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1973-06-15 第71回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十五日(金曜日)     午後二時五十二分開議  出席委員    委員長 田代 文久君    理事 田中 六助君 理事 地崎宇三郎君    理事 山崎平八郎君 理事 山下 徳夫君    理事 多賀谷真稔君 理事 渡辺 惣蔵君    理事 多田 光雄君       愛野興一郎君    荒木萬壽夫君       倉成  正君    三枝 三郎君       篠田 弘作君    塚田 庄平君       八木  昇君    瀬野栄次郎君       松尾 信人君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君  出席政府委員         北海道開発庁総         務監理官    山田 嘉治君         通商産業省公害         保安局長    青木 慎三君         通商産業省鉱山         石炭局長    外山  弘君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 佐伯 博蔵君         労働省職業安定         局失業対策部長 桑原 敬一君  委員外出席者         自治省財政局財         政課長     土屋 佳照君     ————————————— 委員の異動 六月二日  辞任         補欠選任   稲富 稜人君     安里積千代君 同月十五日  辞任         補欠選任   安里積千代君     稲富 稜人君     ————————————— 六月十三日  福岡県金田町の残存鉱害早期復旧に関する請願  (中村寅太君紹介)(第七二一一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(大夕張炭砿に関する問題  等)  常磐炭砿株式会社西部炭鉱災害について説明  聴取  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 田代文久

    田代委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  去る四日、本委員会において常磐炭砿株式会社西部炭鉱災害実情調査を行ないましたので、この際、派遣委員から報告聴取いたします。田中六助君。
  3. 田中六助

    田中(六)委員 この報告は、いま委員長が申し上げましたように、六月四日に私どもが行った報告で、その後十二日にこの同じ炭鉱火災が起こっておりますが、その分ではございませんので、あらかじめお断わりしておきます。  常磐炭砿株式会社西部炭鉱災害現地調査の結果を御報告申し上げます。  日程は、六月四日、現地西部砿業所におもむき、直ちに、常磐炭砿株式会社並びに常磐西部炭砿労働組合、同職員組合から説明並びに要望等を承ってまいりました。  派遣委員は、田代委員長をはじめ、多賀谷真稔君、多田光雄君、瀬野栄次郎君、安里積千代君と私の六名でありまして、上坂昇君が現地参加されました。  まず、西部砿業所概要について簡単に申し上げます。  当鉱は、四十六年三月、常磐炭鉱磐城砿業所閉山に伴い、同年四月、磐城砿業所西部砿の一部を常磐西部炭鉱株式会社として操業を開始、その後四十六年十一月、常磐炭砿株式会社に吸収合併し、同社西部砿業所として今日に至っているものでありまして、いわき渡辺町に所在し、従業員数は千二百二十五名、うち請負者四十八名、職員百七十二名であります。  炭質は低硫黄の一般炭で、稼行払いはマイナス五八〇レベルに一払いを有し、ドラムカッターによる採炭を行なっております。四十六、四十七年度とも年間約六十万トンを生産し、大部分を常磐共同火力に納炭しているのであります。  次に、災害概要について申し上げます。  災害発生は、去る五月二十九日十四時三十分ごろ、西部立て坑第三人道坑付近火災発生したのであります。出火後、直ちに、当時入坑していた五百二十九名に対し、坑内有線放送を通して退避命令を発動するとともに、別途、消火班及び救護隊を編成して、消火救護に当たったのでありますが、不幸にして、当時入坑していた者のうち三名が一酸化炭素中毒並びに窒息により死亡し、さらに消火作業に当たっていた者のうち一名が落盤により死亡、また、十六名が一酸化炭素中毒のため入院したのでありますが、このうち五名は三十一日に退院したのであります。  ここにとうとい犠牲となられました四名の方々の御冥福をお祈り申し上げ、あわせて御遺族の方々に対し、衷心より哀悼の意を表明するものであります。また、現在なお入院中の十一名の方々の一日も早い回復を心からお祈り申し上げる次第であります。  坑内火災原因につきましては、四日早朝より、東京鉱山保安監督部警察当局等により現場検証が開始されておりますが、まだ結論を得るに至っておりません。  次に、現地における要望等について申し上げます。  会社側からは、早急に原因究明し、通気系統を復旧する等諸般事後処理を行なった上、安全を確認して、早期生産再開できるよう望んでおりました。また、労働組合からは、一、坑内有線放送複線化配置個所の再検討、二、保安巡視、特に通常無人個所巡視完全励行、三、坑内木造建屋廃止等が要望され、職員組合からは、一、坑内木造建屋廃止、二、坑内電灯線撤去等が要望されました。  次に、現地における調査を通してのわれわれの所見について申し上げます。  第一は、まだ保安第一という点が徹底されていないのではないかということであります。これは、出火地点と目される場所が、通常火の気がなく、保安巡視の経路からもはずされているところで発生したことであります。とかく災害は思いがけない個所から発生する場合が多く、坑内には全く安全だといえる場所はないとの認識を欠いていたと考えられます。  第二は、坑内に不必要な可燃性資材等を持ち込むがごときは厳に避けるべきであるということであります。やむを得ず倉庫等を設ける場合でも耐火構造とし、不必要な電灯線などは撤去することが必要であろうと存じます。  第三は、一酸化炭素マスクについてでありますが、今回不幸にしてなくなられた方々は、退避を誘導する際、マスクの適正な使用ができず犠牲になられたとも思われますが、長時間の着用が可能で、激しく活動しても息苦しくならない安全なマスクを至急開発する必要を痛感いたしました。  第四は、災害発生後の関係当局に対する連絡体制整備についてであります。今回、消防、病院、警察関係当局等に対する災害発生連絡がおくれたのは、まことに遺憾であり、いたずらに災害の規模を拡大するおそれもありますので、日ごろから、非常の際に備えた連絡体制整備しておく必要がありましょう。  今次災害は、坑内保安巡視がまんべんなく実施されていたとしたら、あるいは未然に防止することが可能だったのではないかという印象を受けてまいったのでありますが、今後、原因究明を早急に行なって、責任の所在を明らかにするとともに、国においても、一そう行き届いた保安体制確立に全力を傾注し、保安意識の向上につとめ、炭鉱災害の絶滅を期するよう特段の努力を払うべきであると考えます。  また、現在第五次石炭政策が進められているところであり、特に当鉱は、常磐共同火力石炭を供給する重要な責務を負っております。すみやかに諸般事後処理を完了して、早期操業再開できるよう、関係者並びに政府当局に対し強く要望するものであります。  次に、遺家族対策につきましては、すでに労使双方の話し合いが終わり、五月三十日、会社から一人七百万円の弔慰金が支払われており、遺家族の今後の生活等については労使において万全を期していくということでありました。  次に、この機会にあわせて調査を実施した旧常磐炭鉱鹿島排気立て坑爆発事故について申し上げます。  本件は、いわき市常磐松久須根町に所在する旧常磐炭鉱鹿島排気立て坑において、株式会社福島環境整備センター廃棄物を投入していたところ、去る四十七年十二月七日午後五時十八分ごろ爆発事故を起こしたものでありまして、死亡二名、重軽傷九名の罹災者を出しております。  原因については、目下、福島警察本部が鋭意究明しているところであります。  廃棄物投入に至る経緯は、去る四十六年七月に坑口の閉鎖を完了して以後、四十七年七月に、産業廃棄物処理事業者である株式会社福島環境整備センターから福島県知事に対し、立て坑内廃棄物を投入することの許可申請提出され、同年十一月二十一日に許可されたのでありますが、同センターでは、正式に許可される以前の十一月一日以来事故発生までの間、廃棄物を投入していたものであります。  爆発原因について、現在推定されているところによれば、小名浜港から運搬してきた原油スラッジが、投棄中に爆発したものでありまして、同スラッジから発生した可燃性ガス及びダストミスト等に、スラッジとともに落下した金属片等坑壁と衝突して発生した火花等が引火したものと見られております。  現在は、同センターの手により隣接する山から土砂を採取して埋め戻し工事を実施しておりました。  廃止坑の利用については、危険性が高いため、今後、慎重に検討する必要があろうと考えます。国は、これを機会に、全国に存在する廃止坑の安全が守られているかどうか、点検する必要があると存ずる次第であります。  以上で御報告を終わります。
  4. 田代文久

    田代委員長 これにて派遣委員報告は終わりました。     —————————————
  5. 田代文久

    田代委員長 次に、常磐炭砿株式会社西部炭鉱のその後の災害について、政府より報告聴取いたします。青木公害保安局長
  6. 青木慎三

    青木政府委員 五月二十九日の事故に引き続きまして、六月十二日再び常磐炭砿火災がございましたので、その概況について御報告申し上げます。  災害を起こしましたのは、常磐炭砿株式会社西部炭鉱西部本坑でございます。  災害発生個所は、西部本坑東斜坑右一片坑道でございます。災害発生をいたしました日時は、昭和四十八年六月十二日二十二時三十分ごろでございます。  災害の種類は、自然発火疑いでございます。  罹災者は、入院者十二名でございます。  災害概況につきまして簡単に御報告申し上げます。  六月十二日二十二時三十分ごろ、排気坑道で煙が流れているのを発見いたしました。その火源の確認をさせましたところ、東一斜坑右一片坑道の一卸切りかえ坑道分岐個所のベルトコンベアーが燃えているのを発見いたしたわけでございます。  この災害の通報を受けましてから、保安技術管理者指示によりまして、入坑しておりました二百三十名は無事避難昇坑いたしました。  さらに一方、火災現場では、消火せんを利用し、人気側から消火作業を行ないましたが、坑道が崩落したため直接消火ができなくなりましたので、火災個所の入排気側遮断壁を設けて通気を遮断することによりまして、十三日の二時五十分、この工事を完了いたしております。  排気側は、やはり入気側遮断壁から約百十メートル離れた個所遮断壁をつくることで作業をいたしておりましたが、その際作業をしておりました者のうちから頭痛を訴える者が出ましたので、検診を受けさせました結果、十二名がCO中毒疑い入院いたしました。  その後、入排気遮断壁間坑道をフライアッシュで充てんすることにいたしまして、十三日の十一時過ぎにこれを開始しまして、十八時三十分ごろまでに約六百トンを注入して一応完了いたしております。さらにその固化を待ちながら、十四日から断続的に注入を続けております。  通産省といたしましては、直ちに東京鉱山保安監督部及び同支部から鉱務監督官を派遣して、その災害処理及び原因究明に当たらせておりますほか、本省から石炭課長現地に派遣しております。十三日、公害保安局常磐炭砿社長を呼びまして、保安確保に万全を期するよう厳重に警告しましたほか、同日東京鉱山保安監督部長は、西部炭鉱保安統括者及び保安技術管理者に対しまして、行政処分として戒告書を交付いたしまして、災害発生報告が遅延したこと及び災害発生したときの応急措置が不十分であったことにつきまして、戒告をいたした次第であります。
  7. 田代文久

    田代委員長 以上で報告は終わりました。     —————————————
  8. 田代文久

    田代委員長 次に、大夕張炭砿問題等について質疑の申し出がありますので、これを許します。渡辺惣蔵君。
  9. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 第五時答申の直後にもかかわらず、石炭産業界は非常に大ゆれにゆれております。特に大夕張問題では重要な問題を多くかかえておりますし、非常に特殊な現象に属しますので、大いに国会論議を重ねなければならなかったにもかかわらず、閉山通告がありました。四月の末以来、一度もこの問題に触れる機会がございませんでした。連休来、国会のいろいろな問題が起こりまして、ことに連続的な政府関係の人々の失言が相次ぎ、そして中村議長辞任増原防衛長官退任等が相次ぎ、その上、去る八日に質問をするつもりで張り切っておりましたところが、中曽根通産大臣のまた失言が、当該大臣失言が出まして、遂に委員会開催不可能におちいってしまうという、あげてこの重要な問題が討議の機会を失ってきたことは、政府関係筋のミスのいたすところで、遺憾にたえないところであります。  ことにこの時期におきまして、すでに御存じのように、一月には石狩炭鉱閉山され、二月には赤間炭鉱閉山される、三月には三美炭鉱閉山される。また、ただいまの状況の中ですでにいつとはなしに奈井江町にあります滝口炭鉱閉山になって、遂に総撤退をしてしまいました。しかもこの時期に、閉山が相次ぐ中で、いま報告がございましたように、常磐炭砿災害が五月二十九日にあったと思ったら、今度は六月十二日に再度、同一の炭鉱災害が起こり、多くの問題を残したということは遺憾にたえないところでありまして、何かたるんでいるのではないかという感じがするわけでございます。ことに公害保安局関係では、常磐炭砿災害に、それぞれ国会からまで委員派遣等が行なわれまして調べておりますにもかかわらず、再度の災害が起こり、しかもその災害再開許可をした三日後に起こった災害であるという意味において、私は、通産省監督行政の弛緩しておることを指摘しなければならぬと思います。  この問題につきまして、再開を許可するに至った経過災害の後における点検がどのように行なわれたか、ことに現地のその任に当たられた公害保安局担当官責任を明らかにしてもらいたいと思います。特にこの点につきまして御答弁を承りたいわけであります。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 重ねて災害が起きまして、まことに遺憾な次第でございます。  前回の災害あとにいろいろあと始末等をやらせ、保安上の点検を最後にやりまして、係官が坑内を一巡しまして、それで、大体だいじょうぶだということで再開したと報告を受けています。しかるに、またこのようなことが出ましたことは、いずれにせよ、監督不行き届きのことがあったのではないかと思います。  具体的な点につきましては、局長から答弁申し上げます。
  11. 青木慎三

    青木政府委員 五月二十九日の災害後、操業再開許可にあたりましてどのような措置をとったかについて御説明を申し上げます。  五月二十九日に坑内火災発生しましたが、坑内火薬類取扱所に火が入りましたので、爆発のおそれがあったということで慎重に状況を見守っていたわけでございますが、六月四日にその火薬類取り扱い所付近ガス状況が安定してまいったわけでございます。  このような状況を踏まえまして、六月五日再開に備えての全坑内の一斉保安点検を五名の鉱務監督官が行ないました。その結果、六月五日付で東京鉱山保安監督部平支部長から鉱業代理人あてに、災害発生時において的確迅速に指示命令を行なうこと等、十七項目監督指示書を交付いたしたわけであります。  これに対しまして、鉱業代理人から改善実施報告書提出されて、六月六日に受理いたしました。改善実施結果につきましては、五名の鉱務監督官追跡検査を行ないましたが、指示事項十七項目のうち十六項目実施済みでございまして、継続中のものが一項目あったわけでございます。  それから一方、坑内機電関係につきましての総点検は、六月五日の一斉保安点検とは別に、鉱務監督官が四名で、六月六日から九日に行ないました。その結果、改善を必要とするところは、第一人道坑電灯線保安状態が不良であったため張りかえること等、十一項目ございまして、即時改善させた次第でございます。  また六月七日には、災害重大性にかんがみまして、監督官指示書内容を含めまして、東京鉱山保安監督部長名鉱業代理人あてに、火災防止消火設備等の完備、指揮命令系統確立等、特に重要な十項目につきまして、あらためて文書で指示いたしました。  これに対する改善実施報告書を六月九日に受理し、審査した結果、操業再開させても保安上支障がないものと認めて、六月十一日十三時四十分に再開を許可したわけでございます。  以上のとおり、災害後につきましては、監督官が中へ入りまして、以上のような指示事項指示いたしまして、一応安全と認定いたしまして操業再開させたわけでございます。  ただ、今回の第二回目の火災は、切り羽付近自然発火でございまして、その消火にあたりまして会社のとりました消火作業等につきまして、必ずしも万全ではなかったような点もございますので、今後、十分調査をいたしました結果、所要の措置をとってまいりたいというふうに考えております。
  12. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 私は、重ねて常磐炭砿災害問題について質問したい問題をたくさんかかえておりますが、残念ですが、大夕張問題が時間が限られておりますので、私の質問は打ち切りますが、他の委員の諸君からさらに重ねて細部にわたりまして質問が継続されるであろうことをお伝え申し上げておきます。  そこで、大臣にお尋ねしたいと思うのでありますが、今度の大夕張閉山問題は、第五次答申直後の問題として、特に北海道で一級の山でありますし、その及ぼす影響がきわめて大きいことは当然であります。特に、この閉山問題が非常に特殊な問題でありますことは、会社側は、三月、九月及び十二月の経営協議会を通して、労使協議会段階において、総炭量数千六百万トン以上があるのだ、安心して出炭業務に協力するようにと、しばしば胸をたたいてきたわけであります。そういうことで、地域社会におきましても、地方自治体におきましても、労働者にいたしましても、安心してこの労働に参加してきていたわけであります。十二月までは、会社は、胸をたたいて、千六百万トンは可採炭量があることを言明しておきながら、突如として四月の段階になりまして、一斉に炭労の組織が新年度にわたります長期生産計画提出要求の戦いを展開した、その長期生産計画提出会社に求めた過程において、会社が、どうしても生産計画を出さない、出せないという状況の中で、ついに閉山を声明したという、従来のような終掘とか災害その他の事情によって閉山を提案したというのとは異なる、長期生産計画を作成するという前提に立って問題が表面化してきたという特殊な例であります。こういう例は従来の数多い炭鉱閉山の中で、あまり例を見ないわけであります。  そこで問題は、二千万トン体制をつくり上げた第五次答申過程において、このような、可採炭量が限界にきておるから閉山せざるを得ないような結果であるということが、通産省では事前にわかっておったのではないかという疑念が生ずるわけです。もし通産省事前にわからなかったら調査不足であるし、また、会社側が知っていて、労働意欲の低下をおそれ、あるいは資金繰りその他の金融関係との調整の必要上、対外的には、閉山するなんということは絶対ない、将来非常に有望な山であると胸を張ってきたのではあるまいか、労働者をだましてきたのではあるまいかという疑念が、同時並行的に起こるわけであります。  それと同時に、問題になりますのは、第五次答申の二千万トン体制樹立の中において、一体大夕張炭鉱をどういうような位置づけをしておったのか。この二千万トン体制に大夕張は入れておらなかったとすれば、これはあらかじめ危険鉱であるということがすでにわかっておって労働者をだましたということになりますし、もしこの二千万トン体制に入っているのだということになりますと、すでに二千万トン体制の第五次答申の基礎が崩壊をしたという論理に通ずるわけであります。この間の経過はどうなっておったのか。大臣が無理でありますれば、局長もしくは部長から答弁を求めたいと思います。
  13. 佐伯博蔵

    佐伯政府委員 大夕張炭鉱が、先生御指摘のように、四月の十九日ですか、閉山提案をいたしたわけでございます。もともと大夕張炭鉱は、原料炭炭質はよろしい炭鉱でございますが、断層や褶曲がきわめて多い、そういう意味での自然条件はきわめて悪い炭鉱でございます。特に、先生おっしゃられますように、四十六年ごろに、炭量は千六百万トンぐらいあるというふうなことが私たちのほうにもお話がございました。また、先生おっしゃいますように、会社のほうでもそのように言っておったようでございます。その後、昨年の暮れになりまして、ボーリングの結果、大二股断層というのが傾斜が全く変わっておるということが判明いたしました。その後、相並行いたしまして探炭坑道あるいは坑内ボーリング等をいたしまして、それがほんとうに大二股断層であるか、あるいはそれの派生断層であるかということを鋭意突きとめておったようでございます。いよいよそれが大二股断層そのもの下あるということになりまして、北部区域で掘っております炭量がなくなったということで、閉山を提案したというふうに聞いており、また、そのように判断いたしております。したがいまして、会社のほうでも、昨年の暮れ以来、同炭鉱労働組合と数回にわたりまして会議を開いて、それの打開策を検討しておったというふうに聞いております。  なお、千六百万トンの数字でございますが、私たちが判断をしておりますところでは、現在掘っておりますあたりのところから北に約五百九十万トン、それから四十二年の十一月に自然発火を起こしまして水没いたしましたところから深いところ、そこは地表から千メートルないし千メートル以上ございますが、そこに約一千万トンというふうな数字でございますが、その北部の現在掘っていますところは、五百九十万トンが、その後約二年ぐらい掘っておりますので、それからもう大体百五十万トンぐらい掘っておるわけであります。その残りがほんとうは当然あるべきところが、大二股断層が出現いたしましたので、急激に掘るところがなくなったというふうな状況でございます。比較的浅いところと並行いたしますと、深いところのせいもあるかもわかりませんが、深いところだけになりますと、特に先ほど申しましたような自然条件がきわめて悪く、かつガス湧出量がきわめて多い、かつまた自然発火の起こる可能性がきわめて多いところでございますので、深いところだけの操業はむずかしいというふうなことで閉山提案をいたしたわけでございます。  それからなお、先生先ほどおっしゃられました二千万トン体制でございますが、二千万トン体制そのものにつきましては個別の炭鉱をうんと積み上げたというわけではございませんで、日本全体といたしまして二千万トンを下らない需要をまず確保するということで答申も出され、私たちもその後の当時の手順のメモ等で二千万トン以上確保するということでいろんな作業もいたしておるわけでございます。特に個々の炭鉱の、こまかいと申しますか、積み上げということではないわけでございます。
  14. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 基本的な論議をしておりますと時間を食ってしまいますので、そのものずばり内容に入りたいと思いますが、いま問題になっていますのは三菱夕張地域だけであります。問題は、この地帯一帯は全く接続して一体の関係で、三菱が百億円前後の資本を投下して南大夕張炭鉱を開発しております。したがって、その続きにもずっと南下しますと、北炭夕張新鉱開発が百六十億円といわれる膨大な資金を投入して新鉱開発に集中しておるところです。だから、北炭の新鉱開発を分離して、北炭新鉱の問題を分離してかかっても、少なくとも大夕張問題については、同一資本である大夕張炭砿株式会社が従来二つの砿業所を経営しているわけですから、したがって地帯別に見ますと、接続した同一企業会社が二つの鉱を経営しておるわけですから、大夕張炭砿機構全体の総合的な対策がはからるべきだと思うのです。したがいまして、たとえば深部に約一千六百万トン埋蔵されておる二股の炭層のほうには約五、六百万トンの炭量がなお残存しておる。それからまた、南擾乱地帯といわれる南大夕張に接続する地帯には炭量もなおあるはずです。こう考えますと、全体を通した山別、坑口別の対策でなしに、総合一体の再開発方式がとられれば、なおこの山は生命を十分延ばし得るし、雇用拡大の道になると判断しておるのですが、どうも通産当局のものの考え方は、大夕張問題だけを独立して考えようとしているという危険があるわけであります。  一つの具体的な例を申し上げますならば、この大夕張炭鉱の坑口から南の炭量のある地帯に到達するには約二時間も坑道を通過しなければならない、往復四時間もかかるから稼働時間というものは圧縮されてくるという説明がなされてきておるのであります。しかし、それは北と南と一体の開発計画を樹立するならば、それが南の大夕張に接続している大夕張鉱の南の部分の炭量については、むしろこれは南大夕張の坑口から採掘することのほうが時間的なロスもないし生産体制も整うのではあるまいか、こう考えるのですが、この点につきまして、そういう二つの坑道をつなぎ合わせた総合一体の関係再開発の道が、生きる道がないのかどうか、この点についてただしたいと思います。
  15. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大夕張の件が会社と組合との間で大詰めに参りまして、閉山のやむなきの方向に至りましたことはまことに遺憾でございます。この間に地元の北海道の各方面から非常な御心配をいただきまして、私どもも恐縮に存じておるところでございます。  通産省といたしましても、事業を継続できるように、会社に勧告をしたりいろいろ努力をしてみましたけれども、いろいろ情勢を聞いてみますと、まことにやむを得ないのではないかという情勢に立ち至ったと思います。  経緯につきましては局長から御答弁申し上げさせますけれども、この事態になりましても、できるだけ居住の皆さま方に心配をかけないように、それから道や市と連絡をとりまして、いろいろ産業の誘致、民生安定のための諸施策等も誠実に実行していきたいと思っております。
  16. 佐伯博蔵

    佐伯政府委員 大夕張問題につきましては、きびしい状況だということ、なかなか国の財政的援助にも限度があるということで、閉山決定そのものにつきましては労使の御判断にまつわけでございますけれども、先ほど先生がおっしゃいましたように、現在採掘可能の比較的浅いところの炭量が、炭労の調査団でも約八十万トンあると言われております。私たちのほうの計算でも、実収率の見方等で若干のでこぼこがございますけれども、ほぼ同じぐらいではなかろうかというふうに存じております。そのうちで約半分以上、四十数万トンは南部の擾乱地帯から先のほうにございます。手前のほうの約四十万トン弱のものは小部分の掘り残した炭層でございまして、五万トンとか六万トンとかというふうに小部分でございまして、もともと自然条件等が悪うございますので掘り残したところでございますので、これはなかなか採掘がむずかしいというふうに存じます。ただ、その四十万トン強の南部擾乱地帯から先の炭量につきましては、採掘が可能なのでございますけれども、先生先ほどおっしゃられましたように、大夕張炭鉱の坑口から参りますと往復早くても三時間ぐらいかかる勘定になりまして、なかなか労務者の方もたいへんでございますし、採算上も問題があるというふうに存じます。そこで先生おっしゃいますように、そういう炭鉱の区画というふうなことにこだわらずに総合的な観点から見たらどうだろうか、この前も理事懇談会のときに先生から御指摘をいただきました。そういう観点で見ますと、南大夕張炭鉱のほうから参りますと比較的近うございます。特に現在は入昇坑に使っておりませんが、南大夕張炭鉱の幌南斜坑というのがすでに完成いたしております。そこに人車をつけますと往復で一時間ぐらいで行けるところにございます。そういう意味で、もし大夕張炭鉱閉山するというような場合におきましても、資源の有効利用という面からも、また南大夕張炭鉱のほうへ少しでも多くの方を配置転換をするという観点からも、南大夕張炭鉱のほうからその炭量を掘るほうがずっと経済的でもあるし合理的でもあるというふうに存じます。  それから、これも先生御指摘ございましたように、南大夕張炭鉱の近くにもとの北夕炭鉱、現在はもうなくなっておりますが、そこに、北夕炭鉱のほうからは掘れないけれども南大夕張炭鉱のほうからは掘りやすいという炭量がございます。これはつい先々月鉱区調整をいたしまして、南大夕張炭鉱のほうから掘れることにいたしました。したがいまして、この部分、それからまた大夕張炭鉱の南部の擾乱地帯先の炭量等は、南大夕張炭鉱のほうから掘ることにいたしまして資源の有効利用に資するのが、先生おっしゃいますように一番いい方法じゃなかろうかというふうに存じます。したがいまして、鉱区調整のほうはいたしましたが、南部擾乱地帯から先のほうは、もし大夕張炭鉱閉山するようなことになりますと、そちらから掘るようにすればよろしいかと思います。そういうような形で今後指導し、進めていきたいと思います。
  17. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 大夕張問題を南大夕張と一体の関係で把握する、そして同時に南大夕張の南部、さらに南にあるものとの、北夕炭鉱その他を加えた総合計画を立てるということはぜひ実行してもらいたいと思います。  それで、もう一つの問題でありますのは、大夕張自身の問題でありますが、大夕張は、資料その他によりますと、千メートル以下の深部について相当の炭量があることは会社側も認めておるところであります。ただ、深部でありますために、現実にボーリングをしたり、技術的な点等について十分の措置がなされておらない向きがあるようであります。この際、大夕張で一千メートル以下のところに炭量があるがこれを放棄するということになりますと、炭層が違っておっても、隣合っております北炭夕張新鉱のほうは、聞くところによりますと、千百五十メートル以下までの地点を開発の鉱床のうちに入れておると承っております。現在は五、六百メートルのところを掘っておるようでありますが、しかし深部開発に対して北炭側は非常に情熱と希望を持ち続けておる。しかし、ここでもし大夕張と隣合っている山が千メートル以下の深部開発を放棄するということになりますと、その精神的な打撃、社会的な影響等も非常に大きく、夕張新鉱開発につきまして打撃を与えることは必至の事情に属するのではないかと思うのであります。  これは大夕張問題、あるいは北炭新鉱の場合に限らず、先般閉山になりました奔別鉱の場合にいたしましても、これから継続されるであろうその他の赤平にいたしましても、芦別にいたしましても、どこの山にいたしましても、石炭産業に必要である深部開発を持続しなければいけない、地下資源の上からもこれは貴重な存在であるということになりますと、例外なしにどこの山も深部開発の問題にぶつかってくると思います。  したがいまして、ここで特に大臣及び当局の人々の決意を促したいのは、深部開発というテーマ、構想についてもう一ぺん検討してもらう時期に来ているのじゃあるまいか。したがって、深部開発に対しては、それなら特定の政府資金の援助も行なう、そして深部開発の積極的な技術開発をするために政府資金を投入して、そういう深部開発の技術的な問題の解明を行なう必要に非常に迫られておるのではあるまいかと私は考えるわけであります。そういう意味で、この際、大夕張炭鉱を従来の方式における閉山でなしに、深部開発の試験炭鉱としてそれを指定して、そこに新しい炭鉱技術の開発等を行なうべき必要があると思うわけです。  通産当局に言わせれば、それはそれぞれ深部開発について関連したことの研究をしている、こう言いそうなんであります。しかし、現実に国立の鉱山災害保安センターであるとか、あるいは石炭技術研究所であるとか、あるいは財団法人の保安センター等、それぞれ国の資金、全額もしくは補助によってつくられている機関が大体三つ存在していますが、いずれも深部開発をそのものずばり研究しているところはないと思います。しかも、聞くところによると、先般ここの委員会に参考人が出席いたしまして、石炭技術研究所などは、経営者側が生産額の一トン当たり十円一銭ですかずつの割合で金を出し合っておる、そして炭鉱の技術開発の具体的な面の調査研究をしている、こう承っておりますが、これすら、そういう技術研究所でさえ、炭鉱がどんどん閉山すればそれだけ割り当てが減りますから、しまいには石炭技術研究所も消滅してしまうだろうと思うのです。  私は、石炭技術研究所が消滅することがいいか悪いかという議論よりも、もっとひとつ深部開発に焦点を合わせた、国の資金による総合開発体制を樹立する必要があるのではあるまいか。ガスやあるいは高熱や盤圧等に対する対策に、そういう大きな炭鉱自身の中で、この際大夕張問題が出ております時点で、取り組むような姿勢こそが、いま政府が問われている石炭施策の一番重大なポイントではあるまいかと考えますが、その点について大臣及び局長部長等の所見を承りたいと思います。
  18. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まず第一に、国の総合的エネルギー政策の中における石炭の位置づけ、第二番目に、第五次答申を推進していく中における石炭問題の推進、そういう大所高所の面からやはり石炭の位置づけをしていかなければならぬと思っております。  国全体のエネルギー政策につきましては、いま白書をつくらせようと思いまして、いろいろ作業をやらせているところでございますが、世界的に見て、長期的に見ますれば、特に新しい油田でも発見されない限り、石油が逼迫していく可能性もございますし、それに伴いましていろいろなエネルギー源の評価がおのずから変わってくる可能性もなきにしもあらずであります。そういう場合にも備えて、いろいろ弾力的な考慮をめぐらすということが大切ではないかとも思います。  第五次答申を実行していくことは、かねてわれわれが公約しているところでありまして、大夕張問題がどのようにどんな方向に動きましても、その政策には変わりはございません。先般来明言しておりまする北海道における石炭火力の問題につきましても、こういう問題を機にますます具現化していくように積極的に努力していく考え方でおりますので、いまその問題につきましてもいろいろ進めさせておる次第でございます。
  19. 佐伯博蔵

    佐伯政府委員 先生おっしゃいますように、日本の炭鉱におきましては深部開発ということがきわめて大きな問題だと思います。昭和三十七年から約十年間の間に、昭和三十七年は全国平均の深度は約三百四十メートルぐらいでありましたが、昭和四十六年度は五百十九メートルというふうに、平均深度は百五十メートルも深くなっております。深度が深くなりますと、先生御承知のように、まず地圧が増大いたしまして坑道の維持がきわめて困難になるというような問題があります。それから、メタンガス湧出量がきわめて多くなるということ、それから、それに伴いましてガス突出あるいは山はねというような現象が起こるようになってくるという問題があります。それから温度が上昇いたします。御承知のように、普通地下垂直三十三メートルに大体一度ぐらい地熱が上がるわけでございます。したがいまして、深くなりますと地熱温度は五十度を越すということもしばしばあるわけでございます。それから、深くなりますと当然坑道の維持がむずかしくなるというふうなきわめて大きな問題が出てまいりますものですから、生産だけではなくて、深くなりますと、保安問題のほうがむしろ大きくなろうかと思いますけれども、そのおのおのにつきまして、通産省におきましては、工業技術院の公害資源研究所、それの北海道支所あるいは九州支所というところで研究いたしております。  それから、先生お話しのございました財団法人石炭技術研究所等に補助金あるいは委託費というようなものを出します。それらのおのおの、たとえばガス突出の予防研究とか、ガス抜きの研究とか、いろいろな研究をいたしておるわけでございますが、今後、より一そうこれに力を入れていかなければならないと思うわけでございます。  それから大夕張炭鉱につきましては、深部にある程度まとまった炭量があるわけでございますが、昭和四十二年に自然発火をいたしまして、現在水没をいたしております。したがいまして、水没をいたしておりますところを取り分けて再採掘をいたしますと、一ぺん焼けたわけでございますので、再び自然発火がきわめてしやすくなる。まあ俗にいいます焼けぼっくいのような形になっておるものでございますから、再開発をいたしますときわめて自然発火を起こしやすくなるという問題がございます。そうかといいまして、水没しておりますところをそのままにしますと、相当の保安炭壁を残してでないと、下のほうが掘れない。そうなりますとますます深くなりますし、炭量はきわめて少なくなるというふうな問題がございまして、大夕張炭鉱の深部は、先ほど来申しましたように、自然条件が悪い上に、四十二年の自然発火後の水没という問題がございまして、きわめて困難だというふうに存じます。  ただお隣の、先生おっしゃいました北炭新鉱でございますが、これはいま開発をいたしております。まだ正常出炭になっておらないわけでございますが、ここも比較的深いところに炭量があるわけでありますが、ここは海水準下六百メートルから七百メートルまでの間に約二千六百万トンございます。それからマイナス七百メートルからマイナス千メートルまでのところに五千五百万トン、合計八千百万トンの炭量があるわけでございます。ただ、ここも地表が大体プラス二百メートルでございますので、地表からのものにいたしますと、九百メートルまでのところに約二千六百万トンの炭量があるわけでございます。したがいまして、ここは年産百五十万トンの計画でございますので、地表からの深度で見まして九百メートルまでの炭量が大体十七年余りあるわけでございます。まずこの十七年の炭量を掘りまして、それまでに鋭意技術開発をいたし、まただんだん深くなってまいりますと、それに伴います経験を科学的に分析いたしまして次の対策を打つということになりますものですから、まず現在の技術で可能な九百メートルまでの炭量を二十年掘りまして、その後の対策はいまから準備をしていくことが一番適切ではなかろうかと存じます。したがいまして、ある意味におきましては、この北炭がやっておられます新鉱は新しい深部開発のテストの炭鉱にもなると存じますので、いろいろな技術を総動員いたしまして、これの開発を、マイナス九百メートルまでのところは簡単だと思いますが、それ以降のところにも炭量は相当ございますので、技術の力を総結集いたしまして、これにいどんでいく必要があろうかと思います。その意味におきまして、研究室での研究あるいは大学での研究等と連携をとりまして、これらの完成に進んでまいりたいと考えております。
  20. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 特にこの際、日本の炭鉱の運命として到達しておる深部開発につきまして、大臣及び関係局長部長に格段の対策を早急に急いでいただきたいということを希望いたしまして、たいへん残念ですが、時間が、五十分の持ち時間ですが、あと十分しかなくなりましたので、私は結論を急ぎたいと思います。  大臣は、ただいまの御発言の中で、北海道の石炭火力発電の問題に触れられました。大臣が勇気をもって明年の予算の中に北海道に石炭火力発電所の設置を位置づけようという努力をしてくれるということは敬意を表するわけでありますが、しかし、現実に日をふいておりますのは釧路の太平洋炭砿です。五十万トンからの貯炭をかかえて苦しみ抜いておる。それから空知の各所の炭田でも当然問題が出てきておるわけであります。原料炭オンリーと申しましても、原料炭を出す過程において、少ないところでも三〇%程度の一般炭が必然的に伴って出てくるわけですから、どこの山も、原料炭の山も電力用炭に使用すべき一般炭が付随して生産される。しかし、いま鉄鋼その他原料炭だけを優先してどんどん買い取って、一般炭は投げ捨てる、コストをたたく、こういう傾向でありますから、いわんや一般炭主力の山にとってはたいへんな運命にぶつかっておるところであります。そういう事態からも、ぜひ石炭火力発電所の問題を早急に具体化していただきたい。  承れば、太平洋炭砿の一般炭のストックは、東電の会社が買い取りを断わってきたというところから問題が表面化しているようであります。しかし、きょう常磐炭砿の中村社長と話してみますと、常磐の共同火力、東電の部門については、従来重油専焼火力発電所としてスタートしたものを、東電側から、二十万トンの一般炭を受け入れて、重油専焼の火力発電所を逆に石炭火力発電所に切りかえるということをいまやっている、こういう話を聞きまして、努力すれば重油火力の発電所でさえ石炭専焼の火力発電所に切りかえられる、こういう状況を見ますと、早急に新しい勇気を出していただきたいと思います。  特に東部苫小牧開発は、コンビナートの点につきましては、一万三千ヘクタールの広大な工場地域におきまして、いま掘り込み港をつくるマスタープランができ上がりまして、いよいよ二十八日に港湾審議会にかけて掘り込み港を三本つくる。その掘り込み港の東部のほうは、マスタープランによれば、石炭になるか重油になるか知りませんが、火力発電所用地として設定しておる。もう一つは、いわゆる鉄鋼用地であるとかその他の一般用地という、掘り込み港を中心にしてマスタープランがつくられてきておる。現実にいま苫小牧においても、そういう火力発電所の課題が、苫小牧に掘り込み港決定と同時に位置づけが問題になってくる。苫小牧東部に火力発電所をつくることが妥当かどうかの論議は別といたしまして、すでにそういうような問題、具体的な動きが出てきている。そういう具体的な早急に急がなければならない火力発電所の問題につきまして、北海道の状況から見てどういうように判断されるのか、進められようとしておるのかについて、所見を伺いたいと思います。  時間がございませんので、私は質問の要綱だけを続けて申し上げたいと思います。  先般、夕張の産炭地代表の人々とともに江崎自治大臣、北海道開発庁長官と会談いたしました。その際江崎大臣は、自分の所管する北海道開発庁あるいは自治省、さらに通産省等にも働きかけて、労働省その他を含めたいわゆる大夕張炭砿における連絡会をつくりたいと思う、そのプロジェクトチームをつくって、そして共同で夕張の対策、大夕張の地域開発等の問題に対応したい、こういう意見を述べられました。  中曽根大臣は所管大臣であり、ことに前大臣石炭政策の火つけ役であったのは総理大臣田中角榮氏みずからであります。あなたは角榮の乱発した政策をしりぬぐいするのに御苦労なさっていらっしゃると思いますが、そこで、非常に重要な要素を持つ第五次答申の渦中に発生しておるこの問題の解決というものは、日本の石炭業界に及ぼす影響絶大なるものがありますので、特に実力者でありますあなたは閣内で、ぜひ閣議決定でこの問題を討議してもらいたい。そして関係閣僚が、事務レベルだけでなしに、連絡会だけでなしに、もう一ぺん協議をいたしまして−先ほど気になる発言が一つあったのですが、閉山のやむなきに至ったというおことばがちらっと出てまいりました。私はことばじりをとらまえようとは考えていないのです。そうでなく、生きる道を、生かす道をどうしたらいいかということを第五次答申の執行の関頭にあたって特に総理とも御相談願いたいし、閣議でも発言を願いたいし、関係閣僚会議を持って共同討議をして最善の道を探究していただきたいことを希望するわけです。大臣の所見を伺いたいと思います。
  21. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 承知いたしました。まず第一に閣議においてこの問題の重要性を訴えまして、関係各省ともに協力してこの問題に対処するということを実行いたしたいと思います。  それから第二に石炭火力の問題でございますが、さきに電発の大堀さんと話をしたということを申し上げましたが、電発でもあるいは北電でも、ともかく早くやることが大事であると思いまして、問題はサイトの問題であると前から申し上げております。もしお説のように苫小牧東部が活用できるならば、比較的に早く具体化する可能性があるではないかと思います。そういうサイトの問題について、北海道関係議員の皆さまの御協力を得れば非常にありがたいと思うわけでございます。
  22. 渡辺惣蔵

    渡辺(惣)委員 質問時間がきてしまいましたので、これで終わりたいと思います。
  23. 田代文久

  24. 多田光雄

    多田委員 今回、大夕張問題につきまして、実は私どもとしては、五月二十八日にここにおられる通産大臣はじめ各省大臣その他に次のような申し入れを行ないました。  その一つは、企業の採算本位の一方的な閉山計画をやめて、そして国庫補助を受けている企業の責任を明確にして再建計画をすみやかにつくらせるべきである。それから、やはり科学的にきちんとするためには、少なくとも炭量調査政府責任においてやる必要がある。石炭がなければ山がつぶれるのは当然のことです。しかしながら、それを科学的に裏づけるものとして炭量調査をきちんとやったらどうか、その他等々ありますが、いま一つは、石炭閉山という問題は、いま大臣もおっしゃいましたけれども、単に一通産という主管の省だけではなくて、自治省、開発庁、労働省、これら関係各省が衆知を集めてそして閉山の対策を立ててもらいたい。こういう骨子の申し入れをしたわけであります。いま大臣は閣議にそれをまたはかるというお話でありますが、ぜひそれをやっていただきたい、こういうように思います。  私の質問の一つは、この十年間で日本の山はおそらく五百前後つぶれていると思います。そして十数行の労働者と、家族を含めればおそらく数十万の人たちが職場を失い、そして他に転業する、職場をかえる、こうなっているのですね。おそらく洋の東西を問わず、わずか十年足らずで一つの大きな産業がこれだけ大転換をさせられたということはまずないでしょう。私は、日本の農村のいまの過疎化、これもヨーロッパではおそらく百年もかかっていると思う。それがこの十年くらいに急速に変わってきている。したがって、いかに過去の高度経済成長というものが激しいものであったか。それだけに私はひずみというか、国民に対する矛盾がどんなにむごいものを残していったのかということをあらためて考えさせられているのです。  そこで大臣に伺いたい。この炭鉱閉山に対して、炭労その他の労働組合ほんとうに命をかけて戦いをやってきた。地域住民も反対してきた。ところが、どの山一つとして助かったためしがない、事炭鉱については。これほど力を入れながら、これは一体どこに原因があるのでしょう。それを伺いたい。
  25. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは、各山によりましていろいろ事情があると思いますが、一つはやはり可採炭量というような問題がわりあいに大きく影響しているのではないかと思います。さらに遠因を尋ねれば、世界におけるエネルギー事情の変化によりまして、石油関係のエネルギーが急激に膨張してきて低廉になってきた。そういうような要素が原因としてあるのではないかと思います。
  26. 多田光雄

    多田委員 その回答はあとにして、先ほども同僚議員の渡辺さんからちょっと話があったのですが、これは再三政府側も言っておるのですが、大臣会社側は昨年の秋まで千六百万トンあるからだいじょうぶだ、こう言ってきたのですよ。四年前の分離統合のときにも、それは労働組合との団体交渉の正式文書になっているのですね。昨年の秋に夕張の市長が心配してあそこの望月という社長に会ったときにも、うちの山は炭質は日本一だ、千六百万トンある。ほかの山のすべてがつぶれても最後まで残る山だと言って市長さんをなだめておった。だから、それだけに炭鉱労働者、住民の裏切られた気持ち、怒りというものは非常に強い。  炭鉱の中にもちろん不可抗力もあるでしょう。実際に石炭を掘っていって断層にぶつかるということも私はあるだろうと思うのです。また非常に多いと思う。しかし、それにもかかわらず三菱のような大きな山で、千百名以上の労働者がいるというところで、こういうことが予知できなかったということについては何としても不可解。  そこで、これは通産省側に聞きたいのですが、二千万トン維持という立場からいって、さほど多くもなくなったこの山の一山、一山の条件その他精密に検査したことがありますか。これは局長でもよろしいです。
  27. 佐伯博蔵

    佐伯政府委員 実は、先ほど渡辺先生にもお答えいたしましたが、二千万トンそのものにつきましては、個々の山の積み上げではなく、総体的に検討いたしたものでございますが、個々の山の状況につきましては、毎年長期計画と申しますか、当年の実施計画等をヒヤリングし、必要に応じて現地調査いたしまして検討をしておる次第でございます。
  28. 多田光雄

    多田委員 私は、夕張閉山が発表される直前の四月十二日の当委員会で、どうも大夕張閉山がうわさされている、これについてどうだという質問をしたことは御存じだろうと思う。それに対する外山局長答弁は、当時の会議録に載っていますが、こういう答弁であります。いまの実情がどうなっているかということについて、特に問題があるとは聞いてない、こう言っているのであります。つまり閉山のようなそういう重大な問題があるとは聞いてないということだろうと思う。なぜなら山にとって閉山ほど重大な問題はないわけですから。ところが、先ほどの佐伯部長の話によれば、このときすでに山は右せんか左せんかという重大な岐路で悩んでいたときなんです。そしてその直後、一週間後に閉山を発表しておるのです。  そこで、私は伺いたいのは、ここから二つの問題がある。一つは政府が全く知らなかったということ、そのことが一つ。それから知っていても知らなかったということ。なぜならば、言えば労働者のいろいろな動揺や社会不安が起きるという不安があるでしょう。一体これはどっちだったのでしょうか。
  29. 外山弘

    ○外山政府委員 この当時お答えしましたように、私は承知しておりませんでした。
  30. 多田光雄

    多田委員 時間がないのでたたみかけるようで恐縮なんですが、それでは伺いますが、去年の二月十八日、二月二十九日、これは石炭審議会の体制委員会が、小委員会があった日だと思って聞いています。この二月十八日の体制委員会での討議に基づいて、二月二十九日の同小委員会石炭局の予想閉山ランクが資料として発表になりましたね。その事実は認めますか。
  31. 佐伯博蔵

    佐伯政府委員 当時私は現在の担当者ではございませんでしたが、引き継ぎ後でもそういう話は聞いておりません。
  32. 多田光雄

    多田委員 そのときの資料に基づくというと、全国で、たとえばユーザーからの千五百五十一万トン、それの前後三百万トンずつ、つまり千二百五十一万トン、千五百五十一万トン、それから千八百五十一万トン、こういう三つのランクに分けて、これはA、B、C、そして四十七年につぶれると予想される山、四十八年につぶれると思われる山、四十九年、五十年、五十一年、五十二年まで、これは五次計画の終わった二年後ですね、ここまでのランクづけがやられたためしはありませんか。
  33. 佐伯博蔵

    佐伯政府委員 先ほど申しましたように、私、当時はおらなかったわけでございますけれども、需要のほうからいたしまして、先生おっしゃられるその程度しか需要はなかなかないということで、いろいろ検討され、審議会において精力的な御討議の結果、三千万トンを下らざる線というふうになったと聞いておりますが、その際に、先生おっしゃられましたような形で、何年度にどの山が閉山するというふうなことはなかったように聞いております。どうも私はその点は聞いておりません。
  34. 多田光雄

    多田委員 私の手にある資料が間違いでないとすれば、これは四十七年二月二十九日体制委員会の資料として出されている文書です。それによると、夕張は、いまの大夕張、Aランクの千二百五十一万トンのときには四十七年に閉山の予定、それからBランクの千五百五十一万トンのときにはこれもやはり四十七年、それからCランクである千八百五十一万トン、これは今日の二千万トンにやや近い、このときには昭和四十八年、ほかの山は、私はこれは申し上げないほうがいいと思う。おそらく体制委員会といっても、実際の事務局は通産がやるわけですから。これがその資料に載っているのです。これを否定しますか。こういう資料自身をも否定しますか。佐伯部長がおらないとすれば、その前任者、どうですか。
  35. 佐伯博蔵

    佐伯政府委員 私は、その資料は知りません。
  36. 多田光雄

    多田委員 ほかに責任ある人、答えてください。
  37. 外山弘

    ○外山政府委員 私自身も昨年の七月から現在のポストに参りまして、当時の体制委員会の資料については承知しておりません。
  38. 多田光雄

    多田委員 これをはっきりさせること、私は保留いたします。  しかし、いずれにしても通産省の中で、大臣が入ったかどうかは別として、五次答申をきめた審議会で、しかもその一番大事な体制委員会の中でこういうランクづけが行なわれていた。このランクづけどおりのように閉山がいくかどうかは別問題です。この資料を見ると、そうでないのも一、二あるようです。しかし、少なくともこういうランクづけが行なわれたということは、それなりに根拠を持って、大夕張は、大体千八百万トンくらいのときは、昭和四十八年くらいのときに閉山だろう、こういうふうにしたのだろうと思うのです。もちろんそのとおりいくものではないでしょう。しかし、それだけの根拠を持ってやっていたと思う。  しかも、これは前回の委員会で指摘しましたように、先ほども同僚委員が聞いたように、炭労がこの春に昭和四十八年の生産計画を集めたときも大夕張は出していないのです。これらの事実を総合すれば、政府が全くこのことについて無知であったとするならば、それは重大な政治責任です。なぜなら、膨大な金を、国民の税金を、石炭を守るという国民の期待にこたえて出しているわけでしょう。何百億という金を三菱はもらっている。これは私が前回言ったとおりだ。それが、山がつぶれるかどうかという問題について政府にも言っていないとすれば、これは重大な山の責任です。しかも同時に、この資料のように政府は一面では知っている面もある。これは一体どういうのですか。  これを見ると、先ほど大臣が、炭量がなくなった、それからエネルギー革命である、そのとおりです。私はそれを否定しようとしているのじゃないです。しかし、炭量についても、もう二十年前の炭量調査です。いますでになくなったところもあるでしょう。掘らないところもあるでしょう。その後の技術開発によって、発見しなかった炭量もわかるでしょう。エネルギー革命はどこの国も同じことです。つまり私の言いたいことは、この閉山について政府責任があるということなんです。根本的には私は企業に責任があると思う。同時に、これらの資料から見るように、確かに一人一人の役人の皆さんは山を残したいという気持ちもおありでしょう。しかし、政府の施策としては、逆に閉山を推し進めるような結果になっている。だから多くの人はどう言っているのか、合理化計画は閉山を進めるものであるとさえ言っているのですよ。その点について私は、いま大臣がせっかくお立ちになりましたから、大臣のお答えを聞きたいと思います。
  39. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政府閉山を推し進めるようなことはやっておりません。また、大夕張閉山につきましては、ことしになって会社側がそういう意思表示をいたしまして、政府のほうも驚いたという情勢であります。
  40. 多田光雄

    多田委員 そこで、私は時間がありませんので、大臣に、先ほど言った私どものこの閉山に反対する再建計画を立ててもらいたいという文書を、私はじかに大臣にお渡ししたわけですが、政府として、この四月の中旬の閉山発表以来、山を守る、石炭を守っていくという労働者、地域住民の期待にこたえてどういう措置をとられたのか、私は具体的に述べていただきたいと思う。
  41. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 当局をして会社側にいろいろ相談をさせまして、できるだけ経営を維持するように勧告をしたり、またそれに対する援助やその他についても相談をさせた次第であります。
  42. 多田光雄

    多田委員 きょう私は、通産のほかに自治省、開発庁、それから労働省に来てもらっております。私は開発庁の人にちょっと伺いたいのですが、先ほどもあなたに質問しました。政府は開発の問題について、過疎過密をなくするとか、あるいはまた片寄った開発をしない、こういうふうに言っておられるわけですね。その言たるやよしです。しかし、現実はそうじゃない。北海道はどうなんだ。これも再三言ってきていることですが、北海道は石炭と農業と水産と林業、これがいわば主として百年間ささえてきた産業なんです。ところが、このいずれもが困難だ。特に、石炭産業はまだあちこちにあるのですよ。一番あるとさえ言っているんだ。ところが、その産業が投げられて、苫小牧東部にいま大規模開発を進める。その大規模開発の中身のずさんさは、先ほど私が明らかにした。三木長官もいろいろ述べておりましたけれども、環境対策からいったって、苫小牧東部のあの巨大開発の中に中心になる鉄が入らないという問題から、非常にずさんさが明らかになってきた。それにもかかわらず膨大な金を入れるのです。そういう点でいえば、私は開発庁の責任があると思う。ほんとうに北海道の開発を進めようとするならば、石炭産業にどういう対策を立てられたのか。苫小牧東部にだけ金や力をぶち込むのじゃなくて。それを伺いたい。
  43. 山田嘉治

    ○山田(嘉)政府委員 北海道の第三期総合開発計画が、たとえば苫小牧東部開発等の重工業開発と申しますか、そういうものに非常に片寄っておって、従来の伝統的な地場産業であります農業、水産業、石炭業等に対して配慮が欠けるところがあるのではないかという御指摘であったと思うのでございますが、第三期北海道総合開発計画におきまして、北海道の有しますすぐれた開発可能性を全域にわたって発揚するということがねらいでございますので、もちろんそういう片寄りのないように配慮していくことは当然のことでございまして、苫小牧東部の計画は、先ほども御議論がございましたように、確かに非常に大きな計画ではございますけれども、第三期計画全体の政府のいわゆる公共投資額と申しますか、政府投資額、予定しております額が全体で八兆五千億円ということになっておりますが、厳密な試算は非常にむずかしいのでございますけれども、この三期計画の終わります五十五年の末までに苫小牧関係に注がれます金は約一%ない程度でございまして、決してそういうことではございません。先生御指摘のような石炭産業につきましても、私どもは全道の地域の五分の一の人口、面積が産炭地域でございますので、ここにつきまして開発道路を敷きますとか、あるいはその地域におきますところの農業その他の産業を盛んにする、あるいは産炭地域に中核的な都市をつくりまして、こういうところに望ましい産業を誘致するというようなことは、三期計画の一つの重点であるわけでございます。
  44. 多田光雄

    多田委員 この問題であまり追及してもしょうがないのですけれども、しかし、現実に石炭山はつぶれているのです。これはあなたの責任だと言っているのではありませんよ。農民の離農率は全国一です。過疎地帯の最も多いのは日本一です。漁民の離村率全国一。あなたがいま金を使っていると言われたが、一%と言われましたけれども、それだって、関連やいろいろなことを調べてみなければわからない。北海道東北開発公庫から出る金だって入れなくちゃならぬでしょう。問題は、北海道を総合的に開発をするといいながらアンバランスが生まれているということです。地場産業が窮地におちいっているということなんです。それは現実の事実が否定してない。だから私は、開発庁の人も真剣に考えてもらいたいと言ったんだ。  それから自治省です。北海道は九州の山と違いまして、一つの炭鉱がつぶれるとゴーストタウンになっちゃうのです。御承知でしょう。そしていまどうなったか。あの美唄がつぶれて、そのあとには自衛隊のR30ロケットの部隊が入る。沼田はどうなったか。つぶれてしまって、いまあそこを、日本で最大の演習場に自衛隊が目を向けている。この大夕張がつぶれたらどういうことになりますか。七万足らずの夕張市のうち、ここは一万数千人です。しかもあの山奥で、いま政府調査団のあれを見ると、企業誘致云々といっているけれども、あそこへいく企業なんかおそらくありはしないと私は思う。あったら、せいぜい観光業ぐらいでしょう。つまり、これは自治体にとっても重大なことなんです。一体、自治省としてこの閉山問題を真剣に考えられましたか。それを伺いたい。
  45. 土屋佳照

    ○土屋説明員 ただいま御指摘がございましたように、この産炭地域におきましては、いろいろと閉山、あるいは閉山に至らなくても実際疲弊をいたしておるわけでございまして、そういう意味で、地方団体自身も非常に財政的にも困っておりますし、何らかの方策を講じなければならない。特に北海道におきます特殊事情といったようなこともございますので、私どももその点は十分認識をいたしておるつもりでございます。そういったことから、産炭地域の振興整備をはかるために、関係地方団体に対しましては、従来から産炭地域振興臨時措置法等によりましていろいろな方策をとられております。自治省といたしましても、必要な地方交付税の措置とかあるいはまた起債措置、それのあとで交付税で措置をするとか、いろいろな手は打っているつもりでございます。しかしながら、産炭地域の地方公共団体の疲弊は依然として著しいわけでございまして、加えて炭鉱閉山発生というようなことにもなりますと、財政需要も増大いたしますし、また税収も減ってくるということで、非常に地方財政を圧迫してくると・いうことになるわけであります。  大夕張のほうの事情は私ども詳細には存じていないわけでございますが、そういった事態になってくるとますます地方団体は困る、地域住民も困るということになるわけでございます。そういった状態でございますので、私どもとしては、いままでもいろいろ手は打っておったつもりでございますが、今後ともその地域の実情に即しまして、地方交付税あるいは特別交付税が主体になろうかと思いますが、そういった重点的な配分をしたり、地方債による財源措置等について積極的に実態に応じた取り組み方をしてまいりたい、かように考えております。
  46. 多田光雄

    多田委員 労働省の意見を聞かしてください。これは私は労働大臣に繰り返し話したのです。
  47. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 労働省といたしましては、閉山問題というものが中高年労働者の離職につながるということで、非常に重大な関心を持っておりますし、そういう面において、通産省と積極的に連絡をとってまいってきております。特にいま問題になっておりますような地域における閉山というのは、やはり非常に深刻な問題が出てまいるというふうに考えます。  最近、中高年齢労働者が非常に多くなってこられました関係で、何年か前のように広域職業紹介という形で必ずしもその労働者のお気持ち等から見てうまくいかない面もありまして、そういう面で、道内でできるだけやはり就職あっせんをしていかなければならぬという問題がございます。そういった場合に、一番問題になりますのは住宅でございます。したがって、労働省といたしましては、できる限り土地を確保し、就職しやすいような形をとるための住宅の確保ということを現在努力をいたしております。そういった形で、今後中高年労働者の就職あっせん、住宅あるいは職業訓練というようないろいろな手だてを講じてその万全を期してまいりたい、こういうふうに考えます。
  48. 多田光雄

    多田委員 いま労働省、それから自治省のお話を伺ったのですが、主として閉山したあとの対策ですね。私はその面は否定しません、仕事の面としては。しかしながら私は、自治省としては、ほんとうにこの日本の大事な自治を守っていく、地域住民の幕らしを守っていく、あるいは自治体をほんとうに守っていくというならば、もっと積極的な姿勢がほしかった。つまり、自治大臣ほんとうに通産大臣と話し合う。それこそ閣議でやってもらう。通産大臣が言わなければやらないなんという、私はそんな序列はないと思う。これは私の理想論でしょうか。労働省にしてもそうだと思う。ここで自治省、労働省に文句を言ってもしようのないことなんですが、私の言いたいことは、こういう大きな問題については関係各省がもっと積極的な姿勢で衆知を集めてやるのが至当だ、そのことなんです。その結果、どうしても調査して石炭がないというのであれば、新たな対策がもっと前向きで労働省にしても自治省にしても立てられる。  それで私は伺いたいのですが、私が先ほど炭量について疑問がある、炭量というのは石炭の埋蔵量です。私は繰り返し申し上げますけれども、石炭がないのに掘れと言っているのじゃないのです。有限の資源ですから、なくなれば、これは石油も同じことです。しかし、私どもが信用がまだ完全におけないということは、千六百万トンあるといって自治体までなだめすかしてきた。労働組合にまで四年前言ってきた。日本一の山だから一番最後だとまで言ってきた。それが突然昨年の暮れから断層にぶつかった。こういうことは私は否定はしない。しかし、いままで炭鉱のやり方を見ていると、いつも閉山、縮小でもって切り羽を縮めていく、掘進をしないというようなことによって閉山の空気をつくっていく、こういうことも少なくないのです。  だから、私が大臣に言いたいことは、かりにいま大夕張が不幸にしてなったとしても、大事なことは、科学的な裏づけのために、炭量の正確な調査をいまこそやらなければいかぬ。大臣が前から言っておりますが、石炭を守っていきたいというようなことを言っておられる。そのことばをもしやられるならば、私は二十年前の炭量調査、これを全面的に否定はしません。同時に大夕張、空知、まずそこからだけでも政府責任において炭量の精密な検査をやっていく必要があるのではないでしょうか。  このことを私が言うもう一つの理由は、南大夕張の拡大再生産という意見、これは私も持っております。ところが、南大夕張労働者は不安を持っているのです。なぜ不安か。またたくさん労働者が入ってきて拡大再生産をやっていれば、うちの山もつぶれるのが早くなるだろうという不安を持っている。なぜなら、南大夕張労働者は大半は閉山を一回、二回なめてきている人たちだ。この人たちを納得きせるためには、一つは正確な炭量調査です。  そういう意味で、私は大臣の在任中にひとつ二十数年ぶりに、日本の石炭とまではいかなくても、せめていまの北海道の夕張とか空知の炭田の正確な調査、これをひとつ政府責任でやっていただけないものかどうか、これをひとつ伺いたい。
  49. 佐伯博蔵

    佐伯政府委員 先生おっしゃいますように、全国的な埋蔵炭量調査と申しますのは、昭和二十五年から三十年までにかけまして炭量調査をしたわけでございます。これはいうならば理論可採炭量というようなことで、一定の方式を設けまして、それに基づきまして炭量調査をいたしたわけでございます。いわゆる可採炭量とは相当違った形になっておるわけでございます。そういう意味におきまして、第五次答申の御検討の中でも、私、当時はおりませんでしたけれども、そのような御検討がずいぶんなされたわけでございます。  現在やっておりますところの探鉱のボーリングの資料、あるいは探炭坑道の資料、あるいは坑内ボーリングの資料等を検討いたしまして、いわゆる経済的な可採炭量が幾らくらいあるのかということを検討いたしたわけでございます。それによりますと、いろいろな仮定の条件がございますけれども、それらを総合いたしますと五億九千万トンが、いろいろな仮定が若干あるわけでございますけれども、可採炭量であるというふうな結論が出ておるわけでございます。これが現在では一番、個々の山のボーリングその他の資料によることが必要でございますが、一番正確な資料でございます。また、必要でございましたら、これは検討し直さなければいけませんが、現在では五億九千万トン、この炭量が相当の精度におきまして調査をされたものというふうに考えております。  これは既存の炭鉱でございますが、そのほかに、現在掘っておりませんところの炭鉱炭量があるわけでございます。これは、前の埋蔵炭量調査のときの数字を現在に直しまして、新しくボーリングをいたしませんでも、それから推定をするということが可能になるわけでございますけれども、この炭量の多くは、たとえば市街地の下とかいうふうなことで掘ってない。未採掘のところは、たとえば九州の筑豊、本土地区、あの辺にも相当の炭量があるわけでございますが、上が密集地帯になっておりますので、技術的にあるいは公害防止の観点から掘れない、そういうものが多いわけでございます。  それらを除きまして、既採掘、現在炭鉱を掘っておりますところを中心にいたしました炭量は、先ほど申しましたように五億九千万トン程度だということでございます。
  50. 多田光雄

    多田委員 この炭量調査とあわせて、私も二、三専門家に聞きましたけれども、鉱区調整その他をやれば、炭価ももう少し安くなるという話を聞いております。この前私も委員会で述べたことがあるのですが、そういう意味で、私はほんとう石炭産業を立て直すというそのかまえがあるならば、正確な炭量調査を含めて鉱区の調整、それで企業がやっていけないというのだったら方法を考えましょう。そういうことをいま含めてやらないと、おそらく夕張について、みんな炭量がなくなったなくなったといって山はつぶれていくでしょう。なぜならユーザーの要求は千五百五十万トンですから。政府がかね太鼓をたたいたって大夕張閉山一つとめられないんだ。私企業でございますから労使関係でやってくれなんていって。そこでみんなが心配しているのですよ。落ちつく先は千五百万トンぐらいになるかもわからぬ。あんまり山をやめさせると、労働運動が激しくなって、これは政府がたいへんだということも考えているでしょう。しかし私は、そうじゃなくて、先ほど大臣が言ったエネルギー革命ということば、石油だってどうなるかわからぬです。最近の中近東に対するアメリカの兵器援助その他を見たって、ほんとうに大事なエネルギーを外国にあなたまかせでは、これはどうなるかわからぬですよ。そういう意味では、真剣に石炭炭量調査を、鉱区調整をひっくるめて、ほんとうの総合的なエネルギー対策をいま立てるときだというように私は思います。これは答弁よろしいです。  ぜひひとつ大臣に閣議でこの問題をやっていただきたいということと、閉山問題の最後に、きのう調査団の報告をもらいましたね。これはもちろん最終的な通産省としての報告ではないと私は理解する。しかし、これを見ると、もう閉山やむを得ないというような内容なんです。大半はもう事後対策なんです。それで大臣どうでしょう。これは相手は三菱です。再建計画を建てろ、はいつくばってもみんなの納得できる再建計画を立てろ、こういうことをひとつ要求できないでしょうか。
  51. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いままでもいろいろ具体的に当局から相談させまして、それで、当方としても援助し得る内容の話もやりましたが、先方はどうしても採算上その他無理のようだということでありまして、いまのところちょっとむずかしいのではないかということで、見通しはそういうふうに必ずしもいい見通しではございません。
  52. 多田光雄

    多田委員 さっきから私の言っているのはそこなんです。つまりどうして閉山をとめられなかったのかということ。これはいつも、金は出す、最後の山の決着は労使にまかせる。しかし、こういうことばがある。閉山通告が出たときは山の最後なんだ、会社閉山通告を出すときは、それなりの内外の準備を進めてきている。しかも、これは私の勘ぐりではないと思う。政府も中身は知っていると思う。そういう意味では、私はもう一度この閉山のやり方、あまりにもひどいやり方に強く抗議したいと思うし、ほんとう三菱に対して私は再建計画を要求していく。必要ならば、それこそもっと正確な炭量調査もやったらよろしいでしょう。これあってこそ、ほんとう炭鉱を立て直して、日本のエネルギー政策、ほんとうに民族の資源を使いながら、外国に鼻先を引き回されないような産業経済エネルギー政策を立てられるというふうに私は考えております。  次に、もう時間がありませんが、保安問題、私は非常に腹が立つのです。それで、大臣は先ほど保守監督の責任であるというふうに言われた。私も同感です。  そこで、保安責任を追及するのに私は二つあると思うのです。一つは保安担当者の責任です。これは何もどうこうするということじゃないのです。つまり、今日の不十分な保安法規でも、ほんとうに徹底して守ったかどうかという問題です。第二番目には、保安の最大の責任者である会社に対して断固とした態度をとったのか、私は問題だと思うのです。  そこで、鉱山保安法を見ますと、監督局は保安責任者をやめさせることを要求できるわけでしょう。そうですね。鉱山保安法の十三条、ここに罷免のことが出ていますね。そこで、私、伺いたいのは、災害があって皆さんのほうからこの所長なりは罷免しろと言ったためしはありますか。
  53. 青木慎三

    青木政府委員 ただいま詳細な資料を持っておりませんが、この規定によりまして解任を命じたことはないというふうに思います。
  54. 多田光雄

    多田委員 あの三池の大災害で、いまでも植物的人間といわれて、ただもう流動物をのどに入れるだけで生きている、そういう人が出ているのです。しかも、このとき三池でもほんとう保安責任者の処分がやられていなかった、私は本来は刑事責任だと思う。なぜなら、日航機が墜落してごらんなさいな、一年、一年半でもってその原因究明するでしょう。しかもその補償金は一千万以上ですよ。ところが炭鉱災害はどうでしょう。この間の三井の場合でもいまだに原因がはっきりしないでしょう、半年近くたっているのに。今度の常磐だって思わぬところに火が出た、こう言っている。残念なことに労働組合がそう言っている。炭鉱というのはすべてがあぶないところなんです。思わぬところじゃないのですよ。ですから、私はこの炭鉱災害の——本来は私は保安法というのを切りかえて、責任者に対しては刑事責任も与える必要があるくらいに思っている。それはいろいろ法の構成上問題があるとは思いますが、しかし、少なくとも現行法でもっときびしくやれるはずだ、会社にはその責任があるのです。その責任を追及しないところに保安監督の立場の責任があるのです。  どうでしょうか、大臣ほんとう責任を自覚しておられるならば、せめてこの不十分な法規だけでも十分守ってやらせていただきたい。死ぬのは労働者です。会社の重役は死にはしませんよ。どうなんですか。
  55. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 やはり直接の責任者は会社であって、それを官庁は監督して、会社にそういう悲惨なことを起こさせないように注意する、それが必要であろうと思います。
  56. 多田光雄

    多田委員 最後ですが、ものの順序はおっしゃるとおりです。ものの順序はおっしゃるとおりだけれども、このように災害が起きているのです。再開を命じたとたんに、二日後にまた火災が起きている。保安が入ったという。そうすると、保安監督者の数が少ないのでしょうか、少なければふやさなければならないでしょう。それともルーズだったんでしょうか。こういう点を厳密にやらないから、山の保安火災や何かの原因がはっきりしない、ほかでは原因がわからないでは済まされないのですよ。炭鉱に限ってなぜ原因不明がこんなに続くのでしょうか。根本的には労働者の人命尊重、これに経営者も保安監督のほうもやはりなれている、炭鉱は。だから事故発生する。おかよりももっときびしく処置をしなければならない。そして、こういう事故が続けば、これはもう労働者は足りなくなりますよ、その面からだって閉山でしょう。  私は、そういう意味で、最後に保安問題についてひとつ厳重な態度をとって、かけがえのない炭鉱労働者の命を守っていただきたい、そのことを要求して、私の質問を終わりたいと思います。
  57. 田代文久

  58. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 三菱夕張炭砿問題並びに常磐炭砿坑内火災について通産大臣にお伺いいたしたいと思います。  大夕張炭鉱について先ほど大臣は、閉山のやむなきに至った、今後は民生安定等の施策を行なう、こういうふうに言われたわけですけれども、私はことばじりをとらえるわけじゃありませんが、現時点においては、先ほど局長はヒヤリングをして検討しておるところである、こういうふうに答弁しておられるのですけれども、すでに現時点で政府閉山、こういうふうにきめておられるのか、その点をまず最初に大臣から再度見解を明らかにしていただきたい、かように思います。
  59. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 会社側がそういう通告をいたしまして、その後いろいろ折衝して、われわれのほうとしては閉山しないようにいろいろ措置をしてきたけれども、遺憾ながら見通しはよくない状態であります。そういう意味であります。
  60. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 まだ現時点では存廃問題についてははっきりと政府閉山、こういうことは言えないというふうに理解しておるのですが、その点再度お答えいただきたい。
  61. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まだ断定したわけではございません。ただ、見通しは暗い。そういうことでございます。
  62. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、第五次答申後、北海道は第一級の炭鉱として、会社側も、先ほどから論議されましたように、千六百万トンの埋蔵量があるということで、ずいぶん強い姿勢で、われわれも期待をしておったのですけれども、四月になっていろいろうわさが出たりして、私たちも憂慮しておるわけです。そこで、政府は今回の存廃問題がこういうふうになってきたことについては、第五次答申がなされるときには十分検討されたと思うのですけれども、政府調査そのものが不十分だった、こういうふうに反省しておられるのですか。
  63. 佐伯博蔵

    佐伯政府委員 第五次答申をいただいた、そのとおり実行いたしておるわけでございますが、個々の炭鉱につきましては、特別に積み上げたという形ではございませんですけれども、大夕張炭鉱につきましては、数年前には、先生おっしゃられましたように、千六百万トンの炭量はあるということで、鋭意努力をしておったわけでございますが、特に下のほうの浅い部分、浅いと申しましても、五、六百メートルあるわけでありますけれども、この部分のところの炭量を現在掘っておったわけでございますが、この部分が、昨年の暮れに大二股断層というのが地上からのボーリングによって確認されて、それから坑内でも探炭坑道あるいは坑内ボーリングによってそれがほんとうかどうかということをずっと検討いたしておりましたが、ことしになりましてから、いよいよそれらしいというようなことで、急遽閉山をせざるを得ないことになったというふうに会社のほうも申しております。また、私たちもそうであるというふうに存じておる次第でございます。
  64. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、これだけの計画を立てられて、エネルギー資源の問題がたいへん重要視されておるときに、第五次計画を立てるについても十分な検討をされてきたと思うし、こういう北海道の第一級の大炭鉱であります。その調査が去年、ことし数カ月の間に大二股断層があったからこうだというような、そういったことで、こういった大きな、たくさんの人を雇用している炭鉱が存廃問題で急遽大問題になるということはたいへんなことだと思う。ほかの九州なんかの炭鉱などもまた同じようなことをやられるのじゃないかと思うので、実に不安なんですけれども、科学的に相当発達したこの時代に、相当綿密に調査をしてやったと思うのですが、そこで、私はどうもそういった点がふに落ちないのです。それでは逆に三菱のほうは、いわゆる会社側政府を欺瞞した、こういうふうなこともいえるのですけれども、政府はそういうふうに受けとめておられないのですか。当然で、あたりまえだ、こういうふうに思われて会社のいうのがごもっともである、こういうふうにすなおに受けとめられたのですか。実にこういったところが簡単な問題じゃないと私は思うのですが、残念に思えてしかたがないのですよ。その点、明確にひとつお答えいただきたい。
  65. 佐伯博蔵

    佐伯政府委員 炭鉱も実はいろいろあるわけでございまして、比較的水平の炭層でございますようなところは、炭層の賦存状態が安定をいたしておりますものですから、将来の採掘計画が立てやすいわけでございます。一般に急傾斜のところは変動が激しいわけでございます。特に大夕張炭鉱は炭層褶曲等がきわめて多いわけでございます。地上からのボーリングではなかなかはっきりいたさないという点がございまして、そのために、坑道もあらかじめ岩石坑道を掘りまして、それから沿層坑道を掘って、いわゆる後退式採炭をいたしまして炭層を確認するという形で従来からやってまいったわけでございますが、特に最近になりまして、大きな炭層に近づいたための派生炭層のためではなかろうかというふうに思いますが、そういうふうにいたしまして、上の片盤と下の片盤で確認をいたしておりましても、その中が全く違った形になってくるというふうな状況になってきまして、このような状態になったものというふうに思います。  それからもう一つは、坑内でございますと、採炭処理場が四つございますから、すべて四つが常にいいということはなかなか実際ないわけでございますので、一つが悪くなるという場合には、そこの部分だけを放棄いたしまして、あらかじめ準備をしておった別なところに移っていく、そういうことで相補っていくというのが炭鉱の大体常でございます。大夕張炭鉱の場合、四つの採炭処理場があったわけでございますが、そのおのおのが悪くなって、そのおのおのかわりのための切り羽が、坑道を掘進してつけてみたけれども、おのおのが悪かったというふうなことになって、やむを得ずこのような形になったというふうに私は判断をいたしております。  それから、先ほど渡辺先生の御質問のときにお話しいたしましたが、たとえば南部の擾乱地帯の先のほうの炭量なんかも、手前のほうの採掘が可能でございましたら、若干向こうが赤字が大きくても手前のほうで相補うということも可能でございますが、手前のいいと思われたところがすべて悪くなったというふうなところからこのようになったものだというふうに私たちは判断いたしております。
  66. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の制約があるので簡潔に聞いてまいりますが、通産大臣、そうしますと、かりにこれが閉山ということになった場合には、第五次答申の二千万トン体制に影響することは当然でありますが、そういったことについては根本的に検討するという考えなんですか。
  67. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まだ閉山になったわけではございませんが、当然第五次答申にどういう影響が出てくるか、これらについてはわれわれは非常に深く検討しなければならぬと思います。
  68. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、局長にお伺いしますが、大夕張炭鉱の経営状況ですね。私は常磐炭砿のほうは現地調査しましたが、大夕張現地へ行くことができませんでしたので詳しいことを聞いておりませんけれども、一応この機会に公開の席上で、大夕張の経営状況について政府調査結果に基づく結果をひとつ発表願いたいと思います。
  69. 佐伯博蔵

    佐伯政府委員 大夕張炭鉱の四十七年度の製品炭売り上げ原価は七千七百三十四円、これは石炭一トン当たりでございますが、それに対しまして山元手取りは五千四百四十九円、これも石炭一トン当たりでございます。そのほかに管理費等もかかりますし、また国からの対策等もございますので、対策後の自産炭損益は一トン当たり二千百十六円のマイナスでございます。したがいまして、年間にいたしますと約十五億円の赤字ということになるわけでございます。  なお、いまのは大夕張炭鉱でございますが、大夕張炭砿株式会社といたしましては、このほかに新鉱でございますところの南大夕張炭鉱がございますが、これらを合わせまして、昭和四十四年度以降四十七年三月末までの決算におきますところの累積損失金は、総額でもって約六十三億円でございます。
  70. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 五月十六日、十七日だと思いますが、政務次官がたしか現地調査をして、労使の話し合い等をやってきたはずであります。そこで、現地の考え方等については、政府は現段階ではどういうふうに受けとめておられるか、政務次官等の調査等を含めて、ひとつ局長から報告願いたい。
  71. 佐伯博蔵

    佐伯政府委員 政務次官が五月十四日、十五日、現地調査をされたわけでありますが、私も政務次官にお供してまいりました。私は、なおもうちょっと調査をする必要がございましたので若干まだ残ったわけでございますが、そのときには地元、たとえば北海道知事さんとかあるいは道議会の方あるいは北海道の労働組合方々等にもお会いし、また夕張現地におきまして会社の幹部の方あるいは大夕張炭鉱労働組合の方、職員組合の方、それから夕張市の市長さんはじめ市議会の方、その他夕張市の御関係の方から相当詳しくいろいろなお話を伺いました。かつまた、私たちと同行いたしました私のほうの課長が坑内調査をいたしました。これも相当詳細に坑内調査をいたしました。その参りましたときの状況は、やはり何とかして大夕張炭鉱を残せないものかというお話、端的にいえばその一語に尽きるというふうに思います。政務次官も私たちに、何とかそのような方法はないかということで帰ってからも御命令がありまして、そのような方向で検討をいたしましたが、先ほど大臣からお話がございましたように、なかなかよろしい状況にないというのが現実でございます。こういうことで、特にそういう調査をいたしました私たちとしては、技術面から見まして、また経理資金面、保安管理面等から見まして、なかなか困難が伴うことはどうしても事実として認めざるを得ないというふうな感じでございます。それからまた、困難な諸問題がございますが、これらを解決するために、炭鉱全体には安定補給金とかいろいろな対策をいたしておりますが、この大夕張炭鉱だけに国が特別の財政援助をするということは、制度上どうしても不可能であるというふうな状況であります。
  72. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 通産大臣、いま局長からいろいろ報告がありましたが、大夕張の場合は、まだ現在すでに閉山ときまったわけではありませんけれども、万一閉山となった場合には、かなり山奥で工業立地条件が悪い、こういうようにいわれて、理事会でもいろいろ報告があっておりますけれども、そうなりますと、将来産炭地振興というようなことでいろいろな問題が大問題になると思うのですけれども、存廃がきまったわけではないのでそういったことについてはまだいまからとおっしゃるかもしれませんが、こういったことを考えましたときに、これはたいへんな問題だと思うのですが、現段階ではその辺は大臣はどういうふうに検討しておられますか。御所見を承りたいと思うのです。
  73. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現地の情勢を拝察いたしますと、ともかく暗たんとして皆さん方各家庭でも心配していらっしゃることであろうと思います。われわれとしては、現時点において最善を尽くすことはもちろんでございますが、もし万一閉山のやむなきに至った場合でも、できるだけ心配はなくするように、われわれはその際は全力を尽くさなければならない、そういうように思います。
  74. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 特に大夕張炭鉱と南大夕張とを総合一体的な開発計画、こういったことで、さっきもちょっと論議されたようですが、何とか総合的に開発していくというようなことを政府としては検討される用意があるか、そういったことについては可能性があるのか、そういったことについて局長から見解を承りたいと思います。
  75. 佐伯博蔵

    佐伯政府委員 大夕張炭鉱の特に南部擾乱地帯から南部のほうの炭量につきましては、大夕張炭鉱から掘ります坑道維持の面、いろいろな面から見ましてなかなか採掘がむずかしゅうございます。特に、経済的にむずかしいという問題がございます。かりに大夕張閉山をいたすというような場合には、資源の有効利用という観点から、また大夕張から離職される方が一人でも多く南のほうに再就職されるという意味からいたしまして、南大夕張炭鉱のほうに鉱区を分割いたしましてつけて、南大夕張地区のほうから採掘することがいいというふうに思っています。  それから、これも南大夕張炭鉱の南側にございます旧北夕炭鉱の鉱区調整をいたしまして、それらとあわせまして資源の有効利用、それから離職者がなるべく多く就職できるという観点から、もしそのようになった場合にはそれを強く推進してまいりたいというふうに思っております。
  76. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 エネルギーの革命の上からも、石炭の位置づけ、または世界的にも石油資源がだんだんと枯渇していくという現段階において、たいへんな問題であることは、もう委員会でもしばしば論議してきたところでありますけれども、先ほどから大臣からも答弁がありましたように、二千万トン確保を約束してスタートしました第五次の計画、こういったことで今回の大夕張問題等を考えましたときに、九州においてもいろいろまた将来心配もされてくる。主として石炭は北海道、九州というのが主要な鉱区になっておりますので、そういったことから、この石炭鉱業合理化臨時措置法の中の六十八条の二に「地域の指定」が規定されておりまして、政府において新鉱開発等地域の指定をすることとなっております。このように、北海道で新しいこういった新鉱の開発、こういうようなことについては、政府はどういうふうに計画を立てておられるか、また、どういうふうなことが考えられるか。この大夕張炭鉱問題があるなしにかかわらず、十分これは検討していくべき問題であろうと思うし、二千万トン確保という面からいけば十分考えておられるだろうと思うのですが、そういったことについて見解をお聞きしておきたいのです。
  77. 佐伯博蔵

    佐伯政府委員 先生おっしゃられますように、相当のまとまった炭量がございますところにつきましては、それを積極的に開発して、いわゆる新鉱開発を指定し、かつ新鉱開発を進めることが特に大切だというふうに思います。  現在新鉱開発をいたしておりますのは、全国で三つございます。一つは、この大夕張炭鉱の隣の南大夕張炭鉱でございます。これは新鉱開発が完成をいたしました。年間約百十万トンないし百二十万トンの原料炭生産をいたしておるわけでございます。  それからもう一つは、同じ夕張市にございます北炭の夕張新鉱といわれるところでございまして、若干深うございますけれども、膨大な八千万トン余の優良な原料炭があるわけでございます。鋭意開発をやっておる最中でございまして、これは年間百五十万トンの生産をいたす山をつくろうということでやっておるわけでございます。四十九年の暮れには採炭を開始できるというふうな見通しでございます。  それからもう一つは、九州の三池炭鉱の北側に有明炭鉱というのがございますが、実はこれは海底炭鉱でございまして、日鉄鉱業が開発を始めたわけでございますが、一時中断をいたしておりましたが、新しく三井鉱山の子会社でございますところの有明炭鉱株式会社がこれを本格的に開発するということになりまして、この四月から再び掘進を開始するという段階になってまいったわけでございます。これは年間百万トンの原料炭一般炭とを出す炭鉱になるわけでございまして、三池地区よりも硫黄分も少のうございまして、将来も期待される炭鉱でございます。  この南大夕張炭鉱はすでにもう完成されたのでございますが、大夕張炭鉱もそうでございますが、新しい新鉱あるいは有明炭鉱に対しましても、国は開発資金等を出しまして、これが開発を積極的にやっておる次第でございます。
  78. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の制約がありますので、大臣に。  この大夕張炭鉱問題については、存廃問題が起きて相当深刻な問題になっているわけです。まあ閣議でも報告されていろいろ対策を立てられておりますけれども、地元の不安、また今後の残された問題等、特に炭鉱の鉱区は山奥で不便なところで、産炭地振興等の手当もなかなかむずかしい状況にあるというふうに聞いております。そういったことで十分この炭鉱問題には配慮していただいて、地元の不安がないように十分対策をとってもらいたいと思うのですが、ひとつその点について、大臣からお考えのほどを示していただきたいと思います。
  79. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御説のとおり、誠心誠意、そういう場合には万全の措置を講ずるように閣議レベルでも相談をいたしまして、処置いたしたいと思います。
  80. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 常磐炭砿問題で若干、時間の範囲内でお聞きしたいというふうに思います。  常磐炭砿株式会社西部炭鉱の西部本坑において、去る五月二十九日十四時三十分、西部本坑の第三人道口付近で、坑内火災疑いということで火災があったわけです。私たちも、急遽六月の四日現地に参りまして調査をいたしてまいりました。死者四名、重傷、軽傷入れまして二十四名の方が入院をしておられて、たいへんお気の毒でありました。心からなくなった方にお悔やみを、また重傷、軽傷の方にお見舞いを申し上げると同時に、一日も早く再起されるように心から念願しております。  そこで、この災害あとまた六月十二日二十二時三十分ごろ、これは自然発火疑いということで、十二名の入院患者を出すような火災がありました。きのう社長も国会に来て、委員長はじめ私のところにも参りまして、申しわけないとずいぶん反省しておりましたが、一度あることは二度、二度あることは三度といわれますように、これは大災害の前の知らせみたいに、たいへん不吉な予感がすると社長も言っておりましたが、重大なことであると思います。今回は死亡された方がなくて、不幸中の幸いだと思うのですが、炭鉱災害はかねがね原因がわからないというのが一つの問題点になっております。前回の五月二十九日の坑内火災、これもはっきりしないということでございますが、現時点においても原因ははっきりしていませんか。原因はどういうふうになっていますか。
  81. 青木慎三

    青木政府委員 五月二十九日の坑内火災原因でございますが、その後、警察並びに保安監督部のほうで調査いたしておりますけれども、現在までのところ、明確な結論は出ておらない状況でございます。
  82. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 坑内火災原因は、漏電とかいろいろありまして、どうしてもはっきりしないのですね。炭鉱災害原因というのは、こういうふうに、疑いということでいつも済まされておりますけれども、大臣は、どういうふうに指導し、どうあるべきだというふうにお考えでしょうか。
  83. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 一言でいえば、管理の不十分であるだろうと思います。したがいまして、念には念を入れて、あらゆる場面を点検し、常に繰り返しておく必要がある、そういうふうに思います。
  84. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 常磐炭砿西部本坑の現地を見まして、私も現地で社長以下、幹部にずいぶんきびしく指摘をし、指導もしてまいりましたが、特に感じたことは、この炭鉱の今回の災害はかねがねからの怠慢、また、いま大臣もおっしゃったように、管理の不徹底、いわゆる保安体制のずさんさ、惰性に流れている会社側の態度。一言にしていえば、惰性、怠慢。こういったことがほんとうにしみじみ感じられて、社長以下に私はきびしく話をしてきました。こういったことを思いましたときに、今度の場合も、火薬庫の反対側のほうに風が吹いたからよかったのですが、これが火薬庫に引火しておったらたいへんなことであった。今度もまた、六月十二日、自然発火原因とされておりますけれども、この火災にしましても、ベルトのいわゆる摩擦につれて起きたとかいうことであいまいでありますが、これまた問題でありまして、もしこれが大事件になっておれば、二百数十名の方が罹災しておったということもいわれるわけで、ぞっとする気持ちであります。  こういったことを思いましたとき、いま大臣保安体制、管理体制のことをおっしゃいましたが、このことを契機にひとつ各炭鉱の総点検を行なって、坑内にある可燃性のいろいろなもの、また危険なもの、こういったものは坑外に出す。今回常磐炭砿は、さっそく火薬は坑外に出したというふうにきのう社長から報告がありましたが、そういったことはいつも慢性になって惰性になっていますので、坑内の総点検をして、人命尊重の上からも、労働者を守るためにひとつ十分対策をとってもらいたい。そういったことで通牒を出すなり、また会社側に対するきびしい指導、こういったものをやってもらいたいと思うのですが、大臣のお考えを聞いて質問を終わりたいと思います。
  85. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先般の事故に際しましても、直ちに各炭鉱に対して注意を促しましたが、さらに今回の事件にかんがみまして、管理の徹底を期するように指導いたします。
  86. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  87. 田代文久

    田代委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四分散会