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1973-03-13 第71回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月十三日(火曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君    理事 大村 襄治君 理事 木村武千代君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 阿部 助哉君    理事 武藤 山治君       宇野 宗佑君    越智 通雄君       大西 正男君    金子 一平君       木野 晴夫君    栗原 祐幸君       小泉純一郎君    三枝 三郎君       中川 一郎君    野田  毅君       萩原 幸雄君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       佐藤 観樹君    高沢 寅男君       塚田 庄平君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    村山 喜一君       山田 耻目君    増本 一彦君       広沢 直樹君    内海  清君       竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵省主計局次         長       長岡  實君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君  委員外出席者         経済企画庁長官         官房参事官   斎藤 誠三君         外務省アジア局         中国課長    国広 道彦君         外務省経済局国         際機関第一課長 羽澄 光彦君         大蔵大臣官房審         議官      秋吉 良雄君         大蔵大臣官房審         議官      森谷  要君         国税庁調査査察         部長      磯辺 律男君         農林省農林経済         局国際部長   吉岡  裕君         通商産業省通商         局輸入課長   若杉 和夫君         通商産業省貿易         振興局輸出業務         課長      柴田 益男君         通商産業省鉱山         石炭局鉱業課長 斎藤  顕君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三一号)      ————◇—————
  2. 大村襄治

    大村委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため出席がおくれますので、その指名により、私が委員長の職務を行ないます。  関税定率法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。竹本孫一君。
  3. 竹本孫一

    竹本委員 関税定率法等の一部改正法律案について御質問をいたしたいと思います。  しかしながら、本法案の内容を見ますと、タコ特恵税率が五%になるとか、魚のかん詰めが一五%のものが九%になるとか、コーヒー、紅茶が三〇%が二五%の税率に変わるといったような問題が中心でございますので、私はこの機会に、関税定率あるいは関税政策の前にあるものと申しますか、考えるべき問題、そういう問題について少し意見を述べてみようと思うのです。  このことは、局長に申し上げる、質問をするということは、私、必ずしも適当でないと思っておるのです。多分に政治的な問題であります。しかしながら大臣に聞いてみても、あるいは総理に聞いてみても、はたして満足のいくような御答弁がいただけるかどうか、実は非常に疑問に思っておるわけなんです。そういうわけでございますので、きょうは、最後に少し事務的なことも一、二聞きたいと思いますけれども政府があらためてこういう関税改正をやるとか、その他いろいろの努力をされる前に、その基本前提条件として考えなければならない新しい国際経済動きに対してどう取り組むのか、取り組もうとしておるのかという問題について、本来ならばいま申しましたようにお尋ねをしなければならぬけれども、主として私の考え方を述べてみたいと思います。そういう意味で、大蔵省でも省議もあることでございますから、十分ひとつ私の真意をくみ取っていただきたい。要望しておきたいと思います。  けさの新聞を見れば、ECが御承知のように共同フロートになり、脱ドル体制になるのだというような問題もたいへんにぎやかに紙面で取り扱われておりますが、そうした新しい世界経済動きに取り組む日本政治基本姿勢についてであります。私はかねがね政治の現状を憂えておるのでありますけれども、その第一は、日本政治には哲学がないということであります。かつて池田総理フランスのドゴールさんに会ったときに、何か日本の商品のセールスマンに会ったような感じだと言ったという有名な話がありますけれども、総じて日本政治というものはビジネスである。経済を例にしても単なるセールスマン的感覚である。世界政治あるいは世界経済についてどう導いていこうか、どう取り組んでいこうかということについての基本的理念というものがなさ過ぎると私は思っておるんです。しかしながら、そのことはあまり詳しく論じてもしかたがありません。場も違いますからただ指摘だけするわけですが、政治に一番大切な哲学あるいは組織、こういうものについては日本政治はほとんど問題は解決されないままになっておる。あるものははったりである、あるいは派閥である、あるいは官僚の事務である。ほんとう意味のリーダーシップのあるステーツマンシップのある政治というものは日本にはない。これは非常に残念に思いますけれども、そうだと思います。  第二番目の大きな欠陥は、日本には外交がないと思うのです。関税の問題もその一つでありましょうけれども外交というものは、いま申しました世界政治なりアジアの将来なりに一つ哲学なり方向なりというものを持っておってその上で出てくるものでありますが、第一段階の問題が十分解決されないので、したがって外交も思いつきになり事務的になる。したがって、そこでは基本的な戦略というものが生まれてこないと私は思う。事実日本外交の手を見ておって、一体われわれをどこへ導いていこうと政府考えておるのであるか、この手は一体どういう意味で打っておるのであろうかということが十分理解できない場合が多い。これは外交先ほど申しました基本の思想がないということとともに、すぐれた外交戦略がないということであろうと思います。  その点から申しますと、通貨外交についてもそうでありますが、通貨の問題はあとで触れますけれどもスミソニアンの場合でもそうでありますし、今回の場合でもそうでありますけれども、十カ国あるいは二十カ国の会議という場合には、日本は何を主張しようとしておるのか、その主張することについて世界のどこに敵がありどこに同志国家があるかということについての見定めがなければならぬと思うのですけれども日本外交にはそういうものがあるようには感じられない。スミソニアンのときも、私はたびたびこの席でも指摘しましたけれども課徴金には各国反対だからアメリカが孤立するであろうという希望的観測を持っていったら、結果においては日本だけが孤立して袋だたきにあった。今回の場合にも政府希望は、おそらく日本立場がもっとよくなるように、円の切り上げがもう少し低い程度で行なわれるようにと考えたんでありましょうけれども、それに理解を示し協力をする国がどこにあるかということになると、たいして基本戦略があるとは考えられない。またそういうことを推し進めるためにだれも本気で努力していない。特にこの前のスミソニアンの場合なんかは、ヨーロッパにおいては、御承知のように総理大臣が先頭に立って、イギリスもフランスも非常に深刻な激烈な動きをやったけれども日本の場合にはそんなものはない。今回のごときは、この間も理事会でも私申しましたけれども、あれだけ重要な大きな会議が行なわれても、大蔵大臣はそれに出席もしないというような状態でありますから、ほんとう意味外交の取り組みができるはずがないということであります。政治もない、あるいは外交もない。  第三番目には、経済通貨の問題についても、私ははっきりしたものが日本政府田中内閣にあるというふうには感じていない。  そこで、そういうことをひとつ前提にして、今回関税の問題が出てきたわけでございますけれども、その関税に取り組む場合においても、やはり世界の新しい段階、新しい動きというものをどう受けとめてこういうことを考えておられるのかということがやはり問題であろうと思います。しかし、それは事務的なレベルで論議すべき問題ではなくて、非常に大きな政治戦略の問題にも関連いたすと思いますから、私は私の意見をひとつ申し上げて、最後関税の問題に触れたい、かように思うわけであります。  アメリカ関税の問題についても、われわれからいえばいろいろかってな動きばかりやっているように思いますけれども、そしてまた日本政府はそれに対して押し切られておるというのか追随しておるというのか、どうもぱっとした動きを見受けることができないのでありますけれども、特にニクソンが再選をされて以後の動きというものは、従来の動きとは変わっておると思うのですね。その変わったことをどういうふうに理解しておられるか、本来ならば総理大蔵大臣にも聞きたいところでありますけれども、きょうはおいでにならぬから私のほうから申し上げる。  私は、ニクソン基本的ないまの政治構想というものは、一九七六年の六月に行なわれるところのアメリカ建国二百年祭をめどにしてすべてが動いておると思うのです。ニクソンという男は非常にすぐれて政治的な人であって、この間までは自分大統領に再選されるということのためにすべての政策をねじ曲げたといいますか、集中したというか、そういう努力をやったと思う。それに対する日本理解が十分でなかったために、希望的観測その他でことごとくに志が狂った。今度はニクソン大統領に再選されまして、御承知のように、アメリカでは三度目はだめなんですから、今度が終わりなんです。そこでいまニクソン考えていることは何かということを十分受けとめて、関税の問題も、経済の問題、通貨の問題も考えなければならないと思うのですが、そのニクソンのいま考え基本にあるものは、一九七六年にアメリカ建国二百年祭を自分の手ではでにやって引退の花道を求めようということだと思うのですね。そのために何を考えるかといえば、一つはストロングアメリカであり、一つはストロングドルです。強いドルをつくり、強いアメリカをつくるということであります。そのためには、先ほども申しましたように、関税政策であろうが通貨問題であろうが経済問題であろうが、全部をそれに重点的に集中していく、そういう考え方に立っておるわけですね。そのニクソン基本戦略を十分理解しないで、ただコーヒー関税が五%下がるとかタコ特恵税率が五%になるとかいうような議論ばかりしておってもしかたがないと思いますから、私はきょうは少し角度を変えて議論をするわけだけれどもニクソン基本的戦略は、いまも申しましたように、二百年の建国祭自分の手ではでにやりたい、しかしそれをやるためには、アメリカが強くなって、またアメリカドルも強くして、そうして内外ともにはでな二百年祭を持ちたいということであろうと思います。  そのためにあらわれる一つの問題は、米ソ提携協力であります。したがって、SALT交渉だけではありません。アメリカソ連との二つ親方連中は、世界は五極構造とか何とかいって、日本も得意になってその一極になるつもりでおりますけれども、極端にいえば、ニクソンの頭の中では日本なんか問題にしていないかもしれません。結局世界アメリカソ連が二人手を握って料理をしようというか、支配をしようというか、そういう考え方に立っておると思うのですね。これはドルの問題にも円の問題にも金の問題にも直接関連してきます。  きょうの問題ではないのですが、先ほど来申し上げましたけれども、たとえば金の問題についても、日本大蔵省は、この間大蔵大臣が野党が金を持てといった、それはいま考えてみれば見識でありましたという不見識な答弁をしておる。この問題についてもこの大蔵委員会の席で、政府当局は常に金の時代はもう過ぎ去ったのだ、昔の夢物語、一つ物理的存在であるというようなことをいって、これが新しい経済一つの大きな柱であるというようなセンスというか、受けとめ方は、政府答弁からは私どもはほとんど受け取れない。それはもう金の時代ではなくなったのだ。国内においては管理通貨、国際的にはSDR、こういう形でいくのだという前提に立っておるし、そして金の価格なんというものは、アメリカドルがみずからを切り下げるというようなことにもなりますので、上げるということはないだろう。金の値段を上げればソ連が得をする。一番しゃくにさわることであるプランスが得をする。これも気に食わない。したがって、金の値段を上げることはまず考えられないという前提で、通貨問題、円問題の日本基本的考え方があったと思うのですけれども、三十五ドルが三十八ドルになって、そしてやがては一説によれば九十ドルにもなろうかなんというような話も出てきておるという状態でありますが、これも単に金の値段がどうなるという問題ではなくて、米ソ政治的に協力提携をして世界支配に臨もうという姿勢一つとして考えれば、きわめてあり得ることである。ソ連に得をさせるのはしゃくだからやらないなんということをいうだけの余裕はもうアメリカ経済にないということもありますけれども、とにかく金の問題については、アメリカ考え方は変わってきておると思うのですね。そういう点も米ソ協力だという新しい世界政策世界戦略から来ておると思うのですが、いずれにいたしましても、強いアメリカをつくる、強いドルをつくる。その第一手段としては米ソ提携である。第二はドル問題である。強いドルをつくるという直接の問題であります。これはすでにかれこれ二回ドル切り下げをやったわけですから、二回やったものは三回やるのではというような不安も出てきて、ヨーロッパの大きな投機を一つは呼んだようでありますけれども、いずれにしましても、ドルの今後の問題は、従来われわれが考えておった感覚とは違った形で来ると思うのです。  日本に関する限りで申しますと、強いアメリカ、強いドル、そして米ソ提携、そのことの背景の中で、アメリカは非常に強く出てくるということを考えなければならぬが、それは三つの面から出てきておる。一つはいま問題の通貨の問題であります。二つ通商の問題であります。三つは軍事的な協力日本にさせようという問題である。通貨の問題は、いま金の問題をちょっと申し上げましたけれども、今度の国際通貨危機の場面に即して、アメリカがどう対応しておるかということを考えると、これは日本政府も驚いたのでしょうが、まず御承知のように、ドルを一〇%下げるということで出てきた。これも予想以外といえば予想以外でございますが、アメリカはいま申しましたようにニクソンが強いドルをつくっていくために、しかしいままでのドルはそのままでは無理なんだ、そして世界通商戦通貨戦、これを自分がリードしなければだめだ、そのリードするためにはまず自分で一〇%の切り下げくらいのことをやらなければ、政策イニシアがとれないというために、ぽんとまずみずから一〇%の切り下げをやった。結局これはここまでアメリカ経済が追い込まれておるし、アメリカ地盤沈下が非常に深刻でございますから、その必然性もあったと思いますが、同時にニクソン政治的機略からいって、これは新しい国際政治の中で、あるいは国際通貨戦争の中でみずからがイニシアを握るための大きな捨て石であったというふうに理解もできると思うのであります。この通貨問題で日本がどう取り組むかは、また機会を改めて論じなければならぬと思いますが、御承知のように通商の問題についてもいま申しました背景の中からすべては割り出されてくる。ニクソン基本戦略の中から割り出されてくる、こういうふうに受け取らなければならぬと私は思うのです。  私だけしゃべってもしかたがありませんから伺いますが、ニクソンがそういう強気で出てくる、強いドル、強いアメリカをつくるための基本戦略をかまえて出てくる、こういうときにこの関税引き下げの御努力はよくわかるが、アメリカが新しい通商法もつくる、セーフガードもがっちりかまえて、そして日本にある場合には一般的な、ある場合には日本をねらいとした特別の課徴金をかけてくるというような場合もあるでしょう。あるいはさらにこれから円の切り上げ幅を、日本政府希望しておるよりももっと大きい幅において切り上げを強要してくる場合もあるだろう。政府はそれらの現実のニクソン戦略戦術にかかわりなく関税引き下げはそのままやろうというお考えであるのか。この点、この関税改正ということは一体どういう前提考えておられるのか、その点をまずお聞きしたい。
  4. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 たいへん大きな見地から、世界政治経済、軍事という問題を論じられて、特にアメリカ世界的な戦略戦術ということについて触れられて、これはとても私どもここで答弁できることではないし、また答弁も要求をなすっていないわけであります。そこで関税についてそういうことを頭に入れてやっておるのかということでございます。お話にありましたように、通貨の問題もまだフロートしておるという段階で、まだこれからの問題でございます七また通商の問題も、アメリカのほうから新聞などを通じていろいろなことが伝えられますけれどもアメリカ政府筋がどういうふうに考えておるかという確たる情報も実はまだないということでありまして、まだこれからの問題であろうと思うのです。そういう基本的な線はいずれことしの秋に新しい国際ラウンドをやるということになっておりまして、その辺でアメリカはもちろんのこと、世界各国が大いに論議をすることであろう、大筋をひとつそこできめるということであろうと思うのです。  今度のお願いしておりまするこの改正は、そういう基本線に深く触れておるというよりは、中身は一つ特恵関税改正、改善という問題であり、もう一つ生活関連物資関税引き下げということが中心でありまして、そういう大きな問題に触れた関税政策がこの改正法案にあらわれておるとは私ども思っておりません。したがいまして、いまお話しのような大きな問題につきましては、今後わが国として新しい情勢を踏まえ、またいまおっしゃるようなアメリカが一体これからどう出てくるかということは日本にとって大きな影響があるわけでありますから、そういう点もかなりこれからやっていかなければならないものであろう、かように思うわけであります。
  5. 竹本孫一

    竹本委員 私が言うのは、関税問題を一つ論ずる場合にも、ほんとうはもっと大きな基本的な政治構想基本構想があってしかるべきだ、また政治的な基本戦略があってしかるべきだ。いまニクソン日本に臨むについて、単なる日米親善友好なんというような中学生の議論みたいなもので臨んできておるとは思わないのですね。そういうものにこちらはきわめて事務的に、いままでいっておりました自由化ですとか、いままでいっておりましたように特恵関税はなるべく下げてまいります、あるいはやめてしまいますというようなことで、事務的にだけ対応するということであってはならないのではないかということを私は強調しているわけなんです。  そういう意味から申しまして、先ほども申しましたように、ニクソンは強いアメリカ、強いドルをつくるという基本的なねらいを持って、しかもそれは一九七六年までにやり遂げようというのですね。だからアメリカのバーンズなんかは、通貨の問題も一九七五年一ぱいまでかかるだろうと初めに言っておったでしょう、最近ちょっと変えましたけれども。そういうことは全部ニクソンの一九七六年の二百年祭に焦点を合わしているのですよ。関税政策といえども、あるいは通貨外交といえども、全部そこへ焦点を合わしているときに、そしてアメリカ通貨通商と軍事的な問題とパッケージポリシー三つ一つにして臨んできておるときに、日本は一体いかなる基本構想があるか、いかなるパッケージポリシーの一環として関税政策を取り上げようとしておられるかということについては、やはりそれなりの構想がなければおかしい。それはすぐれて政治的な問題であるから総理大臣に聞きなさい、大蔵大臣に聞きなさいということも当然の議論として出ますけれども、しかし私は、事務当局といえども、やはり省議もやることでしょうから、一つ関税政策を論ずる場合にも、そうした基本的なものの考え方やねらいというものがどこかになければ、関税定率法改正、一部改正だから部分的に出てくるということであってはならないので、これはアメリカの新しい動きに対する日本の全体の基本構想日本パッケージポリシー一つとして位置づけられなければならぬと思うがどうですか、こう聞いているのです。関税局長いかがですか。
  6. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 先生御指摘のとおり、全体的な、アメリカ出方のみならず、今年から新しく御承知のように新国際ラウンドが始まるわけでございますけれども、現在アメリカ日本に対しまして一番関心を持っておりますのは、いわゆる貿易のアンバランス、日本の要するに対米出超という点に関しまして一般的に非常にイリテートしていることは否定できないと思います。したがいまして、新聞紙上等にも民間の声あるいは米国議会筋の声といたしまして、日本に対しまして輸入課徴金をかけるべきであるというような議論も出てきております。しかしながら行政府と私どもが接触いたしました限りにおきましては、現在米国政府は、日本に対して差別的な課徴金考えることは、長い目で見ました日米経済協力という面から見て、非常にアメリカにとってもマイナスである。したがって米国行政府といたしましては、そういうようなことをやることはできるだけ避けたいんだというような話を、実は行政府としては現在いたしておるわけでございます。  そういったいろいろな、それぞれの国の中に事情があるわけでございますが、私どもといたしまして、世界自由貿易体制を漸次拡大をしていくという方向で、関税政策もその観点から検討をいたさなければならないということは、これは日本の置かれております立場から当然ではないかと考えておりますが、どうも私ども世界動きを見ておりますと、それぞれかなり自分かってな立場と申しますか、要するに自国を中心にしてものを考える、いわゆる関税交渉をいたしてみますると、それぞれの国が自分国内産業のために考えているという点が非常に強く主張される場合が現実問題として多いわけでございます。したがいまして、単に自由貿易体制を進めるべきであるから、日本はほかの国がどうあろうとも、関税を大いに引き下げ開放体制に持っていくのだということでは、これはやはりいけないと思います。やはりこれは相対的な問題でございまして、他国の出方を見ながら全体の方向を見きわめつつ考えていかなくてはならない問題でございます。  非常に高い次元のお話でございますので、私からこういうことを申し上げることはいかがかと思いますが、当然事務当局といたしましてもそういったような基本体制に基づいて、背後におきましてそれぞれの具体的な個々の品目に関しましても検討を続けていくべきである、こういう御議論に対しまして、私も全くそのとおりではないかと考えます。
  7. 竹本孫一

    竹本委員 私はこの機会に、日本がいろいろ政策立案をする場合に、アメリカの力を過大評価することも、アメリカに対して過大期待を持つことも、ともに誤りであるということを指摘しておきたいと思うのですね。結局アメリカは、第一には経済的にもう大きな地盤沈下であります。これは鉄の輸出を見てもわかることだけれどもアメリカの輸入に重工業の占めるウエートを見てもわかる。そのまま重工業製品の輸入の中で日本の占める大きな位置を見ればなおわかる。要するにアメリカの産業構造その他から見て、アメリカ経済地盤沈下というものは非常に大きいのですね。アメリカは強いというような考え方だけ、あるいは大きな国だ、強大国だといったような考え方だけがわれわれの頭にこびりついておるようでございますけれども、もう数年前、ドルがあぶなくなったときに、私がアメリカは大きな地盤沈下であるということを、予算委員会でありましたけれども二時間もやったことがありますが、とにかく日本アメリカ地盤沈下ということについて大きな認識がない。  その上に、今度はベトナムインフレ。アメリカのベトナム戦争で、アメリカが負けることはないだろうといったような議論もずいぶんございましたし、少なくともそういう期待があった。これもさんざん負けて、残ったものはインフレだけが残っておる。これもアメリカ経済をまたいよいよ弱めておる。  第三には、ベトナム戦争が済んだから今度は、アメリカは多いときには三百億ドル近くの金を年に使ったわけですから、その負担がなくなりますから非常にアメリカドルが強くなるだろう、一部にそういう動きもありましたけれども、しかしながら、それもドルの対外流出ということについて寄与するところは幾らでもないらしい。逆にこれからの戦後の復興その他の問題等で、アメリカの新しい経済的な負担もできておる。  結局、今度一〇%切り下げということが唐突に起こったけれども、よく考えてみれば、基本的にアメリカ地盤沈下である。ベトナムインフレが残ってインフレだけがアメリカを悩ましておる。ベトナムが済んでも、そのためにアメリカ経済的負担というものが大きく軽くなるということはない。その重圧の前にアメリカは一〇%の切り下げをやらざるを得なかったのですよ。政治的に言えば、これは政策イニシアを握ろうという対外攻勢の一つのきっかけをつくろうということであったかもしれませんが、経済的に見れば、いまの三つ基本的なアメリカの矛盾を考えればきわめてあり得ることであって、きわめて当然なことなんです。それを意外と受け取ったり、ドルがまたもう一ぺん動揺することは考えてもいなかった、予算では全然そんなことはゆめにも思わなかったという答弁をして喜んでおることは、全くアメリカ経済に対する認識不足ですよ。  そういう意味からいって、私は念のために申し上げるのだけれども、とにかくアメリカは大きな地盤沈下をし、そしてベトナムの問題で大きく傷がつき、ベトナムが済んでもアメリカ経済基本的に立ち直るということはなかなかむずかしい条件を持っておる。しかもニクソンは七六年に間に合うように一応の体制を整えて、それで盛大な二百年祭をやろう、強いアメリカ、強いドルをつくろうということになれば、この辺で一ぺんどんでん返しのドル切り下げをやる以外に何があるかということであります。そういう意味で、私は日本のようにアメリカは強い、またアメリカは非常に信頼できるというような形で、過大な評価をしたり過大な期待をするということは間違いである。過大期待のほうは、日中国交回復の前に頭越し外交をやったり、あるいは今回でも日本は一向お座敷がかからないようでございますけれどもアメリカが一体どこまで日本に誠意を持ってよきパートナーとして協力しておるか、はなはだ私は疑問であると思う。いたずらにアメリカ攻撃をやる意思はありませんけれども日本のいまの政府が持っておられるような過大な評価や過大な期待をしてはいけないということを私は指摘をしたいのであります。  そういうアメリカのほかにもう一つ重大な問題は、ヨーロッパの問題でありますが、日本アメリカで輸入制限を受けた。今度はあわててヨーロッパへ振り向けて一ぺんに一年間に三倍になったり、もっと大きな倍率で集中豪雨みたいな形で輸出をはかった。そういう問題が、またいろいろ矛盾を呼び起こしておるようでありますけれども、そのヨーロッパが今回共同フロートをやるということであります。けさの新聞を見れば、アメリカのシュルツさんも、まさかフランスその他いろいろの問題があって共同フロートはできないであろうと考えておったのでびっくりしたような記事がちょっと出ておりますが、私は、新聞の記事では、フランス立場、ドイツの立場あるいはイギリスの考え方、いろいろありますので、共同フロートはできないだろうと見ておった人が日本にも相当おると思うのですね。ちゃんとできた。これも、先ほど申しました思想や哲学にまでぼくは関連する問題だと思うのです。ヨーロッパは今日もうUSE、ユナイテッド・ステーツ・オブ・ヨーロッパ、USAでなくてUSEだ。このUSEに向かってばく進しておる。共同の通貨考えることも当然なことだ。通貨基金もできる。そういう体制にあるときに、希望的観測を含めて、共同フロートはできないであろう、ヨーロッパ一つになるということはなかなかむずかしいことであろう、特に農業問題もあるなんとかいうようなことで、日本の観測はきわめて楽観的に過ぎると思いますけれども、結果においてはシュルツさんもそうだったというのだが、共同フロートができました。  日本の、現に大臣をしておる人ですけれども、あるおえらい方がフランスへ行ってドゴールに会ったときの話を聞いて私は知っておる。彼は、フランスとドイツが手を握るなんていうようなことはなかなかできる話ではないだろう、これをまあ戦後間もなくの話でございますが、そういう質問をドゴールにやったそうであります。そうしましたらドゴールは、あなたは日本の歴史を少し勉強されたらどうですかというような返事をされたというのですね。すなわち、明治維新ができる前は六十余州があんなにけんかをしておったのに、結局日本はりっぱな統一国家になったじゃないか、きのうまでは非常に対立しておる国も、歴史の流れとともに一つに固まっていくのは必然だ、ヨーロッパは必ず一つになりますよと言って日本の歴史を指摘されて、赤恥をかいて帰った人がいま大臣をやっておりますが、とにかくそういうような認識ですよ、日本は。だから、共同フロートもなかなかできるとは思わない、こういう形で——この間もここで、大蔵委員会理事会で国際金融局長に私が、共同フロートをやられたら、アメリカで縛られた日本が、今度はまたヨーロッパで締め出される、御承知のように域内は固定相場でいくことになるから、そういう形で、ヨーロッパの団結がいよいよ強くなる、経済はブロック化である、そうなった場合に一体日本はどうするんですかと、理事会の席で話をしましたら、うしろから聞いていた山中委員が、手をあげるという手があるという話をしました。なかなかこれは手きびしい批判であったが、今度はいよいよ共同フロートができたが、日本は手をあげるのですか。とにかくそういう大きなブロック化体制が現実の姿として出てこようとしておる。  そこで、私はまとめて申しますと、一方においては、アメリカにおいてもナショナルインタレストである。ヨーロッパヨーロッパのインタレストである。経済は、一言にしていえばブロック化の傾向を大きく持っておる。それから同時に、日本基本立場は、資源もない、輸出は大いにやらなければならぬというような日本基本立場からいいまして、先ほども御指摘のあったように、あくまで自由化していかなければ、あるいは自由貿易主義でいかなければならぬという基本的要請がある。この二つは非常に矛盾した大きな問題ですね。それを一体どうこなしていくのか、それをどういうふうにそれぞれを位置づけ、調和させながら日本外交戦略貿易戦略を立てるかということは、これはたいへん重大な問題だと思うのです。一体そういう点について政府はどういう考えを持っておられるのだろうか。  私は、今度の関税改正は、先ほど申しましたようにコーヒー、紅茶がどうなるのか、タコが何%になるということも大事なことでございますけれども、しかしもっと大事な問題があるのではないか。たとえば関税局長、この関税定率法は何年にできた法律ですか。
  8. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 明治四十三年にできた法律でございます。
  9. 竹本孫一

    竹本委員 そこで、ずいぶん古い話でございますが、もちろんその後、年々必要に応じて改正もしておられるだろうが、私は、これもいま申しました世界の新しい大きな動き、またニクソンの新しい基本戦略、そういうものに対応するような構想があってしかるべきではないかということを言っているのです。明治の時代にできた法律の部分改正ばかり続けていくということで、新しい世界の情勢に一体対応できるのかということを私は問題にするわけであります。と申しますのは、たとえば岩佐さんであったと思うが、ハワイで向こうのアメリカの財界人と会談をやって帰ってきたときに、アメリカ考えはえらく強いぞ、だからこれに対応するためには少しドラマチックにやらなければいかぬ、関税はゼロにするぐらいの勇気なり英断がなければ、これはなかなか対応ができないぞ、こういうようなことを言われた。それが正しいかどうかの論議は一応別にして、私がいまここで問題にするのは、明治の関税定率法を部分改正に次ぐ部分改正をやるだけで、いまの新しい世界動き、新しいニクソン基本戦略に対応できるとお考えであるか。対応できるような要素がこの改正案のどこにあるかということであります。そういう点、いかがですか。
  10. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 ただいま先生の御質問も非常に高い次元のお話でございまして、今回の私どもが御審議をお願いいたしておりますところの関税定率法の一部改正案というのは、主として個々の具体的な品目に関する税率中心とした改正をお願いをいたしておりますので、この中でどこが高い次元からのいわゆる基本体制に該当をするのかという御指摘でございますと、私も、ここがそうでございますという御返事はいたしかねるわけでございますが、先般も申し上げましたように、昨年の十二月に、今後の関税政策のあり方等に関する長期の答申をいただきまして、その線は私どもも、今後、日本のこれまでの関税のあり方から見方を変えたその関税のあり方に変えていくべきであるという基本的な認識は、私どもも強く抱いているわけでございまして、ただ関税と申しますのは、今日までございましたものを一気に変革いたしますると、国内の産業に対しても非常に大きな影響を与える。したがいまして、段階的にこの関税は改めていくべき性格のものではないかと考えております。したがいまして、一気には参りませんけれども、やはり日本のあり方等に従いまして変えていくべきということの方向といたしましては答申の中に盛られておるわけでございまして、法律は、確かに明治四十三年にできました古い法律でございますけれども、これをやはり年々逐次改正をいたしていくことによりまして、その時代に即応していくということも考えられ得ると思います。したがいまして、今次の改正に一体どういうところでどうという点に関しましては、私も的確なお答えをいたしかねることは非常に残念でございますけれども、そういう方向で今後も考えていくという考え方でひとつ御了承いただきたい、かように考えるわけでございます。
  11. 竹本孫一

    竹本委員 私は、いまの大きな動きというものは、一方において非常にブロック化しつつある、それから一方において日本基本的な要請としては、すべてがフリートレードの方向でいけるようにして伸びていきたいという二つの問題があると思う。その問題について、明治の法律ではなくて、新しい時代に即応するような、もっとフレッシュな、またそれごそ次元の高い構想に基づく関税法を考えたらどうかということを言っているのですね。  そういう点からいうならば、二つの要請をばらばらに一つずつ申し上げますと、たとえば自由化の問題についても、昨年二〇%下げた、今度また数多くの品物についていろいろ御努力をいただくことになるわけですけれども、これが岩佐さんの表現ではないが、はたしてどれだけのドラマチックな効果を生むであろうか、これがどれだけニクソンパッケージポリシーに対して圧力なり牽制球になるであろうかというところが問題だと思うのですね。事務的に良心的にやっておられる点はそれなりに評価するとしても、御承知のように、日本自由化の問題は非常に努力が足りないということで予算委員会においてもいろいろ御議論が出ました。要するに、日本自由化なんというものはステップ・バイ・ステップという、ミスター・ステップ・バイ・ステップという表現もあるようだが、そう言いながらさっぱり進まない。悪く言う人はステップ・バイ・ノー・ステップだという人もおる。こういうような形で、日本は何もやらぬじゃないかというような印象だけを与えておる。そういうときに関税の新しい改正をやろうというなら、ここまでやれるし、少なくともやれるという姿勢はこうだというところを示さなければ、コーヒーが二五%になるとか魚のかん詰めが少し安くなるということだけでは話は片づかぬと思うのです。円対策だっていままで第一次、第二次、第三次ですか、しかたなしにやっておる。私は予算委員会でひやかして、一体円の防衛力の限界はどの辺だ、第何次対策まで出てくるのですかと言って質問したこともあるが、とにかくそういう意味自由化の問題なら自由化の問題に取り組むように取り組んだらどうですか。ただ魚のかん詰めコーヒー、紅茶だけの問題ではなくて、だれが見ても日本は本気で自由化に取り組んで、関税も思い切ってこういうふうになるのだという姿勢がうかがわれなければならぬであろう。その点について大きな姿勢の転換がないじゃないか。もちろんこれには産業構造の問題もあるし、予算の組みかえをわれわれ四党が協力して出したのもそのためでありますが、とにかく予算にしても産業政策にしても、大転換をやって新しい時代に対応するだけの姿勢を示せということの一つとして予算の組みかえも論ぜられたと思うのですが、そういう点を一つも見受けることができないし、関税の問題についても何となく部分的に事務的に改正、改革の努力は行なわれますけれども、ドラマチックな政治的な発想の転換というものは全然考えられない、これは非常に遺憾だということをいま私は申し上げておる。  次に、ブロック化の問題につきましても、ニクソンはいま申しましたように、大統領権限で、議会が少しぐらいじゃまをしても、場合によっては関税を下げるということもできるように、場合によっては関税を上げるということもできるようにということをいま考えているのでしょう。それに対応して日本は、特に先ほども申しましたように、日本考えるほどアメリカ日本を評価していると私は思わないが、そういうこともありまして、場合によっては日本をねらって相当集中的にこれからどんどん攻勢をかけてくるのじゃないか。せっかく自由化をしても、せっかく関税引き下げてみても、アメリカのほうではどんどん課徴金をかけてくるとか、あるいは差別的な課徴金日本を苦しめるとかいろいろやってくるのじゃないか。そういう場合に、日本のいまの関税で申しますならば、関税では報復関税の項目が一つあるだけのように思うけれども、一体新しい世界のブロック化の動きに対して、関税政策の上で日本は何をしようとしておるのか、そのことが関税法の上においてはどこに法的根拠があるのか、この二つを伺いたい。
  12. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 先生御指摘のように、全般的にECそれ自体が一つ関税同盟と申しますか、一つのブロック的な方向に行く可能性があるものであることは、そのとおりであると思いますし、また現在アメリカの対外貿易収支が非常に悪いために、アメリカの中に保護主義的な動きが出ていることも、これまた事実であろうかと思います。現在アメリカの議会におきまして提案をされようとしておりますところのいわゆる新しい通商拡大法案と申しますものは、アメリカが新しく今年度から始まる新国際ラウンドに臨みますところのアメリカの交渉権限を大統領にもらうということを主体としたのが新通商拡大法案の内容であろうかと思います。またそれの交渉権限をもらうにつきましては、大統領といたしましては、相手国と交渉をするのに関税引き下げる権限も引上げる権限も両方もらいたいというようなことではないかと思っておりますが、全般的な動きといたしましては、とかく現在保護主義的な貿易方向に走るという傾向があることは否定できません。しかしながら、先ほども先生が御指摘になりましたように、日本といたしましては、世界貿易が安定的に拡大方向に向かって進むことが日本の将来の生きる道であるということを前提として考えました場合に、新国際ラウンドに対して臨みます場合の基本的な姿勢といたしましては、自由化あるいは関税引き下げ方向でものを考えなくてはならないものであろうかと考えております。  したがいまして、関税引き下げ方向検討をし、貿易自由化方向検討をするということでございますが、確かに自由化関税引き下げとは、いわゆる経済効果その他において若干違う面があるかと思いますが、日本自由化基本として進まなければならない以上、それに対する国内産業への衝撃緩和その他の観点から、それに対応する準備がなくてはならないこともこれまた御指摘のとおりであるかと思います。したがいまして、自由化体制を進めなくてはならないこと、それに対しますいわゆる緊急関税であるとかあるいは報復関税というような制度を整備いたしておく必要があろうかと思います。したがいまして、昨年の末、関税率審議会に特殊関税部会というものを設けまして、国内産業に大きな影響があります場合には、直ちにこれに即応いたしまして特殊関税、いわゆる緊急関税なり報復関税なりというものを発動し得るような体制を整備をいたすために、特殊関税部会を設けまして、それに対して即刻対応できるような準備をいたしておるわけでございます。
  13. 竹本孫一

    竹本委員 ひとつ部会の御努力を大いに期待したいと思いますが、結論的にいまの自由化を、あるいは自由化貿易的な方向日本の要請としては力強く進めなければならぬ、同時に、アメリカヨーロッパの新たなるブロック的なナショナルインタレスト中心動きに対しても対応しなければならないということでございますが、そうした取り組みの上において、今度のこの関税定率法の一部改正というものがどれだけの効果を持つというふうにお考えですか。
  14. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 実は御承知のように、昨年の十一月に主として製品関税に関します一律二〇%引き下げをやっていただいたわけでございまして、あまり急激に関税引き下げその他を行ないますと、国内産業に対しても非常に大きな衝撃を与えるということになりますので、今回御審議をお願いをいたしております改正の内容といたしましては、主として特恵関税税率引き下げだとかあるいは対象範囲の拡大だとか、そういったようなものを中心といたしまして、十一月に二〇%の一律引き下げという非常に大きなことをやりました直後でございますので、今回の一部改正案の中にはそれほど大きな内容というものが含まれておらないわけでございます。
  15. 竹本孫一

    竹本委員 次にもう一つお伺いしますが、輸入の自由化にしてもあるいは関税引き下げにしても、それ自体物価の面にも一つの効果を持っているし、いろいろな効果が期待できると思いますが、先ほども申しましたが、日本の産業構造の変革といいますか改革の問題の面からみれば、私は日本経済は過保護だと思うのです。過保護の温室経済みたいなところがありまして、何としても、もう少し近代的な合理化を進めなければならぬ、こう思っているのです。これは、一つは政党も悪いのですが、陳情団あるいは圧力団体に押されて、筋を通さない面も若干あるようですが、そういうこともあって、日本経済ほんとう意味で——アメリカ経済地盤沈下を言いましたが、日本経済の中には矛盾がないかといえば大ありだ。しかもその一つに、過保護の問題がある。それがいまの政治姿勢からいうと、なかなか直らない、あるいは改めることができない。円を切り上げてみたり、あるいは自由化をうんと促進してみたり、あるいは思い切って関税を下げるならば、それは一つの役割りとして、日本経済のそういう意味での近代化、再編成を大きく推進すると思うのです。そういう観点から私は、この関税の問題も見たいと思っているのだけれども、そういう点については局長いかがですか。
  16. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、日本といたしましては、今日まで日本が長い間貧乏であったせいもございますけれども、いわゆる国産重点と申しますか、日本人は、何でも自分でつくらなくては気が済まないというようなことで生きてまいったわけでございますが、今日、日本の国際収支の、特に貿易収支の大幅な黒字ということを考え合わすときに、やはり新しく国際分業という観点から、ある品物は国内で生産するよりは外国から買うという観点で、ものを考えなくてはならないという事態は、現実問題としてあると思います。したがいまして、今日まで何でも国内産業保護という観点から、関税考えられてきたという面もあるわけでございますが、これは関税引き下げの問題にしろ自由化の問題にしろ、あるいは円レートの切り上げの問題にいたしましても、徐々に、こういったようないわゆる国内経済構造の変更というものに役立てるような方向でものを考えていかなくてはならない時代が来ておると思います。  しかしながら、この円レートの問題にしろ関税引き下げの問題にしろ、あるいは自由化の問題にしろ、あまり急激に国内産業に対してショックを与えますと、社会問題その他いろいろな問題が付随的に起こってまいりますので、これは少し長い期間をかけまして、徐々に経済構造を変えていくという観点の配慮も非常に必要なことではないかと考えておりますが、基本的な方向といたしましては、まさしく現在、竹本先生の御指摘になりましたような方向で私ども考えていかなくてはならない、かように考えておるわけでございます。
  17. 竹本孫一

    竹本委員 今度は次元の高い御答弁をいただいてけっこうですが、そこで、その高い次元に対応する私のほうが次元を下げて質問をして、終わりにしますが、それは関税定率法第十五条第一項の問題ですけれども、ここに書いてあることを読んでみると、どうもおかしい。すなわち、輸入をどんどん促進しようという場合には、政府その他の関係団体も輸入の問題についてそれこそ姿勢を直さなければならぬと思うのです。ところが、この関税定率法第十五条の規定を見ると、こういうことが書いてある。輸入する場合に、それが関税免除を受けようと思うならば、その機関は当該機関でなければならぬ、学術研究用に使用するものでなければならぬ、新規発明品または国産困難であること、こう書いてある。この規定というのは、関税が輸入を押える、促進しない方向に役立っておるのです。一体この規定はいつできたものであるか。その規定をいま大蔵省は、先ほどの次元の高い御答弁に対応して、どういう解釈をしておられるのか承りたい。
  18. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘の第十五条の特定用途免税の規定によりますと、要するに試験研究機関が入れる場合には、いわゆる学術研究用品にかかわるものは国の機関が入れなくてはならないということになっておりますが、一般的には、政府関係機関が独占的に輸入するいわゆる専売品、たばこであるとかあるいは米であるとか小麦であるとかいう国家貿易の品目、こういったようなものにつきましては、競合いたしますところの国内産業を保護することができますので、関税を減免することができる、かようになっておるわけでございます。しかしながら、ほかの物品につきまして、政府機関が他の民間の需要者と競合的な地位にあって購入する、こういうようなものに関しましては、やはり今後の検討課題として私どもも新しい観点から検討しなければならない、かように考えているわけでございます。
  19. 竹本孫一

    竹本委員 要するにこの規定は、従来の、輸入はなるべく押えるように、それから先ほど自由化といいますか、新しいそういう大きな歴史の流れのほうに対応する以前の考え、以前の立法でしょう。いま輸入を促進しなければならぬ、貿易の黒字を消さなければならぬというならば、この規定は適正なる規定ではないと私は思うが、いかがですか。
  20. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、私どもも今後、政府国内で調達するか外国からものを買うべきか、こういうようなものに関しましては、学術研究用のものあるいはその他の一般的なもの、いろいろあるわけでございますが、ひとつ検討させていただきたいと思います。
  21. 竹本孫一

    竹本委員 ぜひこれは、それこそ前向きに検討していただかなければならぬ。何でも国産でなければならぬとか、あるいは国産が困難な場合に初めて輸入しましょうという考え方と、それからいまのように、産業再編成のために御承知のように、電算機まで自由化しょうとか、させられるとかいうような段階に来て、官庁だけは古くて一番おくれているのだけれども、ことに輸入の問題についても、輸入は必要だとか大いに輸入はやらなければならぬ、民間も大いに輸入してくれ、輸出をふやすよりも何とか輸入をふやすことのほうが、より現実的な対応策だということで、いまの段階に来ているわけでしょう。  そういうような輸入が美徳になったような段階において、輸出が美徳なときの、輸入は制限することが美徳であるときの法の規定がそのまま残っておる。そして政府が、人に向かってだけ、なるべく輸入を促進するようになんていってみたって話にならぬ。もし輸出を伸ばすためにも輸入が必要であるというならば、政府全体の体制も、輸入がしやすくなるように政府もまた必要なものはどんどん輸入しましょうというかまえにならなければ首尾一貫しないでしょう。  そういうことからいうと、この十五条なんというような規定は、その当時の立法の経過というものは理解できるけれども、いまの新しい要請、新しい流れには対応しているものとは思わない。そういう点で、これはすみやかに検討し、改めるべきであると思いますが、もう一度御意見を伺って、次に進みたいと思います。
  22. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のような考え方、全くそのとおりであると思いますし、この規定に限りませず、いわゆる国産困難なものというような条項の入っております条文に関しては、今後私どもも前向きで検討させていただきたい、かように考えております。
  23. 竹本孫一

    竹本委員 前向きの御検討を強くお願いいたしまして、最後にもう一つ、いまの問題に関連しますけれども一つは、輸入の手続が非常に複雑怪奇というか、めんどうくさいということになっておる。これは局長すでに十分御承知のところでございますから、こまかいことは言いませんが、特に官公庁の輸入の姿勢がまずいということが一つと、同時に、官公庁へ輸入したものを納める場合に、それがまたいま申しましたように手続がいたずらに複雑であり、しかもたてまえが間違っておるということであります。どこに問題があるかといえば、御承知のように、輸入品の契約というものはFOB価格に基づいて行なわれるということですね。これはまあそのとおり。そうしますと、一方は不利になるが、輸入した場合には今度はこちらのほうで実費清算をこまかくやらなければならぬし、やらなければならないようにまた規定ができておるようでありますが、そのために手続はものすごくめんどうくさいということがいわれておる。やはり輸入を推進するということになれば、輸入はなるべく簡単にできるように、今度は税関等についてもいろいろ改正が行なわれると同じように、輸入手続等についてももう少し簡略に行なえるように、その辺の特に官公庁の輸入品納入等についても、先ほど申しましたような精神を入れて、やりやすいように手続規定を再検討さるべきだと思います。  その場合にもう一つ言うならば、その再検討がいわゆる官僚的事務的正義感だけでめんどうになったり、それからあとは実費の清算の問題は文字どおり実費の清算だけなんですよ。そうすると、うまみもおもしろみも全然ないのですよ。だから苦労するだけだ。手続がめんどうなだけです。そういうことでは、だれも本気で輸入に力を入れませんよ。そういうことからいって、手続規定を改正すると同時に、今度は輸入というものを、全然おもしろみのない商売で、ただ役所のかわりに手続だけを輸入業者はやるんだというようなことでは、はなはだまずいですね。そういう面も含めて、これは前向きに検討されてしかるべき問題である。これについてのお考えを承って、終わりにいたします。
  24. 若杉和夫

    ○若杉説明員 お答えいたします。  もう少しわれわれ詳しく検討いたしますけれども、私の知っている範囲で、輸入手続ではなく、事後清算払いとか確定等で、輸入規制上は何らありません。ただ問題は、官公庁が買う場合に、官公庁物品会計という手続面で問題があろうかと思います。ですから、輸入手続ではなくて、上陸してからのおそらく官公庁の物品の購入の姿勢の問題一般だと思います。その辺はわれわれも輸入促進の立場にございますので、今後とも検討さして、前向きで処理さしていただきたいと思います。
  25. 竹本孫一

    竹本委員 それは納入手続であろうが、そういうことを私はこまかく問題にしているのではなくて、とにかく輸入が必要であるし、輸入を大いに政府がやれという以上は、官公庁自身がそういう姿勢を示しなさい。そして、姿勢を示す中でやはり手続も簡単になるように、事業もうまみもあるように、そしてすべてが輸入の促進に役立つように示さなければ、円対策の項目の中だけに二、三行書いただけでは、大きな効果、成果をあげることはできないだろう。ぜひひとつ大蔵省大蔵省の分野において、通産省は通産省の分野において、これは事務当局にドラマチックな政治的な演出を求める、そんなばかなことを言っているわけではありません。事務的に簡単明瞭な対応をやっていただきたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  26. 大村襄治

    大村委員長代理 塚田庄平君。
  27. 塚田庄平

    ○塚田委員 たいへん次元の高い話のあと、次元の低い話になりますが、時間の関係もありますので端的に質問しますから、答弁もひとつ簡明にポイントをつかんでお願いいたします。  この前、同僚議員が豚肉の脱税問題についての質問をいたしましたが、そのときの答弁の中で、ただいま調査中だ、こういう答弁がありましたが、現段階において調査がどこまでいっているか、いわば中間報告という形でいきさつをひとつ説明していただきたい。
  28. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 豚肉の輸入に関しましては、商社などの関係業者が税関に不正の申告を行ないまして、関税を逋脱しているのではないか、こういう嫌疑が生じましたので、現在東京、大阪、横浜、神戸、各税関それぞれ業者約十数社にのぼっておりますけれども、十数社から関係書類その他を押収をいたしまして、現在鋭意調査中の段階でございます。
  29. 塚田庄平

    ○塚田委員 調査中の段階でなくて、いまどこまで調査がいっているか、たとえば十数社といいましたが、その会社の名前をひとつ発表していただきたい。
  30. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 現在関税の逋脱の疑いをもって調査をいたしておりますので、名前を申し上げることはひとつお許しをいただきたい、かように考えるわけでございます。
  31. 塚田庄平

    ○塚田委員 国税庁来ておりますか——国税庁いろいろやっているんだろうと思いますが、代表的な、もう新聞にはすでに丸紅ほか五社あるいは九社、新聞によって違いますけれども出ておりますので、この社名と、これは銀行が借り先の名前を知らせるのと違いますから、国税庁は相当権限があります。そういう意味で名前と脱税額、おおよそでいいですからひとつ発表していただきたい。
  32. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 ただいま関係の国税局で調査いたしております商社等でございますが、これは現在十二社ございます。それからさらにまたそのほか数社今後調査の予定を持っておりますけれども、どの会社を調査中であるかということと、それからその結果というものにつきましては御答弁いたしかねますので、御了承いただきたいと思います。
  33. 塚田庄平

    ○塚田委員 これはどうしても発表できないですかな。それでは調査の一定の進んだ段階において、この委員会で発表することを要請いたしますが、それはひとつ約束できますか。調査の一定段階において発表する、こう約束してもらいたいんですけれども、この点ひとつ……。
  34. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 個々の企業の税務の調査内容に関することでございますので、ここでお約束するということは非常に困難と思います。
  35. 塚田庄平

    ○塚田委員 それではおそらく十数社、それは全部豚肉ですか、それとも差額関税に関して、豚肉あるいはベーコンその他ずっと同種類のものについて、こういう事件を起こす可能性はあるわけですね。それ全部についていま洗い直しているのですか。
  36. 磯辺律男

    ○磯辺説明員 国税の課税標準の調査、検査でございますので、これは総合的にその企業の所得内容について調査するわけでございます。したがいまして、ただいま申し上げました調査中あるいは今後調査見込みという法人につきましても、これは豚肉に関連することだけを中心にして調査するというわけではございませんで、その調査の機の到来した法人につきましては、特にこういった豚肉の輸入が多く、また不正計算もあるんじゃないかと疑いの持たれる法人につきましては、その豚肉関連のことも重点調査の一つとして取り上げて調査をするように指示したということでございます。  それから、今後調査を予定しておるものにつきましても、同様にそういった指示をしておるということでございまして、その中の豚肉の輸入関係だけを抽出して調査をするというものではございません。
  37. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 関連して。いまの公表できない、それは個々の会社の名前を発表し、どこの会社が何ぼ脱税、大体このくらい脱税という、会社名を出せないにしても、現在調査した結果、豚肉関係で関税をごまかした金額はこのくらい、件数はこうだ、そういう中身ぐらいは直ちにここで発表できないですか。
  38. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 現在、実はある一社などトラック三台分くらい税関で帳簿を押収をいたしておりまして、ほんとうに現在非常に鋭意調査を続行中なわけでございます。したがいまして、現在の段階におきまして、犯則の金額が幾らであるとか、そういうことはほんとうにわからない段階でございます。したがいまして、わかりました段階におきまして数字——個別の会社の名前というのはいかがかと思いますけれども、どういった、何社がどのくらいの犯則があったという点に関しましては、判明をいたしました時点にはお話しができるかと思いますけれども、いまの段階におきましては、現実に各税関、四つの税関に分かれて、それぞれの税関におきましてそれぞれの管内の業者に対しまして調査中の段階でございますので、その点御了承をいただきたい、かように考えるわけでございます。
  39. 塚田庄平

    ○塚田委員 私はこの問題、特に再度取り上げるのは、差額関税というのはこれはやはり国内の業者特に消費者を保護する、あるいは経済の安定をはかっていく、そういう趣旨のもとに設けられて運用されると、非常にこれは経済に好影響を与えるわけですが、さて一たん裏をかかれると、これはたいへんな被害が国民に及ぶわけですよ。  そこでいま答弁の中では、とにかく日本の揚げ地についてほんとうに調査を進めておる。ところがこの種の犯罪の手口は、これは国内の揚げ地税関だけではだめなんで、おそらくこれは海外との関係が、海外の積み出し港における、あるいはインボイスを出すその時点における犯罪というのが予想されるわけですが、一体この種の犯罪の手口をはっきり、まあ大体こういう点が予想されるという点をちょっと御答弁願いたいと思うのです。
  40. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 これは全く私ども予想される——現在その調査中で、この事件がどうであったかということは、まだはっきりわかりませんけれども、私どもがこういう手口で犯則を行なうことができるのではないかということを考えられます点といたしましては、関係の業者が正式のインボイス、いわゆる送り状よりも高価の、架空のインボイスを相手方と作成をいたしまして、税関に対する輸入申告に際しましても、そのいわゆる高価なにせの、架空のインボイスを提出をいたしまして不正に関税の減免税を受ける、こういう手口が一番考えられ得るものではないか、かように考えておるわけでございます。
  41. 塚田庄平

    ○塚田委員 インボイスをごまかす、これは私、普通の中小の輸入業者ではなかなか困難だと思うのですよ。これは大手だと思うのです。それは一番やりやすいのは、海外に支店を持っておるとかあるいは代理店を持っておるとか、あるいは技術協力をしているとか、そういう関係の会社同士のやりとりということになると、私はやはり大きいのは大手がやる、こういうことは考えられるのですが、一体どうでしょうか。
  42. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、送り先と共謀をしてにせのインボイスを送るということになりますと、本支店関係であるとか、あるいは代理店関係があるそういう会社同士でやる可能性が多いということはいえるかと思います。
  43. 塚田庄平

    ○塚田委員 私は、きょうはどうしてもその会社名を発表しませんから、A社としましょう。今度の脱税問題で一番大きな役割りを演じたA社の常套手段は、これは海外にたくさん支店を持っているわけですよ。そこでインボイスをごまかすということだということが、もうちまたでは通説になっているわけですよ、その会社は。そういう点で、こういう問題は早く摘発、捜査を進めて、私は当然これは関税法百十条に基づく最大の処罰を受けなければならぬ会社だと思うのです。この点の見解をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  44. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 現在調査中の段階でございますので何とも申し上げられませんが、私どもといたしましても、調査の結果を待ちまして非常に厳正な態度をもってこれに対処したい、かように考えておるわけでございます。
  45. 塚田庄平

    ○塚田委員 これはまあ国税庁は告発するだろうと思いますけれども、私はこの種のことを言うのは、たしか一昨年の十月ごろだったと思うのですよ、あとでいろいろまた質問しますが、生糸のいわゆる原産地の虚偽事件というのがあったと思うのです。端的にいいますと、いま問題になっておる中国産の生糸、それをイタリア産の生糸ということに——イタリアなんか生糸できるはずないですけれども、そういう幼稚なごまかしをやって関税をごまかしたという事件。これはもう名前ははっきりしている。伊藤忠です。こういう事件があって、これもあいまいになっちゃった。結果はどうなったか。非常に過去にさかのぼりますが、いつもこの種の事件というのはとにかくばあっと出る、あとはもううやむやに、何をやったかわからぬというのが、いままでのやり方なんで、たとえば一昨年十月のこの原産地の虚偽事件というのはどういう一体処理をしたか、お答え願いたいと思います。
  46. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 昨年の生糸にかかりまする関税の逋税事件につきましては、検察当局ともいろいろ協議をいたしました結果、犯則事実が判明をいたしました商社四社に対しまして、昨年八月に通告処分を行なっております。
  47. 塚田庄平

    ○塚田委員 この通告処分というのが、これがインチキなんですよ。おまえ、悪いことをやったから、今後やるなよという通告だけなんです。国税庁は今度の事件についてはおそらく同じようなことをしないで、告発の形で臨んでいく決意だろうと思います。先ほど厳重に、ということですから、これは局長もそういう決意だろうと思いますので、ひとつこの点についての事件処理の方針としては、これは厳罰をもって臨むということで、従来のような通告処分というような形式は、これはもう国民は承知しないと思うのですよ。そういう点で、ひとつ再度決意を聞きたいと思います。
  48. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 関税のこの今回の通脱事件につきましては、調査の結果を待ちまして厳重に、悪質な場合にはこれに対して対処をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  49. 塚田庄平

    ○塚田委員 そこでこれは、まあ局長の援護質問になるかもしれませんが、この発見は、この前同僚議員の質問の中では、事後調査の段階において発見された、こういうことでしたね。そうですね。
  50. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  51. 塚田庄平

    ○塚田委員 たとえば東京におけるこの事後調査部門を担当する職員は一体どのくらいいると思いますか、局長
  52. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 東京税関では現在十三名でございます。
  53. 塚田庄平

    ○塚田委員 十三名はこの東京の場合はツーラインですね。二つの部門に分かれていますね。そうすると一部門大体六名ないし多くて七名。課長以下です、これは。これだけの貿易量の中で、一つのラインが五名ないし六名。課長は外へ出ると思うのです。それで一体十分事後調査ができる体制であると思うかどうか、また、そういうわずかな人員でこういう大きな事件に狂奔しなければならぬという、そういう執務体制を一体どう思うか、この際ひとつ率直な意見を聞きたいと思う。
  54. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、今回の事件は事後調査によりまして見つけ出したわけでございますが、確かに昭和四十一年に申告納税制度を採用いたしたわけでございますが、いわゆる自主的な輸入申告というものを後に検査をいたしますのに、現在の員数で十分であるということはいえないかと思いますが、私どもといたしましては、今後関税の逋脱というものを捕捉いたしますためには、通関の際、税関といたしましては早く通関をするということを非常に強く要請をされていることも事実でございまするし、後ほどその通関があったものに対して、できるだけその事後において調査をする件数をふやしたほうがいいことには間違いないわけでございまして、今後そういう方向でできるだけ事後調査というものに関しまして、今回の経験にもかんがみまして、私どもも重点を置いてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  55. 塚田庄平

    ○塚田委員 この種事件を防止するには、事後調査の段階じゃなくて、少なくとも通関の段階で、あるいはまたできれば価格調査の段階でまず押える、これが一番穏当である、訂正を命ずればいいのですから。そういうのですけれども、、残念ながらいまの税関の事務体制というのは、価格調査についてはほとんど独自の能力を発揮するという体制にはなっていない。したがって、それは通関業者というのがあるのじゃないかといいますけれども、この通関業者は、業者との間ではいろいろと長年にわたる人間的なつながりあるいは関係、そういう中でインボイスの検査というのは非常におろそかになっているのが現状だと思うのです。これは一体どの時点でこれからチェックしていくか、その点についての局長意見をひとつ聞きたいと思います。
  56. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のとおり、通関の段階におきまして、インボイスと、それから輸入申告書に書いてありますところの金額が正しいものであるかどうかということをチェックをいたすことになっておりまするし、また輸入申告を出します前に、通関業者の側におきましてもそういうことを審査をいたすことになっておりますが、何ぶんにも輸入の件数というものが非常に多いという実態もございまするし、それから通関業者の立場を弁護するわけではございませんけれども、あまりうるさいことを申しますと、通関業者というものは非常に弱い立場にあるという実態もございまして、インボイスの数字と輸入申告書の数字というものが手続上合っているかどうかというような点に主たる照合の審査の度合いが、通関業者の場合には置かれているかと思います。したがいまして、私どもといたしましては、税関の通関段階におきまして、今後国外の価格調査係の機能というものをもう少し効率的に活用いたすようなことを内部体制としては考えまして、通関の段階におきまして、おかしいと思うような価格はできるだけつかまえ得るような体制にもっていくことが一番効果があるのではないか、かように考えているわけでございます。
  57. 塚田庄平

    ○塚田委員 今度の事件について、ひとつ角度を変えて……。いま関税率の審議会の構成というのは一体どうなっておるか。
  58. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 関税率審議会の構成は全体で委員は四十五名でございまして、そのうち政府側の委員と申しますものが九名でございます。
  59. 塚田庄平

    ○塚田委員 それからあとはどういう構成になっておるかということなんですよ。政府側委員だけじゃないでしょう。
  60. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 したがいまして、三十六名が民間の学識経験者の委員でございまして、九名が政府側の委員と、かように相なっているわけでございます。
  61. 塚田庄平

    ○塚田委員 そこで私は、その経験者ということなんですけれども、その経験者の中にいろいろと過去においても問題を起こしておる、また現在——端的に言います。今度の豚肉の脱税問題についても、一番大きな商社と目されて、もう新聞にも出ておるそういう関係商社の社長が、関税率の審議会の委員になっておるという事態を一体どう考えるか、この点ひとつ御答弁願いたい。
  62. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 現在関税率審議会の委員の中に、御指摘のように商社の社長あるいは副社長、相談役、そういったような関係で関税率の審議会の委員になっておられる方が三名おられます。こういうような方々に対しましては、いずれもいわゆる貿易の学識経験者ということで委員をお願いをいたしておるわけでございますが、たまたまその学識経験者としての委員の方の関係をしておられますところの会社に関税の犯則事件があった、こういうような場合、その違反の情状によりまして、私どもこれに対して委員をやっていただくかどうかということは考えなくてはならない、かように考えておるわけでございます。
  63. 塚田庄平

    ○塚田委員 私は、今度の犯罪というのは非常に巧妙だと思うのですよ。普通の税率ではなくて差額関税というところに、しかも非常に複雑な仕組みの——そういう仕組みを答申したのはこの審議会なんですよ。だから審議会は、端的な話をいうと、委員は一人残らずどういう仕組みでどうしたらどうなるかということは一番よく知っていると思う。その会社が違反した。その会社の社長がそういう審議会の委員になっておるということについては、これはいまのような答弁もありますけれども、私は国民に対してやはり疑惑の目をもって見られないためにも、いま容疑の段階において即刻措置すべきだと思うのだが、局長はどう考えておるか、これはひとつ……。
  64. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 おっしゃるように、これは確かに学識経験ということで個人という資格でやっていただいておるわけでありますけれども、しかしその方が主宰をしておられる企業が、そういう犯則を犯したということがはっきりし、またその内容についてあまりたちがよくない、悪質であるというような場合になりますれば、またこれはそのときで考えなければならない問題であろう。ただここでは、個人のことでもございますし、これをどうこうするということは政府側としては申し上げかねる、こういうことだと思います。
  65. 塚田庄平

    ○塚田委員 ひとつ国民の疑惑を晴らすためにも、なかなかこういうのはやりづらいことかもしれませんけれども、思い切ってやらぬと、いまこういう問題をめぐっての世論というのは非常に高まっておるわけですよ。商品投機の問題から見、あるいは物価高のこの時代に、だから政府も相当慎重にかまえなければならぬと思いますので、李下に冠を正さずの気持ちで思い切ってやるというふうに答弁を受け取っておきます。  さて、同じように観点を変えて、関税関係の高級職員——高級といってはなんですが、職員がそのまま貿易会社へ天下る、しかも重要な地位にそれぞれ天下っていくというケースが非常に多いんですが、この点は局長は一体つかんでおるかどうか、もちろんつかんでおると思いますが、この点が、今度の事件と直接関係ありませんが、一般的な概念としてやはり相当注意しなければならぬ問題だと思うので、その実態をここで明らかにしていただきたいと思います。
  66. 森谷要

    ○森谷説明員 お答えいたします。  税関職員のいわゆる現役をのいてOBになった方が貿易会社にだいぶ天下っているじゃないか、こういうお話でございますが、ここにつまびらかな数字を持っておりませんですが、私どもその衝に当たっている者といたしまして承知いたしておりますのは、税関職員の相当大多数の者は、いわゆる通関業者の嘱託ないしは役付職員として再就職いたしておるという状況でございます。なお、確かに思い当たる点と申しますと、地方の税関長を経験いたした者が数名商社の嘱託として通関業務の業務に当たっている事実はあります。
  67. 塚田庄平

    ○塚田委員 思い当たる節があるなんて、これはそういう簡単なものじゃないのですよ。いま大部分は通関業者の嘱託というか、そのもとでやっていると言いますが、私の調べたところでは、いまいろいろと問題になっておる、これは実際ですから発表します。伊藤忠、丸紅あるいはトーメン、三井物産あるいは日綿、三菱商事、数え上げれば切りがないのです。これはみんなどこそこの税関長あるいはまた関税中央分析所長とか、それぞれ要職についておる人たちがそれぞれ民間の商社に天下っていく、そういう形態、天下り人事ということについては、一般的な非難もありますけれども、特に税関の場合は、こういう形で輸入業者あるいは輸出業者へ入っていくということについては私は自粛すべきだと思うのです。この点一体次官はどう考えるか、御答弁願いたい。
  68. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 私も、どういう入り方をし、またどういう仕事をしておるのか、つまびらかにいたしませんが、しかし一般論として申せば、なるべくそういう点については自粛したほうがいい、こう思うわけであります。
  69. 塚田庄平

    ○塚田委員 それじゃ、先刻申し上げたとおり豚肉の問題については、早い機会にひとつ中間報告ができるように体制を進めるということで要望しておきたいと思います。  第二は、中国産の生糸の問題ですが、これは政令はもう出ましたね。
  70. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 十日の土曜日に政令が出ております。
  71. 塚田庄平

    ○塚田委員 中国の生産にかかる生糸について便宜関税を設定したわけですが、その趣旨について御説明を願いたい。どういう理由でやったか。
  72. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 今回中国の生糸というものに対しまして便益関税を供与するという政令を出しましたのは、国内の生糸の価格が非常に高騰しておりますので、外国から入ってまいります生糸の、ことに中国からの生糸のふえますウエートが非常に高いわけでございますので、国内価格の高騰を幾らかでも抑制をするという観点から中国産の生糸に対し便益関税の供与をいたすことにいたしたわけでございます。
  73. 塚田庄平

    ○塚田委員 通産省来ていますかね。——輸入課長で適当かどうかわかりませんが、輸入課長でもいいです、答えてください。そういう趣旨で生糸の関税を下げたわけですよ。便益関税にした。そこで実際現段階において生糸値段は下がっておるかどうかですね、この点について。
  74. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 農林省からはまだ来ておりません。
  75. 塚田庄平

    ○塚田委員 それじゃ、あとにしましょう。  中国については、かつて大豆、これは無税ですね、それから銑鉄については〇・五ですか、わずかな関税をやっている。こういう個別的に、実は関税引き下げを、貨物を指定してやる。したがって、現在はまだ数品目について国定関税のまま据え置かれているものがあると思うのです。どのくらいの品目で、それは大体どのくらいの輸入額になっておるかということについてちょっと説明していただきたいと思います。
  76. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 事務的に御答弁いたします。  従来関税格差解消品目につきましては、御案内のように四百五十五品目にわたってやってまいったわけでございます。従来関税格差未解消品目といたしましては御承知の八品目ございまして、生糸、絹織物、にかわ、ゼラチンがその内容でございます。四十六年、また四十七年に新たに輸入物品もふえております。四十六年の品目につきましては二十三品目かと思います。四十七年につきましてはただいま調査中でございますが、四十六年、四十七年を合わせまして約五十品目ではないかと思います。以上でございます。
  77. 塚田庄平

    ○塚田委員 きょうは農林省も来てないし、通産省も来てないんですが、実際下げたけれども、ちまたでは生糸の値段はあまり変わらぬというのが声だと思います。これはどこに原因があるか、これは国際的な生糸の値上がりという点にもあろうかと思いますが、私は、それよりもやっぱり国内産業の保護という面と、それから関税政策上、これから長い将来を見て、こういう差別品目を残しておくということは、特に中国の場合は、これはかつてと違って、もうすでに承認した国でもある。そういう面から、五十品目にのぼる差別品目を残しておくということは、私は国際的な感覚からいって不都合だと、こう考えておるんですよ。自分のところで値段が上がれば、大豆しかり、銑鉄しかり、生糸しかりですね、とにかく上がったものについて個別的に下げていく、これではあまりエゴというか、アニマルというか、それではこれからの長い中国との貿易づき合いというものはできないのではないか。  端的にいうと、この際思い切って五十品目全部についてそういう差別を撤廃すべき時期に来ているのではないか、こう考えておりますが、局長の率直な意見をひとつ聞きたいと思います。
  78. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、現在中国との間にはまだ格差のある品目があるわけでございますが、関税は国際的にも実は相互主義という観点からの判断が非常に大きなウエートを占めることが常識となっておるわけでございまして、この点は中国側も知っておるわけでございます。先般、政府のいわゆる事務的なレベルの人間が中国との間にお互いの事情を知り合うために、関税局からも人を出したわけでございますが、その際にも、現在日本に対して中国が適用をしております税率と申しますものが、中国側の一般税率が、いわゆる高いほうの税率日本に対し適用をされておるわけでございまして、そのお互いのそういう税率の適用のしかたというものに関しまして、今度貿易協定が結ばれるときには、その時を同じくしてお互いに最恵国待遇の税率を適用し合おうではないか、こういうことで事務的に考え方が現在一応一致をしているという段階でございまして、御指摘のように、中国と日本の将来の国交を考えます際に、できるだけ早い機会にお互いに最恵国待遇の税率を適用し合うような関係になることが一番望ましい状態か、かように考えているわけでございます。
  79. 塚田庄平

    ○塚田委員 そこで局長、西ドイツはすでに中国との間に最恵国待遇の協定を結んだことは御存じですね。そこで、訪中団の団長が帰って、西ドイツが声明をしているのですよ。その声明の内容を見るとこうなんですね。従来、西ドイツは中国に対して最恵国待遇をやっていた、この二国間協議をする前にとにかくやっていた、事実問題としてやっていた、今度の協定はそれを確認しただけだ。つまり西ドイツは、日本のように相手国がどうだこうだということでいつまでも待ってないで、すでに最恵国待遇を事実上与えている、それをあとで追認していく、確認する、こういう思い切った政策をとっておるわけですよ。平等互恵といいますけれども、私は資本主義の社会とそれから社会主義の社会の関税機能というか、これは根本的に違うと思うのです。だから日本のような概念で、向こうが差別しておるからこっちもだということではとらえられないものがあるのじゃないか。これは西ドイツは敏感に感じ取っているわけですよ。そして事実問題として最恵国をやっていたわけです。私はそのくらいの気持ちをいまから持って今後臨んでいくということでなければ、いまちょうど中国で航空協定の問題でがたがたやっているけれども、これはあとで聞きますけれども、同じようなことでなかなか進まぬ。やはりこれからの中国との貿易の関係等考えてみても、私は思い切って事実問題として最恵国待遇を与えるべきだ、できなければ、全品目について政令をしてそして便益関税を与えるという方策を、これは日本独自でできますからとるべきだと思うのですが、ひとつお考えを聞きたいと思います。
  80. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 一つのお考え方かと思いますけれども、現在日本に参っております中国の臨時代理大使の方とも私お会いをいたしましてお話をいたしました際にも、できるだけ早く日本と中国の間に貿易協定が結ばれて、その際にお互いに最恵国待遇を与え合うような間になろうではないかという話し合いをいたしまして、先方もそれに対して納得をしておられる状況でございますが、場合によりましては、貿易協定の結ばれるのが非常に時間が長くかかる、こういうようなことでも相なりますると、少なくとも関税だけに関してでも中国との間で協定と申しますか、取りきめのようなものが早く結ばれるように、私どもといたしましても努力をしたい、かように考えているわけでございます。
  81. 塚田庄平

    ○塚田委員 私は、そう言うのは、台湾の問題があるからですよ。これが中国だけだったら、いまのような局長答弁も私は了解したいと思うのですけれども、しかし台湾の問題があるのでおそらくこのままの状態では関税交渉というのは非常に長くなるだろう、やはり台湾がネックになってくると思うのです。なぜかというと、日本では台湾については最恵国待遇をしているでしょう。最恵国待遇だけでなくてそれにプラスして特恵待遇もやっているではないですか。つまり、チョウよ花よとなでているわけですよ。最恵国と特恵と両方プラスしてやっているわけです。しかも共同声明の中では、台湾はもう中国の不可分の領土の一部だということが決定されていながら、わざわざ政令まで改めて「国」のうちに「その一部である地域」というのを加えながら台湾を保護しているわけです。そういう関係が、おそらく、何月から始まるかわかりませんが、聞くところによると五月ごろから、国会が終わってからゆっくりかかるという話ですが、ネックになると思うのです。そういう台湾との関係からいっても、私はもう端的に言うと、台湾にはあらゆるものを、そういう特恵的なものをやる必要はない。これは関税にしても、あるいは円借款にしても、あるいは今度の航空の問題にしてもそのとおりですよ。と思うけれども、それはそれとして、原則論として、実際問題としていまやらなければならぬのはこの関税の問題だ。ここでやはり障壁を取り払うべきだ。これがこれからのあらゆる交渉のいい糸口になっていくのではないかと思うので、これはひとつ大蔵省として十分考えなければならぬことだと思うのですが、どうですか。
  82. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 これはいわゆる中国、台湾問題という非常に高度の政治的な問題でございまして、これに対して日本といたしましていかに対処するかという基本的な問題が背後にあろうかと思います。関税の面に関しましては少なくとも私ども事務レベルの間の話し合いにつきましては、何回も繰り返して恐縮でございますけれども、ただいま、先ほどお話をいたしましたような話し合いが中国との間で一応でき上がっておりますので、少なくともできるだけ早い機会関税の問題に関しましては先方の中国政府に対しましてアプローチをするということが非常に大切であるのではないかと考えておるわけでございます。したがいまして、できるだけ早い機会におきまして一回中国側とアプローチして先方の感触もさらに確かめてみたい、かように考えております。
  83. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 ちょっと関連して。関税局長、前にここで議論された中国からの肉輸入の問題、口蹄疫の問題、これはまだ解決しないのか。それからもう一つは、中国から入ってくる内臓、ホルモン剤、ホルモン焼きの材料ですね、これは煮沸したものでなければいけない、こういう措置はまだ続いているのかどうか。もうすでに七、八年前に大蔵省は善処してこれは前向きに検討するということを約しているのだけれども、現状はどうなっているか。まだ差別しているのか。
  84. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 いまの口蹄疫の問題は、大蔵省関税局ではちょっとわかりかねるわけでございます。
  85. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、現実に輸入はされておりますか、中国からの牛肉は。現実はどうですか。まだ認めていないのですか。それと、いまの百度の温度に一回通さなければ中国のものは高い税率で——この前は腐るまで横浜でぶつ積んだままになっておったのですが、その後処置するわけですが、私がこの前質問したときに——それも相変わらず同じですか。煮沸しないものは輸入関税はとっているのですか。あれは改善しましたか。——これもわからぬというのであれば……。
  86. 塚田庄平

    ○塚田委員 そういうことで、それでは政府間交渉は大体何月をめどにしていますか。
  87. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 全体の貿易交渉は私どもといたしましても何月をめどということはちょっと外務省のほうにあれしていただかないとわかりませんけれども、その関税に関しましても、いまのところ何月ということの具体的な計画があるわけではございません。しかしながら、私といたしましては、関税だけに関してでも早く交渉を始める意図があるのかないのかというところから、中国側政府に対してもアプローチをいたしてみたい、かように考えておるわけであります。
  88. 塚田庄平

    ○塚田委員 これは何べんも言うようですけれども、そのときに今度の航空協定と同じように、一体日本は台湾に対してどういう考え方を持っておるのか、関税だけに限ればいま台湾に与えておる最恵国待遇あるいは特恵待遇というもの、これを一体このまま残すのかどうかということがやはり一番大きな焦点だと思うので、話が進めばその点についてはこだわらないんだということなのか、これをひとつ、たいへんむずかしい問題かもしれませんが、考え方を聞かしていただきたいと思います。
  89. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 日本と台湾との外交関係は、御存じのようにもう切れたわけなんですが、経済的な関係はまだ続いているわけでございます。その関係を今後の日中間の外交交渉の上でどういうふうにしていくのかということがまた、私は話し合いの内容になるだろうと思うのですが、そういう交渉を通じてそういう問題をどう考えていくかということはだんだんとはっきりさせなければならない、またはっきりしていくだろう、こう思います。これはまあこれからの外交交渉にまたなければなりませんが、少なくとも外交関係は切れて一本化されたという一つ方向は出ておるわけでありますから、そういう一つ方向が出ておるということを踏まえて、これから外務省あるいは大蔵省が中国と接触をしながらその中で考えていく、こういうことであろうと思います。
  90. 塚田庄平

    ○塚田委員 では、その点はそういうことでひとつ進めていただきたいと思います。  また便益関税の問題に戻りますが、日本関税構造というか、これは日本経済の構造に影響されて、とにかく原材料についてはできるだけ安い関税を、製品については比較的高い関税を、こういう構造を伝統的に持っていたと思うのですよ。つまり、日本は原料はないのですから。しかし、最近になりまして、その構造は、これは外貨が非常にたまったということ等いろいろな原因から、それは検討し直さなければならぬというのが審議会あたりの答申から出ていると思うので、つまりそういう面からいって、私も製品の輸入あるいは半製品の輸入ということは、これからの日本経済の大きなポイントではないかと思うのですよ。  さて、中国の問題について、生糸については一五%を七・五%に下げた、この点は、生糸はまだ原材料ですから。で、いまのような転換しなければならぬという観点からいえば、絹を原材料としたいろいろな織物があると思うのですよ。これは綿も同じですけれどもね。どうしてこういうものを残しておくのか。生糸の減税と同様こういった製品についても早く便益関税を適用するという方策をあわせてとることが、やはりこれは理屈の帰結だと思うのですけれども、どうでしょうか。
  91. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 現在わが国の絹織物業者の大部分、約八三%に相当いたします業者と申しますものが、織機が十台以下のいわゆる家族労働を主体といたしますところの零細企業でございまして、これは最近確かに生糸の価格が高騰いたしておりますので、これらの企業は非常に原料難、そういう難問に直面をいたしておりまして、これらの絹織物業者の採算が悪化をいたしておるわけでございます。それから一方、中国からの絹織物の輸入価格は最近でも昨年に比べまして一〇%ほど値下がりをいたしておるわけでございまして、これは現在の関税率がその輸入を阻害をしている、こういうふうには私ども考えておりませんので、現在のところ中国からの絹織物に対しまして便益関税を供与するということを考えておるわけではございません。
  92. 塚田庄平

    ○塚田委員 いま局長の言ったことですが、これは中国では日本だけの品物が高いとか安いとかいうことによって向こうで輸出するとかしないとかいうことはないのですよ、商社じゃないのですから、社会主義の国ですから。経済の計画に従って、今度は幾ら日本に輸出したらいいかということなんで、私の言うのは、さっきの原則に戻るわけですよ。これからの貿易交渉の中でそういう構造に転換しなければならぬと言っておるし、またお互いに最恵国待遇をやるという面からいってもそういう積み重ねこそ必要じゃないかという点を言っておるわけですよ。それはひとつそういう点で考慮してもらいたいと思うのです。  いま中国の問題を言いましたが、国交回復のない北朝鮮あるいは北ベトナム、これとの貿易も今後はどんどん盛んになっていくということが予想されると思うのです。朝鮮にしましてもベトナムにしましても、一応国内の情勢としては好転してきていますから、特に朝鮮の場合は生糸の輸入ということがやはり考えられます。韓国との間にばく大な差があるわけですよ。生糸は韓国は無税でしょう。
  93. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 七・五%であります。
  94. 塚田庄平

    ○塚田委員 中国と同じですね。それにしましても、朝鮮はおそらく一五%じゃないかと思うのです。いま国交はないけれども、かつて中国に対してわれわれが叫んだと同じように、貿易については便益関税をどんどん与えていくという方向で善処すべきだ、こう思うのですが、どうでしょう。
  95. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 先ほど来申し上げておりますように、便益関税の供与と申しますのは、原則といたしまして、基本的には相互主義の原則ということで、相手国側が日本側に対して最恵国待遇を与えます場合に、日本側も相手に対しまして最恵国待遇と同様の税率、すなわち便益関税を適用するということがたてまえになっておるわけでございますが、たてまえ論だけを言っているわけにはまいりませんで、今回日本国内物価の生糸の高騰ということがございまして、中国産の生糸に対しまして便益関税を供与いたすことになったわけでございますが、中国の場合にはすでに国交が回復をいたしておるわけでございます。北鮮あるいは北ベトナムに関しましては現在国交が開かれておりませんし、相手の関税制度それ自体も私どものところでも実はつまびらかになっておらないわけでございます。したがいまして、現在のところ北鮮あるいは北ベトナムに対しまして便益関税の供与をするということは考えていない次第でございます。
  96. 塚田庄平

    ○塚田委員 これは私としては、朝鮮との貿易額も年々上がってきていますし、北ベトナムとの関係はまだ微々たるものですけれども、おそらくこれから食料品その他の面についていろいろなあれが出てくると思うのです。そういう面で、かつて中国を承認しないときに大豆や銑鉄について処置したと同様な考え方で、やはり未承認国に対しても処置をすべきじゃないか、これはひとつ強く希望をしておきます。  最後に、貿易は年々輸出入総額がどんどん膨張してきております。しかし残念ながら関税処理の段階で、非常な人手不足でさっき言ったようないろいろな不測の事件も起きてきているわけですよ。私は特に税関の場合考えるのは、現場職員というか、実際に関税事務に当たる職員のウエートが額に比べて非常に低い。これを税関の場合特に痛感するわけです。   〔大村委員長代理退席、委員長着席〕 それで、管理部門じゃなく現場の職員についてもっと考えないと、これからの貿易量に対応した事務処理なりあるいは関税政策の遂行ということは困難だと思うのです。この点、非常に抽象的な質問になりますけれども、ひとつ局長の決意を聞きたいと思います。
  97. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 税関の現場職員に対しましての仕事の面に関して、先生から非常に御同情のある発言をしていただきまして、私も非常にありがたいと思いますが、確かに年々歳々輸入が増加をいたしておるわけであります。しかも世界から、日本の非関税障壁ということの中に、いわゆる税関のせいでないものも、税関のために日本に対して輸出がしにくいんだという声も現実問題として聞くわけでございまして、こういう観点から、私の立場といたしましては税関の現場職員の数もさらに充実をいたしまして、特にこれから輸入が非常に重要なときにあたっておりますので、今後も人員あるいは予算の要求というようなことにもその方向で私も全力をあげて当たりたい、かように考えておるわけでございます。
  98. 塚田庄平

    ○塚田委員 最後ですが、関税政策というのは、国の全体的な政策との関連というようなことを当然考えなければなりませんが、やっぱり関税は一面において現実に起きておるいろんな事象に即応する体制を機動的にとる、税率にしましてもね。と同時に、長い見通しの中で税率を定めないと、両国間の国交問題にも非常に響くような事態があると思うのです。たとえばさっき質問がありました金の問題なんかは、きょう現在、金を持ち込めばこれは犯罪者ですよ。ところが、金はおそらくいずれは自由化されるでしょう。そうなりますと金を持ち込んだ者は英雄ですよ。まあ、国から褒賞でももらわなければならないようなことになる。きのうまでは犯罪者、きょうからは英雄、こういうようにくるくる変わる見通しのないやり方は、関税の面でもひとつぜひ改めてもらいたいと思う。政府もこの間の答弁で、野党のほうが見通しがあった、こういうあれがあったらしいのですが、それは関税の面でも言えると思うので、その点ひとつ十分留意してやってもらいたい、こう考えておるのですが、最後に決意を聞きたいと思います。
  99. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、関税面に関しましても昨年十二月に長期答申をいただいておるわけでございまして、その答申の中の方向と申しますものは、それ自体関税のあり方、正しい方向を指し示していると思います。私も、この答申の線に沿いまして、その新しい観点からの関税の見直しということを真剣に考えまして国益に沿いたい、かように考えておるわけでございます。
  100. 塚田庄平

    ○塚田委員 終わります。
  101. 鴨田宗一

    ○鴨田委員長 午後二時より再開することにし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十四分休憩      ————◇—————    午後二時十三分開議
  102. 鴨田宗一

    ○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。高沢寅男君。
  103. 高沢寅男

    ○高沢委員 関税定率法改正について御質問申し上げます。  初めに、この三月一日の予算委員会で、まだ自由化されていない農産物の二十四品目、これを自由化した場合に国際収支上の影響がどのくらいあるか、こういう質問があって、農林大臣から約五億ドル、こういうふうな見解の表明があったわけですが、同じような意味で、昨年の十一月二十二日から関税の二〇%一括引き下げが行なわれたわけですが、この措置をとられた大蔵省が、これによって年間どのくらいの国際収支上の効果あるいは影響があるというふうにお考えになっていたか、そこをお尋ねいたします。
  104. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 昨年の十一月にやっていただきました関税の一律二〇%引き下げ関税引き下げますと当然輸入価格が下がりまして、それだけ輸入増大効果があるわけでございます。昨年やっていただきましたのは、主として鉱工業製品並びに加工食品を中心といたしまして千八百六十五品目やったわけでございますが、これによりまして、私どもの試算によりますと——関税によります輸入増大効果と申しますのは、一応有税品の輸入額に対しまして関税引き下げ率をかけまして、さらにそれに対しまして輸入の関税負担率に対する弾性値をかけてはじき出す計算をいたすわけでございます。品目によりまして弾性値は若干違った弾性値でございますけれども、私どもの試算によりますと、昨年の十一月にやっていただきました一律二〇%引き下げによります輸入増大効果は、四十八年度、いわゆる平年度ベースに換算をいたしまして、約二億八千万ドルというように計算をいたしております。
  105. 高沢寅男

    ○高沢委員 そういたしますと、あの措置がとられたころも円の切り上げがまたあるんじゃないかというふうなことがいわれていたわけですが、この二〇%の関税引き下げ措置は円の切り上げにかわり得る措置である、これをやれば再度の円切り上げは必要がない、これにかわり得る措置であるというところまで期待をされたかどうか、二億八千万程度じゃあまりたいした額じゃないと思うのですが、その辺はどうですか。
  106. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御承知のように、日本貿易収支の黒字というのは、今年度約四十億ドルをこえるものでございまして、いわゆる輸入増大効果と申しますのは二億八千万ドルということで、いろいろな円対策の一環として関税引き下げも補完的な効果を期待はいたしておりましたけれども関税を一律に二〇%引き下げるだけの問題で、貿易収支の問題がすべて解決いたすとは当時も考えておりませんでした。
  107. 高沢寅男

    ○高沢委員 それから、わが国の場合、現在残存輸入制限品目三十三品目あるわけですが、これに対して国際的にこれをはずせはずせという声が盛んに出ているわけですが、かりに三十三品目をすべて制限をはずした、こういうふうにした場合に、先ほどお尋ねしたと同じ意味で年間どのくらいの国際収支上の影響が考えられるか、これはどうでしょう。
  108. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 実は輸入の自由化の問題は、関税局の所管でございませんので、私からお答えをいたすことは適当でないかもしれませんけれども、私どもが聞いておりますところによりますと、農林省は、先般の予算委員会におきまして農林大臣がお答えになりましたように、残存輸入制限品目二十四品目を自由化することによりまして約五億ドル、それから通産関係物資の自由化、これもなかなか現実の計算は非常にむずかしいらしゅうございますけれども、要するに、かりに完全に自由化をするということにいたしますと、約五億ドル見当内外ではないかというような話を私聞いております。したがいまして、残存輸入制限全部で合計約十億ドルというようなことが一応考えられるのではないか、かように考えます。
  109. 高沢寅男

    ○高沢委員 そこで、これに対して盛んに諸外国から輸入制限をはずせという強い声が繰り返し出ているのですが、これについて、今後その三十三のうち幾つとか、あるいはまた全然はずさないとかいうふうなこれからの対応のしかたがあると思うわけですが、この辺はどういうふうにお考えになっておりますか。
  110. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 実は現在自由化をされておりません品目に関しましての所管は、大蔵省でございませんので、私がお答えをする立場にあるかどうかわかりませんけれども大蔵省立場といたしましては、やはり総論的には、今回、現在の日本の置かれております立場から申しまして、できるだけ自由化方向で対処する、そのかわりに、自由化をすることによりまして、いろいろな業種に対しましていろいろな波及効果があがるわけでございますから、それに対する対応策を十分に考えつつ、徐々に自由化するという基本的な態度であろうかと思いますが、現実問題といたしまして、現在残っております三十三品目の非自由化品目と申しますのは、いわゆるハードコアと申しますか、いろいろなむずかしい問題があって今日まで自由化をできなかった品目が残っておるわけでございます。したがいまして、これを今後いかなるテンポによりましていつどうするかという問題は、やはり慎重に検討をしながら進めていかなくてはならないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  111. 高沢寅男

    ○高沢委員 先ほど二〇%の関税の一括引き下げで平年度約二億八千万ドル、そういう影響を見込んでお答えがあったわけですが、あれから十二月、一月、二月と約三カ月経過しておりますが、この間の実績としてはどんなような数字が出ておりますか。
  112. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 昨年の、四十七年の一月から十一月までの輸入の対前年同期比の伸び率が一一七・六%であったわけでございますが、四十七年十二月、すなわち昨年の十二月は、対前年同期一三四・六%、さらに四十八年の一月が一三二・二%、さらに先月の、ただいまのところ中旬までの数字しか出ておりませんけれども、通関実績におきまして対前年同月比一四三・一%と、非常に輸入の増大傾向が顕著に出ておるわけでございまして、このうちどのくらい関税引き下げの影響があったかということは、これはちょっと数字をもってお示しできませんけれども、やはりこれも輸入増大傾向に対して一つの働きをなしておる、かように私ども考えておるわけでございます。
  113. 高沢寅男

    ○高沢委員 昨年の国会で対外経済関係調整措置法案をお出しになって、これはまあ結果としては成立しなかったわけですが、この中で、関税率の改定について、政令によって弾力的に改定していくという、こういうふうな措置をお考えになっていたわけですが、こういう措置を今後についてはどういうふうにお考えになっていますか。やはりやる必要がある、また、そういう法案も立法化したいというふうなことはどういうふうにお考えになっておりますか。
  114. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 昨年の対外経済関係調整措置法案の中におきましても、関税のいわゆる政令委任と申しますか、関税引き下げるに関して政府が権限をいただいてやるという内容は、含まれておりませんでした。で、今後におきましても、盛んに新聞紙上等に出ておりますが、との問題は非常にむずかしい問題でございまして、要するにいわゆる憲法上の租税法定主義の問題であるとか、あるいは国会の審議権の問題、いろいろな面におきまして非常にむずかしい問題がありますけれども、一般的に申し上げまして関税を——今回中国に対する生糸の関税を、便益関税を供与することによって引き下げたわけでございますけれども、一般的に最近のように国内の物価問題その他が非常に大きな問題になっておりますときに、何か要するに歯どめと申しまするか、そういうような基準を求めることができますれば検討に値する問題ではないかと私考えておりまするけれども、現在のところ考えておりません。
  115. 高沢寅男

    ○高沢委員 通産省見えていますね。第三次円対策の中で、輸出貿易管理令の発動ということが行なわれたわけですが、このことでちょっとお尋ねをしたいわけですが、ことしの一月以来、輸出貿易管理令を発動された品目はどんなようなものが対象になっておりますか。
  116. 柴田益男

    ○柴田説明員 一月から貿管令を発動いたしましたのは、自動車関係四品目でございまして、乗用自動車、貨物自動車、車体並びにシャーシー及びオートバイでございます。引き続きまして二月一日から七品目に貿管令を発動いたしましたが、その対象品目は家庭用電気機器、ラジオ受信機、ステレオ、テープレコーダー、カメラのレンズ、三十五ミリカメラ、八ミリ映画撮影機の七品目でございます。
  117. 高沢寅男

    ○高沢委員 同じようにこの発動によって、これを年間にしてどのくらい国際収支上の輸出抑制の効果が期待できるか。この辺はどういうふうにお考えになっていますか。
  118. 柴田益男

    ○柴田説明員 今回の輸出調整措置の対象にいたしておりますのは、ただいま申し上げました貿管令対象の十一品目以外に、業界の自主調整によるものとして、輸出入取引法に基づく協定あるいは輸出水産業振興法に基づく調整というものを含めまして二十品目ございますが、これによる当初の輸出の減少見込み額は約十億ドル弱でございます。
  119. 高沢寅男

    ○高沢委員 これも実施されてまだ月数はたいしてたっておりませんが、それは大体期待される効果がいままでの実績で出ておる、こういうふうにお考えになりますか。
  120. 柴田益男

    ○柴田説明員 貿管令の対象期間は、昨年の九月からことしの八月三十一日までの一年間の輸出を調整するということで対象としておりますが、通関統計が公表されておりますのは去年の十一月まででございまして、速報で数品目について一月まで実績が把握できるわけでございますけれども、その一月までの速報で把握できる数品目について類推いたしますと、全体の調整ワクの中で輸出が行なわれている、かようにわれわれ判断しております。
  121. 高沢寅男

    ○高沢委員 また大蔵省のほうへお尋ねをいたしますが、ことしの一月の段階で、大蔵省では輸出税の構想検討されたと思うのであります。この輸出税の構想は、いまの段階でどういうふうにお考えになっていますか。やる必要がありとお考えかどうか。
  122. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御承知のように、対外経済関係の調整をはかりますためには、通貨通商両面におきまして、あらゆる総合的な施策を講じなくてはならない必要があると思います。特に通貨の調整は、わが国の経済全体に非常に大きな影響を及ぼすものでございますので、政府といたしましても、従来から通商上の施策による対外経済調整につとめてまいったわけでございますが、ただいま通産省から御説明がございましたように、現在のところ、その輸出面に対する調整といたしましては、何よりも貿管令によってこれを行なうという政府の方針で対処をいたしております。輸出税といわゆる貿管令による輸出の調整と申しますものの経済効果は、同じ効果を持つわけでございまして、この点に関しまして、現在貿管令がはたしてどういう効果を持つものかということを、いましばらく見守りまして検討をいたす必要がある問題ではないかと考えております。
  123. 高沢寅男

    ○高沢委員 かりに伝えられるように、輸出税を設けてその税率が一〇%というふうなことになった場合、これによって国際収支上の効果がどのくらい期待されるとお考えになりますか。
  124. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 これは輸出税を一体どういう税率で、たとえばいま一〇%というお話がございましたけれども、かりに私どものほうが事務的に考えましても、輸出税をかける品目を例外なく全部の品目に対して輸出税をかけるということは、これはやはり国際競争力のない、いわゆるそんなに強くない業種というものもあるわけでございまして、現実問題としては輸出税をかりに創設をいたしましても、全品目一律にかけるというようなことはなかなかむずかしいかと思います。したがいまして、いろいろな仮定の条件が——まだいまのところ輸出税を現在の段階におきまして設けるという考え方はございませんので、これが輸出面におきましてどのくらいの効果があるかという計算はいたしておりません。
  125. 高沢寅男

    ○高沢委員 いまのお答えは私どもはわかるわけです。そこでこれは、これからの円の切り上げの問題に結局からんでくるわけですが、いまは変動相場制でやっているわけですが、これは当然いずれかの時期にレートを設定して、そうして何%という円の切り上げがきまってくるわけですが、そうなりますと、これは対外経済関係では貿易に関係する、これは大手から中小企業からつまり全体にこの効果というものは及んでくるというふうなことになるわけですね。それに対して、かりに輸出税というようなものをやろうとすれば、これはどういう品目に対して適用するというふうなある程度選択的あるいは選別的な適用ができるわけですね。非常に輸出の伸びの大きいものとかあるいは鉄だとか自動車だとかというふうなそういう相手の対象をきめて適用ができる。こうなりますと、私はその政策効果が中小企業等に及ぶことを避けて、しかも効果的に国際収支上の効果をあげていくという、こういうふうな考え方からすれば、むしろ輸出税という考え方は積極的に検討すべきものじゃないか、こういうふうに考えるわけですが、いかがでしょうか。
  126. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 これは全く御指摘のように、かりに輸出税を検討いたします場合、私ども事務局の立場といたしましても、先ほど申し上げましたように、一律的に輸出税をかけるということはなかなかむずかしい問題、いわゆる選択的課税ということに相なるという性格のものであるべきである、かように考えております。したがいまして、御指摘のように輸出税を設ける場合の効果といたしましては、選択的な課税ができるということで非常にいいではないかというお考えはまさしく私どもも非常に価値のある御意見であろうということでございまして、私どもやはりこれからあらゆる手段、いわゆる輸出対外調整手段としていろいろなものを検討していかなくてはならないと思っておりますけれども、輸出税という問題に関しましても、一体どういう点に問題があるかということも含めまして、慎重に検討させていただきたい、さように考えておるわけでございます。
  127. 高沢寅男

    ○高沢委員 ここで、これは非常に高度な政策選択の問題になりますから、私は政務次官にお答えをいただきたいわけですが、先ほど申しましたように、中小企業関係のほうではすでにいろいろの製造の原料価格が上がっているとか、あるいはいますでに変動相場制の結果として非常に大きな影響を受けているとか等々のことがあるわけですね。それに加えて正式にレートが設定されるときに、またかりに、伝えられるように二〇%も円のレートが切り上げになるといったふうなことになってきますと、中小企業関係で貿易に携わる人にとっては非常に大きな打撃になる、こういうふうに考えます。  そこで、円の切り上げの率が一定の線がかりに出てくるとすれば、その段階でその切り上げの率は半分にとどめて、あとの半分の効果をいま言ったような選択的に適用される輸出税というものでそういう効果をあげていく、つまり輸出税と円レートの切り上げというそういうふうな政策手段を組み合わせて、そして妥当な効果を出していく、中小企業には打撃を軽くしていくというようなそういう考え方は私は非常に必要じゃないか、こう考えますが、政務次官のお考えをお聞きしたいと思います。
  128. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 いまお話しのは、円のレートをきめるきめ方の上において輸出税というものを片方で考えながらなるべく小幅に、こういうお考えのようであります。これも確かに一つのお考えかと思いますけれども、変動制でありますけれども、いずれは固定制に戻るということであります。その際に切り上げになるというのが常識になっておりますので、中小企業に対する影響をどうつかまえ、またこれにどう対処していくかというのが政府としてもいま苦心しておるところであります。金融上の措置についても早くやりたいということで、いろいろいま研究をいたしておるわけであります。  そこで、いま輸出税というものを考える、輸出税はいま局長がお答えいたしましたように、貿管令でやる場合と同じような効果を持つものだということもありまして、実はまだいまお答えしたように、輸出税についてあまり突き詰めて大蔵省でも検討していないという段階にあるわけであります。そういうところでこういう円のフロートという問題が起きてきておることもありまして、まだ輸出税についてそれほど前向きに早急にやらなければならぬ情勢でもない、こういうわけでございます。  そこでお話しのような両方うまくてんびんにかけたような器用なことが一体できるのかできないのか、これは私は非常に検討を要し、研究を要する問題ではあろうと思いますけれども、しかし円のレートの問題は円の実勢そのもので考えていかなければならない。これは対外的にいろいろ外国との関係も考えながらきめていかなければならない。あまり低くてもいけないし、もちろん高いこともいけない、こういうきめ方を、全体として円の実勢を見てきめていかなければならぬという問題がありますので、それを輸出税のほうで差し引きずるような、そういう器用な考え方が円のレートをきめるときに成り立つかどうか非常に困難があるのではないだろうか。そういううまいぐあいにきまって、日本経済にぴたり適応するようなことができるかどうかというのが政策の問題として非常にむずかしいのではないだろうか。しかしもちろん、中小企業を立ち行くようにしていかなければならぬということは一方においてどうしても考えていかなければなりませんから、それはそれとして、一つ真剣に取り組んでいくということでなければならぬことはもちろんであります。そういうような考え方であります。
  129. 高沢寅男

    ○高沢委員 円のレートの問題は、確かに実勢から結局結論が出ていくということになるわけですが、その実勢というのも、具体的なものさしとしては、結局国際収支でどのくらいの黒字がこちら側で出る、相手側のアメリカなりそういうところでどのくらいの国際収支上の赤字が出る、こういうふうなところから結局実勢というようなものの判断も出てくるわけですから、そうすると、もう一回申し上げるわけですが、たとえば貿易管理令というものをいま現にやっておられる、さらに加えて輸出税というふうな対策もとられるというふうなことが、まだフロートしているその間にそういう策がとられていって、そして結果としてアメリカとの関係なりあるいはヨーロッパとの関係におけるそういう国際収支上のバランスが、かなり従来と違った効果がそういうところで出てきたというふうなことになってくれば、当然フロートしておる円のレートの設定にあたっても、言われるよりも低いレートの切り上げでもって事が済むというふうなことも当然考えられるわけですね。そういう意味から実勢でもってきまるということであるわけですが、その実勢できまるのをある程度こちらから政策的に動かしていく、フロートしているうちにそういう手を打っていくというふうな考え方はあっていい、私はこう思うわけですが、もう一回次官のお考えをお聞きしたいと思います。(私語する者あり)
  130. 鴨田宗一

    ○鴨田委員長 静粛に願います。
  131. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 確かに各国ともそれぞれその国の通貨のレートをきめるときに、いろいろな政策をそれぞれ使いながらそれぞれの通貨の実勢がきまっていくということには間違いないと思います。もちろん円につきましても同じことが言えるわけなんで、いまおっしゃるように、いままで円対策としていろいろ政府がやってきておりますが、ものによっては若干ニュアンスはあると思いますけれども、円対策自体はやはり引き続き進めていかなければならぬ。その円対策を進めていく上において、円の実勢というものがだんだんにきまっていくということでもあろうと思うのです。そういうことになりますれば、いまの輸出税の問題も、おっしゃるような何がしかのメリットというものもある。しかし、貿管令というものがいまございますから、貿管令をできるだけ運用しながら、輸出税というものにこだわらずに、貿管令で同じ効果が出せるものでありますから、貿管令の運用で当面はやっていったらどうであろうか、こう思うわけであります。
  132. 高沢寅男

    ○高沢委員 ともかくそういうふうな円のレートの扱いで、中小企業者関係が受ける打撃がなるべく軽くて済むような、そういうふうな対策については大いに今後も研究していただき、また努力をしていただくようにお願いしたいと思います。  次に、いまわが国のそういう国際収支上の問題が非常に焦点になっております。戦後長い間、とにかく輸出を伸ばして外貨をかせぐということがすなわち善である、ここに国の政策目的がすべて集中されるという形でやってきて、いまこの段階に来て、あまり国際収支を黒字にするのはよくない、あまりに外貨をかせぐのはよくないという形に、そういう意味では政策を進める価値基準がいまここで変わりつつある、こういう段階に来ているわけですが、こういうふうな段階になってみると、一そうわが国の経済構造が、言うならば輸出優先型のそういう経済構造である、そしてまた関税の構造もいわばそういうふうな形になっている、こういうふうにいえると思うのであります。一九七〇年の統計数字でわが国の輸入の構成を見ても、日本の輸入総額の中で原材料関係の輸入が五九・四%になっている。それから半製品の輸入が二二・七%、製品の輸入が一七・九%ということで、わが国の場合には圧倒的に原材料の輸入が大きくて、製品の輸入が小さい。西ドイツを比べてみると、西ドイツの場合は、原材料輸入が二一・九%、半製品が四一・三%、製品の輸入が三六・八%、またフランスをとってもほぼ同じでありますが、原材料は二三・八%、半製品は三五・五%、製品が四〇・七%というような形で、西ドイツ、フランスと比べて、日本の場合には輸入の構造に非常にはっきりとした、原材料を入れてこれに加工して輸出していくという、こういうふうな形がはっきりと出ているわけですが、これに対応して、いわゆるタリフエスカレーション、これも非常にはっきりとしたそういう構造に対応した形になっているわけです。このことについては関税率審議会の答申の中でも、非常に根本的な問題として指摘をされているわけですが、この是正の方向について、これは多少長期的な展望が必要になると思いますが、是正の方向についてどういうふうに将来を展望されているか、お尋ねしたいと思います。
  133. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、日本の輸入をいたしますものそれ自体が、原料が多くて製品が少ない。これは日本が不幸にして非常に天然資源に恵まれていないという、日本のそういった与えられた体質というものにも非常に影響があるかと思いますが、確かに今日までの関税体系におきましても、今日までの関税体系と申しますのは、いわゆるタリフエスカレーション、原料に安く、製品に高いという関税体系の機構は、これは否定できなかったものと思います。  したがいまして、昨年度の長期答申におきましても、そういうタリフエスカレーションの形を改めていくべきであるという答申がなされておるわけでございまして、私どもといたしましても全く同感であるわけでございます。昨年の一律二〇%の引き下げも、そういったようないわゆるタリフエスカレーションを幾らかでも改めていこうという意思があったわけでございますが、最近におきまして、日本も徐々にいわゆる実行税率におきまして、タリフエスカレーションというものも改めていきつつあるわけでございます。一律引き下げ前におきまして、日本の製品関税の平均関税率が一〇%であったわけでございますが、一律引き下げ後は、その製品関税の実行税率が八・五%に下げられておるわけでございまして、これは確かにまだアメリカであるとかあるいはEC等に比べて若干高いわけでございます。たとえばアメリカにおきましても、製品の関税の平均関税率は八・四%、イギリスにおきまして八・二%、ECが八・〇%ということで、日本が八・五%に相なったわけでございまして、いわゆる先進諸国とほぼ同じような平均関税率の水準に向かいつつあるということは言えると思いますし、さらに私どもといたしましては、今後この方向を推進をしてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  134. 高沢寅男

    ○高沢委員 次は、特恵制度の問題についてお尋ねをいたします。  昭和四十六年の八月一日から四十七年の三月三十一日の間の実績で、わが国の総輸入額が四兆四千二百五十八億円、その中で特恵受益国からの総輸入額が一兆七千二百四十億円、その中で特恵を適用している品目の輸入額が四百四十五億円、こういうことで結局特恵制度に基づく輸入額は総輸入額に対して一%、それから特恵受益国の総輸入額に対して二・六%というふうなことで、このパーセントの数字から見ればきわめてまだ微弱な数字である、こういうふうに言えると思うのです。  これは国際的にもいわゆる南北問題というふうなことが非常にいわれて、わが国などに対しても、そういう低開発諸国からもっと輸入してほしい、こういうふうな強い要求が出されているわけですが、この特恵関税の適用品目の拡大、これについてのこれからの展望、いわゆる南北問題のこともからめてどういうふうな将来への展望をお持ちか、お聞きいたします。
  135. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御承知のように、わが国の現在の特恵制度におきましては、いわゆる農水産物に関しましては、ポジリストと私ども称しておりますけれども、原則として農水産物に関しましては特恵の対象にならない。ただし、農水産物の中でも国内生産物に対してあまり影響のないもの五十八品目を選び出しまして、これを特恵対象品目にいたしている。逆に鉱工業産品に関しましては、原則として特恵の対象にするけれども、わが国の産業に対して影響のある品目十品目に関しましては特恵の対象からはずす、いわゆるネガリストを作成しているわけでございます。  わが国の置かれている立場から申しまして、今後もいわゆる農水産物に関しましても、ことに後進国の場合に相手が非常に喜びますのは、農水産物に対しまして特恵税率を適用することが、いわゆる後進国の立場からいたしますると喜ぶわけでございまして、わが国の産業に影響がない限りにおきまして、できるだけ五十八品目に加えまして品目を拡大をいたす方向検討をいたしたいと考えておりまして、今回御審議をお願いしておりますところの法案におきましても、五十八に対して十一品目の品目追加をお願いをいたしておるわけでございまして、今後もこの方向検討をいたしたい、かように考えているわけでございます。
  136. 高沢寅男

    ○高沢委員 低開発諸国でも、現状ではいわゆるモノカルチュアで、出す物がどうしても農水産物関係に比重がかかっておるということはそのとおりですが、これらの国でも次第に軽工業から始めて、最近は特にわが国の従来の軽工業なりあるいは雑品工業なりと重なる面の工業が伸びつつある。今度は当然その品物を日本に対して買ってくれというような要求が出てきて、国内中小企業政策とまたぶつかってくるというふうなことになるわけですが、この辺のところは当然国内産業保護政策の面と同時に、南北問題というもっと大きな見地があるわけですから、そういう点においては、この特恵制度の拡大という方向をやはり基本方向として進めていってほしい、こう考えるわけです。  そこで、それに関連して、シーリングわくの運用の問題であるわけですが、シーリングわく自体の弾力化、今度の法律改正でもそういうふうな措置を提案されているわけですが、このわくに弾力性を持たせるということについては、たとえば年々の実績を基準にして、年々そういうわくについて是正を加えていくというふうなやり方も成り立つんじゃないか、私はこう考えるわけですが、この点についてはいかがですか。
  137. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御承知のように、現在、特恵の輸入わくの設定に関しましては、関税暫定措置法八条の四におきまして、昭和四十三年の当該特恵受益国からの輸入額に、それ以外の、いわゆる先進国からのその前々年度の輸入額の一〇%を加えたものを各年度のシーリングとするということが定められておるわけでございまして、ただいまの御質問は、その法律を改めて、基準年次の昭和四十三年度というのをもっと最近年次に持ってきてはどうかという御趣旨かと思いますが、何ぶんにも御承知のように、この制度は四十六年八月一日に発足したばかりで、今日まで一年半しかたっておらないわけでございます。したがいまして、現在この特恵の輸入わくの設定に関する基準を改めることはいかにも日が浅いかと思いまするし、また、日本と同じようなシーリングわくの制度を採用しておりますところの欧米諸国におきましても、日本と同じ年次、一九六八年を基準年次として採用をいたしておるわけでございますので、他の先進国の出方も見ながら、私どもといたしましても、基準年次に関しましてはその時代時代の大勢に即応して考え、できるだけ輸入わくを拡大する方向日本といたしましては検討を進めていくべきものと、かように考えておるわけでございます。
  138. 高沢寅男

    ○高沢委員 最後に、国際経済関係の全体の背景に関係してくるわけですが、アメリカのほうでもこれから新通商法案が提案されるかというふうな情勢にあり、しかもその中で、対外的な貿易障壁を高めて、そしていわゆる保護主義の方向を強めるというふうな傾向が出てくるんじゃないかといわれているわけです。  これに関係して、アメリカ議会筋では、またたとえば輸入課徴金を設けようというふうな論議が出ておるというふうに伝えられるわけですが、特にこういうアメリカの保護主義の傾向の具体的なあらわれ、あるいは今後の見通しというふうなことについて、見解をお尋ねしたいと思います。
  139. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御承知のように、最近、アメリカ国内におきましては、御指摘のとおり、貿易バランスが赤字であるということで、民間あるいはアメリカ議会筋を問わず、その問題に対する関心が非常に強うございまして、いわゆる保護主義的な傾向が強まっていることは否定できないと思います。先般エバリーが日本に参ったときに、エバリーもそういうような趣旨のことを申しておりますが、アメリカ行政府部内におきましては、今年度新国際ラウンドに臨むその責任者の立場といたしまして、あまりアメリカ自身が保護主義的な立場をあらわすことは、アメリカとしてはとるべき方策ではないという意見の人たちがかなり強いわけでございまして、確かに、国内対策の上から申しまして、新しい通商拡大法案の中に、保護主義的な政策をとり得るような権限を大統領に与えるというような内容が盛り込まれる可能性は、私はかなり強いかとも思いますが、実際に、アメリカ当局といたしまして、現在の段階におきまして、たとえば輸入課徴金を課するというようなことは考えておらないように私は感じております。ただし、私どもといたしましては、アメリカの当局と接触をいたしますたびに、輸入課徴金というようなものは絶対に課すべきではないということをたびたび話しておりまするし、特に差別課徴金のようなものの賦課ということは絶対に行なわないように、機会あるごとに先方に申しておるわけでございます。
  140. 高沢寅男

    ○高沢委員 いまのお答えの中にも出たこれからの新国際ラウンドですね。つい先日、ジュネーブでそのための交渉準備委員会が行なわれたということが伝えられているわけですが、これのこれからの日程、それからまたその内容、こういうふうなことの見通しをお聞きしたいと思います。
  141. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 新国際ラウンドは、世界貿易の拡大と自由化を促進すること、通商関係を規律するための国際的なわく組みを改善すること、さらに世界の人々の生活水準を向上させること、こういう三つの主目的をもって開かれるという基本的な考え方に関しましては一致をいたしておるわけでございますが、この新国際ラウンドの場におきまして、いかなる項目に関して交渉をするかという、いわゆる交渉の対象になるととろの項目をきめる交渉準備委員会がこの七月に行なわれることになっておりまして、さらに、その交渉準備委員会におきまして交渉の対象になりまずところの項目がきまりましたならば、これはこの九月に東京で行なわれることになっておりますけれども、いわゆる閣僚レベルの会議が東京において行なわれまして、そういう項目を審議することを認めるという宣言がなされまして、新国際ラウンドというものが開始される、かような状況になっておるわけでございます。
  142. 高沢寅男

    ○高沢委員 その場合に、特にEC諸国の域内における関税と外に対する関税、この壁の相違を向こうは一生懸命堅持しようとすると思うのです。これは日米関係とはまた別に、日本立場としてEC諸国に対してその辺が非常に重要な焦点になると思いますが、この辺は日本立場をどういうふうに主張していかれるのか、お尋ねいたします。
  143. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 ECの機構そのものがいわゆる関税同盟的な域内の自給自足体制、これを逆に申しますればいわゆるブロック経済化の方向といえないことはないと思います。したがいまして、世界自由貿易体制を進めるべき日本立場といたしましては、域内の関税体系よりは、要するに世界的な自由開放体制関税体系を推進をすべきであると、先般のケネディラウンドにおいても行なわれましたようないわゆる一括関税引き下げと申しますか、特に製品に関しましてはそういう方向で進めるべきであるということを主体として、関税に対しましては私どもといたしましては強く主張をいたしたい、かように考えておるわけでございます。その他いわゆる域内農業問題であるとかあるいはそれぞれの国の持っておりますところの非関税障壁の問題であるとか、いろいろな問題が項目としては取り上げられる可能性があると思いますが、関税から非関税障壁、セーフガード、そういったような問題、それぞれこれから真剣に日なとしてのあるべき立場検討をし、これに臨みたい、かように考えておるわけでございます。
  144. 高沢寅男

    ○高沢委員 最後に、特にアメリカに対してわれわれの側から主張すべき点、こういうふうなことを、これは当然強く主張すべきだということを政府に対して要望して、それに対するお答えを聞いて、終わりたいと思います。  いまのこの国際通貨問題というものの生まれてきておる一番根本的な原因は、やはり何といってもドルから発しておるということであるわけで、その点ではこういうふうな多くの変動を生み出したアメリカの責任というものは非常に大きいわけですね。しかし結果は、そのアメリカからまたいろいろ、ああしろこうしろと押しまくられてくるというふうな状況になっておるわけですが、これに対しては、今度はこちらの側からアメリカに対して、こうしろということのやはり強い主張や要求が当然なければならぬ、こう思うわけです。こういう点で、たとえば各国の外為市場でドル売りの投機が発生した場合には、アメリカが責任をもってドルの買いささえに出動するというようなことも必要であろうし、あるいはまたいわゆるアメリカの多国籍企業というものが、国としては国際収支は赤字だといいながら、しかしその多国籍企業が事実上資本を持ち出して、そしてヨーロッパその他アメリカの外で経済活動を展開する中で、アメリカの国としての国際収支は赤字になるというふうな状況とか、あるいはまた特に金との関係において、金との交換性を停止してそれきりになっているわけですが、この点なども妥当な金とドルとの関係をもう一度設定して、そこで交換性を回復するとか、これはそういうふうなアメリカがなすべき根本的な措置がいまのところなされていないで、ヨーロッパに対して、あるいは日本に対して、いろいろの国際通貨上の要求をしてくるということは、この点では何といっても本末転倒であるわけです。  そういう点で、われわれはわれわれでそういういろいろな措置は最大限やらなければなりませんけれども、そういう根本のところでアメリカがなすべきことをやれ、こういうことを強くアメリカに対して要求していく、こういう立場日本からも必要であろうし、当然また欧州諸国からもそういう声が出ているというふうに聞くわけですが、このことを強くあらためてアメリカに対して要求することを要望し、それに対する御見解を政務次官から述べていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  145. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 ただいまの高沢委員の御意見、私は全く同感であります。   〔委員長退席、大村委員長代理着席〕 今日の世界の国際通貨不安の原因の大きいものは、アメリカの、ドルがたくさんに出たことにある、したがいまして、ドルの信認を回復するということが国際通貨の安定をはかる道に通ずる、こう思うのでございまして、わが国といたしましても、そういうアメリカの今後の国際通貨安定の上での大きな責任ということは大いにひとつ求めていかなければならぬと同時に、おっしゃるようにヨーロッパ各国も同じような態度でそういう点をアメリカに求めることであろうと私は思います。今後の国際会議などを通じて、私は、日本政府としてもそういう態度をはっきりさしていくべきものであろうと、かように考えるわけで、おっしゃることは同感でございます。
  146. 高沢寅男

    ○高沢委員 以上で質問を終わります。
  147. 大村襄治

    大村委員長代理 増本一彦君。
  148. 増本一彦

    ○増本委員 共産党・革新共同の増本でございます。  今回の関税定率法などの本改正案の提案理由などを検討させていただきますと、最も重要な要因が、やはりこの数年来の貿易収支の異常なまでの黒字、これをなくすためにやろうとしている、こういうように一つうかがわれるわけです。そのためにむやみに輸入をふやしてドル減らしをやろうとしている、関税政策の問題だけではなく。いままでもいろいろ議論がされてきましたけれども、一体こういうようなことだけで貿易収支の異常な黒字をなくすことができるかということは非常に重要な問題だし、この点も政府もいろいろ答弁なすっていらっしゃるわけてすけれども、この関税政策とのかかわり合いにおいて一体どういうように考えているのか、今回のこのような提案でこれで了としているのかということについて、まずはっきりと政府の見解を伺いたいというように思います。
  149. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、私は、昨年の十一月の一律二〇%引き下げや、あるいは今回の御審議をお願いいたしております関税率の改正だけで、いわゆる貿易日本の現在持っておりまする問題が解決をするとは考えておりません。先ほどもちょっと御答弁いたしましたように、先般の一律二〇%引き下げ、さらに今回の改正案によりまする輸入増大効果と申しますのは、数字に直しましても、私どもの計算でも約三億ドル程度のものでございます。したがいまして、関税の持ちます機能それ自体、これをいじればすべて解決をするという性格のものではございませんで、あくまでも対外調整策の一環、一つの環にすぎないものであろうかと考えております。ほかの施策が伴いませんと解決をいたさないことは、申すまでもないものかと思います。特に関税につきましては、先般の一律二〇%引き下げ等は、今日までの考え方からすれば、相当思い切った施策を打ったわけでございまして、関税と申しますものはあまり急激に動かしますると、同じ国内産業立場といたしましては、非常にそれによりまして今日まで計画をしておりましたものに大きな狂いが生じてくるというような面もございまして、やはり徐々にこれは傾斜的に手を打っていくべき性格のものではないかと、かように考えておるわけでございまして、これをもって対外貿易収支の黒字が解決されるものであるとは私ども考えておりません。
  150. 増本一彦

    ○増本委員 この貿易収支の黒字基調をなくして均衡を保っていこうというのが、政府一つの財政政策の柱になっておるわけですけれども、この点については、先般来から円対策の問題を含めて議論がされているわけですけれども政府がやろうとしていることは、国内政策としては福祉への転換だとか、また輸出に対しても貿管令などによる規制とかということをおきますと、独自にやれる手というのは、あと関税政策以外にないわけですね。というのは、あとはほかの問題というと、みんなアメリカやその他の外国と話し合って、相手方の御本人さんがどう言うかということとのかね合いできまる、こういう性質のものだと思うのですね。そうすると、実質的には、いま局長も言われたように三億ドルの効果しかないドル減らし、こういうことでは、結局、国際収支の不均衡を是正するということが、それ自体としてはさしたる効果がない。これは政府自身がお認めになっておるとおりです。  では、この貿易収支のこういう異常なまでの黒字で政府自身がたいへん心配しておるというこの問題について、予算委員会などで私も質問させていただいたのですけれども、結局どういう方向に行ってどう詰めてどう解決するのかということになりますと、これはまだはっきりした答弁が得られないわけですね。そういう中で、この関税政策関税定率法などの改正案をそれと位置づけて、国会に審議しろとして出されてこられているわけですけれども、これだと、私たちも審議している立場として、では一体いまのこの円問題やあるいは貿易収支のこういう異常なまでの黒字不均衡をどうやって調整し、是正するかというような立場で明確にそれに対処する、政府立場に対応してやるということもできないという、いまこういう現状にあるのだと思うのです。  ただ、それでいて一方では、政府のほうでこの自由化の問題が新国際ラウンドの設定などの問題ともからめて非常に大きく強調されている。やはり日本のほうでやるのは、効果は薄いけれども関税政策に手をつけて自由化方向をさらに拡大していく以外に道がない、こういうようなことにならざるを得ないと思うのですけれども、そこいらの辺は一体政府としてはどんなふうにお考えなんでしょうか。これは私どもが審議を進めていく姿勢にも関係する問題ですし、政府もこの関税法案をどうしても通してほしいということで出されておるわけですから、そこいらのところをどういうように考えておやりになろうとしているのか。言ってみればこれは政治問題ですから、政務次官のほうからひとつお答えいただきたいというように思うのです。
  151. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 お話しのように、黒字基調が相当強く長く続いてきたということ、これに対して円対策というものを政府としてはやらなければならないということで、昨年来円対策を推進してきておるわけであります。その円対策の中では、やはり輸入を拡大する、あるいは輸出を秩序あるものにしていく、あるいは国内体制としましては、お話しのように福祉国家を建設をしていくという目標に向かって進んでいくということ、あるいは貿易自由化と並行して資本の自由化ということもひとつやっていかなければならない、あるいはまた、世界の中で黒字基調国としての責任として経済協力もひとつ大いにやっていかなければならぬ、こういうようないろいろな問題についてそれぞれ努力をしてきたわけであります。  その努力の中の一つといたしましてはこの関税の問題があるわけでありまして、御存じのように、昨年の秋に二〇%の一律引き下げというものをやったばかりであります。その効果が、先ほども具体的な輸入の率で示されましたように、逐次いまあらわれつつあるという段階にあります。そういうところへ持ってきて、今度一つフロートという問題が出てまいったのでありまして、そういう全体を考え合わせながら、わが国の経済が健全に安定して育っていくという観点から適正に円を固定化させるという方向、そしてまた同時に、従来からやってきたところの黒字対策というものもやはり引き続き、何がしかのニュアンスは出てくるかもしれませんけれども、目標としては、そういうものを前面に目標としてにらみながら進んでいくという姿勢であろうと思うわけです。その中の関税立場というものは、新しい国際ラウンドに臨む政府の態度としてはすでにはっきりさしておるわけでありますけれども国内の弱い産業を考えながらも、しかしやはり自由化方向に進んでいかなければならぬ、関税を下げるという方向に進んでいかなければならぬという方向はすでに間違いのないところであろうと思います。  今度のお願いをいたしておりまするこの関税改正案は、すでに昨年の秋相当大幅に、二〇%引き下げしたあとでありますので、当面、特恵関税という問題、それから生活関連物資に関して一部関税引き下げという、そういう程度にとどまっておるわけでありまして、今後における関税という問題が全体で占める位置というものは、私は、相変わらず相当のウエートを占めるものであろう、そういう立場関税考えていかなければなるまい、こう思うわけでございます。   〔大村委員長代理退席、委員長着席〕
  152. 増本一彦

    ○増本委員 いまそういうお話ですけれども、こんなにまで円問題が深刻な状態にある、いまのところ収拾の余地がなかなかない、関税政策にしましても、たかだか三億ドルの効果。結局、国際収支の不均衡を是正するという課題は、いまのところ政府においては決定的なきめ手がないんじゃないか、こういうように私ども考えるし、国民もそう考えておるのではないかというように思うのですね。そればかりか、いまの経済専門誌などを見ましても、決して展望を明確に出したような論調というものはないし、政府にその点で期待するというものも明確なものが出ていない。これがいまの全体としてのジャーナリズムの論調でもあろうかというように思うわけです。そういう点では、政務次官、どうなんですか、いまの国際収支の問題は政府にとっても全くきめ手がない、関税をちょっといじるといったってたかだか三億ドルの効果しかないのに、これじゃ百八十億ドルから二百億ドルの国際収支の黒字を減らしていくといったって、国内では打つ手が何にもない、こういう状態なんじゃないですか。どうなんですか。
  153. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 いろいろの方法は、先ほど来申し上げたように、あるわけでありますが、こういうものをだんだんに実施をいま政府努力してやっておるわけであります。その効果はだんだんにあらわれるものであって、なかなかそう簡単に、短時日の間にあらわれるというものでもない。こういう経済一つ政策が浸透していく間に数字的に結果として出てくるわけでありますから、そう急に、にわかになかなか出てまいらない。しかし、政府のそういう努力、またそういう情勢に応じた政府の対処のしかたの中で私は逐次そういう効果をあらわしてくるものであろう、またそういうふうに政府としては努力をしなければならない、こう思うわけでございます。
  154. 増本一彦

    ○増本委員 そうおっしゃいますけれども、たとえば去年の秋の、再三お話があった関税の一律二〇%引き下げ、これで自由化にさらにドアを開いた。しかし、そのあと、御承知のように、最近のまた一種のドル危機がぱあっとヨーロッパ中心に起きる。そうすると、そこでまた円が右往左往する、こういうことに結局なるわけですから、もうそういう点では国際経済そのものが非常に変動的ないわば激動の時期を迎えている。これは国際的な経済体制そのものが非常に重大な危機に見舞われている、こういう時期だろうと思います。だから、そういうときに、それにしかもなお対応して国民の生活や国民経済を全体として守っていくという、そういうことになると、やはりジョーカーのような切り札というものを政府は何一つ持ってない。せいぜいやるとしても、関税の部分的な引き下げをやって輸入量を若干ふやしてドルを若干減らす、このくらいの手しか打てないのだ、これまでの国会の論議から見ても、そういうことを政府みずからやはり自白しているようなものではないかというように私は思うのですけれども、私はそこのところの本心を政務次官に実は伺っておるのです。いかがですか。
  155. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 黒字基調を解消していくというそういう方策について、そう奇手妙手が新しくあるわけではなくて、いま政府考えておりまする一種の円対策としてやってきた手で、ほぼ方策、やり方としては私は尽きておるのだろうと思うのです。ただ、そのやり方を実際にはめて実施をしていく場合に、いろいろ問題がある。たとえば輸入の自由化にいたしましても、端的に輸入自由化をやればよろしいと、言うことは簡単でありますけれども、しかし、どうしても日本のいろんな産業の諸情勢を考え合わせて、これは一ぺんにはできませんぞ、こういうこともあるわけなんです。そういうことをやはり国内情勢も考えながらやっていかなければならないという、そういういわば歯切れの悪さというものも中にはあることは、私はいなめないと思う。しかし、そういう若干のジグザグはありますけれども方向としては、やり方としてはもう間違いのない方向を目ざしておるのでありまして、そういう方向に向かって今後とも一段と努力をしていかなきゃならぬ、こういうふうに思うわけでございます。
  156. 増本一彦

    ○増本委員 じゃ、この論争の結論をひとつ出していただきたいのですけれども、そこできめ手とか切り札、こういうものを政府が持っているのか、こういう私の問いなんで、では切り札はこれこれだ、こういうものをひとつ明確に出していただきたい。いかがですか。
  157. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 たいへん短兵急なお尋ねでありますが、ずばり言って、これさえあればオールマイティーだという、そういう方策はなかなかこういうものにはおそらくないだろう、それを求められるのは少し御無理ではなかろうかと思うのですが、しかし、要するに、そういういろんな政策をミックスして、そしてその政策のミックスのうちにだんだんとそういう効果が出てくる。ただ、そういう方向に向かっての努力を怠ってはならない、努力はしていかなければなりませんぞ、こういうことであろうと思う。政府としてはそういう努力は、方向を定め、見定めてそれに対して努力しているということは私はお認めをいただけることだろうと思います。
  158. 増本一彦

    ○増本委員 いまの政府のやり方でやっていきますと、いわば切り傷があって、それにこう薬を塗るけれども、こう薬が皮膚に浸透して傷にきいてくる前にこう薬のほうが薬効がなくなってしまう、こういうような状態で、政務次官もたいへん苦しい答弁をされておるわけですけれども、しかし、この関税政策に手をつけてやっても、先ほどお話でも、結局三億ドルくらいのドル減らしの効果しかない。そういうドルの減らし方であるにもかかわらず、この関税引き下げる品目が多くなればなるほど、日本経済に対する影響というのもやはり非常に大きい。これは政府もお認めになっていらっしゃる点だし、だから、そこからいろいろ勘案した、この品目についてはどうかということを一つ一つ検討もされておられるのだろうと思うのです。特恵関税品目の中の農産物についての五十八品目なんかもその一つの典型だろうということは、ことばとしては理解はできるのですよ。  そこで、お忙しいところ農林省から御出席いただいたわけですが、どうも突然すみませんでした。  それで、農産物の自由化ということがいまたいへん問題になっていて、農水の委員会でもおそらく質疑があったろうと思うのですけれども、この農産物の自由化ということをもしやったとしましたら、これは一体どのくらいのドル減らしになるのか、そしてまた国内にはどのくらいの影響を与えるのか、そこいらのところは数字的にも一応測定されていらっしゃると思うので、ひとつそこのところをまず明らかにしていただきたいと思います。
  159. 吉岡裕

    ○吉岡説明員 ただいま御質問のございました、現在残存輸入制限のもとに置いております農生物は二十品目ございますが、これを完全に自由化した場合にどういう国際収支面での影響があり、あるいは国内に影響があるかということは、なかなか的確に予測することはもちろんむずかしい問題でございますが、一応いろいろの前提を置きまして農林省で一つの試算をいたしたものがございます。その前提と申しますのは、現在残存輸入制限をしております二十品目につきましては、国際価格と国内価格の差が非常に大きゅうございまして、完全に自由化すれば現在の国内生産が完全に輸入品に置きかわるという、きわめて極端な前提でございますが、この前提を置きまして、そのために生ずる輸入の増加というものを計算をしてみますと、約五億ドルの輸入増加が見込まれるという計算が成り立ちます。もちろん、御承知のように、消費者価格がその結果引き下がることによる消費の拡大の可能性でありますとか、あるいは国内生産が完全になくなってしまうということはあり得ない前提でございますので、そういうふうなことがいろいろ考えられなければなりませんが、一応極端な前提を置いていますと、最大限五億ドル程度の輸入の増加が見込めるだろう、こういうことになると思うのです。これに反しまして、国内に対する影響としましては、現在の二十品目の関係の農業の就業者数を推定いたしますと、約七十三万人ぐらいになります。したがいまして、こういう七十三万人ぐらいの農業就業人口について影響があるということがいえるわけでございます。そのあと、国内の物価面では、これもいろいろな前提を置いて計算をしてみますと、〇・四%くらいの物価に対する影響が総合消費者物価指数の中であるのではないかというふうに試算を一応しております。
  160. 増本一彦

    ○増本委員 農林大臣が、もう農産物の自由化はやらぬ、こういったように約束されておるので、あえて言いませんけれども、これでも結局アメリカやあるいはその他の世界の諸国から農産物の自由化についてもかなり強力なプレッシャーがかかっている。しかし、日本の国益というか、そういう立場から見れば、たかだか五億ドル減らして、そのかわり七十三万人もの農民がアウトになる、こういうことですから、これは絶対にやらない、またやるべきでないという立場が当然必要だというように思うわけですけれども……。  それで、今回の特恵関税品目やあるいは政府が位置づけた生活関連物資の中にも、食料品の中でやはり農産物品目が若干あるわけですね。この点については、農林省でもあるいは関税当局でもけっこうですが、国内農業あるいは国内の水産業に対するダメージについては、大体どういうような推定を出されていらっしゃるのですか。
  161. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御承知のように、今回御審議をお願いいたしておりますのは、農産物特恵対象品目五十八品目に対して、十一品目を新しい特恵対象とするという答申をいただいているわけでございますが、これらの個々の品目に関しましては、農林当局とも事前によく相談をいたしまして、国内産業上影響がないということの前提の上に立ちまして特恵対象品目の拡大をはかっているわけでございます。
  162. 増本一彦

    ○増本委員 そこで農林省当局にお願いなんですけれども、この関税引き下げ、あるいは特恵関税品目に加える農水産物を選定する際に、おそらく関税率審議会のほうに資料提出をなさっているだろうと思うのです。あるいはそれを含めて、総合的に関税政策との関係で農業政策がどういう方向でいこうとしているのかということを含めた資料が提出されているのじゃないか。これは私の一つの判断ですけれども、そうでなければ関税率審議会は審議もできないだろうということの上に立ってですけれども、もしその辺の資料がございましたら、ひとつそれは提出していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  163. 吉岡裕

    ○吉岡説明員 関税率審議会の席上で、農林省側から、現在の農産物の輸入状況あるいは将来にわたる国内農業生産の方向といったようなことにつきまして、口頭で御説明を申し上げました経緯はございますが、特に資料という形でお出ししたようなものはございません。御了承いただきたいと思います。
  164. 増本一彦

    ○増本委員 じゃ、けっこうです。  農業ばかりでなくて、中小企業に対する影響もこれは十分に考えなければならないと思うのですね。今度の法案を見ましても、関税割り当て制度からはずした硫化鉄鉱、これは国内の生産量が非常に微々たるもので、大体〇・二%ぐらいでしょうかね。だけれども、それにもかかわらず、その中で国内産出量の一〇%ぐらいが、千名以下の中小鉱山によって採掘されている。これは通産省のほうの統計で調べたものですが、そういうことがあるし、それから同じく割り当て制度から今度はずされているモリブデン鉱の場合も、これは国内産出量の七三・三%くらいが中小鉱山によって産出をされている。タングステン鉱の場合だと、国内で産出しているのは全部中小鉱山だというように言っても言い過ぎでないだろうというように、これも七三%ぐらいですか、というように思うのですが、ここの辺のところの影響というのは、大体私の出したような数字で通産省のほうはよろしいですか。
  165. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 まず、硫化鉄鉱について申し上げますと、硫化鉄鉱は、四十八年度からTQ制を廃止して基準税率の無税に戻すことにしたものであります。この理由は、硫化鉄鉱は国内に豊富に産出しておりまして、その大部分が硫酸として消費されておるものでございます。近年石油からの回収量が増大いたしまして、硫酸としての使用がほとんどなくなってきたわけでございまして、硫化鉄鉱の販売量が急速に減少して余剰となってまいりました。従来海外鉱の輸入から保護するTQ制を採用しておりましたけれども、今後は、以上のような理由から、硫化鉄鉱の輸入があるというふうな事態は考えられませんので、TQ制を廃止したわけでございます。  次に、モリブデン鉱でございますが、モリブデン鉱の関税割り当てにつきましては、四十八年度においても引き続き実施することになっておりまして、廃止することになっておりません。また、マンガン、タングステンにつきましても同様でございます。ただ、恒久的な関税定率法上の無税に変更いたしましたけれども、一年ごとに見直しますところの関税暫定措置法上の税率を設けることによりましてガードしておるわけでございます。
  166. 増本一彦

    ○増本委員 その中で国内で産出しているものがありますね。それの中小鉱山の産出量に占める割合は、先ほどちょっと七三%くらいだとか、いろいろ数字を並べたわけですが、そこいらの数字は大体それでよろしいですか。
  167. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 モリブデン鉱について申しますと、四十七年の一−十二月の輸入実績が一万二百三十五トン、これに対しまして国内生産量は四百十八トンでございます。したがいまして、輸入鉱に対して、全鉱量に対する国産比率は五%でございます。
  168. 増本一彦

    ○増本委員 五%を産出しているでしょう。その五%を産出している中で、それには大きな鉱山もあれば——大きな鉱山といったって、こんな鉱脈ですからそんな大きなものはないでしょうけれども、いわゆる零細鉱山なんか本、やっておるわけですね。それが生産高で大体どのくらい生産しておるのかということはわかるのですか。
  169. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 モリブデン鉱について申し上げますと、現在全国で鉱山が四つございます。島根県に三つ、岐阜県に一つでございます。これらすべて中小鉱山でございまして、総生産量は、先ほど申し上げましたように四百十八トンでございます。
  170. 増本一彦

    ○増本委員 全体の経済に対する影響といったらそう大きなものではないかもしれないんですけれども、しかし、それだけにやはり関税引き下げや手当てが輸入の面で行なわれるようになりますと、それだけにこういう経済的な基盤の弱い中小鉱山というのは一たまりもなくやられてしまう、そういう危険というのは非常に多いというように思うのです。こういうものに対する対策は、今度の関税政策の関係ではどういうようにお考えになっていらっしゃるのですか。
  171. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 御指摘のように、非鉄金属鉱山というものに対しては、特に今回の円のフロートというようなものの影響は非常に大きいわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、今回関税率審議会で現在御審議いただいております関税についても、銅、鉛、亜鉛を中心にいたしまして、他の品目のごとく一括引き下げというふうなことの適用から除いていただきまして、前年度据え置きということにしていただいたわけでございます。銅、鉛、亜鉛につきましてもこのような政策をとっていただくと同時に、他の品目につきましても、先ほど来申し上げておりますように特別なやり方をして、関税によるガードを強くしていただいておるわけでございます。
  172. 増本一彦

    ○増本委員 そのほかに、金融上の問題とか、あるいは設備その他の合理化とか近代化、こういうような点での手だてはどういうぐあいになっていますか。
  173. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 鉱山に対します投資等の数字は、ただいま手元にございませんので、特段の御答弁を申し上げるわけにはいかないのでございますが、ただ、最近、特に鉱山特有の問題といたしまして大きくクローズアップされてまいりました、他産業と異なっておりますところの鉱山の鉱害問題に対しまして、特別な制度、法律を設けましてそれに対する特殊な金融をするというふうなこともしております。また、金属鉱物探鉱促進事業団という、やはりこれも政府機関でございますが、これを設けまして、国内及び海外における探鉱の促進につきまして特別な利息、期限等による融資を実施しております。
  174. 増本一彦

    ○増本委員 たとえば、この関税をこうして引き下げる以前から、中小鉱山というのは経営上も基盤が脆弱なために非常に不安定な状態にある。通産省なども、この中小鉱山に対する合理化指導というのを年々予算措置をとってやっていらっしゃるわけですね。私が調査したところによりますと、昭和四十五年度で五百五十万円、合理化指導の対象鉱山が九十六、四十六年度の場合が五百四十九万四千円で、対象鉱山が八十、こういうぐあいになっているのですが、ところが、その間、結局一年の間に十六鉱山が閉鎖をしているという勘定になりますね。ですから、いわゆる国内産業国内資源を十分に活用しそれを守っていくという上での対策でも、全く手抜かりがないかというと、鉱脈が切れてこれはもうだめだという場合を除けば、ほとんどが経営不振でアウトになっているわけですね。そういう点でも、対策に決して手抜かりがなかったとは言えないというように私は思うのですよ。  そこへ持ってきて、また関税の面でも、これはガードがあるといいながら、しかし引き下げられる点は同じわけでして、こういう問題が起きるとなると、これは国内の資源を活用するという上からいきましても、また中小企業に対する保護政策という、いま政府一つの看板にしているわけですが、こういう看板からいったって、その看板をよごすことになるように思うのですね。ですから、今回のこの関税の問題を踏まえて、しかもなお今日まで、私に言わせると非常に不十分であったこういう中小企業鉱山の資源を守り経営を守っていくという対策の上で、一体当局としてどういうような手だてをとっておられるのか、また用意しているのか、そのところをまずはっきりしていただきたい。
  175. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 資源問題の中で国内鉱山をどういうふうに位置づけるかということは、鉱山政策上最も大事な点でございます。したがいまして、私どもも、鉱業審議会で慎重に御検討いただきました結果、二つの大きな柱を立てておるわけでございます。一つは、御指摘のような関税によるガードでございます。あとの一つは、国が国の資源をさがすという探鉱費用を鉱山に対して積極的に援助していく、この二つの柱を大きく立てております。現にこの四月から自由化される予定になっております金につきましても、特別な予算をただいま御審議いただいておりまして、従来の価格を保障するための価格補償金、あるいは金だけについても三億五千万円の探鉱費、その他、中小鉱山につきましては、昨年度五億でございましたものをことしは六億五千万円にふやす、その他、ただいまのは中小鉱山対策でございますが、大手鉱山につきましては、金属鉱物探鉱促進事業団の探鉱費を大幅にふやしてこれに対処することにいたしております。
  176. 増本一彦

    ○増本委員 探鉱費用と関税は二本の柱だ。しかし、現実に操業している中小鉱山ですね、この辺の経営をほんとうに守っていく、自立して、どんな輸入資源の圧力にも負けずにやっていけるというような点での対策というのはどうなんですか。
  177. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 現在関税で守られております価格でペイしない鉱山が徐々に閉山していくケースがございますが、これは、まことに残念でございますけれども、やむを得ないというふうに考えております。しかしながら、現在鉱業審議会で答申されております中にも、次のようにはっきり書いてございます。それは、現在の一定限度の国内鉱山を維持することは必要である、こういうふうに明文化してあるわけでございますが、これを、先ほど来申し上げておりますような関税と探鉱資金を国が注ぎ込んでいくということによって、よりよい鉱床にリプレースしていくという手段によって一定量の鉱山を維持していきたい、これが基本的な考え方でございます。
  178. 増本一彦

    ○増本委員 そうしますと、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドの政策をそのままやっていく、こういうことになるわけですね。そういうことでよろしいのですか。
  179. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 スクラップ・アンド・ビルドということばが適切かどうか、ちょっと問題と思いますが、新しい鉱床を発見し、よりよい鉱床を発見し、そこへリブレースしていく、そこへ移っていく、こういうことでございます。
  180. 増本一彦

    ○増本委員 私がこういう中小鉱山の問題についてお伺いしたのは、結局、関税引き下げられて一番影響を受けるそういう業界、業種その弱いところに対して決して十分な手だてがとられているとは言えないというようにいわざるを得ないと思うのですね。この点は、たとえばほかの輸入品のあおりを食らって、いままでうまくいっていた業種がそのためにがたんとやられた、そういうのはつい最近までだってあるわけですね。先ほどあなたがおっしゃった硫黄鉱山なんというのはその一つの典型ですね。四十二年ごろまで国内生産で需給が保たれてきたけれども、これはエネルギー政策の転換で、四十三年ごろから重油の脱硫回収による硫黄がたくさん出るようになって、それで結局硫黄鉱山はアウトになってしまったわけですね。一体どのくらいの落ち込みをしているかといいますと、これはもう通産省や政府当局もよく御承知だと思いますけれども、四十六年で鉱山からの産出量というのは六万五千三百五十トンくらいですか、四十五年から見たって三五・七%も減っている。四十五年に九百九十七名の従業員がいたけれども、四十六年には百九十三名に減ってしまった。その間に結局八百四名いなくなってしまう。つまり職を失ってしまうわけですね。こういうように、関連部門でも硫黄鉱山のような——これはもう中小鉱山が一〇〇%ですね。そういうところであおりを食らって結局だめになってしまう。それに対する手だてはどうなのかというと、これは先般の国会でもたいへん問題になって、各党が硫黄対策についての法案を準備されるというようなことまであったようでありますけれども、こういう問題がある。だから今回もそういう轍は踏まないような、そういう対策というものをやはり私はとるべきであるというように思うのですけれども、それについて通産省の課長さんに、それはとりますとか、とりませんとかというお約束をしてもらう立場でもありませんから、これはひとつ政務次官として、大蔵省としてこういう関税政策をとっておいて、関連の通産省では中小企業や中小鉱山に対して手だてがとれないで、スクラップ・アンド・ビルドの政策でこれはもうしょうがないというような方針しか出せないということになると、やはり何といっても原因は大蔵省のこういう関税政策であるということになるわけですから、今回のこういう問題についてもひとつ万全の対策をとるように政府として取り計らうべきであるというように考えますけれども、この点について大蔵省としてはどういうようにお考えなんでしょう。
  181. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 先ほどお尋ねがありましたように、円対策として思い切ってやろうとすれば、いろいろな国内産業の、特に中小企業に影響が出てくるわけでして、そういう影響が出てくる面については、やはりできるだけ救済の手を伸べていくということも必要だと思いますが、同時に、日本経済全体の体質が改善をされていくという、そういう過程で起こることでありますから——実は午前中にも、過保護というようなことのお尋ねもいただいたようなわけであります。かれこれ考え合わせてみまして、だんだんに経済の体質が改善をしていかなければならぬ、あるいは日本経済構造をだんだんと改めていかなければならないという過程で起こる問題、それについてはできるだけのことはしなければならぬとは思いますけれども、やはり生産性を上げていくという必要性も一面においてあるわけでありますので、そこら辺はできるだけ、新しいそういう政策が進行していく場合において、十二分に配慮をしていかなければなるまいとは思います。大蔵省という立場から申せば、これをやるにつきましては、各省とは十二分に打ち合わせをいたしまして、ここに関税定率法等改正という内容で盛り込んだわけであります。さりとて、それでは大蔵省に責任がないかとおっしゃれば、さようなわけで申し上げておるわけではありませんけれども、さような点もひとつ御理解いただきたいと思うわけであります。
  182. 増本一彦

    ○増本委員 御理解をといいましても、硫黄問題というのは、たしか四十四年の国会で問題になったと思うのです。そこへ持ってきて硫酸への需給も考えてみると、四十六年以降過剰生産になっておるわけですね。それで、国内産が、先ほど教えていただいて、九九・八%で、私の言っていたのはさかさまだったわけですね。硫化鉄鉱は国産のほうが多いわけですね。若干にしろ色のつく程度のものを今度関税面でも手だてをとる、こういうことで、これは国内にはそう影響はないといえばそれまでかもしれないけれども、影響がないからこういうものは盲腸みたいなものであるというのだったら、それはそれでさておいても、やはり産業構造を転換させていく上でも、それが中小企業の犠牲の上で転換させていく——先ほどの通産省のお話だと、要するに、関税政策と、あとは新しい鉱脈をさがすために予算措置をとって、鉱脈をさがしてリプレースしていくのだ、これ以外に中小鉱山を救う道はないのだ、これが二本の柱だ、こういう趣旨で説明があったわけですけれども、こういうことは、中小企業対策としても非常に冷たい。だから、こういうことがあるから、今度は逆に輸出問題になれば、輸出関連産業について為替差損をどうするのだという問題でもいま非常に論議になっておるわけですけれども、そういう問題だって、決して中小企業に手厚い保護をしているなんということは言えないことは、私そういうこととうらはらだと思うのです。だから、これは自由民主党政府政治姿勢の問題としてひとつ十分考えていただかなければならない問題ではないだろうかというように思うわけです。  これと関連して、中小企業の場合には、たとえば、これは例として硫黄鉱山の問題を出したわけですが、それとの関連でいけば、硫黄鉱山の中小企業のシェアが、重油の脱硫回収によって出る硫黄によって市場がどんどん圧迫されて、先ほどお話ししたように、実際に鉱山でとれるのは四十六年で六万五千三百五十トン、ところが脱硫回収硫黄は四十六年で三十四万四千三百三十四トン、しかも前年に比べて四三・九七%もふえているというのが通産省の統計なんですよ。こうやって、硫黄や硫酸のこういう部門にまでこの重油や石油資本が——これはほとんど全部大手ですよ。しかも外国籍企業まで入っている。これが圧迫をしていきながら、それに対しては、たとえば原油についての脱硫減税制度というのが依然として存在をしているわけですね。これは直接大蔵省の問題ですが、四十七年だけで、低硫黄の原油のこの脱硫減税が五十三億四千万円、これは通産省の資料で調べたのです。中高硫黄原油のこの減税が百十五億七千七百万円もある。これはみんな、四日市のコンビナートにしても、京浜のコンビナートにしても、どこへいってもみんな公害産業ですよ、石油精製企業は。そこへ持ってきて、これから審議をする租税特別措置法の中でも、無公害化生産設備の特別償却制度という制度まで新たに設けてやっぱり減税をやっている。だから、経済力の強い、ライオンやトラのような企業はどんどん保護をするけれども、それに圧迫をされる羊のような中小企業は追いまくられて、結局食い殺されてしまうということが、政策の上でも、関税政策とからめたって、やはり実際に行なわれているということになるのだと私は思うのですよ。せんだっての予算委員会でもこの点は総理大臣にも伺って、四十九年から漸次洗い直していくというようなこともお話がありましたけれども、こういうこととからめて、この関税政策の中で、あるいはそれと関連して——関税政策だけだと、ガードをどうするとかという問題だけに限られてしまいますから、関税政策プロパーとは言いません。そうではなくて、もっとさらに、それと関連して、こういう貿易の問題でそれから受ける圧迫に対してこの中小企業をどのように守っていくかという、この面での方向づけ、政策の展望というものがはっきり示されない限り、国民は、一体これからどうなるのかという点では、中小企業や農業の当事者はだれもが心配をすることは当然だと思うのです。そこの辺のところの方向づけを一体どのようにお考えになっていらっしゃるか、もう一度ひとつ御意見を聞かしていただきたいというように思うのです。
  183. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 硫黄の話が先ほど来出ておりますが、硫黄は、重油の中に含まれておる硫黄分を取るということには、公害対策としてどうしてもやらなければならない。つまり、いまどこへ行きましても、低硫黄の油をたけという要求はたいへんに強いわけであります。したがって、直接脱硫にしろ、あるいは間接脱硫にしろ、脱硫をして、その上で油をたかなければならないという要求は当然のことでございます。その間に、いわば副産物みたいにして硫黄が出てきたと思うのです。大企業が目的的にこの硫黄をつくるという立場で硫黄が出てくるわけではなくて、公害対策をやっているうちにその副産物みたいに出てきたのが、おっしゃるように中小の企業の形態をとっておる硫黄産業というものに影響を及ぼした、こういうわけであります。必ずしも大企業を守って中小企業をそれで圧迫したということには当たらないように私は考えるわけであります。  いまお話しの中小企業全体の問題につきましては、これは先ほど来申しておりますように、円対策にいたしましても、いずれも一番心配されるのは中小企業の問題です。中小企業の問題がなければ、一番最初に御質問のあったように、私はもっとストレートに進行をしたと思うのですけれども、その問題があるから、その問題にやはりいろいろ配慮をしていかなければならぬ。したがって、何か歯切れの鈍いようなお感じを持っておられるのではないか。さすれば、政府といたしましては、やはり中小企業に対する対策というものを真剣に考えて、これの対策をできるだけひとつ立てながら、また実施をしながら進行をしていかなければならぬ、またそういう立場を現にとっておるわけであります。中小企業については、いろいろの、たとえば金融の問題もございましょうし、あるいは税制の上の問題もございましょうし、そういう各般にわたる中小企業対策を今後ともやっていかなければならないという、そういう政府考え方でございます。
  184. 増本一彦

    ○増本委員 一般論はあれですけれども、今回のモリブデンとか、あるいはタングステンとか、こういう品目についてのそれに直接携わる鉱業、そしてまたそれに関連する業界ですね、これに対する、それを保護する立場からも、政策というのは具体的にはあるのですか。
  185. 斎藤顕

    斎藤(顕)説明員 今回の関税の改定にあたりまして、私ども国内鉱山の位置ということをよくよく考慮していただきまして、たとえそれが全消費量の中に占める国産量が非常に少ないというものでありましても、鉱山と国の資源という特殊性から特段の御配慮をいただきまして、銅、鉛、亜鉛につきましては据え置き、その他の鉱物につきましても、先ほど先生御指摘のモリブデン、タングステン等につきましても、ことしは暫定的にTQ制度を継続ということでお願いをしております。
  186. 増本一彦

    ○増本委員 先ほどちょっと特権的減免税の話を出したのですが、政府としてはどうなんですか。脱硫減税制度ですね、これはおやめになるという意思があるのですか、ないのですか。どうなんですか。
  187. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 いま日本の公害問題で一番大きなものは、亜硫酸ガスの大気汚染であります。日本に入ってくる油は、中近東の油を主といたしまして、非常に硫黄分の高い油であります。したがって、この硫黄分の高い油から硫黄分をできるだけひとつ抜いていかなければ公害対策にならない。そういう意味で、世界にあまり類がないかもしれませんけれども日本の特殊性にかんがみてこういう対策はどうしてもやらなければならぬ、こういう考え方で、脱硫についてのいろいろ税制の措置もしておる、こういうことでございます。
  188. 増本一彦

    ○増本委員 おやめになるのかならないのかという、そういう端的なお答えをいただきたいのですけれどもね。まあ政務次官の意思を私もひとつそんたくをして、おやめにならない方向だろうというように了解いたします。そういうことですね。  ところで、公害のお話が出ましたけれども、今度また暫定税率を延長される中に、トリプロピレンとか揮発油、灯油、重油、粗油、液化メタンガス、液化石油ガス、半成石油コークス、こういうようないわば資源といいますかね、この部分が入っておるわけですね。それからアルミニウムのくずと板ですか、これの来年度の輸入の見通し量と、それから減税の見積もり額ですね、暫定税率をそのまま維持するわけですが、これは大体どのぐらいにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。たいへんこまかい質問ですけれども……。
  189. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 関税収入の見積もりをいたします場合に、大きな品目、たとえば砂糖であるとか重油であるとかいう大きな品目は個別に一応私どものほうで査定いたしますが、何ぶんにも品目の数が非常に多いために、個別の品目に関しましては見積もり計算をしておりませんので、御了解をいただきたいと思います。
  190. 増本一彦

    ○増本委員 輸入の見通し量というのはおわかりになりますか。これは通産省でしょうか。これもわかりませんか。
  191. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 先ほど関税局長が御説明いたしました特別な、たとえば重油であるとかあるいは砂糖であるとか、そういった品目については個別の計算もございますが、その他の一般的な品目につきましては、御承知のように、経済企画庁の経済見通しの輸入見通しというものがございます。それを基礎にいたしまして積算いたしているわけでございます。
  192. 増本一彦

    ○増本委員 その数字はわからないのですね。
  193. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 四十八年度の経済見通しでございますか……。
  194. 増本一彦

    ○増本委員 いや、経済見通しじゃなくて、個々の品目についてはわからないわけですね。
  195. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 わかりません。
  196. 増本一彦

    ○増本委員 そうすると、公害対策というようなことをいわれても、結局向こうでできたあるいは半製品、あるいは製品を日本に輸入する、そして日本で石油を精製して、それで公害をなくそうという、これも関税審議会などでいっている公害対策の一つですね。そうすると、これに関する限りは、いま申し上げた品目は全然問題にしていない、こういうことになるわけですか。
  197. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたような品目につきましては、公害という観点からのあれはやっておりません。
  198. 増本一彦

    ○増本委員 それから今度の関税法案一つの目玉は、生活関連物資税率引き下げてこれを物価対策に資する、こういうことがあるようでありますけれども、この点で先ほど来画期的だとおっしゃった昨年の一斉二〇%関税引き下げですね、これの生活関連物資がその後物価に対してどういう影響を与えているかという点について調査をなすったことがございますか。
  199. 斎藤誠三

    斎藤(誠)説明員 お答えいたします。  今度の一律二〇%関税引き下げの対象品目等につきまして、全部ではございませんが、企画庁でも関係各省の協力を得まして、輸入価格の動向調査といたしまして相当数のものを調査いたしております。
  200. 増本一彦

    ○増本委員 その結果はどういう状況になっておるんですか。
  201. 斎藤誠三

    斎藤(誠)説明員 お答えいたします。  たとえば腕時計のオメガでございますとか、エアコンでございますとか、コダックでございますとか、ローライ二眼レフでございますとか、相当の品目については、関税改正後値下がりをいたしております。ただ、関税の分そのものといいますよりは、一昨年来の円切り上げ等の影響あるいは並行輸入等によりまして、たとえばウイスキーが非常に安くなったとか、そういうようなもろもろの要因がございますので——たとえばオメガについて一万円ほど低下しておりますが、どの部分が関税であり、あるいは円切りであり、あるいは国際市況の変化によるものであるかといった計測が非常にむずかしいわけでございます。一応われわれといたしましては、物価指数上、円切り、並行輸入あるいは輸入量の増大等を含めまして、いろいろ達観いたしまして、ほぼ〇・五%程度の低下を一応し得たというふうに判断いたしております。
  202. 増本一彦

    ○増本委員 いまお話しになったのはほとんど並行輸入の品目ですね。ほかのものだと、それが卸売り物価には一定の反映をしたけれども販売価格の面では反映をしないとか、両方についてプラスにはならなかったとか、いろいろなことが——まあ新聞でも若干報道をされたものがありますけれども、たとえば経済企画庁で、二十二品目でしたか、追跡調査をした結果だと、その多くが国内販売価格の引き下げまでのプラスにはならなかったというようなニュースもあったわけですけれども、その辺のところはどうなんですか。
  203. 斎藤誠三

    斎藤(誠)説明員 ただいまお答えしましたのは末端の販売価格の低下でございます。ただいま先生御指摘の二十二品目の調査は、昨年十一月ごろまでの輸入価格の動向調査等でございましたが、中には、オレンジ、大豆、鳥卵、肉製品、レコードプレーヤー、ストッキング、レコード、石油ストーブ、浴用石けん、靴、はきもの、かばん、ハンドバッグ等々につきましては、この調査によりましても末端価格は値下がりいたしております。ただ、ノリ、干しブドウ、砂糖、ジャム、ハチミツ、アズキ、カーペット等におきましては上昇しておりまして、いろいろの要因がございますが、大部分は国際価格の上昇でございます。  第二番目には、そういう中間経費、あるいは相当数の品物が業務用に回り、たとえば干しブドウ等は直接には参りませんで加工段階を経ますものですから、そういう加工の経費あるいは流通経費等によってそういった輸入差益というものが吸収される面もございます。そういった国際価格あるいは加工流通経費等の増大により吸収される部分が若干ございまして、計算上期待されるような物価の低落を来たしていないということでございます。これについて関係各省の協力を得まして、できるだけ輸入利益を消費者に還元するよう、物価担当官会議等を通じまして、業界、団体、いろいろそういったものを通じましてその実効を期し得るように現在も努力中でございます。
  204. 増本一彦

    ○増本委員 その関係でですが、今度またグレープフルーツやバナナが入っていますね。これは非常に大きな問題になってきたわけですけれども、今度の暫定税率の期限を延長するということで、従来と変わらないといえばそうなのかもしれないけれども、この辺のところでの農林省の対策やその他はどういうぐあいになっているのですか。
  205. 吉岡裕

    ○吉岡説明員 ただいまお話のございました最初のグレープフルーツの関税は、暫定で従来のものをそのまま延長するというものでございます。  次にお話のございましたバナナでございますが、これは季節関税をとっておりまして、四—九月の間四〇%、十—三月の間六〇%を、今回来年度五五%に引き下げるという予定でございますが、これによりまして一応の理論値として計算をしてみますと、推定卸売り価格で約二・七四%程度の引き下げがあるのではないかというふうに思っております。
  206. 増本一彦

    ○増本委員 どうも通告した時間がなくなってしまったのですが、これは最後のほうの質問になりますけれども、こうやって関税についての手当てをし、輸入をふやしていこうという政策がとられてきますと、これはもう通関事務が非常に膨大になると思うのですね。私、ちょっと税関の関係の労働組合の皆さんに聞いてみたのですけれども、たとえば羽田の税関では、輸入の許可件数が、四十二年は五万七千件、四十三年が六万七千件、四十四年が七万八千件、四十五年九万二千件、四十六年九万六千件で、四十七年は今日現在十一万五千件ぐらいである、こういう回答をいただいたのですが、それに対して、結局四十二年から今日まで六年間に二倍の取り扱い量になってきているにもかかわらず、職員の数はどうかというと、ふえているのは二割から三割くらいだ、いまこういう実態だというように労働組合のほうでは訴えておられるわけですけれども、これは羽田だけではなくて各所の税関でやはり問題になる点だろうと思うのですよ。一体これから膨大な輸入事務をどうやって処理するかということになると、当然、人員をふやして適切にやっていくということにしなければならないのではないか。先ほど塚田さんのほうからも逋脱の取り締まりとの関係でお話がありましたけれども、調査官だけではなくて、すべての職員の増員というのがいま非常に重要な問題になっているのではないだろうかというように思いますけれども、その点についてはどのようにお考えになっていらっしゃるのですか。
  207. 森谷要

    ○森谷説明員 お答えいたします。  いま御指摘がございましたとおり、全国の数字を見てみますと、確かに、輸入申告件数は、四十三年をベースにいたしまして四十七年度は一二八%くらいの増加になっておりますが、人員の増加は一〇六%くらいでございまして、そのような数字が示すのは、これは御承知のとおりに、最近私ども役所の定員及び機構の問題につきましては、諸般の事由によりまして、率直に申し上げまして非常にきびしい情勢で今日まで推移してきておるわけでございます。その中で、税関の事務につきましては、ほかの省庁と違いまして、いま御指摘がありましたような事情を関係当局がよく理解していただきまして、ほかの省庁と比べて相当の定員増加の状況を呈しておるわけでございます。具体的に申しますと、たとえば本年度税関の定員は、第二次削減計画で削減されるべき百五名をバックいたしまして、その上に三十八名という定員の増加の結果をいただいたわけでございます。これは、先ほど来申し上げましたとおりにきびしい情勢の中では、税関の事務について非常によく理解していただいた結果であろうと、私どもは感謝いたしておるわけでございます。  確かに、そのぐらいの定員の増加につきましては、まだ努力が足りない、あるいは少ないという御批判もあろうかと思いますが、私どもといたしましては最大限の努力をいたしつつ毎年定員の増加を要求してまいると同時に、事務の合理化につきましても、たとえば輸入の申告書を受理いたしまして審査する際には、もう問題のない貨物については審査を省略する、いままで二回審査をいたしておりましたのを一回審査にする、私どものことばで申しますと一審制の導入という表現で言っておりますが、かような制度をも導入いたしまして、今後とも適正な事務運営を期したい、かように念願いたしておるわけでございます。
  208. 増本一彦

    ○増本委員 事務量が一二八%前後に全国的に見ても伸びているのに、今度は削減はバックしてさらに——削減をバックしてもともとですからね。それであと三十八名。これでは、これから輸入を大いにふやしていこうなどといったって、結局現場で働く労働者のほうの労働強化にはなっても、それでほんとうに問題が解決できるかといったら、決して解決できないだろうというように、これはもうだれでも思うわけですね。どうなんですか。これはもうたいへん卑俗な言い方ですけれども関税の税収に占める割合が非常に低くなった、あまり金の入らぬところには人をよこさぬでもいいというような気持ちが、これは大蔵省にもあるんじゃないですか。どうもこういうやり方というのは実態に合わない。  しかも、私は関税法を見て驚いたのですが、それでいて臨時開庁制度とか時間外使役というのが法定化されていて、これは結局、言ってみれば、制度的には労働基準法や何かともシビアーに対立する、矛盾する内容を持っているわけですね。臨時開庁制度は、その制度としてそういうものは開ける、そこで働く労働者については、基準法の三六協定その他で処理すればそれで事が済むのだという。しかし、労働基準法そのものは、時間外労働いうのはもう原則としてしないというたてまえに立ってできている法律ですよ ところが 時間外の仕事をするんだということを、逆にさかさまにして、関税法が臨時開庁制度や時間外使役の制度を入れている。これはもうきわめて非近代的な法律だというようにいわざるを得ないわけですね。  こういう問題まで含めてひとつ抜本的に、この通関事務の中での、そこで働く労働者の問題あるいはそういう通関制度そのものを改善していくために検討される御用意があるのかどうか。そこらの点をひとつ最後に聞かせていただきまして、委員長のほうから、早くやめろということですので、時間が来ましたので終わりたいと思います。
  209. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 まず第一点の御質問でございますが、決して大蔵省部内におきまして税関が軽視をされているというわけではございませんで、ただいま審議官が申しましたように、定員も相当私どもといたしましても強く要求をいたしましたし、少なくとも現実のプラスを年々むらっているという現状をさらに今後も続けてまいりたいと思います。  また、最後に御指摘のございました臨時開庁制度、これはもちろん役所のあり方の基本問題とも関連をいたすものでございますが、この制度は、法律の上から申しましても、いわゆる輸入の、要するに利用者の便宜をはかるということを主たる目的として規定されている制度でございまして、日曜、休日あるいは時間外にも、要するに要求があった場合にはこれを税関長の承認のもとに開くことができるということになっておるわけでございまして、私どもといたしましては、平生、通関業者その他とも、これは現実問題といたしまして行政指導によりまして、できるだけこの臨時開庁という制度を利用しないような方向で対処をいたしたいという方向で、これは税関からも通関業界その他に指導をいたしておるわけでございまして、非常に現実問題として輸入を急ぐという場合もあるわけでございますが、最近におきましては、年間の臨時開庁の回数、件数と申しますものも年々減っていくという方向にあるわけでございます。いま直ちにこの制度をやめてしまうというわけにはまいらないかと思いますが、今後とも少なくとも臨時開庁の件数をできるだけ少なくするべく、平素から関係業界とも接触をいたしまして、職員の労働強化にならないという方向でこれに対処してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  210. 増本一彦

    ○増本委員 それで、これからもいろいろ私たちも検討をさせていただく上で、ひとつ関税率審議会の企画部会などに提出された資料がございましたら、この法案を審議し判断する上からもたいへん重要に資する問題だと思いますので、ひとつその点の資料を提出していただきたいというように思うのですが、その点はいかがですか。
  211. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 現実問題といたしまして、関税率審議会の委員の先生方の個人的な御要求としていろんな資料を作成をいたす場合もあるわけでございます。ただ、関税率審議会それ自身に正式の役所側の資料として提出されるものは比較的数が少ないわけでございます。それで、いろいろなそういうような関係でこれが正式資料として関税率審議会に提出されるのは、非常に骨組みになるようなものだけが提出をされるわけでございまして、もし先生のほうで具体的にこういう資料がほしいというような御要求がございましたならば、できるだけそれに合わせるような資料を私ども作成はいたしますけれども関税率審議会に提出いたします正式資料と申しますものは、わりあいにこれは形式的な資料提出というかっこうになるものが多いかと思うものですから、その点、関税率審議会の正式資料を直ちに必ず御提出をするということもいかがかと考える次第でございます。
  212. 増本一彦

    ○増本委員 じゃ、その点はあとで詰めましょう。  では終わります。
  213. 鴨田宗一

    ○鴨田委員長 広沢直樹君。
  214. 広沢直樹

    ○広沢委員 私は、基本的な問題について二、三お伺いしてみたいと思います。  まず最初に、わが国が戦後、貿易関税の全面的な改正を行なった、洗い直しをやったというのは三十六年、そして昨年の一律二〇%の関税引き下げ、これが戦後最大ものであった、こういうふうにいわれているわけでありますが、そういうふうにいま情勢が非常に変わってまいって、一律に二〇%の引き下げをほとんど全面的に行なおうというような体制になってきておりますし、またさらに最近においては緊急関税の強化も検討しなければならぬというような状況になってきているわけであります。  そこで、関税について、関税率には、それぞれの品目ごとに基本税率だとか、あるいは暫定税率あるいは協定あるいは特恵税率とか、いろいろあります。しかし、その税率の設定については、それぞれの政策的な、意図するところがあるわけでありますが、また制度についてもこれと同じように、特に関税の減免措置等については同様のことが言えると思います。  そこで、税率の体系は非常に複雑化してきているんじゃないか。そういうような情勢から考えてみましても、あるいは諸外国の体制を比較してみましても、やや複雑になっているんじゃないかと思われますので、これをもう一ぺん基本的に見直してみるべきではないかと思うのですが、まずその点についてお伺いしておきたい。
  215. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 非常にむずかしい御質問でございまして、私どもといたしましては、現在の関税率体系が非常に複雑になっていると思います。現に私も、昨年の十一月に関税局に参りまして、いろいろと勉強をいたします過程におきまして、私自身も先生と同じような感じを持ちまして、これを何とか簡素化をするという方向検討をすることができないか、かなり内部においても実は議論もいたしたわけでございますが、何ぶんにも個々の品目、関税の対象となっております品目が二千以上にのぼるような、国際的にも認められている非常に大きな品目にそれぞれの税率がきまっているわけでございます。また日本におきましては、これが非常にこまかく個々の品目の税率設定の際におきましてはいろいろな各方面からの検討が行なわれておりまして、たとえばスライド関税のほうが適切であるというようなもの、あるいは普通の関税のもの、それから暫定で一時的に引き上げておくべきもの、引き下げておくべきものというように、個々の品目ごとに、理由を聞いてみますと、やはりそれはそれなりの理由がございまして今日の税率が設定をされているという面がございまして、これを一挙に、簡素化ということを目的といたしますためにこれを簡易なものにするということは、国内の産業にもかなり大きな影響がございますものですから、一気にはこれはむずかしいかと思いますが、私自身も、税率の体系そのものが非常に複雑化していることは、何とかしてこれをもっとわかりやすい簡易なものにしていくべきが——やはり国民の方々にもわかりやすいものにするという方向検討するべきことは当然の義務であろうと思っておりますので、ひとつ検討はさしていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  216. 広沢直樹

    ○広沢委員 一応検討してみるということですが、これはひとつ、いま申し上げたとおりでありますので、要望申し上げておきたいと思うのです。  そこで、まず、前回の関税の二〇%、千八百六十五品目に対して一律に引き下げる。これは円対策の一環として行なわれた問題でございますけれども、その背景は、申すまでもなく、いまのわが国の輸出超になっている黒字が非常に累積されているということで、輸出入のバランスを何とかはからなければならないということがその背景にあるわけであります。しかしながら、そういうふうに大幅な一括引き下げを行なったとしてどれだけの輸入増になってくるのか。単なる関税だけでバランスをとるといっても、それはむずかしい話ですけれども、やはりその元締めになっているのが関税でありますから、そういう点で大体どの程度の効果になっているのか、その点を伺っておきたい。
  217. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のように、昨年の一律二〇%引き下げは、もちろん円対策の一環としての目的もあったわけでございますが、私どもといたしましては、いわゆるタリフエスカレーションと申しますか、日本関税率体系そのものが、製品に高く、原料に安いという体系がもともとあるわけでございまして、これをできるだけ是正していくという方向検討いたしたいということで、いわゆる製品関税を主体にいたしまして、一律二〇%、千八百六十五品目の引き下げをやったわけでございまして、そのいわゆるタリフエスカレーションの是正という意味も私どもといたしましては含まれているものと考えておるわけでございますが、もちろん、円対策の一環としての考え方が主たるものとしてあったわけでございまして、先ほどもちょっと御答弁いたしましたように、この千八百六十五品目の一律二〇%引き下げに伴う輸入増の効果と申しますのは、平年度ベースに換算をいたしまして約二億八千万ドル程度かと私どもは計算をいたしているわけでございます。
  218. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、いま問題にしておりますいわゆるこの輸出入のバランスの問題でありますけれども、やはり諸外国からは、関税引き下げだとか、あるいは自由化だとか、それぞれ強くわが国に対して今日までの産業保護育成的なやり方に対していろいろな批判があるわけですね。しかしながら、いまそれだけ最大の一括引き下げを行なったにしても、二億八千万ドルですか、くらいの輸入増にしかならない、こういう状況であります。  そこで私は、いまやはり輸出に対しても、ある程度、これはまあ適正な輸出のしかた、こういうことを考えてみなければならないと思うわけですね。昨年円切り上げをした後においても、ある程度輸出は鈍化したみたいな傾向を示しておりましたが、その後において不況からの脱却ということもあったのでしょうけれども、非常に輸出が伸びてきております。そういう傾向もあり、また今度の通貨調整という中で今後どうなるかということはまだよくわかりませんけれども、しかしながら、いろいろな意見がありますけれども、やはり基本的に日本経済が今日まで貿易立国、こういう形で輸出重点に置かれてきたことは間違いないし、そういう基本的な経済力のもとに今後もそれで頭打ちになるということは考えられないわけですね。したがって、このバランスをとる意味から考えていくと、やはり輸出に対してもある程度の適度な抑制といいますか、そういう形がある程度あらわれてこなければ、いま言うようにすべての品目について関税引き下げて輸入を拡大しようとしても、そこにはすぐにバランスというものがとれないと思うのです。そこで、きょう通産省から来ていただいておると思いますので、その点についてお伺いしたいと思いますが……。
  219. 柴田益男

    ○柴田説明員 先生御指摘のような趣旨もございまして、昨年の円対策の一環といたしまして、現在輸出貿管令を発動いたしまして輸出の調整を実施いたしております。対象期間は、昨年九月からことしの八月三十一日までの一年間をとりまして、輸出が非常に伸びていたものに対しまして輸出調整を実施している段階でございます。
  220. 広沢直樹

    ○広沢委員 先ほどもいろいろ話に出ておりましたとおり、近くアメリカの議会において新通商法案が出る、その中にはいわゆる輸入課徴金の問題も問題になっておりますし、あるいは関税の引き上げだとか、それからセーフガード、いわゆる緊急輸入制限、こういうようなことが一応織り込まれたものがこれは間違いなく出るだろう、こういわれておるわけですけれども、かりにそういうことになりますと、やはりわが国にとっては当然これはマイナスになってくるわけですね。それならば、輸出増勢の強いものからある程度それに対する処置というものをしておくことが、こういうような処置を向こうにとらせないためにも必要じゃないか、こう思うわけですけれども、これは輸入の拡大の方向と両方考えてみなければ、一がいに、いままで輸出が増勢になってきた、そして黒字が蓄積されたからそれを押えればいいという意味ではないのでありまして、その点の考え方をどうしていくかということが問題だと思うのです。ですから、やはり私は前の予算委員会でも多少触れましたけれども、ある程度輸出に対する適度な規制というものが必要ではないか。いまのところは貿管令という形でやっておりますけれども、貿管令にしても、急激な伸びというものをある程度調整しようというだけですから、その関係がどういうふうになっているか、ひとつ御説明いただきたいと思います。
  221. 柴田益男

    ○柴田説明員 先生ただいま御指摘のように、アメリカにおきまして新通商拡大法等の動きもございまして、この二月から変動相場制になりまして、将来の国際収支が相当改善される見込みとわれわれは見ておるわけでございますけれども、そういうアメリカ等の動きがございますので、現在の貿管令は、当分推移を見るということで継続さしていただいているわけでございます。  こういう貿管令という形で急激に輸出が伸びているものの伸びを調整するという程度では足りないのではないかというさらに御指摘ではございますけれども、その点になりますと、あるいは輸出税という問題が考えられると思いますけれども、当省といたしましては、現段階、今回の変動相場制等によりまして相当収支が改善してくるだろうということと、それから貿管令を現在やっておるという事態でございますので、輸出税等によりましてさらに輸出を抑制するということの検討はいたしてない現状にございます。
  222. 広沢直樹

    ○広沢委員 それをいまの時期にこれをやれとか、そういうことを言うのが適当かどうかということは、こういう時期になってみれば——基本的にこれはいままでの産業、企業中心から福祉へかえていかなければならないという、基本的な産業構造を転換していこう、そして福祉優先の体制に持っていかなければならないという考え方から考えてみますと、ただ、いま言うように、貿管令だけで是正しただけでこれはうまくいくものかどうかということが問題があるわけです。ただ、いまこういうような時期でありますから、その輸出産業が非常に不安を持っているし、あるいはまた、それによって大きな被害を受ける面も出てまいりましょうから、それについていまこの問題をどうこうするというわけにはいかぬかもしれませんが、私は、基本的ないまの構造を転換していく上において、やはりいままで大きく育ち、力を持ってきたものに対してのあり方というものを考えてみなければいかぬじゃないか、こう思うわけです。ただ、緊急的に、いま為替差損を大きく受けそうな、あるいは受けている中小企業に対しては、十分な緊急融資だとか、いろいろな施策があると思いますが、それによって壊滅的な打撃を受けないようにこれは保護してあげなければならない。これは当然のことですし、われわれも強くこれを主張しているところですが、しかし、そういう観点から考えてみましても、基本的な考え方としてはそういうこともあり得るのじゃないか。これは田中総理もこういう事態に至るまでにはそれも必要ではないかということを考えたということは、これは基本的な構造を転換していく上において必要であったのではないかというふうな意味に私はとっているわけですが、そういう意味においては、やはり輸出のあり方について今度基本的に、貿管令だけである程度状況を見ればいいというのではなくて、もう少し深く検討してみる必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  223. 柴田益男

    ○柴田説明員 確かに先生御指摘のように、貿管令という波打ちぎわだけの政策では、問題の基本的な解決にはならないわけでございまして、国際収支の改善は、貿易構造、ひいては産業構造を改変していかなければ解決できない問題でございまして、広く財政、産業政策一般の施策が必要である、そのように考えるわけでございます。
  224. 広沢直樹

    ○広沢委員 次に、先ほど関税局長からお話のありました産業保護の関税のあり方の問題ですが、これも再三皆さん触れられておりますけれども、私は、今回の改正案をお出しになるには、いわゆる関税審議会においても、基本的な関税政策のあり方というものを、ここで転換期を迎えているんだから転換しなければならぬ、こういう抜本的な立場に立っての改正というものが行なわれるのではないかと、こういうふうに考えておったわけでありますが、この法案は一応一部手直しをしている程度のものであるというふうにしか受け取れないわけです。確かにそれは昨年の十一月に二〇%の一斉な関税引き下げを行なったということを背景にしているからであるとお答えになると思いますけれども、しかしそれにしても、基本的な問題としては、いま産業保護の関税のあり方というもの、これを変えていかなければならない。そこで、まず関税率、原料と半製品、それから製品、これについて関税率がどういうふうになっているのか、もう一ぺんひとつ御説明願いたいと思います。
  225. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 今回の改正の度合いが非常に少ないではないかという御指摘は、そのとおりであろうと思います。私ども、昨年の十一月にやったばかりであるものですから、あんまり急激な改正をいたしますことは、国内産業への影響も勘案をいたしまして検討をいたしたわけでございますが、ただいま先生の御指摘の原材料、半製品、製品の平均関税率でございますが、原料は、日本の場合、四十七年度の一律引き下げ後の、すなわち四十八年になりますか、要するに一律引き下げ後の日本の原料品関税は四・二%でございまして、半製品が四・八%、製品関税が八・五%ということで、平均関税率は五・三%ということに相なるわけでございます。  それから、それに対応いたしまするところの外国の例は、アメリカが、原料品が二・七%、半製品が五・一%、製品が八・四%で、平均が六・一%になります。EECは、原料品が〇・三%、半製品が四・七%、製品が八%、平均関税率が三・九%と、こういう数字になっておるわけでございます。
  226. 広沢直樹

    ○広沢委員 それはいま資料もいただいておりましたが、それについて、やはり製品の輸入の拡大をはかっていかなければならない。製品ないし半製品ですね。そういう観点から見ますと、一応諸外国並みに工業品的なものはなったというものの、まだ非常に日本のいままでの経済力から考えてみまして、これで満足すべきものではないのではないかと思います。こういう緊急の場合の、いわゆる黒字を何とか是正していかなければならないというような場合においては、こういった製品の関税を思い切って、これは一時的なものですけれども、一応停止して、そしてその調整をはかるというような運用のしかたというのは考えられないものなのか。それはもちろん国内の体制の中に非常に影響がありますけれども、そういう大きな輸出、輸入の関係のバランスということを調整する意味においては、こういうことも検討されてしかるべきではないだろうか。それによって起こってくる、まあこれは大体工業品がおもになってきますけれども、そういうふうな仕組みにこれを変えていかなければならないというのが、いわゆる産業保護育成的ないままでの関税のあり方を変えようという一つのあらわれではないかと思うのです。そういう意味においては、そういったようなことも考えられないのかどうか、お伺いしたいと思います。
  227. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 先生御指摘のようなことは、理論的にはまさしく、現在の日本の輸出入バランスを急激に改善をする、貿易バランスを改善するだけの問題でございましたならば、確かに一時的に製品関税をゼロにしてしまうということも考えられるかと思いますが、現実問題といたしまして製品関税を一律ゼロにいたしますると、日本国内産業で非常に大きな衝撃を受けまして、そのまま倒れてしまいかねないというものも出てまいる可能性があると思います。現実に昨年十一月に一律二〇%引き下げをやっていただいたわけでございますが、その際にも、いわゆる雑貨であるとか繊維であるとか、こういう業界は、この一律二〇%の引き下げですらも自分たちのこうむる打撃が非常に大きいのであるというかなり強い抵抗があったことも事実でございますし、各業界別にながめてみましても、関税を、一時的にせよ、一挙にゼロに持っていくということは、あまりにも現実に日本国内産業に対する衝撃が大きいという観点から、私は、現実問題としてはちょっと無理なのではないかと、かように考えておる次第でございます。
  228. 広沢直樹

    ○広沢委員 それで、いま申し上げたのは、全部ゼロにしてしまえという極端から極端の話ではなくて、いま二〇%の関税一律引き下げを行なって、ようやく工業品においては八・六%、税率がこういうふうになって諸外国並みになってきているというわけですから、これをいまのような情勢下においてはもう少し引き下げるというふうな、これは引き下げて上げるというのはなかなかむずかしい話でしょうけれども、そういうような弾力的なやり方というものを考えてみるべきではないか。先ほども御答弁の中にありましたように、この二〇%の関税率の引き下げによって一応欧米並みになってきているけれども、少しはまだ高いんだ、徐々にこれを考えていきたいという話でありますが、確かにここまで引き下げるについては国内的にもいろいろ問題はあったと思います。しかし、それを是正しながら、どうしてもこの際円対策の一環の上から考えてみても、ここまでに一挙にいままでやったことのない大幅な引き下げを全品目について考えなければならないような立場になったということから考えてみましても、ある程度その点については欧米並みあるいはそれより少しその水準に近いからいいではないかという考え方では、今後の国際間の交渉の上においてもやはり問題を少し残すのではないかというふうに考えますので申し上げたので、中にはそういうふうにして一挙にそういうふうなほとんどゼロに近いような形で行なわれる製品もあるかもしれません。だから今回の場合の中にも無税というのも中にはあるわけですから、そういう点をもう少し洗い直してみて、そしてこれを今後もある程度引き下げるということは御努力なさるつもりがあるのかどうか、その点お伺いしておきたいと思います。
  229. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 ただいまのお話でございますけれども先ほどちょっとお話をいたしましたけれども、昨年の十二月、それから今年の一月、二月、このわが国における輸入水準は、通関実績で見まする限りにおきまして、対前年同期二月あたりは三四%というように、それまでの一月−十一月が一一七%でございましたのが、十二月以降急激な勢いでわが国の輸入が伸びているわけでございます。この現在の傾向でまいりますると、昭和四十八年度におきまするわが国の輸入は、おそらく現在経済企画庁の経済見通しの数字を相当大幅に上回って伸びるのではないか、こういうふうな見方もあり得るわけでございます。したがいまして、私ども輸入の動向というものをいましばらく見ませんと、現在、先般のレートの切り上げの効果が、輸入面においても現実問題としてあらわれてきているという面もあるわけでございますし、ここであまり短期的に関税を上げ下げ——関税と申しますのは、あまり短期的に上げたり下げたり弾力的にやりますということは、国内の業界にとりましては、これからの自分の産業の将来計画を立てます際にも、現在の関税の水準それ自体を一応前提に置きまして生産計画なりあるいはいろいろなものをつくっている面があるわけでございまして、政府のほうにおきましてかってに関税を、対外貿易収支という観点を主体にしてあまりひんぱんに上げたり下げたりいたしますと、国内産業にも非常に大きな影響を与える面が生じてくることは否定できないと思います。したがいまして、私個人としての感じといたしましては、関税と申しますものは、確かに弾力的に、機動的に操作させなければならない面もございますと同時、ある程度の期間は、一定の関税率水準というものを維持をするということも、また必要な場合が出てまいる面があるわけでございまして、そういう意味におきましては、長い目で見ました場合に、徐々に製品関税の率を引き下げていくということを前提考えることは非常に大切ではございますけれども、あまり急激な変化というものをいたすべきものではないのではないか、基本的にはかように考えているわけでございます。
  230. 広沢直樹

    ○広沢委員 スミソニアン以後、国際収支の大幅な黒字基調を是正するというととが、わが国としても一応課題になってきたわけですね。それは一挙にできないからということで、両三年の間に考えると田中総理も言っておったわけでありますけれども、しかし、両三年を待たずに、一年少々でまたこういうようなことになりまして、そしてまた、それこそ大幅な円の切り上げということが懸念される。そういうような中で、アメリカ日本に対して、いわゆる自由化だとか、輸入関税引き下げだとか、いろいろな要求をいたしてきているわけですね。ですから、そういうものに対応するという考え方からいけば、製品の関税というものが、いままで相当それに対しては諸外国に比べても高かったわけですから、そういうことを考えてみるならば、輸入の拡大をはかるということを緊急にはかろうという、円対策の一環でこういう体制を行なっているわけでありますけれども、そこにもう一歩進んで、それに対する考え方というものを持たなければならないんじゃないか、これはそれだけでいいというものではありませんよ。おっしゃっているとおりであろうと思いますけれども、いまのような黒字基調を是正するという意味からも、関税の果たす役割りというものは大きなものであるわけですから、そういう面も一つ考えてみるべきじゃないか。簡単に上げ下げしろ、そういうようなものではありませんけれども、その点についていまそういうお考えがあるかどうかということについては、ちょっと私、聞き漏らしたのですが、明確じゃないのですか、いかがでしょうか。
  231. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 実は、最近国際通貨の問題によりまして、円がフロートいたしておるわけでございます。ドル切り下げと円のフロートの結果、現在その前の段階に比べますと約一五%現実問題として円の価値が切り上げられているという面があるわけでございまして、円のレートの切り上げ関税引き下げと申しますものは、経済的には同じ効果を持つものであろうかと思います。したがいまして、先般の一律二〇%の関税引き下げに加えまして、現在日本国内産業といたしましては、さらに純粋の、要するに約一五%に相当するところの、関税に直しましてまるまるの一五%の円レートの切り上げの効果を受けておるわけでございまして、国際競争力という観点から申しますと、かなり大きな影響があろうかと思います。したがいまして、この段階におきましてさらに先般の一律二〇%引き下げというような、要するに関税の面からいたしますところのドラスチックな対策をとるべきかどうかという点に関しましては、これは非常に慎重に考えなくてはいけない問題ではないか、かように私は考えておるわけでございます。
  232. 広沢直樹

    ○広沢委員 わが国はいままでの産業形態が示してきたように、資源が乏しいわけですから、原料を買ってそれを製品にして売っていく体制というものは、早急に是正するといっても、なかなかむずかしい問題だと思うのですね。さらに貿易の対象というのが、いわゆる開発途上国、そこから資源的なものを入れてそれを製品にして売っている。そういう関係で、いま開発途上国においてもいろいろ問題が出ておりますね。ですから、そういう意味からいうと、半製品なりあるいは製品というものを、今後非常に輸入しやすいような仕組みにしていかなければこれは是正できないですよ、これはいまの状況の中でいえばいろいろ問題がありましょうけれども。ですから、そういう国々によって多少事情は違うでしょうが、わが国の場合は、そういうふうに原料を主体にして加工して、加工貿易によって成り立とうとしてやってきたわけでありますけれども、それをいまどう是正していくかということが問題になってきているわけですから、その点についてもう一ぺん考えてみる必要があるのではないかと私は思うわけです。  それから、いままで競争力の強いもので、いわゆる当時のまま据え置かれておるものはどれほどあるのか。それから是正されても今後是正の余地のあるもの、これは大体どの程度あるのか。それから国際競争力をつけることが無理なために、高い関税をかけているというものはどれくらいあるのか。これは大体わかりませんですか。大まかな数字でけっこうです。
  233. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 一番最初の、競争力のあるものでそのまま据え置かれているというようなものは、もうないと思います。と申しますのは、先般の一律二〇%の引き下げのときには、私どもといたしましても、できるだけ例外品目の数を少なくするという観点から、かなり各業種日別に具体的に通産、農林とも当たりまして、例外品目を少なくするという方向検討いたし、その結果、千八百六十五品目にのぼったわけでございまして、したがいまして、前半の部分は、昔のまま据え置かれているというものはないかと思います。後者になりますと、実は私どもそういう観点からの分析はいたしておりませんが、ただいま伺いますと、確かにそういう観点からの分析をすることの必要性も非常に意義のあることかと思いますので、一回勉強させていただきたいと思いますが、今日までそういう観点からする分析というものは、私ども遺憾ながらやっておりません。
  234. 広沢直樹

    ○広沢委員 それから自給率の高いもの、一三〇から一一〇%の間は大体関税は九%ですか、ところが一〇〇%あるいは九〇%、そういったものでも関税が現在の場合は一〇%−五%というふうに非常に高いわけでありますけれども、自給率の強いのはそれだけ力があるということですから、この点について一応関税率は考え直してみる必要があるのではないだろうかというふうに思うのです。それから非常に自給率の少ない五〇%から三〇%以下というものについては、これはそのまま高い関税を置いておいていいかどうか、これは問題はありますけれども、しかしながら、いま一番国際的にも競争的な立場にあると思います自給率が七〇から一〇〇くらいの間、このところの関税考えてみる必要があるのではないかと思うのですが、この点いかがですか。
  235. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 御指摘のとおり、一般的に申しまして、自給率が上にしろ下にしろ一〇〇%に近い産業の場合には、要するに国外産業との競争度合いが非常に激しいということが一応いえますので、そこの関税を、国内産業のためには自給率一〇〇%前後のところのものは一番高い関税を張って、国内産業を保護するという必要の度合いと申しますものが強いのではないかという感じはいたします。ただ、その自給率だけで判断のできませんのは、要するに自給率と申しますのは、国内消費量とそれから輸出余力と申しますか、輸出とを合わせたものの合計であろうかと思います。したがいまして、同じ自給率一〇〇%のものの中にも、要するに国内消費に向けられる部分は四〇%であり輸出に向けられるものが六〇%の業種もございますれば、逆にほとんどが国内消費に使われて輸出はほとんどされていないものもあろうかと思います。したがいまして、そういう業種のそれぞれの実態によりまして、その自給率だけで関税率というものを判断をいたすわけにはまいらない面があろうかと思いますけれども、一般的に申しますれば、先生御指摘のように、要するに自給率の高いものの関税引き下げというものには私どももさらに力を入れまして、その方向で推進をすべきである、かように考えているわけでございます。
  236. 広沢直樹

    ○広沢委員 それから次に、前国会におきましてこの関税定率法の一部改正のとき附帯決議がついております。この附帯決議は二つありまして、一つは、国民生活の安定充実、それから生活関連物資関税引き下げ、これが先ほども御指摘があったように末端価格にまでこの関税率の引き下げというものが十分な効果を得られるように調査と行政指導をする、これが附帯決議としてつけてあるわけであります。また次の点は、新しい国際ラウンドの発足を前にして、わが国の関税制度の全般的な見直し、こういうことをいっているのですが、これはいいとして、そのいわゆる生活関連の問題について先ほどもいろいろ企画庁からお話がありましたけれども、やはり先ほどあげられた時計だとか——企画庁いらっしゃいますかね。——万年筆だとか、ウイスキーだとか、ウイスキーというのも食品に関係しているのですが、こういう製品については確かに下がった。しかしながら、台所に直結しているといいますか、食品関係については全然下がっていない、むしろ上がりぎみであるということが一つの大きな問題になっているわけです。この点についてどういうふうに追跡調査をなさって、どういうふうな指導をなさっていらっしゃるのか、その基本的なひとつこの後における考え方について伺っておきたいのです。
  237. 斎藤誠三

    斎藤(誠)説明員 台所に直結する生活物資につきましては、われわれの調査でも、たとえば水産物について申しますと、エビ、タコ、イカ、ノリといりた四品目を調査をしております。ただ農産物につきましては従来の消費の慣行と申しますか、生鮮食料品をはじめ大部分が国内産物でございまして、最近ふえておりますのはいわゆるかん詰め等の製品でございます。それらについてのこまかい調査はまだいたしておりませんが、やはり増加している輸入の主体はいわゆる製品でございまして、レモンとか、グレープフルーツ、バナナ、そういったものについては調査をいたしており、それぞれ相当額の値下がりの傾向を示しておりますが、要約いたしますと、いわゆる台所へ直結する産物の大部分は現在国内の供給に仰いでおりますので、輸入価格の定価がそれほど家計に貢献しないというようなことであろうと思います。
  238. 広沢直樹

    ○広沢委員 今度の改正にも生活関連物資関税引き下げということは載っているわけですね。そういう方向でこれから国民福祉ということを考え経済政策に変えようということになれば、関税制度も必然的にそういうふうな方向に持っていこうという趣旨からここへこうあらわれてきているわけですけれども、それだけで物価が下がると私は思いません、いまいろいろな機構があるわけですから。それで経済企画庁のあなたにお伺いしているわけなんですけれども、そういうふうに確かに並行輸入の話があった関係においては、非常に著しく下がったものもあるわけですね。しかしながら、いま申し上げたような、一応食品関係、台所に直結したというものについては、海外市況が上がったのとか、いろいろなことを理屈にしておりますけれども、実際にはそれは具体的な追跡調査やあるいはそれに対する行政指導というものが、適切に行なわれているかどうかということが問題であろうと思うのです。たとえば、これは経済企画庁が出しているのですが、すき焼き用の冷凍牛肉だとか、あるいは砂糖だとか、食用油、これは大豆ですね、それから韓国ノリ、あるいは原油、こういったものは相当な値上がりをしているわけですね。  ですから、そういうことに対する手というものを具体的にどういうふうに打っていくのかということがやはり問題だと思います。海外の市況が上がったから、これはしかたがない、これは手を打っても上がらざるを得ないと言いますけれども、たとえばいま問題になっておる羊毛なんかにしましても、海外においては日本の商社が買い占めているのじゃないかというようないろいろな問題がありますし、こういうことについて、やはりこれと関連して手を打っていかなければ何にもならないのじゃないか、こういう意味できょうは来ていただいて、具体的にこれらに対する各省庁の連携といいますか、それに対するあり方というものをひとつ聞いておきたい。よろしいでしょうか。  ただ、生活関連物資関税率を引き下げました、ですから、一応国民の生活福祉というものにウエートを置いて考えておりますという、関税当局としてはそういう意向を示しているのですが、それが具体的に今度はどういうふうにわれわれの生活の中にあらわれてくるかというところは、これは経済企画庁や、通産省や、それぞれのところで受け持ってやっていかなければならないわけですね。ですから、流通機構を変えた、いわゆる並行輸入をやったということについては、具体的にこういうふうに結果が出ましたよ、輸入品についてはあなたから先ほどもお答えがあった。これは認めます。ですから、その他にもいろいろな並行輸入以外のものについてはどういうふうにやっていくのか。それからまたいま言うような輸入品については、何らかそういうふうな制度を変えて、これが直接末端価格までいわゆる影響するというような体制はとれないものなのか。これは前回の関税のこういう生活関連物資引き下げのときにも附帯決議として一応ついているわけですよ。これはすっ飛ばしじゃしょうがないので、これをお伺いしておくわけなんですが。
  239. 斎藤誠三

    斎藤(誠)説明員 先ほどお答えしましたのは、決して台所へ直結するものがないということではございませんで、現在物価指数の中でもいわゆる輸入品と関連して消費される物資を総計いたしますと、九・五%くらいになるわけでございます。その中で、いわゆる製品の輸入が大部分を占めるわけでございますが、御承知のように、いわゆる輸入ものの消費が、全国的に見ますと、欧米のように高くないものですから、大きい品目を除いて、生鮮食料品の中におきましては依存度が低いので、あまり影響はしないということを申し上げたわけでございますが、決して関税改正等における生活関連物資の重要性を否定するものではございません。  それから、大豆等についての御指摘でございますが、たまたま昨年の国際的な不作あるいはソビエト等の買い付け等が影響いたしまして、農産物が異常に高騰した事態に遭遇いたしましたので、円切りあるいは昨年当初の関税改正の時期等におきましては、大豆等の値下げにより油あるいはそのほか消費者に利益を還元するよういろいろ努力したわけでございますが、秋以降次第に値上がりをいたしまして、むしろ、そういう国際的な暴騰の結果、国内が暴騰しないようにその対策に追われているような現状でございます。  砂糖等につきましては、一応糖価安定事業団によりまして国際価格と遮断しておる、そういう仕組みになっておりますので、これも昨年、非常に粗糖が暴騰いたしましたけれども、そういった遮断の機構がございますのと同時に、国内における砂糖の過当競争等もございまして、幸い、砂糖の小売り価格は低迷しておるわけでございます。  また、ノリにつきましても、昨年非常に豊作でございまして、四十五年度には暴落したわけでございますが、韓国からの輸入を極力二、三億枚ぐらいに縮小したわけでございますが、そういったことで、最近やや市況が堅調になりましたけれども、四十五年度の暴落に比較しますと、相当上がっておりますが、そういうノリの需給の調整によりまして、ノリが暴騰することがないよう、農林省とも相談いたしておるわけでございます。  個々の品目については、不十分でございますが、関係各省とも常々、物価担当官会議等やりまして、十分連絡をとり、また不十分な点につきましては、今後とも努力してまいりたいと思います。
  240. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間がありませんので、あと二、三点簡単にお伺いしておきたいと思うのですが、先ほど問題になりました特恵関税制度ですが、四十六年八月一月にこの制度ができてから去年の三月三十一日まで、この間において輸入総額が一兆七千三百三十九億九千六百万円ですか、それで先ほど御説明の特恵関税適用分は四百四十五億、二・六%である。それでは四十七年四月から今年二月まで、大体この数字はわかりますか。それからついでに、わが国が受益国に輸出した額。
  241. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 四十七年の四月一日から十二月三十一日まで、すなわち九カ月間でございますけれども、九カ月間の特恵適用輸入実績と申しますものは、七百九十七億三千四百万円でございます。輸出のほうは、特恵適用国に対する輸出という統計はとっておりませんので、わかりません。
  242. 広沢直樹

    ○広沢委員 いま私がお聞きしたのは、特恵受益国からの輸入の総額をお伺いしたのです。それからいまの輸出の総量ですね、これは数字がわかれば、あとからまたお知らせしていただきたいと思います。  要するに、特恵受益国から資源を入れて、そして製品を出しているという形をとっておりますから、発展途上国とわが国の差というもの、あるいは世界的にいっても発展途上国と先進国との差というものはどうしても非常についてくる。これが非常に問題になっておるわけでございます。そこで、今度の改正の中にも、先ほども話がありました運用を弾力化していく、シーリング方式ですか、やはり基準というのを、この基準にとらわれずに随時輸入わくを増加していかなければならないと思っております。そこで、こういうきびしい基準はいまさら必要ないんじゃないか、こう思うのですが、このシーリングわくで考えていくと、先進国からの輸入の額の十分の一を加算するということになっておりますから、それがふえなければ受益国からの輸入はふえない、これはきびしい制限だろうと思いますが、そうではなくて、向こうの発展途上国に輸出能力のあるものについては、国内事情等を勘案しながら、これは随時何割かふやしていくという形に変えるべきじゃないか。この点についてお伺いしておきたいと思うわけです。  それから、これは通産省が参っておりますので、この場合、原料輸入ということよりも、油のこともありましょうし、いろいろなこともありますが、半製品並びに製品としての輸入をはかるというふうにとっていかなければ、いまの形を変えなければ、いつまでたってもこの差というものは変わらないと思います。  その二点についてお答えしていただきたいと思います。
  243. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 特恵のいわゆるシーリングわくの天井の設定の方法につきましては、確かに、今後の問題といたしまして、できるだけ発展途上国からの輸入をふやすという観点から研究をいたしてまいりたいと考えておりますが、何ぶんにも現在のところ制度発足後まだ一年半ということで、もう少し時間をかしていただきたいということと、それから製品の問題は、石油はもともと特恵対象から例外品目になっておるわけでございますけれども、原則的な峠え方といたしまして、先ほど申し上げましたように、農産物の場合には五十八品目を特恵対象にしている、それに今回十一品目加えていただく、鉱工業産品の場合には原則として特恵適用である、例外品目が十品目ある、こういろ原則があるわけでございまして、御指摘のように、製品に対する特恵の適用というものは原則として特恵を適用する、こういう制度になっておるわけでございますが、御指摘のような方向で現在制度もできているのではないかと考えております。ただ、その数量をふやしていくという方向で進みたい、かように考えております。
  244. 鴨田宗一

    ○鴨田委員長 次回は、明十四日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十八分散会