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1973-04-05 第71回国会 衆議院 大蔵委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月五日(木曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 阿部 助哉君    理事 荒木  宏君       宇野 宗佑君    越智 通雄君       大西 正男君    金子 一平君       栗原 祐幸君    小泉純一郎君       三枝 三郎君    塩谷 一夫君       野田  毅君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山中 貞則君    高沢 寅男君       塚田 庄平君    平林  剛君       堀  昌雄君    山田 耻目君       増本 一彦君    広沢 直樹君       内海  清君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      茂串  俊君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主計局次         長       吉瀬 維哉君         大蔵省証券局長 坂野 常和君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         国税庁長官   近藤 道生君  委員外出席者         経済企画庁長官         官房参事官   結城  茂君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      佐々木 直君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 四月四日  音楽、舞踊、演劇等入場税撤廃に関する請願  (田中美智子紹介)(第二〇四〇号)  同(土井たか子紹介)(第二〇四一号)  同(石母田達紹介)(第二〇八九号)  同(栗田翠紹介)(第二〇九〇号)  同(田代文久紹介)(第二〇九一号)  同(多田光雄紹介)(第二〇九二号)  同(土井たか子紹介)(第二〇九三号)  同(中路雅弘紹介)(第二〇九四号)  同(中島武敏紹介)(第二〇九五号)  同(野間友一紹介)(第二〇九六号)  同(林百郎君紹介)(第二〇九七号)  同(三谷秀治紹介)(第二〇九八号)  同(山口鶴男紹介)(第二〇九九号)  同(山原健二郎紹介)(第二一〇〇号)  同(鈴切康雄紹介)(第二一四六号)  同(土井たか子紹介)(第二一四七号)  国民金融公庫の定員増加等に関する請願塚田  庄平紹介)(第二〇四二号)  同(武藤山治紹介)(第二〇四三号)  同(村山喜一紹介)(第二〇四四号)  同(平林剛紹介)(第二〇八七号)  同(佐藤観樹紹介)(第二〇八八号)  同(山田耻目君紹介)(第二一四五号)  子供劇場入場税免除に関する請願田中美智  子君紹介)(第二〇四五号)  所得税等課税最低限度額引上げに関する請願  (大久保直彦紹介)(第二一四四号)  個人事業主報酬制度の創設に関する請願(梅田  勝君紹介)(第二一四八号)  付加価値税新設反対等に関する請願荒木宏  君紹介)(第二一四九号)  同(浦井洋紹介)(第二一五〇号)  同外一件(大久保直彦紹介)(第二一五一号)  同(神崎敏雄紹介)(第二一五二号)  同(小林政子紹介)(第二一五三号)  同(谷口善太郎紹介)(第二一五四号)  同(東中光雄紹介)(第二一五五号)  同(正森成二君紹介)(第二一五六号)  同(三谷秀治紹介)(第二一五七号)  同(村上弘紹介)(第二一五八号)  同(米原昶紹介)(第二一五九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件  外国為替に関する件      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制金融証券取引及び外国為替に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本十郎君。
  3. 松本十郎

    松本(十)委員 さっそく大蔵大臣質問いたしたいと思います。  本年の一月末にイタリアに端を発しました通貨不安、二度ほど危機を迎えましたが、結局米ドルの対金一〇%切り下げ、わが国変動相場制への移行、EC諸国共同変動相場制の導入と、そしてその合い間にパリ会議あるいはワシントン会議と、これらを経まして現在は一応の小康状態を保っております。しかしながら、蔵相会議としましても、二つの専門的な委員会で、国際収支あるいは公的準備についてのインディケーター、さらには、資本の移動についての規制問題等、こういったことの検討を命じたようでありますし、このあとナイロビIMF総会に向かっていろいろと模索段階と申しましょうか、流動していく国際金融の実態のまにまに、新しい国際通貨体制をどのように確立するか、いろいろと検討が重ねられていくことと思うのでありますが、そういった、混迷と申しますか、流動する現段階に立ちまして、大蔵大臣としまして、今後この情勢がどのように展開していくだろうか、それについての動向のお見通しなりについて御意見を伺いたいと思います。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ことしの一月の末以来国際通貨の不安に対しまして、各国が非常な懸念と、当面の対策を緊急にとらなければならないということで、まずパリで二回にわたって関係国蔵相会議あるいは中央銀行総裁を加えての会議が行なわれましたことは、御承知のとおりでございますが、それに引き続いてIMFの二十カ国委員会が開かれました。これを通観いたしまして、とりあえずの通貨不安というものは、ただいまもお話のありましたように、小康を得ておるわけでありますけれども、すみやかに国際通貨制度の恒久的な確立をしなければならないということで、二十カ国委員会では、代理会議に対して、ただいまお話しのような具体的な問題について専門的に煮詰めて、九月に予定されている二十カ国委員会で何とかして結論を出そうという意欲が合意されて明らかにされておるわけでございます。できるならばそれまでの間におきましても蔵相会議をもう一ぺん開いて、そしてさらに国際通貨制度確立に対しての早期解決に対する前進をいたそう、しかし、これは代理会議検討状況にもよりますので決定はしておりませんけれども、意欲としては、そういう意欲が合意されているようなわけでございます。  内容としてこれから早急な検討が急がれているのは、一口に言えば、国際通貨制度確立については、さしあたりのところは、ドル信認回復ということが当面の問題であって、これに交換性を付与するということでございますが、同時に、ドルだけにたよるといいますか、唯一基準通貨として恒久的にいくことについてはいかがであろうか。これはむしろSDRというものをもっと建設的にもっと魅力のあるものにして、これを中心にするという方向に重点を置いて検討すべきではないかという意見が大体大勢を占めているように考えられますし、また将来の方向としては、わが国としてもそういう線に沿うた考え方のほうがよろしいのではないかと考えておるわけでございます。  ドル信認回復については、いま申しました交換性回復と、これに関連するいわゆるコンソリデーションドルの残高についての固定化方法がどの程度に考えられるであろうか、これはわが国としても非常に大きな関心の的でございます。これは他の問題と関連をいたしますから、現在の状況でこの程度コンソリデーションということならば日本としても取り上げてよろしいというところまで早計には言えないと思いますけれども、他の条件等関連して手段方法等について検討に入るということについては異議はないという態度を現在のところ表明しておいたわけでございます。  SDRについては、従来からのいろいろの研究もございますから、それらをできるだけ生かして、これが国際通貨一つ基準としてりっぱなものにするということについて積極的に考えてまいりたいと考えております。  それからもう一つ大きな問題は、いわゆる投機資金一口にユーロダラー問題といわれております、これの処理、管理ということについて、特に代理会議におきましても、具体的な対策各国積極的に協力をするということに相なっておりますことも、御承知のとおりでございます。  それからインディケーターの問題ということの御質疑でございますけれども、これは今後の国際通貨情勢を安定していくために、各国国際収支等見方、取り上げ方の一つ指標でございますけれども、かつてボルカー案といわれましたようなものは、たとえば現存する各国外貨準備だけを一つ指標にして、これによって各国政策態度についての基準にしていこうという考え方は、あまりにも単純過ぎますし、それから過去の動向検討する指標としては適当かもしれませんけれども、これからの各国政策の展開にこれだけを一つ基準にするということは適当でございませんので、この点は明らかにその不適当さを指摘いたしまして、必要ならば、国際的な指標というものを、客観的に妥当性のあるようなものをもっと広く検討すべきであるということで、参加国間のそういう考え方をまとめて、この具体的な方策をあらためて検討しようということになっておるわけでございます。  一応ただいまの御質問に対しての考え方を申し上げると、以上のとおりでございます。
  5. 松本十郎

    松本(十)委員 ただいまのようなことでございまして、これからの国際通貨の動きというものはなかなか見通しもむずかしい。ナイロビ総会を評しまして、愛知大臣は、一応そこで何らかの成案が得られるような一つの目標と見ていいのじゃないかと言っておられるようでありますし、フランスの大蔵大臣ジスカールデスタンは、これは一つ段階といいますか、ステージにすぎないというふうなコメントもしているようでございますし、アメリカの財務省のボルカーですか、高官あたりは、いろいろの重要問題がナイロビ以降も残るのではないか、こういうふうなことも言っておるようでございまして、これからの見通しというものは、模索は続けていくでありましょうが、一つの線にまとまっていくことはなかなかむずかしいのではないかというふうな感触を私も持つわけでございます。  そういった中にあって、わが国大蔵大臣としてどのような通貨政策を策定し、実現していかれるか、なかなかむずかしい局面を迎えてたいへん大臣責任は重かろう、と申しますか、また困難な問題に直面されることについて御同情申し上げるわけでございますが、振り返ってみますと、第一次大戦後、一九三一年ですか、イギリスが金本位制を脱しまして、そして翌三二年にはオタワで英ポンド圏の会合をいたしまして、これがきっかけとなって、まずポンドスターリング圏ブロック化し、ひいては世界じゅうをブロック化方向に追い込んで、経済的な第二次大戦の原因にもなったとさえいわれるわけでありまして、これからはそういったブロック化は極力避けるべきでありましょうが、そして、かねがね愛知大臣が言っておられますように、ワン・ワールド・システムの確立に向かって進むべきでありましょうが、しかし、現実というものは必ずしもそう理想どおりに動くかどうかわからぬという要素もあるようでありますから、あくまでもたてまえはたてまえとして、世界各国と協調しながらその方向に進みつつ、同時に、円というものを世界通貨大勢の中でどのように持っていくか、位置づけをしていくか、こういうことまでやはり考えながらかじをとっていただきたい、こういう感じを持っておりまして、そういう意味では、これからの国際通貨策定についての基本戦略と申しますか、円の位置づけを含めまして、大臣がどのように考えておられますか、伺いたいと思います。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ごもっともでございまして、日本としては、やはり一つ世界経済という基本的な原則の確立ということをあくまで旗じるしとして進みたい、こう考えておる次第でございます。  私は、先般の二十カ国委員会におきましても、この一つ世界経済ということは、広く、現在のIMF体制だけではなくて、イデオロギーを越え、国境を越えてほんとうに世界一つであるという基本的な考え方のもとに国際通貨制度確立するということが理想でなければならないということをまず冒頭に申したわけでございまして、このたてまえというものはあくまで守ってまいり、また各国に同調してもらうようにあくまで努力を続けたいと思っておるわけでございます。そういう基本的な一つのディシプリンといいますか、これについてはコミュニケにおきましても各国が承認をして、コミュニケにもその思想が出ているわけでございます。  しかし、同時に、国の数もきわめて多いわけでありますし、それぞれの立場もございますし、またきわめて技術的な面もありますが、同時に、関連する経済政策国内政策の問題もございますから、比較的短期間の間にはたして望ましい結果が十分にでき上がるかどうかということについては、それぞれ思惑もございましょうし、必ずしも短期間にまとまるものとも思えない。これは御指摘のとおりであると思います。いろいろ見通しの問題となりますと、各国それぞれの見通しも異なるニュアンスがあろうと思います。しかし、まあ日本としてはあくまでいま申しました旗じるしのもとでできるだけの努力をしてまいりたいと思います。  そこで、現在からどういうふうにしていくかということにつきましては、まず、現在日本がとっております変動相場制は、その後ECにおいても共同フロートということが行なわれておりますし、また相互に変動相場制というものをいわば認め合った形になり、かつ、これを各国ともいろいろの努力によって平静に、また一方では、先般のような突如として混乱状況が起こらないようにこれを防ぎながら、これをしばらく続けていくということになっておりますから、日本といたしましても、現在の変動為替相場フロートのやり方ができるだけ平静に推移していくように政府としてもあらためて努力をいたしまして、貿易関係やあるいは国内の企業などが懸念、不安を持たないように国内政策も十分展開していくようにしなければならない。  それからその次の御指摘の、円はどういうふうにしていくかという問題でございますが、端的に申しまして、円を国際基準通貨一つにするというような考え方は私はとるべきでないと思いますけれども、しかし、何らかの形において、決済手段といいますか、国際的によい方法があり、かつ、関係国などが積極的にこれを期待するという方向が出てくるならば、それに応ずるような体制は寄り寄り検討しておく必要があるのではないか。しかし、具体的にはこれもなかなかむずかしいわけで、国益を守りながら、そうして円というものの地位が将来にわたって安定した通貨であるようにするためには、くふうが要るところであると思いますから、これにつきましては慎重に、かつ各国動向などを注視しながら、必要ならば適切な方法を考えるという程度に現在のところは考えておるわけでございます。
  7. 松本十郎

    松本(十)委員 円は、いまやドルあるいはEC通貨と並んで世界通貨の三つの柱の一つにもなろうとしているわけでございますので、国際協調を保ちつつ、いま大臣が言われましたように、国益をも十分踏まえて、ひとついいかじとりをお願いしたい、要望しておくわけでございます。  と同時に、先ほどお話の出ましたコンソリデーション、これは日本、西独というのはドルの大きな債権国でございまして、将来のドル信認回復あるいは交換性回復というものを頭に置きます場合には、やはり一つ通り越さなければならない山だと思うわけでございます。しかし、この問題、背後にはいろいろの条件その他をはらんでおりまして、巷間、人のことばをかりますと、第一次大戦後の対独賠償問題にも比すべきような深く大きな問題ではなかろうか。ヤング案ドーズ案が出て、幾たびか協定ができたのがまた改定されながら十数年、いな、それ以上かかってようやく決着がついたというふうな対独賠償問題というのは問題でございますが、今度は若干ニュアンスは違うわけでございますが、しかし、ドル債権をどう処理するかということは、やはり利害が相当複雑にからんでおりますので、大臣先ほど、前向きに話を進める用意があると言われましたが、そういう根の深い、時間のかかる問題だというふうな腹づもりでやっていただくべきではないだろうかという感じを持っておりますので、この点も申し上げ、そういうことを頭に置きます場合に、やはり現在日本の保有しておりまする二百億ドルに近い外貨準備というものを、この辺で——経常収支として必要なドル外為資金特別会計に残しておいて支払い準備として用意しておく必要はございましょうが、それを上回る分につきましてはこの際思い切って活用して、そうして日本のためにもなり、また近隣諸国、友好国のためにもなり、さらには世界のためにもなるような利用のしかた、活用のしかたということを考えていただくべきではなかろうかという感じを持つわけでございます。  先週末の参議院の予算委員会で、第二外為構想というものについてちょっと触れられたようでございますが、私の感じを忌憚なく申せば、外為ということばは何となく通貨的な狭くかたい観念主義で、何かイメージとしてよくないわけでございまして、むしろこれは新しい前向きのいい名前を考えていただきたいと思います。特別会計と申しましょうか、基金と申しますか、そういうものに現在の外為会計のうちの一部の外貨を移しまして、そして平和のための基金、あるいは発展途上国に対する援助、あるいはまた、国際協力ファンド、あるいはまた、世界の各地域地域社会開発協力するための基金、こういうことで活用をしまして、日本貿易その他でかせいだ外貨準備というものをただ漫然とため込んでいる国ではないんだ、世界の中の日本として、世界の平和のために、あるいはまた、発展途上国発展協力するためにその責任を大きく果たそうとしているんだ、こういう前向きの活用方策というものを考えていただきたいと思うのでありますが、これについての大臣の御所見はいかがなものでございましょうか。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一のコンソリデーションの問題ですけれども、概観いたしますと、各国が保有するドルは総額六百億ドルを上回っております。これは日本の場合もそうであると思いますけれども、必ずしも国際収支悪化の場合の支払い準備としてどうしても必要なものとは限らない、いわゆる過剰なドルが相当含まれていると考えるべきものであると思います。この過剰ドルを、流動的な形でなく、何らかの形で固定化しようという考え方がございまして、これがいわゆるコンソリデーションといわれている問題でありますけれども、先ほどもちょっと触れましたように、これはドル交換性回復の問題と密接に関連しておりますし、その実現の方法、それから関連する条件等については、二十カ国委員会においても検討を加えていくことになりまして、その検討に参加するということについてはわがほうとしても異議はないということにいたしておるわけでございます。  しかし、固定化するということになりますと、せっかく持っているドル、これは一方では紙くずになってしまったという見方もありますけれども、同時に、国際的な支払い手段としあるいは通貨として十分な役割りとそれに値する地位を依然として持っているわけでありますから、わがほうとしてはこの積極的な活用をはかるということは、ただいま御指摘のとおりに私も考えるわけでございます。松本委員にはかねがねいろいろな点から積極的な御検討をいただいておることを承知いたしておりますが、積極的なドル活用については、そういったような建設的な御意見政府としても十分取り入れて、実効のある手段方法を考えてまいりたいと思っております。  第二外為構想というものは、いまの外為会計とは別に外貨活用方策を何らかの形で積極的に生かすようにしたいという一つ考え方でございまして、これが唯一とも思いませんし、はたしてこれで目的が十分達せられるかどうかということについても、政府としてもいろいろの角度から検討をいたしておりまして、内容等はまだ固めておりません。これは立法措置も当然要ることでございますが、御審議をいただくような法案の準備はまだできておりません。同時に、現存の制度におきましても、たとえば外貨貸し制度というようなものは相当に活用できる面もございます。最近まではその利用の額も思ったほどでございませんでしたけれども、最近になりましてこの利用の幅もかなり広がってまいりました。  それからもう一つは、実際にプロジェクトに適当なものがないということも一つの障害でございましたし、またプロジェクトを推進するにいたしましても、現実ドル資金がディスバースされるまでには相当の期間がかかるというような点も一つの難点でもございますし、場合によれば、いま御指摘がありましたような南北問題その他も頭に描きながら一つファンドというようなものの設定とか、これもまた既存のものの国際的な機関の活用ということもあろうと思いますが、それらもあわせましてひとつ早急に検討して、ドル活用ということを一方においてやる。コンソリデーションというのは、どちらかといえば消極的な考え方でありますし、その内容等によってはわがほうとしてもあまり適切でないというような案にもなりかねませんので、それらとの関連も考えながら、現実過剰ドル活用ということに積極的な目を向けていくべきであろう、この点については私も全く同感を表明いたしたいところであります。
  9. 松本十郎

    松本(十)委員 時間も参りましたので、まだまだ質問したいこともございますが、最後に御要望だけ申し上げまして、終わりたいと思います。  その一つは、ただいま大臣の言われました外貨活用問題、まあ外に対する活用をあまり打ち出しますと、それほど余裕があるならば国内の福祉に回せということもありますので、そういった内外に向かって調和を保ちながら活用をしていただく。また外に向かっても、従来のとおりのようなただ経済協力だけでは、エコノミックアニマルの延長ではないかというふうな批判が発展途上国から出るおそれもありますので、そういうことに限定いたさないで、もっと広く、平和とか社会開発とか、先ほど申しましたような広い意味での南北問題、地域問題の解決発展のために、ある意味においてはいまチャンスでございますので、早急にその活用検討していただいて成案をまとめるようにお願いしたい、これが第一点であります。  それからいま一つは、先ほどから大臣の御説明にありますように、何と申しましても現在の通貨情勢がなかなかむずかしい局面を迎えておりまして、昭和の初めに濱口蔵相あるいは高橋蔵相がほんとにきびしい時期を経たときから数えて四十年余りでございますが、それにも比肩すべきむずかしい内外局面を迎えているのが、現在の世界経済であり、日本経済また通貨情勢だろうと思うわけでございまして、巷間通貨愛知といわれている愛知大臣でありますから、格段の御勉強と御努力を願いまして、このむずかしい局面をひとつりっぱに乗り切っていただくように特にお願いをするわけでございます。  以上、二つを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  10. 鴨田宗一

  11. 平林剛

    平林委員 きょうは、初めに私取り上げたいのは、先般衆議院の予算委員会でわが党の阿部助哉委員が問題を提起いたしました商社の為替差損に対する政府の取り扱い方に関して、少し問題を詰めてお尋ねをしてまいりたいと思います。  初めに当局のほうからちょっと資料の説明を願いたいと思うのですが、予算委員会に提出した商社の四十六年上期の為替差損は、大体上期だけで、丸紅、三井物産、三菱商事、伊藤忠その他十二商社で百七十八億九千七百万円あったという資料が提出されておるわけです。四十六年の下期の為替差損はどのくらいございましたか。
  12. 坂野常和

    ○坂野政府委員 四十六年下期の同じ十九社についての為替差損額は、二百五十四億五百万円であります。
  13. 平林剛

    平林委員 いまお話しになった四十六年下期のものは、為替差益も計算に入れての話でないでしょうか。実際に差損が出されたのは、伊藤忠、丸紅、当期は三井物産と三菱商事が一番多くて、九社で計算をしてみるのがほんとうで、そうすると二百七十一億八千七百万円、こうなると思いますが、いかがですか。
  14. 坂野常和

    ○坂野政府委員 そのとおりでありまして、さきにお答えいたしましたのは、差益が含まれております。
  15. 平林剛

    平林委員 同じく四十七年上期、この期間における為替差損については幾らになりますか。
  16. 坂野常和

    ○坂野政府委員 損だけの集計ができておりませんが、具体的に申し上げますと、トーメンが一億二千五百万円、三井物産が八億九千万円、住友商事が一億四千二百万円。それから、これは商社ではございませんが、トヨタ自動車販売が千六百万円、金商又一が六百万円。以上が損の額でございます。
  17. 平林剛

    平林委員 ただいまお話しのとおり、四十六年上期、同じく下期、四十七年上期、合計いたしますと四百六十二億六千三百万円、こういうことになるわけでございます。この期間で一番大きな差損を計上いたしておりますのは、三井物産の百三十三億四千九百万円、三菱商事の百七億六千万円、丸紅の百三億六千九百万円、次いで伊藤忠の五十七億九千万円、こういうことになるわけですね。これは初めにはっきりさせておきたいと思います。  次に、国税庁長官おいでになっておりますけれども、この大手商社の税金の申告の状況についてちょっと御説明いただきたいと思うのです。これは同じく四十六年の三月期、四十六年の九月期、四十七年の三月期、四十七年の九月期と、おもな二、三社のトータルでもけっこうですから、これをちょっとお話し願いたいと思います。
  18. 近藤道生

    ○近藤(道)政府委員 まず、新しいほうから申し上げますと、四十七年九月期申告所得、大手二、三社について申し上げますと、三菱商事が百十五億三千九百万円、三井物産が百十億四千九百万円、丸紅が九十七億一千九百万円、伊藤忠六十億五千百万円、住友商事三十二億八千百万円ということになっております。  この前の期の、四十七年三月期の申告所得が、三菱商事が七十一億四千百万円、三井物産が百三億八千七百万円、丸紅が三十一億一千六百万円、伊藤忠商事が八十三億六千百万円、住友商事が五十三億四千七百万円。  その前も申し上げますか。
  19. 平林剛

    平林委員 それでいいです。  そこで、私、長官にお尋ねしたいのですが、たとえば三井物産を取り上げますと、四十六年三月期と九月期を便宜四十六年と見まして、そのときの売り上げ利益は八百七十二億千九百万円、これに対して税金の申告は百十億九千百万円、つまり、売り上げの利益に対して八分の一以下の申告になっている。それから三菱商事を例にとりますと、四十六年三月期と九月期、これを四十六年と見まして、売り上げの利益が九百十億一千万円、これに対して税金の申告は百二十八億二千八百万円、つまり、これも八分の一。丸紅について申し上げますと、同じように四十六年三月期、九月期合計しますと、五百八十六億千八百万円の売り上げに対し、税金の申告は四十七億八千二百万円、つまり、これは十一分の一というぐらいになります。四十七年で同じように三月期、九月期の例を見ますと、三井物産が九百五十四億五千六百万円の売り上げ利益をあげているのに対し、税金の申告は二百四億三千六百万円、つまり四分の一以下。三菱商事も同じように計算をしますと、九百七十四億三百万円の売り上げ利益があるのに対し、百八十六億八千万円の申告。丸紅商事を例にとりますと、六百四十六億四千五百万円の売り上げ利益に対し、百二十八億三千五百万円、こういうことになっておる。売り上げ利益に比較いたしまして税の申告が非常に少ない。これはどういうことになっておるのでしょうか。
  20. 近藤道生

    ○近藤(道)政府委員 その点は、商社につきまして、御承知のように前からこういう比率の数字になっております。それはいろいろな税法上の措置その他によってやっておりますが、ただ、私どもといたしましては、その申告の結果につきまして独自の立場で調査を行ないまして、それぞれ適正な処理をいたしております。
  21. 平林剛

    平林委員 そこで私は、商社の現状を把握する上において、資料についてお話をいただいたわけであります。  そこで問題は、「基準外国為替相場の変更に伴う外貨建資産等の会計処理に関する法人税の取扱いについて」、国税庁長官が通達を出された。これは、もちろん、長官は大蔵大臣とも相談をし、政府の方針に従って通達を出されたと思うのでありますが、この問題に関連をして阿部委員質問したわけであります。会計処理上あるいは企業会計上一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って企業会計審議会で十分公正に考えてもらって、その審議会の意見をいれて徴税の基準にしたというのが政府態度でございますけれども、私はただいま申し上げました数字あるいは徴税の現況から見て、たとえ税務会計上あるいは企業会計上一般に公正妥当と認められるという政府の解釈があったとしても、税法上、税の公平の原則からいきますと、国民感情にそぐわない問題がある、こういうことがやはり正しい問題提起だと思うのであります。  この企業会計審議会の委員、特に外貨建て債権債務等の会計処理を審議する部会の構成メンバーはどなたたちでございますか。
  22. 坂野常和

    ○坂野政府委員 委員は、学識経験者及び関係政府職員の中から大蔵大臣が任命するという審議会で、政令の規定になっておりまして、それに基づきまして、学者、産業界の実務家、それから関係団体の実務家、それに政府関係職員としては法務省の民事局長、大蔵省主税局長国税庁長官、証券局長というものが入っておりまして、当時の意見第三がつくられました当時は、これは特別部会というところでこの審議が行なわれたわけでございます。そのときの委員の数は二十三名でありまして、現在は少し減りまして委員が十九名というふうになっています。
  23. 平林剛

    平林委員 この問題を取り扱った企業会計審議会の特に特別部会、ここの構成はいまお話になったとおりでありますが、それを一べつしてみますと、財界出身が七名、いわゆる官僚、政府側の者が四名、大学教授が九名、中小企業団体一名、つまり、財界と政府の官僚の主導のもとにおける構成が強い。出てくる結論は大体見当がつく。特にこの特別部会におきましては臨時委員というのを指名している。臨時委員を特別部会に四名送り込まれましたけれども、そのうち三名は財界の幹部です。審議会委員の臨時委員九名のうち財界から五名です。これでは私は、今度の取り扱いが国民的立場で見て、どうも偏向があるという疑問を持たれるというのは当然でないか、こう思うのでございます。  本論に入る前に、こうした審議会のあり方、構成について、大臣、何か考える必要がないでしょうか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御意見拝聴いたしましたが、固執するわけではございませんけれども、企業会計の問題というのは非常に専門的なものでもございますので、この構成のメンバーをごらんいただきましても、たとえば財界と申しましても、その道の専門家といいますか、そういう方に御委嘱しておるたてまえでございますから、十分専門的な立場で、偏することなく、企業会計そのもののあり方ということについて、この審議会の委員の方々にその後も非常に御熱心に、むしろ学問的の立場で客観的に御検討いただいているようでございますから、私は特に変更を必要としないかとも思いますが、御意見の点は私も十分ひとつ心にいれて、かりにも世間から見て偏向的でないというような運営をするようにいたしたいと思います。
  25. 平林剛

    平林委員 企業会計上一般に公正妥当と認められる会計処理の基準、つまり企業会計審議会の意見をいれて徴税の基準にした、こういう話でございましたけれども、先ほど私が申し上げましたように、四十六年、四十七年で四百六十二億六千三百万円の損金が損金の取り扱いをされたわけでありますけれども、為替相場の変動がなかりとすれば受けたであろう取り扱いと比較して、非常に大きな金額ですね。これは租税特別措置法に従来規定をされてあります措置で取り扱われるものを加えたら、もっと大きな金額になる。たとえば造船だとか、プラント輸出をやっている企業が、租税特別措置法のいまの六十八条ですか、これで申請をした場合には、これは対外債権をかなり持っておりますだけに、これはたいへんな金額になる。こうしたことを、法律に基づくならこれは別でありますけれども、一片の通達で認めていったということについては、客観的に見て私は公正妥当な徴税結果になってはいないと判断するのですけれども、大蔵大臣のお考えをあらためて承りたい。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 従来の取り扱いとして、為替の差損益の会計処理について企業会計審議会でいろいろと御検討いただいて意見が出ておりますことは、御承知のとおりでございます。これを従来の取り扱いとしては税務上もその意見というものが公正妥当な会計処理であるということを認めて、そういう趣旨を国税庁の長官の通達にいたしましたことは事実でございまして、その点については、先般予算委員会でも、阿部委員から非常にいろいろの角度から御意見を交えた御主張を伺いました。ひとつ、企業の会計の処理ということ、そうして審議会の意見というものと国税の徴収のあり方、その基準ということについての取り扱いについては、今後十分政府としても検討いたしたい、こういう趣旨を申し上げたわけでございます。  ところで、三月二十九日にあらためて企業会計審議会の意見が示されましたことは御承知のとおりでございますから、この会計処理に関する意見というものと法人税の取り扱いにつきましては、先般の予算委員会における御論議も十分踏まえた上で、今後とるべき措置について検討をいたしたいと、私の現在の立場としてはさように考えておる次第でございます。
  27. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この問題に関連しまして一言お伺いをしたいのでありますが、先般の予算委員会で、この商社の為替の差損、税制の処理の問題を取り上げました。これについては、一片の通達で処理するのではなく、法令の形で、国民の審査を経た上で処理すべきものであるということを強く主張し、大蔵大臣もこれについては前向きに検討する旨を答弁されましたが、重ねてその所信をお伺いしたいのであります。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 外貨建て債権債務の換算についての処理基準につきましては、課税所得算出上の影響も大きく、これを税制上何らかの形で法令に規定を設けるというのは確かに一つ考え方でございまして、阿部委員の御主張は十分理解できるところでございます。ただ、この問題は会計技術的な性格の問題でもございますので、企業会計、商法との関係や諸外国の慣行等も十分研究をいたしたいと存じます。その結果、御意見方法によるのが最も適当という結論が出ますれば、御意見のとおり法令を出すことにいたしたいと考えております。  ただ、当面の税務処理につきましては、そのよるべき方法を全く示さないということになりますと、その扱いが区々になりまして、税務上のトラブルが続出し、多数の納税者に御迷惑をかけることになるおそれもありますので、そのような事態を予防するために、暫定的な措置として、企業会計審議会の意見第六に即した、企業の会計処理は、法人税法第二十二条にいう公正妥当な会計処理に該当するという統一的判断に基づいて処理してまいらざるを得ないと考えますので、この点は御理解をいただきたいと思います。
  29. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうしますと、一応暫定的にはいま処理するけれども、検討の結果、適当ならば法令を出す、こういう結論でございますか。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そのとおりでございます。
  31. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、当面の処理についても、予算委員会及び当大蔵委員会の審議の趣旨を下部に十分徹底していただきたいと思いますが、いかがですか。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御趣旨のとおり、十分下部に徹底いたします。
  33. 平林剛

    平林委員 これで大体方向は煮詰まったわけでありますから、これ以上この問題は触れません。ただ、為替差損の取り扱いが、初めてのケースではございますが、手だてを講じてすみやかに処理されたのに比較いたしますと、日銀の為替差損のほうの取り扱いは、これは依然として政府態度がはっきりしておりません。特に、日本銀行の為替差損は、四十六年度及び四十七年度において相当の金額になっておるわけでございまして、きょうは時間がありませんから、こまかい数字までは申し上げませんけれども、納付金は出せなくなる、こういう状態になることは早晩必至であります。四十八年度の国家予算が審議されているときであるから、また、いままで政府のとってきた態度から見まして、そう簡単に答えられない問題かもしれませんけれども、いずれははっきりさせなければならない。そのときはどうするつもりか、こういう角度で大蔵大臣の御見解を示してもらいたいと思います。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日銀の保有外貨の評価につきましては、御承知のように、基準外国相場によって評価をいたすことになっておりますが、現在変動相場制でございますので、よるべき基準がないという状態でございますから、従来的な考え方で申しますならば、固定相場に戻りましたときの公定外国為替相場を基準にして評価がえをする、そしてその処理は、従来行ないましたような処理方法で処理をいたしたいということを現在のところは申し上げるにとどまらざるを得ない実情でございます。
  35. 平林剛

    平林委員 変動相場制もしばらくは続くでしょうけれども、いずれ固定相場制に復帰したいという考え方もございます。その時期がいつになるかというのはこれからの問題でしょうが、見通しの上に立てば、結局、昭和四十九年度の予算のときにはその措置がとられる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは率直に申し上げますけれども、現在国際通貨制度確立ということに各国努力をいたして結論を急いでいるわけでございますから、それとの見合いでどういうふうにするがいいかということについては、いわゆる従来のような固定為替相場になることが望ましいとしても、必ずしも従来的なようなかっこうにはならないような場合もあるし、それらを十分勘考いたしまして、四十九年度の歳入計画あるいはその他の場合に、どういうふうな、制度的なやり方も含めて、新しいやり方を必要とするか、あるいはまた、変動相場制というものが予算編成の時期にどうなっているかということなども十分情勢の推移を見守りながら適切な措置を講じたいと、現在私の頭ではそう考えておりますけれども、しからばどういう方法がいいだろうかということになりますと、率直に申しまして、現在のこの世界的な動きというものも大きなその要素になると思いますので、ただいまのところ、的確にその点についてお答えすることは現在の時点ではできませんことを御理解いただきたいと思います。
  37. 平林剛

    平林委員 次の問題は、最近の日本経済情勢と、それから公定歩合の引き上げ、過剰流動性、この問題につきまして大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。  最近の日本経済が、インフレと投機の波に襲われて、私どものことばでいえば、ギャンブル経済の様相が強まっておる。最近は、ばくち経済なんという表現もあらわれてきたような深刻な状態でございます。三月三十一日、公定歩合引き上げに際しての大蔵大臣の談話を読みましたけれども、これによると、「景気の上昇基調は一段と強まっており、諸物価の騰勢も著しいものがある。」こういう認識に立たれておるわけでございますが、私は、今日の事態は、政府みずからこれをインフレだと言い切るのはなかなか問題がありましょうけれども、かなり深刻なインフレ経済におちいりつつあるという認識はあっていいんじゃないかと思うのですけれども、いかがでしょう。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は、昨日も当委員会で高沢さんの御質問にお答えしたのでありますけれども、政府といたしましては、インフレになる懸念が相当顕著である、こういうふうな認識に立ちまして所要の措置をいたしたつもりでございます。現在がインフレであると断定するのは尚早であり、かつ、インフレというものの定義もいろいろございますということは、昨日も論議がありましたとおりでございます。
  39. 平林剛

    平林委員 このことに関連して、日本銀行の総裁が四月三日パレスホテルで経済連の首脳と定例懇談会を行なったときに、今度の公定歩合の引き上げは、昨年末の物価急騰や景気の急上昇に対処して行なったものだが、金利操作だけでは引き締め効果が十分できないから、公共投資の抑制も必要であるという趣旨の発言をなさって、財政の繰り延べを求める考え方を明らかにしておりますけれども、これについてはどう考えますか。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私も、財政の運用についても十分流動的、機動的に対処していかなければならないと思います。必ずしも繰り延べるということは当たらないと思いますけれども、機動的に運営してまいりたい、こういうふうに考えております。
  41. 平林剛

    平林委員 機動的にというと、どういうことですか。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、やはり年度を通しましての動向を十分見守りながら機動的に運営したい、こう考えるわけでございまして、場合によりましては、たとえば公債等につきましても、流動性という問題もございますから、これはできるだけすみやかに発行するとか、しかし、その支出につきましては、時間的あるいは地域的その他の考慮を加えまして運営することにいたしたい、実はこうやってインフレ警戒の陣立てを金融上におきましていたしたわけで、それと金融財政が一体的に運営されなければならないわけでございますが、たとえばこういうふうな引き締めをやりまして私は効果が相当に出てくると思います。場合によれば相当以上になることもある。やはり景気の調節ということも十分考えていかなければならないと思います。それらのことを念頭に置いて、非常に大事な時期でございますから、歳出の支出等につきましても十分に考慮してまいりたいと思っております。
  43. 平林剛

    平林委員 いま大臣がおっしゃられた方法もあるかと思いますが、どうも最近の政府の財政政策金融政策というのが機動的じゃない。あと追いで、ちょっとタイミングを常に少しずつ失いつつあるという傾向にあるのでございます。ですから、私は、これからのむずかしい段階におきまして、機動的に発揮するといいましても、どの程度信用していいのか、この点が心配であります。たとえば、振り返ってみると、一昨年の円の切り上げ、いわゆるドルショックがあったときに、まあ私どもも同じでしたけれども、不況克服という声につられましてそして大型な補正予算を組みました。しかし、いま考えてみると、それは結果において的確な判断とは言えなかったといううらみが私はあると思う。これは政府だけは責められないかもしれませんけれども、全般的に見てその批判を免れることはできないと思います。そればかりか、今度は政府のその後の措置を見ますというと、昨年の六月、公定歩合の第六次の引き下げを行なった、これは私ははっきり言って、金融緩慢に拍車をかけてしまった、こういうことが言えると思うのです。また、預金準備率の引き上げのときも、あのときは、むしろ公定歩合の引き上げのほうを先にやるべきじゃないかという意見があったことは御承知のとおりでありまして、これもまず取りかかったのが預金準備率の引き上げ、しかし、現在の金融状況あるいは手元流動性のことを考えると公定歩合の引き上げのほうが効果的であったのに、それをやたらやるというと、四十八年度の国家予算を審議しているときに、政府の予算自体に対する批判としてはね返ってくるのをおそれてちゅうちょした、タイミングをそのために狂わせた、こういうことの批判も私は言えると思うのでございます。特に昨年の夏ですか、経済白書が出されたときの内容を読んでみますと、あのときも、当面の経済政策方向として、第一の課題は需給ギャップの解消であるというようなことをいっておるわけでありまして、こんなことから考えますと、私は、政府経済に対する考え方、運営のしかたが歯車が狂っている、そして機動的でない、タイミングを失っておる、こういうことはやはり批判を免れることができないのじゃないかと思います。  ですから、その観点から考えますと、私は、今日の経済情勢に追い込んだ最大の犯人は一体だれなのかという点について、もう少し政府の深刻な反省というものを求めたいと思うのですが、その点についての御感想を承ります。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国内、国際的に流動の激しいときでございますから、機動性、スピードの出し方等についていろいろ御批判をいただいておりますことは、これは謙虚に政府としても受け取るといいますか、十分これを胸に置いて、そして先ほど申しましたように、ひとつ政府としても機動的に、むしろ先行的にかじとりをしなければならないということを私もしみじみ痛感をいたしておるわけでございます。そういう点につきましては、謙虚に反省すべきところは反省して、ちょうど年度がわりのときでございますから、心を新たにして努力を新たにいたしたい、私は現在こういう心境でございます。
  45. 平林剛

    平林委員 大蔵大臣、しばしば過剰流動性の問題が議論されるのでありますけれども、現在の過剰流動性というものをどういうふうに把握なさっておるか。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は過剰流動性ということについてこう考えるわけでございます。やはり何と申しましても四十六年から四十七年、ことに前半にかけまして、一つは、具体的に言えば外為からの散超といいますか、要するに、輸出超過とかドルが急激に多くなった、その関係国内金融が超緩慢になったというところが一つの問題点でございます。しかし、今日におきましては、外為からの散布超過というものは非常に姿が変わってまいりまして、やはり散布超過であることは事実でございますけれども、その額は非常に少なくなってまいりましたし、これをたとえば三月等における状況を見ますと、国庫と民間の収支等においては引き揚げ超過の動向が強くなってきております。まあそれはそれといたしまして、最近、及びこれから将来におきましては、四十六年から七年前期に起こりましたような状況は、通貨政策、為替政策の面におきましても、ああいう状況は起こさないようにしたい、これが一つの私の念願でございます。  それから、現に吹きだまってきておる過剰資金につきましては、そういった金融状況を背景にしながら、なおかつやはり金融機関の貸し出しの増というものの比重が非常に圧倒的に多いわけでございますから、やはりその現状に注目して、先ほど御批判もいただきましたけれども、私の考えとしては、まず預金準備率の引き上げということをやって、それを背景にして、対象別、目的別にきびしい規制をする。ただいま非常に大きな問題になっておりますが、御案内のように、十大商社とか二十商社とかいうものを対象にいたしまして手形の買い入れ限度制というようなものを創設したということも、まさにそういうところにあったわけでございますが、同時に、中小企業とか農林関係あるいは住宅関係というものについては、四十八年度予算で貸し出しの金利も相当低下させております。やはりこれはいわば広い意味の特利でございますから、これはどうしても続けていかなければならない。あるいはまた、公定歩合の引き上げということは預金金利の引き上げということを当然伴うわけでございますが、それらと物価の動向というようなことをいろいろ勘考いたしまして、先ほど御批判をいただきましたが、世評からいうと、公定歩合の引き上げは時期が少しおくれたのではないか、こういう点もあわせて御批判は謙虚に私もちょうだいしているつもりでございますけれども、これで引き締めといいますか、今日における金融政策のいわば陣立てが整った。ここで金融財政、ポリシーミックスということばがよく言われますけれども、これに誤りなきを期してまいりたい。そしてこれに今回提案しておりますような買いだめ、売り惜しみを克服する法律とか、あるいは土地に関する税制とか、あるいは国土総合開発法でありますとか、いろいろなものが総合的に効果を発揮すると、また一面においてあまり引き締まる状態が強く起こることも今後においてあり得るということも念頭に置かなければならない。そういうときに国民に御迷惑をかけないようにという心がまえで、機動性の発揮ということは真剣に考えていかなければならないと思っております。
  47. 平林剛

    平林委員 過剰流動性の吸収のために金融面での総合政策を実施中であるということは、私も承知いたしております。その効果がどういうふうにあがるか、これも今後の注目すべき課題であります。  ただ、私ここでお尋ねしておきたいことは、いわば過剰流動性の見方、それはいろいろな角度からあると思うのですが、指標一つの中心になりそうだというのは、マネーサプライ、つまり現金通貨と預金通貨の合計と国民総生産との比較、これは非常にわかりやすいと私は思うのであります。たとえば、昭和四十六年度におけるマネーサプライは二十七兆六千九百三十一億円でございまして、前年対比で二九・七%の増加になっておる。ところが、これに対し国民総生産は、前年対比で名目で一〇・八%ですね。国民総生産でさえも、これは世界で一、二を争う伸び率と騒がれておるにかかわらず一〇・八%、その三倍近い二九・七%という増加率を示しておる。これが今日過剰流動性吸収を財政でも金融でも急がねばならぬという一つ指標になっていると私は思うのであります。四十七年度にこれがどうなったか、それからいまおやりになっておる金融あるいは財政における機動的な運営でこれがどうなるかということは、一つ政策目標としても私は考えていいのじゃないかと思うのですが、これについてどう考えますか。
  48. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いわゆるマーシャルのKというような指標一つ考え方であり、指標であると思います。そして確かに、GNPとの比率とか、それからまた、企業の手元流動性、その比率の動きというものは注目すべきものであると考えますが、結論的に申しますと、日本の場合におきましては、結果において、たとえば金融の引き締めあるいは緩慢というようなことが、通貨あるいはマーシャルのKに、預金、あるいはこれに長期のものを入れるか入れないか、いろいろのやり方がございますが、そこへ結局あらわれる。それで、通貨の回転の速度ということももう一つ隠れた問題としてあろうかと思いますけれども、こういう点は、私の考え方としては、金融政策の浸透の度合いにおいて、結果においてここにあらわれるものである。ここにあらわれた指標において、それではたとえば通貨の量のほうから規制するというようなことは、現在の体制の上においては行ない得ないところでもあるし、また適切ではないのではないか。こういう面におきましては、私としては、諸般の経済政策の効果が結果においてこういう点にあらわれてくるものである、こういう考え方をとっておるわけであります。  なお、最近におけるマネーサプライに関連する指標は、ここにも持っておりますけれども、御承知だと思いますから省略いたしますが、たとえば企業の手元流動性の比率にいたしましても、昨年の第四・四半期では一・二七ということになっておりますが、これは金融の引き締め、特に商社関係等に対するきびしい規制というもので結局これが減ることになるわけでございましょうし、また手元流動資金が残っております場合でも、借り入れに依存する度合いが非常にきつくなれば、自然手元資金というものが乱用されないということの結果にもなるわけでございますから、そういう点に効果を期待して、先ほど申しました陣立てが整い、あるいはまた、その陣立てによるところの具体的な措置が逐次進行しておりますので、現在どの程度にこれが数字の上にあらわれているかというところまではまだ状況がはっきりいたしませんけれども、数カ月たちますと、これがいろいろの面の指標の上にも逐次あらわれてくるであろうと考えております。
  49. 平林剛

    平林委員 時間もありませんから、この問題は、私はただいま申し上げた意見だけを申し上げておきたいと思います。  これに関連して、ちょっと忘れたのですけれども、公定歩合の引き上げに伴って預貯金の金利引き上げについてはどうするつもりですか。
  50. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 本日金利調整審議会が二時から開かれる予定でございます。すでに、公定歩合引き上げの政策委員会の決定がございましたときに、大蔵大臣から、預金金利の変更の命令が日本銀行政策委員会に対して出されておるわけでございます。きょうの午後二時からの金利調整審議会において審議会としての意見を取りまとめ、これを政策委員会に報告し、政策委員会大蔵大臣に報告する、かような手はずになっておるわけでございます。
  51. 平林剛

    平林委員 聞きたいことはたくさんあるのだけれども、時間も参りましたから、最後に、先ほど問題提起がありました第二為銀構想ですか、これはむしろ第二外国為替特別会計といったほうが適当かもしれませんけれども、これについて田中総理も予算委員会や何かですでにいろいろ考え方を述べられております。先ほど質問に答えて大臣も、検討中のお話がございました。しかし、実際には外貨貸し付け制度がすでに行なわれておるようでございますけれども、現状についてはどうなっておりますか。
  52. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点で先ほど松本委員の御質問にもお答えしたわけでございますが、さらに少し掘り下げて申しますと、わが国の対外資産の構成というものは、米英等に比べまして外貨準備の比重が大きいということが特徴だと思います。そして民間の対外直接投資などの民間の長期の資産の比重が小さいわけでございます。そういう意味から、直接投資とか証券投資を含めて民間の対外投資を促進するという必要性が、この点からも痛感されているところでございます。したがいまして、すでに外貨貸し制度を創設したり、それから、これはいろいろまた御批判のあるところかもしれませんけれども、対外投資を促進する税制上の措置とか、あるいは輸銀の投融資の金利の引き下げであるとか、対外投資の自由化の完全実施というようなことをすでに実行し、あるいは実行しつつあったところでございます。  ところが、この数字はいま国金局長から御説明いたしますけれども、外貨貸し制度にいたしましても、これは先ほど松本委員にもお答えしたところでございますけれども、実は適切なプロジェクトがなかなか見当たらない。それから実際に外貨を必要とするいわばディスバースメントの時期がおくれるというようなところで、目に見えた、金額にあらわれた効果というものが、今日まではあまり顕著ではございませんでした。そういうこともございますので、いわゆる第二外為構想についても積極的にいま勉強をあらためてしておるところでございますが、既存の制度活用ということについてももっと発想を転換する必要があるのではないかということについても、あわせて積極的に施策を展開しようとしておりますが、これらの点につきましても、各方面からの積極的ないろいろの示唆や御提案については、政府としてもいろいろと御意見や御教示をいただいて積極的な具体性のある政策を展開いたしたい、こういうふうに考えている次第でございます。  数字につきましては……。
  53. 平林剛

    平林委員 この第二外為特別会計の構想というのは、先回法律案として提出されたときに、利子補給までして石油の買い付けだとかあるいは外為銀行を通じて商社に対して貸し付けるというようなことがありましたから、猛反対、大反対、それで廃案ということに追い込んだのでございます。しかし、現在の外貨貸し付けの制度を実施している状況を見ますと、やはり、利子補給こそないけれども、考え方としては、石油公団とか輸銀とか、あるいは対外経済協力基金とかいう形で外貨活用を考えている。私はこれは少し偏向であると思うのであります。なぜかと言うと、いま大臣も新しい構想なり示唆なりほしいというお話でございましたが、私は、今日外貨が非常にふえて世界でも指を数えられるような保有国になった背景は、いわゆる国民生活の犠牲とか、賃金が安いとか、労働時間が長いとか、あるいは社会資本、社会保障のおくれ、環境の破壊、こういう国民生活犠牲の上に外貨は積み立てられたものである。もちろんそれだけではありませんけれども、そうした国民的犠牲、努力がなくして今日の外貨の増加ということは考えられない。いわば国民の努力の結果であり、保有された外貨は国民共通の財産である、こうとらえるのが正しいと思っている。  そこで、それならば、もちろん、石油の買い付けとかその他のことも、間接的にあるいは大きな意味関連が全くなしとは言えないでしょう。しかし、ただいま私が申し上げた発想に基づけば、現在国民生活で非常に問題になっておる商品投機の対象の木材、それからえさ、大豆、こういうようなものが商社の買い占めあるいは売り惜しみによって暴利をむさぼられ、そのために生活の危機を感じておる。とうふのときもそうでした。五万トンの輸入大豆を放出しただけでかなりとうふ価格の鎮静化に役立ったことは事実。もとには戻らなかったけれども、五万トン放出したおかげでそれだけある程度見通しがついてきた。いま木材にしても、あるいは羊毛、綿花にしても、われわれがやかましく言うものですから、漸次放出体制がとられ、そしてそれが価格低下の方向にいくだろう。いかせねばならぬと思っておりますけれども、こういう事態を考えたときに、ある程度の木材とか大豆とか飼料だとか、そういうものをこのたまり過ぎたドルで買い付けておく。商社の手ではなくて、適当な、公団のようなものを通じて買い付けて備蓄をしておく。そしてもしかりに今後も商社が不当な買い占め、売り惜しみをやるときには、これがダムとなって放水をし、価格の安定に役立たせる。こういう外貨活用のしかたも私はあるのではないかと思います。  ですから、石油を買う、その他海外経済の援助をするという考え方もございましょうけれども、私は外貨の性格から見て、そうした国民生活に直接関連のある問題によりウエートをかけてドル活用をする、このことこそが国民的課題に沿うものではないか、こういう持論を持っておるわけでございます。この点について御見解を承りまして、私の質問は終わりたいと思います。
  54. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私も、この外貨は国民のものである、非常にその点が大事なところだと思うのです。ですから、先ほど来、通貨制度とか、それからそのほうの角度から御答弁申し上げておりましたが、もう第一はそこでなければならない。これはやはり、たとえば輸入の活用であると思います。その点については、全く考え方としては同感でございます。公団というようなものがよろしいかどうか、方法論はいろいろあると思いますけれども、要するに、考え方としては、全国民が均てんし得るようなもので、日本にはないもので、役に立つものの積極的な輸入ということが、輸入政策の根幹に据えられなければならない問題である。そしてそれが、たとえば海外の価格も、このごろは世界的インフレで輸入価格もずいぶん上がって困りますけれども、しかし日本の価格よりも低いものは相当ございますし、それが低い価格で国民の手に渡るようなくふうをこの上とも各省の協力を得てやってまいりたい、こう考えております。その点は私も一番大事な点だと考えております。
  55. 平林剛

    平林委員 これで終わります。
  56. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、増本一彦君。
  57. 増本一彦

    ○増本委員 共産党・革新共同の増本でございます。  私は、時間があまりありませんので、先般のワシントンでの二十カ国委員会の問題につきまして、大臣にお伺いをしたいと思います。  この二十カ国委員会大臣はステートメントを発表されて、その中で^私の手元にあるステートメントの要旨の第三のところで、「私は、まず、為替レート変更以外の手段によって不均衡の是正を図るべきものと考えている。為替レートの変更は、「最後の手段」とまではいかなくても、他の政策手段による努力を行なった後に使用されるべきものと考える。」ということをお述べになりましたけれども、この発表されたコミュニケによりますと、委員たちは、為替レートが国際的な関心事であり、国際的協議の対象とさるべきこと、及び改革後の制度のもとでの為替相場制度は、安定的な、しかし調整可能な平価に基礎を置くべきことを認めたということが中心になっているわけであります。  そこで一つお伺いしたいのは、このことは、大臣が言う、為替レート変更以外の手段によってやるべきだという見通しが、この二十カ国委員会のもとでは、結局為替レートの変更をする以外にないという立場に立ってこういう合意を見たものではないか。それを大臣自身も承認されたということになると、一つは、これによって円の再切り上げ、つまり、フロートの状態が今度固定レートになったときに、かなり大幅な円の再切り上げというものを見通された上でこのコミュニケに同意をされたというふうに思われるわけですが、その間のいきさつと大臣の所見をひとつまずお伺いしたいというふうに思います。
  58. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私のステートメントについては、私はそのとおりに考え、これを率直に訴えているわけでございます。要するに、特に為替相場の切り下げによって自国の利益を守る、そして他国に迷惑をかけるというようなことをするべきではないということが、これはコミュニケの中にも思想としてはっきりしております。それから、為替相場というよりは、それぞれの国内のインフレ対策を中心にした国内政策各国がうんと努力をすべきものであるということも、コミュニケの中の思想に明らかにされているわけでございます。それから、為替レートの問題については、安定したものでなければならない、しかし非常にかたい意味の固定したものでなくとも、調整可能であるということは考えの中に入れてもいい。これが、安定ではあるが、しかし調整可能な平価ということにコンセンサスがあるわけでございます。そして強化されたIMF体制の中の国際的な協議、相談の中でそうした安定したレートをつくるということについては、積極的な国際間のお互いの相談、お互いの支持し合う、理解し合うそういう姿でできることは非常に望ましいことである、こういう考え方でございます。
  59. 増本一彦

    ○増本委員 大臣のこのステートメントによりますと、第六のところで「ドル交換性回復には、既存のドル残高の処理が問題となるが、これはコンソリデーションなどにより解決すべく、討議に参加する用意がある。」こういうように述べていらっしゃるわけです。  そこで、ドル残高をコンソリデーションするという点で一体具体的にどのようにお考えになっているのか。先ほど松本委員質問に対しては、早計に言うことはどうかという御趣旨もありましたけれども、しかし、これだけたくさんのドル残高をかかえている日本が、これを固定化するということになると、これは先ほど大臣も言われたように、ドルは国民のものであるということですから、その方向日本としてしっかりとした主張を持たなければ、それらの国際会議において協議をするということはできないと思うのですね。ここのところでの政府の主張と方向をやはり明確にさるべきだと私は思うのです。その点での政府の御見解を伺いたいと思います。
  60. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府考え方は、一つは、ドルというものは信認が薄らいできた。それから交換性が現在のところない。しかしながら、現在のところでも、国際的な購買力といいますか、通貨としては十分の地位役割りをまだ持っておりますから、これを有効に活用するということを進めていかなければならない。同時に、ドルをたくさん持っている立場からいえば、これに交換性回復するように努力を重ねていきまして、これは国際的協議の中でもアメリカ自身に大いに努力を新たにしてもらわなければならない。同時に、その交換性回復ということと関連して、コンソリデーションということは、いわば日本やドイツは債権者でございますから、債権者として、債務者としてはいますぐ全部を交換性回復はできないというようなことであるならば、若干は固定化ということにも協力しなければなるまいとは思いますけれども、これは最善の方策でないことは、申し上げるまでもないところであると思います。できれば、完全に交換性回復し、そしてこれが信認回復した状態で完全に使えるということが最善でございますけれども、諸般の条件からいって、すでにコンソリデーションという話が国際協議の場でも出ておりますから、そのやり方等について討議に参加する用意があるということを表明したのでございまして、日本が積極的に、たとえば百億ドルはどうだとか五十億ドルはどうだとかいうことは、私は積極的に言うべき立場にはない、これが日本としての国益の上に立っての考え方であろうと思います。でございますから、この関係は非常に微妙でございます。その微妙な問題でありますだけに、現在私として、コンソリデーションについては、具体的に何億ドルはこうなればよろしいということは、現在の状況日本から積極的に意図を表明すべき段階ではない、こういうように考えております。
  61. 増本一彦

    ○増本委員 だから日本としてはやはりドル交換性の問題を強力に主張すべき立場だし、そのことがいまきわめて重要なときだと思うのです。現にアメリカには百億ドルくらいの金はまだある、この金の交換性をやはり日本としては強力に主張するというのが、大臣先ほど言われた国民のドルだという立場からすれば、私は当然のことだというように思うわけですね。その点で、金との交換性の問題について、一つは、どのようにお考えになり、どういう主張や要求を出しておられるのか、また、今後どういうようにお考えになるのか。それとの関係で、大臣のステートメントでは、SDR役割りを高めなければならないとか、「そのためには、SDRの魅力を高める必要があり、特にSDRの価値の面で配慮が必要である。」という趣旨のことを述べておられて、金との交換性よりもこのSDRの問題を非常に強調されている、そういうように私たち受け取るわけですね。これではやはり金とSDRとどっちだということになると、これは当然金であることは間違いないわけでありまして、そういう意味からしますと、私は、いまのドルとの交換性の問題での政府の主張というのは、国民の立場から見ますと、まだまだ非常に問題があるのじゃないか。そこの点で金との交換性をさらに強力に主張をされ、また、その点での政府の所信をはっきりとこの際お伺いしておきたいというように思うのです。
  62. 愛知揆一

    愛知国務大臣 交換性ということは、金との交換性ということだけの意味ではございません。これはSDRとの交換性あるいは他国通貨との交換性ということも、交換性という中には入る観念でございます。  それから、従来からの傾向から申しますと、数年来でございますけれども、金というものについては、通貨と、ことに準備資産と金との関係ということについては、あまり比重を高くする考え方というものがだんだんなくなってきているということも頭に入れておかなければならない問題であると思います。  そういうような環境から申しまして、交換性というこの中には、もちろん金の交換性というようなことも入りますけれども、しかし、ドルというものが信認回復し得るということは、必ずしも金と全額何どきでも交換できるということだけを意味しない、私はこういうふうに考えておりますから、交換性というものの内容等については、相当幅広く考えてしかるべきではないかと思います。
  63. 増本一彦

    ○増本委員 大臣も、そうしてまた田中総理も、先般来の予算委員会などでも、日本の金準備が非常に低いという点はお認めになってきて、そうして従来から金に対する不足の政策についてもやはり反省的な御意見も述べられていたと思うのです。このSDRの価値を高めるということで考えても、単に引き出し権についての金利を高くするとかいうことだけであって、やはり金に取ってかわるほどの価値というものをほんとうに持ち得るものかどうかといえば、それは決してそうはあり得ないというように思うわけです。そういう、これまでの政府の金に対する反省から見て、やはり金の準備の保有高を高めていくという努力がますます重要になってきているということは、いなめない事実だと思うのですね。ですから、そういう点でこのドルとの交換性の問題のときに、やはり金を重点に置くという立場をおとりになることは、私は当然だというように思うのですが、その点での大臣の御所見はいかがなんでしょう。
  64. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日本外貨準備の中で金が八億ドルそこそこであるということは、私は、率直に言って、少な過ぎると思います。そしてこの点については、累次御答弁申し上げておりますように、やはり日本の外準のふえ方というものが異常にわずかの期間の問に急増したということ、それからその間において、先ほどもちょっと触れましたように、外準における金の問題というものが、国際的にもお互いに金の争奪をしまいというようなことが、過去二、三年の間に急にそういう考え方が高まってきたというようなことで、日本としても努力はしましたが、四、五億ドルからせいぜい八億ドル程度にとどまるような状況になっておる事実は、ありのままに国会でも説明申し上げているところでございます。しかし、今後におきましても、金というものにはやはり相当の重点を置いて考えなければなるまい、これが政府の考えでございます。  そこで、ドル交換性の場合におきましても、先ほど申しましたように、もちろん金ということを意識しております。しかし、SDRというものも、現状においてはともかくといたしまして、これの内容や性格が人類の英知ですばらしいものになれば、これは国際通貨基準として最も望ましい形であるということにもなり得るわけでございますから、そういう点もあわせて考えてしかるべきじゃないか、こういうふうに考えているわけでございまして、いろいろの関連性もございますから、交換性というものについてはどうかというお尋ねであれば、これには内容として考え方に幅がありますということを申し上げたわけでございます。
  65. 増本一彦

    ○増本委員 SDRが人類の英知を結集したものになる、しかし、現在の国際通貨調整の見通しから見ても非常に流動的であるし、これがしっかりしたものになるという確証というものは依然としてない。ですから、そういう中で、ドルは、言ってみれば、毎日、毎時間、毎分減価をしているというのが実態ですね。ですから、その分だけ、国民のためのドルだというようにおっしゃっていながら、日本ドル残高はそれだけ減価を実際にはしているわけですね。ですから、当然金との交換性回復をやはり正面に据えて、そしてアメリカは現実に赤字になっているといいながら、金の保有高は百億ドルも持っているわけですから、こういうアメリカの保有している金をやはり日本がちゃんと自分の金準備として持てるように、そのための努力というものを一貫してお続けになるということが、実は大臣がおっしゃっている国民のためのドルだということを具体的に実行することだと思うわけです。その点の大臣努力を強く要求するわけですが、最後に、その点についてもう一度伺って終わりたいと思います。
  66. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御意見のほどは、私としても十分理解できるところでございます。  それから、これは事実を申し上げるわけですけれども、ドルが一日毎秒減価しているというお話でございましたが、国際的に見ましても、ドルの価値というものはある程度一面においては見直されている。東京市場の状況などをごらんになりましても、むしろドルが強含みであるということは、御案内のとおりでございまして、この辺のところなかなか幅広く観察しながら適切な対策を講ずるということが必要なことではないか、私はこう考えておりますが、御意見のほどは十分ひとつ胸にこの上ともいれてまいりたいと思います。
  67. 増本一彦

    ○増本委員 かつて四十年代に、ポンド残高のコンソリデートでやはりふいになって大きな損害を受けたということもあるわけですし、ですから、このコンソリデーションの問題について、やはり安易な妥協や、それから取引というものがなされてはならないというように思うわけです。そういう意味での一そうの努力と、それから強力な主張、特に通貨問題については対米従属性ということが常に問題になるおりでもありますし、一そうの政府の強力な努力を特に要求いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  68. 鴨田宗一

    鴨田委員長 広沢直樹君。
  69. 広沢直樹

    ○広沢委員 非常に時間が短いわけですから、簡潔にお伺いしますので、答弁のほうも簡潔にお願いします。  いま国際経済の中で最大の焦点というのは、いま問題になっております通貨改革の問題でありますが、なかんずく、通商立国でありますわが国の影響も非常に大きいわけでありまして、これが一つの大きな争点になっておるわけでありますが、大臣は新通貨体制確立は今日明らかにされておりませんが、大体いつごろをめどとされているのか、そしてまた、それまでの体制では、いままでの大臣のいろいろな御発言の中から考えると、フロートはそこまで続けなければならない、こういうお考えに立っているんじゃないかと思いますが、まずその点から……。
  70. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一の点は、私ども二十カ国蔵相会議に参加をいたしました者といたしまして、二十カ国の合意は、何とかかねがね予定されておったナイロビIMF総会で結論を出したい、これには非常に熱意が示されております。そしてなお、それまでにももう一ぺんひとつ蔵相会議を開こうではないかということも、相当の熱意をもって表明された意見でございますが、これは代理会議が来月からびっしり精力的に行なわれることになっておりますので、その進行状況を見守って、あるいは七月の下旬ごろに再開というふうなことが考えられております。しかし、これはコミュニケの上には出ておりませんくらいで、もっぱら代理会議状況を見守るということになっております。  それから第二点のお話でございますけれども、パリ会議以来、ワシントン会議においてもそうでございましたけれども、もう主要通貨、これは見方によってはアメリカ自身も含めてフロートしておるわけでございます。各国がそれぞれこれを理解し合って、そしてフロート中はできるだけ平静にやっていこう、こういうわけでございますし、それまでは政府の介入というようなことはいわばタブーでございましたけれども、平静にしていくためにはある程度政府の介入ということもお互いに容認し合うというところまで来ておりますから、このフロート制度というものは、日本が二月初めに決意をいたしましたときに考えました状況よりは少し長引くというふうに考えるのが常識的ではないか、こう思います。幸いに東京市場はさしたる介入なくして平静を保っておりますから、この状況を何とかして持ち続けてまいりたいものと考えております。
  71. 広沢直樹

    ○広沢委員 つまるところ、この通貨問題はドルの問題でありますし、それから通貨体制の根幹であるドル交換性回復にかかっていると思うわけでありますが、ところが米国は、その過剰ドルの凍結とか、あるいはドル交換性回復に積極的に応ずるというよりも、むしろ原因はアメリカの国際収支の改善を前提としている、まあ中には、国際収支が不安定な中においては交換性回復をしないほうが通貨の混乱を招かないで済むのではないか、そういうような意見さえも出ているわけで、こうした考え方が底流にある限りは、幾らほかの国が通貨改革というようなことを呼びかけてみても、やはりいま問題になっております抜本的な方向というものが、これは長期にかかるわけでありましょうけれども、なかなか見出せないのじゃないか。そうすると、またスミソニアン体制通貨調整をやったより前進した体制というものがこういう短期に考えられるかどうかということが問題だと思うのですが、その点の見通しはいかがでしょう。
  72. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、二月の一種の危機が訪れた前の状態では、通貨改革ということがずっと議題にはなっておりましたけれども、相当の時日がこれはかかるということがどこの国の頭にも私はあったと思います。ところが、こうした危機が一再ならず来ましただけに、緊迫感が非常に各国の頭を支配している。そこで、たとえばことしの九月に予定されているナイロビ会議も、私は、これはおそらく、私の想像も入りますけれども、昨年末くらいの状況ではまあまあと、そこであまりたいしたことができなくともという気持ちが何となしにただよっていたかと思いますけれども、二月以来は様相ががらりと変わって、これはせっかくこの会議が予定されておるのだから、ここでひとつ締め上げ作業を決着をつけようという熱意というものが表明されていることも事実でございます。その点が私は大きく変わってきたことであると思います。  それからアメリカの態度というものは、これは三月の十六日の会議が終わって、あと国会でも御答弁申し上げましたように、たとえば資本の移動についての、アメリカが一〇%切り下げたときに表明したアメリカの政策からいえば、いわばUターンをした、あるいはまた、コンソリデーションというようなことはアメリカとしてもあまり好まざることだと思うのですが、なぜかと言うと、これは交換性ということが前提になりますから、こういう点についての討議に積極的に参加するという態度を表明したいというようなことにあらわれておりますように、アメリカも責任感じて、アメリカとしてももう逃げ腰ではいられない、こういう状況になってきたように私は観察いたしております。  同時に、そもそもこのブレトン・ウッズ以来アメリカは強大な力を持っていたにしても、一つの国の通貨国際通貨のただ一つ基準通貨であるということについての、各国ともにこれではなかなかいけないなという感じが同時に相当強くなっている。そこで、さしあたりのところはドル信認回復してもらわなければ困るのだけれども、同時に、恒久対策としては、むしろ他の新しいものを創造して、クリエートしていかなければならない、こういう考え方が急速に高まってきているということも事実である、私はこういうふうに観察しておりますわけで、したがって、先ほども御批判をいただきましたけれども、SDRというものに対する見方も、とにかくこういうものが現にあるのだから、これに対してもっと建設的な魅力あるものにすれば何とかいい知恵が出せるのではないか、そちらのほうにどちらかというと比重がかかってきているということも言えるのではないだろうか、これはまあ観察でございますから、あるいは当たらざるところが多いかと思いますけれども、私の率直な観察を申し上げれば、そういうふうに見受けられる次第でございます。
  73. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間がありませんので、重ねて二、三点お伺いします。  いまもお話がありましたコミュニケの中では、微妙な発言をされている。いわゆる安定、かつ調整可能な平価、これについては、わが国は固定相場制を主張される側にあるわけですけれども、この意味は、非常に深長な意味が含まれていると思うのです。わが国もその国際会議に出て、平価を中心とした弾力的な調整を主張されたというふうにいわれておりますけれども、いままでの固定相場制に一応変動幅というものが上下で五%ついておりましたが、これをある程度大幅にしたような考え方の固定相場制を意味した主張であるのか、この点が第一点。  それから、ワシントンの二十カ国の会議に行かれて、アメリカは、バーンズ議長が二月の議会の証言で、ドル切り下げは最後のものだということで一〇%の切り下げをやったという証言をなさっていらっしゃるわけですが、アメリカの国際収支の七二年度の六十四億ドルというものがすぐに解決するとは思われませんけれども、この七一年と七十三年の二回の切り下げで七四年度においてはバランスをするんじゃないか、こういう見方に立った発言じゃないかというふうにいわれておるわけですが、そういう面に立ってくると、アメリカ自身が考えている通貨面の調整は一応終わったんだ、そこで新しい通商法案、これは四月から審議に入るだろう、この中で、いままで一番問題になっておりました輸入課徴金の問題がありますけれども、これも含まれることは確実であるというような報道もなされておりますが、その点の感触はいかがであったか。  最後に、国内体制の問題ですけれども、預金準備率の引き上げを二度にわたって行ない、さらに公定歩合の大幅な引き上げを行なった。いまの卸売り物価の続騰だとか、あるいは消費物価の連続の値上げ、それに加えて、商品の投機あるいは土地投機、こういうような問題が起こって、インフレに拍車をかけている。日銀の観測によれば、景気は過熱的な方向に向かっているのだということで総需要を抑制しようという観測のもとにこういう引き上げを大幅に行なったのだ、こういうふうにいわれておるわけでありますけれども、そういう過熱的な傾向の中で総需要を抑制する場合においては、金融面だけではなくて、今日では財政運用面もあわせて、いわゆるフィスカルポリシーですか、そういうものを行なっていかなければならないというふうにいわれているのが常識なんですが、そういうような方向が生まれた場合においては、いわゆる財政的にはやはり公共投資の繰り延べというようなことも考え得るのではないか。いま社会資本の充実ということが最大の課題になつて、トリレンマということばが生まれてくるくらい、ジレンマにおちいるくらい財政を拡大したといういきさつから考えると、繰り延べということもなかなか問題があろうと思うのですが、その間の見通し状況についてお伺いして、終わりたいと思います。
  74. 愛知揆一

    愛知国務大臣 第一点は、安定した通貨というところに重点、比重がございますのは、原文でごらんいただきましても、ステープル・バット・アジャスタブルという字が使われております。このことはステープルということに大きな比重があるわけでございますけれども、必ずしもスミソニアン体制のようなきちっとリジッドなものでなくても、国際的な協議やあるいは相談の中において一つのルールというものが確立していけば、多少ルースなものでもいいのではないかという含みが残っている。これは参加国全体のコンセンサスを求めますとこういう表現になるわけでございまして、こういう表現ではわがほうとしても別に異存はない、こういう考え方でございます。  それから第二番目の、アメリカのドルの切り下げということについては、もうこれ以上は絶対にやらないということはしばしば言っておりますし、それからコミュニケその他のものにおきましても、切り下げ競争ということは封殺する、むしろ国内政策が重点であるということは、先ほど申したとおりでございます。  しかし、通商法は、観測でございますが、近く米政府としては国会に提案するであろうと思います。同時に、通貨問題については一応平静でございますから、かつて一部に御心配がありましたように、通貨問題と通商問題と引っかけて日本に特に課徴金云々というようなかまえ方は、私は、一昨日も申しました、私の願望も含めての期待でございますけれども、日本の国民感情を刺激するようなことをあえてするようなことはないであろうし、またそれを期待するという気持ちで、アメリカの通商法案がどういう形で国会に出されるか、またその後どういう論議が行なわれるかということを見守ってまいりたい、こう思っております。  それから国内対策でございますが、先ほど申しましたが、インフレ懸念ということを政府としても非常な関心を持ちまして、これはある意味からいえば過熱ぎみということばも当たるだろうと思いますから、金融政策においては一応陣立てをつくりましたし、これをさらに機動的に運営をしていきたいと考えております。  それから財政措置につきましては、やはり機動的に運営していかなければならないと思いますけれども、御指摘のとおりでございまして、いろいろ御批判はあるにせよ、政府としては、財政主導型によって、たとえば国民資源の再配分、福祉国家建設に向けてかじを切りかえようとしているわけでございますから、その点は機動的な運営の場合にも十分留意していかなければならない、これは大切に扱っていかなければならない、こういう考え方でございます。
  75. 広沢直樹

    ○広沢委員 終わります。
  76. 鴨田宗一

    鴨田委員長 竹本孫一君。
  77. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、二つの点について簡単にお伺いをいたしたいと思います。  時間がありませんので結論だけでけっこうですが、まず第一点は、固定相場制には、いつ、いかなる条件のもとに帰るお考えであるかということであります。  きょうの新聞で見ますと、ルクセンブルクにおいて開かれたECの閣僚理事会で、ソームズ副委員長は、「通貨情勢ドルの再切下げなども含めて揺れ動いたが、それでも貿易自由化の必要性は少しも変っていないし、新国際ラウンドを始めるのに格好の時期であることにも変りはない」こういうふうに述べております。しかし、そうした情勢に進めていくためには、当面通貨の問題が片づかなければならないと思います。そういう意味で、私は、IMF総会において、大臣がワンワールドを説き、また、調整可能な平価制度こそが、世界貿易国際金融の拡大に寄与するものであるというふうに述べておられることは、非常に賛成であります。どう考えましても、幅のある、弾力性のある固定相場制に帰っていかなければならないと私は考えておるわけでございますが、よくいわれるドル交換性の問題も、SDRの問題も、その次の段階であって、いまSDRがどうとか、コンソリデーションがどうだと幾ら論議してみても、一応そういうことを考える場ができなければなりませんが、その場をつくる前段階の締めくくりは、一応レート調整が一通り行なわれるということでなければならぬと思うのです。そういう意味から申しますと、その固定相場制には、一体いつごろに、いかなる条件のもとに帰ることができると大臣はお考えであるかということをお尋ねしたいのであります。私は、日本フロートやむを得ない措置であるということもわかりますけれども、いつまでもフロートを続けておるということについては、あまり利益でないという考えを持っておる。  それからもう一つは、国際通貨を論ずる場合の場において、すでにアメリカが一〇%ドルの切り下げをやった、ヨーロッパはドルに対してフロートをやりましたが、マルクはマルクで三%切り上げた、こういう事実を積み重ねてきておるのだから、国際通貨会議の場において、今度はどうしますということを言うのは日本の番だと思うのです。日本はいまフロートをやっているということも、一つの答案のようでもありますけれども、これは一種の形勢観望なんですね。流れに従っていきましょうというだけなんで、日本としてはどうしますと言って、第一ラウンドの国際通貨の混乱を収拾するのについて積極的、具体的な案を日本が出したということにはならないと思うのです。今度のドルの問題は多分に短期の思惑が多いのでございますから、それはそれなりとして片づけなければならぬ問題として、やはり通貨調整の場合で一番大きな役割りとか意味を持っておるのは日本の立場だと思うのですが、その日本は、フロートしてまあ様子を見るのだというようなことでは、なかなか各国も納得しないのではないか。そういう意味において、アメリカがドルを一〇%切り下げた、マルクが三%切り上げた、次は日本の円は幾らにどう切り上げるのかということがどうしても問われざるを得ない。そういう段階において、私のほうは慎重に内外情勢を見てからということだけでフロートをしておるということでは、私はどうもまとまりが悪いと思うのです。  そういう意味で、第一問は、いつごろ、いかなる条件のもとに日本が自主的に動くのか動かないのか。やはり全部ナイロビならナイロビ会議が行なわれるまでは待ちの一手だということになるのかどうかという点をひとつ。  それから第二番目の問題は、円の経済圏の問題でございますけれども、これについてもいろいろ最近は説が流れております。私も、やむを得ない一つ方法として、経済ブロック化の傾向から見て考えるわけでございますが、その場合に、特にアジアを中心に円の経済圏を確立するということになるのでありましょうが、簡単な問題は、一つは、円建て決済というものは、長期、短期にわたって現在どのくらいあるのか、それをどのくらいにまでどういう方法で拡大していかれるつもりであるかということ、それから円建て債の発行というものは最近どういうふうになっておるか、どういうふうにされるつもりであるか。  もう一つは、これまたけさの新聞を見ると、中国に肥料を輸出するという問題も、円のフロート関係等も主たる理由の一つになって、なかなかまとまりが悪いということになっておるようでございますが、たとえばヨーロッパの共同フロート考え方を参考に考えてみましても、マルクとフランがある程度結びついておる、ドイツとフランスがこうした緊密な協力をしておるというところに共同フロートの強みがあると思うのです。一体日本はどうも、外交面で考えますと、大臣も外務大臣もやられましたからよくおわかりのように、私は、共同のパートナーというものがなければ、国際場裏において十分な発言はできないと思うのですね。そういう意味で、通貨の問題についても、一体だれがほんとうのパートナーであるのか、私は非常に疑問に思っておる。それから円の経済圏をつくるということになった場合にも、ほんとうの意味での日本のよきパートナーはどこに求めるのかということをひとつ伺ってみたいのです。そういうことから考えると、日本と中国がよきパートナーになるかならぬか議論があると思いますが、いずれにしても、円・元決済の問題にしても、円・元レートの問題にしても、いまの形を一体どういうふうに続けていけばより前向きの形になるのか、あるいはまた、円ブロックの中で日本と豪州との関係をそういう場合にパートナーの一人の候補として考え得るのではないかと思いますが、通貨面から見たそういう結びつきを通じてこの構想を前に進めるためにはどういう努力が必要であろうとお考えになるであろうか。  この二つの点について簡単にお答えだけをいただけばけっこうです。
  78. 愛知揆一

    愛知国務大臣 第一の、調整可能な固定相場制というものは賛成であるが、それに対していつ復帰をするか、日本は自主的にどうするのか、こういうお尋ねでございますが、たとえばマルクが三%切り上げられたということは、域内の共同歩調で共同フロートをするためのまず第一段階といいますか、これによってECの足並みがそろって共同フロートになったということでございまして、これはあまり日本と直接の関係はございません。  それから、将来の恒久的な問題に対しては、もちろん各国意欲を持っておりますが、現状においては、フロートをしてこれが平静にいくということは、各国が相互に認め合っている。そして多少の介入を容認し合って、そして平静を保っていこうということが、たとえばスワップの限度の拡大ということも取り上げられているゆえんでございますから、この調整過程といいますか、しばらくの間は私はこれで進むのが日本としても適切であると思われます。  長期的に見れば、何らかの形で固定相場に復帰することが楽であるということは言えると思いますし、したがって、そういう時期がそんなに長くなく確立されることが望ましいと思いますけれども、せっかくいま国際協調がかなり進んでおりますから、やはりそれらの状況を見合わせて円のほんとうの実勢のレートというものを見据えていくということが、いま日本の自主的にとるべき態度ではないだろうか、こう思いますので、復帰の時期というものについては、いましばらく慎重に情勢を見定めてまいりたいと思います。  それからブロック化あるいは共同パートナー、円・元決済の問題というような第二の御質問でございますけれども、やはり世界一つでなければなりませんが、それぞれ端的に言えば、アメリカが一つEC一つ日本一つというのが、世界通貨情勢の中における現実の姿である。それぞれがやはり相当の責任をわきまえて世界経済発展を考えていかなければならない。そういう点からいって、日本としてもパートナーというものが大事であるということは、これは通貨においても、ほかの問題についても御同様であると思います。従来から日本としては特に関係の深い、いろいろの経済協力等を展開しておるような国々が、そういう感覚からいえば、日本としての仲よしグループとでも申しましょうか、そういうところが考えられると思います。ただ、何と申しましても、現実の姿、または過去長い間、四半世紀、あるいは戦前にさかのぼってもいまよりももっと関係が強かったとも言えるアメリカとの協力というものが、やはり基本において考えていかなければならない。まあ大ざっぱに申しますれば、そういうふうな考え方を持っております。
  79. 林大造

    ○林(大)政府委員 計数だけ若干御報告申し上げます。  円建て化比率がどうなっているかということでございますが、輸出信用状で見ますと、四十六年の四−六月には円建てが一・三%でございまして、大体そのころは一%前後でございます。昨年の十−十二月には一一・一%になっております。これはやはり昨年中に顕著に上昇をしてまいりました。  輸入のほうでございますが、輸入のほうはこのように伸びませんで、四十六年の四−六月に〇・二%、それが昨年の十−十二月に〇・六%でございます。  それから延べ払い輸出関係で申しますと、船舶はほとんど全部円建て化いたしておりますが、プラント類は、四十六年の四−九月期でございますが、そのときには円建てが二・七%、昨年の四−九月期には四一・四%になっております。  で、もちろん、いろいろの関係から早急には進まないわけでございますが、輸出面での円建て化はある程度進行していると申し上げられると思います。
  80. 鴨田宗一

    鴨田委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時二分休憩      ————◇—————    午後三時十三分開議
  81. 鴨田宗一

    鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として日本銀行総裁佐々木直君が出席しております。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。松本十郎君。
  82. 松本十郎

    松本(十)委員 現下の経済情勢、国際的にこれを見ましても、通貨問題は、一応小康は得ておりますが、今後の見通しその他については、なかなか流動的な要素と申しますか、混迷あるいは不確定の要素も多いわけであります。さらにまた国内を見ましても、最近の卸売り、小売り物価の根強い騰勢、あるいはまた民間の設備投資の動向等を見ましても、過熱ぎみであることはもう疑いない事実であります。こういったものを踏まえまして、日本銀行としては、年初来二度にわたって準備率の引き上げをやり、先般は公定歩合の引き上げに踏み切られたわけでありますが、〇・七五%といえばかなり大幅な引き上げだったわけであります。  ここで忌憚のない質問を総裁にしたいと思いますが、率直に申しまして、そのタイミングはややおそきに失したのではないか、はたしてタイムリーであったか、こういう気がするのであります。総選挙があったり、あるいは年末であったり、あるいは年を越えて予算の編成あるいは国会の審議、さらにまた、二月に入りまして国際通貨危機と、いろいろなことが相次いで起こってまいりまして、チャンスをつかみにくいという事情はよくわかるのでありますが、しかし、そのつかみにくい間でも、もう少し適時適切と申しますか、タイミングをとれなかったかどうか、その辺についての率直な御意見をお伺いしたいと思います。
  83. 佐々木直

    ○佐々木参考人 卸売り物価、さらに消費者物価がここまで上がってきておりますので、ただいま御質問のような御疑問がおありになることは、私もよくわかります。実は卸売り物価が上昇をはっきりいたしましたのは昨年の八月でございまして、それからあとずっと引き続き上がっておるわけでございますが、当初にあたりましては大体木材、繊維関係等が中心でございまして、海外の物価高が主たる原因である、したがって、それが一巡すればある程度落ちつくのではないかという考えもございました。ただしかし、すでにそのときから私どもとしましては警戒を要すると考えまして、市中銀行に対しましては、貸し出しを内輪にするようにという趣旨の通達をしておったわけでございます。しかしながら、それを具体的な金融政策手段、たとえば準備率の引き上げとか、公定歩合の引き上げとか、そういうものに結びつけるのにはまだ情勢がそこまでいっていないという判断でございました。さらに、十一月、十二月には外国為替市場におけるドル売りが相当ありまして、ここで金融政策についてあまり強い措置をとりますことは、これがまた円の相場についてどういう影響を及ぼすかという心配もありました。そういうこともございまして、つまり年内は、いま申し上げたような市中銀行に対する注意の喚起という程度で済ましてまいったわけでございます。一月に入りましてからはだんだん物価の上昇が根強くなってまいりまして、いま申し上げましたような海外情勢だけではなくて、国内における需要の増大というものが相当影響を持つというふうになってまいりましたので、準備率の引き上げを、第一回の分を実行いたしました。このときには、正直に申しまして、総体の金融を引き締めに持っていき、かつ、総需要を押えるというところまでの段階には来ていないと判断いたしましたので、このときの趣旨といたしましては、過剰流動性を是正するという名前で実行したわけでございます。それから二月に入りましてからは、ただいまお話しのように、ドルの一〇%切り下げによる円相場の上昇がございました。これの影響がどういうふうに経済に及ぶかと見ておったのでございますが、当面の影響はそれほど大きくないということで、三月にさらに準備率の引き上げを実行したわけであります。このときには、総需要を調節するという趣旨で実行いたしました。さらにその後、いまの物価情勢が依然として続いており、かつ、設備投資なんかにつきましてもだんだん上向きになってまいりましたので、三月末の公定歩合引き上げにあたりましては、総需要の抑制ということをはっきり打ち出した次第でございます。  そういうように、私どもとしては、そのときそのときの情勢を十分見て適当な方策をとってきたつもりでございます。
  84. 松本十郎

    松本(十)委員 これまでの経過につきましては、おっしゃることでよくわかりましたが、過去のことについてはもう御質問はいたしません。しかし、この際特にお願いしたいと思いますことは、日本銀行というものは、通貨の番人と申しますか、守護神として、情勢を的確に把握し、見通しをつけながら、必要とあれば、少々の雑音があっても、断固決断をして実行をしていただきたい、こういうことであります。総裁御承知のように、ジ・オールド・レディー・ネヴァー・テルズですか、老婦人とは何かと思えば、イングランド銀行のニックネームだそうでありますが、イングランド銀行というのは、実行はするが説明はしない、必要なときは果断に事をきめるというふうに聞いておりますが、やはり日本銀行の総裁とされましても、今後国際的にどういう情勢が出てくるか、これまたいろいろと予測されない面がないわけでもないわけでありますし、国内的にはもっと、このたびの公定歩合の引き上げにもかかわらず、さらに過熱ぎみが続いて再引き上げという事態が起こらないとは言えませんし、さらにまた心配されますことは、理論的には、ここまで金融引き締めの道具立てがそろえば、むしろデフレ効果が出てくるのではないか。そしてまた、円の変動相場制移行後、国際通貨の面からするデフレ要因というものも考えられるわけでございまして、これらが二重に作用いたしまして、予想以上に早い時期にむしろデフレ的な様相を展開しないとも限らない、こういう懸念もあるわけでございます。そういった情勢の変化があった場合には、今度こそは適切な時期にひとつ決断をして実行に移していただきたい、この点を要望したいと思います。  次に、物価問題を中心に申し述べてみたいと思いますが、総需要の調節あるいはこのたびの抑制、その面で、もとはといえば、やはり現在の過剰流動性をどのように吸収するかという面が大事であろうかと思うのでありますが、最近は外為の散布超過、あるいはまた、商社その他輸出業者のリース、繰り上げ決済に基づく手元資金の増加、あるいはまた、企業間信用が収縮いたしましてそのために手元流動性がふえた、あれやこれやで商社をはじめ過剰流動性が何かをねらって飛び上がるようなかっこうでふえておるわけであります。そういったものを吸収をし、そして需要を抑制するために、はたして日本銀行のとられる金融政策だけで十分と考えられるのかどうか。日本銀行の金融政策の及ぶ範囲と申しましょうか、手の届くところが、戦後、経済の構造が変化するにつれまして、あるいは最近の経済金融情勢が移り変わるにつれまして、限界が縮まったと申しますか、手が届きにくくなった面がある、こういうふうな感じを持つわけでございますが、これについての総裁の御意見はどんなものでしょうか。
  85. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ただいま御指摘のありましたように、輸出の代金を繰り上げて受け取るというようなことをきっかけに、企業の手元流動性がふえていることは事実でございます。しかもこういう企業あるいは個人が持っております現金、預金あるいは運用有価証券、そういうものにつきまして、金融政策から直接にそこに手を入れて吸い上げるということはなかなかむずかしいわけでございます。したがいまして、こういう手元が厚くなっておりますときの金融政策の面でできます対策は、今後の追加信用というものが得られなくなるという形で影響を及ぼすことが残されておるわけでございます。よく言われることでございますが、非常に大きな外為会計の払い超過はございましたけれども、その間、一方において金融機関からの貸し出しの増加額というものはそれをはるかに上回るものがございまして、手元が厚くなっている。ここでも銀行借り入れが同時にふえていくという状況でございます。したがいまして、手元の資金が相当ございましても、今後は金融機関からの補充がもうそうはきかないんだという環境になってまいりますと、持っております現金などの使い方が慎重になってくるということは、現実にすでに起こっていることでございます。したがいまして、金融政策といたしましては、当面金融機関の貸し出しの増加額を小さくして、特に手元の厚くなっておると見られます商社あるいは不動産業、そういうものへの銀行の貸し出し態度をできるだけ内輪に慎重にしてもらうということで相当な効果はあげられるものだと思っております。もちろんこれは金融政策の面からできることでございますけれども、それだけでは十分でございません。したがいまして、この際は総需要、そちらのほうを押えていって、いまだいぶ増加してきております流通在庫を出させていく、そして流通在庫が過剰であるという感じを強くさせることによって物価を穏やかにさせていくいう方策が必要であろうと思いますし、さらにまた、いま非常に政府の公共投資などの需要が大きな割合になってきておりますので、そういうものの発注のしかたについても、供給能力あるいは工事能力等を考えたやり方でやっていただいて、金融政策と相まって物価政策、物価対策の実をあげていく、こういうことが必要であろうかと存じます。
  86. 松本十郎

    松本(十)委員 商社、不動産業に対する融資の選別規制等もされ、それからまた、全体として準備率の引き上げと量的規制、公定歩合の引き上げによる質的規制と、金融政策のおぜん立てといいましょうか、道具立てはおおむねそろったわけでありますが、もう一つ、いわゆる三種の神器の一つでありますマーケットオペレーション、公開市場操作、これについてどうも最近日本銀行にはオペの種が少なくなっているのではなかろうかという声が聞かれるわけであります。ちょっとこまかくなりますが、その辺のところはどのようになっておりますか。
  87. 佐々木直

    ○佐々木参考人 最近の外貨の流入によりまして、日本銀行の資産の中で相当なものが外貨資産になってきております。したがって、この外貨資産というものは国内におけるオペレーションには使えない。そういう点から、ただいま御指摘がありましたように、オペレーションの材料に不足するというような問題が起こっておることは事実でございます。私どもとしましては、そういう状況を考えまして、四十六年の八月から売り出し手形という制度を始めております。これは日本銀行が新しく手形をつくり出しまして、これに利子をつけまして金融機関に売却して資金を吸収する、こういうやり方でございます。それからまた、手形市場というものをだんだん発達させまして、ここで手形の売り買いをするということになりますと、いまの状況では、必要な場合には手形を売却して資金を供給する、これは市場へ流通している手形を売却する場合、さきに申しましたのは、売り出し手形という、日本銀行が自分でつくりました手形を売却する、この二つ方法で、いまの場合流動性の吸収には決して事欠く状態ではないのでございます。
  88. 松本十郎

    松本(十)委員 ただいま外貨の話が出ましたが、われわれ自民党の中では、外貨活用につきまして一年前からいろいろ勉強してきたわけでありますが、ようやく中間的に、現在外為証券という短期証券で調達した円で買っております外貨を、中長期債を発行してそれに置きかえて、外貨をより長期的、機動的に、また効率的に運用できるように、まず現在の外為資金特別会計の制約をはずそうじゃないかというふうな考えを持っております。けさも大蔵大臣にそれに対する感触を聞いたのですが、方向としては賛成です、何に使うかということがこれからの問題でありまして、いろいろサゼスチョンを受けながら、たまっておる外貨というものを国の内外に有効に使いたいと思います、こういう答弁を得たわけでございます。かりにそういう方向に進みました場合、仮定の質問ではございますが、これによって発行されます中長期債、こういったものが結局日銀に参るかと思うのでありますが、そうした外貨活用という制度の創設に随伴しまして発行されます国債というものが、日銀からまた市中銀行にオペレーションを通して渡っていきまして、それらによって過剰流動性の一部が吸い上げられれば、たいへんこれはいいことだというふうに考えるわけでございますが、そういった方向につきまして、日本銀行総裁としての御意見はどんなものですか、承りたいと思います。
  89. 佐々木直

    ○佐々木参考人 先般、参議院の予算委員会におきまして、いわゆる第二外国替為特別会計の御質問がございまして、その際に私が答えたのでございますが、日本銀行がいま持っております外貨政府に渡しまして、そして政府からいまのお話のような国債を受け取り、それを国内における資金の需給調整の手段として使うということができますならば、さっき申し上げました諸般の手段と相並びまして、日本銀行としてはそういった手段の多様化ということが出てまいるわけでございます。ただ、これはただいまもお話がありましたけれども、外貨を使います場合には、それが日本の将来に役に立つということが非常に大事でございまして、ただ当面外貨があるからというようなことだけで問題をきめるべきではない。したがいまして、どういうプロジェクトがほんとうに具体的にあるのかということを十分検討することが必要である、こういうふうに考える次第でございます。
  90. 松本十郎

    松本(十)委員 おっしゃるとおり、外貨は国民の汗の結晶でございますから、その使い方は慎重でなければならない。一方では、国内の福祉のために役立てるものなら役立てなければなりませんし、外に向かって開発途上国に対する援助ということも考えなければなりません。従来のような援助だけでは、これまた経済進出の先兵になるということで、エコノミックアニマルのまた非難を高くするだけでありますから、そういう意味では、むしろ平和基金構想とか、あるいは社会開発基金構想とか、その他いろいろもう少し広い意味の平和なりあるいは外交なりの面で活用する余地もあろうかということでございまして、そういうことではこれからも慎重に検討したいと思いますが、そういう際にはひとつ日銀におかれましても協力をお願いしたいと思うわけであります。  ところで物価問題に戻りまして、金融政策、いろいろと御苦労なさっておるわけでございますが、総需要ということを考えます場合には、やはり多角的な物価政策対策というものがとられなければならないわけでございまして、そういう点からいたしましても、財政の運用そのものをまたこれに合わさなければならない。けさほど大蔵大臣は、運用を弾力化すると申しますか、公共投資の繰り延べだけではありませんで、むしろ弾力的に、必要なところを中心に優先的にやっていくんだ、あるいはまた歳入面においても、公債をできれば早期に発行してこれまた流動性を吸収したい、こういうようなことでありましたが、財政面でやるべきこともあろうかと思うのでございますが、それでは金融と財政だけで事足りるかといえば、私の感じを率直に申せば、それだけでは十分でない。アメリカその他ヨーロッパの国々のやっておりますところを見ましても、やはり物価と賃金とのガイドラインというか、そういったものも考えなければなりませんし、そしてまた、日本は超完全雇用でございまして、インフレーションのおそれの原因の一つにやはりコストプッシュというようなことも考えられているわけでありますので、そういった面についても何らかの良識と配慮が期待されると思うのでありますが、これは総裁御自身の御所管ではございませんが、やはり政策のリーダーとして、またオピニオンリーダーとして、その辺についての御意見をこの際伺いたいと思うわけであります。
  91. 佐々木直

    ○佐々木参考人 最近、国際会議におきまして中央銀行の者が集まりますと、話題は必ずインフレーションの問題でございます。インフレーションをどういうふうにすれば押えられるかということがいつも共通の話題になっておるのでございます。欧米におきましては、最近、いまお話がございましたように、物価対策あるいはインフレーション対策といたしましては、所得政策というものと相並んでいかなければ問題の解決にはならない、こういう考え方が非常に強く行き渡っておりまして、現にイギリスなどは、ただいま非常にいろいろなむずかしい話し合いが行なわれております。これがどういうふうになるかということがイギリスの今後に非常に大きな影響を持つという意味で、いろいろその苦労を話をしておるわけでございます。したがいまして、私どもも、今後日本でもインフレーションを押えていくということを考えてまいりますときに、特に最近のように経済方向がだんだん転換してまいりまして、いままでのような設備投資をどんどん進め、それによって生産性を上げていくという方向にだんだん制約が生じてくるということを考えますと、いまの欧米でかかえられておるような問題はやがては日本の問題になる、そう遠くないうちに日本の問題になるということが考えられるわけでございます。ただしかし、所得政策というものは、国民が全体としてその必要性が感じられるというところまでまいりませんと、具体的になかなか実行のできない性格のものでございます。したがいまして、今後はわれわれといたしまして、欧米におけるこういう実例を参考にしながら、そういう面についての勉強、皆さんの御理解を進めていくという点に努力をしてまいらなければならない、こう考えております。
  92. 松本十郎

    松本(十)委員 まだまだ質問したいことが多いのでありますが、時間が制約されておりますので、最後にただ一つにしぼって伺いますが、先ほど申しましたように、世界国際通貨情勢というものはなかなか微妙でございまして、現在、新しい国際通貨制度、あるいはIMF体制、ブレトン・ウッズ体制にかわるものを模索しつつある段階、しかもそれがいつ確立できるのかといえば、必ずしも的確なタイムスケジュールも立てがたいような段階でございますが、私は、国際協力が実を結びまして、できるだけ早い時期に何らかの成案が実現することを期待するわけでありますが、その実現の過程におきまして当然コンソリデーションの問題が出てくるだろうと思うのでありますが、かりにこれがある程度のめどがついたといたしましても、これはあくまでも公的準備に関することでございまして、八百億ドルになんなんとするユーロダラーというものがいまだに投機を求めてあちこちに走っているといわれても過言ではないわけでありますし、特に中近東の産油国が持っておりますシェークダラーというのですか、あるいはOPECダラーともいわれておるようでありますが、こういったいわゆる私的ドルが相当今後も投機的に走るんじゃないか。そして、チューリッヒの小鬼とか、あるいはマンハッタンの大鬼とかいわれるような国際的な規模の金融機関というものがまたこれにうしろのほうで糸をあやつるんではないかというふうなおそれがないわけでもないのでございまして、こういった国際投機資金に対しましては、日本の国も先進国の一人として十分情報をキャッチし、それに対処する方策を考えていかなければならない、こう考えるわけであります。  特に日本銀行の場合、日本銀行の発行されます銀行券、円の守り神でありますから、国内的に円の価値を維持するために、物価の騰勢を押えるために努力していただくことは当然でありますが、同時に、国際的な場におきましても、円というものを強いもの、しっかりしたものとして押し出していかなければならぬということでございまして、やはりその一つの敵は先ほど申しましたような国際投機資金にあるということでありますならば、かつての正金銀行のようなものがいまでは多数の為替専門銀行によって営まれておる状況でございまして、この際、中央銀行の日本銀行としては、そういった国際通貨面におきましても、従来も国際機関に人を派遣したり、あるいはBISとか国際会議に参加して、何かと世界的な土俵の中でいろいろと貢献してきたわけでございますが、さらに事務所を増設するなり、あるいはまた人の派遣をふやすなりして、そういう国際的な通貨情勢の変遷、推移を的確にしかも早くつかまえてもらって、これに対する対策を、日本銀行自身、あるいはまた世界各国との協調の場の中で、強力に手を打っていただく必要があるのじゃないかというふうに考えるわけでありますが、そういったことについての総裁の御意見を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  93. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ただいま日本銀行といたしましては、国際機関にはIMFとOECDに人間を入れております。それから、ただいまお話がございましたように、BISの毎月の会議には必ずだれか出席をいたしまして、そこで各国との情報の交換、意見を戦わすというようなことをやっております。ことにBISではユーロダラーマーケットにつきまして絶えずいろいろな検討が行なわれまして、これに日本として参加いたしておりますことは、今度のような問題のときに非常にプラスになっておるわけでございます。事務所につきましては、ロンドン、ニューヨーク、フランクフルト、パリ、香港に置いてありまして、いま一応各国の重要な市場につきましてはそこからニュースがとれるようになっております。しかしながら、今回のようないろいろ複雑な現象が起こってみますと、今後さらに必要に応じてこういう網を充実し、加えていくということが必要であろうと思いまして、その点については絶えず検討をいたしておる実情でございます。
  94. 松本十郎

    松本(十)委員 では、終わります。
  95. 鴨田宗一

    鴨田委員長 堀昌雄君。
  96. 堀昌雄

    ○堀委員 実は日本銀行総裁に前々からひとつ御出席をいただきたいということで一月からやっておりましたけれども、いろいろと国会の日程なり、あるいは総裁が海外にお出かけになる日程等が重なり合っていまして、本日論議することになったわけでありますが、きょうは最初に政策問題をやらしていただいて、後段のほうで、日本銀行はいかにあるべきかをちょっとやらしていただこう、こう思っております。  政策問題でありますけれども、実は昨年の八月三日に総裁に当委員会にお越しをいただきまして、そこで私、「いまちょっと前段で、河野副総裁の御発言から一カ月を経ずして第六次公定歩合の引き下げに踏み切られたわけでありますが、日本銀行として第六次公定歩合の引き下げを必要とした主たる目的といいますか、それはどういうものでございましたでしょうか。」こうお尋ねをしたわけであります。実はその前に河野副総裁がおいでいただいたときには、すでに、企画庁のQE方式によるところの経済の動きを見ておりますと、もう一−三月で瞬間風速が一〇%近くに来ておるということで、これは今後かなり加速をしていくだろうという情勢でありますから、いまのこの情勢でこれ以上金融をゆるめることは必要がないと思う、あわせて預金金利は、物価の上昇から見ても、引き下げる必要はないと思うがということについては、河野副総裁は大体同じようなお考えだということだったわけでありますので、それを申し上げたのでありますが、そのときに総裁は、「昨年からずっと公定歩合を下げてまいった中で第六次を実行いたしました事情でございますが、ことしの六月の時点におきましては、すでにわが国経済はある程度回復のきざしをはっきり見せております。したがって、前の考え方からいたしますと、ここで公定歩合をもう一度下げるということは、われわれとしては消極的な考え方になる筋でございます。ところが、このたびは、日本国際収支、特に貿易収支が非常に大きな黒字を示しております。そういう中でこういう対外均衡の回復をはかるためには、さらにもう一つ経済の拡大をはかる必要がある、こう考えたことが今度の措置の一番大きな原因でございます。」と、まずこういうふうにおっしゃっているわけでございます。そこで私は、当時これ以上金融をゆるめても国際収支には影響しないという考えでおったわけでありますから、それはいたずらに景気の過熱をもたらすだけで、意味がないという立論で申し上げておったのですが、これはちょっと大蔵省も責任があるのでありまして、四十六年の大体秋ごろから、大蔵省内部、特に国際金融局が大いにあずかって力があったのではないかと思うのですが、いわゆる国際派と称する諸君が、国際収支関係から、ともかく預金金利も下げ、公定歩合もさらに下げろという話がだいぶ出てまいりました。私は、当時の銀行局長であった近藤さんに、とんでもない話だ、ともかく、そんなばかなことがあるか、これ以上金利を下げたからといって決して国際収支の改善にならぬ、だから、がんばるだけがんばるということで圧力をかけながら、予算委員会の分科会で当時の水田大蔵大臣に、もしここで預金金利を下げるようなことをするなら、預金に関する租税特別措置を全廃してこい、これだけ片方で租税特別措置をして税制上における不公平を措置しておいて、そうして預金金利を下げるということはもってのほかだ、筋として言うならば、預金を増強せしめるための租税特別措置を全廃したら私も預金金利を下げることに反対しない、こう言って、委員会においても預金金利の引き下げにずいぶん私は抵抗しておったのでありますが、ついに国際派が勝利をして、大蔵省内部においても、預金金利を含めて公定歩合を引き下げるべしということになり、日本銀行もそういう考え方になったということで——実はここでおっしゃっておりますから、そういうことになる。  そこで総裁、下げてから国際収支は改善されたでしょうか。ちょっとそこからひとつ伺っておきます。
  97. 佐々木直

    ○佐々木参考人 昨年の五月にたしか第二次の円対策というのが発表されまして、その中には貸し出し金利の低下ということがうたってあるわけでございます。そういうような考え方であのときはさらに一段とそういう金利を下げ、それからあのときは、預金金利の引き下げに相応じまして、長期金利、債券の金利も下げるということが行なわれたわけであります。そういうようなことで一段と経済の拡大を急速に進めるということが円対策の重要な柱になっておったわけであります。ところが、残念ながら、ただいま御指摘がございましたように、日本貿易収支の黒字はその後あまり減っておりません。結局輸出の増大ということが依然として続きまして、輸入も増加はいたしましたけれども、その増加よりもむしろ輸出の増加額のほうが多少強い場合もあるような状態でございまして、結局差し引き貿易の黒字はあまり変わらないという状態でございました。
  98. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで私は政府の判断の問題があったと思うのですが、あのときにはすでに経済企画庁もそうだったと思うのですが、日本の輸出がいま伸びておるのは、景気がうんとよくなったら輸出が伸びなくなるのではなくて、これは日本経済の構造的な問題なので、構造的な対策がある程度進まない限り、これは輸出輸入の関係というのはなかなか改善できないのだということを当時私はすでに申しておったわけでありまして、ですから、単に金利を下げて景気を押し上げたらそれで済むようなことなら簡単なんですけれども、そうではない。そのことが逆に物価その他にはね返るおそれがあるから、金利を引き下げるべきでない、預金金利を下げるべきでないという立論構成であったわけです。そのことは、今日変動相場制になって、依然として三月の輸出信用状は非常に大きな——輸入もたいへんふえておりますけれども、輸出についてだけ見れば、変動相場制になってもあまり影響しないという日本経済の体質の問題がありますね。ですから、この点は全く、政府を含め、日本銀行を含めて、昨年の第六次公定歩合引き下げというのは、今日の過剰流動性をもたらす非常に大きな原因であったと私は思っておるわけです。この点についての総裁の御反省があるならば、それを承りたいと思うのです。
  99. 佐々木直

    ○佐々木参考人 非常に古い話をして恐縮でございますが、一昨年の五月ドイツが為替相場でフロートいたしました直後に、私はバーゼルの国際決済銀行の会議に出席いたしました。それで、その会議から帰りましたときに、日本ではいままで輸出に向いていた労力、資材、これをぜひ国民生活水準の向上に向けてほしいということを私は実は申したわけでございます。したがって、考え方といたしましては、日本がいままでの姿ではなかなか国際貿易収支の黒字が直らない、それがいろいろな円の相場に影響する、そういう意味の認識は持っておったつもりでございます。ただ、ただいま御指摘のありました第六次の公定歩合の引き下げ、これがいまの過剰流動性を生む直接な源になったというふうには私は思いませんけれども、その時期がもう少し、やるにしてももっと早く行なわれたらよかった、いろいろな関係でその実行がおくれましたことが、次のステップ、次の経済の上昇につながってしまった、そういう時期の狂いというものは私としても認めざるを得ない、こういうふうに考えます。
  100. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、確かに総裁もここでお触れになっているのは、こういうふうにおっしゃっておるわけですね。  「ただ、すでに五回公定歩合を下げております。しかも御承知のように四十六年中に約四兆円にのぼる外為会計の払い超過があるということで、日本金融環境は非常に変わってきております。そういう環境の中ではやはり日本の金利体系全体がここで新しい段階に入る時期がきておる、こう判断したわけでございます。したがって、預貯金の金利も加えました金利の低下というものが、そういう境環の中では自然であり、必要である、こういうふうに考えたわけであります。四月にわれわれが公定歩合引き下げについて消極的な発言をしておりますのは、そのときには預金金利についてどうなるかということがなかなか見通しがついておりませんでした。いろいろな事情がありまして、預金金利の引き下げには反対があるわけでありますから、これが均衡しなければ、引き下げが実行されなければ全体の金利体系の中で公定歩合をさらに一段下げるということは不適当である、そう考えておりました。したがいまして、その後間もなく日本銀行の公定歩合に対する考え方が変わったようになりましたが、そのきっかけは、もし預貯金金利が下がったら公定歩合をどうするかという質問に対しまして、私がその場合には公定歩合も検討しなければいけないだろうという返事をしたことから出ておるようなことでございまして、したがって、預貯金金利との関係を重視しつつ今度の問題を考えた、こういう状況でございます。」こうおっしゃっておるわけですね。  そうすると、私はここでも触れているわけですが、要するに、預金金利の問題で公定歩合操作が金融政策当局としての判断を左右しておったことは事実のようですが、それならば、この時点のきたときに、景気は御承知のようにだんだん上がっておったわけでありますね。  結城参事官に伺いますが、昨年の一−三月、四−六、七−九の瞬間風速がどういう状況であったか、お答えをいただきたいと思います。
  101. 結城茂

    ○結城説明員 申し上げます。  四十七年の、いわゆる瞬間風速といいますか、四半期別の実質経済成長率の年率の成長率でございますが、一−三月が一一・七%、四−六月が一三・〇%、七−九月が一四・八%、最近の十−十二月が一五・二%というふうになっております。
  102. 堀昌雄

    ○堀委員 これは実績でございますから、いま見ればこうなんですが、御承知のように、企画庁でQE方式を出しておりますから、これは三カ月おくれくらいに出ておるわけでございますから、それを見ておれば、六月時点ではもうかなりすでに成長加速がついておることは、私は政策当局としてはおわかりになっておったことであろうと思うのですね。ですから、いまおっしゃるように、私は、すでにかなりカーブが上がってきた段階でやるのは適当でない、こう言っておったことでありまして、この点は、過剰流動性は、総裁がおっしゃるように金融機関の与信態度にかかっておるわけですが、その与信態度というのは、公定歩合を下げて政策当局がさらに金融をゆるめるのだという政策にのっとって行なわれてきた結果でありまして、私は、やはり過剰流動性を招いた一つの原因は、第六次の公定歩合引き下げが非常にあずかって力がある、こう考えておるわけでございますが、その点いかがでございましょうか。
  103. 佐々木直

    ○佐々木参考人 先ほど申し上げましたように、私どもが金利を下げるというふうに考えておりましたときには、まだ実は景気の回復につきまして十分な見通しが立たない、たとえばQE法の話がございましたけれども、私どもがこの問題を考えました五月の初めにおいてはまだ数字が実はわからなかったわけでございます。それで、だんだん日がたっていくうちにお話しのような事情がわかってきた。ところが、いまいろいろ申し上げましたように、引き下げの過程に時間がかかりまして、そこのところに、いまお話しのような、すでにある程度上り坂にかかったときになってやっとそれが実現されたというような形になってしまった点は確かにあると思います。それで、ただいま御指摘がありました、その預金金利にひっかけて公定歩合の動かし方というものがはたして適当かどうか、この点でございますけれども、実はわれわれとしましては、さっきもちょっと触れたのでございますが、長期債券の金利というものがあのときに預金金利とひっかかって動かなくなってしまっておりました。したがって、これをひとつほどいて、ここから設備投資の回復をはかろうという点が、もう一つの目的としてあったわけであります。したがいまして、総体としての金利水準を考えますときに、公定歩合というものが市中金利に一緒に動くという場合があっても差しつかえない性格のものだというふうに考えた次第でございます。ただ、先ほども申し上げましたように、そういうふうに過程において時間がかかっておる間に、いまのような時期がずってしまったという点は確かにあったと思います。
  104. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ終わったことでありますが、私はやはりずっと日本銀行の政策決定を見ておりますと、大体二クォーターおくれているという感じがいたしますね。私は昨年の十二月に、愛知大蔵大臣の就任をなさいましたときに、朝日新聞が愛知大蔵大臣のコメントを持ってまいりまして、そうして愛知大蔵大臣はこういうふうに就任の弁を言っておられます、堀さん、これに対して言うことありませんか。そこで私は、当時十二月でありましたけれども、やはり貿易収支の問題が非常に重要だ、まあ十月三十一日の本会議でも、一〇%程度の輸出税を取れという提案をしておるわけでありますが、そのときもやはり、まず外側に壁をつくりませんと、こっちで引き締める、それが逆に働いてはまずいと思いましたから、まあ輸出税一〇%という壁をつくりまして、そうして少なくとも〇・五%公定歩合を引き上げろということを、十二月に私申しておるわけですね。いまずっと指標を見ましても、十二月という月は、このすべての指標から見て当時わかっておったことでも、私は、もうやらなければならなかった時期ではなかったか、そうして、あのときの〇・五%は今日の〇・七五よりははるかに効果があったんじゃないかと思うのですが、十二月に——まあこれは結果ですからどうなっているかわかりませんが、大体それも一クォーターなんですね。まあ私は、去年の九月、十月段階でやれるとは思いません。これは私どもも、九月、十月時点では、まだそこまで金融を締めなければいかぬというふうには感じておりませんでしたけれども、さっきも松本さんの御質問もありましたが、しかし、年末には、これはもう総需要を抑制しなければいかぬ、こう思いましたが、日本銀行は準備率の引き上げだけなすって、総需要の抑制は必要がないというふうにおっしゃっておりましたね。私、新聞だったか、当委員会だったか、何かそういうお話を聞いております。新聞の記事かもわかりません。そこで、実はもう昨年の十二月というのは総需要を抑制しなければならぬところにきていたのだと思って、〇・五%の公定歩合の引き上げをして総需要の抑制にかかる必要があるということを申したのですが、この点は一クォーターおくれたということは、これは判断の違いでしょうか。何が今日まで、この四月まで公定歩合を上げなかったということなのか、そこをちょっと伺います。
  105. 佐々木直

    ○佐々木参考人 実は、私どもがその総需要の抑制という問題を打ち出しますときには、大体いままでの例、経験から、民間の設備投資が盛り上がってくるという気配のあるときに初めてそういう措置をとる。まあ金融というものが直接景気全体の調整に影響を与えますのは、民間の設備投資が中心である、こういう考え方を持っております。したがいまして、実はただいま十二月のお話がございましたが、まあ十二月の終わりごろから、金融の面で具体的な手を打つ必要があると考えて、一月早々準備率の引き上げを実行したわけでございますが、そのときにわれわれの手で利用できました指標では、民間の設備投資がはっきり上昇するというその傾向がまだつかみ得ませんでした。ある程度増加はしてきておりましたけれども、月によりまして伸びがちょっと落ちたり、またそれからあと回復したりということで、そこのところの見きわめがつきませんでした。したがいまして、そのときには、過剰流動性の是正という形で準備率の引き上げを説明したわけでございます。そういう状況でございましたので、公定歩合というものには手をつけませんでした。また、そのもう一つの理由といたしましては、やはり為替市場におけるきわめて不安定な情勢、そういうものがやはり思い切った金融政策を打ってそれによって円の相場に波乱を引き起こすということは適当でない、この二つが、あのときの措置を決定した原因でございます。
  106. 堀昌雄

    ○堀委員 結城参事官に伺いますけれども、今日振り返ってみて、昨年の十−十二月の民間設備投資というのは、これは対前年比でどのくらいだったんでしょうか。
  107. 結城茂

    ○結城説明員 昨年のこれは国民所得統計で見ました私どものQEの計数でございますが、設備投資が、昨年十−十二月の前年比で一七・九%だと思います。
  108. 堀昌雄

    ○堀委員 私のいただいている資料では、十−十二月は二一・六%の増になっているのですが、これはどう違うのでしょうか。
  109. 結城茂

    ○結城説明員 実質で申し上げたので、あるいはそうなっているかと思います。
  110. 堀昌雄

    ○堀委員 私がいただいている資料では、実は十−十二月は二一・六でございますね。  そこで、これが発表になったのは二月ですね。たしか二月に発表になっている。しかし、二月に発表になって、三月の初めにもう一ぺん準備率の引き上げになっているわけですね。準備率の引き上げが三月の初めに行なわれておる。二一%をこえるという民間設備投資の増加というのは、これはたいへん高い設備投資で、いま総裁がおっしゃったように、総需要は、すでに二月段階では、十−十二月が二一%もあれば、一、二月はさらに上がってくる情勢があるわけですから、私は、三月の初めにもしいまの——そういうデータが不十分であったということはわかりますけれども、それならば三月の初めには行なわれてよかったのではないだろうか。それがまだ四月まで繰り越して、一カ月準備率のほうが先に先行しているわけですね。ですから私は、どうもそこらに——これは両方言えることでして、今度はゆるめるときがまたやはり二クォーターのズレができる。それはまあ私は当委員会なり予算委員会でもずいぶん言っていますけれども、アメリカのこういう経済統計、実に早いんですね。ともかくGNPのいろんな資料でも非常に早く出てくるけれども、日本は非常におそい。何とかもう少しこれを早く、まあ多少のフレがあっても、早く出ないか。現在一番早いのは、QEが一番早いということなんですが、しかし一方では、そういうものにたよらずして、大体現在の成長は瞬間風速どのくらいだという話はしばしばあるわけですね。もうことしの年初来、大体一五%程度というのはずっといわれておったことでありますから、どうも私そこらを感じて、政策決定がいつも非常に両方ともおくれるということが問題だと思うので、私たびたび当委員会で言っていますけれども、間違ったら直せばいいと思うのです。早過ぎてどうもうまくなかったら、またそれをやればいいので、そんなたいへんなことに考えておるところにどうも問題があるんじゃないか。通貨問題もしかりだという感じをこの前一回申し上げたことがあるのでして、政策手段というのは、最も適切な時期に最も適切にとることに意義があるのであって、おくれたのでは非常に国民生活にマイナスの影響をもたらすんじゃないか、私はこう思いますので、どうかひとつ今後についてはもう少し適切な処置をとっていただきたい。  いろいろな指標で見まして、たとえば昨年の状態を見ていますと、卸売り物価は、昨年は、一、二、三、四、五、六、七月までは〇・二とか〇・一しか上がっていなかったのですね。八月になってぽんと〇・六上がり、その次が〇・七、〇・七、十一月が一・五、十二月が一・六、一月が一・五、二月が一・六と、非常に高い卸売り物価になっているのですが、こういう指標を見ていましても、やはりこれは月がかわればわかる資料のようですから、もうちょっとここに対応する処置があったのではないか。百貨店の売り上げ高を見ておりましても、大体年初から九月ぐらいまでは一四、五、六%程度であったのが、十月になると一七・七、十一月一九・九、十二月一九・七、一月二一・九、二月二二・九と百貨店売り上げが上がっておるわけですし、通貨の増加も同じように平仄を合わせて動いておる。いろいろなデータを見ておりますと、どの角度から見てもたいへん今度の処置が不十分で、野党の私でも年末に〇・五%上げるべしと言っていたのが、まあいれられなかったということはたいへん残念だと思うのでありますが、今後はひとつ適切な運営をしていただきたいと思います。  これで政策問題は一応ここまでにいたしまして、ちょっと私は日本銀行法というのを少し調べてみました。これまであまりこういうものを調べてみたことなかったのですが、調べてみてたいへん驚いておるのであります。日本銀行法第一条は「日本銀行ハ国家経済総カノ適切ナル発揮ヲ図ル為国家ノ政策ニ即シ通貨ノ調節、金融ノ調整及信用制度ノ保持育成ニ任ズルヲ以テ目的トス 2日本銀行ハ法人トス」第二条「日本銀行ハ専ラ国家目的ノ達成ヲ使命トシテ運営セラルベシ」、日本銀行総裁、これお読みになってどういう感じなさいますか。
  111. 佐々木直

    ○佐々木参考人 御承知のように、この法律は昭和十七年にできた法律でございます。もう大東亜戦争が始まっておりました。その前に国家総動員法もできておるというようなことでございまして、その中における中央銀行というものがこういうものでなければならないという、そのときのものの考え方が出ておると思います。したがいまして、こういうものがいまもなお日本銀行法としてありますことにつきましては、これはもう完全に時代から離れておるものである、できるだけ早く改正しなければならないと思っております。
  112. 堀昌雄

    ○堀委員 総裁もおっしゃったように、私もこれを読んでたいへんびっくりいたしました。昨日でありますか、尊属殺人の規定が違憲であるという最高裁判決が出ましたね。まあ私も全くその最高裁判決がおそきに失したと思っておる立場でありますけれども、今日やはり法律が現行憲法に背馳をしておるものが残っておるということは、これはたいへん重大なことだと思うのですね。きょうは残念ながら大蔵大臣もいなければ政務次官もいない。政府を代表する者がいないので、これはもう聞きようがないからまあこれは聞きませんが、銀行局長は所管局長だから、あなたはどう感じるか、あなたの所見を聞いておきたいと思います。
  113. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 私、ここでお答えいたしますと、私個人の感じで申し上げていいのか——銀行局長として申し上げる立場にむしろあるのではないかと考えます。  確かに、いまの表現、あるいはこれが法律ができた時点から申しましてそぐわないということは、そのとおりだろうと思います。ただ、もう堀先生も百も承知でございますところを申し上げるのははなはだ恐縮でございますが、金融に関する法規というものに特に強い特徴だろうと思いますが、あくまで慣行と申しますか、実際の動きの上に立ってそれを理念をあらわしていく、あるいはそれを総括していくというような形の法律が多いわけでございまして、法律の条文そのものに非常に拘束されて、それによって現実の事態が非常に動きがとれないというようなものと、それからそうでないものと、多少——たとえば「国家目的」とございますこの国家目的を今日の時代に即して読みますならば、福祉社会の建設であるとか、あるいは生活水準の向上でございますとか、そういうように読み得る心がまえで運用されておるのが現在の時代ではなかろうかと考えております。確かに、法律を改正する、日本銀行法を改正する機会がございますれば、さらに今日の時代に即して改めるべきものとは存じます。ただ、現在の日本銀行法は今後とも金融の基本法であるということから申しますと、これの改正にあたっては非常に慎重に臨んでいきたい、そして経済の先行きを望み得る時点においてこれの改正に踏み切るべきではなかろうか、かような考え方から、今日の段階において、この一条、二条の問題をもって直ちに改正に踏み切るべきであるかどうかについては、私は多少疑問を持っておるということでございます。
  114. 堀昌雄

    ○堀委員 日本銀行法は昭和十七年二月に制定をされまして、戦後二十年十一月には、ポツダム宣言の受諾に伴い、外国人または外国法人による日銀出資の禁止規定を削除した、こんなことがあるようですが、その後二十二年、二十四年、二十七年、三十二年と改正があるわけですね。三十二年にこういう改正をしておるときにこういうことが放置されておるということは、いま局長の話を聞いていてちょっと残念なのは——私も、それは日本銀行法の改正というものには二つあると思うのですよ。日本銀行の経済的運営の問題として当然やはり改めるべき問題があるとすれば、それは一つありますよ。それはあなたのいまの話でいいのですよ。しかし、いやしくもここに書かれていることは、総裁も言われたように、こんなものが今日あることは、この考え方日本国憲法に対して違憲ですよ。ですから、そんなものを放置しておくわけにはいかない。だから、これは自民党の皆さんにもお話をしたいのですけれども、議員立法でこういうところは変えるべきだと思うんだ、現行憲法に背馳しておるようなところは。あとの政策部分の問題は二の次でいいですよ。しかし、少なくともこんなものがいつまでも戦時中の法律そのものでまかり通っておる、これはいま銀行局長は国家目的をどう理解するかと言うけれども、一体いまの民主主義の世の中で、日本銀行が国家目的のために、「国家目的ノ達成ヲ使命トシテ運営セラルベシ」冗談じゃないですよ。いま主権は国民にあるのであって、だから、国民の福祉向上のためにとか、国民のために運営されるというならわかりますよ。日本銀行というのは国家のものですか。銀行局長、そうじゃないでしょう。国民のものでしょう。その点は違いますか。
  115. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 私の申し上げたのがあるいは誤解を呼んで申しわけございません。私の申し上げたのは、この二条の趣旨は、私どもがいま理解するといたしますならば、日本銀行は一応これは公共的な立場においてその運営をすべきであるというその使命をいっておる。その国家目的の内容としては、福祉社会の建設という今日の国家目的があるのではなかろうかと私は考えておる、かように読んだわけでございます。
  116. 堀昌雄

    ○堀委員 あなたが考えるのは自由ですけれども、これはみんなそういうふうに考えません。だって、制定された時期にはそういうことになっていないのですよ。そのときの国家目的は、戦争に勝つことです。そのための国家目的であり、そして「国家経済総カノ適切ナル発揮」なんという、これは先ほどの総動員法との関連で出てくるわけですからね。私はこれはどうしても改めるべきだと思います。これはひとつ委員各位とよく御相談申し上げて、もし政府がやる気がなければ、議員立法で必要なところは変えるということについて自民党の皆さんにも御協力をいただきたい。民主主義の世の中であり、新憲法の世の中でありますからね。それはそこまでにします。  そこで、私これを読んでおりまして、これは法制局にちょっとお伺いしますが、第一章ノ二に政策委員会という項目がある。第十三条ノ二「日本銀行ニ政策委員会ヲ置ク政策委員会ハ第十三条ノ三第一号ニ規定スル日本銀行ノ業務ノ運営、中央銀行トシテノ日本銀行ノ機能及他ノ金融機関トノ契約関係ニ関スル基本的ナル通貨信用ノ調節其ノ他ノ金融政策ヲ国民経済ノ要請ニ適合スル如ク作成シ指示シ又ハ監督スルコトヲ任務トス」こう実は十三条ノ二に書かれておりますね。  そこでちょっとお伺いしたいのは、この一番最初のところですね。「日本銀行ニ政策委員会ヲ置ク政策委員会ハ第十三条ノ三第一号ニ規定スル日本銀行ノ業務ノ運営」というのはどこにかかるのですか。
  117. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいまお読みになりましたのは、政策委員会の任務あるいはその性格というものを明らかにした規定と理解しております。この中で「第十三条ノ三第一号ニ規定スル日本銀行ノ業務ノ運営」これは「国民経済ノ要請二適合スル」云々というところにかかるというふうに思っております。
  118. 堀昌雄

    ○堀委員 そういうふうになりますと、こう読むことになるのですね。「日本銀行ニ政策委員会ヲ置ク政策委員会ハ第十三条ノ三第一号ニ規定スル日本銀行ノ業務ノ運営」を「国民経済ノ要請ニ適合スル如ク作成シ指示シ又ハ監督スルコトヲ任務トス」、業務について「作成シ指示シ又ハ監督スル」ということは、これは業務全般について日本銀行は政策委員会が主体だ、こういうことに法律は読めますね。よろしゅうございますか。
  119. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、十三条ノ三をごらんいただきますと、政策委員会が任務を達成するための内容といたしましてこの権限の規定がございます。たとえば第一号で「日本銀行ノ業務ノ運営ニ関スル基本方針ノ決定」というような事項もございますし、その他、公定歩合あるいは公開市場操作のやり方、それから準備預金に関する法律に基づく準備率の決定、変更といったような、金融政策のいわば基本に当たることにつきましてその決定権を政策委員会が持っておるわけでございます。また、十五条をごらんいただきますと、「総裁ハ日本銀行ヲ代表シ政策委員会ノ定ムル方策ニ従ヒ其ノ業務一般ヲ執行ス」という規定もございます。その意味で、先生御指摘のとおり、いわば中央銀行としての日本銀行の基本的な政策、これについては政策委員会が決定権を持っておる。その政策委の定むるところに従いまして、総裁以下のいわゆる執行機関がその業務の一般を執行するその任に当たるというふうに解釈できると思います。
  120. 堀昌雄

    ○堀委員 あなたの言うことは、要するに、十三条ノ三は事項を例示しておるわけですね。これだけはしなければいかぬという、これは制限規定だと思うのです。これだけは政策委員会がどうしてもしなければいけないという制限規定ですね。しかしながら、前段の任務のところでは、業務の運営を「国民経済ノ要請ニ適合スル如ク作成シ指示シ又ハ監督スルコトヲ任務トス」というのは、それ以外のことはやっちゃならぬと書いてないのですよ。これだけ広い範囲の任務を与えて、ただ制限規定として、しかし、その任務の中でも特にこれだけのことはどうしてもやらなければいけませんよ——あとは限定事項でしょう、十三条ノ三は。違いますか。   〔委員長退席、松本(十)委員長代理着席〕
  121. 茂串俊

    ○茂串政府委員 十三条ノ三は、まさにそういった政策委員会の任務を達成せんがための政策委員会に与えられました権限を明示しておるわけでございまして、先ほども触れましたが、第一号に「日本銀行ノ業務ノ運営ニ関スル基本方針ノ決定」ということがございます。したがいまして、そういった業務に関する基本的な事項につきましては、まさにこれは政策委員会が決定すべきであり、執行部におきましてはその決定に従って業務運営をするというふうに解釈できると思います。
  122. 堀昌雄

    ○堀委員 それは、あなたの言っておることはわかっておるのですよ。しかし、法律にはそう書いてないじゃないですか。いいですか。「第十三条ノ三第一号ニ規定スル日本銀行ノ業務ノ運営」それと、「国民経済ノ要請ニ適合スル如ク作成シ指示シ又ハ監督スルコトヲ任務トス」というのは、この場合はそれではどういうふうに法律解釈するのですか。私は、任務という点では広く包括的に法律に規定していると思うのです。この包括的に規定した中で、ただし、これだけはどうしてもやらなければなりませんよ、この項だけは政策委員会がきめなければならぬことです。しかし、そのワクを越えて日本銀行の任務というもので、いま私が言ったように、業務の運営について「国民経済ノ要請ニ適合スル如ク作成シ指示シ又ハ監督スルコトヲ任務トス」とある以上、より包括的な任務が与えられておるというのが法律解釈じゃないですか。ちょっとはっきりしてもらわないと、限定事項で、基本方針だけきめたらあとはいいと書いてないですよ。「作成シ指示シ又ハ監督スル」というのは、基本方針との関係はどうなるのですか。これは宙に浮くのですか。法律上はそう書いてあるのですよ。
  123. 茂串俊

    ○茂串政府委員 先生のおっしゃりたいこともよくわかるわけでございますけれども、一般に、組織機構につきましては、任務に関する規定と、それから権限に関する規定が置かれるのが通例でございます。したがいまして、その任務の事項につきましては、抽象的と申しますか、要するに、その果たすべき役割りなり機能なり、あるいはその位置づけ、そういった点につきましていわば一般的に規定を置きました上で、具体的には権限のところで実際に行なうべき事柄を列挙するのが通例でございます。また、業務の運営と申しましても、一々こまかいところまでこの政策委員会がこれを行なうということは、実際上もできないと思いますし、いわばそこで意思決定機関という立場と、それから執行機関という総裁以下のいわゆる執行部、この両者が相まちましてそこで日銀の中央銀行としての機能を十全に果たしていくというねらいが日本銀行法にはあろうというふうに理解しております。
  124. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がかかりますからいいかげんにしておきますけれども、私がなぜここにこだわっているかと言いますと、要するに、日本銀行法というのは、よく見ますと、まさに中心は政策委員会になっているわけですね。この法律ができる前は、おそらく日本銀行の総裁というものがかなり専決的な処理ができたんじゃないだろうかと思うのです、旧法をこまかく見ていませんけれども。だけれども、これができますと、この法律から見ると、基本方針というものは——それじゃ一体どこまでが基本方針なのかという点ですね。  政策委員会というのは、一体一カ月に何回開かれるのでしょうか。
  125. 佐々木直

    ○佐々木参考人 定例は火曜日と金曜日でございます。
  126. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、毎週火曜日と金曜日に政策委員会が開かれているわけですね。  そこで、もし火曜日と金曜日に開かれるぐらいなら、当然、いまの運営の基本方針ということではなくて、いまの「作成シ指示シ又ハ監督スル」というのは、抽象的なことばですから問題があろうかと思いますけれども、言うなれば、業務についてかなりはっきりした意見がたびたびそこで論議され、きめられることがあるので——もちろん基本方針はきまっているでしょうけれども、金融なんというものは、どこかで一ぺん基本方針をきめたらそれでいいという問題ではなくて、情勢の変化に応じてそれはしょっちゅう変わらなければならぬ問題ですね。だから、当然変わるべきものとするならばいま私が前段で読んだことのほうが現在の状況に合っているのではないか。基本方針だけきめておいたらあとは総裁がやるんだということよりも、この法律をすなおに読めば、そういうふうに毎週火曜日と金曜日にあるのなら、当然そのときにあったことがここで話題にされ、政策委員会の論議を経て、じゃ大体こういう処理をしたほうがいいだろうという問題が重なっていくというのが本筋だと私思うのです。よくわかりませんがね、法律から見るだけですから。  総裁、これは実際にどういうふうに運営されているのでしょうか。
  127. 佐々木直

    ○佐々木参考人 火曜日と金曜日にやっておりますが、その際には必ず営業局長から、その日その日あるいはその前の政策委員会から次の政策委員会までの間に起こった金融市場のあらゆるできごとが報告されます。それからまた、たとえば四月なら四月にこれぐらいの銀行券が出る見込みである、あるいは財政はこれぐらい揚げ超になる見込みであるとか、そういうようなものが前月、三月の末にわかりますから、そういうものをそろえて、これに対しては執行部としては大体こういうようなやり方をやりたいと考えておるというようなことも報告いたしますし、外国為替市場についてもときどき報告をいたしております。そういう意味で、現実の事態に耐えず知識を持っていただいて、その場その場に必要な判断を下していただくということになっております。
  128. 堀昌雄

    ○堀委員 それならけっこうなんですよ法律はそうなっているように思いますからね。  そこで、私がなぜきょうこれを取り上げているかと言うと、経済企画庁長官が、公定歩合を引き上げるべきだとか、どうもいろいろなことが出るわけですね。経済企画庁はここへ政策委員を送っているわけですね。大蔵省も政策委員を送っているわけですね。そうすれば、その政策委員を通して政策委員会の中で言うことは自由であっていいと私は思います。当然、自由であってもいいと思います。どうもよその経済企画庁長官だとか大蔵大臣が、ぱっぱかぱっぱか——まあ大蔵大臣は最近言わないようだけれども、慎重だから。本来これは日銀の政策委員会の所管事項ですよ。外からものを言うというのは、私はルールに違反しているという気がするのですよ。政策委員を出していなければ、しかたがありません。経済企画庁の政策委員がいない、大蔵省の政策委員がいないのなら、これはしかたがないですね。外からものを言わなければいかぬでしょう。それに政策委員を送り込んでいるということは、大蔵省の意向は政策委員会に火曜日と金曜日に反映されるわけですね。当然また経済企画庁の意向も反映できる。これは、総裁、私はこの仕組みから見て、要するに、大蔵大臣経済企画庁長官がああいう発言をするのは法律違反だと思うのですが、いかがですか。
  129. 佐々木直

    ○佐々木参考人 現在におきましては、経済企画庁から来ておられる委員、それから大蔵省から来ておられる委員、御両人から両省の考え方は絶えず連絡していただいております。   〔松本(十)委員長代理退席、委員長着席〕
  130. 堀昌雄

    ○堀委員 それはいいのですよ。その後段のほうですよ。それだけ連絡があるのに、そこの大臣なり長官が、要するに一般に向かってものを言うということは、私は日本銀行法違反だと思う。  法制局、ちょっと聞きますが、この法律はそういうふうになっておるでしょう。要するに、公定歩合その他というのは、十三条ノ三にざっと書いてある中に入っているのですよ、政策委員会がつかさどるべき事項を。その政策委員会がつかさどるべき事項を、政策委員を出しておる経済企画庁の長官なり——大蔵大臣は言わないから、今度は経済企画庁長官にしぼります。この間ああいうことを言ったのは、大蔵大臣兼任のときじゃなかったのかな。そこはいいですが、どっちにしても結局あれは法律違反だと思うのだが、これはそのことを聞いているのじゃないですよ。法律的には、私が言ったように、この法律は所管事項を政策委員会にまかせておるのであるから、その他の者、特に政策委員を送っておる庁の長官がそういうことを言うのは、法律違反だと思うが、法制局はこれは法律解釈上どう思うか。
  131. 茂串俊

    ○茂串政府委員 国の金融政策一般につきましては、これはまさにいま御指摘のとおり、具体的な権限としては、たとえば準備率の決定とか、あるいは公定歩合の決定とかいったような権限は、確かに政策委員会にまかされておるわけでございますけれども、金融政策そのものは、一般の経済政策その他財政政策、そういったものにいわば密接不可離の関係があるわけでございまして、その衝に当たるところの大蔵省あるいは経済企画庁の幹部が、その関連において、その立場においていろいろな意見をおっしゃるという点につきましては、あえてこれが法律違反という問題はないのではないかと考えられます。
  132. 堀昌雄

    ○堀委員 法律は、それでは、そういう政策委員を送っておるものが言うことはもう自由だということですか。それでは、大蔵大臣が、公定歩合〇・五%上げるべきだ、経済企画庁長官が、上げるべきだと言うことが、法律的に見て何ら瑕疵なしということですか。
  133. 茂串俊

    ○茂串政府委員 法律的な面でどうかという御質問、非常につらいのでありますけれども……
  134. 堀昌雄

    ○堀委員 私は法律論を聞いているので、実態論を聞いているのじゃないですよ。あなた、法制局でしょう。
  135. 茂串俊

    ○茂串政府委員 そういった点につきまして、所管の大蔵大臣とかあるいは経済企画庁長官がそういう御意見をおっしゃるという点そのものは、別に法律に触れるという問題ではないと思います。
  136. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは自由だということですね。私はこれを日本銀行の中立性と見ているわけですよ。それではあなたの法律解釈は、大蔵大臣は何言ってもいいんだ、公定歩合をあした上げなさい、上げるべきだ、こう言っても、法律上何もないの。この法律はそういうことを期待しているの。この政策委員会の法意は、あなた、どういうことになっているのですか。
  137. 茂串俊

    ○茂串政府委員 たびたび申し上げますけれども、大蔵大臣の立場あるいは経済企画庁長官の立場の御意見として、そういう点を別にこれは閣議で決定した上でそういう意見をおっしゃっているわけじゃないのでありまして、その所管事項に関連する問題で意見としておっしゃっているという意味では、別に法律に触れるという問題ではないと考えております。
  138. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がありませんから、法制局長官を入れて一ぺんやりましょう。私はいまの話納得ができない、何のために政策委員会が設けられているかということについては。じゃ、何のために大蔵省と経済企画庁は政策委員をこの中に送っているのですか。これは法律的にはどういう意味を体しているのですか。
  139. 茂串俊

    ○茂串政府委員 先ほども触れましたけれども、国の金融政策そのものが経済政策あるいは財政政策と密接不可離の関係にございまして、その政策をより高次の統一性を保つと申しますか、そういった必要がございますので大蔵省なり経済企画庁の代表が参加しているというふうに理解できると思います。
  140. 堀昌雄

    ○堀委員 それなら、それを通してやるのが、期待していることじゃないのですか。それを通して政策委員会に大蔵省や経済企画庁の意見を反映するということが、法意として期待されているのじゃないですか。
  141. 茂串俊

    ○茂串政府委員 その点につきましては、各大蔵省の日銀政策委員あるいは経済企画庁の日銀政策委員は、当然その席上でその代表する意見を申し述べておられると思うのでありますけれども、その点と、いまおっしゃった、外部に対しまして大蔵省はこう考えるといった点につきまして意見を申し述べる点とは、全く別の事柄だと思います。
  142. 堀昌雄

    ○堀委員 イギリスでは、公定歩合を上げるということを大蔵大臣が言っただけでも大蔵大臣がやめた歴史があるのですよ。これは政治的問題だからいいですけれども……。内閣法制局というのは全く権力に盲従して、そういうことじゃだめですよ。やっぱり法制局は、法律論なんだから、法律論は法律論、実態論を聞いているのじゃないのだから、法律的にはそうですということでなければ、この法律は意味ないのです。この点は全く遺憾だと思います。この問題はここまでにして、もう一ぺん日を改めてゆっくりやります。大蔵大臣経済企画庁長官を入れてゆっくりやります。  国際金融局長にお伺いをしたいのですけれども、イギリスの通貨の処置の問題なんですが、私もこまかくよく知らないのですが、イギリスでは、ドルが売られて、そのために、ポンドを払うときに、それを通貨として払わなくて、大蔵省証券か何かのかっこうでそれが出される。そこでそれは結局マーケットか何かでもう一ぺん、だからコントロールができる場所がある、こういうふうにちょっと聞いたのですが、私もそこはつまびらかでないのですが、イギリスのそういう通貨上の処置をちょっと説明してもらいたいと思います。
  143. 林大造

    ○林(大)政府委員 たいへん申しわけありませんが、その点、私現在つまびらかにいたしませんが、かつての為替平衡資金と申しますか、その為替平衡資金が、イギリスタイプとアメリカタイプとございまして、戦前のことでございますが、イギリスタイプのものは、一種の短期の国庫証券発行権を持っている、そしてその発行権を持っているがゆえに、国内の流動性創出効果を吸収できるという文書を読んだことがございます。ただそれは、いわば通貨かわりに証券をもって代物弁済するというふうには書いてございませんでした。これは記憶でございまして、たいへん恐縮でございますが……。
  144. 堀昌雄

    ○堀委員 総裁、実はちょっとその話を聞きまして、まだ調べる時間が十分にないのでいまちょっと自分で調べずに伺ったわけですが、今後もし、こういうことが起こっちゃいけませんけれども、大量にドルをまた日銀が買わなければいかぬというような事態が起きたときの対策としては、それは短期証券の市場が必要でしょうし、いろいろ準備は要りますけれども、大蔵省証券をそれで出していく。そうすると、受け取ったものは大蔵省証券ですから、通貨じゃありませんから、そうすると、その大蔵省証券をもう一ぺん通貨にかえなければいけませんね。そのかえるときに、いまの経済情勢に応じて操作ができるのじゃないだろうか。だから、過剰流動性問題というのが、フロートしておる限り起きませんから、そういうことはないと思うのですが、また将来起きないとも限らない。日本は為替管理をきびしくしておりますから、起きるのはリーズ・アンド・ラッグズぐらいなものだと思いますが、それにしても、いろいろ手を使って起きたときに、私はやっぱりちょっと検討に値する課題のような気がしておるわけです。まだちょっと私も、いまの国金局長の答弁だけでは不正確ですからあれですけれども、私が聞いた話でも、短期証券を出しているというふうに聞いて、なるほどこれはうまい考えだな、こういうふうには思っているのですが、総裁、この点はいかがでしょうか。
  145. 佐々木直

    ○佐々木参考人 私どもの記憶では、実は戦前、だいぶ前になりますけれども、米を政府が買いましたときに米穀証券で渡したことがございます。それを昔の農業協同組合が換金しておったという例がございますので、確かに、政府の支払いの流動性をある程度押える手段として、そういうことが一つ意味があると思います。私どももできるだけこういう場合の外国為替関係の流動性をストレートに引き揚げる方法がいいというので、最近中小輸出業者の輸出予約に関連します外貨の売りの代金は、日本銀行の売り出し手形で直接吸収しておるのでございます。おっしゃる御趣旨はよくわかりますので、検討させていただきたいと思います。
  146. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、もう一つ日本銀行の貸し出しが最近まだふえておりますね。貸し出しがふえているのは、おそらく輸入金融が主体だろうと思うのですが、この輸入金融との関連で、これは輸入金融の問題とは別なんですが、日本銀行としては商社に対していろいろといま引き締め処置をとっておられますが、この輸入金融がどんどんふえるのは主として中小企業だけなのか、かなり大手の商社も日銀の貸し出しの輸入金融の増加分の中に入っているのかどうか。やはりそこで輸入金融がついていれば、輸入金融というけれども、これは金が商社に入ってくるわけですから、それだけ手元流動性は高くなるわけですね。ここら辺、あれだけ手元流動性の高い商社が、なお輸入金融だからといって日本銀行の信用を利用するというのは、私、この際どうも適当でないというような感じがするのですが、いまの貸し出し増加の輸入金融の中身がどんなふうになっているかをちょっとお答えをいただきたいと思います。
  147. 佐々木直

    ○佐々木参考人 この輸入金融日本銀行がやるようになりましたのは、実は外貨対策で始まりました。それまでは、日本の輸入につきましては全部外国銀行の信用によって決済されておりまして、外国で物を買いまして、そこで向こうで手形が振り出される、その手形をすぐ外銀に売りまして、外銀はそれをたとえば四カ月後に日本から決済してもらうという形でやっておりました。ところが、日本自身が外貨がだんだんふえてまいりましたから、そういう機械的に輸入を全部外国銀行の信用に仰ぐということは、金利を考えましてもつまらないことでありますので、そのうちの何%かは日本銀行の円を渡すことによりまして決済する。したがって、その決済までの信用供与の期間は、いままでの外国銀行から受けておりました信用期間と全く同じにしたわけでございます。そういうようなことで、最初はそのうちのたしか一五が二〇%ぐらいだったと思いますが、だんだん外貨がふえてまいりましたので、現在は五〇%までやっております。ですから、いま日本の輸入がふえますれば、そのふえたものの半分は、日本銀行の貸し出しによって、外貨にたよらないで決済をする、金融を受ける、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、これは輸入業者が全部受けている信用でございます。
  148. 堀昌雄

    ○堀委員 確かに、外銀で取ってくるものもどうせ外貨になりますから、売れば円が出てくるわけですから、同じですけれども、どうもいまの商社のいろいろな動きを見ておりますと、何かやはり日本銀行が信用創造して、依然として彼らの手元に協力しているような感じがしてならないのですね。同じことだと思います。外銀で借りて売って処理をしてくれば、結果は同じことになるのではないかと思いますが、どうも感じとして何だか輸入金融がふえる、そのことはいい、輸入がふえることはこの際はいいことですから、私もそのこと自身に反対ではないけれども、何かいまの問題で——だんだん時間がたてば商社の手元流動性もだいぶきゅうくつになってきていろいろ変化が起こると思うのですが、時間がかかると思うのです。これはただ感じだけですけれども、そういう感じがするのですが、何かそれについては対策があるでしょうか。
  149. 佐々木直

    ○佐々木参考人 円の面につきましては、実は日本銀行の貸し出しによって置きかえた部分だけは外為会計の払いが減っておるわけでございます。そうでなければ、向こうから入ってきた外貨がまたそれだけ出ていきますから、その意味では円サイドにおいては完全に消し合っておることは事実でございます。
  150. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、それはいまの国際金融上の議論でなしに、国内金融の面でいろいろ締めているけれども、どうもそこだけはすすすっと日銀の信用膨張がいっているような感じがするものですから、だからそこがどうも何かちょっと——国際金融的にはおっしゃることはよくわかるのですよ。こっちで出さなければ、ドルを売って円にして持って帰るわけですから、円との関係では私は同じことだと思うのです。しかし、何かどうもどこかそこら辺が、これは感じの問題ですからいいですけれども、何かちょっと不合理な感じが——日本銀行のこちらのあれで見ると、その点では貸し出しがどんどんふえるというかっこうになっちゃっているわけですね。ほかの問題もいま貸し出しがないのでしょうが、輸入金融だけは貸し出しがふえる。それは確かに理屈としては、ここで貸し出ししなければ外為から出ていくのだから、同じだといえば同じなんですけれども、どうもそこらが何となく納得しにくい感じがするのです。それはけっこうです。  最後に、これは委員長にちょっとお願いをしておきたい問題があるのですけれども、日本銀行法の十三条ノ三をいまやっていまして、おしまいのところに、「左ニ掲グル事項ニ関シ主務大臣ヲ経由シテ行フ国会ニ対スル毎年ノ報告」というので、日本銀行政策委員会の報告というのが実はあるのです。これが毎年五月に国会に文書で出されておるわけですね。ところが、私、大蔵委員会に籍を置くようになって、昭和三十五年から約十三年問いますが、ここでこれが論議されたことが実は一回もないのです。ついては、大蔵委員長、これが五月に出されますから、五月に出されたら、日本銀行の政策委員会の議長である総裁も御出席いただいて、この報告を当委員会で一ぺん論議をするということを本年からひとつ道を開いていただきたいと思いますが、委員長、いかがでしょうか。
  151. 鴨田宗一

    鴨田委員長 理事会にはかりまして皆さんと御相談して、その結果、申し上げたいと思います。私は非常にいいと思いますけれども、理事の先生方の御意見がありますから……。
  152. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  153. 鴨田宗一

  154. 荒木宏

    荒木(宏)委員 総裁にお尋ねいたしますが、通貨当局の責任者として国際会議に出席をされまして、いまインフレに悩んでいる国民のために国際会議でどういう成果、どういう約束を取りつけていらっしゃったか、こういうことを私はお尋ねしたいと思うのでございますが、ワシントンからお帰りになりましての記者会見では、二十九日でございましたか、会議の性格上具体的な成果というものは期待できない、これは予想したとおりだ、こういうことをおっしゃっておるように伺いました。  そこで、この会議のほうは午前中他の議員から大蔵大臣にお尋ねしたようでございますので、私はパリのほうの会議について、総裁が国民のためにどのような主張をなさり、どのような成果、約束を取りつけられたか、こういうことなんでございますが、まず第一に、あとのコミュニケを見ますと、市場介入のことについての声明の項目がございます。一体アメリカは買いささえをするということについて国際法上はっきり約束をしたのかどうか、買いささえをいたしますという国際法上の義務を負うたのかどうか、この点をまず総裁の御説明を伺いたいと思います。
  155. 佐々木直

    ○佐々木参考人 パリ会議は二回行なわれまして、第一回の会議の席では具体的な問題の決定はございませんでした。第二回目のパリ会議におきまして、ただいま御指摘のございましたように、各国当局が為替市場に適宜介入すること、それに原則的に合意する、そしてこれに必要な資金の調達方法としてスワップ制度の拡大を考える、こういうことがコミュニケの中に入ったわけでございます。したがいまして、これは介入することに原則的に合意したのでございまして、これはどこかの国が必ずこういうことをしなければならないといったような意味の義務をきめたものではございません。
  156. 荒木宏

    荒木(宏)委員 時間がありませんので、初めに私のほうでわが党の主張を一言、質問を明確にする意味で申し上げておきますが、いまの国際通貨問題の原因、責任は、アメリカの軍事経済支出、海外経済支出にある。だから責任をつくったものはその責任で処理をしなさい、軍事経済支出をやめなさいということをわが党は主張しているわけでございますが、そのためには、買いささえをアメリカがはっきりやるべきだ。いま総裁のお話ですと、これは義務を負ったものではない、こういうことなんですね。では、どうしてあなたのところはそれをやらないのですか、はっきり約束しなさいよということをどうしてはっきり取り付けられなかったのか。
  157. 佐々木直

    ○佐々木参考人 その為替市場における買いささえというような——売った買ったりするわけでございますが、それはそのときの情勢による、非常に技術的なものもございまして、こういうものを必ず売れとか、必ず買えとかいうような義務を負わすというのには不適当な操作の性質のものだ、こういうふうに思います。
  158. 荒木宏

    荒木(宏)委員 それでは一体この声明の実際の価値はどういうところにあるわけですか。こういう合意したということは、アメリカのほうが、そうしましょうと、こう約束したことではないのですか。これはあってもなくても同じことですか、極端な言い方をすれば。
  159. 佐々木直

    ○佐々木参考人 この第一回のパリ会議コミュニケでは、現在の為替相場のあり方、これは合理的なものである、しかし、いまいろいろ問題が起こっているのは、投機資金の移動によって起こっているのだ、こういうことになっているわけです。したがいまして、今度の第二回のパリ会議の結論で出ております介入というのは、その主たる目標は、投機的な国際的な資金の移動に対する対策、こういうふうな考え方から出ているものだと思います。
  160. 荒木宏

    荒木(宏)委員 それではアメリカはドルの価値を維持するについては責任を負わなかったわけですか。総裁の御説明によりますと、投機的な金の動きについての処置としての合意だ、こういうことになりますと、事がよって起こっている当の本人であるアメリカとして、信認回復するための措置をとりましょう、こういうことは言わなかったということですか。
  161. 佐々木直

    ○佐々木参考人 アメリカといたしましては、自分の国の国際収支が悪い、それを回復する手段としましては、二月に自分でドルの切り下げを一〇%実行しておるわけであります。それで、その後における各国の為替相場のいまのいろいろな水準というものはそれ自身合理的なものだという判断、したがいまして、これがもし大幅に動くという場合には、それは投機によって動いているのだ、したがって、その投機を防ぐための手段を講ずれば、いまの為替相場というものは大体当を得ているのだ、こういう考え方からこういう結論になったわけでございます。
  162. 荒木宏

    荒木(宏)委員 では、関連して原因について伺いますが、この声明の中にも、いまの巨額な資本移動の源泉と性格についていろいろ討議したという趣旨の項目がありますね。この巨額な資本移動の源泉は、総裁も御存じのとおりに、この十年間でアメリカの海外支出は約四百五十一億ドルにもなっておりましょう。海外の経済援助、軍事援助は合わせて約四百七十一億ドルにもなっている。御承知のように、関税委員会の発表によりますと、多国籍企業で海外投資として出ているのは約二千六百八十億ドルもあるのですから、これだけ巨額にばらまいている資本移動の源泉と性格、まさにここに関係があるんじゃないでしょうか。いま、投機筋の動きがもとだ、こうおっしゃるのですけれども、肝心のアメリカがばらまいている海外の基地の維持費だとか、ベトナムでうんと使った戦争の費用だとか、あるいはもう各地で問題になっている多国籍企業としての海外の経済支出、これがいまの源泉と性格、こういうことになるんじゃありませんか。このコミュニケの、巨額な資本移動の源泉と性格ということについては、一体どういうふうにこの会議で総裁はおっしゃり、どう理解なさったんでしょうか。
  163. 佐々木直

    ○佐々木参考人 われわれが国際通貨制度の問題につきまして基本的に考えておりますことは、この前の、去年の秋のIMF総会でも出ておりますし、いわゆる今度のC20、二十カ国蔵相会議における愛知大蔵大臣の発言からもわかるわけでございまして、ただ、いまお話しのように、アメリカ側が今日までやってきましたいろいろな国際的な活動、そういうものについて、具体的にこれをこういう通貨制度会議をつくって議論するという雰囲気ではございません。それで、確かにいま御指摘がございましたように、いろいろ国際的な短期資金の移動のもとになっておりますユーロダラーマーケット、これはアメリカの国際収支の赤字の累積によってだんだんできてきたということは確かに事実でございますし、それからまた、石油産出国の石油の代金がだんだん増加しているということもその中には入っておると思います。したがいまして、こういうような国際的な大きな資金の動きに対してどういう対策を講ずるかということは、国際通貨制度に関するこういうパリ会議とか二十カ国会議で問題になりましたけれども、その多くのいろいろな基本的な問題につきましては、それを議論するそういう雰囲気といいますか、そういう会議の運びではございません。
  164. 荒木宏

    荒木(宏)委員 会議の性格とか雰囲気とか、いろいろございましょう。  そこで、総裁の認識をお尋ねしたいのでございますけれども、そういった過剰ドルの根源は、いま私が申しましたようなところにも原因があるということをお認めになったように思いますが、それはそう伺ってよろしゅうございますか。
  165. 佐々木直

    ○佐々木参考人 アメリカの総合的な国際収支の赤字の原因にはいろいろなものがあるということは事実でございます。
  166. 荒木宏

    荒木(宏)委員 だとしますと、特定の会議で特定の主張をするかしないか、これは置きましょう。基本的な問題の解決のあり方として、過剰ドルを吸い上げなければならない。そうすると、いろんな原因のある中で、いま私の申し上げたような原因の除去ということも当然考えなきゃならぬのではないでしょうか。つまり、いろいろな解決方法があると思いますよ。しかし、現にドルが過剰になっている、これはもうお認めになっているとおりですね。しかもその出どころというのが、戦争だとか、基地の維持だとか、海外の金もうけだとか、だとすれば、そのことについての吸い上げなり、対策なりということがやはり必要ではないんでしょうか。この点は、日本通貨当局の責任者としてごらんになっていて、どう認識されておりますか、これをひとつ伺いたい。
  167. 佐々木直

    ○佐々木参考人 私どもといたしましては、アメリカの総合的な国際収支が早くバランスするということが国際通貨制度の安定に非常に大事なことであるという認識については、これは各国とも一致していると思います。
  168. 荒木宏

    荒木(宏)委員 総合的ということで一口でおっしゃるのですが、総合というのは、個々のものが集まった総合ですよね。総裁、いかがでしょうか、この赤字の中に、いま私が申し上げたようなことが総合の中に含まれていることはお認めになりますか、それとも、それはおっしゃった総合とは別のものでしょうか。
  169. 佐々木直

    ○佐々木参考人 総合というのは、全部入っているという意味であります。
  170. 荒木宏

    荒木(宏)委員 そうしますと、たとえば七一年の一月から九月までとってみますと、海外軍事支出は二十六億ドル、アメリカの報告でちゃんと出ていますよ。海外経済協力は四十四億ドル台になっています。合わせて七十億ドル余りになっています。それ以外に、それよりももっと大きな赤字の原因——この十年間にですよ。それ以外にもっと大きな赤字の原因というのは、総合の中にはかにどういうものがありますか。いまいろいろおっしゃった総合という中で、どれがウエートを占めているか別ですけれども、私が申し上げた原因があることはお認めになったように思います。ほかにもいろいろあるというふうにおっしゃるのだと思うのですけれども、この十年間に、おもなものとしてどういうものがほかにありますでしょうか。
  171. 佐々木直

    ○佐々木参考人 アメリカの赤字要因につきましてはいろいろございますが、最近において一番大きいのは、貿易収支の赤字でございます。たとえば去年の一月から九月で貿易の赤字が五十二億ドルになっておりますから、そういう面からいいますと、いまの段階では、貿易の赤字が一番大きな原因になっているのではないかと思います。
  172. 荒木宏

    荒木(宏)委員 傾向として、ここ一、二年おっしゃるような傾向が出てきておりますけれども、しかし、六百億ドルとか八百億ドルとかいわれるような全体の大きな、流れ出ているドルの出どころとしては、いま総裁がおっしゃったようなことではなくて、むしろ、先ほど指摘しておるようなことではありませんか。ですから、その根源認識とあわせて、これの吸い上げについては何かアメリカのほうは約束いたしましたですか。総裁のほうで過剰ドルの吸収について御主張をなさるとか、何か約束したようなことはありますでしょうか。
  173. 佐々木直

    ○佐々木参考人 いまありますたとえばユーロダラーでございますとか、そういうものをアメリカに吸い上げるという意味で具体的な措置がられるということは何も会議ではさまっておりませんが、ただ、たとえばアメリカの金利と欧州の金利とを比べまして、もしアメリカのほうの金利が高いというようなことになりますと、欧州にありますドルがアメリカに帰っていくというようなことは起こり得るわけでございまして、とにかく、ニクソン大統領の一昨年八月の新政策の発表によりまして、ドルを金にかえることはもうやめたわけでございますから、それをほかの方法で吸収するといいましても、いまのように自然な流れにおいて本国へ帰るという形以外は、特別な話し合いを各国の間で具体的にまとめませんと、その問題はなかなか解決ができない、一方的にはなかなかやれないことだと思います。
  174. 荒木宏

    荒木(宏)委員 お話を伺っておりまして非常に残念な感じがするのですが、原因が、いま総裁おっしゃったように総合的とはいいながら、その内容がはっきりしている。それをその責任において改善をせよということは、これはもうぜひおっしゃっていただきたいし、またそうあるきべである、私はこう考えておりますが、買い戻すためには、金利差あるいは自然の流れ、こういうことですけれども、それでは改善の具体的なめどはないといわざるを得ないんじゃないかと思いますね。  この声明の中ではスワップの拡大というようなこともあるようですけれども、これは具体的に預け合いということになりますと、換算などは一体どういうふうにすることになるのでしょうか。この会議のときにどういう換算率でスワップをするか、そしてそれは一体どういう担保で返してもらうか、この点はいかがなりましたでしょうか。
  175. 佐々木直

    ○佐々木参考人 スワップをやりますときには、一方で、たとえば日本とアメリカの例をとりますと、日本は、ニューヨークのフェデラル・レザーブ・バンクに、たとえば百億ドルなら百億ドル、十億ドルなら十億ドルの預金をいたします。その十億ドルにそのときの為替相場で相当する円の預金を日本銀行がフェデラル・レザーブから受ける。したがって、いまの御質問の点がそのレートが何であるかということでございますと、それはそれをつくりますときの為替レートによってきまるわけであります。それで両方に預け合いしますから、担保の問題はございません。
  176. 荒木宏

    荒木(宏)委員 そうすると、このレートのめどといいますか、目安ということは、これは成り行きまかせでございますか。一体どういうレートでやるかということは、全くの話のときの相場の成り行きで、通貨当局としては、このぐらいの目安だなんということは全くきまってないわけですか。  また、預け合いだから担保は要らない、こうおっしゃるのですけれども、片方はいまやドルの値打ちが下がる、金とも交換をしない、そういうところへ、相互にやるのだから担保も何も要らないというのでは、これはあまり手放しではないでしょうか。  この二つの点はいかがでしょうか。
  177. 佐々木直

    ○佐々木参考人 二つ通貨の問題が起こりましたときに、その為替相場は、そのときの市場の為替相場以外は使えないわけでございます。そこで特定の為替相場を何か仮定してやるということは、これはなかなかできない。現実のそのときの為替相場を使うというのが常道だと思います。  それから担保の問題は、これは両方に預け合いをするというところにスワップ取引の特徴があるのでございまして、そういう問題が担保がなければできないというようなことでございますれば、スワップシステムというもの自身がもともとできないことになってしまいます。そういうことから離れてできるところにこのスワップ取引の特徴がございまして、したがって、これは長期の金融の問題ではなくて、非常に短期の特別な問題の起こったときの処理方法、そういうものとして、きわめて技術的な手段として考えられたものだと思います。
  178. 荒木宏

    荒木(宏)委員 時間が参りましたので、総裁に強く要請をして、終わりたいと思います。  いまのインフレ、商品投機、物価高の中で、通貨価値の安定ということは、これは国民が強く求めているところでありますし、総裁もそのことは常日ごろ御努力なさっていると思うのですが、こういった、ことにアメリカとの関係でほんとうに日本通貨の価値を安定するということのために、国際会議でも十分いま申し上げたような根源についての主張をされ、そしてそのための処置、アメリカに責任ある処置をとるように、通貨当局の責任者として処置をとられるように強くこの際申し上げておいて、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  179. 鴨田宗一

    鴨田委員長 広沢直樹君。
  180. 広沢直樹

    ○広沢委員 私は、時間がありませんので、日銀の総裁に景気の対策金融政策の問題について二、三お伺いしたいと思います。  一昨年の円の切り上げ、また、ちょうどそのときは不況期にありましたし、さらに、引き続いて通貨不安が起こり、フロートへ、こういうような短期間に非常に激しく経済が動揺しているわけですけれども、そういう中における金融政策というのは非常にむずかしいものがあろうかと思うのですが、やはり景気に対する金融政策というのが、よくいわれておりますように後手後手に回っているのじゃないか、もう少し早急に手を打たなければならないのじゃないか、私はそういう観点からお伺いしてみたいと思うのですけれども、四十五年から公定歩合はずっと引き下げてきておりますけれども、昨年の六月、第六次の引き下げを行なったわけでございますね。そこでいわゆる金融緩和に拍車をかけたといわれております。四十六年、四十七年も外為会計の払い超が両年で約六兆と推計されておりますし、同じ時期に銀行貸し出しも三十数億増加している。こういうふうに手元の流動性が非常に豊富になってきていることを示しておるわけでありますが、こうしたインフレムードの中で、株だとか、あるいは土地だとか、商品の投機という異常な問題が起こってきておるわけです。こうしたことを背景にして、昨年の暮れにおいても、やはり公定歩合を引き上ぐべきではないか、あるいは金融の処置をある程度強化をすべきではないか、こういう話があったわけでありますが、先ほども話がありましたように、一月に過剰流動性を吸収するということで、預金準備率を第一次引き上げまして、約二千九百億くらいになるだろうと思います。それから三月に、いまお話があったとおり、総需要の調整ということで第二次の引き上げを行なった。そして四月の二日に、今度は総需要抑制ということで、いわゆる公定歩合を五%にしております。こういうように景気の推移に応じて金融政策の機動性が望まれるわけですけれども、今日のインフレの抑制は今回の金融処置でどこまで効果をあげるものなのか、インフレムードの鎮静につながるか、この点非常に疑問視されているわけであります。単に金融だけでそれをやるということは、ほかにも影響が出てまいりますから、問題があろうかと思いますけれども、とりあえずいまとっておる手段というものは、金融は三つの段階に分けてとったわけですが、その効果についてどう判断されているか、お伺いしたい。
  181. 佐々木直

    ○佐々木参考人 先ほども申し上げましたように、物価が急速に上がってきておりますので、金融政策の手段の発動に時期がおくれたのではないかという御質問、これは御懸念よくわかります。先ほども繰り返して申し上げましたように、われわれとしては、そのときそのときの情勢をよく考えてやってきたつもりであります。  今度の措置の効果でありますが、金融政策というものは、その効果が出ますのにある程度の時間のズレはあります。しかしながら、二回にわたる準備率の引き上げで約六千五百億円の資金が金融機関から日本銀行に引き揚げられております。それから公定歩合の〇・七五の引き上げは、過去における日歩時代の〇・七三と大体同じレベルでございますが、いままでの公定歩合の引き上げ幅としては相当大きな幅でございます。それとまた、ことしの四月−六月の都市銀行の貸し出しの増加額につきましては、窓口規制を強化いたしまして、昨年の四月−六月の増加額よりも十数%低くなるような措置も講じて、各銀行の了解をとっております。したがいまして、こういうようなものが全部集まって、ある時間を経て効果が出てまいりますと、その効果は必ず出てくるものだと思います。ただ、御指摘がございましたように、金融政策はそちらのほうをずっと一筋に強化を続けてまいりましたが、ほかの政策がもし逆になりましては、その効果が出てまいりません。したがって、財政の運用その他の面につきましても同じ方向協力していただくことが必要である、こう考えておるのでございます。
  182. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、一月からフロートというのが入っておりますので、そういう関係で非常に判断のむずかしさがあったのじゃないか、一面から言えば、見通しの甘さと言えると思いますが、そういう面が指摘されているわけであります。  過剰流動性の問題ですけれども、ある銀行の試算によりますと、大体六兆から七兆と推定されるこういう過剰流動性を吸収するのには、約一年以上かかるだろう、こういう試算があるのです。これは日銀当局がそういう考え方を持っておるかどうか知りません。そういうふうに投機の主役になっている手元の流動性に、そういうような手段だけではすぐに効果をあらわし得ない、ややしばらく時間がかかる。こういうことになってまいりますと、その場合、ほかの企業、いまちょっとお話がありましたように、中小企業だとか、あるいは一般の住宅ローンだとか、こういう面にも、金融引き締めというのは全体にかかってまいりますから、非常に問題が出てこようかと思いますが、これは金融対策上どういうふうに考えておられるのか。いまの引き締めでそれだけの効果がなければ、今後もやはりまた引き締めということは考えるのか考えないのか、いまの問題と兼ね合わせてひとつ問題があろうかと思いますので、これをひとつ伺っておきたいと思います。
  183. 佐々木直

    ○佐々木参考人 先ほども御説明申し上げましたように、企業や個人が現に持っております預金とか現金あるいは有価証券というものを金融政策によって直接取り上げるということは、これはできません。ただしかし、ずっと仕事をしていく上に自分の手金をどの程度に使っていくかということの判断の非常に大事な要素といたしましては、今後金融機関から追加した信用が得られるかどうかということが非常に影響するわけでございます。したがいまして、そういう直接過剰流動性が吸い上げられなくても、金の使い方を慎重にさせるのには、銀行の貸し出しを押えることによりまして相当な効果があげられると思います。現に商社その他不動産関係などで、いままで借りに行ったことのない金融機関にもうすでに行っているし、今後の資金の必要なときの了解を取りつけているというような例もございまして、すでにもう現段階においても手元の流動性の使い方に心配を持っておる連中がだいぶ出てきておるのは事実でございます。したがいまして、さっきも申し上げましたような窓口規制の強化と相まちまして、私は、一年かかるといったようなのんきなことではなくて、もっと早く効果が出るものと思います。ただ、ただいま御指摘がございましたような中小企業関係、特に今度のような大幅な円の切り上げがまたございましたから、輸出関連の中小企業につきましては、確かに非常にむずかしい事態に面する企業もあろうかと思います。そういう面につきましては、私どもも、この前公定歩合を上げましたときも、全国銀行協会の会長に来てもらいまして、そういう点について遺憾ないように配慮をしてもらうことをお願いしました。それから、住宅ローンその他につきましても、大衆に預金の利益を還元するというようなことから、できるだけ勉強してほしいという点については申した次第でございます。
  184. 広沢直樹

    ○広沢委員 それから、少し先の見通しについて伺っておきたいのですが、先日通産当局のいわゆる景気の見通しといいますか、先行きというものを報道されておったのですけれども、それによりますと、秋には非常に景気は鈍化するのではないか、こういう見通しに立っておるわけです。今年に入ってから輸入が非常にふえている。これは先行きの指標である輸入承認額を調べてみると、確かに、例年ですけれども、一月、二月というのは非常に輸入が増大して輸出が少し押えられたかっこうになりますね。一月で輸入承認額が前年同月比で四〇・九%、二月で六六・九%、三月はまだちょっと出ていなかったようですけれども、大体八〇%くらいじゃないか、こういうような見通しであります。輸出の認証統計によりますと、一月が二一・五%、それから二月が二一・六%、三月が、これもまた数字がはっきりしませんけれども、大体二〇%までじゃないかというようなことで、大体がそういうふうな二〇%増というような形になっておりますが、この三カ月のデータで判断するというのは非常にむずかしいだろうと思います。しかし、現在の状況から判断して、この輸出入の動向がこういう形に定着したかどうかという判断はむずかしいですけれども、いわゆるいままでと違った屈曲点というか、曲がりかどに来ているんじゃないか、こういう見通しがあるわけです。かりに五−六月通関実績で輸出入が逆転した場合、大幅な黒字基調が体質化した国際収支動向というものも多少変わってまいろうと思うのですけれども、そうなってきた場合に、外為会計の払い超の幅も小さくなる、それから過剰流動性も吸収されて、設備投資も冷えてくるだろう、これはデフレの効果というのはかなり大きく出るのではないだろうかというのが、まず見方として当初とっておったわけです。それに公定歩合の今回の引き上げということですから、秋口ないしは暮れには、景気は横ばいか、一部には不況感というのがあらわれるのではないか、こういうことなんでありますけれども、ちょうどこういった時期に、いま問題になっております通貨問題も、九月にはナイロビ総会で一応のめどを立てなければなりませんし、あるいは今後においてもアメリカの新しい通商法案ですか、こういうものが審議されて、その過程においては通商問題というのが非常に大きな要因になってまいると思います。こういういろいろなことをかみ合わせてみますと、こういった見通しもあながち誤っていないのではないか。その点の判断を金融当局としてどういうふうに判断されておるか。  時間がありませんので、以上お伺いして、終わりにしたいと思います。
  185. 佐々木直

    ○佐々木参考人 ただいま御指摘の点は、私どもが政策を決定いたします上に非常に問題とした点であります。国際収支につきましては、確かに先行指標で輸出の伸びがだんだん鈍り、それから輸入の増加は相当顕著になっておりますから、そういう点から考えまして、貿易の黒字幅がある時期になるとあるいは多少ずつ減ってくるのではないか。いままでのところ季節調整後で大体七億前後黒字がございますから、これが数カ月の間に逆転するとは考えられませんけれども、この黒字が次第に減ってくる可能性はあり得ると思います。それからまた、国内経済において、いまのような輸出の伸びが少しずつ鈍くなると、いままでのように景気が強く上昇しない。それがやがて景気の曲がりかどというようなことを、たとえば秋なんかに起こしやしないかというような問題、確かにございます。ただ、私どもといたしましては、現実に物価がこれだけ上がっているという事実がございますし、それから在庫統計などを見ますと、在庫は非常に減っておるわけです。特に製造業の製品在庫などは非常に減っております。そういう在庫の減少というものはどうしても生産に拍車をかけるわけでございますから、そういういろいろなものを考えますと、当面すぐ景気がどうなるというようなことでなくて、いまの強い基調は当分持続する、そういう判断で今度の措置を講じたわけでございます。しかしながら、経済というものは、いろいろな変化の要素が重なり合いますと、思わぬ変化も生ずる可能性もあるわけでございますから、そういう場合はわれわれとしても金融政策を可能な限りにおいて弾力的に運用しまして、その環境に善処してまいりたい、こう考えておるのでございます。
  186. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間がありませんので、以上で終わりにいたしたいと思いますが、とにかく今回のいわゆる景気に対する金融措置、いわゆるインフレがこれだけ進行しているわけですから、これに対しては少し金融政策がおそきに失したのではないかという観点でお伺いしたわけでありますけれども、時間がありませんので、また次の機会に時間があればお伺いしたいと思います。
  187. 鴨田宗一

    鴨田委員長 竹本孫一君。
  188. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、いまの政策のすべての重点は物価の安定ということに置かなければならぬと思うのです。ところが、その努力が足りなかったり、手おくれであったりするのは、いまの経済の実態をインフレと見て、インフレ退治という大きなスローガンのもとに、国民の総意をあげて取り組むというような姿勢がないからだと思うんです。しかしながら、日銀の総裁に、いまインフレであるかどうかという結論を聞くのはどうかと思いますから、そうは言いませんが、日銀総裁は通貨を守る一番の責任者という立場において、インフレとは一体どんなものをいうか、あなたのインフレの定義を一つだけ念のために聞いておきたい。
  189. 佐々木直

    ○佐々木参考人 インフレの定義というのははなはだむずかしゅうございまして、私も私自身のインフレの定義というものを実は持っておりません。ただ、ドイツの第一次大戦のときの例、あるいは日本の終戦後の例、そういうものをとりましたインフレーションというものと、いまの状態は全く質が違うと思います。いまの物価高騰には、決定的な意味での需給のアンバランスはないと思うのであります。要するに、物が足りないから物価が上がっているというのは、時期的にあるいは場所的にはそういう問題があろうと思いますけれども、全般として考えましたときに、そういう需給のアンバランスからインフレーションが起こっているとは思いません。いまの物価上昇の原因は、海外における原材料の価格が上がったこと、それからまた、国内における需要がふえてきたこと、あるいは中間段階でいろいろ在庫積み増しが行なわれていること、いろいろなことが影響しておると思いますが、全体として広く見ましたときに、需給に基本的なアンバランスがあるとは思いません。  そういう意味から言いますと、基本的な、総合的な立場から見た需給のアンバランスがあるということがインフレーションであるとするならば、いまはそういうような状況ではないというふうに考えております。
  190. 竹本孫一

    ○竹本委員 お立場がありますからこれ以上言えませんし、また時間もありませんから、むだな議論を省きますが、ただ、いまのお考えは私は間違っておると思うんです。というのは、通貨価値の安定という重大な責任を持たれる立場であるから申し上げるのだけれども、私に言わせれば、通貨に対する信頼がなくなることがインフレなんですね。需給のアンバランスがインフレだなんというのはとんでもない話で、いまのように、生産力が巨大に発展して、どこの国も、金利を下げたり財政を膨張させたりして、いつでも生産力は拡大もできるし、購買力もばらまけるといったような時期に、需給のアンバランスからくるインフレなんというのはほとんどないんですよ。だから、いまの定義は、せっかくの定義だけれども、私はどうもあまり賛成でない。そういう意味のインフレというのは当分ないんですよ。需給のアンバランスからくるインフレというものはないんだ。インフレの一番大きな要素は通貨に対する信頼で、日銀総裁、あなたの大きな責任だということだけ、私はそういうふうに感じておりますから、念のために申し上げておきます。  それから第二番目は、日銀券の増発に節度がないということについて私はちょっと伺ってみたいのです。  この間のIMF総会において愛知さんは、シュルツさんに対する皮肉を込めて言ったんだろうと思うんだけれども、国際通貨価値の維持、通貨危機に臨んで一番大切なことは、節度を守ることであるということを言ったんだそうですね、ぼくはよそから聞いたんだけれども。そうしたら、渋い顔をして聞かなければならぬはずのシュルツが、まっ先に、大賛成だと言ったというんだね。これは愛知さんのほうが面くらったという話を聞いたんだけれども、その話を聞いてまた私も面くらった。いまの日本の放漫財政の一番の責任者の愛知さんが節度を論ずることに、非常に皮肉を感ずる。どうも世の中がさかさまになってしまって、資格のある人が節度を言うのならわかるけれども、資格のない人が資格のない人に向かって言って、お互いに感心しているというんだから、これは漫画的なことになってしまう。これは要らぬことだけれども、念のために申し上げておきます。  しかしながら、同時に、いまの財政だけではなくて、まじめな議論として、日銀券の増発も、ことしの一月、二月、三月と、二三%ぐらいならいいけれども、二六%、二七%ときておる。これは全く異常なものですよ。私は必ずしも貨幣数量説をとりませんけれども、貨幣数量説が全部間違いだという議論は間違っておると思うんですね。現に半年もおくれれば、通貨の増発など半年ぐらいすればちゃんとその徴候が出るんですから、これはシュバイツァーの議論だとか、むずかしいことは言いませんけれども、とにかく通貨の数量というものは物価に無関係じゃない、大いにあるんだと私は思うんです。  そこで、昨年十月のルクセンブルクにおけるEC蔵相会議においては、承るところによると、通貨の増発にやはり一つの節度が要る、その節度の基準とは何かといえば、その国の経済の実質の成長率にプラス許容されるべき消費者物価の上昇大体四%、私は大体その辺だと思いますが、このものさしが正しいとすれば、日本の一〇%成長プラス四%、一四%ぐらいのものが、私は、日銀券の増発のあり方としては一番正しいと思う。事実、日本においても、不景気なときは一〇%を割りました。それから、まあまあというときには大体一五、六%から一七、八%までが限度であった。これが二〇%をこしたから物価が上がった。去年の暮れがそうだけれども、二三%ならまだいいが、二六%をこえたから、物価の問題が非常に出てきておる。そういう意味から言えば、日銀券の増発というか、残高と申しますか、七兆円というような日銀券がこのままでふえ続けていくというところに、私は重大なる危機を感ずる。先ほどお話がありました「国家目的」がいいか悪いか、いろいろ議論があって、政策委員会を週に二回も開いておられるという話だけれども、一体、昨年の暮れごろから、政策委員会においては、このような日銀券の増発というものは一つの危機感があるというような指摘があったのかなかったのか。また日銀においては、日銀券の増発に対して一つのめど、ものさし、歯どめというものを持っておられるのかどうか。国家目的達成に協力するというのはいいんだけれども、田中さんの列島改造やインフレ政策に追随したり、わけのわからない連中の調整インフレ論に追随したりして日銀券をどんどん増発してもらっては困る。いかなる尺度を持っておられるか、いかなる論議が行なわれたか、簡単に結論だけ承りたい。
  191. 佐々木直

    ○佐々木参考人 御指摘のように、最近の日本銀行券の発行増、これは非常に高いわけでございまして、私どもとしてはもうだいぶ前から問題にしておるわけで、決してこれをないがしろにしておるわけではございません。したがいまして、今度の一月、三月の二回にわたる預金準備率の引き上げ、それから公定歩合の引き上げ、それからまた、この前からやっております窓口規制の強化というようなことは、必ずそのうちに日銀券の伸びを鈍くするものである、そういうふうに思っておるわけでございます。中央銀行といたしまして、銀行券の増発のパーセンテージというものには非常に重点を置いておるわけでございます。  ただ、経済の実態が銀行券を必要とする、したがって、経済の実態が金融政策の実行その他によりまして影響を受けないと、それが銀行券の伸びに実際の具体的な影響を及ぼしてこない、そこに時間的なズレがあることはやむを得ないと思っております。
  192. 竹本孫一

    ○竹本委員 経済の実態を言われるけれども、それなら窓口規制なんというのはあり得ないことだ。経済の実需があって、実態が出てきているから借りに来る、借りに来るから貸す、そこに実態の流れを押えよう、コントロールしようと思うから、窓口規制をやるのでしょう。だから、経済の実態に追随するというのは、一応の説明としてはわかりますけれども、政策意図を持って考えるときには、その実態をどうコントロールするかというのが通貨政策であり、日銀の窓口規制なんですから、その答弁もちょっといただけないような感じがいたしますね。  それからもう一つ、その実態を追随してはいけない、先行しなければいけないという意味で、ついでにあわせて聞きますが、私は率直に言って、佐々木総裁に大いに敬意を払うけれども、やっておられる政策は大体において三カ月おくれておると思うんです。これからは、やろうと思ったら三カ月前にやっていただきたいと私は思うんだが、タイミングがいつもおくれておる。そのタイミングが、金融政策、ことに日銀の政策としては一番大事なんだ。そのタイミングが、今度も〇・七五%上げたんだ、たいへん画期的なことだというふうに一般は受け取っておりますけれども、金融の問題、通貨の問題を心配しておるわれわれの立場からいえば、そんなに〇・七五%上げなければならないほど手おくれであったということですよ。あるいは怠慢であったということだ。どうですか。
  193. 佐々木直

    ○佐々木参考人 さっきの実態論は、ちょっと私の説明が足りなかったのかもしれませんが、私は、たとえば窓口指導とか、準備率の引き上げとか、あるいは公定歩合の引き上げとかいうものが経済の実態に影響を及ぼして、それが今度の日銀券の需要に影響してくる、こういう段取りを御説明申し上げたわけで、実態が動かなければどうにもならないという考え方で申し上げたわけではないのです。われわれの政策というものは経済の実態に影響するということを目標にしてやっておるわけです。  タイミングがおくれたということでございますけれども、先ほどからたびたびそういう御指摘がございました。現実に物価がこれだけ上がっておりますから、そういう御非難もあろうと思いますが、私のほうとしては、しかしそのときの事情を勘案してできるだけのことをしてきたつもりでございます。
  194. 竹本孫一

    ○竹本委員 私はただ感じで言うのだが、大体科学的に調査したわけでもないが、感じからいって、どうも日銀は二、三カ月はおくれるというふうに私は思っていますから、またひとつそれも含めて検討の際には考えていただきたい。  いまの金融機関のビヘービアについていろいろ伺いたいのですが、そのコントロールが、公定歩合の引き上げも含めて少しタイミングがおくれておるということはいま申し上げたのですけれども、これは総裁がどこかでお話しになったということを新聞でもちょっと見たが、三年問に三十兆円貸した、貸し出しがふえたというようなことを言っておられる。銀行は大いに貸したと思うのですね。いま問題の商社についても、四千二、三百億と五千二、三百億で九千五百億ですね。商社の手元流動性がふえたということをいっているけれども、その間においても銀行の貸し出しは約一兆円ふえておるでしょう、これらのものに対して。そうすると、三十兆円金がふえた、商品投機の御本家の商社にも一兆円ふえたというようなこと自体が、金融機関のあり方としてどうもコントロールがなさ過ぎるではないか。  それから、時間がありませんからこれで最後にいたしますが、不動産その他についてもよく指摘されている議論があるように、金融機関が金を出しておる、直接出しておるか間接に出しておるかは問題は別といたしまして、無関係でないどころか、大きな原因をつくっておる、さらには、最近は金融機関がアルバイトというか、とにかく金融以外の事業にも手を出しておる、株もずいぶん買っておる、こういうような、本来の使命から逸脱をして金融機関がまたインフレにも一役も三役も買っておるという、この金融機関そのもののビヘービアは、一体日銀の総裁としてはどう見ておられるか。アメリカの銀行なんかは株式投資はやらぬということになっておるという話も聞いておりますが、事実はどうか知りませんが、これも一つ考え方だ。日本金融機関のいまのあり方、株の問題にしても、土地の問題にしても、貸し出しをふやすという行き方にしても、これは日銀当局としては、通貨の価値を維持する立場において、一体どういうふうに見ておられるか、どういうふうにそれを改めさせるような御努力をこれからしていただけるのか。  その二つの点を承って、終わりにいたしたいと思います。
  195. 佐々木直

    ○佐々木参考人 去年の春くらいから、金融機関の貸し出し競争と申しますか、そういうものが目立ってまいりました。おそらく金融がだんだん緩和してくる、そうなりますと、銀行としては自分の預かった資金の運用に困るのではないかというようなことが心配になって、ああいう方向、ああいう傾向が出てきたものと思います。したがいまして、私どもとしては、去年の四−六のころから、銀行の貸し出しにある程度のめどを立ててくれ、そうむやみに競争してどんどんふやされては困る、実は昭和三十一年の春に私どもそういう経験を持っておりますが、そういうこともありましたので、早目に私ども銀行に対して注意をしたわけであります。ところが、あのころは景気の回復ということが一番大きな経済界の目標でございましたので、なかなかこちらの言うことが通らなかった、それがその後だんだんいろいろな面で貸し出しの増加ということになってきたと思います。その間において、たとえばいま御指摘のありました株式の取得でございますが、そういうものにつきましても、私どもは各銀行にそれぞれのレベルを指示いたしまして、これ以上やらないように、また、転換社債、時価発行株、こういうものの引き受けにつきましても、親引きが非常に多いというような点を考えて、金融機関としてのビヘービアを要求したわけであります。また、去年の十−十二の窓口規制のあたりからはだいぶ強くしてまいっておりますので、銀行としてもそう野方図に貸し出しをふやせないようになってきております。ことしの一−三、四−六、だんだんとそれを強めておりますから、銀行の貸し出し態度はこれによってずいぶん変わってまいると思います。ただ、銀行といたしましては、私的な企業としてお互いに競争の立場もございますので、なかなか理屈どおりにまいらない面もあると思いますけれども、われわれとしては今後十分銀行とよく打ち合わせをいたしまして、そういう点について行き過ぎのないようにやっていきたい、こう考えております。
  196. 竹本孫一

    ○竹本委員 以上で終わります。
  197. 鴨田宗一

    鴨田委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  佐々木参考人には、御多用中のところ御出席を賜わり、貴重な御意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  次回は、明六日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十六分散会