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1973-08-24 第71回国会 衆議院 商工委員会 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年八月二十四日(金曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 浦野 幸男君   理事 稻村左近四郎君 理事 左藤  恵君    理事 田中 六助君 理事 羽田野忠文君    理事 山田 久就君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君       天野 公義君    稲村 利幸君       越智 伊平君    木部 佳昭君       近藤 鉄雄君    笹山茂太郎君       島村 一郎君    田中 榮一君       八田 貞義君    保岡 興治君       加藤 清政君    竹村 幸雄君       藤田 高敏君    渡辺 三郎君       野間 友一君    近江巳記夫君       松尾 信人君    宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         通商産業審議官 森口 八郎君         通商産業省通商         政策局長    和田 敏信君         通商産業省立地         公害局長    林 信太郎君         通商産業省基礎         産業局長    飯塚 史郎君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君         中小企業庁長官 外山  弘君         中小企業庁計画         部長      小山  実君         中小企業庁指導         部長      栗林 隆一君  委員外出席者         通商産業省立地         公害局保安課長 鎌田 吉郎君         労働省労働基準         局安全衛生部安         全課長     野原 石松君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 八月二十二日  辞任         補欠選任   増岡 博之君     保岡 興治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 浦野幸男

    浦野委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件、私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田久就君
  3. 山田久就

    山田(久)委員 わが国を取り巻く世界の客観情勢を見てみますると、資源確保の道を長期的かつ計画的に講ずるということがますます緊要な問題となってきたことは御承知のとおりでございます。この点は大臣もいろいろ考えておられるようでございますけれども、このための一つ手段方法として、資源保有国あるいは発展途上国に対して大きな工業基地というようなものをつくって、より統一的な経済協力を行なう、また一方、開発された資源食糧備蓄を行なうといような構想のもとに、このための機関、公団を準備しておるというようなことを伝え聞いておるのでございますけれども、これはわが国の非常な根本問題でもございまするので、まずこれらの点についてひとつ通産大臣のお考え、方針等を承っておきたいと思うわけであります。
  4. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 発展途上国等に対する経済協力の一環として、また、わが国産業構造政策上からの要請等も勘案いたしまして、産油国あるいはそのほかの発展途上国等に対して経済協力を行ならという意味で、ある場合には石油のリファイナリー、ある場合には石油ケミカルプロダクトあるいは情勢によってはアルミ、鉄鋼あるいは化学肥料等々につきまして先方の要請と協議がととのえば、われわれとしては、そういう関係業界が進出して経済協力を行なうことは、むしろ適切な事態になってきていると思い、ケース・バイ・ケースによってそれらを勘案しながら助成し、積極的にこの政策を進めていきたいと片方では考えております。やはり互恵平等、共存共栄という精神に基づいてこれを行なう必要があると思っております。  また一方におきまして、世界的に食糧不足あるいは燃料、資源問題というものが惹起されておりますし、将来的展望を見ましても、国民生活に密接な影響を持っておる物資等についてはこれを備蓄して、常に保有しつつ国民生活の安定を期するということも必要ではないかと考えておりまして、ある場合には、開発を行なってそれを輸入するということもありますし、ある場合には、値段が安いときに先行き見通して、商社その他に買い入れを慫慂して、それを政府が助成し、ある場合には保証する、そういうところまで考えて備蓄政策を行なったらどうか、そういう考えをもって目下検討しておるという状態でございます。
  5. 山田久就

    山田(久)委員 その問題については、いろいろ具体的な手段方法が適切なものであることが実効をあげる上においては非常に重要な点だろうかと思います。  御承知のように、経済協力の問題は各省にもまたがっているというようなことで、なかなか統一的な効果が発揮できないというような点もありますが、にもかかわらずわが国にとっては非常に重要な問題でございまするので、一段とこの点について大臣政府実効のある、そして長期的な計画性を持った仕事ができるような手段方法をひとつぜひお考えいただきたいということを重ねて要望いたしておく次第でございます。  次の問題は、最近の生活に密着しておりますいろいろな物資不足の問題でございまするけれども、御承知のように、このごろ特に国民生活に密着しているような基礎資材原材料不足が目立ってきているようで、これがために、そのような資材販売し、またはこれを加工しておる中小企業、とりわけ零細な企業は非常な困難に立たされておるという様子も見受けられる。この秋になってくると倒産業者も出てくるんじゃないかというような取りざたも行なわれておるような状況でございまして、そういうような状況にもかんがみまして、切実な訴えを受けておる二、三の問題を中心といたしまして、ひとつ大臣並びに通産当局情勢判断及び対策をお聞かせいただきたい、こう思っているわけでございます。  まず第一に、鉄鋼製品の問題についてただしたいわけでございまするけれども鉄鋼製品については、小棒であるとか、生活に密着した末端への供給不足して、価格も急騰していてまことに思わしくない現状のようであります。去る八月六日に、通産省は、小形棒鋼安定供給のためにあっせん所を設け、三万トンほど放出したということも聞いているわけでございまするけれども、実際それがほんとうに必要な面に回っているかどうか、そこら辺についての実情見通し等がどうなっているかということをお尋ねしたいと思うのです。特に大手ひもつき需要家はいいといたしまして、小口需要家、いわゆる店売りの業者は、一向自分のほうへ回ってこないというようなことで訴えております。  そこで、年間鉄鋼生産計画の立て方、そこら辺のところが実際の情勢に合っておるのかどうか、その点についての説明もお聞きしたいと思っているわけです。需給計画がこうした小口需要家需要を見込んでいないというような懸念もうかがわれるだけに、政府は、すみやかにこれら資材確保需給円滑化のために万全の処置をとるよう強く要望したいとともに、これらの点についてひとつ明快なお答えを願いたい、これが第一の問題でございます。
  6. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 鋼材等につきまして、一部需給が適切を欠きまして御迷惑をおかけしておることはたいへん恐縮でございます。ことしは大体年間一億二千万トンクラスの生産が可能であると考えておりました。最近水不足その他で若干懸念はしておりますが、大体において生産は順調にいきそうであると考えております。  それで、ひもつき大手のものと市中販売のものとの比率は八対二くらいで市中に流れておるわけでございまして、この春以来小棒その他が不足しあるいは騰貴いたしましたので、鋼材あっせん所をつくりまして、市中中小土建そのほかに対する応急措置をやったところでございます。最近に至りましても、特に小棒あるいは一部の形鋼等市中において非常に逼迫しておりますので、特別の措置を講じて、八月−九月大体十六万トン、それから翌月、その翌月が十五万トンずつ、計四十六万トンの分を大口からカットいたしまして、そしてそれを市中のそういう方面に回す、それから相談所をつくりまして、それらの市中要請にこたえる等々の緊急の政策をやりまして、いま市中を冷やそうと思って努力しておるところでございます。  詳細につきましては局長から御答弁申し上げます。
  7. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 小棒のあっせんにつきましてその実施の状況それから見通し等、御質問がございましたので、私からお答え申し上げます。  先ほど先生からも御指摘のように、八月の六日に小棒の特別出荷措置を講じたわけでございますが、数量はとりあえず三万トンを小棒の共販会社を通じて末端需要家に行き渡るように措置したわけでございます。都道府県商工課あるいは通産局等窓口といたしまして、ここに申し入れていただきまして、そこから小棒の共販会社連絡をしていただいて、小棒の共販会社から需要家に売り渡すということにしておりますが、末端中小企業建設業者資材不足のために現在非常に困っておりますので、これを何とかして救おうというのがこの措置の眼目でございまして、この購入の対象となります業者資本金五千万円以下の中小業者でございまして、かつ、購入できる一回の量は五十トンということで限定をいたしておりますが、八月の二十一日現在でとりあえず三万トンの分につきまして締め切りをいたしたわけでございますが、それによりますと、千百九十件の申し込みがあったわけでございまして、申し込み数量は三万トンを若干オーバーするようなことになっておるわけです。ただ、聞いてみますと、この中には資本金五千万円を上回るようなものも若干あるようでございますので、これらを排除いたしますと大体三万トンのところでおさまるのではないかと思いますが、ただ、これだけではとうてい現在の末端中小建設業者需要にこたえられるわけにはまいりませんので、引き続いて九月の中旬から第二弾の措置として今回の三万トンを上回る数量の小棒共販会社からのあっせんにつきまして現在検討いたしている状況でございます。
  8. 山田久就

    山田(久)委員 通産省のほうでもいろいろ努力をしているというお話であったわけですけれども、先ほども指摘しましたように、大手関係のあるというほうはまあまあ回っておるというようなかっこうであるけれども弱小のその方面業者というほうになると現実にはなかなか回っておらない。何しろ非常に重要なわれわれの生活に密着しておるものであり、そこら辺の行政指導というか、十分ひとつ把握して、適切な措置を講じてもらいたいと思うのです。  時間の関係で先へ進ましてもらいまするが、次は最近の品不足、いろいろなデモなんかも行なわれているようですけれども塩ビ関係する諸資材の問題であります。本件は、後刻同僚の左藤議員から質問がありまするのでお聞き取りいただきたいと思いまするけれども地元関係者から、こういう方面をいろいろかかえておりまするので、深刻な訴えに接しておりますから、その二、三の事項について触れてお尋ねしたい、こう思うのです。  一つ屋内配線用ビニール電線品不足というものが非常なもので、値段も非常に高騰しておる。また、一般家庭向け水道用塩化ビニール管というものも同様の状態にあるというわけで、このような需給アンバランス状態を来たした事情について、一体通産当局として、ほかにもいろいろ原因はあるにしても、見通し誤りがなかったのかどうか、小口需要者向け品不足解消あるいは価格安定のために、通産当局指導のもとに、電気事業組合とか、管工事業協同組合に、それぞれ何かあっせん所が設けられてやっているというような点はいろいろその努力は評価されるわけですけれども、実際そういう方面実績があがっているかどうか、こういうような点についてひとつ通産当局実情把握見通しというようなことをお伺いしたい、こう思うのです。  何しろ訴えは非常なもので、零細企業のなまの声、こういうものをよくひとつ聞いていただいて、もっともっと適切な行政指導が要るのではないか、こう思うわけで、メーカーに対する緊急生産出荷要請措置、それはどうなっているのか、その後の状況等についてひとつ当局の答弁を求めたい、こう思います。
  9. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 御指摘塩ビ電線塩ビ管等不足の主たる原因というのは、塩ビ供給不足によるわけでございますが、塩ビ生産につきましては、ことしの四月−六月の期間は順調に過ぎまして、需給関係もほぼ見合っておったというように私ども考えておるわけでございますが、七—九に入りましてから突如として異変が起こってきたわけでございますが、まず供給の面におきましては、七月七日に出光石油化学徳山工場爆発事故がございまして、あそこにおきましては全国の塩ビ供給量の一五%を生産しておったわけでございますけれども、これが全面的に生産がストップしたわけでございます。加えて最近の日照りに上りまして、光化学スモッグ等による電力の制限あるいは生産制限等事情もございますし、また塩素を供給いたしております苛性ソーダメーカー等が若干地元で漁民との間にトラブルを起こして生産停滞を余儀なくされているといったような生産面の問題、それから需要につきましては、いずれもこれらは建設用でございますので、建設関係の受注が予想外に伸びまして、当初私どもが考えておりましたよりもはるかに大きな電線塩ビ管等需要が発生したと思うわけでございます。このために七月におきまして、かなり需給関係でギャップを生じてきた。私どもといたしましては、電線にいたしましても塩ビ管にいたしましても、何としてもこの塩ビそのもの需給のバランスを早くとるということが第一義だと考えておるわけでございますが、幸いにいたしまして、出光の徳山工場におきましても、あそこのタンクの使用につきましては、すでに地元山口県から許可をいただいておりまして、今月の十八日から一部でございますけれども操業いたしております。この面の生産が若干でも進みますと、多少いまの需給関係の改善には効果があるのではないかと考えておるわけでございます。  それから第二番目に、御指摘のように通産省といたしまして、塩ビ電線とそれから塩ビ管につきまして、業界関係メーカーに対しまして緊急出荷要請を行ないまして、これを末端電気工事業者あるいは塩ビ管を使っております建築関係業者に行き渡るような措置を講じたわけでございますが、現在都道府県窓口といたしまして、塩ビ電線につきましては電気工事業組合連合会等中心にいたしまして、個々業者への供給円滑化をはかるように検討をいたしておりまして、来週早々には実際受付業務が発足できるのではないかと思っております。なお、塩ビ管につきましても同じような方法によりまして、府県窓口にいたしまして措置をすることにいたしまして、来週早々から実際に受付が開始されるということになっております。
  10. 山田久就

    山田(久)委員 実際は一企業で三百メートルというようなものを供給されるということになっているのが、その一割そこそこということで非常に困っているというような状況訴えてまいっておりますので、十分実情把握ということにひとつ踏み出して、そして適切なる対策を講じていただきたいということを重ねて強く要望しておきたいと思うのです。  次に、私の選挙区である浅草方面で、ケミカルシューズ、サンダル、そういうようなものが盛んに取り扱われているわけですけれども、これも塩ビ原材料としておる。そういう関係から非常な品不足を来たしている。その上、メーカー側から値上げを持ちかけられており、加えてはきもの需要が一方では低下する。総理府の家計調査というようなものを見ても、はきもの購入の支出が四十五年には〇・八六%にも落ち込んでいるというようなことをいっております。このような値上がり攻勢需要の伸び悩みという矛盾する両面から圧迫を受けて非常に問屋先行き不安というので頭をかかえておる。浅草のこの方面の業種は、長年の伝統と、また関連する業態も非常に多いという状況でありまして、このような地場産業の育成という面からもこれは捨てておけないというのが実情である。このことをひとつよく御理解おき願いたいと思う。  そこで、これらのはきものメーカー卸問屋など弱小企業に対する緊急対策として、非常に彼らも困っているようなので、実際問題としてどのような行政指導を行なっているか、また資材緊急確保のために、他の物資と同様のあっせん所を設けるというようなことについて何か考えておられるかどうか。何しろ零細企業の要望も非常に切実でございますので、この点について大臣あるいは長官等意向をひとつよくお聞かせおきいただきたいと思います。
  11. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 塩ビあるいは樹脂の不足等からケミカルシューズやあるいは玩具類等についていろいろ品不足を来たしていることはたいへん残念な次第でございます。塩ビ不足原因はただいま御報告申し上げたとおりでございますが、われわれといたしましては、そういう中小零細企業に対して圧迫が行かないように今後とも知恵をひねり出し、ともかく当面のこの危機を突破できるように最善の努力を尽くしたいと思います。  具体的には局長から御答弁申し上げさせます。
  12. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のようにプラスチック、はきもの業界では、いろいろと原材料入手難あるいは価格上昇需要停滞等において先行き不安な状態にあるということは十分承知いたしております。私たちのほうといたしましては、プラスチック生産原局と十分緊密な連絡をとりながら原料手当て等につきまして遺憾のないように取り計らいたいと考えます。
  13. 山田久就

    山田(久)委員 これはいずれ左藤議員から詳細質問があろうと思いますのでこの程度にいたしまして、次に、われわれ日常に使っている紙の問題ですが、特に印刷用紙材の問題、これについてちょっとお尋ねしたいと思うのです。  これも全くの品不足という状況で、特に中小印刷業界においては先行きの操業が全くできなくなるのではないかというような不安におびえているような様子もうかがわれるわけです。さらに、メーカーからの一〇%の値上げ、こういうようなことによっても拍車をかけられているような状態になっておる。環境保護のために農林省は原木減材をしておるし、さらにパルプ原材価格も一五%アップしているような状況から見て、需給関係について、通産省見通し等もいろいろあるが、何かそこら辺に少し誤りがあったのじゃないかというような、いろいろ批判も生まれておるようなわけです。これらの点についての供給対策として一体どのようなことを考えておられるか、この点についてお答え願いたいと思います。
  14. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まず紙の需給見通しの問題でございますが、当初月当たり販売量を六十六万三千トンと見込みまして、これに対する生産量は六十七万七千トン、どちらかといえば例年に比べて強含みの需要予測を立てておったわけでございますが、四月以降需要が一方的に増勢を示してまいりましたので、去る四月二十三日、業界に対しまして増産要請をいたしたわけでございます。その結果、四−六月期の実績月間ベース生産が六十九万九千トン、販売が六十八万四千トン、それぞれ二万トン程度上昇を見たわけでございます。  これを特に印刷用紙に使われます上質紙について申し上げますと、ただいま申し上げましたような増産要請に応じまして、上質紙生産は、五月時点で六万三千トン、六月で六万五千トン、おおむね一万トン程度増産を見ておりますが、一方需要がこれよりはるかに強く、五月時点で七万一千トン、六月時点で六万六千トンと、かような伸びを示したために、むしろメーカー在庫は減少しているといったような状況になっておりますが、その後、原木事情がなお悪化しておる、あるいはこの七−八月におきましての異常渇水が災いいたしまして、需給上の情勢はなお好転を見ないというような遺憾な状態にあるわけでございます。当方といたしましては、かような事態に対処いたしまして、中小印刷業者向けに紙のあっせん所を開設いたすべく現在準備を進めております。近い将来に開設の運びになるかと思います。これと兼ね合いまして、関係流通業界に対しまして、便乗値上げ等をなさないよう強く行政指導いたす所存でございます。
  15. 山田久就

    山田(久)委員 通産当局もいろいろ考えているようですけれども、繰り返して言うけれども一般零細企業、この方面になりますと、実際にはなかなか回ってこないということで、困難も非常に多い、こういう状況です。資材確保需給円滑化ということのためには特に一そうの尽力を要望してやまないわけですけれども、また、いまの非常に困っているような状況からして、この中小零細企業に対しては、倒産というようなものもうかがわれるというような状況でもありますし、緊急融資対策というようなものもやはり考えてやるべきじゃないか、そういう情勢じゃないかというようにも考えられます。  そこで、以上の状況に対して、中小企業金融公庫をはじめとする政府公庫という方面においてひとつ特別融資制度を設置するということを考えてみてはどうか、そういうような点についてその意向が現在あるかどうか、こういう点についてひとつ大臣意向をお伺いしておきたいと思うのです。
  16. 外山弘

    外山政府委員 物資供給力が非常に弾力性を欠いておりまして、ただいま御指摘のようないろいろな事情が起こっております。この辺が金融と同様に中小企業に物的な不足状況を起こしておるということは私どもも非常に憂慮しておるところでございまして、物的な面についてもいろいろ関係原局にお願いしておるところでございます。ただ、いま御指摘のような金融面の問題も同時に問題といたしまして、たとえば決済資金増大というふうな点が出てくるわけでございます。また、あるいはつなぎ融資の問題が必要になってくるということもありましょう。私どもといたしましては、とりあえず政府系金融機関に対しまして、実際問題としてこういう原材料不足等からくる所用資金量増大に対して特別の配慮をするように、具体的に個々申し込みに対してそういう点をよく考えてやるようにということで通達をしようということで、あすあたりにはその通達関係機関に出しまして、そしてできるだけ金融上からもこういった問題に対する対処策を講じたい、こう考えておるわけでございます。ただ、特別融資というふうなところまでいくことにつきましてはまだいろいろ問題もあるかと思いますが、この辺はさらに今後の状況を考えまして勉強してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  17. 山田久就

    山田(久)委員 重ねて中小企業零細企業は実際は非常に困っている状況であるので、実情把握して、十分の対策をこの上とも強く要望しておきたい、こう思うのであります。  次に、ちょっと方面を変えまして、魚類商のほうの救済関係の問題なんですけれども、お尋ねしたいのは、魚介類汚染に伴う魚商業者救済措置の点でございますけれども、確かに水銀汚染漁業者にとっては大きな痛手で、地域鮮魚業者にとってもこれは同様の問題で、去る七月二十四日の閣議決定で、二十二府県に対しては緊急融資措置がとられた。しかしながら、汚染地域に含まれていない地域業界は、程度の差はあるけれども、やはりいろいろな新聞報道その他あるいは発表の適切を欠くというようなことで非常に売れ行きが落ち込んでいるというような被害があったわけであります。中でも、大消費地である東京の場合には緊急融資の対象地域に含まれていないのであって、これはやってみたけれども、実際こういう点については矛盾がある、こういうことで、先般中小企業庁にこれらの対策を考慮するようにということを関係有志の議員のほうから申し入れてあったわけでございますけれども、一体これらの点について関係当局の考えはどうか、あるいはこういうような点について措置を一体その後どのようにとろうとしておるか、ひとつその意向対策の現状等をお尋ねしておきたい、こう思うのです。
  18. 外山弘

    外山政府委員 水銀並びにPCBの汚染に関連いたしました中小企業者に対する緊急融資につきましては、ただいま御指摘のように、去る七月二十四日の閣議決定におきまして、御指摘のとおり二十二地域につきまして緊急融資の実施が決定されております。ただ、これらの指定された地域以外につきましても、程度の差こそあれ、何らかの被害が生じておるということも、私どもとしては各地方公共団体からの事情聴取によりましてわかっておるわけでございます。  そこで、私どもとしましては、七月の初めでございますが、政府系機関に対しまして、今回の緊急融資制度の対象とならない企業につきましても、水銀、PCBの被害に対処するための融資について、融資額あるいは融資条件等に関しまして、できるだけ弾力的に応ずるようにすでに指導してきているところでございます。なお、こういう地域につきましての具体的な事情によりまして、もちろん二十二地域とは違った程度だと思いますが、できるだけ今後も実情に応じた金融対策を講じてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  19. 山田久就

    山田(久)委員 以上申し上げたものは、最初に申し上げたように、いずれも国民生活に非常に密着した関係の問題でございます。十分実情把握して、ぜひ適切な対策を講じてもらいたい。これこそまさに人権にも関する重要な点だと考えている点でございますので、ひとつ大臣及び関係当局は一段とこの点についての実情把握対策を緊急に進める、この必要性をさらに強調し、ひとつ努力をあらためて要望いたしまして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  20. 浦野幸男

    浦野委員長 左藤恵君。
  21. 左藤恵

    左藤委員 いま山田議員から質問がありました点につきまして、特に塩化ビニールの電線の問題だけにしぼって少し詳細にお伺いいたしたいと思います。  塩化ビニールの電線の問題につきまして、先ほど来、当面その対策の概要についてはすでに御答弁もあったわけでありますけれども、現在この塩化ビニールの電線がないために住宅の建設が非常におくれておる。庶民のマイホームの夢を果たすことが非常にむずかしい。さらにまた塩化ビニールのパイプというものが不足するために水道が引けないというようなことで、家は建っても電気はつかないし水道が供給されないということで、一つの庶民の大きな夢がそういった点で非常に砕かれているということと、そしていま山田先生からお話がありましたように、そういった業者は非常に零細業者が多い。この零細業者がそのために倒産の危機に——資材難のために仕事ができない、そうしてそういったことが物価対策上も一つの大きな問題になっているということだと思いますが、そこで少し詳細にわたりまして、塩化ビニールの電線というものがどういう実態であるかということを明らかにしておく必要があると思います。  まず、塩化ビニールの電線のうちで、どのくらいのものがいわゆる平形ケーブルということで屋内配線用として実際使われておるか、そうして全体の生産状況は一体どうなのか、また需要の伸びはどうなのか、こういった点について当局からお伺いをいたしたいと思います。
  22. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 塩ビはいろいろな用途に使われておりまして、四十七年度の実績で見ますと、その約三〇%がパイプ用に回っておるわけでございます。御指摘電線につきましては、四十七年度におきましては七%ということになっております。おそらく最近の建築関係のブームに乗りまして、この比率というのはふえてきているのではないかと思うわけでございますけれども塩ビ電線につきましては、塩ビ電線の中の、特に御指摘の平形ケーブルにつきましては、本年の上半期におきましては四−六月の間の供給につきましては、生産がトン数で申しますと月大体三千トンぐらいで、まあ需給関係も何とかやりくりできたというふうに見ておるわけでございます。ところが、七月の中旬以降これが先ほど申しましたように出光の徳山の事故等を契機にいたしまして生産が減ってまいりまして、現在は約二千トン、すなわち平常時の三分の二まで生産が落ちておるというふうに私どもは見ておるわけでございます。この生産が三分の二に落ちましたことに伴いまして、末端電気工事業者はこの塩ビ電線の確保について非常に困難を来たしておるというふうに私どもは見ておりまして、これを何とか救済する必要があると考えまして、先般来いろいろな措置を講じておったわけでございます。私どもは平常ベースの三千トンと現在の生産の二千トン、この差の分を何とかして塩ビメーカーあるいは電線メーカーの協力を得まして捻出をするということでいろいろ努力をいたしておる状態でございます。
  23. 左藤恵

    左藤委員 この減産の理由の中には、塩素の不足もありましょうし、その他の、たとえば電線のことでありますので、ケーブルに使います銅というものの問題もあろうかと思います。しかし、生産されました平形ケーブルというものがどういった形で流通の中に入ってくるかという問題で、流通過程でたとえば商社が介入するとかいうようなことで品薄になっておるというふうに考えておる人も相当あると思いますが、実態はどうなんでありましょうか。こういったものを取り扱っておられる問屋は、平形ケーブルーメートルが大体八十円ぐらいだということで取引が行なわれておりましても、末端の電気材料店へ行きますと一メートルについて二百円とかいうような非常に高い価格になっておるという実態であるわけであります。そういったことでさらに品物が少ないということから、どこかに隠されているのではないかという、一般需要家としては非常にそういう不満があると思いますが、そういった点については流通過程をどういうふうに通産省では見ておられるか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  24. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 塩ビ電線につきましては、一次問屋を通りまして、二次問屋つまり電材店と申しておりますが、こういうところに参りまして、それがさらに小売り店に回って、零細な電気工事業者がそこから買うというようなことになっておるわけでございますが、商社がこの塩ビ電線、特に平形ケーブルにつきまして介入しておるかどうかという点も、実は私ども気になりましていろいろ調べたわけでございますが、商社は直接これのメーカーからの購入というようなことはいたしておりませんけれども、ただこの平形ケーブルのメーカーというのは大部分が中小メーカーでございまして、このメーカー問屋との間をつなぐために従来資金的な融通措置を通じまして若干関係はしておるということはあるようでございますけれども、品物を直接商社が買ってそれを問屋あるいは末端に売り渡すというような機能は果たしてないように私どもは見受ける次第でございます。  なお、先ほども申し上げましたけれども、従来の生産三千トンに対しまして七月下旬以降、月にいたしまして二千トンということに生産が落ちておるわけでございます。しかしそれにいたしましても、三分の二は依然として生産はあるわけでございますが、それが、末端電気工事業者の話をいろいろ聞いてまいりますと、出光の徳山の事故を契機にして、あれから一週間後にたちまち自分らは品物が買えなくなってしまった、それから値段につきましても、いま先生御指摘のように、従来は、ことしの初めは二十三円、あるいはせいぜい三十円程度だったものが、もう百五十円から二百円まで行ってしまっている、しかもそういう高い値段でもなお物が入らない、一体これはどういうことであるかということで、電気工事業者は非常に不審を抱いておりますし、私ども自身もその点について究明をする必要があると考えまして、商社あるいは平形ケーブルのメーカー、それから一次問屋等につきまして、いろいろ聞き込みによりまして調査をいたしたわけでございますが、どうも私ども調査いたした限りにおきましては、商社、一次問屋等において特に買いだめとかなんとかいうような、そういう実態についてはつかめないというようなことでございます。
  25. 左藤恵

    左藤委員 そういったことに需要家はたいへん不満になって、通産当局の強力な行政というものを強く期待しておると思いますので、十分長期的に、安定して取引をする方法はどうすればいいかというようなことについて、なお一そうの検討をしていただく、調査をしていただくと同時にまた、そういった業界との連絡を十分密にしてやっていただきたい。今後の問題として、これは要望を申し上げたいと思います。  そこで、いま減産の理由とかいろんなことが問題になっておったわけですが、塩素の不足原因の水銀の公害の問題、そのために生産が減ったというようなことについて、今後どういうふうにしていくか。当面の緊急対策としては、先ほど来山田先生の御質問に対しましてのお答えもありましたようなあっせん所方式によって、五百五十万メートルとかいうものを緊急に配給するということで、とにかく当面はしのぐといたしましても、長期的にそういった需要見通しというものがどんどんまだ伸びていくという段階において、今後日本の水銀をはじめとして公害をなくしていかなければならない、その中において、どういうふうな対策を講じていくか。たとえば、そういった水銀を使わないで塩素をつくる方法、苛性ソーダの隔膜法というようなことについての技術的な開発というものが一体間に合うものであろうかどうか。そういう見通しについて通産当局はどうされるか。そしてまた、そういうものに対して強力に工業技術院とか、そういうところで技術指導、開発という問題について力を入れていかなければならぬと思いますが、そういうことについてのお考えをお伺いしたいと思います。
  26. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 塩化ビニールの生産増のために塩素の生産円滑化をはからなければいかぬことは御指摘のとおりでございますが、塩素につきましては、従来日本の生産の九五%が水銀法によります電解設備を使ってやっておるわけでございます。したがいまして、水銀を全然使わない隔膜法によりますものはわずか五%でございますが、水銀汚染の抜本的な解消策といたしましては、水銀を使わない製法であります隔膜法にできる限りすみやかに転換するという必要があるわけでございまして、私どものほうは先般来、水銀対策会議の結論等に基づきまして、関係業界指導しながら現在検討を進めているわけでございます。水銀対策会議の結論といたしましては、五十年の九月までに極力その製法への転換をはかるということになっておりますが、関係業界といろいろその後詰めた結果、全体の三分の二程度は隔膜法への転換が可能ではないかというような見通しを持っておるわけでございます。ただ、この隔膜法への転換までの間に若干の時間があるわけでございますが、この間におきましても水銀のたれ流し等の事故がありますとたいへんなことになりますので、これにつきましてはクローズドシステム化と申しまして、水銀を排出しない、一回使った水銀を何回も還流をして使うような方式についてメーカーといま検討をいたしておりますが、実はこのクローズドシステム化につきましても水銀対策会議で一応の指導基準というものはできておりますけれども、私どものほうは、この指導基準をさらに早めまして問題の九水域につきましては本年の九月末までにこのクローズドシステム化を完了せしめる、それからその他の地域につきましては、本年一ぱいまでにクローズドシステム化を完成せしめるということを指導いたしております。これによりまして、水銀対策について可能な限りの対策をとって、苛性ソーダあるいは塩素の生産にできる限り支障がないように措置したいと考えておるものでございます。
  27. 左藤恵

    左藤委員 もう一点、塩ビ需給関係につきましてお尋ねいたしますが、いままでは日本として塩ビ線をかなり輸出していたと思います。そういったものを今後どういうふうに行政指導によって輸出というものをなくしていくのか、日本の品不足をそういうことでカバーしていくのか、また逆に今度は外国から輸入するという計画はあるのかどうか、そういったものでいま技術開発をしていただく段階までに品不足の起こらないような、そういった不安を除去するような対策を考えておられるのかどうか、この辺についてお答えいただきたいと思います。
  28. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 塩ビの輸出につきましては、中国その他東南アジアの諸国に対しましてかなり長期的な契約があるわけでございますが、これに対しまして塩ビ業界は、最近の国内の品不足から、できる限り輸出を削減しようということで、中国その他の従来からの得意先をいま使節団が回っておる状態でございまして、日本の国内事情訴え、輸出につきましては少しの間繰り延べを認めてもらいたいということで各地を歴訪いたしておりまして、その結果、私どもは幾らかでも輸出が削減でき、それが国内の供給に回ることができれば幸いだというふうに考えておるわけでございます。  なお、輸入につきましては、従来から塩ビモノマーの原料でありますEDCが若干ずつ入っておるわけでございますが、月にいたしまして約四千トン程度のものが入っておるわけでございますけれども、最近商社等を通じまして外国のメーカーと折衝いたしました結果、この九月から従来の四千トンに六千トン上のせして、約一万トン程度のものは日本に輸入が可能である、これは大体今年一ぱいは一万トンベースで輸入ができるというらうな見通しがつきましたので、先ほど申しまし出光の事故の復旧その他光化学スモッグによる生産減等と相まちまして、いまの輸入の若干の増大によりまして国内の需給関係の改善に幾らかでも資することができるのではないか、かように考えておるものであります。
  29. 左藤恵

    左藤委員 この塩ビ電線が足らないとか、そういった問題で住宅工事がかなりおくれるとか、あるいはまたそれでいろいろ迷惑をかける。働かなければならない人を雇っておかなければならない、働く人を雇っておくための日当が要るとかいろいろなことで、こういった宅内の電気工事をやります業者が大きな損害を受けていると思うのですが、こうした人に対して、たとえば先ほど山田先生から御指摘のあった鮮魚商に対する緊急融資のような何か救済資金を別ワクで融通するとかいうようなことについて検討しておられるかどうか、この辺の問題について中小企業庁からお伺いしたいと思います。
  30. 外山弘

    外山政府委員 先ほどもお答えしたところでございますが、原材料不足によりまして中小企業者が著しく困っているというふうな事情をいろいろ耳にいたしているところでございます。とりあえず私どもといたしましてこれを金融面から救済するということで、三機関に対しまして通達を出して、そして特段の配慮をするように、こういったことに備えて所要資金量がふえてくる、そういったことに対して特段の配慮をするように指導をしてまいりたい。その状況の中でさらに先生のおっしゃるような特ワクという問題が必要であるかどうか、今後の状況の中で検討してまいりたい、こう考える次第でございます。
  31. 左藤恵

    左藤委員 もう一点だけお伺いしたいと思います。  売り惜しみ買い占めのための投機防止法というものが国会で成立したわけですが、ここにこの塩化ビニールを指定物資として指定されることについて御検討になっておるかどうか、この辺をお伺いしたいと思います。
  32. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 塩ビ品不足を契機といたします末端価格の異常な暴騰等に対しまして、現在の状況を打開するには、何といたしましても供給の増加をはかり、かつ塩ビ電線あるいは塩ビ管等一般庶民の住宅に関係あるような緊急部門にできる限り多くのものを振り向けるということで措置をいたしておりますが、同時に価格の異常な高騰につきましては、私どもといたしまして非常に心配をいたしてこれを注視しておるわけでございますが、関係メーカーの協力を得まして緊急部門への緊急放出をやっております。これの推移を見まして、かつその後、先ほど申しましたように、商社、問屋等につきまして私ども調査もやっておるわけでございますので、そこら辺の情勢を見きわめつつ、投機防止法の指定の問題については引き続き検討していきたいというふうに考えております。
  33. 左藤恵

    左藤委員 冒頭に申しましたように、中小零細企業資材難で仕事ができなくなったり、そのために倒産するというようなことがどんどん出てくるという心配もあるわけでありますし、また庶民のマイホームの夢を電線や水道管が足らないために建てられないというようなことのないように、今後とも通産省として原局が中小企業庁と連絡をとられるだけでなくて、ほかの建設省とか、そういったところとも十分連絡を密にしていただきまして、行政の万全を期していただきたいことを強く要望申し上げて、この点についての大臣のお考えをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘のとおり、生活に密着したそれらの物資につきましては、通産省としても非常に責任を感じておりまして、まず第一に需給関係を円滑にする、そういう点について重点的に努力をしてまいりたいと思います。  第二番目には、そのような事情から営業上の困難を来たして金融上の問題が出る、そういうものにつきましても、ただいま申し上げましたように、三機関等を督励いたしまして金融上の措置に遺憾なきよう特別にいま指示もいたすところでございます。そういうような諸般の対策に省をあげて取り組みまして、御期待に沿うようにいたしたいと思っております。
  35. 浦野幸男

    浦野委員長 加藤清政君。
  36. 加藤清政

    ○加藤(清政)委員 私は、中小企業省の設置について、並びに原材料不足と物価対策について、それから金大中問題と対韓援助について、この三点にわたりまして御質問したいと思いますが、左藤委員から品不足の問題や塩ビの問題につきましては詳しく説明がありましたので、その点省かしていただきたいと思います。  去る七月十九日の本会議で、私は、中小企業対策の一そうの強化拡充のために中小企業庁を中小企業省に昇格させるべきだという立場から政府の見解をお尋ねいたしましたところ、田中総理は、中小企業を取り巻く情勢は、環境問題の深刻化、物価、流通問題等、ますます複雑化し、多元的になっておるのでありまして、したがって、このような新たな情勢の展開を踏まえまして考えますと、中小企業省の設置は十分検討に値する問題であると考え、関係当局に対して検討を命じたと答弁されました。したがいまして、そのことについて通産省において首相の指示を検討されたという検討の作業がどの程度進んでおられるか、また、このことについての通産大臣の御見解を伺いたいと思います。
  37. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 本件につきましては目下検討を続けておりまして、もしかりに中小企業省ということに踏み切るとする場合にはどういうような構成にすべきであるか、農林省や厚生省や運輸省に関係する中小企業もございます。そういう場合それらの扱いをどうするか、金融上の措置等についても、現在大蔵省が持っておる権限等についてどういうふうにするのか、そういうようなことを含めていろいろ検討もしております。  しかし、そういうような機構にたよるということなくして、現在の中小企業庁を拡充強化することによって現在の時代の要請にこたえるほうが手っ取り早いのではないか。そういう点から、中小企業庁を充実強化、特にその下部機関あるいは中小企業者に対する情報提供、指導強化、そういうような諸般の面について行なうべきことが多々あるのではないか。いたずらに看板をかけることばかりにたよるということは必ずしも穏当ではないと思われる点もなきにしもあらずであります。そういう観点にも立ちまして、いろいろな法案、方策を検討しておるというのが実情でございます。
  38. 加藤清政

    ○加藤(清政)委員 中曽根通産大臣から中小企業省の設置についての御答弁がありましたが、本会議の席上、田中総理も、十分検討に値するのでそのことについて関係当局に作業を命じておるという御答弁があったわけでありまして、少なくとも七七%の産業構造をにない、しかも二千七百万人に及ぶ中小企業者並びに従業員の人たちがこの産業構造あるいは流通機構をになっておる現在において、中小企業省を設置して積極的に中小企業対策に当たっていただきたい、そのことを要望しておきたいと思います。  それでは次に、原材料不足と物価対策についてお伺いいたしますが、最近中小企業の間で必要原材料が円滑に調達できない、いわゆる原材料不足が深刻になって、業者の中では倒産あるいは企業を縮小するというのがもうすでに出ておるわけであります。なおまた、機械業界などの中には操業度が低下している企業も出ていると聞いております。この品不足は一部の原材料に限らず、大豆だとか生糸だとか綿糸、プラスチック、鋳物、木材など広範囲にわたっておりまして、仕入れ価格承前年回月比で繊維、鉄鋼、木材、セメント、鋳物などで約二倍、大豆に至っては約三倍というものすごい高値になっているということであります。  このような原材料の大幅な値上げは当然に製品価格上昇となって消費者物価を引き上げることになるわけでありますので、供給不足に悩む中小企業とともに、国民生活の面でも重大な影響を受けるのであります。私は、このような事態に立ち至った大きな要因は大量生産、大量消費という高度経済成長政策にあったというふうに考えておりますが、通産大臣は、この点に関しましてどのような認識を持っておられるか、お尋ねしたいと思います。
  39. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘のような諸般の物資がむしろ需要の爆発的増大というような性格から不足ぎみになってきておりますことはまことに遺憾でございます。これらに関する対策につきましては、いままで御説明申し上げたとおりでございますけれども、やはり総需要をある程度カットして、そして需要に対する抑制措置を講ずるということが基本的には大事なことではないかと思つて、そういう面からも政府はいままでしばしば金融措置あるいは公共事業の繰り延べ等によってその仕事を果たそうと思ってやってきたところでございますけれども、今後ともやはりそういう努力をさらに継続していく必要があると思っております。  また一面におきましては、この供給の増加ということをあらゆる手段をはかって考える必要がございます。今回のこういう問題は、一面においては国際的な資源不足、それから来る割り高、外国からの資源を通ずるインフレ的輸入、そういうような様相も一面においてございます。また一面においては、公害関係あるいは工場の事故によるストップ等による原因もございます。また、先ほど申し上げた内需の旺盛という面もございます。したがいまして、そういう性格分析を的確に行ないながら、それに応ずる一つ一つ手段を講じていきながら現在の事態に対処していきたい、そのように考えております。
  40. 加藤清政

    ○加藤(清政)委員 今日の原材料不足の解消の見込みは一体通産大臣としてあるのかどうか、あるとすれば、どのような政策手段を考えておられるか、あわせてこの際、御答弁願いたいと思います。
  41. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この点は、先ほど申し上げましたように総需要が非常に旺盛になりまして、友が友を呼んでいまのような供給不足需給の逼迫という事態がまず第一に出てきているように思います。そういう面から総需要の抑制ということを引き続き行なう必要があると思います。これは金融措置あるいはそのほかの財政的措置等も必要に応じて断行すべきである、そういうように私は思っております。  それから第二には、やはり国際的な資源供給を増加させる、そういう点についてさらに格段の努力をしていきたいと思うのでございます。  第三点は、事故を起こした工場等の安全保障あるいは復旧を急ぎまして、できるだけ早期に再開させて、そして供給に追いついていくようにいたしたい、そういう諸般の対策を講じていくべきであると思います。
  42. 加藤清政

    ○加藤(清政)委員 さらに、この品不足につけ込みましてまたまた商社の価格協定が摘発されておりますが、買い占めや売り惜しみ、価格のつり上げに対する商社の動きに対しましては十分な監視体制をとっておられるかどうか、具体的な行政指導をされておるかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  43. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のような買い占め、売り惜しみに関する規制措置の法案が出ましたので、この対象となっておる生活物資につきましては、それぞれ通産省あるいは農林省の御協力のもとにいま価格調査官というものが経済企画庁の物整課長中心にできまして、それぞれ行動をとっておるわけでございます。  なお、商社につきましては、商社そのものが行動基準等を新たにつくりまして、やはり企業の社会的な責任というものを自覚して、節度のある行動をするというふうにやっておるわけでございまして、これは通産大臣の監督の問題でございますけれども、ただいまのところ、私どもは特段の商社の悪質なる買い占め、売り惜しみというものは見当たらないように考えておるわけでございます。  なお、この機会に申し上げますが、全般的な消費の強調というものは、やはり一部の極端なるそうした消費に対する利潤優先からの買い占め、売り惜しみということよりも、非常に広範な層にわたって買い急ぎが行なわれ、あるいは物を持つというそういう行動が非常に大きく物価を押し上げているのではないかというふうに考えておりまして、そういう面について、総需要の抑制とともに個々物資需給状況というものを見ながら、そうした高度の需要というものを抑制するというような措置をとりたいと考えておる次第でございます。     〔委員長退席、稻村(左)委員長代理着席〕
  44. 加藤清政

    ○加藤(清政)委員 物価の問題につきましては、先ほど左藤委員並びに山田委員からお話がありましたので、たいへん重複いたしますので、この物価の問題をあとに回しまして、対韓援助の打ち切りと現状について所信をお尋ねしたいと思います。  韓国の元大統領候補の金大中氏が、滞在中の九段の、東京のどまん中から連れ去られ、韓国に連れ戻されたという事件は各方面に大きな反響を呼び、また全世界にショックを与えたことでありまして、まさに朴政権の独裁的、ファッショ的な性格というのをあらためて浮き彫りにされたというふうに私は考えるのでありますが、わが国はこの韓国と日韓条約を結び、日韓経済協力協定、日米首脳会談による共同声明などで緊密な関係を強化しております。  そうした中でわが国は、有償、無償の借款、延べ払い輸出などを含めて約十五億ドルにのぼる対韓援助を行なっているのでありますが、私は、このような分裂国家の一方的な側だけに多額の資金援助を行なうということ自体に大きな問題があろうと考えるのでありますが、今回のような、わが国の主権を侵害され、しかもそれが韓国の政府機関が関与している疑いがきわめて濃厚であるという重大な事態に立ち至っておりますが、このことにつきましては、疑惑の第一として、事件の解明が行なわれていないということと、韓国のCIAの関与が疑わしいということが大きな疑惑の種になっておるわけでありまして、韓国でもこのことにつきましては、事件の経過を日本に対して詳細に報告することになっておるが、その約束も果たされてなくて、国際信義が全く無視されていると言わざるを得ないわけであります。  そうした中で、わが国は今回のように主権を侵され、しかも韓国の政府機関、CIAが関与しておるという濃厚な疑いに対しまして、現在合意されている対韓援助についてはこれを打ち切るくらいの決断を下せないかどうか、通産大臣のこれに対する考え方をお伺いしたいと思います。
  45. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 金大中氏の事件は、両国の間にまことに不幸な事件であると思います。これがいかなる者によって行なわれたか、目下真相を究明しておるところでございまして、この真相が明らかになるまでは、そう軽々とした発言はこの際慎んでいたいと思いますが、そういうような過程にある今日、日韓両国の閣僚会議は、けさの閣議において外務大臣からは当分延期するという報告がございまして、先方も了承したということでございますが、当然の処置であるだろうと私は思います。しかし、だからといって日本と韓国との関係の善隣友好政策を阻害するというものであってはならぬと私は思います。やはり日韓条約が締結され、われわれは隣人として、隣の、ごく近くの国の皆さん方の福祉や民生安定に貢献し得るものならば貢献さしてもらうということは、われわれの平和外交、福祉外交の一貫した方針でございまして、今回の不幸な事件によってそういうわれわれのプリンシプルが阻害されるものであってはならないと思います。  しかし問題は、これによって国家主権が侵害された事実ありやなしやということであります。国家主権が外国の官憲によって侵害されるというようなことがあるとするならば、これはわが国の独立体制の面から見ましても重大な事件でございまして、それに対してはそれ相応の対応を考えなければならぬと思っております。
  46. 加藤清政

    ○加藤(清政)委員 さらにこの際お尋ねしておきますが、これまでの対韓援助の実績とその主たる内容及び前回の閣僚協議会で合意した一億七千万ドルの内訳についてもあわせてお答え願いたいと思います。
  47. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 従来の実績等につきましては政府委員から答弁させます。
  48. 和田敏信

    ○和田(敏)政府委員 韓国に対しますわが国からの政府ベースの経済協力といたしましては、まず第一に、一九六五年に締結されました財産及び請求権問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国の協定に基づく無償及び有償のものがございます。  無償につきましては三億ドル、有償につきましては二億ドルを一九六五年から十年間にわたりまして毎年均等に三千万ドル及び二千万ドルずつ、それぞれ供与することになっておりまして、無償分支払い済み額は、四十八年六月三十日現在で二億一千六百万ドル、有償分貸し付け実行額は、四十八年六月三十日現在で一億五千五百万ドルとなっております。  次に、以上の協定に基づきますもののほか、これまでに円借款を供与した金額、コミットベースでは六百六十八億四千万円であります。  なおこのほかに、民間ベースの経済協力といたしまして、延べ払い輸出が昭和三十八年から四十八年三月三十一日までの期間の分といたしまして、輸出承認ベースで六億五百万ドル、投資が四一十八年三月末現在の残高が二億二百万ドルという形になっております。  この無償及び有償の分等の中身に関しましては、有償分といたしましては、経済協力に基づく有償分二億ドルの分といたしまして、鉄道関係、水利、干拓関係、建設機械改良事業、海運振興事業、中小企業及び機械工業等に関しまして多々ございますが、詳細に関しましてはこの際省略をさせていただきます。  また、成果をあげましたものといたしましては、すでに完成を見ておりますものといたしましては、たとえば鉄鋼関係でございますが、わが国の対韓経済協力の基本が韓国の民生安定、経済発展に寄与する、こういう原則で実施しておりますところの浦項総合製鉄所におきましては、一九七一年四月から建設を開始し、七月に完工を見ております。大まかな数量でございますが、百万トン強の生産設備となっております。  なお、その他最近におきます経済協力案件といたしましては、セマウル農業開発等によりまして農業用排水の改良等により、農業基盤等を整備する、あるいは地下鉄及び電化不足資金といたしまして韓国側の地下鉄等の建設に対して協力するという実態になっております。
  49. 加藤清政

    ○加藤(清政)委員 また今回の定期閣僚会議で韓国側が四億ドル以上の援助要請をするであろうと伝えられておるわけでありますが、今回のこの事件に関しましては、まさに日本の主権を侵されたといっても過言でないわけでありまして、先ほども中曽根通産大臣から、韓国の政府機関の関与があった場合には重大な決意をするという御答弁がありました。したがって、田中総理が十月上旬にヨーロッパあるいはソビエト訪問から帰られたあとで日韓閣僚会議をどうするかということを決定するというように聞いておるわけでありますが、もし韓国の政府機関が関与されたということが明確になった場合は対韓援助を打ち切るべきであると考えられますが、このことについて大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  50. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この事件がそういうような不幸な事件でないように私たちは念願をしております。しかし、もし万一そういうような性格のものであるとしますれば、それに対応する措置につきましては、外交当局とも相談をしてやはり閣議レベルでいろいろ対策を講ずべきであると思いますが、対韓援助云々という問題につきましてはよく検討してみる必要もあると思います。
  51. 加藤清政

    ○加藤(清政)委員 最後に物価対策についてお伺いいたしますが、この問題につきましては左藤委員並びに山田委員から詳しく質問がありましたので、簡単に結論だけお伺いしたいと思います。  この物価対策に関連して経企庁にお尋ねしたいと思いますが、原材料不足が製品価格をつり上げ、それが消費者価格全体に波及することについて、経企庁としてはどのような対策を考えておられるか、その点お伺いしたいと思います。
  52. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 最近原材料不足が非常に表面化してまいりまして、ことに中小企業の製造に対して大きな障害になりつつあるということについて、私どもとして深く憂えておるわけでございます。この対策につきましては、たとえば棒鋼であるとか、そうしたものについては通産省において窓口相談所を設けられまして、円滑にこれらのものが企業あっせんをはかられておりまして、非常に私ども時宜を得たことであると感謝をしておるわけでございます。また、塩ビ等につきましても先ほどいろいろ御質疑があったようでございますが、それぞれ通産当局において措置しておられるわけでございますが、根本的に申しますと、私は日本が非常な高度成長をしてまいった、そこに一つの段階が画せられたというふうに考えておるわけでございまして、今後非常な、いままでのスピードをもってする成長を見直していく時期になっておる、その意味においての総需要というものを考え直していく必要があるというように考えておるわけでございます。やはり成長というものは国民のためにある成長でございますし、だれのための経済成長かということを考えながらやっていかないとその間のバランスを失するということになるわけでございます。  そういう意味から、公害の問題についても、またそれと関連する製造の問題についても、たとえば苛性ソーダの製造を隔膜法に転換するということと関連いたしまして、今度は苛性ソーダを使う紙であるとかあるいは石けんであるとかあるいは塩化ビニールであるとか、そういうようなものについてもそれぞれの全体のバランスを考えた製造、しかもそれに見合った消費というものを考えながらやっていかないといけないというように思います。根本的には総需要の中の超過需要、それを切り取るということが必要であると思いますし、そのためには財政の面からする公共投資の問題も考えなければなりませんし、また金融面における引き締めも考えていかなければならないと思います。また、個々需給対策というものも、先ほど申し上げたように考えていかなければならぬと思うのでございまして、私どもは非常にきめのこまかい経済政策を必要としておる段階になっておる。この経済政策生産と流通と消費とそれぞれの段階においてのバランスを考え直してみる必要がある、かように思っておる次第でございます。
  53. 加藤清政

    ○加藤(清政)委員 最近の卸売り物価の高騰は、戦後の混乱期と朝鮮動乱時を除きますと、最も大幅な上昇テンポをたどっておるわけでありますが、一体いつになったら政府が約束しておる物価の鎮静が可能になるのか、おおよそその見通しをお伺いしたいと思います。また、物価の目付役ともいうべき経企庁のこの具体的な政策についてどのように考えておられるか、その点をお伺いしたいと思います。
  54. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今日の物価の騰貴というものは非常に複合的な要素を持っておると思います。全般的な需要の非常な強調、それから海外からする物価高の問題、また海外の物価については非常に高くて、必要なければ買わなければいいのでありますけれども、国内の需要が非常に強いから高くても買うというようなことから、海外の物価高が国内価格を引き上げるようになってくるというような問題もございますし、あるいは非常に近代的な企業組織の上から、いわゆる寡占管理価格のような問題もあるわけでございます。それから需給間の時期的なラグの問題もございますし、あるいは供給のボトルネックの問題もある、あるいは、害からいたしまする生産停滞の問題もあるというようなことで、いろいろな問題が複合してきておるわけでございまして、それに対する対策というものも複合的なものでなければならぬというふうに思いまして、私どもいろいろ関係各省と協議をしておるわけでございます。この月末に物価対策閣僚協議会において相当密度の高い内容のものをつくりたいと思って、関係各省との間に日夜折衝を続けておるようなわけでございます。物価は、今日までのところ、なかなかわれわれの努力にもかかわらず強調を続けておりまして、ただいまお話しのような状況になっておりますことを非常に残念思っておりまするが、卸売り物価につきまして申し上げますと、前年対比十何%というにけたの上昇、前年同月の対比十何%という上昇は、十一月ごろになりますれば、そういう関係はよほど変わってくるというふうに思います。すなわち二けたの上昇ということはなくなると思うのでございます。しかし、そういう卸売り物価の上昇というものは、これはまた小売り物価にはね返ってくるわけでございますが、小売り物価、消費者物価の問題につきましては、なお非常に警戒を要する段階であるというふうに思うのでございます。根本は非常に総需要が強い。総需要の強い原因というものはいろいろ考えられますけれども、私は何といっても政府対策政府の有効需要をつくるような公共投資とか、あるいは政府需要というものを押える必要があると思いますし、また銀行、金融機関による信用の造出というものも押えなければならぬと思いますが、それと同時にやはり国民全般の消費態度というものをできるだけ合理的にやってもらうというように御協力をいただかなければならぬ問題もあるのじゃないかというふうに思っております。  いずれにいたしましても、日本の非常な成長が物価にはね返ってきている段階、しかもその間に供給もまた思うようにふえていかない、資源の有限性の問題、環境の問題というものがこの際出てきて、これにいかに対処するかということは非常にむずかしい段階になっている、たいへん重要な時期と考えておる次第でございますが、私ども全力を尽くしまして物価安定対策というものを最重要政策課題として取り組みたいと考えておる次第でございます。
  55. 加藤清政

    ○加藤(清政)委員 一点だけ中曽根通産大臣にお伺いしたいと思いますが、電気工事人の方々は品不足あるいは非常に物が高くなって金を出しても手に入らないというようなことで、塩ビの問題については左藤委員並びに山田委員から詳しく質問がありましたので、ひとつお考えだけをこの際お伺いしておきたいと思います。  昨日、電気工事業危機突破決起大会が日比谷公会堂で開かれたということを聞きましたが、その中で中曽根通産大臣は、塩化ビニール不足に対しては政府もたいへん責任を感じておる、この対策については万全を期したいという力強いあいさつをされたと聞きましたが、ひとつ万全の対策ということについて具体的にどのような対策を持たれ、将来展望をどうするかということについてこの際お伺いしたいと思います。
  56. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御承知のような客観情勢にあるわけでございますから、特にまた公害とかあるいは工場の事故とか、そういうものがいろいろ遠因ともなりまして、不足を招来しておるわけでございますから、これを一挙に解決するということは非常に至難なわざであります。しかし問題は、中小企業者の特に建設関係、電設関係をおやりになっておる方々が、それらのために非常に不当な圧迫を受けたり、あるいは商売上の苦難をなさるということは、私たちは全力をふるって回避しなければならない、そういうふうに考えておりまして、それらの方々に対する特配と申しますか、しぼり出してそちらのほうへできるだけ回そう、そういう考えに立って大いに努力していきたいと思っておるわけでございます。それと同時に、全体的な供給増加を諸般の政策をもってこれから行ないまして、できるだけ供給量をふやしていくということも基礎条件として行なっていきたいと思っておるところでございます。相談所を設けるとか、あるいは五百五十万メートルの平形電線を緊急放出するように関係業界と話をつけてそれの実施に入ったとかということはそういう政策一つでございまして、それで終わったのではなく、今後ともわれわれはそういう努力を継続していくということを申し上げたわけでございます。
  57. 加藤清政

    ○加藤(清政)委員 いま大臣から資材の確保、需給円滑化について万全を期するという御答弁がありましたので、物価対策につきましてだいぶ質問を用意してきたわけですが、ほとんど左藤委員並びに山田委員から質問がありましたので、重複をいたしますから、私はこれをもって質問を終わりたいと思います。
  58. 稻村佐近四郎

    ○稻村(左)委員長代理 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後一時四十分開議
  59. 浦野幸男

    浦野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野間友一君。
  60. 野間友一

    ○野間委員 まず最初に、大臣お越しのようですから、金大中氏の事件について対韓援助の面から一点だけお尋ねを申し上げたいと思うのです。  御承知のとおり、白昼公然と主権を侵して拉致し、これを韓国に連れ去る、こういうゆゆしい事態が発生したわけですけれども、私たち共産党の国会議員団は、この二十一日に本件に関して政府に対する申し入れをしております。この申し入れの中でわが党は、本件が国際謀略機関の犯行であり、朴政権との関連についても否定することのできないものとなっておる、こういうふうに述べておりますけれども、きのうの参議院の法務委員会の中で、田中法務大臣がほぼこれを裏づけられるような発言をされたと思うのです。きょうの時事のファクスによりましても、「現在のところ確たる証拠を上げる段階に来ていないが、感触としては某国CIAの仕わざと思われる。」某国だというふうに言われておりますが、「つまり(事件を引き起こす)がいぜん性が高く、ありうると思われる。」これはきのうの参議院の法務委員会での発言に関する釈明だと思います。それからもう一つは、「金大中氏の自作自演だとは思わない。第六感から某国政府機関たるCIA、秘密警察がやったと思う。そうでなければこういう芸当は出来ないと思っている。」こういう談話をきょう発表されております。わが国の出入国管理を無視してなされましたこの野蛮な拉致事件、これは先ほど申し上げましたように、わが国の主権の重大な侵害である。ところが、政府の今日までの本件に対する姿勢を見てみました場合に、これはマスコミもかなり書いておりますけれども、真剣に日本の主権を擁護する、こういうものとは私は言えないと思うのです。非常に腰が弱い、こういうふうに私は考えるわけです。それは私たち申し入れ書に具体例をあげておりますけれども、この段階に至ってすら、閣僚会議について中止ではなしに延期する。しかも、この延期の内容についても、予定されたものを延期するだけであって近い将来開かれるという含みの延期であるというふうにも私は聞き取っておるわけでありますけれども、非常に態度があいまいじゃないか。このようなあいまいな政府の態度は、御承知の西ドイツでの一九六七年の同種の事件の場合、西ドイツは国交断絶をも考慮するという非常に強硬な態度をとったことは明らかでありますけれども、この点からしても明らかに弱い、こういうふうに言わざるを得ないと思うのです。  私はここで多くは触れませんが、対韓経済協力の点について若干申し上げたいわけです。この田中内閣の対韓援助はどういう意味を持つのか。金大中氏がいみじくも言っておりますけれども、朴政権はいま国民の支持によってではなく、アメリカの武器と日本の金によって立っている、こう述べておられるわけです。昨年もたしか一億七千万ドルという多額の援助がなされたわけでありますけれども、こういう点から見ましても、金大中民の表現は誇張ではない、こういうふうに私は考えざるを得ないと思うのです。しかも政府は、ことしの閣僚会議で二億ドルの援助を与えようとしていた、こういうふうに聞いておるわけでありますけれども、わが党が一貫して指摘し、反対してまいりました反共独裁の朴政権の擁護をこのような重大な事態になってもなお続けようとしている。非常に異様な執心というふうに言わざるを得ないと思うのです。  午前中の大臣の発言にもありましたが、きょうの閣議で定期閣僚会議を延期した、こういうようなことでありますけれども、私は、はっきりとこれを中止すべきである、そういう方向で検討し、直ちにこういう措置をとるべきだと思いますし、また予定されておりました二億ドルの援助を含めて一切の経済協力を全面的にやはり停止すべきである、このように私は考えるわけです。このことがいわゆる韓国政府に対して金大中氏ら三名の再来日を保証させること、それから日韓閣僚会議を中止すること、これと並んで日本の国家主権を考える場合に大きな試金石になるというふうに私は考えるわけです。とりわけこのような対韓援助、これらの一切を停止すべきである、二億ドルの援助も含めて今後の問題としてこういう強い措置をとるべきである、こういうふうに私は考えるわけですけれども、この点について大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  61. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御意見として承っておきます。ただ、こういう問題は、真相を究明しないで見込みや予想だけで国交関係の重大問題を決することはできないのであります。やはり何千万あるいは一億の国民を代表する政府間のことであり、長期にわたって隣同士でつき合っていくという過程でもありますから、よほどこれは事態の真相を究明した上で態度をきめないと軽率の感を免れない、こういうふうに考えます。
  62. 野間友一

    ○野間委員 もし国家主権が侵害された、いわゆるKCIA、この機関が手を下してやった、こういう場合には、私は国家主権の侵害になる、こういうふうに考えます。午前中の答弁で、国家主権が侵害された場合には外務当局と相談して対応策を立てる、こういうお話がありましたけれども、この点について大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  63. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういうような不幸な事件がないことを希望する、願っているという前提で私は申し上げましたが、もし万一という仮定の質問に対して、もし万一そういうことがあるとすれば、外務当局と相談して相当な対応策を考えなければいかぬだろう、これは私もそういうふうに思っております。
  64. 野間友一

    ○野間委員 対応策の中には、先ほど私が申し上げた援助の打ち切り、こういうことも含めていま発言されたのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  65. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは私は打ち切りということを必ずしも意味しておるものではありません。私は、もしそういうような場合には、対韓関係経済協力、経済援助について再検討の必要もあろう、そういうことをたしか発言したと記憶しております。再検討という意味は、やめるということを前提にした再検討ではなくして、リフレクトする、そうしてもう一回よく考えてみる、そういうような意味を含めた再検討というので、やめるということを前提にした意味で言っているのではありません。
  66. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、その対応策というのは、まさに対応してどうするかということを考えられるわけですけれども、この対応策の中には打ち切りも含めてお考えになるのかどうか、この点をお伺いしておるわけです。
  67. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいまお答え申し上げたとおりです。ただ、日韓関係は、隣同士として善隣友好で長い間つき合っていかなければならぬので、こういう不幸な事件に対してはお互いがその歴史の局面においてこれを善処し合わなければならぬけれども、両民族、両国家として善隣友好でつき合っていかなければならぬということは、私は全国民が期待しておるところであると思います。そういう精神をやはりもとにして考えていかなければならぬのではないだろうか、そう思います。
  68. 野間友一

    ○野間委員 ずばり明快なお答えがないわけですけれども、国家主権が侵害された場合というのは、大臣はどのような場合を想定されておるか、この点いかがですか。
  69. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは外務当局や法務当局にお聞き願ったらいいと思うのですけれども、たとえばわが国の領土、領空、憲法の通用する範囲内において、わが国の了承を得ずして外国の正規機関がその公権力を行使する、そうしてある行為が行なわれる、そういうようなことがやはり主権侵害に入るのではないだろうか、そう思います。
  70. 野間友一

    ○野間委員 そうしますとKCIA、韓国中央情報部、これはそれに入ることは間違いありませんね。
  71. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま理論的な解明を私はしたのでありまして、今回のケースはどういうケースに当たるのかということは、真相を究明しなければ何とも申し上げられません。
  72. 野間友一

    ○野間委員 それでは一般的にKCIA、これについてお聞きしたいと思います。
  73. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私の解釈によれば、ともかくわが国の領土、領空、領海、憲法の通用する範囲内においてわが国の意思を無視して外国の国家権力がそれを公然と行使される、それはやはり主権の侵害である、そういうふうに申し上げる以外にありません。これ以上は、具体的にどういうふうに適用するかというのは弁護士のあなたのほうがよっぽど通じておられるのではないかと思います。
  74. 野間友一

    ○野間委員 どうもややこしいあいまいな答弁で、むしろ田中法務大臣のほうが暗にKCIA、これの関与を認める発言をきのうもされ、きょうもそれを認める談話も発表されておりますけれども、いまの通産大臣のおことばはあいまいで、私は遺憾であると思います。いずれにしても、そういう前提で、主権が侵害された場合にはやはりきびしい対応策、これは私の立場からいえば停止というような態度をとるべきだ、こういうようなことについて強く要望して質問を進めたいと思うのです。  きょうの私の質問のテーマは、通産省がいわゆる管理監督をしておる企業、これは石油精製なり石油化学あるいは製鉄、いろんなのがあるわけでありますが、これらの企業のいわゆる災害が最近盛んに激発しておる、こういう事態の中で通産行政の姿勢を私は若干ただしてみたいと思うのです。  最初に、住友金属の和歌山製鉄所、これは労働安全の面から最初にお聞きするわけですが、私たちが調査をしたところによりますと、ことしになりましてから七月末までに、労災が本工において重傷が十一名、うち死亡が二名です。それから下請が重傷が四十名、うち死亡が三名、軽傷が本工が十四名、下請が六十八名、それから住友全体で考えてみますと重傷が二十六名、うち二名が死亡、軽傷が四十名、下請が重傷が七十八名、うち死亡が十一名、軽傷が百十一名と非常に数が多いわけでありまして、天下の住友といわれるこの独占企業において、このように数多くの本工ないしは下請工が、労働者に言わせますとこれは企業の殺人である、こういうふうに強く大きな怒りを持って叫んでおりますけれども、こういう事態が激発しております。とりわけ、私はここで住金のいわゆる人権に対する姿勢、この問題について具体的な事例をあげてみたいと思うわけでありますが、この事例は、ことしの七月の十二日、沖繩県の出身の伊覇賢榮さん、二十歳の溶接工でありますが、これは和歌山製鉄所の中の厚板工場のナンバーワン熱処理炉、ここでラジアントチューブの取りかえのために、電気溶接作業の切断作業をしておったわけであります。この伊覇さんというのは、住友のいわゆる孫請、下請が大阪富士工業、その下が大阪岬機工、この岬機工の従業員でありますけれども、このような作業をしておった伊覇さんが、同日午後二時二十分ごろにこの熱処理炉の中で倒れ、同僚が発見したわけであります。そして救急車で堀口整形外科病院、市内本町にあるわけでありますが、ここへ運び込みましたが、間もなくなくなった。  ところで、具体的な事例はこれでありますが、これに関して住金のとった措置、これが非常にけしからぬわけなんです。具体的に言いますと、同七月十二日、直ちに住金の安全衛生課、これがいわゆる死亡報告書、これは私病でなくなった、急性心不全でなくなった、こういう報告書を作成しております。そしてこの報告書を孫請である岬機工に手渡しております。遺族が沖繩から飛んでまいりまして、涙にむせんで、そして岬機工にある遺体にすがりついて泣いたわけです。若いみそらの二十歳の前途ある青年が、せっかく就職して和歌山に来たのに心不全でなくなった、こういう知らせを聞き、しかも岬機工の常務からは、いま申し上げた住金の労働安全衛生課がつくりましたこの報告書を見せられたわけです。  そこで私が申し上げたいのは、このように非常に危険な職場、これは熱処理の炉の中での溶接切断作業、こういろところでは二十分しかからだが持たないわけです。交代で仕事をするわけですが、ここでなくなった。ところがこの伊覇さんを、直ちに報告書をつくって急性心不全でなくなった、そういう報告書をもとにして、遺族の方に私病でなくなったという結論を言い渡したわけです。こういう姿勢がはたして正しいかどうか、この点なんです。その後の経過を申し上げますと、これは感電死ということになるわけでありますが、このように仕事中になくなった。これはいまの労働基準法によりますと、業務遂行性とそれから業務起因性、この二つのしぼりがあって、これは私は不当だと思いますが、いずれにしても作業中になくなった場合には、はたして労働上の災害であるかどうか、この点の原因究明がまずなされなければならない。ところが、このような究明について何らなすことなく、逆に私病でなくなったというような報告書をつくって遺族にこれを押しつける、こういうような会社の人権を無視した姿勢、これらについて労働省ではどういうように考えるか、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  75. 野原石松

    ○野原説明員 労働省では、ここ数年来人命尊重の基本的な考え方に立ちまして、労働災害の防止ということを行政の最重点として進めてきております。特に昨年度皆さん方の御審議を得まして制定を見ました労働安全衛生法に基づきまして、この考え方をさらに飛躍的に拡充発展しまして、まず安全ということで、事業者はもちろんでございますが、働いている作業者等々についても所要の監督指導を進めてきておるところでございます。
  76. 野間友一

    ○野間委員 ちょっと、質問に答えてくださいよ。私はいま具体的な事例をあげて、こういう住友金属のいわゆる労働安全に対する姿勢をどう考えるのかということをお聞きしているのです。措置です。
  77. 野原石松

    ○野原説明員 いま御指摘のございました伊覇さんが和歌山製鉄所の構内で作業中におなくなりになったという件につきましては、先ほどもお話がございましたように、業務との関連性等々につきまして慎重な判断を要しますので、現在県立和歌山医大の手をわずらわしまして解剖、さらにその所見をお願いしている段階でございますが、いずれにしても、そういった慎重な検討を要するにもかかわらず、和歌山製鉄所のほうで、これをどのような観点からかはわかりませんが、私病というふうな判断をして措置されたということはたいへん遺憾なことだというふうに考えておりまして、今後そのようなことのないように十分行政指導をいたしたいと思っております。
  78. 野間友一

    ○野間委員 こういう事実を私、事前に申し上げておるから具体的な事例は御存じだと思いますが、この場合、私が問題にしたいのは、これは十二日の事故で、それから十三日に遺族が引き取りに沖繩県から参りまして、会社側の説明によって急性心不全でなくなったと信じ込まされ、だまされて、そして泣く泣く遺体を沖繩県に連れて帰ったわけですね。ここで火葬にでも付しておれば、労働上の災害であるかどうか、この究明は全くできないわけです。これは状況証拠で労災かどうかということは判断できませんから、この若い労働者の命がやみからやみに葬られていたのです。しかも住金は、何ら真相を究明する手だてをしていなかった、やみからやみに葬られていた、こういうような事態なんです。これは遺憾であるというような単なる一片の労働行政で私は済まされないと思うのですが、こういう場合の措置として労働省ではどのような指導をされておるのか、その点をお聞きしたいと思うのです。
  79. 野原石松

    ○野原説明員 労働災害というのはやはりいろいろな原因がからみ合って発生しているケースが多いわけでございます。したがって、予防ということはまず第一でございますが、不幸にして労働災害の発生を見た場合には、これを単なる表面的な現象だけでなくて、あらゆる観点から深く掘り下げて、その根っこが一体どういうところにあったかというようなところまでも十分に検討して事後の防止対策をとる。もちろんその被害を受けた方々に対する手当てその他の問題は優先いたしますが、そういうことで考えられるあらゆる要素というものをひとつ分析するようにということで従来から指導を進めてきております。したがって、住友製鉄所のほうでおそらくそのような検討がなされておるのではないかというふうな気がするわけでございますが、そういった点にもし不十分な点があったとすれば今後大いに改めてもらうようにいたしたいと考えております。
  80. 野間友一

    ○野間委員 あなたの推測でものを言っては困るわけですよ。私は現に調査して、その結果ここでお尋ねしているわけですが、そうすると、このような住友のとった措置は、労働省の行政指導からもはずれるというふうに理解していいわけですね。
  81. 野原石松

    ○野原説明員 はい、けっこうです。
  82. 野間友一

    ○野間委員 けっこうですというお答えですね。——そこで、しかもたまたま伊覇さんが生前健康体であった、しかも同日一緒に働いておった友人がおるわけですが、この比嘉さんとか山城さん、この方らから話を聞きますと、電気をビリビリ感じた、賢栄君は感電死したのではないか。しかも、事故当時抵抗器が故障していたことやキャップタイヤが部分的に破損しておったという事実があとで判明したわけでありますが、このようなことを聞いて、そして初めて遺族の方は死因に疑惑を感じたわけです。そこで、遺族の方から和歌山のほうにも連絡がありまして、私たち共産党が一緒になって、この死因の究明について、労働基準局のほうへ参りまして、これは労災事故として調査するように命じ、その後そのような措置が講じられたわけでありますけれども、このような経過からしましても、住友金属が全く何の措置もせずに、しかも、先ほど申し上げたように、これを火葬に付しておれば、全くやみからやみに、労働者の命はこれでおしまいだったわけです。会社側は全く何の責任もないということで終わっておったのですね。ところが、不幸中の幸いと申しますか、死因に疑問を持って、このような状況の中であれこれ手だてをして、そして行政解剖を和歌山県立医大でやったわけですね。これが十八日なんです。これまで遺体を安置して、そしてさらに和歌山に運び連れ戻してやった結果が、八〇%は感電死である、こういう鑑定の結果を私は永野先生から聞いておるわけです。これで初めて感電死したという事実が明らかになったわけでありますが、こういう事態を一連の経過の中でお考えになって、労働省では一体どうお考えなのか、あらためて見解を聞きたいと思うのです。これは特に遺族が疑問を持って初めてこのような適切な措置をとったがために病死の事実がくつがえされたという事例でありますが、天下の住友の中でいまに至るもこのようなことが公然と行なわれておる。冒頭に申し上げたように、死亡あるいは傷害事故が非常に多いわけですが、こういう事態を踏まえた中で、何とかしてこのようなものをひた隠しにしたい、やみからやみに葬りたい、依然としてこういうような姿勢をとっておるのが住友金属なんです。この事故のあとにも、たしか死亡事故が発生したと私は記憶しておりますが、こういう事態を踏まえた上で、労働省は一体どう感じますか。そしてさらにこういう住友に対してきびしい措置をとるべきだと思いますけれども、いかがですか。
  83. 野原石松

    ○野原説明員 ただいま災害を隠すような傾向があるのではないかというふうな御指摘がございました。同じような御指摘を前にやはり国会の審議の過程で受けたことがございますが、私どもとしては、そのようなことはかりそめにもあってはならないことでありますので、そういったことのないように厳重に監督指導をしておるわけでございます。  この製鉄所というのは、御承知のように、いまもお話がありましたが、一次の下請あるいは二次の下請等々非常に複雑な請負形態で行なわれております。そして問題は、むしろ下請あるいは二次の下請において多く災害が起きておるということであります。そこで、私どもとしては、それは下請の方々にももちろん努力をしてもらわなければなりませんが、それだけでは限界がありますので、むしろ一つ企業集団ととらえて、親企業である、いまの場合でいえば住友製鉄所のほうでむしろリーダーシップをとって、こうした下請に発生する災害の防止に大いに努力をしてほしいということで、そういったことも行政の一つの大きな柱として、従来からも進めてきておりますし、今後もそのような姿勢で臨んでまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  84. 野間友一

    ○野間委員 事故の件数、死亡も含めまして数を申し上げたけれども、非常に多いでしょう。これは異例の事態だと思うのですけれども、こういうケースはほかにありますか、どうですか。
  85. 野原石松

    ○野原説明員 件数で先ほど御指摘ございましたが、これはどのくらいの労働者が働いているか、また労働時間との関連等々ともあわせて考える必要があるように思います。  そこで、私どものほうでそういったことを考慮した率、災害発生の度合い、これを実は調べてみたのでありますが、やはり親会社と下請とではかなりの格差がありまして、下請のほうが二・五倍くらい高いわけでありますけれども、親会社自体としては一般鉄鋼業全体の平均値があるわけでありますが、それよりは若干低いところを示しておりますので、住友製鉄所が鉄鋼業の中で特に異常に災害の率が高いのだということは、この数字からは言えないのではないかというふうに思うわけであります。
  86. 野間友一

    ○野間委員 どうもそういう認識のしかたでおるから事故が絶えないわけですよ。私申し上げたいのは、こういう下請、孫請、これらは住友の安全弁として切り捨てなんですね。死んでも、傷ついても、とにかく幾らでも代替性がある、こういうところで今日まで来ているわけです。ですから、いまも指摘があったように、下請、孫請の事故が多いわけですね。しかも彼らは、住友の構内で、住友の機械を使って、住友の指示の中でこういう仕事をしておるわけです。しかも、犠牲を受けるのはこういう下請、孫請の人たちなんです。こういう事態を踏まえて私が要求したいのは、住友金属和歌山製鉄所の中での労働災害を洗い直して、そして安全衛生上の見地からひとつ厳重にこれを調べてみる必要があるというふうに思うわけですけれども、この点について私は要求したいのです。ぜひこれらを調査して、適切な措置をとってほしい、こう要求しますが、どうですか。
  87. 野原石松

    ○野原説明員 ただいま御要望のありました点については、住友製鉄所はもちろんでありますが、鉄鋼業全体についても同様な調査をして、問題点があれば直ちに是正をしていただくということにいたしたいと思います。  なお、下請企業に非常に災害が多いというふうなことの一つ原因として、いろいろなれない仕事をさせられるというふうなことも若干あるわけであります。そこで、そういうことについては、親会社のほうでそういった仕事につける前に手厚い指導をすることが労働災害防止上非常に大事なことであるということで、昨年制定されました労働安全衛生法の中で、特に親企業に対して、そのような下請企業に対する指導監督の義務というのを新たに入れましたので、こういった規定を今後フルに活用しまして、下請企業に災害が多いという問題を一日も早く是正させたいというふうに考えている次第でございます。
  88. 野間友一

    ○野間委員 それではいま住金に対して労働安全衛生上の見地から厳に調査する、こういうようにお聞きしていいわけですね。(野原説明員「はい」と呼ぶ)  それからもう一つは、伊覇君の労働上の災害の救済ですが、これについて、これが七百九条云々という不法行為はともかくとして、せめて労災の給付だけは直ちにとれるように早急に労働省として措置してほしい、こういう要求を私は申し上げるわけですが、この点についてお答え願いたいと思います。
  89. 野原石松

    ○野原説明員 先ほどもお話し申し上げましたように、伊覇さんの件につきましては目下県立の和歌山医大に解剖をお願いいたしておるわけであります。ところが、組織学的な精密検査が必要であるということで、かなり時間がかかっておるわけでありますが、おそくとも今月中には解剖所見がいただけるということになっております。その結果に基づいて業務上であるかいなかという判断をいたしてまいりたいと思っております。もちろん業務上となれば、法律で定めております所要の遺族補償その他の補償が保険給付という形で支給されることは当然でございます。
  90. 野間友一

    ○野間委員 そこで、この住金に関してもう一つ驚いたことには、ここでは下請、孫請を入れますと大体二万人以上の労働者が働いておるわけです。これは交代制をとっておりますので、常時それだけの人間が働いておるわけではありませんが、この中で、形だけの診療所体制がありますけれども、これは何度も私は足を運びました。しかも製鉄所というと非常に危険な作業場なんですね。これは生命、身体に非常にかかわりの深い、こういう作業の内容であり、職場であるわけです。ところが、住友でいろいろ聞いても、単に応急措置をするような、そういう手だてしかしていない。具体的には医師が一人しかいない、こういうことなんですね。これはやはり私は大問題だと思うのです。これだけの職場で、しかも生命、身体が常に危険にさらされるような作業をしておる者が、構内でこのような応急措置しかできないような形だけの診療体制では、助かるものが助からない。ですから本件の場合でも、これは町の病院に救急車で運び込む。会社側の話によりますと、これには七分時間がかかったというふうに言っておりますけれども、この場合でも構内に適切な診療体制があればあるいは助かったかもわかりませんし、また、多発しておるほかの死亡やあるいは傷害事故ももっと迅速に措置ができたというふうに私は思うのです。  このようなことを踏まえまして、これは確かに労働安全衛生法あるいはその施行令によりますと産業医の制度があります。これは五十人以上の場合に単に一人、これは予防医学の見地からだと思いますが、このような大会社、しかも生命、身体に非常に危険性の高い職場においては、もっと慎重に医療体制を充実する、そういう方向で労働省としても臨むべきである、このように考えますが、これはいかがですか。
  91. 野原石松

    ○野原説明員 現在の労働安全衛生法の中では、いまも先生が御指摘になりましたように、そういった災害の予防という見地から、一定の規模以上の事業場には産業医を置きなさい、そうして産業医が医学的な所見から事業者あるいは衛生管理者に対して助言、指導をするのだ、こういう形でのお医者さんの選任というのを求めておりますが、起きたあとの始末という意味合いの、治療面からのお医者さんを構内に置きなさいというところまでは規定上いたしておりません。しかしながら、いまお話がありましたように、やはり災害発生直後に適切な救急措置をとるということが非常に大事であるということは言うまでもありませんので、これにつきましては、一つには衛生管理者というのがおるわけでありますが、これに対してそういったことについての訓練をするということと同時に、構内における診療所の設置ということについて、これは行政指導でありますが、かなり強力に進めておるわけでございます。なお、それが構内にどうしてもむずかしいというような場合には、近くの救急処置病院等と十分に連絡体制をとって、そういった災害発生時に直ちに適切な救急治療ができるように備えるという形での体制づくりをやっておる次第でございます。
  92. 野間友一

    ○野間委員 私はそれを踏まえた上でお聞きしておるわけなんです。だから、いまのような具体的な労災の激発、こういう中でいまの法律あるいは施行令、こういうことでは助かる命も助からない、あるいは早くなおるものがなおらない、こういうことが出てくる蓋然性が非常に強いと思うのです。ですから、こういう点を踏まえまして、いまの法の不備の中で労働者の人権と申しますか、人命を尊重する、そういうたてまえから、積極的にこれら法律の改正等について、もっと前向きに取り組む姿勢があるのかないのか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  93. 野原石松

    ○野原説明員 先生御要望のございました点については、今後の課題として積極的に検討してまいりたいと思います。
  94. 野間友一

    ○野間委員 それでは同じ住金の鹿島の事故について、これは労働省はもうけっこうでございますけれどもこの鹿島で、高炉近くで小爆発がありまして有毒ガスが充満する、こういう事故があったわけですね。これは第二高炉ですが、熱風管から千二百度以上の熱風が送られている。この接続部分である銅パイプですか、羽口、これが破損して爆発事故が起こったわけであります。  時間の関係で私のほうから申し上げますが、この事故の中で一つ問題は、アラーム、異常警報、これが事故の四十分前に鳴っておったわけですね。ところが、この事実を住金ではひた隠しにして、そして内部で秘密裏にこれを処理しようとした。これは各新聞が当時伝えておるとおりであります。このようなことは、消防法のたてまえからしても、直ちにこれを所轄の消防署なり何なりに通報しなければならぬ、こういう義務にも違反することにもなるし、しかも、周辺の安全性という点から考えて四十分前に異常警報が鳴っておるにもかかわらず、これをひた隠しにした、こういう事態は、私はたいへん遺憾千万と言わざるを得ないと思うのです。これは通産省の事故報告書にもそういう趣旨のことが書いてあります。ところが、当初は、いま申し上げたように、異常警報が鳴ったこと自体を隠しておったのです。事前に事故の徴候はつかめなかった、こういうことを言い張っておったのですけれども、その後きびしい追及の中でこういう事態を自白する。この点は、やはり安全性を無視した生産第一主義の住金の姿勢がここに出ておる、これが一点です。  それからもう一点は、この場合の適切な措置としては減風して羽口をこわして修理する、こういう措置をするべきにもかかわらずこれをしなかった、これもやはり生産第一主義のもたらした帰結である、こう言わざるを得ないと思う。  この二点について、このようないわゆる災害安全上の問題から、通産省としてはどのように考えておるのか、ひとつ御答弁願いたいと思います。
  95. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 住金の事故につきまして、御指摘のように警報が事故の四十分ばかり前に鳴ったにかかわらず、これについての適切な措置がとられてなかったということは事実でございまして、この点は、私ども通産省調査の際にも、現場の責任者は言っておりますし、それから警察のほうにもその件は届けておるようでございます。  警報が鳴ってから、なおかつ状況判断の甘さから送風を続行しておったことは、事故の防止対策の観点からいってきわめて遺憾なことでございまして、私どもこの点については厳重に注意をいたしてきた次第でございます。
  96. 野間友一

    ○野間委員 いま二点についてお聞きしたのですが、ちょっと答弁漏れがありますが……。
  97. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 失礼いたしました。  その後、今回の事故にかんがみまして担当の重役を呼びました。これは、私ども、東京通産局もこの件について重大な関心を持ち、現場を指導したわけでございますが、通産局長並びに私のほうの基礎産業局の担当課長が責任の重役を呼びまして、事故後の対策についていろいろ注意をいたしたわけでございます。  二、三申し上げますと、先ほど先生も御指摘ございましたように、警報装置が働いた場合には直ちに送風をとめるのは当然のことでございますけれども、これをきつく言ったわけでございます。二番目には、羽口の取りかえ期間が、従来は十カ月ごとにやっておったわけでございますが、今回の事故等を考えますとかなり破損の危険性は多いという観点から、従来の倍以上に、すなわち五カ月に一回は取りかえをやれということを命じたわけでございます。それから羽口の点検につきまして、従来は四時間ごとに点検をやっておったわけでございますけれども、これを二時間ごとにいたすように指示をしたわけでございます。  その他幾つかございますけれども、おおむねのところはそのとおりでございます。
  98. 野間友一

    ○野間委員 質問に答えてほしいんですよ。  警報機が鳴っておるにもかかわらず、これを最初は隠しておった、こういうことが一つと、それから熱風を減風して羽口を取りかえる、こういう措置をしなければならないのに、これを怠った、こういうことはやはり生産第一主義、安全無視だという観点で当然住友金属は責められてしかるべきだと思うのです。こういう二点にわたっての私の指摘はそのとおりかどうか、ひとつ確認していまお尋ねしておるわけです。
  99. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 警報が鳴っておるにかかわらず送風を続けておったということは、警報機の扱いについて判断の甘さがあったからだと思います。かつ、羽口の取りかえを即刻やらなかったということも、やはり事故についての判断の甘さがあったからだと思います。したがいまして、結果といたしましては事故の状況についての判断の甘さからこういう事故に至ったわけでございまして、先生御指摘のように、生産第一主義に徹したあまりにこういうことになったのじゃないかというような御指摘もできるかと思いますけれども、むしろこの点については、私どもは事故の状況判断についての甘さに責任があるのではないか、かように考える次第でございます。
  100. 野間友一

    ○野間委員 いや、かばわなくていいですよ。  いま私の意見も肯定されたと思いますが、そこでお聞きしたいのは、作業基準の変更をなすこと、これを事故の対策として通産省では指摘しておるわけですね。直ちに減風、休風、取りかえを実施する、こういうように改める必要がある、こういうふうに最初は通産省では考えておるのですが、お聞きしたいのは作業基準なんですね。この作業基準というのは、これはどういう根拠に基づいてできたものであるのか、あるいはこれらを全部通産省では把握しているのかどうか、この点についてお聞かせ願いたいと思うのです。
  101. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 過去の各製鉄所におきます作業基準を参考にいたしまして通産省のほうでいろいろ検討いたしておるわけでございますが、それをベースにいたしまして今回の指導基準というものを指示したわけでございます。
  102. 野間友一

    ○野間委員 どうも質問に答えてないのですがね。  このような作業基準の根拠、法律上の根拠、これはどこにあるのかということです。
  103. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 法律上の根拠はございませんけれども行政指導として、しかも指導の基準といたしましては、過去の製鉄所におきます操業の実態等から見まして、過去の経験を積み上げた上で基準をつくって指導をいたしておるわけでございます。
  104. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、行政指導の基準としてという話がありましたが、本件の場合、事前にこういう作業基準を通産省で持っておったのかどうか。
  105. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 ほかの製鉄所におきます事故等を調べましてこの基準をつくりまして、指示をいたしたわけでございます。
  106. 野間友一

    ○野間委員 この作業基準は、これは住金自体がつくっているものでしょう。そうですね。こういうものをこの事故当時持っておったのかどうかということを聞いておるのですよ。率直に答えてください。
  107. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 事故当時は、役所としては持っておったわけではございません。
  108. 野間友一

    ○野間委員 そうでしょう。持ってないでしょう。持っていなければ行政指導はできないでしょう。はたして安全上これが適切かどうかということを判断する基準を通産省自体が持っていない。事故が起こればそこへ出かけていって、そうしてあれこれと基準をその場でいじって、そしてお茶を濁す、こういう通産省の姿勢がここに出てくると思うのです。そうでしょう。行政指導をする場合に、基準もなしにどうして指導するのでしょうか。ですから、これらの基準についてはすべて通産省把握して検討して、適切かどうかについての判断をしなければ、これは指導できないということになりませんか。事故が起こってから、ああそうか、それじゃこれはこう変えればいい、こういうような微温的な態度、こういう通産省の姿勢が事故の多発につながるのです。安全性を無視したこういう生産第一主義につながるのです。違いますか。中曽根通産大臣、この点いかがですか。
  109. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま化学関係のコンビナートを精密に調査しておりまして、特に出光の事件以来全国にも厳密な調査をやっておるところであります。そういうような点検の結果にかんがみましていろいろ処置を考えてみたいと思っておりますが、いずれにせよ、こういうふうにコンビナート関係が拡大して、また増大してくる、こういう段階におきましては、外部に対する影響及び内部における集団的規律等につきましても格段の注意をコンビナートの内部においてもやってもらって、外部に対して迷惑をかけないようにやっていく必要はあろうと思います。
  110. 野間友一

    ○野間委員 もう少し具体的に申し上げますからお聞きください。  これは住金の鹿島の問題についてお聞きしておるのですが、ここでは安全基準があったわけです。ところが通産省は、この安全基準そのものは、保安基準ですか、作業基準、これは確かに法律上の根拠はないわけですね。これはたとえば高圧ガス取締法とか、とにかく幾つかそういう規制はありますけれども、作業基準全般についての根拠がない。ただ、これは具体的に各企業がつくっておる。ところが、これらについて通産省行政指導をするといいながら、事故が起こるときまでこのような作業の基準については全く資料も入手していない。事故が起こったら出かけていって、君のところはどういう基準になっているのか、これじゃおそいのです。そうしてその事故に照らし合わせてその基準を手直しするということは、結局後手後手に回ってしまうわけですね。ですから、私は、ほんとうにこのような企業に対して行政指導するなら、事前に作業基準なりあるいは保安基準、こういうものを入手した上でそれが適切であるかどうかを判断して、しかもそれに基づいて指導する、こういう姿勢がなければ、これは通産省企業サイドと一声われてもやむを得ない、こういうように御指摘申し上げておるのです。いかがですか。
  111. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 御指摘のように、各製鉄所の作業基準等につきましては、事前に通産省としても十分に把握する必要があると思いますので、今回の事故を契機にいたしまして各製鉄所ごとの実態を調べ、それが安全基準から見て適当であるかどうかについて至急検討してみたいと思います。
  112. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ質問を続けますが、大臣、このように天下の住友が医療体制が不備で、しかも感電死を、労働上の災害を私病と偽るような、そういう措置をやったとか、あるいはいまの鹿島のように、とにかく警報機が鳴っておるにもかかわらず、これを当初報告しない、あるいは事故の原因についていろいろ調査しますと、当然減風して羽口を取りかえなければならないのに、これを放置して事故につながったというような事態から考えまして、私は天下の住友とは一体何なのかということを考えざるを得ないと思うのです。このような、とりわけ住金の企業の実態について、通産省として、通産行政の責任者としてどのようにお考えになるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  113. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 労務管理の安全性及び適正化ということは非常に重要なことでありまして、ただいま鉄鋼関係の住金のお話がございましたけれども、こういうことをよく参考にいたしまして、そういう災害関係が起こらないように、今後とも私たちは厳重に取り締まっていきたいと思っております。
  114. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ時間がありませんので、次の質問を続けます。  今度は東亜燃料和歌山工場の問題です。これは通産省から資料をいただいたわけですが、今年度に入ってからも事故が五回起こっておるわけです。最近の七月二十九日の事故について、私どものほうから便宜時間の関係で申し上げるわけでありますけれども、これは要するに塩素ガスが漏れて、そして地域の住民が非常に被害を受けたわけです。目やのどを痛め、吐きけなどの症状を訴える、こういう事態が生じたわけです。ところが、この事故において、東燃のほうは住民の知らせによって初めてガス漏れに気がつく、こういうような非常にずさんな管理が明らかになっておるわけですね。しかも、この事故の原因について、これは通産省からの報告書を入手しておりますけれども、この塩素の通過する。パイプのバルブについていたさびが詰まる原因になって、そして塩素が吹き出した、こういうようなことになっておるわけですね。この事故についてどのような調査をされたのか、簡潔にひとつ答弁願いたいと思うのです。
  115. 鎌田吉郎

    ○鎌田説明員 先生御指摘のございました和歌山の東亜燃料の事故につきましては、七月の二十九日、クーラー用の海水ポンプ室内におきまして海水を滅菌するための塩素注入装置が破損いたしまして塩素ガスが漏れたわけでございます。このため、周囲の住民から身体の不調を訴えるなどの問題が起きまして、通産省といたしましては、和歌山県と連絡をとりまして、直ちに実態、事故原因の究明を行ないますとともに、二度とこういうことが起こらぬように十分に注意した次第でございます。
  116. 野間友一

    ○野間委員 その事故の原因について、いまのその。パイプにさびがついて、バルブのところですね、そして、吹き出たというふうに私申し上げたけれども、これは間違いありませんか。
  117. 鎌田吉郎

    ○鎌田説明員 バルブのさびつきよりも、むしろ異物をかみ込んだというふうに聞いております。
  118. 野間友一

    ○野間委員 その異物については、さびであるというふうに私はきのうヒヤリングで通産省から聞いたのですが、さびですね。
  119. 鎌田吉郎

    ○鎌田説明員 そのとおりでございます。
  120. 野間友一

    ○野間委員 塩素のパイプにさびがつくというようなことは一体あるのか、ないのか。ないとすれば、どういう原因でパイプの中にさびが、塩素の流通を阻害する、遮断するような形でついたのか、この点の原因について、どのように調査して、結果はどうであったか、ひとつ答弁願いたいと思います。
  121. 鎌田吉郎

    ○鎌田説明員 本件につきましては、県と通産局が中心になりまして事故原因の究明を行ないまして、先ほどちょっと申し上げましたように、塩素ガスが約五百グラム程度漏れまして、付近……(野間委員質問に答えてください」と呼ぶ)通産局及び和歌山県が中心になって調査いたしまして、その点につきましては、いま手元に資料を持ち合わせてないということでございます。後ほど詳しく調べまして、先生のお手元にお届けしたいと思います。
  122. 野間友一

    ○野間委員 それがやはり同じように企業サイドの行政なんですよ。きのうヒヤリングした場合でも、この原因についてはわからぬというわけですよ。その塩素のパイプにさびがつくはずがないのですよ。ところが、さびが実際ついて、しかも塩素の流通を遮断してこのように吹き出した。ところが、一片の簡単な報告しか上げてない。このさびがどこからどういうふうに発生したのか、この点についての原因究明が全くなされていないわけですよ。こんなことでほんとうに地域の被害住民の怒りや要求にこたえることができますか。これを私たちは通産行政が企業サイドと言うのです。どうですか。なぜこういうことすら調べることができないのですか。いま手元にないと言われますが、これは実際調べてないでしょう。どうですか。
  123. 林信太郎

    ○林(信太郎)政府委員 ただいま、東亜燃料の塩素の事件でございますが、現在の高圧ガス取締法の体制によりまして、許可権限あるいは監督の権限、施設あるいは製造方法あるいは保安規程等々は一切知事に機関委任いたしておる。知事が地元でよく実態もわかりますし、そういった問題の調査あるいは同原因の究明等をやることになっております。したがいまして、そういった報告を私のほうから早急に究明するように手配しておるさなかでございます。したがいまして、そういう結果の上がってくるのを待ちまして、具体的な状況あるいはこの原因について御報告できるかと思っております。
  124. 野間友一

    ○野間委員 なまくら言いなさんな。これは七月二十九日の事故ですよ。しかもあなたは県に押しつけるけれども、これは通産省は責任ないのですか。答えてください。
  125. 林信太郎

    ○林(信太郎)政府委員 高圧ガス取締法の権限につきましては、機関委任という形式をとっており、したがいまして、当然私どものほうも責任を最終的にはかぶることになっております。御指摘のとおりでございます。
  126. 野間友一

    ○野間委員 そうでしょう。ところが二十九日のこれについて、単に一片の報告書が上がって、しかもこれについては原因の究明が全くなされていない。何のための原因調査なんですか。こういうような態度がありますか。  それから次に、その前の四月二十日の事故、これは送油ポンプが過熱して煙が出た。これも事故をひた隠しに隠しておった。これも紀勢線の乗客が見つけて、初島の駅を通じて工場に連絡した。ところが驚いたことには、この東燃会社の事務部長の望月、この人をはじめ幹部が、こういうふうに連絡したにもかかわらず、そんな事故はない、知らないの一点張りでこの事故を隠しておった、こういう事態が起こっておりますね。これを知っているかどうか。これは資料をもらっておりますから知っておるはずです。これは五件の事故がありますが、一、二あげただけでも、いまのように住民の通報によってガス漏れを初めて知るとか、あるいは汽車の乗客が駅を通じて連絡した、それにもかかわらずしらを切る、こういう態度が東燃なんです。  こういう一連の姿勢について通産省はどうお考えになるか。しかも、先ほど御指摘申し上げたように、常に企業サイドに立って全く子供の使いのような調査しかしていない。こういうことでほんとうに国民の期待にこたえるような通産行政ができるかどうか、責任ある答弁を求めたいと思います。
  127. 林信太郎

    ○林(信太郎)政府委員 東燃のケースにつきまして二件例示としておあげになられましたし、かつそのほかにもこういった種類のものがかなりあるということも知っております。  問題は、たとえば住民からの通報によって会社側が知るとか、あるいは列車の乗客の指摘によって初めて気がつくというような体制では、これは企業といたしまして保安について責任をとるという姿勢からほど遠いものであることは先生の御指摘のとおりでございます。こういうことで、ほんとうに企業企業活動を通じて安全を常に大前提にしながらこれでいいのかという御質問につきましては、きわめて不十分と言わざるを得ないと思っております。私ども、高圧ガス取締法あるいはその他の関連の安全法規を持っておりますけれども、この法規の趣旨に照らし、あるいはその条文に即してなお一そう反省し、かつ企業がまず安全第一に徹してこういう問題を皆無にするというふうな方向に指導してまいりたいというかたい決心でございます。
  128. 野間友一

    ○野間委員 これはことしになってから五件の事故事例が通産省の資料にもあります。こういうような企業がさらに七万バーレルの増設を進めておる。これは御存じのとおりだと思うのです。これは有田市の住民がいま猛反対をして、まだきめかねておりますが、こういうように全く安全性を無視し、住民の声を無視した安全施策をとりながら、まだ増産というような態度をとる東燃の態度は私は許せないと思うのです。  そこで私が要求したいのは、このような続発する事故、これはヒヤリングしたときに、その係の人は、全くたるんでおるというふうに言いましたけれども、まさにこのような安全無視の企業は私はそうたくさんないと思うのです。これらを総点検して安全性を確かめなければ、地域の住民は不安でしようがない。これは毎日、新聞紙上をにぎわしておるわけです。ですから、この東燃のいまの既設の施設に対して、その安全性を総点検するように私は要求しますが、どうですか、やりますか。
  129. 林信太郎

    ○林(信太郎)政府委員 東燃のケースでございますが、実は出光の事故に関連いたしまして、あの事故が二回にわたります操作のミスあるいは高温あるいは高圧におきます異常時の措置が不適切であったということが直接の原因になっております。その事故の状況をそのつど十七のコンビナートに通達をいたしまして、同種の事故が起きないように、一つの参考として安全の徹底をはかってまいったわけでありますが、たまたま出光の事故を転機にして行なわれました十七のエチレンのセンターの点検の際、東燃の川崎エチレンのセンターにつきましては、出光で発見されましたそういう問題が完全に操作マニュアルで規定されております。したがいまして、たまたま和歌山のほうの工場におきます姿勢は先生御指摘のとおり事実でございますが、同時にもっと危険な大きな危険物の集団であります川崎の東燃のコンビナートにおきます姿勢は、一級事業所という折り紙をわれわれもつけておりますし、総点検の結果そういうきわめて周到な結果になっております。したがいまして、企業として東燃がはたして安全軽視の企業であるかどうかということはやや私どもも慎重に考えてみたいと思っております。
  130. 野間友一

    ○野間委員 これだけの事故が続発しながら、この具体的な内容について非常に問題が多い。しかも、調査したけれども調査した内容が全く原因追及がなされていない。こういうことを前提にした上でも、なおかつそういうことが出てくるのですか。どうですか。私は川崎は知りません。しかし、少なくとも和歌山については安全の面から総点検すべきである、こういうように思うのです。それを要求しておるのです。これはしませんか。
  131. 林信太郎

    ○林(信太郎)政府委員 東燃の和歌山工場におきましては、先生御指摘のとおり直ちに総点検の措置をとりたいと思っております。
  132. 野間友一

    ○野間委員 それでは時間があまりなくなりましたので、今度は住友化学の火災について若干触れてみたいと思うのです。これについては、きょういただいた通産省の資料もございますけれども、実際よくわからないわけです。たとえば二十二時十五分ごろに、パトロールして異臭を感じたので倉庫を開錠して内部を調べたけれども異状は認められなかった、ところが、二十二時四十分ごろにスミチオン工場の作業員がポンポンという花火が破裂するような音を三回聞いた、その後二十二時五十分に火災報知機が作動して云々、こういうような調査の経過が報告されておるのですね。  ここで私がふしぎに思うのは、この火災の発生時刻が問題になると思うのです。これは住化が市議会、県議会で二転、三転しておるのです。これは五十分ごろというふうにありますが、それはそれとして、要するに異臭を感じてパトロールした、しかもポンポンという花火の破裂するような音を聞いた、倉庫の屋根のスレートが赤くなっておった、こうあるわけですね。これは二十二時四十分ごろで、二十二時五十分ごろに火災報知機が作動した、こういう通産省調査の結果が報告されております。これは逆なんですね。こういうことがあり得るのかどうか。火災報知機というものはこんなものかどうか。こんなものじゃありませんね。私が聞いておるのは、温度が五度ばかり上がれば、異常になれば、ばっと直ちに報知機のアラームが作動するというふうに聞いておるのです。ですから、こういう状況の中でそのあとで報知機が鳴るというようなことは考えられない。これはそのまますなおに信じているのかどうか。これも通産行政のずさんさがここに出ておるように思うのです。この点について納得のいくようにひとつ説明してください。
  133. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 御指摘のように、火災報知機があとから鳴ったというのは私ども非常に疑問に思っておるわけでございます。ここの火災報知機は、前回の五月の事故のあと、県の指示を受けながら防災体制の完ぺきを期するという意味で火災報知機をつけたわけでございまして、相当最新鋭なものというふうに聞いておるわけでございます。それが現実に火災が起こってから鳴るというのは、いかにも理解しかねる点でございますけれども、もう少し技術的な観点から実態を調査する必要があるかと思っております。
  134. 野間友一

    ○野間委員 これは八月十二日ですね。しかも私がヒヤリングしたときに、通産省の係官から聞きました。これは一体どのようにして調査したのか聞いたのです。これは企業の職員からしか聞いてないのです。調べてないのです。私たち共産党は、付近住民からずっといろいろ聞き込みをやって、三百人余りの対象者から聞いたわけです。そうすると意外な事実が出てきた。それは、この火災の発生時点、時期はもっと早い十時前後ではなかろうか、こういうことです。これはテレビで「子連れ狼」というのをやっております。九時半から十時半までです。そのあと「夫婦善哉」というのがあります。九時半から「子連れ狼」のテレビが始まって、それを見ておる途中にポンポンと異様な音を聞いて、煙が立ちこめた、こういう聞き込みをやっておるのです。そうすると、これは十時三十分に終わるわけですから、それまでに火災が発生しておるわけなんです。ところが、この報告書によりますと、そんなことは全く調査の対象にもしていない。そして二十二時四十分あるいは二十二時五十分、いま指摘したように、全く科学は別にして、常識ですら頭をかしげるようなことを平気でここでは文章にしておる。私が指摘したいのはこの感覚なんです。なぜもっとまじめに調査しないのか。いかがですか。
  135. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 火災事故が起こりまして、翌日直ちに福岡通産局の担当官二名が現地に参りまして、その後、本省の課長補佐が参って調査をやったわけでございますが、御指摘のように、火災報知機の問題は私ども非常に疑問を持っておりますし、それから担当官も疑問を持って現地でいろいろ聞いたわけでございます。消防庁関係にも、実は私どもいろいろ疑問を持って聞いておるわけでございますけれども、正確なこれについての判断の材料というのはまだ得てない状況でございます。
  136. 野間友一

    ○野間委員 そうでしょう。ですから、そういう行政だから困るのです。問題がたくさんあるのですがね。たとえば、これは通報してないわけですね。これは鶴崎駅の駅員から消防署は通報を受けたわけです。これはもう企業は認めておるのですね。その他有毒ガスではありませんということを会社が放送しております。これについてヒヤリングしても、通産省はそんなことはない、こう言い張る。それから消防車がかけつけていったときに、守衛が確認中だから少し待てということで門前払いを食っておるのです。こんな事実についても全く触れてない。この事故から言えることは、私が思うのは、発見時点はもっと早い十時前後。ところが、これも秘密主義で内部で内々に処理する、こういう誤った態度をとったがために初動の消火作業がおくれたわけですよ。失敗したわけですよ。しかも、いま申し上げたように、有毒ガスが出て——これは結果的に出ております。出てないとか消防車を門前払いするとか、こういうことまでやっておる。しかも発生時刻について、いま申し上げたように市議会、県議会で二転三転しておるのです。こういう事実を通産省は知らない。市議会、県議会は、非常に疑問を持って追及しておる。もっと調べて納得のいくような報告をしてくれますか、ひとつ答弁願います。
  137. 飯塚史郎

    飯塚政府委員 御指摘のように消防署への連絡がおくれた点につきましては、私ども担当官の調査の際に確認をいたしまして、これは住友化学の幹部に対して厳重にその点については注意をいたした次第でございます。なお、その他いろいろまだ不明の点がございますので、私どものほうも引き続き真相究明については最大の努力をするつもりでおります。ただ、現在地元の消防署並びに警察署も県と一緒になって検討をやっておるようでございますので、こういった地元関係とも十分連絡をとりながら調査の万全を期していきたい、かように考えております。
  138. 野間友一

    ○野間委員 きょうは、出光の徳山工場の事故について私は調査に参りましたので、これを十分お聞きしたいと思っておったのですが、これは同僚の質問がまだ残っておりますので後日に回しますが、いずれにしても、通産大臣いまお聞きいただいたと思うのですが、これは通産行政の指導下にある石油精製、石油化学、それから鉄鋼、製鉄ですね、あらゆる企業が労災なりあるいは災害を起こしておるわけですね。地域の住民に非常に大きな被害を与えている。ところが、このような事故の原因あるいはその後の手だてについて先ほどから私が指摘しておりますように、企業秘密やあるいは内々に処理する、こういう態度が非常に大きな事故につながっておる。しかも、これについて通産省調査を形だけやっておるけれども、いま私が追及して答えることができないような全くずさんな、通り一ぺんの子供の使いのような調査しかしていない、こういう事実が明らかになったと私は思うのです。こういうようなことをやるから通産省企業ペースだ、こう言われても無理もないと思うのです。抜本的に労災あるいは安全性の問題からいま幾つかの大企業の具体的な事例を出しましたけれども、このような事例についてもっと真剣に考え、抜本的にこれらの安全や労災上の対策通産省としては当然立てるべきである、このように私は思うのです。最後に通産大臣の御見解をお伺いしておきたいと思います。
  139. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 人命の安全は一番大事なことでございますから、労災あるいは安全管理等につきましていささかも従業員の皆さんやまわりの人に心配をかけることがないように、われわれは取り締まりを厳重にしてまいりたいと思います。
  140. 野間友一

    ○野間委員 もう一点、労災とそれから地域住民の火災とかその他の爆発の安全性の問題についていままでの通産行政の欠陥、不備を私はついてきたのですが、これらを踏まえてどういうふうにお考えになるのか、お伺いしたい。
  141. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いまもお答えいたしましたように、従業員の皆さま方には労災、それから環境安全という面についてはそのまわりの地域の皆さま、こういう方々に対して不安を与えないように、われわれはさらに監督を厳重にしてまいりたいと思っております。
  142. 野間友一

    ○野間委員 まだまだ私申し上げたいことがありますけれども、一応この火災等の事故についてはさらに質問を続行することで、きょうはこれで留保します。
  143. 浦野幸男

    浦野委員長 松尾信人君。
  144. 松尾信人

    ○松尾委員 大臣に三つ四つの点についてお尋ねしたいと思います。  総理の日本列島改造論以来、地価をはじめとして諸物価がうんと上がっている。卸売り物価も十カ月、一年近くも続騰しておる。おまけに四十八年度の景気刺激の大型予算、これが指摘しておりましたとおりに過熱になってきた。それで世界的なインフレ傾向もありますけれども、日本の現状は供給能力を大きくこえた需要というものがいま起こっております。そして総体的に品不足へこれが国民生活関係に欠くことのできない物資にまで及んできておるわけでありますけれども、このようなことから、結局その結果といたしましては、電力需給も窮迫してきた、代表の鉄鋼需給が窮迫してきておる、こういうところに端的にあらわれてきておるわけでありますけれども、なお公共事業というものがだんだん活発化してまいりまする今年の秋、それから年末、そういうところにかけまして、さらにいま申し上げましたような傾向が顕著になっていくのじゃなかろうかという心配があるわけでありますが、こういうことにつきまして、秋から年末にかけてのわが国の経済動向、物価の動向、こういうものに対してどのように大臣はお考えでありますか。
  145. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 けさほど午前中にも申し上げましたが、やはり総需要が非常に上がってきておるということ、それから国際的な資源関係等からくる資源供給不足、そういうようなこと等々が重なり合いまして、今日の物資不足状態が出てきたと思っております。     〔委員長退席、稻村(左)委員長代理着席〕  それには、一つには総需要関係で総需要カットということを金融面でいろいろとやってまいりましたが、さらに一段とこの努力をやる必要がありますし、資源的にも農産物、石油あるいはそのほかの諸物資等についてできるだけ手当てを促進いたしまして、それで国内的にできるだけ需要供給のバランスを早くとるように努力してまいるつもりでおります。小坂長官が午前の御回答でも申し上げましたが、そういう努力をしてまいりますならば、卸売り物価の騰勢というものは十一月くらいまでには弱い方向に転化して変化があるだろう、そう言っておりましたけれども、私もそういうような期待感を持って今後とも努力してまいりたいと思っておるところでございます。
  146. 松尾信人

    ○松尾委員 当然しっかりやってもらわなければいけないわけでありますけれども、いまお答えの中で総需要の抑制を考えていくというようなお話でありますけれども、総需要という中にもぼくはいろいろあると思うのです。そういう総需要の抑制というような一言で片づけるのじゃなくて、需要の中には、国民がどうしても自分の最小限度の需要というものを伸ばしていきたい、そういうものもあるわけでありまするし、同じ公共投資と申しましても、公共投資の中にも国民の福祉につながっておる、どうしてもやめてはいけない福祉施設の公共投資もあるわけであります。生活、道路の充実もあるわけであります。こういうものはやめては相ならぬわけでありますけれども、総体的に公共投資、それが建設だけでも二十兆円、こういうふうなことになりますと、これはセメントも当然足らなくなりましょうし、鉄鋼も足らなくなっていくわけでありますから、同じく総需要の抑制の中からどうしても必要とするもの、国民生活に欠かしてはならないものは抑制すべきではなくて、むしろ手厚くそういうところはやるべきである。そのような面から遠いもの、また、むしろ日本に公害をもたらすようなもの、日本の物価というものをさらに引き上げていって、国民に不安を与え、生活を苦しめていくようなもの、そういうものをひっくるめて総需要の抑制とおっしゃってはいけないと思うのでありますが、同じような考えと思いますけれども大臣いかがですか。
  147. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先生御指摘のように、確かに国民生活に密着して、しかも生命とか衛生だとか、そういうものに関係するものはもちろん総需要抑制の中から排除さるべきものであると思っております。
  148. 松尾信人

    ○松尾委員 まあ当然だと思うのであります。  ところが現実には、このセメントの不足も先般起こりました。緊急にいろいろここでわれわれも質疑を重ねましたし、政府のほうでも緊急対策をとられましておさまってきたようになっておりまするが、昨日も大臣出席されました全国の建設業、特にこの電線関係の全国決起大会、そういうことまでやってきておる。これがやはり物が足らないし、足らないところにメートル三十円や四十円のものが二百円にもなる。こういうことはやはりお考えがそこまで及んでいなかったためにそのような悪い影響が出ておるのではなかろうか、こう思うのですがね。電話の配線だとか、またいろいろの家庭の中の配線、そういうものは当然あるべきものでありましょうし、そこに不足を来たすということ自体は、何かやはり施策として考えておられる中に、そういう国民の生活の必需的なものというものが遠いような感じがします。だからそこに悪い影響が一つ一つ出てくる。どうしてもたまらないから陳情をし、要望をし、また決起大会を開く、そして強い要請をする、このような姿でこれは今後とも私は出てくると思うのでありますけれども、いかがでしょうか。
  149. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今後の経済運営のいかんにもかかわることでございますが、われわれとしては、ただいま申し上げましたように、需要供給のバランスをできるだけ早く回復したいと思っておるわけでございます。  塩ビについては、この間の徳山の出光の事故とか、あるいは公害関係等の影響もありまして、そういう影響が一挙にここで出たということでございました。これらもいま緊急の手当てをしておりますけれども、かつてセメントその他についていろいろ努力をいたしましたように、今後出てくるであろうと思われる物資につきましても、丸棒であるとかあるいはそのほかについていま一生懸命やっておるのでございます。特に灯油の問題等につきましては、市民生活に影響するところでございますから、量的にも逼迫を来たさないように一生懸命いま手当てをしておるところでございます。
  150. 松尾信人

    ○松尾委員 それで、いま答えられたのを私が少し補足すれば、そのような国民生活に欠くことのできないこの原材料、そういうものについては考えておいて問題の起こらないようにしていきたい、こういうお考えと私は理解いたしまするし、そうじゃなくてはいけないと思うのであります。  そうしますと、いままでのセメントにしろ、今回の塩ビ電線の問題にしろ、やはり政府の考えが不足であるということが端的に指摘できると思うのですよ。ですから、今後とも起こると思われるような、そのような国民生活の基本物資については問題の起こらないようにする、こういう配慮をきちっとしていただきまして、国民が安心して日常生活のできるように、仕事が滞りなく末端の人々ができるようにということをはっきりひとつお答え願っておけば、私は基本的な姿勢としては納得できるのじゃなかろうか。また、かりに問題が起こりましても至急対策をそういうところにとるということになれば、国民も不平、不満はありながらも基本的には納得できると思うのでありますけれども、くどくなりましたけれども、そこを明確にお答え願いたいと思います。
  151. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘がありましたように、病院や学校のような公共事業でも公共性の特に強いようなもの、あるいはさらに国民生活の中におきまして、灯油あるいは野菜あるいはそのほか生活のためにも非常に重要なもの、あるいはセメントであるとか棒鋼、丸棒あるいは塩ビ関係電線、そういうように中小零細企業の生計上にも影響するような大事な物資、そういうような諸般のものにつきましては、私たちも周到な手配をいたしまして、それらの方々に心配や迷惑のかからぬようにわれわれも万全の策を講じていきたいと思っております。
  152. 松尾信人

    ○松尾委員 しっかりお願いいたしたいと思います。  先ほど大臣のお答えの中で、灯油もこの買い占め、売り惜しみ規制法の中に入れていくというようなことがあったかと思うのでありますけれども、新聞等には発表されております。先般の小口のセメント不足の場合にも、あの韓国からの緊急輸入等がありまして、これはうんとききましたね。パンチがありました。  この塩ビ電線でありますけれども、いま対策を立てていらっしゃいますけれども、これは時期的に言えば九月からきちんと答えが出ますか。そのころからもう出していただきませんと、高くなった上に現物が手に入らぬというのが決起大会の趣旨でありますから、何かひとつ速急に効果のあるような手を考えなくちゃいけません。ですから、これをやはりこの買い占め、売り惜しみ規制の法に入れる、かりにいま速急に入れぬとしても、そういうことを前提とした調査というものをしっかりおやりになる、また海外からの緊急輸入をある程度おやりになる、これによって私はぐっとおさまって、そうしてどこかに滞っておる、卸売り業界なんかにたまっておるのではないかといわれておる、そういうものが出てくるんじゃないか、こういうことも考えるわけでありますけれども、この一つの塩化ビニールの電線ということについてそのような方向を具体的に私は申し上げたわけでありますけれども、いかがですか大臣、そういう具体的な問題をひとつはっきりさしていただきたいと思うのです。
  153. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは供給力を増すということがやはり大きな大事な政策でございまして、たとえば出光の工場の総点検をやりまして、いま学者のいろいろな御見解も加えて最終的な処理をしておるところでございます。こういう工場が稼働し始めまするならば、供給力がふえてくるわけであります。そういうふうにしてできるだけ民間の稼働力をふやすようにしつつ供給力を確保する、また一方においては売り惜しみ、買いだめというようなことがいささかでもないように流通過程において監視の目を光らす、そういう等々の措置を強化していきたいと思っております。
  154. 松尾信人

    ○松尾委員 いまお答えの中で、やはり不足時代であるから物をつくるということでありますけれども、それはわかります。基本的にはわかりますけれども、かりにこの塩化の製品を見ますと、どうしても必要なものと、公害というものをそこからまき散らしていくような製品もあるわけです。それを国民が使っておる、使わせられておる現状であります。ですから、生産をふやすということももちろん大事であります。おまけにこの大きな力のある出光の工場の爆発、それでいまなお不足がはなはだしいといわれるわけでありますけれども、そういう中からやはり要らないものを切り捨てていくという考えも、単に生産をふやすというだけのお考えじゃなくて、私は必要だろうと思います。  たった一つ例をあげますけれども、この包装紙の問題を取り上げましても、いまもう包装というのは、品物の保管、輸送、販売上それは当然必要でありますけれども、その包装がいま商品の一部になりまして、それで過剰包装になりまして、要らない大きな包装、容器、中身はたいしたものは入っておらぬ。いかにも豪華に見えます。そういうもの、それがビニール製品である。また上げ底もある。商品の一部になっておりまして、千円のみやげものを買いましても、中身は八百五十円、包装代が百五十円というようなことであります。国民生活の安定と申しますか、それから物価の安定ということが来年度の通産省の大きな柱でありましょう。そういう中から総体的にどんなことをなされていくのか。いまビニールの問題でも、生産力をふやすのだというお答えだけでありましたけれども、私は公害をまくような製品をきちっと取り締まっていく、そういう製造は押えていく、そうして電線等の必要なものをうんと増すというようなお考えも必要じゃなかろうか、こう思うのですよ。この過剰包装の問題は私はあらためて論議していきたい。きょうはちょっとそのことに触れたものですから、私もそういうことを言っておるだけでありますけれども、そういうこともあるということでありますから、一がいにつくる力をふやすというだけではなくて、やはりつくったもの、そういう製品が非常にいま害を及ぼしておる。それが物価騰貴の一つ原因もつくっておる。そこにメスを入れると、使用量も減ってくれば物価も安定する、むしろ逆に効果のある政策もそこに生まれてくるわけでありますけれども、そういう点を今後とも検討していこうというお考えはありますか。
  155. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 同感でございます。ですから私らも、いままでは消費は美徳であると言っておったのを節約は美徳であるという方向に方向転換をしなければならぬ。特に紙類についてはそういうことが非常に大きく取り上げらるべきである、そういうように感じておりまして、紙のみに限らず、電力もそうですし、水もそうでありますし、石油もそうでありますし、われわれが目の前に見ているとおりでございます。したがいまして、そういう方面の節約についても、政府としていろいろ指導なりあるいは国民の御協力をお願いいたしたいと思っております。
  156. 松尾信人

    ○松尾委員 いま広範なるお答えがあったわけでありますけれども、鉄でもそうですね。電力ももちろんそうであります。資源、エネルギーの問題、これはまた通産省としましても基本的に態度をきめられまして、いまもうほとんど確立されたと思うのでありますけれども、そういうところで単に年間何%そのものがふえていくのだというような過去のそういう消費または経済成長の追求型でなくて、公害というものをこれ以上ふやさない、それから国民のためにならない分をうんと減らしていくというような面でお考えになりませんと、資源、エネルギー問題も行き詰まっていくだろうし、そして電源立地の問題もますます問題を複雑にしていくであろうと思う。姿勢が悪いんじゃないか。ですから単に消費がこうふえていくのだ、経済成長がこうだというような過去のそのような傾向をたどるのではなくて、新しい発想でこの資源の問題、電力の問題も見直していらっしゃるのかどうか、そうしてそういうことを見直しながら、われわれ、また国民に納得のいくそのような施策というものをお立てになっておるのかどうか。これをあわせていま聞くわけであります。
  157. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういう考えに基づいて政策を立てたいと思っております。来年度予算に伴う通商産業政策政策大綱をいま練っておりますが、そういう考えが盛られております。特にいままでは大体物が豊穣な時代でありましたから、物のことは考えないで金の面さえ考えれば物はついてくるという思想がございましたが、やはりこういう経験によりまして世界的な物資不足等が起こってまいりますと、ある程度永続すると考えなければなりません。そういう考えから、お金というものは物の裏づけがあって初めてお金として通用し得る、それが貨幣価値を安定させるゆえんでもあります。そういう意味において物のフローと金のフローが調和をとるように予算規模等についても十分配慮を加えながら適正な運営をしていきたい、そういうように考えております。
  158. 松尾信人

    ○松尾委員 大体そのような方向でしっかりお願いしたいと思います。  それから、いよいよ来年度のいろいろの政策決定がなされまして予算に組み込まれていくわけであります。われわれ、いつも中小企業のことを考えるわけでありますけれども、来年度の中小企業施策の重点は、基本的にどこにポイントを置いてやっていこうとなさるのか、これを聞いておきたいと思うのです。
  159. 外山弘

    外山政府委員 わが国中小企業を取り巻く経済環境は今後ますますきびしさを増してくるというふうな認識に立ちまして、従来にも増して諸般の中小企業施策を積極的に推進してまいりたい、こう考えております。  まず、私どもといたしまして、来年度の重点を一つは小規模企業対策の推進に置きまして、その格段の拡充強化をはかりたい。それから第二には、中小企業への資金供給円滑化という点に重点を置きたい。第三には中小企業構造の高度化。それから第四に国際化への対応の円滑化。こういった諸点につきまして施策の全面的な展開をはかるつもりでおります。  特に集中的な施策の投入が必要だと考えておりますのが小規模企業対策でございます。本年度創設されました無担保、無保証の小規模企業経営改善資金融資制度、これにつきましても資金量の大幅な増大あるいは融資条件の改善といった点が大事なポイントだと思いますし、同時に、その実施をはかるための商工会議所及び商工会の経営改善指導員の大幅増員と、もう一つは待遇の改善、こういった点が重点にならなければならない、こう考えております。  それから、さらに資金供給円滑化につきましても、政府関係中小企業金融機関の貸し付け規模の拡大あるいは条件の改善といった点に重点を置きますと同時に、中小企業の信用補完制度の充実をはかってまいりたい、それによりまして保険料あるいは保証料といったものの引き下げについても進めてまいりたい、こう考えております。  それから高度化施策の充実につきましても、御承知中小企業振興事業団の融資規模の拡大をはかりまして、同時に新しい情勢に対応した若干の新しい融資制度といったものもいま検討を加えているところでございます。  それから、さらに国際化への適応ということでございますが、中小企業振興事業団にはいろいろ事業転換の助成制度を設けておりますが、そういった点についてもいろいろ拡充してまいりたいし、また、中小企業が新しい事業分野へ転換が円滑にいくような配慮もしてみたい。それから、さらには中小企業が海外へ進出するにあたりまして、その円滑な促進ができますために金融上あるいは税制上の措置、そんな点をいま検討しているところでございます。
  160. 松尾信人

    ○松尾委員 非常に広範なお答えであったわけでありますけれども、四十八年度より創設されましたこの小企業経営改善資金は、残念ながら初年度三百億円であったのでありますけれども、これは大臣、中曽根構想といわれまして二千億円、五カ年で一兆円、こういう構想でありますが、来年度はこれをどのくらい——われわれは、最初大臣の構想どおりに、少なくとも二千億くらいは当然おやりになるだろう、このように大きく期待しているわけでありますが、どうですか、大臣
  161. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この小規模企業の経営改善については、経営改善指導と裏表になってやるわけであります。したがいまして、いまの情勢で見ますと、経営指導員のほうが、指導機構がどうもまだ脆弱であります。そっちのほうをさらに充実するということに伴って資金量もまたふやす、そういうことで、いまのところ幾らというようにきめておりませんが、目の子算用として一千億円くらいは拡充していきたい、そう考えております。
  162. 松尾信人

    ○松尾委員 お話しのとおりですね。小規模事業の対策推進は、何といいましても、いまお話しの指導員、またあるいは記帳員というのもおりますけれども、そういう人々をふやし、質を上げていく、こういうことで、やはり裏表になると思います。ほんとうに四十八年度で初めて中小企業対策らしいものがなされたといいますのは、いま大臣のお答えになりましたこの商工会議所、商工会における指導員、そういう人の大幅な増員でありました。これを来年度もどのようなお考えのもとに——具体的にやはりふえ方としては四十八年度と同じベースでふやしていくのは最低限度だろうと思うのでありますけれども、そこの考え方ですね。そうしてそういうことを充実しながら、この資金の充実、大臣のおっしゃった点、一千億円ぐらい考えておるということで五割引きになったのでありますけれども、やはりそれは裏表相まって進みませんと、資金だけ先に走っても結果的にはこれはやはりいいことがないかもしれません。それはわかります。ですから、ほんとうにこの指導員、そういう人々を充実させる具体的な策はどうか。これは長官からでもけっこうですが、お答えください。
  163. 外山弘

    外山政府委員 ただいま大臣からも御発言ございましたように、経営指導員の充実ということが非常に大切でございます。いま先生はことし程度の伸びしか要求できないだろうというふうに御指摘ございました。確かにことしは三百人を上回る増員でございまして、従来のベースから見ましてもたいへん考えたわけでございます。しかし、来年度は、やはりこれを上回る増員要求をしたい、こう考えております。通産省内におきましても、小規模企業対策のための予算要求のワクも、ほかの施策よりもこえて増ワク要求をすることをわれわれにもいろいろ応援してくれております。そういった意味におきましても、三百人をずっと上回る、いまのところ七百人程度考えておりますが、少なくともそのくらいの増員の実現をはかりたい、こう考えて、いま検討しているところでございます。
  164. 松尾信人

    ○松尾委員 まあ当然だと思いますね。そこに重点を置くということがぼくはほんとうの小規模企業対策だろうと思うのです。ですから、これはいまお話しのとおりに、しっかり実現してもらいたい。  少し内容は小さくなりますけれども、この無担保、無保証、これは設備の場合は百万、運転資金の場合は五十万ですが、これをやはり限度を上げませんといけないというのが他方あるわけです。指導員をふやすということと、この貸し付け限度というものをそれぞれ引き上げていくということと両々相まって、りっぱなこの資金ワクの消化ということも出てくるだろう、こう思うのですけれども、長官いかがですか。
  165. 外山弘

    外山政府委員 御指摘のとおりでございまして、私どもも、このワクの拡大あるいは条件の改善につきまして来年度はさらに前進したい、こう考えます。百万円もいまの考えでは二百万円程度にしたいし、それから期間についても延ばしたいし、据え置き期間も新たに設けたい、こういうふうなことで内容も改善していきたい、こう考えておる次第でございます。
  166. 松尾信人

    ○松尾委員 運転資金のほうはどうですか。
  167. 外山弘

    外山政府委員 運転資金につきましては、ことし五十万円ということで発足をする予定をしております。この辺はことしの実施状況等もよく見ましてやりたいと思っております。五十万円の運転資金というのは確かに少ないという感じもいたしますが、同時にこのワクをできるだけ多くの小規模企業者にも使ってもらいたいという配慮もございます。この辺は両方の事情をにらみ合わせまして、私どもとしても、できるだけ有利な方向で考えてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  168. 松尾信人

    ○松尾委員 この制度でありますけれども、これは現実にはいつから発足するのですか。
  169. 外山弘

    外山政府委員 この制度は、何と申しましても本年度から発足する制度でございます。同時に新しい制度でございますので、これを実施する、たとえば国民金融公庫あるいはその推進母体になる経営指導員、そういったこととの円滑な連絡が必要でございます。  それからまた、先ほど来御指摘がございましたように、経営指導員の体制整備と申しますか、ことし三百人を上回る増員をいたしましたが、それの訓練と申しますか、研修も必要でございます。そういった意味での体制整備もはかりたい。事務上の円滑な進め方あるいはその体制整備、そういった点をにらみ合わせまして、いまできるだけその実施を急いでおるわけでございます。私どもといたしましては、できるだけ十月早々にはこれを実施に持っていきたいと考えておる次第でございます。
  170. 松尾信人

    ○松尾委員 これは早く実施しませんと、非常に前評判が行き渡っておりまして、みな待っているわけです。  それから商工会の問題がありますけれども、商工会は、月に二百円とか三百円とか四百円という小さな金額を組合員から集めまして事業をやっていこうとしているわけでありますけれども、これはかねがね指摘しておきましたとおりに、残念ながら本来の事業等にあまり使われないのですよ。職員の退職金の積み立て分とか、保険の支払いの充当補助だというようなことで、相当そういう人件費、待遇改善等にこれが食われておりまして、本来の商工会の働きができない。会費を上げるということになりますと、そんなことに使っておりますから、あまり利用できませんから、急にも上げられないわけでしょう。そういう実情があります。ですから、こういうことは、待遇改善というのが若干四十八年度になされておるわけでありますけれども、それを思い切ってやるか、それとも商工会自体に何か働けるだけのものを助成してやるか、こういうことになるわけでありますけれども、考え方はいかがですか。
  171. 外山弘

    外山政府委員 御指摘の点は二つの方向で考えていかなければならない、こう思います。一つは、いま食われておるとおっしゃいましたが、確かに待遇改善を強化していくこと、これが一つの大事な点だと思います。この点につきましては本年度の予算でも二〇・一%の給与の引き上げということで、かなり画期的なふやし方をいたしましたけれども、この点につきましては、引き続き待遇改善に努力をしてまいりたい。そして少なくとも身分の安定と申しますか、指導員が安心した財政的基盤のもとにやれるようなかっこうの待遇改善につとめてまいりたい、それが一つでございます。  それからもう一つは、いま御指摘のように、逆に社会保険料の負担といったほうに流用されてしまうというようなこともございます。私どもといたしましては、補助の対象に新たにそういった面も加えて補助の要求をしてまいりたい、そして来年度はぜひその実現をはかりたい、こう考えているわけでございます。
  172. 松尾信人

    ○松尾委員 ぜひともそういう方向でがっちりやっていただきたいのです。  この下請の振興協会の問題でありますけれども、これはぼちぼち数はふえておりますね。来年度どのくらいこの数をふやしていくかということと、現地の協会をながめてみますと非常に弱体なんですね。特に長崎は大企業中の大企業、指定産業であります造船業を控えておりまして、下請が一ぱいです。それでいろいろ問題がございます。そういう中で親と子の間を取り持って十分に指導をして、下請が安心して働けるような指導力というものが非常に弱いのじゃないか、このように感ずるわけです。長崎でもそうであるから、ひょっとしたらこれは全国的にもそういうことが言えるのじゃなかろうか。数をふやすということとそのスタッフを充実していく、この面をどのように考えておられますか、長官。
  173. 外山弘

    外山政府委員 下請振興協会も逐年その数をふやしておりますが、まだ行き渡らないところも多々あるというのが現状でございます。来年もそういった事情にかんがみまして、これの増加要求はしてまいりたいと思っております。  それからもう一つ、スタッフの充実につきましても、職員の待遇の改善、研修といったような資質の向上、これも大事でございますし、機械化による事務処理体制の整備等も大事でございます。そんなことを含めまして予算要求も拡充してまいりたい、こう考えている次第でございます。
  174. 松尾信人

    ○松尾委員 これで最後にしたいと思うのでありますけれども大臣、この中小企業に対する財投資金の問題、政府機関政策金融の問題であります。これは先般私が当委員会で大臣にも質問いたしまして、そのときの前長官のお答えの数字がちょっと違うと思うのでありますが、ことしの三月末の中小企業の貸し出し残、これは全金融機関で四十八兆八千億円になっております。そのうちで政府の三機関の分が四兆四千億であります。これは一割に足りません。財投全体としますれば、昨年四十七年度は二八・三%ふえておる、こういうことでありますけれども、特に大事な中小企業、その中で小規模企業等を中心に助成していこうという大きな柱でありまするので、何としても政策金融、この政府機関に対する財投というものをがっちりやっていかないといかぬ。当然と思うのでありますが、これはどのようなお考えであるか。特に一般の財投のふえ方とこの政府機関に対する中小企業対策の財投のあり方というものは違っていかなければいけない。むしろ四十八兆八千億円に対して政府機関の四兆四千億という現状から見ましても、これがふえるということはどのくらい中小企業が恩恵を受けていくか、潤うかということは当然明らかなんですね。大臣、いかがですか。
  175. 外山弘

    外山政府委員 金融機関中小企業向け貸し出し残高に占めまする政府系金融機関の比率は、ただいま先生がおっしゃったように若干の動きはございますが、おおむねやはり一〇%程度でございます。民間の金融機関の貸し出しは、当然のことながらそのときどきの景気動向等で敏感に左右されます。したがって、中小企業者に安定的に資金が流れるためには、政府系機関の役割りといったものがきわめて大きいというふうに認識いたします。私どもといたしましても、先ほど申し上げましたように、融資量の増大につきましては引き続き努力を払ってまいりたいと考えておるわけでございまして、ことしはやはり財政の規模でも四〇%に近い数字で要求をしてまいりたい。もちろん全体の貸し出し量と財投のワクとの連動性あるいは財投の伸びとこの伸びとの関係といった点は、もっといろいろ考えなければならない要素があるかと思います。しかし、従来二〇%を若干下回るような伸び率でございましたが、国民金融公庫中心にいたしましてできるだけ伸び率の増大をはかるように努力をしてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  176. 松尾信人

    ○松尾委員 以上で終わります。
  177. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)委員長代理 次回は、来たる二十八日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十六分散会