君       塩谷 一夫君    地崎宇三郎君       野田  毅君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       佐藤 観樹君    高沢 寅男君       平林  剛君    堀  昌雄君       山田 耻目君    増本 一彦君       広沢 直樹君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵省主計局次         長       長岡  實君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局次         長       後藤 達太君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      松川 道哉君         国税庁次長   吉田冨士雄君  委員外出席者         外務省経済協力         局外務参事官  菊地 清明君         通商産業省産業         政策局調査課長 広瀬 武夫君         通商産業省基礎         産業局非鉄金属         課長      奥田 義一君         通商産業省基礎         産業局化学製品         課長      赤羽 信久君         参  考  人         (日本銀行総裁佐々木 直君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十四日  辞任         補欠選任   津金 佑近君     木下 元二君 同日  辞任         補欠選任   木下 元二君     津金 佑近君 同月十六日  辞任         補欠選任   津金 佑近君     小林 政子君 同月十七日  辞任         補欠選任   塚田 庄平君     山本 政弘君 同日  辞任         補欠選任   山本 政弘君     塚田 庄平君 同月十八日  辞任         補欠選任   小林 政子君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     小林 政子君 同月二十六日  辞任         補欠選任   木野 晴夫君     丹羽喬四郎君   塩谷 一夫君     赤城 宗徳君 同日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     塩谷 一夫君   丹羽喬四郎君     木野 晴夫君 同月二十七日  辞任         補欠選任   塩谷 一夫君     赤城 宗徳君 同日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     塩谷 一夫君 八月二十四日  辞任         補欠選任   内海  清君     渡辺 武三君 同日  辞任         補欠選任   渡辺 武三君     内海  清君     ――――――――――――― 七月十六日  昭和四十八年産葉たばこ収納価格引上げに関す  る請願小沢貞孝紹介)(第八八三七号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第八八三八号)  同(羽田孜紹介)(第八八三九号)  同(中澤茂一紹介)(第八八七〇号)  同(井出一太郎紹介)(第八九三九号)  同(倉石忠雄紹介)(第八九四〇号)  付加価値税新設反対等に関する請願谷口善  太郎紹介)(第八八六九号) 同月十七日  昭和四十八年産葉たばこ収納価格引上げに関す  る請願小川平二紹介)(第九〇八五号)  同(林百郎君紹介)(第九〇八六号) 同月十八日  昭和四十八年産葉たばこ収納価格引上げに関す  る請願下平正一紹介)(第九三二五号)  同(原茂紹介)(第九三二六号)  葉たばこ収納価格改定に関する請願鈴木善  幸君紹介)(第九三二七号)  同(梶山静六紹介)(第九六三五号)  旧朝鮮金融組合連合会在日残余財産凍結解除  に関する請願上村千一郎紹介)(第九六三六  号)  付加価値税新設反対等に関する請願坂井弘  一君紹介)(第九九一九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月十六日  付加価値税新設反対等に関する陳情書  (第四七三号)  勤労者税負担軽減に関する陳情書  (第四七四号)  税制改正による都市財源配分に関する陳情書  (第四七五号)  文化芸術等に対する入場税撤廃に関する陳情書  (第五五二号) 同月十八日  昭和四十八年産葉たばこ収納価格改定に関す  る陳情書(第六一  九号)  税制改正による都市財源配分に関する陳情書  (第六二〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件      ――――◇―――――
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、金融に関する件について、本日、日本銀行総裁佐々木直君に参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 鴨田宗一

    鴨田委員長 国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  この際、政府より発言を求められておりますので、これを許します。愛知大蔵大臣
  5. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、去る七月三十、三十一日の両日ワシントンで開催されたIMFの二十カ国委員会、いわゆるC20会議出席してまいりましたので、この機会に、会議模様等につきまして概略まず御報告いたしたいと存じます。  御承知のとおり、二十カ国委員会は、長期的な国際通貨改革の問題を論議するため昨年九月に設けられたものでありまして、今回の会議は本年三月の会議に続く第三回目の会議であります。  今回の会議は、出席各国大臣が演説を行なうという形式のものではなく、九月二十四日からナイロビで開かれるIMF総会通貨改革概要についての二十カ国委員会の報告ができまするよう、大臣レベルで実質的な討議を行なうことを意図したものでありましたが、ナイロビ総会において何らかの合意を見ようという各国代表の熱意は強い盛り上がりを示し、これにより所期目的は達成されたと考えておる次第であります。  今回の会議における主要な論点は次のとおりであります。  第一は、国際収支の不均衡がありました場合、調整を行う必要をどのように判断するか、適切な調整措置をとらなかった国に何らかの圧力を課すべきか、また、国際収支じりの不均衡をどのように決済すべきか。  第二は、新制度中心資産としてのSDRの取り扱いをいかにするか。  第三は、新制度開発途上国援助の問題をどうするか。の三つ論点のうち、実質的な検討が行なわれましたのは一及び二についてでありまして、これらの点についてのわが国の具体的な主張は次の五点に要約されます。  第一は、調整必要性は、客観的な指標、たとえば外貨準備増減等を重視しつつ総合的に判断すべきものであること。  第二は、国際収支じりの決済については、不均衡額全額決済を行なわせるという交換性原則は確立するが、交換性義務履行を円滑ならしめるため、必要に応じ信用供与等措置を講ずること。  第三は、国際収支調整過程各国通貨交換性は密接不可分な問題であること。  第四は、国際収支均衡是正のために適切な政策をとらない国に課せられる圧力の問題については、きわめて慎重に扱うべきものであること。  第五は、新制度中心的資産であるSDR価値は魅力あるものとすべきであること。これらのわが国主張は、今後通貨改革概要の取りまとめの過程において十分尊重されていくものと考えております。  国際通貨改革の問題は、単に国際間の支払い手段をどうするかという問題にとどまらず、将来の各国経済政策のあり方とも密接に関連する一面を持っております。私は、今後とも国際協調の精神にのっとりながら、わが国の国益を十分考えてこの課題に取り組んでまいりたいと存じております。  次に、この機会に、今般、物価上昇等経済の根強い拡大基調に対処するための総需要抑制策といたしまして、財政面及び金融面において講ずることといたしました措置について御報告申し上げます。  まず、財政面におきましては、再度にわたり公共事業等の施行につきまして上半期契約抑制する措置をとってきたところでありますが、最近における物価状況等経済情勢の推移に顧み、総需要抑制のための総合的施策の一環として、財政面からの抑制措置をさらに強化することとし、昨日の閣議におきまして、財政投融資対象事業を含め、財政執行繰り延べにつきまして各省協力を要請した次第であります。  繰り延べ具体的内容につきましては、各省とも十分協議の上、来たる三十一日の閣議で決定いたしたいと心組んでおりますが、繰り延べ率につきましては、現下の経済情勢に顧み、昭和四十二年度の例を上回る八%を原則とし、積雪寒冷地及び生活環境施設につきましては、本年度上半期契約抑制措置においても特に配慮されている事情を考慮いたしまして、四%とすることといたしたいと考えております。  なお、災害関係及び財政投融資における中小企業金融機関等につきましては、対象から除外することといたしたい所存でございます。  また、地方財政につきましても、国の措置とあわせて積極的な繰り延べ措置がとられますよう、地方公共団体指導について、閣議の席上自治大臣等の格段の協力を要請したところでございます。  金融面におきましては、すでに数次にわたり公定歩合引き上げ預金準備率引き上げ窓口指導強化等措置がとられてきたところでありますが、総需要一段抑制をはかりますために、昨日、日本銀行は、公定歩合を一%引き上げるとともに、預金準備率引き上げを行ない、あわせて窓口指導の一そうの強化を行なうことを決定いたしました。  今回の措置につきましては、公定歩合引き上げ幅が一%と、かつてない大幅なものとされたことが大きな特色であります。  年初来の引き締め政策影響は、金融面ではかなり明確に認められるようになってきておりますが、今回公定歩合大幅引き上げが行なわれましたのは、当面の情勢から判断して、この際引き締め効果の浸透を経済実体面にも早急に及ぼすことが肝要であり、このため特に強い措置をとる必要があると認められたことによるものであります。  また、このように引き締めの徹底を期する場合には、金利面にとどまらず、量的調節の面でもできる限りの措置を打ち出す必要がありますので、公定歩合大幅引き上げと並行して預金準備率引き上げ窓口指導一段強化措置がとられることとなった次第であります。  このように、今回は金融政策効果がいわば本格的に浸透する段階において全面的かつ強力な追加措置がとられたわけでありまして、今回の措置は今後の金融調節上大きな効果を発揮していくものと期待いたしております。  政府といたしましては、今後とも日本銀行と緊密な連絡を保ちながら、情勢の変化を慎重にフォローし、必要とあれば何どきでも適切な対策を講じ得るよう機動的な金融政策運営一段と意を用いてまいる所存でございます。     —————————————
  6. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。越智通雄君。
  7. 越智通雄

    越智(通)委員 ただいま愛知大蔵大臣から、昨日とられました金融引き締めあるいは公共事業費繰り延べ等、非常に果断ともいえる措置につきまして種々御説明がございました。私どもも、そうした措置よって、そのねらいとする総需要抑制いたしまして、今日の異常とまでいわれている物価上昇にぜひ一日も早く歯どめをかけてほしい、そういう願い一ぱいでございます。  この一年間の経済運営そのものを振り返ってみますと、非常に目まぐるしいような感じがいたします。そしてまた、従来にないきわめて特異なものであったような気がするわけであります。  愛知大臣は、年頭にいわゆるトリレンマというお話をされました。昔から、経済運営の中で、成長を維持しながら国際収支の安定をはかり、物価の安定をはかる、この三つが非常に大きなキーファクターとなっていたと思うのでありますが、かつては、この国際収支の赤字というのは常に一番先にくるネック、それが景気調整のシグナルになっていた。しかし、昭和四十年代の前半に入りまして、そうした傾向が解消されて、国際収支成長が両立することが可能であるかのようになったわけでありますが、その後それが逆に出まして、去年あたりの感じでは、むしろ国際収支の非常に大幅な黒字基調というものを何とか解消したい、これが経済運営の一番の眼目になってきたように思うのであります。  昨年秋には、国際的には、すでに各先進国金利引き上げに踏み切っていたその時期において、日本はいわば低金利政策を維持し続けた。その理由というのも、何とかして円の再切り上げを避けたい、もし万一それに追い込まれた場合でも、そうしたことが国内に大きなショックを与えて、たとえば中小企業がばたばたと倒れる、そういう事態をぜひとも避けたいという願いでああいう政策がとられ、またかなり大幅な、大型なと申しますか、財政支出が行なわれてきた、このように思うわけであります。  現実にこの円のレートの問題は、二月以来変動相場制ということになりましたけれども、大幅な黒字基調は現在解消されつつあると思いますし、そのこと自身が、いろいろなまだ意味はあると思いますので後ほど伺いたいとは思いますが、特に政治的に問題になっていた日米間のアンバランス、日本の恒常的な黒字というものが今日大体とんとんになってきた。まあ田中総理はハワイで、三年でバランスさせると言ったのをおれは一年でやったんだとおっしゃいますが、三年分を一年でやることが日本経済運営そのものにとってよかったかどうかという問題は、私は後世もう一ぺん検討されるべき問題ではないかと思っております。  いずれにいたしましても、そういう意味では、去年後半の政策はその所期目的を達したかと思いますけれども、あとに残された日本経済状況というのは、私は何とも非常にふかしぎな状況になっているような気がするのであります。今日の経済議論というのは、日本経済現状をどう理解するかというところから議論を始めないと何か煮詰まらないような気がいたします。  ともかくいろいろな特殊なことが起こっております。消費者物価がたいへんなスピードで上がっております。卸売り物価が去年の夏以来でございますが、ともかく棒上げというような状況になっているように思います。昨今では特定な物資については町ではないないづくしになっております。私どものところにも、家は建っちゃったけれども、電線がないので何とかならぬでしょうかというような話がたいへん持ち込まれております。そうしたことから、何か国民の間にお金を持っているより物を持ってなければだめだというような、そういうような思想が出てきますと、きわめて深刻なインフレムードになる危険があると思います。  これは一体日本経済がどういう状態に入っていると見るべきだろうか。先ほど来の蔵相お話では、総需要抑制する、その限りではそのとおりだと思いますけれども、では、供給力はちゃんとそれにくっついていくだけの十分な余力を持っているのだろうか。昨今の新聞では、相当程度金融引き締めをやっても、この五カ月間に四回あるいは一挙に一%、そういうことをやっても、日本経済をいわゆるオーバーキルというんですか、冷え込むまで持っていくおそれはない、こういっておりますけれども、ほんとうにわれわれはそう信じていていいのだろうか、それらの点につきまして、あらためて大蔵大臣、今日の日本経済の、病状と言ったらあれかもしれませんが、現状についての御判断を伺わしていただきたいと思います。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一は、ただいまもお話がございましたが、昨年暮れからことしの初頭にかけて私はよくトリレンマということを申しておりましたが、その三つ課題である、まあいわば一つは円の対外価値と申しますか、これと国際収支の問題、それから物価の安定の問題と福祉国家建設の問題、この三つが当面する大きな課題であると申しましたが、実は私は、その中でも円の価値の問題というものが一番むずかしい、また取り扱いにくい問題である、こういうふうに内心思っておりましたが、過去半年余りを顧みてみますと、いろいろの状況から、かえってこの円の問題あるいは国際収支の問題は現在小康を得てきております。これが実は物価安定等に対しても本来よい影響があるべきはずのものでありましたが、意外にこの点は、当時予想しておりましたよりもはるかに大きな問題になってまいりました。したがって福祉問題についてはいま触れないことに一応いたしたいと思いますけれども、何としても物価の安定をつくり上げるということがこれからの政策の最重点課題である、非常にこれははっきりしておる。こういう現状であると認識をいたしておりますから、物価の安定、インフレ的な状況換物思想のびまんというようなことを何としても防ぎたい、こう考えております。  それには財政金融政策に課せられた役割りは非常に大きいと思います。主としてこれは総需要抑制の面において最も効果のある手段であると思いますから、いまも言及されましたように、供給の面についてあるいはオーバーキルというような問題が起こらないようにするということを一方において非常に考えていかなければならないと思います。それらいろいろ考え合わせまして、公定歩合引き上げ相当思い切った幅でいたしましたが、同時に預金準備率引き上げ窓口指導の面におきましては特に中小零細企業の今後ということについて十分の、これまで以上の配慮をしていかなければならない。これが、非常に具体的な問題でございますが、一番当局としては心しなければならない問題だと考えます。  それからもう一つは、これは申すまでもないことであると思いますけれども金融財政政策につきましてはできるだけのことを考え、かつ実行しておるつもりでございますけれども、やはり卸売り物価の問題も消費者物価の問題も、それぞれ総合的な各般にわたる政策が一斉に足並みをそろえて行なわれなければ十分な成果は上げることができない。したがって内閣の立場におきましては物価対策関係閣僚協議会中心にいたしまして、各省庁が力を合わせて知恵をしぼってそうした総合的な物質面に対する政策あるいはその他の面に関しても逐次具体策を展開していきたい、こう考えておるわけでございまして、最近における各省庁のいろいろと考え出され、あるいは実行されつつある方策等には、その面においても相当望ましい効果をあげてくるというふうに期待もし、また事実それは効果を発揮するであろうと信じておるわけでございます。
  9. 越智通雄

    越智(通)委員 いま蔵相もおっしゃいましたが、国際収支の面では小康を得ている、確かにそういえるのかもしれません。ただ、円という通貨が外で強くて中で弱いといいますか、そういう二面性というものがいつまでも続くものだろうかと私ども感じておりました。今日なるほど円はドルに対して二百六十五円がらみの線でいわば安定しているように見えますけれどもドル自身がずいぶん弱まってきているのではあるまいか。そうするとフランとかあるいはマルクとか、そういう欧州通貨に対して——大体マルクというのは一マルク百円くらいと思っておりましたが、最近は百円をオーバーしているように思います。フランも、旅行したときの感じではまあ一フラン六十円くらいという、そういう目の子からいうと、やはり六十円をずっとオーバーしてきているような感じがする。一体円というのは国際的にはたいして強いのだろうかということも感じますし、また国際収支基調も大幅な黒字基調は直ったというものの、ともかく三月以降ずいぶん外貨準備が減っている。この四、五カ月で三十億ドルくらい減っていると伺っておりますが、ちまたでは、この調子では年末には百二十億ドルじゃないか、はたしてそのくらいの外貨準備レベルでいいのだろうか。  やや忘れかかっている国際収支上の問題が、何か黒字黒字と騒いでいるうちに、逆の方向で心配がひょっとまた出てきたらたいへんだなという気分もあるのですが、蔵相先ほどお話ございました七月末に国際会議に出られましたその実感をもって、これからの日本国際収支の見通し、円の価値がどういうふうな状況で推移するか、お考えあればお聞かせいただきたいと思います。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 最近の二、三月ごろからの状況には一ずいぶん紆余曲折がございましたことは御承知のとおりでございますが、ごく最近の動向から申しますと、私の観察からすれば、各主要国ともインフレ的傾向には御同様非常な悩みを持っている。そして国際的にも金の信認がなくなって、物といいますか、そういうほうへの関心が世界的に高まりつつある。これはどうしても押えていかなければならないという認識努力が非常に高まってきている。  したがって、先ほど説明もいたしましたが、国際通貨問題等についても私は国際間の協力ということが相当具体化してくるのであろうことを期待いたしておりますし、また日本もその間に大いに努力しなければならないと思いますが、現在がこういう状態であるということは、私は小康を得ておる状態であるけれども、これは小康ということではなくて相当恒久的に安定するように一段努力をしていかなければならない、こういうふうに考えております。  それから、日本として国際収支に対して今後どうなるであろうかということでございますが、たとえば八月一ぱいで貿管令の適用を廃止していくというようなことにおいても、十分それらの動向のことを頭に置きながら、今後の日本の行き方が誤りなきようにしたいということも、その辺に十分の考えを置いているわけでございますから、やはり国際収支均衡を得るように、不当にというか、これは申し上げますといろいろファクターがございますけれども、たとえば外貨準備などにつきましても、具体的にいえばドルというものをあまりたくさんに持ち過ぎるというようなことはかえっていかがであろうか。そうかといってこれか非常に少なくなり過ぎてもあらためて心配ではないかというような趣旨のお話でありましたけれども、そういうところまで現在心配を持つほどのことはないのではないだろうか、こういうふうに考えております。  私は、先ほど率直に申しましたように、一番むずかしいであろうと思われていたことが案外にというか、いろいろの状況がしあわせしたと申しますか、そういう点から、この面でいま特に心配をさらにしなければならぬというふうには考えません。むしろいまお話がございましたが、国内的に円というものが安定をする、そして国内、国外に対して円の価値というものが安定をするということが望ましい。そして当面のところはやはりこれは国内物価の問題で、これ以上の騰勢を阻止するということは何よりも大事なことではないか。これにできるだけの力を入れていきたい。そして対外的にはやはり海外物価が非常に暴騰しておりますから、クリアカットの効果はございませんが、しかしやはり輸入の促進、供給の増進ということも一つの当面やはり引き継いで考えていかなければならない課題である、こういうふうに存じております。
  11. 越智通雄

    越智(通)委員 おっしゃるように対外的な面で円ができるだけ早く安定をして、そして国内的にも安定に向かう、ほんとうにそのとおりだと思います。ただ現状の問題でいうと、では国内のほうが一体いつごろに安定できるだろうというねらいをお持ちで今回の金融引き締めをやられたか。巷間新聞などではすでに、いまぐっと締めておいて春になったらゆるめるのだともう書いております。そして実際企業の手元流動性はあまり下がっていないのではないかという議論があります。確かに銀行の預金の取りくずしが進んでいるやに聞いております。あるいは債券市場では企業が多少売って出ているようにも聞いております。ただ実際に株式なんかはそう企業が手持ちを放しているような気配は感じませんし、あるいは不動産などをどんどん換金しているという傾向もない。一体いま金融というのはどの程度ほんとうに締まっているのだろうかという感じと、このいまの窮屈さかげんがいつごろまで続いて、いつから先いわば楽になるのだろうかと、事業をやっております町の方々は非常に心配いたしております。蔵相はこれからの金融の締まりぐあい、あるいはゆるみぐあいと言ったらおかしいかもしれませんが、どういうようなお考えをお持ちか、胸のうちをもしお明かし願えれば伺わしていただきたいというふうに思います。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 率直に言って、何月ごろに卸売り物価の上がり方がどのくらいでとどまるであろうかということ等については、しかと責任をもって御説明するだけの勇気はございません。これは忍耐強くあらゆる考えられる手法を実行していくよりほかにない。しかし同時に、たとえば金融政策の問題に例をとるならば、これこそは機動的、流動的に情勢の変化におくれないように、むしろ先行して手を打っていかなければならない。そういう点から申せば、心持ちの問題から申しますならば、公定歩合というようなものはむしろ期間からいえば長期的な手法ではなくて、短期的な手法であるというところが一つの性格的な手法であると思います。  それから財政の問題にいたしましても、私はやはり景気の変動とか物資需給の状況によって、いわば窓口指導的に支出の調整というものをやっていかなければならないのであって、先ほど説明いたしましたような八%の繰り延べというようなものも、繰り越しではなくて、状況が変わってくればこれを解除するというふうに考えていくべき手法である、こういうふうに考えておりますが、そういったような考え方を持つゆえんのものは、現在のような異常な状態に対してよい方向に変調のきざしが具体化することを一日もすみやかに待ち望んでおる、こういうふうに裏から申し上げれば気持ちがおわかりいただけるのではなかろうかと思います。  それからもう一つ、くどいようになって恐縮なんでありますが、企業の手元流動資金の問題というようなものも、もういまや国民的な関心の的でございますけれども、ごく最近の状況を見ますと、たとえば四十七年のある時期のピークのところから見ますればかなり減ってまいりまして、今年の七月−九月期の見込みでは一・一四というような程度に見込まれております。これはピーク時の一・三二から見ればかなり急速に減ってきているということが言えるのではないかと思います。  ただ問題は、さらに業種別あるいは大中小企業というような規模別と申しますか、こういう点をもっと掘り下げて見てみなければ、しかとした予測は立ちにくいと思いますけれども、マクロ的に見ますとかなり低下してきている、そしてわりあいすみやかにいわゆる過剰流動性というものが大きな問題になったあるいは発生した時期の直前の状態に企業の手元流動性の比率というものはおさまりつつある、こういうふうに見られるわけでございまして、こういう点から見ましても従来の数次にわたる手法はそれなりに効果をあげているのではないか、こういうふうに考えられるわけでございます。
  13. 越智通雄

    越智(通)委員 そういう意味で、金融政策ができるだけ早く所期目的を達してもらいたい、そのかまえは、どちらかというといわゆる短期決戦のかまえというふうに感じられるのです。ところが歳相おっしゃいました、各省を通じて財政その他いろいろな面から一致協力して物価抑制につとめたという金融以外のファクターの中で、財政がわりとそういう小回りがきかないような状況にあるように思われるのでございます。  さきに生産者米価が大幅に引き上げられました。二千億ぐらいの食管会計の追加が必要だと伺っております。あるいは公務員給与のかなり大幅なベースアップがございまして、これまた二千億がらみの追加財源が必要だと伺っております。そうしたものがこの延長国会にすぐ出せるというものでもないだろうと思いますが、しかしいずれにしても例年の例でいえば、ことしの秋から暮れにかけては補正予算のかっこうになってくるのでございましょうし、その財源としては、片一方税収のほうが法人企業の増益でかなり自然増収が出るのじゃないかという声が聞かれております。十一兆からの税収が、一割やそこら変わればすぐ一兆円からの自然増収が出てくるわけでありまして、そうしたいまのような追加支出の財源としては十分あるのでしょうけれども、問題は十分過ぎるところにあると思います。ことにそれが法人税、所得税でおそらく自然増収が出るのだと思いますが、当然のこととして、地方交付税交付金がふえてまいりますと、ざっと言って数千億の補正予算がこの秋に出されるとするならば、今日までとられてきた一つ引き締めムードといいますか、そういうものに対しては効果を減殺してしまうのじゃないか、こういう感じを持つわけです。  自然増収の見通し、あるいは補正予算についてのお考え、あるいは財政のそうした問題が今日までの措置とどのように斉合性をもって行なわれていくかという点についてのお考えを伺わせていただければありがたいと思います。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お尋ねの点がかなり多岐にわたっておりますから、あるいはお答え漏れがあるかもしれませんが、まず生産者米価を引き上げまして消費者米価は年度中据え置きということをきめたわけでございますから、直接その点から出てまいります概算でございますけれども、生産者米価引き上げだけをとってみましても、財政負担の増が千九百億円ぐらいにはなろうかと思います。それから人事院勧告の問題も、給与改善費としては二千六百億円余りが必要かと思います。これらは一方では食管会計の糧券の発行その他の余裕というものもございますし、それから給与費については五%の引き上げ分がある、あるいは予備費も相当ございます。これらの関係も考え合わせまして、さしあたりのところは予算というものに触れないでも実行をやっていくことが十分可能でございます。  しかし、予備費だけでは十分ではございませんし、他にやはり、御案内のように、義務的な経費の精算というようなものも含めまして、ある程度財政需要が追加的に出てくることは否定し得ないわけでございますから、いずれ年度の終わりごろまでには補正ということも必要になろうかと思いますけれども、現在税収の見込みも、今年六月の税収の見込みなどを見ますと相当順調ということがいえますけれども、何ぶんにもまだ年度の当初でございますから、年度を通じて自然増収の額がどのくらいになるであろうかということを責任をもって申し上げるのには、まだ時期が尚早であると思います。これらの点をこれから十分に検討しなから、いずれ適当な——これはかなり率直に言えば、おそい時期で適当だと思いますけれども、そういう時期に必要があれば補正ということを考えたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  さてそこで、全体に通じてそういった財政需要が多ければまたインフレ的様相が高進するのではないかというお尋ねでございまして、農家の手取りが多くなる、あるいは公務員の手取りの給料が多くなるというような面から、これが通貨増発の要因になるというふうなことを考えれば、そういう面も否定できないかと思います。しかしこれは財政上の面からだけいえば、赤字で補給をするというわけのものでは全然ございませんし、また、先ほど来申しておりますような財政上でいえば、概算いたしますと大体七兆円程度あるいはそれ以上にのぼるような面について、大体八%くらいの繰り延べといいますか、正確に言えば私はむしろ留保ということばを使ったほうが実態に当たるかと思いますが、そういうこともあわせ行ないますから、私は、財政面からはさらにインフレ的要因が高進する、こういうようには考えておりません。  なお、これらの点につきましては、今後とも十二分にいろいろの点から検討いたしまして、国民的に御納得の仰ぎ得るような措置を講じてまいりたい、かように存じております。
  15. 越智通雄

    越智(通)委員 時間もございませんので、最後に、具体的な問題について、ぜひ蔵相に一言お願い申し上げておきたいと思います。  それは補正予算との関係で、固定資産税の問題なんでございます。固定資産税の評価がえが行なわれまして、固定資産税額が非常に上がりました。私どものおります東京では、七割くらい去年に比べてことしの税金が上がっております。そしてそれがことし限りのことではなくて、来年も再来年も上がるんだ、こういう仕組みになっております。  確かに、土地という一つのものに対して評価がいろいろある、これを一元化したい、あるいは評価がえすることが義務づけられているからぜひこれを変えなければならない、それはわかるのでございますが、土地所有者、それから土地を借りている人、あるいはそこに建っているうちに入らせてもらっている人、こういう人たちは、いまこの固定資産税問題でいわばてんやわんやの騒ぎをいたしております。もう蔵相も先刻よく聞かれていると思います。  この問題については、各党がいま真剣にいろいろな提案をされている。ただ、その全体を通じて一つ問題がありますのは、所有面積でいろいろ段階をつけるということを考えて御提案が出ております。私どももその提案のいわば企画に参画をいたしたこともございました。私どもの属しておるグループでもそういう提案をしたこともございます。しかし、なかなかにその問題が決着がつかないで、まあ来年よく考えてということでは、いまこの問題についていわば激しい怒りを燃やしている人を納得させることはできないのじゃないか。  ぜひ、自然増収が相当に出るならば、固定資産税の問題についてはそれらを財源として御考慮いただきたい。ことに固定資産税の税率一・四%は長年変化いたしておりません。所有面積についていろいろな区別を設けることが非常にむずかしい点があるならば、あるいは考え方を切りかえて、税率についても一ぺん一体幾らであるべきか、一・四というのは一体どういう理論的な数字なんだということを再検討していただくのも非常にいい時期ではないか、そのように思うわけであります。  ことに小さい面積の人を固定資産税なしというのは、法的にそういう体系が許されるかどうか、一体そのミニマムの面積というのは幾らであるべきか、なかなかに議論がむずかしいと思いますし、あるいは実務上名義を分けられたときにどのように処置するかという困難性もあります。それらの問題が一ころ燃え上がって今日までやや置きざりにされているような気がいたしますので、ぜひ真剣に再び取り上げてやっていただきたい。  全国で固定資産税は七千億ぐらいの収入と伺っております。そのうち三分の一が土地と伺っております。二千億そこそこでございましょう。それに対して地方財政計画上五割くらいの増収を見込んでいるといいますが、もし国の自然増収が出て地方交付税交付金が相当多量に地方に行くのならば、その間のいろいろな調整をはかりながら、ぜひともこの固定資産税の増額を現状程度に、要するに去年払った税金程度に押えるような方法をお考えいただきたい。それがまた庶民の感覚からすれば、政府物価を押える押えると言いながら、都の税務事務所から来る令書は七割も上がっている、おかしいじゃないかという、そういう声に対する明快な答えにもなるのではないかと思います。愛知大臣の果断なる措置をぜひ心からお願いいたします。御所見をどうぞお願いいたします。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 四十八年度の固定資産税の改正につきましては、住宅用地について評価額の二分の一を課税標準額にするということにして、四十八年度、四十九年度とこれでやっていこうと調整措置を講じたわけでございます。ところが、いま越智委員の強調されるように、小規模の住宅用地について固定資産税が非常な高さであるということについては、私どももほんとうによく耳にし、また実地の勉強もさせていただいているところでございまして、ひとつ十分検討して、税制調査会にもはかりまして結論を出したいと思っております。  ただ、冒頭にお話がございましたが、これは補正の問題として考えておりませんで、税制の問題として考えておりますことを付言しておきたいと思います。
  17. 越智通雄

    越智(通)委員 ありがとうございました。
  18. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、高沢寅男君。
  19. 高沢寅男

    ○高沢委員 越智委員の質問に続きまして、野党の立場からひとつ質問いたしたいと思います。初めに、これは大蔵大臣日本経済現状をどう見るかということでお尋ねをしたいわけであります。  ことしの四月四日の大蔵委員会で、私は同じような問題を大臣にお尋ねしたわけであります。つまり日本経済現状はインフレと規定すべきじゃないかということをお尋ねしたわけであります。そのときの大臣の答えは、まだインフレという認定ではない、それは言うなれば、インフレ的な傾向が懸念される状況である、こういうふうなお答えであったわけです。そのときのさらに大臣の説明によれば、こういうことを言われておるわけです。いま昭和四十八年度の新年度が始まったところであって、これから予算の執行に入る、物価の安定をはかるためにいろいろ財政上、金融上あるいは例の買い占め投機防止のああいうふうな法律案も含めてその道具立てをやっとそろえたところで、われわれもその道具が働いて、そして数カ月後には物価は安定する、こういうふうなことになるので、いまの段階でインフレという判定はしたくない、こういうふうな大臣のお答えであったわけです。  四月から数カ月確かにたったわけです。政府がいろいろ準備されたそういう道具立ても、ことに日銀の公定歩合のごときは四回も、二・七五%も上げられてきた。こういうことであるが、卸売り物価においても消費者物価においてもその上がり方は依然としてものすごい勢いで上がっておる。こういうことであるとすれば、私はこの際もうひとつ大臣にいさぎよく現状はインフレである、こういう判断をしてもらうことが必要じゃないか。こういうふうな判断をお聞きするのは、実はただことばの問題ではなくて、そういうふうな認識政府が立たれれば、当然政府経済政策運営原則物価の安定というところに最大の焦点が向くことになるわけであって、そういうふうな一つ政府経済政策の原理を確立してもらうという立場からも、日本経済現状はインフレである、こういうふうな認識をひとつ持たれるべきではないか、こう思います。  そこで、四月段階での大臣の御答弁を一応土台にしながら、その後数カ月たった現在の時点で大臣はインフレとお考えになるかどうか、ひとつその判断をお聞きしたいと思います。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 最近に至りましても卸売り物価、それから消費者物価も依然として騰勢がやまない、これは事実として私もこれを認識し、その認識の上に立ってますます対策について努力一段としなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  21. 高沢寅男

    ○高沢委員 私のお尋ねしたインフレと見るべきかどうか、これについての判断をひとつお願いします。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 インフレということになりますと、そもそもインフレーションというものはどういうものであるかという定義からきめてかからないといかぬと思いますけれども、そしてそれにはいろいろの問題が入っていると思います。たとえば失業の問題だとか生産性の問題だとかいろいろあると思いますが、しかし感覚的に言えば物価が非常に高い、この事実は私もそういう認識の上に立って対策にいよいよ努力を倍加していかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  23. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣はなかなかインフレということばを避けておられますが、私は学者ではございませんので、卸売り物価消費者物価もともにたいへんな勢いで上昇していく結果として、したがって貨幣価値が非常な勢いで下落しておる、こういう状況をインフレである、こう見れば、いま大臣が答えられた認識はまさにインフレと認めておられる、こういうことになろうと思います。  そこで、先ほど越智委員に対する大臣の御答弁の中で、トリレンマ関係の中で、実際の考えとしては円の対外関係を守ることに一番の重点を置いて考えた、こういうふうなお答えがあったわけですが、私は、そのことは大臣がこれは一種の調整インフレ政策というふうなことを、そういう円の国際均衡を守るという立場からとったということを実は告白をされた、こういうことじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私、申しましたのは、そういう意味ではございませんで、調整インフレということばがあの当時使われておりましたけれども、そういう考え方ではございませんで、むしろ私の言うのは円の国際的な実勢価値になだらかにフロート制を採用することによって調整ができた、そしてこれはいわゆるトリレンマ解消の一つの大きな突破口ができた、私はむしろこういう点を率直に振り返って申し上げているわけでございまして、それも諸般のいろいろの状況等が幸いしてということも申したわけでございます。率直に事態の推移を申し上げ、私がさように認識しているということを申し上げたわけであります。したがって、スミソニアン以前から見れば約三〇%も実勢が、円の価値がレバリューされたそのことは、国内的にも物価問題等の処理に本来よき素地ができたはずでありますが、たまたまそういうふうにはうまく必ずしもいかなかったのは国際的なインフレ的傾向というようなものがあらわれてきた。たとえば輸入は非常に増大をして、ある面では非常にけっこうなことでありますが、価格的に見ればその半分あるいはそれ以上が相殺されたというようなことになりつつありますのが今日の一つ日本物価問題の越えなければならない問題を提起している、こういうことを申したつもりでございまして、あの当時意識的にあるいは内心調整インフレを展開しよう、こういうことを言ったわけではございません。
  25. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は日本経済現状がインフレである、こういう立場に立って、今年度の予算の前提になりました経済見通し、あるいは経済運営の基本的態度、このことについて次にお尋ねをしたいと思います。  経済見通しは、本年度は経済成長率が実質では一〇・七%、名目で一六・四%、こういうふうな見通しになっておりますが、これは私はとても一六・四%という成長率でおさまる現状ではない、これは過去のいろいろな実績や経験から見てもことしの成長率はどう見ても二〇%はこえる、こういうふうに見なければならぬのじゃないか。物価のほうはいま大臣も言われましたように、経済見通しでは前年度に対して卸売り物価は二・〇程度におさまるだろう、それから消費者物価は諸般の物価対策効果を奏して前年度に対して五・五%、これでおさまるだろう、こういうふうな見通しになっておりますが、これも全く状況はそれをこえておるわけです。非常に大きくこえております。  それから、経済運営の態度としてはこういうことばを使っておられる。「わが国経済を息の長い安定した成長路線に定着させる」、こういうふうなことばが使われておりますが、これはもう現状は安定した成長路線ではなくて、ものすごいかけ足成長路線になっておるということも否定できない。それから「経済成長の成果を活用しつつ、長期的視点から国民福祉の充実を図ることが当面の重要な国民的課題となっている。」この国民福祉というところに非常に大きな力点を置かれて、いわゆる福祉元年というふうなことばも使われたわけですが、このものすごい物価の上昇によって、まさに福祉元年のことしは国民の福祉が一番危機に瀕しておる、こういうふうに言わなければいけないと思います。  そうすると、ことしの予算編成の前提になった経済見通しなりあるいは経済運営の基本的態度、これはもはやすべてがくずれてきておる、こういうことになると思いますが、現状が見通しあるいは運営の基本的態度で設定された原則と完全に狂っておるということは、大臣、認められますか。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 見通し等につきましては、いろいろの指標において相当の変化があるということは御指摘のとおりであると思います。しかし同時に、いまも御指摘がございましたが、息の長い安定的な成長を旨としたいというこの考え方にはいささかも相違はございませんで、生きた経済でございますから数字の上のいろいろな相違もありましょうけれども、しかし底を貫いて、経済政策運営の路線として、あるいは中心の考え方として息の長い安定成長をするべきものである、それから福祉国家建設への道を築いていこう、こういう態度、考え方を基本的には私自身としてはいささかも変えておらないわけでございます。いろいろ具体的な政策を次々と実行いたしておりますのもそういう路線を守りたいためでありまして、先ほども御議論いただきましたけれども、インフレ的にものごとをやって投げやりにやっていくというようなことでは全然ございませんことを御了承いただきたいと思います。  それから経済見通しの問題については、これは御承知のように企画庁の担当でございますから、必要に応じましてはまず企画庁のほうから御説明をお聞き取りいただきたいと思います。
  27. 高沢寅男

    ○高沢委員 いまの点はまた後ほど大臣にお尋ねしますが、その前に、いま大臣もそう言われておりますから、企画庁青木調整局長に、ことしの一六・四%の成長見込みが、まだ年度の途中ではありますけれども一つの見込みを立てて実績はこういうふうに変わってきたというふうな過去の毎年の例がございますから、そういうふうな点と対比してみてことしは一体どのくらいの成長率まで予測すべきであるか、その辺の考えをひとつお聞きしたいと思います。
  28. 青木慎三

    ○青木政府委員 過去の数字をいま全部手元に持っているわけではございませんが、たとえて申しますならば、昨年度の数字で申しますと、名目の成長率が見通しでは一五・七%であったわけでございますが、それが実績では一七・四%になっております。それから実質で申しますと、見通しでは一〇・三%の成長率が一一・五%という実績になっております。これは昨年度の後半におきまして非常に高い成長率を示しましたために見通しに比べて非常に高い数字が出たわけでございます。  本年度について申し上げますと、実績としましては、いままだ速報でも第一・四半期の数字が出ておりませんので即断することは困難でございますけれども、いろいろの指標を総合してみますと、名目の一六・四%という数字は、いまの時点で判断しますとこれを上回る数字になるというふうに見ざるを得ないと思います。実質の一〇・七%につきましては、今後の推移いかんでございますけれども、ほぼこの数字に近い数字に落ちつくのではないかというふうに現在のところ見ております。
  29. 高沢寅男

    ○高沢委員 一六・四%は相当上回るだろうということは言われたわけですが、私は決してあとでその実績がどうなったからその責任がどうだということを言う考えはありません。したがって、あなた方がいままで毎年そういう日本経済を見てこられた経験というふうなものからいって、一六・四がどのくらいのところまでいきそうだと思いますか。それはある程度の想定でけっこうですが、大体どのくらいのパーセントを予測されるか、お聞きしたいと思います。
  30. 青木慎三

    ○青木政府委員 責任のある数字を申し上げるのは差し控えたいと思いますけれども、現在の卸売り物価の趨勢いかんでこの数字は相当変わるというふうに考えます。いまの景気鎮静策が成功いたしまして、あるいは秋以降卸売り物価相当下がるというようなことになりますればこれに近い数字になりますし、それにいたしましても一六・四という数字でおさまるという見通しは若干困難であろうと思います。率直に申し上げまして、公式に申し上げるわけではございませんが、私どもの私的な感じから申しますと、この数字は二〇に近いところにいくのではないかと現在では考えざるを得ないというふうに考えております。
  31. 高沢寅男

    ○高沢委員 いま企画庁の青木局長から、名目の成長率はかなり見通しをこえるだろう、ただし実質の成長率はこの辺におさまるのじゃないかというふうなお答えがあったわけですが、名目は相当いくだろう、しかし実質はこの辺だろうということをもし前提に考えれば、これは実際上、物価の上昇が相当いくということを裏返しに表明されているというふうなことになろうかと思うわけです。それはともかくとして、名目の成長率が予測を相当こえるだろうということになってくれば、これは当然税収の見通しということに関連してまいります。  それは後ほどお聞きをしたいと思いますが、そういうふうな経企庁の見方を一応前提にして、大臣、この経済の見通しは少なくとも改定すべきじゃないですか、これをひとつお聞きしたいと思います。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現在経済見通しをどういうふううに見直しをするかどうかということについては、先ほど申しましたように、これは企画庁として担当しておられることでございますから、私として、いつどのように考えたらいいかということについては、責任を持ってお答えする立場にはございません。ただ、いまも御指摘がございましたように物価の面においては、先ほど来私が申しておりますように、見込みとは相当離れた現状であるということは、私もさように認識し認めていると申し上げているとおりでございます。
  33. 高沢寅男

    ○高沢委員 それでは、経済見通しの改定が企画庁の仕事であるということになれば、これはひとつ青木局長さんから長官にその旨をよく伝えておいていただきたいと思います。  そこで、先ほど大臣は、経済運営の基本的態度の中の安定成長路線あるいはまた福祉の充実、これはこういう経済の実態になってくればいよいよその必要を痛感しておる、こういうふうなことを言われたわけです。そうであれば当然それに対応した政策がなければいけない、こうなります。そこで、安定した成長路線というふうなことを実現する政策的なものとして、いまたとえば公共事業費の八%繰り延べであるとかというふうな政府の施策が出てきておりますが、私はこういうふうな経済状況になった一番端的な原因はことしの十四兆という非常な大型予算、これについては野党各党は一致して、これはたいへんなインフレ促進予算であるということを指摘したが、しかしそういう予算が成立していまのような状態になっておるということを考えれば、ただ繰り延べという問題ではなくて、これはむしろ減額補正というふうな思い切った対策をとるべきではないか、こう思いますがいかがでしょうか。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は基本的に、従来から申し上げておる考え方を繰り返すことになりますが、本年度の予算がインフレの原因になるような予算であるとは、私は今日においてもさようには考えておりません。インフレ予算と野党の方が言われているその中にいろいろのことがあると思いますけれども、たとえば公債の論議については当時も大いに論議がかわされたわけでございますけれども、やはりこういうふうな安定成長路線というようなことを考えます場合、そしてインフレを起こさせないようにするというような場合において、私はある程度の公債発行ということはむしろ是認さるべきものであって、そしてこれが財政法に基づくところのいわゆる建設公債であり、そして赤字公債でない、こういうものがたとえば市場の繁閑等に応じまして金融政策の上にも活用されるあるいは過剰流動性対策の一翼をになう、そして、吸収された金が国民の生活環境の改善あるいは社会資本の充実というような面に使われる。こういうことはこういう際には特に必要なことである。公債を出せばインフレ予算であるというふうに考えられるのはむしろ旧来的な考え方ではないか、私はこういうふうに考えております。  それから、それならば公共事業等繰り延べということをやるならこれは減額してしまうべきであるあるいは公債を出すことをやめてしまうべきであるという御議論かと思いますけれども、まず公共事業等の問題についてはやはり国民的に非常に要望されているものが多い。したがってこれは繰り延べでございまして、景気の状況や現在の民間の設備投資等の過熱ぎみが鎮静するのとあわせましてこれはむしろ留保しているのであって、これはできれば年度内に解除して予定どおり年度内には施行をいたしたい、これを現在の考え方として持っているわけでございます。  また、公債等につきましても、現在たとえば日本銀行券の発行状況というものは依然として相当多いわけでございますが、それの吸収等に役立つ方法があるならばさらに公債政策の活用というようなこともむしろ積極的に考えてもいいのではないか、さようにすら考えておるような状況でございますから、現在のところそういう意味におけるところの予算の補正というようなことは、私は考えておりません。
  35. 高沢寅男

    ○高沢委員 公債に関する一つの大臣の見解の表明があったわけですが、これは私はむしろ話は逆で、いま日銀券の増発の問題も言われましたが、結局公債は回り回って日銀へ行ってまた日銀券の増発を促すというふうなことで、公債の発行がインフレをおさめる効果を持つというふうなことは、それは公債発行で吸い上げた金がどこかの金庫へ凍結されるならば別ですけれども、そうでない限りは公債の発行はそれは通貨の増発なりインフレを促進する効果を持つ。こういうふうなこれは一つの古典的な原理じゃないでしょうか。  そのことはそういうこととして一応申し上げておいて、そこでその予算に対する手直しの問題になりますが、私は決して一律の削減を言っているわけじゃありません。  たとえば同じ公共事業というふうな関係の中でも、福祉に関するいろいろな福祉施設の建設、こういうふうな面であれば、これはもうことしはたいへん建設の資材も上がっている。あるいはものによっては資材がそもそもないというような状況で、せっかく予算に組んだけれども施設はつくれないというふうな状況が非常に多くなっていますし、その面でまた逆に、そういう施設を受けた地方自治体は非常な超過負担の問題が出るとか、こういうふうなことを考えれば、そちらは大いに予算単価をこの際高めて、むしろそういう増額補正をやるべきである、こう考えます。  それから福祉という関係でいえば、これは与党の中でもすでにそういう意見が出ていますが、生活保護基準、こういう物価の上昇で一番端的に被害を受けるそういうところに対して、むしろ生活保護の基準を年度内であっても引き上げて、そのための予算措置を講ずる。私はこういう増額措置も当然なければいかぬと思います。それをやりながら、同時にまた、いわゆるわれわれの言う産業基盤の整備に直接つながるそういう面の道路なり港湾なりというふうな関係の公共事業、これは私は減額していい。  こういうことで、ある面では増額もある、ある面では減額もある。しかし全体として予算の財政需要の面から、いまの経済情勢の中では需要を締めていく、こういうふうな対策をとるべきだ、こういう内容を含めて申し上げておるわけですが、大臣、端的に生活保護基準、それからあるいは社会福祉施設、そういうものの建設の単価の引き上げ、こういうふうなことをおやりになる考えがあるか。それから一方道路なり港湾なりそういう関係の公共事業費、これは減額する。こういう相互関連について、ひとつ見解をお尋ねしたいと思います。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お話ごもっともの点も多々あると思います。たとえば直接に御指摘をカバーすることにならないかと思いますが、繰り延べをいたします場合も、ことしの上半期から下半期に繰り延べをいたしました場合に、生活関連と申しますか、そういう面についてはむしろ予定どおり実行する。そして単価の点につきましては状況をよく見まして、できるだけ事業量に影響が及ばないように十分配慮を加えて措置をしてまいっております。  それから、公共事業費関係においては、あくまでやはり福祉につながるもの、それから文教関係というようなもの、あるいはたとえて言えば沖繩関係であるとかあるいは中小零細企業につながるもの、こういうものはあくまで、そのワクの中ではございますけれどもこれをできるだけ大切に扱って、むしろ延ばすべきものは他の一般の公共事業というものを繰り延べの焦点にやってまいっておるわけでございます。  ですから、高沢委員お話のお気持ちは、幅においては御議論のあるところと思いますけれども、そのお気持ちにおいては私も十分同じような気持ちを持ってやってまいっておるつもりでございます。  それから、端的に言って生活保護費の問題等についてどう考えるか、こういうお話でございますが、これは先ほど高沢さんのおっしゃるような意味での補正ということは考えておりませんと端的に申し上げましたけれども、たとえば給与費のベースアップの問題、これなどについては当面財源的に心配がございませんけれども、いずれこれは補正において、予備費等でまかない切れないところは年度内には補正をする必要があろうかと思いますが、そういうときに米価の問題等とあわせてどういうふうに検討すべきであるかということは、私も頭の中にはございます。これは財政全体の歳入歳出等のバランスなども考えなければなりませんけれども、いま率直に言いまして私の頭の中にございますということを申し上げておくことにさせていただきます。
  37. 高沢寅男

    ○高沢委員 まあ大臣頭の中にあるということですから、ひとつぜひそれが具体的な形にあらわれるように、ひとつ期待をしたいと思います。  それで、大臣は正午に退席をされるというふうなことでありますから、大臣のおられる間にお尋ねしたい。あと二つあります。  一つは、租税の自然増収の見込み等は主税局長いらっしゃるからまたあとでお尋ねしますが、そのことを一応前提としながら、私は非常に大きな自然増収があるということを一応前提に踏まえて、さらには四十七年度の税収も補正後予算に対して六千四百億もの非常に大きな増収が出ている、そしてことしの増収はおそらく一兆何千億という大きな増収になる、こういうふうな見込みを前提にしながら、大臣に私は年度内の減税、これをひとつお尋ねしたいと思います。  今年度の予算の審議の中で、ことしの物価の上昇が五・五%というこの見込みをこえるようなら年度内の減税もやらなければならぬということは大臣も認めておられるわけですが、もう情勢は明らかにそういう情勢になっている。とすれば、そうしてまた非常に大きな自然増収があって、さっき言われた公務員なりあるいは米価なり等々の補正予算があるにしても、そのほかにまだ大きな財源が残る、こういうふうに見れば、それは当然国民へ払い戻しをする、年度内の減税としてこれをやられるべきだ、こう考えます。  そこで第一に、所得税中心の年度内減税はぜひやるべきである、こういう立場から、大臣のやるというお答えをひとつ期待したいと思います。  それからその際、先ほど越智委員も言いましたが、ことしの非常な課題になっておる固定資産税、これは一般の勤労者で非常に大きな問題になっておりますので、この点についても、ぜひこの税制改正の中で、私はかりに来年の税制改正になるにしても、ことしのこの取り過ぎの固定資産税分については、たとえば払い戻しの措置をとるとか、その場合に住宅用の土地については百坪がいいのか五十坪がいいのか、とにかくそういう今日の社会的な常識から妥当な線をはっきりときめて、それ以下の住宅、それ以下の土地には課税しない、こういうふうな思い切った固定資産税の減税もぜひあわせて打ち出していただきたい、こういうふうに考えますが、この点ひとつ大臣のお答えをお願いしたいと思います。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず自然増収でございますが、これは主税局長からお答えしたほうが適当かと思いますが、実は私の手元で現在、六月末の税収の進捗状況、これが一番最近なんでございますが、全国的に集めてみますと、昨年の同月から三・二ポイント上がっております。ですから、きわめて順調と申しましょうか、そういう状況でございますけれども、何ぶんにも六月の時点しかまだ正確でございませんものですから、本年度当初予算額に対して相当額の増収はあるとは感覚的に思いますけれども、年度全体についてどのくらいになるかということは、まだ申し上げる段階ではない。  そこで本論ですが、年度内の所得税の減税の問題でございますが、これはやはり、お気持ちはよくわかりますが、私にも率直に言わしていただきたいのでございますが、理論的に申しますと、こういう際は、諸外国の例などを見ても、むしろ増税すべきではないかということのほうがどうも理論的には分がありそうに私は思われるわけでございます。  同時に一やはり税の問題は年度を通じましての財政全体の計画として慎重にやるべきものでございますから現に税制調査会にもおはかりをして、そして前にも当委員会でも申し上げたと思いますけれども、来年度はそのかわり政府としてはもう思い切った所得税減税をやる、これは申し上げましたことを本日ただいまも再確認申し上げたいと思いますけれども、標準家庭において最低課税限度百五十万円、これは私としても、ぜひそれは最低限のところとしてやっていただきたいということを税制調査会の本年度の最初の会合の冒頭に私も率直にお願いをしたようなことでございますので、来年四月以降におきましてはこの考え方をぜひ実現をいたしたい。年度内の減税ということは考えておりません。というのは、むしろ当面のあるいは物価対策をも含めて経済の安定というようなことからいえば、むしろ理論的には増税ということすらも分があるほどに考えられるというふうなことも考えあわせまして、私は四月からそのかわり相当大幅なものを実現いたしたい、かように考えております。  それから、固定資産税につきましては、先ほど越智委員に率直にお答え申し上げましたとおりでございまして、私も十分考えさせていただきたいと思って、これまた税制調査会等につきましても、いまのこの固定資産税に非常な重圧を感しておられる地域の方々の御不満といいますか、御希望といいますか、これははだに触れて私も感じておりますから、ぜひ来年度の固定資産税の改正につきましてはできるだけの処置を講じたい、こういう考えでおる次第でございます。
  39. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣はインフレ問題の論議のときはばかに非理論的で、ここへ来るとばかに理論を出されるのですが、インフレだからむしろ増税すべきである、こう言われたわけですが、税収全体の問題としてはそういうことがあると思います。しかし、その税の中身として、インフレの被害者である勤労者に対する所得税の問題と、それからインフレの中で異常利益を得ている企業に対する法人税の問題これは同じインフレ対策でも全然違うのです。ですから、法人関係は、むしろ私は年度内に税率を上げて付加税をかけてどんどん取るべきだと思います。いまの総需要を調節するという議論の中で、財政のほうでは公共事業の繰り延べ等々が出てくる。しかし一方民間の設備投資、この面では大企業がインフレ経済の中で異常利益を手元に十分持って、これでどんどん民間設備投資を進めておるということになれば、幾ら政府財政面でやっても、そっちの面でどんどんインフレは進む、こうなるわけですから、むしろそこへもう一つメスを入れるということがいわゆる過剰流動性を退治するには法人税の引き上げが一番端的な対策であるということになるわけですから、この面ではむしろ大いに税を取って、それでいまのインフレをおさめるという大臣の理論を発揮してもらって、勤労者の生活、所得の面においては、これはインフレの直接の被害者としてその救済としてどうしてもやはり減税がなければいかぬ。  こうなりますと、来年度からやると言われた標準世帯百五十万円、この所得税の減税と、それから法人税は四〇%やります、こう言われた。これは時間的にこの年度内に繰り上げてぜひやるべきではないか。そうして来年度の税制改正の問題では、もうインフレによって百五十万というものの値打ちが変わってきておる。そうなれば、来年度四十九年度の税制改正では、これは百五十万円でなくて百七十万くらいまで課税最低限を上げていく、こういうふうなやり方が必要になるのではないか。  ですから、この年度内の減税と来年度の減税というものを一体のものにとらえて、そうして大臣も五・五%の物価の見通しを上回れば年度内やります、こう言っているのですから、私は、ここでやりますという答えをぜひもらいたいと思います。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはまことに遺憾ながらと申しましょうか、年度内の増減税というものは考えておりませんで、そのかわり来年度においてひとつりっぱなものをつくって御審議をいただきたい、かように考えております。
  41. 高沢寅男

    ○高沢委員 それじゃ大臣が退席される前にもう一つだけ、ちょっと性格が変わりますが、お尋ねしたい。  これは例の韓国の金大中氏の問題でありますが、韓国に対してわが国からいろいろな形で援助が行なわれておる。その援助は当然財政当局の関係になるということで、国務大臣としての愛知さんにお尋ねをしたいと思うわけです。  現在の韓国の朴政権というものの成り立ちがこれが軍事クーデターである、それによって成り立った政府であるということは御承知のとおり。その後民政移管とかあるいは大統領選挙とかそういう形は確かにとってきておるけれども、その形の中であの韓国でどういう秘密警察による恐怖政治が行なわれているかということもまさか大臣は知らないということはないと思うのです。そうすると、その韓国の朴政権に日本の国民の税金によって与えている援助というものがはたして韓国の民衆のしあわせになっているかというと、私はなっていない、むしろ逆に反動的な独裁政権を強めて民衆の不幸を招いている、こういうふうな結果になっているんじゃないかと思います。ですから、本来こういう援助はやめるべきである、朝鮮の南北分断を固定化するような援助はやめるべきであるというのがわれわれの立場でありますが、この際、金大中氏の事件に関連して、彼とそれからさらには梁一東あるいは金敬仁というふうな参考人も含めて日本へ来ることを実現をしてあの事件の起きる前の状態に戻す。これは政府も韓国に対して要求されているところですが、これを私はぜひ強く主張をして実現をしてもらいたい。  ただしこれは、要求はする、向こうは向こうでもって立場があるということではいつまでも切りがありません。したがって、むしろこの際、たとえば九月十日なら十日あるいは十五日とか一定の日にちを切ってそれまでにあの事件の起きる前の状態に戻す。そのためにはあの三氏の来日を実現させる、こういうことを韓国の政府に要求して、それをもし向こうのほうで聞かないならば援助の打ち切りをやる、これも含めて日本政府として強力な対策をとる、こういうふうなことがいまどうしても必要じゃないかと私は思います。で、後宮大使も会見をしたということもあり、事態は動き始めているような感じはしますが、この際そういうふうな日にちを切って、そしてこの援助という問題をからめながら強力な要求をするということをぜひ私はすべきだと思いますが、国務大臣としてひとつ愛知さんの御見解をお尋ねしたいと思います。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 本来対外的な経済援助にとどまらず援助関係というものはその国とわが国との親善友好関係ということが基礎で行なわるべきものでございますから、私はまあしいて言えば問題を二つに分けまして、いまお話がありました朴政権の云々ということとは別に、私は、この金大中事件という不幸な事件が最近起こりましたが、これが解決されて、両国の国民が納得のいくような解決策が行なわれて両国の親善友好関係というものが旧来のような形になることが一番強く望まれることではないか、そしてその基礎の上に経済協力関係というものが処理されるべきものである、こういうふうに考えております。  内閣一体の原則ということは申すまでもございませんけれども、いずれ内閣の責任において日韓両国の関係が一日もすみやかにこの事件の起こった前の信頼友好関係が回復され、そしてそこであらためて日韓閣僚会議なりあるいはその他の方法によってこの経済協力の問題が一日もすみやかに処理されるような事態がっくり上げられることを私はひたすらに望んでまいりたいと思います。
  43. 鴨田宗一

    鴨田委員長 大臣、じゃどうぞ御退席を。御苦労さんでした。     〔委員長退席、木村一武千代一委員長代理着席〕
  44. 高沢寅男

    ○高沢委員 それでは主税局長先ほどちょっと大臣にお尋ねしたわけですが、本年度の租税の自然増収の見通しでございます。私はもうどう見てもこれは常識的に一兆円をこす、そういうふうな自然増収が出る、こう見て間違いないと思います。昨年度の税収があれだけ大型補正を組んだその補正後の予算に対して六千四百億もまた増収が出ておる。こういうふうな昨年度の増収になっているから、それがその後一そう経済成長という状況で見れば、もっと過熱された状態でことしへ引き継いできておるというふうに見れば、ことしの租税の自然増収はどう見ても一兆円をこえる、こういうふうに見るべきじゃないかと思いますが、局長の見通しはいかがでしょう。
  45. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 大臣もお答え申し上げましたように、現段階で本年度の見通しを立てることは非常にむずかしいわけでございます。私どももいま率直に申しましてまだ来年度ないし本年度の見通し作業をやっておりません。ただ、おっしゃいますように、いろいろの状況から見ますと、ただいま御指摘がありましたようなかなり大きな金額の自然増収が出るであろうということは予測されるところでございます。昨年度の六月末の決算に対しますところの進捗割合は、六月末では二一・三%でございました。本年度の予算に対する進捗率は二四・五%でございます。したがって、もしこの進捗割合、昨年度とことしとの進捗割合の差がそのままの状態で推移いたしますならば、ただいま高沢委員御指摘のような一兆をこえるというようなことになろうかと思います。  ただ問題はいろいろこまかい点がありまして、責任をもって見通し数字を立てますには、いま進捗割合だけでの割り戻しということではぐあいが悪いわけでございます。それにはまだ実はいろいろの要素が動いておりますし、私ども自身率直に申しましていま現在正確な見通しを立てるのにはもう少し時期をかしていただきたいということであるわけでございます。
  46. 高沢寅男

    ○高沢委員 その来年度の減税なりあるいは年度内の減税の問題でもお聞きしたいのですが、大臣がやると言わなかったことを局長さんにやると言えと言ってもこれは無理だと思いますので、それは一応保留しまして、ただものの考え方として、私はさっき百五十万円という線のことをちょっと問題にしたのですが、ことしの四月に東京都が去年の七月から九月の東京都の家計費の調査をしたその結果をデータとして発表したものがあるわけです。それによって見ると、所得の階層別で見て月収十万円から十四万円の層がどうやら生計費の収支が均衡しておる、その下の層はもちろん家計が赤字になっておる、こういうふうなデータを東京都で発表しております。そうすると、常識的に見て大体月収十万円、こういう線が生計費の収支、赤字を償うところにいく一つの限界線じゃないか。そうすると月収十万円といえばボーナスやその他のものを加算すれば年収が百五十万円ではとても足りない、こういうふうに当然出てくると思うのです。  来年度標準世帯で百五十万円を所得税の課税最低限にする、こういう線は出されておりますが、私は政治的判断は別として、そういうふうな国民の生活状態のあり方から見てこれこそ理論的に主税局長の考えをお尋ねしたいわけですが、もう百五十万で十分だということはとてもいえない、それよりもっと上の線で所得税の課税最低限という一つの線を求めなければならぬじゃないか、こういうふうに考えますが、局長いかがでしょうか。
  47. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 この春の国会で所得税のあり方に関連してお尋ねがありました際にもお答え申し上げましたが、生計費と課税最低限との間において何らかの関係があるべきである、つまり課税最低限をきめる場合には生計費を基準とすべきであるという御意見がございましたが、私どもといたしましては生計費が課税最低限決定の絶対的基準であるとは考えていないわけでございます。ただ、課税最低限をきめます際に、生計費の状態がどうあるかということはきわめて重要な要素であるとは思いますけれども、よくいわれます標準生計費が直接課税最低限のあり方と関連する問題とは考えていないわけでございます。この問題につきましては、学者その他の間でもいろいろ議論があるところでございますし、諸外国においてもいろいろ議論があるところでございますが、生計費と課税最低限のあり方とは直接結びつけなければならぬという考え方は一般的には必ずしも認められていないというふうに私どもは考えております。  ただ、ある水準で課税最低限をきめられましたならば、その課税最低限とその時点における生計費とがどういう関係にあるかということは結果として出てくるわけでありますし、その後税制を改正していく場合の一つの目安として、生計費が上がったならば課税最低限もそれとのある種の関連において上がっていいではないかという議論はあり得るわけでございます。従来ここ数年間、と申しますよりはもう十年近く、課税最低限の引き上げ幅は大体五%から一〇%の間でございましたし、それからそれによって改善されました程度は、物価の上昇率よりは課税最低限の上昇率が改善されてきているという結果になっております。  明年度におきまして大幅に所得税の減税が行なわれるべきであると言われておりますし、そしてその中身といたしまして課税最低限の改善も相当程度重点が置かれるべきであると言われておりますし、私どもも現在その方向で考えておりますが、現在の夫婦子二人百十五万という水準と、言われております百五十万の水準の間におきましては三割の開きがあるわけでございますので、最近におきまして物価が上がり、生計費が相当大幅に上がっているということがあるといたしましても、過去におきます所得税の減税の進捗割合と申しますか改善割合と申しますか、その実績値から申しますならば、百五十万という水準は、現行百十五万という水準と比べますならば、やはり相当思い切った大幅な改善といえるのではないかと考えるわけでございまして、生計費が確かに最近急激に上がっておりますが、百五十万という水準はかなり多くの方に御満足願える数字ではないかというふうに考えております。
  48. 高沢寅男

    ○高沢委員 そういう来年度の税制改正が行なわれる場合、出てくる問題点は、一方では法人から取る、そして他方所得税のほうは大いに減税する、これが大まかにことしの予算審議の過程で総理大臣あるいは大蔵大臣から示された見解であるわけですが、そこにもう一つの要素としてくっついているのは、この減税の際に法人税以外の別の間接税、こちらのほうも今度は大いに取るんだ、こういうふうな考え方が田中総理にもある、財政当局にもあるというふうに伝えられておるわけですが、この点はどういうふうな税目で間接税を増徴するかというふうなことによって、またすぐ物価問題へ、また国民の生活の問題に響いてくるわけです。  所得税でまけてもらって間接税でまたがっぽり取られるというのでは、国民の生活のほうではこれは一種のペテンにかけられたということになるわけですから、したがって来年度税制改正では、所得税の大きな減税というものは法人から取る税源というものを基本にして考えるべきであって、そのほかに国民の生活に響く間接税の増徴というこの面はむしろ考えるべきではない、私はこういうふうに考えるわけですが、この際たとえば新しいもので付加価値税という話があったり、あるいはギャンブル税や広告税という話があったり、あるいはその他これは地方税の関係になるかと思いますが、事業所事務所税という話があったり、これらはいずれも税制調査会でこれから検討される課題とは思いますが、主税局長としてはその辺をどういうふうにお考えになっておるか、ひとつお伺いしたいと思います。
  49. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 長期的な問題といたしましては、四十六年の八月の税制調査会の答申に書かれておりますように、やはり直接税だけではぐあいが悪いので、直接税と間接税の適度な組み合わせによって租税構造を考えていくことが望ましいというふうに私ども事務方といたしましても考えております。そして間接税が短期間に非常にウエートが下っております現状からいたしまして、現在の租税構造には問題があるというふうには考えております。その場合の一つとして付加価値税という問題が日程にのぼっておることも事実でございます。  ただ、付加価値税の最大の問題は、やはりその創設の時点において物価影響するところが非常に大きいということでございますから、現在のような異常なこういう情勢のときには、付加価値税の創設という問題は少なくとも時期として適当でないというふうに考えております。  明年度の四十九年度の税制改正の問題にしぼって考えますと、先ほど御指摘のありました所得税と法人税の問題が金額的にも最も大きな問題でございますが、これにつきましては自動車関係諸税の間接税の問題があるわけでございます。これは道路計画との関連がございまして、道路計画についてどう評価するかという問題がございますが、第七次道路計画をかなり規模の大きいものとして政府としては出すことにきめております関係上、その特定財源ということで自動車関係諸税を相当充足する必要があるというふうに考えております。  それ以外の間接税につきましては基本的にいま申しましたようなことがございますので、何かいい方法はないかということは絶えず研究を続けておりますし、場合によりますと、あるいは一部四十九年度の問題としても考えなければならないかもしれないというふうにいまあちこち研究をいたしておるところでございますが、少なくともその規模の非常に大きなものというふうに考えておらないわけでございまして、先ほど御指摘のありましたような広告税やギャンブル税の問題等、あるいは印紙税の問題等を含めまして検討はいたしておりますが、所得税の減税や法人税の増税のような大きな規模でのことにはなることはないというふうに考えております。
  50. 高沢寅男

    ○高沢委員 もう一つだけお尋ねしたいと思います。  先ほど大臣から公債の問題で、こういうふうなインフレのときにはむしろ吸い上げる効果という点で公債を積極的に考えるべきだ、こういうふうなお考えがありましたが、吸い上げてそれをどこかで凍結しておけば、確かにそのよしあしは別としてそういう効果を持つことになるかと思いますが、これも伝えられる非常な租税の増収が出た場合に、その中の一部を、剰余金を凍結する、あるいはまた経済安定資金のようなものを設けるというふうなことも検討されているということでありますが、この辺について大蔵当局が現在どういうふうにお考えか、ひとつお尋ねしたいと思います。
  51. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 必ずしも私どもの担当でもございませんが、自然増収がもし出た場合、それをどう処理するかということの関連がございますので、私の承知しておるところで申し上げますと、従来の考え方から申しますならば、公債は当年度の歳出をまかなうために必要な限度において発行するというたてまえ、これが財政法のたてまえでございますから、自然増収がございますならば、当然国債はそれに応じて歳出をまかなうに必要がないという金額に関する限りは減額をするというのが従来の伝統的な考え方でございます。  ただ、国債を発行する場合に、これは非常に論議があるところでございます。国債の発行のしかた、引き受けのしかた、消化のあり方ということによって、これがインフレ抑制効果があるかどうかということについてはいろいろな評価が行なわれることになろうと思いますが、しかしそれをうまくやりますならば、一面において資金吸収効果があるという面も否定できないわけでございます。  そこで、そういう従来の伝統的な考え方とやや趣を異にいたしまして、当年の歳出のための財源調達のワクを踏み越えて若干の公債を発行して、そしてそれを一種の凍結をしたらどうかという考え方は、たとえば先般来ドイツ等において行なわれております方式等も一つの参考として研究に値するものであるということで、私どもの役所の中におきましては相当真剣に研究いたしておるところでございます。  ただ、これはその法律的なあり方につきまして、現行法のもとにおいてそういうことがなかなか簡単にはできにくい点もございますし、それから反面その経済効果という面におきましては、なお国債の消化のあり方等と関連して考えませんと、予期したほどの物価安定効果として動いてこないという面もございますので、長年やってこなかったことをやってみるかどうかという検討でございますだけに、非常に検討すべき事項が多々あるわけでございます。現在でもいろいろ検討いたしておりますが、方向といたしましてそういうことをやろうということを前提に検討しているというよりは、まだもう少し白紙の状態で検討中であるという状況でございます。
  52. 高沢寅男

    ○高沢委員 以上で質問を終わります。
  53. 木村武千代

    ○木村(武千代)委員長代理 午後一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後一時三十九分開議
  54. 木村武千代

    ○木村(武千代)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  本日午後の議事には、参考人として日本銀行総裁佐々木直君が出席しております。  質疑を続行いたします。武藤山治君。
  55. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 けさの各新聞は、昨日発表したばかりの公定歩合引き上げをめぐって、景気の過熱を抑制することや、物価上昇を鎮静するためのねらいで行なわれた今次の公定歩合引き上げをめぐって、一斉にこの問題を取り上げ、論評を加え、あるいは日銀総裁や大蔵大臣との対談なども交えた記事が掲載をされております。国民は物価の問題については、政府が近い将来必ず国民の期待するような結果をもたらすに違いないだろうという期待を実はいたしていたところ、三たびにわたる公定歩合引き上げ預金準備率引き上げ、窓口規制等々行なっても、今回またまた一%の公定歩合引き上げをせざるを得ない。この様子を見て、国民はかなりショックを受けがっかりしている。一体政府、大蔵省、日銀当局は何を考え何をしているんだろうか、こういう偽らざる率直な批判があると私は思うのであります。  そこで、日銀総裁として、公定歩合を一%今回引き上げざるを得なかった積極的な理由、根拠、そういうものをわかりやすくひとつ御発表願いたいと思います。
  56. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいま御指摘がございましたように、四回にわたって公定歩合引き上げを実行いたしました。その引き上げ幅も二・七五%、戦後における金融引き締めにあたって、これほど大幅な公定歩合引き上げを実行いたしたことはございません。  こういうような激しい金融引き締めを必要とした環境、その点につきましては、世界経済の中で日本経済というものが非常に強い上昇傾向を続けてまいり、その中で物価の上昇が非常に大きく目立ったということが、何と申しましても、この引き締めを必要とした最大の原因でございます。  いまさら申し上げるまでもなく、日本卸売り物価は、世界でも非常に安定した姿を示しておりました。それが昨年の夏以来急速に上昇してまいりました。この原因につきましては、国内の要因と海外の要因と両方ございます。  国内の要因は、しばらく停滞を続けておりました日本経済が上昇に転じてきたということで、いままで不活発であった総需要が増加してきたということがきっかけになっております。  たまたまそれと時期を同じゅうして、海外における物価の上昇が始まってきた。特に農産物を中心とした第一次産品の価格の上昇が目立っておるわけであります。日本のように原材料の大部分を海外に仰いでおります国柄といたしましては、こういう海外における原材料の価格の上昇は、国内物価に非常に強い影響を持つわけでございます。  こういう中で、ことしの一月から、預金準備率引き上げをはじめといたしまして、金融引き締めをやってまいりました。こういう金融引き締めを実行いたしました最初のところでは、実はまだ日本国際収支相当大幅な黒字を示しておりまして、円が再び高くなってくる状態から、国内における金融引き締めの程度をあまり強くできない感じがございました。それがまず最初に預金準備率からスタートしたわけでございまして、また今度は、流動性がわりあいに市中に高かったということから、量的な規制から始めるほうがいいという判断もあったわけでございます。  ところが、二月、三月にわたりました為替調整日本経済に及ぼします影響、私どもはもう少し抑制的な、鎮圧的な影響があるのではないかと思っておりましたけれども日本経済の上昇の力が非常に強くて、この為替変動というものをほとんど問題もせずに乗り切った関係もございました。したがって、その後において四月から公定歩合引き上げた、こういうことでございます。  そういうような環境の中での金融引き締めというものは、戦後の金融引き締めの歴史の中で環境としては初めてのことであったと思います。したがって、金融引き締めの及ぼします効果は必ずしもはっきり著しいものがございませんでした。戦後における日本経済は非常にオーバーローンの状況でございましたので、金融引き締め効果というものはわりあいに強く出ておったのでございますが、今度の非常に多量のドルの流入後における、また景気がよくなってまいりました後における企業の手元というものは非常に熱くなっておりまして、金融引き締め効果がなかなか出にくかった状況がございます。それに先ほど申しました国際的な関係がありまして、金融引き締め効果というものがなかなか出にくい状態で今日まできたのでございます。  しかしながら、すでに最初の準備率引き上げ以後日がたっておりますので、金融面では相当効果が出てきております。たとえば市中金融機関の貸し出しの増勢はだんだん低くなってきております。それから、何と申しましても企業の手元流動性も下がってきております。それからまたマネーサプライ、要するに資金の供給の数字もやはりやや鈍くなってきた。それからまた、ごく最近実施いたしました私どものほうの調査によりますと、企業も設備投資の予定を多少削っている感じが出てきておるのでございます。しかしながら、これが総体の経済の動き、特に企業の投資態度にはっきり影響が出たというふうには申すことはできない。総需要もまだ依然として強いということから、今度の第四回目の公定歩合引き上げということを実行したわけでございます。  私どもはもちろん、今後の推移いかんによりまして、金融政策というものは弾力的にやっていかなければならないとは思っておりますけれども、しかし今度の措置金融引き締め相当徹底し得る措置である、こういうふうに思っておりますので、その効果が近く出てくるのではないかということを強く期待し、それがまた日本物価上昇に対してもいい影響が出てくるだろうと考えておる次第でございます。
  57. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 今回の第四次の引き上げでいい効果が出てくるだろう、そういう期待をなされているようでありますが、総裁は新聞記者会見の中で、異常事態が続く場合には第五次公定歩合引き上げもやむを得ないと述べた。その異常事態ですね、日銀当局が認識をする異常事態とは一体どういうような場合をさすのか、あなたの頭の中で描いているこれは異常状態だぞというデーターは、どういうものを一応根拠に異常と判断されるのか、この辺をちょっとお聞かせ願いたいと思うのであります。
  58. 佐々木直

    佐々木参考人 私、昨日異常状態ということばを使ったかどうかちょっと記憶しておりませんが、ただ私の申しました趣旨は、こういう金融政策というようなものはもうこれで終わりだというようなことは、将来に対して申すことはできない性質のものである、今後の情勢いかんによってはまたさらに引き締めの追い打ちをかけるということも必要であるかもしれない、そういう意味での将来に対する可能性を申し上げたつもりでございます。いまここで特殊な事態を考えて、その事態になればこうだというふうに具体的に考えておる状態ではございません。
  59. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 まあ新聞の報道でありますから、あるいはあなたがおっしゃらなかったのかもしれませんが、これを見ると国民は、これはまた物価問題がおさまらぬともう一回第五次があり得るなという感じを抱きますね。したがって、これが最後で終わるような期待を実現させるためには、金融政策だけではなかなかそう効果があらわれない。総裁も、今月の中旬ごろですか、やはり新聞記者との会見の中で、政府が、財政当局がもっともっと財政の圧縮をしなければならないという意味のことも述べられているわけであります。今回愛知大蔵大臣の手元で、大体五千億か六千億程度、公共事業費の八%を明年度に繰り越そう、こういう措置をとられたようでありますが、日銀としては財政にくちばしをいれるのはどうかとあるいは遠慮されるかもわかりませんが、五千億程度の財政の繰り延べでやや満足でございますか。
  60. 佐々木直

    佐々木参考人 どうも私ども財政の当局でございませんので、金額は幾らがいいかということにつきましては私ども申す力もございませんが、ただ最近の公共事業費その他の支出の現状を見ますと、やはり相当抑制効果が現実に出ております。そういう点から考えまして、いま予定されておりますそういうような調整は今後において相当効果を発揮するものだ、こういうふうに期待いたしております。
  61. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵大臣、大体公共事業費八%とおきめになるようでありますが、本年のように地価が暴騰してなかなか公共事業の土地取得がむずかしい、資材が値上がりをしてなかなか事業がスムーズに進まない、いろんな問題がかかわり合っておって、自然に繰り越される公共事業費というものが五千億近く出るのじゃないですか。人為的に繰り越すのは五千億だ、こう言うけれども、これは自然的に繰り越されるのは三千億や三千五百億になるのじゃないでしょうか。ちなみに去年の公共事業費で翌年度へ事業を繰り延べていったものは幾らくらいになりますか。
  62. 長岡實

    ○長岡政府委員 公共事業の範囲のとり方でございますけれども、今回繰り延べ対象にしておりますような、たとえば財政投融資事業まで含めまして申し上げますと、四十七年度には年度末の支出残が五千五百億ございます。ただしこれはすべてが繰り越しではございませんで、若干の不用額も含まれておる数字でございます。
  63. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 年度末に五千五百億でしょう。大臣、いま主計局次長がお答えになりましたように、通常の年でも五千億ぐらいの繰り越しの金が不用額を入れて出てくる。したがって、いま大臣は日銀総裁からの注文で、金融手段ばっかりでとにかくこの難局を乗り切るのはむずかしい、財政当局も本腰を入れてくれと再三日銀総裁が御意見を発表されてきた。それにこたえる措置としては、五千億円の繰り延べという措置は、通常の繰り越しの額を計算してみると、何ら人為的な抑制措置をとっておらぬ結果になる。したがって、もっと思い切った財政面から物価鎮静あるいは景気過熱を押えるという措置をとるべきではなかったのか。まだおそくはありません。あすの物価対策閣僚協議会でまた物価対策の総ざらいをするのでありましょうから、ひとつこの辺はもう一回再検討してしかるべきじゃないかと思いますが、大臣の所見はいかがでございますか。
  64. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一に、今年度においてとった措置は御承知のとおりでありますけれども、大体大づかみのラウンドの数字で申しますと、六兆数千億の公共事業関係費については上半期から下半期に相当繰り延べを実行しているわけです。たとえば一般的な公共事業費で、そして公共事業費全体から言えば、これもラウンドで申しますと六分の五ぐらいになりますが、その面についてはもう五〇%を割るほどの繰り延べをやっております。それと生活関連あるいは災害対策等々といったものはなるべく手をつけないようにしておりますけれども、こうした二回にわたる上半期から下半期へのいわばズレというものは、昨年度に比べると、これは基準のとり方その他いろいろ勘定のしかたがありますが、常識的に言いますと、昨年の実額から比べると大体一兆一千億程度が上期から下期に繰り延べられた。そうして今回はさらにホールイヤー、全年度の繰り延べの比率を八%にしましたし、対象もこれまで上期から下期に繰り延べ対象よりはその対象も広くしているわけです。したがいまして、いま言われたのは、たとえば何もしないでいても通年、例年事実問題として相当繰り延べになっているのではないかという御指摘ですが、これと単純に比較することはできないわけであって、いわゆる今年度の繰り延べについての額というものがこれにプラスになるものである、こういうふうにお考えいただいて私はいいのではないかと思います。  同時に生活関連等につきましても八%というふうにはまいりませんが、四%まで切り込もうというわけでございますから、いずれ早ければ三十一日の閣議までにこれはいろいろ各省各庁とのいわば窓口折衝がございますから、いま徹夜で一生懸命やっておりますが、いずれ数日中にはきちんとした数字を固めまして御報告できる段階になると思いますが、これは相当繰り延べておる、例年の比ではないということを申し上げることができると思います。
  65. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いまの大蔵大臣の立論でいくと、物価問題は少なくとも年内あたりには片づくという前提なんですよ。したがって、いま上期に繰り延べておるものを一月、二月、三月にだだっと使っても、景気問題に影響がないという前提なんですよ。上期のものを下期に延ばしたのは政府努力で高く評価してくれということはいただけない議論です。私が言っているのは金融だけに多くの負担をかけて、物価問題、過熱状態を鎮静させるというやり方には無理があるのだ、限度があるのだ、したがって、財政当局がもっと思い切ったなるほどというような政策を断行する必要があるのだ。いみじくもきょうの朝日新聞の社説はこのことを喝破していますよ。「公共事業の繰り延べについて、政府の態度はいぜんとして優柔不断で、ある。」しかも「公共事業の八%を対象として執行を見合わせ、事実上、来年度に繰り越す含みを持たすのが大蔵省のハラといわれるが、建設資材の入手難、人手不足、地価の高騰ぶりからみて、八%程度なら、たとえ放置しておいても消化でき」ない額である。したがって、人為的な財政圧縮の努力というものは全く見られない、ということを朝日新聞の社説は論破していますよ。私はこれが当たっていると思うのです。  したがって、ほんとうに日銀と一体となって物価問題を片づけようという姿勢を見せるなら、私はもうちょっと思い切った政府としてここでとるべき措置をとらなければいかぬ。しかし、これは注文です、あなたとここで論争をしても言いわけを聞くだけでもありますから。いずれにしても、政府の姿勢はもう少し物価に対するきちっとした姿勢をとるべきではないかということを強く訴えておきたいのであります。  次に、総裁にお尋ねいたしますが、今回のこの措置によっていつごろから物価というものの上昇が頭打ちになるのだろうか。日銀統計月報によると、この一月からの卸売り物価の総平均のところをちょっと見てみますと、一月が前月比一・五、二月が一・六、三月が一・九、四月がやや落ちて〇・五、五月が〇・九、六月が一・三、七月が急遽二になった。このことでおそらく総裁はこれは危険信号だ、この辺で強力な手を打たなければということでおそらく今回の措置もおとりになったのだろうと思うのでありますが、この趨勢がいつごろ、マイナスにはならないにしても、プラス、マイナスちょうどくらいのところというのはいつごろを期待しておるわけでありますか。
  66. 佐々木直

    佐々木参考人 御質問の点は私どももぜひその見当をつけなければならないと考えておりますが、率直に申しまして、なかなかそれがいつ期待できるかということを自信を持って申し上げられません。  たとえば、ただいま御指摘がございましたような七月が二%の卸売り物価の上昇でございまして、これは非常に大きかったわけでございますが、その背後に、私のほうで調査しております輸出入物価を調べてみますと、七月には輸入物価が四%上がっておるわけでございます。この七月の輸入物価の水準は、昨年の七月に比べまして二四%上昇ということに相なっております。そういうような国際的な物価上昇というものを考えますときに、なかなか日本だけの物価の安定ということがむずかしいと考えます。  ただ、しかしながら、国内要因によります物価の上昇はぜひわれわれとしては努力して押えていかなければならぬ。その面につきましては実は八月に入ってやや落ちつきの感じが出てきてはおります。ただ一部の資材、特に鉄だけが、これは特殊な関係だと思いますけれども、上がっておる。これ以外のものにつきましては、一時に比べますとやや落ちつきの感じが出てきつつあると申すことができようかと思います。  ただ総体といたしまして安定いたします時期につきましてはまだここで申し上げるだけの自信を持っておりません。
  67. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総裁の新聞記者会見を読んでみてちょっとがっくりくるのは、やはりいまおっしゃった海外輸入物資が非常な高騰を続けておる。したがって、国内要因は取り除けるが、こういう国際インフレに対しては何とも総需要抑制なり日銀の政策手段ではどうにもならぬ。こういう意味に受け取られて、物価問題は慢性病だ、これは慢性の糖尿病で、入院患者は何とも手だてがない。自宅療養に持っていけるような処置もとれないという悲観論をあなたの記者会見を読んだ限りでは抱かざるを得ない。  一方大蔵大臣は、物価問題は年度内に頭打ちになる。この年度内というのは一体——また年度内といっても一ぱいあるのです。来年の三月まで年度内であるのであります。年度内には物価が頭打ちになっていく、これは卸売り物価のことを言っていると思うのですが、大蔵大臣、いつごろ物価は頭打ちになるのですか。年度内のいつごろですか。
  68. 愛知揆一

    愛知国務大臣 頭打ちになるということを申し上げるだけの勇気はないというのは、先ほど午前中にお答えをしたとおりで、頭打ちになることを期待して忍耐強く諸般の手を打っていく、こういう意味で申し上げたわけであります。
  69. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 どうも一国を預かる大蔵大臣としてはちょっとたよりない回答でありますが、やむを得ません。  企画庁のほうはいかがでございますか。これから二、三カ月間、この年内でいいでしょうな、十二月までの間に、これはとても押えられぬ、上がりそうだと思われる物資、商品はどんなものが大体いま予想されておりますか。
  70. 小島英敏

    ○小島政府委員 消費財関係と申しますか、CPI関係では、公共料金関係、ペンディングになっております電力、ガスとか国鉄運賃とかいうものがあるわけでございます。それ以外に上がる要因が考えられるものといたしましては、新聞などに出ておりますが、小麦など非常に国際価格が暴騰しておりますために、そういう面からは値上げの要因としてあるということでございまして、これはしかし政府としては現在全く白紙でございますので、コスト的には上がる要因があると思います。  それからこれも新聞に出ておりますけれども、やはり飼料の関係がかなり値上がり要因になりまして、これは現在担当省の間で極力値上げを抑制するべく検討が進められておりますけれども、その辺が値上がりいたしますと、やはりこれに関連した畜産関係のものの値上げの問題が出てくるということでございます。  卸売り物価につきましては、ことしになりましてからもかなり上昇の内容が変わっておりまして、年初から三月ぐらいまでは食料品の関係とか繊維原料とかという比較的消費財原料的なものの値上がりが非常に強くて、これがかなりの短期間の間に消費者物価に波及してきたわけでございますけれども、最近の二、三カ月になりますと、そういう形ではなくて、むしろ生産財ないし投資財関係の値上がりのほうが強い。鉄鋼とかあるいは機械とかというものがおしなべて値上がりしておるわけでございます。  それだけにいままで何回も行なわれました総需要調整を必要とする物価抑制というものが、かなりのタイムラグを伴って効果をあらわすものでございますから、だんだんにじわじわときき始めてきておるところへ今回の四次の追加的な措置がとられましたので、私ども感じでは、やはりこれは現在の在庫の動きが非常に問題でございますけれども、確かに在庫統計全体で見ますと、生産者在庫と申しますか、製品在庫が非常に少なくなっておりますために、また原材料在庫も薄くなっておりますために、総体とするとあまり顕著にふえていないようでございますが、内容を見ますと流通在庫の面はかなり積み増しが行なわれている。流通在庫というのは統計的にも非常にウイークな面でございますから必ずしも正確な統計がございませんけれども、各種の情報を総合してみますと、何となく国内インフレ気がまえというものがあって、流通在庫を手厚く持ちつつあるという形が一般的のように思われます。したがいまして、ものによっては流通在庫のはき出しというものがかなり期待できるのではないかと思っております。したがって卸売り物価につきましては、どうもそういう面ではものによってはこれから値下がり的なものも期待できるのではないか。  その反面卸売り物価の中でさらに根強いと思われますのは、先ほど愛知大臣がお示しになりましたような海外要因に基づくもの、これはどうもなかなか国内の手の及ばないところでございまして、これが強いものは今後とも上昇的な動きを示す可能性が強いということでございますけれども国際インフレの動きについても最近だいぶ頭打ち説というものが出てまいりまして、各国ともかなり総需要調整に力を入れてきておりますし、国際商品市況の暴騰、ロイターを見ると一年間に二倍も上がっているという非常に異常な状態でございますが、ようやくそういう事態もいつまでも続くはずがないという感じもございまして、やはりこれも天井に近づきつつあるのではないかという感じがだんだんふえてきているように思います。  そんなところが今後の見通しでございます。
  71. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いま企画庁が申し上げたようにガスの料金、電気料金、国鉄運賃、それから今度健康保険料。小麦がたいへん高騰してきておるので、これがいまの輸入価格で常識的に判断すると、パンの値上げ、菓子類の値上げ、めん類の値上げ、大蔵省の管轄のビールの値上げ。今度は二〇%飼料が値上がりだと新聞は報じておりますが、これが上がりますと、飼料を必要とする肉の値上げ、牛乳、卵、みそ、しょうゆ、食用油、庶民が日常最も多く必要とする購入回数の多いこういう消費物資が軒並み上がる要因を含んでいる。これを大蔵省は、企画庁、通産省、農林省と打ち合わせして、あしたの閣僚会議でこういう傾向に対して何か歯どめをきちっとつけられますか。明日発表される政策にこういうものを押える手だては用意されておりますか。大蔵大臣、ちょっと見解を伺います。
  72. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いまおあげになりましたことは、いろいろ私どもも非常に心配している問題なんでございますが、たとえばその中で飼料の問題等につきましてもいろいろくふういたしまして、たとえば財政的な手法としても、これは必ずしも一般会計が、ことばは適当でございませんが、現ナマでたとえばある種の基金その他の組織に補給をするとか助成をするというだけが財政的手法ではないと思いますけれども、広い意味の財政的な手法を用いてできるだけ値上がりを防ぐという点については従来からも努力しておりますし、いまも私も直接関係の方々の御意見を伺いながら努力をいたしまして近日中に結論を出したい、こういうふうに考えております。  それから、たとえば大蔵省の関係というか所管ということも正確な意味ではございませんが、ビールのお話もございましたが、これについてはまたビール業界内のいろいろのコスト計算その他等も念入りに調べまして、値上げということに安易に走らないように行政指導等で及び得る限りにおいては善処を続けていきたい。  これらにつきましても企画庁の御協力をいただいて、たとえば有識者層の方々の長期にわたる御意見などもいろいろ伺って対処しつつあるような状況でございまして、いまおあげになりましたいろいろの点については深い関心を持ちながら、同時に海外インフレ要因が日本国内にストレートに国民の必需物資の値上がりに及んでくるというようなことは何とかして遮断というかやわらげていくようなクッションをつくるように最善の努力をいたしておる次第でございます。
  73. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵大臣、あすの物価対策閣僚協議会で、従来四月の十三日から毎月七項目の対策を発表したり、あれもやるこれもやるという個別対策ども発表したりいろいろ毎月出ておるのでありますが、あすはおもな柱はどういうものが大体きめられそうなんですか、もうすでに原案はできておると思うのでありますが、どんなものですか。
  74. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは御案内のように企画庁が中心になって取りまとめに当たっておられますから、私からだけでは十分なお答えができないかと思いますが、直接私どもの所管としておりますことは、けさほども申し上げましたように物価閣僚協議会というものをできるだけ盛り上げて、ここを各省各庁の協力の場とし、成果をあげたいと思いまして、そのタイミング等に合わせてたとえば財政金融措置等についても、今月の定例といいますか会議は月末ぎりぎりになりましたけれども、これには財政の繰り延べ各省庁とのネゴと申しますか折衝なども、これは実は非常にこまかい作業にまでわたりますので徹夜作業もずいぶん続けております。こういう関係は、けさほど申しましたように相当な数字的な御説明ができて、そして協議会の主題になろうかと思います。  それから金融措置については、幸いにして昨日日銀政策委員会の決定もございましたし、あるいは預金準備率等の問題については政府の認可にかかっておることでございますから、こういったようなきわめて最近においてでき上がったこと、あるいはいま現にこういう作業中であるということ、直接私担当している面におきましては、過去一、二カ月の間における経過としては相当のものが出てくるといいますか提出できることになっておると思います。
  75. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 新聞報道によるビル建設を規制をする。新たに建築確認書の提出のあるものについては建設を見合わしてもらうように指導する。それから消費者ローンの割賦販売についての頭金を二〇%から三〇%にさせる。公定歩合はきのうやりましたからこれはよろしい。財政を五千億円繰り延べをするというのがあすの発表になりそうな項目であると聞き及んでおるわけであります。  しかしこれではまだ足りない。まだなすべきことが一ぱいある。特に大蔵省管轄内でやらなければならぬ問題がまだ幾つかあるのじゃなかろうか。私はことしの二月ごろから愛知大蔵大臣とこの委員会で論争しておるのでありますが、西ドイツは法人税の付加税をかけ、あるいは高額所得者に対する所得税の付加税をかけて過剰流動性を吸い上げる、富の再分配を行なう、企業の手元流動性を吸い上げる等々の措置を西ドイツにおいては提唱され、実行に移されつつあるようであるが、日本政府はどうなんだ、こういう質問をこの委員会大蔵大臣とやりました。大蔵大臣は、日本経済はドイツのような過熱状態ではないからそんな手荒いドラスチックな手だてをしなくとも物価は鎮静するのだ、こういうような答弁をいたしておったのでありますが、もうさっぱりいままでのはききめないですね。したがって、この辺で年度内に法人税の付加税を徴収するぐらいなことは踏ん切るべきではなかろうか、あしたあたりの対策の中にひとつ織り込んでいいのではなかろうかこれについて第一に大臣の見解を承りたい点であります。  第二は、日銀の窓口規制なり預金準備率引き上げ公定歩合引き上げ等々によってかなり需要が鎮静されて景気の過熱があるいはチェックできるかもしらぬが、しかしいまのような経済規模が大きくなって百兆円になんなんとするような、こういう情勢のときはもっときめのこまかい個別の措置というものが必要ではないか、たとえば大企業に対する個別の融資、産業別融資ワクの策定、そういうようなものを通じて、どうしても足りない塩ビや鉄鋼やそういうようなぜひふやさなければならぬというものは別として、不急不要のものについての投資に対してもっと個別、産業別規制、こういうものを断行すべきではないか。あるいは大蔵省の管轄ではないが寡占価格、独占価格といわれるような市場支配的な価格形成力を持っているものに対してはやはり思い切ったこの際行政指導で介入すべきではないか、このくらいなことは、日銀が最後の手段として思い切って一%引き上げた段階に呼応して財政当局、行政当局が本気で取り組まなければいかぬと私は思うのであります。  そういう意味で、巷に新聞に報ぜられている程度の物価対策閣僚協議会の対策ではなまぬるいなまぬるい、こう私は思うのであります。大蔵大臣の見解をあすの決定を前にしてひとつお聞かせを願いたいのであります。
  76. 愛知揆一

    愛知国務大臣 第一が税の問題ですが、ドイツの例などももちろん政府としても十分検討いたしておりますし、また御案内のように先般は経済安定法という名前のもとにわれわれの考え方というものも整理いたしまして、これは今後においてもいろいろの措置をとるべく検討を続けてまいりたい、こういうふうに考えておりますが、ただ午前中に高沢委員にもお答えいたしましたように、増減税ともに年度内に実行するという考え方はございません。  それからドイツの税制等については日本の実情あるいは日本の税のたてまえからいって必ずしも適当でないという点もございますから、それらの点については検討は続けますけれども、年度内ということは考えておりません。  それから、金融についていまのお尋ねは、いわば物資統制的な対象別といいますか業態別といいますか、そういうところに金融調節政策を展開したらどうかというような御趣旨のように承りました。先般来窓口規制等日銀でやっていられる点についても、土地の問題とか融資の問題とかあるいは商社に対する問題とかいろいろのくふうがこらされておりますし、それから確かに一つの考え方としてかつての資金調整法的な考え方も一つの考え方であろうとは思いますけれども、これを日銀の金融政策、あるいは特に中央銀行の立場あるいは大蔵省の財政当局の立場からいって、この物資についてはこうこうである、あるいはこの産業についてはと産業政策に立ち入って調節的、統制的な手を入れるということはいささかいかがであろうか。  これは幸いにたとえば最近は通産省において鉄鋼の需給状況にかんがみていわば一種の切符制度的な、そう言うと言い過ぎなのかと思いますけれども、需給状況をよく掌握されて、それぞれについての行政指導相当強力に展開されつつある。これは私は非常に高く評価しているやり方でございますが、そういった点から産業政策あるいは物資の主管官庁の面からそういうふうな考え方が具体的に出てくる、あるいは今後拡大されるという場合に、これを受けて財政金融上の措置に加えていくということは将来の問題としては考え得るところではなかろうかと思います。  たとえば財政の面におきましては現にやっておりますように、繰り延べ措置についてのやり方は主要物資の需要関係を地方的にも相当こまかく当たって資金の裏づけをするという方法を始めておりますし、それから四十九年度の概算要求がもうここ二、三日中に各省からまとまりますが、その場合においてはやはり主要物資の需要計画というようなものの裏打ちを概算の要求につけて要求していただくようなことも各省協力をお願いしておりますが、こうしたやり方はいまお話のありましたような趣旨を政府としても相当考えておるということは申し上げることができると思います。
  77. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 持ち時間が限られておりますから論争はできませんが、大臣、新聞報道によると輸銀の融資ワクを圧縮する、こういうようなことも報道されておったのでありますが、聞くところによると輸出金融ワクを三百億円圧縮をする、これはほんとうですか。
  78. 愛知揆一

    愛知国務大臣 三百億ということがどこまで権威のある数字か、どういうことからキャリーされたか知りませんが、輸銀、開銀等の融資につきましても原則八%の繰り延べは適応いたしたいと考えておりますが、三百億ということに比較的近いのは輸銀の中の輸出金融の額の八%が三百十数億に当たりますから、たぶんその辺の見当が新聞等に出たのではなかろうかと存じます。趣旨においては否定いたしません。
  79. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 開発銀行も大体その率でいくとどのくらいになりますか。開発銀行の資金ワク抑圧はどのくらいになりますか。
  80. 愛知揆一

    愛知国務大臣 大ざっぱに申しまして四百億円程度になろうかと思います。
  81. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大蔵大臣は過般四月だと思いますが、ここで私の質問のときに、中小企業向けの三公庫についての金利は据え置く、こういう答弁をしたのでありますが、なぜ八月一日から金利引き上げたのですか。
  82. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはお話をすると長くなりますから簡潔に申し上げますが、長期金利体系の中の一環として、あるいは財投の資金コストの関係その他等から申しまして若干の引き上げはいたしましたけれども、しかし同時に上げ幅はできるだけ小範囲にとどめることに努力したつもりでございます。
  83. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大臣は国会で答弁したことをうそついてはいけません。一代議士の質問であっても上げるという場合には上げるということを当然本委員会において了解を得べきであります。私はそういう点あなたが信義がなかったのをいささか腹を立てておるのでございます。この間国民金融公庫に行って、国会の議事録を見ると上げないと約束しているのに上げたじゃないかと、私が恥をかいた例がある。そういう大臣うそをついちゃいけません。上げなければならぬ場合には上げなければならぬこれこれこういう理由があるから上げざるを得ないのだ、前回わずか一カ月前にこう言ったけれどもこうだということを、やはり機会があるのですから答えなければいけませんよ。知らぬ顔の半兵衛で中小企業専門機関の金利まで上げるとは、うそじゃありませんか。以後そういう点私は十分気をつけていただきたいと思うのであります。  日銀総裁、卸売り物価が上がれば当然やがてそれが波及して小売り物価にはね返ってくるということはこれは経済学の初歩であります。したがっていま卸売り物価がたいへんんな上昇を示している、こうした傾向というものが消費者物価にはね返ってくるわけでありますが、専門家のあなたにとって、通貨価値を安定させる番人として日銀総裁は、この卸売り物価はいつごろまで消費者物価に波及してくるだろうか、最終的な波及は何月ごろで一応ストップになるのだろうか、一年間なのか、一年半ぐらい影響をずっと及ぼすのか、半年で一応小売り物価への波及効果というのはストップするものなのか、その辺の専門家としての見解はいかがでございますか。
  84. 佐々木直

    佐々木参考人 先ほど企画庁のほうからお話がございましたように、ことしの初めからの卸売り物価が、世界的な一次産品の価格の上昇の影響が出ておりまして、これが消費者物価影響の出る期間が早い性質のもの、そういうものが上がっておりましたために、そういうものの影響はもうすでに消費者物価に出ておるのでございます。それから最近上がっておりますのは、たとえば銅でございますとか鉄、そういうようなものの消費者物価に対する影響は、これはいろいろな非常に複雑な経路を通って影響してまいりまして、これは食料などの上昇ほど端的に消費者物価には出てまいらない場合もございます。そういった点を考えますと、最近の卸売り物価の急上昇はもちろん消費者物価影響を持つと思いますけれども、その影響の出方はことしの春ぐらいよりはだんだん鈍くなるのではないかという感じがいたします。  ただしかし、そう申し上げましても卸売り物価の上昇幅が非常に大きゅうございますので、それの影響がなくなるという意味で申し上げたのではなくて、たとえば卸売り物価が十上がりましたときに消費者物価に対して六とか七とかその影響が出るであろう。それが最近の十の上がり方の影響の出方は、いままでがもし七ならばそれが五ということになるのではないかという感じは持ちます。ただしかし、もとの上昇が二%——たとえは七月の卸売り物価は二%でございますから、その半分くらい影響いたしますにしてもやはりある程度の影響が出てくると思います。したがって、いままでわれわれは卸売り物価の上昇の影響消費者物価に出てくるのには六ヵ月ないし九ヵ月かかるというふうに考えておりました。しかし今度はそれよりも少し平均すると早いと考えてよろしいのではないかというふうに思います。
  85. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうしますと小売り物価も、これは東京の消費者物価指数でありますが、対前月比をずっと見ても六月が最低、前月比プラス〇・三。それがまた七月は〇・六にはね上がってきているわけですね。前年同月比では一二・二。五月が一一・六、一一・三という順序でありますから、四月から消費者物価がずっとまたウナギ登りに上昇傾向をたどっている。この傾向は六ヶ月か九ヵ月、しかし卸売り物価はもっと率が高く上がっていますから、この消費者物価の上昇傾向というのは、総裁、当分というのは非常にあいまいでありますが、半年くらいはおさまりがつきませんか、どうでしょう。
  86. 佐々木直

    佐々木参考人 消費者物価の先行き、なかなか見通しがむずかしゅうございますけれども、いままでの日本消費者物価の動きを考えてみますときに、やはりまだしばらく上昇傾向は続くというふうに考えざるを得ないと思います。
  87. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 大体大臣と総裁の話を聞いた私の結論は、物価問題は庶民大衆が安心できるような、期待するような答えは本日なかった。物価は上がる。さてそこで上がりっぱなしの物価の中で困るのは庶民大衆である。物価高から庶民大衆をいかに守るか、その方策いかんということについて一、二御意見を伺いたいと思います。  その一つは、大臣はこの前もここでお約束をしたのでありますが、個人預金と法人預金を区別して、法人預金は公定歩合に連動させるが、個人預金は一定額をきめて、これは高金利をつけてやる、こういう方策を考えたい、次の金融制度調査会にかけて何とか実現をしたい、こういう答弁でありました。ところが銀行局長は、どうも大臣の答弁にあまり賛成のようでない、反対でもないが賛成でもないような、たいへんつまらぬ答弁を、ゆうべ議事録を読み直してみたら局長はいたしている。これは一体事務当局が先行するのか、大臣の言明どおり実施するのか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。もう一回答えを聞きたいと思います。
  88. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは理屈の問題になりますけれども公定歩合というものが上がった場合に預金金利というものはおしなべてこれに連動するという考え方は、ずばり言ってそれは言い過ぎであり、あるいはきき過ぎであると私は考えるわけでございます。、しかし、いろいろの考え方がありますが、やはり預金をする者の立場、つまり国民大衆の立場、預金者という特に個人的な立場というものを、私はまた別の観点を加えてできるだけ大切に扱っていきたい。そこで一つの考え方としては、法人預金と個人預金というものは取り扱いを変えてもいいのではなかろうか、金融調査会でもざっくばらんにそういう考え方も御検討願いだい問題であるということを私は申しました。それらの点につきましては引き続き検討を続けてまいりたい、こう考えております。
  89. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私がお願いしたいのは、検討検討で、検討している間に物価問題が別な方向にきざしが見えてきたらああこれでもう終わりだ、やめだということになるのですな。こういうのはやはり迅速果敢でなければ庶民の期待にこたえられないのですね。だからこれも九月一日から実行できるような手だては十分あったのですよ。やろうという意思が銀行局長にないんだ。だからこれからまだ検討検討、そのうちにどうやら景気が鎮静したからこれはやめようという、何かそういうようなこそくな行政姿勢、私は銀行局長のこれに対する熱意がないような気がする。大臣、いませっかく答えたのですから、早く金融制度調査会を臨時にでも何でも招集して答えを出してくださいよ。  第二は、大臣、そういう金利をいじるというのは、金融機関同士のいろいろな思惑があり摩擦が起こるという配慮からなかなかこれは取りかからぬと思うのですよ。そこで、そういう摩擦が全くない方法を庶民にひとつやってください。それはやはりマル優ですね。いまは利子に対する二〇%の税金を取られる。せっかくやった庶民のわずかな貯蓄のうちから二割取られるのだから、いまの物価のこういう状態のときにはひとつ五百万か七百万まで全部一時免税に対してやろう、そのくらいのことなら大臣に決断と実行の意思さえあれば簡単にできるのじゃないですか。マル優を拡大する。いかがですか。
  90. 愛知揆一

    愛知国務大臣 預金の金利についてはまた一言つけ加えますが、この前こういういろいろの応答がありましてから後にも、預金金利は若干上げ、あるいは郵貯等につきましても郵政省との間でも相談をいたしまして、かなりこれが当面とるべき措置に前進をいたしましたこともあわせて御理解いただきたいと思います。引き続き検討すべき点は検討する、こういうふうに考えております。  それからマル優の問題ですが、これは詳しく申しませんが、六つも七つもいろいろの制度がございますが、これを総合いたしまして、検討と言うとしかられますけれども、十分検討いたします。同時に一口当たりの額が二十三万円でありましたか、そういう現状であるということも現実の問題としてあるわけでございまして、現行の制度でも十分に活用されるわけだと私は思いますが、これの拡大ということにつきましては十分検討いたします。
  91. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 銀行局長現状を一人一口百五十万、そういうことですね。それを私は五百万くらいにこの際したらどうかと言うのですが、主税局長、免税点はどうですか。
  92. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 現在は銀行その他のいわゆる預金が一人一口、多種類多店舗で百五十万ということになっております。そのほかに郵便貯金は百五十万まで、それから別ワク国債が百万というようなことになっておりますが、この制度はいずれも法律上限度がきまっておりますので、ただいま御指摘のように機敏果敢ということにはなかなかいかないわけでございまして、それらは来年度の問題としては十分検討に値する問題だと考えております。
  93. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 物価がこんなに上がるときに、主税局長は庶民に血も涙もない。まことに感覚が鈍いですな。いまの国会は九月二十七日まであるのですよ。だから大臣がもしマル優を五百万にしょうか七百万にしようかと大蔵省のおえら方、局長を集めて決断をすれば、二十七日までの国会に間に合うじゃありませんか。私は個人と法人の預金金利を別にしろということを提案をして、いままで二カ月待っても大蔵省はさっぱりやらぬから、いても立ってもいられぬから、いまもう一つの案としてマル優の問題を持ち出したのだ。マル優をもっと広げてやる、預金金利の二〇%の税金がかりに五百万までゼロになる。金利の部分がいまかりに一年もの六%にしても、税金を二割取られちゃうと四%くらいなんだ。だからその税金の分だけでも免税をしてやることによって、物価高から庶民の気持ちを幾らかでもやわらげてやることができるのですよ。そういう政治こそ思いやりのある政治なんだ。愛情のある政治なんだ。自由民主党にはそういう愛情も思いやりもないのか。     〔木村(武千代)委員長代理退席、森(美)委員長代理着席〕 大臣、もう一回、マル優の問題についてひとつ早急に検討したいという答えは出ませんか。
  94. 愛知揆一

    愛知国務大臣 マル優の問題だけではなくて、実は一般国民に対してお金を大事にしていただくという意味からいいましても、貯蓄の手段にいろいろのバラエティーをつけたい。それから午前中にもちょっと言及いたしましたが、かねがね安定国債というようなものの考え方もやっているわけでございますが、ただおことばを返すようですけれども、これはよほど考えませんと、いわゆる現在の手段からシフトされるだけでありまして、その面から申しましても効果が非常に疑わしいわけで、それらの点も総合的に考えていきたいということで、実はいまこの点については非常に頭を悩ましているわけでございます。名案を考えましたならば、できるだけ御趣旨に沿うようにいたしたい。これはただ単にマル優だけということになりますと、先ほどもちょっと申しましたように、一口二十三万円ぐらいのところで停滞しているというようなことではなりませんので、よほど斬新な措置を考えませんと悪用される、思わざるところに弊害が及ぶというようなことも考えなければならぬ。これは当局側としては、その辺のところにも感覚的だけではなくて、実際起こり得るあらゆる状況を想定して慎重にやらなければならない、こういう悩みがありますことも御理解をいただきたいと思います。
  95. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 時間ですから、企画庁、通産省まことに申しわけなかったのですが、通産省にたいへん項目多く要求してありますけれども、あとでひとつおひまなときに資料で説明願いたいと思います。  質問する時間が四十分までで、終わってしまったので、申しわけないと思いますが、最後に日銀総裁と大蔵大臣に一問だけ御意見を伺って終わります。  今回の公定歩合引き上げでまたまた長期金利引き上げか行なわれる。三公庫——商工中金、中小公庫、国民金融公庫の金利をこれに同列に扱って、またまた貸し付け金利引き上げをやるかどうか、これが一点。  日銀総裁にお尋ねしますが、いまの総需要抑制金融引き締め効果が個人消費個人支出になかなか及ばない。個人支出が四〇%から五〇%を占めている。財政支出、民間設備投資等のウエートを考えますと、個人消費の抑制というものがどう行なわれるか、あるいは資金をどう吸収するか、重大な金融政策一つだと思うのですね。これらについての総裁の御見解を伺って、私の持ち時間が来ましたので、質問を終わります。
  96. 愛知揆一

    愛知国務大臣 三金融機関等金利については、先ほどもおしかりをいただいて恐縮いたしましたが、さような場合におきましてはできるだけすみやかに御理解を得るようにあらためて努力をいたしたいと思います。  同時に、公定歩合引き上げというものは短期に機動的に金融政策手段としてとられるべきものであって、特に政府関係の金融機関の金利に直接に結びついて考えられるべきものではない、私はこういうふうに考えるわけでございます。したがって、今後各種の金利動向とかそれから中小企業金融に与える影響というようなものも十分考慮いたしまして、できるだけ引き上げないような努力を続けてまいりたい。しかし絶対にやらないかと言われれば、そこまではっきり申し上げますと、また先般のような誤解を起こすことがございますから、そこは留保しておきたいと思います。
  97. 佐々木直

    佐々木参考人 御指摘がありましたように、個人消費につきましては直接的に金融政策はなかなか影響が及びにくいのではございますが、ただ全体としての経済の動き、それを背景とするものの考え方、そういうものがやはり個人の消費には影響があるように思います。そういう意味で、経済の実態の落ちつきということは間接的に個人消費の落ちつきにつながるものがあるのではないかと思っております。  ただ、いま金融機関がやっております個人に対する貸し付け、その中で住宅ローン以外のもの、たとえば自動車を買いますための貸し付けとかあるいは電気器具を買うための貸し付け、そういうようなものは今回の公定歩合引き上げ機会に各金融機関に抑制するように申し渡しました。
  98. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 終わります。
  99. 森美秀

    ○森(美)委員長代理 荒木宏君。
  100. 荒木宏

    ○荒木委員 けさほど大臣から蔵相会議の報告を伺いました。この国際通貨危機の原因につきましては、私どもは以前からアメリカの異常なドルの流出、これは通商面もありますし、ことに海外軍事支出、軍事援助、また多国籍企業などの形での海外投資など、そういう点が、それこそがこの国際通貨危機の原因である、これに対する歯どめを考えないで解決はない、こういう主張をしてきたわけであります。そのことについて大臣もその原因指摘については従来否定をされませんでした。そこで、けさほど伺いました報告の中で、大臣があの会議主張されたそのことによってすでに数百億ドルといわれる滞留しておる過剰ドル、これが解消できるのか、またその時期の明示ができるのか、けさほどの御報告に関連して、この点をまずお尋ねしたいと思います。
  101. 愛知揆一

    愛知国務大臣 けさほど御報告申しましたように、国際通貨問題の焦点は、さしあたりいわば調整過程における措置の問題とそれから資産決済の問題、すなわち交換性の問題と、大きく言えばこの二つに焦点が合わさっているわけでございまして、その考え方の大筋がまとまれば、具体的にいまお話しになりましたような点につきましても、対応策というものがだんだんにまとまってくることになると思います。  いま申しましたように、その二つの大きな命題に関しましては、率直に申しますとそれぞれにやや対立された考え方というものがまだ残っておる。これの幅を狭めて、それぞれに相互に関連いたしますけれども調整過程の問題につきましても、交換性の問題につきましても、実効性が早くあがるように、譲るべきところは対立した意見それぞれがそれぞれ少しずつ歩み寄って解決をはかる。その中で過剰ドル等の問題等につきましての措置というものもだんだんに効果があがるようになってくることを期待しておるというわけでございますが、直ちに一挙に数百億ドルというものがこういうふうにクリアカットになるということになる時期はいっかというようなことについては、事柄の性質上あるいは話し合い進行のいままでの状況から申しましても、的確にその時期がいつであるということをまだ申し上げるところまではいっていないように観察される次第でございます。
  102. 荒木宏

    ○荒木委員 いまの御答弁を伺いますと、一番重要な、いわば病巣のガンといったところに直接手を触れないで、そしていわば周辺の手当てといったようなことが、いわれるところの資産決済でありますとかあるいは調整措置でありますとかいうことの論議のように考えます。しかしいまおっしゃった調整措置、資産決済そのものにつきましてもまだ非常に疑問が多い。たとえばSDRを魅力あるものにしたい、こういうふうな御報告を伺いましたが、では一体その魅力の内容とは何か。そしてまたそのことに関連をして、交換性回復の義務遂行のために必要がある場合は信用供与する、こういう御報告でありましたが、ではその信用供与の必要性とは一体どういうことなのか。これについていわば客観的指標があるのか。この点について御主張の中でどのようにおっしゃったのか、この点をお尋ねしたいと思います。
  103. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはどういうふうに申し上げたらよろしいのでしょうか。まず、その調整過程の問題としては、国際収支均衡とか、あるいは赤字国、黒字国というような場合にどういう指標を用いて、極端にいえばどういう制裁をして調整をするかということも含まれるわけでありますけれども、私どもとしては単純にその時々の外貨準備の高というようなものが単純な基準によって多いとか少ないとかいって、それぞれ責任をとり合うとかあるいは制裁規定を発動するということはあまりにも単純過ぎるのじゃないか。これはたとえばIMFという組織がりっぱにあることでもございますから、いろいろの指標もあわせて、そしてかつ協議の中から生まれてくる方針をそれぞれの国が体して実行に移すというようなことのほうが実際的でもあるし、またそれぞれの国がそれぞれのりっぱな主権国でもございますから、その立場の中で処理しやすい方法ではないか、たとえばこういうふうにも考えられるわけであります。  それからまた資産決済のやり方等については、厳格に交換性を守るということをきちっと原則として確立しなければならない、こう思います。これはぜひそうしなければならないと思いますけれども、そのやり方、方法等については、技術的にいろいろの信用供与の方法等も考えられるわけでありますから、ゆとりのある、幅のある方法論が相当考えられてもいいのではないだろうか、こういうふうな考え方でできるだけ早く合意ができるということ、これが必要であると思います。先ほど迂遠なような、外回りばかりしている議論だと言われますけれども、実は各国ともこの二つの命題というものが一番基本的に大切であるということに少なくとも参加国は合意をして、これを片づければあとはずっと進んでいくだろう、そういう気持ちをどこの国も持っておるように思います。  SDRの魅力云々ということは、一つSDRのいわばバリュー、価値をどういうふうに客観的にきめるか、そのきめ方いかんが魅力があるかないかということになります。そして同時に、どういう金利をどの程度つけるかというようなこともそれに付加されるわけでございますけれども、そのバリューのきめ方については、たとえば主要複数通貨の比較的高い水準のところと結びつけるという考え方が適当ではなかろうか、こう考えますけれども、それらの点につきましてはまだなかなか最終的な合意を見るまでに至っておりませんし、そしてそのきめ方いかんによりましては金利の問題というものが、その高低というものが比較的第一次的な重要性はなくなるかもしれない、こういったような状況でございますが、けさほど申し上げましたような線でさらにナイロビ会議でもできるだけの努力を払ってまいりたい。そしてけさ最後に申し上げましたように、国際協調ということはもちろん大事でありますが、国益を踏まえて国益に十分かなうようなやり方に合意ができるようにしたい、これを基本的に守ってまいりたいと思います。
  104. 荒木宏

    ○荒木委員 いま伺いますと、肝心な信用供与の必要性、内容はどういうものであるかということについては、ゆとりだとかあるいは幅だとか、こういったようなことで、歯どめとしての効果が全くその中に見られない。さらに問題だと思いますのは、いま国益というお話があったのでありますが、けさほどの報告の中にプレッシャーの問題が含まれております。これは十分慎重にという報告でありましたけれども、しかしプレッシャーは認めるというような趣旨で報告を伺いました。だとしますと、それに対する態度が慎重であるかどうか、これは別としまして、認めるということになりますといろんな意見が出ております。御案内のように、あるいは通商面の措置でありますとか、あるいはまた通貨面の逆金利措置でありますとか出ておりますけれども、その内容についてもさだかでないし、またそれを認めるというふうなことについては、これは一番もとである歯どめをかけるという点からいいますとむしろ逆の方向になるのではないか、このプレッシャーの内容について、いまお尋ねした諸点を明らかにしていただきたいと思います。
  105. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは大きく分ければ黒字国、赤字国ということが考えられると思いますが、従来ともすると日本は定着した黒字国であるというふうに言われておった、こういう立場から申しますと黒字国に対して何らかのプレッシャーがかかることは避けなければならない。特に通貨問題と通商問題は車の両輪であることはそのとおりではありましょうが、基準のきめ方にもよりますけれども、単純なきめ方などによってそれが通商上の制裁措置というようなことに自動的になるようなことはこれは避けなければならないというのは、いかなる黒字国であっても合意をするはずでございます。  こういう点におきましては、黒字国であった、またあるとも言えましょうが、日本としては十分警戒しなければならぬことでありますが、同時に日本としては、これはまた別な根本問題になりますけれども、定着した黒字国というイメージは日本の国益としてもはたしてこれがいいことであるかどうであるか、それから現在円対策として推進しておりますような政策はむしろそれとは違う方向があるいは適当ではないかという考え方も含めてやられている措置とも理解できるわけでございますから、長い目で国益からいって、いずれの場合になりましても、黒字の場合であっても赤字の場合であっても、そしてお互いに協調し合える限度においてのある程度の制限措置というようなものはこれは考えざるを得ない、こういうふうに私は考えます。  ただその措置というもののきめ方の段取り、基準となるその指標、それから段取りを経過して行なわれるべき措置の具体的な内容というようなものに対して、しさいに検討していかなければならないわけであります。そういった具体的な点につきましては、まだまだ合意ができるところまでには若干の時日がかかるのではなかろうか、こう考えます。
  106. 荒木宏

    ○荒木委員 いまお答弁を伺いましたけれども、これは私は使い分けだと思います。いままで定着した黒字国であり、いまもそうである、しかし将来の問題についてはいかがという御答弁でありますが、しかし貿易収支の黒字という点については、あの五カ年計画の中ではっきりと数字を出しておられます。そして方針として貿易立国ということも言っておられる。ですから、そういった経済成長の面から申しますと依然として高度成長という方向をとり、それが海外投資ということはあるにしても黒字をずっと続けていくような政策をとっていらっしゃる。そうして一方、アメリカをはじめとするドル危機の問題になりますといまのようにおことばが変わるのは、まさにこれはトリレンマという、そういったところにあらわれていると私は思うのであります。いまの御答弁を伺っても、一番の原因であるドル危機のドルの海外流出ということについての歯どめということには、これはならないのじゃないか。現にアメリカはこのことについてすら、交換性回復についてすら、条件つきだということをいっておりますし、またスミソニアンの以後もそういったことで事態の改善にならずに不安が続いている。こういった点から、この一番根本原因についてメスを入れる、歯どめをかける、そういったことを政策としてとられることを強く申し上げておきたいと思うのです。  時間の制約がありますから関連して今度は別のことをお尋ねしたいのでありますが、大臣がこの会議出席されましたときに日米会談が行なわれておりました。その中で田中総理が、インドシナ復興援助に五千万ドルを提供する、こういったことが伝えられ、大臣もこの相談にあずかられたと聞いておりますが、このインドシナ復興援助につきましては、私どもは本年の一月に締結をされましたパリ協定、ベトナム人民の自主権を認め、インドシナ人民の基本的な民族的権利を認めたあのパリ協定に沿って、その精神でやらねばならぬ、こう思っておるのでありますが、この無償援助の所管大臣として、また先ほどの五千万ドルの件について相談にあずかられたお立場として、ひとつインドシナ復興、ベトナム復興援助についての基本方針を明示していただきたい。
  107. 愛知揆一

    愛知国務大臣 田中・ニクソン会談のインドシナ問題については、御案内のように共同声明が出ておりますけれども、インドシナのいまのお話の点に触れては、両者はインドシナの復興を援助する決意を再確認したということに象徴されている一合意であると思います。それからわが国の態度といたしましては、ただいまお話しのような経緯もございますから、今後のインドシナに対する経済協力の進め方については全インドシナ地域を対象としていくことが基本である。そして方法論として望ましいのは、多数の国が参加する幅広い国際協力のもとに実施していくことが最も望ましいとかねがね考えておるわけでございます。  同時に、その基本的考え方に立ちますけれども、時間的考え方その他からいって、人道的その他の立場で二国間ベースである程度の援助を行なうことも必要であると考えられると思うのでありますが、そういった趣旨で、日米首脳会談で日本の総理は南ベトナムに対して五千万ドル程度の援助を約束したと伝えられておりますが、その実施可能の面ということから考えれば、そのくらいの程度になるかということをこちらの考え方として、いわば参考までにこういう言い方ができるということが伝えられてあると承知いたしております。したがって、金額等の点については、両者の合意した声明等にはあらわれておらないわけでございます。  これは御承知のように、日本政府からは調査団が出ておりまして、そしてさしあたり、いずれにしても、たとえば難民の救済、難民の住宅、医薬品の供与、それから農業用の資材、機器といったような内容で、人道的、民生安定的なものを調査したその結果が大体五千万ドル程度のものである、こういうふうな印象を踏まえて、参考までにそういう話が出た、こういうふうに承知いたしておる次第でございます。     〔森(美)委員長代理退席、大村委員長代理着席〕
  108. 荒木宏

    ○荒木委員 ところが、いままでこのインドシナ援助、ベトナム援助がなされたのはサイゴン政府のほうばかりですね。これは無償、有償、借款含めて、サイゴン政府のほうばかりいっている。いま大臣お話のこの調査団の問題にしましても、これはサイゴン政府の支配地域へ行って、そしてベトナム民主共和国、臨時革命政府のほうへは行こうともしていない。しかるに北欧三国をはじめ、あるいはイギリスでありますとか、西ドイツでありますとか、こういったところはむしろこういった日本政府のような態度ではなくて、ベトナム民主共和国とも復興援助の問題についていろいろ折衝、交渉をすでに始めておる。こういった現在の政府の態度、そしていまお話の五千万ドルがサイゴン政府へ向けられるであろうという、こういったお話、これが日米会談でアメリカの政策責任者との間でかわされた、これは私は非常に重大だと思うのです。  御案内のように、昨年の二月にはアメリカは七十五億ドルというのをきめましたけれども、これはまだ全然履行しておりませんし、議会筋の問題があっていまやれぬわけですね。そこで両者で話し合ってその問題について決意を再確認したということになりますと、アメリカがやれぬ分をこっちのほうでサイゴン政府のほうへ向いてやっていく。まさにこれは肩がわり、責任分担というふうな客観的結果になっているのではないか。  ですから、大臣がおっしゃったようにパリ協定、こういった精神でやるということになれば、このサイゴン政府へ向けての援助というものはむしろいまの段階では打ち切るべきではないか。この点について大臣の御意見を伺いたいと思います。
  109. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、日本としての立場はパリ協定もできたのみならず、日本の外交当局としては北ベトナムとの国交回復と申しますか国交樹立についてもすでに外交的な段取りをつけつつあるということはもう御承知のとおりでございますし、経済協力の問題についても北ベトナムを含むことはもちろん、インドシナ全域に対して日本としての力でできることは援助をしていきたいというのが政府の態度でございます。  そしてその方法論としては一番望ましいのは、要するにマルチの手段が一番いいのではないか。たとえば国連を通すのも一つでございましょう。アジ銀を通すのも一つでございましょう。あるいはその他の国際機関を通すのも一つでございましょう。しかし、いずれにしましても北ベトナムの地域に対してどうしてもやはりこういう人道的な立場に対してはやるべきものは——たまたま調査団の報告の結果から見てもこのくらいになるものがある。とすれば、時間的にもそのうちで早くやれることなら、それだけはともかく実行したほうがよろしいという心証を日本政府としては得ている、こういうのがいまの状態でございます。  いずれ、北ベトナムからは現在具体的には私はまだ承知いたしておりませんが、どのくらいの計画が先方からプロポーズされておるか、あるいは外交チャンネルで話に出ているか、おそらく現在ないと思うのでありますけれども、今後は当然そういう話も出てくるでありましょうし、これは当方としても応分の協力をすべきものではないかと思います。しかし、インドチャイナの全域の中の一部である、現にサイゴン政府が支配している地域であるかどうかはともかくとしまして、この程度のことはやることは私は適当なことではないか。これを打ち切るというお考えはどういうところから出てくるのでございましょうか、お聞かせをいただければ幸いでございます。
  110. 荒木宏

    ○荒木委員 いま、調査団も行っておるという話でございますけれども、しかし一政府の派遣したその調査団は一方の地域にしか行っていないのですよ。しかもこのインドシナ問題について日本の置かれている立場といいますものは、アメリカがどんどん軍隊を送り、飛行機を送り、軍艦を送り、たいへんな破壊をしたその基地が日本にあるわけでしょう。ですから、日本としてはこの問題についてはまさに被害を受けておるベトナム民主共和国、パリ協定ではっきりとこのベトナムの自主権を認めるという立場で国際的に協定ができているわけですから、その精神に沿ってやるべきであり、まだ支配地域がどこであるかわからぬけれども、とりあえずということでそっちへばっかりお金が流れていく、こういったことはいまの国際情勢の中で政策としてとてもとるべきことではない。私はその立場からパリ協定の精神に沿って打ち切るべきである、こういうふうに申し上げておるわけであります。  アメリカとの関係について申しますと、これは韓国との問題も同じでありまして、日米会談では「この地域における平和と安定の促進のために貢献する用意がある」こういうふうになっておりますけれども、しかし、アメリカは通常援助で一億ドル、その上に三億ドルとこういうふうにしてまいりましたけれども、これが金額がずっと減ってきている。両方が共同目的のためにこの朝鮮半島に対する、韓国に対する援助をやっておるとすれば、アメリカが減れば日本がふえていく、こういったことが日米会談でなされたというふうに当然見ることができると思うのです。  そこでいまの事態で韓国の援助の問題これについても日米会談ではアメリカが減っておる分を日本のほうでふやしてくれ、こういうふうな話があったのではないか。これは新聞報道などでも伝えられておりますけれども、その点について大臣の御意見を伺いたいと思います。
  111. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まずベトナムの問題ですけれども日本の立場というのは先ほど申しましたとおりで、すでに北越との間にも国交回復というか、正常化といいますか、もうその段取りが始まっているわけなので、北越からもたとえば要請があれば、おそらく日本としては調査団等を必要に応じて派遣することは当然のことだと思うのです。そして従来からの経緯からいっても、南越との間は長く国交がございますし、段取りとしてそちらのほうが時間的に早かったとか、あるいは北越にも、こちらは国交回復前にも援助をする用意はあってもそれだけのルートもまだなかった。しかし人道的な立場から北越には若干でありますけれども、従来から援助をしたことも私は実績があると承知いたしております。  要するに日本の立場というのはそういう立場であって、その中の南については、調査団の報告等からいっても大体五千万ドルぐらいになるかなあという印象を持った話がされたというふうに私は理解しておりますが、それにしても交換された公文の上で両者の合意事項の中にはそういった金額とかこまかいことが合意されているわけではございません。したがってこれからの財政当局の立場から申しましても、北越との間においても段取りが進んでいけばこれに対して経済協力、適切なプロジェクトのもとにおいて日本の国益を考えながら、しかもベトナム全体に対する友好関係ということを考えて適当に処理をはかっていくべきである、何にも悪いことはないと私は思います。むしろそれは日本国民として当然なすべき方向ではないか、私はこういうふうに考えます。  それから、朝鮮につきましては、午前中御質疑があった点にもお答えをしたわけでございますけれども、現大韓民国政府がどうこうであるとかなんとか従来の態度にまでさかのぼって論議することは別といたしまして、相手国との間に友好親善、信頼関係がある。その両国の政府間におきまして経済協力等が行なわれていたわけでございます。問題を分けて、金大中事件というような不幸な事件が起こりましたから、それだからどうこうというのではなくて、この金大中事件というものが一日もすみやかに両国民が納得できるように解消、解決されて、そして両国の親善友好関係というものがもともとどおりの姿で確保されるということに保障がつけば、この経済協力関係というものは従来からの考え方を伸ばしていってよろしいのではないか。一人の国務大臣として答えろという午前中のお話でしたから、そういう角度で私はお答えをした次第でございます。
  112. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣によくお考えいただきたいのでありますが、アメリカがベトナムを爆撃した飛行機は沖繩から飛んでいった。その沖繩の基地を提供したのは自民党内閣である。そしてベトナムの解放臨時革命政府、解放戦線はサイゴン政府と戦争しておったのであります。サイゴン政府はアメリカからうんと援助を受けて、そしてアメリカの武器を使い、アメリカの兵隊の助けをかりて戦争しておった。そこのところにたまたま話があるからといってどんどん、どんどん援助するのはまさに一方のてこ入れじゃないですか。ここのところをひとつお考えいただかなければ、パリ協定の精神を尊重するとおっしゃってもベトナム人民の自決権を尊重することには、これはならぬと思います。  私が伺いましたのは、援助の方法が二国間であるとか、あるいは多国間であるとかいうその方法ではなくて、原則を伺ったわけです。精神が一体どういうところにあるか、ここのところをひとつ大臣十分にわきまえていただかなければ、いま出ておる五千万ドルの問題はまだぞろこういった一方に対するてこ入れ、しかも北欧三国や西欧諸国がやっておることすらやれぬではないか、こういうことから申し上げたわけであります。  韓国の問題につきましては、けさほど親善友好が基礎であり、それが回復されることを期待しておる、こういうふうな御答弁がありました。しかし事態はすでに明らかになっておりますように、国会の論議に対してすら公式な抗議的申し入れがあった。日本の国の最高機関であるこの国会の論議に、韓国の大使館筋から抗議の申し入れがある。しかも再三求めておる関係者の来日については実現をしない。報告すら、なかなか中間報告も出されなかった。  こういうような事態を考えてみますと、一体大臣がおっしゃるような友好親善が基礎だといたしましても、それの回復のめどがあるのか、むしろ事態は反対の方向にいっておるのではないか。ことに本年の二月十八日のワシントンの時事通信が伝えるところによりますと、アメリカの上院の外交委員会で韓国の報告書が公表されました。それによりますと、野党の政治家は政府の情報機関の監視のもとに絶えず置かれておって、そして投獄されておるという事例が紹介されており、経験の深い一外人観測者の話によりますと、李承晩大統領以来市民は最もきびしい弾圧のもとに置かれておる、こういった報告書が公表されたと伝えられています。  そういったところといまこういった事態にあって、なおかつ主観的な期待だけで従来の対韓援助をなお続けていかれるおつもりか。このことについて検討し対策を立てる、こういったおつもりはないのか。単に閣僚会議の時期を延期するといったことだけではなくて、あるいはもっと自主的に主体的にほんとうの平和五原則に基づく国際交流というものを進めていくためには、いまこれを打ち切るべきではないか。西独の例もあります。そういったことから大臣の御見解を伺っておるのであります。御意見を明らかにしていただきたいと思います。
  113. 愛知揆一

    愛知国務大臣 またもう一ぺん繰り返してベトナムのことを申しますが、北とも日本は友好関係を結ぼうとしている状態なんですね。ですから、インドシナ全体に対して、いままでのことはいろいろまた議論を繰り返せば議論があると思いますし、私も言いたいことはございますが、必ずしも荒木さんの御意見に賛成じゃないのですけれども、しかしともかくこれからの時点においてインドシナ全体の国民の再建あるいは人道的な立場からの立ち直りということに日本協力するということについて、しかもどっちがどっちだというのじゃなくてインドチャイナ・アズ・ア・ホールとして考えるということについては、私は何ら荒木さんとの間にも意見の相違はないのじゃないか、私はかように考えます。  それから韓国の問題は、けさから私、言い続けておるのですが、とにかく現実の時点においては不幸なこういう事件が起こりました。やはり真相は究明されて両国民が納得できるようにこの事件が解決、解消されることが私は望ましいと言っているのであります。それから同時に、こういうことがあったために日韓会談というものも延期になったわけでございますから、これはひとつそういう真相の究明から事件が納得できるような推移をたどりました場合において考えるべき問題である、かように存じます。同時に、これと従来の朴政府のやり方あるいは置かれた立場等々についての論議はまたこれは別の問題で、この点においてはわれわれは全く立場が違うかもしれませんが、そこにはあえて論点を置きたくないと思います。
  114. 荒木宏

    ○荒木委員 南と北と同じように扱っている、こういうようにおっしゃるのでありますが、もう事実がこの点をはっきりと証明していると思うのです。サイゴン政府の立場を支持するということは国会の答弁でも出ておるじゃありませんか。しかも卑近な例を申し上げますと、日赤を通してのあの援助にしましても、サイゴン政府には約五億円、そして本年になってやっと出されたベトナム民主共和国のほうへは約一千万円であります。五億円のほうは政府資金が出ておるという新聞報道があります。こういったようなことから、私は再三の繰り返しての御答弁でありますけれども、ここのところはパリ協定の精神というものをもっと深く突き結めてはっきりとそういった立場に立つということを明確にされねばならぬ、かように思います。  そしてこの対韓援助の問題につきましては、なるほど回復されることを期待しておるというお気持ちはそれといたしまして、問題は行政の措置であります。政治的なとるべき施策としていま申し上げておるのでありまして、私はそのことに関連しまして日韓経済協定の第一条2に定める合同委員会に関する交換公文の中で、「協定第一条1の規定の実施状況の検討」というのがその交換公文の四項の(e)というのにあります。これに基づいていままで日本政府が韓国に対してなされた有償、無償の援助の時期と品目、数量と金額、それから取り扱った業者とその使い道、これを明確にするたに資料とし家提出されるよう要求をいたします。  それから私は時間が三十分でありまして、あと国内問題の物価に関して財政、金融のほうを、関連して増本委員が質問されますので、その関係を一言だけ伺っておきたいのでありますが、物価に対する措置は、先ほど他の委員さんからも御質問がありました。私はその中で一つ今度の日米会談にも触れて、農産物の供給の問題が出ておりますが、例を小麦にとりますと、食糧庁長官が行かれて数量についていろいろと御努力になった。ところが価格が五ドル相場というようなことでたいへんな値段になっておる。新聞の報道によりますと、秋には小麦の売り渡し価格の値上げも考えざるを得ないだろう、こういうような報道も見られます。そこで大蔵大臣として、いまの物価を押えなければならぬ時期に小麦の売り渡し価格を値上げしなくてもいいような財政措置、これをおとりになるおつもりはないか、そういうふうにされるべきだと思うのでありますが、その点についてお尋ねをいたしまして、資料の要求とあわせて、私の質問を終わりたいと思います。
  115. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどお答えもいたしましたが、実は農産物の関係では私もいろいろ考えておるのでありますけれども、一例として先ほど飼料の点を申し上げましたが、小麦につきましてはいずれ来月から再来月にかけまして財政当局としてもいかなる名案があるか、タイミングとしてはそのころまでに対策をきめたいと考えております。先ほど飼料の点について申し上げましたように、財政の需要も各方面で非常に多いときでもございますから、すべて財政的な協力と言えば一般会計から財政資金を投入する、助成に使うということだけが考えられがちでありますけれども、やはりいろいろくふうをしなければなりませんので、たとえば融資というような姿を使って実際はしかし農民の負担をできるだけ軽減しながら、同時にその輸入価格を消費者に向ける場合に、できるだけその価格が上がらないようにするということについていろいろのくふうが必要だと思います。  従来にないようないわゆる輸入インフレ、ことに一次産品の価格の海外的な高騰の問題もございますから、従来的な手法だけではなくて、いろいろの案を考えて対処いたしたい、こういうふうに考えるわけでございまして、荒木さんから御希望を込めての御質問でございましたが、そういう御趣旨になるべく沿うようないろいろ多面的な方策を考えてまいりたい、こういうふうに思っておりますが、その時期は大体ここ一、二カ月の間に考えていいのではないか、こういうようにタイミングとしては考えております。
  116. 荒木宏

    ○荒木委員 先ほど他の委員の質問に対するお答えで、広い意味での財政的手法を含めて行政指導したい、こういう御答弁があったものでありますから、私は単に指導だけではなくて値上げがしなくても済むような、範囲の広い狭いはありますけれども、財政措置を講じられたい、このことを申し上げたわけでありまして、物価対策が緊急の問題になっておりますから、いまの御答弁の趣旨はひとつしっかりと守っていただきたいというふうに思います。  資料の点はいかがですか。
  117. 愛知揆一

    愛知国務大臣 対韓資料、いまちょっと事務当局から注意がございましたが、これは大蔵省だけでは作成ができないようでございますから、各省庁の御協力願いましてできるだけ御趣旨に沿うようにいたします。
  118. 荒木宏

    ○荒木委員 これで質問を終わります。  外務省のほうは時間の関係でお尋ねできませんでしたので、せっかくお越しいただいたのですが、あとでまた資料としていろいろ御教示いただきたいと思います。  関連で増本君が……。
  119. 大村襄治

    ○大村委員長代理 増本一彦君。
  120. 増本一彦

    ○増本委員 午前中からいままで、ほかの委員の皆さんの質疑を伺っていて、一つ卸売り物価の値上がりの原因が国内需給の逼迫と海外価格の上昇にある、こういうお話で、そのほかに消費者物価の問題でもいろいろ原因をお述べになりましたけれども、現在政府がおやりになる施策としては、結局国内需給の逼迫をどうするかという総需要抑制、これに限られているわけです。もう一つの海外価格の上昇に対して日本はどういう施策をとるのかという問題や、それから消費者物価の値上がりのいま一番大きな原因になっている公共料金の値上げの方向、これについては一定の御見解も大臣からいただいておりますけれども、あるいは管理価格、独占価格にメスを入れて高利潤を規制していくというようなことを含めた抜本的な物価対策というものをいま国民が求めているのではないかというように思うわけです。  その点で海外要因に対して日本は一体どうするのか。もちろん為替政策をとるということはできないし、これが輸入価格の引き下げにつながらないことはもうすでに経験済みのことであります。そうすると、いままで若干議論されてきましたけれども、特に農産物などの第一次産品が値上がりをして、これが卸売り物価に大きな影響を与えているという答弁での御指摘もありましたけれども、それなればこそ、一つは農産物などの自給率を高めていくということで、財政当局として一つは積極的にこの面でさらに一だんの御努力が必要だというように思いますし、さらに公共料金あるいは独占価格にメスを入れていくというようなことまで含めてひとつまず大臣の御所見をいただきたいというように思います。
  121. 愛知揆一

    愛知国務大臣 当面率直にいって非常に苦労しておりますのは、まず第一が農産物関係でございます。海外インフレの問題で一番頭を悩ましますのは、当面国民生活に直結する問題でありますだけに、ただいまお答えいたしましたように、広い意味の財政的措置、手法をいろいろ考えまして、さしあたりのところ、値上がりができるだけ幅が狭くとどまり得るような措置を当面の措置としては考えなければならない。これはすでに飼料等についても考えておりますし、これからいろいろ各種の問題が出てきつつあるわけでありますが、そういう方向で進めたいと思います。  さらに基本的には、ただいまもお話がありましたが、先般の米価を決定いたしますときにもあらためて農林省等ともいろいろ深刻な議論を戦わしたわけでございますけれども、やはり農業政策全般について、米の生産調整とあわせて、いろいろの種類のものへの転作の奨励その他積極的な自給度の向上がどういうふうなやり方でどのくらいのタイミングで期待できるか。この辺はただいま農林省当局でも非常に真剣に取り組んでおられることで、これらの点は財政需要、ことに食管会計等も非常に窮屈になっておる現状ではございますけれども、基本的な問題としてさらに農林省の御研究にまって協力をしてまいりたいと考えております。  それから、管理価格の問題等については、これは物価閣僚協議会等の問題として今後も相当実行面において効果があがるように、ひとつ関係者で協力してまいりたいと考えております。一口に管理価格と申しましてもいろいろございますから、どういうところからアプローチし、どこから解決の道を求めていくか、なかなか問題は広範であり、かつ困難であると思いますけれども、大蔵省といたしましても、そういう点については何か知恵があれば、さらに示唆もしたり協力も辞さない、こういう気持ちでおります次第であります。  それから、公共料金の問題、これは国鉄等については現に参議院で御審議を願っておりますが、先ほど企画庁側からも答弁がございましたが、現在ペンディングになっておる関電の料金の問題とかあるいは大阪瓦斯の問題とかいうものを含めまして、先ほど企画庁当局は現在白紙であると答弁しておりましたけれども、真剣にこれらの対処策をさらに検討いたしたいと考えております。
  122. 増本一彦

    ○増本委員 総裁にお伺いしたいのですが、ちょうど二、三カ月前でしょうか、総裁が参議院の大蔵委員会で、公共料金の今日での値上げはあまり歓迎できないような趣旨のお話が出て、それ以降経済情勢はますます過熱ぎみで、いまたいへん深刻な状態になっているわけです。この時点でかってお話しになった公共料金の引き上げは望ましくないというこの御意見は今日も変わらないものなのでしょうか。
  123. 佐々木直

    佐々木参考人 基本的には公共料金はなるべく上げないでほしいという考え方は変わっておりません。しかしながら公共事業体の経理の問題もありますから、そういう点を考えて公共料金を絶対に動かしてはいかぬということもまたこれは無理な話だと思うのであります。ただ、物価の問題を考えますときに、公共料金の問題は、上げるとしてもできるだけ小幅にしてほしいという考え方はいまでも変わっておりません。
  124. 増本一彦

    ○増本委員 時間がありませんので、ほかの質問は留保させていただいて、先ほど大臣も若干触れましたえさの問題です。これは九月一日が一応めどだということですが、たとえばいま配合飼料価格の安定基金への助成も、今度特別の積み立て基金をつくるといっても、大体トン当たり一万円以上上がる中で、二百円さらに上乗せするくらいの案しか考えられていないようでありますけれども、ここは農民の皆さん方のお話を聞くと、大蔵省が大きなボトルネックになっているというようにも指摘されている問題なんですが、ここらにこそもっと大幅な助成をして、こういう農産物価格の上昇によって大きな痛手をこうむることのないようにすべきであるというように私は思いますが、その点に限っては大臣としてはいかがなんでしょうか。
  125. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは率直に申しますけれども、この積み立て金に二百十一億円ほどの一般会計からの助成金といいますか、補助金といいますか、これを払い込んでほしいということが一つ中心課題になっております。私といたしましては、これは何も一般会計から現ナマでそういう措置をしませんでも、融資で切り抜けられるのではないか。ただその融資と申しましても、これはたとえば政府が保証するとかその利子はどうするとか条件とかいうことについてはできるだけわれわれも考えてみたいというようなことが一つの折衝といいますか、御相談の焦点になっておるわけでございまして、私は関係の農村の方々、酪農関係の方々にも、あなた方に心配をかけないように、しかしその手段、方法はもうぎりぎりのところだけれども、われわれにも十分ひとつ考えさせてほしい、一口に言えば悪いようにはしません、そういうところでいまやっておりますのですが、夜を徹してでもわれわれとして最善と思うところに話を煮詰めて妥結いたしたいと考えております。
  126. 増本一彦

    ○増本委員 卵価にしても乳価にしてもきわめて不安定で安い。ここでこれが上がれば結局農民だけでなくて直接消費者価格にも大きな影響を与えるということだと思うのですね。しかもいま融資を受けても返す手だてがない、あるいは非常に困難だというような状態ですから、これこそ私は一般会計を含めて財政の大幅な助成がいまこそ必要になってきている。この点についての検討も十分にやっていただきたいというように考えます。  あともう一点ですが、公定歩合引き上げによって当然市中金利も引き上がってくる。そこで、中小企業関係の問題についてはお話がございましたのでその点は省きまして、いま地方自治体が地方債の引き受けを銀行にお願いしている、縁故債などの地方債の引き受けの交渉条件の中では非常に金利が上がってきて、自治体側からすると金利をきめる交渉で苦労する。しかも金利の支払いでさらにそれが財政を圧迫するということで、これも地方財政の困難な問題になっているわけですが、やはりこういう地方債の引き受けに際しての金利の問題については、これを引き上げをさせないで地方財政の負担を軽減していくというような方向で考えるべきであるというように私は思うのですが、この点での強力な御指導を業界に対しては大臣としても積極的にとっていただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  127. 愛知揆一

    愛知国務大臣 地方債の問題につきましては、一つの考え方としては、先ほど申しましたように、国の各種の事業の繰り延べ等に関連して地方自治体にも国と同様の措置をお願いしておりますから、その面からすれば地方債の額というのはむしろ現在よりも当面のところはふえないというかっこうになるわけでございます。しかし一面地方財政の地方債に依存するところも相当な額になっておりますが、まず第一は地方債の引き受け、ことに縁故債、利用債というようなものについて、たとえば地方金融機関が他の貸し出しに向けるために地方債の引き受けに支障があるようであってはならない、ここがまず第一点だと思うのでありますけれども、幸いに地方金融機関におかれても、たとえば貸し出しワクの配分に際しまして社会的な影響を十分に考慮して、たとえば住宅ローンと同じように地方公共団体に対する融資に優先的に振り向けておりますので、われわれとしてはそういう体制で今後ともやってもらいたい、引き続き協力をお願いしていきたいと考えております。  なお、金利等の点につきましても十分ひとつ考えてまいりたいと思っております。
  128. 増本一彦

    ○増本委員 時間が来ましたので終わります。
  129. 大村襄治

    ○大村委員長代理 広沢直樹君。
  130. 広沢直樹

    ○広沢委員 午前午後にわたっていわゆる今日の景気の問題と物価問題についていろいろ質問がございました。私もそういう観点から数点お尋ねいたしたいと思います。  今日の異常な物価の上昇、今日のというかこれは数十カ月続いておるわけでありますが、その問題に対しては先ほどからお話がありましたように、総需要抑制という金融面あるいは財政面からの処置がとられておるし、また今後もそういう面については強力な体制でいこうということでありますけれども、やはり状況をいろいろ見ておりますと、一昨年の暮れいわゆる円の切り上げがあって、それ以降とってこられた経済政策というか経済の実態あるいはそれに基づいた政策の決定、またその効果という、いわゆる四十八年度の経済白書でも反省を含めて指摘されております三つのラグということによって今日の事態が引き起こってきたのではないかといわれております。  私は何ごとにも反省の中に改善があり、またそこに向上があると考えておりまして、きょうは日銀総裁もそしてまた大蔵大臣も御出席でありますので、昨年の超緩和からいまは強力な引き締めへと非常に短期間にこういう状況が出てきておるわけであって、何とも極端といいますか、いわゆる主体性のない姿じゃないか、こういうふうにも感じられるわけであります。とにかく今日の経済の実態からすると、こういう処置をとっていかなければならないことは当然でありましょうけれども、本年また一昨年の円切り上げ以後、いわゆる財政金融当局がとってきた経済政策に対する反省といいますか、評価といいますか、そういった点をまずお伺いしてみたいと思います。
  131. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど佐々木総裁が一昨年来の経過を振り返りながらお話があって、私もそのとおりと考えて伺っておったわけでありますけれども、超緩慢からだんだん引き締めに変わって今度は急激になってきた、おかしいではないかというような見方に対して、そのときどきの事情を回顧しながら御説明がありまして、私も全くそのとおりだと思いを新たにしたわけでありますが、私はさらに率直に申し上げてみたいと思うのは、これは先ほどから申しましたとおりですけれども、海外関係で円の価値というものをどうするかということが非常にむずかしい問題であると考えておりましたが、意外にこれがいま小康を得ているような状況に、いろいろな条件が幸いにしてこうなっている。したがってフロート制に移行しましてからあとは、金融政策というものは本来的に楽になったといっては語弊がありますけれども、正常化された姿の金融政策が展開されるようになったと思うのであります。この四月ごろから展開されている金融政策というものは、こういう時期においてはきわめて妥当なやり方ではないかと私は思います。  ただその際において、海外の事情というものが私どもがそれ以前に予想していたものとは非常にというか、がらりと変わってきたために、本来正常な姿で金融政策というものが一〇〇%に浸透し効果をあげるべきであったのに、そういった海外条件の変動というものに伴って思うような成果が出なかった、あるいは相殺されてしまったという難物を現在しょっている。しかし金融政策としてはこの春以降とられつつあるものがこの時期においては最も妥当なものである、これ以上に考えられることはないのではないかとすら私は思うくらいでございまして、ですから、先ほど来もいろいろの点から御指摘がございましたが、財政でもがんばっているつもりでありますけれども、むしろ他の総合的な政策の強力な展開というものが今日において最も望まれるところである。私の認識では、政府部内におきましてもそういう認識が急速に高まり、内閣をあげて全力投球をしつつある姿であるので、これが本来の金融政策等々と相まってこれから効果が期待できる段階ではないか、私はこういうふうに考えております。
  132. 広沢直樹

    ○広沢委員 大蔵大臣も四十八年度予算のときに、いわゆるこれから財政運営のあり方として三つの大きな問題点があるということで、それはいわゆる国際収支均衡の問題であり、もう一つ物価問題であり、そして福祉の充実である、これをひとつ経済の基本の中で考えながら財政運営をしていかなければならない、こういうお話をなさっておりました。確かに問題の指摘としてはそのとおりであったのではないかと私は思うのです。  しかしながら、確かに今日見まするに国際収支均衡のほうは徐々に回復しつつある、そういう状況になってきております。当然国際収支、いわゆる外貨の蓄積が非常に異常に伸びているという点を押えていこうということに対しては、それは輸出を規制して輸入をふやす、と同時に内需を喚起していかなければならない、こういうふうなやり方にパターンはなってくるわけであります。それは当然のことでありますけれども、そういう面にウエートが置かれてきたのではないか。その中にやはり問題になっておりました過剰流動性の問題、これも金融政策上で操作していかなければならなかった問題があった。いわゆる内需はだんだん拡大される方向に政策はとられていくし、その中における今日の金融情勢の緩和あるいは外為の払い超とかいった問題も含めて、そういう具体的な政策処置というものがとられなかったところに、投機も含めた今日の異常な物価の上昇が起こってきたのではないか。  ですから、三つの問題をとおっしゃったけれども、現実的には国際収支均衡にウエートが置かれ、物価、福祉の面は、もちろん財政は拡大されておりますから福祉に力を入れたとおっしゃるかもしれませんけれども物価がこのように異常に上昇してくるということになれば、福祉の面についても十分なる処置がとれなくなることは当然のことでありまして、ですからそういう面で、やはりそういった片寄った一つの行き方に今日の異常な景気過熱、物価上昇というような傾向が生まれてきたのではないかと思うわけです。  要するに超緩和から強力な引き締めへという非常に短いパターンの中で、物価というものは全然上がり下がりがなくてそのまま急上昇を続けているという状況にあるわけでありますから、それに対して今度の総需要抑制ということを強化していこうということでありますが、ここで日銀総裁にまずお伺いをしておきたいことは、公定歩合引き上げを行なってから実際に効果が出てくるまでの期間というものは大体どのくらいかかるものなのか。四月二日に第一次公定歩合引き上げをやって、今日まで四回ですか、非常に短期間のうちに引き上げられてきておるわけであります。ですからその第三次の引き上げのときにも、それで効果というものを一応考えた上での引き上げであったわけでありますから、またこの第四次の一%という思い切った引き上げにあたりましても、先ほどお話がありましたように記者会見では、これで効果がなければ第五次も考えざるを得ないんだ、こういうようなことをおっしゃっておられるわけでありまして、ですから、今日このような異常な物価の上昇に対して総需要抑制して対応しなければならぬというのであれば、相当思い切った手段を国がとっていかなければならない。  ところがその短期間に徐々に徐々に上げていく、おそるおそると言ったら語弊があるかもしれませんけれども状況を見ながら上げていく。そしてその効果がまだ十分にあらわれてこない間にまた次の手段をとらなければならないといったところに、今日の金融当局の物価に対する配慮の具体性というものがないのではないかと私は考えるのですが、その点に対してお答えをいただきたい。
  133. 佐々木直

    佐々木参考人 公定歩合引き上げ中心とする金融引き締め政策効果が実施後どれくらいかかって出てくるかという御質問だと思いますけれども、これは当然のことでございますが、そのときそのときの経済情勢によっていろいろ差があるものでございます。しかし大体において引き締めを開始しましてから、半年から長いときで十カ月くらいたちますと経済の実態に影響が出てくるものだと、いままでの経験では思っております。ただ、今度の物価の上昇は、さっきからたびたびお話がございましたように非常にいろいろな複雑な原因がからみ合っておりますので、物価面にどの程度の効果が出てきますか、その時期の判断が、先ほども申し上げましたように実は今度はなかなかむずかしいのでございます。  それから今度の公定歩合引き上げ、たびたびいたしておりますことについてのお話でございますが、私どもも一回の措置効果が上がればたいへん望ましいので、たびたびいろいろ政策を動かしますことはいろいろな影響もありますので慎重に考えなければならないのであります。  ただ第一回の四月の公定歩合引き上げは〇・七五といたしましたけれども、それまでの戦後の日本銀行公定歩合引き上げは最高〇・七三でございます。それは日歩で二厘ということでございます。したがって〇・七五上げましたときには、いままでの引き締めのやり方といたしましてはやはり一番強い手段を選んだつもりでございます。決しておっかなびっくりやった考え方ではございません。今度一%上げましたことにつきましては、これは最近の総需要の強さ、特に物価の上がり方の幅の広さ、そういう特殊な状況を考えて、またいままでにない強い措置をとり、今度こそは効果が早く出るということを期待しておるわけでございます。
  134. 広沢直樹

    ○広沢委員 その事情はよくわかりますけれども公定歩合引き上げて実態面へ出てくるのは大体六ヵ月、こういうことであります。しかし最近の卸売り物価にせよ、小売り物価にせよ非常な急上昇で、月々の上昇があまりにも激しいというので、早く効果をあらわす意味でこういう緊急対策をおとりになった。これも当然いまの当面する問題に対する対応策としては、その効果があらわれてからどうしようかということではこれはおそいので、私はそういう面について、これはいけないという意味ではございません。  しかしいまおっしゃったように、そういうような物価の異常上昇に対する対応策としてのこういう強力な引き締めを短期間に行なっている。一体それでは、国民にせよ、それから企業にせよ、これからの景気の動向というのはどうなるのだろうか。特に企業にすればこれから景気はどうなるのだろうかということは非常に先行き心配になって  いるという状況にありますし、また国民にとっては、異常な物価がずっと十数ヵ月も連続、異常に続いているわけでありまして、いままでのいろいろな論議の中から伺っておりましても、卸売り物価は何とか年度末あたり、あるいは暮れには多少そういう影響も出てくるのじゃないかというそれぞれの各方面の見方もぼつぼつ出ております。しかしながら、小売り物価については、消費者物価についてはまだまだその効果というものは期待できないのじゃないかということも言われております。  したがって、そこまで強力に引き締めをやっていこうというお考えに立ったのは、先の見通しは大体どの時点にどういう効果を期待なさってこう  いう処置をおとりになったのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  135. 佐々木直

    佐々木参考人 いまの日本経済におきましては需要が非常に強い。そのために物資の需給が窮屈になっていると思います。したがいまして、こういう総需要の強さというものを押えていかなければならぬ。その需要を押えますとどうしても景気は鈍化してくるわけでございます。また景気が鈍化しなければ、とにかくこの春以来の経済成長の早さからいいますと、あまりに経済成長が高過ぎる。したがって私どもとしては、この秋以後は景気は鈍化してくるもの、そういうことをねらって、われわれとしては金融政策運営し、そうしてそういうことによって物資の需給の緊迫を緩和させていくことが必要である。こう考えておりますので、景気の先行きにつきましては、私はそういう考え方で企業もやっていただきたい、慎重な態度をとっていただきたい、こういうふうに思っております。
  136. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで大蔵大臣物価の問題についてでありますが、いま景気の先行きのほうがそういう予測でいまの金融政策をおとりになっているわけです。そこで、先ほどお話がありましたけれども、いわゆる不景気の中の物価高、いわゆるスタグフレーションといいますか、その問題についてもやはり懸念されるということは、今日の物価高というのは海外要因というものが非常に多いのだ、四割強を占めているとまでいわれております。したがって、日銀総裁も記者会見の中では、そういう意味であるから、いわゆる国内でのそういうような不況あるいは景気のかげりの中での異常な物価というものは押えたいという、これはまあ当然な話でありますが、約四割強にも及ぶ海外要因というものが非常な状況にあるとするならば、そういう一つの不安というものも起こってくるわけでありますが、これに対してはどういうふうにお考えになっていらっしゃいましょうか。
  137. 愛知揆一

    愛知国務大臣 海外物価高に対して私の一番の懸念は、第一にはやはり一次産品の輸入が非常に多いわけですから、これに対してはさしあたりはやはり価格補給的な考え方で、財政面からも相当協力をしなければならないと思います。  それから恒久的には、やはり食料等についてはもう少し、米以外の自給度を高めることであろうかと思います。こういう点については財政需要が特に食料関係では、米の関係からいっても非常に多いわけでございますが、生産調整ということと相並んで、転作その他の拡充ということに意を用いるべきではないか。しかしこれは相当時間的な要素もございますし、それから、一体財政上の措置とその効果がどういうふうなあんばいになるか、これらの点については所管の農林省当局と、来年度予算との関連もありますので、大いに掘り下げた検討を加えてまいりたい、こういうように考えております。  それから、それ以外の面についても、たとえばエネルギー資源の関係その他も、心配すれば限りなく心配があるわけですが、ひとつ輸入先をできるだけ広めるとか、あるいはこのごろよく話題になっておりますが、海外資源の開発等についても積極的な日本としての協力をすることとか、いろいろの手も考えられるのではなかろうかと思います。しかし同時に、日本経済成長の足取りとそういったような物資の需給関係とがどういうような関係になっていくか、これを輸入政策あるいは経済協力政策とどういうふうに結びつけるか、これは相当基本的かつ総合的な対策相当恒久的に検討しなければならない、もうまさに時期が来ている、おそ過ぎるくらいになっているのではないかと考えます。  さらには産業構造の問題にもなろうかと思いますが、これらの点につきましては、今日の異常な事態というよりは、われわれが予測しなかったようないろいろの要素がここにあらわれてきているわけであります。しかもこれは将来的にもずっとつながっていく問題であると思いますから、当面の措置はもちろんのこと、恒久的な、ほんとうの広い意味日本経済政策というものについて目を向けていかなければならないと思います。  それから、基本的には、いままでのところは企画庁の研究によりましても、たとえば貸金の水準が急速に上がっておりますが、これが今後どういうふうに生産性に結びついていくのか、それらの点については、これは海外要因ということではございませんけれども、海外の各国も同様に当面している問題でございますから、やはり大きな意味国際協力ということで、それぞれ今後処すべき道や考え方を相互にいろいろ共同に検討、研究を進めて、そして新しい一つの考え方というものを国際協力の面でも押し出していくようにしたいものだ。こういう空気はOECDだけではなくて、通貨会議等の場におきましても、いろいろと各国心配を表明されております。その間にはお互いにいろいろの知恵の出し合いということもこれからはかなり活発になってくるのではなかろうか。日本としてはおくれずに、よいところはできるだけ吸収しておくれをとらないようにしていかなければならない、こんなふうに考える次第でございます。
  138. 広沢直樹

    ○広沢委員 いずれにしましても、これからやはり今日の景気はある程度いまの過熱的な方向から、それを静めていかなければならないことは当然でありますし、今後やはりそうなっていくであろうし、していかなければなりませんが、それと同時に起こってくる問題は、やはりいま申し上げた不況下の物価高と言い切ってしまえばどうかと思いますけれども、そういう現象が出てくるということは、これは重大な問題になってくる。その要因がやはり海外のインフレ要因に基づいているという、原材料をほとんど海外に依存しているわが国としては、そういう影響を受けざるを得ないということをいわれている今日でありますので、当然この面に対するいまお話がありましたような具体的な処置を講じて、そういうことのないようにひとつ十分なる配慮をしていただきたい、そのことは要望として申し上げておきたいと思います。  それから、この金融引き締めにあたって、また財政も来年度へ向かって約八%公共事業を繰り延べる、こういう方針を閣議で報告されたと報道されております。これは公共事業を来年度へ繰り延べるということをおきめになったのでありましょうか、いかがでしょうか。
  139. 愛知揆一

    愛知国務大臣 来年度に繰り延べではなくて、あくまでも年度内の時期的調整でございまして、いわゆる繰り越しではございません。と申しますのは、金融の面においてもそうだと思いますけれども公定歩合の上げ下げというようなものは私は比較的短期の政策手段であると思います。それから財政もやはり年度主義ということで、やはりこれは年度を通じて公共事業にいたしましても、いろいろの御批判はあるでしょうけれども政府としてはいろいろの要素をかみ合わせて真剣に計画いたしたものでございますから、これは年度を通じて実施を考えていくべきものである。しかし時間的に考えればこれを景気調整あるいは物価問題との関連においてタイミングを考えていくというのが、政策手段として当然許されることであると思いますので、これを繰り延べるということに決定いたしましたが、年度を越してこれを次の年次に送るという意味ではございません。状況が安定してきたら、あるいはきざしが見えたら、あるいは資材の関係等が好転してくればこれは実施をする、つまり解除をするということを含みとして持っておるわけでございまして、正確に言えば、むしろこれは支出を留保した、こうお考えいただけばいいのではないかと思います。  それから同時に、これはお尋ねと関連して申し上げるのでありますけれども、この繰り延べ対象になります事業はすべて原則的に繰り越し明許をいただいておりますから、場合によりましてはこれが次年度に繰り越されましても、これは繰り越し明許によりまして残った事業は来年度に施行はできることになっております。これが例年、先ほど御指摘をいただきましたが、ある程度のものは次年度に繰り越されておりますから、そういうものもあり得ることはもちろん予想いたしております。
  140. 広沢直樹

    ○広沢委員 ですから、先ほどもいろいろ議論がありましたように、この八%の公共事業の繰り延べという問題につきましては、やはり金融がそれだけいまの景気に対し、そしてまた異常物価に対して対応しようとすることに対して、やはり今日の景気対策というものはあくまでも金融だけでは限界があるのだということをしばしば日銀さんのほうも申されておるし、これは当然常識的にもそういうことはわかっているわけです。ですから財政的にもこれは四十七年度の補正でも大型の補正を組まざるを得なかった。そしてまた四十八年度も福祉的な充実という方向から大型の予算を組まなければならない大勢になってきたわけですね。ですから年度内の繰り延べだけで処置ができるのかというと、上半期繰り延べをやってきたけれどもやはり物価に対しては、また景気に対しては、その効果というものは出てきてないので、金融当局としては第四次の強力な引き締めをまたやらなければならぬという段階にきたのでありますから、そういう財政当局と金融当局の見方が基本的に——財政当局がただ繰り延べしてその範囲内て済むのだというような安易な考え方で実際今日の景気問題、さらに異常物価問題というものは解決できるのか、そういうところに見通しの甘さがあるのではないかというふうに考えられるわけです。ということは、この八%はいま言うような状況に応じては来年度に繰り越すということも、景気の動向においてはあり得るとして前提に置いた考え方でいらっしゃるわけですか。
  141. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはこういうことなんです。先ほど説明をしました年度を繰り越したものが過去の年度においてもございますけれども、これは年度中に政策の決定として繰り延べをしたから、そこで繰り越されたものではなくて、実行上いろいろの他の原因によって支出実行が繰り延べられて次年度に及んだものである。  今回の場合は、例を求めれば四十二年度に例がございますけれども、これは年度中に、今度は四十二年度よりも幅が広いわけでありますけれども、八%を繰り延べるということにきめたのでありますから、自然的に他の要件によって繰り延べられた額をこれと比べるというわけにはまいりません。すなわち財政上の措置といたしましても、今回の措置というものは、私どもとしてはもちろんでございますけれども、関係実施官庁の、あるいは地方公共団体のかたきを忍んでの物価問題に対する非常な協力のあらわれとして、これらの多くの関係者の非常な協力によって年度中、八月中に八%の繰り延べをしたということは、これは従来の自然的な状況の結果と一緒に論ずべき筋合いのものではない、かように考えております。
  142. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間がありませんので、まだ数点聞かなければならぬことがありますから先にいきますが、次に中小企業の問題です。  こういう総需要抑制というために金融措置がとられますと、勢いいままでのパターンは中小企業にしわ寄せ、こういうことになっておるわけです。特に引き締め状態がおそらく効果をあらわしてくるであろういわゆる九月決算期を過ぎたあたり、あるいはまた十二月、そういうころは例年中小企業に大幅な金融措置というか特別措置を講じているわけですね。  ですから今回の場合、中小企業は御存じのようにいま物の不足という問題と金融引き締めという両方の問題で非常に苦しくなってきておる。手元流動性の厚い企業においてはそういうことはないでしょうけれども、実際にそれがないいわゆる中小企業においては、そういう状況が顕著にあらわれつつあるわけです。  したがって金融引き締めの中で今度中小企業金融機関に預金準備率をまた引き上げ対策をとっておるわけでありますが、そういう点とからみ合わせて考えていく場合に、中小企業対策というものは今後どういうふうに考えていくべきなのか、どういうふうに考えておられるのか、その点をまずお伺いしておきたいと思います。  信金にしても相互銀行にしても預金準備率引き上げて、いわゆる量的な規制をやろうとなさっていらっしゃる。一方においては政府三機関の中小企業金融に対しては、そういう原材料不足によるいわゆる困った面については、資金的にめんどうを一時的に見てあげましょうというような手段をとっておるが、こういうことが重なり合ってやはり年末においては中小企業の倒産というものはふえるのではないかという危惧が大きく広がりつつあるわけでありますが、その点に対しての対応策というものはどういうふうにお考えでしょうか。
  143. 愛知揆一

    愛知国務大臣 具体的に申し上げますと、全国銀行の中小企業向け貸し出しの比率を比較してみますと、昨年六月が三二・七%、それから今年の六月が三四・九%でありまして、全国銀行の貸し出しの比率から見ましても、中小企業を累次の金融引き締めによって圧迫しているということはございません。むしろ昨年同期よりは高い比率にあるということがいえるわけであります。  それから、今回の預金準備率引き上げについては、信金、相銀等も含めましたけれども、やはりこれは御説明いたしておりますように、いわば全体の凍結額が二千二百億円に対して四十億、八十億というような常識的な程度でございます。それから財政の繰り延べにおきましても、三金融機関は全然手をつけません。こういうわけでございますから、いろいろ過去の経験上からいたしましても、中小企業金融については、こうした量的の面におきましても非常な配意をいたしておるつもりでございますし、今後も十分配慮してまいりたいと思います。  それから、倒産の関係も、件数は増加傾向にありますけれども、ただいままでのところは、内容的に見ると、緩和期に行き過ぎたしぶりを示した企業がここへきて行き詰まったという例が大半を占めておる模様でございますが、これらの状況についても、今後の状況については十二分に注意を払ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  144. 広沢直樹

    ○広沢委員 現状においては、インフレ等の影響もあって多少利潤率がよくなったというところも出てきているようでありますが、私が危惧しているのは、例年にある年末における資金繰りの問題なんです。ですから、当然景気の動向というものに対してこれが相当影響を与えることは事実でありましょうが、やはり年末における中小企業への特別融資というものについては、十分にこういう配慮をしていかなければならないというふうに考えているわけで、これも要望をいたしておきたいと思います。  それから、いわゆる公定歩合引き上げますと、預金利子の取り扱い、これも引き上げていかなければいけないのじゃないかと思うのですね。インフレで被害を受けていくということははっきりしているわけでありまして、預金者あるいは確定利子つき債券を保有している者、そういった者は、貸し出し金利がそういうふうにずっと上がってまいりますと、インフレによる被害というものが出てまいります。また、それで得する者はだれかということになれば、金融機関だとかあるいは低利で融資を受けておった企業というものは当然得をしてくるという結果が出てくるわけです。  金融市場がいわゆる完全に競争的であれば、物価上昇下においては、預金金利も含めて一切の金利が上がるというのが常識だろうと思うのですね。ですから、今日のようなこういうような物価上昇が続いている中においては、当然預貯金の金利というものも引き上げるべきではないのか。これは社会的な公平論の上からいっても当然な話でありますし、そういうことによって、いま起こっておりますいわゆる換物思想といいますか、そういったことも阻止できる役割りになっていくのでありまして、これは当然考えなければならない問題だと思うのですが、この点についてどういうふうにお考えになっておりましょうか。
  145. 愛知揆一

    愛知国務大臣 公定歩合の上げ下げというのは、私の考え方では、比較的短期な政策手段であって、そしてこれを相当長期の金利の体系というものに必ずしも連動して考えなければならないという性質の問題ではない、かように考えるわけでございます。したがいまして、今回の大幅のマル公の引き上げに際しましても、これがたとえば貸し出しあるいは長期それぞれの金利その他にどういうふうな反響を呼ぶものかということも見定めながら、また一方においては、いまお話がございましたように、預金者を大事にしていきたい、こういう考えと両面からとくと考えていくべき問題である。  必ずしも預金の金利引き上げをやらないという意味ではございませんけれども、そういう考え方でございますから、かりに今後預金金利引き上げということを考えます場合も、その幅はそんなに大きなものとお考えにならないでいただきたい、かように考える次第でございます。  同時に、先ほども申し上げましたけれども、やはりいろいろの観点から金を大切にする、あるいは過剰流動性の吸収というような面から申しましても、物価対策の進行と相並行して、また別の観点から貯蓄手段を多様化する、あるいは貯蓄者の立場をより厚遇するというようないろいろの配慮を加えまして、適切な妙案はないかということを考えているような次第でございます。
  146. 広沢直樹

    ○広沢委員 今度こういう短い時間に一%という異常な強い引き締め政策をとったわけでありますが、これに基づいて預金金利を上げるということを考えざるを得ないというお考えなのか、いまはそういう考えはないのか、この点、もう一ぺんはっきりしていただきたい。
  147. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一口に申しますれば、いまは考えていない、こう申し上げるような心境でございます。
  148. 広沢直樹

    ○広沢委員 これは意見としていま最初に申し上げておきましたとおり、やはり引き上げるべきではないか、私は同時に引き上げるべきだというのですが、いま大臣もそういうお考えで、将来においては成り行きを見ながら考えたいということでありますので、いまは直ちに上げるかといえば答えられないということのようでありますけれども、それは当然いまのような換物思想、そういうようなインフレの中においては、いわゆる預貯金金利引き上げて、やはり安定した国民の貯蓄ができるような体制というものを考えていくべきであるということを強く要望いたしておきたいと思います。  続いて、今度の金融引き締めの中でいわゆる消費者ローンも抑制していかなければならない、いわゆる個人の消費支出というものが非常に大きくなってきている、これは当然考えていかなければならない問題だと思うのですが、当初問題になっておりましたいわゆる住宅ローンについて簡単にお伺いしておきたいと思うのです。  この住宅ローンの問題についても、やはりこれだけ強い引き締めを行なわなければならない段階になってまいりますと、これだけ特別にというわけにはいかぬ状況が出てくるのではないか、こういうことが懸念されているわけであります。確かに住宅投資というものは、今日の経済指標の上から見ますと上がってきておりまして、これについてもいろいろまた論議があるところだと思うのでありますが、私は、福祉という見地から考えていっても、今日までの住宅事情から考えていっても、やはり住宅ローンについて、特に個人それからアパートですか、そういういまの住宅事情を緩和するために具体的に役立つような大きな要因を持ったものについては、これは特別な配慮をしていくべきではないだろうか。  この点について日銀総裁にちょっと意向をお伺いしておきたいと思うのですけれども、日銀総裁は、これも程度ものであるというような表現を使っていらっしゃる。それはこの問題をどんどん拡大させていけばいいというわけにいかぬ、景気調整の中の一環として考えなければならない問題ですが、私は、少なくとも今日までの状況は安定的にそれが行なわれていくような体制というものを考えていかなければならないのじゃないかと思うのですが、その点はどういうお考えを持っていらっしゃるでしょうか。
  149. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいまちょっとお話がございましたように、住宅ローンというものは、ほかの先進国ではやはり景気調整の非常に有効な手段と考えられておりまして、引き締めのときには住宅ローンも押えられておるのでございます。しかし日本の場合には、住宅ローンというものを銀行が取り上げましてからまだあまり日がたっておりません。最近の伸び率は非常に高うございますけれども、その絶対額というものはまだそれほど大きなものではございません。したがって、ただいまお話がございましたように、いまの日本の住宅事情を考えますと、これをほかの企業金融と同様に押えていくということは適当ではないと思っております。ただしかし、その場合でも、いまのような環境でございますから、少なくとも第二の家をつくるためのローンとかいうようなことはやめてもらいたい、そういう意味引き締めの気持ちは入れてほしいと思いますが、大体最近の各銀行の住宅金融の実績は量的に維持してもらうようにお話をしております。  それから金利の問題につきましては、住宅ローンにつきましてはいま銀行の申し合わせの金利の中に入っておりません。したがいまして、各行がそれぞれの判断でやっておりますが、最近ではほとんど金利を変えていないようでございます。しかし、この問題につきましてはいま金融制度調査会でいろいろ住宅金融のことを研究しております。その結論を見て考えられていい問題ではないか、こう思っております。
  150. 広沢直樹

    ○広沢委員 住宅ローンの問題については、総需要に占める投資の割合というものは大体一〇%前後——いま一一%くらいてすか、それから貸し出しに占める割合というものは各銀行二〇%ぐらいになっているのですが、大体そういう線のところはそういう中にあっても、特に日本のいまの実情をお話しになりましたけれども、そういう住宅事情を勘案して、当然この線はひとつ安定的に維持できるように配慮を願いたい、こういうふうに要望し、お願いしておきたいと思います。  だいぶ時間がなくなりましたけれども経済企画庁に来ていただいておりますので、若干お伺いしておきたいのですが、四十八年度の経済見通しでありますけれども、これはいまの卸売り物価にせよあるいは消費者物価にせよ、こういう異常な状態が来て、当然当初見通しのとおりおさまるということはできないのじゃないかというふうに思われるわけであります。  そこで、さきの予算委員会において、当初円の再切り上げの問題が起こったときに経済見通しを変えなければならないのじゃないかという論議が盛んに行なわれました。事実上、今日に至りますとやはり当初の見通しというものは相当狂ってきているのではないか。部分的には国際収支だとかそういう面については徐々に効果があるところもありますけれども、そういう面で経済見通しというものを——当時予算委員会では、経済企画庁長官はもう少し先行きを見て中間的に修正はしなければならぬのだということをおっしゃっておられたのですが、その点はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。  それから、物価局長も御出席いただいておるのですが、やはり今日の物価の問題についてはいわゆる物の供給不足ということが非常に大きな問題になっております。特に基幹産業でありますセメントとか鉄鋼だとかそういう問題あるいは繊維の問題、木材の問題にしてもそうでありますが、こういったものは依然として供給不足になっている。それが値上がりの一つの大きな根拠にもなっていることでありまして、やはりこういうものに対する具体的な対策というものをどう考えていくか。これはこまかくいえば、通産省あるいは木材は農林省というふうになりますけれども、総合的に物価調整をしあるいはそれの対策を立てていらっしゃる経済企画庁としてのお考えを聞きたいと思うのです。  この供給不足というものが解決しない間というものは、やはり値上がりというものは続いてまいりましょうし、ですから、その供給不足の需給ギャップというものがなくなる時点というものは、大体どういうところをめどに置いて、どういう体制をいま具体的に講じられようとしておるのか。先ほども申し上げましたように、いわゆる中小の企業というものについて、ほんとうに物がないということと金融引き締めということで相当いま困惑しているわけです。困惑というか実に憤りというか、そのやり方について非常に強い陳情なり要望があるわけでして、その見通しを早く立てたいということが切実な問題になっているわけであります。  その点に対して的確な総合判断の上からその方向というものを示される必要があるのではないか、こう思いますので、その点をお伺いしたいと思います。
  151. 青木慎三

    ○青木政府委員 四十八年度の経済見通しに対しまして現在経済の実勢がだいぶ違っているのではないかという御指摘でございますが、四十七年度の後半に非常に経済の実勢が強くなりまして、その後四十八年度に入りましても、民間設備投資あるいは民間住宅投資というような指標を見ておりますと、相当実勢としては強い状況であるように思われます。ただ四十七年度の後半が非常に伸びておりますので、四十八年度の第一・四半期は前期に比べますと伸び率は若干落ちているのではないかというように予想しておりますが、いずれにしましても前年同期に比べますと相当高い状況で推移しているわけでございます。ことに指標が早く出てまいります卸売り物価等につきましては、前年同期に比べまして一五%をこえるような騰貴をしておりますので、経済の実態が見通しを立てました時点から相当変わっているということは事実でございます。  また一方、国際収支のほうも当初の予想よりは輸入が非常にふえておりまして、若干数字が当初予想しておりましたものとは違う動きをしていることもこれは確かなことでございます。  ただ、現在までのところ私どものつかんでおります指標の大半は七月まででございますし、第一・四半期全体の数字といいますのも速報で今月末でなければ出てこないというような実情も一方にあるわけでございます。それに加えまして現在こういう強い経済情勢の中で引き締め政策を実行いたすわけでございますが、先ほどいろいろ御議論ございましたように、引き締め政策のあらわれるのが時期的には若干ずれるということもございまして、私どものほうで予測しておりますのは、この秋ごろからこういう経済の実勢に若干引き締め効果があらわれまして、その騰勢が鈍化してくるというふうに見ております。  こういう情勢でございますので、経済見通し全体を見直すとなりますと、あらゆる項目の数字を全部洗い直しまして斉合性を持った見通しを考えなければなりませんので、いま少し事態を見守りまして、もう少し引き締め政策の浸透を見きわめました上で必要があれば経済見通しそのものも再検討する必要があるかと考えております。ただいまのところはもう少し事態を見守りたいということでございます。
  152. 小島英敏

    ○小島政府委員 おっしゃいますように、最近どうも供給不足が幾つかの商品について顕著になってきていることは事実でございます。まさに供給不足というのは需要に対する供給不足でございまして、私は一部の方が言っておられるように特殊の要因による特殊の物資の値上がりというふうには考えておりません。全体的に水位が高くなり過ぎたために、物によって供給力のあまり高くないものが堤防が同じような高さになっていないわけでございまして、物によってはやはり供給力の限界が早く来るものがあるというところにどうも幾つかの物に非常に供給不足が顕著になってきた原因があるというふうに思うわけでございます。  しかも水位が高くなってまいりました原因の一つに全体的なインフレ気がまえと申しますか、思惑的に何しろいま買っておけば間違いないというような気分が蔓延して、これが流通在庫の積み増しという形で、どこにあるかわからないけれども何しろ需要が強いというような状況が顕著でございますので、やはり水位を下げる上にはそういうインフレ気がまえを払拭することが重要であると思います。その意味からも、今回の大幅な公定歩合引き上げその他の金融引き締め、さらに財政の繰り延べということが決定されまして、さらに明後日、その他の面も含めまして総合的な物価対策を打ち出すべく現在鋭意検討しているわけでございますけれども、従来に比べますとかなり強化された物価対策が打ち出されることになると思いますので、こういう面で実需の減少プラス仮需要の減少というものがかなり期待できるというふうに思います。  その意味で全体としての需要調整、これが中心でございますけれども、そのほかにやはり現在通産省で各物資別に検討しておりますが、個別のもの、特に先ほど申しました供給不足が非常に顕著なものは、どちらかというと建設資材にわりに多いわけでありまして、そういう意味からも、現在検討中の新規の建築について規制をするべく準備いたしておりますけれども、そういうものも含めて、さらにどうしても、物によってどうにもならないようなものは、一種の緊急措置でございますけれども、大手のところに対する供給を一部削減して小口の需要を確保するというような対策も通産省を中心に行なわれておりますが、そういう全体の仮需要を含めた総需要調整と、それから個別の物資対策というものと相まちまして、何とか現在のような異常事態を一日も早く解消いたしたいと思っておる次第でございます。
  153. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間がオーバーしましたので、この点についてまだ聞きたいことはたくさんあるのですが、次の機会に聞かしていただくことにして、最後に大蔵大臣、最初に申し上げましたように、今日の四十八年度のインフレなき福祉を目ざしてという、経済白書が指摘しているように、やはり経済の実態の認知だとかあるいは政策の決定あるいはその効果という三つのラグをあげて、ズレによって今日の状況というものは出てきているという反省を含めた経済白書が出されておりまして、私は、その点についてはそれなりに評価しながら読ませていただいたのですが、こういういままでの形を見ておりますと、先ほども申し上げましたように、何か現在の景気に、金融にしても、財政にしても、主導的ではなくて、追っかけ追っかけやっているというような状況がある。やはり、より経済動向というものは、これは経済は生きものですから、正確にということはこれは非常にむずかしいことで、あらゆる観点から予測をなさって、そうしてその最大公約数で方向をきめていらっしゃるわけでありますけれども、聞くところによりますと、そういうような景気調整物価対策を機動的に行なうために、経済調整機関といいますか、そういったようなものをひとつこしらえて、各省庁で相当、いま経済企画庁もおっしゃっておられますように、総合的には経済企画庁で具体的な体制を見ていらっしゃるわけですけれども、やはり通産省は通産省あるいはまた農林省は農林省と、それぞれの所管があってそういったものに対する強力な体制をつくろう、そういう動きがあるやに聞いておるわけでありますが、経済調整のそういった機関をおつくりになる考えがあるのかどうか、その点最後にお伺いして終わりにいたしたいと思います。
  154. 愛知揆一

    愛知国務大臣 新聞に伝えられているような考え方がないわけではございませんで、やはり総合的な見方に立って考えていくほうがいいのじゃないかという説もございますし、また一面におきましては、現在の体制といいますか、行政組織で十分ではないか、屋上屋を架する必要はないという見方と両論ありまして、政府部内におきましても、さらに十分検討いたしたいと考えておる次第でございます。
  155. 大村襄治

    ○大村委員長代理 竹本孫一君。
  156. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は二つほどお尋ねをいたします。時間もおそいようですから、簡潔に御答弁をいただければありがたいと思います。  一つは、対韓経済協力をこの辺で見直すべきではないかという問題の関連、もう一つは、銀行のあり方についてやはり本格的に検討をし直すべきではないか、あわせて銀行法の改正等も取り上げるべき段階に来ておるではないかという二つの点であります。  まず第一の対韓国問題、現在きびしく問い直されているようでありますけれども、この問題について私どもの基本的な考え方を最初に申し上げますけれども、われわれは世界すべての国と友好親善で行きたい、かように念願をいたしまして、大臣もよく御承知のように、日韓条約の問題につきましても民社党は賛成の立場をとったわけであります。しかしながら、これは韓国と仲よくしていきたいということであって、朴政権をどうするという問題とは一応話が別であります。  今回金大中事件が勃発いたしまして、世論もだいぶやかましくなっておりますが、われわれ日韓条約を支持した立場から考えてみますと、ある意味においては、何だかわれわれの信頼と期待を裏切られたような現実を見せつけられるような気もいたします。そういう意味で、この問題については当然真相が解明されるのを待たなければならぬでありましょうけれども、しかし一定の長い間真相がまだわからないとか、向こうから返事がないのだとかいっているようなごまかしでこの問題を乗り切るわけにはいかない。やはりここで主権の侵害があったかなかったか、そういう問題も含めて、政府としては一応強い姿勢で臨んでいただかなければならぬ。われわれが友好親善を心から望んでおればおるだけに今度のような不当な、むちゃくちゃな、ファッショ的なやり方に対しては、特にそれか政府関係機関——きょうの新聞でも一部の新聞は、情報機関の一部に関係があるということをはっきり言っておりますし、法務大臣の答弁等も、そういうことがうかがわれるようであるし、わが党がちょうど韓国に行きましていろいろ調べた話等も聞いてみましても、そういうニュアンスが非常に強い。  そういうことから考えて、友好親善を基本的たてまえにするだけに、より一そう大きな怒りを持つと申しますか、きびしい態度を持って姿勢を正し、ほんとうの意味での日韓の正常化を願わなければならぬ、かように私は考えますが、大臣のこの問題についてのお考え、所信、姿勢というものをお伺いいたしたいと思います。
  157. 愛知揆一

    愛知国務大臣 民社党が春日委員長をはじめ、この金大中氏の事件が起こりましてから早々に、いろいろと国民的な御協力を賜わりましたことについては、私も心から感謝申し上げておる次第でございます。  私は、これは政府を代表してというとおこがましいので、私としての考えを申し上げたいと思いますけれども、韓国人民といいますか、国民に対して非常な私は愛情を持ちますし、また持つべきであると思います。そういう基本的な観点に立って、いろいろの経過があったけれども、大韓民国政府というものが樹立されまして、そうして日本との間に親善友好の関係が逐次固くなってきつつあるということを喜んでおりました。そうして経済協力等につきましても、できるだけの誠意を尽くした努力をすべきである、かように考えてまいったわけでございます。  ところで、今回の事件はまことに不幸というか、何と申していいかわからないような感じが率直にいたすわけでありますが、何はともあれ、やはり真相がわれわれ国民にも納得のできるように解明がされるということが先決であって、私も真相がどうであるのか遺憾ながらまだわからないわけでありますが、基本的な角度から申し上げまして、一日もすみやかにわれわれが納得ができるような真相の解明とその処置というものができて、すみやかに日韓の関係がもとへ戻るという関係になることが望ましいと思います。  それから、それぞれお互いに国民的に尊敬し合っている国であるべきはずでございますから、韓国の人は韓国の人として正常な政府をつくっておられるわけでありますから、そういうふうなしこりが解消いたしましたならば、私は正当な、政府との間に経済協力その他の関係も話し合っていくべきものであろう、かように考えます。ともかく真相の解明とその納得のできるような処理ができない限りは何とも、これからどういうふうにやるかということについては言明をいたすべきまだ時期ではないのではないだろうか、かように存じております。
  158. 竹本孫一

    ○竹本委員 この問題が単なる刑事事件ではなくて、日韓の間に横たわってきた大きな政治問題である、へたをすればどこまでエスカレートするかわからない政治問題であるということについては、大臣もわれわれと同じお考えではないかと思うのですが、先ほど申しましたように、問題がそれほどの大きな重要性を持っておるだけに、いま大臣御答弁のように、真相がきまらない、わからないということのいまの段階においてどうするということが言えないということは、私はよくわかります。しかし同時に、真相がきまるまでは何にも言えないと言うておると、このことがまた、へたをすれば韓国のペースで問題に取り組むことにもなりかねない。  そういう意味からいって、まあ法務大臣等もはっきり言っておるように、やはり、もしそういう——まあ、もしということばを使う必要があるのかないのか問題だと思いますけれども、謙遜して言って、もし政府情報機関がこれに関与しておるというようなことがはっきり出てきた場合には、日本政府としては、いままでにない強い姿勢でこれに対処されるべきであると思うが、そういう場合にも、そのときになって考えましょうということであるのか、あるいはそういう主権侵害にもつながるような問題の場合には強い姿勢で考えるということになるのか、また、強い姿勢で考えられるということは、経済援助についても一ぺん再検討をしなければならない。私は、一切やってはならぬという考えは持ちませんけれども、しかし、やり方、続け方についても、きびしい姿勢で貫くものがなければならぬと思いますが、その二つの点については、大臣、どういうお考えでありますか。
  159. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはやはり両国間の非常にむずかしい問題であると思いますから、仮定をしてお答えをするのはいささか早計かと思います。しかし、私としても、先ほど申し上げましたが、内閣が一体となって、そしてこれは何と言っても外交ルートを通しまして真相を一日もすみやかに、一刻もすみやかに解明をされることが必要である、望ましいのではなくて、それが必要である、かように存じます。そして、それによってやはりその後の体制というものは主体的に考えるべきものである、私は原則的にさように考えますが、こういうことであったならば——あるいはこういうことであったならばというのは、いささか私も、ここで言い過ぎてはますます事態を紛糾させるという配慮も外交当局にもあるのではなかろうか、これも十分尊重してまいりたいと思います。
  160. 竹本孫一

    ○竹本委員 まあこの辺で要望にとどめますけれども、言い過ぎてもいけないと思うのです。しかし、言い足らなくてもいけないだろうと思うのですよ。これは非常に政治的な大きな影響がある問題ですから要望をするわけですし、要望にとどめますけれども、まあ大臣の御答弁を率直に受けとめておれば、法務大臣の答弁なんかは軽率、不謹慎のそしりを免れないように思いますが、しかし、国民の気持ち、国民感情の中にはやはり、もちろん法務大臣でも法学博士でもあるわけですから、条件もつけずにでたらめを言っているわけではない、いろいろの場合を含めて答弁もしておられるけれども、しかし、何かそこに一つのき然たるものを持って答弁しておられるということは、これは相当国民が好感を持って迎えておるというのがぼくは現実ではないか、それがまた今日の国民感情ではないかと思う。  そういう意味で、大蔵大臣も含めてやはり内閣全体がこの問題については国民感情を十分尊重していただいて、まあ強過ぎても困りましょうが、強い姿勢で対処をしてもらいたいということで要望をしておきたいと思います。  次に、これに関連をして、従来韓国に対しましては、無償三億ドル・有償二億ドル菅款二億ドルですね、民間が三億ドルとか、いろいろ援助の問題が議論されましたけれども、現実に最近までにどれだけの援助をされたか。これは局長のほうからでもひとつ具体的な数字で、無償資金協力がどれだけであるか、技術協力が幾らであるか、政府が貸し付けられたので幾らであるか、直接投資が幾らであるか、項目に分けて、総計幾らであるかということをひとつ伺いたいと思います。
  161. 松川道哉

    ○松川政府委員 御質問のその資料をある時点でそろえて御説明いたしますためには、三月末の時点が一番最近の時点でございますので、若干古い数字になっておりますが、本年三月末で御説明さしていただきたいと思います。  この段階で無償援助、いわゆる請求権の資金三億ドルという約束がございますが、この分につきましては二億一千五百万ドルが実行済みでございます。なお、無償援助につきましては、そのほか、たとえばKRによる食糧援助であるとか、工業高校の設立であるとか、技術協力であるとか、そういったものがございまして、ただいまの三つの項目、それぞれ四億円、五億円、十四億円、でございまして、合計二十三億円になっております。  さらに有償援助でございますが、これは二億ドルの約束がございまして、このうちの現在までに一億五千四百万ドル実行をいたしております。その債権を円建てで見ますと、現在の債権残高が五百三十四億円でございます。なおこのほか、いわゆる円借款という政府間の借款ですでに約束いたしましたのが千百三十億円でございまして、そのうち実行が済みましたのが二百三十九億円で、これはそのままただいま債権残高として残っております。なお、そのほかに御案内のとおり日本米の延べ払いというのをやっておりますが、このうち一部は現物で貸すということでありましたが、金額に表示いたしまして貸しましたものが二百八十四億円でございます。これも現在のところそのまま債権残高として残っております。したがいまして、この有償援助の残高は現在千五十七億円ということに相なっております。  ただいま米につきまして金額で表示されたものと申し上げましたが、このほかに六十三万三千トンというものが現物の貸し付けになっております。これは金額でいいまして約三百五十七億円相当であろうと推算されております。  さらに、これらのほか、ただいまの御質問の民間ベースの話でございますが、これは数字が七月末現在になりまして恐縮でございますが、民間の延べ払い輸出で出されましたものの債権の残高が、円で申しまして約千百五十億円ございます。また、直接投資の残高が、これは許可ベースでございますが七百二十一億円。それぞれこのような数字に相なっております。  合計は、ちょっといま入れたものを手元に持っておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  162. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま数字を承りましたが、そのほかに、現在の段階で、さらにこれをこういうふうにしてもらいたいとかというようなことで、新たなる協力なり援助なり借款なりを申し入れている、あるいはその交渉が進んでおるというものが、現在まだ結論は出てないけれども、持ち込まれているものはありますか、ありませんか。
  163. 松川道哉

    ○松川政府委員 これは御案内のとおり、来月早々に日韓の定期閣僚会議というのが開かれることになっておりまして、その準備のために韓国のほうから内々いろいろな案件を持ってきております。ただ、私のほうでそれはある程度の審査をいたし、その上でのことになりますので、審査を経ておらないいまの段階で、その点につきまして申し上げることはいささか先方の立場もございましょうし、現在の段階では時期尚早ではなかろうかと思っております。
  164. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで、まず大蔵省、外務省それぞれにお伺いいたしたいのだけれども、そういうばく大な援助をやられると——外務省がおらなければ大蔵省でもけっこうですが、海外援助の成果、効果、それがどういうふうに受けとめられておるかということについては、一般的に制度としてどういう検討を加えておられるかということが一つ。  それから、いま具体的に御説明のありましたような援助を韓国にした。その援助は韓国にはどういうふうに受けとめられておるか。感謝されておるか、いないか。どの程度に感謝をされているか。そういう問題について——外務省も見えたから、外務省は外務省の立場で、大蔵省は大蔵省の立場で、海外援助の効果についてどういうような検討をしておられるか、また韓国の具体的な場合についてはどういう反響を受けとめておられるか、その二つを承りたい。
  165. 松川道哉

    ○松川政府委員 本日の審議の過程におきましても、たびたび大臣から御説明がございましたが、このような経済協力は、これを受け取ります国々、これらは主として開発途上国でございますが、これらの国々との友好関係という基盤に立って、これらの国々の経済発展ないしは国民の福祉の向上、こういったものをねらいとして実施されてきております。私ども財政当局の一部門におりますものといたしましては、われわれの経済協力の資金が有効に活用されて、これらの目的のために役立つものであることを心から期待しておるものでございます。  お尋ねの韓国のケースを例にとりますと、開発途上国の中でも模範的だといわれるほど最近経済発展が進んでおりまして、一人当たりの国民所得も非常に高く成長してきております。たとえば一九七二年には三百二ドルというレベルにまできておりますが、このような経済発展を遂げることができましたその陰には、わが国からの経済協力というのが非常にあずかって力があったのではないか。これはすなわちわがほうから見ましても、経済協力が非常に有効にその効果をあらわしたものではないかと思っております。  第二の点の御質問でございます韓国の国民がどのように受け取っておるかということでございますが、この点につきましては、私どもが接触いたします韓国の人々というのはおのずから限度がございます。しかしながら、私どもが接触しております限りにおきましては、みないずれもわが国の援助が韓国の目ざましい経済発展に非常に有効に活用されているということで、感謝の意を表明しております。
  166. 菊地清明

    ○菊地説明員 ただいま大蔵省から御説明のございましたことにあまりつけ加えることはございませんけれども、ただ一つ申し上げておきたいのは、わが国の対韓援助、経済協力といいますのは、大きく分けて二種類ございますけれども、第一番目は日韓の経済協力及び請求権に関する協定に基づいた、一九六〇年に締結いたしました協定に基づきまして、無償三億ドル、有償二億ドルという経済協力を実施しておりますが、これは国際義務に基づくものでございます。  それから第二のいわゆる私たちが交換公文ベースの経済協力と申しておるのがございますけれども、これは実は去年の一月一日から始まりました韓国の第三次五カ年計画というのがございます。日本の対韓経済協力というのは、基本的にはこの韓国の第三次五カ年計画というものを踏まえた上で、これに調査団などを出しまして、その上に基づきまして第三次五カ年計画でどれくらいの対外援助、外国からの援助を必要とするかというようなことは出されておりますので、それに基づいて、つまり韓国の長期計画に基づいて協力をいたしておりますので、その点、そういう場合でないのに比較しまして非常に計画的といいますか、効果があがる協力をやっておるというふうに感じております。  それから効果の点につきましても、これはむずかしい問題がございますけれども、現在御承知のように、非常に韓国経済は順調でございます。輸出も非常に伸長しておりまして、おそらく五カ年計画に盛られた目標を上回っておるものと思います。そういうことでございますので、一般に日本経済協力というものは歓迎され、かつ喜ばれておるというふうに見ております。
  167. 竹本孫一

    ○竹本委員 お二方の答弁を承ったのでありますけれども、ぼくの聞いたポイントと少しずれているんだ。ぼくが聞いたのは、海外投資、海外協力をいまもやっておられるし、韓国にもやっておられるし、今後も大いにやられるだろうし、やるべきことである。そういうものの効果はどれだけあがっておるかということについて制度として検討するような制度、機構やくふうを持っておられるかということが一つ。それからもう一つは、韓国に対する援助、協力については、いかなる反響があったと受けとめておられるか。聞いたことを答えてくれなければ、まわりのほうを長々と言われても時間の浪費です。よろしくひとつ要点を言ってください。
  168. 菊地清明

    ○菊地説明員 第一の御質問に関しましては……
  169. 竹本孫一

    ○竹本委員 なければないとおっしゃればいいのです。
  170. 菊地清明

    ○菊地説明員 ございます。経済協力の結局手続の問題になろうかと思いますけれども経済協力が有効にかつ所期目的を達成するために、はたして経済協力が実際韓国でもそういうふうに使用されておるかどうかということに関しましては、まず手続面を申し上げますと、最初申し上げました日韓経済協力及び請求権に関する協定に基づきます協力の場合には、日韓合同委員会というものが設置されております。それで毎年三千万ドル、二千万ドル協力しておるわけでございますけれども、これに関しましては年次計画というものを日韓間であらかじめ合意して、それから実施しまして、そしてもし何らかの事情で韓国側が、たとえば事業計画を変更したいというようなことがあります場合には、一々日本政府のほうへ言ってきまして、日本政府の承認を得た上でやっておる。  それからそれ以外のいわゆる一般的な経済協力に関しましても、交換公文というのを結びまして、その協定に基づきまして、たとえば協定の一部といたしまして定期的に韓国政府から報告を出してもらう。それによってチェックいたします。  それから経済協力の場合は、大体日本から商品とか物資とか設備とか、そういうものが韓国に行く場合が大半でございますので、その輸出面におきまして、実際協力目的のものが行っているかどうかということを、最終的には通産省のいわゆる輸出承認というので一々承認を要することになっております。ですから最初に合意した援助の目的のための物資ないし資材が必ず韓国に行くというふうになっております。  それから、若干詳しくなり過ぎるかもしれませんけれども、商品援助というものがございます。この商品援助を韓国に送りまして、それの売り上げ代金のウォン貨というものができますけれども、このウォン貨は、いわゆる産業合理化資金というものが韓国で設けられておりまして、それに払い込まれる。そこに払い込まれますと、産業合理化資金法という法律に基づいた目的、すなわち開発目的以外には使わないというふうになっております。以上のようなのがチェックの例でございます。  それから第二の御質問については、非常に具体的に申し上げることは困難なんでございますけれども、逆に、日本経済協力が韓国の役に立っていないということを聞いたことはございませんで、そういった、先ほど申し上げました第三次五カ年計画その他の実施に非常にあずかって力があったということでもって効果測定ということがいえるのじゃないかと思います。  それからちなみに、これは一般論でございますけれども、海外経済協力のために効果測定チームというものをときどき派遣しております。それで韓国の場合も、これは何年でしたか忘れましたけれども、一度派遣いたしております。でき得れば、予算のあれが許しますれば、今年度中に一回、韓国にそういったいわゆる効果測定のためのチームを送ることを考慮しております。
  171. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣、これはまた要望にとどめますが、私は日本の十四兆円の予算についても、会計検査院というものがあって、違法や違反がないかということについてはそれなりに追及しておられると思うのですね。しかしそれが、全体の経済的エフィシェンシーをどの程度あげたか、また政治の大きな流れに対してどういうふうに寄与、貢献したかということについては、国会が一つのその機能を果たすわけですけれども制度として十分なものがないと思うのですね。したがって、海外経済協力についても、いまいろいろと御説明があり、誠意のほどは認めるけれども、何かぴんとよくわからない。もう少し、これから経済協力は大いにやらなければならぬし、やるのでありましょうから、何か制度的に、その効果、特に対外関係の場合には政治的な影響経済影響もなければ、ただ何次計画に話が出て、そのとおりやって、その結果、国民所得も大いに伸びたのだから効果があったんだろうというだけの話では、必ずしも十分でないと思うのですね。もう少しきめのこまかい、しかも視野は広い制度的なくふうが要るのではないか、一度ひとつ考えおきいただければありがたいというふうに要望を申し上げておきます。  そこで、外務省の方にお伺いするが、いまいろいろ、悪いほうは聞いたことはない、こういうような話でしたけれども、あなたは金大中さんが書いた「独裁と私の闘争」という本は読まれましたか。
  172. 菊地清明

    ○菊地説明員 私、直接は、寡聞にして読みませんけれども、内容は聞いております。
  173. 竹本孫一

    ○竹本委員 読まぬでも内容がわかるようなえらい天才的な……。ところが、ぼくが読んだところには、こういう個条があるんだ。「独裁と私の闘争」の中からですよ。「日本は、もともと朴政権支持の態度をとっており、六九年に大統領の三選を禁止した憲法を改定したときも、当時の川島自民党副総裁は「韓国に長期安定政権が必要だ」と内政干渉の声明を出したほどである。」これは金さんの書物ですよ。「声明を出したほどである。そして三選改憲支持の証拠として、世界の国々が経済的採算がとれないという理由で出資を断わった浦項の製鉄所を日本が引受けることになった。」これが一億三千五百万ドル出したあれですな。世界じゅうが採算がとれないと言っているときに、そして出資を断わっているときに、浦項の製鉄所を日本が引き受けた。「これは日本でも経済団体や政府部内に技術的な面から反対があったのだが、」これは金氏がそういっている。「政治的配慮によって決定されたのである。製鉄所を作るということは、一部の国民に「韓国は一流国になった」という夢を与え、百万票に相当するといわれていたものだ。」  これは御承知のように、朴さんと金さんは大統領選挙を争ったのですから、金さんが言う百万票がそのままそうであるかどうかは、これは政治的に割引をしなければならぬかもしらぬが、「百万票に相当するといわれていたものだ。とすれば日本の朴政権支持の役割はきわめて大きかったということになる。いよいよ選挙も迫ってくると、日本は韓国にとって必要でもないソウルの地下鉄の建設計画」これが八千万ドルですか、「ソウルの地下鉄建設計画に全面的に肩入れするようになった。」  これはいなか者がどこかの山の奥で言っているささやきではないのですよ。いやしくも大統領選挙を争ってわずかに九十万票の差、これも金さんに言わせれば、あれだけの弾圧がなかったならばおれが勝っただろうといわれる、韓国における重要な一つのリーダーだ。その人の書いた書物の中にはこういうことが書いてある。外務省はそういうことをろくに調べもせぬで、あなた、どこを大体わかっているのですか。
  174. 菊地清明

    ○菊地説明員 読まなかったことをおわび申し上げますが、御質問の浦項の点と地下鉄の点にしぼってお答え申し上げますと、浦項については、いわゆる私たちの申しますフィージビリティー、経済協力のフィージビリティーに関して当初においていろいろ問題があったことは御説のとおりであります。ただ、その後累次にわたりまして日本から調査団を出しまして、これは官のみならず民のほうの調査団にも行ってもらいまして、フィージビリティーありということで、最初は御承知のように百三万トンから始めまして、現在は二期工事で二百六十万トンという製鉄所を始めたわけでございます。このフィージビリティーありかなしかということは、どれだけの期間を見、どれだけの条件を取り入れるかによって違ってくることは、御案内のとおりでございます。わがほうの官及び民の調査団によりまして、これはフィージビリティーありということで経済協力をすることになった次第でございます。  それから、地下鉄に関しましては、そういった政治目的のためではございませんで、ソウルにおいでになるとわかりますけれども、ソウルの町の交通の混雑というものはたいへんなものでございまして、バスが延々と何十台と連なって走っておるわけでありまして、あれを地下の、しかも非常に短い、何キロか忘れましたけれども、非常に短い、いわゆる第一号線というものに協力を申し出たわけでございまして、これがソウルの市民に対してたいへんな助けになり、生活を楽にするということでございます。しかもそれに関してやはりフィージビリティーありということで、これは日本の国鉄その他も協力いたしましてやったことでございまして、政治的目的で援助したということはございません。
  175. 竹本孫一

    ○竹本委員 こまかいことはいま論議する時間もありませんし、また、金さんが言っている問題も、やはり反対党のリーダーとして常に政治的な表現もされるでしょうから、私は言っていることが全部正しいとか正しくないとかいうことをいまここで論議しようとは思わないのですよ。ただ一つは、経済効果についても、海外援助、協力について、やはり国民の税金を使う金のことだから、まじめに検討してもらいたい。当然のことじゃないか。  同時に、政治的にいうならば、われわれは、先ほど来言っているように、韓国と友好親善をやりたいということで、そのことは朴さんと友好親善になる場合と、なり得ない場合とあると思うのですね、一般論として。韓国は朴さんでなければならないし、朴さんに協力することがそのまま韓国に協力するというような前提でものを考えておると、場合によっては間違いが起こるかもしれない。あるいは正しいかもしれない。私は間違っているとも正しいともいま言っているのじゃない。ただ、日本の政治のかじとりをやられる皆さんは、少し慎重でなければいかぬ。常に反対の意見も聞いてみなければいかぬ。その反対の意見も、どこかのいなかのすみのほうでわいわい言っているのを聞けと言っているのじゃないのだ。いやしくも朴さんと大統領を争った金大中が命がけで書いた書物に書いている議論ぐらいは、やはり外務省も大蔵省も読んでもらって、金大中はこういうことを言っているけれどもそれは間違いだと言われるなら、それでいいですよ。しかし、そんなのがあるかないかも知らないのに、そんな喜んでいるようだと言って一人自己陶酔しておってもこれは話にならぬ。  そういう意味で私がひとつ要望を申し上げるのは、やはり韓国は朴さんがいま中心になっておられるけれども、必ずしも朴さんに全面的にすべての世論が帰一しているわけじゃないのだ。したがって朴政権に協力するということと韓国に協力するということは、同じ場合もあるし同じでない場合もあり得るのだ、そういうことを前提に含めて少し視野の広い態度で対処してもらったらいいのじゃないかということです。というのは、いま日本でもいろいろまじめな人が心配しているのは、日本が朴政権にてこ入れというか何というか、入れ過ぎちゃって、抱き合い心中みたいなものになっては困る。そういう意味でわれわれは韓国と協力するのだという基本的な立場を忘れないように、そして韓国の中にはいろいろの流れがあり特に大統領選挙では半々の争いがあったのですから、その残りの半分についてもう少し注意をするということは政治家として当然じゃないかということを私は言うわけです。  そこで、ついでにもう一言だけ言うのですが、たとえば米国の上院外交委員会の韓国及びフィリピンについての報告というのが一九七二年十一月に出ておる。これは知っているでしょう、あなたは。その中のことばの中に、あるいは見出しのようにして、市民の自由への抑圧は李承晩政権以来最悪のものだという大胆な表現をしているのですね。これはわれわれ読んでちょっとびっくりしたから覚えているのだけれども、しかしアメリカの上院はでたらめだというわけにはいかない。われわれがむしろ感心するぐらい大胆率直に意見を述べていると思うのですけれども、その委員会でも朴政権の弾圧政治については、市民の自由への抑圧は李承晩政権以来最悪のものだ、こう言っているのだ。その最悪のものにわれわれが全面的信頼を置いて全面的協力をするということは、日本の真意を疑われるゆえんになる。  そういう意味で、私はいま朴政権を全部信用しちゃいかぬというわけでもないが、少なくとも若干の距離とゆとりを置いておかないとたいへんなことになりはしないか。こういうことをいま御注意を申し上げるわけですが、大臣、いかがでございますか、そういう考え方は。
  176. 愛知揆一

    愛知国務大臣 最初に調査団の問題ですけれども、これは私は実は外務省におりましたときも、他の国に対しましても、これはなかなかやはり手続的にむずかしいことですが、先方の政府の了解を得まして、そしてなるべく政治、経済その他各方面から見て幅広く日本経済援助の結果がどういうふうに受け入れられているかということについては民間の方々の協力を求めて調査団を派遣し、そしてその報告も非常に私は教えられるところがあったわけです。韓国についても、先ほど菊地参事官の言われたとおり、韓国に対してもそういうことは、しばらく前になったかと思いますが、やっておりますし、政府としても関心を持っているつもりですが、なおこれは制度化されてはいないと思いますから、そういう点については、直接にはこれは外務省の仕事でありますけれども、御忠言をいただきましたから、ひとつ十分政府としても考えてまいりたいと思っております。  それから、私は冒頭に期せずして申し上げたのですが、私は個人的に申し上げてということが前提でしたけれども、韓国民に親愛の情を持っている。だから、韓国民という国民ですね、これに対して隣国としての日本国民が妥当なプロジェクトに対して協力を措しまないということは、私は適当な考え方ではないかと思いますと申し上げたのでありますが、これはやはりそのときどきの政権あるいは政府というものとは別のアングルからもまた見ていく必要がある点ではないか。いみじくもその点を御指摘になったと思います。同感でございます。
  177. 竹本孫一

    ○竹本委員 韓国の国民大衆が問題なんですから、これは大臣の言われたとおりに、そういう基本を忘れずに、その原点に立って金大中事件も今後の経済協力もぜひ進めていただきたい。要望をいたしておきます。  最後に一つだけ、日銀総裁せっかくお待ちいただいたので、これは要望に終わるかもしれないし、あるいは承るだけで時間がないからやめますが、私は貨幣数量説を信ずるわけでもありませんが、やはり何としても日銀券の発行が少し多過ぎるという感じを持つのです。それで、ヨーロッパでは御承知のように大体実質経済成長率プラス許容し得る物価上昇の範囲ということで、そのぐらいのところへ日銀券はというか、通貨の増発は押えなければならぬという考え方もあったように記憶をいたしますが、最近のように——私は、だから去年の十月ごろでしたか、日銀券の増発が二〇%になった、あのときにもう今度二十八日にきめられたような政策をきめるべきだったと思うのです。  これはこの前日銀総裁にたいへん失礼な言い方で、どうも日銀総裁のやられることは三カ月ずつは必ずおくれているから、この次から三カ月繰り上げてやってもらいたいと要望したと思うのですが、いま考えても去年の十月が大きな手を打つべきときであった。しかし田中内閣のあり方の問題もあるし、日銀総裁だけ責めるわけにもいきませんが、しかし日銀総裁は通貨価値の維持という大きな使命を持っておられるのだから、きょうは銀行の問題はやめますが、しかし物価の騰貴という問題、いろいろ議論がありましたが、やはり日銀券の増発についても一つの科学的な節度、また基準というものがなければいかぬと思うのです。それはどういうふうなものを持っておられるかということをお伺いしたいのです。  私の考えでは、実質成長を一〇%ぐらいに押えて物価を四%に押えて一四%、そのぐらいの日銀券の増発ならばまあまあ一番いいのじゃないかと思うが、借金経営、自転車操業の日本経済の特質から考えて、まけて一八%ぐらいはぼくは認めるということにしておるのです。ところが、それが二〇%をこえるともういかぬ。二七・五%なんていうのはもってのほかだ、こう思うのですね。  したがって、そういう場合には何としても、これも一つ制度、くふうがいろいろ要るでしょうけれども、日銀券の増発という面から日本のインフレに大きな歯どめをかけてもらいたいと思うのですけれども、何だか気前よくどんどん日銀券を刷っておられるような感じがするが、一体どこに基準を置いてインフレを通貨数量の面から節度的に、制度的に押えていこうとされるか。何かそうしたくふうなりそうした基準なり持っておられますか、いませんか。そこだけ伺って終わりにしたいと思います。
  178. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいま御指摘の点は日本銀行にとっても一番大事なことでございまして、日本経済にとってどれぐらいの通貨数量が適当なのか、その点についても研究はずいぶんいたしておりますが、ただ何%以上はいけないとか悪いとかいうことがなかなか線が引きにくいのでございます。もちろん二〇%をこす増発率の場合にはわれわれとしても警戒をしなければいかぬということは十分考えておりますが、それを正確に何%というふうに理論的にはじき出すことはいままだ成功しておりません。  それから、御指摘がありましたけれども、昨年の十月の時点では実は日本国際収支がえらく黒でございまして、どんどん外貨が蓄積しておる最中で、金融引き締めをちゅうちょさせられたものがあるということだけ申し上げておきます。
  179. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは数字的に言うのがむずかしいとおっしゃるのだけれども、そういう姿勢だとやはり政府に押し切られてしまう、特に強引な田中さんに押し切られてしまうと思うのですよ。だから、やはりある一定の科学的な方程式をつくって、これ以上はできない、それ以上は政府のほうで強引に通貨の増発を来たすような経済要因をつくられるならば日銀総裁はやめるぐらいな覚悟をもってがんばってもらわないと、われわれはいま日銀総裁に通貨の問題については全面的信頼をしている、全面的期待をしているのですから、数字で示されないということになるとこれは話し合いでということになる。話し合いの場合にはそれぞれかってな理屈はあるのですから、言えば切りがないのだが、これ以上はできないのだという一つの線を強引にでも設定するぐらいのかまえでないと、私はインフレをがちっと押えるということはなかなか困難だと思いますが、この問題は複雑な面もいろいろありますから、きょうは要望にとどめますが、何とかひとつ世間で良識的に納得できる、なるほど日銀でいっている、さすがに専門家だ、その辺でおさめなければいかぬ、あるいは何項目か基準をつくってもいいのですよ。その基準で、これ以上の通貨の増発には日銀で責任は負えないといって、政府に逆に居直るだけのかまえがなければいかぬ。われわれは佐々木さんの人柄を信頼して非常に期待しているのだけれども、何しろ情勢がこういう情勢で、きょうは時間もないし、申しませんけれども、ぼくは、日本はもうインフレだと思うのですよ。このままに二七、八%ずつ通貨をふやしていったらほんとうにどうなるかということで、これはもう非常に心配をしておる。  その心配を具体的にになって立ってもらうのは制度的に日銀総裁しかいないのだ。それは大蔵大臣もあるけれども大蔵大臣は大きな予算が好きなようだから、これはしかたがない。だからもう少し節度のある考え方を持った、機構の上でですよ、デフレーションをやれとは言いませんけれども、アンチインフレーションのかまえでひとつ心血を注いでもらう人といえば日銀総裁ですから、ひとつ日銀総裁に要望いたしますが、われわれも納得できる、政府といえども抵抗のできないような通貨増発についての一つの基準というものをつくるように前向きに取り組んでいただきたい。要望を申し上げまして終わりにいたしましょう。
  180. 大村襄治

    ○大村委員長代理 佐々木参考人には御多用中のところ長時間にわたり御出席賜わり、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十二分散会