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1973-06-15 第71回国会 衆議院 大蔵委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十五日(金曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君    理事 大村 襄治君 理事 木村武千代君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 阿部 助哉君    理事 武藤 山治君       宇野 宗佑君    越智 通雄君       大西 正男君    金子 一平君       栗原 祐幸君    小泉純一郎君       三枝 三郎君    地崎宇三郎君       中川 一郎君    萩原 幸雄君       坊  秀男君    村岡 兼造君       毛利 松平君    佐藤 観樹君       塚田 庄平君    平林  剛君       広瀬 秀吉君    村山 喜一君       山田 耻目君    増本 一彦君       広沢 直樹君    内海  清君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵省主計局次         長       辻  敬一君         運輸政務次官  佐藤 文生君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 住田 正二君  委員外出席者         日本国有鉄道共         済事務局長   清水  晋君         参  考  人         (国家公務員共         済組合連合会理         事長)     竹村 忠一君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 六月十四日  辞任         補欠選任   木野 晴夫君     倉石 忠雄君 同日  辞任         補欠選任   倉石 忠雄君     木野 晴夫君 同月十五日  辞任         補欠選任   内海  清君     永末 英一君 同日  辞任         補欠選任   永末 英一君     内海  清君     ————————————— 六月十三日  国家公務員共済組合制度等改善に関する請願  (和田貞夫君紹介)(第七〇三六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十二年度以後における国家公務員共済組  合等からの年金の額の改定に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣提出第六五号)  昭和四十二年度以後における公共企業体職員等  共済組合法に規定する共済組合が支給する年金  の額の改定に関する法律等の一部を改正する法  律案内閣提出第九九号)  国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律  案(広瀬秀吉君外五名提出衆法第三四号)  公共企業体職員等共済組合法等の一部を改正す  る法律案広瀬秀吉君外五名提出衆法第三五  号)      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れの件についておはかりいたします。  目下法務委員会において審査中の商法の一部を改正する法律案、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律整理等に関する法律案について、法務委員会連合審査会開会申し入れたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会開会日時等につきましては、委員長間で協議の上、公報をもってお知らせいたします。      ————◇—————
  4. 鴨田宗一

    鴨田委員長 内閣提出昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法に規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案及び広瀬秀吉君外五名提出にかかる国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案公共企業体職員等共済組合法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、各案について本日国家公務員共済組合連合会理事長竹村忠一君に参考人として出席を求め、その意見を聴取したいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  6. 鴨田宗一

    鴨田委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。山田耻目君
  7. 山田耻目

    山田(耻)委員 この週の火曜日、村山委員からかなり詳細にわたりましていろいろの問題について質疑がありました。若干ダブる点もあろうかと思いますけれども、御理解をいただきたいと思いますが、最近年金の問題が非常に国民の中に強い権利の意識として育ってきております。こうした国民意識というものがいろいろな、ことしの四月以来働く人々の中からは年金制度を含めての多くの要求がなされて、政府との折衝も行なわれておりますし、また院外ではいろいろとそれを求めての国民の声が組織的に強まってきておりますし、いろいろ司法の関係を見ましても、かつて国民にございました生存権から生活権へ、だんだんと要求主体が変わってきておるのを見ることができるわけです。そのような状態でございますから、きょうは若干、年金とは何なのか、こういう一つ総括論について質問をいたしながら、私の意見も述べてみたいと思うわけです。  政府自体も、ことし昭和四十八年は福祉元年である、国際的な一つの動向にも追いついていきたいという意思がそこにもあるし、国内の政治の中にもそういう転換をしていきたいという強い願望が示されておるものと私は思いますだけに、従来の惰性の中で年金額を引き上げていけばこと足りる、こういうことだけでは私、満たされないものがあるような気がするわけです。年金というのは社会保障制度として将来にわたって日本確立をされていく、あるいは中身を成熟させていく大事な柱である。一体年金の性格、目的とは何なのか、こういうことについてひとつお考えをいただきたいと思うわけです。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お話しのとおり、年金というものについて国民的な関心が非常に高まっておりますし、これにこたえていかなければならない、社会保障政策一環としてその中心の大きな課題として位置づけていきたい、これが政府考え方でもございますし、また、各政党におかれましても、そういう趣旨やねらっておるところは御同様なことではなかろうかと私は思います。具体的な進行の方法やあるいは速度や幅ややり方等については、いろいろの意見の相違がありましょうけれども、考え方の基本は同じだと思います。  それから、年金というものはどういう性格づけであるか。これはやはり社会福祉政策中心に位置づけられるものである、そうして国民全体が社会連帯考え方の上に立って国民的につくり上げていくものでなければなるまい、こんなふうに考えておる次第でございます。
  9. 山田耻目

    山田(耻)委員 いまの大臣お話で、概念的には私よくわかるわけです。社会保障制度一環であるし、社会福祉政策の中核をなすものである、これが年金だ、そういうことを私も概念的には理解いたすわけですが、準拠すべき法律はどのようになっておるのでございましょうか。
  10. 辻敬一

    辻政府委員 御承知のように、わが国の年金制度歴史なり沿革なりを振り返ってみますと、官吏につきましての恩給制度が一番初めに発足したわけでございます。それから現業の公務員鉄道等職員につきましての共済組合制度ができまして、一般民間被用者につきましての年金制度ができましたのは戦争中でございまして、昭和十七年に厚生年金制度ができたわけでございます。それから農民自営業者年金制度でございます国民年金制度は、昭和三十六年にできまして、そこでいわゆる国民年金の体制が発足をいたしたわけでございます。そういうような歴史なり沿革なりがございますので、現在の年金制度は、御承知のように厚生年金国民年金あるいは船員保険共済組合共済年金等々に分かれておりまして、それぞれ基礎厚生年金法なり国民年金法なりあるいは国家公務員共済組合法なり、それぞれの法律に準拠して年金制度があるわけでございます。
  11. 山田耻目

    山田(耻)委員 国民年金公的年金制度というのがいわゆる一本として統一されてきた。これらの基本的な法体系基礎をなしておるのはやはり憲法二十五条から発したものであるというふうに現行の制度としては理解してよろしゅうございますか。
  12. 辻敬一

    辻政府委員 御指摘のように憲法二十五条の精神に基づきましてでき上がっているものです。
  13. 山田耻目

    山田(耻)委員 早くからありましたのは恩給制度、これはちょっと社会保障と見るのは適切でないと思いますけれども、その後起こりました鉄道共済国家公務員共済、最近に至りましては国民年金、こうしたものは一貫した社会保障の上に基づいた社会福祉政策である、これもよく理解できましたが、今日のこうした多くの分類に分かれておる年金制度というもののそれぞれの国民が受けるメリットは違います。一体どれだけの区分に分かれておるのか、御説明いただきたいと思います。
  14. 辻敬一

    辻政府委員 先ほど申し上げましたように、一般民間でございますと、被用者の場合は厚生年金保険でございます。それから自営業者農民方々でございますと国民年金でございます。それから別途船員につきましては、その特殊性にかんがみまして船員保険法があるわけでございます。それから共済制度といたしましてはただいま御審議いただいております国家公務員共済組合制度公共企業体職員共済組合制度、そのほか地方公務員地方公務員共済組合制度がございます。多少特殊な職域の制度といたしまして、私立学校教職員共済組合農林漁業団体職員共済組合があるわけでございます。
  15. 山田耻目

    山田(耻)委員 大臣にお尋ねするわけですが、憲法二十五条から発しており、最近では恩給関係まで共済組合に吸収され、あるいはされない部分を併存しながら、いま御説明ございましたように八区分に分かれておるわけですね。ところが国民年金でございますから、国民の有資格者がほとんど参加をしておるわけです。八区分に分かれて国民が受ける利益というものは、それぞれ違っております。こうしたことは、福祉元年と銘打つ国の公的年金制度として、八区分に分かればらばらな処遇を受けておるということは望ましくないと思われるわけでございますね。しかし、それぞれに沿革があるし、歴史があるし、いろいろと特徴もあるわけでございますが、しかしそれかといって、このまま放置をしておきまして、それぞれの分野の法改正をしながらできるだけバランスをとるようにという御配慮があるようでございますけれども、しかししょせんは区分に分かれておって、歴史的な背景を持っておりますから、なかなかそれがじゃまをいたしております。だけれども、行政の姿としては、諸外国の例なども勘案をしてみますと、望ましくない、私はこのように思うわけでございます。  だからこれをできるだけ早く一本の公的年金制度につくり上げていく、こういう考え方を望ましいと御判断なさるのか、いかがでございましょうか。望ましいとすれば、将来の展望というものについて御成案があればお聞かせをいただきたいと思います。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お話しのとおりでございまして、政府といたしましても、これは問題の本質としては、できるならば一本あるいはそれに近い制度にするのが理想的であると考えております。そして昭和四十二年でございましたか、社会保障制度審議会から答申といいますか、申し入れがございまして、それに基づいて公的年金制度調整連絡会議というようなものもできたわけでございますけれども、そこの考え方答申もまとまっていないぐらいでございますから、いわんや民間各種年金制度を総合して案をつくる、あるいはどういうビジョンを持っているかとお問いになりますと、いま政府としては理想としてはそうありたいとは考えてはおりますが、非常にむずかしい仕事であって、まず現在のところは各種年金相互間の権衡バランス考えてなるべく内容的にそれぞれを充実した形にしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。  第一、給付水準も現に違っておりますし、それからよく問題にされますが、国庫負担率も違っておりますし、あるいは拠出制度内容等も違っておる。しかも制度が発足してからの経過の年数が非常に大きな違いがあるというようなことも実際問題といたしましては統合するというようなことを理想考えていても、なかなか制度を一本化することは困難というよりは、もっと率直にいえば非常にやりにくい、ほとんど可能の限度というものがむずかしいとすら率直にいえばいわざるを得ないような感じさえいたすわけでございますが、しかし、いま申しましたようにできるだけ現在の時点に立って将来的になるべく相互権衡を、これは給付水準だけではなくて、他の具体的な方法拠出制度その他にも考えを及ぼして、なるべく権衡のとれたものにするということが現在最も努力の重点を置く行き方ではないだろうか、かように考えている次第でございます。
  17. 山田耻目

    山田(耻)委員 一本にするのが望ましいという立場から、しかし実際に現実に進めることはなかなかな困難を伴うという見解のようでございますが、要するに当面の措置としては、各区分周のアンバランスをなくしていくように努力をする、そうしてそのバランス調整がとれたときに、将来一本化へという、具体的に申せば、そういう抽象的なそういうことをさしておられるのだと私は思うわけです。しかし、そういう立場をおとりになる方法が将来一本化への促進を進めることになるのか、将来一本化へという最高の政治命題を明確にしながら、それに向かって年次計画を立てながらさや寄せをしていくというやり方がいいのか。国民としてもこの認識の度合いが今日非常に深いだけに、そういう一つ方向を明示していただく。そして長期計画を立てて一本化へ、こういうように一つの方策を明示なさるのが私は一番望ましいような思いがいたすわけでございますが、そこらあたりについては、そういう考え方はだめなのだ、やはりバランスをとって、そのバランス調整点が一致できるころ自動的に一本化へ、こういう立場をおとりになっているとすれば、なかなか将来できないと私は思うのです。だから将来、諸外国に示されたような方向に、あるいはILOで議論されているような方向に早く日本も、経済大国ですから到達をして、国際的に恥ずかしくない年金制度確立をしていく、こういう立場を求めていく。日本政府としては、いま私が申しましたように、一本化への未来的な明示をしていく中で、その方向長期計画を立てていくということが不可能なんだろうかどうだろうか。大臣、私が言っていることがほんとに無理なんだろうか、どうだろうか。そういうことをひとつお聞かせをいただきたいと思うわけでございます。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府を代表してしかと申し上げるのには、いささかはばかりがあるように思いますが、私の見解といたしましては、将来の問題としては、あくまで統合、一本化ということが政治的な大命題である、かように存じます。しかし、これをどういう形で統合するかということを考えた場合に、あまりにも現在の状況状況でございますから、どういうやり方統合方向に向かうかということまでの私にはまだ考えはございません。しかし、基本的な考え方はそうでございますから、まず、たとえば公的年金の問題にいたしましても、できるだけ相互間の調整権衡ということを考えてまいりたい。幸いに連絡会議もあるわけでございますし、これは相当な年月をかけて専門的に、財政計画の面もございますが、同時に内容的には、やはりこうした関係についての深い知識を有されるような方の御意見を十分伺いながら、前向きに前進していくというよりほかには実際的な方法はないのではなかろうか、こういうように考えるわけでございます。  なおまた、実際問題としてはそれぞれの年金制度沿革もあり、そして未成熟なものであるだけに、各系統相互間において、率直にいえば、具体的な利害意見の対立ということもあり得るわけでございますから、こういう点も国民年金といわれるだけに、全国民的なコンセンサス、それには、たとえば労使の間におきましても、あるいは制度間におきましても、私は非常に複雑な利害関係あるいは期待権というものがあると思いますので、そう簡単には私はコンセンサスが全般的に得られることはできぬであろうというような感じもあるので、率直に、個人的な見解でございますが、順を追うて前進をしていく、だんだんならしていくということがやはり実際的ではないだろうか、こういうふうに結論づけざるを得ないのが現状ではないかと思います。
  19. 山田耻目

    山田(耻)委員 一本化が望ましい、ただ相互間の調整をとらなくてはならないし、それぞれの組合員コンセンサスを得なければならない。もちろん私は、そういう経過経ずして一本化へということは、歴史がありますだけに無理だと思います。  そうした調整をとり、コンセンサスを求める、そういう方向をいま直ちにというわけにもいかないし、いま大臣が、政府の総意を代表してという意見ではないと申されましたが、常識としてその方向に踏み出さなければ、いまのような区分区分けをされて、自分はその年金を受ける区分の中に入ることは好ましくないといたしましても、民間企業に入りましたら厚生年金わし厚生年金はいやで国家公務員年金がほしいといいましても、そうはいきません。農民は、わし国民年金はいやじゃ、うちは五人以上の家族労働でやっておるから、わしのほうは厚生年金に入れてくれ、そういう、いまの法律のすべてを熟知しての要求ではないけれども、感覚的には、わし国民年金はいやじゃ、こういう要望もあるわけです。  だから、自分意思ではなくて、自分がいま働いておるところで年金区分をきめられてしまう、こういう一つの不合理性というものがだんだんと大きくなりこそすれ、縮まることはないのです。これは必ず巨大な政治問題化していく事柄でありますから、こうした公的年金制度を早く一本化する検討に入って、そして八区分間のバランスをどうしたらとれるのか、どうしたらコンセンサスが得られるのか、こういう議論を最も近い将来詰めていただかなければなるまい、こういう気持ちを、いまの大臣のことばに沿って私は申し上げるわけであります。  ただ、大臣お話で若干気にかかる点は、制度上の問題、歴史もあるし、あるいは財政的な問題がとおっしゃられました。国庫負担も、それぞれの年金の中には共通性もございますけれども、大体まとまっていない。国庫負担もばらばらである。こういうふうに私たちは現状を理解いたしております。だから、財政問題というのがそういう中から出てくるとすれば、やはり国として、現在の上限以上のところの国庫負担、一番多い国民年金国庫負担をもう一歩上積みをして統一的にならす、こういうふうな一つ配慮も当然議論の中には出てくるものと私は思うわけです。いわゆる国庫負担統一的負担、こういう一つ考え方が最近出ております中には、諸外国のように、せめて国庫負担を当面三〇%にしてほしい、こういう意見が出てきておるわけでございますが、国庫負担率のそれぞれの区分ごとの違い、こういうものをひとつ述べていただきたいと思います。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 具体的な数字をあげての権衡関係はともかくといたしまして、常識的に申せば、現在各年金系統には、それぞれの沿革がございます関係もあって、給付水準、それから拠出の割合その他等々勘考いたしますと、たとえばある年金制度につきまして国庫負担現状よりも高くするということになると、一そう相互間のバランスが拡大されることになる、こういう点も考えなければなりませんので、現状においては、先ほども申し上げましたように、国庫負担率ですらと率直に申し上げたのです。これはでこぼこがございますので、これは内容的に考えて全体の均衡がとれるようにいたしますれば、国庫負担率をむしろでこぼこにしておかなければ権衡現状においてはとりにくい、こういう点を考え合わせておるわけでございます。したがって、理想として、今日からスタートして全部国民年金ということを白紙でつくり上げるということでありますならば、これはまた非常に仕事がやりやすいわけでございますけれども、創始された時期がそもそも違うというような点から申しまして、各制度間のバランスということを統合する、そうして単一の方式でもってぴしゃっとみんながイコールフッティングにするということは、実際の問題として、やり方として私は非常に困難以上の困難さがあるように思われます。同時に、しかしそんなことを言ったって大政治課題ではないか、その点は私も全く同感なんです。ですから政治の姿勢としてはそういう方向へ向かうという気持ちを持ち続けながら、現制度間における均衡というものをできるだけとれるように、じわじわといいますか、段階的にいろいろのくふうをしておくことが必要ではないだろうか。  国家公務員共済組合の現在御審議願っているこの点だけについて申し上げてみましても、これがまた昔の恩給制度あるいは旧法そうして新法というふうな段階を経てきておりますし、それから前の制度のときにすでに受給をしておられる方々からいえば、一方においては既得権、これは法律的にもそういうことは言えるのじゃないかと思うのです。同時にこれからの改善に対して、その立場の上に立った期待権というものを持っておられる、これは実際そうであると私は思うのでありますけれども、こういう点を考え合わせてみますと、先ほど申し上げましたように、それぞれの受給者の間あるいはこれをになう今度はたとえば厚生年金でいえば企業主立場、そうしてこれと組合との関係というようなことも、異なった要素で、しかも沿革があり、しかも違った制度のもとに発達してきたものでありますだけに、政治課題としても、目標は一本化ということは簡単に言えますけれども、なかなかこれはむずかしいということは何べんも繰り返して申し上げざるを得ないような感じがいたすわけでございます。
  21. 山田耻目

    山田(耻)委員 むずかしいという大臣見解はよくわかりますが、しかし、いまの国民の持っておる不満感というのは、社会保障制度という立場に立つなら、百姓をやっておろうと民間の会社におろうと国家公務員であろうと、病気になったら保障してもらえるし、老後は同じように国民としてそれぞれの持ち場を守ってきたのだから、しっかり国家として保障してもらわなければならないという、生存権から生活権意識に問題が変わってきておるのだ、それが最近の年金問題に対するいろいろな裁判になったり、いろいろな争いになってきておるわけですね。  ところが、日本現状というのは、申し上げるまでもなく八区分に分かれて、それぞれ区分別にみんな、健康を害したときも老後の問題の年金の扱いもみんなばらばらなんです。これを統一しなくちゃならぬということは、将来にわたって大事な政治の懸案でもあるし、大臣自身としてはそれを求めたい、しかしさて現実には困難である。これでは現状の変革をするという気がまえが若干薄いのじゃないか。  だから困難な問題点というものをもっと客観的に、科学的にそれを出していって、これを一体どうしたらいいのか、こういうことなどを審議をする社会保障制度審議会もあるですのから、あるいは年金制度に関する審議会もあるのですから、そうしたところで討議をしてもらう時期ではないのか、そうしてその具体的な一つ答申を得ながら、それを実現していくのに財政問題はどうするのかあるいは過去の歴史の個々の調整点はどうするのか、いろいろな問題点が出てくると私は思いますけれども、もう問題点を表面化して、国民全体のコンセンサスを得る時期に来ておるのじゃないか、こういうふうに私は思うわけです。  ですから、大臣の答弁なさっておる内容、私、全然わからぬわけではございません。よくわかりますけれども、しかし、わかっておるということだけでは現状の固定です。やはり年金問題を解決をするということに大きく踏み出すためには、いま私が申し上げたようなことを主管省としても踏み出していただく、そうしてそれぞれの委員会でも討議をしていただく、国民に向かってもコンセンサスを求めるような一つの材料を提供していく、そういう中から、困難な問題であるであろうこの年金というのが、私は片づけられていくのじゃないかという気がいたしております。  この問題については、また中に入りましたときにいろいろと掘り下げてまいりたいと思いますが、もう少し総論を進めていくのですけれども、日本年金というのは、先ほども御答弁がございましたように、恩給法から受けて入ってきておるものが多くあるわけです。あるいはもともと日本年金制度の生みの親というのは、内容的には恩給だったかもしれません。しかし恩給というのは恩恵的なものであって、字に書いてあるとおりです。恩給というのは、途中一時脱退するような事態に直面しても、国庫納付金であるからということで、掛け金の相当額ないしは何割か金額を減じたものを返還をする、こういうふうなことも、恩給制度時代にはございませんでしたが、いまの共済組合制度には若干の前進を見ております。しかし、系統的に見てみますと、従来の恩給、与える、国益、軍国主義時代のこういうものの思想というのがいまの年金制度の中に残りかすとして生きているのではないだろうか、こういう気が私、ときおりいたすわけでございます。いまの共済組合法第一条、公共企業体等共済組合法第一条、地方公務員共済組合法第一条もそうでありますが、いわゆる組合員相互の生活安定、疾病その他の事態に対して相互に救済をする制度である、これが第一項に明らかにされておりまして、第二項では、公務員共済の場合は公務の円滑な運営に資するためとなっております。いわゆる年金というものは、冒頭御答弁ございましたように、社会保障制度から出ておるものであるから、憲法二十五条の精神をくんだものである、そうして社会福祉の中核をなすものである、これは人間として生活をしていく上に不可欠の要件を備えさせてあげる、しかもその最低の保障をなし遂げてあげる、こういう立場を貫ぬいておるとするならば、私は公務員としての公務の能率的運営に資するとか、あるいは公共企業体の企業運営の円滑に資するためだとか、あるいは地方公務員の公務の運営の円滑に資するためであるとか、こういう一つの、社会保障制度とは別の性格がここににじみ出ておるように私は思える。ところが厚生年金法にはございません。ところが国家国務員共済組合法昭和二十三年六月制定の旧法の第一条の目的の中には「相互救済を目的とする」これだけであります。「公務の能率的運営に資する」という条項はございません。新法ができました昭和三十四年、公共企業体の新法ができました昭和三十一年、そのときの法改正恩給者を吸収しました。そのときから第一条は、私が先ほど申し上げたように改正をされたと承知をしております。  そういたしますと、今日の共済組合法というのは恩給法の思想というものをこの中に受け継いでおる、もっと端的に言えば、戦前の軍国主義思想というものが、あるいは軍国主義国家体系というものがこの中に生かされておるのではないだろうか。それが国家公務員年金であり公共企業体の年金であるとするならば、私は憲法二十五條の精神に反すると思うが、一体これはどう解釈したらいいのだろう。私の考えが間違っているかもしれませんので、その点について御説明をいただきたいと思います。
  22. 辻敬一

    辻政府委員 国家公務員共済組合法の目的は、ただいま山田委員御指摘になりましたとおりでございまして、「国家公務員及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するとともに、公務の能率的運営に資することを目的とする。」というふうになっておるわけでございます。したがいまして、国家公務員の「生活の安定と福祉の向上」という社会保障的な要素と、それから「公務の能率的運営」という要素と二つの要素からなっておるわけでございます。先般もお答え申し上げたわけでございますが、国家公務員共済組合審議会の三十四年の答申におきましても共済年金の性格は、「一般被用者に対する社会保険制度の上に公務員特殊性に対する要素を加味した、独特の職域保険制度である」というような答申がございますし、また今回の社会保障制度審議会答申におきましても、厚生年金を基盤とした上、これに企業年金的性格を加味するというようなこともうたわれておりますので、私どもといたしましては、現在の共済年金の性格なり目的なり本質なりをそのように理解をしているわけでございます。
  23. 山田耻目

    山田(耻)委員 そのことは八区分ある中にはそれぞれの特徴点というものはございますが、特にいまおっしゃいましたように、厚生年金一般社会保険、国家公務員年金は特殊な職域保険、このように解説にも書いてございますね、おっしゃっておるとおり。しかし、それはそれで将来一本化することが望ましいという前提から見ましたら、いわゆる公務員共済のほうが、ある意味では、官吏として国家公務員としてその職務に従事をしておるし、いろいろと身分的な制約、制限もあることだから、若干給付を高くしておることの理由説明なわけなんです。私はこう理解しておるわけなんです。高くしておることの理由説明ですね。ところが国庫負担は、厚生年金のほうが百分の二十で国家公務員、公共企業体は百分の十五ですね。むしろ公務員共済なり公共企業体共済のほうが国庫負担が低い。だからむしろ掛け金率は企業体なり組合員、それ自体が高い。厚生年金は掛け金割合は四〇%でしょう。国家公務員なり公共企業体の職員は四二・五%でございましょう。掛け金も高い。だから当然給付は高い。しかし、それもいろいろな恩給該当者などの身分通算等をいたしてきた、今日では特殊な職域保険としての性格づけもする、そうして掛け金も高いじゃないか、そのかわり給付も高い、こういうふうな申しわけ的なものがいまの審議会答申意見であったと私は思うわけです。  こういう一つの状態というものを考えてみていきますならば、私はいまの第一条の目的の中に「公務の能率的運営に資する」、そのために共済組合制度があるのだ、あるいは「公共企業体の円滑な企業経営に資する」ために共済組合があるのだ、こういうふうな理解というものと違うと思うのです。特殊な職域保険であるということと、公務なり公共企業体の運営を円滑にするために共済組合というものに加入する、あるいはそういう制度があるということ。第一の目的は社会保障制度的なものであり、第二の目的は仕事を円滑にさせるために共済組合はあるのだということ。それと、いま言ったような社会保障制度審議会なり年金審議会のいっているように厚生年金一般社会保険である、公務員、公共企業体のほうのは特殊な職域保険である。この違いは目的の違いということと異なると思う。  これは給付が高いということがいつも問題になりますが、職域保険としての性格を持っておるのだ、こういうふうに私は理解をするわけです、それは前提が憲法二十五條から出発しておるということにかんがみまして。昭和二十五年の社会保障制度審議会社会保障一環であるということを明確に示しております。こういう憲法二十五條なり昭和二十五年の社会保障制度審議会なりの答申から見て、私はこの一条の目的というのは恩給の思想体系を引き込んでおる、若干ひがみがあるかもしれませんけれども、そう思うわけです。なぜそれを思ったかということを、私の気持ちをより具体化させたのは旧法の第一条の目的、性格にはなかったものが新法には生かされてきておる。新法に生かされたときをもって恩給制度を引き継ぐものが一応共済組合の中に引き継がれてきたという、そういう一つの経緯があるだけに、私は強くそう思うのですが、第一条をいまのようなおっしゃり方だけで私は受けとめにくいので、もっと、私が申し上げたようなことは間違いであるのか、そういう考え方も若干現実的に肯定し得るとしたら、この第一条の二項の部分について修正する用意があるかないか。この点を少し明確にしておいていただきたいと思うわけです。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま辻政府委員からお答えしたことで尽きているかと思いますけれども、さらに補足して政治的にお答えするとすれば、こういうことになるのじゃないかと思いますが、御批判をいただきたいと思います。  国家公務員共済制度というものには、本件の御審議を始めていただいて以来ずっと私が言っておりますように、現実に何といっても恩給制度というものが常識的にいって引き継がれているわけです。これはもらうほうの方の立場からいえば、既得権的な考え方、あるいはそれに基づいた期待権的な考え方がある。こういうわけで、それにプラスといいますか、日本憲法下におけるところの社会保障制度一環としての年金制度ということが複合されている。これがいわゆる特殊な職域、社会におけるところの年金制度といわれるゆえんである、かように私は存じます。  したがいまして、私としても将来の理想でございますけれども、それらのことをよく納得づくにコンセンサスができて一本に統合できるというようなことができますならば、それはただいまの法律第一条第二項を修正をするとかなんとかということは当然その中に吸収されるべき問題であると思いますけれども、現在のようにほかにも年金制度が、先ほど来八つと仰せられているとおりでございますけれども、それらの関係調整されない限りは、現在の法律制度を変えるという、こういう考えは現在政府としては持っておりません。  同時に、先ほど私は抽象的に申しましたのですけれども、現に御指摘があるように、国庫負担率あるいは受給者の掛け金というか保険料、そういう点にかかわる点からいって、いま一律にこうしろとおっしゃられてもなかなかむずかしいんじゃないか。国家公務員共済組合でいえば負担も多い、しかし国庫負担率は低い、しかし給付の内容の水準はよろしい。しからば厚生年金と同じように二割負担国庫がすればといえば、そこにますます格差が出てくるわけです。  こういうふうな点をいろいろの点から考えまして、まず現状におけるところの権衡あるいは給付水準の上昇ということが望まれている。これも先般もいろいろ御議論がありましたが、政府としても、たとえば厚生年金が物価スライドを踏み切ったのだからこのほうに物価スライドをやったらどうかということも審議会においては御検討いただいたわけです。しかしこれは御答申にあるように、意見が賛否相半ばした。そこでそれに並行してたまたま公務員の給与ベースアップ、四十六年、四十七年の上昇率をプラスをして、それを基準にしたというような、便宜的とあるいは御批評を受けるかもしれませんけれども、現下の与えられた条件のもとにおいて、いろいろの趣旨の目的を曲がりなりに達成するということからいえば、こういうやり方が現下においては最適の選択ではなかったか、選択であった、こういう考え方でその案を御提案申し上げている次第でございます。
  25. 山田耻目

    山田(耻)委員 大臣のおっしゃいますことは、将来一本化になればこうした一条の第二項などは当然消えていくだろう。しかし現状では、公務員共済なり公共企業体共済はかつての恩給受給者の継続期間を通算をして共済年金を受けていく、こういう人たちを吸収しておるから、まあまあ、いまの段階ではこういう二項を持っておるのだ、将来はなくしていくように、そのお気持ち、私はすなおにいただいて、そうだと思いますし、そうしていただかなくちゃならぬと思うのです。  ただ、ことばじりをとらえるようで恐縮でございますが、先ほどの八区分一本化の問題を将来の一つのあり方として検討していかなくちゃならぬとおっしゃっていました。しかしその過程で、いろいろな制度上の調整、内容上のバランスをとる、そうして国民とのコンセンサスを得るようにする、その段階がいまの段階だとおっしゃっておられます。私は、いまの一条第二項というのが現状年金支給条件の中に基本的な損害を年金受給者に与えるこういう条項があるとすれば、私は重大だと思うし、その部分についてはぜひともバランスをとり、調整をしていかなくちゃならぬと思うのがございます。  それが、それぞれの法律にございます給付制限です。国家公務員法では第四節、九十七条でございます。公共企業体では第一節二十条でございますが、いろいろな給付制限がございます。たとえばこの条文を見ますと、禁錮を受ける、そうした場合は一部または全部の資格を喪失をする。あるいは公共企業体の中にもございます。この給付制限の中には——最近日本の労使関係が国際的に多くの話題を呼んでおります。ILOの精神並びに諸条約に、日本の、特に国家公務員関係、公共企業関係が持つ労働運動への認識、あるいは国内法の未成熟な部分、こういうものが指摘を受けておりますが、そういう、労働運動をやったということで公務員法に基づいて停職以上の処分を受ける、戒告を受ける、あるいは減給という処分を受ける。ところが公務員法を見ますと、停職以上の処分、停職、解雇でございますけれども、こうした処分を労働運動上受けた場合には年金の一部または全部を支給しない、こういう法律になっております。私は、一条の目的第二項との結びつきが明確にここに存在しておるとは言い切れませんけれども、社会保障とは何ぞやということにもう一ぺん返りたくなるわけです。病気になったら国が国民のめんどうを見てあげますよ、働けなくなったら、まだ働く能力を備えない赤ちゃん、子供、こうしたものは社会保障制度の中でしっかり国が抱きかかえていく制度をいうのだ、おまえはそういうことで八つの分類に分けて年金保険をかけなさい、しかしおまえは企業の意に沿わなかった、おまえは労働運動をやった、そうして企業で職場規律を乱したということで停職以上の処分をかける。社会保障制度はあまねく国民全部を明記しております。その全部に保障すべき、こうした社会保障制度一環であるし社会福祉政策の重要な部分である年金制度を減額をし、停止をする。こういうのが給付制限の骨格を占めている。  そういうことが正しいかどうかわかりませんけれども、現在の共済組合法に通算をされる以前の恩給制度の時代ならば別だと私は思う。日本社会保障制度というものはなかった時代は別だと思う。しかし、今日では国民皆保険制度がとられ、社会保障制度一環として認め、福祉政策の根幹をなすものと認めたこの年金が、そういう一つの行為があったとして一部停止なり全部停止を行なって生活権を奪うということがいいのかどうなのか、私はおかしいと思うのですよ。  しかも、私は法律的には詳しくございませんし、日本の実定法の中にはそれは存在をしておるので、これまた困ったと思うのでありますけれども、たとえば刑罰の二重制裁主義というものはいけないのだ。裁判で明らかになりました刑期をみごとに服役をして、そうして社会人として帰ってきたら、更生された人間として平等に、差別なく社会復帰させてあげてくださいというのが、法務省の指導であるし、国の指導であったはずです。ところが、懲役一年以上、禁錮を受けますと年金はゼロになっていくのです。あるいは、制限額がございますけれども、十分の二・五、十分の三・五、十分の四・五と加算をされていく減額措置ができております。それは刑罰を終わって、服役をして罪を償ってきれいなからだになって帰ってきた人に対して終身続きます。生きておる限り続くのです。そうして、その人が死んだら、恩給年金受給者の継続をする奥さんにも影響してまいります。その子供にまで影響してくるのです。一体こういうことが社会保障制度一環としてすなおにながめられますか。  私は二重制裁主義というものは好みません。刑罰を受けて、無事にそれを果たして帰ったら、私は、りっぱに更生された社会人として平等に扱いたい。いまの各企業内罰の中にも同様、類似したものがありますだけに、私は特に大臣にこの点一つだけお答えいただきまして、将来の方向を御明示いただきまして、大臣は御退席のようでございますから、以下各論に入っていきたいと思いますが、その点だけ、私は何としてもさびしい気がしてなりませんので、憲法二十五条なり、いまの社会保障制度一環であるという立場から見て、この点はどのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどお答えした中で足りないことがあったように思うのでありますが、経済的というか、そういう観点から見て、恩給制度からの引き続きであるという面を申し上げましたが、同時に、やはり特殊な職域であるということの意味は、日本憲法のもとにおけるところの国家公務員というものの性格、あるいは公企業体の職員の性格といったようなものも特殊の職域という観念の中には入っておる。それに社会保障政策が踏まえられているというのが国家公務員共済組合であると私は思います。  そこで、国民に対する奉仕の義務を持っている国家公務員というものの性格からいいまして、これが労働問題あるいはその他の問題になるといろいろ御議論がある点であるとは思いますが、現行の法令に違反し、そして行政罰を含む処罰に服したような場合に、これに対して制裁があるというのはやむを得ないのではなかろうか。これは意見が違いますのでたいへん恐縮ですけれども、その点については、遺憾ながら私は山田さんのお考え意見が違うわけでございます。  たとえば、私学の共済につきましても同様の制限規定がございますが、これはやはり私も法制上の立場その他の立場を的確に理解して申し上げるわけではございませんが、教員というような職種の性格あるいは使命ということから申しまして、私立学校の教員の方々に対しても、やはり同様な特殊の職域である、そうしてそこの中の方々の、社会的にあるいはその他の意味において特殊な使命を持っている特殊な職域であるということに着目して、かような制限規定が置かれているものと私は存ずるわけでございまして、こうした種類の問題は、私がいま申しますのは現行の諸法令、国家公務員のあり方、これに対する労働法規をどう考えていくか、あるいは公企業体の職員に対してどうであるかということについては別個の問題があるかと私は思いますけれども、しかし、現行の法令のもとにおけるところの国家公務員あるいは公企業体の職員等に対しましては、かような制限規定があることはやむを得ない、私はかような見解を持っております。
  27. 山田耻目

    山田(耻)委員 大臣、あとはまた機会を改めてお伺いしたいと思いますが、辻さん、いま大臣お話でございますが、私はこの社会保障という立場から見たら、生活権の問題ですから、いまのその人がどういう仕事をしておるのか、どういう労働の態様の中でいるのかということは、これはそれぞれの、たとえば民間企業だったら、民間企業の中には服務規律がございまして、そうしてそれぞれ作業内規等もありまして、それに違反をしたときには懲罰委員会にかけてその人に対する制裁を加えております。それはあるわけです。それはそれ限りですね、制裁は。そういう、いいこと、悪いことという表現をすれば、まあ、よくないことをしたのだからおまえは制裁をする、制裁をして減俸とかあるいは出社停止だとかあるいは停職、あるいは一番ひどいので解雇というのがありますが、それは企業内の規則できめておりまして、みんな承知をしておるわけです。  公務員の場合は、いわゆる国民が雇い主でそうして中正をもって服務しなくちゃならぬ、これに違反したときにはこういうことで制裁を加えるぞという、公務員法律に基づいた条項がございます。私はそれはそれで、いまとやかく言っているのじゃないのです。正常な勤務をする、円滑な仕事をしていくために一生懸命働いておる人たちは努力する。ところが、故意か過失にあやまちをおかして制裁を受ける。そのことを私はとやかく言っているのじゃない。それは企業内の規則であるし、公務員なら公務員法なんです。地方公務員地方公務員法、公共企業体にはそれぞれ事業法がございます。事業法で取り締まっております。それと共済組合法とは別だと私は言っているのです。  共済組合法というのは、その人が二十年以上一生懸命働き通してきて、そうしてその間起こった疾病その他について短期で救済をしていく、そうして働けなくなった老後に対しては人間として最低生活の保障ができるようにめんどうを見ていきましょう。それがいま国家制度の中で公的年金制度という制度になっておるわけですね。いわゆる国、本人、事業主という三者負担によって、率は違いますけれども八区分に分かれてある。ところが、事業内の諸法律に抵触をして罰則を受けた、あるいは刑法に触れて刑事罰を受けた、刑務所に入った、私は、それはそれで服役をしたら終わりじゃないか、事業内で罰を食って、停職、減給を受けたらそれで終わりじゃないか、なぜ終生つきまとってその人間に罰を食わしていかなくちゃならぬのか、なぜ死んでしまって奥さんや子供の代になってもなお継続してその罰の効果を及ぼしていかなくちゃならないのか。これは社会保障だろう。私はほんとうに首をかしげたくなるのですけれども、辻さんこの点いかがでございますか。
  28. 辻敬一

    辻政府委員 給付制限の問題につきましては、先ほど御指摘がございましたように、国家公務員共済組合法の九十七条に根拠規定がございまして、具体的には政令で定めているわけでございます。政令で定めるにあたりまして、これは昭和三十四年でございますが、国家公務員共済組合審議会にかけまして、その答申をいただきまして、それに基づいて政令を定めたわけでございます。そして国家公務員共済組合の場合でございますと、最高二割までの給付制限があるわけでございます。  共済組合年金の性格につきましては、先ほど来御議論があったところでございますが、私どもといたしましては、一般被用者に対する社会保険制度の上に公務員特殊性に対する要素を加味したそういう職域保険であると考えておるわけでございます。そういう性格から見まして、一般社会保障給付に見合う部分につきましては、御議論のございましたように、確かに給付制限をすることは適当でないと存じます。その分はそのままにいたしまして、公務員特殊性に基づく給付のいわば上積み分につきましては、これは給付制限が許されるのではなかろうかという考え方に立ちまして、ただいま申し上げましたように、最高二割の給付制限をいたしておるわけでございまして、共済年金制度の性格から見て、この程度の給付制限というのは妥当なところではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  29. 山田耻目

    山田(耻)委員 ちょっとおかしいですが、いわゆるその人が公務員として二十年まじめに一生懸命やってきまして、そうして既得権である年金がつくわけです。掛け金も高くかけてきたわけですね。そうして退職前になって故意、過失は別にして問題を起こす、刑法上の罪を問われる。そういたしますと、その発生した時点で、その問題によって、法のもとにその人はさばかれていくわけですね。そうしてかりに禁錮刑を受けるとします。禁錮刑を受けて服役をしている間は年金を支給することを停止する、その権利を停止するということなどならわかりますけれども、おまえはもうこういうことをしたら、過失、故意は問わず、刑法上の制裁を受けたらもうおまえは上積み分は取り上げるんだ、こういうおっしゃり方のようです。  しかし、これは公務員法という法律をもって救済しているなら、私は必ずしもわからないことはございませんけれども、恩給であったらわからないことはございませんけれども、社会保障としてこれは認めておる。そういうことになっていきますと、いまのあなたのおっしゃっているお答えではどうも承服できない部分が多くあるわけです。だから、厚生年金を受けておる一般企業の中にはそういう給付制限は少しもございません。そういうことをあわせて、いまの上積み分は取り除いて厚生年金並みにするのだよ、あるいは厚生年金並みという一つの——表現は適切でないかもしれませんけれども、公務員なるがゆえにという特殊職域保険ということで上積み分がある、この上積み分は取り上げるぞということで、十分の二減額という措置をしたのだ、これはおかしくないというお話のようです。しかし、私はそうなると、論理的にはおっしゃることが一つの要素を持ち得るとしても、社会保障という根本の理念から見たら当てはまらない。それから社会の制度として各種法律がございますけれども、その法律に基づいて刑事上の罪を全部服役をしてもとの状態に返ったら、それはそれで終わりなんだ、一般社会人として復帰をしてきたら何も問題はないと思う。二度とするなよ、これが更生として扱われている問題でしょう。しかしもうお前はだめだ、一ぺんやったから二割ずつずっと減らすのだ、こういう思想というのは、最低生活を保障するという立場からとられている社会保障制度の面から見たらおかしくないか、こういう気持ちが私はするわけです。  それから、これもことばじりをとるようで恐縮ですが、二割の減額というのが上積み分に相当するのかどうか。禁錮刑三年以上を受けたとしたら二割でないはずでありますが、一応この政令をここで、給付制限率ごとにひとつ御説明をいただきたいと思うのですが、それはそのあと説明してもらってけっこうですけれども、いまの二割が上積み分に相当する、それ以上のものは何分に相当するわけですか。     〔委員長退席、大村委員長代理着席〕
  30. 辻敬一

    辻政府委員 厚生年金につきましては給付制限がございませんことは仰せのとおりでございます。したがいまして、その一般被用者に対する取り扱いの均衡から見まして、いわば厚生年金給付に見合います部分、一般社会保障給付に相当いたします部分については給付制限をいたすことが適当でございませんので、そういう考え方に立ちまして、基礎的な部分については給付制限をいたしていないわけでございますが、先ほど申しましたように、いわば公務員特殊性に基づく給付の上積み分につきましては、そういう共済年金の本質、性格からしまして給付制限が許されるのではなかろうかという考え方に立って、給付制限を行なうわけでございます。それが二割という考え方でございます。  国家公務員共済組合の場合の支給制限の基準を申し上げますと、禁錮以上の刑につきましては十分の二の給付制限をする、懲戒免職につきましては引き続くその期間部分の額の十分の二を給付制限をいたしております。懲戒停職につきましては停職期間部分の額の十分の一を給付制限をいたしております。なお、特に各省各庁の長がこの割合によることを不適当と認めた場合には大蔵大臣と協議をいたしまして、その協議によりまして支給制限の割合をきめる、かようなことになっております。
  31. 山田耻目

    山田(耻)委員 それでは支給を停止するという処分のほうはないわけでございますね。
  32. 辻敬一

    辻政府委員 禁錮以上の刑に処せられている期間は支給を停止するわけでございます。
  33. 山田耻目

    山田(耻)委員 九十七条の三項がそれを意味しているわけですか。
  34. 辻敬一

    辻政府委員 そのとおりでございます。
  35. 山田耻目

    山田(耻)委員 いまの御説明を見ますと、最高で十分の二でございますね。十分の二を最高に給付制限をする。この問題につきましては、さっき大蔵大臣がおっしゃっていましたように、恩給法の流れを受けてでき上がった公務員共済であるから、あるいは地方公務員共済であるから、公共企業体共済であるから、そういう給付制限というものも第一条の第二項の目的を受けて発生をしておるので、そういう二重制裁になるけれどもあるのだ、そういうあなたの答弁だというふうに受けとめるわけですが、私は、大蔵大臣がおっしゃったように、将来一本化になる、一本化になるという制度変革なり時期を画して消えていく。こういうふうなことは、今日の時点で給付制限することは妥当性を欠いておるからそういう発想に大蔵大臣はなってきたのじゃないかと思うわけです。将来一本化になったらやめますよ、そういうものは。そうして第一条の第二項もなくなっていくでしょう。給付制限、それもなくなっていくでしょう。こういうふうな純粋な社会保障制度という立場に立ち切れればそういう状態になっていくだろうというふうな一つ大臣の御意見でございましたが、私は、いまの制度の中にある問題点をなくすることが妥当である、社会保障制度という立場に立ってですよ、なくすることが妥当であるということを認め合っての御発言だと思います。     〔大村委員長代理退席、委員長着席〕 そういたしますと、たとえばいまの一条第二項をなくしていくことは当面はできない、しかし将来は、一本化になったら考えましょう、こういうことなんですけれども、いまのように給付制限の事項につきましては、二重制裁という立場から切り抜けていくことが、ものの考え方、常識としてはそれはそのとおりだという答弁をいただいておりますけれども、こういうふうな問題点で、今日の生活権に直接影響を及ぼしてくるようなことになっておる条文については、これは改めていただくことはできないだろうか。給付制限というのは禁錮刑を受けたそのとき、停職以上の処分を受けたとき、その期間内は九十七条の第三項によって全面停止をする、以後は十分の二の減額をしていく。この以後の十分の二の減額という措置は、国民生活権ということから考えたら、生活権を脅かすわけです。この点は、今日の問題として排除してしかるべではないだろうか。  私は、後ほど質問をするわけですけれども、公務員年金が今日のこの生活物価上昇の中で最低生活を完全に保障しておる、それだけの年金をもらっているというふうには思えません。その上になお終身二割も差し引いていくということになりますと、しかも奥さん、子供にまで影響させていくということは、社会保障制度という立場から見て私はどうも納得しがたい。だから、その罪に服役をしている期間中は九十七条第三項によって全面停止、このことも私は納得しません。納得しませんけれども、それはやはりその刑に服役をしておるときには、あらためて人間更生として服役のための苦汁をなめる、そのことについて私は多少の理解度を示すことはできますけれども、服役後社会人となったときに、なお社会保障制度一環である年金は終生罰を加えて減額をしていく、こういうやり方は、常識からしても、社会保障制度憲法二十五条の精神から見ても合致をしない。この点はひとつ検討していただいて、ほんとうに人間として、日本国民として更生した人たちに対してはりっぱに、差別なく社会保障制度の恩典を受けさせる、こういう措置をしていくのが、私は、法のもとに平等である、しかも権利として、既得権を持ったその人に対して当然の保障である、こういうふうにひとつ辻さんお考えいただいて、御検討いただくということは、いまの皆さんたちのお気持ちの中からはどうしても引き出すことができないのでしょうか。この点をひとつ明確にお返事をいただきたいと思います。
  36. 辻敬一

    辻政府委員 先ほど来、共済組合法の第一条の目的につきましての御意見は十分拝聴させていただいたわけでございます。その上で重ねて理屈を申し上げるようでまことに恐縮ではございますけれども、やはり現在の共済組合年金制度と申しますものは、社会保障制度一環であることはもとより間違いないところでございますけれども、そのほかに、いわば国家公務員制度一環であるという性格もあわせ有しているのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。国家公務員は、申すまでもなく国民全体の奉仕者でございますので、そういう意味におきまして、公務の能率的運営をはかるということもまた重要な目的であるわけでございます。したがいまして、社会保障制度としての性格をそこなわない限りにおきまして、国家公務員制度立場から、その面からある程度の制限を課するということは、現在の制度のたてまえから許されるのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。先ほど来大臣もそういう複合的な性格のものであるという答弁をいたしたところでございますが、そういう共済年金の目的なり本質に立って考えてみますならば、基礎にございます社会保障制度一環としての給付をそこなわない限りにおいての給付制限というものは許されるところではなかろうか、そういうふうに思っているところでございます。
  37. 山田耻目

    山田(耻)委員 社会保障制度一環であるということは間違いないけれども、国家公務員法の公務員としての立場がそういう減額措置をさせるんだ、複合しておる、こういうお話でございます。  きょうは法制局を呼んでいませんので、私は一条の二項の解釈をここで明らかにすることはできませんけれども、いまの年金関係をつかさどる皆さんたちの判断は、一条の第二項の目的はそれでわかりましたが、私、先般法制局といろいろこの問題について話をしたわけです。まあ法制局の事務官の皆さんの見解としては、一条の第二項は、国家公務員として公務員法によって仕事をする特殊職域の人たちだから、安心をして働けるように、第一項の老後の生活の安定、そうして疾病その他によって生じた今日の不安、こういうものを除去してあげる共済組合、そうして公務員として安心をして仕事ができるように第二項というのはあるのであって、第一条第一項の生活の安定と社会福祉の向上を減殺させるようなものではない、こう見解を述べておるわけです。それからこの共済組合法のいろいろな解釈、解説が大蔵省の方々から出されておりまして、これが大体今日の共済組合年金関係法令解釈となって出て、それをもって理解されておりますが、この解釈もほぼ同様な解釈になっているわけなんです。しかし、この大蔵省が出されました解釈の中には、辻さんなり大臣がおっしゃっていたように、公務員としての性格を若干におわせておる要素があります。しかし社会保障制度一環であるということが法律上明確になっている。そういう立場から見れば、私は、法制局の解釈が正しい、これは将来必ずそうなっていかなければならない問題です。私、きょうお呼びしていなかったのは、このことだけでそう長く時間をとっては恐縮だと思ったからなんですが、将来必ずこれは変革をされる条項なんです。給付制限もそうです。  最近、皆さん御存じのように、生存権から完全に生活権にということで裁判も起こっているわけですよ。そのことが判事の中では支持をされてきておる傾向なんですから、私は古い法律というのはだんだんと修正されていくものと思います。思いますが、現実年金を扱っておる大蔵省の皆さんなりあるいは関係省の皆さんたちは、そういう変化に対応できるような政治姿勢だけはとっていただかないと、今日の社会のトラブルというものを解消することにならずに、むしろ激化することになるのですから、その点は政治を担当するものがしっかりと心に銘じておかなくてはならぬ。だから、きょうここでは私は辻さんのいまの解釈に不満を表明いたします。しかし、必ずいまの二重制裁という考え方は、少なくとも社会保障制度にかかわる関連についてはその分野が最優先されて法律是正をされていく、こういうふうにひとつ御検討いただかなくてはならぬと私は思うのです。  この点は、次官お二人お見えになっておりますし、両方の次官の関係する共済組合のことを申し上げておるわけですから、お二人の次官に対して、この一条第二項の将来の改正もさることながら、このことによって生じておる公務員の性格による給付制限、このことは社会保障制度の上から見たら適切でない、だから将来修正をする、そのことのための検討に入ってほしいという私の主張に対してどのようにお考えになっておられるか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  38. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 先ほど大蔵大臣からこの考え方の基本を御説明申し上げたのでありますが、そういう御説明の骨子は繰り返しここでいまお述べになっておるとおりであります。私はもう一つ、いま日本社会保障制度全般を通じて給付制限というものをする、あるいは所得制限をする、そういうことが社会保障の面でいろいろあるように思うのです。これの考え方を将来の社会保障制度の上でどう考えていくかということは非常に大きな問題だ、社会保障制度を論ずる上において非常に大きなテーマだ。しかし方向としましては、私はやはりそういう給付制限をする、あるいは所得制限をするということについてだんだん考え直していこうという傾向にあるようには思っておるわけなんです。しかし、直ちにまだそう簡単にはこれはいきません。またそういう社会保障制度全体の問題に加えて、ここでは一本化の将来というものを考えて、一本化のときにはまたいろいろ考えられることであろう、こういうことでありまして、私どももいま御質問のお気持ちはよく了解できるわけでありますが、さて現実の運びとしましては、社会保障全体にわたる大きな問題でありますし、またいまはまだこの国家公務員共済組合制度というものは恩給との複合といいますか、混合した状態にあって、いわば未成熟の状態にあるという組合でもありますので、そういう点も考え合わせながら将来の問題をひとつ考えていきたい、こう思うわけであります。
  39. 佐藤文生

    佐藤(文)政府委員 先生のお話をずっと聞いておりまして、権利として、また生活権として給付制限の撤廃をやるべき方向にいくのだ、こういうお考え方はわからないでもありません。しかし私はそれより以上に、公企体の職員には義務として国家の経済なりあるいは国民の福祉により以上に大きな責任が課せられておるということを考えますと、給付制限の最小限の実施というものは将来ともやむを得ない、こういうぐあいに考えております。この点、先生のお考え方と違う点は残念でございますけれども、私はそういう考え方を持っております。
  40. 山田耻目

    山田(耻)委員 次官お二人のお話は、私は何か無理に肩をいからせておっしゃっているような気がするのですよ。社会保障というものはそういうふうな無理の中で改革をされていくものじゃなくて、これはもう一つの人間生存、生活に関する基本的な条件です。そういう権力構造の中で支配できるというしろものじゃないのです。佐藤さんのお話というのは、まだまだ一つの統治、それが天皇制に直結しておるとは思いませんけれども、統治をする、共存して生存、生活をしていくという原理とは違うのです。  私は、一つの社会秩序というのは否定をしませんよ。否定をしないのですけれども、いまのお話では、あなたの思想を拡大して延ばしていくと生存権を否定するのです。生活権を否定します。それは私は社会保障制度という立場から見たらいただくことができないのです。公共企業体の共済組合制度というものは社会保障制度である。それは解釈の中で明確になっているのですよ。特殊職域の社会保険制度であるということになっているのです。だからそこに、企業の秩序を守るためにおまえの生存権を脅かすぞ、こういう発想になることは間違いなのですから、この点は現行制度をやはり改めていくという立場に立っていただいて、その原点に帰っていくということを皆さんたちの政治姿勢の中に育てていただかなければいけない。  いまのあなたのおことばをそのままいただくことはこれは日本の国会としてもできないのじゃないですか。福祉元年に立ち返ってほんとうに国民生活権をしっかり守っていく。ただ現時点は財政的にも制度的にもまだまだ不十分だからこれからしっかり国としては努力をするという立場から見ても私は間違っていると思う。それはいまの企業内罰というものがある限りあなたのお説は出ると思う。しかしその企業内罰というものが歴史を経て変化をしていくわけですから、しかも福祉元年というものは変化を意味する初年度でしょう。私はそういうおっしゃり方だけでは何となくはだ寒い気がするわけです。  だからこの点は、いまあなたのおっしゃったことはおっしゃったことで記憶にとどめておきますけれども、しかし、それはあしたに向かって進んでいく日本社会保障制度国家として、自民党政府のいう社会福祉国家へ衣がえをしていくというその論理から見るならば私は間違いである、このように思って、やがてそれぞれの関係法は修正をする、これは愛知大蔵大臣立場を私は一刻も早くという立場で同感をしておるのでございますから、そのようにひとつ御判断いただきたいと思うわけであります。  山本さんのおっしゃっていることは、所得制限と給付制限とを同じ質に見ておるのですか。私はとんでもないことだと思う。もう収入があり余って、やれきょうはゴルフ、やれきょうは赤坂へ行こうか、どうしたら金を使ってみてるだろうかと苦しみ悩んでおられる人たちに年金をつけてあげることはいけないというのが所得制限ですね。しかしその額が、あまりにも所得制限の幅が広過ぎるというのが私たちの改正の趣旨です。これはきょうのここの問題じゃございませんよ。国民年金の問題に関する問題です。そのあり余る人たちに所得の制限をかけて、国民年金給付をしないという発想と、最低生活すら維持できない、年金をもらっている人が社会保障として片側でしっかりとそれが保障されていると法律的にいわれておるにかかわらず、なお給付制限をしているこのやり方は、私は憲法二十五条の精神から見ても、企業内罰が将来にまで、終身、妻、子にまで及ぶようなやり方はいけませんといっているわけです。その点は大蔵大臣も、それは将来の一本化の過程での中で、一条第二項は修正をされていくものと信じていると大蔵大臣は言っている。こういうものに継ぎ足すのが次官の意見であってほしかったわけです。できるだけ早く検討して、そういう企業内の制裁から及ぼしてきた分まで含めたこの給付制限というものは検討します、それが大臣の答弁に対する次官としての継ぎ穂でなければならぬはずだ。それがあなたは国民年金の所得税制限まで引っぱり出して、こういうものがあるのだから、長い年月かけてというふうなことは、これはくそとみそを一緒にしている筋違いのことです。  これはひとつそのようにお考えいただいて、将来に向けて早く検討の準備に入っていただいて、国民ひとしく生活権が保障されていくようなそういう福祉国家社会保障国家に育て上げていく、こういう立場に立っていただかなければ、それは山本さんも政府の大蔵の次官です。自由民主党の党員です。国会議員です。そんなことでは福祉元年が涙を流します。それはぜひとも私が申し上げたような方向にすみやかに検討していただくというふうな答弁をいただきたいと思いますが、再度ひとつ山本さんだけでけっこうでございますからお願いします。
  41. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 私の申し上げたのは、今日の日本社会保障制度の中で、給付制限とか所得制限とかいろいろまだ現存しておりますけれども、そういう制限をだんだんと取っ払っていくという方向にいくであろう、それは別の、つまり社会保障制度そのものをそういう制限をしなければならない事柄との間には関係がないというふうにだんだん考えられていくものであろう、こういうことを申し上げたのであって、所得制限そのものについてややいま誤解をされているように思いますので、その点は御了解をいただきたいと思うのであります。  要するに、私が言っていることは、社会保障制度そのものをいろいろ制限をするいろいろな事項との間の関連というものは、だんだん将来撤廃をしていく、なくしていくという方向にあるであろう、そういうことを言っておるのであります。しかし現実の問題としては、なかなかそうは進んでおりません。ことにこの国家公務員共済組合は、先ほど来申し上げているように、まだ恩給共済組合法の適用を受ける方との混合である、制度としてはまだ一本化していない。ですから未成熟の状態にあるといっていいと思うのです。そういう状態であるから、まだそういういま申し上げたようないろいろな制限も残っておる、こういうことを申し上げておるのであって、そういう意味では、私は大蔵大臣が申し上げたことと私の言っていることは一つも矛盾をしていない、こう思っております。
  42. 山田耻目

    山田(耻)委員 私は評論家にお伺いしておるわけじゃないので、私もわかっているのですよ。だから、未成熟な状態である、いろいろな矛盾があるということをあなたにお聞きしておるわけじゃない。あることをどうするのかと聞いているわけですよ。どうするのか。大臣は将来に向かって一本化します、その方向努力します、私見だけれどもと前置きされて申された。その一本化に向けてやっていかなければならぬ問題で、いまの制度上の問題その他いっぱいあります。ただ現実にもろにかぶっている問題で不均衡な点がたくさんある、あるいは国の財政負担もある、こういう現実の問題を解決をしていって国民コンセンサスを得て、それから一本化へというのが大臣のお考えでしょう。いまの矛盾の中、あなたのおっしゃっていることは矛盾がたくさんある。未成熟だから、その未成熟であるための矛盾が出てくる。未成熟を成熟させて矛盾を解決していく。それが大臣の言われたアンバランスだ。制度上にも問題がある、歴史の背景も違う、これを解決していくのが今日の、いまの姿だ、端的には大臣はそう言っている。  その矛盾を解決していく一番の端的な問題として、いま私が最低生活すら保障されていない日本現状の中で、年金というものが、老後国民の唯一の命の綱である。この命の綱である問題を、なおかつ二重制裁的な刑罰を設けて、給付制限というものを女房とか子供にまで及ぼしていくというやり方は、一番当面の問題だし、矛盾が起こっているのだから、これをひとつ大臣が言われたように、大臣が言われたことに継ぎ足してあなたがおっしゃるとするならば、私は具体的な矛盾を申し上げているわけだから、この点を解消していくように検討する、すぐやれということを言うておるならもっと逃げなさいよ、逃げ方があるんだから。そうじゃなくて検討していく、こういうことぐらいはおっしゃらないと、国会における年金問題の審議というふうには受け取れぬような茶飲み話になってしまう。  だから、いまのような矛盾が現存し、現実にあるわけですから、この点については検討していく、直すようにしていく、こういう立場をひとつ、これから検討していきたいということをお聞きすれば一番いいのですけれども、矛盾がある、未成熟だということだけをお聞きしておったのでは国会審議ではないような気がするのですが、いかがでございましょう。
  43. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 未成熟ということばが多少誤解を招いたようですが、未成熟なという意味は、先ほども申し上げましたように、つまり組合員年金を受ける立場において同じであるということでは現在はないわけです。つまり恩給部分を持っておる人がまだたくさんいま国家公務員の中に残っておるという意味では、この制度はまだ未成熟である、私はこう申し上げておるわけであります。つまりもう恩給期間というものを持っていないという組合員にばかりなったときは、国家公務員共済組合というものがほんとうに成熟してきた、私はこういえると思うのです。そういう意味で私は未成熟ということばを申し上げたということを御了解願いたいと思います。
  44. 山田耻目

    山田(耻)委員 次官、私のお聞きしているのは、いまの共済組合法に基づく、あるいは厚生年金なり公共企業体の共済組合法に基づくいろいろな法改正というものを、今日のこの委員会における総論的な立場から、私は矛盾しておるとお尋ねしているわけです。何もいま戦前の国会で議論しておるのと違いまして、ちゃんと公務員の場合は昭和三十四年から一応恩給というものはなくなりまして、そして公共企業体は昭和三十一年からなくなって、それぞれ新しい法律が生まれたのです。このときの論議は私は存じませんけれども、おそらく古い帝国主義的な、軍国主義的な日本のからを捨てて、新生国家として、民主主義国家としての一切の法体系を整えて、社会保障制度へ。だから私は、昭和二十五年に社会保障制度審議会が勧告をしましたね、各公的年金は全部社会保障制度である、こういう意思は少なくとも戦前には表明できなかったでしょうね。そういうふうに時代は移り変わってきておるのです。そして恩給というものは、確かに今日あなたのいま御答弁なさっているような考え方がほんとうはあってはならないのだけれども、現実には恩給という理念、思想、その背景が国民を支配する、そういうものが一貫して公務員共済に流れてきておるのではないか。そして第一条第二項ができた。  つまり、終戦直後マッカーサーのいろいろな監視、監督を受けていた当時できた昭和二十三年六月の国家公務員共済組合は、国庫が報酬を負担する。二番目に相互共済制度制度化して、そこで生活安定、疾病等の措置をする。国家で報酬を出す。その人たちが公務員共済の組合をつくるんだ、こうなっておるだけです。いまの一条二項なんてなかった。なかったのが、旧法がくずれて、昭和三十四年に一条二項が生まれておる。私は、これは恩給という思想がここにつながったのじゃないかと指摘をした。それがそうであるとしたならば、これは日本の民主主義の逆戻りであると私は言うのです。恩給が持っていた権力構造の中の支配体制というものがここにつながっておる。そこで法制局といろいろ話をしたら、そうじゃありません、この一条第二項というのは、公務員が安心をして公務の運営に資されるように、いわゆる従事できるように、仕事ができるようにするためにあるのだということだった。老後になったら保障がある、疾病すれば保障がある、赤ちゃんを生めば保障がある、安心をして働きなさいよというのが第二項だというふうに私は聞いた。  それだったならば旧法の第一条と変わらない、こういう感じは受けましたけれども、この委員会審議しておると、いまの山本次官のお話では、まだ恩給法のほうがだいぶ手を振って歩いているような気がする。恩給受給者がある限り、恩給からの通算を受けている限り、こういうことがある限りいまのような給付制限というものは撤廃できないんだ、これが死んでしまったらできるかもしれません。これは暴論です。私はことばじりをとらえるのは好きではありませんけれども、これは暴論です。それは制度的には消えていって、昭和三十四年から新法というものができて、この法律で少なくとも公務員は保障される。昭和三十六年に国民年金ができて、これで国民年金ができた。そして社会保障制度としてあなたの老後のめんどうを見ましょう。  ILOに出された日本政府の資料を見ますと、諸外国のいう年金とはかなり思想的に違うけれども、国際統計資料では日本年金も同じような水準に置かれて、率が多いとか少ないとかの議論だけです。向こうでは日本考え年金制度社会保障である。ところが、帝国主義的な軍国主義的な恩給法の思想がそこに入っておる、こういうことになりますと、私は事は簡単には済まなくなってくると思う。しかしそれは私は山本さんの若干の誤解じゃないかと思う。昭和三十四年から始まった公務員共済の新法というのは申し上げたようにこれこそ社会保障制度である。恩給法とは関係ないのですよ。そういう立場に立っておるのだということから、ここには与野党の意見の相違はない。そういう立場から社会保障制度というのを基礎にして議論をして、給付制限をするということは過酷じゃないかということを申し上げたとたんに、恩給法の人たちがおらぬようになったらと言う。こういうふうなところに話を持ち返されると少し考えがおかしくなるような気がする。  そこで次官、肩をいからし、脇を固めて、安く見られたらいかぬから私は首を振り続けるということじゃいけません。いまの法律の解釈というのは、それは二通りぐらいあるかもしれませんが、あってはならぬ。いまの社会保障制度であるということにはもう二様の解釈はないのですから、その解釈に立って申し上げておるのですから、あなたもその解釈に立ってもう一度ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  45. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 私も国家公務員共済組合制度というものが、社会保障制度一環であるということを否定しておるわけではありません。ただ、いま国家公務員の中にはまだ恩給期間の間勤務されたという方が相当おられるということを申し上げておるわけでありまして、恩給法がそのまままだ生きておる、そういうお考えかどうかわかりませんが、いまお聞きしておると、どうもそういうふうに私がとっておるようにお話があったと思いますが、そういう意味ではありません。もちろん、私も社会保障制度一環としての国家公務員共済組合法であるということの理解は十分いたしておるつもりであります。ただ、いままだ現在の国家公務員として勤務しておる者の中には、恩給法の適用当時の期間も持っておられる方が残っておるので、そういうことを申し上げたにすぎないのでありまして、この点は誤解のないようにお願いをしておきたいと思います。
  46. 山田耻目

    山田(耻)委員 それは恩給を持っていた人たち、恩給の掛け金をかけてきた年限というものは昭和三十四年でちょん切られて、おまえはもうだめ、おまえは昔の帝国主義、軍国主義時代の恩恵を受けていた連中で、それはだめだ、つぶすのだ、こういうふうにはなっていないのです。それは引き継いであげる。引き継いであげるということは新しい着物を着たんですよ。旧令共済の皆さん等を含めて恩給関係の人たちも新しい着物を着たのです。新しい着物というのは新しい政治形態の中に入ったということです。それが社会保障です。過去に恩給の掛け金をかけた年限を持っていようといまいと、そんなことは関係ないのです。それは過去勤務債務の中でこれからまた聞いていくのですけれども、それは関係ない。  私が言うのは、総論として観念、ものの考え方、そういうものを伺っているわけです。昭和三十四年、新法になって以来恩給のことを、そういう一つの過去の思想的なものを引き継がれてきておる、そういうものとは関係がないのですから、新法が新しい共済組合制度の中で行なわれていって、そこにあるいまの九十七条による給付制限というものはおかしい、おかしいからこれはひとつ検討してくれ、こういうことを言っておるわけです。恩給をかけた人たちがまだ生きておる限りはだめだとか、そういう人たちも通算をしておりますからいけない、そういう制限を受けた人もいるのだから、その人たちがいなくなるまではだめだというのは、新しい共済組合法の精神ではない。いま私が伺っているのは、新しい共済組合法ができてからの今日の問題として伺っているわけですから、そういう古い残滓があるとすればそれはやはり取り除いていかなければならぬし、山本さんのいまのお話の中でもその分は取り除いてもらわぬと、新しい制度になっているのですから、そのように理解をして、いまの矛盾を検討していただく、こういうことで御理解いただけませんか。
  47. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 繰り返し何度もお答えすることになりますけれども、新しい国家公務員共済組合制度社会保障制度として新しく生まれ変わっておるんだということについては、何も私も違った意見を持っておるわけではありません。また、恩給法の適用当時勤務された方がいなくならなければ一本化ということも考えられない、もちろん私はそういう考えでもおるわけではありません。大臣の言われたように、一本化が進んでまいれば、だんだんにそういう方向をひとつ考えていきたいというお考えであるとするならば、私はそのとおりだと思うのです。社会保障制度の全体の充実という方向の中の一環として、こういう問題も将来だんだん考えられるであろうということを先ほど来申し上げておるわけでございます。
  48. 山田耻目

    山田(耻)委員 この話はまたあらためていたしたいと思いますが、どうも私はじっくりのみ込めないのですね。大臣はアンバランス部分、そして制度上の矛盾、こういうものを片づけていかないと一本化ができないと言っているのですよ。そして、その過程でなお国民なり各組合コンセンサスを得なければ、私は非常にむずかしいと思う。だから、このアンバランスなり制度的な矛盾なりを組合なり国民コンセンサスを得ていけば一本になるでしょう。だから私は、将来一本にするぞということを国民に明確にしながらコンセンサスを求めていけば、この矛盾はこうしてほしいということで、そのほうがむしろ早いんじゃないかと言ったけれども、大臣はそれに対しては御答弁なさいませんで、当面のアンバランスなり制度上の矛盾なり国民コンセンサスを得る、これをやっていこうという、それが今回の法改正の中にも出ておりますという答弁。  だから、いまあなたが言った九十七条の給付制限というものは今日の制度上の矛盾なんです、社会保障制度という立場から見たら。ところが恩給という立場から見たら当然だ。あるいは佐藤次官のように企業の中の秩序をしっかり守っていくためには罰則規定は当然だ、そうして一生涯その人は給付制限を受ける、その人が死んでも奥さんにまで給付制限がかかってくる、こういうことは社会保障制度の上から見たらよくない。だからこの九十七条、各公共企業体にありますそれぞれの給付制限規定というものは、もういま起こっておる大臣の言われた制度上の矛盾として検討してくれませんか。大臣の意向ですよ。これを両次官は、いやそれはだめだ、一本になるまでせぬ。そんなことを言ったら一本になることはないですよ。一本になるということを私が言うたものですから、一本になるということを隠れみのにして今日の現状の矛盾というものまでその中に包み込んでしまうのはひきょうですよ。  だから、まじめに日本社会保障制度というものを考えていく。それは政治家の任務であるという立場に立つのだったら、いまの一本化の方向に向かって、大臣が言ったように、起こっておるアンバランスの解消、制度内矛盾の解消、そういうものを現実に手がけていってやりたい、現実に手がけていくのがいまの法改正であるというのが、いまの大臣考えられた見解でしょう。それを私がここで問題提起をしまして、九十七条なり公共企業体の第二十条なり、こういう矛盾があるから、この点についてはひとつ御検討いただけませんかと言うているのを、恩給を持ってきたり、所得制限まで引っぱり出されて、意味ないのです、こんなものは。  私が言っているのは、もう簡明直截なんですから、その点について、いや検討せぬ、佐藤さんみたいに、あって当然だ、こんなもの悪いことをしたやつは銭はやらぬ、かつえ死んでしまえ、これが日本で言う社会保障制度なら、それでけっこう。それが自民党政府の言う社会保障制度ならそれでもけっこう。だからどっちかの答弁をしてくださいよ。検討するならする、こんなばかばかしいものはせぬならせぬ、どっちか言ってください。そうしないと、これは次へ移ろうにも移れぬようになってしまって私も困りますから、お願いします。
  49. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 先ほど大蔵大臣から御答弁があって、その御答弁には御了承をいただいておるようでありますから、その線で御理解をいただければけっこうだと思います。ただ、私が申し上げて多少誤解を招いたかもしれないと思うのは、私は社会保障制度全体の中で給付制限というものをやっておる、しかし、そういうものは将来の社会保障制度のあり方として検討されていくであろう、こういうことを申し上げておるわけであります。所得制限の話も申し上げましたが、現在の社会保障制度の中にも所得制限のあるものがございます。そういうものについても、社会保障制度を立てる場合に、社会保障制度そのものはそのもの、それからそれに対していろんな制限の事項があるわけでありますけれども、そのことはそのこととして切り離して別に考えていくという方向に、将来の社会保障制度というものはいくであろうということを申し上げておるわけでございます。それが先ほど来、少し恩給制度を持ち出したとか、所得制限を持ち出してとかということで誤解を生んだように私は思うのでありまして、私も大蔵大臣の言われたことには全く違ったことを申し上げておるつもりはございません。
  50. 佐藤文生

    佐藤(文)政府委員 私は、いま先生がずっと質問なされたことがやはり論議の対象に当然なることであることだけは否定しておるわけではございません。ですから、公的年金制度調整連絡会議の中でどういう論議をされているのだろうかということで私自身も勉強してみました。大きく分けまして第一点は、いまの年金制度共済制度、こういうような問題について改定の対象となる部分というものは一体どこなんだろうか、こういうこと、あるいは対象となるものは一体どういう人であろうか、あるいは改定の指標の求め方というものは一体どういう指標を求めていくべきであろうか、あるいは年金改定の時期並びに方式についてはどうあるべきであろうかというようなことが連絡会議で論議されて、一つの例を申し上げますと、改定の時期なり方式で自動改定方式をやるべきであるという意見、半自動改定方式をやるべきであるという意見と、それから財政の負担の面についても、国に大きなウエートを持たせろといった先生の先ほどの御意見と、第三者負担が原則であるという意見、これはいろいろ論議の中心になって、まだ結論が出ていません。しかしそれがやはり論議の対象になっている。その中にいま言った給付制限の問題点だって当然論議の対象になっているわけであります。  したがって、いま公共企業体のこの法案の中に出しておる給付制限というものについて次官はどう考えるのか、こうなりますと、私はいまの権利あるいは生活権といったような面については、一時行政罰なりあるいは刑事罰を受けるその間においてはストップしても理解できると思いますが、しかし一般社会に復帰して、堂々と罪の償いを済ましたあとにおいては、そこまで永久に給付制限をする必要はないではないか、こういう先生の御意見、これも私はわからないではありません。しかし、たとえば国鉄の職員国家の経済なりあるいは国民の福祉に最大限の奉仕をするようなことが要求されているのが国民の願いなんですね。ですからその期待にこたえて国鉄職員というものはがんばっているのです。そこでそういう行政罰なりあるいは刑事罰を受けた場合においては、いまの段階においては、やはり給付制限というものを設けていく、最低限のものを設けていく、国鉄では年額あるいは一時金に対して十分の二から十分の五、こういうぐあいに私は記憶しておりますけれども、そういうようなものはやむを得ないのではなかろうか。しかしそれは将来における公的年金制度調整連絡会議において、改定の対象となる部分というものは一体どういうところだろうかという中で論議の対象になっていくということは当然でございます。ただその中における将来にわたるいろいろな意見というものをわれわれは見込みながら、やはり将来に向かって考えていかなければならぬ重要なポイントであるということだけは私は否定しておるわけではありません。そういう意味です。
  51. 山田耻目

    山田(耻)委員 この問題はこれで終わりたいと思いますが、お二人の意見わかりだしてきたのですが、将来八区分を一本にする。それで今日の制度上の矛盾、いま私が言ったのは給付制限だけですけれども、ずいぶんあるんですよ。こういうものは委員会あたりで、あるいはそれぞれの関係審議会で十分議論されていく段階に入った、このことはお二人ともお認めでございますね。検討する段階に入っておる。  ただ私がとりわけきょう申しましたのは、同じ公的年金の中で一番国の歳出の部分、いわゆる国庫負担が多い国民年金、二番目に多い厚生年金、この国民年金厚生年金が全公的年金加入者の大体八〇%以上占めているのですね。両方で四千五百万人くらい占めておるのです。この人たちに対してはいろいろな給付が低いということでいま問題になって、国もかなり配慮なさっているようですけれども、しかしこの国民年金なり厚生年金の人たちは給付制限がないのですよ。そうして特に公共企業関係国家公務員関係には給付制限がある。これがいま私の申し上げた質問に対する争点の軸であったのですが、しかしこれは社会保障制度であるという立場から新しく生まれてきた国民年金厚生年金等の立場が、やがて人間として保障されていく最低の権利、こういう社会保障制度というものはあまねく全国民に適用する、法律はこうなっている。だから憲法上のすべての国民という立場の中には、農民も漁民も一般民間企業の人たちも国家公務員も平等である。それが旧来の古い思想から見たら、支配権という関係と被支配者、こういう立場に官僚というものが非常に多くの権力を持続してきた。そういう一つの背景がここにはからまって、こういうふうな一つの状態があった。そういうふうなことを私は申し上げて、一条の目的の第二項を指摘をしたわけです。  ところが、いま佐藤さんは、国民経済ということばを使われている。国鉄にしても電電にしても、専売にしても、この人たちだけが特別に国民経済をになっておるのじゃないのです。日本農民日本の漁民も、今日どれほど苦労を重ねながら日本国民経済をささえておるか。差別はありませんよ。みんなひとしい国民です。  だから、公共企業体の人たちだけが国民経済のにない手として、そこに秩序を乱した者は、おまえは終身罰を食わせるぞというふうなやり方は、これまたあなたの御答弁としていただけない、社会保障制度から見るならば。やはり厚生年金国民年金もすべて同じなんです、国民経済から見たならば。公共企業体も民間企業体も日本の農漁民団体も差別はない。それぞれが持ち場を守って、しっかり日本国民経済を高めてきておる。差別はない。だから、国民経済という立場から見てはいけない。だから社会保障制度一環であるということばだけで、すべてを包括をしておるというふうに私は受けとめたい。  これはこれで打ち切ります。打ち切りますが、どうかひとつ両次官とも、いま起こっておるアンバランス、八区分のアンバランスと、それぞれが持っておる制度上の歴史が違うだけにある矛盾、それに組合員なり国民とのコンセンサス、この一致点を求めるために今日の法改正を出したというのであるならば、出されてない部分を私は指摘をしたわけですよ。それが給付制限という非常に思想的背景を持つものだけに、私はこうした長い時間をかけたわけですけれども、制度上の矛盾です。大蔵大臣が言っているようにこうした三つの矛盾点を解決をして一本化へ、それが大蔵大臣の、私一個人、私自身の意見だがという前置きをしましての所信でありました。それを受け継がれての山本次官なり佐藤次官のいまの答弁としては、当面起こっておるこの矛盾を解決をするために御検討いただきたい。  だから、佐藤次官のほうは、それが制度審議会その他には議論が出ておる。だから矛盾は矛盾として必ず解決しなくちゃいけないし、山本次官のほうも大臣のおっしゃるとおりだとおっしゃいますから、そういう問題点が起こってきたら、こういうものは政治の分野で片づけなくちゃいけないのですから、そうしないところに国民の不満はつのってくるのですから、やがてこうした問題でだんだんと大きな社会問題になってくるのですから、ここらあたりでこうした気がついた矛盾点は私たちの責任として解決に取り組む。そうして必要な関係に検討を求める、こういう気がまえと作業への意欲だけは私は消していただきたくない。そういうことをお願いをして、この給付制限についての質問は終わりたいと思います。  委員長、あとたくさんあるのですが、十二時半になったらやめてくれというお話ですが、これはひとつこらえていただいて、まだたくさん問題がありますから、ひとつ午後に再開していただいて質問を続けたいと思います。
  52. 鴨田宗一

    鴨田委員長 午後一時四十五分より再開することにし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  53. 木村武千代

    ○木村(武千代)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山田耻目君
  54. 山田耻目

    山田(耻)委員 午前中の質疑で、国庫負担割合というのがいろいろな分野に影響をしてきておるわけですが、国庫負担を八区分に分けて違うわけですけれども、これを同率にすると、なお年金支給額にアンバランスを生ずる、だから今日のように国庫負担分がアンバランスになっておることが、年金支給総額をできるだけ一律化していくのに妥当な措置だというふうな御見解が述べられておりました。この点についてもう少し深めてみたいと思うのでありますが、大体八区分に分けて国庫負担率はそれぞれどういうパーセントを示しておるのか、お伺いいたしたいと思います。
  55. 辻敬一

    辻政府委員 厚生年金の場合には、御承知のように、国庫負担割合が二〇%でございます。船員保険につきましては二五%でございます。国民年金につきましては三分の一でございます。国家公務員共済組合地方公務員共済組合、公企体職員共済組合につきましては、これは公経済の主体としての負担でございますが、一五%になっております。私立学校教職員共済組合農林漁業団体職員共済組合につきましては一八%ということに相なっております。
  56. 山田耻目

    山田(耻)委員 国庫の支出ですから、税金を歳入で受けて国庫で歳出で出していっている。欧米諸国には非常にこれが多いわけですね。社会保障制度の中の税として受けて、そうして歳出でまかなう。日本の場合もいまの国庫負担率がばらばらであるところに、いろいろと、国民の側から見たら、いわゆる保険組合の側から見たら、私たちの年金はこんなに少ないがあなた方は多い、これは国の、国庫負担分が多いのじゃないか、こういうふうな素朴な疑惑を持つわけです。  ところが、逆にながめてみまして、一番公的年金の低い分野である国民年金は、いま申されましたように三分の一ですから、三三・三%強、そうして船員保険のほうは二五%、厚生年金は二〇%。船員を除きまして、比較的給付率の低い分野に国庫の支出は高くかかっております。だから、それからながめてまいりますと、イコール、本人負担なり事業負担が高いということに単純な頭ではなるわけです。しかし、国民立場から見たら、それは一つの今日の施策の中から生まれたやり方がこういうふうに年金に差を生じさせてきておる、こういうふうに判断をいたしておるわけでございまして、やはりあるべき本来の姿としては、さっき申し上げた一本化ということが前提であるわけでありますが、当面一本化に近づくなしくずしの体制として、社会保障制度でございますからこの国庫負担歳出分も同額にしていく、こういうことが当然あり得てしかるべきではないか。この点、未来永劫にわたって差をつけておくということではないという説明をさっきいただいたわけでございますが、これは辻さん、いかがでございますか。  このように国の税金から支出していく分について、同じ公的年金制度で基本は社会保障制度であってこの違いというものは妥当でない、こういうことが私は一口には言えると思うのですが、将来その方向に向かって折りあるごとに是正をさせていく、あるいは統一さしていく、そういう方向への努力というものは今日までなさっておるのでありましょうか。それとも将来に向けてする気持ちがあるのですか。いかがでございましょうか。
  57. 辻敬一

    辻政府委員 社会保障制度に対する国庫負担のあり方につきましては、いろいろと御議論なり御意見があるところでございます。昭和三十七年に社会保障制度審議会答申が出ておりまして、私どもも大体基本的にはその答申の趣旨に従って考えておるわけでございます。  御承知のように、社会保険と申しますものは一般所得階層に対する施策でございますから、国庫負担の優先度という点からまいりますと、公的扶助でございますとか、社会福祉でございますとか、あるいは公衆衛生でございますとか、そういう施策よりは優先度が低いというふうに考えています。しかし、もちろん社会保険制度につきましても、国庫負担が先ほど申し上げましたようにあるわけでございます。その場合に、どういう場合に国庫負担をするかと申しますと、保険料だけでは社会的に要求される最低限度の給付水準を維持、保障することができないような場合でございますとか、あるいはまた被保険者の範囲が負担能力の低い層に及んでいる場合、そういうような場合に限りまして制度全般の均衡、緊要度を勘案いたしまして国庫負担を行なっているところでございます。  そこで先ほど来御指摘のございました国民年金につきまして、なぜ三分の一の高率な負担をしているかという点でございますけれども、御承知のとおりに国民年金につきましては事業主の負担というものがございません。そこで、そういう点も加味いたしまして特に高率の負担をしている次第でございます。  それから一般厚生年金共済年金との国庫負担についてなぜ差があるかという御指摘でございますが、これも御承知のように現在の厚生年金水準共済年金水準とを比較いたしてみますと、今回厚生年金の大幅な改正を予定いたしておりまして、標準的な年金額を五万円に引き上げるということを別途御提案申し上げておりますが、共済年金のほうはそれに比較いたしますと、金額にいたしまして大体六万四千円程度に相なるわけでございます。そのほかに、御承知のように受給開始の年齢が違うわけでございまして、厚生年金の場合には六十歳からもらえますが、共済年金の場合には五十五歳からもらえる。つまり一生のうちに年金をもらえる期間が違うわけでございます。そういう違いを全部総合いたしまして給付水準を比較いたしてみますと、共済を一〇〇といたしますと厚生年金水準が大体六割ないし七割程度である。そこで、そういった給付水準の差がありますのに同じ国庫負担をするということは、かえって均衡を失するという観点に立ちまして、先ほど申し上げましたように、厚生年金は二〇%でございますが、共済年金の場合は一五%、こういう国庫負担にしておる次第でございます。
  58. 山田耻目

    山田(耻)委員 八区分調整をするということで負担率をそれぞれ変えているというお話です。それはそれなりに私わかるわけです。ただ問題は、厚生年金にいたしましても、年金給付額は非常に少ない、公務員に対して六ないし七である、こういうことになりますと、思い切って国庫負担を増額をして、できるだけ最終の給付額が同じようになり、しかも年金を受け取る年齢もほぼ同じにしていく、こういうふうな作業を今日までお考えになりお進めになった一つの例が今回の五万円年金ということでしょうけれども、しかし、それでもなおまだ公務員なりその他に比べてみて比肩すべき額ではないわけです。  五万円年金とおっしゃいますけれども、実際には大体二万五千五百円程度の年金が三万六千円程度になるだけでございまして、五万円年金にははるかにまだ距離がございます。五万円年金を受ける人というのはごくわずかですね。それはやはり財源的な保証というものがないからできない。結論は簡単なんです。それは、端的に言えば、掛け金率を事業主、被保険者本人に思い切って増額をする方法一つと、それはしかし社会保障制度のあり方としてはおかしいから、国庫負担率をふやしていく、この二つしかないはずです。その国庫負担率を、いまの百分の二十から百分の三十に引き上げていくということは、いずれか二つのうち一つを選ぶということになったら、当然どちらか選ばなければならない。それを行政サイドでながめていけば、やはり国庫負担というものをできるだけ高めてあげる、そうして社会保障制度の名にふさわし年金を、同じように国民どなたにも差し上げていく、特殊なものは別といたしまして、概念的にはそういうふうに統一されたものにしていく、この考え方は、私は誤っていないと思います。  だから、国庫負担というものがいまの財源二〇%で、厚生年金給付水準がまだ国家公務員の六割ないし七割しかないというのだったら、国庫負担というものをそれに見合うように引き上げていく、あるいはそれに近い金額に引き上げていく、こういうようなことはお考えになったことはございませんか。
  59. 辻敬一

    辻政府委員 年金に対します国庫負担の割合でございますが、諸外国について見てみますと、イギリスは被用者保険につきまして二〇%でございます。西ドイツは約一五%でございますが、アメリカ、フランスにおきましては、原則として年金に対します国庫負担はございません。そういう諸外国の例等を勘案いたしますと、現在の厚生年金その他わが国の年金制度におきます国庫負担の率と申しますものは、かなり高率になっているのではないかというふうに考えておるわけでございます。  なおまた、ただいま厚生年金水準についての御質疑があったわけでございますが、御承知のように、ILOの条約におきましては、未熟練男子労働者の平均賃金の四〇%ないし四五%という基準が示されておるわけでございます。厚生年金の今回別途御審議をいただいております五万円年金給付水準は、平均の標準報酬に対しますと六割をちょっとこえております。それから賞与まで含めました現金給付の総額に比較いたしますと、四六%でございますので、ILO条約を上回っておりますし、国際的に見ましても相当な水準ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  60. 山田耻目

    山田(耻)委員 問題は、国際的な比較、ILOの調査資料に基づいてお話しでございますが、これはどの部分を引き抜いてそれを言うのかによって違うわけです。一般的に見て、一九七二年、去年のILOの調査資料を見ますと、国がまかなっている社会保障費の中で年金がどれだけを占めておるか。このILOの比較を見ますと、私のほうの比較では、日本は、社会保障費の中に占める年金は八・六%しかございません。フランスが三三・二%、イギリスが四二・二%、イタリアが四八・七%、西ドイツが五六・二%、アメリカが六八・四%、こういうふうになっております。日本は八・六%で、大体アメリカの八分の一、あるいは西ドイツや比較的経済的に豊かでないイタリアあたりと比べましても六分の一弱、五分の一強、こういう状態です。  だから、社会保障制度という全体の国家支出の中で、いま年金の分野だけ、たとえば国民年金が三三・三%、船員保険が二五%、厚生年金が二〇%、私学一八、その他一五、こういう比率を比較すれば、いまおっしゃるように比較的日本の存在というものは高いかもしれませんけれども、社会保障費全般から見たら、日本年金というものは微々たるものです。これを比較されて申されたのでは、なかなか国庫負担率を上げないという立場に立てば、そういう御意見は十分私はうかがえますけれども、できるだけ国庫負担を上げて、そして被保険者なり事業主負担というものをできるだけ軽くしていくという考え方に立てば、私のような見解が出るわけですね。  ただ、いまの辻さんのお話の中で見ましても、国庫負担率が非常に低い国もございます。たとえば日本の場合は三一%、西ドイツが二八・二、イギリスが四九・八、フランス、イタリアは一八%と一九%で、日本より低いです。低いけれども、こうしたところはたいてい事業主と被保険者の割合は三対七ですよ。被保険者のほうは三割かけ、事業主が七割かける。そういうところは国庫負担率は比較的下がっています。しかし、社会保障の費用というのは膨大に国家予算に組んでおります。その中で年金が占める分は、最初に申しましたように、日本は八・六と非常に低い。だけれども、相対的に見て年金部分だけ見ますと、いま申し上げたように、日本は財源構成率を見ると国庫がかなり高い。しかし年金の分野ではそうした低さが目立っておる。  きょうここで申し上げておるのは、社会保障費全般の話を私はしておるのではないのです。いわゆる年金制度、その年金制度の中の国庫負担率のアンバランスというものがどうしたら是正できていけるか、そこにいま申されたようにいろいろその区分別に背景があるし、ますます格差を拡大してはいけないから、負担割合をそのように差別をつけておるし、厚生年金は五万という形に持っていくために、本人負担なり事業主負担を増額していって処理をしていく、こういうお話に尽きたようでございますが、厚生年金を本物の五万円年金にしていくために、国庫負担を三〇%程度に引き上げたら、私は財源的に十分だと思う。だから、少なくとも国庫負担を三〇%基準までに引き上げていく努力というものが年金額を引き上げるということと相関性において将来考えられないか。本人の負担率というものをふやすことは国際的にはむしろ逆の現象をとっております、事業主負担がふえてきておりますから。やはり国庫負担というものを、そういうものをカバーをして、最低求められておる年金政府が言っておる五万円年金というものに近づいていくような国庫の支出というものをお考えいただけないだろうか、この点についてはいかがでございましょうか。
  61. 辻敬一

    辻政府委員 御質疑の冒頭に社会保障基準の中に占めます年金給付の割合が低いことを御指摘いただいたわけでございますが、それはそのとおりでございます。ただそれには二つの大きな理由がございまして、一つはわが国の老人人口の割合が非常に低いということです。六十五歳以上の人口をとってみますとわが国の場合は七・一%でございますが、諸外国は大体一〇%から一四%程度で老人人口の割合が高くなっております。それからもう一つは、わが国の年金制度歴史が浅いと申しますか、それだけ未成熟であるという点でございまして、たとえばただいま御審議をいただいております国家公務員共済組合年金をとってみますと、共済組合員の総数に対します退職年金受給者の割合と申しますのは大体一二%ぐらいでございます。厚生年金の場合でございますとさらに低くて三%程度でございます。それに対しまして諸外国でございますと、大体二割から三割でございまして、成熟度が高いわけでございます。  したがいまして、現在のように老人人口の割合が低く年金制度が未成熟な段階では、御指摘のように年金給付の割合が非常に低いわけでございますが、制度といたしましては先ほども申し上げましたように国際的に見て相当な水準に達しておる。したがいまして、このまま老人人口がふえていく、あるいは年金制度が成熟してまいるという状態になってまいりますと、現在のままの制度でも相当年金給付費の割合が上がってくるのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。  それから、国庫負担と関連いたしまして事業主負担の御指摘もあったわけでございます。一部の先進諸国においては仰せのとおりでございますけれども、たとえばドイツの年金制度におきましては、御承知のように相当高率な保険料になっておりまして、千分の百八十という保険料を取っております。しかも労使折半でございまして、千分の九十ずつを労使で負担しておる。アメリカも労使折半の原則をとっております。諸外国によっていろいろ制度は違いますけれども、そういう例もあるわけでございます。私どもといたしましては、年金制度の充実、年金給付水準改善には今回も相当思い切って配慮をしたつもりでございますし、今後ともそういう方向に向かって努力を続けてまいりたいと思っております。  国庫負担その他につきましては、先ほど申し上げましたように、諸外国との均衡上もかなりの程度にいっているのではなかろうかという考えを持っておるわけでございます。
  62. 山田耻目

    山田(耻)委員 国庫負担の問題でございますから、それらについてはなおいろいろと情勢は変わってまいりますし、十分お含みの上なお一そうの御研さんをいただきたいということでお願いしておきます。  ただ、国庫負担というのはいわゆる税金です。いわゆる歳出でまかなっておるわけですが、いまの三三・三%の国民年金から一番低い国家公務員共済地方公務員共済、公共企業体共済、一五%ですが、この一五%の国庫負担というのは当然国家でまかなっていくのですけれども、私がかつて国会議員の前に仕事をしておりました国鉄などでもそうでございましたが、国庫負担を国が負担せずに企業負担をさせる、こういう制度はいまでも残っておるわけですか、いかがでございましょう。
  63. 辻敬一

    辻政府委員 公共企業共済組合の場合には、仰せのように公共企業体、つまり国鉄なり電電公社が公経済の主体たる立場から長期給付の一五%を負担しておるわけでございます。
  64. 山田耻目

    山田(耻)委員 そうなりますと、これはまたおかしいのですけれどもね。この間、国鉄運賃問題の連合審査に出まして、私、いろいろ質問をやったわけです。国鉄運賃法も昨十四日衆議院を一応通過をいたしまして、参議院に送付されておりますが、公共企業体の中で国鉄——次官もお見えでございますし、清水さんもお見えでございますが、国鉄の財政というのは、国が十カ年の再建計画でまさに倒産寸前の国有鉄道に対して、日本企業の中に占める国鉄の使命等も考慮してこれから十カ年間に十兆五千億という金を貸し付けてそうして国鉄の構造改革、近代化への衣がえをさせる。関連企業、競争企業の中で市場欠落を起こさないように強化をしていく、こういう一つの筋道と、三兆六千二百億国としてめんどうを見なければ、その中には出資金の一兆五千億、金利負担等も含めて、過去債務に対する金利もうんとめんどうを見てやって、そうして寄せ集めた金が三兆六千二百億、十カ年間で見ようというところまで経営は悪化してきておるのです。そして国民には客貨合わせて二五%近い運賃値上げをさして、このインフレの中で国が公共料金値上げに主導的役割りを果たすということは、アメリカのニクソンさんがおととい発表したアメリカの物価、インフレ政策の中でも半年間一切の物価の値上げは中止をさせる、かなり思い切った手をとり始めてくるほどインフレは悪化しつつある。日本もその例外ではございません。そういう中で、運賃値上げをさせるということの批判がかなり強く国民の中に出てきておる。国鉄に国庫で支出すべき一五%の負担金を、その国鉄に背負わせておるということは一体どういうことなんだろうか。  もっと端的に言えば国庫負担というのは税金の負担ですね。税金で見ている。社会保障の基本原理はそうでしょう。ところが国鉄、専売、電電というのは原則的には受益者が負担をしています。独立採算制をとっておりますから受益者負担です。だから鉄道を利用し、たばこを吸い、電話をかける人たちの負担国庫の支出という名目を貫こうとしておる。これは私は邪道じゃないか。確かに国鉄も専売も電電公社もいわゆる国有である。それぞれの事業法を見ると、その基本の中に公共的性格を持つと同時に、企業的性格を持てとなっている。しかし、原則は国の経営する事業という立場をとっておるから、税金でめんどうを見るのも、国庫負担として支出をしていくのも、鉄道運賃をもろうた中から払っていくのも同じだという理屈にはなりませんよ。ではこれはどういうことになるのですか。
  65. 住田正二

    ○住田政府委員 国鉄、電電、専売の公共企業体につきまして、国庫負担分は、先ほど大蔵省から御答弁がありましたように、公経済の主体としての国鉄が負担しているというのが現在のやり方でございます。このような負担を国鉄にさしておいて、一方国鉄が再建計画を実施していくのは矛盾しているのではないかというような御指摘だろうと思うのですが、現在の国鉄再建十カ年計画におきましては、先ほどお話がございましたように、三兆六千億の助成金を出して再建するわけでございますが、この再建にあたりましては、個々の項目について助成するということではなくて、国鉄全体についていま申し上げた三兆六千億の補助金を出して最終年度の十カ年目に三千七百億円の黒字を出すという形で再建をいたしているわけでございます。したがって、たとえば地方赤字ローカル線について補助をするとか、あるいは公共運賃割引について補助するというような個々の項目について助成しないで、全体として特に過去債務の負担を軽減するとか今後の資金についての利子負担を軽減するということを中心に、全体としての国鉄の財政がどうなるかということを見て助成をいたしておるわけでございます。国庫負担金の一五%は国鉄の経理といたしましては人件費の中に含まれるわけでございまして、人件費といたしましては当初五カ年間は一二・三%、後半の五カ年間につきましては一〇・三%の上昇率で人件費をはじいております。したがって、今後の国鉄の国庫負担の分もその範囲内でまかなえるわけでございまして、そういうものをまかなって十カ年目には黒字に転換するということで、国鉄財政再建ができる、そういうふうに考えているわけでございます。
  66. 山田耻目

    山田(耻)委員 何か質問がかみ合わないのですが、要するに国庫負担というのは国の税金、歳出でまかなうのが国庫負担ですね。それを公共企業体、国が経営する企業であるからといって企業負担にさせることは、国庫負担ではないでしょうと私は聞いているのです。それはどうなんです。
  67. 辻敬一

    辻政府委員 一般に、社会保険制度におきます長期給付の費用は、国とか地方公共団体、あるいはただいま御指摘のございました公共企業体、いわゆる公経済の主体が社会保険を推進する立場から一定の割合を負担いたしまして、残りを事業主と被用者とが折半して負担するというたてまえに相なっておるわけでございます。  公共企業体につきましては、私がくどくど説明するまでもございませんけれども、公共の福祉を増進するために設置された公法人でございまして、広い意味での国の活動の一翼をになうものでございます。いわば国に準ずる性格のものでございまして、そういう公経済の主体たる地位にあるものと考えられますので、そういう立場から、長期給付の費用を負担をしてしかるべきではないかというふうに考えておるわけでございます。  もちろん、ただいま山田委員の御指摘のような国鉄の財政危機につきましては、大蔵省といたしましても十分認識をいたしておるわけでございまして、国鉄の再建につきましては積極的に取り組む姿勢を持ちまして、四十八年度を初年度とする十カ年計画の再建対策を立てているわけでございます。全体としてそういう再建計画対策によりまして国鉄の体質改善をはかるということを計画しておるわけでございまして、この問題と、ただいま御指摘のございました公経済の主体としての長期給付の問題は、おのずから別の問題であろうかと思います。
  68. 山田耻目

    山田(耻)委員 私は、国が経営すべき企業として、そこに公の法人としての日本国有鉄道、専売公社、あるいは電電公社をつくったら、そこにはその人格があるわけです、独立採算制をしいられておりますから。たとえばそれぞれの事業法を見ましても特殊な性格が出ているわけです。それは完全に独立した企業です。しかし、そこには公法人としての公益性を持たせておりますから、いろいろそういう意味からの制約もあります。  しかし、社会保障制度として確立された年金制度は、国庫と事業主と被保険者、三者が拠出をし合って保険財政を保っておるわけです。だから、法律では三公社に対しては一五%国として補助率をつけておる。一五%国庫として負担をするとなっておりますね。だから、一般から見ますと、国庫負担というのは、私が申し上げましたように、歳入で、税金で得て歳出で出していく、これが国庫負担の原則です。それが三公社だけはいまのように企業に持たせておる。それがたまたま公益法人としての一つの人格がある、あるいは国が経営しておるという前提に立っておるならば同じじゃないかという立場でながめていくことは私は間違いじゃないかと思うのです。少なくとも国庫負担を、そういう企業であろうとも、企業国庫負担をかぶせていく。その企業負担というものはいま申し上げたように独立採算制で受益者負担を原則としておる。その中に保険料を国庫負担分を加えて企業に持たせるということは、私は国庫負担という法律のたてまえから間違いであろう。それはかつて国が経営しておったのだから、いまでも国が総裁の任命権を持っているわけだから、予算、決算を見るのだ、そういうこととは別なんです。だから私は、ここは企業にかぶせていくというのは酷ではないか。  その事情の中で、非常に優秀な企業とほんとうに破産に瀕しておる企業との違いがまたおのずから出てきます。理由もまた違うものが出てきます。それが住田鉄道部長のように、三兆六千二百億の金を十カ年間で出してくれる、これは何に入れろということではなくて、そういうことも全部含んでいるのだということをおっしゃっておりましたけれども、国鉄財政再建十カ年計画というものはそういうものじゃないのです。国鉄財政再建十カ年計画の中には国鉄の労働者の年金を十分見てやれということは入っていないのです。国鉄企業の再建をどうするのかというところが主体になっている。三者三方損という大臣の御意見ではありませんけれども、国も金を出して国鉄の再建に当たりましょう、国鉄も十一万人の合理化をやって、輸送構造の改善にひとつ力を入れなさい、国民は二三・四、二四・四——二五%近い運賃値上げを受けて、三者みんな損だ、それによって国鉄という公経済の中にある企業体をしっかり安定させていこう、これが十カ年再建計画の趣旨です。  国鉄の年金国庫負担分を国鉄に背負わせて、それを含めての国鉄再建十カ年計画というものじゃない。そんなことをしたら、国民は、この運賃値上げでいま非常に怨嗟の声を出しておるけれども、国鉄労働者のやめていった先の年金までこの中に入っておるのだ、そういう立場国民の皆さんは決して了解しませんよ。それは社会保障一環としてある年金というものは、国庫と事業主と被保険者と三者で負担をしていくのだという大原則ができておるからです。企業体に負わせた国庫負担分は最終的には受益者に返ってくるのだ、こういうふうな立場はとられておりません。それだけに私は、三公社に対していまやっておる一五%の国庫負担を背負わせた、しかもこれも一五%になりますと、だんだんと金額はかさんでまいります。かさむ一方です。これがかなり重荷になる企業、ことに国鉄なんか重荷になってくるものと私は思います。これは佐藤次官そうでございましょう。次官としての見解はいかがでございましょう。
  69. 佐藤文生

    佐藤(文)政府委員 国鉄の財政再建にとって、いま先生の御指摘になりました共済組合負担金の問題は、人件費とあわせまして私は大きな問題だと思います。これは率直に認めざるを得ません。そこで、先生の言われた原則を貫いてこの負担金をまた別な面で、原則に照らして国の一五%を出すということに踏み切るには、なかなかいろいろな問題がございます。したがって、人件費の中に含めまして、向こう十カ年間に徹底した国鉄自体の合理化、近代化を行ないつつ、国の助成と国民の運賃の値上げに対する御了解を得ながらやっていこうという再建案を立てまして、御審議をしていただき、衆議院で貴重な意見をいただきながら通過をさせていただいたわけでございます。ただ、先生が言われたこの負担金の点については、国鉄再建の上における大きな問題点であるということだけは間違いない事実であることだけを私は認識いたしておる次第でございます。
  70. 山田耻目

    山田(耻)委員 まあ、たいへん将来問題になるという事実は同感だとおっしゃるわけですが、ではこうしようという見解はまだいただけないのですが、いずれ、佐藤さんのほうからこうすべきだという見解もきょうは聞きたいと思います。  私は、いま国庫負担一五%だけの問題じゃないと思うのです。過去勤務債務に対する負担まで差別しているでしょう。国鉄からきょうお見えになっておりますが、国鉄が過去勤務債務として今日どれだけの累積額を持っているのか、項目別に述べていただきたいと思います。
  71. 清水晋

    ○清水説明員 お答えいたします。  四十六年度末の数字で申し上げたいと思います。総額におきましては、過去勤務債務二兆一千三百六十四億五千万円でございます。その内訳といたしまして約十項目ございます。新法の施行以前の過去勤務債務が八百三十六億。次は恩給公務員期間吸収による増加額が九百四十一億円ございます。新法施行時の所要財源率を改正いたしまして、これによる増加額が二百五十二億六千九百万円。次が年金改定による増加額が二千六百六億六千五百万円。それからベースアップによる増加額が一兆一千二百八十五億九千六百万円。軍人期間を算入いたしましたことによります増加額が百五十億ございます。次に満鉄等外国特殊法人期間算入によります増加額が九十五億七千七百万円。それから今日まで所要財源率を改正いたしてまいりましたが、これによります増加額が千五百五十九億二千五百万円。次に増加恩給期間算入による増加額が二億七千六百万円。最後に過去勤務債務の利息の増加分といたしまして三千六百三十四億四千二百万円。トータルいたしまして、冒頭に申し上げましたように、二兆一千三百六十四億五千万円の過去勤務債務、これは四十六年度末でございます。
  72. 山田耻目

    山田(耻)委員 いまの過去勤務債務という表現を私は使ったのですが、もっと端的にいえば、膨大な二兆一千三百六十四億円というお金は、申されたように、ベースアップであるとか軍人軍属期間の通算であるとか、あるいは外国特殊法人の通算であるとか、これだけの金を支出する財源を積み立てていなかった金額のわけでございますね。この過去勤務債務というものは国家政策の変更によって生まれ出たものです。たとえばインフレなどになってまいりますと、今回出てきておりますように年金のアップがある。物価政策というものは、この年金保険の被保険者の行なっておる日常の諸活動、諸労働の中から生まれ出てきたものではなくて、むしろ国家政策の中におけるインフレ政策国家がこのことについて当然責任を負う物価上昇という形の中から、こうした問題は発生してきておるわけです。あるいはまた外国の特殊法人におりました人たち、満鉄にしても華北にいたしましても、開拓にいたしましても朝鮮鉄道にいたしましてもそうでございますけれども、そうした人たちの過去の保険というものは国鉄保険財政に入っておりません。その人の分まで年金を支払っていくわけです。こうしたものが、いま十項目述べられた総額が二兆一千三百六十四億になっておって支払っていかなければならぬ。ところがこの金の積み立てばない。  国家政策の変更に基づいて、特に軍人軍属の期間の通算も含まれておるだけに、当然国家としてめんどうを見ていかなければならぬのが追加資金とも呼ばれ、過去勤務債務の措置ともいわれておるわけですけれども、これが膨大な、二兆一千億をこえてきた。これはふえるばかりです。この負担というものはすべて国庫で見ておるわけです。公共企業体の共済組合などで追加資金措置をいたしておりますけれども、大蔵省は、四十八年、ことしを含めて、すでに予算は完了しておると思いますけれども、どれくらいこの追加資金を見ておるのか。四十四、五、六、七、八、五カ年間くらいにわたってひとつお伺いいたしたいと思います。
  73. 住田正二

    ○住田政府委員 昭和四十三年度からの国鉄の追加費用の額を申し上げますが、四十三年度二百四億、四十四年度二百四十八億、四十五年度三百三億、四十六年度三百六十二億、四十七年度は推計でございますが四百三十八億、四十八年度の予算では四百八十三億でございます。国鉄だけでよろしゅうございますか。
  74. 山田耻目

    山田(耻)委員 国鉄の場合だけでけっこうです。  公務員の場合はいかがですか。
  75. 辻敬一

    辻政府委員 四十四年度から申し上げますと、四十四年度が百六十二億一千五百万円、四十五年度が二百三十億七千九百万円、四十六年度が三百億七千二百万円、四十七年度は見込みでございますが三百五十九億五千百万円、四十八年度は同じく見込みで四百八十三億二千六百万円でございます。
  76. 山田耻目

    山田(耻)委員 公務員の場合はその年度年度できちんと予算化し、整理していくわけでございますね。ところが公共企業体の場合は、その過去勤務債務、いえば追加費用というものは積み立てをしていく。それがいま鉄道部長がおっしゃった金額でございますね。その積み立て率は千分の五になっておる。それで一体鉄道部長、三公社の共済組合というのがいまの千分の五のものを積み立てていくだけで将来まかなえますか。それはどうなんですか。
  77. 住田正二

    ○住田政府委員 この追加費用は、過去勤務債務の総額の金利負担分まで積み立てるということで、毎年千分の五ずつふやして積み立てをいたしておるわけでございます。したがって、昭和四十五年には千分の八十一を追加費用として積み立てる。四十六年には八十六、四十七年には九十一、四十八年には九十六、これから毎年ずっと千分の五ずつ増加して積み立てていくわけでございます。
  78. 山田耻目

    山田(耻)委員 国鉄の場合は積み立てていく方式で千分の五ずつやるわけでございますけれども、これも国鉄という企業あるいは専売、電電という企業の中で肩がわりしている。最初の百分の十五の国庫負担も、企業、おまえ持て。この過去勤務債務も本来国が持つべきだが、まあ千分の五ずつ負担をしてやっている。金利相当分以下ですけれども、負担をしてやっている。これもおまえ持て。全部企業にかぶせていくわけです。これでは企業共済年金財政というものはつぶれていきますよ。たとえばいまお話のございましたいわゆる過去勤務債務総額は二兆一千三百六十四億ある。これを五分五厘の金利でかけてごらんなさい。幾らになるのだ。年間千百六十三億になる。一体千分の五の、これだけのものだけを出して積み立てておく。そのことだけ見たって国鉄なり公社の年金財政というものはつぶれていくですよ。それもみんな苦しい各企業に肩がわりさせて持たせる。これは少し三公社の企業年金というものがじゃまになっておるのじゃないですか、大蔵省は。  何もかもみな企業で持て。しかし理屈はもう社会保障制度じゃぞ、それは老後の問題、しっかり保障していかなくちゃいけぬ。しかし何かちょっとしたら、懲戒処分を受けたら十分の二減らすぞ。金のほうは、国庫負担分はみんなおまえ持て。いま国鉄の積み立てが、出ております資料を見ますと、大体三千五百億前後ではないかと思いますけれども、いまのような追加資金総額二兆一千億の金利分、それに積み立てとして千分の五やらせる。その差額を見ただけだって、金利分と千分の五の差額を引いただけで八百億近いものになる。そうして年々の年金支給というものは額、数ともにふえてまいります。三千四、五百億の準備された資金はこのままほっておくとここ三年か五年出ずしてパンクするのじゃないだろうかと心配をします。そのときになって運賃の値の上げようが足らなかったからまた運賃上げようよ、こういうことでは年金の性格から全く逸脱したやり方といわなければならないわけです。  だから、私は、この年金の問題についてはその原則に立ち返って、国庫負担分の一五%と過去勤務債務追加費用については国で持つ。国家公務員なり地方公務員はそれぞれ国でちゃんとめんどうを見ておる。特に国家公務員はその年度年度で計算していく。みんな清算をしてあげる。公共企業体のほうは蓄積をしておいて、元金は凍結をしておいて金利分はめんどう見てやるけれども、積み立てをする。それは千分の五しか見ない。そのために五分五厘、金利から計算をしていけば、八百億近い差がまた生まれてきておる。そうしたものはみんな国鉄持ちだ、あるいは三公社企業持ちだ。こういうことでは私は年金問題をほんとうに考え、ほんとうに将来に向かって国際的にも遜色のない日本年金制度をつくり上げていくという立場から見たら、うすら寒い気がする。  これは辻さん、いかがでございましょうか。本来なら国庫負担と追加資金の分は国で見るべきでございますね。国家政策の変更から生まれてきたことですから、それだけの掛け金は積み立ててないのですから、当然国庫として負うべきである。公務員共済は国でめんどうをみな見てあげているのでしょう。しかもそれは毎年、毎年完全に整理する。ところが三公社のほうはそういうふうにして千分の五しかめんどうを見ない。その積み立てをしていく。こういうことでは私は公正な年金の追加資金の処理ということにはならない、こういうように思うわけです。いまの国庫負担一五%の問題とあわせて、これは最も近い将来文字どおり、法律どおりに国庫負担にしていく、こういう立場をおとりになっていただくことは考えられないでございましょうか。
  79. 辻敬一

    辻政府委員 ただいま御指摘の点につきましては二つの問題があろうかと存じます。  一つの問題は、先ほど来御議論いただいておりますように、公経済の主体の問題でございまして、国鉄なり電電なりの公共企業体を公経済の主体として長期給付の費用を負担させることが妥当かどうかという問題であります。これにつきましては、先ほど申し上げましたように、社会保険を推進する主体と申しますものは必ずしも厳密な意味の国に限らない、地方公共団体もそういう意味で社会保険を推進する主体でございますし、公共企業体も国に準ずる性格の特殊な法人でございますから、そういう立場において社会保険を推進する主体として考えられてもしかるべきではなかろうかというふうに思っているわけでございます。  第二の点は、過去勤務債務の負担方式をどうするかという点でございますが、この問題はさらに二つございまして、新法の施行前の分と新法の施行後の分とに分けて御説明したほうがよろしいかと存じます。  新法施行前の分につきましては、恩給なりあるいは旧法の期間でございますが、これは社会保険でございませんでしたので、その分の過去勤務債務につきましては、いわば事業主としての立場から国なり公共企業体が負担をしているわけでございます。そこで、先ほど御指摘がございましてお答え申し上げたような方法によりまして整理資源を繰り入れているわけでございます。  それから次に新法施行後の分でございますが、これは社会保険として新たに発足した後の分でございまして、これにつきましては公経済の主体と事業主、共済組合員の三者で負担するというのが原則でございます。これは御承知のように、他の社会保険制度、たとえば厚生年金制度につきましてもそのような原則をとっておるわけでございますし、諸外国についてみましても、私の知る限りでは、そういう過去勤務債務を特別の国庫負担にしている例はないように承知いたしております。そこで、そういう原則に従いましてこれは三者負担ということで処理をしているわけでございます。
  80. 山田耻目

    山田(耻)委員 いろいろと国庫負担の問題にしましても、いまの過去勤務債務の問題にしましても、国庫として支出をするという立場が厳然としてパーセントまで明示してある。いまの年金の財源の負担率一五%、これだけは法律に明示をして三者負担ということになっておるので、この一五%を国鉄に持たせるということは私は過酷だと思うわけですね。それはいまの国鉄とそれから被保険者とは同率の負担になっておりますね。それ以外に一五%国庫負担ということが明記をしてあるわけでしょう。それはさっきあなたも申しておられましたように、各八区分年金負担別の率を申してくれと言ったら、国民年金は三分の一、以下ずっと述べられて、三公社の関係は一五%であると申しておられましたが、それはいわゆる区分としては本人、事業主、それぞれ同率負担で四二・五でありますが、その後改正になりましたか、そうして国庫負担が一五%で、企業のほうは自分負担の四二・五%に国庫の一五%を加えた五七%を持つ、こういうふうな方向企業に持たされておるわけですね。これは私は社会保障というたてまえから見たら間違いだと言うのです。だからその一五%は国庫に持たせなさい。国で支払ってください。それが当然な法律上の措置じゃありませんか、こういうことを申し上げておるわけです。  いまの過去勤務の問題につきましては、これも三者負担だ、国が負うのは千分の五だけである、こういう言い方の三者負担という立場はわかりますけれども、千分の五を国が負う、これだけの基準というものは私はどうしても納得できません。だから、いまのような年金財政の中で、過去勤務債務にまで年金の積み立てが取りくずされていきますと、現在千分の五しか国が負わぬということになりますと、おれたちが積み立ててきたこと以外の軍人軍属の通算であるとか、外国鉄道の通算であるとか、あるいは国家公務員の通算であるとか、よそへ掛けた掛け金までなぜ一体おれたちがめんどうを見なくちゃならぬのかという精神的なものを中心にした大きな不満が出てくるわけですよ。そうしたものというのは当然国策を変えていく、法律を変えていく、国民ひとしく受ける社会保障であるという原則を貫く、その立場から私は当然だと思う。だからこういう問題は国庫で見ていくということが常識じゃないか。  そういうものは、公務員共済の場合は年度ごとに国できちっとめんどうを見てあげる、こういうような立場をとられ、三公社のほうは千分の五しか見ないぞ、もとの過去勤務債務の二兆一千数百億というものは凍結をしなさい、千分の五だけ見てやる、それは積み立てなさい、こういうものだけでは公平を欠くじゃないか、年金制度のあり方として、国の見方として公平を欠くじゃないか、こういうことを申し上げているわけです。  だから、私はいまの千分の五という積み立て方式の中身を変えてもらいたいということが一つと、この千分の五まで国鉄が全部持ちなさい、専売、電電が全部持ちなさい、こういうやり方はいまのそれぞれ企業の財政状態から見てきわめて過酷なやり方ではないか、私はこういうことを申し上げておるわけですから、できるだけ歯車がかむように御返事をいただきたいと思います。
  81. 辻敬一

    辻政府委員 第一点の国庫負担率の問題でございますが、先ほど私御説明申し上げましたときに、共済年金につきましては、公経済の主体としてというような前提で申し上げたと思います。     〔木村(武千代)委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、おことばではございますけれども、法律のたてまえは国が一五%を持つことになっておりませんで、むしろ逆に公共企業体が一五%分持つというのが現行の法律のたてまえでございます。  それから、お尋ねの整理資源率の問題でございますが、これは先ほど運輸省のほうからお答え申し上げましたように、毎年千分の五ずつ引き上げるということになっておりまして、整理資源率の割合が毎年上がっておるわけでございます。そこで最近の数字で見てまいりますと、整理資源の繰り入れ額と現実に発生いたしました追加費用の発生額がほぼ見合うところに来ておりますので、最近の数字で見る限りは、国家公務員共済やり方とそう大きな違いはないのではなかろうかと考えております。  それから、その負担を公共企業体が負うのは問題ではないかという御指摘でございますが、これは先ほど私が申し上げましたように、ただいま御指摘の分については、これは新法施行前の分でございまして、いわば恩給法なりあるいは旧法の分でございます。その分につきましては、国も公共企業体の場合も同様でございますが、むしろ使用主、事業主としての立場からその全部を負担する、こういうことになっているわけでございます。
  82. 山田耻目

    山田(耻)委員 国鉄等三公社の年金関係などについては国庫負担はない。国庫としては負担をしない、企業が見なさい、こういうことになっておるということで、私もたいへん勉強不足で申しわけありませんが、そういたしますと、社会保障制度ということに返ってまいりますから、たいへんなことになる。厚生年金国庫として二〇%見る。私学、農林は一八%見る。そうして国民年金は三三・三%見る。三公社は一文も見ない、こういうことですね。そういうことでよろしゅうございますか。
  83. 辻敬一

    辻政府委員 結論はそのとおりでございます。なぜそういうことかと申しますと、厚生年金なり船員保険、それから私学、農林等の共済につきましては、その社会保険を推進する公経済の主体が国以外にございませんものでございますから、国が負担をする。しかし、先ほど申し上げたことを繰り返すようで恐縮でございますが、社会保険を推進する主体と申しますのは、必ずしも狭い意味の国に限らず、地方公共団体もそうでございますし、公共企業体もその特殊な性格からかんがみまして、社会保険を推進する主体として的確なんじゃないかということでございます。
  84. 山田耻目

    山田(耻)委員 そういたしますと、一応観念上ということになるわけですが、たとえば公共企業体以外に国家公務員共済とか地方公務員共済も原則として、一五%ございました国庫負担というのは、いまの論理を発展させていきますとないということになるわけでしょうか。
  85. 辻敬一

    辻政府委員 ちょっと御質問の趣旨を聞きのがしましたが、国家公務員共済組合の場合でございますか。
  86. 山田耻目

    山田(耻)委員 そうです。一五%ございますね。
  87. 辻敬一

    辻政府委員 国家公務員共済の場合は、そういう意味でいわゆる公経済の主体として国の負担の分とそれから使用主としての国の負担の分を合わせて国が負担している、こういう関係でございます。
  88. 山田耻目

    山田(耻)委員 私は国家公務員共済組合なり地方公務員共済組合というものは、いまのあなたのおっしゃっていることで多少理解できるところがあるわけですけれども、ところがいまの三公社の場合になりますと、独立採算制を持っているでしょう。公経済という立場から国が経営の責任を負う。経営の責任を負うというよりか、国の事業としての責任体制が明確にされておるのだ。そういう立場をその面では私も認めるわけですけれども、実際には独立採算制がやられている。独立採算制が行なわれておりますから、いわゆる受益者負担ということばが出るし、総合原価主義ということばが出るし、そろいうものは、一般民間企業とはその意味では何ら変わることはないのですよ。ただ経営の形態というものが、申されたように異なっておる。だからその企業に対して国庫負担分はゼロにして、国の負担分を含めて全部事業主負担ということになりますと、それは独立採算制というたてまえから、鉄道であるならば汽車賃に、専売であるならばたばこに、電電であれば電話、電報料金に、そこへはね返ってくることになるわけですよ。一体これはどのように解明なさるおつもりですか。一切経営費用を含めて国で見るという国家公務員なり地方公務員なりとは、一応別の立場でながめる必要性が客観的にそこには存在をしておるというふうに私は思うわけでございますが、いかがでございますか。
  89. 住田正二

    ○住田政府委員 三公社の国庫負担分は公経済の主体としての国鉄が負担いたしているわけでございますが、その費用が運賃に直ちにはね返ってくるということでは決してないわけでございます。先ほども申し上げましたように、現在の国鉄再建十カ年計画は、国鉄再建促進特別措置法によりまして、十年目の昭和五十七年度に黒字に転換するということを目標にいたしているわけでございます。どのようにして国鉄を再建させて十年目に黒字にするかという点につきましては、先ほど先生のほうからお話しありましたように、三本柱ということでやっているわけでございますが、その場合に国の助成をどういうふうにするがという点で、先ほど申し上げましたように、総合的に判断して助成を行なっているわけでございます。助成のやり方といたしましては、個々の項目をつかまえて助成するというやり方もございますけれども、今回の再建計画にあたっては、十年目を黒字にするということで総合的な助成をやっているわけでございます。その中で人件費等含めて経理をいたしているわけでございますが、現在の国鉄の国庫負担金がその中に含まれているわけでございますけれども、そういうものを含めて助成をいたしているわけでございます。したがって、この負担金が生じるからそのために運賃値上げの率を高くしているということでは決してないわけでございまして、国鉄がいろいろな面で負担している、国庫負担であるとか、あるいは身体障害者に対して運賃割引をいたしておりますが、そういうものもやはり国鉄の負担で行なわれている。あるいは政策公割ということで、米とか生鮮食料品の運賃は割り引いておりますけれども、そういうものも現在国鉄の負担で、別に国の助成をいたしているわけではございませんが、そういうものを含めて国の助成を行なっているということで、決してそういう運賃割り引きあるいは国庫負担分を運賃に転嫁しているということではないわけでございます。
  90. 山田耻目

    山田(耻)委員 きのうの本会議で国鉄運賃法なり再建十カ年計画を通しますときに、加藤六月君が、運賃値上げは全部人件費にいくのだ、こういうふうな演説をしていましたね。その人件費の中には、いまあなたがおっしゃっているように、一五%の国庫負担分が入っておる。国の負担分が入っておる。それが人件費を構成しているんだ。加藤六月君の国会における、国民にPRをする、意思表明をする、あの国会の本会議の討論では、運賃値上げは全部人件費になるんだ。にもかかわらず、国鉄の労働者はけしからぬ、つまらぬサボタージュなんかしていると一生懸命力説をしている。  いま住田さんのおっしゃっている考えでいきますと、人件費の中に入れてある、運賃とは関係ない。しかし、私は、いまの国庫負担分は全部運賃で見られているというふうには理解しませんよ。しませんけれども、運賃値上げの中に相当部分の要素が加味されているということは否定できないのですよ。独立採算制を原則にしておるのですから。  だからこの点は、私はやはり今日の社会保障制度という立場から年金を見ていくのだったら、受益者負担という立場から財源捻出をさしていくということは私は間違いだと思う。だから国、事業主、被保険者、三者で——私は保険制度の問題があると思いますけれども、一応現行法の中で処置をしていくとすれば、この三者で明確に財源負担率を明らかにして、それぞれが応分の措置をしていく、負担をしていく、こういう立場が貫かれていかなくちゃならぬのである。特に運輸省関係は三公社の窓口になっているわけですから、そうした立場を将来ともおとりになっていただきたいし、大蔵省もいまのような現状というのを十分お考えの上で国のあるべき財源的な施策というものは考えていただきたいと私は思うのです。  時間が非常に過ぎてまいりまして恐縮でございますが、もう一点お聞きしたいと思います。いまの点につきましては十分、お考えをこれからもいただきたいし、私も勉強不足の点がございますので、なお研究をしていきたいと思うわけです。  いま一つは、火曜日の村山委員の質問の中でも出ておりましたが、年金公務員なり公共企業体はおおむね最低が年間三十万程度に引き上げていくことになる、こういうお話でございました。いま、生活保護世帯は幾らでございますか。
  91. 辻敬一

    辻政府委員 年金と比較いたします場合には老人の世帯をとることが妥当であろうかと思いますが、老人の単身の世帯で申しますと、一級地が一万八千五百十三円。それから地方の四級地で申しますと一万三千四百九十六円でございます。なお、老人の夫婦の世帯でとりますと、一級地、都会地でございますが、二万八千七百四十三円、四級地が二万九百六十六円と承知いたしております。
  92. 山田耻目

    山田(耻)委員 二十年一生懸命働きまして、そして年金がついて、それは原理的には社会保障制度である、そういう人たちが、今回の二三・四%、大体旧法を中心に四号俸の改正ということで、この最低が二万五千円くらいになる。年間三十万近くになる。生活保護世帯は夫婦で二万八千七百四十三円。年金よりか生活保護世帯のほうが収入がいい。私はもう年金では夫婦で食っていけない、年金はお返しするから生活保護世帯に入れてくれ。メンツを考えればそれもできません。生活保護は国家で保障する日本国民が受ける最低の権利である、こういう自覚に立っていないいまの日本国民は、生活保護世帯より安い年金をもらっておっても、食えなくても、三ばい食べるめしは一ぱい半にしても恩給年金というもので食っていくことが、これがおれの若いころから終生通して働いてきたことに対し国がしてくれる年金なんだ、このほうが人間として、おれは誇りを持つのだ、こういう人たちが多くいるわけですね。それは、いまの年金受給者よりか生活保護世帯のほうが高いという現実がそのようにさしているわけです。これは辻さん、どうでしょうか。それでもいいんだ、それでいいんだ、こういう気持ちでございますか。いかがでございましょう。
  93. 辻敬一

    辻政府委員 年金改善充実につきましては、私どもも従来から努力してまいったつもりでございますし、今回も二三・四%の引き上げ、あるいは老齢者についての四号俸を限度とする引き上げ等を御提案申し上げている次第でございまして、老後生活のささえとなるような水準の実現をはかっていく必要があると考えておるわけであります。一方、生活保護は、御承知のように収入、資産はもとよりでございますが、あらゆる資力を活用いたしましてもなお最低生活を維持できない困窮世帯に対する社会保障制度でございますので、制度の目的が年金制度とはいささか異なっているわけでございます。したがいまして、両制度の目的やあるいは給付の性格の違いから申し上げまして、年金の額と生活保護の給付水準を直接比較いたしますことは、必ずしも適当ではないのではないかというふうに思っているわけでございます。
  94. 山田耻目

    山田(耻)委員 私はあらゆるものをしさいに見て、そしてあらゆる力を動員してみて、何にもない、そういう人たちは生活保護世帯に転落をして最低生活をやはり維持させてあげるために、夫婦で二万八千七百四十三円見てあげる。しかし、年金受給者の最低者である人たちは、一体何があるのだろう。高級官僚なら退職後のいろいろな道も講ぜられておりますし、いろいろとそれぞれのつくられた制度の中にはまり込んで、かなりの年月までいろいろと生活の配慮がなされていっておることは承知しておりますが、下積みのほんとうに何もない人たちが、住む家すらろくにない人たちが、今日どれだけ多くいるかということは政治をあずかるわれわれとしてはよく承知しておるはずです。もうおれも働けなくなった、あらゆるものを全部動員してみたってこの年金しかないのだ、どうしてもさしむき当座の金が要るので、実はこの年金証書を抵当にして金を借りた、こういう人もたくさんいるのです。共済組合法の中には質権設定だけは認められておりますね。制度金融の中には認められている。そういう年金証書を質に入れて、それによって生きていかなくちゃならぬ人たちというのは、私は生活保護世帯の人たちと比べてほとんど大差ない。しかもその人たちは二十年以上働き続けてきて、そのことを誇りとして、生活保護世帯に落ちていくことは何としても歯を食いしばってもできない。これは何かといったら、年金が低過ぎるということです。  昭和四十六年なり七年を見てまいりますと、私はこれを調べながら実は悲しくなってきたのですが、国家公務員なり地方公務員なり公共企業体で旧法の適用を受けている人たちは、去年までは一月一万五千円から一万七千五百円くらいしかなかった。まるまる何の支障もなく新しい法律に基づいてやっておる厚生年金を見ましても、昭和四十六年で平均二万一千三百六十七円、そうして生活保護世帯が二万五千五百十円。ことし引き上げを見まして、おっしゃっているように二万八千七百四十三円が東京地帯。そうして旧法の人たちは二三・四%もろに上がるし、四号俸もろに修正できますから、大体一万七千五百円程度のものが、国鉄などを見ましても二万五千五百円程度に上がります。二万五千五百円程度に上がっても、まだ生活保護世帯以下。地方の第四級地の生活保護世帯と比べて四千円ちょっと高いだけです、今度の年金改正では。これではあまりひど過ぎる。  一体こういう社会保障、こういう年金制度というもの、二十年も三十年も掛け金をかけてきて、そうして最後に報いられる措置がこれだ、こういうことでは私はやはりいけないと思う。だからいわれておりますように、最低一月夫婦で四万円程度の年金というものは支給すべきである。年額四十八万円程度は最低として支給すべきである。そうして生活保護世帯は私は一律でけっこうだと思いますけれども、いまの状態で大体年間三十二、三万程度、月二万八千何がしになると思いますけれども、こうした人たちもできるだけ年間四十八万程度の最低の生活費までは引き上げてあげたい。ましてや既得権として持っております年金裁定者に対しては、私は最低年間四十八万程度までは引き上げてあげなければ、国として社会保障制度一環でございます、国際社会に比べてみてそう遜色はありません、あるいはこれが社会福祉の中核です、将来八区分を一本にいたします、そのときにはいろいろ制度内矛盾は解決いたします、私はことばはいいと思うのです。しかしいまのような、現実にこれによって生きていかなくちゃならぬ人たちに対しては、これでは生きていけないのですよ。だからそういう最低保障というものを三十万ではなくて、ぜひとも年間四十八万、一月四万程度に引き上げてあげないと、私は年金の効果というものは全く価値を失ってくるという気がしてなりませんけれども、そういう方向への検討を、山本政務次官今度は歯車がかみ合うようにひとつ御答弁いただきたいと思います。
  95. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 国費を要しますいろいろな社会保障制度の中で、給付水準をいろいろ均衡をとっていかなければならない、あるいはまた全体の財源の関連もあることでございます。ことしはいまお話しのように三十万二千四百円ということに最低保障額を引き上げた。これも相当政府としては奮発をしたつもりであります。しかし、いろいろお話しのように、国民生活の実態から見て、いろいろだんだんと変わっていくという事情もございますから、将来の問題として検討をしていきたい、こう思っておるわけであります。
  96. 山田耻目

    山田(耻)委員 次官、私は年金問題を審議するときですから特にそこに力点を置いて言っているので、本来社会保障制度ということの包括的な議論になりますと、私は生活保護世帯の問題を、最低生活必要限度はまだ低過ぎるという議論をしたいところなんですが、きょうはそうはいたさずにただ比較の問題として出したのです。  あなたのおっしゃっているように、最低を今回大奮発をして三十万二千四百円にした、それはいいのですけれども、生活保護世帯を三十四万四千九百十六円にしたのは最低でしょう。これでなかったら食えないというのでしょう。それが三十四万五千円近く国で出すわけです。年金生活者は大奮発だといってなぜ三十万二千円しか出さないのか。  さっき私が言いましたように、生活保護世帯は持てるものすべてやってみたけれども何もないからこれでやるのだ。いまの年金取得者はその年金証書を質権として持っていって前借りをするような人たちも多いのです。一歩間違えば、これはもうこんな安い年金は要らぬから私は生活保護世帯に入りたいという人があるのです。それほど困っている年金生活者に対して、これ以上はなければもう生きられないという最低線が三十四万四千円であるならば、なぜ年金取得者には三十万二千円にしたのか、大奮発だとおっしゃいますけれども、そうおっしゃる限りその根拠をひとつ示してください。
  97. 辻敬一

    辻政府委員 先ほど申し上げましたように、年金老後におきますところの生活のささえと申しますか、老後生活のささえとなることを原則としているのに対しまして、生活保護は世帯人員だとかその構成に応じまして給付の基準がきめられているものでございますから、それぞれ比較する場合意味が違ってくるのではないかと思います。  それからなお、昭和三十三年の社会保障制度審議会答申によりますと、「年金は、生活設計の有力なよりがかりとなるところに意義があるのであるから、それが必ず最低生活を保障するものでなければ意味をなさぬという考え方も行き過ぎである。」というような御指摘もございますので、私どもといたしましては、できるだけ年金給付水準の引き上げに努力してまいりたいと思いますけれども、政務次官からもお答え申し上げましたように、他の公的年金制度との均衡でございますとか財源率への影響もあることでございますので、今後の問題といたしまして慎重に検討させていただきたい、かように考えております。
  98. 山田耻目

    山田(耻)委員 いまおっしゃっているのが三十三年ですかの審議会意見だとおっしゃいますが、大蔵省で編さんされている財政金融法規解説全集の財政編、ここの中にあります「共済組合制度の概要」これをちょっと私抜粋してきてみたのですが、昭和二十五年に社会保障制度審議会が出した勧告、その勧告を受けての解釈を読んでみますと、この共済組合社会保障制度の中核をなしておる一環である、これはきょう大臣が御答弁になったとおりです。それは何なのか、「生活不安ないし生活困難から解放して、健康で文化的な生活を保障する」これが社会保障の原理であるし、この立場に立って厚生年金保険はじめ共済組合制度が設けられておるのだとなっておるわけです。私はいま公的年金制度に加入をしておる国民が四千五百万をこえたと申しました。この人たちは老後の問題が、ほんとに不安なく過ごせるように、そのことから今日のいろいろな政治に対する欲求もあるわけです。老後の不安を解消する、疾病になれば心配なく医療が受けられる、この二大原則というのが社会保障の原則であることは先刻来、午前中確認できたことです。そうして、共済組合制度社会保障制度一環であるし、社会福祉制度の重要な中核をなすものだと愛知大蔵大臣も述べられているわけです。だからこそ四千五百万加入者の人たちは高い掛け金をかけても、これが老後のために役立つのだということで掛け金をかけてきた。その掛け金をかけてきて裁定をされてみると、生活保護世帯にとうてい及ばない裁定額しかもらえない、こういうことは私は制度上の誤りということだけではなくて、基本的に問題が違っておるというふうに思うわけです。  少なくとも生活保護世帯に支給する金額は最低のものとして公的年金制度の中には認めていかなくてはならない、これが、私は了解はしないにしても最低ぎりぎりの政府側の答弁であってほしいわけです。生活保護世帯以下のものをもってして、おおばんぶるまいであったし、たいへんな措置です、喜んでください、こういう言い方をされていたのでは、年金問題にほんとうに真剣に審議に入る気もなくなってくるわけです。私は生活保護世帯に出しておる金額は生きておるだけの最低生活の金額と認めておるわけです。年金の裁定者は生きておる最低の金額だけでなくて、文化的で健康な生活が維持できる憲法二十五条に基づいた精神であることは先刻来明らかになっておると思うのですよ。それが生きるというぎりぎりの線以下の裁定しかなされていないということは、私は国の政策上誤りであると言って指摘することは過言でないと思う。この点は、辻さん、私は最も緊急に早くこの最低保障は生活保護世帯を上回り、それこそ健康で文化的な最低の生活が営める、こういう原理に立つ憲法二十五条の精神に準拠したとおっしゃるのですから、その立場に立って裁定の最低額はきめていかないと、一体日本年金というものは何なのか、こういう国民の声をすくい上げてやったとはいえなくなるわけです。この点はひとつ最低額の保障についてはことに最も急ぐ問題として御検討いただけませんか。
  99. 辻敬一

    辻政府委員 先ほど来申し上げておりますように、私どもといたしましては、年金老後生活の設計の有力なよりどころとなるべきものである、あるいはまた、老後生活のささえとなるべきものであるという立場に立っておるわけでございます。したがいまして、生活保護の金額そのものと直接御比較をいただきますことは、先ほども申し上げたことを繰り返すようで恐縮でございますけれども、生活保護は地域差もございますし、世帯構成による差もありますし、直接御比較をいただきますことは必ずしも適切でないと考えますけれども、しかしながら、年金給付水準を充実していくということにつきましては、私どもとしては異存のないところでございますので、財源の問題あるいはまた他の厚生年金等の公的年金との均衡等を十分考えながら、そういう方向に向かって今後の問題といたしまして真剣に検討してまいりたいと思っております。
  100. 山田耻目

    山田(耻)委員 辻さん、生活保護世帯に出す金とこういう公的年金の最低額とは関係ない、比較する因果関係は別にない、こういう発想は間違っているのではなかろうか。社会保障制度であるという公的年金制度社会保障制度の国であるから生活保護世帯がしっかり守られていく、これは同じことなんですよ。  だから冒頭に、なぜ社会保障制度であるのか、過去の恩給法の惰性を受けてはいないか、私が二時間もかけてこの問題に触れてきたというのは、日本国民すべてが健康で文化的な最低生活を営んでいかなくちゃならぬという憲法二十五条を受けた社会保障制度であるからなんです。その範疇の中に生活保護世帯に対する国家の援助も、年金というみずからも金をかけ、企業主もかけ、国もかけてくれて、そして老後の問題を保障していく、このこととは原則的に違いないのです。あなたのおっしゃっているように、年金というのは老後一つのささえである、こういうふうな考え方だけで律せられていけば、三十万二千円が妥当なんだというふうには聞こえないし、この三十万二千円はささえなんだから、あとはおまえどうにかせいよ、こういう意味でこの三十万二千円を最低としたおおばんぶるまいである、こういうものごとの発想というのは間違っているのではないだろうか。  年金も、せんじ詰めていけば、社会保障制度という立場をとるならば、生活保護世帯の保障に入っていくべきものである、そういう一つの範疇の中にあるけれども、二十年事業主、国庫とともにかけ合って、社会保険制度として認めて努力をしてきたわけですから、少なくとも国が何の掛け金もかけなかった社会保障制度の中からぎりぎりの線として認めてやる生活保護世帯よりか下であっていいという原理はないのです。当然上でなくちゃならぬのです。こういう立場に立てませんか。いまの三十万二千円、一月二万五千円でおじいさん、おばあさん夫婦が食っていけ。できると思いますか。国家公務員になる人、公共企業体の職員になる人で、不動産がたくさんある、そうして貸し家もたくさん持ち、貯蓄もたくさんある、こういう人たちは、大学に行きまして、そして高級官僚として育っておる人たちです。いまでもまだ小学校を出たり旧制中学を出たり新制高校を出て公務員になり、三公社につとめておる人は非常に多い。このほうが多い。この人たちは何も生活のささえとなるべきものを持っていない人たちが多い。この人たちが年金を唯一のものとする、ささえじゃなくて、唯一のものとする人たちが多いということを知っていただかなくちゃならぬわけです。  そういう立場から見るならば、三十万二千円というものと生活保護世帯の三十四万四千円というものと比載してみたときに、最低は三十四万四千円まで引き上げなくてはならぬし、掛け金を今日まで二十数年かけてきて権利を取得した人たちだから、せめて一月四万、最低年間四十八万までは引き上げてやれ、こういう私の主張が無理なのでしょうかね、もう一度お話を伺っておきたいと思います。
  101. 辻敬一

    辻政府委員 繰り返して同じことを申し上げるようで恐縮でございますけれども、年金制度老後の生活設計の有力なよりどころになるところに意義があるというふうに考えておりますので、最低生活、生活保護と、どこでどういう額で比較するかということは問題でございますが、社会保障制度審議会の、先ほど引用いたしました答申にもございますように、必ず最低生活を保障しなければ全く意味がないというふうには私ども考えておりません。しかし、年金の額ができるだけ充実したものである必要があるという御趣旨については、私ども全く同感でございます。  ただ、それを改善していきます場合に、当然財源の問題が伴うわけでございます。掛け金の負担という問題もあるわけでございますし、他の公的年金厚生年金と比較しての議論もあるわけでございます。今回退職年金の最低保障の額を三十万二千四百円にお願いいたしているのも、厚生年金の額を基準として計算をいたしておるわけでございますので、そういうほかの公的年金との比較においてどうするかということも検討しなければなりませんので、先ほど来申し上げておりますように、そういう観点に立って検討しながら今後とも充実につとめてまいりたい、こういう御趣旨を先ほどからお答え申し上げておる次第でございます。
  102. 山田耻目

    山田(耻)委員 あなたのおっしゃっていることはわかります。私が言っているのは、何も国家公務員共済組合法組合員だけを中心に申し上げておるのではなくて、公的年金制度というものに触れておるわけです。公的年金制度の最低は生活保護世帯より下回っていいという根拠がないのです。そうでしょう。社会保障制度一環であるし、そうして社会福祉の根幹をなすものであるし、憲法二十五条を受けているのだということはあなたもおっしゃったわけです。それが生活保護世帯以下であるということは、この年金の最低では食えないぞ、おまえそれは覚悟しなさい、こういうことを意味しているわけですから、私はやはり公的年金制度というものを、世界一、二を争う経済大国が、そういう生活保護世帯以下の公的年金制度があるのだ、その該当者もかなりいるのだ、こういうふうなことを得々として言っておる段階では私はないと思う。この状態を放置しておきますと、それは年金暴動が起こりますよ。だから私は、ほんとうに最低のぎりぎりの生活を営む金額というものは最低保障として認めてやっていかなくてはならぬです。  それはおっしゃるように確かに他の公的年金と比較しながら全体の法律改正をする時期が私は来ると思う。その時期を一刻も早くこの問題だけはしてくれというのです。そうしないと、どうして生きていくのですか。それはいけないから、早く最低保障というものを実現をして、いまの三十万二千円ではこれはどうしようもないのですから、せめて一月四万、年間四十八万、そこまではいけぬでも、生活保護世帯の年間三十四万四千円ですか、これぐらいまでは最低を引き上げておかないと私は非常に恥ずかしい、こういう気がいたすわけです。繰り返し申し上げて恐縮でございましたが、早急に検討していただきたいと思います。  特にことし初めて、年金問題に対してああして春闘の一環で、政治ストとかという意見がこの国会でも出ておりましたが、行なわれました。私は、こういう傾向というのは、冒頭申したように、生存権から生活権に問題が移りつつある。日照権というのをだれがいまから十年前に考えたでしょうか。生活権というものがこれからの日本の社会では大きく取り上げられてくる。だれが年金ストというものを考えた時期があったでしょうか。しかしこれからは、いまのような制度が残されておる限り、私はひんぱんに起こる可能性があるということをほんとうは予言をしたい。  それは私、ほかのことをいろいろ調べておりましたら、ことしになりましての物価上昇というのはすごいでしょう。二三・四%は四十六、四十七年のベースアップ分を考えて二三・四にした、旧法の人たちはその上に四号俸を積み重ねた。去年までは一万五千五百円、そこらあたりの旧法の扱いであったけれども、ことしは一月二万五千円近くなるぞ、そういう御配慮がおおばんぶるまいであったかもしれませんけれども、最近の物価上昇を見ますと、政府、日銀統計あたりを見てみますと、私は実は驚いたのですが、この二、三、四、五で、前年同月対比で、まず年金生活者が最低生活、生きる一番のてこになる、かてとなるものは衣食住の費用でございますが、そのうち食料費が三十九品目、これは最低のだれでも必要とする食料費三十九品目で二〇%以上の上昇が十二品目、三〇%以上の品目が十一品目、四〇%以上の品目が五、五〇%以上が五、六〇%以上が六、一四五・九%以上が一、こうなっておる。これが食料費です。時間がございませんから全部中身を申し上げません。被服のほうは総括的に見て二十六品目ですべて二五%以上の上昇です。これは東京都と一般と違いますけれども、東京都の関係を見ますと、五月で総合で一一・六、全国は総合で九・四、食料費は東京は総合で一三・七、住居が八・五、光熱費が一二・一、被服二一・九となっております。このように異常な上昇過程をたどっております。  だから、今回の二三・四プラス四号俸のアップというのは、こういう値上がりを控えて賃金が上がる、ことしは賃金上昇率は二〇・四だそうでございますね。そういう賃金の上昇は、こういう物価上昇を踏まえて上がっていく、そうして年金はすでにスライドの関係で、物価その他という関係だけではいかなくなって、賃金のほうに根拠を求めていくようになってくる、こういうことで最低の保障というのは、現状ではもう一日一月を経るごとにたいへん年金生活者は苦しくなってくる。  こういう情勢というものを私たちはしっかりと踏まえておかなくちゃいけないし、物価を安定させるというのもこの国会の大きな責任の一つでしょう。政治一つの責任です。そうしてその中で、最低生活を営むに足りる明るい文化的な生活を営んでいく、そういう社会保障の最低の基準を求めて本来年金というものはなくちゃならぬはずです。そういうものの最低とあわせて、一刻も早く政府としても手を打っていかないと、いまの国民の中に占めた公的年金の加入者は四千五百万、この人たちの気持ちの中にはそうした欲求が非常に強い。ということは、そういう条件が基礎になっておることも御判断をいただきまして、ほんとうに一刻も早く御検討いただいて、そうして国民全体が日本という国の社会保障制度の中で、老後病気になったときや途中死亡がしっかりと守られていけるように御配慮いただきたいものだと思っております。  これ以上の答弁は聞けそうにございませんし、あとの質問者には御迷惑をかけましたが、長くなりましたので、私はこれで終わります。ありがとうございました。
  103. 鴨田宗一

    鴨田委員長 増本君。
  104. 増本一彦

    ○増本委員 政府側に対する質問は、前回大体済ませていますので、きょうは参考人竹村理事長もお見えですので、ひとつ国家公務員共済組合連合会の当面している問題につきまして、少しお伺いしたい、こういうように思うのです。  いままでも再三力説されてきましたように、生活できる年金を保障してほしい、これはだれもが希望していることですし、その面での連合会の責任というものもたいへん重いものになってきているというように考えるわけですね。これはもちろん政府がやることですけれども、それだけに組合員の輿望をになって政府に対して強く要求するものは要求するという態度がますます必要になってきている、こういうように考えるわけです。  そこで従来、国家公務員共済組合については、年金生活者の実態というものをあまり調査されるという機会がなかった。またそういうものをつくろうとなされなかったという点は、私はたいへん不満に思っているわけです。いま大体年金生活者の実態がどうなっているのかということを若干調査してみますと、たとえば全税関労働組合の調査結果によりますと、昭和四十五年十一月に退職をして、勤続年数が四十一年七カ月、年齢六十三歳で行(一)の五等級二十二号俸の人で年金額がいま六十六万七千円、これは勤続四、五年の人の本俸に相当するくらいの金額しか保障されていない。たいへん低い実態にあるということがよくわかると思うのです。  そこで、まずお伺いしたいのは、こういう生活できる年金を保障せよという年金生活者や組合員要求をになって、今後理事長としてどういう態度で臨んでいかれるのか、まずその姿勢といいますか、そういうものについてひとつお答えいただきたいと思います。
  105. 竹村忠一

    竹村参考人 お答え申し上げます。  私ども年金を取り扱っておりまする関係上、部内におきましては、いろいろ年金に関する諸問題について研究はいたしております。ただ何と申しましても、やはり年金額をどういたしてまいりますかという問題は政府の御方針にもよるところがございますから、私ども正式に御意見を申し上げる立場にはない、こういうことを御了承いただきたいと思います。
  106. 増本一彦

    ○増本委員 しかし、正式におっしゃる立場にないというけれども、組合員の期待や要求や権利というものをあなたのほうで扱っていらっしゃるわけでしょう。あなた自身も年金額を引き上げ、年金で生活できるような状態を実現してほしいという組合員要求はよく御存じだと思うのですね。そうであれば、政府に対して要求するところはきちっと要求し、その声を反映させていく、このことは理事長としての最大の責任であるし、責務であると私は思うのです。そういう立場からだと、いまの御答弁はいただけないし、たいへん心もとないというように思います。  では、どういうルートでその声が保障できるようになっているのですか。
  107. 竹村忠一

    竹村参考人 私ども毎年、たとえば事業計画を組んで予算を編成いたしますとき、やはり加入組合員方々からの御要望をお聞きすることになっております。その中に、やはり年金額の増額の問題もございます。そういう御意見もございますので、やはりそういう御意見があったということ、そういう点につきましては、関係政府御当局にも申し上げておるわけでございます。
  108. 増本一彦

    ○増本委員 では政府に伺いますけれども、そういう共済組合のほうからの年金の額の引き上げの要求、そういうものは正しく受けとめられるような制度的な保障とか、そういうものはあるのでしょうか、どうなんですか。
  109. 辻敬一

    辻政府委員 共済組合員の御要望につきましては、もちろんいろいろな機会にそれを伺っているわけでございますが、連合会を通じても共済組合員のいろいろな方面の御要望というものは伺っているところでございます。
  110. 増本一彦

    ○増本委員 要求を反映できるような制度的な保障があるのかどうかということです。その点はどうなんですか。
  111. 辻敬一

    辻政府委員 予算事業計画等につきましては、大蔵大臣のほうに協議がございますので、そういう機会あるいはまたそういう機会ばかりではございません、いろいろな機会を通じまして、共済組合員の御要望を伺っているわけでございます。
  112. 増本一彦

    ○増本委員 制度的な保障としては事業計画を大蔵大臣審議し、認可する、その段階だけになるのですか。
  113. 辻敬一

    辻政府委員 制度的にと申されますとどういう意味でおっしゃいますか、必ずしも十分に私は理解しておりませんけれども、特にそのための制度というものはございません。
  114. 増本一彦

    ○増本委員 あらゆる機会をとらえて連合会の組合員要求を反映させていく道はあるのだ、こういうようにいまの御答弁でお伺いしてよろしいのでしょうか。
  115. 辻敬一

    辻政府委員 おっしゃいます意味が私、必ずしも的確に理解していない点もあるかもしれませんけれども、あらゆる機会を通じましてそういう共済組合員の御要望を伺う、あるいはそれを吸い上げると申しますか、そういう方向努力しているわけでございます。
  116. 増本一彦

    ○増本委員 竹村参考人にお伺いしますけれども、今回の年金額の引き上げをきめるに際して、政府その他に対してではどういう働きかけや接触がされてきたのですか。
  117. 竹村忠一

    竹村参考人 先ほど申し上げましたように、加入組合員からの御要望がございましたので、それを大蔵省にお伝えしておるわけでございます。ただ、その御要望の中には具体的に金額を幾らにしたらいいかというようなところまではあるいは申し上げてなかったかもしれません。
  118. 増本一彦

    ○増本委員 政府のほうでは組合員要求をあらゆる機会をとらえてできるだけ反映さしていくようにするという、またそういうようにしてきたということでありますので、ひとつこれからも共済組合として組合員要求政府に積極的に反映されるように努力していただきたいということを申し上げておきたいと思うのです。  ところで、先般も政府のほうにはお伺いしたのですが、来年はちょうど財政再計算期に入るわけですね。ここで掛け金の値上げになるのかどうか、こういう問題を含めていろいろ見通しも立てなければならないし、そういう検討の時期に入ってきているというように考えるのですが、連合会としては再計算期に臨む方針をどうお持ちなんでしょうか。
  119. 竹村忠一

    竹村参考人 連合会内に掛金率検討委員会というものを設置いたしまして目下鋭意勉強中でございます。
  120. 増本一彦

    ○増本委員 その掛金率検討委員会ではいまどういう御意見が出て、どこが問題になっておるのですか。
  121. 竹村忠一

    竹村参考人 ただいまの段階では資料の収集並びに整理の段階でございまして、まだ具体的な意見の交換のところまでは参っていないわけでございます。
  122. 増本一彦

    ○増本委員 過去三十九年、四十四年、二回計算期がありましたし、そのときには、見てみますと、三十四年から四十四年までの間の年金改定率が七三・六七%で、四十四年から四十八年を見ますと六三・四七%ということで、過去と比べましてもそんなに違いがないので、私は積極的に引き上げる理由はないというように判断をしているのですが、これは掛け金率を引き上げずにむしろ国庫負担をふやすなどして、別の手だてで解決をするように積極的な努力をすべきだというように思いますが、理事長としての抱負と御見解を伺っておきたいと思います。
  123. 竹村忠一

    竹村参考人 私ども運営協議会という組織を持っております。その中に組合員の代表の方もお入りになっておるわけでございますが、その運営委員会におきまして、やはり掛け金率の検討につきましての御要望もございました。ただいま申し上げましたとおり、私ども部内で検討はいたしておりまするが、まだ先ほど申し上げました状態でございまして、具体的な御意見を申し上げる程度には至っていないわけでございます。
  124. 増本一彦

    ○増本委員 掛け金を引き上げずに、そして社会保障としての実態を備えるようにしてほしいというのが組合員の切実な要求になっているということは理事長も御承知だと思うのですね。ですから、ひとつそういう立場政府との関係についても対処をしていただきたいということを強く申し上げておきたいと思うのです。  共済組合の資金の運用の利回りを、資料をいただいて見てみましても、四十四年が六・五五、四十五年が六・六四、四十六年が六・六二、四十七年が、私の手元の資料では、見込みですが、六・四一というように、全体として決して悪くなっていない。こういう点から見ましても、いまここで掛け金率を引き上げるという理由はないというように思います。  ところで、政府のほうにちょっとお伺いしたいのですが、再計算期のときには施行令の十二条と七条の二で五・五%で計算するということになっておりますね。そうすると、実際の今日までの運用では六%以上の運用利回りになっていますが、この差額分はどういうように処理をされているのでしょうか。
  125. 辻敬一

    辻政府委員 予定利回りにつきましては、御指摘のように五・五%で計算をいたしております。これは他の公的年金制度厚生年金等も五・五%で計算をいたしておりますが、共済年金もそれにならいまして五・五%で予定利回りを見込んでいるわけでございます。  なお、御指摘のように、実際の運用利回りは六分五厘前後でございますので、その間に利差益が生ずるわけでございますが、その利差益につきましては、一部過去勤務債務の償却に充当をいたしておるわけでございます。
  126. 増本一彦

    ○増本委員 過去勤務債務に一部充当されている、これはいつからやっていらっしゃるのですか。それで、今日までどれぐらいの金額になるのでしょうか。
  127. 辻敬一

    辻政府委員 現在の国家公務員共済組合の財源率には過去勤務債務の償却財源は反映されていないわけでございますが、これは当面、当面と申しますのは次の再計算期、すなわち四十九年まででございますが、資産の有利運用によって利差益が生ずる見込みでございましたので、これを過去勤務債務の償却に充当するということにいたしたわけでございます。これが前回の再計算のときでございます。その際、連合会におきます過去勤務債務の額が約五百五十億見当見込まれていたわけでございますが、過去勤務債務の償却額といたしまして三十億円を見込んでいたわけでございます。四十四年度、四十五年度、四十六年度の利差益を見ますと三十億円を上回る利差益が生まれているという状況になっております。
  128. 増本一彦

    ○増本委員 過去勤務債務の処理のしかたその他についてはすでに山田委員からいろいろ議論がありましたし、私はここで繰り返す必要はないと思います。ただ、これを財源率引き下げのほうに回せば、掛け金率をかえって下げて組合員の利益にも運用できるというメリットがあるわけですね。ですから、この財政再計算期を来年に迎えて、ここで組合員の利益を常に最優先させていく立場に立って検討すべきであるというように私は考えるのですが、ひとつ理事長の御意見を伺っておきたいと思います。
  129. 竹村忠一

    竹村参考人 ただいまその額につきまして計数を整理中でございます。財源率の引き下げに回せることができるかどうかは、整理後検討いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  130. 増本一彦

    ○増本委員 再計算期にあたって、検討の上、組合員の利益をあくまでも守っていく、負担を軽減させていくという立場に立っておやりになるかどうか、ひとつその一般的な姿勢でけっこうですから、あなたの決意をはっきり聞かせてください。
  131. 竹村忠一

    竹村参考人 計数を整理した上でないとはっきりしたことは申しかねるわけでございますが、方向といたしましては、なるべく引き上げないで済むことができれば都合がいい、かように考えておるわけでございます。
  132. 増本一彦

    ○増本委員 ところで、再計算期にあたって、共済組合組合員が皆さんのほうにもはっきりと要求を提示していると思うのです。一つは、検討委員会をつくる上では、運営協議会の委員の中から労使折半で構成せよ、そしてその結果について、運営協議会の決議事項としてきちんと位置づけろ、こういう要求が出ていると思うのですね。こういう方向に沿って、組合員の利益を手続の上からも守り、反映させていく、こういう立場に立って検討をされるかどうか、この点はいかがですか。
  133. 竹村忠一

    竹村参考人 いままで運営協議会の委員から、組合代表を入れて話し合いをしたい、かような御提案がございました。私どもといたしましては、組合代表を入れまして、検討委員会を今後つくっていくつもりではございます。  なお、検討委員会の結論が出ました場合において、やはり運営協議会でもその結論を出しまして御協議をいただきたい、かように考えております。
  134. 増本一彦

    ○増本委員 ちょっとこまかくなりますが、組合の代表を入れて検討する、この点はけっこうですが、労働者組合の代表と使用者側の代表とを折半にせよ、この点はいかがですか。
  135. 竹村忠一

    竹村参考人 使用者側代表ということばが適当かどうかわかりませんが、私ども、運営協議会の中には厚生課長さんと組合員の代表の方がお入りになっておるわけでございます、その両者できれば同数にしたいと思っております。
  136. 増本一彦

    ○増本委員 時間がありませんので、次に移ります。  ともかく、組合員要求が手続的な上でも正しく反映できるように、そしてまとまった意見が正しく国の政策の中に反映され、よりよい年金制度共済組合制度をつくっていく、この点はひとつしっかりと据えて業務の運営に当たっていただきたいと思うのであります。  ところで、共済組合連合会の経理の上で一番の大きな問題の一つが医療経理の問題だと思うのですが、皆さんの経理の内容を拝見さしていただきますと、赤字が約七十二億円になっておりますね。この医療経理の赤字をどのように解決されるおつもりなのか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  137. 竹村忠一

    竹村参考人 御質問のように四十八年度末では七十二億くらいの赤字をかかえる状態になっておるのでありまして、はなはだ遺憾に存じております。こういうふうに医療経理が悪化してまいりましたのはかなり前からの問題でございます。したがいまして、これが解決策をどうするかということにつきまして、私ども非常に苦慮いたしておったわけでございますが、昭和四十六年度になりまして予算並びに事業計画を論議いたしました場合におきまして、評議員並びに運営協議会の委員のほうから御意見もございまして、四十六年の秋ごろから医療経理特別対策委員会というものを設置いたしまして、これが抜本的な方策を検討することになったわけでございます。この特別委員会の構成は、先ほど申しました各省の厚生課長さん、それから一般組合員代表、それに私どもの連合会が入りました三者構成で、それぞれ三名ずつ合計九名の委員会をつくったわけでございます。その答申が四十六年の十二月に出てまいったわけでございまして、私どもといたしましてそれを十分検討、思索したわけでございます。そうしてこの答申の線でやるという方針をきめまして、たとえば昭和四十七年度の予算におきましては、この方針で本年度から逐次実施いたしてまいります、かようなことを申し上げて御了承を得たわけでございます。四十八年度以降もやはりこういうことでやってまいりたいと思います。  ただ、御案内のように、病院経理の大宗をなす収入は診療報酬でございます。この診療報酬はいろいろな面の関係するところの広いものでございますから、なかなか私の一存で変えられるものでもございません。そういった関係でございますので、私ども対策委員会の示された方針に従って万全の努力はいたしておりまするが、それにいたしましても、そちらのほうの関係もございまするので、いつどのようにめどがつくかということを現在の段階においては判断をしにくい状況にございます。ただ、各年度、単年度を比較いたしますと、私どもの努力が幸いにいたしまして若干効を奏しつつある状態でございます。こういう状態でございます。
  138. 増本一彦

    ○増本委員 私も医療経理特別対策委員会理事長あての答申を読ませていただきました。しかし、病院について具体的にどういう対策をとるかという点については明確な答申がないようですが、ここではつぶす病院、閉鎖する病院というのが皆さんの答申の中であるのですか。
  139. 竹村忠一

    竹村参考人 答申の柱は大体二つからなっておるような気がいたします。  一つは、私どもが国家公務員の福祉事業としてやっております関係上、本来の趣旨からいたしまして、国家公務員に対する医療サービスの向上の面、これが第一点でございます。それから、病院を経営してまいります面におきましての資金、これはいずれも長期の資金をお借りして運用する、こういう形になっております。したがいまして、病院の経理は健全でなければならない。これが二本の柱でございます。  その柱を総合いたしますと、国家公務員の利用度も多い、また現在とやかくいわれる状態がございましても、今後を見通しました場合に、やはり収支の改善もできるような状態、かような病院には力を入れて再建に努力する。しかし、さような二つの面からいたしまして考えました場合に、公務員の利用度も少なく、非常に赤字をかかえておって、今後も赤字解消の見通しのない、かような面につきましては、連合会の病院の本来の趣旨からいたしまして考え直してみたらどうであろうか。その場合に、さような病院につきましては、たとえば地方団体に対しまして病院の移管をお願いするなり、そういう努力も必要でありましょう。しかし、そのような努力をいたしましてもなおかつ何ともしょうがない病院が出てきた場合には、しかるべき措置を講じなさい、かような表現になっております。
  140. 増本一彦

    ○増本委員 対策委員会の方針を聞いているのじゃなくて、これに基づいて具体的に実行をしていく場合に、閉鎖をする病院があるのかどうかということを聞いているのです。
  141. 竹村忠一

    竹村参考人 私どもといたしましては、できるだけさような事態が生じないように努力はいたしておるわけでございまするが、中には、はなはだ残念ながらどうしても連合会が経営していくことが本来の病院のあり方からして許されない、かような病院も出てまいるわけでございまして、現に閉鎖を公表いたしました病院も一カ所ございます。
  142. 増本一彦

    ○増本委員 具体的に名前をあげてくだされば早いのですけれども、若松病院ですね。この若松病院については、答申では一方的な閉鎖ということを言っていない。その後皆さん方のところでこういう方針が出されたのだろうと思うのですが、この閉鎖が妥当かどうかというのを私はいま問題にしているのじゃないです。  問題は、そういう結論を出すまでに至った経過と手続の上でいろいろな問題があるのではないかというように思うのですが、若松病院を存続するかあるいは閉鎖するかということについては、評議員会あるいは運営協議会で討議をされたことがあるのかどうか、その点はどうなんですか。
  143. 竹村忠一

    竹村参考人 四十七年度の私どもの事業計画及び予算の御審議をいただきました際に、運営協議会及び評議員会におきまして、今年度の病院経理の運営の方針といたしましては、医療経理特別対策委員会の示された答申に従いまして逐次実施をいたします、かような説明をいたしております。そしてその際に、医療対策特別委員会の御答申も示しておるわけでございますから、その場合におきまして、それぞれ評議員会なり運営協議会の御了承を得たものと考えております。
  144. 増本一彦

    ○増本委員 そこが私は問題だと思うのですよ。つまり四十七年度の事業計画では、いま理事長おっしゃったように、答申に基づいて逐次実行に移すということを言っているだけで、若松病院を廃止するかどうかということを具体的に問題にしているのじゃないのですね。答申そのものも、若松病院ということを一つも、それについてどうするということを明確に方針を出していない。ところが事業計画ではそういう事態になっていながら、具体的な執行の段階で廃止するということをやった。ですから、事業計画では明確に出てないものを、執行の段階で具体的にこの病院を閉鎖するということをやったということになると、若松病院の存廃の問題そのものについては、評議員会でも運協でも実際は何にも討議をしていない、こういうことになりませんか。
  145. 竹村忠一

    竹村参考人 お答えいたします。  第一は、評議員会なり運営協議会の問題でございます。その席上におきまして、私どもは、先ほど御説明いたしましたとおり、こういう方針で具体的に四十七年度から実施をいたしておりますと、かように御説明を申し上げて御了承を得たことは先ほど申し上げたとおりでございます。  それからその次は、事業計画に具体的に若松病院の廃止について書いてない、かような御質問でございますが、なるほど、規則等によりますと、施設等を廃止いたしまする場合には、その具体的な名称その他を一定の様式に従いまして書かなければいけないことになっておることは事実でございます。ただ、規則等が要求いたしておりまする趣旨は、財務諸表上におきまして、病院を閉鎖いたしました場合に、それが連合会の全体の財産にどういう影響を及ぼすか、こういうことをチェックするのがこの趣旨でございます。したがいまして、廃止を表示するために要求されております様式を見ましても、そのことがうかがわれるわけでございます。  若松病院におきましては、まだ具体的な累積の損益が、最終的なものはこれであるとわかっておる金額もはっきりいたしていないわけでございますから、したがいまして今後これらの数字が固まりましたならば、規則等の要求する様式に従いまして直ちに廃止の手続をとりたい、かようなことになっております。
  146. 増本一彦

    ○増本委員 経理的にそのつじつまを合わせる、そのための最後のとまりのところでどうするという問題を私は言っているのじゃないのですよ。そうではなくて、皆さん方の一つの財産であり、そして公共性もある病院を具体的に廃止をするというこのこと自身が、連合会の業務にとってもきわめて重要な問題だし、だから本来それは事業計画の中に明記をするなり、あるいはこの問題についてどういう方針で進んだらよいのかということ自身を、これはきめられた機関できちんと合議をし決定をして方針を明確に出す、そのときに組合員なり組合員の代表の意見もその具体的な問題で反映できるようにする、そういう共済組合の運営というものが必要なのではないか。そういう点から見ると、若松病院の存廃問題そのものを評議員会なり運協で具体的に討議をするということをしなかったということ自身がこの運営の民主的なルールそのものから見てもきわめておかしいやり方ではないかということを私は申し上げているのです。その点はいかがですか。
  147. 竹村忠一

    竹村参考人 先ほど御説明いたしましたように、現在、四十八年度の事業計画の段階におきましては具体的に名前をあげまして明示する段階にもなっておりませんし、またその必要もないことは先ほど御説明申し上げたとおりでございます。ただ、実質的に若松病院を廃止するかどうかの実体の問題につきましての評議員会並びに運営協議会に対する説明の問題だけが残るわけでございますが、その点につきましては、先ほど御説明申し上げましたとおり、この特別対策委員会答申では、いろいろな手だてを講じましてもどうしても連合会としては経営することが不向きな病院につきましては閉鎖することはやむを得ない、かような答申でございますから、四十七年度からこの線に従いまして逐次実施をしてまいるつもりでございます、かように申し上げて御了承を得ております。したがいまして、具体的な名前こそ申し上げてはおりませんが、包括的に御了承を得たものと私どもは考えておる次第でございます。
  148. 増本一彦

    ○増本委員 それでは、四十七年度の事業計画審議をした際に、若松病院の問題については具体的に討議にのぼり、審議がなされたのですか。
  149. 竹村忠一

    竹村参考人 私どもがさような説明をいたしました場合におきまして、格別具体的にどこをどうするかという御質問もなかったわけでございます。また、私どもといたしまして、四十七年度予算を編成する、事業計画を策定いたします段階におきましては、まだ若松病院を廃止しなければならぬという結論には達していなかったわけでございます。したがいまして、四十七年度の過程におきまして研究をいたしまして、かような閉鎖をしなければどうにもならないような病院ができましたならば実施をいたします、かように御説明を申し上げていたわけでございます。
  150. 増本一彦

    ○増本委員 昨年の九月に具体的には閉鎖の発表をなさったわけですね。この閉鎖の発表をする段階で運協なりあるいは評議員会で、この問題についてこういう方向でいくということはおきめになったのですか。
  151. 竹村忠一

    竹村参考人 私どもは閉鎖発表のほんの少し前に結論に達したわけでございますが、評議員会及び運営協議会に対する関係におきましては、先ほど御説明申し上げましたとおり、年度当初におきまして包括的に御承諾を得ている、かように考えておったわけでございますから、閉鎖決定後両機関におはかりしたことはございません。
  152. 増本一彦

    ○増本委員 あなたは包括的にとおっしゃるけれども、この病院についてどうする、あるいはこの若松病院がいま病院経理の問題でやっていかなければならない問題の一つの重要なケースであるということを、事業計画を決定する際にあなた方のほうから何も言わない、質問がなかったから包括委任だ、これはちょっとおかしいと思うのです。だから自後のいろいろな紛争のもとがそういうところで起きてきているのじゃないですか。
  153. 竹村忠一

    竹村参考人 事業計画、予算を審議いただきます場合に、具体的な名前はもちろん出なかったわけでございますが、結核病院全体の論議はされたわけでございます。現在、私どもの三十の直営病院のうちで大体九カ所ぐらいが結核病院の範疇に入るわけでございますが、そういう結核病院は、いわば疾病構造の変化からやむを得ないところであるにいたしましても毎年非常に巨額の赤字を出している、その累積赤字はかようになっております、かような事柄、それから、答申の線に沿いまして生かすものは生かし発展さすものはもちろん発展させていく、しかしそうでないものにつきましてはやはり答申の線に従って措置をせざるを得ない、かような論議が行なわれておるわけでございます。  したがいまして、結核病院全体について全然話がなくて、だしぬけに若松病院だけを閉鎖したというわけでももちろんございません。むしろ先生のお話と反対かとも思いますが、研究の結果やむを得ず閉鎖になるような病院もある程度出てくるのじゃなかろうかということは、評議員の方なりあるいは運営協議会の委員の方なりは御想像になっておったのではなかろうか、かように私は考えておるわけであります。
  154. 増本一彦

    ○増本委員 病院の経理が赤字である、これについては国の負担金がまだまだ非常に低いと私は思っていますけれども、ことし二十億ですか、これは大臣にももっと大幅に引き上げることを要求しました。しかしそれとは別の問題として、こういう赤字をかかえている共済病院を今後どう運営していくかという点では、積極的に職員や患者の協力も得なければならない。であれば、いろいろ現場の職員の人たちそれから共済組合組合員も含めて衆知を集める、そういう手だてをとって克服のために、解決のために努力をするということが非常に重要だと思うのですね。そういう点からいきますと、今回、三十の病院のうち赤字をたくさんかかえた結核病院は九病院である、しかしいま閉鎖する病院はそのうちのただ一つだ、これはたいへん重大な問題になるわけですね。  だからこそ私は、ルールの上からいってももっと民主的に、ちゃんと問題を具体的に話のできるような機会をつくるべきであるし、またその上でお互いに再建策あるいは善後策を含めてその検討をしていくというような姿勢を連合会としておとりになる必要があるというふうに思うのです。いま患者の人たちや職員の中でも、一方的な閉鎖については反対だというので運動も起きているようですけれども、あなたのほうとしてはこれをどういうように解決していくお気持ちですか。
  155. 竹村忠一

    竹村参考人 私どもといたしましては、先ほど来御説明申し上げておりますとおり、運営の方針を決定するにあたりましては評議員会なり運営協議会の御意見をいままで十分に拝聴してまいっております。また具体的な病院の経理方針につきましても、先ほど申し上げたとおり民主的な構成を持ちました特別委員会の御答申もいただいております。したがいまして、よって出しました結論につきまして私どもといたしましては決して非民主的な方法ではない、かように信じておるわけでございます。  ただ、何と申しましても、病院を閉鎖いたしますと患者にも影響がございますし、病院に勤務する職員にも労働条件の変更という問題が生ずるものでございますから、方針を公表いたしましたら、その後におきまして職員組合なりあるいは患者の方々に十分お話をいたしまして御了解を得る、かようなことは絶対必要だと思って、現在までその努力は続けてまいっておるし、今後も精力的にさような努力は引き続いてやってまいりたい、かように考えております。
  156. 増本一彦

    ○増本委員 民主的におやりになったと言いますけれども、これ以上言いませんが、結局閉鎖を発表して、退院患者には三万円渡すというビラを出したり、かなり皆さん方のほうでも、職員や患者を刺激するようなことに具体的にはなっているという気がするのですね。ここいらは十分注意をして、組合や患者との交渉でひとつテーブルについて、ちゃんと解決をするというようにしてほしいと思います。  最後に、特借宿舎の問題についてちょっとお伺いしますけれども、今年度は昨年からの繰り越し分で新規のものはないようですけれども、国との貸借契約の内容が、決して共済組合連合会にとって有利だというぐあいには判断できないと思うのですね。六十年の半年賦の元利均等償還で年六・五%、これでは皆さんのほうから賃貸料を値上げせよというような増額請求もできないし、財産でありながら国にまるまる六十年間借り上げられて、そして言ってみれば普通の利息から見たって低いような金額で、これを家賃だというぐあいで払われる。この辺のところの契約関係の条件をもっと組合に有利なように私は解決をしていく必要があるというように思うのですが、この特借宿舎の問題については理事長はいかがお考えですか。
  157. 竹村忠一

    竹村参考人 私ども長期資金の運用の形で特借宿舎に対する貸し付けを行なっているわけでございますが、私ども資金運用面でどういうふうな利率がいいかというのは非常にむずかしい問題でございます。たとえば有価証券その他につきましては、これはできるだけ高いほうがいい、これは問題のないところでございます。それから一般組合員に対する貸し付けというもの、これは相当な金額にのぼっているわけでございますが、これは現在法令の許す最低限の五分五厘でやっております。これは主として公務員の福祉に役立つ、かような観点から従来そういうふうにきめてまいっておるわけでございます。それから先ほど先生からも話もございましたように、平均利回りは大体六分五厘を多少上下しているような状態でございます。そこで特借宿舎は一体どういうふうな観点から利率をきめたらいいのかという問題になるわけでございます。  御案内のように、特借宿舎は国のほうでお使いになりまして、比較的若い層の国家公務員に、あまり広くない官舎を建てておるものでございます。したがいまして、やはり広い意味で考えてみますと、国家公務員の福祉にも相当役立っている、ことに公務員宿舎が少なかった時代におきましてはかなり貢献もいたした、かように考えるわけでございます。したがいまして、でき上がりました家屋が国家公務員に使われるというふうなこと、それから平均利回りを兼ね合わせて考えまして大体六分五厘がいいではないか、かような観点で従来六分五厘でやってきております。私も、いま考えてみましても大体その辺が妥当ではなかろうか、かように考えておる次第であります。
  158. 増本一彦

    ○増本委員 この積立金の管理運用については、これを長期運用ということで国家公務員の宿舎のほうに回すというのは国の政策からいくとむしろ本末転倒でして、国が公務員宿舎というのは自分の責任でつくるべきですね。そういうことで圧迫を受けるために、組合員に対する運用の点でいけば、住宅貸し付けは二〇%、住宅以外の貸し付けが二五%、組合員プロパーの資金運用というのは四五%以内にとどめられている。こういう状況ですから、ここいらのところも私は十分に配慮すべきものだと思います。その点では政府のほうはいかがですか。
  159. 辻敬一

    辻政府委員 特別借り受け宿舎の問題につきましては、ただいま連合会の理事長からお答え申し上げたとおりでございます。先般の委員会におきまして大蔵大臣からも御答弁申し上げたとおりでございますが、連合会の側から見ますと、資金の運用ということに相なるわけでございます。共済組合の資金はその性格上安全かつ効率的に運用しなければならないということが法律に定められておりますが、六分五厘という金利でございますので、先ほど来お示しのございました大体平均利回り程度でございますから、連合会の運用の面からすれば決して不利ではない。また相手先は国でございますから安全なことは申すまでもございませんので、連合会の資金運用の金利としては妥当なところではなかろうかと思っております。  また、それを裏側から見ますと、先ほど来理事長から御説明いたしましたように、共済組合すなわち公務員の福祉の向上にもつながる、特にそれを中堅以下の公務員の宿舎に充てるという意味で、福祉の向上につながるというふうに考えて、従来はやっていたわけでございます。  ただ、本来国家公務員の宿舎は国の責任において建設すべきではないかという御指摘はまさにそのとおりでございますので、本年から一般の特別借り受け宿舎はこれを取りやめるということにいたしております。ごく例外的なものが残っているだけになっております。御指摘の線に沿って規模を縮小いたしたわけでございます。  なお、資産の運用の割合について御指摘がございましたが、現在組合員の福祉向上のための運用の割合は五〇%をちょっと上回る程度になっております。今後とも福祉還元につきましては努力してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  160. 増本一彦

    ○増本委員 じゃ終わります。
  161. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次回は、来たる十九日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十九分散会