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寺前委員 あなた、ほんとうにもっと真剣に
考えてもらわなければいかぬと思うのは、日銀が二十日の日に、第二次製品は急ピッチに物価騰貴が起こっておるということを発表していますよ。だから、そのことはたいへん急速な物価上昇、当初
考えておられたよりも早い勢いで物価上昇が生まれておる。だからいま予算に組んできた内容自身も、これは明らかに近い将来には検討を要する
段階が来るというぐらいの、私は、国民生活の問題に対する
責任の問題から大臣に決意をしてほしいと思うのです。
それにしても、私は、最近、この七日の日に――おとうさんはすでに十二年前に病死してしまった。そうして、おかあさんは十年前に精神
病院に入っておられる。残っておるのは、十八歳のねえさんと中学校三年生のお二人だ。それが四畳半のアパートで生活保護をもらって生活をやっているわけです。その中学三年生が自殺をしたという事件が起こっておるのです。これは新聞にも報道されました。最近中学生の自殺問題というのは、かなり広範囲にいろいろな事情から起こっていますけれども、ここで起こっておる問題は何かというと、こういうことですよ。
結局この子は、非常にからだが弱いのですが、この子供がいよいよ中学校三年生の、いま二月というのですから、卒業期の前です。その卒業期を前にして――この学校の子供たちは全部で二百八十何名おると思うのです。そうしてそのうちで就職する者はわずか四名です。あとの子は全部高等学校へ行くことを希望しておるのです、まだ試験があれですから結果がどうなるかは別として。そうしてその四人のうちの二人までは、これはもうちゃんと縁故関係で就職がきまっておる。一人の子は就職がきまった。からだの弱いその子、そして家庭生活は、父親はいない、片方は精神
病院にいる。非常に不幸な環境だ。その子だけが、諸条件からその就職がきまらないという非常に不安定な
状態の中におるわけです。その子はついに、そのねえさんにやっかいになって今日まで育ててもらったのにというところで死んでしまっておる。昼間ですけれども、ガスで自殺してしまったのです。これは東京の話です。
これは結局遺書やその他の面からずっと見ると、この子のいま置かれておる逆境に対してほんとうに疲れてしまった感じを
出しておるのですね。ずっと調べてみると、生活保護をもらっておるわけですが、生活保護は一体何ぼもらっておるのかというと二万一千何ぼだ。なぜかというと、その女の子のねえさんが保育所へつとめて、そして月給をもらっておる。三万円程度の収入がある。そういうところから引かれて、二万一千何ぼだ。家賃は何ぼかというと、八千五百円、九千円ほどだ。残るのはねえさんのお金とその一万何ぼのお金、これでもって二人が生活をし、そうしてねえさんはそこから夜学の高等学校へ通っておるのです。この子も、せめて高等学校は夜学なりでも行かせなければとねえさんは思うけれども、ねえさんに甘えられないという気持ちでその子は一ぱいだった。そういう雰囲気の子供が生活保護の
状態の中におるわけです。
私はこの死んだ子をめぐって――ますます物価が上昇していくことは厳然たる事実だ。だから、こういう子供が生活保護をもらいながら生活をしておる
実態において、私はこういうのは、先ほどから言うように、財源がどうこうという問題よりも、これは日常生活、待ったなしに生活をしなければならない問題だけに、手を打てる範囲は、やはり
行政で手を打ってやるということが私は必要だと思う。このことをめぐって、生活保護基準そのものを何とかもう少し上げてもらう必要の問題が一面ではあると同時に、私はこの子の問題をめぐって、びっくりしたことが
一つある。
それは何かというと、そのおねえさんに収入がある。十八歳ですから、まだ未成年ですね。未成年者が自分が高等学校へ行くその資金を含めて、三万円弱の収入がある。その収入が生活保護から引かれるというのです。支出の中から引かれてしまう。それで未成年者控除というのは何ぼやと聞いたら、二千円だ。たった二千円分だけ、生活保護をもらうような御家庭だからということでちょっと
世話をする。未成年者だけが生活しているのに、二千円の控除だけで一体、めんどうを見ているという話になるんだろうか。これはたいへんなことが行なわれている。いつからそういうようになっているのやと、ずっとたどってみたら、二千円の控除というのは、とうの昔の昭和三十八年からずっと変わっていない。三十八年からずっと変わらない。しかし、
考えてみたら、物価が急上昇してきたのは三十五、六年ごろからです。それまでの年平均の物価上昇率から見ると、十倍以上の物価上昇率になっておる。この急速な物価上昇率の
段階に、このような未成年者を控除するのを二千円だけで済ましておる。ようそんなことで済ましてきたな。私も政治家の端くれとして、ほんとうにこれは思想信条を乗り越える話だと思うけれども、文化的
最低生活を保障するという面から見たときに、こんなやり方で今日までよう済ましておるなということを、ほんまにつくづく感じたのです。
一つは、生活保護の基準のあり方において、今日の物価上昇の
段階を
考えたときに、緊急に途中においてでも検討するという決意を大臣に持ってもらいたいということ。それから、未成年者とか障害者とか、いろいろな角度で普通の人よりもハンディを持っている場合の、そういう方々の収入認定ですよ、こういう収入認定については、いままでのような差し引くというやり方を全面的に再検討してもらう必要があるのじゃないか。私はこの死んだ中学生のものを通じて、具体的に調べてみてつくづく思ったのです。これは
法律を変えなくても
行政的に処理できる話なんですから、控除を二千円で済ませておくというのを、直ちに再検討してもらって、大臣に率直に、すぐにやってもらいたい。私はその点について大臣の見解を聞きたいと思うのです。