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1973-06-19 第71回国会 衆議院 商工委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十九日(火曜日)     午前十時五十分開議  出席委員    委員長 浦野 幸男君   理事 稻村左近四郎君 理事 左藤  恵君    理事 田中 六助君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    稲村 利幸君       内田 常雄君    小川 平二君       越智 伊平君    大久保武雄君       小山 省二君    塩崎  潤君       田中 榮一君    西村 直己君       八田 貞義君    増岡 博之君       松永  光君    岡田 哲児君       加藤 清政君    加藤 清二君       上坂  昇君    佐野  進君       竹村 幸雄君    藤田 高敏君       渡辺 三郎君    野間 友一君       近江巳記夫君    松尾 信人君       宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  中曽根康弘君  出席政府委員         通商産業政務次         官       塩川正十郎君         通商産業省企業         局長      山下 英明君         通商産業省企業         局参事官    三枝 英夫君         通商産業省公害         保安局長    青木 慎三君  委員外出席者         環境庁大気保全         局企画課長   河野 義男君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 六月十九日  辞任         補欠選任   佐野  進君     土井たか子君 同日  辞任         補欠選任   土井たか子君     佐野  進君 同日  理事神崎敏雄君同月十五日委員辞任につき、そ  の補欠として神崎敏雄君が理事に当選した。     ————————————— 六月十五日  海水淡水化法案塩出啓典君外一名提出参法  第九号)(予) 同月十八日  情報処理基本法案塩出啓典君外一名提出、参  法第一六号)(予)  情報処理振興委員会設置法案塩出啓典君外一  名提出参法第一七号)(予) 同日  中小業者の営業と生活擁護に関する請願(青柳  盛雄君紹介)(第七二八七号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第七二八八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  連合審査会開会申し入れに関する件  工場立地調査等に関する法律の一部を改正す  る法律案内閣提出第九一号)      ————◇—————
  2. 浦野幸男

    浦野委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任の件についておはかりいたします。  現在、理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 浦野幸男

    浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長神崎敏雄君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 浦野幸男

    浦野委員長 次に、連合審査会開会申し入れに関する件についておはかりいたします。  法務委員会において審査中の内閣提出商法の一部を改正する法律案、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律案及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律整理等に関する法律案について、同委員会連合審査会申し入れを行ないたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 浦野幸男

    浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会開会日時につきましては、委員長間で協議の上決定いたしますので、御了承願います。      ————◇—————
  6. 浦野幸男

    浦野委員長 内閣提出工場立地調査等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤田高敏君。
  7. 藤田高敏

    藤田委員 まず大臣にお尋ねしたいのでありますが、この法律工場立地法として改正されるに至った経緯、特に現行工場立地調査等に関する法律を今回の工場立地法改正するにあたって一番重点として考慮した点は何か、まず大臣にお尋ねしたい。
  8. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今回の工場立地調査等に関する法律というものは、大体公害立法の一種としてわれわれは考えておるわけでございます。工場立地させる場合に、環境との調和、それから周囲環境に対する公害防除、それから工場内における施設配置、そういうような諸点について基準をつくりまして、いままでのような企業が恣意的に乱雑に工場及び工場配置をやりまして、周囲に対して騒音とか、あるいはそのほか諸般公害的な作用を及ぼさないように、そういう意味で、環境を顧慮した公害立法一つとしてわれわれはこの法案提出したわけでございます。
  9. 藤田高敏

    藤田委員 いま大臣答弁されたような趣旨に沿ってこの法律改正されるということであれば、具体的な問題になるわけですが、第一条の目的の中に、いま言われたような環境保全の問題に、公害未然に完全に防止する問題、これらのことが、この工場立地法目的それ自体の中に当然文章としてもうたわるべきではないか。にもかかわらず、少なくともここに掲げておりますものは、従来の工場立地調査等に関する法律よりは一歩前進したかに見えますけれども、やはりその基本的な発想は、工業開発優先考え方というものが依然として流れておると思うわけであります。それは先ほど指摘したように、この目的の中に、いま中曽根通産大臣答弁されたような環境保全生活環境あるいは公害防止に向けての目的条項が何らうたわれていない。その点についてはどうでしょうか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この法案の第一条に、「国民福祉向上に寄与することを目的とする。」ということばがございます。これは新しく入れたことばでございまして、これが公害あるいは環境というものを考慮して入れたことばでございます。
  11. 藤田高敏

    藤田委員 そういうことであれば、具体的に環境保全あるいは公害未然防止について、公害未然防止を完全にはかるということをこの条項の中にさらに追加される御意思があるかどうか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれの意図はそういうところでございますから、この中身の各条文をごらんいただきますれば、公害に対する配慮でこの法案ができておるということを御理解いただけると思いますが、もし表現上そういうことばがないことが不適切であるとおぼしめされれば、それは私らは国会側の御意思に従ってけっこうであると思います。
  13. 藤田高敏

    藤田委員 それではお尋ねしたいのですが、今日公害問題が全国各地に起こっておりまして、公害の四大裁判の問題を取り上げるまでもなく、ここ数日来有明海の問題なり、山口県の徳山湾の問題なり、あるいは瀬戸内海一帯の汚染の問題等々、これはまさに日本列島公害の海になってしまっておると思うわけでありますが、こういう現状から考えて、この工場立地法改正内容だけでは、現状のような状態を根本的に解消することができるかどうか。いわゆる工場立地段階において公害未然防止する、環境保全については十全を期すんだということがこの法律——当然いまから中身審議に入るわけですけれども、この法律内容に盛られたものだけで、現在起こっておるような公害をなくしていくことができるという自信を天臣はお持ちであるかどうか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 公害防止環境保全という政策は、いろいろ環境庁系統公害防除特殊立法、そのほかわれわれがいま提出している法案等、総合的な協力によってその目的を達成すべきものであると思います。少なくとも工場立地に関する部面は、通産省として、公害防除を大きな目的にして今回法案として提出したものでございまして、中身をごらんになりますれば——大体この法案を出そうという考えを持ったのは四日市裁判、四日市における昨年のコンビナート問題等を動機として法律改正して出そうと考えたのでございまして、個別的な一定規模以上の工場立地あるいはコンビナートにおける立地というような問題について、排出の問題からあるいは緑地の設定からあるいは周囲に対するさまざまな施設、そういうような問題について届け出それから勧告変更命令という権限までいただいて公害に対する対策を充実させよう、通産側としてそういう工場に関する規制を行なおう、そういう趣旨でできたものでございまして、これは自然環境保全法とか、あるいはそのほか自然公園法とか、そのほか諸般政策と相まって行なわるべきものであると思います。
  15. 藤田高敏

    藤田委員 なるほどいま答弁にありましたように、現行法律と比較をいたしますと、その中身について公害防除未然に排除するという点についての条件は幾つか前進をしておりますが、今日やはり環境保全の問題がこれだけ国民立場から重要視されて、そうして公害問題、環境破壊の問題が、これだけ政治的、社会的に大きな問題になっている以上、その根本的な解決をはかるためには、こういう今回の改正による準則の公表であるとか、届け出によって内容が不備であれば勧告をし、さらには命令をするということで、その設備内容について改善をするような措置だけでは根本的な問題の解決にはならない。やはり住民サイド国民福祉を増進するという立場から考えるなれば、住民意思工場立地する地域住民のコンセンサスというものをどういう条件の中で求めることができるか。また、最近法律的にもやかましくいわれております環境権が十分に尊重され、保障されるというそういう条件法律的に立法行為として保障されなければ、いま大臣が言われておるようなそういう目的を果たすことはできないと思うのですが、その条件は、今回の法律改正中身には遺憾ながら入っていない。私は、そういう条件が満たされない限り、全国各地原発火力、その他コンビナートの建設にあたって地域住民との間にいろいろな形のトラブルが起っておりますが、この種の問題を解決することができないと思うのですが、その点についての見解はどうでしょうか。
  16. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 本法を改正して提出しようとした考えの中には、四日市判決の理由の中に、立地段階注意義務を果たしていなかったのではないかというのがございます。第二には、操業段階注意義務。その中で、立地段階注意義務という意味から工場立地法という発想を持ちまして、改正案として提出したものでございます。  それで、いま御指摘の問題につきましては、第三条に工場立地調査簿というものを作成して閲覧に供する、こういうことにしてあります。それから大体相当な権限都道府県知事に委任いたしまして、地方団体意見を聞き、その判断に基づいていろいろ具体的な仕事を運営させようと考えておりますので、そういう考慮もわれわれとしてはしておるわけでございます。
  17. 藤田高敏

    藤田委員 四日市裁判の例をとられましたが、なるほどあの判決中身立地段階における行政上の注意義務について、第二は操業における結果責任に対する直罰主義の問題について、三つ目はその企業全体と申しますか、コンビナート地域における連帯責任についてというふうに大きく分ければ確かに中身は分かれている。そのうちの第一段階立地段階における具体的措置として、今回のこの法律内容整備につとめたんだ、こういうことですが、私は先ほど指摘したように、今日これだけ全国的に数多くの公害問題が起こって、生活環境なり自然環境を破壊して、いわば国民生存権を著しく侵害しておるわけであります。国民生存権を著しく侵害しておる、侵害するようになった第一の原因なりその責任とい ものは、今日までの工場立地段階において公害防止についての万全の対策がとられてなかった。いわば工場の新設、増設に対して、その企業コンビナートであれ、今回の法律でいうところの特定工場であれ、いずれの場合といえども環境破壊が起こらないんだという、そういう事前のチェックというものが通産サイドにおいて、あるいは今日でいえば環境庁サイドにおいて十分なされていない、また、そういうことが法律体系上確立していないというところにまず私は第一段階原因があったと思うわけであります。  そういう点では、個々の面について私も指摘をしてまいりたいと思っておりますが、まず基本的な考え方として大臣が、抽象的ではありますが、いま私が指摘しておるような問題点を解消するという方向に沿って今回の改正に手をつけたというのであれば、いま一歩進めて、工場立地するにあたっては地域住民同意を必要とする、そういう意味環境保全について、完全に国の機関として、通産省サイドだけでなくて、環境庁サイドにおいても事前にチェックすることができる。そうして、その法律中身にも関連をいたしますが、たとえば第二条の工場立地に関する調査が行なわれた結論に対して、地域住民同意をする。同意することができる。こういう条件をこの法律の中に具体的にうたわなければ、私は環境保全についての完全な目的を達成することができないのじゃないかと思うのです。そういう点で、いま私が主張しておるような条項を立法技術的にはどこへ入れることが一番適切であるかはまだ検討の余地があるわけでありますが、そういう条件をこの法律の中にうたう必要があると思うのですが、どうでしょうか。
  18. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 環境保全のために地域住民意見を尊重するということは私たちも同感でございます。ただ、私たち配慮いたしましたことは大部分の権限地方知事等に委任をいたします、したがって、県議会やあるいは知事さん等の判定によりまして、地域住民意見を重んじながら行政をやっていただこう、そういう考えがあったわけでございます。そういうような面を立法的にもっと強く出せという御意見がございますならば、これは国会側の御意見をわれわれも尊重してやる用意はございます。
  19. 藤田高敏

    藤田委員 最後のところをちょっともう一度……。
  20. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 地域住民意見をもっと強く反映して出せ、そういう御意向がございますならば、国会側の御見意に対して、私たちはそれを尊重して考え用意がございます。
  21. 藤田高敏

    藤田委員 私は、今回のこの七十一国会でわれわれ自身審議することになっております発電用施設周辺整備法と、今回のこの工場立地法というものは大同小異のような気がするわけであります。なるほどこの発電用施設周辺整備法よりは、公害未然防止に向けての配慮がいささかこちらのほうが強いのじゃないかと思われますけれども、しかし感触としては大同小異のような気がいたします。というのは、いま私が指摘したようなことが具体的にこの法律条項の中に載ってないということでありまして、この点は、いま大臣が言われたように、国会意思として、たとえば具体的にこの法案中身を修正するということであれば政府がそれに従うということでありますが、いかなる場合といえども国会がこの政府提案法律を修正すればそれに従うことが当然であって、むしろこの国会審議の場を通じて、いま私が指摘しているようなことが不十分であるということであれば、政府みずから進んでそのような環境保全に向けて、公害未然防止に向けての条項を挿入してもよろしい、こういう具体的な言明があってしかるべきだと思うのですが、どうでしょうか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政府側といたしましては、相当な権限地方団体の長に委任して、地方との調和県議会やそのほかの場を通じてお顧いしたいと思っておつたわけでございますから、われわれとしては、それでけっこうであると思って提案した次第でございます。また、運用によりましてかなりそういう点も事実上行なえるとも思われます。しかし、国会側がもっと強い表現で法的にそれを表へ出すという御意思で御決定なさいますならばわれわれはその考えに従って、それを尊重するという用意があるということを申し上げたわけでございます。
  23. 藤田高敏

    藤田委員 あとの条文との関連も出てくるわけでありますが、そういうことであれば順序不同の形でお尋ねをいたします。  これから工場をつくっていくという場合は、少なくとも私は、地域住民納得をする、協力をする、こういうことにならなければ、火力であろうと、原発であろうと、コンビナートであろうと、今回のこの法律に基づく特定工場であろうと、もうこれだけ全国各地が汚染されてまいりますと、少なくとも大きな工場ができる、あるいは公害企業だと名のつくものができるということになれば地域住民が非常に神経質になって、工場立地それ自体に対して従前以上に反対運動が起こると思うのですよ。これはもう当然のことだと思うのです。  そういうことになれば、少なくとも国民福祉を増進するということが工場立地のすべてであるとするなれば、当然のこととして住民同意権というか、住民主権立場に立って工場立地に対する同意というものが必要になってくる。それでは、地域住民同意とは何か、同意を必要とするための具体的措置は何かといえば、いろいろ方法はあると思うのですが、工場立地計画に対して、地域住民がいわゆる計画について縦覧をする、あるいはその企業資料を完全に公開をする、あるいは原発設置の場合にも、いま具体的に問題になっておるわけでありますが、公聴会を開催していく。これは単に聞き流しの形式上の公聴会の開催ではなくて、具体的に、断わっておきますが、私ども社会党主張としては、その地域住民が推薦をする専門家あるいは学者あるいは弁護士、こういった者が陳述者としてこの公聴会出席をして発言をして、その専門家代表者十分了解を得ることができる公聴会の制度、こういうようなものをこの法律の中に新たにうたっていく条項を挿入していくということがなされて、初めて地域住民納得の上に、そうしてこの法律が意図しようとしておる国民福祉向上に寄与することのできる工場立地というものができるのじゃないかと思うのですが、いま私が主張いたしましたような、そういう住民サイド意見というもの、具体策というものをこの法律の中にうたう御意思はあるかどうか。これも念のためにお尋ねしておきたいと思います。
  24. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は、工場の性格あるいは規模あるいはその複合体であるコンビナート等が、つまり工場団地等がどこになるか、そういう大きいもの、あるいは周囲に対して著しい環境影響を及ぼすと思われるもの等については、住民意見を的確に聞くということも一つ考え方であると思います。しかし、市町村長とか市町村議会とかあるいは府県会とかあるいは知事さんとか、そういう行政系統がございまして、これらの責任者が、工場設置する場合には大体地元住民了解を得るとか、了解工作をやるとか、そういうことが普通であるだろうと思うのでございます。中小企業とか小さいものについてはそこまではいきませんでしょうけれども、公害危険性があるとか、住民周囲に対して影響が著しいというような問題については、当然いまや地方自治体方々はそういう配慮をしておるわけでございますから、現実的にそれは解決されるだろうと私は思うわけでございます。しかし、国会側でいろいろそういう御注意があり、お考えがあるならば、その国会側まとまりを見まして私たちも検討させていただきたいと思います。
  25. 藤田高敏

    藤田委員 いま大臣答弁を聞いておりますと、地域住民工場立地に向けてのいろいろな意見というものは、それぞれの自治体サイドで具体的に尊重されておるのじゃないか、こういう御認識のようでありますが、この点は、私はただいまの答弁はたいへん遺憾だと思います。これは意識的にそのようにおっしゃったのではないと私は善意に解釈したいのですけれども、今日むつ小川原の問題やあるいは愛媛県の伊方の原発の問題や、あるいは北海道伊達火力発電所設置に伴う問題等を見てまいりますと、ある場合には、全く法律違反をやって行政サイドで強行する。北海道のごときは、警官、機動隊を出してまで工場立地に向けて強権的な立地をやっていくというようなことであって、今日起こっている現象の一つ一つを見ても、いま大臣答弁したように、住民サイド意見が尊重されるどころか、権力的にじゅうりんされておるじゃないですか。こういう今日の現実を無視していまのような答弁をなさることは、私ははなはだ心外だと思う。そういうことで、この法律案内容審議をやるという点については、基本的に所管大臣である通産大臣自身現状認識を改めてもらわなければ私は真剣な審議ができないと思うわけですが、どうですか。
  26. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私が申し上げましたのは、国の民主的意見の表明の手続と申しますか、秩序体系から見まして、市町村議会あるいは市町村長あるいは県段階国段階、そういうふうな秩序ができておるものでございます。法的には、いまは地方自治法等に基づいて、地方自治という意味において、そういう一つまとまりが各セクションごとにできておるわけでございますから、法的な意思表示機関としてそういうものがある。また、その機関方々地域住民に対する意向を十分そんたくする方法考えていただく、そういうような考えに基づいて、手続的に申し上げたわけでございます。  しかし、いま、工場立地等については、地元住民の関心が非常に高い段階であり、また、いろいろないままでの裁判等経緯等考えでみますと、それもまたわれわれ考えなければならぬ要素もあると思います。それらにつきましては、国会側の御意見がどういうふうにまとまるか、われわれは見守っていきたいと思うわけでございます。
  27. 藤田高敏

    藤田委員 大事なところは全部国会側意思におまかせする以外にないということで逃げを打っておるように聞こえてならないわけです。少なくとも政党政治のたてまえからいって、自民党意思が今日の内閣意思であり、内閣政策意思自民党が原則的にこれをささえるものだ、こういうふうに常識的にも理解せざるを得ないわけでありまして、少なくとも内閣提出法案に関する限り、これは内閣として主導的に法律を提案したわけですから、この国会審議を通じて、野党といえどもわれわれの意見が、いま主張しておるようにその主張自体合理性があれば、内閣自体として法案提出した側として、われわれの意見を具体的に取り入れる意思があるかどうかということを答弁してもらわなければ、すべて国会意思にまかすということでは、きわめて私は、政府の態度としては責任回避になるのじゃないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれといたしましては、この原案を提出いたしましたのは、先ほど申し上げましたような見解に基づいて、地方自治体において地方住民意思を十分そんたくし、また、これをくみ上げるという措置を期待して、そしてそのために相当な権限地方自治体に委譲して行なおうと考えて、これでいいと思うて提出したわけでございます。したがいまして、これでもし足りないというお考えがございますならば、われわれも謙虚にそれを聞く用意がございますが、それらは国会側意見がどういうふうにおまとまりになるか、われわれは見守っておりたい、こういうわけでございます。
  29. 藤田高敏

    藤田委員 この地域住民意思をそれぞれの自治体が尊重するという点について、そのことは十分前提として考えているんだということでありますが、そういう地域住民意思が、工場立地にあたって、自治体サイド従前以上に、今日まで以上に具体的に尊重されるというような、そういう条項がこの法律改正の中のどこにありますか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まあわれわれといたしましては、地方自治体本来の機能といたしまして、地域住民意向を盛り上げて、地域住民の世論を尊重して、地方自治体の運営というものが行なわれるものでございますから、したがいまして、地方自治体がそういう観点に立って、この工場立地に関しても適当に審査をしていただき、また、地域住民意向をよく尊重して行なわれるということを期待しておるわけでございます。
  31. 藤田高敏

    藤田委員 いま大臣答弁を聞きますと、具体的にはこの法律改正条文の中には何も出ていないですね。ですから、立法上は、もう従来どおりなんですよ。そうじゃありませんか。それはもう法律の中には、法律改正をやる以上、住民サイド意見を具体的に尊重するというのであれば、現状以上に、具体的に私が指摘した、今回の場合であっても、工場立地調査簿を閲覧するという第三条の規定がありますが、こういうことについて、たとえば地域住民にも閲覧をさすとか、関係住民に閲覧をさすとか、先ほど指摘した資料の公開をやるとか、公聴会については、その関係住民の推薦をした専門家、学者、弁護士、こういった者の意見を聞く公聴会制度とか、そういうものがなければならぬのに、そういう具体的なものは何にもないじゃないですか。法律上そういうことが保障されてなければ、今日の自治体に、いま大臣が言われておるようなことを期待しても、工場立地にあたって、この自治体審査をし、あるいは地域住民意見を聞くといっても、従来と大同小異の結果になるのじゃないかと私は思うわけでありますが、どうでしょうか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 縦覧をお願いするというのは、地域住民に縦覧をしていただくということも入っておるわけでございます。でありまするから、地域住民が自由にその調査簿をごらんいただいて、そして工場の性格なり、規模なり、従業員の数なり、そういうことをよく知った上で、それで意見を表明なさるようにしてあるわけでございます。法規上、公聴会という制度は書いてございませんけれども、私たち考えでは、そういう地方自治体地域住民意向を十分くんでおやりになるのが自治体本来の仕事である、そういう考えに基づいて書かなかったわけでございます。
  33. 藤田高敏

    藤田委員 当然のこととは言いながら、今日までの工場立地にあたって、いま私が主張しておるような公聴会制度を持っておる県なり自治体が過去にあるとすれば説明してもらいたいのです。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 工場立地に関しては、いままでないようであります。
  35. 藤田高敏

    藤田委員 いまおっしゃったように、ありませんね。ですから、この第一条の目的ではありませんが、どんなに口できれいなことをおっしゃっても、私は、基本的には、工業開発優先考え方が依然として工場立地法の基本になっておるような気がしてしかたがないわけであります。これはたいへん残念なことですけれども、やはり国民福祉向上さしていく、そのためには、環境権というものが尊重されるのだ、地域住民意見というものが、それぞれの工場立地にあたっては満度に尊重されるのだ、納得のいくまで尊重されるのだということが大前提にならなければいかぬということであれば、いま大臣がどのように期待をしても、たとえば公聴会一つとっても、そういう公聴会自体がただの一度もない。私は、せんだってこの原発伊方の問題についてここで質問をしましたが、私が原発の問題について公聴会制度をやれと言えば、検討してみようということで、そのあくる日のたしか科学技術特別委員会で科学技術庁長官が、形式的な公聴会制度については踏み切ったようでありますが、あれだけ問題のある原発設置についてさえ公聴会制度を渋っておるということですが、私は先ほどから言っておるように、今日もう原発だけじゃないですね。これだけ水銀の問題が起こり、カドミの問題が起こり、あるいはPCBの問題が起こっておるということになれば、この法律でいうところのコンビナートあるいは特定工場、こういうものについては、少なくとも最低の条件として住民意見を尊重するということであれば、私が指摘しておるような公聴会制度くらいは原案の中に当然入れるべきじゃないでしょうか。そのことが入らないという理由はどこにあるのですか。これだけ全国各地に多くの工場ができておっても、いままでただの一つもそういうことを具体的に入れないで、そうして工場公害のたれ流し、吹き流しの現状の中で、自治体に期待するといってもそれは無理じゃないですか。自治体に期待するのであれば、国の法律の中に、工場立地をするにあたっては地域住民意思をかくかくの手だてによって尊重しなければならぬぞ、こういう具体的な条項を入れることによって初めて自治体が、国のその指導方針に沿って工場立地についての手だてをやるのじゃないでしょうか。そういう点で、私はこの国会審議の方向にゆだねるというだけでなくて、積極的に責任大臣として、少なくともいま私が言っておるような公聴会制度ぐらいは法律の中に条文を追加しましょうというぐらいな答弁をほしいわけでありますが、あらためて見解を聞かせてもらいたいと思います。
  36. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど来申し上げましたように、国の法制上のたてまえが地方自治体、それから国、そういうランクになって、そして市町村おのおの自治的な地方自治による機関を持っておるわけでございますから、その市町村議会なり、あるいは市町村当局等において地域住民意見をよく聞いて、そして工場立地に関して所見をお持ちであり、それぞれ権限を委譲されたところにそれが反映させられる、そういう考えに基づいてこういう法案として提出したわけでありますけれども、いまの御意見をいろいろ承っておりまして、この時代の大きな変化に沿って、もし足らざるところありというお考えから国会側においてお考えがあれば、それをもちろん尊重していく、こういう考え方に立っておるわけであります。
  37. 藤田高敏

    藤田委員 国会側意思ということは野党の意思だけではいかないということでしょうね。それは与党も含めてということでしょうか。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれとしてはこういう原案を提出したものでございますから、やはりまず委員会、それから本会議、それで多数がなければ通過いたしません。できるだけこういう法案は皆さんの御協調によって通過させたいと念願しておるものでございます。
  39. 藤田高敏

    藤田委員 形式上はもう当然のことだと思うわけでありますけれども、そのことは現実的にはなかなかむずかしいことじゃないか。政府自身が、大臣自身が、なるほど指摘をされてみれば、たとえば公聴会制度の問題一つとっても、過去においてそういう事例がない、しかし、今日これだけの環境破壊の問題が起こっておる現実の中でこの法律改正をやろうとすれば、発想の転換ではないけれども、最低限度の条件として、その程度のことは必要でしょうね、必要だと思います、こういうことが答弁の中で出てくれば、これは与党の皆さんといえども、ひとつそういう方向で国会のコンセンサスをつくろうじゃないか、こういうことになると思うのですが、大臣どうでしょう、一歩そこまで踏み込まれるお考えはないかどうか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 委員会提出されました法案につきましては、政府側から申しますと、やはり委員会の皆さんの御意見に従うというのが私たち立場でございまして、先ほど藤田委員の御発言は非常に傾聴しておるところでございます。
  41. 藤田高敏

    藤田委員 傾聴していただいてたいへんありがとうございましたということで私もこれで質問を終わるわけではないのですが、私は、少なくともそういうものがこの法律の中に立法行為として、具体的な条文として明記をされなければ、今日の社会の現状に即応した工場立地法にはならないと思うのです。これはくどいようですけれども、そう思います。ですから、その点は私なお保留をいたしますが、ぜひその点はこの委員会の討議を通じて与党の皆さんにも同意を得て修正ができるように、具体的なそういう意見がこの条文に立法化されるように努力をいたしますが、そこだけで時間をとることもどうかと思いますので、私は、この法律の中に、環境保全に向けて、あるいは工場立地をする地域住民意思が具体的に尊重されるという、そういう条項のない工場立地法は今日の現代社会に即応しない法律であるという点を具体的に指摘をしておきたいと思うわけであります。  そこで、順序不同でありますが、次に進みます。  条文に沿って質問をしてみたいと思うわけでありますが、第二条の「工場立地に関する調査」、これは従来何カ所くらいやったでしょうか。そうして一カ所あたりその調査期間というものはどれくらい時間的にかかっておるでしょうか。また、従来やった調査結果は、その調査結果と現実に工場操業された後における結果との間に相違がなかったかどうか。極端に言いますと、昭和四十七年、どこかの省が、この工場から排出する排出物によっては人体に影響を及ぼすような公害はないということで、そういうことを発表した工場が現実的に健康被害を起こすような問題を起こしておるわけですね。そういうこととの関連において、この調査結果がほんとうに妥当性のある結果であったかどうか、過去の結果実績について説明をしてもらいたい。
  42. 青木慎三

    ○青木政府委員 産業公害総合事前調査でございますが、これは昭和四十年度から法律に基づかない実質的な行政手段として実施いたしておりまして、いままでやりました地域は大気関係で延べ四十一地域でございます。それから、水質関係で三十水域にのぼっておるわけでございます。これらの地域は、調査実施後、工場立地が進展したもの、進展していないもの、これから進展が予想されるものなどの開発の態様がさまざまでございまして、一がいには言えませんが、通産省といたしましては、対象地域環境汚染の状況を環境基準の範囲内に押えるように指導しておりまして、成果はある程度あがっておるものと考えております。  ただ、御指摘のように、この総合事前調査が実施されまして、この結果指導に従って立地したものにつきましても、対象地域周辺にぜんそく患者が発生したり、あるいは農産物に被害が出るというような公害問題が起こっておる例も事実ございます。  これらができました原因と申しますのは、事前調査が指導指針としていました環境基準そのものが人の健康を保護する上で必ずしも十分な目標値でなかった場合もございます。     〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕  そういう点を踏まえまして、最近の情勢の変化を取り入れまして、たとえばSOxにつきましては、本年の五月に環境基準の見直しをしております。それから、従来環境基準のなかったNOxにつきましても環境基準が新しくつくられたという事実もございます。今後の総合事前調査におきまして、こういう新しい環境基準を踏まえまして、調査の見直しをいたしまして、将来そういう公害が生じないように運営してまいる所存でございます。
  43. 藤田高敏

    藤田委員 一つ調査に、短いのでどれぐらい、長いのでどれぐらいかかっていますか。
  44. 青木慎三

    ○青木政府委員 答弁一つ漏らしましたが、この総合事前調査はいろいろなデータを入れてやりますので、短いもので約一年、長いもので一年半という期間を要する調査でございます。
  45. 藤田高敏

    藤田委員 このあとの届け出から勧告をやって命令を出すという期間が六十日、九十日というふうに時間的にはなっていると思うのですが、この調査との関係、企業工場立地をしたい、私が工場をつくりたいということで届け出をしてきてからそういう調査をやるのか、それともどの段階でこの第二条の調査はやろうとしておるのですか。いままではやってきたのですか。そして今回、電子計算機を使ったり、模型をつくって従前以上に精密な分析調査をやろうとしておるわけですか。この届け出から勧告命令、これとの関連はどうなりますか。
  46. 青木慎三

    ○青木政府委員 この届け出が出ましてから勧告までの期間は短いわけでございますが、おおむねこういう大規模工場が集中している地域におきましては、各企業は相当前からいろいろな計画を持っておりまして、その計画段階でその企業意向を十分取り入れまして、基本的な調査をいたすわけでございます。そういう調査をいたしました上で判断基準を出しまして、それに基づいて具体的に企業工場立地をきめます段階はそれから相当あとになりますので、そこで届け出が出てくるというふうに私どもは運用を考えております。
  47. 藤田高敏

    藤田委員 事務的なことの運び方としてはわかりましたが、やはり先ほど大臣との間のやりとりではございませんが、地域住民がそれぞれの工場設置にあたって納得をするかどうかは、第一段階としては、この調査結果が妥当であるかどうか調査の結果の中身について、あるいは調査の結果について地域住民が信用することができるかどうか、ここに私は一つの大きな条件があると思うのです。そういう点では、調査結果の妥当性を保証するような具体的な手だてについて何かお考えがありますか。
  48. 青木慎三

    ○青木政府委員 調査をいたしますと、その結果を公表するわけでございますが、その調査内容につきましては十分検討いたしまして、いろいろな人の判断の基礎になり得るような調査として公表いたすわけでございます。それを踏まえまして企業立地する場合には、そこから出ました判断基準に従いまして、企業が具体的にどれくらいの規模工場をどういう公害防除施設をつくって立地するかという点が届け出で具体的に出てまいります。その両者を比べますれば、専門的な立場からいいますと、おおむねその調査結果とその企業立地をした場合の汚染の出しぐあいというものは推理できるわけでございます。そこで、私どもは、調査の結果と実際の結果とが一応担保できておるというふうに考えております。
  49. 藤田高敏

    藤田委員 この調査コンビナート地区に限ってやる調査ですか、それとも特定工場、これはあとで出てくるのですが、現行条件からいけば、たしか建築面積が三千平方メートルで敷地面積が九千平方メートル、そういうものが一つの基準になる特定工場公害防止に向けての調査は、この調査は行なうのかどうかということが一つです。  それから、いま私が前段質問しました調査結果の妥当性について、これだったらだいじょうぶだ、これだったらわれわれもこの工場立地について協力しようじゃないか、こういう地域住民了解というか同意を得られるためには、自治体あるいは官側といわれるような国が調査をしただけではなくて、住民の側が納得のいく保証条件というものは、いま局長答弁なさった以外のことを何か考えないと、これだけ全国各地工場立地関連し、あるいは公害発生に伴って問題の起こっている住民納得を得ることはできないと思うのですが、具体的には何かありませんか。私は私なりに一つのものを考えているわけですけれども……。
  50. 青木慎三

    ○青木政府委員 第一の点でございますが、調査を実施いたしますのは、大規模工場または事業場の設置が集中して行なわれると予想される地区及びその周辺の地区でございまして、個々の単独の立地の場合には調査をいたさないということになっております。この理由は、大規模工場または事業場の設置が集中して行なわれる場合には、各工場の出します公害が重合いたしまして、各工場の判断だけではつまびらかでないような結果が重合により生ずるわけであります。この点を科学的に究明するためにこの調査を実施するわけでございます。  それから第二点の調査の妥当性でございますが、これは科学的手法によります調査でございまして、従来から調査の結果は、その手法その他を含めまして詳細なデータを公表しておりますので、住民方々がこういう調査について信頼できるかどうかという点は、この調査報告を十分お読みになりますと、その科学性あるいは妥当性というものが十分判断できるというふうに考えておりまして、その点は外部の人、学者の方々の検討も同時にできるように私どもは調査報告を出してまいるつもりでございますので、この点は客観的な妥当性があるものというふうに私どもは考えております。
  51. 藤田高敏

    藤田委員 従来も工場適地に関する調査が行なわれ、今度の法律に基づくほどの法律上の裏づけはなかったけれども、先ほど答弁にありましたように、各地のコンビナート地区等においては調査が行なわれてきた。しかし、その調査結果は必ずしも調査結果どおりにいくどころか、反対にそのことが公害の発生を起こしておるということも現実なんですね。そういうことになりますと、国なり自治体調査をして、風洞調査とか、あるいは模型実験等をやって、これはかくかくしかじかだという結論を出しても、今度専門家立場から見れば、これは一つの例ですが、この間の原子力発電所の結論ではありませんけれども、これは公正妥当だということで安全専門審査会なりその部会で結論が出ておっても、途中で通産当局の手直しがあったとかないとか、あるいはいろいろな安全性についての問題が起こっておるわけですから、一方の、工場立地を推進をしていくそういう側の調査だけでは、その調査結論に対してこれは妥当であるかどうかということが今度は住民サイド立場から見て信用できないという場合には、この結果自身を住民サイドからチェックする、そういう第三者機関が必要ではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  52. 青木慎三

    ○青木政府委員 調査結果のチェックでございますが、この事前調査につきましては、従来からいろいろ実績がございますが、従来二の調査にもかかわらず公害が出ている原因は、先ほど申し上げましたように、環境基準なり何なりの見方が甘かったという点が主たる原因でございます。また、事前調査を行なった後に、法的規制がございませんので、工場立地条件が変わったというような面もあるいはあろうかと思うわけでございますが、調査をしましたデータと結論とはそれほど大きく開きがあった例はございませんので、むしろ調査のやり方といいますよりも、調査の基準になりました環境基準その他の見直しによりまして、今後調査の見直しをすれば、そういう公害を生ずるというようなことはなくなるものと私どもは考えております。  それから、チェックの方法でございますが、これは非常に専門的な調査でございますので、専門家が見れば、この調査はどこが悪いかという点もわかると思いますので、そういう点でいろいろ御指摘がございますれば、調査の手法も日々改善いたしておりますので、いろいろな観点を入れて、万全の調査をしていくというふうに直してまいりたいというふうに運用を考えております。
  53. 藤田高敏

    藤田委員 私は、先ほど大臣とのやりとりの中で指摘をしましたように、このあたりでひとつ第三者機関がこの調査結果を診断をして、この調査結果のこういうところは甘いぞ、基準それ自体にも問題があるけれども、調査のやり方及び結論についても問題があるぞというようなチェックをする、そういう専門家会議といいますか、そういうものをつくって、調査結果の妥当性について一つの保障条件を与えるような手だてをする必要があると思うのですが、そのお考えはありませんか。
  54. 青木慎三

    ○青木政府委員 この調査方法は、通産省地方自治体協力して行なうわけでございますが、方法自体につきましては専門家の検討を得てやっておるわけでございまして、審議会の議も経るわけでございますので、いろいろな方がいろいろな改善の御意見があれば、そういう場を通じまして、漸次改善されていくものというふうに私どもは考えております。
  55. 藤田高敏

    藤田委員 私が指摘しておる核心を理解してくれてないように思うわけでありますが、同じ専門家といっても、官側といいますか、国が任命をしあるいは委嘱をした専門家、学者というものと、住民サイドのそういう専門家、学者、弁護士というものとの間には質的な違いがあるわけでして、私が指摘をしておるのは後者の意味であります。そういう専門家によって調査結果をチェックするようなことを考える御意思はないかどうかということをもう一度重ねてお尋ねをいたします。  それと同時に、なおきょう私自身の質問時間でこなし得ない場合は、これは理事会できめることでありますが、私としては後日継続して質問をしたい、さしてもらいたいと思っておりますが、きょう一定の持ち時間の関係もありますから、関連して第三条の点について尋ねたいと思うのです。  その一つは、工場立地調査簿に関して、第三条の二項で「前項の工場立地調査簿には、前条第一項の調査又は第十五条の三の報告により知り得た事業者の秘密に属する事項を記載してはならない。」とありますが、この「秘密」とは具体的にどういうものなのか。審議時間の節約の意味から、私のほうからお尋ねしたい核心を申し上げると、この事業者の秘密事項の中には、公害関係に関する事項、公害関係にかかわる生産工程、こういうものは秘密事項の対象になっているのかなっていないのか、これをお尋ねしたいと思うのです。
  56. 青木慎三

    ○青木政府委員 第一の問題点について御答弁申し上げますと、なるほど私どものほうは、審議会の委員の選定等につきましては、公平、客観的にやっておるつもりでございますけれども、その審議会の委員でない専門家の方が、専門的な点に関しまして御意見がございますならば、これは私どものほうで受けまして十分に審議会に御披露いたしまして、十分検討していただくにやぶさかではないということを申し上げます。  それから第二番目の企業の秘密にわたる事項でございますが、秘密にわたる事項は極力少ないほうが望ましいし、ことに公害に関しましてはなるべく広く知っていただくほうが望ましいわけでございますけれども、企業の生産工程等の秘密事項がございますと、それを調査簿に記載して一般の人に縦覧させるということは、公務員の機密保持の義務もございますので、秘密事項についてはすべてをここに記載するわけにはまいらないというふうに考えます。
  57. 藤田高敏

    藤田委員 私は、その特定企業が、こういう自由主義経済の中で競争をやっておるわけですから、その一つの生産工程の中で、技術面において対外的に秘密を保持したいというようなことはあり得るかとも思うのですけれども、しかし、そういう場合といえども、今日これだけ環境破壊なり公害問題が生存権を脅かすところまできておるのですから、少なくとも社会的な責任を果たし、国民福祉の増進に寄与することが、大臣答弁ではありませんけれども、その目的のすべてだということになれば、今日の企業公害にかかわる部分については全然秘密はないのだ、秘密は公開するのだ、従来の秘密の条項なり秘密の概念に入るべきものもこれは公開するのだ、こうしないと、その肝心なところは、これは企業競争上、公害に関する部分といえども秘密にするのだということになれば、縦覧期間において住民サイドでその計画をチェックしようとしても、肝心かなめのところがベールに包まれておったのでは、その縦覧の意味もなければ、そうして今日問題になっている公害工場立地段階住民協力も得るという形の中で未然防止するという目的が達成されないのじゃないか。したがって、それこそ発想の転換ではありませんけれども、工場立地段階において、今日の公害問題の大半とはいわれぬまでも、かなり大きな公害問題を起こしておる原因になっておるとすれば、ここでいうところの秘密、これはなくしていくのだ、公開の原則に沿って民主的に公開主義をとるんだ、こうすることが私はきわめて大切だと思うのですが、この点については大臣どうですか。
  58. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 おおむね同感であります。この秘密を守るという意味は、工業所有権、ノーハウ、そういう特許上の秘密を守るということが主であると思います。それ以外の公害に関する部分、待に住民が関心を持っておるいろんな問題については、これは当然できる限り最大限に公開されるべきものである。ただ、先ほど申しましたように、工業所有権等の秘密については、これは公務員として漏らすことは慎まなければならぬ、私は主としてそういう判断を持っております。
  59. 藤田高敏

    藤田委員 これは大臣答弁したのですから、もう、そういうことだと思うのですが、私は率直にいって局長答弁大臣答弁との間には、ニュアンスの面においてかなりな違いがあったと思うのですよ、私の受けとめ方は。ですから、これはもう大臣答弁局長答弁を求めるまでもないと思うのですが、いわゆる事務サイドを含めて、この秘密に関する取り扱いは、いま大臣が言ったようなことでいいですね。
  60. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 住民の皆さんに安心してもらうということがこの法律目的としている大きなことでもありますから、私が答弁したことで御了承願いたいと思います。
  61. 藤田高敏

    藤田委員 それでは念のためにお尋ねしておきますが、公害にかかわる環境保全にかかわる部分については企業秘密というものはないんだ、こういうふうに理解してよろしいか。
  62. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この工業所有権、特許、ノーハウ、こういうような問題について秘密にされている部分とか、あるいは公務員として知り得たものであっても、一定の限界以上言ってはならぬということもあります。そういう点は秘密にすべきであると思いますから、それ以外の一般の皆さんが公害上心配している諸問題、特にどうせ基準がきめられるわけでございますから、その基準について、いろいろの項目について調査が行なわれると思うのであります。そういう住民が関心を持っている問題については当然に公表すべきものである、私はこう思っております。
  63. 藤田高敏

    藤田委員 ちょっとまたひっかかりができましたが、この特許に関する部分については秘密保持の必要がある、しかし原則的には公害に関する面については秘密主義はとらない、公開の原則に従う、こういうことだろうと思うのです。そういうことで間違いないかということが一つであります。ところが、この特許に関する部分が肝心な公害問題と競合したとき、これはわれわれ国民サイドからいけば、健康をそこなわないような環境保全を前提とする場合、特許上の問題であろうと——そこが一番聞きたいのです。知りたいのですが、競合した場合、どちらを優先的に取り上げますか。
  64. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 特許というような場合は、やはりこれは優先さるべきものであります。しかし、住民の関心とダブるという場合は、その結論について公開すべき、またされ得るものがあると思うのですが、特許とか、ノーハウの場合は、その過程の場合が多いと思うのです。したがって、そういう秘密として保持しなければならぬ部分については保持さるべきでありましようけれども、その結果について公表すべき分野は当然公表すべきである、そういう意味で私は矛盾しないと思います。
  65. 藤田高敏

    藤田委員 私は、やはり厳密な意味からいけば、二者択一ではないですが、どちらを優先するかという問題が起ってくるような気がします。しかし、これはあとにたくさん質問をしたい事項がありますので、私の考え方を強調しておきたいのですが、私は大体大臣の言われるような気持ちはわかるのです。気持ちは私にもわかるのですけれども、やはりもう今日これだけ企業の社会性というものが要求され、企業地域住民に対して、地域社会に対して責任を持つということが、企業立地にとって欠くことのできない条件下に置かれては、私は、この種の公害関連する部分は、特許上の問題が、あろうとも公開すべきだということを強く主張しておきます。なお、この部分についてはちょっとひっかかりがあるように思いますので、そういう主張をし、意見を留保して次に進みます。  次に、第四条の工場立地に関する準則の公表であります。ある意味においては、基本的にはこの法律中身では私は賛成できないわけでありますが、一応通産当局が立案をしたこの法律体系からいくと、中身の面についてこの準則の公表というところがかなり重要な部分になっているんじゃないか、こういうふうに理解をするわけであります。それであればあるだけに、これは国会審議段階で、この準則は、たとえば電力についてはこうだ、鉄鋼、化学、紙パ、繊維、機械、石油、あるいは石油化学等々については、敷地面積に対してこの生産設備の率は現状は大体どのくらいになっておるけれども、今日のこの公害の状態等をそれぞれの業種別に見た場合には、この程度のスペースにせざるを得ないだろう、そうして工場敷地内の緑地については、この程度はこの業種については必要であろうというこの準則表というものが、この国会審議の中で出されるのが当然じゃないかと思いますね。これを出さなかった理由はどういうことなんでしょうか。特別な理由がありますか。
  66. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 特別な理由はございませんで、いま申されましたように、業種の区分ごとに、生産施設面積ですとか、あるいは各施設ごとに配置の準則等を学識経験者の御意向も聞いてきめていくつもりでございまして、内容的に相当こまかいものになりますので、一般の他の法令の例にもならい、これは政令にゆだねたわけでございます。現在私ども準則に関連して持っております統計あるいは検討中の事項等は御質問に応じてお答えいたします。——訂正させていただきます。政令と申し上げましたが、告示でやるつもりでおります。
  67. 藤田高敏

    藤田委員 私もその答弁はちょっとおかしいなと思って、いま文章を見直していたんだけれども、それはそれでいいです。しかし、特別に理由がないのであれば、こまかい規定であるかどうか、そして大事な規定であるかどうかは、国会審議にあたって私どもが選択をする問題なんで、こまかい事情であっても、これが一つ工場立地をするにあたって新たな条件として重要視するということであれば、いま私が言っておるような程度のものは出してもらって——われわれ自身が、これは率直に言ってしろうとですね。しかし、われわれは国会審議にあたって、この準則をこういう形で公表する制度ができれば、それぞれの業種については、こういう条件内容を持つものであるかどうかという点については、それぞれの専門家なり学者の意見も参考にしながら国会審議をやるのですよ。こういう中身のないものでは審議のしようがないですね。ですから、特別な理由がないんだったらお出しになりますか。私はぜひ出してもらいたいと思う。もし出せないとすれば、私はあとでこれは理事会にはかってでも資料要求として行ないたいと思うのです。
  68. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まだ案というものができていないようであります。しかし、大体いままでの調査によって各業種別の実績のようなものはわかっておる由であります。したがいまして、大まかなこんな見当のことを考えつつありますという程度のものをでき得る限りお知らせするように努力したいと思います。
  69. 藤田高敏

    藤田委員 これは中身一つでありますが、たとえば機械産業については、たとえば電力については、生産施設と敷地との比率をどの程度にするんだ、中身を幾つぐらいに区分するんだ、緑地のスペースは敷地全体の何%ぐらいにそれぞれの業種においてはやるんだというくらいな一つの目安になるようなものくらいは出さなければ、これは国会審議の対象になりませんね。これはもうそんな国会をつんぼさじきに置くような形で審議せいというほうが無理じゃないですか。
  70. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ごもっともなお話でございます。したがいまして、大体こんな見当を考えつつありますという程度のことをできるだけ努力いたしまして提出するようにいたしたいと思います。
  71. 藤田高敏

    藤田委員 それではわかりましたから、具体的にこの国会審議に間に合うように出してもらいたい。これは委員長のほうでしかるべく取り扱ってもらいたいと思います。
  72. 田中六助

    田中(六)委員長代理 国会審議にできるだけ間に合うように提出するようにいたします。
  73. 藤田高敏

    藤田委員 できるだけじゃなしに……。
  74. 田中六助

    田中(六)委員長代理 必ず問に合うように努力いたします。
  75. 藤田高敏

    藤田委員 あすにでも……。
  76. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 いま大臣が申されました線で、私どもの検討中の数字を御披露いたします。
  77. 田中六助

    田中(六)委員長代理 それはいまなさるわけですか。
  78. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 十分ではないかもしれませんが、とりあえず……。
  79. 藤田高敏

    藤田委員 資料を出してください。いまはなにしても、すぐ私はこれについて適当だどうだということは私のほうでもできませんからね。
  80. 田中六助

    田中(六)委員長代理 それではあとでそれを出したらいいでしょう。  あとでこの資料を提出するようにいたします。
  81. 藤田高敏

    藤田委員 いま概略的なことは答弁するというくらいですから、それでは資料にしてきょうじゅうにひとつ出してもらいたい、こう思います。その上でこの部分についての審議はさらに継続したいと思います。私はこの四条の関連部分は一応留保いたします。  次に、この届け出条項でありますが、届け出条項は、これだけ今回の法律改正にあたって公害防止の問題に向けての条件も入ってきたわけですから、そういうことであればあるだけに、これは単なる届け出をやって、六十日の間検討をしてその間に問題点があれば勧告をする、そうして問題点勧告に従わなかった場合には命令を出す、九十日以内にいわば命令を出すということで、その命令に従わなかったら処罰するんだ、こういうたてまえになっておると思うのですが、届け出届け出の行為としてそれは当然やらす、しかし届け出してきた中身によって、そうして勧告の行為も含めて、その内容に不備がある場合には、当然これは訂正もさせなければいけませんが、この許認可を持つ官庁としては、当然私は届け出制と許可制、最初の入り口を届け出制、最後の締めくくりのところを許可制という二段がまえでやはりチェックすることができるようにしたほうが法律としてはよりベターではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  82. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 この点は原案作成にあたって苦労した点でございますが、私どもは、この法律が民間企業の誘導立法であるという勧点から……(藤田委員「何ですか」と呼ぶ)誘導でございます。準則を公表いたしまして、その準則を守って環境住民調和するような立地をしてもらうように誘導していくという従来の公害関係の規制法とは違うたてまえでございますので、まず届け出をしてもらいまして、その届け出内容を検討の結果命令をしていく、こういう立て方にしたわけでございます。
  83. 藤田高敏

    藤田委員 私は、これは通産当局が立案をした、それを一つのたてまえにして考えた場合に限定しても、やはり通産当局は非常に逃げを打っていると思うのですよ。届け出をして、そうしてその中身を検討しましょう、問題が起こったら勧告を出しましょう、勧告に従わなかったら命令を出しましょう、勧告をするようなことがなければ九十日間過ぎたら自動的に工事に着工してもよろしい、こういうたてまえになっておるのですね。私は、そんなことで少なくとも公害問題や何かを完全にチェックすることはできないと思うのですよ。やはりぴしりとやらなければ、この工場は許可にならないんだというそういう許可条項をつくらなければ、日本人というのはどうも届け出制なんというのは、出しておけばいいんだ、命令に違反したって、あとの罰則を見たら懲役六カ月、十万円以下でしょう。特定企業コンビナートをやるような会社にこんな十万円ぐらいな罰金をかけても何の効果もないですよ。このごろは採石や砂利なんかをとる業者なんか、違法だというのがわかっておって石をとって、そうして五万や十万の罰金を先に納めておいて、そうして一つの石が二百万とか三百万するのだから、そんな罰金くらい何ともないのだといってやっておる。少なくとも大企業になると、一つのメンツがあるからそんなことはないだろう、こう思うかもしらぬけれども、私は今日こんな十万円程度の罰金でどうこうするなんという考え方自身が時代おくれだと思いますね。それよりもどうせやるのでしたら、工場立地を認める段階においてもっと厳格なチェックをやる、そうして従来の届け出制は厳格な許可制にしていく、そうしてその工場立地について許可をした以上は、大半の責任は許可をした通産当局にもあるいは環境庁当局にもあるぞ、こういう責任の主体性というものを明確にしていかなければ、公害防止の問題や環境保全の問題は絶対に解決がつきませんよ。私は、そういう点から、これは立法技術上は、時間がありませんからあらためて私どもの意見を出しますが、ぜひ許可制にすべきだと思うのです。この点はどうですか。
  84. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 御意見はわかりますけれども、この法律の立て方全般に及びますので私どもの考えをちょっと言わしていただきますと、公害関係の規制諸立法としましては、従来の排出基準、着地濃度等々、厳格な規制立法を続けていきたい。これは公害立法でございますけれども、同時に土地所有権に関する重大な制限でもございますので、私権制限と公害との公平問題について多々配慮した次第でございます。先ほど数字を申し上げませんでしたが、かりに用地比率が二割とか二割五分あるいは緑地をつくらなければならない比率が二割とか一割五分ということになりますと、従来の企業家の土地所有に比べますとたいへんな制限になってくると思います。  もう一点、さらに許可制ということでありますと、立地段階において許可をした、そのあとは環境について、住民に対して免罪符をとって大いばりでやられるというような弊害も考えた次第でございます。そういう判断から届け出勧告命令の体系が最も妥当ではないかと考えた次第でございます。
  85. 藤田高敏

    藤田委員 私から言えば、全く局長答弁は詭弁だと思いますね。その許可制をとったことによって、その企業主、工場立地をやる者が、社会的に、政府なり自治体、いわゆる許認可権を持つ官庁の許可をとったのだから、たとえば公害の面で言えば、環境破壊につながる公害が起こっても、許可をされておるのだからしかたがないというのは、これは工場立地をやった者と許可をした者との当事者間の問題であって、地域住民立場からいけば免罪符にはならないですよ。これは地域住民サイドからいけば、企業立地をやる者と官庁との間に許可をしたかしないかということで、直接的にその第三者である住民立場とは私は関係は別だと思いますね。そういう点で本腰を入れて、さればこそ、私は当初来から、環境保全あるいは公害未然防止について万全を期せということを目的条項の中に入れろというのはそこであって、全体的に流れているものがどのようにきれいな答弁であっても、公害未然防止して環境保全をするのだと言っても、届け出制と許可制の問題一つを見ても、私は、政府にほんとうに本腰を入れて工場立地段階環境保全の万全を期すのだというかまえがないというふうに思えてしかたがない。ですから、これはぜひひとつ許可制にすることを要求します。     〔田中(六)委長代理退席、委員長着席〕  これは大臣、いま言っておるような私の主張に対してどうですか。許可制にして特別問題はありますか。ないでしょう。
  86. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれのほうの法のたてまえが誘導行政的にやろうという考えでやっておるものでございますから、届け出、それから勧告、聞かなかった場合に変更命令、そういう形で指導して地域との調和を保っていこう、それでぴしっと壁をこうつくるというやり方よりも、むしろかなりの周囲との調和ということを考えてみて、そしてそっちへ引っぱっていく、そういう考え方が基本的にあるわけでございます。事実上結果においては許可制と同じ効果を持つと私は思うのです。ちゃんとこちらの準則に合わないような場合については変更を命ずるわけでございますから、変更を命ぜられて聞かないというようなことは、いまの日本の企業の場合にはあまり考えられないと私は思います。それから、事実上において許可制と同じ効果を生むというような考え方が私たちにあるわけでございます。
  87. 藤田高敏

    藤田委員 いま聞きますと、大臣のおられる時間は半までのようでございますので、なお同僚議員の質問も大臣に向けてあるようであります。若干の時間大臣が時間を延ばしていただくことができれば、それは一番好都合だと思うのです。そのことを要請しながら、私あと一つだけ質問をしたいと思います。  私は、いま大臣答弁になられたようなことであっても、許可制にしたからそのことが妨げられるものではない、こう思います。したがって、これはぜひ許可制にすることをたてまえとして、法律全体の仕組みを部分的に改正せざるを得ないとすれば、そのようにしてでもこれは許可制にすることが望ましい、ぜひそうすべきだということを主張いたしておきます。  そして次に、第六条の関係だけ済ましておきたいと思うのですが、この第六条の三項において、「特定工場に係る事業を所管する大臣は、第一項の規定による届出で当該特定工場設置の場所が指定地区に属するものを受理したときは、遅滞なく、その届出書の写しを環境庁長官に送付するものとする。」こうなっておるわけでありますが、私は、当初来からの質問の趣旨にも関連するわけですけれども、この改正立法が公害環境問題について特に意を用いたというのであれば、この指定地区だけに限定する必要はないのではないか、特定工場といえども公害を発生するおそれのある企業はたくさんあるわけですから、この公害に関する部分、環境保全関連する部分は、環境庁長官に対して届け出書の写しを送付するというようなものではなくて、公害に関する部分については、むしろ優先して公害環境庁長官の手でチェックする、こういう責任を明確にする必要があるのじゃないか、こう思うわけでありますが、そういう意味から言って、この部分については、特定工場及び指定地区に属するこの届け出書は、環境庁長官と通産大臣と同時並行的にこの書類を提出して、公害関係の部分については、環境庁長官が、通産大臣のチェック以前に環境庁長官の責任においてチェックをしていく、こういう仕組みに変えていく必要があるのじゃないか、こう思いますが、どうでしょうか。
  88. 青木慎三

    ○青木政府委員 この届け出書につきましては環境庁長官に写しを送付することになっておりますが、環境庁通産省の関係でございますが、環境庁は、環境保全に関する行政を総合的に推進することをおもな任務としておるわけでございます。しかしながら、環境保全につきましては、各省ともそれぞれの任務を遂行するにあたりまして最重点を置いて行なわなければならないことは当然でございまして、通産省としましても、製造業等の大部分を所管する責任から、工場立地される段階では、環境保全につきましては厳重な注意義務を課すことが私たちの責務だと考えております。他方、環境庁が総合官庁といたしまして果たすべき役割りもございますので、本法でも、この届け出の写しを送付することによりまして十分なチェックをしていただくことになると考えております。環境庁長官は、その権限といたしまして「環境保全を図るため特に必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し環境保全に関する重要事項について勧告することができる。」ということがございますので、環境庁長官のほうで十分チェックしていただきまして、必要があれば通産大臣勧告をしていただく、こういう法律の立て方にいたしておるわけでございます。
  89. 浦野幸男

    浦野委員長 加藤清政君。
  90. 加藤清政

    加藤(清政)委員 大臣が十二時半までという理事会の申し合わせでありましたが、二、三分少しお許しを願いまして大臣に質問したいと思います。  私は、まず本法律案の質問に入る前に、これまで政府によって行なわれてまいりました企業政策並びに公害対策について、大臣の基本姿勢についての御質問をしたいと思います。  政府は、これまで一貫して高度成長政策をとってまいりまして、GNP拡大路線を指導してまいったわけでありますが、私は、このような大企業を中心とする生産の拡大第一主義こそが現在の異常な物価高をもたらし、またインフレを高進させ、日本の全国土に公害をまき散らす要因であったと考えるのであります。北海道の苫小牧から新潟、富山、川崎、四日市、徳山、熊本、果ては鹿児島の離島に至るまで、まさに日本を縦断する形で公害病患者が発生して、国民の不安感を一そうつのらせております。しかも、これらの公害の元凶がすべて大企業による廃液のたれ流しであり、大気汚染であることが明らかになっております。このような実態を見るにつけ、世界の大国にのし上がったわが国の経済力、つまりその中心的にない手である大企業は、国民の生命を代償にして今日の繁栄を築いたものであると言っても過言ではないと考えるものであります。一体、国民の命と引きかえにつくり出された繁栄とはだれのためにあるのでございましょうか。私は、これらの公害病患者の切実な訴えを耳にするにつけ、一方加害者である大企業のいんぎん無礼な釈明を聞くにつけまして、心から憤りを禁じ得ないのであります。  大企業を指導する総元締めの立場にある通産大臣は、このような現状について、いかように感じておられるのか、また公害行政について、どのような方針で対処されようとしておるのか、大臣御自身の率直な見解を伺いたいと思います。
  91. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 率直に反省いたしまして、一九六〇年代の高度成長が行なわれましたときに、もう少しテクノロジーアセスメントとか、環境に対する配慮とか、国民福祉に対するさらなる配慮というようなものが必要であったように思います。現在、水銀問題とかPCBの問題というようなものは、その初期においてもっと厳重に手当てをすれば、今日の惨害をこれだけ大きくすることを防ぎ得たかもしれません。そういう意味において、これはおくればせながらでございますけれども、いま一生懸命手当てをしているところでございます。やはり企業の社会的責任及びそれを保持させる監督官庁の責任というようなものをよく反省をして、こういうような結果が次の時代に起こらないように、今日ただいまわれわれは厳重なる監視と、それから行政措置をしていかなければならない、そのように思います。  なおまた、被害者に対しましては、PPPですか、企業者負担の原則をもって、いま環境庁そのほか政府一体になって処理しております。何といっても被害者自体のめんどうを見るということが非常に大事でございまして、公害に関する補償法等も今国会提出するようにいろいろ努力しておるところでもございます。被害者に対する医療救護あるいはそのほかの手当て等につきましても、私たち企業責任をまず第一にしながらも、国としても、いろいろまためんどうを見ていかなければならない、そういうように思います。
  92. 加藤清政

    加藤(清政)委員 いま公害対策について、大臣から積極的な姿勢をもって取り組むというお話がありましたが、過般のストックホルムにおける国連人間環境会議においても、まさに公害国日本のレッテルを張られたわけでありまして、公害対策に対する大臣の御答弁がいまありましたが、一そうの峻厳さをもって臨んでいただきたい、このように思います。それでは、もう一点だけ大臣にお伺いしたいのですが、今回提出されました工場立地法案の背景につきましてお尋ねいたしたいのですが、これまで通産省が行なってまいりました産業政策企業対策に対する深刻な反省の中からこの法案提出されたものであると考えますが、この点について大臣に率直な御意見を伺いたいと思います。  それと同時に、既存工場公害防止環境施設の整備については、どのような対策を立てておられるのか、大臣の御答弁を願いたいと思います。
  93. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 既存工場の問題につきましては、いろいろ金融上あるいは税法上等のめんどうを見て、緑地を多くするとか、そういうような配慮をして、実施をする工場については、政府としてもいろいろ便宜の措置を講じておるところでございます。ただ、この法案全体を見ますと、新設の工場に対する措置が中心であって、既成の工場に対する措置が弱いと御指摘になりますれば、まさにそういう点があると反省いたします。ただ、既成の工場については、いままで公害諸立法によって厳重な規制をして、その順守を行なわしておるものでございますから、さらにベターな方向に行こうとするものについては、われわれとしては、そういういろいろな援助をするという措置を講じていこう、そういう考えに立って今度の法案ができておるものでございます。
  94. 浦野幸男

    浦野委員長 本会議散会後委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ————◇—————     午後二時三十七分開議
  95. 浦野幸男

    浦野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。加藤清政君。
  96. 加藤清政

    加藤(清政)委員 午前中に、産業政策並びに企業対策に対しまして、中曽根通産大臣に基本的な姿勢と、またこの法案提出されるに至ったそのことが、従来の産業政策並びに企業対策に対する深刻な反省の中から出てきたということで、基本的な姿勢について質問をいたしましたので、これから具体的に内容につきまして、若干質問を続けたいと思います。  それでは、引き続いて工場立地法案に関しまして質問いたしたいと思います。  産業公害総合事前調査は、その調査結果をもとにして、進出企業の業種なり規模を制限したり、あるいは進出予定企業に中止を求めたりするためのものであるのか、あるいはまた各種のデータを取りそろえて企業の利便をはかるというような意味合いのものであるのか、お尋ねいたします。  また、この調査結果は、調査簿を作成して閲覧できるようにするということになっておりますが、これを公表して地域住民の理解を深める一助にしようというような考え方はできないものであるかどうか、閲覧できるにとどめているのはどういう理由か、その点についてお尋ねしたいと思います。
  97. 青木慎三

    ○青木政府委員 お答えいたします。  産業公害総合事前調査目的のお尋ねだと思いますが、大規模工場が集中して設置される地域におきまして、多数の汚染源から大量の汚染物質が集中的に排出されるわけでございますが、これが地域特有の自然的諸条件影響を受けることになりまして、著しく重合汚染を惹起するケースが多いわけでございます。このような地域におきます著しい重合汚染の発生の防止に万全を期するためには、工場建設の段階から未然防止のために積極的な措置を講じる必要があるわけでございまして、この調査は、このような地域における工場の新増設計画を集団的にとらえまして、各種の科学的な汚染予測手法を用いて、これらの工場群からの汚染物質の排出を予測して、この予測された排出予定量を環境受容能力の範囲内に押えるように企業指導を行ない、必要な場合には勧告命令をを出すたてまえになっているわけでございます。  この調査の結果でございますが、このような調査は、現実には通産省が府県の協力を得て行なうことになりますが、この結果は公表いたしまして、そこに進出する企業の判断に資すると同時に、あらゆる人に見ていただきまして、この調査の結果を十分に認識していただくという手段をとるごとになっております。
  98. 加藤清政

    加藤(清政)委員 第四条第一項第一号でありますが、生産施設、緑地、環境施設などについて省令で定めて、その省令で定められたものをもとにしまして、それぞれの面積比率を定めることになっておりますが、これらを省令にゆだねた根拠は何であるか、その点お伺いしたいと思います。
  99. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 生産施設と用地の比率あるいは工場内におきます施設配置等につきまして基準をつくるわけでございますが、これは業種ごとに、また地域の実情に合わせて、わりあいとこまかく基準をつくる方針でございます。技術的かつ詳細なものになりますので、他の法令の例にもならって告示できめていきたいと思った次第でございます。
  100. 加藤清政

    加藤(清政)委員 次いで第四条の第一項の三でありますけれども、「工業団地について一体として配慮することが適切であると認められるもの」についてのみ準則の公表をすることにしておりますが、こうした団地の場合には、本来これを一体のものとしてとらえて、包括的に規制をしていくということをしないと実効があがらないのではないかと思われますが、この点についてはどう考えておられますか。
  101. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 工業団地の規制は、通常工業団地をつくる者がつくりましたあとで土地を分譲して実際の工場経営者にまかすわけでございますので、規制の対象としましては、やはり実際にその土地を使う工場の経営者がよろしい、こういうことで工業団地造成者ははずしたわけでございます。ところが、実際はどうかといいますと、現在までもそうでございますが、地方公共団体または公的機関等が団地造成をする場合が大部分でございますので、団地造成にかかわる政策浸透は、そういう公的機関を通じ、またあるいはその他の法律によりましてできるものと存じております。
  102. 加藤清政

    加藤(清政)委員 第六条に「製造業等に係る工場又は事業場(政令で定める業種に属するものを除く。)であって、一の団地内における敷地面積又は建築物の建築面積の合計が政令で定める規模以上であるもの」ということになっておりますが、敷地面積、建築面積等の規模を政令で定めることにしておることについて、現在どの程度のものを考えておられますか、お伺いしたいと思います。
  103. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 現在の工場立地調査法におきましては、それぞれ三千平米及び九千平米という基準でやっておりますが、今度の新しい法律を適用いたしますときは、もちろんそれが基準になりますけれども、特定工場のすそ切りの規模をどのくらいにするか、また建築面積、敷地面積との関係は、結局先ほどお尋ねのございました第四条の準則のきめ方に関係いたしますので、現行の基準を参考に、準則できめる比率とにらみ合わせた上できめたい、こう考えております。
  104. 加藤清政

    加藤(清政)委員 第六条のただし書きで、指定地区以外の地域に進出する企業については、一定以上の規模であっても汚染物質の最大排出予定量及び予防措置についての届け出をしなくてもいいということになっておりますが、この種の企業に対する規制は、どの省令がどのような法律に基づいて規制をしておりますか。
  105. 青木慎三

    ○青木政府委員 本法に規定する工場立地に伴う公害防止に関する調査は、大規模工場等の設置が集中して行なわれると予想される地域において、多数の汚染源から大量に汚染物質が排出されることによって著しい重合汚染が生ずることを防止することを目的とするわけでございます。このために、著しい重合汚染の発生するおそれがある地域については本調査を行ないます。当該地区を行ない、当該地区を指定地区とする予定でございますが、その指定地区に立地しようとする工場群から著しい重合汚染の発生を防止するために、その地域立地しようとする工場から必要な事項の届け出を行なわせることにしているわけでございます。したがいまして、指定地区以外の地域につきましては、個々の施設ごとに行なわれます大気汚染防止法等の公害規制法に基づく規制が順守されるならば、著しい環境汚染をもたらすおそれはないと考えられますので、この届け出を免除しているわけでございます。
  106. 加藤清政

    加藤(清政)委員 また将来、複数企業が進出をして重合汚染の心配が持たれるような事態になったときには、どのような対策を講じますか。
  107. 青木慎三

    ○青木政府委員 そのようなおそれが生ずる場合には、あらためて指定地区に指定いたしまして、調査を行ない、届け出をとるということにいたす所存でございます。
  108. 加藤清政

    加藤(清政)委員 次に、第十五条の二でありますが、環境施設の整備をする企業に対して必要な資金のあっせんなどの措置を講ずることにしておりますが、地方自治体が工業団地の緑化だとか環境整備を進めようとする場合には、どのような助成措置が講じられますか。お尋ねしたいと思います。
  109. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 十五条の二に関します助成措置で、私どものほうは二通り考えております。  まず、工業団地につきましては、工業団地の環境整備のために直接国が補助金を出す方針でございます。  それから、工業再配置法に基づきまして工業団地をつくります場合に利子補給金を出しておりますけれども、その補給の幅をこの法律に基づいて準則に適するような緑地、環境を整備する場合には広げたい、補給幅を拡大したい、こう考えております。これが補助金をもって団地造成を助成していく一グループでございまして、次に個々の工場につきましては、融資によって緑地造成を誘導してまいりたい、そのためには開発銀行及び中小公庫から低利融資をしたいと思います。  なお、十五条の規定による税制上の優遇措置をかね合わせて緑地造成準則の比率を守らせていくという方式を考えております。
  110. 加藤清政

    加藤(清政)委員 次に、命令に違反した場合の罰則規定が、本法においては最高でも六カ月以下の懲役または十万円以下の罰金というたいへんゆるやかなように感ずるわけでありますけれども、六カ月以下の懲役または十万円以下の罰金という、あってなきがごときゆるやかな罰則であると思うわけでありますが、もっと罰則を強化して峻厳な態度をもって臨む必要があると思うわけですが、その点についてお考えをお尋ねしたいと思います。
  111. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 命令違反に対しまして十六条の罰則がかかります場合、おっしゃいますとおり十万円以下の罰金と六カ月以下の懲役でございますが、この十万円という金額は、現在一般の法令並みに見まして安過ぎるというレベルではないと思います。全般の罰金のレベルがここ十年来の物価動向等に関して低くなっておる一般情勢はございますけれども、他法令並みのレベルだと思います。私どもが苦心いたしましたのは六カ月以下の体刑懲役をつけることでございまして、これも法制局と重々審議しましてかまわないじゃないかという結論に達したわけでございます。  なお、十九条には両罰規定も置かれまして、罰則としてはこの程度でやっていけるであろう、もともと根本の思想が周囲環境住民との調和に主眼を置く法律でございますので、コミュニティー等から好ましく思われないような企業経営、工場立地という場合には、命令違反をしたというだけで、その環境周囲の社会が安住できない性質のものだと思いますので、そういった社会的環境、雰囲気ともあわせ考えるならば、十六条、十九条等で十分ではないかと考えております。
  112. 加藤清政

    加藤(清政)委員 公害がたいへん深化してまいりましたし、特に過般のストックホルムの環境人間会議においても公害国日本というレッテルを張られた今日におきまして、公害に対して十分なる対策を立てていかなければならない。これは工場立地以前の問題として当然のことであろうと思うわけでありますが、特に工場立地をやる場合は、届け出制度ではなくして、むしろ許可制にすべきであると私は考えるわけでありまして、公害防止という立法の精神からいいましても、もっと強い規制をもって公害に対する対策を打ち出すべきではなかろうか、そのように思うわけであります。社会通念上からいいましても、企業公害の深化の過程の中におきましても、もっと強い体罰あるいは罰金刑を課して、その企業に対する警鐘を乱打する必要があろうかと思うわけでありますが、いま局長からの御答弁で、その点ももっと強い体罰を課すべきではなかろうか、このように思います。  この法案趣旨公害防止し、周辺の生活環境との調和を保つための基盤を整備することにある以上、周辺住民の権利を守り安全な生活を確保するために、住民意見、要望を十分に聴取することは当然であろうと思うわけでありますが、この法案では、通産当局と事業者のことしか触れられておらず、肝心の地域住民が置き去りにされているように思われますが、この点についてどうか、お尋ねしたいと思います。  さらに、今後の開発については、地域住民意思地方自治体意向を尊重することなくして進めることはできないと考えられますが、むつ小川原だとか伊達火力発電の現地における反対闘争などの現況とあわせて通産当局の御見解をお伺いしたいと思います。
  113. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 コンビナート周辺住民との調和というのがこの法律による調査及び準則による規制の主眼点でございますが、特にコンビナートの場合には多数の工場が集中しておりますので重合汚染が発生する危険がある。それからまた第二には、主として住民が訴えられますのは騒音あるいは粉じん等による被害の問題であろうと思います。従来の経験から申しましてそういう点だと思いますが、この法律では、コンビナートにつきましては公害防止に関する調査をして、工場立地事前にそういう調査結果を発表すると同時に、届け出勧告命令の制度によって重合汚染を防ごうということが第一点でございますし、第二点は、準則によりまして施設の比率、緑地等を工場敷地内に設けてもらう、こういう仕組みでございます。  その場合に、特に従来ございませんでした工場の敷地内の私有地について、かりにそれが十という面積である場合に、そのうちの二とか三とかしか生産施設に使ってはならない、また、その周辺の二とか三とかは、これはかりの数字でございますが、二割なら二割は緑地にしてほしいという趣旨の誘導行政をいたすわけでございまして、これは私有権の従来の考え方に対しまして非常な制限を課するわけでございます。したがいまして、強制的におよそ工場立地はいけないものだ、許可を受けたものだけがやってよろしいという仕組みも法律論としては一つございますけれども、私どもは準則を公表して、届け出をしてもらって、そして実際上、その地域環境等に関する判断をした上で、要すれば変更の勧告をし、命令をしていこう、こういうたてまえでございます。そしてそのベースになりますのは、無公害工場をつくり、環境注意し、住民調和するということでございまして、その際に、住民意見がある場合、市町村長意見がある場合等は、十分行政上反映さしていくべきだと考えております。  さらに、お尋ねのむつ小川原等の具体的な点につきましては青木局長からお話し申し上げます。
  114. 青木慎三

    ○青木政府委員 ただいま具体的なお話でございまして、むつ小川原の問題が出ましたが、この開発につきましては、現在企画庁のほうで総合的に開発の計画を練っておるところでございます。私どもといたしましても、進出企業につきましては十分地域住民との意思の疎通をはかりまして、十分の了解のもとに工場進出をするように指導してまいりたいというように考えております。
  115. 加藤清政

    加藤(清政)委員 財団法人日本工業立地センターという組織がありまして、われわれのところにも陳情が来ておりますが、工業立地に関するインフォーメーションや調査や研究活動を行なっており、通産省から委託費が出されておると聞いておりますが、この立地センターの主たる経費は自転車振興会からの補助金でまかなっているというようなことを聞いております。立地センターに限らず、自転車振興会は各種団体に対して資金を提供しておるようであります。自転車、競輪事業の一定金額、比率によって、振興会の予算で支出されておるということで、ちなみに昭和四十八年度の収入予算が約二百八十億円、そしてその内訳としては公益事業部が百三十九億で、機械事業振興費として百四十一億円を配分しておるということを聞いておりますが、この振興会の性格及び資金の分配先、補助方針、その額等について、この際、資料の提出を求めたいと思いますが、委員長ひとつお取り計らいを願いたいと思います。
  116. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 ただいまのお尋ねは、日本工業立地センターに自転車振興会から出しております寄金及び自転車振興会がその他諸団体に出しておる補助金、支出金等の資料だと存じます。前者は手元にございますが、後者は相当広範囲にわたりますので、後ほど資料にしてお届けいたします。
  117. 加藤清政

    加藤(清政)委員 それでは、この社団法人日本工業立地センターに対しての委託調査あるいは補助金等についての額並びに自転車振興会からの各団体に対する資金の分配先あるいは補助方針、額、そういう点につきましては、また後ほどひとつお渡し願いたいと思います。  そこで一点お尋ねいたしますが、この日本工業立地センターの役員は、石坂泰三氏を会長にして、財界の人たち理事に二十九名並びに地方公共団体の長、知事だとか市長だとか、そういう人たちが二十九名で構成されておるわけでありますけれども、これに中小企業者の人たちが入っていないわけですね。そこで、中小企業を含めた工場だとか事業場なども地方移転が活発化して工業団地などへの参加がこれからどんどんふえてくると思いますが、この種の団体へ中小企業の代表を加えて指導助言をすべきではないか、そこに中小企業に活を入れて工場立地に実をあげるということになろうと思うわけでありますが、そういう点について、ひとつ財界だとかあるいは知事だとかいう地方公共団体だけではなくして、その中に中小企業者も入れてこういう工場立地の実をあげていくという点についてのお考えをお尋ねしたいと思います。
  118. 三枝英夫

    ○三枝政府委員 お答え申し上げます。  この工業立地センターに現在中小企業の関係者といたしましては、評議員といたしまして商工会議所の専務理事が一名加わってございます。しかし、ただいま御指摘中小企業関係の工業団地の相当部分は公共団体、府県の造成あるいは市町村の造成ということが多いわけでございまして、その意味におきましても、単に立地拠点としての意見反映ということでの県ということだけではございませんで、県の立場中小企業団体を造成するという見地からの意見も反映するという立場でこういうような構成をとらせていただいておるということでございます。もちろん積極的に中小企業の分野におきましても工業団地の連合会あるいは協同組合連合会とかいろいろございますので、その辺に当方として働きかけまして、役員等に、あるいは会員等に御参加いただくということは一向差しつかえございませんので、またそういうような御指導をしたいと思っております。
  119. 加藤清政

    加藤(清政)委員 時間も参りましたので、関連質問として藤田委員が若干残っておりますので、藤田委員にバトンタッチをしたいと思います。
  120. 浦野幸男

    浦野委員長 順序としては野間君になっている(藤田委員委員長のいいように」と呼ぶ)  野間友一君。
  121. 野間友一

    ○野間委員 私は、共産党を代表して、工場立地法について若干の質疑を申し上げたいと思います。  今日ほど大企業本位の政治の中で公害問題、環境問題で、非常に深刻な国民の健康や暮らしを破壊しておるという事態はないと思うのです。農業あるいは漁業、地場産業、これらの衰退を招いておる。  実は私、一九七〇年にフィンランドのヘルシンキで民主法律家協会の総会があって参ったのですが、このときでも、日本の大企業公害は世界的に有名になっている。私たちは、イタイイタイ病とかあるいは水俣病のパネルを持っていって世界の法律家にこれを披露したわけです。最初はぴんとこないわけです。日本のような高度に発達した資本主義国の中で、このような残酷な、残虐な被害が起こるはずがない、最初は世界の法律家がそう言うわけです。ところが、これが現に起こっておるのだということで説明しますと、初めて大企業本位の政治、日本の独占、これがいかに過酷な、いかに残虐な被害を与えておるか、この点についてすべての法律家が大きな怒りをもって大会を開いたわけです。このように世界的に日本の環境問題、公害問題というものは有名になっておるという点について最初に申し上げておきたいと思います。  私たちこの工場立地法を見た場合、このような命や暮らしを破壊するいままでの政治、この中であちこちで国民の猛反撃を食っておる。したがって、そういう前提の上で新しい産業立地工場立地をするのは非常に困難になっておる。そこで、今回の改正によって何とか糊塗する、そういうような背景があってこの法律ができたんじゃないかというふうに私は思うわけです。  そこで、具体的に聞いていくわけですが、まず公害防止事前調査、これが今回の改正によって法制化される。これは二条にありますが、資料によりますと、すでに昭和四十年からこのような事前調査がなされておるわけですね。ところが、事前調査をなされたはずのものでありながら、たとえば鹿島とかあるいは水島その他多くのところで現に公害が発生して問題になっておる。このことについてはすでに御承知のとおりなんですね。これはもし事前調査をしたとすれば、明らかに公害が予測できたはずだと思うのです。ですから、この調査の中で、たとえばいま申し上げた鹿島とかあるいは水島ですね、予測できなかったかどうか。また予測したにもかかわらず、公害そのものを予防できなかった、この原因は一体どこにあるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  122. 青木慎三

    ○青木政府委員 ただいま御指摘事前調査を行なったにもかかわらず公害が生じたのは何ゆえかという御質問かと思いますが、まず一般論で申し上げますと、昭和四十年から四十七年までに産業公害総合事前調査ということで、大気関係、水質関係、合わせて約五十地域にのぼる調査をいたしておるわけでございます。これらの地域におきましては、調査の実施後工場立地が進展いたしましたが、これらの進展が予想されるものなどの開発の態様がいろいろでございまして、一がいには言えませんが、通産省といたしましては、対象地域環境汚染の状況を極力環境基準の範囲内に押えるように指導したものでありまして、ある程度の効果はあがっていたものと言えると存じます。     〔委員長退席、稻村(左)委員長代理着席〕  しかしながら一方、御指摘のとおり、対象地域の周辺にぜんそく患者が発生するなどの公害問題が生じているということも事実でございます。  これらについて考えられる原因を申し上げますと、まず第一に、事前調査が指導方針といたしておりました従来の環境基準そのものが、人の健康を保護する上で残念ながら必ずしも十分な目標値でなかったという点にあると思われます。このために、政府といたしましては、この反省の上に立ちまして、五月に二酸化硫黄にかかわる環境基準を改定するとともに、二酸化窒素についても環境基準を設定したところでございます。これらの環境基準は国際的水準から見ましても相当きびしいものでございまして、こういうことによりまして、今後人の健康の保護に万全を期することができるというふうに考えております。したがって、今後の調査は、これらの新しい環境基準が維持達成できることを目標に進めてまいるつもりでございます。  それから第二には、事前調査に基づいて行なってきました行政指導も、最終的には企業自身がそれをよりどころとして操業することにより担保されるものでありまして、おのずから限界があったという点を反省するわけでございます。  第三には、従来の事前調査は、予算上の制約もございまして調査の精度が高められなかったことや、調査手法の点で未熟な面があったことも私どもは認めさるを得ないと思います。しかしながら、過去十年近い経験を有しますこの調査の手法自体は、実用化されているものとしましては国際的に見ましても高水準にあると思われますので、これは昨年九月、日本で開催されましたOECDの大気管理グループの会合においても認められておりまして、今後さらにこの改善をはかりまして完ぺきなものに近づけて、将来こういう問題が起こらないようにいたしたいと考えております。  それから、御指摘の具体的地点につきまして簡単に一例をあげて申し上げますと、鹿島の関係でございますが、鹿島地区における大気関係の調査は、四十年度並びに四十三年度にコンビナート完成時点を目標年度とした調査を実施しております。コンビナート完成時点においても環境基準を越えることのないように事前の改善指導を実は行なったわけでございます。  硫黄酸化物にかかわります大気汚染の現状は、昭和四十六年度までに測定されておる全測定点におきまして、従来の環境基準には適合しているわけでございます。また、四十五年、四十六年度におきましても汚染が進行している傾向は見られておらないわけでございます。  これを若干具体的に申し上げますと、調査対象時点を鹿島臨海工業地帯の完成時点といたしまして、現在立地している企業、将来立地予定しておる企業二十八企業、三十一工場のばい煙発生施設調査しております。それから、企業から提出されました第一次案では、使用燃料の平均硫黄含有率が一・四%でありまして、風洞、模型及び電子計算機によるシュミレーション予測結果では、一時間値〇・五九二PPMの最大濃度が出現することが予測されたわけであります。このために最大重合汚染濃度が環境基準に適合するよう各企業の煙源の改善を指導いたしました。その結果、使用燃料の硫黄含有率は一・一%に減少しまして、また排煙脱硫装置も採用されましたために、最大重合汚染の濃度が従前環境基準に適合することが確認されたわけでございます。それから、水質関係について申しますと、この調査を四十一年度、四十三年度の二度にわたって行なっております。水質汚濁の現状は、生活環境項目のうちCODは、昭和四十六年に水域類型Bの海域において環境基準を越えることがありましたが、昭和四十七年度は環境基準を達成しております。また、油分については、ときに環境基準を越えることがありますが、有害物質についてはいずれも検出されておらず、環境基準を達成しております。  事前調査におきましては、共同汚水処理場の設置、製鉄所排水の活性汚泥処理等を指導しておりますけれども、コンビナート稼働初期におきまして環境基準を達成できなかった理由といたしましては、まず第一には、共同汚水処理場が活性汚泥処理法でありまして、大規模共同施設でありますために、微生物が馴致されますまでに長時間を要したことでございます。第二には、製鉄所の活性汚泥処理施設の稼働が予定よりもおくれたことであります。第三には、港湾建設、埋め立てのために一時的の影響があらわれたことがございます。  これらの点は、事前調査自体の欠陥といいますよりも、一時的、過渡的な現象でございまして、本法に基づく企業指導の強化等によりまして、今後は十分処理し得るものと考えております。鹿島の場合には、事前調査の結果に基づく指導によって現在では環境基準を達成しておるわけでございます。それからまた、水質汚濁事件といたしましては、四十六年四月に製鉄所のシアン排水による魚の大量斃死がありましたけれども、これは前述の活性汚泥処理施設設置がおくれたことによるものでございまして、直ちに対策を講じた結果、その後問題は生じておらないわけでございます。  以上のように、一例として鹿島の状況を申し上げましたけれども、今後調査の手法をだんだん完成さしていくこと、それから将来新しい環境基準を達成するような行政指導をしてまいること等によりまして、過去の失敗を未然に防ぎまして、無公害工場建設につとめてまいりたいというふうに考えております。
  123. 野間友一

    ○野間委員 いまの鹿島の、通産省で把握しておられる事実は、日弁連の公害対策委員会調査と全然違うわけですね。これについては後日あらためて私のほうでさらに追及したいと思いますが、いずれにしても、先ほど答弁によりますと、調査内容あるいは方法がいま言われたような事情で非常に不十分であったということは認められたと思うのです。それからもう一つ環境基準、これは以前のものが甘かった、こういうことですね。政府みずからが認めた、こういうふうに私は理解するわけです。ただ、それにしてもいまの環境基準を多少きびしくしたとしても、いまの基本法のもとでは排出基準とそれからいわゆる環境基準、これがうまいぐあいにリンクされておらない。だから、規定を守っても総量としてはオーバーする。一体どこに責任があるのか。こういうふうになりますと、責任の所在が明らかでない。こういうような事態が和歌山でも現にいろいろ問題が起こっておるわけですね。たとえば丸善石油、それから住友金属、関西電力それから東亜燃料、こういうところが重合汚染しまして、いろいろと問題が提起されておる。おそらくこの一番根本的な原因は、いま申し上げたようにやはりリンクすること、これをしなければ重合汚染そのものは防げないというふうに私は考えているわけです。この点について御見解を伺いたいと思います。
  124. 青木慎三

    ○青木政府委員 ただいまの御質問は環境基準と排出基準がリンクしてないために実際上の被害が生ずるのではないかというお説かと思いますが、そういうものを最終的に処理するためにはいわゆる総量規制ということを導入する必要があるかと思っております。総量規制につきましては、そのことばの使い方が人々によって必ずしも一致しておりませんし、内容も必ずしも明確でございませんが、一般的には、一定の地域内におきます環境保全上の許容できる汚染負荷量の総量を規制するために、個別的な発生源ごとにその排出量を規制するというふうに解せられると考えております。政府といたしましても、総量規制の導入が望ましいとして、現在環境庁を中心に前向きに検討しているところでございます。しかしながら、総量規制の実施につきましてはいろいろ問題がございまして、環境総合量を決定する必要があろう、それを事業者別の配分に関してどうすべきかというような問題点がございます。特に、規制の実効を確保いたしますためには観測方法について技術的な問題がございまして、総量規制の全面的採用はまだ現在されていないのが現状でございます。  この法律におきましては、直ちに総量規制を行ない得ない現状を前提としながら、工場立地段階でその最大排出予定量に着目いたしまして、総量規制の考え方を生かしながら、工場立地それ自体あるいはその工場規模を規制することをねらいとしているものでございます。
  125. 野間友一

    ○野間委員 日本列島改造論の中でも、総量規制、これは田中総理みずからこれがなければだめだ、こういうように言われているわけですね。環境庁も、いまの話にありましたけれども、近い将来総量規制をやっていく、これがなかったら公害を防げない、こういう態度をとっておると思うのです。この点について通産省見解を確認を求めておきたいと思います。いまの話によりましても、総量規制がなかったらだめだ、いまリンクされていないという事実は認められると思いますけれども、御答弁願います。
  126. 青木慎三

    ○青木政府委員 環境保全をするためには総量規制という方法が理想的であるということは私どもも承知しておりまして、ただいま申し上げましたようにいろいろな問題点はございますけれども、この問題点を極力早く克服しまして総量規制を実施するという方向で通産省も検討してまいりたいというふうに考えております。
  127. 野間友一

    ○野間委員 さらにその点についてですが、具体的にいつごろからやる予定であるのか、単に将来の問題としてそういう方向で検討したいという趣旨だけなのか、その点についてひとつお答え願いたいと思います。
  128. 河野義男

    ○河野説明員 ただいま公害保安局長からも御答弁がございましたように、環境庁におきましても総量規制の導入につきまして検討いたしております。  問題点としては、その地域に対して汚染物質の排出許容量の算定をどのようにするかという問題あるいはその排出許容量を個々の企業にどのように割り当てるかとか、いろいろ技術的な問題がございます。現在総量規制の基本となります地域環境容量の設定の手法を開発するために、コンピューターシミュレーションの手法によりましてその評価方法を検討しております。今年も引き続きやっております。これらの結果を踏まえまして、できるだけ早い時期に総量規制方式を導入したい、かように考えております。
  129. 野間友一

    ○野間委員 できるだけ早い時期というのはいつごろを想定されておるか。
  130. 河野義男

    ○河野説明員 現在そういう調査を実施しておりますので、その結論を待って検討し、でき得れば四十九年度中には結論を得て実施したい、このように考えております。
  131. 野間友一

    ○野間委員 いま四十九年というのが一つのめど、こういうふうにお聞きしていいわけですね。これでは私はやはりおそいと思います。可及的すみやかに、早く調査をして、これの導入をぜひ至急にきめていただきたい、こういうふうに強く要望しておきます。  次に問題を進めますが、三条の関係でお聞きします。ここには工場立地調査簿の規定がありますが、これは一般に閲覧することができる、こういう規定になっております。先ほども同僚委員のほうからも質問があったわけですが、いわゆる事業者の秘密に属する事項、これは通産大臣答弁されましたけれども、あらためて具体的に、この秘密に属する事項について、何を考えておるのか、私はこれはもう取っ払うべきだというふうに考えます。大臣答弁されたわけでありますけれどもさらにあらためて、ひとつ明確な答弁をいただきたいと思います。
  132. 青木慎三

    ○青木政府委員 先ほど大臣からも御答弁ございましたように、公害に関しては極力こういう秘密が少ないことが望ましいわけでございますが、各企業におきます生産技術には、特許あるいはノーハウ等、企業の機密に属することがございますし、場合によりましては国外からの技術導入にかかわる分もございます。そういう面から申しますと、国際信義の上からもある程度機密を保持しなければならない面があることは御理解願えると思いますが、そういう最小限度の面を除きまして極力公開をいたしまして、第三者の安心を得るように処置してまいりたいというふうに考えております。
  133. 野間友一

    ○野間委員 大臣は、たしか工業所有権、それから特許、それからノーハウ、この三つをあげたと思いますが、そういうふうに確認していいわけですか。これ以外のものについてはすべて公開する、こういうふうに理解していいわけですか。
  134. 青木慎三

    ○青木政府委員 大臣がそう御答弁いたしましたとおり解釈していただいてけっこうだと思います。
  135. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、これらがいわゆる自然環境あるいは人間の健康とか生命を破壊する、こういう公害で対立した場合にはどうするかということ、これも同僚議員のほうからも聞かれましたけれども、そういう矛盾が必ず出てくると思うのです。この場合に、いわゆる企業の秘密というベールでこれらを公開あるいは公表しない、閲覧させない、こういうような結果が私は必ず出てくと思うのです。そういう場合にどう対処するか。私はやはり企業の秘密、特にいま例示したノーハウやあるいは特許、工業所有権、これらと相対立、才盾する場合には、やはり人間の命を環境破壊から守っていくという立場から積極的にこれらを明らかにするという立場こそ望まれる。それは正しい立場であるというふうに考えますが、いかがですか。
  136. 青木慎三

    ○青木政府委員 ただいま御指摘のいわゆる企業の機密と人間の健康を守る立場とは相矛盾するという場合でございますが、こういう際に、われわれとしてはいろいろな技術的な方法があると考えられるわけでございます。すなわち、企業の機密に触れないで実際に外に出る危険な物質を十分明らかにするとか、ノーハウに触れないで外側への有害物質の排出との関係を説明するとか、いろいろな方法があると思いますので、極力そういう方法によりまして、真に外に出ます有害物質については明らかにする、しかし、ノーハウについてはある程度秘密を守る、こういう両立する方法があろうかと思われますので、極力そういう方法によってこういう事態を解決していくべきだというふうに考えております。
  137. 野間友一

    ○野間委員 環境庁いかがですか。
  138. 河野義男

    ○河野説明員 環境庁といたしましては、そういう有害物質の排出の実態を把握するという点から考えていかなければならぬと思います。その場合にノーハウとの関係が出てまいりますが、通産省と十分協議いたしまして、ノーハウの保護それから有害物質の排出の実態と両立させるように考えていきたい、かように考えております。
  139. 野間友一

    ○野間委員 環境庁がそういうことじゃ困るじゃないですか。(加藤(清二)委員「基本法できまっているよ」と呼ぶ)そうですよ。人間の命と健康、これを最も大切にする立場からあるわけですよ。ですから、私が聞いているのは、矛盾した場合に一体どういう立場に立つか、人間の命を犬切にする立場に立つのか、あるいは企業立場に立つのかそういうことをお聞きしておるわけです。あるいはあなたのほうで矛盾はないというふうに考えるのか、この点についてどうですか。
  140. 河野義男

    ○河野説明員 御指摘のように、環境庁立場といたしましては、人の健康を保護するということが最優先する立場でございます。その立場に立ちまして、それと関連のあるそういう有害物質の排出を把握するという技術的な方法であろうと思います。それを貫きながら、一方では法のたてまえの、法に規定してございますノーハウの保護、この両方を両立させる道を見出していきたい、かように考えております。
  141. 野間友一

    ○野間委員 どうも歯切れが悪いわけです。そういう歯切れの悪い答弁をしてもなおかつ企業を保護しなければならぬのか、そこが問題だと思うのです。どちらの立場に立つのか。もしそれが矛盾した場合に、あなたのほうでは、当然企業立場でなくて、命を公害から守っていく、こういう立場にはっきり立つべきだと思うのです。私が聞いておるのは、いま申し上げたように、特許の関係とかあるいは工業所有権、これらと相矛盾した場合に、はっきりと人間の命を守る立場に立つ、こういう答弁を私は求めておるのです。いかがですか。
  142. 河野義男

    ○河野説明員 先ほど申しましたように、環境庁立場は人の健康を保護するという立場に立つわけでございます。     〔野間委員「だから聞いておるのです」と呼び、その他発言する者あり〕
  143. 稻村佐近四郎

    ○稻村(左)委員長代理 発言を求めて発言してください。
  144. 河野義男

    ○河野説明員 環境庁は、人の健康を保護するという立場に立ちまして、それと関連いたしまして、たとえば有害物質などの排出の実態等を把握していかなければならぬ、かように考えております。
  145. 野間友一

    ○野間委員 前段は、私はそういうふうに理解いたします。後段は、最後の答弁で飛ばしたところは、矛盾した場合にはやはり国民の健康、命を守る立場に立つ、そういう立場を貫くからということで抜いたというように私は理解しておきます。  それから、工場のいろいろの物質、これの生産高、生産量ですね、こういうものについては、これは企業の秘密に属さない、これは当然閲覧に供する、こういうように理解していいわけですね。
  146. 青木慎三

    ○青木政府委員 環境保全するために必要な範囲内においては当然明らかにすべきでございますので、個々に届けられるような有害物質に関係のあるものの生産に関しましては記載するように解釈されてけっこうだと思います
  147. 野間友一

    ○野間委員 その点は私どもも理解いたします。  それから四条に移ります。準則ですね。工場立地に関する準則が公表される、こういうことになっておりますが、まずこのきめ方の問題ですね。これはやはりこの法案の一番かなめになるもの、こう見ても差しつかえないと思いますが、緑地の比率とか、あるいはその他の事項、これらについて、きめ方の問題として単に「関係行政機関の長に協議」と条文にあるわけですが、これだけではなしに、やはり地方自治体の長であるとか、あるいは直接もろに被害を受ける地域住民意見あるいは要求、こういうものを反映させてやはり準則をつくらなければならぬ。あとでまた触れますが、国のこういううしろ向きの姿勢よりも、むしろ地方自治体によっては、もっと前向きに現に緑化を進めておる。国のうしろ向きの政治にもう業を煮やして、もっと前向きに進めておる、こういう事実もあるわけですね。そういう意味で、地方自治体あるいは住民意見、要求、こういうものを聞いてやはり準則をつくる、こういう立場を堅持しなければ、単に関係機関と協議する、これだけでは十分な準則はできない。これは明らかだと思うのです。なぜこういうふうにしないのか、御答弁願います。
  148. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 第四条に「審議会の意見をきいて」とございますが、この審議会は、現在すでにあります審議会をこの法律で換骨奪胎して、その審議会へはかるわけでございますけれども、ここには、現在でも自治体の長、知事が数名入っておられます。もちろんそのほかに各省の責任者責任的地位にある方あるいは学識経験者等で構成されておるわけでございますが、客観的な判断及び地元意見を代表していただくということでは、私どもはこの審議会の意見を十分活用していきたい、こう思っております。準則はもちろん業種別につくりますけれども、やはり全国一つの基準でございまして、そしてその準則を公表して、今度その立地をする地元の事情、その準則と地元の事情とを兼ね合わした判断によって届け出を出してもらう。その届け出を受けた政府側は、その地元の事情に合わせて判断して勧告をするかどうかをきめていく、こういうたてまえでございます。
  149. 野間友一

    ○野間委員 この準則は、これは全国で通用するものをつくるわけで、一つでしょう。そうですね。そうしますと、関係機関の長との協議だけではなしに、たとえば工業用水審議会の意見を聞くと確かにありますけれども、この場合にここでいう工業用水審議会というのは一つですね。そうですね。だから、一つ審議会で全国的な事情が把握されるかどうか。準則そのものがやはり私は心臓になると思うのです。業種別あるいは地域性、そういうものを十分考慮してやるとすれば、単に東京にぽんとあるこの一つ審議会で、全国的なそういう地域的なあるいは業種的なものを全部把握して、すぐれた準則ができるのかどうか、非常に私は疑問に思うわけです。  そこで、お伺いしたいのは、工業用水審議会の委員の構成、これはあとでまた資料でいただきたいと思いますが、きょう差しつかえなければ、ここでひとつ口頭で答弁していただくというのが一つ。  それから、いま私が申し上げたような意見に対してどのようにお考えになるのか。  もう一つは、最低基準ですね。こういうものを法文化する、法律に明記するということが必要になると思うのですがね。これはいろいろな基準を準則の中できめるわけでしょう。緑地とかあるいは環境施設ですね。ですから、これを最低限度、最低基準を法律にやはり明文化する。これをなぜやらないのか、その点についてもお答え願いたいと思います。
  150. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 審議会の委員名簿は後ほど一部お届けをいたしましてごらんいただきますが、工業立地及び工業用水審議会の委員は、大学の先生等また新聞社の論説委員等を含めて十名ばかり、さらに各省庁の次官クラス等が十五名以上、県知事が四人、かつ商工会議所の専務ですとか、化学工業会会長、機械工業連合会副会長という工業団体の会長もしくは副会長をしておられるような方々が六、七名という構成でございます。  お尋ねの全国一本の準則が意味があるのかということでございますが、私どもは、今度の御審議いただいておる法律が誘導立法であること、かつ地域に重点を置いた立法であることから、最終的な法による運用はきわめて地域性の強いものだと思います。しかし、それでもまず基準がつくれないものかということで資料を集めておりまして、私どもが行政府として集められました資料は審議会にも提出して御審議をいただくわけでございます。  ここの国会で御審議いただく際に、それがどこまでいっているのかという御質問が午前中もございましたので、資料を委員会のほうに提出する予定でございますが、現在の御討議の参考に申し上げますと、私どもは、電力なり鉄鋼なり化学あるいは紙パルプ、繊維等、業種別に現在の実情をいま統計的に集めております。しかも、その生産施設工場の敷地との関係は、過密地域においてはどうであるか、過疎地域においてはどうであるかというようにして集めております。その場合に大体業種別の大きな傾向がつかめてまいりましたので、その資料を提出するつもりでございます。たとえば、電力の場合に、全国的に見て四割ぐらいが通常である。かりに一〇〇の敷地を持っていれば四〇の施設をつくるのが全体であるという場合に、それでは全国の準則はどうするかといえば、私どもは、もっといろいろな事情を審議会その他御専門の方の意見を聞いてあれいたしますが、三割なり五割はカットして準則をきめたい。五割カットすれば二割になりまして、今後電力施設の場合には百坪の土地を入れたら二十坪しか生産用地はつくれないという結果になるわけでございます。鉄鋼の場合にどうであるか。これは六〇ぐらいという数字もできておりますし、化学は六〇ぐらい、紙パの場合は四〇ぐらいというような数字が出ております。そういう実情を十分つかんだ上で準則をつくる。それからもう一つ大事な点で、工場敷地内の生産施設なり緑地の位置あるいは公害防除施設の位置について政府が介入することになりますが、その場合も基準をつくっていきたいと思います。これはできるだけ法律に書くほうがいいとは存じておりますけれども、こまかい技術的なものでありますので、他の法令にならって政令以下の段階に譲ったわけでございます。  これを適用する場合にこの準則の規定をどういうぐあいに運用していくかということは、あるいはまた後ほど御質問があるかもしれませんが、準則を示して届け出をもらいまして、受け取った届け出審査しますときには、その工場の周辺の事情、たとえばそれがほんとうに森林地帯のまん中にできた工場の場合には緑地比率の要求も変わってまいります。密集地帯につくる場合には、その密集地帯も隣が工場でつながっている場合と住居が周囲を取り巻いている場合では違ってまいりますので、そういった地域性は、実際の勧告、変更の段階でむしろその地域性に重点を置いた判断をしていかなければならないと考えております。
  151. 野間友一

    ○野間委員 幾つか問題があると思いますね。たとえば、基準の問題でも政令にまかさずに、これは別表か何かでやはり基準は基準としてきっちり法律上明文化する。たとえば農地法の別表なんか非常に詳細に各府県別にあるように、これは別表でできると思うのですね。ですから、そういうことをして、そういう地域性あるいは業種の特性によって多少弾力的に考えていくということであれば、あるいはそれなりにわかると思うんですが、すべてこの準則にまかす、こういうことになりますと私はやはり大きな問題がある、こういうふうに思います。  それから審議会の構成の点について、いま口頭でお聞きしたわけですが、その中にやはり最も肝心な、切実な被害を受ける地域住民の代表、これはやはり欠落しておる。御承知のように、いま全国で命と暮らしを守るいろいろな会議、組織がつくられておりますね。こういうものが全く入ってない。あるいは全国の公害反対運動の先頭に立っておる良心的な科学者の集まりである科学者会議、こういうものも全くこの審議会の中には盛られていない。考慮されていない。こういうことでは、私は、やはりほんとうに環境破壊から命や暮らしを守るという、そういう立場に徹するというふうにはならぬと思うのですね。何かイチジクの葉っぱみたいに、もともと審議会というものはそういう傾向が強いわけですが、何かつくって、客観的な第三者の公平妥当な者が考えたのだからということで逃げを打つ、そういうことがいまの審議会の構成から十分うかがわれる、私はこういうふうに思うわけです。したがいまして、この審議会のメンバーの中に、いま申し上げたように一番切実に被害を受ける、そういう者、あるいは先進的な、良心的な活動家、科学者の集まりである科学者会議、これは学術会議でもけっこうだと思いますが、こういう方々をどうして入れないのか。だから審議会の人選だって非常に恣意的に通産省が一方的にきめておる。結果的にはこういうことになると私は思うのですね。このあたりについて、さらに明確にひとつ疑問にお答え願いたいと思います。
  152. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 午前中に大臣も申されましたが、自治体の各市町村、県、これらの組織を現在では一応住民意見が反映されるべき組織、こう考えておるわけでございますが、私どもの審議会でも、そういう意味から県知事代表、それから村長会代表、市長会代表の方が入っております。先ほど四名と申し上げましたが、知事は二名、村長一名、市長一名の方、そのほかにこの審議会には臨時委員というあれがございまして、それでまた特別御意見を持っていらしゃる知事等が入っておられます。そういう現在の自治体組織を通じまして、一般的な住民意見を反映させていきたい。それから、学識経験につきましては私どもも多大の努力を払ってきておりますので、この審議会では、立地なりあるいは工業用水のそれぞれ少なくとも私どもが入手しております情報では斯界の権威と言えると思えますような先生方が入っておられまして、大学の教授、名誉教授だけでも数人入っておられます。
  153. 野間友一

    ○野間委員 やはりそういうお答えでは、私はもうどうしても納得できないわけですね。大体知事とか市町村長、これは実際の具体的ななまの被害の事実を知らないのが普通なんです。だから、いつでもどこでも問題になるのがこの審議会の人選、構成ですね。たとえば、いま和歌山でも、港湾審議会というものが、この中でいまもめております。これは丸善、東亜燃料、こういう石油精製工場、住友金属工業——埋め立てに関して知事のいわば私的な諮問機関として港湾審議会を持ちましていろいろやっております。その人選を見ても、国の機関関係と、それから与党、和歌山では自民党ですが、この県会議員は、社会党は一人入っておるだけですね。そのほか、企業の代表ということで、やはりほんとうに切実な被害を受ける者がなまの自分の実態を訴えて、そしてよくしてほしい、こういう要求を貫く、そういう人選がやられていない。これはいまの工場立地及び工業用水審議会、これだけじゃなしに、あらゆる国あるいは地方自治体機関の中では構成の不公正ということが問題になって、住民が非常に怒りを持っていろいろと運動を進めておるわけですが、こういう点で、やはり何と言いましても、なぜこのなまの被害を受けた者を入れないのかということについて、私はどうしても納得できないのですね。ですから、このような審議会しか考えられないとしたら私は反対せざるを得ないと思うのです。  それから、この準則について、いまの話では、過疎過密、そういう地域の特性も考え、あるいは業種的にもいろいろ電力とか石油精製とかいうものを考えてつくるのだという話がありましたけれども、これはかなり時間をかけて、正確に全国的に十分調査した上で練り上げて、業種別についても単なる大ざっぱなものでなくて、やはり一つ一つできるだけこまかくこういう規制をしていく、こういうことが必要ではないか。これはあとでまた準則等のあれをもらった上でいろいろ検討して、さらに質疑を進めていきたいと思います。私はそういうふうに思うのです。ですから、どのくらい、いつごろつくられるのか、それまでの具体的な作業の過程ですね、こういう段取り等についてひとつ答弁を願いたいと思います。
  154. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 準則は、現在私どもの考えておりますのは、業種別に全国の実情を集めました上でつくっていきたい。地域別には、それを適用していきますときに、その届け出のありました周辺工場地域状況と準則との関係を十分勘案してやっていきたい、こう考えております。この法律を御審議いただいた結果、公布になりますれば六カ月以内につくる予定でございますが、私どもは審議会の御審議さえ順調にはかどるならば、期間内に早目に準則をつくり上げたいと考えております。
  155. 野間友一

    ○野間委員 準則の法律的な拘束力はいかがなものですか。つまりいまのお話によりますと、一応業種別に準則はつくっていく、ただし、地域の特殊性によって何か弾力的に運用するという趣旨に私はいま聞いたわけですが、準則そのものが法律上の拘束力があるのかないのか、ないとすれば、これはつくったところで単に運用あるいは行政指導の面でうやむやにされる、こういう危険性、可能性が十分あると私は思いますが、どうですか。
  156. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 その点はこの法律一つの核に当たる点を質問をいただいたと思います。この法律は、先ほど申し上げましたように誘導立法として、つまり無公害工場をつくっていくのは、何といっても環境の規制法、着地濃度なり排出基準が本筋だと思います。これは環境庁、各省で現行法をあるいは強化してやっていくわけですが、それをさらに別な面からとらえて重合汚染なり総量公害立地段階でどこまでできるか。そうなればどうしても土地所有権との関係になります。かつ、先ほど審議いただきました企業の機密の問題になります。そこで、できるだけ政府が誘導をして、そして立地段階から公害を除去できる形にしていこうという法律でございまして、したがって、届け出が出ますと、その届け出はもちろん準則に乗ってもらわねばいけません。準則は公表いたしますから、周知の準則ですから、かりに用地比率二割ときめたならば、届け出は二割以内で出してきてもらわねば困りますが、それがもし違反しておった場合、これは政府は二割と準則でいったのに、あなたは二割五分やっているから勧告します、勧告に従わなければ命令をいたします、命令に従わなければ体刑をつけるか罰金を取ります、こういう仕組みでございますので、勧告命令は明らかに法的な効力を持っておりまして、その効力の基準になるものが準則でございます。  それで、先ほど来御説明申し上げて、先生のほうで、ちょっとそこのところの運用がとおっしゃる点は、結局、準則は数字できちっと公表いたしますが、届け出が出てきた、それが二割五分と出てきた、そのときに政府勧告するかどうか判断する場合に、その周辺地域環境住民意見というものを個別的に判断いたしまして、そして勧告命令以下につながっていくたてまえでございます。
  157. 野間友一

    ○野間委員 いや、先ほど答弁でお聞きしたら、たとえば森林ですか、あるいは山林の中でつくる場合、あるいは過密の地域でつくる場合で、何か違いがあるというようにお聞きしたわけです。だから、それは準則でそういう割合とか何かについてつくる場合に、その比率が違うという趣旨なのか、あるいは一律つくるけれども、そういう地域の特性とかいろいろなものによって弾力的に運用をするという趣旨なのか、ちょっと私は理解しかねたものですから、お聞きしたのですけれども、そうすると、そうでなくて、要するに準則をつくって、いろいろ割合とか何かつくられた場合には、その規格というか、準則ですね、基準に合致しない場合にはペケだ、一律にそういうふうに評価される、こういうふうにお聞きしていいわけですか。
  158. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 準則は、現在、全国一本で、業種別には事情によって違いますが、一本で、数字をきちっとつくって、それを適用していくつもりでございます。それで、それを見た当業者が、ある特定の地域工場をつくる場合に、それはその地域でその業種が鉄鋼業であればはっきりしているわけですから、その準則を頭に置いて、二〇であれば一八とか一七とか出してくる。ところが、その場合に、先ほど例を申し上げましたので話さしていただきますと、生産施設の比率のほかに緑地率というのがございまして、緑地を何%つくりなさい、しかもそれは工場の周辺につくりなさい、それがかりに土地の一五%は緑地にしなさいという準則ができたといたします。それで鉄鋼業者が一五%緑地をつくらねばならぬということを承知の上ですけれども、たまたまその自分のつくる立地帯が森林に囲まれておって、しかもそれが地域指定として長く緑地であることが明らかである場合、準則は一五%だけれども、こういう理由で自分は二%で届け出たいということもあろうかという例でございます。その場合には、その地域の事情を勘案する。逆に申せば、過密地帯で、しかもそれが百坪なら百坪程度の小さい住宅の密集しておるところである場合には、準則は一五%の緑地でございますが、その場合には、実際上そういう周辺住民環境を破壊しないようにその届け出を扱う、こういう運用でございます。
  159. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、準則そのものにはいま厳密な意味での拘束力はないわけですね。たとえば地域的に見ると、地域の特性に応じて準則をつくるのじゃなくて——業種別には、なるほど私いまのお話はわかりましたが、全国一律の地域性というか、地域の特性に基づいて割合というか、基準をつくるというのじゃなくて、いまの話によりますと、その地域の特性に応じて、あるいは上げたり下げたりが運用上やれるのだということになりますと、これはまさにしり抜けになると思うのですね。これは運用上の妙によってはどうにでもなるのじゃないか、こう考える以外にないと思うのですね。それがどうにでもなるとすればですよ。つまり準則そのものが厳密な意味での拘束力はないのだ、こういうことになるのじゃないでしょうか。どうですか。いまの話を私はそういうようにお聞きしたのですが、どうですか。
  160. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 そこは法律論として強行規定であるかどうかということにつきまして、そのまま形式的にお答えすれば、非常に微妙な点がございます。ただ、実定法としましては、先ほど申し上げましたように、準則に反する届け出に対しては、政府国民に対して勧告の義務があります。したがって、勧告をする、勧告して命令する、命令に対して罰則がある。こういう意味では、強行規定でございます。ただ、お手元のたとえば第九条の二項の一号をごらんいただきますと、「第四条第一項の規定により公表された準則に適合せず、特定工場の周辺の地域における生活環境の保持に支障を及ぼすおそれがあると認められるとき。」こういう実定法の規定になっておりまして、準則に適合しなければすぐ九条の勧告を出すかというと、そこは、ここで周辺地域の状況を判断して勧告を出す、こういうたてまえになっております。これは私どもは、もちろん審議会にもかけ、公表した準則ですから法律上守ってもらう、準則に対する違反は、勧告するという心がまえでおります。したがって、しり抜けの法律というわけではないと思います。ただ、ここに行政裁量の余地が残っておりますので、それはいい意味でも、悪い意味でも、この周辺の判断ということが一つよけいに入ってくると思います。
  161. 野間友一

    ○野間委員 これは大事なところなので重ねて聞くわけですが、法律の拘束力あるいは法律の規定の効果ですね、これは訓示規定と強行規定の二つがあるわけですね。先ほどの話によりますと、たとえば森林で囲まれた工場施設であれば、かりに一五%という準則があったとしても——五%という緑地率ですね。いま緑地の例が出ましたけれども、そういうような地域の特性にかんがみて緑地を一三%でいい、こういう場合もあり得る。こういうことでしょう。先ほど言われましたね。そうすると、この準則そのものが一応法律では規定されても、これはいわゆる強行規定、拘束力があるのじゃなく、これは訓示規定なんじゃないか。訓示規定と強行規定のあいのこということはないと私は思うのですね。そういう意味で、もし運用によって、いろいろと変わってくるとすれば、これは準則そのものは何の役にも立たない、単に規定があるだけだということになって、これはどのようにでもくずしていけるのじゃないか、こういうふうに考えますね。その点どうですか。
  162. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 準則をもとにしまして、違反したもの、適合しないものは勧告をするたてまえでございますが、この九条二項一号のような個別的事情によってその勧告もしない場合が法律上あるという、そういった例外的な範囲におきまして、先生のいわれる訓示規定ということもまたむべなるかな、妥当なことだろう、こう考える次第でございます。
  163. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、これはやはり私は問題があると思うのです。これは繰り返しになるから言いませんが、結局運用によって原則がくずせるということになるわけですね。そうしますと結局これは訓示規定である、こういうふうに考える以外にないと思うのです。これはやはりもっと強い拘束力を持たす、そういう意味を付加しなければ、つまり強行規定というふうに理解しなければ、私はこれは大問題だ、このように考えるわけです。  それに関連して聞くわけですが、緑地あるいは生産施設、それからさらに環境施設、これは広い意味では環境施設の中に緑地が入る、こういうような記載の条文もありますけれども、それぞれの割合、いま業種別に電力とか石油精製とかパルプとかいろいろありましたが、具体的にいま業種別に大体何割くらい考えておるというような構想があるのかないのか、もしあるとしたら、それを記載した資料をきょうじゅうにいただけるのかどうか、その点ちょっと聞いておきたいと思います。
  164. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 現在の印刷状況では一時間以内にお届けできる予定でございます。
  165. 野間友一

    ○野間委員 それを見てものを言え、こういうことですか。私は、その中に何割という規定が業種別にあるのか、こうお聞きしているわけです。
  166. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 その中に私どもの考えておる案を業種別に実績をずっと並べまして、そして大体一割から四割の間で各業種の実態に合わせてきめていこうと考えておりますという案を明示してあります。
  167. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、かりに本案ができまして、そして審議会を開いて、その中でその割合、比率を検討する、こういうことになるわけですね。その経過からすれば、そうなるわけですね。そうしますと、いまこの法案審議している段階では、業種によってどの業種に一体どれだけの割合を定めるかということについては全くの白紙ということになるわけですか。それとも、従前のいろいろな実績というか、具体的な例から、このあたりに線を引くのが望ましい、そういう一本の線、そういうものを具体的に考えられておるのかどうか、そのあたりがよくわかりませんので、あとはもう審議会まかせ、だから法律さえ通ればあとは審議会でどんなにしてもそれでいいのだ、そこで法案の中に最低基準をやはりきっちり盛り込むべきだ、特に事は重大ですから、そういうふうに私は思うのですが、どうですか。
  168. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 私どもが入手しました業種別の実績と全国平均を書いてございます。そしてその実績からものによっては半分にすべきだと思うし、ものによっては三割ないし五割強化すべきものだと思うという私どもの事務当局意見も付してございます。そして最終的にはそれぞれ業種によって一割から四割くらいが妥当だということでございまして、したがって、それぞれの考え方、体系からいえば、その資料をごらんいただけば、この業種は大体このくらいだとおわかりいただけると思います。
  169. 野間友一

    ○野間委員 それじゃそれを見た上でさらにまたその点についてお聞きしたいと思いますが、しかし、いずれにしても、いままでの実績というか、具体的な事例がら割り出していくというのは、私はおかしいと思うのです。つまり、既存の工場立地の中で、コンビナートとかいろんなそういうところで公害の被害が現に出ているわけですね。ですから、そういういままでの具体的な例から割合を判断するのではなくて、もっと抜本的にやはり人間の命とか、あるいは環境の破壊からどう自然を守っていくかというもっと高度な見地から積極的に提示をしなければ、私は公害をなくすることはできないと思うのです。  そこでお聞きするわけですけれども、この法律でいう緑地というものは一体どういうものであるか、お答えを願いたいと思うのです。和歌山なんかに行きますと、石油工場で山を削って緑のペンキを塗っておるわけです。これが公害防止だ、こういうわけですよ。だから緑地とは一体何なのか、これをひとつお答え願いたいと思います。
  170. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 先ほどの点はおっしゃるとおりでございまして、私が全国平均の三割ない、五割に減らしたいというのもそういう意味でございまして、何も比率が問題なのではなくて、その工場の実態に合わせて公害防止するということから諸種の条件を判断しておきめいただく、こういう趣旨でございます。  緑地もそういうことでございまして、緑地だけを論議すればおかしなことにもなりますが、趣旨は亜硫酸ガスなり炭酸ガスのような有毒ガスの吸収、吸着による浄化効果を見る、あるいは粉じん、ミストなどの防除効果を評価する、あるいは近隣に対する騒音の防止、こういう意味で緑地というものが取り上げられたわけでございまして、そういう目的から、私どもの定義は、樹木、芝生、その他これに類するような植物が植えられている土地であって、一定の維持管理がなされている地帯こういうぐあいに定義づけていきたい、こう思っております。
  171. 野間友一

    ○野間委員 芝生は私は山にペンキを塗るのとそんなに変わらぬと思うのですがね。要するに、環境の美化という観点から、芝生とかペンキというものは、ある意味では意味があったとしても、芝生を植えたからこれで公害が遮断される、そういうようにまじめに考えられたとしたら、これは私はどこかおかしいと思うのです。おそらくそういうことまで考えられていないと思うのです。芝生は一体どのような効果があるのか。さらに植林の予定地、樹木を植える予定地、こういうものを緑地に含まれるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  172. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 恐縮でございますが、第二番目は何が含まれるかとおっしゃったのですか。
  173. 野間友一

    ○野間委員 現に木が植わって、そして青々としておるというところでなくて、土地はあるけれども、将来そこに木を植えて緑化するという予定地、それも緑地になるのかならないのか。つまり植林して、木を植えて、植栽してそれが成長して一人前に成木するまで二十年、三十年という時間がかかるわけですね。ですから、苗木を植えただけでは、これは芝生と変わりませんし、山のはげたところにペンキを塗るのと変わらぬと思うのです。そういう意味で、緑地というものをどのように内容づけるかということは非常に大事になってくると思いますので、お聞きしておるわけです。
  174. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 緑地の場合、私どもは、やはり植栽密度というものを規定していきたいと思います。現に一定の樹木が一定の間隔で植わっておる地帯でなければいけない、こう考えて、したがって、その辺の幅、樹木の種類、高さ等がきめられてくると思います。  それから、芝生の効果は後ほどまた専門的にお答えいただきますが、やはり吸着効果及び遮蔽効果を持っておる。それにプラスおっしゃられるように美化の問題で、じゃ裸の地域はどうか。これは厚生施設でないと緑地に入れない、ここで線を引いた次第でございます。
  175. 野間友一

    ○野間委員 環境庁どうですか。樹木の場合と芝生の場合、具体的に公害防止する効果の上について、どのような特性あるいは違いがあるのか。特に芝生の公害予防の効果についてお聞かせ願いたいと思います。
  176. 河野義男

    ○河野説明員 芝生についていま公害防止の効果をお尋ねでございますが、私、特別に専門でございませんので、的確な御答弁はできませんので御了承いただきたいと思います。一般的には、緑地につきましては先ほど局長から御答弁がありましたように、いろいろな大気汚染物質の吸着効果とか、あるいは浮遊粉じんがそこで吸収されるとか、あるいは悪臭についての効果、そういったものが期待されておりますが、芝生についての専門的なことは私ちょっと専門家でございませんので、御答弁できませんことを御了承いただきます。
  177. 野間友一

    ○野間委員 全くおそれ入りましたけれども、芝生にそんな効果がありますか。粉じんが芝生の上へ落ちてころころころがる。それだけは防止できるかもしれませんが、風で飛んでいくわけですよ。これは遮蔽しませんよ。だから単にこれは美化、これしか私は効果ないと思うのですよ。それは全くないかといえば、ないよりあったほうがましだということでは、緑のペンキと変わりません。  そこでお伺いしたいのは、この緑地ですね。緑地の目的は一体何なのかということです。これは単に環境を美化するという側面なのか、あるいはそうでなくて公害を遮断する、ここに力点があるのか。おそらく両方にというふうにお答えになると思いますが、その点どうですか。もしほんとうにこれを環境保全公害予防という見地から考えれば、やはり公害を遮断する、ここに目的を定めなければならぬと思うのです。また、それを法文化しなければならぬ、このように思うのです。芝生で事足る、用を足すというようなことでは、私はこの法律の効果は全く期待することはできないと思うのですが、どうですか。
  178. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 先に答弁のあれをおっしゃられましたのでちょっと恥じ入りますが、私どもはやはり両方を考えておりまして、もちろん直接的には亜硫酸ガスそれから炭酸ガス、こういうものを吸着してくれる効果、これは大きいし、粉じんやミストを防ぐ。それから立ち木の場合には明らかに騒音をあれする。それから葉緑素によって空気をきれいにする。炭酸ガスを吸着する効果も非常にあると思います。それだけかというと、これは専門家調査にまったわけですが、外国におきましても、インダストリアルパークという場合には心理的効果を非常に重視する、こういうことでございまして、いま先生も言われたように、そういう意味から自然美、それから緑の色、人間の心を平和にする効果等々もこれまたあるという専門家意見を採用いたしました。そうしてどっちが重要かといえば、それは私は直接的には公害問題のほうが大事だと思いますけれども、プラスそういう効果も考えまして、しかもこれは半ば強制していくわけでございますから、そういう広い範囲で緑地効果を認めていきたい、こう考えております。
  179. 野間友一

    ○野間委員 どうも私はよくわからぬわけですが、いまの解釈としては、緑地についての定義がないのです。先ほどお聞きしたのですけれども、そうしますと、緑地といえば芝生でもいいわけですね。これはどうなるわけですか。樹木を植えると金がかかるといってはあれですけれども、現にそういうことを言う公害企業があるのです。だから芝でも木を植えてもどっちでもいい。そうだとすれば、とにかく青ければいいという結論になるという気がするのです。そこでペンキが出てくるわけですよ。いま心理的な効果を言われましたけれども、ある企業によっては確かに心理的な効果、これだけで用を足す場合もあるのかもわかりません。しかし私は、そういうような芝でも何でもいいのだということではぐあいが悪いと思うのです。特にこの法律上緑地の目的が書かれていない。これはいまの局長の答えにも私は端的に出ていると思うのです。だからほんとうに公害防止するということであれば、たとえば緑地なら緑地の目的をもっと明文化するということがなぜできないのか、こう思うのですが、どうですか。
  180. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 私どもの考えでは緑地の定義、樹木の間隔、樹木の種類、高さ等々を準則できめていきたい。法律上は緑地ということで基本をきめる、こういうつもりでございました。実際は全部芝生でもいいかといえば、私どもは先ほど公害を除去する直接的な効果としては、樹木のほうが効果があると思います。かつ、費用的には、多くの場合は芝生のほうが費用がかかると思います。しかし、緑地帯全部について芝生を張るという届け出を出してきた場合にそれが準則違反かといえば、現在の私どもの考えておる準則の考え方、また審議会等でどうなるかわかりませんが、その考え方では、そのときの地域判断を加えた上でよろしいということであれば違反ではない、こう考えております。
  181. 野間友一

    ○野間委員 どうも納得できません。  それからさらに、 緑地あるいは環境施設、両方使い分けがしてありますが、環境施設のほかに特に緑地というものを法律の中に盛り込むということは、これはやはり緑地そのものの特性、いま申し上げたような公害防止するという観点、そこに力点があるというふうに私は理解するわけです。ですから、もし準則をつくるとすれば、やはり業種によって芝生を植えるのではなくて樹木を植栽せよ、そういうような基準は当然設けるべきであって、緑地というか、植栽する予定地であるとか、あるいは芝生、こういうようなことでは実をあげることはできない、このように私は指摘するわけです。  さらに質問を進めます。企業、業種によってこういう施設の割合をそれぞれきめていくというお話ですが、はたしてその割合だけで公害防止ができるかどうかということについてお聞きしたいと思うのです。といいますのは何割ということですね。そうでしょう。そうしますと、たとえば業種によっては、公害が発生する企業と比較的それほど激しいものでもない、そういう企業は確かに私はあると思うのです。しかし、敷地の広狭、広いか狭いか、これによって私はその割合がかなり違ってくると思うのですね。だから一律にきめて、それであらゆる業種に分ければはたしてその公害防止の用を足すかということになると、私は必ずしもそうでない、こういうように思うのです。その点、敷地というか面積、これとその割合との関係はどういうふうに考えられておるのか、お答え願いたいと思います。
  182. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 規模の著しく小さいもの、中小企業等に関しましてはまた別でありますが、一般に工場、たとえば製鉄工場あるいは圧延工場、特殊鋼の鍛造工場等々、私どもが業種で拾いました場合にある程度の群分けができます。その中で、かりに鹿島の溶鉱炉のように大きなところと、それから密集地帯にできた古い製鉄工場等の場合、用地面積が十倍だから基準が変わるかといえば、その点は私どもは考慮しておりません。
  183. 野間友一

    ○野間委員 それじゃお聞きしますが、これは大気、それから海水、いろいろありますが、特に大気の問題に関連して、どのような企業が最も公害を発生する企業とお考えなのか、それから、いまお考えになっている段階で、緑地の割合が最も多いのはどういう企業なのか、それは一体同割くらい考えておられるのか、この点についてお聞かせ願いたいと思うのです。
  184. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 公害の一番大きいのは亜硫酸ガス系統でございますから、これは電力、鉄鋼あるいは石油、硫黄系の燃料をたく工場の場合が一番大きいと思います。そのほか、化学工場等はまた別の問題があると思います。そういった業種の性質によって準則の内容が変わってくると思います。  そこでそれじゃ現在の緑地がどうかといいますと、実はこの緑地につきましては過去二十年間の工場の発達、経営の方針として非常に私はおくれておると思います。私どもが集めました情報では、業種によって多少違いはありますけれども、敷地の一ないし二%くらいしか多いところでもつくっていない。たとえば九州のある地区につくった新しい製鉄工場なんかの場合には幅五十メートルの植栽地域をとったというような例もございますけれども、それでも全地域から見るとその比率というものは少ないものでございます。私どもは環境施設——この環境施設はこれまた緑地とどうして区別したかでございますが、かりに工場敷地内に公園をつくる’あるいは小川を流す、野球のグラウンドをつくったというような場合に環境施設考えたわけでございますが、環境施設も緑地もひっくるめまして一〇%をこえる比率を何とかして強制していけないかというのが現在の方針でございます。
  185. 野間友一

    ○野間委員 一〇%をこえる程度ですか。それじゃ話にならぬと私は思うのですよ。これは私も聞いたわけで、自分の目で正確に調査して確かめたわけじゃありませんが、埼玉県の場合には、いま東松山工業団地、これが造成されておりますが、ここでは工場敷地の六〇%を雑木林、緑地でおおう、こういうふうに私は聞いております。また青森、これはむつ小川原の関係もあろうかと思いますけれども、工業団地の緑化条例、これを定めて、緑化の率を三〇%こういう動きがあるわけですね。うまり地方自治体がどんどん住民の要求によって公害防止するためにはということで先取りしておるわけです。六〇%、三〇%ですよ。それを国が、何ですか、一〇%をこえたいと思っておる、こういう後手後手の態度では、やはり企業サイドだ。企業立場に立つからそういうあれが出てくると私は思うのです。どうですか。地方自治体でもこういう予定があると聞いておりますが、これははたして事実かどうか、あなたのほうで確認しておるのかどうか。またこれは事実だとすれば、六〇なり三〇、これをどう見るか。それに比べてあまりにもおくれ過ぎてはせぬか、こういうふうに思いますが、どうですか。
  186. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 生産施設用地比率のほうは、先ほども申し上げましたように半分以下になると思います。一〇%から四〇%。かりにそちらのほうが二〇ときまったある業種の例を想定いたしました場合に、全敷地の二割は生産施設、そうすると残りの八割というのをどうするかという問題になると思います。したがいまして、その八割遊ばしておるところに植木を植えようという方針をきめれば、六割を緑地にするということも不可能ではないと思いますが、いまあげられました具体的な例は私どもまだ存じておりませんので、さっそく調べますけれども、先ほど私が一〇%をこえると申し上げましたのは、現在の実績がかくも低いものですから、それでそこから誘導していく全国の平均値として申し上げたわけでございます。さらに、私どもが現在事務局原案として審議会等にお出しする場合には一五なり二〇というところまで持っていきたい、こう考えておることをつけ加えさしていただきます。
  187. 野間友一

    ○野間委員 非常に企業に遠慮されておると思うのですよ、それから見ても。     〔稻村(左)委員長代理退席、委員長着席〕 いま申し上げたような埼玉とか青森の例を国としてはまだ把握してないわけですね。これは電話で照会できることですから、一ぺんやってもらったらわかると思いますが、これが事実であるとするならば、実際にいま申し上げたように、もう地方ではどんどん進んでおるわけですよ。遠慮しいしい後手後手に回っておれば、いつまでたっても環境保全ができないと私は思うのです。そういうことでは国の行政としては失格だ、私はこういうふうに考える以外にはないと思うのです。特に緑地について私が執拗にお聞きするのは、これはやはりどうしても美観よりも公害の予防、こういう見地からもっともっと真剣に考えていただきたい。たとえば四日市など、これは従来の工業立地の典型ですが、ここでの失敗例、これは四日市の判決を見ても、立地についての過失、これは裁判所が認めておる。これは御承知のとおりなんです。住むところと工場が混在しておる。むしろ工場に囲まれて住宅がある。これが公害の被害を一そう深刻にしておるという事実、これだと思うのです。これらは、たしか環境白書の中にも触れられておりました。ですから、公害あるいは災害予防、こういう見地から考えまして、緑地そのものをほんとうに遮断するような形で、ここに力点を置いて明文化して、そしてここに力を注ぐ、こういうことをやってもらわなければ、私は本気になって考えておるというふうにはどうしてもとれないのです。そして住宅と企業工場との間では、学者によっていろいろ意見がありますが、少なくとも五百メートル以上遮断緑地をつくらなければだめだ、こういうようによくいわれておりますし、あるいは私も最低そのくらいのものが必要だ、そうでなかったら、芝で事足りるとすれば、ほんとうに子供だまし、こうしかとれないわけですね。通産省工場立地法の必要性とその概要というパンフレットの中でも、グリーンベルト、この設置をうたってあるわけです。三%ですか、このグリーンベルトそのものも、改正案の中にははっきり条文に出ていない。これは緑地とどういう関係にあるのか、このあたりもお伺いしたいわけです。  それからさらに、この費用ですね。企業責任と負担においてこれをすべきだということを明文化する必要がある、こういうように考えますが、お考えをお聞かせ願いたいと思うのです。
  188. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 緑地を重視しろという御意見はまことに賛成でございますし、私どももその方針でまいります。全国平均が低いので、強制的にできる準則としてどこまで上げるか、これは私どももできるだけ上げていきたい、こう思います。  グリーンベルトなり近代のインダストリアルパークなり中核都市建設の場合の一つの要件として、住宅と工場の間に緑地帯をつくるということは、私どももまことに必要であり、かつ日本は非常におくれてしまった、先進国に追いつかねばならないと考えるわけですが、今回の法律は、各企業の私有地の中に関する規制でありまして、私どもは、さらに都市計画法なり農地法なり、あるいは自然公園に関するその他の諸法規によって、それぞれ自治体がある程度のゾーニングをやっていける、そうしてそのゾーニング規制と同時に、本法による規制を加えまして、この私有地の中の住宅地帯と工場地帯の間にグリーンベルトをつくっていくべきだ、こう考えております。
  189. 野間友一

    ○野間委員 私がいまお聞きしたのは、一つは緑地、これは法文上は緑地になっておるわけですね。いま申し上げた通産省の概要の中にはグリーンベルト設置というのがありますが、ところが法文上はこれがないわけです。緑地とグリーンベルトというのは一体どういう関係にあるのか、こういうことをお聞きしておるわけです。いかがですか。
  190. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 グリーンベルトのほうはいわゆる俗語でございますが、ここの法律による工場の中の緑地も、それからそれに引き続きまして周辺の森林、あるいは隣の工場の緑地も一緒になりまして、長く緑地帯になりましたものを、そこの資料でグリーンベルトとしたわけでございます。
  191. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ次に進みますが、今回の改正案では、午前中の質疑の中でも論議されたわけですが、既存の緑化については対象とされてないわけですね。これはなぜ除いたのか、その理由をお聞かせ願いたいと思います。
  192. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 そもそも既存工場につきまして私どもがどれだけ改善できるか、これは四日市判決後もコンビナート調査等を行ない、真剣に取り組んでおるわけでございますが、何といってもこの法律で掲げます準則、それによって新しく無公害工場をつくっていこうという基準をいままでの工場に当てはめますことは、非常に困難がございます。もしも既存の工場を少しずつ改善していくことを先に頭に置きますと、思い切った準則ができなくて、新増設の場合になまぬるいことになってしまう。それほどに既存の工場がある地帯におきましては、公害、自然美等の観点から全くおくれてしまっておるというのが実情でございます。  それではどうするか。したがって、私どもとしては、一応この法律の対象から除きましたけれども、かりに既存の工場が新増設をするような場合には、従来以上に、従来にも増して、行政指導におきましてこの基準、準則を適用していきたい、緑地も余裕のある限りつくっていってもらいたい、こういう方針でございます。
  193. 野間友一

    ○野間委員 既存のところを除いた理由をいま聞かしてもらったのですが、問題になるのは、いまあるところの企業からの公害、これによっていろいろなものが破壊されておる。だからこそ曲がりなりにも、あえて言いますと曲がりなりにもこういうものをつくる一つの契機になった、こう思うわけです。しかも既存の施設においては、たとえば局長は無公害工場の建設というような大それたことを言われますけれども、実際いまの最高の頭脳を集めても無公害というふうなことはむずかしいと思うのですよ。硫黄酸化物は最も大きい問題だというようにいわれますけれども、これだって直脱装置、排煙脱硫等、いろいろ考えられ、いろいろ努力はされておりますけれども、しかしこれは全く出さずに済むということは、いまのところでは、ないと思うのですね。それから、最もこわいのは窒素酸化物です。二段燃焼法とか、いろいろいまあちこちで研究はされておりますけれども、しかしおそろしい光化学スモッグ、突然目がちかちかして倒れる。しかも、これの手だてがなかなかきめ手がない、正直言ってこれが現状だと思うのですよ。ですから、この中で現在の工場から出てくる公害によってほんとうに地域住民が苦しんでおるわけですね。ですから、こういうものにやはり目をつけて、しかも、これをきびしく規制しなければこれは効果があがらないと私は思うのです。  一つ申し上げたいのは、無公害工場ということばを軽々にはお使いにならないように。そういうふうにあなた自身が努力されるのはあたりまえだし、してほしいと思いますけれども、実際そういうものはなかなかいまの時点ではないわけですから、軽々しく使うということはどうかと私は思うのです。  ところで、既存の工場緑地について、これは確かにいろいろむずかしい問題があると思うのです。しかし、国としてはこれに根本的なメスを入れていかなければ、もう公害を防ぐどころか、今後の激化を食いとめることはできない、これは明らかだと私は思うのです。  これまた各地方自治体が先取りというか、前向きに進めておるという具体的な例なんですが、たとえば川崎市、これに次いで府中、ここでは市内の大手八社と緑化協定を結んで緑化を進めておる、こういうふうに私は聞いておるわけです。ですからほんとうにその気でやろうと思えば既存の工場であっても私はできると思うのです。ほんとうに人間の命を、環境を大切にしなければならぬ、そういう気持ちがあれば私はできると思うのです。しかも、これは単なる行政指導ではなかなかできない。何となれば、それは義務もありませんし、基準もない。これは強制できませんからね。こういう点について、国としては一体どう考えておるのか。川崎とか府中、こういう地方自治体の先進的な努力に対して恥ずかしいと思わないのかということまで私は言いたいのです。お答え願いたいと思います。
  194. 山下英明

    ○山下(英)政府委員 現状の既存工場を土台に見ますと、私どもの今度の提案申し上げている法律は、新増設に関してではありますが、相当、一歩も二歩も理想的な方向に進んだ提案だと存じております。  逆に言いますと、既存工場についてはどうするのだという問題が残っております。引用なさいました川崎市の例なり、あるいは京都の福知山市の例等も私どもでは情報を入手して研究いたしております。現地の自治体が相等数の指導的な事業所と緑地協定を結んでおります。ただ、これも事業所によりましてできるところが一〇%の緑地化という目標でございますが、それもほんとうに密集してしまっているところ、土地の買い増しもできない、中に職員や労働者の宿舎もつくってしまって全く敷地もないという工場の場合と、お金をかけ努力をすれば一〇%まではできるというその場合に、どこまで強制的にというと、現在の私どもが承知しておる緑地協定では、その実情に合わしてできるだけということだと思います。国がほったらかしておるかといいますと、私どもも、そういった既存の緑地化が進む場合には低利融資の道を講じております。機会あるごとに、可能な範囲でやっていってほしい——しかも、今度もしこの法律が通りまして新増設に関して準則が公表されましたならば、これはやはり既存に対しても一つの大きな改善の目安となって刺激していくのじゃないかと期待しております。
  195. 野間友一

    ○野間委員 きょうは大臣がいないので、さらにこの問題については質問を保留したいと思います。  委員長、これはもうこういう状態では、一応この程度であすに質問を留保したいと思いますが、いかがですか。
  196. 浦野幸男

    浦野委員長 つまり、大臣がお見えになったときに質問をさらにいたしたいということですね。
  197. 野間友一

    ○野間委員 理由はともかくとして、質問をあしたに留保したいと思います。
  198. 浦野幸男

    浦野委員長 だから、大臣のお見えになったときに質問をしたいということですね。  次回は、明二十日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十六分散会