○寺前
委員 そうだろう。そうしたら、あなた、長期にわたってこういう赤字が生まれてきておるのに、医務局などで、こういう
病院はほかの
病院もいろいろあって、同じように赤字問題について検討しますでは、長期にわたってこういうことになっていることに対しての責任は済まぬのじゃないかというのだ。原因点についてもっとメスを入れて、経営のやり方が悪いのだったら、悪いとはっきり言うたらいいし、赤字になるのには原因があったのだから、それをはっきりさせる。七年にもなって
原爆病院がいまだにこのように扱われている。ゆゆしき問題だ。
長崎の場合だってそうでしょう。長崎の場合だって病床閉鎖までいってしまった。そんな軽く扱われているということについて、ことばで何ぼきれいなことを言ったって、現実的に問題点はこことここにあります、だから、こういうふうにしたらこういうふうに改善されます、責任を持ちます、これが言えなかったら、私は無責任だと思いますよ。県は利子補給を
考えておるようですでは、
ほんとうのところだめだ。
これはあなた
たち、陳情を受けてもお読みにならぬのだったら、私ここでちょっと御披露しましょうか。
病院長が切々たる訴えについて陳情を出している。
ちょっと読んでみますよ。「
広島原爆病院は
医療対象が
原爆被爆者のみに限られており、しかも特に高度な
医療機器の設備と研究が要求されている機関でありますが、その実情はまことに乏しく、「
原爆被爆者の
医療と研究」という使命達成には、なお道遠しの感を強くせざるを得ません。その上不運にも年を追って困憊の一途をたどりつつある当
病院の経理においては、全く将来に期待のできない現状をいかんともすることができなくなりました。」一億円の赤字が出てきたから、できなくなりましたということを言っているでしょう。「
昭和三十二年三月に
制定された
原爆医療法は、当時
被爆者や
関係医療施設にとっては大きな福音でありまして、当
病院においても、これにより開設以来約十カ年間は貧弱ながらもまず順調な歩みを続けてきましたが、その後の時世の要求と諸情勢の急転とは、当
病院の経営の上に痛撃を加え、年ごとの収支のバランスは完全に乱れて、このままの推移にまかせるときは
病院崩壊の危機をもたらすの杞憂に苦しむに至りました。」崩壊の危機だと言っているんでしょう。「御承知のごとく「
被爆者の
医療等に関する
法律」は
被爆者のみに関するものでありまして、診療を行なう
医療施設に対する法的補助の
制定は全くなく、しかも当
病院の特殊性とも申すべき患者の老齢化に伴う平均在院日数の長期化、ベッド回転率の極度の低下、所定の診療報酬規定によることのできぬ特殊な高度の
医療行為の多数等々。また
昭和三十五年十二月に付属施設として設置された原子力放射能
障害対策研究所は、その研究の成果が斯界の注目の的となっていますが、開設以来これに要した経費は実に一億円にも達し、これがすべて診療請求の対象外で、当
病院の経理の中で負担するという、他に例のない収益皆無の事業を続行し、今後とも
原爆後遺症の研究を続行しなければならない
立場にあります。その上、韓国、沖繩、北海道、その他国内他府県の要請に基づく
被爆者検診にも医師を派遣し、人生最大の不幸をになう
被爆者のため、経営を度外視した
努力を持続して今日に至っています。
かかる
事態の繰り返しは、いよいよ日々の運営費の不如意を増大し、やむを得ず
広島赤十字
病院からも一億余円の買いかけを余儀なくして今日に及んでいます。
なお、ここに憂慮にたえないこととして付記したいことは、当
病院本館の施設は
建設以来十六年を経過したものであるだけに、毀損、消耗がはなはだしく、多大の補修を要する時点に迫られていますが、かかる多額を予想される資金はとうてい償い得るすべもなく、いかんともいたしがたい事実となっています。それに加え、最近の人件費材料費等の高騰もはなはだしく、累積赤字はさらに加速度に膨大となることが
考えられるに至りました。
以上、当
病院の窮状について概要を申し上げましたが、収入源としては、固定化した入院患者の
医療費を主体とし、他に見るような室料差額等の徴収も不可能であり、ただいちずに奉仕精神による
医療行為を根幹とするものであるだけに、経営上からは採算無視の連続というほかなく、いまやそれらの悪条件は極限に達したと認められます。
つきましては、これら
病院の特殊事情等を考慮いただき、当面の窮状打開と」云々ということがずっと書かれている。これが
広島原爆病院長の訴えの内容です。
この訴えだけ見ても、そこに原因点となった幾つかのことを指摘しているわけでしょう。だから、この
一つ一つについて真剣に、これについてはなるほどそうだろう、だからこういうふうにしてやる必要があるのじゃないかと、
一つ一つについて親切にメスを入れる必要があると思う。
一般的に、赤字だから困っているだろう、その利子くらい県が見てやってくれ、よし頼むわな、そういうふうに扱ったらいけないと思うのです。
御存じのとおりに、ここの院長
先生は戦前からここでずっとやってきた人なんでしょう。一貫して
原爆病院をになってきた人でしょう。この人は同時に、ここでたくさんの人がなくなっていった、その一切を背負って、あそこで働いている諸君と一緒になって背負った内容をことばとして言っておられる。だから一言、一言をないがしろにしたら、いけないと思う。そういう
意味で、せっかくこの人が訴えておられる内容の
一つ一つについても、ちょっとメスを入れてみられたらどうなんでしょうか。
いま読んだところの中からちょっと拾っただけでも幾つか出てくるでしょう。ですから、ここはぼくも直接この内容を
一つ一つ聞いてみましたよ。当
病院の特殊性は、老齢化に伴う平均在院日数の長期化だ。具体的にはどうなんですか、こう聞いたら、ここの場合には、普通の
病院だったら一カ月で退院していく人がたくさんおる、ところが当
病院においては三カ月はおるということになる。経営の面からいうたら、最初の一カ月の場合だったら検査やら何やらあるから、経営の採算には合う。だけれ
ども、長期になってきたら、毎月毎月検査をやっているというわけにいかぬから、収入の面から見れば、それは非常に悪い。回転の悪いということは、経営上非常に悪いという特殊条件をつくっているのだ。それは老人が多いだけにそうなんだ。しかも老人の慢性病ということになってくると、治療の対策というのは、次々新しいものをぽんぽんほうり込んでという対策にならないから、経営上の面からもやっていけぬようになっているのだということを、ここで言っているわけですね、あえてこう聞いたら。そうしたら、
原爆病院の場合は、そういう特殊性の人を預かっているのだから、すなわち普通の
医療点数
制度のやり方では合わないということを明確に
意味していると思うのですよ。明確に
意味しているのだから、明確に
意味している場合には、それに対してはどういう手を打ったらいいと思っておられるか。私はそこから結論がそれなりに出てくるだろうと思うのです。
私はきのうきょうだったら、研究中ですで済むかもしらぬ。七年間もこういうことが起こっておって、いまだに
一つずつについてメスを入れないという態度は一体どうなんだ。あるいはその次に言うておられるのは、ここに研究所を持っておるという問題を言うておられるでしょう。ここの研究所というのは普通の
病院の、なくなった人の解剖をやって、どうのこうのという研究じゃないわけでしょう、ここの研究所の場合の研究というのは。これは文部省がやるところの
広島大学にあります原医研にありますとか、どこどこにありますというやつとは違いますよ。
原爆病院としての使命を果たしてこられました。そこでなくなった
方々を、どういうふうに自分らも責任をもって、その
病院で今後の治療に生かしていくかという
意味においての研究というのは、必然的な性格なんです。特殊な
病院だけにその研究所というのは特殊な
意味を持ってくる。
そうすると、ここにおけるところの、なくなってからのその解剖というのは、非常に重要な
意味を持っておる。それは入院されたときの
状況の検査においても、私は総合的に検査をしておって、なくなられたときにも総合的に検査ができる、この
関連性がなければならないと思う。そしてふだんの
一般検診のときもずっと系統的にめんどうを見るという、一貫性を持った検査機能と研究所の役割りとが結びついていくという性格を、ここの研究所というのは持っている。だから、これを保険の計算の中からそんなものひねり出すことはできるはずがないんで、特殊な性格を持ってきている
病院に対して、特殊な問題として手を打ってやるということは、私は当然結論として、なぜいままでお
考えにならなんだろうか。これも私はふしぎでならないのですよ。
ですから、そういう範囲内で解剖をやられるのですから、たとえば患者さんのところへ行って、解剖させてくださいと言ったときに、普通、解剖料のお願いもしなければならない、棺おけも準備しなければならない、薬その他の準備もしなければならない。あなたのところで、一体どのくらいのお礼をして御協力をいただいているのですかと聞いたら、解剖料二千円だ、いろいろ入れて一万円の範囲内だ。一方ABCC、
広島にあるこの予研の担当者にABCCのほうは研究のために一体どれだけのお金がそこでは要りますかと聞いてみたら、四万円はかかっていますということを言っておる。
日本の
原爆病院広島、ここは
ほんとうに内部の
人たちも奉仕的な態度で積極的にやっておられる。患者さん方も後世に対する使命として、
ほんとうに献身的じゃないですか、その態度も。そういう形にしてかろうじて運営しながらも、またそれが赤字を生んでいる。何でこれを真剣に、この問題を切々と訴えておられるこのことを
考えないのだろうか、研究所の問題
一つにしても。
それからまた、
病院に来られる
人たちに対して検査をする。さっきも検査料は一体どうなんだという
質問が出ていました。これは検査料がまた赤字を生む原因になっているということを私ここに行ったときに聞かしてもらいました。
広島原爆病院で四十六年の十二月から四十七年の十二月、要するに一年間の、これは去年のことでしょう。精密検査費は、大体月八十件やって、毎月十万円ぐらいの赤字を生んでいます、だけれ
ども病院は、お預かりした以上は、精密検査をやらなければならない人についてはかまっていられません、やっぱりやらなければなりません。こう言っておられるわけです。
積算の基礎が、人によって全部、精密検査どれだけかかるか、違いますわな、疾病に応じて検査のしかたが変わってくるのはあたりまえのことなんだから。いままで言っておられた精密検査費というのが二千六百何ぼですか、それを今度上げて二千九百になったのですか、およそそれではやれぬということを
原爆病院でもいっておられますよ。
ほんとうにまじめに
——経営のたよるところないわけでしょう。この
原爆病院は
原爆手帳を持った人に限って入れている
病院ですよ。どこから特殊な金が出てくるというのですか。明らかに
一般病院における経営も検討しなければならないという問題はあるけれ
ども、それと離してでも緊急に、もう七年もこれできているんでしょうが。
私がいま言った三つの点でも、
一つずつについてなぜメスを入れないのでしょうか、
ほんとうに。ひとつ私がいま例をあげた三つの点について、
一つずつについて解析してください。聞かしてもらいたいと思うのです。