運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-08-31 第71回国会 衆議院 社会労働委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年八月三十一日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 田川 誠一君    理事 伊東 正義君 理事 塩谷 一夫君    理事 竹内 黎一君 理事 橋本龍太郎君    理事 山下 徳夫君 理事 川俣健二郎君    理事 八木 一男君 理事 寺前  巖君       加藤 紘一君    瓦   力君       小林 正巳君    斉藤滋与史君       志賀  節君    住  栄作君       田中  覚君    高橋 千寿君       戸井田三郎君    登坂重次郎君       羽生田 進君    増岡 博之君       粟山 ひで君    枝村 要作君       金子 みつ君    島本 虎三君       田邊  誠君    多賀谷真稔君       村山 富市君    山本 政弘君       石母田 達君    田中美智子君       大橋 敏雄君    坂口  力君       和田 耕作君  出席国務大臣         労 働 大 臣 加藤常太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      坪川 信三君  出席政府委員         総理府人事局長 皆川 迪夫君         厚生省社会局長 高木  玄君         労働省労政局長 道正 邦彦君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省労働基準         局安全衛生部長 中西 正雄君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         労働省職業安定         局失業対策部長 佐藤 嘉一君  委員外出席者         総理府人事局参         事官      梶谷  浩君         厚生省社会局保         護課長     山崎  卓君         運輸省自動車局         業務部旅客課長 森  雅史君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 田川誠一

    田川委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 きわめて長い間懸案になっており、関係者が非常な不安を持っておりました問題の一つが解決をしました。これは私非常にうれしく思っておるわけです。それは労災特別援護処置であります。これは昭和二十二年九月に労働者災害補償保険法施行されて以来、その施行前の業務上の疾病人々法律の外に置かれておったわけです。これをこのたび通達を出されて、そして八月十五日から実施をするということになったことは非常にうれしく思います。  そこで具体的にこれを聞くわけですが、第一にはこの問題は周知徹底がなかなかむずかしいだろうと思うのです。これは官報告示するわけでもないし、ただ基準局長が都道府県の基準局長通達を出すだけですからね。ですから、これは一体どういうようにして関係者に知らすかというのが非常に困難になる。筑豊炭田のように、いわば外傷性脊髄であるとか、けい肺であるとか、比較的集団的におる地域、現在その地域生活しておる人はいいと思う。しかし家族とともに京阪神に出ていったり、他に転居をしておる人に一体どうして知らしてやるのか、これは非常にむずかしいと思うわけですね。これは一体どういうようにして把握をされ、この援護処置に乗せられるつもりであるか、これをお聞かせ願いたい。
  4. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 先生指摘通達につきましては、八月九日に出しましたばかりで、十分末端まで浸透しているかどうかという点については私どももまだ自信がございませんけれども、これはでき得る限りすみやかに一般に広く徹底をするようにいたしたいと思います。  特にまず当面何といっても問題なのは、休廃止の金山だとか砒素鉱山だとかいうようなことで、戦前従業員であられた方に職業性疾病がかなり多く発生しておられる地域には特にまず最初に力を入れて、今回の処置趣旨徹底するようにいたしたいと思います。  なお、現在はそういう地域を離れてばらばらに地方に分散しておられる方、これは実際問題といたしまして従来も個々に問題になった場合にも追跡が非常に困難でございまして、もと従業員方等を通じて現在おられる場所を突きとめるようにいたしますほかは、一般的に基準関係のいろいろな広報紙等を使いまして広く周知をはかっていく、こういうようにしてまいる考えでおるわけでございます。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 基準監督署の外にあるのですよ。ですから問題は、病院を把握するほうが先ですよ。結局何らか治療をしているわけですからね。現実には二十五、六年放置されておるわけですからもうあきらめておりますから、監督署なんかにそういうのがありますかなんて行きませんよ。それは集団的に多くのそういう関係者がおる地域は別なんです。ですから、私は病院とか医師会とか、こういうところで把握したほうが早いのじゃないか、こういうように思うのです。  何にしても、告示をしないというのは一体どういうわけですか。こそっと通達で出すという——国制度として官報もあるし、告示もあるのに、告示しないというのはおかしいですね。
  6. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 法令的な処置でございますとそういう場合も当然でございますけれども行政措置で今回やることにいたしましたので、通達でもって処置いたしておるわけでございますが、先生指摘のように、病院等につきまして当然そういう手続を知らせる必要もございますので、労災指定医等にはもちろん趣旨が知らされておるわけでございますが、それ以外の医療機関におる場合も考えられますので、医師会等連絡をとりまして、病院診療所等にもその趣旨を十分徹底するようにいたしたいと存じます。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで適用外になる労働者、すなわち加害業者が存在している場合、あるいはまたその業者から鉱業権移転があって、移転を受けた事業主がいる場合、こういう場合には対象外にすると書いてありますが、一体どういう処置をとられるつもりですか。
  8. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 労災法施行前の方につきましては、法律的には労災で支給するべき義務はないのでありますが、特に社会的な必要性に応じて国がこういう処置をとったわけでございます。したがいまして、元事業主であった方がいまなお現存し事業をしておられるような場合には、これは法律上の義務はともかくといたしまして、道義的には業務上の疾病を生ぜしめたということで、実質的に救済をはかられることは当然だと考えておりまして、いままでも、たとえば宮崎県の土呂久砒素中毒等につきまして、事業主あるいは鉱業権を承継した人に行政指導いたしまして、いずれもいままでの例では、そういう事業主救済をすることを承知し、実際に行なっておるわけでございますので、今後につきましても、事業主が現存する場合は、あるいは、その鉱業権あるいは経営権等を承継いたしております者が現存いたします場合には、行政指導によって必要な救済措置を講ずるように指導してまいりたい、かように考えておりますし、これまでの例で申しますと、行政指導によってそういうことが達成できる、かように考えておるわけでございます。ただ、もしそういう事業主がおりましても、たとえば、現在は全くの無資力であってそういう能力がないと客観的に認められるというような場合には、実際能力がない者につきましては、指導いたしましても実施不可能でございますので、そういう場合には例外的にこの措置対象にしたい、かように考えております。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 外傷性脊髄症の場合には事業主が存在しているわけでございます。たとえば、今度ちょっと調べたら、三井山野災害を受けた人でも飯塚だけでも二人いる。ですから企業も現存している。三井鉱山というのがあるわけでしょう。ところが本人たちは、行政指導政府がそういうように既往の分についても指導によって援護しているということを知らない。いままで知らなかった。私自身知らなかった。でありますから、いままでもそういう指導がなされていないのですよ。それは個所によって問題化したところはあるでしょう。ところが現実には、きわめて明白な事由によるきわめて明白な疾病、それが保護対象になっていない。  そこで、過去のことは別として、こんな、対象にしないなんと言われないで、どうせ労災の金は事業主が払っているわけですから、もうそれをひっくるめて既往の分については画一的におやりになったらどうですか。この扱いを別にするというのはきわめておかしな話ですね。
  10. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 これはまあいわば戦前の法の谷間におった人たちでございますので、ほかに方法がない場合の措置として今回考えたわけでございます。したがって当時の事業主が現存する場合には道義的にもそういう措置をすることが当然であると存じますし、それからいままで行政指導によってそういう過去の事業主救済をいたしました場合には、むしろ今回の措置よりも手厚い、基準法並みくらいのことはいたしておりますので、まあ現存しておる事業主にできるだけ現行法に近いような救済をさせるように指導していく、これを第一の手段といたしまして、先ほど申しましたように、どうしても資力等がないためにできないような場合には、そういう場合にも例外的にこの処置対象にしたい、かように考えております。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも的確でないですね。やはりどうせおやりになるならば、結局事業主が出した、連帯で出した労災の金ですから、それでお使いになるというほうが手続的にも楽ですよ。  では、具体的に聞きますが、たとえば三井山野鉱業所でけがをして、そうして現在その付近に住んでおる。しかしいままで、政府がそういう処置をしているなんてだれも知らない。知らないものですから、いままでは自費で療養費を払っておる、こういう形ですよ。  そこで、具体的に言いますと、それらの人々監督署にどういう請求をするんですか、そうして会社との関係監督署がやるんですか。
  12. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 いままでは戦前の方々には一般的にすべて一定の処置をするということはございませんでしたので、問題がわれわれに把握できましたつどそういうことをやっておりましたけれども、今回は事業主が現存しない人も含めまして広くこういう処置をとることにいたしておりますので、事業主が現存される方等につきましても、そういう問題があれば、基準監督署に申し出ていただければ、署のほうから当時の事業主に対しまして、この通牒によります行政指導をいたすわけであります。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうしますと、事業主から直接罹災者は金を受ける、こういう形になるわけですか。
  14. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 そういうことでございます。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そのあっせんは監督署がやる、こういうふうに理解をしてよろしいですね。何か告示もしないし、そうして人によっては対象外にするという。せっかくここまで制度をつくったら、やっぱり一歩前進しておやりになるべきではないかと思うのですが、大臣、どうですか。
  16. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この問題、これ自体相当大蔵省と折衝いたしまして、ようやく多賀谷委員の御意見も大いに尊重してできたものでありまして、当面の問題は現在の方法でやらしていただくように御了解得て、あとの問題につきましてもなお検討いたしますが、現在ここまでようやくできたので、この程度でひとつごしんぼう願いたいと思います。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、具体的に聞きますが、これは療養費とは介護料を含めますかどうか。もう少し具体的に言いますと、基準看護病院は、それは当然その介護料的なものも、看護婦さんが入っておると思う。ところが、基準看護でない私立の療養所等付き添いが要るわけですね。その付き添い一体給付対象になるかどうかというのが一点。それから在宅通院をしておる場合に、外傷性脊髄の場合でありますと当然家族介護しなければならない。その場合は、労災のほうも介護料的なものを出しておる。また生活保護関係介護料的なものを出しておるわけですが、今度の場合はどうなりますか。
  18. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 療養費につきましては、これは入院等の場合、すべて労災療養費と同じ取り扱いをいたすことにいたしております。したがって看護料等は当然含まれますし、介護料についても、医者がその必要を認めた場合には支給されるわけでございます。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、在宅もそうですか。
  20. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 在宅の場合には労災でも介護料は出しておりませんので……
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 何かほかの名目で出しておるよ。
  22. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 在宅の場合には、労災では保険施設では介護料を出しておりますが、今回の場合には通院の方にはそこまでは考えていない。一般療養費ということで処置をいたすことにいたしております。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、そこまでやるならなぜ在宅の場合やらないのか。労災の場合は出しているのですよ。ところが、なぜこの際労災と区別をされるのか。入院の場合はいいわけですよ。
  24. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 在宅介護料の問題につきましては、十分検討いたしたいと存じます。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣、どうもちょっとしたところが手が届かぬのですよね。家族脊髄の患者をかかえたら仕事にいけないのですよ。生活保護になりますと、生活保護は別に出しておるのですよ、療養費のほかに。生活保護は、一人は働きにいけぬわけです、ですから何らかの手当てをしておる。ところが、なぜあなたのほうは、今度の処置についてはしないのか。労災はしておる、生活保護もしている、そうでしょう。厚生省、見えていると思うのですけれども、ちょっとその点を説明願いたい。
  26. 高木玄

    高木(玄)政府委員 介護人をつける必要があります場合には、一万円の範囲内で生活保護のほうではめんどうを見ております。
  27. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いろいろ事務的な問題、大蔵省のほうの意向などでなかなかすかっと多賀谷さんのおっしゃるようにひもといておりませんが、いま局長とも打ち合わせいたしまして、できるだけそういうほうに向くようにもう一ぺん検討いたします。対処いたします。
  28. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣一言大蔵省に言ってもらえばすぐ解決するのですよ。労災もいままで出しておるわけでしょう。在宅の場合には介護を必要とするもの。それから生活保護のほうも出しておるわけですよ。それに今度の援護処置は、入院した場合は同じように扱うけれども在宅の場合は扱わぬという。そしてことにもう長いから入院費にこたえられないで、在宅して通院しておるのが多いのですよ。ですから、もう一歩のところですからね。これは大臣責任をもってやってもらうと考えてよろしいでしょうな。
  29. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 責任というところはいますぐに答えられませんけれども、このこと自体が大体むずかしかったのをやったんですから、もう一歩ですから、何とか御趣旨に沿うようにやります。
  30. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ありがとうございました。  そうすると、厚生省にお尋ねしますが、入院する場合は一万円ですね、見舞い金のようなものが月に支給される。それから通院の場合には、七日未満の通院者は三千円、七日以上が四千円ということになるのです、その見舞金のようなものですね。それは生活保護のほうからはどうなるのでしょうかね。と申しますのは、医療扶助関係は、これは今度の援護処置で切りかわりますからね。これは当然要らなくなるわけです。ところが、いま見舞い金のようなものは一体どういうようになるのか、控除されるのかどうか、それをお聞かせ願いたい。
  31. 高木玄

    高木(玄)政府委員 今回の労災特別援護措置生活保護収入認定との関係でございますが、この点につきましては労働省とも十分協議いたしまして早急に検討さしていただきたいと存じます。
  32. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ひとつ、せっかくの制度ができましたのに、少なくとも生活保護関係は意味がなかったということのないようにお願いを申し上げたい、かように思うわけです。  続いて、四十九年度予算関係についてちょっと質問したいのですが、その前に、四十九年度を待たずして現在の物価高騰によって、生活保護並びに失対の労働者は非常にいま苦しんでおるわけです。政府の四十八年度物価上昇見通しは五・五%。ところがいまじゃ一二%をこえてきた。これは七月の東京の速報ですけれども、そういう状態になって、いわば消費者物価が非常に高騰をして、政府考えておった以上の状態になっておる。そこで生活保護支給基準並びに失対労働者賃金、これは至急年度内において改定をする必要があるのではないか、こういうように思います。従来も消費者米価改定された場合には、生活保護とそれから失対賃金年度途中で改定をされた例もあります。でありますから、今度の場合は特にその必要を感ずるわけですが、これは大臣、どういうようにお考えですか。
  33. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 失対賃金の問題は、これは釈迦に説法で、理屈からいきますと、類似作業に従事する労働者賃金を考慮して失業対策事業賃金審議会意見を大いに尊重して定めることになっておるので、生活費物価とは直接リンクせぬというたてまえでありますが、実情はいまお話があったように、消費者米価を上げたときにはこれを改定した例もあります。また生活保護基準の引き上げ、これはうわさでは、あと厚生省のほうから答弁があると思いますが、いろいろ検討しておることを仄聞いたしますが、その問題とこれとは関連がないのはもう御承知のとおりであります。しかし関連がないようであるような点もあるということで、いまここで私がこの失対賃金の問題に対して、閣議なりいろいろな点で決定いたしておりませんが、この点は十分各方面と連絡をとり、そうして物価の現状、失対就労者生活実態等を踏まえて十分検討いたしておりますので、いまはっきりとここで改定するということは申し上げかねますけれども、やや御趣旨に沿ったような線が、いろいろの状態がその線に沿っておるという程度の御答弁を申し上げて、どうも大臣はっきりせぬじゃないか、こう言われると思いますけれども、いまのところはその程度で、御趣旨に沿うような客観情勢が醸成されつつあるということだけを申し上げて、はなはだ相済みませんが御答弁にかえたいと思います。
  34. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いやしくも政府、しかも労働大臣政策立案担当者ですからね、何か客観情勢が熟しつつあるなんという客観的な話じゃ困るんですよ。大臣としてはどうされるつもりですか。大臣年度内にどうされるつもりですか。
  35. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 大臣はどうされるかというとちょっと困るのでありますが、十分諸般事情を勘案して前向きに検討いたしております。
  36. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 諸般事情を勘案するというと、どういうことですか。まだまだ物価が上がらなければやらぬということですか。もう少し上がるのを待ってやるというのですか。何%ぐらい前年同月比が上がったら踏み切るというのですか。一体どういう気持ちですか。
  37. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 失対事業賃金につきましてはただいま大臣から御答弁申し上げたような方針で定められることになっております。従来も消費者米価改定されましたときは、これは政府米価をきめるわけでございますので、それを上げましたときには失対賃金は引き上げる慣例を残しております。しかし今回の場合、確かに消費者物価が当初予想されたよりは上がっておることも事実でございます。しかし、失対賃金は御承知のように、繰り返しになりますが、類似作業に従事する労働者賃金を根拠にして定めることになっておりますので、直ちに消費者物価が、あるいは生計費が予想より上回ったからということだけで失対賃金を年内に改定するということは非常にむずかしい問題でございます。そういうことでございますけれども先ほどから多賀谷先生指摘のように、いろいろの情勢が必ずしもいまのままで過ごせるかどうかという点につきましては、私どもは事務的は別といたしましていろいろ問題があろうかと思います。そういう点につきまして大臣として政治的に御判断をいただきまして今後の方針をおきめいただく、こういうふうに考えておる次第でございますので、ただいまのような大臣の御答弁があったわけでございます。御了承いただきます。
  38. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 失対賃金政府がきめるのでしょう。違いますか。
  39. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 これは多賀谷先生も十分御承知のとおりでござまして、屋外職賃の結果に基づいて、類似作業に従事する労働者賃金と比較して決定することになっております。政府がきめております。
  40. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、その類似労働者賃金がどのくらい上がったのか、そして公務員賃金も御存じのように一五・三九%、しかもこれは定期昇給を加えておりませんからね、さらに平均賃金は上がっておるはずですよ。それから民間も二〇%くらい上がったわけです。ですから五・五%の政府見通しのときにつくった生活保護並びに失対賃金ですから、当然上げていかなきゃならぬわけでしょう。あなたのほうは、どこまでいったら上げる、そこまでまだ水準が上がっていないから判断ができない、こう言うのか、そういう資料があるならば明確にお示し願いたい。
  41. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 ただいま申し上げましたように、失対賃金屋外職賃を基礎にして決定いたすことになっております。ところが毎年の屋外職賃が大体十月ころにならないと出てまいりません。ことしの屋外職賃もとにしまして来年度賃金を、賃金審議会におはかりした上できめることになっております。したがいまして、確かに本年度いろいろな情勢が変わっております。確かに毎月の賃金水準も上がっております。公務員等も上がっておりますが、それに伴って屋外職賃がどういう結果が出ますか、まだ私ども手元では全然その数字は把握できない状態でございます。その数字を確認いたしました上で来年度の失対賃金をきめるというのが、これがいままでの慣例でございまして、年度途中でそういった具体的なデータが私ども手元では確認いたしかねますので、失対賃金をここで申し上げることはできないわけでございます。
  42. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、明年度のをきめるための資料づくりとする十月の類似屋外労働者賃金の統計が出なければきめられぬ、こういうことですか。それを待っておる、こういうことですか。
  43. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 事務的にはそのとおりでございます。ただ、事務的に申し上げるだけではこの問題はなかなかいろいろな諸般情勢から必ずしもそうまいらないような要素もあるかと思います。そういった点につきまして、先ほどから大臣がお答えになったようなことで御判断をいただくということにいたしておるわけでございます。
  44. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 まだきまっておらぬことでありますから、事前にはっきりと私からどうかということをちょっとぼかしましたが、今後の情勢だけではなしに、現在までの情勢判断しておりますから、ただ生活保護基準のほうが上がったからというような理屈でなしに、屋外の同種の賃金との問題、また生活実態その他を踏まえまして前向きでいま政治的に判断の最中でありまして、大体御趣旨に沿うような線に行くと思うのでありますが、はっきりとここで、まだ決定しておらない前に私からこういたしますということが言えない点だけを御了承願いたい。先ほどから言った趣旨は、理屈理屈だけれども前向きで検討いたしております、こういう程度で本日はごしんぼうを願って、私の腹の中その他政府方針も察知されることをお願いいたします。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、いまからのデータではなくて、現時点におけるデータによって判断できる、それは、どういうふうにするかは政治的判断によると、こういうように理解して、そして前向きでやる、こういうことですね。
  46. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 そのとおりでございます。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 厚生省、見えていますか。生活保護はどうなりますか。
  48. 高木玄

    高木(玄)政府委員 生活保護基準は、本年度一四%引き上げたのでございますが、その際、先生おっしゃいましたとおり、政府の経済見通しによります物価上昇率五・五%を前提といたしております。その点につきまして、先ほど先生申されましたように、四月以降の消費者物価の動向を見てまいりますと、予定されました五・五%をだいぶ上回っております。そういった情勢でございますので、何らかの措置を講ずる必要があるというふうに考えられますので、ただいませっかく検討中でございます。
  49. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 情勢の変化があることを認められて検討中だというので、われわれは前向きの線で期待をしておきます。しかし早急にひとつやってもらいたい。  四十九年の三月末で一応、緊就すなわち石炭特別会計による緊就の作業が、それ以降は閣議決定を見ていない。そして関係労働者はかなり不安がっておるわけですが、これは、来年度の予算については政府はどういう考え方で臨まれるのか。ことに労働省はどういう考え方で臨まれるのか。これをお聞かせ願いたい。
  50. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 緊急就労対策事業の問題につきましては、多賀谷先生が一番よく御存じでございます。昭和四十二年度をもって法的には緊急就労対策事業は廃止されることになっております。ところが現実にはこの制度によります就労者がまだ多数当時から残っておりまして、現時点におきましても三千数百名がこの事業に就労いたしております。四十三年度に入ります際にも、あるいは四十六年度におきましても、この就労者が現存する限りはこの事業は引き続き実施いたします、廃止はいたしませんということをこの委員会におきましても再三お約束をいたしてまいりました。そのつど閣議決定その他の方法によりまして事業は継続実施いたしてまいっております。ちょうど来年の三月末をもって一応閣議決定の期間が切れることになっておりますけれども、いま申しましたようにいまだに三千名をこえる就労者がございますので、こういう人たちがあります限りは、今後とも継続実施をいたしてまいる考えでございます。同時に、予算要求もいたしております。
  51. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働省大蔵省に対して開就、緊就それから特開の単価はどのくらい、人数はどのくらい予定をして要求をされましたか。
  52. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 産炭地域開発就労事業につきましては、就労額は前年どおりでございます。単価につきましては、現在のいろいろな諸物価、諸資材等の値上がり、人件費等の値上がりを考慮いたしまして、それ相応の引き上げを予定しております。特定地域開発就労事業につきましても同様であります。緊急就労対策事業につきましては、これも先生御存じのとおりでございまして、就労額は一応要求はいたしておりますが、そのワクは若干減少いたしております。
  53. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 単価は……。
  54. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 単価は同様に引き上げる予定にいたしております。
  55. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 緊就の単価が非常に安いということで、この前石炭特別委員会でも質問をしておきましたから、ひとつ速記録を見て十分考慮してもらいたい、かように思います。  続いて質問を続けていきたいと思いますが、四十九年度政府のいわば新しい政策、それについて若干質問をしてみたい、こういうように思います。  この中小企業の政策といいますと、なかなか事実上むずかしいし、ないのですよ。率直に言いますと、日本の中小企業政策は、ずいぶん論文があるし、法律もあるから、外国から日本の中小企業政策を勉強しに来る人が非常に多い。ところが、あることはあるけれども、肝心なバックボーンがないんですね。これは私はよく水虫の薬と、こう言うのですけれども、要するに水虫の薬のように、薬は非常に数は多いけれども、特効薬がない。だから、中小企業政策というのは、日本の場合は非常にむずかしい情勢で、政府がいろいろ施策をやっておるけれども、やっぱり隔靴掻痒の感がある。  そこで、私は、この中小企業退職金共済、こういうものは、政府が政策をする場合に、一番端的に労働者に援護の手が差し伸べられる問題ではないか、こういうように思うわけです。ところが、その実情を見ると、必ずしもこれによって中小企業労働者がかなり確保できる、こういうような情勢になっていない、こういうように考えるわけです。そこで、具体的に、中小企業退職金共済制度に乗っておる労働者がどれぐらいあるのか。さらに、その労働者に対する月掛け金がどれぐらいあるのか。それらの人々が二十年、それから三十年働いた場合はどれぐらいになるのか、これをお示し願いたい。
  56. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 現在、中退金共済事業対象に入っております労働者数は、四十八年六月現在で、被共済労働者数が百三十九万三千人、かように相なっています。これにかかっております掛け金は、これはまあいろいろランキングがあるわけでございますが、平均いたしますと、一人一ヵ月千五百円ぐらい、かように相なっています。そこで、千五百円掛けた場合、これはちょっとここにはその区分がございませんが、例として申し上げますと、千円掛けておりますと、二十年で五十五万、三十年で百十八万、二千円掛けておりますと、二十年で百八万、三十年で二百三十二万、かように相なっておりますので、ちょっとただいま持っております資料では、千五百円の場合の数字がございませんが、ただいま申し上げました千円と二千円のほぼ中間ぐらいというふうにお考えいただいてよろしかろうと存じます。
  57. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 平均千五百円というのは、掛け金の平均と思いますけれども、ランクで見ると一番多い層はどの層ですか
  58. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 ランクで見ますると、一番多い層は千円のランクでございます。
  59. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、この場合、千五百円という数字でお示しになることも必要と思いますけれども、やはりランクで千円の層が多いということになると、政策としては、千円の層を中心にやはり政策を見ていかなければならない、こういうように思うわけです。そういたしますと、二十年で五十五万円、それから三十年で百十八万円というのは、やっぱり低いですね。ですから、もう少しランクを上げるような政策をとっていただきたい。要するに、そういうように奨励をしてもらいたいと同時に、これはやはり国の補助金を入れるということが、結局、退職金共済の加入の申し込みが多くなるということですけれども、これを一体大臣はどういうように考えられておるか。中小企業政策は、大臣、あんまりないんですよ。むしろこういうところに政策をやっていくことが必要じゃないかと思うのですがね。
  60. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 退職金共済事業につきましては、先生も御承知のとおり、法律で五年目ごとに保険経済等について再検討し、必要な場合には所要の措置を講ずることに相なっております。この法律につきましては、昭和四十五年にその検討をし、法律改正を若干いたしましたので、次の法律上の検討時期は昭和五十年に相なるわけでございます。したがいまして、私ども昭和五十年に検討の上現状に合うようなかなりの改善をいたしたい、かように考えまして、本年の後半から来年にかけまして、早急に現行制度の改善を検討いたしたい、こういう予定にいたしておりますので、その際には、先生指摘のように、掛け金もできるだけ上のランクに引き上げるように、それからそれに対する特に国の補助等も、現状よりはでき得る限り改善するような方向で検討いたしたいということで、現在その準備に取りかかりつつあるところでございます。
  61. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この千円以下の層というのはどのくらいおりますか。そのいま百三十九万のうち……。
  62. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 千円以下の層は二九%ございます。
  63. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 二十年で五十五万円ですから、その以下の層というのは、ぼくはもう四百円というランクは削るべきじゃないか。廃止して、千円がいま二十年で五十五万円ですね、五十五万円といいますと、二十年つとめてたった五十五万円ですから、もう千円以下というのはあってもほんとうの恩恵にならないのですよ。ですから、その四百円のランクは千円から出発する、少なくともその程度に上げなければならないし、また、それにいくためには、やはり補助金を上げてやらなければならない。何も共済に入っておっても魅力がないじゃないかと、こう労使ともに考えれば、なおそういうことになるわけですね。ですから、ひとつ大臣答弁願いたいと思うのですよ。
  64. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 わかりました。なかなかちょっと意義がありますので、これは十分本腰でひとつ御趣旨に沿うように検討いたします。
  65. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 率直にいいますと、やはり中小企業政策といっても、そう政策がないのですよ。端的に行き届くような政策が非常に少ない、またなかなかできにくいわけですよ。そこでいま一番困っているのは、資金と結局労働力でしょう。そうすると、労働力ならば、最低賃金制といっても、これはなかなか事実上むずかしいですよ。それをかなり高いランクに上げるというのはなかなかむずかしい。そうすると、何がいいだろうかということ、それは、最賃も必要ですけれども、やはり退職金というのはわりあいに端的に出てくるし、それから中小企業の人々で、若い層はそれほど大企業とも違わない。ところが、ある程度から年齢が増すごとに格差が非常に激しくなってくるわけです。ですから、やはり中小企業の退職金共済制度というものは、私は国がやる政策の一つの大きなポイントじゃないか、こういうように考えるわけですがね。そこで、それはひとつぜひあなたのほうから言うならば大きな目玉商品として推進をしてもらいたい、こういうように思います。よろしいですね。
  66. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 御趣旨私も同感で、中小企業対策は政府においても目玉商品でありますし、何かといえば、資金の対策の問題、金融の問題また減税の問題もありますが、従業員関係は大企業でなかなか困難な諸情勢がありますので、いま言ったような中高年齢者の退職金の問題も御趣旨のとおり今後労働省として目玉商品として対処いたしまして、いま局長から事務的に答弁がありましたが、これは政治的に私も考えまして、御趣旨に沿うような線に沿って大いに検討して、ただ検討だけでなく、これが具体化するような方向に善処いたしますことをお誓いいたします。
  67. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いろいろな社会施設に従事する労働者の確保の問題ですが、これは先般来びわこ学園の問題とか島田療育園の問題とかいろいろ出ている。そうして職員が集まらないから退園をお願いしなければならぬという事態も起こっておるし、それから予算処置の問題として、いままで一・五人に一人の割合を一対一にするという問題も、先ごろからこの委員会においていろいろ論議をされております。  そこで私は、これは労働省も手助けをしてやったらどうかと思うのですよ。これは厚生省まかせでなくて労働省も何か考えてやる必要があるのではないか、こういうように考える。そこで、いろいろ聞いてみると、たとえば第二びわこ学園でも寮がないそうですね。一・五人にいま一人の定員になっておる。そうすると一対一にすると、さっそく、予算処置は来るけれども入るところの寮がない、こういう問題が起こってくる。それから看護婦さんの確保の場合は、男子のほうに社宅があって、大体妻のほうは男子のほうの社宅に依存しておるというのが普通の状態ですね。しかし今日、看護婦の確保ができない。有資格者はかなりおるけれども、それが職場と家庭が両立をしない、こういう問題は、やはり一つの大きな問題は住宅の問題だろうと思うのです。  そこで、住宅の面についてこれは厚生省にまかすことなく、労働省がひとつ手助けをする必要があるのじゃないか、こういうように思うのです。あえて言うならば、いままで大きな事業主が社宅を建てる場合画一的に出すという援助だけでなくて、一歩進んで、そういう施設に従事する労働者の場合は何らか労働省のほうで手助けをする必要があるのではないか、こういうように考えるわけです。これも地域的に移動する場合は雇用促進事業団によって雇用促進事業団の宿舎ができていますね。そして一般事業主がやる場合には、それに対して融資の方法もある。ところが今度は業種別と考えざるを得ないのですけれども、労働力が非常に確保できない業種、しかも業種のあり方、仕事のあり方として住居が近いところでなければいけないとか、あるいはまた住居の確保がむずかしいとかいうことが隘路になっておるような場合、これは労働省のほうでそういう人々の住宅の確保あるいは福祉施設の改善をやる必要がある、かように思いますが、これについてどういうように考えられておるか、それが四十九年度の予算にどういうように要求をされておるか、これをお聞かせ願いたい。
  68. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 先生指摘のように、病院看護婦さんでございますとかあるいは一種の社会福祉施設の要員、いういった人たちが極度に不足しておるという実態でございます。こういった国民生活に直接欠くことのできない部門の人たちをいかにして確保するかということが、これからの雇用対策の上でも非常に大きな問題になっております。その一番大きな問題は住宅とかあるいは福祉施設が欠けておるというような点でございますので、そういった点につきましては、先生指摘のような雇用促進融資をそういった面で最重点的に、優先的に活用するというような方向で今後指導してまいりたいと思います。  同時に、特に看護婦さんにつきましては、いま潜在看護婦、資格を持った人たちが二十万人いるといわれております。こういう人たちがどうして出てこないかと申しますと、一つはいまのような住宅問題がございますと同時に、子供をかかえて病院の深夜勤務に耐えられないというようなこともございますので、この二十万人をこえます潜在看護婦さんの人たちを登録いたしまして、その人たち病院の深夜勤務に耐え得るような体制をどうやってとるかということで、一つはそういう乳幼児をかかえている人たちにつきましては、乳幼児を保育所なり託児施設に預け入れるような体制をとるための何らかの援助措置、こういった面で、来年度予算的にもそういった援助措置を講じてまいりまして、こういう人たちの就労確保をはかってまいりたいと考えておる次第でございます。
  69. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ただ優先的に融資するというだけでは、私はそういう民間の福祉施設、社会施設等はその能力がないと思うのですよ。ですからそれは雇用促進事業団でもつくってやるか、あるいはまた補助金を出してやるか、何らかしないと、ただ融資に対して優先確保しますということでは実際にできないのじゃないか、こういうように考える。これは厚生省にも話をしなければならぬ問題ですが、現実に一・五人に対して一人を一対一にするということになって、今度それだけ人間が入ってくるということになると、もう施設がないですよ。だからそれは何らか政府全体として、というよりも労働省としてもう少し積極的に取り組む必要があるのじゃないか、こういうように思います。  それから乳児の場合の保育に欠けることのないような処置というのは企業内の保育所のことを考えられておるのですか。
  70. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 来年考えておりますのは、そういった乳幼児保育を要する子供をかかえている人につきましては、保育に出すだけの手当を援助いたしまして、そして看護婦としての病院勤務に出られるような体制をとっていきたい、こういうことでございます。
  71. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 職業安定局のほうの施策と相まちまして、婦人少年局のほうといたしましては、かねてから企業内の保育施設の整備ということのために助成策をとってまいっておりますが、特に来年度は企業内保育施設の整備充実のために、従来からの融資に加えまして、国庫補助によってその施設のさらに整備を進めてまいりたい、このように考えているところでございます。
  72. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 企業内保育についてはかなり基本的な問題があるわけですね。いわば労務管理の一環にされるとかいろいろあるわけですが、それは別にして、企業内保育というのはほとんど無認可保育ですね。厚生省の基準に入らない。これとの関連はどうなんですか。今度補助金を出すとおっしゃるけれども、人数等においてそれだけの乳児を入れる方々がいないというような場合、あるいは乳児が足らないというような場合、いわば無認可保育の関係になるのですが、そういう場合はどういうようにされるのですか。
  73. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 お尋ねの点につきましては、厚生省とも御相談してまいっているところでございまして、補助を行なうという場合には厚生省がお示しになる社会福祉施設の最低基準というものに見合うようなものということを原則にしていきたいと考えております。
  74. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、大きな病院ぐらいにしか適用がないことになりますね。どうですか。
  75. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 人数につきましては一応一カ所当たり三十人規模程度のものということに考えておりますが、やはり児童福祉の確保という点からの配慮ということが片や要請されるわけでございますし、児童福祉施設としてのある程度水準の維持、レベルアップということは必要であるという考えに立っているわけでございます。
  76. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはきわめて重大な問題です。いろいろ問題があるわけですね。ですからこれはあらためてもう一度保育行政のところで質問をしてみたい、こういうように思います。  そこで、先ほどちょっと社会福祉施設の従業員の宿舎の話をしたのですけれども、これは最終的に答弁がなかったわけですが、これはもう一歩進んで何らか手当てする方法はないですか。
  77. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私どもの手でさしあたってできますことは、先ほど先生指摘になりました雇用促進住宅、雇用促進事業団の建設しております全国各地の住宅がございます。これは従来は移転就職者用の宿舎ということで、新たに雇い入れられて住居を移転する者に限られておりました。先般当委員会で御可決いただきました法律改正によりまして、住居を必要とする者については貸与できるようになりましたので、こういったものをそういう人たちに貸与することによって住宅の確保をはかってまいれるのじゃないか、かように考えております。
  78. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その程度じゃだめですよ。立地条件が違う。それはもう、とても実態に合わないですよ。ですから、そういう、ことに社会福祉施設の場合は、必ずしもいいことではないけれども、施設の近くにそういう宿舎があるわけですね。また、なければ意味をなさない場合も非常に多いわけですよ。ですから、私はやはり労働省としては一歩踏み込んで、厚生省がそういうことで現実に非常に困っておるわけですから、また大きな社会問題であり政治問題ですから、労働省のほうから雇用確保のための住宅を助成をするなりあるいは確保してやるということが必要じゃないですか。私はこのことはぜひ必要だと思うのですがね。大臣、どうですか、これは緊急な問題なんですよ。
  79. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 全国の勤労者の住宅問題は、一般の住宅問題と同様、これは住宅を持ち家とか、または賃貸でもけっこうでありますが、いまの御指摘のようなさような中でおって、福祉施設、病院とかそういう就労者のなかなか困難な場合の点も、御指摘のような点、かっちりとこたえるような本年度の予算にも御趣旨の点にさわるところもありますが、はずれたところもあるというような、どうもぴったりせぬところがあることは認めます。これは厚生省ともよく相談いたしまして、まだ本年度、特別な場合には特別な要求もできますので、労働省が固有にやるとなかなか建設省その他の関係もありますので、よく厚生省と打ち合わせいたしまして、御趣旨に沿うように何かひとつ新しい助成制度もしくは積極的な、建設するような措置を講じたいという感じがいたしますので、よく厚生省と打ち合わせまして、これが具体化に——いまのお説を聞きますと、なかなかこれは重要な課題でありますので、十分各省とも連絡をいたしまして、何かここでひとつそれにぴたりと当てはまるような方向に持っていくように、本年度さっそくこれが御趣旨に沿うようなことにいかなくても、その芽を出すような方向はぜひこれは具体化するように善処いたしたいと思います。
  80. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 早急にしないと間に合わないのですよ、実はこの問題は。もう民間の重度心身障害児の施設というものは壊滅状態なんです。来年度、四十九年度から予算をつけるというのです。ところがそれは措置費だけの話であって、住宅なんかのことは考えておれぬわけですよ、厚生省は。住宅がなければ入れないでしょう、現実問題として。いまちょうど夏休みで、アルバイトがどの施設にも来ておる。アルバイトはみな大部屋へ詰め込んでおるわけですよ。そういう状態なんですよ。仕事も腰痛でたいへんだというけれども、その入れる施設すらないという、こういう状態ですからね。これはもう早急にやってもらいたい。  そこで、労働省の方がおられるわけですから、いまの保育所問題の全体はあとから聞くとして、労働省関係する分だけちょっと聞いておきたいと思う。無認可保育になる多くの理由は、三カ月未満の子供を預かっておるということにあるのですよ、一つは。大体通達で九十日以後の子供でなければ預かるなと書いてある。厚生省は保育所に対して通達を出しておるでしょう。九十日以内の子供は預かるな、こう書いてある。要するに、俗に首がすわらぬというのですか、そういう子供を預かってはならぬと書いてある。そこでみんな困って、無認可保育になっておるわけですよ、基本は。人数の少ないところが多いということも関係ありますが、一番根本はそこなんですよ。そうすると、無認可保育で、基準に合わなければ補助金をやらないなどといったら、あとはどうしたらいいかというと、基準局長に頼んで、産後の休暇を三カ月、こう言う以外には手がないのだ。それか、育児休暇をやるかですよ。結局手がないのですよ。とにかく基準に合わすためには、九十日までの子供は預かるなと書いておるわけです。通達を出しておるわけだ、厚生省は。それは責任が持てぬ、こう言う。それに合わなければ基準にならぬでしょう。ですからあなたのほうが補助金をつけますよといっても、肝心なところが抜けておる。肝心なところが抜けておっても、それがよその省のことならいいけれども、基本はやはり労働省にあるのですよ。そこで私は、一体いつまでこんな六週間、六週間の産前産後の休暇の法律を置いておくのですか。もう先進国では恥ずかしいような、しかもILOの条約百三号にすら違反しておるでしょう。それから勧告とは非常にかけ離れておるでしょう。昭和二十二年にできたものをまだそのままにして、そして一方においては夫婦共かせぎの家庭がどんどん出ておるという、こういう中で基準局長はどういうつもりですか。
  81. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 基準法につきましては、先生もいま御指摘がございましたように、昭和二十二年にできまして四半世紀を経ておりまして、最近の実情から見て、これでいいのか、いろいろ問題があるではないかといういろいろな御意見があるわけでございます。私どもといたしましてもそういう点を十分検討いたしたいと考えておりまして、御承知のように、かねてより労働基準法研究会等設けましていろいろ御検討もいただいておるわけでございまして、そのうち安全衛生等、研究結果のいただきましたものにつきましては必要な法律改正等も行なったわけでございます。  ただいま先生が御指摘になりました女子・年少者の問題、この問題はきわめて重要でございますと同時にいろいろな側面を持っておるわけでございまして、基準法研究会におきましても、現在女子・年少者問題につきましては、先般来いろいろな科学的、医学的、そういう面も含めまして検討するということで、そういう方々の専門委員会というようなものもおつくりになりまして、医学的、科学的な面を含めていま鋭意検討をされておられますので、そういう結果を十分拝見した上で各方面の御意見も伺って検討するようにいたしたい、かように考えておるものでございます。
  82. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 ちょっと補足的に……。先生指摘の無認可という問題につきまして御説明さしていただきたいと思います。  厚生省の方がおいででないようでございますが、この保育施設の認可ということのための条件といたしましては、一つには設置主体が公の地方自治体あるいは社会福祉法人であることが、たしか条件になっていたと思います。それからまた、そこに収容するところの乳幼児が不特定多数と申しますか、地域一般の子供たちを収容する、そのようなときに認可保育所になるのでございますので、企業内保育施設につきましては、その両方の条件を欠きますので、いずれにいたしましても認可保育所ということには位置づけができないもののようでございます。ですから、しょせんは無認可の保育施設ということでございましょうが、しかしその運用にあたりましては認可保育所等のレベルを下がらないようにやるべきだ、こういう考え方が両者の間にございますので、そのレベルを保つということで助成策を講じているわけでございます。
  83. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 わかりました。レベルを保つということについてはわかりましたが、問題はとにかく九十日までの子供は預かるなという指導をしているでしょう。通達が課長から出ておる。それは困ります。ですから企業内保育も、たいてい一年くらいまでの子供なんですよ。そうして一年を過ぎますと、一般の公立の保育所とか社会福祉法人の保育所に預けておるわけですよ。問題は、赤ちゃんから一年未満ぐらいの子供をどうするかというのが問題なんですよ。ですから、その点を十分配慮していただかないと、実際は非常にむずかしい問題になる、こういうことです。  それから基準局長、あなたに科学的、医学的、いろいろ調査をするといいますけれども、そんなに総合的にやらなくても、当局が気がついたらどんどんやっていいと思うのですよ。母性保護の規定を全部、全面的に改めるというものの考え方に立つとなかなか困難でしょうから、産前産後の休暇ぐらいは、それだけでもちょっと改正したらどうですか。簡単なことでしょうが。幾らだれが考えたって、医学的科学的に考えてみても、これは産後の休暇の長いことがいいことはわかっているのですから、それは少なくともいまの国際水準並みにはやるべきじゃないですからね。どうですか。
  84. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 ILO条約でも御承知のとおり産前産後六週間でございますが、現行わが国の基準法の場合には、五週間を経過いたしました者で、医者がいいと認め、本人も働くことを希望した者には、五週間をこえた場合には就労させてもいいという、六週間に満たない五週間以上の者についての特別の除外規定がございます点が特にILO条約に違反したわけでございます。その点は小さいことでございます、さほど大きなことではございませんが、労使の間には産前産後六週間という期間そのものについてかなり大幅に延ばすべきだ、あるいは六週間でいいんだというようないろいろな意見がございます。やはりそれらの点につきましても、現行の科学的な面からして、いまおっしゃった保育施設等々の社会的な問題もまた別個ございますけれども、科学的、医学的に見ても一体どのくらいが一般的な観点から見て妥当かということはやはり検討の要があるんではないか、こういうことで、その問題も含めまして、女子・年少者のいろいろな保護の問題についていま医学の専門家あるいはそのほかの生理学、衛生その他の関係専門家の検討がなされておるわけでございます。
  85. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 条約は、六週間が厳格に日本の場合は守られていない。五週間でも医者の診断があればよろしい、こういうところに違反がある、こう言われておる。ですから私は条約とは言わなかった。勧告ということばを使った。ですから婦人少年局長、御注意願いたいと思うのですが、職場によっても、婦人が多い職場はかなり八週間をかちとっているのです。ところが婦人の少ない職場は、やはり基準法のとおりしておる。女性の声が小さいわけです。たとえば同じ公務員でも県職は意外に六週間・八週間、通算十四週間というのが多いわけです。ところが市町村職は六週間・六週間になっておる。よく調べてみると、県職よりも教組は御存じのように女性が多いから、地方公務員である教組がかちとったのを、同じ県が人事権を扱っておるからということで県職も同じように扱われておる、こういうことなんです。ところが市職になりますと婦人の労働者は非常に少ないから、やはり六週間・六週間が多い。そこでやはり現実問題として執行部も男性が多いし、どうもいかぬわけです。日本の政治というのは、声が小さいとやってくれない。ですからこれは現実に、あなたのほうから出された資料でも、お産をしたということ、あるいはお産をして子供が生まれたということが、婦人退職者の大きな理由になっておるでしょう。ですからこれはどうしても産後の休暇あるいは育児休暇というものを真剣に考える必要があると思うのですよ。いまごろ六週間・六週間というが、現実にはみんなどのくらい休んでいるのですか。婦人少年局の調査があるでしょう。現実には産後からどのくらい休んでいますか。
  86. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 昭和四十六年の全国的な調査でございますが、これですと、産後の休業日数といたしましては四十六・六日という数字が出ておりますので、六週間半くらい、六週間を少しこえた日数を実際には休業しております。
  87. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そんなことないでしょう。産後休暇は四十六・六くらいですか。私はいまちょっと統計がないのですけれども、あなたのほうから出された資料にも、そんな少ないものじゃないでしょう、現実に有給休暇その他を全部集めて休んでおるのは。現実に出勤するのは、何日後くらいから出勤されておりますか。産後の休暇は大体四十二日しかないから、それにさっき申しましたように八週間というようなところがありますから、それを平均して四十六・六というのですか。現実にお産をしてから休んでおる日数を知りたいのです。
  88. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 その点につきましては、統計として数字を把握しておりません。
  89. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 問題はそれなんですよ。いま婦人少年局長のおっしゃったのは、産後の休暇として確立をしておる場合、それで六週間の場合は四十二日ですか、それから八週間の場合が五十六日、そういう規定のある範囲内でとった平均が四十六・何ぼだ、こういうことなんですよ。現実に休んでおるのは——休んでおるといいましても、やめる人は別ですよ。続いてつとめる人がどのくらい休むかというと、平均値はかなりの数字になっておると思いますよ。ですから、やはりその程度は産後の休暇というものを認める必要があるのではないか、こういうように思うのですがね。国際水準からいえば、何といっても八週間、この点ぐらいはどうですか。福祉国家といっておるのですから、日本人は働き過ぎるといっておるのですから、産後の休暇ぐらい国際水準並みにやらしたらどうですか。
  90. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 先ほど申し上げましたように、現在専門家の科学的、医学的な検討もいろいろ願っております。国際水準等も十分考慮に入れながら今後検討してまいりたい、かように考えます。
  91. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これだけでも早く、先行しておやりになったらどうですか。全体的な母性保護の全部の規定、時間から何から全部検討しておやりになることも必要でしょうけれども、しかし産前産後の休暇、そして保育所問題がいま大きな問題になっておる。そして三カ月未満の子供はなるべく預かるな、こういうような通達が出ておる。そしてやめざるを得ない、労働力は足らない、こういうときに、あなたのおことばでいえば戦後四分の一世紀、法律をそのままにして、まだ慎重に検討をされておる、こういうことではいけないのじゃないか。ですから、この点は早くおやりになったらどうかと私は思うのですがね。どうでしょうか。
  92. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 婦人保護の問題につきましては、そのほかにも当面緊急な問題としていろいろ提起されておるのがございますが、そのうちどれだけの範囲でどういう順序で検討するかといったようなこと、いろいろ相互彼此勘案して考えなければならぬ問題があると存ずるのでございまして、いずれにいたしましても、ただいま科学的な面の検討がなされておりますので、それらの結果が逐次出てまいりますこと等を見ながら検討することとしたらどういう順序で、どこから手をつけるかというようなことも至急に考えてまいりたいと存じます。
  93. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ひとつ至急にやってもらいたい。どうも行政がおくれますね。非常に行政がおくれておる。むずかしい問題もありますよ。しかしこういった問題は、私は簡単にできるものじゃないかと思う。ただ踏み切れないだけですよ。なぜそれができないか、私は非常に遺憾に思うわけです。  最後に、具体的な問題で恐縮ですけれども、石川県の金産自動車工業における不当労働行為事件について質問したいと思います。  ごく簡単に言いますと、会社が社長以下部課長一緒になりまして、ある旅館に陣どって、そして五十台ぐらいの自動車で、いわば一晩のうちに組合をひっくり返したという事件です。五百名ぐらいおりました組合を二日ほどの間に五十名にしてしまった。それは全部手分けをして、そして家庭訪問をして、いまの組合から脱退をして第二組合に入りなさい、判をつきなさい、そしてあらかじめ用意しておった文書に判をつかした、こういう事件です。  私がなぜこれを問題にするかといいますと、今日こういう感覚の経営者が出たというのは一体どういうところにあるのだろうか。公々然としてこんなことが現実に行なわれておる。なぜ行なわれるのだろうかという疑問に逢着せざるを得ないのです。きわめて原始的な、初歩的な違反をやっておるのです。それは、組合員を使って組合脱退を勧誘することはありますよ。しかし部長や課長がみずから行って、家庭訪問をして、父兄のおるところで書類を出して判をつかしたというような例はきわめて珍しい。この事件について一体どういうように労働省考えられておるか、お聞かせ願いたい。
  94. 道正邦彦

    ○道正政府委員 事件の骨子につきましてはただいま先生が御指摘のようなことでございますが、金産自動車工業は石川県の松任市に所在し、従業員は約七百名でございます。バス、トラックのボデー等の製造、販売を行なっている株式会社でございますが、御指摘のように、従来約五百名で組織しておりました全金石川地本金産自工支部というのがあったわけでございますが、本年三月六日に非常に大量の脱退がございまして、大量脱退した組合員のほうで新労働組合を組織しております。  本件につきましては、全金の石川地本及び金産支部が、労働委員会に対しまして不当労働行為の申し立てをやっております。現在地方労働委員会におきまして審査中でございます。われわれといたしましては、こういう段階でございますので、労働委員会の審査の決定を注目しつつ、重大な関心を持って事態の推移を見守っておるというのが現状でございます。
  95. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働委員会にかかっておるからということで、きわめて慎重に発言をされたわけですけれども、しかし私はいまごろになってこういう事件が起こるということ自体、非常にふしぎに思うのですよ。大体、ちょうど選挙と同じように、旅館に陣どって、そしてあれも脱退した、これも脱退した、二十名なら二十名あるいは三十名なら三十名脱退者が出たら万歳をしたという、こんなことが公々然として行なわれた。そしてどんどん、次から次へと証人が出ておるわけです。私のうちへ来ました——それもみな課長あるいは部長です。そしてひとつこれに判を押せとか、こういうことが行なわれておる。一体労働省はどういう教育をしているのか。もう少し言うと、これはやはり国鉄や郵政なんかに関係があると思うのです。あれだけ大々的に国の機関が不当労働行為をやるなら、われわれ一企業がやってもいいじゃないか、こういう考え方を持っておるんじゃないかと思うのですよ。知らないでやったわけじゃないのです。ですからこれはもう、あとから審問をされておるわけですけれども、地労委では、いや、そういうことは絶対ありません、私は行きませんでした。現実にたずねていって、そして親にも会って、おたくの子供さんがこうだということまで言っておるのに、いや私はそんなことはない、そんな家に行ったことがないと、経営者は水ぎわで黙秘権同様のを使っているのですよ。ですから、私は行きましたが、こういう理由があるというように、理屈があればいいですよ。そうじゃなくて、いや、絶対行ったことはありません、顔も見たことはありません、家も知りませんなんというような答弁をせざるを得ないようなことをなぜやったのか。これは私は、国の機関でもそういうことをやるじゃないかというようにこういう経営者が見て、ついやってもいいんだと考えたのではなかろうか、こういうように思うのです。これは初めからきわめて計画的ですよ。自動車を五十台も用意してぱーっと散ったわけですから。そうして一両日のうちに五百名の組合員が五十名になったわけですからね。こんなことが許されるかという——なぜそういうような気持ちになったかといえば、やはり私は政府責任があると言わざるを得ない。これに対して労働省はどういうようにお考えですか。
  96. 道正邦彦

    ○道正政府委員 本件に限らず、私ども承知している案件だけでも数件、労使のそういうケースを承知いたしております。御指摘のように、日本がここまで近代国家として発展したにもかかわらず、労使関係がなお、部分的にせよ紛争の種が尽きないというのは非常に遺憾に存じます。ただ、本件につきましては、組合は先生指摘のような主張をいたしておりますけれども、会社側は全面的に否定しておりまして、地労委のほうでいま審査をやっておりますので、私は日ならずしてその結果も明らかになると思います。もしそういう事実が御指摘のようなことで明らかになれば、これは言うまでもなく組合法の違反になるということになるわけでございますけれども、現在は地労委でせっかく審査中でございますので、その結果を待ちたいというふうに考えるわけであります。
  97. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一体なぜこういうことをしたのでしょうかね。五百名といえばかなり大きい企業でしょう、あなたは従業員七百名とおっしゃったから。しかも、ほかの人々も入っておるのでしょうけれども、しかし、それにしてもこんなことが平気で行なわれたという、そういう背景は一体どこにあるのだろうかと思うのですよ。これはやはり労働省の姿勢というのが問題だと思うのです。そんなことをやったって、このごろは国鉄だって郵政だってやっておるのだから、やったっていいよ、そういう気持ちがあるのじゃないですか。部長や課長が個人のお宅へ行ったり電話で呼び出したりして、そうして印刷をした脱退届けと新しい組合の加入届けを渡して判をとったというのですからね。私はけしからぬ、かように思うのですけれども労働大臣、まだこういう企業があるのですが、あなたはどういうようにお考えですか。
  98. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 企業内の紛争の問題も全国でいろいろありますけれども、この問題、きょう、朝、聞きまして、局長からいろいろ事情を聴取したのですが、これが不当労働行為になるかならぬか、地労委のほうでいま審査中でありますので、こういう直前に労働省がすぐにタッチするというようなこともなかなか困難な点もありますので、どちらにいたしましても遺憾きわまりないことと思いますので、今後内容その他が十分判明しますと同時に、労働省といたしましても大臣としても、適当な措置を講じる所存でありますが、いまの段階で、地労委で審査中でありますので、これに対して遺憾と言うことはできますが、どうするというところまでは、まだ大臣として意見を述べる段階でないという微妙な点もあります。しかし、かようなことは今後ないことを希望し、また金産自動車についても、労働省のほうから適当な警告は出す所存であります。
  99. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういうようにいわばあいまいな組合ができて、そしていわば第二組合といいますか、その組合が法人届けのために資格審査を地労委に出した。地労委はこれを保留した。にもかかわらず、その新しくできました第二組合と会社が協定を結んだ、その三六協定を基準監督署は受理をした。なぜ、地労委のほうで保留をしておるのに監督署のほうは受理をされたか。その受理をされたということが、いわば第二組合は法的に認められたのだという印象を一般に与えることは、いなめない事実である。それはきわめて明白な事実ですが、私はその点が行政措置として非常に遺憾だ、もう少し配慮する必要があったのではないか、こういうように考えるわけですが、その点を基準局長はどういうぐあいにお考えですか。
  100. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 先生が十分御高承のとおり、基準法の三十六条の協定につきましては、これは労働組合だけではなしに、労働者の過半数で組織する労働組合があればその組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定、こういうことに相なっておるわけでございます。それで、これは届け出でございまして許認可等ではございませんので、一応この法定の要件を具備しておれば受理をせざるを得ないわけでございますが、この新労との三十六条協定の届け出がございました場合にも、そういう意味におきまして、基準法三十六条の要件を満たしておるかどうか。これにつきまして会社にも疎明をさせ、組合の加入届け等も確認をいたしまして三十六条の協定としての一応の要件を備えておるということで、これは新労が組合法にいうところの労働組合であるかどうかということは別といたしまして、三十六条の協定としての要件を備えておれば届け出を受理せざるを得ないということで受理をいたしましたわけでございまして、決して三十六条の協定を受理いたしたことが労働組合であるということを認めたとか何とか、そういう意味ではないわけでございます。組合であるかどうかということは、もちろんこれは組合法に基づきまして労働委員会が認定をすべきことである、私どもかように考えておるわけでございます。  なお、ただ三十六条の協定の要件を形式的に満たしておる場合におきましても、あとからそれが、その組合員の加入届けなるものが会社の威迫に基づいたものであるとか、あるいは労働者の錯誤に基づいて出されたものであって、新労が過半数の労働者の自由意思を代表していないのだということが判明いたしますれば、当然三十六条協定としては適当なものでないことになるわけでございます。
  101. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 文理上解釈をすればそのとおりですけれども、問題は過半数の組合かどうかというのが問題なんですけれども、要するに今度の事件というものはただ不当労働行為を一組合がやられたとかいうのではなくて、不当労働行為であるけれども、それは構成にかかわる問題ですよ。でありますから、もしこれが不当労働行為になるならば、構成自体が変わるわけです。そしてそれは過半数の組合員でなくなるわけですね。ですから私は、その点はただ形式的に扱うべきではなかったのではないか、こういうように思うのです。問題は構成である、構成の変化にかかる問題である、こういうように思うのです。それならばむしろこの過半数の署名を取ったらいい。ですから、その点はどうなんですか。
  102. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 ただいまもお答え申し上げましたとおり、新労が過半数の労働者を代表する労働組合だと認めて受理したわけではないのでございまして、それが組合法にいう労働組合であるかどうかは別として、「過半数を代表する者」であるかどうかということで、いろいろ会社側の疎明あるいは組合側の加入届け等を確認いたしまして、一応加入届けが過半数の労働者から出されておるということであれば、過半数の労働者を代表しておると認められるということで、過半数の労働者を代表する者という意味で三十六条協定として要件を満たしておるから、そういう意味で受理をいたしたわけでございまして、それを構成員とする労働組合であるということを別に認めたわけではないわけでございます
  103. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは奇妙な説を聞きました。あなたは、三十六条のいわば前段、「労働者の過半数で組織する労働組合」ということで受け取った書類ではない、「労働者の過半数を代表する者」として受け取った書類だ、こういうことをおっしゃったが、そういうように解釈していいわけですか。
  104. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 私が申しましたのは、三十六条では、過半数の労働者を代表する労働組合があればそれ、ない場合においては過半数の労働者を代表する者との書面による協定ということになっておりますので、過半数の労働組合であるかどうかということは別として、この前段か後段かのいずれかには該当する。そういう意味において要件を具備しておる。前段に該当しない場合においても、後段の過半数の加入を得ている労働者の代表者だというところには該当するのではないか、こういう意味で受理をしたわけでございます。
  105. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いや、それはおかしいです。文章は「労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面」だとなっている。ところが労働組合として認めたのでしょう。どうなんです、その点は。あなたはあとからは、そうでない、過半数で構成する労働組合として認めたのではなくて、むしろ「労働者の過半数を代表する者」として認めたのだと、こうおっしゃった。それならそれで理屈は通るわけですよ。どっちなんですか。
  106. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 過半数の労働者を代表する労働組合であるかどうかということは、もちろん基準局は労働委員会の証明等がない限り認定することはできないわけでございます。したがってその点は、過半数を代表する労働組合であるということを認めたわけではございませんので、それに該当するかどうかはいま審査中であるとしても、後段の過半数の労働者を代表する者には該当する。したがって三十六条協定の要件を形式的に一応具備しておる、こういうことで認めたわけでございます。
  107. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それでは私が聞いたのと同じですね。労働委員会との関係で労働組合として認めたのではない。しかし過半数を代表する者として認めたのだ、こういうように解釈してよろしいですか。
  108. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 いずれであるかということは明確ではございませんが、少なくとも後段に該当するということでございますので、先生がおっしゃるようにおとりいただいてけっこうごございます。
  109. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 後段に該当するということになりますか。本人たちが署名をしたりして代表者と認めたという独自のものはついていないのですよ。過半数を代表する者というならば、この問題についてそれを委任をしますとかなんとか別の形式をとって、それで代表したというならば、それが代表するのはいいです。ところがそれは加盟の——労働組合として、前段の行為として加盟する人間の名簿を添付しただけでしょう。ですから私はそんなに便宜的に解釈できないのですよ。後段でいくならば後段でいくような手続が必要でしょう。前段でいくならば前段の手続が必要ですよ。そのいずれかだというようなあいまいなことじゃ困る。どうも組合としてはっきりしないから、では後段の手続でいきましょう。そうすると、代表する者としての手続をとるというならば、その疎明書類はそういうようにあるべきですよ。実際書類そのものはそうなっていないでしょう。
  110. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 一応疎明として私どもは加入届けを確認をいたしておるわけでございます。新労に対する加入届けを過半数の労働者が出しておるということは、これを自分たちを代表する者として一応認めた疎明の書類になるのではないか、かように考えて、少なくとも後段には該当する、かように考えておるわけでございます。
  111. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 代表する者というのは、三十六条協定について意思統一をしたということでなければならぬのでしょう。どうなんですか。過半数の労働者を代表する者というのは、三十六条協定を結ぶことについて意思統一をした労働者、それが過半数を占める場合、こう解するべきでしょう。
  112. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 三十六条の協定をすることだけについて代表権を与えたと必ずしも限定しなくても、三十六条の時間外協定その他を含めて、自分たちの代表権を認めたと認められるものであればいいわけでございまして、一応新労の加入届けということで、新労というものが労働条件全体をやるのだというたてまえで発足をしたわけでありますので、そういうものについて加入届けを出しておるということであれば、そういう包括的な代表権を認めた疎明になるというふうに考えるわけでございます。
  113. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は少なくとも三十六条協定を結ぶことによる——それはこれだけてなくてもいい、包括的であっていいのですけれども、その意思結集をした者、こういうように解するのです。ですからあなたのほうが前段の労働組合ということについて否定をされるならば、加盟届けというものはむしろそちらになるわけですよ。ですから、労働組合として加盟した、それが問題であるとするならば、後段でやろうとするならば、後段でやるような手続がやはり必要なんだ。そこが問題でしょう。もしあなたのような議論が成り立つならば、今度は逆に聞きまょう。もしこれが不当労働行為で、この組合はいわば組合として認められないということになったら、その効力はどうなるのですか、協定のその効力は。
  114. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 三六協定を結べるのは労働組合だけではございませんで、労働組合でなくなったから直ちに協定の効力に及ぶということではない。労働組合ではないけれども、そういう団体に引き続き労働者が加入して、そういう団体を通じて会社と時間外協定等を含む労働条件の処理をしたいということであれば、そういう意味においてその団体が過半数の労働者を代表していれば、それは三十六条協定としての要件は別にそれによって失われるわけではないのでございまして、現にたとえば労働組合がないところなどにおきまして、親睦団体等がそういう意味において三六協定の主体になっているというような場合もあるわけでございます。ただ、労働者が加入したということが威迫に基づいたものであるとか、あるいは錯誤に基づいて出したものであって、あれは加入届けは出しておるが、労働者の自由意思によって出されたものでない、したがって、労働者の自由意思を代表してないということになりますれば、これはもう三十六条協定の過半数の労働者を代表する者という要件そのものがなくなるわけでございますから、協定としての効力はなくなる、かように考えます。
  115. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは不当労働行為になった場合はどうなんですか、会社の不当労働行為になった場合は。
  116. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 不当労働行為になった場合は、組合法上のいろんな問題がございましょうが、三十六条協定で申しますと、不当労働行為としてその組合の労働組合たる資格が否認された場合でありましても、労働者の方がその団体に引き続き入って、三十六条の時間外協定その他労働条件処理についてその団体を通じてやっていこうということでございますれば、三十六条協定としての要件が特にそれによって変わってくるということはない、かように考えます。
  117. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、不当労働行為になったけれども、新しく何らかの意思を通じてその団体を続けていこうではないかといった場合のことを言っているのではないのです。これはそのときにまた考えればいい。また、それがあるいは効力が無効であるか有効であるかということの問題もあるが、しかし問題はさかのぼって、一体その効力がどうなるかと、こう聞いているのですよ。要するに不当労働行為というか、やっぱり会社のそういうようないろいろな策動によって、支配、介入によって意思が曲げられた、自主的な意思行為でなかったということになるでしょう、加入が。ですから労働組合を前提としての協定というものは、三十六条協定は一応無効になるのじゃないですか。今後続けていこうというのは別の話ですよ。その後どうするかというのは別の話。いままで労働組合として集めた加入届け、そういうものが一応無効になるでしょう。ですから、そういうあいまいなことではいけない。少なくとも不当労働行為があったら、やっぱり自由意思ではなかった、こう考えざるを得ないでしょう。
  118. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 これは、不当労働行為であった場合の効力につきましては、労政局長の所管でもございますので、あとであるいはそちらの御意見があるか存じませんが、不当労働行為になったということは使用者の支配、介入があった、こういうことでございまして、労働者がその団体に加入したことが労働者の意に反したものであったかどうかということには直ちに結びつかないのではないか、こういうふうに思っております。
  119. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうもはっきりしない。あなたが区別しておっしゃることもはっきりしないと思うのですよ。やはりそういう会社の不当介入がなかったとすれば、そういう加入届けは出なかったでしょう。それはすなおに考えればそうでしょう。自分たちみずからでつくろうと言ったのじゃないですから、会社が、あなたはこちらに入ったほうがいいと、会社の上司が言ってきたわけですから。ですから、一応すなおに考えれば、労働組合としては適格性を欠いたわけですから、労働組合としてはなくなる。それからそのあとの連中がいまさら第一組合に帰れもしない、どうするかということになれば、それならそれはまた別の話ですよ。そして三六協定だけは結ぼうというなら、それは本来別の話ですよ。それから、初めからこれは労働組合として法的に問題があるから、ひとつ過半数を代表する者でいこうというなら、これも私はいいと思うのですよ。そうでないでしょう。労働組合として届けたわけですよ。労働組合として届けたけれども、あなたのほうで、いやこれは組合としてはあぶないけれども、これは代表する者であることには間違いない、こういうように区別ができるのですか。それはできないでしょう。ですから、そんなあいまいでは困るわけです。やはり労働組合としてあなたのほうでは受け付けたわけでしょう。それならば、労働組合としての法的な資格について地労委がちゅうちょして保留しておるものを何で受け付けたのか、こういうように思うわけです。おたくのほうで、どうも労働組合としては、いま不当労働行為として提訴中ですから、ひとつ過半数の代表として届け出を出してくださいというなら、それは私は一つの方法だと思うのです。そうでなくて、労働組合として受け付けたものを、役所のほうではそれは代表する者として扱ったのだということはちょっと理解できない、こういうように思うのですがね。
  120. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 向こうは労働組合ということで出してまいったわけでございますが、労働組合であるかどうかは、いま争いがあるわけでございますから、それを基準局で労働組合であると認定したわけではないのでございます。しかしながら、三十六条は過半数の労働組合がある場合はその組合、ない場合は過半数の労働者を代表する者との協定でもよろしい、こういうことに相なっておるわけでございまして、ともかく過半数の労働者が加入届けを出しておる、そうしてその組合は、労働条件全般を取り扱うことにそういう団体がなっておるということであれば、その二つの要件のうち少なくとも後段の要件には該当し得る、するということで、三十六条協定の要件を満たしておれば受理せざるを得ないということで、受理をいたしたわけでございます。
  121. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうもはっきりしないのですよ。あなたのほうは労働組合の前段の条項については、いま係争中だから保留されておる、そうして後段でいけるのだ、その後段でいけるというものの考え方がぼくはおかしいと思う。それは後段でもいけるのですよ。いけるとするならば、それは方式が違う。やはりこの三十六条協定を結ぶからというので、この組織が代表しますというような何らか疎明をするものがなければいかぬ。労働組合としての加入届けを出したものをもって後段のものに使うということは、これはおかしいのです。何にしてもこの事件は軽率に扱われたと私は思う。ですから、地労委がそれだけちゅうちょしておるものを、なぜ監督署のほうでそういうように受理をしたのか。受理をするのもいいですよ。それなら明確に、労働組合としてはこれはわからないけれども、過半数の代表者の「者」で受けます、こういうのなら、これはこれでそういう一つの意思表示をされればいい。あなたのほうはそういう意味で意思表示をされたわけですか。これは労働組合として受け付けたのではなくて、過半数を代表する者だ、こういうように基準局長考えて受理をしたのだ、これでいいですか。
  122. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 私どもは、少なくとも現在の段階で、三十六条前段の労働組合であるということを認定して受理したんではない、これははっきり言えると思います。前段、後段を含めていずれかの要件には該当するということで、形式的に該当する協定であるので受理をした、こういうことでございます。
  123. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ぼくは必ずしも賛成しませんが、いずれか、前段でなくとも後者にはなるという、そういう安易なことは許されないと思う。というのは、加盟届けそのものが不当労働行為であるという中の一翼であるというならば、当然基本的に考えなければならぬと、かように思います。しかしこの受理は、労働組合として役所が見たんではない、これは後段の「者」としての扱いだ、こういうように考えたとするならば、これははっきり監督署を通じて組合に意思表示をすべきだと、こういうように思うのです。この扱い方は労働組合としたのじゃありません、これは「代表する者」と思ってやったんです、これならこれで私は監督署としてははっきり明示すべきであると思いますが、それでよろしいですか。あなたのほう、されますか。
  124. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 ただいま私がお答え申しましたようなことは、十分に現地にも伝えるようにいたします。
  125. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうもありがとうございました。
  126. 田川誠一

    田川委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  127. 田川誠一

    田川委員長 速記を始めて。  田邊誠君。
  128. 田邊誠

    ○田邊委員 御承知のとおり、公制審は八年目を迎えて、第三次公制審が九月三日期限切れを目前にして、いま作業を進めておるようでございますが、政府はこの公制審の答申が出たならばそれを尊重することを再三にわたって言明をしておるわけであります。しかし私は、そのことは政府が何も意見がない、あるいは無策であってあなたまかせということではないと思うのでありまして、当然労働基本権、まあ一口にいってスト権に対して政府の基本的な態度というものはおありだろうと思うのです。これは総務長官、いかがでございますか。
  129. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 田邊先生指摘の問題点でございますが、公務員制度の審議会におきましては、いまのお話のごとく第三次公務員審議会が審議を開始されて、鋭意真摯に討議がかわされてまいったようなわけでございます。したがって、本年の五月七日から公益委員側による答申案の、まあたたき台と申すか、そうした点を中心に作業に入ってまいりまして、六月二十五日、労働基本権全般についての検討経過が中間的に報告をされたようなわけでございますが、その後も公益委員側のほうにおきましてはその検討が鋭意続けられまして、新聞にも報ぜられましておるがごとく、今月の二十七日の総会において公益委員側のいわゆる素案が労使の各委員側にそれぞれ内々で示されまして、この素案に基づいて、きのうでございますが、公益委員側と労使各委員との間に個別的な懇談会が行なわれたところでございます。今後も、もう三日に迫りまして、明九月一日には公益側と労使各委員が個別的に懇談をさらに重ねるという予定等がありまして、その上に立って答申の作成のために審議が続けられるという手順に相なっておるような次第でございます。したがって政府といたしましては、その審議の状況をながめながら、答申がなされました上に立って、その答申を尊重いたしながら今後の方針をきめていくという態度でございますので、いま審議の際、まあ正念場に来ましたといいますか、最後の段階に入っておりますので、政府といたしましては、とやかくそれに対する批判がましいこと、あるいは期待感、あるいは予想等の論議をいたすべきときではない、こういうような気持ちで、担当の私といたしましても、そうした気持ちで静かに注視申し上げているというような状況でございます。
  130. 田邊誠

    ○田邊委員 経緯は総務長官の言われたような経緯で進んでおると思うのです。そこでいま言われたように、公益側は一つの素案を出された。これには意見が一致しない面もあるようでございます。しかし前田会長は、スト権を一部であっても認めるという前提に立って、いわばこの素案をまとめられた。したがって、われとしてもその答申を出すにあたっては、このスト権は、全部というか一部というかその点については不明確であっても、これは認めるという前提で一本の答申を出したいということを語っておるようでありますけれども、この点に対しては政府はどのようにお考えですか。
  131. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 いま田邊委員が御指摘になりましたような前田会長のそうした結論といいますか、見通しといいますか、そういうようなことがなされたということも私はまだ聞き及んでおりません。したがいまして、そうした非常に大事な、微妙な立場での現時点でございますので、それに対して私が直ちにこれに対するところの返答、あるいはそれに対する判断、あるいはそれに対する所感をいま申し上げる段階ではない、こう考えておる次第でございます。
  132. 田邊誠

    ○田邊委員 総務長官、私は実はずいぶん長い間、この春もいろいろこの面について質問をして、あなた非常にかたくなといっていいほど公制審の答申を待ちたいということで、いわばあなた自身の判断も——以前は非常に自由に話をされた坪川さんが、このところ非常にかたくなになっておって、話をされない。それは一面、公制審がいわば自由な形でもって答申を出すということについては必要な面もありまするけれども、また一面、いわゆる使用者側といわれる政府のそれぞれの機関のいわば専門家というものが、政府考え方というものを受けて、かなりこれに対する発言をしている。この辺に私は大きな矛盾があると思っておるのです。したがって、いま素案についてあなた何らの判断がと言われるけれども、それは政府のいわば統一的な考え方ですか。代表される総務長官がそう言われる以上、政府の統一的な判断としては、いまこの素案については判断を下すべきではない、こういう見解ですか。
  133. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 田邊先生とはほんとうに昔からの政治の友として、ことに建設省におりましたころからいろいろと御理解ある御指導やらまた話し合いをさせていただいておる間柄でございますので、お互いよくそれぞれのお気持ちもわかるのでございますが、非常に重要な国民的課題であるがために、政府といたしましては公正な立場で御審議を願って、そしてその上に立って、この問題に対する政府の方向を十分検討し、またその答申を尊重したいというので、いま政府が頼んでいる最中ですが、頼まれている側がいま真剣に作業と討議を続けられておる最後の場に来て、いま政府がとやかく言うということは——これは皆さん御承知のとおりだろうと思うのです。それならば頼まぬほうがよかったということになるので、非常にまじめに、真剣に、重要な国民的課題として討議されておるのでございますから、その審議の場でよく冷静にその判断が、答申が行なわれることを期待いたしておるというところでひとつお許し願いたいと思うのでございます。
  134. 田邊誠

    ○田邊委員 私ちょっと、聞く前に……。それならばあれですか、使用者側で出ておる政府の各機関に対して、あなた、どういう指示を与えられますか。
  135. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 政府といたしましては、使用者側にも、労働者側にも、公益委員側に対しても、何一つ指示は与えておりません。
  136. 田邊誠

    ○田邊委員 使用者側はストライキ権をいわば総括的に認むべきでないという見解を示しておるのです。あなたのほうは、全く自由裁量の形でもって各使用者の委員は判断をして、それに対する意見を述べている、こういう考え方ですか。
  137. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 いまも申しましたように、使用者側の方々に対しても、労働者側に対しましても、公益委員側に対しても、政府といたしましては何ら示唆も与えていずに、自主的な判断によってそれぞれの考え方がおのずからまとまることを期待いたしておりますので、私といたしましては、使用者側に対して特別そうした指導的ないろいろな感覚のあるいは感想を申し上げるということもいたしておらないわけでございます。
  138. 田邊誠

    ○田邊委員 それについては、これは私どもは違う判断を持っていますけれども、そんなことがありようはずがないのであります。もっと自由裁量なら自由裁量のように、それぞれの企業なりの歴史的な経過を踏まえてかなり違った意見というのが吐かれてしかるべきである、こういうように私ども考えておる。軌を一にして同じようなかたくなな見解を述べているのは、これは政府のそういった面に対する統一的な締めつけがあるというふうに判断せざるを得ない、こういうように思うのです。そのことについてあなたと突き詰めて論議をするにはちょっと時間がございませんし、前にもその種のことは話をしてきましたが、後段で総務長官、いまは非常に微妙な段階だから政府はこれに対する見解を差し控えたい、それは察してくれと言うのですね。いわば担当である総務長官が、一面でいえばそういう慎重な、一面でいえばかたくななといわれるほど見解を示さない。これは政府のいわば一面におけるところの無策を露呈したものと受け取れる面もありますけれども、あなたは見解を述べない。しかし閣僚は述べているじゃありませんか。これはどうなんですか。奧野文部大臣は、けさの新聞によれば、スト権については公益側の代表の素案というのは、非現業職員にはスト権を認むべきでないと自分は受け取っていると、政府側として初めて素案に対する受け取り方について言及をしている。これはいいのですか。あなたは一番の責任者だから言わないけれども、閣僚の一員はかってに公益側の素案について言及をして、非現業職員に対してはスト権は認むべきではないというように素案は言っているというように受け取っている。これはどうなんですか。
  139. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 奧野君がどういうような答弁をされたか、あるいは御意見を開陳されたか、私は何ら関知いたしておりませんので、奧野君の発言に対し私が所感を述べたりあるいはどうだということは、私は申し上げる立場でないということで、われわれといたしましては、御承知のとおりに、最初から最後まで全く明鏡止水の気持ちで注視しておるということでひとつ御了承願いたいと思います。
  140. 田邊誠

    ○田邊委員 それならば、この新聞報道等が事実であるとすれば、これは担当大臣としてはきわめて遺憾ですね。きわめてけしからぬですね、いまのこの重要な段階で。それはどうですか。
  141. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 さっきも申しましたように、私がいま奧野君のお話の内容あるいはそうした事実に感想を言うようなことは、私は本人からも何も聞いておりませんし、私もそうしたものは情報としていま聞いたような状況でございますので、あくまでも私は、こうした重要な課題についてはその答申がなされるものと期待しながら、明鏡止水の気持ち、清純な気持ちでこれの推移をながめておるということで御了承いただきたいと思います。
  142. 田邊誠

    ○田邊委員 この問題については、あなたは政府を代表するものであるというように私は考えておるわけですけれども、そういう点で、あなたは明鏡止水と言ったけれども、実は明鏡止水では困るのです。ほんとうなら政府はこれに対して積極的な考え方を打ち立てるべき時期に来ていると私は思うのですよ。ところがそれに対して全くうしろ向きな、全く反動的な、全く組合に対する攻撃をかけるような、こういう考え方の大臣がおるということ、これはたいへんなことですよ。それ以外の問題についても奧野発言は重大な問題をはらんでいますから、いま国会が開かれている段階で、この問題をそのまま看過するわけにいかない、私はこう思っております。当然関係の委員会なりで奧野発言に対しては徹底的な追及をしなければならぬ、こういうふうに思っております。しかしいずれにしても、この発言が事実であるとすれば、これは重大問題であるという認識は同じでしょう。言った言わないは別として、こういう報道がなされているんだから、天下の公器であるマスコミを通じてこれがなされているんだから、国民はそう思っているんだから、奧野文部大臣はこういう発言をしたと思っておるんだから、あなたはそれに対して一体どう考えますか。これはけしからぬと思いますか。あなたは明鏡止水、いまのところは見解を述べるべきでない、これは政府を代表する発言と受け取っていいですね。したがって、それ以外の発言は、これはあなたの意図と相反するものである、こういう観点に立って、これは政府の統一的な発言でない、誤った発言である、こういうふうにわれわれは受け取っていいわけですか。私にわかりやすく説明してください。
  143. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 どうも賢明な田邊委員、まだ御理解願えないということは、ほんとうに私友情の上からもさびしく思っているのでございますが、私といたしましては、いま政府がお願いいたして十分御審議を続けていただいて、その上に立っていずれかの答申がなされるであろうというときであり、またそれを、国民的な重要な問題であるから、そうした点をひとつお願いしたいということで審議をお願いしておるという状況でございますので、私はいまほんとうに、使用者側の気持ちになって指導するとか、あるいは労働者側の立場に立ってこれを反対的に誘導するとか、そんなことはみじんも考えておりません。おそらく三日には答申がなされる、その答申の上に立ってそんたくも——考える、こういうことでございますので、その点はひとつ担当大臣の私の気持ちを正確に御理解賜わりたい、こう思っております。
  144. 田邊誠

    ○田邊委員 ちょっとくどくなりますから、あなたも時間がないから……。それならば、いわゆるいまの公益側の素案についても、あるいはまた各界のいろいろな意見についても、政府としては、この際九月三日を控えて何らかのこれに対するところの意見なり批判あるいは見解なりなんというのは述べるべきでないというのが政府の統一見解ですか。
  145. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 私は担当大臣として諮問しお願いしている責任者の立場でありますので、私は、そうした先ほどから繰り返すような気持ちで、清純な気持ちでその答申をお待ち申し上げておるという方針は微動だにもしてないということで、ひとつ御了察願いたい。
  146. 田邊誠

    ○田邊委員 じゃ、それ以外の大臣は何言ってもかまわぬとあなたはお考えですか。あなたの気持ちとそぐわないような発言をしてもかまわぬ、そんなばらばらのような形でもっていったのでは、明鏡止水だなんてあなたが言ったって、閣内はかって気ままに発言をしているような状態の中でもって、担当大臣がいかにそんな態度であっても、これは政府の態度と受け取れないでしょう。これはどうですか。はっきり言ってください。
  147. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 全く私は、幾度も御期待に沿えないような答弁になるかもわかりませんが、奧野君の言われた発言というものが、私は何らまだ聞き及んでおりません。どういうようなお気持ちで、またどういうようなお答えを、あるいは感想を述べられたということも知り及んでいませんので、これに対して私がとやかく——その立場の理由あるいは内容等を私にお尋ねになるというのは、私としてはどうも違うんじゃないか。それはそれとしておりますけれども政府といたしまして、また担当大臣の、責任者の私といたしましては、あくまでもさっき申し上げました心境と方針で、最後の重要な段階でありますので、その方針で進みたい、こういう方針だけはひとつ御理解願いたいと思います。
  148. 田邊誠

    ○田邊委員 これは、きょうあなたは時間がないから逃げ切ろうという気持ちじゃ困るのです。これはあなた聞いてないというけれども、これだけの問題でもって文部大臣が発言をしているのですよ。あなた方の権限を侵して発言しているわけだ。しかも、重大な公益側の素案に対して批判がましい発言をしておるわけですよ。明確に批判をして発言をしているわけだ。こういうのを、あなた方新聞を見たら、あるいはいろいろ報道を聞いたら、なぜ文部大臣に問い合わせないのですか。なぜあなたは文部大臣に詰問しないのですか。けしからぬじゃないか、こんなことを言っちゃ、ということをあなたは言う義務があるんじゃないですかね。これはほおかむりをしておいて、それでもって私は知りません、私の気持ちは明鏡止水なんて言ってみても、そんなことでは世の中は通じませんよ。私は約束だから、きょうあなたに対する質問をこれ以上できないのは非常に遺憾に思いますが、文部大臣の発言に対して担当大臣として、政府のこれに対する代表的な立場に立つ総務長官として直ちに問いただして、それが事実であるとすれば、これは明確に取り消させる。こんなふらちな発言が横行するような形でもって、政府がいわゆるスト権問題、労働基本権問題に対して誠意ある態度であるというようには国民は受け取れません。こんなことでもってぼんぼん花火を上げておいて、これはあなたたいへんな圧力ですよ、公制審に対しても国民に対しても。そういうようなことをやらしておいて、私は知りません、連絡がありません、そういうことじゃ私は、坪川さん、あなたがせっかく総務長官としてのこの問題に対する担当の大臣として責任を果たせないと思うのです。この点はどうですか。あなたは事情を知らぬということに対しては、あなたは責任を感じませんか。これは最後に聞いておきます。
  149. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 ほんとうに田邊委員の私に対するそうした問題の答弁を求められる気持ち、私としてはやはり先ほどから申し上げましているがごとく、奧野君が発言された問題は問題として、私がそれにかわって奧野君の批判をするというようなことになりますと、(田邊委員「あなたは担当大臣だよ」と呼ぶ)担当大臣であればあるほど、非常に重要なことであって、私は私の考えを貫くことがよりよく公制審の中正、公正さにこたえる私の態度であるということは、私はもうたいへん恐縮なんでございますが、おことばを返す意味ではございませんが、あくまでも私は明鏡止水の気持ちでこれを貫きたい、こう思っておりますのでお許し願いたいと思います。
  150. 田邊誠

    ○田邊委員 調査しますか、さっき私が質問したことに対して。それではあなたは、奧野文部大臣の言動に対して、あなたはあなたなりに十分聞いてこれに対処しますか。これは必要でしょう。
  151. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 私は、人の発言されましたそれに対して責任をもって処するということは私のとるべき道でない。あなたがそれをただしたいというなら、国会は言論の府ですから自由でございます。私がそれをどうやということをただしてみたり、あるいはそれをどうすべきか批判したりすることはあくまでも私は避けるべきであり、避けたいという気持ちは一貫しておるわけでございます。
  152. 田邊誠

    ○田邊委員 ぼくは総務長官の発言というのは、これはやはり真の責任を痛感した発言でないと思うのです。あなたが担当大臣でない、この問題に対していわば並び大臣であれば、ほかの大臣であればそういうことは言えるでしょう。文部大臣の発言に対して言及することはできない。しかしあなたはこの問題に対する担当大臣である、政府を代表する大臣である。ほかの大臣がかってな発言をしては困るということは言うべきじゃないですか。私は奧野文部大臣に対しては別の機会に言いますよ。われわれは当然追及しますよ。ここへ呼んできてでも答弁してもらいますよ。あなたは、そういうことに対して当然責任をもって調査をし、発言に対する対応を考えなければならぬ責任ある立場でないか、こういうことを言っているのですよ。あなたがそういうことを言うなら、それでもってお帰りいただきます。——これから奧野君の発言に対して自分は自分なりに問いただしてみたい、それで自分の見解を述べてみたい、奧野君に対して、担当大臣として自分はこう考えるのだと述べてみたい、こういうふうに言うのが当然じゃないかと思うのです。それすらもできないというなら、これは一体どうなんですか。それじゃ、文部大臣にここへ来てもらって、あなたと並んで、意見を聞かなければならない。これはそうでしょう。これは、そういう答弁をしてからお帰りください、これは当然でしょう。そうでなければ担当大臣なんていえない。あなた、資格ないですよ。
  153. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 私は資格ない大臣かもわかりませんが、担当大臣であればあるほど、私はそうした問題については中正な立場でいなければならぬ、こう考えております。
  154. 田川誠一

    田川委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  155. 田川誠一

    田川委員長 速記を続けてください。
  156. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 先ほど来の奧野文部大臣の御発言になりました問題については、私は不勉強ながらまだ何ら聞き及んでおりませんし、その内容等も知悉いたしておりませんので、この問題に関する限りは、やはり奧野文部大臣から直接お聞き賜わることがより正確ではなかろうか、こう考えておりますので、御了解願いたいと思います。
  157. 田邊誠

    ○田邊委員 私はいまの総務長官の発言は了といたしません。当然この問題に対する担当大臣とあなたは最初から言い切ってきたわけですから、したがってあなたの担当する問題に対する閣僚の発言に対して、あなたがチェックするのは当然のことである。私はチェックしろとまで言っていない、その真意を聞いてみてください、こう言っておるのですから、それすらも聞けないという話は私はないと思うのですよ。ほかの運輸大臣とか郵政大臣とかが文部大臣に対して聞くというのは、これはいかぬでしょうけれども、あなたがこの労働基本権問題に対しては、公制審に対していわば答申を求めている担当大臣であることは違いない事実だ。それ以外の大臣がこの種の問題に対して——いいですか、文部大臣が教育問題そのものについて言ったというなら、あなたが聞く必要はないです。あなたの所管する問題に対する発言があったから、その真意はどうなんだ、おれはいま明鏡止水の心境でもって九月三日を待っている、みだりな発言をしないのだ、おまえはなぜこういう発言をしたのかといって聞きただすぐらいは、あたりまえだと思うのです。そんなことが通用しない政府というものは、私はないと思うのですよ。ですから私の希望は、これはあくまでも総務長官が、あなたの所管する問題に対して、公制審の問題に対してですから、その公益側草案に対して文部大臣が批判的な意見を言った、これに対して聞いてもらいたい、こう言っているのですからぜひ聞いてもらいたいと思います。それを希望いたします。  それと同時に、これはひとつ、そんなことで総務長官は答えられないというなら、文部大臣からじかに聞いてくれというんですから、委員長を通じて早急の機会に文部大臣に当委員会に出席してもらって、この問題に対するわれわれの質問に対して答えてもらいたいということを希望いたします。お約束の時間を過ぎましたので、非常に不満ですけれども退席されてやむを得ません。——閣僚がかってに発言をしているようなことを制約できないような形では、われわれとしては一体政府は何を考えているかわからぬ。言うならば、文部大臣のスト権を認めないような発言というものが政府を代表した発言ではないかとすら思いたくなるのでありまして、非常に遺憾であります。この労働基本権問題は本来は労働大臣の所管でありまして、当然政府は世界の潮流にさおさして、これが基本権を認める方向に行くべきであるとわれわれは考えておるわけであります。したがって、スト権に対する、そして労働基本権の中でもスト権に対する政府の見解というものは、私は、総務長官でなくても労働大臣でも当然これに対して見解を持つべきだというように思うのです。いま申し上げたように、一つはそれは世界のいわば大勢になりつつある。公共部門に対するところのストライキの問題についても、これはいまやだんだん世界の大勢になりつつあるという状態であります。いま八十七号条約なり九十八号条約の運用に対して問題が起きているのは世界でわずかの国になってきている、こういうことがILO総会において言われておるわけであります。そうした点から見ても、いわば日本はこの世界の大流に対して当然同じ方向に行くべきである、こういうふうに私は思います。  それともう一つ日本の特色は、公務員労働者なりあるいは公共企業体の労働者に対して、当局は非常に大きな抑圧の政策をやってきた。不当労働行為もやってきた。あるいはまた第二組合づくりもやってきた。そういうような特殊な事実というものが、この問題に対してさらに日本政府の前進的な態度を要請するというILOの勧告や見解や報告になってきている、こういうことを知らなければならぬと思います。そういった点から見て労働基本権に対して、特に公務員、公企体の労働者に対して、この際スト権を与えるべきであるという意見に対して、労働大臣は一体いかなる御見解をお持ちでしょうか。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕
  158. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 このスト権の問題はいま坪川長官から担当の大臣としての御意見がありましたが、この点は労働大臣といたしましても、坪川君の意見と重複した御答弁をする以外に、現状においてはなかなか困難な点があるのは御承知のとおりであります。現在公制審でいろいろ何十回にわたって審議し、最終の結論が出るような大詰めの段階でありますので、鋭意作業中の公制審の直前に、労働行政の立場、側といたしましても、これに対してどうこうということは、慎重にすべきは、いま坪川大臣から話があったとおりであります。しかし、スト権の問題その他のいろいろな、ILOの八十七号、九十八号条約の問題に対しましても、やはり世界の情勢、国内の情勢を検討して今後対処すべきことは、これはやぶさかでありません。そういう意味でスト権の問題については坪川大臣と同意見で、しかし、その答申の結果を見ましてから、労働省としてはどうこれを善処すべきかということは、当該大臣の私といたしましても、いろいろ胸中にはありますけれども、これを本日の委員会で、どういうことになるのだと、こう仰せられますと、いま田邊委員から御質問のあったような諸般情勢を勘案して善処する、こういう程度の御返答よりできないという段階でありますので、その点はあしからず御了解をお願いいたしたいと思います。
  159. 田邊誠

    ○田邊委員 いま放言大臣もいると思えば、また総務長官や労働大臣——公制審は総務長官が責任の立場に立つ担当大臣ですけれども、しかし労働基本権という問題全体は労働大臣ですから、これは何も坪川さんがああ言ったから、あなたも貝の口みたいに閉ざして語らないなんという必要はないのですよ。そういった点では日本の政府というのは、非常に責任を転嫁をして何にも言いたがらない。したがってILOの場においても、日本の政府代表というのは全く消極的な態度で、これが世界のもの笑いになっているのですね。いかにあなた方が時期を少しかしてくれというようなことを言ってみても、ILOに結集される政府代表あるいは労働者側代表、いずれももっと積極的な発言をしているのです。つい最近の五十八回ILO総会の開催中に持たれた条約勧告適用委員会においても、たとえばスイスの政府代表は、八十七号条約というのはストライキ権を対象にしていないけれども、また一面において、これは禁止しているのじゃないのだ、もっと前進的に考えるべきだというような発言をしているのですね。ですからそういうふうな積極的な発言をするようにならなければ、これはいま言った世界の時流にいつもおくれていく当然のかっこうになるということはいなめないのです。ですから私は、いま申し上げたような形で、労働大臣の積極的な答弁をしてもらいたかったわけですけれども、非常に遺憾でありますが、あなたのことですから、ひとつ機会をあらためて、三日に公制審で問題の一つのめどが出るかもしれませんから、その直後にもう一度私質問をいたしますので、その際にはひとつもっと画期的な発言をしてもらうことをいまから望んでおきまして——何かありますか。答弁ありますか。
  160. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いまの場合に、この大臣はわかったと思ったことをぱっぱっと出すほうでありますけれども、一方で文部大臣が妙な発言をした以上は、また労働大臣が妙な発言をしたということでは混雑してまいりますし、時あたかも大事な段階でありますので、やはり私の所論というものを遂行するためにも、いろいろな御意見はこの際差し控えて、ほんとうに最終の段階に至っておりますので、この公制審の答申の内容にも言及いたしませんが、これを見まして、当然管轄の労働行政を担当しておる大臣でありますから、内容を見て今後こういうふうにしていきたい、持っていきたいというような意見は、その段階ではいいと思いますが、いまほんとうに御同情ある御質問をいただきましたが、本日はこの程度にひとつごかんべんになって、あと出ましたら十分私の意見を開陳して、少々しかられても私の所論は大いに遂行する所存でございます。
  161. 田邊誠

    ○田邊委員 文部大臣のほうの発言は妙な発言ですけれども、あなたのほうはもうちょっと積極的な妙味のある発言をしてもらいたいと思ったのですけれども、きょうはできませんからまたあとに譲りたいと思います。  実はあの問題で空費しましたので、時間がどの辺まで私は認めてもらえるかわかりませんけれども、きょう質問をする重点は処分の問題であります。これに対して実はいろいろ法的な面で基本的にお伺いしてみたいと思っておったのですが、時間がございませんから端的にお伺いしますと、この春闘に対するところの処分が近くなされる。国鉄については一部出ましたけれども、これからなされるということを開いておりまするけれども、これに対してどういうふうにあなたは受け取っておられますか。また、その内容についてどういうふうなぐあいに処分が出されようとしているかお聞きになっておりましょうか、ひとつこれをお伺いしたいと思います。
  162. 道正邦彦

    ○道正政府委員 八月四日の国鉄の処分はじめ、数件の処分が行なわれております。その内容について答えよということでございまするならば後ほど申し上げますが、今後どういう処分をやるか、内容がどうかということは私ども承知いたしておりません。
  163. 田邊誠

    ○田邊委員 これはいま公制審の問題があり、それから春闘の中における政府と総評とのいわば約束もあり、当然処分は慎重でなければならぬ、こういうふうに思っておるわけです。慎重、公正にやるということになっておるわけですが、そういった点でこの公制審の問題が一つめどがつき、政府がこれに対して対応するいわゆる対処策が明確になるという形の中で、この処分問題はまた新しい段階を迎えるんじゃないか、私はこう思っておりますので、慎重な態度で臨んでもらいたいということを強く希望しておきます。  そこで、いままでなされました処分というものをわれわれが振り返ってみますと、その処分の内容というのは非常にまちまちであります。たとえばストライキに参加をしたという形で処分がなされますが、ある企業においてはこれがいわば将来の昇給等に影響しない形の訓告等の処分のものをやる。ある企業においては、将来の昇給や退職時の退職金等にも影響する減給等の処分をする。こういうような形であります。また企業によっても、その年その年によって処分の内容というものに非常に区々たるものがあるということであります。これを私どもが問い詰めてまいりますと、いやそれはそのときそのときの事象によって違うのだ。ストライキの規模の問題だとか、あるいはそのときに起こったところの暴力行為がはさまっているとか、あるいは企業によってその重要性が違うとか、いろいろなことがいわれるのでありますけれども、これだけ二十数年経た今日において起こっているところの争議行為といいましょうか、闘争の手段として行なわれる実力行動というものに対して確たる基礎がないということについては、私はいかがかと思うのであります。政府としてはこれに対して統一的な基準というものがあるべきじゃないかというように私は思っておるわけです。  そしてさらに、時間がないので一括して言うことになりますけれども、この日本で行なわれている処分については、御案内のとおり、ILOの結社の自由委員会百三十三次報告によっても、この処分が非常に過酷である、この懲戒処分の硬直性ときびしさを緩和するための諸手だてをとってはどうかという実情調査調停委員会の示唆を想起することが適当であると考えます、こういう報告がなされているわけであります。労働者間に永久的な賃金格差をもたらすような懲戒処分の結果、いろいろな労使間の紛争というものがさらに激化するということに対しても、これが留意をするというようにもいわれておるわけですね。ですから、そういった面を考えてまいりますと、いままで行なわれてまいりましたところの処分に対して、ILOの勧告や報告等を踏まえて政府は当然緩和する措置というものをとらなければならぬところへきているのではないかというように思っておるわけであります。全逓の提訴いたしました七百二十五号事件についても、ILOはその後、キャリアまで影響を及ぼすような処分については考えなければならぬ、実はこういうことをいっておりますね。したがって、そういう半永久的にまで影響を及ぼすような過酷な処分を緩和するということについて政府は一体どう考えるか、これは将来の問題として、政府はこの際この種の問題に対して積極的に取り組む姿勢を示す意味からも、私は態度を明確にしてもらいたいというように思いますので、この二つの問題、非常に基準がまちまちであるということ、それからまた、いま言った処分を緩和すべきであるというこのILOの見解に対して一体どう考えるか、質問をいたします。
  164. 道正邦彦

    ○道正政府委員 法律に反した行為があった場合に、法律の定めるところによりまして適正な処分が行なわれることは、これまたやむを得ないと存じます。しかも処分は各当局がその判断責任において行なうものでございますので、労働省が時期、内容等について具体的なことを申し上げる立場でないことは御了解いただけると思いますけれども、御指摘のように、処分については公正でなければならず、また慎重でなければならないわけでございまして、その点は先般のいわゆる春闘の際にも政府として一種の公約をしておるわけでございまして、この点は関係方面にもお伝えしてあるわけでございますので、労働省といたしましては今後は処分について各当局が公正にかつ慎重に行なうことを心から期待しておるわけでございます。  また、第二の問題、すなわち過去の昇給延伸の回復の問題でございますが、これにつきましても春闘の際に引き続き協議をするという約束をいたしておりまして、協議も始めておりますから、そういう場を通じまして、組合と十分協議を重ねてまいりたいというふうに考えております。
  165. 田邊誠

    ○田邊委員 これはもうちょっと私あらためて時間をかしていただいていろいろと質問いたしたいのであります。けれども、私はいまの日本の法体系を前進的に解釈をいたしまして、いま公務員労働者や公企体労働者に加えられているところの処分というのは非常に過酷だと思うのです。これは法の解釈を非常に曲げてやっておるのじゃないかと思うのです。これは私しばしばILO八十七号条約の批准等の際から実はずっと論議をしてきたことですが、たとえば公労法をとってみましても、十七条に違反した者は十八条で解雇できることになっております。しかしこの解雇できるということは、必ずしもそれはすぐしなければならぬということではなくて、これはやむを得ざる場合に限って解雇というのがある、こういうことについてはこれは御案内のとおりだと思うのです。そういった点から見て、この労働基本権の制限違反に伴う法律効果、すなわち違反者に対して課せられる不利益については必要な限度を越えないよう十分な配慮がなされなければならぬというのは、これは最高裁のいわゆる千代田丸事件等においてもいわれておりますし、それから全逓中郵判決においてもそのことがいわれてきたわけであります。そこで解雇をするかどうかということについては、これは当然それぞれの企業の合理的な裁量にまかせるということが、この千代田丸事件では判決の中にあります。しかしそのことをもって、たとえば労働運動をやったかどでもって、いわば公労法十七条違反に問われている、それに対する直接的な法律は十八条の解雇しかない、これでは非常に不都合だからというので、この違反行為に対しては、いわばその他の国家公務員法、地方公務員法あるいはいろいろな企業における公社法、日鉄法等の中における懲戒処分、これを適用してきたと思うのです。しかし私はいま言ったように、たとえばストライキ参加者といわれる者に対しても、休暇をとってストライキに参加した者に対する処分をしてはならない、こういう判決の事例等も出てまいりました今日においては、スト参加者に対してもうたとえば一律一体に処分をする必要はない、あるいは処分をするとしても、いわば将来の身分に影響を及ぼすような処分はやるべきではない。このくらいのことは私は、これは各企業の自由裁量というよりも政府の統一見解として出すべきところまで来ているのではないか、こういうように思うのです。本来的に言えば、この公労法十七条違反は、いわば実際に指導した者に対して解雇をすることができるという厳格な規定にとどむべきであって、一転して、労働運動をやったからといって、他の公務員法等を通じて懲戒処分を直ちに適用することは、私は法の趣旨を決して正確に判断するものじゃない、こういうふうにすら考えられると思うのでございまして、そういった点から見ても、スト参加者に対する将来に及ぼす、身分に及ぼす、あるいは昇給昇格等に影響を及ぼすような処分はこの際取りやめるべきである、こういう政府の見解が出されなければならぬと私は思っておるのですけれども、その点はどうでしょうか。
  166. 道正邦彦

    ○道正政府委員 ストライキを企画し実施させる等の責任者と、それからそれに従ってストライキに参加した労働者との間に軽重の差があってしかるべきではないかというのは、一般的にはそのとおりだと思いますし、また最近の担当当局の処分におきましても、そういう趣旨の取り扱いがにじみ出ているというふうに私としては判断いたしております。ただ、一般的にこういう処分については、こういうふうにするんだというふうなことを政府全体としてきめるということにつきましては、各当局の事情も区々でございまするし、また事案も区々でございますので、非常にむずかしい問題ではないかと思います。しいて基準を設けるとすれば、やはり公正、慎重にということに帰着すると思いますし、そういう点については政府としては公約いたしておりますので、われわれとしては、先ほどお答えしたように、関係当局が公正、慎重に今後とも処分をされることを心から期待するわけでございます。
  167. 田邊誠

    ○田邊委員 これは国家公務員法も地方公務員法も少し質として違いまするし、それから公社法も実は適用のしかたが違うわけですから、これをひとつまた私は突き詰めていきたいと思うのですが、大臣、いま労政局長からも答弁がありましたが、やっぱりILOのいまのいろんな意見というものを加味したときに、一つには労働基本権、その中のスト権について一体どうするかということと同時に、いままでのストライキという一つの行為に対して労働者が参画した場合、これは組合統制上に従って参画しているわけですから、そういう点から見て、これが将来の身分や給与等に影響するというのは基本的におかしいですよ。ですから、これはいわば休暇戦術といわれておったものを今度はだんだんストライキ権の問題があって変えてきたんですけれども、身分に影響するような処分はしてはならない、これはもう私は当然の形だろうと思うのです。いま労政局長は、非常に何か口から出かかっているものを無理に押えたような答弁をしていますけれども、もうその辺はすきっと割り切って、政府の統一見解という形になっていかなければ、私はILOの精神に合致することはできない、こういうふうに思うのです。どうでしょう。大臣のきわめて妥当な、いろいろなものにとらわれない、そんなへんてこな文章にとらわれない公正なる答弁はできないでしょうか。
  168. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この問題はスト権の問題と同様、公制審でもこの問題にも触れておりますが、この意向も大いに尊重するのは当然でありますけれども、八十七号、九十八号でも触れておりますし、また結社の自由委員会、また勧告適用委員会などの勧告もありましたし、日本の給与の関係が、定期昇給だとか昇給延伸だとか特別昇給だとかいういろいろな関係がありまして、あまりこれが相当長期にわたって過酷なことになると、これが回復措置を何とかしてくれ、こういう問題は今回の春闘のときにも、政府関係組合との間の覚え書きの場合にも、この問題が大きな問題になったのであります。  今回の処分に対しても、いろいろ議論が出ておりますが、しからばいま労働省がこれに対して、おいやめてくれというわけにも——各種の見解で処分をやっておりますが、これも公制審の結論を待ちまして、労働省としてはこの程度は妥当である、こういうようなことは統一見解を政府内部で固めて述べる時期も来ると思います。全然これに対してごうも耳をかさないというような私の方針でもございませんので、今後十分この問題に対しましても慎重に対処すると同時に、前向きで対処して検討いたしたいと思います。
  169. 田邊誠

    ○田邊委員 そういう時期が来ますから、いまからもう用意されておかないと、そのときになって突如として発想しても、これはなかなか対処できませんから、そういうことをよくひとつ考慮してもらいたいというように期待をしておきます。  さっき、いわゆる不利益処分を受けた者に対する回復の問題についても、労政局長は私の質問の前に答弁をしましたけれども、これも大臣もいまちょっと触れましたが、これから先の処分の問題についてもさることながら、過去に対していわば身分や給与等に非常に影響があるところのいわゆる処分、これはぜひひとつその回復措置が早急にとられるように——回復措置がとられつつあるやに聞いておるところもありますけれども、とられておらないと聞いておるところもありますので、そういった点に対しては、ひとつこれも公正な立場に立って、実損回復といわれる処分の回復措置が早急の機会にとられるように、これは政府をたばねる労働省として、ぜひひとつ積極的な態度をとってもらいたい。これはどうでしょうか。
  170. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いま田邊議員からもう何だかそれができたようなかっこうの受け取り方でありますが、これは関係方面ともなかなか複雑なところもありますし、いろいろな意見が出ておりますので、労働省としては慎重に前向きで大いに検討したい、こういうので、いまもうそれができかかったというまでには至っておらぬのであります。この点を誤解のないように、今後いろいろな御意見もありますし、ILOの関係その他、あまり過酷過ぎるというような組合のほうの意見も、いろいろな点を考慮いたしまして、今後公制審の結論が出て、その後によくこの点は十分検討いたしたいと思っております。
  171. 田邊誠

    ○田邊委員 何でも公制審待ちでなくて、いまのは公制審とは直接関係ないことなんです。だけれども、これはひとつ大臣がいま言ったように、いろいろと公正、前向きにやるということですから、これが具体化されることを大いに期待をいたしておることを——大臣、期待していますよ、いいですね。あなたの発言をそのまま率直に私は受け取って、これを実行に移されることを期待をし、注目をし、監視をいたしまして、きょうのところは終わります。
  172. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 石母田達君。
  173. 石母田達

    ○石母田委員 きょうは私は三つの問題について質問したいと思います。  一つは、いわゆるいま公制審で審議されている内容にわたります公務員並びに公労協の基本権の問題、それからもう一つはハイヤー、タクシーの問題、それからもう一つは日雇い労働者、つまり失対労務者の賃金の問題について、これは主として田中議員が関連して行なう予定であります。私は最初にもうすでに先ほどからずっと論議されております問題について、また私も再三この委員会で質疑をいたしました問題について発言したいと思います。  私は、いままでの質問の中でも申し上げましたように、この公務員なり公労協労働者、いわゆる官公労労働者のスト権が不当に禁止されておる。そしてその結果、すでに数十万人の処分者を出しておる。それを何ら根本的に解決することなく何年間も繰り返ししてきている。そういう問題について政府が一体どういう基本的な態度で、これを解決するのか、こういう問題を質問してまいりました。それに対して答えは、公制審で近く——近くといいますか、ある一定の時期に結論が出るので、それを期待したい、結論を待ちたいということがいわれているわけです。いよいよ八年たって、今日その結論らしいものが出かかっているわけですけれども、こういう問題について、いま私どもが質問した内容に、期待にこたえるような、解決できるような答申なり、あるいはそういう政府が期待しているものが出るというふうに考えておられるかどうか。これは労働大臣を含めて関係者に聞きたいと思います。
  174. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 私からお答えを申し上げます。  御案内のように、公務員制度審議会は、過去通算いたしますと、約八年間にわたりまして、この問題について基本的な角度から検討を進めてまいったわけであります。非常に長い時間を費やしたわけでございますが、九月三日の任期を控えまして、いま最終段階の詰めをいたしておる状況でございます。もちろん非常にむずかしい問題でありますので、なかなかその結論を予断することはむずかしいと思いますが、私たちとしましては、なるべく今後の行き方について一つの考え方が出ますことを期待をしておるわけでございます。その具体的にどういうものになるかということは、いまの段階でとうてい申し上げられないという事情にありますので、御了承をいただきたいと思います。
  175. 石母田達

    ○石母田委員 労働大臣発言される前に、もう少し——あの当時の質問とちょっと違って一応素案が出ておるわけですね。これに対する見解というものでは、なかなか言いにくいでしょうから、そういう素案が出ている段階で、あと、九月の三日という限られた期間があるわけですね。そういうことで政府が期待しているようなものが、そういう根本的な解決につながるような答申が、あの素案の内容から見て、現状から見て期待されますか。もっと具体的に言えば、特にスト権の問題については意見が三つ、ああいうふうに並記されているわけですね、対立意見といいますか、方法が。そういう内容のものが、非常にあと限られた期間の中に、いま素案として出ている段階で、いまもなお政府がそういう根本的な解決に期待できるようなものが出るというふうに思っているのかどうか、それを聞きたいと思います。
  176. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この公制審の問題は多年の懸案でありまして、公制審の公益、使用者並びに労働者側代表が寄って、いま素案をつくりつつあるということは新聞の報道でありますが、まだ正式にわれわれにも素案の内容もわかりませんし、新聞報道だけを見て、私がここでこれが当を得ておるか得ておらないかということを関係のある大臣として見解を述べることも、いまなかなか微妙な最終段階でありますから、先ほどの多賀谷並びに田邊さんの質問にも、何々大臣がどういうことを発言したというようなことも御質問がありましたが、いまの段階でそれが政府として適当であるのか適当でないのか、新聞に素案程度のことを載せられたことを議題にして、ここで、国会で答弁することも微妙であるだけに差し控えたいと私思っておるのでありまして、先ほどの田邊議員の——出てからでありましたら、私は見解を述べられますが、いまの場合には慎重に差し控えたい、こういう所存でおります。
  177. 石母田達

    ○石母田委員 そうすると、お二人の発言が、非常にむずかしい状態にあるから政府が期待したような根本的な解決につながるような、こたえるような答申が出るという確信は、いまのところ持てない、こういうふうに言ってもいいですか。
  178. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 持てないとも言えないし、持てるとも言えない、こういうような段階でちょっと微妙な段階でありますので、これは見方、見方によってその答申の内容の検討なり批判もありましょうけれども、いまの段階では、それが持てるとも言えないし、持てないとも言えないし、この答申を見ましてから、関係大臣なり政府としても、これはこうしたいという所存は考えなくちゃならぬことでありますけれども、いまの段階ではまだ素案で、素案の内容も政府連絡がありません。まだ新聞が報じただけでありますので、この場でいろいろの議論を差し控えたいと思います。
  179. 石母田達

    ○石母田委員 先ほどから総務長官も言われていたように、政府は全く中立的な立場で、使用者あるいは公益側、労働者側いずれにも属さない中立な立場だということを強調し、明鏡止水の立場で静観しているとか、あるいはいまも素案についても新聞報道で知っているだけだ、こういうようなことを言われています。しかし、私の質問に対して、この公制審の使用者側の代表というのは、いわゆる総理府設置法の第十四条の三項に基づきまして、国及び地方公共団体、公共企業体の代表である、国だけの代表でもないんだ、しかし国と関係ないというのでなくて、国の代表でもあるのだ、兼ね備えているという意味なんでしょうね、そういう人格であるということをここで答弁されております。その点については、あらかじめ、変わりありませんね。
  180. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 総理府設置法の第一四条第三項に規定しております表現自体は、いまお話のありましたような趣旨でございます。ただ、それが国の代表だという場合に国という性格は二つあるわけでございまして、いわゆる使用者としての立場と、もう一つは政府としての立場と、二つあろうかと思います。ここにいいます国と地方団体というものは、ここにありますのは使用者としての立場を代表する意味である、かように私たちは考えております。
  181. 石母田達

    ○石母田委員 これは非常に重要なことですけれども。そうすると、この使用者側の代表というのは、あなたたちでいえば、国が二つの機能を持っていて、政府としての立場と、使用者として、雇用者ですね、としての立場とある。そのうちの雇用者の立場を代表した国の代表というものを兼ね備えている、こういうことでして、これは政府の統一見解でよろしゅうございますね。
  182. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 政府としては諮問をしている立場が一つであります。それで、ここでいう代表者というのは、使用者の立場から見ておるというふうに従来から考えております。
  183. 石母田達

    ○石母田委員 そうしますと、使用者側がこの中でいろいろ意見を述べておるということは、いわゆる使用者としての国の発言でもあるわけですね。
  184. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 これは、こういった審議会において使われます代表というものの理解のしかたであろうと思いますが、法律上、法律的な代表ということになりますならば、たとえば一々意見を、いろいろな機関決定のしかたによりまして取り上げていくというような厳密な意味の代表ということに理解すべきかどうかということに、いろいろ問題があろうかと思います。通常、あるいは職員を代表する場合も同じでございますけれども、こういう立場を十分に理解をして、その立場から判断し、意見を述べることができるということに使われていると思っております。したがいまして、国の意向をストレートにそこに、使用者としての国あるいは地方団体でありますが、その意向をストレートに代表するというふうには私たちは考えておらないわけであります。
  185. 石母田達

    ○石母田委員 そうしますと、使用者側が公制審で述べているスト権の問題に対する意見という、そのこまかいことはともかくとして、あるいはそこの自主的な運営という問題は、いろいろあるでしょう。しかし、その述べている基本については、使用者としての国としては、やはり一定の責任を持ったものであるというふうに考えていいですか。
  186. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 法律的には、委員は個人として資格を持っておりまして、その発言については、委員個人としての責任といいますか、こういう立場であるということであろうと思いますが、したがいまして、その委員の発言が直ちに国の責任になる、国の考えであるというふうにストレートには、つながらない性質のものであろうか、私はこのように考えます。
  187. 石母田達

    ○石母田委員 そうすると、この設置法によれば、総理大臣がこれは任命することになっておりますね。それは国及び地方公共団体、公共企業体の代表の者を構成として、いわゆる総理大臣が任命するのだということになっていますから、普通のただ個人じゃないのです。そういうものを代表する。あなたの言う使用者としての国をも代表する委員として選ばれた者ですね。ですから、純粋な個人、その辺にいる不特定な個人じゃないわけですね。そういう資格を持った人の発言の——まあ全部が全部というんじゃないのです。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕 その基本的なものについては、政府としても、使用者としての国としてのやはり責任を持たなければならないと思いますが、どうでしょうか。その考え方と全然一致しないことを委員がしゃべってもいいというものじゃないでしょう。
  188. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 私は、委員としてはやはり独立の人格でありまして、そういう国の立場、考え方というものを代表し得る能力を備えた人を任命するという意味であろうと思います。したがって、個々の発言が直ちに使用者として国が統一的に決定をした意思であるというふうに解するのは、ちょっと無理じゃなかろうかと思います。
  189. 石母田達

    ○石母田委員 そうしますと、委員が発言している内容については、国の方針と全く違ったとかなんとかという場合は、総理大臣が任命ですから、罷免することもできるのでしょう。つまり、総理大臣が任命して、代表として出させた意見については、総理大臣といえども、任命した責任上からいって、国の方針と全く違ったものじゃなくて、国の方針の方向で発言している。しかし、そこには個々のいま言われたような、ある程度の限界がある、こういうことであって、使用者側の委員が述べている基本的な方向については、いまの政府としては、それを是認している。つまり、国の代表じゃないというような、資格を奪うような性質の発言はしていない、大体国の方向でやっている、こういうふうに見ていていいですか。
  190. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 この問題は、私は使用者を代表するものとして選ばれた方々が自分の判断で、この考え方は間違っていないだろう、こういうことは当然お考えになるだろうと思います。同時に、国あるいは使用者であったといういろいろな経験、そういうものの立場をよく理解しておるということから、個人の意見というものが当然出てくる場合もあるだろうと思います。それがこういった第三者機関を設ける意味でもあろうと思います。したがって、この委員の発言というのが、かなり自由な立場で発言されるものと私たちは理解しております。
  191. 石母田達

    ○石母田委員 何べんやっても、そういうコンニャク問答ですから……。しかし、法的に書かれたものを保障されているわけですから、それに基づいて任命された委員の発言の自由という中身の限界があるわけでしょう、きちんと。その中での自由でしょう。そういう点では、私はこの使用者側の意見の中で、たとえば国鉄のスト権を否定をする、あるいはもちろん公務員のスト権も認めないというような発言が、あなたたちのことばで言えば、自由にこの中で発言されているわけです。それは大体使用者側として一致しているわけですけれども、こういうものは国の方針と無関係じゃない。関係がないとは言ってない。関係があると言っているんです。しかも、あなたが言うように、使用者側としての国の代表をも含むわけですから、そういう点では、当然これは使用者側としての国の意見をも反映しておるものだ、こういうように見るのは当然のことなんです。  そうしますと、諮問しておきながら、やはりその使用者側が述べているような方向での解決をこの中に持ち込んできている。そういうような解決では、私ども言うように、絶対に労働者はこれを認めることはできないし、いまの労使関係を円満に解決することはできない、こういうことをいままで述べてきたわけです。それに対して、あたかも政府は全くフリーの立場なんだ、諮問して、ただ公制審の回答を待つだけだ、こういう態度なんです。ですから、奧野発言なんというのは、先ほど糾弾されましたけれども、偶然ではないのです。いまの政府の閣僚の中に多かれ少なかれ、こういうものを持っているのが、いまの政府の体質なんです。そういう基本的な態度を持ちながら、それが使用者側を通じて、いろいろな形で出ている見解、これがいまの政府のスト権に対する基本的な態度なんです。  このことを私は再三この委員会の中で明らかにしてきたと思うのです。しかし私は、このような態度というのは絶対に文明国では通用しない。このスト権の発動のいろいろな問題というのは、これは国民的な世論の中で、おのずから、いろいろその戦術の問題についてはあるでしょう。しかし、このスト権という民主主義的な権利というものは、あなたたちも言っているように、憲法の二十八条で保障されたものですね。そういうことをきちんと認めるというこの根本に立って解決をしなければ、あなたたちの期待している、というようなことによって絶対にいい解決は出ない。しかも今度の公制審のいまの素案の状況を見ますと、一部のスト権を認めるかのような内容を持ちながら、実際には全体のストライキを否定をする、あるいは分断をはかっていくというような方向が見えておりますけれども、こういう内容では絶対に、いまあなたたちが諮問された基本的な問題については、私はいい結果が出ないということを、あらかじめ申し上げておきたいと思います。  さて、時間がありませんので、私は次に移りまして、もう一つ国会の中でまだ正式な回答がないというので、ひとつILOの条約の訳語問題で、内容というよりも訳の問題について、事実関係だけお伺いしたいと思います。  それは、この労働省編の「ILO条約・勧告集第四版」私持っておりますのがそうですが、これのいわゆる九十八号、団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約というのがあります。これの第六条に「この条約は、公務員の地位を取り扱うものではなく、また、その権利又は分限に影響を及ぼすものと解してはならない。」という場合の「公務員」に当てはめる英語の原文ですね、原文が英文と仏文とありますから、英文のところのほうをちょっと知らしていただきたいと思います。
  192. 道正邦彦

    ○道正政府委員 ILO九十八号条約第六条にいう「公務員」の英訳と仏訳に若干の差があるのは御指摘のとおりでございます。ただ政府といたしましては、法令により、その勤務条件が保障されているものを公務員というふうに解釈をし、そういう前提で行政を進めておるわけでございます。
  193. 石母田達

    ○石母田委員 質問は、英語の原文について、あなたでなくても、その「公務員」という部分に当たる英文の原文について先ほど質問しておきましたから、用意していると思いますから……。
  194. 道正邦彦

    ○道正政府委員 英文につきましては「パブリック サーバンツ エンゲージド イン ザ アドミニストレーション オブ ザ ステート」こうなっております。
  195. 石母田達

    ○石母田委員 普通常識的に考えますと、「パブリック サーバンツ」のほうは「公務員」でいい。そのあとの「エンゲージド イン ザ アドミニストレーション オブ ザ ステート」、この部分は、国家行政に携わる、従事するというものがついているんですけれども、「公務員」と訳する場合に、この「エンゲージド」以下のところを、これは同じものとして意識的にはずしたのか、この点について御答弁願います。
  196. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 お答えいたします。  かつてILOの結社の自由委員会におきまして、ただいま労政局長のほうからお答え申し上げましたような解釈を公式に打ち出しております。それによりますと、わが国に関する第六十号事件及び第百七十九号事件における同委員会の見解として「雇用条件が法令によって定められる者、即ち行政事務に従事し、かつ、条約第九十八号が特に取扱っていない者については、政府は、これらの者がその組織を通じて苦情及び提議を提出することができるようにした上、これが、法令による雇用条件の内容について規定し、又は勧告を行なうことに責任ある当局により考慮されるように取計らっている。」ということで、途中ちょっと飛ばしますが、「従って、委員会は、国及び地方公共団体に雇用される者の労働協約締結権に関して政府は条約第九十八号の規定に合致する方法を執っているもののようであると考える。」というような表現がございまして、これが一応ILOの公式見解として通用しておるものと考えております。
  197. 石母田達

    ○石母田委員 ですから、解釈とかいろんな問題について、私きょう論議する時間がないのですが、訳として普通常識的に考えますと、「エンゲージド」以下の部分は国家行政に携わるとか、従事するとかいう、まくらことばですね。ところがILOの問題で、あなたがそういう見解を出すならば、御承知のようにILOの中では公務員というものをできるだけ狭義に解するということで論議になって、国家行政に携わる公務員というのは、公務員一般ではなくて、上級職員だという論議さえ——ILOで決定したものじゃないけれども、そういう意見もあるのですよ。そういう中で、ことさらにこうした部分がはずされているということについて、私が言っておるのは訳語の問題として、これは不適当ではなかろうか。この問題については検討されているのか、あるいはこのままでいいんだというふうに考えておられるのか。国会でまだ論議されたことがないというので、そのことだけきちんと答弁しておいてほしいというわけです。
  198. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 ただいま申し上げましたような解釈がILOで成立しておりますので、わが国の実態に当てはめてみますると、わが国の公務員法上の「公務員」と申しますものは、勤務条件が法定主義によって保障されております。したがいまして、日本語に関する限り、ただいま説明のありました英語を「公務員」というふうに訳することは妥当であろうかと思います。
  199. 石母田達

    ○石母田委員 そうすると、これは「パブリックサーバンツ」だけでいい、それと同じだ。あとのほうの「エンゲージ ド イン ザ アドミニストレーション オブ ザ ステート」というのは不要だ、日本ではそういうふうに考えている、こういうことでしょうか。先ほど道正さんの言ったことと多少違うようなので、関連させてお答えください。
  200. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 私は「パブリック サーバンツ」以外の文言が不要であると申しておるのではございません。ただいま読み上げました英語の文言をそのまま意訳いたしますると、日本語の「公務員」になるというふうに申し上げた次第でございます。
  201. 石母田達

    ○石母田委員 それは意訳とかなんとかでなくて、こういうものが載っているのに、国家行政に携わる公務員というのを入れては、そのことはまずいのかということを逆に質問しましょうか。国家行政に携わるというこのまま直訳の「公務員」と、あなた方のいう「公務員」とは同じことなのかどうか、それをつけた場合にはどういうまずさがあるのか、ちょっと聞かせてください。
  202. 梶谷浩

    ○梶谷説明員 私は「公務員」ということばだけで十分であり、それ以外の形容詞をつけ加えることは、誤解のもとになると思います。
  203. 石母田達

    ○石母田委員 そうすると検討する余地はない、これで正しい直訳だ。——では、これは政府のほうも確認してください。確認してというとおかしいですが、私はこれは非常に不満でありますけれども、この問題は一部の学者の中でも、かなり論議されている問題です。今後この点については私たちの見解を述べますけれども、きょうは時間がありませんので、いま梶谷説明員の言ったことを政府見解として、もう一回言い直していただきたい。梶谷さんの言うとおりということなら、それでいいから、政府見解としてちょっと言ってください。
  204. 道正邦彦

    ○道正政府委員 ただいま人事局の梶谷参事官からお答えしたとおりに御理解いただいてけっこうかと存じます。  なお、本件につきましては、批准している条約でございますので、法制局、外務省等も加わって訳をきめているわけでございます。
  205. 石母田達

    ○石母田委員 最初ちょっと局長のほうから英文との間にどうのこうのという話があって、それはそのまま立ち消えになったようですけれども、それではこの問題については、いずれ時を改めて質問したいと思います。  それから、もう一つ聞いておきましょう。公制審に諮問したときの政府の諮問の内容と、そのときどんな状況を解決したかったかという問題について、ちょっと質問が逆になりましたけれども、もう一度聞いておきたいと思います。公制審にこういうことを諮問するという内容、それはどういう状況を解決するための諮問であったか。
  206. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 これは御案内のようにILOの条約を批准する際に、この条約のもとにおいて日本の公務員労働関係をどのように持っていくべきか非常に御議論があったわけでございます。その結果、いわゆる三者構成の機関によって十分に練ってもらうことがよかろうということで公務員制度審議会ができ、それに諮問をするということになったわけであります。  諮問の中身は、申し上げますと「国家公務員、地方公務員及び公共企業体の職員の労働関係の基本に関する事項について貴会の意見を求める。」ということで、なお第一回目は、ほかに部分的なものがちょっとついておりますけれども、この諮問に応じて今日議論しているわけでございます。
  207. 石母田達

    ○石母田委員 そういう諮問をされた政府の立場として、先ほどから質問して答えておりますように、今度の公制審が期待できるとも確信あるとも言えないし、まあ大臣の答えたのは、あるともないとも言えないという状況ですよね。そうするとこれは、国民に対してきわめて重大な問題が提起されているんじゃないかと私は思うのです。  それは、先ほど来申し上げますように、ストライキ権というものが民主主義の背骨だといわれている内容のものであり、しかもこの問題について何十万人という不当処分が出たり、あるいは順法闘争、ストライキというような形で労使関係に対立が出てくる。その根拠については、さらに賃金問題とか労働条件という問題があって、そういう対立がこういう形で出てくるわけですね。こういう、国民に対しても大きな問題を提起しているものの根本的な解決が、いま言ったような趣旨の諮問をしておきながら、八年間じっとがまんの政治を続けて、とにかくただ待機してきた。何もしないんだ。とにかく公制審の回答待ちだ。そしていま、その回答が確信持てるとも持てないとも、どうなるかわからないというような状況でしかないんだということについて、政府はどういう、それでいいと思っているのかどうか。あるいはもっと積極的な立場で臨もうとしているのか。その点について、もう一度大臣にお聞きします。
  208. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 先ほどから私から申し上げた、希望を持てるのか持てぬのかの内容についての御質問でございますが、これは素案というのも、まだ連絡がありませんから、希望を持てるようなことが出るかもしれぬという意味で、またその希望というのが、とり方によっても、またいろいろな見解の違いはありますので、また熱心に最終の段階の答申の原案をつくっておることは、もう間違いないのでありますから、この原案に対してとかくの批評は、われわれとして避けたいという意味で、その内容について持てるとか持てぬということをいま申し上げかねる、持てないという意味でもありませんと、こう言うので、いま人事局長から言ったように、国家公務員、地方公務員及び公共企業体の職員の労働関係の基本に関する事項についてのことでありますから、当然スト権の問題も含みますし、ただ公制審から一度四十一年六月に答申のあったことはありますけれども、その後基本の問題については、今回が初めての答申待ちでありますというので、いま私の見解が持てぬという意味でもない、持てるという意味でもないという意味で、とかくの批判は、この場合避けたいという趣旨であります。
  209. 石母田達

    ○石母田委員 そういう私から見れば非常に無責任な態度ですね。私は批判と見解を聞いているんじゃないんですね。そういう状態でいいかどうか。いまの公制審が限られた期間で任期が終わる。そしてその素案の内容を見ていると、諮問した点からいうと、もう大体一つの回答案みたいなものが出ているわけですから、そういう状態の中で、しかもまだあなたの言われたような状況であるということが、はたして国としてどう考えているのか。特に先ほどからいわれている使用者としての国という側面があるということをまず出されましたけれども、使用者としてこういう問題についても全然いま言った状況なのか、あるいはあなたは、それはいまいわれる政府としての立場で言って、使用者としての国の立場では言ってないのか。使い分けをなさったのか、その点いわゆる政府は自分でも政府であるとともに、使用者でもあるんだということを出されましたけれども、その使用者としてはどうなんですか。やはり同じような答えですか。
  210. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 これはいつか坪川総務長官からお答え申し上げたと思いますが、政府と使用者としての立場の国、地方団体というものを観念的には十分分離できて、そういう仕組みで構成され、運用もされておるわけでありますが、現実にはなかなか区分しにくいわけでございます。したがいまして、政府がいろいろものを言うということは、どうもとかく誤解を与えがちである。したがって、この点については白紙で御検討いただこう、こういう姿勢をとってきたわけでございます。私たちは、それがこの公務員制度審議会が結論を出す上においていいんじゃないかということで、さような態度をとってきたわけでございますが、いまお話のように使用者としての国が何かものを言ったらどうかということは非常にむずかしい問題であろうかと考えております。
  211. 石母田達

    ○石母田委員 これじゃ全然論議にならないですね。だから国としての意見は何もしない。つまり、じゃ公制審に出しているのは使用者としての国の代表をしているのだ、じゃその発言についてどうなんだというと、これは使用者としても、国としても、あまり責任は持てないんだ、自由な発言だ。それじゃ政府として、使用者として、こういう発言はどうなんだ。公制審についてどうなんだということは、それも述べられないということになれば、政府の主体性というものは何もないわけですよ。これはどういう指導的な立場なのか、行政的な指導基準はどういう基準なのか、公制審に一体何を諮問して、諮問した立場からどうなのかという点の意見は、形式的に意見は何も出てこないということですね、あなた方の意見では。  そんな雲つかむような話は国会の中だって外だって通用しない。どこをつかまえてぼくら議論していいかわかりません。そういう点で全く公制審というものを総理大臣が任命して諮問する、あるいは使用者団体を通じて国がどんどん自分たちの使用者としての意見を出さなければならぬということについても当然なことなのに、そこではないのだということを皆さん方がんばるから、どこで一体政府方針、国の考えをつかまえていいかわからぬということで、これは全く私は無責任状態だというふうに思います。  これ以上論議しても、しょうがないから、この点については、また機会をあらためてやりたいと思います。  それからだいぶ時間がたちましたので、第二の質問に入りたいと思います。  一つは、ハイヤー、タクシーの問題の労働者実態と、これに対する行政指導のあり方について御質問したいと思います。実は私、ハイタク労働者の非常に過酷な、劣悪な労働条件について前々から重大な関心を持っておったのですが、四月下旬にその実態調査するために添乗してみたのです。朝九時から午前三時までですから、十数時間にわたって一緒に助手席にすわってみたのです。これは自分でやってみて、二、三度おりようかと思ったのです。そのくらい相当きつい労働で、近代的な労働とはとても言えないような過酷な労働です。しかも走ってみて、とにかくいまの交通事情はひどいものだということを、あらためて痛感したわけであります。そういう自分の経験からもちまして、このタクシー、ハイヤー労働者の特に大都市なんかにおける問題での劣悪な労働条件、労働環境というようなものについて、ぜひ国会でも問題にし、善処していただきたい、こういうことを考えて、きょうは質問するわけであります。  初めにその実態でありますけれども、産業衛生学会というのが、ことしの四月六日大阪相愛学園で開かれて、その中で安部三史という北海道衛生研究所長、運転労働安全委員会の委員長、こういう方が報告されているのが報道されておりまして、その一部を御紹介します。  この調査は、交通労働者実態と健康、安全に関連して七月から九月の間国鉄労働者からトラック運転手までの百三十九事業所、八千八百三十九名にアンケート調査した。そうしたら五つのワーストファイブ、一番悪いというのです。これは大都市のタクシー運転士が第一、その次が大都市の電車運転士、三番目が国鉄電気機関士、四番目が大都市のバス運転士、五番が国鉄ディーゼル機関士、地方都市のタクシー運転士、これが一番悪い部類のいつまり悪いというのは労働条件、労働環境が悪いものの五つにあげられております。そうして特に東京、大阪のタクシーの運転者の健康実態として、健康だと思っている人は三七%、どことなく不安な人が五五%、実際に病気だった人が八%、こういう状況が出ております。そうして、このワーストファイブの運転者の半分以上が、からだがだるい、疲れる、目が疲れる、肩がこるなどの自覚症状を訴えていることを報告しているわけであります。  このような劣悪な条件というのは、私は自分の、先ほど言ったわずかな経験でありますけれども実態だと思うのであります。特に、神自交の私が乗ったときの条件を見ましても、昼間はほとんど走れない、四時ごろまでかかってやっと百キロぐらい走った。それですから、売り上げをあげるために非常にいらいらして、どうしてもスピードを出したくなる。しかし交通事情がこうですから、それが軽わざみたいなものですね。事故を起こしやしないかと思うような状況ですから、非常に神経も疲れるということで、腰痛症や胃病、肝蔵障害なども含めて、そういうものが職業病といわれるくらい出ているわけです。  この神自交タクシー労働者の十二人を調べた結果では、鉛障害といいますか、鉛中毒患者とまでいわなくとも、そういう患者に進む危険があるというようなデータが出始めているのです。  これは鉛中毒については一つの権威であります氷川下セツルメントが調べた結果なんですが、この十二人のうち特にひどい二人などは、尿中の鉛が、四十五年十二月のときには四〇マイクログラム・パー・リットル、それが、四十六年二月ですから、ほんとうに数カ月たたないうちに一〇六マイクログラム・パー・リットルになっている。これは普通の人々が通常は尿中鉛は二〇マイクログラム・パー・リットルといわれておりますので、かなり高くなっている。もう一人の人は、同じく四十五年の十二月に一六マイクログラムが、五三マイクログラムに同じ期間に上がっている。程度は違いますけれども、この数カ月間に徐々に多くなっているということがデータに出ているのですよ。  こういうことを見ましても、やはり交通労働者、特にハイヤー、タクシー労働者の鉛の問題については、かなり気をつけなくちゃならないという労働条件にあるんじゃないかということがうかがわれるわけです。  長くなりましたけれども、こういった実態について労働省としては、どういうふうに認識されているのか。さっきの学会で発表なんかあったことも知っておられて検討されておるのか、あるいは独自にこういう疲労度を検討するというようなことをやっておられるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  212. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 産業衛生学会の席上におきまして、ただいまのような話も出たということは、私ども聞いておるわけでございます。  確かに、ハイヤー、タクシーその他自動車運転手の労働条件については、十分注意をしなければならないというふうに考えておるところでございまして、そういう見地から、ハイヤー、タクシーの問題は昔から非常にいろいろな問題があり、特に都市の交通混雑の激化というようなことから、こういう問題も進んでおりまして、それが何年か前には、いわゆる神風問題として交通事故の大きな原因となったというようなこともいわれましたので、関係各省いろいろ協議の上、四十二年に、それぞれ各省がこういう自動車運転対策を進めるということで、労働省といたしましても、御承知の自動車運動手の労働時間の改善基準というもの設けて、まずこの程度一〇〇%確保しようということで努力をいたしておるところでございます。  ただ、現在までの状況は、一年、一年とりますと、若干の改善はございますけれども、まださほど大きな改善を見るに至らず、なお、四十二年の改善基準につきましても、かなりの違反が見られますことは、まことに遺憾でございまして、私ども年度につきましても、自動車運転業務関係を監督行政の重点といたしまして監督指導をするようにつとめておるところでございまして、何とか少なくとも、まず四十二年の改善基準くらいは十分に守られるようにいたしたい、かように考えておるところでございます。  なお、いろいろいまお話しの鉛の問題等々ございましたけれども、これは労働条件の問題でございますと同時に、それよりも都市における、特に大都市におきます交通事情、こういうものの混雑度の緩和ということが、やはり基本的になければならないわけでございまして、そういう点につきましても、関係各省にその改善方を強く要望いたしておるところでございます。
  213. 石母田達

    ○石母田委員 最後の鉛の問題について、何か定期的に検査するとかそういうような方法は検討できませんか。
  214. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 現在までわれわれの手で広くそういう点について研究をいたしたことがございませんので、今後この問題を専門家に研究してもらってみたい、かように考えております。
  215. 石母田達

    ○石母田委員 それでいま労働基準法がなかなか守られない、というのは四十二年の二・九通達のことですね。守られていない実態があって困っているということですが、いまお調べになったことを聞きますと、四十六年に何らかの労働基準法の違反があったものが、運輸業全体で七七・一%、うちハイタクに至っては七九・六%、八割近くが何らかの違反がある。トラックが七六・四%。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕 これが四十七年度にどのように改善されたかということでありますが、運輸業計が七五・一%、うちハイタクが七七・七%、トラックが七四・五%。いわゆる改善というような数字ではないわけです。これは引き算しても二、三%でしょう。  これは一体どういう事態なのか。特に一番多いと出されている労働時間について、ハイタクの場合は四十六年度四九・八%、約五〇%ですね。それから休日の問題については、ハイタクでは一六・七%、割り増し賃金の問題については二七・八%というような状況で、私はこの二・九通達が確かにあなたが言われるようにあまり守られていないというような実情にあると思いますけれども、こういう数字について、いまあなたは努力してきたと言っておりますけれども、一体この数字との関係ではどうでしょうか。
  216. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 私どもそういう数字を把握いたしておりますので、まだまだ改善が十分でない、かように考えまして、重点対象業種として、監督指導の力を入れておりますというだけではございませんで、特に春秋の交通安全の期間等におきましては、一斉にいろいろの監督をいたしております。したがいまして、ハイタクにつきましては監督率なども一般事業場が現在一割前後でございますのに対しまして、約三割くらい、かなりわれわれといたしましては、現有勢力の中でハイタクを中心といたします自動車運転関係につきましては力を入れまして、監督指導につとめておるところでございます。
  217. 石母田達

    ○石母田委員 それじゃ、もう少し具体的な実例を出しますと、第十日本交通というところがあるそうです。ここでは賃金形態について、オール歩合的な賃金形態になって、乗務回数によって歩率が変更する、あるいは一カ月普通十三乗務になっていますけれども、これを完全勤務として、それ未満のところは不完全勤務として歩率を引き下げる、あるいは逆に月間営収二十六万というと、これはたいへんなものですけれども、それをこえた部分については、その一二%を加算支給する、こういうような内容について、この組合のほうから、これじゃどうも二・九通達に触れるんじゃないかということで、飯田橋の労働基準監督署長へ質問を出しているわけですね、上申書という形になっていますけれども。  そしてその回答がここにあります。飯田橋労働基準監督署長の名前で、この(イ)(ロ)(ハ)というのは、いまの順序に読んだ内容ですけれども、(イ)(ロ)(ハ)については、すべて二・九通達趣旨に反するもので、好ましくない。——それはそうでしょう、こういう回答が来ているわけなんですね。その中で、これは名前を出すといけませんけれども、二・九通達などは死んだ法規と同じだ、指導しても業者が言うことを聞かなければそれまでだ、署としては、これ以上の権限はない。こういうような発言があったというのです。これは監督署ですよ。これはまあこの人が言ったことを追及するとかなんとかということよりも、こういう状態、雰囲気というものでなければ、さっき言った数字のことが考えられないのです。八割が労働基準法に何らか違反しているというようなことが続いている。これは私は、この労働基準監督署のは、氷山の一角じゃないか。これは特殊な例なのか、これはそう思えないのです、さっきの数字から関連しますと。  ですから、こういう状況では、私はほんとうにこの二・九通達のいわゆる「自動車運転者の労働時間等の改善基準について」ということを積極的に守らせるような行政指導というものは、すでに基本姿勢からくずれているんじゃないか、こういうふうに考えますけれども、この個々の問題というだけにとらわれないで、そういう傾向があるのではないか、それはどういうところからきているのか、少し御説明を願いたいと思います。
  218. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 二・九通達におきましても、賃金形態につきましては、こういう業種においては、いわゆる水揚げ量に応じた歩合給という制度が広く採用されておるけれども、これについては六割以上の保障給を設けるとか、それから歩合給全部をやめるわけにいかないにしろ、極端に労働者を刺激する歩合給は廃止するようにせよ、そしてでき得れば、その歩合の歩率は一定率にするように逐次改善指導することといったようなことを定めておるわけでございます。  それで、抽象的にそう定めておるだけでなくて、四十二年の実施以来、いわゆる一定率歩合のほかに積算歩合だとか累進歩合だとかいろいろな制度がございまして、当初は、特に累進歩合といって、水揚げが高くなりますと、歩率が根っこから高くなる制度がかなり広く行なわれておったわけでありますが、第一目標といたしまして、その累進歩合は全廃をさせるようにしようということで、指導につとめてまいったわけでございます。  これにつきましては、私ども業者の協会の幹部などを呼びまして、趣旨を説明し、これに対する協力を求めましたところ、この業者の協会におきましても、協力を約束いたしまして、そうして累進歩合は、その後非常に減りまして、私どもが知っている限りでは、ほとんど絶無とまでは言えるかどうかわかりませんけれども、非常に、いまやほとんどなくなってきておるというふうに聞いておるわけでございます。  ただいまおあげになりました飯田橋の事例につきましては、私ども全然聞いておりませんので、さっそく帰ってよく調べてみるわけでございますが、おっしゃるような累進歩合をいまとっておったとすれば、むしろ今日におきましては例外的なものではないか、かように考えておるわけでございます。  ただ、そういう昔ありました累進歩合はなくなってまいりましたが、近ごろはまたいろいろな新しいいわゆるMK方式だとかリース制だとかいう方式の新しい仕組みなどが出てまいりまして、それにつきましても、いろいろ弊害問題がございますので、私どもそういう新しく出てまいりましたそういうものにつきまして、弊害をなくすよういろいろな指導を、いま通達その他によってやっておるところでございます。
  219. 石母田達

    ○石母田委員 先にお答えになったのですが、リース制のことは、あとで質問します。  もう一つ、いまのあなたが努力されることはいいんだけれども、一つの事実をあげていきます。これは労働大臣に私ぜひ見解を聞きたいと思っておったのです。  いま言ったことと同じですけれども、石川労働基準局の警告書が出ているわけですね。石川県の旅客自動車協会長あてに労働基準法の違反があまりに多いというので、ことしの六月五日「労働基準法の遵守について」それを見ますと、昭和四十七年、五十五の事業場の検査をした。違反事業場数が五十だというのです。違反しているところが五十なんですよ。それから昭和四十八年四月に二十六検査した。違反しているところは二十五。守っているところは一つしかないということです。これは一体どういうことなんでしょうかね。  そこで「自動車運転者の労働時間その他の労働条件は、交通事故防止対策との関連からも、その改善が強く要請されるところでありますが、最近当局で立入検査を実施した結果においては左表のとおり、労働時間、休日、割増賃金等の労働基準法違反がなお全般に多い実情であります。  ことに、昨今は運転者個人の営業収入額から諸経費等を控除した残額の全部又は一部を賃金とする、いわゆる「利益配分制」と称する賃金形態」つまりいまあるのですよね。「賃金形態を採用する企業が増加しておりますが、この賃金制度による場合は、労働基準法上の問題点がより多く、重要な条項違反も指摘される現状であります。  このような事情から、当局としては以後、さらに監督指導を強化しますとともに、法違反については厳重措置しなければなりませんので各事業場にあたっては、とくに左記事項にご留意のうえ、速やかに改善を図られますよう、ここに警告いたします。」こういう警告書が出ておるわけです。  これは全く私どもはショックな事実なんですね。これは考えられないのですよ。違反なんというものは、数ある中で例外的に出てくるのが法の立場から常識ですよ。ところが、大部分。守っているのはもうほとんどない。しかもこれは取り締まりの——これは労働大臣に聞きたいし、局長にも、これは送検したのがあるか、それから送検して、一番重い罰金だとかなんとか——罰金だと思うのですよ。八万円じゃないかと思うのですけれども、その点、これは業者がこわくないから、こういうことをやっているのか、警告が出されているのに、なおかつ違反しているのか、そういうことについて局長に聞きたいし、それから、石川だけではなくて、先ほど述べました全体のハイタク業者におけるこの労働基準法の違反の問題については、これはあまりにひどい、そういうことについて労働大臣の見解を聞きたい。
  220. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 先ほども申しましたとおり、私ども全国で調べたところにおいても、かなりの違反があるわけでございます。もっともその何らかの違反があるという中には、かなりの労働者を雇っておる中で、一人について労働時間の違反があったり、あるいは一人について割り増し賃金の違反があったというようなものが含まれておりますが、それにいたしましても、多いわけでございます。それにつきまして、私ども違反を見つければ、もちろん改善勧告を出しまして是正させるわけでございますが、なかなかそれに応じない。あるいは非常に悪質なものにつきましては送検もいたしております。それで、四十六年でございますと、運輸関係で百二十一件、四十七年には七件という送検もいたしております。     〔竹内(黎)委員長代理退席、塩谷委員長代理着     席〕  それから、さらに私どもがやっておりますことで業者にとりましてかなり痛いところは、運輸省と相互通報制度というのをやっておりまして、こちらに違反があるものには向こうに通報いたします。そうすると、運輸省の運輸行政上の措置についても、それらを考え措置をとっていただく。たとえていいますと、数年前にある都市であったことでありますが、運賃値上げが各業者から出まして、それを認める場合に、基準法違反が是正されないものについては是正されるまで、その認可を差しとめたといったようなことも運輸省と連絡をとってやったこともございます。  そういうように運輸省と相互通報制度をとりまして、運輸省の運輸行政面の措置も基準法の順守の有無というようなことを考慮に入れてやっていただく、こういうような方法もとりまして、業者に対しまして法律はもちろんのこと、二・九通達についても極力これを順守せしめるよう強力なプッシュをいたしておるところでございます。
  221. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 ハイヤー、タクシーの労働時間の問題は、これはそのよってくるところは普通の工場の労働者と違って、どうも請負制だとかではいかぬ。これはMK方式だとか、リース制だとかいろいろ考えた案が出てきまして、これが最終の自動車運転者の負担にかかって、恒常的な長時間労働であるとか、休日も休まぬで走らすとか、こういうような関係で交通の安全の問題からも相当な弊害がある。いま石母田委員からの質問では、どこの県ではこの程度だというようなことが出ておると思います。これは従来から役所のほうでよく聞いたんでありますが、やっておるんだ、こう言うが、どうもその成果が、四十二年に自動車運転者の労働時間の改善基準を示して、その後者と秋に二回ずつ安全週間のときには厳密な調査をし、ときには告発もする、こういうふうにやっておるが、なかなか改善されておらないという点があることも、これは私認めざるを得ないと思います。  それについては、やはり抜本的な改善策を講ずるのには労働者の立場でだけでも、なかなかこれは監督の役人の数その他がありますので、警察権は持っておりませんし、なかなか困難な点もありますので、やはり関連の陸運行政の機関と協力してよく協議いたしまして、抜本的にひとつ案をこしらえて、ただ通達だけで、これが実行できないという違反の取り締まり方法でも困まりますので、この程度はやろうという原案をつくって、業者の方にも寄ってもらって、ことによったら私もこの会議に、大臣は一ぺんも出たということはありませんけれども、この会議を招集して業者の自覚を促し、陸運局その他の機関とも協議して、一ぺん本腰でやってみようと思います。いまの場合であれば、現在の労働省関係の基準法違反は氷山の一角で、なかなかこれの実行が不可能だというような現状であろうと思いますので、この点に対しまして抜本的な対策をひとつ役所の連中ともよく協議いたしまして講じたいと思います。
  222. 石母田達

    ○石母田委員 それから運輸省の方に二つ質問があります。  一つは、いまの過労運転防止の場合の過労というのは、どの程度なのか。道交法の第六十六条に、これは運転者の義務として、過労である状態で車両を運転してはならないとありますし、第七十五条は、これは管理するほうの側として過労運転の防止がありますし、さらに自動車運送事業等運輸規則の第二十一条は、これまた過労防止について触れておりますけれども、この過労というものは、だれが判断し、どの程度なのか、法的に何か基準があるのか、ちょっとお教え願いたい。
  223. 森雅史

    ○森説明員 ただいまの過労の程度というものにつきましては、具体的にどういう場合に、この過労の場合に当たるかという基準的なものは現在持っておりません。ケース・バイ・ケースで、乗務員の前日の勤務時間とかいろいろな労働条件その他によって変わってまいりますし、これは各タクシー業者には運行管理者、そういう運転者の過労状態判断する責任者がおりますけれども、その判断においてやらせておるということでございます。
  224. 石母田達

    ○石母田委員 労働省に労働衛生研究所でしたか、大臣はここはいい設備を持っていると言ったので、私、視察に行ったのです。それで、この交通労働者の疲労度をぜひやったほうがいいのではないかと言ったら、これはなかなかむずかしい、国際的にも疲労度をはかるあれがないというのですが、民間ではそれぞれやっておるのです。だから政府のほうでも、やはり疲労度を科学的にできるだけ追及して、正確なものが出るかどうかは別として、接近する態度でぜひやらないと、いま言ったように、ケース・バイ・ケースでやっては、幾ら過労運転防止といっても、これはざる法になってしまいますので、ぜひ政府として、そういう科学的に疲労度を検討する対策を進めていただきたい、こういうふうに思います。
  225. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 私も一ぺん行きましたが、いまの石母田委員の質問ではできないという意味にとったのでありますが、これはできると思います。鉛の問題並びに疲労度の問題は、この研究所でこれはさっそく実行に移して——全部というわけにはいきませんが、人数を限って一ぺんピックアップして研究しようと思います。させます。
  226. 石母田達

    ○石母田委員 もう一度運輸省のほうに……。  私乗ってみて、いま私のほうは三百七十キロなんですが、東京は三百六十五キロですか、あの最高キロ数がとても走れない。私が走ったのは二百八十キロ、全体の平均が三百ちょっとくらいですね、よく走って。それが実情だと思います。この問題については何か検討されているのですか。このままで押し通してしまえば事実守れないということになってしまいますよ。どうですか。
  227. 森雅史

    ○森説明員 タクシーの最高乗務距離は現在の道路運送法及び運輸規則でそういう制度がつくられておりまして、東京、大阪等の都市で実施しております。     〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕  これは御承知のように昭和三十二、三年当時だったと思いますが、神風タクシーが非常にばっこいたしまして、たいへんにあぶない、安全、その他事故も起こすということで非常に不評でした。そこで、そのものの具体的な確定数字で押えようということで、そのための非常手段ということで、東京でしたら、三百六十五キロというものを設定しておるわけでございます。現在は当時と都市交通事情が相当変わってまいりまして、非常に渋滞をする。したがいまして、先生おっしゃいますように、それだけは現実に走れないということになっておると思います。  そこで、これを改正する計画があるかどうかという御質問だと思いますが、ただいまのところは当時と比べまして、相当タクシーの事故率その他下がってきておりますし、現実にもう相当渋滞のために走れないという事情がございますので、現段階におきましては、これについて検討して、さらにこれを短縮するということは考えておりません。
  228. 石母田達

    ○石母田委員 それはまずいんじゃないですか。問題があることを認めておきながら考えておりませんというのはおかしい。現実に合わなくなってきている、だから検討するというなら話がわかるけれども、検討しないというのは、どういうわけですか。
  229. 森雅史

    ○森説明員 一つは、当時の神風問題のような、タクシーが非常に無謀な運転をして、あぶなくてしかたがないというような当時の情勢と前提条件が変わっておる。それからもう一つは、やはりキロで押えようというのは、非常に非常手段でございまして、たとえば具体的には夜おそく藤沢とか遠いところに走ってくれという要望がお客からありました際に、キロ数という関係から断わるという場合もあるわけでございまして、そういう面で一律的適用は非常にむずかしいということがございますので、当時とだいぶ事情が変わっておるということで、現在その基準を改定するということは、いま考えておらないということでございます。
  230. 石母田達

    ○石母田委員 聞けば聞くほどますますわからない。一律的にきめるというのは、おかしいと言っているのに——これはあなたとここで論争してもしようがないので、検討する必要があると思います。あなた自身の論理から言っても検討しなければならないわけだ、矛盾があるんだから。矛盾があるものを押し通していったら有名無実になります。ことに三百七十キロを基準として賃金をきめておりますから、賃金が下がらないような形で実情に合ったように、ぜひ早急に検討してほしいというふうに私は思います。  それから時間がございませんので最後に、再三出ておりますリース制の問題なんですが、これはいまタクシー労働者や、あるいは長距離トラック運転者の中で非常に問題になっているわけです。このリース制については、私も再三運輸省や労働省に聞いてみたけれども、これはどう見ても、道路運送法の三十六条、三十七条、三十八条のハンドル貸しはいけないとかそういうものに触れる内容に思うのだけれども、このリース制については奨励する立場なのか、この法には触れてないのだというふうな見解なのか、政府の見解を示してください。
  231. 森雅史

    ○森説明員 ここ数年来、いわゆるリース制というものがだいぶふえてまいりまして、いろいろな面で問題になっておるということは、われわれもよく承知しておるところでございます。  問題は、われわれの立場からいたしますと、道路運送法の規定に触れるのかどうかということでございますが、いま先生の御指摘のありました三十六条その他の名義貸しその他の規定との関係でございますが、この三十六条の規定は、道路運送法でタクシーを免許制にした、それでその面から、たとえば運賃につきましては、きまった運賃を取る、あるいはお客さんから運送の申し出を受ければ拒絶してはいかぬ、乗車拒否をしてはいかぬ、あるいは車の整備点検、その他安全面あるいはサービス面の規制をしておるわけでございますが、免許を受けた者がそういう道路運送法の規定を守らないで、免許を受けたのに、自分でその業務を運送法の規定に従ってやらないで、自分の名義を貸してほかの者にやらせる、それではせっかく免許して、その者にやらせるという精神に反しているではないか、そこでそれを禁示しようというのが三十六条の趣旨でございます。  したがいまして、いわゆるリース制というものはいろいろな形がございますが、事業者が運送法に従いまして適法に、その責任でタクシー事業を運営しておるということでございます場合は、直ちに名義貸しだと言うことはできないという状況でございます。  ただ、リースにつきましては、その実態は個々にずいぶん変化がございますので、労働省のほうからもいろいろ具体的に御指摘のある場合もございますし、あるいはタクシーの労働組合のほうからお話があったりする場合がございますが、そういう非常に問題のある場合には、そのケース・バイ・ケースに応じまして監査をする、あるいはその内容を調査をするということで、具体的に運送法の違反があります場合は、それについて改善指導ということをやっておるという状況でございます。
  232. 石母田達

    ○石母田委員 時間がないので簡潔に言いますと、いまのところリース制それ自体は触れるということではないけれども、その可能性があるので、触れるものについてはケース・バイ・ケースでそのとき処置をする、こういうことですね。  それで、リース制そのものについて奨励しているかどうかについての発言はなかった。この前の電話では、国としては奨励してないというような話だったんだけれども、「ハイヤー・タクシー行政の改善について」という昭和四十三年七月二日、運輸省自動車局示達の大都市対策の中で「たとえば」ということで「法人タクシー事業が車両、車庫等のリース事業もあわせ、行なうよう育成指導することによって」云々というふうにあるんだけれども、これだけ見ると、国があなたたちの行政指導の中でこうしたことを育成指導するということで、「たとえば」ということがついているけれども、リース制という問題について奨励しているように思うのだけれども、この示達との関係ではどうですか。
  233. 森雅史

    ○森説明員 四十三年の通達ですか。
  234. 石母田達

    ○石母田委員 四十三年七月二日、運輸省自動車局となっている。これはぼくのほうの調べだから……。
  235. 森雅史

    ○森説明員 あるいは先生の御指摘の点と違っているかもしれませんけれども、一昨年の四十六年八月に、運輸大臣の諮問機関で運輸政策審議会というものがございますが、そこで答申が出まして、大都市のタクシーにつきまして、これくらい車が普及した現在では、いたずらに免許制だけに縛られないで、もう少し自由化をして、車も自由にふやす、運賃もある程度自由化するという方向はどうかという答申がございました。それは非常に大きな問題ですので、取り扱いについては現在協議中でございます。しかし、そこでは別段リースを推奨するということではございませんで、現在もわれわれはリース制を推奨するということは考えておりません。ただ、運送法上違法であるかどうか、それは具体的に見て、ただす点はただすということでございます。
  236. 石母田達

    ○石母田委員 最後に、また事実を言いますと、リース制の中で、こういう問題は明らかに今度は道運法に触れるケースだと思うのだけれども、リースの実態として札幌にある東日本交通の労働契約書の中の問題ですが、その中で自動車賠償責任保険料とか対人の任意保険料とか、あるいは車両減価償却費、自動車税、自動車取得税、重量税、こういうようなものの負担が入っているのですね。これは明らかに事業者が負担すべきだと思うのだけれども、こういうようなものまで負担したのは、これは賃金形態の変化で、労働省なんだというあなたたちの考え方からいうと、どうも矛盾でもあるし、どうかという点が一つあるのです。  それからもう一つは、新潟市の新潟日の出タクシーでは、諸負担金の中で協会費、県バス・ハイヤー協会、市タクシー・ハイヤー協会、構内タクシー組合、交通安全協会、これの費用まで負担していると書いてあるのですね。これは協会だから、明らかに事業者が負担すべきものなんですね。そういうものまで負担しているようなリース制というものが現実に行なわれているのです。この点あなたは知っているのか、あるいは取り締まりの対象になっているのか知らないけれども、こういうものまで賃金形態の変化で、これは労働省の所管だとか労働基準局の対象だとかというようなことは、何か全然こじつけの論理であって、推奨していないと言うけれども、やはり運政審の答申の方向でリース制あるいは個人タクシーがどんどん放任、あるいは行政指導の実際上の処置としては野放しになっているということが、うかがえてならないわけです。こういう問題については、どうなんですか、簡単に答えてください。
  237. 森雅史

    ○森説明員 いわゆるリース制には、先ほど労働省のほうから御答弁のありました完全歩合とか、あるいは利益の一部を分配する形とか、あるいはいまおっしゃいました一部の固定経費については事業者負担というような形のものとかいろんなものがございまして、われわれの解釈といたしましては、それが労働条件の一つというふうな扱いで考えております。具体的にはいろんなケースがございますので、具体的ケースについて検討いたしたいと思っております。
  238. 石母田達

    ○石母田委員 以上、きょうはハイヤー、タクシーの問題で論議しましたけれども、いま二・九通達とか労働基準法を順守するということ、それからオール歩合とか刺激的な歩合制をなくするというような問題についても、これは二・九通達に明らかに違反する方向ですから、厳重に指導していただきたい。  それから、また、リース、ハンドル貸しなどで道路運送法を事実上無視すると思われるような悪質な行為が出ていますから、こういうものについても厳重取り締まるように行政指導を強化していただきたいということについて、明確なそれぞれの関係者答弁を聞いて、私は終わりにしたいと思います。
  239. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 労働基準法を順守せしめるはもちろんのこと、二・九通達につきましても、これが確実に守られるよう今後ともできる限りの努力をしてまいりたい、かように考えます。
  240. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いま局長から御答弁いたしましたとおり、大臣のほうもその方針で、また先ほど来お約束したことは実行させます。
  241. 森雅史

    ○森説明員 タクシー運転者の労働条件の改善につきましては、所管は違いますけれども、これはわれわれといたしましても側面から協力いたしまして、われわれの分野でも十分改善措置をとってまいりたいと思います。  リース制の道路運送法による適正な運用につきましても、十分指導してまいりたいと思います。
  242. 田川誠一

  243. 田中美智子

    田中(美)委員 時間が非常に短時間だものですから、失対の賃金に限って伺いたいと思います。まず最初に二つの点を伺いますので、簡単にお答え願いたいと思います。  まず、失対の賃金が非常に低いということはもう十分御存じだと思いますけれども、とてもこの高物価の中ではやっていかれないということはもう常識以前の問題になるほどの、世論の中でもそういうようにいわれているわけです。これに対して再改定をしていくという気が政府のほうにあるのかどうか、早急にそれをしていただきたい、その検討をしているのかどうかということ。それから、その検討の中でどういう作業をしているかというようなことを最初にお答えいただきたいと思うわけです。これが一点。  もう一つは、私のところにこういう手紙が来ているわけです。これは初めだけちょっと読んでみますと、「前略、毎日三十六度の猛暑が続く、八月二十日」ついこの間です。「八月二十日午前五時ごろ、夏目義一さんは東海道本線に飛び込み自殺をされました。」、この夏目さんという方は失対で働いていらっしゃるわけです。名古屋のすぐそばにあります西枇杷島というところにいらっしゃるわけですけれども、この方は最低ランクのCの三なんですね。ですから一日千四百十六円という賃金なわけです。食べていかれないということで、組合などにも、もう少しお金の入るところがあったら失対はやめて、そっちへ行きたいというようなことも相談に来たりしていたようですけれども、お年ですし、なかなか仕事がない。もう少し上がるから、そのうちにきっと上がるだろうから、もうちょっと待ってみたらどうかというような話をした直後だったのですね。とてもほかにも行かれない、失対では食べられないということで、この二十日に自殺をしているわけです。  これは一つの名古屋の例ですけれども、こういうことが起きているわけですね。特に愛知県は、その低い中でも格差があるわけです。東京、神奈川、そういうところでは全県一本になっているわけですね。しかし愛知の場合には級が分かれて、格差がある。そういうことが生活保護の中でもいま非常に問題になっているわけですけれども生活保護の一級から四級というのも、いまの住宅、団地や何かができておりますね、そういう中で結局、四級をもらっている人が実際の買いものというのは一級、二級のスーパーマーケット、すぐそばのマーケットへ行って実際同じものを買っているわけですね。それなのに違うわけですね。こういうことはやはり失対の賃金の格差の中にもあらわれているわけです。こういうことについて、どのようにいま検討し、作業をしていらっしゃるかということを簡潔に具体的に答えていただきたいと思います。  局長さんが何か先にお帰りになるというお話ですので……。
  244. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 本来の失対事業の改善の問題でありますが、この春一三・二上がった。これが、物価が上がった、生活費が上がったから早く変えてくれ、これは失対の関係の方、並びに国会関係の方からよく聞いております。しかしこれは、釈迦に説法でありますけれども、生計、物価が上がったからすぐに改善せよ、これはちょっと、理屈から、緊急失対法の規定からいくと、類似作業に従事する労働者賃金によって改定するというので、物価の問題とは直接リンクしませんけれども諸般生活状況を勘案いたしまして、いま検討いたしております。まだ最終的決定をいたしておりませんので、ここではっきりと申し上げられませんが、まあまあいいほうに向かっておるという状態であります。今後早急に対処することを申し上げて、あと局長から……。
  245. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 賃金改定の問題につきましては、大臣からお答え申し上げたとおりでございます。  第二点の、生活を苦にしてなくなられた方があるそうでございますが、たいへんお気の毒だと思います。いま、愛知県の失対賃金についても格差があるというお話でございますが、過去におきましては、失対賃金は各県とも一段階から四段階まで、大体四段階、多いところは五段階に分かれておりまして、それをこの数年来——大都市地域と末端のいわゆる過疎地域賃金に非常に格差がございます。これは御承知のとおり屋外職賃類似作業に従事する労働者賃金を基準にして失対の賃金をきめることになっておりますので、そういった意味で現実賃金の格差があるわけでございます。  そういった関係でかなり大きな格差がございましたけれども、この数年来、この格差はできるだけ縮めようということで、東京都におきましては全部一ランクになっておりますが、愛知県はたしか二ランクになっておるかと思います。そういったところで、大都市のほうの高い賃金と周辺の過疎県の賃金の比較的低いところの最低の賃金との間をできるだけ縮めようということで、各県内でも多くても三段階、できるだけ二段階というかっこうで、最近は賃金は縮まってまいっております。そういったことで実態的には、先ほど大臣からお答え申し上げましたが、一三・二%上げておりますから、そういった地域格差をできるだけ縮小して、できるだけ皆さんの御要望にこたえるような方向で処理してまいったわけであります。
  246. 田中美智子

    田中(美)委員 局長さんお帰りになるようですから、もう一言お伺いしたいのですけれども、いま一三・二%も上げているというふうにおっしゃったのは、私は失言だと思いますけれども、一三・二%もと——生活保護でも一四%上げているわけです。これは非常に少ない、一日でわずか百五十円ですから、も、という発言はちょっとおかしいと思います。そこのところ、ことばじりをとらえるようですけれども、議事録にもちゃんと残ることですし、訂正の気があるならば、訂正していただきたいと思います。
  247. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私どもは、いま一三・二%もと申し上げたのじゃなくて、一三・二%引き上げた、と申したわけであります。実は私ども事務的に類似賃金を標準にして算定いたしますと、一三%であったわけでございますが、大臣が予算折衝の際、たいへん御努力いただきまして一三・二%の引き上げになったということでございます。
  248. 田中美智子

    田中(美)委員 もう一度局長さんにお尋ねしますが、いま大臣が非常に抽象的に、早急にやるというふうにお答えになったわけですけれども、結論はまだ出ていないとしても、具体的にどういうことを考えていらっしゃるのか。どういうことを考えて、これは少ないから、どうしようというふうなことを考えていらっしゃるのか、もう少し具体的にお話し願いたいと思います。
  249. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私、残っておりますので、どうぞごゆっくり御質問ください。  これは事務的なお話でございますけれども先ほど大臣からお答えになりましたように、法律によりまして失対賃金屋外職賃もとにして、類似作業に従事する労働者賃金もとにしてきめることになっております。  そのきめる手順を申し上げますと、毎年八月に屋外労働者賃金調査をいたします。その結果が大体十一月末ごろにしか判明いたしません。したがいまして私どもは例年、八月の屋外職賃の結果をもとにいたしまして、翌年度の予算要求に盛られます失対賃金を具体的に決定するという段取りをいたしております。したがいまして、今度のような事態になりましても、私どもはその準拠すべきデータを持ち合わせておりませんので、従来とも米価改定、いわゆる政府が決定いたします消費者米価が引き上げられたというようなとき以外には失対賃金改定した例はございません。そういうことでございますので、事務的に申し上げますと、賃金改定ということはきわめてむずかしい問題だと私ども考えております。ただ、先ほど来諸先生の御質問にございますように、ことしは生活保護の例で申しますと、厚生省からも御答弁がありましたように、五・五%の消費者物価水準が予定されておったにもかかわらず、一〇%をこえる状態になった。春闘その他で、一般の毎勤におきましても例年よりは賃金の引き上げ率が高い。こういうことから考えますと、おそらくことしの八月の屋外職賃の結果も例年よりは高い数字が出るのではないかというふうには考えられます。これは予想でございます。しかしそういったデータ手元にございません以上は、私どもは事務的にこれをどうするこうするというような検討の余地が実はないわけでございます。そこで先ほど大臣からもお話ございましたように、事務的には私どもそういった諸般情勢を勘案しながらこれをどうすべきかということは一応考えてはおりますけれども、もっぱらこれは政治的な御判断によって大臣の御指示を仰ぐ以外にはないのじゃないか、かように考えておるわけでございます。
  250. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは大臣に伺いたいと思います。  いまの局長さんのお答えと大臣と同じお心かもわかりませんけれども、いま事務的ということばが出たわけですね。それは確かに失対法の十条の二の二項などではそのように書いてあります。しかしそれならば、それが至上命令であって、労働大臣には心がないのかということを聞きたいわけなんです。主体性も心もないじゃないか。事務的にそちらがくればこうくるということですね。そして実態というものをもう少し見てみませんと、最低ぎりぎりの生活をしている人と、それから一般労働者のぎりぎりという線というのが——労働者だってぎりぎりです。ですけれども、もう生命を維持するぎりぎりのところで生活している人にとっては、去年の八月の調査でもってそれが四月にきまる、その間結局夏目さんのように間に合わないわけですよね。私、失対労働者が食べていらっしゃるものの献立などをちょっと見せていただいたわけです。ある一人の方ですけれども、朝、塩がついたおにぎりを二個食べてくる。これが約百円かかるわけです。それからお昼は、お弁当を百五十円で食べるのだそうです。その百五十円というお金ですけれども、私はこの間伊勢丹の食堂——庶民食堂です。あそこで、おらがそばというのをとりましたら百八十円です。とてもおなかの足しにならないわけです。ですから百五十円で、それはいろいろありますでしょうけれども、そういうものをお昼は食べていらっしゃる。夜は大体二百六十円かけているというのです。これはもうここの議員会館の下でも、カレーライスに卵の入ったのは二百五十円しています。それもごはんも少ないわけですから。そして結局これでやりきれないで夜ちょっと夜食をしてお休みになる。即席ラーメン一個に卵を一個入れる。この卵を一個入れるのがほんとうに精一ぱいだということなんですね。そしてこれは男の方ですけれども、たばこでもきざみだそうです。私は見たことがなくて申しわけないと思ったのですけれども、三十円のたばこを一個吸われる。そして働いていらっしゃるものですから、安いお酒に二百円使うというのです。これは皆さんも御存じだと思いますけれども、特級酒ですと二百円するわけですね。一番最低を飲むにしたって一合か一合半くらいしか飲めないわけです。こういう形で全くほかに余裕がないわけですからね。これがある日こういう日があったというならいいですけれども、これでずっといって、年じゅう何も余裕がないわけですからね。そういう生活の中で、ここで物価がすごく上がっているわけです。これはもう物価がいま具体的に上がっているのをずっと私も調べてきましたけれども、ほんの一、二を見ますと、ちり紙のようなものだって、ついこの間七十円だったものが百十円になっているし、それから一番ひどいのは、くだものと衣類ですね。この間十三・三%上がった時点からいまの間で、もう三割も上がっているわけですね。ですから去年の八月からしますとたいへんに上がっているわけです。ネギだって一本七円のものが十八円、これはもう倍になっているわけですね。おとうふも二十二円が四十円、これも倍になっているわけですね。そういうふうなことを考えますと、失対法十条の二の二項でこれがあるからこれを事務的にやっていくのだというふうなお答えでは、これは私自身が納得しないだけでなくて、失対労働者だけでなくて、やはり国民全般が納得できないと思うのですね。失対の方たちがこういう食事をしている。その中で、お菓子などを買う場合にでも、大臣は召し上がったことがないかもしれませんけれども、たとえばカステラのようなものでも、ヘリを削ったものを売っているわけですね。かすのように削ったものだけを売っているとか、それからおせんべいですと、割れたせんべいだけを売っているわけです。それから焼き豚なんというのは、スーパーなんかにも肉屋さんなんかにも出ておりますけれども、端っこを切ったあぶらのようなところを切ったようなものばかりを売っているわけです。これがたいへん安くなっているわけですね。こういうものを買ってきていたわけですけれども、ことしに入りましてから——これは失対の賃金というものか失対の方だけの問題でないということを私は言いたいのですけれども一般の勤労者の主婦がそれを買うようになったということなんです。ですから競争なんですね。その焼き豚のかすを切ったのを奥さんたちが早目に行って買ってしまうわけですね。ですから、失対の方たちが働いたあと行きますと、もうないわけなんですね。そういう点で、そういうものがなくなっているということが、物価高の上にまた、そういう安いものが買えないという現状があるわけです。こういう現状に対して、単なる事務的に、とてもいまできませんということをおっしゃるところがちょっと私理解できないわけですけれども、そこは大臣にお答え願いたいと思います。
  251. 田川誠一

    田川委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  252. 田川誠一

    田川委員長 速記を始めてください。  職安局長
  253. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私、先ほどお答え申し上げましたのは、事務的にはなかなかむずかしい問題でございます、これは筋論として申し上げたわけでございまして、全く事務的に何もやる気はございませんと申し上げているわけじゃございません。確かに失対に就労している人たちのみならず、物価が上がっているということ、生活が苦しくなっているということはもう御存じのとおりでございます。私も承知いたしております。そういったことで、賃金の上昇状況等を比較いたしましても、先ほど申し上げましたように、昨年の八月の職賃をもとにいたしましてことしの失対賃金をきめたわけでございますけれども、ことしの八月の調査の結果がことしの暮れに出ますけれども、それはおそらく去年よりは上昇の度合いがかなり高くなっているのじゃないかと思います。毎月勤労統計の賃金調査を見ましても、昨年とことしを比較いたしますと、上昇度合いがやはり若干の差がございます。そういったような同じような傾向が出るだろうということは想像にかたくないことでございます。しかし、事務的にだけ詰めますと、いま年度途中の改定ということは非常にむずかしい問題でございます。したがいまして、この問題につきましては諸般情勢を勘案した上で、大臣の政治的な御判断によって、私どもその指示を受けて善処してまいりたい、かように申し上げたわけでございます。
  254. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 いま規定とか事務的な調査からいくとなかなか困難だ、いままで例外は消費者米価が上がったときに一ぺん上げただけで、物価が少々上がったからといってやったことはないのでありますけれども、リンクはしないというが、生活実態その他いろいろなことを考えまして、大臣としても決して冷たい気持ちじゃございません。温情ある施策をやりたいというので、関係方面ともいろいろ生活保護関係、これと失対は関係ありません。ありませんけれども、いろいろなほうとも連絡をとりまして前向きに対処しようというので、しからば、そのまま放任して、事務的なほうは進まなくとも、それはやる場合もありますし、前向きで検討して善処していく。そうしたら、もうあっさり大臣言ったらどうだ、こういっても、これはなかなか行政のむずかしいところもありますので、どうかこの点はおまかせを願いまして、この程度で大体胸中はお察しいただいたと思いますので、ひとつ大いに対処いたします。決して、事務的な遅延をした場合にはこれがもうパアということはありません。
  255. 田中美智子

    田中(美)委員 先ほど事務的というふうに言われておりますけれども、十条の二では「労働大臣が定める」というふうに書いてあるのですね。審議会でも労働大臣が諮問するわけですからね。大臣がほんとうに現実に困るのだと思えば、ぎりぎりの人ほどこれは大幅に上げていかなければ、自殺に追い込むことです。ですから、そういうことを考えて、生活保護とは関係ないと言いながらも、いつも生活保護よりちょっと少なく常になっているという数字を見ますと、関係あるのじゃないかというふうに思ってしまうわけです。ないならば、これはやはり大幅に上げる時期に来ているのじゃないかというふうに思うわけです。そういう意味で、大臣はもう少し大臣としての権限を持ち、そうして主体性を持っていただきたい。法律だけに縛られないで、思い切って加藤労働大臣のときにばっとやったということをやっていただきたいというふうに思います。  それで、ちょうど時間になりましたので、質問を終わります。
  256. 田川誠一

    田川委員長 大橋敏雄君。
  257. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 重複をするようでございますけれども、私も生活保護、それから失対賃金の再引き上げの問題、それから公制審その他若干の質問を申し上げてみたいと思います。  いまも田中委員のほうから、実生活にあらわれている物価の上昇の実情がこまかく述べられておりました。大臣もその話を聞きながらかぶりを振りながら全くだ、全くだと、私このような感じを受けたわけでございますが、私も今年度消費者物価の上昇について、経済企画庁の調べた内容を見てみましたところ、全国平均で、対前年同月比でございますけれども、四月は九・四%、それから五月は同じく一〇・九%、六月は同じく一一・一%の上昇を示しております。昨年に比べますと、一割も値上がりをしたという実態が出ているわけでございますが、また先月の七月、これは東京都の速報分だけでございますけれども、一二・二%とさらに上昇の様子を示しているわけでございます。まことに現在の諸物価高騰というのは話にならない。当然国民生活は圧迫されますし、特に生活保護者あるいは失対事業等で働いている方々の生活というものは、想像以上に困難な状態にあるということでございます。  そこで、まず厚生省関係の方にお尋ねしますが、生活保護費の問題でございますけれども、先般自民党の社会部会でもって、最近の物価上昇を考慮して生活保護費の再引き上げをすべきである、このような意向を明らかにしたということを私は新聞紙上で見たわけでございますが、まず、それは御承知かどうかということです。
  258. 山崎卓

    ○山崎説明員 先般自民党の社会部会におきましてそうしたことにつきまして審議が行なわれ、その結果社会部会長さんのほうから厚生大臣のほうにお申し出があったというふうに承っております。
  259. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それじゃ社会部会の意思というものは厚生省にもはっきり伝わっているということですね。  それでは厚生省として、つまり政府としてこれについてどのような考えになられているのかお尋ねいたします。
  260. 山崎卓

    ○山崎説明員 先生御案内のとおり、生活保護の場合におきましては、今年度保護基準は昨年度に比べまして一四%引き上げておりますけれども、その中に経済見通しとして物価上昇部分は五・五%ということを見込んであるわけでありますが、先生がいまお述べになりましたような数字がございますので、相当やはり見込みから上回っておりますので、何らかの措置を講ずる必要があるのではないであろうかと私たちといたしましては考えて、目下検討中でございます。
  261. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまあなたがおっしゃるとおり、政府消費者物価上昇率の当初見込みというものは、年度平均で五・五%であった。ところかいま私が示しましたように、実態はもう倍以上の値上がりをしているわけですね。こういう中にあって公務員給与に関する人事院勧告が、御承知かと思いますけれども、一五・三九%と大幅な引き上げを示しているわけでございます。こういうときにあたりまして、生活保護費の問題だけを置き去りにしていいわけはない。そういうことから自民党の社会部会でも先ほど言ったような決断をしたと思うわけでありますが、政府と自民党は表裏一体の関係でありますし、当然今国会で私は再引き上げが行なわれるのであろうと期待しているのでございますが、その点はどうですか。
  262. 山崎卓

    ○山崎説明員 再引き上げの件につきましては目下検討中でございます。
  263. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 検討していることは十分承知しているわけですけれども、今国会で引き上げるのかどうかという問題ですね。それとも臨時国会で補正予算等で行なうようになるのかどうか。この辺非常に知りたいところなんですよ。あなたの立場からなかなか言いにくいところでしょうけれども、ほほこういうことになるであろうということでもけっこうです。
  264. 山崎卓

    ○山崎説明員 先生お述べになりましたように、四月、五月、六月、こういうような数字でございますので、なおその辺を見ながら目下検討中でございます。
  265. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 やっぱりあなたでは説明できないでしょうね。——いずれにしましても、強く要望しておきます。     〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕 今国会でなすべきであるということ、少なくとも次の臨時国会で、いわれておりますその補正予算の中で当然措置されるべき内容であるということですよ。  それから、その引き上げ幅ですが、今度再引き上げしなさいとわれわれ言っておるわけですけれども、その再引き上げのことについてはどの程度に予想されておりますか。
  266. 山崎卓

    ○山崎説明員 先ほど申し上げましたとおり、その辺全般を含めまして検討中でございます。
  267. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 話にならぬわけでございますが、倍以上、つまり一一%から一二%前年同月比で引き上げになっておりますし、五・五差し引いた差額分くらいは当然引き上げられるだろうということはもう一般の常識になってきておりますからね。そのくらいはあなたも承知しているはずなんですね。ただ立場として言えない、私はこのように理解しますが、検討中、検討中ということでございまして、検討なさるのもけっこうですけれども、お帰りになりましたら厚生大臣に私のいまの気持ちを十分伝えられるかどうか、これだけ確認しておきましょう。
  268. 山崎卓

    ○山崎説明員 上司には十分報告いたします。
  269. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 熱意をもって伝えてください。よろしいですか。——それでは生活保護費の問題は、もうこれ以上論議しても進まないようでございますので、けっこうでございます。  次に、失対賃金の問題でございますけれども、いま生活保護費の問題を論じてきているうちに、おそらく労働省の皆さんも十分おわかりと思いますけれども、現在の生活水準あるいは物価上昇の傾向から見た場合、現状の失対賃金というものはきわめて不適当であると私は言えると思うのですね。先ほどからも説明がありましたけれども、本年の四月に改定された分はたしか一三・二%である。つまり一日当たり約百六十八円の増額と見るわけでございます。したがいまして、千四百五十円となって、二十二日働いたとして月額三千七百円程度です。これではほんとうに現在生活していくにきわめて困難である。先ほど田中委員の話ではございませんけれども、自殺に追い込まれていくような心情もわかるような気がするのであります。  そこで、私なりに四十八年四月の賃金を見てみたところ、失対賃金では三万一千九百十八円、全産業平均では八万二千七百二十六円、公共企業体では九万四千五百八十円、このように大きな開きを示しているわけでございます。またことしの春闘で大幅な賃上げが実現したわけでございますけれども、それを見ますと、主要民間産業では平均二二%、一万五千円、公共企業体でも平均一七・五%、一万四千円引き上げられているわけですね。こういう状態から見てまいりますと、生活保護費は自民党の部会でもはっきり再引き上げをやるべきであると決定したと同じように、この失対賃金も早急に再引き上げを行なうべきである。先ほどから局長答弁にしろあるいは大臣答弁にしろ——局長答弁のほうは、事務的にいった場合は屋外労働賃金調査を終えてから云々ということでありましたけれども、気持ちとしてはそういうゆうちょうなものではない、早くやりたい、そういう気持ちでありますということでございますが、これはもう最終的に大臣の英断以外にないと思うのですよ。言われるとおり、事務的にいけば、屋外労働賃金調査を待ってやる以外にないだろうと私は思う。しかしながら現実現実です。実情は実情でございますので、この際思い切って再改定をやる、再引き上げをやる、こう決心なさるのが大臣の心意気ではないですか。
  270. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この問題は大橋委員も諸般事情は十分知っておっての御質問と思いますので、私のほうもそうした、大臣が大英断をもってやれ、これはもうよくわかっております。しかし大臣、金を持っておりませんので、やはり大蔵大臣のほうの連絡をきちっとしなければいかぬとか、いろいろ省内の連絡があるので、ここですぐに、大臣はやれるのだからやれ、それじゃすぐやりましょうと言いたくても言えないというようないろいろな関係がありますし、先ほどから私の答弁を聞いておりましてもう大橋委員もおわかりと思いますので、この程度でひとつ……。ただ、事務当局のほうの作業が終わらなければやらぬというわけでもありません。でき得べくんばそういたしたいのでありますけれども諸般事情また失対の方々の生活の実情、その他の感情等もいろいろ勘案いたしまして、早急にこれに対処いたしたいと思います。
  271. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 確かにあなた自身はお金はない。ある程度のお金はあっても、失対賃金を引き上げるほどのお金がないことは十分知っております。ここが問題ですが、先ほどからも話があっておりました、失対賃金の決定は労働大臣である。これは法律で規定しているわけですよ。よろしいですね。そして現在の社会情勢あるいは賃金上昇の実態からいった場合、いまの失対賃金では不十分である、不適当である実情がわかった。それでいて労働大臣が決定できないというのは矛盾じゃないですか。どうですか。
  272. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 大臣が決定することはできるのでありますけれども、やはり予算の場合には大蔵省がおり、相当関連の協議も必要なのが行政のほんとうの姿で、これは隠しても——特にこの問題は、特別会計でありませんで一般会計から取ってくるのでありますから、やはり関係大臣との協議も——これはあらゆる場合に、当該大臣がこれはいいからやれといってやっておったらおさまりがつきませんので、当然大蔵大臣とも折衝しておる。この点の折衝等はいま言えませんが、いろいろ協議いたしておりますので、御趣旨の線に沿うように対処いたします、こういう御答弁を現在いたしておりますので、これでごしんぼう願いたいと思います。
  273. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 実は先ほどからも言っておりますように、春闘の大幅な賃上げが実現されて、主要民間産業でも先ほど言ったように平均二二%、それから公共企業体でも平均一七・五%ですよ。先ほど物価の値上がりの問題が出ておりましたけれども、四十七年の五月から四十八年の五月の一年間の姿を見ただけでも、食料品の場合は一三・七%平均して上がっておるわけです。被服は二一・九%ですよ。ところが失対賃金の引き上げは、いま言ったように一三・二%でしょう。そして公務員の人事院勧告は一五・三九%ですよ。だからこういう実情から見てまいりますと、失対賃金あるいは生活保護も合わせてですけれども、置き去りになっているわけですね。だから実情をひっさげて大蔵省に折衝すれば、当然大蔵省だってまことにごもっともでございますということで、大臣の意思どおりになるのではないかという私の見通しです。ましてや労働大臣の労働行政に対する熱意は、いままでの大臣以上のすごいものがあると私は見てきております。そういうことですから大臣、言いにくい立場かもしれませんが、もう少し具体的なはっきりした——何月何日どの程度引き上げるなんということは言わなくてもけっこうでございますが、もう少し失対労働者が、なるほど近いうちには何とかしてもらえるのだという希望と喜びを持てるだけの答弁がほしいと思いますね。
  274. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 先生の、物価が非常に上がっている、あるいは民間の賃金公務員賃金も上がっているじゃないか、仰せのとおりでございます。現在失対就労者の月額手取り平均額は、先ほど三万幾らとおっしゃいましたが、正確に申し上げますと三万四千九百五十八円でございます。これは確かに十分だとは言えません。  若干数字を申し上げますと、公務員なり民間賃金の上昇を昨年と比較いたしますと、毎月勤労統計で常用労働者賃金上昇率を見ますと、四十五年、四十六年、四十七年、各年大体一五%程度でございます。それがことしは、四十八年上半期は一七・九%、四月−六月をとりますと一九%近くなっておるようでございます。  そういった状況から見ますと、先ほど来申し上げておりますように、失対賃金の決定の基礎になります屋外職賃は、残念ながらことしの暮れまで出てまいりませんけれども、こういった数字を勘案してみますと、おそらく相当な上昇率を示すのではなかろうか。したがいまして私ども事務的に失対賃金を決定するルールどおりにいきますと、いまここで改定云々の手順にはなってまいりませんけれども、こういった数字から類推いたしますと、私ども心情としては何らかの措置をとらなければならないのではないかという感じは持っております。したがいまして、先ほど大臣答弁になりましたように、これは失対賃金をこういうルール以外の方法で何らかの措置考えるといたしますと、政府部内でいろいろな関連の問題がございます。そういった点を労働大臣から政治的に御判断をいただいて、その上で私ども事務的に手順を進める以外にはないのではないか、かように考えておりまして、先ほど大臣の御答弁があったわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  275. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 大橋委員のいろいろな関係事情の開陳があり、そして、大臣この際善処せい——まあその所存はありますし、前向きで各方面とも打ち合わせをいたしておりますので、まあいま詳しくこうすると言うことはできませんが、この程度大臣として、おほめのことばをいただきましたから、ほめられたからというわけでなく、本腰で対処いたしますことをお約束いたします。
  276. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 では労働大臣のその心情を信じてこれ以上追及いたしませんが、御承知のように、私が住んでいる福岡県は失対労働者が非常に多いところでございます。そういう方々とじきじき会ってお話し申し上げますと、ほんとうに胸の痛くなるような心情を訴えられます。何とかしていただきたいという、そういう実情をまのあたりに見ておりますだけに、私どもはこの問題を強く訴えるわけでございます。その点、よろしくお願いいたします。  それでは、話はがらりと変わりますけれども労働者の安全衛生の拡充強化の一環としまして、労働省として産業医科大学構想があると思うのでございますが、まずこれについて説明を願いたいと思います。
  277. 渡邊健二

    渡邊(健)政府委員 産業医科大学につきましては、先生御高承のとおり、昨年制定していただきました労働安全衛生法で、一定規模以上の事業場には産業医を置くべきことが定められたわけでございます。  具体的にその後省令によりまして五十人以上のところには置く。特に千人以上の規模及び有害業務については五百人以上の事業場については専属の産業医を置かなければならない。三千人以上のところは二人産業医を置けという規定がございまして、その産業医が行なうべき職務につきましても安全衛生規則によりまして健康管理、それから労働者の衛生教育、それから健康障害を起こさないために必要な処置あるいは衛生管理者の指導、こういったことが定められ、しかも一定のことにつきましては産業医は事業主に対して勧告する権限も持つといったような権限も明記されたところでございます。  こういうことで私ども労働者の衛生、特に職業病の予防等につきましては、今日の段階におきましてはそういうただいま申し上げましたようなことに詳しい専門的な知識を持つ医者の協力ということがぜひとも必要である、かように考えてこういう対策を推進しておるわけでございます。ただ日本の実情を申し上げますと、そういう産業の中における労働者の衛生管理あるいは職場における職業病の予防、その他そういう健康障害発生の防止に必要な措置あるいは衛生教育等々について十分な専門的な知識を持ったお医者さんというものは、必ずしも十分におられないわけでございます。医者はたくさんにおられますけれども、従来のわが国の医学教育で申しますと臨床医の教育が非常に主でございまして、外国においては医学部の中にこういう産業医学の専門の講座もあるというように聞いておりますが、日本の場合には従来はこういう専門の講座がございません。公衆衛生の講座の中の一部として取り扱われているにすぎないといったような状況でございまして、したがいまして、こういう問題を専門的にお勉強なさっている方は非常に限られた方でございます。産業界におきましては、法律でこういう規定を設けましても、それにふさわしい専門的な医者の確保ということに非常に苦労をしておられるわけでございます。そこで産業医学会、医師会等医学面からも、そういう産業医の養成をする必要が緊急の要としてあるのではないか、こういう要望がありまして、あるいは産業界のほうからもそういう必要な産業医を大量に養成してほしいという御要望がございまして、これらの御要望はいずれもきわめて当然のことである、われわれかように考えておるところでございます。  そこで、こういう産業医を今後の日本の産業界の需要に応じまして養成いたします専門の医科大学がやはり必要なのではないかということで、産業医学会の専門の方々の御意見を聞きながら、産業医科大学を創設すべくいろいろ検討をいたしておるところでございますが、そういうわれわれの構想に対しまして、昨年五百万円の調査費が予算につけられております。そこでわれわれ、今年度に入りましてから産業医科大学設立準備委員会というものをつくりまして、関係専門家の方々等を委員に御委嘱いたしまして検討を続けておるところでございます。まだ最終的に構想が固まったわけではございませんが、大体の構想といたしましては、この大学は六年制の大学法に基づく大学といたしまして設置をいたします。もちろんこの卒業生は一般の医科大学と同じように医師の国家試験を受ける資格を当然に持つ。そういう意味の基礎医学の教育をいたしますと同時に、当初から産業医学に関しまして専門的な科目も六年間を通じて履修をしていただきまして、卒業の暁には、医師たる資格を持つと同時に、産業医学についても専門的な知識を持たれまして、先ほど申しました安全衛生法に基づく産業医の職務を十分専門的な知識を持ってこなしていただく、こういうような教育をいたしたい、かように考えております。  なお、当然のことでございますが、その大学には大学院を置きまして、さらに高度の産業医学についての勉強をしていただく、博士号も取れる課程を設ける、それから卒後コースも設けまして、一般の医者の方でも、すでに医師の資格を持っておられる方でも、卒後コースとしてそこに入っていただきまして、そして一定期間産業医学だけについていろいろお勉強いただく、こういうコースも設けたいということで、そのために必要なカリキュラムあるいは施設等々について、いま設立準備委員会で具体案を固めつつあるわけでございます。
  278. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 産業医科大学の構想の一部をいま伺ったわけでございますが、これで十分理解するわけにはまいりませんけれども、方向としては大いに伸ばしていくべき内容であろう、このように私も考えるわけでございます。四十九年度ではたしてどの程度の具体的な方向が示されていくのか、たとえば設置個所としてどういう方向になっていくのかどうかということですね、そういう点もあわせて御答弁願いたいと思います。
  279. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 設置個所などの点も、なかなかこれは関係するところもありますし、むずかしいので、実際のことを申しますと、まだ設置個所の候補地は、茨城、静岡、大阪、北九州、大体四カ所。初めは川崎、東京付近というのもあったのでありますが、これは地元のいろいろな協力を得なくちゃ、政府はやろうといたしましても、土地の確保とかいろいろの問題、下水道とか上水道とかの環境の関係もありますので、いま役所のほうなり設置委員会のほうとも連絡いたしまして、これが設置場所をどこにするかということを検討中であります。しかし、幾ら延ばしてもやはり本年度には最終的にはきめなくちゃならぬ。ところがいま言ったように、千人以上ということになりますと、相当な需要量がある。一カ所ではもう少ないのじゃないか、もう少し構想を変えて、二カ所にしたら、三カ所にしたら、こういうような意見も各方面から出まして、いま一カ所にするか二カ所にするか、こういう点を政府部内で検討いたしております。この資金の問題は、労災から出るのでありますが、労災では二カ所では困難だ、一般会計から出してもらわなくちゃならぬというような関係も、いま政府部内で大蔵省その他と検討中でありまして、いまどこということがなかなか発表できないという段階で、一カ所の場合と二カ所の場合とおのずから相違があります。この点をいま検討中でありますので、本日この席でどこが有利かということもなかなか触れ得ない。しかし、やはりあまり交通が不便でも教授陣の確保という点からいってもなかなか困難な点もあります。また、この大学を設立しても、普通の臨床医学と違いますから、いろいろの工場の関係、すなわち安全衛生を研究するのに必要な実験台の工場のあるところという点も考えなくちゃならぬ。それから特殊の学校でありますから、いろいろ教授の確保という点、いろいろな関係と、当然地元の御協力とか、いろいろなデリケートな関係がありますので、本日ここでどこが有利だという順位ということはつけられませんが、いまのところ二カ所という案も出ておりますので、この点を十分勘案いたしまして、来年度までこれは決定が延びることはありません。五百万の調査費もついておりますので、今年度中に決定しなくちゃならぬ、こういう段階であります。  以上であります。
  280. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの大臣の御説明で大体方向としては理解できたわけですけれども、四カ所あるいは二カ所、いろいろといま審議されている段階である。先ほどの話の中に、北九州市が出てきたわけでございますが、これについては、北九州は労働者の町でもありますし、非常に関心を深く持ってこれをながめております。そこで、地元の協力はむしろ歓迎でございまして、一も二もなくこれを受け入れるということを私は申し述べておきます。そこで、いろいろ検討がありましょうけれども大臣の心の中に、きょうの私の質問の中に産業医科大学の設置個所として、北九州は大歓迎であるということをお忘れなく、しっかりと審議の段階で思い出して、それを生かしていただきたいことを強く要望しておきます。
  281. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 この問題は、結局いろいろ新聞では誘致運動が、どこへ行ってどこにどうしたというようなこともときどき見ますが、労働省が設置する産業医科大学でありますから、大臣が最終的には諸般事情を考慮して、諸般の条件を考慮して決定しなくてはならぬ。なかなか、数カ所のうちで一カ所となると立場が苦しいのでありますが、やはり政治的な配慮もこれはあるかもわかりませんが、結論は政治的な配慮を抜きにいたしまして、最終決定は私の手元でいたしたいと思います。いま大橋委員の御意向の点も大いに尊重いたしますが、それだけを全部尊重するというわけにもいかない立場でありますので、この点御了察願いたいと思います。
  282. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 とにかく私はここで真剣に、まじめに、労働大臣に自分の気持ちを伝えたわけでございますので、あと大臣のお心にまかせたいと思います。  そこで、話はまた変わりますが、公制審に関してお尋ねしたいと思います。  御承知のとおり、公制審は九月三日でその任期が終わるわけでございますけれども、労働基本権問題については八年間の歳月を要し、ようやくその結論が出されるのだということで、関係者は真剣にその答申に期待を寄せ、関心を寄せているところでございます。ところが新聞報道によりますと、公益委員の素案なるものが八月二十七日に明らかにされた、つまり任期までわずか一週間しかない時期に示されたわけでございます。そしてその素案なるものについては、労使代表のためにたたき台としてこれを出したのだという説明がなされているように伺っているわけでございますけれども、私どもは、この公益委員の示した素案なるものは、単なるたたき台ではない、これは八年目の公益委員の最終答案である、この程度重要に受けとめているわけでございますが、総理府の方はどうこれを考えておられるか、まずお尋ねしたいと思います。
  283. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 公務員制度審議会で御審議をいただいております公務員労働者の基本権の問題につきましては、国内のいろんな事情からしてなかなかむずかしい問題でありますので、御指摘のようにほんとうに長い間審議を続けてまいりましたけれども、なかなか公労使三者間で一致を見ることができないという事情にあったわけでございます。  そういう事情でありましたために、ひとつ公益委員が中心になってたたき台をつくったらどうかという話になりまして、そういうことでずっと最近まで経過してまいったわけでありますが、ただその際に、公益委員が答申の原案をつくるというように解されては困る、公制審というものは公労使三者の機関でございますから、一種のたたき台をつくって、それに労使が参加をして、そして全体としてまとまった答申を得たい、こういうことでまいっているわけでございます。したがいまして、これはことばのとりようかもしれませんけれども、いまお話のありましたように、公益委員が答申案をつくるんだということでは実はまいっておらないわけでございます。したがいまして、そうは言いましても、きわめて重要な問題については公益委員側で一つの案がまとまればたいへんけっこうなことである、これは皆さんがそのように感じておられると思いますけれども、詳しく言いますと、原案ではなくて、一つのたたき台を出すというお約束で仕事を進めてまいったわけでございます。この点はひとつ御了承をいただきたいと思います。
  284. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 実は本日の委員会におきましても、各委員から公制審に関する質疑がいろいろと行なわれてきたわけでございますが、総理府に対して初歩的なことを聞いて申しわけないのですけれども、この審議会は何のために設置されているのかということです。というのは、単なる飾りものになってはならないという私の懸念からの質問なんです。審議会が答申を出すからには、一体何を言っているんだろうかというようなものであってはならぬし、やはり一定の方向を示したものでなければならない、こう思うから聞くわけでございます。政府の意図的な委員の任命や圧力、こういうもので審議会の方向がゆがめられたり、あるいは公益委員が大胆にといいますか、正直にものが言えない、結論を表明できない、こういうことであってはならないと私は思うから、初歩的なことを聞いておるわけでございますが、その点についていかがですか。
  285. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 お話しのように、これは公益委員として見識を持って、一つの日本の公務員労働運動といいますか、その基本問題のあり方についてお考えを出していただきたい、こういう考え作業をいたしたわけでございます。もちろん政府がこれに対してとやかく申し上げることは、あるべくもないし、今日まで差し控えてまいったわけでございます。
  286. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 政府の立場はよくわかります。わかりますけれども、これまで新聞紙上等で報道されている内容から判断してまいりますと、公益委員が示している素案の決定的な弱さといいますか、それは肝心のスト権については、現業の場合は三案併記である、非現業の場合は二案併記というような内容になっております。これではその方向性がさっぱりつかめないわけですね。実は八月二十九日の朝日新聞の社説の中にもこのようなことが書いてあるのです。「三案を同じ比重で並べることは、結果的に何もいわないのと同じである。公益委員を医者に、官公労の労使関係を患者にたとえてみると、八人の医師は「全面的に治療する必要がある」「投薬だけでいい」「全く治療する必要はない」と三つの処方せんを出したようなものだろう。第三者にはどの処方せんを信用していいか分かるまい。われわれに理解しがたいのは」云々とあるわけです。これからまだ九月三日まで何日か日にちはあって積極的に詰められるところでありましょうけれども、われわれは、この三案併記などという答申のあり方を見た場合、現在の審議会のあり方自体に疑問を持たざるを得ない、こういう考えで一ぱいなんです。この点についてもう一度総理府の考えをお尋ねしたいと思います。
  287. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 公益委員の先生方としては、重大なスト権の問題につきましても相なるべくは一致した意見を出したいということで、たいへんな努力をされたわけであります。ただ、なかなかその一致が見られない、時間も残されておらないという段階に立ち至りましたので、これを率直に労使の方にお示しして、三者であらためてどういう一致をはかるかという点で努力をしてもらうほかないだろうという経過を経まして、中間の報告をいただいたわけでございます。もちろんこのままの形でこれが好ましいというふうには考えておられないだろうと私は思います。また、これから残されたわずか数日の期間でございますので、三者がなるべく歩み寄って一つの方向を出したいという御努力をなされるものと私たちは考えております。
  288. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 あなたの考えは要するに、いまのような三案併記、何を言っているかわからないような姿ではなくて、ある一つの方向を示した答申がなされるものと期待いたしております、こういうように理解してよろしいですね。  実は先ほども問題になっておりましたけれども、奧野文部大臣の発言なんです。昨日でございましたか、青山会館での全国都道府県教育委員会、教育長協議会合同総会における奧野文部大臣のあいさつの中に、公務員制度議会は来月三日任期切れになるが、これまでの報道を通じて見ると、公益代表の考えは、非現業職員には争議権を認めるべきではないとの立場に立っていると言ってみたり、組合のいうスト権奪還は不自然である、こういうことを明確に口を切られているわけですね。先ほどこれが重大問題だということで議論がなされておったわけでございますけれども、総務長官は、自分は奧野大臣の発言についてはまだ何も知らない、もし問題があると思われるならば直接奧野大臣に聞いてくれというような言い方で帰られました。あなたにこれ以上のことを聞いたって返事はできないと思いますが、けしからぬことだと私は思うのです。つまり内閣の一員である文部大臣が、しかも教育問題の話をする中で労働問題に触れて、しかも公制審の審議内容に大きな影響を及ぼすような発言をした。その発言の中身は、全労働者に対する挑戦であると思われるような発言でもある。こういう点についてあなたにお尋ねしても無理かと思いますけれども、あなた自身はどうお考えになりますか。
  289. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 前提を置いてのお話でございますけれども、私もなかなかこれはお答え申し上げにくい問題でありまして、真意もよく伺っておりませんし、私の立場でとやかく申し上げるのは、どうもその任でないように思いますので、御了承いただきたいと思います。
  290. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 無理もなかろうと思います。  そこで、では労働大臣、ついてじゃございませんけれどもお尋ねいたしますが、まず、労働運動が末熟な段階ならば、スト一律禁止、このような抑圧政策といいますか、こういうことによってある程度事態の処理はおそらくできたと私は思う。ところが現在のように労働運動が成熟した段階に入ったときに、こうした抑圧的な政策というものはかえって争議を激化させていくという効用しかない、私はこう思うのです。これは労働運動の歴史を振り返ってみれば証明されている事柄なんです。そうしてみれば、先ほどの文部大臣の発言というものは、このような実態承知していない、認識していない立場からの無謀な発言であると私は考えざるを得ないのであります。労働大臣は、労働基本権を確立する、労働者を守るという立場からは、公制審そのものとは直接の関係はないとしましても、当然この問題には関心を深めていらっしゃるものと思いますので、お気持ちをお尋ねしたいと思います。
  291. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 私ここで新聞を読んだのでありますけれども、文部大臣の言っておるのは、労働省の、全体の労働省の立場を例にとったのでなく、公務員の問題だろうと思います。公務員のスト権の問題で見解を発表したのでなかろうかと思うのであります。特に公制審の問題は総理府でありますし、また公務員の問題は私の管轄のことでもありません。公制審に対して、審議が最終段階に入っているときに、特別の意図をもって審議会の審議を誘導したり圧力をかけるということは、これは政府の各閣僚もないと思います。文部大臣の発言をとやかく言うことは、私もどういう意味で言われたかもわかりませんし、これに対して総務長官が先ほどああいうような答弁もされたのでありますから、労働大臣としても管轄外のことにつきまして私から文相の発言を、スト権の問題について、公務員の問題でもありますので、この際は私は差し控えざるを得ない、こう思います。公制審の問題は、これは各大臣ともいまは慎重な気持ちでおりますので、文部大臣の言ったこともよく見ると、公制審のほうでそういう意図でないかというような文章に、この新聞の文言も受け取れますので、私はいまとやかくこの問題についてどうも発言ができにくい立場にありますので、どうか御了承願いたいと思います。
  292. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 労働大臣を責めてもいたし方ないことでございますが、文部大臣の発言を新聞がその要旨を報道しておりますのを一部分読んでみますと、「一、組合のいうスト権奪還の言葉は不自然だ。終戦後に現業公務員と合わせ教員に一時的にスト権が与えられたが、これは間違った措置であり、例外的なものにすぎないと考える。憲法を守る立場の先生は、争議行為を禁止する法律が変わらない限り、争議に参加すべきでない。四月二十五日の最高裁判決が明示している。」「一、公務員制度審議会は、来月三日任期切れになるが、これまでの報道を通じてみると、公益側代表の考えは、非現業職員には争議権を認めるべきでないとの立場に立っていると受けとっている。」そのほかずっと述べられているわけでございますが、これはきわめて重大な発言だと私は受けとめております。公制審に対する影響が甚大であることとともに、ある意味では公務員労働者に対する挑戦であると受けとめておりますし、私はぜひこの委員会に奧野文部大臣を呼んで、糾弾してみたい。これは委員長にお願いをしておきますが、当然理事会で相談したいと思っておりますけれども、近い機会にこの委員会に文部大臣を呼んで、この問題について戦いたい、こういうことでございます。
  293. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 先刻の田邊委員の質問の中にもその趣旨の要望がございましたので、追って理事会でまたよく相談をして取り計らいたいと思います。
  294. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは、本日はこの程度で質問を終わります。
  295. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 和田耕作君。
  296. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いま大橋君の質問とお答えをお聞きしておりましたところで、私が質問しようとしておった大部分の話し合い、質疑が行なわれたようでございますから、私は二点ほど大臣あるいは総理府の方にお尋ねしてみたいと思います。  いま大橋君の質問の中にもありましたけれども、きょう私のところへ見えた私ども関係の深い公務員の労働組合の幹部の方で、どうも使用者側の意見、態度を見ると、政府のほうで直接あるいは間接に何か圧力をかけているような印象が深い。いまの奧野さんの場合もそういうふうな一つの例として申しておったのですけれども、これは非常に重大なことでございまして、この際労働大臣としては、労働基本権、基本法という問題については大臣が主管されておる問題でございますから、政府としてこの大事な段階で誤解されるような、あるいは圧力を与えるような言動は差し控えるべきだ。これは公式も非公式もですね。そういうふうな何らかの意思表示をする必要があると私は思うのですけれども、それについて大臣のお気持ちを伺いたい。
  297. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 労働省の係の局長関係者並びに私もまた、和田議員の言われるとおり、いま最終的な重大な段階でありますので、労働省から妙な圧力をかけるとか示唆を与えるとか、いろいろ委員の方、公益委員の方、使用者の方、これは労働省関係も、関係が個人的にはありますけれども先ほどから総務長官も答えたとおり、この際は慎重に、妙な圧力がましいような行動をとられることは困るというので政府の見解も統一しておるのでありますけれども、いまの話の、文部大臣が妙なことを言った、これは公制審の問題に対して言ったのではなくして、日教組のいろいろな関係で話があったんだろうと思うのでありますが、労働省はいままででも厳にその点は慎んでおりますし、まあ閣僚の中にも基本権の問題についても多少個人的にはいろいろな意見が、これは個人個人の考え方もありますし、立場立場の考え方もありましょうし、労働省の立場と通産省の立場というのも、これはやはり管轄大臣として多少見解の相違がありますが、政府として統一する場合には、これはもう全部国務大臣でありますから、統一見解をやらなければならぬ。こういう意味で御趣旨の点も十分——われわれのほうはさようなことは絶対ありません。  以上のとおりであります。
  298. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それは閣議等の席上で、非公式でもいいと思いますけれども、総理を含めて、こういう問題についてはたいへん神経質になっているんだ、そして事実上政府のいろいろの有力な関係の閣僚がいろいろなことを発言するということは誤解を招くんだという趣旨政府内部の申し合わせというものを、私はどういう形でやれという注文はつけませんけれども政府としてこの際それくらいの自粛した態度というものは必要だと思いますので、ちょうど労働大臣という立場は、労働基本権の問題についての論議ですから、そういう立場から政府としての自制した態度を要望するような処置をとっていただきたい、こういうふうにお願いしたいと思います。ひとつお願いいたします。
  299. 加藤常太郎

    加藤国務大臣 公制審の問題は私のほうにも重大な関係があるし、主管大臣といたしましても考えなくてはならぬが、公制審そのものはやはり坪川総務長官のほうでありますので、きょうも坪川さんまあまあ苦しい立場ではありましたが、私から閣議で非公式に発言するというよりは、坪川さんとよく相談いたしまして、どういうかっこうでするか、そういう発言することがまたいろいろ文部大臣の点にも関係ありますので、よく和田委員の意思を体して、坪川さんとも次の閣議のときによく相談いたしまして善処いたしたいと思います。
  300. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 お願いいたします。  それから、これは私、よくわからないので率直にお聞きしたいのですけれども、今度の公益側の素案という形の意見の中で、スト権を全面的に認めるべきだ、逆に全部だめだ、あるいは一部認めるべきだというふうな内容のものだと伝えられておるのですけれども、たとえば全面的に認めるべきだ、あるいは一部認めるべきだというような場合、そういうふうになった場合に、人事院の機能というのがどのような変化を受けるか、この問題について、私よくわからないのでお伺いしているわけですけれども、お答えいただきたい。
  301. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 これはひとつ御理解をいただきたいのでありますが、公益委員のたたき台というのは、実は労使の御相談のたたき台であって、世間に公表して議論するというおつもりではなかったようでございます。ただ、新聞等に報道されましたので、それは当然お目にとまっているわけでございます。それをごらんいただきますればわかりますように、人事院の勧告というのは、御承知のように非現業を対象にしてなされておるわけでありますが、非現業職員につきましては、一部スト権を認めたらどうかという御意見も一部ございますけれども、全体としては、スト権を認めるという意見は、新聞に出ている限りは、ないわけであります。もちろん、団結権の禁止の職員もございますし、そういう点をよく考えれば、人事院の勧告制度というものは残さなければならないということになってくるわけでございまして、人事院の、特に給料についての勧告権は残すという前提で御議論がなされておるわけでございます。
  302. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 新聞等にもありますように、非現業の人たちは一応争点からはずれてくるというようなところに論議の煮詰まるところがありはしないかという予測も新聞にあるのですけれども、そういうふうに考えてよろしゅうございますね。
  303. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 これは先ほども言いましたように、公益委員のいわゆるたたき台でありまして、労使から見ればまた違った御意見があるのでございます。全面的に非現業にもスト権を与えろという意見もあるわけでございますが、今後どういうふうになっていきますか、全く私どもいまから予断はできないだろうと思います。
  304. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 あなたが率直にごらんになって、使用者側も全部認めないというふうな、公表されているようなかたくなな態度ではないと思うし、労働者側も、中にいろいろな意見があると思いますけれども、スト権をかりに認めたとしても、やはりそれに対する何らかの歯どめの措置だとか、あるいは、ある部分はそうまで言わなくてもというふうな意見もあると思うのです。それを三つを一つの意見として整理されたということは、労働者側は全面的にやれ、使用者側は全部反対だ、こういう意見に沿って、しかもこの公益側の考え方をまとめる中心としては、両方違った意見が対立しているけれども、一部に与えるというところでまとめていくのだということを示唆しているというふうに、前田さんの意見もそういうふうな報道として流れておるわけだけれども、そういうふうなものとして理解していいのでしょうか。これは全くあなたの感じとしてです。
  305. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 これは非常にむずかしい、微妙なニュアンスを持った御質問でございますが、公益委員の出されましたたたき台自体におきましては、いろいろな考え方も併記になっておるわけでございます。したがって、これがどういう考えでなされたかということになりますと、これはいろいろな方もございましょうから、私どもで推測はとてもできない問題ではないかと考えます。
  306. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは仮定の問題でございましてこれ以上質問いたしませんけれども大臣、世界各国をながめて、公務員のスト権を全面的に禁止しているのは後進国だけで、先進国は大体これを全面的に認めておる、あるいは部分的にはいろいろな制限はありますけれども、と思うのだけれども、日本ももう先進国なんで、この際認めて、そして必要な歯どめをしっかりとするというような考え方にまとめていくということが、私は一番合理的だと思うのです。そうすれば あの順法闘争みたいな怪しげな変なことをやらなくなるとも思うし、そういうことが一つ。これはいま、政府が圧力をかけてはいかぬと言った口の下でこういうことを申し上げてはいかぬですけれども、やはり常識的な線を大臣としては堅持されて、そして圧力をかけない形で、いい方向ができればいいのですから、ひとつぜひとも御努力いただきたいと思う。そうでないと、日本は後進国になってしまいます。これは両方の当事者がある理解をもって自制する行動をするということが前提になるわけだから、それだからスト権を認める国は先進国なんだ、認められない国はそういう理解がないのだから後進国なんだ、そういうようなこともあるので、ただし政府は答申が出れば完全にこれを尊重するということはお約束しておるわけですから、そういうふうなあとへ引っぱるみたいなかっこうでなくて、いい方向が出るように、こういう空気をつくっていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  307. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十九分散会