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佐伯政府委員 先生おっしゃいますように、日本の
炭鉱におきましては深部開発ということがきわめて大きな
問題だと思います。
昭和三十七年から約十年間の間に、
昭和三十七年は全国平均の深度は約三百四十メートルぐらいでありましたが、
昭和四十六年度は五百十九メートルというふうに、平均深度は百五十メートルも深くなっております。深度が深くなりますと、
先生御承知のように、まず地圧が増大いたしまして
坑道の維持がきわめて困難になるというような
問題があります。それから、メタン
ガスの
湧出量がきわめて多くなるということ、それから、それに伴いまして
ガス突出あるいは山はねというような現象が起こるようになってくるという
問題があります。それから温度が上昇いたします。御承知のように、普通地下垂直三十三メートルに大体一度ぐらい地熱が上がるわけでございます。したがいまして、深くなりますと地熱温度は五十度を越すということもしばしばあるわけでございます。それから、深くなりますと当然
坑道の維持がむずかしくなるというふうなきわめて大きな
問題が出てまいりますものですから、
生産だけではなくて、深くなりますと、
保安の
問題のほうがむしろ大きくなろうかと思いますけれども、そのおのおのにつきまして、
通産省におきましては、工業技術院の公害資源研究所、それの北海道支所あるいは九州支所というところで研究いたしております。
それから、
先生お話しのございました財団法人
石炭技術研究所等に補助金あるいは委託費というようなものを出します。それらのおのおの、たとえば
ガス突出の予防研究とか、
ガス抜きの研究とか、いろいろな研究をいたしておるわけでございますが、今後、より一そうこれに力を入れていかなければならないと思うわけでございます。
それから大
夕張炭鉱につきましては、深部にある程度まとまった
炭量があるわけでございますが、
昭和四十二年に
自然発火をいたしまして、現在水没をいたしております。したがいまして、水没をいたしておりますところを取り分けて再採掘をいたしますと、一ぺん焼けたわけでございますので、再び
自然発火がきわめてしやすくなる。まあ俗にいいます焼けぼっくいのような形になっておるものでございますから、
再開発をいたしますときわめて
自然発火を起こしやすくなるという
問題がございます。そうかといいまして、水没しておりますところをそのままにしますと、相当の
保安炭壁を残してでないと、下のほうが掘れない。そうなりますとますます深くなりますし、
炭量はきわめて少なくなるというふうな
問題がございまして、大
夕張炭鉱の深部は、先ほど来申しましたように、
自然条件が悪い上に、四十二年の
自然発火後の水没という
問題がございまして、きわめて困難だというふうに存じます。
ただお隣の、
先生おっしゃいました北炭新鉱でございますが、これはいま開発をいたしております。まだ正常出炭になっておらないわけでございますが、ここも比較的深いところに
炭量があるわけでありますが、ここは海水準下六百メートルから七百メートルまでの間に約二千六百万トンございます。それからマイナス七百メートルからマイナス千メートルまでのところに五千五百万トン、合計八千百万トンの
炭量があるわけでございます。ただ、ここも地表が大体プラス二百メートルでございますので、地表からのものにいたしますと、九百メートルまでのところに約二千六百万トンの
炭量があるわけでございます。したがいまして、ここは年産百五十万トンの計画でございますので、地表からの深度で見まして九百メートルまでの
炭量が大体十七年余りあるわけでございます。まずこの十七年の
炭量を掘りまして、それまでに鋭意技術開発をいたし、まただんだん深くなってまいりますと、それに伴います経験を科学的に分析いたしまして次の対策を打つということになりますものですから、まず現在の技術で可能な九百メートルまでの
炭量を二十年掘りまして、その後の対策はいまから準備をしていくことが一番適切ではなかろうかと存じます。したがいまして、ある
意味におきましては、この北炭がやっておられます新鉱は新しい深部開発のテストの
炭鉱にもなると存じますので、いろいろな技術を総動員いたしまして、これの開発を、マイナス九百メートルまでのところは簡単だと思いますが、それ以降のところにも
炭量は相当ございますので、技術の力を総結集いたしまして、これにいどんでいく必要があろうかと思います。その
意味におきまして、研究室での研究あるいは大学での研究等と連携をとりまして、これらの完成に進んでまいりたいと考えております。