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1973-06-06 第71回国会 衆議院 大蔵委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月六日(水曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員   委員長 鴨田 宗一君    理事 大村 襄治君 理事 木村武千代君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 阿部 助哉君    理事 武藤 山治君       宇野 宗佑君    越智 通雄君       大西 正男君    金子 一平君       栗原 祐幸君    小泉純一郎君       三枝 三郎君    地崎宇三郎君       渡海元三郎君    野田  毅君       萩原 幸雄君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       佐藤 観樹君    塚田 庄平君       平林  剛君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    村山 喜一君       山田 耻目君    増本 一彦君       広沢 直樹君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵省主計局次         長       吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君  委員外出席者         労働省労働基準         局補償課長   山口  全君         参  考  人         (日本銀行総裁佐々木 直君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  横田  郁君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 六月五日  辞任         補欠選任   木野 晴夫君     倉石 忠雄君 同日  辞任         補欠選任   倉石 忠雄君     木野 晴夫君     ————————————— 六月四日  付加価値税新設反対等に関する請願(渡部一  郎君紹介)(第六〇三〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は、最近の金融事情等について参考人から意見を聴取することといたしております。  本日御出席いただきました参考人は、日本銀行総裁佐々木直君、全国銀行協会連合会会長横田郁君の両君であります。  両参考人には御多用のところ御出席いただきましてまことにありがとうございます。最近の金融事情等について何とぞ忌憚のない御意見を述べていただくようお願い申し上げます。  なお、御意見十分程度に取りまとめていただき、そのあと委員からの質疑にお答え願うことといたしております。何とぞよろしくお願いをいたします。  それでは、まず最初佐々木参考人よりお願いをいたします。佐々木参考人
  3. 佐々木直

    佐々木参考人 最初に、最近のわが国経済動向につきまして所見を申し上げまして、あわせて日本銀行金融政策運営方針について申し述べさせていただきます。  わが国経済は、昭和四十五年の終わりごろから景気が下がってまいりまして、その後四十六年、四十七年にかけまして、途中いわゆるニクソン・ショック、アメリカのニクソン大統領の新経済政策発表、この影響もありまして長い間停滞を続けてきたのでありますけれども、昨年の後半からようやく景気上昇に転じまして、その後今日に見られますように著しい拡大を示しておるのであります。  今回の景気の立ち直りは、従来のような企業投資をきっかけとするものではなくて財政支出個人消費住宅建設、こういうものの増大によるところが大きい点が特徴であります。最近はそういうものの上に、さらに企業設備投資も相当盛り上がってまいりました。総需要のほとんどすべての構成要因拡大を続けておるという実情でございます。最近半年間の経済実質成長率は年率にいたしまして一六%にのぼっております。また個人所得消費動向を主として反映いたします日本銀行券発行高も、最近では前年に比べまして二八%近い水準になっておるのでございます。こういう増加を示しておるのでございます。  こうした中で、物価が昨年の夏以来かなり大幅な上昇を示してまいりました。昨年の夏から秋にかけましての卸売り物価上昇には景気回復の初期といったような事情、それから羊毛、木材といったような特定品目大幅値上がりによって影響受けておった面もありましたが、その後この春にかけましては各品目ほとんど軒並みの上昇でありまして、消費者物価にも相当な影響が出ておるのでございます。  この間、本年の二月と三月の二回にわたりまして相当大規模な国際通貨情勢の動揺がございまして、その結果ほとんどの主要国変動相場制に移行したのでありますが、わが国におきましてもスミソニアン体制によります三百八円という平価から約一六%以上円が切り上がるという状態になりまして、こういう円高相場日本経済に対して抑制的な影響を及ぼすであろうというふうに見られたのでございますけれども実情国内の総需要の強い拡大海外物価上昇のために、全体として非常に熱を持った経済の動きになってきております。  こういうような状態に対処いたしまして、日本銀行は昨年の半ば以来金融政策を積極的な緩和から中立的、さらに警戒的に運営するほうに変えてまいりまして、各銀行にも慎重な融資態度をとるように要請してまいりましたが、本年に入りましてからははっきり引き締め政策に転じまして、一月、三月と二回にわたって準備率引き上げました後、四月の初めには〇・七五の公定歩合引き上げを行ないました。またごく最近にはさらに公定歩合を〇・五上げますとともに、預金準備率引き上げ追加措置として実施いたしたのでございます。  こういう政策をとりましたのも、四月の公定歩合引き上げ後さらに総需要拡大が続いておるということ、さらにまた企業投資態度が一そうその後においても積極化しておるということから総需要抑制、特に企業投資の一そうの抑制が必要であると考えたのでございます。  今後は、企業金融の面で決算資金ボーナス資金が流出する時期にも当たりますので、このような時期に今回の措置をとりまして、これによりまして一そう金融機関貸し出し抑制態度が強まりますならば、今後所期の目的を漸次達成していくことができるのではないかと考えております。  金融引き締めはこのように金融面から主として企業投資活動影響を与え、総需要抑制することによりまして物価の安定をはかろうという趣旨でございますが、最近の物価の騰勢には海外インフレーションの進行、賃金の大幅上昇需要構造変化などいろいろ複雑な要因が作用しておりますので、これに対処いたしますのには金融だけでなく、可能な限り各種政策手段を動員することが必要と思われるのでございます。この点に関し、先般来政府によりまして公共投資の施行時期の調整など七項目にわたる物価安定対策が進められておりますことは私どもとしては非常に賛成でありまして、今後ともそういった方向に一そう努力を重ねられますよう期待する次第でございます。  このように私どもといたしましては、総需要抑制のために鋭意金融引き締め政策を実施しておりますが、金融引き締めの中で中小企業に不当なしわ寄せが行なわれるようなことがあってはならないと存じております。特に輸出関連中小企業などは国際通貨問題というきびしい環境の変化にさらされているのであります。私どもといたしましては、中小企業金融につきましては実情に応じ十分配慮するように金融機関の指導に万全を期しておる次第でございます。  最後に、金融引き締め国際収支問題との関連でございますが、いまの景気の強さから見まして、引き締めによりまして総需要をある程度抑制いたしまして黒字幅が再び大きく拡大する懸念はないものと存じております。  ただ、この二、三カ月、目立って貿易黒字幅が縮小しておりますが、これはいままで手控えられておりました輸入反動増というような要素もございます。一方、輸出の増勢はまだ根強いものがありますので、現在程度黒字幅縮小がそのまま定着すると即断することは不適当かと思われます。したがって、わが国といたしましては引き続き国際収支均衡化への努力を怠ってはいけない、特に物価安定効果の面からも、輸入促進に一段と積極的に取り組むことが望ましいと考えておるのでございます。  以上申し述べましたような諸情勢から見まして、私どもといたしましては、当面の金融引き締めが総需要抑制を通じ物価の安定に資するよう一そうの努力を尽くしますとともに、今後の情勢変化に応じまして金融政策を引き続き機動的に運営してまいる考えでございます。
  4. 鴨田宗一

    鴨田委員長 ありがとうございました。  次に、横田参考人お願いいたします。横田参考人
  5. 横田郁

    横田参考人 ただいま御紹介をいただきました横田でございます。  これから私が申し上げることは、佐々木日銀総裁とほぼ似通ったことを申し上げることになろうかと思いますが、御清聴をお願い申し上げます。  初めに、最近の経済金融情勢と今後の展望についてでございますけれどもわが国経済は一昨年末、戦後初めての体験とも申すべき円の切り上げを行ないまして、前途に一まつの不安が持たれたわけでございますけれども、結果的には予想より早く回復過程に入り、昨年秋口以降は急速な拡大過程をたどっているのでございます。  こうした経済の急速な拡大を背景に、所得水準上昇し、また企業業績もおしなべて好況を謳歌いたしておる次第でございます。しかしながらその反面におきまして、卸売り物価は急上昇を示し、最近はこれが消費者物価にもはね返るというまことに憂慮すべき現象が生じていることは御高承のとおりでございます。  その意味で、物価対策は今日焦眉の急を要する問題になっているわけでございますが、本年に入りまして公定歩合の二次にわたる引き上げ、三次にわたる預金準備率引き上げ、さらには窓口規制強化など、金融政策面から引き締め措置が実施される一方、公共事業の上期契約率は昨年を下回るよう財政面におきましても過熱抑制策がとられ、さらには不足物資緊急輸入ども促進された次第であります。  第一次公定歩合引き上げ後の経済情勢を一べついたしますと、行き過ぎた備蓄買いや投機はやや鎮静化に向かい始めておるわけでございますが、国内需要は依然根強く拡大しておりまして、加えて海外物価の高騰などを勘案いたしますと、物価動向にはなお予断を許さないものがあるのでございます。  こうした情勢から、金融政策が今回一段と引き締めの度合いを強め、政府が総需要抑制に不退転の決意のほどを示されましたことはまことに機宜に適した措置考えられるわけでありまして、私どもといたしましても、一刻も早くその成果があがるよう、金融面から御協力申し上げる所存でございます。  さて、今後の展望に目を移してまいりますと、金融引き締め政策財政支出繰り延べ措置などの効果が漸次経済実体面影響を与え、その結果過熱現象は次第におさまり、年度後半以降においてわが国経済は次第に安定的な軌道に立ち戻るのではないかと期待されるのでございます。  物価問題に関しましても、卸売り物価景気動向とのかね合いで見る限り、いずれ落ちつきを取り戻すものと考えられるわけでございますが、ただ、今日の物価上昇が世界的なインフレ傾向を反映する一方、構造的な一面を持っていることを考えますと、楽観は許されない、なおしばらくは警戒的態度をもってこれに臨むことが必要だと存じます。  消費者物価につきましては、消費需要の旺盛さや天候不順による季節商品値上がり、あるいはサービス部門における賃上げの影響などを勘案いたしますと、卸売り物価以上にむずかしさがあると存じます。したがいまして、この際、財政金融政策機動的展開は申すに及ばず、貿易為替政策各種構造対策など、一連の総合施策を強力に推進すべきであると考えます。  次に、金融引き締めに伴う諸問題について若干つけ加えさせていただきます。  まず第一は、引き締め強化に伴い、消費者ローン、特に住宅ローンにつきどのように考えるかという点でございます。一般的に見て、総需要抑制の見地からいえば、個人消費投資需要もその例外ではございませんけれども住宅ローンに関しましては、福祉社会実現観点から、全般的な引き締め政策下におきましても可及的に疎通に努力し、もって国民の要請にこたえるべきものと考えております。各銀行におきましても、二次にわたる公定歩合引き上げにもかかわらず、住宅ローンの金利の据え置きをはかったのはこのような趣旨に基づくものでございます。なお、この問題につきましては、御高承のとおり、現在金融制度調査会において御審議中の事柄でもありますので、私どもといたしましては、その御意向に沿って考えてまいりたいと思っておるわけでございます。  第二の点は企業金融に関してであります。金融引き締め政策影響は、主として企業投資活動に大きくあらわれるわけでありますが、今日の企業投資活動の内容には、公害防止省力化投資中小企業構造改善のための近代化投資など、むしろその助長、定着化をはかるべきものも少なくはありません。この際、私どもといたしましては、ただいま申し上げましたような、国民経済的に見て優先度の高い投資に関しましては、資金配分上十分配慮いたしたいと存じております。また、金融引き締めしわがいやしくも中小企業金融に片寄ることのないよう万全の措置をとりたいと存じますが、政策当局におかれましても、総需要調整策金融政策にのみ偏向しないよう格段の配慮を払われることをお願いいたしている次第でございます。  以上、短期的な金融経済情勢について申し述べさせていただきましたが、次に、やや長期的な経済展望を踏んまえつつ、今後の銀行経営について考えているところの一端を申し述べてみたいと存じます。ためには供給をふやすということが必要ではないかという点でございますが、確かにそういう方法によりまして物資需給関係調整することもあります。ただしかし、そのためには設備投資をしなければなりませんが、増産のための設備投資というものは、それが供給力として具体的にあらわれてきますまでは、設備のための投資需要として、あらわれてくるわけであります。設備のための需要として、資金面でも物的な面でもあらわれてくるわけでございます。したがって、現在のように当面物価が上がっておりますときの対策といたしましては、やはりそういうある程度プロセスを経てからでないと出てこないものに期待することよりも、総需要抑制するという面から需給調整を行なうことが適当と考えておるのでございます。  それから、中小企業の問題は、先ほども私から申し上げましたし、横田会長からも十分考えていくというお話がありました。われわれとしては、中小企業問題というのは前から長い、われわれとしても関心を持っている問題でございますから、これに対しては今後とも十分注意をしてまいりたいと思います。  それから、商社の問題でございますが、確かに日本商社というものは実に広範な仕事をいたしておりまして、こういうことまでやっているかというようなこともあるのでございますが、金融につきましては確かにこの前からの輸出受けの入ってきたというようなこと、そういう点で手元資金が厚くなっておりますが、最近われわれのほうで窓口規制をやりますときに、一方商社不動産業につきましては、特定の業種問題として、二つ事業に対する資金供給は非常に強く押えております。したがって、その効果は一般的な金融引き締め効果よりも早く出てきておるように思います。したがって、最近商社の方の話を聞きますと、だいぶ手厚かった手元資金もだんだん夏ぐらいにはもとへ戻ってしまうのではないかという話をなさる方もあるのでございます。商社金融につきましては、仕事が広範にわたりますだけになかなか取引銀行でも十分な把握が困難な点はございますけれども、われわれとしては量的に押えていくということで相当な引き締め効果はあげ得るものと、こう考えておるのでございます。
  6. 村岡兼造

    村岡委員 いまの商社の問題ですが、日銀のほうでそういうようなもとを押えている、こういうわけですが、商社相当金を持っておる。実例も私知っておりますが、時間がありませんので言いませんけれども、現時点でもそういうような金融をするというような話が来ておる。したがって、こういう点もせっかく日銀総裁が強い決意引き締め十分商社金融というものに対しても効果あらしめるような対策をしていただきたい。  同時に、横田協会長も申されましたけれども引き締め下にありながら中小企業というものは十分に配慮するんだ、毎回引き締め時には大蔵省のほうも言われておるわけでございますが、実際に中小企業零細企業にこの引き締めが浸透してまいりますと、はっきり申せば地方相互銀行とか信用金庫あるいは農協その他からコール資金が大銀行のほうへ来る、こういうような状況。同時にどんどん支払い手形決済が非常に長くなってくる。これは中小企業は大企業から言われまして、四カ月物は六カ月にしろあるいは八カ月にしろ、十カ月にしろと言われて、これは仕事をやらないと言われればそれを引き受けざるを得ない。こういう実際的な状況中小企業にあらわれてくるのがいままでの常でございます。したがって十分にこの対策をひとつしていただきたい、こう思うわけでございます。  横田協会長さんに御質問申し上げますけれども、いわば今後だんだん金融が詰まってくる。そうしますと、コールの問題でも現在はたいしたことはないにしても、先ほど申しました相互銀行、信金あるいは農協から集めて大企業のほうに回すというようなことが今後もとられるのかどうか。あるいは大企業貸し出ししておる、大企業関係に対して具体的には支払い手形なりサイト決済、こういうようなものもきめのこまかい対策をひとつ銀行協会でとっていただかないと、やはり引き締めの結果だめになるのは中小企業零細企業、こういう結果になってしまう。それらの観点をお答えを願いたい。  同時にいま協会長意見発表もあったわけでございますが、日銀政策は総需要を押えるために引き締め政策をやるということでございますので、全銀協といたしましては具体的にこれに協力することに対してはどういう問題点があるか。同時にまた、先般土地問題で騒がれましたけれども銀行土地関連会社に出資している問題が新聞に出ておりましたけれども、この関係はどうなっておるのか、こういう点。それからまた、総需要を押えるということを一生懸命やっておるのに全国銀行関係では新設店舗あるいは改築等、こういうものがあるわけでございますが、これもやはりいまの時点で景気の刺激ということになるならば、こういう店舗とかあるいは改築、微々たる金であってもこういうことは協力する考えがあるのかどうか、こういう点。それから中小企業に対して今後どういうふうな対策、きめのこまかい対策をとっていただきたいが、この点を御質問いたします。
  7. 横田郁

    横田参考人 申し上げます。  中小企業引き締めしわが寄るかどうかという御懸念でございますけれども金融引き締め下貸し出し運営にあたりましては、大企業中小企業個人の各層に対してどうやって適正な資金配分を行なっていくかということが銀行にとっては最大の関心事でございます。ほんとうに必要かつ緊急な資金を優先してバランスのとれた配分を行ないたいということを考えているわけでございます。したがいまして、引き締めによって中小企業に対する融資態度を変える考えは毛頭ございません。ただし、きびしい引き締め下の限られた資金配分なので、中小企業向けといえども不要不急のものにつきましては御遠慮願わなければならないわけでございますけれども、必要なものについては極力応じてまいりたい。引き締めしわ中小企業に一方的に寄ることは厳に避ける考えでございます。  それから、コールの問題でございますけれどもコールの問題につきましては、確かに御指摘のように昭和三十年代の引き締め期にはコールレートが異常な上昇を示しまして地方相互銀行あるいは信用金庫等資金都市に還流するというような事態を生じたことはおっしゃるとおりでございますが、四十年以降の引き締め期になりましてはだんだんとその様子が変わってまいりまして、都市に還流するパーセンテージ、信用金庫なりあるいは相互銀行なりがコールに放出をする割合は非常に下がってまいったわけでございます。もちろんそのレートとの関係もあろうかと存じますが、昭和三十九年の一月から十二月の引き締め期にはこれが八・一%、それが四十四年の引き締め期には六・九%というふうにだんだん下がってまいっております。信用金庫の場合は、三十九年の一月から十二月の間は二七・一%、それが四十四年の十月から四十五年の九月のときは〇・六%というふうに、コールに回す金が非常に下がってきております。  このことは、中小金融機関地元企業に対して積極的にこれを育成していきたい、地元に密着しなければ中小金融機関としての存在意義がないという経営意識によりまして、こういう姿勢にはっきり変わってきたように私は感じておるわけでございます。したがいまして、今回の引き締めにつきましても、おそらく中小金融機関はそのように努力されると思いますし、また、都市銀行としましても中小企業向け貸し出しにつきましては、先ほど申し上げましたようにできるだけ配慮してまいりたいと思っているわけでございます。  それから下請に対する下請代金支払い遅延の問題かと存じますけれども、この問題につきましては、できるだけそういうことのないように取引銀行として指導するつもりでございますし、また下請代金支払い遅延防止法ですか、そういためには供給をふやすということが必要ではないかという点でございますが、確かにそういう方法によりまして物資需給関係調整することもあります。ただしかし、そのためには設備投資をしなければなりませんが、増産のための設備投資というものは、それが供給力として具体的にあらわれてきますまでは、設備のための投資需要として、あらわれてくるわけであります。設備のための需要として、資金面でも物的な面でもあらわれてくるわけでございます。したがって、現在のように当面物価が上がっておりますときの対策といたしましては、やはりそういうある程度プロセスを経てからでないと出てこないものに期待することよりも、総需要抑制するという面から需給調整を行なうことが適当と考えておるのでございます。  それから、中小企業の問題は、先ほども私から申し上げましたし、横田会長からも十分考えていくというお話がありました。われわれとしては、中小企業問題というのは前から長い、われわれとしても関心を持っている問題でございますから、これに対しては今後とも十分注意をしてまいりたいと思います。  それから、商社の問題でございますが、確かに日本商社というものは実に広範な仕事をいたしておりまして、こういうことまでやっているかというようなこともあるのでございますが、金融につきましては確かにこの前からの輸出受けの入ってきたというようなこと、そういう点で手元資金が厚くなっておりますが、最近われわれのほうで窓口規制をやりますときに、一方商社不動産業につきましては、特定の業種問題として、二つ事業に対する資金供給は非常に強く押えております。したがって、その効果は一般的な金融引き締め効果よりも早く出てきておるように思います。したがって、最近商社の方の話を聞きますと、だいぶ手厚かった手元資金もだんだん夏ぐらいにはもとへ戻ってしまうのではないかという話をなさる方もあるのでございます。商社金融につきましては、仕事が広範にわたりますだけになかなか取引銀行でも十分な把握が困難な点はございますけれども、われわれとしては量的に押えていくということで相当な引き締め効果はあげ得るものと、こう考えておるのでございます。
  8. 村岡兼造

    村岡委員 いまの商社の問題ですが、日銀のほうでそういうようなもとを押えている、こういうわけですが、商社相当金を持っておる。実例も私知っておりますが、時間がありませんので言いませんけれども、現時点でもそういうような金融をするというような話が来ておる。したがって、こういう点もせっかく日銀総裁が強い決意引き締め十分商社金融というものに対しても効果あらしめるような対策をしていただきたい。  同時に、横田協会長も申されましたけれども引き締め下にありながら中小企業というものは十分に配慮するんだ、毎回引き締め時には大蔵省のほうも言われておるわけでございますが、実際に中小企業零細企業にこの引き締めが浸透してまいりますと、はっきり申せば地方相互銀行とか信用金庫あるいは農協その他からコール資金が大銀行のほうへ来る、こういうような状況。同時にどんどん支払い手形決済が非常に長くなってくる。これは中小企業は大企業から言われまして、四カ月物は六カ月にしろあるいは八カ月にしろ、十カ月にしろと言われて、これは仕事をやらないと言われればそれを引き受けざるを得ない。こういう実際的な状況中小企業にあらわれてくるのがいままでの常でございます。したがって十分にこの対策をひとつしていただきたい、こう思うわけでございます。  横田協会長さんに御質問申し上げますけれども、いわば今後だんだん金融が詰まってくる。そうしますと、コールの問題でも現在はたいしたことはないにしても、先ほど申しました相互銀行、信金あるいは農協から集めて大企業のほうに回すというようなことが今後もとられるのかどうか。あるいは大企業貸し出ししておる、大企業関係に対して具体的には支払い手形なりサイト決済、こういうようなものもきめのこまかい対策をひとつ銀行協会でとっていただかないと、やはり引き締めの結果だめになるのは中小企業零細企業、こういう結果になってしまう。それらの観点をお答えを願いたい。  同時にいま協会長意見発表もあったわけでございますが、日銀政策は総需要を押えるために引き締め政策をやるということでございますので、全銀協といたしましては具体的にこれに協力することに対してはどういう問題点があるか。同時にまた、先般土地問題で騒がれましたけれども銀行土地関連会社に出資している問題が新聞に出ておりましたけれども、この関係はどうなっておるのか、こういう点。それからまた、総需要を押えるということを一生懸命やっておるのに全国銀行関係では新設店舗あるいは改築等、こういうものがあるわけでございますが、これもやはりいまの時点で景気の刺激ということになるならば、こういう店舗とかあるいは改築、微々たる金であってもこういうことは協力する考えがあるのかどうか、こういう点。それから中小企業に対して今後どういうふうな対策、きめのこまかい対策をとっていただきたいが、この点を御質問いたします。
  9. 横田郁

    横田参考人 申し上げます。  中小企業引き締めしわが寄るかどうかという御懸念でございますけれども金融引き締め下貸し出し運営にあたりましては、大企業中小企業個人の各層に対してどうやって適正な資金配分を行なっていくかということが銀行にとっては最大の関心事でございます。ほんとうに必要かつ緊急な資金を優先してバランスのとれた配分を行ないたいということを考えているわけでございます。したがいまして、引き締めによって中小企業に対する融資態度を変える考えは毛頭ございません。ただし、きびしい引き締め下の限られた資金配分なので、中小企業向けといえども不要不急のものにつきましては御遠慮願わなければならないわけでございますけれども、必要なものについては極力応じてまいりたい。引き締めしわ中小企業に一方的に寄ることは厳に避ける考えでございます。  それから、コールの問題でございますけれどもコールの問題につきましては、確かに御指摘のように昭和三十年代の引き締め期にはコールレートが異常な上昇を示しまして地方相互銀行あるいは信用金庫等資金都市に還流するというような事態を生じたことはおっしゃるとおりでございますが、四十年以降の引き締め期になりましてはだんだんとその様子が変わってまいりまして、都市に還流するパーセンテージ、信用金庫なりあるいは相互銀行なりがコールに放出をする割合は非常に下がってまいったわけでございます。もちろんそのレートとの関係もあろうかと存じますが、昭和三十九年の一月から十二月の引き締め期にはこれが八・一%、それが四十四年の引き締め期には六・九%というふうにだんだん下がってまいっております。信用金庫の場合は、三十九年の一月から十二月の間は二七・一%、それが四十四年の十月から四十五年の九月のときは〇・六%というふうに、コールに回す金が非常に下がってきております。  このことは、中小金融機関地元企業に対して積極的にこれを育成していきたい、地元に密着しなければ中小金融機関としての存在意義がないという経営意識によりまして、こういう姿勢にはっきり変わってきたように私は感じておるわけでございます。したがいまして、今回の引き締めにつきましても、おそらく中小金融機関はそのように努力されると思いますし、また、都市銀行としましても中小企業向け貸し出しにつきましては、先ほど申し上げましたようにできるだけ配慮してまいりたいと思っているわけでございます。  それから下請に対する下請代金支払い遅延の問題かと存じますけれども、この問題につきましては、できるだけそういうことのないように取引銀行として指導するつもりでございますし、また下請代金支払い遅延防止法ですか、そういう法律も施行されておりますので、従来のようなことはないのではないかと私は考えております。  それからもう一つ最後に、銀行が出資しております不動産会社のことでございますが、これは現在銀行は独禁法によりまして一〇%以上の出資ができませんので、一〇%の範囲内で出資をいたしております。それからいろいろ銀行から役員も出ておりますし、また出向社員も出ている状態でございますけれども、これは先般来当局の御指導によりましていろいろと改変の措置を講じているわけでございます。独禁法で許された範囲は一〇%でございますけれども、にもかかわらず五%くらいに引き下げたほうがよかろうということで、漸次引き下げを行ないまして、銀行との関係をなるたけ希薄にするようつとめておる次第でございます。  また、出ております役員は、私どものほうの全銀協としてではなくて、第一勧業銀行としての関連会社について申し上げれば、今度の総会が六月だったと記憶いたしますが、そのときには私どもから出ております役員は引き上げます。出向職員の問題でございますけれども、これは一斉に引き上げると会社がからっぽになってしまいますので、漸次引き上げていくように努力をいたしております。  それから、私ども関連会社は勧銀土地建物という会社でございますが、名前がやはり銀行の名前を冠しているのではぐあいが悪いということで、その会社に対しましては名称を変更するようにいま折衝中でございます。法人が別になっておりますので、いまのところなかなか言うことを聞いてくれませんが、できるだけ早くいい名前を見つけて変えるように申しておるわけでございます。  余談でございますが、勧銀土地建物という名前を変えますと、何か勧銀観光という名前の会社が、全然関係のない会社でございますけれどもあるそうで、それが残って勧銀土地建物が消えるということになるわけでございますが、そういう努力をわれわれは一生懸命して、できるだけ関係を薄くするように努力いたしております。  店舗新設改築等につきましては、これは新設店舗は当局の御指導によりまして、その地区における居住者が急増いたしまして、銀行業務に対してニーズが非常に高まっているときに店舗新設が認められているわけでございますので、そういう方面に対しては店舗をやはり出していかないと国民のニーズにこたえるわけにいかなくなるということで、これは最小限度出してまいりたいと思います。それにつきましては、地価の値上がり、あるいはぜいたくな建物というようなものはわれわれは考えておりません。ただ、銀行のことでございますので、保安上やや堅牢な建物は必要かと存じますけれども、できるだけそういう投資額を最低限にとどめるよう努力をしているわけでございます。  以上でよろしゅうございますでしょうか。
  10. 村岡兼造

    村岡委員 もう時間になりましたので、要望だけ申し上げまして私の質問を終りたいと思いますけれども、いま総需要抑制のためたいへん御難儀なされていると思います。同時に、これはあまりやりまして、先ほど私が言いましたように、数カ月後あるいは一年後に中小企業の倒産が続出した、こういうふうにならぬようにひとつ日銀総裁並びに横田協会長お願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  11. 鴨田宗一

    鴨田委員長 阿部助哉君。
  12. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 初めに、横田参考人にお伺いをいたしますが、先ほど陳述されましたときに、一番最後のほうで、銀行経営のあり方でありますか、貯蓄心を涵養していくとか、地価、物価の安定に協力するとか、あるいはまた公共的使命というものでこうやるというようなお話、私、たいへん賛成なんでございますけれども、しかしいままでのあり方についてはいささか問題があるのではないだろうか。  と申しますのは、土地関係の融資について、通達ですか指示事項でおりますかわかりませんが、大蔵省からたびたび銀行に対して出ておるわけであります。これはたいへんたびたび出ておる。一ぺんや二へんではないんですね。そうすると、その間銀行先ほどおっしゃったような公共的な立場に立って大体運営されておるというふうにはちょっと思えないんですね。その辺の銀行の理念といいますか考え方といいますか、そういうものをもう一ぺん横田会長からお聞かせいただきたいと思います。
  13. 横田郁

    横田参考人 お答えいたします。  銀行の不動産融資に対する態度について若干疑問があるという御趣旨のように受け取りますが、それでよろしゅうございましょうか。——銀行の不動産融資が急増いたしましたのは、一昨年から昨年にかけてと思います。結局福祉国家指向型の政策に転換いたしまして、いま一番重要な問題は、国民の生活環境の整備ということが取り上げられているわけでございますけれども、そのためにはよい宅地、よい住宅を一般大衆に提供するということが一つの大きな今日の課題だろうとわれわれは考えておった次第でございます。時あたかも一昨年夏のニクソン・ショック等によりまして景気が低迷時期にございましたので、金融緩和政策がとられ、景気の浮揚政策がとられたわけでございます。したがいまして、そのときにあたって、いわゆるデベロッパー的な仕事に対しまして銀行は相当積極的融資をしてまいったことは事実だと存じます。しかし、積極的にこういうものに融資してまいったということは、先ほど申し上げたような趣旨から、いわゆる国策に協力するという意味合いでそういう方針をとった次第でございまして、それが今日このように行き過ぎた結果になったということは、私どもが全く意図しなかった結果であるわけでございます。その点、はなはだわれわれとしても遺憾に思う次第でございますが、御指摘のように、昨秋来大蔵当局からいろいろと御注意を受けまして、あるいは規制を受けまして、その後われわれとしましてもできるだけこの不動産融資については目下のところほどほどにやっていくという考え方でやっておるわけでございます。もちろん、不動産融資の増加額は全体の貸し付けの増加率以下に押えられておるわけでございまして、各銀行ともそれを順守していくべく大いに努力している次第でございます。  大体以上のようなことでよろしゅうございましょうか。
  14. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 ごく最近はわかりませんが、いまこの資料を見ましても、銀行関係の不動産会社四十二社、借り入れ資金が四千五百二十九億ということになりますと、普通の融資の比率からしまして、これはいまお話しのようなものではないのじゃないか。この四十二社の資本金合計、大体私が目の子で当たってみると四十億くらいなんですね。しかし貸し出した金額は百倍の四千五百二十九億ということになりますと、これはいまお話しのように、一般の貸し出しの比率をこえてないというふうにはちょっと私は思えないのです。  もう一つたいへんこれは失礼なようですけれども「エコノミスト」の五月二十二日号、これを見ますと、横田さんのおっしゃっていることがそのままここへ載っているのかどうかわかりませんが、横田さんはこう答えておるのです。「不動産会社の社名に銀行の名前をつけたのがいけないとよくいわれますが、銀行名をつけているからこそ、わけのわからん不動産会社みたいにベラボウなもうけはできないし、してもいません。」とこうおっしゃっている。そうしますと、このお考えをいまでもお持ちであるとすると、これはみんな銀行の名前をつけた不動産会社であったほうがいいと、こうなる。ところが銀行局のほうの通達を見てまいりますと、そういう名前をつけちゃいかぬと指示をしておるのでして、どっちかが狂っておるわけですよ。これは銀行局が狂っておるとお考えになりますか。
  15. 横田郁

    横田参考人 決して銀行局が間違っているとは私は思いません。結局考えの基礎がちょっと違うわけなんで、世間的な一般的水準からいえば、銀行というのは信用の機関でございますので、一般の需要者からは、銀行の名前がついておりますと、安心して買えるんじゃないか。そこの不動産会社の分譲するマンションなりあるいは宅地なりは安心して買えるんじゃないかというお話は、実際に需要者の方からはちょいちょい伺います。伺いますが、別の意味で、そういった名前を冠することについて、銀行と不動産会社との癒着関係あるいは銀行の周辺業務としての不動産業務が適当であるかどうかというような問題については、若干問題がある。そういう意味で、誤解を受けないように、銀行との癒着関係を断つということで、銀行の名前を冠しないほうがいいという通達の御趣旨だと思うのでございます。したがいまして、われわれもごもっともと存じまして、それをその通達に従うことにいたしているわけでございます。
  16. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうしますと、ここでお述べになったことは、もうこのお考えとは現在は違うお考えを持っておられるわけですね。
  17. 横田郁

    横田参考人 銀行的な立場からいえば、これは銀行局のおっしゃることが正しいというふうに考えております。ただ、世間一般でいろいろ言っておりますことは、これはまた別だろうと思うわけでございます。
  18. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 土地問題が今日のようにいろいろ問題になるけれども、この土地問題は、だいぶ前から、土地の値上がり、特にこの委員会でも、もうだいぶ前ですが、銀行の子会社の土地会社、この問題についてはたびたび指摘があったわけであります。そして土地の値上がりというものに銀行が一役買っておるのではないかという指摘がたびたび行なわれておった。ことに、大銀行になりますれば、なおさら社会的な責任のある立場にお立ちになっておる。それが土地会社でもうけるなんということは、銀行のあり方から見ても、それは法には触れない、適法かもわからぬけれども、少なくとも社会の常識から見て、適正ではない、こうわれわれは感じておったわけでありまして、私は、銀行局の通達は当然なことであり、まあ銀行当局のこのお考えは少し間違っておるのではないだろうか、こういうあれがありました。そういう点で、たいへん失礼なことを聞いたわけでありますけれども、土地会社、不動産会社、特にいまのいろいろな物価問題の中でも、特に土地問題というのがたいへん問題になっておるときでありますので、ひとつその辺をお考えをいただいて、これからの運営に当たっていただきたいと思うのであります。  もう一つ、横田参考人にお伺いしたいのでありますけれども、これは大蔵省のほうの決定によるのだと思いますけれども銀行の担当者としてはいかが考えるかお伺いしたいのであります。  いま、公定歩合引き上げをされてまいります、そうすれば、当然皆さんのところの貸し出し金利も引き上げられてくるだろう、こう思うのであります。しかし、預金金利は依然として据え置くとすれば、これは銀行のもうけは大きくなるということになるわけでありますが、銀行の方にもうけるのは悪いとは言えないだろうけれども、やはりこれはそれに見合ってすぐに連動するということではなしにでも、やはりこれは引き上げてもやむを得ないというふうにお考えになるのか、これは据え置くべきだとお考えになるのか、どちらなんでございますか。
  19. 横田郁

    横田参考人 では、申し上げます。  私たちは、政策当局が決定した方針に協力する立場にございますので、預金金利を据え置く理由はということになりますと、推測の域を脱しませんけれども公定歩合及び短期金利は一番機動的に弾力的に動かして、資金需給調節を有効適切に行なうものでございますが、預金金利、ことに、なかんずく定期預金につきましては、公定歩合等に比べれば、金利体系全体との関連で慎重に考えた上で操作しなければならないものと考えられます。したがって、もし公定歩合に預金金利を連動させるという習慣ができますと、本来公定歩合操作の持つ機動性、弾力性がそこなわれるおそれも出てくるわけで、政策当局としても、そこのところを考えて、預金金利の変更については慎重な取り扱いをなさったものと思うわけでございます。この前の公定歩合の引き下げのときにも、低金利がある程度定着したところを見きわめて預金金利が引き下げられております。今回も、預金金利は公定歩合引き上げと同時に四月には引き上げられましたけれども、今度の引き上げにつきましては、さらにこの引き締めがどういうふうに、あるいは金利の上昇が定着するかを見きわめた上で、預金金利を引き上げるということに当局は考えておられるのではなかろうかと思いますし、私どもとしましても、その御方針には賛成でございます。決して引き上げないというわけではないので、時期を見て引き上げることもあり得るということだろうと思います。
  20. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 次に、日本銀行総裁にお伺いいたしますが、私、これで七年目でございますけれども、この委員会で、日銀総裁にお伺いするのはこれが初めてでございます。たいへん初歩的な基本的なことをお伺いを申し上げますが、日本銀行運営の理念というのは一体どういうことなんでございましょうか。
  21. 佐々木直

    佐々木参考人 日本銀行は、国の中央銀行といたしまして、やはり通貨価値の維持ということが一番大事なことでございます。そういう大事なことが、いま現実にわれわれの目の前でなかなかむずかしくなっておる。この点は私どもとして、はなはだ遺憾に存じております。そういう大きな目的のためにいろいろな手段を中央銀行として使わなければなりません。これがいわゆる金融政策の手段でございますが、その手段をいろいろ使いまして、結局終局的には通貨価値の安定に努力する。その間にどういうことが入るかと申しますと、結局金融の量の調整ということが中に入ってくるわけであります。そういうものが、たとえばいまの具体的な例として申し上げますれば、総需要調整というようなことにつながっておるわけでございます。  したがって、私どもとしては、国内的にいまのような問題を第一に考えておりますが、さらに最近は国際通貨問題というのが非常にウエートが上がってまいりました。ことに日本の国際経済社会の中におきます地位が上がるのを反映いたしまして、さらにまた一方国際通貨問題がいろいろ変化を示しておるという中で、やはり中央銀行は、その問題の当事者としていろいろ仕事をしてまいらなければなりません。したがって、ただ、先ほど申し上げました通貨価値の維持ということが、今度は海外との関係でどういう役割りを持つか。いままではできるだけ為替相場というものは安定させるということで努力してまいりましたけれども、いまの変化の多い国際経済社会では必ずしも安定ばかりがその目的ではない。実情に応じた調整もまた必要であるということで、そういう面にもまた新しい問題が加わってきております。  しかし、ともあれ、一番大事なのは国内経済でございまして、国内経済の安定した発展という目標のために、いまのような内外の金融調整の問題を考えていくということが、現在の中央銀行の姿だと思います。
  22. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そういたしますと、現実は通貨価値はどんどん落ちておる、さっぱり安定しない。そうすると、通貨価値の安定を阻害するような経済発展は、日銀総裁としては好ましくない、これはチェックすべきだというふうにやはりお考えになるわけですね。
  23. 佐々木直

    佐々木参考人 あまりに高い経済成長は、必ずそのあとに需給のアンバランスを生じ、強いいろいろな政策手段を必要としまして、経済の安定した運営にじゃまになります。したがって、やはり経済発展というものは、内外のバランスを考えて適当なラインで行なわれるべきものだと、中央銀行の立場からも考えております。
  24. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私はこういう質問をいたしますのは、勤労大衆にとっては、まあ最近は日銀動向に非常に大きな注目をしておるわけであります。日銀券、つまりお金でありますが、これが独占的に発行権をお持ちになっておる。この日銀に注目しますのは、ほかでもない、勤労大衆は言ってみれば、日銀券を手に入れるために命がけにやっておる、そしてそれに命を託しておる、こう言っても、これは資本主義下においては言い過ぎではなかろうかと私は思うのであります。  ところが、そのお金がどんどん低下していくということは、勤労大衆にとってみればこれはたいへんな苦痛であります。先ほどお話がありましたように、貯金をするように国民に貯蓄性向を高めよう、こうおっしゃってみても、なるほどタンス預金しておれば、それは金利がつかぬからもっと悪いかもわからぬけれども、貯金をしていって、それであとになればさっぱり価値がなくなっちまっておるということでは、勤労大衆の立場からいってはたいへん困るわけであります。  そういう点で、私は日銀券のこの価値の低落という問題については、勤労大衆はたいへん困っておる。総裁がおっしゃるように、最大の使命であるとおっしゃるけれども、現実はこう下がっておるとすれば、日銀総裁として何かこれはもう少し考えざるを得ないんじゃないだろうかという感じがするわけでありますけれども、これはお考えはどうなんですか。
  25. 佐々木直

    佐々木参考人 いまの御指摘の点、確かにもうわれわれが日夜非常に心配しておる点でございます。したがいまして、金融政策の面、中央銀行としてできる限りにおきまして手を打っておるのが現実でございまして、ことしに入りましてからのいろいろな金融政策の展開、これなどは、われわれ中央銀行として全力をあげて物価上昇をチェックしようと努力しておるあらわれでございます。  ただ、決して私、責任をのがれるために申し上げるのではございませんが、物価問題というのは、金融だけではなかなか片がつかない。やはり総合的な政策が行なわれなければ、そうしてまた、金融政策がその総合的な政策の一部として働くということでなければ効果があがりません。しかし、現在は各方面で物価に対する関心が高まっておりまして、私どもとしては、この関心の高まりを背景にいたしまして、総合的な政策が展開されることを強く期待しておるのでございます。
  26. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 おっしゃるように、物価問題はたいへんいろいろな複雑なまた要因があることは承知をいたしておりますけれども、それにしても、いまいろいろ手を打っておられると言うけれども、いままでのあり方から見まして、いままでの物価の推移、貨幣価値の低落の推移、そういうものを見てまいりますと、どうもその辺で合点がいかぬのでありまして、ばく然とした総合的な政策を立てねばだめなんだ、こうおっしゃるけれども、それにしても、日本銀行としてはもう少しきびしい政策を立てる。しかし、その権限がないとおっしゃるならばこれはまたやむを得ないのでありまして、どうも私も日銀法を繰り返し読んでみたけれども日銀総裁の権限というのは一体何なのか、さっぱりわけがわからない。この前もわが党の堀委員から、もうこれは古いから改正しろという意見が出、総裁も何か賛成をされたように思うのでありますけれども、どうもどういう権限をお持ちになっておるのか、もう少しその辺教えていただきたいと思うのです。
  27. 佐々木直

    佐々木参考人 総裁の権限というものではございませんけれども日本銀行日本銀行貸し出しの場合に適用いたします金利、これを公定歩合と呼んでおりますけれども、これを決定する権限は、日本銀行の中にあります政策委員会が持っておるわけでございます。それから預金に対する準備率、これの変更も、大蔵大臣の認可が条件にはなっておりますけれども、やはり政策委員会で決定して認可の申請をするようになっております。それからまた、その日その日の金融調整をいたしますこれは、権限というわけでもないかと思いますが、それは日本銀行のその日その日の判断によって調節ができるようになっておるわけであります。金融政策の中心でありますいまの公定歩合預金準備率、これの運用につきましては、日本銀行が権限を政策委員会として持っておるということが現実でございます。
  28. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これも総裁のあげ足とりになるかもわかりませんけれども、これは新聞にお話しになったのかどうかわかりませんが、総裁がお話しになったということでここへ書いておるのですね。「なにせ相手のおなかが一回りも二回りも大きくなっているんで、まわしになかなか手が届かないんです」こうおっしゃっておる。しかし、これは一回りも二回りも大きくしたその責任は、やはり日本銀行金融政策に大きくあったのじゃないだろうか。大きくしておいて、手が届かなくなったなんて言ってみたって、これはまあある意味で言うと、職場放棄を宣言されたみたいに私は感ずるのでありますけれども、どうもこんなことでは勤労大衆はたいへん困るわけでして、もう物価が上がってしまって、大きくなって手が届かないというか、これは大企業の流動性が大きくなって締めようがないと、こうおっしゃっておるようでありますけれども、この大きくした大きな原因といいますか責任は、やはりいままでの金融政策、中央銀行の役割りが大きく作用した、こう考えるのですが、いかがですか。
  29. 佐々木直

    佐々木参考人 いまのまわしに手がかからないという話は、私がしたのではなくて、ある方が言われたのに私がなるほどそういうもんですかなというふうに申したのでございます。  それはともかくといたしまして、そういうふうに企業の流動性がふえましたこと、それが金融政策のききを悪くしておるということは確かに事実でございます。ただ、企業の流動性がなぜふえたかということは、これは一時流動性論議でずいぶんいろいろ出たのでございますけれども、確かに日本の円が強くなりまして、ドルが日本に流入いたしてまいりましたときに、その流入、外為会計の支払い超過額をどういうふうに調整するかということが大きな問題でございました。日本銀行では、さっそく日本銀行貸し出しの回収をいたしました。売りオペを実施いたしまして、余裕資金は回収したのです。しかし、それは金融市場における資金は回収いたしましたけれども金融市場に出てくるまでの過程におきまして企業の手元を大きくしたということは事実でございます。  ただ、この点は、日本輸出が非常に伸びて、輸出代金が多量に入ってくるという形でございましたので、この事態に変化が起きませんと、なかなかもとでとめることはむずかしかった。そういう点について、いまから考えますと、もっと何か手を打てばよかったのじゃないかという反省はございますけれども、しかしながら、やはりこの間そういう手元の流動性がふえましたことは、いまのような国際収支の黒字を引き金といたしました金融の緩和が大きな背景になっておることは事実でございます。  ただ、われわれとしては、輸出が伸びることは国内における経済活動の不活発からきているという判断でございましたので、そこで金融を全面的に締めるということをちゅうちょいたしました。このちゅうちょをいたしたことについてのいろいろな御批判はあろうと思いますけれども、われわれとしては、あの時点においては、やはり緩和政策が適当であり、その結果として、いまお話のような企業の手元の流動性の増大が起こったということになっておることは事実でございます。
  30. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、きょうは議論するのじゃない、お伺いをいたしますので……。  ただ、申し上げますと、どうも私はいまの世の中、矛盾を感じてしかたがないわけであります。というのは、日本経済がだんだん大きくなってきた、こういっておる。確かにGNPの伸びにしたところで、国民所得の平均の伸びは上がっております。だけれども、現実に経済が大きくなればなるほど、政府が幾ら奨励してみたって、もう東京のサラリーマンで自分でうちを持つなんということはだんだん遠いところに、手の届かないところにいってしまったというのが、私は現実だと思うのであります。  そうすると、これはもちろん金融機関だけの責任じゃありませんけれども、それにしても、この通貨価値の維持というものに本腰を入れて取り組まないことには、まあ中央銀行として国民、勤労大衆の期待にはこたえないということになるのではないかという心配を私はするわけであります。  そこで、もう一つお伺いいたしたいのは、現行日銀法では規定はございませんけれども、よく中央銀行の中立性というような話が出るわけでありますが、そういうものはいま総裁としてはあると言うのかないと言うのか、総裁はどのようにお考えでございますか。
  31. 佐々木直

    佐々木参考人 私は、いまの日本におきましては、中央銀行の中立性は非常にはっきり維持されておるというふうに思っております。ただ、中央銀行の中立性というものも、歴史的には相当変化がございます。金本位時代の中立性と、いまのような管理通貨制度のもとにおきまして、しかも完全雇用を志向する国の経済政策の中における中央銀行の中立性とは、やはり質的な変化が起こっておることは否定できません。しかしながら、先ほど申し上げましたような公定歩合操作あるいは準備率操作、そういうものについての決定の中立性というものは十分確保されておる、こう考えております。
  32. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 先ほど総裁は、過去半年間で成長率が大体一六%、こうおっしゃったと思いましたけれども、この四月、五月、六月、これの成長率は大体どの程度に見当をつけておられるか、お知らせ願いたいのであります。
  33. 佐々木直

    佐々木参考人 いまやっと三月がわかりましたところで、四月以降の問題はまだちょっと推測が非常にむずかしく、生産の数字を見ますと、四月の生産は速報でマイナス〇・八になっております。しかしながら、これはいろいろな特殊な事情がございまして、総体としての生産の動向がここで急変したとはまだ思えません。その証拠には、五月の生産の予測指数が相当上がることになっております。したがいまして、一番高かった去年の十−十二の三カ月より下がっておると思いますけれども、具体的に数字を申し上げるだけの材料が実はございません。
  34. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 まあこのところまたたいへん過熱ぎみでありまして、そのために引き締めをやっておると思うのでありますけれども、過去十年、この日本経済の高度成長、この中で日銀の果たされた役割りはやはり非常に大きなものであった、こう思うのでありますが、それだけにまた一方では日銀券の価値の低落をしていくということも、これもまた私は事実認めざるを得ないと思うのです。そういう点で、冒頭に総裁がおっしゃったように、通貨の価値維持、これが日銀としての最大の使命だ、こうおっしゃるということになりますと、私はあまり責任問題を追及しようと思っていませんけれども、やはりここにもっと反省が必要なんじゃないだろうかという感じがするのですが、いかがですか。
  35. 佐々木直

    佐々木参考人 その点はもう御指摘のとおりでございまして、私どももいまの事態をきわめて遺憾と考えておりますし、われわれといたしましてもできるだけのことを今後もやってまいる考えでございます。
  36. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 まあ決して総裁をいじめるつもりじゃないのでありますけれども先ほど申したように、労働者はこれに命を託して、そしてこれを手に入れるためには命がけになって働いておるということを考えていきますと、この価値維持のためには総裁はやはり命がけでおやりになる。そのために政府にきらわれようとも、権限はどうか知りませんけれども、少なくとも日銀総裁としての意見日銀としての意見を述べるくらいなことは必要だったのではないだろうか、私はこう思うのであります。  ところで、今度は田中内閣は列島改造を進めようとしておる。そうすれば日銀としてはまたこの路線に沿って御協力をされるわけでしょうね。
  37. 佐々木直

    佐々木参考人 どうも列島改造と中央銀行関係というのは、そう直接的なものでございませんので、われわれとしてもいま具体的に何とも申し上げられませんが、しかしながら、さっきから申し上げておりますように、中央銀行の使命というものははっきりいたしております。したがって、その使命を達成するためには、いろいろ政府政策がございましょうけれども、その政策が中央銀行の目的とするところに反しないようにできるだけの調整をやっていくということはもちろん必要なことだと思っております。
  38. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 まあたいへん憎まれ口のようなことを申し上げましたけれども、私たちとしては何としてもやはりこれだけいままでの政府から、まあ対外経済競争力をつけるとか、輸出増進ということで、少なくとも私はここへ参りまして以来、それだけを聞かされてきたわけであります。しかし、実際経済が大きくなり、貿易が伸びていけばいくほど、勤労大衆の生活はだんだん苦しくなってくる、しかも年とった人たちはせっかく老後のために貯蓄したそれすら価値を減らして、老後の不安にかられるというような状態になってきておる、そういうときでありますだけに、私は日銀総裁として最大の使命であるとおっしゃるこの通貨価値の維持に向けて一そう御努力をいただくようにお願いしまして、私、持ち時間たいへん余しましたけれども、これで終わります。
  39. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、増本一彦君。
  40. 増本一彦

    ○増本委員 共産党・革新共同の増本でございます。     〔委員長退席、木村(武千代)委員長代理着席〕  私は、今日の悪性インフレといわれるこの経済の事態、ここにまでなってしまった結果を見ますと、やはり日本銀行が果たさなければならなかったいろいろな手だてや責任というものをこの際はっきりさせて、そして次に移っていくべきであるというように考えるわけです。何と言っても、一つは、日銀がほぼ二年ぐらいの間マネーサプライを非常に著しく増大させていった。昭和四十六年の七月−九月期から広義のマネーサプライを見ましても、非常に高まってきている。こういう事態のときにすでに、これはまあ都市銀行を中心とする金融機関の信用膨張によるインフレを生み出していく、これをどうしてもきちっとしなければいけないということを私たちは強く指摘してきたわけですけれども、しかし、日銀としてあの段階には、総裁も言われたように、金融の緩和政策をずっととられて、過剰流動性を押える手だてをとらなかったし、それから都市銀行をはじめとする金融機関の信用供与の態度を改めさせるというようなこともなさらなかった。まあ数字的に見ましても、広義のマネーサプライで見ますと、四十六年の四月−九月期に六十七兆三千九百八十二億円、前年対比で二四・三%ふえていますし、それが去年の十月−十二月の段階では八十四兆四百五億円、前年対比二四・七%という中で一貫してふえてきているわけですね。こういう状況で、卸売り物価も四十七年の九月からは非常に上昇をして、土地や商品の買い占めが進む。こういう状況を見ますと、やはり今日の悪性インフレをつくり出した非常に大きな根源が、何と言ってもこの日銀のマネーサプライを著しく増長させていったそういう態度にあるのではないか、政策にあるのではないか。  ですから、こういう問題で、私は、総裁としてやはり初めにこの点についての責任を一つは明確にさせるべきだと思いますし、その点について総裁は一体どういうようにお考えになっておられるか、まずはっきりさせていただきたいというように思います。
  41. 佐々木直

    佐々木参考人 日本銀行は、古い話になって恐縮でございますが、四十四年の秋に軽い引き締めを実行いたしました。その後四十五年に入りましてからは、日本経済はだんだん勢いを失ってまいりまして、不況色が出てまいりました。したがいまして、四十五年の暮れから金融の緩和を積極的にはかりました。四十六年に入りましてからもその金融緩和政策は継続されたのでございます。これと並行いたしまして、日本輸出は急速に伸びてまいりました。そのために貿易の黒字が拡大し、したがって外為会計の払い超過がふえてくるということで、四十六年中の外為会計の払い超過は四兆四千億という多額にのぼったわけであります。  したがって、いまの御指摘の点は、そういう金融が外為会計の払い超過をきっかけとして緩和しており、また政策的にも緩和政策をとった。そのことがはたして適当であったかどうかという御指摘だろうと思いますが、そのときのわれわれの考え方は、その大きな貿易の黒字で、これが海外に非常にいろいろな批判を巻き起こしておる、これを直すのにはやはり国内経済を再び活気を取り戻させる、生産をふやしていく、消費もふやしていく、こういう方向で解決することが適当であるというふうに考えたわけでございます。  したがいまして、この間にそういう外為会計の払い超過と相並びまして、金融機関もそういう緩和政策公定歩合の相次ぐ引き下げというものを背景に貸し出しを積極的に市中の金融機関も伸ばしていく。それが四十七年になりましてだんだん効果を発揮してまいりまして、四十七年の春ごろからは、部分的なまだ不況は残っておりましたけれども、総体として、マクロとして見ます限りにおいては、経済の伸びは高まってまいったのであります。  ところが、それが間もなく秋口以来の卸売り物価上昇というふうに出てまいりました。これは金融の緩和ということも、もちろんその需要拡大につながるという意味で卸売り物価上昇の原因になっておりますが、さらにまた海外における物価高というものもこれに加わっておるということは事実でございます。それからまた、その四十六年中の日本卸売り物価が世界でも珍しい例でございますが、低落をしておったのでございまして、それの取り戻しという点もそこに最初のうちはあったと思います。  したがいまして、いまのようなマネーサプライの増大、これが適当であったかなかったかという判断には、われわれが国際収支についてどういう考えを持っておったかということに非常に深いかかわり合いを持っておると思います。私どもは、戦後数回、国際収支が悪化いたしましたときに、いつも財政金融引き締めによりましてこの赤字傾向を直してまいりました。その場合に、為替相場を切り下げて調整をはかるということもなかったわけではないと思いますが、われわれはやはり安定した為替相場が日本貿易に非常に有利であるという判断で、為替相場には手をつけないで国内政策調整をはかってきたわけでございます。そういう考え方が今度の黒字基調の場合にもやはり貫かれております。そういうことでいまのような政策の運びとなったわけでございます。  したがって、黒字になればそのときに切り上げればよかったではないかとか、そういう場合に国内の均衡はむしろとりやすかったではないかという御批判があれば、それは確かに一つの考え方であろうと思いますが、私どもはやはり安定した為替相場の維持ということを目標にして国内金融政策を運んだのでございます。
  42. 増本一彦

    ○増本委員 一月になって第一次の準備率引き上げをおやりになった。しかし、四十六年のニクソンのドル防衛政策以降ことしの二月に円をフロートさせるまでの間は、この国際収支の環境は、部分的にいろいろな変動はあったにしましても、その間の環境は大体同一の内容をずっと持ってきていたと思うのです。ですから、国際収支関係だけで引き締め策をとればなお一そう黒字をかかえ込むというようなことは、公定歩合引き上げなどの場合には当然国際的な金利も一定の低い環境にあるときに、日本だけ高い状態をとれば、これはいろいろ問題が起きるでしょうけれども、しかし一月に預金準備率引き上げを行なうというのは、これはもっと早目にその点での一つの手だてをマネーサプライの収縮に向けてとるべきでなかったのかというように私は考えるわけです。その点では、一つはマネーサプライを収縮していくための手だてがおくれていたのじゃないか。もっと早目に金融環境をそういう面で収縮させていく方向をとれば、今日のような過熱は防げたのではないか。だから、最初にとる段階がおそ過ぎたために、かえって大きな波をかぶって、これが第二次、第三次とますます深刻な状況を呈してくるようになるというようなふうにも考えられるわけですが、その点については総裁いかがなんでしょうか。
  43. 佐々木直

    佐々木参考人 おととしの暮れワシントンのスミソニアンできまりました新しい平価、これが実はわずか半年あまりしかもたなかったわけでございます。それは昨年の六月にイギリスのポンドがフロートするという形で新しい不安定な要素が加わってまいりました。それからあとの国際通貨問題というのはやはりいろいろな意味で非常に不安定が続いております。いまから振り返ってみますと、もうあのころから日本の中におきましても、いわゆるリーズ・アンド・ラッグズ、輸出を急ぎ輸入の繰り延べということがすでに始まっておりました。三百八円という新しい日本の円の相場もだんだん上がってまいりまして、三百一円というような二・二五の幅の一番上まで円が上がってしまっておったような状況であります。  私どもとしては、金融政策を実行いたします上で、円についてのいろいろな問題、波乱、そういうものをひき起こす危険を常に一方において感じながら問題を考えておった状態でございます。したがって、ただいま御指摘のように、準備率引き上げならばもっと早くやれたのではないかというお考えもあろうかと思いますけれども、私どもとしては、預金準備率引き上げも、これが金融引き締めの具体的な政策である以上、やはりあのときの国際通貨情勢ではなかなか踏み切ることがむずかしかった、こういう実情でございます。
  44. 増本一彦

    ○増本委員 そうしますと、先ほど来、今日の悪性インフレの状態について総裁としても非常に遺憾であるという趣旨のことをおっしゃっていますけれども、それはどういうところからおっしゃっておられるのか。総裁の現時点での反省的な立場に立った見解をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  45. 佐々木直

    佐々木参考人 御質問の趣旨がちょっと私にわかりかねますが、現実のいまの物価上昇を私として非常に遺憾に考えておりまして、そのためには日本銀行としてできますことをできるだけ十分にやってまいりたいというふうな考え方は持っております。  ただ、そういう考え方を持っておりながら、いままでにやった政策がはたして適当であったかどうかという御質問でございますれば、それは私どもとしてはそのときそのときの判断としては最善を尽くしてきたつもりでございます。しかしながら、あとになりまして、はたしてそれが全部完全であったかどうかという点については、私どもとしても十分反省も必要でありましょうし、いろいろの御意見も伺わなければならない、こう考えておるところでございます。
  46. 増本一彦

    ○増本委員 私どもは、今日のような状態をつくったのは、やはり日銀を中心とする信用膨張、これがインフレを招き、今日の深刻な事態になっているというように考えるわけですが、先ほど来から指摘されていますように、日銀の使命は通貨価値の安定と維持である。しかし、すでに二回の準備率引き上げをしてもなお総裁もおっしゃっているように、卸売り物価は前月比で〇・七%、前年同期比で一二・一%、消費者物価も一一・六%というぐあいに非常に上がっているし、民間設備投資も一億円以上の企業経済企画庁の見込みでいっても一七・三%だ。なぜこのようなインフレと高度成長が続くのかという点で、日銀大蔵省銀行局の統計などから見ましても、まだ日銀の信用供与の増大が依然として続いている。  一方で今度また第三次の預金準備率引き上げをおやりになっても、そして流通通貨の還流を一方ではかっていらっしゃっても、他方で四八年の一−三月のマネーサプライは八十五兆三千四百六十二億円、前年同期比でも二五・一%とさらにまたふえているわけですね。その上いろいろ数字をいただきますと、割引手形や貸し付け金、買い入れ手形、国債の売り戻しや債券買い入れというような形で、この三月三十一日、四月三十日、五月三十一日とここのところ、ことしに入ってからも、やはり一方でこういう形で金融市場にお金を出している。  これで結局従来から続いている成長第一主義をそのままとって、大企業には資金供給を一貫して続けていかれる、こういうことになって、片方で流通通貨を還流させ、それを固定させるという準備率引き上げなどをやっても、片方でその効果を大いに減殺するどころか、そういうインフレを促進するような政策を一貫してとっておられるということだと、これは政策的にも矛盾であるし、これは効果としても多くを期待できないというようにも考えられるわけですけれども、この点については総裁はどのようにお考えになりますか。
  47. 佐々木直

    佐々木参考人 金融実情でございますが、これをちょっと御説明申し上げたいと思いますが、企業などの資金というものは、もういまさら申し上げるまでもございませんが、日本銀行が直接供給をするわけではございません。それは市中の全金融機関供給しておるわけでございます。それからもう一つ大きな資金需要者として政府というものがございます。ですから、日本銀行はこの政府と全金融機関とのいろいろの金の出し入れのしりを最後的に中央銀行として決済しておる、こういう仕組みになっておるわけでございます。したがって、金融政策を実行いたします場合でも、その金融政策、たとえば公定歩合引き上げとか預金準備率引き上げとか、これは引き締めの場合ですが、そういうことが市中の金融機関貸し出し態度を変化させなければ効果は出てこない。したがいまして、その効果が出てくるまでに時間がかかりますれば、やはりそれが具体的な資金の、たとえばいま御指摘がありましたマネーサプライの量の調整にもつながらないのでございます。そして日本銀行がどれだけの貸し出しをし、どれだけのオペレーションをするかということは、そういう民間の全金融機関の活動と政府の収支のしり、そういうもののいかんによってきまるわけでございまして、ある場合には金融引き締めがいよいよ効果を発揮いたしまして、市中銀行貸し出しの伸びが相当ダウンしても、日本銀行貸し出しがふえるという場合もあり得るわけであります。たとえば目先六月−八月には大体資金の不足が三兆円以上になる見込みでございます。したがって、日本銀行の現状をごらんになりますと、五月までこれだけたびたび金融引き締め政策を打っておるにかかわらず、六、七、八の日本銀行の信用は増加になっておる、信用の供与がふえておるという御指摘になろうかと思いますが、これはそういう季節的な政府資金需給、あるいはまた総体としての経済活動の増大からくる銀行券の増発、そういうものの最後のしりとしてそういう数字が出てきておるということを御理解いただきたいと思います。  したがいまして、いままで実行いたしました市中銀行貸し出しを押える諸方策がやがては実を結びまして、たとえば四−六の窓口規制では前年の貸し出しの増加額、都市銀行につきましては増加額の一六%減というような貸し出しの増加になっておりますので、それがやはり預金通貨の伸びには相当の影響をもたらすものと思います。したがって、少し時間はかかりますけれどもマネーサプライの増加はだんだん率が落ちてくるというふうに思っております。日本銀行貸し出し、オペレーションについては、別途の目で見ていただきたい、こう思います。
  48. 増本一彦

    ○増本委員 しかし、依然としてやはり大企業中心の経済成長のための通貨供給は続いているわけでして、ですから、日銀の通貨価値の安定維持というこういう立場に立って見ますと、物価安定という国民大衆の期待とか要求というもののこたえは何もないというようにいわざるを得ないと思うのですね。  まず第一に、マネーサプライの収縮の問題ですけれども、総裁もおっしゃいましたように、六月には一六%減らすとか、七−九月には、伝えられるところによると二〇%抑制をするとかいうようなお話もありますけれども、これはたとえば都市銀行貸し出し増加でみますと、昨年の七−九月期で二兆二百二十四億円も出しているわけですから、これを二〇%削減しても一兆六千億円の貸し出し増は確保できる、こういう勘定にもなりますね。ですからやはり依然としてマネーサプライ度を収縮させていくということにはならないで、やはりインフレそのものがそのまま続いていくということになるのではないか。  総裁も期待されている総需要抑制策の一環として、政府公共事業契約率を引き下げたという問題でも、ことしの予算を見ますと、公共事業投資で三二%去年の当初予算よりもふえているわけでして、それで五九%にしても前年比は七三%でしたから結局総額としてはふえる勘定になるのですね。だからここでもやはり経済膨張、成長が依然として続けられるということであれば、卸売り物価は上がるし、消費者物価も上がる、インフレは依然として続くという、こういう結果になって、私が最初に言ったように、歯どめにはなかなかならないのじゃないだろうかというように考えるわけです。  この点では総裁は物価ということを強くおっしゃっていますので、今後の金融政策としてさらにもう一段の強力な措置が私は必要だと思うんですね。特にマネーサプライの収縮や、それから大企業向けの貸し付け残高を減らすとかいうようなこと、こういうような点でどのようにさらに今後お考えになって対処されるか、明確にひとつお答えいただければと思います。
  49. 佐々木直

    佐々木参考人 日本経済の体質から申しまして、実は金融機関貸し出しというものはいままでずっと、必ずふえるにきまっておりました。これについていろいろな問題もあろうかと思いますが、したがって、金融引き締めの場合にできますことは、増加額を小さくするということの程度でございまして、また過去の引き締めの経験から申しますと、増加額を押えることによって相当効果はあがるものでございます。七−九の都市銀行に対する窓口規制をどうしますか、これは今月の半ば過ぎでなければきめられませんけれども、少なくとも四−六のやり方よりは少しきびしくするということは必要であろうと思います。したがって、そのきびしくのしかたにつきまして、何%がいいかというようなことは、やはりいろいろな過去の経験あるいは現実の動き、そういうものをいろいろ比較考量してきめなければなりませんが、私はここで四−六に続きました七−九の窓口規制、これはいままでやってまいりました公定歩合預金準備率、こういう操作と相まちまして、必ずマネーサプライの伸びを小さくし、物価の安定につながる、その間に日本経済の伸びの鈍化というものをはさみまして物価にも効果をあげてくるものだと考えております。  何%にするかというような点につきまして、あるいはまた窓口規制程度を何%にするかということにつきまして、あるいは今後どういう追加的な金融政策をとるかというような点につきましては、今後われわれとしては実情に合わせて判断してまいりたい、こう考えております。
  50. 増本一彦

    ○増本委員 それではまたさらに機会を見まして、このインフレ政策を抑止していく上で総裁の見解を伺いたいと思いますが、最後にひとつ横田会長にお伺いしたいのです。  市中銀行あるいは金融機関全体として一般国民大衆に対するサービスの向上につとめる、そういうためには、やはり銀行につとめている従業員がよい労働環境や労働条件のもとで働くということが非常に重要なことだと思うのですね。そこでいま私たちは、銀行についても週休二日制を採用すべきではないだろうか。それからもう一つは、現実に各支店の次長とか、支店長代理とか、こういう役付の人たちについては時間外手当がなかなか払われないような労働慣行にいまなっている。この点についても労働基準法に従って適切に是正をしていくということが、やはりよい労働環境をつくる上で非常に重要ではないだろうか、こういうように考えているわけですが、全銀協の会長として、この面での御意見と、今後の態度について一言お伺いしたいと思います。
  51. 横田郁

    横田参考人 お答えいたします。  まず最初に、週休二日制の問題でございますけれども、これは全銀協としては前向きに取り組んでいるわけでございます。御承知のように、私から申し上げるまでもなく、勤労と余暇のバランスのとれた生活ということがこれから必要になってくると思うわけで、週休二日制につきましては基本的には私は賛成でございますが、ただ、銀行業務というのは、御承知のように、公共的なサービス業でございますので、銀行が週休二日を率先して実施するということについては、やはりいろいろ問題があろうかと思いますし、またわれわれの取引先の中においても中小企業あるいは零細企業の方々は週休二日制に対して反対をなさる方も非常に多いわけでございます。そういう意味で、銀行が週休二日制を実施するにつきましては、何といっても社会的なコンセンサスが必要であろうというふうに考えておるわけです。これが前提となるわけでございまして、あとは法律上の問題で、銀行法とかいろいろ法律の改正が必要かと存じますが、そういう二つの前提が解決がつきますれば、われわれとしては進んでこの問題に取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。  これが第一の問題でございますが、次の御質問の銀行の役職者でございますか、そういう者に対して時間外勤務手当を払うべきではないかというようなお話でございます。銀行における調査役あるいはその他の名称がいろいろございますけれども、そういう役職者は、中間管理者として一応労基法四十一条の管理、監督の地位にある者に該当するというふうに考えているわけでございます。いわゆる役付者の名称は銀行によりましていろいろ異なっておるので、どれが役付者だというふうにわれわれも一概にきめかねるわけでございますけれども、これは各行がその者の所管しております事務権限というようなものを自主的に判断し、実態的に判断してきめてやっておることと思います。ですから、副長とか調査役とかいろいろ名前がございますが、どこの銀行では副長は中間管理者である、どこの銀行ではあるいは管理者でないということもあり得るので、一律に線はなかなか引きにくい。  たとえて申し上げますれば、私ども銀行では、役付者は現実に管理者として部下を持っております。そしで管理、監督の地位にございますし、また銀行の重要な証票類の認証権限を与えております。その他いろいろ現場の支店におきましては大金庫の開閉権限を持っている。あるいは出勤、退勤につきましてもそう厳格な制限を規則上設けてはおりません。また給与面でも、職務手当の形で時間外勤務手当以上のものを支給しておるわけでございまして、現在の段階では、われわれは違反をしておるというふうには考えていないわけでございます。  もちろんおっしゃるまでもなく、われわれは従業員の福祉向上ということについては日夜心を砕いておる次第でございますので、御了承いただきたいと思います。
  52. 増本一彦

    ○増本委員 時間が超過してしまって申しわけありませんが、この点では、すでに大蔵省銀行局のほうでは、労働基準監督署の指示に従ってその基準を順守せよということで指導をしているという答弁がありますし、大蔵大臣も政治的にこの問題はきちっと判断をしてやらなければならないというように言われているのですが、具体例としては、結局各支店の支店総括次長を除く次長以下の役職者については、これは労働基準法三十二条に基づいて時間外手当を払うようにしなければならないというのが一応労働基準監督署で出している方針なんですが、こういう大蔵省やその他の通達あるいは労働基準監督署の方針に即応して、業界全体としても労働問題について指導なさったり監督なさったり、そういう方向でやっていくようになるかどうか、最後に一点確認して終わりたいと思います。
  53. 横田郁

    横田参考人 私、ただいまお答え申し上げましたように、現在の段階で、労基法四十一条から見まして中間監督者ということで職務手当を支給し、時間外勤務手当を支給いたしておりませんけれども、そういう事実あるいはそういう規定あるいはそういう通牒があるといたしますれば、その方針にのっとって今後検討を進め、できるだけ当局の方針に沿うようにいたしたい、こういうふうに考えます。
  54. 増本一彦

    ○増本委員 終わります。
  55. 木村武千代

    ○木村(武千代)委員長代理 広沢直樹君。
  56. 広沢直樹

    ○広沢委員 日銀総裁に、非常に短い時間でありますので、いろいろの問題を聞きたいのですが、端的にお伺いしたいと思います。  まず、けさの新聞を見まして、先ほどお話がありましたけれども、ごらんになったと思いますが、「政策転換、進言へ」という大きな文字が出ているわけですね。それと同時に、「公共料金、抑えよ」こういった問題についても進言なさるというような記事が出ているわけです。私はしごく当然のことだろうと思うのですけれども最初質問なさった方に、私は政策転換と言ったことは覚えはない、こういうふうなお話でありましたので、その内容についてもう一ぺん私お伺いしておきたいと思うのですが、まず第一に、いまの総需要抑制のためには金融政策だけではいけない。これは当然のことだと思うのですけれども、その中で、公共投資の年度を越える繰り越し、それからもう一つは国債発行の予定額の削減、それから国鉄など公共料金の値上げを抑制する、こういった進言をなさるという記事が出ているわけです。したがって、これが政策転換であるかどうかという意味合いは、取り方によっていろいろあろうかと思うのですけれども最初に、政策転換を私は言った覚えはないというお話でありましたので、私はいまあげた三点は、今日の情勢下においてはしごく当然のことだろうと思うのです。したがって、その点についてどういうふうにお考えになっているか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  57. 佐々木直

    佐々木参考人 御承知のように、昨日の委員会の私の発言はすべて質問に対するお答えとして出ておるわけでございます。したがって、いま御指摘のありましたような点についても、金融政策以外に、たとえば財政の問題についてこういうことの必要はないかというようなことについて私の意見を申し述べました。政策の転換ということばは、私、あの新聞を読みましたけれども、内容とあの見出しがどれだけつながっておるのか実はよくわからないのです。  私が申しましたことは、先ほども申しましたように、やはり金融引き締めに相応じて財政の面でもいろいろ考えてもらいたい。しかしながら、政府はまず年度内における支出の繰り下げ等を発表された。それでこれにつきまして、年度を越した調整が要るのではないかというお話に対して、そういう考え方もあろうけれども、まだ年度が始まったばかりであって、ここで年度の総体の数字をすぐいじくるということはまだその時期ではないだろう。しかし、今後だんだん時期がたってそういう必要がもしあると認められれば、そういうときにはぜひ考えてほしいというふうな言い方をいたしました。  それから国債発行につきましても、いま四月、五月の金融緩和期に大幅に国債の発行を増加しておられます。これは金融調整の上から見ましても非常に適当なことであろうかと思いますが、これはそういうような金融の季節的な繁閑に対する対策でございまして、総体としての国債発行額というものは今後のいろいろな財政収支その他から考えればあるいは国債の発行額を減らすことができる場合もあり得ると思います。しかし、これもまた年度の初めで、まだ見当がつく問題ではございません。したがって、やがて時間がたちまして、そういう実情がはっきりしてまいりましたときには、やはり考えてほしいということを申したような次第でございます。  それから公共料金の問題につきましても、いろいろ具体的な政府に対する注文を並べて、これはどうかこれはどうかという御質問がございました中で、公共料金の問題につきまして、私はできるだけこれの引き上げについては押えてほしいというふうな希望を申し述べました。  いずれもそういうような形で私が申したのでございまして、国会における質問に対する答えというふうに御理解をいただきたいと思うのでございます。
  58. 広沢直樹

    ○広沢委員 いずれにいたしましても、いま非常に物価が高騰いたしまして国民生活は圧迫されているわけです。したがって、この景気過熱を防ぎ、また異常な物価抑制するために預金準備率引き上げる、また公定歩合を二次にわたって引き上げる、また窓口規制強化する、こういった総需要抑制に本格的に取り組む、これは私もしごく当然のことだろうと思うのです。しかしながら、今回の引き締め中小金融機関にまで、預金準備率の問題にしましても引き上げるといういまだかってない引き締めの方向をとっております。     〔木村(武千代)委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、こういう総体的な引き締めをする場合は、先ほどからいろいろ質問がありましたように、それぞれ中小企業におきまして、あるいはまたいま住宅ローンお話もありましたけれども、そういう福祉関係につながる住宅ローンの問題についても、やはり重大な影響が出てくるわけですね。したがって、こういう総需要抑制をしなければならない原因というものを的確につかんで対処していかなければならないのじゃないかと私は思うわけです。  そこで、その原因をどのように把握された上で総需要抑制を行なっておられるのか、その点についてお伺いしたいと思うのですが、一年前に——ちょうど一年前になるわけですが、昨年の六月までは、要するに公定歩合を五回にわたって引き下げておりますし、それから国際収支黒字幅の増大に伴って外為会計の払い超ということも一つ問題になっておりましたし、また昨年の六月には預貸金利の引き下げを行なって、いわゆる超金融緩和を行なっておった。こういう事情から、企業の手元流動性も相当厚くなってきた、こういう問題があったわけです。そしてまた公共投資拡大のために建設国債を今度大幅に発行しているわけでありますが、それに伴って財政拡大している。  こういうような問題があって、国際収支関係からしますと、輸出抑制して輸入を促進する、まあ内需を拡大するというような政策をとっておるわけで、国内需要拡大させる、いわゆる需要先行型の経済政策をいまとっているわけじゃないかと思うのです。  したがって、そういう関係から、いわゆる株式にしてもあるいは土地にしても、あるいは商品にしても、そういったところに投機問題が起こってきた。それが今日の異常な物価高という原因にもなってきていると考えておるわけでありますけれども、総裁としては、総需要抑制をこれから本格的に行なっていくという段階にあって、その原因というものをどういうように把握されておるのか、これも簡単にお答えいただきたい。
  59. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいま原因というふうなことばをお使いになりましたが、総需要抑制をしなければならない理由がどこにあるかという御趣旨であろうかと思うのでありますが、確かに、お話しのように、昨年の半ばまでは金融は緩和を続けておりました。政策としても緩和政策をとりましたし、実態もまた緩和の方向で来ておりました。このときにはわれわれとして、ただいまお話がありましたように、国際収支の非常に大幅な黒字、これが国際的にも問題をいろいろ起こしておりますし、国内的にも外為会計の払い超過が非常に増大するという形で問題を起こしておるということから、緩和政策による経済活動が再び活発になることが問題の根本的な解決になろうということでやってまいったわけでございます。その結果が国際収支の面である程度出てくるころには物価が上がってしまったということが現実の問題。ですから、ここであまりに国際収支にこだわり過ぎて緩和政策を追い過ぎたんではないかという御批判があろうかと思うので孝ありますが、私どもとしては、さっきもちょっと申し上げましたように、去年の六月にまたポンドがフロートして国際通貨問題が相当ごたごたして、国内の為替市場における円もぎりぎり一ぱい上がるというような事態でございましたので、国内引き締め政策に転ずるということをどうしてもちゅうちょせざるを得なかったのが現実でございます。  しかしながら、その後におきましての物価上昇があまりに激しいということから、第一次の一月の預金準備率引き上げを決定いたしました。さらに二月に、御承知のようにドルの切り下げがあり、円がフロートするということで、円が一六%以上も上がるという事態が起こりましたけれども、それ以後はわりあいに為替市場が安定してまいりまして、小康状態を得てまいりましたのと、それから依然として物価が上がっているということで、そこではっきり金融引き締めの態度を打ち出すことができるようになったというふうに御理解をいただきたい。  それで、なぜ総需要抑制ということにねらいをつけたかという点でございますが、これはいまの物資需給の緊迫化というものは、生産があまりに小さ過ぎる。生産の伸びが不足であるという面よりも、需要があまりに急増しているということからきているという判断でございます。  たとえば例を鉄鋼にとりますと、鉄鋼というものはわりあいに設備の余裕を持っておりまして、最近の鉄鋼の生産は前年同期に比較して二五%近く増加をいたしております。生産を二五%近くもふやしてなお需給が窮屈であるという場合は、これはもっと生産しょうというよりは、やはり需要を押えるということのほうが正当ではないか。  そういう意味で、総需要抑制が現在の金融政策の目標であり、ここにこそ物価上昇をとめる一番のポイントがある、こう考えて決定した次第でございます。
  60. 広沢直樹

    ○広沢委員 予算編成のときに、いわゆるトリレンマということをよくいわれました。いわゆる国際収支の均衡の問題と物価の問題、それから福祉への財政の問題、こういうことがあったのですが、国際収支の問題については、最近若干減少という傾向をとっておるわけですね。財政の問題については、契約を年度内の上半期を後半に繰り延べる、こういうことで対処しようとしているわけですが、結局物価に対しては具体的な政策ということが行なわれない。むしろいま総裁もおっしゃったように、いわゆる国際収支の面に力が入り過ぎたんじゃないかといいますか、トリレンマといわれた中のいわゆる一番問題点であった物価の問題、ここにしわ寄せがきたみたいな状況になってきているわけですね。したがって、それに対しての総需要抑制、これは当然だと私は思うのです。  そこで、先ほどからいろいろお話がありましたけれども、いまの、こういう本格的な引き締めを行なった場合に物価抑制にどれだけの効果があがるかという問題ですね。これはいまもお話があったように、金融政策だけでは十分な効果があがらないということは当然のことだと思うので、本格的に引き締めに入った今日、先ほど冒頭に申し上げましたように、財政のあり方というものはどうあるべきなのか、これは当然進言もし、金融当局としては、こちらではこれだけの施策を打つかわりに、これだけはこうやっていかなければならぬというそういう財政金融にわたる両輪といいますか、それがきちっと行なわれなければ、これは効果が出てこない問題だと思います。したがって、今後の動向によってはこれからさらに引き締めるという方向を考えるのか、その点簡単にお答えいただきたい。  次に、時間がありませんので続いてお伺いしますけれども、一つは、いまこういう本格的な引き締めの段階に入っているわけですが、下期においてはそれが不況になるのではないかという話もぼつぼつ出かかっているわけですね。そういう点の見通しはどういうふうに立てておられるのか、その点をひとつお伺いしておきたいと思います。
  61. 佐々木直

    佐々木参考人 物価への影響がいつごろ出てくるかということでございますが、それは私は必ず出てくると信じておりますけれども、その時期がいつになるかはいまのところ私もはっきり自信を持って申し上げかねます。  それから、不況が起こるかどうかという問題でございます。これは実はことしの年初、預金準備率引き上げたときからオーバーキルとかいろいろなことばが使われまして、秋以後には不況が来るのではないかというようなお話があったことは事実でございますが、その後のいろいろな経過を見てまいりまして、だんだんそういう不況が来るのではないか、年内に不況が来るのではないかという見方は減っているようでございます、ただしかし、最近のいわゆる瞬間風速では、経済成長率が非常に高いわけですから、これをある程度穏やかなものにしていくためには、後半で経済成長率がいまよりも伸びが小さくなることは当然でございます。小さくなることが不況だと言われればまた別でございますが、私はそれは不況ということばが使われるような小ささではない、そういうふうに考えております。  今後の政策を機動的にやるかどうかという問題でございますが、これは申し方がなかなかむずかしいのでございますけれども、冒頭に私が陳述いたしましたように、政策はもちろん機動的にやることが特に金融政策は必要でございまして、われわれはそういう意味で、ある手を打ちましたらそれ以後は何にもしないんだという態度はとるべきではございません。しかしながら、何と申しましても公定歩合預金準備率引き上げを一週間前にやったばかりでございますので、いまのこの段階ですぐ次の手をどうということではございません。金融政策効果の見届けということもやはり必要でございますから、そういう点については十分時間をかけて見てまいりたい、こう思っております。
  62. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間がありませんので、もう一、二点お伺いして終わりにしたいと思います。  予算の執行にあたって、大蔵大臣は財政演説を国会でなさるわけですが、そのときには、財政金融政策を適宜に適切に運営して経済の安定をはかる、こういうふうにいつもおっしゃるわけです。つまり、予算が年々相当拡大してくるわけですから、これに対してはやはり経済が過熱するおそれがあるから、金融引き締めてもらいたいということをそれとの調節の関係で言っておられると思うのですけれども、今日までの状況をずっと見ておりますと、また一年間の状況を見ておりますと、どうも財政金融政策というものの本質というのは、いわば財政のしりぬぐいと言ったら語弊がありますけれども、いわゆる後手に回っているようにどうにも感じられてならないわけですね。そういう意味からではありませんが、四十八年度予算にあたって、総裁は、これも私は新聞で見たわけですけれども、やはり四十八年度予算の大型化については、記者会見でいわゆる批判的な御発言をなさっておった。これは景気動向の上からであろうと思いますが、そういう点から考えてみましても、いまそういうふうな感じにとれるわけです。  そこで、これは時間がありませんので、基本的な問題はまた後日に譲ることといたしますけれども、いわゆる政府日銀関係、これは日銀法の改正の問題に若干入りますけれども、この関係の中立性の論議が三十五年の金融制度調査会の答申の中にも大体中心になって出ているようですね。総体的には総裁も日銀法は全面的に改正すべきではないか、こういうふうにおっしゃっておられるわけです。やはり私はここにもう少し明確にしていく意味においては、これは金融当局としての中央銀行のあり方というものをここにはっきりしていかなければならない時期が来ているのではないか、こう思うわけですね。  先ほどその点に関してはちょっと消極的な御意見を述べておられたように思うのですけれども、確かに去る三月の本会議におけるこの問題に対するわが党の質問に対しても、大蔵大臣は、適切に行なわれておるので取り急ぎそういう改正の必要はない、こういうような答弁をなさっていらっしゃるわけですけれども先ほどから申し上げたような状況から考えてみますと、これは当然考えていかなければならない問題じゃないだろうか、こう思うわけです。それと同時に相当な期間が必要だという問題もあるでしょうけれども、しかし三年前からこの論議を始めて、三十五年に答申が出て、もう十何年たっているわけですね。ですから、そういったことから考えてみましても、当然こういった問題にいま触れるべきじゃないかと思うのですが、その点はどのように考えていらっしゃるでしょうか。
  63. 佐々木直

    佐々木参考人 日本銀行法改正の問題は、この前たしかこの委員会で話がございました。私はあの法律が制定されました経緯から考えて、機会があればなるべく早く改正されることが適当であろうというふうに御答弁申し上げました。戦後間もなく日本銀行法改正の問題が出ておりますが、たびたび議論されておりますけれども、なかなか現実に改正まではまいっておりません。それは問題が非常にむずかしいせいだと思います。昭和三十五年の金融制度調査会の改正案がA案とB案併記の形で出ておりますことも非常にその問題のむずかしさを物語っておると思います。したがいまして、それだけむずかしい問題でございますので、改正の必要は感ぜられましてもそれが現実になかなか解決を見ていない。さりとてわれわれとしては改正への意欲を捨ててはいけないと思います。したがって機会がありますればなるべく早く金融制度調査会にかけまして、十分検討されて、原案をつくるという方向にいっていただきたいと思います。しかしこれは関係者も多いことでございますし、政府の提出でございますから、いろいろ政府の都合もあろうと思いますが、私としてはそういうふうに希望いたしております。  ただ、いまの法律というものも、これは非常に大事なことでございますが、中央銀行の場合などはその運用も非常に大事だと思います。大臣が言われましたことは、いまの法律でもその運用のよろしきを得れば何とか現実にやっていけるのだという御趣旨だったと思います。現実に私どもいまの法律で法律上非常な障害が起こって困っていろということはございません。中立性の問題におきましても、これはやはり運用が大事、人間が大事なことでございまして、そういう意味で現実はいまの法律のもとで十分役割りを果たしておるということを申し上げておきたいと思います。
  64. 広沢直樹

    ○広沢委員 最後に、横田参考人にひとつお伺いしたいと思うのですが、先ほどお話の中で、いわゆる今回の総需要抑制の中でも特に住宅ローンについては国民の要請にこたえたい。それからまた企業金融の中でも公害だとかあるいは省力化、中小企業の問題等も含めて、これに対しては最優先に考えていきたい。しごく当然であって、私もその主張には大賛成なんですけれども、しかしどうしてもこういうような総需要抑制をしていかなければならぬ、そしてこれが都市銀行だけじゃなくて中小企業金融機関にまで今回はそういうふうな引き締め影響というものを出していこうということになりますと、やはりどうしてもこういった問題には頭打ちになってくると思われます。  さらに総需要抑制するという側から考えてみると、いま言うように企業金融の問題にしても、福祉につながる住宅ローンの問題にしても、これだけを特に別に考えるということになりますと、はたしてその効果がどの程度あらわれてくるかという矛盾もあらわれてくるのじゃないかと思うのですね。したがって総需要抑制という中でやはり具体的に、先ほども私ちょっと触れましたけれども、今回のこういう異常事態が起こっている原因というものをはっきりして、その原因に適切な引き締めというものをやっていく、こういうことでなければならないと思うのです。  そういう点の考え方をどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。日銀総裁にもちょっと関連いたしますので、いま言うような住宅ローンの問題だとかあるいは企業金融の中でも特に国民生活に関係のあります公害問題あるいは中小企業の問題にある省力化の問題だとか、中小企業の育成の問題だとか、こういった問題には特別に配慮するということは当然だと私は主張しているわけですけれども、そういうことになると、総需要抑制関係効果というものはどういうふうに考えておられるのか、この点をお伺いして、終わりにいたしたいと思います。
  65. 横田郁

    横田参考人 お答えいたします。  総需要抑制の見地から、現在、先ほどお話が出ておりますように、非常に強力な引き締め政策がとられておるわけでございます。したがいまして、都市銀行といたしましては、貸し出しのワクが四半期ごとに査定されまして、その範囲内で貸し出しを実施するということになっております。したがいまして、中小企業金融といい、公害防止産業への金融といいあるいは住宅貸し付けといい、いずれもそのワク内でまかなわなければならない次第でございます。したがいまして、総需要抑制を目的とした金融引き締め影響は、すべての融資について影響があるわけでございますが、その中でできるだけ国民の福祉につながるそういった住宅ローンとかあるいはまた公害防止とか、そういった融資については優先的に取り上げていきたい、こういうふうに考えておるわけで、大企業は、幸いと申しますか、やや手元流動性も高いようでございますししますので、もう真に必要やむを得ない資金、たとえば大企業公害防止というような資金とか、そういうものについては優先的に取り扱いますけれど、その他の経済成長を目的とした設備投資、そういうものは極力押えてまいりたいというふうに考えております。  また、住宅ローンにつきましても、できるだけ選別を強化いたしまして、必要、緊要なものに限る。たとえて申しますれば、従来の金融緩和期にあったときは、別荘とかあるいはセカンドハウスの取得にも住宅ローンがついたわけでございますけれども、これからはそういうものは押えてまいりたい、こういうふうに考えております。  なお、中小企業金融については、日銀、大蔵、両当局の御指示にもございますし、われわれ自身としましても、できるだけ考慮を払ってまいりたい。中小企業金融の比率も、ここ数年来だんだんと上がっておりまして、三、四年前に比べますと五%ぐらい上がっておるわけでございます。そういう態度で臨みたいというふうに考えております。
  66. 佐々木直

    佐々木参考人 都市銀行に対して相当強い窓口指導をやっておりまして、貸し出しの増加額も前年同期に比べまして、減少ということになっておりますけれども、何といいましても比べるもと、前年同期の貸し出し増加額は相当大きいわけでございます。したがいまして、これをある程度削減いたしましても、ただいま御指摘がございましたような公害防止投資あるいはまた省力化の投資というものあるいは住宅ローン等、民生に直結した資金供給、そういうものにはそれほど差しつかえが生じるとは私は思いません。その範囲内で十分やりくりがつくものと思います。  ただ、ただいま会長から御指摘もありましたが、同じ住宅ローンと申しましてもほんとうに個人の住宅、そういうものであることを確認するような調整は、やはり総体の金融引き締めの中で必要であろう、こういうふうに考えております。
  67. 広沢直樹

    ○広沢委員 いずれにしましても、こういう総体引き締めを行なう場合においては、いわゆる中小企業の問題だとか福祉の問題だとかというものにしわ寄せが来やすいわけでありますから、特にこの点御配慮いただくように御要望申し上げまして質問を終わります。
  68. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、竹本君。
  69. 竹本孫一

    ○竹本委員 両参考人お疲れのところだけれども、二、三の質問をひとつさしていただきたいと思います。  まず第一は、銀行は少しもうけ過ぎはしないかということなんですが、言いにくいことかもしれませんけれども、一応お尋ねしてみたい。と申しますのは、配当については一〇%あるいは一二%ということに大体自粛をしているといいますか、これはやはり銀行の公的な性格を十分考慮してそういうことになっているのだろうと思うのです。  かつて電力の国営をやろうとしたときに、国営電力はどのくらいの利益をあげたらいいだろうかということで、当時企画院であったか、議論をしたことがありますが、その席である先輩が、こういう会社は利益をあげてはいけないのだ、利益をあげるということは幹部が無能だということだ。というのは、これは独占的な力を持っているのですから、あげようと思えば幾らでも、電気料金を上げさえすれば利益はあがる。しかしそれをあげないで、しかも社会、国民経済の要請にこたえるというところに幹部の責任なり腕があるわけだから、独占的な力を持った会社の利益が多いということは、誇るべきことではなくて、恥ずべきことである、こういう意見を述べられた。  これは私は非常にいまだに印象に残っておる問題でございますが、銀行の利益もそういう意味からいうならば、利益がたくさんあがったということは誇るべきことであるか、悲しむべきことであるか、あるいは慎むべきことであるかということについて、一体どういうふうに考えたらいいのであろうか。  次に具体的に、巷間伝えるところによりますと、三月期の決算でも、第一の銀行は二百九十五億円くらい、第二の銀行は二百七十九億、第三の銀行は二百六十七億、第四の銀行は二百六十四億、第五の銀行は二百十億というような利益があるというように伝えておる。これにつきましては、あらためてまた銀行局長に具体的な数字を出してもらいたいと思いますから、ひとつ用意をしておいてもらいたいと思うが、いずれにいたしましても、半期二百億をこすといったような利益は少し多過ぎはしないか。  なお試みに私はちょっと計算をしてみたのだけれども、あるMという銀行が百七十九億円の利益をあげておる。そこでNという鉄鋼の製造関係のある会社が同じく百七十九億円の利益をあげておる。ところが従業員を見ると、一方は一万一千人で、一方は四万二千人である。すなわち四倍の人が汗水流して鉄鋼の工場で働いてあげている利益と、一万の人が絹のハンカチ、絹の手袋というわけじゃないでしょうけれども、右と左に金を回すことによってあげている利益が同じであるということは一体どうだろう。やはり額に汗して働く者の立場も考えながら、銀行というものは、そのおさめる利益というものについて高度の配慮があってしかるべきではないか、そういう点で、いまの銀行の利益がふえることは、ある意味においてはけっこうですが、いま私が申したように、ある意味からいえばこれはおそるべきことであり、悲しむべきことであるかもしれぬと思うが、両参考人は一般的にどういうふうにお考えになるか、ちょっと伺っておきたい。
  70. 佐々木直

    佐々木参考人 金融機関の利益が増大しておりますことの背後には、総体としての資金量が非常に急速に伸びているということがあろうと思います。それでまたその裏には経済拡大が非常に速い、それからまた、先ほどからいろいろ議論になっております外為会計の払い超過などを中心に、国内の流動性が非常に増大した、こういうことが働いておると思います。したがいまして、いまのような状態が普通だとは私、考えておりません。こういう事態はやがてそのうちに変わってくるのだというふうに思っております。  ただ問題は、引き締めをやりますと金利が上がります。その金利が上がったことが金融機関の利益の増大につながるのじゃないか、こういう御指摘がよくあるのです。確かにそれは事実としてあるとは思いますが、問題は預金金利との関連をどの程度の連動性で考えるかという、これはまた違う角度からの検討が必要な問題でありまして、そういう意味からいいまして、もちろん今後貸し出し金利がたびたび上がるということになりますと、当然預金金利の引き上げも課題になって上がってくると思います。そういう意味からいいまして今後の金融機関の収益がどういうふうになるか、これは相当変化が予想され得るものだと思っております。したがって、いまのこういう事態を銀行の経営者がいいと思うか悪いと思うか、この点についてはいろいろ見方があろうと思うので、私から特にその点申し上げる意見を持っておりませんが、そののちに、私はいまの事態がいつまでも続くものではない、変化が起こり得るというふうに考えております。
  71. 横田郁

    横田参考人 御指摘のように、たいへん銀行の利益が巨額に絶対額がのぼっておるということでございます。しかし、ただいま日銀総裁からお話もございましたように、使用総資本に対する利益率ということが一つの利益の目安になると思うのですが、そういう利益率を比べてみますと銀行はいろいろの産業の中で一番低い。  具体的に申し上げますと、昭和四十七年の下期の確定数字がまだ公表されておりませんので上期の計数で申し上げますと、対使用総資本利益率では都市銀行が〇・四一%、それから地方銀行が〇・五八%でございます。これに対しまして製造業平均が三・四二%とけた違いに上でございます。また卸売り業でさえ一・一九%となっているわけでございますので、都市銀行の利益は一見非常に大きく見えるのでございますが、利益率ではほかの産業の水準をかなり下回っているということが言えるかと思います。  それと同時に、銀行の公共的性格から申しまして、銀行経済の、まあ潜越な申し方かもしれませんが、人体で言えば血液あるいは血管のような仕事をしているわけでございますので、これが混乱をいたしますと経済に大きく影響を与えることになるわけでございますので、銀行の安定的成長ということは経済の発展にとってどうしても必要であろうと私は思っているわけでございまして、そういった意味で大蔵当局からの御指導もあって、銀行の利益は大体平準化されてきておるわけでございます。  それからその利益は他産業のように自由にこれを処分できるわけではなくて、配当も先ほどおっしゃいましたように制限がございます。従業員の給与あるいはまた役員の給与についても監督ということではございませんが届け出もすることもございますし、決してむだに社外流出をしているわけではなくて、これを社内に蓄積をいたしておるわけでございます。その社内に蓄積した資金は、無利息資金として運用されているわけでございまして、これがコストの低下に大きく役立っているわけでございます。これがあって初めてコストの低下が、ほかにも要因がございますけれどもできるわけで、それによって高い金利の預金をつくることもでき、貸し出しレートを上げないようにすることも、もちろん金融政策によって貸し出しレートは上下いたしますけれども、できるだけ低利に押えるということができるわけでございますので、この点はちょっと他産業と異なった面がございます。われわれは決して利益の高をいたずらに誇るわけではございませんので、御了承を願います。
  72. 竹本孫一

    ○竹本委員 利益率の問題については、いろいろまた議論のしかたがあろうかと思いますから、時間もありませんからこれはやめまして次の問題に入りますが、公定歩合が上がれば、これは先ほど来御議論がありましたように貸し出し金利が上がる、そうすると、預金金利も引き上げる余地が出るということについては疑いないと思うのですけれども、これを引き上げるか引き上げないかはだれがきめるかということを一つ伺いたいし、それからアメリカあたりではそういう場合には、ある意味において自由競争原理を生かして、AならAという会社が金利を上げる、そうすると上げないところの預金がそちらへ流れてしまうというような意味で牽制されて全体に上げざるを得なくなる、下げる場合についても同様である、すなわち自由競争原理が金融機関の場合にも生かされておるというふうに思うのですけれども日本ではどうなるのか。少なくとも日本では、これは経済全体でございますけれども、自由主義経済の悪いところと統制の悪いところとだけをあわせ持っているような体質に日本経済はなりつつあるというのが私の意見ですが、金融のそういうメカニズムの中に自由競争原理は生かされるのであるか生かされないでおるのであるか、その点についてひとつ横田先生から簡単でけっこうですから……。
  73. 横田郁

    横田参考人 預金金利の問題につきましては、やはりこれはたしか大蔵大臣の発議によりまして……
  74. 佐々木直

    佐々木参考人 これはなんでしたら私から説明してもよろしゅうございます。
  75. 鴨田宗一

    鴨田委員長 では佐々木参考人から説明してもらいましょう。
  76. 佐々木直

    佐々木参考人 いまの日本の制度では、預金金利の変動、動かします場合は大蔵大臣が発議いたしまして、発議と申しますのは、日本銀行政策委員会に対して預金金利について考えろという発議がございまして、政策委員会はそれを受けまして金利調整審議会というのがございますが、その審議会に諮問いたしまして、その審議会の諮問を受け政策委員会で決定する、こういうことになっております。  ごく簡単になぜこういうことになっているかを御説明申し上げますと、預金利子協定というのが終戦後占領軍によりまして独占禁止法にひっかかるのだということがございまして、したがって、その疑いを排除いたしますために政府が関与して動かすということになっておるのでございます。
  77. 竹本孫一

    ○竹本委員 まあ私のほうから結論を言いますが、日本ではそういうことのメカニズムの関係もありまして、よき意味の預金の金利を引き上げるとかあるいは貸し出しの金利を下げるとかいう競争がある意味においてできない。自由競争原理のいいところがわりに生かされていないのではないかと思うのです。これはあらためて議論もし、大蔵大臣との間で論議を深めてまいりましょう。  そこで、もう一つの質問をしたいのですけれども佐々木さんのほうでは、先ほど来も御議論があったようですけれども、私は日本経済は、いつも言うていることですけれども、上りばかりですね。高度成長ばかり。大体東京でも坂には上りもあれば下りもあると思うのですが、日本経済は上り一本やりで、下りは最近はあまりない。そのことがいいか悪いかということが大きな政策的な判断の問題になると思うのです。アメリカのある人は日本の高度成長にびっくりしちゃって、このままどんどん伸びていったらどうなるか、天井まで行ったら頭打ちだから今度は横ばいになるだろうと思ったら、驚いたことに日本経済は天井を突き抜けて上に出ちゃったと言うて批評をした人がおるが、いま天井を突き抜けて上に行ったために嵐が吹いてたいへんなことになっていると思うのだが、どうも日本経済にはそういう意味で節度が足りないと私は思うのです。  この前、ここでも言ったのですが、愛知さんがIMFの総会に行って基調演説をやって、節度を守れと言ったというので私は驚いておるのです。一番節度を守らない人が節度を守れという演説をするというのはどういうわけか私にはわからないのですが、それにしても日本経済全体に節度がない。第一に財政は毎年二〇%以上、二四・六%伸びているでしょう。ところが中央財政だけではないのだ、財投だって七兆円あるでしょう。合わせれば二十一兆円。地方財政が十四兆円とすれば三十五兆円ですよ。そんなにどんどん財政需要を伸ばしておいて、そして日本経済に節度を守れ、物価は上がり過ぎて困りましたと言ったって、それで物価が上がらなかったらおかしいでしょう。上がるのがあたりまえじゃないか。そういう経済運営をやっている。これは大蔵大臣の責任で、日銀総裁の責任じゃないと思うのですがね。政府の責任でしょう、大体経済がろくにわかりもしない者が調整インフレなんといって、とんでもないことを言うて、ああいうばかなことをやったんだから。これは政府の予算委員会における問題ですから、ここでは言いません。しかしそれに調子を合わせたというか、あるいは協力をなさってというのか、日銀も通貨増発二八%というようなことになる。これは前回申し上げたから申し上げませんが、二〇%以上日本日銀券を増発するというのは、ぼくはどう考えたってアブノーマルだと思うのです。しかし、それに対して日銀総裁が切腹した話も聞かないし、大蔵大臣と激論して辞表を出したという話も聞かない。しかし、ほんとうはそのくらいのことはあってしかるべきだと思うのですよ。だから日銀法の改正とかなんとかいいますけれども、幾ら改正してみても、これはやはり日銀総裁が通貨価値を守るんだという立場で——いまも御努力いただいていることはよくわかりますよ。しかし欲をいえば、さらにさらに決意を新たにしてがんばってもらわなければ、日本のインフレというものはどうにもならない方向にどんどんいくというわけで、私は、第一に財政に節度がなければだめだ、第二には少なくとも日銀が、日銀券の増発その他金融政策において節度を守らなければいかぬと思うのですが、ひとつ総裁の決意をこの段階において、物価がこれだけ上がる、日銀券はこれだけ増発しておる、一体どういう決意を持っておられるか、決意のほどを承りたい。  あわせて横田さんにも承りたいのですが、調べてみると、去年一年間における各銀行貸し出しは大体十五兆円増ですね。これだけの金をまたばらまけば、それは中小企業の問題とか住宅ローンの問題とかいろいろありますから、需要があることは当然だけれども、それにしてもやはり経済物価等に刺激を与える意味からいえば、トータルサムが問題だと思うのですね。その財政十四兆、財投七兆、地方十四兆、日銀が二八%ふやしている、金融機関は全部で大体十五兆円ぐらい貸し出しを増加してくる、これでどんどんいけばインフレにならざるを得ないと思うが、その点は横田参考人はどういうふうに感じておられるか。  両参考人の感想なり御決意なりをちょっと承りたい。
  78. 佐々木直

    佐々木参考人 中央銀行の総裁としての決意いかんということでございます。私といたしましては、もちろん中央銀行の責任から申しまして物価をできるだけ早く安定させなければならぬ、それにつきましての責任は十分痛感しております。しかし、決意を申しましても行動のほうが大事でございまして、私がどう考えておるかということは、日本銀行が現実にやり、これからまたやるでありましょう具体的な政策の中で御判断をいただきたいと思います。
  79. 横田郁

    横田参考人 お答え申し上げます。  昨年、都市銀行の融資が相当出ておったというお話でございます。まことにそのとおりだと思います。ただ、これは先ほど来いろいろ御説明がありましたように、言いわけではございませんけれども、一昨年のニクソン・ショック、そしてさらにスミソニアン体制というようなことになりまして、景気が非常に低迷をしておったわけでございます円したがいまして、景気の浮揚策がとられまして、それに基づいて金融の緩和という現象が起きてきたわけでございます。金融の緩和という時期にあたりまして、福祉国家志向というようなこともあわせて持ち上がってきたということで、したがって資金需要がこの方面に大きく出てきたことは否定できない事実でございます。そういうわけで貸し出し住宅ローンをはじめといたしまして大きく伸びたことはおっしゃるとおりで、その間にまた銀行貸し出し競争が全く皆無であったということも言えないと思います。その点はわれわれ現在非常に反省をしている次第でございます。  しかし、一応去年の年末から引き締めに転じられて、ことしに入って強力な引き締め政策が実行されておりますので、われわれといたしましてもその実行に協力し、その引き締めが成果があがるように持ってまいらねばならぬ責務がわれわれにもあろうかと思いますので、今後は大いにこの点に戒心いたしまして、御期待に沿いたいというふうに考えておるわけでございます。
  80. 竹本孫一

    ○竹本委員 最後に日銀総裁にお伺いしたい。  物価が御承知のようにどんどん上がっていくと、預金した者がばかを見るということでわが党の議員が総裁に質問をしたことがありますが、ブラジルあたりでもやっているという話だけれども、私は十分調査しておりませんが、賃金にしてもあるいは預金にしても年金にしても、物価にスライドさせるべきであるという考え方があるわけですね。その後総裁はそういう問題について何か御検討になっておるかということが一つ。  それからもう一つは、これは総裁に申し上げるのがいいかどうか若干疑問もありますけれども、いま話しましたように去年一年で十五兆円、都市銀行でも大体七兆円ですね、それだけの貸し出しをやっておられる。もちろん銀行貸し出しをするについてはいろいろ慎重に検討されることだと思いますけれども、そうしていままではそれに対して、これはどこでどういうふうにやっておられるか、おそらく銀行が自主的にやっておられるのじゃないかと思うのだけれども、融資についての共同準則みたいなものを持っておられると思うのです。しかしそれはおもに日本経済全体がそうであったように、量的な問題が中心だと思うんですね。すなわち預貸率がどうあったらいいか悪いかというような問題、あるいはこれをやれば設備投資が過剰になりはしないかというところくらいが精一ぱいな問題だ。そういうものでは間に合わなくなった。いまは、日本経済の質的成長をやらなければならぬ、福祉国家建設だというようなことで新しい視点から問題が取り上げられておりますので、銀行の融資についても量的な観点だけでなくて質的な問題、たとえば、私、数えてみると十くらいありますが、公害の問題にしても、物価の問題にしても、研究開発の問題にしても、あるいは資源の問題にしても、またこれから外国の企業も入ってきますから、労使協議制といったような問題がやはり具体的に取り上げられなければならぬと思うのですね。  外国の資本が入ってきて、ドイツなんかは、総裁も御存じだと思いますけれども、外国の資本が入ってくることは日本が驚くほど自由にしている、しかしどうして民族産業の利益を守るかと聞いてみると、大体大事なところは労使協議制ができているから、民族の利益と合わせてそこで守ることになっていると、ドイツの社民党の連中が私に話してくれたのですが、そういうこともこれからは考えなければいかぬし、そういう制度があるかないかということもやはり融資の場合の一つのものさしになるのではないか。  そのほかいろいろと、要するに日本経済全体が質的に発展していくのだ、量より質へという転換をやるならば、銀行の融資の基準も量より質へと転換しなければいかぬ、そういう意味で従来の共同準則といったようなものを再検討して、銀行の融資そのものを、あるいは日銀のあり方もすべてが量的日本経済の発展ではなくて、質的な発展という方向に方向転換をしなければならぬと思うのですけれども、総裁のお考えを承って終わりにいたします。
  81. 佐々木直

    佐々木参考人 第一の、例の預金金利のスライドの問題でございますが、私はかねがね勤労者が自分の所得の中から将来のために貯蓄するものにつきましては、できるだけの優遇がはかられてしかるべきだというふうに考えておりました。したがいまして、先般の御質問にも、いまのような物価上昇の中で何とかそういうほうの利益を守りたいという気持ちから御返事をいたしたわけでございまして、あのときも、非常にむずかしい、スライドすることはむずかしいとは思いますが、検討しようというふうに申し上げました。その後検討いたしましたけれども、やはり物価と完全にスライドすることはなかなかむずかしゅうございます。したがいまして当面できることは、そういう勤労者の長期貯蓄というものの条件をできるだけよくしていく方向で解決すべきである、したがいまして最近出ております中期預金の問題も、金融機関が長期のものについては高い金利を払ってよろしいという考え方であるならば、それは私はとめる必要はない、ただ、金融機関相互間にいろいろ問題がございますから、その調整は十分やってほしいというふうに申し上げているわけでございます。それ以外のやり方につきましても、今後さらに勤労者の貯蓄の条件をよくすることに努力してまいりたいと思います。  それから、融資の質的な規制の問題でございますが、これは先生十分御存じのように、戦争中は非常に質的な調整をやってまいりました。臨時資金調整法というのでやってきたわけでございますが、戦後はやはり統制からの解放ということで、そういうものがみんなはずれておりまして、しかも戦後は全般的に非常に資金不足でございましたので、質的をやる余裕もないと申しますか、量的な調整で手一ぱいであったわけでございます。ところが、最近になりまして、いまの物価高の関連等で、商社あるいは不動産業に対する融資について、特殊な規制が加えられるようになりました。しかし、いまの段階では、まだそういう伸ばしてほしくないものを押えておくという、マイナスとでも申しますか。抑制のほうの質的な規制が始まっておりまして、プラスのほうに資金を流していくというふうなところにはまだまいっておりません。いまの全体の経済運営のしかた、社会的なものの考え方、そういうものからいいまして、そういう質的な統制の方向を具体的に進めていくのはなかなかむずかしいことではないかと思いますけれども、御趣旨の点はよくわかりますので、今後検討いたしたいと思います。
  82. 竹本孫一

    ○竹本委員 要望だけ申し上げて終わりにいたしますが、私が申し上げるのは質的規制ということでございまして、方法には積極的なものもあり、消極的なものもあってしかるべきだと思います。いずれにしましても、従来の量的な視点だけでなくて、質的な角度から、やはりこの段階においては融資も考えるべきであるということでございますので、両参考人においても十分検討していただくように要望申し上げまして終わります。失礼いたしました。
  83. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人には御多用のところを御出席賜わり、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  午後二時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時三十七分開議
  84. 鴨田宗一

    鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の会計、税制及び金融に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小泉純一郎君。
  85. 小泉純一郎

    ○小泉委員 大蔵大臣に御質問いたしますが、ことしに入ってから、預金準備率引き上げやまた変動相場制移行に伴う実質的な円の切り上げ、さらには公定歩合引き上げなどの一連の景気調整措置やデフレ的効果を持つ政策が現在とられております。しかし、それにもかかわらず、経済の現状というのは強いインフレ基調のもとにあると思うのです。特に従来、消費者物価上昇を続けても卸売り物価というものはまあ大体安定的であった。しかし、近ごろでは、卸売り物価までが非常に上がってきた。このことは、この高い卸売り物価というものをベースにして、さらにより一そう高い消費者物価上昇というおそれとまた不安を国民に与えていると思うのですけれども、こういうインフレ下にある日本経済展望して、財政政策の責任者であられる大蔵大臣はどういうように考えておられるか、またこれに対する決意というものを簡単にお聞かせ願いたいと思います。
  86. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 昨年末以来、物価の安定と国際収支の改善とそして福祉国家の建設と、三大目標の達成に努力を続けてまいりましたが、他の面はともかくとして、物価の問題については、依然として非常な値上がり状況が続いておりますことを、私どもとしては非常に残念に思っているわけであります。あとう限りの努力をこの上とも続けてまいりたい。そのためには、私は率直に申しまして、財政金融の面では相当ぎりぎりのところまで考え得る手を打ってまいったつもりでございます。その中身については、御承知のとおりでありますし、簡単にということですからあえて申し上げませんけれども、相当の期間、タイムラグと申しますか、これがかかることは、これだけ大きな世帯になりました以上は、ある程度の時間的なラグがあることはやむを得ないことだと思いますけれども、これから数カ月あるいは下期等にかけては、相当の効果物価面においてもあらわれてくることを期待いたしております。  なお、財政金融政策以外にも各種措置を講じておるわけで、たとえば年初には相当警戒をしておりましたが、証券市場の状況などをごらんいただきましても、これはやや鎮静といいますか、落ちつきを取り戻しておるように思われますし、あるいは地価の関係などについても漸次よい結果が出てくるのではないかと期待しておるわけであります。
  87. 小泉純一郎

    ○小泉委員 ただいま、ことしの施政方針演説ですか、三大目標というおことばがございました。国際収支の均衡というものと物価の安定、さらには福祉の充実という三大目標のうち、国際収支の均衡のほうはともかく、あとの物価抑制とか福祉の充実というのは、いわゆる福祉元年であると言った総理のことばからすれば、いまでは非常にうつろなものになってしまった。これは国民のだれもが感ずるところであると思うのです。  考えてみれば、全般的な大型予算、単なる福祉予算の膨張というものが必ずしも実際の福祉の向上につながらないということは、現時点を見ても明らかだと思います。やはり物価安定こそ福祉向上政策の最前提だと思いますが、去年の選挙前ですか、金融緩和政策、それとまたことしに入っての金融引き締め政策、いわゆる政策転換のタイミングを失したんじゃないかというような向きもずいぶんあると思いますが、いま物価上昇を押えるために総需要抑制政策というものがとられておりますが、先日、総理ですか、また橋本幹事長が、一兆円減税する、あるいは一兆二千億円減税する、所得税の課税最低限を百五十万まで引き上げるというようなことをお話しになりましたが、この点について、大蔵大臣あるいは大蔵省との密接な事前の計画なりあるいは調査なり、そういうものがあったあとの発言でしょうか。それとも単なる選挙向けの思いつきかどうか、その点について大蔵大臣はどういうふうに考えられておりますか。
  88. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 税の問題につきましては、たびたび申し上げておりますように、財政需要の見通しと相関連して歳入計画を立てるわけでございますから、財政当局として具体的な数字をまだ公表するという段取りには至っておりません。例年に先んじて、実は、数日中に内閣の税制調査会も開いていただくことにいたしておりますが、十分論議を尽くして、また来年度の財政需要、さらにはそれから以降の見通し等も踏まえて、できるだけ大規模な税制改正をやりたい、こういう意気込みでおるわけでございます。  その大づかみの考え方としては、正確にいえば増・減税と申したほうがいいかと思いますが、歳入財源を考えました場合に、相当の需要にこたえなければなりませんから、法人税等については、今国会における当委員会その他の御論議についても十分謙虚に伺って、そして税率等については私どもは、野党の御提案にもございましたが、四〇%を目途にこれを引き上げたい。それから各種の特別措置については洗い直しを十分にやりたい。その反面におきまして、やはり福祉政策ということも考え、また社会的な要請あるいは公平感あるいは物価関係等も考えまして、所得税についてはできるだけ大幅な減税をやりたい。作業の一つのめどといたしましては、標準家庭課税最低限度を百五十万円というところにめどを置きまして、具体的な方法、組み合わせなどを考えてまいりたい。それから給与所得控除制度を抜本的に改善をいたしたい、こういうふうに考えております。  その内容等から申しまして、いろいろの組み合わせがあり得ると思いますので、総額どのくらいの減税規模になるかということについては、財政当局として大ざっぱにも何千億円というような程度に申し上げるのにはまだちょっと自信がない、こういうわけでございますが、百五十万円というところに一つのめどを置きますれば、総額においても相当大幅な減税額になるというふうに考えますし、そうやりたいと考えておるわけでございまして、そういう基本的な考え方といたしましては、党のたとえば幹事長等が言っておりますことと、基本的には同様な方向を志向しておるわけでございます。
  89. 小泉純一郎

    ○小泉委員 大幅な減税、大歓迎なんですが、先ほどもらった資料におきましても、自然増収の伸びがことしでも一兆円以上ある。さらには大幅な賃上げもあって、自然増収分だけでも非常な減税ができる。しかしながら、減税大賛成なんですけれども、全般的な総需要抑制政策がとられている中で所得税の減税をした場合、個人の可処分所得というのはふえると思うのです。いわゆる購買力は高まる。そこのちょっと矛盾した政策というものはどういうふうに考えて対処していくのか。
  90. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 純粋に理論的な立場だけをとれば、今日のような状況におきまして、設備投資はもちろんですが、個人消費も非常な伸び方でございますから、こういうときにはむしろ増税をするというのが一つの考え方であろうと思います。しかし、政府としては、この年度内に増税ということはもちろん考えておりません。同時に、現在政府として志向しております最大の目標は、何とか物価の騰勢をとどめたいということに全力をあげてまいる。かたがた経済状態、特に物価情勢等が落ちつくのを見ながら、来年度において大幅な所得税減税をやるということがタイミングからいっても適当であろう、こういうふうな考え方をとっておるわけでございます。
  91. 小泉純一郎

    ○小泉委員 タイミングからしてたいへん適当であるとだれも思いますけれども、総理がああいうふうに、また幹事長、責任ある立場の人が打ち上げますと、私もまた国民も、ああいいことだ、やってもらいたいと思うわけであります。しかし、最近の総理なりの言動を見てみますと、非常なかたい決意も最後にいってはぐらぐらしてしまうというようなことがあるわけです。非常な決意、それもやはり現実の施策なり行動で示してもらわないと何もならない。いまお話を聞きますと、あまり大蔵省と総理というのは打ち合わせしていない、具体的な詰めは行なっていないというような印象を受けるのですけれども、これだけああいうように新聞に騒がれまして、またいままでのを百五十万円に引き上げる、例年十万円ぐらいのを一挙に三倍以上に引き上げる。こういうふうな大幅な所得控除の引き上げこそいま混乱期にある日本にとって国民は望んでいると思うのですけれども、これがもしまたいろいろな内部の事情、そのことによってできないとなると、政府に対する不信感というのはより一そう国民の間に広がってしまう。そしていま国民の間には、政府と自民党というのは一体であるというような感じを持っております。確かに一体なんですけれども、ここで思いつきで政府がこれをやってまたできないとなると、これまたますます自民党の評判を落とすようなことになってしまう。何とか一兆円減税以上の画期的な、野党も驚くような減税と、それとこれからの福祉充実政策をやっていただきたいと痛切に感ずるわけなんです。  将来活力ある福祉社会を実現するためには、これからもますます財政負担を必要としていくと思います。全般的な長い目で見れば、福祉充実政策を定着させるためには租税負担率を徐々に引き上げていかなければならないと思いますが、一方国民の減税要求も非常に大きい。そして租税負担率を引き上げるということを最小に押えようとして公債にたよろうとすると、これまたインフレの心配がある。そういうことで将来の国民福祉の充実に不可欠な財源を調達する方法として、ただいま大蔵大臣は法人税の引き上げというのを言われました。これはたいへんけっこうなことだと思います。特に法人利潤が増大することによって企業設備投資というものの過熱が誘発されるおそれがある、こういう現在の景気においては、法人税増税というものはこれからの経済の安定とそれから福祉政策を両立させるような手段になると思います。今後の問題として、直接税から間接税に転換していく。直接税の国民の負担感は大きいと思います。  そういう面におきまして、単に法人税の増税とか租税特別措置の洗い直しのほかに、長期的な福祉充実予算を実施させるためのプログラムの具体的な計画はどのようにお考えになっておられるか、そこをお聞かせ願いたいと思います。
  92. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず第一に、私がいま申しましたような点については、たとえば総理大臣との間には十分の検討をいたしまして、そしてこの目安というものについては、政府が一体としての計画でございますから、来年度この規模の大減税、私もしばしば言っておりますように、数字をあげてはおりませんけれども、あっといっていただけるような大幅な減税をやりたい。これは必ず責任を持って政府、自民党として実現をいたす覚悟でおるわけでございます。  それから、長期的な展望ということになりますと、なかなかこれは、たとえば税制の五ヵ年計画とかなんとかということは事柄の性格上ほとんどできにくいことであるわけでありますから、しいていえばことしの二月でしたかにできました経済社会基本計画の中では、大体五年間のうちに三%ぐらいの国民の負担率がふえることはいろいろの五ヵ年計画等の財政需要からいってやむを得ないめどであろうという趣旨が出ておりますが、大体これも一つの大きな政策の目標になろうかと考えておるわけであります。  したがって、税制の内容について、これも当委員会で私もしばしば申し上げておりますが、消費税体系というものも税の体系としては非常に大切なものでございますから、たとえば物品税とか入場税とかいうものについてもいろいろの御意見を野党側からも謙虚に拝聴いたしました。そういう点も十分参考にしながら、かつまた付加価値税というような税については一つのイメージというものが現に存在しております。広い層にわたって反対の考え方が強くあることも承知いたしておりますが、それらのいろいろの状況を勘考いたしまして、間接税体系の整備というものも考えてみたい。  しかし、この点などにつきましては、やはり税制調査会等において十二分にひとつ御検討いただきたいと思っているわけであります。なかなか総合的な結論というものは簡単にここ数日とかこの二、三ヵ月のうちに出るというものの性格ではない、こういうふうに考えますので、しばらく相当の時日をおかしいただきたい、こう考えております。  ただ、実は昨日も建設委員会でも非常に御熱心な御質疑を受けたわけですけれども、たとえば道路五ヵ年計画を遂行してまいりますにつきましても、一般財源と特定財源との伸びの状況などがかなりこのごろ変わってきておりますので、たとえば特定財源の中で何らかのくふうをこらしてみたい、たとえば揮発油税とか自動車重量税とかいろいろ受益者的な考え方から御負担願えるものも考えられるのではなかろうかというような点も考え合わせてまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございますから、相当広範にわたって、所得税についてはあっというほどの大減税、その他につきましてはいろいろと調整をしたい。  それから増徴するのは、法人対象という基本的な考え方はきわめて明確に明らかにしておるつもりでございます。
  93. 小泉純一郎

    ○小泉委員 大蔵大臣から今度こそはあっと驚くようなことをやりたい、それを私も大いに期待したいと思います。思い切った減税とそして福祉充実、よくやったというような抜本策を講じていただいて、またそれに必要な財源を調達するためには将来一般消費税というようなもの、これは反対があってもそういうような見返りがあれば国民は納得していくのです。そのためには財源を調達する面とそれに合ったような福祉財政、大幅な減税というものに対して決断と実行をもって果断にやっていただきたいということを希望いたしまして質問を終わらしていただきます。
  94. 鴨田宗一

    鴨田委員長 佐藤観樹君。
  95. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 時間がありませんので端的にお伺いをしていきたいと思います。  あえて私が数字をあげるまでもなく、卸売り物価指数、消費者物価指数が異常な高まりを示しております。たとえば卸売り物価でも、前年同月比が二月が九・二、三月が一一・〇、四月が一一・四、五月が、これは中間でありますが一二・一と異常な卸売り物価指数を示しておるわけであります。消費者物価にしましても、平均だけとりましてもたいへんな度合いに、五月が一一・六、四月が九・四、三月が八・四、これは前年同月比でありますけれども、こういったような状態になって、きょう午前中にも、あるいはこの時間にも、このインフレを一体どういうふうにするのだということを論議をするわけでありますが、こういうふうになったというのは、担当の大蔵大臣として、一体どういうようなことにそもそも問題があったのか、そもそもこの原因は何だったのか、それをどういうふうに考えていらっしゃるのか、まずその辺をお伺いしたいわけであります。  何か聞くところによりますと、経済安定促進法を出すとか出さぬとか、これはまた私お伺いいたしますけれども、そんなことの前に、昨年七月、この大蔵委員会でも問題になったように、公定歩合を引き下げをし、さらに大量にドルが流入してくるという経済情勢の中に、日本列島改造論という、高度経済成長政策の何版と申すのでしょうか、そういった改造論をバックにした十四兆余にのぼる超大型のインフレ予算を組んだ。これも予算委員会等でいろいろ指摘したところでありますが、こういった経済運営自体が今日のこのたいへんなインフレをもたらした原因なのではないのか。予算を編成された大蔵大臣として、四十八年度予算の規模自体があまりにも大き過ぎたのではないか。それが経済を過熱化させる大きな原因になったのではないか。その証拠に公共投資自体をなるべくうしろに繰り下げなければならないような状態にいま追い込まれているのじゃないか。この現在のインフレの原因は一体どこにあるのか、このことについてどういうふうにお考えになっておるか、まずお伺いしたいと思います。
  96. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 物価高の原因にはいろいろの要因があると思いますけれども、端的に申しますと、やはり需要が一般的に急速に増大してきているということがいえると思うのであります。したがって、そういう認識の上に立っておりますから、やはりこれは総需要抑制ということを順を追って展開することが妥当な方策である、かように考えて、金融政策あるいは財政の機動的な運営ということをやっておるわけでございますが、そもそも一昨年から昨年にかけていろいろの状況変化があった。たまたまそれが不況期に際しておったということで、これに景気づけをしなければいけない。それはそれなりのメリットがあったと私は思いますけれども、そこで景気が非常に上昇してまいった。そして、本来ならば変動為替相場の採用というようなものは理論的にはデフレ的な要因があるわけでございますから、これが有効にもっと響いてきてよいはずなのでありますけれども、たまたま国際的なインフレ傾向海外物価高というようなものがそれに加わってきて今日の物価高の現象になっている、こういうふうに理解していいのではないかと思います。  それから同時に、そういうような環境であり、原因であると認識いたしておりますからこそ、ここはもう予算委員会以来大いに論議が繰り返されたところでありますが、私は、この程度の公債の発行はむしろしなければならないことだ。そしてそれを、この年度が開始されましてからも、第一・四半期においてできるだけ多くの公債を発行する、そして資金を吸収する、そして吸収いたしました政府の側において公共事業等の実施の繰り延べ、あとに延ばしておるというようなことがポリシーミックスで、もしこういうふうなやり方をしなければもっと事態は異常な事態になったのじゃないかと、私はその点には確信を持っておる次第でございます。
  97. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私は、そのあたりが基本的に考え方が違うのです。特に昨年七月、公定歩合引き下げをしたときには、すでにもう経済の回復する加速がついていたと私は思うのです。すでに当時木材の買い占めにそもそも始まって、私たちの選挙前後に、選挙中にそういうことが論議されていたわけでありますけれども、もうすでに七月、経済は回復期に向かっていたにもかかわらず、そこで再び、当委員会でのいろいろの論議の中で注意があったにもかかわらず再引き下げを強行した。これはどういう政治的理由だかわかりませんけれども、しかも日本列島改造論を背景とした十四兆円にのぼる大型の予算を組まざるを得なかった。私は、これが今日のこの異常なインフレをもたらした大きな原因になっていると、こう思うわけでございます。  それで、この論議をまたずっとしていても不毛の論議になりますから、おそらく平行線でしょうから、時間がありませんので、とにかくこの現状について、今日まで政府としては公定歩合引き上げ、あるいは預金準備率引き上げ、あるいは財政政策として公共事業の繰り延べということをやってきたわけでありますが、今日まで二度行なわれた公定歩合引き上げ、これではたして景気鎮静化する、総需要はある程度押えられる、あるいは押えられるとすればいつごろその効果があらわれてくると現在大蔵大臣は考えていらっしゃるのか。特にいろいろ過去の例を見てみましても、三十六年七月及び三十九年三月の引き締め開始のケースの場合には、ほぼ一年を経ずして一〇%前後の伸びが鈍化したわけであります。あるいは四十二年、四十四年の場合には、これがなかなかきき目が出ませんで、一年半程度期間を要した。こういったようなことから考えても、それぞれ公定歩合引き上げによるところの効果が出てくるには時間がかかるのではないのか。いまこの公定歩合引き上げというのが、現状で足りていると思われるのか、また、この効果はいつごろ出てくると考えていらっしゃるのか、そのあたりの見通しはいかがですか。
  98. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 公定歩合について申しますならば、二十九日に引き上げを決定したばかりでございまして、私は、この幅の引き上げが現時点においては最善の方策であると考えまして踏み切ったわけでございますから、これでまず、科学的に何カ月先、何十日先ということは申し上げられませんけれども、これは数カ月のうちにはその効果が十分出てくるもの、かように考えておる次第でございます。
  99. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私は、そんなに早くは実は効果はあらわれないだろうと思っているわけでありますが、数カ月先にこの効果があらわれてくれば幸いだと思いますが、私は、まだまだあらわれないと思うのです。  その前提に立ってあとでまたいろいろと法人税等についてお伺いをいたしますが、預金準備率についてでありますけれども、すでに二回行なわれているわけでありますが、この合計がざっと六千五百億だといわれておるわけであります。二十九日の大蔵大臣の公定歩合引き上げの際の記者会見でも、再び二千億くらいの預金準備率引き上げする用意があるように、日銀から申し出があれば許可をするというようなことも話していらっしゃるのでありますが、現状では預金準備率のさらに引き上げをやろうと考えていらっしゃるのか、そのあたりはいかがでございますか。
  100. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いまお話しになりました点は、ちょっと事実と違うかと思いますけれども、第三回目の預金準備率引き上げを二十九日に決定したわけでございます。これは凍結する金額自体は大体二千億円弱であるということを説明で申しましたけれども、自後さらに云々と言うたことは事実ございません。先ほど申しましたように、今回は公定歩合引き上げ預金準備率引き上げ、前回よりは少し低目な引き上げでございますけれども、同時にやったことに意味があるわけです。預金準備率引き上げそれ自体は六月十五日から実施されるわけで、まだ実施されていないわけでございます。したがって、これで現在の時点としては相当の効果を期待する、これが最善の方策である、私はかように考えております。
  101. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私がちょっと勘違いした部分がありますので、その部分は訂正させていただきたいと思います。  今日までやってきた政府の施策というのはきわめてオーソドックスに金融財政政策としてやってきたわけでありますけれども、どうも私の感じではこれではたして下期において、ことしの後半期において十分効果があらわれるであろうかということについてはきわめて疑問を持つわけであります。  次の経済安定特別措置法の話に入る前に、私が冒頭あげましたように、卸売り物価指数あるいは消費者物価指数、こういったものがきわめて高い位置にあるわけであります。おそらく大蔵大臣も覚えていらっしゃると思いますけれども、本年三月一日に予算委員会の一般質問の最後のときに、社会党の、わが党の松浦委員から、もうすでに現在の予算その他一切五・五%の物価指数を織り込んでものごとを考えているわけでありますけれども、それ以上上がったらどうするんだというやりとりがなされておるのは大臣も覚えていらっしゃると思います。その当時大臣は、まだこれから予算を執行するときでございますので、五・五%以上上がったときのことはいやどうもということで逃げられておりますけれども、最終的には減税も含めて五・五%以上上がったときには適切な処置をいたしたい、こういうことを述べられているわけでありますけれども、このことをそのまま延長しますならば、年度内に大幅な減税をする必要があるのではないか、またそう約束をしたのではないか、こう思うわけであります。先ほどの小泉委員との話は来年度の話でありますが、先ほど来大臣からもたびたびおことばが出ておりますように、現在の見通しではさっぱりどうなるかわからぬというような見通しで、来年の話をする前にこの下期をどうするか。特にこの物価高の中で苦しんでいる国民にとって政府の具体的になし得る政策というのは所得税の大幅減税である、またこれしかないのではないかと私は思うわけであります。  この予算委員会における大蔵大臣の約束、これを具体的に年度内減税、少なくも五千億ぐらいやるつもりはないか。来年はわれわれが長いこと言ってまいりましたように、本予算の組みかえでも、標準家族で、夫婦子供二人で百五十万円まで無税にしようというのが私たちの予算の組みかえ案の土台になっているわけでありますが、これを政府はやっと重い腰を上げて来年考えようということでありますけれども、いまや来年の話ではなくして、この物価高の中で苦しんでおる国民を救うためには年度内減税を大幅にすべきではないか、またそう予算委員会で約束をしたのではないか、こう思うわけでありますが、大蔵大臣のお考えはいかがでございますか。
  102. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 物価と税の関係についてはいろいろの御質疑をいただきお答えをしたことは事実でございますが、同時に先ほど率直に申しましたように、この物価高騰の現状において、そして消費が非常にふえているというようなときにおいては、純粋に理論的にいえば逆に増税をすべきであるというのが考え方の一つであろうと思います。それやこれや考え合わせまして、しかしこうした物価高騰の現実の上に立って、来年度においては思い切った減税でもって国民におこたえをしたい、私はこう考えて、少なくとも標準家庭においては最低限度百五十万円をぜひ実現したい、こういうふうに考えているわけでございます。年度内減税あるいは年度内増税ということは考えておりません。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと関連。実はいまの大臣のお答えの中で非常に問題がありますのは、今度賃上げが非常に大幅に行なわれることになりました。これはやがてどうしても結果的には物価にもはね返ることはやむを得ないと思うのですが、そういう賃上げをしないでもいいように、実はことし大幅な減税をもっと行なっておくべきであったと私は思っておるわけですね。現在の成長について、企画庁だれもいませんけれども、いまの瞬間風速、私は二〇%をこえておると見ておるのですけれども政府はその点をどういうふうに見ておりますか。
  104. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 瞬間風速についても十分警戒をし、見通しを常に念頭に置いておりますが、私の見るところでは二〇%までは行っておりません。  それから、いまの堀さんの御意見、私もよく理解もできますけれども、現実にたとえば春闘においては一九%といわれておりますし、それから一般的な賃金水準、総平均の状況から見ても、一六%はこえている、これが現実の事態でございます。それを現実の事態として踏まえまして、減税のほうについては来年度に大幅にやりたい、ぜひやるということで、具体的な案をつくることにすでに本年度としては入りかけておるということは、先ほどから申し上げておるとおりでございます。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 ことしのままで行きますと、政府の見通しから、私は今年度四十八年度は自然増収がまた異常な大幅なものが起こると思うのですね。四十七年度にすでに六千億補正をした上でなおかつ資金が余ってきたということは、当然私ども考えておる減税をもっとやるべきだということに対する政府の消極的な問題が今日に来ておるわけですね。四十九年度にあっと驚く減税をする前に、なぜこれまでにやるべきことを正確な経済見通しの上に立ってやらなかったのかというところに、私ははっきり言いまして政府は責任があると思うのです。過去五年間を加えても、政府の減税は一兆円になっていないのですよ。過去五年間で一兆円できなかったものを来年あっと驚く減税をするというのは、それは経済政策のためではなくて政治的な要因に基づいてやろうということだろうという気がするわけですね。経済はやはり経済として合理性の上で問題を考えるのであって、そのような政治的な形でやろうというところに私はきわめて不純なものを感じる。同時に、いまの減税の問題は本年度中に行なうことがより全体としてのバランスをとることになるのであって、来年度になってうんと大きな減税をやるというようなことは、私は非常にこれは問題があろうかと思うのですね。  ですから、いま佐藤委員が触れましたように、予算委員会の中で五・五%以上になれば減税を考えるという御答弁を私も読んでおるわけですから、その際、では一体消費者物価は幾らになるのか。いま政府はどう見ておりますか。大体三月までで消費者物価のげたは五%ぐらいありますね。それから卸売り物価のげたは七%少しこえているわけです。いま第一・四半期ですけれども、今年度の第二・四半期、七−九に入りますと、卸売り物価はおそらく前年比一五%近い上昇になるのではないか。いま皆さんがとられておる金融政策では不十分だ、私はこう見ておるわけですけれども、そういう事態になるという予測、同時にそのことは本年度の経済成長が、政府が出しておられる見通しよりも名目的には非常に高いものになる。名目的に高いものになるということは、それだけ名目的な自然増収がふえるということですね。たいへんな自然増収が今年度中に出るということになるならば、私は適切な時期に補正予算を組んですべての問題にあらためて対処するだけの姿勢がなければ、政治的な参議院目当てのそういうやり方は国民にとって決してプラスでない、こう考えるのですけれども、愛知大蔵大臣、いかがですか。
  106. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いろいろな問題を含んでのお尋ねでございますが、まず物価の見通しはどのくらいになるかということでございますが、いま見通しを立てることも実はなかなか困難であると思います。とにかく上がり幅を何とかして押えるということに全力を尽くしていきたい。たとえばごく一部ではございますけれども輸入品などの物価についてある程度の徴候があらわれつつあるようにも思われます。それから先ほど申しましたように、物価高の過去からの吹きだまりの後遺症的なものももちろんございますけれども、現状をもってすれば、要するに需給のアンバランス、需要が非常にふえているという事態でございますし、それからたとえば公共事業の例をとりましても、セメントというようなものは供給が不足なのであります。それから生鮮食料品等についても安定した供給を都会向けにしなければならない。そういう点がまだ予算執行後日が浅いものですから効果が十分にあらわれておりませんが、そういう点から精力的な対策をきめ細かく展開することによりまして、私は相当の効果が期待できる、こういうふうに考えるわけでございます。  それから、年度内のというかあるいは四十七年度の税収についても見積もりより相当増収があったではないか、これも事実でございますけれども、同時にたとえば四十七年度では、予定した国会で御承認を得ました公債の発行の限度からも三千六百億円公債の発行を停止いたした。そして剰余金は地方交付税の関係などを差し引いて翌々年度の歳入に二分の一を入れることになっておるというような制度のたてまえもございますし、それらの点から申しましても、年度内に現に増収があったからといって、その時点だけをとらえて計画を変更するということは私はいかがかと思っておるわけでございまして、それやこれやいろいろの要素をあわせて、年度内に増・減税をすることは考えておりません。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの四十七年度に発行すべき国債を出さないということは、ある面ではプラスでありましょう。しかし実質的には、公債を発行するということは民間資金を吸い上げることでありますから、そのことはいまの皆さんのほうで金融政策はずいぶん先行してやっておるけれども財政政策は非常におくれておる。聞くところによると、これから短期証券を発行するなりあるいはまた何か安定法によって安定国債などを出そう、これはいろいろ問題のあるところでありますけれども、一体四十七年度のそういう余剰資金が出るということについて、それを国債を減額することはいわば市中における流動性を高めることになるのじゃないのか、当面の問題としては。そこは大臣どうお考えになってそういうふうにしたのかお伺いしたい。
  108. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この点はすでに当大蔵委員会でも御質疑があり、お答えもしたわけでありますが、これは考え方が二つある。しかし財政制度のたてまえからいって、税収入が多かった場合には公債の発行をとめるというのが常道である、かような考え方をとったわけでございます。同時に、四十八年度に二兆三千四百億の公債発行を御承認をいただいておりますから、これを資金の吸収という点を重視いたしまして四月、五月と三千五百億、三千七百億、そして六月に千億というふうにこのほうは繰り上げて相当巨額を発行することにいたしましたので、このほうで吸収のほうの効果はある程度達成できたもの、かように考えるわけです。  また、お尋ね以外のことになりますけれど、公庫と民間の資金の収支から見ましても、あのときにはむしろ三千六百億を発行しないで、そして四十八年度の公債発行の計画のほうを繰り上げてやることによって効果が達成できる、それ以上にやることは金融政策としてもいかがか、こういう配慮もございましたのは事実でございます。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、それは今日から見るとまずかったということですね。
  110. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私は、ですから率直にいって、二つ考え方がその当時からあったということを申し上げておるわけでございまして、今年の三月から四月にかけての、そしてたとえば外為会計の引き揚げの状況その他等の関係を見まして、これは三千六百億をしいて出さなくとも、四十八年度の公債の繰り上げ発行によって金融的な効果はできるもの、かように判断したわけでございます。その判断に対して御批判がございますことは承っておきたいと思います。  それからなお、先ほどお答え忘れましたけれども、短期証券等の発行を考えているのではないか。これは十分いま検討いたしております。場合によりますれば、そういった種類のものも臨時の一つの手段として考えられる政策手段である、こういうふうには考えておりますけれども、やはり諸般の状況を慎重に検討する必要があると思いますから、ただいままだ決定をしたとか内容がこうだというところまではいっておりません。
  111. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 公債の発行についてもいろいろ論議があるのですけれども、時間が限られておりますので、少し話を先に進ませていただきたいと思いますが、今日まで政府がやってきた施策というのは、いわゆる金融政策財政政策、それをオーソドックスにやってきたわけでありますが、正直いってなかなか効果が出てないということだと思うのです。そこで新聞にあるいはその他の報道機関でいわれていることは、いわゆる経済安定促進特別措置法案というものを大蔵省のほうで考えていらっしゃる。何か七つの内容の入ったものだということでありますけれども、今国会は七月二十四日までであります。内容については触れておりますと時間がかかりますから申し上げませんが、そもそもこの経済安定促進法案というものは出すのですか出さないのですか。どうなんですか。
  112. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いま政府としてはまだ未定でございまして、決断をつけておりません。
  113. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 どうもそういったものが出てくる背景というのが、従来の金融財政政策ではいまのこの大型のインフレに対して対処できないという考え方があるように私は思うわけであります。私は冒頭申し上げましたように、どうもインフレをここまで進行させてしまったのは、いろいろな公定歩合引き上げにしろ預金準備率引き上げにしろ、タイミングをたえず失しているためではないか、こう私は思っておるわけであります。  今度の問題につきましても、こういった他の手段、問題の多い租税法定主義を逸脱をしたり、あるいは予算の単年度主義を離れてしまうようなそういったこの経済安定促進臨時特別措置法案というようなそういった別の手段を考える前に、私は本来的に過剰流動性を引き揚げるやり方というのがあるんではないか。どうも先ほどの御答弁を聞いておりますと、来年は来年はと言っているけれども、来年のことを言う前に、この本年度四十八年度後半をどうやってこのインフレを退治をしていくかということを私は考えるべきが先ではないかと思うのです。それは先ほど委員お話がありましたように、一つは国民に対してこの物価高を救う意味で私は大幅な減税をせよ、所得税の減税をせよということであります。それについては一応いま論議はされました。  もう一つは、ほんとうに政府がこの現在のインフレというものを退治しよう、これを正常な経済関係に戻そうというのでしたら、私は来年予定されている法人税の引き上げ、これも私たちが長いこと言ってきたことでありますか、法人税の引き上げということを来年考えるよりも、せめて付加税率について三%から五%ぐらい上げて過剰流動性を吸い上げる、これが一番確実なやり方ではないのか。これは総需要を押えるのに当面持っている一番大きな、またやられていないことではないのか。ほんとうに現在のこの大型のインフレを退治しようと思うならば、この法人税の付加税率の三%から五%の引き上げを果敢にできないならば、私は来年の話をしてもしようがないのじゃないか、こう考えるわけでありますが、その点について大臣いかがでございますか。
  114. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私は率直に申しまして、一昨年から昨年前半に起こったところの過剰流動性の状況は、もはや根絶することができたと思っております。これは何と申しましても、変動為替相場の採用とその後における国際収支状況がようやく成果をあげつつある、それで国際収支状況がさま変わりになってまいりました。その結果、少なくとも外的要因から国内資金の過剰な吹きだまりができるということはなくなったわけでございます。したがって、金融政策としては正常な手段が相当の効果を発揮し得る状況になったわけでございますから、たとえば法人の手元資金の過剰性というものも、この総需要抑制金融措置によりましてさらに成果をあげるものと信じておるわけでありまして、私は、税というものを過剰流動資金対策というようなものに結びつけて考えることはいかがなものであろうかという考え方を持っております。  しかし同時に、何しろ今後もきわめて複雑に多様化するのであろうところの日本経済状況を見ますと、従来からの政策手段以外のものも用い得るような一つの骨組をつくっておいたほうがよろしいのではないかという考え方から、国内の税について、あるいは関税の問題について、あるいは公債問題について、あるいは金融政策についても、新たなる政策手段が使い得るような骨組みをこの際考えておくことが適当であろう、こういう考え方で大蔵省としては一つの案をまとめたわけでございますが、その中で立法措置お願いしなければならないような性質のものをこの国会に提案するかどうかということについては、まだ最終判断をきめかねているようなわけであります。したがってそのほうはいまそういったものをすぐ発動するというのではなくて、将来、積極、消極の両面の配慮からいたしまして新たなる政策手段を用意しておいたほうがいいのではなかろうか、当面はオーソドックスな従来的手法で十分克服していくことができる、かように私は考えておる次第でございます。
  115. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 一つの私の考え方の違いは、いま現状である程度過剰流動性については終止符が打たれた、このあたりで過剰流動性というものもなくなった、というと正確ではないかもしれませんが、ある程度目安がついたという意味の発言が大臣からあったのだと思うのですが、私はその点が若干違うと思うのですね。おそらくまだまだ本年度後半においては、たとえば四月、五月の法人税の税収から判断をいたしましてもかなり高いレベルにいくのではないか。しかも、税というものを過剰流動性を吸い上げる手段に使うのではいかがかと言われますが、来年度はほんとうに四〇%の法人税率というものを考えるならば、そのワンステップとして、しかも過剰流動性を吸い上げる手段として、付加税率をこの早い時期に直すことによって吸い上げることは必要なんじゃないか。そうしないと、なおかつ再び過剰流動性は横行し、そして再び本年度と同じことが来年度に行なわれるのじゃないか。やはり問題は、来年のことを考えるよりもいま具体的にできることからやるべきなのではないか。大臣は後半で、経済安定促進特別措置法案の新しい手段によって将来に備えるべきであると言われますけれども、私はそういう新しいものをつくり出さなくたって、日本企業の自己資本率というものはきわめて低いわけでありますから、財政金融政策のタイミングさえ失わなければ十分効果を発揮できると考えるわけでありますけれども、そのあたりも含めて大臣のお考えを再度お伺いをしたいと思います。
  116. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 誤解があってはいけませんが、過剰流動性という最近までのことばは、主として外的要因からきたところに因を発しているところにそのことばが用いられておったわけでありますから、外為会計を通じて国内に過剰流動資金が起こったということについては、この原因というものがなくなりましたということを申し上げているわけであります。したがって、今後はそういったような外的要因といいますか、これは結局日本のエネルギーが爆発した結果であるので、それが善悪の判断の対象ではもちろんございませんけれども金融政策としては常識的にいってやりやすくなった、そして引き締め効果というものはそれなりに、ずいぶん成果があがっていくはずのものだと私は確信しているわけであります。  同時に、先ほど申しましたように、日本全体が非常に大きな組織といいますか規模になっておりますので、これは若干のタイムラグというものは見ていただく寛容さというものを御理解いただきたいと思うのでありまして、そう急に感覚的にこうだからこうだというふうなやり方では、かえって将来に行き過ぎの害を残すのではなかろうか。根本は、やはり日本経済力は非常に大きくなっておりますから、需要供給関係をごらんいただいても、供給というものが将来ともに縮小するようなやり方をあまりやり過ぎますと、これは将来に相当な問題を残すことをやはり考えていかなければならないのじゃないか。いろいろの観点から申しまして、私の考えといたしましては、いまのオーソドックスな手法でできるだけのことをやっていきたい。  同時に、これも率直に申しますと、国会の審議の日数などを考えてまいりますと、相当の御審議をいただけることも可能ではないだろうか。その観点に立てば、こういう際に将来に備えるような政策手段について御審議、御論議いただくこともまた適当かと思いまして、一応大蔵省の案というものをまとめておりますのが現状でございます。  ただ、これはまた逆の見方もできるわけでございますから、会期が残り少ないときに、延長後においてそういうことでお騒がせするのもいかがかという遠慮もございます。そこら辺について、われわれ政府といたしましてはいままだ最終決断をするに及んでいないわけであります。
  117. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 アメリカにおいてもインフレ抑制ということがたいへん大きな経済問題になっているわけでありますけれども、民主党のほうでは賃金、物価のほかに企業利潤、家賃、消費関連金融などの金利、こういったものも凍結をするという強硬立法も考えられているやに新聞では報道されているのでありますが、そういう賃金、物価の凍結と申しますか、こういった考え方というのはいま大蔵大臣の頭の中にあるのですか、ないのですか。
  118. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 賃金、物価の凍結というようなことは、私どもとしてはとりたくない考え方でございます。
  119. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それから、再々の公定歩合引き上げによって、経済全体としては若干なりとも正規の方向に戻ったように思うのでありますが、午前中も論議をしましたように、いわゆる一般大衆の必要とする住宅に関連する住宅ローンでありますけれども、これが確かに金利は据え置かれておりますが、現実には窓口規制でなかなか十分使えないようになってしまったようであります。これについて、先ほどちらっと大臣も漏らされましたけれども、セメント等の問題がある、木材の問題がある。こういったようなことで、総需要を押えるという観点の中にこの住宅建設、しかもそれはセカンドハウスとかあるいは別荘とかそういった不要不急のものではなくして、一般大衆が住む家に使う住宅、これについて現実には窓口規制というような形で、窓口規制というのはあまり正確な言い方ではありませんが、窓口でチェックされてしまって、従来のように借りられなくなったという現状があるわけでありますけれども、これについては総需要を押えるということの観点から妥当となさるのか、いや、やはり社会福祉充実の一端として個人の持ち家政策をとろうとする政府の施策からいって、住宅ローンについては、これは金利は確かに押えられておりますけれども、具体的には貸し出しの額なり件数が減ってきているという現状の中において、いわゆる引き締め以前同様に別ワクとして考えるのか、その辺のところはいかがでございますか。
  120. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 そこがこの金融政策の非常にむずかしいところでございまして、これもざっくばらんに申し上げるわけでございますけれども引き締めが足りない、あるいは公定歩合引き上げたその次の日から、今度はいつ何ぼ引き上げるのだ、こういう性急な議論も一方に非常に盛んなんでありますけれども、私はその需給のバランスあるいは国家として望みたいことまでが阻止できるようなやり方は当然とるべきじゃないのでありまして、住宅ローンはもとよりのこと、中小零細企業に対する配慮、ことに輸出関連中小企業等については御案内のようにずいぶん政府としても積極的な施策をしているわけでございますが、これは別であって、これは窓口規制として総資金量は抑制しておりますけれどもお話しのようにほんとうの大衆の住宅に充てられるようなローンについてはこれはひとつ十分に供給してあげるようにしなければならない、こういう方針で、それぞれ適切な行政指導をしておるわけでございますが、今後におきましても十分その点については配慮してまいりたいと思っております。
  121. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私の質問の最後に、これからまた過剰流動性吸い上げという形での国債発行というのがいろいろな形でふえてくると思うのでありますが、その国債発行の販売の窓口の話でありますけれども、一説によると、銀行も国債発行の窓口にしたらいいじゃないか。これは現在御存じのように証取法の六十五条で禁止をしているわけでありませんけれども、行政指導としてそうなされているわけであります。この辺のところはなかなかむずかしい問題があって、いわゆる今度の経済安定促進特別措置法といわれる法案の中には、少し長期の安定国債というようなものを出したらどうだ。当然長期でありますから若干利回りをよくしよう。こういったようなこともいわれているわけでありますが、こうなってきますと、普通国債との買いかえの問題あるいは利率の問題あるいは個人が売り戻しをした場合に銀行が引き取るのかあるいは証券界が引き取るのか、その辺の問題、あるいは銀行の定期預金とか郵便の貯金とか、こういったものとの利率の競合の問題、こういった金融政策と申しますか金利の問題ともたいへんからんでくる。また証取法六十五条問題ともからんでくるたいへん根の深い古くて新しい問題であるわけでありますけれども、現在のところこの国債の銀行での窓口発行、これについては大臣としてはいかがお考えでございますか。
  122. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 非常によく実情を御存じなので私から特に申し上げることはございませんが、現在は証券業者を通じて行なわれておる。それから個人に対してもっと買ってもらいたいと思いますと、銀行でもやってもらいたい、こういうふうに私も考えることもあるわけでございますが、証券会社との業務調整の問題をどう考えたらいいか、あるいはまた非常に具体的なことになりますけれども、国債を買ってくださった国民が換金をするときにどういうふうな買い取り価格にしたらいいかどうかというようなことなどもいろいろございまして、気持ちとしては私は広げたいのですけれども、それからたとえばシンジケートで引き受けていただくものとシェアの分け方をどうするかとかなかなか技術的にこまかい点もございますので、よくこの上ともに検討したいと思っております。
  123. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私も、単に簡単に反対とか賛成とか言える問題ではなくて、非常に新しくて古い、古くて新しいたいへん幅の広い問題だと思いますので、当委員会でも一度本格的に論議をしてみる必要もあるだろうし、また証取審でも二月でしたか答申が出たこともありますので、このあたりでもう少し、安直に考えられない問題ではないかと思ってちょっと御質問を申し上げたわけであります。  私の質問を終わりますが、塚田委員のほうで関連がありますので……。
  124. 塚田庄平

    ○塚田委員 関連というよりも緊急を要する問題であるので、若干の時間をかりまして御質問したいと思います。  先ほどから高度経済成長、いろいろな質疑がありましたが、経済成長の陰でもう一つ私ども非常に困った問題が起きておると思うのです。それは職業病の問題、つまり経済がどんどん成長していく。特に銀行業務は質的に、量的に非常に広まってきておりますし、また機械化、合理化が進んでおる。そういう中で、山林労働者の白ろう病類似の、これは大臣も御存じだろうと思いますが、腱鞘炎というたいへんいまわしい病気が出てきておるわけですが、こういった職業病に対する対策といいますか、銀行を監督する立場からどういった対策を指示し、また立てておるかということについてまずお伺いしたいと思います。
  125. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 キーパンチャーの腱鞘炎の問題でございますね。これは私どもも非常に関心を深くしておる問題でございまして、御満足をいただけない御答弁になるかと思うのですけれども、現状は、御承知のとおりに労災保険の対象として扱われておる。ある金融機関におきましては、これが組合との間の問題に取り上げられておりまして、単なる労災保険の対象だけではなくて、それにもっと適切な措置をしてほしいということを金融機関の経営者側に申し入れて交渉がされているということも聞き及んでおります。現在のところ、大蔵省としては、ほかならぬ金融機関でありますし、公共的性格の非常に強いものでございますから、とりあえず労働省の意見を十分聞いて、そして公共的機関としてふさわしいような態度をとってもらうように期待しておるわけでございます。  いま労使間の問題になっておりますから、これは金融機関に限りませんけれども、できるだけ労使間の話し合いが円満にまとまるように、とりあえずはそういう態度でおりましたわけですが、場合によればそれでは済まないかもしれない、私はひそかにその点を心配しているわけでございまして、十分労働省その他の意見も聞きまして善処いたしたい、かように考えております。
  126. 塚田庄平

    ○塚田委員 そこで、非常に急を要する問題で具体的な問題にちょっと入りたいと思います。労働省も来ておられるだろうと思います。  実は、北海道の北洋相互銀行という銀行があります。これは預金量二千五百億くらいだろうと思います。北海道の相互としては最もしにせの銀行なんですけれども、ここで実はいま言ったパンチャー病についての事件が発生しておるわけです。実はこういう事情なんです。昭和四十五年にこのキーパンチャーの病気についてのいろいろな労使の交渉がありました。そこで、この病気というのは非常に複雑な病気なんで、労使双方で、いわば非専門家が議論していたんじゃ始まらぬということで、公正な第三者、つまり労働基準局の認定を仰ごうじゃないかということで、四十五年五月にその問題は一応妥結しました。そこで、この労使の妥結に従って、この銀行の苦痛を訴える者の中から、これはひどいと思われる二十七名について申請をいたしました。そして四十七年十二月に、この申請した二十七名について認定が下ったわけです。二十七名のうち八名だけ認定が下りました。つまり、業務上の疾病とみなすということで決定したわけです。  ところが最近、この問題が非常に新聞紙上をにぎわしておるというのは、そういう認定があったにもかかわらず、銀行側はその認定は不服である、承服しかねる、けれども具体的には福利厚生上の特別措置としてもろもろの措置をしていこうということで、基本的にその認定を認めないという態度できたわけですね。ここに問題が発したわけです。この点についてはいま直接大臣に言っても実態がつかめないので、労働省はこの問題については、労働問題の監督官庁としておそらくつかんでおると思いますので、この認定は認められないというこの銀行側の態度について、どう考えられるか、この点ひとつ御答弁願いたいと思います。
  127. 山口全

    ○山口説明員 ただいまの先生の御質問でございますが、私ども把握している数字と若干異なりますが、私どもは頸肩腕症候群の申請を十七件受理いたしまして、そのうち十二件を業務上として認定しております。残り五件についてはなお審理が進んでいるということでございます。  業務上として認定すれば当然労災補償から必要な給付を行なうわけでございますので、その限りでは治療あるいは休業等の補償が保険から行なわれるという仕組みになっております。  ただいまの問題は、業務上と認定されることによりまして企業が行なういわゆる上積み補償の問題が関連することから議論があるのかと思います。本来上積みをどう行なうかということは、全く労使間の自由な問題でございますので、たてまえとしてわれわれが介入すべき性質のものではないというふうに考えておりますが、認定が原因となって紛議が生じているということを承っておりますので、その限りでは、銀行側に対して適切に行政指導を行ないたいというふうにただいま考えております。
  128. 塚田庄平

    ○塚田委員 認定が原因になっていると言いますけれども、やはり一番問題になったのは、片方は、業務上という認定は承服できない、しかし片方は、官庁の認定が下ったじゃないか。承服できないという側は理由が納得できないというのですよ。つまり業務の態様からいっても、あるいは業務の時間からいっても、これは業務上だとは認められないというきつい先入観があるのですね。そこで両方は、それでは労働省はどういう理由でこうなったのかということを問い合わせたら、それは労基法の百五条に該当するもので、理由は言えないというのですよ。これではむしろ労働省は紛争をあおっている結果に結果的になるので、一体これはどういうことなのか御答弁願いたいと思います。
  129. 山口全

    ○山口説明員 業務上外の認定に際しましては、判断が区々になっては困りますので、全国同じ判断基準によって行なうというたてまえから、専門家の御意見をちょうだいしまして、認定基準というものを作成しております。個々の事案について、当該労働者の業務量あるいは訴えている症状というものに照らしまして、なお専門家の意見を聞いて業務上外をきめるということをたてまえにしております。その結果、業務上または業務外と認定する場合に、個々に理由書の交付をすることは非常に個人の身体的な条件にもかかわりますので、たてまえとしては行なっておらないわけでございますが、差しさわりのない限度で理由の要旨等が必要であれば、その限度で説明することは差しつかえない、こう考えております。
  130. 塚田庄平

    ○塚田委員 先ほど上積み補償と言いましたけれども、上積みだけではなくて、常識的に、たとえばこの人たちは三年間いろいろやって——しかし退職してゆっくりやりたいという人もあって、当然打ち切り補償の問題が出てくると思うのですね。打ち切り補償ということばはどうか知りませんが……。つまり三年間たって打ち切る場合には、いろいろ労使間で協定しているわけです。この件については千五百日の打ち切りというのがあることは御存じだろうと思うのですが、こういったものを、私病という観念から、先ほど言ったとおり一切やらぬということなんですが、労働者の保護の立場から、一体労働省はどういうふうな考えを持っておるか、この点もひとつ聞きたいと思います。
  131. 山口全

    ○山口説明員 ただいま先生のおっしゃる打ち切り補償というものは、労災保険では、三年間たってもなお負傷、疾病が治癒しないという場合は、いわゆる長期給付というものに移行しまして、必要な期間、必要な療養が継続するという仕組みになっておるわけです。保険上はそういう仕組みになっておりますが、ただいま御指摘のとおり、社内規程の第七十条かに打ち切り補償を千五百日分支給するという規定があるように承知しております。どういう関連でその七十条が理解されるのか、私どもまだ詳細存じておりませんが、その規定を読む限りでは、三年間たってなおらない場合には千五百日分の補償を行なうというふうにも読めます。したがいまして、業務上外については公的な判断を行なっておるわけでございますので、できるだけ早い機会に会社側に対して行政指導なり、あるいは紛議のよって来る原因等について現地局を通じて調査、指導をさせたい、かように考えます。
  132. 塚田庄平

    ○塚田委員 これはまあ読めば一番よくわかるのですが、明らかにこれは、退職した場合あるいはなおらぬといって本人が申し出て打ち切りを求めた場合には、千五百日分の補償をするということです。ともあれ、こういうことで現地では非常に問題になっておる。そこで、いま労働省の見解として、これは認める認めないの問題ではなくて、認定が出たんだから、当然それに従った一切の協約上の義務を履行しなければならぬ、そのように指導すると解釈していいですか。
  133. 山口全

    ○山口説明員 現地局を通じまして、先生の御趣旨に沿うように行政指導させたいと考えております。
  134. 塚田庄平

    ○塚田委員 そこで大蔵大臣、いま北海道の場合は典型的にあらわれたわけなんですけれども、業務の態様が非常にきびしくなってきておるという中で、表面に出た出ないにかかわらず、この種の問題は全国的に相当あると思うのです。たとえば健康診断をひんぱんにやる、そして、これはあぶないなと思ったときには必ず職種を変えてやるというような親切な指導体制をやはりつくる必要があるんじゃないか、こう思いますので、特にこのパンチャー病については、大蔵省としても重大な関心を持っていただきたいと思うのです。最後に、ひとつ大臣の考え方を承りたいと思います。
  135. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど申しましたように、私も大きな関心を持っておる次第でございまして、今後どういう方法をとったらいいか、とくと考えさせていただきたいと思いますが、たとえば全国の協会に対して注意を喚起するとか、一般的にこの種の問題について重大な結果にならないように未然にまず防ぐことを関係者一同で配慮しなければならないと思います。具体的な問題については、ただいま労働省からもお答えがあったように、労使間の問題として労使の間で解決するのがたてまえでございますけれども、なお監督官庁の立場でも、先ほど申しましたように公共的な金融機関でございますから、処置に誤りなきよう十分の配慮をするように注意してまいりたいと思います。
  136. 塚田庄平

    ○塚田委員 それじゃ最後に、具体的に当該銀行についてはいま労働省のほうから一応の見解が示されたのですから、十分指導し、注意をするということですから、監督官庁としても当該銀行に対してはひとつきつく指導していただきたい、こう思います。  以上で終わります。
  137. 鴨田宗一

    鴨田委員長 増本君。
  138. 増本一彦

    ○増本委員 きょうは大臣に、今日の悪性インフレをもたらした原因とそれから責任についてやはり明確な御答弁をいただきたい、こういうように考えるわけです。  今日のこういう異常なインフレの事態になったという点で、私は、一つは政府の放漫な金融政策に非常に大きな責任がある。大臣は先ほど、今日のような事態になった一つの原因が、国際収支が大幅に黒字になったというところに原因を求めて発言をされておられましたけれども、しかし、それを一方で引き金にしながら、大企業に対する非常に大きな信用膨張が生み出されてきたということも否定できないだろうと思うのです。  昭和四十六年の七月−九月期からずっと一貫して日銀のマネーサプライの残高が大幅に伸びてきていますし、これが四十七年の十月−十二月期では八十四兆四百五億円、前年対比でいっても二四・七%、こういうように一貫してふえているわけですね。大臣は、なるほど昨年の十二月に大蔵大臣になられたわけですけれども、これは一貫した自民党政府のこういう金融放漫政策の結果であり、これが過大に土地投機や商品投機に向かって物価の今日のような異常な高騰を引き出してきている原因であるというように考えるわけです。  そういう点で、今日見た段階で、この昨年までの異常な段階に対して、なぜ昨年のうちに引き締めの手が打てなかったのかということは常に議論になるところですし、私たちはこういう事態に対して、金融機関の信用膨張によるインフレを抑制することを強く要求もしてきましたし、金融機関の信用供与の態度を根本的に検討して改めることも主張してきたわけですけれども、この点について一体大臣として、やはりこれからの政策を打ち立てていく上には過去の政策についてのきびしい反省というものが必要であろうと思いますし、その点でまず明確な御見解を伺いたい、こういうように思います。
  139. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 あの当時としては、何と申しましてもやはり対外関係というものが一つの大きな障害、と言うと言い過ぎかもしれませんけれども、十分な配慮をしなければならなかったということも私はあったと思います。たとえば金利政策一つをとっても、公定歩合を上げれば海外からの資金の流入というものがまた一そう展開されやしないかということも考えていたでございましょうし、それから不況のタイミングの認定というようなことについてもいろいろ御意見のあることは承知しておりますけれども、やはり不況下においてスミソニアン体制というものが実施されつつあった、これを抜け出すということ、そうしてやはり正確な認識があったかどうかは後世の批判にまつところであると思いますけれども、やはり内需にこれを転換していくような考え方というものもございましたでしょうし、そういったような点が、先ほど申しましたように、外的な要因との関係が多いような点については現在は金融政策もやりやすくなったということは、効果がそれだけ期待されるような環境ができた、私はこういうふうに思っておりますから、迷わずにオーソドックスの金融政策を展開していくべきである、かように考えるわけでございます。  政治的責任論等については、私、特に申し上げる立場にないように思いますが、お話しのように、一貫した自民党の内閣でございます。また、あの当時はあの当時の金融政策あるいは財政政策をとらざるを得ないような環境にあった、それなりのメリットがあった、こういうふうに私は申し上げるにとどめておきます。
  140. 増本一彦

    ○増本委員 昨年の状況を見ましても、卸売り物価は四十七年の九月からずっと上昇気流に乗っかっていったわけです。なるほど対外収支の関係公定歩合引き上げは無理だとしましても、預金準備率をこの時点で引き上げることによって一定の資金の凍結をはかるということは、あの時点でもできたと思うのです。逆にこういう緩慢な、放漫な金融政策をとってきたために、内需への転換ということを、政府は、また大臣もいまおっしゃいましたけれども、結局その金が全部輸出向けに振り向けられ、そうしてそのことが二度にわたる実質的な大幅な円の切り上げやああいう国際収支の爆発的な不均衡を生み出すというような結果にも結びついているというように思うわけです。こういう点で、現実これまでとってきた金融政策に対する反省を抜きにしては、これからのインフレを収束させていくということは私はできないと思うわけです。こういう点では大臣のいまの御答弁は私はたいへん不満でありますけれども、時間がありませんので次に移らせていただきます。  そこで、今日の段階で政府は総需要抑制ということでいろいろ政策も立てられていらっしゃるようですけれども、しかし、基本的に財政主導型の政策がやはり続けられていくし、この面ではインフレをストップさせるというような状況にはなってないというように判断せざるを得ないのです。先般、大臣が発表されたところによりますと、公共事業費についても上期の契約率を五九・六%に引き下げるというようにおっしゃっているわけですが、この四十八年の対象事業費というのは六兆九千億円ですね。ですから、これでいっても四兆一千億くらいはやはり上期に契約され、支出もされるという勘定になるだろうと思うのです。四十七年との関係で見ますと、四十七年の対象事業費は五兆二千億で、上期の実績が七三・九%、これでいくと、三兆七千四百二十八億円、前年対比三千五百億円から四千億円近いそれだけの増加分が本年、現在の過熱したインフレのこの状態のもとでやはり増加される、こういう結果になるわけですから、総需要抑制ということをおっしゃってもそれはことばだけのことで、やはりしり抜けになっていないだろうかというように考えるのですが、この点では大臣はどのように判断なさっていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  141. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず第一に、預金準備率引き上げをやったらよかったのではないかということですが、これもやはり引き締めの有力なる手段なのであります。あの当時としては、従来のずっと長い政策のパターンや状況を見ていただくと、従来的には、引き締めれば必ず外にあふれていくわけです。つまり輸出のほうにドライブがかかっていくわけですから、あの当時の与件のもとにおきましては、そういったような点からいっても引き締めはできなかったろうと私は思います。  それから第二の点は、よく提案される問題でございますが、私はこの機会にこういうことを申し上げてみたいと思うのです。  民間の設備投資というものと、財政主導型に転換はしておりますけれども、全体の状況というものはどういうふうになっているか。たとえばGNPにおける重要項目としてのウエートを見ますと、政府の固定資本の形成というのが一〇・八%それから民間の設備投資は一七・一%、もうすでにここで相当大きな民間の設備投資というものの大きさがあるわけです。  それから、今日経済見通しについてもいろいろの御批判をいただいて恐縮しているわけでございますけれども、成長率は見通しを相当上回る状況にございます。ところがその原因というものは、民間の設備投資が一四%と見通されていたものがそれをはるかにこえている現在の状況のように見受けられます。たとえば、五月の日銀の主要企業の観測によりますと、製造業で設備投資の伸び率が二六・六%、非製造業で一七・五%、全産業で二二・四%、こういう状況になっておりまして、さらにいわゆる先行指標で見ますと、機械の受注、建設受注、こうしたものの動きから見ましても、民間設備投資については非常な盛り上がりが見込まれているわけでございます。  一方政府としては、福祉国家建設という大命題を持っているわけでございますから、公共事業費の繰り延べにいたしましても、直接民生に関係するようなものについてはなるべく予定どおりに実行することが将来にわたっての日本の福祉向上のために必要なことであると考えますから、そういう面にはできるだけ繰り延べのしわを寄せないようにして、そしてそれを除いてみれば五四%程度契約率にしかならないわけでございます。  これを四十七年度と比べれば、いま御指摘もございましたが、比率からいえば、七〇%以上のものを一般公共事業については五四%にとどめるわけですから、これは相当の引き締めであります。しかも、量的にいってははるかに民間設備投資のほうが多い。そして現在の見通しとしてはこれがどんどん伸びる傾向にある。その辺を彼此勘考いたしまして、四月に財政公共事業支出というものをかなり思い切って繰り延べたわけでございます。  これを感覚的にもっと引き締め引き締めろと言われることは、私は福祉国家建設に逆行することになると思いますし、それから数量的に考えましてもこれでバランスがとれる、もっと足りないくらいではないかと思います。やはり民間の設備投資に着目し、御指摘のようなマネーフローの状況、それから金融機関貸し出しの増加の現状等々からいって、金融政策というものをその面においてはきびしくやっていく、それから財政のほうについては、それと量的にも均衡をとり、また目的的にも十分の配慮をいたしまして、この程度の繰り延べというものは、私は財政当局としては相当思い切った措置である、かように考えておりますが、しかしやはり世間的な感覚的ないろいろの御要請や感覚的な御議論にも十分謙虚に耳をかさなければなりませんから、今後におきましてもこの公共事業費の実行支出等についてはさらに一そうきめこまかく配慮いたしたいとは思いますけれども、私の基本的な考え方はいま申し上げたとおりでございます。
  142. 増本一彦

    ○増本委員 問題は、公共事業費の中でも、五四%の一般公共事業費の中身であるというように思うのです。災害復旧やその他生活関連のものについては、せんだっての大臣の私の質問に対する答弁でも、七三%くらいの比率を占めているというお話でしたので、あと残りの一般公共事業についての、これは直接現金または小切手で大企業に支払うという性質のものですし、これが直接そのあとの金融機関からの大企業への融資のやはり一つの源泉にもなるという性質のものなので、これは公共事業に向けての引き締めについての政策的な緩和というものをやはり十分にやっていただきたいというように思うわけです。  そこで、大臣がいま指摘されました民間設備投資が非常に伸びている、これが現在では景気過熱の一つの大きな問題になっている。これは私もそのとおりだと思うのです。だから引き締めをやるんだということでありますけれども政府日銀がこうして三次にわたる引き締め政策をやって通貨の還流をはかるということをやっても、一方で四十八年の一−三月のマネーサプライはやはり引き続きふえてきているわけですね。八十五兆三千四百六十二億円、前年同期比で二五・一%、こういうようになっているわけでして、これが今後の準備率引き上げによって、どの程度卸売り物価消費者物価の引き下げに役立つのかということになると、他方でまたこういう民間設備投資そのものは大幅に伸びるし、そこの辺のところはなかなか十分に政策的な効果も発揮できないのではないか。これは現在の超大型の予算に原因があるのじゃないかというふうにも考えるわけです。  公共事業投資を見ましても、昨年の当初予算と比べましても三二%もふえている。その中での、ただ契約の成約率を前期だけ若干引き下げても、それだけでは大企業向けのこういう融資と相まって、やはり景気過熱を引き締め、そして物価を安定させるということにはならない。インフレの政策もそういう面ではやはりしり抜けになっているというふうに私は考えざるを得ないと思うのです。  そこでなんですが、この段階でもう一度予算を再検討されて、公共事業関係、特に一般公共事業関係で、列島改造計画の基本になっているような、高速自動車道路整備だとか国鉄財政再計画とか電信電話整備の五ヵ年計画の中止だとか、国鉄運賃値上げや健康保険料の値上げなど、今回かかっておりますこういう公共料金の値上げをやめて、そういう面をむしろ国民福祉のほうに、あるいは社会保障の充実のほうに回すような予算の組みかえを含む再検討というものが必要ではないだろうか。これが国民の生活をいまのこの悪性インフレの状態のもとで守り、物価を安定させていく道にほんとうにつながるのではないだろうか、こういうふうに考えるのですが、ひとつ大臣の御意見を承りたいと思います。
  143. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず第一に、公共事業、それから民間の設備投資等について、特にまあ公共事業関係での御意見と思いますけれども、なるほど建設業界も大企業はたくさんあるわけですけれども、御承知のように、関連する下請その他もたいへんなものでございまして、一面から言いますと、そういうほうからも繰り延べというようなものについては相当な声が上がっていることは御承知だと思います。  ですから、やはり中小企業、それから先ほどお話が出ましたが、住宅ローンというようなところに注目せざるを得ないと同様に、そういう末端におけるところの影響度、波及度というようなことも十分考慮に入れていかなければならないということが一つございます。  それから、大型予算という話ですけれども、福祉国家建設のためには相当の大型をつくらなければいけない。しかも、予算委員会当時にも十分申し上げたつもりでございますけれども、昨年度の、ことに補正予算成立後の規模と比べてみますれば、私は、決してそんなに大きなものではないと思います。それから政府の財貨サービス購入の比率も御案内のように二八%程度なんでありますから、そういう点から申しましても、われわれ政府の態度というものは十分国民的に御理解いただけるものと私は思います。  それから、この引き締めをやって、物価にどれだけの影響があるか、どれだけ下がるかという御質問でございますが、金融政策とたとえば消費者物価というものの直接の連関は私は薄いと思います。しかし、基本的にマネーサプライが減り、そして通貨の価値が対外的にも安定するというか向上してまいりますれば、卸売り物価にまず相当のよい影響が出てくると思いますし、ひいては消費者物価のほうにも相当よい影響が出てくると思います。  それから、予算の関係ですけれども、私は先ほども申しましたけれども、いまの一つの問題は、供給をやはり安定的にふやしていくということが非常に必要なことだ。特に生鮮食料品等については、これは四十八年度予算でも昨年度に比べてぐんとくふうがこらされているわけでございます。生鮮食品の安定的な供給、価格の安定、それから出荷、流通、そして末端のこれを扱う小売り業の方々の近代化といいますか、いろいろの意味の補助、助成というようなことが、迂遠なようでありますけれども、これが本格的な物価対策だと思います、ことに生活を守る立場からいたしますと。そういう面で、私は予算の執行が漸次波及してまいりますれば、その面から相当の効果を発揮してくるもの、大体かような考え方でございますから、年度中に予算を補正するとか組みかえるとかいうようなことは考えておりません。
  144. 増本一彦

    ○増本委員 まあ福祉のためには大型予算やむを得ないというお話ですけれども、この点についてはすでに予算委員会等でも私どもも議論してきましたし、まあ振替所得が六%というこの現状を見れば、それが非常に問題だということもはっきりしていますので、まあ時間もありませんので、これで終わります。
  145. 鴨田宗一

    鴨田委員長 広沢君。
  146. 広沢直樹

    ○広沢委員 私は、まず最初に、預金金利のことについてお伺いしておきたいと思います。  第一回の公定歩合引き上げのときには預金金利を引き上げているわけでありますけれども、第二次、今回の公定歩合引き上げにおいて預金金利を上げなかった理由を御説明いただきたいと思います。
  147. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 確かに預金金利とそれから公定歩合関係、いかにあるべきかということは、一つの非常に大きな問題だと思います。ただ、基本的には、金融制度調査会でも答申が出ておりますが、貸し出し金利の水準に応じて預金金利がバランスをとられるべきである、かような考え方から、貸し出し金利の水準がある程度国民経済の中に定着いたしますと、それに応じて預金金利の水準がバランスを回復するように訂正すべきである、こういう考え方になっておるわけでございます。昨年引き下げましたのも、六回にわたりまして二%ほど公定歩合を引き下げました結果、貸し出し金利の水準が非常に低位になったということとの関連で引き下げたわけでございます。  ことしの春、これはちょうど逆の場合が起こりました。最初公定歩合引き上げのときに、これは最初にぽんと引き上げたという形でございますが、御承知のように預金金利は、ある意味では長期の金利に類するような一年半定期預金も含まれておるわけでございます。公定歩合はできるだけ短期的に景気調整を目的とした操作でございます。したがいまして、公定歩合のたびごとに預金金利を連動するということは、むしろその結果、公定歩合操作そのものの機動性を非常に損なうというような関係がございまして、むしろ公定歩合の変動の結果、それが長期の貸し出し金利等に影響し、これが定着した場合には、預金金利の水準考えていく、かような考え方からいたしまして、今回の公定歩合の場合におきましては預金金利の問題はまず考えるべきではない、かように考えたわけでございます。
  148. 広沢直樹

    ○広沢委員 まあそういった面からだけで預金金利の問題は考えるべきじゃないのじゃないかと思うのです。と申しますのは、昨年の春には預貸金利をともに引き下げたのですね。それで景気が過熱ぎみであるということから総需要抑制の一環として公定歩合引き上げた。そのときには預金金利も一応引き上げているわけです。しかしこれをもう一方の面から見てみますと、やはり物価の面、そういった面からこれはやはり考えてみなければならない問題じゃないかと思います。というのは、全国銀行の預金について四十七年の一月から三月は全体の預金が二兆四千四百二億円、そのうち定期性預金が約六〇%、一兆四千百七十三億です。四十八年の一月から三月は預金が二兆九千八百十九億、定期性の預金が四千四百十二億です。約一五%弱です、その中に含まれているのは。それから定期性預金の全体の割合ですけれども、四十七年の九月が五六・八%。これまではずっと一%ないし二%ずつ全体の預金の中に占める割合というものはふえてきているわけですが、四十八年の三月には五三・一%、これは都市銀行の場合ですが、三・七%落ちているわけですね。これは相互銀行、信金の場合においてもやはり一・六%ないし一・七%というふうにこの割合が落ちていっている。  こういうことは何を反映しているかといいますと、いろいろな要因はあるかもしれませんが、やはり昨年以来の異常な物価値上がりというもので、預金をしているよりもそれを何か物にかえたほうがいいんじゃないか。最近の百貨店の売り上げ、消費支出の問題から考えてみましても相当そういうような傾向が出てきているわけですね。先ほども話がありましたけれども、東京の卸売り物価を見ましても四十七年度で五・六%、それから四十八年度一月から三月で前年同期に比べて七・七%、三月だけで前年同月比は九%、四月では一一%と卸売り物価についても異常な値上がりをしているわけでありますが、こういうような背景があって考えてみますと、一年間定期で預金していることがばからしいじゃないかという考えが出てきているんじゃないかと思いますね。  ですから、いまおっしゃった面だけではなくて、やはりそういう面から考えていくならば、こういう公定歩合引き上げる、もちろん貸し出し金利は上がるわけでありますから、当然預金金利についても情勢判断をしてやはり引き上げるべきではなかったのかと思いますが、その点いかがでしょうか。
  149. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いま銀行局長から詳しく申し上げましたが、二つ観点があるのかと思います。  まず、公定歩合引き上げられた、そして貸し出し金利がどういうふうに水準上昇するか、これがある程度定着いたしますれば預金金利の水準がそれとアンバランスだということはおかしいので是正されるのは当然である、こう思います。  それからもう一つの点は、前回のときには預金金利を引き上げたではないか、なぜ今回はやらないのか。これは昨年の場合は公定歩合の六回にわたる引き下げの後に初めて引き下げられた預金金利をもとの水準に戻したわけでございますから、これは前回の場合と今回の場合とはちょっと状況が違うということが申し上げられると思いますけれども、いま銀行局長の申しましたように、これから長期の貯蓄性のものも含めた預金金利のあり方等についてどう考えていったらいいか。これは短期金利が変動するからといって連動すべきものではないと思いますけれども、そういう観点からとくと検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  150. 広沢直樹

    ○広沢委員 私、その言われた意味はわかるのですが、いまいろいろ数字をあげて申し上げましたように、やはり物価関係から考えていきますと、これだけの異常な物価値上がりがずっと続いている段階においては預金をしていることがあほらしい、そういう思想さえ出てくるんじゃないかと思うのですね。そういう面から、どういうふうにお考えになりますか。
  151. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 たとえば、先ほどもちょっとお話が出ましたけれども、一方において国債の発行条件、一般の市中消化というようなことについても何か積極的な手を考えてはどうかということを検討しておるわけでございますし、あるいはまたいわゆる中期預金というようなものについてもいろいろの点を考慮に入れながら実現したいと考えているようなわけでございますから、それらとの関連におきましても、一面においては資金を吸収する、一面においては貯蓄を奨励する、そのことが一面物価上昇程度を何とかして食いとめたいという努力とあわせて必要なことであろう、かように考えておる次第でございます。私も御意見のあるところを十分察知できるわけでございまして、ひとつ十分検討さしていただきたいと思います。
  152. 広沢直樹

    ○広沢委員 やはり物価の問題はいま最大の問題になっておりますので、そういう観点からしても十分その御検討をいただきたいことを要望いたしておきます。  それから、私は午前中に日銀総裁にも申し上げたのですが、やはり今日の異常な物価の問題を抑制していかないといけない、それから景気の過熱化も防いでいかなければならない、こういう事態に立ち至ったのは、やはりこれまでとってこられた政府経済政策が失敗じゃなかったか、私はこういうふうに考えるわけです。  と申しますのは、昨年、ちょうど一年前までは公定歩合を五回にわたって引き下げておりますし、さらに国際収支黒字幅の増大に伴って外為の払い超の問題が起こる、あるいは金融の緩和という問題で企業の手元流動性が非常に高まってきた、そこへ御承知のように福祉型予算ということで財政拡大、こういうことが行なわれてきたわけですね。したがって国際収支関係から輸出抑制して輸入を促進していこう、当然の話でありますが、それには内需を喚起していかなければならないということが主眼になるわけでして、すなわち内需の喚起ということで需要先行型の経済政策をとってきたのじゃないか。それが先ほど言った過剰流動性の問題と結びついていわゆる投機問題が起こってきた。やはりこういったところに今日の異常な卸売り物価をはじめ消費者物価の値上げが起こってきているのじゃないか。     〔委員長退席、木村(武千代)委員長代理着席〕  これに対して金融当局は、いま総需要抑制ということでやっておりますけれども、それがまた極端に行き過ぎてまいりますと、先ほどからいろいろ議論がありますような中小企業の問題も出てまいりますし、あるいはせっかく緒についたばかりだと思われる住宅ローンの問題についても影響せざるを得ない。これには特段の配慮を払うとは再々御答弁なさっておられますけれども、現実には今度の金融引き締め中小企業金融機関が強く引き締められていくという傾向をとっている以上、そういう結果が出てくることは当然だろうと思うのです。  そういうわけで、やはりこれは、財政的な相当なこれに対する処置というものを考えていかなければならない。いまのところ大臣は、いわゆる公共事業拡大は、これは福祉につながるということで、この問題については年度内の契約の繰り延べということは考えているようでありますけれども、実質的にやはりこれだけの金融引き締めを行なっていけば片方においてはそういうしわ寄せが出てくるし、財政的にもある程度これを考えていかなければこれはやはり問題点は解決しないと思うのですね。そういう面で、これはけさもお伺いしたわけですけれども金融当局としても公共投資の年度を越える繰り延べが必要であるんじゃないだろうか、あるいは国債発行予定額を削減しなければならないんじゃないか、あるいはこういった場合は公共料金を押えなければならぬのじゃないかという意向は持っていると、ここには進言と書いておりますけれども、きょうはそこまで、進言ということはおっしゃられませんでしたけれども、確かにそういう手段を講じなければ今日の景気の過熱化を防ぐということはむずかしいし、あるいは異常な物価というものを抑制していくこともむずかしいんじゃないか、こう思われるわけです。  ただ、いまもお話がありました国債発行については、だからこれを削減するということは話が逆になっていく、過剰流動性を吸収するためには国債を早期に発行したほうが吸収できるんじゃなかろうかという議論もあります。しかしこれは過剰流動性を吸収するために、特にそういったことを考えるなら別でありますが、これは今回の大型予算の一環として大型な国債を発行したい、公共投資拡大していこうという、いわゆる建設国債という名目のもとになにしたわけでありますから、当然これは財政を大きな拡大をしていく要素になっているのですから、そういう意味からはやはり景気を強く押し上げているんじゃないか、こういう面が考えられるわけですね。そのほかに国債発行についてもいろいろ御検討なさっていらっしゃるでしょうが、それはその目的があっておやりになろうということでありますから、いま言ったような点はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。財政的な、今回の景気過熱を防ぐ、あるいは異常な物価抑制する上からどうお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  153. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず、公共事業の問題について申し上げますと、とにかく先々月、四月に、今年度は上半期はできるだけ繰り延べをして圧縮をいたしましょうということで決定をして実施中でございます。     〔木村(武千代)委員長代理退席、委員長着席〕 契約ベースは、御承知のとおり公表したわけですけれども、さらにきめのこまかい、これはまた関係各省のそれぞれの事業計画もございますが、関係各省の協力を求めてきめこまかくさらに実質的に内容的にも詰めてまいりたい、こういうふうに考えております。その考え方は、先ほど申しましたように財政主導型に展開しつつありますけれども、総量からいえば、常識的に申せばこの面における財政の持つウエートというものは民間の現在の予想される設備投資から見れば比重が少ないわけでございます。ですから、その比重の少ないものと多いものと見比べながら、私の感覚ではこの比重の比較的少ない公共事業のほうの繰り延べは、いま金融措置をやっておりますが、これと相照応する程度のものである。こういうふうに思いますから、金融だけのほうから見れば、もっとこっちも引き締めてくれという希望は持つかもしれませんけれども、これは大蔵省の立場からいえば、そこの相互のバランスを見、かつ政府としての、何と申しましても福祉関係のものはできるだけ予算どおりに執行したい、こういう考え方も含めまして、ここは適切なかじとりをしたい、こう考えております。  それと公債の問題については、先ほども詳しく申し上げましたが、私はむしろ公債の発行にくふうをいまや加えるべきであるというのは、先ほどるる申し上げましたように、過剰流動性ということばの定義の内容がやや変わってきているように私は思われるわけでございますが、たとえば非金融部門に滞留している通貨量、これはあながち企業手元資金とは申しませんが、百貨店の売り上げ高の増高というところとむしろ照応して考えるべきものじゃないか。そこをまず貯蓄奨励的な、幸いに日本国民は貯蓄性向が世界に比べて高いわけでございますから、こういう点にくふうをすれば、もしそこに過剰流動資金個人的の階層の中にもあるとすれば、公債の発行にくふうをこらして個人消化ということも考え、もっと幅広く考えるべきではなかろうか、こう考えますし、かたがた公債を減額するという考えは持っておらないわけでございます。
  154. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間でありますので、一応最初に申し上げた今回の預金金利の引き上げを据え置いた問題にしましても、それからいま言う財政金融のあり方にしましても、やはり問題になってきますのは今日の異常な物価あるいは過熱的な景気の傾向、そういうような問題が総合的な対策として立てられなければならない。ただ金融だけによってもこれは解決すべき問題じゃないわけです。いまの金利の問題にしましても、当然これは、物価はこれ以上異常に上がっている状態の中で、特に預金しているほうはこれじゃかなわないという現状があるわけですから、国民が幾ら貯蓄性向が高かったとしても、現実の問題としては、いま数字をもって申し上げたとおりの現実が出てくるんじゃないか、こういうふうに思うわけです。その点ひとつ十分御配慮いただくように要望いたしまして終りといたします。
  155. 鴨田宗一

    鴨田委員長 竹本君。
  156. 竹本孫一

    ○竹本委員 最初に大臣に、その後の国際通貨改革の動きと、これにどういうふうにこれから取り組まれるお考えであるか、簡単にお考えを伺いたいと思います。
  157. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 簡単に申しますと、三月末のC20蔵相会議でできましたコンセンサスをもとにいたしまして五つほどの合意、その中には例のドルの交換性回復をはじめ重要な点が含まれているわけですが、これに対して建設的な結論を出そうということで蔵相代理会議が非常に精力的な作業をいたしまして、第一回五日間にわたる会議は終了して、次回がそのうちにまた行なわれることになっております。ただ、率直に申しますと、その代理会議が先月末に行なわれておりました当時においては、ヨーロッパ等において共同フロートに踏み切ってからあとが、金の価格の上昇というようなことがあったけれども、二月ごろに起こったような大火事にならなくて切り抜けることができたということで、三月末のときのような非常な緊迫感というものがちょっと薄れたような感じがあるのではなかろうか。私は、これは想像なのでありますけれども。そこで、しかし一方において、その後数日たたずしてまた、現在のように共同フロートの諸国の間においても、ドルの減価を中心にしたかなりの動きがございますから、やはり当時から合意しておったように、何とかして九月のIMF総会のときには相当の成果があがってより具体的な国際的な合意ができるように、特に日本としては努力を新たにいたしたいと、こう考えておるわけでございます。今後とも、アメリカを先頭にして、国際的に安定できるような積極的な努力を当方としては期待しながら、大いに努力をいたさなければなるまい、こう考えております。
  158. 竹本孫一

    ○竹本委員 この問題は非常にデリケートな要素が多いし、大臣の積極的な御努力を大いに期待したいと思うのですが、私は、前から持論でありますけれども、フロートというのは、大火事にならないように幅を持たせることがフロートなのだから、フロートのもとにおいてはそう大火事にはならないのではないか。同時に、フロートして、かりにある程度ドルが下がるとか、マルクや円が上がるということは、彼らからいえばむしろ望むところなんだから、そこで日本が独自の立場で積極的に取り組むべきではないかということをたびたび申し上げておるつもりであります。アメリカでは、バーンズさんだけが、固定制というものが基本にならなければならぬし、長期的にはそうなるべきだというようなことを相変わらず言っておる。何かその点で日本の態度が変わったのではないか、あるいは変わらないことを望むとか言って、この間ある新聞の記者に語っておりますが、日本の態度の中に、そういう誤解というか何というか、変化があったというふうに思われるような点があったのですか。
  159. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 全然そういう点は私には読み取れないわけでございます。むしろ現在の東京市場の運営のやり方は、御案内のように、各国があるいは関心を持っていたかもしれませんが、政府といいますか日銀といいますか、これが大幅に介入をして、ドル買い出動をやりはしないかという懸念も持っていたようでありますけれども、全然さような事実はございませんで、日本の市場としては、ヨーロッパ市場の動きがあるにかかわらず、いまのところはきわめて安定した状況にある、アメリカのみならず各国も、いまの日本状況については、私は何も言い分があろうはずはない、かように存じております。
  160. 竹本孫一

    ○竹本委員 次へ参りますが、本委員会においても、先般来関税の改正の問題を論議いたしました。この問題につきまして、政府は、七項目の中でも、あるいはいまうわさされておる経済安定法においても、非常に重要な課題として考えておられるのでありますけれども、ただ、そこで関税を引き下げる、そうすることによって何を期待するかということについては、いろいろの考え方があろうかと思いますが、私はやはりこれが物価に対するよき影響を持つように、それから、これはあまり言われておりませんけれども、私自身は、日本経済の合理的な再編成を推進するという役割りを非常に期待しているわけであります。  ところが、いま流通機構の問題等はよく論じられますから、きょうは論じませんが、せっかく関税を引き下げてみても、特にまた大蔵、通産の関係のいろいろな協議の中で、特に通産省は国内産業保護という立場もありますから、当然な努力ともいえますけれども、しかし、それが行き過ぎて国内産業に影響を与えては困るのだということばかりを言っておると、実はそれほどたいした役割りを持っていない国内産業が、一種の圧力団体になっているかどうか知りませんが、非常にじゃまをして、せっかくの関税改正も台なしにしてしまう、こういう心配があるように見受けるのです。  そこで、大臣にお伺いいたしたいのは、関税引き下げをやる、それが、いま申しましたように物価にも好影響を及ぼす、それから同時に、国内経済についても再編成を促し、また、場合によっては輸入の増大にも役立つような方向に行くためには、たとえば小さいところからいえば、各省の事務手続の簡素化という問題もあるでしょう。あるいはいま申しました、国内産業といってもほとんど守るに値しないようなものまでもそのままに守ろうとするがために、さっぱり問題が進展しないという問題もあるでしょう。それらを含めてこれだけ関税改正をやる、今度はさらに権限も委譲してもらいたいというような声もあるようですけれども、その場合に、関税改正が所期の効果を生むようにするためには、やはり相当の決意と構想がなければならぬと思うのです。ただ関税は下げた、下げたほうがいいのだというような議論だけにとどまっておるような感じが非常にするのですけれども、関税引き下げを契機として、さらに一そう前進をするために、取り組みとしての何か新しい重大なる決意や構想というものを政府は持っておるのか、ただ事務的に関税を下げておるのか、その辺はどうでございますか。
  161. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 関税の引き下げということは、輸入の増大ということをねらっているわけでございますが、輸入の増加について、これは本来なら物価に非常にいい影響があるべきものでございますが、不幸にして海外物価高ということが起こってまいりましたために、その効果が相殺されている面がかなり出てきておる。この点は残念に思っておるところでございますが、輸入がふえ、あるいは関税が引き下げられて、その効果消費者に均てんできるようにこの上とも努力をしたい、こういうふうに考えております。  それから、一言申し上げたいのは、先般行ないました資本の一〇〇%自由化については、外資審議会に非常な努力をしていただいて、各省一〇〇%自由化に協力をいただきまして、よい成果ができたと思いますけれども、このことは、今後日本の流通構造の改善とか、あるいは競争条件の整備とか、そういうような、いまお話に出たような問題についての非常なる刺激剤になるし、刺激剤に使っていかなければならない、私はこういうふうに考えております。  それから、先ほどもちょっと触れたのでございますが、このごろの輸入価格の動向というものが、海外物価高があるものですから、相殺されている面もございますけれども、ある面には相当価格の低下にあらわれております。通産省からの連絡によりますと、万年筆、書籍、カラーフィルム、それからゴルフクラブというようなものもあるわけです。それからエアコンディショナー等の輸入消費財の小売り価格はかなり下落を見せているようでございます。
  162. 竹本孫一

    ○竹本委員 これはぜひとも国内経済の、と申しますのは、私はよく政党性悪説を言うのだけれども、いろいろな関係もございまして効果があらわれるようになっていないという点、それからもう一つは、刺激を与えるような方向に進んでいないという点を心配するから申し上げるわけでございますが、ひとつ善処していただきたい。  それからもう一つ、最近の新聞で見ると、中東の石油の問題でございますが、これが一一・九%値上げをするということで、国内の石油もすぐ上がるんだというような話が出ておるのだけれども、全般として割安になったものが、流通機構もあり、また業者のいろいろな動きもあって安くならない。ところが、仕入れが上がるということになると、今度はすぐ消費者その他に値上げをするというところは、どうも飛躍的であり過ぎる。  たとえば石油関係について言うならば、円の値上がりによる為替差益というようなものもある、そういうようなものについては全然手を触れないというか、そのままにしておいて、上がったものだけはこちらで業者がまた値を上げてやるのだというようなことで、これまた全く意味をなさないような感じを受けるのですけれども、そうした業界の自主的な努力、まじめな努力がなければ物価引き下げというものはできない。こんなに物価がどんどん上がっているときに、みんな無責任に、何かの口実さえあれば物価を上げていくというような動き、その一つとして石油の動き、これに対して大臣はどういうお考えであるか、その点お考えを承りたい。
  163. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず事実を申し上げますが、六月二日にOPECとメジャーとの間で、通貨変動に伴う原油価格の値上げ交渉が妥結いたしまして、お話しのように平均一一・九%の価格引き上げが行なわれることになりました。現在のところメジャーからわが国の石油精製業界に対する価格引き上げの通告がまだなされておりませんので、これがわが国の石油製品価格にどの程度影響するか明らかではございません。しかしいまお話しのような点は十分考慮に入れまして、これは通産省にお願いをする仕事でございますけれども、業界の協力をぜひ求めるべきものである、かように考えておる次第でございます。
  164. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がありませんから次へ参ります。  もう一つは、ちょっと唐突になるかもしれませんが、行政機構の改革の問題が最近はさっぱり忘れられておるような感じを受ける。これは私は先ほど来いろいろ言っておるのですけれども日本のように予算が毎年毎年膨張する、金融機関貸し出し競争も含めてどんどん金は貸し出す、こういうようなただ進め進めで、東条内閣のときには軍事的に進め進めで世界じゅうを相手にし、アジア全域に軍を出したのですが、これが行き詰まった。いまの日本経済もやはり、これは軍事的ではない、今度は経済的ですけれども、まあ進め進めで一向退却したこともなければ引き締めをやったこともない。拡大に次ぐに拡大、前進に次ぐに前進、整理緊縮なんというのはほとんど、大蔵省が少しは努力されているようだけれども、国民に印象づけるようなはっきりした姿における整理緊縮というものはまず聞いたことがない。予算は毎年膨張しておる。金融はどんどん貸し出しが進んで、去年のごときは、多いときは貸し出しの増加が四半期では六〇%をこえたことがある。そういう形でいけばそれこそインフレにならざるを得ない。  先ほども言ったのでありますが、坂だって下りの坂があれば上りの坂もあるわけで、経済だって前向きに進むときもあれば、あるいは踏みとどまるとか、あるいは後退をするということがなければならぬ。ある意味においてはデフレというものも場合によって必要なこともあるでしょう。そういうときに、日本経済あるいは財政運営というものは前進に前進、拡大拡大、これでは一体どこへ行くのであろうか。私どもはインフレを非常に心配する意味において、これは大蔵大臣も日銀総裁も当然御心配になっておるのだろうと思うけれども、その心配が具体的な数字でどうも出てこない。一体政府はインフレに対する危機感はあるのかないのか、私にはそれが全然わからない。そういう意味で財政運営にも金融運営にも私は注文があるのです。  そういう立場で、行政機構の改革についても、ひとつこの辺で一ぺん引き締めてみたらどうかという意味でお尋ねするのですが、大体デフレ恐慌みたいなものがあれば、会社だって切り詰めをやり、合理化をやらざるを得ない。それでまた次の前進が約束されるということだと思うのですが、経済界にはそれがない。肝心な政府にはなおそれがないような感じがいたしますのでお尋ねするのですが、日本の行政機構も、それはまた時代とともに、また福祉国家には福祉国家建設の新しい社会的な要請もあるわけですから、いたずらに縮小すること、整理することが能ではありませんけれども、少なくともいまの膨大化したところの行政機構や国家公務員というものが、どの程度経済的にいえばエフィシェンシーをあげておるのか。会計検査院的な会計法に違反しているかしていないかというような次元の低い問題ではなくて、日本経済の再編成なり前進なりを考えた場合に、どの程度にその機能を果たしているかということについて総合的に一度検討してみたらどうかというふうに私は前から思っているのです。  これは大臣すでに御承知のように、アメリカではかってフーバー委員会というものがありました。イギリスではロイアル・コミッティーというのがあって、総合的な検討を加えたこともある。ところが日本では、ほんとうの意味で、行政管理庁もいろいろ御努力はあるんでしょうけれども、国民の目に見えたような成果あるいは努力というものはどうも見受けられない。一ぺんやはりこの辺で、日本のいまの膨大な予算は、はたして国民の税金を使ってやっているだけに値するような合理性や社会性を持っているものであるかどうかということ、この問題は全面的にひとつ調査検討すべきだと思うのです。いろいろの委員会もありますけれども、そういう委員会が特にあるわけでもないようだが、大臣はこういう問題についてどういう考えを持っておられるか承りたい。
  165. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 実は今朝もある会合というか会議に出ましたところが、まさにただいま竹本さんのお話と同じような趣旨の御意見を伺いました。そして大蔵省もっとしっかりしろ、財政需要がいたずらに膨張するということの前に行政機構を刷新せよという御意見に接して恐縮いたしたわけでございますが、まことにごもっともな御意見であると思います。政府の部内としては、これは行管あるいは行政調査会にお願いをする仕事であると思いますが、財政当局としても確かにこれは大問題でございますから、積極的に前向きに検討いたしたいと思います。
  166. 竹本孫一

    ○竹本委員 これは非常に重要な問題ですからもう一度念を押しますが、ただやりたい、考えておるということだけでなくて、これには角度がいろいろあると思うのです。単なる資本主義的な合理化ということだけでもいかぬでしょう。またわれわれにはわれわれの社会的な要求もあるわけですけれども、しかしそれにしても、やはりこれこそ大規模な審議会なり調査会なりをつくって、そして民間の相当権威のある方々に御協力を願い、それから自民党にも前大蔵大臣とか前日銀総裁とかいう方もいらっしゃるわけでしょうから、やはり経理面から見ても相当整理緊縮ということについてセンスのある人を動員してやる。  たとえばそういうことを言うとしかられるかもしれませんし、いまの財政が放漫財政だということにばかりなっても恐縮ですけれども、しかし私はやはり本気で取り組めば、一割なら一割の費用の削減をやるということは必ずしも不可能でなかろうと思うのです。かつて委員会ではもっと大規模な三割とかいうような結論を出したこともあったと思いますが、しかしやはりめどを持たなければいかぬ。十四兆円の予算の中で、国民の犠牲を要求した租税を使う立場から考えて、必ずしも所期の目的に沿ってないというようなものをこの際思い切って政府が整理緊縮、合理化をするということになれば、やはりその風潮というものが会社の経営の中にも反映するであろう、そういう形で、これはインフレに取り組む一つのまた別の角度からの試みとして、やはり全面的に日本の、いま申しましたようにふくれるばかり、前へ進むばかりの経済に対して、あるいは冗費というものが相当多い、あるいは少なくとも所期の目的に十分合目的的でない経費というものが相当ある。まあ二割あるか一割あるか、いろいろ議論ありますけれども、少なくとも一割か二割は節減をするというような目的のもとに、そういう権威を集めて一ぺん検討すべきである、さように思いますけれども、もう一度その点について大臣のお考えを承りたいと思います。
  167. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まことにごもっともと存じます。一方において行政に対する国民的な要請は非常に複雑で多様化しておりますから、実際はその要請にこたえるために広げなければならないことが相当あるのでありますけれども、それを考えるにしても、やはり整理すべきところは思い切った整理が絶対必要であろう、かように考えるわけでございますので、そういう点が、政府としても大いに反省をして、積極的な努力をしなければならぬ点であろう、かように考えますから、ひとつ閣内の同僚にも御趣旨のあるところは伝えまして、内閣としても積極的な姿勢をとるようにいたしたいと思います。
  168. 竹本孫一

    ○竹本委員 これはとにかく大臣の御在任中に何らかの成果を見るように、ぜひひとつ積極的に取り扱うように要望をいたしまして、私の質問を終わります。
  169. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次回は、来たる八日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十一分散会