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1973-02-23 第71回国会 衆議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十三日(金曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長代理 理事 大村 襄治君    理事 木村武千代君 理事 松本 十郎君    理事 村山 達雄君 理事 森  美秀君    理事 阿部 助哉君 理事 武藤 山治君    理事 荒木  宏君       宇野 宗佑君    越智 通雄君       大西 正男君    金子 一平君       木野 晴夫君    栗原 祐幸君       小泉純一郎君    三枝 三郎君       塩谷 一夫君    地崎宇三郎君       野田  毅君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       山中 貞則君    佐藤 観樹君       高沢 寅男君    平林  剛君       広瀬 秀吉君    堀  昌雄君       村山 喜一君    山田 耻目君       増本 一彦君    広沢 直樹君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵省主計局次         長       長岡  實君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省証券局長 坂野 常和君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君         国税庁次長   江口 健司君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第三課長   福田 幸弘君         大蔵省銀行局特         別金融課長   額田 毅也君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   小林 政子君     津金 佑近君 同日  辞任         補欠選任   津金 佑近君     小林 政子君     ――――――――――――― 二月二十二日  資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年  金の積立金長期運用に対する特別措置に関す  る法律案内閣提出第一号)  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五号)  入場税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三七号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第四二号)  物品税法の一部を改正する法律案内閣提出第  四三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月九日  地方議会議員報酬等に対する非課税措置に関  する陳情書  (第五四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  有価証券取引税法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二号)  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件      ――――◇―――――
  2. 大村襄治

    大村委員長代理 これより会議を開きます。  有価証券取引税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣法案について簡単に、二十分間の割り当て時間でありますから、要点だけをひとづかいつまんで質疑をしたいと思います。  第一は、過般、大蔵省証券界にたいへん介入をする発言をして、特に四証券会社特別検査する、こういう新聞記事が、きのうですか、出ておりますが、それらの証券会社が好ましからざる何か具体的なそういう事実があるので特別検査をすることに踏み切ったのか、その辺の経過をまず最初にお聞きしたいと思います。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 最近の株価状況が御承知のような状況でございまして、これらの状況に対しまして、政府としては従来から、これも詳しく申し上げるまでもないと思いますが、いろいろの措置をとってまいりましたし、また業界自粛等も要請してまいりました。同時に、私どもからいたしますと、株価形成というものがどういうふうにして成り立っているかという点について、特に最近の状況を具体的に掌握いたしたいと思いまして、一部の証券会社に対しまして立ち入り検査をいたしたわけでございます。これは証券会社等財務内容とか内部管理等にはかなりの改善も最近見られておると思いますので、特にそういう点について焦点を合わせたというよりは、いま申しましたように株価形成の具体的な状況等を掌握したいということを中心にいたしまして立ち入り検査をいたしたわけでございます。その結果は、いまやっております最中でございますからまだわかりませんが、今後の証券対策の資料、参考にいたしたい、こういうふうな考え方でいたしましたわけでございます。
  5. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣のお答えでは、具体的に何か大口の買い手に片寄らせた株の取引があるというようなこと、そういう何か具体的事実があるので特別検査に踏み切ったというのが新聞報道ですが、いまの大臣の話ではまだ具体的結果は掌握しておらぬというのでありますが、証券局長、その辺はどうなんですか。  というのは、山一証券、それから大七、丸荘伊藤銀という証券会社の名まで新聞ではあがっているわけですね。だから名をあげられた証券会社はたいへんショックだろうと思うのですが、さらにその後もそういう状況証券会社がまだある、これらも立ち入り検査を予定しておるんだ、こういう日本経済新聞報道ですね。具体的に何か大口会社証券会社と結託して一回に何億というような株を証券会社と話し合いの上でかなり動かしている、そういうような何か事実関係があるのですか。
  6. 坂野常和

    坂野政府委員 具体的な名前については、私どもはどこへも発表いたしておりません。それからどういう証券会社についてそういう、いま大臣の申しましたような検査をしておるかということでありますが、これからやや広くこの検査をやっていきたいというふうに思っております。とりあえず、言われました四つの証券会社から始めておりますが、いずれの場合も、価格形成秩序がゆがめられるようなことがないように、価格形成秩序がゆがめられ、そして価格形成がゆがんだ形で行なわれるということがあってはならないわけでありまして、そういうことがあるかないか、あればそれを排除しなければならないというような観点から、検査対象を選んでおるわけであります。
  7. 武藤山治

    武藤(山)委員 とにかく二十分ですから議論する時間がありません。  そこで大臣、基本的に、土地投資がばあっとふえたが今度は一時下火になる、株にばあっといく、商品にばあっといくというのは、根本問題はやはり流動性の過剰に非常に問題があるので、これはやはり金融政策が何かどこか一本抜けている感じだ。たとえば企業側は、余ったから少し返済を減らそうとして銀行に返そうとしても、銀行は、いいよ、返さなくてもけっこうですよ、使っていてくださいよ。そして銀行貸し出しというものはさっぱり減らさないようにしている。それは利益率関係やいろいろな問題がある。そういう関係流動性はますます余剰になっている。そこらを西ドイツは国債発行して、ばんと使わずに凍結をする。日本の場合は、国債発行しても、予算は総需要をどんどん喚起するように大きくして、凍結しないで直ちに支出に回している。そこらにやはり、財政や金融の運営のしかたを根本的にもう一回日本の場合考え直さぬと、幾ら株屋をたたいてみたところで、土地の問題をちょっぴり個々にたたいてみたところで、根本流動性自体をどう凍結するかという基本的なところに触れないと、大蔵大臣、どうにもこれは効果はあらわれてこないんじゃなかろうかという感じがするのですよ。その辺大蔵大臣見解はどうでしょう。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことにごもっともな御意見だと思います。根本は、結局金融政策を的確に行なうことであると思います。同時に、限られた時間でございますから私からなるべく簡潔に申し上げたいと思いますけれども、外貨との関係において日本の国内に資金が過剰になった、この根本は、たまたま今回変動為替相場をとりまして、御承知のような状況になっておりますので、その根本はさしあたり大勢としてとめることができたように思います。したがって、最近数カ月間におけるそうした原因からきているところの過剰になったと思われるものをどう処理するかということでございますが、全体として見ると、ちょうど一月から三月期は資金需要期でございますから、本来正常な場合でございましたならば、たとえば日銀が買いオペをしなければならない。そのことがたとえば千四、五百億円とかりに想定すれば、それだけは買いオペをする量が減るわけでございますから、もちろんそういうことをいたします。  それから同時に、金融政策といたしましては、御案内のように、準備率引き上げ中心といたしまして目的的な規制は相当やりまして、たとえば地価対策などにつきましては、およそ土地に関連すると思われるものは、業種のいかんを問わず、他の正常な貸し出し増加の比率以下にとどめるという、かなり思い切った措置をいたしましたから、ここ二、三カ月の間には相当の効果があらわれると思います。証券に対しても同様でございますが、まだ足らざるところは、今後も情勢の推移に応じまして、目的的な引き締めというものをやっていかなければならないと思います。  それから最後に、一言付言いたしたいと思いますのは、企業手元資金の問題でございますが、何といいましても大勢としては金融機関を通ずる金のフローが大きいわけでございますから、基本的にはやはり金融機関を通ずる金融政策というものが一番決定的な手段であり手法である、こういうような基本的な認識を持っておる次第でございます。
  9. 武藤山治

    武藤(山)委員 これは議論する時間がありませんのでやめますが、次に大臣、株の年間売買、株だけで大蔵省答弁によると約二十八兆八千億円、そのぐらいが取引されている。年間取引額ですね。二十八兆八千億円も株の売買が行なわれておりながら、このキャピタルゲインについては課税されない。もちろん流通税としての取引税はあります。それから配当については配当課税がありますが、売買利益については全く課税されていない。つい最近、二十万株、五十回というのが一件査察につかまって課税されたという例が週刊誌に大きく報道されておりますが、それ以外にいままで課税された例を聞いたことがない。そういうような状態で、株の利益についての課税というものが、他の所得に対する課税との均衡上、公平の原則あるいは負担応能の原則等から見て、たいへん批判の的だと思うのですね。大臣はこれについては、大蔵大臣に就任されて何か手を打とうとか、これは何か考えなければいかぬというお感じをお持ちになっているのかどうか、この辺ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 確かに税の負担の不公平というような点から申しますと、そして同時に感覚的な点から申しましても、何とかこれはしなければならない問題だというふうに考えます。そして歴史的にいえば、昭和二十八年以来議論はございますけれどもなかなか手がつかない、今回もそこまでは手がつかないのでございますけれども、これは要するに、いままでも大蔵省見解はよくお聞き取りいただいておると思いますけれども、一言にして言えば、キャピタルゲインをとろうとするとキャピタルロスの問題も出てくる。この評価損の問題などの扱い方をどうするかということで、税の理論ということからいいましても問題はあるかもしれませんが、徴税技術的にも非常な問題がある。そこでいまも御指摘がございましたが、年に五十回、二十万株というようなところは、もはやこれは個人としてのサイドワークではなくて、もう事業として見るべきであるということで、この辺の徴税のしかたをまずとりあえず検討して実績を上げるというようなことに入っていくことがどうであろうかというふうなことも考えております。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣のなまぬるい考えでは、この所得公平化はぼくは実現できないと思いますね。大体二十万株、五十回という法律規定そのものがもう死文なんですから、こんな死文はもう検討し直して、全く捕捉できない法律でありましたらこれは廃止する、別なものを、もっときちっとしたものを考え出す、そういう努力すらしていない。主税局長たいへんまじめな人ですから、一生懸命この問答弁をしておりましたけれども、まことに歯切れが悪い。やはり検討をするかしないかは一主税局長の問題ではないのです。やっぱり高所から見た大蔵大臣の判定が下されない限り、この国民の怨嗟の批判は解消しない。しかしきょうはそれをもう議論する時間がありません。大臣歯切れの悪い、捕捉がむずかしい、ロスをどうするかというような弁解論で終わっているようでありまして、やがて一般質問のときに少しこの問題は議論をさせてもらうことにいたします。  そこで、そういう死文キャピタルゲインに対する課税状態であるのだから、せめて流通税だけでも税負担をしておるんだという姿勢をもう少々国民に示すべきではなかろうか。そこで、今回の取引税改正税率を、従来の倍額にしたとはいえ非常にわずかでありまして、第一種が〇・一二、第二種が〇・三というような状態で、まことに微々たる金額であります。もちろん一挙にこれを引き上げればかなり株流通に打撃を与え、影響は大きいと思いますから、そうべらぼうに一挙に引き上げるということは諸般の事情からなかなかむずかしいだろうと思います。しかし、現在の改正率ではあまりにも国民感情に沿わない、こう私は思うのでありますが、大臣、この程度改正でやむを得ないとお考えになっているのか、それともなるほどもうちょっと一%くらいのところまでいってもしかるべきかなという感じをお持ちにならないか、その辺ちょっとあなたの見解をお聞かせ願いたいと思います。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも実はいろいろ苦心したところでございますけれども、これは一律の比例税である、それから流通税であるということから考えますと、従来の税率の倍にするということは、相当な勉強をしたつもりでございまして、将来はともかくといたしまして、今日四十八年度の改正といたしましては、まず倍に踏み切りましたところをひとつ御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 わが党はたいへん不満であります。二十年間同一税率で放置しておいて、いまの物価状況やいまの租税の徴収の状況大衆負担現状等勘案をしてみたときに、不労所得に対する、株に対する取引税が一律課税だからといえども、二十年置いてこんなわずかの引き上げでは国民感情にはそぐわない、わが党は第一種は少なくも五、六倍、第二種のほうは一%に近づく程度税率に引き上ぐべきである、実はこういう主張であります。しかし、ここで論争してもしかたありません。  時間がありませんから、次の二点、無記名架空名義取引を今後も認めて、取引規制はするつもりはないか、依然として株の無記名架空名義取引というものを認めておくかどうか、これが第一点。  第二は、株式の時価発行に伴うプレミアの分に対する法人税課税を行なうような検討をすべきだと思うけれども、この点に対する政府見解はどうか、この二つを取引税に関連する質問として終わり、次に相続税の問題をちょっと伺いたいと思います。
  14. 坂野常和

    坂野政府委員 証券流通の安全、事故防止という観点から無記名制度でなく——無記名と申しますか、架空名義制度はいけない、証券会社はやはり実名主義をとれ、それから証券会社自身名前名義貸しをしてはならないというようなことは数次にわたりましてやかましくいっており、また、証券業協会としてもそういうことで業界の指導にあたっており、往年と比べますとかなり改善されておる現状になっております。  なお、無記名制度というのは、商法の流通のたてまえから昔の記名裏書き譲渡の方式といま違っておりますので、そういう法制上の問題もあろうかと思います。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間がありませんので、相続税についてちょっと触れておきたいのですが、昭和四十五年から相続税額、さらに課税件数はたいへん急激に増加をいたしております。昭和四十六年二千百三億円であったのが、四十七年三千三百七十億円、四十八年の予算では四千百七十一億円、しかもこの原因地価高騰、そういう不動産資産、これの評価額高騰による課税、これが非常にふえてきていると見なければなりません。今回の政府改正で、大体都会地で七十坪の宅地、三十坪程度住宅家屋、このくらいは課税されなくなるのだと、主税局長盛んに答弁しておりますが、これは相続人五人の場合であって、これから家族は非常に少なくなって、子供二名くらい、だから女房子供二人、三人家族くらいが大体多くなってくる傾向であります。子供四人、五人というのはあまり見られないという傾向であります。でありますから、かりに子供が二名で、女房と三人と計算をすると、非課税限度が千四百四十万円、三人と見た場合でも千五百六十万円、いまサラリーマン国家公務員退職金が今度の退職手当法改正で三十五年で九百万をこえるわけですね。そうすると、土地家屋で一千万、退職金で一千万のうちをつくるというのは、もうざらに出てくる状況が生まれておるわけであります。したがって、三人の相続人の場合千四百四十万円、これではちょっと非課税限度が少な過ぎて、いわゆるサラリーマン家庭相続税を取られて苦しまねばならぬ。しかもその場合に、不動産を売って納税できる階層ならばよろしいけれども、住んでいる不動産でありますと、それを処分して納税するというわけにはまいらぬ。こういう実態にそぐわない小資産階層、こういうものに対する減税の恩恵が渡るような相続税の体系に改善をすべきではなかろうか。もう時間がありませんから、こまかい年度別の数字やなんかを申し上げることはしません。端的に大蔵大臣のひとつ見解を承りたいと思います。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御指摘の点は、これは四十六年度の実績で申しますと、たとえば遺産額千五百万円超では法定相続人が平均四・七五人になっております。ほぼ五人というのが実績でございますので、それを頭に置きまして、現行の千二百万円から千八百万円に最低限引き上げる。それからいまの不動産関係で申しますと、これもすでに説明をお聞き取りをいただいたと思いますけれども、都内のポイントとして考えておりますところで、敷地が五十坪で建物が二十坪の住宅評価額というものを頭に置きまして、最低限として千八百万円ならば何とかいけるのではなかろうか、そういう考え方で千八百万円に引き上げることにした次第でございます。  同時に、私の考え方を申し上げますと、従来は何年ぶりに一回というような相続税改正が行なわれたわけでございますけれども、今後におきましては、御指摘のような事情も勘考いたしまして、もう少し適時に改正をするということも今後の問題としては考えていくべきではなかろうか、私はかように考えているわけでございます。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 地価高騰や諸物価状況経済動向、そういうものを勘案をして適宜に手を加えていく、こういう大臣の意向については私も賛意を表します。ぜひひとつそういう角度で明年そういうサラリーマン階層の、しかも家族の少ない構成、相続人三人くらいでしかも住む家しかない、そういう人たちがどうすれば救済されるのか、その辺を検討願いたいと思います。  それから、もう割り当て時間がありませんから最後主税局長、いま退職金遺産についての課税、すなわち国家公務員地方公務員がぽっくり途中で現職でなくなった場合のことですね、退職金に対する相続税課税というものは一相続人について八十万円しか認めていませんね。これは私、少な過ぎると思うのです。しかもいま退職金は、今度大幅に引き上げになる法案内閣委員会提出されている。三十五年で九百万ちょっとこえるのですね、今度は。そういう状況勘案したときに、一相続人八十万円しか免税点を認めないというこの退職金に対する相続税課税のあり方は、この際改善すべきだと思うのですが、まず事務当局主税局長見解大蔵大臣見解を伺って、持ち時間終わりますので質問を終わりたいと思います。
  18. 高木文雄

    高木(文)政府委員 この点は、今回も一応検討対象にはいたしましたが、いま御指摘退職金非課税になるものというのは、おなくなりになることと相続が同時に起こる場合でございます。退職されてしばらくの時間があった後相続が起こるというときには、今度はいまの規定は働かない、こういうことになってまいりますので、確かにただいまの八十万という金額がいいか悪いかにも問題がありますが、今度は退職後若干の時間を置いて相続が起こった場合と、それから現職中になくなったために相続退職が同時に起こった場合のバランス問題がまた一つありますので、ちょっと今回は踏み切れなかったわけでございまして、今後よく検討いたしてまいりたいと思います。
  19. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま主税局長が申しましたように、平たくいえばこの点もずいぶん考えたのでありますけれども、職についておられる期間に不幸にして死亡された場合、それから退職されてからある程度期間がたってから死亡された場合、この間のやはり均衡ということも考えなければなるまいということが一つポイントでございました。  それから、これはもう御承知のとおりでありますけれども相続人五人でその中には配偶者もおるという場合では、今回の場合は千八百万円の課税最低限にプラスされて四百万円の死亡退職金非課税になる、こういうかっこうになりますので、いま申しました点などを勘考いたしまして、今回の税制改正案としてはまずこの辺が適当なところではなかろうか、こう考えた次第でございます。
  20. 武藤山治

    武藤(山)委員 そこで、いま主税局長は、今回も一応議題にはしたが改正には及ばなかったけれども、なるほど退職金が今度引き上げになったり、だいぶ状況が変わるので検討の要があるような答弁をちらっとしたわけですよ。大臣はそれについてはどうですか、将来、来年あたりこれは。
  21. 愛知揆一

    愛知国務大臣 来年度以降におきましては十分検討に値する、またしたいと思っております。
  22. 武藤山治

    武藤(山)委員 終わります。
  23. 大村襄治

  24. 増本一彦

    増本委員 共産党・革新共同増本です。  大臣はきのうの私の代表質問に対して、租税三法の問題では明確な答弁をされなかったわけですけれども、この点については三法の審議の際に十分に論議を尽くしたいと思います。きょうは、相続税有価証券取引税法改正の問題についてお尋ねしますので、きのうのような態度ではなくて、率直にひとつ答えていただきたいというように思います。  今回の相続税法改正案一つの理由は、中堅財産層税負担を軽減するということになっているわけですが、この中堅財産層とは一体幾らぐらいの資産を持っている者までをさしておっしゃっておられるのか、その点は大臣答弁としてひとつ明確にお答えいただきたいと思います。
  25. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一におわびを申し上げますが、昨日の本会議で多くの事項について御質疑がありましたのですが、御案内のように、総理大臣から各項目にわたって詳細な答弁がございまして、私からはつけ加えるべきものがございませんでしたので、ああいう答弁を申したわけでございまして、決して他意はございませんので、御了承いただきたいと思います。  ただいまの御質問でございますが、中堅層というのは、相続税関係で申しますと、大体最低限が千八百万円というようなところを課税最低限にする、こうしたところに該当するようなところの方々が中堅層である、相続税に関連して申し上げれば、さような考え方でございます。
  26. 増本一彦

    増本委員 政府が、特に主税局が政府の税調に対して出しました相続税関係資料、四十七年の十月二十日に出しておりますけれども、この中に「標準的な住宅地において土地家屋のみを所有する世帯の相続財産調」というのが一三ページにありますけれども、これは先ほど大臣が都内あるいは全国の標準的なポイントを選んでその財産の評価をしたというものに当たるのだと思いますけれども、これを見ましても、今度の場合で、法定相続人五人で配偶者を含んでいる場合でも、一千八百万円、ましてや法定相続人が二人とか三人の場合ですと、土地が五十坪で家屋二十坪の場合でも、ましてや七十坪の土地家屋が三十坪の場合には相続税として払わなければならない。この千八百万円という非課税限度を、あるいは法定相続人が二人、三人の場合ですと、それがさらに下回るわけですが、まかなえない場合が出てくるわけですね。そしてここに住んでいる人たちが勤労者である場合だと、いまの賃金水準などを見ますと相当大きな負担を、しかも自分の経済的な負担でかなり無理をして払わなければならなくなる、こういう結果になると思うのです。そういうこともできないような場合には、そこに住めなくなるということが当然あるわけですけれども、それでもやむを得ない、あるいはそれも当然であるというようにお考えになっておられるかどうか、その点をまず確かめたいと思います。
  27. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は先ほど申し上げましたが、いま資料について申し上げますと、御案内のように、このポイントとなっておりますところでも、一口にいえばカバーできなくなるところが相当ある、これは御指摘のとおりでございます。この点につきましては、いろいろとくふうもしてみるわけでございますけれども、一面におきまして、こうしたポイントとして従来考えておりましたところはいわばだんだん開けていく土地でございますので、そこに住んでおられるという方々が、従来の感覚からいっての中堅層というものと多少考え方も変えてきていいのではなかろうか、あるいはまた相続税等の場合に住宅あるいはその土地というものだけを基準にして考えるということもどうであろうかというようなことで考えまして、この中である種のものがカバーできる程度のところを一つの基準として、千八百万円、あるいは死亡退職の場合におきましては、さらにその上に四百万円が付加されるというようなことを考え合わせまして、まず中堅層の方々の相続税の問題としては千八百万円の最低限というところが妥当ではなかろうか、こう考えたわけでございます。
  28. 増本一彦

    増本委員 中堅財産層を千八百万円ぐらいというようにお考えになっていること自体が非常に低過ぎるということの証明ではないかというように思うわけです。要するに、千八百万円でも、親も兄弟も、あるいはすべての相続人が協力をしなければ、自分の居住資産すら相続税から守ることができない、こういういまの実態。ですから、相続税が大衆課税化しているというように政府も言われるわけですけれども、それは統計を見ましても、二千万円までの課税財産を持つような人でもすでに五一・八%ですし、三千万円のところまでいきますと、六五%近くなる。このことは、ここいらの資産を持っている人についてまでは相当程度この相続税を軽減しない限り、居住財産とか、あるいは中小企業の営業資産または農民の営農資産の基本的な部分も守れなくなるといういまの現実を明確に証明していると思うわけです。この点で、先ほどのお話ですと、適宜非課税範囲を拡大していくというお話がありましたけれども、この法案でさらにその免税点引き上げて、三千万円程度にまでそれをアップする、こういうお考えがおありかどうか、最後にお伺いしたいと思います。
  29. 愛知揆一

    愛知国務大臣 考え方は私も同様に考えるわけです。ですから、先ほども申しましたように、将来の問題としては、相続税改正というようなものが数年に一回だというようなことではなくて、もう少しそれらの点については考えを改めていかなければなるまいと思っております。  それから、もう御承知のとおりと思いますけれども最低限が現行より五〇%引き上げとなるように今回措置したわけでございますが、これによりますと、相続税課税件数は約六千二百件程度減少いたします。それから死亡者中に占める課税相続人の割合が四・九%から四%に減少する見込みでございます。  それからまた、たとえば遺産額が三千万円の場合ですと、軽減の割合が四一・二%になる。そういうような内容でありますことも御理解をいただきたいと思います。したがいまして、ただいま申しましたように、お考えの筋は私もよく理解できますけれども、漸を追うて改善をしていくということに将来において考えてまいりたいと思います。
  30. 増本一彦

    増本委員 今回のあれでもカバーできない部分がある。そうすると、かなり今回の改正案でも不十分な面を政府側としても認めていらっしゃるというように思いますけれども、そういう不十分な案のままで今回お出しになる、この御趣旨が私にはよくわかりませんけれども、もう一度簡単に御答弁いただきたいと思います。
  31. 高木文雄

    高木(文)政府委員 問題はどの程度のところに課税最低限を置くべきかということでございまして、その辺はなかなか絶対的な基準をきめにくいわけでございます。先ほど来の御討論のように、方向としては漸次それを引き上げていくべきであろうと思いますが、そのやり方として、あるときに非常に大幅に改定いたしますと、先般もちょっとお答えいたしましたように、本法が適用になります一月一日以降の死亡者と、その前日、十二月三十一日までとの間であまり大きな差が出てくるということについては、実は執行の面においていろいろ問題があるということがありまして、なかなかそこが一挙にぽんといくということはいきにくいというような事情があることも、ひとつお含み願いたいと思います。
  32. 増本一彦

    増本委員 先ほどの大臣の御答弁ですと、相続税法については適宜改正をしていきたい、こういう御趣旨もあったわけですが、一体何年ぐらいの間隔でおやりになるつもりですか。最後にこれだけ。
  33. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま申し上げましたことで大体の考え方は御理解いただけると思いますけれども、たとえば所得税を補完するというような性格も持っている、相続税というものはそういう性質のものであるというようなことも考えてみますと、できるなら一、二年に一回の程度相続税法改正をするということが望ましいことではないだろうか。そうして、漸を追うて実情に沿うようにいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  34. 増本一彦

    増本委員 もう時間がありませんので、有価証券取引税について最後にお尋ねしますが、昨年来の株式をはじめとする証券市場の動態を見ましても、また、証券局や東京証券取引所などの統計を見ましても、金融機関とか事業法人の株の保有比率が全体の六〇%近くになってきている。そうして、昨年の上半期の決算を見ましても、三光汽船とか伊藤忠商事というようなところでは、非常に巨額の株の売買益が利益に計上されている。こういう問題も御承知だと思います。  そこで、この取引税については、法人の譲渡の場合には、特にそこの担税力に着目をされて、一般よりも高率の税率で重課をする必要があるというように考えますけれども、その点についていかがかということと、それからもう一つは、このように事業法人が株などの譲渡益を経常利益に出しているということから見ても、この株買いや証券取引などのキャピタルゲインについての課税が非常に重要だというように考えるのですが、それは損金などの問題もあるとか、あるいは法人については法人税が結局はかけられることになるということで、このキャピタルゲインに対する課税については消極的な見解がいままで述べられてきていますけれども、そのキャピタルゲインの発生したつど、それを他の所得と分離して課税をするということをしていけば、こういう問題も解決できると思いますけれども、その方向で検討される用意があるかどうか。それからもう一点は、キャピタルゲイン課税について、ほんとうに大蔵省はそれを積極的にやるという上で検討をされているのかどうかという点を最後にお尋ねしたいと思います。
  35. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一点は、取引税の問題でございますけれども、これは御案内のように流通税であります。一律でやるのがたてまえでございます。そういう点から、先ほど率直に申しましたように、倍にするということについては、政府としても相当の決心をいたしたことを御理解いただきたいと思います。  それから、たとえば取引高税を累進の税率にするというような場合には、かりにそういうことを考えたといたしましても、一回の取引金額を分割するというようなことで課税の回避行為が行なわれるおそれもこの種の税については考えられる。そういう点から申しましても、やはり流通税としての取引税は一律であることが妥当である、こう考えるわけでございます。  それから第二の点は、法人の場合は御案内のようにキャピタルゲインも全部総合して課税対象になるわけでございますから、この点は御趣旨の線に沿うておるものと思います。それから法人の場合に、株式の譲渡益だけを別勘定にしてそれだけに対して高率の税をかけるということは、法人税のあり方から申しましても、一括して法人税というものがかけられるわけでございますから、そこまで証券について考えることは私は妥当ではない、こう考えております。  それから、申しおくれましたが、個人のキャピタルゲインにつきましては、先ほど申しましたが、これは租税の公平感ということからいって、感覚的にもなかなか大きな問題であると思います。でございますから、従来から徴税技術上の問題あるいは評価損の扱い方あるいは申告というものをどういうふうにやったらいいだろうかというようなこと、いろいろ難点はございますけれども、将来におきましてはこの問題につきましてとくと検討をいたしたい、こういうふうに考えております。
  36. 大村襄治

    大村委員長代理 広沢直樹君。
  37. 広沢直樹

    ○広沢委員 非常に短い時間でありますので、有価証券取引税法改正とそれから相続税法の一部改正について一、二点簡単に御質問申し上げたいと思います。  いままでも質問に出ておりましたとおり、今回の有価証券取引税法の一部改正に伴う税率改正でありますが、二倍に引き上げた点については的確に努力をして二倍に引き上げたのだとおっしゃっておられますけれども、二倍にするのが適正であるかどうかということについてはやはりこれはまだ問題があると思います。  それは一つには、関連していまもお話がありましたキャピタルゲイン課税というものが適正に行なわれてないというところにも関連してきておると思いますが、いまも、将来にわたってキャピタルゲイン課税については検討してまいるとおっしゃっておりますが、それは確かにここに税の不公平という問題から検討しなきゃならぬということはわかっているのですが、基本的にどういうふうにこれは取り組んでいくのか。確かに有価証券取引税法ができた時分には、いわゆる譲渡益に対する課税に対して、税法上の理由だとかあるいは諸券市場の育成だとか資本の蓄積だとか、いろいろな理由のもとに一応この有価証券取引税法というものに切りかえて、流通課税として一律にかける。そしてその後において、このキャピタルゲイン課税についてはどういうふうに具体的にやっていくかということを検討されたはずなんですね。ですから、二十八年からかれこれ二十年たった今日、いまだ具体的にそういう不公平の問題についての適正な課税の方向というものが見出せないところに、当局の怠慢があるのじゃないかと私は思うのです。したがって、これは将来にわたって検討するというあいまいな御答弁では納得できないのでありまして、どういう方向に向けて取り組んでいくかという基本的な姿勢を大蔵大臣に第一点お伺いしたい。  それから、ちょうど株に関係した問題で、時間がありませんので続けてお伺いしておきますが、御承知のように、昨年から株が非常に暴騰する。そしてまた暴落する。またいま暴騰中であります。そういうふうに株価の変動が非常に激しい。先般いろいろな問題についてはお伺いしましたけれども、その点に対して大蔵省は信用取引規制処置を強化したり緩和したり、そのつどやっているわけですね。その強化していく場合、今回も四十二銘柄ですか、それに対して預託準備金の率を引き上げております。これが悪いというのじゃない。それは適正に考えてやっていかなければならないと思いますけれども、こういうふうに七〇%以上あるいは八〇%以上というふうに強化していく場合は一般投資家が非常に投資しにくいという現状が出てまいりましょうし、今度は逆に暴落のときにはこれを緩和する処置をとられるわけですけれども、その過程において下落する可能性が強いときにこれを緩和するということは、確かに小口投資家が投資しやすい状況というものは生まれるわけでありましょうが、かえってまたそれについて大きくそれ以上下落していくということが見込まれる場合においては負ける確率が多い。大きな損をするというような、こういういろいろな弊害が出てきているわけですが、それに対してただ単に株価の調整のために信用取引規制処置だけを強化したり緩和したりというふうにするのではなくて、そういういろいろな問題が起こってくることに対してはどう対処しているか。まず二点お伺いしたい。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 第一点の取引税税率の問題でございますが、これは御案内のように、たとえば外国でもOECDなどの場におきましてもいろいろ問題にされるわけでございますけれども、ヨーロッパのように国が密接している場合と違いまして日本の場合におきましてはそう一挙に多くを引き上げるということは不適当であるということで二倍にいたしたわけでございますけれども、今後の税制のあり方等と関連いたしまして将来の問題としては検討いたしたいと思います。  それから、キャピタルゲインの問題については、個人の問題、これは先ほどお答えもいたしましたとおり、同様に——実にこれはむずかしい問題だと思いますけれども、そのむずかしさを理論上、また徴税技術上どういうふうに克服できるかということについて積極的に取り組んでまいりたいと思います。  それから、第二番目の保証金の問題でございますが、これはいまお尋ねがございましたとおりことしの一月九日以降とりました、保証金の現金二〇%を三〇%に引き上げるという措置は、当面の市場対策の一環としてやったことでございます。これは信用取引によって過当な投機を抑制するためにとった措置でございまして、したがってこの措置の今後の運用に対しましては適宜適切な流動的な考え方で処理をしてまいりたいと思います。そういう考え方でございますから、一般の投資家にこうしたことによって不測の損害を招くようなことがあってはならないのでありまして、むしろ不測の損害を与えないような気持ちでとりました措置でありますことを御理解をいただきたいと思います。
  39. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、いまのキャピタルゲイン課税については先ほど申し上げたとおりでございまして、要するにいま当局としては将来にわたって適正な課税が行なわれるように検討するということでありますけれども、先ほど申し上げましたとおり二十数年にわたってこれは問題になってきていることですから、いつまでに大体目標を持っておやりになるのか。将来にわたってといっても、これからまた五年、十年と、徴税上非常にむずかしいとかいろいろな理由でこの不公平がそのまま延びては困ると思うのです。ですから、検討作業としてもやはり大体めどというものを考えてやるべきだと思いますから、その点、最後に一点お伺いしておきたい。  それから、相続税法についてですけれども、きのうの新聞ですか、とにかく四十六年度の国税庁の調べによりますと、残した資産が九千四百億円、これは大体が土地です。七〇%までが土地だといわれております。そして徴税されたのが二千億円。これはいままでにない土地の値上がり等いろいろなことがあったもので、二千億円の大台に乗った徴税になっておりますけれども、いまこの滞納状況を調べてみますと、ずっと歴年滞納状況が非常に多くなってきているわけです。これはいろいろな意味があると思いますけれども、いまの居住用の財産でいいましても、たとえば東京周辺では、せんだっても問題になっておりましたように急激な土地の値上がりをしている。別に資産がなかったとしても、居住用財産について考えてみても、やはりいまの土地の値上がりで思わないような大きな遺産が残っているという関係になります。したがって、ここでも問題になっておりますのは、このため土地相続した場合はその土地を売らなければ税金を払えない、いわゆる相続貧乏といった例もしばしばあるのじゃないか。こういう実態をどうとらえていらっしゃるか、そしてそれに対してどう対応する対策を立てていらっしゃるのか、その点をお伺いしたいと思うわけです。  いまちょっと御指摘がありましたように、居住用財産についてはやはり税金を払わなければならないというたてまえから、その居住用財産だけしがなかったような場合においてはどこかへかわらなければならない。夫が死んだことによって、結局居住用財産を処分して税金を払ってまた別へ移らなければならない。いままでの過程においてはこういう例もあるわけです。働いて、そしてローンやいろいろな形でそういう財産をつくってきた形もあるだろうと思います。そういうことになってくるということは、これは社会的にも非常に矛盾が出てくるのではないかという点が問題になっておりますので、そういう夫婦間の場合においては、やはり次の世代にかわるまでは相続税非課税にするというような方法は考えられないのか。こういった面もあわせてお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 第一点の御質問は、税制調査会等におきましても、いままでもずいぶんいろいろな議論があったところでございますから、はっきりと時期を明定することはできませんけれども、今後誠意をもって検討、取り組んでまいりたいと思います。  それから、第二の相続税の問題でございますが、滞納の状況等については主税局長から説明をしてもらいたいと思いますけれども、居住しておりました住宅などを処分しなければならないというようなことについては、さような不幸な事態が起こらないように、御承知のように、相続税につきましては延納その他の措置もできるわけでございますから、徴税上も十分の配慮をいたすべきものであると考えます。  それから、夫婦問の問題は、これは昨年度の税制改正で三千万円までは課税されないことになりましたし、いわゆる水平移動と申しますか、そういう点については、すでに政府としても相当の配慮をしておるということは御承知のとおりかと思います。
  41. 高木文雄

    高木(文)政府委員 先ほど滞納のお話がございましたが、確かに滞納発生額は非常にふえております。年々ふえております。ただ、額はふえておりますが、それは、幾ら相続税を納めていただくといういわゆる徴収決定額がふえていることがおもな原因でございまして、滞納発生率はある程度着実に下がりつつあるという状況でございます。今後ともこの問題は検討していくことにやぶさかではございませんが、今回の改正のようにしていただけば、さらにそれに役立つことになると思っております。
  42. 広沢直樹

    ○広沢委員 問題点はまだたくさんありますが、時間がありませんので、また次回にひとつ具体的に御質問申し上げたいと思います。
  43. 大村襄治

    大村委員長代理 竹本孫一君。
  44. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は二つだけ、まあ質問というよりも要望を兼ねて質問をいたしたいと思います。  一つは、土地税制の強化や有価証券に対する課税が、われわれからいえばいろいろ不満、不十分の点があると思いますけれども、だんだん強化せられていく。そういうことになりますと、今度はキャピタルゲインを新しく書画骨とうに求めるというような傾向が大きく出てくると思うんです。そういう意味で、これに対する対策といいますか対処の方法はどういうことを考えておられるか。  あわせてお伺いをいたしますけれども昭和二十五年に税制改正所得税の補完税として考えられた富裕税というものがあるんです。これはその後三年ぐらいでやめてしまったわけですけれども、確かに課税技術上非常な困難があるということもよくわかりますけれども、少なくとも三年の実績なり経験なりがあるんだということもありますので、この際そうした一つの補完税というか、富裕税といったようなものをもう一ぺん検討してみることはどうであろうか。この二つの点についてお伺いしたいと思います。
  45. 愛知揆一

    愛知国務大臣 二つの点でございますが、結局お考え一つの線の上に立ってのお考えであると思いますし、私もごもっともな御意見であると思います。  そこで、それならば富裕税ということをたとえば一つの提案としてみたらどうか、こういう御趣旨と思いますけれども、これは、実は昭和二十五年のシャウプ勧告を受けてできましたのが富裕税でございますが、三年間の経験で三つほど問題とされたわけでございます。一つは、表現されない資産というものをどうして捕捉、把握できるかということ、それから収益のない資産に対してまで課税することが適当であるかどうかということ、それから徴税の経験上からいって実に繁雑な手数がかかったということ、同時に、手数が繁雑である上に、補完的に所得の把握も富裕税によってやりたいというのが立法の趣旨であったと思いますけれども、その副次的な目的の発生も思ったほどの効果があがらなかった。大体こういう三つが経験上の問題点であったと思います。そして二十八年に廃止されたわけでありますが、これらの経験を踏まえまして考えますが、同時に、理論的には非常に興味のある問題であると思います、ことに今日の状況下におきましては。したがって、一つの御提案とし、あるいは政府自体といたしましても、所得税や相続税の今後のあり方とも関連させましてひとつ検討を進めてみたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  46. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣がいま御指摘になりました三つの点は、それぞれ十分理由のあることでございまして、よく事情はわかります。しかし、最後にお話しのありましたように、一応この際は前向きに検討してみるに値する問題であろうと思いますので、御検討をお願いいたしたいと思います。  次に、第二の点もまとめて申し上げますが、相続税関係です。それも二つに分かれますけれども一つは、農地の場合には、生前の一括贈与の問題について特別のくふうが行なわれておる。これを中小企業の場合に、おやじはただ名目だけで実際は長男がやってお店を繁盛さしておる。資産をつくったものの大部分は、おやじの名義も確かにものをいった点もあるでしょうけれども、本人の努力である。自分が形成した財産を自分が相続するといったような要素が特にいなかに行けば非常に多いのですね。それじゃおやじ引退したらいいじゃないかということをいいますと、いなかのまだ古い考え方から申しますと、そうした形でおやじにさびしい思いをさせるのはいやだといったような、むしろりっぱな心がけで引退もさせないでおる。そうすると、まあ相続税という問題が出てくるわけです。そういうことについての特別の配慮がこれから一体考えられるのかどうか。税制上それを救う方法はないのかという問題が一つであります。  これと関連をいたしますが、家督相続関係は、まあ新しい民主主義によりまして、そういう古い封建的なあり方は一掃しよう。それはそれなりにまた大いに意味のあることで賛成でありますけれども、実際問題として、長男が弟や妹の世話もするといったような問題について、そうした現実の実態に即して税をかけるということになっていない面がある。これらについてもやはり一つの配慮をしてしかるべきではないか。そういう意味で、そういうものにも相続税法の上で考慮をする余地があるのか、あるいは前向きに取り組まれるお考えがあるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  47. 愛知揆一

    愛知国務大臣 第一の点は、相続人の中でだれか一人が農地を一括生前贈与を受けた場合は免除されるという、この制度をお話しになったと思いますが、実は私、実績をいまここに持っておりませんけれども実績上あまり成績はあげていないのではないかと思います。これはやはり相続人間の微妙な家族関係というようなことを反映しているのではないか。あるいは土地を持っているおやじさんのまた微妙な気持ちというものもそこへ反映しているというようなことで、考え方はすばらしい考え方であったけれども、人情の機微に映らざる、なじまざるところがあったのではないかと、私は率直にそんな感じがいたします。  ところで中小企業の場合に同じ方向が考えられないかということでございますが、農地の場合は土地が定着しております。ところが中小企業の場合は、その財産というものが多様化しておりますし、それから農地の場合でもなかなかうまくいかなかったように思いますので、やはり考え方一つ考え方だと思いますけれども、実効上はたして成果をあげることができるかどうか、私は多くの疑問を持つ次第でございます。  それから、第二の点は、これは税法の問題としてはやはり非常に興味のある問題だと思いますが、どうも農地の生前贈与の場合もそうでございましたけれども、民法の家督相続というものがなくなりました今日におきましては、むしろ民法上の家族制度の問題がかかわっておりますから、そのほうがはっきりした線が出ませんうちに税のほうで特に家督相続というものを中心考えるということは、これはなかなかむずかしいことではないだろうか。これも非常にざっくばらんな考え方でございますけれども、非常に興味のある御提案だと思いますけれども、民法との関係家族制度というものの基本的な考え方の定着している今日におきましては、税法の上で特殊のくふうをすることはきわめて困難であると、こういうふうに申し上げざるを得ないと思います。
  48. 竹本孫一

    ○竹本委員 最後に要望だけですけれども、いまお話しのように、民法が均分相続の体制をとっておる。それは民主的な前進であって私も賛成でありますけれども、いまの社会の現実にはそれはなじまないとか、それに即応しないギャップがある。私は均分相続をやめてしまえとまでは言うわけではありませんけれども、そのギャップを税の実際の運用なり適用なりの場合に、もう少しそこでギャップを埋めるような政治的配慮をする余地がないかどうかをひとつ検討していただきたいということでございますので、ひとつ御検討をお願いして、私の質問を終わります。      ————◇—————
  49. 大村襄治

    大村委員長代理 国の会計、税制金融及び外国為替に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。越智通雄君。
  50. 越智通雄

    ○越智(通)委員 自由民主党の越智通雄でございますが、今回一般質問の最初に質問をさしていただきまして、たいへんに理事、諸先輩の御厚情に対しまして心から感謝する次第でございます。またふなれでございますので、質問がことばが足りない点も多いかと思いますが、ひとつ愛知大臣には質問の意のあるところをおくみ取りいただきまして、的確なる御答弁をいただければありがたいと思います。やはりいまの日本経済につきまして、円の問題が一番緊急の問題だと心得ております。本日はその問題を中心に伺わしていただきたいと思っておりますが、衆議院の本会議あるいは予算委員会等の質疑を拝聴いたしておりますと、今回の通貨調整が大蔵当局がお考えになっていたよりもわりと早目に来たという御答弁があったように存じます。田中総理がお答えになったように記憶いたしております。やはりこうした問題は前広に的確に情報をつかんでいることが非常に大事な問題ではないかと思います。その点につきまして、大蔵大臣は今回の通貨調整についてどういうふうに情報をつかみ、どういうふうに考えていらっしゃったか、伺いたいわけですが、質問の都合上、二、三まとめて申し上げますので、あしからず御了承いただきたいと思います。  ただそうした動きに対しまして対処されました対策については、非常に評判がいいように私は伺っております。国際的にも日本のとった措置がスピーディーであり、タイムリーであったという批評を伺っておりました。日本政府のために、日本経済のためにたいへん喜ばしいことだと思っております。こうした通貨問題が起こってくる原因としましては、私はやはり日本経済の基本的な体質の問題のほかに、ことにそのきっかけとなるような動きに対して、先ほど申し上げましたように、通貨当局が神経をぴんと張りめぐらしている必要がある、このように感ずるわけであります。何か日本経済がどんどんふとるような体質で、どうも血圧が上がるという、それをどうなおしたらいいかという問題、これは自由化とか関税の引き下げとか大きな問題があろうと思いますが、きょうはその問題よりも、むしろそうした体質の人がいきなり脳卒中にかかったのは、きのうの晩酒を飲み過ぎたせいだ、そういうきっかけになった問題について考察してみたい、伺ってみたい、こう思うわけであります。  今回の通貨の問題は、私どもが伺っているのでは、一月の半ばごろからだいぶきなくさくなってきた。いわゆるアメリカの多国籍企業の金がだいぶ動いているのではないかという情報を聞いておりました。それが結果的にはイタリアのリラに集中されて、二十三日でございますか、それからあそこら辺からいわゆるスイスの国際資金が動いて、チューリッヒの小鬼どもといわれる投機筋が動いた。しかし結果的には前回の通貨調整のときよりもそうした国際投機筋の動きは弱かったというか、短かったというか、逆にいえば果断なる措置が早めにとられたということだと思いますが、こうした事態はやはり私どもが的確に認識しておく必要がある。ことに、これからそうした国際的な投機筋がこれだけではなりをひそめてはいない、今後ともどんどん出てくるであろう、それにどう対処していくか。私は後ほど金の問題を伺いたいと思っておるのですが、かねてからこの問題は必ず金に波及する、質問に立つ機会があれば金を伺いたいと思っておりましたら、けさの新聞で、ついに九十ドルの値が一たん大きくついたという報道がされております。そうした国際的な資金の動きについていままでどう認識され、また今後どのように対処されていくか、大蔵大臣の御見解を伺わせていただきたいと思います。
  51. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一に、情報が不足であり機敏な対応ができなかったのではないかという点については、予算委員会で田中総理から所信の表明をいたしておりますように、まことに遺憾といたしておる点でございます。それを前提にして申し上げたいと思いますけれども、お話しのように、一月の二十日過ぎ、イタリアから始まった動きが、二月に入ってからドイツであれだけのドル売りが起ころうとは予想をいたしておりませんでしたし、おそらくアメリカ側としてもこの状況には非常な衝撃を受けたのではないかと思います。そこで、ヨーロッパ筋とも協議をしながら、ドルが一〇%切り下げということで一応小康を得た。そして日本といたしましては、これに対応して一連の措置をとって今日に至っておるわけでございます。  国際的な資金移動がどうであるかということについては、特に多国籍企業資金の動きというものが注目されております。OECDなどの調査で、昨年のある時期までのところで四百五十億ドルというようにいわれておりますが、今日ではそれより相当またふえておることは当然に想像されるところであり、それが七百億ドルとかあるいはその前後であるということがいわれておるわけであります。これが今後どういうふうになるかということについては、ヨーロッパ市場あるいは特にドイツの今日以降の状況がどうなるであろうかということが国際的にも非常な関心の焦点であると思いますが、的確に、はっきりとこうなるであろうということを予測して申し上げるだけの立場に現在おりません。同時に、日本としては、御案内のように、為替管理が相当の程度に行なわれておりますから、短期資金の移動によって日本がどうこうということはまずまずないと思います。しかし、日本の為替管理といえども完ぺきなものではございませんし、それから貿易の正常な取引とそれ以外の資金の動きとは、接点になりますと区別がつかないというようなこともございますから、この穴から何か異変が起こらないように、今後とも十二分の注意を払っていかなければならないと考えておるわけでございます。  それから、金の問題にお触れになりましたが、国際的に一番大事なことは、アメリカのドルが金との交換性を回復すること、これなくしてはドルを単一の基軸通貨としている現在の制度のもとで終局的な安定はなかなかむずかしかろうと思いますから、何とかしてドルに対しては兌換性を回復するという前提で、今後のアメリカとしての政策の遂行というか成果があがるように各国が努力していかなければなるまい。今後多数国間の、たとえば二十カ国蔵相会議などがあります場合には、日本としても従来からさような主張もしておりますし、またそれがむずかしいならば、SDRというようなものをもっとりっぱなものにつくり上げて、別の方向で国際通貨の安定をはかる。しかしそれにしても何より必要なことは、関係各国がそれぞれの国内の経済対策においてインフレを抑制するというようなことについて、それぞれの国のできるだけの努力をしてもらわなければならぬということで、これは赤字国とか黒字国とかいうことだけではなしに、各国の積極的な努力というものが行なわれなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。  非常に広範な御質問ですから、あるいはお答え漏れがあろうかと思いますが、なお御質問によって補ってまいりたいと思います。
  52. 越智通雄

    ○越智(通)委員 そういう措置によりまして、現在為替がフロートされている。きのうあたりは二百六十数円でございますか、いずれは固定相場制に戻る。いつ戻るかというのがいま一番の関心事でございます。大臣は、国会では率直に言って明確なお返事をされていないと思いますが、きのうあたり田中総理がテレビで、三月の二十五、六日に予定されております二十カ国蔵相会議まではフロートしっぱなしだということを示唆されたと新聞報道されております。考えてみますと、四月一日にはイギリスがECに加盟する時期が来る。ECでは固定相場制をとっている関係上、ポンドの問題はそれまでに決着がつくのではあるまいかという声もございます。そういたしますと、三月の二十カ国蔵相会議から四月一日あたりが一つの為替問題の焦点の時期になろうかという気がいたします。ポンドの成り行きを見定めてから円の行くえもきめるというのも一つの作戦かもしれませんが、ポンドが先にきまったのでは、かえって円の始末がしにくいということも考えられるかもしれませんし、そうした固定相場制への復帰についての蔵相のお考えをお伺いさしていただきたいと思います。
  53. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は固定相場制に返る問題については、まだ申し上げる時期ではないと思うのでございまして、変動為替相場というものは、現在の状況下において日本としてまず妥当な体制ではないかと思います。御案内のように、よく十カ国云々といわれますけれども、その十カ国の中で五カ国は変動相場制を現に続けているわけでございます。それにはカナダも入りますし、いまお話しのイギリスもそうでございますし、あるいはイタリアもそうでございます。十カ国のうち半分は変動相場制、さらにそのほかに二重為替相場をとっている国もございまして、むしろ固定相場制の国のほうが十カ国の中では少ないわけでございます。それだからというわけではもちろんございませんが、いまはアメリカのドル切り下げがどういうふうな影響を国際的に与えるであろうか、それから日本自身としてはこの変動相場制というもの、その中で円の実勢というものがどういうふうな推移をたどるであろうか、その他いろいろの観点からいたしまして、あまりせっかちにならずにひとつじっくりかまえるべきではないかと考えておるわけでございます。  それからもう一つは、いまこれもお話に出ましたが、三月の二十六、七日に二十カ国蔵相会議が行なわれるということは、その二十カ国蔵相会議の事務局としては決定しているスケジュールでございます。こういう変動の時期でございますから、いろいろの話がその会議で出たり、あるいはその機会に個別的ないろいろの話でも出る機会もございましょうけれども、必ずしもそれと日本の変動制相場をいつやめるかということとは直接のつながりを持たずに考えてしかるべきであろう、私はそういうふうに考えております。同時にしかし、この二十カ国蔵相会議というようなものは、十カ国から二十カ国に広がり、ある程度の開発途上国なども熾烈な要望のもとに参加したわけでございますが、二十カ国蔵相会議の場で多数国間の通貨調整というものが会議の議事としあるいは結論として出るかどうかということよりも、これからの国際通貨制をどうしたらいいか、先ほど申しましたようなドルの金兌換というようなことがもう考えられないとするならば、それにかわってどうするべきかということのほうがむしろ従来の経過からいえば大きく論議される問題ではなかろうか、こういうふうな想像もいたしておるわけでございまして、まだまだ情勢はいろいろの意味で流動的である、こう申し上げるのが正しいと思います。
  54. 越智通雄

    ○越智(通)委員 固定相場制度というのは、現在のIMF体制のもとにおいては一つ原則的なシステムだと思う。そういう意味で、今後固定相場制度をどのようにとっていかれるか、私はその点についていろいろとまだお伺いしたがったのですが、あと五、六分でございますので、残念ながら他の質問を省きまして、先ほど一言言及いたしました金の問題をもう一度伺いたいのでございます。  今度四月一日から日本でも金を海外から購入することが自由化される。これはわりと国民にはそう広く知られていない事態ではないかと思います。しかるにかかわらず、海外で先ほど申し上げましたような投資資金が金に殺到しまして、新聞で皆さまごらんのようにたいへんな高値を呼んでおります。昨年時代が大体六十ドル見当だったと思いますが、日本の貴金属特別会計も六百六十円、六十七ドルぐらいのもので動かしているはずなんですが、いまもう九十ドルになんなんとしている。その原因一つ日本の商社が入っているのじゃないかと新聞報道に書かれている。こうしていま、先ほど蔵相がおっしゃいましたように、金とドルの問題というのは非常に深刻な、自由諸国家の貿易体制を維持していく上で大事な問題であるにもかかわらず、その金の自由化ということがこのタイミングに日本において行なわれる。私は実は金を大いに購入することは賛成なんでございますが、ややタイミングがおそ過ぎたというかタイミングが悪いような感じもいたします。ことにそれが購入されました場合の日本の金地金業者というのは非常に限定された数と私は伺っております。したがいまして、国内において金の価格の形成がほんとうに公正に行なわれるか。まあ俗なことばでいえば、地金業者がしこたまもうけるのじゃないか。あるいはにせものが出回るのじゃないか。あるいは個人的には、先ほど竹本委員からも絵画の話が出ていましたが、ずいぶんロンドン等で高く絵画を買ったという話の次に、日本人が高く金塊を買っているじゃないかということをいわれますと、全体としての国益からいうとどうもうまくないような気もいたします。心配になりまして、実は私はその許可申請が二、三件しか出ていないと関係筋から、役所じゃありません、民間の方から聞きましたので、お役所のほうに確かめてみたら、二、三件じゃないけれども十件以内だという話で、非常に数が少ない。十件しか買わないのだったら国際的にそういうことをいわれるはずはないのでございますけれども、実態は買っているとするならば、商社が海外で買い付けていることと国内で許可申請することとの間にそのようにタイムギャップがあるというのも、これまた非常に事態をまずくさせるのではあるまいか。こういう際でございますので、金の問題について慎重なる御検討をしていただきたいという希望を申し上げ、それに対する御答弁をお願いいたしまして、質問を終わります。
  55. 林大造

    ○林(大)政府委員 最初に、事実関係を申し上げますが、ロンドン市場におきます金の価格の終わり値でございますが、二月の一日には一オンス当たり六十六ドル七十五セントでございました。それがヨーロッパ、日本の為替市場が再開されました十四日には七十二ドルと七十ドル台に乗せまして、その後次第に上昇し、昨日二十二日には終わり値は八十七ドル二十五、新聞報道によりますと九十ドルもつけたということでございます。その原因が何であるかということについて私どもが得ている情報によりますと、これは米ドルの一〇%切り下げに伴う自然な調整に始まったものであろうけれども、為替市場の不安定等を背景として、この金のドル建て価格の高値の動きが次第に加速された感じが強い。その買い手はどうかということでございますが、買い手は米国、欧州、中近東等あらゆる方面に及んでいるが、日本筋の買いも散見されたということでございます。現在日本の買いがどの程度になっておりますか、自由化は四月一日からでございますけれども、事前に若干の買い付けが行なわれているかもしれない。しかしヨーロッパの市場筋の評価では、日本の買いが特に市場を撹乱するような重要な要因になっているとは見ていないようでございます。  私どもの自由化のやり方は、あらゆる輸入の希望者が自由に購入できる、そのために、手続面では大蔵当局の許可が要るような姿になっておりますけれども、どなたでも自由に購入できるわけでございまして、それが十分徹底していないようであれば、それは徹底するようにいたしたい。従来から金に限らず、銀、白金その他いろいろなものが国内ですでに自由流通になっておりまして、したがいまして、その間価格形成あるいはにせものが出回るというようなことがなく、わりあいに円滑に行なわれているわけでございます。今後とも十分配意いたしまして、そのような価格形成の公正さあるいはにせものが出回らないように、流通の正常な姿を維持するように極力努力してまいりたいというふうに存じております。
  56. 越智通雄

    ○越智(通)委員 ありがとうございました。
  57. 大村襄治

  58. 武藤山治

    武藤(山)委員 突然ピンチヒッターで一般質問をすることになりまして、冒頭に金・ドル問題、これに関連して二、三大臣の所感を伺いたいと思うのでありますが、最初に国際金融局長、いま日本の保有しておる外貨準備、金が幾らでドルが幾らであるか明らかにしてください。
  59. 林大造

    ○林(大)政府委員 一月末の外貨準備高は、御案内のとおり百七十八億五千六百万ドルでございます。このうち金が八億百万ドル、外貨が百五十九億九千万ドル、ほとんど全部ドルでございます。それからIMFのいわゆるゴールドトランシュが六億四百万ドル、SDRが四億六千百万ドルでございます。
  60. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣、いま局長が発表しましたように、日本の外貨準備の大半は紙っぺらであるドルであります。われわれはかって昭和四十年ごろから本委員会において、ドルというものは、これは将来信用の置けないたいへん不安な通貨である、したがって、できるだけ外貨準備というものは金に切り変えるべきである、こういう質問を、私も当時本会議においても二回ほど質問をしておりますし、大蔵委員会においても何回かそういう提言を政府に迫ったのでありますが、政府はアメリカにたいへん気がねをしてついに金の購入をしなかった、こういう経緯があるわけですね。その結果、今日のようなドル不安のためにたいへん日本は損をすることになりますね、大臣国民のかせいだ富というものが、ドルの切り下げや、あるいは円の切り上げ等によってたいへん損をする。大臣、その問題についてどのようにいま感じておりますか。
  61. 愛知揆一

    愛知国務大臣 従来いろいろの考え方があったと思いますけれども、現実に金の準備が非常に少ないという事実は明らかで、御指摘のとおりでございます。  それから、ドルの保有について、これは日本銀行外国為替特別会計でございますが、この保有高について評価損が将来起こるということもあり得ると思いますが、しかし同時に、これは物の輸入資金としては十分まだ使えるわけでございますし、今後におきまして、政府としては何とかこういう機会を契機といたしまして、さらに一そう輸入の増進策をはかってまいりたい。そしてドルも一方において使い、かつ貿易上の収支のアンバランスもできるだけ縮めていく努力をしたいということで今後の政策を推進していきたい、こういう考え方でおりますことも御承知のとおりと思います。
  62. 武藤山治

    武藤(山)委員 金を買い付けなかったためにドルを大量に持って、国民の富というものが結局損失をこうむることはもう間違いありませんね、大臣。というのは、貿易で、輸出でもうけたドルが結局円に切りかわって国内に利用されるわけでしょう、使われるわけでしょう。そのドルが、すなわちこれは国民の勤勉による富ですよね、外貨が入ってきたということは。かせぎ高ですよね。それが結局フロートすることによって一六%くらいの円の切り上げとひとしい効果をもたらされるわけでありますから、一六%だけ損失をこうむるわけですね。もし日本円に、かりにドルを計算し直した場合四兆八千億円ですか、現在の外貨準備のドルを円に換算すると四兆八千億、五兆円にはなりませんね。そのうち一六%を損をするということになると、日本円にしてどのくらい損した計算になりますか、国際金融局長
  63. 林大造

    ○林(大)政府委員 単純に五兆円に一六%をかけますと八千億円ではないかと思います。
  64. 武藤山治

    武藤(山)委員 このように七、八千億円、いずれにしてもドルの一〇%の切り下げによって、フロートに転換したことによって日本国民が損をしたことになる、かせいだものがそれだけかすめ取られたことになる、その事実は大蔵大臣認めますね。
  65. 愛知揆一

    愛知国務大臣 逆に円の価値が高くなるわけでございますから、円としての、外国から物を安く大量に入れる力があるということが反面のまた真理であろうか、こう考えます。
  66. 武藤山治

    武藤(山)委員 反面の真理はなるほどそうかもしれないが、現実に蓄積された外貨準備の額というものは、一回そこで計算し直す場合にはそれだけの損が発生することは事実として認めるでしょう。私は、輸入するほうの金の価値のことじゃなくて、現実にたまった外貨準備というものが、国民のかせぎによってためられた価値が、その分だけ蓄積された富が減価するわけですから、したがっていま局長が答えるように八千億円の損失をもたらすという事実は否定できないだろうと思いますが、これについて……。
  67. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、それは事実そのとおりでございます。同時にいま私は輸入のことを申しましたが、輸出につきましても、日本の製品の価値というものが正当にというか、高く評価されて、そして日本人の労力あるいは製品のコスト、技術というものが正当に高く評価される、こういう点に反面の事実があるということを私は指摘をしたわけでございます。
  68. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣は輸入するときに円の価値が上がって安く輸入できるから損得はないのだというような感覚のようですが、現実に日本銀行が損害を受ける、減価する額というものはいまの計算でもう明らかに出ているわけでしょう。そこで大臣、これから金が自由化される、政府としては紙っぺらよりも金を持とう、こういう金選好に走るのか、それとも一切また金は従来どおり蓄積しない、買わない、こういう方針でいくのか、その辺の大蔵大臣見解はどうですか。
  69. 愛知揆一

    愛知国務大臣 金は四月の一日から自由化されるわけでございますし、先ほど国金局長から御説明いたしましたように、これは輸入の希望者にかかわらず自由に許可というか、自由に輸入ができるようになるわけでございますから、国内の保有金というものはいまよりは多くなると思います。ところが、これについては国内で金に対する正常な需要というものもございましょう。それからそれに対していわゆる通貨の金準備としてどういうふうに処理をするかということは今後の情勢に応じて検討いたしたいと思いますが、ただ先ほど来申しておりますように、従来からもいろいろ議論があったように、これは国際通貨問題に関連いたしますが、単一の基準通貨ということにだけとらわれない考え方というものも今後の検討の課題であろうか、かように考える次第でございます。
  70. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、大蔵大臣の見通しなり見解では、ドルは再び金本位に復帰することはあり得ない、金との兌換は一切将来ももう望みない、こういう見通しに立たれて国際金融問題をお考えになっていますか、大臣は。
  71. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、先ほど申し上げましたように国際金融界といいますか、通貨当局からいえば一つの行き方としてドルの兌換性が回復されて、そして基準通貨としてのメリットを発揮することが望ましい、これは一つ言えることだと思います。しかし、はたしてそれが実現可能であるかどうか、あるいはアメリカ側がどういう政策をとるであろうかということにつきましては、これは不確定要素がたくさんございますから、私が断定的にどうこうということはなかなかできないと思います。
  72. 林大造

    ○林(大)政府委員 若干補足して御説明いたしますが、通貨用の金の購入につきましては、大臣からるる御答弁申し上げたとおりでございますが、産業用の金につきましては、今年度末までは貴金属特別会計が一手に買い付けてこれを民間に流す、四月一日から自由化するということにいたしております。産業用の貴金属の特会からの金の国内への流通が円滑化するように、実は本日その弾力条項の発動をお願いいたしまして、約十五・五トンの買い付けができますように、一応権限をいただいているわけでございます。これは四十七年度の予算に基づきまして行なっているわけでございますが、これも御趣旨のようなことで、国際金市場に対する影響は十分考慮しながら、それは先ほど越智委員の御質問にもお答えいたしましたとおり、国際金市場にあまり影響を与えてもいけませんという点を十分に配慮しながらも、国内に対する金の供給は円滑に行なわれるようにという配慮でお願いしたわけでございます。
  73. 武藤山治

    武藤(山)委員 ドルが最初は一オンス三十五ドルの公定から三十八ドルに変わって、今度一〇%ドルが切り下げになったから一オンス四十二ドルぐらいですか。そうなりますと、現在の自由価格が九十ドルをこえた、九十・二五ぐらいできのうあたり売られたというように新聞にちらっと出ましたが、そうなると大体倍ですね。アメリカのドルと金との公定——公定といったって交換しないのだから公定という形式でございませんが、それのとにかく倍の値になっているわけですね。こういう調子で金の自由価格というものが暴騰していくということがまた逆反射して国際通貨の不安をかもし出し、ドルの値打ちというものを引き下げていく、そういう作用を起こすのではないだろうか。したがって、金のべらぼうな高騰ということがまたドル不安につながっていって、ドルの値打ちを引き下げていく、そういう心配というのは全くないのか、あるのか。それはどうでしょう、大蔵大臣
  74. 林大造

    ○林(大)政府委員 ロンドンその他の国際金市場は自然に成立する市場でございまして、したがいまして、日本一国だけの規制はもちろん及ばないわけでございます。金が騰貴しますのはいろいろな理由があると思いますけれども、そのような問題は国際通貨制度とどういうかかわり合いがあるかという側面から、二十カ国委員会及びその代理会議検討する範囲に入ってくる問題だと存じます。そのような問題として、いろいろな観点から考慮を加えていく。金の国際通貨制度におきます役割りというものにつきましても、基本的にいろいろな考え方があるわけでございまして、次第に国際通貨制度は金から離れていく、そしてSDRが国際通貨制度のより重要な役割りを果たしていかなければならないというのが現在の二十カ国委員会における討議の流れのようでございます。
  75. 武藤山治

    武藤(山)委員 割り当て時間が大体四十分までというのでありますから、あまり詳しく論議できないのでありますが、大臣は先ほど私の質問に答えて、確かに輸出面で損をしても輸入の面で円の価値が上がって利益を受けるのだ、そのように政府は貿易政策の中で考えている、こういうような答弁をしましたが、その政府の主要経済指標の見通しの中で、いま大臣答弁したような考慮が一体どこにあるのですか。輸出は三百三十三億ドル、輸入は二百五十二億ドル、こういう見通しですよね。しかも今度のドルの一〇%の切り下げをやられた後における、それぞれの機関が、大和銀行や三和銀行や住友銀行などがみな試算をいたしておりますが、やはり貿易の黒字というものは八十一億ドル、あるいは三和銀行の七十七億ドルというような、かなりの黒字を見込んだ見通しが立ってしまう。これでは大臣がいま言っているような姿勢が一つ政府の施策に貫かれていないじゃないですか。詭弁じゃないですか。この経済指標は全部変えますか、それでは。これでやはり当面経済運営するのでしょう。  やはり具体的に答弁する場合には、そういう姿勢をとられているなら、こういう点でこういうようにわれわれは姿勢を直してやりますよということがあらわれなければいけないでしょう。この数字は相変わらず、輸入、輸出のバランスというものはたいへんな黒字で、また外貨蓄積はあなたがいま答弁したとは逆な方向に、このままいけば外貨は積もりますよ。積もれば、またさっき言ったように国民のかせぎがドルの切り下げによって減価していくのですから、また国民が損害を受け、国全体の損害にまたはね返るわけでしょう。したがって、そこらの政策を、社会党の堀委員がかつて、予算を組みかえなければだめだという提言をしましたように、政府としてはもう弁解の余地のないところに追い込まれているのですから、口先だけではなくて、経済見通しそのものも、じゃ変えるとはっきり答弁できないものですか。
  76. 愛知揆一

    愛知国務大臣 経済見通しにつきましては、政府として変動相場制に移行いたしましてからも、繰り返して申し上げておりますように、こうした状況下において年度の末までを、これはかなり長い期間でございますから、見通した経済状況がどう変わるかということを前提にして見通しを変更するということは現在はできない。また、つくろうとすることが不適当であるというのが政府の立場でございます。  それから、いま御指摘になりましたいろいろの研究も各方面で出ておりますけれども、同時に、これはお答えが御質疑とすれ違うかもしれませんけれども、たまたま昨年末からことしにかけては、ともすると日本の経済状況がいわば相当強気といいますか、あるいは過熱の動意が見受けられていたというようなことで、将来の見通しの中には、これから相当の期間をもって十分見通しをつくっていかなければならないと思います。したがって、私どもとしては現在においてはすでにできております経済見通しというものをやはり一応の中心として考えていくべきであろう。同時に、こういう際に従来からやってまいりました円対策の基本的な考え方を変えてはいけない。ということは、輸出奨励ではなくて、内需に転換であり、福祉国家のほうに向けていかなければならない。こういう気持ちは、こういう状況下になればますます持っていかなければならない。その努力や政策がどういう形で輸出、輸入の方面にあらわれるかということは、今後の情勢や今後の政策の進め方によってこれはきまるものである、こういうふうに理解すべきものじゃないか、私どもはかように考えているわけであります。
  77. 武藤山治

    武藤(山)委員 そこまでの答弁、私は一応大臣の立場に立って考えた場合、やむを得ないと思います。せっかくつくったばかりの経済見通しをここでいま数字をいじるなんということはできない。それは形式はそれでよろしいと思いますが、問題は、政策努力によってこれから輸入をふやすのだ、こういう場合に、一体、じゃ二百五十二億ドルという輸入は、実際は政府はどの程度へ今度は持っていこうとしているのか。関税率の改定や輸入のいろいろな奨励をすることによって、見通しにこだわらずにここでそのままずばり率直に答弁をしていただくとしたら、二百五十二億ドルの輸入はどのくらいにふえるというのか、率直に政策努力によって期待する数字はどこなのか、大臣の期待している数字は。
  78. 愛知揆一

    愛知国務大臣 少なくとも二百五十億ドル以上の輸入を確保したいというのが目標でございます。
  79. 武藤山治

    武藤(山)委員 それは人をばかにした答弁ですね。それはまさに人をばかにした答弁ですね。それはあたりまえの話じゃないですか。八十一億ドルの黒字ができるということは多過ぎる、外貨準備がさらに積み増しになる。したがって、外貨準備をできるだけ減らすことが、国際的な圧力から今日当然やらなければならない政策努力なんでしょう。したがって、二百五十二億ドルよりも輸入をふやしたいなんということはあたりまえの話なんで、政策努力によってどの程度までこれを持っていこうとしておるのかということを聞いておるんだから、不親切な答弁じゃなくて、このくらいまでは今度の関税率の改定で持ってくるだろう、あるいは特別に買い付けを奨励することによってこれぐらいのものがふえるだろう、ある程度の積算は大蔵省としてしておるんじゃないですか。通産省やほかとのいろんな協議をして、ある程度、この程度まで輸入をことしはふやさざるを得ないだろう、そうしなければ外圧でまたたいへんなことになるだろうという心配はしてないのですか。一切そういう協議というのは省内でやっていないのですか。ただ二百五十二億ドルよりはふえるだろうという不親切な答弁しかできないのですか。そんな大蔵省じゃ信用できませんね。
  80. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御承知のように、経済見通しというようなものを公の立場に立って、たとえばつくり直すというようなことになる場合でありましても、相当の期間を要するわけでございます。したがって、現在の状況下においては、この見通しを改定するということはできません、あるいは無理にやろうと思えばこれは不適当なものしかできませんということを正直に申し上げているわけでございまして、これには現在のフロートというものをやっていく期間、それからそれの落ちつく水準あるいは国際情勢の推移、いろいろなことが、いま非常に流動的でございますから、その上に立って、公の立場でこうなりますということを、計画的に最終の時点を目ざしての数字をあげて申し上げるということは、これはできないと申し上げるのがほんとうに正直なところではないかと思います。
  81. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間がありませんから、大臣の不誠意な答弁に対しては、あとでいつかおりを見てひとつ徹底的に議論をしたいと思います。  次の問題に入りますが、日本銀行日本銀行政策委員会というものを組織しておりますね。この政策委員会の主たる任務、大臣が期待をしている機能、政策委員会にどういうものを期待していますか。
  82. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この日本銀行の政策委員会というようなものができましたのは、ずいぶんもう古くなりますが、日本銀行法第一章ノ二の十三条ノ二に任務が書いてあるわけでございますが、「日本銀行ノ業務ノ運営、中央銀行トシテノ日本銀行ノ機能及他ノ金融機関トノ契約関係ニ関スル基本的ナル通貨信用ノ調節其ノ他ノ金融政策国民経済ノ要請ニ適合スル如ク作成シ指示シ又ハ監督スルコトヲ任務トス」これが日本銀行政策委員会の任務である、かように承知いたしております。
  83. 武藤山治

    武藤(山)委員 この十三条ノ二を読んだだけでも、これはたいへん重要な任務、機能を持った委員会ですね。特に今日のようなインフレ傾向のとき、通貨信用の調節それから国民経済の要請に適合する金融政策、こういうものをつくらなければならぬというのですから、相当有能な人材、確固として自分の意見を述べられるようなそういう人をやはり選んでおかぬと意味がなくなりますね。この間の運輸審議会の答申のように、大臣が困るような答申を出せないなんという腰抜けの審議委員や政策委員を並べたのでは、これは国民にえらい迷惑をかけるし、期待を裏切ることになります。現在出ている政策委員というのをずっと見ると、日本銀行法によると、商工業の代表、それから農業の関係者、そういう者を出すとなっている。「農業ニ関シ優レタル経験ト識見ヲ有スル者」「商業及工業ニ関シ優レタル経験ト識見ヲ有スル者」現在、この商業及び工業に関する代表一、農業の代表一ですか。
  84. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 武藤先生御承知のように、必ずしも代表という形になっておりませんで「商業及工業ニ関シ優レタル経験ト識見ヲ有スル者一人」とございます。それに当たるのが小島新一氏でございます。それから「農業ニ関シ優レタル経験ト識見ヲ有スル者一人」というのが東畑四郎さんでございます。
  85. 武藤山治

    武藤(山)委員 小島新一さんは御承知のように元八幡製鉄の社長さん、年は七十八歳。この八幡製鉄の社長が商工業ですかね。それから農業といえば、これも元農林事務次官の東畑さん、これは学者ですからそう遠くないが、さらに、今日のような通貨に対する関心の非常に強いこういう時勢に、この規定はもう古いんじゃないですか。昭和十七年、太平洋戦争中の遺物だね。預金者の代表なり、もっと一般の中から学識経験豊かな者とか、何かそういうような者ももっと含めて、政策委員会そのものをやはりこの条文で規定しているような機能が十分果たせるようなものに再検討する必要があるのじゃなかろうか。昭和十七年の古いままの、戦時中の遺物です。そして何かおば捨てみたいな、みんな七十過ぎのおっさんをここへ押し込む。月給幾らくれていますか、これ。たいへんですよ。
  86. 吉田太郎一

    ○吉田(太)政府委員 これは兼職禁止の規定あるいはやめたあとの就職制限がございまして、非常に厳格な扱いになっておるわけでございますが、俸給年額八百四十万円、手当三百六十万円でございます。これは年額でございます。一千二百万でございます。
  87. 武藤山治

    武藤(山)委員 大体月に換算すると百万、それに賞与もおそらく別に入るんだろうと思いますけれども大臣昭和十七年につくったこの法律は、いま言った商工業代表と農業代表という規定だけで、預金者なりあるいは学者なり、そういうような者を入れる余白はないわけだ、この法律規定では。この辺でひとつ、その辺のことを検討する必要あるのじゃなかろうかと思うのですが、大臣の率直な御所見はいかがでございますか。
  88. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いまお話がございましたが、この日本銀行法の中に日本銀行政策委員会というものが規定されましたのは、昭和二十四年でございます。これは戦後の、戦前からの状況の変化に対応いたしまして、日本銀行の運営につきましてできるだけ新風を入れなければならない、それから民主的に運営をはかりたいという当時の世論の上に立ちまして、この日本銀行政策委員会というものがつくられたわけでございます。そして法律の上で、いわゆる内閣の任命する任命委員については、国会の同意を得て、しかもその中におきましては金融業とか商業及び工業とか農業とかいうことが法律の上にも出ているくらいでございまして、当時といたしましては非常に画期的な規定であったと私はいまもそう思っておるわけでございます。
  89. 武藤山治

    武藤(山)委員 それがいまでは時代おくれだということなんです。もっとふやすのなら学識経験者なり学者の中からとかあるいは消費者なり預金者の中からとかそういうものを含めて、いまのはたとえば日本銀行総裁、大蔵省を代表する者一人、経済企画庁を代表する者一名、さらに地方銀行から一名と都市銀行から一名、商業及び工業に関しすぐれたる経験を有する者一名、農業に関する者一名、こうなっているのですね、これではいまの時勢の金融政策なりインフレーションなり通貨増発なり国債発行の問題なりいろいろな問題が、今日もう国民の関心事がたくさんある。通貨問題、日本銀行に対する姿勢の問題、そういう問題を議論するところに、これだけではもう足りぬ、もっと幅を広げて十分実質的な議論のできる政策委員会に改める必要がある、こう考えるわけなんです。そこで、大臣にそういう方向で今後検討するという御意向がないか、こういう要求なんであります。
  90. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは日本銀行法の問題でございますから、日本銀行法自体についていろいろと考えなければならないということでございますなら、その一環として考えることはできると思います。  それからもう一点、あえて私、申し上げたいと思いますけれども、中央銀行という性格は、たとえばこれは国会に対しての責任というものは、日本銀行の総裁の任命権ということからもいえますように、これは政府が責任を国会に対して持つわけでございますから、これはできるだけ中立的な存在であるという本旨は曲げることは私はできないと思います。ですから、他の審議会その他とはおのずから趣の違ったものでなければならない、その点だけはあえて申し上げておきたいと思います。
  91. 武藤山治

    武藤(山)委員 中立的ならもっと国民の代表が入るべきじゃないですか、中立性をもっと出そうというなら。それでいまの任命している顔ぶれを見たって一つも中立的なのはおらぬわけだ。中立的なら、もっと国民的基盤に立った中立的なものを半分くらい出さなければいかぬ。それは詭弁なんだよ、大臣。そうじゃなくて、大臣日本銀行改正の提案権がないにしても、通貨の問題というのは、インフレの問題や通貨増発の問題や銀行との関係国民はいろいろな角度から日本銀行に対する期待を持っているわけだ。したがって、そういう機関であるのだから、現状にもっと沿うようなそういう形でもって再検討してしかるべきではないか。いますぐここで改正しますなんて大臣が言えないことはわかっていますよ。しかし検討の必要がないのか。二十三年間も、四半世紀も過ぎた当時につくった選ぶべき基準なんだから、この選ぶべき基準を直すべきだ、こういう意見なんです。検討する必要は全くありませんか。
  92. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、いま申し上げましたとおりで、これは日本銀行という組織体の中の政策委員会でございます。この日本銀行というもの全体が中立的なものであります。そして通貨政策というものは、これは国会に対し、国民に対して直接責任を持つものは政府でございますということを申し上げているわけでございます。その点を踏まえてお考えをいただきたいと思いますし、私としては日本銀行法自体が改正の必要ありとするならば、その一環として、日本銀行の組織の一環として考えることはできましょうというふうに申し上げているわけでございます。
  93. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうしたら、大臣の言っているのは、日本銀行法のこの全文にわたるとか広範にわたる改正でもない限り、政策委員をどういう範疇から出すなんという個々の規定については手を触れられないという意味なんですか。日本銀行法そのものをいじるときでないと、そういうたとえば十三条ノ四なら四だけをいじることはできないのですか。そういう意味ですか、いまの答弁は。
  94. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、日本銀行というものの性格に触れてあえて申し上げたわけでございまして、そういうところをお踏まえいただいて御論議をいただきたいと、こういうことを念のために申し上げたわけでございます。それから日本銀行法というものも改正の必要というものがありとするならば、その一環として検討することは適当でございましょうということを言っておるのでありまして、私の意見はこういう意見でございます。
  95. 武藤山治

    武藤(山)委員 いま、日本銀行政策委員の任命が国会でこれから論議されようとする、具体的人選問題も出ているわけですね。しかし大臣がそういう答弁をしている限り、われわれはこれはとてもそう簡単に承認するわけにはいきませんよ。  一応、時間がありませんから、質問はこれで終わります。
  96. 大村襄治

    大村委員長代理 本会議散会後直ちに再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ————◇—————    午後二時五十七分開議
  97. 大村襄治

    大村委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山田耻目君。
  98. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 ちょうど三年ぶりなものですから、いろいろ当を得ないこともあろうかと思いますが、少し質問を続けたいと思います。  昨日の参議院でございますか、大臣質疑の中で、第三次、第四次の円対策を検討しつつある段階だということが述べられておるようでございますが、具体的にはどういうことを第三次、第四次にお考えになっておられるのか、そこらあたりをひとつ伺いたいと思います。
  99. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一つは、三次にわたる円対策というもの、これは変えないで、残っておることは推進をしたいということと、それから、それ以外にも考えられるようなことは今後においても取り上げていきたいという趣旨を申したのでありまして、第四次としてどういうことを考えているかということをまだ具体的に申し上げたつもりではございません。  しかし、それをもう少しこまかく申しますと、第三次の中ではもう一段と資本の自由化をやりたいと思っておりました。これが残っておりますのがございますから、これはできるだけすみやかに、大体OECDの案に沿うたような原則的な資本の自由化一〇〇%ということをやりたいと考えておるわけでございます。  それから、たとえばこれは大蔵省の所管で申し上げますと、非関税障壁の中で、まあこれがいわゆる円対策ということに直接つながるかどうかは別といたしまして、たとえば飛行場における通貨の取り扱い等について調書をとるというようなことが、外国人旅行者にはとかく苦情の種になっておるようですから、こういう手続の簡素化あるいは撤廃というようなことも具体的に考えられないであろうかというようなことも考えております。  それから、関税につきましては、いま特恵関税の全面的の実施ということを中心にした定率法の改正の御審議をお願いしているわけでございますが、将来の問題としては、もう少し突き進んだ、まあ率直に申しますれば、暫定的に政府に執行権をもう少し幅広くゆだねていただくというようなことも考えられはしないだろうかというようなことも、考え方の中に一つ入れてあるわけでございます。
  100. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 こうした一連の計画を非常に有効的に作用させるような具体策というものは、いつごろ発表できる段階に来るわけですか。
  101. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは立法を要するものもございますし、それもただいま触れましたように、現に御審議をお願いしているものが成立することがまず第一でございますから、いま期限を切って、どういうことがいつできるかという日程まで含めて、第四次円対策とか、あるいは第三次円対策の付録というものを具体的にまだ用意する段階には行っておりません。しかし、いろいろ考え検討しておるという段階でございます。
  102. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 当面お考えになっておるような円対策で、これからの日本の経済成長の度合いを、あるいは貿易上の一つ取引関係の中で、円の切り上げという事態が回避できるというふうな前提に立ってお考えになっておられるのか、それとも当面の糊塗的な一つの段階としてお考えになっておられるのか、これによって私はだいぶ組み立て方に相違があると思いますが、いまお考えになっておられるような第三次、第四次の円対策というのは、一体将来に対してしっかりした安定の保障を得られるというふうな認識に立って作業を進めておられるのかどうなのか、そこをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  103. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いずれにいたしましても、日本のこれからの進路というものは、四十八年度予算の中に組み込まれておるような考え方、つまり一言にしていえば、内需中心にしていきたいという考え方を伸ばしていくことが、どちらにしても必要なことであると考えておるわけでございますから、通貨調整の問題がどういうふうな進展になりましても、この考え方は通していかなければならない、こういう考え方でございます。
  104. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 内需中心にこれからは切りかえていくということについては、予算委員会でもしばしば述べられてきたことで、話としては私たちは理解できるわけですけれども、しかし、今回四十八年度予算一つを見ましても、この審議中に円のフロートが起こりまして、まさに出された予算そのものに傷があるのではないだろうか、こういう懸念を多く呼び起こしてきておることも事実です。きわめて不安定な状態なのです。  そこで、もう一点その点に入ってみたいと思うのですが、大体四十八年度予算をつくられます経済見通し、この経済見通しが、さっきも本会議議論がございましたが、たとえば鉱工業生産にしても、実質一三・六%程度の成長を見込んで経済見通しの基礎が固められておりますが、今回の変動相場制移行によりまして、一体この経済見通しは維持できるのかどうなのか。当然維持できないと思いますけれども、維持できないとすれば、実質どの程度の経済見通しになっていくのか、その点をひとつお聞かせいただきたい。
  105. 愛知揆一

    愛知国務大臣 経済見通しというのは、単なる経済の予測というよりは、本来、経済の実勢というものを考慮に入れながら政府のとる政策の効果というものを織り込んだ経済の見通しというような性格のものであると思いますので、政策的な目標という性格がかなり強いのではないかと思います。いずれにいたしましても、しばしば御説明をいたしておりますように、変動相場制度下における現在のこの時点で、経済見通しを修正するというのには、かなりな条件をいろいろ取り入れながら、また国際的な情勢なども考慮に入れながらつくらなければならないものでありますから、相当の期間がかかる。現在これをどういうふうに考えるかと問われましても、これをどういう姿にすべきであるということは、現在の時点では、先ほど申しましたように、正直申しまして、これを公にお示しするということはほとんど不可能に近い、こういうふうに考えているわけでございます。
  106. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 昭和四十六年十二月、一六・八八%の円切り上げがございまして、これは日本経済が落ち込む度合いをかなり深刻にさせてきたわけですけれども、このときの経済成長の実勢というものは、瞬間的にはかなりの打撃があったことは多くいわれております。しかし、過去のそうした一六・八八%の切り上げの中で、今回フロートに移行しましてきょうで八日ぐらいですね。いろいろと東京の外国為替市場の動きを見ておりましても、二百六十三円五十銭ぐらいが一ころ出て、政府も日銀もかなり御心配になっていたようですが、きのうあたりは二百六十五円ぐらいに一応の小康を得ている。だから、ここらあたりで大体固定相場に切りかえるとすれば、そこらあたりに落ちつくのではないだろうかということが新聞の記事などにも書かれておりますように、あるいは外国あたりでは、やがて切り上げるときの幅はもっと大きいという見方をしている向きもあるようですけれども、大体何月におやりになるのか。田中総理は三月の終わりにはやらざるを得まいというふうな印象で受け取れるテレビ放送などをなさっておるようにも見られますけれども、一体いまの変動相場の二百六十五円程度に固定相場の位置が切り上げられていく可能性というものの認識は、いまどうなっておりますか。
  107. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私の考え方を申し上げますと、変動相場制度というようなものは、そう短期に結論を出すべきものではない。たとえばいま東京市場のレートのお話がございましたけれども、実勢を見守るということから申しますと、もっと長い期間でこれは見詰めていかなければならない問題である、こう考えておるわけでございます。今回の変動相場制採用に際しましては、大がかりな介入というものはやるまいということでやっておりますし、また現にそういうことはやらないで推移いたしております関係もございますけれども、いま少し長い目で見て、それからたとえばヨーロッパ市場の状況ども日々いろいろの様相が出ておりますから、そういう点も十分考慮に入れていかなければならないと考えるわけでございますから、現時点における相場とそれから将来の措置とをあまり直接に結びつけて、現在の時点で論ずるのはいささか早計ではないか、私はこういうふうな考えでおる次第でございます。
  108. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 これもきのう参議院でお話しになった内容ですが、変動相場制からやがて固定相場にと移行していくわけですけれども、時期的なものについてはなかなか主管の大臣としていま直ちに述べられることは、これは私もむずかしかろうと思うわけです。しかし、きのう参議院でのお話では、変動相場から固定相場へ移行していくのに国際会議によらなくてもできる方法もあるということを述べておられます。どういう方法をお考えになっておりますか。いわゆる日本一国で単独に円の切り上げもやり得るということを意味しておられるのか、そこらあたりの関連はいかがでございますか。
  109. 愛知揆一

    愛知国務大臣 今回の状況をごらんいただきますとよくおわかりいただけると思いますけれども、一昨年のスミソニアンのときには、スミソニアンの講堂といいますか会議場に集まって、そしてそこで多数国間の話し合いが行なわれて、その結論として各国がそれぞれレートの変更を行なったわけでございます。今回の場合は、たとえばヨーロッパの三カ国、これが一堂に会して相談をしたということでございますけれども、多数国が集まってそこでの協議の結果コンセンサスをもってきめたというものではございません。ただしかし、関係国間の間には相互に理解を持ちながら相互に連絡をとりながら、それぞれの判断においてそれぞれの国の方針を決定したわけでございます。わが国におきましても、これらの諸国との連絡と申しますか協議と申しますか、これを通してそしてそれぞれの理解を持ちながらそれぞれが自主的に判断をし、日本としては自主的久措置をとったわけでございます。こういったような経過からごらんいただきましても、相互の協調、理解ということが前提ではございますけれども、同時に自主的にきめる。もちろんこれは手続としてはIMFへどういうふうな連絡をしなければならぬとか、いろいろの手続的な、あるいは友好的な組織や国々との間において連携を強化しながら措置することが絶対に必要ではございますけれども、必ずしも二十カ国蔵相会議というような場において、そこの会議の結論としてコンセンサスができるという場合だけを想定する必要はなかろう、こういうことを申したわけでございます。
  110. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 二十カ国蔵相会議なり諸外国とのコンセンサスを得て、そうして固定相場に移行という場合、これがある意味では非常に国際協調という面から見ていいことかもしれませんが、いま、あなたのきのう参議院でおっしゃったことの中で、そういうことを経なくてもやり得る方法はあるのだという立場をとられますと、私たちが何となくそのことを報ぜられて受けとめますのは、それはもうそういう国際会議でそういうコンセンサスを得なくても、それは日本の情勢によって単独にやり得るのだ、こういうふうな受け取り方をする、そういう可能性も多く出てくるわけです。そのことはやはり、日本単独で円切り上げをやるというふうなことを念頭に置いて述べられておるいまのことばと受け取ることは間違いでございましょうか。
  111. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはたとえばアメリカがドルの一〇%切り下げをやりました。アメリカがどこにも何も言わずにすぽんと自主的な判断で一方的にやったとはいえないと思うのでありまして、ことにヨーロッパとの間の関係などにおきましては、おれのほうはこうやるぞ、それに対応しておれのほうはそういうことはやらないというようなことも、これは会議とか、協議とかのアグリーメントとしてできたことではなくとも、相互の理解の度合いというものがそういうところでよく理解し合えたというようなところで判断をして措置をしたということで、これは一方的にやったといえばやったともいえるかもしれませんが、やはりいずれの国においても国際協調ということを非常に大切なことにしておりますから、そういう段取りというか、根回しというか、こういうことはいずれの場合にも絶対に必要なことであると思います。
  112. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 もう時間があまりございませんから、先に進みたいと思いますが、いろいろ円対策の問題、これからたいへんだと思いますし、そのことが国民の生活に直接大きな打撃を与えてくることは必定ですし、ただ私たちが従来とも言ってまいりましたのは、いまのような経済構造、いまのようなGNP中心主義、過去の輸出第一主義、こういうものはこれからお改めになって、内需中心にしたいというようなことですから、それはそれなりに評価をいたしますけれども、しかしいまのようなGNP第一主義もっとことばをかえていえば、昭和六十年には三百四兆という一兆ドルGNPに到達する。田中総理の言われる列島改造論、こういうものをやっていく段階を修正しなければ、思い切った転換をしなければ、私はいま大臣がおっしゃっていたようなことばというのは、これから何十年も聞き続けていかなければならぬことばのような気がするのです。だからこれは私はいろいろと内需に中心を置いた円対策をお立てになるようですけれども、私は思い切ってGNP中心のいまの列島改造論をおやめになって、もっと国民福祉に中心を置いたそういう経済構造といいますか、経済規模といいますか、そういうものに転換をなさっていく心組みないしは見当、そういうことは主管の大臣であるあなたとしてお考えになる余地はございませんか。
  113. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現在の時点において特にそういう感じを深くいたしますけれども、私は、もうかねがね、昨年の早い時期のころから、当時はそういうことばがまだ熟しておりませんでしたけれども、GNPよりはたとえばGNSというような感覚でこれからの政策を考えていくべきであるということは、昨年の初めから、もちろん個人的な意見でございましたけれども、唱道していたぐらいでございまして、政府の政策としてもそういう気持ちがあらわれている。GNSということばは練れておりませんけれども、要するに福祉優先の国策に切りかえていくということは、この変動相場移行いかんにかかわらず、予算編成当時から強く考えておった線を打ち出してきておるつもりでございます。もちろん、これはまだ不十分であるとか、スピードがおそいとかいう御批判はあると思いますけれども考え方の切りかえはわれわれも相当できてきたと思っていたところでございます。  ですから、先般衆議院の予算委員会でもお聞き取りいただいたと思いますけれども、たとえば長期の社会経済発展計画の答申ができましたときに、田中総理自身も非常に率直な感想を述べておりますけれども、あれには五十二年度の国際収支の見込みも出ているわけで、これでは多過ぎるかなという感じが非常にしたのだけれども、しかし審議会として、現在日本で集め得る衆知がこういう結論をした、それを尊重するという意味で、閣議でもこれを承認することになったのだという経緯を、田中総理自身も非常に率直に申し上げているわけでございまして、その気持ちにおいては私も御同様に考えております。
  114. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 まあいろいろと長い間のGNP中心主義、輸出第一主義でありましただけに、切りかえ時におけるいろいろなジレンマというものも私はわかりますが、しかし、いまの列島改造論を基礎に置きましてつくられているもろもろの経済政策を見てまいりますれば、びっこの状態はかなり続くかもしれませんけれども、決定的に福祉優先という日本の経済政策は出てこないという感じを強く持ってしかたがないのです。だから、こういう転換の時期に際しては、あなたらしく考えておられること、あるいは総理としてお考えになっておる田中さんの考えと、必ずしも同一のものじゃないと思いますけれども、やはり私は、思い切って転換のために踏み出していくという強い政治姿勢というものが、この時期にこそほんとうに必要だと思うわけです。  非常に変な話になりますけれども、去年の十一月、予算の外形がほぼまとまってくるころから、今度の予算というものはたいへんこれはインフレ予算である、しかも列島改造論というものを背景にしたたいへんな予算が組まれていく、こういうようなうわさがちまたに伝わってまいりました。そのころから、たとえば経済企画庁の経済研究所が、五十五歳定年でやめて七十二歳まで生き延びていく、平均寿命ですが、奥さんのほうは七十六歳まで生き延びていく。五十五歳でやめたその人が十七年間生きていき、奥さんが二十二、三年生きていくとして、どれだけ生活費があったらいいのかという試算を出しておりますのを見ますと、この老夫婦二人で五十五歳から七十二、七十六まで生きるとして、一億八千四百二十九万円要る、こういう試算が出ております。これは庶民には実感として起こらない。しかし非常に不安を巻き起こしできたことは間違いないのです。これは経済企画庁から出されておる、研究所のある方の論文でもあるし、非常に客観的な科学的な資料を備えての分析なので、全く一読に値するものです。しかし、時を同じくして市販された書物の中にも、これは書きびとが何びとであるか私はわかりませんけれども、吉田祥二郎さんという方の書物もほぼ同じような数字を並べて書き立てております。このことは明らかに、いまの日本の貯蓄平均が、これはお伺いすれば正確にわかると思いますけれども、大体一人百七十万前後じゃないかと思う。これは現金預金じゃなくていろいろな保険なんかを加味したものでありますけれども、その百七十万前後のいわゆる預金というものしかない国民で、五十五歳から、もうからだの健康さを失いつつある人々が老後十数年間生き延びていくのに一億八千四百二十九万かかるとしたら、たいへんな脅威なんです。一体こういうことがいまの政策の中から出てきておるわけですから、これは私は政府としても当然これに対して具体的にこたえられ得る政策、こたえられ得る施策、そういうものを示していかなければいけない。  このような積算のしかたの中には、物価上昇を五ないし六と見ておりますし、生活水準を一〇%ないし一二%変化と見ておるようですから、これは決して無理じゃないのです。しかもこの老夫婦は、夫婦で一月四万六千円くらいで生活するわけです。それでそれだけの金が要るわけですから。一体これに対して生活様式の変化なり、物価の上昇なり、老後問題なり、福祉ということをよく口では言われますけれども、実際にこういう具体的なものに対して明快な回答を与えない限り、私は福祉ということばを軽々に使ってもらっては困ると思うのです。この点についてひとつ大臣見解をお聞かせいただきたい。
  115. 愛知揆一

    愛知国務大臣 福祉ということばは、具体的な政策からいえば、社会福祉政策の拡充と社会資本の拡充という二つであると思います。したがって、社会福祉政策のほうも、その一億数千万というようないまお話しのような数字にはほど遠いかもしれませんけれども、たとえば年金政策の上で物価のスライド制というようなものを採用することにいたしましたのも、これはまあ財政上の負担その他からいえば相当の問題でございますけれども、あえて踏み切りましたのも、やはりそういう点に配慮をしておるからでございまして、政府としても、考え方も、私はよく申しますのですけれども、幅と速度ということからいえば御不満や御批判がいろいろございましょうけれども考えの基本の線というものは、お話の点と私は変わりはないと思います。これをあんばいして、その方向にできるだけ早く、できるだけ幅広くやっていくということに、これからもあらゆる努力を傾倒していくべきことであると考えます。
  116. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 老後の年金問題を物価スライドさせることは政府としてたいへんな勇断であったというおっしゃり方、私、きのうも財投問題で、財投の二大財源は郵便貯金なり簡易保険なりあるいは厚生年金が軸になっておるわけですが、高福祉高負担、千分の六十四を千分の七十九に引き上げて五万円年金。五万円年金には、見せかけであるということは、もう、資料の上でも、現実の上でも、国民もだまされたという気持ちを最近は持ってきておりますが、私はきょうはその中をここで論議をしようとは思いません。思いませんが、この年金が物価スライドをなさったから年金の持つファンド、基金としての減価はあり得ないというふうにながめておられるとすれば、私はたいへんな間違いだと思う。だから、日本の年金というのは、申し上げたように、千分の六十四労使折半で積み上げていって、そして大体——ちょっと私の申す数字は古いかもしれませんが、大体二千万人、年間八千億、そうして約百万人の人に支払っておる金額が一千三百億、脱退一時金など、死亡などで支払いますのが約七百億。ですから、八千億集めて二千億支払って、残り六千億が年金ファンドに積み立てられていきます。それを二十年間そのように積み立てて貯金をして、二十年後にもらうわけです。この減価というものはとてつもない一つの結果を招来している。  私は、ときどき、変なことを話すのですけれども、財投に使われます簡易保険、私、十五歳のときに五百円入りました。昭和十二年です。昭和十二年のころの五百円ございましたら、私のいなかでは、三十坪の家ができて、たんぼが六反買えておった。それを私の母がずっとかけてくれて、そして三十年たってもらったのが昭和四十二年、私がここに二度目の当選をしていたときです。五百円もらいました。二級酒一本買うたら終わりですよ。私は笑い話として言っておるわけではないのです。これが現実の保険システムなんです。  いまの厚生年金も、毎年、八千億積み立てて、二千億払い出しを受けて、六千億は年金ファンドに積み立てられていく、そうして二十年たってもらう。たいへんな減価です。金利分一〇%として見ていきますと、十五年たてば元はゼロになってくるはずです。だから、そういう状態を、物価調整規定を挿入して物価調整してやるのだ。それはそれなりにゼロではない。しかし、最近の傾向は、御存じのように、たいへんな大幅賃上げが続くわけです。大幅賃上げがどこにはね返るかといえば、生活水準の変化にはね返ります。それがさっきの、経済研究所におられる古賀さんが出されたこの論文の中には、その生活様式の変化を一〇%と見ても、これも十五年たったら原価はゼロになるのです。掛け金がゼロになる。ところがこれを財投でどんどん使われていく、その過程ではたいへんな一つの利潤を生み出していく。それを掛けていった国民勤労者階層は、年金を受け取る段階ではたいへんな貧しい年金に変わってしまう。この繰り返しの根本にメスを入れませんと、あなたのおっしゃっているような、政府は大勇断をふるって物価を調整したのだ、それは最終的には全然国民利益には還元されてこないですよ。  だから私は、こういう積み立て貯蓄方式という積み立てファンドのやり方をおやめになれぬだろうか、いま西欧諸国では、この積み立て貯蓄方式をとっておる国は一国もないですよ。みんな一時分配という近代経済の原理に立って、将来にわたって、過去にわたって分配のそういう論戦の段階を経て、一番インフレに強いこの賦課方式のやり方をやっておるのです。それをやりますと、将来老人がふえてきたときに困るからとか、いろいろ理由は言われておりますけれども、そんなものとは違うのです。いまの若い者がいまの老人を救う、これは賦課方式です。いまの日本の場合でも、八千億年間集めるものを賦課方式で一時払いしてごらんなさい。年金は一挙に八倍にふくれあがります。いまの年金が二十年で一万六千円ぐらいですからね。そういう方法をなぜ日本はとれないのであろうか。西欧先進国は一国残さずみなその賦課方式をとっている。そうして国民福祉ということを着実に実行に移している。いまの積み立て貯蓄方式をとっているのは日本と南米だけでございましょう。大臣、いかがでございましょう。そこらあたりをひとつ切りかえていくことこそがほんとうの福祉国家に衣がえしていく最も近い道であるというふうにお考えになれないでございましょうか。
  117. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、お話しになっておるお考えに何も反対でも何でもない。この年金制度というものがよくでき上がって、充実したものにするためには、どういう方法が一番適当な選択であるかという方向で考えるべきものである、こう思います。  この問題を論じ合いますと長い時間かかると思いますから端的に申し上げますけれども、やはり日本の場合におきましては、何と申しましても急速に年齢層が高くなってきた、それから年金制度がいまだ若いということ、そうして世代間の負担均衡と申しましょうか、こういう点を考えてまいりますと、現在は賦課方式でないとも言えないと私は思うのであります。積み立て方式であるとも言い切れない。こまかく検討していろいろこれには御批判もございましょうが、積み立て方式の改善積み立て方式あるいは修正積み立て方式ということが正しいのではないかと思いますけれども、将来のことを考え、そしてよりよき年金制度というものが末長く育ちあがるまでは、むしろこの選択のほうがより適切ではないかという考え方を持っておるものでございまして、何もこれに拘泥する、何でもかんでもこれでなければならないということは考えておりません。賦課方式のよろしいところ、あるいはもっと取り入れ得る幅があるとすれば、十分前向きに検討してしかるべきものであると思います。しかし私は、昭和四十八年度の予算編成に際してあらためて考えてみましたけれども、現在の段階においては、これが日本のとるべき選択としてはよろしい制度ではないかと思ったわけでございますが、これらに対して建設的な御意見がございますれば、謙虚に将来の問題として検討することはやぶさかではございません。
  118. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 時間がありませんから終わりますが、賦課方式でもないが、積み立て方式でもないし、まあ中間的なものだろうとおっしゃる気持ちの中には、私は積み立て方式というものは非常に掛け金をかけた大衆を苦しませる一つの道具にしかならないという、こういう気持ちがどこかに存在をしておるからいずれでもないという立場をおっしゃっているのだと思うのですけれども、私は日本の厚生年金にしましても、三十六年から始まりました国民年金にいたしましても、これが公社、公団を育てておるんだ、もっと端的にいえば、社会資本がこの分野から充足をされていくんだ、その財源がこれによってまかなわれておるんだ、こういうことは偽りない事実だと私は思うのですよ。だからほんとうに老後の問題を考える年金という制度ではなくて、もっとその奥底には目的意識的なものがある。それをいま私が言ったのです。だからこれは財投の中で、これから私の資料を出しながらまた議論を深めていきたいと思いますが、いずれにいたしましても早晩この問題は、大臣、御検討にならなければ、いまの老後の問題はどうしようもない事態に直面することになると私は思う。  それだけに本来の年金制度、ある一時限を限って分配をする、この一つの原理に立たないといけないのじゃないか。高福祉高負担なんというのは当然でしょう。そんなものは能のないことばですよ。経済原理というものから見たら低負担高福祉というのが経済の原則ですよ。費用を安く効果を最大に生む、これが近代経済の原理なんですから。高福祉高負担なんということばは、私は政治家として口にすべきことばじゃないと思う。そういう立場から見ていきますならば、いまの年金の問題というのは、将来の老後の問題を含めてあるべき本来の姿というものを育てあげていく、それを当面考え得るとすれば、それは賦課方式に立つ以外にはない。このことを、大臣も非常に造詣が深い方ですし、やはり検討のかなめに加えていただきまして、きわめて近い将来この問題に対する非常に見識高い結論を伺いたいと思うわけです。  終わります。
  119. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私も一言つけ加えておきたいのですけれども、山田さんのお話の中に、何か年金のファンドを活用したいためにこだわりがあるのではないかというお話がございましたが、これは私は少なくともそれを考えているわけではございません。そして現に、これもやはり幅とスピードの問題になるかと思いますけれども、例の還元融資の幅も広げましたし、それから財投の計画の中も、これは額が小さいという批評がすぐ出てくるのですけれども、とにかく四十八年度の資金の配分につきましては、社会福祉といいますか、生活環境の整備というものに特に重点を置いて、配分の比率をごらんいただけば昨年までとは相当に変わったやり方をしておるわけでございます。それからこの掛け金を、それこそ大企業育成のために使いたいから、それで賦課方式にいけないのだ、そんなことは毛頭私は考えておりません。先ほど申しましたように、私はいますぐに無条件の賦課方式ということはいかがかと思います。私は現在のところはそれに対して異議がございますが、現在の修正積み立て主義にもっと改善を加えるところがあるということであるならば、私も謙虚に大いに勉強さしていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  120. 大村襄治

    大村委員長代理 村山喜一君。
  121. 村山喜一

    村山(喜)委員 私に割り当てられた時間は十五分ですから、大蔵大臣、現在提案をされている法案に関連をしながら、大臣でなければならないような点について問題点を確認だけしていきたいと思うのです。  まず、有価証券流通税の問題でございますが、取引税法の一部を改正する法律案、これに関連をいたしまして、ちょうど二十一日のこの大蔵委員会株価形成の問題をめぐりましていろいろ疑惑を与えている点があるというようなことで追及をしていったわけであります。直ちに次官と証券局長が同時に関係の団体の代表等を呼んでいろいろと指導なさったようでございますが、そのときにお尋ねをしてみると、四十七年度の純利益の見込み額が七百十九億円。その中でいろいろ証券業の業種内容についてどういうような機能別に利益をあげているのかということの収益関係を調べてみましたが、ブローカー業務、ディーラー業務、アンダーライター業務のその中で一六・八%はディーラー業務によるところの自己売買による収益関係だということを、利益の総水揚げの中におけるパーセンテージが示されたわけであります。ところがこれは行政指導で昨年の十二月一日ですか、規制措置をして、証券会社の自己売買ワクを凍結されていらっしゃるわけです。そういうような行政指導もしながら、なおやはり以前の分もありましょうけれども、わりあいに自己売買の比率が多過ぎる。その中身を調べてみると、傍系会社に買わせる方式をとったりしていろいろな抜け道を講じているようでございます。そこでそういうような不当な株価形成がなされて、しかも大衆がみすみす損をするような形の中で、証券市場というのはもう大衆とは縁のないものだという空気をつくり上げている。いま一番インフレの象徴的にあらわれているのは株と土地だと私たちは見ているわけなんです。それだけに、そのキャピタルゲインなりあるいはキャピタルロスの把握がどういうふうになされているのかということを調べてみると、十分に把握がされない、そういうような状況にあるようでございます。そうなればなるほど、いまの異常な株価水準というものを冷やす意味からも、そして、いまのその回転率がヨーロッパあたりの四倍ぐらいの回転率を示しているようでありますが、そういうような点からいいましても、やはりここら辺で取引税をもっと引き上げて、この投機的な動きを押える、そういう政策的な手段をこの際もっと明確に打ち出すべきときが来ているのではなかろうか。そういう観点から見ますと、政府の打ち出しましたこの二倍に引き上げるというのはあまりにも根拠がなさ過ぎるような気がしてならないのですが、大臣は、やはりこれが最も正しい、現実に即したものだという判断をいまでもお持ちであるのか、この点についてお伺いしてみたいと思います。
  122. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、私もずいぶん考えたわけでございますけれども、一律の流通税でございますから、税率を上げます場合に、倍というのはやはり相当なものだ、今年度は倍ということでスタートいたそう、こう考えたわけでございます。
  123. 村山喜一

    村山(喜)委員 現実に即して問題を把握しなければなりませんので、私たちも、先ほど武藤君のほうから意見を出してございますが、この委員会に修正案を提案して、さらに論議を深めてみたいと思っているところでございます。  そこで、この前高沢委員のほうから相続税の問題につきましての重点的なものはほとんど触れられましたが、私はその中でもっと詰めておかなければならない点が一点あるということを考えまして、それを質問申しておきたいと思います。  この相続税関係には未成年者控除というのがございますが、ほかの税法の中に未成年者控除というものがございますか。担当の局長からでもいいです。
  124. 高木文雄

    高木(文)政府委員 未成年者控除というはっきりした形では相続税だけでございまして、ただ、住民税に一部そういうものがございます。
  125. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは税額控除でございますから、今度二万円ということになれば、一年について二万円ですから、これを課税標準額でとらえるとどういうことになりますか。
  126. 福田幸弘

    ○福田説明員 お答えいたします。  一年二万円といたしますと、十歳の子供さんが残りますと、二十歳までですから、二十万円ということになります。税率がどのくらいかということになりますが、平均二〇%ということになれば、百万円というように、財産としては考えられると思います。
  127. 村山喜一

    村山(喜)委員 大体年二十万円ぐらいの所得に見合うだけの課税額になると私は思うのです。そこで、こういうような未成年者控除というのは、財産を持っている人だけがそういう未成年者控除という恩恵を得べきものなのか。中学を出まして、そしてすぐさま働くようなそういう子供たちが、所得税についてはもうほとんど最低限度額以上にはみ出ますから、税金を取られるわけです。そういう点から考えますと、財産を持っている子供たちだけが優遇されて、高等学校にも行けないような子供が税法の上ではそういう恩恵を与えられないというこの不合理は、私はやはり考え直すことが必要ではなかろうかと思いますが、この点、大臣の御所見をお尋ねしておきたいと思います。
  128. 愛知揆一

    愛知国務大臣 感じとしては、そういう御指摘の点があるのもごもっともだと思います。ただ、相続税というものは一時に大きな額になる。それから、たとえば所得税の場合におきましても、働きながら勉強しているというような人たちに対しては控除がありますことも御承知のとおりで、年齢としての未成年者の控除というものはございませんけれども、実情に合うような配慮はいたしておるつもりでございます。
  129. 村山喜一

    村山(喜)委員 その論議はまた所得税法改正のときにいたします。ただ、そういう有資産階級の場合には未成年者控除という恩恵が与えられている。ところが、中学校を卒業して、大企業の場合には勤労しながら夜間に学習をする場が与えられるけれども、中小企業の場合にはそういう場が与えられない。そういうところで働いている年少労働者の問題については考える必要があるということを指摘しておきます。  そこで、私は具体的な実例を国税庁のほうから資料として出してもらいました。大臣の手元にあるだろうと思います。それのまん中の欄を見ていただきたいのですが、サラリーマン住宅地で杉並区の上井草の四丁目あたりの実例では、固定資産税の評価額が八万五千円、相続税評価額が十六万円、これは坪当たりの単価でございます。そこで時価はどうなっているのかというのが下のほうに出ているようでございますが、今度、大臣承知のように、地方税法の改正案の中で、固定資産については四十八年に評価の見直しをするわけでございますが、その場合の評価額と現在の評価額との間における対比を見ながら、評価額を二分の一で計算をする方式で固定資産税のほうは押えることにしました。そして税率調整も残していくわけでございますから、そう大幅に固定資産税の課税標準額は上がらないという仕組みになっているようであります。いつも論議をされておりますのは、生活の手段として現実に普通のサラリーマンなりその他の勤労者が働いている生活の場、これはその土地を売ることによって生活をするという意図がないわけですから、そういうような意味では、最低限の生活手段の場として残すべきではないかという考え方なんです。  そこで大臣にお尋ねしたいと思うのですが、いまのように相続税の場合の評価はいろいろなやり方をして、公示価格よりも若干低い線で押えてありますけれども課税最低限度額というのは、毎年毎年、税法の改正で論議をしながら引き上げていくという時価方式の評価方式よりも、固定資産税と同じような立場から一定の標準的なものを設定して、これだけは課税最低限度額として押えるんだ、そういう税法のあり方を追求していくのが合理的ではなかろうか、こういうふうに私は考えるわけですが、これに対する御所見をお伺いしておきたいと思います。
  130. 愛知揆一

    愛知国務大臣 固定資産税と相続税というのは、税の性質が違います。固定資産税は申すまでもなく毎年の課税でございまするから、その負担が急激に高まるということを調整する必要もある。そこで住宅地について特に軽減するための措置が講ぜられておりますが、評価額としては一〇〇%にしているわけであります。それから、相続の際に一回限り課税される相続税としては、いまお話もございましたが、課税最低限の問題として処理するということが適当であろう、こういうふうに考えております。
  131. 村山喜一

    村山(喜)委員 これで終わりますが、意見として申し上げておきますが、やはり固定資産税と相続税との間には若干の性格的な開きがあることは私もわかります。わかりますが、いまのように課税最低限度額を毎年毎年上げていって税法の改正をするというようなやり方よりも、もっとやはり固定資産税の評価方式を相続税の場合にも織り込みながら一定の最低限度額の標準をきめて、これだけはもう控除した残りについて課税をするという方式のほうが合理的ではないかということを私たち考えておりますので、大臣のほうでも御検討を願っておきたいと思います。  終わります。
  132. 大村襄治

    大村委員長代理 荒木宏君。
  133. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 前回の円の大幅切り上げで、輸出関連中小企業をはじめ、中小零細業者はたいへんな被害を受けました。その被害がまだ続いているといわれるときにまたまた今回のような事態になりました。この問題については、すでに本会議予算委員会でもいろいろ質疑のあったところでありますが、きょうは時間が限られておりますので、この輸出関連の中小企業救済のための財政金融措置、対策、そういうことに限って大臣にお尋ねしたいと思います。  一言経過を申し述べておきますが、二月十三日に私は共産党を代表いたしまして政府に申し入れをいたしました。官房長官にお会いをして、この問題での緊急対策を強く要望いたしました。また、その後衆参の本会議で、他の問題も含めて代表質問の中で特にこの緊急対策の即時実施を強く求めました。また、予算委員会の再開にあたりましては、政府の声明もございましたし、また先日の予算委員会では私自身が大蔵大臣にこの点も含めてお尋ねをしてきたところでありますが、まあおしなべて政府の御答弁を見ますと、この問題については万全の対策をとる、すみやかに実態を調査して遺憾のないようにしたい、こういうふうに伺っておるのですが、財政金融措置をとるための調査として、大蔵省当局では、いまどのような業種についてどのような地域に実態調査をされて、被害事実をどのようにつかんでいらっしゃるか、このことをまずお尋ねしたいと思います。
  134. 愛知揆一

    愛知国務大臣 大蔵省としてすでに措置をしておりますことを詳細申し上げるべきでございますが、時間もなんでございましょうから、一応これはあとへ回しまして、いまお尋ねの地域別、それから業種別の実態の把握につきましては、大蔵省としても財務局等動員し、あるいは税務行政上の問題もございますから、末端の税務署まですっかりそういう体制についておるわけでありますが、同時に、この地域的、業種的な実態の問題、それから、それらの業種別にいかなる対策を望んでおるかというようなことについては、通産省の中小企業庁がただいま徹底的な活動をしておりますので、この通産省からの実態の把握をもとにいたしまして大蔵省としても万全の措置を講ずる、こういう体制にいたしておる次第でございます。
  135. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 新聞報道によりますと、昨日経済調査課長会議が開かれたということも伺いましたが、その席上で出された被害の実態、それについて御報告いただきたい。
  136. 長岡實

    ○長岡政府委員 大臣からお答え申し上げましたように、現在まだ調査を続けている最中でございますが、現在までに財務局が八十五の産地に対しまして調査を行ないました。その産地の反応につきましては、たとえば今回の通貨調整措置が一体どの程度に受けとめられておるか、影響を受けておるかというような感じにつきまして、サンプル調査ではございますけれども、ほとんど影響がないというところから、きわめて大きな影響を受け、場合によれば経営の縮小または転廃業もやむを得ないというような程度まで、大体四段階に分けまして分布をひとつ見ております。偶然の一致かもしれませんが、前回、四十六年八月の産地の反応と非常に似たような状態を示しておりまして、一番ウエートが高いのが、かなり影響を受け、これを乗り切るためには何らかの国の施策が必要であるというところに相当程度が集中しておるようでございます。  それから、国の施策に対して一体各産地ではどんなことを要望しておるかという点につきましては、やはり一番要望度の高いのが緊急融資でございます。それからその次には、すでに融資を受けておりますものの返済猶予、この二項目が圧倒的に比重が高いようでございます。  この調査を通じましての印象は、この円の変動制の移行とは無関係の、いろいろ、たとえば韓国、台湾、香港などの追い上げの影響等も出ておるようでございますけれども、特に問題が深刻であると思われる産地としましては、関東に、秋田のクリスマスの電球、それから横浜のスカーフ、桜井のグローブ、ミット、それから泉州の人造真珠等であるように聞いております。  ただ、あくまでこれは完全に調査が終わった段階ではございませんので、大蔵省としても財務局の手足を通じて十分実情を把握してまいるつもりでございますけれども、中小企業庁の調査の結果を待った上で、国としていかなる措置をとるべきかということは相談をいたしてまいりたい、かように考えております。
  137. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 調査をすみやかにお進めいただいて、しっかり実情をつかんでいただきたいと思いますが、いまの強い要望である緊急融資とそれから返済猶予、これについてはどういう処置をおとりになっているか、そのことを伺いたい。
  138. 長岡實

    ○長岡政府委員 緊急融資、返済猶予を含めまして、まだ現在のところ具体的に措置は講じておりません。ただ、前回の四十六年八月の通貨調整の際には、フロートに移行しましてから約一カ月後の九月二十三日に閣議決定をいたしまして、ただいまの緊急融資といたしましては、いわゆる中小企業金融三機関、すなわち、商工組合中央金庫、中小企業金融公庫、国民金融公庫、この三公庫の融資の規模を千五百億円追加をいたしております。当然これに伴いまして財投資金の追加もいたしておるわけでございます。が、これを中心とした緊急融資を行なったわけでございます。今回はそれに加えまして、こういうものの打撃等もまだ完全に吸収されていないところに今回の通貨調整になったわけでございますから、既往の融資に対する返済猶予といったような声が非常に強く出てこようかと存じますけれども、その点につきましても、中小企業庁の調査が大体今月中ぐらいにはまとまる見込みでございますので、その結果を待ちまして政府として必要な措置を講じていくことになろうか、かように考えております。
  139. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 もう一言お伺いしておきたいのですが、十四日に銀行局長名前で、それぞれ金融機関に向けてこの問題についての協力方を伝達されておるようでありますが、その中での中小企業向けの貸し出し増だとか、あるいは下請代金の支払いに関するひもつき融資だとか、そういったことで局長通達に伴う実績ですね、それが現在の段階ですでに出ておるかどうか、そのことをお伺いしたいと思います。
  140. 額田毅也

    ○額田説明員 通達をいたしました後の実績についてはまだ現在十分把握いたしておりませんが、ある程度期間をおきまして把握したいと思っております。
  141. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 それからもう一つですが、新聞報道によりますと、財投一千億の追加をきめたということが報ぜられておりますし、また、予備費から百億円の支出も検討されておるということも報ぜられておりますが、このことのおきめになった有無ですね。政府のほうの見通し、それをお伺いしたいと思います。
  142. 愛知揆一

    愛知国務大臣 予備費につきましては、いま年度末でございまして、使用見込みのありますものを除いて、いま至急に三月末日までに予備費を充当しなければならないものを精査しておりますから何でございますが、百二、三十億ないし四、五十億はそのために用意ができております。これは手続といたしましては最終決定には閣議決定が必要でございますけれども大蔵省としてはこの資金は何どきでも輸出関連中小企業向け対策に支出する用意をしております。それから財投資金関係も、何どきでも相当のものが用意できる、とりあえずの措置としてそれだけの準備はいたしております。
  143. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 一通り伺いましたので、そこで大蔵大臣にあらためてお伺いしたいのですが、私どもの調査によりますと、先日の予算委員会で申し上げましたように、たとえば横浜のスカーフ業者、これは先ほどお話もありました。あるいは東京、秋田のクリスマス電球の業者、また私の地元であります大阪の洋がさ、模造真珠あるいはレンズ、全国に輸出関連の中小零細業者がたくさんおりますけれども、その実態を調査をいたしますと、たとえば、前回のときに大阪の田島のレンズでは約百三業者で一億五千万円の融資を受けて、今度からその返済が始まろうとしておる。先日もその関係の業者が国民金融公庫に行きまして、いまお話しの対策の二つのうちの一つ、融資について相談をしましたところが、金を借りてまた払えますか、前のが残っているじゃありませんか、業績についていろいろ検討をするけれども、大きい声で言えませんが、お金を借りても無理じゃないですか、こういった話が出ておりますが、実際に前の被害に加えて今度の事態に、金を借りようにも借りられないという業者が出ている。緊急融資と返済猶予という二本の柱を先ほど伺ったのですが、こういう輸出関連業者の実態に対しては、その救済を大蔵大臣はどうお考えになっておりますか、お伺いをしたいと思います。
  144. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは予算委員会でも話が出ておりましたように、たとえば担保の問題その他からいいましても非常に気の毒な状況にある方があるように承知をいたしておりますので、これらに対しましては、実態を通産省との間に十分相談いたしまして、適切な措置を講じたいと考えております。
  145. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 もう少し具体的にお尋ねをしたいと思いますが、利子の補給なども、これはいまおっしゃった適切な措置一つに含まれるべきではないかと思いますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  146. 愛知揆一

    愛知国務大臣 利子の問題につきましては、利子の補給というよりも、特利の設定ということのほうがもっと直接的ではないかと考えております。
  147. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 担保の話も先ほど出ましたが、もちろん無担保で貸し付ける、このことも、いまおっしゃった適切な御処置のうちの一つと伺ってもよろしゅうございますか。
  148. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはすでに通牒の中にも出しておりますけれども、信用保証協会等も活用いたしまして保証で貸し付けをするということを考えております。
  149. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 あるいは大臣は実態についてまだ十分な御報告をお受けになっていないのかもしれませんが、信用保証協会をすら利用できないような業者も、先ほどあげました業界地域では決して珍しくありません。保証協会ももちろん何らの人的保証すらなしで貸すようなシステムにはなっておりませんので、そういった程度に被害を受けて苦しんでいるそういう業者の人たちについて、いま申しました無担保、そして無保証、そういった融資の措置を、いまおっしゃった適切な措置の中に含めて伺ってもよろしゅうございますか、お考えを伺いたい。
  150. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはなかなかむずかしいところでございますけれども、お話のような実態について、さような必要がどうしてもということであれば、何か適宜な措置考えなければならない場合もあろうと思います。
  151. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 問題を救済する方向で適宜な措置をお考えいただくということを強く期待をいたしまして、この問題についての政府の御処置をなお引き続き期待したいと思うのですが、金融措置とあわせまして為替措置についてお尋ねをしたいと思います。  それぞれ契約済みの債権につきまして、あるいはまた今後の契約につきましても、関係業界ではずいぶんと努力をしてまいったわけでありますが、その中で、たとえば一、二の例をとりますと、大体二百八十円くらいで何とかいけるのではないかというようなことで、実質的にレートをきめたりいたしまして関係業者はたいへん努力をしております。しかし一方、実勢がだんだんと明らかになってきて、そして為替差損についての心配、不安が非常に大きくなってきた。一方、政府のほうの御答弁では、先日来、これは実勢をさだかに見定めるまでは固定の時期、幅については何とも言えない。はっきり不安が生じており、そのことが日々拡大し、しかも生業の基礎が脅かされておりながら、政府のほうとしてはそのことについて何ら明確なめどを示されない、こういった業者の先行きの不安について、ことに為替差損の心配について、大臣としてはどうお考えになっていらっしゃるか、これをどのように扱おうとなさる御所存であるか、御見解を伺いたい。
  152. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず、そのとりました措置としては、二十日の日に、中小企業製品にかかる輸出成約の円滑化のための外貨預託というものを閣議で決定いたしまして、為替予約を受けた外為銀行に対して外為会計からその予約額に見合う外貨を預託することにいたしたわけでございます。
  153. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 いまお尋ねしております差損の補償、あるいは業者のほうから出ております差損の保険については、大臣としてはどうお考えになっておりますか。
  154. 林大造

    ○林(大)政府委員 若干技術的な面にわたりますのでお答え申し上げますが、輸出関連業務に伴いまして生じます為替上の不安といいますものには、船積み前と船積み後とございまして、船積み後の為替不安というものは、為替債権を銀行に割り引いてもらうことによりまして業者は不安を免れることができるわけでございます。それから船積み前の為替リスクにつきましては、通常の場合でございますと先物予約をいたすわけでございます。この先物予約が前回の場合には非常にむずかしい状況でございました。それで先物予約を円滑に行ない得るようにということで、ただそのような予約を行ない得るようにいたしますには、結局為替リスクを外国為替資金特別会計で引き受ける、かぶらなければいけない、しかし、それにふさわしいものに限るという趣旨で、中小企業製品に限りましてその種の為替リスクを国でカバーするという措置をとりましたわけでございます。それを今回も同様な方式で実施することにいたしました。  荒木委員お尋ねの為替損失というのは、そのような為替リスクの不安という問題ではなくて、すでに現在の為替レートが、かつての三百八円とかあるいは三百一円というレートからだいぶドル安になっているということによる為替上の差損ということかと存じますが、それは為替レート政策上ではいかんともなしがたいわけでございまして、まあこれにつきましては、先ほどから話が出ております融資とかその他の面で別途措置をするという大体のかまえになっているわけでございます。
  155. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 確かにこの問題を金融技術的にあるいは法律的に見まして救済はいかんともなしがたいという答えになるかもしれませんが、私がお尋ねしておるのは、これを政治的にどういうふうにお取り扱いなさるか。すでにクリスマス電球などでは昨年の十二月から一月にかけまして現在の契約の七割から八割が契約済みでありまして、いま局長が言われた、まさに私がお尋ねしておる差損はそういった部分でありますけれども法律的な処理は別といたしまして、政治的には、政府のいままでとってみえた輸出第一主義、こういったことで、ほんとうに生業として営々として努力をし、しかも、前回の大きな被害にもかかわらず、なお一生懸命働いてこられた業者の人たち、それに対して政府としてはその損害に対して責任をもって補償する政治的な態度をはっきりおとりになるべきだと思いますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。
  156. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはいろいろくふうをしなければならないと思います。たとえば税法上の取り扱いにいたしましても、損失あるいは欠損の払い戻しというような還付の手続なども活用するということも考えの中に入れておりますし、それから金融上その他につきましても、できるだけの配慮をしたいと考えております。
  157. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 この問題につきましても、政府のほうとしてさらに救済する方向で十分検討を進められることを強く期待したいと思いますが、なおこれに関連して、先ほどちょっと一言申し上げましたが、保険制度の採用はどのようにお考えになっておりますでしょうか。
  158. 林大造

    ○林(大)政府委員 保険制度とおっしゃることの中身が、いろいろ人によって違っておりまして、世上非常に言われておりましたのは、プラントその他の長期延べ払い債権の為替リスクを国でカバーすべしという議論でございます。本件につきましては、いろいろな経緯がございましたが、結局、この為替リスクをこの際政府がカバーするということは、現在輸出が伸び過ぎていろいろ問題を起こしているときに、輸出をさらに助成するような結果になりはしないかとか、あるいはそのような長期の延べ払い債権で現実に輸出できるものは中小企業はほとんどないので、中小企業は大体普通の先物カバーの範囲内でカバーできるのではないかというような議論から、先物市場が円滑に機能している限りはその必要はないという一応の結論で予算編成その他の作業が行なわれたわけでございます。今回のフロートによりまして、先物市場、前回と違いまして、かなり円滑には機能いたしておりますけれども、依然として若干ドルの先物がいわゆるディスカウント、先物のドル安になっておりますので、それによります中小企業の、まあ何と申しますか、御不便を適宜調整するという意味におきまして、二月二十日に前回と同様な為替予約の円滑化をはかるための外貨預託を実施することにいたしたわけでございます。
  159. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 為替予約の問題で解消できるというようなお話のようですけれども、しかし私が問題にしております先ほど来あげたずいぶん多くの業界、業種、業者の方々は、この予約制度を活用するようなことさえなかなかできない人も少なくありません。これは実態についてはあるいはお耳に入っておるかと思いますけれども金融機関が予約を活用するような相手として取り上げないようなそういった雰細規模の業者もおりますので、そういうような人たちのために、前回も大きな影響があり、またまた今回もこういったことで不安、被害が起こる。このことは大臣よく御承知と思いますが、全体のいま問題にされております輸出の伸びを押えるということとは全く性質が違っておりまして、どちらかといえば社会保障あるいは零細業者の救済というほうがむしろこのニュアンスが勝っておるわけでありますから、その問題をはっきりそういうふうにとらえていただいて、いまの、技術的には局長がおっしゃるようなことになるのでしょうけれども、政治的に非常に大きな不安が生じておる業者の人たちに対する救済を強く要請したいと思いますが、そういう意味で検討される御意思があるかどうか、お伺いしたいと思います。
  160. 林大造

    ○林(大)政府委員 実は前回も同様な問題がいろいろ出てまいりまして、それで中小企業自身がこの種の為替予約をしなければいけないということになると、手続その他非常にやっかいでございますので、中小企業製品であれば、その中小企業自身でなくても、いろいろ取りまとめをいたしましたり、あるいは中間に業者が入りましてもよろしいわけでございますが、この制度の適用を受けられるようにという配慮をいたしたわけでございます。しかしながら、先生御指摘のような点が今後出てくることのないように、十分注意いたすつもりでございます。一応技術的な点はそういうことであります。
  161. 愛知揆一

    愛知国務大臣 荒木さんの御心配の点は私もよく理解できます。十分善処いたしたいと思います。
  162. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 善処していただくことを強くお願いしたいのですが、最後にもう一言お尋ねしたいと思います。  一番初めに申しましたように、現実に金を借りようとしても借りられないような事態にまでなっておる人たちもたくさんございます。業者の人があります。そこで財政措置として、先ほど予備費の中からの支出についても若干お話を伺いました。その予備費としてお使いになる方法ですね、どういう形で救済に役立てようとしていらっしゃるのか、これについての御方針あるいは御意見があれば伺っておいて、私のこの問題についての質問を終わりたいと思います。
  163. 愛知揆一

    愛知国務大臣 予備費についてはどういうふうな使い方をするのが一番適当かということについては、まだ確としたきめ方はしておりません。同時に、たとえば政府機関、三機関等に対する出資というようなことを考えます場合には、その資金量が相当大きく使えますから、これを予備費から考えるということも一つではないか。まあこれは異存のないところだと思います。それから、たとえばかつての繊維対策、四十六年度中、これは予備費を使いました前例もございます。いろいろそういったようなことを、用意を考えながら、そして先ほど来申しておりますような実態とそれから業界の要望というものをかみ合わせて、そして予備費で使う場合には、これは閣議決定だけで使途をきめ得ますから、かなり機動的に——もちろん、予備費の使途につきましては、従来からの財政法の解釈等の問題がございますけれども、この点については、こういうような特殊の事態でございますから、ひとつできるだけ相ミートするようなやり方をいたしたいと、こう考えておるわけであります。
  164. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 先日の政府の声明でも、その後の大臣の御答弁でも、万全の措置をとるということを繰り返しおっしゃっておりますので、ぜひ業者の要望にこたえるように実行していただくことを強く希望いたしまして、質問を終わります。
  165. 大村襄治

    大村委員長代理 広沢直樹君。
  166. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは大蔵大臣に、時間もありませんので、二、三見解をお伺いしておきたいと思います。  いま世界的なインフレ要因ということが問題になっておりますし、わが国においても輸入インフレの問題が大きな問題として取り上げられておりますが、アメリカのドルの流出と、それからIMFにおけるSDRの創出によって国際流動性が過剰傾向を示している。今回の通貨不安によってアメリカは金価格一〇%引き上げを行なったわけでありますけれども、このために世界的なインフレ要因を強めることになっておるのじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、この点についてどうお考えになっているか、お聞かせいただきたい。
  167. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これがなかなか日本としてもむずかしいところでございまして、午前中にも申し上げましたけれども、国際収支上の黒字が累積するということが、国内的な過剰流動性資金がダブついてくる、これに対してどうしていくかということでございますが、当面の前後数カ月間のところで申しますと、相当の流動性資金がダブついておる。これに対しては、累次、御承知のように、あるいは土地に対し、あるいは株式に対して相当きつい金融規制を行なってまいりましたし、それから全体としては準備率引き上げ中心にいたしまして、かなり目的的な規制をやっておるわけでございます。それから、その後変動性に移りましてからは、その抜け穴と申しますか、これは大体とまりましたものですから、今後の金融政策といたしましては、当面のところは目的的な引き締めというものが相当効果を発揮できるように運営できるものと思います。ただ、長期的に世界的な問題としてお取り上げになっているわけでございますから、これは国際的な通貨の調整と、それから国際的な貿易の調整ということが何とかこれからうまくいくように、その根本についての対策を講じていかなければならない、これはなかなかむずかしいところであると考えております。
  168. 広沢直樹

    ○広沢委員 国内的な問題は先ほどからいろいろ論議がありましたので、いま私がお伺いしたのは、こういうようなアメリカのドルの流出と、それからいまのSDRの創出によって国際流動性というものが過剰傾向を強めているのじゃないかという見方をしているのですけれども、それが要するに世界的なインフレ要因を強めている結果になっているのではないだろうかと考えるのですが、その点についての見解をお伺いしたわけです。
  169. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これには関係国、特にアメリカの国内、国際両方の政策に期待するところも非常に大きいわけでございます。で、これらの点についてはあらゆる機会において協力を求めていかなければならないと思います。
  170. 広沢直樹

    ○広沢委員 アメリカの金価格の引き上げに伴いまして、要するに金の投機が、先ほどもお話がありましたように、欧州の自由金市場では一オンスが九十ドル、きょうの新聞によりますと、そうなっております。この投機筋がドルの再切り下げあるいは公的金価格の再度引き上げ、これを予想しているのではないかと思われるような金の投機がいま行なわれているわけですが、また金と通貨が依然として、こういう面から見ますと表裏一体の関係を示していることになるのではないか。やはり何か通貨問題が起こりますと、すぐに金の投機という形が出てまいります。その点はどういうふうに判断しているのか。きょうは見解だけをお伺いしているわけですが……。
  171. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この金の問題は、先ほども申しましたが、たとえばドルが基準通貨として機能するということのためには、金との交換性を回復してもらわなければその機能を十分に発揮できない。しかし、はたしてそういうことが可能であろうかどうかということになりますと、なかなかそうでもなさそうだという見方が強いわけでございます。したがいまして、金というものと離れてといいますか、やはり従来日本も主張しておりましたように、SDRというものを魅力のある、内容のあるものにして、これを中心に動くようにするということが、まあこのしばらくの問、そう言っていてもなかなかできることとも思いませんけれども、将来の一つの理想的な体制としては、これが育ち上がるようにしていくということが、時間はかかるけれども、本来の行く筋ではないだろうか、こういうように考えるわけでございます。
  172. 広沢直樹

    ○広沢委員 さきにアメリカの連邦準備制度理事会の議長でありますバーンズ氏が、二十日のアメリカの上下両院の合同経済委員会の証言で、三回目のドルの切り下げの可能性、こういうような意味のお話をなさって話題をまいているわけですが、こうしたことが一段と金の投機に拍車をかけているのではないかと考えられますけれども大蔵省当局としては、こういった面どういうふうに受けとめておられるか。いかがでしょう。
  173. 林大造

    ○林(大)政府委員 私どもが入手している情報によりますと、今度の金の相場の上昇は、米ドルが一〇%切り下がりました、それに伴う自然な調整ということから始まったものだと思われるけれども、しかし、為替市場がまだ安定を取り戻していない。きのう欧州市場では、ドルはかなりの値下がりをいたしております。そういうような情勢を背景として、金のドル建て価格の訂正高の動きが次第に加速されてきたものと思う。そしてその買い手はどんなところがあるかというと、これは米国、欧州、中近東と、あらゆる方面に及んでおりまして、日本筋の買いは散見される程度であるという情報が入っております。したがいまして、この背景に通貨問題があるというふうにもいわれておりますし、また、ドイツで流入した外資が約十億ドル前後還流したといわれております。ドイツから出てきたその投機資金が金に向かったのであるともいわれております。そういうような非常に不安定な状況であることは、御指摘のとおりであると思います。
  174. 広沢直樹

    ○広沢委員 先ほど大蔵大臣からお話がありましたように、今後ドルの交換性の回復ということがやはりこれからの大きな問題になってこようかと思うのです。しかしながら、一〇%切り下げたということは、世界のドルへの不信をさらに何倍か大きくした要因になったのじゃないかと思われますし、自由金市場における金の騰貴は、やはり一面、ドルから逃げるといいますか、逃避運動のあらわれじゃないかと見られるわけですが、これがいま申し上げたように通貨不安に新たな要因を加えるようになっておりますし、金とドルの交換性の回復という問題をやはり一そうむずかしくしているようなことになっているのではないか、こういうふうにも考えられるわけですが、この点いかがですか。
  175. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはアメリカがどうやるかということで、早計にコメントもできませんけれども、非常にむずかしいことになっているというふうに多くの人が見ているのではないかと思います。
  176. 広沢直樹

    ○広沢委員 ここでもう一点お伺いしておきたいことは、外貨準備に占める、先ほどもお話がありました金の保有高というものは、各国においてまちまちであるわけです。今度の金の価格の引き上げということは、やはり金保有の多い国が得をした、結果的にはこういうことになるわけですし、国際経済の上から考えてみても、このような不平等な処置が各国にひとしく強制されることになり、通貨不安を激増させる要因となっているのではないか。そこで、わが国は金の保有が他国に比べて非常に少ないわけです。ですから、今後金の保有についてはどういうふうに考えておるのか。これは先ほどから数字を示されておりますように、日本は極端に少ないわけですね。この点はどういうふうに今後考えておられるのか、伺っておきたいと思います。
  177. 愛知揆一

    愛知国務大臣 従来金が外準の中で非常に少なかったということは、今日までのいろいろの経緯がございまして御承知のとおりと思いますけれども日本としては、俗なことばで申しますと、数年前までは金を買うだけの余裕が外貨準備の中になかったということもいえるのではないかと思います。そして、その後の状況におきましては、ドルもだんだん信認が薄らいでくるし、こういうときに金買いするようなことは国際的な調和を乱すのではないかという配慮もあったのではないかと思います。同時に、今日国際情勢がこういうふうな状況でございますから、日本として金に対して通貨準備としてどうするかということを確定的にここでお話しをするような基本政策というものがまだ日本としてはきめ切れない。いろいろの条件、いろいろの情勢の判断も必要でございましょうから、外準としてこの際あらためて金の保有を多くするということに向かうがいいかどうか、これはいましばらく考えなければならない問題であろうか、こういうふうに考えております。いま直ちに政府が方針として金準備を多くするということに方針を切りかえるというところまでは考えておりません。
  178. 広沢直樹

    ○広沢委員 いま直ちにどうこうせよということよりも、いまこういう不安の中で行なうということになれば、新たな不安をまた呼び起こすことにもなりましょう。  そこで、さっき大臣のおっしゃったSDRの問題なんですけれども、通貨調整後、第三の通貨としての通貨改革をこれからやらなければならない段階になるわけでして、その場合に、国際会議においてこの問題が大きく問題化されるだろうと思いますが、現在の国際経済の環境の中でこれを魅力あらしめるというか、定着させていくということは、いままでいろいろ論議されながら、あいまいといっては語弊がありますけれども、あと回しにされてきたわけです。これに対して、いま言うような政府のお考えであるならば、どうしても第三の通貨を考えていかなければいけないわけですから、これに対して、今日の国際経済環境の中で政府はどういう対策を持っておられるか。それがなくて、金の保有も非常に少ない、そしてこういうふうな通貨不安が起こってきているということであれば——どっちもつかずでは困るわけですね。その点どういうふうに考えておられますか。
  179. 林大造

    ○林(大)政府委員 若干技術的な経過がございますので御説明申し上げますが、SDRを魅力あらしめるためにどういう手段があるのかということで考えられますのが、一つは金利でございます。金利は現在SDRにつきましては年利一・五%、それをもう少し上げるという方法がございます。それから第二には、SDRの価値は金にリンクしております。それを、金よりも強くなる通貨があれば、この前のときの円のように、金と同じよりかもうちょっと価値を強くしたらいいではないかという考えがございます。第三に、そのほかに、SDRに付属しております各種の制限をいろいろ手直しをすることによりまして若干余地があるかとも思われます。この点につきましては、まだ具体的にどうこうという話は出ておりません。第一、第二の方法で、その方法によってSDRのいわば債務者の負担も変わってくるわけでございますが、どういうふうにしたらよろしいか。日本の立場からすれば、どちらかというと、現在は黒字の国でございますから、したがって、SDR建てのいわば債権を持つ立場でございます。その日本の立場からすれば、SDRを魅力あらしめるために、金利の面でも価値維持の面でもできるだけ魅力あるものにしたらよろしい。それに対しまして、なかなかそうはいかないというような議論も各国でございまして、現在二十カ国委員会検討の範囲でいろいろと議論が行なわれているということでございます。
  180. 広沢直樹

    ○広沢委員 最後に一言伺っておきたいのですが、これから二十カ国委員会が行なわれるわけですけれども、先ほど申し上げたように、いままでの進展を見ておりますと、国際収支の調整における国内政策だとか、いま盛んに論じられておりますが、価格政策とか、その役割りについて論議される。これは前回の円切り上げのときもそうです。過剰ドルの問題とか、SDRあるいは金をどうするかというような問題が明確にならないと、将来においてまた絶えず通貨不安を残したままになっていくわけです。したがって、今回においては、通貨改革という問題が大きな論議を呼んでくると思うのですが、それに臨む姿勢としてどういう姿勢を持っておられるのか、これから当然この問題が焦点になってこようかと思われますので、基本的な姿勢だけをお伺いして終わりにしたいと思います。
  181. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは一言にして申しますと、ドルが金兌換ということができない、あるいは非常にむずかしいということが見透えられるならば、それにかわるものがなければならない。しかし、どこの一国の通貨もこれを引き受けるといって名のり出るものはありませんと思いますから、結局、いままでいろいろの知恵者が創造してきましたSDRというものは、いまも局長からお聞き取りいただいたような経過や意義があるのでありますから、SDRを中心にして国際通貨の安定ということをはかるという方向に各国が積極的に協力し合うということ以外にないのではないだろうか。これもしかし先ほど申しましたように、なかなかそう簡単にはいくまいと思いますけれども、二十カ国なら二十カ国がそういう意図に向かって積極的な努力と協力をする方向をつくり上げること。それからもう一つは、やはりこういう不安定な状態が続くことは各国ともまことに好ましからざることでありますが、これは同時にそれぞれの国のビヘービアにもかかわるところが重大なわけでございますから、各国がそれぞれ自国内において、たとえばインフレ抑止の徹底した対策をそれぞれ講じ合うとか、あるいは資本の流出についてこれを抑止するというような点について主要国間の思想統一をしていくということがさしあたり一番必要なことであろう、私は、日本としてもそういう態度で臨むべきではないだろうか、こういうふうに考えております。
  182. 大村襄治

    大村委員長代理 次回は、来たる二十七日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十二分散会