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1973-03-26 第71回国会 衆議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月二十六日(月曜日)     午後一時五分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君    理事 大村 襄治君 理事 木村武千代君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 阿部 助哉君    理事 荒木  宏君       愛野興一郎君    宇野 宗佑君       大石 千八君    大西 正男君       金子 一平君    塩谷 一夫君       竹中 修一君    野田  毅君       萩原 幸雄君    坊  秀男君       毛利 松平君    山中 貞則君       高沢 寅男君    堀  昌雄君       山田 耻目君    小林 政子君       増本 一彦君    広沢 直樹君       内海  清君    竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主税局長 高木 文雄君  委員外出席者         参  考  人         (税制調査会会         長)      東畑 精一君         参  考  人         (日本大学法学         部教授)    北野 弘久君         参  考  人         (横浜国立大学         経済学部教授) 井出 文雄君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 三月二十六日  辞任         補欠選任   栗原 祐幸君     竹中 修一君   小泉純一郎君     大石 千八君   三枝 三郎君     愛野興一郎君   堀  昌雄君     米田 東吾君 同日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     三枝 三郎君   大石 千八君     小泉純一郎君   竹中 修一君     栗原 祐幸君   米田 東吾君     堀  昌雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第四二号)      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案、及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  本日は、各案について参考人から意見を聴取することにしております。  本日御出席いただきました参考人は、税制調査会長東畑精一君、日本大学法学部教授北野弘久君、横浜国立大学経済学部教授井出文雄君の各位でございます。  参考人各位には、御多用中のところ御出席くださいましてまことにありがとうございます。税制各案について、忌憚のない御意見をお述べいただきまするようお願いを申し上げます。  なお、御意見十分程度に取りまとめていただ歩き、そのあと委員からの質疑にお答え願うこととといたしたいと存じます。何とぞよろしくお願いいたします。  それでは、まず最初に東畑参考人よりお願いを申し上げます。
  3. 東畑精一

    東畑参考人 税制調査会長としてお呼び出しがあったのでありますが、参考までに、四十八年度税制改正につきまして意見を申し上げたいと存じます。  税制調査会は昨年の十二月三十日に、昭和四十八年度税制改正に関する答申提出いたしました。また、本年の一月十八日には、今後の土地税制あり方に関する答申をまとめまして、総理大臣答申いたした次第でございますが、政府におきましては、これらの両答申を尊重されて、政府案を決定された次第であります。  特に四十八年度税制改正につきまして、重点とでも申すべき点を申し述べたいと思いますが、第一は、勤労者中心といたします所得税減税であります。  わが国課税最低限は、過去しばしばの減税によりまして、先進諸国のそれと比肩し得るような水準に達しておりますが、最近におきます所得物価水準の動向だとか、給与所得者中心とする所得税納税者数が非常に増加しておるということを考慮いたしまして、なおまた、中小所得者中心とする負担の軽減をはかる必要があると思っております。今回はむしろこういう観点から、給与所得者中心とした課税最低限引き上げ答申した次第であります。これによりまして、われわれ国民税負担は若干緩和されるものと思いますが、今後とも所得物価水準等の推移に即しまして検討を続けるべき問題であると考えております。  第二点は、相続税減税であります。  最近において、特に地価上昇に伴いまして相続財産評価価額が上昇し、相続税課税件数が非常に増加しておる傾向を考慮いたしまして、課税最低限引き上げをはかることが必要であると考えました。  第三は、法人税負担の強化であります。  今後の福祉充実のための財政需要が増大するに従って、法人にもまた応分の負担を求めるべきではないかと考えております。とりあえず今回は、産業関連租税特別措置の縮減、合理化を行なうように答申いたしました。今後、法人税負担につきましては、なお本格的な検討を行ないたいと考えております。ことに臨時措置といたしまして、法人税負担を五%ですか、引き上げになっております。この臨時措置が来年の三月三十一日、つまり四十八年度で期限がくるものでありますから、あらためて法人税を今後特にいろいろ考慮いたして研究したいと思っております。  それから第四点は土地税制の改善でございます。  税制調査会といたしましては、去る四十三年の七月の土地税制あり方についての答申で、総合的な土地政策の一環といたしまして各般の土地政策が適切に講ぜられることを期待しながら、個人保有土地について、長期のものにつきましては譲渡所得分離軽課、それから短期の譲渡所得につきましては分離重課、こういう措置導入することを提案いたしまして、四十四年度税制改正でこれらの制度は実現を見たわけであります。  ところが、その後税制以外の土地政策についての法制の整備がどうも必ずしも十分に進捗いたしておりませんので、土地供給そのものは進んだのでありますけれども、その多くは法人保有に帰しまして、最終需要者の手に渡るということが少ない、こういう批判が高まってまいりました。ことに昨今の金融情勢の変化を背景といたしまして、法人土地投資が全国的な規模で目立つようになっておりますことは、皆さん御承知のとおりであります。それで、法人土地投資を抑制し、土地問題の解決に関し税制上何らかの役割りを期待するというのが社会一般の風潮であると思います。  そういう状態にかんがみまして、われわれ税制調査会としましては、昨年七月に設けられました税制調査会内の第二部会中心としまして、関係各省とか学識経験者意見をお伺いしまして、精力的に審議を重ねたのであります。途中におきまして審議の一そうの具体化をはかるために、たたき台といたしまして一つの試案を提出し、それに基づきまして審議を加えたのであります。  その結果、昨年の暮れになりまして、四十四年度のさきに決定していただきました土地税制を補完し、法人による投機的需要を抑制することを主眼に、土地供給促進を配慮いたしまして、国税といたしまして土地譲渡益重課、それから地方税といたしまして土地保有税を新しく創設するという答申をいたした次第であります。  申すまでもありませんが、現在の地価問題は、なかなか税制だけでは解決ができるものとは思いませんが、どうかひとつ今後とも総合的な土地政策が強力に実施されることを特に希望いたしておる次第であります。  それから、いわゆる事業主報酬制度という問題につきましては、税制調査会内に特別部会を設けまして、専門家にも特別委員として御参加をいただきまして、これまた数多くの審議を重ねたのでありますが、その結果、事業主報酬制度所得税基本税制の中に取り入れることはどうも適当でないという答申をいたしました。  ところが、政府におかれては、これを中小企業経営近代化という見地から、租税特別措置として創設される、そういう案が提出されております。こういう結果になりましたことは、特別措置政策としての当否ということはともかくといたしまして、税制自体から見ますというと、かなり将来に問題を残したやり方でないかと思っております。  それから最後に、社会保険診療報酬制度の特例につきましても、四十六年十二月の答申あとを受け継ぎまして、調査会として独自の検討を進めるために、特別部会を設けまして鋭意審議を重ねておりますが、なお具体的な方策を得るに至っておりませんので、今後もさらにこれを継続して検討を加えたい、こう思っております。  大体本年度の、四十八年度税制改正を目当てといたしました税制調査会審議の模様は、簡単でございますが、いま申し上げたとおりでございます。
  4. 鴨田宗一

    鴨田委員長 ありがとうございました。  次に、北野参考人お願いいたします。
  5. 北野弘久

    北野参考人 日本大学北野であります。時間が制限されておりますので、重点的に幾つかのことを申し上げまして、後ほど質疑応答段階で補足させていただきたいと思います。  第一、四十八年度増減収額概算によりますと、内国税全体の減税額平年度で三千七百八十億円、初年度で三千三百五十五億円になっておりまして、うち所得税減税額は、平年度で三千七百億円、初年度で三千百五十億円となっております。政府筋におきましては、大減税であるということがいわれておりますけれども、かつて昭和三十二年度の一兆円予算のときにおきましても、所得税の一千億減税を行なった経緯がございますので、決していわれるほどの大減税ではないと考えるのであります。むしろ最近における地価を含む物価上昇傾向を考えますと、今回の減税規模は決して十分のものではないということになると思います。とりわけまして四十八年度一般会計予算額は十四兆二千八百四十億円、財投計画は六兆九千二百四十八億円の超大型でありますので、それ自体すぐれてインフレ的な要因を内在せしめていることが見落とされてはならないと考えるのであります。違憲の疑いの強い防衛予算であるとか租税上の特別措置につきまして、大幅な整理を行なうとか、あるいは法人税につきまして、累進課税措置導入するということにいたしますと、もっと大幅な減税が可能であったといわねばならないと思います。  第二、今回の改正案では、給与所得者所得税課税最低限は、夫婦子供二人で百十四万九千六十円になっておりますけれども、決してこれで十分だとはいえないのであります。これに加えまして住民税課税最低限があまりにも低いのでありまして、住民税均等割りを除きましては理論的にはインカムタックスでありますので、国税所得税と同じ程度にその諸控除引き上げられるべきであると考えるのであります。  なお、参考までに申しますと、給与所得控除一般給与所得者概算経費控除分、それから利子控除分勤労所得担税力の低さを考慮する分、それから把握控除分四つファクターから成るといわれておりますけれども、給与所得控除制度合理化をはかるためには、この四つファクターを分別しまして、それぞれ別個の控除項目としまして立法化するということが望まれるのであります。また、大島サラリーマン訴訟におきましても問題になっておりますように、わが国所得税法は、実額控除制度導入しておりませんけれども、他の所得者との均衡からいきましても、実額控除制度導入いたしまして、概算経費控除分法定額実額控除とのいずれかを納税者の選択にゆだねるという方式を導入すべきだと考えます。  第三に、わが政府は従来事業主報酬控除制度につきましてはきわめて消極的でありまして、政府筋から、このような議論は、税制を知らない、税法を知らないしろうと議論であるという非難すらあるということすら伝えられたのであります。しかし、近年さすがにこのような議論を全く無視することができないということになりまして、とりあえず御承知のように四十六年度青色事業主特別経費準備金制度が設けられたのであります。それから一年後に、四十七年におきまして、この準備金制度が廃止されまして、青色申告控除制度が設けられたのであります。そして、今回、ようやく事業主報酬制度創設を見たという次第であります。このような立法経緯を見ますと、何ゆえに、昭和四十六年に事業主報酬制度創設を決断しなかったのかという疑問を禁じ得ないのであります。事業主報酬制度創設は、中小企業諸団体の積年の主張でありまして、かっこの議論は理論的にも十分根拠のある議論であります。それを政府筋のほうにおきましては、しろうと議論であるといって、いままで取り上げてこなかったのでありまして、きびしくその責任が追及されねばならないと考えるのであります。言うまでもなく、国民主権主義の今日におきましては、税制私物化は許されないと考えるのであります。  事業主報酬制度創設せよという議論は、法人企業個人企業との間の課税制度上の不均衡を是正しようという観点から展開されているものであります。個人企業法人企業と同じように純粋に一つ企業体と見た場合、事業主企業体に対し提供した労働の対価というものは、企業体のコストを構成するという考え方が成り立つのであります。このような考え方からいきますと、事業主報酬というものは、まさしく企業体経費である、事業主自身給与であるということになってくるのでありまして、このように、事業主報酬制度というものは、理論的にも妥当であります。その意味におきまして、今回おくればせながらも導入を見たことは、わが国税制史上高く評価されねばならないと考えるのであります。  ただ、今回の制度がその適用青色申告者のみに限定をしておる点は、問題であります。事業主報酬制度理論的根拠がただいま申し上げましたような点に存在するとするならば、青色申告者に限定しなければならないだけの理論的な理由がないのでありまして、白色申告者につきましても、一定の条件のもとにこの制度適用導入すべきである、このように考えるのであります。  第四、租税上の特別措置につきましては、今回若干の改廃が予定されておりますけれども、大企業にとって重要な措置は手つかずに温存されております。特別措置は、憲法論上、憲法十四条の平、等原則から問題となるほかに、憲法八十三条、八十五条の財政民主主義ないしは財政立憲主義観点からも問題とされねばならないのであります。さらに、私は、最近の研究におきまして、憲法二十二条の営業の自由の観点からも問題になり得るということを確信するようになりました。租税上の特別措置につきましては、さまざまなデメリットが存在するのでありますけれども、ここに詳しく論ずる余裕がありません。ともかく、人権規範としての憲法規範の基底的な空洞化をもたらすものとして、憲法論上も看過し得ないことを、本委員会におきまして御考慮くださることを、お願いしたいのであります。  租税特別措置につきましては、いろいろ提案したいことがございますけれども、時間の関係で、後ほど討論の段階で申し上げることにいたします。  ただ、二、三の問題について、ちょっとつけ加えておきますと、今回、公害対策等につきましての租税上の措置が用意されておりますけれども、一般国民税金を使って、つまり一般国民の犠牲において、このような公害対策を行なうべきではないと考えるのでありまして、企業自身負担で行なうべきである、このように考えるのであります。  それから有価証券取引税率というものが今回引き上げられることになっておりますけれども、そのこと自体は非常によろしいのですが、有価証券譲渡所得非課税に対する国民非難を少しでも回避する、そういう観点からこの引き上げがなされておるとするならば、問題であります。有価証券取引税は、昭和二十八年に有価証券譲渡所得非課税措置にかわって導入されたものであります。この譲渡所得非課税措置は、所得税法上の非課税所得として規定されておりますが、実質的には租税特別措置であります。政府筋におきましては、有価証券譲渡所得課税することとしましても、現実には譲渡把握が困難であるということがいわれておりまして、そういったことが理由となって、この非課税措置が正当化されているのでありますけれども譲渡把握が困難であればいろいろな対策を講ずべきでありまして、たとえば証券会社を通ずる売買につきましては、各人別の売買の内容を、証券業者から税務署に報告させることとすればよいのでありまして、譲渡把握が困難であるという、つまりそういう税務行政の怠慢と申しますか、そういったことを理由一つとしまして有価証券譲渡所得非課税措置を正当化することは許されないと考えるのであります。有価証券取引税流通税でありまして、理論的には所得税と併存し得るものであります。有価証券取引税をもって有価証券譲渡所得課税のかわりとすることは許されないのであります。今回の有価証券取引税率引き上げとは別に、有価証券譲渡所得非課税措置を廃止すべきであると考えるのであります。  最後に、新土地税制について簡単に所見を申し上げまして終わりにしたいと思いますが、今回土地譲渡益重課制度及び特別土地保有税制度が設けられることになっております。法人土地譲渡益重課は、昭和四十四年の譲渡所得税に関する土地税制欠陥を補うものでありまして、その意味ではこの創設自体につきましては異論がありません。むしろ昭和四十四年に当然に措置されるべきであった事柄が、今日まで放置されてきた政府責任が問われねばならないと考えるのであります。昭和四十四年の土地税制におきまして、何ゆえ法人の仮需要抑制措置がとられなかったのか。昭和四十四年の土地税制は、いわば欠陥を持った税制欠陥税制でありまして、この欠陥税制によって地価の異常な高騰をもたらし、国民生活を圧迫せしめた政府責任は重大であると考えます。地価問題は、今日では一般国民にとっては生存権に関する問題であり、つまり人権問題でありまして、そういう観点から抜本的な措置を講ずべきであると考えるのであります。  今回の措置につきましていろいろな疑問があるのでありますが、たとえば一定要件を満たす宅地造成事業適用除外しているということについては疑問であります。宅地造成業者のほうが土地について重要なプライスリーダー役割りを果たしているのでありまして、このような適用除外措置を一切設けるべきではないと考えるのであります。  それから、特別土地保有税につきましては、保有にかかる税率は一・四%でありまして、これは固定資産税標準税率と同じであります。しかも、固定資産税制度は、新税額から控除されることになっております。このようなものであれば、固定資産税自体課税の適正、合理化を行なえばよいのでありまして、ことさらこういった税金を設ける必要はない。それから新税取得にかかる税率は三%でありますが、これまた不動産取得税標準税率と同じでありまして、しかもその新税額から不動産取得税額控除されるということになっておりますので、これまた現在の不動産取得税あり方を本然の姿に戻せばよろしいということになってくるのであります。現在の制度を本来の姿に戻すことによってその目的を達成することができるにかかわらず、こういった新しい税金を設けることは、心理的にも、税負担の価格への転嫁をもたらす危険性が高いと言わねばならないと思います。  私としましては、地価対策としての土地税制として、まず現行保有課税である固定資産税課税の適正と合理化をはかるということが先決であると考えます。  第二番目に、適正価額をこえる土地譲渡益につきましては、現行のような保有期間の長短によらないで、法人個人を通じまして、差別的な高率課税を行なうということにすべきだと考えます。その場合の適正価額というのは、いわゆる時価に近いものによるときは地価対策としての意味がなくなりますので、一定時の相続税評価額、これをある期間据え置くことにいたすわけでありますが、そういうものを用いてやるということにすればよろしいと考えます。  いずれにしましても、いろいろ問題はありますけれども、税制上の措置だけによっては地価高騰は阻止し得ないのでありまして、この際税制上の措置とは別に地価を法定しまして、法定価額をこえる売買を禁止する、そういう形での抜本的な措置を講ずべきであると考えるわけです。その場合の法定価額というのは、一定時現在の相続税評価額を用いて、確実にそういった法定金額をこえる売買を禁止する。そういった場合は犯罪であるという形で対応すべきだと考えます。  たくさん申し上げたいこともございますけれども、時間が来ましたので、後ほど質疑応答段階で申し上げることにしたいと思います。どうもありがとうございました。
  6. 鴨田宗一

    鴨田委員長 どうもありがとうございました。  次に、井出参考人お願いをいたします。
  7. 井出文雄

    井出参考人 横浜国大の井出でございます。十分の与えられました時間内で要約を申し上げたいと存じます。   〔委員長退席大村委員長代理着席〕  一番目に所得税についてでございますが、私はいわゆる高福祉高負担ということを基本的には支持するわけでございますけれども、前提といたしまして、高福祉の問題は別として高負担の問題になりますと、やはり税制公平化ということが行なわれないというと、この高福祉高負担という議論国民の合意を得ることはできないじゃないか、こういうことでございまして、こうなりますと、国民福祉優先財政政策、あるいは福祉税制の確立ということが叫ばれております今回の税制改正において、もっと意欲的にこの税制公平化をはかっていただきたかった、こういうような気がいたします。  それで、まず所得税でございますが、給与所得者課税最低限度額引き上げがございまして、これはこのままでは不十分であるということを申します。  なお、この点につきまして一言申しますと、いつもこういう減税の場合は初年度幾ら、平年度幾らとなっております。たとえば今度の課税最低限度額でも、給与所得者夫婦子供二人という場合に、標準世帯において初年度は百十二万幾ら平年度は百十四万幾ら——百十四万九千円、約百十五万円ですけれども、しかし、平年度というのは、物価高の過程におきましては、毎年毎年引き上げが必要になってきますので、実質的に意味があるのは初年度でございます。ですから私は、技術的に多少問題があるかもわかりませんけれども、初年度平年度ということをやめまして、減税の場合は暦年制、一月からさかのぼってやるべきである。ですから、これをやりますというと、初年度において百十四万九千円、こういうことになるのでありますけれども、これは技術的にどういう困難性があるか、課税当局の方にお伺いをいたしたいと存じます。  それから、給与所得者課税最低限度額の引き.上げの場合は、特に給与所得控除引き上げということになるべくならば重点を置いていただきたいと存じます。給与所得控除引き上げ重点を置くことによって、クロヨンとかトーゴーサンというような現在のアンバランスがある程度解消するわけでございますので、給与所得控除にひとつ重点を置いて今後お願いいたしたい、こういうふうに存じます。  それから、所得税においては事業主報酬制度導入がございましたが、これは事業主報酬も一部は勤労所得的要素がございますので、そういう意味においては基本的には私はこの制度導入には賛成でございます。しかし、この事業主報酬について、給与所得者と同じ金額給与所得控除を認めるということになりますというと、いわゆるトーゴーサン、クロヨンというような負担のアンバランスは、拡大するわけです。サラリーマンあるいは給与所得者の相対的な不利、こういうことで問題になるわけでございまして、そういう意味におきまして、私はこの際先ほど申しましたように、給与所得控除額を今後思い切って引き上げていく、そうして、事業主報酬についての給与所得控除は、給与所得者に対する給与所得控除額の三〇%ないし四〇%程度にする、この程度の格差を認めるべきであろうと思います。  ただし、この場合に、時間がございませんので申し上げませんけれども、給与所得控除とはそもそも何であるかということが問題になるわけです。このイデーを究明しなければならない。そのことによって所得税制を根本的に再検討する必要があると思います。その意味におきましては、この事業主報酬制度臨時措置にされたということは適当であったと存じます。  それから三番目には、先ほどもお話ございましたけれども、株式譲渡所得の非課税制度というものを撤廃するということが必要だろうと思います。これは利子所得や配当所得の実質的な分離課税が行なわれている、これを撤廃すると並んで行なうべきであろうと存じます。所得税の公平ということは、所得の量的な側面と質的な側面と両方から考えなければならない。所得の大なるものには高い税率というような量的な側面と、それから資産所得勤労所得よりも負担能力が大きいというようなことを考えた面からの負担の公平ということが必要でございますけれども、現在の所得税制度というものは両側面から負担の公平というものが崩壊しておると思うんです。こういう資産所得の総合所得算入の失敗ということは、これは総合累進課税の崩壊であり、と同時に資産所得軽課ということになる。二重の意味において不公平でありますので、こういうものからまず是正していかないと、高福祉高負担国民がこぞって賛成する、気持ちよく賛成するということにならぬじゃないか、こういうふうに存じます。  それから四番目に、先ほど申しました課税最低限度額の問題でございますけれども、課税最低限度額とは一体どの程度のものであるか、これは非常にむずかしい問題でありますけれども、やはり避けて通らないで、多少時間をかけてもいいから理論的にこの辺を検討する必要があるんじゃないかと思います。健康にして文化的な生活、これを可能ならしむるのが課税最低限度額というのは、少し欲が多過ぎるんじゃないかという答えが返ってくるかもわかりませんけれども、現段階においてやはりこういう問題をもまじめに取り上げて考えるべきではなかろうかと思います。  それから、課税最低限度額は、アメリカあるいはヨーロッパ先進諸国と大体肩を並べた、国によっては日本のほうが高いということで、もういいじゃないかというわけでございますけれども、御承知のように社会保障制度が非常に不備でございますので、そのためにわが国においては貯蓄率が高いわけです。ですからして、所得から社会保障制度整備のための貯蓄——これは一つの強制的な税金でありまして、この貯蓄を引いた可処分所得、そこから税金が払われるわけでありますから、非常に重く見える、重くなるわけです。重く感ずるわけです、日本では。ですから課税最低限度額は、もうすでに表面的な金額だけはアメリカやヨーロッパの先進諸国と肩を並べたからといって、もうよろしいということにはならないと思います。それからまた理論的に確立された課税最低限度額ができましたならば、やはり物価上昇に対するスライド制というようなことも、一応検討するに値するんじゃなかろうかと思います。  それから次に、二番目に、法人税につきまして申しますと、法人課税の強化ということについて、今回の税制改正があまり熱意がなかったように思われるわけでございまして、この点は不満でございます。法人税率の引き上げというものがなされておりませんが、法人課税の強化ということは、税率引き上げるということだけではなくして、法人所得をどうとらえるかということが問題になるわけです。この点から申しますと、法人の受け取り配当の益金不算入制度とか、あるいは法人の支払い配当への軽減税率の適用制度というようなものは、撤廃すべきじゃなかろうかと思います。今日は、大法人の株式保有率が非常に多くなっております。それからまた、株式の時価発行増資とか、あるいはまた時価転換社債の発行というようなことによって設備投資の資金などを獲得する、非常に資金コストが低くなっている、こういうような客観的情勢のもとにおきましては、いま申し上げましたような受け取り配当の益金不算入制度とか、支払い配当の軽減税適用ということは、大企業にとっては不当に有利ではなかろうか。ですからこの制度は撤廃すべきである、法人税率を引き上げるとともに撤廃すべきである、こういうふうに存じます。  それから三番目といたしまして、同族会社にだけ留保所得課税が残されておりますけれども、これは撤廃すべきだろうと思います。一回限りの留保金の積み立て額に対する課税、これは撤廃すべきだろうと思うのです。個人事業につきましては、完全給与制度あるいはまた先ほど申しました事業主報酬制度というものが導入されましたので、同族会社と個人事業との間の負担のアンバランスというようなことはもうないと見ていいわけでありますからして、同族会社に対してこのような課税をするということは必要ではない、こういうふうに思って撤廃を主張いたします。  あるいはまた、すでに全面的に撤廃されましたところの留保金の累積金額に対する課税、これはシャウプ税制で主張したのでありますけれども、これがなくなっておりますが、これを復活する、こういうこともまたある意味において考えてみる必要はなかろうか、こういうふうに思います。  それから四番目に、大企業から中小企業に至るまでただ一つの理論によって法人税制を組み立てていくことは、いかにもナンセンスじゃなかろうかと思います。新日鉄のような大企業からその辺の町工場に至るまで、同じような理論によって法人税制が組み立てられているということは、これはやはりおかしいわけでありまして、たとえば大企業については法人実在説あるいはまた中小企業については擬制税、中間においてあやしいところは選択制、どっちかの説に従って納税する、こういうようなことも検討すべきではなかろうかと存じます。  ただ、こういうことを申しますというと、たとえば法人税率を引き上げろ、四〇%にせよとか、もっと上に引き上げろといった場合に、いや待て、そういう法人税制をいじるということは、根本的に実在説だ擬制説だということが解決しないというと手がつかぬのじゃないかというところへ持っていきますというと、何か法人課税強化の逃げ道、それを避ける一つの逃げ道として基本的な理論へ持っていかれる可能性もある。ですから、そこは、そういう基本的な理論は、やはり時間をかけて今後の日本税制を長期にわたってどうするかということで検討しなければならぬが、それとは別に、やはり現実の日本の実情を踏まえて適当な税制を行なっていく、改革を行なっていくということが必要だろうと思うのです。しかし、それはそれとして、やはりこういう基本的な理論の問題を考えていかなければならぬというふうに思います。シャウプ税制はこれはいいところもございますけれども、基本的にはあの当時の実情もございまして産業優先の税制を確立したわけでして、その基礎的な理論として法人擬制説を持ってきておるわけです。そういう辺を考えまして、このシャウプ税制にとらわれることなく、もちろんその長所は長所として認めるとして、とらわれることなくこれからの日本の税制あり方を少し真剣に考えてみる必要があるのじゃなかろうかと存じます。  土地税制につきましては時間の関係で、先ほども詳しくお述べになりましたので省略させていただきまして、なお特別措置につきましても、先ほどございましたので簡単に申し上げますが、大企業優遇という本質的な租税特別措置の性格は、今回の税制においても何ら基本的には変えられていないということを指摘いたしたいと存じます。まあ交際費課税の強化、これはもう少し強化すべきであろうし、あるいはまた重要産業用合理化機械等の特別償却、これは順次縮小していって三年で廃止というのですけれども、どうして一挙に廃止できなかったのか。あるいはまた価格変動準備金の積立額の一%引き下げというのですけれども、こういう価格変動準備金とか貸倒準備金というようなものは、一体どういう性質のものであるか、本質的には利益留保ではなかろうか、こういうように利益留保かどうかということを検討して、利益留保的な準備金、引当金というものは、徹底的に排除していくというような大胆さが必要ではなかろうかと存じます。  それから最後に、先ほどもちょっと北野教授から申されましたけれども、公害対策のための特別措置、これはPPPいわゆるポリューター・ペイ・プリンシプル、公害原因者負担の原則というものが世界的な合意になりつつあるわけでございまして、その場合に、こういうような特別措置はいかがなものであろうか。イコールフッティングと申しますと、同じ条件のもとに、日本の大企業が世界の大企業と競争していくということで輸出がふえても世界は納得するだろうと思うのです。こういうイコールフッティングの原則、あるいはPPPの原則というものを、やはり考えていかなければならぬのじゃないか。こういう問題とこの公害対策のための特別措置というものはどういう関係になるのか、この辺を一応問題にいたしたいと存じます。
  8. 大村襄治

    大村委員長代理 ありがとうございました。     —————————————
  9. 大村襄治

    大村委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。阿部助哉君。
  10. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 東畑先生たいへんお疲れのところを御出席いただいたそうでございまして、たいへん御苦労さんでございます。   〔大村委員長代理退席、委員長着席〕  まず、東畑先生にお伺いをしたいのでありますが、四十八年度税制改正にあたって、一般税制についても土地税制についても、税制調査会答申は、何か自民党の税制改正案の公表よりそれぞれ大体一日おくれて発表なすったようでありますが、大体予算編成方針は一月の六日、それで八日には大蔵原案、十五日には政府案、そして十八日に土地税制について答申という形を見ますと、税制調査会がより先に案ができるのが普通であるのに、どうもその辺が自民党に押しまくられたというか、税制調査会が従属した、こういう印象をわれわれ持たざるを得ないのでありますが、その辺の理由についてまず簡単にお伺いしたいと思うのです。
  11. 東畑精一

    東畑参考人 阿部さんからなかなかデリケートな御質問がございましたのですが、正直にひとつお答えいたしますが、税制調査会といたしましては、いつも私は申しておることでありますが、功を争わずという原則で、理屈が通ればそれでいいじゃないか、こういう感じでおりまして、一日早くやったからというのは——私は一日おくれたからどうのこうのという問題はないと思うのです。少なくともわれわれの審議では同じ意見が多数あればけっこうじゃないか、こういう形でおりまして、一つデリケートなお話を申し上げますが、先年たばこの値上げ問題でありますか、そういう問題がありまして、われわれとしては当然上げていいだろうという議決をすることになっておりましたのですが、そのときに、これもデリケートな話でありますが、当時の自民党は、そういう案に大体賛成のようだ、それで、しかも早くそれを発表するということだったのです。当時の主税局長の吉國君でありますが、そういうことですからわれわれも一日も早くやろうじゃありませんかということだったのでありますが、私はそんなことを一日早くやろうとやらぬとたいしたことじゃないんだ、まさか自民党は、人のいやがることを早くやるまいと、たかをくくったというと悪いですが、それで予定どおりやったところが、前日に自民党はそういうことを御発表になりまして、考えてみますと、これは自民党はずいぶん成長したんじゃないか、いやがることをわりに言う、私はそういう感じを持ちましておったのでありますし、今日の場合でも、別にそういう一日早くやるとかやらぬとかいう問題はありません。中心問題は、一体この案が通るか通らぬかという問題でありまして、少し景気のいい案を出して、それで無視されればそれきりのことになりますし、そこはだから自民党の税制調査会とも公式の何の関係もございません。ただ、どういう議論を自民党がなさっておるかということは、しょっちゅう私は会長として聞いておりまして、別途に聞いておりますし、また、われわれはこういう案を持っておるのだということを、私は会長として非公式でありますが通知をいたしておるのであります。案が一致したからといって、別に引きずられたというほどの問題はないと思っております。ただ一日早くやったかやらぬかということで御判定になることだけはひとつ免除していただきたい、こう思っております。率直に申しましてこういうわけであります。
  12. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 税制調査会は、土地税制についてこの改革が有効であると考えられるのかどうか、私お伺いしたいのでありますが、実は昭和四十四年度税制調査会答申では、まあ土地の値下げを目的として、長期の土地所有者の土地売却について分離課税、軽減税率を採用いたしましたが、この結果、現実はたいへんに違った方向へいっておるのじゃないだろうか。この結果をどのように判断をされ、見ておられるのかという点が一点。  今度のこの国会に、土地騰貴を防止するための税調答申に基づいて、また特別措置が上程されておるわけであります。しかし、この土地税制について税制調査会意見は、あなたも含めて、先生も含めて、何か反対であったように報道されたわけでありますが、それはほんとうなのかどうか、これが第二点。  そして、さきの供給面での減税措置とあわせて、今度の改正で土地騰貴の抑制が可能であるとお考えになっておられるのかどうかという点を、もしおられるとすれば、その根拠についてお話を聞かしていただきたい、こう思うのであります。
  13. 東畑精一

    東畑参考人 四十四年でございましたですか、土地供給の促進という意味で、長期保有地の売買に伴う課税を非常に軽減いたしました。その結果としてと言えぬことはないと思いますが、非常に多数の土地売買、売却された、これはもう事実そのとおりであります。はたしてこれが税法上のつまり特典ということによって、これだけの土地が売られたかどうか。別に土地に対する投資というものが非常にふえておるものでありますから、どちらかと言うことはできぬかとも思いますけれども、少なくとも土地供給を促進したということは言えると思うのであります。ただ、当時からして、単にこれだけでもって土地税制は終わったと言うつもりは一つもありませんで、他の土地に関するいろいろな法制というものができるということを、多少期待いたしましてあの案をつくったわけなんであります。ところが、残念ながら特別に土地についての政策というものが講ぜられなかったという、そのことが非常な大きな欠陥となりまして、阿部さんよく御承知のような事情になったわけなんであります。  それで、われわれとしましては、新しくどうしても土地騰貴を、つまり押えるといいますか、多少でも押えるということと、中間で保有されておる土地最終需要者に供給することを促進する、こういう点を、税制上どこまでやったならば促進することができるかどうか、こういうので練った案なんであります。実は昨年でありますが、税制調査会としましては、おそらくは五〇%に匹敵するエネルギーを土地の問題に投じたわけであります。やっと御承知のような案としてまとめたわけであります。  これがそれでは全面的に大きな効果があるかどうかというのは、これは私は疑問であります。少なくとも、ただ土地の値上がりということを押えるといいますか、値下げするということはとてもできぬのであります。これは金がだぶついているということが問題でありますものですから、税としては、値上がりということはあっても、せめて少しでもそれにブレーキをかける、こういうような案なんであります。  もう一点ひとつ御了解願いたい点は、この土地税制土地問題が、非常に複雑な問題でございまして、私も実は大学で教師を長くしておりましたのですが、農地だけでありますが、農地問題につきまして、ことに水とからんだ農地問題につきましては非常に複雑なことで、実は残念ながら一冊の書物も、それについては書きたくてもずっと書かないでおる。今度は農地だけじゃありませんで、農地、林地全体が、それ自身としての問題もありますけれども、宅地に転用するということになりましたので、非常に複雑なつまりそこに問題がからんでおりまして、実は恥ずかしい話でありますが、税制調査会長としてもどうもなかなか意見ができないのでありまして、審議を十何回やりましたのですが、十何回の間私は実は一言も発言しなかったのです。皆さんの意見をずっと聞いておりますと、まさに複雑きわまるものなんですね。これを最初からすっきりしたものとして土地税制を確立するということは困難ではないか、こういう感じを持ちましたので、まず第一歩をつくるというつもりで実は今回の土地税制はできたんじゃないかと思っております。これによってさらに欠陥が目につくということになれば、第二、第三のつまり足踏みをしたい、こういう感じでおるのです。
  14. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 まあここで論議をするのではなしに、一応お伺いしたいと思うのでありますが、先生は事業主報酬制度にやはり反対の御意向をお持ちだったように新聞は報じておるのでありますが、そのような趣旨を記者会見で述べられたようでありますが、それがほんとうであったかどうか。そして、もしそれがほんとうだったら、なぜこの答申に加えたのか、それが私にはちょっとわからぬのであります。また内部でもたいへん数多くの人たちがこれに対して疑問を持ち、不満であったようにお伺いをしておるのでありますが、その点についてお話をお伺いしたい。特にその不満の点はどこが不満だという意見がよけい出たのかをお聞かせ願えればありがたいと思うのであります。
  15. 東畑精一

    東畑参考人 事業主報酬制度につきましては、税制調査会といたしましても特別部会を設けて、おそらくこれも十回ぐらいの討論をいたしたのでありますが、結局皆さんの意見が一致しなかったわけであります。問題はいろいろございましょうが、結局これは税負担の公平とでも申しますか、その問題でないかと思っております。よくこの事業主所得税とサラリーマンの所得税とでもいいますか、この間に非常な不公平がある。俗にいうクロヨンと申しますか、こういう問題もございまして、その点が今度の事業主報酬制度を立てることによって一そう強まるのではないか、こういう意見が結局は大多数を占めたんではないか、こう思っております。そのために所得税法そのものに事業主報酬制度税制を入れるということは反対である、こういうことがまあ勝ちを制したといいますか、あとは、そうしたところが特別措置としておやりになる。こうなってきますと、ちょっとこの特別措置というのは大体公平を破っていくという制度でありますから——ちょっとそれは言い過ぎかもしれませんが、そうなってきますと、公平論からいうと少し虚をつかれたという点もあるかもしれません。ただ、税法としてはどうもわれわれは納得できない、こういうことでございます。
  16. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、日本の税制というのは、原理原則をだんだん失ってしまっておるのじゃないか。勤労国民の利益はそういう点で著しくそこなわれておる。所得税制について見ましても、利子、配当あるいは土地譲渡所得あるいは山林所得、そういうふうに不労所得にはどっちかというとたいへん軽い。有価証券の売却利益に課税はされていないし、今度は比較的上位の中小企業者に事業主報酬をやる。だからこれは事業主所得控除、専従者控除、事業所得控除、こういうふうに、何か三分三乗みたいなかっこうで税金課税するという感じがするのであります。ところが、ほんとうに日本経済をささえている勤労者や農民は、これはたいへん虐待をされておるのじゃないだろうかという感じが非常に強いわけであります。税制調査会長として長年おつとめいただいた先生には、このような所得税制をどう考えておるのか。毎年私たちがこれを問題にしながらさっぱり直っていかないというのは、一体どういうことなんだろうという点で先生から所見をお伺いしたいのであります。
  17. 東畑精一

    東畑参考人 どの御質問もどの御質問も、なかなかむずかしい御質問でして、非常に答えにくい点が多いのですが、私、正直にいろいろなことを申し上げますが、所得税法にひっかからない所得者というのは非常にたくさんあるのですね、ことにいまお話しになりました農民その他には。これは所得税でどうにもならぬ階層なんですね。これはちょっと話が別になりまして、別途の考え方でやらざるを得ないかと思います。しかし、事いやしくも所得税に関しては、これはとにかく公平の原則ということをできる限り貫いていきたい、これがおそらくは税制調査会の皆さんの御意見じゃないかと思っております。そういう点からいいまして、つまり勤労所得と財産所得と申しますか、この間の均衡をはかっていくということは、税制調査会ではずっといままで取り扱ってきた問題であります。理想的なことにはなかなかいかぬと思います。先ほどもいろいろお話がございました有価証券の取引による利益とか、こういう問題はなかなか思うようにはいっていないということは、これは事実でございます。
  18. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 公平の原則を貫くために御努力をなすった、こういうお話でありますし、私はその努力をしているだろうと思うのでありますが、それにしても日本の税制はあまりにも不公平過ぎるのではないだろうか。たとえば企業税制についてみると、わが国企業税制は先生御承知のように国際競争力の強化だとか、あるいは設備投資、輸出主導型というような形でたいへん優遇をされてきた。それについてやはり税制調査会はこれまたたいへん大きな役割りを果たしてきた、私はこう考えざるを得ないのであります。  ところが、わが国の経済は、もう転換期に差しかかっておる、差しかかっておるというよりも、もう緊急の必要に迫られておるのではないだろうか。この今日の好況のもとで一体税制調査会法人税税率引き上げる、課税を強化するという点でなぜことしおやりにならなかったのか。いままでの法人税を見てまいりましても、不景気だから不景気だからということで税率を下げてきたわけであります。ところが、この好況のときに税率を上げなければ、もとへ戻さなければ、いつまでたったってやる機会はないのではないかという感じがするわけであります。いままでの経過から見てもそれはいえるのでありますし、そういう点でまあ特別措置の幾つかをなくしたり、また公害関係をふやしたりしたけれども、基本的な点で法人税率をいじらなかったという点は、どうもわれわれには納得ができない点なんでありますが、この点なぜこれを避けられたのか、そして今後これをどうされるつもりなのか。私は今日、先ほどおっしゃった過剰流動性の問題等をからめても、これを緊急にやらなかったのはたいへん大きな間違いをおかしたのじゃないだろうかという感じすら受けるのでありますが、先生いかがでございますか。
  19. 東畑精一

    東畑参考人 法人税の、ことに税率につきましては、たしか朝鮮事変のときですか、引き上げて、それから以後は連年ということはありませんが、四十何%から三五%まで基本税率を下げてきたわけでありますが、一昨年でございますか、これを引き上げるという問題になりまして、たしか十数年ぶりに法人税の下がっていく率を食いとめた。それが特別措置とかとなりまして、三五%のが三六・七五でしたか、あなたのほうがよく御存じですが、やっとそれで食いとめた、というとことばは悪いのですけれども、やったのでありますが、ちょうどそれがたまたま来年、四十八年度で終わりになるものでありますから、ほっておけばもとの三五%に返るということであります。これはいかにもよくないというので、どうしてもこの機会に法人税検討をいたしたい、こう思っております。  実はことしやらなかったのはどうのこうのというお話でございますが、ことしは先ほど申しましたように、事業主報酬制度だとかあるいは土地税制ということで非常に精力を取られてしまいまして、毎年税制改正をやらなければならぬというわけのものでもありませんので、来年は法人税に集中いたしまして、できたならば根本的にこの検討をし直したい、こう思っております。
  20. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 ぜひ法人税を、私はほんとう言うと、ことしこの好況のときに手直しをするのが一番やりやすいし、やるべきだった、こう思うのであります。と同時に、そのときにはひとつ租税特別措置も、これはもう先生方、答申のたびに租税特別措置については検討をすべきである、そうして改廃をすべきであるという文句は、これは毎年税調の答申のたびごとにきまり文句で出ておるのでありますけれども、これは全く何かお題目のような感じすらわれわれは感ずるわけでありまして、そういう点で特別措置の抜本的な廃止もひとつ特に要請をしたいと思うのであります。  最後に、税制の立案または施行の責任者としては政府がございます。そうしてこれを審議するためには、これはわれわれ国民から選ばれた国会というのがあるのでありますが、このほかに税調というものが一体なぜ必要なのか、私にはほんとういうとよくわからぬのであります。長年会長をしておられた東畑先生には失礼かもわからないけれども、これはどうも個人の問題と違いまして政治の重大問題でありますので、私は税調のあり方、存在というものについて疑問を持っておるので、御所見を承りたいと思うのであります。これがまず第一点。  私は、税調というものが必要なのは、たとえば政府が目先の政策を追及するために租税原則を踏みはずしたり、そういう場合に、原則に即してこれを正すという役割り、これを果たすのが一番の主任務だ、こう思っておったわけであります。ところが一番最初にお話がありましたけれども、実は政府の諮問どおり大体答申する機関であってみたり、あるいは自民党の税制調査会の後塵を拝するような例を見ていると、どうも私の考えとはこれは違うのではないだろうか。今日わが国税制は例外ばかりで、もう原則が埋没してしまったという感じがするのでありますが、こういう傾向のあるときに、東畑会長、長老を先頭にして、原則を守るために勇気を出して抵抗することこそが私は税調の最大の任務だと、こう思うのでありますが、御所見を承りたいのであります。  三番目に、税金を取り立てるということは、これは国家権力を使って国民の血と汗の結晶を取り上げるということであります。だから、納得させるだけではなしに、やはり見通しを国民に示さなければならないと思うのでありますけれども、その見通しを示す場合に何が必要か、こうなると、やはりこの原則があってこそ初めて見通しがあるのであって、こう日本の税制のように、原則をずたずたにした特別措置ばかり一ぱいつくっておるようなこういう税制では、国民にその見通しを与えることも不可能じゃないだろうか、そのことこそが税調の主任務である、こう私は期待をするのでありますが、会長の東畑先生の御所見を承って私の質問を終わりたいと思うのでありますが、どうぞよろしくお願いいたします。
  21. 東畑精一

    東畑参考人 税制調査会に対して、阿部さんのほうから非常に御期待されていて実は赤い顔をしなければならぬのでありますが、私は税制調査会に実は十年ぐらい関与いたしておりますが、考えていることは、これは一種の社会的技師とでも申しますか、いい税制をいかにして具体化するかということを考える技術とでも申しますか、技師的役割りを持っているのではないか、こうしょっちゅう思っております。それではいい税制は、これもできる限りみな考えますが、一番私が期待いたしているのは、国会なんですよ。国会が日本のあらゆるものを決定なさる、国会においてりっぱなビジョンを出していただければ、これをどうしたら生かせるかということで、毎年国会における皆さんの御議論を、実は大蔵省の連中にも頼みましてこまかく検討いたしておるのであります。そういうことでありますから、われわれだけが税について国民に見通しを与えろというのは、税制調査会がそうなればけっこうだと思いますが、それは少し過剰期待じゃないかと思っております。むしろわれわれは、逆にあなた方こそいいビジョンを出していただきたい、それをわれわれは生かすべく努力をする、こういう立場にずっとおります。ですから、税制調査会がどうのというのじゃなしに、これはやはり国会、大蔵省、われわれというようなところで協力するといいますか、何かそういうことにならないと、ほんとうの運用はできないんではないか、私はこう思っておりますので、どうぞこういう機会に、おれはこういうビジョンを持っているんだ、おまえの考え方、しようがないじゃないかというようなことをどんどんおっしゃっていただければ、われわれにとって、実はここへ参りましたかいがあると思っております。その点をひとつお願いいたします。
  22. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 その点で、微力ですがみんな一生懸命やっておるのでありますけれども、どうも政府のほうも、何かあると税調にお伺いをしてみるような形で逃げてしまって、ここでなかなか基本的な論議というものが進まないという面もあります。そういう点で、私たちももちろん努力をいたしますけれども、やはりお互いに税の公平の原則、これをいかに貫くかということに私たちももちろん努力をいたしますが、あまり大蔵省の逃げ場の役割りをされないようにひとつお願い申し上げまして、私、失礼な質問を終わります。
  23. 東畑精一

    東畑参考人 大蔵省もここにおるのですが、そんな意見ありはせぬのですよ、大蔵省自身にも。そういう問題なんでして、大蔵省が逃げ場にするというのはちょっとかわいそうであって、大蔵省の意見はこうなんだということは、なかなか事務当局的には私は出ないと思っておりますので、そこは多少同情を持って大蔵官僚をひとつ……。私はいつもそういう気持ちでおります。
  24. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、高沢君。
  25. 高沢寅男

    ○高沢委員 社会党の高沢寅男でございます。  きょうはお忙しい中を、参考人の先生方、御苦労さまでございました。ただいまから御質問を申し上げたいわけですが、先ほど私都合でちょっとおくれてまいりまして、北野先生と井出先生のお話はお伺いしたのですが、お伺いしたところでは、大体御意見は私たちの意見とまあ一致する点が非常に多い、こういう感じがいたします。それで、私も阿部委員あとを受けて御質問する点は、主として税制調査会を代表される東畑先生のほうへお願いを申し上げたい、こう思うわけであります。  最初にお聞きしたいことは、もう東畑先生も御存じかと思いますが、東京都の新財源構想研究会、ここで——社会党の木村禧八郎先輩なども入っておられるわけですが、この研究会が大都市財源構想について、東京都のほうへ一つの報告あるいは提案を出しておられるわけです。この中には、いろいろ税制あり方についてかなり大胆な考え方や、またわれわれから見てぜひそうあるべきだという考えも出ておりますので、この点について最初に東畑先生のお考えをお聞きし、さらに私、できれば税制調査会の中でそういうふうな提案を積極的に取り上げて、そしてこれを実現させる方向へひとつ促進をしていただきたい、こう考えるわけです。  それで第一、この報告の中では、大都市における集積の利益と不利益、こういうふうな問題に触れて、集積の利益は主として大企業がこれを受ける形になっておる。それに対して集積の不利益は都民が受けるという形になっている。こういうふうな分析をして、そこでその集積の利益を受ける企業のほうからそれに対する一定の税を取って、それで不利益を解消するための対策に向けていく、こういうふうな考え方を出しておられるわけであります。  これは東京都に対する報告ですから、当然形としては地方税の形で、法人住民税なり法人の事業税という関係一定引き上げのパーセントをかけるべきである、こういうふうな意見を出されているわけです。私は、これは地方税の面でも非常に大事であるけれども、同時に、国税の面においても、法人、特に最近の国民経済の動きについて決定的な影響を持つ大法人について、そういう考え方国税の面においても当然必要ではないか、こういうふうに思うわけですが、まず集積の利益と不利益というふうな考え方について、東畑先生どういうふうにお考えになりますか。そして大企業に対して、そのことに対する一つ法人税負担をかけるべきであるという考え方について、先生がどういうふうにお考えになりますか、お伺いをしたいと思います。
  26. 東畑精一

    東畑参考人 私、残念ながらその木村禧八郎さんの御提案を存じていないのでありますが、集積の利益と不利益となってきますと、抽象的にはわかるのですけれども、具体的にそれを当てはめるとなってきますと、一体どこでその限度を設けるかというのは非常にむずかしい問題ではないかと思っております。なおこれは、技術的に考えてみなければならぬ問題だと思っております。  それに関連いたしまして、高沢さんにもひとつ御了解願いたい点があるのでありますが、先ほども申し上げましたように、法人税の改正ということは、来年度税制調査会としても一つの大きな問題になるかと思っております。そのときに、先ほども井出さんのお話にありましたか、あるいは北野さんのお話でありましたか、法人と申しましても、それこそ新日鉄も法人であれば、小さい八百屋さんの法人というのもありまして、これを一つ法人という考え方で律するのはいかがなものであるか。何か質的にもう少し区別して税制を考えなければならぬのではないか、こう思ったり——これは私の全く個人的な意見であります。株を公開しているところとそうでないところでは、ずいぶん意味も違ってくると思っております。それが一点。  それから、いまのお話と特に関連が多いと思っておりますが、同時に、日本の地方税制というものを考えてみますと、大東京も大阪も札幌も、これはわれわれのいなかの一つの村と同じ地方税制ということで多少の相違はありますが律しておる。これも私は、日本の税制としては考え直さなければならぬ。ただ、地方税だからどうのこうのというのでなしに、いまのお話にもありましたように、国税と入りまじってくるような問題がずいぶんたくさんございまして、そういう意味から申しまして、法人についても大小とでも申しますか、これを少し検討し直さなければならない。地方税につきましても、大都市と人口一万足らずの村と同じような地方税制では時代の要求に合わないのではないか、私は実はこういう個人的な考えを持っておりまして、いまの木村さんのお話も、よく調べてみますけれども、あるいはそういう問題についての非常に大きなヒントではないか、こういう感じを持っておりますので、これは十分検討いたしたいと思います。
  27. 高沢寅男

    ○高沢委員 四十八年度税制についての税制調査会答申の中でも、確かにいま東畑先生が言われたように、大都市地域の税源の充実をはかるために、新税創設についてすみやかに実現できるように引き続き検討すべきである、こういうふうな部分がございますので、これは大都市における税源上の立場からそういうふうな提起をされているわけです。これも非常に大事な立場でありますが、同時に、大都市という特別な自治体のあり方、その自治体の中において展開されておる非常に活発な経済活動、その経済活動の中で、一方においてはそういうふうな非常に稠密な大都市、特に東京のような行政の中枢に接しているところにあるがゆえに、多くの大企業がそのために特別な利益を受ける。そのために東京にみんな本社を持ってくるということになるわけですが、その逆においては、今度は大都市で交通問題や住宅問題、公害問題等々で、また多くの不便を住民のほうが受けるという、この関係を東京都の新財源構想研究会で報告をされているわけです。これはまだ第一次報告ということで、この研究会でもなおこれからさらに研究を深められるというようなことになっているわけですが、これはいま東畑先生がおっしゃったように、ぜひひとつお読みをいただいて、その中で提起されている問題を、税制調査会でもひとつ正面から取り上げて検討されるようにお願いしたいと思います。  それに関係いたしまして、法人税関係になるわけですが、いま言ったようなそういう税源の立場なり、あるいはそういう特別な大都市における集積の利益、不利益という、こういうふうな関係に加えて、もう一つ私は、特に最近の非常に問題になっておる土地の値上がりとか、あるいはいろいろな商品の値上がり、それから投機というふうな関係ですが、この値上がりや投機、これを実際やっているのは商社なりというふうな、これはそれこそ先ほども問題になった法人実在説のまさにその法人がやっているのだと思うのですが、そういうことがやれる一つの手段に、いわゆる過剰流動性というふうなものが特に一つ役割りを果たしていることは確かであると思います。  そこで、いま政府のほうでも、そういう商品投機を規制するための法案というふうなものもこの国会へ出されるということになっているわけですが、それもさることながら、その問題の根源にメスを入れるということで、そういうふうな過剰流動性というものについて、これを税制の改正によって吸い上げていくというふうなことが、一番端的な対応のしかたじゃないか。日銀の預金準備率を上げるとか等々のことも確かになされてはおりますが、これは全く間接的な、くつを隔ててかく程度対策にすぎないわけであって、端的に根本へ迫るには、そこで法人税率をある程度思い切って上げていく、そしてそういうものは政府の財源に吸収していく、その吸収した財源で、今度はまた公害対策やその他の対策をやっていくというふうなやり方が、どうしても必要な段階に来ているのじゃないか。先ほどの阿部委員の質問も、そういうふうな立場であったわけですが、このことについて、もう一度東畑先生から見解をお聞きしたいと思います。
  28. 東畑精一

    東畑参考人 高沢さん、現代のいろいろな経済問題につきまして、過剰流動性ですか、ここに大きな根源があるというお話は、私全く賛成であります。いかにそれを手綱をとって御していくか、こういうことが今日の経済政策の一番根本問題じゃないか、こう思っております。税制がそれに対してどれだけの貢献ができるかということは、これはなかなかの問題でございまして、一説によると過剰流動性は七兆何千億の金が走っているのだ、こうなっています。これを手綱をとるということは、税制ではあまり期待することはできないのじゃないか。もちろん一環としてそれを規制するということはやらなければならぬと思いますが、全体としての政策ということをひとつやっていただきたい。その一環として税制のほうからも喜んでこれに参画したい、こう思っております。参画すれば、言うまでもなく一つ法人税の問題であります。なお若干は特別措置ということにも関係があるかと思いますが、法人税法人についての事業税だと思いますので、やはり過剰流動性という問題の御し方ということになってきますと、主眼点はどうしても金融政策といいますか、そちらへ移るのではないか、こう思っております。率直に申しまして、いまそういう感じでおります。
  29. 高沢寅男

    ○高沢委員 いまの点は、私、東畑先生にまたちょっとおことばを返すようで、たいへん恐縮でございますが、過剰流動性の問題に迫るには、税制こそ私はむしろこの際最大の手段じゃないか、こう思うわけなんです。いろいろの対策の中のささやかな一つの分野を税制が担当するというふうなことではなくて、むしろこの問題は、税制こそが一番その手綱をとれる最も有効な方法であるというお考えで取り組んでいただきたいという気がするわけなんです。金融政策の面では、先ほども申しましたが、日銀の預金準備率をどうしてみても、あるいは公定歩合など金利を動かしてみても、しかし、この過剰流動性が、そういう企業の自己資金としてふところに入っている以上は、金利の上げ下げというのはほとんど支障がないし、預金準備率の上げ下げもほとんど支障がない。その金が、それこそ七兆という金がどんどん動くという、こういう状況にあるとすれば、その動いている金に対して、今度はこういうものを買ってはいけないとかいうふうなことの規制も、これはまたよほどの統制経済でなければそういうことはできませんし、そうすると、いまの資本主義の体制で、われわれが使うことのできる政策手段で一番有効な方法というのは、端的にその部分を税収で国庫に吸い上げるというやり方が、一番直接的で、かつ一番すなおな政策じゃないか、こういうふうに考えるわけですが、もう一度、おことばを返すようですが、東畑先生の御認識をお伺いしたい、こう思います。
  30. 東畑精一

    東畑参考人 いや、私は特別のことを申し上げたわけではありませんで、税制としてももちろんやれるだけのことはやりたい、こう思っております。金融政策もやってもらわなければ、両々相またなければなかなか解決できる問題ではないと思います。金利というものをうんと引き上げる、こういうことも一つの重要な問題ではないかと私は思っておりますが、ちょっと金融論になってきますと私は弱い。弱いというとはなはだ——農学主なものですから、あまり金利のことは知らないのです。その点だけはちょっと容赦していただきたいのですが、どうもそういう感じがしろうととしてはいたしておりまして、決して税制が——これは謙遜のことばでありまして、一生懸命やりますということは、一生懸命やるということなんでありまして、ないがしろにするつもりは毛頭ございません。どうぞその点はひとつ御了解願いたいと思います。
  31. 高沢寅男

    ○高沢委員 ぜひそういうふうにお願いをしたいと思います。  そこで、法人税の問題に関してもう一つだけお聞きしたいと思います。  先ほど言いました東京都の大都市財源構想の中で、こういうふうなことも言っているわけなんですね。外部負経済、負というのはマイナスの意味の負経済ですね、そこに出ているはっきりとした例としては、たとえば中性洗剤、こういうふうな商品が出回っておる。これをつくる大企業はそれによって一定の収益をそれぞれあげている。ところが、それが各家庭で使われると、それが下水等々で川の水や海の水を非常に汚染をする結果になる。当然国なり自治体なり、こういう公的な立場からは、今度はその汚染を取り除くための非常な対策をとらなければならぬし、そのための公的な費用もかかる。こういうふうな例をあげて、こういうふうな場合には、明らかにそういう原因と結果がもうわかっておるというふうな場合には、こういう産業、こういう企業に対して、その対策の部分を負担させるというような意味で、公害税というふうなものを設定するのも法人に対する一つの方法じゃないかというふうなことが提起されているわけです。これは集積の利益、不利益の議論と違って、もう一つ原因、結果が非常にはっきりしておるというふうな場合には、そういう税制上の考え方が当然あっていい、私はこう考えますが、この点東畑先生、ひとつ御見解をお尋ねし、これも税制調査会の中でひとつ積極的な御検討お願いしたい、こう考えるわけです。
  32. 東畑精一

    東畑参考人 外部負経済という問題ももちろん大きな問題でございまして、それにつきましては先ほどもお隣の北野先生ですか、PPP原則のお話がございましたのですが、つまり公害発生者がどこまで公害についての負担をするか、こういうことなんであります。これはできる限り検討しなければならぬ非常に重要な問題ではないか、こう思っております。そうでありませんと、たとえば長い間たまっておった、先般来やかましいあのチッソの問題なんかも、十年放置しておったということによって国民もずいぶん命を失った、会社自身もどたんばになってたいへんなことになってくる、お互いの実にあれになる。そこはやはり先見の明というものがあってやらなければならぬと思います。技術的にどういうふうにやるかということについては、ちょっとお答え申しかねますけれども、高沢さんのおっしゃった意味は、私は非常によくわかっております。そういうつもりでおります。
  33. 高沢寅男

    ○高沢委員 これはひとつ来年度税制調査会答申を、楽しみに待ちたい、こう思うわけです。  次に、私は物価税負担関係ですね、これについてお尋ねをしたいと思うのですが、ことしの予算審議の中でも、衆議院の予算委員会で、社会党の委員の質問に答えて、愛知大蔵大臣は、四十八年度の消費者物価の上昇率の見通しは五・五%になっておる、もし実際の物価の上昇率がそれを上回るというふうな事態になったら、この年度内にさらに減税をすることも含めて適切な処置をとらなければならぬ、こういうふうにお答えになっているわけですが、これは物価税負担との関係からいって、当然そうなければいけない、こう思うわけですが、大蔵大臣がこういうふうに言われておることに重ねて、もし四十八年度の消費者物価の上昇率が五・五を上回るというふうな場合に、税制調査会としても、主体的に政府に対して、その場合には年度内にまた減税をやれ、こういうふうなことを勧告されるお考えがありますかどうか、お尋ねしたいと思います。
  34. 東畑精一

    東畑参考人 物価というより、むしろ生計費物価ですね、その値上がりということにつきましては、税制調査会としても、ずっといつも所得税審議のときに議論をいたしておりまして、非常に少ない減税の場合には、やっと物価上昇といいますか、生計費上昇をカバーする程度じゃないかという議論をしょっちゅういたしておりまして、大きな値上がりがあれば、当然われわれのことばでいうと物価調整減税とでも申しますか、そういうことを過去も注意いたしておるのであります。今後ももちろんそういう問題が出てくるかと思っております。それを年度内にやるかどうか、これは別問題といたしまして、その点に注目しておるということは事実でございますし、また大いに注目したい、こう思っております。
  35. 高沢寅男

    ○高沢委員 年度内に消費者物価政府の見通しを上回ればぜひやるんだというお答えを、実は期待しているわけなんです。  それで、これに関係いたしまして、こういうふうな考え方を私はとるべきじゃないかと思うのです。といいますのは、昭和三十八年度に、当時は税制調査会の会長は中山先生がおやりになっていたわけですが、三十八年度答申の中で、そういう消費者物価の上昇がもたらす実質所得の増大に対する租税負担増と、それから名目所得の増大に対する租税負担増と、この関係を分析をされて、名目所得の増大に対しての租税負担増が、いわゆる一定の弾性値でもって実質所得の増大よりずっと大きく伸びる、こういう関係から、そのための調整、いま東畑先生も言われた調整減税というふうな考え方をお出しになったわけですが、その三十八年度答申の中では、いわゆる租税の自然増収の中で、そういうふうな物価の上昇に応じて、それに対する一定の弾性値をもって、その名目所得に対して租税負担がそれだけふえて、その分が租税自然増の中へ、これだけの部分で入ってくるというふうな部分を一定の数式で計算されて、三十八年度の場合には、租税の自然増収の中で約三〇%が、そういう物価の上昇に応じて名目所得の上がるのに対する租税負担増として、約三〇%がそういう部分に当たる、こういうふうな分析をされていたわけですが、これは非常に大事な分析であって、これからの毎年のそういう減税に関する答申をされる場合、また政府がみずから減税の案をつくられる場合には、来年度租税自然増収はこれだけある、そのこれだけある中で、これだけの部分が物価上昇によってもたらされる租税負担増であるという部分を、ちゃんと示して、そこでそれに当たる減税はこれだけだ、つまりこれは調整減税ですね。この調整減税というのは、要するに物価上昇に対する調整であるから、これはほんとうの減税じゃない。それがなされてやっともともと、負担が同じということになるわけですから、その上に乗せる本来の減税部分はこれだけだ、調整減税はこれだけだというようにその減税部分を二つの部分に分けて、そして国民にわかるようにこういうふうに示されるということは、税制調査会答申でもそれは非常に——国民から見て、なるほど物価上昇でこれだけか、ほんとうのわれわれの負担の軽くなる減税はこれだけかというふうに一目にわかるわけですから、そういうふうな答申をされて、この政府税制改正案もそういうふうに出てくるというふうになることが非常にいいことであるし、また、いまのような物価上昇の激しいときにはぜひ必要な方法じゃないか、私はこう思うのですが、これについて先生のお考え、そういうふうにひとつ税調の中でやってみようというふうなお答えをいただきたいと思うのです。
  36. 東畑精一

    東畑参考人 なかなかいいお話をお伺いしまして、そういうふうにやれば、国民にいわゆる減税というものがどういうものであるかということをはっきりさせるゆえんだと思っております。御趣旨のような点は大いにやってみたい。少なくとも私自身もそういうことを知りたい、そう思っております。ただ、所得がふえるということも同時に考えなければならぬと思います。
  37. 高沢寅男

    ○高沢委員 次にお尋ねをいたしたいことは、これも所得税関係ですが、先ほど阿部委員からお尋ねをいたしました青色申告するその事業主のみなし法人課税、これはことしの税制調査会答申の中では、なお慎重に検討してみたい、こういう答申であったのが、政府のほうではことしはもうこれをやられた、こういうふうな経過があるわけですが、これによって給与所得者との関係で不均衡が非常に拡大するということは、東畑先生と同じようにわれわれもそういう考え方を持つわけです。ただ、そうであるから、このみなし法人課税、というやり方をやめろというのではなくて、これはこれで、そういうふうな事業者の、特に零細な事業者の負担を軽減するという意味でこれはやって当然だと思うわけですが、この場合には、それに対する不均衡をなくするために、給与所得者のほうの税負担をそれと不均衡にならないようにもっとずっと軽くさせるという、そういう対策が伴って必要である、こう思うわけです。  そういう点において、実はそこら辺の関係をこの間参議院の予算委員会で自民党の西村委員が質問されて、田中総理大臣がそれに対して、自分の私見であるという立場をとりながら、給与所得者に対しても二〇%なり三〇%という一つの必要経費を認めるということも考えたいというふうなことが、田中総理大臣の答弁の中で出ているわけですが、私、これがもし実際に実行されれば、給与所得者税負担を軽くするという面においては相当思い切った対策になるのではないか、こう思うわけです。ただ、田中総理に言わせると、それをやるには、一方、今度は間接税のほうで取るべきものは取らなければいかぬ、こういうふうなものがくっついておるわけですが、その間接税との振り合いは一応別といたしまして、所得税という面で考えて、こういう事業所得者に対するみなし法人課税というものがすでに実行されたという上に立って、給与所得者に対して均衡をとるためにそういうふうな必要経費を認めるとか、あるいは給与所得控除というふうなものをいま提案されているよりもっと思い切って引き上げていくとか、そういうふうな考え方が当然あってしかるべきだと思いますが、東畑先生のお考えをお尋ねしたいと思います。
  38. 東畑精一

    東畑参考人 例の事業主報酬制度審議のときも、その案を何とかしてああいう考え方を生かしたいという議論もございました。大蔵省のほうにも私から、何とか生かす方法はないかしらということでいろいろ注文をいたしましたのですが、そのときに大蔵省の事務当局のほうからは、給与所得控除というものを二つの範疇に分かってやりたい。一般給与所得者給与所得控除、これはそれとして、第二範疇のつまり給与所得控除というものをやりたい。それは金額になりますと大体半額ですね。俸給取りの半額の給与所得を認める。その案で生かしたならば公平というものは保てるのではないか。これは苦心惨たんした一つの案だったのでありますが、結局それも税制調査会としては通らぬ、こういうことになりまして、実はわれわれとしては基本税制にこれを組み入れることは反対だ、こういう答申を出したわけであります。今度それが特別措置として御提案になっておるようでありますが、それにいかにそれを見合うかという問題はもちろんありまして、私が非常に尾を引く問題であるというのは、その点であります。つまり、サラリーマンの税についてそっちへどうしても波及してくる問題だと思う。その場合に、いま高沢さんがおっしゃったように、結局、問題の一つの焦点は、給与所得控除ですね、これに集中していくかと思います。これを一々経費を認めるとなってくると、これは計算その他からたいへんな問題になると思いますし、また給与所得者というものは、大きくいいまして、社会において幾つかの階層に分かれておる。その階層に応じて一定の概算というものを適用して控除をやったほうが、税法上も楽に執行できるし、また事の本質に合っているのではないか。これを一々というのは事務的にもたいへんなことになりますので、それで概算の給与所得控除ということにやるほうがプラグマティックではないか、こういう考え方が強いかと思っております。ただ、それをどれだけ引き上げるかどうかという問題は、いまおっしゃったような観点からも練らざるを得ない。例の事業者報酬制度というものがかりにできましたならば、当然そちらへ問題は波及していくか、こう思っております。  ただ、税源上、それがためにうんと減税すれば、ほかの税をとるとかどうとかいう問題、これはまた別の問題であります。
  39. 高沢寅男

    ○高沢委員 もう一つお尋ねしたいことは、わが国所得税の納税人口が非常に多数になっているという問題ですね。戦前の昭和九年、十年、十一年ですか、戦前のあの基準年次のころには、わが国では所得税の納税人口というものは百万人ぐらいだったというふうに聞いているわけですが、これは戦前と戦後ではかなり社会経済的な事情に変化があるにしても、それにしても年々所得税の納税人口というものが増大してきている。もういまでは三千万を上回るというふうな納税人口になっているわけですが、このことは、一方においては、新制中学を卒業してそして仕事についた、そういうほんとうにまだ若い勤労者にまで税がかかるというふうなことになっておりますし、一方、今度は税務行政の面から見ても、五万人そこそこの税務署の職員の人たちでそういうふうに年々増加していく納税人口をさばいていくということは、これはやはりたいへんなオーバーワークになっておる、こういうふうに考えるわけですが、ここら辺のところをもう思い切ってやはりある程度整理すべき段階へきているのではないか、こう思うわけです。  そこで、これは、いまお尋ねした、たとえば給与所得控除を思い切って引き上げるとかいうふうな、そういう勤労所得者に対する税負担の不均衡を是正するということと当然内容的には一致してくるわけですが、そういう面を思い切って引き上げれば、少なくも新制中学を卒業した程度の子供たちには税はかからぬというふうな形になってくれば、そこで納税人口というものをずっと減らしていくということもできるのではないか、こういうふうに考えるわけですが、私たちとしてはそういうふうな考え方の上に立って、特に年少労働者の減税と申しますか、考え方としては、新制中学を卒業して仕事についた子供たちが、高校を卒業して仕事につくというその年代までの約三年間ぐらいになりますが、その間というものは税をかけない、こういうふうな考え方で、本来ならば当然高校まで行って社会へ出ていくべき子供たちが、家庭の事情やその他があって中学卒で仕事について働いておるという、こういうふうな、その少なくも三年くらいの年代の子供たちは税の対象にならぬというふうな形でもって、高校を出て社会へ出ていく子供たちと中学を出て社会へ出ていく子供たちは同じように、高校卒の少なくもその辺の段階から税の対象になっていくような、そういうふうな年齢上の一つ考え方もあっていいんじゃないかというふうなことも考えておりますが、いずれにせよ、非常にいま課題になりつつある納税人口というものを少なくさせる、こういうふうな見地から、いま言った、特に年少の勤労者に対するそういう税の非課税措置といいますか、そういうふうなものがあっていいんじゃないか、私はこう思いますが、東畑先生のお考えをお聞きしたいと思います。
  40. 東畑精一

    東畑参考人 未成年者でいまおっしゃったような納税、中学を出たばかりで所得税を納めておるのはだいぶあるようでございます。しかもそれは未成年者ということで投票権もない。選挙権もない。こういうことはやはり是正したい、こう思っております。数が多くても別に特に問題はありません。みなが堂々たる資格があれば数は問題でないと思いますけれども、いまの多数の中には、私がいま申しましたような納税者がなかなかおるのでございます。これはやはり私は、国政に参加するといいますか、そういう意味から申しましても、修正できるような結果になりたい、こう思っております。結局それは、独身者の課税最低限引き上げる、こういうことなんです。何の形でそれを引き上げるかということになってきますと、やはり給与所得控除ということが一番大きな項目になるかと思っておりますが、しかし、趣旨は、私は、何歳ということよりも、とにかく選挙の投票権を持っているかどうか、こういうことがやはり一つの問題でないか、こう思っております。
  41. 高沢寅男

    ○高沢委員 もう一問で終わります。  いまの東畑先生のお答え、非常に積極的で、私賛成であります。私は高校卒ぐらいの年代というふうな考えを申し上げたのですが、先生からむしろ投票権というふうなそういう考えを示されて、これがもし実現の方向に向かえば、私は非常に大きな前進になるんじゃないか、こう思います。ぜひよろしくお願いしたいと思います。  最後にもう一つだけで終わりたいと思いますが、租税特別措置の中でいろんな不合理が指摘されておりますが、特に声を大にして指摘されていてことしもとうとう残ったものに、あの社会保険診療報酬課税の特例があるわけですが、これはもう世論としても非常に熟しているというふうに見ていいと思うのです。ことしの税制調査会答申では、きわめて近い将来にこれを解決する、こういうふうになされているわけですが、この「きわめて近い将来」とは大体どの辺のめどをお考えになっているか、お尋ねしたいと思います。
  42. 東畑精一

    東畑参考人 この社会保険診療報酬ですか、それの特例という問題につきましては、実は、何年でありましたか、国会でおきめになった案なんですね。それがずっと今日まで続いておる。先年、二、三年前に国会で同じような御質問がありましたので、どうですか、国会でおきめになったことなんだから、国会でひとついい案をおきめになったらいかがですかと私は言った。これは決して人をひやかした問題じゃありませんが、実は昨年の国会の附帯決議は、衆議院もそうですし、参議院もそうですが、税制調査会検討をしろという附帯決議がございまして、われわれとしても義務がついたわけであります。社会保険の診療報酬制度審議するために特別部会を設けまして、専門家として特別委員も何人か御参加を願いまして審議しておるというのが今日の状況なんであります。  これは全く私の私見なんでありますが、問題としては非常に複雑なんでありまして、どういう意味で複雑かといいますと、社会保険の診療報酬の点数表という問題があります。それは、中央医療協議会というものでありますが、そこで審議しておるわけでありますが、私も実は四年半ばかり中央医療協議会に委員としておりましたので、そこでつくづく考えた問題は、あの点数制度は実に欠陥が非常に多いものだと思っております。  これをこういうふうにひとつ分類してくれないかというので厚生省の役人にも頼んだのでありますが、第一は、主としてお医者さんの技術料ですね、技術料というものを主とした点数があります。それともう一つは、物価、賃金、これの値上がりに伴って、それをまともに受けるといいますか、そういう点数、それからもう一つは薬の問題、薬を主とした点数表、さらに第四番目といたしましては、新しい機械を導入するとか、こういうことに伴って機械にかかる点数表ですね、こういうものに分類してくれ。そのときは初めの三つしか頼まなかったのでありますが、そういたしますと、物価、賃金をまともに受けるという点数の引き上げといいますか、これはわりあいにいきやすいのであります。だれも納得せざるを得ないのですね。その点はわりあいに楽にいきました。もう一つは、薬の値段が下がる、薬価基準が下がりますので、これに応じた点数表を改正するというのも、比較的これは客観的標準があるのでわりあいに是正しやすい。一番つまり改正しにくいのは、医者の技術料という問題であります。これをいかに修正していくかということが、中央医療協議会の一番大きな問題でないか。その点から見るというと、あの点数制度には非常に欠陥がある。それで、それを引き上げるといいますか、診療の技術料というものを引き上げるということになってきますというと、反対論が出てくるんです。医者にはこういった所得税法の特権があるではないか。それはいまの特別措置ですね。それがたてになって反対が起こってくる。片一方は、医者の技術料というのは引き上げるのが当然ではないか、これも一つ議論であります。片一方の反対論も、まだああいう特権があるのに何だ、こういう議論になってくる。そうしますと、つまり点数表と例の特別措置とがいつもイタチごっこといいますか、キャッチボールしているようなことになりまして、なかなかそれがきまらぬというのが、実は中央医療協議会の議論が難航している一番大きな問題でないか、こう思っております。  もう一つは、他方におきまして、これは医者のほうの主張でありますが、健康保険組合ですか、非常なつまり黒字ではないか、二千億か三千億か毎年あるではないか、これがやっている仕事については、非課税団体になっておって、全然課税が行なわれておらない、これは実に不公平だ、こういう議論なんですね。それに比べて、七二%の特権というものはコップの中の不公平なんだ、コップの外にもっと大きな不公平があるんだ、こういう議論がまじっておりまして、医者の診療報酬自身の問題は、いまの保険制度といいますか、それと非常にからみ合っておる、こういう問題がありまして、この点は、われわれが審議するに際しましても実は一番苦心しておる点であります。もう少し早く結論を出したいと思っておりましたのですが、昨年の一月に、こういうことを議したいという提案を皆で採択したわけであります。ところが、そのとき一つの問題としては、いま国会に出ておりますですが、詳しいことは知りませんが、健保法案ですね、あれが去年は通ると、通ればいま申しましたようなそのような事情が多少変わってくるものでありますから、診療報酬制度を改正するという問題について、診療報酬七二%問題を解決するのも一歩できるんではないか、こういうふうに見通しておったのであります。幸か不幸か健保法案はそのままになっておりまして、ことしの国会、これから御審議になると思いますが、これと非常にからみ合っておるというようなことがございまして、ちょっといましばらく待っておるという状況でございます。それ自身として見れば確かに不公平はありますが、あの不公平があるがゆえに点数表の改正ができないんじゃないか。私個人といたしましては、あの七二%問題を解決する一歩ができれば、それが跳躍台となって、診療報酬制度そのもの、点数表そのものの改正、ことに技術料の引き上げという問題、そちらにも行きやすいのではないか、こう思っております。それが実は日本の医療制度を非常によくしていくゆえんじゃないか、こういうふうに考えております。しかし、その意見は皆さんには必ずしもなかなか通じないかと思っておりますが、私個人といたしましてはそういう考えでおります。全体としての医療制度というものと——事七二%問題だけは簡単な問題でありますが、周囲の問題がいまのようなことになっておりますから、よほどのエキスパート、しかも衆知を集めなければなかなかこれは進まぬ問題ではないか、こういうふうに思っております。実は今日非常に苦慮しておる問題で、私の任期中にはたしてこれができるかどうか、それすら心配しておるというような状態であります。これはひとつ国会のほうからも非常に助けていただかなければならぬ。単に七二%問題を解決するのは、医者いじめだとか、そんなけちな考えは一つもないのですよ。医者の本来の使命である技術料の引き上げという問題、これとからみ合ってやりたい、こういうことなんであります。事情はそういうわけであります。
  43. 高沢寅男

    ○高沢委員 ではこれで終わります。たいへんありがとうございました。
  44. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、増本君。
  45. 増本一彦

    ○増本委員 共産党・革新共同の増本でございます。  .三先生にそれぞれお伺いしたいのですが、まず、税制調査会の本年度四十八年度答申を見ますと、所得税減税については「最近における所得物価水準の動向やこれを反映した給与所得者中心とする所得税納税者の著増傾向わが国国民の蓄積水準の低さ等を考慮すれば、なお、中小所得者中心として負担の軽減を図る必要がある。」こういうように書いてございまして、国民はだれもが大幅な減税を望んでいるわけであります。  ここで、一つは、東畑先生には、税制調査会ではこの課税最低限というのを大体どういうようにお考えになっているのか、また、ほかの先生方には、特にこの課税最低限というのをどういうように考えるべきなのか、ひとつこのカテゴリーの内容等にわたって御意見を伺いたいというように思います。
  46. 東畑精一

    東畑参考人 まあ生活問題でありますが、その時代その時代に相当の生活ができるということ、及び若干の貯蓄ができる、こういうことから考えを出していくのが一番適切ではないか、こう思っておるのであります。
  47. 北野弘久

    北野参考人 それではちょっと申し上げますが、私は法律学の専攻者でありますので、そういう観点からお答えいたしますと、税法の秩序もまた憲法の秩序の一環でありますので、課税最低限というのは、憲法二十五条の要請を満たす必要があると考えるのでありまして、憲法二十五条の健康で文化的な最低生活を脅かすようなそういう税法の規定は、憲法二十五条が内在しております自由権的な機能に反する、したがってそういった規定は違憲、無効であるということになりますので、現段階における健康で文化的な最低生活を保障するそういう限度が必要になってくる、こういうことになってきますので、ぎりぎりの最低限ではなくて、やはり健康で文化的なということ、そういう憲法の要請に従って課税最低限あり方を考えていくべきである、このように考えております。
  48. 井出文雄

    井出参考人 ただいまの健康にして文化的な生活ということは私も先ほど申し上げたわけでありますが、なおこれに付随しますと、これも先ほど申しましたように、今日のわが国社会保障制度というものがきわめてこれは劣っておるわけです。したがって、そのためにわが国個人の貯蓄率が高いわけです。一人当たりの国民所得水準もかなり上がってきたにもかかわらず、消費性向が高くなって貯蓄性向は落ちていかなければならぬのに、貯蓄性向が高い。先進諸国に比べて第一である。これは社会保障制度の不備ということにからんで貯蓄が必要になってくるということです。したがって、総所得からそういう意味での貯蓄を完全に引いた残りである程度ゆとりのある生活を営むことができる水準、こういうふうに考えられております。それを具体的に何万円であるかということは、いろいろ実態調査を行なって決定すべきものであろうかと存じます。
  49. 増本一彦

    ○増本委員 税調答申の冒頭を見ますと、わが国所得税課税最低限は、先進諸国課税最低限と比肩しうる水準に達しているというようなことをいっておるわけですけれども、私たちの実感からすると、重税負担感というのがまだ非常にあるというように言わざるを得ないのです。先進諸国と比肩し得るということで見ますと、日本の税制先進諸国税制とはやはりいろいろ相当な相違があるわけですね。基礎控除などを見ましても、たとえばイギリス、カナダ、スウェーデンその他の国と比べると、日本はあまりにも低いという現実もあると思うのです。ですから、こういう点では、ほんとうに西欧先進諸国と比肩し得る水準に達しているかどうかという点がきわめて問題だというようにも思うわけなんです。ところが、わが国の基礎控除にしましてもその他の所得控除にしましても、年々一万円程度しか上がらないという、こういうきびしい現実があるわけでして、ですから、ほんとうに憲法二十五条で保障されているような健康で文化的な生活、あるいは東畑先生おっしゃったような相当な生活で、しかも相当な蓄積もできるような生活というようなことになりますと、現実のこの給与所得平年度百十四万円という、これはあまりにもまだ低いのではないか、これが国民の実感だというように思うのですが、その点についてはいかようにお考えになりますか、三先生の御意見を伺いたいと思います。
  50. 東畑精一

    東畑参考人 所得をただ計算したというだけのあれが問題でありまして、実感ということを増本さん盛んにおっしゃったのですが、これは実にあいまいなことばなんです。そこは国民の判断の問題にかかると思いますが、西欧諸国で税を必ずしも日本のように感じないのは、一つは、貯蓄がやはり多いものでありますから、それが生活苦ということをずいぶん助けておる、こういうことになりまして、年々の所得と貯蓄収入、その問題で、日本は残念ながらまだ貯蓄がそこまでいっておらないものですから、いまおっしゃったような感じも出るのではないか、こういうように考えております。  それから、先ほど隣のお二人の先生がおっしゃったようですけれども、社会保障制度でありますか、こういったものがまだ西欧のようにはいっておりませんので、所得税が重い、こういう感じが出るのではないか、こう思っております。
  51. 北野弘久

    北野参考人 お答えいたします。  この問題は非常にむずかしい問題でありますけれども、一応政府の数字によりますと、サラリーマンのほうはなるほど比肩し得る数字になっておりますが、実はサラリーマンの数字だけを持ち出すこと自体が問題でありまして、給与所得控除額はどういうものであるかということを考える必要があるわけですが、給与所得控除額の大部分がサラリーマンの必要経費である、概算経費控除分であるといたしますと、そういった数字を含めて課税最低限を計算すること自体が問題でありまして、事業所得者の数字を見ますと、必ずしも比肩し得るような数字になっていないわけでありまして、その辺のことをよく詰めて統計的な数値を検討する必要があるということがまず言えると思います。それから、日本では物価が非常に高いということ、それから一人当たりの国民所得が必ずしも高くはないということ、それから、いまおっしゃいましたように社会保障の問題もありますので、そういったことを総合勘案しますと、必ずしも言われるように十分な課税最低限になっておるとは言えない、このように考えるのであります。
  52. 井出文雄

    井出参考人 ただいま北野参考人が申されました例の給与所得控除の問題でございますが、これは私がずいぶん前から——昔はひとり私だけが言っておったのですけれども、だんだんと中にはわかっていただく方もできましたけれども給——与所得控除の性質は詳しく申しません。ただ、そのかなりの部分が必要経費の概算控除であります。ですから、給与収入から必要経費であるところの——全部じゃありませんが、大部分が必要経費であるところの給与所得控除を引いた残りが給与所得ですから、その給与所得に対する課税最低限度額を計算するのに、基礎控除と配偶者控除と扶養控除社会保険料控除と、それに給与所得控除を足せば、給与所得控除は二重計算になるのです。ですから、事業所得者よりも給与所得者のほうがいつも課税最低限度額給与所得控除額だけ高くなっておる。これはいかにも事業所得者よりも給与所得者のほうが優遇されているように見えますけれども、給与所得控除を二重計算に入れておるものですから、私に言わせますと、課税最低限度額というのは事業所得者と同じように給与所得控除抜きでなければいかぬ。だから現段階四十八年度においても、夫婦子二人、四人の標準世帯給与所得者百十二万円には絶対ならないわけでして、百万円を切るわけでございます。そこを考えなければいかぬと思うのです。それが一つ。ですから、実際は非常に低いし、必要経費まで入れて課税限度額を計算しておるというのは非常におかしいと思うのですね。事業所得というのは、事業収入から必要経費を引いて事業所得が出てくる。事業所得者は、その事業所得から基礎控除と配偶者控除と扶養控除とほかの社会保険料なんかを引いたものが課税事業所得になる。ところが、給与所得はどうかというと、給与収入から給与所得控除を引いて初めて給与所得になるはずなのに、直ちに給与収入に対して課税最低限度額幾らかというので給与所得控除を入れておる。ということは、必要経費を認めていないということになるわけですね。ですから、この点は非常におかしいと思うのです。ですから、皆さん方が考えられておりますように百十二万円だ、百十四万円だというふうに四十八年度はわれわれサラリーマンの課税最低限度が標準世帯でなるということは、幻想であるというように私は考えます。  それからもう一つは、先ほども東畑先生おっしゃいましたように、所得水準はなるほどある程度いったかもわからぬけれども、ストックが少ないわけですから、そのストックが少ないということを考慮に入れないと、ただ金額が何万円になったからアメリカに追いついたとか、あるいは西ドイツや何かに追いついた、こういうふうには言えない。いろいろな事情を勘案しますと、非常に低いのではないか、こういうふうに私は考えます。
  53. 増本一彦

    ○増本委員 そこで私は、いまお話がありましたように、給与収入でもあるいは事業収入の場合でも、それと見合って課税最低限を問題にするときには、やはり所得控除が全体として幾らになるか、ここのところが実は課税最低限の目安にならなくてはならないと思うわけですね。それから見ますと、実質的には、夫婦子二人の場合で、今度の改正案を見ましても、七十四万円でございますね。ところが、生活保護費の一級地で夫婦子二人の場合を考えてみましても、実はそれより多い七十六万円以上になる。こういう事実を見ますと、実は課税最低限は日本は列国と比べてもきわめて低いということを明確に証明しているのではないだろうか。ここらのところが、税制調査会でも具体的にはそういう問題意識でこの課税最低限にアプローチしていく、そういうことになっていないというように私は考えざるを得ないのですけれども、その点について三先生はどのようにお考えなのか、もう一度お伺いしたいと思うのであります。
  54. 東畑精一

    東畑参考人 増本さんのお話のようなことは税制調査会でも議論をしょっちゅういたしております。ただ、計算上の問題として最低限というのはこうだというだけの問題であります。これを外国に比べてどうのこうのということは、そう重要視する必要のないことじゃないかと思うのです。
  55. 北野弘久

    北野参考人 全くおっしゃるとおりでありまして、そのためにも、私が先ほど申しましたように、給与所得者給与所得控除額の内容を四つに分解してそれを立法化する。概算経費控除分であるとか、利子控除分であるとか、把握控除分であるとか、あるいは勤労所得担税力の低さを考えた部分であるとかいうように分けて立法化する。第一の概算経費控除分については、給与所得者を幾つかに類型化しまして、その類型の実態に応ずる必要経費を法律化する、こういう方向でいくべきだと思います。その場合の基本的な姿勢としましては、増本さんがおっしゃったような方向で考えていくべきであろう、そういうふうに考えております。
  56. 井出文雄

    井出参考人 給与所得控除と必要経費との関係だけについて申しますと、私は、現在の概算控除としての必要経費、それともう一つの個別的な、一々申告をして必要経費を書き出してそうして個別的に認めてもらう、こういうこととどちらが原理的にいいかといえば、それはもう個別的な必要経費控除が理論的には正しい、当然そうでなければならないと思います。ただその場合には、やはりどういうものを必要経費と認めるかという取りきめをしておきませんと、かえって個別的な必要経費の申告のほうが概算的控除よりも少なくなる心配があるわけですね。どのように必要経費をきめるか。たとえば一ぱいのコーヒーを飲む場合に、趣味として飲めば必要経費じゃないけれども、講義などをやって疲れて、次の講義をやるために飲むコーヒーは必要経費であるかもわからないし、一週間に何着かワイシャツのクリーニング代を払うというのが、どこまでを必要経費とするか、それをよほど合理的にきめておかないといけない。そういう合理的な決定を前提とした上での個別的な必要経費控除はぜひやらなければいけない。ただし、サラリーマンその他の給与所得者の中には記帳能力その他にふなれな人もありますので、水平的な公平の破壊ということもあるかもわからない。だから、そこは時間をかけなければならないので、概算的控除を大幅に引き上げて、そして個別的控除制度と概算的控除制度の選択制度をある期間は行なっていくということにして、漸次この必要経費を完全に認めていく、こういうことが必要じゃないか、こういうように思っております。
  57. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、私どもは、基礎控除、配偶者控除も、五十万円ぐらいにやはり大幅に引き上げてほしいという要求を持っていますし、そういう主張もしているわけですが、また扶養控除につきましても、被扶養者一人について二十五万円ぐらいの控除を認めるということで、せめて百五十万円の所得控除課税最低限を画するような、そういう方向で検討をしていただきたいし、その面での学問的な御研究やアプローチもお願いしたいというように考えているわけでありますが、それとあわせて、いま社会保険料などもいわゆる所得からの控除分になっているわけですけれども、この社会保険料とか医療費控除、それから寡婦控除その他の控除が若干の金額で、二万円とか、そういうぐあいであるわけですが、こういうのはひとつ税額控除に繰り入れていくということで、諸控除制度も簡便にしていくということが、実は納税者を保護していく上からも必要なことではないかというように考えるわけなんですが、その点についての御所見をひとつお伺いできればというように思います。
  58. 東畑精一

    東畑参考人 非常にそこは技術上問題がありまして、私ちょっといま確答をいたしかねるのであります。ただ、控除額をふやしていくということはだれもが納税者は望むところなのでありますけれども、基礎控除を一万円ずつ上げるというと、たしか原資は一千億円ぐらいじゃないかと思います。ですから、全体の税収という問題と関連が多いと思っております。ちょっと数字は怪しいのです。たしか、基礎控除一万円で一千億ぐらいだったかな。——七百億ぐらいになります。結局、個々の税でなしに、税収及び財政需要、こういう問題とからんでいるという問題がありまして……。
  59. 北野弘久

    北野参考人 人的控除あり方につきましては、いろいろ議論があるわけですが、最近所得控除中心に移っておりますけれども、人的控除のいかんによっては、税額控除がふさわしいものは税額控除をしてやるということが望ましいわけでありまして、所得控除をいたしますと、階層によって受ける利益が違ってくるということになりますので、やはり人的控除の内容を厳密に検討をしまして、それにふさわしい控除形式を考えていくということだと思います。
  60. 井出文雄

    井出参考人 所得控除と税額控除とでございますけれども、所得控除は高額所得者に有利であり、税額控除が低額所得者に有利であるというような差異はあるのです。ですから、わが国におきましても、たしか、扶養控除にしても何にしても、かつては税額控除ではなかったかと思います。それをだんだんと所得控除に統一をしてきたのです。もとは所得控除もあれば税額控除もあって、まちまちであったのを、所得控除に統一して現在に至っておりますが、そのように、税額控除のほうが、負担公平の点からいうと望ましい面もあるわけです。高額所得者は、税額控除のほうが不利であり、所得控除のほうが有利であるという面もありますので、控除の種類によってやはり税額控除制度というものをもう一ぺん検討するということも必要であろうかと思います。  それから、これはまたいろいろ議論があるかと思いますが、今日は控除制度が非常にきめこまかになっております。配偶者と扶養控除一般の扶養者との間の控除額も違っておりますし、それから扶養控除にしても、高齢者、老人の扶養控除額はまたほかの家族のものよりも若干多いというように、非常にきめこまかになっておりまして、これは負担の公平を期するという点からいうとまことにけっこうでございますけれども、しかしまた他面からいいますと、逆に簡素化をして、基礎控除中心に大幅に引き上げていくというような、控除額の簡素化というもの。基礎控除を大幅に引き上げていく、それから給与所得控除を大幅に引き上げていく。そういうものを低くしておいて、非常に手の込んだ、こまごまとした、控除に一万円か二万円の差をつけていくというようなことがいいのか、もっと税制を簡素化して大まかにしながら、基礎控除給与所得控除中心にしてぐっと百五十万円か百七十万円ぐらいにまでしていくような仕組みにするのがいいかということも、一考を要する問題ではなかろうかと思っております。
  61. 増本一彦

    ○増本委員 ところで、土地の問題あるいは証券取引の過熱化とか、非常にインフレ要因をはらんで、キャピタルゲインに対する課税の問題が国民の中でも非常に強い要求となって出てきているというように思いますし、先生方も先ほどその点について言及をされました。このキャピタルゲインに対する課税を厳格にやっていくという方向で問題を考える場合に、私どもは、たとえば土地にしましても、あるいは有価証券譲渡益にしましても、これは高率の分離課税をすべきでありて、しかも現在の、昭和四十四年の土地税制のような個人の特別分離のああいう課税もやはり廃止して、逆に小規模土地譲渡についてはむしろ控除額を大幅に引き上げるというようなことで考えていくほうが、現在の土地問題を解決していく上でも、また土地税制そのものをしっかりとしたものにしていく上でも、非常に重要なのではないかというように考えるわけですが、こういうキャピタルゲインに対する課税につきまして、一体これをどういうように行なっていくべきかという点につきまして、多少一般論になりますけれども、ひとつ御見解を伺いたいというように思います。
  62. 東畑精一

    東畑参考人 キャピタルゲインに対する課税という問題は、結局キャピタルゲインをどうして把握するか、こういう問題ではないかと思っております。キャピタルゲインそのものに対して私はやはり課税すべきものと、こういう考えでおりますけれども、どうしてこれをつかむか、この困難が、この問題を今日まで放置しているゆえんでないかと思っております。
  63. 北野弘久

    北野参考人 さっき申しましたように、有価証券譲渡所得非課税措置というのは、私は違憲の疑いが強いと考えております。合理的な根拠はない。あるいは、政府のほうでいっておりますことは二つであります。一つは、資本蓄積の観点からやむを得ない、いま一つは、税務行政譲渡把握が困難である、こういう二つの理由昭和二十八年にあの制度ができたわけでありますけれども、しかし、それはいずれも合理的な根拠がありませんので、憲法の規定に違反する点が強いと思いますが、もし所得把握が困難であるというならば、できるだけ科学的な調査の手法を開拓する。どろぼうがなかなかつかまえられないからつかまえないという議論はおかしいのでありまして、やはりつかまえるように努力をすべきでありまして、そのためには立法上の措置も必要でしょうし、行政上のあり方についての改善も行なう必要があるわけでありまして、立法上の措置といたしまして、先ほど申しましたように、証券業者を通じてやる売買につきまして全部報告を義務づける、税務署に全部通知せしめるということにしたほうが、かなりの程度において把握できるのではないかと思いますので、そういったことをおやりになれば相当程度キャッチできるわけですから、そういうことを考えられまして、ぜひ一〇〇%課税を行なうということにしてほしいと思います。昭和二十四年のシャウプ勧告におきましては、キャピタルゲインの全面課税ということが最も重要なポイントになっていたわけでありますので、それをこの機会にかみしめていただきまして、ぜひ実現させていただきたいと思います。  それから、土地税制につきましてもいろいろ問題がありまして、もし地価の凍結効果がないということであるならば一こんなことは明らかでありますので、昭和四十四年の土地税制はむしろ地価高騰地価をつり上げたという結果が客観的に言えるような状態になっておるわけでありますので、そういう政策効果のない税制上の措置、つまり、そういった措置をサポートするに足る合理的な立法技術がないということが科学的に明らかになりますと、そういう措置は、憲法十四条に違反し、無効であるという法律論になってくるのでありますので、そういう意味で、単に税制論レベルの議論ではなくて、憲法との連関で御検討を願いたいということを先ほど来強調しておるわけでありますけれども、私は昭和四十四年の土地税制は違憲の疑いが強いというふうに考えております。つまり、だれが見ましても、法人の仮需要を抑制する措置を同時に講ずべきであったのを講じてない。これは明らかに欠陥車を売ったのと同じでありまして、そういう欠陥車的なものを持った税制を白昼公然として行なうということは、これはたいへんな問題でありまして、ちょっと税を研究すればわかるような疑問に対して対応させてない。こういうことでいきますと非常に困るのでありますので、もう少し立法技術を立法過程において分析する、立法技術に対する科学的な分析をこの際おやりになるということが必要なのではないか、わが国の立案当局には立法技術という観念が従来全くなかったのでありまして、この際もう少し立法技術の科学的な分析ということをおやりいただく、そうしなければとても国民のための税制というものはでき上がらない、このように考えるわけであります。
  64. 井出文雄

    井出参考人 有価証券譲渡所得課税、これは譲渡所得を捕捉することがきわめて困難である、したがって、たまたま捕捉されたものがばかをみる、そういうことで廃止されたわけでございますけれども、先ほども北野参考人が申されましたように、それはあくまでも筋を通して、非課税措置を撤廃して、譲渡所得の捕捉の方法を検討すべきだと思います。スウェーデンではたしか有価証券譲渡所得課税をやっておると思います。おそらくスウェーデンでも譲渡所得の捕捉は困難であろうと思いますけれども、それを押してやっておると思うのですけれども、具体的にどのようにしてスウェーデンでその譲渡所得を捕捉すべく努力をしているかということの調査が、私においてはまだ詳しくできておりませんので、ここで申し上げられないのは残念でございますけれども、その辺をよく調査をしましてわれわれも一緒に研究をしたい。方向としては、あくまでもこれは税制公平化という点からいって、総合課税主義の貫徹という点からいいまして、非課税措置はこれはあくまでも撤廃しなければならぬ、こういうふうに存じております。  もう一つ土地税制は、ああいう、土地の供給をはかるために、売ってもうけたら、税金をまけてやるから、税率を低くしてやるから早く売りなさいというようなことは、私は大反対なんですね。これは税制の公平という点からいっておかしいのです。非常にもうけるものに、税金をまけてやるから売りなさい、あの税制は絶対に反対なんです。だから、これはむしろ譲渡益に対しては重税を課するという今度の新土地税法ですね、それでなければならぬ。ああいう税制は撤廃しなければならない。わが国では、何でもまけてやる、税金をまけたり、減免してやるからという方法で国の政策を実行しようとしておる。これはやすきにつくことです。しかも税制の公平ということを犠牲にしながら国の政策を何とかやっていこうとしておる。これは国の政策に対する貧困なんですね。どうすればよいかという政策を追求していくことがめんどうであるために、税制にすぐ依存してしまう。そうして税金をまけたらいいだろう、税金を免除したならばうまくいくだろう、そういう形になっていくものですからして、税制というものが筋の通らない不公平なものになってきて、今日のような状態になっておるのであって、これは絶対いけないのですね。ですから、土地を売ってもうけるものに対してはあくまでも重税を課する。重税を課して、それではもうけがないからというので土地に対する需要というものが一方において抑制されるし、他方においてそれと並行して土地保有税というものを今日の土地新税のように強化して、そして、持っていてもこれはたいへんだからというので手放さざるを得ないということで供給を促進する。ですから、土地新税は、方向としてはいいと思うのです。ただ、税率があの程度であるとか、抜け道が多いとか、いろいろ不備がございますので問題だらけでありますから、決して今度の土地新税をそのまま納得しませんけれども、四十四年度のあのようなやり方よりもはるかにいい、私はそう思っております。
  65. 増本一彦

    ○増本委員 そこで、時間がありませんので先に進みますが、今回も租税特別措置の、特に大企業に対する特権的な減免税の問題がやはり依然として解決をされていないという点は、それぞれの先生からもそれぞれの立場で言及がありました。東畑先生に一つお伺いしたいのですが、たとえば、私どもが準備金あるいは引当金等々によってどのくらいの減免がなされているのかということを調査しようとしましても、実質的には資料がほとんどない。有価証券報告書を買ってきて、それに基づいていろいろ検討を加えて、数社について、ほぼこのぐらいの、何百億円の減税になっているというようなことでアプローチする以外にはないわけなんですが、税制調査会として、この特別償却や、あるいは準備金、引当金等々による減免の実態を検討なさっていらっしゃるかどうか。また、そういう租税特別措置法による現在の特権的な減免の実態についてこれをどういうようにすべきか。私は、まずこれは公開してその実態を国民の前に明らかにすべきであるというように考えるわけですけれども、そういう点についていかようにお考えを持っていらっしゃるか、特にお伺いしたい。
  66. 東畑精一

    東畑参考人 個々の会社がどうのこうのということは話はしたことはございませんですけれども、全体としてこういう特別措置についてどれだけの減税になるとか、あるいは交際費についてはどれだけの増税になるとかいうことは、いつも検討いたしております。
  67. 増本一彦

    ○増本委員 税制調査会では、それについて大蔵省等からの資料を提供されて、それに基づいて検討をされていらっしゃるのですか。
  68. 東畑精一

    東畑参考人 われわれの議論に必要な限りにおいては、やはり材料を出してもらって議論しておるわけでございます。
  69. 増本一彦

    ○増本委員 この点は、北野先生とそれから井出先生にお伺いしたいのですが、この租税特別措置のいま申し上げました特権的減免の問題ですが、この点について先生方どのようにお考えになっていらっしゃるか、御意見を伺いたいと思います。
  70. 北野弘久

    北野参考人 私は、これはかねてから、十年近く前から私の論文で提唱していることでありますけれども、租税上の特別措置につきましては、憲法論観点から厳密に分析を加えるべきであるという観点から、幾つかのことを提唱しております。四つのことを対症療法として提唱しておるわけですが、一つは、御承知のように、立法過程、特に大蔵省を中心とした立案過程におきまして、租税上の特別措置に対する要求をチェックする、公正にチェックする、そういう審議会というものをつくってほしい。それをオープンに国民の目の前でやっていただく。税調はあまり期待できませんので、税調とは別個の、もっと専門家中心とした、しかも一般の、民主感覚のあるそういう委員によって、公的な機関として、補助金に対する申請と同じように、隠れた補助金である特別措置審議する。こういったものをやってほしいといってきた場合に、それを国民の目の前に発表しまして、審議会の審議の経過を新聞等で発表する、そういう形で毎年の要求に対してチェックする、そういうことが必要なのではないか。もちろん、基本的にはこの特別措置は廃止するという方向でやっていくわけですが、かりに存続する場合であっても、そういう民主的な手続と申しますか、立法過程における適正手続というものを踏まえた形で審議するということが必要なのではないかということです。  第二番目に、先ほど増本議員からも出ましたように、審議参考資料としまして、ちょうど財投の計画表が一般に発表されておりますと同じように、詳細な租税特別措置の減免表というものを国会に毎年義務として出させる。法律的義務でなくても、道義的な義務として予算審議と一諸に提出させて国民に発表する、そういうことが必要なのではないか。非常に詳しい参考審議資料というものを国民に出す、隠れた補助金の実態を表明した減免表というものを国民の目の前に毎年出す、予算と一緒に出すということを要求しておるのであります。  第三番目に、特別の減免措置を受けました各企業納税者から個別に申告させるのでありまして、現在はその実態が企業自体わからないというような状態になっておりますので、これは全部法人税申告書なり所得税の申告書に書く欄をつくりまして、そういう税法の規定の仕組みをつくるわけでありますけれども、この納税者が本来納めるべき税金幾ら少なくしてもらっているかということを申告させる、申告を条件にそういったものを認めるということにしまして、それを税務署が目の前に掲示する、公示するということにして、国民のコントロールを加える。これは、議会制民主主義と申しますか、財政議会主義を強調する憲法の要請からいきましても当然でありまして、隠れた補助金というのは、実態は補助金でありますので、本来、憲法八十三条、八十五条の、国会での民主的コントロールを受けるべき性質のものであります。それを税法という抽象的な法律規範によって一たん認めますと、国会の民主的なコントロールを得ないで補助金を出すという結果になっておりますので、その辺のことを憲法観点からぜひ強調したいと思います。もう一度申しますと、個別の減免金額というものを税務署で掲示する、そういう方向でいくべきじゃないかと考えるのであります。  第四番目に、先ほど来申し上げておりますように、単に減免措置というものを財政学ないしは租税論の観点からいいか悪いかということを議論するだけでなくて、やはり法律学の観点からメスを加える。さっき申しましたように、立法技術についての科学的なメスを加える、そういう方向でいかなければいけない。日本の税法に対する研究で一番おくれておりますのは法律の研究でありまして、つまり、税金という問題を人権の観点から扱うという学問が発達してないのでありまして、ですから国会でもその辺のことを十分に御議論を願いたいと思います。  それから、先ほど、国会で十分やったらどうかということが東畑会長から話が出ました。もちろん、国会は、憲法四十一条を引用するまでもなく、唯一の立法機関でありますので、当然そうあるべきだと思いますけれども、しかし現実には、政府提出法律案というものはほとんど行政管理機構のレベルできまってしまうのでありまして、一たん国会に出しますと、ほとんどの場合無修正で国会を通過する。ですから、現実の立法過程の論議としましては、行政管理機構のレベルにおける立案過程のほうが現実の問題としましてはるかに重大であります。ですから、立案過程におきまして、憲法三十一条などの要請であります手続的正義という考え方を貫徹させる、そのために立法過程の民主化、立法過程への国民の参加ということを、国会とは別の次元で考えていくということが必要であります。そういう観点から、憲法学の立場から減免措置に対して学問上のメスを加える、そういうことが必要なのではないか、こういうふうに考えております。  以上四つのことを考えております。
  71. 井出文雄

    井出参考人 国会の予算審議能力というものを十分に発揮させなければならないわけでございまして、それがいろいろな面において制約されておるところに、議会制あるいは財政民主主義欠陥がございます。財政投融資計画を国会における審議、議決の対象にするという問題も、長い間問題となっておりまして、今回どうやら、完全とは言えませんけれども、ある程度実現することになった、こういうことは非常に喜ばしいと存じておりますが、同じような意味で、先ほど申し上げましたように、隠れた補助金としてのこの特別減免の内容というものを、これはいまの論法でいけば国会の審議、議決の対象にすべきかもわかりませんけれども、そこまでいかなくても、予算参考資料として提出させるべきだということは、財政民主主義の方向として当然かと思います。具体的にどういうような処理にするかというようなことは、いろいろ検討すべきかと思います。いろいろ各会社によってどれだけ減免されるかという金額を全部列記するというのはたいへんでしょうけれども、ずっと前の古い資料で見たところでは、たとえば電力関係とか、銀行とかの金融関係とか、メーカーとか、いろいろ部門別に分けまして、そしてそういう各企業部門で、特別減免によって、本来課税さるべき法人所得が一〇〇の場合に、それによって実際の課税所得が四〇になっておる、つまり、たった四〇%しか課税されない、三〇%しか課税されない、七〇%しか課税所得になっていないという表を見ましたけれども、そういうような表をもう少し詳しくしたようなものでもいいから、さしあたり参考資料として提出していただきますと、いかに特別措置というものが各企業にとって、特に大企業にとって有利になってるかということがわかると思うのです。かなり古い資料でございましたけれども、ある部門によっては、本来課税されるべき所得の三十何%ぐらいしか課税所得になっていないわけです。われわれサラリーマンは一〇〇%課税所得になるわけですけれども、大企業は三十何%台の課税所得である、これは非常におかしい、そういうことが一面わかるわけですが、どういう資料作成かということは、いまのようなことをも含めまして検討いただくとして、やはりせめて参考資料としてさしあたり当然提出する、そうしますと、ほんとうに租税特別措置というものが不公平だということがわかるわけです。ただ、貯蓄奨励のために幾ら、産業合理化のために幾ら、これこれだ、あの小さな表だけでは国民にはよくわからぬと思うのです。  以上です。
  72. 増本一彦

    ○増本委員 それでは、時間が参りましたので、終わります。
  73. 鴨田宗一

    鴨田委員長 広沢直樹君。
  74. 広沢直樹

    ○広沢委員 短い時間でありますので、簡潔にお伺いしたいと思います。  まず最初に、税調の答申あり方について、冒頭に、同僚委員も触れられましたけれども、若干伺ってみたいと思います。  私は、数ある政府審議会の中では、いわゆる税調は、最も権威ある存在の一つであろうという認識を持っておりますし、さらに、これからは産業優先から福祉へ、こういうような一つの大きな転換期を迎えて、その財政の基本をなしている税制あり方についても根本的にまた考えていかなければならない段階が来ている。こういう事態の中で税調の占める使命というものも、また大きな使命があろうかと思います。そこで、先ほどもお話がありましたのですが、税調の答申が、ここにも出ておりますように、十二月の三十日に、年末に答申されて、それから一月に閣議決定、こういう段取りになっているのですが、やはりもう少し早く、税調自身のあり方としてかくあるべきだということをまとめたそういう答申はできないものか。それは先ほどいろいろ議論があったように、税調自身の性格というものも——これは心外かもわかりませんけれども、いろんな面で問題になることが出てくると思うのです。したがって、やはり十二月の三十日ごろということになりますと、大体大蔵の原案もほぼ方向が固まってきている段階じゃないか。そういう段階でありますから、当然税調としてはもう少し早く答申をして、その答申を受けて具体的に次年度のいわゆる税制検討する、またそれを受けてどういうふうに織り込んでいくかということは、これは政府当局でやることですから、そういう面から考えると、少し答申がおそいのじゃないか、こういうように思うのですが、その点、税調会長の御意見を承りたいと思います。
  75. 東畑精一

    東畑参考人 広沢さんの御意見ごもっともだと思いますが、実は昨年は特におそくなったのですが、非常に問題が山積いたしておりまして、何十回やったか、ちょっと記憶いたしておりませんが、最後の週は、一週間に七回かやりまして、やっと三十日にこぎつけておったような次第で、これはどうも私の運営がまずかったといえばまずかったわけなんですが、これも内輪話になりますが、委員の気分が、やはり迫ってこないとなかなかいかぬのですよ。これは国会なんかでも広沢さんよく御存じのことだと思いますけれども、うんと迫ってこないとなかなかいかぬというのが日本人の気質でして、早くやりたいという気持ちはしょっちゅう持っているのです。しかも昨年は、土地税制を除いて、やっと十二月三十日でありますか、済ましたというわけであります。しかし、早くやれというお話は、これはまさにおっしゃるとおりなんで、私としては一日でも早くやりたいと重々思っていたんですが、昨年はたしかふだんと違って五月ごろから始めたのですが、ずいぶん多数の回数を重ねてやっとああいう調子になったのですが、あまりにも重要な問題がたくさん山積をしておるということであります。ことしはどうなりますか。しかし、あなたのお話になるべく沿うように努力いたします。
  76. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、四十八年度税制改正ですね。これは政府案、さらにまた予算案を見ましても、福祉へ転換ということについては非常に不満を持っているわけなんです。というのは、政府の言い分としては、予算については福祉元年だ、こういうことでありまして、ここに一つ大きな転換期に対して福祉優先の方向に歩むという姿勢だけは示しているようでありますけれども、しかし、先ほど申し上げたように、予算の骨格をなしているのは言わずと知れた税制でありますから、税制もやはりそういう面から考えてみると、もう少し基本的に画期的な税制改正が行なわれてしかるべきじゃないかというふうに考えました。それで、答申も読ましていただいたのですが、やはりどちらかというと手直し程度で、先ほどもちょっと話がありましたが、四十九年度においてはいろいろと取り上げるというお話でありますけれども、やはりその点は画期的に抜本的にこれは改正すべき、四十八年度からその方向にあったんじゃないか、こういうふうに考えているのですが、その点はいかがでしょう。
  77. 東畑精一

    東畑参考人 どうもむずかしい御質問なんですけれども、画期的にとか抜本的にということは、ことばとしては非常に簡単なんです。しかし、実にあいまいなことばなんですけれども、味は非常にあることばなんですよ。われわれもその味をいかにして出すかということにずいぶん苦労しておるわけですけれども、何しろ、一国というものがそう簡単に少数の頭で画期的なことができないのじゃないか、どうしても連続という問題がございまして、それを一歩でも新しい方向に近寄せていくということでありまして、税もそう毎年変えるというわけにもいきません。ある意味においては、若いころのように景気いいというようなことはできないんですよ。だから、その点はひとつ御了解願っておきたいと思います。
  78. 広沢直樹

    ○広沢委員 私が申し上げたいのは、今日過疎、過密、いわゆる国土のアンバランスが出ておりますが、それはやはりアンバランスを是正するということが今日の大きな課題なんですから、それはやはり社会資本の充実というのは、民間部門から一応吸い上げた金をこれを当然公共部門に回す、こういうふうにやらなければいけない、そういうことになりますと、いままで日本の経済というのは、国際競争力を強くしなければならぬ、あるいは産業基盤をそのためには充実しなければならぬということで、御承知のように二十七年に一回法人税引き上げただけで、あとはずっと引き下げているわけですね。ですから、やはりそういう先ほど私が申し上げた意味から言うと、法人税の課税負担あり方を今回は基本的に変えるのではないか、変えなければならない、こういうふうに期待をしておったわけです。答申の中にも一応その方向というものは示されておりますが、非常にほかの面もたくさん重要なものがあったんでしょうか、答申の中では五行ぐらいに、非常に短い文句で「法人企業に対し応分の負担を求めるべきである」という、いわば抽象的というか示唆的というか、そういう意味にとどまっておるわけですね。そういうことではなくて、やはり具体的にこの点は考えてみるべきではなかったんだろうか。そういう面で、先ほどちょっと、臨時的な処置については期限が四十八年度にくるから考えてみるというお話がありましたが、こういった具体的な指摘もやはり答申の中では述べられるべきではないだろうかと思うわけです。  これは先ほどの説明でわかりましたけれども、そこで、それに関連してもう一つお伺いしたいのは、一昨年ですか、いわゆる付加税方式というものを取り入れていますね。やはり基本的に不況だとかあるいは国際競争力の問題で企業の基盤を充実するためになんという理由法人税を下げたものであるならば、別個の変わった形でそういうことをやらないで、当然法人税というものは上げる必要があれば率直に上げるべきではないか。しかしながら、同じ国の中で、同じ企業に対して、基本税率は、基礎的な税率はちゃんとあるのだけれども、それに付加税的なものをプラスするやり方というのは、ちょっとこれはおかしいんじゃないか。今後四十九年から考えるということでありますが、これについてはどういう考え方を持っていらっしゃるか、御意見をお伺いしたいと思います。
  79. 東畑精一

    東畑参考人 税制調査会は一年一年答申も出しておるのでありますけれども、三年に一度くらいは、いわゆる長期答申ということで、長い間の、つまり今後何年間ということに対する見通しのもとに長期答申というものをやっておりますが、一年一年でごらんくださるよりは、三年——大体みな任期は三年になっております。三年を単位にして問題を議していきたい、こういうことになっております。  法人税につきましては、ことしはそれほど大きなことはやりませんでしたが、来年はいい機会でありますので、ことに臨時措置が終わるときであります、大いにこれをひとつ検討したい、精力をそこへ注ぎたい、こういう気持ちでおる次第であります。
  80. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、その方向としては、税調会長の前向きな方向で取り組みたいということはわかるのですが、そういう法人に対してはいま言うような付加税的な方式の改正をやったりするということは、私は基本的にはそうあるべきじゃないと思うのです。ですから、上げるときは、当然、基本税率を下げてきたんですから、ある程度上げなきゃならぬ。下げるときにはまた、景気の動向やいろいろな状況を見て検討しなければならぬ。これは当然のことだと思うのですがね。どうしてこういうようなあり方を便法的におとりになるのか。私はそうすべきじゃないと思う観点でいまこの点を意見として申し上げているのですがね。その点いかがですか。
  81. 東畑精一

    東畑参考人 私の記憶が間違いなければ、われわれは臨時税としてやったわけではありません。国会がおきめになったことなんです。
  82. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは北野先生にお伺いしたいのですが、事業主報酬制度のことにも関連してくると思うのですが、給与所得控除ですね。これは先ほど中身について四つ理由をあげられました。そこで、いわゆる給与所得者概算経費控除分ですね、これを、先生の先ほどのお話では、実額控除制度導入したらどうだ、こういうお話が先ほどありましたですね。それは、いままでの論議の中では、必要経費というのは一体どういうふうにきめていけばいいかという非常にいろいろな議論が出て、いまだに煮詰まってないといいますか、はっきりしてないわけであります。したがって、この実額控除制度導入するといえば、具体的にはどういうふうにやっていくお考えであられるのか、御意見を承りたいのです。
  83. 北野弘久

    北野参考人 それじゃお答えしますが、これは非常に重要な問題でありまして、私は二年前の参議院の大蔵委員会でもこれについて意見を述べたことがあるわけでありますけれども、さっき、実額控除制度の強制控除を言ったのではなくて、実額控除制度税法の上において保障する、つまり、概算経費控除実額控除制度と選択制にするということを申し上げたわけでありまして、実額控除制度だけを一本だけ行なうという趣旨ではないのであります。実額控除制度を特に強調しましたのは、憲法の要請であります。私は、昭和四十六年の三月二十日に京都の地方裁判所にこれに関する憲法論的な鑑定意見書を出しておりますのですが、そういう憲法論上の要請でありまして、めんどうでありますから、現実にはおそらく多くのサラリーマンは概算経費控除の法定分を選択するとは思いますけれども、しかし、たとえば大島教授のように、まれにはそういう方たちにとっては実額控除が望ましいという場合には、そのことを税法の規定の上で保障する。そういう保障を欠く税法制度は、憲法十四条に反する疑いが強いというふうになってくるわけでありますので、実益はあまりないとは思いますけれども、憲法上の要請として、違憲の税法を認めるわけにいきませんので、そういう憲法論観点から実額控除制度を提唱しているわけです。  私としましては、まず概算経費控除合理化する。給与所得控除のうちの第一のファクターである概算経費控除合理化する。これは、立法当局におきまして、どういうものを現段階においてサラリーマンの必要経費として認めるのが望ましいかということは、社会の良識に従ってお考えいただけばよろしいことでありまして、せびろ代のうち何割相当額が勤務に必要であるかというようなことを職種によっておきめいただく、そういったこまかい計算が行なわれまして、概算経費控除額というものを計算するということは可能であります。それに対応するものを、実額控除を行なう場合の要件を法律で明文化する。そうするとおのずと解決するわけでありまして、要件のときに実額控除を認めるべき対象範囲をはっきり立法化する、そうすれば簡単に解決できるのでありまして、そんなにむずかしい問題ではないと思います。そういう趣旨であります。私は、実額控除だけを強調したのではなくて、実額控除制度を保障しなければ憲法に違反する疑いが強い、そういうことで申し上げたわけです。
  84. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、時間がありませんので、少しずついろいろな問題について御意見を承っておきたいと思うのですが、先ほどから問題になっておりますいわゆる事業主報酬制度の問題です。これは税調会長さんも、最初、税の不公平という問題、あるいは今回のように特別措置の中で考えられたその矛盾、両方の矛盾を指摘されたわけです。そしてまた、基本税制の中に取り入れることが適当でないという答申でありますね。しかし私は、やはりこれはそういう形で何かまま子扱いに、別個に、当たらずさわらずの考え方ではまずい。これはいま諸先生方もお述べになりましたように、当然しかるべき処置であって、基本税制の中で考えていくべきではないか、こう私も考えているわけです。したがって、租税特別でたとえば五年間ということでおけばそれはまた問題になってくるし、今回の事業主報酬制度が取り入れられたことについては、私がるる述べなくても、当然法人事業と個人事業の不公平の問題を内容的から考えてみても是正しようということ、したがって答申の中では、サラリーマンとの不公平ができるということでいわゆる二分の一の控除を認めるというような答申になっておりますね。しかし実際はそうじゃなくて、これは全額同じような形になってきているわけですが、それで井出先生の御意見の中にも、一応これを大体三〇%、四〇%ぐらいと、こういうお話であったのですけれども、やはりいまは概算でものを考えなければはっきりしないからの御意見じゃなかったかと私は思うのですけれども、いま北野先生のおっしゃったいわゆる四つの部分に給与所得控除を分けてみた場合に、やはり必要経費というものを、大体これも概算でなきゃできないと思いますが、これだけというふうに認めていけばいまの不公平論が出てくるのは、やはり必要経費論の中で一つの大きな問題になっていると思いますので、そういう分け方をしていけば、これははっきりと基本税制の中へ入れて考えられると私は考えるのです。  非常に時間がありませんから、簡単に三人のお方からお答えいただきたいと思いますけれども、もう一ぺん、税調会長さんの、今後の——いまは一応こういう答申をいただいておりますから、見ればわかりますけれども、今後はどういうふうに考えられるのか。それから諸先生方には、やはりそういうふうに基本税制の中に入れて考えるべきであるという私の基本的な考え方に立ってどういう御意見であられるか、これをお伺いしたいと思います。
  85. 東畑精一

    東畑参考人 いま広沢さん、二分の一の給与所得という答申をしたという——議論の最中に、そういう形であの考え方を救おうとしただけのことでありますが、それも通りませんで、全面的にそれは基本税制には不適当である、こういう答申になっております。今後もそのつもりでおります。
  86. 北野弘久

    北野参考人 非常に重要な問題で、広沢さんのお考えに全く賛成であります。  一言申しますと、税調のほうでは、サラリーマンとの均衡論から反対的な意見が強いということでございますけれども、事業主というのは、理論的には二つの性格を持っておりまして、サラリーマンとしての地位と、いま一つは資本主の地位を持っておるわけでありますので、サラリーマンとしての地位につきましては、理論的には一般サラリーマンと同じであります。ですから、理論的には事業主について特別な扱いをする必要はないわけでありまして、サラリーマンの地位としての事業主については、一般サラリーマンと同じように扱っていく、これは基本税制で処理するということは当然であります。ただし、サラリーマンの問題は別途考えればよろしいのでありまして、それはさっき申しましたように、現行法が給与所得控除を込みにやっておる、わけのわからないようなものにしてしまっておりますので、給与所得控除の中身を洗いまして、それをはっきりと明文化する。給与所得控除の基礎が四つあるとした場合には、四つを分解しまして、それぞれの控除項目をつくって対応していくということが、サラリーマンの所得税制における地位を高めていくゆえんにもなりますので、そういう給与所得控除制度あり方自体を根本的に検討するという方向で考えるべきでありまして、素朴なサラリーマンとの均衡論から事業主報酬制度に反対する意見は非論理的である、こういうふうにならざるを得ないと思います。
  87. 井出文雄

    井出参考人 私も、この事業主報酬制度につきましては、先ほども申しましたように、事業主報酬というものは勤労所得でありますので、こういう制度導入されるということは当然だろうと思うわけです。ただ、いわゆるわれわれのような給与所得者事業主報酬ということになるというと、一方は、資本を多少使って全体として事業収入というものは出てきている、そしてそれが事業主報酬になり、そして残りがみなし法人所得になるというその過程の中で、これはもう少し詰めて考えなければいけませんけれども、多少そこに違いがある。それと、捕捉率の差異というものが依然として出てきておる。クロヨンとかトーゴーサンとかというものがやはり本来もうまつわってきている。ですからして、純理論的に言うと、まさにすっきりともう事業主報酬制度はそれでいいのであって、給与所得控除はまさにサラリーマンの給与所得控除と同額でいいということになるのですけれども、それがそこにいろいろな具体的な事情があってアンバランスが出てくる。だから、そこを調整するためには、もう少し給与所得控除というものの意味を詰めて考えてみる、それからまた、一〇〇%給与所得者給与所得控除をそのまま事業主報酬に当てはめていいかという問題も詰めてもう少し考えてみる、そういう段階が必要ではないか。だから、そういう意味において、五年なら五年といいますか、臨時的な形でやられたということは、一応よかろう。そのかわりに、はっきりとしたらば、これはもちろん本法において規定すべきである。問題は、クロヨンとかトーゴーサンというものがこれによってますます拡大するというのが、この事業主報酬制度に対する基本的な反対意見なんです。これは確かに俗人に出やすいのです。しかしまた一面の真理も多少ある。そこに給与所得控除は多少の格差を認めなければならない。そのかわりに、現在の給与所得者に対する給与所得控除というものを先ほど申しましたように徹底的に引き上げなければならない。重点的にあそこを引き上げておいて、これは非常に概算的でありますけれども、三〇%、四〇%というものを事業主報酬適用する。ですから、その事業主報酬適用される給与所得控除額というものは、おそらく現在のわれわれに対する給与所得控除額あるいはそれ以上かもわかりません。そこのところは多少考えなければいかぬと思います。そういう意味であります。
  88. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間がないので次々言って申しわけないのですけれども、ちょっと話があと戻りしますが、先ほどの法人税負担の今後のあり方ですけれども、これは先ほど井出先生からもお話がありまして、一応累進的なというお話があったわけでありますけれども、確かに私もこの法人税率の改正については、基本税率がきめられますと、これは上げたり下げたりするという問題については、いつもいろいろな問題があるわけでして、見解の違いもあるだろうし、いろいろな意見が出てまいると思うのです。そこで、中小企業あるいは大法人という形もありますので、一応二段階にいまなっているわけですけれども、これは所得税みたいなああいう何段階もの累進税率ということはこれはちょっと不可能なことでして、ある程度、四段階、五段階、六段階というふうに、その産業構造、いわゆる企業の構造の実態に応じてある程度累進的な考え方というものを取り入れるべきではないかと、私も意見を持っているわけですが、両先生からこの法人負担税率あり方について簡単に御意見を伺いたいと思います。
  89. 北野弘久

    北野参考人 私は、法人税率は、これは企業課税の根本に関する問題でありますけれども、税制としましては、法人というのは継続企業である、解散することを一応前提にしていないということでゴーイングコンサーンであるということで考えていくべきでありまして、そういう観点からいきますと、法人企業に対する法人税というのは、法人企業に対する所得税でありますので、個人所得税と同じようにインカムタックスであるという観点から考えるべきでありまして、二重課税論だとかなんとかいう議論は、全く理論的根拠を持たない議論でありまして、二重課税論などを持ち出しますと、たいていの税金は、二重、三重、四重課税をやっておるわけであります。みんな自分のふところから物品税を納めたり固定資産税を納めたり、所得税を納めたり住民税を納めたりしているわけでありますので、二重課税論と三重課税論だけを何ゆえ法人税所得税関係だけについて問題にするのか。非常に現実的問題でありまして、私としましては、法人企業というのは、現実には社会的な、個人と別個の存在である、そういう観点から、所得税に準ずる——所得税ほどとは言いませんが、所得税に準ずる超過累進税の構造を採用する、そうしてそのかわり、同族会社の留保金課税制度を廃止する、こういう方向でいくべきじゃないかと考えております。  ただ、それとは別に、日本の商法が株式会社につきましてはピンからキリまでひっくるめてやっておるという問題もありますので、商法のあり方も大いに問題でありますけれども、一応その企業課税一つの暫定的な方向としましては、大企業用の法人税法と、中小企業あるいは零細企業などの法人税法を別個にする、これは個人企業も含めてでありますけれども、そういうふうに幾つかの企業の実態を類型化しまして、その類型に合う企業課税などを考えていくという方向があっていいと思いますけれども、しかし一般論としましては、さき申しましたように、法人というのは個人とは別個の存在である、そういう基本的な前提に立って、所得税に準ずるような累進課税を行なっていく、こういう方向で検討すべきであると考えるわけでございまして、シャウプが昭和二十四年に法人擬制説的な議論を展開いたしましたけれども、あの議論は、一応課税理論とは言っておりますけれども、課税理論、つまり課税上のセオリーということばに値しない議論でありまして、あの議論自体が、戦後日本の資本主義の復活の過程におけるある一定意味を持って登場しているわけでありまして、私に言わせますと、あの議論自体が、つまり法人擬制説という議論自体が、大企業中心とした法人の軽課、法人税を軽くするというそういう論理を正当化する手段であるというふうに理解しているわけであります。ですから、いまさら法人擬制説であるとか法人実在説ということを議論するのはおかしいのでありまして、ああいう議論を持ち込みますといつも議論が混乱するのでありまして、ですから、そういう議論をしないで、現実の法人企業の実態を踏まえて企業課税などは考えていくということであるべきだと思います。
  90. 井出文雄

    井出参考人 現在でも、資本金一億をこえる企業と一億以下とでは税率が違っておりまして、そうしてまた一億以下では、年所得三百万円以下とそれをこえる企業とでまた税率が違う、こういうことになっておりまして、すでにもう法人擬制説はくずれておるわけです。法人擬制説からいえば、もう一本の比例税率にしなければいかぬわけです。それがもうすでにくずれております。ですから、それにこだわる必要はありません。  それで、いま御質問がありましたように、法人税を累進税率にするということが一つの方法、それからまた、資本金一億で区切るかどうかは別として、一定のどこかで中小企業と大企業とを分けて、そうして大企業は、年所得いかんにかかわらず、たとえば四二%、戦後最高の税率四二%まで上げるなら上げる、それから一定企業以下については累退税率適用するということも一つの方法じゃないかと思います。累進税率にするか、累退税率にするか、二つの方法のいずれかを考慮するということが一つの問題として提起されるんじゃないか、こういうふうに思います。
  91. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間が来たようでありますが、最後にもう一問だけ、これは意見をお伺いしたいと思うのですが、実はいま投機の問題がたいへん問題になりまして、いま土地税制だってそうです。それから株式だってそうですね。その次に商品の問題が問題になっておる。商品の買いだめ売り惜しみなんというものについては別に立法措置を講じようと——まだ立法措置できていませんが、そういう段階まで来ているわけですね。そうなりますと、やはり確かに土地については法人重課というものを考えています。株式についてもある程度それを考えています。したがって、商品の投機について、そこには不当な利益を得ようという意図があるからということで立法化しようというのでありますから、何らか税法的にもこれは特に考える必要があるんではないかと、私も、煮詰まった意見ではありませんが、そういうふうに考えるわけでありまして、たとえば、それをただ、法律ができて取り締まってみたところで、つり上げられた価格というものが自由市場の中でやはりその上がったままでいくわけでして、今度新しくできる法律の中で、価格をこれだけにしろなんて下げることもできませんし、そういう矛盾がある。したがって、いまいわゆる投機に対しての重課の問題になっておりますが、その中で税制が考えられるとしたならば、商品投機に対していわゆる法律の適用を受けるような法人に対してはある程度税制でこれを考えるべきではないか。重課というか、一定税率をかけることを考えるような方向で検討すべきではないかと思うのですが、これは税調会長さん並びに二人のお方から一応御意見をお伺いして、終わりにしたいと思います。
  92. 東畑精一

    東畑参考人 法人の利益に対しては法人税を課している。どうもそれ以上に別個に考えろ、こういう御意見のように拝聴しているのですが、間違いございませんですか。
  93. 広沢直樹

    ○広沢委員 いまの商品投機あるいは法律の適用を受けた場合、売り惜しみ、買いだめという……
  94. 東畑精一

    東畑参考人 その法人の利益に対して法人税を課している、それ以外に考えろと、こういうお話でございますか。
  95. 広沢直樹

    ○広沢委員 そうです。
  96. 東畑精一

    東畑参考人 税問題としましてはちょっと即答いたしかねますけれども……。しかし、投機を押えるということ自身は、私は重要な経済政策だと思っております。税法的にどういう形になりますか、特別利得税ででも課税するということですが……。
  97. 北野弘久

    北野参考人 お答えします。  それは非常にむずかしい問題で、税制だけの問題ではなくて、むしろ税制以外のレベルで考えるべき問題だとも思いますけれども、私は、もうそろそろ、地価の問題一つとりましても、経済学の論理では説明できないことになっておりますので、自由主義経済を前提とした対応策では不可能であろうというふうに考えておりますので、ものによっては、かつてございました、現に一応法律の規定ではありますのですけれども、物価統制令的な形で禁止立法を特別につくるということが必要なのではないか。たとえば利息制限法という法律がありますけれども、法定の率をこえた利息の約定は無効であるということを利息制限法ではいっておりますけれども、そういった禁止立法であるとか、あるいは地価問題は今日の公害と同じである、人工的な公害と同じであるという観点から、一定の価格をこえる売買は犯罪であるという形で取り締まる。取り締まり官庁は環境庁にすればよろしいと思いますけれども、そういう形にしないといけないと思いますので、これは憲法に違反するんじゃないかという意見もあるようですけれども、決して憲法に違反しないのでありまして、日本国憲法は、御承知のように憲法二十九条第二項で私権の内在的な制約を予定しておるのでありまして、ですから、ある程度の契約自由の原則の制限であるとか、あるいは私的所有権の制限ということは、憲法自体がむしろ観念していることでありますので、そういうことで決して違憲の問題は起こらないのでありまして、むしろ、憲法二十五条であるとか、あるいは憲法十三条、そういったことからいきましても、国民生存権国民の人権を守るという、そういう観点から物価問題について対応する、そのための抜本的な特別の対策を考えるべきじゃないか。税制上の措置ではなまぬるいのでありまして、ですから、もう税制上の措置とは別に、まさに緊急令的な、何といいますか、国家緊急状態であるという、その程度の発想から対応しなければだめなのではないかと思いますので、目下一番大事な内政問題は私は物価問題だと考えておりますので、その物価問題について、国会におきましても抜本的な対策をお考え願いたいと思います。
  98. 井出文雄

    井出参考人 いまの問題、なかなかむずかしい問題でして、資本主義社会における商行為、商取引行為をいかに解するかということに関連しますので、まあ北野教授も申されましたようなことになるのではないかと存じますが、また東畑先生も申されましたように、臨時利得税というものもかつてございました。これをしいて租税でやるとするとどうなるかというと、私もいま初めて種々考えておったのですが、たとえば、これはどういう御意見になりますか、御批判をいただきたいのですけれども、全くの思いつきですが、過去数年間、たとえば五年でも十年でもいいのですが、それには物価の問題もありますのでそれも調整しなければいけませんけれども、過去数年間一定期間の平均利潤というようなものは企業にあるわけでしょうから、それと比較してある年において何倍かものすごい利益をあげるというようなことであれば、そこにモラルに反した一種の投機的な——資本主義社会における投機はある程度許されねばなりませんが、それを越えた投機行為というものによる不当利益を得た、そうしてそれが社会的に好ましからざる影響を及ぼしたと考えていい、そういうような非常に高い利益率といいますか、利潤額といいますか、そういうものが、過去数年間、何年間か、とにかく平均と比べて出た場合に、それに対して特別の課税をするというようなことは技術的にできるのではないか、こういうふうにも思うわけでございますが、まあどういうふうに言っていいですか……。
  99. 広沢直樹

    ○広沢委員 じゃ、終わります。
  100. 鴨田宗一

    鴨田委員長 竹本君。
  101. 竹本孫一

    ○竹本委員 まず東畑先生に二つほどお尋ねいたしたいと思います。  一つは、今日の税は、御承知のように所得税法人税中心になっておりますが、そうした直接税中心考え方に対しまして、もうこれでは負担感が大き過ぎて困るといったような考えから、付加価値税その他間接税に重点を移行していこうという有力な意見もあります。しかし私は、所得税というものは最も近代的な税制、税体系であって、やはりこれが中心になっておるということは、それだけ税体系が近代化しておるということであって、そう簡単に修正したり変更したりすべきではない。確かに税負担の問題、負担感の問題もありますけれども、それは一方からいえば、税を通じて政治のあり方に対する批判というものもだんだんに強くなってくるべきであるし、また、くるでありましょうから、所得税の位置づけの問題ですけれども、できる限り今日のようなあり方を守っていくべきである。簡単に付加価値税その他間接税に重点を移すということには私は賛成できないと思いますけれども、これに関する先生のお考えを伺いたいという点が一つ。  それからもう一つは、これは要望を兼ねてまいりますけれども、先ほど来だんだん問題が出ておりました社会保険診療報酬の特例の問題、七二%の問題でございますけれども、この点につきましては、一応の常識論からいって、課税の問題と診療報酬の問題とがからみ合っておると先ほど来御説明もございましたけれども、確かにそうだと思います。しかし、税の問題とそういう問題をからめていくということがはたして正しいかどうか。所得税は、税を取るのが目的なんであって、所得を保障するのが目的じゃない。そういう点から考えてみましても、とにかく特例の問題はもう早急に検討を加えて実現をすべきであると思いますが、この点について、一つは、診療報酬とからめることは妥当でないと思いますが、その点についてどうか。  次には、七二%というのがよく問題になりますが、先生個人として、一体これは何十%がほんとくらいか、五〇%と見ておられるか、あるいは四〇%と考えておられるのか、あるいは六〇%と大体のねらいをつけておられるか、感想といいますか、感じを承りたい。  さらに、この問題は四十九年の一月あたりからは早急に実現すべきだと思いますけれども、いろいろ委員会特別委員会、問題も多いようでございますけれども、いつになれば実現するのであるか、少なくとも四十九年には必ず実現するというような意気込みで取り組んでおられるのかどうか、これだけのことをお伺いいたしたいと思います。
  102. 東畑精一

    東畑参考人 竹本さんの第一点でありますが、税の重点というお話になると思いますが、税の重点はやはり直接税であるということは、これはもう疑うべからざる点じゃないかと思っております。ただ、日本としまして間接税の割合が連年減ってきておる。ですから、そのほうからも多少財政収入があがるということはそう悪いことではない、こういう考えであります。ただ、間接税そのものとしましては、間接税自身は非常に不公平な部分がございまして、ことに物品税なんかそうなんであります。これを大いに修正したいという心持ちは持っておりますが、それが間接税中心にしていく、重点をそこに置くというつもりは毛頭ございません。  それから付加価値税の話もございましたのですが、これもどうも日本の現在のような複雑な流通過程のときには、これをかりに直ちに実行するとすれば、私は実行できないのじゃないかと思っております。むしろそれなら、一般の消費税といいますか、売り上げ税といいますか、そういった形のほうが実行しやすいし、また、今日のように六十何種類の物品税に限らないで、もう少し広げたほうが、物品税間の公平というのはできるのではないか、こういうふうに考えております。  それから第二点の、診療報酬に対する七二%の特別措置でありますが、経費がどれだけになるかという御質問であります。日本のあらゆる調査統計で最も資料の欠乏しているのは、実は医療経済の実態であります。それからもう一つは、土地問題に調査としては欠陥がございますが、医療経済は最も欠陥の多いものでありまして、資料をもとにして議論していくということがなかなかむずかしい点が多いのであります。ただ国税庁の幾つかの調査では、とても七二%の経費はかかってない、こういうことがはっきりいたしておりますが、一方におきまして、昭和四十二年度についての医療経済の実態調査というものを厚生省でやったのでありますが、これは昭和二十七年以来初めてのものであります。この調査結果によりますと、なかなか医療の経費は多いのです。大体七二%に近いようになっているのですね。それで、三年ごとにやろうというので四十五年度の医療経済の実態調査をやったのであります。これはどういうふうにまとめるかということ自身をいま議論していると聞いておりますので、なかなかおそいのでありますが、資料そのものでやるよりは、選択制度にして、七二%がいいか、そうでないか、こういう形でやっていけばはっきりすると思うのです。お医者さんは自分のことは一番よく知っているのですから。そういうことも考えられるのですけれども、何しろ税制調査会としては最もやっかいな問題の一つでございます。なるべく早くやりたいという気はやまやまなんでありますけれども、いつになるかと言われると、ちょっと私一存ではどうにもならない、こういう次第なんであります。これは国会の皆さん方に助けてもらうということが大事なんですね。あるいはいままでのような附帯決議として——税制調査会意見を聞け、こういうのが衆参両院から附帯決議があったのでありますが、いついつまでにきめろ、こういう附帯決議といいますか御決議でもあれば、それはもう間に合わすように努力いたします。
  103. 竹本孫一

    ○竹本委員 たいへん前向きな御答弁をいただきました。日本の税制あるいは日本の政治が圧力団体のためにいつでも筋を曲げてしまう悪いくせがありますから、私はそれをやはり一日も早く直したいという希望で特に御要望申し上げておきますから、よろしくお願いいたします。
  104. 鴨田宗一

    鴨田委員長 東畑参考人には御多用中のところ御出席いただき、貴重な御意見を承り、まことにありがとうございました。  どうぞ御退席くださってけっこうでございます。ありがとうございました。
  105. 竹本孫一

    ○竹本委員 次に、北野教授に二つほどお伺いいたしたいと思いますが、一つは、たとえば先ほど住民税のお話が出ましたけれども、課税最低限につきましても、所得税住民税とでは非常に違う。未成年者の控除の問題につきましても、中央と地方ではまるきり様相が違う。今度問題になりました事業主報酬につきましても、みなし法人課税の問題等につきましては、中央と地方は首尾一貫してないように見受けるわけですね。確かにそれぞれの中央、地方の事情もありますし、いろいろ問題点もありますから、専門家の説明だけ聞けば、一応もっともな理由もあると思いますけれども、しかし、これを受けておる庶民の立場、一般国民の立場から考えてみますと、同じ所得にかける税金あるいは未成年者の控除の問題、あるいは中小企業課税の問題等について、場合によっては額が違い、場合によってはたてまえまで違うということは、まことにどうも複雑怪奇であるという感じを受けると思うのです。これらの問題について先生はどういうお考えを持っておられるか、またどういうふうに是正すべきであるとお考えであるかという点が一つ。  第二点は、今日サラリーマンの不平あるいは憤り、いろいろ問題がありますが、税制を通じてのサラリーマン減税ということについて、特に重点を置いて考えられる点は何であるかという点についての先生のお考えを承りたいと思います。
  106. 北野弘久

    北野参考人 非常に重要な問題で、簡単にお答えできかねるのですが、最初の住民税中心とした地方税あり方の問題でありますけれども、私は前から論文で書いておりますことでありまして、若干これについては一部のほうで誤解を受けておるのです。財政学者は、地方税あり方につきましては、地方税国税の場合よりも応益課税、住民として地域社会で受ける利益に応じて何がしかの税金負担すべきであるという応益課税の原則を非常に強調します。しかし私は、国税であろうと地方税であろうと、税金の一番大事な原則は、応能負担、能力に応じて平等に負担するということが一番大事なのではないかと考えるのでありまして、また、二十何年前のシャウプ勧告当時の社会経済事情とは現在違います。シャウプ勧告当時は、なるほど、あるいは東京−大阪間が何十時間もかかるというような、しかも電話も何分も何時間も待って初めてつながるという、そういう事態でありました。そういう時代におきましてはそれなりに古典的な地方自治論というものが妥当する。つまり、地域によって若干の税の負担の不均衡があってもやむを得ない、住民がそれを承認した場合には、東京と大阪が税金が違ってもいいじゃないかという議論がそれなりに妥当したかと思いますけれども、今日ではそういうことは現実に妥当性がないわけでありまして、また、税金あり方からいきましても、やはり国税地方税を問わず一番大事なプリンシプルは、憲法十四条、二十五条からくる応能負担の原則が一番大事であろう。能力に応じて、どこの県に住もうと、平等に納めるべきである。アメリカみたいな連邦国家なら別ですけれども、日本のようなこんな小さな国で、一つ橋が違うと税金が違ってくるというようなことはおかしいのでありまして、そういう意味で、私は、租税制度におきましては、古典的な地方自治論に基づく応益課税の原則は本来親しまないということを述べております。  そういう観点からいきますと、住民税は基本的には所得税でありますので、自治省では、住民税所得税と違った応益原則のもとにある税金であるということを言いますけれども、均等割りはそういう面がありますけれども、均等割り以外の部分につきましては、所得割り、法人税割りにつきましては、所得税法人税同じものでありますので、インカムタックスである。そういう意味では、国税所得税と同じように、国税法人税と同じような形でやられるべきである、そういうふうに考えますので、住民税の付加税化論の問題は一応別としまして、少なくとも方向としましては、住民税課税最低限というものは所得税課税最低限と同じにされるべきである、こういうふうに考えております。とにかく住民税所得税である、その場合最も大事なことは、能力に応じて平等に負担する、こういう方向で考えていくべきだと思います。それに伴って、地方の財源が減るんじゃないかという意見もありますけれども、それはまた国と地方の税源の配分の問題として、憲法の地方自治の考え方を尊重する観点から別途考えればよろしいわけでございまして、特殊住民税の問題としましては、そういう方向で応能負担の原則ということをまず出して、その上で譲渡所得と同じように考えていくということになってくると思います。  それから第二番目の問題でありますけれども、これは先ほど来申し上げておりますように、最も大事な問題は給与所得課税あり方、なかんずく給与所得控除の問題であります。その中に幾つかの問題がありますけれども、一番重要な問題は、概算経費控除をはっきりと法律で法定化するということが一つでありますし、いま一つは、行政のレベルで現実に不均衡が生じておりますクロヨンであるとかトーゴーサンというようなそういう問題について、税制としても対応すべきである。これはほんとうは行政の問題ですから、税務官庁のほうで事業所得者であるとか農業所得者についても一〇〇%つかまえるようにもっと努力すべきであるという運営論の問題になってくるわけですけれども、私は単なる運営の問題ではないと考えるわけでありまして、長年にわたってそういった不均衡が行政のレベルで現実にある、その場合の事実上の不均衡というものは、もはや法的な評価、リーガルな評価をすべき段階にきているんではないか。ですから、そういう評価をしない税法の規定は憲法に違反する疑いが強いということになってきますので——なぜ盛んに憲法を持ち出すかといいますと、日本の憲法学者は税法についてほとんど発言しませんので、私は税法学専門でありますけれども、何といっても税法学の最も基礎的な議論憲法論でありますが、日本の税法だけは憲法秩序と無関係にあるような気がするくらい、初歩的な憲法論すら展開されてないので、申し上げておるわけであります。  いずれにしましても、長年にわたって事実上の不均衡がある。これはちょっとやそっとの行政の改善では解決できない。そういうことになりますと、そういう不均衡を放置する立法は問題になってくるのでありまして、立法上の措置によってその不均衡をカバーするということはやむを得ないことになってきます。そこで、さっきも申しましたように、クロヨンとかトーゴーサンという問題についての事実上の不均衡を、サラリーマンに関する特別の控除項目として立法化する、そういう形で対応するようにしなければならない。それとは別に、国税庁のほうでも行政の改善をはかっていただく。科学的な税務調査の方法を考えていただきまして、サラリーマン以外の所得者につきましても完全な所得把握をしてもらう。昔式の、二十年、三十年前と同じような問題意識、感覚で税務行政をやってもらっては困る。これだけ科学が進歩し、学問も大衆化している今日におきましては、税務官庁はよほど勉強してもらわないと困るのでありまして、科学的な税務調査の方法を使って万全を期すということが、一方において必要になってくるかと思います。
  107. 竹本孫一

    ○竹本委員 ありがとうございました。  最後に、井出先生に二つほど、簡単に結論だけでけっこうですが、お伺いをいたしたいと思います。  一つは教育費控除の問題でございますが、所得税をかける場合に、人的な特別な事情を考えるということには限度があるということでいろいろ議論があるのですけれども、私は、これからの日本は教育国家に持っていかなければならぬという立場に立ちまして、何としても教育費控除は実現したいと思いますが、これに対する先生のお考えを承りたい。  それからもう一つは、先ほど来いろいろ御議論が出ておりますけれども、交際費の課税の問題です。損金不算入がだんだん上がっていっておりますが、百分の八十くらいまで持っていったらどうかと私は思っておるのですけれども、これに対する先生のお考えを承りたい。  以上であります。
  108. 井出文雄

    井出参考人 これからはわが国もだんだん労働力不足時代になってきますし、生産的な労働力の確保あるいは文化の発展という意味からいって、教育費というものは常に重要になってくると思うのです。そういう角度から、長期的な観点から見ましても、教育費というものを積極的にとらえなければならぬ。そういう意味におきまして、この税制におきまして教育費控除の問題を取り上げるということは、私は結論として賛成でございます。  それから交際費課税の問題でございますけれども、これは個人消費とも関連いたしましてもっともっと強化すべきである。四十八年度も、若干の手直しといいますか、強化がございましたけれども、あれは非常に不十分である。そういう意味におきまして、この二つの御質問の御趣旨には完全に賛成いたします。
  109. 竹本孫一

    ○竹本委員 ありがとうございました。  これで終わります。
  110. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。先生方、ありがとうございました。  次回は、明二十七日火曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十八分散会