○
竹本委員 関税定率法等の一部
改正の
法律案について御
質問をいたしたいと思います。
しかしながら、本
法案の内容を見ますと、
タコの
特恵税率が五%になるとか、魚の
かん詰めが一五%のものが九%になるとか、
コーヒー、紅茶が三〇%が二五%の
税率に変わるといったような問題が
中心でございますので、私はこの
機会に、
関税定率あるいは
関税政策の前にあるものと申しますか、
考えるべき問題、そういう問題について少し
意見を述べてみようと思うのです。
このことは、
局長に申し上げる、
質問をするということは、私、必ずしも適当でないと思っておるのです。多分に
政治的な問題であります。しかしながら
大臣に聞いてみても、あるいは
総理に聞いてみても、はたして満足のいくような御
答弁がいただけるかどうか、実は非常に疑問に思っておるわけなんです。そういうわけでございますので、きょうは、
最後に少し
事務的なことも一、二聞きたいと思いますけれ
ども、
政府があらためてこういう
関税の
改正をやるとか、その他いろいろの
努力をされる前に、その
基本の
前提条件として
考えなければならない新しい
国際経済の
動きに対してどう取り組むのか、取り組もうとしておるのかという問題について、本来ならばいま申しましたようにお尋ねをしなければならぬけれ
ども、主として私の
考え方を述べてみたいと思います。そういう
意味で、
大蔵省でも
省議もあることでございますから、十分ひとつ私の真意をくみ取っていただきたい。要望しておきたいと思います。
けさの
新聞を見れば、ECが御
承知のように
共同フロートになり、脱
ドル体制になるのだというような問題もたいへんにぎやかに紙面で取り扱われておりますが、そうした新しい
世界の
経済の
動きに取り組む
日本の
政治の
基本姿勢についてであります。私はかねがね
政治の現状を憂えておるのでありますけれ
ども、その第一は、
日本の
政治には
哲学がないということであります。かつて
池田総理が
フランスのドゴールさんに会ったときに、何か
日本の商品の
セールスマンに会ったような感じだと言ったという有名な話がありますけれ
ども、総じて
日本の
政治というものはビジネスである。
経済を例にしても単なる
セールスマン的感覚である。
世界の
政治あるいは
世界の
経済についてどう導いていこうか、どう取り組んでいこうかということについての
基本的理念というものがなさ過ぎると私は思っておるんです。しかしながら、そのことはあまり詳しく論じてもしかたがありません。場も違いますからただ
指摘だけするわけですが、
政治に一番大切な
哲学あるいは組織、こういうものについては
日本の
政治はほとんど問題は解決されないままになっておる。あるものははったりである、あるいは派閥である、あるいは官僚の
事務である。
ほんとうの
意味のリーダーシップのあるステーツマンシップのある
政治というものは
日本にはない。これは非常に残念に思いますけれ
ども、そうだと思います。
第二番目の大きな欠陥は、
日本には
外交がないと思うのです。
関税の問題もその
一つでありましょうけれ
ども、
外交というものは、いま申しました
世界の
政治なり
アジアの将来なりに
一つの
哲学なり
方向なりというものを持っておってその上で出てくるものでありますが、第一
段階の問題が十分解決されないので、したがって
外交も思いつきになり
事務的になる。したがって、そこでは
基本的な
戦略というものが生まれてこないと私は思う。事実
日本の
外交の手を見ておって、一体われわれをどこへ導いていこうと
政府は
考えておるのであるか、この手は一体どういう
意味で打っておるのであろうかということが十分
理解できない場合が多い。これは
外交に
先ほど申しました
基本の思想がないということとともに、すぐれた
外交戦略がないということであろうと思います。
その点から申しますと、
通貨外交についてもそうでありますが、
通貨の問題はあとで触れますけれ
ども、
スミソニアンの場合でもそうでありますし、今回の場合でもそうでありますけれ
ども、十カ国あるいは二十カ国の
会議という場合には、
日本は何を主張しようとしておるのか、その主張することについて
世界のどこに敵がありどこに
同志国家があるかということについての見定めがなければならぬと思うのですけれ
ども、
日本の
外交にはそういうものがあるようには感じられない。
スミソニアンのときも、私はたびたびこの席でも
指摘しましたけれ
ども、
課徴金には
各国反対だから
アメリカが孤立するであろうという
希望的観測を持っていったら、結果においては
日本だけが孤立して袋だたきにあった。今回の場合にも
政府の
希望は、おそらく
日本の
立場がもっとよくなるように、円の
切り上げがもう少し低い程度で行なわれるようにと
考えたんでありましょうけれ
ども、それに
理解を示し
協力をする国がどこにあるかということになると、たいして
基本戦略があるとは
考えられない。またそういうことを推し進めるためにだれも本気で
努力していない。特にこの前の
スミソニアンの場合なんかは、
ヨーロッパにおいては、御
承知のように
総理大臣が先頭に立って、イギリスも
フランスも非常に深刻な激烈な
動きをやったけれ
ども、
日本の場合にはそんなものはない。今回のごときは、この間も
理事会でも私申しましたけれ
ども、あれだけ重要な大きな
会議が行なわれても、
大蔵大臣はそれに
出席もしないというような
状態でありますから、
ほんとうの
意味で
外交の取り組みができるはずがないということであります。
政治もない、あるいは
外交もない。
第三番目には、
経済、
通貨の問題についても、私ははっきりしたものが
日本の
政府、
田中内閣にあるというふうには感じていない。
そこで、そういうことをひとつ
前提にして、今回
関税の問題が出てきたわけでございますけれ
ども、その
関税に取り組む場合においても、やはり
世界の新しい
段階、新しい
動きというものをどう受けとめてこういうことを
考えておられるのかということがやはり問題であろうと思います。しかし、それは
事務的なレベルで論議すべき問題ではなくて、非常に大きな
政治戦略の問題にも関連いたすと思いますから、私は私の
意見をひとつ申し上げて、
最後に
関税の問題に触れたい、かように思うわけであります。
アメリカは
関税の問題についても、われわれからいえばいろいろかってな
動きばかりやっているように思いますけれ
ども、そしてまた
日本の
政府はそれに対して押し切られておるというのか追随しておるというのか、どうもぱっとした
動きを見受けることができないのでありますけれ
ども、特に
ニクソンが再選をされて以後の
動きというものは、従来の
動きとは変わっておると思うのですね。その変わったことをどういうふうに
理解しておられるか、本来ならば
総理や
大蔵大臣にも聞きたいところでありますけれ
ども、きょうはおいでにならぬから私のほうから申し上げる。
私は、
ニクソンの
基本的ないまの
政治の
構想というものは、一九七六年の六月に行なわれるところの
アメリカの
建国二百年祭をめどにしてすべてが動いておると思うのです。
ニクソンという男は非常にすぐれて
政治的な人であって、この間までは
自分が
大統領に再選されるということのためにすべての
政策をねじ曲げたといいますか、集中したというか、そういう
努力をやったと思う。それに対する
日本の
理解が十分でなかったために、
希望的観測その他でことごとくに志が狂った。今度は
ニクソンは
大統領に再選されまして、御
承知のように、
アメリカでは三度目はだめなんですから、今度が終わりなんです。そこでいま
ニクソンが
考えていることは何かということを十分受けとめて、
関税の問題も、
経済の問題、
通貨の問題も
考えなければならないと思うのですが、その
ニクソンのいま
考えの
基本にあるものは、一九七六年に
アメリカ建国二百年祭を
自分の手ではでにやって引退の花道を求めようということだと思うのですね。そのために何を
考えるかといえば、
一つはストロング
アメリカであり、
一つはストロング
ドルです。強い
ドルをつくり、強い
アメリカをつくるということであります。そのためには、
先ほども申しましたように、
関税政策であろうが
通貨問題であろうが
経済問題であろうが、全部をそれに重点的に集中していく、そういう
考え方に立っておるわけですね。その
ニクソンの
基本戦略を十分
理解しないで、ただ
コーヒーの
関税が五%下がるとか
タコの
特恵税率が五%になるとかいうような
議論ばかりしておってもしかたがないと思いますから、私はきょうは少し角度を変えて
議論をするわけだけれ
ども、
ニクソンの
基本的戦略は、いまも申しましたように、二百年の
建国祭を
自分の手ではでにやりたい、しかしそれをやるためには、
アメリカが強くなって、また
アメリカの
ドルも強くして、そうして
内外ともにはでな二百年祭を持ちたいということであろうと思います。
そのためにあらわれる
一つの問題は、
米ソの
提携、
協力であります。したがって、
SALT交渉だけではありません。
アメリカと
ソ連との
二つの
親方連中は、
世界は五極構造とか何とかいって、
日本も得意になってその一極になるつもりでおりますけれ
ども、極端にいえば、
ニクソンの頭の中では
日本なんか問題にしていないかもしれません。結局
世界は
アメリカと
ソ連が二人手を握って料理をしようというか、
支配をしようというか、そういう
考え方に立っておると思うのですね。これは
ドルの問題にも円の問題にも金の問題にも直接関連してきます。
きょうの問題ではないのですが、
先ほど来申し上げましたけれ
ども、たとえば金の問題についても、
日本の
大蔵省は、この間
大蔵大臣が野党が金を持てといった、それはいま
考えてみれば見識でありましたという不見識な
答弁をしておる。この問題についてもこの
大蔵委員会の席で、
政府当局は常に金の
時代はもう過ぎ去ったのだ、昔の夢物語、
一つの
物理的存在であるというようなことをいって、これが新しい
経済の
一つの大きな柱であるというようなセンスというか、受けとめ方は、
政府の
答弁からは私
どもはほとんど受け取れない。それはもう金の
時代ではなくなったのだ。
国内においては
管理通貨、国際的にはSDR、こういう形でいくのだという
前提に立っておるし、そして金の価格なんというものは、
アメリカの
ドルがみずからを
切り下げるというようなことにもなりますので、上げるということはないだろう。金の
値段を上げれば
ソ連が得をする。一番しゃくにさわることであるプランスが得をする。これも気に食わない。したがって、金の
値段を上げることはまず
考えられないという
前提で、
通貨問題、円問題の
日本の
基本的考え方があったと思うのですけれ
ども、三十五
ドルが三十八
ドルになって、そしてやがては一説によれば九十
ドルにもなろうかなんというような話も出てきておるという
状態でありますが、これも単に金の
値段がどうなるという問題ではなくて、
米ソが
政治的に
協力、
提携をして
世界支配に臨もうという
姿勢の
一つとして
考えれば、きわめてあり得ることである。
ソ連に得をさせるのはし
ゃくだからやらないなんということをいうだけの余裕はもう
アメリカの
経済にないということもありますけれ
ども、とにかく金の問題については、
アメリカの
考え方は変わってきておると思うのですね。そういう点も
米ソの
協力だという新しい
世界政策、
世界戦略から来ておると思うのですが、いずれにいたしましても、強い
アメリカをつくる、強い
ドルをつくる。その第一手段としては
米ソの
提携である。第二は
ドル問題である。強い
ドルをつくるという直接の問題であります。これはすでにかれこれ二回
ドルは
切り下げをやったわけですから、二回やったものは三回やるのではというような不安も出てきて、
ヨーロッパの大きな投機を
一つは呼んだようでありますけれ
ども、いずれにしましても、
ドルの今後の問題は、従来われわれが
考えておった
感覚とは違った形で来ると思うのです。
日本に関する限りで申しますと、強い
アメリカ、強い
ドル、そして
米ソ提携、そのことの
背景の中で、
アメリカは非常に強く出てくるということを
考えなければならぬが、それは
三つの面から出てきておる。
一つはいま問題の
通貨の問題であります。
二つは
通商の問題であります。
三つは軍事的な
協力を
日本にさせようという問題である。
通貨の問題は、いま金の問題をちょっと申し上げましたけれ
ども、今度の
国際通貨危機の場面に即して、
アメリカがどう対応しておるかということを
考えると、これは
日本の
政府も驚いたのでしょうが、まず御
承知のように、
ドルを一〇%下げるということで出てきた。これも
予想以外といえば
予想以外でございますが、
アメリカはいま申しましたように
ニクソンが強い
ドルをつくっていくために、しかしいままでの
ドルはそのままでは無理なんだ、そして
世界の
通商戦、
通貨戦、これを
自分がリードしなければだめだ、そのリードするためにはまず
自分で一〇%の
切り下げくらいのことをやらなければ、
政策の
イニシアがとれないというために、ぽんとまずみずから一〇%の
切り下げをやった。結局これはここまで
アメリカの
経済が追い込まれておるし、
アメリカの
地盤沈下が非常に深刻でございますから、その
必然性もあったと思いますが、同時に
ニクソンの
政治的機略からいって、これは新しい
国際政治の中で、あるいは
国際通貨戦争の中でみずからが
イニシアを握るための大きな捨て石であったというふうに
理解もできると思うのであります。この
通貨問題で
日本がどう取り組むかは、また
機会を改めて論じなければならぬと思いますが、御
承知のように
通商の問題についてもいま申しました
背景の中からすべては割り出されてくる。
ニクソンの
基本戦略の中から割り出されてくる、こういうふうに受け取らなければならぬと私は思うのです。
私だけしゃべってもしかたがありませんから伺いますが、
ニクソンがそういう強気で出てくる、強い
ドル、強い
アメリカをつくるための
基本戦略をかまえて出てくる、こういうときにこの
関税引き下げの御
努力はよくわかるが、
アメリカが新しい
通商法もつくる、
セーフガードもがっちりかまえて、そして
日本にある場合には一般的な、ある場合には
日本をねらいとした特別の
課徴金をかけてくるというような場合もあるでしょう。あるいはさらにこれから円の
切り上げ幅を、
日本政府の
希望しておるよりももっと大きい幅において
切り上げを強要してくる場合もあるだろう。
政府はそれらの現実の
ニクソンの
戦略、
戦術にかかわりなく
関税の
引き下げはそのままやろうというお
考えであるのか。この点、この
関税の
改正ということは一体どういう
前提で
考えておられるのか、その点をまずお聞きしたい。