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1973-08-31 第71回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年八月三十一日(金曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 佐野 憲治君    理事 菅波  茂君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 森  喜朗君    理事 渡部 恒三君 理事 小林 信一君    理事 島本 虎三君       小澤 太郎君    田中  覚君       戸井田三郎君    阿部未喜男君       木下 元二君    岡本 富夫君       坂口  力君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁長官官房         審議官     橋本 道夫君         環境庁企画調整         局長      城戸 謙次君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君  委員外出席者         農林省農蚕園芸         局植物防疫課長 福田 秀夫君         通商産業省基礎         産業局化学製品         課長      赤羽 信久君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  委員派遣承認申請に関する件  参考人出頭要求に関する件  公害健康被害補償法案内閣提出第一二三号)      ————◇—————
  2. 佐野憲治

    佐野委員長 これより会議を開きます。  この際、委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件、特に、瀬戸内海環境保全問題の実情調査のため、議長に対し委員派遣承認申請いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐野憲治

    佐野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、派遣委員人選日時派遣地等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐野憲治

    佐野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 佐野憲治

    佐野委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件、特に、瀬戸内海環境保全問題調査のため、参考人出頭を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 佐野憲治

    佐野委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。  なお、参考人人選及び出頭日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 佐野憲治

    佐野委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。      ————◇—————
  8. 佐野憲治

    佐野委員長 次に、連合審査会開会申し入れの件についておはかりいたします。  商工委員会において審査中の化学物質審査及び製造等の規制に関する法律案について、商工委員会連合審査会開会申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 佐野憲治

    佐野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  10. 佐野憲治

    佐野委員長 内閣提出公害健康被害補償法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
  11. 島本虎三

    島本委員 公害健康被害補償法案は、いよいよ最後の段階になってきたわけであります。それで、特にきょうは細部にわたってこれを検討することになるわけです。その細部の一番末端は、これは政令委任事項になるわけです。五十四というかつて類例のないほどの政令委任事項があるわけです。したがって、この公害健康被害補償法案の命運はかかってこの政令委任事項にある、こう言っても過言でないほどであります。政令をつくるのは政府態度いかんによるわけでありますから、これはなかなか重要だと思います。したがって、今後この公害健康被害補償法案に命を入れるためには、大臣自身もこの問題を十分検討なすっておるとは思いますが、何としてもこの問題と慎重に取っ組んで、一つ一つでも目を通してやってほしい、こう思う次第です。したがって、いま一つ要望だけを先に申し上げておきますが、えてして政令委任ということは、政令で逃げてしまうおそれがあるのであります。あと政府が都合のいいようにつくってしまうというおそれさえあったのであります。したがって、この画期的な公害健康被害補償法を実施するにあたって、過去のこういうような惰性にとらわれるようなことがなく、ほんとうに公害健康被害補償法そのものによってあらゆる公害患者を救える、いわゆる患者を救うためには、法定にするためには、この政令そのものが重大な役割りを果たすわけでありますから、この点等について大臣に特にお願いしておきたいと思うのです。その決意だけは先にちょっと聞かしておいてもらって、あと末端のほうへ入らしてもらいます。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 島木委員の御指摘のように、政令に委任された事項が非常に多いわけで、この政令にどういう内容を盛るかということは、本法案が真に目的を達成できるかどうかということにかかっておりますから、この委員会における御審議の過程に出たいろいろな御意見もこれを参考にしながら、公害による健康被害救済したいという本法精神に沿うように政令を制定をいたしたいと考えておる次第でございます。
  13. 島本虎三

    島本委員 いままでは、四十五年の十二月に十四の公害関係法律が改正されました、基本法を含めて。その後また出ました。現在は二十をこえているはずであります。しかし、法律がこのようによけいになっておるが、依然として公害あとを断たない現状は重大なことでありますから、これは単に形式を整えるだけじゃなく、法律が出た以上完全に公害を撲滅するのだ、環境の破壊を阻止するのだ、そうして被害者救済するのだ、こうでなければならないのであります。この点等についても今後ひとつ十分留意しておいてもらいたい。これも要請しておきます。  それと、現行救済法と現在出されている公害健康被害補償法、これあたりの対比も一つの重要な問題です。現行救済法は不備であります。しかし、たとえば四日市から川崎、これはもうともに公害の源泉でありますが、そういうような場所に居を移した場合には暴露期間通算を行なわない、あるいは四日市に住んでいて一時的に非指定地域に居を移して再び四日市に住むようになった場合には、新たに四日市に居を移したときから暴露期間を計算する、こういうように認定要件が狭く、かつ被害者救済という観点からいろいろ問題があった。これも参考人意見聴取をしたときに出ておったわけであります。こういうようなのは行政的にやはりはっきりとこれを救済しなければならない問題でありますが、本法案においては、このような問題に対してはどのように対処しているのですか。
  14. 城戸謙次

    城戸政府委員 お答えいたします。  現在の救済法が完全でないということは先生指摘のとおりでございまして、今度新しい法律をつくります場合はそういう点を改めるように努力してまいっておるわけでございます。  いま御指摘の点に関連いたしまして改善されます点を申し上げますと、たとえば第一種地域であります四日市から川崎市に住居を移した場合、これは通算して政令で定める期間以上であれば暴露要件を満たすということにいたしております。たとえば四日市二年、川崎一年、こういう場合は、従来はだめであったわけでございますが、今度はこれでいいわけでございます。  それから申請時まで引き続く期間内で第一種地域以外の地域住所を有したというのがある場合、一定要件のもとに暴露要件を満たすことにいたしております。たとえば、四日市に二年おりまして、非指定地域である長野、こういうところに六カ月おって、さらに川崎に二年六カ月おる、こういうことになりましても、間に長野におった期間が入ったことによって妨げられない、かようにいたしております。これは指定時間以上の時間を第一種地域内で過ごすことが常態であった期間という表現をとっております通勤等の場合の期間通算についても同じような扱いになっております。  それからもう一つ、第一種地域住所を有していました期間といまの通勤等期間とがあった場合、これを合算しまして、政令で定める期間以上であれば暴露要件を満たす、かようにいたしております。たとえば四日市に二年六カ月居住しまして、ほかのたとえば津から四日市工場に二年通った、こういう場合もこの場合には取り上げられる、こういうぐあいになっておりまして、現行法から見ますと相当の改善を見ておると私ども考えております。
  15. 島本虎三

    島本委員 地域指定の問題ですけれども、この地域指定については過去の汚染状況についても十分配慮をする、こういうような答弁もいままで行なわれてきておるわけです。実際には汚染の最も激しかった時期のデータがまずほとんどない。しかも、その当時の汚染による患者が見受けられる、こういうような場合には、具体的な汚染状況の証明がない場合でも、工場立地状況、燃料の使用状況、地形、気象、こういうようなことによって過去の汚染状況の推測を行ない、かつ、現に被害を受けておる患者救済、こういうようなこともはかってやる、こういうようなことも一歩前進じゃないか、こういうように思うわけです。この点等に対しては十分配慮してありますか。
  16. 城戸謙次

    城戸政府委員 ある疾病環境汚染影響によるものであるかどうかということは、先生御承知のように、疫学的手法によりまして、その疾病発生地域人口集団との関係においてとらえまして、環境汚染との関係を把握し判断していく、こういう考え方をとっておるわけでございます。したがって、この法律におきましても、特別措置法の場合と同じように、相当範囲にわたる著しい大気汚染、水質の汚濁が生じておるということと、それからその影響による疾病が多発しておる、二つ要件を前提としておることは当然でございます。ただ、いま御指摘のように、具体的にどういう基準で地域指定していくかということでございますが、この点に関しましては、今後中央公害対策審議会におきまして専門的にいろいろ御検討願いたいと思っておりまして、何らかのものさしをつくってまいる所存でございますが、特に過去の汚染についてどういうぐあいに考えていくかという点につきましては、十分御検討いただきまして、不合理がないようにいたしていきたい。ただ、全く立証ができないという場合にまで指定をするということはできないわけでございますので、その点につきましては御了承いただきまして、ただ、従来のように過去の問題は全然問題としないということでなしにやっていきたい。もちろんいろいろ取り上げようと考えておったわけでございますが、従来につきましては、先生の御指摘のような点もございますので、今後はできるだけ取り上げていきたい。ただ、この辺は相当困難な事情がございますから、知恵を出し合ってやっていくしかない、こう思っております。
  17. 島本虎三

    島本委員 これはやはり一つ問題点じゃないかと思うのです。居を移してきた——私のように頑健なからだを持っておる人は若干公害被害に対しては抵抗力がある。しかしながら、それも蓄積されて、そして別のほうへ行ったときに発病した、こういうような場合は当然あるわけです。たとえば、三木環境庁長官に至っては私よりもっとそういうような現象があらわれるのじゃないかと思います。しかし、現在いるところがわりあいにいいところであるから、過去のことは一切問わないということになると、現状に沿わないことになります。この点等については十分考える必要があると思うのです。まあ救済ということを主にすると、過去のことを一切無視するということはとうてい困ることでありますから、いままで救済できなかったようなこういう現状救済するのだ、これが本法精神である。生業まで補償すると言っていたのに生業を抜きにして出たのだから、せめて健康被害だけはあらゆる困難を克服してもこれは救済してやるのだ、こういうような精神に徹しないとだめなんじゃないか、これは当然なんであります。しかし、あまりにもデータにたより過ぎて、過去のものに対しては、そんなものないからこれは参考にしないのだということになると、これまた困ったことになりかねません。この点に対しては十分配慮する必要があろうと思いますが、この点はいかがですか。
  18. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のございました点につきましては、七月以前の委員会におきましても、現在全国で自主的に、古くからの公害の問題がございまして、救済法の適用は受けてはおりませんが、自分のところの条例でやっておるということがある。それをどういうぐあいに扱うかというところの問題にも非常にかかわりのあることだろうと思っております。その点につきましては、私どもは、この救済法指定地域外自分たち地域指定をしているというところ、あるいは救済法地域指定になっておらないところで、しかし、もとは非常に、その横に救済法指定地域があるというような問題の地域がいろいろあると思いますので、これは各地方自治体によく連絡をとりまして、発生源の過去のデータ、また、当該地方自治体自分のところでそういう事業を始めたときの根拠となった事情等をできるだけ詳細に調べまして、先ほど局長の答弁いたしましたような原則に立ちまして、極力この問題を善処していくという方向で努力をいたしたい、そういうように思っております。
  19. 島本虎三

    島本委員 やはりこれは地域指定そのものは、もうそこに住んでいるとかまたは通勤している、こういうようなのが条件になっておるようであります。この地域指定後の一定期間内にその地域から移転した者であって、その者の疾病はもう移転前からであるということが明らかな場合には申請できる方法を設けて、これは当然救済する必要があると思いますが、この点においては漏れはございませんですか。
  20. 城戸謙次

    城戸政府委員 本法におきましては、第一種地域にかかわる疾病について、指定地域指定疾病それから暴露要件、この三つで汚染物質疾病との間に因果関係がある、こういうような制度的な割り切りをいたしているわけでございます。したがって、この制度といたしましては、第一種地域に居住している者についてのみそういう条件判断ができるという考え方に立ってやっているわけでございますが、御指摘のようなケースが出ますことは非常に遺憾でございますので、今後運用方針としまして、そういうような事例が生ずることのないように、医療機関等の協力も得まして、制度普及徹底に尽くしてまいりたいと思っているわけでございます。
  21. 島本虎三

    島本委員 そうしたならば、この認定申請中に不幸にして死亡した場合、これはどうなりますか。認定されないということになると、死亡した本人はなにですけれども、その遺族に対しても何ら補償給付支給されないということになってしまうとすると、これは重大であります。この点はどういうふうなことになりますか。
  22. 城戸謙次

    城戸政府委員 いま御指摘のような場合は、もちろんこの本人が権利の上に眠ったというわけではございませんし、また認定に必要な診断書等もそろっておるわけでございますから、死亡の日から六カ月以内に限りまして、遺族申請によりまして、死亡した者が認定を受けることができる者であったという旨の決定を行ないます。これが行なわれますと、認定を受けた者と同様の扱いとなるということが、この法律五条で定められているわけでございます。
  23. 島本虎三

    島本委員 この認定をする要件と申しますか、五条できめられてあるその六カ月ということはどういう根拠ですか。なぜ一年にできないのですか。
  24. 城戸謙次

    城戸政府委員 この六カ月という問題は、いまの五条にもございますし、六条の場合にも同じような問題があるわけでございますが、これはあくまで指定疾病に起因して死亡したかどうかという判断が必要でございます。その場合、その判断がいろいろなまわりの状況からできる期間としまして六カ月ということを考えているわけでございます。ただ制度運用にあたりましては、遺族等死亡後すみやかに申請ができるように制度の趣旨の徹底につとめまして、六カ月を過ごしてまったということで給付を受けられない、こういう事態が生じないように十分配慮してまいりたい、こう考えているわけでございます。
  25. 島本虎三

    島本委員 未支給補償給付、第十二条です。この法案では、未支給補償給付を受けることができる場合というのは具体的にどういうような場合をさすのですか。
  26. 城戸謙次

    城戸政府委員 前に御質問ありましたように、認定申請中に死亡した者につきましては、障害補償支給請求を生前にしておるという場合におきましては、当然、配偶者等障害補償費支給請求をした翌月から死亡した月までの分が未支給分として払われるわけでございます。一般的に申しますと、たとえば障害補償費の四月分、五月分を六月に支払われるということになるわけでございますが、その被認定者が五月に死亡してしまったという場合には、四月分と五月分が未支給分として被認定者配偶者等に支払われる、かようなことになるわけでございます。
  27. 島本虎三

    島本委員 二十五条のいま言った障害補償費、これは政令できまる年齢に達しない者に対しては支給の対象から除く、こういうことになっているようですが、政令で定める年齢として何歳を予定しておりますか。なぜこの障害補償費を給しないことにしたのか、この二つについてひとつ解明していただきたいと思います。
  28. 城戸謙次

    城戸政府委員 一定年齢に達しない者に障害補償費支給しないということでございますが、これは逸失利益がない、判例等でもそういうぐあいに扱っているわけでございまして、逸失利益がないということで障害補償費支給しないということにいたしております。そのかわりに、その年齢層の者には児童補償手当支給するということになっているわけでございます。  年齢を何歳で引くかということでございますが、私どもの気持ちとしましては、義務教育終了前の児童、一般的に申しまして十五歳未満ということを考えているわけでございます。それで具体的にきめますのは中央公害対策審議会にはかってきめるわけでございますが、その際、義務教育終了前とするか、あるいは十五歳未満とするかという点につきましては、むしろ年齢で切ったほうがいいのではないか。と申しますのは、年齢が十五歳以上になりましても、いろいろな身体の障害等義務教育を受けている方もおられるわけでございますから、そういう方のためにも年齢十五歳未満という線を引いたほうがいいのではないか、こう考えているわけでございます。この点はさらに審議会の議を経て決定したいと思っております。
  29. 島本虎三

    島本委員 遺族補償費、これは被認定者認定疾病に起因して死亡した場合に支給する、こういうようなことですね。そうすると、この理由はどういうことになるのですか、また、起因して死亡した場合と指定疾病により死亡した場合、これではどのように違うのですか、この点もまた明らかにしてもらいたいと思います。
  30. 城戸謙次

    城戸政府委員 この本法によります給付は、いずれも公害によります健康被害に対して補償していこうというものでございます。したがって、遺族補償費の場合におきましても、その死亡の原因が当該公害病と何らかの関係がないといかぬわけでございますが、その際に、指定疾病によるということになりますと、相当因果関係を必要とするということで非常にきつくなるわけでございます。私どもとしましては、それでは法の運用上適当でないだろうということで、「指定疾病に起因して」という表現をとっております。したがって、これは直接起因した場合のほかに相当広い範囲のものが入ってくる。たとえば指定疾病による併発症を引き起こして併発症によって死亡した場合とか、あるいは他の疾病指定疾病が同時に悪化して死亡した場合、こういうものにつきましても、指定疾病が何らかの寄与をしているということでございますれば遺族補償費支給する、こういうぐあいに考えております。そういう意味合いにおきまして、指定疾病によりということでなしに「起因して」という表現をとっているわけでございます。
  31. 島本虎三

    島本委員 その点だけはわかりました。  介護加算額のいろいろいままでの質疑応答がございました内容はわかりました。この介護加算額をどういうような根拠で考えておりますか。その根拠となる点をひとつ解明してください。
  32. 城戸謙次

    城戸政府委員 障害補償費あるいは児童補償手当の場合に介護加算制度がございますが、これは重度の障害を有する者、障害の中で特に他人の介護なくして日常生活を行なうことは不可能である、あるいは困難だ、こういう人に対します介護に要する費用の補てんを目的としているという経費でございまして、金額につきましては現在のところ、先生指摘のような二万円ということで前の答申をいただいているわけでございます。ただ、この委員会におきましても、その額の点につきましてはいろいろと御指摘があったことでございますし、さらにほかの医療給付等とも関連しまして、総合的にできるだけそういう状態にある人が困らないように制度を仕組んでいきたいと思っております。
  33. 島本虎三

    島本委員 やはりこの介護加算額、特に水俣病についてのいろいろな医療費の中でも、介護手当という問題が大きい問題になってあらわれてきているのです。額が一万円、こんなものではどうにもしようがない。したがって会社のほうからぜひ人を出してもらいたいという患者の熱烈な要請もあったわけです。それを二万円にした。一万を二万円にしたのだからこれはいいだろう、こう思うかもしれませんが、二万円ではたして十分介護加算としての使命を果たすことができるのかどうか、これも問題です。その根拠をどこに置いたのか、一万円を二万円にしたのだから、二倍にして支給したのだからこれはいい、これも一つ根拠だと思うのですが、それではあまりにもあさはかであります。これは十分介護できるような額にしておいてやらないとだめなんです。現行はどれほど必要なんだ、したがってこの法律ではこの点まで認めるのだ、こういうような一つ根拠がないとだめだと思っているのです。これには根拠がない、一万円を二万円にした、二倍にしたからいいだろう、どんぶり勘定であります。その根拠についてはやはり承っておきたいわけでありますけれども、これはどう考えるか、橋本君にひとつ……。
  34. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 介護加算をどういうわけで二万円にしたのかという御質問でございますが、現行救済法では一万円ということでございまして、これでは非常に不十分であるということでその倍にしたわけでございます。それと看護のほうの問題につきましては、本制度健康保険の例によるものではございません。そういうわけで、医療一環としての看護という問題につきましては、環境庁長官中央公害対策審議会意見を聞いて診療方針及び診療報酬を定めるというときに、医療一環としての看護という面につきましては、できるだけの努力をいたしたい、そういうぐあいに考えておりますので、看護費用ということにつきましては、医療費のほうでやっていこう、そのような考えでございます。
  35. 島本虎三

    島本委員 やはり模範的な一つ法律案にするのに、その根拠となるものが一万円を二万円にしたというどんぶり勘定的な根拠では、これは根拠としてはなかなか薄い、もっと実態に即したように考え、なおかつ運営してもらわないと、せっかくこれができてもまたしてもこの中から不満も出てくる、こういうようなことでは仏をつくっても魂を入れないような結果になってしまうことをおそれます。こんなことのないように十分配慮すべきだということを要請しておきます。  それと、障害補償費及び遺族補償費、こういうようなものは賃金の水準にスライドされるということになっております。しかし児童補償手当、それから葬祭料であるとか療養手当、こういうようなものに対しては定額給付ということになっております。これは定期的に見直す必要があるのではないか。そうでなければ、賃金にスライドして上がっていく部分、それとそのまま固定してしまう部分、こういうことになるとやはり現状に沿わなくなってしまいます。どうしても定期的に見直して、物価水準に見合うようにこの定額給付についても考えるべきだ、またこうでなければならないんじゃないかと思いますが、これに対してどういうような見解をお持ちでしょうか。
  36. 城戸謙次

    城戸政府委員 障害補償費遺族補償費等につきましては、スライドということばこそ使っておりませんが、労働者の賃金水準にあわせまして毎年改定していく、こういうぐあいに法律表現されておるわけでございます。  ところでいま御指摘の点でございますが、こういう定額の給付につきましても、当然これは毎年実情に即して見直していくということが必要だということは、私ども考えておるわけでございまして、当然毎年中央公害対策審議会にそのための検討をお願いしよう、こう思っております。
  37. 島本虎三

    島本委員 その点は十分配慮してやるべきだと思います。  次に、第三十条関係になってまいりますが、認定のときであるとか、または申請の当時、その人の収入によって生計を維持している者がない、そして被害者は家族等の収入で生活している場合であっても、死亡した場合には年齢であるとか、過去の職業、健康であったときの生活状態を推定して遺族補償費支給できるように、弾力的にこれは運営してしかるべきではないかと思います。これは死亡直前、こういうようなことになると、公害関係疾病にかかった場合には、急にばったりいく人が少ない、したがって何年か病床に呻吟ずることになります。したがって長い間にはだんだん収入が減ってくる。死亡直前の収入状態ではほとんど収入がないようになる傾向が多いと思います。健康体のときの収入状態を基礎にする、こういうようなことこそ必要じゃないかと思いますが、この点についてはどのようにお考えですか。
  38. 城戸謙次

    城戸政府委員 御指摘のように慢性的経過をたどって死に至るということが公害病の特性の一つであるわけでございますので、死亡時の生計維持関係ということだけを問題にするということは私どもいたしておりません。これは特殊の、例外的に、たとえば利子所得等で家計をなしている、こういう方の場合は例外的にございますが、一般的には先生指摘のような状態だと思っております。したがって、この法律では三十条で認定申請時の生計維持関係があればそれで足りるということにいたしているわけでございます。
  39. 島本虎三

    島本委員 局長早口で、理解しないうちに終わってしまう。これは、するといま言ったような点を十分に考慮してやるということなんですか、それとも今後の問題として、今後この点も十分取り入れていくというのですか。これはどうもあまり官僚的答弁で、議事録にはりっぱに出ても、私には理解がどうも薄い。私の質問に合うように答えてもらいたいな。もう一回……。
  40. 城戸謙次

    城戸政府委員 三十条でございますが、私申し上げましたのは、生計維持の関係を、通常は先生指摘のように死亡時の生計維持関係ということになるわけでございますが、死亡時の生計維持関係があればけっこうでございますけれども、そうでない人の場合におきましても、認定申請のときに生計維持関係にあれば足りる、こういうことで生計維持ということを非常に広くとっていく、こういうことでいま御指摘のような実態あるいは要請にこたえるということを、この三十条で規定しているわけでございます。
  41. 島本虎三

    島本委員 それはわかりました。  次に五十六条関係ですけれども、これは汚染負荷量賦課金について、延納の特約ができるということになっておるようです。これを行なう場合は企業の都合のみによって行なうということになると、加害企業を有利にするということにも通ずると思います。その要件をはっきりしておくことが必要ではないかと思います。どんな場合にこれを認めるのですか。
  42. 城戸謙次

    城戸政府委員 延納をどういう場合に認めるかということでございますが、これはこの法律では、六十一条に総理府令、通産省令でそういう要件を定める根拠規定がございます。これによりまして今後具体的に検討しましてしぼってまいりたいと思っておりますが、たとえば賦課の金額が一定金額以上であるとか、あるいは負担能力の乏しい小規模の事業者だとか、こういう条件を限定しまして、申請のときから一定期間に限り分割延納を行なわしめるということでやってまいりたいと思っておるわけでございます。
  43. 島本虎三

    島本委員 そうすると、汚染負荷量の賦課金、これと、別に法律で定めるところによって徴収される金員の配分比率、こういうようなものに関して「その他の事情」、こういうようになっている。「その他の事情」というのは何を勘案するのですか。第四十九条第三項の汚染負荷量賦課金と別に法律で定めるところにより徴収される金員との配分比率に関して「その他の事情」、これは何を勘案するのでしょうか。
  44. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 御質問の法第四十九条三項の配分の比率のところの「その他」というのは一体何をさすかということでございますが、これは具体的には全体のたとえば硫黄酸化物と窒素酸化物の総排出量というものをはじきまして、そうしておのおのの発生源が一体どの程度寄与しているかということの議論になるわけでございますが、その場合のその寄与度という問題を「その他の事情」というところで見よう、こういうぐあいに考えたわけでございます。
  45. 島本虎三

    島本委員 そうすると、この汚染負荷量賦課金の納付対象工場、これは最大排出ガス量、これがもう「地域の区分に応じて政令で定める量以上であるもの」としているわけでありますけれども、この汚染物質そのものの排出量を基準としないで、最大排出ガス量としたのは、これはやはりはっきりした理由があろうと思います。苦心の産物じゃないかと思いますが、その点等についてもこの際はっきりさしておいていただきます。
  46. 城戸謙次

    城戸政府委員 汚染負荷量賦課金の納付対象工場を最大排出ガス量が地域の区分に応じて一定量以上のものということですそ切りをしているわけでございますが、いま御指摘のように汚染物質でとらえるということも考えとしてあり得るわけでございます。ただ汚染物質でとらえます場合にはその使用の燃料だとか、発生施設の稼動状況だとか、こういうことによりまして常時変動しますので、納付義務者が確定できないということがございますので、いまの最大排出ガス量ということで、設備そのもので自然にきまってまいります動かしがたいものを基礎に納税義務者を確定しようということでございます。排気ガス全体の平均量というようなことをとりましても、やはりいろいろな変動的要因があるわけでございますので、そういうばい煙発生施設の設計上明らかになっております排気ガス全体の最大値ということに着目しまして、いま御指摘のような五十二条の規定になっているわけでございます。
  47. 島本虎三

    島本委員 第二種地域にかかる特定賦課金、すそ切りというのは、これはどういうことですか。
  48. 城戸謙次

    城戸政府委員 いま汚染負荷量賦課金の場合のすそ切りの例を申し上げたわけでございまして、  一定規模以上のものだけが納付義務を持つ、一定規模以下のものには賦課金をかけないというのがすそ切りでございます。これは第一種地域だけ認めておりまして、第二種地域にはさようなことをいたしていないわけでございます。と申しますのは、第一種地域のほうはいわば集団責任としまして広く多くのばい煙発生施設等から賦課金を徴収するわけでございまして、徴収のためのコストということ、労力ということ、こういうことを考えました場合に非常に小さな規模まで取り立てるということは必ずしも能率的でございませんので、こういうようなやり方をしたわけでございます。  たとえば四十七年三月末のばい煙発生施設の設置工場約五万五千ございますが、この中で一万立米未満のものが約五万あるわけでございまして、その汚染負荷量全体に占める割合は大体一割だ。五万五千のうち五万のものでわずか一割しか占めていない。残りの五千で全体の九割を占めている、こういう状況でございますので、一万とはきめておりませんが、一定の規模以下のものをすそ切りしよう、こういうことを考えているわけでございます。  ただ、いま第二種というお話でございますが、第二種につきましてはそういうような考え方はとっていないわけでございまして、原因者であることがはっきりわかっておるにもかかわらず小規模であるために納付義務者としないということは、いわば原因者負担の原則からいきましても適当でございませんので、第一種の場合とは事情が違いますから、第二種につきましてはすそ切りというものをしない、こういう法律の体系になっているわけでございます。
  49. 島本虎三

    島本委員 今度は百三十六条から百三十八条並びに百四十六条、これらにずっとわたって、この制度には正当な理由なく報告の求めに従わず、受診命令に従わない場合は被害者に対し罰則をかけたり、補償給付を差しとめる、こういうようなことができるようになっているわけですけれども、この規定の適用は慎重に行なわなければならないのじゃないかと思うのです。これはどうしても過失相殺に通ずるような考え方で、公害の場合には特に加害者と被害者しかない。被害者は健康、生命、こういうようなものを当然犠牲にされるわけであります。自分が好きこのんで犠牲になるような人はないのであります。生命こそは地球より重いわけでありますから、この「正当な理由がなく」とか、こういうようなことのためにたとえば病人が報告書を自分で書かなければならない。それが期間がおくれておる、そのためにばっさりこれは適用されるということになりますと、せっかく法があっても、適用されないようにこれは運営されるおそれがなきにしもあらず、こういうように考えられるわけであります。正当な理由ということは、これはなかなかえてしていずれにも使われる可能性のある問題でありますから、この辺の使い方も十分配慮しなければなりません。これは当然慎重に行なうべきでありますが、これに対してどのようにお考えですか。
  50. 城戸謙次

    城戸政府委員 この制度によります指定疾病認定あるいは補償給付支給ということにつきましては、当然指定疾病にかかっておって、一定障害の状態にあるということに着目して行なわれておるわけでございますので、そのためにその障害の状態等を正確に把握しておく必要上ただいまのような規定があるわけでございます。  ただ、御指摘のように非常にこの点につきましては慎重な運営を行なう必要があることは申すまでもないわけでございまして、いやしくも被害者救済制度という趣旨に反するようなことには絶対にならないように十分私ども配慮し、地方も指導してまいりたい、こう思っております。
  51. 島本虎三

    島本委員 その認定のための認定審査会、これは現行法によりますと、お医者さんが多いわけでありますが、今回の場合はいろいろ適用範囲が広くなります。またいろいろその種類等につきましても、これは考えなければならないような状態が多いようです。したがって、これは中には法律屋さんも必要でありましょうし、幅広くこれは考えてやらなければならないのじゃないかと思っておるのですが、この件等についてはどのようにお考えでしょう。
  52. 城戸謙次

    城戸政府委員 認定審査会につきましては四十五条に規定がございます。それでこの場合には従来の認定審査会と違いまして、いろいろな余分な仕事があるわけでございます。たとえば有効期間というのを今度定めましたが、有効期間政令で定めるよりももっと延長しなければならぬという場合の意見を出すとか、あるいは認定を更新するとか、取り消すとか、いずれも認定審査会の意見を聞いた上でやる。もちろん障害等級をきめる場合、あるいは先ほど御指摘がありましたようなその死亡の原因が指定疾病に起因しているかどうかの判断、こういうものをすべて認定審査会の意見を聞いてやることになっております。したがって、私どもとしましては単に従来のような医者だけの構成でなしに法律家も入れますし、それから特に障害の程度等を判定する上で従来から専門的にそういうことをやってこられたような方、これもぜひ入っていただきたい、こう思っているわけでございます。
  53. 島本虎三

    島本委員 その配慮は十分この点はしてやってほしい、こういうように思います。行政不服審査についてですけれども、この体系、これはどういうふうなことになっておりますか。特に一般と異なった特徴点というふうなものは、この法律ではどういうようなことでしょう。
  54. 城戸謙次

    城戸政府委員 この認定とか補償給付支給に関する処分に対しまして不服がある。一般の国民の側からの不服でございますが、この点に関しましては第一次的には処分をしました都道府県知事あるいは政令市長に行政不服審査法の手続によります異議の申し立てをすることができるということにいたしております。さらに不服があります場合には、公害健康被害補償不服審査会に対しまして審査請求をすることができる。これが第百六条に規定しているところでございます。一般的には審査請求を上級行政庁、この場合でまいりますと環境庁長官自身にやるわけでございますが、この場合には特に公害問題につきましては技術的な問題が非常に多い。それから量もいま申し上げましたようにいろいろな問題がございますから、非常にたくさん出てくるだろうということが予見されます。特にそれに対しましてさばきも迅速にしかも公平に行なわなければいかぬ。こういうことから環境庁長官でなしに審査会を設けまして、専門に審査請求の件を扱わせる、かようにこの法律ではいたしているわけでございます。
  55. 島本虎三

    島本委員 その点はわかりましたが、実質論と申しますか、介護手当の低いことは先ほど言ったとおりでありますけれども、厚生省あたりでは付き添いの看護料であるとか、こういうようなものについて新たにこれは発想をこらしているようであります。今後いろいろな給付について、厚生省あたりではだんだん上げていく、その場合は本法によるところの適用をされる場合には、それとの間に差があってはいけないと思うのですが、その連絡等については十分とれるような法の仕組みになっておりますか、その点をひとつお伺いいたします。
  56. 城戸謙次

    城戸政府委員 いま御指摘の基準看護、付添看護、こういう問題も含めまして診療方針診療報酬環境庁長官がきめるということになっております。私ども公害病の実態に即した診療方針診療報酬をきめてまいりたいと思っておりますが、いま御指摘のように厚生省の関係健康保険、国民健康保険等との関連もございますので、十分連絡してもらいまして、少なくとも先生指摘のように、向こうのほうが進んでこちらがあとになるということは絶対ないようにやってまいりたいと思っております。
  57. 島本虎三

    島本委員 新たに自分が作成した法律ではなく、その間に主管局長となって答弁した城戸局長としては、きょうは若干官僚的で冷たい感じはいたしましたが、大体においてよく勉強しておった、こういうようなことを痛感したわけであります。しかし、今後なおこれで安んずることなく十分検討しておくれないように対処しておってもらいたい、こういうように思うわけであります。  あと、それぞれ優秀な人材が個々別々に質問を展開するのであります。私の与えられた時間が参りましたから、これでひとつ終わることにいたしますが、一そう今後の健闘をひとつ私としては要請して、これで終わります。
  58. 佐野憲治

    佐野委員長 木下元二君。
  59. 木下元二

    ○木下委員 基本的な問題を伺いたいと思いますが、汚染者負担の原則、いわゆるPPPの原則といわれているものがあります。これは公害対策の第一歩としてもうすでに確立をしておる原則であります。被害者救済をより完全なものに近づけるためにも、あるいはまた規制や予防をより実効的なものにして、公害対策全体を進めていくためにも、このPPPの原則はその出発点であります。ところが、このPPPの原則がこの健康被害補償法案の基本に据えられておるのかどうか。この法案にPPPの原則がどのように取り入れられておるのかどうか。この点について私疑問を持っております。このPPPの原則とこの法案との関連を伺いたいと思います。
  60. 城戸謙次

    城戸政府委員 汚染者負担の原則とこの法律との関係という御質問でございますが、この法律におきましては、一番中心をなします補償給付に要する経費につきましては、全部関係の企業から徴収しましてそれを充てる、こういうぐあいになっております。それからこういうような公的な制度をつくり上げて、単なる私的制度でなしにやっていくわけでございますから、それに要する事務費につきましては、国と都道府県あるいは政令市で持つということになっております。それから公害保健福祉事業に関しましては、これは本来被害者に対しますものと、それから一般住民に対しますものと一体としてやっていくというような関係でございますので、半分は関係の企業から取り、半分は公費でもって充てる、かような仕組みになっておる。大きく申しますと、そういう仕組みでございます。
  61. 木下元二

    ○木下委員 関係企業から費用を徴収する、これはPPPの原則を貫いておる、あるいはPPPの原則の立場に立っておるとは直ちに言いにくいと思うのです。問題はこの法案制度の仕組みが公害発生者の公害発生責任、すなわち不法行為責任を基礎に据えて、かつ最後までその責任を追及することを志向しておるかどうか。そうでなければ私はPPPの原則の立場に立っておるとは言えないと思うのです。PPPを具体化しておるとすればこの点がはっきりしていなければならない、こう思いますがどうでしょう。
  62. 城戸謙次

    城戸政府委員 そういうことになりますと、この制度全体の仕組みの問題だと思います。この制度は一方におきまして社会保障的色彩を有するような生活保障制度という考え方はとっておりません。御指摘のように民事責任を踏まえました環境汚染による健康被害にかかる損害を補てんするための補償を行なうというのがこの第一条で規定されているところでございます。ただ、この場合に民事責任を踏まえたと申し上げましても、それでは具体的に個々の企業の民事責任に直接つながっておるかと申しますと、そこにはたとえば第一種の地域に関しますこの制度の仕組みのように、ごらんいただきますとわかりますが、やはりそこに一つのフィクションを設けましてこの救済措置をとっているわけでございまして、そういう意味におきまして先生からのやや企業責任が不明確になっているという御指摘につながっているのではないかと思いますが、これは大気汚染の性質上私はしかたないところだ、かように思っているわけでございます。  なおまた、いまのPPPということでございますが、PPPにつきましては、原則論としてはOECDにおきまして昨年の五月これが採択され、各国に勧告されているわけでございますが、その細部につきましては、さらに現在検討されているわけでございまして、経済専門家小委員会で検討されまして、一応の報告の案が環境委員会に上がってきている、こういう段階でございまして、特にその中におきましての、いわば損害の費用の負担ということにつきましては、このOECDのPPPの中ではまだ十分具体化されていないというのが、国際的な現状でございます。日本の場合は、それを一つ先へ行きまして、PPPの原則をそういう損害の問題にまで当てはめていこう、こういうことで努力をしておるところでございます。
  63. 木下元二

    ○木下委員 この法案制度の概要についてあなたからいま説明を承らぬでも、これはもうすでに何回も論議をして、もう内容は明らかになっておるところであります。私はそういうことを聞いておるのでなくて、たとえば公害発生原因者が明らかになった場合に、これに対する求償の措置、このための制度というものはつくられていない、こういうことを問題にしておるのです。  賦課金の徴収というのは、これはむしろ原因者が不明の段階で、あなた方がよく言われる制度上の割り切りを行なってこの徴収をやる、こういうものですね。これとは別に、公害発生原因者が明らかになった場合に、これに対して求償できる道が確立されていなくてはならないと思うのです。公害発生原因者というのは、少なくとも、従来の公害訴訟によって認められたレベルでの損害賠償責任というものが完全に負わされていなくてはならない。そのための機構が完備されてこそ、PPPの原則が具体化しているといえると思うのです。だから、こういう制度がこの法案の中にないから、何かこの制度が、企業のための保険的な性格のみが浮き彫りにされておるという批判が生まれるのですね。この点いかがでしょうか。
  64. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘の点、本制度で求償の条項がないではないかという御質問でございますが、第一種と第二種というぐあいに本制度では分けておりまして、第一種の大気汚染による一般的な非特異性の呼吸器系の疾患の発生している場合に原因者を追及できるというのもきわめてまれである、全く例外的なことであろうというぐあいに私ども実はいま感じておるわけでございます。四日市の磯津のような非常に極端なはっきり区分のできるものにつきましては、これは判例というのがございますからそれができるようになったということでございますが、あのような形で第一種の非特異性の疾患について民事上の訴訟をやった場合にはたして勝てるかどうかということになりますと、現在ほかの地域におきます多くの問題がございますが、やはりいろいろの法律家の意見を聞いてみますと、原因者の追及で裁判を維持することはきわめてむずかしいという議論があるわけでございます。そういう点におきまして、第一種の場合に求償を設けるということについては、これは実益がないという考え方に立ちました。  次は第二種の場合でございます。  第二種の場合には、これは特異的疾患という場合でございますから、汚染物質と病気との関係が明らかである。汚染物質を出す施設、これは明らかにマークできます。しかしこれを求償するという段になりますと、民事上の条件をすべて整えるに至らなければこれは求償できないということになります。  そうしますと、この民事上の条件をすべて満足させるまでわれわれがこの制度の中でやるかどうかということになりますと、これまた非常に複雑な問題があるということでございますので、本制度では、特定賦課金という形で、私どもの感じといたしましては、むしろ求償よりもきびしいやり方ではないかと思われるようなやり方でございますが、従来の法律には見られなかったような形で、それに対して強制徴収の規定をもって特定賦課金を徴収するという形をとっておるわけでございます。そういうことにおきまして、本制度では、求償の条項というのを持っておりません。  それからもう一つは、その企業が裁判に負けまして向こうが払った場合には、本制度はその分については免責になりますし、また、先生の御指摘のございました問題に関連してでございますが、本制度と現在の規制法の制度におきます違反した場合の規制ということは、本制度で払っているからといって何ら情状酌量が加わるものでもございません。また民事上の裁判を起こしますことにつきましては、これは全く憲法上の権利でございますので、本制度から給付をもらっておっても、当然にこの裁判を起こせるということになっております。  それからもう一点につきましては、民事の不法行為という点のみで律し切れない問題が現在の公害問題の中にあるということが、公法上このような制度を設けたという一つの点でございます。  この制度におきましてどうして補償という形に変えたかという点につきましては、最初のころ御説明いたしましたように、民事の責任の確定に先立って公法上行なうということでございますので、裁判の判決であるとかあるいは民事の調停であるとか、あるいは自主交渉によって当事者同士で折衝するというようなことにつきましては非常に時間がかかりますので、それに先立ってやるというのがこの制度の特色でございます。  その場合に、不法行為の責任を問われる者だけを対象とするかどうかということをいたしますと、非常に限定をされるのではないかということでございます。で、自動車から賦課金を取るということを申しましても、自動車はそれでは不法行為責任を問えるかということになりますと、これは不法行為責任を問われません。そのような問題もございますので、本制度は民法の不法行為の考え方よりも少し幅を広くとり、現在の日本のように発生源が集中しており、不特定多数の発生源によって起こっておる、これら補償を要するようなものに対応しようという特殊な公法上の形態として考えたということでございます。  そういう点におきまして、PPPの原則から考えてこれは企業も甘く扱っておるのではないかという御指摘がございましたが、公害問題の特質、第一種、第二種の相違あるいは民法の持っておる問題の制約ということを考慮して、本制度のような体系をとったわけでございます。
  65. 木下元二

    ○木下委員 いま第一種の場合は原因者の追及がきわめてまれである、むずかしいということを言われましたけれども、しかし四日市の場合でも例にあるように、裁判でもって請求が行なわれ、現実に結果が出ておるわけですね。実益がないと言われますけれども、そういうふうな方法だって現実に行なわれておるわけでありますし、それであってもそういう追及ができるという方途を保障しておくことが必要ではないかと思います。あるいは訴訟に必要な費用を援助する制度も私は必要ではないかと思うのです。こういう点についての配慮が行なわれていないという点に、私はこの制度の欠陥があるのではないかと思います。  特に私ここでお尋ねしておりますのは、前の中公審の答申案には、この点について違った取り扱いがされておった。「故意または重大な過失により給付の原因となった行為を行なった事業者」に対して求償をするという道が定められておりました。これがなくなっておる。もちろんこの中公審の答申案、これだけでも私はきわめて不十分だと思います。求償の対象者をこのように「故意または重大な過失により給付の原因となった行為を行なった事業者」というふうに限定をするべきではないと思います。ところが、この出されました法案ではこうした限定的な求償の制度さえなくなっておるのですね。これは一体どうしてですか。
  66. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 中央公害対策審議会の答申におきましては、いま先生の御指摘のような答申があったわけでございます。それをどのような形で法律化するかというときのその議論といたしまして、私先ほど申し上げましたように、求償ということをやる場合のいろいろな条件を検討いたして、公法上の制度として設ける場合に、先ほど申し述べましたような理由で、むしろ特定賦課金というような形でやろうということになったわけであります。ただ本制度におきまして原因者が明らかになって、あれは求償すべきではないかというような問題が起こった場合に、本制度は民事上の問題として、この制度として相手の原因者に対して求償するということを起こす道が決して閉ざされているわけではない、こういうことでございます。
  67. 木下元二

    ○木下委員 いまの中公審の答申が特定賦課金に変わったと言われますが、その条項、条文はどれですか。どれに変わったというのですか。
  68. 城戸謙次

    城戸政府委員 ただいま申し上げましたのは、この答申の中にあります「事業者に対する求償」「故意または重大な過失により給付の原因となった行為を行なった事業者に対しては、給付を行なった価額の限度において、当該事業者に求償することができる」、この規定でございますが、これは一般的には法務省の見解で当然にできるということで、法律の中に入ってないわけでございます。  特定賦課金につきまして特に申し上げましたのは、特定賦課金は、一定公害発生しました場合に、それが特異的疾患にかかる場合には、当然その原因者に対しまして一種の原因者負担という考え方でこれを課していくわけでございまして、厳格な意味での民事上のとうとい因果関係があるかどうかということを問題にしないという意味におきましてもっと広いわけでございまして、そういう意味で、この制度では六十二条で特定賦課金の徴収を相当過去の設置者まで含めましてやっていける、こういう制度になっているということをあわせて申し上げたわけでございます。
  69. 木下元二

    ○木下委員 ちょっといまの意味がよくわからないのです。「故意または重大な過失により給付の原因となった行為を行なった事業者」に対しては当然できる。当然できるから必要ない、こう言うのですか。当然できるという根拠はどこにあるのですか。被害者のほうが故意または重大な過失のある場合、その場合にははっきりと条文化しておいて一きわめて問題のある条項でありますが、しておきながら、この中公審の答申にある「故意または重大な過失」が事業者のほうにある場合は、この場合はもうカットしてしまっておる。どうしてですか。
  70. 城戸謙次

    城戸政府委員 いま申し上げましたように、一般的に法務省の見解としまして法律上書かなくてもできるということでございます。いま御指摘になりました被害者のほうの重大な過失等の問題につきまして入れましたのは、給付をします場合に給付との関係で問題になってまいりますから入れたわけでございまして、これは具体的な求償の問題でございますから、この制度とそういう民事上の責任者との求償関係につきましては、一般的に別途民事上の争いとしてできるということでございます。
  71. 木下元二

    ○木下委員 「故意または重大な過失により給付の原因となった行為を行なった事業者」、これは当然損害賠償の義務がある、だから特に法文で言う必要ない、こういうことですか。それでは、たとえば重大な過失がない場合はどうなんでしょうか。この賦課金制度を設けまして賦課金を徴収する、そういうたてまえにしておる以上は個々の責任は問わない、求償はしないというたてまえで、いわゆるこの法案の賦課金制度、賦課金徴収の制度が設けられているわけですね。それとは別に、特に事業者のほうが悪質な場合、故意あるいは重大な過失がある、あるいはそのほか悪質な場合に、特にさらに賦課金以上に事業者に対して追及できるという道を残しておこうというのがこの中公審の答申の内容でしょう。残しておく必要があるでしょうが。これをカットした理由があなたの説明ではもう一つ私はわかりにくいのです。
  72. 城戸謙次

    城戸政府委員 いま申し上げましたのは、その民事上の求償ができるかできないかということでございますが、これは一般の民法の原則に従いまして、因果関係等はっきりしているものにつきましては求償することはできるというのが法務省の見解でございまして、大気系の疾患の場合に、非常に多くの場合因果関係がはっきりしない場合があるわけでございますね。そういうものを制度給付としてやるわけでございますから、その全部について求償することはできないというのは、この制度の仕組みから見て当然のことだと思うわけでございます。したがって、第一種の地域につきましてはそういうぐあいになるわけでございまして、第二種の場合にはよりはっきりする。ただこの場合におきましても、私どものほうで特定賦課金を課する場合と、それから求償というようなぎりぎりの民法上の条件を備えているかどうかという判断とはおのずから違ってまいるわけでございまして、私どもこの制度におきましては、特定賦課金はその意味におきましては非常に厳密な意味の詰めをしなくてもかけていける、こういうことになろうかと思うわけでございます。
  73. 木下元二

    ○木下委員 いまあなたが言われる求償できるというのは、これは当然のことなんですよ。故意もしくは過失がある不法行為の場合に、賦課金を納めておるけれども、それ以上に損害を要したということで求償できるということは、これは確かに法文にうたわなくてもできると思います。けれども、中公審の答申が、特に故意もしくは重大な過失による場合というふうに限定づきでこの問題を打ち出しておったわけですね。それを何かことさらに排除したところに私は非常な問題がある、企業側から苦情が出てそれに従ったんではないかという疑いさえ持つわけです。これは当然私は法制度としてもっと簡単に求償できる道というものをつくるべきであった、こう思います。  それから次の問題に移りますが、障害補償費の問題、障害補償標準給付基礎月額の問題です。  もうすでに何回も論議があったわけですけれども、なぜ全国の性別、年齢別による平均賃金を基礎とするのか、またなぜこの平均賃金の八〇%とするのか、これはもう前回詳しく論及をいたしまして、その不当性、不合理性は論破されておると私は思います。政府側の答弁はどうしても納得できません。これは国民の立場に立って納得できないわけであります。  で、きょうは少し違った角度から指摘をしておきたいと思うのですが、この前にこの問題について質問いたしました際に、船後政府委員はこう答えております。「この制度大気汚染による患者であるかないかということを認定するにつきまして、一つ地域ということと、その地域の中にある期間住んでおるということと、ある病気にかかっておるということ、この三つが立証されますれば、直ちに認定患者として認定するわけでございます。ということはつまり、この制度といたしまして因果関係ありというふうに割り切っておるわけでございます。」こう言っておるのであります。つまり、この三つの要件にあてはまっておれば因果関係ありと認定する。因果関係認定がゆるやかである。だから八〇%にするんだ、こういう趣旨なんですね。こういう理由というのは、これはもう前に詳しく指摘をいたしましたけれども、全く通らない理由であります。これは日弁連も指摘をいたしておりますが、因果関係で蓋然性説をとるということが、これを給付水準の点で考慮するということは許されない、こういうふうに指摘をいたしております。  しかしこの問題は、もう私きょうは同じことを申しません。特にここで申したいのは、第二種地域の場合、つまり特異性疾患の場合の問題であります。第一種地域の非特異疾患の場合は、一定地域ということと、その地域内にある期間住んでおるということと、ある病気にかかっておるというこの三つの要件に該当すれば認定をする、そういう場合には他原因を取り込むことが絶対にないということがいえない。そこで八〇%の合理性を説明されようとするのでありますが、この第二種地域の場合、特異性疾患の場合には、個別的に当該特異性疾患にかかっておるかどうかということを見るわけでありますから、他原因を取り込むということは考えられないのですね。この場合には因果関係認定がゆるやかだというようなそういう理由は当てはまらない、そうではないでしょうか。
  74. 城戸謙次

    城戸政府委員 いまの御指摘の問題は、先ほどの問題とつながりがあると思うわけでございます。実はさっきの中公審の答申の段階では、こういう特定賦課金というような制度を非特異的疾患に対しての関係の企業から取っていくということはまだ割り切っていなかったわけでございます。したがって、むしろ制度的に求償するということが精一ぱいではなかろうかというような考え方もありまして、ああいうような、表現としましては一種、二種含めたような表現になっておりますが、表現の答申がなされているわけでございます。その後いろいろ検討いたしまして、私どもとしましては、民事上の原因者を確定してできるような状態でなくても、一種の原因者負担金という形で特定賦課金を課するということができるということで、現在の六十二条のような規定を置きましたわけでございまして、したがって厳密な意味におきましては、第二種の場合におきましても、民事上の損害賠償責任がある場合でなしに、そうでない場合も相当広く入っている、こう考えるわけでございます。特にまたこの場合には、六十二条の中にございますように、過去の設置者にまで特定賦課金を課する、こういうような体系に持っていっているわけでございます。
  75. 木下元二

    ○木下委員 いや、私が伺っているのは給付の問題ですよ。給付を第一種地域の場合には八〇%にする、第一種、第二種の両方ともそうなんですけれども。第一種の場合に八〇%にするという点、これはさておきまして、これも私は不当だと思いますが、第二種地域の場合に八〇%にするという根拠は全くないではないか、あなた方の立場に立っても。あなた方の説明というのは、前の議事録に出ておりますが、さっきも言いましたように、因果関係認定がゆるやかにしか行なわれにくいという説明なんですね、結局は。そのことは第一種地域にしか当てはまらない。第二種地域の特異性疾患にかかっている場合には、そういうふうなほかの原因も加わっておるというふうな、そういう場合というのはまずないわけですよ。だからこの場合は、あなた方の立場に立っても八〇%説というのは合理性がもうないわけなんですよ。そうではないですかということを聞いておるんです。
  76. 城戸謙次

    城戸政府委員 私は、先生の御質問に対します船後前局長の答弁も読んでおりますが、完全にゆるいから非常に低い水準にしているんだという答弁にはなっておりません。ただ、先生指摘の点が、因果関係におきましては、一種に比べ二種のほうがきついじゃないか、一種のほうは相当制度的取り組みだというけれども、二種のほうでは完全に因果関係を確定してないではないか、こういう御指摘でございますので、それは民事上の因果関係を確定するまでもなく、私どもとしましては、特定賦課金を課しました上で給付していく、こういう体系をとっておりますという御説明を申し上げているわけでございます。
  77. 木下元二

    ○木下委員 いや、それでは説明になってない。それでは八〇%しか支給しないということの理由をもう一ぺんお尋ねしましょう。どういうことですか。
  78. 城戸謙次

    城戸政府委員 八〇%の問題につきましては、現在の段階においては確定したということは私ども申していないわけでございます。前の答申でそういうようなことが入っておりますが、正式には今度新しくこの法律が制定されましてから審議会に諮問してきめていくわけでございます。そういうことで従来から御答弁申し上げています。  それから、どうして八〇%になったかということにつきましては、この制度自身がいわば公法上の定型的な給付をやる制度として打ち立てられているということでございまして、他制度等との状況も勘案しました上で、こういう労災のレベルとそれから一〇〇%のレベルとの中間のところにきめるということで、そういう議論が出てきているのだということを御紹介申し上げているわけでございます。
  79. 木下元二

    ○木下委員 もう繰り返しませんが、いま言われましたように、これは確定したものではない、これから検討していくんだということですから、これは第一種と第二種ともともと同一に扱うべきだと私は思います。一〇〇%支給という線で扱うべきだと思いますが、少なくとも第二種地域については第一種地域と違った面がある。八〇%をやめて一〇〇%支給するようにこれは考えてもらいたいと思います。  この点も私一つ指摘をすれば、中公審の答申ですね、これをよく見ますと、第一種地域と第二種地域と異なった取り扱いで述べておられる。この第一種地域について九ページの下のほうにずっと書いておりますね。「非特異的疾患における補償費の給付水準は、公害裁判における判決にみられる水準、社会保険諸制度の水準等をふまえ、公害被害の特質、本制度における因果関係についての考え方、前述の慰謝料的要素を総合的に勘案し、結果的には全労働者の平均賃金と社会保険諸制度給付水準の中間になるような給付額を設定することが適当である。」こう書いておる。そしてこれによって八〇%という線を出しておるのですね。ところがそれに並べて、「なお、特異的疾患で疾病汚染原因物質との特異的な関係を明らかにすることができるものについては、給付水準を定めるにあたって、これらの特殊事情を考慮する必要があろう。」こう書いておるのですよ。これは私がさっきから申しましたように、因果関係の点でも、この特異疾患の場合にはより明確である。そういう事情から、この給付水準については第一種地域の場合と異なった取り扱いをして考慮する必要があるということなんですね。答申自身にそういう考えがあらわれておるのですよ。それがいつの間にかこの法案が出てきて、この点も現在となって変わってきておる。だから、この点は先ほどもあなた方が認められましたように、まだ確定したわけではありませんので、もう一度この中公審の中間答申の段階に戻って再検討をされることを要望いたします。いかがですか。
  80. 城戸謙次

    城戸政府委員 何度も繰り返して申しわけございませんが、いまの特異的疾患に関しましては、この中公審の答申ができました段階では、特定賦課金というような包括的な賦課金を課するということが法律的にも相当問題があるんじゃないかということで、むしろ制度給付をしました上は、あとは民事上とれる分だけをとっていこう、こういう考え方に立っていたということでございまして、その辺現在の段階とはやや違っているわけでございます。先生指摘の点私どもわからぬわけではございませんが、そういうこともございましたので、特定賦課金という制度割り切りました際に現在のような考え方に整理をしているわけでございます。
  81. 木下元二

    ○木下委員 ですからこの問題についてはまだ特に確定した考えが出ていないわけですからよく検討をされるというふうに伺っていいんですね。
  82. 城戸謙次

    城戸政府委員 もちろん先ほどもお話ししましたように、公式に申し上げますと、この法律が通りましたあとで中公審の意見を聞いてきめることになっておるわけでございます。それから先生方の御指摘があったということも私どもよく承知しているわけでございます。ただ私ども考え方としましては、前の答申の線もそうでございますが、他制度とのバランス等をもやはり考え合わせた上で決定していく線もございますので、この辺はいまおっしゃったことがすぐこの中に取り入れられていくということをここでお答えできるような段階ではないわけでございまして、そういう意味で私としましてはお答え申し上げるよりほかないと思います。
  83. 木下元二

    ○木下委員 まあその問題はたいへん不十分な答えしか得られませんが、次の問題に移ります。  これもすでに指摘をした問題でありますが、どうしても改めていただきたい点でございますので再度申し上げたいと思います。それは法案の四十二条であります。被認定者または認定死亡者が重大な過失によって指定疾病にかかった場合等の問題であります。この場合には「補償給付の全部又は一部を支給しないことができる。」結局補償給付が全面的に否定される場合があるということなんですね。これはいかに被害者側の過失が大きいとはいえ——まあ被害者側の過失が重大であるというふうな場合はこれはほとんど考えられない、あまりそういうふうな例も考えられないということなんでありますが、かりにそういう過失が大きい場合があるといたしましても、だからといってこの補償給付を全くしないというふうなことはこれはあまりにも酷であります。酷だというばかりではありません。これは私、法律家として損害賠償制度に関する法体系上から見まして全く容認できないのです。これはもうこんなものつくりましたら法律学者、専門家の批判の的になります、笑いものになります、はっきり申しまして。過失相殺というのは民法七百二十二条、「不法行為」にありますね。この七百二十二条「被害者二過失アリタルトキハ裁判所ハ損害賠償ノ額ヲ定ムルニ付キ之ヲ御酌スルコトヲ得」ということで、額をしんしゃくする、加害者の責任自体は否定されないということなんですよ、この損害賠償制度というのは。だからたとえば自動車事故が起こった場合に被害者はどんなに過失が大きくてもこれは不法行為者に対して、加害者に対して損害賠償請求ができるんです。不可抗力の場合は別ですよ。少なくとも加害者に過失がある場合、被害者の過失がいかに大きくても損害賠償責任、責任そのものは否定されないんです。これが民事の不法行為制度の大原則なんです。ところがここではもう責任そのものが否定される、こういうことになっておるので、これは民事の損害賠償制度の均衡上からもどうしても了解しがたいところであります。ひとつこの点は改めていただきたい。特に反論がありましたら伺います。
  84. 城戸謙次

    城戸政府委員 特に反論を申し上げるということではございませんが、私どもとしましては、ほかの制度にありますような給付に対しますいろいろな給付を受ける側に責任がある場合の公平の見地からの制度、これを参考にしながらあの条文をきめたわけでございまして、民法の規定がそのまま適用になるということではないということでございますから、私どもとしましては他制度をしんしゃくしてそういう形のもの、そういう結論を出して、提案をいたしているわけでございます。民法の規定でそういう条文になっているということは私ども承知いたしております。
  85. 木下元二

    ○木下委員 そうしたら、ほかの制度とのかね合い上やった。ほかにこれの参考になるような、準用するような、もとになる法律がどこにありますか。少なくともこれは参考にすべきものというのは民法の七百二十二条のこの過失相殺の規定でしょうが、これが民事責任を踏まえた制度という以上この七百二十二条に準拠すべきことは当然のことじゃないですか。この点はどうですか、改めてもらえますか。
  86. 城戸謙次

    城戸政府委員 他制度、これはまあいろいろございますが、労災の場合、健康保険、国民健康保険、船員保険、それぞれ若干ずつニュアンスが違っております。これはそれぞれの制度で少しそのできたいきさつが違っておりますが、かような規定が置いてあるということにおきましては共通でございます。
  87. 木下元二

    ○木下委員 時間がありませんので、その点はひとつ改めていただくことにしまして、次の問題にいきます。  認定地域の問題ですけれども、この認定地域の問題は、現在の認定地域をこの新しい法律によりましてそのまま踏襲するということが一つと、それからさらに新たに地域指定を拡大するという方向が一つあると思うのです。前回、長官からこの地域指定を拡大するという答弁をいただいております。で、その地域指定の拡大というのは、一つは自治体で行なっている認定地域川崎とか千葉とか水島とかありますが、これを国の制度に取り込むということがあると思います。あるいはまた全く新たに公害のひどい地域指定することを検討するということがあると思います。それからもう一つは、現在の認定地域範囲をさらに拡張するということがあるわけであります。この点は、たとえば前に尼崎からやってきました島田公述人が述べておりましたけれども、空には汚染を仕切るカーテンはないのに道路一つ隔てて患者がおる、こういう実態が明らかになっております。尼崎ばかりではなくてほかの認定地域も同じであります。この現在の認定地域範囲の拡大をひとつ前向きで患者の立場に立って抜本的に検討していただきたい、このことを要請したいのでありますが、ひとつ長官の再度の御答弁をお願いしたいと思います。
  88. 三木武夫

    三木国務大臣 従来の指定地域、それは踏襲をいたします。それからまたいま木下委員がいろいろな場合を御指摘になったですが、それは地域拡大のときのやはり重要な大きな参考になると思いますが、できるだけ前向きに地域の拡大を考えていきたいと思っております。
  89. 木下元二

    ○木下委員 最後に伺いますが、中央公害対策審議会の組織の問題であります。これは公害対策基本法の二十八条に規定がありまして、学識経験者から内閣総理大臣が任命をするということになっております。この審議会のメンバーでありますが、これは学識経験者ということが要件なんですけれども、学識経験者であると同時に、公害を起こす大企業の役員などが入っておるのではないかと思うのです。その点はいかがでしょうか。その点について検討されたことがあるでしょうか。
  90. 城戸謙次

    城戸政府委員 中央公害対策審議会の構成員がどうなっているかということでございますが、ちょっと手元に正確な名簿はございませんが、現在企業に籍を置いておられる方が何名か入っておられるということは事実でございます。ただ、この中でも相当部分の方は技術的な面の専門家であるとかいう方が多いわけでありますが、そういう産業の実情、そこにおきます技術の水準、こういうことにつきましても、十分私ども審議会の場を通して知り得るような方々も入っておるわけでございます。ただ、その具体的な環境基準をつくるとかいう場合におきましては、専門委員会を設けまして、その環境基準の数値そのものは全くそういう産業界の方々と関係なしに、別の専門委員会レベルで決定されているというのが実情でございます。この審議会のメンバー等、もし御必要でございますれば後ほどお届け申し上げたいと思います。
  91. 木下元二

    ○木下委員 実は名簿をいただいたわけであります。ずっと私検討しておるのですが、きょうの朝もらいましたので詳しくまだ検討いたしておりませんけれども、ざっと見たところでも、相当公害を引き起こす大企業の役員がおります。あるいはまた公害大企業と取引があると思われる銀行の役員がおります。公害大企業と密接な関連のある銀行の役員、そういうところからこの公害対策審議会の委員が出ておる。私はこれは少し問題だと思うのです。特に健康被害補償法案がつくられまして、この法案がつくられるまでに、こうした人たちが関与しておるわけでありますが、さっきからお話がありましたように、この法案には政令にゆだねられた事項が多いのであります。その政令委任事項について、中公審の審議にかけられて政令できめられる、こういうことになりますと、これからも問題であります。加害者側が入っておるのですね。これでは公正な立場でこの法案のあるいはその政令委任事項審議がやりにくいのではないかと私は思います。さっき何かいわれました、産業技術などに詳しい人がいる、それは私は別の問題だと思うのです。特にその産業技術について詳しく聞きたいということならば、そういう人を参考人としてこの中公審が呼んで聞けばいい。中公審のメンバーの中にそういう公害大企業の加害者側が入っておる、そういうことでは国民の目から見ましても、一体これで公正な法案があるいは政令ができるのかどうか心配であります。この点はこうした加害者側と思われる人たちに対しては、この中公審の委員から辞退をしていただくように私は要請してもらいたいと思います。いかがでしょうか。
  92. 城戸謙次

    城戸政府委員 先ほどお話し申し上げましたように、私どもとしましては、やはりこういうような公害行政について理解を持っていただく上で、こういう審議会に入っていただいたほうがうまくいく面と、それから御指摘のようないわばマイナスの面と、これは両方あるということは認めざるを得ないと思うわけでございます。したがって私どもはその運営におきましてそういうプラス面が発揮され、マイナス面が出ないような運営をできるだけしていきたいということで、いろいろな基準等をつくります場合には、産業界の人を排除した形で専門的にやっていく、こういうことをやっておるわけでございまして、たとえば窒素酸化物の環境基準にしましても、専門委員会レベルで出たものをさらに中公審に上げました上で小委員会をつくって検討していただく。その段階でいろいろ議論はございましたが、最終的には御理解をいただいて、非常にきびしい基準でございますが、各業界全部をあげて御協力いただく。こういう体制に持っていっているわけでございまして、この中に、もちろん大部分が産業界であるということじゃございませんから、ある数の方が入っていただいておるということについて決してマイナスだけではないと私は思っております。
  93. 木下元二

    ○木下委員 それは私プラス面というのは非常に問題があると思いますよ。少なくとも中公審の名で答申を出したりあるいは中公審の名で一定考え方、方針を出すわけですね。その場合にその中公審のメンバーに加害者側の大企業の役員がおる。それでは一体公正な審議をやったのかということについて疑惑の目で見られる、これは当然のことであります。非常なマイナスであります。だからいろいろそうした人から専門的な知識を縛るということが必要であれば、それは別の方途でもってできるわけなんですよ。そうでしょう。だからかりにそういうプラス面があるとすれば、それは別の方途でもって補えるということですから、そういうふうにしてもらって、マイナス面が非常に大きく問題になるわけでありますから、それをなくするために、そうした加害者側の人たちはこの審議会からやめてもらう。そういう方向で進めていただきたいと思いますが、長官いかがでしょうか。
  94. 三木武夫

    三木国務大臣 産業界がことごとく公害防止の上からいって敵だというふうには考えていないわけで、これはやはり公害の防除ということは、産業界に限らず国民一般の課題でありますから、いろいろな審議会に産業界の者が入ることもそれだけの意義は私はあると思う。しかしそのことで必要なことは、その産業界の利害ということが中公審の全体をリードするようなことは許されることでもございませんし、それだけの人数もないし、また具体的にいろいろな公害防止の基準等をきめるような場合には、そういう者を排した専門的な委員によってきめるわけでありますから、要は、産業界の利害というものがそういう審議会の空気をリードするようなことはさせない。こういうことが大事であって、やはり産業界の者もいろいろな審議会に出てきておるので、国民をみな公害問題、公害問題、こう敵と味方に分けて、あれは敵だから一つもそういう中には入れさせないという考え……。(「公害企業は敵だ。」と呼ぶ者あり)それは敵といっても、そういう人たちを公害防止に対して企業側も一番の大きな目標にするくらいに考え方を変えさせなければ、これは目的が達成できぬのでありますから、今後の中公審の運営については、木下委員の御指摘のような弊害のないように注意は十分にいたします。
  95. 木下元二

    ○木下委員 運営の面で注意をしていただくだけじゃなくて、やはり私は組織の問題だと思うのです。産業界ということをいわれますが、私はその産業界に関係のある人一切をやめてもらいたいとは言っておらぬのです。そうでなくて、公害大企業の役員もしくはその公害大企業と取引関係のある銀行、密接な関係があるわけですから、そういうところのメンバーはひとつ遠慮してもらったらどうかということを言っているわけです。そしてそれは単に運営面の問題だけじゃなくて、そういう人たちがこの審議会のメンバーにおるということ自体が、国民の立場から見て大きな疑惑を招く。この中公審が一定の見解を打ち出します。いかに内容的に公正であっても、そういうふうな公害大企業のメンバーが入っておるような中公審ということになってくると、一体それはほんとうに公正なのかどうか、疑惑を招くわけです。そういう点から私は問題提起をしておるわけでありまして、この点については十分にひとつ決断と実行をもって配慮していただきたい、こう思います。
  96. 三木武夫

    三木国務大臣 委員には任期もあるわけでございますから、中公審が、それ自体が、国民が見てそういう疑いを持つようなことのないような人選を今後とも気をつけていきたいと思います。
  97. 木下元二

    ○木下委員 終わります。
  98. 佐野憲治

    佐野委員長 阿部未喜男君。
  99. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 この健康被害補償法の審議についてはかなり長い時間を費やしてまいりました。これはわれわれ委員にも責任があるのですけれども、同じような質問が何度も繰り返されまして、政府も当局もなかなか苦労されておると思うのですけれども、これだけの時間をかけ、しかも全委員が出席をしないために同じ内容の質問が何度も何度も繰り返されて時間をとってきておる、これは今後十分注意しなければならないと思うのですけれども、かなり議事録を読み返してみましても、それだけの時間をかげながら、多くの方の質問がありながら、なおかつこの法案内容に釈然としないものが幾つか残っております。私は、それはこの法案の特性として、特に先ほど来議論のありました政令に譲る事項が非常に多いこと、しかもその政令が中公審の答申を待って定められるという内容になっておる。そういう関係から、給付内容にしても賦課金の内容にしても、われわれが納得し得るような数字になってあらわれていない。あるいはせめて政府の考えだけでも明らかにされればいいのですが、それができていない。その辺に私はこの法案に対する釈然としない原因があるように思われます。先ほど島本先生から特に長官の決意についても御質問がありましたから、重ねて申し上げませんけれども、私も同じように、この委員会の議論を通じて出された意見については、中公審の諮問の際、さらには政令の制定の際に十分生かして運用をはかっていただくように重ねて長官にお願いをしておきたい。委員全部島本先生の要望と同じであるということをお願いしておきたいと思います。そこで、もし長官、申し上げたことについて決意があれば承りたいと思います。
  100. 三木武夫

    三木国務大臣 先般島本委員にもお答えいたしましたように、これは全く記録的な長時間の御審議を願って、その間にいろいろな各委員の御熱心な、この法案に対して政令を制定する場合の御注文も承ったわけでありますから、そういうことも体して、できるだけ委員各位の御議論の中で生かせるものは生かしていきたいと考えております。
  101. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それではなお少し、疑問の点について質問させてもらいたいと思いますが、まずこの第一点は、法第二条に規定をする第一種の地域と第二種の地域は両方指定されることが私はあり得ると思うわけです。いわゆる第一種地域として指定されておったところで特定疾患が発生をする、その場合には当然第二種の指定も行なわれる、こういうことになるかと思いますが、この点はそう理解してよろしゅうございますか。
  102. 城戸謙次

    城戸政府委員 当然第一種地域、第二種地域目的が違うわけでございますので、それが重複する場合には二重に指定になることもあり得る、そのとおりでございます。
  103. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それでは私は少し具体的な事例を引用をしながら、一種と二種の地域指定が非常に困難な事態が生まれるのではないかという点について質問をさせてもらいたいと思います。  まず伺いたいのは、水俣病の関係については今後発生する患者等については当然本法が適用される。イタイイタイ病についても当然であろうと思います。しかしカネミライスオイルの患者あるいは森永ミルクの砒素患者については本法が適用されないだろうというふうに想定をされますが、これは間違いありませんか。
  104. 城戸謙次

    城戸政府委員 ただいまのようなケースにつきましては、公害対策基本法におきます公害ということでございませんで、環境を媒体としておりませんので、そのものにつきましてはこの法律は適用はないということ、御指摘のとおりでございます。
  105. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私は疑問に思うのですけれども、まず水俣病を例にとります。これは水銀が魚介類の体内に蓄積をして、それを媒体として、人間が食べて水俣病が発生した。カネミライスオイルはどうでしょうか。PCBが食油を通じて人間の体内に入って、これを媒体として人間の体内に入って病気が発生しておる。なぜこれが違うんでしょうか。
  106. 城戸謙次

    城戸政府委員 ただいまのケースでございますが、カネミライスオイル事件の場合は、製造の過程におきまして、その事故からそういうことになったわけでございます、したがってこれは取り締まりの法律としましては当然食品衛生法の体系に属するわけでございまして、もちろんこういう問題について将来ほうっておくということは適当でないわけでございますので、現在その対策については厚生省を中心に検討しているわけでございまして、私ども法律と別個にそういう救済措置が講じられるというのが一番妥当でないかと思っております。
  107. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 いま事故ということばが出てきた、カネミライスオイルあるいは森永砒素ミルクの場合にはその事故から発生したものだと。しかし水俣病の場合には、環境に放出をされて、それが魚介類を媒体にして発生したのだと。それだけの違いがあるから別の法律をつくらなければならないと。はたしてそういうことになるかどうか。こういう法律をつくるとするならば、こういうものを全部包含をした法律のほうが正しかったのではないかという気もいたします。しかしそのことをいまここで議論しようと思っておるのではないのです。私がこれからお伺いしたいのは、大気汚染にからんでの第一種地域、第二種地域指定の問題についてでありますが、さきに大分県の住友化学工業が五月十日に、やはり事故によって有毒のガスを発生して大気汚染して健康被害に及んでおる事例があります。さらに、去る八月十二日夜から十三日の朝にかけて、これは火災という事故によって農薬の倉庫が爆発をして、これまた健康被害を起こしておる事例があります。したがってまずその内容について明らかにしながら、因果関係、それから暴露要件等について明確にしてみたいと思いますので、この大分新産都の中にある住友化学工業の事故の内容について、通産省お見えになっておるはずですから、通産省から承りたいと思います。
  108. 赤羽信久

    ○赤羽説明員 二度の問題のうち、まずパプチオン事故といわれております五月十日の事故でございますが、これは、製造工程から出てまいります廃液を処理するための設備を新しくつくりましてその運転をしたところ、一部操作の誤り、それから設計上にも多少不十分なところがあったということで、非常に悪臭の強い有害なガスが漏洩いたしました。その結果、これは遠くまでは影響は及ばなかったのでございますけれども、のどの痛み等の症状を訴えた者が九十四名になっております。住民で九十四名になっております。  それからその次の八月十二日に起こりました倉庫の火災事故は、倉庫の中にありましたものが約千四百トンですか、非常に大量であったということによりまして、火災が大きくなりまして、火が盛んに燃えているときは問題なかったのでありますが、下火になって分解されたガスが地面をはうようになりまして、やはり風下の住民に症状を訴える者がたくさん出てまいりました。これは煙の量が多いので病状は軽いのでありますが、六百四十七名に達しているそうでございます。これは県当局の調査によるものでございます。
  109. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 いま通産省のほうからお話がありましたように、この二回の事故で、いわゆる健康被害が出ておる、この点について環境庁のほうはどういうふうに把握しておりますか。
  110. 春日斉

    ○春日政府委員 第一回の事故、すなわち五月十日の事故でございますが、先ほど通産省のほうから御報告になりましたとおりでございまして、まず付近住民に刺激性及び悪臭の強い物質が排出されたことによって、目、のどの痛み、吐きけ、せき、たんなどの症状を訴える被害を生じた者九十四名が出ておるわけでございまして、その原因物質といたしましてはメチルメルカプタン、ジメチルジスルファイド等がおもなものと推定されておるわけでございます。  それから第二回の事故、八月十二日の場合でございますが、やはり主として悪臭それから刺激性の被害がございまして、調査によりますると、硫化水素、二硫化炭素、メチルメルカプタン、ジメチルスルファイド等が検出されておりますが、翌日の調査でございますので、この場合におきます量はすでに県条例の規制値を下回っておったわけでございます。もちろん事故当時は一過性に濃厚な煙によりまして患者数百名が出たことは先ほどの報告のとおりであります。
  111. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこで、その第一回の有毒ガスが発生したときの大分県の医師会の調査結果を聞いてみますと、それが直接原因で気管支性の疾患になったものか、もっと前からずっとそういうものが蓄積されて気管支性の疾患が起こっておったもの、いろいろな場合が想定をされる。第二次の調査をしたいということになっておるようでございますけれども、こういうふうな場合に、これは大体一種地域として認定をされるのか二種地域として認定をされる筋のものなのか、これをまずお伺いしたいのです。
  112. 城戸謙次

    城戸政府委員 ただいまのような問題によります健康被害疾病として認定される場合は、当然その地域は二種地域ということになろうかと思います。
  113. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこで問題になるのですけれども、医師団の診断でも、それからこの委員会で私がかねて申し上げてきましたけれども、大分の鶴崎地区は大気汚染指定地域にすべきであるという主張をしてまいっておるのですが、そういうふうに、この事故がなかったとしても当然一種地域指定をさるるような汚染された環境にあることは、これは間違いがないわけです。たまたまそこに五月十日に有毒ガスが起こった。しかもその症状がそのガスによるものか、前からの大気汚染によるものか明らかでない、こういうふうに医師団が発表しておる。なおかつそれでも二種地域であるというふうに断定ができるのかどうか。この認定は非常にむずかしい問題を伴うのではないかという気がしますので、もっと明確に承っておきたいのです。
  114. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御意見にございましたが、大分のそこの問題になった地域は立地条件上非常に不利な地域でございまして、この点につきましては大分県当局もかなりの期間にわたって汚染調査をいたしております。また先生のお話の中にございましたように大分県医師会が調査をしているというものもございます。そのデータをどういうぐあいに判断をするかという問題が一方にあるわけでございますが、まず当面の問題としましてはやはり現在この制度ができておりませんから、これは現在指定できるわけではございませんが、あのような事態が起こった場合にはまず第二種としての問題の検討が先に立つということでございまして、第二種の検討が始まったので、そういう条件が消失したというわけではないというように私ども考えておるわけでございます。
  115. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 第一種地域と第二種地域が重ねて指定をさるる、認定をさるるというような場合に、常識的に考えられるのは、第一種地域認定があって、その中で第二種に該当するような問題が起きたときに二種地域指定が行なわれる、これが常態だろう。特に大分のいま申し上げに鶴崎などの場合にはそれが常態だろうと思うのです。しかしいまの橋本さんのお話では当然第二種だ、こうおっしゃるのですけれども、二種に認定をされた場合と一種に認定をされた場合では患者の疾患によって非常に問題が起こってくるような気がいたします。いわゆる慢性疾患のごときものが二種認定の中で救済の対象になり得るかどうか、これはどう考えますか。
  116. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 第一種の指定地域におきましては非特異性の呼吸器系の疾患の四疾患を対象といたしておるわけであります。大分の場合に第二種として一体どういうことになるかということは、これは現在県がいろいろ調査をいたしておりますので、その結果の成績を見るということ以外にはちょっとただいまはっきりしたお答えをいたすことはできませんが、その範囲内でどのような第二種の特異的な健康障害であるかということの、その地域における特異的な健康障害像を明らかにして、そしてそれと汚染物質関係が特異的なものであるということで、その障害がこの法律条件に当てはまるものになると思いますが、そういう形で第二種の地域指定をし、それによる障害を特定をして出すということでございます。その場合に二つございます。一つはもともと慢性疾患である人がいるという場合と、もう一つは、工場の事故によってなった病気があとに慢性的に引いてくるという場合と二つございます。まず、もともと慢性疾患であったものがどうなるかという点につきましては、先ほど申し上げましたように、やはりその点につきましては、この法律の体系によりますと第一種の指定地域要件というものの検討をして、第一種の指定地域疾病条件にはまるかどうかということの側からこれを規定をしていくということでございます。それから後段の、この病気が慢性であるかどうかということにつきましては、あくまでも本制度におきましては、認定審査会でこれが障害があるという場合には、その機関において有効期間をきめて、その有効期間が切れてもまだ障害がある場合にはそれをまた認定して引き継いでいくということでございますので、それが不幸にして慢性に移行したということがもしあるとするならば、その病気としての慢性の障害としてその対象としていくという形になろうかと思います。その場合に第一種のほうの病気と慢性疾患と第二種のほうが慢性化した病気との間に相違があるかどうかということは、次の問題として検討すべきことだろうと思っております。
  117. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 いま私は原因の面から第一種地域指定と第二種地域指定についてお伺いしたわけです。  そこでこの法律の面から見ますと、第一種と第二種の指定はいわゆる非特異性の疾患か特異性の疾患かということによって分けられる、こういうふうになっておるようでございます。そうすると、いま申し上げたのはこれは一つの事例でございますから、お答えは一般論としてでけっこうでございますから、一般論として考えられる場合に、いま申し上げましたように原因のいかんを問わず、その疾患によって特異性か非特異性かによって一種、二種を分けるのか、いまのような原因によって分けるのか、この辺はどうなりますか。
  118. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの、原因によって分けるかどうかというポイントの御質問でございますが、まずこの第一種の特異的疾患という場合におきましては、磯津のような非常に特殊な条件の場所をのけましては、普通は高濃度汚染であるとはいえ、労働衛生のほうで問題になるような限度を越えるような汚染というのはまず存在しないというような状態でございます。そのような、汚染のレベルは高いことは高いが、労働衛生の恕限度を越えるような状態というのは普通の第一種のところでは存在していない。少なくとも私どもがいままで知っております範囲内で、大阪の西淀におきましてもあるいは四日市の磯津におきましても、最高濃度におきまして労働衛生の基準を切ったというデータは一切ございません。そのような状態における医学的な角度からいきますと、低濃度の汚染物質による長期の暴露によって生じた慢性の疾患ということになるわけであります。  次の第二種の特異的疾患ということでございますが、これはその汚染物質と病気との関係が明らかということでございますが、この工場が事故を起こした、そうするとその汚染物質と病気との関係はこれはもう非常に明らかな問題でございます。先ほどの第一種の場合には、浮遊粉じんあり硫黄酸化物あり炭化水素、いろいろなものがございますから、これは非常にむずかしゅうございますが、この後段の第二種のほうの問題になりますと、汚染物質が非常に特定されているということが一点と、それからもう一つはそれによって生じた病状といいますものは、私どものその考えを申し述べますと、暴露されている状態といいますのは、むしろ労働衛生での恕限度を越えるような暴露を受けておるということでございまして、職業病と同じような状態が急性に生じておるというような状態であろうというぐあいに考えておるわけでございます。  以上のような観点から第二種の特異的疾患というものを分けてくるということでございますので、労働衛生の知識における汚染物質疾病との関係というものが、第二種の場合には非常に広く応用されてくるというぐあいに御理解願いたいと思います。
  119. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 農林省がお見えになっておると思うのですが、いまの問題に関連をするのでお聞きしておきますが、その住友の八月十二日の火災の際に、スミチオンとかあるいはパプチオンとかPCTとかそういうものが燃焼した。さっき通産省のお話では、明け方になって下火になって煙が地をはったので云々と言っておりましたけれども、これは私は現地を見ておりますから訂正しておきますが、途中で水をかけたのです。燃焼さしてしまえばよかったかもわからないのを、風はなかったのですが、途中でかってに水をかけたために煙が下をはうようになって悪臭が特に周囲を強く襲った。これはあとでもう一ぺんお伺いしますが、特に農林省のほうでそういう農薬がいわゆる燃焼しておるときに、どういう成分のガスを出すのか、あるいは燃焼の途中で水をかけたならばどういう成分のガスを出すのか、お伺いしたいのです。
  120. 福田秀夫

    ○福田説明員 先生の御質問の農薬が燃焼しているときに出るガスの種類でございますけれども、これは農薬に限りませんで、いろいろな有機化合物が燃えます場合どのようなガスが出るかというのはなかなかむずかしゅうございまして、完全に燃えてしまいますと大体わかっておるわけでございますが、いまの、途中で水をかけたとかあるいはいわゆる不完全燃焼のときにどういうのが出るかというのは、なかなか有機化学の専門家の方に聞いてもよくわからない点があるようでございまして、農林省といたしましてもそのガスの種類を、どんなガスが出たかということは残念ながら把握できない状態でございます。  ただ、これはケース・バイ・ケースになるわけでございますけれども、あの場合には現地で幾つかのガスの検出があったようでございまして、先ほど通産省のほうからお話がございましたように、数種類のガスが地域別に検出されております。けれどもこれらのガスにしましても、たとえば硫化水素だとか二硫化炭素ガス、これは農薬から出たのかあるいはその他のものから出たのかわからない。大体あの倉庫の中の三分の一ぐらいが農薬であったようでございます。あとゴムの老化防止剤とかその他が入っていたようでございますけれども、それらのほうからも出得るガスでございますので、その辺がまざってしまいまして、一般論としましても農薬から出るガスというのは熱焼のぐあいによってまちまちであるし、あの場合もまたいろいろなものが同時に燃えたということで、その辺の状況がよくわからない。メルカプタンなどはおそらくスミチオンなどから出得る、あるいはパプチオンから出得るものでございますから、農薬が主であったのではないかというふうに考える、その程度しかわかっておりません。
  121. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 少し議論の本筋からそれますけれども、通産省せっかく見えておりますからこの機会に申し上げておきますが、この住友化学というのは、そういうふうにかねてから大気汚染をしておったのに、五月の十日には有毒のガスを出し、さらに八月の十二日にはこういう事故を起こしておる。しかもこの火災事故について、火災の通報も非常におくれてやっておるし、消防車が来たら何か門でとめて入れなかった、こういうことをやっております。そして燃焼中に消防署の指示等も受けずにかってな判断で消火をして、そのためにさっき問題になっておるいわゆる不燃焼ガスを発生せしめた。私が十三日の午前十時ごろ現地に参りましたが、まだ不燃焼のガスが非常に強くて、とても普通の状態では通れないような状況で、ハンカチで鼻をおおいながらそこを通過したわけでございますけれども、いろいろ見せてもらいましたが、付近にはガスタンク等もある。一体通産省はこういう点でどういう指導をしているのですか。そういうことをよく把握しておるのですか。若干本論からそれますけれども、この機会ですから伺っておきたいのです。
  122. 赤羽信久

    ○赤羽説明員 まず先ほど御指摘がありましたように、午前二時ごろ下火になって、ガスが地面をはったというとき確かに水をかけたことがあるようでございます。これは消防署のほうの判断もございましてやった措置のようでございます。  その前に避難命令を出してあったのですが、警察等の判断で二時前に避難解除してありまして、ちょうど住民が家へ帰ったところへ、その水をかけた弱くなったガスが一部にはっていったということが事実のように聞いております。  それから二度問題を起こしましたことにつきましては、両方の性質は違いますけれども、特に火災につきましては、いわゆる工場の事故におきますような物理的な問題あるいは技術的な問題と申しますよりは、もっと基本的な工場管理の体制あるいは管理の姿勢に問題があるのではないかという感じがしておりまして、これにつきましてはさっそく厳重に注意いたしたわけでありますが、ちょうど高圧ガス取締法あるいは消防法の危険物、そういったものに指定されていない、しかし一たん燃えてしまえばかなり大きい問題を出す、言うなれば法律上の網にかかっていない部分が残っているわけでございまして、このことを機会に、このような、燃焼しますと有毒ガスを出すような物質を大量に保存しておきます倉庫につきまして、全国的に現在調査を進めております。そして具体的な指針というようなものを消防庁と共同で作成いたしまして、消防署のほうからあるいは企業のほうから、両方共同して今後の指導監督に当たってまいりたいと思っております。
  123. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 その問題については多くを触れませんで、さっきちょっと申し上げましたように、火災の通報もしなかった、それから消防車が来ても企業秘密があるということで門の中に入れずにしばらくとめておった。しかもいまあなたからお話のあった避難命令の解除も、何ら警察や消防に相談することなく、会社の独自な判断で避難命令を解除してそして消火をしたから、九百人にのぼる異常を訴える人たちがあらわれた、こういうことについては、ひとつ通産省、これから産業優先でなくて十分人間優先のほうの指導を強めてもらわなければ困ると思います。  さて、そこで、これに関連してですけれども、時間が来たようですから、これ一つだけ質問してあと午後に回します。  さっき五月十日の有毒ガスの問題について申し上げましたが、かねてからここは、申し上げましたように、ずっと大気汚染されておった。その大気をずっと汚染してきた燃焼物とその漏れたガスとが同じ性質のものであったのではないかというようにいわれております。そうすると、症状としてはずっと蓄積をされた症状が、多量に同じ物質の有毒ガスが出たために非常に悪化してくる、こういう形になってくると思うのです。そういう場合に、いわゆるこれが一種か二種かということについて、どういうふうにお考えになるわけですか。
  124. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの御指摘の問題でございますが、これはあくまでも従来のあの地域につきましての汚染調査のデータをはっきり見た上でなければ十分なお答えはいたしかねると思いますが、現在までのところ、第一種というところの考え方につきましては、広域の大気汚染ということで、浮遊粉じんあるいは硫黄酸化物あるいは窒素酸化物というような汚染物質による影響として、学問的にも一応合意を見ているものを抜き出してくるという考え方に立っておりますので、やはり第一種の病状が変わるわけではないと思いますが、いま御指摘の、前からあった汚染物質の慢性の影響はどうかという点につきましては、汚染物質の何があったかという問題と、それによって慢性的な影響を生ずるリスクがあるかどうか、慢性の暴露がございましても特に疾患を生じないものもございます。それから急に非常に高濃度が出てきてそれから生ずるというものもございますので、あくまでもケース・バイ・ケースに、汚染物質を見た上で、調査成績とあわせて、現在の学問の知見でわかる範囲内のデータをもとに行政上の判断を加えるということが本法のとるべき態度である、そういうぐあいに考えております。
  125. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 約束の時間ですから、午前中の質問は終わって、あと午後に保留させてもらいたいと思います。
  126. 佐野憲治

    佐野委員長 この際、午後三時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ————◇—————    午後三時五十七分開議
  127. 佐野憲治

    佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。阿部未喜男君。
  128. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 では、午前中に引き続いて、特に今回は暴露要件についてお伺いしたいと思いますけれども現行公害に係る健康被害救済に関する特別措置法をまず前提に置いて、もちろん新法ではそれぞれの疾病についてそれぞれの期間政令で定める、こうなっておりますが、まず現行のこの特別措置法を前提に置いて閉塞性の呼吸器疾患の場合、たとえば大分県のほうで周防灘の総合開発が行なわれたと仮定をします。ここはいま無公害の地帯でございますけれども、ここに進出企業が参りまして、そうして二年後にこの閉塞性の呼吸器疾患が多発をしてこの地域が第一種の地域指定を受けたと仮定をいたします。そうすると、現行と同じように新法がその暴露要件を三年間と認めた場合には、企業が進出して二年後に第一種に指定をされた、この企業には中央からたくさんの人がついてきたと想定をしますと、地元に住んでおった方々はこの三年間の暴露要件を満たすから認定患者になることができる。しかし、二年前企業の進出と同時についてきた人たちは、二年しかたっていないから暴露要件に該当しない。同じ疾患で同じ原因でありながら、暴露要件期間の定め方によってそういう問題が起こってくるのではないかというふうに想定をされますが、この点はどうでしょうか。
  129. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの御質問でございますが、この法律でいいます暴露期間といいますのは、この指定地域内での暴露でございますので、先生のおっしゃった進出企業の従業員が来てから二年にしかならない、それは三年に満たないということでこれにははまらないのではないかという点は、残念ながらその企業の従業員ははまりません。ただ、その企業がもと川崎におった、そしてその人たちが川崎に住んでおった。川崎指定地域の中でずっと暴露されておった。それで別の指定地域にその企業がやってきて、そしてそこの二年と川崎におったときの暴露と合わせればということならばこの制度では救えるという形になっておりますが、全く別のところにいて指定地域と何ら関係のないという場合には入りません。
  130. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私も入らないと思うから質問しておるのですよ。そうしますと、従前住んでおった指定されていない地域から進出企業と一緒に従業員が出てきた。そして二年を経過して多発した、一種の指定を受けた。そうしますと、その地域に住んでおった人たちは暴露条件を満たすから公害病として認定をされるが、企業と一緒に出てきた方々は暴露要件が満たないという理由で、同じ原因で同じ疾病にかかっていながら公害患者として認定をされないという、そういう結果が生まれるのではないか、こう聞いておるのです。
  131. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの御質問に対して、先ほどのお答えと同じ結果になりますので、非常に恐縮でございますが、条件に満たないということでございます。
  132. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 長官、この法律をせっかくおつくりになって、いま事務当局が答弁したとおり、同じ条件でありながらたまたまその暴露要件を満たしていなかったという理由だけで公害患者認定をされないというふうな事態が起こるおそれがある、これは間違いないですか。これは長官、どうお考えになりますか。そういうことがあってもしかたがないんだというお考えですか。それは何らか政令の中で措置をとっていくというふうにお考えになりますか。
  133. 三木武夫

    三木国務大臣 制度の中ではある程度やっぱり割り切らざるを得ない。制度として考える。会社自体がそういう場合には何らかいろいろ救済方法は考えるでしょう。しかし制度としてはやはりそこで割り切らないと、暴露要件に対しての期間をきめてそれにいろいろな除外例をつくるということは制度の混乱を起こす危険もありますから、それはいろいろ御指摘のように不合理なと思われる点もございますけれども制度としては割り切らざるを得ないという考えでございます。
  134. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 制度としては割り切るというのはよくこの法律では使われて、制度をつくるんだから割り切らざるを得ないというのが政府の主張のようでございます。したがってその割り切らざるを得ないような非常に複雑な内容の場合は、私はそれは割り切ることもあり得ると思います。しかしいま申し上げましたように、たまたまそこに住んでおったから公害認定を受けることができる、よそから来たから公害認定を受けることができない。法のもとに平等であるべき権利が明らかに差別をされるという実態にこれはなるわけです。それでも割り切れというのはちょっと酷で、なかなか割り切れない。それは会社の従業員で直接ついてきた人たちについては会社がめんどうを見るかもわかりません。しかしたまたま二年前に移り住んだ人と五年前から住んでおった人と、そして二年前にたまたまその企業が誘致をされて公害を起こしたということになりますと、公害の原因からその経過を見た場合に、二年前に移ってきた人も五年前から住んでおった人も同じ条件のもとで公害におかされる、こういうことになるわけです。それが暴露期間だけを理由にして割り切れといっても、それはちょっと酷じゃないでしょうか。
  135. 城戸謙次

    城戸政府委員 これは非常にむずかしい御質問でございまして、実態からいいますとやはり企業がやってまいりまして汚染がひどくなってから三年間という暴露期間がなければ、この制度ではそういう慢性気管支炎等が公害病として発症することはないという前提に立っておるわけでございます。したがって、これは指定問題として検討してまいりませんと、いまおっしゃったような問題が出てまいりますので、もう少しこの指定をどういう時期にやるかという問題として検討さしていただきたいと思います。
  136. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 検討ということばも非常に便利のいいことばですけれども、少なくとも私は公害審議会に対する諮問なりあるいは政令運用について、そういうことが起こらないように十分な配意を払ってもらうということをやはり前提にお考えになっていただかないと、実は私はこういう問題が起こる可能性が非常に多いような気がするのです。これからの立地の関係を考えますとどうなるかわかりませんが、田中総理の言うように日本列島を改造してどんどん企業が地方に進出していく、そういう形になった場合の荒廃というのは、暴露要件の問題でそういうことが非常に起こりやすい条件をつくり出すだろうという気がしますから、(「苫小牧がそうだ」と呼ぶ者あり)これからの政令なりの内容救済ができるようなことについて十分検討していただく、このことを約束しておいてもらいたいのです。
  137. 城戸謙次

    城戸政府委員 いま苫小牧という御発言がございましたが、私ども今後立地をいろいろ考えてまいります場合、少なくとも二年、三年でそういう状態になるということはもう絶対考えていないわけでございまして、規制を強化し、立地を認める認めないという、こういう問題で対処できると思っておりますが、先生の御質問、非常に理論的な問題でございますから、それはそれなりにひとつ研究させていただきたい、こう思っております。
  138. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私どももこれから公害が少なくなるだろうというふうに想定をして——ならなければ困ると思っております。しかし、いまのような問題が起こり得る可能性が多分にあるわけですから、したがって起こらないだろうという前提に立つならばもうこういう法律をつくらなくてもいいのでございまして、やはりこういう法律が要るということは、起こり得るということを想定してつくっておるわけですから、想定できる可能の範囲内においてはその運用についても万全を期する、それが私はあなた方の姿勢でなければならない、こう要望しておきます。  そこで、いまあなたはたぶん起こり得ないだろうということを前提にお話がありましたから、次の問題をお伺いしたいのですけれども、まずばい煙の発生施設者は汚染負荷量賦課金と特定賦課金の両方を納める場合が起こり得ると思いますが、これは間違いありませんか。
  139. 城戸謙次

    城戸政府委員 これはけさもお話ししましたように、二つ制度が別でございますから、指定地域もそれぞれ重複することがございますし、徴収関係も重複することがあるというのは先生指摘のとおりでございます。
  140. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこで、特定賦課金と汚染負荷量賦課金の相違についてちょっと説明してもらいたいのですが……。
  141. 城戸謙次

    城戸政府委員 いまの汚染負荷量賦課金のほうは第一種地域に関します財源に充てるために徴収されるものでございまして、これは条文でまいりますと、五十二条にございますように、毎年年度の初日においてばい煙発生施設等を設置している者から徴収されるようなたてまえになっているわけでございます。ところで、片方の汚染負荷量賦課金でございますが、これは六十二条にございまして、これは具体的に問題が起こりました場合に、そういう汚濁のあるいは汚染の原因となるような物質を排出した施設の設置者からとる、こういうことになっておるわけでございます。したがって、片方は毎年とるたてまえでございますし、片方は具体的な問題が起こった場合地域指定して、それで金を集めました上で給付をする、こういう体系になっておるわけでございます。
  142. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 いまの城戸局長の答弁は反対になっておりましたから、議事録を訂正しておかぬとおかしくなりますよ。いいですか。五十二条とそれから六十二条の関係は反対にあなたは答えたから、議事録を訂正しておかぬとおかしくなりますよ。
  143. 城戸謙次

    城戸政府委員 あとに申し上げたほうは特定賦課金でございました。間違っておりました。失礼しました。
  144. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこで、特定賦課金とそれから汚染負荷量賦課金との違いですけれども汚染負荷量賦課金は毎年当初に量をきめて、賦課額をきめて賦課する、とる、こうなりますね。ところが特定賦課金のほうはそういう事故が発生してから、いわゆる公害が起きてからそれに見合った額をとることになるわけでしょう。したがって、汚染負荷量賦課金は公害があろうとなかろうとこれはとられる。しかし特定賦課金のほうは公害発生しなければ賦課されない、こういう内容になっておると思いますが、間違いありませんか。
  145. 城戸謙次

    城戸政府委員 ただいま先生おっしゃったとおりでございます。
  146. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこで、私は非常な疑問を感じます。いま先ほどもお話があったようにこれからは公害がだんだん少なくなって起こらなくなるだろうという前提に環境庁も立っておるようでございます。私どももまたそうなければならないと考えておりますけれども、そういう前提に立っていまの公害の実態をながめてみますと、第一種地域指定をされておるところはもうそうたくさん広がっちゃ困るし、広がらないだろうというふうに考えられます。にもかかわらず、全国のこの公害発生源といわるる亜硫酸ガスあるいは窒素酸化物、そういうものを出すものについて、自動車までも含めて文句なしに賦課金を徴収する、そうすると極端に言えばいまそういう公害のために金を支払っておる企業が、今後公害が拡大しないと仮定をするならば、自動車を持っている人までも含めて、あるいは非常に小さい排出物を出すところも含めて金を集めてこれを援助する、そういう形になってこないでしょうか。
  147. 城戸謙次

    城戸政府委員 これは当然その年度にどれだけ第一種地域にかかる給付に金がかかるかということを前提としまして、単位排出量あたりの賦課金、いわゆる賦課料率をきめるわけでございます。したがって、だんだん被害が少なくなってまいればそれに応じて全体が少なくなってまいる。それから固定発生源と移動発生源につきましては、当然これはそれぞれの寄与度に応じて徴収するということで制度ができ上がっておるわけでございます。
  148. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 だから大気汚染が今日より拡大しないという前提に立つならば、少なくともいま指定地域以外で、特に指定地域に出入りをしないような車は何ら寄与率がないという理屈になりませんか。
  149. 城戸謙次

    城戸政府委員 これは程度の問題だと思うわけでございます。この考え方としましては、一応固定発生源につきましても原因者集団としての責任ということを考えているわけでございまして、したがって、被害が現に発生している地域あるいはその周辺だけでなしに、被害発生のおそれがあると認められる地域も含めまして賦課をしてまいるわけでございますが、ただこの場合、当然どういう施設にかけるかという施設の規模についてのすそ切りをする段階につきましても、また賦課料率をきめる場合におきましても、地域差を相当大幅につけましてやってまいりたい、こう思っておるわけでございます。これは移動発生源、固定発生源間のどういうシェアにするかということをきめます場合もその点十分考えてまいりたいと思っています。ただ移動発生源に関しますものにつきましては、別の法律に徴収が譲られておるわけでございますので、いま御指摘のような、いなかのほうに走る車と都会を走る車とどうだという御質問等は別の法律をきめます場合に、どうすれば一番具体的な汚染寄与度に近似的なものさしをとり得るかという問題として検討してまいりたいと思っております。
  150. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 固定発生源の場合でも、現に公害が起きておる地域と起きていない地域で差をつけるというお話がいまございました。もちろんそれは差をつけるべきでしょう。差をつけるつけないではないのです。もし公害が今日より拡大しないとするならば、たとえば鹿児島で大気汚染という公害は全然ない、しかし鹿児島で非常に小さい企業が固定発生源を持つならば、これもまた汚染負荷量の賦課金の対象になる、こういうことになるはずでございます。そうすると、鹿児島にある非常に小さい固定発生源を持つ企業は、今日汚染をされておる大企業の負担をすべきものを負担させられるということになりませんかというんです。
  151. 城戸謙次

    城戸政府委員 おっしゃることよくわかるわけでございまして、私ども、政治あるいは行政の姿勢として、今後どんどん汚染が広がっていって健康被害発生するということは決して好ましくないし、そうならないようにやってまいらなければいかぬと思っているわけでございます。ただ現実には、先生先ほど御質問等にも関連あるわけでございますが、企業が進出したところで被害が生じないという保証はないわけでございまして、この辺厳密に議論を詰めますれば、先生指摘のようにやや矛盾があるということは事実でございます。しかしこれはやはり行政でございますから、一方でそういうことの姿勢でいくと同時に、万一出た場合の対策ということも考えていく。これは今後それがどういうぐあいに推移するか見合わせて、いま申し上げましたようなどこの範囲にかけていくかという問題を制度的に合理的に組み立てていくということだと思うわけでございます。
  152. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこで私が問題にしたいのは、いわゆる二種地域の特別賦課金と一種地域汚染負荷量賦課金の違いです。特別賦課金については、現に被害が起こってから公害認定があって、金が要るようになってからその必要なものを取るということになっております。これはいわゆる完全な原因者負担ということになっておるようですけれども、しかしこの汚染負荷量賦課金のほうは、被害が起こる起こらないにかかわらず事前に金を集めるわけでしょう。そうして集めた金が現に起こっておる公害被害者救済に充てられる、そういうことになるわけでしょう。そうすれば、たとえばいま四日市なりあるいは川崎なりで起こっておる大気汚染による公害病について、いま何にも関係のない地域の方々が若干の肩がわりをさせられるという結果になってくるではないか。その点は一種と二種とで非常に不平等になってくるような気がしますが、どうですか。
  153. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの先生の御指摘になったような問題がいろいろこの法律制度をつくりますときに非常に私ども苦慮いたしたポイントでございます。第一種の非特異性疾患に関係いたします大気汚染のほうの硫黄酸化物であるとか窒素酸化物になりますと、これはある程度、ある程度と申しますか、片方の水銀が出てくるとか、鉛が出てくるというよりもはるかに多くの量を実は放出しておるわけであります。これは煙突から出てくる煙の中に入っておる硫黄酸化物の量、非常に猛烈なきびしい規制をかけましても、これはかなりの量が出るわけでございます。それから自動車の排気ガスの、うしろから出てくるガスの量といたしましてもやはりそういう量でございます。  しかし一方特定賦課金のほうの対象として考えられます汚染物質といいますのは、たとえば水銀にしましても検出せざることと、技術的にはたとえば〇・〇一というのが現在の段階、これは非常にきびしく押えられておりまして、本来ならばもうほとんど出てこないというようなものでございまして、放出の態様が非常に違うということでございます。  もう一つは、前者のほうは非常に集団をなしておりまして、しかもあちこち移動をいたします。しかも気団としてこれは行政区画や地図がありましてもそれを全部越えていくわけでございます。そういうことでこの日本の大気汚染ということによって生ずる外部不経済の金をどう持たすべきであるかというようなことから考えまして、法律上の問題と経済的な手段の問題と科学的な問題といずれも完全な満足はどうしても得られませんので、やはり外部不経済の費用を持つという場合には、問題を起こしている地域には重く持たせ、問題を起こしていないが起こすポテンシャルが否定できない、しかもある一定量放出しておるというところについては、これはかなりすそ切りの大きな施設から上だけ持たせる、あるいは賦課料率も軽くするというような形で費用を持たせるという以外にはないのではないか。現にPPPの議論をいたしますときも、汚染者負担とこう訳されますから、だれが汚すかという議論になりますが、あれは経済の原則でございますから、そのものの価格の中にかければそれでいいというのが実はあのOECDの議論の基本でございます。そういうことでもございますので、第一種のほうはいま言ったような割り切りをした、第二種のほうにもしもそのようなことを持ってまいりますとこれは保険制度的なものになってまいります。私どもは保険制度をつくろうというような気持ちは毛頭ございません。そういうことで第二種のほうには本来起こるべきはずはない、もし万一起きたらということであのような形態を出した、そのようなことが、十分な御説明ではございませんが、立法の形におきまして法律上のものの考え方と経済的な手段と科学的なその見解ということの全体の談合点と申しますか、折り合ったポイントというのはこのような制度であったというようなところが、私どものいたすその説明でございます。
  154. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 第二種の地域が、おっしゃるようにそういうことがあってはならないが、もし起こったならばそれに見合うものを負担さしていく、こういう思想になる、これはよくわかります。それなら第一種のほうについても、もうこれから公害が起こらないのだという前提に立つならば、いま起こっておるものについては現行どおりとしてのあれがありますけれども、その地域の排出に対して固定発生源なりあるいは移動発生源も含めて、公害が起きておる地域について負担をさしていく、そういう原則を打ち立てて、そしてもし不幸にして大気汚染公害が拡大をしていったならば、その地域ごとに新たに賦課していく、そういう方法はとれないものですか。
  155. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のありましたような点は、一体どのようにして賦課料率をきめるかということの問題と非常に密接にからんでまいります。そういう意味で、私ども現在までいろいろ試算をいたしておりますが、ものの考え方といたしまして、大半の金を問題を起こしておる地域に持たせるようにしようということでこれをやっていきたい、そのような考え方で今後進めてまいりたいと思っておりますので、御了承願いたいと思います。
  156. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私がくどくこれを申し上げるのは、どうもこのままこの法律が施行されることになりますと、そしてかりにあなた方がおっしゃるように、それからは公害を起こさない、そういう前提に立つならば、いま公害を起こしておる企業に対して、たとえば小さな固定発生源影響のないものあるいは移動発生源で直接には現行公害には影響のないものが、現在公害を起こしておる大企業の補償措置についてそれを肩がわりをさせられる、そういう結果しか招かないのじゃないか、それならばそのランクがあるなしは別にして、そういう問題が起こってから金をその地域で賦課するというような、第二種と同じような方法をとったほうがより的確ではないか。保険制度ではないとおっしゃいましたけれども、一種の場合には、私はこの方法をとるならば保険制度的な要素が非常に強くなってくるという気がするわけです。したがって、一種の場合も大体二種の場合と同じように、公害が起きてから、その起きた地域を中心にして、その場合は移動発生源をも含めて徴収することにやぶさかではありませんけれども、まず公害をこれから起こさないという前提に立つならば、いま起こっておる公害救済するために公害を起こしていない地域発生源にまで全部賦課するという考え方は、全く保険的な考え方につながるではないか、そういう気がするのですが、どうですか。
  157. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生のおっしゃいましたような議論も、私どもも大いに中でいたしましたわけでございますが、先生の御心配の、現在汚染問題もろくにない県の中小企業もこの金を持たされるのではないかという御指摘でございますが、そのような御心配はまずないとお考えになっていただいてけっこうだと思います。  たとえば、申し上げますと、例の通産省の主管をしております特定工場公害防止の管理者を置くということの法律がございます。公害の管理の制度でございます。この制度におきまして、汚染負荷量賦課金を納めるものの規模をどうとるかというときに、施設単位でとりませんで、工場全体でどれだけの排気ガス量があるか、これは午前中御質問のあったところでございますが、そこで一万ということをとってまいりますと、これは相当な企業でございます。全体の発生をしている企業は五万幾らかございますが、一万ということで切ってまいりますと約四千くらいになってまいります。一万よりもさらに非常に大きなものしか、今度はたとえば北海道であるとかあるいは鹿児島であるとかというところでは取らないというようなものの考え方を草案の最中はいたしておりまして、そうなりますと中小企業が肩がわりをするということはない。しかしそれはもう相当巨大な工場である。その巨大な工場というのは、それは大企業としてその近隣に汚染をばらまくポテンシャルを持っているということでございまして、そういうものは当然日本の空をよごしておるということで、金を持たすのはいいのではないか。しかし持たすには先ほど言ったような考え方で、すそ切りも調整をし、またその賦課料率も汚染をしているところには重く、汚染をしていないところには軽くということで対処をしていく、そのような考え方でやっているわけでございます。  それで、保険的な性格があるではないかという御指摘でございますが、結果としてそのような要素が若干あるということでございますが、これは保険制度という形態は一切とっていないということを申し上げておきたいと思います。
  158. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 どうもわからないのですけれども、基本的に保険でないとすれば、発生源から取るというのが原則になってくる。その発生源も、第二種の場合には明らかにその公害を出した発生源に対して賦課する、そういう方針がとられておるわけです。一種の場合も同じような思想に立てばいいではないか。いわゆる公害に対する救済でございますから、したがってその公害病が出ておる地域発生源に対して賦課をすればいいのであって、公害の起こっていない地域発生源にまで、多いとか少ないとかということは問題ではないのです。公害が起こっていない地域発生源にまで負担をさせるということが保険的な性格になってくるから、したがってもう公害を出さないという大前提に立って、もし万一公害が起こった場合にも、その起こった地域発生源から徴収をする、賦課する、こういう考え方にならないだろうかという気がするのです。
  159. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のような議論も当然あるわけでございますが、影響だけを受けておって発生源は持っておらないという地域がございます。発生源のところは死角になって、そこの回りでは指定地域になるような問題はないというところも中にあるわけでございます。そういうことで、問題は非常に広域化しておるということの問題がございますので、この制度のようなものの見方をしたということでございます。
  160. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それはおかしい。発生源がなくて公害だけ起こるわけはないのですよ。発生源があるから公害が起こっているのでしょう。そんなばかなことがありますか。発生源がなくて公害だけ起こる地域があるなんてばかなことはありませんよ。必ず発生源がある。その距離が幾らあるかわかりませんよ。だから広い範囲にわたるということについては私は理解をします。しかし発生源がないのに公害が起こるなんというばかな理屈はないですよ。必ず発生源はあるはずです。だからその公害が起こったところにおける発生源について賦課する、これは私は正しいと思います。  しかしこの法律でいくと、一種地域公害が起こる起こらないにかかわらず、いわゆる幾らかでも汚染するものには全部賦課するという方式なんでしょう。そうして起こったところを補助するというと語弊がありますが、救済していくということになると、これは明らかに保険的な思想じゃないかということを私は言っている。ですから、具体的には二種地域と同じように、一種の公害救済についても、公害が起こった地域発生源に賦課していく、起こったその原因になる発生源に賦課していく。その場合に、私は移動発生源や非常に小さいものも含めるということについて異存があるわけではありません。しかしそうでないと、全然公害影響のない、寄与をしていないところの方々も負担をして、そして公害に寄与をしたものを助けていくという保険的な要素を持ってくる、こう思うのです。どうでしょうか。
  161. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 非常にことばが足りませんで先生に誤解をお与えしましたことをおわび申し上げます。  先ほど申し上げましたのは、たとえば豊中市というところにおいて、現在救済法指定地域になっておりますが、豊中市にはほとんど発生源がない。発生をしているのはどこかと申しますと、これは尼崎市と大阪市の西淀辺になります。そのような県の境を越えるということの問題として申し上げたことが、非常に不十分な言い方で、おわび申し上げたいと思います。  それから先生のおっしゃいましたようなポイントもございますので、私どもは問題のある地域に大半の、たとえば八割前後ぐらいな賦課をかけてしまうということで、この問題を処理をしていきたいという考えでございます。  また自動車の公害という点につきましては、今後の検討の問題が非常に多くございますが、これは相当国土全般にわたっての議論が今後あるのではないかということも一応頭に置いている点は御理解願いたいと思います。
  162. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それで、公害の起こっておるところの地域発生源に大きく賦課していくということで割り切ってもらいたい、こういうお話だと思うのですが、かりにその点について、私はなかなか納得しにくいのですけれども、おっしゃるような考え方があったとしても、それでは今度はいまおっしゃった自動車の場合ですね、これは前々から別の法律でもって定めることになっております。しかしもう予算要求の段階に来ておるわけですから、おおむねどういう形で徴収するかについて、おたくのほうの見解、考え方が述べられる時期だと思うのですが、いわゆる移動発生源についての賦課金の徴収のしかたはどう考えておられますか。
  163. 城戸謙次

    城戸政府委員 これにつきましてはまだ十分詰まりておりません。これは予算が詰まってまいります今年の末、このころをめどにしましてこれから詰めてまいるわけでございまして、原燃料賦課方式をとるかあるいは自動車重量税引き当て方式をとるか、この二つ審議会の答申で示唆されている点でございますが、全般的に再検討しまして一番いい方法をとってまいりたいと思っております。
  164. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それはもう一番いい方法をとるのは当然のことですけれども、さっき橋本さんおっしゃいましたけれども地域別にランクをつくって、特に寄与率の高い地域については八〇%ぐらいまでは取りたいのだというふうな思想に立つならば、一体この自動車の、いわゆる移動発生源から取る場合に、そういうランクの設け方が可能であろうかどうか。私は技術的に非常にむずかしい問題がある、これは前からの私の持論ですけれども、これはどうお考えになっておりますか。
  165. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま御指摘のありました点が、自動車の場合にどうするかということにつきまして、運輸省ともいろいろな議論をいたしておるところでございます。  これは現在どちらという議論に固まっておるわけでは毛頭ございません。一台ずつの自動車ということで賦課をするという場合には地域差を設けられるのではないかというような議論がございますが、東京の自動車が北海道に行くということもございますので、その辺を一体どうするのか、そういうような議論がございます。  それからもう一つは、一台ずつの自動車ということですと、現在の自動車重量税法あるいは自動車の登録等で持っております指標は非常に静的な指標でございまして、一万キロ走った自動車も千キロ走った自動車も同じようになってしまう。そうなりますと燃料にかけることがよいのではないかという議論もございますが、燃料ということになりますと、東京と北海道とでどうやってその差を設けるか、そのようなことができないということでございますので、これは今後どのようなぐあいに最終的に整理するかということの問題として残されておるということだけを御説明いたしておきたいと思います。
  166. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 別の法律で定めるにして新しい法律ができるにしても、要するにその法律のよって立つところは、この法律を受けて、この法律で別に定めることになったから別の法律をつくるわけです。ですから、この法律が基本になるわけでございましょう。その基本になる法律の中で、しかも国民に義務を課するという重大な行為が行なわれるわけです。それについて、いまお話しのように、どういう方法でどのくらいの額の賦課をするのかということが全然わからなくて、それらはすべて政令にまかせたまま、この法律を認めなさいと、こうおっしゃられても、これは私ども国民を代表する者として、ああそうですかというわけにはまいりません。  すでに四十九年度の予算の概算要求が始まろうという時期になって、どういう方法で賦課するのかということさえ今日まだわからない。しかも、いまおっしゃったように、個々の自動車に重量税的なやり方をすれば、地域別のランクはつくが、しかし走行キロ等から、いわゆる寄与率から考えれば必ずしも正しくない、同時にまた、原燃料賦課方式をとるならば、これは地域別のランクができぬだろう、そういうふうに、あなたがおっしゃっておるとおりになると私は思うのです。非常にむずかしい問題だからこそ、私は、この法律が議会を通過するまでに、その内容についてわれわれが納得し得る説明を皆さんのほうからお伺いしたい、そう思っているわけです。
  167. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御質問の点でございますが、いま私どもがおおよそ客観的につかまえ得ると申しますのは、固定発生源からの汚染貢献度と自動車からの発生貢献度をどの程度に見るかということを日本全国として達観をいたしますと、大体七対三ぐらいになるということでございます。
  168. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 七対三の議論はもう前からずっと承っておるわけです。私が申し上げておるのは、どういう形でその移動発生源、特に自動車について賦課金を課するのか、その基本的な思想が全然わからない。それぞれの一つ一つの自動車に賦課するのか、あるいは原燃料に賦課するのか、それさえもわからない。そういう状況でこの法律を通せと言われても、申し上げたように、国民を代表するわれわれとしては、その内容さえわからないものを、なかなかこれはけっこうですということにはいかないんじゃないだろうか。せめてこの段階で、少なくとも政府当局は、こういう考え方でこの程度のものを考えておるという考え方は明らかにすべきであると思いますし、それが明らかになっていないならば、大体構想だけでも、こう考えておるというようなことはこの委員会で明確にしてもらいたいと私は思うのです。
  169. 城戸謙次

    城戸政府委員 先生いまお話のございましたように、この法律を出しますまでにそれが詰まりますれば、当然別法律ということでなしに私どもやれたわけでございます。それはどうしてもできないということでこういうかっこうになったわけでございまして、実は逃げるわけでございませんが、いま中央公害対策審議会の中の費用負担特別部会の中に専門委員会を設けまして、この問題をもっぱらやってもらうということで、数日前も打ち合わせをしているような状況でございます。年内といいましてもあと幾らもございませんので、早急に詰めたいと思っておりますので、この際具体的なことをということはちょっとごかんべんいただきまして、お答えになりませんが、この残されました期間内にこの問題を詰めてまいりたいと思っております。
  170. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大体考え方がわからないわけでありませんけれども、しかし、あなたが国民の立場に立ってお考えになってどう思いますか。自動車を持っておる方々はどういう税金を取られるかわからないのですよ。そういう法律ができるということについて納得ができますか。一体どういう形で私の自動車から税金を取られるだろうかということさえわからなくて、とにかく公害対策のためにそれぞれの移動発生源である自動車を持っておる方々から賦課金を取りますよ、こういう法律がここにでき上がるわけですよ。全然内容がわからない。まだいまからそれをきめるんだ、こうおっしゃっているわけでしょう。これは国民を拘束するのです。国民に義務を課するわけでしょう。そういう重要な内容を持つものがその義務の内容さえ明らかでない。そういう法律というものはあるでしょうかね。私は、あなた方もう少しその点について真剣に議論をして、少なくともこの法律が通過をするころまでにはその構想を国民の前に明らかにする、そのくらいの努力はあってしかるべきだったと思うのです。どうですか。
  171. 城戸謙次

    城戸政府委員 私はこの法律の推進役で、一番急先鋒に立ったわけでございますが、去年のちょうどいまごろはまだ出すということがきまっておりませんでした。これをぜひ出せということでやりまして、その結果が島本先生等から御指摘のありました五十四の政令ということにもなっておりますし、いまの法律で別に定めるということにもなっておるわけでございます。ただ、これをほっておきますと、やはり相当期間たってからでなければ法律化ができないわけでございまして、どうしてもここで給付面につきましてのいろいろな準備をしていくというためには、まず法律をつくり上げまして、その裏づけになる財源の一部はやや残りますが、やっていくのが私はいいんじゃないかという判断に立っていままでまいったわけでございます。  したがいまして、先生指摘のように、これは徴収でございますから、当然国民の権利義務に非常に密接でございます。給付を受けるという立場でなしに、むしろ出すほうですね。したがって、その条項だけは政令というわけにまいりませんので、別に法律で定める、その法律の段階で国会の御審議をいただく、かように整理をしたわけでございまして、現在の段階でその内容を申し上げられませんのはまことに遺憾でございますが、まあいきさつ上これはやむを得なかったというぐあいに私も考えておりますので、御了承いただきたいと思います。
  172. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 手続としては、私はそれは了解をします。それなら、もう一ぺん初めの私の議論に立ち返って、そういうことが手続上困難な状況にあるのならば、第二種地域と同じように第一種地域も取り扱えば、そういう心配はなくなってくる。いわゆる現に公害発生源公害の起こっておる地域だけにこの第一種地域の適用を行なっていって、そうして不幸にして公害が新たに起こったならば、その地域における発生源から新たに賦課していくあるいは徴収していく、こういう形をとればいまの問題は解消すると思うのです。だから、私は冒頭にそのことを申し上げたのです。二種と同じような取り扱いにならないかということを申し上げたのですが、それが私はPPPの原則にも連なると思うのです。橋本さん、どうですか、これは。
  173. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの御指摘のような考え方もあろうかと思われます。すべてはっきりしないということよりも、その一番核心のポイントがまだはっきりしないというところでございまして、自動車のほうは、全体十あれば三ぐらいのものはかぶらざるを得ないということは、これは覚悟しておるわけでございます。  それからもう一つは、自動車のほうが費用負担をする理由は何かといいますと、これは不法行為責任を問われません。損害賠償責任を問われません。これは社会的な費用をどう負担させるかという社会責任論に非常に近いものの考え方でございます。そうしますと、自動車といたしまして起こしておりますいろいろの外部不経済があるわけでございまして、これは大気汚染もあり、騒音もあり、あるいは廃棄車の始末ということもあるということで、自動車に対する賦課という問題は、大気のほうからは、いまのような詰めてきた考え方で、およそ全体のどれくらいのものが割り振られてくるということはわかりましたが、そうすると、自動車に賦課させる場合にそのほかの要素もどうするのかというようなこと等も含めまして、先ほど局長が御答弁いたしました費用負担の専門部会というところで、自動車に対する社会的な費用の持たせ方ということで現在検討をいたしておるわけでございます。  で、第一種の地域をこの地域だけに限れという御意見でございますが、非常に広域の汚染を起こすという問題と、移動発生源があるという問題と、交通公害の問題というものもどうにかして対処しなければならないということを考えますと、やはりある地域だけに限ってそこに賦課をしていくということは運用していく上において非常に困難性があるということで、先ほどるる申し上げましたようなことで私どもは第一種の大気汚染につきましては割り切り方をしたという点を御了承願いたいと思います。
  174. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 どうも釈然としないのですが、この法律には騒音の関係健康被害が入っておりません。しかし、もし騒音の関係公害被害救済が将来法律の中に盛り込まれるとするならば、やっぱり自動車がその一つの対象になってくるでしょう。そうしてやはりその場合も、いまの発想からいくならば、自動車が大気汚染をしておるから負担させる、それが直接公害関係があろうとなかろうと、そういう思想に立っております。同じように騒音による公害被害についても、自動車を持っておるということによって、自動車が音を出しておるんだからやはり賦課金を取る、こういうことに将来発展してくると私は思うのですが、そういうことになりますか、なりませんか。
  175. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 先生の御指摘のような議論も、費用負担の委員会の中ではいたしております。ただ現在具体的に迫られている問題は、この法律による、別に法律に定めるところにより徴収する金ということが最も具体的な課題であるということで、費用負担の専門委員会で検討されておるところでございます。
  176. 島本虎三

    島本委員 関連。その場合には国鉄のディーゼル機関車を移動発生源と考えておりますか。あれだけは除いておりますか。
  177. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 燃料消費の統計で七対三に分けたときには移動発生源の中に入っております。
  178. 島本虎三

    島本委員 ディーゼル機関車は全国的に相当の数であります。また相当の油を消費しています。そうなると七対三というのはもう当然その中に入っているんじゃないかと思うが、七は何で三は何ですか。
  179. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御質問がございましたが、移動発生源というものの中には自動車も入っておりますし、あるいはディーゼルのものも入っておりますし、また船が沿岸で消費する燃料というものも入っておりますし、飛行機が飛行場のある一定範囲内で消費する、これはすべて推定でございますが、そういうものもすべて出しておりまして、そのものの総放出のウエートが三であるということが私どもの試算のもとでございます。
  180. 島本虎三

    島本委員 したがって飛行機、それから船、国鉄のディーゼル機関車、こういうようなものは全部それは対象になる、こういうようなことになりますね。
  181. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 現在本法の対象とはいたしておりません。本法におきましては大気汚染防止法の特定施設と水質汚濁防止法の特定施設ということにいたしております。そういうことで本法の対象とすぐさまにはなりませんが、燃料消費ということの角度から計算をするとそのようなことになるという事実を申し上げたところでございます。
  182. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 燃料からいけばそうなるわけですね。しかし今度は逆に、個々の自動車に賦課するという方式をとれば当然これは除外されるということになってきますね。したがって燃料方式をとるか個々の発生源に賦課するかということによって、いまおっしゃった飛行機や船やそれからディーゼル機関車、こういうものは除外されるか含まれるかという大きな分かれ目にもなるわけでしょう。だから私は、基本的にいずれの方法をとるかということを明らかにすべきであるということを言っておるのですよ。
  183. 城戸謙次

    城戸政府委員 いずれにいたしましても先生の御議論の中にございますように、一つの方法でいいものは他の方法ではだめになりますし、どれをとるかということは、最後私ども決断を迫られるわけでございますが、まだ若干の時間がございますので、最大限勉強したい、こう思っております。
  184. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 勉強で逃げられたようですけれども、しかし私は非常に重要な問題だと思いますから、ひとついままでの意見について、これを十分生かしながら今後の政令の制定なりあるいはこの法の運用について御努力を願いたいということを要望しておきます。  次に、長官にお伺いいたしますけれども、長官がかりにおつとめになって月給二十万円をおもらいになっておると仮定をいたします。元気でおつとめになって毎月月給二十万円をおうちに持って帰る。たまたま長官が公害におかされて、カドミのように足腰立たなくなって頭が上がらなくて寝込んでおる。その補償が二十万円である。どっちも二十万円入ってくることに違いはないけれども、長官としては、元気でおつとめになって二十万円持って帰ることをお望みになりますか、足腰立たずに寝込んでおって二十万円をもらうことを希望されますか、いずれでございましょうか。
  185. 三木武夫

    三木国務大臣 それはだれも足腰立たずに二十万円もらいたいと思う人は、私はないと思います。
  186. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それでよくわかりました。ところでこの障害補償との関係、この一連の給付内容を見ますと、これはくどくなりますけれども、寝込んでおるほうが安くなりまして、元気で働いておる方のほうが高くなるというシステムになっておる。いま本法による解釈でもはっきりはしておりません。いずれは政令できめることになっておりますけれども、最高もらっても十六万しかもらえないというシステムになっておるようでございます。むしろずっと議論を重ねてきておりますように、繰り返しませんが、私は、慰謝料的な性格をこの給付の中に盛り込んであるという当局の御答弁がほんとうであるとするならば、二十万円にプラスをして、二十五万とか三十万とか差し上げることによって慰謝料的な性格が生まれてくるのであって、二十万差し上げた場合でも、むしろ元気で働いていることのほうをみんな望む、長官と同じことだと私は思うのです。それを十六万に削るという理由が一体どこにあるのか、これはおかしくないでしょうか。
  187. 城戸謙次

    城戸政府委員 これは何度も御答弁申し上げているとおりでございまして、一つ制度給付として割り切ります場合、他制度等いろいろ考えまして、他制度、少なくともたとえば労災の制度よりもはるかにいいレベル、ただまあ定型的給付でございますから、一〇〇%でなしに八割、こういうことで御答弁申し上げているわけでございまして、私どもとしましては、その中に公害被害の特殊性だとか慰謝料的な要素だとかいうことも織り込んできめたんだということでございます。ただこれは、最終的には審議会の答申を得ました上で、この法律ができましたあとできめるということになっておりますが、現在までのところ八割という給付水準でいこうという考え方を私どもは持っておるわけでございます。
  188. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 これは率直に言って、今日まで議論し尽くされております。ずっと同じ議論が繰り返されておりますから、私は特にこれについていまさら繰り返そうとは思いませんけれども、いま私がたまたま長官にお伺いしたような観点からしてみても、少なくとも慰謝料がこの中に含まれておるというふうな解釈は成り立たないのではないかという気がします。きょうは午前中の木下委員の質問にもありましたが、まあせめてそういう足腰立たない方々についての一〇〇%給付というようなものについてはひとつあなた方の考えを変えていただいて、それでも私は慰謝料が入っておると思えないのですけれども、一〇〇%給付ぐらいの最低の線はこの制度の中では決定すべきだ、そういうふうに私は思いますので、そういうふうに考え方を変えてもらえるかどうか。これは城戸さんでございますか、どうでしょうか。——長官ですか、長官ひとつその考え方を変えてもらいたいのですが、どうでしょうか。
  189. 城戸謙次

    城戸政府委員 ただいまの点でございますが、慰謝料的要素ということでございますが、これは慰謝料的要素が障害補償費の中にも入っておるという御説明を申し上げておりますが、むしろ慰謝料的要素としましては、たとえば児童補償手当等は全く慰謝料的要素でございます。御承知のように、裁判の場合には慰謝料かあるいは逸失利益の補償でございますが、児童の場合には逸失利益はないわけでございますので、当初の審議会の中間答申ではこのものはなかったわけでございますが、あと児童補償手当というものを設けたわけでございます。そのほか遺族補償費につきましても、これは相当部分が遺族の固有の慰謝料分でございますし、そのほかに先ほど来御議論のありますような障害補償費の中に入っておる慰謝料分と申しますか、むしろ本人に対する慰謝料分の相続分というものも入っているわけでございますが、こういう遺族補償費なり児童補償手当の中には相当大きな慰謝料部分が入っておる、こう御了承いただきたいと思うわけでございます。
  190. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そうなると、議論を繰り返さなければなりませんし、あなたが入っておる、入っておるというふうに強調されれば、それでは八〇%の中のどの部分が補償費で、どの部分が慰謝料か、あるいは児童手当の中のどの部分が慰謝料で、どの部分が何になるのかというふうにぴしゃっと分けてこなければ、科学的な根拠がなければ議論の対象になり得ません。いままでの答弁、前の船後さんがずっとおっしゃったのは、そういうものもあるのはあるけれどもという言い方で、しかし何ぼ何ぼというような分け方はしてないのだ、こういうことを盛んに強調されてきた。しかしそれとなくにおうてきたことは、労災補償の場合が六〇%だ、そうすれば二〇%がこの場合に慰謝料かといったような解釈がそれとなく成り立つようなニュアンスはあったけれども、しかしそのことについて明確に、二〇%が慰謝料であるとか六〇%が補償であるということはいままで言ってきてないのです。それでいまあなたがおっしゃるように、いややはり慰謝料は入っておりますということを強く主張すれば、議論の繰り返しになりますけれども、それでは何%が補償で何%が慰謝料か。六〇%が補償費であるというならばさっき申し上げた八〇%は間違いであって、二十万の収入のあった人は六〇%に下がるわけですから十二万に下がるということになってくる。寝ておるよりも起きて働くほうがいいというのに、寝せられた上にまた収入が八万円も減るというようなばかな理屈になってくるのです。そうでしょう。だから私が言うのは、かねて船後さんがずっとおっしゃってきたように、そういうものもすべてひっくるめてせめて一〇〇%の補償にならないか、そういうふうに考えを変えてもらえないのかということを言っているのです。これは非常に政治的な言い方ですよ。
  191. 城戸謙次

    城戸政府委員 私は、慰謝料が幾らでそのほかの分は幾らだと個別的に申し上げようという気持ちは全くないわけでございます。御指摘のように、障害補償費の中にはいろいろなものが一緒に入っている、それで全体として八割の給付レベルということを一応私ども考えておりますという船後前局長の答弁をそのまま私も踏襲しているわけでございます。他意はございません。
  192. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 あなた、一番大切なところを逃げてしまっているんです。私が一番聞きたいのは、いままでるる議論してきた経過の上に立って、あなた方はなおかつ慰謝料も含めて八〇%だという主張を持っておられるようですけれども、慰謝料も含むというならばせめてこれを一〇〇%に引き上げるぐらいの考えがあってしかるべきではないか……。(島本委員「一二〇だ」と呼ぶ)一二〇に引き上げる考えはないか、私はこのことをお伺いしているのです。それはもう政治的な判断でございましょうから、長官からひとつお答え願いたいと思います。
  193. 三木武夫

    三木国務大臣 いま局長から御答弁をして慰謝料と言いますから、それでは幾らだという質問になるのですが、実際は慰謝料的要素を含んでおる、こういうことでしょうね。そうでないと、慰謝料と言ったら幾ら入っているか——慰謝料的な要素も含んでおるということを申し上げることが適当だと私は考えております。
  194. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこまでわかったのです。  そこで長官、慰謝料的な要素も含めて、さっき議論したようにかりに慰謝料が入らなくとも、一〇〇%でも寝ておるよりも起きて働くほうがいいというのが人情だ、だから慰謝料が入ればいま島本先生もおっしゃったように、一二〇%ぐらいは当然の理屈になってくる。少なくとも一〇〇%を越さない限り慰謝料の部分があるということが科学的には立証されないのです。越して初めて慰謝料があるということが科学的に立証されるわけです。しかしいまおっしゃるように、かりに政治的にそういうふうないろいろなものを含めて判断されたとしても、最低一〇〇%というものについてあなた方のお考えを変えていただくということになるべきだと思うし、いままでずっと各委員の皆さんの発言の内容を聞いてみましても、みんなそういう意見でございます。この点もう一度考え直してもらえませんか。
  195. 三木武夫

    三木国務大臣 一〇〇%にしたらどうかと言われることは私もよくわかるんですよ。どの程度にするかということは、いままでのわれわれの考え方では八〇%程度のことを考えておりますが、これはいろいろな審議会の御議論も踏まえて検討をいたすことにいたします。
  196. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 もう一つその前に前向きに検討ということばがほしかったのですがね。大体検討というときは何もやらぬことだということに私は聞いておるのですが、長官、前向きでございましょうか、うしろ向きでございましょうか。
  197. 三木武夫

    三木国務大臣 いま午前中も、せめて二種でも一〇〇%にしたらどうかとかいろんな議論がございましたが、前向きとつけておきましょう。
  198. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 わかりました。  では次にもう一つだけ質問させてもらいますが、効力の問題ですけれども、この法律によりますと申請時から効力が発生するというふうになっておるようでございますが、これは地域指定がない限りだめでございますから、したがって地域指定が行なわれてそれから申請が行なわれる、こういうことになると思うのです。その申請が行なわれたときから効力が発する、これが本法の趣旨のようでございます。ところで地域指定が行なわれるということは、その地域に同じような公害病が多発するということが一つ条件になっておるようでございますから、多発してそれから地域指定が行なわれて、それから申請をする。その間一体だれがその病気に対する補償をしてくれるのか、初発から申請までの間は一体だれが補償してどういうように生きていったらいいのか、どうお考えになっておるのでございましょうか。
  199. 城戸謙次

    城戸政府委員 これは第一種と二種で違うと思いますが、一種ですか。——第一種の地域につきましてはもともと非特異的疾患でございまして、相当疾病がどこにでもあるわけでございます。それが一定のレベルを越した場合に私どもとしては地域指定をしようとするわけでございますので、私どもといたしまして、そういう基準に合致しているのを従来調査が行き届かないというようなことでなかなか指定できなかったような事態がかりにあるとすれば、今後はそういうことのないようにできるだけすみやかに指定していく、こういうことで対処するしかないわけでございます。もちろん患者さんの立場といたしましては指定の前とあと、これは当然あるわけでございまして、同じ方が従来は自費でやらざるを得なかった、指定になれば今度はこの給付によっていろいろやっていける、こういうことがあるわけでございますが、しかし指定一定の基準でやる以上、その点はやむを得ないかと思います。ただ、指定になりました以上はできるだけ十分PRしまして早く申請をしていただきますし、同時に審査会を通してできるだけ早く認定をする、こういうことでやっていかなければならぬと思っております。
  200. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 かねて議論しておるように、公害については被害者には責任がない、これはもう異論のないところのようでございます。そこでいまの城戸さんのお話を承ると、何か給付をしてやるのだから、指定がなければ当然自費でやらなければならぬことを指定をして給付をしてやるのだから、恩恵的にやるのだからおまえたちはそれから申請をして、申請から効力が発生する、それまでのことは当然自費でやるべきだというふうなニュアンスですけれども、しかしそうではなくて、さっき申し上げたように被害者には責任がない。たまたまそこに住んでおったために−−それは公害でなくても呼吸気系疾患である方もたまたまあるかもわかりませんが、多発するということが原則でしょう。多発してから地域指定が行なわれるわけで、その地域指定が行なわれてから申請が行なわれるわけです。そして効力は申請からしか発生をしないとするならば、その病気が初発したときから地域指定が行なわれ申請が行なわれるまでの間、責任のない患者が自費で病気の治療をしなければならない、あるいは生活を維持していかなければならない、これを一体どうお考えになりますかということです。
  201. 城戸謙次

    城戸政府委員 この法律の体系は、第一種地域につきましては、少なくとも因果関係について、個々の汚染と個々の疾病との間を結びつけるということはできないという前提に立ちまして、指定地域指定疾病それから暴露要件と、この条件でこの制度を仕組んでいるわけでございます。したがって、地域指定されるまでの間におきましても患者が多数おられるということは当然でございます。その中の相当部分の人は自然発生の方もおられるでございましょうが、また同時に指定前でも公害によって悪化された方もあることは事実だと思います。ただ、そこを制度的な割り切りをしませんとできませんので、一定の基準を設けまして、その基準に合致するところから指定地域としての指定を進めていこう、こういうことでございまして、その辺前後にどうしても境ができるということはやむを得ないと思うわけでございます。  ただ、先ほど私の言い方が悪かったかもしれませんが、恩恵的にこの制度があるということは絶対考えておりません。
  202. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 どうもこの法律審議では何でも割り切れ、割り切れとおっしゃっておるのですけれども、いま長官お聞きになっておわかりのように、何か相当部分はその公害発生源がなくても先天的な、いわゆる公害病ではなくて、呼吸器疾患等にかかっておったんだろうというふうな城戸さんの言い方になるわけです。しかし、これは少なくとも法律の上では多発してからということが一つ条件になっておるわけです。多発してからということは、逆に言えば相当部分が大気汚染によって、公害によって起こったというふうに理解すべきだと私は思うのです。そうなりますと、いま申し上げたように、相当期間あるんですよ。十日か二十日ならまだ耐えられるでしょう。しかし多発地域としてこれが指定をする、それまでに、初発から指定を受けるまでに相当期間がたっておる。そして指定を受けてから今度は申請をするわけでしょう。ここからしか補償してもらえないわけですね。それまでの間の補償というのはないのです。もししいて言うなら、あなた方は民事裁判で争う以外にないだろう、こう言うでしょう。しかし、私は、ほんとうにこの法律がそういう方々を救済するという基本に立っておるならば、この申請からでなくて、それは医学的に立証できるわけですから、その初発のときから治療費その他について補償していくべきだ、そういう法体系に変えるべきだと思うのですが、どうでしょうか。
  203. 城戸謙次

    城戸政府委員 この点は何度も申し上げて恐縮でございますが、非特異的疾患と申し上げておりますのは、たとえば四十歳以上の成年でとりますと、大体どの地域でも三%程度の閉塞性呼吸器疾患の方がおられるわけでございます。それで、たとえばその場合の六%のレベルで切るか、あるいはもっと低く五%にするか、あるいは七%にするか、いろいろあると思いますが、いずれにしましても、根っこに三%という自然発生があるわけでございますから、どうしてもその問題につきましては、さっきお話ししましたような三つの要因で割り切って制度運用するしかないということございます。ただ、その指定地域指定が、従来予算の制約その他もあったわけでございますので、今度はそういうことがないわけでございますから、それがスムーズにいけばいまの問題は片づく。  もう一つ、どういう場合に指定するかという基準について十分今後詰めまして、スムーズに指定が受けられるようにする、これが一番解決のポイントになるのじゃないか、こう思っておるわけでございます。
  204. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 どうも私は長官、いまの城戸さんの説明では納得がいかないのです。なるほど、そういういわゆる公害がなくても先天的な患者もおるであろう。それが何%かおるんだから、公害でおかされてそのために呼吸器性疾患になった患者もがまんしなさい、こういう理屈になるわけでしょう。しかし私は、それは次元が違うと思うのです。やはり医学的に初発がわかって、しかもそれが企業の大気汚染に起因するものというふうにおおむね了解ができるならば、その初発から申請までの間の治療なりあるいは休業の補償なり、そういうものは当然さかのぼって見てやっていいではないか。なぜそれをさかのぼって見てやれないのか。
  205. 三木武夫

    三木国務大臣 いろいろ御議論を聞いてみまして、やはり制度としてやったときには、いろいろな問題が、いま御指摘のような矛盾がありますね。ほかの問題、こういう公害問題ばかりに限らず、いろいろなそういう点で、ある一定の線を区切りますと、それの一応割合に達せないような場合に矛盾があるので、結局は一つには、一番大事なことは、公害というものが起こらないように、公害の防除ということに対して根本的に対策を講じていくことが根本と、もう一つはやはり社会保障制度などを充実していくということで、いま確かに、制度としては言われるような矛盾を持っていると思いますよ。しかし制度自体としても、至れり尽くせりということにはなかなかならない点もありますので、そういう点は社会保障制度というものでカバーをしていくために、今後社会保障制度というものを充実していくということだと私は思います。確かに御指摘のような点で矛盾がある点は認めますけれども、それを全部この制度で吸収していくということには、制度としてはなかなかむずかしい面があるということは御了承を願いたいのでございます。
  206. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 専門の城戸さんに参考までに伺いますが、四大公害裁判の判決の思想は、いわゆる初発のときからを大体対象にして判断をしておるのでしょうか。認定以後の問題について対象として補償等がなされるような判決になっておるのでしょうか。
  207. 城戸謙次

    城戸政府委員 これは裁判の場合は、当然個々人が企業を相手どって争うわけでございまして、その疾病の始まりから当然問題にされるということは、私十分了解しております。
  208. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それだけわかっておりながら、さっきのように先天的な患者もおるんだからがまんせよとか、あるいは八〇%をやってその中に慰謝料が入っておるとか、どうもまだ何か与えてやるのだ、こういう制度をつくって救済してやるのだというような思想が多分にあるような気がします。だからあなた方は、逃げ道として、不満ならば民事訴訟で争いなさい、こういう言い方になってくるんだと思うけれども、せっかくこういう制度をつくる以上は、やはりだれが見ても、民事で再び争うことのないような内容にすべきだ、政府の姿勢としてはそうあるべきだという気が私はします。この点について長官のお考えをひとつ。それと、どっちにしても予算の伴う問題でございますから、予算の獲得については最大限の努力をしていただいて、そして公害の対策あるいは救済に遺憾のないようにやってもらいたい。この二点についてひとつ長官の所信をお伺いしたいと思います。
  209. 三木武夫

    三木国務大臣 予算の点は、私も極力、できるだけの予算をつけるように努力をいたしますが、最初の点については、どうしてもいろいろな矛盾は健康保険その他社会保障制度でカバーしていくようにいたしたいという考えでございます。
  210. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 終わります。
  211. 佐野憲治

    佐野委員長 岡本富夫君。
  212. 岡本富夫

    ○岡本委員 けさから論議を尽くされておりますが、この法案の答弁を聞いておりますと、何か複雑怪奇な、根拠がないようなあるような、非常に何かわからないような御答弁があるわけですが、そこでもう一ぺん、基金をつくる財源について、同じようなことでありますけれども聞いておきたいのは、移動発生源より徴収するところの、これは自動車やこういった個々のものか、あるいはそのガソリンに加重金として出すのか、この二点でどっちかわからぬのだ、こういうことではどうも納得いかないのですがね。それはわしらにまかしておきなさい、こうおっしゃるかしりませんが、どちらを採用されるのか、これをひとつはっきりしていただきたい、こう思うのですが、いかがですか。
  213. 三木武夫

    三木国務大臣 正直に言って、現在のところこういうことにするというところまで至ってないのですよ。これは予算編成の時期における石油税制ともいろいろ関連を持つ問題でございまして、そういうこととにらみ合わしてこの問題は、要するに本年度の予算編成の時期までの間にいろいろ検討をいたしましてきめたいというのが正直なところでございます。しかも、これについては、別の法律案を出しまして御審議を願うことになっておりますので、できるだけ国民の納得のいくような方法をとりたいということでございますが、いま現在の段階では、まだ、どちらか言ってみろということに対しては、いろいろ検討をいたしておるので、今年度の予算編成時期までには結論が出したいというような目標で検討を加えておるというのが正直なところでございます。
  214. 岡本富夫

    ○岡本委員 この法律案につきましては、長官が相当精力的に取り組まれたと私は思うのです。会期内にもできず、会期が延長されて——これは自民党が悪いのですよ、この延長したのは。その中でこれを出してきたわけですが、そうして何とか来年の七月に間に合わせるようにというわけですから、長官は相当これはいろいろと検討を加えてお出しになったと思うのです。この財源については、まあいろいろ党内事情もあろうと思うのです。それはよろしいが、長官としては、あなたはこの法案をつくるときに、私はここから財源を求めるのだということを一応おきめになったと思うのです。それはどういうところですか、ひとつその点だけを……。二つから取ろう、そうじゃないでしょうね。どっちからか、きちっとその点について……。
  215. 三木武夫

    三木国務大臣 最初この法案を提出するときには一応いろいろな考え方があったわけですけれども、これは最終的に決定をする場合に、いろいろな方面の意見も調整をする必要がございましたので、いま過程の、最初はこうだったのだが、これがこういうふうになったということは、申し上げないほうがいいのではないか。とにかく、近くこれは予算編成の時期までには結論は出さなければならぬし、出るということでいま検討を加えておるわけでございます。
  216. 岡本富夫

    ○岡本委員 私なぜこの財源に対してやかましく言いますかと申しますと、当委員会で、交通公害、要するに通過道路ですね、そういった道路の周辺、ここに相当ぜんそくとか気管支炎の方が、その道路がないときにはほとんどいなかった。それは、私が例に引いたのは、大阪と神戸を通っているところの国道二十八号線、ちょうど私、芦屋の市長さんを連れて、これは前の小山長官に、実はこういう状態だということで、非常に多発している、市の調査によると四軒に一軒くらいのぜんそくがそれから出ているのだ、何とかひとつ公害病に認定をして救済をしてもらえないか、こういう陳情がありまして、そうしてこれはひとつ宿題にさしてもらいたい、こういうことになっているのです。ですからそういった人たちの救済あるいは治療というものは全部自費になっているのですね。救済というものはない。これは全国あちらこちらにあると思うのです。東京都内も調べるとそういうところがある。ですからそういう人たちの救済にも——救済というのはおかしいのですが、補償もしなければならぬ、こういうふうに思うのですが、そうすると財源というものが問題になってこようと思うのです。おそらく基金のほうの財源が少ないと救済する量というのも少なくなってくると思うのです。せっかくこうして公害健康被害補償法というものをつくるわけですから、患者の人たちはみんな補償していくという立場からものを考えなければならないと思いますが、そういう場合交通公害一定地域であると思うのですね。道路からそんなたくさんのところまではありませんが、たとえば五十メートルとかあるいはまた八十メートルとか区切って、そういった指定地域にして救済することを考えておるのかどうか、これをひとつお聞きしておきたいと思うのですが、いかがですか。
  217. 城戸謙次

    城戸政府委員 ただいま御指摘の問題については、前に私官房長をしているときも突然の御質問にお答えしたことがございます。私の考えはそのときに申し上げましたが、新しい法律になって、当然そういうことも単独でもし切り離して問題が出れば救済するようにすべきだということを申し上げたわけでございまして、この法律でもそういうことができる形になっております。ただ問題は硫黄酸化物なり窒素酸化物なりいろいろな汚染物質がございますが、これが複合して働いている形におきましていま地域規制等をやっておるわけでありますが、道路わき等におきましてもっぱらNOx中心でほとんど硫黄酸化物の汚染がないようないなかの場所、こういうところで発生しているような例ですね、こういう場合窒素酸化物単独でどういうぐあいに汚染影響というのを評価しているか、こういう点につきまして若干の技術的な問題も残っておるようでございますから、こういう点を至急詰めました上で、いまおっしゃるような問題がかりに具体的にあるとすれば、それに対応できるような施策をとってまいりたい、法律的には十分この法律でやれるということでございます。
  218. 岡本富夫

    ○岡本委員 この法律ができると、こう言われましても、やらなければ何にもならないのですね。できるのだ、できるのだといってもやってもらわなければそういった被害を受けた人たちは浮ばれないわけですね。そこでいまの説明によりますと、窒素酸化物あるいは亜硫酸ガスあるいはまた一酸化炭素ですか、COあるいはSO2、これは救済できるのだ、NOxすなわち窒素酸化物だけの場合はどうもやりにくいというような答弁だったのですが、その点いかがですか、もう一度詳しく言ってください。
  219. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御質問のあったポイントでございますが、先ほど局長がお答えいたしましたのに若干補足して申し上げたいと思います。  まず第一に、現行健康被害救済特別措置法、あの法律をつくりますときには、四日市汚染であるとか、川崎汚染であるとか、尼崎の汚染であるとか、そのような固定発生源工場群があって、そこで非特異性の呼吸器系疾患が多発しておるというような状態をもっぱら頭に置いておったわけでございます。そういうことを頭に置いてやっておりましたので、この地域指定もそのような地域をまず頭に置き、またそのときの汚染物資といいますのも当時はNOxはあまり計っておりませんでした。非常に量は乏しゅうございました。浮遊粉じんであるとかあるいは硫黄酸化物というようなものを対象といたしまして、そのようなものの汚染の水準と有症率というようなことを中心としまして、指定地域をきめてまいりました。そうしてその費用を負担させるという点におきましては、経団連の中に財団を設けまして、そうして十四業種でございましたか、十四の数字はひょっとして間違ったらお許し願いたいと思いますが、この固定発生源を持っておる業種から金を拠出させまして、そうしてこの救済法費用の半分に充てるというようなことをしておったわけであります。そのうちにこの自動車公害の問題が次第に大きくなってまいりまして、またそれが急速に大きくなってきまして、先生の御指摘は阪神間の国道沿いの汚染をどうするかという具体的な実例を引かれたわけでございますが、尼崎は非常にどちらもよごれておるが、芦屋ということになりますと一般の浮遊粉じんとか硫黄酸化物とかいう汚染はこれは尼崎とか西淀とは非常に違うということは事実でございます。現在の測定データをちょっとよく存じませんが、そこの場合にはおそらくその道路のまわり何メートル範囲というところはやはり拡散圏といたしまして一番暴露されるということが理屈の上では考えられるのではないか、そのような事実につきましては昭和四十年度以来ずっと調査研究を続けてこられまして、道路のまわり何メートルぐらいのところに汚染が起こるかというところは理論的にはかなり予測ができてくるというような調査研究も出てまいったわけであります。本法におきましては非常に問題として、御指摘になりましたような交通公害による大気汚染の問題というものはとうてい無視できないということを私ども考えたわけであります。で、日本弁護士会等では自動車の発生源なんかを含めるのはもってのほかだというような反論があったわけでありますが、私どもはいやそうではない、これは当然にこの対象として含めるべきであるということを強く主張いたしまして、そしてこの法案の中にはこの費用の徴収の点につきましては「別に法律に定めるところ」ということで、先ほど来阿部先生からもいろいろな御指摘を受けたところでございますが、そういうような体系になっておりますが、移動発生源からの汚染ということを当然に念頭に置いてこの法律が通過して実施される暁においては対処をしていきたい、こういうぐあいに考えております。その場合に、先ほども芦屋と尼崎の例で申し上げましたように従来の地域指定のところではSO2、粉じん、それから最近窒素酸化物のデータがここ一、二年で急速に集まってまいりましたが、やはり従来問題にしておるところは、指定地域のところは浮遊粉じんもSO2も窒素酸化物も全部高いところでございます。ですからその意味におきましては、それでは浮遊粉じんと硫黄酸化物と窒素酸化物の影響を分離できるかといわれますと、影響としましてはやはり同じ非特異性の呼吸器系疾患ということで、これはなかなか分離できないというような問題があるわけであります。そこで、自動車の排気ガスとして自動車高速道路の沿線という問題になってきますと、従来の指定地域とは異なりまして浮遊粉じんとか硫黄酸化物というのはあまり高くない、しかしながら窒素酸化物だけ高いという状態があるだろうというぐあいに考えるわけでございます。あるいはほかの炭化水素等の問題があるやもしれません。一酸化炭素の問題がありましょうが、一酸化炭素の問題が非特異性の呼吸器系疾患に影響があるという学問的な知見は現在のところございません。そういうわけでございますので、私ども判断といたしましては、現在の学問的知見によれば窒素酸化物あるいは炭化水素がかむかかまないか、ある程度浮遊粉じんがかむかというところが自動車の排気ガスによる汚染によって非特異性の呼吸器系疾患を多発させているかいなか、こういう問題になるわけであります。現在その点につきまして昭和四十五年度以来窒素酸化物の影響ということでの影響調査が一方に進んでおりますが、いままで得られたデータは、その調査のゾーンといいますのは、つまりやれた地域と申しますのは、やはり工場と自動車の複合したポイントのデータしかまだございません。そういうことで私どもはこの法律が通りましたら、今度は窒素酸化物だけの汚染がある、あるいは自動車の排気ガスとして窒素酸化物以外の炭化水素等の汚染があるという地域をどう扱うかということは、この法律で自動車からも金をとるというわけでございますから、当然にその対象として検討を加えなければならないというぐあいに考えております。そういう点で、いままでのところでは窒素酸化物だけの汚染のあるところで有症率がどのような程度で多発しておるかという点については私どもは残念ながらデータを持ち合わせておりません。先生の御指摘のような四軒に一軒おるではないかとかあるいはぜんそくの患者が多いというような話は私どもよく伺います。伺いますが、この自動車排気ガスの調査として大阪市内で約二年間継続されたものもございますが、これとてもやはりSO2と両方の完全にまざったやつでございますので、どうにもその点の分離がきかないということでございますので、この法律が通りました暁にはそのような道路の沿線における汚染とその影響、それに伴ってどのように地域指定をしていくかということを積極的に対処をしていきたい、そういうぐあいに考えておるわけでございます。
  220. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうもいままでの指定地域にする基礎のあり方が今度は変わってくると思うのですね。まずその地域の病気になった、補償を当然受けられるその住民の側に立ってそして調査をすれば——その人が気管支になったあるいはぜんそくになった、私は窒素酸化物のためになったんだとか、私は亜硫酸ガスでやられましたよとか、そんなのは一々わからないですからね。これはおそらく複合していると思うのです。ですから、もう一度指定地域に対するところのいろいろな条件要件というものを検討し直す必要があると私は思うのです。と同時に、現在川崎でもそうですし、尼崎でもそうです。あるいはまた四日市でもそうですが、道路をはさんでこちらが認定されておってこっちはされてないというそういう指定地域の拡大については、これは十分検討し、そしてその付近の人たちを全部補償できるというような考え方を持っておるのかどうか、ひとつお聞きしておきたい。
  221. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 先生の御指摘のございましたように、従来までの地域指定条件というものを今度新たに検討し直すべき要素があるという点につきましては、私どもも全く同様の問題があるというぐあいに思っております。その場合にやはり汚染と多発ということを把握すべきでございますから、汚染はやはり客観的にはからなければならないということと、影響をどう見るかということについては現在の学問の知見でどのようなところにおおよその一致を見ておるかということによる以外にないということでございます。それから多発というところの条件の調査につきましては、これは当然に住民の方々の調査をしなければできないということでございますので、そのときに住民の方々のいろいろな声も聞く機会があろうと思いますので、そういう点におきまして私ども今度の制度においてはいままでの条件とは違うものを検討しなければならないということについて、積極的にこの法律の施行のあとにおいていたしたいと思っております。  もう一点先生の御指摘は、道路をはさんで道路の向こうはかかるけれどもこっちはかからぬというので、例に川崎と尼崎をお引きになりましたが、これは特に尼崎ということを頭に置いてみますと、尼崎はもともとは相当な広範囲でよごれておった地域でございますが、その中での一部の地域地域指定になったということでございます。現在道路のある周辺がどういう状態であるか私はちょっといま申しわけございませんが詳細な数字としては覚えておりませんが、先ほど芦屋で申されたような事例とは尼崎の場合はかなり相違があるのではないか、同じようなことが川崎の場合もあるのではないかと思われます。そういう点におきまして不均衡のないように、結果としては地域が広がるということでございますが、あくまでもこれは基準をゆるくするということではございませんで、四十五年から四十八年までやられてきた救済法指定地域の基準の中から考えてみると、これは不均衡であるというようなところの是正をすることによって、結果的には広くなるというようなこととしてお考え願いたい、こういうぐあいに思います。
  222. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこのところが、この基準がゆるくなるのではないんだと、そういった指定地域にするために基準というものを根本的に——先ほどお話ししましたようにいままでは亜硫酸ガスあるいは一酸化炭素、そして窒素酸化物は入ってなかった、それで今度は窒素酸化物を入れるということになりますと、その基準というものを、ゆるくするとか強くするというのではなくして、やはり根本的にもう一度検討しなおさなければならぬ。その網のもとに、そういった一つの方程式のもとに調査をすれば、私は決して基準をゆるくするとか強くするというんではないと私は思うのです。そこのところが私はどうもあなたの御説明がわからない。きのうもちょっと聞いたんだけれども、その点がどうも私は納得がいかないんですね。だからいまの基準を決してゆるくするという気持ちはないんだということは、先ほど根本的にそうした基準というものを変えなければならぬ、この基準を当てはめないということなんです。いままでどおりいくと、こういうことなんです。先ほどから論議したことは何にもならなくなっちゃうんです。違いますか。
  223. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 私の申し方が少しゆるくしないというところに力点を置きまして、不正確な表現だったと思います。NOxの問題を含めれば、結果としては少し広くなる。ですから前に言っているようにSO2とか浮遊粉じんの問題と、新たにNOxの問題を加えて、新たな指定地域の基準というものをつくりますということで検討いたします。
  224. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、まずこの大気汚染の場合の指定疾病のことについて、いままでぜんそくとか、肺気腫、あるいは気管支炎、こういうものだけだった。私、きのうも聞いておったんですが、鼻炎、これも特に小学生ですか、児童に多いわけですが、当委員会で、これは四十五年だったと思うのですが、非常に鼻炎が多いので、これもひとつ何とか指定疾病の中に入れて対象にしてもらいたいということを要求いたしまして、それは検討いたしますということになりまして、現在で約三年くらい検討していただいたと思うのです。それはしてないかもわからぬですね。最近、環境庁はいろいろ答弁なさるけれどもあと大体言いっぱなしということが多いんじゃないかというようなうわさも出ているわけですが、鼻炎も指定疾病の中に入れていくという考えはありますか。その点ひとつ……。
  225. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 先生の御指摘のありました鼻炎につきましては、検討するというような答弁が過去にございまして、そして四十六年の検討委員会において鼻炎の問題が検討されまして、四十七年に報告が出てまいりまして、鼻炎をこれに取り上げるということについては、まだいまの学問的な知見ではそこまではまだいけないというような議論が出たわけでございます。そういうことで検討いたしておらなかったわけではございませんが、鼻炎については私どもいままでのところはすぐさまはむずかしいという見解を持っております。しかし、この点につきまして、一点の問題といたしまして、すでに認定されている患者さんにつきまして、呼吸器系の上のほうの部分、気管支というと下のほうになりますから、そのような上のほうの部分の続発症として鼻炎とかそういうものを扱うということで検討してみようという考えをひとつ持っております。それから、もう一つは、その鼻炎としてもう一度この問題につきましては最初から認定疾患として取り上げるべきかどうかということは、やはり今後の調査検討問題としては取り組んでみたいというふうに思っております。当面はまず続発症の問題として取り上げようという方向で一度専門委員会で検討していただきたいという気持ちを持っております。
  226. 岡本富夫

    ○岡本委員 いままでの救済措置法は臨時措置みたいなものですから、今度は少なくとも健康補償法、こういうことになりますと、私、きょうはちょっとデータを持ってこなかったのですが、鼻炎の児童がたしかよその学校よりも五倍以上ふえた。対象の学校で見ますと五倍以上鼻炎の児童がいる。そういった大気汚染によってやはり同じ病気になっている。片方のぜんそくは救われる。ところが同じ大気汚染によってなった鼻炎、これは救われない、こういうのはどうもぼくは納得いかない。いまあなたがもう一度今度は公害補償法案に従って検討する、こう言うならもう一度検討を待ちますけれども、前の検討は四十六年でしたか検討をお願いしたのですが、これは前の法律に基づいてでありますから、今度の公害被害補償になりますと、やはり私はもう一ぺん検討し直さなければいかぬ、要求しておきます。  そこで次に基金の徴収方法、これにつきまして移動発生源のほうは先ほど少し論議をして結局わけがわからなかったということでありますが、今度固定発生源、この考え方をふろ屋までとるのか、要するにすそ切りですね。どの辺を——ほんとうに零細企業や中小企業というところを対象にして徴収するのか、これをひとつ明らかにしておいていただきたい、こう思うのです。
  227. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘汚染負荷量賦課金の納付義務をきめる場合に、すそ切りをどういうぐあいに考えているのかという御意見でございますが、これは法律にもございますように、事業所全体としての排出量、最大排出ガス量というものを一つ取り上げる。それを地域の区分によって、たとえば東京、大阪というようなところは相当小さいところまで入る。しかし北海道とか鹿児島とかそういうところになりますと非常に巨大なものしか入らないというような取り方をするということをいたすわけでございます。この場合にふろ屋が入るかという御指摘でございますが、私どものいままでの観念では、ふろ屋で入るものはおそらくきわめてまれなものが入る可能性があるかどうか、むしろない公算のほうが高いというぐあいに考えております。これは先ほどもちょっと申し上げましたように、一つの事業所から大体一時間当たり一万ノルマル立米放出する、これは特定の公害管理者を置くということで、通産省所管の法律で規制されている事業体で非常にはっきり把握されておる業種でございますが、現在ばい煙発生施設として対象となるのは五万くらいですが、一万立米以上出すのはそのうちの約四千ぐらいでございます。それでもう八割強ぐらいのものの放出を押えてしまいます。その下にどこまで入るかというような議論でございますが、その下の四千までやるとしましても、実は取り組む分が割合としてはあまり大きくはない。それを徴収するためのコストが高くつくということでございますので、この辺は現在いろいろ検討いたしておるところでございまして、これは単に検討ということではございませんで、七月末現在で全国の県を通じまして発生施設と事業所を非常にこまかな調査をいたしております。その調査の結果を全部整理いたしまして最終的に決定をいたしたいというような政令案というものをつくりまして決定いたしたいという考えでございまして、先生の例をあげられましたふろ屋は入るかという御質問に対しましては、入る公算はきわめて少ないということでございます。ただ一部大阪の西淀のケースでいろいろ業界等とも大阪市が話をしたり折衝したりしている事情を聞いてみますと、できるだけ小さいものまでとってくれというような声もそういうところにはあるということもございますが、具体的にはおそらくふろ屋で入るものはまずないのではないか。あるとしてもきわめて例外的な巨大なふろ屋しか起こり得ないだろうというぐあいに考えております。
  228. 岡本富夫

    ○岡本委員 できるだけ小さいところからも取ってくれという考え方は大きな企業はそうでしょうね、それを代弁するところは。自分のところがよけい取られるより、一番小さいところまで取ってくれというのと同じことだと思うのですが。私はすそ切りは、やはりあまり零細企業、こういうところはやめたほうがいいと思うのですよ。いまあなたおっしゃったように、徴収する金のほうがよけいかかる。とにかくそれだけを特に検討してあまり零細企業のところまでは取らない。すそ切りを相当なところに上げちゃうというようにして考えていただきたい。  次に、生活補償につきましてちょっとお尋ねしておきたいのですが、生活補償の中で主婦ですね。全然どこにも働きに行ってないところのこういった奥さん方が病気になった場合、生活補償はどういう算定をするのか。これだけひとつお聞きしておきたいのです。
  229. 城戸謙次

    城戸政府委員 これは公害健康被害者の中には主婦もありますし、無職の方もあるし、つとめに出ている方もある、いろいろあるわけでございますから、これを定型化して給付するわけでございます。その場合使いますのは男女別、年齢階層別の労働者賃金水準から持ってくるわけでございますから、その女の方の年齢層の労働者の賃金水準、これに先ほどからお話ししております大体八割程度のレベルというのが障害補償費のレベルになる、こういうことでございます。
  230. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、その方の賃金がどうだということでなくして、一家の主婦で——これは自分が平均賃金でもらえるわけだから関係ないわけですね。  それから次に、先ほどからも論議されておりましたが、慰謝料の問題です。だいぶ先ほどからの論議で慰謝料の問題があったのですが、これは慰謝料的なものが含まれてない、こういうようにはっきりひとつ長官言うておいたほうがいいと思うのですよ。だからどうですか。ここではっきりそうしておいてくださいよ。慰謝料的なものでないのだ。補償も少ないのだけれども、これはいまのところしかたがない、今後ふやす、こういうくらいに勇断をもってお答えになっておいたらどうですか。
  231. 城戸謙次

    城戸政府委員 これは何度も同じお答えになるわけでございますが、障害補償費の中にも先ほど長官からお答えしましたそういう慰謝料的なファクターが入っている、こういうことになっておるわけでございます。
  232. 岡本富夫

    ○岡本委員 私なぜこういうことを言うかと申しますと、おそらくこれだけでは耐えかねて、ちょうど四日市の裁判のようなものが出てくると思うのですね。その場合、すでに慰謝料は支払ってあるではないか、こういうことになってくると思うのですよ。ですから、私はこれは一面を考えますと、そういうのが出てこないようにというので金を集めてやっているのだというような考え方にもなってしまうわけですから。ほんとうの補償法ということでないわけですから。だからこれははっきりひとつ慰謝料は含まれていません。こういうようにしておいたほうが——先ほどからの論議でも確かに聞いているとおかしいですよ。慰謝料が含まったほうが安くなる。そんなばかなことはない、慰謝料が含まれればふえるのが普通なんだから。いま、的なもの、的なものと言ったって、的なものが含まれておっても、これはやはりふえるのが普通なんですから、どうも論議がはっきりしないわけですよ。ですから、ひとつどうですか、長官、慰謝料的なものは入っていません、まず生活補償のうちの一部、こういうようにはっきりしておいたほうがいいと思うのですが、いかがですか、これをもう一度。
  233. 城戸謙次

    城戸政府委員 これは何度お話し申し上げても御了解いただけないのじゃしようがないわけでありますが、私どもの立場は先ほど来お話ししているとおりでございます。ただ裁判の場合一番大きなのは、通常の場合逸失利益でありまして、ただ老人の場合等は慰謝料のほうが若干ふえる場合もあるかと思いますが、通常のあれでいきますと、逸失利益が一番大きな金額になると思います。ただ最近水俣の場合もそうでございますし、それから阿賀野川の場合もそうでございますが、逸失利益を特に要求しないで慰謝料一本で要求している。こういう場合裁判所としては当然逸失利益については現在及び将来ともこれを請求する意思がないというので、逸失利益を含めまして、慰謝料の算定のしんしゃく事由としてその額に含ませて請求されている、こういう見解をとって慰謝料の額をきめているわけでございまして、この辺慰謝料というものは非常にいろいろな形で判決は下っておるわけでございます。私どもは慰謝料というものがこういういろいろな四角四面になりがちな法律的な解釈の中でひとつそれをできるだけ現実に合ったものに持っていく役割りも裁判の中で果たしていると思うわけでございますし、私ども制度の中でもそういう意味で分離はできませんがこの中に入っている、こういうことで御了承いただきたいと思います。
  234. 岡本富夫

    ○岡本委員 この問題は、たとえば先ほど私が質問いたしました公害病の認定、こういうことになりますと、どうもやはり医者の見解だとかそういうものによって法律的にきめてしまう。今度これがいまの慰謝料とかそういうものにつきますと、これはそういう限界をこえた政治的な判断だと言う。都合のいいほうだけは法律の限界をこえたなんと言うのですね。だから私は慰謝料は別に入っていない。生活補償の一部だということだけをはっきり明言しておいたほうがいい。これを何べんも同じことばかり言いますということになりますと、私たちはこう考えているのだ、あなた方はそう考えているかもわからないけれども法律審議するについて立法は国会がするわけですから、そうするとわれわれが立法する上において、じゃこれは慰謝料は入っていないのだ、こういうようにあなた方のほうで変えてひとつ解釈をする、こういうふうにしたほうがよいと思いますが、いまそういってもなかなか固まってしまって貝みたいになって全然話にならない。  そこでもう一つだけ聞いておきますが、最後に居住制限ですね。これもひとつ前の救済措置法と変えて、居住制限についても検討し直す必要があると思いますが、これについてはいかがですか。
  235. 城戸謙次

    城戸政府委員 いまの居住要件暴露要件でございますが、これにつきましては、けさ嘉木先生の御質問にもお答えしたわけでございますが、前の特別措置法に比べますと、いろんな点で改善されているわけでございます。たとえば第一種地域である四日市から川崎住所を移した場合、それを通算して政令で定める期間以上であればいいというようなことにしたり、あるいは申請までの引き続く期間内に第一種地域以外に住所を移した期間が含まれておりましても、一定要件のもとで暴露要件を満たすものとしてそれを通算するという、指定地域におった期間を中断でなしに通算するということだとか、あるいは第一種地域内に住所を有した期間通勤等期間とを通算するといういろんな点で、現在の特別措置法ではできなかったことを今回織り込んでおりまして、できるだけそういう点につきましても実態に沿うようにやっているわけでございます。
  236. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたが島本委員に答えたのは、前の救済措置法でも検討事項になっておったわけですよ。それでこれはできなかったのじゃなくしてやらなかったことなんです。そんなごまかしはいけませんよ。私は、この三年あるいはまた五年通勤ですか、こういうものを現実的に言いまして——私この前ここで論議したことがあるのですが、一年ぐらいでその指定地域に入ってきて病気になっているわけです、発病しているわけです。そういう人たちは救済できないわけですよ、補償できないわけですよ。ですからこの三年、五年についてももう一度現実的な立場から私は居住制限について検討し直してもらいたい。きょうそれを要求します。いかがですか。
  237. 城戸謙次

    城戸政府委員 いま申し上げましたのは、制度として国会の御審議をいただいて法律にしなければできない点だけ今度手当てしておりまして、あと具体的な期間をどうするかにつきましては、当然いま御指摘ございましたように、できるだけ合理的になるように期間を定めていく。これは中央公害対策審議会の中に専門委員会を設けますので、その場でこの議論はできるだけ詰めていただきまして実態に沿うようにやっていきたい。これは法律を成立させていただいたあとども努力いたしたいと思います。
  238. 岡本富夫

    ○岡本委員 中公審の先生方といいますか、あるいはそういう審議をなさる方々が現地を調査して、ほんとうの現実の姿に立ってやはりやってもらうように長官から要求してください。ただ机上で、いままでこうだったからこのぐらいにしておこうというようなことじゃなくして、現実に立ってひとつ居住制限については——私は現実を非常にたくさん見ているわけですよ。当委員会で何べんもやっているわけです。ひとつこの点は長官最後に御意見を承りたい。
  239. 三木武夫

    三木国務大臣 おそらくこれで質問が終わることになるわけですが、実際に、いま岡本委員の御指摘になった問題も含めて、いろいろ御指摘になったことは政令事項が多いわけですから、その場合十分に御趣旨のあるところを体しまして検討いたします。中公審の方々も必要があれば現地を見てもらうような場合もつくってもよろしいわけでありますが、この立法の精神公害健康被害者に対して十分な補償をしたいということですから、その趣旨に沿うように——ただ全部が全部御指摘になったことを実行するというお約束はできませんけれども、いろいろ御発言の中に考えなければならぬという点も確かにたくさんございましたから、そういうことも参考にしながら政令の案をつくる場合に十分検討をいたすことにいたします。
  240. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に、来年の七月からやりますね。これははっきりしておきましょう。
  241. 三木武夫

    三木国務大臣 国会の予定が少し延びていますから、したがって、前のような国会の順序でいった場合には七月と言ったわけでございますが、多少実施が延びる場合もあると思うのですよ、国会が延びてまいりましたからね。しかし、できるだけ七月を目途にして努力をいたします。前は七月と申し上げた、これは国会がこんなに会期の延長などがありましてずれてきましたからね、この場合は七月からやるとは申し上げられない、多少の時間的なおくれもある場合がある、できるだけ早くやりたいということでございます。
  242. 佐野憲治

    佐野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十六分散会