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1973-02-27 第71回国会 衆議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十七日(火曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君    理事 大村 襄治君 理事 木村武千代君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 阿部 助哉君    理事 武藤 山治君 理事 荒木  宏君       宇野 宗佑君    越智 通雄君       金子 一平君    木野 晴夫君       栗原 祐幸君    小泉純一郎君       三枝 三郎君    塩谷 一夫君       地崎宇三郎君    中川 一郎君       野田  毅君    萩原 幸雄君       坊  秀男君    村岡 兼造君       毛利 松平君    山中 貞則君       佐藤 観樹君    高沢 寅男君       平林  剛君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    村山 喜一君       増本 一彦君    広沢 直樹君       内海  清君    竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵省主計局次         長       長岡  實君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省理財局次         長       後藤 達太君  委員外出席者         国税庁税部長 吉田冨士雄君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 二月二十三日  個人企業事業主報酬制度創設に関する請願  (毛利松平紹介)(第二四七号)  同(橋本龍太郎紹介)(第二七二号)  元満鉄職員等共済年金通算に関する請願(吉  川久衛紹介)(第二七三号)  入場税撤廃に関する請願外一件(小泉純一郎君  紹介)(第三五五号)  同(伏木和雄紹介)(第三五六号)  同(堀昌雄紹介)(第三五七号)  同(武藤山治紹介)(第三五八号)  同(竹本孫一紹介)(第三六八号)  同外一件(内海清紹介)(第三九三号)  同(毛利松平紹介)(第四〇三号) 同月二十六日  子供劇場入場税免除に関する請願馬場昇君  紹介)(第四四五号)  同(松尾信人紹介)(第四四六号)  同(大原享紹介)(第四六九号)  同(小宮武喜紹介)(第四七〇号)  同(坂本恭一紹介)(第四七一号)  同(多賀谷真稔紹介)(第四七二号)  同(田邊誠紹介)(第四七三号)  同外一件(塚田庄平紹介)(第四七四号)  同(中澤茂一紹介)(第四七五号)  同(中村重光紹介)(第四七六号)  同(成田知巳紹介)(第四七七号)  同(宮田早苗紹介)(第四七八号)  同(吉田法晴紹介)(第四七九号)  同(有島重武君紹介)(第五〇五号)  同(池田禎治紹介)(第五〇六号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第五〇七号)  同(江田三郎紹介)(第五〇八号)  同(枝村要作紹介)(第五〇九号)  同(小沢貞孝紹介)(第五一〇号)  同(柴田健治紹介)(第五一一号)  同(下平正一紹介)(第五一二号)  同(長谷川正三紹介)(第五一三号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第五一四号)  同(平林剛紹介)(第五一五号)  同(松尾信人紹介)(第五一六号)  同(受田新吉紹介)(第六〇五号)  同(江田三郎紹介)(第六〇六号)  同(勝澤芳雄紹介)(第六〇七号)  同(村山富市紹介)(第六〇八号)  入場税撤廃に関する請願中川一郎紹介)(  第四六八号)  公共事業等適期施行に関する請願羽田孜君  紹介)(第四八〇号)  同(小川平二紹介)(第五二〇号)  同(小沢貞孝紹介)(第五二一号)  同(吉川久衛紹介)(第五二二号)  身体障害者に対する自動車重量税撤廃等に関す  る請願玉置一徳紹介)(第五一七号)  同(永末英一紹介)(第五一八号)  同(山田芳治紹介)(第五一九号)  付加価値税新設反対等に関する請願青柳盛  雄君紹介)(第六〇九号)  同(荒木宏紹介)(第六一〇号)  同(諫山博紹介)(第六一一号)  同(梅田勝紹介)(第六一二号)  同(浦井洋紹介)(第六一三号)  同(金子満広紹介)(第六一四号)  同(神崎敏雄紹介)(第六一五号)  同(小林政子紹介)(第六一六号)  同(紺野与次郎紹介)(第六一七号)  同(柴田睦夫紹介)(第六一八号)  同(田代文久紹介)(第六一九号)  同(田中美智子紹介)(第六二〇号)  同(多田光雄紹介)(第六二一号)  同(谷口善太郎紹介)(第六二二号)  同(津金佑近君紹介)(第六二三号)  同(寺前巖紹介)(第六二四号)  同(土橋一吉紹介)(第六二五号)  同(中路雅弘紹介)(第六二六号)  同(中島武敏紹介)(第六二七号)  同(野間友一紹介)(第六二八号)  同(林百郎君紹介)(第六二九号)  同(東中光雄紹介)(第六三〇号)  同(平田藤吉紹介)(第六三一号)  同(不破哲三紹介)(第六三二号)  同(正森成二君紹介)(第六三三号)  同(増本一彦紹介)(第六三四号)  同(松本善明紹介)(第六三五号)  同(三浦久紹介)(第六三六号)  同(三谷秀治紹介)(第六三七号)  同(村上弘紹介)(第六三八号)  同(山原健二郎紹介)(第六三九号)  同(米原昶紹介)(第六四〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  有価証券取引税法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二号)  資金運用部資金並びに簡易保険及び郵便年金の  積立金長期運用に対する特別措置に関する法  律案内閣提出第一号)      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  有価証券取引税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。増本一彦君。
  3. 増本一彦

    増本委員 共産党・革新共同増本ですが、きょうは政務次官おいでにならない……。じゃ、政務次官あとから聞きますが、ちょっと直税部長に先にお伺いいたします。  相続税相続人確定申告によって課税標準と税額が確定するという申告納税制度になっておりますね。ところで、この相続税法相続財産評価時価主義をとっているわけですから、確定申告をする納税者立場からしますと、時価幾らだというのはよくわからない、判定がなかなかむずかしいという問題があるわけです。そこで税務署に聞きに行くということがよくあるわけですが、これは、税務署はそのときには金額を教えるものなんですか。
  4. 吉田冨士雄

    吉田説明員 税務署のほうではできるだけ納税者の方に親切にお教えするというたてまえをとっておりますので、いろいろな書類をそろえまして御相談に応ずるようにしております。たとえば、いまお話し評価関係、特に土地関係、どの地点幾らかということは、納税者の方も非常に御関心がございますので、それぞれの税務署に詳細な、どの番地が幾らかという相続税基準書類を備えておきますと同時に、税務署以外にも、たとえば農協あるいは市町村役場というところまでできるだけそういう書類を配付して納税者の御便宜に供するようにしております。
  5. 増本一彦

    増本委員 この税務署納税者金額を教えるというのは、これは申告指導の趣旨でおやりになっているのか、または別に何か特別の意味があるのか、その点はどうなんでしょう。
  6. 吉田冨士雄

    吉田説明員 むしろ納税相談と申しますか、税務相談と申しますか、できるだけ納税者の方の御相談に応ずるという立場でお教えしております。
  7. 増本一彦

    増本委員 そこで、税務署納税者申告を教えたりあるいは税務署としての財産評価がこういうものであるということを納税者にわからせたり、相談に応ずる、その場合の税務署のほうの評価、これはどういう基準で、またどのような手だて方法をとって実際に評価をされていらっしゃるのですか。
  8. 吉田冨士雄

    吉田説明員 まず、税務署に備えつけてあるいろいろな評価基準というものがどうなっておって、それをまた次に納税者の方にどうやってお教えするかという順序でお話しいたしますと、たとえば土地につきまして、税務署で備えつけてありますのは、路線価、それから固定資産税倍率のところは固定資産税倍率を備えつけてございますが、それを算定いたしますのには、御案内のように、まず土地時価を導き出しまして、その時価から大体最初いわゆる仲値を出しまして、都市の場合にはそれのおおむね七割のかためで評価しておるわけでございますが、それを市街地部分では、大体路線価が引けるところは路線価で引いております。路線価の引けないところは今度は固定資産税の何倍という倍率地域でやっております。倍率地域の場合には、その倍率ごと地域を区分してやっておるわけでございます。そういう路線価なり倍率の表がございまして、相続税が起こった場合には六カ月以内に申告していただくことになりますので、納税者の方がおいでになりましたならば、路線価幾らでございます、あるいは倍率地域幾ら倍率地域でございます、こう御相談に応ずるわけですが、その際に、たとえば路線価の場合には、正常な大体十間四方程度土地基準にして路線価を考えておりますので、実際の土地がそれよりも奥行きが長かったりあるいは変形しておったというような場合には、いろいろな修正値をそれに加えるわけでございます。そういうものもお教えいたしまして、実際のその相続地点場所値段幾らというぐあいに相談に応じているというのが実情でございます。
  9. 増本一彦

    増本委員 この路線価方式で算定するとか、あるいは固定資産評価額倍率でやる、何かこういう方法を採用するというような法律上の根拠があるのですか。
  10. 吉田冨士雄

    吉田説明員 評価関係は、御案内のように相続税法の二十二条で時価主義だということが書いてありまして、あとは若干立木その他が法律できめてある点がございますが、それ以外は全部執行にまかされていまして、法律、政令に明細が書いてございませんので、その時価主義の解釈ということで、われわれは路線価とか倍率方式というものを古くから採用してやっておるわけでございます。
  11. 増本一彦

    増本委員 そうしますと、納税者が今度は税務署やその他へ聞きに行かないで、自分の判断だけで申告をするということも起こり得ると思うのですが、そういう確定申告そのものは、一応形式的にも整っていれば受理されるわけでしょう。その点はいかがですか。
  12. 吉田冨士雄

    吉田説明員 通常の場合には、非常に計算方法が多岐に分かれておりますので、税務署納税相談おいでになりましたり、あるいはいろいろ解説書類がございますので、あるいは税理士の方が普通入っておられまして、それで申告なさいますが、そうでない場合にも、われわれとしては、申告書としては受理いたします。
  13. 増本一彦

    増本委員 税務署としては、路線価でやる場合でも、基準となる土地とかそういうものは独自に鑑定をされたり、その他の方法評価はされておるわけですか。
  14. 吉田冨士雄

    吉田説明員 さようでございまして、たとえば宅地の場合には、全国で約七万カ所におきまして標準地というものを選定いたしまして、これによって評価して、それからほかの場所を類推するというかっこうにしております。  なお、付言いたしますと、やはり全国的にバランスを統一する必要があり、また税務署各局バランスの統一が必要でございますので、まず各局におきましては、宅地なら宅地につきましては、各署所在地最高地につきまして局でバランスをとります。それから国税庁では、原則として各局所在地最高地につきましてバランスをとる。そういうものでバランスをとりました標準地基準にいたしまして、ほかのところに評価を及ぼしていくということでやっております。
  15. 増本一彦

    増本委員 全区七万カ所というのは、全国七万カ所という意味ですか。——そこで、その七万カ所の標準地がきめられて、各税務署管内ではそれぞれの土地評価と、それに基づいて路線価方式で独自に評価をされるわけですね。
  16. 吉田冨士雄

    吉田説明員 ただいまの七万地は、全国で七万でございます。  それで、税務署で独自の評価をしておりますが、その際に、税務署といたしましては、精通者の御意見をまず、いろいろ承ります。精通者といたしましては、通常の場合不動産鑑定士とか、あるいは市町村固定資産税に御経験のある方とか、あるいは金融機関その他民間の方で、不動産関係をやっておられる方とか、そういう方の御意見を伺うのが一つと、もう一つ標準地近くの売買実例、これもできるだけ最近の売買実例をさがしてまいりまして、それから標準地値段正常価格幾らであるかということを推定する、そういう二つの作業の上で標準地値段をきめております。
  17. 増本一彦

    増本委員 まず、この七万カ所の標準地ですが、これはだれがどういう手だて評価をされるのか、これはどうなんですか。
  18. 吉田冨士雄

    吉田説明員 まず、税務署が七万カ所を選びまして、それから先ほど申しましたように税務署がその近くの売買実例をさがしてまいりまして、それで一応の考え方を出しまして、それから精通者の御意見をそれについて伺いまして、その上で税務署として一応決定いたします。それから各署間のバランスをとるために国税局で一応それを相談いたし、さらに局間は局の最高地だけは国税庁が見まして、最終的に全国的にきめるということにしております。
  19. 増本一彦

    増本委員 その評価の際に、不動産鑑定士とかその他の専門家使つて土地評価鑑定をするという手だてはおとりになるのですか。
  20. 吉田冨士雄

    吉田説明員 さようでございまして、先ほど申しましたいろいろな方、鑑定士その他の御意見精通者意見といいますか、意見を七万カ所についてとって、その意見を参酌して決定しております。
  21. 増本一彦

    増本委員 税務署部内だけで、その職員なり担当官だけで不動産鑑定なり評価をする、それだけで済ましていて、不動産鑑定士その他が正式に鑑定をするという手だてはとっていないんじゃないですか。その点はどうですか。
  22. 吉田冨士雄

    吉田説明員 不動産鑑定士としての正式の鑑定はやっていませんが、不動産鑑定士あるいは先ほど申しましたいろいろな不動産関係のある方の御意見を伺いまして、精通者意見として意見をとりまして、それを参考にして税務署は決定しております。
  23. 増本一彦

    増本委員 不動産鑑定士その他の意見をお聞きになるそうですが、たとえばどういう組織なり人の意見を参酌してやっておられるか、できる範囲で明らかにしてください。
  24. 吉田冨士雄

    吉田説明員 地価事情に明るい精通者といたしまして、おおむね、先ほど申しました不動産鑑定士の方あるいは市町村固定資産税関係の方あるいは銀行、不動産業その他で、その辺の税務署管内土地事情に明るい方、こういうような方を土地事情に明るい方といたしまして、精通者として税務署のほうできめまして、意見をとつておるというのが実情でございます。
  25. 増本一彦

    増本委員 それから、七万個所標準地を選ぶということですが、その標準地を選定する基準はどういう基準でしょうか。
  26. 吉田冨士雄

    吉田説明員 われわれも土地評価基準となるのにふさわしいようにできるだけ努力して選んでいるわけでございますが、なるべくある程度一部に片寄らないように税務署としてもできるだけ散らばったように、それから路線価その他の場合には、特に売買実例ができるだけ近くにあるような地点、しかも路線の中のなるべく一番まん中であるように、できたならばあまり買い急ぎとか売り急ぎとかいうものがない地点に近い売買実例があるような地点ということで、できるだけわれわれの評価のほうから見まして比較的よく分布されておるというような地点を選ぶように努力しております。
  27. 増本一彦

    増本委員 それは国税庁部内で何か規定とかあるいは内部の取りきめとか、そういうものは明文化されたものがあるのですか。
  28. 吉田冨士雄

    吉田説明員 標準をとってそれを基準にするということは評価通達にもございますが、どういう場所で、標準地をどうやって選ぶかというのは内部の取り扱いとしてやっております。したがいまして、外に文書として出ておるものはございません。
  29. 増本一彦

    増本委員 七万カ所選んだ場所そのものはきめられているわけですね。それは外部にも明確にされているのですか。
  30. 吉田冨士雄

    吉田説明員 それは表には出しておりません。
  31. 増本一彦

    増本委員 そこで、不動産鑑定士とか精通者意見をお聞きになってきめるということなんですが、それでも、私も弁護士をやっていての経験ですけれども、不動産鑑定というのは鑑定士によって結論が二、三に分かれて、なかなか一つの線にきまるということがむずかしいわけですね。これは不動産鑑定一つのむずかしい困難な問題だと思うのですが、税務署での相続財産時価評価という場合でもそういう問題というのは起こり得るし、ましてや税務署から具体的にこの土地はこのくらいの評価であるということを言われても、納税者としてもそれを確信を持つて、なるほどそうだと言える、得心のいく問題でもなかなかないというように、そういうむずかしさもあると思うのですが、そういう点で時価幾らと見るかというのは、決して客観的な正確さを担保したり、あるいはそれが絶対的なものだ、こういう基準もなかなかないというように感ずるわけですが、そういう点で、税務署というか国税庁なり国税局、そういう当局として、この時価はこれだということをやはり納税者に慫慂するわけですから、その辺のところの正確性担保客観性担保、こういうものはどこに求めておられるわけですか。
  32. 吉田冨士雄

    吉田説明員 おっしゃいますように、土地評価ばらつきが多くて非常にむずかしいということはわれわれも常に痛感しております。特に買い進み、売り急ぎという場合には非常に差が多うございますが、一応そういう要素を捨象いたしまして、われわれとしては正常価格を導き出すようにしておるわけですが、その場合にも、正常価格ということで導き出すにおきましても、かなりの上下、それぞれ二割なり三割の精通者意見によって幅があるというのが実情でございます。したがいまして、私どもとしてはできるだけそれを、財産評価課税評価でございますので、いわゆる正常価格の三割減というところで七掛けでかために評価しております。なおその正常価格仲値を出します際に、最近は公示価格もかなり出てまいりましたので、公示価格がそこの地点あるいはその近くにある場合には公示価格参考にいたしまして、それを仲値と考えまして、それをさらにかために仲値の七掛け評価しておるというぐあいに、かために評価しております。
  33. 増本一彦

    増本委員 それは七掛けはわかるのですが、その七掛けのいわば基数になる正常価格ですね、この正常価格の取り方自身がやはり幾つにも見解が精通者によって分かれるし、そこでの正常価格幾つかに二、三割の間でばらつきがあって、それを一つのところで押える押え方というのはどういうようにしてやっておられるのですか。
  34. 吉田冨士雄

    吉田説明員 何人かの御意見をとり、また税務署のこれまでの数値あるいは公示価格等を見まして、できるだけばらつきを一点に収斂させるということの作業でやっております。
  35. 増本一彦

    増本委員 その収斂のしかたがまだお話だけだとよくわからないのですよ。一体それじゃ正常値として参考になる数値幾つくらい出されて、それをどういう形で一つのもとに収斂させるのですか。
  36. 吉田冨士雄

    吉田説明員 精通者意見は一応五人を原則としております。それからそれ以外に売買実例自身から税務署として収斂する、導き出すやり方、それから近くにあります公示価格参考にするやり方、そういうようなものを相互に勘案しまして収斂するというかっこうにしております。
  37. 増本一彦

    増本委員 精通者五人というのは、みんな鑑定士の資格がある人ですか。
  38. 吉田冨士雄

    吉田説明員 税務署ではなかなか鑑定士にそうたくさんお願いできない場合もございますので、先ほど申しましたように、鑑定士以外にも不動産業あるいは金融業不動産関係をやっておられる方とか市町村固定資産税担当の方とかいう方も随時税務署として入れてやっております。
  39. 増本一彦

    増本委員 土地評価の実際を見ますと、都市近郊地域ではほとんどすべての農地宅地並み評価されているといいますか、時価がそういう趨勢になつているということの結果でもあるわけでしょうけれども、そういう状況になってきているように思うのです。たとえば、私の住んでいる藤沢でも、市街化区域ばかりか、市街化調整区域農地中間農地としてずっとかなり高い評価なつてきている。中間農地ということになると、不動産評価基本通達を見ますと、売買実例価格または精通者意見価格をもととして国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価するというようになっているわけですね。基本通達の三十四ぐらいのところですね。ここにも、時価といいながら、結局定める倍率で計算した金額ではじき出すというように、非常に人為的というか、作為的というか、そういう評価がやられているのではないかというように思うのですが、こういうやり方、たとえば国税局長の定める倍率ですね、これは固定資産税評価価額倍率をかけてはじき出す場合もあるわけですね。こういう倍率というのは、一体どういう手続基準をもっておきめになるものですか。
  40. 吉田冨士雄

    吉田説明員 いまお話し市街地近郊農地の場合でございますが、御案内のように、市街地周辺農地中間農地と、それからもう少し先に行けば純農地があるわけでございますけれども、大体大ざっぱな概念は、御案内のように、市街地周辺農地はいわゆる宅地比準で、市街化区域が大部分でございますし、それから純農地は純農村が大部分でございますが、その中間地帯中間農地であって、それは大部分市街化調整区域でございます。それでいま、中間農地についての国税局長の定める倍率というお話がございましたが、これにつきましても、先ほど御説明いたしておりますように、まず税務署におきまして精通者意見売買実例をとりまして、それで一応署内でバランスをとって、それから国税局のほうに連絡いたします。今度は、国税局といたしまして署間のバランスをとって、そこで、一体幾らであるという一つの水準をつくって、それからそこにあります固定資産税等の割り算をいたしまして、結果的に固定資産税の何倍という倍率国税局長が定めるということで出しております。
  41. 増本一彦

    増本委員 いままでの相続財産、特に不動産評価についての方法を伺つていましても、第一線のところでは非常に苦労されているということがよくわかるわけですけれども、確定申告のたてまえからいきますと、どういう形で相続財産評価して自分相続財産課税標準を出すかということまで納税者法律その他によって明らかにされていれば、またそういう点で非常に申告の実もあがるし、納税者にもきわめて便利だというような感じもするわけですね。ところが、時価によるということだけきめておいて、評価方法手だてやその基準納税者には一般的にはわからない。こういう状態ですと、確定申告制度といいながら、相続税申告そのものが、財産評価を含めてまだ非常に不十分な問題ではないか。そういうところから、税務署金額を聞きに行く。税務署の線に沿った申告にならないと、納税者としてもなぜ税務署がそういう評価をするのか、ただ高いという実感は持つけれども、それに対する反証もあげられないまま、それに沿った申告をせざるを得ない。もしそれより低目の申告をすれば、あと修正申告だとか調査だ、更正だというようなことになって、まためんどうだというようなことも、納税者実感としてはあるだろうというように思うのですね。  そういうこともあるわけですから、この点は政務次官なりあるいは主税局長にお伺いしたいのですが、こういう相続財産評価の関連で、納税者申告をする便宜立場から、この評価手続とか方法、あるいはどういうようにして自分相続財産課税標準をきめるかというようなことを、制度的に整備するお考えやら気持ちをお持ちなのかどうか、その点をまずお伺いしたいというように思います。
  42. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいま御指摘の評価につきましては、御存じのように法律では、たとえば二十二条に評価原則を定めますほか、二十六条の二まできわめて基本的なことだけ定められております。そこで、この評価に関する原則をもう一そう詳しく法定すべきやいなやというのは、まさに御指摘の問題点であると思っております。  ただ問題は、ただいまは土地の問題について非常に詳細に御質問がございましたが、土地の問題だけでもいろいろ問題がございますが、土地以外のいろいろな財産についても、それぞれについていかなる具体的手続によるべきやという問題がやはりあるわけでございまして、その関係上、どの程度に整備していけばいいかということも含めて問題点であると考えております。  ただ、特に土地につきましては、現在、相続財産中圧倒的に土地の占めます割合が多いわけでもありますので、最近十年来しばしばいろいろな議論があります。基本的に、固定資産税評価相続税評価とはいかにあるべきか、それから最近になりまして公示価格制度がだんだん整備されてまいりましたので、公示価格制度といういうものとの間の関連がいかにあるべきかというようなことが議論になつてきております。昭和四十八年度から公示価格制度もかなり全国的に広げようかという方向で所要の法制の整備なり予算措置なりがとられるようになってまいりましたので、今後土地評価問題につきましては、主として公示価格制度を今後どういうふうに発展さしていくかということと関連しながら、御指摘の点も含めて検討してまいりたいと思っております。
  43. 増本一彦

    増本委員 実は、私のところに最近投書がきまして、これは北海道の釧路の人なんですが、相続税申告自分で出したら、税務署からこの評価ではだめだといって返されて、税務署職員申告書税務署評価の額を記入して、こういう形で申告をしろというように言われた。それが自分評価とあまりに違うのでたいへん驚いた。見ると、地目が原野であろうが雑種地であろうが、その人の感想だと全部大体宅地並みだ。市街化調整区域を、牛馬で耕してもひざまでつかるような湿地帯でも、非常に高い評価がされている気がしてならない、こういうようなことが書いてあるのです。こういう感想を納税者が持つのも、つまり税務署が一体幾ら評価をそれぞれの土地にしているのか、特に納税者自分の財産について国から内々一定の評価を受けていながら自分はそれを全く知らない、申告のときに聞きにいかなければわからぬ、こういうことから、納税者そのものからすれば、納税署が陰でこそっと評価をしたものが何の客観的な担保もなしに、その正確性の保証もなしに、申告のときにそれを押しつけられる、こういう印象はいなめないというのですね。だからこそ、その評価をした金額とかあるいはその評価手だて、こういうものについては、これははっきりと納税者だれにでもわかるように公示をして、そして納税者や国民のそれに対する反証なりそういうものを、意見も組み入れながら適正な価格を評価していく、こういう開かれた制度なり関係というものを持つ必要が、税務行政の実際の面からも私あるように思うのですけれども、その点についてはいかがでしょう。
  44. 吉田冨士雄

    吉田説明員 先ほど申しましたように、私どもも、できるだけ、どういう基準で、その土地幾らであるか、特に固定資産税倍率地域であれば何倍であるかということをPRするように、市町村役場とが農協事務所等にも備えつけるようにいたしておりますが、まだわれわれの努力が足らない点は、これからもできるだけPRをやつて周知させるというようにやっていきたいと考えております。
  45. 増本一彦

    増本委員 そういう、納税者にわからしめる、評価額を公にする、そういうような制度は、これは税務当局なり大蔵省のほうでその気になれば、私は、法律上の根拠がなくても一定のものはできるのではないかというようにも思いますけれども、その点は、政務次官あるいは主税局長はいかがお考えですか。
  46. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 たてまえとしては、やはり申告納税でございますから、納税者が御自身評価をして申告をされるというのが第一原則です。ところが、非常に多くの財産があるというようなことであれば、御自身不動産鑑定士に頼んで評価をして、そして申告するということもできないわけではないのですが、大部分相続の場合にはそこまで手間をかけてということもなかなかむずかしい。そこで、税務署おいでいただければそれは御説明します、こういうたてまえになっているわけでございます。  それを、たとえば初めから、制度的に公示をするというような制度はどうかということも一つ考えられないわけではないわけですけれども、しかし、たとえば固定資産税の場合でございますと、これは全国すべての土地について毎年課税の問題が起こるわけですけれども、相続税というのは、御案内のように、全国で最近で四万件強、こういうことでございますし、しかもその土地も、相続税の場合は固定資産税よりもはるかに税率が高いというような問題もありますし、それこれ考えてみますと、なにか、そこで公示というようなことをやりますと、今度はまた本来の申告納税から若干気持ちの上で離れてきて、それで統一をするのだというような気分も出てくるということもありまして、御議論のようなことは、私自身かって国税局で仕事をしておりますときにも中でいろいろ議論しましたが、両論ありまして、現在のところは、従来どおりの慣習に従って、税務署にそういう帳簿を備えつけておいて、おいでになった方は見てくださいあるいはお教えします、そういうようなことになっているわけですが、それらの点について、部内でも議論のあるところですが、今後もそういう制度をとるほうがいいかどうか、検討する必要はあると思っております。同時に、制度、税法上の問題としましても、先ほど申し上げましたようなことでありますので、御指摘の点は今後とも勉強してまいりたいと思います。
  47. 増本一彦

    増本委員 つまり、納税者の側から見ますと、一体どういう手だてで、どういうぐあいに自分の財産が評価されているのか、その根拠や何かについてもよく得心がいかない、しかも自分の反証がなかなかしにくい、だからこの点でこれが適正であるということを部内だけできめて、聞きに行けば教えてくれるけれども、それは申告制度ですから、自分で思った評価をして出しても、それはそれでいいわけですけれども、しかし申告も内容の正確性ということを納税者自身もやはり考えなければいかぬということですと、税務署評価した額が正しいかどうかということをやはりお互いに、納税者の側からの意見なりそういうものもしんしゃくして、税務署評価そのものも、より現実に近い正しいものにアプローチしていく努力が必要なわけですから、そういうものに耐えて、そうして正確な一点に収斂していく、そういうやり方をどうしてもとる必要があるというように思うのです。そういうことを検討される必要が私はあるのじゃないかというように思うのです。内部だけでいろいろ精通者意見も聞いてきめられる、それはあくまでも一つ基準だとおっしゃるけれども、しかしそれよりも低い申告をされれば、税務署の出されている評価に従って、これは過少申告の疑いがあるということで調査もするだろうし、それから修正申告を要求する場合もあるだろうし、ましてやそれでもきかなければ、それに基づいて更正決定をするということにもなるのだろうと思うのです。そういう点で、税務行政の上では、単にそれが申告納税者にしてもらうための判断の基準として提供するということにとどまらないで、さらに納税義務を今度は更正決定によって確定していく、そういう作用まで持っているわけですから、そこらの点は十分にやはり検討される必要があると思うのですけれども、最後に、その方向についてどうなのか、もう一度ひとつお答えいただきたいというように思います。
  48. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 御指摘の点は確かにあるわけでございますが、ただ具体的に、相続が起こりました地点と、先ほど直税部長が説明いたしました七万点とは必ずしも合わないわけで、その七万点で示しましたものを参考にしながら、また具体的に相続の対象となりました物件の評価というものはもう一ぺん起こってくるわけでございます。それで、現実の私どもの経験でも、たとえば税務署のほうは最近の取引事例等をベースにして、こういう標準点をこういうふうに変えましたということになりますが、納税者のほうは、それは非常に異例なる取引であるというようなことから、それは基準にすべきでないというようなことで、現実には、私の承知している範囲では、かなりの程度納税者の方と税務署との間で一種のネゴシエーションが行なわれるという過程を経なければきまらない場合もあるわけでございます。そこのところは、制度を整備するなりあるいは制度までいかなくても、運用上何か標準点の評価方式なり評価結果を明示するということも、もう少し別の方法で明らかにすることについても検討はしてみたいと思います。しかし、従来もこれは決して放置してあるわけではないので、かえって公示みたいなことをしますと、それで何かすべてがきまってしまうような印象を与えるおそれもあり、私どもとして、主としてこれは制度の問題としては主税局、それから運用の問題としては国税庁でございますが、今後もなお検討はいたしますが、必ずこういう方向でいたしたいということまでは、本日ちょっとお答えいたしにくいということでございます。
  49. 増本一彦

    増本委員 相続税法時価主義をとっている理由の一つは、やはり財産の承継取得税だという、そういう側面をかなり強調してのたてまえだというように思うのですけれども、この承継取得ということをすべての相続財産に及ぼすことが、一つ相続の現実の実態に合わないという問題も出てくるんじゃないか。たとえば勤労者の居住用財産とか中小零細業者の営業財産とか、それから農民の営農資産というような一定の規模のものは、それ以前に被相続人相続人である後継者とがやはり共同で生活手段として使用してきたもの、こういう側面が非常に強いということも実態の一つとしてあるだろうと思うのですね。所有名義は承継人に変わったけれども、それは法律形式で変わったにすぎないのであって、その権利の実態は、やはり全面的に被相続人が生前に排他的に支配してきたものかどうかということは必ずしも一様ではない、こういうこともあり得るわけですね。ですから、一定規模以下の居住用資産や中小業者の営業用資産とか、それから農民の営農資産、こういうものは守れるようにやはり免税点を大幅に引き上げるということを、ひとつこれは評価の面とは別に考えていくことが非常に重要だというように私は思うのです。こういう一定規模の生活資産というか、それ以外の可処分財産については、これは非常に厳密に時価主義評価をしなければならない面があるわけで、これは大資産家の場合は特にそういう可処分財産が多いわけだから、その担税力を考えても合理的にきちんと評価をして課税をするということとあわせて、処分の不適当または社会的に処分不能な財産というか、というものを分けてこれはやはり検討していく必要があると思うのですが、この点についてはせんだっての大臣の質問に対するお答えでも、大幅に減税を今後考えていくというお答えもいただいていますけれども、一体どういう方向でこういう問題を検討されようとしているのか。その点について少し具体的にお答えをいただきたいと思います。
  50. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 まああまりぜいたくでない、生活に必要であると思われるような住宅並びに住宅用地、それからただいま御指摘の農地の問題、それからいわば中小企業の経営の基本となる財産については、他の比較的処分可能な財産と別にして評価基準をつくってはどうか、あるいは特別な控除制度を設けてはどうかという御議論は、相続税にはずっと古くからある御議論でございます。  私どもの考え方では、確かに御指摘のように、現象的には何かこういう小さい居宅については特別に考えられないかとか、農業用の農地等については特別に考えられないかということは、具体的な事案に即して考えます場合には、私ども自身も何か名案がないものかということを考えるわけでございますが、さて制度論として考えてみますというと、一人一人の相続財産の構成割合が、その種のものが非常に多い方あるいは半分くらい占めている方あるいはそれが少ない方というふうにいろいろな例がございます。それからもう一つの問題は、やはり被相続人のほうの立場だけではなくて相続人立場も考えなければならない。相続人の中で農業なり中小企業なりを継承される方と、そうでない方との関係をどう調整するのかという、相続税以前の相続自体に伴う問題がございまして、いままでのところは私ども自身具体的事例については何か考えられないかとくふうしてみるのでございますけれども、結論的にはやはりそこに評価原則なり何なりに差等を設けたり特別控除制度を設けることは、公平の原則からいってどうもやはりうまくないのではないかということで、現在までのところはいわゆる課税最低限の引き上げをもって対処してきたわけでございまして、今後とも、いまのような角度からの御指摘がしばしば各方面から寄せられておりますので、それは検討は続けてまいりますが、先般大臣がお答えいたしましたけれども、短い期間の間にまた法案審議をお願いするということを申し上げております内容といたしましては、なかなかそういう新しい制度を設けることは困難であって、やはり一般的な最低限の引き上げという形で対処をせざるを得ない、短期の問題としてはそういう問題ではないかと私どもは考えております。
  51. 増本一彦

    増本委員 相続税法の二十六条の二は時価主義の一種の例外規定ですね、立木の評価を百分の八十五にするということは。この二十六条の二の立法趣旨はどういうことなんですか。
  52. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 二十六条の二の規定は、立木というものの性格をどう見るべきかということから発しているものでございまして、立木というのは相続または遺贈を受けた後、大体多くの場合その相続人が経営に当たっておられる期間中に必ずといっていいくらいに譲渡が発生する、相続直後にまた譲渡が発生をする。たとえば二十年なり三十年なりの一種の幼齢林といいますか、まだ切るには早い、伐期に来ていない立木を相続で承継したという場合にはその何年か後に伐採が行なわれる。そこで何か相続税と、その後の伐採後における譲渡所得、伐採によりまして発生するところの譲渡所得との間に近い時点において一種の二重に課税されるというような例がありまして、これは二重課税ではないかという考え方と、それからすでに一ぺん相続税がかかっておりますものを次の時点で売った場合の期間が接近している場合、それは二重課税と見るべきであるという御意見がありまして、各方面で意見調整の末、一種の妥協として相続税時点で評価額の一五%を引きましょうということで調整をすることになったものでございます。で、それはやはり立木には立木なりの問題があり、それでは農地なら農地にどういう問題があるか、営業用資産にどういう問題があるかという問題があるわけでございます。何といっても立木の場合にはかなり普遍的に顕著にそういう問題が起こるところからそういう規定が置かれたものでございます。
  53. 増本一彦

    増本委員 いまのお話でもわかりますように、やはり相続財産評価についても時価主義をとる場合でも一定の政策的な配慮とか、いろいろ問題に応じてこれを修正するということを法律自身が体系の中で認めているわけですね。そうしますと、居住用とか営業用とかあるいは農業をやるための資産の一定規模のものについてもやはり別の配慮、政策的な考慮ですね、相続人の生存権とかあるいはまた所得税の場合に考えられる生活費非課税、これを後継者の生活手段そのものに対して非課税としていくということも合理的な根拠があることだし、こういう立場から見ても、時価主義をやはりこういう問題では修正をして別途のたてまえをとるということも十分意義のあることだし、合理的な態度である、それはまた相続税法の体系から見てもそれを逸脱するものではないというようにも考えるわけですけれども、こういう立場に立って、先ほどの居住用とか営業用とかあるいは営農用の資産に対して、この時価主義を修正して、一定規模のものはきちんと相続税から守れるという立場をとられることも一つの方向だと思いますけれども、この点についてはいかがですか。
  54. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 おっしゃることは非常によくわかるのでございます。現に二十六条の二のような評価についての特例規定があるではないかということもよくわかるのでございます。ただ、具体的に考えてみますと、立木の場合については、たとえば相続人なら相続人が五人いて、その五人の人が共同といいますか、共有といいますか、そういう形で相続するということも可能でございますが、農地なり中小企業なりあるいは居宅というような場合には、相続人のうちの義かがそれを具体的には分けていく、こういうことになってまいります。そういう関係がありますので、たとえば居宅についてだけ評価をされるということと相続の配分との関係はどうなのかというような問題がありまして、農地とか中小企業財産とかあるいは居宅とかについては、立木の場合よりはやや複雑な関係になっておるわけでございます。そういうふうに均分相続の大原則からいって、具体的なその財産が均分相続になってもうまくいくようなものと、それから居宅、農地等の場合のようになかなかそこのところがうまくいかないものとの関係もありまして、二十六条の二のような規定を御指摘のような種々の事例にそのまま当てはめてはどうかということについては、なお相当実態的、技術的にむずかしい問題があろうかと思っております。ただ、かねがねそういう御議論は納税者の間に起こっておりますし、われわれとしても長期の研究課題となっております。
  55. 増本一彦

    増本委員 時価主義をとられて、しかも最近の土地の異常なまでの値上がりによってもう持ち切れないという状態が各所で出ているわけですね。  実はきのう、私、藤沢の農協の人たちと懇談をしたときに、たまたま相続税の話が出まして、たとえば三反持っている人で、去年相続があって払わなくちゃならない相続税が五千七百万円だというのですよ。これはほとんどが市街化区域。それからもう一つは、八反持っている人で、これは横浜市の戸塚のほうの人でしたが、二億五千万円の相続税だ、こういうのですよ。そうしますと、これで一応延納願い、延納申請を出して許可はもらったけれども、実質的には払える見込みがない、土地を売らなければとうてい払えない、こういうわけですね。  だから、相続税の税額がきまって相続税を払うとなれば、その相続財産を処分して払う以外にないということで、相続の発生とそれから相続財産の処分とが時間的にも非常に密接になって、しかもそれは別の資産を得るためにその相続財産を処分するのではなくて相続税を納めるために処分する、こういうようなことになっている現状だと思うのですね。だからそれについて一定の、しかも都市近郊農村の実態を見れば、三反五反くらいがいま大体平均保有面積になっているという現状では、しかも評価だけは時価主義をとられてかなりきびしい評価をやられるということだと、相続のたびに先細りしていってもう営農の基礎そのものが相続によって破壊されるという、これはもう前から何人かの委員の人からも指摘をされている点ですけれども、こういう実態だというふうに思うのです。ですから相続に対する評価を、一つは政策的にも配慮して修正をするということと同時に、この相続の発生と密着をして相続税を払うために相続財産を処分するというような場合には、その譲渡に対する課税についてもやはり一定の配慮というものが必要になってくるのではないだろうかということも考えられるわけですけれども、その点について、一体政府のほうではどういうようにお考えになっておられるか、まずその点ひとつお伺いしたい。
  56. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいまの二億からの相続税の方というお話がございましたが、それは家族構成、相続人の数、その他によって違いますが、二億五千万ということであると大体遺産額で五億円くらいの方であろうかと思うのです。五億円くらいの方が現在農業をやっていらっしゃる場合ということになると、現在の相続税の一生の財産の清算という意味から申しますと、私どもの考えております中堅財産階層の税負担を軽減するという思想から申しましても、五億ということになると、やはりやや中以上の階層といわざるを得ないのではないか。そういう意味からいいますと、私どもとしては売らざるを得ない、売る以外には相続税を納められないという事態がありましても、それはやはり一生の財産の清算という意味からは、現在の相続税のたてまえ上やむを得ないのではないかと思います。  ただ、そのために現実に売らなければならない、売ることになると、次にまた譲渡所得が発生するというあたりのところをどう調整するかという問題は、譲渡所得と相続税とは全く別の問題だというふうに割り切って見る考え方もございます。実はそういうことでかなり長年の間相続税と譲渡所得とは別の問題だ。たとえば現に売ってから相続が起こった場合と、それから相続が起こってから売る場合のバランスを考えてみると、両者は切り離して考えるべきだという考え方で長年まいっておりましたが、最近御指摘のような事例がだいぶ出てまいりました結果、昭和四十五年度の改正で譲渡所得のいわば原価に当該土地相続税相当額を充てる。つまりそれだけは譲渡所得について経費として引きましょうと申しますか、そういう形で調整をすることに四十五年からなっております。それでもなおかつ土地を売らなければ納められないというのは非常にきついではないかという問題があるわけでございますが、現在のところは延納制度が一つ、それからいま言ったかような譲渡所得原価算入制度が一つ、その二つでの調整だけを行なっておるということでございます。
  57. 増本一彦

    増本委員 たくさんの土地を持っている場合には、それは大資産家あるいは中堅財産層以上に対してそれなりのきびしい清算もしなければならないと思いますけれども、ただそれが営業用資産とか営農資産でその土地がなければ農業やそれから商工業もやっていくことができないというあれで、中堅財産層になれば、なおやはり深刻な問題が出てくるわけですね。可処分財産もない、自分の営業資産を売らなければ相続税も払えないという、こういう深刻な問題というのは各所にあるわけですから、そこらの配慮もひとつ検討していただきたいというように思うわけです。  それとの関連で、荒木委員のほうから関連質問があるそうでありますので、ひとつお許しいただきたいと思います。
  58. 荒木宏

    荒木(宏)委員 いまの点だけに限ってお尋ねしたいと思いますが、実情はいままでのそれぞれの委員さんから質問で出ておるのですけれども、関連して、政府委員のほうでは、農業の営農単位といいますか、農業をやっていくのに最低このくらいはないととても農業とはいえぬだろうという一つのミニマムがあると思うのですが、そういう下限についてはどんなふうにごらんになっているか。関連でひとつお伺いしたい。
  59. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 いわば標準的な農業経営規模といいますか、そういうものの農地相続については、本来課税にならないようにするのが原則であろうかと思います。ただ、最近非常に私ども弱っておりますのは、都市近郊農地の問題でありまして、都市近郊農地については、相続税評価額でいいますと、いわば適当なる経営規模の場合でありましても、今回の改正によります課税最低限の引き上げによりましても、なおかつ課税対象になる事案が相当増加しつつあるわけでございます。そこで、都市周辺地域、いわゆる純農地帯でない地域における農地、そして後継者が農業を継続していきたいという場合の相続税のあり方というのは、確かに非常に問題であるというふうに考えております。ただしかし、実はこの問題につきましては、かねがね農林省等ともいろいろ意見を交換しておるわけでございますが、実は最近の現状は私も詳しくは知りませんが、相続税の問題の前に、相続自体の問題として、つまり何人かのお子さんがおって、そのうちの一人が後継者であるという場合の相続人相互間の問題で、いろいろと紛争が起こっておるようでございます。農家における後継者の地位をどうやって保持していくかという問題と、それを相続の上にどういうふうに指導といいますか、あるべきものと考えるべきか、憲法あるいは民法に定めます均分相続の考え方とどうそこを調整していくか、そしてそれを相続税の上ではどう反映していくかという問題は、最近における都市近郊農地の地価急上昇と関連いたしまして、また、それほど上がっていないところでも、将来農地の価格が上がるのであろうということとの関連で、いろいろ問題が起こっておるわけでありまして、私どももいわば頭の痛い問題ではあると考えておりますが、どうも相続税の問題の前に、相続の問題としてどう処理さるべきかということの考え方が固まってくるということが先決ではないかというふうに思っております。
  60. 荒木宏

    荒木(宏)委員 問題を提起しておりますのはこういうことなんですよ。ほかの委員さんからもだいぶいろいろな観点からありましたけれども、相続税額が高い、その高い相続税を払うためにいろいろ苦労しなきゃならぬ、これは一つ問題ですよ。お考えいただかなきゃならぬと思います。それからまた、そのために生活用の資産である土地、建物も場合によっては売却しなきゃならぬ、これも生活破壊につながる大きな問題です。これも考えていただかなきゃならぬ。しかし、いま言っておりますのは、それとあわせて、あるいはそれ以上に近郊農村で相続が起こって、その相続税を納めるために農地を処分しなければならない。ところが、農地は数量的には可分ですけれども、残った残余農地ではもう農業のそろばんがとても合わなくて、社会経済的にやっていけない。この点もほかの委員さんからも御指摘があったとおりですよ。いま大阪の一戸当たりの平均所有農地は、計数上からいいますと四・五反です。農民の皆さんに聞いてみますと、これ以上農地が減ったのでは、一反とか二反では、いまの肥料、いまの手間賃、それからいまの農産物価格、それからいったらもうとてもやっていけないから、相続税を納めなければならぬあれなら、この機会に全部処分しなければならない。自分の意思にかかわらず農業を廃業しなければならない。これが社会現象として社会経済的に起こっているわけです。  一方、農産物の自給は、国の農業政策の基本として非常に重要なことですから、農林省のほうではその点については自由化の問題とあわせて、農業保護のためにいろいろ御苦労なさっておるところです。ところが同じ内閣の他の省では、都市近郊農村の保護のためにいろいろやっている。ところが同じ内閣の他の省では相続税の徴収に伴って、農業を全部やめなければならぬという事態が起こっても、何らの配慮が払われていないことになれば、これは問題ではないか、しかも立木のときには、議論はあるけれども、実質的に課税の時期が接着しておるということで、軽減措置も講じられておるということになれば、法律的には別として、社会現象的には同一の機会に相続とそれから譲渡が起こらざるを得ないような社会機構になっている、社会経済実態になっている。このことについて、政策的に政務次官はどうお考えなのか。つまり都市近郊農業を保護しなければならぬという声が一方にあって、一方ではこのことによつてその税金に見合う分だけ資産があるのだかち、処分して納めればいいでしょうということでは済まない実態がある。これは政務次官に政策の問題としてお伺いをしたい。
  61. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 いまお話しの、農村の中で農業経営の経営規模をどれくらいに考えていくかという基本的な問題が一つあるわけですけれども、先ほど来のお話は、純農村とかあるいは中間農村ということではなくて、要するに都市近郊の農村における経営形態というものを、いまお取り上げになっているわけです。どうも最近の傾向は、都市近郊におきましては地価が著しく騰貴をしておりますから、つまり経済の原則からいえば、土地が生産の手段であるというよりは、むしろ財産という観念のほうが非常に強くなってきている。税制の上でも、たとえば一括生前贈与などという制度を考えたわけですけれども、これらも実際のところ実務者の話ではあまり成功していないというようなことで、そういう考え方がすっかり変わってきておる。純農村あたりになれば、これはほんとうに生産の手段ですから、そういうふうにお考えになっている。その辺のあたりから始まりましても、今度は先ほど局長が申しましたような、日本の相続の制度が終戦後新しい憲法のもとで、いわゆる家督相続ということではなくて、均分相続になってきて、財産を分割をしていくという考え方になってきております。その場合に、それでは後継者として農業なら農業というものをやっていこうという人に、一体そういう均分相続制度の上でどういうふうな考え方をしていくかという根本問題が一つあると思うのです。これは、法務省では一体これをどう考えていくか、戦後の新しい憲法のもとでの考え方と、戦前の憲法のもとでの考え方というものとの間の変化というものから考えてみますと、やや、逆戻りとまでは言いませんけれども、少し考え方を戻したといいますか、そういう考え方もしなければならぬ面も否定できないのではないだろうか。そういたしますと、相続の制度の上で一体これをどういうふうに考えていくかというたいへんむずかしい問題があるように思うのです。これは法務省のほうもいろいろ御研究なさっているけれども、なかなか結論ができにくいということがあります。同時にまた、税制の面では、農業と中小企業との問題、あるいはサラリーマンとの均衡の問題そういういろいろ問題があるわけなんです。  いずれにしろ、結論的にいえば、やはり農業経営はある程度の経営規模を持たなければならぬ。日本の農業政策の上におきましても、経営規模をなるべく大きくして、農業がうまくいけるようにひとつ考えていきたいという方向には間違いはないのでありますけれども、その辺のところのいろいろの考え方の混淆といいますが、考え方の接点というものが、いま如実に都市近郊農村にあらわれているというような感じがいたします。そう考えてまいりますと、全体としてそれらをひとつ考え合わせて、相続と農業政策との調和、あるいは税制をその間でどう考えていくかという問題を、全体の問題として今後ひとつ考えていかなければならぬ、こういうふうに思っているわけでございます。
  62. 荒木宏

    荒木(宏)委員 問題意識はずいぶんとお持ちのように伺いましたのですけれども、さて、そのお持ちになっている問題を一体どう解決なさるのか。御案内のように、いま自治省の関係では、農地宅地並びに課税の問題で、きょうも久保講堂で全国の農民の代表が集まって、朝から集会をやっておりますけれども、やはり農地農地として、擬装の農地は別として、これは保護していかなければならぬというのは、これはきわめて道理のあることでして、そのことが否定できないからこそ、いま宅地並み課税の問題については非常に大きな世論が起こっているわけですね。ですから、農林省のほうでもそういう方向であり、自治省のほうでも、課税の面からも、地方税の上ではあるけれども、その実態を認めて、それを進める方向を検討せざるを得なくなっている。ひとり国税の面だけ全くの考慮が払われていない。何もないでしょう、この点は。いま損金算入ということをちょっとおっしゃいましたけれども、しかし、そろばんの勘定ではなくて、農業を守るという観点ですね。これは、幾ら損金に入れてもらったって、処分しなければ払えないようなことでは、農業を破壊せざるを得ぬわけですから、最低限度を割ってしまえばどうにもならぬのですから、そういう点で、政務次官に重ねてお伺いしたいのですけれども、一体、お持ちになっている問題の解決の方向としては、どういうふうにお考えになっているか。  ちょっと実情を申し上げますと、私の出身の大阪では、大阪府民の生鮮食料品のうちの野菜の四割は、府下の農民が供給しています。畜産、それから果樹、蔬菜、これらについて都市近郊農村の果たしておる役割りは非常に大きいわけです。物価の点からも、また公害対策の点からも、この点は十分御配慮いただきたいと思うのですけれども、なればこそ、都市近郊農村の振興を大いにやってくれというのが、四十五年の世論調査では六八・四%です。それから住宅地付近、近郊地の田畑は、擬装農地は別にしまして、ペンペン草のはえているようなのはこれは別として、残しておいたほうがいいという積極意見が五一・七%、こんなのはなくなったほうがいいというものは二四・五%しかありません。ですから、相続税制の中でその点についての配慮の方向をひとつ明らかにしていただきたい。——いや、政府委員の方でけっこうです。政府委員の方から話してください。
  63. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 まず現在、固定資産税の問題と相続税の問題との違いは、固定資産税のほうは、現に農業を長年経営しておられる方の問題で、それが土地評価が上がったことに伴って固定資産税は上ぐべきやいなやという問題でございますが、相続税の問題は、一つは、一生所得の清算という意味があることが一つと、もう一点は、相続人は必ずしも農業をやられる方ばかりではないわけでございます。相続人の中にどなたか一人が農業を継続するという関係になるわけでございます。そうしますと、その農業を継続される相続人と他の相続人との関係をどう調整するかという問題が一つあります。それからもう一つは、相続をされた方の中で、親御さんが農業をやっておられた、農地を持っておられた方とそのほかの財産を持っておられた方とのバランス問題というのがありまして、なかなかただいまの御指摘は、今後非常に大きな方針として、都市近郊農地をどう持っていくのかという問題がまず一つございます。  その問題と関連がありますが、それについてかりにそれを都市近郊農地を今後とも農地として維持すべきだという前提でものごとが考えられるようになりましても、相続税のフィールドにおいては、なかなかほかのいま言った二つのバランス関係から、その種の農地については、相続税の課税対象かちまるきり除外をするということは非常にむずかしいのでないか。なかんずく、先ほど政務次官がお答えをいたしましたが、相続については、現在、法務省の中の法制審議会におかれております相続部会において、おととしからかなり長期にわたり御専門の方がお集まりになって御検討なすっておりますが、どうもやはりその相続に詳しい、そしていろいろ家庭裁判所とかなんとかで具体的に相続の紛争事案を扱っていらっしゃる委員さんの御感触では、均分相続はどうしても譲れないというような感触がだんだん強くなってきております。そういうことを考えてみますと、私どもとしては、非常に重要な御指摘ではありますが、他の農業政策との関連で、都市近郊農地問題がどのようになりますか、それによるところが非常に大きいのではありますけれども、それでもなおかつ、相続及び相続税の問題としては、なかなかもう一つ複雑な問題があるということをお含み願いたいと思います。
  64. 荒木宏

    荒木(宏)委員 ちょっと、政務次官にお答えいただく前に、いまの技術的な説明ですから一言申し上げておいてお考えを聞かせていただきたいのですが、一生資産の清算というお話があったのですけれども、これは遺産取得税体系に変わっているいまでは、前の残りかす的な考え方ではないか。もちろん遺産税体系の考え方は、税額計算の上で部分的に取り入れられておりますけれども、しかし大きな体系としてはもう二十年前に変わっているのですから、そういう意味合いで、一番初めにおっしゃった理由は、日本の農業をどうするかということからいいますと、いまのこの大きな経済政策の点からいいますと、とるに足らない、そう問題にすべき点ではないというふうに思うのですがね。  それから、均分相続の点にからめて、相続人間の負担の公平という問題がありましたけれども、この部分は、まさに相続人間の協議によるわけですから、私的自治にゆだねられておる典型的な分野でして、それについて身内の間で話がきまっているのに、国の力で、いや、それは不公平だからというようなことでくちばしをいれるようなことはなかろう、こう思うのですよ。ですから、均分相続のたてまえはたてまえとしながらも、しかしやはり当事者間の私的自治の範囲で、しかも農業を継続するという本人の意思、また、都市近郊農業を発展させていくという全体のこの農業政策の点から見ますと、従来、税制の持っておる禁止誘導機能という点からいいましても、もっともっと農業振興という点にからめて相続税制をお考えいただかないと、法務省のほうばかり連絡されておるというんじゃこれはどうにもならぬと思うのですよ。ですから、その意味政務次官に、今後の方向として、日本の農業を発展させる意味で、都市近郊農業を保護育成するという意味で、相続税法の検討をお進めいただきたいというふうに思っておるのですが、その点についての御意見を伺いたいと思うのです。
  65. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 確かにおっしゃることもよくわかります。わかるのですが、全体の、たとえば先ほど来お話しのありまするような都市のサラリーマンなどの方々の居住用の財産をどうするか、それから中小企業者の方々の営業用の設備といいますか、財産といいますか、そういうものは一体どうするのか、それからいまお話しの農業経営者の営農財産をどう守るか。こういうそれぞれの国民のいろいろの財産をお持ちになっておる方によって、それらが引き続き営業なり経営をやっていけるように、またある意味では、財産の蓄積の意欲を失わない、そこなわないという、そういう政策的な考え方をすべて相続税としてはしていかなければならぬわけです。相続税の本来の性格、機能というのは一体何だという議論もございますが、これもすでにいろいろ議論がありまして、一つは従来の生前所得の清算的な意味もある、もう一つは偶発的な財産取得に対する課税だという意味もあります。それらもいろいろ考え合わせまして、一体どの辺で線を引いていくのがいいかというのは、そのときそのときによつてもずいぶん変わっていく問題でもあろうと思います。しかし、いまお話しの、特に都市近郊における農業経営者が引き続き経営をやっていけるような形を考えていくということについては、これは均分相続はもちろんありますけれども、たとえばいまの相続税でも、そういう法律による相続の分け前によって一応相続税は勘定しますけれども、それを実際にお払いになるのは、いまお話しのように、お話し合いになつた上でそういう取得をされる方がお払いになればよろしい、そういう考え方でやっておるわけでございまして、それらはいろいろお話し合いの上でそういう財産が引き続きある程度の規模で維持をされていくということにも現在もなっておるようです。しかし反面、財産という考え方は非常に強いものですから、どうしても分けろという要求も、私ども承知している限り、私の選挙区に近いところでもそういう希望が非常に強いように思います。そういういろいろのこともございますが、しかし大筋としては、おっしゃるように日本の農業経営というものの将来を考えてやっていかなければならぬと思うのです。  しかし、土地というものに対する対策は、特に都市近郊におきましては、そういう経営も一面においてございますし、また宅地に対するサラリーマンの方々の強い要望もあるわけなんでして、そのような接点になっておるところが私は非常にむずかしいところだと思います。それは具体的の農業経営の政策の上で考えていかなければならない問題であろうと思います。しかしおっしゃるように、都市近郊で特に蔬菜とか、直に消費地と結びつけていかなければならないという、そういう生産地を確保していかなければならないことも間違いのないところであります。そういう農業経営、農業のほうの政策というものもひとつ大いに私ども税制の面でも相当長期な目で考えていきたい、こう思っておるわけであります。
  66. 荒木宏

    荒木(宏)委員 一番最後のお話によりますと、その方向で、しかし時間をかけていく、こういうふうに伺ったのですけれども、財産の問題として申し上げておるのでありませんから。たいへんくどいようですけれども、政策の問題として申し上げておりますので……。いま大豆の高値だとかいろいろ大きな問題になっておりますね。農業食料自給ということがしっかりしていないから、ちょっとしたきっかけで大商社の買い占め、投機が起こることは御案内のとおりですけれども、そういう都市近郊農民の農業継続の希望、それから都市住民の生鮮食料品の供給源を確保したい、そういうことを農業政策の面から十分御検討願って、そしていま政務次官が最後におっしゃったことをできるだけすみやかに税制の面でも考慮していただくような手だてを強く希望しまして、私の関連質問を終わります。
  67. 増本一彦

    増本委員 農業を継続していく場合の土地保有面積のミニマムなリミットをどのくらいに見ておられるかという点について、具体的な御回答をいただけなかったのですけれども、たとえばさきにも引用させていただいた昭和四十七年十月二十日付の税制調査会に出した相続税関係資料ですか、あれによると「標準的な住宅地において土地と家屋のみを所有する世帯の相続財産調」というのをお出しになっておりますね。こういうようなものを、農業とかあるいは中小零細企業とかいうようなところでお調べになっていらっしゃるのかどうか、その点はいかがなんでしようか。
  68. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいま御指摘のような意味での調査というものは、率直に言ってやっておりません。宅地の問題については、ずっと昔から継続してやってきたものですから、こういう調べを随時やっておりますが、最近になりまして、御存じのように都市近郊農地の問題が非常に浮かび上がっておりますから検討課題であることはわかっておりますが、それではやっているかやっていないかといえば、やっていないわけであります。
  69. 増本一彦

    増本委員 国税庁の税務統計年報の昭和四十六年の財産階級別の被相続人の数を見てみますと、一千万円以下が二千五百八十三人で一〇%、千五百万円以下が五千五百二十六人で二一・三%、二千万円以下が四千六百四十六人で一七・九%、三千万円以下が四千九百三人で一八・九%、大体この辺でちょうど被相続人の数でいきますと六八%ちょっとになるというのですね。これは確定申告した数でもあると思うのです。ところが、この三千万円以下の約七〇%の人々の相続財産が全体の確定申告済みの同じ昭和四十六年じゅうの相続財産総額に占める割合はどれくらいかといいますと、大体四〇%ぐらいだと思います。そうすると残りの三千万円をこえる資産層が被相続人の数で見ると四〇%以上で、しかし相続財産総額の中で占める割合は六〇%ぐらいだということにも逆に言うとなるわけです。ここいらのところが中堅財産層として線を引く一つの目安みたいなものにもなると思うのです。つまり、課税最低限以下の膨大な被相続人の層があって、逆のピラミッドを形成しているように思いますけれども、ですからそういう範疇に入るそれぞれの財産階級別の中でこういう勤労所得層あるいは中小企業などの営業をやっている人たち、また農業をやっている人たちというような人たちが、一体こういう階層の中でどのくらいの割合を占めるかというようなこともひとつ検討していただいて、そしてこういう階層のそれぞれの人たちが、大体どのようにしたらそれぞれの生活資産、営業資産あるいは営農資産を守っていけるか。それに対しては相続税はやはり不可侵の立場に立って、そしてそれを守っていくような手だてを、やっぱり方向としてこれは相続税の誘導機能としても考えていかれる必要が私はあると思うのですがね。その方向での検討をされる用意なりあるいは意思がおありかどうか。これは政策の方向の問題ですので、ひとつ政務次管にお答えをいただきたいと思うのです。
  70. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 いま具体的にいろいろ数字をあげてお尋ねがありましたが、大体そういう方向でひとつ今後研究をしていきたい、かように考えております。
  71. 増本一彦

    増本委員 これは、土地などの値上がりが非常に毎年毎年激しいですね。だからこれは、長期に検討されるということだと、いつまでたっても追いつかないというそういう状態で、結局非常に広範な人たちがやはり大きな影響を受けるという問題だと思いますので、めどをどのくらいのところに立ててひとつおやりになる決意なのか、そこのところをひとつ最後にお聞かせいただきたいと思います。
  72. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 先般来の御指摘で、今回のいわゆる課税最低限の引き上げ幅が少し少ないのではないかという御指摘がございました。大臣からも、いままでのように七年というような期間ではなくて、もう少し随時それを考えていくべきだ、いこうという御答弁がございました。そういうこととも関連いたしまして、当然かなり短い期間に、つまり次にどのようにして改正の中身を盛るべきかということを考えますにも、ただいま御指摘のような点を詰めてみる必要があると思いますから、さっそくにもそういう、どういうふうにして調べていくか、どういうふうにして実態を把握するか、少し勉強を始めてみたいと思います。
  73. 増本一彦

    増本委員 たしか大臣は、数年ということでなしに、一年二年の短い間隔で相続税の減税はおやりになる、こういうことを答えられていると記憶しているんですがね。そういうことでひとつ、これはもう国民各層の切実な要求ですから、それに十分こたえるように積極的にやっていただきたいと思うのです。今回の改正案は、そういう点でもまだまだ勤労国民あるいは勤労者階級に対する相続税の重圧をなくするという点ではやはり非常に不十分だというように思うのですね。しかも財産の評価も決して、国民との対抗の中で正確なものを導き出していくというような点でも、やはり非常な不十分さが残っているというように思います。そういう点で、やはり相続税が特に所得税の補完的機能を持っているというようにおっしゃったんですが、それは単に清算的な意味でその機能を発揮するというだけでなくて、相続人の生存権とか生活の基盤は、必要な限度でもう絶対に守っていく、そういう立場からも、ひとつこの問題についてはやはり考えていく必要があるというように思います。その点についてひとつ一そうの努力をしていただくことを強く要求いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  74. 鴨田宗一

    鴨田委員長 本会議散会後直ちに再開することにし、暫時休憩いたします。    午後零時十五分休憩      ————◇—————    午後二時三十一分開議
  75. 大村襄治

    ○大村委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平林剛君。
  76. 平林剛

    平林委員 相続税法の問題について、ちょっときょうは質問をしておきたいと思います。  私は、前の国会から農業の後継者が被相続人の死亡で農地等を相続した場合には、その相続人である農業の後継者が引き続き一定の期間農業を経営する場合、配偶者控除等に準ずる特別控除、これを検当すべきである、こういう主張をしてまいりました。この主張に対しまして、政府におきましては、その後何らかの検討をなさったかどうか、これをまずお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  77. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 農業につきましては、相続税と後継者の農業の継続との関係を何か考える必要があるのではないかという御意見が従来より各方面から出ておりますので、その点につきましては、今回の改正にあたりましてもいろいろ検討はいたしたわけでございますが、先般来各委員からの御質問に対するお答えで申し上げておりますように、どうもやはり他の形態の中小企業なりサラリーマンなりの相続との関係と、もう一つ相続税の前に、相続制度そのものについてのいろいろの問題がございまして、なかなか越えがたい差しつかえがあるということで、そのような御意見があることは十分承知いたしておりますけれども、今回そのために特別措置をするということには至らなかったわけでございます。
  78. 平林剛

    平林委員 私は、この問題についてもう少し掘り下げた議論というものを大蔵省、特に主税関係でもする必要があると感じておりますことは、一般論をおやりになっておって、個別のそうした問題についての配慮が少し欠けているという感じがするのです。  ちょっとこの問題で、もう少し議論をしたいと思うのですが、いま大蔵省といいますか、政府が土地税制の問題、いまやかましくなっておる全般的な問題について基本にしておるのは、私の承知している限りでは四十三年七月の土地税制のあり方についての答申がまとまったものでないか。それ以後少しずつ部分的にはありますけれども、土地税制のあり方についての答申という四十三年七月に出されたものが基礎で、大体そこから発想していろいろな考え方が出されているように承知しておるのですけれども、その点はいかがでしょう。
  79. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 御指摘の答申が一番基本的なものでございまして、今回、御存じのように、主として法人の土地の取得について特別な税を置くということで、ことしの一月の十八日に土地税制についての答申がありましたが、しかし何といってもただいま平林委員御指摘の四十三年の答申が中心であります。
  80. 平林剛

    平林委員 私はたぶんそうじゃないかと思うのですが、この土地税政のあり方についての答申を大体一読いたしますと、どちらかというと土地の提供をしていく、そして土地の供給を多くするということに主眼が置かれている。したがって、この答申の内容を貫いている考え方は、たとえば土地の高騰を解決して物価問題や都市政策を遂行するために、都市近郊農地に代表される土地の流動性を期待する政策は結局都市近郊農業の縮小を促進するものであるとか、あるいはまた今後の土地の供給の中心をなすものは、主として大都市周辺を中心とする個人の長期保有土地であり、その早期給供が促進されることが必要であるという形で、何となく土地供給ということを主眼にして土地税制のあり方というのが答申をされております。これが一貫した流れになっておるように思うのであります。つまり、土地を手放させることを軸にして答申をされております関係から、私は農業サイドからの視点が欠けているという批判を持つておるわけであります。つまり農業政策という視点が欠けている。  私は、土地政策を考える場合でも、生業であるところの農業、日本の農業というあり方からのとらえ方が欠けておりますと、そこに一つ抵抗が生まれてくる。いい例が固定資産税に対する反撃も、私は日本の農業という問題に対する一つの反撃だと思うのですね。議論はいろいろあるでしょう。固定資産税評価のしかた等について、それはいろいろな視点があります。国民の各層の希望、期待というものから議論をする場合でもいろいろな視点がある。しかし一面、日本の農業という角度を忘れた議論になってくるというと、これは私はかたわだと思うのですね。それがいま固定資産税の問題にあらわれている反撃です。こういう現実、私は、農業サイドを含めた、それを考慮に入れた土地政策でないとかたわになってくる、現実的でないということを実は感じておるわけでありますが、そういう点について主税局長はどういう御見解を持っておられますか。
  81. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 一般的には土地問題を考える場合に、農業政策をはずして考えることはできないわけでございます。税制でいろいろなことを考えます場合にも、まさに御指摘のように、農業政策のあり方ということは、当然に重要な要素として考えられなければならないということであると思っておりますが、同時にここ数年来、土地問題は主として宅地供給問題、特に大都市近郊におきますところの宅地問題という形で論議されてきているところでございまして、平林委員から御指摘のありました四十二年の夏に土地税制について税制調査会等でいろいろ議論が行なわれました際に、確かに御指摘のような面はありますけれども、しかし何といってもサラリーマンの土地取得難ということをどうやって解決するかということが当面の課題であつたわけでございます。おっしゃるように、農業経営の継続ということについてどのような配慮を加うべきかという問題はあろうかと思いますが、それは地域により状況によつて非常に違うわけでありまして、おしかりを受けるかもしれませんが、私どもはやはり都市周辺に関する限りは、農業政策をしないというわけではありませんけれども、どうしても宅地対策というかそちらのほうに重点が置かれた政策が打たれるということもまたこれはやむを得ないのではないかというふうに思っております。ただ、固定資産税の問題につきましては、現に農業を継続しておられる方の問題でございますから、直ちにこれがいろいろ影響するわけでございますし、相続税の問題につきましては、その点は一生に一回の問題でありますから問題のあり方は少し違ってくるということではないかというふうに思っております。いずれにしても、農業政策のことを忘れておるわけではありませんが、大都市近郊の農地についてはまた別の政策である宅地供給ということがきわめて重要な問題であり、そっちの角度からの要請が強いということも御了承得たいと思います。
  82. 平林剛

    平林委員 固定資産税に関して、いま宅地並み課税の問題で非常に抵抗があるというのは、私はいま日本では代表する二つの見方があると思うのですね。いまおっしゃるとおりに、サラリーマンとか一般の土地がほしくて住宅がほしいというサイドから見ると、特に都市近郊の農地などは早く手放させるようにして供給をふやしてもらいたいということで、それに反対をする野党、それから政府、与党のほうも同罪だということで骨抜きだという批判が高まっておる。これは私はどちらかというとそういう方々の意見を代表するものである。これに対して政府やそういう論拠に反対する側も、そのことは認めるけれども、土地の供給は、生業である農業だけをねらい撃ちにするというのはおかしい。それからかりにいわゆる家がほしい、アパート住まいをしているという人々に土地を供給するために農家から農地を奪ったとしても、それがストレートにその人たちの希望するように手に入らない。間にブローカーが入ってくる、間に土地資本が入ってくる、大手の企業が入ってくる。それが安く買いつけて高く売りつける。最近の商品投機であらわれるように、それが暴利とまでいかなくても不当な利益を得て、そして分譲して、土地で困っている人に高く売りつける、こういう現象がいま起きてきているわけですから、そのことを抜きにして考えられないということで、固定資産税宅地並みに課税するのはおかしい、だから反対なんですね。やや視点が違うわけであります。ですから、私は、そういう前提条件が解決できないときに、単に農地宅地並み課税をやるということは、いたずらに大手の企業だとか土地ブローカーに安い土地を提供させてしまう、かえって一部の企業に得をさせるだけで、庶民は回り回って高い土地を手に入れるだけ、あるいは手に入れることも全くできない、こういうことが問題なんであります。その段階では、いまお話しのように、たとえ都市近郊であろうとも農業を営もうとする者の生業を奪ってはならない。ですから、いまのように、都市近郊に関する限りはどうしても宅地政策にウエートがかかるというお話がありましたけれども、それは私は少し考えを変えてもらわなければいけないんじゃないか、実はこういうふうに考えておるわけです。特に最近の農業の実態を見ますと、それが強く言えると思うのであります。  そこで、ちょっと主税局長に質問しますが、相続税というものの創設の意味相続税という税の存在というものは何を目的にしておりますか。
  83. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 一般的に私どもが理解しておりますのは、相続税には二つの面があろうと思っております。  それは、いま税の制度として一番基本的なものは所得税でございますが、所得税でもいろいろ例外がありましたりいろいろなことで、必ずしも所得税だけでは課税の公平が保てない。それでは所得の一生累積、そしてそれの財産化したものというものについて、死亡という事実がありましたときに、死亡の時点で所得税の一種の清算課税を行なう、それによって所得税の持ちます再分配機能というものを相続税が補完をするという、被相続人の財産課税という面に着目した面が一点あるわけでございます。  もう一点は、相続人のサイド、被相続人でなしに相続人のサイドから見ますと、何といいましてもやはり死亡という事実、あるいは親子関係ということから発生するものでありますにせよ、相続というのはいわば偶発的、一時的に財産の取得があるわけでございますので、その被相続人でなくして相続人のほうの一時的、偶発的の財産取得について、いわば担税力ありということで負担を求めるということでございます。  そのいずれに重点を置くか、つまり被相続人の所得、財産の清算という面に重点を置くか、相続人のほうの偶発的所得の発生に重点を置くかはいろいろ考え方がございましょうが、いずれの体系をとるにいたしましても、相続税はその二つの面を持っているものと考えております。
  84. 平林剛

    平林委員 一般論としてはそうですが、今度は、私がきょう提起している点に局限して、農業を経営している者、そしてその相続をする者、それに限定しても、やはりこの原則が入っておるのでしょうか。
  85. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 私どもは、やはり同じような原則で考えられるべきものと思っております。ただ、現実にいわば適正規模と申しますか、特別大規模の大農地でない者について、それが相続税が賦課されて、そうして農業経営の担税力からいって払えないようなものであってはいけないわけでございます。いわば純農業地域におきますところの適正といいますか、適度の経営規模の農業を継続するための農地相続については、それは課税にならないほうが望ましいといいますか、当然であると考えております。それを具体的には、現在の段階では課税最低限の置き方、非課税限度の置き方、その水準を適度に保つことによって、相続税が農業経営の阻害要因にならないようにするというのがよろしいのではないかと考えております。
  86. 平林剛

    平林委員 さて、今度はもっと細分化しまして、いまお話は純農地というふうにおっしゃったが、都市近郊の農地はどうなんですか。
  87. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 その点については、都市近郊の農地になりますと、最近かなり速いスピードで農地でありましても評価額が上がっております関係で、適正規模といいますか、ほどほどの規模の農業経営をやっていらっしゃる方の農地であっても、課税最低限をこえるものが出てくるわけでありますが、その場合についてどう考えるかということでありますけれども、相続税立場から申しますと、財産の形態が農地であるか宅地であるか、あるいはまた預金、株券というようなものであるか、さらにはその他の形態の資産であるかによって、財産価値としては同じであるのにかかわらず、財産形態が違うからといって、片方が課税になり、片方が課税にならないというのは、やはりぐあいが悪いのではないか。先ほど申しました一生の間の所得の清算という意味から申しましても、それから財産価値がある以上、やはり偶発的な所得なり財産の取得であるという点からいたしましても、それは財産形態によって違うということは適当でないのではないか。そこで、具体的には最近では都市近郊農地について課税問題が起こってくるわけでありまして、それについて、先ほど来御指摘のような問題はありますけれども、相続税立場では、やはりそれについて例外を置くわけにもまいらぬだろうということで考えております。
  88. 平林剛

    平林委員 いまおっしゃったのは、純農地であろうと都市近郊であろうと、農業を維持するという場合には例外にするわけにいかない、こういうふうにおっしゃったのでしょうか。
  89. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 農業を経営する場合だからといって、相続税で何らかの特別な配慮を加えるということは、現実問題としてなかなかむずかしいのではないかということを申し上げたわけでございます。
  90. 平林剛

    平林委員 特別な配慮を加えるわけにいかないと言うけれども、特別な配慮を加えているから私は問題にしているのですよ。つまり、農地に扱っていないということが問題を提起しているわけです。  そこで、ちょっと最近の農業経営の実態を考えてみますと、都市近郊の農業におきましても、むしろ被相続人と農業後継者になっておる者とは共同の経営、つまり共同で営農している場合が多いのですね。ですから、これは配偶者控除を設けたと同じような意味で、相続すべき財産である農地に特別の配慮をしてもいいのじゃないか。日本の農業、都市近郊にもやはり農業があったほうが消費者にとっても必要であるし、都市化の波の中で緑地を残しておくということは、自然環境の意味でも必要なことであるし、それはいろいろな法律の中でもその必要性が認められて立法化されておる現状から考えてみても、土地の供給をさせるためにねらい撃ちをして、そのためにこれ以上農業をつぶすという必要性は、私は問題があるのではないかと思う。  それから、最近の都市周辺地域土地評価が確かに高まったということは事実ですね。しかし、都市近郊では、農地宅地並み課税問題を先ほども私、述べたとおり、相続税についても、農地等の農業資産の評価が、生産の手段として不相応に急激な引き上げが行なわれるということは問題だ。つまり、特別の考慮を払うわけにいかないという意味であなたはおっしゃったわけですけれども、むしろどうも特別な悪いほうの考慮をやっているのではないか、逆に言えば。私はその点を指摘しておるわけなのです。何も都市近郊の農業だから純農地と区別して相続税を配慮しろ、こう言っているわけではないのであって、逆に都市近郊農業については、むしろ特別な措置をやっているのは政府がやっちゃっているのだ、悪いほうに配慮しているのじゃないか、これを私は言っておるわけなのでありまして、相続税の納付が農業経営の継続を困難にさせているという現状は、やはり再検討する必要があるというのが私の議論なんです。  そこで、先ほど私はそういう意味で質問をしましたが、相続税意味は、財産化したものを所得の分配機能を働かせる、それから偶発的、一時的なものの所得であるから担税力ありというふうなことでかける、こう言われたのですが、それは都市近郊もそうですがと言ったら、大体そうだと考える、純農地はあれだが、都市近郊はそれでやっているのだ、こういうお話ですが、きょう地方税法の一部を改正する法律案が本会議で議論になりました。この中に、新たに特別土地保有税というのが今度は創設されることになりましたことは、御承知だと思うのです。その条項の中に、相続というものは、形式的な所有権の移転であるという規定があるわけです。いまおっしゃった財産化したものの所得分配機能とか、偶発的、一時的のものは担税力ありとかいうことで、相続税を課するといういまのお答えと、特別土地保有税の場合におきましては形式的な所有権の移転である、こうみなして非課税にしておるという考え方とは食い違っておると私は思うのですが、その点はどうですか。私は、むしろ特別土地保有税の考え方の中には、農業政策サイドがかなり織り込まれている、こう思うのです。あなたのいまの御説明は、先ほど私が指摘したように、農業サイドからの視点というものが全く欠けている。配慮がない。特別な配慮をするのはどうかと言いながら、特別な配慮をしてしまっている。これはどうなんですか。
  91. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいま御指摘になりました地方税におきます特別土地保有税は、これは農地の問題とは全く直接の関係がございません。すべての相続財産についての考え方でございます。と申しますのは、特別土地保有税というのは、最近、土地が売買されますが、その土地の売買について、実需要者が土地を買うということではなしに、いわば投機的目的と申しますか、そういう目的で、実際自分が使うのでないのに将来の土地の値上がりを期待して、土地の売買が行なわれる場合が多いということから、そのようなことは望ましくないので、税制上特別税を設けようということであるわけであります。そこで、四十四年一月一日以降に取得した土地について、土地保有税がかかることに、今度御提案申し上げておるのが地方税の内容でございますが、その際、その四十四年一月一日以降の取得というのは、どのようなものを取得というのかということを考えます場合に、相続によって取得したものについては、これは明らかに投機目的でも何でもございませんから、そのようなものについて特に抑制するという政策が働く余地がございませんので、相続によって四十四年一月一日以降取得しても、それは新たな特別土地保有税の対象にはならないということを定義づけたものでございます。でございますから、この問題は、農業関係土地だけに限定せず、すべての土地についての取得という概念のきめ方の問題でございます。  ただいま御指摘にありました相続税にあたりまして、農地評価上、ある意味で現在の評価のしかたがむしろ農業政策にとって阻害要因になるような、いわば追い出し的効果をねらったような意味評価をしておるのじゃないかという御指摘でありますが、その点は必ずしもそういうわけではなくて、私どもとしては、特別に都市近郊地域については、農業経営をどうしても維持するために相続税法上特例を設けるということもとりかねるということも申し上げましたが、さりとて何か相続税をもって、ちょうど相続という機会にいわば追い出しといいますか、農業経営をやめることを促進するような意味で特別なことをやっているつもりはないのでございまして、すべての財産について同一の評価基準でやるということをしているわけでございます。ただ、あるいは先生のお考えでは、その同一評価基準で同一にやるということは、すなわち農業のことを考えないことだという御指摘があろうかと思いますが、その点は特別な評価制度をとっていないということから、そういう御批判を受ける余地はあろうかと思っております。
  92. 平林剛

    平林委員 これはある経済学者の話なんですけれども、現行民法でいくというと、農業の後継者が被相続人の死亡によって農地等を取得する場合には、まず妻に、配偶者にいき、そしてその子供たちに分配をされるという機能に民法はなっているわけですから、そうなると、相続権の放棄がない限りは、三代目ぐらいになるというと営農すべき土地がなくなっていくという、論理としては発展をするのですね。実際はそうはやれませんし、なかなかこういう時代になってくると、後継者が次男、三男、四男の人に何らの措置もしないというと、あと取りばっかり全部農地を持って、おれたちは町へほうり出されるというようなことから、いろいろ実際上の問題が起きてまいりまして、結局、農業の経営が非常に苦しくなってくる、こういう実態があると思うのであります。農業基本法という法律がありますね。農業基本法にはそういうことについて何らかの配慮をすべしというようなことが書いてあるのですけれども、それといまの相続税の中に特別の配慮をすることとは私は矛盾しないのじゃないかと思うのですけれども、農業基本法のいまの後継者の実際上の経営を維持させるという考え方を延ばしていけば、相続税の中にも農業後継者には何らかの措置を加えても決して矛盾じゃない、むしろ理に合っている、こういうふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  93. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 農業経営を継続していくためには、農地の細分化が非常にマイナス要因として働くことは事実でございますので、農業基本法的考え方からいえば、まず農地の細分化ということを防止しなくてはならないわけでありまして、私どもといたしましては、その精神を受けまして、御存じのように農地の生前贈与の特例を認めている、そういう制度を新たに数年前に設けたわけでございます。これはあくまでも現行農地法上不在地主は認めない、それからかつ農業経営者が農地の所有者であることを前提としておる、また農業経営者がある年齢に達して、農業を継続するにふさわしくない年齢に達した場合には、むしろ次の世代に移ることが望ましい、そしてまた農地が細分化しないことが望ましいという前提のもとに、平林委員よく御存じのような、生前贈与の特例規定が設けられたわけでございます。しかし残念ながら、今日まで必ずしもこの農地の生前贈与の特例規定は十全の効用を発揮するには至っていないと思っております。一部では活用されている向きもありますが、まだ全国の農家について一般的に相続税法上の農地の生前贈与の規定がうまく動いてないという事実は、私どもも認めております。  したがって、ある意味で、この種の農地について、単に相続税だけの問題ではなく、相続税の前提となります相続の問題とからめて、何らか後継者へのスムーズなバトンタッチが農地について行なわれますように、いろいろと知恵をめぐらすことは必要であると思っております。いままでのところは、残念ながら税法上はこの生前贈与の特例があるだけでございまして、これだけではなお不十分だ。しからばどうしたらいいかというような点については、税だけではなかなかうまくいきません。農地相続というような問題に関連して、何かそれぞれの御担当のほうでもう一ふんばりがんばっていただいて、いろいろと何か知恵を出していただきたい気持ちを持っておるわけでございますが、実際上は税法だけで処理するということはなかなかむずかしい。ただいま御指摘がございました次男の方、三男の方との権利調整もございまして、どうもうまくいかないというのが現状でございます。
  94. 平林剛

    平林委員 やや、主税局長お話で、後継者のバトンタッチがスムーズにいくようなことが必要であるということ、一ふんばりがんばってひとつ知恵を働かせたいという趣旨は、前向きの積極的な答弁として評価をしておきます。  私は、今日この問題を提起しましたのは、この件につきましてやはり考える必要があるということの問題提起なんです。私は、そうかといって、農地相続してそれをブローカーとか、それから農地の周辺に何かあったら高く売りつけようとかいう者に対して保護を与えようなんてちっとも思っていないのですよ。そんなものがあるならばこれはさかのぼってでもあたりまえにやっていいのじゃないかと思っております。しかし、純農地であろうと都市近郊の農地であろうと、ほんとうに農業を維持し、それがまた日本農業のあり方として、国民的経済から見て必要であるというものに対して、今日の実情というのはかなり問題があるということを言っているわけです。ですから、そういうことで、相続したらそれはあとで売ってしまうのだ、もう農業を維持しないのだという者に対してまでその措置をやれと言っているのじゃないのです。私は日本の農業を維持し、営農を続ける意思のある者に対しては、やはり農業基本法なりその他と比較をして配慮があってしかるべきだ、その配慮のしかたは、私の知恵では後継者控除というようなものを考えてみたらどうかという提起をしている、ということを頭にとめておいてもらいたいと思うのです。  そこで次に伺いますが、倍率ですね。現行行なわれておる倍率、現行行なわれておる相続税財産評価につきましては、大体これは国税局のほうですけれども、特に都市近郊にしぼって申し上げますけれども、固定資産税評価額がございまして、それで実際に、被相続人から農業後継者がこれを相続する場合の相続税評価額というものは、たとえていうと、八十倍とか九十倍とかいうふうに税率をかけてしまっているのですね。だからこれは、さっきそういうところには特別の考慮は払わないと言っているのですけれども、特別の考慮を払ってしまって、よけい倍率をかけて相続税を徴収しているわけですね。私が逆な意味で特別の考慮を払っているのじゃないかと言うのはそういうことなんです。この倍率は何を基準にしてきめておるのですか。
  95. 吉田冨士雄

    吉田説明員 農地評価に限ってお答えいたしますと、御承知のとおりに、市街化区域につきましては、ほほ宅地比準市街地周辺農地ということで評価をしておりまして、これは宅地に介在いたします農地売買実例から正常価格を導き出しまして、それの〇・七掛けにさらにまた八掛けをいたしまして、五六%でやっております。それから片一方、純農村にあります純農地につきましては、やはり売買実例から導き出しますが、これは一般の〇・七に対しまして五五%の限界収益率をかけております。この限界収益率をかけております場合には、純農地といたしまして二町とか三町とかいうワンブロックの売買がございませんものですから、通常一反とか二反とか非常に小規模な買い進みの農地の実例がございますので、その差額を調整するために五五というものをかけております。それからいま御指摘の中間農地でございますが、中間農地は、市街化周辺農地と純農地とを結びましてなだらかに評価額をだんだん落としていくため一定の倍率固定資産税にかけておるわけですが、固定資産税のほうは、御案内のように市街化区域におきましては、今度は宅地比準でかなり高い倍率の実施になっておりますが、中間農地市街化調整区域におきましては、純農村の固定資産税の水準とほぼ同じになっておりますので、相続税のほうはなだらかに宅地のほうと純農地とを結んでおりますが、固定資産税のほうは市街化区域までは宅地比準でございます。それから急に落ちまして純農地と同じ水準で中間地もきておりますために、相続税でいっております中間部分につきましては、固定資産税との倍率がいま先生御指摘のように非常に大きな倍率になるというのが実情でございます。
  96. 平林剛

    平林委員 付近の売買実例というけれども、結局は売らないからね、私の言っているのは。売る人は別ですよ。売らないのですからね。農業を継続する者に限って私は指摘しているわけです。売らないのですよ。売らない人に売買実例を根拠にしていろいろな調整をしても不合理じゃないですか。その点いかがなんでしょうか。
  97. 吉田冨士雄

    吉田説明員 相続税評価は、御案内のように、相続税法の二十二条で時価主義をとっておりまして、これは自由な市場におきます取引価格、売買価格というものが基準になっております。これは土地ばかりじゃございません、あらゆる相続税の財産につきまして正常売買価格というものを基準に考えております。そういうものでございますので、まず基本といたしましては、できるだけ売買実例中間農地の場合にも探してまいりまして、それから正常でない部分を除去いたしまして、それから先ほど申しましたような倍率をかけるということでわれわれ処理いたしております。
  98. 平林剛

    平林委員 私は、一般的な相読税の場合には、財産化したものについて富の再分配という意味は大いに替成なんです。それから偶発的、一時的の所得でありますから担税力ありと見て、それを相続税をもってならしていくという考え方は賛成ですよ。ただ売らないわけですからね。そういう場合にそのまま付近の売買実例基準にしてやるという考え方には、いわゆる農業政策が加味されていないのじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、その点はどうですか。
  99. 吉田冨士雄

    吉田説明員 基本的には先ほど申しましたように時価でございますので、売買実例価格等から引き出します正常売買価格でございますが、中間農地は、先ほど申しましたように純農地宅地とのちょうど中間でございまして、純農地のほうは一町、二町とかという大きなワンブロックの単位がございませんので、限界収益率で五五%を〇・七にさらにかけてございます。したがいまして、宅地と中間でございますので、その意味では中間的に配慮をされていると考えていいと思います。
  100. 平林剛

    平林委員 具体的な実例で議論しないとわからないのですけれども、非常に倍率が高いですね。それが適正かどうかということは専門的にやって具体的な例でないとなかなかわからないし、また例によって違う。ですから、訂正をしなければならぬというような実例なども税務署ではおそらくあると思うのです。こういう場合に、ある程度それを知っている人たちの代表を参加させて、評価額が、急激な負担をかけていくというようなことのないような配慮はしているのですか。たとえば農協の代表のような人を評価のときに参加させるというような方式をやるとかいうようなことはやっておるのでしょうか。
  101. 吉田冨士雄

    吉田説明員 倍率あるいは路線価でありますが、これの決定は国税局各署バランスを見てやっております。各局間のバランスは、国税庁が、これは宅地についてだけやっておりますが、農地について申しますと、税務署長が、まず原案を作成いたします際に、売買実例等から正常売買価格を引っぱると同時に、精通者の御意見も伺っております。それぞれ税務署長が精通者を大体五人前後選んで、全国で七万——これは宅地でございます。農地はもう少し少のうございますが、いずれにしましても精通者意見税務署長は聞いておりますが、その場合に精通者はおおむね不動産鑑定士とかあるいは市町村固定資産税担当の方とかあるいは銀行、不動産業などで不動産の事務を長くやっておられる方とか、それぞれやっておりますが、その中にはあるいは農協の方もおられるかもしれません。この辺は原則といたしまして税務署長が土地精通者ということでお願いしてやっております。
  102. 平林剛

    平林委員 おるかもしれないという程度でなくて、市町村評価委員の中にそういう精通者という意味でそこから出してもらうというようなことは、むしろ積極的に指導されたらいかがでしょうか。
  103. 吉田冨士雄

    吉田説明員 農地の場合には、そういう方にも、農地の事情に明るい方がおられましたら、われわれといたしましても積極的に御意見を伺いたいと思います。
  104. 平林剛

    平林委員 新都市計画法によりまして市街化区域市街化調整区域の区分がされましたね。固定資産税倍率については、この二つの地域ではどういう調整があるんですか。さっき言いましたように、純農地とか中間地とか宅地とかいう区分は、これは税務署的発想ですね。私は法律的発想でちょっと質問しますけれども、新都市計画法で市街化区域市街化調整区域に区分されましたが、固定資産税倍率は、この法律で定めた地域については評価率はどういうふうにバランスをとっていますか。つまり市街化区域というのは、言うまでもなく宅地化される区域ですね、それから市街化調整区域というのは農業を主体にしている地域ですね、そういう場合の倍率は何かわかるようなバランス、調整、これはとられておるんでしょうか。
  105. 吉田冨士雄

    吉田説明員 御案内のように、大きく分けまし  て、市街化地区と市街化調整地区とその他の地区とございまして、その他の地区はほとんど純農地でございまして、ごく例外はございます、純農村の中のまた若干集落的なところもございますが、こういうようなものは一応捨象いたしますと、市街化調整区域の外のほうは純農村と考えていただいて、これは固定資産税倍率でおおむね二倍ないし三倍、畑が三倍くらい、田が大体二倍から二・五倍くらいで評価してございます。  それから市街化調整区域でございますが、これは甲種農地と乙種農地に——新都市計画法を受けました農林省の次官通達が四十四年の十月に出ておりまして、甲種農地と乙種農地に分けてございます。甲種農地というのは、御案内のように集団の優良農地あるいは土地改良事業施行地域でございまして、純農村の農地とほぼ同じでございまして純農地としてわれわれとしては通常評価してございます、つまりこれは固定資産税は、全国的に申しますと二倍ないし三倍というところが多うございます。もちろん地区によって例外はございます。それから今度は市街化調整区域の乙種農地ですが乙種農地は甲種農地よりはもう少し市街化区域に近い近郊農地的な色彩を帯びているものが多うございまして、大部分は先ほど申しました中間農地に近うございます。これは農林省の次官通達、四十四年の十月にございます。第三種、第二種、第一種と分けてございますが、そのうちの第二種でございます。場合によれば第三種の場合もございますが、甲種に比べまして比較的農地法の制約がゆるいという地区でございます。しかしもちろん調整区域でございますから、都市計画法によりまして、開発行為とか建築制限というものはかぶっておる地域でございます。  それから市街化区域でございますが、これはおおむね先ほど申しました周辺農地、われわれが申します市街地周辺農地でございまして、いまの宅地課税の問題になっていると同じレベルで、宅地比準基準にいたしまして評価しているところでございますが、固定資産税のほうでは宅地と全く比準しております。つまりそれが農地でありましたならば、それを宅地にするために造成費が要ります。宅地の比準からマイナス造成費だけで評価しておりますが、相続税のほうではその宅地マイナス造成費に〇・八をかけておりまして、そういう水準で周辺農地評価しております。
  106. 平林剛

    平林委員 あとで議論しますけれども、農業振興地域というのがありますね。この農業振興地域というものにおける固定資産税倍率にはどういう配慮がありますか。
  107. 吉田冨士雄

    吉田説明員 これは私申し忘れましたが、御案内のように、農業振興地域の整備に関する法律で、農業振興地域と農業振興地域外とに一応分かれます。それで農業振興地域はさらに市町村長の指定で、農用地区域内の農地と農用地区域外の農地とに分かれます。この農用地区域内の農地は、先ほど申しました純農地として評価しております。つまり固定資産税の、全国的に申しますと二、三倍の評価でございます。それから農業地区外の農地と農業振興地域以外の両方のそれぞれ農業地区域からはずれました地区につきましては、農地法の制限の度合いによりまして、第三種農地の場合と第二種農地の場合と第一種農地の場合があるわけですが、第一種農地の場合は純農地、第二種農地の場合は中間農地、第三種農地の場合は市街地周辺農地ということで分類して評価しております。
  108. 平林剛

    平林委員 いま御発言になったようなことは、私またこまかく調べまして、適合しているかどうか、問題点を提起していきます。  それから同時に、固定資産税宅地並み課税の問題は、先ほど申し上げましたような見解を私は持っておるわけです。そこで、この問題は、私どもとしては、市街化区域農地に対して宅地並み課税を押しつけて土地を手放させようとしても、それを買い占めるのは大手の企業や大口ブローカー、つまりこれは逆にその土地の価格をつり上げて分譲するだけで、特定業者に巨大な利益を与えるだけだということから、別な角度から土地政策を樹立すべきであるということを主張して、たぶん政府側の考え方は適当でないということで、国会において是正をされていくだろう、こういう見通しであります。  ところが、相続税だけは個の問題ですからね、個の問題ですから、どうしても力が弱い。一生に一度ということですからね。そのために、相続税の場合にはいまおっしゃったような倍率がかけられて取られる。小さいものであろうと大きいものであろうと、理屈は同じじゃないか。大きくなれば一つの団体が動いて政治力になるから押えるという、それはいま政治の力学ですけれども、個の場合だって同じことじゃないか。それを個の場合には一生に一度だからとか、いまおっしゃったように農業サイドの政策的な加味をしないで、ただ売買実例だとかいうことでやる。つまり先行取得しているわけですね、税金の面の先行取得。これは同じ国がやるものとしては矛盾していはしませんか。またこの国会できめることに対して、まだきまりませんけれども、きまった場合には、国税のほうのやり方というものは、少しそれに離反をして先行取得している、こういう矛盾になりはしませんか。その点はいかがですか。
  109. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 私どもは、固定資産税の問題と相続税の問題では、やはりいろいろな意味で違いがあるんじゃないかというふうに考えております。固定資産税の場合には、現に農業を経営していらっしゃる方が年々負担される税でありますし、相続税の場合には、相続人が負担をするということになる。先ほどもちょっとお触れになりましたように、相続人の中には後継者としてそれを継続していかれる方以外の方、つまり次男、三男で、すでに他の職についている方が相続になる場合もあるわけでございまして、その各種相続人間のバランスをとらなければならないということから、かなり事情は違うのではないかと思っております。ただしかし、そうはいいましても、農業経営を主体に考えます場合に、相続税が阻害要因になってはいけないということから、今回改正をお願いしております、いわゆる課税最低限の線を引きます際に、間違いなく純農地については、かなりの大規模の農地所有者であっても課税にならないように線を引いているつもりでございますし、そのほか平林委員よく御存じのとおり、相続財産の半分以上が農地等の固定資産税であります場合には、延納等についての特例もございまして、その点では固定資産税の場合とは異なりまして、相続税相続税の範囲内でできる限りそういう点は配慮しているつもりでございます。
  110. 平林剛

    平林委員 私は、先ほど来述べてまいりましたような理由で、政府はこの問題に真剣に取り組んでもらいたい、そして何らかの結論を出すことを要請いたしたいと思います。特に調整地域に対する相続税評価倍率についても、法の趣旨から見まして矛盾をしておるし、それからたとえ個のものであったとしても、国の考え方に二つあるということについては矛盾を感じておるわけでございますので、きょうは先ほど主税局長がおっしゃったことを一応評価いたしまして、この点にとどめておきたいと思いますが、ぜひまた実例を調べまして、この次の機会にやらしてもらいたい、こう思っております。  そこで最後に、相続税全般のことについて伺いますけれども、今回の提出された法律案を見ますというと、相続税についての課税の最低限ですか、これが七年ぶりでもって改正されたわけですが、この土地の値上がりのときに七年に初めて出してきたというのは、いかにも長い期間ほうりっぱなしというとおかしいけれども、それに対する配慮がなかったんじゃないかと思うんです。そういう点ではこれからも七年に一ぺんというような気持ちなのか、もう少し期間を縮めてそういう点は絶えず気を配っていくという考え方なのか、その点をはっきりしておいていただきたいと思います。
  111. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 その点につきましては、先般他の委員からの御質問に対して大蔵大臣からも答弁申し上げましたように、いままでのように七年というのはあまりにも長過ぎるわけであり、かつ最近は土地の値上がりが非常に激しい、相続財産の中における土地部分の占める割合が高くなりたということ等を考えますと、当然いままでとは違ってかなり短い期間に課税最低限の調整その他の措置を行なう必要があると思っております。
  112. 平林剛

    平林委員 相続税の場合は昭和四十一年にあれしたんですね。
  113. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 昭和四十一年に、従来いわゆる課税最低限が相続人五人の場合で五百万円でありましたものが一千万円になりました。途中で一度改定がありまして、昭和四十六年にそれが千二百万円になりました。この千二百万円というのは、妻の贈与税についての特例措置の改定がありました機会に、やはり妻の控除部分、これを改定をいたしました。したがって、妻があり、子供が四人の場合でございますと、四十一年の改正前が五百万、四十一年からが一千万、四十六年からが千二百万、今回が一千八百万、こういう過程でございます。
  114. 平林剛

    平林委員 相続税についての課税最低限はいまお話のとおりですが、贈与税のほうですか。贈与税のほうについては、今度のあれでは、配偶者控除の引き上げなどとか延納に関する利子税の軽減がありますが、基礎的な控除の点については何ら触れていないですね。これは贈与税の場合はたしか昭和三十九年に幾らか訂正をされただけであって、今日まで手をつけていない。相続税の課税最低限は七年ぶりに直した。しかし贈与税はもう八年か九年になる。全然手をつけていない。こういうことはなぜか。すべきではないかと思うのですけれども、これについてやはり見直すべきではないだろうか、こう思うのですけれども、その点はいかがでしょう。
  115. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 贈与税の課税最低限は、三十九年に現行の四十万円になりましてから改定をいたしておりません。したがって四十一年のときにも見送りになったわけでございます。そこで、今回これを直すべきかどうか、相続税についてほぼ五割増しになるわけでございますから、これを直すべきではないか。特にこの制度にはいわば少額不追求的な精神もないわけでにありません。貨幣価値の変動に伴って、実は課税案件が非常に増加しているということもありまして、この四十万円というものは直すべきではないかということは十分検討いたしたわけでございます。内部におきましても、検討の過程におきまして、直すべきではないかという議論と、現行のまま据え置くべきではないかという議論と、私ども事務屋の間でもいたしましたし、各方面の御意見も承ったわけでございますが、最終的に直さないことにならざるを得ませんでしたのは、どうも最近この制度をいわば利用する租税回避的行為がかなりふえてきております。たとえば株であるとか預金であるとかいうものについてちょうどこの制度をうまく利用されて、三年に八十万にならぬ程度に年々かなり計画的に贈与を行なう。そうすると株、預金のたぐいはのがれていくわけでございまして、そこで実は税務執行その他のことを考えますと、国税庁あたりでも何とか事務を軽減する趣旨からいいましても多少引き上げてほしいということもあったのでございますが、どうもこの制度をうまく利用されている面がありますので、なおもう少しその辺を実態を調べてみたいということで、両論議論の上、今回は見送ることにさせていただいたわけでありまして、今後の宿題としてはなお検討していきたいと思っております。
  116. 平林剛

    平林委員 税の知識が出てくると、いまのような弊害といいますか、意識的にそういうような形で行なわれている実例は私らも承知しております。しかし、そういうもののために、体系といいますか、全般的なことをおくらせるというのはいかがなものであろうか。私は、相続税の課税最低の基礎の問題をいじるとするならば、当然、つり合いの上から見て、贈与税の問題についてもやはり同じように見直すべきである。それを九年間もほっておくというのはどうかと思うのでありますが、検討するという意味は、近いうちにその結論を得てやりたい、こういう御意思であるかどうか、それを承りたいと思います。
  117. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 四十万に対する贈与税の額というのは必ずしも大きい額ではございません。それにもかかわらずかなり多数の案件である。現在四十万円をこえるものが相当ありまして、現在でもその処理に税務署が相当忙殺されておりますし、ということは、逆に申せば、納税者にもかなり迷惑をかけておるということでもございますので、そういう意味からいいまして、十年もたっておりますから、改定をするということは一応検討しなければならないし、検討したのでございます。ただ、直すとなりますと、一体どの程度に直すべきや、また、現在のような四十万、二十万、二十万という非常にわかりにくい制度になっておる点もありまして、その点はもう少し簡素にすべきだというようなこともありまして、いろいろ議論の末見送ったのでありますが、いまここで、それでは次にたとえば相続税を直すときに直すかというところまでなかなかお約束はいたしかねますが、何かこのままでいつまでもおくわけにはいくまいという感じは持っております。
  118. 平林剛

    平林委員 これは先ほどの農業経営の生前贈与の問題にもからまる問題でございまして、あわせてそういうようなことも考えてみるというお約束をしていただきたいと思うのですが、いかがです。
  119. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 おことばのように研究をいたします。
  120. 平林剛

    平林委員 私はこれで終わります。
  121. 大村襄治

    ○大村委員長代理 阿部助哉君。
  122. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いままでいろいろと論議が行なわれのでありますが、私、まず第一に、たいへん初歩的な、原則的な質問でありますが、相続税を課税するというのはどういう理由なんですか。
  123. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 相続税の課税は、先ほども平林委員の御質問にお答えいたしましたように、二つの面から私どもは考えております。それは、一つは、被相続人の財産、これは所得税等で毎年税を納めていただいておるわけでございますが、その所得税で納めていただいた残りといいますか可処分所得、それが財産の形で残るわけでございます。その財産について、その方の死亡ということを契機としてその一生所得の清算という意味において課税をするものでございまして、これによりましてちょうど所得税の累進税制と同じような意味において所得の再分配が行なわれる。それによって異常なる財産価値が生まれてこないようにするという趣旨が一つでございます。第二は、相続人のほうの立場でございますが、相続人から見ますと、何百万あるいは何千万という財産がいわば一時的に、偶発的に帰属することになりますので、この相続人にとって一時的、偶発的な所得であるからこれは担税力があるという意味で課税されるわけでありまして、納税者は現在の観念では相続人でございますけれども、その制度の持つ意味は、二つの意味を兼ね持つものと考えております。
  124. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、簡単にいえば、一つは富の再配分、もう一つは、相続人立場からいえば、担税力があるという点で課税をされる、こういうことですね。ところが私たち、よく大会社の社長あるいはまた有名な政治家がなくなられた場合なんかには、当然あるだろうと思います相続されたものが、たいへんに相続税というものは少ないということを幾つ経験をしてきたわけであります。私は個人の名前はあげませんけれども、某私鉄会社の社長がなくなられた、たいへんよけい住まいや土地や、また株式を保有しておるであろう、たいへん大きな会社でありますから、こう思っておったところが、実際に相続税で課税された金額はたいへんに少ないものであった。あるいはまた、有名な政治家がなくなられた、書画、骨とう、石、そういうたぐいはたいへんよけいあった。こういわれるけれども、実際に課税をしてみたところが、課税の結果はたいへん少ないという話も聞き、経験をしてきておるわけでありますが、そうすると、相続税が富の再配分、こうおっしゃるけれども、一体これはさっぱりその機能を果たしてないんじゃないだろうか。皆さんの資料を見ましても、どうもそういう点でのアンバランスがあり過ぎると思うのだけれども、相続税は、おっしゃるように私も富の再配分として大きなところを取り上げるということは賛成なんです。だけれども、実際それはうまくいってないんじゃないですか、どうですか。
  125. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 なかなかお答えがむずかしいところでございます。私はかなりの程度に所得再分配の機能は果たしているものと思います。御指摘のように、しばしば、常識的な意味で、思ったより相続税が少ない、毎年毎年国税庁でまとめて発表いたしますもの等から、思ったより少ない場合があるという御指摘を受けておりますが、しかし大口相続とか、ただいまの御指摘のようないわば有名人の方等についてはかなり精査をしているわけでございます。やはり少ないには少ないなりの理由があってのことでございまして、非常に大口なものあるいは有名人のものについて、それほど脱法的なものがあるという例は、全部とは申しませんけれども、そう数あり得ないという現状だろうと思っております。
  126. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さんの国税庁で出された資料を見ましても、実際いってそういうものはあまり多くないんじゃないですか。しかし、財産としては、宝石であるとか有価証券の場合などというのは、無記名でやっておれば実際は課税ができないんじゃないですか、どうなんです、直税部長
  127. 吉田冨士雄

    吉田説明員 おっしゃいますように、不表現資産の追及はなかなかわれわれも苦労しているところでございますが、先ほどお話のいろいろな資料等で見ますと、まず申告自体でごらんいただきますと、四十六年で申しますと、資産額が九千九百五十八億ございますが、その中で有価証券が九百七十九億、預貯金が七百七十一億で、両方合わせましても率といたしましては一七%程度でございます。これは申告でございます。これに対しまして、私どもとしては、課税価格大体五千万以上の人たち、四十六年で申しますと、被相続人が二万六千人ありますが、そのうちの五千万円以上を実調対象にいたしまして、約六千件についてこまかい調査をやっているわけでございます。それ以外にも軽い調査は一万件ほどやっておりますが、実調対象六千件につきましては、ただいま申しました不表現資産を中心にして調査をやっております。その調査の結果、四十七年では九百五十一億円の調査としてあらわれておりまして、全体の予算額の約一〇%でございますが、このかなり大きな部分は不表現資産でございます。特に無記名の公社債とかあるいは株とか別途預金とか、こういうものが多いのが実績でございます。
  128. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あなたの話はよく私はわからぬのですが、そうすると、有価証券や宝石や、そういうものは大半把握しておられる、こういうことですか。あまりくどく言わないで簡単に言ってください。   〔大村委員長代理退席、委員長着席〕
  129. 吉田冨士雄

    吉田説明員 把握に努力しており、そこに調査の重点をかけておりまして、その結果がただいまの数字でございます。
  130. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 努力しておられるというお話を私はそのとおり額面どおり受けてもいいのでありますけれども、おられるけれども実際はなかなか困難であるということはお認めにならぬのですか。
  131. 吉田冨士雄

    吉田説明員 確かに調査といたしましては困難でございます。
  132. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 国税庁から出した資料を見ましても、結局皆さんの相続税の場合には、一番簡単なのは、やはり土地建物、こういう形のあるものが一番簡単明瞭に課税対象になって、それはわりとちゃんと取っておる、こういうことになるんじゃないですか。
  133. 吉田冨士雄

    吉田説明員 把握といたしましては、おっしゃるように表現資産のほうは把握は容易でございます。
  134. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それで、皆さんのこの表で土地の中で宅地のほかに「その他」というのは何ですか。
  135. 吉田冨士雄

    吉田説明員 土地の中の「その他」は、原野、雑種地でございます。
  136. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 農地などというのはどこに入るのですか。
  137. 吉田冨士雄

    吉田説明員 この表によりますと、土地が「宅地」と「その他」に分かれておりますので、「その他」のほうの中には、田畑、林地、それから先ほど申しました雑種地等が入っております。
  138. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、その土地の中の「宅地」「その他」とある「その他」は、やはり農地が一番大きいと思うのですけれども、原野だとか、そんなこと言ったって、そういうのはその問頭じゃなしに、やはり農地が一番大きいと思う。しかもそれが四十一年と四十五年を比べますと、倍率はたいへん大きく伸びておるわけですね。そうすると、何だかんだといいながら、皆さんは、困難だから、有価証券だ、宝石だ、そういうものはなかなか取っておらない、これが実情だと思うのですよ。まあ苦しいから、努力をしておるという表現をあなたはされたけれども、なかなか把握は困難だ、困難だから取っていない、こういうことになる。片っ方は、農地やそういうのはちゃんと把握ができるから取っておる、こういうことになるわけでしょう。
  139. 吉田冨士雄

    吉田説明員 不表現資産の把握にはなかなか困難を伴いますが、ここにあります表は申告の表でございまして、申告に基づいて作成した表でございます。したがいまして、これは申告書にどう出ているかという表でございます。
  140. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 申告であれば、実際取ったのはどうなんですか。
  141. 吉田冨士雄

    吉田説明員 実際取りましたのは、先ほど申しましたように、四十六年で申しますと、これの一割増、全体の一割増でございますが、その種類別の内訳はとってございません。
  142. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 今日株がこう上がっておるという問題はありましょうが、いずれにせよ、大資本家、資産家、そういうところからは抜けられてなかなか取っておらない。そうすると、やはり税の公平という点からいって、取れるところからよけい取るということになるのですか。
  143. 吉田冨士雄

    吉田説明員 私どもは執行面で税の公平に心がけておりまして、先ほど申しましたように、五千万以上の大きいものにつきまして、特に調査を入念にやっております。できるだけ大きいほうを重点的に調査し、それから課税を公平にしていきたいという努力をしております。
  144. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それじゃ、たとえば宝石なんというのはどんなふうにして取っておりますか。
  145. 吉田冨士雄

    吉田説明員 宝石とか絵画とか骨とう、こういう不表現資産は特に動産でございますので、やはり困難な点が多いわけでございますが、通常の場合、相続される前にいろいろ財産を処分されて、その資金がどこかへいってしまってわからないということがよくありまして、その資金の流れを追及いたしますと、別途預金になっておる場合、あるいは宝石、絵画、骨とう等になっている場合ということが発見されますので、そういう方法で取っております。
  146. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 ほんとうは宝石の高いものは、大体皆さん追跡調査をしておるのですよ。だから、なくなる前に売ってしまう人もあるだろうけれども、なくなってから処分する人もあるだろうし、実際皆さんがほんとうに努力をしておるということならば、これはある程度把握はできるのであります。もう一つは証券の問題、匿名等をやめさせるならば、これはまた把握ができる問題なんです。だから私は、現実に相続税というものは非常に不公平な取り方、法律自体は、たてまえは、先ほど局長がおっしゃったように、富の再配分だとか、その原則はたいへんけっこうだし、賛成なんでありますが、現実の執行の面において非常な不公平が現出しておるということは間違いがないのじゃないですか、どうなんです。そう思いませんか。
  147. 吉田冨士雄

    吉田説明員 私どもとしては、不公平、特に大口の高額被相続人の場合に不公平が起こりませんように、大きいものから重点的に調査するという方針で、重点は五千万以上、特に階級の高いほうに重点を置いて調査をいたしております。
  148. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あなたの主観的な努力とかなんとかを聞いているのじゃない。私は、客観的に現実に不公平になっておるのじゃないか、こう言っている。何べん言ったって同じピントのはずれた答弁をされるなら、私は同じことを二日でも三日でもやっていますよ。
  149. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 相続税の現在の執行の状態は、私自身国税庁におりましたときの感じからだけ申し上げますが、ただいま直税部長も申し上げましたように、不表現資産についてはなかなか把握がむずかしい、また、それを調査いたしますことは骨の折れる仕事であるということでございます。それについては、御指摘のように、それが不公平になるということは非常に問題でありますので、先ほど直税部長からも触れておりますように、特に大口の相続と目される方につきまして、かなり最近は調査の重点をそこに置くことによって、不公平の排除には相当つとめている状況でございます。問題は、申告でありましても、その申告がないわけでありますから、そこで、その方の具体的な財産ということでなしに、要するに資金の出入り等をいろいろな方法で調べることによって、可能な限りその追及に努力をいたしておりますが、その資金の状態がなかなかつかめないというような場合には、一部把握漏れがあることと思っております。それとの関係で、相続税につきましては、漸次富の集中が、五年前と比べ、十年前と比べ激しくなっておりますので、そういう意味からいいますと、相続税による公平の維持ということが、富の集中との関連から申しましてますますむずかしくなっておりますと同時に、何らかの対策を打たなければならないという感じはいたしておるわけでございます。先般当委員会におきまして、他の委員の御質問に対して大蔵大臣は、富裕税の復活というようなことの研究をしなければならぬのではないかという発言をいたしておりますが、そのこともやはりそれこれ相まつことによって、相続税の不公平の除去ということにつなげたいということでございまして、私どもも国税庁だけに負担をかけるわけにはまいりませんので、制度上整備をすることについて、検討を内々進めておるという段階でございます。
  150. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だから、結局現実はたいへん不公平だ、執行面で不公平な結果が出ておるということはお認めにならぬのですか。
  151. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 確かにおっしゃるように、不表現資産の把握は非常にむずかしい。しかも最近の傾向としてはそういう方向に資産の蓄積が行なわれておるということもありますので、先ほど来申し上げておりますように、特に相続税の機能といいますか性格といいますか、富の再配分という観点からも、高額といいますか、大口の遺産相続の行なわれる場合には、特にそういう方面に向かって力を入れてきておる。おっしゃるように、実際問題としてそれじゃ申し分のないような把握が行なわれておるかとおっしゃれば、私も一線の状況はよく存じませんけれども、しかし、また反面、高額な遺産相続の行なわれた場合、それらの人々はずいぶん税務署はきついということを言う人もあるわけでありまして、その辺のところは、申し分なく行なわれておるかというお尋ねになれば、それはなかなかそういっておるというふうに一〇〇%の自信で申し上げられないかもしれません。しかし、そういうことの方向で特に大口に向かって努力をしておるということには間違いがないのでありまして、その辺でひとつ御理解を賜わりたいと思います。
  152. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さん努力をしておるということでかんにんしろ、こういうことなんですが、私はその努力もあまり評価をしないのです。というのは、宝石なら宝石で、皆さんは輸入されたときから大体追跡調査をしておるのですね。また、書画、骨とうなんというのも、皆さんがやる気になったりすれば、これはできる。ところが実際は、零細企業の税金なんというのには、たいへんな労力を使って、重箱のすみをほじくるようなかっこうで税金を取っておる。私、先ほど農民の連中から、たいへん不満だといって話を聞いてきたのですけれども、たとえば農業課税なんというのは何です、あんなもの。これは所得税のときやりますけれども、農業課税なんというのは、税務署が一方的につくってやって——大体所得税はあまり納めるのはいない。地方税の関係なんです。健康保険税の関係なんです。それを税務署がみなつくって、協議会の会長の村長さんがしゃべるあいさつの原稿まで税務署が書いている。村長さんが文句を言っていったり、協議会を抜けたいと言ったりすると、今度は仕返しがくるということで——私の足元でやるのだから、あの税務署長相当度胸があると思うのですけれども、とにかくたいへんな税務署の一方的なやり方でやっておるでしょう。それだけの努力を払うならば、これくらいのものを把握できないはずはないのですよ。困難だから困難だからということで、不公平な、いままでのこのやり方をそのままやっておるとすれば、これは相続税全般を考え直さなければならぬときが来るのではないか。まあ、努力しておると言うのだが、皆さんどうです、大口で相続税の査察をやられたことはありますか。
  153. 吉田冨士雄

    吉田説明員 相続税の査察事案はございません。
  154. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 やったことないでしょう。だから実際言うと、もう宝石や大金持ちや大政治家の場合には、うまく隠しなさい、それで皆さんがここで、努力しました努力しましたなんと言ったって、だれもそれはほんとうにしないですよ。そうじゃないですか。その努力したというのは、どういう努力をしたのか、では具体的にあなた言ってごらんなさい。何べんか、努力した努力したとおっしゃるのなら。
  155. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 最近数カ月の経過を申しますと、従来は大体相続税調査税務署でやってきておりましたけれども、大口のものにつきましては、国税局に専担班を置きまして、それで調査をするということであるとか、それから、必ずしも相続税のいわば担当者だけではうまくいきませんので、それに関連する関係会社の法人調査に関する担当をしております職員に協力をさせるとか、そういうことをやらしてまいりました。そういうことで、私ども自身経験といたしましても、可能な限り努力はしてきたつもりでございますが、実は偶発的な課税案件でございまして、死亡という機会に起こるものでございますので、なかなか平素から用意をしておくということが非常にまずいわけでありまして、そういうことでなお至らない点があると思っております。  ただいま査察案件がないということでおしかりを受けましたけれども、そういう点におきましても、事案についての継続的管理がまだ十分できていないということでありまして、これは国税庁の仕事ではございますが、今後ともわれわれも関係して努力を続けていかなければならぬと思っております。
  156. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だから、どうもこの税務行政そのものが非常に階級的——私のことばでいえば階級的で、大きなところはもうみな目をつぶって、努力したようなかっこうをしておるけれども、さっぱりやってない。そして勤労者のほうへはたいへんきびしい。ある意味では憲法違反、人権無視というような形の調査まで皆さんおやりになっておる。私は何かこの税務行政そのものが非常に階級的な税務行政じゃないだろうかという感じがする。その一番よくあらわれておるのが相続税じゃないだろうかという不満を私は持つわけであります。そういう点で、ほんとうに皆さんがあの零細企業に投入しておるエネルギーをここへ使うならば、私はいまのような大きなところが抜ける——これは大きなところはみんな、いろんな知恵を持っておる人を集めて、いろんな細工をします。有価証券はどうするとか、さっき言ったような大会社の社長は、なくなったときには自分の持っておる土地はみんな会社のものだなんということに名義をしてしまっておいて、抜ける道を講じておる。これは具体的に言えといえば私言いますよ。言うけれども、そういうものを皆さんが見のがしになっておって、そして努力をしたと言っても、何かピントのはずれた努力じゃないだろうか。たいへん失礼な言い方だけれども、私、そういう感じがする。そうすると、一番最初申し上げた、富の再配分とか、あるいはまた税の公平という点からいってみても、私はどうも筋が通らないのじゃないかという感じがするわけであります。  まあしかし、その点は皆さんに努力願って次に移りますけれども、欠に、法人税に対しては、再生産を保障する立場から、生産手段には課税をしないのが税の原則だ、こう私は思うのですが、いかがですか。
  157. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 必ずしもそういうことではなくてやはり償却という形で、時間がかかりますが償却という形で、何年かの間には課税になってくるということであろうかと思います。
  158. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 まあ資本には税金をかけないというのが原則でしょう。そうじゃないですか。
  159. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 そのとおりでございます。
  160. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 固定資産税というのは、私はちょっとこれは別なカテゴリーというか別ワクだと思うのですが、そういうふうにしておるとすれば、たとえば農業法人でやっておる場合に、出資者である人がなくなった、こういうときには、それには相続税は、持ち株というか、あれにはかかるだろうけれども、土地にはかからないでしょうね。
  161. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 株なり出資の持ち分の評価という形であらわれてくるわけでありまして、土地そのものには別にかかる関係にはない。
  162. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、先ほど来農地の問題、都市近郊の問題あるいは、いろいろありましたが、農地に対する課税というのは、やはりこの税金を払うのは、たてまえとすれば農業収益から払う、農家の収入から払うということになるのがまあ普通だと思うのですが、そうでしょうね。
  163. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  164. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、どうもこれは収益課税であって、収益課税ということになると、そのときにおいてはこれは二重課税ということになりますか。
  165. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 農地は収益を生む一種の基本的財産という性格のものでございますから、したがって当然、純農地についてはそれが財産税であるところの相続税の課税対象にならないように措置をするのが適当であろうかと思います。ただ、先ほど来平林委員の御質問にもございましたが、都市近郊農地につきましては、それがいわゆる農業の生産手段としての農地の性格のほかに、独立して財産としての価値がそこに認められるということから、都市近郊で農地としては著しく高いと認められる評価をしなければならないような土地について、現在相続税の課税対象になっている場合があるわけであります。その場合の相続税のものの考え方は、農業生産手段としての農地に着目しているというよりは、一般財産としての土地というものに着目しての課税が行なわれているということでございます。
  166. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いま都市近郊とおっしゃったけれども、私は逆に純農村の場合をひとつお伺いをしたいのでありますが、そういうときにはどうなんですか。
  167. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 特別の大農の方でひどく広い面積をお持ちの方の場合にどう考えるかという問題がありますが、一般的には通常の経営に必要な通常の面積の農地については相続税が課税にならないようにするのが当然であろうと思います。
  168. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 特に広いというのはどの程度の広さをおっしゃるのですか。
  169. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 これは地域によっても違うと思います。非常に広い面積での耕地が常識である場合と、五反とか六反とかいう面積が常識である、場合とありましょうが、広い面積の地域におきましても、現在のところでは、市街地に隣接してない限りにおいては、たとえば少なくとも二町歩ぐらいまでは課税にならないというのがいまの考え方でございます。
  170. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 もっと具体的に言うと、米の単作地帯だったらどれぐらいですか。
  171. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 四十七年の相続税評価額基準に見ますと、たとえば水田単作地帯であります新潟県の例で見ますと、田だけでありますと、現行の千二百万円という標準的な相続の場合の最低限の額、それで大体八町歩ぐらいまでは課税にならないという状況になっているはずでございます。
  172. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 千二百万円で八町歩までかからないですか。ひとつ局長に五町歩くらいでいいから買ってもらわなければいかぬですね。いまのたんぼの値段土地値段というものを局長は全然お知りにならないで税制をおやりになっておるのじゃないですか。
  173. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 いま申し上げましたのは、農地相続税評価額基準に言っておるわけでありまして、御存じのとおり、相続税では、先般来申し上げておりますように、宅地の場合でいわゆる時価の大体七割以下でございますし、田の場合は大体四割以下になっております。それでそういう相続評価額基準にいたします限り、いま申し上げました面積ぐらいまでは農地だけでは課税にならないという、そういう評価水準に現在なっておるはずでございます。
  174. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 日本の農業は零細農だから、これの規模拡大をしなければいかぬというのが農林省の基本方針だと私は思うんですよ。これは同時に政府の基本方針だと思う。そこで、あなたは、八町歩ぐらいまではかからないはずだ、こうおっしゃるけれども、私が自分の地元の税務署のあの書類を見ましても、二町歩あると大体かかりますよ。
  175. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ちょっと私の手持ちの資料で計算してみたのでございますけれども、水田の地帯であれば大体調整区域になっていると思うんですが、調整区域であると——市街化調整区域であるが市街地にかなり近いという場合はわかりませんが、一般的には二町歩ということではないかと私どもは考えております。
  176. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 実際は、最近特に激しく農地が値上がりをしておるんですね。そういう点からいくと、いまの皆さんのおきめになる税金でいきますと、これはたいへん税金がかかることになるんです。私はやはりこの評価のしかたが問題で、先ほど来この問題でいろいろの方がおっしゃっておるけれども、純農地の場合には、固定資産税にしても、この相続税にしても、収益還元方式をとらない限りこれはどうしようもないという感じが私はするんですがね。ただ皆さんが一方的に近傍類似でそれに何ぼかの調整係数をかけていったところで、皆さんはやはり固定資産税を基礎にしておられるわけですよ。それに倍率をかける。ただ、固定資産税は三年に一ぺんかなにか改定するものだから、その間多少調整の数字を違わせておるだけであって、基本は固定資産税評価をもとにしておられる。それである限り、私はいまのような土地の値上がり——もう上がってしまったのはこれはなかなか落ちないですよ。日本列島改造論なんというからますます上がってしまったんだから。そうすると、これは農地への課税が行なわれる、そうすればだんだんたんぼを売って税金を払わなきゃならぬというところへはまるのは当然なんであつて、どうも大蔵省のほうの税金の面からいくと、日本農業はますます零細細分化の方向をとろうとしておるんじゃないかという感じが私はするし、実際そうだと思うんですが、その辺もう少し検討されることはないんですか。
  177. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 今回、標準的な相続の場合におきます千二百万円のいわゆる課税最低限を千八百万円に改めさせていただきたいと申し上げておりますのですが、そのような判断をいたしますにあたりましては、おっしゃるような面が心配になってきたわけでございます。つまり、農地を含めまして土地評価額がたいへん上がってきておりますものですから、従来の千二百万円でございますと、おっしゃるような危険といいますか、ラインすれすれになる可能性が出てきたわけでございまして、その意味で今回改定をお願いしておるわけでございますが、土地の価格の値上がりが非常に速いものでございますから何とも言えませんが、今回千八百万円にしていただけば、少なくともここ一、二年はおっしゃるような問題は現実には起こり得ないのではないか、ただ問題は、都市近郊農地についてはあるいはなお問題が残るかもしれませんが、いわゆる純農地についてはそのようなことは起こらないのではないかという前提で、今回の改正をお願いしておるわけでございます。  なお、農地評価のしかたを全面的に変えてはどうか、あるいは農地についての特例控除的なものを認めてはどうかという御指摘を、先般来、相続税法の改正にあたりまして各委員から受けておりますが、このことにつきましては、そのつどお答え申し上げておりますように、制度の仕組みをどうするかという点については、にわかに考え方を申し上げかねるわけでございますが、少なくともこの純農地について適正規模のものについて、またこれから経営拡大を前提としておる農業政策との関連も考えながら、それが課税にならないようには絶対にしていかなければならないと思つております。
  178. 武藤山治

    武藤(山)委員 関連して。直税部長、ちょっと数字のことで恐縮ですが、いま阿部委員の質問の田畑の問題ですが、大蔵省の資料を見ると昭和四十一年から四十六年のわずか五年間で、相続財産価額がたんぼの場合、人員にして約四倍にふえておる。それから畑が約三倍強。そしてたんぼの場合の評価額、財産価額が一千二百六十四億円、畑が一千二百五十九億七千六百万円、宅地が三千九百七十七億。これに対してたんぼの税金は幾らか。これは大体田畑どのくらいの相続税がかかっていますか。人員と金額わかりますか。これには税額が出ていない。財産価額だけしか出ていない。実際に田畑の所有について相続税がかかっているのは、人数がどのくらいで税額はどのくらいになるのか。
  179. 吉田冨士雄

    吉田説明員 人数は、ただいまお話しのように、田の分は幾ら、畑の分は幾らというふうに税務統計に出ておりますが、それの最終的な相続税にかかった税額が幾らかということになりますと、全部まとめて統計処理しておりますので、わかりかねます。
  180. 武藤山治

    武藤(山)委員 いや、税額。
  181. 吉田冨士雄

    吉田説明員 税額は、全部まとめまして、田とか畑というぐあいに分類してとっておりませんで、まとめた総計のところでしか税額がわかりませのんで、現在わかりかねます。
  182. 武藤山治

    武藤(山)委員 田畑で合わせて二千五百億円の財産評価になるわけですが、かなりやはり課税されているという理解をしてよろしいですが。何割ぐらいの額になるか、統計を聞かなければわかりませんが、このうちかなり相続税を取られているのでしょう。
  183. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 実はそういう統計がとれないわけでございます。と申しますのは、たんぼで幾ら、あるいは有価証券で幾ら、預金で幾らと財産を書き出しまして、それから相続人の数が五人なら千二百万と、こうやりまして引いたものにぽんと税率をかけて税額が出ますので、どの分にどのくらいかかったか、葬式費用とか、債務とか引いていきますから、どの分にどういうふうにがかったかということが統計的につくれないわけでございます。ここにあります千二百六十四億とか、畑で千二百五十九億とかいう数字は、申告していただいて税金を納めていただいた申告書に書いてあります財産価額そのものを財産種目別に合計したものでございますから、なかなかこれと税額とが結びつかない、こういう関係のものでございます。
  184. 武藤山治

    武藤(山)委員 結びつかない、統計の数字がないのでありますから。主税局長は、農家の田畑には課税されませんよ、八町歩まではだいじょうぶですよと口では言っても、その数字の具体的な中身で説明されないことには信憑性ないじゃありませんか。そこが問題なので私ちょっといま関連で尋ねたわけであります。
  185. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 私がさっき申し上げましたのはごくサンプルでございますが、ある地点をとりまして、そのある地点相続税評価額幾らになっているかということを見まして、それで今度はちょうど千二百万円、四十七年度の問題として考えたものですから、千二百万円になるまでになるには何ぼの面積かというのを逆算しただけのことでございますので、現実に純農地帯におきましても、また別の資料等によりますと、課税案件がないわけではございません。ないわけではございませんが、しかしそれはまた田畑以外の財産も合算しての話でございますから、という意味で申し上げたわけでございまして、全部が全部確実に課税にならぬ、こういうことにはならないわけでございます。
  186. 武藤山治

    武藤(山)委員 それはあとで具体的なサンプルを幾つか資料として提出してください。
  187. 鴨田宗一

    鴨田委員長 資料、わかりましたね。
  188. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 局長は純農村のそういう農地には課税をしないようにという希望意見を述べておりますね。ところが、実際はいまあなたのところにはそれの資料はない。私が見たところでは課税になる。実際言うて、いまの日本の農政、農業基本法をつくった三十六年のころは、これは一町五反ぐらいが適正規模であると、こう言ったけれども、その当時から、つくられた人たちは、これは年によってだんだん規模は拡大をせざるを得ないのだ、こう言ってきたわけです。現実にいま米をつくる単作地帯で三町歩の農家なんというのは、たいへん苦しいところにきている。一町五反ではどうにもならない、二町歩でもどうにもならないところにきているわけです。そうすると、農林省や何かは、最低限どれくらいの面積をいまの時点で——それは三年後、五年後になればさらに大きくなるでしょうけれども、いまの時点でどの程度の規模が好ましい最低限と見るのか。そういうのと合わせて、あなたが税金がかからないようにする、こういうお話ならばわかるのでありますけれども、いまのように、八町歩まではかからぬはずだなんという話では、私はちょっと納得ができない。しかも一番最初に申し上げたように、大きなところは皆さん努力をしておるとおっしゃるけれども、たいへんにその執行は困難であって、実際は現実は不公平な税執行になっておる。そういうことを考えれば、その辺をもう少し、同じ政府なんだから、意思統一をされた中でこの相続税法というものを提案をされるのが私は当然なんじゃないかという感じがするのですが、その辺の打ち合わせはしておられるのですか。
  189. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 率直に申し上げて、きめこまかいそういう調査が十分整っておりません。それで、ある意味で申しますと、そのあたりについてもう少し研究をする必要があるわけでございますが、何ぶん急激に土地の価格が上がりまして、それでその関係相続税の納税人員なりあるいは課税価格なりが急激にふえてきておりますので、とにかく急いでまず現在の課税最低限を直すことが必要である。その場合、一つの目安として五割くらいであろうかということで今回ここに御提案申し上げて御審議をお願いしておるわけでございます。先般来御指摘のように、農地の問題なりあるいは都市の住宅地の問題については、なおきめこまかい検討をいたしたいと存じます。大臣も近々さらに追っかけて改正のことを研究しなければならないと答弁申し上げておりますが、その際にはぜひともそういう点を配慮いたして——配慮というよりは研究いたして、改正の目安をつけますときに研究をいたしたいと思います。
  190. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 せっかく研究をされ検討をされるのでありますから、先ほど、制度の仕組みについては困難であるという——せっかくそこまで前向きの姿勢を示されたのでありますが、私は、その制度の仕組み、たとえばもう一度収益還元方式をとるとかというものをこれはもう検討をすべきではないか。法人税の場合は、たとえば一昨年のあのドル売りのとき、皆さんはたいへんないろいろな芸当——芸当と言ったら失礼かもわからぬけれども、やってのけたわけで、国税庁長官の通達ぐらいで、国会を無視したやり方で、帳面のつけ方で為替の差損、差益の問題を、あれだけ大きく皆さん減税をしておるのですよ。これはいずれ法人税のとき、特別措置のとき私ただしますけれども、それぐらい大きな、私に言わせれば、何千億という税金をまけておると思うのです。そういうことを簡単に国会を無視してやってのけるような皆さんが、それぐらいのものをやれぬはずがないじゃないですか。それは特別措置のときにやりますが、そういうものを、いまの日本の農業の現状を踏まえ、そして農業をどうするかというものを考えないで税法をおやりになっても、実際言うて、富の再配分というけれども、その原則も執行面ではくずれておる。そういう中で、そういうことからいけば、一番つかみ得る、逃げ道のない農地であるとかというようなものに対して、もう少し抜本的な配慮をされる必要があるのではないかという感じがするので、私はもう一度、局長は検討されるという前向きなあれで、追い打ちをかけるようでありますが、現在の農村の実情を踏まえていくと、仕組みは変えられないという非常にかたくなな態度ではなしに、そのこと自体から再検討すべきだ、こう私は思うのですが、もう一度答弁を願いたい。
  191. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 農地相続税の問題はいろいろな問題があることは、各方面から御指摘を受けておりまして、一応ある程度承知をいたしておりますが、問題は、先ほども申しましたが、相続税の問題であるよりは、その前にどうも相続の問題があるように思います。最近、相続税でなしに、相続の制度について、法務省の法制審議会の身分法委員会でいろいろ議論されておる議事録等を読んでみますと、農地、特に都市近郊農地相続の問題につきまして、関係者間での紛争が、事件も数がふえ、かつ複雑な案件がふえておるようでございます。私どもといたしましては、この相続のあり方、それから農林省を中心にして検討されております農地の分散を避けるための農地特有の何か相続制度のあり方等々について検討が進められておりますので、それとあわせて何かうまい制度ができましたならば、その考えられる新しい相続のシステムについて、税の上でもお手伝いできるような方法を何か考えることは検討してみたいと思っておるのですが、どうもなかなかそれがうまく見つからないということでございまして、先ほども申しましたように、生前贈与の制度ももう一つうまく動いてないというようなこともあります。それらを総合的に研究させていただきたいと思います。いずれにしても、農業政策との調和は必要であると考えています。
  192. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いま相続の、特に都市近郊の場合、税金の問題前に相続人間のいろいろな問題があるとおっしゃるけれども、それはそれであるのでしょう。それはそれで私はやはりあると思う。だけれども、税の立場はまた多少次元が違う面もある。そういう点で、税執行の場合の税法としてのお考えをいただき、農業をこれからどうするかという問題をあわせて税法があってしかるべきだ、こう私は思うのでありますが、そういう点で検討をいただくということで、私、先へ移りたいと思うのであります。  それからこの前、武藤委員からも質問がありまして、住宅等の土地家屋の場合、局長のほうでは、宅地七十坪、家屋三十坪ぐらいはなるたけかからないようにしたいみたいな話があったと思うのであります。しかし、この場合、皆さんおっしゃるのは、これは五人家族で言っておるわけでしょう。そうじゃないですか。
  193. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 これは、相続人の数が五人ということでございます。
  194. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 実際は、課税最低限も大体家族四人ということになってきたし、現実は大体あんまり子供をつくらなくなってきた。まあつくれなくなったというほうがこれは当たるのかもわかりませんけれども、大体家族は四人以下というのが標準でございます。そうすれば、やはりその標準に合わせるということが私は現実の税法だろうと思うのですが、いかがですか。
  195. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 どうもその点は、前回もたしか一度お答え申し上げたと思いますが、相続税におきます相続人の数、これはたとえば核家族になりましても、つまり別々のところに住んでおりましても、相続人はあるわけでございます。それで、おことばではございますが、所得税のほうは、確かに扶養親族の数は統計上も減ってきておりますが、相続税のほうで見ますと、被相続人一人当たりの相続人数は、私ども手元にあります数字で、昭和三十五年が四・一四人、それから四十六年が四・三一人ということで、変わってないわけでございます。これは平均ですと四人じゃないか、こうなりますけれども、実は課税最低額が五人で計算してあります関係上、たとえば同じ千二百万円でも、五人であれば課税にならないから課税統計の上にあらわれてまいりません。三人だと課税になりますから、課税統計の上にあらわれてまいります。こういう関係で、平均的にはこういう形に出ておりますが、少なくともここ十年ぐらいは、相続人の数の家族構成に変化はないわけでございます。そういう意味で私どもは一応、御説明する便宜上、五人家族を例にとらせていただいているわけでございます。
  196. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あまり便宜はやらぬで、なるたけ現実に合わせて、四・一四というならば、四人で大体かからないように配慮するのがほんとうじゃないかと思うのであります。  もう一つお伺いしたいのは、死亡時の遺職金、まあこれは線香をあけておる横から税金を持ってくるのは、皆さんのほうもたいへんつらいんだろうと思うのでありますけれども、これはどうも一人当たり八十万という控除額は、いまの貨幣価値の下落、こういうものからいってちょっと実情に合わないんじゃないだろうかという点で、来年あたりからこれは修正をするというお考えはありませんか。
  197. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 実は今回、これを見送りましたのは、今回の相続税法の改正は四十一年からのものであるわけでございますが、この退職金については、四十一年当時は五十万であったわけでございます。それで途中で昭和四十六年にやや小規模の相続税法の改正がございまして、そのときに、生命保険金については従来百万円でありましたものを百五十万にいたしました。それから退職金については、従来五十万でありましたものを八十万にいたしまして、途中の過程でいわばこの五割増し手直しをやりましたものですから、そこで実は今回見送らせていただいたわけでございます。  もう一つの理由は、確かに、御不幸がある、そうして退職金をもらわれるという場合は、非常にお気の毒な場合でありますから、そういう意味でこの退職金について特別控除制度があるわけでございますが、実はしばしば問題が起こりますのは、やめられまして退職金を受けられて、それから半年とか一年とかたってなくなったというときにはこの控除が働かないのでございます。これは現職中になくなった場合だけ若干考慮ということで入っておるわけでございまして、そこのバランスが、一方からは喜んでいただいておりますが、一方からは、ちょっと残念——ということもありませんが、もう少し何とかしてくれぬか、こういうお話が一線で出てきておるものですから、そこらをどう調整するかという問題があります。  その問題はありますが、今回見送らせていただいた主たる理由は、この制度だけは中間で四十六年度に手直しさせていただいたからということが主たる理由でございます。それ以外に他意はございませんので、今後とも、しかし、この問題はどうしたらいいのか、受けられてからしばらく間を置いてからなくなられた方との関係をどうしたらいいのかということを考えながら、次の機会にその研究を取りまとめさせていただきたいと思います。
  198. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この八十万という根拠は一体どういうところからきたのですか。
  199. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 これは八十万で、またしかられるかもしれませんが、法定相続人が五人だという場合に四百万またプラスになるわけです。それで、その当時、千二百万のときには基礎控除が四百万、それから一人について八十万かける五、それから奥さんについてもまたもう一つ四百万、こうなっておりましたので、相続人一人についての基礎控除的なものが八十万であるところから、そこまでが最高であろう。それについて五人であればプラスまた四百万になりまして、千二百万が千六百万円になる。こういうかっこうになりますので、五人単位で計算します限り、基礎控除四百万、それから相続人の数による控除四百万、妻の分が四百万、この分が四百万、こういうかっこうでいわばその五人の場合の額をそろえたということ以外にあま合理的な根拠はないと思います。
  200. 武藤山治

    武藤(山)委員 関連して。主税局長、今国会に退職手当法が内閣委員会に上程されていることは御存じですね。その改正案によると、退職金が二〇%引き上げになって、国家公務員に対する退職金はかなり大幅な増額になりますね。今度の所得税法改正の免税点でいっても、全部落とし切れないほど今度は退職金が上がるわけでございます、そういう退職金の今日の趨勢から見て、一相続人八十万円というのはちょっと実情にそぐわない、こういう感じがするわけなんです。そこで、やはり公務員の退職金の限度額ということとにらみ合わせて、これはこの際大幅に改善をすべきだ、こう思うのですが、この間、大臣と一緒にあなたに質問したときには、この八十万はなるほど改善をしなければならぬと思うという趣旨の答弁をしております。これは会議録にありますが、そこで、あの答弁以後おそらく主税局長幾らかお考えになったんじゃなかろうかと思っていまちょっと立ったのですが、どの程度に——たとえば一相続人二百万、そうすると五人で一千万。ちょうど今度、三十五年で退職した国家公務員が九百四十万ぐらいになるわけですから、それは全部非課税になる。そこらを、どのくらいならばいいだろうという大体の線を、主税局長どんなお考えでありますか。
  201. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 これは家族構成をどう見るかということによって違うわけでございますが。要するに、この退職金のことを別にいたしまして、従来千二百万が千八百万になつたのでございますから、五人家族の場合であれば、現行八十万でございましてもさらに四百万が乗りまして、この制度の適用のないほうの五人家族の基礎控除は千八百万であるのに対して、四百万乗りまして二千二百万ということになるわけでありまして、今度、御指摘のように退職金手当法が変わって退職金の額は上がりましたけれども、それと他の財産を加えて二千二百万ということであれば、私どもはまずまずという考えを持っておるのでございます。  もし、その点でバランスの問題が起こるといたしますと、実は所得税のほうの退職金の非課税限度が、前回に比べて、三十五年勤で五百万というところから八百万というところにやはり五割増し程度になっております。これがたしか四十一年か四十二年からやはり七年ぶりくらいの改定でございますので、実はそこらもにらみ合わせて、私どもは今回はちょっと据え置きにさしていただきたいという感じを持っておるわけでございます。
  202. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いや、今回これでと言っておるわけではないのですよ。来年か再来年か、ごく近い将来に直すかどうか、その場合にどの程度をお考えになっておるかという質問なんです。
  203. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 実は、ちょっといろんなことを申し上げなければいけないわけでありますが、今度の所得税のほうの退職金の非課税限度の引き上げと関連をいたしまして、年金とのバランス問題というのが起こっております。最近、退職金制度について、一時金で退職金を払うことのほかに、やめられてからあと年金でだんだん払っていこうという制度が民間企業では普及しつつあるわけでございます。そこで退職金と一時金とのバランス問題がありまして、それで実は、所得税のほうのときにまた御議論いただきますが、現在あれも不十分だという御指摘が各方面から出ておりますが、三十五年勤八百万というところで御審議をお願いすることにしておるわけでありまして、それとまたこの相続税の退職金とは関連をしてまいるものでございますから、実は現在、年金についての手直しをどうすべきかということの腹づもりが十分できておらないものですから、それとの関係で、はたして退職一時金のほうについてだけ、所得税について、また相続税について先行的に手直しするほうがいいのか、それとも一時金のほうの問題を何か考えなければいけないのか、それとこれとをどういうように調整するかという問題が残っておりますので、ほんとに恐縮でございますが、現在の段階でちょっと目安を申し上げにくいということを御了承願いたいと思います。
  204. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 最後にもう一つ、これはほんとうにお伺いなんだが、障害者控除というのを今度二万円にしますね。この二万円というのは大体どういう根拠から出たのですか。
  205. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 障害者控除は昨年新たに設けていただきました。そのときに、普通の障害者は一万円で、特別障害者は三万円ということにしていただきました。その一万円というのは、実は未成年者控除の一万円と一つは横並びにしたということでございます。それで、かりに三十歳で相続をされるという障害者がおりますと、その三十歳から、余命年数の関係で七十までの四十年間について一万円ということになるわけでございまして、それをかりに平均税率で戻してみますと、大体八百万くらいの財産を別除したということと同じ結果になります。——ちょっと申しわけありませんが、少し計算がおかしくなりましたが、そういうことで、たしか五、六百円であったか、いま計算がここにありませんが、そのぐらいの財産別除という頭で考えていたものでございます。しかし、考えてみますと、だんだんこういう一種の福祉対策というものは充実すべきであるということで、なおこれを倍額にする、こういう形にしたわけでございます。
  206. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いま三十歳から七十歳、こうおっしゃったが、二十歳のときに相続したとしても、七十歳まで生きると仮定して、それで控除をするわけですか。
  207. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 はい。
  208. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それで、その七十歳までの年数をかけるわけですか。
  209. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 障害者控除のほうは、親御さんがなくなったときに障害者がおられる、その方が三十歳であるならば、七十歳まで生きられるものと仮定して、そうすると七十引く三十は四十ですから、一万円かける四十で四十万円、今度それを二万円に上げましたから八十万円、こういうものを、税額を計算をして、一番最後にその相続人の分からだけぽんと引くわけです。未成年者のほうは、なくなった年から成年になるまでの年限、たとえば十歳の方であれば十年、八歳の方であれば十二年、その年限に、従来であれば一万円、今度の場合はやはり二万円をかけたものを、計算した税額から最後に引くわけでございます。
  210. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これで終わりますけれども、冒頭申し上げました農業課税の問題、この問題はひとつもっと抜本的な検討を要望して、私の質問を終わります。
  211. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  212. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金積立金長期運用に対する特別措置に関する法律案を議題といたします。
  213. 鴨田宗一

    鴨田委員長 まず、政府より提案理由の説明を求めます。山本大蔵政務次官
  214. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 ただいま議題となりました資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金積立金長期運用に対する特別措置に関する法律案につきまして、提案の理由及びその概要を御説明申し上げます。  資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金積立金長期運用は、従来から財政投融資計画の中心をなすものとして、わが国の社会資本の整備、民間経済活動の誘導等に大きな役割りを果たしてまいりました。最近、財政投融資計画の規模が拡大し、また、その対象とする機関の数が増加してまいりましたのに伴い、これら資金及び積立金の長期の運用は、確実かつ有利な運用という性格に加えて、財政的資金の配分といった性格を兼ね備えるに至ってきております。このような現状にかんがみ、国会においてかねて行なわれてきた財政投融資計画と国会の審議のあり方についての論議の経過を踏まえ、資金及び積立金の期間五年以上にわたる長期の運用について、毎年度新たに行なう運用の予定額を国会の議決を経るものとする等の措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案につきまして、その大要を御説明申し上げます。  まず、この法律案は、資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金積立金の長期の運用が国民経済の中で果たす資源配分的機能の重要性にかんがみ、その適正かつ効果的な実施に資することを趣旨とするものであることを明らかにいたしております。  この趣旨に沿った運用を確保するための措置といたしまして、第一に、毎会計年度新たに運用する資金及び積立金のうち、その運用の期間が五年以上にわたることを予定されているものにつき、予算をもって国会の議決を経なければならないことといたしております。また、その際、運用を予定する金額を資金及び積立金の別に、かつ、運用対象区分ごとに区分することといたしまして、国会の議決が個別的に行なわれるべきことを法律上明確に規定するとともに、運用対象の区分の方法について具体的に定めることとしております。  なお、簡易生命保険及び郵便年金の契約者等に対する貸し付けにつきましては、その特質にかんがみ、議決の対象から除外いたしております。  この規定に基づき、昭和四十八年度における資金及び積立金長期運用予定額を昭和四十八年度特別会計予算の予算総則第十四条に掲記し、別途御審議をお願いいたしているところであります。  第二に、国会の議決を経た長期運用予定額につきまして、議決を受けた年度内にその運用を行なわなかった場合には、翌年度に繰り越して運用できるものといたしております。これは、資金及び積立金の運用は、その相手先である公社公団等の事業の進捗の状況等に応じて弾力的に対処する必要があり、かつ、資金及び積立金がいずれも受動的な有償の預かり金を源泉とするいわば金融的資金であることに配意したものであります。  なお、同様の見地から、予算総則に弾力条項を設け、予見しがたい経済事情の変動に対処するため、個々の機関につきその運用予定額を五〇%まで増額し得るよう措置いたしております。  第三に、毎会計年度の運用の実績を明らかにする必要がありますので、この点につきまして所要の措置を講ずることといたしております。  以上、資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金積立金長期運用に対する特別措置に関する法律案につきまして、その提案の理由と内容の大要を申し上げました。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます
  215. 鴨田宗一

    鴨田委員長 本案に対する質疑は後日に譲ります。  次回は、明二十八日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十八分散会      ————◇—————