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1973-07-17 第71回国会 衆議院 商工委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月十七日(火曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 浦野 幸男君   理事 稻村左近四郎君 理事 左藤  恵君    理事 田中 六助君 理事 羽田野忠文君    理事 山田 久就君 理事 中村 重光君    理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    稲村 利幸君       内田 常雄君    越智 伊平君       木部 佳昭君    小山 省二君       近藤 鉄雄君    笹山茂太郎君       塩崎  潤君    島村 一郎君       田中 榮一君    八田 貞義君       増岡 博之君    松永  光君       岡田 哲児君    加藤 清政君       上坂  昇君    佐野  進君       渡辺 三郎君    野間 友一君       近江巳記夫君    松尾 信人君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         通商産業政務次         官       塩川正十郎君         中小企業庁長官 莊   清君         中小企業庁次長 森口 八郎君         中小企業庁計画         部長      原山 義史君         中小企業庁指導         部長      生田 豊朗君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 七月十四日  中小小売商店営業保護に関する請願(岡本富  夫君紹介)(第八六五八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月十六日  円の変動相場制等に伴う中小企業対策に関する  陳情書外一件  (第五〇六号)  発電用施設周辺地域整備に関する陳情書  (第五〇七号)  電力の相互融通に関する陳情書  (第五〇八号)  石油資源枯渇化に伴う総合対策確立に関する  陳情書外一件  (第五〇九  号)  漁業用燃油の確保に関する陳情書  (第五一〇号)  消費者保護のための指導調査権都道府県移  譲に関する陳情書  (第五一一  号)  余暇利用対策体系化等に関する陳情書  (第五七一号)  関西電力株式会社電気料金値上げ反対に関す  る陳情書外一件  (第五八四号)  国土調査法に基づく地籍調査事業法定事業費  算出基準引上げに関する陳情書  (第五八五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  中小企業者範囲改定等のための中小企業基  本法等の一部を改正する法律案内閣提出第八  四号)      ――――◇―――――
  2. 浦野幸男

    浦野委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  参議院から送付されました内閣提出化学物質審査及び製造等の規制に関する法律案審査のため、参考人出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 浦野幸男

    浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選及び出頭日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 浦野幸男

    浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  5. 浦野幸男

    浦野委員長 内閣提出中小企業者範囲改定等のための中小企業基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。
  6. 佐野進

    佐野(進)委員 私は中小企業者範囲改定等のための中小企業基本法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。  きょうは大臣出席いたしませんので、主として中小企業庁長官質問をいたしますが、必要に応じては、政務次官もお見えになっておりますので質問いたしますから、ひとつお答え願いたいと思います。  中小企業者範囲改定等のためということばが入っておりますけれども、いわゆる中小企業基本法等の一部を改正する法律案ということになっておりますので、中小企業基本法制定されてから今日に至るまでの間、この基本法精神に基づいて中小企業政策並びに対策が行なわれておるわけでありますが、この機会に、中小企業基本法の一部を改正するという名のもとに範囲改定のみにとどめた理由、これはいかなる理由か、ひとつ長官でも次官でもけっこうですから、御答弁願いたいと思います。
  7. 莊清

    荘政府委員 中小企業対策は、業種、業態が非常に多岐にわたり、施策内容もまた多岐にわたっております。法律だけでも二十本近いものが整備されておるわけでございまして、政府といたしましても、中小企業対策重要性にかんがみまして、ほとんど毎年のように新しい予算措置を講じ、あるいは税制財政投融資等につきましてもその内容改善につとめてまいりました。また、多数の法律につきましても、施策の変更に伴いまして所要改正を行なってきたところでございます。今国会におきましても、ドル対策法、それから中小企業信用保険法改正を御審議いただきましたし、また、基本法でも重視しております小売商業問題につきまして、今回初めて中小小売商業振興法案を御提出申し上げておる次第でございます。  本日、御審議いただいております基本法等の一部改正は、これらの施策対象とすべき中小企業者範囲をそれではどうするかという点につきまして従来から問題がございましたので、中政審の答申に基づいて今回法案として御提出したわけでございまして、今後ともそれぞれの予算税制、財投を通じまして中小企業施策充実に一段と努力する所存でございます。
  8. 佐野進

    佐野(進)委員 御承知のとおり、中小企業基本法昭和三十八年に制定されたわけであります。したがって、それから今日まで十年を経過しておるわけです。中小企業基本法前書き並びに第一章総則第一条に書かれている「政策目標」、これらがこの十年間に時代変化に伴ってこの対策改正を要するという形の中で変化しているのではないか、こういうぐあいにもとらえられるわけです。私の冒頭御質問申し上げておることは、基本法におけるところの前文ないし第一章総則第一条のこの表現を変更せずして、第二条の中小企業者範囲のみ改定することにした理由はいかなるものかということをお聞きしておるわけです。
  9. 莊清

    荘政府委員 中小企業基本法前文及び第一条の目的というところが基本法中心かと思いますが、これらの規定は、制定当時からきわめて前向きの長期的な観点に立っての十分な検討が加えられまして、その内容におきましても表現におきましても、非常に広範かつ包括的かつ弾力的な規定がなされておるというふうに考えておるわけでございます。これらの前文及び第一条の精神を体しまして、先ほど御答弁申し上げましたように、政府といたしましても、中小企業施策充実に年々努力をしてまいったわけでございます。今後も内外の諸情勢の急激な変化ということは、先生指摘のとおり、私ども非常に重視しておるわけでございます。今後も基本法前文にございますような中小零細企業というものはその基盤において弱いものである、しかし、国民経済上最も重要な分野である、中小企業自主努力もございますが、国が自主努力の向かうところを示し、かつ十分な助成策を講ずべきだということは今後とも私どもはいささかも変わらない点だ、かように判断いたしております。  個々の施策充実改善につとめるわけでございますが、この施策対象とする範囲について、これは資本金とか従業員で一応画一的にもきめておりますので、この点は実態変化も考慮して十年たった今日、一回調整を行なう、大幅な引き上げではございませんで、実態変化に即応した所要調整を加えるべきであろうという審議会の御答申を尊重して改正を別途の法案としてお出ししておるという趣旨でございます。
  10. 佐野進

    佐野(進)委員 あなたがいま御答弁なさったことと私の質問とは若干ズレがあるわけです。と申しますことは、これから審議をするについて必要なことですからお尋ねをしているわけですが、いわゆる「七〇年代の中小企業あり方中小企業政策方向について」四十七年八月八日、中小企業政策審議会意見具申をしているわけです。この意見具申は、詳細かつ具体的にわたって中小企業政策あり方方向、こういうものについて提言をしているわけです。もちろんあなたが十分それを検討されて今日この改定案を出されたと思うのでありますけれども、この意見具申内容中小企業基本法前文ないし第一章総則第一条の政策目標と合致しており、いささかも改定を要しないものである、こういう判断に立ってこの前文ないし第一条の政策目標については改定をせず、第二条の中小企業者範囲のみについて改定をしたというように理解していいのかどうかということなんです。私は、この意見具申を詳細に検討した上に立つならば、むしろ第二条の中小企業者範囲改定をする以前に、この前文ないし第一条の目的に関していま少しく検討をする必要があったのではないかという判断かありますのでそのような質問をしているわけです。もう一度明確に御答弁をいただいて次に進みたいと思います。
  11. 莊清

    荘政府委員 今回の中小企業政策審議会意見具申に基づきまして私どもがこれから重点的に講じようと思っておる政策というものは、すべて現在のこの基本法前文及び第一条の政策目標という点に完全に即した路線である、かように考えておりますので、必要かつ不可欠の部分として第二条の修正を行なったということでございます。
  12. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは質問を続けますが、いわゆる前文ないし第一条の条項に完全に意見具申は沿っている、こういう前提に立って第二条の改定をしたのだ、こういうことになりますが、いわゆる大臣提案理由説明の中に、範囲拡大について「強く要請されてまいったわけであります。」こういうぐあいに書かれているわけであります。一体「強く要請されてまいったわけであります。」ということがどの層から出されておるのか、私もいろいろな角度から検討してまいったわけであります。中小企業団体中央会等をはじめとする団体からの要請等々幾つかの事例がございます。しかし、その直接のきっかけになりましたのは、いわゆる四十六年十一月のドル対法を審議した際における本衆議院の商工委員会におけるところの附帯決議、これが直接の動機になって範囲改定、いわゆる定義改定が行なわれる、そういうことがきっかけとなり、中小企業政策審議会のほうへ意見具申を求めた、このような筋道であるように考えられるわけであります。それがどうかということがまず第一の質問です。そういたしますと、いわゆる各方面から強く要請された、こういうことでなくして、特定の分野人たちから強く要請された。しかも、商工委員会におけるところの附帯決議精神は、小規模企業対策を強化することを前提として云々ということになっておるわけです。いわゆるいままで中堅企業と目された人たちに対して、定義改正によってその施策対象を広めようということでありますから、結果的に、その範囲拡大することによって小規模企業者ないし零細企業者が受ける犠牲ないししわ寄せというものを最小限度にする、いやそれをむしろ充実発展させる形の中でこの対策を立てるべきではないのかということがその附帯決議精神であるように私も考えられるわけであります。といたしますと、いま申し上げましたようないわゆる中小企業基本法前文ないし第一条とも、中小企業の、特に小規模企業に対する対策を十分はかりなさいよということが前提になっている。にもかかわらず、今回提案されたこの範囲拡大対象は、小規模企業者でなくして中堅企業者中小企業者範囲の中に入れる、いわゆる中小企業対策じゃなくして中堅企業対策としての意味をこの法律改定は持つのではないか、こういうぐあいに考えられるわけでありまして、強く要請されたということばの持つ意味は、中堅企業者の方々から強く要請されたのだ、こういうぐあいに理解しなければならぬと思うのですが、その点いかがですか。
  13. 莊清

    荘政府委員 基本法制定後十年たちまして、同じ資本金規模でも、当然に、物価の変動あるいは資本装備率上昇等で事情が変わってまいります。それで、当時五千万円までの中小企業も必要に迫られて当然の増資をすれば、従業員が三百人のときにははずれてしまうというような矛盾も実はあるわけでございます。そういうこと、さらに卸売商業では小売と一本できめられているという点が非常に実態に合わない。中小卸企業を十分維持するためにも、現在新しい立地を整える、物的流通施設を整えることが非常に必要であるにかかわらず、団地に入ろうとしても、いまの定義では助成対象から除かれる。いろいろな要望が業界かちもございましたし、関係都道府県からもございましたし、全国団体決議もございました。こういう点をすべて勘案の上、国会においても御指摘のような御決議をなされる一つの原因になったのではないかと私どもは理解をしておるわけでございます。  それで、その場合に相当大きい中小企業人たちだけが騒いだのであろうかという御懸念でありますけれども、決してそうではございませんで、全国中央会でも全国商工会でも、これは数から申しましたら圧倒的に小さい方たちが当然多いわけでございまして、そういう場でいろんな委員会もつくり、それぞれの総会等でも十分御検討の上全体の決議として出されてきておるわけでございます。私、昨年の新潟の全国中小企業大会に臨んだわけでございますけれども、実際に小規模の方が多数おいでになっておるその会場で非常に強い要望があって、必ず実現に努力したいとお約束をした記憶がございます。決して一部の一握りの中小企業要望ではございませんちなみに、製造業だけでも中小企業四十数万ございますか、今回の定義改定対象に入るのはわずか五百程度というふうなことをもってもその点は明瞭ではないか、かように考える次第でございます。  なお、零細企業対策充実基本として、前提としてということは最も重要な事項でございます。定義改定の有無にかかわらず既往の中小企業政策の中でこの小規模企業対策というものは至って不十分な分野であったということさえ言わなければなりません。基本法二十三条で持にその点について規定を設けております。小規模共済法とか、あるいは信用保険法とか、中小企業団体組織法等におきましても、二十人以下あるいは五人以下の製造業、あるいは五人以下もしくは二人以下の商業者について別の定義を置きましてそれぞれの施策を講じておるという点もございます。まあ金融、税制等一々申し上げませんが、四十八年度予算におきましても、政府といたしましては、この点については相当な努力を惜しまなかったつもりでございますが、決してこれをもって十分とは考えておりません。非常に各般の点においてまだ至らない点が多いわけでございます。今後、定義改定も御提案申し上げておりますが、来年以降のそういう政策におきましても、この点にはさらに一そうも二そうも重点を置いて努力をいたしたい、かように考えております。
  14. 佐野進

    佐野(進)委員 私はこの法律改正しようというところまできたわけですから、その強く要請されてまいったということばの持つ意味が何も一部の人たちだけと限定して言っているわけではないのです。しかし、一部の人たちの利益にのみ片寄るような運営になるおそれか実際上あるわけです。したがって、経過を見ると、一部の人たちの強い要請、しかもそれは中堅企業である。私もかつて大平大臣とここでやり合ったことがあるわけですけれども大平さんは、日本の中小企業をやがて中堅企業にすることが施策中心である、こういうふうなことを答弁されておったことも、私も質問しておりますから知っておるわけでございますが、中堅企業になった、中堅企業がやがてまた中小企業範囲拡大することによって中小企業に還元する、こういうことになりますると、何のことはない、中小企業というものはいつまでたっても中堅企業に脱却していくことはできない、こういう形になってくるわけです。したがって、中小企業対策の焦点は中堅企業対策でなくして小規模企業対策にその重点が指向されなければいけない。これは七〇年代の中小企業政策方向についての意見具申の中でも、あるいは基本法前文その他においても、あらゆる場所、場合におけるところの中小企業対策を論ずる場合、そのことが強調されながら対策ということになると、その人たち対策が非常におくれてしまう。現実にもこの意見具申の中にも示されておるように、調査によっても直接対象になるべき層の人たちが案外政府の行なう中小企業対策の恩恵を受けていない、そういう例が非常に多いわけであります。したがって、比較的多い層が中堅企業人たちあるいは中堅企業に近づきつつある中小企業者の層の人たちである、こういうような点を考えるとき、この基本法改定しようとする目的が、いま長官が言われたような趣旨であったとしても、結果的に中堅企業対策になってしまう。こういうことではならないわけでありますし、四十六年十一月の本院におけるところの附帯決議の中でも第五号に「小規模企業施策の一層の充実前提として、中小企業者定義上限引上げに関する検討を開始し、」云々ということになっておるわけでございます。これはドル対法のときでありますが、そういう面についてこの案を審議する際、最も重要な点だと思いますので、いま一度私の質問している趣旨をひとつ理解した上で答弁をしてもらいたいと思うのです。
  15. 莊清

    荘政府委員 今回の定義修正は、先ほどちょっと触れたと思いまするが、十年間の経済成長に伴いまして、当時中小企業として施策対象に取り入れるべきであると考え企業というものが、資本金等の点におきましてかえって窮屈になるというふうな事態が起こっておる。この点は認めざるを得ません。  そこで、中小企業でない、いわば大企業中小企業の間の中堅企業と申しますか、こういうものの一部を積極的に中小企業政策範囲内に取り入れてこようというふうなことは毛頭考えておらないわけでございまして、従来中小企業として扱ったものは、今日も明らかに実態から見て中小企業である、しかも従業員が三百人ないし若干こえておって資本金四千万円であったものがどうしても増資せざるを得ない、そういうことで定義からはずれていくということは実情に合わないということが十年間で起きておりますので、いわゆる改定とは言っておりますけれども引き上げではございませんで、所要修正ないし調整であるということでございます。中堅企業を取り入れてこようということではございませんので、あくまでもやはり中小企業政策という筋は一本失わないことを中心考えております。したがいまして、中小企業の中でも、製造業でも七五%はいわゆる小規模企業であります。小売商に至ってはもっと零細でありまして、八割が個人営業でございます。こういう層に対しての施策充実なくしては、中小企業施策そのものが欠陥があると言われても、そのとおりでございます。今後ともその面の施策充実努力いたす所存でございます。
  16. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは質問を進めます。  そこで長官、この「七〇年代の中小企業あり方中小企業政策方向について」、これがこれからのいわゆる中小企業対策中心に置かれてくるのではないか、こう思うわけです。ことしの白書を見ても、ここにあらわれている意見具申内容が相当程度盛り込まれている、こういうぐあいに感ずるわけでありますから、私ここで中小企業基本法改正という原則的な問題でありますので、ひとつ原則面長官見解あるいは次長でもいいから見解をただしてみたいと思うのです。  巷間、特にここ数年来言われていることは、中小企業問題を論ずる際、その問題の根底にあるものとして、いわゆる二重構造論がその前提にあるわけであります。私この意見具申をずっと見たわけでありますが、二、三年前というか一年ぐらい前までは、二重構造は解消された、いわゆる中小企業対策なるものの持つ意味は、ここ高度成長下における経済政策の中で大きく転換をされつつある、こういうのが一般学者ないし中小企業問題専門家の間に論ぜられてきた一つの趨勢であるように感ぜられておったわけであります。ところが、この七〇年代の中小企業あり方をしさいに見てまいりますると、この学者先生方の御意見は、結果的にいまなお格差が存在している、したがって、格差是正一つ中小企業対策問題点である、こういうぐあいに言われて、大づかみに言って結論的にそのように感ぜられるわけであります。中小企業対策を論ずる際に、政府としては、いわゆる二重構造の解消というところに力点を置くか、あるいは二重構造は解消されたということを前提にして、新しい事態に対応する中小企業対策前提にしてその対策を行なうのか、現状に照らし合わせていずれの方向にその重点を置くのか、この際ひとつ見解をお示し願いたいと思います。
  17. 莊清

    荘政府委員 依然として格差があるということを基本施策を講ずる考えでございます。生産性格差あるいは給与面での格差等数字の取り方によりまして若干改善されてきておるということも事実でございますけれども、同時に零細層のところに重点を置いてそういう格差是正状況を見ますると、これはまことに遅々たるものであるということを申さざるを得ません。そのほか、やはりこれだけ経済が国際化し、あるいは技術革新等知識集約化方向に向かう場合には、研究開発であるとか、人的能力であるとか、マーケッティング力とか、いわゆる過去の一般的な企業力設備投資中心にした企業力だけでは評価できない総合的な企業力ということがより大きな問題になってきておる時代だと存じます。そういう点から見ますと、数字ではなかなかとらえられませんけれども、全体の企業力として見たときに、それでは格差はなくなったかといわれますと、これはいなとお答え申すべきだと存じます。私どもはそういう認識に立って、やはり各般施策中小企業全体について講ずる、特にその中でも、零細企業についてはさらに一段と上のせした施策を講ずる、これが今後の施策基本的な考えであるべきだ、こう存じております。
  18. 佐野進

    佐野(進)委員 いまの問題については原則的な問題ですから、ひとつ政務次官から見解を聞いておきたいと思います。
  19. 塩川正十郎

    塩川政府委員 やはり先ほど荘長官か申しておりましたように、格差は厳然としてあることは、これは非常に残念でございますが、ございます。それと二重構造、これも違った意味の二重構造があらわれてきております。数年前でございましたら、大企業中小企業という関係における二重構造であったのでございますが、いまやそういう単純な二重構造ではなくして、労働就業者の層による二重構造というものが新しい事態として出てきております。したがって、そういうものを踏んまえて、今後の中小企業施策というものを考えていかなければならぬ、このように思っております。
  20. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、そういうことを前提にしながら、本法律案内容審議に入ってまいりたいと思いますが、そうすると長官中小企業者範囲として、この法律改正案は、一つには資本金の五千万円を一億円に引き上げることですね。それから、新たに卸売業を別に抜き出して新しく設置して、三千万円及び百人とする。いわゆる商業関係については、卸売業を新たに抜き出して、一千万円以下であったのを三千万円、五十人以下であったのを百人と、こういう層を新たにつくったわけです。そして、小売業及びサービス業については現行どおりである、こういうぐあいにこの法律範囲をきめようとしているわけであります。そういたしますと、ただ抽象的にばく然とこの法律案改定をながめてみると、結果的には五千万円の資本金を一億円にしたのだ、卸売業については、三千万円と百人に大きく範囲を広げたのだ、零細規模、小規模企業の業界の人たちに対してはそのままなのだ、そうすると、いままで長官ないし政務次官答弁したこの答弁趣旨と全く食い違った、特定の人たちのためにのみ範囲拡大をやり、この人たちに特別の条件を与えようとしている、こういうぐあいに、これは誤解ですけれども、曲解ということになるのか、みずから曲がって見ればそういうことになると思うのですが、しかし一般から見た場合は、曲がって見ようがまっすぐ見ようが、文字であらわれたものは同じなわけですから、そういうぐあいに感ずるわけです。そうすると、小規模企業、零細規模企業に対する施策が最重点であるとはいいながら、範囲拡大の中で、結果的には中堅企業、特定の層に対してのみ、範囲拡大をやる中でこの層の利益をはかった、こういうような印象が強くなるわけであります。そういうような印象が強くなるということの意味は、この七〇年代の中小企業あり方と、中小企業政策方向についてのこの定義改定については、一番最後のところに取り上げられて、きわめて弱い表現の中で幾多の条件をつけた中でその提言をしているわけです。ということは、こういうことをやるに何か時期が早いのじゃないか、何か中小企業庁は少し勇み足でこの問題に取り組んでいるのじゃないか、こういうような印象もまたなきにしもあらずだと思うわけでありますけれども、あえてこの範囲拡大をここに求めた理由について、いま少しく御説明願いたいと思うわけです。
  21. 莊清

    荘政府委員 先ほど来の御答弁と若干重複するかもしれませんが、まとめて御答弁申し上げます。  今回の五千万円から一億円の引き上げというのを例にして申し上げますと、十年前、五千万円以下の資本金企業というのは、中小企業としてやはり中小企業政策対象として保護育成すべきであるということが現在の基本法の基礎にあるわけでございます。名般の施策充実強化をはかったわけでございますが、経済成長に伴いまして、当時の五千万はいまの五千万とは異なるわけでございまして、近代化等に伴いまして、当然各企業は自己資本の充実もはからなければならないということに相なったわけでございます。ただ、経済全体が伸びておりますので、大きいものと小さいものとの格差という、政策のよって立つところの基本理念に戻って見ました場合には、かりに五千万円のものが八千万、九千万になっておりましても、数百億の大企業との格差は、先ほど申し上げましたとおり、若干改善されたにせよ、まだまだこれから本格的に努力をしなければならないという意味では、これはやはり中小企業対策の一環としての定義改定でございます。その場合に、形の上で、先生も曲解されるようなことがあってはこれは不届きであるといういまお話がございましたけれども、たとえば今国会におきましても、税法のほうで、画期的な税制改正といわれます個人事業主報酬制度の創設がやっと日の目を見たわけでございます。それから金融面でも、小規模企業の経営改善資金制度、これは財投の運用の問題でございますけれども、こういう施策を講じておる、あるいは小売商業振興法の中で申し上げましたように、零細な人たちが集まってつくる寄り合い百貨店というものについては、従来の施策を格段と強化いたしまして、八〇%までは無利子で高度化資金の融資をしょう、例はたくさんございます。その他特別小口保険の限度の若干の引き上げということも別途の措置としてお願い申し上げました。こういう施策もそれぞれ別の法体系とか、あるいは予算措置等において講じておるわけでございますけれども、決して今回のこの定義改定法案だけが答申に直結したものでは毫もございません。やはり総合的な政策の一環として私どもはこの定義も取り上げておるのでございまして、したがいまして、総合的な予算、財投、税制各般にわたって四十八年度においてもそれぞれの措置を別途講じておるという次第でございます。特にその場合に、小規模零細企業対策重点を置いた施策を四十八年度においてはそれぞれ講じたという点を何とぞ御理解賜わりたいと存ずる次第でございます。  来年度以降の政策検討におきましても、引き続きこの路線を堅持いたしまして、一そうの充実につとめる所存でございます。
  22. 佐野進

    佐野(進)委員 ちょっと長官答弁が、私の聞こうとする面について若干のズレがあるわけです。私がいまお聞きした問題は、この中小企業者範囲を新たに五千万から一億にした、それから卸売業を取り出して三千万と百人にした、それから小売業はそのままにした、こういうことですから、結果的に言うならば、力のある者の層を新しく抜き出して特にその人たちに力をつけてやろう、こういうことになるのではないかと言ったわけです。いま長官から答弁があった問題については、これから質問しようとすることに関連が出てくるわけであります。そうであるのかないのかということを聞いておかないと、これからの質問にならないわけです。だから、私の言うことは、この範囲拡大というのは、先ほどから質問しているとおり、力のある人にさらに力をつけてやろうとするような、そういう印象が強いのである。特にこの表現の中で五千万を一億にした、これはあとからいろいろ問題が出てきますよ。五千万から一億にしたということの持つ意味が、単なる一億にしたということだけでなく、その内容に持つ意味が非常に大きいわけでありますが、そういうことは力のある人にさらに力をつけてやろうとするために範囲拡大をやったのではないか、それはいまの時期の中では少し早いのではないか、こういうことをわれわれは危惧するのだけれども長官はこの点についてどうなのか。これをお聞きしたわけです。
  23. 莊清

    荘政府委員 四十八年度施策を例に先ほど申し上げましたように、私どもは、この際、小規模対策に明らかに重点を置いた政策充実をはかっておる次第でございます。力の強い人だけを抜き出して、そこに特別の措置を講ずるというふうな具体的な施策というものは特段に実はございません。十年前の資本金五千万円というものを今後も堅持していくというふうにいたしますと、これは明らかに当該業種におきまして格差があり、一般的な中小企業対策対象として見ていくべき中小企業の中では、比較的おにいさん格のものが中小企業政策範囲から完全に落ちてしまう、これは中小企業政策としては、ある意味では後退になる、これを調整しなければならないという意味修正でございまして、私どもは、この際、資本金を二億、三億、五億にするとか、そういうことは毛頭考えておらないのでございます。
  24. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、いまの答弁でわかりましたが、そのように言われても、結果的に各方面から中小企業基本法の一部改正の問題が提起されるや、いわゆる上位シフトになるのではないか、あるいは結果的に小規模対策というものがおろそかになるのではないか、こういうことが非常に心配されているわけです。また、事実上あなたが言われたとおり、十年前にきめられた五千万は今日の経済変動の中で一億以上に該当する、したがって、中小企業対策の落ちこぼれを防ぐために定義改定が必要だ、こういうぐあいに言われてみても、実態上においては中小企業者の層が厚くなっているとか、あるいはまたその中におけるところの中小企業者政府施策を受け入れようとする人たちの数が多くなっているとか、こういうような条件の中で、結果的に上位の中堅どころの人たち、いわゆる新しく拡大された層の人たちは、中小企業対策の大部分の恩恵を享受して、小さな層の人たちがますますこの恩恵を受けることのでき得ない状態の中で埋没してしまう。それはあってはいけないからといってあなたは先ほど来いろいろ御説明になっておられるわけだけれども、それらのことについてもあとで質問申し上げますが、結果的にいまなおそれらのことを理解しながら、それらを利用している層というものはきわめて少ないわけです。少ないと断定しているわけです。各種調査はそのように説明されているわけであります。したがって、そうした場合、結局単に小規模対策をやるのですよということだけでなく、いわゆる上位シフトを防止するための具体的な対策というものは何があるのかということが明らかになっていなければならないと思うのです。たとえば、予算については、これは上位シフト、いわゆる上位の層に対してこれだけの予算が吸収される可能性がある、したがって、これだけの吸収される可能性に対してこれだけの金額を用意しましたとか、あるいはこれだけの指導なら指導という問題についてこれだけの経費がかかります、事務的な費用がかかります、そうしたらこれだけの小規模零細に対しては対策を立てました、その裏打ちがなければ単なることば表現では通らなくなっていく、その心配は解消されない、こうなるわけであります。したがって、いまあなたが言われたような幾つかの員体的な例がございますけれども、それらを含めながら上位シフトに対する防止の方法がどう講ぜられようとしておるのか、この際、もう一度ひとつ御答弁を願いたいと思うのであります。
  25. 莊清

    荘政府委員 中小企業政策中小企業を一般に対象にしておるわけでありまして、その中で特に小規模零細層を意識いたしまして、そういうような小規模な人たちだけを対象とするという施策がいろいろございます。経営改善指導事業とか、あるいは特別小口保険、無担保保険あるいは国民金融公庫からの保険あるいは中小企業高度化資金の運用についての配慮等々、いろいろな点が具体的にございます。それ以外のたとえば金融で申しますれば中小企業公庫からの融資というふうなものは、規模の大小にかかわらず、中小企業全体に対しての融資が行なわれるということになっております。ただ、中小公庫の運用でも、実際には従業員百人以下の事業者に対する融資の件数というものが七割くらいを現に占めておるというようなことでございまして、そういう中小公庫の設備融資というふうなきわめて一般的な施策考えられるものにつきましては、運用におきましては十分に配慮がなされておるということでございます。また、今回の定義改定以前から、定義には該当しておっても、大資本の実質的な支配下にあるような中小企業は、たまたま資本金従業員が少なくてもこれには融資をしないという運用を確立いたしておりまして、そういう問題は一件もなかろうというふうに考えております。今後も金融情勢も変わってきておりますし、定義引き上げもたまたま行なわれようとすれば、これは運用についてはさらに一段と配慮をせよということを関係機関にも指示もしておるという状況でございます。信用保険制度をとりましても、昨今では、無担保保険とか、あるいは特別小口保険等を重点に置きましての限度の引き上げとか、あるいは料率の引き下げというふうなことにつとめておるわけでございまして、中小公庫からの融資等ごく一部のものにつきましては、運用上はっきりと個別排除につとめろという立ち入った指導までやっておりますが、その他の面におきましては、主として制度の、システムのつくり方そのものについては、この制度は零細企業のみに適用するのだというふうな制度を別立てでつくりまして、それの拡充につとめておるということでございます。
  26. 佐野進

    佐野(進)委員 それではいわゆる上位シフトに対する防止の対策は、いまの説明ではあまり私はぴんとこないのですが、時間もだいぶたちますから、長官も私の聞いている意味が全くそのとおり理解されていないということがありますけれども、私は逐次これから質問しますので、質問している意味を的確に把握した上で御答弁をしていただきたいと思うのです。  そこでいま私の言っているのは、結果的に上位の人たちのある一定の力を持つ人たち施策が片寄り過ぎていく危険性がある。それを防ぐために上位に対してどのような歯どめをかけるのか。いわゆる下層と言ってはことば意味が違いますけれども、小規模事業対策を重視するということだけの意味ではなくして、歯どめをかける姿勢があるのかないのかということを聞いているわけです。もし歯どめがかからないならば、いわゆる小規模企業に対してもう少し大幅な対策予算の面においても指導の面においても、あらゆる部面において裏打ちした上でこの定義改定をしなければ意味はありませんよ、こういうことを強く主張しておるわけです。このことをよく理解されてこれからの答弁にも当たってもらいたいと思うのです。  そこで、私は結果的に上位シフトになる危険性が非常に大きい、したがって、そうでなくしてもらいたい、あるならあるでもう少し大幅にひとつ予算を増額するなり、指導体制を強化するなりの形の中で、いわゆる変則的な状況にならないような中小企業対策をひとつ行なってもらいたいということを強く要望するわけでありますが、いま長官答弁された中で具体的な例が一つあるわけです。やるやると言っていながらなかなかうまくやっていない例があるわけです。たとえば小規模経営改善資金融資制度です。これは今年度予算でも通り、それぞれの対策の中で非常に目玉とも称すべき中小企業対策として通産省が宣伝をしている制度なのですが、この制度がいまだ具体的に、何月何日から、どのような方法において、どのようにこれを実施する、こういうようなことが明らかにされていないわけです。これはどういう理由で明らかにされていないのか。やります、やりますと言っても、ことばだけでやりますという形だけでは、どうにもならないわけです。したがって、やっていない理由をひとつ明らかにしてもらいたいし、この小規模経営改善資金の融資制度の運用について、私はこの前の一般質問の際でも大臣質問しておるわけでございますが、結果的に民間の指導層、これは商工会議所を通じてこの制度の充実をはかっていくという形の中で、若干無理があるやにも聞いておるわけでございますが、そういう点について、いま少しく前進した取り組みの中で、これらの活用をはかるべきではないか、こう考えるわけですが、それらの点について、この際、お聞きしておきたいと思うのです。
  27. 莊清

    荘政府委員 今年度の経営改善資金融資ワクが三百億でございます。これは正直に申し上げますけれども、これらの多数の零細企業層に対する特別の融資制度といたしましては、初年度ではございますけれども、きわめて不十分なワクであると考えております。初年度でございますので、これの実施要領等につきまして、財政当局とその後打ち合わせを進めておるわけでございますが、まだ最終的な結論に至ってはおりません。そういう点が一つございます。ただし、これは日ならずして最後の詰めが終わる予定でございます。  それから第二の問題といたしまして、おくれてきた一つ理由でございますが、経営改善指導員の増員ということが基本的に大切な前提になるわけでございますが、特に大都市におきましては非常に不足でございます。予算があいにく七月からの予算ということになっておりますために、現在、各会議所、商工会で採用に入っておられるわけでございますが、御案内のとおり、経営改善指導員は、全部新規に採用した方は、中小企業振興事業団で一カ月でございましたか、基礎的な研修を全部行なった上で配置につけるということにいたしております。今回採用する方も、さっそくこの重要な融資業務に携わっていただくわけでございますし、大都会に重点的に配置も考えておりますので、八月一ぱいはどうしても訓練をしなければならないだろうということもございます。そういうことがございまして、なるべく早くと考えておりますので、九月中にはこの融資制度が実際に動き出すように、いま人の面と制度の面の両方から準備を急いでおるわけでございます。  なお、経営改善指導員は五千人強でございますが、これは至って手不足でございますので、来年度以降もこれの大幅な人員の充実につとめなければならないことはもちろんでございますけれども、他方同じくやはり経営指導の一端をになっていただくという意味で、大きな都市におきましては、経営改善普及員制度をとっておりまして、商店街でございますと、そこの組合の責任者のような方に、指導員ではございませんけれども、振興員というふうなことで、別途会議所から委嘱をし、その資金は国と県でまた補助しておるというような制度がございます。こういう人たちも大いに活用につとめる、充実にもつとめるということをして、貸し付け事務等もなるべく国民金融公庫と会議所との連携を常時密接にとるようにいたしまして、スピーディーな処理をはかるというふうにして、全体の効率をあげるようにいたしたい、今後大いに努力をいたしたいと思います。
  28. 佐野進

    佐野(進)委員 したがって、この制度そのものは、今年度は初年度で三百億ですが、制度の持つ意味は非常に大きいわけでありますから、結果的に来年度予算においてもこの予算の伸びが見られる。そうなりますと、いま長官答弁にあったように、いまでもその取り扱う対象人員がきわめて求めにくい状況にあるわけです。そこで、中小企業基本法に基づいて昭和三十八年に制定された中小企業指導法の中で、これらの問題に関する取り扱いについて第六条に定める方々の一定の活用、こういうような活用の中でそれぞれの処理をする。いわゆる通産大臣の登録に基づく一定の有資格者をそれぞれ活用する等、現に資格を有しない人たちに対して一定の講習をする、講習に基づいて資格を与える、それに一定の生活条件を確保する、それに対してその仕事をなさしめる、こういうような形の中でいまなお発足がおそくなっている。こういう説明がなされているわけでありますけれども、それだけではなくして、現有する中小企業指導法に基づくところの条件に当てはまり、かつその仕事をなし得る状態にある人たちを活用する等も、今日きわめて重要な課題の一つではないか、私はそのようにも考えるわけですが、これらの考え方について、ひとつお示しを願いたいと思うのです。
  29. 莊清

    荘政府委員 御指摘のように、中小企業に対する指導体制は、公のベースと申しますか、各県の総合指導所を通ずる線と、それから会議所、商工会等、いわゆる民間の公的な指導機関を通ずる体制と、大まかにいって二本あるわけでございますが、前者の県の指導体制と申しますのは、現在特に重点を置いてやっておりますのが公害関係の技術指導でございますとか、あるいは、ドル・ショックを受けた産地についての産地ぐるみの構造改善の大きな指導というふうな点が、ことのほか重要になってまいっております。商工会とか会議所のほうでは、そういう意味の産地ぐるみ全部診断をし、指導する、あるいは卸売団地であるとか工場団地をつくるときに、その計画内容を事前に詳細に診断、指導するという式のことは、なかなかこれは行なえませんので、個別の零細企業の方にしょっちゅうはだで接しまして、帳簿のつけ方から、仕入れのしかたから、陳列のしかたまで、スキンシップを重視したような指導をしてあげる。これがまた零細企業にとっては非常に大切なことでございまして、そういうふうな運用もいたしておりますので、民間ベースのそういう会議所、商工会の経営改善普及事業が、いままでのような指導のしっぱなし、相談に乗りっぱなしではいけないということで、国民公庫への推薦をしていくということをしたわけでございます。  御指摘の点は、私どもは今後もよく御趣旨を体しまして、指導体制の全体の充実、特に大都会ではそれが至って脆弱であるという点を十分に念頭に置きまして、よく検討さしていただきたいと思います。
  30. 佐野進

    佐野(進)委員 具体的な例の、いまの小規模経営改善資金制度については至急発足させるとともに、予算充実について格段の御努力を願いたいと思います。  そこで、次へ進みます。同じ問題ですが、これは簡単な御答弁でよろしいと思うのです。  いまのは個人の問題、いわゆる個人企業者というか小規模企業者に対する問題として取り上げたわけでございますが、そのほか、今回の法律改正になることによって、上位規模企業が、これは協同組合関係関係するわけですが、中小企業対策に該当する協同組合として上位の、いわゆる五千万以上の規模を持つ中小企業者が協同組合に加入することによって一定の利益を受けることができるようになるわけであります。そうなりますると、そういう上位規模企業人たちが協同組合に加入することによって、結果的に小規模企業の組合員や、あるいはそのことによって協同組合の中で恩恵を受けているところの消費者というものが、その一定の規模の人たちが新規加入することによって圧迫をさせられ、利益がそこなわれる、こういう心配が必然的に出てくるわけでございますが、この協同組合法関係の中で、それらの歯どめというものはどのような措置をとっておられるか、この点についてひとつ御説明を願いたいと思うのです。
  31. 莊清

    荘政府委員 まず、組合自体の内部的な運営の適正化をはかるためでございますが、御案内のとおり、一人一票の原則というのが組合原則でございまして、これは組合法にも明記してございます。  それから、組合の対外的な活動と申しますか、これが同時に適正でなければならないわけでございまして、組合法の第百七条で、百人以上の事業者につきましてはまた特別の規定がございまして、公取委員会での「排除措置」というものも念のために整備されておるわけでございます。  法律の上ではさようになっておりまするけれども、一番大切なのは、全国にたくさんある地域別のあるいは業種別の組合に対する指導の問題でございます。これは全国中央会の系統を通じまして、組合の設立から事業に至るまでいろいろ指導をいたしておるわけでございまして、この点につきましては、御趣旨を体しまして、今後各都道府県とも密接に連携の上、組合の内部構成あるいは事業のやり方等につきまして十分に個別の指導に配慮をいたしたいと思います。
  32. 佐野進

    佐野(進)委員 配慮をいたしたいということですが、結果的には小規模の組合員や消費者の利益が圧迫されるようなことが発生するおそれがあるのかないのかということであります。配慮をするということの意味は、おそれがあるということを前提にして配慮するという意味なのか、あるいはそうではなくて、おそれはないけれどもそういう状態が起きてくる可能性について十分配慮する、こういう意味なのか、その点ひとつ明確にしていただきたいと思うのです。これは疑念ですからね。
  33. 莊清

    荘政府委員 今回の定義改定によりまして主として問題になりますのは工業の関係であろうと思いまするが、工業の関係でも約七十四万が現在の定義での施策対象でございまして、それが五百強程度ふえるということでございまするけれども、これはあくまでも定義調整でございまして、拡大ではないということは先ほど来申し上げておるとおりでございます。  ただ、数百にせよ、やはり現実に中に入ってくるものもあるわけでございます。先ほど御答弁申し上げましたような組合法上の配慮、一人一票原則とか、あるいは公正取引委員会の特殊な排除権限というふうなものは、健全な組合制度の発展をはかるという見地と、それからそれによる関連事業者、消費者等への悪影響を阻止するという公の見地から設けられておるものでございまして、従来こういう遺憾な例というのはそれほど多くはなかったのでございまするけれども定義改定のあるなしにかかわらず、私どもはやはり組合の健全な発展という見地から、その運営については、やはり関係団体あるいは都道府県、公取等とも十分連携の上、中小企業庁としてもさらに努力をしなければならないとかねがね思っておるわけでございます。  今回の定義改定で当面五百でございまして、ふえるものもあるわけでございますから、従来のそういう方針を堅持しまして、さらに一そう指導の面で――法律だけかあれはいいというものでは決してございません。数万の組合があるわけでございますから、これは各都道府県とも十分連絡の上、さらに指導に万全を期するように努力したい、こういう考えでございます。
  34. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは次へ進みます。  今回のこの定義改定の問題と直接の関係があるのかないのか、私もちょっと自信がないわけでございますけれども、しかし、いずれにせよ中小企業問題全体にとってはきわめて重要な問題でありますので、この際、質問をしておきたいと思います。  いわゆる政府の行なう中小企業対策重点は、近年、近代化促進法の関係の中で集約的にその方向は示されておる、一般的にはこういわれておるわけです。結果的に近促法に基づく構造改善事業の中で、中小企業者の力を強める中で、国際化その他あらゆる状況の変化に対応し得る中小企業対策中小企業者の育成、こういうことが議論というか問題の中心に置かれているようにわれわれは考えておるわけでございまするけれども、この近促法がいわゆる第一次、第二次とそれぞれの条件に対応しながら対策が立てられてきておるわけでございます。仄聞するところ、いわゆる第三次近促法なるものを政府は実施しようとしている、この第三次近促法なるものの内容は、結果的に言うならば、現在の内外情勢に対応した新しい構造改善制度である、こういうようにいわれておるのでございまするが、この新しい構造改善制度というものがいわゆるデザインあるいは商品の開発等知識集約型の構造改善事業ということになっている こういうぐあいにいわれておるわけでございまするが、これがどのような形の中で取り組まれているのか、この取り組みの状況について、まず最初に御説明を願いたいと思う。
  35. 原山義史

    ○原山政府委員 お答えいたします。  従来の近代化促進法の運用は、何と申しましても設備の近代化が中心でございまして、その後、構造改善というふうな取り組み方をいたしまして、集約化等により規模の利益を追求するという物的な生産面に重点を置いて運用してきたわけでございまするが、先般のドル・ショックの経験等にかんがみまして、物的生産性の向上だけではやはり生産の合理化に限界がある。企業の外部、経済の側面にも注目しなければならない。取引関係等も注目し、また内部的にも製品の開発、デザインの開発というふうないわゆる知識集約型の方向に取り組んでいかなければならないというふうな観点から、この際、新しくそちらの方面にも重点を置きまして近代化を促進しようというふうな意味合いにおきまして、今般政令を改正いたしまして、新しい側面に取り組む方向を示していきたいというふうに思った次第でございます。
  36. 佐野進

    佐野(進)委員 政令を改正し、新しい――何と言いましたか、そこの点をひとつ……。
  37. 原山義史

    ○原山政府委員 新しい事態に対応するような方向で問題と取り組みましでいきたいというふうに考えた次第でございます。
  38. 佐野進

    佐野(進)委員 新しい事態に対応する方向で問題に取り組んでいきたい、そういうことで政令の改正を行ないたい、こういうように説明をされているわけですが、そうすると、第一次、第二次の近促法の精神の中で新しい事態ということは、結局デザインとか商品の開発等の知識集約型の構造改善事業が新しい事態に対応する第三次近促法の内容というぐあいに理解していいのですか。
  39. 原山義史

    ○原山政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  40. 佐野進

    佐野(進)委員 第一次の近代化促進法を改正して規模の利益を追求するという形の中で第二次近促法が改正されたわけです。そうすると、規模の利益を追求する第二次近促法に対して、いわゆる知識集約型近促法が今回の第三次の近促法の考え方です。そうすると、第二次の規模の利益と知識集約型というものが同じ次元の中でとらえられていいものかどうか。いわゆる規模の利益というのは規模を大きくしていくことでしょう。いわゆる構造改善事業という中におけるところの第一次近促法、第二次近促法、第三次近促法と出てきますね。法律改正をしないで政令でこれを行なうということの持つ意味はどういう意味でありますか。政令をもってこのような構造改善事業の中における知識集約型、いわゆるデザイン、商品等ソフトな面におけるところのこれらのものが処置されるということが、今日の中小企業対策全体の中においてはたして妥当かどうか。これはむしろ長官、ちょっと答弁してください。
  41. 莊清

    荘政府委員 近促法はいま部長が申し上げましたように、一次、二次とそれなりの内外情勢の変化に応じて進展があったわけでございます。昭和四十四年に第五条の二というのを設けまして、構造改善事業というものを取り上げることになったわけでございます。  今回、私どもは仰せのとおり純法律的な立場からも実は検討いたしました。第五条の二の文言で、はたして私ども考えておるような知識集約化事業というものを本法の施策として取り入れるかどうかという点についての検討でございますが、内閣法制局の御意見も聞いたわけでございます。     〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕 第五条の二の条文をしいて修正する必要は認められないということでございましたので、法案としては解れておりませんが、先ほど御答弁がありましたように、本法の施行令の面におきまして最近これを改正いたしまして、計画のきめ方が従来はこの法律を受けたままになっておったわけでございますが、政令の中で商品の開発等、いわゆる私どもが今後重点を置いて知識集約化路線として推進したい事項をつけ加えて明示したわけでございます。  別途中小企業振興事業団の業務につきましても、これは予算面でございますが、そういう事業については八割無利子の融資を新規に行なうという措置をあわせ講じたわけでございまして、法律の上では表には出ておらない、ただし実態はいま申し上げたような仕組みで行なう、こういうことでございます。
  42. 佐野進

    佐野(進)委員 長官、近促法というものの持つ意味が非常に重要だということはあなたも認識されるわけでしょう。しかも、近促法は第一次から第二次への近促法となって、今度実質的には第三次でしょう。この法律の持つ意味を多くの中小心業者が理解し、これを活用する中で、新しい時代に対応する中小企業者としての力というか、そういうものをつけてやる、あるいは対策としてそれを発展さしていく、これが必要なのに、法制局と相談したから云々という形の中においても、これは小手先的な形の中で糊塗しようとすることは、前向きに中小企業対策をやろうとする中小企業庁としてはちょっと何か消極的じゃないですか。私はむしろこれらのものは近促法の改正案として上程し、多くの時間をかけて審議する中で、やはり全国民にこれを知らしめる形の中で中小企業対策としてやはり前進をはかるべきではないかと思うのですよ。しかし、説明されておるとそれだけの時間的余裕がございませんから、追及はこの程度でとどめますけれども、今後これらの制度を活用して、いまのたいへんむずかしい、中小企業振興事業団に云々、八割を云々、無利子を云々ということを説明するだけでもたいへんです。しかし、これらについては、十分それらの意を含めた形の中で万全を期していただかなければならない。この時間の中においてはそれ以外言いようがないのですが、これらについて、第三次近促法の持つ意味をさらに充実発展させる形の中において全力を尽くすお気持ちかどうなのかということを聞いて、次の質問に移りたいと思います。
  43. 莊清

    荘政府委員 ただいまの先生指摘の点は、私ども中小企業庁といたしましても十分頭にとどめるようにしたいと存じます。  なお、近促法は、私ども中小企業近代化を促進する上でのきわめて重要な政策手段であると考えております。百三十以上の業種、現在でも対象となっております客観情勢が非常に急激に変わってきておる。これらの対象業種についても、今後本法の運用を通じまして、近代化の進め方なり目標なり、こういうものについて通産省の全組織をあげて十分努力をしなければならぬと思いますし、また、これらの助成措置につきましても少しずつ改善にはつとめておるわけでございますけれども、御趣旨も体しまして一段と努力をいたしたいと思います。
  44. 佐野進

    佐野(進)委員 あとでまた中小企業庁については質問いたしますが、公取お見えになっておりますね。――ここで公取に質問をしてみたいと思うのであります。  それは、今度のこの法律改正の中で、御承知のとおり、下請関係一つの重要な意味を持ってくることになるわけであります。したがって、この下請関係の問題についてこれから公取に質問をしてみたいと思います。  今回の下請代金支払遅延等防止法の改正によりまして、親事業者及び下請事業者の資本金額が機械的に引き上げられることになるわけです。五千万から一億、こういうことになりますから、その関係において機械的にその対象者が引き上げられることになっていくわけであります。そうなりますと、結果的には一部の下請関係が規制の対象からはずれることになるわけですが、公取として今回の法律改正に対してこのような措置をそのまま認めたということは、公取の本来のあり方からして、私ども若干疑問を持たざるを得ないわけですが、これを容認した理由について公取の見解をお聞かせ願いたいと思います。
  45. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答え申し上げます。  確かに先生おっしゃいますように、下請事業者の範囲が五千万円から一億円に引き上げられまして、従来五千万円超一億円以下の親事業者から下請を受けておりました五千万円以下の下請事業者というものの保護がなくなる、結果的にはそういうことになるわけでございますが、下請法というのは、中小企業と大企業との取引等、取引上の力の大きな差のある場合に規制する法律でございます。これはもとは取引上の優越した地位の乱用規制、不公正取引方法から出ておる法律でございます。中小企業基本法改正されますと、資本金一千万円から一億円の事業者は同じく中小企業として取り扱われることになるわけでございまして、五千万円でしいて区分する理由はなくなったのではないかというふうに考えております。  それからもう一つ、製造委託等の取引の実態を見ますと、資本金一千万円超五千万円以下の事業者、これは資本金一億円超の事業者から受託している場合が非常に多いわけでございます。資本金が五千万円超一億円以下の事業者との下請取引というのは数において非常に少ないということでございます。また、資本金一千万円超五千万円以下の事業者と資本金五千万円超一億円以下の事業者との取引におきまして不公正な取引というものが発生する場合には――ここのところが抜けておるわけでございますが、これは独禁法の不公正取引によって規制することができるというように考えております。
  46. 佐野進

    佐野(進)委員 ぼくの聞かんとする意味は、今回の下請代金支払遅延等防止法を改正することによって、五千万であったものが――いわゆる五千万円以上はその親事業者であったわけです。それが今度は五千万円から一億までのものが、いわゆる下請事業者になるわけでしょう。中小企業範囲に入るわけですからね。一億以上の企業でなければ親事業者としての取り扱いを受けなくても済むわけです。したがって、五千万から一億の人たちは、いままで親事業者であったものが下請事業者になることになるわけですね。したがって、そのような層が存在するわけですね。これは何社くらいあるのか、おたくのほうで調査してあればここで説明してもらいたいのですが、その層がいわゆる下請業者になることによって、それ以下の層に対する、下請事業者に対して、制約から解除されるわけですね。いままでの制約から解除されるわけです。そのことによって受ける下請小規模の――それ以下の下請企業者の受けるデメリットに対して配慮することなくこのような措置を容認したのかどうかということをお聞きしているわけです。
  47. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 先ほど申し上げましたのとそう違いませんが、たとえば今回の改正によりまして資本金八千万の事業者と資本金三千万の事業者との取引はいわゆる下請取引とはならなくなるということでございます。先ほど申し上げましたように製造委託等の取引の実態を見てみますと、資本金一千万円超五千万円以下の事業者は一億円超の事業者から委託を受けているという場合が多くて、資本金五千万円超一億円以下の事業者との下請取引はきわめて少ないというふうに申し上げましたが、これを数字で申し上げますと、昭和四十七年の十二月末現在の調査でございますが、製造業に属する資本金一千万円超五千万円以下の事業者六百五十三社について調査した結果は次のとおりでございます。  資本金一億円超の事業者とだけ下請取引をしているものが三百二十四社、資本金五千万円超一億円以下の事業者とのみ下請取引をしているものが二十二社で、いま申し上げました双方の事業者と下請取引をしているものは三百七社でございます。その下請依存度というものは、資本金一億円超に対して五七%の依存、資本金五千万円超一億円以下に対しましては一六%ということになっておりまして、非常に少ないということが申されるわけでございます。
  48. 佐野進

    佐野(進)委員 そうすると、非常に少ない実態であるので、この改定によって五千万円ないし一億の層の人たちが下請事業者となることによって、五千万円以下の人たちに対するデメリントはそれほど大きくないと判断して、この法律改定を容認した、こういうぐあいに理解してよろしいわけですね。
  49. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 いまおっしゃるとおりでございます。そのほかに、先ほども申し上げましたが、資本金一千万円超五千万円以下の事業者と資本金五千万円超一億円以下の事業者の取引におきまして、かりに不公正な取引方法、いわゆる優越した地位の乱用行為が発生する場合には、これは独禁法のいわゆる優越した地位の乱用規制、一般指定の十によって規制をするというふうに考えております。     〔田中(六)委員長代理退席、左藤委員長代理着席〕
  50. 佐野進

    佐野進委員 それでは次に公取に質問を続けますが、そうすると、容認したとしても、いわゆる規模が拡大することによって、現状までの実態によってそう大きなデメリットはないし、事後措置によっても十分それを防ぎとめることができるのだ、こういうことでそれをなされたということですから、それはそれでこれからの公取の行為を見守っていきたいと思うわけですが、ただ、公取自身が答弁は比較的うまくやるのですが、その措置そのものが何かしり抜けになっているような場合も非常に――それは力関係その他いろいろありますから、私どもやむを得ないと思うのですが、しかしこの際明らかにしておかなければならぬのは、資本金額が一千万円以下の下請関係が、今度の場合においても依然として規制の対象からはずれたままであるわけですね。これについては第四十八回国会のこの委員会、いわゆる四十年五月十八日のこの委員会で、下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案に対する附帯決議として、第一項に次のようなことが書いてあるわけです。「親事業者の範囲について、引き続き検討を加え、資本の額または出資の総額が一千万円以下の法人たる事業者をもその実態に即し親事業者として規制しうるよう、速やかな措置を講ずること。」これは四十年の、いまから八年前の附帯決議なんです。ところが、これについては、今回のこの法律改正に際しても、さらにそのままに置かれているわけです。そうすると、この附帯決議は、この八年間一体何をしていたのか、附帯決議というのは委員会においてきめられたことだからそのままでいいのだということにはならぬと思うのです。やはり努力のあとが見られなければならぬ。その努力のあとが全然見られないということはたいへん遺憾だと思うのです。公取、力がないといえばそれっきりですが、しかし力は相当あるのですから、したがって、これが実現しなかった理由、なぜできないのかという理由、それをひとつここで説明していただきたいと思います。
  51. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 確かにおっしゃるとおり、昭和四十年に先生かおっしゃいましたような附帯決議が出ておりまして、現在まで八年もたっているわけでございます。その間全然検討してないということではございません。実態調査をやったり、検討はいたしておるわけでございますが、資本金一千万円以下の事業者間の取引の態様というのは非常に複雑でございまして、親事業者、下請事業者を資本金等によって一律にそこに線を引いて区分するという基準がなかなか見つけることが容易でないというようなことで、現在まで、検討はいたしておりますけれども、そのままになっている。今回の法律改正案には入れてないわけでございますが、これは引き続き検討いたしたいというふうに考えております。
  52. 佐野進

    佐野(進)委員 引き続き検討したいと言っても、八年間検討して結論が出てないのに、引き続き検討して十年検討したって結論は出ないのですよ。したがって、このときの附帯決議精神が間違っているのなら間違っている、こう言えば、間違っているということですから、本委員会としてもまたこれをどうするかということになるわけですが、間違っていないならば、引き続き検討するということの持つ意味は、私が考えるところ、その趣旨に沿ってさらに努力すれば、その解決する方法、この趣旨を生かす方法は考えられる、こういうことで引き続き努力する、こういうぐあいに答えたのかどうか、その点をひとつはっきりしておいてもらわぬと、引き続きこれで八年やってだめなのかどうかわかりませんから、この際ひとつ明快に答弁してもらいたいと思います。
  53. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 ちょっと私の言い方が不十分でございましたが、いままで実態調査をやって、八年間何をしていたかということを言われますと、これはまことに申しわけないのでございますが、やってきました結果、どうも下請取引の一千万円以下の親と子を分ける基準の引き方が非常にむずかしいということでありまして、これはまだむずかしいから今後何もしないんだということではございません。現在までの結倫としては、一千万円以下の親子関係というものは非常に複雑でございまして、むずかしいということでございまして、したがって、その附帯決議が間違っているということではございません。実態から見て、現在までのところ、非常に困難であるということでございます。
  54. 佐野進

    佐野(進)委員 時間がなくなりましたから、これ以上やり合っているわけにまいりませんが、いずれにせよ公取は、この附帯決議精神ないし下請代金支払遅延等防止法の精神を十分体して、今後この定義改定後において全力を尽くしてひとつ取り組んでもらいたい、このことを要望しておきたいと思います。  さて、私の時間はあと五分しかございませんので結論に入りたいと思います。  いままで政務次官あるいは長官等に質問を続けてきたわけでありまするが、結果的に今回のこの定義改定問題は、七〇年代における中小企業対策を行なう上において、一定の条件下において定義改定することが最も必要だという判断に基づいて提案された、こういう説明がなされたわけであります。しかし、私の立場をもってするならば、いまの質疑応答を通じてもなお解明し切れなかった多くの不満足な点が残されているわけであります。しかし、時間が来ましたので集約しなければなりませんが、当面は中小企業問題なかんずくこれからの中小企業問題の持つ意味は、日本経済にとって非常に大きなものがあるわけでありますので、この定義改定が行なわれた後においても、中小企業基本法全体に対する検討をする中で、先ほど長官が近促法の問題で答弁されたような小手先の問題として処理するのではなくして、全力で取り組む姿勢の中で対応していく、こういう形の中で中小企業問題に取り組んでいただきたいと思うわけでございます。  そこで私は、最後に一つ伺っておきたいと思うのでありまするが、このように七〇年代における中小企業の問題は、日本経済に占める役割りが非常に大きいわけでございまするし、その対策は広範かつ非常に微細にわたらなければならない条件が多々存在するわけでございます。そこで私どもは、この中小企業問題が単なる通産省の一庁として存在するのではなくして、政府施策の中における重要な柱として中小企業省を設置して、これらの問題に取り組むべきではないかということを多年にわたって提案し続け、また、各方面にわたって努力をしてきておるわけでございまするが、これについての政府のほうの反応も具体的にあらわれてきているやに私ども伺うわけであります。過日、日刊工業新聞の記事になったところによると、田中総理は、内密に、中小企業省を設置した場合どのような影響ないし状態が出るのかということについて、あるいはそれらの検討の上で中小企業省を設置すべきではないか、こう指示されているというようなことが言われているわけでございまするが、これは単に新聞記事の上にあらわれたものなのか、あるいは政府当局でそのような取り扱いをしているのか、これらについてひとつ御説明を願いたいということであります。  いま一つは、通産省は今回非常に広範な機構改革を行なったわけであります。ところが、中小企業庁は全然この機構改革の中に組み込まれていないだけでなくして、中小企業庁内部においてすら全然手をつけていない。これは一体どういうことなのか。先ほど来長官は、たいへんいろいろ各般にわたって答弁しておりまするが、積極的に新しい時代に対応する機構をつくり上げる、これは絶対必要なことではないかと思うのであります。それらをしないということの持つ意味はきわめて消極的ではないか、いわゆる中小企業庁は通産省の中において肩身を狭くしておるのじゃないか。私は大いにがんばれという期待を込めて、そんな関係者にひとつ激励をしたいと思うのであります。もう少し堂々と胸を張って、通産省内部におけるところの中小企業対策に取り組んでもらいたい。そういう角度から、今回の機構改革について手をつけられていないということについてはきわめて不満でありまするけれども、これについてひとつ見解をお示し願いたいと思います。
  55. 塩川正十郎

    塩川政府委員 お答えいたします。  最初に、中小企業省を設置するという考え方ついて政府部内でどういう意見があるのかというお尋ねでございます。この件につきましては、牛生も御指摘のとおり、長年にわたりまして中小企業省を設置すべしということが国民の声として、また政府の中にもそういう意見が非常に強くございまして、それを受けまして、過日田中総理が、こういう中小企業省設置についてどういうふうに影響があるかという点を検討してくれ、こういうことを言ったことは事実でございます。そこで、これはわが通産省におきましてもいま懸命に検討しておる段階でございますが、これは若干私見をまぜて恐縮でございますけれども、現在の段階におきましては、まず中小企業行政というものは、横割りの行政になじむものであって縦割り行政になじむものではないという考え方が実はございます。したがいまして、現在の中小企業庁がやっておりますことは、その縦割り行政の中に埋没されておる中小企業対策というものを全部横割りにかき集めてきて、そこに監督と命令権というものをもって指導していくということをやっておるのであります。  そこで、まず中小企業省を設置する前に、中小企業行政に対してどこに権限を集約していくのがいいのかというこの検討から始めなければならぬ、このように思っております。現在中小企業庁が持っております権限というものは確かに十分なものではない、これをまず強化していくことから始めなければならぬということでございまして、そういう多角的な面から現在真剣に検討いたしておる段階でございます。私たちといたしましては、最近におきます中小企業問題というものは単に経済問題だけではなくして、国民の生活に密着した非常に重要な問題になってきておりますだけに、何とかして中小企業行政の中に入れる権限の強化と機構の整備ということを考えていきたい、このように思っております。  第二番目にお尋ねがございました今回の通商産業省の設置法改正に伴っての機構改革についてでございますが、おっしゃるのは当然でございまして、私たち中小企業庁はこれでいいのかということでございます。  そこで、今回の通商産業省の機構改革のねらっております点をまず最初にちょっと申し上げますと、いままでは、通商産業省は各産業ごとに編成されてきまして、そういう産業ごとの競争力強化、体質改善、こういうものを中心にやってまいりました。しかし、いまや日本の経済というものはそれを必要とする段階ではなくして、もっと国民の生活の中における経済というものを考えなければならぬということになりまして、したがって、これからは国民のニードを中心にした機構改革に変えるべきである、こういうふうになりました。それが二十年ぶりに機構改革をする一番大きいねらいの点でございます。  そういたしました場合に、中小企業庁のあり方ということでございますが、これは現在持っております機構でもって一応は中小企業対策というものに対応できるではないかという判断に立って、一方におきまして中小企業省を設置しろというような意見も出ておったことは事実であります。そういう点をいろいろかみ合わせまして、現在の中小企業庁の機構は一応はこのまま置いて、その中で実際にやりにくいような点、不都合な点等があれば改正していかなければならぬ、こういう検討をする必要があるだろう、こういうふうに思っておるのであります。  最後にちょっと時間を二、三分いただきまして、先生が先ほど来いろいろと熱心に御質問いただきましたその中で、一番やはり釈然としない気持ちを持っておられる点があるだろうと思うのでございます。それは中小企業範囲拡大するということに伴って、いまや中小企業に対する基本的な考え方そのものを変えるべきではないだろうか、こういうことであろうと思います。それは先生のおことばで言いますと、前文と第一条をさわらずして範囲だけを変えるということに対してどうも納得できないということであろうと思います。  中小企業基本法というのは、その精神は根本においてはちっとも変わっておらない。前文と第一条は、いわば中小企業を日本の経済の中において、あるいは日本の生活の中にいかに位置づけていくかということが前文の中に書いてございまして、それを位置づけていくための目標政策目的ではなくて、目標をどうしていくかということが第一条に入れてあると思うのでございます。その位置づけと目標というのは私はやはり変わっておらないように思うのであります。  ただ、今回範囲改正をお願いいたしましたのは、先ほど来長官が申しておりますように、制定当時の昭和三十八年から比べまして、経済そのもののスケールが変わったことと、中小企業自体の体質の中にすでに相当充実した力が入ってまいりましたので、いままで育ってきた単位の大きさを変えるべきではないか、そういう気持ちで範囲改定を出したようなことでございますので、その点はひとつ重々御理解いただきたいと思います。ついては、これによって起こってまいりますところの小規模事業対策というものについては、ますますひとつ重点を置いて対策を講じなければならないことは当然でございまして、御趣旨に沿いまして一そうの精励につとめてまいりたいと思う次第でございます。
  56. 左藤恵

    左藤委員長代理 小山省二君。
  57. 小山省二

    ○小山(省)委員 今回基本法改正案を提出されました機会に、私は、所管の大臣からいろいろ大臣としての御所見を承りたいと考えまして通告をしたのでありますが、きょうはおりあしく日米経済閣僚会議があって大臣出席をされないということでございます。私は主として大臣対象としての質問考えておりましたので、いろいろ法律の中身についてはいままで各委員からそれぞれ詳細に検討がなされましたので、この基本法改正案自体が範囲改定というきわめて小範囲改正案でありますから、私どもが重ねてお尋ねを申し上げる要はないように考えるのでありますが、せっかく指名になりましたので、この機会に長官に二、三お尋ねを申しげたいと思うのであります。  今度の基本法改正は決して範囲拡大意味しないと長官は御答弁されておるわけでありますが、そういう考え方に立っての改定であろうとは思いますが、いずれにしても、その範囲拡大されることは間違いない事実であります。したがって、私は、この改正案というものが十年ぶりに提案されたということをあわせ考えました場合に、やはり中小企業対策というものに対して積極的に対策を講じようという田中内閣の意図のあらわれではなかろうかというふうに理解しておるわけであります。基本法改正という、ある意味においてはきわめて意業の深い改正案であります。特に対象を広げて、その範囲まで中小企業の各種対策のあれを及ぼそうというのでありますから、私はそういう熱意の上に立ってこの改定というものが行なわれたものだと理解しておるのでありますが、そのように受けとめて差しつかえないかどうか。
  58. 莊清

    荘政府委員 仰せのとおりでございます。
  59. 小山省二

    ○小山(省)委員 そこで、定義拡大し、その範囲を広げるということになりますと、私は従来の中小企業対策予算の中で処理するということになれば当然この対策というものは薄く、広くなるという懸念が起こるわけでありますが、本年度の予算編成にあたって、あらかじめこの定義拡大考え予算編成というものが行なわれたものかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  60. 塩川正十郎

    塩川政府委員 若干予測をいたしまして予算編成の際には臨んでおります、けれども、現在御審議いただいておる、まあ御決定いただこうと思うのでございますが、これが実現いたしまして、干して実際運用される面になりますと、あるいはそこで若干の増減が出てくるように思います。そうした場合はどうするのかということでございますか、これは補正予算でその分は必ず充当いたしたい、このように思っております。
  61. 小山省二

    ○小山(省)委員 この定義の解釈についていろいろ御質疑がなされたわけでありますが、現在は出小企業範囲というものを資本額あるいは従業員の数によって定めておるわけであります。私はこれだけで十分かと考えると、やはりこういう機会にこの中小企業者範囲を定めます中で、商業でいえば売り上げ高、工業でいえば生産高というものが多少考慮されて差しつかえないのではないかというような感じがするわけでありますが、これらを検討されたものであるか、あるいはその必要性をまだ感じておらないか、この点について長官にお尋ねいたします。
  62. 莊清

    荘政府委員 今回の中小企業政策審議会の専門委員会においても御指摘の点はいろいろ検討されたのでございます。資本金及び従業員規模以外に、たとえば売り上げ高とかあるいは利益とか賃金とかいうふうなものを追加の基準として取り入れるか、あるいは全く別の基準に切りかえてしまうかというふうな点、いろいろ御検討されたのでございますが、そういう売り上げとか利益率とか、一人当たり賃金とか、あるいは付加価値額というふうな詳細な数字を採用することにいたしますると、どうしても業種、業態別に非常に詳細にきめなければ実態に合わないという問題が実は直ちに出てまいります。かつ、景気の状況等によりまして、全く同じ中小企業でも売り上げが少し調子よく伸びたりあるいは減ったりというふうなこともございます。そういうことで非常に中小企業範囲が不安定になる、あるいはそれぞれの施策を講ずる場合に、その調査等にまた手間どるとか間違いを起こすとかいうふうな実際上の問題等も実は指摘されたわけでございます。  御指摘のように、アメリカなどでは、工業についてはもっぱら従業員数だけで、それから、商業については売り上げ高だけできめておる国も現にございます。わが国の場合には、従来からいろいろな中小企業政策を総合的に講ずる場合の一本の柱として、格差のある弱いところは中小企業として助成しようという考え方でございます。それを最も的確に、かつ、だれが見てもわかる形でとらえるのが、やはりはっきりしておる資本金、それから労働行政その他の上でもはっきりとらえられておる常時従業員というものですべてを代表させまして、それで一律に押えておけば最も簡明であり、かつ混乱もない、こういう判断でなされたわけでございます。今回も専門委員先生方でもいろいろ御検討いただいたのでございますが、とりあえず今回のところは、従来の線を踏襲するのが妥当ではないかという結論に相なりました。外国でもいろいろな例があるわけでございまして、今後とも私どもそういう点についてなお引き続き勉強をいたしたいと考えております。
  63. 小山省二

    ○小山(省)委員 中小企業は概して同族的な色彩が強いわけでありますから、したがって、公称資本を増額するということは、えてして手続上からも困難性がある関係で、主として借り入れ金に依存して、資本の増額にはなかなか踏み切りにくい、そういう特殊性を持っておるわけです。一方、人員のほうから見ると、最近かなり中小企業といえども近代化が進んで、人員をふやすというよりその内容、規模においてはかなり機械力によって生産高がふえておる、人員のほうはそれほどふえていないが、内容的には非常に生産高をあげておるというような実情で、今後も高度化や近代化が進むにつれて、いまの人的不足をそういう機械力によって補おうという傾向が強いわけですから、資本額とかあるいは従業員数のみによって中小企業範囲を判定するということについては、かなりいろいろな変化が起こる可能性があるので、もちろん従来とっておった方針そのものがどうというわけではないが、それに加えて、そうしたものを十分あわせ考えながら定義をきめていくというほうがより万全を期するのではないかというような感じを持っておりますが、今後の問題として御検討を願いたいと思うのです。  私が一番お尋ねしたかったのは、先ほど佐野君から指摘をされました、先般、田中総理が中小企業庁を省に昇格してみたらどうかというような発言をされたということで、大臣検討を約されたというようなことが新聞に出ておりました。私も関係者に確かめてみましたら、そのような発言が行なわれたことは事実だ。御承知のとおり、中小企業省を設置したいというこの考え方は、全国中小企業者の多年の要望でございまして、これがさきの佐藤内閣のときに時期尚早ということで、総理の発言もあって、運動はかなり中絶をされたような形をとっておりますが、依然として全国における中小企業団体は常にこのことの実現を強く望んでおり、要請をしておるわけでございます。したがって、たまたま総理からこのことが閣議の中に持ち出されたということは、たいへん全国の中小企業者に大きな勇気を与えておる。私は、これからこの運動はかなり盛り上がってくるのではなかろうかというふうに考えております。     〔左藤委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、この問題に対する具体的な検討について、おおよそいつごろ通産当局としてこの省昇格に対する考え方がまとまるものか、たいへんむずかしい質問のような感じがするのでありますが、ただ検討をするというだけで放任をされては困るというのが全国の中小企業者の声であります。したがって、できるだけ早く、あるいは何らかそれを検討するための特別な機関でも設けて、そして具体的に、いろいろ障害になるような問題について検討するというようなことにされるのか、単なる検討ということでは中小企業者も非常に失望を覚えますので、この点について、もう少し具体的に差しつかえなければ次官からお話を願いたいと思います。
  64. 塩川正十郎

    塩川政府委員 先生の御質問に満足な答えができるかどうかわかりませんが、とりあえず検討の段階に入ったということでございまして、その検討がいつまでに答えが出てくるのかという御質問でございますが、これは単に通商産業省だけで結論を出せるものではございませんで、内閣全体がやはりこれに動かなければならないと思います。特に通産省、大蔵省、それから労働省も関係してまいりますし、農林省も関係してまいりますし、行政管理庁、こういう多角的な検討を要する問題でございます。  そこで、さしずめ私たちといたしましては、総理から指示がございましたように、中小企業省を設置するとするならばどういう範囲に影響があるかという影響関係、これをまず洗い出してみることが大事だと思っております。それは近く作業にかかっていかなければならないと思います。しかし、これはいずれ来年度の新しい政策決定のかなめになってくると思いますので、大体その辺が一つの時期ではないかと思います。さらには、通商産業省といたしましても、たとえば中政審等の意見を聞くというような手続も必要であろうと思っております。これは御質問にお答えになるかどうかわかりませんが、その程度しか私たちとしては申し上げられませんので、御了承願いたいと思います。
  65. 小山省二

    ○小山(省)委員 決断と実行をスローガンとした田中内閣でありますから、私どもは大きくこの問題に対して期待をかけておるわけでありますが、私ども心配するのは、従来からそういう運動が行なわれておるにかかわらず、通産当局自体がきわめて消極的であったということです。ところが今度は、内閣首班の総理から検討の指示が出されたわけでありますから、当然私は大蔵当局もあるいは行管等においても、通産当局を中心としてこの問題に対する検討が本格的に進められるものと実は大きく期待しておるわけであります。確かに、いま政務次官から御答弁がありましたように、ひとり通産当局だけで解決できる問題ではございません。問題は、行管がどの程度までこの問題に対して踏み切るか、その辺も大きく問題があろうというふうに考えておりますが、いずれにしても、多年にわたる中小企業者の強い要望であった問題が、とにかく総理の一石によってかなり明るい方向に向かいつつあることは事実でありますので、私は通産当局自体もひとつこの問題については積極的に取り組んでもらいたいという考え方なんです。この問題について中小企業庁に御質問申し上げるということは、これは当然われわれとしても無理だというふうに考えておりますが、大臣を補佐する政務次官は、この問題についてたいへん理解のあることはもう定評のあるところでありますから、ぜひあなたの在任中にそういう方向に向かうような基礎固めを確立してもらいたい。強く要請をしておきたいと思います。  それで、私も実は佐野君と同じように、今度の通産省の機構改革の中で中小企業庁だけが全然対象からはずれておるのは特別な何か理由でもあるのか、あれだけの大幅な機構改革を行なうというときでありますから、当然中小企業庁の内部でもいろいろな検討がなされたものと思うし、そのなされた結果によってはかなりの機構改革が行なわれるのではなかろうかと実は考えておったのですが、一応いま御答弁を承りましたので、これ以上の御質問を申し上げる必要はないと思いますが、今度の基本法改正案を提案されるというときに、従来行なっております中小企業対策、もちろんたいへん積極的に取り組んでいただいておるわけでありますが、一口に中小企業と言って、中と小と、中堅企業零細企業とを一体にした対策というものでは何かしら十分でないような――もちろん零細企業対策、小規企業対策、それぞれあることは私もよく承知しております。しかし、この基本法改正を機会に、中堅企業をかなり取り入れるわけでありますから、そういう企業と特に保護対策を必要とする小零細企業というものとは、同じ中小企業対策といっても同一には論ぜられない、かなり違った考え方を持った対策で臨まなければならぬような気がするわけです。したがって、特にいま強く要請されておるのは小零細企業対策でありまして、今度かなり特別融資制度などが設けられて、そういう方面にもあたたかい手が差し伸べられてはおりますが、私は、小零細企業対策というものは企業別くらいに分けて、徹底した対策を講ずる必要があるような感じがするわけであります。ただ、いままでの小零細企業対策を見ますと、主として個人を対象とした対策が進んでおるが、もう少しそういう小零細企業対策というものは組織を中心として対策を進める必要性があることは、これは組合法の上からいっても私は明らかだろうと思うのです。今度の特別な融資制度の中にも、やはりもう少し組合を対象とした、たとえば企業組合であるとか小組合であるとか、こういうものが、組合によってそういう特別な融資制度の恩恵を受けられる、組織化された形の中では特別な恩恵が受けられる。個人になればそういう融資制度の恩恵を受けられるというような形では、小規模零細企業対策というものが十分その成果を発揮することはむずかしいのではないか。その対策をあわせ用いるところにやはり小規模対策の成果を期待することができるので、こういう点について、今後の中小企業対策の一環として、長官、どのようにお考えになっておるか、ひとつ御答弁いただきたい。
  66. 莊清

    荘政府委員 小規模対策重要性は全く先生指摘のとおりでございます。私どもも今後一段とこれの施策充実努力いたしたいと思いますが、中小企業対策の中で、法律上もはっきりと定義の区分けをいたしまして、二十人以下とかあるいは五人以下、二人以下というふうな定義をはっきり出しまして講じておる施策もございまするし、それからいまお話のございました経営改善資金のように、国民金融公庫という政府系の金融機関がいろいろな層に融資しておりますが、その中に特別のワクを、これは業務の運営上の問題でございますが、ワクをつくりまして、零細な人にだけ融資をする。そのための特別の財投予算のワクを用意する。法律上は特別の措置はございませんが、そういうこともあるわけでございます。私どもは、予算、財投、税制全部を通じまして、かりに法律の上に出ないものでも、実際の内容におきまして零細企業対策充実に今後努力をいたしたいと思います。  それで零細企業金融の経営改善資金融資でございますけれども、とりあえずああいう形で発足したわけでございますが、今後内容なり運用なりにつきまして、われわれひとつ実際やってみまして拡充、改善、強化ということをぜひやりたいと思います。御指摘のございました企業組合も、現在の、ことしの制度でも五人以下の方の企業組合でございましたら、当然にこれは零細企業でございますから、あの融資の対象にいたしておるわけでございます。この制度全体につきまして、今後融資ワクも条件もその他も、運営面につきましても、私ども十分な改善をはかりたい、かように考えております。
  67. 小山省二

    ○小山(省)委員 いろいろ御配慮願っておるようでございますが、私が主として長官にお尋ねしたいと思っておるのは、組織金融の中に同様な制度を設けることは可能かどうかということであります。従来のそういう特別な融資制度というのは、あくまでも個人を対象としておるわけです。したがって、せっかく組織されたものが個々で借り入れなければならぬということに、この恩恵を受けようとする場合にはなるわけです。したがって、商工中金のような組織金融を主体とする機関に同様な融資制度が設けられるということになれば、組合としてこの資金を活用することができる。たとえば、小組合のような零細な組合では、組合全体としてこの融資制度を活用することによって、小組合の運営が非常にスムーズにいくようになる、あるいは企業組合においても同様なことが期待できる、そういう組織金融の中に同様な融資制度が可能であるかどうか、また検討されておるかどうか、私はその点について長官の御所見をちょっと聞きたいと思う。
  68. 莊清

    荘政府委員 組合組織に対します系統金融は、いま商工中金が中心になって実施いたしておりますが、現在はそういう制度は特にございません。ただ、今回のドル対策融資等におきましては、商工中金から相当多額の融資を行なうわけでございますが、その場合に小規模零細な輸出業者の人及びそれの組織する産地の組合というふうなものについては、融資の運営にあたって格段の配慮をするようにという指示をしてございます。実際に運営面におきましてもそういうことが行なわれております。同様なことは中小企業金融公庫等においても現に行なっておるところでございますが、経営改善資金に準じたような、何か特利、特ワクの、特別のものを商工中金の中につくるかどうかという問題は、今後の検討課題としてひとつ勉強さしていただきたいと存じます。
  69. 小山省二

    ○小山(省)委員 ぜひひとつ私は、組織金融の中にも同様な特別な融資制度が新しく創設されることを強く期待し要請をしておきたいと思うのであります。せっかく基本法改正して新しい定義に基づく中小企業対策をこれから実行しようということでございますから、ぜひこの際思い切った積極的な中小企業対策というものをとってもらいたい。特に今回定義改正によって新しく対象になる範囲というものは、比較的中堅企業であるということに思いをいたしますとき、従来と違った小零細企業というものをよほど重点に置いた政策を用いませんと、とかく中堅企業というものはいろいろな点で条件を具備して、各種の対策の恩恵を受けやすい企業成長しておるわけであります。成長しておらないそういう企業というものが置いていかれて、成長した企業がどうしても恩恵を受けやすい現実の姿を考えると、私は思い切った発想の転換が必要のような感じがいたすわけであります。  大臣の御出席のときに、一度大臣から、来年度の中小企業対策に対する思い切った転換について構想をお聞きしたいというふうに考えておったのでありますが、きょう御出席でございませんでしたので、きわめて簡単ですが、私は以上で質問を終わらせてもらいます。
  70. 浦野幸男

    浦野委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ――――◇―――――     午後二時十一分開議
  71. 浦野幸男

    浦野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野間友一君。
  72. 野間友一

    ○野間委員 中政審の意見具申、これは昨年の八月八日付のものですが、この中に、中小企業者範囲、「施策量の確保」というところがあります。これは八三ページから八四ページにかけてですが、この中で、中小企業者範囲拡大に応じて行財政面での施策量を確保するとともに、施策が上位規模層にシフトしないように、特に小規模の企業に対する施策を質量両面で充実するよう特別に配慮すべきである、こういう記載がありますが、これは昭和四十四年にもこのような意見具申をした。昨年八月の意見具申でも同様の趣旨のことが書いてあります。  この内容は、一つは行財政面で範囲拡大した場合に相当の施策をしろということと同時に、先ほどからも同僚委員のほうから出ておりましたが、いわゆる上位シフトにならないように、とりわけ小規模の企業に対する施策、これは質量ともにふやせ、こういう指摘があるわけで、私も、この点についてはそのとおりだ、これはどうしても強化しなければならぬ、こういうように思うわけですが、この点について、これは四十四年の具申から今日まで続いておるわけですが、その間にどのような配慮がなされたか、あるいは今後どのような配慮、施策をするのか、そのあたりの具体的な方策等についてまず答弁を求めたいと思います。
  73. 莊清

    荘政府委員 御指摘の点は、中小企業政策基本に関する非常に重要な問題点であると思います。  実は今回の定義改定自体は、基本法制定以後におきます経済成長に伴う資本金規模の当然の増加等を考慮いたしましての改定でございますので、四百七十万の中小企業に対しまして、今回この改定によりまして新たに中小企業として加わってくる企業数は約四千でございます。製造業、卸業を含めまして四百七十万に対して四千でございますから、企業の数としては実はそう大きなものではございませんが、従来から小規模企業対策基本法においても特に一章を設けまして、特別な配慮をすべしということがうたわれておるにもかかわらず、とかくきわめて不十分のそしりを免れない実情でございました。そこで政府といたしましては、逐年、予算、財投、税制等におきまして施策の強化をはかり、所要法律改正等も行なってまいったわけでございまするが、特に最も重要な金融面におきましては、従来から小規模企業に対しまして設備近代化資金の半額無利子融資制度及び設備貸与制度を設けておりましたが、今回は経営改善資金貸付制度を四十八年度から別途創設いたしたわけであります。また、中小企業振興事業団を通じまする高度化資金の供給につきましても、小規模事業所の共同化につきましては、製造業の場合、所要資金の八割について無利子の融資を行なっておりましたが、今年度からは中小小売商業振興法に基づきまして、中小の中でも特に零細の小売商業の方が店舗を共同化するという場合には、製造工業の場合同様、四十八年から八割無利子の融資制度を創設したわけでございます。  また、国民金融公庫が政府系三機関の中で零細層に対します融資の中核的な役割りを果たしてまいったのでございまするが、これの資金量の拡充につとめますると同時に、一企業当たりの融資限度額というものも漸次引き上げてまいりまして、今年度におきましては一人当たり従来の三百万円から二百万円上げまして、五百万円までは国民金融公庫の各支店長限りで融資をしてよろしい、その融資は従来同様担保を必要とせず、保証人だけあればよろしいといういわゆる無担保融資でございます。この限度を引き上げておるわけでございます。  また、民間からの借り入れにつきましては特別小口保険、これは今回百万円まで引き上げを実施いたしております。  それから税の上におきましては、従来から非常に要望が強うございました個人事業主報酬制度の創設、それから同族会社の留保所得につきましての課税の一そうの緩和をはかったわけでございます。  あと、中小企業対策の中でも最もじみちな努力を要します診断指導の面でございますが、経営改善普及員の増員、従前増加の割合がなかなか鈍かったわけでございますが、四十八年度においては二百人をこえる増員を初めて実現したわけでございます。約五千人の指導員が確保できたわけでございますが、まだまだ零細企業に対しましてはこの普及員の設置が非常におくれておりますので、今後とも格段の努力をいたしたいと存じております。  また、零細企業がほとんど大部分を占めておる小売商業につきましては、先ほども若干触れましたが、今回は大型店舗法案並びに中小小売商業振興法案、これによりまして四十八年度以降中小小売商業の施策を強化することにいたしておる次第でございます。  以上、概略申し上げましたが、ただ、予算の全体の規模が、まだ中小企業関係では政府全体で八百億というふうに非常に小さな予算となっております。このほかに、もちろん減税措置でありますとか、財投資金によります融資でありますとかいうものもあるわけでございますが、一般会計の中でのウエートというのはあまりにも小さいという点は私ども率直に反省をいたしております。今後これの格段の充実努力をぜひいたしたいと思います。
  74. 野間友一

    ○野間委員 確かに予算の面で中小企業対策にどれだけ力を入れておるかということについていま答弁がありましたけれども、私もまさにそのとおりだと思うのです。いま正確に私記憶しておりませんが、たしか今年度予算十四兆二千八百億円の中での八百億円、これはパーセンテージにしますと〇・五%台だというふうに思うのです。しかも、これも不正確なんですが、昨年はたしか四百九十六億円か七億円くらいじゃなかったかと思うのです。このときにはまだ〇・六%台じゃなかったかと思うのですが、これに比べてことしの予算の中に占める中小企業対策費の割合がさらにパーセンテージとしても減っておる。これは非常に重大だと思うのです。こういうことから考えまして――これは不正確であればまた御指摘願いたいと思うのですが、私はそのように記憶しておるのです。まだまだこういう中小企業対策に対する手だてが十分なされていない。  それで、先ほどもいろいろ自己批判めいたものがありましたけれども、このいま申し上げた四十四年の意見具申、これがあったということ自体が、これはその範囲拡大する以前の問題としても、やはり小規模零細企業に対する手だてが少ない、こういう指摘が含まれている、このように考えるのです。つまり、従前から今日に至るまで一貫してやはり小規模零細企業に対する手だてがほんとうになされていないということが今日から考えましても明らかになったというふうに私は考えておりますけれども、お聞きしたいのは、それに関連して、いままで申し上げた小規模零細企業に対する手だてが足りなかった、こういうことを自己批判されるのかどうか、さらに確認を求めたいと思います。  それから、ちょっと聞き落としたのですが、この五千万円から一億円の規模拡大によって四千企業が加わってくると私は聞いたのですが、そういうことですか。
  75. 莊清

    荘政府委員 小規模事業者に対する施策は、私ども中小企業庁といたしましても、従来きわめてまだ不十分であった、これは今後格段の拡充整備を要する、かように考えております。  それから、四千企業ふえるという点でございますが、定義改定によりまして昭和四十五年の工業統計を基礎に申し上げておるわけでございますが、製造業で約五百七十、それから卸売業で三千四百程度、合わせまして約四千というものが新しく中小企業範囲に含まれてまいります。
  76. 野間友一

    ○野間委員 そういう反省の上に立っていまの具体的な手だて、施策をお聞きしたのですが、結局目新しいものはといえば小規模経営改善資金、融資の面についていえばこの程度じゃないかと思うのです。あとは、額の拡大等について御指摘ありましたけれども、そういう既存のものはさておいて、新しいものはといえばこの程度じゃないかというふうに私はいまの答弁から感じましたけれども、そのとおりで間違いないのか、それが一点であります。  それから、税制上の問題についても、いま事業主報酬の問題がありましたけれども、これは白については適用しない、この点で私は基本的にこういう差別があるということ自体がやはりおかしい、こういうふうに思うのです。  それからさらに、先ほど申し上げた中小企業対策費これは額の上ではふえておるけれども、パーセンテージの上では減っておる。しかも、この対策費の内訳は私は正確によくわかりませんが、経営指導員の増加、それに対する人件費、こういうものが主たるものではなかろうか。ですから、実質的にはパーセンテージの上でも減っておるし、さらに力の置き方についても、このような人件費に食われて結局対策そのものについての抜本的改善については、今度の予算の中で何ら見当たらない、このように思いますが、この点についていかがですか。
  77. 莊清

    荘政府委員 中小企業対策は長年逐次改善しながら講じてきておりますし、小規模事業対策も決して十分ではございませんが、長年改善強化をはかりながら今日に至っておるわけでございます。したがいまして、多くのものは従来の制度を踏まえまして、それの運用の改善あるいは規模の拡大等を行なっておるわけでございますが、四十八年度からの全くの新規のものというのは、御指摘のとおり、経営改善融資制度、それから事業主報酬制度でございます。事業主報酬制度につきましては、これは一つ企業と個人の二面性ということを前提に、税制上の技術として扱わざるを得ませんので、その間の帳簿がございませんとどうにもならないということで、運用上は青色ということになっておると私は了解いたしておりますが、個人の所得部分についてはサラリーマンと同様な扱いを個人事業者にもするということは、これは従来税の論理上全く矛盾であるというような説が相当強くて実現しなかったものを実施に踏み切ったという点におきましては、私ども中小企業に対する税制上の措置としては、これは過去の経緯をずっと考えまして、確かに画期的な措置であったというふうに考えておるわけでございます。  また、中小小売関係につきましては、従来百貨店法がございますけれども、ただそれだけで全く放置されておりましたのに対して、中小小売商業振興法を制定する、あるいは百貨店法を廃止して大手の資本対中小小売商業の調整をはかるという意味での大規模店法を制定するというところは、考え方としても新しい点であると存じます。  それから四十八年度予算約八百億でございますが、その中で経営改善指導関係は、人件費も含めましてこれは重要項目と考えて増額につとめたことは事実でございます。ただ、人件費の補助金というのは、実は八百億に対しましては決してそう大きなものではございませんで、百億以内の金額でございまして、大きな金額といたしましては、中小企業振興事業団に対しまする政府の出資金でございますとか、あるいは信用保険関係での保険公庫への政府出資金等でございます。この信用保険につきましても、これの利用者の大半は零細企業でございまして、そういう意味からも、零細企業対策というのは金融、税制、財政、すべてを通じましていろいろの面の施策が必要でございます。すべてを通じまして施策重点をここに置くということで、今後とも努力をいたしたいと考えます。
  78. 野間友一

    ○野間委員 百億程度がいまの補助金に関連する予算だという話ですが、そうすると、前年の四百九十六億でしたか七億でしたか、これは約五百億ですね。八百億からそれを引きますと三百億ということで、パーセンテージの上からも額の上から見ても、決して中小零細企業に対して手だてが十分なされておるとはいえないわけでありますから、これは来年度の予算関係になりますが、ぜひ抜本的、大幅にこの点についての予算をつけて、中小零細企業者がほんとうに成り立っていくように、これはひとつ真剣に考えるべきであるということを強く要望申し上げたいと思うのです。先ほどからのお話をいろいろ聞いておりますと、従前の施策そのものもやはり上位シフトといわれてもいたし方ないのじゃないか、このように思います。いま申し上げた中政審の指摘、ここにありますけれども、その点で今日までの施策そのものが、中小企業対策そのものに対する予算等々の施策の貧困化、とりわけその中でも上位シフトによって小規模の場合には手だてがしていない、そういうものについてお認めになるのかどうか。いかがですか。
  79. 莊清

    荘政府委員 中小企業四百七十万と申しますか、企業数では七五%程度がいわゆる小規模企業でございます。したがいまして、中小企業に対する施策というものはいろいろございますけれども、どの施策もすべて中小企業関係のないものはございません。中でも保険の一部でございますとか、あるいは小規模共済事業でございますとか、経営改善指導事業のように法律上もはっきり定義を別にいたしまして、小規模企業に対する専門の施策もあるわけでございます。それで、そうはなっておっても、結果として上位にシフトしておらないかというお尋ねだと私は存じますが、よく金融が問題になりますので、金融の例で申しますと、国民金融公庫の融資の状況でございますが、九八%程度というものは件数でも三十人未満の企業に出しております。それから中小企業金融公庫は、長期の設備資金をもう少し大きな金額で出すのでございますけれども、百人以下の企業に対する融資が七割を占めておるという状況でございます。それから同じく金融で民間からの借り入れを円滑にするための信用保険制度でございますが、基本法制定以後昭和四十年の暮れに至りまして、御案内の無担保保険制度が創設されました。これはその趣旨から申しまして、もっぱら中小企業の中でも下のほうの層を対象に運用をしておるわけでございますが、昨今一年間に保険の引き受け件数約百万件ございます。そのうちで六三%程度の件数というのは実は無担保保険が占めておるのでございます。すべて零細企業ないしそれに準じた中小企業の中でも規模の低い層が、六十何%は件数でございますけれども、保険というのを使っておるという点を御報告申し上げたいと思います。  なお、経営改善指導関係予算とかあるいは税で、先ほど申し上げました個人事業主報酬制度等でございますが、これらももっぱら小企業もしくは個人企業対象にしたものでございます。  こういうことでございまして、私どもは決して中小企業の上のほうになるべく施策を持っていこうというふうな考えは従来からも全然ございませんし、今後も予算全体の規模の拡大も大切でございますが、それにつとめると同時に、その中でも、とりわけこういう小規模零細企業に対する施策というものを充実するように注意をいたしたいと思います。  なお念のために一点だけつけ加えますと、中小企業金融公庫等におきましては長期の設備資金を貸す関係がございますが、たとえ中小企業定義に一応該当しておっても、それが大企業の子会社であるというふうな場合には、一件別の審査に上りまして、そういうものは融資の対象にしない、辞退をさせるということで従前から措置しておるところでございます。これも形式的な中小企業ということで扱わずに、実態に応じまして、いわゆる悪い意味での上位シフト、誤れる上位シフトは絶対に避けるという趣旨に出るものでございます。
  80. 野間友一

    ○野間委員 一つ一つについて批判すればいいわけですけれども、いまの時期には適切でないと思いますので質問を進めるわけですが、いずれにしても四百七十万という膨大な企業の数、その大部分が零細企業である。しかも、その企業の数に従業員、家族、そういうものを考えますと、これはかなりの数になるわけですね。正確な統計は知りませんが、おそらく二千万人を下ることはない。こういうものを前提考えますと、何といっても絶対的に税制の問題あるいは融資の問題、あらゆる点から考えまして、これは不十分のそしりを免れないということについては異論のないところだと思うのです。したがって、先ほど申し上げたように、やはり抜本的にこれらについての手だてを考え直してほしいということを重ねて要望申し上げたいと思うのです。  次に進めますけれども小規模企業対策が非常に不十分であるということの一つの例として、たとえば基本法制定の翌年になります昭和三十九年は倒産件数が非常にふえておる。ここに資料がありますが、ここ二年ほどはいわば微減というような現象を呈しておりますけれども、いずれにしても水準は高いまま今日に至っておりますね。これはよく考えてみますと、昭和三十五年、たしか池田内閣の所得倍増政策、そのあと佐藤さんの高度経済成長、こういういわゆる大企業本位の政治が始まるわけですけれども、その効果が出てきたと思われる時期から中小零細企業、特に小規模の倒産が非常にふえておる。これは統計上明らかだと思います。倒産の中でも小規模が非常に多い。ちなみに、たとえば昭和四十七年度は倒産総数が七千百三十九、このうちで負債総額百万円未満の件数が二千三百十四、百万から五百万未満か三千七百六十五、こういう統計になっておるわけですが、こういう点から見ましても圧倒的に小規模零細企業の倒産が多いということが明らかになると思うのです。さらに二度にわたるいわゆるドル・ショックあるいは円の切り上げ、フロート、こういう中で、中小企業白書の中でも、これだけが原因で四十六年度、四十七年度に百十一件の倒産があるという指摘があるわけですね。これ以外にも地場産業、これは何回も当委員会でも問題になりまして私も質問したわけですけれども、地場産業が非常に大きな打撃を受けて転廃業に追い込まれている、こういう数も非常に多いわけです。つまりこの統計に出てこないものが非常に多いわけですが、こういうことを考えますと、どのようなことが原因で倒産がふえたか。高度経済成長かあるいはドル・ショックかはともかくとして、常に経済変動でもろに被害を受けているのはこういう小規模零細企業である。しかも、これらに対する手だてが十分でないから、ほんとうに小規模にとっては救いようのないような打撃を受けておる。こういう点から見ましても、これは決して中小企業のうちの上位に手当てが多過ぎるということを意味しているわけでは毛頭ないので、大企業に対して中小企業そのものが一つの対立した立場にあるというふうに私は考えておるわけです。だから、その中で上位と下位といいますと、これは一つの内部矛盾といいますか、ミクロの矛盾があると思いますが、そういうことで、上位に片寄っておるという意味で申し上げておるわけではなくて、どちらかといえば、下部のこういう方策が少なかった、だから、もろに小規模の場合は被害をこうむるんだという指摘をしておるわけですけれども、こういう統計からしても私の指摘が正しいと思うのですが、これはどこか誤りがあるかどうか、長官、どのようにお考えですか。
  81. 莊清

    荘政府委員 基本法が三十八年に制定されましてから三十九年、四十年と急激に倒産件数がふえておるということは統計でも明確でございます。この当時の中小企業白書では、このあたりについていろいろ理由等の解析もしておるようでございますけれども一つには、三十九年から四十年にかけましての、ついに戦後初の国債発行にまで踏み切らざるを得なかった著しいデフレショックも無視できない事情だと思います。そういう際に、御指摘のように小規模零細企業というものが最も抵抗力が弱くて最初につぶれるということは、これは遺憾ながら否定し得ない事実であると存じます。  そういう意味で、中小企業対策としての直接的な助成策もさることながら、経済全体を安定的な成長のラインに極力維持いたしまして、激しいでこぼこをなくするということは、中小企業政策を進める上で、その基本前提として私ども強く反省もし、今後そのような方向経済の運営につとめなければならないと思う第一の点でございます。  そのほか、倒産件数が三十九年以降非常に大きな件数になって、高原状態で横ばいになっておる、去年、ことしあたりは鎮静しておるわけでございますが、そういうふうにふえてきたという事情としては、たとえば手形交換所が非常にふえて、そこで、把握できる倒産件数の数がどんどんふえたとか、調査員が拡充されたとかいろいろなことがあるわけであろうと思いますし、そういう記録も残っておるわけでございますが、基本といたしましては、やはり経済成長に伴って新しい企業もできるけれども、それが開業後四、五年で倒産している零細な企業というのが統計を見ましても非常に多いようでございます。そういう小さな企業が、進むべき方向を知らずに、努力してもむざんに倒産するというふうなことは、国民経済的に見ましても非常なロスでもございます。したがいまして、今後はやはり中小企業政策として、税制、金融の強化はもちろんでございますが、こういう小さな層に対しましての経営の改善指導とか情報の提供とか、きめこまかな対策を講ずるということが一こういう企業がいたずらに生まれ出て、いたずらにつぶれるということの繰り返しに終わらせないためにもきわめて必要ではないかと考える次第でございます。  なお、中小企業全体といたしましては、マクロの数字でございますが、この十年間でも数では四割くらいふえておるわけでございまして、やはり経済成長の中で農業から商工業への移動もありますし、中小企業全体としては倒産相次いで、どんどんつぶれてだけおるということではもちろんございません。数はむしろふえておるわけでございますが、その中にはやはり相当遺憾な意味での倒産があるという点については、私も先生の御指摘基本的には同感でございます。こういうことを避けるためにも施策の一そうの充実強化、指導という点に十分配慮いたしたいと考えます。
  82. 野間友一

    ○野間委員 ほんとうにことばだけではなしに、ぜひ強力な施策要望したいと思うのです。  いま鎮静に向かっておるというふうに言われましたけれども、統計によりますと、これは絶対量と申しますか絶対数がずっとふえているわけです。ふえたままでとどまっている、微減しておるということになっておりますね。たとえば三十一年から三十八年まで倒産件数が一千件台ですね。ところが、三十九年になりますと四千二百十二、それから六千百四十二、六千台から八千台、一万、四十三年がピークで、それから八千五百、九千七百、九千二百、七千百、七千、ここ二年七千ということになっておりまして、これは三十八年以前から比べますと、ずっと急上昇して、そのピークがずっと続いて、それから多少減っておるという程度で、多少減っておることから鎮静に向かっておるという指摘は必ずしも正しくない。これは三十八年よりもっと以前の状態に戻すべきである、このことを数字が何よりも明らかに物語っておる、こういうふうに考えるわけです。  四十七年度の白書によりましても、三九ページにありますが、四十七年度の中小企業の倒産件数が七千百一件、これは倒産件数の九九・五%を占めておる。しかも資本金が五百万円未満の規模の小さい企業の倒産が全体の八五・二%。だから、倒産の九九・五%、さらにその上で小規模の場合が八五・二%を占めておる。これが倒産の大きな特徴になっておるわけですね。この内訳が、商業が二千五百五十七件、製造業が千八百九十五件、建設業が千八百七十一件、サービス業その他が八百十六件、こうなっております。さらにドル・ショック倒産、これについても先ほど数字を申し上げたのでありますけれども、百十一件出ておりますね。ドル・ショックの手当てがどうであったかというようなことについて、この委員会の中でも私も指摘したわけですけれども、やはりその手当てが十分でなかったということが白書の中でも私はうかがわれるというふうに考えるわけです。  なぜこのように小規模が常にもろに被害を受けなければならぬかということについて、これは先ほどから申し上げておりますように、中小企業対策についての観点をやはり抜本的に変えていかなければならぬ。端的に申し上げると、いままでの政府施策考えてみますと、中小企業政策中心は何かといいますと、近代化あるいは構造改善、こう言って差しつかえないのじゃないか、このように私は思うわけです。私から考えますと、この近代化とかあるいは構造改善、これはまさにカッコづきのものである。近代化施策こそが上に厚く下に薄い、この典型でないかというふうに私は考えざるを得ないと思うのです。ただでさえ上に厚くなりやすいものを、一そうこういうことでもって助長するのじゃないか。  一つの例をあげますと、これは近代化促進計画なんですが、第一次の近促の例の中で、レンズあるいは双眼鏡の業者、この場合レンズとか双眼鏡の業者というものは九四%が零細企業である、こういうふうにいわれております。三十九年一月に近代化の指定を受け、基本計画において従業員が三十名、月産三百万以上、これを目標にする、こういうことがいわれたわけですね。「七〇年代の日本の中小企業」という市川弘勝という人が編著になっております新評論から出版している書物の中にもそれが出ておりますが、結局このレンズ、双眼鏡の業者、この場合に近代化指定を受けて、そして結局融資を受けられたのはわずか三社にすぎない、こういう指摘がこの本ではなされているわけです。しかも、近代化指定とともに、それまでの生産制限あるいは販売方法の規制、この撤廃が行なわれて、結局野放しの設備の合理化が進み、その結果として、三十八年には百六十万個、この生産が四十二年になると四百万個になる、その単価は、四十二年の三月には四十一年の春の半値に下落している、たちまちそこでは十社が倒産している、こういう指摘がいま提示しました書物の中には書いてあるわけですが、そういう点からいたしましても、近代化あるいは構造改善、これを中心にとってみますと、ほんとうに恩恵にあずかると申しますか、乗っかかれるのは、この中小企業の中の一部の上層部にしかすぎないんじゃないかということがこの数字の中から出てくると思うのです。つまり、上層を育成して下層を淘汰すると私たち共産党では常に指摘をしてきたわけですが、この統計の中でも私たち考え方というのが正しかったと思いますが、こういう点についてどのようにお考えになるのか、ちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
  83. 莊清

    荘政府委員 近代化促進法は、三十八年以来十年間、多くの業種を指定いたしまして運用してまいりました。現在百三十二業種が対象になっておりますが、いろいろの業種がございますので、先ほど申しましたような景気変動の影響を非常に受けやすかった事業もございまするし、あるいは発展途上国の追い上げが逐年強くなりまして、輸出面でも近代化、合理化の努力にもかかわらず、じりじりと押されて、だんだん倒産等も出たというふうな業種も実はございます。しかしながら、これら全体を通じまして、私ども政策当局としての姿勢でございますけれども、近促法におきます一つの柱でございます融資制度、これの運用におきましては、小企業零細企業重点的に対象として取り上げるということで一貫して実はまいったわけでございます。ちなみに、国民公庫に設けられております設備の近代化融資の特利の貸しつけワクの運用でございますが、その七〇%は九人以下の事業所に運用しておるわけでございます。また、中小公庫は若干大きな設備資金を扱うわけでございまするが、それでも百人以下の事業所に対して六割を確保してまいってきております。このほか設備近代化資金あるいは事業団の工場、アパートの建設に対する融資等はもっぱら小企業ないし零細企業対象にいたしておりますし、信用保険の中での近代化保険制度におきましても、七〇%は小規模企業が現に利用しておられるという形になっておりまして、融資の面におきましては、運用面において配慮を怠らなかったつもりでございます。ただ、ただいま御指摘ございましたような面も、過去において事実としてあったろうと私は想像いたします。その事実は、私、業種ごとにつまびらかにいたしておりませんが、一般的にそうではないかと考えるのでございます。これは融資のワクそのものがそれでは十分であったかという点に結局は帰着する面がきわめて大きいと私は考えるのでございまして、今後知識集約化の推進というふうな新しい近促法の運用をもう一つ幅広く前向きにやろうという時代でもございます。私どもはこの運用の改善と並びまして、やはり施策量の拡充、予算、財投を通じましてやはりその施策の量をふやさなければ話にならないという点を十分反省して、今後努力をいたしたいと存じます。
  84. 野間友一

    ○野間委員 同様の別な例を申し上げたいと思うのですが、これは中小企業庁でつくった資料ですが、構造改善の貸し付け、中小企業金融公庫の関係ですね。高度化資金の貸し付け、これはネジ業者、この統計をもらっておるわけですが、企業者千二百十七、構改貸し付けか四十七件、高度化資金貸し付けが四件、合計いたしますとわずか五十一件。千二百十七業者の中で、五十一業者しか貸し付けを受けられない。このことは、一つは、いま指摘がありました金額の絶対数の不足、そういうこともあろうかと思いますが、いずれにしても基準がきびし過ぎてこれに合致、つまり手続の面ですでに門前払いをここでされるというのもかなりあると思いますし、また絶対額が少ないために、業者の中でも受けられる者はわずかである。私は追跡はしておりませんが、千二百十七のうちの五十一業者、おそらくこれは中小企業のうちでも上層部で、いわゆる構改などの機運に乗っかれる、そういうものだけが手を上に引っぱられる、あとは足でけられるというような現象がやはりこの数字からも出てきておると思うのです。さらに近促の貸し付け、これは四十七年度、これも中小企業庁からもらった資料ですが、別の例としては製本業ですね。これは全国で二千三百二十四企業、製本というのはほとんど小規模ですね。このうちで近促の貸し付けを受けた件数が七件、金額は、単位は書いてありませんが、一億四千六百万ですか、ほんとうに二千三百二十四業者の中でも七業者しかこれを受けることができない。こういうふうにいろんな統計の中で、やはり先ほど指摘したような製本それからネジ、それからレンズ、めがね、そういうところからしても、こういういわゆる合理化、近代化が一体何を到来さすのか。こういう統計の中から教訓を引き出して、どこにどう欠陥があったのか、この辺をきびしく追跡し、今後の施策を立てる上において、これを教訓として生かしていかなければならぬ。これがどうも欠けておるのではないか。何か伝家の宝刀のように、構改や近代化といえば、中小企業者の皆さんがバラ色の企業の未来を夢見るような、そういうことでは、ほんとうに中小企業者そのものは救われない。こういう実態を踏まえた上で、今日までの施策そのものを抜本的に考え直す必要があるのではないかというふうに私は思うわけですけれども、次官、いかがですか。
  85. 塩川正十郎

    塩川政府委員 おっしゃるように中小企業――私はあまりにも企業という面からこれを助成、育成していくという政策が多かったと思うのであります。中小企業の中で特に零細企業というのは、企業であると同時にそのものがなりわいであって生活なんであります。でございますから、それを企業として扱うところに若干の、さっき先生いろいろ御指摘されたそういう事態が起こってきておるように思います。そこで、零細企業に対する指導というものは、そういうただ金を貸してやろう、税金はまけてやろうというだけではなくて、それらがやはり強くなっていくための実質的な指導というものがやはり必要だ、このように思います。したがって、これからの中小企業対策の中で私たちが一番意を用いなければならないのは、やはり技術的にあるいはまた経営的にしっかりとした基盤がつくれる、いわゆる企業として育っていくという一つ指導と、それからなりわいとしてやっていくならば安定ということを十分考えてやる政策が必要であろうと思うのであります。安定をはかってやるということの中には、大企業との業務分野調整ということもございましょうし、また資材なり技術なりの公開をして、それを十分にそういう零細企業に潤沢に回していくようにするということも一つの方法だろう、こう思うのでありまして、金だけ、融資だけで片をつけていこうという考えは私たちとしてはいま持っておりませんし、また、これからもそういう考え方でもってやっていってはいかぬ、このように思う次第であります。
  86. 野間友一

    ○野間委員 融資の面ですね。私が申し上げたのは、融資だけではだめだというようなことではなくて、やはりいま御指摘のありました、これは企業ではなくて生業としてやっておる、なりわいとしてやっておるという表現がありましたが、そういうところにやはりもっと光を当てる、これは当然私は必要だと思うのですね。労働者、それから小規模事業、これは生業的なものですが、この移動は変転きわまりないというとあれですが、常に移動するわけですね。しかも、たとえば労働者が足を折ったとか、あるいは交通事故でからだが不自由で賃金をもらって働く労働者になり切れないとか、あるいは不幸にして主人がなくなるとか、そういう場合には何かラーメン屋でもとか、小規模な駄菓子屋とか、そういうところは常に労働者が交流するわけですね。しかも、交流する中でも一貫して特徴的なのは、こういう小規模の企業がふえているというのは事実だと思うのですね。ですから、これは社会的な実態として一つの社会の仕組みの中でこういうものはどんどんできてくるわけです。ですから、これを健全に育てるというか、確かにある意味では薬あるいは栄養を与えてこれを育てていくということも当然必要だと思うのですが、同時に、やはり全体の施策の中でこういうなりわい、生業としてやっておる企業を、いま言われた安定した一つ企業として生活をどう保障していくか、これは全体の関連の中で考えなければ、単に微視的にこれだけを見ておりまして、これは近代化だ何だということだけでは私は片づかない問題があると思うのですけれども、どうですか。
  87. 塩川正十郎

    塩川政府委員 まさに私の思っていることをずばりとおっしゃったと思うのでありまして、結局今日の中小企業の問題がむずかしいのはそこだと思うのです。でございますから、きのうの労働者はきょうは経営者となっておるというような事態が方々でございまして、また、それではそういう企業が実際に中小企業としていわゆる経済活動をやっていく単位として可能な力を持っておるのかという点になりましたら非常に問題がございます。けれども、やはりその人がそれによって生活のかてを取っていかなければいかぬ。そこがむずかしい。したがって、そういう方々の営業がいくようにするのには、私は、これは個人の私見でございますけれども、まず何としてもその仕事をこなしていかれるだけの技術指導というものが大切ではないかと思います。それと同時に、そういう新しい企業がどんどんとふえていきます場合に一番おそろしいことは、その仲間からの扱い方というもの、いわゆる同業者からの保護ということをしてやらなければ、開業したわ、直ちに競争相手と目されてそれがつぶされていくわというのを私たちはよく見ておりますので、そういうことの競争からのある程度の擁護というようなものも実際に見てやらなければいけないのではないかと思います。  それと、さらに根本的な問題になるかもわかりませんが、現在中小企業の増加のテンポがあまりにも激しいと私は思うのであります。昭和三十八年中小企業基本法制定されましたときから今日まで見ました場合に、約百万の中小企業者がふえておるわけであります。したがってまず中小企業の、そういう零細業者というものの安定をはかるためには、これからの中小企業というものの業務分野というものをやはり国の非常にグローバルな政策の中に絶えず考えていかなければ、この根本問題が片づいてこないように思うのであります。  この前も議員の諸先生方で成立さしていただきました無籍織機の登録に関するあの法律を見ましても、やはり業者の保護というものと相関連して考えてまいりました場合に、何らかのそういう規制も一つの――これは当たるか当たらぬかわかりませんが、何らかの例外として考えていかなければならないような時代になってきておるのではないか、私は実はそのように思うのであります。したがって、これからの中小企業対策考えます場合に、いままでの高度経済成長に合わして、競争力を高め、企業の体質、内容改善していくというだけが中小企業対策ではない、私はそう思いまして、中小業者が望んでおりますことは生活の安定であるということ、ここにより一そう意を用いてやっていきたい、このように思います。
  88. 野間友一

    ○野間委員 いま民主商工会というのか――私たち委員会でもよく指摘するのですが、要するに財界とか、あるいは労働者の場合には労働組合を組織して、そして団結の力でいろいろ事に当たって、そしてみずからの労働条件の維持、向上をかちとっていく、こういう一つの組織の中に仕組まれたものについてはそういう方途があるわけですが、中小企業、特に小規模の場合にはなかなかそういうものがないわけですね。しかも、政府施策がそれに当たってないというところ、やはり商工業者みずからが立ち上がらなければならぬということでできたのが民主商工会であるわけです。いまや民主商工会が、いわば自民党のいまの政治の矛盾、欠陥を救済する役割りを果たしておるわけです。これはだれが何と言いましても、やはりみずからが立ち上がって業者の権利と利益を確保する以外ないということで、業者みずからが権利意識に目ざめた結果こうなったと思うのです。しかもそれが閣議で問題になる。いつかの新聞には中曽根さんが閣議の中で発言したという囲みがありましたけれども、こういう力をつけ、また確かに業者の権利と利益を守るためにかなり大きな業績を残してきておると思うのです。ですから、やはり率直にこういう小規模零細業者の要求、意見をほんとうに聞いて、いままで再三指摘を申し上げた統計上からあらわれるそういう実態、結果を謙虚に踏まえて、ほんとうによって立つような一つ施策を強力に進めていくべきじゃないか、私はこういうふうに常日ごろ思っているのです。  さらに質問を次に進めるわけですが、中小企業白書の中で、これは五〇ページに指摘があるわけですが、中堅企業への卒業生を数多く送り出した、こういう指摘があるわけですね。私は、中堅企業への卒業生を数多く送り出したというのはオーバーな表現、自画自賛だと思うのです。これはごく一部の優良な上層企業だけがわずかに上から手を差し伸べられてひっかけられたということであって、中小企業の中でも八〇%以上が小規模零細企業といわれておりますが、この大部分は依然として、先ほどからもお話をしておりますように、不安な営業の中で苦労しておるというのが実態だと思うのです。こういう白書の書き方によりますと、何かいかにも中小企業対策施策がベターで、その指導の中で中堅企業へどんどん小規模からあるいは中小企業から卒業生を送り出しておるということになり、何となくバラ色のこういう夢を描きたくなるような指摘があるのですけれども、私はこの指摘は誤りだと思う。こういうことから考えまして、白書の中の分析すらも正確に施策あるいは実態、こういうものが反映してない、こういうふうに指摘せざるを得ないと思うのです。私たちも、この中小企業範囲を広げるということだけをとりまして、別にそのことによって反対ということじゃないわけですけれども、いずれにしても、施策そのものが根本的に変わらざる限り、たとえ範囲を広げたところで、これによってそれじゃ中小企業が救済されるかというと、決してそうじゃない。そういう点が私は非常に問題になると思う。  特に先ほども問題が出ておりました小規模企業経営改善資金制度ですが、これは先ほどの答弁にもありましたが、今回新しくできた一つ対策ということです。これ一つ例にとりましても、この程度のものです。というのは、百万あるいは運転資金の場合は五十万という限度があるわけですね。しかも、利息もあるわけです。こういうものについては、私も、また同僚の神崎委員も当委員会の中でも指摘を申し上げたのですけれども、各地方自治体の中で、すでにもっと大口のものが実施されておるわけです。     〔委員長退席、左藤委員長代理着席〕 これは、政府施策としてはおそきに失する、こういうことは言えても、これが何か鬼の首でも取ったように、こういうふうにわれわれはやったんだというような、自慢するようなものでは決してないと思うのです。ですから、これ一つをとってみましても、予算の規模が三百億、これは何といいましても、四百五十万の企業の中でこれだけのものですから、焼け石に水と申しますか、むしろいままでの実態からいきますと、これは各地方自治体の無担保、無保証、これにささえられているということで、これをもっとやはり予算拡大しなければならぬということと同時に、利息についてもやはり無利息という方向にはっきり踏み出すべきではないか、今度の中小小売振興の中では無利息というのは出てきましたけれども、とりわけこういう小規模の場合には、よって立つ社会的、経済的あるいは歴史的な要因、沿革、そういう点から考え、またほんとうに置かれた立場から考えますと、こういう小規模企業に対して、たとえば商工会議所あるいは商工会の指導、推薦とか、そういうような条件、それから限度額、それから利息、こういう点をやはり私たちは納得できないわけです。塩川次官いかがですか、こういう点で思い切って融資のワクを広げ、限度額も拡大する、さらに利息の点についても、やはり思い切って無利子というふうに踏み出す、こういう方向で前向きに検討するべき時期が、これはもう政府の中でもそういう論議がなされておるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  89. 塩川正十郎

    塩川政府委員 無利息にするというような議論、そこまではまだ政府部内では出ておりません。しかし、私は私なりに、これは画期的な中小企業、特に零細企業対策であると思っておるのであります。と申しますのは、先生先ほど御指摘のあった、いままで無担保、無保証融資というような制度を国として開いております。しかし、これは先ほども申しましたように、金融だけすればいいのだというような考え方に立った金融なんであります。いま中小企業者が求めておるのは、指導と金融というものを一体としてやってほしいという考え方が出てきておる。いままでの中小企業対策というのは、金ならば金、技術なら技術というような、単一でやっておる施策がわりあい多かったと私は思う。そのあらわれが、この現在の一連の中小企業に対する融資制度であります。  ところが、今回の経営改善の融資は、いわゆる改善指導し、その指導した中から融資という問題が当然起こってくるので融資をする、指導と融資を一体としてやっていくという考え方であります。指導いたしますのは小規模事業所の指導員でございますので、したがって、その指導員が属するところの商工会議所並びに商工会の責任者が融資の責任者になるという、こういう制度を開いていったのであります。したがって、これはことしから発足いたしますが、あくまでもテストでありまして、指導と金融の効果というものが確実につかまれていくということになれば、当然おっしゃるように、内容もそれに伴って改善し、その内容とは、すなわち融資限度を引き上げることでもあり、金利を引き下げていくということになろうかと思うのでございますが、そこへいくまでに、応は新しい試みとして指導と金融という一体の運営をやってみようということでございますので、これはひとつ刮目して待つというところでごかんべん願いたいと思うのであります。
  90. 野間友一

    ○野間委員 指導の問題なんですが、いままでの政府施策考えてみますと、先ほどからたびたび申し上げておりますように、近代化にしても、どうもやはり上からの押しつけで、もっと下からの、やはり先ほどから申し上げたように、生業としてやっておる中小規模の業者の皆さんの歴史的あるいは経済的、社会的な一つ実態の中でとらえて、ほんとうにそれぞれの業者の要求、意見、これを十分くみ上げていくように、この根本姿勢を改めない限り、たとえて言いますと、くつをつくって足をつくるというような結果にしかならないのじゃないか、こういうことを私は常々感じておるのです。商工会議所あるいは商工会の指導、これは一がいに私も否定するわけではありませんが、上からつくってさっと下へおろしていく、このくつに合わせて足をつくれということで、これはなかなかくつに合わせて足をつくることはできませんので、やはり足というもののほんとうの実態を見て、それに合わせてくつをつくる、そういうことが私は大事だと思うのです。そういう意味からしても、やはりほんとうにそういう小規模業者の意見は十分聞いていく、その上で施策考えていく、この姿勢、これが最も要求されるべきものであるし、そういうものを重視するという姿勢がない限り、今後もやはりその欠陥、誤りがそのままの状態で進んでいく、こういうふうに私は考えるわけです。  時間の関係で次に進めたいと思いますが、下請関係、これは公取の関係になるわけですけれども、私も下請代金支払遅延等防止法、これをいつかの委員会で取り上げてやったわけですが、下請企業の数は百万をこえるというふうに私は理解しておりますが、そのとおりであるのかどうか。下請代金支払遅延等防止法の運用状況についてお聞きするわけです。  いただいた資料によりますと、申告が非常に少ないわけですね。四十二年が十二件、四十七年は二件ですね。これはやはり申告制度そのものの持つ弱点、欠陥、これはたびたび指摘するとおりなんで、要するに親、下請という関係にある下請がこういう申告ができるかどうかということ、これは正直に申し上げてかなり問題があるわけです。これによって一体だれが不利益をこうむるのかということになるのです。だから、その百万をこえる下請がありながら申告が非常に少ない、ほとんど皆無と言っていいと思うのです。この申告が少ないということは、実際に下請法に基づく違反なり問題がないのかというと、そうでなくて逆なんですね。あり過ぎるほどあるわけです。私も実態をたくさん知っております。ところが、いま申し上げたようなことで申告ができない。皆無にひとしい。したがって、この法律はざる法である、中にもいろいろ問題があるわけですけれども、そういわれるわけですね。  措置の件数、これは勧告が四十五年から若干ふえておる。これは私はそのとおりだろうと思いますけれども、こういう運用の状況を見ますと、いまあるこの法律そのものが、絵にかいたもちというとあれですけれども、実際にはなかなか運用ができていない現状にあるんじゃないかと思いますが、どうなんですか。こういう統計を踏まえた上で公取としてはどのように考えられるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  91. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答え申し上げます。  下請企業の数でございますが、これは四十六年の数字でございますが、推定で四十二万八千三百ということを聞いております。  それから、確かにおっしゃるとおり、申告の件数が四十二年度十二件あったのが、四十七年度では二件と非常に少なくなってきております。下請事業者か親のことを申告すると何か不利を受けるのじゃないか、申告したために不利を及ぼしてはならないという法律規定はございますが、心理的にもなかなか申告しにくいという状況は確かにございます。したがいまして、公取としては、親事業所を調査する、これは第一次的には書面によって内容調査するわけでございますが、その調査件数は毎年ふえてきております。そのほかに、下請事業者に対して直接調査をするということもやっております。たとえば四十五年の五月、四十五年の六月、四十六年の一月、この三回にわたりまして下請事業者合計千五百四十三、これは選定をして、資本金三億円以上の親、主として機械関係でございますが、それの下請事業者千五百四十三に対しまして特別調査を実施したわけでございます。ただし、これは四十七年度はやっておりませんが、四十八年度においては約二千件をやることを予定しております。こういうものはやはり申告にかわるような実際的な効果を持つのではないかというふうに考えているわけでございます。四十二年から見ますと、四十七年度は親事業者に対する調査も八千七百五十一というふうにふえてきております。勧告の件数も五件から四十一件というふうになっておりますし、また、公取でやりました行政指導によって是正さしたものが四十七年度四百八十五件というふうになっておりまして、必ずしも下請法の運用が、いわゆるざる法で全然効果がないというふうには考えておりませんが、しかし下請法の目的は、親事業者の下請事業者に対する公正な取引を確保して下請事業者の利益の保護をはかるという点で、非常に下請中小企業者の保護にとっては大事な法律でございますので、今後とも一そう下請違法行為の規制については努力をしてまいりたい、特別調査等も随時実施をいたしまして、申告だけにたよることなく、下請取引の改善努力してまいりたいというふうに考えております。
  92. 野間友一

    ○野間委員 三条の関係でお伺いしたいのは、書面の交付義務があるわけですが、私の仄聞するところによると、一部は知りませんが、とにかくこういう書面の交付がなされておる企業はほとんどないというふうに聞いております。この調査をされた場合に、三条違反というのは実際あったのかなかったのか、どうですか。
  93. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 三条書面というのがございまして、これでは親事業者が下請を出して製造委託、修理委託を頼んだ場合に、給付内容、下請代金の額、支払い期日、支払い方法等を記載した書面を交付しなければならないということになっております。この書面の交付というのは大体においてなされておりますが、その内容に不備があるというケースがわりあいに多うございまして、たとえば四十七年度におきまして行政指導で是正をさしたもののうち、これは勧告と合わして六百二十五件でございますが、行政指導で是正をさしたもののうちで、書面の不備等を是正をさしたものが四百八十七件ということになっております。ただし、この中には値引き、早期決済等も含んでおりますので、正確に書面不備ということの数字だけではございませんが、大部分が書面不備で是正をさしておりまして、それが四百八十七件ということになっております。
  94. 野間友一

    ○野間委員 時間の関係であまり詳しく聞くわけにいかぬのですが、三条に関連してもう一点お聞きしておきたいのは、四十七年度調査件数八千七百五十一件というわけですが、この三条関係、いまお話を聞くとほとんどが書面を交付しておるというふうに聞いたわけですが、どうも実態とは違うように私は思うわけです。実際に八千七百五十一件、三条に限って調査されたわけじゃないと思いますが、この中で三条の書面の交付がないのは、あなたの調査でどのくらいあったのですか。
  95. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 ただいま数字を持っておりませんが、非常に少ないということでございます。
  96. 野間友一

    ○野間委員 どうも私はその公取の調査が正確かどうか非常に疑念を持つわけです。実際に私の知っておる範囲では、慣例に従って口頭でやっておりますから、ほとんどないわけです。これはずっと聞いたんですが、その辺の調査のいろいろな欠陥がここにそういう数字で出ているとしたら、どうもおかしいのじゃないか、やり方をもっと考えていく必要があるのじゃないかと私は思うのです。この三条関係でいいますと、これは下請業者に交付しなければならないということにだけなっておるわけですね。私は、これを改めて――もちろんこれはきびしく守らせるということが前提なんですが、いまあります振興協会、こういうところに届け出る、こういたしますと、もう調査する以前に、要するに書面の交付そのものが、義務を履行しておるのかどうかということと同時に、その内容が相当かどうかということはよくわかると思うのですね。こういうふうに当事者以外のものが、しかも、客観的な協会がこれを全部事情を把握するというような体制に置きますと、これは容易にこの内容について調査が可能であるし、またそのことがこの法律の実効性を高める一つの方法ではないかと思います。これは法改正か必要になりますが、こういう点について公取として私の意見をどのようにお考えになるのかということをまずお聞きしたい。それが一点です。  それから午前中の質疑でも問題になっておりましたけれども、発注者の制限ですね。これは一千万以上の会社に限定されておる。これをすべての発注者にこの法律を適用するというふうに改めるべきではないか。  それから調査あるいは検査の権限、これは通産省それから公取が持っておるわけですが、この点についても、やはり具体的な実態をよく知っておる都道府県、この中で権限を持つように改めるべきではないか。  さらにその下請加工賃、これは最低賃金と同じような考え方で、一日八時間の労働で、とにかく安定した経営ができるという点から考えましても、ほとんど労働者にひとしい下請企業、こういうものを保障するためにも、私は一日八時間で安定した経営という点から考えて、下請加工賃を引き上げて、そうしてこのような最低基準を設けるべきではないか、こういうようなことを思うのですが、公取、この点についてどうですか。
  97. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 まず第一の下請法第三条に規定する書面、これを下請企業振興協会に届け出る義務を課して違反行為を防ぐようにしたらどうかという御質問でございますが、下請法第三条の書面と申しますものは、発注を出すつど、下請事業者にこれは出されるものでございまして、その数量は非常に膨大なものになっているわけでございます。下請企業振興協会というのは、下請取引のあっせん、調停等を行なう機関ということになっておりまして、この協会に、違反行為の予防でございましても、取り締まり的な業務を行なわせるというのには必ずしも適さないのではないかというふうに考えております。  それから、資本金一千万円以下の法人である事業者も、その実態に即して親事業者として規制し得るようにしたらどうかという御質問でございますけれども、これは先ほども申し上げましたけれども、四十年の附帯決議以来引き続いて検討はしてまいりましたが、資本金一千万円以下の事業者間の取引の態様がきわめて複雑でございまして、親事業者、下請事業者を資本金等の一定の基準によって一律に区分をするということは容易ではないという状況でございます。  それから、親事業者の定義資本金によらないで、事実上下請取引がある場合にすべて規制できるように下請法を改正すべきではないかという御意見でございますが、結局これも規制の範囲がちょっと広がり過ぎるという点、したがいまして、効率的な法の運用がどうもむずかしくなるのではないかという点と、規制の対象となります下請関係を律する明確な基準がどうも設定しにくいという点から考えまして、そういうふうに法を改正するということにつきまして早急な実施は困難ではなかろうかという考えでございます。
  98. 野間友一

    ○野間委員 一つ抜けましたが、下請工賃の最低基準を設けるということと、それから調査、検査の権限を都道府県に与えて実態を十分把握さすようにするべきじゃないかということはあとでお答え願いたいと思うのです。  それから、いまの資本金一千万の問題ですが、私はよく思いますのは一たとえば独占企業の場合には、直請それからずっと孫請、曾孫請というように、非常にこの系列化の中で四次、五次という下請が一ぱいあるわけですね。しかも、その中で最もほんとにこの法律を厳格に適用しなければならぬと思われるところには全くこの法か妥当しないという現象があっちこっちであるわけです。これはもう否定できないと思うのですけれども、こういうほんとに必要なところにこの法の手当てができないというところに法の持つ欠陥が出てきておると思うのです。あなたのほうでは一定の基準を設けて云々と言われるが、事実上非常に複雑になる。これは私はわかると思うのです。しかし、たとえそれが複雑になったとしても、これは技術的な問題ですから解決できると思うのです。このような、要するに四次、五次の系列下の請負、この中で最も救済しなければならぬものが法の手当てを受けないというものがあっちこっちにあると私は思うのです。実は私の選挙区の和歌山でもずいぶんあるわけです。こういう欠陥を認めれるかどうか。もし法の手当てをしないとすれば、どのような方途でもってこれらのものが救済されると考えるのか、そのあたりひとつお答え願いたいと思うのです。
  99. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 先ほど申し落としましたが、都道府県に下請の規制をやらしたらどうかという御質問でございますが、なかなか都道府県におろすということについて一律の基準と申しますか、都道府県によってまたあまり運用が違ってもまずいという点がございまして、現在のところ、都道府県に対して権限をおろすということは考えておりません。いろいろこれはむずかしい。景品表示法については一部おろしておりますが、下請法については、ただいまのところ考えていないということでございます。  それから、そのあとの御質問の下請の額について幾ら以下はいけないという基準を設けたらどうかというお話でございますが、これについては、現在まだどうする、こうするという意見は持っておりません。下請法の趣旨というのは、やはり大企業のいわゆる自分より弱い企業に対する不公正取引、つまり優越した地位の乱用を規制するという内容趣旨法律でございまして、下請代金の額がこれ以上低ければ、不当減額とか買いたたきとかいう規定はございますけれども、そこに一定の基準を設けるというのは非常にむずかしいんじゃなかろうかというふうに、これは私個人の考えでございますが、思っているわけでございます。
  100. 野間友一

    ○野間委員 しかし、たとえば倒産あるいは支払い代金遅延あるいは不払い、履行遅滞だけでなくて、履行不可能になる場合が非常に多いわけです。よく新聞で出ておりますように、三次、四次のものが、要するに代金を払わないでどこかに逃げてしまう、あるいは逃げなくてもとにかく上のものが使ってしまって、あと下に流さない、こういうのが多いわけですね。これは民法の契約の中でケリをつけたり、あるいは七百十五条でしたか、とにかく使用者責任ですね、これなどである程度の救済はできるとしても、やはり問題はいま申し上げたようなことで、ほんとうに救済しなければならぬものが、なかなかこの法の手当てを受けないというところに、この法律の持つ大きな欠陥があるということは否定できないと思うのです。そういう意味において、技術上の困難はあっても、これはできると思うのです。やる気さえあれば、私はできると思うのです。私やれと言われればやりますけれども、その点を考えていかなければ、いろいろ今後問題が生じますし、また、いままでもたくさんあるわけです。だから、その点さらに再考をぜひお願いしたいと思うのです。特に都道府県に対する権限の委任の問題ですが、たとえば企業の数が非常に多い。これだけのものを把握することは中央官庁ではなかなかできにくいわけですね。しかも、実態をよく知っておるのは都道府県ということですから、いま運用がまちまちになってはというお話がありましたけれども、これは一定の基準があれば方法はあるわけですから、それを具体化するだけの話ですから、私はあなたのおっしゃるのは当たらないと思うのですね。その方法なり基準を設けて、しかも都道府県にその権限を委任して実態を把握する、しかも敏速に事の処理に当たるということが可能になると思いますので、その点については、抜本的にこの法律改正というものを考えざるを得ない時期に来ておる。これは実際いままでの運用の中で欠陥は百も承知だと思います。公取の方でも、私的に聞きますと、それはお認めになるわけですか、委員会の公的な発言の場ではなかなかお認めにならないということで、こういう方向で一ぺん慎重に検討しようというような空気があるのかないのか、最後にお聞かせ願いたいと思います。
  101. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 確かにおっしゃるとおり、下請法の運用につきましてはいろいろ問題がございます。まあ私は必ずしもこれはざる法とは思いませんけれども、運用は決して十分ではないと思いますが、私どもの公取だけでやっているのじゃございません。中小企業庁と共同してかなりの数の親事業所を調査しているわけでございますが、先生のおっしゃいますことは十分私ども考えてまいりたいというふうに思います。
  102. 野間友一

    ○野間委員 終わります。
  103. 左藤恵

    左藤委員長代理 松尾信人君。
  104. 松尾信人

    ○松尾委員 この基本法定義改定案を審議するに際しまして、いろいろ中小企業が多くの問題をかかえておる、またいろいろいままでの施策というものを反省して、そして新しい観点から出発すべきときを迎えておるであろう、このように思うのであります。でありますから、いままで中小企業庁がとってこられた中小企業に対する施策のポイント、どういうところに重点を置いて中小企業施策をやってまいったかということが一点と、いろいろ内外の経済情勢の変化なり環境の問題、公害の防除等あります。また構造変化という知識集約化への方向もございます。また、消費者利益の確保等という観点も新たにしっかり考えていかなくてはできない問題でありましょう。こういうことから、今後の中小企業施策のポイント、いままでどういうところにポイントを置いてやってきた、今後はどういうところにポイントを集めて、そして柱を立ててやっていこうとするのか、こういう点について、まず基本的な問題からお伺いしていきたい。これは長官でも、また政務次官からでもけっこうです。
  105. 莊清

    荘政府委員 中小企業基本法前文及び第一条の政策目標に明らかに定められておりますように、中小企業がわが国経済の健全な発展のためにきわめて重要な役割りをになっておる、にもかかわらず現実には大きな格差を背負っており、したがって、中小企業の自主的な努力前提に国も積極的な助成策を講じて、中小企業の健全な発展と中小企業に従事する人たちの生活水準の向上をはかるべきであろうというのが従来からの基本路線でございます。この方向に即しまして各般の金融、税制、財投上の施策を講じてきておりますことは御案内のとおりでございますが、特に重点を置いて従来つとめてまいった施策は、一つは金融上の施策でございまして、中小企業の体質の弱さ、信用力の不足から円滑な金融を受けにくいという点がございます。金融がつくかつかないかは、事業を行なう者にとってはもう死命を制する基本的な問題でございます。そこで、中小三機関等を通じまして金融の円滑化につとめるとともに、信用保険制度の充実整備につとめてきたということが従来の力点を置いてきた施策の第一点でございます。  もう一つの点は、いわゆる近代化の施策でございます。中小企業、とりわけ製造業は輸出産業が大部分でございまして、そのために従来の考え方は、設備の近代化を中心にいたしまして企業の生産性を高めるということを施策の法本に置いております。このために中小企業振興事業団の融資、その他各種の融資制度を整備してまいっております。ここにまいりまして内外の経済、社会情勢というのはただいま先生から御指摘がございましたように急激に、かつ、広範に変化してまいってきております。これらの点を考えまして今後の施策考えます場合に、私どもは特に二点に留意すべきだと存じます。  一つは、従来の線に即した施策内容の一そうの整備充実をはかる必要があるわけでございますが、その際に、とりわけ中小企業の中で大部分を占めております小規模零細層に対します施策が従来の施策の中で不十分であった点を反省いたしまして、これの格段の強化をはからなければならないという点でございます。もう一点は、近代化に関する問題でございますけれども、設備の増強とか近代化あるいは生産規模の拡大というふうな面は今後とも当然必要でございます。これは先進国もそれにつとめておりまするし、LDC諸国もその方向にございますので、わが国の中小企業といえどもその面の努力は今後一段と必要でございまするが、それだけではとうてい対処しきれない時代に入ってきておりますので、単なる設備の面だけでなくて、経営のあり方、技術の開発、マーケッティング等含めました広い意味での経営全体を近代化すると申しますか、知識集約化方向に向かわせるということが非常に大切であると存じます。そういう面の施策がまだ不十分でございますが、今後これを新規の重要施策として推進する必要がある、かように考えております。
  106. 松尾信人

    ○松尾委員 いまお答えがあったわけでありますけれども、この環境の整備の問題はいかがですか。
  107. 莊清

    荘政府委員 環境の整備の問題はもとよりきわめて重要でございます。公害対策基本法におきましても、企業の経営者というものは大中小を問わずすべて公害を発生させない責任があるということがうたわれておるわけでございます。中小企業も同様でございます。ただ、この問題につきましては、一つには、やはり技術の問題でございますし、第二には、その設備投資が利潤を生まない、あるいは売り上げを増加させないという意味で負担になるわけでございます。これはことのほか中小企業にとっては大きな負担でございますので、やはり金融面においてよほど助成を行なうということが大切でございまして、これはやはり広い意味での設備の近代化、合理化の中の一環でございますが、現在でも公害防止に関しては三機関におきましても特利の別ワク制度を設けまして融資につとめておるわけでございまして、今後その方向でさらに一そう充実をはかりたいと考えます。
  108. 松尾信人

    ○松尾委員 第一番に金融面のお話が出たわけでありますけれども、それでは、端的に聞きますけれども、この中小企業金融ですね。現在の一番新しいところで、おわかりの点でけっこうでありますけれども、要するに、中小企業の借り入れ残ですね。都銀とか地方銀行からどのくらいの割合で借りているか、政府の三機関がどのくらい出しておるか、総額は幾らで、それに対する政府の三機関というものがどのくらいになっているか、こういうことをまず聞きたい。聞いておいて、金融面ということは従来も大事にやってきたんだし、今後も力を込めてやるのだというお話でありますから、そういうことから、あわせて今後どのようにしていこうと考えておるか、あわせぬでもいいけれども、お答えください。あわせなければあとで聞きます。
  109. 莊清

    荘政府委員 中小企業に対します融資は、過去一年間の金融緩和のもとで非常に大きく伸びたわけでございます。現在残高で約四十五兆円程度だと存じます。うち、政府系の金融機関のシェアが約一割程度でございます。あと民間で中小企業金融を専門に行なっております相互銀行、信用金庫、信用組合等が三五%程度あろうと存じます。残りがいわゆる都市銀行、地方銀行、信託銀行等でございます。この中で、都市銀行が従来中小企業に対しての融資が渋かったわけでございますけれども、昨今非常に伸びております。これは中小企業が今後のわが国の経済の発展路線の中で、従来以上にきわめて重要な役割りをになうものであるという認識が金融機関に漸次浸透してきた一つのあらわれであるということがよく新聞等でも昨今報道されるようになってまいりました。このことは非常に私どもとしては注目すべきことだろうと存じます。ただ、今回の金融引き締めのもとでまたそういう金融が押えられるということになりますと、これは何にもなりませんので、今回の金融引き締めにあたりましては、民間金融機関の中小企業への引き締め直前における貸し出し比率というものを下げないようにということを大蔵当局及び日銀当局に強く要請いたしまして、この施策は当局においてもぜひさようにいたしたいということで、現在その線で指導を強化してもらっておるところでございます。  なお、政府系三機関につきましても、今後資金量の拡充をはかることは当然でございますけれども、当面の金融引き締めのもとでは、今年度の財投計画できまっておりますワクを極力繰り上げ使用いたしまして、足りなければ年末の補正で十分対処していくということを基本に現に進めつつございます。こういう施策によりまして、中小企業の資金需要の中でも正常な資金需要、つまり正常な運転資金及び近代化、省力化、合理化、公害防止その他前向きの必要不可欠な設備資金というものについては、金融引き締めのもとにおきましてもこれが円滑を欠くことのないように十分配慮いたしたいと考えております。
  110. 松尾信人

    ○松尾委員 いま四十五兆円の残ですね。うち政府三機関の分が一〇%、また民間の中小企業専門と申しますか、そういう金融機関の分が三五%、両方で四五%ですね。五五%というのが都市銀行であり、その他の地方銀行になる、こういうことであります。また、そういう五五%にもなったということは、これはいろいろいまお話がありましたけれども、むしろ向こうのほうが金が余って、いままで断わっていたのが中小企業分野にどんどん貸すようになった、むしろ政府三機関または民間のそのような中小企業金融機関のシェアというものを向こうが侵しているのではないか、おまけにやはり金利とかそういういろいろの条件も都市銀行とか地方銀行はきびしいはずであります。そういう中からでも借りていくというのは、よくよくこれは反省すべきものがあるのではなかろうかと思うのですよ。非常に私も感ずるわけでありますけれども政府三機関はなかなかきびしいですよ。そうしてやはり零細な人はこの地方銀行とかなんとかに行くわけにいかないのでございまして、そういう人の分はなかなか借りられない。そういうところを変えていきませんと、金融が緩和された場合には、そういう都市銀行等が出てくる。だんだん金融が逼迫してくると中小企業から抜け出して自分の本来のかせぎのほうへ回る。問題は緩和のときじゃなくて金回りの苦しいときでありますから、そういうときにぴしっと確保していくようにしませんといけないのではないか。ですから、この一〇%というようなワク、これは四十五兆円に対する一〇%でありますけれども、こういうものをやはりきちっと、こういうところまでひとつ助成しよう、三機関を通じてここまではやってやるのだ、特に三機関の中でも国民金融公庫等の零細な分はうんとこれは増していくのだ、こういう決意がありませんと、具体的には都市銀行のほうが伸びてみたり、こちらのほうがうまくいかなくってみたり、その間、政府の三機関がやりたいと思ってもどうもなかなかうまくいかないというような問題が残るのではないか、こういうふうに思うのですが、この点は、感じとして、また今後あるべき姿として政務次官はどのようにお考えですか。
  111. 塩川正十郎

    塩川政府委員 政府三機関からの借り入れが非常に手続上めんどうで、またむずかしいという非難はよく承ります。したがって、利用する人はこれは積極的に利用いたしますが、利用の経験のない人は近寄りがたいというような空気が流れておるように思うのであります。しかし私は、率直に申しまして、ここ数年来の三機関の貸し付け状況を見ておりますと、窓口が非常に広がりました。いままでは、要するに、かたい話のところからアプローチをして借り入れの申し込み交渉をしておりましたけれども先生も御存じだと思うのでございますが、そういり三機関へ行きましたら、フロントのところで、窓口で話し合いをして、ほんとうに一般の市中銀行の雰囲気と変わらぬような体制で融資を現在やっております。そういうことから、最近におきましては、取っつきにくいという非難は私はだんだんと解消していきつつあると思うのであります。  そこで、この資金を年間幾らというふうに固定してしまって、これだけは貸しなさいというように貸すこと自身が一つの仕事になってしまっておるような三機関の業務のあり方改正しなければならぬ。要るときには自由に出していける、要らないときには引き締めもできるというような、ある程度のアローアンスを持った運営というものをやらさないといかぬと思うのであります。ところが、この三機関は、いずれも財政投融資計画でぴしっときめられておりまして、年度間貸し付け規模幾ら、その資金の構成はこれこれというふうにきめられておる、こういうことは私は現状に即さないような感じがしてなりません。そこで、これからの三機関がほんとうに中小企業と密着していって一そうの効果をあげていこうとするならば、まず第一に資金面におきますところのアローアンスというものをやはりある程度つくっていくべきだ、このように思います。  それから次に、これはやはり私の私見でございますが、現在の融資をしております融資の対象というものをもう少し広げてやらなければいかぬのではないか。やはり設備資金に重点を置いております。これは依然として今日までとってまいりました高度経済成長の中の中小企業の体質改善構造改善、そして合理化推進というような、そういう面に重点を置いた融資であったと思うのでありまして、まだそういう残滓が残っておるように思います。いま中小企業者が資金を非常にほしがっておりますのは、長期で安定したいわゆる運転資金か実はほしいのであります。そしてまたジョイントベンチャー等がほしがっております資金、こういうようなものが実はわりあいに十分とられておらないように私は思うのでありまして、これからの三機関に私たち政策上やらせていきたいと思いますのは、そういう面における資金というものをもっと幅広く出していけるようにしたい、このように思っております。  それからなお、三機関以外のいわゆる市中銀行と三機関との関係でございますけれども、私はこれはもっと協調してもいいのではないかと思うのであります。よく見られる現象といたしまして代理貸し付け業務というのがございますが、それをいたしました片方においては貯金をとっておって、片方の資金は国家資金で貸し付けをしていくというようなことがございますけれども、それらは、ある程度特異な例でございまして、やはりこういう貸し付けにつきましてはそれぞれの民間機関におきましても国家資金としての扱いを厳重にやっておると思います。したがって、これから三機関はそういう民間金融機関と密接に提携することによって、貸し付け対象となります企業調査なり業界の状態というものを正確に把握していって、機動的に貸し付けを実施していけるように私思うのでございまして、大体そういう三点等について、今後の金融の考え方をまとめていってはと、私自身の話でございますが、思っておるような次第であります。
  112. 松尾信人

    ○松尾委員 いまのお答えで傾向はわかるのです。現実にそういうアローアンスも含めた資金ワクの問題、こういうものはがっちりしませんと、やはり来年度の財政投融資もきまるわけでありますから、そういうところでしっかりやっていかれるかどうか。いまのお話の結論になるわけですね。  もう一つは、何といってもいろいろな施策というものは中小企業庁の予算でなくてはいけませんね。いまも質疑がかわされたわけでありますけれども、どうも〇・五%というのが大体固定化されておりまして、今度総予算が伸びますると、どうかすると〇・五%というようなものがむしろ離されていくとかなんとかいうことで、どうも全体の予算のバランスからいいましても、この中小企業庁の予算というものが伸び悩んでおると思うのですよ。これは政府全体の大きな認識不足に間違いない。これはまたあとで小規模零細企業のところで申しますけれども、事業主の数からいっても従業員の数からいっても、一番大事なポイントを占めているこの中小企業でありますから、そういう金融面におけるワクのきめ方、それから中小企業庁の予算のきめ方一これは力を入れてがんばりませんと、取り残されていくことかそういう面から指摘できるのではないかと思うのです。長官もこの点は一生懸命がんばってきましたが、これはぼくは長官の悩みの種になると思うのですね。ですから、そういうことだけではありませんけれども長官の権限を強めたらいいのではないか。どうしても中小企業庁ではなくてやはり省としての力を持たせて、そして一番大事な金融面を充実させていく。また、いま中小企業には問題が非常にたくさんあります。そういうものを政府の中で、この中小企業をがっちり守っていくということからいっても、やはり組織の変更は必要であろう、そうして予算をがっちりつける、金融面をがっちり固める、これが中小企業基本の態度じゃないかと私は思うのですけれども、これは長官のほうではお答えは無理でありますから、やはり政務次官からはっきりお答えください。
  113. 塩川正十郎

    塩川政府委員 中小企業庁の予算が伸び悩んでおるという御指摘でございますが、私は、先生のおっしゃるような御懸念はそれほどでもないと思うのであります。御承知のように、それは一般の公共事業等から比べましたならば、確かに私は少ないと思います。これはなぜか、私たちもよく思うのですけれども中小企業基本法にも書いてございますように、中小企業はみずからの努力によって体質改善をし、企業の競争力をつけていけということが主体となって、それがためには、国なりあるいは地方自治体というものがそれに合わす施策をやっていくという精神でいっております。したがって、主として中小企業庁の本来の予算指導育成という面に使われておる。それと金利の補助といいますか、そういう面に使われておるのでございまして、そこでこれからの中小企業庁の予算の中に重点を置いていくのは何だろうか、いろいろ考えますと、指導の面にいろいろ使っていくべきだろうと私は思うのであります。これを単に中小企業の個々の事業に対する補助金的なもので予算がふえることは私はいかぬと思います。まず第一に、その一例として見ました場合に、小規模事業所の指導員というものがございますが、これなんかも現在一生懸命全国の指導員にやっていただいておりますが、これの待遇改善等の一例を見ましても、男子一匹これに打ち込んで使命感を持ってやっていこうというような待遇になっておらない。私は、そこらにやはり問題があるのではないかと思うのであります。したがって、こういう指導員の方々に対するものはもっと考えていい。人材をやはり集めて――いまでも人材はたくさんおいででございますが、それにふさわしい待遇をする。これが国としてまずやっていかなければならぬようなことかと思います。そういう面の予算のふくらみというものは当然考えていかなければならぬと思うのでございまして、私たちも今後ともつとめていきたいと思います。  先ほど来、松尾先生からいろいろと御質問ございました中で、私たちの今後の中小企業対策の中の重点の置き方ということがございました。いままでの、いわゆる六〇年代におきます中小企業対策の哲学というものと、七〇年代における中小企業対策というものは違う。まず第一に改めるべきは、現在、七〇年代におきます中小企業対策というものは、行政だけではなくして政治なんだということであります。そこに先ほど来、ちょっと御質問もございました中小企業省を設置しようではないかという声が上がってきておるというのは、中小企業そのものが政治であるんだということで、現在の中小企業庁というものは行政処理機関としての中小企業庁でございますので、そこらに私はやはり問題があるように思います。そうしていままでの中小企業に対します一貫した基本政策というものは、中小企業の自助努力によって体質改善構造改善というような、いわゆる企業を強くしていくというところに重点が置かれておったように思うのですが、いま中小企業者が求めておりますことは、そういうことも大事でございますけれども、自分らの安定をはかるためには、まず社会的公正と申しますか、ソシアルジャスティス、こういうものが一番ほしいのではないかと私は思うのでございます。  現在、自由競争の名のもとにおいて、大企業中小企業分野調整にもいろいろな問題が起こっております。また隠微な形で、大企業中小企業の間にそごを来たしておることも事実でございます。支払い遅延防止等の一例を見てもおわかりのように、実際は、その法律があったといたしましても、適用するという段階になって、なかなかむずかしい問題があるのであります。そして一方において、中小企業者はそういうものこそはっきりしてほしいけれども、力関係でどうにもならない、ここらにやはり自由競争の一定の限界があって、その限界を守りながら、社会公正という精神、社会の連帯感という精神でもって発展をはかっていかなければならぬ、こう思うのでございまして、まさに六〇年代と七〇年代の中小企業に対する基本的な考え方というものを変えなければいかぬ時期に来ておると思います。
  114. 松尾信人

    ○松尾委員 非常にいい答えでした。要するに、政府の行政面は、いままでそういうところに力が非常にかかっておった、これを政治面、そういう面に持っていくべきである、方向基本的な転換になりますね。いまおっしゃいましたけれども、要するに、構造改善にしても、お金を貸しましょうでは、これは乗らないわけですよ。単に金融制度では、知識集約化のほうでしっかりやりなさいといっても、そのお金を出しますからでは乗らないわけですね。また、いわゆる公害防除をやりましょうといっても、お金を貸しますからでは、乗らない面が多いのです。単なる指導とか金融面だけでは乗らない。やはりもとを助成していくという、中小企業庁としての大きな政策をがっちりそこに立てておいて、そのための予算というものがなければいけないと思うのです。ですから、いろいろおっしゃいますけれども、具体的には、そういう構造改善にしても事業転換にしても、なぜそんなにうまくいかぬのか、公害防除にしても、資金はそこにある程度備えられても、それがなぜうまくいかぬのかというようなことをいいますると、何といっても、そこに政策面の弱さ、政策面に金をうんと入れていく、そういうものが少ないのですね。ですから指導面、それは商工会議所または商工会等指導員とか経営改善員とかいうものの待遇を変えていくとおっしゃいますけれども、やっと四十八年度の予算で、いままでよりもうんと予算がつきました。それは、ぼくは非常にいいことだと思うのでありますけれども、長らくそういうことは言われておって手がつけられなかったという一つの残念さが残ります。  それからあえて聞きますけれども、いま経営はどうかという問題です。商工会議所等はなんでありますけれども中小企業に関する部門における商工会議所の予算的な制約、人員的な制約、ましてや商工会におきましては、会費を取っていますけれども、会費は月に三百円、四百円、いなかへ行きますと高くて五百円です。そして集めた金も何か一つ改善をやればそれで吹っ飛ぶということで、そしてこの職員のほうの給与の補助だとか、退職金の補助だとか、保険の補助だとか、そういうところで経常費があらかた食われてしまっておって、商工会としてはお手あげだというような実態ですね。ですから、思い切って行政指導をやるというならば、四十八年度の予算で、ある程度デザインもずっと思い切って伸ばす、そうすると零細企業がそこに浮かび上がってきて、初めてスポットライトが当たると思うのです。あなたがおっしゃったとおり、大いにこれはやらなくちゃいけない。いままでそういう面は非常に少なかったのです。  それともう一つは、いま政策面をがっちり固めていかなければできませんし、そういう面におけるデザインをどうするかとか、そういうものをどうしていくか。小回りのきく中小企業、それの特色を生かしていくためにはどうするか。いろいろな面がたくさんあろうと私は思う。政務次官もいま構想を述べられましたけれども、私もそのとおりだと思うのです。そういう意味において、いままでのそういう金融面、施策面というものをひとつよくお考えなさって、がっちりと固めていただきたいと思うのです。それには、やはり何といっても政府三機関を伸ばしていく。これはもう大銀行との協調というものも大事でありますけれども、むしろ彼らがこちらの分野を侵したり、また都合が悪ければ逃げたりというかっこうでありますから、むしろこちらががっちりと固めるということが基本的なものであろう、このように感ずるわけです。これは押し問答をしておりますと時間がたちまするので次に参りますけれども、大体考え方はどうでしょうか、基本だけでけっこうです。
  115. 塩川正十郎

    塩川政府委員 松尾先生のおっしゃっておる考え方と、私たちはもう完全に一致しておるように思います。したがいまして、これからはそういう御質問趣旨を体して、やはり基本方針を定めていくべきだと思います。
  116. 松尾信人

    ○松尾委員 では次に、この小規模零細企業に対する施策あり方であります。これもおくれておるわけでありますけれども、やはり何といっても、小規模零細企業のほうがおくれています。このおくれをどうして取り返すかということでありますけれども、どうもくどいようでありますが、中政審の意見具申の中に、政府の「主要施策の認識状況」というのがあるのです。その中で一つ指摘しておきたいと思いまするのは、従業員の規模の問題から五人以下、これはなかなか小さいほうでありますね。これが政府中小企業金融機関による中小企業に対する長期低利融資があるのだけれども、知っておるかどうかということでありますけれども、これは五七・六%が知っております。「主要施策の認識状況」の問題、これでは政府三機関の分は五七・六%が知っておる。それから信用補完制度については、五人以下の零細の方々でありますけれども、これが二〇・四%しか知らない。それから中小企業振興事業団による高度化資金等になりますと、これは五人以下が二〇・九%しか知らない。設備近代化等の資金の問題は二九・三%しか知らない。また、商工会だとか商工会議所の経営指導員による相談指導というものを三九・五%しか知らない。都道府県の中小企業総合指導所による診断指導というものも一七・九%しか知らない。小規模企業共済制度につきましては二一・五%しか知らない。このような施策があるのですけれども、どれもこれも知らないというのが二九・一%ある。こういう認識状況に関する調査というものが出ておるわけでありますけれども、こういう点から何を感じとっていかなくちゃいけないのかということです。そしてどのようにしていったらいいか、これは長官、どう思われますか。
  117. 莊清

    荘政府委員 御指摘の点は私ども日ごろから非常に残念な点だと思い、今後努力をしなければならないと考えておる点でございます。ただ、四百数十万という全国の中小企業、場所もいろいろ違います。業種、業態もさまざまでございまして、努力をいたしましても、いままでなかなか急速な効果というのは出ておりませんが、昨今におきましては、予算面でも相当努力をしておるということをまず申し上げたいと思います。  昭和四十八年度、中小企業庁で施策の広報関係のために取っております予算が六億円をちょっと切りまして五億八千四百万円でございます。昭和三十八年にはわずか三千万円でございますので、国全体の予算なり中小企業対策費の中では相当重視してこれはふやしてきておるということが事実でございます。特に、四十七年度は三億四千万でございますから、四十八年度は七割ふやしたということもございます。今後一そう努力をいたしたいと思います。  なお、このほかに小規模事業の人に対する特別のパンフレットやポスターをつくりまして、小規模事業向けに特別に配付するという予算を四十八年度一億三千万計上することになっております。  ラジオとかテレビとかパンフレット、映画、月刊誌といろいろやっておりますが、いま御指摘のございましたように、一応そういう施策の名前は知っておっても、一体どこへ行ってどうすればいいのか、どの程度の助成措置の内容かというふうなことになりますと、皆目実は知らない。聞いたけれどももう忘れたというふうな方が非常に多いようでございます。これはやはりいろんな手段を通じて広報を行なうと同時に、全国津々浦々までこれが行き渡りますように、中小企業自体の全国中央会の組織もございますし、県の指導所もございますし、商工会議所、商工会もございますので、そういう組織を使って年々施策を拡充しまして、しんぼう強く何回でも広報というものをやらなければ絶対に定着しないものだと思います。一度や二度やって相手が全部それを理解し記憶すると期待するほうが実は無理であるというのが世の中の常識であると思いますので、そういうことを念頭に置きまして、施策の運営のしかたもいろいろ反省いたしまして、今後はくふうをしながらやってまいりたいと思います。
  118. 松尾信人

    ○松尾委員 それでこういう広報宣伝が基本的に大切でありますけれども、来た人に借りやすくということと、資金的にも三機関にたっぷりある、これが両々相まってその基本にもなります。そしてまた、先ほど塩川政務次官も言われましたけれども、この政府三機関のほうはいま窓口も非常に広がり、よく指導しております。そしていろいろ政策金融のパンフレットもつくっております。その点は私もよく現場に参って認識しておりますけれども、大部分の中小企業の零細の方々が知らないという問題は、やはりそこにまた厳然と残っておるわけですね。やはり借りやすくする、資金的にも十分にある、そしてPRがきいたということでなくちゃ効果はあがらぬであろう、こう私は思います。ですから、いま長官おっしゃったとおりに、ひとつしっかりお願いしたいと思います。  それから中小企業重点を、特に零細企業に対して力を入れていく、こういうお話は当然でありますけれども、ひっくるめて中小企業施策をどのようなクループに分けて――業種別には当然でありますけれども、やはり大中小ぐらいには分けて、ひとつ判断の基準を立てられたらどうかというふうなことであります。  これはもう古い話でありますけれども、すでに四十五年の四月、第六十三回特別国会で、本会議でも公明党が提案しております。そうして当時の佐藤総理が、「御指摘のとおり、それぞれの経営力、資金調達力、これに応じた適切な施策を講ずようつとめてまいります。」とはっきり答えておるわけであります。ですから、大といえば中堅企業でございましょう。中堅企業というものはどこに持っていくのか、一つ政策課題であり、それにはどういう資金をつけるかという問題があります。その次のまん中のグループはどういうふうにしてやったらいいのか、あながちこれを大企業に追いつくようなかっこうで持っていく必要はない、それぞれの特徴を生かした、そうして高度化し、また知識集約化し、そうして社会の繁栄、そういうグループの繁栄に連なるようにする。その下の、今度はいよいよ小の部分、 この小の部分にはどういう考え方でやっていくか。これは社会保障的な考え方も相当そこに入れていきませんと、いろいろな施策をとって金融的な措置をとっただけでもいかぬのじゃないか。特筆すべきは、今回のこの無担保、無保証の制度等であります。やはりそういう面が生かされていかなくてはいけません。特利というものはどこにくるのか、こういうような点にがっちり入り込まないといけないというふうに思うのです。これは政務次官がいいですね。中小企業施策として、かりに大中小と分けても業種別にありますけれども、そうして大の部分の中堅企業をどういうふうにやる、まん中の部分をどうする、零細をどうする、そういう分け方、考え方でがっちりと、みっちりとひとつ施策を立てていくことも必要じゃないか、こう思うのですけれども、いかがですか。
  119. 塩川正十郎

    塩川政府委員 そういう企業の規模別で分類して、それに対応する融資態度で臨むということも確かに一つ考え方だと私は思います。それともう一つ中小企業団体等がよく要請しておりますのに、一つは、業種別というものもまた一つの区別のあり方であって、同じ資本金一千万円で化学工場を経営するのと鋳物工場を経営するのとで融資の金額が全然違ってくる。片方は装置産業といたしまして高い資本装備率を必要といたしますし、片方はむしろ運転資金に重点を置いた業種であるというような相違もございます。したがいまして、仰せのように企業規模を一つの分類のめどにするということ並びに業種別にする、そういうふうないろいろ多角的に組み合わせて融資の類型といいますか、パターン、こういうものも絶えず研究していかなければならぬ、こういうことは、少なくとも政府三機関等においては非常に熱心にやっておるように私は思うのでございますが、それを実際に適用する場合に、もう少し機敏にやっていくということに先生の御発言の意味があろうと思いますので、よく私たちからそういう御発言の趣旨をお伝えいたしたい、このように思います。
  120. 松尾信人

    ○松尾委員 かりに三つのグループに分けるとすれば、それの業種別の将来の発展の方向、これはこっちにつけるんだ、これは全体で伸びるんだ、一番下は社会保障的な観念をうんと入れて助成していこうというような基本的な考えを私は述べたにすぎないのです。まあお答えもそうでありますから納得いたします。  今度は次に入りまして、卸業の対策であります。今回の基本法定義改定によりまして、従来商業として小売業も卸業も一括しておったのでありますけれども、これで卸業の中小企業者としての範囲が明確になったわけでありますから、これを一つの柱として卸売業に対する振興策といいますか、中小企業庁の考え方というものを聞いておきたいと思いますが、いかがですか。
  121. 莊清

    荘政府委員 中小卸商業に対する施策というのは、やはり生産から消費までの間の卸機能を営むわけでありますから、繊維は繊維、魚は魚、肉は肉というふうに、ものによって問屋の機能なり問題点、現状というのが非常に違っておるようでございます。したがいまして、物資別にやはり流通システム全体を合理化するという見地からの総合的な検討が非常にいま望まれてきておるわけでございます。今後通産省といたしましては機構改革も行ないまして、こういう問題を含めた流通問題を抜本的に取り上げようということになっておるわけでございますが、そのときの重要課題になると考えます。とりあえずの中小卸対策として特別の施策というのは、御案内のとおりの高度化資金によります卸団地の造成でございます。八十近いものがすでに助成対象になって成果をあげておるわけでございますが、中小卸の場合には、やはり大商社の機能と国内での卸機能と比べてみますと相当見劣りがいたします。従来のように町の中にすわっておって卸を行なっておれば済むという時代はとっくに去っておりまして、相当な物流施設、基地というものを持たなければ中小といえども卸機能が現実に営めない。それはやはり交通の便利な、しかも土地の広いところにそういう施設を新規に整備していくということがございませんと、中小卸としての使命が今後果たせないという時代になっております。  こういう意味で、事業団は非常に長期的に見て重要な業務を実はやっておると私は思っておるわけでございます。今後こういう面の資金の確保あるいは用地の先行取得というふうな点も含めまして努力をいたしたいと思います。また、卸の中でも非常に小さな人たちにつきましては、きめこまかな金融といたしまして、一部の運搬設備等につきまして今年度から設備貸与制度の対象に取り入れるというふうなこともいたしております。融資面全体につきまして小売商業振興法というのができましたが、卸の問題も今後の大きな問題でございますので、卸の中でも比較的規模の小さい層、これの近代化をどう進めるかという点に重点を置いて、来年度以降よく検討いたしたいと思います。
  122. 松尾信人

    ○松尾委員 その点はけっこうです。この知識集約化方向でありますけれども、これをいまどのように盛り上げていこうとお考えでありますか。まず、研究上の開発、高度組み立て産業、ファッション型産業等いろいろありますけれども、この知識集約化の問題をどう取り上げて、将来これを一つの柱としてやっていこうというお考えがあるかどうか、聞いておきます。
  123. 莊清

    荘政府委員 知識集約化と申しますと、よく研究重視型の経営に切りかえていくことだといわれております。中小企業でも、ソニーなどは昔は文字どおり中小企業でございましたが、研究集約刑の中小企業で、あの分野で非常な成果をおさめまして、いまは堂々たる大企業になっておるわけでございます。その他にもいろいろ例がございます。ただ、そういう一部の企業だけでは済まない時代に入ってきておるということが今度のドル・ショックの問題に徴しましてもはっきりいたしてまいりまして、いま多くの産地で前向きにこの問題に取り組もうという真剣な努力がなされ、計画が検討されております。これは従来、設備の近代化それから適正生産規模を確保するということにもっぱら専念しておったということへの一つの反省でもございまして、今後は国の施策といたしましては、中小企業のそういう努力が実りまするように知識集約化についてのビジョンというものを早期に策定して提示する、それを情報として中小企業に早く流すようにつとめるということがまず大切であろうと存じます。また、各種の知識集約化のための事業に対しまして、たとえば事業団を通ずる無利子融資ということも発足させましたが、こういう融資制度の充実と並びまして中小企業の技術の研究開発に対する国の助成、今年度予算で約十五億程度でございますが、こういう研究開発に対する助成措置というものを格段に強化していくということを今後の施策重点にいたしたい、かように考えております。
  124. 松尾信人

    ○松尾委員 いまの予算を格段に伸ばしたいということですが、やはり事業の不安定というものが一つあります。将来がはっきりしない。また人材が不足いたしております。また、こういうものは集約型でありますから、まだ物的担保があまりない。そういうことでいろいろの問題をかかえておるわけであります。     〔左藤委員長代理退席、委員長着席〕 でありますから、これはしっかりいまおっしゃったとおり――特にそういう関係でベンチャービジネスの問題でありますけれども、やはり知識集約化の中の一つのベンチャービジネス、これをうんと伸ばしていく。資金面と技術の開発面、こういう面においてもがっちりおやりになるかどうか。これは一言でけっこうです。
  125. 莊清

    荘政府委員 ベンチャービジネスの育成については新しい課題でございますが、とりあえず信用保険の対象に加えるというふうな措置は昨年から講じております。研究だけ専門に行なうものも中にはあるようでございますけれども、多くは既存の製品をさらに高級化する、新しい分野を開拓するという形で、研究、技術開発なりデザインの改良なりということに力を入れていくという場合が一般的だろうと存じます。そういう点が円滑にいきますように金融、税制その他の措置を強化いたしたいと思います。
  126. 松尾信人

    ○松尾委員 次に事業転換の問題に入りますけれども、これはどこまで変えていけば事業転換とお認めであるかということがあるんですね。その認め方によって金が出たり出なかったりというふうに、現実面では非常に苦労する問題があるのです。ですから、こういう問題も前広に教えるというわけにはいかない問題もありましょう。ぽかっと出てくるやつもありましょう。ですから、そういう考え方というのは、やはり基本というものをこういうところではっきりしておいたほうがよいだろうと思うわけでありますけれども、どうですか。簡単に言えぬと思いますけれども、事業転換はこういうことを言うのだということですね。
  127. 莊清

    荘政府委員 昨年来のドル対策としての転換助成の場合、特にいまの御指摘の問題が発生したわけでございますが、最初は非常に厳格な考え方でございまして、いままで全くつくってなかったものに生産の半分以上を切りかえなければいけないというふうな制約がたしかあったかと思いますが、その後、運用上の経験も含めまして全く別のものをつくるということはそう急にはまいりませんので、従来のものの高度化というふうなことも含めまして考えようということにしております。それから、産地等で行なう場合に、全部の産地の企業が参加するような形を中心考えておったという面がございますけれども、なかなかそういうことではまいりませんので、従来から取引関係のある数社ないし十数社で協同組合をつくっておるという場合などもございますので、そういう単位で行なうものも当然助成対象にするということで現在検討いたしております。
  128. 松尾信人

    ○松尾委員 ドル対法でも指定業種があって、指定産地がある。特定では繊維とか雑貨等に限られておる。こういうふうになっておりますけれども、いろいろ業種が限られてみたり、産地が限られたり、制約条件も多い。ですから、一つの事業転換でありますから、もう少し幅広く、そしていろいろかわっていかれるときにかわっていきやすいようにしていく、おまけに、こういうものからこっちへ移りますというこの転換業種にもいろいろ御注文があるわけです。ボーリングはできぬとか、アパートまでいいとか、いろいろドル対策がありましたね。そういう問題はあるわけでありますけれども、いまのところでも事業が行き詰まってできないというものが何か切り抜けていこう、特にドル対法の関係ではそういう問題が深刻に出ました。それで、転換業種に制限があるものだから思うとおりにいかぬ。食堂等はだめだとか、いろいろなものがありまして、これは幅広くおやりになる必要があるだろう、このように思う次第であります。  では、時間もだいぶ迫ってまいりましたので下請関係に入ります。  これは親企業が今度は移転する場合でありますけれども、その下請企業の対応のしかたであります。下請企業でありますから多くは親企業と一緒に行きたいということでありましょうけれども、この東京都下の下請の振興協会が行なった調査でありますけれども、親企業に七〇%依存しておる、そういう下請企業がありますけれども、これが親企業と一緒に行くということが非常に困難である。八五・二%の企業が現在地にとどまっておるというような調査の結果も出ております。ですから、この親企業への依存度が低い下請企業にとっては、なおなお一緒に親企業とともに行くということはなかなか困難であります。ですから、これはいろいろな手を打ちませんと、工業再配置その他の問題で出ていく、下請がついていけない。行きたいけれども、いろいろ資金面とかその他の面で行き詰まっておる、これはどのようにして解決されますか。政府施策、そういう点をこれは明確にする必要があると思います。
  129. 莊清

    荘政府委員 親企業の移転に際しまして、一つの具体例でお答えいたしたいと思います。  日立製作所の三工場が移転をするという問題があったわけでございます。その場合に中小企業庁では、下請からもいろいろ事情を聴取すると同時に、日立製作所自体の責任者にも来てもらいまして、下請について工場別にどういうふうにするかという点のこまかい計画をヒヤリングいたしました。結局日立とともに移転をするものについては、県あるいは住宅公団と連絡の上、入居すべき団地の土地の手配をしたわけでございますが、大部分のものは移転ができないわけでございます。御指摘のとおりでございます。それは日立にだけ依存はしておらない下請が相当多いのでございまして、日立としてもそういう企業の技術力を買っておりますので、遠隔の地に行っても部品のレポートをつくりまして、長距離のトラック輸送で対処するというふうなことについて検討するという回答が一つの工場についてはございました。結局移転もできず、日立としても、そういう形での遠距離での取引も考えない三番目のグループがございまして、これについては日立製作所のほうで、日立グループの中で別途に受注のあっせんをするというふうなことに落ちついたわけでございます。まだ移転が全部行なわれておりませんが、私どもは今後これが実際にどういうふうに進展するか、注視してまいるつもりでございます。この例が示しますように、今回の工業再配置法に基づく移転の場合に、親企業が計画を出して承認をとるわけでございますが、下請企業の承認書を取りつけさせるように、これは政省令の段階ですでに手当てをしてございますが、書類だけではなかなかわかりませんので、個別の工場ごとにこういう指導、あっせんを当然行なうということが必要でございます。今後は各県の下請振興協会等にもこういう仕事を、整備、充実と見合った形で順次やっていただけるような体制にまで私どもは持っていきたいと思っております。
  130. 松尾信人

    ○松尾委員 金融面の助成等も大事だと思います。  次は、四十五年十二月に下請中小企業振興法ができたのであります。二年半を経過しておるわけでありますけれども、この法律に基づきまして振興事業計画を策定したもの、これは非常に少ない。もうぼくのほうから申しますけれども、四十六年十二月に一件、四十七年がなし、四十八年三月に二件、五月に一件で、累計わずか四件が、この振興事業計画が出されて承認されたにすぎません。それはどこにわけがあるのか。どういうわけでこの実施状況というものが、大事な振興事業計画がなぜ出せぬのか。なぜこういうふうに少ないのか。二年半でわずか四件、この点いかがですか。
  131. 浦野幸男

    浦野委員長 答弁は簡明に。
  132. 莊清

    荘政府委員 一つには、本法施行後まだ二年半でございますが、その間、通貨調整二度というふうに大きな経済変動がございまして、親企業でも長期の発注計画がまず立てにくいという不幸な事態があったことが一つの事情でございます。また、五年という長期の計画でございますので、こういう時期には一そうきめにくかったということに相なります。ただ、最近では機械、造船などでさらに御指摘のもののほかに数件のものについて、いまこれを締結すべく親企業と下請の間で検討が進められております。
  133. 松尾信人

    ○松尾委員 これは指摘だけにとどめますけれども、この第三条に基づく振興基準、これは親事業者の振興基準の順守が悪いと思います。これはもう少し促進して、がっちりこれは出さすべきである。これは先ほども質問がありましたので指摘にとどめておきます。  それから、同じく発注分野の明確化の点でありますけれども、これを守っていない企業が二〇%をこえております。しかも、その二一%の中の三六%というのが今後も明確化するつもりはないと答えている。発注分野の明確化ですね。この発注分野を明確化することによって下請は合理的な生産計画ができるわけです。これが一つの柱になっておるわけでありますけれども、そういう発注分野を明確化していないというのが二一%もある。おまけにその中の三六%というのが今後も明確化するつもりはない、こう言っているわけですが、これはけしからぬと思うのです。この点が一つ。  また、発注量を示す期間につきましても、半数近い四八%の企業が三カ月以内という間近になってから発注する。九六%が六カ月以内という、非常に発注する期間が短いですね。こういうことでは計画は立てがたいと思うのですけれども長官、この点はどうですか。非常に法の順守状況が悪いということなんです。
  134. 莊清

    荘政府委員 発注分野の明確化でございますが、この振興基準というのは一つの行政指導のガイドラインでございまして、罰則をもって強制するという法制には現在なっておりませんが、全体の中でごくわずかのものが実はまだ守る計画がないということは残念でございます。多くのものはこの線に沿ってきておりますので、一段と指導を十分に行ないまして、これが十分に行なわれるようにいたしたいと思います。  それから、発注期間につきましても、これは景気情勢、経済情勢とも非常にからみますので一がいに申し上げられないと存じますけれども、極力やはり親と子で話し合ってこれを長期化するように指導をいたします。
  135. 松尾信人

    ○松尾委員 代金決済の問題でありますけれども、これは東京商工会議所の調査によりますと、親企業が下請に払う現金の比率、これが二五%未満が最も多いということであります。それが三二・三%くらい占めておる。また現金比率五〇%未満というのが六四・三%にも達しておる。手形サイトも九十一日から百二十日というのが三九・六%もある。百二十一日から百五十日にわたるものが三七・四%である。平均では百二十四・七日という長期化の傾向がはっきり出ているわけでありますけれども、いよいよ金融引き締め等になりますとますます払いが悪い。そして企業倒産にもつながるということでありますけれども、これをどのように認識して、どのように変えられますか。これは下請代金支払遅延等防止法にも関係がありますので明確にお答え願いたい。
  136. 莊清

    荘政府委員 下請代金は、現在金融が引き締められながらも、親企業の手元にまだ相当ゆとりがございます。特に機械金属等下請の多い事業では生産、受注とも伸びておりますので、私ども昨今では、これはドル対策もありまして、毎月四千くらいの下請企業に直接調査をやっておりますが、現金比率も大体四割くらいで、それから手形の期間も百二十日くらいで、わりあいいい状態で推移しておるというふうに私ども考えております。御指摘数字も拝見したのでございますけれども、全体としては私ども下請の状況をいま申し上げたように把握しておりますが、ただ、金融の引き締めが次第に浸透するという見通しのもとでこれが悪化しないように、今後とも、公取とも十分連絡の上、下請法による行政処分も辞せずという方針で臨むとともに、やはり中小企業向けの金融の円滑化という措置を十分に講ずるということがどうしても裏打ちの措置として必要である、かように考えております。
  137. 松尾信人

    ○松尾委員 公取、どうですか。
  138. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 最近時点におきます――最近時点と申しますのは昭和四十八年四月でございますが、下請代金の支払い状況は現在集計中でございますが、大体いままでの傾向としては現金支払い比率五〇%未満、これが半分くらいになってきております。それから百二十日超の手形を交付している事業所もかなりの数になっておりますけれども、しかし昨年の十月以降の傾向は大体同じで推移しております。しかし、われわれとしましては、下請法に違反する事例が発生する場合は直ちに是正措置を講じさせてきておるわけでございますが、特に長期間の手形によります支払いを是正させるために、下請利用度の高い鉄鋼業あるいは非鉄金属工業、機械工業、繊維工業等につきましては、標準手形期間、繊維は九十日、ほかは百二十日というのを設けて指導しておりますが、他の業種につきましても、これに準じて手形期間の短縮化を指導してまいりたいというふうに思っております。今後また金融引き締め等が強化されまして、下請にしわ寄せがくるということも考えられますので、こういう下請法による規制は全力をあげて強化してまいりたいと思っております。
  139. 松尾信人

    ○松尾委員 これを最後にして終わるわけでありますけれども、信用補完制度に関して一言聞いておきたい。  これは保証協会の四十七年度の信用保証の承諾でありますけれども、前年に比べて件数で一六・六%、金額で十三・三%と、ともに大幅に下回っておるわけであります。このように前年に比べて件数、金額が減ったということは保証協会始まって以来のことである、こう言われておりますけれども、原因は何ですか。そういう原因は金融緩慢等とおっしゃるかもしれませんけれども、これはやはり零細なる人々の申し込み、その金融助成という意味が強いわけでありますから、そういうことを反省して、どういうことを反省すべきであるか、それで今後どのようになすべきであるか、これを要領よくお答え願いたいと思います。
  140. 莊清

    荘政府委員 主たる要因は、お話しのとおり、昨年における金融の超緩慢の影響だろうと思います。こういう状況がいつまでも続くとは考えられませんので、信用補完制度はきわめて重要でございます。零細な層に対しましては特にこの信用補完制度が重要でございますので、今回も保険料の引き下げを行ない、これによって県の保証料が下がるというふうに財政措置を講じ政令も改正したわけでございますけれども、全国で全部の保険の平均の県段階の保証料がまだ一・二六%、一%をだいぶこえておるということは、やはり国の金々使ってやっておる保険としては相当高いような感じがいたします。さらに、これの引き下げに努力をいたしたいと思います。
  141. 松尾信人

    ○松尾委員 これで終わります。
  142. 浦野幸男

  143. 近江巳記夫

    ○近江委員 ドル対法の審議の際の附帯決議、これは四十六年十一月三十日に行なわれたわけですが、「小規模企業施策の一層の充実前提として、中小企業者定義上限引上げに関する検討開始」云々、このように付されておるわけでありますが、まず初めに、本法提出の経緯を伺いたいということと、二点目は、附帯決議を尊重して、小規模企業施策についてどういうような一そうの充実がなされたか、この点についてお伺いしたいと思います。
  144. 莊清

    荘政府委員 本法案提出の経緯でございますが、基本法施行後十年の間における経済成長にかんがみまして、資本金規模等の面におきまして不都合が生じてまいりましたので、これを調整する意味改正をすべきであるという中小企業業界からの強い要望国会の御決議を体し、中小企業政策審議会に諮問の上、その答申に基づいて今回の改正を提案いたしておるわけでございます。  その場合、附帯決議にもございますし、中政審の答申にも明記されております小規模対策充実をはかれという点でございますが、まず金融面、税制面、指導面等々、各般の措置がございますが、金融面では、今年度から小規模経営改善資金貸付制度を発足さしております。それから設備近代化資金、設備貸与制度につきましても、その規模の拡大をはかっております。また、中小企業振興事業団からの融資、国民金融公庫からの融資等についても運用の改善をはかっておりまして、国民金融公庫では従来三百万円であった無担保貸し付けの限度を五百万円まで上げております。さらに、保険につきましても、特別小口保険制度につきまして限度の百万円の引き上げを行ないました。  税におきましても、個人事業主報酬制度の実施及び同族会社についての留保所得についての税制上の制約がございましたのを昨年度に引き続き緩和をはかっております。  また、中小企業の中でも、小規模企業につきましては、特に経営改善指導事業が今後重要でございますので、指導員の増員、待遇改善等につとめた次第でございますが、まだ至って不十分でございますので、今後も引き続きこの面については予算措置等十分強化する方針でございます。さらに、小規模企業の中で、中小小売商業が非常に数も従業員も多いのでございますが、見るべき施策がございませんでした。今回、中小小売商業振興法案及び大規模店舗法案国会におはかり申し上げておる次第でございます。
  145. 近江巳記夫

    ○近江委員 この基本法に関してですが、今回の改正定義改正のみにとどまっておるわけですが、基本法全体を見直して改正する必要がなかったのかどうかということなんです。この点について今後、政府としてどのように取っ組んでいかれるか、基本的な態度をお聞きしたいと思います。
  146. 莊清

    荘政府委員 御指摘の点につきましては、中小企業政策審議会の場におきましても、各方面の権威者の御意見を十分伺った点でございますが、現在基本法が、その前文及び第一条でうたっております基本的な姿勢というものは、やはり今後とも変わるところなく堅持すべきであるという御意見でございます。中小企業格差及び経済的な不利の是正ということが今後とも引き続き重要でございますので、その点については特段の法文上の修正は行なっておりません。ただし、それ以外にも、税法の上あるいは保険法その他関連法規の改正は別途また今国会にも御提出申し上げておるところでございますし、法律とは直接関係ございません財投の運用改善というふうなことについても努力をいたしておる点でございます。     〔委員長退席、稻村(左)委員長代理着席〕
  147. 近江巳記夫

    ○近江委員 この基本法制定されて、いろいろなねらいがあったと思うのですが、ちょうど十年になるわけです。それで企業間の生産性あるいは企業所得、労働賃金等の格差は実際にどれだけ是正されておるのか、基本法制定の効果をどのように把握しておるのか、お伺いしたいと思うのです。
  148. 莊清

    荘政府委員 従業員一人当たりの付加価値額、いわゆる生産性格差で申し上げますと、基本法制定当時は大企業に対しまして四四%でございました。それが四十五年では約五〇%に上昇いたしております。ただし、十人以下の零細層をとってみますと、数は非常に多いのでございますが、あまり上昇が見られないわけでございます。なお、一人当たり賃金につきましても、ただいま申し上げたのとほぼ同様のことになっております。
  149. 近江巳記夫

    ○近江委員 中小企業者範囲が、工業等については資本金が五千万円以下から一億円以下に引き上げられるわけですが、一億円以下とした理由は何であるかということです。これによってどれぐらいの企業対象になるのか、その内容をひとつお伺いしたいと思います。
  150. 莊清

    荘政府委員 簡単に申し上げます。  一億円にいたしました理由は、実は三百人という従業員規模を変えませんで、四十五年の工業統計によりまして、三百人に対応する資本金規模を詳細に作業したわけでございます。それで約一億円という結果を得ましたので、五千万円を一億円に引き上げるということにいたしたわけでございます。これによって増加する中小企業の数は、現在中小製造業が七十四万程度ございますが、それに対して約五百七十程度でございます。
  151. 近江巳記夫

    ○近江委員 次は、卸売業につきまして資本金三千万円以下、従業員数百人以下に引き上げるのですが、これによってどのくらい卸売業者が対象となるのか。基本法制定の際は、卸売業範囲についてどう考えていたのか、お伺いしたいと思います。
  152. 莊清

    荘政府委員 卸売業につきましては、基本法制定当時は小売と合わせまして小売商業一本ということで、従業員は五十人、資本金は一千万円ということに相なっておったわけでございます。しかしながら、卸と小売とは本来業態を全く異にしておりまして、多くの中小卸がこの基準では非常に合わない実態が明確になってまいりました。そこで、資本金につきましては今回は三千万円まで引き上げたわけでございますが、卸業の中で九九%の企業というものを拾ってみますと、ちょうど百人という従業員規模が出たわけでございます。このあたりは、いわゆる大商社等と比べまして、中小卸であるということがここにも明確な限界がございます。そこで百人ということを定めたわけでございまして、人数をまず五十人から百人に上げ、それに対応する資本金規模として三千万というものを出したというのが私ども行ないました作業の実情でございます。  これによりましてふえます卸の数は、現在の定義では約三十四万程度が定義に該当しておりますが、今回の定義改定によりまして約三千四百、三十四万の約一%ぐらいふえるというのが実情でございます。
  153. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま二つのことについてどのくらいふえるかということを聞いたわけですが、こういうふえた企業に対して、本年度どの程度の予算措置を講じておるか、これについてお伺いしたいと思います。
  154. 莊清

    荘政府委員 中小企業振興事業団からの高度化融資について一番影響があると考えまして、団地化予算等につきまして所要の増額を行なっております。また、中小企業金融公庫からの長期の設備資金の融資につきましては、とりあえずの措置として五十億程度の財投ワクの上積みをいたして去りますが、今後これらの新規に対象になります企業がどれだけ年内に実際に申請するかということを調べまして、必要があれば今後の補正で対処いたしたいと思います。
  155. 近江巳記夫

    ○近江委員 この中小企業等協同組合法の関係ですが、今国会の当初は生命傷害共済事業をもっぱら行なう生命傷害共済協同組合及び火災共済事業と生命傷害共済事業とをあわせて行なう商工共済協同組合を追加するための法改正を予定しておるということを聞いておったわけですが、一つは、この提案しなかった理由は何であるか。もう一つは、中小企業者が行なっておるこれら生命傷害共済の実情はどうなっておるか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  156. 莊清

    荘政府委員 法案についていろいろ検討したのでございまするが、生命共済事業につきましては公益法人の形で現に相当な規模で行なっておるものもございまするし、事業協同組合が別組織をつくりまして行なっておるものも相当数あるというふうなことでございまして、これらの全体の最もすっきりした調整をどうつけるかというふうな点で、私ども不幸にして十分な法案提出までの時間がございませんで、引き続き検討するということにいたしたわけでございます。  事業の概要につきましては、担当部長から簡単に御報告申し上げます。
  157. 生田豊朗

    ○生田政府委員 中小企業協同組合その他が行なっております生命傷害共済事業でございますけれども、いろいろの形態がございまして、協同組合の形態をとっておりますもの、各地の商工会その他の関連団体といたしまして任意団体で行なっておりますもの、財団法人の形態をとりましてやっておりますもの、大別しましてその三種類ほどございます。火災共済協同組合ほど全国一円にわたりました体系的な組織は、現在のところでき上がっておりませんけれども、それぞれの地域におきまして、あるものは火災共済協同組合と表裏一体の形で行なっているものもございますし、その他、先ほど申しましたように、そのほかの中小企業団体との関連におきましてかなり活発に活動しております。加入人員その他、ただいま数字を持ち合わせておりませんので、また後ほど御説明さしていただきます。
  158. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、もう時間が来ましたのできょうはこれで留保して、あす一応予定として質問したいと思います。終わります。
  159. 稻村佐近四郎

    ○稻村(左)委員長代理 次回は、明十八日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十五分散会