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1973-07-17 第71回国会 衆議院 社会労働委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月十七日(火曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 田川 誠一君    理事 伊東 正義君 理事 塩谷 一夫君    理事 竹内 黎一君 理事 橋本龍太郎君    理事 八木 一男君 理事 寺前  巖君       大石 武一君    大橋 武夫君       加藤 紘一君    粕谷  茂君       瓦   力君    小林 正巳君       斉藤滋与史君    志賀  節君       住  栄作君    田中  覚君       高橋 千寿君    戸井田三郎君       登坂重次郎君    中村 拓道君       羽生田 進君    増岡 博之君       粟山 ひで君    枝村 要作君       金子 みつ君    島本 虎三君       田口 一男君    田邊  誠君       塚田 庄平君    村山 富市君       山本 政弘君    石母田 達君       大橋 敏雄君    坂口  力君       小宮 武喜君    和田 耕作君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      坪川 信三君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長内閣総         理大臣官房審議         室長      亘理  彰君         内閣総理大臣官         房総務審議官  宮崎 隆夫君         大蔵政務次官  山本 幸雄君         厚生政務次官  山口 敏夫君         厚生省公衆衛生         局長      加倉井駿一君         厚生省医務局次         長       信澤  清君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省保険局長 北川 力夫君         労働政務次官  葉梨 信行君         労働省職業安定         局長      道正 邦彦君         労働省職業安定         局失業対策部長 桑原 敬一君         建設省住宅局長 沢田 光英君         自治省財政局長 鎌田 要人君  委員外出席者         人事院事務総局         任用局長    茨木  広君         内閣総理大臣官         房参事官    今泉 昭雄君         警察庁刑事局保         安部防犯少年課         長       奥秋 為公君         法務省刑事局刑         事課長     根岸 重治君         大蔵省主計局主         計官      梅澤 節男君         文部省初等中等         教育局教科書検         定課長     浦山 太郎君         文部省大学学術         局学生課長   遠藤  丞君         特許庁審査第一         部長      土谷 直敏君         中小企業庁計画         部振興課長   宇賀 道郎君         運輸省船舶局首         席船舶検査官  内田  守君         運輸省自動車局         参事官     真島  健君         労働省労政局労         働法規課長   岸  良明君         労働省職業安定         局業務指導課長 加藤  孝君         労働省職業安定         局失業対策部企         画課長     望月 三郎君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十三日  辞任         補欠選任   小林 正巳君     高見 三郎君 同日  辞任         補欠選任   高見 三郎君     小林 正巳君 同月十七日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     大石 武一君   山本 政弘君     塚田 庄平君 同日  辞任         補欠選任   大石 武一君     粕谷  茂君   塚田 庄平君     山本 政弘君     ――――――――――――― 七月十二日  看護職員労働条件改善等に関する請願(安宅  常彦君紹介)(第八四〇八号)  同(石田幸四郎紹介)(第八四〇九号)  同外五件(枝村要作紹介)(第八四一〇号)  同(北側義一紹介)(第八四一一号)  同(住栄作紹介)(第八四一二号)  同(山本幸一紹介)(第八四一三号)  同外二件(和田貞夫紹介)(第八四一四号)  同(湯山勇紹介)(第八五三九号)  同(池田禎治紹介)(第八五七六号)  同(内海清紹介)(第八五七七号)  同(多賀谷真稔紹介)(第八五七八号)  生活できる年金制度確立等に関する請願外一  件(佐藤観樹紹介)(第八四一五号)  同(坂本恭一紹介)(第八四一六号)  同外二件(柴田睦夫紹介)(第八五八五号)  同(米内山義一郎紹介)(第八五八六号)  戦災被爆傷害者等援護に関する請願赤松勇  君紹介)(第八四一七号)  同(大橋武夫紹介)(第八四一八号)  同外二件(佐藤観樹紹介)(第八四一九号)  同(塩谷一夫紹介)(第八四二〇号)  同(横山利秋紹介)(第八四二一号)  同(伊東正義紹介)(第八四六二号)  同(海部俊樹紹介)(第八四六三号)  同(石野久男紹介)(第八五二七号)  同(枝村要作紹介)(第八五二八号)  同(太田一夫紹介)(第八五二九号)  同(河上民雄紹介)(第八五三〇号)  同(柴田健治紹介)(第八五三一号)  同(田口一男紹介)(第八五三二号)  同(辻原弘市君紹介)(第八五三三号)  同(堂森芳夫紹介)(第八五三四号)  同(原茂紹介)(第八五三五号)  同(細谷治嘉紹介)(第八五三六号)  同(村山富市紹介)(第八五三七号)  同(湯山勇紹介)(第八五三八号)  同(浦野幸男紹介)(第八五七九号)  同外一件(岡田哲児紹介)(第八五八〇号)  同(古川喜一紹介)(第八五八一号)  同(山本弥之助紹介)(第八五八二号)  優生保護法の一部を改正する法律案反対等に関  する請願外三件(土井たか子紹介)(第八四二  二号)  同(土井たか子紹介)(第八五二四号)  健康保険法等の一部を改正する法律案反対等に  関する請願外一件(小濱新次紹介)(第八四二  三号)  同(竹村幸雄紹介)(第八四二四号)  同(荒木宏紹介)(第八五二五号)  同(荒木宏紹介)(第八五八三号)  同(神門至馬夫君紹介)(第八五八四号)  医療事務管理士法制定に関する請願小平久雄  君紹介)(第八四六四号)  保育所事業振興に関する請願北山愛郎紹介)  (第八五二六号)  児童手当制度改善に関する請願松本忠助君  紹介)(第八五五八号)  社会福祉協議会活動強化に関する請願外九件  (羽田孜紹介)(第八五八七号) 同月十四日  看護職員労働条件改善等に関する請願塚本  三郎紹介)(第八六一二号)  同(岡本富夫紹介)(第八六五三号)  同(山口鶴男紹介)(第八六五四号)  同(小川新一郎紹介)(第八六八五号)  同(小宮武喜紹介)(第八六八六号)  同(足立篤郎紹介)(第八七一八号)  戦災被爆傷害者等援護に関する請願野坂浩  賢君紹介)(第八六一三号)  同(山中吾郎紹介)(第八六一四号)  同(石母田達紹介)(第八六四八号)  同(武藤山治紹介)(第八六四九号)  同(粟山ひで紹介)(第八六五〇号)  同(川俣健二郎紹介)(第八六八八号)  同(住栄作紹介)(第八六八九号)  同(塚田庄平紹介)(第八六九〇号)  同(小林進紹介)(第八七一九号)  優生保護法の一部を改正する法律案反対等に関  する請願久保三郎紹介)(第八六一五号)  同(山中吾郎紹介)(第八六一六号)  同(土井たか子紹介)(第八六五二号)  同外一件(土井たか子紹介)(第八六九二号)  同(土井たか子紹介)(第八七六六号)  戦傷病者援護に関する請願白浜仁吉紹介) (第八六五一号)  建設国民健康保険組合に対する国庫負担増額に  関する請願外一件(川俣健二郎紹介)(第八六  八七号)  保育所事業振興に関する請願田中武夫紹介)  (第八六九一号)  同(小林進紹介)(第八七六五号)  児童手当制度改善に関する請願浅井美幸君  紹介)(第八七二〇号)  同(新井彬之君紹介)(第八七二一号)  同(有島重武君紹介)(第八七二二号)  同(石田幸四郎紹介)(第八七二三号)  同(小川新一郎紹介)(第八七二四号)  同(大久保直彦紹介)(第八七二五号)  同(大野潔紹介)(第八七二六号)  同(大橋敏雄紹介)(第八七二七号)  同(近江巳記夫紹介)(第八七二八号)  同(岡本富夫紹介)(第八七二九号)  同(沖本泰幸紹介)(第八七三〇号)  同(北側義一紹介)(第八七三一号)  同(小濱新次紹介)(第八七三二号)  同(坂井弘一紹介)(第八七三三号)  同(坂口力紹介)(第八七三四号)  同(鈴切康雄紹介)(第八七三五号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第八七三六号)  同(田中昭二紹介)(第八七三七号)  同(高橋繁紹介)(第八七三八号)  同(竹入義勝君紹介)(第八七三九号)  同(林孝矩紹介)(第八七四〇号)  同(広沢直樹紹介)(第八七四一号)  同(伏木和雄紹介)(第八七四二号)  同(正木良明紹介)(第八七四三号)  同(松尾信人紹介)(第八七四四号)  同(松本忠助紹介)(第八七四五号)  同(矢野絢也君紹介)(第八七四六号)  同(山田太郎紹介)(第八七四七号)  同(渡部一郎紹介)(第八七四八号)  生活できる年金制度確立等に関する請願(兒  玉末男紹介)(第八七六七号) 同月十六日  優生保護法の一部を改正する法律案反対等に関  する請願多賀谷真稔紹介)(第八八一〇号)  戦災被爆傷害者等援護に関する請願佐藤敬  治君紹介)(第八八一一号)  同(寺前巖紹介)(第八八一二号)  同(福岡義登紹介)(第八八一三号)  同(石田幸四郎紹介)(第八八七五号)  同外二件(海部俊樹紹介)(第八八七六号)  同外一件(早稻田柳右エ門紹介)(第八八七七  号)  同(久野忠治紹介)(第八九四六号)  同(小林正巳紹介)(第八九四七号)  同(塚本三郎紹介)(第八九四八号)  同(羽生田進紹介)(第八九四九号)  同(村田敬次郎紹介)(第八九五〇号)  低所得者階層生活確保に関する請願小沢貞  孝君紹介)(第八八二六号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第八八二七号)  同(羽田孜紹介)(第八八二八号)  同(中澤茂一紹介)(第八八八三号)  同(井出一太郎紹介)(第八九四一号)  同(倉石忠雄紹介)(第八九四二号)  頸肩腕症候群対策に関する請願小沢貞孝君紹  介)(第八八二九号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第八八三〇号)  同(羽田孜紹介)(第八八三一号)  同(中澤茂一紹介)(第八八八四号)  同(井出一太郎紹介)(第八九四三号)  同(倉石忠雄紹介)(第八九四四号)  原爆被爆者援護法制定に関する請願西岡武夫  君紹介)(第八八七八号)  深夜労働の禁止に関する請願石母田達紹介)  (第八八七九号)  社会保険診療報酬引上げに関する請願岡田  春夫君紹介)(第八八八〇号)  同(塚田庄平紹介)(第八八八一号)  同(島本虎三紹介)(第八九五五号)  医療事務管理士法制定に関する請願加藤陽三  君紹介)(第八八八二号)  看護職員労働条件改善等に関する請願島本  虎三紹介)(第八九四五号)  保険診療経理士法制定に関する請願田中覚君  紹介)(第八九五一号)  同(中垣國男紹介)(第八九五二号)  国民健康保険事業に対する財政措置に関する請  願(床次徳二紹介)(第八九五三号)  生活できる年金制度確立等に関する請願(栗  田翠紹介)(第八九五四号)  失業対策事業賃金生活保護費引上げ等に関  する請願石母田達紹介)(第八九五六号)  同(寺前巖紹介)(第八九五七号)  保育所事業振興に関する請願島本虎三紹介)  (第八九五八号)  老後保障確立に関する請願田中美智子君紹  介)(第八九五九号)  同(寺前巖紹介)(第八九六〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月十六日  戦傷病者援護に関する陳情書  (第四八二号)  難病救済対策確立に関する陳情書  (第四八三号)  優生保護法の一部を改正する法律案の一部修正  に関する陳情書  (第四八四  号)  健康保険法改悪反対等に関する陳情書外七十  五件  (第四八五号)  健康保険制度改善に関する陳情書  (第四八六号)  国民健康保険事業運営健全化に関する陳情書  外一件  (第四八七号)  老人医療費公費負担制度拡充に関する陳情書  (第四八八号)  生活できる年金制度確立等に関する陳情書外  六十二件  (第四八九号)  老齢年金制度充実に関する陳情書  (第四九〇号)  重度心身障害者医療費国庫補助に関する陳情  書外一件  (第四九一号)  身体障害者雇用促進に関する陳情書  (第四九二号)  精神障害回復者社会復帰施設設置に関する陳  情書  (第四九三号)  公衆浴場の助成に関する陳情書外一件  (第四九四号)  未帰還者援護対策等に関する陳情書外一件  (第四九五号)  水道事業に対する国庫補助等に関する陳情書外  一件  (第四九六号)  大型廃棄物等処理施設整備事業費国庫補助に関  する陳情書  (第四九七号)  週休二日制の早期実現等に関する陳情書  (第四九八号)  公共企業体等労働組合のストライキに関する陳  情書  (第四九九号)  健康保険法の一部を改正する法律案反対に関す  る陳情書(第五五  九号)  健康保険法の一部を改正する法律案等反対に関  する陳情書(第五六  〇号)  国民年金制度改善に関する陳情書  (第五六一号)  国民年金制度改善等に関する陳情書  (第五六二  号)  脊髄損傷者障害年金増額に関する陳情書  (第五六三号)  高齢者生活保障に関する陳情書  (第五六四号)  老人対策確立に関する陳情書  (第五六五号)  食品の安全性確保に関する陳情書  (第五六六号)  妊産婦、乳児及び重度心身障害児者医療無料  化に関する陳情書  (第五六  七号)  進行性筋萎縮症国立研究所設置に関する陳情  書(第五  六八号)  献血事業拡充強化に関する陳情書  (第五六九号)  社会福祉協議会活動強化費増額に関する陳情  書(第  五七〇号)  原子爆弾被爆者援護強化に関する陳情書  (第五七二号)  原子爆弾被爆者援護法早期制定に関する陳情  書(第五七三号)  失業対策事業賃金及び生活保護基準の再改定に  関する陳情書(第五七  四号)  結核予防対策強化に関する陳情書  (第五七五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  覚せい剤取締法の一部を改正する法律案起草の  件  厚生関係基本施策に関する件  労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 田川誠一

    田川委員長 これより会議を開きます。  覚せい剤取締法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。  本件について、田中覚君より発言を求められております。これを許します。田中覚君。
  3. 田中覚

    田中(覚)委員 本件につきましては、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、四党委員協議に基づく試案がございます。各委員のお手元に配付してありますが、四党を代表して、私からその趣旨を御説明申し上げます。  本案は、最近における覚せい剤事犯の増加及び悪質化保健衛生上及び治安上きわめて憂慮すべき問題を提起している現状にかんがみ、覚せい剤原料に関する指定、制限、取り扱い等に関する規定を整備するとともに、覚せい剤犯罪に対する罰則麻薬取締法並みに引き上げることとし、もって覚せい剤犯罪の取り締まりを強力に推進し、その根絶をはかろうとするものであります。  そのおもな内容を申し上げますと、第一は、覚せい剤原料取り扱い及び監督の強化に関する事項であります。  すなわち、覚せい剤原料輸入業者及び輸出業者指定に関する制度を新設し、覚せい剤原料輸入または輸出指定を受けた者でなければこれを行なうことができないことといたしました。  また、覚せい剤原料製造譲渡等につきましては、薬事法による許可を受けている者についても、原則的に覚せい剤原料製造業者または取り扱い者指定を必要とするように改めることといたしました。  さらに、覚せい剤原料不正使用を防止するため、その譲渡、譲り受け、保管及び廃棄等手続について、覚せい剤そのものと同様の規制を行なうことといたしております。  第二は、覚せい剤犯罪に対する罰則強化することであります。  すなわち、現行の覚せい剤取締法違反の罪に対する最高刑である「一年以上十年以下の懲役及び五十万円以下の罰金」を「無期又は三年以上の懲役及び五百万円以下の罰金」に引き上げるほか、以下それぞれの違反行為の段階に応じ罰則強化することとし、また覚せい剤及び覚せい剤原料密輸出入及び密造についてその予備を罰するとともに、これに要する資金、建物等の提供及び不正取引の周旋を独立罪として罰することとしようとするものであります。  この際、私は四党を代表いたしまして動議提出いたしたいと思います。  お手元に配付してあります試案成案とし、これを本委員会提出法律案決定されんことを望みます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  4. 田川誠一

    田川委員長 ただいまの田中覚君、八木一男君、大橋敏雄君及び和田耕作提出動議について御発言はありませんか。——御発言もありませんので、本動議について採決いたします。  田中覚君外三名提出動議のごとく、お手元に配付いたしました草案を成案とし、これを委員会提出法律案とするに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  5. 田川誠一

    田川委員長 起立総員。よって、さよう決しました。  なお、本法律案提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 田川誠一

    田川委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  7. 田川誠一

    田川委員長 厚生関係基本施策に関する件及び労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。羽生田進君。
  8. 羽生田進

    羽生田委員 私は、厚生省関係に、特に国民の命を守るというようなことで、実は総理大臣に特に御質問申し上げたい、こういうお願いをしておったわけでございますが、総理大臣厚生大臣もお見えになれないということで、これから二、三御質問あるいは私の意見も差し加えましてお願い申し上げたいのですけれども、ぜひひとつ総理並びに厚生大臣にも伝えていただき、また御見解等もいただきたいというようにお約束をお願いしたいのでございますが、よろしゅうございますか。  それでは、ことしは福祉元年、こういうようなことがいわれて、本格的に日本行政国民福祉ということを重点に置いて、福祉国家建設ということを目ざしてやっていこうという年でございますが、現在GNP世界第二位とか三位とかいわれておるくらい経済大国になっておりますのに、いわゆる福祉国家福祉行政という面におきましては、世界第二十二位とか二十三位とか、こういう地位にあるわけですが、この点に関して将来どういうことをされるか、ちょっとお伺いしたいと思うのです。
  9. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 ただいま羽生田先生の御見解のように、経済成長社会の中におきまして、やはり物質文明の中で国民的な連帯あるいは安定というものを求めるのは、ひとえに福祉の面でどういう政治があるいは行政が機能を果たすかということに尽きるわけでございますし、そうした意味からいいましても、一つの安心できる老後あるいは同時に医療福祉の面の整備充実、さらに赤ちゃんがじょうぶに、すこやかに育つ保育環境、そうした一つ一つの部門も含めまして、私どもかより豊かな福祉社会国民の手の中にするための積極的な諸施策を推進していかなければならない、このように考えている次第でございます。
  10. 羽生田進

    羽生田委員 私は、福祉行政と申しましょうか、あるいは福祉政策、これにつきましては、国民の健康あるいは命、これを守るというような意味におきまして保健福祉、それから暮らしを守る、あるいは生活を保障するというような面におきまして社会福祉、この二本立てで福祉行政は進めなくちゃならぬ、これは車の両輪である、このように考えておるのですが、この点はどうでしょうか、ひとつ教えていただきたいのですが、間違っておるでしょうか。そういう意味でよろしいのでございましょうか、ちょっとお伺いしたいのです。
  11. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 羽生田先生の御指摘のとおり、保健福祉さらにまた生活の安定のための社会福祉、当然私ども福祉の中で国民皆さんに進めていかなければならない重大な諸施策は、先生指摘のその二点に十分ウエートを置いていかなければならない、かように考えておる次第でございます。
  12. 羽生田進

    羽生田委員 ところが現在のわが国の福祉政策は、どちらかといいますと社会福祉のほうに重点を置かれておる、いわゆる保健福祉のほうが軽んぜられておる。車の両輪といいましたけれども保健福祉のほうが車が小さくて社会福祉のほうが車が大きい。したがってどうしても命よりもお金のほうが優先するような現在の政治が行なわれているように私は思うのです。その一例が健康保険問題、いわゆる健康保険というのは、これはあくまでも医療費支払い制度なんです。したがって医療行為が行なわれた後になって健康保険制度というものがあるいは健康保険というものが考えられるべきなんです。ところが現在は健康保険が優先しちゃって、命が、医療面があとについていく。そのいい例が中医協等におきますいわゆる医療行為の点数の決定というような、あの決定権中医協にある。要するにお金のほうを優先して、がまぐちが先行して、命を守る医療制度がそれに追従していく、いわば本末転倒であると私は思うのですが、これらについてひとつぜひお考えをいただきたいと思うのですが、私どもが実際に患者を見ている場合には、特に若い人たちが死に直面いたしますと、家族の者たちが、お金は幾らかかってもいいのだ、ぜひなおしてほしい、助けてくれ、健康保険で使えない薬でも、どんな高い薬でも使ってくれといって、お金よりも命のほうが大切なんだ、これは人間のほんとうの叫びだと思うのですが、現状はそうでない。これに対して私は非常に不満を持っておるわけですが、これについてお伺いし、また将来の御見解をお伺いをしたいと思うのです。
  13. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 羽生田先生の御見解のとおり、まさに国民皆さんの健康と命にかえ得る重いものはないわけでございまして、そういう点からいいましても、医療福祉の体制というものが少しでも整備していかなければならない、その立場に立ちまして厚生大臣も当委員会でも再三申し述べておるわけでございますが、やはり医療の主体性を握っておられます診療者側のいわゆる医療の供給体制といいますか、そういう面での供給体制を整備充実をし、そうすることがまた患者の方々の医療福祉に大いに貢献できる、こういう立場からいいましても、いま中医協の問題を先生指摘ございましたが、そうした協議会の意見も十分に参考にした上、国民皆さんの健康確保のためのバランスを、金や物の中でのイニシアチブということではなくて、あくまで国民医療に徹した体制の整備充実をはならなければならない、たびたび大臣もこの席を通じて答弁をしておるとおりでございます。
  14. 羽生田進

    羽生田委員 そういう御答弁は、いただいてけっこうなんですけれども、やはり現実はどうしても財政面が優先しちゃって、財政面の牛における医療というようなかっこうに置かれているのが現在だと思うのですが、その点がもっと生命尊重、命のほうが大事なんだというような考え方で、これからの医療行政あるいは厚生行政というものを私はどうしてもしていただかないと、生命軽視というようなかっこうになると思うのです。これは長年の習慣と申しましょうか、あるいは陋習といいましょうか、どうしても昔から、いわゆる健康保険制度ができた当時は生命軽視、命というものをあまり重要視しない時代でもあったのです。それがいまだに私はこの健康保険制度の中に大きな流れを持っている、ウエートを占めている、こういうことで、根本的にこれは転換をしていただかないとほんとうに生命を守るという、命のほうが大事なんだというような政治にならないと思うのです。そこを何とか転換するようなことはできないのでしょうかね。
  15. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 いわゆるこの医療体制の制度や保健的な保険制度一つのたてまえが整備されることによってのみ国民医療福祉に貢献できるということではもちろんないわけでございまして、現実的な運用過程におきまして、ただいま羽生田先生が御指摘になりましたような、やはり現状健康保険、いわば保険医療というような立場からのみ私ども国民医療福祉を考えておるということではございませんので、十分その辺の先生の御意見も尊重させていただきながら、現実に即応した、国民の日常生活に即応した医療供給体制、また国民の健康と命をいかに守り得るかという一つ医療福祉の点について十分前向きに検討したい、かように思っておる次第でございます。
  16. 羽生田進

    羽生田委員 その一つの具体的な例として、今年の一般会計十四兆何がしという国庫予算ですが、その中で社会福祉関係として二兆一千幾らという予算があるわけです。また、厚生省関係がその中の二兆幾ら、そこでほんとうに健康保持、増進というものに一体幾ら使っておるか、あるいは疾病の予防というものに対してどのくらいの金をかけておるのか、さらには治療面、あるいはリハビリ、あるいは環境整備、これは厚生省だけではないと思うのですけれども、そういうような面についてどのくらいお金を使っておるのだろうか、これをお聞きしたいのです。私があっちこっち引っ張り出しましてやったのは、厚生省関係が大体一兆円くらい、その他が五、六千億程度で一兆五、六千億くらいじゃないかと思うのですが、私はこれじゃちょいと国民の命を軽視し過ぎていると思うのです。もっと国民の命というものにお金を使ってもらいたい、これをお願いしたいのですけれども、その数字は一体そんなものでしょうか、ちょっとお伺いしたいのです。
  17. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 ただいま先生の計数のとおり、大体厚生省関係医療費関係は一兆円前後でございますし、まあ環境庁その他いろいろ予防、治療等も含めますと、わが国の当面の医療費関係の予算は一兆五、六千億になろうと思います。まあ申し上げるまでもなく、今年度の厚生省関係予算二兆一千億でございましたか、その五〇%近い医療費ということは、まあパーセンテージから言いますると大きなウエートを占めておるわけでございますが、しかし、今日の社会状況や経済状況、近代日本の百兆円国家という立場から言いますると、確かに先生が御指摘のように、この国民の健康と命を守るというためには、まだまだ医療関係の福祉予算というものを充実していかなければならない、かように思っておる次第でございます。
  18. 羽生田進

    羽生田委員 いまの私申し上げました区分ですね、これは数字的にも、その一兆五、六千億のうち、健康保持、増進には何%ぐらい、それから疾病予防にはどのくらい、あるいはほんとうに病気になったときの治療というものにはどのくらい、さらにはそのあとの社会復帰にどのくらい、あるいは環境の浄化ですか、これらにどのくらいというような数字はおわかりにならないでしょうか。
  19. 信澤清

    信澤政府委員 先生のせっかくのお尋ねでございますが、いまお話しのようなぐあいに区分した数字をただいま手元に持ち合わしておりません。早急に整理いたしまして資料としてお届けいたしたいと思います。
  20. 羽生田進

    羽生田委員 いま公害病の問題で、特に水俣病がまたけさの新聞にも出ておりますが、これは私の記憶が間違っておるかどうかわからぬですけれども、たしか水俣病が公害病であると厚生省が認定をされたのは、昭和三十四、五年ごろじゃないかと思うのです、いまから十何年か前。これは、水俣病に対する研究費等も当初は出ておったと思うのです。ところが途中で打ち切られてしまった。それが今日このように水俣病が非常に大きな問題、世界的な問題になってきておる。これはもう命を軽視していた問題じゃないかと思うのですよ。あの当時からほんとうに厚生省は、あれは公害病であるとたしか認定したと思うのです、もう十二、三年前ですか、十四、五年前ですか、そのころから本格的に水俣病の研究を進め、健康を守る、命を守るということに徹底しておったならば、いまこんなに大問題にならずに済んだと私は思うのですが、たしかそれは間違いないでしょうね、昭和三十四、五年ごろじゃなかったかと思いますが。
  21. 信澤清

    信澤政府委員 私の不確かな記憶で申し上げますので、間違っておりましたらあとで訂正さしていただきたいと思いますが、いわゆる公害病として認定をいたしましたのは十数年前のことではないと思います。ただし、通常水俣病といわれるような一連の疾病が出てまいりまして、非常に原因も明らかでない、したがってそれに対する医療というものにつきまして、いわゆる医療研究費の形で実質的には医療費の援助をする、こういう措置を十数年来講じてまいったことは事実でございます。
  22. 羽生田進

    羽生田委員 そこで私、先ほどからも生命尊重ということを盛んにお願いしておって、特に保健福祉社会福祉の二本立てでということでお願いしておったのですが、その生命の尊重という意味におきまして、憲法で保障されております国民の健康を守るあるいは命を延長する、ライフエクステンション、あるいはほんとうに命を守るというような行政が実はばらばらじゃないかという気がするのです。  一例をあげますと、生まれてから学校へ行くまで、あるいは幼稚園へ行くまで、これは厚生省が保健管理をしているわけです。学校へ入りまして大学を終わるまでは文部省が健康管理をしておる。学校を終えますと、今度は労働省が相当この健康管理というものに対してウエートを占めてきている。特に産業方面に行きますと、これは労働省がほんとうに指導しておる。そして定年退職あるいは老人になりますというと、また厚生省へ戻ってくる。そのほか、公害的な病気になりますと環境庁がこれは健康管理をするとか、その他各省各庁でそれぞれやっておるわけなんですが、何かばらばらというような感じがするのです。健康診断にいたしましても、母子手帳は厚生省が出す。学童の健康診断等は文部省がやっておるというような形で、また就職その他になりますと労働省がやるというような形で、これもばらばらなんですが、何とか命を守るということをもっと真剣に考えるならば、命というものに対して所管するところの、保健省とかりにいうわけですけれども、こういうようなものを独立さしてつくるべきではないか。特にこれからほんとうに福祉行政をやっていこうという時代ですから、ぜひひとつ保健省というものを新設する。各省各庁にまたがっております、国民の命を守り健康を保持し、増進もするというようなことを特に集めて保健省でやっていく、こういうような考えはないかどうか。これは特に総理大臣にお聞きをしたかったところなんですが……。
  23. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 国民の健康と命、これがもうとにかく先ほど来の先生の御指摘のように、何ものにもかえがたい一番大切な基本認識でなければならないわけでございますから、ただいまの御提言も一つの考え方として私は大いに検討を進める余地は十分にあろうと思うわけでございますが、先生も御承知のとおり、健康と福祉の問題は、これはもうきわめて密接な関係にございますし、現状においてすぐ保健衛生部門だけを分離するということの妥当性もさらに検討を加える必要があるのではないか、こういうことで、当面は私ども厚生省といたしましては、保健衛生対策のそうした部門に対して、各省庁にまたがる問題も含めまして十分緊密な連絡をとりながら、先生の御提言の趣旨が現状においても十分生かせる、国民の健康福祉医療福祉に十分現状に即応でき得るような機能を果たしつついろいろ問題点も検討するということがより大切なことではないか、このように考えておる次第でございます。
  24. 羽生田進

    羽生田委員 これも私が世界各国調べたんですけれども保健福祉社会福祉を二本立てにして省を持ち、大臣は別々にしたというのがベルギー、ポルトガル、西ドイツ、イタリア、スウェーデン、ニュージーランド、これらだと思うのです。それから特に一本立てでも保健、いわゆるヘルス、これをその名前につけているというようなところが、フランスとかフィンランドとかアメリカとか、これははっきりヘルスということをデパートメントの名前に出しているわけです。こういう点で、これからほんとうに福祉行政重点を置いていこう、国民福祉を何よりも優先してやるというんだったら、やはり私は前向きに二本立てでやるということをぜひひとつ御検討いただきたい、重ねてこれはお願い申し上げます。  それから、先ほど疾病の予防、治療あるいは健康増進についての国の費用の使い方についてお願いをしたんですけれども、もう少し具体的にお聞きしたいのですが、いま死亡率第一位が脳血管損傷、いわゆる脳卒中、脳出血。それから第三番目が心臓疾患だ、いわゆる循環器系統が第一位、第三位を占めている。ガンが第二位である。したがってこの循環器系統の疾病の予防あるいは今後の対策、これをどんなふうにお考えか、またどの程度のお金を使っておられるか。またガンに対しましても、ガンの予防あるいは集団検診、治療その他に関してちょっとお伺いしたいと思うのです。
  25. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 国民の皆さま方の生命を守る、健康をはかる、こういう立場からの予算の充実というものは一そう進めていかなければならないわけでございますが、先生指摘のように、脳卒中あるいは循環器系統の死亡率が非常に高いわが国の現状を十分考慮いたしまして、先生御承知のとおり、今年度国立の循環器センターが大阪に建設されるわけでございますが、その建設費も含めて十八億八千五百万円を循環器関係の予算として計上しておるわけであります。  ガン対策につきましては、国立がんセンターの経費も含めまして七十九億二千四百万円計上しておるわけでございます。
  26. 羽生田進

    羽生田委員 ガンにつきましては、特にまだ原因もはっきりしておらないというような状況なんですが、これも私はガン対策に七十九億なんという、こんな貧弱な金ではとても研究もできない。いまガン治療に対して若手の学者の中で全国的に相当りっぱな研究をされております。これが本格的になれば、ガンの治療という面に対して非常に大きな武器になると私は思うのです。それらに対しましても二千万とか三千万程度の研究補助しか出ておらぬと思うのです。このことに対して思い切って——こんな数字を言いますと笑われるかもしれませんが、一研究に対して百億くらいの金をつぎ込むくらいでないと、とてもできるものじゃないと思います。先ほどもちょっと話に出ました水俣病にいたしましても、金をもっとつぎ込みさえすればこんなものは幾らでも——環境の浄化、海をきれいにすること等は私はできると思う。そういう意味で、どうも少し命を守るのに金の使い方が少な過ぎる、こういう感じがするのです。  それから昔、結核が日本の亡国病といって死亡率第一位を占めておった時分、財団法人結核予防協会ができて、いわゆる結核予防法ができる前ですが、非常に民間団体として活躍をいたしたわけです。その結果結核予防法もでき、結核というものに相当大きな成果をあげた。たまたまガンがちょうどそのような時期だと私は思います。これも民間団体のガン対策、たとえば日本対ガン協会というようなものもありますが、そのほかにもあります。しかしまだガンに対します法制化というようなものは全然できておらない。ちょうど結核予防協会ができたときと同じような時期だと思うのですが、これらに対して厚生省の、こういう民間のガン対策等をやっておるものに対しての助成が、ほんとうにスズメの涙ほどしかない。これはもっと真剣にガンというものを考えないと、死亡率が第二位というのが、へたをすると第一位になるかもしれない。そのくらいやって、何とか、原因がはっきりせぬでも、早くに見つけて早くに治療すればなおる、こういうことなのに、早くに見つける方法すら国が真剣にやっておらない、こういう点で、ぜひ私はもう一度お聞きしたいのです。
  27. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 国民皆さんの平均寿命が延びている中に、いわゆる脳卒中やあるいはガン等で貴重なかけがえのない命をなくす、それは単に御本人ばかりでなく、ある意味においては国家的な大きな損失にもなり得るわけでございますし、そういう点ではベテランの医学者の方々や若い学究の方々が、世界の医学界の中におきましても、ガン研究に対しましては積極的な学問的究明と実践的な研究をなさっておる。そういう医学界の前向きな努力に対して、これだけ経済社会の発展したわが国で、かりそめにも予算的な措置が足らないためにそういうガン研究が滞るということは、ある意味においては行政の大きな、政治の大きな責任の一つであると私は思いますし、先ほど来羽生田先生が、こうした大きな問題は厚生大臣あるいは総理大臣に直接、大いに施策の前向きな改善を促進をしたい、こういうお願いを御指摘になったわけでございますが、全く私も先生のお考えに同感でございまして、来年度の予算編成作業もこの国会が終わりますと直ちに進められると思います。その過程におきまして、先生のただいまの御意見、御提言を、私自身も積極的にこの予算の編成の過程においてひとつ推進をしたい、かような決意を申し上げておきたいと思います。
  28. 羽生田進

    羽生田委員 それはもうぜひひとつ、いま政務次官お答えのとおり、何とか実現をしていただきたい、重ねてお願いします。  それからもう一つ、いわゆる難病、奇病というような特殊疾患、あるいは心身障害児、これらに対して原因の究明やらあるいは発生予防やら、適正治療というようなことで、すでに厚生省でこれは検討されていると思うのですが、まだ成果が出ておらないと思うのですが、何か中間報告的なことでも、どんなことをやっておられるのか、簡単にひとつ聞きたいと思うのですけれども……。
  29. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 お答えいたします。  難病対策につきましては、私のほうで特定疾患対策室を設けまして、現在の段階におきましては二十疾患に対します研究費の助成をいたしております。大体本年の七月におきまして、各研究班の編成がなされまして、今後の研究方針その他につきまして検討され、現在研究に入っておる段階でございます。御承知のように非常にむずかしい疾病でございまして、原因その他治療方法の解明という段階には達していないと思いますけれども、私どもといたしましては全力をあげてそれらの研究班の研究成果があがるように御援助を申し上げたいと思っております。  なお、難病のために高額に治療費がかかるというような疾病につきましては、私どもの対象といたしまして、特定疾患対策懇談会の御意見に従いまして、若干の疾病について医療費の補助の制度も開きつつございますが、この問題は医療費の関係でございまして、健康保険法との密接な関連がございますので、今後はその問題も含めまして、それらの難病の方々の医療費につきまして検討を重ねてまいりたい、こう思っております。
  30. 羽生田進

    羽生田委員 それから今度健康保険問題についてちょっとお聞きしたいのですけれども、先ほどもちょっと申し上げましたように、いわゆる救貧政策として発足した医療費支払い制度、これができましてから非常にばらばらに各業態あるいは各方面からたくさん出てきちゃっている。そこへもってきて最近、公費負担というようなことが非常に大きくあらわれてきております。いま健康保険のいわゆる請求明細書等を見ますと、健康保険制度が八種類ございます。そのほか公費負担、これらを入れますと、請求明細書が四十二種類実はあるわけなのです。これが末端の医療機関に全部背負わされているわけなのです。これはこの委員会等でもちょいちょい出ているのですが、保険あって医療なし、こういうことばがよく出るのですけれども、まさにこの保険制度があって四十二種類もの請求明細書をわれわれに要求しておるのですから、われわれ医療を担当する側も、医療を真剣に、患者を見たり治療することに真剣になっている時間よりも、この請求明細書の書類をつくる時間のほうが多い。したがってどうしても保険があって医療がないというようなことばも、私のほうの面からも出てくるわけなのです。これに対してたしか日本医師会が五月三十日に厚生大臣に、この請求明細書等の統合というようなかっこうでお願いをしたところが、厚生省も六月八日の局長会議で、診療報酬事務に関するプロジェクトチームというものを設置してこれから検討しようというようなことになったそうでございますが、これは七月中くらいには結論をつけて、来年度予算に何とかひとつ持ち込みたい、こういうお話だそうでございますが、それにつきましてちょっとお伺いしたいと思うのです、どんな状況になっておるのか。
  31. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいま御指摘のように、特に皆保険になりましてから以後は、社会保険の面におきましても非常に受診件数がふえております。それからいまお話しのように、公費負担医療というものも最近は、老人医療というような大型なものも含めまして、あるいは難病、奇病等も含めてだんだんと多くなっておるような状況でございます。いま先生のお話のように、いろいろな医療機関の方々からは何とか請求の事務を能率化、簡素化をしてほしい、すべきである、こういう御要望もかねがねあるわけであります。私のほうもそういった面を踏まえて従来から検討もいたしておりまするし、また日本医師会あるいは直接これを扱います支払い機関等におきましても、この問題について多年検討を続けてまいったような状況であることは、先生にも御承知のとおりでございます。ただ、なかなかにむずかしい問題がたくさんございますので、結論については相当時日がかかる状況でございますが、いまお話がございましたような点もありまして、先般省内に、この関係の事務の簡素化をはかるプロジェクトチームをつくりまして、具体的な検討に入っております。すでに関係者の間で前後三回か四回にわたって検討が進められ、また実際には作業班をつくりまして、その作業班で当面どういう点を改善をすべきかということについてかなり詰めた検討が行なわれている状況でございます。  なお、明年度予算との関連でございますが、いま申し上げました作業班の作業の状況、またそれを受けましたプロジェクトチームの最終的な結論、そういったものを踏まえました上で、どういう形で作業するか、いずれにいたしましても相当早い目に結論を出すように、現在プロジェクトチームで、また具体的には作業班で非常に急ピッチで作業を急いでおるような状況が現状でございます。
  32. 羽生田進

    羽生田委員 私の考え方でお願いをしたいのですけれども、請求明細書はひとつ一様式で全部済むようにしていただきたい。その欄外の肩に健康保険だったらマル健、国保だったらマル国、あるいは生活保護だったらマル生、老人の医療費だったらマル老、結核の医療費だったらマル結というような形にして、肩にそういう判こさえ押せば、あとは保険者側あるいは役所サイドで処理していただく。医療機関は一枚のそれで、余分な事務をさせないというようなかっこうにぜひひとつできないものか。これは私、やる気さえあればやれると思うのです。いかがでしょう、それは。
  33. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 実際の医療の現場で非常に数々の貴重な御体験のある先生の御提言でございますし、私どもも今後ものを進めます上において、十分にひとつただいまの御意見は尊重してまいりたいと思います。ただ具体的な事務処理になりますると、いまマル健とかマル生とかいうようなお話がございましたが、そういうかっこうが一番いいか、あるいはまたほかにいい方法があるかどうか目下検討中であることは先ほど申し上げたとおりであります。要は、先生方が実際に患者さんとの間でできるだけ診療に専念をしていただく、そして請求事務についてはできるだけ時間の短縮をして能率化していただくということが、皆保険下の非常に大きな要請であることは私ども十分に承知いたしておりますので、そういう気持ちで今後とも十分にひとつ考えて進めてまいりたい、かように考えております。
  34. 羽生田進

    羽生田委員 それはぜひひとつ、事務の簡素化も約束していただきたいと思います。  それから私非常に不愉快な感じを年じゅう持っておりますことばに、乱診乱療ということばがあるのです。これはもう本会議におきましても大臣も使われておりますし、またこの社労委員会等におきましても委員の間にもあるいは役所側においても乱診乱療ということばを使われて、われわれとしては非常に不愉快なんですが、定義をひとつこれはお伺いしたいと思うのです。どういうのが乱診でどういうのが乱療であるか、これをちょっとお伺いしたいと思います。
  35. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 非常にむずかしい問題でございまして、これを具体的に計数化して、ここまでは正常な診療であり、ここから先はいわゆる乱診であり乱療であるというふうなことはなかなか私どももこの場で、いま申し上げたように計数的に申し上げることはむずかしい問題だと思います。ただ実際上私どもは、先生も御承知のように、あるいは疑義がある場合に集団的な指導をやりますとか、あるいは集団指導のあとに監査ということになった場合にひっかかってまいりますようなものの中には、残念ながらやはり医学の通常の概念から見てもやや多きに失するというようないろいろな治療内容、そういうようなものがあることも否定できない現状でございます。したがって私は先生に乱診乱療の定義といわれますと、はなはだこれに対してクリアーカットのお答えをいたしますことはむずかしいのでありますけれども、現在のようにとにかく健康の増進、疾病の予防というようなことが現在的な要請であり、予防、治療、リハビリを通じて総合的な治療というものが要請されるときに、通常の日常の予防活動、健康保全活動、健康増進活動というものを別にして、ただ投薬、注射というようなものだけを多くするというようなことが例外的にしろありますことは、これまた非常に残念なことでございまして、そういう意味合いで、明確にこれに対して定義といわれますとなかなかむずかしいわけでございますけれども、少なくとも保険料でまかなっておる診療、医療でございますから、そういう意味合いで、かりにそういう言い方が許されるならば、医学的に見てむだな治療があるならば、そういうものはやはり排除していかなければならない。そういうものは残念ながら、現に調べてみると、ごく一部のものについてはないことはない。そういう点をつかまえまして、いわゆる乱診乱療というものについてはこれをなくすべきである、こういうことを申し上げておるわけでございまして、決して一般にそういうものが非常に普遍化しておるということを申し上げておるわけではございません。そういう意味でこれは先生のほうが御承知であるはずでありますので、私どもは十分にそのお話は留意いたしまして今後行政を進めてまいりたいと思います。
  36. 羽生田進

    羽生田委員 いま保険局長の答弁の中にやはり、保険料でまかなっておる医療だからと言って、やはりがまぐちが、お金のほうが優先してしまっておる。医療がお金がまぐちに左右されている。やはりそういう観念をどうしても捨てていただかないと、生命尊重、命優先という政治じゃないのです。これはぜひ考え直していただきたいと思います。  それから参考までに申し上げるのですが、病気というものは単なるかぜでも、その人によってみな違うわけですね。簡単に済む人もありますけれども生活状態とか健康状態あるいは抵抗力とか食生活とか、いろいろなものに関して非常にひどくなるものもある。これは主治医が一番よく知っておる。したがって同じかぜでも、たくさん薬を使い過ぎる、注射をし過ぎるというようなことを、これは軽々して聞かしてもらいたくない。これは主治医が一番よく知っていることなんですから、やはりそれは命を守るということのためにやっていることなんですから、そういう点はぜひひとつ再認識をしていただきたいと思うのです。  それから、時間がありませんのでもう一つ、これは特に医務局にお伺いしたいのですけれども、いま救急医療で救急指定病院等がたくさんありますけれども、実際夜間に外科医が当直しておらぬと、救急指定病院でも消防署に対してきょうは外科医がおらぬから救急患者はよこさぬでくれというような連絡をしておったり、こういうようなのが救急指定病院になっておるのですね。これらは私は非常に残念だと思うのです。それからもう一つ、休日診療の問題なのです。大体各県でそれぞれ医師会等が率先して、当番制というような形で、新聞に発表したり、消防署に連絡したりしてやっておりますけれども、これは何とか国も、町村あるいは市等に休日診療所というふうなものを設置して、委託は医師会等にまかせるというような形でやっていくというような考え方について、ちょっとお伺いしたいと思うのです。
  37. 信澤清

    信澤政府委員 救急医療の問題につきまして、ただいま先生から御指摘ございましたように、たいへんいろいろな問題が起きておりますことは、私ども十分認識いたしておるつもりであります。特に後段にお触れになりました休日、夜間の急患対策というものは、都会地でも、それから農村でも問題になっている大きな医療上の問題だというふうに考えておるわけでございます。この点につきましてはいま先生もお触れになりましたように、実態は主として地域の医師会の御好意によって当番制等の方法で患者の医療確保をやっていただいているというのが実情でございます。そこで、当番制でございますと、たまたま当番に当たられたお医者さまが御苦労されることはこれはやむを得ないといたしましても、家族の方までも御迷惑をかける、こういうことについて当番制についていろいろな批判があることも私ども承知いたしておるわけでございます。そこでいまお話がありましたように、市町村で特別の診療所をつくって、その運営については医師会にお願いする、また運営費等につきましては国を含めまして公費で援助する、こういう体制をつくっていくことが一つの方法ではないか、私どももそういうふうに考えておりまして、具体的には来年度予算の問題として十分検討いたしたいと思います。
  38. 羽生田進

    羽生田委員 最後に一つお願いをしておきたいと思うのですが、冒頭申し上げましたようにぜひひとつ政務次官におかれましては、総理並びに厚生大臣の御見解もお伺いしたい、こう思いますのでお願いいたします。  それから、厚生省全般として、ぜひ旧来の陋習を捨てて生命優先という、あらゆる行政に優先するのだという考え方で今後の医療行政全般についてお考えをいただきたい。特に来年度予算というような問題も出てくる時期でもございますので、前年比較二〇%増であるとか、いや二五%増だというようなことは、これは私はもう自然増だと思っているのでありまして、命を守るためには四十九年度は実は四十八年度の二倍になったとか三倍にとれたというぐらいに、ひとつ命を守るということに対して、これはもう大臣、次官、各局長課長、全職員が心を入れかえて、ほんとうに不退転の決意で考えていただきたい、これをお願いをして私の質問を終わります。たいへんどうもありがとうございました。
  39. 田川誠一

  40. 大石武一

    大石(武)委員 久しぶりでこの委員会に顔を出しましたが、わざわざ私のために関連質問の時間をお与えくださいまして感謝にたえません。  いま交通事故を中心として植物人間という問題が、医療関係だけではなくて、社会問題の一つとなってございます。これにつきまして政府の考え方、あり方について二、三の質問をいたしたいと存じます。  最初に法務省にひとつ、来ておりますか。——いま交通事故が非常に頻発しておりますが、法務省としてこれに対してはどのような対策をお立てになってこの交通事故を防ごうとするお考えでございますか。それをちょっと簡単にお聞きいたします。なお、質問も簡単にいたしますが、時間がありませんので、答弁もぜひ簡潔にしてください。そして同時に、前進的な方向でひとつ御答弁を願いたいと思います。
  41. 根岸重治

    ○根岸説明員 交通事故につきましては、通常、業務上過失致死傷罪として検察庁に送致されるわけでございますが、検察庁におきましては、各事案に応じまして適正な科刑の実現に努力しておるところでございます。法務当局といたしましても、交通関係の検察官の会同を開く等々の方策を講じまして、具体的な妥当な科刑の実現に努力いたしておるところでございます。
  42. 大石武一

    大石(武)委員 もう少し具体的にお尋ねしますが、交通事故を防ぐためにはいろんな交通の規制とか、いろんな問題がたくさんあります。それは法務省だけではできる問題じゃありません。これは全体的な交通体系の中でやらなければなりませんが、私、法務省でひとつ考えてもらいたいとことは、交通事故ということですね、ことに交通事故を起こして人を殺したという場合です。この場合にはその加害者に対してどのような処罰を行なうかということでございます。人命というものは何よりもとうといものです。その人命を、単に酒に酔って無謀運転によって殺すとか、あるいは自己の不注意によって人命を失うということは、これは非常に許しがたい罪悪だと思います。こういうことにつきまして、現在どのような処罰を一体与えておるのか、それを簡単にひとつ御答弁願いたいと思います。
  43. 根岸重治

    ○根岸説明員 交通事故で人を死傷いたしました場合に、普通、受けました事件の約六三%を起訴しております。さらに、相手を死亡させました事件について申し上げますと、大体において約半数は罰金刑、半数はいわゆる禁錮、懲役の自由刑、この求刑をしております。簡単に申しますとそういうことでございます。
  44. 大石武一

    大石(武)委員 禁錮なり懲役の最高の年限、そういうものはどのくらいになっておりますか。
  45. 根岸重治

    ○根岸説明員 三年以上という統計しか出ておりませんが、三年以上が大体〇・二%でございます。
  46. 大石武一

    大石(武)委員 実に答弁があいまいもことしておりまして、これ以上追及したのでは時間がありませんからやめますが、たった三年以上の刑期が〇・二%というに至っては、ほとんどこれは問題にならないような軽い刑罰であります。しかし、いやしくも自動車という凶器にもなり得るものをもって、自分の不注意ならなおさらのこと、酒に酔ったり何かして人を殺した場合に、三年や四年の自由刑であるとか懲役であるとかというのは、私はあまりに軽過ぎると思う。これは私はわかりませんが、少なくとも十年とか十五年の殺人罪に準ずる刑罰もやるべきだと思うのです。そういう峻厳な法の適用が、私はやはり交通事故を防ぐ一つの大きな対策にもなると思います。そういうことで、あまり甘い、いいかげんなことをなさらないように。近ごろの裁判所の方向は非常にヒューマニズムを尊重する方向に進んでおります。あなたも御承知でしょうが、最近の一連の公害裁判をごらんなさい。いままでの裁判の歴史にないような、人命を何よりも尊重するという考え方から、その裁判の判断がなされておるのです。こういうことを考えた場合に、ただむちゃくちゃな自己の不注意やあるいは酒に酔ったことなんかで人を殺して、それで二年や三年という自由刑で済むなんということは、あまりにも私はつり合いがとれないと思う。もう少し人命というものを大事に考えて、そうして、あなただけの責任ではありませんけれども、もう少し正しい処罰がなされるような、そのような方向に進まれることを希望いたします。どうかそういうことを、ひとつ法務省の中でそのような意見を出してください。  これで法務省を終わります。  次に厚生省ですが、植物人間というのは御承知のとおりでありますが、おもに交通事故あるいは労働災害によって脳に負傷を来たして、いわゆる動物的機能、ものを考える力あるいは意識、そういうものが完全に失われ、自主的な運動、手足の運動、からだの運動ができなくなった、ただ植物機能だけがわずかに残って、生命を維持するだけの、人間の形骸に近いような者が大体植物人間といわれております。これは最近交通事故その他の頻発によってこういう者がたくさん出ておるわけでありますが、これにつきましては厚生省では全国的な調査というものが進んでおるでしょうか、それをひとつお聞きいたします。
  47. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 御指摘のような植物人間、この問題につきまして、ただいま学界等におきまして、はっきりした認定基準を現在おつくりになっている最中でございます。で、御指摘のように、厚生省といたしまして、全国的にそういう状態にある方々がどのくらいあるかということにつきまして、行政的に現在の段階では把握はいたしてございません。  ただ、この問題につきまして、東北大学の外科の鈴木教授からお話がございまして、その実態等につきまして本年度の研究費をもちましてお調べをいただく、こういうことで、研究費の補助を差し上げてございまして、本年度中に大体全国の病院等を通じましてその概数を把握していただく、こういう段階になっております。
  48. 大石武一

    大石(武)委員 実態、たとえば簡単な数であるとか、そういう者がどこにどのくらいあるかということをまだ把握しておらないということは多少怠慢ではないでしょうか。東北大学の鈴木教授にだけ研究の一部のことを依頼して百万円の補助金を出しておるといったって、それで全国の実態が把握できるはずがない。そんなことは当然、そのような厚生関係の大元締めである厚生省がその責任を負わなければならない。いま数が幾らというが、宮城県でも四十三人の数が出ておる。しかもこれは単なる脳損傷患者だけではなくして、大きな社会問題化しておる、多くの各家庭の崩壊を来たしておるような現状であります。こういうことを考えるとき、そういうものはもうすでに何年も前からわかっておる、そういうことがまだ数がわからない、実態が調べがつかないということは怠慢過ぎると思うのです。もう少し真剣にその実態を直ちに把握して、単なる形式上の、何ぼかの研究費を出すとかなんとかいうおざなりなものではなくて、もう少し真剣に、どうしたならばこのような不幸な人間を一人でも多く防げるか、確固とした信念を持って努力をすることが必要だと思いますが、そういうことを要望いたします。  次に、これは交通事故によることが非常に多いわけですね。したがって救急医療の手当てを受けるわけでありますから、どうしても救急医療病院が要ることになりますが、近ごろは非常にその医療の内容が進みまして、同時に医療にもヒューマニズムが取り入られまして、いわゆる看護とか環境の改良ということが非常にうまくいきまして——われわれの経験では、普通ならこういう患者は数カ月か一年足らずにして、全身の衰弱とかあるいはいろいろな細菌の感染で死ぬことが多かった。いまは、そういう患者が三年も四年も意識もないままに、ただ生きているだけの姿でも三年も四年も命を保っていることができるわけなんです。しかし、残念ながら、いまの医学的知識では、これをなおす道がない。だから、考えようによっては、このような人間をなぜ長生きさせなければならないかという疑問も出てまいります。しかし、いやしくも生きている限りは、やはり医学というものは何よりも人命を尊重しなければなりませんから、これはやはり生きている限りにおいては、できるだけその生存が長引くように努力すべきだと思います。そういう意味で、非常に長期の療養が行なわれるわけです。そうすると、そういう患者がふえればふえるほど、いわゆる救急医療病院というのは、それにベッドやその他のものをとられますから、占領されますから、どうしてもその機能が薄らいでくるわけです。ですから、こういうものはできるだけ早い機会に、このような特別な収容施設なり病院なり手当てをする施設に移して、できるだけの新しい手当てをすることが必要です。したがって、厚生省としては、このような植物人間に対する収容施設であるとかベッドであるとか、そういうものについては、いろいろな近い将来の考え方をお持ちですか。
  49. 信澤清

    信澤政府委員 ただいま御指摘のような問題がありますことは、私ども十分承知いたしております。ただ、先ほど公衆衛生局長から御答弁申し上げましたように、患者の概数すらつかんでおらない状態でございまして、的確な考え方も実は持ち合わせておりませんが、しかし、御指摘のような方向で考える必要がある、こういう認識では先生と同じ考え方でございます。
  50. 大石武一

    大石(武)委員 まだその的確な考え方、構想がまとまっておらないのは、残念であります。しかし、それは責めてもしようがありませんから、できるだけ来年度の予算にも、そういうような具体的な計画なり予算を計上するようにぜひ努力してもらいたいと思います。  同時に、先ほどお話がありましたが、東北大学の脳研の鈴木二郎教授のところに、厚生大臣がいろいろと、治療研究班をそこを中心にして発足させて、それが実績をあげるようにいたしたいという考えを表明されたようでございますが、何か具体的なお考えでもありますか。ただ百万円だけ単なる補助金を出せば事足れりとお考えになっているとは思いませんが、もう少し具体的な考えをお持ちですか。また、そういう考えを近く持とうとしておりますか。お考えをお聞きしたいのであります。
  51. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 私のほうに特定疾患のための研究費がございます。しかしながら、私ども現在所管いたしておりますこの難病の研究費につきましては、一応懇談会の御意見に従いましてその疾病を決定いたしております。ただ、この植物人間の発生等につきましては、先ほど申し上げましたように、現在の段階におきまして、概数はつかんでおりませんけれども、鈴木教授からお話をいただきまして、昨年末鈴木教授がお調べになりました——これはまだ学会に発表いたしておりませんので詳しい数字は申し上げられませんけれども、約三分の二が交通外傷でございます。したがって、交通外傷後の治療措置によりまして植物人間にならないか、あるいはどうしても傷害の部位等によりまして植物人間にならざるを得なかったというような、そういう予防的な措置につきましての研究等につきまして、私どもは今後、鈴木教授とともに本年度の実態の把握をいたしまして、御援助を申し上げるつもりでございます。したがって、私どもといたしましては、当然、交通事故の発生あるいは災害の予防という面、あるいはそういう状態にならない予防的な治療方法の開発、こういう点につきまして、私どもといたしましては研究費の助成はいたしたいと思っております。ただ、すでに植物的な人間の状態になられました方につきまして、これをもとの姿に返すということは、私どもの医学常識といたしまして、現在のところ非常に困難ではないかというふうに考えておりますので、そういう面から、特定疾患あるいは難病の研究費という面において若干困難性があるというふうに考えております。しかし、先ほど申し上げましたような予防的な措置に何らかの技術的な面が開発できるかというような点につきましては、私どもといたしましては、積極的に御援助申し上げたい、かように考えております。
  52. 大石武一

    大石(武)委員 いろいろなお考えをお持ちのようですから、それをぜひ具体的に急速に実現化するようにひとつ努力をお願いいたします。  それから、このような植物人間は、いま残念ながら——残念というのはおかしいのでありますが、長期療養を必要とする状態になっておりますが、そのためには非常な医療費がかかります、詳しいことは申し上げませんが。そのために、その療養費をだれが負担するかということが、いま一番大きな社会問題になっています。多くの家庭では、加害者というものはほとんどこれに対してろくな賠償はしておりません、したがって、どうしても家族自身が、国のあるいは公の医療費を中心としながら、足りない分を補っている現状でありますが、その補い方が非常に多いのです。たとえばいま付添婦というものが問題になります。つまり、それは意識も何もありませんし、大小便たれ流しですから、食事にしたって、三度三度これは他動的に胃の中に食物を入れてやるほかに道がないから、これはどうしたって四六時戸人手が要るわけなんです。そういう患者に対して、国の医療体制は、いわゆる完全看護ということを国は方針としておりますが、その完全看護は、それに対して十分対処できるような方向がありますかどうか。理屈は別として、具体的な実際においてどうであるか。これは責めるわけでありませんから、いいか悪いかは別として、現実はどうなっているのか、そういうことをちょっとお聞きしたい。簡単に御答弁願います。
  53. 信澤清

    信澤政府委員 私どもの預かっておる病院にもこのような患者はおりますが、実態はただいまお話がございましたように、看護が重点でありますので、完全看護をたてまえとしております関係上、本来は付き添いをつけられないたてまえでございますが、実際は付き添いをつけております。
  54. 大石武一

    大石(武)委員 どうしても、完全看護といえば、ほんとうはよけいな付添婦だの何かを入れない、あるいは入れる場合には当然病院の責任においてつけるとかいうことにおいてやるべきなんです。ただし、現実は人手不足であり、特に看護婦不足の時代ですから、それは残念ながら理想通りいかないのはよくわかります。それを責めるわけでありませんから、できるだけ早く完全看護というものの具体的な実際的な姿を整えるように、ただ理屈だけの理想ではなくて、現実にそれだけの看護婦を得られないならば、それにかわる別な付添婦なんかもこれをちゃんと整えるような、そのような現実的にできる方向を進めていただかなければならないと思うのです。それにつきましては、現在宮城県内には四十三人おりますが、その気の毒な植物人間のそういう多数の者は、全部自分の費用で大体はその付添看護婦を雇っておかなければならない現状です。月に十五万円かかりますが、そのような場合には、その付添婦はみな自分の負担でありますから、百姓で資産の少ない人は、自分の家を売ったり、あるいは自分の仕事を休んで、その妻や母が全部病院に付き添って看護をしなければならない。そのために家庭が崩壊して、みな大体において保護家庭になっているというような現状が非常に多い。こういうことは決して国の正しい行政ではありません。ですから、その付添婦についてどのような見解を持っているか、それをもう少し具体的な考え方をお聞きしたいと思います。
  55. 信澤清

    信澤政府委員 病院は、患者を預かる立場から申しますれば、これはいまお話しのような問題については、病院の責任で解決すべきだというふうに考えております。ただ、実はそうなっておりませんことも先ほど申し上げたとおりでございますので、いろいろと努力をいたしまして、少なくとも病院で預かっている患者については、病院の責任において看護できるような体制をつくりたい、このように考えております。
  56. 大石武一

    大石(武)委員 それはちょっと話がおかしいんですよ。理想はそうであるけれども、現実はそうなっていないわけだからやむを得ないというような考えはだめです。行政としては非常に愛情のないやり方です。もっとほんとうに現実を考えて、一人の人でも救うことが厚生省の仕事なんですから、現実がこうだからできませんということを言わないで、あらゆる知恵をしぼって、できないならば規則や法律を改正してもいい、ほんとうにその患者の助かるように、一人でも家庭が崩壊してみじめなことにならないように、そういう努力をする心がまえが絶対必要だと思いますが、そのような努力をされますかどうですか、ひとつ政務次官、御意見を伺います。
  57. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 現在、社会の中におきまして、先生が先ほどから言われておるようないわゆる難病といいますか、精神的あるいは肉体的な負担をかかえる患者さんに対しまして、必然的に社会的な要請に十分沿った医療面における施策を講じなければならない、かように考えております。いま厚生省でも、難病やあるいは特定疾患等を含めたこうした人たちの対策を十分検討しております過程におきまして、ただいま先生の御指摘のようなことにつきましても積極的に、あくまで生命尊重の立場から前向きに取り組みたい、かような決意を申しておきたいと思います。
  58. 田川誠一

    田川委員長 大石君にちょっと申し上げますが、質問者の持ち時間がだいぶ経過をしておりまして、次の質問者に答弁をする総務長官の出席時間にたいへん影響を及ぼしますので、ひとつ締めくくっていただきたいと思います。
  59. 大石武一

    大石(武)委員 では、できるだけ急ぎます。  政務次官、その心がまえで、あたたかい気持ちでぜひともこれを救済するように努力してください。  それから、同じことでたとえば紙おむつの問題がある。これはしょっちゅうたれ流しですから、もちろんおむつを取りかえなければいけない。その費用が一日に七百円、月に二万円もかかります。そういうものは金持ちから見れば何でもないような金かもしれませんが、所得の低い貧乏な農民から見れば非常な負担であります。これは私はやはり医療の一部だと思うのです。医療の一部でありますから、そんなものを自己負担をさせることが間違いであって、当然医療費として正しく、こういうものにつきましてもそのようなしかるべき機関から支払われるべきだと思います。  それから御承知のように、いま難病の問題につきましてすでに政府で百八十億という大きな金を出してこれと取り組んでおられる、これは非常にけっこうなことです。難病の定義にもよりますが、この植物人間は難病の範囲に入るかどうか、これもいろいろな考え方がありますが、できるならば、相当の予算もありますから、こういうものもやはり難病の中に考えて、難病対策との組み合わせにおいてもできるだけ幅広い手当てをしてもらうように、ぜひいろいろ御協力願いたいと思います。御承知のように、宮城県におきましては六月県会で、四十三人の県内の患者、植物人間に対しましては一日付添婦五千二百円、おむつ代七百円というものを完全に県から支給する、その他医療の自己負担分については全部県が支給するという方針をきめて予算を計上しております。宮城県のようなたいして財政の豊かでない府県においてさえ、そういうことを実行しているのです。国においてそういうことができないはずはない。残念ながら、まだその実態がわからないなんて言っておりますからまだできないかもしれませんが、こういうことは来年度からでもやれる、それほど数は多いはずはないのですから。それに対して懸命に努力する、地方自治体に負けないような、国のもっと進んだ、より高い行政というものを心から期待する次第です。ぜひひとつ御善処をお願いいたします。  それから次にもう一つ、簡単なことがあります。これは運輸省であります……。
  60. 田川誠一

    田川委員長 大石君、ちょっとお待ちください。次の審議にたいへん差しつかえがございますので、ここで締めくくっていただきたいと思います。
  61. 大石武一

    大石(武)委員 あと二、三分もらいます。  運輸省にお願いしますが、いま自賠責法で一応五百万円、金がくることになっておりますが、そのような植物人間になってもその五百万円の金がきますかどうか、ひとつそれをお聞きします。
  62. 真島健

    ○真島説明員 自賠責保険で後遺症に対して等級を分けて保険金を出しておりますが、いま先生のおっしゃいましたような状況になるということはおそらく第一級、一番金額の高いものに相当すると思いますので、五百万円が出るということに仕組みとしてはなっております。
  63. 大石武一

    大石(武)委員 わかりました。非常にけっこうなことです。ぜひそれを、ことばだけでなく実際に実行していただきたい。さらに、五百万や七百万の自賠責では少ないのです。将来これを上げる御希望のようでありますから、ぜひともそのような方向で、できるだけ十分にその患者に対して補償ができるような、あるいは医療が受けられるような方向に進めてもらうことを心から希望いたします。  まだほかにも質問がありますが、同僚の諸君がだいぶお急ぎのようでありますので、これは大事な問題でありますから、三分五分の時間をいただいても決して国の行政に役に立たないとは思いませんが、残念でありますがこの辺で私の質問を打ち切ります。どうもありがとうございました。
  64. 田川誠一

  65. 八木一男

    八木(一)委員 私は部落の完全解放の問題、政府のいわれる同和問題の完全解決の問題について、総務長官はじめ各関係の諸官庁の代表の方に御質問を申し上げたいと考えております。  まず、予算委員会においてこの問題について先日質問をいたしました。内閣全体として、非常に重大な時期でありますから、前内閣より以上に積極的に熱心に、そして具体的に急速に対処したいという御答弁があったわけでございますが、この問題を主管しておられる総理府の総務長官のほうから、本問題の解決のためにどのような方策で、どのような気魄をもって対処しようとしておられるか、総括的に伺っておきたいと思います。
  66. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 同和対策に深い御理解を持っていただいておる八木委員から、同和対策に対する国政の場にあっての基本姿勢というものがいかにあるべきかという基本的な御質問、私といたしましては、かつての予算委員会においても申し上げましたごとく、同和対策という問題は国民的課題としての重要な政治案件である、したがってわれわれは国民的な課題のきびしい使命を考えまして、政府といたしましてはあらゆる角度から同和対策の多年の懸案の解決のために全力を注ぐべきであり、それが当然な施策である、担当の私といたしましては、そうした気持ちをもって各省庁と連絡調整をはかりながら、その推進に全力を注ぎたいという気持ちであることを申し上げておきたい、こう思います。
  67. 八木一男

    八木(一)委員 いまの総務長官の御答弁は、姿勢としてけっこうであろうと思います。  ただ、具体的に問題を進めてもらわなければならないと思います。たとえば総合計画の問題あるいは特別措置法の問題あるいは予算の問題その他の問題について、いま総務長官が推進しなければならないと考えておられる問題について、具体的にひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  68. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 具体的な点に触れますことは、御承知のとおりに同和対策の基本計画の十カ年計画が本年をもって上五カ年を終えようとしておる、この事態と、これからの基本計画をどう進めるかというところのいわゆる後の五年に四十九年から入るという非常に大事な時期に到達しておる、私はこう考えておるのでございまして、そうした観点から、いわゆる四十九年からの五カ年の間に、残されたこの短期間の間に、前期の五カ年と比べますとかなりおくれを生じておるということを考えるときに、後期の五カ年の初年度である四十九年度に対しましては、予算上格段の配慮をいたさなかったならば、その計画の推進がおくれるのではなかろうか、こういうような憂慮を持った気持ちでひとつ具体的に予算措置を講じてまいりたい、こういうような覚悟で、また計画であることを申し上げておきたいと思います。
  69. 八木一男

    八木(一)委員 私のほうからもう少し具体的に申し上げます。  昨年の六月に初めて、同和対策閣僚協議会が開かれました。佐藤内閣の末期であります。それまでに閣僚協議会が開かれなかったというようなことは、政府の姿勢がほんとうに怠慢であるという証拠だろうと思いますが、そのときに、今後の事業量として四千七百三十三億の事業量がそこで報告をされたわけです。この四千七百三十三億という事業量は全くもって問題にならない小さ過ぎる数字であります。これは諸官庁の方が来ておられますけれども、千億をこえると大きい数字のように思っておられる方がもしあったとしたら、とんでもないことであります。四千七百三十三億というのは問題にならない数字である。この四千七百三十三億という数字は、昭和四十六年度に実態調査をしたことに基づいた数字であります。この昭和四十六年度の実態調査は、四十二年度のまことにもって論外の実態調査を補完するために行なわれたわけであります。ところが、四十六年度の実態調査も問題になりません。たとえば東北とか北陸においては、対処すべき地域についての報告のないところもある。たとえば愛知県においては、対処すべき地域の半分しか報告をしていないというような事実があります。こういうところから見て、地域的に見て、そういう報告がひとつもなされていないというところが多分にあるわけであります。これが一つ。  それからもう一つ、その事業の内容であります。四千七百三十三億という事業は、この大部分がいわゆる環境改善だけにとどまっているわけです。住宅と生活環境の隣保館、下水道、そういうようなものが大部分であって、農山漁村対策というものが六百九十三億円その中に含まれているだけであって、それ以外の全部は環境改善だけであります。いわゆる同和問題の完全解決のためには環境改善一つの大切なことでございますけれども、就職の機会均等、就学の機会均等あるいは当該産業の振興というような根本的なことを推進しなければ問題の解決にならないわけであります。ところが環境の改善だけが大部分であって、これが今後の計画の骨子になっているということでは、とんでもないことであります。しかもその環境改善関係の予算も、この集計は問題になりません。たとえば環境改善だけで、大阪市で予定しているものが一千億、大阪府全体で六千億であります。一応大阪の地域だけで環境改善に必要なものが六千億あるというのに、政府全体の同和対策の今後の予算の集計が四千七百三十三億、農山漁村の問題を省くと四千億くらいの環境改善費しかない、問題にならない量であります。こういうことを考えますと、この四千七百三十三億という数字を根拠にして今後推進しては、これは全く問題に対処することにならないということは、総務長官も十分御認識をいただいているところでございます。この問題について四十二年、四十六年に実態調査をしましたけれども、そのような十分なものでなかったことを十分なものが出てくるような指示をしながら、さらに近いうちに実態調査のやり直しをしなければならないという問題と、それからその間、いま各省別にいろいろな補完調査をしているところであります。この補完調査の分を加えて総合計画を早急に樹立をする、そして財政計画をそこに樹立をする、後に加わったものはどんどんそれだけ計画量を、財政量をふやすということが当然必要だろうと思いますが、総務長官の御見解を伺っておきたいと思います。
  70. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 政府といたしましては、本年に入りまして、私、官房長官と総理等にお願いをいたしまして閣僚協議会を開きまして、そして各省の集合も願いまして、当面する同和対策の具体的な方途について十分閣僚を中心に協議をいたしましたことは、八木委員御了承のとおりでございます。それが終わりましてまた直ちに、総理府が主体になりまして、全国の同和対策関係の各地方庁からお集まりを願って、私もその会に出向きまして、政府の意のあるととろ、また取り組むべき基本的な姿勢と具体的な施策に対して、私は私なりの指示と、また関係官に対して労をねぎらいながら、今後の積極的な取り組みの方法を強く要望いたしてまいった次第でございますが、さらにこうした会合を持ちまして、新たなる四十九年度予算編成に際しての地方の声も十分ひとつ把握してまいりたい、こういう順序であることをまずもって申し上げておきたいと思うのでございます。  特に御承知のとおりに、四十二年、四十六年と調査を三回行なっておることも御了承願えると思います。しかし、まだ未調査地域がかなりあるということを考えるときに、補完調査を完全に進めるべく、いま指示もいたしておりまして、その調査も着々と実りを結ぶような状態になってきておりますので、そうしたものを踏まえながら、私は後半のいわゆる事業計画四千七百三十三億円、この問題点と、現実の上においてのこれからのこうした事業形態と事業を推進する予算というものと取り組んで、やはり時代の流れ、財政状況からくる問題あるいは単価の問題、いろいろの問題が出てまいると思いますので、そうした問題を踏まえながら、ひとつ具体的に取り組んでまいりたい。ことに下水とかあるいは環境の整備はかなり進みつつありますけれども、おっしゃったごとく、いわゆる農業の問題、授産の問題、教育の問題こういうような問題がまだおくれがちでありますので、そうした面も中心にいたしながらひとつ積極的にやってまいりたい、こう考えておる次第であります。
  71. 八木一男

    八木(一)委員 御答弁なかなかけっこうでありますが、申し上げたことについてひとつずばり御答弁をいただきたいと思います。  重ねて申し上げます。補完調査を進めていただくのはけっこうですが、まだ未提出の部分の補完調査だけではいけないわけであります。というのは、各府県で対処をしておっても、そこに非常に熱心なところと不熱心なところがあります。いままで調査が出てこなかった東北地方であるとか愛知県の残りであるとか、これはもちろん詰めていかなければならないことは当然でございますが、調査は出ていてもおざなりの調査しか出てない、おざなりの事業しか計画をしておらないというところを全部補完をしていただかなければならないと思う。例をあげますと、たとえば漁業の問題についてある府県はりっぱに対処をしている。ところが他の府県は全く手ぬるいといった場合には、他の府県でほかのたとえば住宅その他の問題について出ておっても、その漁業の問題についてはそれだけ欠陥があるわけであります。また、ある大部市で住宅問題その他についてりっぱな計画があっても、他の大都市においてそういうことがないことがございます。そういう意味で、補完調査は、いままで出てこなかったところだけではなしに、出てきたものも部門別に、熱心な部門と不熱心な部門がある、それを一番熱心な部門に、熱心な府県市町村の一番熱心な部門に全部がそろうように、そのような補完調査をしていただかなければならないということと、それからもう一つは、補完調査は補完調査として、近いうちにやはりまた全国的な調査をしていただく必要があろうと思う。その二つについて、ひとつ積極的な御答弁を願いたいと思う。
  72. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 いわゆるまだ報告のない地域に対する問題、それからありましたが、また調査が完了いたしておりますが、これに対するところのさらにプラスした問題と取り組むべきであるという二つの問題だと思います。  ごもっともだと思いますが、先般各省次官にお願いし、各省庁にお願いいたしまして、次官通牒をもって地方自治体に強くそうした問題点を明示しながら通達をいたして、関係の地区に対する協力をお願いいたしていることも事実でございます。目下、栃木、新潟、長野という三県を調査いたしておりますけれども、それ以外に本年度中に数県にわたって未調査の補完調査を終了いたしたい、こういうような具体的な方途をもって対処し、それの報告、その状況によっての判断から、四十九年度予算編成に資してまいりたい、こういうような方針でおるので御了解願いたいと思います。
  73. 八木一男

    八木(一)委員 予算にもちろん反映していただかなければなりませんが、補完調査は先ほど私が申し上げた意味で急速に完全にしていただきたい。それから近い将来に、完全な全国調査をさらにしていただきたい。この問題についてずばり積極的なお答えをひとつお願いしたい。
  74. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 いまおっしゃった大事な問題二点につきましては、さきに申しましたような基本姿勢で積極的に——積極的というよりか、やはり具体的にその成果を求めたい、得たいという気持ちで、ひとつ積極的に取り組んでまいりたい、こう思っております。
  75. 八木一男

    八木(一)委員 それとともに大事な問題、具体的な大事な問題に入る前にこれも大事な問題ですから、二点ひとつお約束をいただきたいと思う。  田中内閣になってから、総務長官の御推進でこの四月に閣療協議会が開かれたということは、前よりましであります。しかしこの閣僚協議会というものは、内閣全体が同和問題のために対処するためにつくられたのが、ほとんど開かれていない。いままでたった二回だ。こういうことではいけないので、少なくとももっとひんぱんに開いていただきたい。これは招集責任者は官房長官ですが、推進される方は総務長官です。そういうことで、少なくとも予算をつくる前の四月、五月の時期あるいはまた予算を実際に固める前の十一月とか十二月とか、そういう時期にどんなに少なくとも二回は開く。それからまた法改正とかあるいはまたその他のことをしなければならないときには、随時どんどん開く。そういうことをぜひ御推進をいただきたいと思いますが、お約束をいただきたいと思います。
  76. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 いまの閣僚協議会という重要な国政の場において、同和対策の問題に対して田中内閣が各省庁あげて取り組む姿勢ということは必要でございます。おっしゃるとおりに、年一回開くなんという、こういうようなことは私はやはり政治の上においても、また同和対策の関係者の皆さんに対しても、またこれらを要望しておられる同志の皆さんに対しても申しわけないことだと思いますので、こうした点については、いま八木委員が御指摘になりましたように、具体的にやはり増してまいりたい、こういうような決意でこれからのあとを見ていっていただきたいと思いますが、官房長官と十分連絡をとって配慮したい、こう思っております。
  77. 八木一男

    八木(一)委員 さらに具体的に問題を解決して実体的な差別をなくしていくことが必要でございますが、もう一つ、心理的な差別といいますか、社会意識としてある差別観念をなくすための努力が必要だろうと思います。  そのことについて、同和対策事業特別措置法の制定記念日である七月の十日とかあるいはまた、ことしは七月の十日が過ぎてしまいましたが、人権週間等で内閣自体があるいは総理府がおやりになってもけっこうですが、総理大臣または総務長官がこの同和問題の完全解決のための全国に対する訴えを、また指導をされる必要があろうと思います。NHK等を活用されまして、政府自体がこの問題に熱心に取り組んでいく、そして実際に国民に訴える、そういう姿勢を示していただきたいと思います。本年人権週間等でそういうことを実現をしていただきたいと思いますが、それについての御答弁を願いたい。
  78. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 御承知のとおりに、田中内閣が過般いわゆる国政の国民へのPR、広報活動、そしてそれに対するところの正当な認識をいただくということが非常に重要であるという総理の判断から、内閣広報室の拡大強化をはかったゆえんもここにあるような次第でございますので、そうした立場から、いわゆる同和対策の重要性を国民に十分知悉していただき、そしてこれに協力をしていただき、そして側面的に推進していただくというようなことから、広報活動、宣伝活動、また国民の理解活動等についてはひとつ万全を期してまいりたい。御指摘のような人権週間等においては十分そうした問題を配慮してひとつ推進をしていくということは、お約束申し上げたい。係官も政府委員も全部来てくれており、各省庁の担当の政府委員皆さんもおいでいただいておりますので、そうした考えで、ひとつ総理府が主体となってその点万全を期したい、こう考えております。
  79. 八木一男

    八木(一)委員 たいへんけっこうな御答弁でございます。ぜひ実現をしていただきたいと思います。  では、具体的な問題に入りたいと思います。いま四千七百三十三億の集計、これは補完して、そしてまた再調査をして総合計画を実施して、財政計画をつくって御推進をいただくようにお約束をいただきたい。これを実際に実施することについて、同和対策事業特別措置法では、国の第一義的な責任を明記をしてあるわけであります。地方自治体はそれに準ずる責任を明記されているわけであります。ところが実際は地方自治体にこの問題の具体的な責任が大部分負わされているという状況にございます。この問題は、たとえば対処すべき事象が多い地域と少ない地域とがございます。でございますから、地方自治体が当然必要なものとして取り組むときに、これが国の財政によってまかなわれないと、その問題に対処しなければならない府県市町村は財政的な非常な負担を負うわけであります。負担を負ってもやっていかなければなりません。やっていかなければならないけれども、実際は財源が少ないというようなことで、他の一般行政との競合を生ずることがございます。これではならないので、国が全部ほんとうは主体的に対処をしなければならないわけです。戦前の融和事業もこれは全部国費でやっております。ところが今度は地方自治体に第一義的な責任を負わして、国が対処をするようになっているわけであります。これでも、ほんとうに完全に対処をされておればまだましでございますが、完全には対処されておりません。そういうことを考えて、同和対策事業特別措置法、これを改正する必要があろう。たとえば同和対策事業は全部国の事業としてやる。実際的な事務的な扱いは市町村に扱わしてもいいのですが、国がやる。国がやるのですから、全額国庫負担、全額国庫支出であるというのがほんとうの姿であります。そういうことになれば、これは当然法の改正をしなければなりません。法の改正についていま同和対策協議会でも協議をしておられるようでございますけれども、積極的な意味で政府が、そしてその担当官庁である総理府がこれに対処をされなければならないと思うわけであります。この問題についてぜひほんとうの意味の同和問題の完全解決ができるように、地方自治体にしわ寄せていて、国がのほほんとするような状態がないように、この改正に向かって取り組んでいただかなければならないと思います。それは非常に急速にやらなければならない問題ですけれども、大きな問題ですから、総理府総務長官はりっぱな政治家でございますが、いま即答を求めることは少し無理であろう。ですから次回の機会にその問題についてひとつお答えをいただきたいと思うわけでございますが、その前にその法の改正をしなくてもできる問題があります。というのは、法というものは行政的に解釈を運用してりっぱにやっていけば生き生きとして動く問題であります。法律の差しさわりのない範囲内でどんどん行政的に運用を積極的にやっていけば動くものであります。この問題の法律の制定のときに、政府と確認事項がたくさんございます。確認事項をほんとうに正しい意味で解釈をするということをすれば、法の大部分が動いてまいります。それがなされていないわけです。これは当然完全な正しい解釈をしてやるようにしていただかなければならないし、同和対策の問題について政府に熱意があるならば即刻できる問題であります。そういう点でやっていただきたい。  さらに、確認事項についてブレーキのかかった部分がいささかあります。これはその当時政府が提出をされましたが、その前に四党協議会というものがあって、一生懸命煮詰めておりました。その当時実際に問題が発足をしておりませんから、四党協議会のメンバーが一生懸命頭の中で考えましたけれども、そして全部に抜けがないように考えたつもりだけれども、やはりそういう欠陥が少しあったわけであります。これも確認事項でありますから、法律を変えなくても、その確認のつぼめられたところを広げればこれができるわけであります。そういうこともぜひ推進をしていただかなければならないと思います。確認事項の正しい解釈を狭く解釈をされている点、これは直ちにやめて、正しい解釈をする。そして不十分な確認事項についてはこれを改めるということをやっていただく必要があろうと思います。それについて総務長官の積極的な御答弁を願いたいと思います。
  80. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 同計画が発足いたしましたときの、御承知のとおりの事業対象というものはわずか十三だったと思います。その事業が四十八年度に至りまして三十三の対象に拡大されておる。やはり十条に適用すると同じような事業といたしましても、本年は御承知のとおりに十四事業対象が増してきておるという、こうしたことは当然でございますけれども、理解ある八木委員、まあ評価というようなことでなくして、当然ではございますが、御理解いただけると、こう思うのでございます。  いま後段で御指摘になりました点、いわゆる法の改正措置をどうすべきか、また現実の問題として、こうした問題に対する取り組み方について示唆に富んだ御要望と御指摘がございましたが、非常に重要な問題でございますので、目下これに対して前向きの姿勢で取り組んでおるような姿である。真剣にいまこの問題と取り組んでおるということでございますので、そうした点の御期待を賜わりたいと思うとともに、なかなかそこに問題点のあることも御理解願いたいと思いますが、積極的にひとつ取り組んでまいりたいということで御了察願いたいと思います。
  81. 八木一男

    八木(一)委員 坪川総務長官は非常に熱心で、その点私は敬意を表します。しかし坪川総務長官が主観的に熱心でおありになっても、問題の重要性から見て、客観的に問題が推進されることにならなければ、これはいけないわけであります。本問題について認識の非常に濃い方と薄い方が、国会議員の同僚の方々の中にも、あるいは政府の方々の中にも、諸団体の方々の中にもあります。これはそれ自体が問題の解決を鈍くしているわけです。全部が一番認識を持った人になっていただかなければならない、そういう問題であります。したがって主管官庁である総理府は、またその責任者であり国務大臣である総務長官は、最もその問題に理解が深く、最も熱意を持ってこれを推進をする方であってほしいと思います。総体的にいって坪川総務長官が熱意のおありになる、誠意のおありになる政治家として、私は敬意を表しておりますが、問題の重要性からして、いまの御答弁ではまだ不十分であります。法改正が必要であるという状態で、この問題について直ちにいま御答弁を求めることは御無理であろうと思って私は控えました。後の機会にしたいと思います。  しかし、いまの法律があって、それを行政的にりっぱに運用をして、それを生かすということは当然やらなければならない問題であって、いまちょっと御答弁の中に問題があると言ったその問題があるということが、政府の猛烈な怠慢のもとになっておるわけです。その問題を乗り越えて、突破をして、この特別措置法がほんとうに生きるようにしていただかなければならないと思います。  この最後の確認事項に、政府を代表して当時の床次総務長官が、特別措置法を積極的に活用するということを答弁をされ、そして内閣総理大臣の佐藤さんが、これはまだ緒についたばかりである、したがってこれを完全にするために鞭撻、督励をしてもらいたいということを言っておられるわけであります。したがってこの法律が最大限に、積極的に活用されることが、政府の国会を通じての国民に対する約束であり、その法律ができてそれをやろうとする姿勢についても、まだ緒についたばかりであるから、ぜひ鞭撻、督励をしてもらいたいと、国民にあるいは国会議員に、総理大臣が政府を代表して要請をされているわけであります。私はその政府の要請に従って鞭撻をしているわけであります。したがって、この鞭撻はまともに受けていただきたいと思います。確認事項は完全に積極的に活用をする。不確かな、不十分な確認事項については、これを直してあらためて確認をするということは当然やっていただかなければならないことであろうと思います。どうか総務長官、その点について私の申し上げたとおりやっていただくという御答弁をいただきたいと思います。
  82. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 御指摘のごとく、政治は決して主観で決定すべきでありません。主観の中に事実を踏まえた客観があってこそ、政治の実が結ばれるということでございますので、私といたしましては主観の気持ちを踏まえて、客観的に一つ一つを具体的に積極的にひとつ改めてまいりたい、こういう気持ちを申し上げ、また御承知のとおりに床次総務長官の時代、私も同じ閣僚として佐藤総理のお答えになったこと、また八木委員指摘になりました事実も、いまなお記憶を新たにいたしております。そうした点を踏まえながら、いわゆるこの確認事項の取り組み、実施すべき方向、これが非常に重要でございますので、その点は積極的にひとつ具体的に取り組む考えであることをはっきりと申し上げておきたい、こう思います。
  83. 八木一男

    八木(一)委員 総務長官の積極的な御答弁、けっこうであります。     〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕  それで、これからやや具体的な問題に入ります。この特別措置法の第六条では、同和問題の完全解決のためにあらゆる問題が提起をされております。その条文すべてに例示がございますが、例示のあとに「等」というものが全部つけてある。そしてその例示の一番最後に、その地本問題の解決に必要な事項ということが書いてある。それは明らかに間違いなく記憶しておりますから、ごらんにならなくてもそのとおりであります。  そこで、総務長官、ですから、同和問題完全解決のために必要なことは一切全部やるということがこの法律の精神なんです。そして積極的に活用するということは、その同和問題完全解決のために必要なことを一切やっていくということがその方針でなければなりません。ところが、第六条の問題について地方自治体でどんどんやりながら、政府の認定する同和対策事業として認定されているものがはなはだしく少ないわけであります。これは一昨年の例でありますが、実はある都市で同和対策事業をやっております。そこで四十八種類のことをやっているときに、政府の認定を受けて補助を受けているのがわずかにそのうちの五つの、事業にしかすぎません。これだったら積極的どころか、全く消極的にしか運営されていないということになる。ですから、この同和問題完全解決に必要なものは一切政府の認定する同和対策事業として対処するということでなければならないと思います。そのことについて坪川総務長官の積極的な御答弁をいただいて、そして各省がそれを軽く考えて値切って、事業の種類について値切りまくっているということを、厳重にこれを改めさせるようにしていただきたいと思うわけです。
  84. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 同法の第六条において八項目にわたるところの各問題点の指摘がされており、これにつきましてはいま八木委員がおっしゃったとおりの問題があることをよく承知いたしております。したがいまして、これに対しましてはやはり各省庁のこれに対する協力体制、また認識体制が非常に必要でございますので、総理府といたしましては累次にわたって連絡会議を開いて、これに対するところの具体的な措置も十分考えておりますけれども、いま御指摘になりました点等を踏まえて各省庁等に御協力と、また総理府が指揮をいたしましてこれらに対する具体的な措置を十分講じてまいりたい、こう考えております。
  85. 八木一男

    八木(一)委員 総体的にけっこうでありますが、各省庁に全く認識不足の省庁があるわけです。それから省庁の中で少しましなところがあっても、この局は認識があるがこの局は認識がない、この課は認識があるがこの課は認識がない。課の中でもこの人は熱心だけれども他の人は全くけしからぬ、差別意識を持っている連中があるわけです。そういう各公務員の中で、熱心な人が推進をするのを不熱心な連中がブレーキをかけることは許さぬ。このことは政府の方針に反する公務員であるから、直ちにそういう連中は解職をする。ブレーキをかける者は即座に解職をする。不熱心な課があれば、不熱心な局があれば、その人事を入れかえる。不熱心な省があれば、これは担当の大臣に責任をとってもらって、そのような大臣は解職をする。そのような態度でやっていただかなければならないと思う。そういう点についてぜひ積極的な強い決意を示していただきたいと思います。
  86. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 御指摘になりましたような批判を、あるいは誤解を生じておるということはまことに申しわけない次第でございますけれども、私といたしましては、各省庁の最近の連絡会の状況等もそれぞれそのつど報告を受けております。非常に真摯に取り組んでくれておるということで私は信頼いたしておりますが、もし御指摘になるような点がありとせば、今後十分気をつけてまいりたい、こう考えております。
  87. 八木一男

    八木(一)委員 では、それは厳重にやっていただくことにしまして、もう少し具体的な問題に入ります。  確認事項の中で、いますべてのものを同和対策事業として認定して、政府の認定事業として対処していただく、そうならば第七条の特別助成、すなわち三分の二の国庫負担、国庫補助の対象にすべてならなければなりません。そしてその補助裏はすべて優先起債、第九条か八条ですかの対象にならなければならないし、その問題はすべて第十条の起債の分に対する元利補給金を、十分の八まで通常の場合には普通交付税で地方公共団体に交付する、そして地方公共団体が不交付団体であったときには同様な率で特別交付税でこれを交付するということにならなければならないわけであります。そのことをぜひほんとうのものになるように推進をしていただきたいと思うのです。その点について積極的な明快な御答弁をいただきたい。
  88. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 御指摘になりました同法七条、八条、九条の各項にわたるところの具体的な点、御要望のとおり当然でございます。重要な具体的な問題でございますので、政府委員から答弁させます。
  89. 今泉昭雄

    ○今泉説明員 補助対象の拡大等は、先ほど総務長官が申しましたように年々拡大をはかっております。あるいは補助単価の拡張等やっております。四十九年度は後期の五カ年に入りますところの重大な時期でございますので、総理府の事務当局といたしましても、各省と緊密な協力のもとに、この補助対象の拡大等について全力を尽くしてまいりたいと思っております。
  90. 八木一男

    八木(一)委員 総務長官の御答弁の中で七、八、九条とおっしゃったけれども、十条も私の質問に入っていますので、それも入れてやっていただくことだと確認をしたいと思います。
  91. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 そのとおりでございます。
  92. 八木一男

    八木(一)委員 では、その問題のさらに具体的な点になりますが、確認事項を総務長官お持ちですか。——今泉さん、確認事項ありますか。なければ私が総務長官にお目にかけますけれども、お持ちですか。
  93. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 はい、あります。
  94. 八木一男

    八木(一)委員 「土地買収費」というところがあります。「同和対策の推進にあたって、重要な問題は、補助対象に土地買収費——これは先行取得を含む、それと整地費を加えることである。たとえば、建物の建築費だけの補助では実際はできあがらないのであり、同和対策事業の重要性を十分認識されて、ぜひ補助対象に先行取得を含めた土地買収費と整地費を含められたい。」それに対して福田大蔵大臣は、「先行取得を含め土地買収費、整地費等の財源措置が必要であることはお説のとおりである。これらの土地買収費、整地費等で国庫補助の対象とすることが適当でないというものについては、同和対策事業の重要性にかんがみまして、起債の措置を講じ、事業の推進に支障のないように善処いたしたい。」という確認事項があるわけであります。この確認事項の中の部分をものすごく曲解をして、いまいろんなことが進められているわけであります。総務長官、よくお読みをいただきたいのですが、「これらの土地買収費、整地費等で国庫補助の対象とすることが適当でないというものについては、同和対策事業の重要性にかんがみまして、起債の措置を講じ、事業の推進に支障のないように善処いたしたい。」これは日本語でございますから、日本人が日本語で解釈をすれば、当然、これらの土地買収費、整地費等で国庫補助の対象とすることが適当なものが一つある、適当でないものについては起債でやるというふうに解釈をされなければならないわけであります。それがそうでないように、各省で解釈を狭義にとりまとめて、このことをやっていないという多くの事例があるわけであります。これは正しい日本語のとおり解釈をされるものとしてこの確認事項はできているわけであります。これを読みかえているわけであります。これらの土地買収費整地費等は国庫補助の対象とすることが適当でないので、同和対策事業の重要性にかんがみて、そういう問題については起債措置を講じ、事業の推進に支障のないように善処いたしたいというように、法律条文にひとしいような確認事項をわざわざ政府全体が、各省全体が読みかえて、とんでもないことをやっておるわけです。土地については、国庫補助の対象とするものがある。当然ある。その国庫補助対象にすることに適当でないものについては、かわりに起債の措置をするということでなければならない。これについて総務長官、ひとつ今泉君と御相談いただいてもいいですが、この文章について、ほんとうの日本語の解釈で確認事項はつくられた、それを各省庁が曲げて解釈をしている。同和対策の完全解決にブレーキをかけている。これはとんでもない、けしからぬ問題ですよ。ぜひ総務長官、これをよくお読みになっていただいて、参事官ともよく御相談いただいて、正しい御答弁をいただきたいと思います。
  95. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 確認事項に対するところの政府の見解、あるいは広義あるいは狭義にというような点から御指摘になりました点だと私は考えるのであります。そうした点につきましては、やはり広義な立場で広く解釈をいたしまして、確認事項の適用をはからなければならない、こういう方針で臨みたい、また私としてはそうして指導をしてまいりたい、こう考えております。
  96. 八木一男

    八木(一)委員 非常にけっこうな御答弁であります。総務長官のこの正しい御見解が各省に浸透して、各省が間違った解釈にならないようにしていただきたいと思います。きょう各省ほとんど来ておられますが、来ておられないところもありますが、ぜひ総務長官、総理府から各省庁に、間違った解釈を改めて、正しい総務長官のお答えになった解釈で問題に対処するようにしていただきたいと思います。そのことについて、簡単でけっこうでございますから、お尋ねいたします。
  97. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 各省庁の責任担当官すべておいでいただいておりますし、さらに今後の連絡会議においても十分配慮いたしてまいりたい、適切に指導したい、こう考えております。
  98. 八木一男

    八木(一)委員 そのことに関連いたしまして、各省庁に関係ありますが、厚生省にひとつ伺っておきたいと思います。  実は厚生省は、総理府がこの同和問題の主管官庁になられる前に実際上の窓口官庁、主管官庁でございました、総理府ができられるまでの間は。その中のいま生活課に当たるところが内閣全体の主管官庁であって、昭和三十年ごろ、わずか七百万ぐらいしか国家の支出がないころです、それから昭和三十四年ぐらいからわずか一億ぐらいにふえてきましたけれども、そのころからやられていたことはわずかに、共同浴場をつくる、隣保館をつくる、あるいはこれは政府自体が金をあまり出しておられませんでしたけれども、地方自治体等で同和教育を進める、そのくらいのことしか昭和三十三、四年ごろにはやっておらなかった。この共同浴場というのは、当時トラコーマが非常にはやった、そしてまた非常に貧困でございますから、自分のところに浴場をつくるというような余裕は一つもないというところから、共同浴場をりっぱなものをつくって、そうしてちゃんときれいなものができるというようなことが非常に緊急重要な事項であるという——隣保館も同様であります。その一番最初にやられた一番基礎的なこの二つの問題について、先ほどの土地の買収費に国庫補助がない。国庫補助が当然なければならないということで——さっき総務長官か御確認になったとおりであります。これを狭義に各省が解釈してやっているわけです。このあやまちを正して各省全部に、これから来週も要求するつもりですが、少なくも前に主管官庁であり、一番最初の同和対策であった共同浴場や隣保館の土地の買収費、整地費について当然来年は、いま御確認をいただいた方針に従って国庫補助の要求をされるべきだ。それについて厚生省の積極的な明快な御答弁をいただきたいと思います。
  99. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 先ほど総務長官から決意の披瀝もあったわけでございますし、国民の基本的な人権を守る立場からの八木先生の同和対策に対する御指摘、私どもも先ほど来の一生懸命この問題に取り組んでおる省の一つというふうに確信をしておるわけでございまして、そういう点におきまして、いろいろございますが、土地取得費補助につきましてはただいま先生の御主張の線に沿うように、いま厚生省でも来年度予算の総体的な検討を進めておりますが、努力をいたしたい、かように申し上げられると思います。
  100. 八木一男

    八木(一)委員 まだ何かちょっと遠慮しておられるような気配があります。断じてそれをしていただくようにしていただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。  ではまた総務長官、ちょっと御休憩いただきましたので、総務長官に伺います。  実はこの確認事項の中で非常にぐあいの悪い点が一つあるわけです。これは私も立法の下準備に当たった者として残念しごくであるのですが、この確認事項は、とにかく当時の佐藤総理あるいは床次長官が言っておるように、積極的に同和対策特別措置法は活用すべきものでありますから、それが制定されて四、五年たって欠陥が出たならば、それは直していかなければ……。法律は直さないでも運営についてできるわけですから。そういう点で、第十条について当時の野田自治大臣が、「法第十条は、地方団体が起こした同和対策事業のための地方債で自治大臣が指定したものの元利償還費を基準財政需要額に算入することとしている。全部を指定すべきものと考えるが、自治大臣は指定についてどのようなお考えなのか。」という質問に対して、「公営企業、準公営企業など、その事業収入を当該地方債の元利償還金に充てることができる事業に対する地方債を除き、国庫負担金または補助金を得て行なった事業に対する地方債を指定する考えである。」ということになっておる。これが非常に重要な点でございまして、二つあります。「国庫負担金または補助金を得て行なった事業に対する地方債を指定する考えである。」その国庫負担金及び国庫補助金を得てというところで、さっき申し上げましたように政府の認定する同和対策事業が制約をされておりますので、このためにこの第十条発動がその前に制約をされてしまうということになる。もちろん全部同和対策事業に指定されて、三分の二が国庫負担を受けて十条になるのが本則であります。ですからそうやっていただければこれは問題ないわけでございますが、それをやっていただくと同時に、もし国庫負担、国庫補助にはずれておるものについても第十条を適用するようにやはり運営をしていただく必要があろうということと、それからもうひとつ前に「公営企業、準公営企業など、その事業収入を当該地方債の元利償還金に充てることができる事業に対する地方債を除き、」というのがあります。これは具体的に言いますと、同対住宅で家賃をわずか取っておる、その家賃で償還金に充てることができるのだから、だから第十条の適用は必要ないというような解釈でこういうことがなされたわけであります。ところが非常に貧しい人たちのためにつくられた住宅で、この公営住宅の家賃を高く取るということは、これは非常に不当なことである。当然わずかな収入でまかなえるくらいな低い家賃しか取られていない状態であり、またその状態でなければならない。したがってその家賃は、実はその住宅の補修費にも当たらないような実態であります。ところがそういう実態でありながら、収入があって、それで元利償還に充てられるんだからという観念的な理屈で、この問題について第十条の適用がないというようなことになって、住宅という非常に需要の大きな問題について地方自治体がたくさんかぶらなければならないという問題がある。この間違った不十分な確認事項、制約をした確認事項は、その一方の下準備に当たった者として、私は国民に対してほんとうに申しわけがないと思う。それを受け入れられた政府のほうも、申しわけがないと考えてもらわなければいけないと思います。こういう制約をされた確認事項を、制約の部分をぜひ取っ払うというふうにしていただかなければならないと思うわけでありますが、それについての総務長官の積極的なお答えをいただきたい。
  101. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 御指摘になりました確認事項の制約のいわゆる削除、あるいは全面的な運用あるいは適用というような問題は非常に重要な問題でもあり、またそうした矛盾といいますか、要望、そういうような点も十分聞き及んでおりますので、自治省に対しましても強くお願いいたしておりますので、今後前向きの姿勢で自治省と連絡をとりながら検討を続けてまいりたい、こう考えております。
  102. 八木一男

    八木(一)委員 ほんとうに総務長官が内閣を代表して同和問題に熱意をもって取っ組んでいただくお答えに対しては心から敬意を表したいと思います。ぜひそれをやっていただきたいと思います。  それでは、ひとつ前の確認事項に含めまして実質単価の問題であります。一番最初に確認事項で、国庫負担があっても実際に要る費用と同じ予算単価をつくってもらわないと、三分の二の国庫負担でも予算単価が低ければ実際は三分の一の国庫負担になってしまい、自治体に非常なしわ寄せが来るという問題が起こるわけであります。この実質単価という問題がほんとうにやられていないわけでございますが、これについては大蔵省はどのように対処しておられるか、大蔵省の担当官来ておられますから、ちょっと伺っておきたいと思います。
  103. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 ただいまの件について御説明申し上げます。  まず、御承知のとおり街路とかそれから下水道、それから漁港等ございますが、この種の公共的な土木事業につきましては、個別の実施個所ごとに、事業計画をその年度の実行の段階で審査いたしまして、実勢に沿うように、事業の進捗に障害が生じないように個々に計画審査をやっておりますので、問題はないと思っております。  問題はその建築関係の予算の単価の問題でございますけれども、これも毎年度予算編成の時点におきまして、資材費労力費等、翌年度の経済見通し等を基礎にいたしまして適切な工事単価を積算すべく努力をいたしております。特に四十八年度につきましては、たとえば住宅等につきましては、四十七年度にいま先生指摘になりました超過負担の問題がございまして、超過負担の実態調査等の結果に照らし合わせまして、四十八年度においては例年に比べまして大幅な工事単価のアップを積算に入れております。  以上でございます。
  104. 八木一男

    八木(一)委員 どうも事務的に言うと何か対処されているように見えますが、大蔵省に私が交渉に行ったことがある。何回も行っておりますが、大蔵省に交渉に行ってどのようにして実質単価をきめているかと言うと、何か数年前に実質単価と予算単価が合わないので地方自治体の超過負担が多いということで洗い直しをした。それから毎年想定したパーセンテージをかけて、それでやっているということが去年大蔵省に交渉に行ったときの答弁です。そういうことでは非常に形式的で実際に合わないと思うわけであります。比率をかけるということは、総体的にどういう比率をかけておられるか、また時間があるときに別な機会に伺いますけれども、そのときの御説明ではとにかく観念的な比率であって、その比率が非常に少ない。それからもう一つは、全国的な水準の比率をかけておるにすぎない。同和問題は全国的にわたっておりますけれども、事業量は関西とかそういうところに非常に多い。そうならばそこの材木の値上がりなり大工さんの手間賃なりは、北海道とかあるいは宮崎県とかよりはかなり激しいわけであります。それを全国的な水準で、前に一回洗い直して毎年率をかけておるから実質単価に合うというような御答弁であります。まことに実態に合わない。このことについては大蔵省はほんとに実質単価にするようにやっていかなければならない。これは一般のほかの行政の場合でもそうです。地方自治体の超過負担というのは非常に痛い問題であるから直していかなければならない。それ以上にこの同和対策事業というものは、必要な事業量が多い府県は多い、多い市町村は多いということですから、この超過負担が残ればその府県や市町村の財政的な困難は非常に加重をするわけです。ですから全部の超過負担解消のために実質単価をとらなければなりません。それの推進、即時に全部やられるということについては大賛成でありますけれども、しかし、それがすぐにできないならば、少なくとも同和対策事業に関しては完全な実質単価を即時にやられる。いままでの形式的なものでなしにやられる。これをほんとうにやられることは、予算単価を完全に合わしてやる。しかしそれからの間に、一年間でも値上がりがある。値上がりがあった差額は年度末にこれを埋める、そのようなことをやらなければほんとうの実質単価になりません。そういうことについて大蔵省は対処をしなければ、当時の福田大蔵大臣が大蔵省を代表して実質単価をやると言ったこの公約に反するわけです。非常に不十分でありますので、それについては厳重な警告を申し上げておきますが、完全な対処をしていただきたいと思います。大事な質問がありますから、御答弁は必要ありませんが、そういうことについてぜひ総務長官の指導監督、また大蔵大臣に対する御協議を、大蔵大臣がほんとうの推進をされるようにひとつやっていただきたい。
  105. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 いま御要望、御指摘になりましたごとく、十分財務当局、すなわち大蔵省と協議を続けながら進めてまいりたい、こう思っております。
  106. 八木一男

    八木(一)委員 次に機構の問題であります。この大きな問題を推進するのに、総理府が指導、総合推進をされなければなりません。そのときに総務長官は非常に御熱意がある、副長官も御熱意をもって当たっておられる、室長も、また審議官も熱意をもって当たっておられますけれども、何としても人員が少ない、そういう状態があります。ですからぜひ内閣の中の総理府の中に、少なくとも同和対策局あるいは局にかわる、それだけの権限と人員を持った室、ことしすぐなら室でもいたしかたありません、局を目ざして来年は少なくとも局と同様な室をつくる、同和対策室をつくるということをぜひ実現をしていただきたいと思いますし、また各省にそういう課をつくる、そういうことを御指導いただきたいと思うわけであります。昭和三十九年の六月に臨時行政調査会の答申、勧告が出ました。あれは機構を全体的に縮小したいということが流れになっておる。しかしこの臨時行政調査会の報告をつぶさに読みますと、たとえば産業的におくれた地域、貧困な方方、の問題、人権の問題、そういう問題については、それに対処する部局をふやさなければならないと明記をしているわけであります。ところが政府全体が、各省全体があれをちゃんと読んでいないわけです。あの勧告は全部部局を小さくしなければいけないと思い込んでしまっているわけです。非常に責任を持った、しかも頭のいい政府の部局の人としてはたいへん怠慢であると思います。あの勧告のとおりにやっていただかなければならないと思う。三十九年の六月に出ましたから、これは同和対策と明記をしておりません。しかし、四十年の八月に同対審の答申が出ました。そのあとに臨時行政調査会の答申が出たならば、その問題に同和対策のための部局はこれを拡大しなければいかぬということが明記されるはずのものであります。そういう立場に従って、実は予算委員会で福田行政管理庁長官にも御質問を申し上げました。福田管理庁長官は坪川総務長官と御相談をして、その趣旨に従って同和対策の部局を拡大をする、整備をすることを進めたいという御答弁をいただいているわけであります。行政管理庁は完全に理解をしておられます。ですからぜひ総理府としては、総理府の中に局または局にかわるべき室をつくる、各省にその課をつくる指導をなさる。少なくとも総理府については来年度からそれを完全に実現をされるということについてぜひ積極的な決意を伺っておきたいと思います。
  107. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 八木議員御承知のとおりに非常に国民的な重要な課題であるだけに、行政の上においては非常に広範多岐にわたっておるという内容であることも御理解いただけると思います。そうした立場を考えますときに、その事業の推進またその執行をやる場合において、御案内のごとくやはり各省の主体性がおのずから必要であるということからの推進を私はやってまいりたい、そういうようなことを踏まえながら、そうした各省庁の国家的な立場からの大きい政策をどう統一、調整をはかりながらこれを取り扱うべきであるかと  いうことになると私は思うのであります。そうした観点から八木委員もいまの御要望をされているものだと私は解釈いたしておりますので、そうした点につきましてはひとつ御要望のとおり、また行政長官も御理解いただいた予算委員会の答弁も私は聞き及んでおりますので、また福田大臣ともよく相談をいたしながら、各省庁の意見も十分考慮いたしながら、予算編成の場において御期待に沿うべき姿でどうこれを改めていくか、推進していくかということは前向きの姿勢でひとつ取り組んでまいりたいということは申し上げておきたい、こう思っております。
  108. 八木一男

    八木(一)委員 これは一つの省庁で実施されるんだったら、私は同和対策省をつくっていただきたいと思っているわけです。しかし各省がいろいろな責任分野でやっておられることを考えまして、その総合調整あるいは推進に当たられる総理府にその局をつくっていただきたいと申し上げておるわけです。その総合調整、推進についても、たいへん今泉君熱意を持っておられますけれども、人間一人の力では各省に叱咤激励をするというのは時間的になかなか無理です。ですから、そういうことじゃなしに、今泉君が局長になられてももちちろんけっこうですけれども、それは別にして。人事の問題ですから……。どちらにしましても、ともかくたくさん有能な、熱意のある人を集めてそしてやられるために、局あるいはまた室というものを断じてつくっていただきたい。この特別措置はあと五年しかないわけですから、いま、来年つくらなければそれは間に合いません。ですからどんなことがあってもつくられる、予算要求はされる、大蔵省はそれはもう直ちにけっこうでございます。それを総理府が要求されなかったら、一体どうなったのですか、早く要求を出してもらわなければ困りますということを大蔵省は言われる。当然そうでなければならないということで御推進をいただきたいと思うわけであります。     〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕  次に、予算の問題について申し上げます。実は先日予算委員会の分科会で愛知大蔵大臣にこの問題について熱心に御質問を申し上げ、愛知大蔵大臣も熱意を持ってお答えになりました。予算の問題について本年度は直接の予算は昨年度に比較して一六三%というふうになって、やや率がふえている。これは率の問題ではないということを愛知大蔵大臣に申し上げました。完全に理解をしていただきました。政府のほうは大蔵省なりあるいはまた閣議の中でも、率の問題を頭に入れていろいろな考え方に当たられる方が多いと思う。明治以後百年、いろいろな問題に対処されている。いろいろな問題これはみんな大事ですが、農業の問題にしても教育の問題にしても、いろいろな問題にしても、ルートに乗っている。だからそれは飛躍的によくしなければならないけれども、率の問題で前からやられている問題である。ところが同和問題は、明治以後百年ほったらかしにされている。同対審の答申が出て行政調査会の報告があって、これから本格的に十分並んでやらなければならないということになった。したがって、前の年の何%増しということではこれは絶対にこれに対処ができないわけです。ところが予算全体が前年度の何%増しになった。その中で重要なものはそれより増加率のパーセンテージが幾分かよくなれば、それで対処をしたというような一般的な認識で問題を判断する方が多いわけです。総理府はもちろんそうではないと思います。大蔵省の方もさんざんきびしく申し上げておりますから最近はそういう気持ちではなくなっておられると思いますが、閣議の中でほかの閣僚の人がそうじゃない観点で、まあそれは六、三ならほかより率がいいからいいじゃないかというようなことを言われる人もないとは限らない。大蔵省の中でも、主計局はそうであっても、ほかの大蔵省の連中はそう思わない人もあれば、主計局で担当官はそうは思っても、ほかの主計官はそうは思わない連中があるということで、ブレーキがかかるわけです。そういうことがあっては断じてならないということで、この同和問題については予算は必要なものは必要なものだけ組むという態度でいかなければならない。したがっていまの対処が少ないので、地方自治体からあがってくるものは各省が全部これを受け入れる。各省が要求したものは大蔵省が全部そのとおり予算を組む。びた一文も削減は許されない。それだけではなしに、大蔵省がほんとうに考えたならば、まだ要求が少ないではないか、総理府はどうしているのだ、労働省どうしているのだ、厚生省どうしているのだ、建設省どうしているのだということを大蔵省が連絡をして、予算を組もうにも、たくさん組もうにも、要求が少なければ組めないという態度でやっていかなければならないということを愛知大蔵大臣に申し上げて、そのように、同和対策の完全解決のための予算はそういう態度で対処をしますということを明確に御答弁をいただいておるわけです。大蔵省の方々は聞いておいていただきたいと思う。そのとおりにやっていただきたいと思うわけです。  ところで、総理府の総務長官に、この前の山中総務長官の時代からこの予算の問題については、各省が大蔵省に要求される、そのことについて総理府がこの中心の総合官庁として、この予算の問題について総理府自体も各省とともに大蔵省に交渉をされるというよい風習がつきました。坪川総務長官もそれをさらに前進してやっておられると思いますが、ぜひいま言った予算は完全に各省の要求が実現をする、そういう立場で最善の御努力をやっていただきたいと思いますが、坪川総務長官の積極的な力強い決意のほどを伺わせていただきたいと思います。
  109. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 同和対策に対するところの政策の万全を期し、予算的措置を万全を期するという姿勢は、冒頭にお答え申し上げましたとおりでございます。したがいまして私といたしましては、幸いに愛知大蔵大臣も非常な深い理解と認識の上に立って八木委員に答弁をされておることを思うときに、まことに力強いものを感ずるのであります。私といたしましてはそうした点を期待いたしまして、これからの四十九年度の予算編成に際しましては、そろそろもう来週ごろから私は事務的な判定を指導をいたす、その場合にはあくまでも同和対策に対する予算措置に万全を期したいという考えで、亘理審議官あるいは関係担当の係官と十分協議をして御期待に沿うよう万全の指導と配慮をいたしたい、こう考えております。
  110. 八木一男

    八木(一)委員 大蔵省政務次官は来ておられますか。——大蔵省の政務次官に、いま御質問申し上げたことをお聞き取りをいただいていると思います。先日愛知大蔵大臣に御質問をし、大蔵大臣から御確認をいただいた線で、当然政務次官も大臣を補佐して全力を尽くしてやっていただきたいと思います。またやっていただくべきであると思いますが、それについてのひとつ御決意のほどを大蔵政務次官から……。
  111. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 先般の予算委員会の分科会でも八木委員から非常に熱誠を込めた御質問が大蔵大臣に対してありまして、これに対して大蔵大臣は、同和問題は政府の姿勢としてもそうでございますが、大蔵大臣個人といたしましてもこの問題は超重要な問題であるということをよく認識をいたしておりまして、この認識のもとにできるだけひとつ努力を傾けたい、いろいろ八木委員からお話のございました点につきましては、十分な反省を込めて、御趣旨に沿うようにいたしたい、こういう答弁もいたしておるわけでございますので、大蔵省としては、さような考え方の線に沿って今後善処をしてまいりたい、こう考えているわけでございます。
  112. 八木一男

    八木(一)委員 政務次官は大蔵大臣を積極的に補佐をなさっていただきたいと思いますし、また、主計局その他大蔵省の関係局の方が大蔵大臣の御確約の線に従ってやっていただくことを確認をいたしまして、他の省のほうに移りたいと思います。  次に、労働省に対して御質問を申し上げたいと思います。  実は、この同和問題の完全解決について一番中心的な事項は、就職の機会均等というものを実現することであります。そのことについて労働省は、本年は就職の問題についてやや前進した方策をなされました。そのことは非常に評価をいたしますけれども、しかし、いままでは、この問題についてはあまり具体的なものがありませんでした。本年度やや前進された上に立って、就職の機会均等、この同和地区の住民の職業を安定するように最大限の努力をしていただく必要があろうと思うのですが、それについての労働政務次官の、労働省を代表してのひとつ積極的な御意見を承りたいと思います。
  113. 葉梨信行

    ○葉梨政府委員 同和問題は基本的人権に関する問題でございまして、その早急な解決は国の責務であり、また国民的課題でございます。特に、ただいま先生がおっしゃいました就職の機会均等の実現というのは、中心的課題でございますので、同和地区の方々につきましての就職の差別を解消し、また近代的産業への就職の促進につとめておるところでございます。具体的に申し上げますと、事業主に対しまして啓蒙、指導の強化をはかっております、これはもう御説明するまでもございませんが。  あるいはまた、新規学卒者を中心としまして、職業指導の推進をはかっております。これは、千二百校の中学校がございますが、これらの中学校を指定いたしまして、バスを仕立てて事業所を見学して、事業所に対する理解を深めた上で就職企業をきめるというようなことをいたしております。  また、求職者に対しまして各種の就職援護措置を実施しておりまして、これは先生御存じと存じますが、就職指導手当二万五千円、職場適応訓練、これは六カ月から一年間本人に対しまして三万二千円を支給し、事業主には七千百円の委託費を支給しておる。  三番目には、公共職業訓練を行なう。  四番目には、就職資金の貸し付け。これは単身者二万五千円、世帯主五万五千円を支給しております。  五番目には、雇用奨励金としまして、月八千円ずつ一年間支給しておる、こういうような措置をとっておるわけでございます。  また六番目には、職業訓練の強化というものを行ないまして、たとえば自動車の免許証の取得のために、自動車教習所の教習料を国で全部めんどうを見るというようなことを実施しておるわけでございます。  また、同和地区の方々の就職を促進するために、公共職業安定所に専門の職員とか職業相談員を置きまして、巡回職業相談の実施などをしておりまして、きめこまかく職業指導につとめておるわけでございます。  今後はさらに、このような職業指導体制の整備拡充に一そう努力をしていきたい、こういうように考えておる次第でございます。
  114. 八木一男

    八木(一)委員 労働省がかなり積極的に対処をしようというお気持ちであることは評価をいたしますが、この問題は一番大切な問題であって、一番進んでいない問題であります。同和対策の解決については、実際に地方自治体が非常に熱心に取り組んでおりますが、しかしながら、地方自治体では環境改善等が中心になって、ほんとうに就職の促進の問題や産業の振興の問題についてはなかなか手がつけにくいのであります。この職業の問題については労働省がほんとうに全面的に対処をしていただかなければならないと思います。その問題については飛躍的にひとつあらゆる方策を考えて推進をしていただく、そして当然予算要求はぐんぐんしていただくということにしていただきたいと思いますが、それについてひとつ。
  115. 葉梨信行

    ○葉梨政府委員 先ほどからの先生の御質問を伺いながら、同和対策の重要性につきましては、いままで以上に私も認識を深めたところであります。先ほど答弁申し上げましたような施策をさらに充実させると同時に、また、こういうことをやったらどうかというような御提言でもございましたならばお聞かせいただいて、それらをどんどん積極的に行なっていくということで、あと残る五カ年を実効あらしめるように、労働省側としても積極的に努力をしていくということをここでお誓い申し上げる次第でございます。
  116. 八木一男

    八木(一)委員 道正さんに伺いたいと思います。  これはごく緊急な問題でございますが、同和地区の特別な産業の中でグローブ、ミットというものが非常に大きな部分を占めておる。ところが、円の変動相場制のために、この零細企業がほとんど壊滅に瀕しておるわけでありまして、そこで働く職人、労働者は、職業も生活も先行き非常に見込みが少ないという状態にあるわけであります。一般的に雇用を増大すると同時に、このような産業に従事をし——それまでに何も保護がございませんでした。援助もありませんでした。それでみんなでグローブ産業を盛り立てて、そこで仕事をし、生活をしておったところが、円の変動相場制移行ということで猛烈な打撃を受けて、生活の道、職業の道が閉ざされているわけであります。その間、職業安定所でいろいろ就職のあっせんをされたようであります。また、関係団体みずから走り回ったようであります。ところが、そこで転職者の就職ができた部分はごくわずか、数名であります。数名というのはゴム産業だけであります。  部落の人たちの仕事というのは、大体五種類くらいに限られてしまっているわけです。一つは、はきものとかそういう皮革関係の仕事、それから清掃関係の仕事、土木関係の仕事、それから小さな商いというような、部落の産業内をくるくる回っているような状態であります。そうでなしに、他の一般の近代産業にどんどん転職ができるという状態をつくらなければならないわけでございまして、一般的に非常に重要な問題でありますが、それだけいままで就職の機会均等が保証されていない中で、わずかに努力して仕事をし、生計を立てておる人たちが、国の貿易政策や国の為替政策の変動のために、わずかに得た職業からほうり出されるという状態について、緊急に最善の策をとっていただかなければならないと思いますが、これについての労働省の、特に職業安定局の積極的な態度をひとつ伺っておきたいと思います。
  117. 道正邦彦

    ○道正政府委員 御指摘のように、グローブ、ミットの産地におきましては離職者の問題が重大な問題になっております。非常に複雑でございまして、たとえば一人親方であるとかあるいは家内労働の形で就職されておる方もかなりおられまして、いわゆる失業保険制度の適用から除外されておるわけでございます。また失業保険の適用がある事業所につきましても、適用漏れになっておるというような者もございます。そういうところで非常に苦慮いたしておりますが、離職者対策につきましては、かねてより職安行政の最重点施策一つということで取り組んでおります。特に御指摘のように、一定の地域に集中的に発生をする離職者の問題でございますので、安定行政といたしましては、関係の安定所、あるいは他府県にまたがって就職をあっせんする必要もございますので、ブロック内の連携も緊密にとりまして、御指摘のようにできるだけ近代的な産業への再就職のごあっせんに万全の努力をする覚悟でございます。
  118. 八木一男

    八木(一)委員 やや具体的なことになりますが、たとえば失業保険の適用について、これは行政運用の最大のよい対処をされて、みんなが失業保険の適用を受けられるというふうにしていただきたいと思いますし、それから中高年齢層の就職促進措置について、これは部落の関係については若い人であってもその対象にしていただいていると思います。これについて訓練手当が出ますけれども、たとえばグローブ、ミットの人などは一生涯すわり切りでミットをやったりなんかしていますから、ほかの近代産業で立ってする仕事、腰かけてする仕事——そういう立ってする仕事のようなものになるには、ほかの近代産業から近代産業に転業する人と違って、もっと長い訓練期間が要る。その期間、訓練手当は十二分に支給されなければならないという問題がございます。そういうことについていまの行政運用でできることは全面的にしていただきたいと思いますし、また行政運用でできにくいことがあれば、この失業保険法についても、また中高年齢層の就職促進措置の関係の法律についても、法改正の必要があったら法改正をする。あるいは行政運用でできれば直ちにそれに対して対処をされるということをしていただく必要があろう。また転職について、ほかの人たちと違って、ほんとうに貧困のどん底にいまありますから、転職に対する支度金というようなものがなければ実際転職に非常に困難な状態になるという、そういうことについて、また別の機会に十二分に具体的な問題についてお答えをいただきたいと思いますが、全面的にあらゆる方法を使って対処をするということについてひとつ御決意のほどを伺っておきたいと思います。
  119. 道正邦彦

    ○道正政府委員 最初にお述べになりました失業保険の適用の問題でございますが、現実に失業保険の適用漏れがありますことはまことに遺憾でございまして、加入促進につとめたいと思いますが、特に当面問題になっております離職者で、本来ならば失業保険の適用があるべき事業場からの離職者の方々につきましてはまことにお気の毒でございますので、遡及適用の措置も講じまして失業保険の支給についてはほかの離職者と同じように扱ってまいりたいと思います。またいろいろ御指摘の点につきましては、同和関係者の実情を十分踏まえまして、行政措置でできるものにつきましてはそういうふうにいたしますし、なお今後検討を要することにつきましては、来年度の予算編成の時期でもございますので、十二分に検討して万全を期したいというふうに存じます。
  120. 八木一男

    八木(一)委員 いまのように対処していただくことについて、いま政務次官からお答えを求めませんでしたけれども、政務次官、大臣と御一緒に御推進をいただけるものと確信をいたしたいと思います。さらに同和対策の雇用促進法とか、あるいはそれにかわるべき行政措置とかそういう問題について、ひとつ急速に具体的に検討していただいて御推進していただきたいと思いますが、この点について政務次官からひとつお答えをいただきたいと思います。
  121. 葉梨信行

    ○葉梨政府委員 いまおっしゃいましたことにつきましては、十分に省内で検討いたしまして、できるだけ御趣旨が実現できるように努力をいたします。
  122. 八木一男

    八木(一)委員 建設省にちょっと伺いたいと思います。  いまいろいろの質問と応答について建設省で聞いていただきまして、建設省としては、先ほど厚生省に申し上げた土地の問題等について、いろいろな確認事項のいまの正しい解釈を総務長官はなさいましたが、それに従って推進をひとついただきたいと思いますが、それについて建設省のほうから御意見を伺いたいと思います。
  123. 沢田光英

    ○沢田政府委員 土地に対する補助の問題あるいは十条適用の問題、特にこの十条適用の問題につきましては、先生昔から関係されておりますし、私どもも自治省とたびたび折衝しております。今後もいまの総務長官のお話に従いまして続けていくつもりでございます。いずれにいたしましても地方公共団体の負担というものはかなり大きくなりますので、これを削減しなければ事業は進みません。そういう面で格段の努力をしたいと考えております。
  124. 八木一男

    八木(一)委員 自治省に伺いたいと思いますが、いまの普通交付税と特別交付税の問題で、特別交付税の中で不交付団体に普通交付税と同じように交付する特別交付税がございますけれども、この特別措置法の制定された経過において、その前からありました特別交付税を完全に確保して、そしていろいろの同和対策のために必要なものについてはこの特別交付税を活用していくという確認でやられているわけであります。この特別交付税の活用については、自治省はかなり積極的に対処をしておられます。たとえば建物、土地の問題でいろいろまだ未解決の問題について対処をするために、たしか秋田自治大臣と山中総務長官の時代に両省で協議をされまして、特別交付税でたとえば二分の一対処をするということをされたのを、本年は三分の二対処するというふうに前進をされました。それは評価をいたしたいと思いますが、十条適用の問題が非常な大きな問題になっておりますときに、この問題について特別交付税においていま現状においては十分の八まで対処をしていただくことによって、当面の問題がかなり解決をすると思うわけであります。その点について、ことし三分の二にされたことについては評価をいたしておりますが、さらに十分の八までなるように熱心な御推進をいただきたいと思いますが、自治省のほうの積極的な御答弁をひとつお願いします。
  125. 鎌田要人

    ○鎌田政府委員 お尋ねの点につきましては、いまお述べになりましたように、ことし、従来の二分の一を三分の二に引き上げることによりまして、私どもといたしましては精一ぱい努力をしたつもりでおるわけでございます。     〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕 これを直ちに八割にするかどうかという点につきましては、これは御案内のとおり交付税の総額、特に特別交付税の総額、これの確保の問題とのからみ合いで引き続き検討さじていただくということにお願いいたしたいと考えておる次第でございます。
  126. 八木一男

    八木(一)委員 ぜひ積極的な御検討、御推進をお願いをいたしたいと思います。  さらに、関連いたしまして、この交付税の問題について、交付税の全体のワクがきまっております。地方自治体が正しい行政を進めるために、交付税のワクはふやさなければならないと思いますが、特別交付税も交付税も総ワクの中に入っております。特別交付税というものはたとえば災害その他のためにつくられた制度である。そしてそのために、たとえば同和対策を推進するときにそれだけの金額的なブレーキがあるということではならないということで、前々から私は国会で政府にそれを直すように申し上げてきたわけです。ぜひ自治省としては交付税全体のワクをふやす、それから特別交付税では同和対策の問題を対処しているわけでございますから、昔の災害等を主体とした特別税のワクではなしに、特別交付税全体のワクをふやされる、そのような推進が必要であろうと思います。それについてひとつ積極的に対処をしていただきたいと思います。ひとつ積極的な御答弁をいただきたい。
  127. 鎌田要人

    ○鎌田政府委員 特別交付税の配分にあたりましては、ただいまの災害等、当初、基準財政需要を見込みますときに予測できないものを補足するという機能があるわけでございます。同和対策事業につきましては、これは私どもいわば災害対策と並びまして優先的にこれを扱っておるわけでございまして、先生御案内のとおり、四十五年度で四十四億でありましたが、四十六年度五十七億、本年度、四十七年度は七十五億、こういうふうに他の項目とは比較にならない高い伸び率でふやしてきておるわけでございまして、格別この分について特別なワクを設けるということにいたしませんでも、私ども十分問題の重要性を認識いたしておりますし、地方の実情もわかっておりますので、特別交付税の運用におきましては、全体的な総ワクの拡大は当然でございますが、その中で従来にも増して優先的に配慮してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。     〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕
  128. 八木一男

    八木(一)委員 特別交付税で十分に対処できるならけっこうですが、災害がたくさんあったら、そのとき同和対策に来る交付税が少なくなるということでは困る。災害はないほうがいいけれども、突然ものすごい災害があることがあります。ですから、その災害の問題でブレーキをかけられないような同和対策に対する特別交付税のワクをさらに拡大して完全に確保する、そういう態度で自治省が御推進を願うことを強く要求をしておきたいと思うわけであります。  最後に、大蔵省の方おられますね——帰られましたか。それでは、実は本日はまだまだ時間が足りないので詰められませんので、大蔵省と、きょう来られた各省の中でもまだ建設省、自治省その他申し上げなければならないことがありますが、大蔵省は途中で帰られた、これは非常に怠慢であると思います。農林省や通産省や文部省や法務省や、あらゆる省に関係のある問題でございますが、来週私も同僚とともにこの問題をさらに追求してまいりたいというふうに考えておるところでございます。  最後に一言だけ、残っておる各省の方に申し上げておきたいと思います。  大蔵省に対しては、断じていまの考え方を変えて予算要求をされたい。また自治省も大蔵省に、原資については強硬に主張していただきたい。また各省は自治省に対しても、起債あるいはまた交付税については強力な要求をされたいということであります。  御承知のとおり、明治の初年において武士階級は、就職について優先的な実際上の特権を確保されております。ところが、明治以降武士階級とともにいろいろなことが変わったはずの部落の同胞については、あらゆる面で就職の機会均等を阻害され、産業に従事することを阻害され、ずっとやってきたわけです。その武士階級に対して二億一千万円の秩禄公債が当時発行されております。これは三年前の計算でございますが、いまの、その三年前の貨幣価値に変えますと八千億、それだけの値打ちのものを年四分利で活用するとすれば四十五兆円になるということである。武士階級のほうが部落の同胞よりはるかに数が少ない。完全に明治以後、たとえば国家公務員、地方公務員あるいは新しい商社等の幹部になる優先的な立場を保障された武士階級に対して、俸禄がなくなったということだけでこれだけの補償がされていて、あらゆる点で差別を受け、あらゆる点で産業に従事する機会を失わされた部落の同胞に対して何らの措置がなされていないということで、同和対策特別措置法が対処すべくでき上がったわけです。そのことに対しての予算面として、本年はわずかに百五十八億何がしであります。そしてその他の特別ワクを入れても、これはまだ四百億円台であります。大阪地方だけで自治体が対処しているものが五百億をこえる、そのときに国の支出が四百億、全くもって言語道断であります。武士階級に四十五兆に余る補償をしているとするならば、おのずから、それよりも人数が多い、非常に抑圧された人たちに対処すべきものとして、たとえば百兆、百五十兆の対処をしても対処のし過ぎということにはならないのであります。そうなれば、一年間の予算が一兆になっても多過ぎるということにならない。そのときにわずか百五十八億というような状態であります。  ここにおられる各省庁にはぜひそれを体されて、地方自治体から出てきたものについては、これをもっとたくさん出してこい。そして各省自体で配るものについては積極的に予算の要求をとる、断じてこれを削減させないという状態で推進をしていただきたいと思います。自治省は大蔵省に対して同じような態度で要求をする。そして起債や交付税に対する各省の要求については、断じてすべてこれを受け入れられるという態度でやっていただきたいと思います。  御答弁は総務長官にお願いをしたいと思いましたけれども、おいでになりませんから、それをやっていただけることを強く要求をしまして、本日の質問をこれで一応終わっておきたいと思います。
  129. 田川誠一

  130. 塚田庄平

    塚田委員 時間もございませんので端的に要点だけを質問いたしますので、御答弁も簡潔にお願いいたしたいと思います。  実は函館市、室蘭市に函館ドックという会社があります。これは造船会社としては日本でも中堅あるいはそれ以上の会社だろうと思います。ここで職案法四十四条違反あるいは労基法六条違反、そして不当労働行為、こういった事態がここ二、三年表ざたになりまして、不当労働行為についてはすでに地方労働委員会に提訴をされております。  先日、私ども社会党として五名の調査団が現地に出向きまして、うわさにたがわず、その実態というのはまことにひどい、違法、脱法を白昼公然と行なっていること等を調べてまいりましたので、そういう実態に基づいて労働省、あとで運輸省が来るだろうと思いますが、御質問をいたしたいと思います。  造船産業というのは、これは日本では高度成長をになった基幹的な産業であることは否定できないと思うのです。それだけじゃなくて、日本の造船というのはまさに世界に冠たる技術、あるいはまた、何でも世界の造船界のうわさでは、日本に注文したら工期がまことに正確だ。何年何月何日に納めるという工期を確実に守るということで非常に好評を博しておる、こういうことなんです。しかし私ども実態を調べた結果、日本の造船界の実態というものは、たとえばこの間ニクソン・ショックで為替差損の問題がありました。国民の税金で税をまけるという形で、長期間償却ということで為替差損の埋め合わせをやる。新しい船舶をつくるという場合にはこれは財政投融資財投の資金を大きく導入する道が開かれておる。できた場合に税金はこれは特別措置でまけられる。銀行の融資は輸銀を中心として興銀あるいはまた公庫の資金等を大幅に導入できる、こういう国の非常に手厚い保護の中に成長しておるということは、これは否定できないと思うのですね。これが造船の発展といいますか成長のささえをしてきた。しかし私ども、もう一つ日本の造船界のささえどしてやはり労働問題というのを見のがすわけにいかないわけです。特にその場合下請の関係、本工と下請との比率が他産業に比して非常に下請が高い。つまり、労働関係からいうと心ずしも安定した労働関係の中で仕事がなされておらない。当然これには不当労働行為というのが裏表となって常にぼつぼつと噴火のように出てくる、こういう実態が私は日本の造船界の実態じゃないかと思います。前の資金の関係あるいは国家保護の関係は除いて、あとの点についてひとつ、以下御質問を申し上げたいと思います。  労働省は、これは函館ドックだけじゃなくて、ここ二、三年造船関係で不当労働行為ということで労働者側が地方労働委員会あるいは中央労働委員会に提訴した、そういう案件はどのくらいあると思いますか。
  131. 岸良明

    ○岸説明員 ただいまのお尋ねでございますけれども、正確な数はわかりませんが、私どもの記憶しておる限りでもそういうような問題が多々あったという点は記憶いたしております。
  132. 塚田庄平

    塚田委員 記憶しておらなければ、私の調べた範囲でひとつ言います。  ごく最近ですね、昭和四十六年、あまり遠いやつはもうこれは数限りありませんから……。昭和四十六年の九月浦賀ドック、岡山の玉島製作所——これから言うことをひとつ関連して考えてください。この玉島製作所というのは、すでに追浜に大ドックをつくる計画が進められておる。そして浦賀ドックについては不当労働行為ありという認定が下されておるものが多々あります。昭和四十七年九月三保造船、これは静岡です。昭和四十七年十月佐野安船渠、これは大阪ですね。このドックは水島ですね。岡山の水島に新しく大ドックを建設するという、こういう計画が進められております。昭和四十七年十一月金指造船、これは静岡ですね、清水だと思います。これは豊橋に大ドックを建設するという予定でいま準備が進められております。そうして函館ドック、これはすでに御承知のとおり三十万トン造船ドック、三十万トン修理ドック、合わせて六十万トン。同じ室蘭には間もなく十五万トンの修理ドックが完成する。いずれも将来に大計画を持っておる。そういう日本の中堅の造船会社でいま言ったような不当労働行為がそれぞれ摘発され、あるいはまた提訴されておるという事態ですが、この事態について、状況として労働省は一体どういう判断が生まれてくるか御答弁願いたいと思います。
  133. 岸良明

    ○岸説明員 ただいま先生のおあげになりました諸般の事例でございますが、必ずしも私詳しくその実情を熟知しているわけではございませんが、いずれにいたしましても、私は大体二つの面があるのではないかと思うわけでございます。  一つは、これは先ほど来先生が御指摘をいただいておりますその企業の大きい、何といいますか、伸長の過程においていろいろな問題が派生をしているという面と、もう一面はやはり私どもの承知している限りでは、労使関係上特にいろいろな複雑な関係があるように見受けておるわけでございます。これらが両々相まちまして、地労委段階等にいろいろな事案が提訴されてきておる、そういうふうに承知をいたしております。
  134. 塚田庄平

    塚田委員 いま課長の答弁で、企業の伸長の過程においていろいろ問題、労使の関係上いろいろ問題と、こういういろいろ、いろいろなんですが、私ども調べた範囲では、いずれもいま言ったとおり大ドック建設の計画があるという中で、この経営者側は労働組合に対して不必要な、端的に申しますと警戒心といいますか、そういうことから発した第二組合の育成なり、あるいは干渉なりがひんぱんに行なわれるという傾向を示しておるということは認められないですか。
  135. 岸良明

    ○岸説明員 先ほど御指摘になりました事案のうちで、私は、やはり国会等におきまして御指摘をいただいて問題になりました玉島造船、それから今回の函館ドック、これはいずれも労働関係というようなことが非常に大きなファクターになって不当労働行為等が起きておるというふうに承知をいたしております。
  136. 塚田庄平

    塚田委員 そこでこの不当労働関係については、一次的にはこれは地方労働委員会あるいは中央労働委員会というものがあって、具体的に審査が進められると思うので、ただ当面、きのうきょう起きた事件について課長見解を求めたいと思うのです。これは函館ドックの場合です。労使関係が非常に不安定、特に私ども調査の限りでは、ドック資本の第二組合育成、不当労働行為の事実、これに対する第一組合の反発等で、ついこの間は二百人に及ぶ労働者の摩擦があって、流血の事態が起きたということもございます。そういう中で春闘、われわれのことばで言うと春闘ですね、春の賃金の取りきめがいまだになされないまま交渉が続けられております。その春闘と、お盆になりましたので当然これは一時金の要求があるわけですが、あわせて交渉しまして、基本賃金はとにかくとして、一時金要求については十一日の段階で実は労使双方妥結をしました。そこで組合は当然これは機関にはかってこの妥結をのむかのまないかの決をとったところが、組合では一時金については妥結よろしいということになって、会社側に直ちに支払いを要求したところが、第二組合も同時に同じ金額で実は妥結したわけです。第二組合には即時払いました。しかもこれは通常、ドックの慣習として一時金の支払いは退場時に、門を出るそのときに渡すのだそうですが、今回の場合はまだ仕事をしているさなかにそれぞれ個々に渡して、しかも隣は第一組合だから渡らぬ、こちらは第二組合だから渡るということで、第一組合はこれを裁判所に提訴した。つまり支払うべきだという仮処分申請をしたという事実を、課長は御存じでしょうか。
  137. 岸良明

    ○岸説明員 ただいま先生指摘になりました事案につきましては、私ども内容を承知いたしております。
  138. 塚田庄平

    塚田委員 結果はどうなりましたか。
  139. 岸良明

    ○岸説明員 私どものほう、県を通じましていろいろ実情を調べておりますが、先生指摘のように、七月十一日の段階で、かりに組合を第一組合、第二組合と申しますと、第二組合側のほうは七月十日に妥結をして、十二日に支払った。第一組合のほうにつきましては、一時金のみ妥結した、きめたけれども、会社側では、賃上げ後の賃金が基準になるということから、春闘の賃上げというものがまだ妥結してない段階で、一時金の妥結を拒否した。そういうことで第一組合では、函館地域に五十一名分の一時金の支払い仮処分の申請をいたしました。この十四日には支払い命令が出たわけでありますが、会社側が異議を申し立て、地裁におきましては、八〇%の支払いを命令した。会社側では十六日に、昨日でございますけれども、五十一名分の支払いを行なっておる。  なお、この第一組合におきましては、これと並行いたしまして、七月十三日に五十一名以外の残余の方々の一時金の支払いについて、地労委にあっせんを申請いたしました。地労委は、十六日に全額支払い等のあっせん案を提示いたしまして、労使はこれを受諾して、本日支払いの予定である、かように聞いておるわけでございます。
  140. 塚田庄平

    塚田委員 いま課長の答えた中で、この一時金というのはどういう性格か。いま御指摘になったとおり、たいてい基本賃金のベースがきまらなければ一時金は出ないと常識的には考えられますけれども、函館ドックの場合はそうじゃなくて、一万五千円の祝い金なんですよ。つまりドック完成の祝い金なんですよ。これは決して基本賃金をもとにして査定される性質のものじゃないわけですから、これは調べてください。そういうものについて差別をつけておる。  それから、五十一名についてやったというのは、とりあえず五十一名の賃金を集める、全員について、千何名について集める時間的な余裕がないので、とりあえず典型的な五十一名についてやったところが、地裁でこれについては払うべきだという判定が下ったわけです。私はそのことについて、事ほどさように、地裁もこう言う、あるいは労働委員会もこう言う。にもかかわらず常識的に考えて、当然差別をつけるところじゃないところに差別をつけて、しかも執達吏が現地に行ってクレーンを押えるというまぎわになって支払う、こういう企業の体質が、不当労働行為やこれから以下述べる社外工の取り扱い等の問題について出てくるのじゃないか、こう思うのですよ。その点どう思いますか。
  141. 岸良明

    ○岸説明員 ただいま先生が御指摘になった点でございますが、私どもの承知していることと若干違いますので、それを申し上げておきたいと思います。  一時金のほうは、第二組合が妥結しましたのが二十二万五千円という、これは夏期一時金でございます。そこで、会社側の主張、事情を聴取したところによりますと、七月七日から九日の間にトップ交渉で大型ドックの完成祝い金として一万五千円、これは十一月に支払う予定であったのを今回出すということによって、夏期一時金の問題はベースアップの問題と同時に解決したいということで、第一組合にいろいろ話したのですが、第一組合のほうではいずれにしてもベースアップの分はこれは妥結はできない、一時金の分について妥結をしたい、こういう主張であったというふうに私どもは承知をしておるわけでございます。  したがいまして、これは夏期一時金でございますから、やはりベース的には新しい賃金というものにのっとってやらざるを得ないという感じも、私は理解できないわけではないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、二つの組合の中に、そういうのは、一時金の妥結の中でいろいろとトラブルが起きるということは、これは私は全般的な労使関係上必ずしも適当ではない、こういうふうに感ずるわけでございます。
  142. 塚田庄平

    塚田委員 まあここで具体的なことをこまごま言ってもしようがないと思いますが、二十二万五千円、それは知っております。けれどもこれはあとで調べてください。労使の団体交渉の席上で、その配分については組合に従うということで、特別いまベースが確定しなければ払えないものではないということだということだけは、ひとつあとで調べていただきたいと思います。  そういうことで、函館ドックにはいろいろな問題が山積をいたしております。  そこで私どもは、これは函館ドックだけの問題じゃなくして、先ほど指摘したとおり全国的に造船の関係については、特に新しい大きなドック計画のあるところに限って、どういうわけかそういう問題が起きるということについては、ひとつ労働省としても調査を十分進めてもらわなければならない。起きた場合にはこれは当然地方労働委員会の認定にまつのだろうと思いますけれども、しかし起きないような事前指導というものをやはりやらなければならぬ、こう思いますので、不当労働行為についての課長の御見解をひとつ承りたいと思います。
  143. 岸良明

    ○岸説明員 ただいま先生の御示唆でございますが、私どもといたしましても、おっしゃいましたとおり、こういう造船関係で不当労働行為が実際地労委関係等にも出されてきておる。こういう実情もございますので、かねがねそういう面についてはできるだけ注意をして、実情等、関係の県から聴取しておるわけでございます。御指摘もございますので、そういう面でさらに詳細な調査をして実態を把握してまいりたい、かように思います。
  144. 塚田庄平

    塚田委員 そこで、運輸省来ていますか。
  145. 田川誠一

    田川委員長 来ております。
  146. 塚田庄平

    塚田委員 さきごろ「ぼりばあ丸」あるいは「かりふおるにあ丸」の座礁海難ですか、まあ二つに割れたという事件を契機にして、船舶局は特に造船会社に対してそういう事故の起きないようにということで、幾つかの指導をしておると思うのですよ。たとえば安全面で溶接がどうである、あるいは点検をどうせいというような、あるいはX線をこれだけとれ、具体的な指導をしておると思いますが、その中で造船会社における労使関係について、あるいは労働構造について、どういう見解で、どういう勧告と言いますか、指導をしておるかということなんですが、この点ひとつお答え願いたい。
  147. 内田守

    ○内田説明員 いま先生指摘がございましたように、四十四年の一月に「ぼりばあ丸」、それから四十五年二月に「かりふおるにあ丸」事件という不幸な事態になりまして、私ども運輸省のほうといたしましても、気象、海象、それから運航、もちろん造船の分野も含めましていろいろ調査いたしました。反省すべき点は反省する、また前向きに一そう安全を増進するという見地からいろいろの施策をとり、また現在とっておるわけでございます。  その中の、構造の基準の問題であるとか、検査のやり方の問題であるとか、あるいはいろいろな施設の問題であるとか、いろいろございますけれども、いま御指摘になりました人為的な問題としては、特に品質管理、工程管理等の問題が一番問題であろうかと存じます。したがいまして、私どものほうといたしましては、特に人為的な面につきましては、特に社内の品質管理体制という面から、いろいろな通達も出し、いわゆる総点検と申しますか、今年もおもなる造船会社を船舶検査官を立ち会わせまして、そういう人的あるいは物的な点についての検査それから指導等を行なっておるわけでございます。
  148. 塚田庄平

    塚田委員 そういうことじゃないのですよ。もっと基本的に造船会社の作業を進める上の労働構造といいますか、端的にいいますと下請と元請の関係が一体どうなっておるのか、これについてメスを入れなければ、単に品質検査とかなんとか言ったんじゃ、基本的な解決にならぬと思うのですね。現にこれについては運輸省はすでに、こうしますという回答を出しているはずなんですね。たとえば一九七二年に全造船という労働組合からこうしなさいという要求に対して、一定の回答をしているはずなんですよ。下請の実態をどう見ているのですか。
  149. 内田守

    ○内田説明員 実は私非常に申しわけないのでございますけれども、船舶局の首席検査官でございますので、特に生産管理あるいは生産監督という面からの実は担当者ではございませんので、詳しい点はちょっと承知しておらないわけでございます。ただ、いま申しました検査という面からの問題としまして、先生おっしゃったたとえば下請の問題という点も一つあろうかと思いますが、これにつきましてはある程度の下請のパーセンテージと申しますか、そういう面は造船産業の上ではある程度避けられない産業構造になっておりまして、これにつきましては御承知のように一昨年でございますか、特に社団法人を——下請の業界が集まりまして、そこを通じましていろいろな問題について指導をし、またいろいろな要望に対してこたえるようなことをやっているという点、非常にマクロではございますけれども、その程度のことは承知しております。
  150. 田川誠一

    田川委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  151. 田川誠一

    田川委員長 速記を始めて。
  152. 塚田庄平

    塚田委員 それでは、いまの点はあとでひとつ別な人が質問しますから、あれしてください。  具体的に入ります。安定局長おりますか。——この函館ドックの場合、直用の労働者が室蘭を入れまして三千二百六十七名おります。そのほかに下請労働者というのが千五百七十おります。つまり、全労働者の三六%は下請が占めておるわけです。これは部門によっていろいろ凹凸があります。たとえば修繕部門では、ことしの末までには大体本工に比較して六八%くらいの数にまで上げよう、こういう計画がすでにわれわれの調査で明らかになってきております。つまり先ほどちょっと御答弁がありましたが、そういう下請をだんだんと減らしていくという方向じゃなくて、全般的に日本の造船界はむしろ下請のウエートをどんどん高めていくという傾向にあることは、これは事実です。そういう中で函館ドックは生産をやっておるのですが、局長は貸し工ということばを知っておるかどうか。
  153. 道正邦彦

    ○道正政府委員 存じております。
  154. 塚田庄平

    塚田委員 これは他のたとえば製鉄あるいは土建、下請をたくさん使う、そういうところじゃなくて、造船で主として使われていることばだということを御存じですか。
  155. 道正邦彦

    ○道正政府委員 貸し工の実態、必ずしも詳細つまびらかにいたしておりませんけれども、各種の業界にわたって存在すると思いますけれども、御指摘のように造船にもかなりの貸し工的形態の者がいると存じております。
  156. 塚田庄平

    塚田委員 貸し工というのは何ですか。私は最初お菓子をつくる職人だと思いましたが、貸し工とは何ですか。
  157. 道正邦彦

    ○道正政府委員 必ずしも明確な定義を申し上げかねるわけでございますけれども、法律的に申し上げますならば、職業安定法に基づきましていわゆる労働者供給事業の違反になるような形での貸し工の存在、これは法律に照らしまして厳重に処置をしなければならない性質のものと思います。一般的に申しまして、自分のところの労働者をみずから指揮監督することなく、他の事業主に貸して、他の事業主の指揮監督下に置くものというふうに言えようかと思っております。
  158. 塚田庄平

    塚田委員 つまり貸し工というのは、これは明らかに職安法四十四条違反の行為で作業についておる工員をいうわけですね。
  159. 道正邦彦

    ○道正政府委員 最近の社会経済情勢の変化に伴いまして、労働者の就業の形態も非常に多様化いたしてきております。御指摘のようなことにつきましては、実態を明らかにしまして、われわれといたしましては法律に触れるか触れないかということを踏まえまして措置をする。もし法律に違反するものがあれば、これが貸し工であろうと何であろうと、法律に照らして処置をするということになろうかと思います。
  160. 塚田庄平

    塚田委員 職安法施行規則の第四条はこういうことになっておりますね。形式的にはかりに請負の契約になっていても、しかし実態が伴ってきてない、つまり請負契約というのは単なる外見上の脱法といいますか、外見上の行為であって、実態が以下何々に該当しない者は、これは明らかに四十四条違反だということで、むしろ例外規定を一項目から四項目くらい設けて、一般的に労働者を提供するものについては厳罰をもって臨むというのが四十四条の精神じゃないですかどうでしょうか、この辺から……。
  161. 道正邦彦

    ○道正政府委員 論拠になるかならないかということにつきましては、施行規則の四条に解釈規定がございます。その条項に照らして、それに合致しておれば適法でございますし、違反しておれば四十四条違反になるということで処置をしておるわけでございます。
  162. 塚田庄平

    塚田委員 私はドックで調べたんですけれども、たとえば貸し工作業員を繰り出しておるその会社ですね、通常であれば請負契約を結ぶ場合は、どこそこの部門でどれだけの金額の仕事をどういうことでやるというような、金額があって、そして工期があって、それから順守しなければならないいろいろな項目がある、これが私はたてまえだと思うのです。ところが、函館の場合はどうでしょうか。ここに下請の請負契約というのがあります。これは会社で事前に刷ってあるのですよ。たいへん名前を出して恐縮ですが、畠山興業、こういうのが出てきている。自分の名前をぽんと判を押して、そして次に、あとは甲、乙のあれを押すだけ。そこには事業の計画もなければ、金額もなければ工期もない。こういう契約が取りかわされておるわけです。一体これは法第四十四条に言う、かりに請負契約はあっても実態が伴わなければ——この畠山興業というのは何をやっている会社かというのはあとで言いますが、こういうことが一般的に行なわれている。ただ請け負う人は判を押すだけなんです、自分の会社の名前を。こういう実態はどう思いますか。
  163. 加藤孝

    加藤説明員 法規の関係にわたりますので、担当の業務指導課長加藤でございますが、申し上げます。  いま御指摘のございました函館ドックの事実関係につきましては、私どもなお詳細に調査しなければならぬ面がございますので、ここで具体的な判断は差し控えさせていただきたいと存じますが、局長が申し上げましたように、まさに職安法の施行規則の四条の四つの要件にそれが具体的に該当するかどうかというその面で、その関係が問題になってこようかと思います。  それでいま御指摘の、かりに一方的にこういう条件を示して、ただ判を押させるだけという形の中で考えられますことは、多分に、従業員を派遣させて、そしてその会社が責任を持ってその作業の遂行に当たるのではなくて、まさに供給先の会社の指揮命令を受けるというような疑いが非常にあるわけでございます。もしそういう関係の事実がございますれば、その面でやはり職安法第四十四条違反ということになるおそれが強い、こう考えるわけでございます。
  164. 塚田庄平

    塚田委員 時間もないので言います。  ここの会社は、全部人を繰り入れるわけです。そしてそれぞれ朝、所定の時間に入る。そうすると、まっすぐ自分の職場に行きます。そして直用の組長なり班長の指揮下に入ります。時間がないから言いますが、入るときには何も持っていきません。全部親会社から支給されます。スパナの果てまで支給されます。もちろんガスとかなんとか全部これは支給されます。しかし、支給されるときに重要な機材については借用書を出します。帰るときにそれを返した場合には、現物を返した場合にその借用書は破棄されます。いいですか。それから長期に借りるものについては有償、無償の判を押します。調べたら大部分無償です。有償というものはほとんど見当たらない、こういう状態です。そして、残業の命令は伍長なり組長がやります。それから、所用があって出るときは伍長、組長の許可を得ます。こういう形態ですよ。これは函館ドックだけじゃないのです。石川島播磨にしたって全部そういう形態でやっていると思うのです。これはまさに四十四条に言う、形式は請負契約であっても実態は指揮監督も及ばない。これは直用の職工がやっているのですから。これは一人一人聞いて実態を調査した結果なんですよ。こういう事態は明らかに四十四条違反でしょう。どうですか。
  165. 加藤孝

    加藤説明員 確かにいま御指摘の、残業の命令をまさにその親会社のほうがする、あるいはまた作業器具一切を親会社が持っておって、下請会社のほうがそういう財政上の責任をほとんど何も負ってないというようなことが事実でございますれば、四十四条違反の疑いが非常に濃いというふうに考えます。
  166. 塚田庄平

    塚田委員 それから賃金の計算のしかたなんです。  これは、会社でコンピューターで出します。まず、その日出た人員、これは日報で確かめる。それから人員に単価を掛けます。それに労働時間を掛けます。これで人工を出すわけですね。たとえば二人出しているものは二を掛けてそれを出すわけです、請負会社に。こういう形式で全部やっております。たとえば女性については残業時間何ぼ含めて幾ら、こうやるわけです。それを取った請負会社は、当然それから何がしかのピンはねをやって当該女工員あるいは男工員に渡す、こういう形態をとっているのです。これはどうですか、労基法六条の違反じゃないですか。
  167. 加藤孝

    加藤説明員 いま御指摘の事実として伺います限り、そういう労働時間の管理をその親会社がやっておるということになろうと思いますので、もしそれが事実であれば、やはり労基法違反の問題になる疑いが濃いと存じますし、また賃金につきましてそういう中間の段階でそれを、いわゆるピンはねという形になっておれば、労基法の六条違反の問題も出てこようかと存じます。
  168. 塚田庄平

    塚田委員 私は、いま時間がありませんけれども、一番この中で問題なのは、エックス線の扱いだと思うのですよ。これは船舶局のほうで、ちょっと聞いてくださいよ。聞いていますか。エックス線というのは、これは非常に技術が要ります。本来ならば有資格者でなければエックス線は扱えないのですけれども、エックス線にしてもガンマー線にしても、特に先ほど言ったような海難事故の場合は、エックス線の取り扱いあるいはエックス線の取り扱い上の注意あるいは照射の数、たとえば百五十枚とるところを今度は三百枚とれというような、いろいろなきびしい規制があると思うのです。この函館ドックは、三人だけ有資格者がおります、あの膨大な企業の中に。もちろん直用で三人おります。そしてそれに資格のない直用、それから資格のない下請が配置されるわけですよ。そしてその下請が現実にエックス線を照射する、そしてその有資格者の監督下に置かれる、こういう事態が——先ほど言った畠山興業というのは、実はそのエックス線の人間を差し向ける下請なんですよ。これは一体どう思いますか。両方で答えてください。
  169. 加藤孝

    加藤説明員 もし、そういうエックス線の技師の指揮監督を受ける者を差し向けるという行為が事実行なわれておれば、その指揮監督関係がどうであるか、その辺についての詳細な調査は要ると思いますが、お話を伺っておる限りにおきましては、やはり労基法違反の疑いが濃いと思います。
  170. 塚田庄平

    塚田委員 運輸省はどう思いますか、こういう事態、安全の面からいって。
  171. 内田守

    ○内田説明員 一がいにちょっと、函館ドック固有のあれはわかりませんけれども、この労務問題でなくて安全審査の問題だけから考えますと、エックス線による照射で鋼材の欠陥を判定するのに、この工場規模で三人が適当であるか五人が適当であるかということになろうかと思いますけれども、その点については検討させていただきたいと思います。
  172. 塚田庄平

    塚田委員 運輸省、技術屋さんですから、ちょっとあるいは答弁する人が別な方がいいんじゃないかと思いますので、その点はひとつあとで……。  いずれにせよ、そういう実態が今度の調査では浮き彫りになってきておりますし、これは会社も否定しようがないと思うのですよ。そうして、私が言いたいことは、たしか運輸省はあの「ぼりばあ丸」の事件が起きたときには、あるいは「かりふおるにあ丸」の事件が起きたときには、できるだけ下請をなくして直用をしなさい、たとえばいまエックス線の問題を言いましたが、エックス線の試験をとるためにその下請会社が独自に教育をしているということはないのですよ。もちろん下請会社には有資格者はいない。こういう中で、いつまでもとれないまま危険な作業にさらされる。これではいけないからできるだけ直用にしなさい。ほかの下請についても貸し工などという全く非人間的な名前がなくなるようにやりなさいということが確かに勧告であったはずなんですよ。ところが現実は、逆に貸し工の下請労働者の割合というのはどんどんふえてきておる。こういう中で日本の造船会社というのはささえられておるわけです。こういう非近代的な労働構造といいますか、あるいは労使関係といいますか、これは早急に解消するように全国的な調査をまず進めること、そして強力な改善命令を出すこと、これが当面の急務だと思うので、この点についての決意を伺いたいと思います。
  173. 道正邦彦

    ○道正政府委員 御指摘のように、職安法四十四条違反というのは重大な問題でございますので、全国的にも調査をいたしまするし、函館ドックにつきましても、道と一体になりまして調査をし、適正な措置をいたしたいと思います。
  174. 田川誠一

  175. 島本虎三

    島本委員 いま塚田委員指摘されたように、相当この貸し工になるものの存在が多いようなことを聞いて、私自身もびっくりしたわけであります。私自身もこの函館ドックの現状を見てまいりましたが、はたしてこういうような状態があっていいのかなと思う状態が一、二散見されました。  それは、いわゆる社外工といわれる貸し工という名前が存在するわけです。お菓子をつくる職工かと思ったら、貸し借りをする職工のことだそうであります。そしてそれも、下請会社は六十社にも及ぶ。一千名をこえる貸し工がいるということ。そうなりますと、これはまことに重大な問題であります。いわゆる社外工、貸し工です。そうした下請労働者といわれる者が依然として多いという実態は、労働行政上から見て好ましいのか、好ましくないのか。同時に、労働省はこの実態を十分把握していたのか、いないのか。この件についてまず伺いたいと思います。
  176. 道正邦彦

    ○道正政府委員 いわゆる社外工あるいは貸し工あるいは下請労働者の中に法律違反の疑いの濃い者がおり、最近しばしば問題として御指摘いただいておりますことは、まことに遺憾に存じます。現在のところ全国的な調査もその点についていたしておりませんので、最近における実態を明らかにするように全国的な調査も実施いたしたいと存じておりまするし、当面、御指摘のございました函館ドックにつきましても、労使関係は紛争、紛糾中でございますけれども、その点との調整は十分考えながら実態を把握し、その結果に基づきまして、法に照らし厳正な措置をしたいというふうに存じております。
  177. 島本虎三

    島本委員 いわゆる把握しておらないようでありますから、これは厳重な調査をする前提として全国的な規模で調査すべきである。その中でもいわゆる函館ドックの中の具体的な事実が、不当労働行為の問題と職安法違反の問題としてこれは指摘されたようであります。また私自身も若干この点について触れたいと思うわけでありますけれども、それにしても運輸省自身がこれをやっていながら十分わかっておらないということ。最近の公害の問題等を見ますと、各種各様になっておりまして、各省に公害に類する対策の課ができております。労働問題についてはもう労働者のいない各省はないのでありますから、特にこういうような点に対しては、運輸省あたりでもこれは実のあがるような指導をしておられるのじゃないか、こう思っておったのですが、いま聞いてみたら、運輸省自身もあまりこの内容をわからないままに許可しておった実態もあるようであります。いわゆる社外工であるとか下請労働者、こういうような労働者供給事業に該当するものとしていままで告発された件数、一年間に何件程度あったのか、そして具体的な違反の内容、これに対しては十分調査してあると思いますが、ひとつお知らせ願いたい。
  178. 道正邦彦

    ○道正政府委員 職安法四十四条違反として起訴されました数は、四十七年度におきまして略式命令四十五名、公判請求が行なわれた者が十五名、合わせて六十名になっております。
  179. 島本虎三

    島本委員 件数は。
  180. 道正邦彦

    ○道正政府委員 全体の件数は二百十六名でありまして、そのうちの起訴人員が先ほど申しました六十名でございます。
  181. 島本虎三

    島本委員 六十名くらいの起訴ですね。これはほんのわずかであります。たとえばいま港湾労働法の問題は参議院にかかっておるようでありますが、この中間労働者あっせん業としてあってはならない手配師、こういうようなものに対しても全襲いはずであるのですが現存する、こういうような例があるわけです。一年間で六十名くらい違反だ。はたしてこれでどうなんだろうかという疑問が当然起きますが、これはあまり少ないじゃありませんか。現実の問題としてあまり低過ぎるわけです。これに対して、どういう理由でこれは低くなっているのでしょうか。
  182. 道正邦彦

    ○道正政府委員 御指摘のように件数は必ずしも多くないわけでございまするけれども、今後の日本の雇用問題を考えます場合に、いわゆる重層下請を中心といたしまする雇用構造、それに伴って法律違反の問題になります労務供給的な事案が数多く見られるということは、まことにゆゆしき事態でございます。従来とも私どもといたしましては、労基法違反につきましての監督、指導、是正にはつとめておるつもりでございまするけれども、御指摘のように実績は必ずしも多くございません。しかしながら問題の重要性にかんがみまして、そういう点についての解明と対策とあわせまして、法違反の是正につきましても今後は努力をしてまいりたいというふうに存じます。
  183. 島本虎三

    島本委員 そうなった場合には、一年間、件数は二百十六名をいろいろ送検した結果、六十名起訴、こういうようなことのようであります。これではあまり件数が少ない。しかし現実の面においては相当こういうようなものがばっこしておるということになると、その辺にやはり重大問題もあるのじゃないか。労務供給違反、こういうようなものの件数が少ないということの基本的な原因、これはいま労働省でも十分考えておりますか。たとえば認定基準というようなものに対しても、これはあまりにも複雑多様化してしまって、そして現在の情勢に十分対応できないような情勢のままにぶん投げてあるのじゃないか。したがって、もうその中にいる者を完全に掌握もできない。また違反を指摘もできない。よほど運の悪い、よほど新聞にたたかれるか、よほどこれは顕著なものだけが六十名としてあがったにすぎない、こういうようなことになるわけであります。これはやはり相当考えなければならないと思いますが、十分情勢に合わないのじゃありませんか。
  184. 道正邦彦

    ○道正政府委員 最近、技術革新の進展あるいは社会経済機構の複雑化等に対応いたしまして、職業安定法の四十四条の適用につきましても、一方においては厳格に適用すべきであるという議論がございますが、反面、多様化した産業の態様に応じて、就業の実態から見て、いわゆる封建的な残滓のないものについては弾力的な運用をはかるべきじゃないかという意見も一方にございます。労働省といたしましては、御指摘のように社会経済情勢に十分に対応するにはどういう内容のものが適当であるかについて研究をいたしておりますけれども、当面は、労務供給禁止規定、特に現行規則第四条に詳細、解釈規定がございますので、それに照らしまして一そう適切かつ強力な運用につとめてまいりたいというふうに考えております。
  185. 島本虎三

    島本委員 なお、それもあわせて全国的に調査をしてみたほうがいいんじゃないか、こういうように思うわけです。この労働者供給事業、こういうようなことについては、もう十分にこれを配慮してやるのでなければ——逆に社外工という制度、そしてそれが貸し工という名前で自由に貸し借りされるという、こういう原始的な名前がついているのは、これは原始的な行為が行なわれているからそういうような名称が付されているんだろうと思うのです。工員として十分その職にたえ得るような能力のある者を、貸してやるのだ——当然その人を本採用にして使わなければならないのに、本採用にするとそれに対するいろいろな要件を備えなければならないから、とりあえず、緊急の場合には貸し工、借り工、こういうようなことで間に合わしていく。それがそのまま定着する。そのまま定着したままで、そして更新するものもしない。そしてそのままの状態で、器具、器物、こういうようなものはそのまま借りっぱなしである。何か指摘があると、あわを食って帳簿を書き改める、こういうような程度で終わるわけです。結局一つの惰性じゃないかと思うのです。労働行政の中にこういうような惰性をそのまま認めておくということは、安全衛生上もよくないです。いままでのいろいろな、マンホールから人間が地雷のように飛び出した、こういうようないわばマンホールの爆発事件、こういうようなものは一種のなれによるところの、怠慢といいませんが、惰性なんであります。いまのような貸し工という制度も、長い間の仕組みの上にあぐらをかいた一つの惰性ではないか。こういうようなことになると、これははっきりと労働者供給事業を禁止するという措置に自然とこれは触れてくるのに、気がつかないということになってしまうわけです。この社外工が労使関係を不当に混乱させているのじゃないか、こう思われる節がありますが、いまのような実態からして、労働省はどのように把握して、どのようにこれは考えておりますか。
  186. 道正邦彦

    ○道正政府委員 先生もすでに御承知のとおり、安定法四十四条の趣旨は中間搾取の排除にあるわけでございまして、そういう意味では、労働基準法の六条の規定と趣旨を同じくするものであると考えております。したがいまして、たとえ社外工であるとかあるいは請負という名前がついておりましても、実質的に職業安定法の四十四条に該当するものでございますならば、これは立法趣旨から見まして禁止しなければならないわけでございます。その解釈につきまして非常にむずかしい問題もございますので、施行規則四条にるる書いてあるわけでございますので、その基準に照らしまして厳正に措置をしてまいりたいというふうに考えます。  特に労使関係との関連についてお尋ねがございましたけれども、労使関係が紛糾しているから直接そのことのゆえをもって労働者供給事業がいいとか悪いとかいう問題にはならず、両者はおのずから別の問題であろうと存じております。ただ、安定法の二十条によりまして、職業安定機関としては、労働争議に対しましては中立の立場をとるということで、紹介その他は争議中はやらないという規定になっております。
  187. 島本虎三

    島本委員 基本的な考え方、行政を執行するための基準に基づいての行動というようなものは、やはりいま言ったような状態であろうと思います。ところが実際行なわれているのは、一つの惰性という上に立って、それがいかようにでも操作されるという実態が現状なんです。ですから、そういうような点をあわせて、もっとこの労働者供給事業禁止の立法の趣旨というものについても考えなければならないと思うのです。  社外工そのものが労使関係を不当に混乱させる結果になっているということは、いまの不当労働行為が惰性によるところの貸し工制度が行なわれているということで、これは明らかなんです。現にこの問題の一つをとらまえましても、職安法第四十四条、これに基づく規則違反に対しては、具体的に現場責任者がそれぞれおらなければならないし、それがおらないままで貸し工ということで中へ入っていって、いわゆる伍長、組長という人たちの指揮下に入ってしまっているのです。その指揮下に入っていますから、自然と、使う器具というようなものは自分のものではない。借りたものであります。したがって、こういうことになると、「作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること」というような条項にも触れてくるわけです。こういうようなものを、いるかいないかは、現地のほうでは監督局があるはずでありますが、十分これは全国的にも、たとえば函館ドックの場合にも、これは掌握しておりますか。
  188. 道正邦彦

    ○道正政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、遺憾ながら詳細の調査はまだ行なっておりません。労使関係紛糾中でございますので、その関係の調整をはかりつつ至急調査いたしまして、その結果に基づきまして厳正な措置をとってまいりたいというふうに考えます。
  189. 島本虎三

    島本委員 この中で特に私ども、「作業の完成について事業主としての財政上及び法律上のすべての責任を負う」者がおらないということ、それが親会社なり貸し工を借りてきたその事業主、こういうようなものがおるということ、それと「企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。」こういうような一つの条項を適用しながらも、前に言ったようにレントゲンの問題であるとか技術者の問題であるとか、その他これに類するものが散見されているわけです。     〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕 また今度は「作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負うものであること。」こういうふうなことであるにもかかわらず、その人がおらない。すべてこれはもう具体的な条項に違反しておるわけです。それを基準局なり監督署なり知らないでいるということ自体が、やはり労働行政としても職安行政としても、これは今後の問題として重要だと思います。これは全面的にすぐ調査するということを先ほど言ったと思いますが、特に函館ドックの場合には、これは全国的な調査の中でもいま言ったような四つの点にはっきりもとるかもとらないか、それが一つ。  もう一つは、先月、六月以前と以後、この問題に関してはっきり調査のものさしを示してもらいたい。その以前の状態、以後の状態です。というのは、直ちにこれを手直しを加えているはずであります。ですから、手直しをする以前、たとえば五月の現状を調へなければ、六月以降——八月過ぎになる。八月過ぎになってしまうと、これは平常の状態になる。しかし実際にはあった証拠には六月以前の状態、四月か五月の状態を見なければいかぬ。こういうようなことです。現状を見るだけで甘んじないで、そのようなものさしをはっきり当てて調査すべきじゃなかろうか、こう思いますが、往々にして最近はそういうようなことが多いのであります。現在工場では一切汚物はたれ流しておりません、そういうものは絶対本社ではやっておりません。なるほどいまそういうようなことはやっていないけれども、一年前にはやっていたわけです。一切やめてしまった、世論がきびしいから、こういうようなことがあるわけであります。これは公害の事例であります。労働者に対しては、これも一つの公害に値しますから、そういうような見地からして十分これは調査すべきである、このことだけははっきり私としても申し上げておきたい、こう思うわけであります。労働者の供給事業、この基準は、賃金の中間搾取の排除とあわせて、労使関係を混乱させたり紛糾させたりすることがないように考えて運用させなければなりません。しかし、こういうふうなことが現在労働関係の中に一つの障害をもたらしておりますから、この点等においても十分今後の一つの指針にして指導すべきじゃなかろうか、こう思いますが、労働省はどういうようなお考えでしょう。
  190. 葉梨信行

    ○葉梨政府委員 先生おっしゃるとおりでございまして、そういう労使関係が混乱におちいらないように、混乱させないように考慮して運用すべきことであろうと思います。  職業安定法第四十四条の趣旨は、中間搾取の発生の可能性を排除するため、労働者の就業に介入する事業そのものを禁止しているものでございます。その意味労働基準法第六条の中間搾取の規定を一段と徹底させたものでございます。最近における産業社会の変化に伴って作業内容、作業の進め方は一そう複雑、多様化の様相を示しておりまして、このような中にあって労働者供給事業に該当するかいなかの判断もきわめてむずかしい問題を含むケースが増加しているわけでございます。このために労働省といたしましては、今後種々のケースについて先ほどから局長が御答弁申し上げておりますように調査を行なうとともに、調査結果を参考としまして職業安定法第四十四条及び同法施行規則の適切な運用をはかるように、いろいろな観点から検討しまして、指導を強化してまいりたいと存ずる次第でございます。
  191. 島本虎三

    島本委員 特にそれを要請いたします。いまの次官の答弁で、今後の一つの指針というもの、方向というものがわかりました。  なお、全国的な調査、その結果等についてもまた私どもも資料としてこれはぜひとも提供してもらいたい、こういうように思いますから、いつ行なったのかというような点、いつ点検したのかという点、それをあわせて資料としてぜひ出してもらいたい。このことをお願いしておきたいと思いますが、これはよしなにお取り計らい願いたいと思います。次官、よろしゅうございますか。
  192. 葉梨信行

    ○葉梨政府委員 全国的にこの問題を調査しますと、おそらく一つの会社、それぞれの事業所で非常に複雑な、いろいろな入り乱れたというか、関係あると思いますので、一つ一つについてはっきりした判断を、実態を調査した上で判断するのに時間がかかると思います。しばらく時間をかしていただきたいと思います。そしてまた、結果が出ましたならば適当な機会にこの委員会において御報告を申し上げたいと思います。
  193. 島本虎三

    島本委員 そういうようにしてもらいます。なお、全国的な調査の中でもやはり北のほうから始められるようにしたほうがいいと思います。この点は特に私から要請しておきます。よろしゅうございますね、これは局長
  194. 道正邦彦

    ○道正政府委員 全国的に調査をいたしますけれども、当面函館ドックについての御指摘があったわけでございますので、そのことを十分含んで調査をいたします。
  195. 島本虎三

    島本委員 じゃ、函館ドック関連質問はこれで終わることにいたします。皆さんの今後の検討と、あわせて善処を心から要請するとともに、その資料を千秋の思いで待っておるものであります。よろしくこの点にこたえてもらいたい、こう思います。  次には、失対事業関係について御質問を申し上げる次第であります。と申しますのは、一九七一年五月でありますけれども、中高年齢者雇用促進法、この法律が修正可決になっておるわけであります。そして、一九七一年でありますから、それ以降において附帯決議と確認事項について十分生かされておらなければならないはずであります。当然生かされておるだろう、こういうように思うわけでありまするけれども、まず衆議院のほうの附帯決議、その第七項、「人口の高齢化が今後急速に進行することにかんがみ、すみやかに社会保障対策や高年齢者の仕事に関する対策の充実に努めること。」これがはっきり述べられておるわけです。大臣は、趣旨に沿うようにこれは行なう、こういうような答弁であったのでありますが、この件等については十分行なわれておりますかどうか。
  196. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 特に第七項目の私どもの関連は、高年齢者の仕事に関する対策が労働省の一つの主管であるわけであります。先生御承知のように、高齢者問題の一番大きな問題は私どもは定年の問題だと思っております。したがって、この定年の延長について最大の努力をしてまいりたいと思います。当面六十歳を目途にいたしまして、五年間の間に早く六十定年を実現いたしたいと、こういうことで施策を進めておる段階でございます。  なお、いろいろ経過的には、六十歳前に定年退職される方がございますので、そういう方たちに対しては特に定年の前に訓練その他の手厚い対策を講じながら、すみやかに就職できるようにいろいろな手当てをいたしてまいりたい。そのために、先般雇用対策法の一部改正を出しておりまして、御審議を願ったわけでありますが、そのほか今後とも高齢者の仕事の対策に対して体制の整備その他を十分加えながらさらにこの充実をはかってまいりたい、こういうように思っております。
  197. 島本虎三

    島本委員 野原労働大臣のころ、ちょうど中高年齢者雇用促進法の審議に入っていたわけです。はっきりそのときに、五十五定年では現在の情勢に沿わない、したがって、六十の定年まで年齢の引き上げを考慮しなければならないし、そのようにやるということをそのときから言明されている。したがって、ここにこういうような附帯決議を付して、そしてそれに対する「社会保障対策や高年齢者の仕事に関する対策の充実に」つとめなさい、こういうようになっているわけです。まだ六十になっていない。定年六十までまだ実際にいってない。やっているところも散見はされるようであります。しかしながら、社会保障対策やこの仕事に関する対策の充実が行なわれないということになると、これは当時の野原労働大臣の答弁、それから附帯決議の趣旨には沿うておらない。これからやりますよじゃ、だめなんです。これは過去なんです。未来のことを言っているんじゃないのです。一九七一年なんです。この三年間の間にやはりこの点なんか解決されなければならなかったはずじゃなかろうかと思うのです。これは大臣の話ですから、大臣いなければ政務次官でもとなるのですが、これは往々にして官僚にまかせるとこういうような作文になってしまうわけですね。そうしないで、やはり官僚は使わなければいかぬです。労働省は往々にして官僚に振り回されている、こういうようなことを言われないようにしなければならないと思うのですが、この点についてはどうでしょう。これはもうそのまま、原稿なくてもやれるだろうと思うのですが……。     〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕
  198. 葉梨信行

    ○葉梨政府委員 いま先生が触れられた問題については、ここ一、二年の情勢というか、社会の理解は急速に進み、定年制の延長についてもどんどん実施しておる状況でございます。また今国会に年金関係の法案が提案され、衆議院を通過しておりますけれども、定年制の延長それから年金の充実というような両面から高年齢者の問題を解決していこうという具体的なステップが踏まれておるわけでございます。労働省といたしましては、雇用対策法の改正案も衆議院を通していただきましたけれども、あの法律を武器といたしまして高齢者の再就職ができるような措置を具体的に積極的にこれからもとっていきたいと考えておるわけでございます。
  199. 島本虎三

    島本委員 同時に、次の項目ですけれども、「現在失業対策事業に就労している者については、社会保障対策や高年齢者の仕事に関する対策が充実されるまでの間は、同事業に就労し得るよう配慮すること。」こういうようなことになっておるわけです。これはこのとおりにいってございますか。
  200. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 私どもこの附帯決議の趣旨に沿いまして、現在失対事業に就労していただいております方々については、その就労ができ得るように最大の努力を払っていくつもりでございます。
  201. 島本虎三

    島本委員 失対部長も所管局長も政務次官もおられるわけでありますが、この失対労務者あるいは悪いことばで俗に言うニコヨン、こういうようなことばでいいますが、身分関係については、これは歴然としているのですから、これはもう次官も知っておられるでしょう。いわゆる失業対策事業に就労している労働者の身分はどういうふうになっておりますか。これはもう三役はそのままでいい。うしろのほうの課長クラスの……。
  202. 望月三郎

    ○望月説明員 なかなかむずかしい御質問でございますが、非常勤の特別職の地方公務員でございます。
  203. 島本虎三

    島本委員 よくできました。非常勤の特別職の地方公務員ですね。  じゃ、私の職名はどういうふうになりますか。今度次の人……。
  204. 望月三郎

    ○望月説明員 特別職の国家公務員でございます。
  205. 島本虎三

    島本委員 非常勤の特別職の国家公務員なんです。そうすると、失対労務者は特別職の非常勤の地方公務員なんです。私の場合は衆議院議員島本虎三即非常勤の特別職の国家公務員なんです。そういうふうになってみますと、ここでいろいろな問題で失対労務者という名前でまだまだやることも十分やっていない点があり過ぎやせぬか、ここなんです。賃金のベースアップは今回幾らなされましたか。
  206. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 四十八年度の賃金の単価アップは一三・二%でございます。
  207. 島本虎三

    島本委員 東京の物価は五月の末現在で一三・二%をこえているわけでありますから、もうすでに東京に在住する人たちは相当生活苦にあるという実情は、その点でわかるわけでございます。そうすると、やはり地方公務員である以上、何らかの方法で、同時にこの一九七一年にできた中高年齢者雇用促進法、これができた以後残った人に対しては、十分これは手厚く扱う、こういうようなことになり、それをやった人は当時の職安局長住栄作氏であります。ですから、そういうふうになっているのに依然としてまだそういうふうに軽く扱っておるということは、当時の職安局長の意に沿わないことになるじゃありませんか。これは一三・二%といっても、こんな若干しか上がらないのに、みんな一般は五けたいっている。これじゃ、少し考えてやらないといけないんですが、これに対するはっきりとした方策がありましたならばお示し願いたい。
  208. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 先生も御承知のように、失対賃金の決定の原則というのがございます。ルールがございます。私どもはこのルールに沿いましてその賃金の引き上げに毎年努力をしてきているわけでございます。今後ともこの失対賃金の引き上げについては努力をいたしてまいりたいと思います。
  209. 島本虎三

    島本委員 そのいわゆる美文調の型にはまった答弁はよくわかっている。悪いことばで言うと、官僚的答弁であります。もう少し悪いことばで言うと、惰性に満ちた血も涙もない答弁であります。しかし、やはりそうあってはなりませんから、この際ですから、やはり待遇は具体的に考えてやらないとだめなんじゃありませんか。そのために賃金審議会、必要ならばそれを修正する。そうしないと、やはり地方公務員なんですから、それにしてみても、やはりその点もう少し考えてやるように今後は要請しておきたいと思います。この点についてはまあいいでしょうから、政務次官の決意を伺っておいて……。
  210. 葉梨信行

    ○葉梨政府委員 いままでも労働省当局としては毎年努力してまいりましたが、先生のおっしゃるような御趣旨に沿うように引き続き努力をしてまいりたいと思います。
  211. 島本虎三

    島本委員 その前に、急いでということばを入れたい。いいですね。私がかわって答弁を申し上げた。  それと、参議院の附帯決議がまたあって、その六番目です。これは「失業対策事業の運営については、事業継続の趣旨を尊重し、就労者の実情に応じて無理のないよう改善を図るとともに、一層生活の安定に努めること。」とある。さあ、こういうふうにあるのに、いまのような状態では少しこの附帯決議にもとるんじゃありませんか。これに対して部長……。
  212. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 御承知のように失対事業に働いておられます就労者の方は非常に年齢も高くなってきております。女性の方も非常に多いわけで、従来のような土木事業中心の事業運営では非常に御無理がある。特に老齢者の健康その他を考えますと、十分そういった就労者の実情に応じてやっていかなければならぬという御指摘だと思います。そういう意味で私どもこの附帯決議以降、いろいろな高齢者向きの事業を開発して、喜んで失対事業に働いてもらえる、また地域社会からも喜ばれる、そういった事業運営につとめていきたい。今後ともそういった意味で就労者の方が喜んで働いていけるような環境の改善等に努力してまいりたいと思います。
  213. 島本虎三

    島本委員 それともう一つ、八番目の附帯決議になりますと、「失業対策事業就労者に対する夏季・年末の臨時賃金については、法案修正の趣旨を尊重し、これまでの経過に留意してその改善に努めること。」こういうようになっておりますが、これはやはり趣旨に反するような状態じゃございませんか。これはいかがでしょう。
  214. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 臨時の賃金につきましては、この中高法の御審議の際にいろいろ経緯がございました。私どもはその経緯を尊重いたしまして、臨時賃金を法律的制度として残しまして、その後引き続きこの臨時賃金を支給してまいっておるような状況でございます。しかも御指摘ございますように、就労者の生活に激変を与えないような措置をとれということでございまして、そういった趣旨でこの問題に対処いたしておるようなわけでございます。
  215. 島本虎三

    島本委員 やはりこの問題等については、当初の予定はこういうような手当を廃止する、賃金一本にするという予定だったのが、これが修正可決されてこういうようになったのであります。現在いる人はもうすでに年齢も相当高くなっております。数も少なくなっているはずであります。いわば労働市場における功労者であって、貴重品扱いしてもいいんじゃなかろうか、こう思うのであります。これ以上どうも入る者がない。入った入れものからもだんだん漏れていく。こういうようになったら残っている酒はなかなか貴重品でありますから、そういうような意味においてもこれは大事にすべきである、こういうように思います。そういうような意味においても法ができた、修正された中高年齢者雇用促進法、このときにおいても十分その趣旨を関係者は述べておられましたが、この点を念を入れて皆さんに申し上げておきたいのでございます。この法案修正の趣旨を尊重して、これまでの経過に留意してその改善に一そうつとめること、こうありますけれども、あまり改善されていないのが賃金それから手当の額です。こういうようなことになると、せっかく残った人、それ以上入ってこないのですから、これだけは相当大事にしてやったってこれはどうということはありませんから、これは大いに法の制定の趣旨に基づいて大事にしてあげるようにしてやってほしい、こういうように思います。これは局長、そうしないといけません。特に名ざしをして申し上げますから、決意を言ってみてください。
  216. 道正邦彦

    ○道正政府委員 御指摘のように、法施行のときに現に失対事業に就労されていた方々につきましては、引き続き就労していただくというたてまえになっております。先ほど失対部長からお答えいたしましたように、現在五十九歳、六十歳に近い平均年齢になっております。しかも女性が六割ということでございますので、やはり作業につきましても炎天下の建設作業ということでは気の毒でございます。そういう意味で花卉の栽培であるとか、学校給食の手伝いであるとか、植物園、動物園の手伝いであるとか、そういういわば御老人として生きがいをもって働けるようなもの、また地域社会からも喜ばれるというような事業を選びまして、そういう事業に極力就労していただくというふうにつとめているところでございます。また賃金等につきましても、今後十二分に失対事業就労者の方々の生活実態等も考慮いたしまして、改善に努力をしてまいりたいと思います。
  217. 島本虎三

    島本委員 最後に、この附帯決議の十番目ですけれども、これは「労働市場における適応性が乏しく再就職が特に困難な高年齢者に対する社会保障対策の充実および高年齢者にふさわしい新たな仕事に関する対策の確立に努めること。」こういうようにあるわけであります。この「社会保障対策の充実」と「高年齢者にふさわしい新たな仕事に関する対策の確立」この問題等については十分考えて、これの実施を促進しておりますか。
  218. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 私ども特にこの高年齢者の仕事に関する対策については、安定行政の最重点施策として進めておるわけでございます。特に高齢者につきましては体力、能力等も十分考えまして、安定所におきましては高齢者コーナーその他特別の窓口を設けまして、いわゆる手厚い方途を講じながらその就職開拓につとめております。その方法といたしましては、いわゆる高齢者に向いた適職を選定をいたし、その求人対策その他の方法を講じまして、できるだけ適職におつきいただくような努力を進めておるわけでございます。
  219. 島本虎三

    島本委員 時間が来ましたから結論を急ぐわけでありますけれども、これは昭和五十年を目途にして失対を再検討する、そしてここで失対をなくさせる、こういうようなことを労働省は考えておるのじゃないかという疑念を持っている人があるわけであります。決してそういうことはないし、それではこの附帯決議の趣旨に全面的に反するわけでありますから、そういうようなことはなかろうと思いますが、この件について、はっきりとここで確言を得ておきたいと思います。
  220. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 先ほど御指摘をいただきました附帯決議の趣旨にございますように、社会保障の対策あるいは高齢者の仕事というものが十分整備されるまで失対事業に就労する、こういう御趣旨でございます。したがって、この御趣旨にのっとりまして今後とも進めてまいりたい、こういうふうに思います。
  221. 島本虎三

    島本委員 では最後、これでやめるわけでありますが、いま言ったような趣旨のものはすでに御存じだと思います。一貫してこの問題と取り組んでまいりました。附帯決議はせっかくこうつけてあり、大臣がそれに対するりっぱな答弁もなすっておる、また決意を表明されておる、しかし現実にはさっぱり行なわれておらないというのが附帯決議について間々あることであります。これが労働省のほうにあってはいけないのであります。ことに国民労働者ですから、そういうような立場に立つ労働省の指導と権限というのはますます高くなければならないわけであります。それをこういうような、間々散見されるように、附帯決議に沿わないような点があってはなりませんし、あることを聞くことさえも私は警戒しているのであります。絶対にそういうようなことがないように、今後これを機会にしてもう一回点検してみて、そういう事態がないように十分細心の注意を払っておいてもらいたい。このことだけは最後に要請しておきます。  それと同時に、いま言ったように一三・二%上げても、東京のような地域では、この五月の末でそれだけはもう物価の上昇が越えてしまっておる、こういうような実態でありまして、いま局長が答弁されたように、日雇い労働者といえども非常勤の特別職の地方公務員でありますから、そういうような実態から考えて生活の安定と手当て、こういうようなものに対する十分の配慮、これは今後皆さんのほうではっきりと考えてやらなければならない問題だ、こう思うのであります。最後にこれに対しての決意を聞いて私は終わるわけでありますが、これは副大臣のほうからお願いしておきたい。
  222. 葉梨信行

    ○葉梨政府委員 ただいま先生からるるお話がございましたが、お話を伺うまでもなく、労働省は勤労者のための役所でございまして、一生懸命全力投球を行なっておるわけでございます。先ほどのお話は労働省に対する激励のおことばと受けとめて、さらに内容を充実させるように、御期待に沿うように努力することをお誓い申し上げます。
  223. 島本虎三

    島本委員 では終わります。
  224. 田川誠一

  225. 寺前巖

    寺前委員 私は最初に、ハンセン氏病、いわゆるらい病の関係の問題について、正しくない理解が現実的になされているのではないかという問題について、一、二の質問をしたいと思います。  これを聞くにあたって、大臣がおられないので、政務次官にちょっとお聞きしますが、このらい病、ハンセン氏病というのは、遺伝なのか、それとも伝染性の病気なのか。それは非常におそろしい病気でどうにもならぬのか。私は、あの一見失明をしたり、あるいはまた皮膚が変形をするという事態を通じて、いろいろな偏見かあるように思う。それで、一番基本的に、これがおそろしい病気だということで社会不安を持たなければならないのかどうか、この問題に対する認識を厚生省としてどのように持って諸般の指導をしておられるのかを最初に聞きたいと思います。
  226. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 ただいま寺前先生御提示のように、ハンセン氏病は、遺伝でもなければ、伝染力がきわめて強いというものでもございませんし、率直に申しまして、かつてはなかなかなおりにくい病気でございましたけれども、今日においては、完全になおる、一般慢性伝染病として特別な扱いをする必要はなくなったというのが、ハンセン氏病に対する私どもの認識でございます。
  227. 寺前巖

    寺前委員 それじゃ厚生省に聞きますが、国民の中に理解を深める問題というのは、まず義務教育の段階からどういうふうに理解をさせるかというのが、一番影響力が大きいですね。社会的には、歴史的につくられた関係上、誤った理解の者が非常に多い。これは後ほど私は、未解放部落といわれる問題の差別の問題でも、やはり義務教育あるいは学校教育の分野が非常に重要だ、そういう意味から考えて——それじゃ、学校教育でどのようになっているかということについて、私はちょっと読んでみます。  ここに幾つかの会社の中学の保健体育の本を持っています。いま私が第一番目に取り出したのは、教育出版株式会社です。ここで「新版標準中学保健体育」というのを出していますが、その本の一八九ページのところにらいが書いてあります。  どう書いてあるかというと「らいは、らい菌による慢性伝染病で、皮ふや神経かおかされる」——「おかされる。」ということで、ばんと言い切ってある。そして「らい療養所に患者を入所させたことや、最近は治療法が進歩したことによって、」患者がだんだん減少していき「社会復帰も進んでいる。しかし、適確な予防法がないために、現在でもなお、そうとう数の患者がいる。」  そうすると、私が、厚生省は一体どういう指導をしているんだろうかと思って、公衆衛生局が編集している「らいを正しく理解するために」というパンフレットを届けていただいた。このパンフレットを見ると「戦前ほとんど全治が望めなかったこの病気も特効治らい薬の効力で完全に治癒するようになり、」こう書いてある。厚生省のほうは、治癒することができるんだということを明確に、戦前と戦後の比較で言い切っておる。これを編集して指導しておる。ところが、広範な国民に理解を与えるところの義務教育の教科書では、これが「適確な予防法がない」ということになると、相反する内容なんです。  それでは、その教科書をつくっているところの教育出版社が出している教師用の指導書を読んでみた。私、読んでみましょう。その教師用指導書の二六四ページのところにこう書いてある。「らいはらい菌によって皮ふからくさっていく恐ろしい病気であることを説明する。現在では、らい予防法という法律によって患者の数が少なくなったことを理解させ、今後の対策についても考えさせる。」前提はおそろしい病気だ、そう教師用の指導書はちゃんと指摘してある。  そして子供の前には、先ほど読み上げましたように、これはこうこうこういうことになるんだ、皮膚や神経が侵されるんだ、治療法がないんだ。先生のその指導方向と本の中に書かれているものと、そして現実に昔の治療法の適切でなかった時代の人を見たときに、総合作用の中でどういう理解が進んでいくか。私はこの教科書についてあ然とせざるを得ないのですけれども、厚生省として、この教科書問題についてどういうふうにお考えになりますか。
  228. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 先ほど私がお答えさせていただきましたように、近代医学におきましては、いわゆるハンセン氏病につきましても完全になおる病気であるということは明らかでございますし、そういう立場から考えますと、ただいま先生がお読みいただいた教科書等の内容につきましては、公衆衛生の意味からも、いわゆるらいを正しく理解するためには適切でない、かように思われます。そういう点につきまして、らいといいますか、ハンセン氏病の専門家の方々に、正しい理解を得られるような表現方法を検討していただきますとともに、文部省とも十分協議いたしまして——十分協議いたしましてというよりも、その教科書の指摘は適切でないという認識に立つものでございますので、改善を申し入れたい、かように思う次第でございます。
  229. 寺前巖

    寺前委員 文部省の関係者来ておられますか。——これについての見解を聞かしてください。
  230. 浦山太郎

    ○浦山説明員 ハンセン氏病に限りませず、教科書の内容につきましては児童生徒に誤解や偏見を与えないように適切に記述されるように、文部省としても従来留意をしておるところでございます。教科書で御指摘の記述に関しましては、現在厚生省のほうと協議をしておりまして、厚生省の意見を待って、適切でない個所がありますれば、これを教科書会社に適時指導をいたしまして、適切な措置を講じたいというように思っているわけでございます。
  231. 寺前巖

    寺前委員 あなた教科書会社と言うけれども、それじゃ私は次に出しましょう。  文部省みずからが出すところの「中学校指導書保健体育編」これの一九七ページのところに「痘そうおよび癩(らい)の推移」という項があって、その項の中に——これは文部省みずからの全学校あるいは教科書に対するところの規制をするものでしょう。「癩は癩菌による慢性伝染病で皮膚や神経をおかすこと、最近は治療法などによって、相当減少し、社会復帰も進んでいるが、適確な予防法がないため現在でも相当数の患者がいることについて統計から知らせる。」というのが文部省の指導として指導書の中に書かれているじゃありませんか。教科書会社がどうのこうのじゃないでしょう。あなたたちがここの細部までこのように教科書はやりなさい。こう書かれてなかったら、教科書は適格でないわけでしょう。文部省自身の理解に狂いがあって教科書会社を云々する資格がないですよ。そうでしょう。これを出しているのは文部省ですよ。あなたたちはいままで知らなかったのか、この問題について。文部省自身が態度を改める——こで厚生政務次官ははっきり言っているんだよ。それでも調べましてと言わざるを得ないのかね。明らかに違うでしょう。わからないのかね。これは間違いだということを政務次官が言っている以上は、即刻あなたこの場において判断をせざるを得ない内容でしょう。しかも教科書会社の問題じゃない。文部省が出しているところの指導書に書かれているんだから、即刻改めるか改めないか。現に教育は毎日行なわれているんだよ。毎日の教育だから来年度からという話じゃない。厚生省が指導している内容と違う部分は、即刻その部分についてはこのような教育については待てという指示をまず指摘しなければいかぬじゃないか。そして正しい指摘を追って通知をするというくらいの適切な行動をしてあたりまえじゃないか、文部省自身の指導に問題があったんだから。私はそう思うのだが、これに対する見解を聞きたいと思います。
  232. 浦山太郎

    ○浦山説明員 ただいまの指導書の御指摘につきましては、らいと痘瘡というのは一時多く発生をいたしましたけれども、公衆衛生の進歩によって急速に減少したというところから、予防にさえ留意すれば減少も可能であるといったような観点から、ここは記述をしてあるものでございます。  なお「適確な予防法」云々というくだりにつきましては、らいは、たとえばポリオに対するワクチンのように、そのワクチンがまだ培養することができず、BCGが結核のみならずらいの予防にも効果があるということがございますけれども、ポリオに対するワクチンに比べて、まあ適確な予防法がないという趣旨で書かれておるわけでございます。
  233. 寺前巖

    寺前委員 あなた、抗弁するんだったら、ますますややこしくなるよ。こちらは政務次官が代表して、公衆衛生局がはっきりと、一般慢性伝染病として扱われ、特別な扱いも必要なくなってきている、そこまで指摘しているのですよ。公衆衛生局が指導してつくらしている「らいを正しく理解するだめに」私は厚生省からわざわざ届けてもらった。そこでちゃんと戦後の話として、特効治らい薬の効力で完全に治癒するようになってしまっているんだよ。そして扱い方も、従来と違って特別な扱いをする必要がなくなってきているというところまできている。そうしで先ほど厚生政務次官は、これはぜひともあなたのところに申し入れなければならぬ、こう言っているんだよ。あなた専門家か。専門家のほうがはっきりした分析をもって言っているんじゃないか。それに対して文部省が抗弁するんだったら、文部省が特に専門家を乗り越えるところのものが何かあるのかね。専門家のほうがそういうように言うているんじゃないか。  これは厚生省、あれほど抗弁されているんだけれども、あなたたちはどうなんです。そうなったら、専門家のほうへ聞こうじゃないか。文部省にああ言われて、あなたたちは黙っているのか、ほんとうに専門家として黙っているのか。責任がありますよ。
  234. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 私どものPRがはなはだ至らなかったことは、まことに残念でございます。  先生の御指摘のとおり、らいにつきましては出生後短期間の間に濃厚な感染をしない限り感染、発病はいたしません。しかも最近におきましては、プロミンあるいはDDS等によって完全な治癒の状態に達する現状に至っておりますので、ここに掲げられておりますことにつきまして、私どもといたしましても、きわめて残念な点がございますので、私どもといたしましては早急に文部省のほうに訂正方を申し入れたいと思います。
  235. 寺前巖

    寺前委員 厚生省にもう一回聞くけれども、厚生省は、こういう教科書が出ていることについて、いままで知らなかったのか。
  236. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 従前はらいにつきましての記載がなかったというふうに聞いております。したがいまして、私どもといたしましては、昨年度、らいについても正しく理解をしてもらうということで文部省に申し入れをして、らいについての記述をお願いをしたわけでございます。その内容について御連絡をいただかなかったことにつきまして、私ども遺憾な点があったかと思います。
  237. 寺前巖

    寺前委員 それは文部省はどうなんだい。去年も指摘を受けていると言うんだ。それでいまだにあそこまで言い切って抗弁をしているということは、一体どういうことなんだ。厚生省の見解はもう聞くに足らぬという何か根拠があるのか。あるのやったら説明してくれ。なければ、厚生省があそこまで言い切っている問題について、それはすなおに即刻検討して改善する——これは義務教育全体にわたって行なわれているんでしょう。偏見を子供のうちにたたき込んでおいて、そしてこちらのほうで何ぼ偏見を消そうなんということを言ったってできない仕事じゃないか、義務教育のほうがちゃんとしてなかったら。これは文部省の見解をもう一回聞きたい。
  238. 浦山太郎

    ○浦山説明員 私、あとから参りまして、先生の御質問なり厚生省のほうの御意見を十分存じないままに申し上げたので、あるいは失礼を申した点があったかもしれませんが、厚生省のほうから前々から話があって、それに応じてできる限り厚生省の御意見を教科書会社に伝えて従来から改善につとめてきたわけでございますけれども、御指摘のような事実並びに厚生省のほうでその点について改善の御意思がありますれば、私どもといたしましても、十分その点を尊重いたしまして適切な措置をとらしていただきたいと思うわけでございます。
  239. 寺前巖

    寺前委員 もう少しすなおに聞いたらどうやと言うんだ。「適確な予防法がないため」というようなことはないと言うておるんだよ。予防法はあるんだと言うておるんだ。そんなおそれはない。それは教科書におそろしい病気だという指摘をしてあるし、こういう記述がある教科書もよくないけれども、もともとのあなたのところの指導書の中に適確な予防法がないという立場をとっているところに間違いがあるから、したがって、教科書まで狂いが起こってくるんだ。それを厚生省も言っているんじゃないか。言っているんだったら即刻改めたらいいんだよ。改めるか改めへんかの問題だけなんだよ。  厚生省の言うことは聞く耳なし、わしのところには根拠ありと言うんだったら、それは論争したらいいのです。ことさらないでしょう。なければ、即刻申し入れたいと言っているんだから、当然あなたのほうも積極的に義務教育に関する責任を持たんならぬという立場から考えて、即刻この分野については文部省の指導書自身から改善をしなければならぬ。現実に教育というものは毎日なされているんやから、来年の教科書からという問題じゃなくて、現行の教育の中において間違った部分がある場合には即刻改める。即刻改める以外にないんだよ。間違った教育はやめてくれと言わなければならぬのやから。  予防法があるんだから、その点については的確な予防法の教育のしかたを——こういうようにしなさいというやつはとりあえず送るけれども、すぐにやるけれども、さしあたって、あそこのところについては問題がありますということを全国に指示しなさい、指導書なんだから。文部省自身の指導書に誤りがあるということをはっきりしてくれと厚生省が言っているんです。はっきりするかしないかだけやないか。それをもう一回聞きたい。そこのところをはっきりするかしないかだけや。
  240. 浦山太郎

    ○浦山説明員 厚生省のほうから的確な予防法があるんだということは——私直接指導書の担当ではございませんので、あるいはそちらのほうに行っているかもしれませんけれども、私としては従来聞いておりません。厚生省のほうで、そのような点が誤りであるから訂正せよということであれば、その点について担当のほうにさっそく連絡いたしまして、適切な措置をとらしていただきたいというように思います。
  241. 寺前巖

    寺前委員 そうだよ、すなおに間違っている場合は間違っていると言えばいい。教育をやっておるところが子供にすなおになりなさいというふうに言うても教育になるかいな、そんなはっきりしたことで文部省自身がすなおにならぬもん。  わしはやはり子供のときの教育から将来にわたって対策を考えようと思って一生懸命やっておるんや。厚生政務次官がわしのところに共産党の議員さんにも理解してもらいたいと言うて四十部もちゃんと持ってきて、私はこうやっておるのだけれども、相すまぬこっちゃ、文部省があんな教育をしておりましてと。ところが正直いって偏見というのは、私はたいへんなものだと思う。  たとえば、これは私はあえてもう名前は言いませんけれども、ことしの三月にある国立病院、これは非常にハンセン氏について協力してくれている病院ですよ。昭和四十三年の十月六日に療養所を退園された方が、社会復帰したけれども身体に異常があって、もとの療養所に見てもらいにいったところが、そこの療養所で見てもらったら、これは手術を要するぞという話になった。療養所は総合病院じゃないんだから、療養所自身に手術をする体制がないわけなんだよね。だから早急な手術が要るというので、もよりの非常にハンセン氏について理解のある国立病院に行ったわけや。ところが国立の病院に行ったら、入院と手術をすぐやってくれると思ったところが、ちょっと待ってくれ、こう言われたという。そうして今度はわざわざ施設の何にもないところの療養所へ機械を運び込んで、そこでやる。そうすると、一たんあの病気にかかった人間は、そこにはもともとないから総合的な病院でめんどうを見てもらいたいといっても、そこではシャットアウトされる。非常な大きな打撃ですわな。同じ世の中に生まれてきた中で、治療方法が弱かった段階においてこういうことになってしまった、そのために手術してもらうこと自身、社会的につくられた総合病院でそういうものを受ける資格すらない、これは非常に大きなショックです。  現実はそこに直面するわけです。一番ハンセン氏に理解があるところの国立のもよりの病院ですらも、このような扱いを受ける。一般社会の病院でどういう扱いを受けるかということは、もっと明確じゃないですか。それは病院にすれば、ああいうからだの人が入ってきたときにお隣の患者さんとの関係とかいろんな問題を考慮して、その人のめんどうを見るためにはこういうふうにやったらいいという見解でおやりになったと私は思う。非常な善意だと思う。だけれども一般病院というのは、それは通用しないですよ。一番通用するところですらも、このような扱いをこの間受けた。ハンセン氏の分野の人たちについては、いまの教科書のような偏見が行なわれているということ自身問題だし、さらに一番理解をしてくれるところですらも、こういう扱いだということになってくると、非常に大きなショックだと思う。病気になったときにほんとうに社会的にめんどうを見てもらえる、そういう場合に保障し得る体制、政治というのはそこだと思う。一人歩きする人間のことをとやかく世話せぬかてよろしい。社会の中で一人歩きすることのできない特別な位置のところにこそ政治的な役割りを集中的にするということがぼくはあたりまえだと思うんだよ。  そういう意味から考えれば、このような事象が国立病院で起こったということを考えたときに、国立病院のあり方についても、もっと改善する必要があるのじゃないか。この問題についてどういうふうな見解を持っておられるのか聞きたいと思います。
  242. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 ただいま寺前先生の御指摘のとおり、いわゆるハンセン氏病の患者の方々の医療につきましては、国立病院それから国立療養所等におきましても、できる限り協力する体制を整えておるわけでございますけれども、いろいろ現状運用の点につきまして御指摘いただいたような点、率直に今後とも教育体制につきましては遺憾のないような形で指導してまいりたい。と同時に、やはりそうした方々の社会復帰をはじめ医療福祉の面でこそ、こうした国立病院や療養所の機能がより一そう発揮されることが国民の方々の医療の本来の福祉に役立つということになるわけでございますので、一そうそうした点に遺憾のなきよう指導につとめてまいりたい、かように思う次第でございます。
  243. 寺前巖

    寺前委員 一般論だけではあかぬので、現にああいう事象が起こった、こういう事象が起こったということを通じて、それではその人たちにこたえるためにはどういう手を打ったらいいだろうか、担当の局長からひとつ具体的に聞きたい。  あわせて療養所へいくと患者同士がめんどうを見合うというやり方をしているわけなんだ。これはほかではない姿ですよ。療養所の中で患者同士が見合う。それから作業をやらすわけだ。患者作業というやつがありますな。一定の手当を出しながら、食事を運ばしたりすることが行なわれているでしょう。あそこの施設というのは、昔はおそろしいものだから、そういうふうに隔離して、彼らだけでこういうことになっておったのだろうと私は思う。しかし先ほども言うように、昔の治療法のなかった時代の遺産を、今日ちゃんと手の打てるようになった段階において同じような扱い方でいいのだろうか。  そこで私は聞きたいけれども、病院だったら患者さん何人に対して何人——病院だったらちゃんと職員配置の基準があるでしょう。あるいはほかの施設に対しても、ちゃんと何人に対して何ぼという基準があるでしょう。これは一体どの法律に基づいて基準がつくられているのだろうか。突っ込みで適当にということになっているのじゃないだろうか。一体これは病院なのか、正確にはどういう施設なのか。実際に患者さん同士が助け合ったり、美しく見えるけれども、今日の段階ではかなり年もいってこられた、そういうことを考えたときに十分な基準体制というのを考えないかぬと思うけれども、その体制は一体どうなっておるのか、これもあわせて明らかにしてほしいと思います。
  244. 信澤清

    信澤政府委員 前半の元患者であった方が国立病院の窓口で治療を受ける際いろいろトラブルがありました点につきましては、その事情は実は私どもよく承知いたしております。先生も事情御承知でおっしゃっておられますので、決して医師みずからの偏見によってあのような事態が起きたことでないことは御理解いただけると思いますが、いずれにいたしましても、軽快退所された患者さんが一般の医療機関で医療を受けるということについていろいろな障害がありますことは御指摘のとおりでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、一つはいまの療養所自身にもう少し高度の医療ができるような内容のものに整備をしてまいる。お話の中にございましたように、現在九千何がしの患者がおりますが、ハンセン氏病そのものの治療が必要だという患者はごく少数でございまして、問題は患者の年齢が高くなりましたことに伴って、たとえばガンでございますとか、あるいは脳卒中でございますとか、こういう一般疾病がふえてきているというのが療養所の医療の現状でございます。  したがって、そういう医療ができるように、高度の医療ができるように療養所自身を整備をすることが一つ必要かと思います。同時に軽快された患者に対してできるだけ手厚く医療を受けられるような窓口を開く、そういう意味で全国の国立病院、療養所に、いわばそういった窓口を開くようなことを私どもとしては具体的な問題として今後考えていきたいというふうに思うわけでございます。  第二点の療養所の性格でございますが、これは申すまでもございませんで、医療法に基づく医療機関ということになっております。職員の配置等は当然医療法の規定が適用されることに相なるわけでございます。ただ、一般的にきめられております、たとえば入院患者四人について看護婦一人というような表示については、結核とか精神とか、この種の疾病については例外を設けているわけでございます。結核と精神については六対一でよろしいというような例外を設けておるわけでございますが、決してかってにやっているわけじゃございませんが、ハンセン氏病の療養所についての的確な基準というものは現在定めておりません。これは御指摘のとおりでございます。  同時に、従来患者が患者の世話をするというようなことをいたしてまいっておりますが、これもやはりいまの患者の現状から見ますと、お話しのようにたいへん無理がございます。そこで三十五年からいわゆる患者同士の付き添いというものを廃止するという方向で、約八百人ほどの増員もいたしたわけでございますが、これにつきましても、なお十分ではないという実態でございます。したがって、やはり患者の構成なり、あるいは疾病の構造の変化に伴ってほんとうに医療機関らしい職員の配置をする、機能を充実させる、こういう方向に努力すべきものというふうに一般論としては私ども考えております。
  245. 寺前巖

    寺前委員 それじゃ、いよいよまた来年度の予算の編成期にあるだけに、社会的な偏見を持たれているだけに、一そうこの分野について検討してもらって改善されるように要望して、この問題は一応終わりたいと思います。  それで、次にいわゆる未解放部落の問題について質問いたしたいというふうに思います。  きょうは時間もなんですから、未解放の部落の人たちの問題については教育上の問題、それから社会の環境上の問題それから仕事の問題、これの分野は非常に大きな分野ですね。きょうは、労働省が中心におられることですから、職業上の問題について主として聞きたいというふうに思うわけです。  そこで職業安定法という法律があります。職業安定法の第三条によると「何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない。」と、ちゃんとはっきりいっておるわけですね。社会的身分がどうあろうと差別を受けるものではないということを職業安定法の中でもいっておる。これはもちろん日本国憲法に基づいての精神を示すところのものだというふうにいえると思うのです。  同時に同和対策審議会の答申、そして同和対策事業特別措置法の中でも第五条でもって「同和対策事業の目標は、対象地域における生活環境の改善社会福祉の増進、産業の振興、職業の安定、教育の充実、人権擁護活動の強化等を図ることによって、対象地域の住民の社会的経済的地位の向上を不当にはばむ諸要因を解消することにあるものとする。」というふうに、同和対策事業の面においても職業安定という問題が、社会的、経済的地位の向上を不当に押えるものに対して解消するということが重要な使命だ。これもまた基本的に憲法と職業安定法が、さらにこの分野の問題として生かされておる内容だというふうに思うわけです。  そこで実際問題として、私はきょうは学校を卒業する人の問題について聞きたい。中学校を卒業する人、高等学校を卒業する人、大学を卒業する人、その人たちが社会の諸分野に就職していく。このときに社会的な身分、部落だということを理由にして差別を受けるということのないように、法律の面からもそうなっている。したがって、行政というのは、その法律を生かすために積極的な活動というのが必要になってくるということの中で、今日特別措置法が出てから五年になるけれども、この分野での学校を卒業しての就職をめぐって、問題点は今日までなかったのか。私は、労働省に最初に学卒者の就職にあたっての問題点は一体どういう点にあったのか、説明してほしいと思う。
  246. 道正邦彦

    ○道正政府委員 同和地区出身の新規学校卒業者の方々がいわば人生の門出にあたりまして就職の機会均等を奪われまして、不合理な差別を受けるということは断じて許されないところと考えまして、労働省といたしましては求人者に対しまして正しい理解と認識を深めていただくよう啓蒙活動を強力に推進しております。また具体的に新規学校卒業者採用のための選考法につきましても統一応募書類というものを定め、その使用の徹底をはかるようにいたしております。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕 教育関係機関との連携を密にいたしまして、きめのこまかい職業指導を行ない、就職先につきましても近代的な産業へ一人でも多く就職していただくように手を打っておるところでございます。  しかしながら現実にいろいろ問題も起きておることは事実でございますので、そういう場合にはケースごとに指導を加え、あやまちを繰り返すことのないように指導の徹底をはかっているわけであります。
  247. 寺前巖

    寺前委員 統一応募書類というものをつくるというのは一体どういうわけです。
  248. 道正邦彦

    ○道正政府委員 これは就職の不当な差別を排除するためでございまして、採用の可否を事業場において判断をするのは、本人の適性と能力を中心にすべきであって、出身地のいかんであるとかそういうもので採否をきめるということは適当でない。しかしながら、いままでの日本におきます採用の慣行の中には、たとえば本籍地を当然のこととして聞くという慣行もございました。そういうことが就職の不当な差別に関連がございますので、そういう点について全国統一した応募書類を定めまして、弊害の起きないようにつとめているわけでございます。
  249. 寺前巖

    寺前委員 こういうことなんでしょう。たとえば本人の能力、適性を明らかにする上において、定時制の卒業生であるならば、これはあかぬとか差別をするとかいうことにはならない。なぜかといったら、夜勉強に行くとかいう人が、時間数が三年間であかぬから四年間にするのだとか、そういうことの違いであって、夜行こうと昼行こうと、あるいはどういう形態であろうと高等学校卒業には違いないのであって、それで区別するということは職業安定法の立場から言っても適切ではない。  ましてそれが部落の問題ということを考慮に入れたら、これは十分適切でないということがある。そういうような現実があったのだ。本籍を示すこと、あるいは親の職業を示すことは、そういう意味から履歴書についてはそういうことを書かないようにすることが適切ではないかという立場で、労働省としては指導してきたのだ、それが今度は統一した書類にしておかなかったら、口頭で、あるいは文書で言うているだけでは実践的ではないということで、様式まで統一したのだ、そういうふうに解釈していいのですか。
  250. 道正邦彦

    ○道正政府委員 そのととりでございます。
  251. 寺前巖

    寺前委員 私は、実際にそうだと思うのですよ。私の出身の京都を見ても、ほんとうに本人の能力とかあるいは適性、そういう問題に対して適正でないことを書かせているというのが九十件ほど、去年の高等学校卒業者の問題を見ても出てくるわけですね。  たとえば定時制を除くというのなんかは、いろいろのところからのあれで出てくるのだけれども、ところがそれを見ると、たとえば桃山高校というのが私のところにあるのです。桃山高校で調べてみたら、定時制を除くという求人が幾つかの会社から来ている。ところが、そのうちで飯田橋職安関係が、勧業銀行、日本信託銀行、三菱信託銀行、山本海苔店、こういうふうにちゃんと四つも飯田橋職安関係が出てくるのです。そういうふうに、飯田橋職安関係というたら大体本社なんですね。だから大きな企業の本社関係において、このような扱いをしているというのが非常に多いわけなんですね。だから、労働省自身がほんとうにどういう指導をするのだろうかということを全部見ているわけです。  いま言ったのは定時制を除くという問題ですが、そのほか家庭環境を問題にしたり、社用紙を同封してきたり、戸籍謄本を送れと言ってきたり、そうすると戸籍謄本なんか来ると、字何々とこう書いたらもう、関東ではあまり御存じないかもしらぬけれども関西方面へ行くときわめて明確に、ああ、あそこの部落やないか、こうなってしまうわけですね。それから親の家庭環境を明らかにしたら、親が日雇いの親と、それからどこかの会社の社長の親とで、学業の成績を見たら同じであった場合、どちらを採用するか、家庭環境を書かされたら、どういうふうになるか、きわめて明確なんですね。  だから、そういうことは本人の能力を社会的に今後発展させる上ではないことなんです。ところが、そういうことを平気で社用紙で送ってくるという問題が現に昨年も続いているわけですよ。それだけに私は、就職試験にあたっての書類の問題、それから面接試験のあり方の問題、あるいは身上調査をどこかを使ってやるという問題については、非常に重要な位置を占めるわけですね。  ですから、そういう意味労働省が統一書類をつくって、要らぬものはやめるということで一般民間企業に対する指導をやるという立場にことしから打って出られた。それは私は非常にいいことだと思う。そこで、それじゃ労働省が打って出たからといって、全面的にいけるのかどうか。  私は、一番中心になるものは、それではまず国の機関自身がどういう立場に立つのか、公務員試験をやって——人事院か試験をやって採用する、まず公務員試験をやる場合にどんな書類を出せいと言うのか、この書類上の問題はないのか。労働省が、そんなもの要らんことするなと何ぼ企業に言うておったって、何を言うておるのだ、おまえのところの国家公務員の試験はこうするということになったら、かっこうつかぬのだ。だから——人事院来ていますか、人事院はこの問題についてどういうふうに考えておられるのか。
  252. 茨木広

    ○茨木説明員 先生指摘の問題についてでございますが、御案内のように、私どもの試験は国家公務員法の各条項に基づいてやっておるわけでございますが、御指摘のような差別をやらないということで、能力実証主義でやるたてまえできておりますので、いま御指摘のような点につきましても、ここ一、二年注意をしながら漸次、誤解を受けるものについては直しておる最中でございます。  たとえば定時制云々の問題等は、うちの総裁がたびたび言っていらっしゃるように、学歴試験というかっこうでなくて、その程度のものを試験するというたてまえにしております関係上、定時制と普通というようなものにつきましても必要がないだろうということで、従来は落第で四年おったのかどうかわからぬということで書かしておった経緯がございますけれども、本年からやめるということにいたした経緯がございます。  それから戸籍の問題でございますが、これは国籍との関係等の問題もあり、一つの試験で、たとえばことしの特殊試験等でもございますが、約十一件の同一姓名、同姓同名でございますけれども、そういうことがあるわけでございます。そんなことで区別をする必要がございまして、従来、日本の慣例に従って戸籍抄本をとっておったようでございますが、それも末端でいろいろございまして、結局本籍は県段階まで書かせることでよいのではないかということで、ことしはやってみようというようなことをいたしておるところでございます。そんなところで、いろいろ注意をいたしておる最中でございます。
  253. 寺前巖

    寺前委員 それでは、人事院がそういう立場でことしから書類を変える、これはもう変えたわけてすね。——そうすると、人事院はそうやったけれども、今度は採用は個々の省庁でやるわけでしょう。自分のところでどういう人を雇うか、この雇う段階で、面接をやったり調査をいろいろやった段階に、それじゃ人事院では、戸籍抄本なり謄本なり集めたり、あるいは字まで書くようなことはやめて府県段階だけまでのものにするとかいうことをやっておったって、違う書類でもって各省庁がその精神に反することをやり出したら、何やっているかわからぬどいうことになりますね。だから省庁全体が、それじゃそういうことをやらないという立場に立ってもらわなければいかぬわけですね。  まず、公務員の採用にあたってはどうするのか、公社、公団に対してはどうするんだ、末端まで周知徹底するという立場がなければ生きてこないことになると思う。これは総理府のほうが全体の省庁の窓口になるんだろうと思うので、一体どういう処置をとっておられるのか、お聞きしたいと思うのです。
  254. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 国家公務員の採用にあたりましては、御承知のとおりに公務員法の趣旨に徹しまして、それぞれの立場で試験をいたす。その試験の結果、十分なる学識と能力を持つ者を採用するという方針は御承知のとおりでございます。この原則の上に立って各省庁、また各出先機関、また人事院におきましても、その方針で採用をいたしておるわけでございますが、これに関しまして、いわゆる憲法に認められておるがごとく、御承知のとおりに、平等にして明るい生活を営む権利を有する日本国民といたしましては、この憲法の精神にのっとって採用とか、あるいは地域とか、あらゆる具体的な問題について差別を与えるようなことは絶対に避くべきでもあり、そうしたことが現実の上にあらわれてくるというようなことだけは絶対に排すべきである。  またいま労働省あるいは人事院等においての政府委員の方が御説明、御報告申しましたようなことで御理解もいただき、また寺前委員もこの点を御心配になっての御質問であろうかと思いますが、そうしたことのなきよう万全を期しておる次第でありますとともに、総理府におきましては、いわゆる人事担当官の連絡会議等を開きまして、この趣旨に徹しましての人事の採用を各省庁が統一的な見解のもとにおいていたしておるというようなことでございますので、もしもそうしたことがありとせば、仮定の上でございますが、そうした点は絶対に排すべきであり、そうした方向は絶対とるべきでないという強い姿勢で、公正、妥当、適切なる採用方針を貫きたいと考えておる次第でございます。
  255. 寺前巖

    寺前委員 人事の担当者の会合をやって周知徹底させるというお話がありました。たとえば現に私の出身の京都について言うと、昨年京都中央郵便局で面接実地調査というのをやりまして、その面接・実地調査の中で、本人の適性、能力と関係のない事項が出されるわけなんです。やっている人は無意識なんですよ。長い間身についておって、そんなこと聞くのはどこが悪いのだ、私は別に差別意識は持っていないというわけですね。そんなこというたって、実際上そのことを知るという行為が身についておるものが出てきているだけの話であって、本人は差別意識はないといったって、実際はそうなっている。だから四十六年度の国家公務員初級試験の際に、京都の中央郵便局で面接の場合に必要ないことがやられた。  あるいはことしの話ですが、京都のやはり府の職員採用試験において、警察職員の採用問題をめぐって、やはり意向調査というのを文書でとっておきながら、面接をやって、現在働いている職場の名称と住所、現住所は本籍と同じところか、何年くらい前から住んでいるか、家族の人数、構成、年齢、卒業した学校名、父親の職場名、以前つとめていた仕事の職種家人に悪いことをして警察に捕えられた人が以前にいるか、こういうようなことをやはり聞くのですね。本人の能力と直接関係ないわけですね。それでその人が、うちの人はそんな警察に捕えられたことはないと、こう言ったら、そうだろう、役所につとめるからには、そんなことはないだろうなんて言われて、およそ本人にとっては関係のない話なんですね。現実には平気でこういうことが言われているのです。  だから現にシャットアウトしますのだという言い方で、差別が起こっているのではなくて、現実にこういう調査を通じて差別が存在しているわけです。だから面接のあり方として、面接というのは本人の能力を見ること以外に必要ないのだということを明確にする教育というのは、末端に至るまでやらなければならないわけです。そういうことを考えたら、単に会議を開いて申し合わせをしただけでは末端まで周知徹底しない。現に労働省自身は書類までつくって、企業にこういう書類でしか、あなたのところには履歴書は出しませんよ、という指導を文部省当局とも相談してやるわけでしょう。書類でもって末端までやって、なおかつそれでも次々と問題は起こるわけです。問題が起こるというのは、積極的に問題点が明らかになるほうが世の中の改善には早いことであって、隠れているよりも出ることのほうがいいことなんです。  そういう意味ではやはり総理府が窓口になって、各省の末端に至るまで文書で理解できるようにぜひとも指導をしてもらう必要があるのではないだろうか。この点を特にお願いしたいと思う。どうなんでしょう。
  256. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 先ほどから労働省の職安局長もおっしゃったように、労働省は労働省として昨年の三月よりいわゆる職業の明記もいたさず、また統一的な方式によっての採用の書類を整える。また府県以下の具体的なものにも触れない。また人事院におかれましても、四十八年度よりいわゆる試験申し込み用紙の統一、またそうした府県名以外に書かないというように、それぞれ適切な全国統一した方式で処理にあたっておる。  しかし、いま御説のとおりに口頭試問といいますか、口頭面接試験等々に、故意ではなかろうとは思いますが、あまりにも忠実ならんとする気持ちか、具体的にそうした問題の性格に対する掘り下げ方をすることからくる、不幸なことが生ずるというようなことは絶対に避けなければならぬ、こういう判断をいたしておりますので、総理府といたしましては、人事担当官会議を適時開催いたしておりますので、その場において周知徹底をはかり、統一的な方式と、いま言いましたような単なる試験だけでなくして、個々の面接に至るまでの細部にわたる配慮もきめこまやかに指導をいたしてまいり、ことしの地方担当官会議においても、こうした問題を議題として指示をいたしておるということで、寺前委員御説のとおりでございますので、総理府といたしましては、誠意を持って今後も調整をとった統一的な方針で真剣に取り組んで、こうした不幸の生じないように万全を期したいと、こう考えております。
  257. 寺前巖

    寺前委員 それじゃ労働省、いまのお話に関連してちょっと戻るのだが、ことし労働省がわざわざ都道府県知事に、新規卒業生の職業紹介についてということでお出しになっている内容の中に、なぜ面接の問題が指摘されていないのか、これについてお聞きしたいと思います。
  258. 道正邦彦

    ○道正政府委員 御指摘の趣旨で念には念を入れたほうがいいということで、現在起案中でございます。近く都道府県に出すようにいたします。
  259. 寺前巖

    寺前委員 それから特に大手の中心部において問題が多いということを考えたときに、労働省としてはどうすべきだというふうにお考えになりますか。
  260. 道正邦彦

    ○道正政府委員 その点も御指摘のとおりでございまして、大企業に対しましては中央雇用対策協議会というのがございまして、随時雇用問題を相談するわれでございますが、そり回議を先般開きまして、この統一応募書類の趣旨の徹底をはかりました。おそらく私どもは大企業に徹底したものというふうに思っております。
  261. 寺前巖

    寺前委員 それではちょっと聞きますけれども、公務員のほうはそういう対応策でやっていく。それから出先の省庁までそうだ。ここのところは公団、公社に対する指導をやってもらう。  私は念のためもう一度お聞きしたいのですが、総務長官、あとでいいですが、私はこういうような形で会議、指導だけではなくして、ぜひとも文書にしておいてほしい。それから大手の企業に対するものでも、明確に文書をもって申し入れをやるなり何かそういうものをつくって——地方へ行ったら、いろいろなものをつくっていますよ。地方自治体で、たとえば私ここに持っているのは、これは兵庫県の労働部がつくっているものがあります。非常にいいのですよ。こういうような積極策を労働省自身がつくってほしいと思うのだけれども、問題は通産省の指導、管轄の中にある。  一般市販の履歴書の中には、明確にいまの方向と違う内容で市販されているわけなんです。国会の中にも売っています。これは工業技術院で規格をきめてやっているでしょう。通産省おられますか。労働省はそういう指導をしておる。ところが一方では市販の履歴書はこれだ。ちゃんと本籍を書かして家族関係全部書けというのだ。これでは話にならぬじゃないか。これはどうするのです。
  262. 宇賀道郎

    ○宇賀説明員 ただいま御指摘のございました履歴書のフォームでございますが、これは先生指摘のございました日本工業規格、JIS自体ではないのでございます。JISにつきましては、いわゆる帳票類の規格というのがございまして、たとえば紙の大きさでございますとか、活字の大きさであるとかということについて規定をしておるのでございまして、その解説といたしまして、帳票類の規格を、日常もっぱら使われておりますような、たとえば納品書であるとか、あるいは領収書であるとか、そういう書類に適用した場合の様式例というものが解説としてくっついておるわけでございまして、これは約三十九種類指定されておるわけでございますが、その中にいま先生指摘のございました履歴書、身上書が入っておるわけでございます。しかし、そうは申しましても、JISと一体となって世間に出ておることは事実でございますし、内容自体につきましても、いろいろ先生指摘のように不適当な使用をされるおそれのある個所なしとはしないわけでございます。  本件につきましては、最近労働省からも申し入れがございましたので、われわれといたしましても、それを早急に改正するということでいろいろ検討いたしたわけでございますが、技術的にいろいろ難点がございます。さりとてこういうものをいつまでも出しておくわけにはまいらないということで、本年の七月一日付で、この解説集の中から履歴書と身上書をとりあえず削除する。それから同時に、この履歴書を市販しておりますメーカーがあるわけでございますが、これは紙製品工業会という団体をつくっております。これを七月の九日にわれわれのほうに招致して、こういうような経緯に従って解説集から削除したから、おたくにおいても今後こういうものの生産はやめるようにということを強く要請したような次第でございます。  今後は新しい規格をつくるということが非常に問題になるわけでございますが、いろいろこういう問題もあったわけでございますので、労働省の指導も仰ぎまして、できるだけ早く適正な規格をつくるようにいたしたいと考えておるわけでございます。
  263. 寺前巖

    寺前委員 それではそれを早いことやりながら、市販がこうやって広がっている以上、長年つくられておるのだから、これは困ることになるので、急いで指導してもらうということにして、それでは今度労働省自身なんだけれども、就職ガイドブックというのがある。私がここに持っておるのは東京の職安の監修のものですが、これをぱっとあけてみたら、従来どおり自筆の履歴書、どこどこの会社はこういう会社で自筆の履歴書で出しなさいと、ちゃんと七四年ガイドブックというのが出ておる。そうなると、町へ買いに行ったら履歴書はさっきのあれだ。通産省の先ほどの御説明のとおりの履歴書が売られておる。こちらのガイドブックはかくのごとくにして持ってきなさい。これはまた合わぬ仕事だ。しかし労働省はお気づきになって、これは去年の版だったから急速に改善をいたします、新しい版の指導のやつはもう途中でつくりかえさせました。私はその敏感性は非常にいいと思う。  しかし就職ガイドブックというのは、これらだけじゃないのです。たとえば兵庫県で調べてみたら、たいへんな数のガイドブックというのが、いろいろなところから出ておるので、ちょっと手元に持っておるもので言いますと、「リクルートブック」というのが株式会社日本リクルートセンターから発行されている。「躍進する日本の企業」というのは旺文社総務局から出ております。「就職アドバイス」が日本工業新聞社大阪支社から出ている。「七四年就職のための会社案内」が財団法人学徒援護会事業部から出ている。「就職の手引=入社試験必携」というのが中部日本教育文化会編集部から出ている。「高等学校用面接・作文」というのが株式会社教育学習社から出ている。「あいち事業所案内」というのがサン・ロームというところから出ている。  これらの内容を見ると、いま問題になっている点が、そのまま全部出ておるわけです。全面的に社会にはたいへんな職業紹介の指導がなされているわけです。さあ、これはどうします。
  264. 道正邦彦

    ○道正政府委員 ただいまおあげになりました出版社がそういう適当でない内容を記載しておるということは承知いたしております。さっそく出版社に対しまして指導を加えまして、すでに出版物を配っている配付先にまで個々の出版社から訂正させるように指導いたしました。
  265. 寺前巖

    寺前委員 ところで、私はいよいよ最終の段階になったわけですが、都道府県知事に対して労働省職業安定局長が、さきの統一書式は三月三十一日付で知事あてに出している。そして今度は、新しい職業紹介についてというのを都道府県知事に出している。どちらを見ても、あれだけれども、要するに中学校、高等学校の指導をやっているのだ。そこで抜けてくるのは大学だ。大学については、これについて全然なし。大学についてはないんだよ。これがまたたいへんな問題なんだ。  たとえば最近兵庫県の神戸製鋼で六月二十一日に高等学校に配った求人案内というのがあるのです。六月二十一日に神戸製鋼が求人案内を配ったんだよ。ちょっと聞いておってくださいよ。そしたら、統一様式の話を一方では労働省は都道府県知事を通じてやっているけれども、実際に神戸製鋼が学校に送りつけている書類というのは、全然旧態依然のものが送られるわけだ。企業のほうの指導というのは、そう簡単に入らないということが、これでわかる。学校のほうはそれをもらって、これは話が違うじゃないかということを問題にした。そしたら今度は企業の側でどう言うかというと、ああこれは間違っておりました、うっかりしておりました、短大用をそのまま高校用として発送しましたと言うてあやまったんだよ。短大用を送ったというんだけれども、高等学校だったら、こういうことは問題だけれども、中学校だったら問題だけれども、短大だったら問題ないんだという考え方が、はっきりと企業の側にあるんだよ。はっきり企業の側にある。短大用としてそのまま送ったんだ。  そうすると、ぼくは大学のあり方が問題になってくると思う。それでは、こういう思想状態に企業の側があるときに、大学の側においてはほんとうにその思想状態に対して対応するところの指導がなされているのだろうか。職安の局長名で出るのは、都道府県知事に中学校、高等学校の話だけ出た。それでは労働省と文部大臣との間に協議をして——この昔流の職業紹介を大学でやらすことになっているわけだ、職安法では。それではその協議ははたして文部省のほうで徹底して、そういうことを企業側でやらさないように自主的に大学の側でもはっきりしているのかどうか、私はこの問題について文部省のほうに聞きたいと思うのです。どういうことになっておるのか。
  266. 遠藤丞

    ○遠藤説明員 大学につきまして、この問題についての問題意識が薄かったということは御指摘のとおりでございます。しかし、事柄の性格上は全く同様の事柄でございますので、労働省のほうとも御相談をしながら、中央雇用対策協議会等を通じまして企業側にもお願いをし、大学のほうにも今後趣旨を徹底させてまいりたいと思っております。
  267. 寺前巖

    寺前委員 私は、大学の問題は緊急事態だと思う。労働省がここまで中学校、高等学校指導をやっておるけれども、一番エリートの集まっている、しかも大学ということになってくると、奨学金を出してまで部落の中で気ばって教育したわけでしょう。その人たちがいよいよ社会に出るときに直面することに対する問題というのは、影響はぼくは大きいと思いますよ。  現にたとえば広島県で、三菱重工のビクターエアコン販売会社というところで、これは昨年の六月の十五日ですよ、ある大学生が広島営業所を受験したのです。受験したら、六月二十六日に採用通知書が届き、契約書の提出を求めてくる。契約書に署名捺印して出したら、いろいろなことがその後出てきた。何が出てきたかというと、今度は興信所を通じて家庭調査があった。そしたら、そこで——興信所を通じてやったということを初めのうちは隠しておったけれども、興信所自身がやりましたということを認めた。これはたいへんなことですよ、部落を調べていくのは。  ところがこの三菱の日本ビクターエアコン販売会社のそもそも入社志願書というものを見たら、入社志願書の内容ははっきりと本籍地を書かせるようになっているし、家庭環境を書かせるようになっている。おとうさんの仕事はどうのこうのと。これがちゃんと大学に来ているわけです。大学からこれを書かせて送らせているわけです。私は大学におけるところの部落問題の立ちおくれというのは著しいものがある、何ら手を打ってないというふうに言っても過言ではないと思う。労働省も私はたいへん怠慢だと思う。文部大臣と協議をして云々ということをちゃんと職安法に書いている。こういう大事な問題を十分協議してない。だからこういう問題が短大の場合のを間違って送りましたということを平気で言わせている。これは文部省と労働省は即刻この大学対策に対して検討してもらわなければならない。これが一つ。  もう一つは、大学の卒業生を今度は教員として採用するという試験が間もなく行なわれますね。八月段階にずっと試験が行なわれます。さて、この試験段階において教員の試験をする場合に、どういう状態で採用試験をやるか。一番早い段階の問題だと思う。そこで総務長官に、きょうは各省全部呼んでおりませんので総務長官にもう即刻早い段階に——一番おくれている大学関係の人々を集めた試験が間もなく行なわれるのです。それだけに、これは教員の採用試験というたら地方自治体になりますか、自治省にもなることだと思うので、特別に御配慮をいただいて、そのようなことのないように十分御指導あるいは連絡をお願いをして、一番最初に申し上げましたけれども、単に口頭だけではなくして、文書の面においても、各省の末端にまで周知徹底できるように、あるいは自分のところの所管のところに文書で十分に指導することができるようにひとつ連絡調整を、私は大学が最もおくれているだけに申し上げておきたい。特別に総務長官、私はもうこれは御返事をいただけたら、御退席いただいてけっこうですから、その点について先に一言お願いしたい。
  268. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 先ほどから御指摘になりました重要な問題すなわち国家公務員、地方公務員また民間企業への就職等の問題につきましての大学卒業に対するところの適切さを欠く問題点を御指摘になりながら御要望になりました点、ごもっともなことだと私は考えておるのであります。それぞれの会議においても通達いたしておりますし、また府県知事あてに、あるいは関係者にそれぞれの各省庁も十分通達を文書によっても出しておりますし、また今後も総理府が中心となりまして、各省庁との連絡調整の会議の場において、いま御指摘になりましたような問題の解明、またそうした不幸なことがなきよう各省庁にも強く積極的に働きかけ、御期待に沿いたいということを、政府の名において表明申し上げて、御理解願いたいと思います。
  269. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 寺前君、申し合わせの時間が過ぎております。結論をお急ぎください。
  270. 寺前巖

    寺前委員 大学の問題ですが、現に大学がそういうことであれになっているというだけでなくして、たとえば去年の十二月九日に京都大学において新規採用選考調書を書かせて面接をやっているのでございます。これはことしの三月に高等学校を卒業する人の採用選考調書であり、面接なんですが、その場合に先ほどから問題になったと同じように本籍、家族の職業、学歴、そういうものを調べたり、先ほどからのいろいろの問題について、大学で採用する場合にやはり起こっているわけです。学生の面における指導も足りなければ、実際に自分のところの職員の採用についても非常に立ちおくれを来たさせている。  私は大学について、大学自身の職員を採用する面からも、それから今度は学生を社会に就職させる面からも、両面から文部省は積極的な態度をこの際にとっていただきたいと思うのですけれども、決意のほどを、これは文部省とそれから労働政務次官にお聞きしましょうか、大学に対する特別な問題に対して、労働省としてはどういうふうにおやりになるのか、その決意を聞いて質問を終わりたいと思います。
  271. 葉梨信行

    ○葉梨政府委員 先ほどからの先生のお話、ごもっともでございまして、大学関係について、大学卒業者についての指導並びに文部省との連絡等について、労働省として至らぬところがございましたので、この点はさっそく御趣旨に沿うような措置をとりたいと思います。
  272. 遠藤丞

    ○遠藤説明員 ただいまの労働政務次官のお話もございましたように、労働省に御協力いただきまして企業側、大学側ともども指導を徹底してまいりたいと思います。
  273. 寺前巖

    寺前委員 どうもありがとうございました。
  274. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 坂口力君。
  275. 坂口力

    坂口委員 七月一日から献血推進月間が始まっております。今国会の最初にも一度この献血問題、取り上げさせていただきましたが、引き続きまして、本日献血問題をやらさせていただきたいと思います。  御承知のように昭和三十九年八月の閣議決定以来、全国で献血の輪は広げられましたし、制度上いろいろの問題はありましたけれども、とにもかくにも国民全体の中でその重要性が認識されまして、献血者数は年間約三百万になんなんといたしております。申し上げるまでもなく、この献血運動というのは単に血液を出し合う運動というのではなしに、いわゆる血液を出すという生物学的な、あるいは医学的な側面だけではなしに、お互いの生存をかけた一つの運動であり、からだの一部を提供し合うということによって、ともに生きるという人間の本質にかかわる非常に大きな運動であるというふうに私どもは認識をいたしております。  したがいまして、それを進めるにあたりましては、それにふさわしい政策なり、またそれにふさわしいフィロソフィーというものが必要であるというふうに考えております。具体的な問題といたしましては、先ほども述べましたように約三百万になんなんとする人々が献血をしてくださるわけですが、しかし今度はそれを供給する体制と申しますか、つくられた保存血液が今度は各病院にスムーズに運び得るかどうかという問題がございます。  たまたま先日来、私のほうにも二件ほどその問題が持ち込まれました。それはいずれも血液の供給が非常におくれたために不幸にしてなくなられたケースでございます。お二人とも御婦人でございまして、お産のあとの出血による死亡ということがございました。そういったケースもまだまだ起こる昨今でございますので、この供給体制につきまして、きょうはいろいろとお話を伺いたいというふうに考えております。  現在のところ、ほとんどの場合赤十字自身が献血事業をやっておりますが、赤十字自身が供給をやっておるところもございますし、あるいはまた他の事業団あるいは一般の薬局等がこれを受け持っているところもあるやに聞いております。この現状につきまして、まずお聞きをしたいと思います。
  276. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 先生指摘のように、保存血液は国民全体の愛情と申しますか善意に基づく拠出によりまして、医療用に必要な血液を供給するという体制のものでございますので、その採取されました保存血を良質で十分に保管するということと並んで、適時、適切に医療機関までそれを届ける、むだなく使用できるようにするということは非常に大事なことであろうと存じます。  先生指摘のように、現在の保存血液の供給体制の実情といたしましては、土地の実情によりましていろいろでございますが、いまおっしゃいましたような事業団形式も含めまして、県によりまして違いますけれども、全部または一部を医薬品販売業者、これは広義の医薬品販売業者でございますが、もちろん公益法人的なものもあるわけでございますけれども、そういう赤十字自体以外のものに委託しておりますところと、それから血液センター自身が直接供給しておるというところとに分かれておりまして、全国的に見てみますと、量にいたしますと、大体供給量の約六〇%が委託供給、それから四〇%が大体赤十字自身の血液センター自身の手によって配給されておるという状況でございます。  なお、これはだいぶ前からでございますが、血液の配送車につきましては、これは緊急自動車の指定を受けておりまして、いろいろな方式によりまして、できるだけ必要な場合に早くお届けできるような体制をとっておるわけでございます。ただ保管等につきましては、かなり高度の技術と施設を要するというような制約もあり、またもの自体がたくさんつくって十分な用意をしておくという性質のものではございませんで、必要最小限度と申すと申し過ぎかもしれませんが、必要なものをできるだけ有効に使うというような性格のものでございますので、一般医薬品のように、いついかなる時点を問わず必要なときに必要な量を直ちに届けるというまでの体制は、地域によりますと御指摘のように必ずしも整っていないというようなおそれはなおあろうかと存じます。  特に日本の妊産婦の死亡の実績から申しましても、いま御指摘のような異常出血による死亡というのは諸外国に比して高いわけでございまして、そういうような母子保健対策ともからみ合わせまして、今後の配送対策につきましては、さらに赤十字の御意見も十分に伺いまして、漸次整備していかなければならない、さように心得ております。
  277. 坂口力

    坂口委員 今後の問題といたしまして、これはどこが配給体制をとるにいたしましても、より迅速に患者さんに届くということが第一条件でございますので、それを考えますときに、特に山間僻地の多いような地域あるいはまた病院等の設備の非常に少ないようなところ、そういうところにお住まいの方々のことを考えますと、何かはだ寒い感じがするわけでございますが、今後の御方針として、いままでは赤十字が四割、ほかの一般の業者のほうが六割ということでありますが、どこがするかは別にいたしまして、今後形態としてどういうふうな形態をおとりになっていくおつもりなんでしょうか。
  278. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 この点は地域によりまして実情がそれぞれ異なる点がございますので、全国的にどういう一律の形態をとればいいかというわけにもまいらぬのではなかろうかと存じます。都市的な形態のところは形として見てみました場合に、相当医薬品の配給体制の上で、かなり力を持った卸業者等も完備しておりまして、そういうところは医療機関と常に密接な連絡をとっておるというような実情もございますので、そういうようなところでは、むしろ医薬品の販売業者に委託するという形のほうがより実態に合う場合もあろうかと存じます。  それに対しまして、それと対照的な、いまおっしゃったような僻地というようなことになりますと、これはむしろ医療体制自体の整備が残念ながら、なおおくれておる点がございまして、そういう医療体制の整備とからみ合わせまして考えなければならない。そういう非常な僻地におきましては、必要なときにすぐといわれましても、おそらくどういう方法をとりましても、なかなか間に合わない場合があろうかと存じます。したがって、これは保存血の量との見合いでございますが、やはり最小限度その病院において必要だと考えられるようなものについては、そういった病院に保存施設を設けて最小限度の保存をしていただくというようなことも必要な場合があろうかと存じます。  そういったことを含めまして、地域の実情に応じて、もう少しきめのこまかい対策をとっておくということが必要であろうと存じますが、なお半面これは先ほども申し上げましたように、保存血液というものの特殊性から申しまして、日赤あるいは医薬品販売業者がいかに努力いたしましても、一般の医薬品と同じような敏速な配給というのは、やはり限度がございますので、医師会等にも御協力を得まして、医療機関自体のほうにおかれましても、ある程度の手術計画等に基づいての計画的な、少し余裕を置いた請求をしていただく、そういうようなことにつきましても御協力を得ていく必要があるのではないか、さように考えております。
  279. 坂口力

    坂口委員 諸外国の例を見ました場合に、中にはリトルバンクというような呼び方をしまして、大きい病院、特に公立の市民病院級でございましょうか、そのぐらいな病院に常時保管をしておく、そしてその地域の緊急の場合に備えるというような方針をとっておるように聞いておりますが、日本の場合にはそういうことは可能なのかどうか、この点いかがでございましょうか。
  280. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 現在の日本赤十字社が大体全国をほとんど網羅いたしますネットをつくって供給体制をとります前には、むしろ各病院におきまして院内の血液銀行というような形で保存血の供給がなされておった例もあるわけでございます。また、今後考えられます医療供給体制全般から考えましても、やはり地域的なケルンになる公的病院というものは考えられており、また漸次整備されているわけでもございますので、先ほど申し上げました地域の実情に応じての配送体制を考えるという体系の中身は、先生指摘のような地域の中心になります病院において何らかの形で、たとえば施設設備を委託するというようなことも含めまして、そういった体系がとれないかどうか、外国の例等もさらに勉強いたしまして、前向きで検討させていただきたいと考えております。
  281. 坂口力

    坂口委員 この保存血液の配給体制にかかわりまして、やはり一番関係の深いのは、いわゆる血液製剤と申しますか、分画製剤と申しますか、そういったたぐいのものが、あわせて非常に大事になってくると思うわけでございます。保存血液が急に運び得ないというときに、しばらくの間それにかわるものとして使用されるものが各地域に常時整えられているということが、たいへん大事なことだと思うわけでございます。多少専門的なものになりますが、フィブリノゲンというようなもの、あるいはまたプラスマネート、こういったようなものが非常に大事になってくると思うわけでございます。  ところが、日本のいままでの血液製剤あるいは分画製剤というものは、たいへんにおくれておるということがいわれております。特に献血されました血液というのは、ほとんどが全血と申しますか、そのままで患者さんに使われるのであって、それからその成分、成分に分類をして、それを使うということが、たいへんにおくれてきているということがいわれておりますが、この面についての今後の計画なるものがございましたら、ひとつお示しをいただきたいと思います。
  282. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 御指摘のように、献血されました貴重な血液、これは、医療の内容によりましては、保存血液あるいはその前段階の新鮮血液というような形で、全血をもちまして医療に用いられる、ケースとしては、それが一番多いわけでございますけれども、御指摘のように、血液の中の一部の成分、特にいまおっしゃったような血漿の分画製剤というような形で、あるいは特殊な場合には血液の成分製剤というような形で利用したほうが、医療的にもより大きな効果をあげ得るし、また、せっかく献血された血液について、より有効な利用が考えられる場合があるというようなことがございますので、     〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕 四十八年度に入りまして、若干の予算を計上いたしまして、血液問題全体に関する研究会を、各関係分野の専門家にお集まりいただきまして編成いたしまして、その中にさらに研究部会というようなものを設けまして、今後そういった血液の成分製剤あるいは血漿分画製剤をどのように進めていくかというような問題も一つの重要な議題として含めまして、現在鋭意検討を続けている段階でございます。その御結論を得ました上で、早急にそういった開発の体制も整えてまいりたいというふうに考えております。  もっとも、そうは申しましても、現段階におきましても、御指摘のように、量は非常にわずかでございますけれども、全然行なわれていないわけでもございませんので、現在行なわれておるものにつきまして、さらにそういったものを使いやすい体制をとるというような意味も含めて、ことしに入りましてから、血液成分製剤あるいは分画製剤につきまして、これを薬事法上のルールにきちっと乗せました正規の医薬品として製造承認許可を与え、またできるだけ早い機会にこういったものを医療保険の薬価基準にも登載いたしまして、医療上これを使用いたします際の事務的な面におきましても、できるだけ便宜をはかる、そういうようなことと並行いたしまして、こういうものの開発利用というものを、できるだけすみやかに促進してまいりたいと考えております。
  283. 坂口力

    坂口委員 実際問題といたしまして、各病院でそういう製剤が自由に使われるようになるには、あとどのくらいかかるのでありましょうか。現在委員会ができて、そこにおいて各専門の方々によって話が進められている。次の段階としまして、そういう工場等もつくっていかなければならないと思いますが、それが実際に、日本国じゅう津々浦々とまでは申しませんけれども、まあおもだったところで十分に使えるような段階になるためには、あとどのくらいかかるでしょうか。
  284. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 まことに申しわけないのでございますが、いまの御質問に対しまして、あと何年というような推定数を出すだけのデータは実は私どもも十分に持っていないわけでございます。今年度そういった研究会の発足と並行いたしまして、血液製剤の需要動向調査ということを、予算も計上いたしましていたしております。ただし、現在血液製剤がどういう需要動向を持っておるか、これもなかなかむずかしい問題でございまして、先生指摘のように、特に保存血液も必ずしも十分でない面がございますけれども、成分製剤とか分画製剤、特に有効期限の非常に少ないものにつきましては、まず注文生産的な製造がなされるというような要素もございまして、需要がむしろ供給に制約されて出てくるというような点もありまして、おっしゃったような、ほんとうに医学的にフルに必要だとすれば、どのくらい要るかというような推定もなかなかむずかしいわけでございますが、そういった需要動向調査の数字を踏まえ、さらに研究会の専門家の方々に将来を推計していただきまして、そういったものにあわせて、できるだけ早く供給体制がとれるような行政的な措置をとってまいりたいと努力しておる次第でございます。
  285. 坂口力

    坂口委員 私も直接聞いた話ではございませんが、特に産婦人科医師会等から赤十字等に対しまして、緊急の出血に際して保存血液が十分に間に合わないことがあるので、そういう緊急のときのためにフィビリノゲンといったような製剤を何とかして全産婦人科に置けるような体制に一刻も早くしてほしいというような要望が来ておるようでございます。私は一刻も早くそういう体制をとっていただいて、そして日本がこれだけ文明が発達していながら、文明国の中で一番出血による妊婦の死亡が高いというような汚名を一日も早くなくしてほしいと思うわけでございます。それをひとつ一日も早くレールの上に乗せていただきたいということを御要望いたします。  これとあわせて申し上げたいのは、たとえば大地震がありましたようなとき、あるいは大きなガス爆発等があったようなとき、そういったときにやけどの人とか、あるいはまたそれに類する人が非常にたくさん出るようなことが不幸にして起こったような場合、どういたしましても血液製剤というものがたくさん要るわけでございます。  外国の例を見ましても、大体その国の国民の必要な量の二年間分くらいをアルブミンというような形で保存をいたしております。ところが日本の場合には、このアルブミン等の製剤もほとんど進んでいないように聞いております。これも緊急時の問題を考えますと、非常に重要な問題だというふうに思うわけでございます。まあ関東大震災のような地震がそうまで多く起こるとは思いませんけれども、万が一ああいうふうなものが起こったといたしましたら、現在の日本の体制であれば、多くの人が死ぬよりほかに道はないというのが現状ではないかと思います。どうしても、ころばぬ先のつえで、そういうことが起こったときにいつでも間に合うように、アルブミン等の製剤についても早急に体制を確立してもらわなければならないというふうに思うわけであります。こちらのほうの体制はいかがでありましょうか。
  286. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 私どもも、いま先生が御指摘のような点、最近いろいろ災害の発生についても議論がなされております際でございますだけに、他の救急医薬品と並べまして、特に血液製剤の研究体制につきましては努力をしなければならないと考えております。ただ血液製剤、いろいろないま、おあげになりましたような血液の成分を利用いたします製剤につきましては、今後の研究に待たなければならぬ点が多いわけでございますけれども、血液製剤自身につきましては、非常に保管方法が手がかかるということと、保存期間が短いというような要素から、他の医薬品のように一カ所に備蓄しておいて、あるいは数カ所のデポをつくって備蓄しておいてということには、なかなか現状ではまいらない点があるわけでございまして、現在のところ一番そういった負傷等に利用いたします保存血液につきましては、これは先生も御案内のように、各基幹センター同士で連絡をとりまして、一地域において非常に多くの需要がありました場合には、他の地域の基幹センターあるいはその他の血液センターから緊急に輸送するという方法をとってカバーしておるわけでございますが、特にいま御指摘のアルブミン等の製造につきましては、基本的に申しまして、一つはそういう保存の体制をとるということとともに、その原料になります血液の献血、これがそういう保存血以外に相当量を回すということになりますと、さらに献血を促進しなければ、全体としての不足を来たすというような要素も考えられるわけでございますので、対策といたしましては、一つは献血体制をさらに伸ばしまして、国民の協力を得て量をふやしていくということと並行いたしまして、一般的な血液に由来いたします製剤の製造体制あるいは保管体制等についての研究会の御意見を得て整備を進めていく、その両面から考えてまいりたいと思います。
  287. 坂口力

    坂口委員 いまこの体制がとりにくいのは、一つはいわゆる原料になります血液の問題がございますが、もう一つは結局どこにつくるかは別にいたしまして、やはり財源の問題でございますが、これがスムーズにいかないためにできにくい。血液の原料は、これはいままで全血でたくさん使っておりますのを、全血を少なくして、そして分画製剤あるいは血液製剤という形で使うようにすれば、まるまるその分だけふえるというわけではないと思うわけでございます。それはそれとしまして、また皆さんにお願いをするとして、財政的な問題では、局長さんのほうでがんばってもらえば、すぐできるものなんでしょうか。その辺どうなんでしょうか。
  288. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 財政的な問題と申しまして御指摘の点がいろいろ広い範囲の御指摘であろうと存じますが、まず、順序が逆になるかもしれませんが、血液製剤を御質問の医療機関で供給いたします際の医療費の一環としての血液製剤の価格、これは先ほど申し上げましたように、薬価基準に掲載いたしまして、原則として医療保険の医療費としてまかなわれる、体制としてはそういうふうになっておるわけでございまして、ただ血液というものの特殊な性格からいたしまして、現状先生御存じのとおり、そのうちの原価に相当いたします赤十字の費用の相当部分につきまして国費をもって補助金を出しておる、そういう体制をとっておる次第でございます。  それからもう一つ、今後血液製剤を開発あるいは製造いたしていきます場合のそういった新たな研究施設あるいは製造施設をどうするかという問題これは全体的といたしまして、いまの血液の製剤自体の価格とも関連するわけでございますが、少なくとも新しい血液製剤を開発していく研究の段階におきましては、国もできるだけの力を入れて援助をするという体制をとらなければならないと存じます。  また、今後の研究体制といたしまして、赤十字の中央血液センターを中心とはもちろんするわけでありますけれども、国公立あるいは私立の大学の専門家あるいは血液製剤を現在つくっております民間の血液製剤の製造業者、そういったもののそれぞれの能力を結集いたしましての研究体制というものをつくっていく、そういうようなことによりまして相当促進されるものではなかろうか、そういうことを前提にいたしまして、研究会等でも御検討をいただいておるわけでございまして、特に今後において財政問題が大きなネックになる一つの問題ではあろうと思いますが、それだけが大きな問題であり、財政問題が解決されれば急速にそういったものの整備が進む、必ずしもそれだけのものではないのではなかろうか、したがって、問題点を一々つぶしてまいりまして、ネックのところを広げながら全体的に進めていくという配慮が必要であろうと存じます。
  289. 坂口力

    坂口委員 いずれにいたしましても、私どもの生命に直接関係のある分野のことでございますので、一刻も早くその体制というものをつくってもらわなければならないと思うわけでございます。  そこで、政務次官にもこの際ひとつお願いをし、また御意見を伺っておきたいわけでございますが、いまお聞きいただいたように、日本の血液及びその製剤の供給体制というものは非常にまだ不備なままに残されております。献血運動が始まりましてから約十年を過ぎようといたしておりますが、ようやくにして血液の提供のほうは軌道に乗ってまいりましたが、逆に、今度それを供給する、そして一人でもそれが不備のためになくなる人がないような、そういう体制の確立という面では、まだまだの感があるわけであります。特にいま局長からお話しのように、まだ研究段階というようなこともございます。  しかし、諸外国におきましては、それがすでにでき上がっておる、ことに先進諸国だけではなしに、非常に後進国といわれるような国においても、ばく大な金が投じられて、すでにでき上がっている、その国々の人たち日本に見に来て、いかに日本はりっぱなものを持っているかと思って見にくると、たいへんお粗末、これは東南アジアの中で日本が一番粗末ではないかと、その人たちが言うほど粗末なままに捨てられておるわけであります。ですから、一にかかってやる気があるかどうかにかかってきていると私は思います。  昨年の八月にも血液保存体制の整備というのが自民党のほうから打ち出されまして、そしてことしはどうしてもその基礎をつくるのだというのが打ち出されました。ことしの予算におきましては、それらはほんの小さなかけらが見えたというような段階でございますけれども、少なくとも来年度においては、これは一つのやぐらにしてもらわなければならないと思うわけでございます。そういう意味でひとつその御決意のほどを、何としても来年はこれをものにしてほしい、ひとつ御意見を伺っておきます。
  290. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 先ほど来から坂口先生の実践的な活動や御体験の中からの御判断や幾つかの御提言に対しまして、局長からの答弁の中にもございますように、幾つかの御教示もいただいたと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、福祉社会あるいは医療福祉のたてまえや制度確立をしたから、それで福祉社会への手がかりがつかめということには、つながらないわけでございまして、要は国民福祉に対する理解と認識をともに高め合いながらの社会的要請ということを考えますならば、少なくとも現在の献血の問題がいわゆる善意の方々の協力、先ほど坂口先生指摘のように、ともに生きるのだという、いわゆる生命尊重への理解と認識の上に立った、そうした献血者の方々の善意というものだけに大きなウエートを置くということでは、国の行政の立場としての責任も十分果たし得ないわけでございますから、その血液事業が円滑に促進をされ、より多くの国民の方々の医療福祉に貢献できるように、来年度予算もすでに作業の段階に入っておるわけでありますけれども、私ども先生の御提言に対しまして、最大の決意をもって、この問題についても積極的に取り組みたい、かような決意を申し上げておきたいと思います。
  291. 坂口力

    坂口委員 ひとつその点を十分にお願いをしたいと思います。それに対するスケジュール等ができましたら、またお知らせをいただきたいと思うわけでございます。  それから、時間がございませんので次に移らせていただきますが、いわゆる一本の血液をつくるに要します代金の問題がございます。私、これをちょっと見せてもらっておりましたら、県立の血液センターもたくさんございますが、そこで一本に要する費用と、それから赤十字等でやっておりますものと、かなりなばらつきがございます。一本の二百ccの血液を保存血液につくり上げて病院に供給するのに、高いところは五千円をオーバーしているところがございます。そうかと思いますと、二千円弱でできているところがございます。非常なばらつきがあるわけでございます。  名前を申し上げていいかどうかわかりませんが、たとえば昭和四十六年度兵庫県立の血液センター、ここでは五千五百四十八円という数字が出ております。このときに赤十字のほうでは千九百九十円というような値が出ておりますが、これは体制の問題もあろうかと思います。あるいは整備の問題もあろうかと思いますが、こういうような差は、これは赤十字のほうが非常にうまく率よくやっているのか、それともこの県立の血液センター等で五千円近くかかってやっているようにこのくらいかかるのがほんとうなのか、この辺はどうなんでしょうか。
  292. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 申しわけございませんが、私の手元にセンター別の経費の内訳を持っておりませんので、どのくらいが妥当かという具体的な額は申し上げかねるのでございますが、私ども赤十字あたりから聞いておるところによりますと、他の医薬品製造と違いまして、これは当然のことでございますが、大量生産のメリットというのは、保存血液のような場合には全然考えられないわけで、むしろ母体採血が中心になって、献血採血車等によります出張採血が比較的少ないようなところのほうが一本当たりの単価は低いというような傾向もあるようでございます。非常に力を入れて献血採血車を回し、大いにPRを行なって献血者の数をふやしていくというような努力をいたしまして、新規の献血者を開拓することによって、むしろ多少その経費が上がってくるというような要素もあるやに聞いております。  したがいまして、一本当たりのセンター別の単価によりまして云々するわけにもなかなかまいらないんだろうと思っておりますけれども、ただ、私どもの補助のしかたといたしましては、これも先生御承知のとおり、赤十字全国を一本にして計算いたしまして平均的な単価を出しまして、それに対しまして薬価基準によります保存血液の単価というものを低く押え、その差額を国から赤十字社に対して支給する、そういう方式をとっているわけでございまして、こういった方式は、計算のしかたはいろいろあろうかと存じますけれども、考え方としては、全国民がひとしく善意をもって献血し、また先ほどのお話のように、どこにおりましても、それを手術に使わなければならない国民の立場を考えますと、統一した経費をもって計算するという方式がよろしいのではなかろうかと考えております。
  293. 坂口力

    坂口委員 できるだけ低い単価で優秀な製品がつくれれば、それにこしたことはないわけでございますが、ただ私が心配いたしますのは、低くできればよいで必要なこともせずに手を抜いてこしらえるというようなことがあってはならないと思うわけです。これを見せていただいて、かなりなばらつきがあったものですから、これだけたくさんかかったところがある一方において、非常に少ない額でできておるところがあるわけでございますので、五千円なら五千円かかるものか、二千円くらいであげるということが血液そのものからいって、はたしていいことかどうかということがございましたので、いまお尋ねをしたわけでございます。  血液は何と申しましても、無料で提供されたものは無料で皆さんにお返しするというのが大原則であるはずでございます。この原則はどうしても貫かなければならないというように私ども思うわけでございます。人件費等は毎年上がってまいりますし、一本の血液をつくるに要する費用が増加することは当然だと思うわけです。これに対して、値上げ等の問題が出てきたり、今後いろいろ紆余曲折があろうかと思いますが、私どもは先ほど申し上げた無料で提供されたものは、無料で皆さんにお返しするという大原則を貫いていただきたいと思うわけです。政務次官、ひとつその辺のところの御見解をお伺いいたします。
  294. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 いわゆる献血の受け入れ体制といいますか供給体制、あるいは献血思想の普及、あるいはそのたよりとするところの善意の問題等いろいろ考えますと、坂口先生の御指摘のように、無料で献血されたものを無料で供給するという原則の上に立って献血事業が運営されることも大きな必要性があろうと思いますけれども、率直な話が、医療体制の中で献血も位置づけられておる、こういうような現状もございますので、いろいろ先生のほうの御指摘も十分検討をさせていただきながら、私どもといたしましては今後の医療体制の中における献血の位置づけというものを一段と考えさせていただきたい、かように思っている次第です。
  295. 坂口力

    坂口委員 今年最初のころの委員会におきまして、この問題を取り上げさせていただきましたときに、献血というのはただ血液を出し合う運動だけでなしに、優秀な血液を持っている人というのは、やはりすぐれた健康の持ち主である、このささげる献血運動というのは、すこやかな血の献血運動でなければならない、そういうことを私は申し上げた記憶がございます。  そういう意味で、この献血運動というのは、大きなそういう私たちの健康というものを踏まえた上での運動でなければならないと思います。やはり人にあげられるような血液を持つ健康な人間になるということが、その基本であるというようなことから、献血者に対する処遇の問題で、献血をしていただいた方にただ手帳をお渡しし、あるいはバッジをお渡しするということだけではなしに、あるいはまたジュースとかお菓子をお渡しするというようなことではなしに、やはりそれを機会として皆さん方の健康管理にお役立てをいただくようなシステムができないであろうか、それがこの献血運動の最も進んだ方法であるというように私どもは考えるということを申し上げたわけでございます。  それについて、その後いろいろと御研究をいただいているようでございますが、来年度の予算の問題もございますので、その辺のところ、いまお話しいただける段階でけっこうでございますので、お話をいただけましたら幸いだと存じます。
  296. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 いまの先生の御質問、二月九日の予算委員会で、これは大橋先生からも御質問がございましたし、引き続き先生からも御質疑をいただきまして、私どももかねがね、特に先生が三重県に御在職中に、すでに三重県の血液センターにおきまして先駆的に、三重の献血者に対しましての健康診断を行なっておられまして、そういった成績も拝見いたしまして、これは非常に有効なことであろうと存じます。  特に献血者に対する処遇と申しましても、金銭を給するということは売血に戻るわけでございますので、もってのほかだということになりますし、たとえば、金銭にかえて物を贈るということになりますと、これは考え方によりましては、むしろ売血に近いというような、物をもって血液を買うような印象も与えかねませんので、私どもいろいろな方法を検討いたしてみましても、やはり先生指摘のような、そういった血液を供給された機会に、その人の血液を検査することによって健康を調べ、その後の健康管理に資していただきたいということは、献血のためのみならず、国民全体の保健衛生、健康増進というような面におきましても不可欠なものであろうと考えております。  具体的にこういったことを行ないますためには、やはり各血液センターにおきまして、人の問題あるいは経費の問題等もあるわけでございまして、先ほど申し上げました全体的な財政の中でどういうふうにそういうものを取り上げて考えていくかという問題に帰するわけでございまして、私どもも資料をいろいろいただいておりますし、検討もいたしておりますので、できるだけ可能なる範囲で、そういった方向に向きまして施策を進めてまいりたい、そういうふうに努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  297. 坂口力

    坂口委員 今後この献血運動というものはそういった方向に私は進まなければならないと思いますし、この方向というのは、おそらく近い将来において世界の各国において取り上げられていく方向であろうというふうに私は考えております。そういうふうな先駆的な意味もありますので、ひとつ何とか日本で優秀な献血制度というものをつくっていただくように御尽力をいただきたいということを最後にお願いいたしまして、終わらせていただきます。
  298. 田川誠一

  299. 和田耕作

    和田(耕)委員 日本ぐらい薬の種類の多い国はないと思うのですけれども局長さん、薬価基準に登載されておる薬の種類は現在どのくらいあるか。十年前からどういうふうな形でふえておるか。そこをちょっと。
  300. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 申しわけございませんが、手元に正確な資料を持っておりませんのですが、現在登載されておりますものは、一般名で申しまして約七千、それから品目別に申しますと、たしか一万三千ぐらいであったかと存じます。  増加の傾向につきましては、もちろん新しい薬というのは年々出てくるわけでございますので、ふえてはおりますけれども、反面これは非常に使われなくなった薬というものは、毎年薬価基準改定の際に削除もいたしておりまして、少しずつふえておりますけれども、ちょっと十年前の数字は記憶しておりませんが、そう著しく薬価基準の薬がふえておるということもなかろうかと存じます。
  301. 和田耕作

    和田(耕)委員 これは外国と比べて非常に多いということを聞くのですけれども、たとえばドイツやイギリス、アメリカに比べてどういうことになりますか。
  302. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 これはいつも御指摘がございまして、私どもも二、三の資料を調べてみたわけでございますが、国によりまして医薬品の取り扱い、その法令的なシステム等が違っておりますために、一がいには比較ができないようでございますけれども、現在薬価基準に登載されておりますものは、いま申し上げたとおりでありまして、それから医薬品全体といたしましては、製造承認を受けておりますものは約十万といわれておりますが、現在製造されて市販に出ておりますものは約四万程度でございまして、これは諸外国の数に比べまして品目数としては、特に多いと必ずしも言うような状態ではないように承知をいたしております。
  303. 和田耕作

    和田(耕)委員 特に最近、関係者、特にメーカーその他消費者のほうから、まぎらわしい商標の登録、まぎらわしい薬の商品名というのがよく言われておるのですけれども、これはどうしてそういうまぎらわしい品目がたくさん出てきたのか。私、資料がたくさんありますから、例を幾らでもあげますけれども、これは特許庁から見えていますね。どういうふうな理由で、こうなるのでしょうか。
  304. 土谷直敏

    ○土谷説明員 ただいま御指摘の点でございますが、私ども業界のほうから、まぎらわしい商標名がかなり出ているというふうなことを最近承っております。私どもとしては、その事由と申しましても、これはメーカーから出してまいりますものを私どものほうで審査をして登録を認めておるということでございまして、最近私どもの見ますところでは、薬品に限らず、その他商品一般につきまして非常に商標に対する関心がふえたと申しますか、あるいはテレビが普及したということもあるかと思うのでございますけれども、商標登録のための出願件数が非常に増加しております。私どもも現在のところそういう業界のほうの指摘もございますので、その理由等につきましては検討中であります。
  305. 和田耕作

    和田(耕)委員 これは特許庁と厚生省の両方にお聞きしたいのですけれども、大体薬というのは、直接われわれのからだと関係のあることだから、製造を許可する場合にも、あるいは名前を許可する場合にも、もっと厳重にしなければならぬという感じを持つのですけれども、何か野放しにし過ぎているという感じを私は持つのですが、現状を見て、当局としてはどういうお感じでしょう。
  306. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 もちろん名称はその医薬品のいわば顔みたいなものでございまして、それで同一性を認識いたしまして、お医者さんが処方し、あるいは一般薬の場合ですと、薬局で買って患者が使用するということになるわけでございますので、私どもといたしましても、たとえば全く同一の医薬品でありましても、その販売名を変更する場合には、新しい薬事法による承認を必要とするというようなほどに、神経質にやっておるわけでございます。決して名称を野放しにしておるわけではございません。一応審査の対象にいたしますし、類似のもの、あるいはすでに既発売のものにつきまして、それと同じようなものが出てきました場合には、それは変更させるというようなことはいたしております。  ただ、御承知のように相当な数にのぼっておるわけでございまして、特に同時に申請されまして、並行してそれぞれの担当官が審査するというようなときに、非常に数がたまっておりました時期に審査をいたしましたものについては、あるいは類似のものが気がつかれないで承認されてしまったというようなケースもあるのではなかろうかと存じますが、そういったものにつきましても、あとから気がつきました場合には、後発のものにつきまして、その名称の変更を指示いたしまして必ず変えさせる、誤解を招かないようにするというような措置をとって、できるだけそういう事態が起こらないようにつとめております。  なお医薬品は、これは先生御案内のように、基本的に申しまして必ず薬事法によりまして成分分量あるいは用法、容量、使用上の注意というものは記載されておるわけでございまして、名称だけを見て、それで安易に医薬品が使われるということは非常に少ないわけでございますので、名称だけによって誤用されるということは、ほとんどなかろうと存じますけれども、やはり希有な例としては、そのようなことも名称が類似しておりました場合にないともいえませんので、さらにその点は十分に調査をいたしまして、そういう問題がないように指導し、行政措置をしてまいりたいと考えております。
  307. 土谷直敏

    ○土谷説明員 商標法によりますと、商標を持っておりますものは、その商標を必ず表示しなければならないという義務はないわけでございますが、出願されてまいりました商標につきましては、私どものほうといたしましては、同一の商標はもちろんでございますが、類似の商標が同じ商品または類似の商品について使われないように、表示しないように審査をいたしております。
  308. 和田耕作

    和田(耕)委員 つまりまぎらわしいというのが、現在薬価基準に登載されておるものがたくさんあるわけですね。私もこの資料を見て驚いているのです。  たとえば薬の内容の違うもので、その品名が同じとみなされるものとしては、これはたくさん載っているのですけれども、アフラゾン錠というのがある。これは北陸製薬でつくったもので、非ステロイド系の消炎剤という薬ですが、同じく小林化工でつくった同じ名前のアフラゾン錠というのがある。これは腸内殺菌剤だ。これは現在登載されておる薬ですよ。そしてまた藤本製薬でつくっているF・Mという字にかなを振ったF(エフ)・M(エム)散という薬がある。同仁医薬がつくったものでF・Mとしてカッコで「(エフエム)」とかなで書いた薬がある。  こういう種類のものがこんなにたくさんあるのですよ。違ったきき目の薬で名前の同じものが——あなた、いまチェックしているとおっしゃっても、薬の内容が違うもので、ほとんど同じような名前、F・Mだったら、その上にかなを振っている、あるいはカッコして「(エフエム)」としている。しかも用途が違う。片一方は解熱剤であったり片一方は整腸剤であったりというものでしょう。こういうのが現在私いただいておる、この資料だけでもたくさんあるわけです。類似のものはまだたくさんあるけれども、あげません。今後のこともありますから、こういう実情を一ぺん総点検してみたらどうですか。私はあまりにひど過ぎるんじゃないかと思うのです。いかがでしょう。
  309. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 御指摘を受けまして、私どもまことにお恥ずかしいことでございまして、御指摘のような事情が——さっき申し上げましたように、いろいろ弁解はいたしますけれども、どう申してみましても、これは確かに医療上万一のことを考えますと、すみやかに是正しなければならない性格のものだと思います。  私どももこういった点は気になっておりまして、実は点検を進めておりまして、たまたまいま先生がおあげになったものが、それに当たったわけでございますが、いまのアフラゾン錠につきましては、小林化工のほうに指示をいたしまして、これは北陸製薬が商標権を持っておる関係もございまして、小林化工のほうは本来承認を受けましても、商標権侵害になりますので製造できないというような事情もあるわけでございまして、これはすでに取り下げをいたしておりまして、承認整理済みでございますので、発売いたしておりません。  これは一例でございますけれども、ずっと点検をいたしまして、順次整理に入っておる段階でございますが、今後、先生の御指摘がありましたのを機会に、さらに強く県にも指導いたし、業界にも働きかけまして、すみやかにこういうものは誤解のないように整理をいたしたいと思います。
  310. 和田耕作

    和田(耕)委員 これは特に薬剤師さんがいろいろな薬の関係の雑誌に、そういうまぎらわしい薬の名前から生ずるいろいろな事故についての事例を発表しておるわけです。たいがい薬剤師さんが出しておるのです。日本でこういう薬の名前なんかのまぎらわしいものがたくさんあるにもかかわらず、あまり問題にならないのは、お医者さんが調剤しておるということと関係があると思うのです。お医者さんが調剤して奥さんがあれするとか、あるいはむすこさんがやるとか、大体家にある薬はきまっておるわけだから、間違いはわりあい少ない。しかし外国の場合に、あるいは薬剤師さんがやる場合に、こういうふうなまぎらわしい名前が、いろいろな国民生活に不便あるいは危険な面を出しておるのは、お医者さんが投薬しない、医療分業が行なわれておる国なんかでは、これはたいへん大事な問題だと思う。  今後日本だって医薬分業をどんどんやらなければならない。またやろうと厚生省はしている。こうなりますと、ほんとうに、発音的にまぎらわしいものもそうですが、いまのような形で、同じようなことをちょっと語尾が違うとか、あるいは何々錠と何々剤とかいう違いのものを放置することは非常に危険だと思う。日本はおそらく医薬分業がないから、いろいろなものがあっても、お医者さんが処理するわけだから比較的少ない。それでもありますよ、薬学の雑誌にはいろいろなまぎらわしい薬から出てきた問題点が。これはぜひとも、特許庁もそうですけれども、厚生省のほうも——やはり製造認可するのは厚生省でしょう。そういうチェックをもっときびしくしなければならぬ、そういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  311. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 これは全く御指摘のとおりでございまして、将来医薬分業を推進いたしますためにも、その前提としても、こういう整理は十分行なわなければならないと存じます。極力努力をいたします。
  312. 和田耕作

    和田(耕)委員 これは特許庁のほうも、基準をもっとやかましくしたらどうでしょうか。かなが一字違ったらいいというのではなくて、薬の名前の全体の音感ですね。そういう名前はたくさんございます、音感の似たやつで一字くらい違うやつが。エスベリンとエスフィリンとか。きょうめがねを持っていませんから、あれですけれども、これはとても多いのです。だから、これは一字くらい違っておれば許すなんということじゃなくて、少なくとも二字や三字——あるいは字は相当違っておっても、音感上非常に同じようなイメージを与えるというものは許さないとか、こういった基準を強める必要があろうと思うのです。  これは基準を強めますと、非常に競争しておるし、類似のメーカーがおるわけだから、あとからどんどん競争に参加してくる製薬業者には不便かもしれません。あるいは既設の大きい会社には便利かもしれません。単に大きい会社が便利であるだけでなく、一般の消費者の問題が関係するわけですよ。薬の問題は、メーカーの大きなやつと小さなやつの関係だけじゃないわけです。一般の消費者から見れば間違ったものを買わされちゃ困るんで、特許庁の商標の登録の場合にもっと基準を上げるというか、まぎらわしくないような基準をくふうする必要がある、私はそう思うのです。また製造の認可をする場合にもそういう配慮が必要だと思うのですが、いかがですか。
  313. 土谷直敏

    ○土谷説明員 先生指摘のとおりでございまして、私どもも商標の類否というものが非常にいろいろ問題がございます。ことに著名な商標になりますと、私ども著名商標のただ乗りと言っておりますけれども、有名な商標にできるだけ近いものを出す業者の方がおられるわけでございます。そういうものをこれは薬品に限らず私ども商標の称呼、観念それから外観、こういう三つの観点から判断をして類否をきめているわけでございますけれども、いま御指摘がございましたように、薬品の商標につきましては人体に重大な結果を及ぼすおそれもあるわけでございますので、先ほど申し上げましたように、私どもとしても、この点につきまして再検討いたしておりますし、また業界のほうの意向もよく聞いてまいりたいと思っております。
  314. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 これは確かに御指摘のように同一はもちろん困るわけでございますが、類似の範囲につきましても、特に調剤のときのことを考えますと、ちょっと読み違えると違う薬が入るというようなことも困るわけでございまして、私どもとしては原則的に、なるべくこういう製品をつくる場合には、一般名で出すようにという指導をまず第一義的にしておるわけでございます。一般名なら絶対間違いございませんので、これは国際的にも大体統一されておりますが、ただ、やはり企業であります以上、全部ブランドというものを認めないというわけにまいりませんので、こういう商品名が出てくるわけでございますが、先ほど申し上げましたような方針で今後整理し、今後の承認につきましても十分慎重を期するつもりでございます。  なお、どの範囲までが類似と考えられるかというようなことは、これは商標のほうの御専門であります特許庁の御意見なども十分に伺いまして、そういった点を参考としながら、とにかく誤調剤、誤薬の起こらないような考え方を先行させまして審査を行なうように努力いたしたいと思います。
  315. 和田耕作

    和田(耕)委員 私、きょうの質問はこれで終わりたいと思いますけれども、先ほども申し上げたとおり、お医者さんが投薬をしておるということが一般的な状況である日本は、これは今後急速に直さなければなりません。やはり医薬分業というものをやっていかなければなりません。そしてまた類似の品物がたくさんはんらんをするということが、この商標名がごたごたする基盤にはあるわけです。類似の品物がはんらんするという問題も、これはある面では競争をするとかいろいろな刺激があっていいという面もありますけれども、問題は人間のからだに関係のある薬の問題ですから、これらの問題については、商標を登録する場合に、あるいは製造認可をする場合にもっと気を使って厳重にしなければならぬと思うのです。最後に山口政務次官にひとつ……。
  316. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 先ほど来から和田先生の御提言や、あるいは御教示に対しまして薬務局長も答弁申し上げておりますように、かりそめにも国民の健康や、いろいろ関連する医薬品の問題でございますから、国民に健全に運用していただけるような立場で厚生当局といたしましても、十二分なチェックと健全な運用を促進し得るような行政的な措置を積極的にとりたい、かように思っておる次第でございます。
  317. 和田耕作

    和田(耕)委員 終わります。
  318. 田川誠一

    田川委員長 次回は明後十九日木曜日、午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時五分散会