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1973-04-17 第71回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月十七日(火曜日)     午後零時三分開議  出席委員    委員長 佐野 憲治君    理事 登坂重次郎君 理事 林  義郎君    理事 森  喜朗君 理事 小林 信一君    理事 島本 虎三君 理事 中島 武敏君       戸井田三郎君    羽田野忠文君       松本 十郎君    村田敬次郎君       阿部喜男君    木原  実君       土井たか子君    木下 元二君       岡本 富夫君    坂口  力君       小宮 武喜君  出席政府委員         環境政務次官  坂本三十次君         環境庁長官官房         長       城戸 謙次君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁自然保護         局長      首尾木 一君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         通商産業省公害         保安局長    青木 慎三君         通商産業省公害         保安局参事官  田中 芳秋君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  相川  孝君         厚生大臣官房審         議官      福田  勉君         農林省食品流通         局消費経済課長 堤  恒雄君         農林省食品流通         局食品油脂課長 籾山 重廣君         通商産業省重工         業局製鉄課長  佐藤 真住君         通商産業省鉱山         石炭局参事官  飯塚 史郎君         通商産業省鉱山         石炭局石油業務         課長      根岸 正男君         運輸省航空局飛         行場部長    隅  健三君         建設省河川局治         水課長     栂野 康行君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 四月十七日  辞任         補欠選任   阿部喜男君     木原  実君 同日  辞任         補欠選任   木原  実君     阿部喜男君     ————————————— 四月十六日  公害防止抜本的対策に関する請願増本一彦  君紹介)(第二七九三号)  同(八木一男紹介)(第二七九四号)  同(有島重武君紹介)(第二八四一号)  同(八木一男紹介)(第二八四二号)  日光国立公園尾瀬地区自然保護に関する請願  (山田芳治紹介)(第二八八五号)  同(島本虎三紹介)(第二九三四号)  同(辻原弘市君紹介)(第二九三五号)  同(山口鶴男紹介)(第二九三六号)  同(山田芳治紹介)(第二九三七号)  同(吉田法晴紹介)(第二九三八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公害対策並びに環境保全に関する件      ————◇—————
  2. 佐野憲治

    佐野委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  3. 木原実

    木原委員 お許しをいただきまして、千葉ニッコー食用油有毒物混入をした製品が多量に出荷をされたという御案内の問題につきまして、お伺いをしたいと思いますけれども、最初にそれぞれ今日ただいまの時点まで当局調査をなさっているはずでございますから、まず警察のほうから調査概要についてひとつ御報告をお願いします。
  4. 相川孝

    相川説明員 お答えいたします。  ただいまお尋ね千葉ニッコー株式会社ジフェニール混入食用油事件でございますけれども、これは本年三月十五日以降熱媒体ジフェニール混入した食用油千葉ニッコー株式会社販売ルートに乗せたということで、千葉警察本部では千葉県の当局と密接な連絡をとりながら現在鋭意調査を進めておるところでございます。  まず、千葉県との密接な連絡と申しますと、具体的には四月の十三日千葉県側と警察側合同対策会議、打ち合わせを持っております。そしてその後必要な捜査を進めておるわけですが、十四日には工場関係者五名から事情を聴取いたしております。それから、十六日には午後二時半から夕方の七時半までかけまして千葉ニッコー工場会社のいわゆる家宅捜索捜索、差し押えを行なっております。人員は大体二十名ぐらい、市原警察署千葉警察本部特別捜査本部人員をこれに充てました。そしてこの捜索では工場食用油製造工程に関する資料とか、あるいは生産日報とか、あるいは出荷伝票製品検査結果の書類、あるいは熱媒体に使ったジフェニールを二かん、あるいは二月二十一日から四月十日までに精製されました食用油を全部で七十六種百五十六本ほど押収いたしております。関係書類や物件で合わせて二百九十四点押えてきております。いまこれを鋭意検討を進めておるところでございますが、なお近く脱臭塔の解体を含みます検証を行なう予定でございます。  このニッコー工場容疑食品衛生法第四条違反ということでございますけれども、法律的な検討とあわせて、そのような必要な捜査を行なっておるところでございますが、この種事件は、申すまでもなく国民生活にたいへん密接な関係を有するものでありますし、私ども警察といたしましては、今後厳正な捜査を積極的に進めてまいる所存でございます。
  5. 木原実

    木原委員 あとでもう少し報告について聞きますけれども、これは少し順序が逆になったかと思いますが、厚生省でいままで掌握になりました問題点、簡単にひとつ要約をして御報告願えませんか。
  6. 福田勉

    福田説明員 お答えいたします。  事件概要は、ただいま警察側からもお答え申し上げたとおりでございまして、一番問題点になりますのは、こういうような有害あるいは有毒と思われる異物が混入いたしまして、それが消費者のいわゆる流通ルートに乗ることでございます。この点は現に厚生省といたしましては差しとめるという態度でございまして、事件のわかりました四月十日までの製造にかかる分、二月二十日から四月十日までの製造にかかるいわゆる食用油につきましては、全部販売停止、移動の禁止並びに製品回収を、関係都道府県を督励いたしまして鋭意実施中でございます。その間生産されましたのが約二千四百トンぐらいでございますけれども、目下約七百二十トンの回収を終わったという状態でございます。なお今後強力に続けてまいりたいと思っております。  と同時に、この毒物人体にどういう影響があるかという問題も大事な問題でございまして、これの分析を現在国立衛生試験所でもって実施しておるわけでありまして、近くその結果が出てまいります。その結果に基づきまして、人体の健康に対する被害の問題あるいは分析に対する今後の扱いの問題という点をさらに検討してまいりたいと思っております。  なおそのほか、食用油製造工場に対しましては、当該千葉ニッコーはもちろん営業停止処分にいたしておりますけれども、その他の食用油製造工場に対しましても一斉に総点検を実施することにいたしまして、現在通達を流して、関係各県で準備中でございます。
  7. 木原実

    木原委員 幾つか問題があるわけですけれどもビフェニールを含む熱媒体ダウサムA、これの毒性については不明な点がまだあるという話でございますけれども、これについて不明な分を含めて、どの程度毒性があるか、その一番原点になる問題についての見解を聞かせてください。
  8. 福田勉

    福田説明員 当該熱媒体ダウサムAといいまして、ビフェニールとそれからビフェニールエーテルの共融物質でございます。ビフェニールエーテルが七割、ビフェニールが三割の共融物質でございます。  それから、千葉ニッコー熱媒体として使用しておりましたのは、ダウサムAと同時にKSKというものを混合いたしまして熱媒体として使用しておりますが、その割合は、いまわかっている時点で申し上げますと、大体ダウサムAKSKは四対六という混合比率で使っていたというふうに称されています。なお詳細については、現在調査中でございますのでつまびらかにいたしませんけれども、この毒性の問題につきましてはまだ確たる資料がございませんで、アメリカ等の外国の資料、文献、それから日本におきます若干の実験等の結果を見てみますと、急性毒性につきましてとあるいは慢性毒性につきましてと両方ございますけれども急性毒性につきましてはPCBよりもはるかに弱い。一説によりますと約三分の一程度ということがいわれております。さらにその計算でまいりますと、慢性毒性につきましては九分の一程度というようなことがいわれている学説もあるわけでございます。さらにそれが人体に及ぼします影響につきましては、必ずしも十分な知見が得られておりませんので、今回の分析数値を見てさらに専門学者等調査いたしたいと思うわけでございます。
  9. 木原実

    木原委員 これは確たる資料もない、意見がある程度だ、こういうことなんですが、その辺が実は不安の根源なんです。事件のいきさつその他につきましては、行政上の措置その他の問題でいろいろ問題があるわけですが、しかし国民にとりましてある意味で一番不安なのは、どうも毒性があるらしい、しかし具体的に人体にどういう影響があるのかもはっきりしない。はっきりしない部分についてこれは非常に不安があるわけですね。だから症状が出てみないとわからない、こういう姿があると思うのです。それならばそういう物質熱媒体という形で、たとえば食用油製造工程の中にまじる可能性が全然ないわけではないわけですから、どうして使用させたのか、さかのぼってその点を詰めなくちゃならぬと思うのです。ですからわからないというのは、おそらくいろいろ学界の水準の問題その他の問題があるのでしょうけれども、しかし不明なまま熱媒体に、たとえば商品として許可をした、使用した、この責任は、これはどういうことになるのですか。
  10. 福田勉

    福田説明員 製造工程そのものについては、農林省許可にかかわる製造工程上の問題でございますので、食品衛生法上からは、おっしゃるような熱媒体はもちろんなるべくそういうものは混入しない前提でもって行なっております。しかしながらそういう問題がございますので、熱媒体は今後総点検いたしたいということで、現在対策を考慮中でございます。
  11. 木原実

    木原委員 あなたのほうに責任がないというのですか。それじゃ私は責任官庁責任者を呼んでもらいたいと思うのです。
  12. 佐野憲治

    佐野委員長 関連質問申し出がありますので、これを許します。島本虎三君。
  13. 島本虎三

    島本委員 いまの答弁では、これは厚生省怠慢になるじゃありませんか。PCBの三分の一程度毒性だということがわかっているのです。そのほかに慢性については九分の一程度影響力しかないということを言っております。それならばなぜ、分解しにくい、排出しにくい、こういうようなことまでわかって、そしてPCBとの対比までできておって、発ガン性の問題であるとか催奇性の問題であるとか、または繁殖試験の問題であるとか、それから胎仔試験であるとか慢性毒性試験であるとか、こういうものをきちっとして、そしてこれを熱媒体として使ってもよろしいということで許可しないのか。PCBの場合には国会ではっきりこの問題は決議までしているのです。そしてこの問題に対しては各省庁の大臣から、責任をもって今後はこれに当たるということを言っているのです。依然としてこういうものが、まあ官庁農林省であろうとも、出てきたということに対しては、これはやはり行政の怠慢である、こういわざるを得ないと思うのです。禁止しないで許しておいたというこの責任、これからやるといったって、国会でこれは何回指摘されたらやるのですか。前回指摘されたのは去年でございましょう。去年やられてまだ全部実現していないのですか。これはやはり私はただいまの答弁としては納得できませんが、厚生省としての態度を伺います。
  14. 福田勉

    福田説明員 お答え申し上げます。  熱媒体食用油等食品製造に使いますことは、たとえばこれは脱臭剤として使うわけでございますけれども脱臭工程におきましてそういうような毒物に類するものあるいは毒物を使うことは、ある程度は使わないようにするということが一番理想的でございまして、そういうような方向で今後農林省とさらに詰めて行なってまいりたいと思っております。  なお、この問題につきましては、先生おっしゃったようにPCBの問題がカネミ事件で出ております。私たちもその轍を踏みたくないということで指導していたわけでございます。ほぼPCB食用油製造工場におきましてはこのダウサムあるいはKSKというようなものに切りかえてはおりますけれども、ここでは残念ながらダウサムそのもの事故も起こったわけでございまして、この点はおっしゃるとおり総点検いたしまして、農林省とともにその方法について善処してまいりたいと思っております。
  15. 島本虎三

    島本委員 これは他の人にそれを言うならば、ある場合はここを免れることはできるかもしれない。浦田環境衛生局長は去年はっきりそれを言っているのです。去年言っていながら、一年たっても、これからやるとするならば、行政の姿勢が悪いじゃありませんか。これはこういう熱媒体に使うことを禁止すべきじゃなかったのですか。これは政府責任です。今後はこういうようなことのないようにすべきです。  それと同時に、数回にわたってこれは事故があったのですが、事故があるたびごとにそれをだれが点検し、だれが許可したのですか。そのことは厚生省は知っていたのですか。精製の課程で事故があって、その事故の個所を直してまた出荷した、出荷するようにして二、三回やはり事故があった。あったのです。厚生省はそれを知らないのですか。そういうようなものをそのまままた出荷許可を出していた。許可していないとするならばこれは重大です。許可していたとしても重大です。これはやはり私は政府態度がどうも怠慢だと思う。この点ではあなたのほうばかり責めてもしようがない。これをやっているのは通産省ですか。農林省ですか。だめですよ、こういうようなことでは。検査をしたのですか検査をしないのですか。そういう報告を受けていましたか。
  16. 福田勉

    福田説明員 この千葉ニッコー食用油につきましては、三月十五日に、いわゆる脱臭装置コイルパイプに一ミリの穴があいて、そこから熱媒体が漏れていたという事実を、千葉県がつかみましたのは四月九日でございます。そして厚生省にその情報が入りましたのが四月十日でございます。その間約二十五日間ぐらいは、会社はこの事実を隠蔽して、再精製の上出荷したと、当時調べの結果わかったわけでございます。その後の調べによりますと、その再精製もしていなかったというような事実をつかんだわけでございますが、厚生省が直ちにその回収等指示の手を打つことができましたのは、四月十日でございます。
  17. 島本虎三

    島本委員 そこが重要なんですね。どこまでが厚生省で、どこまでが農林省で、どこまでが県なのか。もしそれを全部うその報告をしながら出荷したというなら、これは刑事問題でしょう。刑事問題としてこれは重大な問題じゃありませんか。これはやはりいまやるんでもまたおそいのです。犯人ができてからやるんじゃだめなんですよ。出かさないうちに、こういうような問題は、そのおそれがある場合、公害の場合には、やらなければならないのですよ。こういうようなことを覚えておいてやったならば、両罰規定でやった人が罰せられるのですから、そういうような重大な公害に対して、これを全部やられてからようやく警察当局が立ち上がったのではおそい。その前に、従業員会社当局がこれをちゃんとやらなければならない義務があるのです。そういうようなものは、もう両罰規定でそれをやらないものは罰せられるのです。これは平気で二、三カ月遊んでいたようです。この点は、警察当局、どういうようなことになっているのですか。県当局が悪いのか、警察当局が悪いのか。
  18. 相川孝

    相川説明員 お答えいたします。  先生ただいま御指摘のように、警察は、音なきに聞き姿なきに見て犯罪捜査に当たることができるのが一番すばらしい姿とされております。しかし、やはり事件端緒をつかめないことには、私ども理念の上ではそのように努力しておりますけれども、現実問題としては、犯罪情報なり犯罪事件端緒をつかんでから動き出すということになります。  日ごろ、そういう食品公害といいますか、食品衛生法違反等国民の健康や生活を侵害するようなおそれのある事犯、そういうものにも十分力を入れて、違反端緒をつかみ、早期の捜査内偵活動を進めるべきでしょうが、今度の場合につきましては、私どもも県からの連絡によって初めて食品衛生法違反容疑がその会社にあることを知ったようなわけでございます。したがって、やや立ちおくれという御指摘でございますけれども、そのような事情もございましたが、私ども今後とも十分情報活動といいますか、そういうものを充実してこの種事犯に対処していきたい、このように考えています。
  19. 木原実

    木原委員 毒性の問題につきましては、あと農林省責任者が来るそうですから……
  20. 佐野憲治

    佐野委員長 いま見えましたから……。
  21. 木原実

    木原委員 農林省、見えましたね。——さっそくですが、いま例の千葉ニッコー食用油毒物混入をしたという問題で論議をしておるわけですが、その中で、熱媒体に使いました食用油の中に混入をした毒物毒性について、少し意見を聞いておるところなんです。  問題は、いまも説明があったわけですが、熱媒体の中にダウサムAあるいはまたKSK二六〇というようなものがあるのですが、これの毒性について聞きましたところが、必ずしもどういう影響があるか不明なところがある、こういう御答弁をいただいているわけなんです。問題はこういう不明な分野人体にどういう影響があるかわからない、あるいはまたわかっておる分野だけでもPCBの三分の一ぐらいの毒性だろうというようなことが指摘されている。一方で毒性がかなり明瞭であり、他方で人体にはまだどういう影響があるかわからない、こういうようなものをどうして食用に供する油の製造工程の中で熱媒体として許したのか、こういうことが実は問題になっておるわけなんです。  そこでお伺いしたいわけですが、食用油製造する過程の中で、最近、農林省御存じのように、脱臭とか脱色とかということを強めるという傾向がどこの油会社にも強いわけですね。そういうことが前提にありながら、いまになってはおそいわけですけれども、どうしてこのような毒性のものあるいはまた影響の不明な分野が残っておるものを許可したのか、こういう問題が出ておるわけなんですが、御見解を聞きたいと思います。
  22. 籾山重廣

    籾山説明員 お答えいたします。  私どもといたしましては、カネミ油症事件が起きましたPCBの問題がありましたあと、私ども業界指導の立場にあります関係から、日本油脂協会の中に専門委員会を設けまして、PCBにかわる熱媒体研究をその専門委員会がいたしました。その結果、前から使ってもおったわけでございますけれども、現在使われておりますところのダウサムとかあるいはKSKというものに転換するという方向で今日まで至っておる次第でございます。  毒性につきまして、正直申しましてさだかなものでございませんでしたが、毒性ははるかに少ないという考え方のもとに、また、先生指摘のような許可をするというようなことでございませんで、媒体のことでございますので、特に禁止をしないということでいままで続いておったものでございます。
  23. 木原実

    木原委員 私はおかしいと思うのですね。すでにたとえばカネミというたいへん悲惨な経験をわれわれは持っておるわけですね。今度の事故だって、型からいえばあれと同じような形で事故が起こっておる。そのときにまぎれ込んだものがPCBであるかダウサムAであるか、これの違いだけなんですね。そうすると、われわれのあれだけの社会的な大きな波紋を呼んでおる事故経験というものを少しも行政の上で生かしていないじゃないかといわざるを得ないのですが、相対的に毒性が少ないから禁止をしないという形で黙認をしてきた。それでは、こういうような事故が起こってみるというと、これは責任所在というのは一体どこにあるのですか。行政上の責任所在は一体どこにあるのかとわれわれは追及せざるを得ないのですが、その点については農林省としては、いまお答えになりましたように、相対的に毒性が低いから禁止をしないという形で許したのだ、ただそれだけのことですか。そしてまた今度のことについてはどのような行政上の責任を感じられるのですか。
  24. 籾山重廣

    籾山説明員 お答えいたします。  毒性についての研究が十分でなかった点は、私どももたいへん遺憾だと思っておりますので、今後は厚生省のほうとも連絡を密にいたしまして、毒性検査等に努力いたしまして、これに対処したいと思います。私ども業界に呼びかけまして、厚生省のほうからも御指示があったようでございますけれども、とりあえずは各工場脱臭装置についての総点検を行なうということを昨日、下部下部といいますか、個々のメーカーに指示いたしまして、さっそく装置点検を一斉に行なうというふうに定めた次第でございます。また、こういったことは今後起こしてはならないことでございますので、この点につきましては厚生省とも十分連絡をとりつつ、二度とこういうことの起こらないように努力いたしたいというように考えておる次第でございます。
  25. 木原実

    木原委員 時間があまりありませんから、あなた、なるべく近いところにすわっておってください。  これは課長、先ほども同僚委員から関連質問がありましたけれども、この種のものを扱うについては、この委員会をはじめ、国会の中でも、さんざんに、いままで議論があったことなんです。それが少しも行政の上に反映をしていないということが一つ。  それから、毒性がある程度わかっている、しかも不明の分野がある。そのようなものを、これだけ食品公害だの何だのということが騒がれている中で、あえて黙認をしてきた。業界が相対的に毒性の少ないのに転換をするんだ、その方向だけに指導のウエートを置いてやったことは、こういうことが起こってきた上の結果論みたいになりますけれども、これは措置としては十分でなかったと思います。  それから、これから厚生省も含めて総点検をやるんだというのですね。いままで点検をやっていないのかといいたい。実際問題としてやっていないのです。脱臭装置につきましては消防庁などの関連があります。各官庁のそれぞれアプローチする分野があるわけなんですけれども、あれだけ、カネミのような体験を持っておりながら、食品製造工程に対する行政上の監督なりあるいは指導なり監査なり検査なり、そういうものが、絶対やっていないとはいいませんけれども、ともかく総体的に非常に薄い。そういうことが今度の結果でもあらわれておるわけです。これから総点検というのは、やるのはやらなければならぬわけですけれども、今度のことについてもどれだけ事前に、たとえば具体的にいって、この工場について点検をやっていたのか、こういうことを聞きたいわけですが、食品衛生関係から厚生省、どれくらい過去に点検をやったのか、実績をひとつ示していただきたいと思います。
  26. 福田勉

    福田説明員 お答えいたします。  食用油製造工場につきましては、かつては製造許可にかかってなかったのでございますけれどもお尋ねのようにカネミの問題がございまして、四十四年四月以降製造業の許可業種にかからしめているわけでございます。したがいまして、食品衛生監視員が監視をすることになっております。食用油のニッコーにつきましても、四十七年度といたしましては、年二回検査を実施しております。
  27. 木原実

    木原委員 農林省にもう一つ、前後しますけれども、伺っておきたいと思いますけれども、先ほどもちょっと触れましたように、油の脱臭あるいは脱色、私どもしろうとですけれども、必要以上にそういう工程を強化しているのではないか、こういう感じがするわけなんです。先般も、何年か前に問題になりましたけれども、ゴマ油のような場合を見ましても、脱色といいますか、そういう方面にたいへん力を注いだような製造が行なわれているように、われわれは見受けておるわけなんです。そういう傾向からしますと、どうしても、そのために毒性のある媒体その他を使わなければならぬという方向に走るのは当然であります。ですから、今度のことに関連いたしまして、商品としてある意味で見ばのいいようなものにするんでしょう、脱臭とか脱色とか、かなり強力な毒性媒体などを使ってそういう作業をやることについて、立ち入った再検討をしていく側面があるような感じがするわけですが、そういう点についてはお考え方はどうですか。
  28. 籾山重廣

    籾山説明員 お答えいたします。  脱臭その他の過程が従来よりも強化されているかどうかという点については、私ども、技術的に十分承知していない面がございますけれども先生指摘のように、油の製造技術そのものは進んでおるというふうに聞いておりますものですから、そういった面があるとすれば、今後、油の製造過程のあり方についても、私どもといたしましては十分研究いたしまして、業界に正しいあり方についての指導をすることを考えたいというふうに思っております。
  29. 木原実

    木原委員 それから厚生省のほうに、先ほど、昨年二回やった。これは本来は四回やることになっているわけですね。しかし、いまそのことは問いません。  今度事故が起きました。いろいろと県の警察その他が現場を調べているわけでありますが、一ミリの穴があいていたということですね。この一ミリの穴というのは確認をしているのですか。
  30. 福田勉

    福田説明員 ただいまお尋ねの点は、一ミリの穴ということを事情聴取している段階でございます。十九日と聞いておりますが、警察当局も立ち会いの上で解体、確認をいたしますので、その際に明瞭になると思います。
  31. 木原実

    木原委員 警察のほうもそういうことですね。塔を解体して、それを調べるということですか。
  32. 相川孝

    相川説明員 検証、差し押えにあたりましては、脱臭塔の解体が必要かと考えます。それからパイプの穴あきの状態も、そういう大がかりな作業をやらなければとても確認できない状態であるやに聞いております。
  33. 木原実

    木原委員 この穴はすでに工場の手によって修復されたという、ある意味では証拠隠滅になっている。一ミリの穴が一つあいていたというのは工場側の説明なんですね。私ども、そういう説明を聞きました。しかし、それが一カ所で、一ミリであったかどうかということは、いまになっては検証できない。しかも、ほかの現場の情報によりますと、もうすでに摩滅寸前のところが十カ所以上あるというのです。そういう状態なんです。ですから、はたして一カ所であったのか、一ミリであったのかということについては、いまとなっては工場の言い分しか信用ができない。ところがこの工場の言い分たるや、御案内のとおり、出荷の問題についても、私はちょうど土曜日現場におりましたけれども、午前中に私が県から聞いた事情と、午後になっての社長の言い分とがくるっとひっくり返るような工場です。そうすると、はたして一ミリであったのかどうか、あるいは一カ所であったのかどうかということについては、どれだけ毒性のものが混入したかということを考える場合に、非常に大きな問題だと思います。それが残念ながら、いま検証できないような姿になっている。私は、ある意味ではまことに憤慨にたえないわけなんですが、どうですか、それを的確に、解体をして検証して掌握できますか。
  34. 相川孝

    相川説明員 私も現場をまだ見ておりませんので、何ともはっきりは申し上げられませんが、脱臭塔の状況からいたしまして、解体、検証をすることによって内部の状況はどうなっているか初めてはっきりするもの、確認できるものと考えております。
  35. 木原実

    木原委員 この事故が起こったということも長期にわたって隠蔽をしていたというお話が先ほどございました。残念ながら工場の中から報告があったわけではございません。たまたまそこで働いていた下請関係の方が見るにたえかねて市のほうに通報をした、こういうことになっているわけなんです。事態はきわめて悪質だと思うのです。それだけに一番肝心な穴についても私どもは疑ってかからざるを得ない、そういう前提があるわけなんです。しかもなぜ穴があいたかということについては、たとえば県当局調査はおそらく振動であろう、こういう推測をいたしておる、それから工場のほうの説明は、かなり熱の差が出てくる、非常に高熱になっていく過程の中でその温度差によってそういう故障個所が出るのだろう、こういうようなことを言っている。これらについても、原因についても客観的にまだ私どもは掌握することができない。これだけの事故が起こっていながら、どれだけの穴があいてどれだけの油が流れ込んだのかという確証もあがらない。それから、なぜそういう事故が起こったかということについても——事故が起こってからもうすでに一カ月たっている。問題が明らかになりましてからももうすでに一週間近くなっている。しかも油はもうすでに使用した人たちもいる、こういう状態になっている。それらについての責任というのか検証というのは、これは一体どこの責任なんですか。厚生省ですか、消防庁ですか、農林省ですか。
  36. 福田勉

    福田説明員 一ミリの穴が確認できないのはいま申し上げたとおりでございますけれども、これは十九日でございますか明らかにいたしまして、ぜひ原因をはっきりさせたいという考えでおります。  ただ会社側のいままでの発言等からかんがみまして、三月十五日に穴があいて十六日に修理をしたということでございますが、必ずしもそのあと製品についても全部白というふうには私ども思えない状況でございますので、事件が発生いたしました前後、二月二十日から四月十日まで全製品について販売禁止回収をかけているわけでございまして、その点はせめてもの措置だというふうに思っておりますが、今後その穴等の原因につきましては、これは警察当局が検証の際はっきりされるわけでございますが、食品衛生法の施設の管理という意味からいきましては、厚生省におきましても責任をもって明らかにしてまいりたい。さらに農林省製造管理、生産管理という意味から共同でタッチしてまいりたいというふうに存ずるわけでございます。
  37. 木原実

    木原委員 事が事だけにすべてを相当疑ってかからなくてはならぬ側面がずいぶんあると思うのです。課長のお話の中にもありましたけれども会社報告によって、すべて修理が終わった、二十日の段階ですか、精製に入った。そのあと製品についても現実に会社に苦情が来ているわけです。そういうようなことを考えますと、これはどこまでの事態を疑っていっていいのかという問題が残るわけです。しかしそれにしても日常の現場に対する検査その他が、先ほど昨年十月ですか二度やったということがございましたけれども、この当局のやった検査内容だって私は疑わざるを得ないような感じがするのです。実際に機械をとめさせて、事故が起こる可能性を含めて全部やったのか、会社報告だけ聴取して引き揚げたのか、その辺の中身にも問題はかかわってくると思うのです。たとえば、今度は、会社自体が自主検査をやっております。二月二十日ですか。この日付だってはっきりしないのですよ、記憶ですから。二月二十日でしたか、二十一日でしたか、二十三日でしたか、これは私の手元にある報告でもそういうことになっているのです。自主検査はやったというのは会社の言い分なんですね。台帳もないのですよ。二月二十日に検査をやりました、こういう会社側の言い分がある。裏づけになる検査台帳なんというものはないのです。ですから二十日だったか、二十一日だったか会社の人によって違うのです。しかしそういうようなことを考えあわせますと、これはどうしても監督官庁の負うべき責任が多いと思うのです。そんなずさんな工場の管理で食用の油を製造させていたのかとあらためてりつ然とするわけなんです。これはいろいろ原因があるでしょう、ありますけれども、出てきた結果についていえばそういう事態が起こっているのですからね。どうですか。
  38. 福田勉

    福田説明員 監視につきましては、ただいまお尋ねのとおり四十七年中に二回実施いたしたわけでございますが、これは食品衛生監視員が立ち入りいたしまして、貯溜槽の中までは見ておりませんけれども製品についての安全検査を実施いたしております。  それから次の問題でございますけれども会社の自主検査、これはおっしゃるように、どうもこの千葉ニッコーの帳簿が非常にずさんでございますので若干問題があろうと思いますけれども、岡山に親会社の日本興油株式会社というのがございまして、そこの水島工場がございますが、そこで受け入れたものに二月二十日のラベルが張っておりますので、二月二十日ないし先生のおっしゃるようなあるいはその前後に定期検査をしたことは事実のようでございます。
  39. 木原実

    木原委員 その会社がどの程度検査をやるのかも問題ですが、いまお話しになりました岡山にある親工場検査体制というのは一体信頼できるようなものですか、どうですか。
  40. 福田勉

    福田説明員 親会社でございます日本興油株式会社検査体制につきましては、検査担当者十一名おりまして、うち大学の農芸化学等専門の課程を経ましたものが五名配置されております。さらに機械設備といたしましてはガスクロマトグラフィーあるいは薄層クロマト、分光光度計、赤外分光光度計等一応の検査体制は整っているというふうに考えられます。しかし企業において行なわれます試験結果につきましては、先生おっしゃるようにわれわれも一応参考程度にとどめまして処理してまいりたいというように考えております。
  41. 木原実

    木原委員 事故を起こして毒物混入した。それが、本社のほうで検査をした。その中に九PPMという報告があがってきているというわけですね。だから私の心配なのは、はたして本社のほうのそういった検査体制の中であがってきた九PPMというのが信頼が置けるのかどうかという問題があるわけです、衛生研究所その他で検査をやっておるからちゃんとしたものがいずれ出るのだろうと思うのですけれども、そういうふうに詰めてまいりますと、事件が起こりまして以来、先ほども申し上げましたようにすでに一カ月、そして明るみに出ましてからも、あれは十日でしたか、もう一週間近くたっているわけです。それなのに一向何も明らかにされないまま、ただ製品回収せよ、こういうような事態だと思うのです。ですからこれは、われわれの委員会もあす現地の調査などをやるということだそうですけれども、県の体制にしたってただてんやわんやでございまして、ふだんの食品衛生行政といいますか、末端は哀れなものなんです。これは私ども見ておりまして、私どもはもっと検査をきびしくやれ、こういう立場ですが、実際問題としてやれません。そういう状態が放置をされていて、そしてこの事故が起こった。起こってみたら、何といいますか企業のほうは、食品衛生法なんていうものはもう業者ですから一通り知っているはずですけれども、監督官庁をなめちゃっているわけですね。それだから先ほど来話がありましたように事態の隠蔽をはかる、あるいは妙なごまかしをやって出荷をする、社長の一週間ほどの態度の中にもそういうものがあらわれておるわけですね。私は、だからこうなりますと、国民の不安を去る上からも、あるいはまたこの種の企業のあり方をきびしく問いただす上からも、何よりも責任のある官庁が、やはりそれぞれ責任所在を明らかにしてきちんとした対応策をとってもらいたいと思うのですが、製造工程農林省であり、直接の検査の衝に当たるのが厚生省であり、塔の問題は消防庁だ、いろいろ役所の分野が重なっておるわけです。しかしそれにいたしましても、それだけじゃ済まないわけなんです。ですから、やはり食品行政の末端の体制というものをこの機会に整えるということを前提に置いて、起こりました事態についてはもっと敏速にやってもらいたいと思うのです。これこのままじゃいつ——つまり結局うやむやのままに終わってしまう、病人が出なかった、症状の訴えが出なかった、まあまあそれでということで終わる可能性があります。そういうことではこれは非常に禍根を、もうすでに禍根が起こっているわけですから、敏速にひとつ行動してもらいたい。  それからいま私が幾つか疑問点をあげました。これだけじゃまだ終わらないわけですけれども、それらにつきましても納得のいく追及をひとつやってもらいたい、こういう要望を申し上げておきたいと思います。もう時間がすでに過ぎておりますのでこれで終わりますけれども、ぜひいまのような私の要望に対しまして、これからの対応を急いでもらいたい。お願いをいたします。  終わります。
  42. 佐野憲治

    佐野委員長 中島武敏君。
  43. 中島武敏

    ○中島委員 先ほどからの質問に多少ダブるところもあろうかと思いますが、非常に重要な問題ですので、なおいろいろお聞きしたい点があります。  この問題は早く国民の不安を解消しなければならないという事態に直面しておるわけですが、そういう点でまず第一に私は、すでに販売されている量については大づかみなことを先ほど報告がありましたが、その行き先ですね、これは全部わかっているのかどうかということをまず最初にお尋ねしたいと思うのです。
  44. 浦田純一

    浦田政府委員 お答えいたします。  ただいま一部出荷伝票の整理が終わってないものもございますし、調査中のものもございますが、千四百二十五トンの出荷先につきましてはおおむね私どもとしては県の報告を受けて把握いたしておるところでございます。
  45. 中島武敏

    ○中島委員 つまりその行き先がわかっているというのはどの範囲で言っておられますか。すでにずっと家庭の中にまで入ってしまっている、あるいは学校の中にも入ってしまっているというような問題があるのですね。そういう意味で追跡調査を非常に必要としていると思うのです、これは。何県の範囲に販売されたということではなくて——いまおっしゃったのはむしろそんなような意味じゃないかと思うのですが、もっと詳しいところでどうなっているのかということであります。
  46. 浦田純一

    浦田政府委員 いま私どもが把握している段階はおおむね各県の卸商が中心で整理されております。さらに末端の消費者への経路につきましては現在まだ追跡調査中でございまして、もうしばらく時間をおかしいただきたいと思います。ことに千葉ニッコー株式会社におきます一番汚染の疑いの濃い油につきましては、行き先が名前で申し上げますと、月島食品四台、三十九・八トン、中島製菓一台、五・〇トン、花王石鹸一台、四・九トン——台というのはみんなタンクローリーの台数であります。キューピー社に十三台、百三十三・六トンというようなことで、なお一般小売り用に百二十トン、先ほど申しました四つの業者での合計は百八十三トン余りでございまして、合計して三百三トンという、一番疑いが濃いと思われております油につきましては以上のような状況で、回収もいま全体といたしまして三百三トンのうち二百十四トンといったようなことで、差し引き約九十トンにつきましては現在さらに調査中でございます。
  47. 中島武敏

    ○中島委員 これは単に業者とかあるいは卸商だけではなくて末端に至るまでの追跡調査をぜひ早くやる必要があると思うのです。そのことがやられませんと国民の不安というのはなくならないわけです。そういう点からいって、繰り返して申し上げますが、やはり一番末端までの追跡調査を全力をあげてやる、同時に回収ということがいますぐに行なわなければならないことだというように思います。  それに関連してなんですが、すでに学校給食用にかなり使われているということが明らかになってきているようですが、どの範囲で学校では使われているものでしょうか。かなりわかっておりますでしょうか。
  48. 浦田純一

    浦田政府委員 新聞紙上等で個々の例については報告されておるところで先生も御承知だと思いますが、私どもといたしましては文部省を通じまして県の教育委員会などの御協力を得ながら、いま、報告していただくように、そしてその上で整理いたしまして報告したいということで、たいへんどうも時間が経過して恐縮でございますけれども、なお今後ともできるだけ早くそれの実態を末端の消費者に至るまで把握いたしまして、ことに学校給食用につきましては、相手が学校の児童でございますので、健康上の不安というものに対する対策も含めまして早急に手を打つようにいたしたいと思います。それらの概略につきましてはすでに私どもは文部省あるいは私ども関係の筋を通じまして各都道府県に通達、指示いたしたところでございます。
  49. 中島武敏

    ○中島委員 きょう文部省は来ておられませんね。
  50. 佐野憲治

    佐野委員長 来ていません。
  51. 中島武敏

    ○中島委員 ですから直接申し上げれば一番いいわけなんですけれども、少なくとも早く文部省のほうでもやらなければならないし、そのことを厚生省のほうでも、当然のことですが、全部掌握をしてやる必要があると思うのです。それで健康調査なんかもやはりやる必要があると思うのです。ぜひひとつ、きょう文部省来ておられませんけれども厚生省のほうからもそのことをはっきり言っていただきたいと思うのです。  次は、これは農林省になりましょうか、熱媒体のパイプのコイルに穴があいたということが原因のようでございますね。私が非常に疑問に思いますのは、こういう施設は許可制ではないのですか。これはどうなっておりますか。
  52. 籾山重廣

    籾山説明員 油脂製造工程は、原料をエキスペラーというのを使って圧縮をいたしまして、その後に抽出機によって薬品を使って油分を抽出いたしまして、そしてそこででき上がったものが原油となるわけでございますけれども、原油には色やにおいがついておりますし、また酸度も除かなければならないというようなことから、脱酸装置というものがその次の過程にございまして、脱酸の後に脱臭をする。これは加熱をして臭気を除き去るという過程でございます。そのあとに脱色という工程が入りまして、そして精製油ができ上がる、そういうことになっておるわけでございます。その工程につきましては、特に許可とか不許可というようなことはいまのところございません。
  53. 中島武敏

    ○中島委員 それは法規の上では許可、不許可の制度ではない。しかし私どもが考えて、きわめて毒性の強いものが食用油混入するという、そういう生産工程が許されてよいわけはないのです。そのことについて農林省のほうではどんなふうにお考えになっておられるのですか。
  54. 籾山重廣

    籾山説明員 脱臭装置、先ほどもちょっと同じような質問がございましたが、脱臭その他の精製過程が従来よりもより進められているかどうかについては、私よく詳細には存じておりませんけれども脱臭ということはもちろん必要な工程でございます。ただ、その施設は問題を起こすような熱媒体が漏洩するようなことのないような施設にしなければならないということになろうかと思うわけでございます。  そこで私どもといたしましても、さっそく四月の十二日付で、これは厚生省のほうからも御指示が出ているかと思いますけれども、総点検をするように、指導通達でございますけれども、私どもから通達を出しまして、それを受けました製油メーカーの団体が全工場を昨日の十六日に集めまして、各工場にこのことをしさいにおろしまして、十八日から工場をストップして点検をするというふうに運んでいる次第でございます。
  55. 中島武敏

    ○中島委員 これは事件が起きてしまってから騒いでいるわけですけれども、人間の口から入るものですから、安全性という点ではきわめてしっかり確保されているという必要がある問題なんですね。それが生産工程、製造工程の何か小さな事故によって食用油の中に混入するという、まさにそういうことが許されるということ自身に私は非常に重大な問題があると思うのですよ。この点ではいまから人を集めて総点検しているというふうに言うのですけれども、当然こういう問題は事前によく点検をされて、そしてそのしかるべき許可がなければ操業できないというような許可制にこれは本来するべき性質のものですよ。きわめて強い毒性のものを扱っていて、それが何の点検も受けないで操業ができる。事件は起きてしまう。起きてから騒ぐ。これは私は非常に残念なことのように思うのです。そういう点で総点検も必要だと思いますけれども、生産工程の中で異物が混入するというような、そういう生産工程自身が許されない、きちんとした事前の許可が必要であるというふうに私は改めるべきじゃないかと思うのです。  それからもう一つ、それとも関連してなんですが、先ほどこの毒性の問題についてお話がありました。それでこの毒性問題について、私もこれほど強い毒性のものは禁止するのが当然だと思うのです。またそういうことをいままでも要求してきたわけなんですけれども、この問題について今後どういうふうにされようと考えておられるのか。つまりこういうものは使わない、禁止するという考えなのか、あるいはそうでないのかということについてお尋ねしたいと思います。これはどこでしょうか。
  56. 浦田純一

    浦田政府委員 お答えいたします。  確かにこのような毒性のある物質熱媒体として使って、しかも万一穴があいた場合には、そこから漏れて直接に食品にまじるという危険性のある製造工程そのものにつきまして、私どもとしてはやはり関係の省庁のほうに強く要請いたしまして、その改善方の検討をお願いしているところでございます。  それから食品衛生法上の観点から、実はこれは前回起こりましたカネミ油症事件の前例にかんがみまして、このような食用油製造業につきましては、食品衛生法上の指定施設にいたしまして、特に施設の基準を設けるという定めをしたわけでございます。なお食品衛生法製品検査というものの命令を厚生大臣が下すことができます。またその品種をあらかじめ指定することもできます。こういったような規定を活用いたしたい。それで出荷の前の段階でもって安全性についてちゃんと検査するという体制を至急整えたい。  それから第十九条の十八、これは昨年の食品衛生法一部改正で新たに設けられた規定でございますが、第十九条の十八によりまして、有害もしくは有毒物質食品混入するおそれのある施設につきまして、厚生大臣はその施設の基準あるいは措置の基準を設けるという定めが設けられておるのでございます。この設けを私どもは早急に動かしたいということで、全国的にこのような有毒物質の使用状況について、当該施設につきましてその種類等を調査中でございまして、その矢先に今回の事件も起こったということはまことに遺憾なことでございますが、早急にこれも基準を設ける。そして再びこのような事故が絶対に起こらないように、私どもとしては全力をあげたいというふうに考えております。  なお、熱媒体そのものにつきましても、前回はカネミではPCBというより毒性の強い物質で起こったということもございまして、その後は、これはやはり農林省のほうにもお願いいたしまして、塩素系の熱媒体は使用を禁止してございます。  そういったようなことでございますが、さらにそれを一歩進めまして、より安全なものということへの切りかえなどできるだけの手を打っていくように、関係省庁にも一十分に協議の上進めてまいりたいと考えております。
  57. 中島武敏

    ○中島委員 いまの答弁の中にありました施設の基準というのは、すでにきちんとできているわけですか。
  58. 浦田純一

    浦田政府委員 昨年の法一部改正以前の施設の基準は、実は公衆衛生上の施設の基準ということで、都道府県知事がその実情に応じて設ける基準でございまして、たとえば鼠族、こん虫の駆除に対する考慮とかあるいは調理台等、そういった食品を扱うところの清潔の保持といったような一般的な施設の基準でございましたので、先ほど申しましたように、昨年設けられました新たな規定、第十九条の十八を活用いたしまして、有害、有毒物質に重点を置いた施設の基準あるいは行動基準といったようなものを早急につくりたいということでございます。
  59. 中島武敏

    ○中島委員 この事件が起きましてから、いろいろな総点検を開始されているようですけれども、現在点検は進行中だとは思いますが、しかし点検の過程において何か新しい問題が発見されておるかどうか、このことについてお聞きしたいと思います。
  60. 浦田純一

    浦田政府委員 ただいま御指摘の総点検、一斉立ち入り検査でございますが、これは明十八日から一週間という期間でもって実施しようという計画のものでございます。このやり方といたしましては、対象施設が全国で約三百八十五施設ございますが、食品衛生監視員を主体といたしまして、このような食用油製造業の専門家、油脂協会の協力を得まして実施しようとしておるものでございます。これには操業を停止いたしまして、ことに問題の熱媒体を使う場所、これを重点に、関連しているところをすべて一斉に詳細に点検して遺憾なきを期したいということでございまして、まだ詳細には上がってきておりません。(中島委員「いまから実施するわけですね」と呼ぶ)いまから実施するわけでございますので、もうしばらく時間をおかりしたいと思います。
  61. 中島武敏

    ○中島委員 事件が起きましてからもうすでに一週間ですかになるわけですから、ほんとうはもっと早くこれを実施してほしかったと思います。しかし、おそくともいいことはいいわけですから、これはぜひひとつきっちりと点検をやっていただきたいと思います。  それから最後にお伺いしたいのですが、今度の事件は知っていてやっているのですね。しかも、うその供述をしている。どういうわけでこういう人が、人間のきわめて健康にかかわるものを製造する責任者であったのかということを疑いたくなるくらいですけれども、この点について警察のほうはどうするつもりなのか。現在捜査中ですけれども、どうされるつもりか、聞かしておいてもらいたいと思います。
  62. 相川孝

    相川説明員 ただいま先生指摘のように、今度の事件国民の日常生活といいますか、健康と生命にたいへんかかわりのある重大な事件だと私ども認識しております。したがいまして、いま鋭意捜査中でございますけれども、真相といいますか事犯の内容を徹底的に明らかにしまして、ただいまのところは、先ほどお答え申し上げましたように、食品衛生法の第四条違反、その中に第二号と第四号とありますけれども、これは厚生省なり千葉県衛生部のビフェニール毒性検査結果を待って、いずれの条項を適用するか検討してまいりたいと思っておりますが、いずれにしましても、これにはそれぞれ罰条もございますし、単に個人のみならず法人の両罰規定もあるわけです。したがって、実態に照らして厳正な捜査というものを進めて、関係検察庁へ送致をいたしたいと思っております。
  63. 中島武敏

    ○中島委員 時間がないから私はこれで終わりますけれども、まさに厳正な措置、告発を必要としている問題だと思うのです。そして同時に、いままで御質問申し上げて御答弁のあった点ですね。これはやはり政府が全力をあげていまここでやらなければならないことだと思います。そのことを強く要求して、私の質問を終わります。
  64. 佐野憲治

    佐野委員長 岡本富夫君。
  65. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間があまりありませんから率直にお聞きしますけれども、まずこの千葉ニッコーの汚染油の問題で一番心配なのは消費者です。一般家庭です。これについて、これはテレビを見ると、食用油あるいはまたマーガリンですか、こういうものがちょっと出ておりましたけれども、ほとんどの方は知りません。新聞を見ますとお菓子ですかあるいはまたパン、これも最近わかったというのですが。ですから私は厚生省のほうで、この汚染油の入った、要するにこういうものは食べてはいけませんということを早く消費者に知らせることが大切であろうと思うのです。それは厚生省責任であろうと思います。それをただ県に指示した、それだけではいけないと思うんです。ここでひとつわかっているだけ全部を公表してください。これがまず第一です。
  66. 浦田純一

    浦田政府委員 私ども事件を知りまして、これは四月十日のことでございましたが、さっそく報道関係の方々にお願いいたしまして、その日からテレビあるいは新聞、ラジオ等を通じまして、消費者の皆さま方に品名、それから荷姿などにつきまして、周知徹底をはかることを御協力をお願いいたしまして、この点は非常な御協力によりまして、かなり国民の皆さま方にも徹底したのではないか考えております。しかしながら、その後いろいろとまたその他の品名、ことに二次製品等につきましても品名がわかってまいりましたので、私どもはそのつど、もちろん報道関係の皆さま方の御協力をお願いしながら、別途各都道府県を通じまして行政のルートに乗せまして、国民の皆さま方にその辺の周知徹底をはかってまいったところでございます。なかなか事件事件でございまして、繰り返しこういったことについては今後とも広く訴えていく必要があると考えております。  いまわかった品名の一覧表はここにございますが、非常に数が多うございますが……(岡本委員「それを読んでください」と呼ぶ)それでは読み上げます。  まず千葉ニッコー株式会社関係分でございますが、ゴールドタワー天ぷら油、ニッコーサラダ油、ニッコー天ぷら油、ニッコーサラダ油セレクトR、これは製菓業務用でございます。それからニッコーの菜種白絞油、ニッコーの大豆白絞油、ニッコー純正菜種油、ニッコー菜種精製油、これはローマ字でございますが、チョウ・ブランド・サラド・オイル、すなわち蝶印サラダ油でございます。それから蝶印純正菜種油、蝶印菜種油、蝶印菜種白絞油、蝶印大豆白絞油、大豆白絞油天ぷら油。  それから二次製品になりますが、キューピー株式会社関係分といたしまして、キューピーマヨネーズ、これは仙川工場の分と五霞工場分でございます。  それから月島食品工業株式会社関係分といたしまして、マーガレット一〇〇、マーガレット二〇〇、特せん揚油、ニューコーデング(S)、フライマック、シルバースター(SK)、プラスフレッシュ、プラスカスタム、プラスゴールド、ソフトマーガリン、マーガリン(GK)、マーガリン(GT)、マーガリンGWK、マーガリンGWK−S、シューファンデ(DX)、シューファンデ(DXIY)、マーガリン(GWK−O)、それからオリコ(W)、フレッシュファンデ、ケーキファンデ、ゴールドベイク、クリームファンデ、フレッシュスター。  それからミヨシ油脂株式会社関係分といたしまして、東京工場分、ミヨシマーガリンW、食卓用ミヨシマーガリン、白マーガリン、ニューフレッシュ、クリームベース、シャノン、特白マーガリン、ミヨシマーガリン、ミヨシマーガリンソフト、ミヨシソフトマーガリン。名古屋工場分といたしまして、フレッシュエースCPDX、ニューフレッシュエースCPDX、クリームライトマーガリン、ヤマザキソフトマーガリン、ミヨシソフトマーガリン、ヤマザキマーガリン1/4、ミヨシマーガリン1/4、コーベヤマーガリン1/4。  花王石けん株式会社分といたしまして、ニューエコナSS(M)、ニューエコナMC(H)、エコナTOP−1、ロフティ、ロフティQM(B)、クッキーデラックス(B)、ペンギンスペシャル(B)。  それから月島食品工業株式会社関係分といたしまして、天板油(Y)を追加させていただきます。
  67. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなた、読むのにもたいへんなくらいの食品名です。なお、その中に今度製菓用業務の油が入っているわけですね。そこから今度お菓子になるか、いろいろなものにいっているわけです。消費者の皆さんは、一般の家庭の方は私にやいやい言ってくるのです。どれを食べたらいかぬのか、これを明確にせよと。ぼくも千葉ニッコーじゃないからそれも困る、こういうことで、これを食べてはいけないんだということを早くはっきりしてあげることが、私はこの場合のまず最重点施策であろうと思うのです。いま公表されましたから——しかし、まだまだあろうと思うのです。あなた、これを発表された中からまだ落ちているやつがありますからね。再度私はあなたに要求しておきたいことは、各県あるいは市に連絡をとって、さらにこの品名がわかれば早く一般の消費者に知らしていく、これが厚生省としては一番大切なことであろうと思います。これを要求しておきます。  次に、この汚染油を回収した、その分の処分法、これについてやはりはっきりしておかないとそのままになってまたどこかで使ってしまう、この点についていかがでございますか。
  68. 浦田純一

    浦田政府委員 いま回収を急いでいる段階でございまして、約千四百トン、第一次回収指示いたしましたものにつきましては、五〇%回収されていることは先生御案内のことだと思います。これらにつきましては、すでに使用停止と仮札が張ってあるわけでありますから、この点いま直ちに使われるという心配はないわけでございますが、私どもといたしましては、それらの処分を含めまして、絶対に人体への不安、健康への障害ということが起こらない方法でもってこの処置ということを指示いたしたいと考えております。
  69. 岡本富夫

    ○岡本委員 私が心配するのは、PCB問題、これが問題になりまして、当委員会でもやかましく言ったわけですが、——国会決議までした。ところがこのPCB回収されたものを今度高砂の鐘化ですか、ここで、政府答弁ではたしか千九百度ですか、高熱でもってこれを処理するというような御答弁があった。しかしそれをやると排気中からどんどんPCBが飛ぶというわけで、いま地元、特に兵庫県側ではそういうのを焼いてもらっては困る、こういうことなのです。したがって処置なしというところなのです。これは厚生省の所管ではないかもわからぬ、特に通産省の所管だけれども、きょうは来てないかもわからぬが、この点についていかがなっているか、ひとつ参考にお聞きしておきたい。
  70. 浦田純一

    浦田政府委員 今回問題になっておりますダウサムAあるいはKSK二六〇の組成でありますビフェニールあるいは芳香族の化合物、こういったものはPCBとは違いまして——私も専門家でございませんから、その点よくわかりませんが、文献等によりますとPCBとは違いまして、かなり分解もしやすい、それから水にも溶けるといったような性質のようであります。したがいまして、いま製造過程を聞いてみますと、ダウサムA等が蒸発して、そうして空気中に逃げるわけですけれども、そういったものの回収装置とかいったようなものも会社ではつけているようであります。私どもさらに担当の通産省とも十分にこの検出、それに対する処置方法というものを検討いたしまして、環境への汚染というものは絶対にないように処置するように努力いたしたいと考えております。
  71. 岡本富夫

    ○岡本委員 PCBの問題。
  72. 浦田純一

    浦田政府委員 通産省の方おられませんので、私の承知している範囲でお答えします。  PCBにつきましては、この製造が国内では禁止されておるということで、もっぱら回収したものをどうやって処分するかという点に問題がかかっていようかと思います。これにつきましてはいま通産省のほうで、試験的な段階で専門にこれを処分する炉が開発されておる、それがもう実用の段階に移るところまで来ておるというふうに聞いております。なお、もっとすぐれた処理方法ということについては、環境庁が中心になりました政府PCB対策協議会を中心として、いまさらに検討を進めておる、それに対する研究が進んでおるというふうに承知しております。
  73. 岡本富夫

    ○岡本委員 PCBの問題は通産省にもう一ぺん聞かなければならぬですが、そこで、今度の千葉ニッコーの汚染油の問題について、食品衛生法で取り締まっているというけれども、結局この法律がきめてあるだけで、行政措置ができていないのじゃないか。たとえば一ミリの穴があいていた、一個あいていたというのですけれども、そうでない、警察調べると何か数カ所だということですね、これは報道によるのですけれども警察のほう来てますか。いかがですか、どういう状態ですか。
  74. 相川孝

    相川説明員 先生指摘のように、報道関係などでは数個の穴があいていたのではないかというような記事も見受けられますが、私どもいま関係者事情聴取等を進めている段階でございます。私も県からはっきり報告を受けておりませんけれども、まだ関係者の供述が十分固まっておりませんので、この席でお答えすることは控えさせていただきたいと思います。
  75. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたのほうはまだ何も調べてないと言うが、一カ所あいていたか、数カ所あいていたか、これは見たらわかるのですよ。それくらいのことは答えられるのじゃないですか。
  76. 相川孝

    相川説明員 一応本事件関係者につきまして事情聴取を行なっております。その中で一カ所以外にもあったのではないかというような供述も見受けられますけれども、その辺の実態につきましては、脱臭塔の解体検証の際に初めて明確にされるものと思います。
  77. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうもはっきりしない。解体検証をしたという報道なんです。それはまだやってないのですね。
  78. 相川孝

    相川説明員 脱臭塔の検証、差し押えにつきましては近く行なう予定でございます。まだ行なっておりません。したがって、穴の関係などはその検証によって明らかになるものと考えております。
  79. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは早くやらないといけないと思います。  そこで、今回のこの問題は、厚生省のほうで抜き取り検査をしたりあるいはまた工場の立ち入り検査をしたり、こういう食品工場を届け出許可制にして定期検査をする、そういう強力な行政をいままでやらなかった、そこに今度の大きな問題が起こったんじゃないか。これはもっとたくさんばたばた倒れるというようなことが起こったとしたらたいへんな問題です。今後の問題を考えるとき、今後は製品の抜き取り検査、それから工場の立ち入り検査、定期検査、こういうものをおやりになるお考えはあるか、これをお聞きしたい。
  80. 浦田純一

    浦田政府委員 今回の事故、これは私どもといたしましても監督上の手落ちについて非常に残念に思っております。これを契機といたしまして、いま、食品衛生法で実は第十四条の規定がございまして、厚生大臣が品種を指定して検査をかけることができる仕組みになっておるわけでございます。早急にその指定をするとか、あるいは第十九条の十八、これも昨年の食品衛生法の一部改正で新たに入った項目でございますが、有害、有毒物質食品混入するおそれのある場合に、厚生大臣がその施設の基準や措置の基準をつくることができるという規定が新たに入っております。私どもはこれを早急に整備いたしまして、御指摘のような体制を確立させたいと考えております。
  81. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に、この報道によると十八日からこういう食品工場の総点検をやるということでありますが、もっと早くできないのか。これはこういう問題が起こったら一日もゆるがせにすることはできないわけですから、その点、もっと早くやるというその決意を聞いて終わりたいと思うのですが、いかがですか。
  82. 浦田純一

    浦田政府委員 確かに一日も早くということで一斉点検指示をすべきであると思います。私どもといたしましては、実は十三日に都道府県のほうに指示したわけでございますが、末端まで浸透するようにということで余裕を置きましたために十八日から実施せざるを得ないということでございますので、御了承願いたいと思います。また、私どもはできるだけ早くこの結果をまとめまして、正すべきところは正すというふうにいたしたいと思います。
  83. 岡本富夫

    ○岡本委員 終わります。
  84. 佐野憲治

    佐野委員長 小宮武喜君。
  85. 小宮武喜

    ○小宮委員 まず質問をしたいことは、今回の千葉ニッコー事件はかつて発生したカネミ油症事件と大体同じようなケースをたどっておる。そこで、この前カネミ油症事件が起きてからどういうふうに行政指導をしたのか、まず農林省厚生省質問します。
  86. 籾山重廣

    籾山説明員 お答えします。  農林省といたしましては十一日に、油脂関係の団体でございますところの日本油脂協会というものがございますのですが、油脂協会と、それから千葉ニッコーからは来られないものですから親会社の日興の東京支店の方においでを願いまして、さっそく事情聞き取りをいたしました。その場で口頭で……。
  87. 小宮武喜

    ○小宮委員 答弁中ですが、私は今度の事件の問題を言っておるわけではないのです。私が厚生省農林省質問したいのは、カネミ油症事件が発生したあとカネミ油症事件のような問題が二度と発生しないようにということでこれまでにどういうふうな指導をしてきたのかということです。今度の事件のことはいいです。
  88. 籾山重廣

    籾山説明員 質問を取り違えましてたいへん失礼いたしました。  カネミ油症事件が起きましてから後、熱媒体につきましての研究をすることといたしまして、日本油脂協会の中に専門委員会を設けまして、そこで熱媒体についてそれまで使っておりましたところのPCBにかわるものはいかなるものがあるかというような研究をいたしまして、その前から使っていたものではございますけれども、主として今度の千葉ニッコーでも使っておりますところのダウサムあるいはKSKその他のもののほうに切りかえをするように指導をいたしました次第でございます。専門委員会では熱媒体に関する管理というようなパンフレット等もつくりまして、業界内部でできるだけ安全性の高いものへ切りかえるようにいたした次第でございます。  あと厚生省関係につきましては、私の了知している限りでは食品衛生法における許可業種にした等のことがあるわけでございますけれども、これは別途厚生省のほうからお答えがあろうかと考えます。
  89. 浦田純一

    浦田政府委員 お答えいたします。  カネミ油症事件が起こりましたのは四十三年でございますが、厚生省といたしましては翌年の七月、食品衛生法施行令の改正を行ないまして、従来許可を要する業者ではございませんでした食用油製造業を食品衛生法第二十条及び第二十一条並びに政令の第五条第十九号に基づく指定の施設といたしまして、立ち入り検査その他の根拠をはっきりいたしたわけでございます。  それから、食用油製造工程が御案内のように非常に複雑でございます。それで食品衛生管理者というものの設置を義務づけまして、自主的な管理の強化をはかってきたということでございます。  さらに、先ほど農林省のほうから御説明ございましたように、日本油脂協会を通じまして、PCBのような非常に毒性の強い塩素化合物系の熱媒体としての使用を禁止するという、行政指導措置をとっていただいておるところでございます。  さらに、昭和四十七年でございますが、昨年食品衛生法の一部を改正した際に、新たに第十九条の十八という一条を起こしまして、有害物質混入防止基準の設定を厚生大臣ができるというふうにいたしたところでございます。もっとも、この基準につきましては、実はまだ省令ができ上がっておりませんので動いていないのは、まことに私どもとしては残念に考えております。それから、やはり監視体制の強化、あるいは人体に対する毒性研究等々について手を打ってきたところでございます。
  90. 小宮武喜

    ○小宮委員 前回のカネミ油症事件製造工程の中で発生した事件です。今回も同じ製造工程の中で発生した事件です。その意味で、私はやはりカネミ油症事件が発生してからのあのような教訓を生かして、ほんとうにこういうような事件を二度と起こさないようにするために、いまのような行政指導だけじゃ不十分だと言いたいのです。  特に私が言いたいのは、三月十五日発生した事故にしても、結局熱媒体用のステンレスパイプに穴があいておった。しかも、そのほかにも同じパイプの中に穴のあく寸前の個所が十一カ所もあったというようなことが報道されておるわけですが、私は、結局このステンレスパイプ自体がそれほど全体的に腐食し、摩耗しておるのではないかということを言いたいのです。だから、この熱媒体を使っておるステンレスパイプは何年使用しておるのですか。
  91. 浦田純一

    浦田政府委員 詳しい月まではわかりませんが、四十六年から使用しているものでございます。
  92. 小宮武喜

    ○小宮委員 昭和四十六年ですか。それでは通産省に聞きます。このステンレスパイプというのは、一般的に耐久年数は何年ですか。たとえば油を通す場合、海水を通す場合、こういうような毒物、劇物を通す場合、いろいろ違います。千葉ニッコーで使った熱媒体用のこういうようなステンレスパイプというのは、耐久年数は何年ぐらいですか。
  93. 佐藤真住

    ○佐藤説明員 ただいまの御質問でございますが、一般的にステンレスパイプの寿命が何年かということは、科学的に非常にむずかしい問題でございまして、全く決定できません。腐食の程度と申しますのは、一つはもちろん厚みに関係するわけであります。通産省で現在ステンレスのパイプにつきまして、配管用については特にJISで指定してございますけれども、この厚みにつきましては、たとえば一ミリから三十五ミリくらいの範囲にわたっております。で、三センチ五ミリぐらいのものを使えば、これは十年でも二十年でももつということになるわけでございます。  一方、成分の問題がございまして、同じステンレスでもクロームの系統であるとか、あるいはニッケルの系統であるとか、それに相当腐食性のある材料を入れるという場合もあります。したがいまして、そういう成分と厚みの関係を十分に事前に実験データなり過去の操業データなり、そういうものをもちまして設計するわけでございます。そういう設計で、かりにこれは何年持たせるという設計になりますと、そこにある種の安全係数をかけましてやるわけでございまして、あくまでも使用条件と材料の選択という問題でございまして、何年ということは全く言えない状況でございます。
  94. 小宮武喜

    ○小宮委員 それはおかしいじゃないですか。使用目的によって、たとえば何ミリのステンレスパイプは勢い耐用が幾らときまってくるわけですね。そうすれば、それが、特にいま言ったように、海水を使うか真水を使うか、あるいはこういうようなビフェニールとかを使う場合はどうなんだというような研究はしてないのですか。そういうこともせずにおって、農林省あたりにしても、こういうような工場がステンレスパイプをどんどん使っておるのを、そのまま、何年もてるのか、どういうような状況で腐食が進むのかわからずに、そういうところに使わせておるからこういうような問題が起きてくるわけです。だから、穴があいた、ああ腐れたな、また穴があいたというので、それを発見したときに修理をするというばかげたことではなくて、当然わかるはずです、何ミリのステンレスパイプはこういうようなビフェニールを使う場合は何年間だ、真水を使う場合は何年間だということはわかるはずです。それによって基準をきめて、そういうような製造工程をやる場合にはこれは何年かで取りかえなさい、何年間使えばこういうような腐食をしますよということを、当然通産省もそういうような基準を持っておるであろうし、農林省自身もそういうような基準を設けて——私が不十分だと言ったのはそこなんです。ただ行政指導だけであれしなさい、これしなさいというのではなくて、そういうようなステンレスパイプを使う場合は何年したら取りかえなさい、こうしたら腐食しますよというような指導をやらないと、こういうような事件は今後ますます、二度も三度も起きてくると私は思うのです。もうちょっと、通産省はその点はっきりしてもらわないと困りますよ。
  95. 佐藤真住

    ○佐藤説明員 その件につきましては、JISの体系というものがございまして、材料全般に寿命の問題というものがあるわけでございます。これは腐食の問題だけではございません、あるいはその強度であるとかあるいは疲れであるとかいろいろな問題がございまして、寿命の問題をJISの体系の中できめるということは非常にむずかしい仕事でございます。世界的に見ましても、規格の中で寿命を何年というような規定をやっておるケースは非常に少のうございまして、と申しますのは、ステンレスの場合でも、たとえば使う条件によりまして、応力と申しまして、力がかかったりすると寿命が非常に短かくなってくるというような現象がございます。そういうことで、使われる条件によってきわめて寿命が変わってまいりますので、それをJISで一々こういうケースは何年、こういうケースは何年というふうにやりますと、やるだけの、簡単な条件の規定というものはなかなかできないという現状でございます。そういうことでございますので、JISの体系といたしましては、材料の成分とかあるいは厚みであるとか、これは間違いないということを保証することが目的となっておりまして、あくまでもそれは使用者側においてデータを十分に研究して、事前に合理的な設計をしてもらうというのがいまの姿になっているわけでございます。
  96. 小宮武喜

    ○小宮委員 私はJISの規格にそういうようなことを入れろとは言っておらぬ。実は、JISの規格は規格としていいけれども、たとえば使用者側として当然このステンレスパイプは寿命が何年ぐらいだ、いま話を聞けば二年ぐらいだと言っておりますが、そういうように腐食が早いわけですね、二年ぐらいで穴があくようなパイプだったら。そういうような問題を根本的に検討研究しなければ、こういった問題はもう二度も三度も繰り返しますよ。だから私は、農林省あたりがこういうような問題について基準をきめる場合は、たとえばそういうような定期検査をする場合には、テストホールをあけて、そして厚みの何分の一ぐらい摩耗したら取りかえるという基準をきめるとか、そういうことをしなければ、穴があいた、穴があいてから、ああ穴があいた、事故が起きた、そういうばかげた大騒ぎをするような愚の骨頂みたいなことはやめて、やはり基準をきめて、このパイプは何年で取りかえなさいという指導をやらなければいかぬと思うのですよ。そうしなければ、穴があいてからわかった、そうしてこういうような問題をがちゃがちゃ言っておるけれども、穴があく前に摩耗度がどれだけある、だから定期検査の場合は、年二回の定期検査をやるでしょう、テストホールをあけて厚みをはかって、そしてもうこれはあとしばらくしたら穴があくというような、薄くなっておったら、当然これは取りかえろという指導をしなければならぬと思いますよ。そうせぬと、カネミ事件とか千葉ニッコー事件、また同じことを繰り返すことになりますよ。農林省の考えはどうですか。
  97. 籾山重廣

    籾山説明員 お答えいたします。  四月十二日付で私のほうで食品流通局長名をもって日本油脂協会会長にあてまして通達をしたところでございますけれども、その中に先生おっしゃるような、まだ基準がございません段階ではございますけれども、考え方といたしましては、耐用年数等から見て危険性のあるようなものはすみやかに更新するというようなことを指導の指針として通達いたしておる次第でございます。それからまた装置点検等も、定期検査の度数といいますか、密度といいますか、期間といいますか、それをもっと高めるようにする、密度を高めるようにするというような趣旨も織り込みました通達を出しておる次第でございまして、今後、基準等につきましては厚生省当局とも御相談をいたしながら、趣旨としてはそういう摩耗しているようなものを使うことを続けないように十分指導したいというふうに考えておる次第でございます。
  98. 小宮武喜

    ○小宮委員 それではいまのステンレスパイプも、もう結局十一カ所も穴があく寸前のやつがある。これはステンレスパイプ全体が摩耗しておる、私はそう思います。したがってそれをこそく的にびほう的に修理したって何にもなりません。あと半年か何かしたら、またあきますよ。したがってこの際農林省はいまの千葉ニッコーの問題のステンレスパイプを全部取りかえさせない。そうしなければ結局穴があいて初めてわかるわけでしょう。その場合混入するわけでしょう。パイプの穴のあかないようにするのが、こういうような食品公害を未然に防止する唯一の対策ですよ。だから今度のパイプは全部かえさせなさい。やらせますか。
  99. 浦田純一

    浦田政府委員 食品衛生法の立場から、私どもといたしましては、そういった有害、有毒物質が混入するおそれのある施設につきましては、厚生大臣が基準を設けてきちんと取り締まることができるというふうにきめてございます。したがいまして、これを活用につきまして、パイプの取りかえその他につきましても私どもとしてはこちらから強く指示したいと思います。
  100. 小宮武喜

    ○小宮委員 定期検査はどういうようなことをやっているのですか。立ち入り検査工場の中に入っていって何をやっているのですか。定期検査をやる場合は、工場の操業を停止して、すべての問題について調査しているのですか。ただおざなりに行って、どうか、異状ないか、ありません、というようなことですか。どういうような定期検査をやっているのですか。
  101. 浦田純一

    浦田政府委員 食品衛生法上からの立ち入り検査は、工場内に立ち入りまして、必要に応じましてはそういった施設などの点検をいたすのでございます。しかしこの該当の工場につきましては、いわゆる操業を停止してコイルの異状を点検するというようなことはいたしておりません。ただ自主的に——私どもはいまでは自主的の限界ということが十分にわかったわけでございますが、自主的に検査、管理体制を立てるように食品衛生管理者というものが工場に設置される義務を課しておりますので、その食品衛生管理者との協力を得ながらいろいろな必要な検査をしておるというのが食品衛生法に基づく検査の実態でございます。
  102. 小宮武喜

    ○小宮委員 食品衛生法に基づく検査はその程度しかできないというならやはり根本的に検討することを考えぬと、そういうような必要があればと、必要とは何かということです。たとえばパイプに穴があいたとか、問題が起きてから必要があるから行くということではなくて、やはりそういうような問題を未然に防止するために定期検査をやらなければいかぬ、立ち入り検査をやらなければいかぬ。その場合、先ほど私が言ったように、必要があればと、必要がないなら、行ってみて、何も異状ありません、はあそうですか、それならだいじょうぶですなというようなことで、何の立ち入り検査か。私は、定期検査である以上、そういうような問題を起こすパイプにしても機械にしてもやはり徹底的に操業を停止してやるのが定期検査だと思うのですよ。そういうようなことがいまの食品衛生法ではやれぬということであれば——農林省あたりは現在の法の中で全然やれぬですか。そういうようなことをやれなければ法改正でもやらなければ、こういうような問題を二度も三度も何度も繰り返すようなことになりますよ。ただわれわれは健康を守れとかなんとかいうことでいろいろなことを追及する問題はここに問題がある。カネミ油症事件にしても今回の事件にしても製造過程で問題が起きてきている。それを根本的に解決しなければ、こういうような事件は何回も起きてくるわけです。その点について今度は腹をきめて取りかかってもらわぬと、ただおざなりの答弁だけでは困りますよ。  それから農林省は、今度の混合された食用油をJASのマークをつけて、品質を保証して売り回っておるんですね。出荷、販売されておりますね。これは事実上非常に困難と思いますが、それではやはりこういうような問題が起きてくるとあまりに無責任じゃないですか。この食用油はだいじょうぶですよという品質保証を張ってそして売って回っておる、出荷、販売されてしまっておるんですね。これに対して農林省責任はどうなりますか。今後の改善対策はどうですか。
  103. 堤恒雄

    ○堤説明員 JASは御承知のように品質保証というようなことで、農林省がつくったJAS規格に合格した品質のものに保証マークを張るというようなたてまえでやっておるわけでございます。その場合安全性の問題については食品衛生法にゆだねるというふうなたてまえで、そのチェックはいままではやらないというふうな形で仕組んでいたわけですけれども、今回こういうふうな事件が起こりましたので、JASについては御案内のように一々製品検査を、サンプリング検査をやるというふうなたてまえでやっておりますので、その際安全性についてもあわせてチェックできるような方式を確立することが非常に大切であるというふうに考えますので、厚生省とも十分相談して早急にそういうことを検討していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  104. 小宮武喜

    ○小宮委員 質問がまだありますけれども、協力してこれでやめます。
  105. 佐野憲治

    佐野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件、特に水俣病問題調査のため、参考人として、チッソ株式会社会長江頭豊君、チッソ株式会社社長島田賢一君及び日本興業銀行頭取正宗猪早夫君の出頭を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 佐野憲治

    佐野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、参考人の出頭日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 佐野憲治

    佐野委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決定いたしました。  この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後直ちに再開いたします。    午後二時休憩      ————◇—————    午後四時十一分開議
  108. 佐野憲治

    佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 きょうは私は、これから成田空港の航空燃料パイプライン、石油パイプラインについてお尋ねするわけでありますが、実はこの質問に先立って運輸政務次官の御出席を求めていたわけであります。ただいま、参議院の運輸委員会の御都合で御出席がかなわないということが知らされましたので、運輸政務次官抜きで実は質問を開始するということになりました。  なぜ運輸政務次官の御出席を私要求したかということを冒頭に申し上げてから、質問に入ります。  政務次官は、御就任になった当初から、この成田空港の整備については、ただならぬ決意を込めてやってみせるという御趣旨のごあいさつがあったわけであります。特にパイプラインの問題については、一方ならぬたいへんな熱意をもって臨んでおられるということが、いろいろ、新聞を通じあるいはテレビを通じ知らされているわけでありますから、ひとつその政務次官にじきじきにいろいろ御質問をさせていただいて、御答弁をいただきたいということで、きょうは特に御出席を要求したということでありますから、そういうことから、きょうは、イエス、ノーのきっぱりした御答弁をひとつお願いしなければなりません。  ここに御出席の隅飛行場部長、吉村計画課長、運輸省からお出向きでありますけれども、ひとつ、そういうつもりで、政務次官のかわりといっては、かわりになりませんとおっしゃるかもしれませんが、しかし、はっきりした御答弁を伺わせていただくということを冒頭に申し上げておいて質問に入ります。  航空燃料パイプラインについては、すでに石油パイプライン事業法という法律に従って、まず基本計画があって、それから事業の許可がこれに従って認められて、そしてさらに工事計画の認可があるという順序になりますね。この工事計画の中身で、特に「石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準を定める省令」というのに基づいて、技術上の基準というものが問題にされていかなければならない。その「石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準を定める省令」、これを略して技術上の基準省令といまから申し上げましょう。  この技術上の基準省令の十三条という個所を見ますと、十三条のところでは地下の埋設、「導管を地下に埋設する場合は、次の各号に掲げるところによらなければならない。」とあって、その十三条の一号で「導管は、その外面から建築物、地下街、隧道その他の告示で定める工作物に対し告示で定める水平距離を有すること。」とございます。告示が問題になっていますね。  そこで、まずお尋ねしたいのは、隅飛行場部長、いま現に、この告示はございますか、いかがですか。
  110. 隅健三

    ○隅説明員 ただいま御質問の告示につきましては、現在、通産省、建設省、運輸省、消防庁でいろいろ協議をしておりまして、まだ現実に告示はされてないというふうに思っております。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 告示をされてはいらっしゃらないかもしれませんが、告示案のようなものはあるはずであります。告示案はすでにあるはずであります。現にこれはもう公になっているわけでありますが、告示案を告示とする手続の中には、やはりこれに対しての実験が行なわれなければならない。  そこで三月の二十三日に、千葉の川鉄の千葉製鉄所構内で実験が行なわれました。これは言うまでもありません、建設、運輸、自治が立ち会いのもとで、通産を含めまして四省で実験をおやりになっていらっしゃる。ところがそこで起こった問題は、これも新聞で各紙が一斉に報じておりますから、だれもよく知っている事柄でありますが、その実験の結果、約十五分間で実験用の住宅が全焼するという、すごい実験が起こってしまった。そのもともとは、言うまでもありません、現にある告示案で水平距離は最低一・五メートルということになっているのに従っての実験でありますから、一・五メートルでは、この実験の結果どうも安全性は確保できないということだけははっきりしたというふうにいえるのではなかろうかと思います。いままだ告示がない、これから告示をひとつ考えようということらしゅうございますけれども、この一・五メートルということに従って実験をなさった結果がこうなんでありますから、これからこの一・五メートルというものを考え直されるというお気持ちがあるのかないのか、また考え直すとすればどういうふうに考え直すという用意がおありになるのか、その辺をひとつはっきり聞かせておいていただきたいのであります。
  112. 根岸正男

    ○根岸説明員 お答え申し上げます。  ただいま、川鉄構内におきます実験についての結果を御引用されて御質問がございましたが、これは内部についてはまたあらためて詳細に御説明させていただきたいと思いますが、この基準案の中におきましては漏洩拡散防止という設備をつけることを義務づけております。今度の実験におきましては、そういう装置をつけませんで、そのまま漏れたときにはどういうふうに燃えるかという、燃えることが目的といってはおかしいのですけれども、どういうふうに燃えるかということの実験をいたしたわけでございまして、次いで、今度は漏洩拡散防止装置をつけまして、その漏洩拡散防止装置がどの程度に効果があるかということについての実験をいたすことにしておりまして、その結果に基づきまして、また検討いたしたいと思っております。その検討につきましては、これは国会等で御指示がございましたように、学識経験者を集めまして委員会を組織して、それぞれ専門に応じて分科会をつくって検討しておりまして、先ほど運輸省の飛行場部長からも御答弁がありましたとおり、ただいまそういういろいろなデータに基づきまして検討しておるという段階でございます。
  113. 土井たか子

    ○土井委員 では伺いますが、いま拡散防止の設備をして云々という御発言がございましたが、省令の中身を見ました場合には、十三条の一号では「告示で定める水平距離を有すること。」、距離が問題になっているのですよ。距離の問題なんであります。したがって、一・五メートルでいいか悪いか、その辺はどう考えておられるんだということを私は質問している。拡散防止の設備をするかしないか、そんなことじゃないのです。距離の問題については、告示であらかじめはっきり明示しておかなきゃならないわけでしょう、今度の省令からしますと。したがって、その点はいかがなんですか。告示の中身になるところの距離の問題です。
  114. 根岸正男

    ○根岸説明員 おっしゃるとおりでございまして、ただしその市街地を通過するときの建屋から一・五メートルという場合は、当然ほかの条文で拡散防止施設をつけなければならないというふうに規定されておりますので、われわれとしては、当然、実験の結果によって、いろいろ拡散防止施設が、それでいいか悪いかというような問題もございますけれども、その上であらためて検討するという考え方でございます。
  115. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃお伺いします。この省令の中の十三条の一項にいうところの水平距離というのは、いまおっしゃったような拡散防止というふうなものを備えての距離ということが明示されていなきゃならぬわけです。端的にここでは、「告示で定める水平距離を有すること。」と書いてあるだけの話でありまして、いまおっしゃったような拡散防止の設備がどうのこうのじゃない。重ねて私は聞きたいのです。距離について一・五メートルでいいか悪いか、その辺はどういうふうに考えていらっしゃるか。悪いのなら悪い、考え直す用意があるのなら考え直す用意がある、また考え直す用意の中身は、こういう方向で一つは考え直してもみたいというところがあったら、その辺を端的にはっきりひとつお答えを願いたいと思います。
  116. 根岸正男

    ○根岸説明員 ちょっといま、急なものですから、条文の番号を忘れましたが、間違いなく、その建物から一・五メートルということと、それから、そういう建物が密集しておりかつそういう事故が起きたときに危険な場所については漏洩拡散防止装置をつけなければならぬというふうに、間違いなくそのほかの条文に規定はしてあるわけでございます。  一・五メートルについて、いいか悪いかということについては、先ほども申し上げましたとおり、そういう学識経験者の委員会検討をしていただく段階でございますので、私はまだいいか悪いかということは申し上げられる段階ではないと思います。
  117. 土井たか子

    ○土井委員 学識経験者の意見の問題はあとに申しましょう。しかし、一たんこれは、こういうことに従って、実験をなすっているのですから、実験というのはだてや酔狂でするわけではない、やはり現にあるところの告示案の中身に照らし合わせて、これでよいかどうかということを問題になさるはずの実験であります。実験をおやりになった結果は、その告示案をさらに告示に移す場合にどういうふうに考慮するかということがそこに示されているに違いない。したがって、あの実験がだてや酔狂だとおっしゃるのならいいですよ、あの実験では意味がございませんでしたとおっしゃるならそれでいいです。だけれど、その実験をなすったことについての結果を告示として生かすべき問題ととらまえられるのならば、あの告示案の中身について、こう思うというところがあるはずなんですが、いかがですか。
  118. 根岸正男

    ○根岸説明員 先ほどから申し上げましたとおり、いま御指摘のありました実験は、そういうほかの設備を入れないで、むき出しのパイプを埋めて、そこから漏れたらばどういうふうな状況になるかという第一段の実験でございまして、次に先ほど申し上げた防護装置あるいは漏洩拡散防止装置を入れまして実験をして、その結果に基づいて先生方の御判断を願うという段取りになっておりますので、この前行なわれました実験が全然酔狂でやったというようなことではございませんで、そういう状態で漏れたときには、どういうふうにその近傍の建屋に火が移るかということを、あるいはどのくらいの時間をかけて出てくるか、表面に引火するような状態になってくるかということをまず調べたという段階でございます。
  119. 土井たか子

    ○土井委員 それは引火することを当然に予測した実験じゃなかろうと思うのです。要は一・五メートルでいいか悪いかということの実験でしょう。そういう点からしますと、一・五メートルで拡散防止施設を持たない場合「安全性は確認されなかったということに、極端にいうとなるのじゃないですか。拡散防止施設というのを使わないで、なまのままで一・五メートルということで考えていくというのは、どうも安全性から考えると確保されていないということがそこで立証されているのじゃないですか。
  120. 根岸正男

    ○根岸説明員 前回の実験の結果を評価いたしますと、それは先生のおっしゃるとおりでございます。ただ先ほどから何回も申し上げておりますとおり、これはそういう状態で人家のそばに埋められるということは、いまの告示案の考え方からいきまして希有の、ほとんどないことになりますから、それは当然次の段階の実験によって確認されなければならぬというふうに考えております。
  121. 土井たか子

    ○土井委員 実験は何回もおやりになるということらしいのですが、しかしその節学者の意見も尊重してというふうなことらしいのですが、学者の意見の尊重ならば、あとで私はこれは問題にしようと思いましたが、それじゃいま申し上げましょう。  東京大学の工学部土木工学科の奥村教授、これは御承知のとおり成田空港のパイプライン安全性特別研究部会の委員でいらっしゃった先生でいらっしゃいます。この先生がお出しになった資料、これが市議会のほうでは、先生に断わりなしに配られているわけであります。最近新聞紙上を通じて奥村先生御自身が、公団のパイプラインの安全性については私は責任を持てないというふうな発言をなすっている。あの資料については私の同意を得ないで、私の断わりなしに配られているという、そういうことも判明しているわけであります。学者の見解とか学者の研究というものを尊重するということであるならば、やはり学者の立場なり学者の研究内容というのを、その学者をまず何よりも尊重するということで取り扱ってもらわなければ困るのです。現にこの問題については新聞紙上を通じてこういうふうなことでもあります。この奥村教授のお話によりますと、四十五年に提出した安全性の確認論文というのは、パイプライン建設があらゆる最善の技術を駆使して、末端の埋設現場まで安全確保の行き届いていることを前提にしたもので、自分は信じているのだ、三年もたったいま、公団から建設の現状について何の報告も受けていない私に、安全性について正当な判断ができるわけがない。御都合主義で論文だけに一人歩きさせられては迷惑だというふうにもおっしゃっているわけです。それで学者の意見も尊重しながらとおっしゃるから、私はいまここで引き合いに出したわけでありますが、学者の意見というものをすでに考えていらっしゃる一つの政策なり、一つの計画なり、一つの予定コースの上に乗っけて、それを利用なさるという気がここに出ているのじゃないか。学者の意見というものはやはり学術研究、学術的な見解として尊重していただきたいということは私もやぶさかでない。だからそれを尊重する態度というものはありますよ。こんなことはむちゃくちゃだと思いますよ。これはひどいですよ。今回の一・五メートルの問題につきましても、学者の見解もさることながら、やはり、通産省はどう考えるのか、運輸省はどう考えるのか、建設省はどう考えるのか、自治省はどう考えるのか、この四省が立ち会いのもとでやられた実験なんでありますから、それぞれの立場で、この実験結果については自主的にそれぞれの判断なりまた判断に従ってのお考えがあってしかるべきだと思います。告示をなさるのは一体だれなのですか。学者じゃないのですよ。したがいまして、学者の意見は尊重しながら、やはり告示を問題にしていかなければならない。当の担当省としてどういうふうに考えていらっしゃるかということを、ひとつきょうはっきり知らしておいていただかなければならぬと思って私は出かけてきている。そういう意味でひとつ御答弁願います。ですから通産省のみならず、立ち会われた運輸省はいかがであったか。建設省はいかがであったか。自治省はきょうはここにおいでになっていらっしゃらないから自治省はいいです。立ち会われた各省の担当者の方にひとつお答え願いましょう。
  122. 根岸正男

    ○根岸説明員 先ほど奥村先生のお話が出ましたのですけれども検討会の中には奥村先生にも加わっていただいております。それで、われわれとしては、当然一・五メートルをどうするかという端的な御質問でございますけれども、それは先生方の御判断によりまして、あるいはもう少し延ばす必要があるとか、いろいろ御指示があればそれは十分取り入れて告示の案として考えてまいりたいというふうに考えております。
  123. 隅健三

    ○隅説明員 運輸省といたしましては、千葉における漏油実験につきまして、われわれのほうからも担当官を出して立ち会いをさせていただきました。これはただいまも通産省のほうのお答えどおり、防護装置をしていない場合の地中への油の浸透状況、それから油による火災の場合の調査というふうに承知をしておりますけれども、この場合につきまして、防護装置をとることの必要性については運輸省も十分そのことを痛感しておりますし、さらに専門家によっての検討が行なわれていると聞いておりますので、その結論に従いまして、われわれといたしましてはパイプラインを埋設していきたいというふうに考えております。
  124. 栂野康行

    ○栂野説明員 建設省といたしましては、その実験の成果が十分検討されまして、その報告に基づきまして告示の案を検討してまいりたいと思っております。
  125. 土井たか子

    ○土井委員 こういうふうな御答弁になるから私は困るということを最初に申し上げているのですよ。事実をもうちょっと調査して、よその出方を待って、よその出方次第によってうちのところは考えるという御答弁しかないじゃありませんか。こういうことではいつまで待っても告示は現実のものにならないと考えておいていいですね。おそらく告示というものは、いつまで待っても出てこないだろう。一体いつごろ告示というものはお出しになるという予定でいま作業を進めていらっしゃるのですか。これが出ない限りはパイプラインの建設はできっこないだろうと私は考えるものでありますから、まずは聞いているのであります。いかがですか。
  126. 根岸正男

    ○根岸説明員 実際にほかにもいろいろかつて実験をしたデータがございますけれども、実際に建屋からの水平距離についての実験といいますのは、破壊実験その他では、水を使ってやったデータとかいろいろございます。ただ実際に油を使うということはなかなか危険性のある問題でございますから、第一段、第二段とそういうふうにやっていく予定でやってきたわけでありますが、いつ告示になるかというのは、先ほど申し上げました防護装置あるいは漏洩拡散装置、そういうものをつけました実験のデータで、問題としてこれはそこが残っているところでございますから、その実験が終わりますれば、あと何回かの検討会によりまして結論が出るということになると思います。ですからいっその告示の段取りに入るかということになりますと、おそらく今月中ないしは五月の初めにその実験ができると思いますので、そのあとしばらくの時間で結論が出るというふうに私は考えております。
  127. 土井たか子

    ○土井委員 冗談じゃないですよパイプラインができたら、そこを流れるのは水じゃないのです。瞬時もたゆまず流れるのは油なんです。いままで油を使って実験をやることは危険だから水でやったというふうな御答弁を聞いていて、私はあきれ返るのです。石油のパイプラインですよ。油がパイプラインの中を流れるのです。油の実験をやらないと実験をやった意味がない。水の実験なんかやったって、そのパイプラインを通ずるのが水ならば意味があるけれども、油が流れるんだということを忘れてもらっては困ります。  それから実験をおやりになる予定は今月末ですか。そしてその実験というのはどういうふうな方法による実験でありますか。下五メートルで拡散防止装置というものを取りつけて実験をおやりになるのか、それとも再度拡散防止装置というものを取りはずして、一体何メートルというふうなことにしていかなければならないという意味の実験であるか、どういう実験ですか。
  128. 根岸正男

    ○根岸説明員 やはり一・五メートルの水平距離をもちまして、そういう防護装置その他を全部つけた状態で実験いたします。
  129. 土井たか子

    ○土井委員 そしてそれを待って、あと専門家の意見を聞いて、そして告示を出される予定は一体いつごろですか。もう一度はっきりおっしゃってください。
  130. 根岸正男

    ○根岸説明員 先ほど申し上げましたとおり、実験の段取りにいろいろございますので、まだ今月末から来月の初めにかけてという段取りでございますから、その後また先生方の御審議が何回必要であるかということは、これはまた先生方の御判断にまつ問題でございますので、いつということはまだはっきりここでお約束はできませんが、われわれとしては先生方の御納得のいく御検討が済めば、直ちに告示の手順を踏みたいというふうに考えております。
  131. 土井たか子

    ○土井委員 このことについてはもうあと一回押しをして次に進みましょう。  これはどこまでも一・五メートルという距離にこだわるかどうかであります。必要とあれば、一・五メートルという告示案にある中身を考え直さなければならないと考えていらっしゃるかどうかであります。その点端的にひとつお答えを願いたいと思います。
  132. 根岸正男

    ○根岸説明員 先ほどお答え申し上げましたとおり、先生方の御判断によって適当な距離がまた御提示されればそれを考えることはやぶさかでございません。
  133. 土井たか子

    ○土井委員 それでは先生方とおっしゃる先生方を教えておいてください。
  134. 根岸正男

    ○根岸説明員 ただいまちょっと名簿を持ってきませんでしたので全部覚えておりませんが、後ほど先生のお手元に差し上げます。
  135. 土井たか子

    ○土井委員 それは審議会かなにかそういう名称ですか。
  136. 根岸正男

    ○根岸説明員 技術検討会という名前でやっております。
  137. 土井たか子

    ○土井委員 その問題はまだ残りますが、次に進みましょう。  これは省令の三十二条というところを見ますと、「導管系には、次の各号に掲げる漏えい検知装置および漏えい検知口を設けなければならない。」というふうにきめられているわけですね。考えてみますと、油の漏れというのは地表へ浸出するということもたいへん危険でありますけれども、しかし地中に浸透するということのほうが事実問題としてはケース、が多かろうと考えておいてよかろうと思うのです。そういうふうに考えておいていいと思いますが、いかがですか。まずこれを……。
  138. 根岸正男

    ○根岸説明員 油が漏洩いたしましたらどういう動作をするかということでございます。これは今度の実験でもはっきりわかったことでございますが、埋めました面に沿って全面的に圧力がかかる場所、あるいは土を埋めたときの突き固めの軽重によりまして多少違いますが、やはりそういう掘さくされました面に沿って上がってくるということがデータでわかるようでございます。
  139. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、いまは地表への浸出よりも地中に浸透することのほうがケースとして多いと考えておいてよいという御答弁の意味でありますね。
  140. 根岸正男

    ○根岸説明員 もう一回申し上げますが、パイプを埋めるために掘りました溝ができますね。そこへまたパイプを入れまして、その周辺には地震とかいろいろそういう外圧に対するショックアブソーバーといいますか、そういうために良質の砂をもって周囲を埋めなければならないというふうに規定されておるわけでございます。砂をもってそのパイプのまわりに埋めますと、当然そこに非常にポーラスな状態ができるわけでございます。そこで大体そういうむき出しのパイプの場合は砂の層を伝わって横に流れる、あるいはそういう非常に緻密なところを掘さくしてありますから、その溝以外の緻密な土層にはあまりしみ込まないで、そういう砂の層とそれから上に埋めました土質のほうに出てくる。先ほどのこの前の実験でもやはり砂の方向に流れておるということが掘り返してわかっております。
  141. 土井たか子

    ○土井委員 私は工法についてお尋ねしているわけじゃないのであります。パイプラインから油が漏れるというふうな場合には、地表へ浸出するよりも地中に浸透することのほうがケースとして多いでしょうねということをお尋ねしているのです。だから砂を埋めるのどうのこうのという、そういう工法をお尋ねしているわけじゃないのであります。むしろそれじゃ逆に言いたい。そういう工法をいろいろあれこれとくふうなさるのは、やはり地中に浸透すること、それを予防することのためにそういう工法というのは考えられるのじゃありませんか、いかがです。
  142. 根岸正男

    ○根岸説明員 先生のおっしゃるとおりです。むしろ先ほどから申し上げているとおり横に流れる、地中のほうに浸透しないということも一つの目標になるわけでございます。
  143. 土井たか子

    ○土井委員 そういうことを考えて、ここにあるところの探知口なんというふうなことも、やはり省令の三十二条で問題にされているのだと思うのです。こんなことはいまさら言うまでもないことですけれども、漏油計で探知できないものは探知口に従って一応これを探知するということだと思うのです。ところがこれで実験をすでになさっているのを見ますと、五メーターの距離のところで六ミリの穴をあけて、そして漏れてくるものは一時間たっても二つの穴、五メーターの間隔ですよ、片方のほうはついに出てこなかった。一方のほうは一時間で初めて出てきたという実験が現地であるわけですね。いまこれは五メーターの距離でありますが、私、ここに持ってまいりましたのは、公団から配付されております昭和四十六年三月の「航空燃料パイプラインについて」という新東京国際空港公団の発行になるところの刷りものであります。これを見ますと、いまの対策については、「パイプライン全線に添って約二〇〇m間隔に漏洩検知孔を設置し、ガス検知器による検知を容易にいたします。」と書いてある。五メーターの距離で、先ほど申し上げたような実験の結果であります。公団のほうが考えられているのは二百メーターごとであります。これでもってはたしてよいといえるかどうか、通産省とされましては、一体この公団の計画どおりに進めるということがはたしてずさんといえないかどうか、ひとつお考えを聞かしていただきたいのです。
  144. 根岸正男

    ○根岸説明員 先ほどの先生がおっしゃられましたとおり、そこにある傾斜があればその傾斜のほうに流れる、砂層を通じて、ということを示しているわけでありまして、これは距離という問題はいろいろ、これも先生の御承知のとおり、まだ告示案の検討の段階になっておるわけでございますけれども、われわれとしては場所あるいはその掘ります地質その他によってその距離というのは相当幅が持てるものではないかというふうに考えております。
  145. 土井たか子

    ○土井委員 この公団から出していらっしゃる刷りものは一応公式の刷りものでありまして、もうすでにこれに従ってやはりいろいろ考えられているという向きがあることは御承知願いたいと思うのですよ。これこそ、これを基本にやっぱりいろいろお考えになるという向きは各界にあるだろうと思う。そうすると、ここに書いてある「二〇〇m間隔に漏洩検知孔を設置し」というこの部分ですね、これはこのままでいいのかどうかというのが、やっぱり考え直されなきゃならないのじゃないでしょうかね、実験の結果がどうなるにいたしましても。そのためにこそ実験の意義というものはあるだろうと思うのですよ。それで、これは公団に聞いているわけじゃないのですよ。これは通産省とされましては、これはこの公団のおっしゃっているとおりでけっこうだと考えられるかどうかというところをひとつお尋ねしているわけでございます。いかがでありますか。
  146. 根岸正男

    ○根岸説明員 これは、われわれとしましては告示の段階でいろいろ検討している段階でございますけれども、二百メートルがいいか悪いか、これは非常にいろいろ問題があろうと思います。ただ私としましては、いま二百メーターと考えられておりますのは絶対いかぬと、これは先ほど申し上げましたように、砂層を流れてどのくらいの時間でペーパーが出てくるかということの関連においてきまる問題でございますから、私としては、いまのところ二百メーターがいけないということは言えないと思っております。
  147. 土井たか子

    ○土井委員 二百メーターがいけないというふうなことが言いにくかったら、この二百メーターというふうな、すでに公式のこういう文書として出回っているこの中身についてはこのままでよいと考えるかどうかということをひとつ答えてください。
  148. 根岸正男

    ○根岸説明員 いま申し上げましたとおり、私としてはまだ、よいか悪いかということは考える立場にございません。
  149. 土井たか子

    ○土井委員 そういうふうな御返答ばっかりだから困るんですよ。それではやっぱり告示については、これは初期の運輸省の計画どおりに進んでいたらとっくの昔にできているはずなんです。そうでしょう。ずいぶんそれがずるずると延びているんじゃないですか。そうじゃありませんか、飛行場部長、そうでしょう。そうしましたら、これはまだ告示が出てない段階でありますからイエスもノーもよう言えない。私どもとしては、そういうことはいいとも悪いともよう言えませんということばかり聞かされていたら、一体これはどういうことになるのか。何のために当初こういう計画を立てて、そして計画に従って事業を進行させていくかということになるだろうと思うんですよ。いかがですか、これは幾ら聞いても、やっぱりこの問題については、この公団が出しているところの資料に基づいて一応考えてみて、そしてやっぱり告示については先ほどおっしゃるとおりで、今月の末に片方の距離の問題については実験をやって、その結果を待って有識者の意見も聞いて告示も考え直そうというふうな御発言が先ほどあったわけでありますが、この問題については、一体告示というのはどういうふうに考えられますか。
  150. 根岸正男

    ○根岸説明員 これも先ほど申し上げましたとおり検討マターになっておりまして、これはどういうふうに考えるかということはまた先生方の御意見を伺ってからきめてまいりたいと思っております。
  151. 土井たか子

    ○土井委員 その先生方とおっしゃるのはどういう先生ですか。
  152. 根岸正男

    ○根岸説明員 これも先ほど申し上げましたとおり、後ほど名簿をちゃんと先生のところへ差し上げますから……。
  153. 土井たか子

    ○土井委員 万事はその先生方に全権をゆだねていらっしゃるということでありますね、いかがです。
  154. 根岸正男

    ○根岸説明員 先ほどから申し上げておりますとおり、やはりそういう学識経験者の御意見を参考にいたしましてわれわれがきめるという形になっておりますけれども、その全権という——やはり告示でございますから、最終的にはそういう先生方の御意見を参照してわれわれが各省協議の上きめたという形になるわけでございます。
  155. 土井たか子

    ○土井委員 ではお伺いしましょう。運輸省の飛行場部長さんにお伺いしますが、公団がこういう文書をお出しになるのについては、学識経験者なり専門家の意見というものは参考になすっているかどうかです。いかがです。
  156. 隅健三

    ○隅説明員 ただいま先生からお示しのありましたパイプラインについてのパンフレットは、これは運輸省においてもこれを出すときのいきさつは十分知っております。それで、先ほど先生から御指摘がございました東京大学の奥村教授あるいは渡辺教授の御意見も聞いたやに伺っておりますし、また高速道路協会でございますかにいろいろ検討事項をお願いいたしましてそのパンフレットをつくったと思います。ただ、先ほどからの先生のお話のとおり、それをつくりましたのはたしか四十六年でございますか、現在いろいろ告示について検討されておりますけれども、運輸省といたしましてはもし告示が出ました場合に公団のその案と違っておりましたらば、これは十分告示の線に沿って修正、訂正をいたします。
  157. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃ追い打ちをかけるように申しますが、先ほど申し上げたとおり、現地で検知口についての実験をなすったところが、五メートルの距離になっても一時間たっても片方の穴のところから出てこなかったという始末でありました。それで、いま公団から配付なすっているところの文書によりますと、二百メートルごとにこの検知口を設けるというふうなことが書かれている。そこで、実験の結果から考えると、この中身はどうも思わしくないというふうなことになってくればこの中身を撤回なすって、そして告示の中ではこの線ではなく、新しくそういう実験などの中身を生かしたところの告示に従うということにやぶさかではございませんね、これをはっきり言っておいていただきたいと思います。
  158. 隅健三

    ○隅説明員 この点につきましては、通産省、建設省、消防庁とも公団、運輸省は十分御協議を申し上げております。それで、告示の線がそのようにきまりました場合に、公団の出しました資料がそれと食い違った場合には、当然これは訂正をいたさせます。
  159. 土井たか子

    ○土井委員 さて、いま事業法の技術上の基準を定める省令、先ほど略称でこう呼ぶと申しましたが、それの第二条の一項の五号のところを見ていきますと、これはお手元にあれば見ていただきたいと思うのですが、「利水上の水源である湖沼、貯水池等」とここには書いてあります。「事業用施設は、次の各号に掲げる場所に設置してはならない。」ということで、いまの「利水上の水源である湖沼、貯水池等」というのがここに定められているようでございますが、地下水源の場合についてはどういうふうに取り扱われておりますか、それをひとつお尋ねをしましょう。
  160. 栂野康行

    ○栂野説明員 お答えいたします。  地下水源につきましては、付近におきまして非常に水源を使っているという例がありますと、やはりあの項目に該当いたします。
  161. 土井たか子

    ○土井委員 ただしかし、該当すると一応言われてもあとずっと読んでまいりますと、二項でただし書きがございますね。いまの規定にかかわらず「地形の状況その他特別の理由によりやむを得ない場合であって、かつ、保安上適切な措置を講ずる場合は、当該事業用施設を当該場所に設置することができる。」となっておりますね、そうでしょう、ただし書きでは。  そこでお尋ねしたいのは、成田という場所は一般家庭の飲料水というのは何にたよっているかという問題であります。何ですか。
  162. 栂野康行

    ○栂野説明員 その前に、該当いたしますと申し上げましたけれども、これは貯水池とかそういう非常に大きな地下水源でございまして、一般的な地下水源の場合には河川を横過する場合もございまするように、十分な対策を講じて進めていきたいと思っております。それで十分な対策と申しますのは、いわゆるさや管と申しますか二重管で通していくとか、その他継ぎ手の問題とか、そういう点は十分な検討を加えて進めていきたいと思っております。
  163. 土井たか子

    ○土井委員 いまのは質問に対する御答弁にまるでなっていないのです。成田は一般家庭の飲料水は何によっているかということを私はお尋ねをしているんですけれどもね。
  164. 栂野康行

    ○栂野説明員 その点、言い漏らしまして失礼いたしました。  私はっきりは知っておりません。成田のニュータウン、あれは利根川からの水で、いわゆる表流水でございます。一般の成田市内におきます水の利用、これは現在私知っておりません。
  165. 土井たか子

    ○土井委員 これはちょっと困りますよ。というのは、あの成田の空港が建設されたために、今度はあの場所に大体予定としてはパイプラインのコースがきまっているわけでしょう。予定コースというのは青写真があるわけでしょう。あそこにパイプラインを引かれますと、どういうふうな影響があたりにあるか、特に飲料水についてはどうか、付近の水利用ということについてはどういうことになるかということぐらいはやはり知っておいてもらわぬと大問題だと思うのですが、いかがですか。
  166. 栂野康行

    ○栂野説明員 まことに申しわけありませんが、十分勉強いたしたいと思います。
  167. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃ重ねてこれを聞いてもあまり意味がなかろうと私は思いますけれども、成田のあたりは地下水ですよ、家庭の飲料水というものは。したがいまして、今度このパイプラインというふうなものをあそこに設けるのについては、地下水に対する影響というものは何よりもやはり、現実、毎日生活する、命につながる問題ですから、たいへんこういう問題については切実であります。ほんとうに切実です。だからそういうことからしますと、ここにあるところの、二条の二項にいうただし書きの「保安上適切な措置」というのは一体どういうことを認識なすっているか、どういう措置をなすっているか、こういうことをさらに聞こうと思っていたが、これはひとつ勉強しておいてください。これは早急にひとつお願いしますよ。片方は、告示については何か実験をやってまた出すというふうなことについていま作業をやっていらっしゃるかのごとくでありますから、片方の肝心かなめの「保安上適切な措置」というあたりが一体どういうふうに考えられているかということ、これなんかのかね合いというのは非常に大事だと思うのです。  そこで少し例を引いて申し上げておきましょう。強勉していただくのにこれはぜひ考えておいていただかなければ困りますから申し上げておきますパイプライン規制に関する法律で、スイスのパイプライン規制に関する法律というのがあります。一九六六年の七月に施行されておりますが、その中を見ますと、十七条の二項でこういうふうに規定されているのです。「飲料水の集水が予想される地帯は州が指定する。」州ですね、自治体。州が指定する。「この地帯には如何なる液状物導管も設置することができない。」と書いてあります。いかなる液状物導管も設置できないという、無条件です。条件何にもない。無条件ですよ。やはり生活飲料水というふうなものに対して、これは非常に重要視している、大切に取り扱っているということだと私は思います。この点がいま私がここにあるところのわが国の石油パイプライン事業法に関する政省令を読んでみて、ずいぶんずさんだという気がしてならない。もっと生活用水、飲料水に対しては具体的にきめこまかにきめる必要があるんじゃないですか、はっきりこういうことについては。どういうふうにお考えになりますか。飛行場部長さんひとつお答えしておいていただきましょう。
  168. 隅健三

    ○隅説明員 私が知っております範囲では、成田市は水道をやっておりますし、空港は木下からの取水でやっておりますが、そのほかの酒々井、佐倉あたりは確かに先生指摘のとおり地下水、すなわち井戸を水源にしておるところが多いと思います。そこでこの地下水の汚濁に対しましては、パイプラインを埋設するにつきまして、できるだけ地下水の汚染を少なくするように、いろいろの保安装置を公団に命じて措置をさせておりますけれども、この点については、さらに先生の御指摘に従いまして、公団の計画を私自身が見直して検討してみたいと思っております。
  169. 土井たか子

    ○土井委員 この水の問題というのは、一つはまた厚生省のほうにも来ていただいて、私は続行して質問をいたします。これについてはもう予告しておきますよ。  さていま問題になっているパイプラインに、暫定パイプラインがありますね。全長七・二キロ。ところがこの中身を見ますと、四・四キロは本ライン、二・八キロというのは暫定とするためだけの工事として考えられているようであります。そうですね。そこでお尋ねをいたしますが、パイプライン事業法の施行令の二条の第四項に従いますと、この事業法それ自身は十五キロ以上のパイプラインについて適用するわけでしょう。そこでいまこの暫定ラインについては事業法を適用しないのかするのか、その辺をお答えいただきたいと思います。
  170. 隅健三

    ○隅説明員 先生指摘の暫定パイプラインは、確かに暫定だけで引きますところが二・七キロ、あとすでに埋設済みの本格パイプラインに結合いたしますけれども、この暫定パイプラインにつきましては、その規模から申しまして短いということで、石油パイプライン事業法の適用を受けないというふうに考えておりますが、計画の経緯から、運輸省におきましてはパイプライン事業法の基準に準拠をいたしまして設置をし、保安上は万全なる措置をとるというふうに考えております。
  171. 土井たか子

    ○土井委員 適用しないということになると、当面問題になるのはやはり安全基準の問題ですけれども、安全基準について事業法で規制するものよりも、この暫定ラインのほうは劣る安全基準になるのかどうかというのは、たいへんにこれは不安な問題、地元にしてみるとこれは憂慮される問題です。一体そこのところはどういうふうにお考えですか。
  172. 隅健三

    ○隅説明員 暫定パイプラインが敷設されます成田市におきましては、地区といたしまして寺台地区、吉倉地区それから山ノ作地区の三地区がございます。そこでこの地区のそれぞれの住民の代表の方々に対しまして、公団からもまた運輸省からも政務次官が出向きまして、専門家と一緒に参りまして、この安全の問題をいろいろ討議をしております。また御説明もいたしております。そこで当然山ノ作あるいは寺台、吉倉の地区の皆さま方は、パイプライン事業法の安全基準を絶対に下回ってはいけないという非常に強い御要求がございます。これは当然のことでございまして、われわれといたしましても、本格パイプラインと同じ基準で保安上の基準を守っていくということははっきりお約束できると思います。
  173. 土井たか子

    ○土井委員 そういう安全基準をしっかり守っていくという心がけはけっこうでありますが、それを具体的に担保するところの根拠は何によるのですか。
  174. 隅健三

    ○隅説明員 先ほどから通産省のほうから告示の御説明がございました。その原案を十分慎重に検討いたしまして、それを上回るようなところで保安装置を考えていきたいというふうに考えております。
  175. 土井たか子

    ○土井委員 ただいまの御答弁はたいへん重大ですよ。告示案に従って、その中身を吟味してそれを上回るような安全基準を考えて暫定ラインに適用したいという御発言。そうしますと、ここで問題は二つある。まず、最初から私はずっとさっきまで質問を通じてやってきた中に、この告示案の中身を実験をした結果考え直すということに対してどうなんだとあれほど執拗に聞いたら、いや各省の意見がいろいろとあるからそれを調整したり、学者の意見を聞いたりしてそれ待ちでございますというようなのらりくらりの発言しかなかったのです。しかしいまの御答弁からすれば、現実に暫定ラインについて適用しようとする際に、安全基準というものは、いまの告示案の中身よりももっと中身をシビアに考えなければいけないという線が一つは出ているじゃありませんか。  それからもう一つですよ。告示を待たずに、告示案の中身を再吟味をして適用したいとおっしゃるのは、告示ができるまでに暫定ラインにはもう手をつけなければならないという意味があるのかどうか、これははっきりしてください。
  176. 隅健三

    ○隅説明員 現在暫定パイプラインにつきましては、寺台地区、吉倉地区の話し合いがまだ続行されております。それで、この問題が解決いたしませんと、成田市は市道の占有許可をおろさないことになっております。そこでこの着工をどうしても急ぐということではなく、やはり成規の手続をとりまして、成田市長が市道の占有許可を出して、これをいただいて、それから関係方面との設計協議あるいはパイプラインの関係についての御協議が終わってから着手をするというふうに考えております。
  177. 土井たか子

    ○土井委員 市長の手続上の当然きめられた中身を実行してもらわなければ着手できない、あたりまえのことであります。しかしいま私がお伺いしているのは、告示が出る以前に、告示案の段階で告示案の中身を吟味して、暫定パイプラインに適用するという趣旨なのかどうかということを聞いているわけです。それについては各省で協議しさえすればできることだというふうにお考えになっているのかどうかを再度答えてください。
  178. 隅健三

    ○隅説明員 当然この告示案につきまして、われわれが暫定パイプラインでいたします保安上の施設につきまして各省に御相談をいたします。
  179. 土井たか子

    ○土井委員 どうも質問に対する御答弁になっていないのです。それじゃ端的に聞きましょう。告示がつくられるとつくられないとにかかわらず、暫定ラインについては法で所定の市長の権限による手続さえ済めば着工してよいとお考えになっているのかということをお伺いします。
  180. 隅健三

    ○隅説明員 一応告示が出る前にすべての設計協議その他がととのいました場合には、一応基準についての御相談は申し上げますけれども、着工をいたしたいというふうに考えております。
  181. 土井たか子

    ○土井委員 それでは再度お伺いしましょう。これは告示はまだないのですよ。そしていまの事業法からもはずしているのですよ。事業法の適用外にして考えるわけですね。安全基準について、だいじょうぶだという根拠をどこに置かれるかという問題であります。各省の話し合いと先ほどからおっしゃっていますけれども、それがどういう姿、形で出されるのですか。単に話し合い、話し合いと言われても、安全基準というものはこういうものだということが公でなければ安全基準とはいわないのです。いかがですか。
  182. 隅健三

    ○隅説明員 基準案に基づきまして一応公団の案を作成いたしまして、これにつきまして検討を加えていっております。その際に各省にも御説明いたしますし、また、いろいろの検討をお願いをいたしております。
  183. 土井たか子

    ○土井委員 それほど執拗にこの暫定パイプラインについていろいろな計画や事業の中身を進められるゆえんはどこら辺にあるのですか。そして、本ラインでなく暫定パイプラインというものについて、これほど執拗に早急にやらなきやならないという理由、それはどの辺にあるのですか。ひとつはっきりおっしゃってください。
  184. 隅健三

    ○隅説明員 空港敷地内の施設、これは四千メートルの滑走路、旅客ターミナル、貨物ターミナルビルは内装の一部を残しまして完全に完成しております。それで、問題は燃料輸送でございます。残念ながら本格パイプラインは、千葉市内におきましていろいろの事情がございまして、ただいま工事を中断いたしております。この本格パイプラインが全部完成するのを待って開港いたしますと、相当の年月がかかります。また一方、羽田におきましては、現在の発着回数がほぼ限度に来ておりまして、国際協定で結びましたそれぞれの便数につきましても、十分にこれを遂行できないという状況もございまして、新東京国際空港の開港が待たれるわけでございます。そのために本格パイプラインによる燃料輸送にかわりまして、貨車輸送と暫定パイプラインによる暫定燃料供給というものを考えまして、成田の新東京国際空港の開港を一日でも早めたいというので、ただいま貨車輸送の問題と暫定パイプラインの問題に公団、運輸省は取り組んでおるわけでございます。
  185. 土井たか子

    ○土井委員 暫定であれ本格であれ、パイプラインであるという意味においては変わりがないのです。一たんつくられたらパイプラインとして利用されるのです。それについていまだに告示がない問題を、告示をつくる以前にお互いに省が話し合うだけで、安全性についても確認されると住民から考えられるでしょうか。空港周辺のいろいろな事業に対する整備については、公害を引き起こさない、安全性というものは十二分に保証されているということでなければならない、これはABCの問題であります。いまだに告示が定められていない。また、告示についても、先ほどから御答弁をお伺いしておりますと、自信のあるきっぱりした答えというのは何らないのです。本格ラインについてもそうですね、暫定ラインについても中身を見た場合に、四・四キロについては、暫定なんといいながら本ラインそのものじゃないですか。正真正銘新たに暫定とするためだけの工事といったら二・七キロでしょう。四・四プラス二・七というのが今度は暫定ラインとして問題にされるのですよ。その一部は本格ラインなんですよ、暫定ラインといいながら。まやかしじゃないかというといわれたら、どう答弁なさるのですか。
  186. 隅健三

    ○隅説明員 空港の燃料基地から東関東自動車道に達しますまでの四・四キロ、これは先生指摘のとおり、本格パイプラインでございます。これにつきましてはすでに埋設を終わっております。これの基準につきましては、当時の基準で埋設をいたしましたけれども、今度の二・七キロの暫定部分は、これはジェットAの燃料を一本通すパイプラインでございますので、これにつきましてはできるだけ告示案というものを尊重して、安全上十分な手段をとりたいというふうに考えております。
  187. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、いまのお答えから総合して考えれば、本格パイプラインの中にも安全性の基準がまちまちであって、もう敷設してしまっておるところはそれでいく、これから新たに暫定パイプライン、さらに本格パイプラインについてはいまから考えるところの安全基準ということを一つは見ていただきたいということになるわけですか。
  188. 隅健三

    ○隅説明員 敷設をいたしましたパイプラインについて、もし告示と違っておる点があればどうするかという問題になろうかと思います。私どもといたしましては、パイプラインを敷設いたしますときに、十分注意をいたしまして、いろいろの問題を検討いたしまして、埋設の基準を考えたわけでございます。もし告示の基準に全く合わないというような点がございましたら、この点につきましては安全上の問題でございますので、さらに補修、補完をするつもりでございます。
  189. 土井たか子

    ○土井委員 安全上の問題とおっしゃるなら言いましょう。告示がまだない前夜に、たとえ各省の話し合いとはいえ、早々と暫定ラインをつくる必要がどこにあるかということをさらに言いたいのです、安全性の確認をそれだけお考えになるのなら。一たんつくってしまえば、あと取り返しがつかないということはある意味でいえますよ。告示を出したのと基準が合わなければもう一度つくり直せばいいじゃないかとお考えであるかもしれませんが、しかし、一たんつくられたら、それを利用するためにつくるのですから、油がその中を流れるのです。したがって、その辺、暫定ラインについてはいま私は執拗に質問をしているわけです。おわかりになりますね。したがって、こういう点からいいますと、告示が出ない、告示案がただあるだけ、その告示案についても、先ほど来いろいろな実験を通じてこのままで決してよいといえない中身です。検討して、各省の申し合わせに従って考えるんじゃ、どうもたよりなさ過ぎると思う。安全基準をそれによって担保するということにはならない。  もう一つ、こういうことに対しては本格パイプラインと暫定パイプラインの安全基準というものは同じように考えるのだ、その中身はいずれが劣る、いずれがまさるということは絶対あってはならないという確認と同時に、それを今後どのように具体的に基準として公のものにしていきたいとお考えかということをひとつはっきり——ここで二つ言っていただいて、次に進みます。
  190. 隅健三

    ○隅説明員 暫定。パイプラインが本格パイプラインよりも安全上劣ってもいいとかあるいは不完全であってもいいとは絶対考えておりません。これは本格パイプラインと同じだけの安全装置をわれわれは暫定パイプラインといえどもこれをするつもりでございます。
  191. 土井たか子

    ○土井委員 もう時間ですという知らせが来ていますから、あと大事な問題一問だけ、これだけはどうしても聞いておきたいと思います。公団とそれから山之作区長と成田市長との間で三月七日の日に覚え書きが取りかわされておりますね。これは御承知だと思います。その中身を見ますと、暫定パイプラインの運用予定期限は昭和五十年三月三十一日とするというふうに書いてあります。暫定期間が五十年三月ということになっているのですから、その中身を考えていきます——これは覚え書きですよ、はっきりした公式文書ですね。したがって、この中身を考えていきますと、本パイプラインというものがそれまでにできるのかということがはっきりしてなければならない。しかし、本格パイプラインについて考えていきますと、ルートについて、地方住民の同意を得て確定をして、さらに工事に着工して、それを竣工して、一切のこれに対する事業というのは完成しなければならない。五十年の三月となっている。中身はこういうことだと思うのですが、これは確認しておいてよろしいですか。いかがです。
  192. 隅健三

    ○隅説明員 成田市の山ノ作の区長さんと成田市長と、空港公団の総裁の今井榮文の覚書と思いますが、ただいま私の手元にそれがございませんので、一応この点については、ただいま一応公団のほうに命じまして、資料の提出を求めまして、御返答申し上げたいと思います。
  193. 土井たか子

    ○土井委員 ちゃんと私の手元にはあるんです。この手元にあるところによると、この文書では、項目五で、いま申し上げたとおりにちゃんと日付が入っております。したがって、これについてはやはり大事な問題ですから、ひとつ早急に返答してもらわなければ困ります。できたら、きょうはここでこの問題についてははっきりしておかなければならなかった。非常にこれは大事なことですから、はっきりしておかなければならなかった。  そこで、これにまつわる問題ですから、いまから言うことについては確答してくださいよ。いまいわゆる花見川ルートというのが問題になっているのは御承知ですね。ほかに水道道路ルート、東関道ルート、大体あそこの場所については、大きく分けて三案分かれてあるわけですね、現実に。ところが、この花見川ルートについては、先ごろ運輸大臣が、決定したかのごとき趣旨の公式の発言があったようです。この点まず確認したいことと、もしそれが事実であるならば、ほかの案を破棄して、花見川ルートというのは、公的に正式決定したというふうに確認してよいかどうか、この二つお答えください。
  194. 隅健三

    ○隅説明員 本格パイプラインの千葉市を通過いたしますルートといたしまして、ただいま先生の御指摘のとおり、当初は水道道路、それから千葉市長が、昨年では、新しくできる湾岸道路への東関東自動車道路の延長部分という二案がございました。第三番目の先生指摘の花見川ルートにつきましては、運輸大臣が建設大臣に対しまして、花見川ルートの検討をお願いをいたしましたことは事実でございますが、この点につきまして、本格パイプラインを花見川ルートで決定をするというのには、まだ、臨時新東京国際空港閣僚協議会幹事会の議題にもなることでございますので、正式に花見川ルートを本格パイプラインとして決定したという段階ではございません。
  195. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、運輸大臣をはじめとして、最有力のルートであるということは事実ですね。いかがです。
  196. 隅健三

    ○隅説明員 水道道路につきましては、千葉市長が、あのルートについては非常に困るということをはっきりおっしゃっております。また東関東自動車道路の延長部分につきましても、道路買収その他に関連いたしまして、非常にむずかしい問題があることも承知いたしております。そういうことで、第三の花見川ルートが、ただいまといたしましては、運輸省、公団が、ぜひこれについて、技術上のいろいろな問題点があるとは存じますけれども検討をお願いをいたしまして、先生おっしゃるとおり、有力な案として考えていることは事実でございます。
  197. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、正式決定がないということをきょうははっきり言われた。それを確認しておいていいですね。  一言申し上げましょう。住民の同意は、これにはまだございませんよ。閣僚の意見の一致を見たとか、閣僚での協議が整ったとかおっしゃる以前に一番大事なことを忘れてもらっては困るのです。住民がどう考えているかということを無視して事を運んでいただいては困る、このことだけをはっきり申し上げておきたいと思います。  そして最後に一つ申し上げたいのは、先ほど私が出したところの公的な覚書の問題です。日付がちゃんとある。単に日付だ、日付だというだけじゃない。飛行場部長さんにとっては成田空港の心臓部ともいうべきパイプラインの竣工時期を一体どういうふうに考えたらよいかということを思う場合に、これは非常に大事な問題じゃありませんか。覚書の中身は、ここの手元にはない、そういうことは確かめなければわからないとおっしゃるのはどうかと私は思うのです。こんなに大事な問題については、はっきり確認をしておいていただかなければ仕事になりませんよ。そうじゃありませんか。したがって覚書は覚書でありますから、現にいまも有効であります。これに従って、一体どういうふうに具体的に運輸省としては考えていらっしゃるのかということをきょうははっきり聞きたかった。はっきりしたお答えをきょうここで要求するのは無理なようであります。  最後に私は一言申し上げて、時間が過ぎていますから終わりにしたいと思いますが、この航空機燃料、石油のパイプライン全体を通じて問題になりますパイプライン事業法、これが審議されたときに、現内閣総理大臣、その当時の通産大臣である田中角榮さんは、住民の意思を尊重することをはっきり確約されているのですよ。このことをどこまでも忘れてもらっては困ると思いますが、住民の意思を尊重することを言われたから、通産大臣から内閣総理大臣になられたのかもしれぬ。そこのところを期待をかけるので、一そうこの問題については、やっぱり肝心かなめは一体だれなのか、何を考えるべきかということをひとつ慎重におもんぱかっていただいて、取り扱いを進めていただかなければ困ると思います。そういうことを申し上げて、あと少しまだ問題点は残りますが、次回に譲りたいと思いますから、次回にも引き続いてこの成田空港周辺整備の問題について質問を受けてくださるように申し上げておいて終わりにします。  ありがとうございました。
  198. 佐野憲治

    佐野委員長 木下元二君。
  199. 木下元二

    ○木下委員 私は、日本の南の島奄美大島の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、この奄美大島に石油基地がつくられようとしておる問題であります。  この奄美大島に枝手久島という島があります。これは面積六十ヘクタール、周囲十六キロの小さな島であります。この奄美大島の全体の位置から申しますと、中央やや南の西海岸にございますこの島に、日本一の、しかも世界でも最大級の規模の大石油精製基地がつくられる計画があるわけであります。新聞報道によりますと、東亜燃料工業が、枝手久島の一部とそれから奄美大島のほうの陸地の間の遠浅の海などを約三百万平方メートルにわたって埋め立てを行なって、日産約五十万バーレルの石油精製基地をつくるという計画であります。  そこで通産省にお聞きしたいのでありますが、こういうふうな計画について正式に東亜燃料から申請を受けていられるのかどうか、お尋ねいたします。
  200. 飯塚史郎

    ○飯塚説明員 東亜燃料の計画につきましては、実は私ども新聞で初めて知ったような状態でございますが、もちろん会社側からこの計画について通産省に対して申請あるいは正式の報告というようなものは出ておりません。
  201. 木下元二

    ○木下委員 まだ申請が出ていないようでありますが、申請がやがて出ると思われるのですが、新聞報道によりましてももうすでに現地にも東亜燃料のほうから人が行っております。県のほうとも交渉が進められようといたしております。申請があれば一体通産省はどのような態度をおとりになるのかということを伺いたいと思います。まあ申請が出ないことには具体的なことはおわかりにならないと思いますが、基本的な方針としてどのようにお考えになっていられるか伺います。
  202. 飯塚史郎

    ○飯塚説明員 私ども会社側から聞きましたところでは、あそこにつきまして製油所の建設の可能性調査をまずやらしてもらえないのかということを枝手久島の属します村当局にお願いをしたようでございます。同時に県のほうにもそれをお願いしたようでございますが、まだそれについての村ないし県の正式な返答というのは得ていないように承知しております。したがっていまの段階で設備の許可につきまして申請が行なわれるかどうかにつきましては、私どもむしろ見通しとしてはその可能性は少ないんではないかというふうに考えております。  ただ、かりに申請があったときにどうするかという御質問でございますので、申請がございますと法律上石油業法に基づきまして、これの許可の手続に入るわけでございますが、まず問題は、地元の県なり村当局がこの問題について了解をし得るかどうかということが基本的な問題でございまして、そこら辺がかりに可能であったということが前提で、設備の許可の問題について検討がなされるわけでございますが、今年の設備の許可につきましては、本年の需給見通しから考えましてやる必要があるかどうかについてまだ検討中でございます。明確なことは申し上げられないわけでございますが、設備の許可にあたりましてまず需給見通しからいって適当であるかどうか、それから公害対策、保安対策、その他現在ほかの法律その他によりまして規制を加えられております事項に一ついて十分措置し得る見込みがあるかどうか等を参考といたしまして検討するわけでございます。もちろん基本的には、県なり地元市当局の了解を得られるかどうかということが基本にあることは先ほど申し上げたとおりでございます。
  203. 木下元二

    ○木下委員 まだ調査の段階で、はたして申請があるものかどうか、むしろ可能性は薄いというお話ですけれども、私が調べたところによりますと、そういうふうな、まだ海のものとも山のものともわからないというような状態じゃなくて、相当話は進んでいるようであります。特に先ほども申しましたようにもう具体的な計画が発表されております。昭和五十四年に操業するということをめどにしておる。そして総工費、埋め立ての費用、漁業補償、公害防止施設などを含めて、合わせて千五百億円ということであります。雇用見込み者数は地元採用を含めて千七百人、年間の固定資産税は十五億円、こういうことで計画の内容も一般に発表されているようであります。だから、これは決して将来もあるかないかわからぬというような問題ではないと思われるわけであります。  そこで伺うわけでありますが、まず最近は大都会過密地帯ではもう公害企業が拡張することができなくなってきている。特に住民運動が起こりまして、この反対によって拡張ができなくなってきておる現状でございます。そこで住民運動の起こらない地方にどんどん進出をしてくるというのが最近の傾向であります。本件の場合にもまさにそういうふうなケースの一つだと思うのですよ。こういうことに対して、いうならばこういうふうな公害企業の安易な立地のしかたに対してどのようにお考えでしょうか。
  204. 飯塚史郎

    ○飯塚説明員 わが国の石油精製に対する施策といたしまして、石油製品のわが国への安定供給という観点から、石油はなるべく消費地において精製することが望ましいということで、従来通産省としても考えておったわけでございます。原油を外国から輸入いたしましてそれを国内において精製することによって石油製品の安定供給が、海外から製品を輸入するよりもより有効に確保できるという意味でございます。ところが最近はいま先生指摘のように、国内におきましてもいろいろ立地難等の問題も出てまいりまして、一体、将来十年先、十五年先の日本の国内における製品の確保について日本国内における立地だけで十分まかなえるかどうかというような点でいろいろ議論されていることは事実でございます。したがいまして、各精製企業におきましても、国内における立地の問題をもちろん一生懸命に地元対策公害対策等について努力はしていると思いますけれども、なかなかむずかしくなってまいりますので、中間地での、つまり外国で日本に近いところでありますけれども、中間地での精油所の建設等も勉強しているようでございます。そういう意味におきまして、いまの本件についても、従来の日本国内におきます立地難からこういう問題を考え出してきたのじゃないかという御質問でございますけれども、私ども正確に会社の意向を聞いてはおりませんけれども、おそらくそういう配慮というものも多分にあるというふうに考えているわけでございます。
  205. 木下元二

    ○木下委員 そこで環境庁のほうに伺いますが、こういうふうな大きな石油精製基地ができますと、大気汚染や水質汚濁がたいへんひどい状態が予想されるわけであります。このことについて環境庁としてはどのようにお考えですか。
  206. 岡安誠

    ○岡安政府委員 石油精製基地一般のお話かと思いますけれども、お話のとおり、こういう基地からは大気汚染それから水質の汚濁ということが発生しやすいものでございます。新規そういう工場の立地につきましては、私どもは地元住民の意向を尊重しながら環境を保全し得る範囲内にとどめるというような考え方で、事前にアセスメント等は厳重にいたすという方針で対処してまいりましたし、今後もそういう方針でいきたいと思います。
  207. 木下元二

    ○木下委員 現在日本にある石油精製基地につきまして、その付近の公害の現状がどのようになっておるか。その被害の状況等について、全体的には時間の関係でけっこうでございますが、簡単に一つか二つ、例を言ってお話しをいただきたいと思います。
  208. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まず、水質関係につきまして私から御答弁いたします。  わが国の主要な石油精製工場と申しますと、大体コンビナートを形成している場合が多いのでございますが、そういう工場群からの排水につきましては、大体そういうコンビナートを形成するという特性から、各県非常にきびしい上乗せ排水基準を設定いたしまして、それによって排水の規制が現に行なわれておるわけでございます。問題となります水の汚濁はCODとそれから油分ということになろうかと思いますが、CODにつきましては先ほど申し上げましたように排水基準の強化の結果だと思いますが、経年的に見ましておもなコンビナートの地先の水面等は順次改善を見ております。ただ油分につきましては、やはりいろいろ衝突事故その他もあろうかと思いますけれども、環境基準に適合しないというような事例もございます。これらにつきましては、それぞれきびしい上乗せ排水基準の設定により、たとえば活性汚泥法等を厳重に実施をするというようなことによりまして、今後さらに環境基準の達成に努力をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  209. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 石油精製施設の周辺にはたいがい発電所、製鉄所などの施設が操業している場合が多いのでございまして、大気汚染だけの問題として評価することはできないかと思いますが、四十六年度の硫黄酸化物の環境における濃度で、おおむね現行の環境基準に適合しておるものが多くなっておりますが、一応四十六年度では四日市のように基準に不適合の地域もある実情でございます。これらに対して私どもは現在の環境基準の改定強化を行ないまして、さらに大気汚染の軽減をはかってまいりたい、こういう方針で作業をしております。
  210. 木下元二

    ○木下委員 排水基準のほうも、たとえばCODは順次よくなっておるとか、あるいは大気汚染のほうも環境基準にだんだん適合してきておるということで何かよくなっているようなことを言われますけれども、しかしたとえば大気汚染にしましても公害病認定患者はどんどんふえる一方であります。瀬戸内海にいたしましても汚染は広がり、深まる一方であります。だから環境庁のいわれるそういう御説明は何か企業寄りの、企業のほうから説明を聞いているような感じさえ受けるのですけれども、たとえば瀬戸内海の場合は複合汚染であって、この石油基地からだけの問題ではありませんけれども、少なくとも石油基地が汚染源として大きな被害を及ぼしておるということは明らかです。また石油タンカー、特に大型タンカーの事故、あるいはそういうことも含めての油の流出といった問題が、きょうは私は手元に資料を持ってきておりませんけれども、決して少なくなっていない。広がっております。  それから石油精製基地だけの問題で申しますと、たとえば和歌山の有田市には東亜燃料、それから丸善石油といった石油精製基地があるのでありますが、そこから排出される亜硫酸ガスによりましてミカンに黒点病などの被害が出たということが地元の農協等から訴えられております。それからまたこの付近では気管支炎の患者がふえております。近くの御坊市には酸性度の強い雨が降るという調査結果も出ております。また昨年の十二月にはシーバースにタンカーが衝突して油が流出して甚大な漁場被害が出ておるという報告がされております。  それからさらに申しますと、たとえば沖繩の金武湾、ここは沖繩石油精製基地があるわけでありますが、石油の流出や悪臭などによりまして被害が続出しております。原油の流出について申しますと、タンカーの事故、送油パイプの故障などによりまして四十六年十月、四十七年一月、二月、三月と連続して起こっております。また悪臭は四十七年六月以来今日まで断続的に起こっておりまして、住民は吐きけ、頭痛等を訴えております。こういう沖繩の状態やあるいはいま申しました和歌山の問題は御存じでしょうか。しかもこの沖繩の石油基地というのは日産十万バーレルであります。今度つくられようとしておるのは、初めに申しましたように五十万バーレルという計画であります。この何倍もの被害が出ることは十分に予測されることであります。こういうことについて環境庁として一体どのようにお考えなのか、所見を伺いたいと思います。
  211. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いま御質問の沖繩の金武湾の水質でございますが、実は沖繩県はまだ必ずしも水質調査を十分に行なっておりませんので、必ずしも十分明らかでないわけでございます。現在私ども承知しております限りにおきましては、四十七年におきますガルフ精油所の排水の油分は三PPMということで、これは一応全国の一律基準に適合いたしておるというふうにいわれております。ただ先生指摘のとおり、こういう精製所近辺におきましては、たまたま事故等が起きまして、その結果の汚染というのがあり得るわけでございますし、現にあったのでございまして、事故による汚染というのが、海水を汚染する度合いとしましては、最も私ども警戒をしなければならないと思っておりますので、それらにつきましては今後とも十分注意をいたしたいと思っております。
  212. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 初めに、和歌山の御指摘の点につきましては、この事象を承知しております。ただ、私ども年平均値でもって経年変化の推移を見てまいりますと、たとえば先生の御指摘の有田にあります測定局の年平均値は、当初〇・〇四七PPMあったものが四十六年度は〇・〇三四と落ちてまいりまして、一応ステーションにおける測定濃度に関しましては、毎年毎年少しずつながら下がっておるというデータが出ております。しかしながら、これは現行の環境基準を満たしておるということでございまして、さらに現在それを強化する方向で作業を進めております。  また、沖繩の金武湾地域の精製工場に関して悪臭問題等もございますが、これらにつきましては、なお沖繩県における監視測定あるいは大気に関するいろいろな指導的な面もまだ弱い点がございますので、人員の研修あるいは測定機器の整備等、これから重ねてまいりまして、監視指導を徹底強化していく方針で臨みます。
  213. 木下元二

    ○木下委員 いまの沖繩の金武湾の問題ですけれども、測定体制、監視体制が非常に不十分なようであります。これははなはだ遺憾なことであって、もう施政権が返って相当な期間たつわけでありますから、これはぜひとも早急にひとつ監視体制を強めていただきたいと思います。この沖繩の海も、私も再々行きましたけれども、たいへんきれいな海であります。サンゴ礁の海でありまして、サンゴ礁が海面に輝いて非常にきれいな海でありますが、これがどんどんよごされようとしておるということはもう放置できないことであります。ぜひともきびしく監視、そしてまたその前提として調査をしていただく、このことを要請しておきます。  それから通産省に伺いますが、御承知のように四日市の公害訴訟の判決が出されましたように、石油精製といった公害をまき散らすことが明らかに予想される企業が新たに工場を建設しようとする場合には、事前に十分に調査をして、付近の住民の生命、身体に危害を及ぼすことのないように立地すべき注意義務がある。これはもう判決がはっきりと判断をしておるのでありますが、今度のケースでも、先ほど申しましたように、明らかに大きな被害、公害が予測されるわけでありますから、十分に調査をする必要があろうと思います。通産省はこういう公害が起こることが十分に予測される建設を許可してはならないと思うのですけれども、その点について通産省のほうは、これは具体的な問題としてでなくて、一般的な問題としてお答えいただきたいと思います。
  214. 飯塚史郎

    ○飯塚説明員 石油精製許可の申請がございますときに、それを許可するかどうかという際に、公害対策を十分に講ずる必要があるわけでございまして、従来、通産省の公害保安局が中心になりまして、そういう場合には、公害防止総合事前調査というのを実施いたしておりまして、これは地元の県並びに市町村当局との協力事業としてやっておるわけでございますが、こういう調査の結果をもとにして、公害に対する対策が十分であるかどうか、それを確認した上で許可検討に入るわけであります。本件につきましても、そういう事前調査をやることは当然でございます。
  215. 木下元二

    ○木下委員 例の四大公害裁判などが明らかにいたしておりますように、公害の問題というのはもう公害が起きてからではおそいのであります。これを未然に防ぐということが最も大切なことであります。通産省が石油基地などを許可する場合に、その許可基準として一体どの程度のことを考慮しておられるのか。許可基準を伺いたいと思います。
  216. 根岸正男

    ○根岸説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御質問許可基準でございますが、これは当然まず第一に考えられますことは、そこでつくります製品が非常に公害対策上優秀な製品をつくれる——今後の考え方として申し上げるわけでございますが、その次に、みずから発生するものに対する公害対策が十分であるということが非常に大きな許可の要件になるというふうに考えております。
  217. 木下元二

    ○木下委員 その公害対策が十分かどうかということについては、その前にお答えがあったのですけれども、何か県のほうと協力し合って調査をするということを言われたのですが、一体これまではどの程度調査をされておったのでしょうか。
  218. 田中芳秋

    ○田中(芳)政府委員 ただいまの産業公害に対する事前調査でございますが、私どもといたしましては、特に大規模なコンビナートといったものにつきましては、個々の企業では必ずしも判断できない複合汚染の問題が生ずるわけでございますので、当該地域を総合的にとらえまして、そして、その地域の環境容量といった点をとらえつつ、企業の立地のあり方、生産規模、あるいは排出のあり方といった点について、指導をしておるわけでございます。昭和四十年ぐらいからすでに実施をいたしておりますが、私ども調査の内容といたしましては、大気につきましては、御承知のとおりにSO2を基準にいたしております。それから水につきましてはCODあるいは油分といったものを基準にいたしておるわけでございますが、現地におきます気象条件、地形、あるいは海流の流れといった自然的な条件を把握し、かつ、風向その他トレーサーを使用する等によりまして実地の調査をいたしますほかに、さらに風洞実験等もいたしまして、現実の立地にあたりまして基準を越えることのないように指導をしてまいってきているわけでございます。  なお、従来までやってまいりましたのは現行の環境基準を一つのめどといたしまして、その基準内に入るように指導をしてまいったわけでございますが、今後環境庁のほうといたしまして早急にきびしい新環境基準を設定されるということでございますので、これが策定の暁には、私どもといたしまして、この新しいきびしい基準によりまして企業を指導してまいりたい、こういうふうに考えております。  これと公害諸法の規制との関連につきましては、私どもといたしましては、このような調査をいわば予備校と申しますか、そういった考え方で、それをパスしたものが必ず公害諸法の規制をパスするとは考えておりません。環境庁で重ねて現実の立地にあたりまして公害諸法を適用していただきまして、今後新規立地に関して公害の発生のないように厳重にやってまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  219. 木下元二

    ○木下委員 いま言われたような、現地の状況に即して、いろいろな自然的条件といったものも考慮して、科学的な見地から調査をするということで、たいへんけっこうですけれども、それは、初めに言われたのですが、石油コンビナートについての複合汚染の問題として言われましたが、そういう場合はもとよりのことでありますが、そうでなくて、本件のような石油精製基地の場合においても、同じような調査をされるという意味で言われたのですか。
  220. 田中芳秋

    ○田中(芳)政府委員 単独の立地につきましては、むしろ開発主体でございます事業者、それから県等によりましてこれを実施していただきたいというふうに考えております。と申しますのは、複合汚染になりますと、立地しようとする企業は、他の企業の排出状況その他についてわかりませんので、いわば第三者がこれを公正に判断をする必要があろうという意味で、通産省は県等とも協力してこれを実施しておるわけでございます。  今後の方向といたしましても、工場立地の調査等に関する法律の一部改正法案を今国会に提案をいたしております。すなわち、工場立地法案でございますが、これにおきまして、大規模な企業が集中して立地されると予想される地域につきまして、ただいま事実上の行政指導としております産業公害事前調査、これを法律的に義務づけ、法律事項といたしまして、これに基づきます調査の結果につきまして、大臣の勧告権等をこれに盛っておるわけでございます。その意味で、いわば大規模コンビナート等を対象に今後は実施してまいりたい、このように考えております。
  221. 木下元二

    ○木下委員 私は初め許可基準ということで通産省に伺っておったのです。いまの話によると、そういうふうな単独の企業の場合には、環境庁でなくて通産省のほうでということのようでありますが、そこで通産省に伺いますが、いま環境庁のほうではいろいろな自然的な条件とか現地の状況とかいうものに即して調査を十分に行なってやるんだ、こういうふうに言われたのですが、通産省としても、これは許可をする場合に、先ほども言われましたけれども公害が発生しないということが基準である、そのためには当然そういった環境庁が行なうのと同じような調査をされた上で、公害が起こらないという前提でなければやらないというふうに伺っていいのですか。
  222. 飯塚史郎

    ○飯塚説明員 通産省といたしましても、いま先生指摘のような、また先ほど環境庁から申し上げましたような方向検討していくということは当然だと考えております。
  223. 木下元二

    ○木下委員 それからもう一つの問題は、その公害の問題と同時に、住民の問題だと思うのです。住民が反対をするというのは、これは公害の発生の可能性が強いから反対をするわけなんですけれども、この住民が強く反対をしておるときというのは、それはすなわち公害が発生をするおそれが非常に強い、こういうふうに見られると思うのですけれども、こういう住民の意向というものも、許可をする場合の基準としてお考えになっておられるかどうか伺いたいと思います。
  224. 飯塚史郎

    ○飯塚説明員 住民の意向は住民の立場によりましていろいろ違う場合もありますけれども、かりに反対がある場合にも、漁民の立場からの反対あるいはその他の職業の方の立場からの反対、一般市民としての立場からの反対、いろいろございますけれども、いずれにいたしましても、総体として地元の了解の、地元の納得の得られないところに工場の新しい建設というのは不可能でございますので、地元並びに県当局の意向を十分確認した上で設備の許可について検討することになるわけでございます。
  225. 木下元二

    ○木下委員 確かめておきますけれども、地元の納得というのは、一部のボスとか町長とか、そういう人たちをさすのではなくて、住民の方々の多数の意向というふうに伺っていいわけですね。
  226. 飯塚史郎

    ○飯塚説明員 そのとおりでございますが、ただ、現実の問題として、意見を聞く場合に、ある総体の意見を代表するにふさわしい人の意見を聞くというようなことに実際問題としてはなるかと思いますけれども、趣旨としては地元の大多数の賛成が得られた上で許可をするというふうにお考えになっていただきたいと思います。
  227. 木下元二

    ○木下委員 ちょっとそこ、デリケートですから確かめておきますが、たとえば町長が賛成している、町長が一人賛成している、ところが、もう住民はこぞってほとんど——まあ一部それは賛成している人がいるかもわかりませんけれども、大半が反対をしておるというふうな場合もあり得ると思うのです、現実には。これは、そういう例は私はたくさん知っております。そういう場合は、町長というのは確かに本来からいえば住民の意向を反映するべき立場の人でありますけれども、現実には反映していないという場合があるわけなんです。そういう場合は、もちろんその町長からも意向は聞くでしょうけれども、やはり多数の住民の方々の意向も聞くということでしょうね。それを尊重するということでなければ困ると思うのです。確かめておきます。
  228. 飯塚史郎

    ○飯塚説明員 具体的な事例に即しませんと実際はこういう問題はわからないわけでございますけれども、ただいま先生がおっしゃったように、地元の大多数の住民の賛成を得た上でやるということでございます。
  229. 木下元二

    ○木下委員 そこで、この奄美大島では現在国定公園の指定の申請が出ておるということですけれども、これはそういうふうに聞いておるのですけれども、出ておるでしょうか。出ておるとすれば、いつ出ておるでしょうか。
  230. 首尾木一

    首尾木政府委員 国定公園につきましては、四十六年の暮れに自然公園審議会のほうで、その地域が、国定公園の候補地ということの選定がございまして、それによってきまっておるわけでございます。ただいまそれにつきまして正規に国定公園としての指定の手続をやっておるところでございます。
  231. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、まだ国定公園には指定されていないようですけれども、手続が進行して、ごく近い将来に国定公園になるというふうに伺っていいわけですか。
  232. 首尾木一

    首尾木政府委員 さようでございます。
  233. 木下元二

    ○木下委員 それでは、その奄美大島全体ではないようですけれども、これはどの地域が国定公園に入っておるのでしょうか。
  234. 首尾木一

    首尾木政府委員 奄美群島国定公園の候補地でございますが、全体として陸域が七千九百九十ヘクタールでございまして、奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の海岸部と、湯湾岳、井之川岳、百之台等の内陸部の一部、及び大島、与論島内、合計四地区の海中公園ということが、これが対象になっております。
  235. 木下元二

    ○木下委員 この問題の枝手久島とそのごく周辺は入っていないようですけれども、この枝手久島というのはサンゴ礁に取り囲まれたたいへん美しい島だというふうに聞いているのです。この自然環境というのは永久に保全されるべきだと私は思います。国民の保養地としても残されるべき島だというふうに思うのですけれども、環境庁としてはどのようにお考えでしょうか。
  236. 首尾木一

    首尾木政府委員 奄美群島の国定公園の候補地が選定をされましたのは、ここの地区におきます特にサンゴ礁の問題でありますとかあるいは亜熱帯性の植生でありますとか、マングローブ林といったようなもの、それが個々の奄美群島の国定公園の、特に今後守るべき自然ということで選定をされておるわけでございまして、先生のただいま問題になっております枝手久島でございますが、この地区につきましては、鹿児島県から国定公園の指定についての申し出がなされておられないわけでございます。御案内のように、国定公園の指定は都道府県の申し出に基づきまして行なうわけでございまして、私どもそういったような申し出に基づきまして、そこが国定公園として適当な地域であるということでございますればそれを選定をするわけでございます。  ただ、枝手久島につきましても私ども全然調査をいたしておらないというわけではございませんで、ここにつきましても環境庁の職員が、この候補地の選定に先立ちます調査につきまして、一応そこについて現地のほうへは行っておると考えております。ただ、他の地区に比べましてここの地区が特にすぐれたというようなことはないということについては、そのような一応の報告を受けているわけでございますが、何にいたしましても、これは前提となります申し出が出ておりませんので、この地区がこの対象になっておらないというのが実情でございます。
  237. 木下元二

    ○木下委員 初めにこの奄美大島の指定されるであろう予定の範囲を言われたのですが、枝手久島そのものは県のほうから申請もなくて入っていないということですけれども、枝手久島そのものが国定公園に指定されなくても、かりにここに石油基地ができましてこれが汚染をされるということになると、この海水なり大気が近くの指定された国定公園にずっと及んでくることは明らかであります。これはもうどこでもそういうことになっておるのであって、たとえば瀬戸内海でも、瀬戸内海国立公園ということで指定をされております安芸の宮島なんて、もとはたいへん美しいところであります。ところが、そういう指定された範囲は国立公園で埋め立てもない。けれども、その周辺がどんどん埋め立てられ、廃液が出る、工場がつくられる、こういうことで、周辺が汚染されて結局国立公園そのものも全部汚染されてしまう、こういうことになってきまして、瀬戸内海でもたいへんな問題になっておるわけですね。だから、この奄美大島の場合でも、いいところだけ国立公園ということにいたしましても、その周辺にたとえばいまのように石油基地がつくられるということになると、これはもう国立公園でも国定公園でも指定をした意味が失われると思うのです。ですから、そういうことになってはたいへんでありますので、それに対する対処を考える必要があるのではないか。たとえば、先ほど県のほうから申請がなかったと言われましたけれども、こういった問題については、環境庁のほうとしてはもちろん県の申請を待ってやられると思うのですが、県と十分連絡をとり合って、形の上では県の申請ということになるのでしょうけれども、いろいろ協議をされてやられることと思うのですが、行政指導をされて、奄美大島のほかの地域、特に問題になっておる枝手久島もひとつこの範囲に含めるような指導をしていただきたい、こう思うのですけれども、いかがでしょう。
  238. 首尾木一

    首尾木政府委員 私ども、公園の地域をとります際には、公園として十分保護ができますようにその地域をとることを心がけておるわけでございまして、そういうふうな意味で、県から申し出がございましても、特に重要な地点については、さらにそこを守っていくためにはぜひこの地点を追加すべきであるというような意見を述べまして、双方連絡をとり合って適正な地域をとるように指導をいたしておるところでございます。  枝手久島の問題につきましては、実は私どもも全く石油基地の問題につきましては、そういう候補地の選定段階におきまして承知をいたしておりません。今日においてもまだその辺の実情につきまして、鹿児島県からも十分事情を聞いておりませんので、今後事情を聞きまして、国定公園として守るべき地域については、これは国定公園として指定をするように努力をしていきたいと考えます。ただ、先ほども申し上げましたが、現在すでに申し出に基づきまして手続をやっておりまして、この地区だけのためにこの問題が非常におくれてくるといったようなことは問題があると思いますので、今回の指定につきましてはなかなかそこまでにその問題を解決するというようなことは実際問題として非常にむずかしいのではないかというふうに考えます。
  239. 木下元二

    ○木下委員 むずかしいようでありますが、かりにむずかしいとすれば、自然環境を守るという立場から新しくできました法律、自然環境保全法というのができたわけでありますけれども、この法律に基づく環境保全地域に指定することはできないだろうかと思うのです。どうでしょう。
  240. 首尾木一

    首尾木政府委員 この地域は国定公園の候補地でございますので、まあ国定公園の地域の中に拡張をしてこの地域を考えるべきかどうかということが先決の問題であろうというふうに考えております。環境保全地域というものも、もちろん自然環境保全地域の設定ということも考えられますけれども、特に自然環境保全地域にすべきか、あるいは国定公園にすべきかということにつきましては、実際問題といたしまして、調査を十分やってみませんと、そこの点についてはどちらが適当かということは必ずしも言えないと思いますが、私ども、むしろ、現在その付近が国定公園でございますので、もし考えるとするならば、国定公園の地域ということで第一次的に検討すべき問題ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  241. 木下元二

    ○木下委員 念のために確かめておきますが、これは国定公園であってもあるいは環境保全地域であってもけっこうだと思うのですが、問題は、大規模な自然破壊をもたらすような公害企業の立地を認めてもらいたくないということであります。そういう公害企業の立地を阻止するという立場で環境庁としても行政を進めていただきたい。このことを特に要請をいたしておきます。  それから通産省に最後に伺いますけれども、東亜燃料がここに進出をしてくるということで、もうすでに現地では住民の反対運動がどんどん盛り上がっておるというように私は聞いておるのです。実は現地の住民だけではないのです。阪神問には奄美大島出身の人たちがたくさんいるのです。そういう人たちが、自分たちのふるさとを守ろうということで立ち上がって、奄美を守る会というものをつくって陳情に来ておるのです。問題はそこまで発展をしておるのです。先ほど言われましたけれども、大多数の住民が反対をしておるということ、それから公害のおそれが多分にあるということ、こういうことですから、こういうふうな状態にある以上は、石油企業の申請の許可をしないということを約束していただきたいと思います。これはもうずっといままで私が質問をし、あなたの方でお答えをいただいたわけでありますが、そのことから当然出てくることでありまして、私は、要約して、まとめて言っておるわけでありますけれども、結局住民が反対をしておる、公害のおそれがある、そういう場合には、許可の基準から見て許可しないのだということを言われたのでありますから、そのことを念のために確認をし、そうしてそういうふうな状態にある以上、石油企業の申請の許可はしない、このことをお約束いただきたいと思います。
  242. 飯塚史郎

    ○飯塚説明員 現実に地元で反対があるというのは、いま初めてお聞きしたわけでございますけれども、何せ会社のほうもまだこれから調査にかかろうかというところでございますので具体的に設備の新設ということで態度を決定しておるわけではないと思います。したがって、私どものほうにも地元の反対その他の声というのも具体的にまだ出てはいないかと思いますけれども、ただ結論といたしまして、新設の精製企業が公害に対する配慮が十分でない場合には、当然許可はすべきではないということでございますし、それからまだ地元の反対も、これは先ほどもちょっと先生から御指摘ございましたけれども、地元の反対というのは具体的なケースに当たらないと、どこが反対かというのはなかなかつかみにくい問題でございますけれども、大勢的に申し上げますと、大多数の地元の住民が反対をするという場合には、これは企業は進出すべきではないという一般的な考え方は申し上げられるかと思います。
  243. 木下元二

    ○木下委員 そのことは確認していいわけですね。それを聞いて安心したわけですけれども、その線でこれからも進めていかれる、こういうふうに伺っていいわけですね。けっこうです。
  244. 佐野憲治

    佐野委員長 岡本富夫君。
  245. 岡本富夫

    ○岡本委員 いまお話がありました奄美大島の問題でありますが、ちょっと詰めておきたいのですが、環境庁としてはこの問題について、たとえばここに石油精製工場、基地をつくろう、こういう場合に、それをとりやめさせるという権限、こういうのがあるのかどうか、その権限について一点お聞きしてみたいと思います。いかがですか。
  246. 船後正道

    ○船後政府委員 権限があるかないかという御質問でございますが、これは石油業の新設等につきましては、通産省が監督官庁として許可という問題があるわけでございます。これにつきましては、環境庁は法律上は関与していないわけでございます。しかしたいていの場合、こういう臨海性の大きな工場の設置は、あるいは埋め立ての問題あるいは港湾の問題等が伴うわけでありまして、こういった立地上の問題につきましては、それぞれの法律で環境庁が何らかの形で関与するという場面もございます。あるいはそういうことがないという場合につきましても、環境庁といたしましては、環境保全という観点から、必要に応じていろいろな技術上の協議もございますし、場合によっては法律上の勧告という権限もあるわけですから、少なくとも開発が環境を害しない、環境保全の範囲内で開発が行なわれるというのが環境庁の基本方針でございますので、そういうものに背馳するものについては、環境庁はその事態に応じまして適切に対処してまいりたいと思います。
  247. 岡本富夫

    ○岡本委員 枝手久島とそれから奄美本島、この間を埋め立ててしまおうというわけです。そうしますとここにある焼内湾が、片一方だけあいて片一方はふさぐということで、全然潮流が動かなくなるだろう。こういうことになりますれば、そこの魚あるいはまた海水が汚濁することは間違いない。  同時に私もう一つ心配しておりますのは、ここは五十万バーレルということになりますと、大きなタンカーで原油を運んでくるだろう。これを精製したものを今度は小さなタンカーで運ぶわけです。そのときに、特にこれは外洋ですから相当なバラスト水を積んでくるのではないか。バラストを捨ててそして油を入れるわけですから、このバラストを船の下から抜くわけですね。たとえばこれに対して、バラスト水を処理する処理施設、こういうものをつくると思うのですけれども、実際上そのバラスト水を処理する場合に、前の一船が処理していますと、次の船がそれを待っておれないわけですね。特に船賃の採算上あとのはみな捨ててしまう。特に船の構造を見ますと、一番船底からさっと抜けるようになっているのですよ。したがって、海水汚濁ということはもう火を見るよりも明らかだ。特にこの地形をあとで見てもらったらわかりますけれども、そういうよごれた海水が焼内湾に入りましたら、今度は出ないのですよ、片一方詰めていますからね。そうしますと、ここの部落の漁業、あるいはこの焼内湾の中は全然よごれてしまってきれいにならぬといいますか、ちょうど瀬戸内海みたいになってしまう。これは火を見るよりも明らかでありますから、ぜひひとつこの東亜燃料の埋め立てに対しては、またここに対するところの精製工場はつくるべきでないという考えを私は持っているわけです。  先ほども環境庁は基準以内基準以内、基準にさえ合えばというような答弁がだいぶあったわけでありますが、これは東燃の川崎工場に当委員会から委員長以下みんな行った、わけです。行きますと、非常に基準以下に守っているのだ、こういうことであるけれども、大気汚染の場合はどんどん患者が続出しておるということですから、この許可にあたって、こういった配慮を考えますと、私は地元の住民の皆さんも反対しておることでありますから、ここに東亜燃料の精製基地をつくるべきではない、こういうように思うのですが、環境庁の考え方をまずひとつお聞きしておきたいと思います。
  248. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 環境庁といたしましては、いままでの四日市だとかそのほかいろいろ汚染が進みまして、そしてこれが退治のために環境基準をつくって、いままでの反省の上に立って一生懸命押え込もうとしておるわけなんです。それは行政の油断からそういうことが起ったといわれれば、これは率直に反省をしなければなりません。しかし特に新しい立地のときにあたりましては、いままでよごれたところを押え込むためにも環境基準をきびしくする。これは見直しをしていきます。と同時に、新しいそういう処女地につきましては、なおさら汚染に対しては警戒をしなければいけませんから、この新しい基準をそこに、こんなきれいなところだから一つぐらいあったってたいしたことはなかろうというような気持ちではなしに、きれいなところであればなおさらやはりきびしい大気、水の環境基準を科学的に研究をいたしまして、そしてそれを当てはめて環境を守っていきたい、こういうことでございます。  先ほども局長答弁しましたように、許可に関してはなるほど環境庁は権限はありません、これは通産省のほうに法律上なっておりますけれども、設備をつくるときは知事にも届け出をいたしますから、そのときにあたってやはり厳重にチェックをしていく、そういう姿勢はもうきびしく貫いていきたい、こういうことで一生懸命努力をしたいと思います。
  249. 岡本富夫

    ○岡本委員 それから、自然保護局長ですか、首尾木さん、この前も皇太子さんが奄美へ行ったときに、一番いいところだとここへ県から案内しているんですよ。それくらいのところでありますから、やはりもう一度あなたのほうからも調査をしていただいて、そしてこの自然環境を残していこうという前向きの姿勢をひとつ示していただきたい。国定公園ということになりますとすぐ県が許可してしまったりしますから、できれば自然公園の中に入れていくというような前向きの検討をひとつお願いしたいというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  250. 首尾木一

    首尾木政府委員 私どもといたしましては、それがすぐれた自然であるということでございますれば、そういうものはぜひ守っていきたいというふうに考えております。ただ、具体的な問題といたしまして、国定公園の指定、あるいは自然環境保全地域の場合でもそうでございますが、これにつきましては、指定をするかしないかという手続の段階におきまして、国定公園の場合は申し出ということがございます。自然環境保全地域の場合には、県との協議というような問題もあるわけでございます。したがいまして、それを指定し得るかどうかということは、やはり地元におけるそういうことについての熱意といいますか、そういうものが前提になるわけでございまして、その地域を自然の環境として保全していくか、あるいはその一部について開発をするかというようなことにつきまして、住民の意向というものが十分に反映されるような形で、私どもとしましては、それが申し出があったというようなことでありますれば、そういうことについて十分検討してみたい、かように考えております。
  251. 岡本富夫

    ○岡本委員 いまのそこのところなんですよね。地元から申し出があったら私のほうで検討するんだというんじゃなくして、これは写真も持ってきているのですけれども、とてもすばらしいところです。ですからもう一度、地元からではなくして環境庁のほうから手を差し伸べて、そうして自然公園にしていくとか、あるいはまた国定公園も、県にも少し勧告するくらいのことをしませんと、なかなか残っていかないのではないかと私は思うのです。特にまたここは大島つむぎの産地でありまして、ここで大気汚染によってその付近をよごしたりしますと、染料の中へどろを入れて染めているわけですから、こういう大切な日本の文化を守る上からいきましても、もう少し強力な前向きな考え方をもって環境庁として臨んでもらいたい。  そこで通産省にも要求しておきますけれども、そういうわけで、ただ環境基準が達せられるならばとか、そういうことではいけないと私は思うのです。環境基準ができておっても、環境基準以内でもああしてよごれるわけですから、まして、新しくいまこれからつくるところですからね。ひとつ、住民の皆さんのたくさんの反対もあるわけですから、こういうところには許可しないというぐらいの強い姿勢で臨んでいただくように希望しまして、時間がありませんから終わりたいと思います。その点ひとつよろしくお願いしますよ。
  252. 佐野憲治

    佐野委員長 坂口力君。
  253. 坂口力

    ○坂口委員 きょうはセメント公害についてひとつお伺いをしたいと思います。  まず第一に、セメント公害の場合にはやはり大気汚染防止法で規制されるものと思いますが、他の粉じんと違って特殊な点を多く持っておりますので、これについての取り扱いをいままでどういうふうになさっていたかという点をお伺いしたいと思います。  それからあわせて、排出基準なるものがあるのかどうかということもひとつお願いをしたいと思います。
  254. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 セメント工場の大気汚染防止対策として、四十六年の六月に大気汚染防止法に基づきまして、一定規模以上のセメント焼成炉から発生するばいじんやセメントを運搬するコンベアなどから飛散する粉じんにつきまして、規制基準をきめてございます。これによりまして、工場周辺の粉じん汚染は少しずつ改善されてきていると考えておりますけれども、さらに粉じんの規制の徹底を期するために、このほかのセメント製造関連施設で規制の必要なもの、たとえば袋詰め作業とかいろいろな問題をまだやっておりません。こういったものについても大気汚染防止法に基づく規制対象施設としてさらに検討を続けていこうという段階でございます。
  255. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、製造工場におきましてはすでに規制があるというふうに理解させていただいてよろしゅうございますね。
  256. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 製造工場から出ますものは、ばいじんの排出基準もございますし、それから粉じんの排出基準もつくりまして、それで規制をしております。
  257. 坂口力

    ○坂口委員 セメントの場合は、ほかの粉じんあるいはばいじんと違いまして——他の粉じんの場合には、どちらかといいますと、健康破壊のようなものが先行してまいります。しかしセメントの場合には、そういったものがあまり表面に出なくて、それよりもかわらとか家屋の被害あるいは農作物に対する被害というようなものが中心になっております。そういうふうな意味で他の粉じんとは少しく趣を異にしておると思うわけでございます。そういう意味で、他の粉じんの基準に合っていればそれでいいかどうかということが一つ特殊なケースとして問題になってくるのじゃないかと私は思うわけでございます。  その問題は、またあとで出てまいりますので置いておきまして、セメント公害で健康破壊を起こした例というのがいままでございますでしょうか。もしありましたら教えていただきたいと思います。
  258. 船後正道

    ○船後政府委員 セメントの工場内の労働衛生の問題といたしましては、健康被害が発生いたしました事例は報告されておりますが、その周辺の住民につきましてのいわゆる公害としての健康被害は、私どもまだ例を聞いておりません。
  259. 坂口力

    ○坂口委員 工場内におきましてはいわゆるじん肺の形で一つの職業病としての問題がございますが、特別にそういうふうな例があれば教えていただきたいと思いまして、お伺いしたわけでございます。実は、一例といたしまして、三重県の藤原町という小さな町がございますが、そこにセメント工場がございます。ここでも住民の間から、かわらが非常に白くなりまして、そして冬になりますとそれが割れる、あるいはまた、窓ガラスだとか柱にそれがつきますと、そこが非常にいたんでくる、そういう苦情が出ているわけでございます。あるはいまた、農作物にそういったものがつきまして、たとえばそういう菜っぱ等をつけもの等にして食べたり、あるいはたいて食べたりしますときにじゃりじゃりしてどうにもならないというような問題が出たりするわけでございます。まだ住民のいわゆる健康被害というような形では特別には出ておりません。したがって、住民の健康診断というものもやられていないわけでございますけれども、そういうふうな、かわらですとか家屋の被害あるいは農作物に被害が出たりしておりますので、やはり住民の健康診断の必要性というものはあるのではないかというふうに思いますが、その点について御見解を伺いたいと思います。
  260. 船後正道

    ○船後政府委員 ただいま先生指摘の三重県藤原町のセメント工場の粉じんの問題でございますが、周辺の住民からそのような危惧があったわけでございまして、県ではこの二月に粉じんの環境調査を実施いたしております。その結果は近く出ると聞いておりますが、そのような状況も踏まえまして、住民の間に不安がありますので、現在藤原町では住民の健康調査を計画しておる、このようにも報告を受けております。でございますので、粉じんの中に含まれております重金属が何であるかというような点で、これが人体に対する影響が懸念されるわけでございますから、よく県から実情を聞きまして、健康調査につきましても、環境庁として必要に応じ指導してまいりたい、かように考えております。
  261. 坂口力

    ○坂口委員 一説によりますと、申し出られた方にのみ健康診断をするというようなこともいわれておりますが、こういった問題はその地域全体の健康診断をしなければいけないと思います。その点、健康診断等が行なわれますときには、その地域全体の健康診断が行なわれるようにひとつ御指導をいただきたいと思うわけでございます。  それから、写真が小さいのでちょっとわかりにくいかと思いますが、借りてまいりました。赤いれんがのかわらでございますけれども、二枚が割れたので差しかえたものでございます。ほかはもとはこれと同じ色をしていたのですけれども、白くなってしまう。それからこの辺にありますのは普通のいままでのかわら、れんががわらでなしに普通のかわら、これがこういうふうに割れるということがあります。あとでちょっとごらんいただきたいと思います。   〔坂口委員、写真を示す〕  それから、これは屋根のといの中にたまりましたものでございます。こういうふうにずっと入っているわけでございます。といへ詰まると申しますか、下にしばらくしてこういうふうにたまる。これはやはりセメントである。セメント成分が多いのだそうでございます。こういうふうな問題が一つ起こっております。  こういうふうなことがありますので、やはり地域の人としましては、セメントの場合にはひとつ特別な基準をつくってもらうわけにはいかないかというようなことがいわれております。先ほどから申しましたとおり、普通の粉じんと同じような基準でいきますと、その基準には合格をしていましても、先ほどお見せしましたような、かわらが非常にいたんだりあるいは家屋がいたんだりというようなことが起こり、それから農作物に被害が出るというようなことが起こる可能性が十分にあると思うわけです。こういったものについては一般の粉じんの排出基準とはまた別のものを考えられるべきではないかというふうに思いますが、その点についての御意見をひとつお伺いをしたいと思います。もう少し一般論的な立場からでもけっこうでございます。
  262. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 先生指摘のとおり、粉じんに関しましては、施設の構造、仕様、あるいは管理基準というものでやっております。確かに鉱石や土石の堆積場から粉じんとなって出ていくのについては、これこれの構造の建築物内できちんと設置せよとか、あるいは集じん器、フードや散水設備等々やりなさい、こういう形にはなっておりますが、この規制ができましてから、毎年毎年の成績によりますと、各地非常によくはなっておるのでございますが、先生指摘のこういういろいろな事象を見ますと、これは一般的なことで正確でないかもしれませんけれども、私考えますのに、セメントだけの影響とはちょっと考えられない問題があると思います。さらにこまかい微粒子の問題に関しましては、私どものほうで昨年の一月に浮遊粒子状物質といいまして非常に粒径の小さい、いわゆる十ミクロン以下のものに対して、呼吸器系の障害を起こすということで、それの環境基準をつくりました。さらにこういうものについてこまかく防御施設をつくる施策がこれから行なわれるわけでありますが、この写真で拝見したような問題に関しましては、一般論で申しますと、セメントだけでなしに、その成分が何であるか、ほかの重金属成分がどんなものが含まれておるか、これらをよく調べませんと、たとえばセメントのほかに石灰分を含んだものが当然あると思いますが、その石灰分等が、どういうところから持ってきたものか。それによってその中に、鉛もカドミウムもクロムその他も含まれておると思います。それらの成分をよく分析をして総合的な対策をしませんと、集じん器だけの設備ではなかなかむずかしいかと思いますが、一応これらの問題についてはさらに私どもも勉強してまいりたいと思っております。
  263. 坂口力

    ○坂口委員 きょうは重金属等の問題につきましては触れないでおこうと思ったのですが、いまたまたま出していただきましたので、申し上げるわけでございますが、先日地元に行きましたときに、中部地方の技術センターで、いま持参いたしましたといの中にたまりましたセメントを中心にして重金属の調査をいたしております。その結果を見せていただきますと、鉛が六一・五PPMある、それからクロムが一・九五PPMというものが出ております。ほかは何も出ておりません。それがどこから来たものかということを、私もよくわかりませんし、確かめましたところ、もう一ぺんこのことについてはやり直すので、その結果を待ってほしいということでございましたので、私はあえてきょうは申し上げないつもりでいたわけでありますが、いまそちらから御説明いただきましたように、単なるセメントという形ではなしに、もう少し検討しなければならないものがありとするならば、なおさらのこと住民の健康診断というものは、早急に一度していただいたほうがいいと思うわけでございます。それはひとつお願いをしておきたいと思います。  それから藤原町なんかの場合には、もう一つ問題がございます。問題があるといいますと変ですけれども、こういうような村はたいへん小さな、限られた地域社会でありまして、そして、その小さな村に大きな工場があるわけでございます。村の人たちはみんななそこへ働きに出かけております。いってみれば、その工場というのはその村のお城のようなものでございまして、そこの工場長さんとか社長さんというのは、いわゆるその城の城主さんみたいなものです。だから、人情的に、いろいろな苦情がありましても、いえないという人間関係がその地域社会には存在するわけでございます。それがいいとか悪いとかいう問題は別にいたしまして、いままで多くの例は、地元から公害等の要求が出てこなければ健康調査等は行なわれてきませんでしたし、また、ほかの調査等も行なわれてこなかったのが現在までの実情ではないかと思うわけでございます。しかし、こういうふうな特殊な事情によって、公害がありながらその要求が出てこない場所もあるわけでございます。私は、行政上、そういうふうな意味で非常に害があると思われるところについては、先手をとって、被害の可能性があるかどうかということの調査、進んでは健康診断というものが行なわれるべきではないかと思うわけでございますが、その辺の、これは一つの姿勢の問題になるかと思いますけれども、今後積極的にそういうふうな方向をとっていただけるかどうか、ひとつ次官からもあとで御答弁をお願いしたいと思います。
  264. 船後正道

    ○船後政府委員 御指摘のような、地元の事情で必要な健康調査が行なわれがたいというようなことがありますれば、これはたいへんなことでございます。したがいまして、先ほど来申しておりますとおり、現在環境調査の結果待ちでございますが、そのような点も勘案いたしまして、必要な健康調査が、必要とする地域の全住民に行なわれますように、県とも十分相談をしてまいりたい、かように考えております。
  265. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 環境庁は、いままでずいぶんおくれておりました公害対策に取り組んでまだ日も浅うございまして、そして一番大事なのは人の健康だということで、健康をおかすおそれのないような環境基準をつくって、それもまだまだこれからふやさなければいかぬという段階でございますが、しかしその地域社会、いろいろな社会構造がありますから、いまあなたのおっしゃられたような、これも極端な例はチッソの例もあるわけでありまして、そういうような点につきましては、いま町でも何か健康調査を始めておるようなことを言っておりますし、それから県でも、環境調査をやろうとしておられるようなわけでありましょうし、全然声がないというわけではありません。局長がいま答弁しましたように、積極的に県を指導して健康調査、またそれ以外の、といの中のセメントだけではないでしょう、何かいろいろ有害物質も含まれておるかにいま承っておりましたので、そういう面の調査も、環境庁としては積極的に取り組んでまいりたいと思っております。最近は、この間の木川田提言にも言われましたように、なるほど町の発展はかつてはその企業が引っぱってきた。それも事実でありましょうけれども、やはりいま生活環境を守るということが一番大切であるという自覚も生まれつつあるわけでありますから、企業がその社会の原点ではなしに、やはり社会が原点であるという意識をとらえまして、環境庁としても積極的に善処してまいりたいと思っております。
  266. 坂口力

    ○坂口委員 次官のたいへん前向きなお話を伺いまして、たいへんありがたいと思います。企業がその原点ではなしに、地域社会のほうが原点であるというお話、たいへんありがたいことだと思います。ひとつ、事後処理の環境庁ではなしに、先手をとった環境庁ということで、こういうふうな問題も、やかましくマスコミ等で騒がれるようになってから、やおら腰を上げるということではなしに、もう長年こういうものは続いてまいりましたし、それからまた先ほどお話ありましたとおり、二、三年前を思いますと、ちょっと楽にはなっております。しかし、現在なおかつごらんのような状態でございまして、やはりこういうふうなことがありましたときには、先手をとって調査なり何なりをするということを環境庁でおやりいただきたい。また地域の行政にそういう指導をしていただきたいと思うわけでございます。  それから、これは一般論としてお聞きいただいてもいいわけでございますが、こういうふうな採石と申しますか、セメントでもそうでございますが、ほかの採石でも同じでございますが、そういうふうな採石によって生じます土砂が、たとえば近くに水道の水源地があるといったところに流れ込んだような場合、こういうときには、この処理というのは、やはり環境庁で調査をせよとか改善をせよということは言われるわけでございますか。ちょっとその点お伺いいたします。
  267. 岡安誠

    ○岡安政府委員 一般的には、水源地の確保につきましては厚生省がいろいろ配慮いたしております。いろいろなそういう水源地の汚濁があるような場合には、厚生省のほうから指示がありまして、水源転換その他をするわけでございますが、一方、採石につきましては、水質汚濁防止法の特定施設に該当するもの、一般採石すべてではないのでございまして、たとえば洗浄施設その他があるというような条件がございますけれども、そういうような条件がある採石場につきましては、水質の汚濁につきましては、SSといいますか、そういうものについての規制を現在行なっております。
  268. 坂口力

    ○坂口委員 実は、この藤原町の場合にも、この工場がやっているわけじゃございませんで、下請のところが採石をやっているわけですが、近くに簡易水道がございまして、それに土砂が流れ込むということが起こっておりますので、下請にもしもそういうことが起こった場合には、やはり親会社責任をとるというふうに私どもは解釈をしているのですけれども、その点はいかがでございましょう。
  269. 岡安誠

    ○岡安政府委員 下請と親会社の法律関係といいますか、どういうふうになっているかによると思いますけれども、一般的にはやはり現に汚水を排出している社というものが水質汚濁防止法の適用対象になると考えざるを得ないと思っております。もちろん損害賠償その他のお話は別でございますけれども、法律の規制対象はやはり直接汚水を排出している社ではなかろうというふうに思います。
  270. 船後正道

    ○船後政府委員 問題は行政面と民事面と二つあろうかと思います。行政面につきましては、ただいま水質保全局長が申し上げましたように、やはり発生施設でつかまえるわけでございますから下請の責任、こういうことになるわけでございますが、民事の問題につきましては、私、もちろんお答えすべき立場にないわけでございますけれども、共同不法行為が成り立つというような事例もなきにしもあらず、かように承知いたしております。
  271. 坂口力

    ○坂口委員 その問題はわかりました。  そういたしますと、初めにちょっと戻って、結局、今回のようないわゆるセメント公害と一口にいっておりますけれども、まだ中身が判明しない点がある。これはこの例だけではなしに、こういうふうな例は日本各地にもあるであろうと思いますが、そういった事例を検討されて、そうしてこれがいままでの粉じんによる公害というものとかなり趣を異にしているということがわかりました場合には、こういったものは、別途の基準というものがつくられるべきではないかと私は思います。その点に対する御意見を一つ賜わりたいのと、それから最後にもう一つお聞きしたいのは、結局、結論的には、一つの公害としてこういうふうな家屋の受けた被害でありますとか、健康診断はいたしておりませんのでわかりませんが、その結果何か害があるということになれば、公害による補償の対象になり得ると考えていいかどうか、この二点についてひとつお聞かせいただきたいと思います。
  272. 山形操六

    ○山形政府委員 初めの御質問にお答えをいたし  私ども、一般的な排出規制は先ほど申しましたようなやり方をしておりますが、確かに各セメント工場を持つ現地ではいろいろな事象が出ておると思います。これに関しましては、県においては上乗せは一応できるのでございますが、上乗せをしても、それはあくまで排出規制の強化というだけでありまして、その内容によって重金属その他がいろいろ影響しておるという問題があるいは出てくるかと思います。これらの点に関しましては、現在セメント工場ということに限ってはおりませんが、各地で調査研究が行なわれておりますし、私どもも、それについて解析をいまやろうとしておる最中でございます。たとえば鉛については現在も作業を進めておりますが、さらにクロム等も、全般的にこれは有害物質の中に入れて環境基準をつくっていくという方向にいくべく、次々といま手を打っておる最中でございます。いろいろたくさんな重金属が出てまいりますので、それのどの点に焦点を合わせて作業をするかというようなことで、目下重金属の粉じんの中にある中身につきましては、やはり頻度の多いものから手をつけていこうということで、全国的な実態調査をそれぞれについてやっていこうと考えております。
  273. 船後正道

    ○船後政府委員 損害に対する補償の点についてお答え申し上げます。  この問題も、行政上の救済と民事責任と二つに分けて考えるべき問題がございますが、まずセメントあるいはその粉じんあるいはその中に含まれておる何らかの有害物質というものが原因になって健康被害が起こるということが因果関係で明らかになりますれば、これは現行の被害者救済特別措置法の対象として取り上げるということになるわけでございます。  それから民事上の問題といたしましては、これは御承知のとおり、それ以外に民法七百九条の不法行為が成立しますためには、故意、過失その他の要件の立証を要するわけでございますから、それらにつきましても、最近の裁判例から判断いたしますれば、当然SO2あるいは有機水銀等による健康被害と何ら異なるところがないので、民事責任を生ずるのではないかと思います。
  274. 坂口力

    ○坂口委員 物品の被害につきましては……。
  275. 船後正道

    ○船後政府委員 財産被害につきましては、当然のことでございます。
  276. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。以上で終わらせていただきます。
  277. 佐野憲治

    佐野委員長 次回は、来たる四月二十日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時五分散会