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1973-04-03 第71回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月三日(火曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 佐野 憲治君    理事 菅波  茂君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 森  喜朗君    理事 小林 信一君 理事 島本 虎三君    理事 中島 武敏君       小澤 太郎君    田中  覚君       村田敬次郎君    岡本 富夫君       坂口  力君    小宮 武喜君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      福田 赳夫君  出席政府委員         行政管理庁行政         監察局長    大田 宗利君         環境政務次官  坂本三十次君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁自然保護         局長      首尾木 一君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         文化庁長官   安達 健二君         文化庁次長   清水 成之君         通商産業政務次         官       塩川正十郎君         通商産業省公害         保安局参事官  田中 芳秋君         通商産業省公益         事業局長    井上  保君         海上保安庁次長 紅村  武君  委員外出席者         文部省管理局教         育施設部長   菅野  誠君         通商産業省公益         事業局技術長  和田 文夫君         建設省道路局企         画課長     浅井新一郎君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 三月三十日  公害防止抜本的対策に関する請願谷口善太  郎君紹介)(第一八八四号)  山梨山岳地帯自然保護に関する請願(新井  彬之君紹介)(第一八八五号)  同(有島重武君紹介)(第一八八六号)  日光国立公園尾瀬地区自然保護に関する請願  (鈴切康雄紹介)(第一八八七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月三十日  公害損害賠償保障制度の確立に関する陳情書  (第二一六号)  窒素酸化物環境基準設定に関する陳情書  (第二一七号)  幹線道路建設に伴う交通公害防止対策に関する  陳情書  (第二五四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件(自然環境  保全対策等)      ――――◇―――――
  2. 佐野憲治

    佐野委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  この際、自然保護に関する行政監察結果に基づく勧告について、福田行政管理庁長官から説明を聴取いたします。福田行政管理庁長官
  3. 福田赳夫

    福田国務大臣 自然保護ということ、つまり環境破壊防止、これは当面の政治課題として非常に重要な問題と考えるのであります。自然をよい形で保存することは、これはわれわれの生活前提条件である。また、これは祖先に対する責任でもあり、また同時に次の世代に対する、子孫に対する義務でもある、かように考えるのであります。  自然は、一たび破壊されますと、その復元はきわめて困難であり、これを保存するためには、自然の現状を変更する行為による影響をできるだけ少なくするよう事前に万全の措置をとる必要があるのであります。ところが、現実の国土状況はどうかというと、国土破壊、損壊というものはもう目をおおわしめるような状態である。  さようなことで、行政管理庁といたしましては、自然環境保護することを目的といたしまして、自然公園法等の運営の改善をはかるためにはどうするか、こういうことにつきまして調査をいたした次第でございます。  調査をいたしてみますると、いろいろの点が指摘されるのでありますが、第一に、法令違反行為に対する監視、監督、是正措置、これが十分でない、こういう問題であります。つまり、法令によりましていろいろなことがきめられておりまするけれども、たとえば法令による許可を得ずして開発行為が行なわれる、こういうことがしばしばある。また、その許可があったからその隣の地区開発行為は、これは前例があるからというようなことでまた許可されるというようなことで、環境破壊が進行をするというような事例も多々あるのであります。  第二に、国立国定公園及び史跡等文化財現状を変更する行為につきまして、許可基準を作定すること等が不備である、そういうためにどうも自然保護ということが十分に行なわれておらぬ、こういうような状況も見受けられるのであります。したがいまして、許可基準を作成する、また自然公園などの区域内における開発行為を適正にする、そういうようなことについて、行政管理庁といたしまして格段の配意をする必要がある、そういうふうに認められたのであります。  第三には、国立公園などの管理体制がどうも十分でない。せっかく国立公園等がきまっておるにかかわらず、その管理体制が不十分である。これは予算あるいは人員等の問題もあろうかと思うのでありまするけれども、これを強化する必要があるということが認められたのであります。  そこで、それらの問題点を内容といたしまして、去る三月二十六日に、環境庁外関係省庁に対しまして行政勧告をいたした次第でありまするが、なお、詳細につきましては、政府委員から必要に応じましてお答えいたすことにいたします。      ————◇—————
  4. 佐野憲治

    佐野委員長 次に、自然公園審議会諮問中の事項について、三木環境庁長官から経過報告説明を聴取いたします。三木環境庁長官
  5. 三木武夫

    三木国務大臣 昨年十月三十一日、自然公園審議会諮問をいたしました大雪山国立公園内の道路忠別清水線及び上信越高原国立公園内の妙高高原有料道路につきましては、同日の審議会においては、結論が出ず継続して審議されることになりました。  その後も審議会では、この問題について結論を出すに至っておりませんでしたが、近く自然環境保全法の施行により審議会が改組されることになる事情にかんがみ、今後の審議に資するため、去る三月二十九日、従来の審議経過を取りまとめた報告書が提出されました。  この報告では、大雪山道路については、「大雪山は、日本の代表的な原始地域であり、道路は認めるべきではない。」という意見、「最近の国際的傾向として、自然公園内の自動車道路は、減らそうとする反省期にきている。」という意見等反対意見があり、一方、慎重に判断するために、「道路建設賛成反対両派をまねいて意見を聞いてはどうか。」「審議会として現地調査をしたうえで判断すべきである。」等の意見があること、また、妙高高原道路については、「自然保護に関する専門学者から反対があり、これを無視すべきでなく、さらに審議をつくすべきである。」との意見があることを明らかにしております。  今後、この審議は、自然環境保全審議会に引き継がれることになりますが、環境庁としては、この新しい審議会において現地調査を行なう等慎重に検討の上、これら道路建設の可否について結論を取りまとめていただく所存であります。      ————◇—————
  6. 佐野憲治

    佐野委員長 公害対策並びに環境保全に関する件について、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林信一君。
  7. 小林信一

    小林(信)委員 私は、きょうはちょうど二人の大臣がおられるので非常に恵まれておるという、そういう気持ちで、これから二、三質問をいたすものでございます。  と申しますのは、公害の問題、自然を保護するという問題がいま非常に危機にあるわけでございます。これを当面の責任として努力をされる環境庁長官、さらにこれのお目付役としての行政管理庁長官、お二人そろっておられるということは非常に意を強くするものでありますが、こんなりっぱな長官が二人そろっておりながら、どうも政府のやっておることは、言うこととやることがだいぶ違うようなことがわれわれには目につくのであります。そういうことでは、決して自然を保護する、住みよい環境をつくるということはできないという前提で、私はこれから御質問を申し上げるのです。  まず最初に、環境庁長官所信表明を私は伺いまして、非常にありきたりの各大臣所信表明等と違った、全く窮位に立って重大な決意をしておるという、そういう率直な表明を私は強く感じたのであります。当然これでなければいけない。しかし、この文章だけで問題は解決しない。いかにこれを——「至上命題」とおっしゃっておりますが、その気持ちをしんから大臣がお持ちになって、そしてこれは勇気が非常に必要だと思うのですが、いまの大臣説明された一つ道路の問題でも、賛成反対がある、そういう場合に、とかくいままでの政治は、何か利益とか権力とかいうふうなことに左右されて判断をしたが、人類の未来永劫の立場で正しく判断をして、どういう至難な問題であろうとも正しい方向に解決していく、そういうものが環境庁長官になければならない。こういうものが十分この中に見えておるわけでありますが、しかし何となく長官のやっておられる実際上の事実というものを考えると少し質問をしたくなるのですが、第一番に、こういう環境行政に意を用いなければならなくなったのは、二ページのところを見ますというと、国民がいままで物さえ豊富になればいいというようなそういう考え方から、一体人間の生きる価値は何にあるのだろうという価値観転換がなされてきた、こういうふうに言われておるのですが、国民価値観転換がなされたからそれに政治が応じようとするのか。元来、政治はそういう価値観に立っていなければならなかったのじゃないか。とすれば、私は、国民価値観転換ということよりも、政治が、世間でいっておりますように企業と癒着したとか、そういうような姿勢というものを反省すべき文章がここに入るべきではなかったか。国民がそういうふうに価値観転換をなしてきたからそれに応じなければならぬ、もしまだそんな考え方を持っておったんでは、ここに書いてあります「われわれに課せられた至上命題である。」これはただ一つ文章にすぎないような気がいたします。「至上命題」というのは神のことばとか、さっきの行政管理庁長官のおっしゃった過去、未来すべて全人類のこれは要望であるというようなことばだと思うのですが、それがやはり形式的なものに終わるような感じがするのです。  まずその価値観の問題を、国民傾向がそうなったからというようなものであるのか。政治をなさる方が、元来そういう価値観にわれわれは立ってきたのだ、しかしそれが実際には行なわれなかったのだというふうに反省をされた立場で言っておられるのかどうか。まずそこから私はお聞きしたいと思うのです。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 国民政治立場というものはお互いに影響されるものである。したがって、国民動向国民一つ意識というものの動向というものも絶えずやはり政治家は頭に入れなければならない。だから、お互いにどちらがどちらということでなしに、相互に影響し合うものであります。いま小林委員の言われる点はよくわかるのですが、敗戦直後の日本状態というものは、働く機会もない、国民の所得も非常に低い、こういうときに日本経済を発展さそうという、これはもう国民全体がやはりそういうふうな意識というものに一致をして、なりふりかまわず働いてきたわけで、今日のような、国民も食えるような状態になってきたというときには、政治としても、日本のいままでのやり方をずっと継続して高度経済成長、そのためにいろいろな環境——自然の環境もあるし生活環境もあるし、そういうようなものとの間にいろいろな矛盾を起こしておるような現状高度経済成長を続けていくということは、政治方向として正しい方向でないことは明らかです。国民もまたこういう段階になってくれば、そういう高度経済成長というような方向でいままで立ちおくれておる環境の整備ということが取り残されていくことは、国民自身も望まない方向であるわけでありますから、そういうことで、これは国民政府も、日本政治は大きな方向転換しなければならぬときにやはりきておる。そういうことだと私は思うのであります。国民が言ったから、政治が言ったからというのでなくして、内外の情勢はそういう方向転換を求められておる、そういうことを前提にして申し上げたわけであります。国民が言うから政治がついていくという、そういうふうに一方的なものではない、相互に影響し合うものである、こう考えております。
  9. 小林信一

    小林(信)委員 私もそうでなければならぬと思うのですが、国民が言ったからそれについていく、さっき長官の言われた物の非常に少なかった貧乏だった時代というものは、やはり国民政治が相対的な関係で進んでいくというふうな、ことばの端からもやはり政治はいつでもき然とした一つ価値観に立って進んでいかなければならぬ。それは国民が当然持たなければならない価値観に合致するものでなければならぬと思うのです。そういうものをますます——一般行政よりも環境行政の衝に当たる人は持っていかなければならぬと思うのですが、しかも大臣だけでなくて、私は今回一つの問題で、たくさん環境庁の職員の方々と接したのですが、あなただけでなく末端の一人の行政官といえどもその信念に立たなければ、環境行政というものは確立できないというような感が私はしましたので、強くそういう点を要望するものであります。  それから、これからの環境行政あり方として、いままでのあり方反省されておりますが、「率直に申し上げて、従来の環境行政は、公害が発生し、自然の破壊が深刻になってからようやく対策を講じるという、いわゆるあと追い行政であったことは否定できません。」国民はこんなふうに見てはおりません。あと追いなんという簡単なものでなくて、企業本位である、企業と癒着する政治である。そういうきびしい批判をしているのです。もし大臣がこれからほんとうにあなたのおっしゃるような環境行政をしようとするならば、そういう反省も率直にきびしくしなければいけないと思うのです。あと追いの環境行政であったというふうななまぬるいもので今日大気が汚染をされ、あるいは水が魚が住めないような状態になってきた。ここで取り扱うものは非常に大きな世間の話題になるようなものが多いのです。私は長く文教関係をやっておりますが、いま子供たちは川で水泳することを教育委員会からみんな禁止されております。しかし、あの子供たちは、じゃそのかわりにプールが全国各学校に設置されておるかといえば設置されておらない。そんな点はあまり環境行政の中で考えてくれておらないのですが、そういう小さなところまで心しなければならない状態に置かれておると思うのです。私はいなかに住んでおりますが、私の家のまわりに小川が流れておりますが、その小川はすでに下水道になっています。その下水道状態というものは、新築をしたら水洗便所にしなさい、水洗便所にするという建築のほうの指導はある。ところがその処理は、一切従来のきれいな川へみんな流していけ、こういう国民生活の周囲というものは全く手のつかないような状態になっておるわけです。それが何が原因であるか。ただあと追いの環境行政である。——私はもっとここに重大な反省をし、しかもそれを率直に国民に訴えるような、そういう環境行政を期待をするものでありますが、とにかくそういう遺憾な点も、りっぱな所信表明でありますが、あげればいたるところに問題があります。しかし、何といっても環境庁長官がこれに述べておりますように、「至上命題である」、「一国の文明の度合いは、その国が、環境保全にどれだけの努力を傾倒するか、また、破壊された環境復元にどれほどの能力を有し、熱意を示しているかにあると言っても過言ではないと考えております。」こういう前提の中に「私は、いまや、環境問題こそ政治出発点であり、」こういうふうに明言をされて、そして決意のほどが示されておるわけなんです。  そこで、時間がございませんので具体的な問題に私は入りますが、きょう北富士演習場継続使用の問題で本協定が結ばれると私は聞いております。この問題でまず最初行政管理庁長官にお伺いしてまいりますが、この監察では、二百カ所を選んで調査をされておられるようであります。私は、非常にきびしく諸官庁に対して意見を出されておるところに賛成をするものでありますが、ただきびしいことばを使うのでなくて、これを出した以上長官も、私がいま環境庁長官にお願いをしましたように、これこそほんとう勇気を持って、決断を持って当たっていただかなければ、これは何にもならないと思うのです。なかなか思うようにいくものじゃないと私は思います。これを受けた環境庁長官は、自分のところの官庁だけで処理できない。やはり今度はほかの省庁にいろいろ注文をする。そういう中で初めてこの問題は可能になってくるような行政機構でもあることを考えますと、ただ一ぺんの監察をして勧告をしただけで終わるものでない。いかにこれが実現するかに身を粉にして長官監視をするかということが、私は問題だと思うのです。その二百カ所の中に残念ながら、大自然、自然保護の問題と、往々にしてそういう周辺演習場があります、米軍使用する演習場、こういう問題については、最も大事な監察要件になるくらいに私は考えておったのですが、それに触れておらないのは、そういうものは除外視をわざとしておるのか、あるいは問題がないと考えて除外したのか、それからまずお聞きいたします。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 結論を申し上げますと、これは意識的に演習場除外をいたしたわけではないのであります。今回の調査自然公園など特定のものを調査対象にする。もちろん自然公園の中に演習場が存在するということになりますれば、演習場もまた調査対象になる、こういうことでございますが、今回の調査対象の中には演習場は存在しなかった、こういうことで演習場には触れてない、こういうことでございます。  ただ、演習場といえどもこれは国土の一環である。この演習場国土を損壊する、こういう問題、これは他の地域同様に存在をする問題であります。そこで、演習場につきましては、今回は調査はいたしませんけれども、その管理に当たっております防衛庁に十分に話をいたしまして、防衛庁自体演習行為を行なうにあたって、自然環境保護保全、こういうことに十分意を用いる、こういうようにさせたい、かように考えております。
  11. 小林信一

    小林(信)委員 含まれていなかったというのは、形式的な行政だと私は思うのです。確かにそれは、一つの例を申し上げれば、北富士演習場は、これは戦後、占領下の中で強制的に米軍から指定をされて、地域人たち要望もあるいは国の見解もいれられずに権力的に指定をされた。その指定をされたものを、演習場に設定されたものを当然入れなければならないところなんですが、国立公園にする場合には、これはやはり除かなければならぬというふうなことになると私は思うのですが、それはほんとう行政上の措置としてなされておるわけで、しかし私は、総理大臣がこの問題について、富士山というと、あの方錐形の、白扇がさかさまにかかるあの姿だけしか考えておらぬところに私は非常に残念なものがある。富士山というのは、あの周辺のいろいろな自然環境というものを備えて初めて富士山になるわけですよ。あの田子の浦の富士というのは昔からも有名ですわ。あれがヘドロになっている。こういうものを含めた富士保全でなければならないのです。あるいは五百円札に富士山の絵がありますよ。あれは大月の、はるか東京寄りの山の上から見た富士山なんです。そういうふうに富士山景観というものは、ただぽつんとあの方錐形の山だけを見るので美しいのじゃないのですね。あるいは、演習場がいまあります。そうして自衛隊の庁舎があります。その付近に忍草という部落があります。いま雪の降ったようなときにたくさんその忍草部落へは泊まり客が多いのです。雪の朝そのわら屋根なんかの民家を一緒に含めた富士山景観を写真にとろうとしているのが非常に多い。そういう姿から見ても、富士山というものは、あの山だけではない。大沢くずれを直す、それだけが富士山を守ることじゃないと思うのですよ。あるいは河口湖に映るさかさ富士ですね、いま死滅寸前河口湖、それに映った富士山なんというものではないと、これはやはりほんとう富士山の真価というものを見ることができないと思うのです。そういうふうに考えていけば、いま演習場のありますところも当然富士山の大自然保全の中に含まなければならない。ところが、それが除外されておる。これなんかもやはり行政管理庁が指摘しなければいけないのです。しかし、調査対象の中にないから調査しませんでした、そういうところに私は、これからの環境行政が、言うだけであって実行できないところがあるじゃないか、こう指摘をしたいのです。  第二の問題は、これは同じ閣僚でございますから、行政管理庁長官といえどもこれは同じ責任をしょっておいでになると思います。昨年の七月二十七日、民法六百四条が適用されまして、あの七千町歩の広大な演習場のうちの約四千町歩山梨県へ返ったのです。この返ることも、政府はきわめて消極的でありました。私どもが盛んにこの点を追及してようやっと六百四条適用に踏み切った。そうして山梨県へ返したら、これはもういまの総理大臣がちょうどアメリカへ行ってニクソンとハワイでもって会うというそのやさきでございます。おそらくそんな状態で行くことができないから、山梨県知事を呼んで、あの暫定使用協定を結ばしたのです。その結ばしたその交換文書の中に富士保全法をつくりますという条件があるのです。つまり演習場継続使用するために富士保全法をつくります。環境庁は、演習場を可能にするために利用されている。こんなことでもって日本環境行政は私はできないとそのときに判断をしたのです。これが、環境庁人たちに私がちょっと話をしますと、別個でございます、そういうことは一切私どもは関知しませんと言っておりますが、三月の二十日に、富士保全法閣議で決定をするという段階がありました。ところが、山梨県のほうの事情が、まだ十分態勢が整っておらぬということで、それが延び、そして三月三十日に持ち回り閣議でもって、富士保全法というものが一応閣議を通ったわけであります。そういうふうに、演習場継続使用させるために富士保全法自然保護という法律が一緒に動いて、そうしてこれが、話が可能になるという段階閣議でもって決定される。それが決定されたから、知事のほうでもよろしいと言ったのでしょう。きょうが本協定になるという話であります。しかも長官一つ聞いていただきたいのは、従来の米軍使用だけじゃない。米軍ならばときには、たいがいそうでしょうが、短い期間に撤去することがあるのでしょうが、それを、富士保全法というふうな条件を具備して、自衛隊演習場使用転換をするという条項まで、きょうは協約の中に入れようとしているのです。私は、もうこのことを去年の七月二十七日からずっと政府の動きを見ておりまして、日本環境行政はこれでは絶対にいままでのものを復元することもできないし、ますます環境破壊される、こういうふうに断ぜざるを得ないのですが、そういう点を管理庁長官はどういうふうにお考えになられるか。そういう点を見落とすような監察であっては、これも形式的ではないかといわざるを得ないのですが、この点についてお知りでありましたら、何かお話を願いたいと思います。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 国土保全するという問題、これは先ほども申し上げましたが、当面の重大な政治課題である。しかし、同時に、国家の安全保障という問題もまた非常に大きな問題であるわけであります。問題は、その両者をどういうふうに調整、調和するかということじゃないか、そういうふうに思います。  したがいまして、私は、この際、国土環境保全という意味において、富士山環境保全の立法ができるということは、これはもうたいへんけっこうなことである、こういうふうに考えまするけれども、この富士保全法案の中に演習地もまた包摂されるかどうかということになりますと、そこでまた安全保障の問題との関係が出てくる、こういうことでございます。  ですからやはり富士をきれいに保全をする——私は、富士山につきましては、毎夏行きまして、つぶさにその状況をまのあたりにしておるわけなんですが、もう年々環境破壊されるという状況が進んでおる。ほんとうに見るにたえぬというようなことを痛感をいたしてきておったわけでありまするが、演習場外にもそういう問題が多々あるわけなんです。その問題もここで片づけるということは大事なことである。同時にいま小林さんの頭にある問題は、演習場の問題であろうと思います。  この演習場内の景観といいますか、自然環境というものを保全をするということにもまた配意をしけなればならぬ。先ほども申し上げましたように、演習活動、これは大事なことでありましょうが、その活動に支障のない限りにおきまして、富士の自然を保全するということ、これも心しなければならぬ問題である。しかし、演習行為、演習活動、そういうようなことになりますると、一般の土地と違うものですから、法体系からは別になりまするけれども演習場に臨む行政の姿勢というものは、他の地域に臨む姿勢と同じような考え方でなければならぬ。防衛庁がこの演習場管理にあたっておりまするけれども防衛庁はその演習活動をするにあたりまして自然を破壊しないように、この心がけ、これを思いを新たにして徹底させなければならないのじゃないか、さように考えます。
  13. 小林信一

    小林(信)委員 長官、まことにおことばを返すようでありますが、私の聞いた点は、演習場自然保護、この問題を、北富士演習場の問題についてはあなたは閣僚の一人としてどう判断をされておるのか。  第二番目。環境庁責任を負います富士保全法というものがその取引の材料にされるというようなことは、環境庁の存在がますますこれは薄くなってくる。いかにこんなりっぱなことを言ったって、これは国民全体が、少なくとも山梨県や静岡の人間が、環境庁なんというのはあってもなくても同じことだ、私は三木大臣政治生命まで批判を受けると思うのです。私は徳島なんだからいいわと言うならこれは別ですが、とにかくそういう環境庁の歴史に大きな汚点をつくるものなんですよ。そういう自然保護という問題を条件——自然保護という、これには金を出しますとかどうしますとかいうことだと思うのです。そういうものを含めた法律を交換条件にするということを、行政管理庁長官としてはどう判断されるか。  この二つの点、したがって、きょうの本協定はあなたはいいというのか、あるいはこれに対して意見があるというのか、この三つを私はいまお聞きしているわけで、率直にお答えを願いたいと思います。
  14. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、多年の問題である富士演習場の問題は一応解決、妥結をするという形の本協定調印、これが本日とり行なわれるという話を聞きまして、これを歓迎をしておるわけであります。  ただ、小林君も御指摘になるように、今度これと関連し、富士保全法というものができる、そういう際に思いを新たにして富士山景観を保存するという配慮を進めなければならぬ、こういうふうに思うわけであります。したがいまして、演習場、これはまあ、本協定調印によって引き続いて演習場としての機能を存続させまするけれども、その機能を存続させる過程におきまして、自然景観の損壊、これがないように格別の配慮をするという、そのことが特に痛感をされる次第でございます。  とにかく三木長官も非常に国土保全環境の整備ということには御熱意を持っておられる。私も同様であります。ですから主管大臣である三木長官を大いにバックアップいたしまして、そして国土保全、特に問題の富士景観保全というものには全力を尽くしてみたい、かように考えます。
  15. 小林信一

    小林(信)委員 まことに失礼なことばでございますが、やはり長官もこの問題にほんとうに頭を突っ込んで考えておられずに、こうやって話題になったから初めて、大体政府方向はこっちだ、こっちのほうの弁解をしていれば問題はないだろうというふうな御答弁と私は承ります、残念ながら。と申しますのは、一体きょうの本協定長官は、米軍使用ですか、自衛隊使用転換までいくというふうにお考えになっておいでですか。そこのところもあらためてひとつ御答弁願いたいと思います。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 これから自衛隊使用する、その演習場米軍にもお貸しをする、そういうことに相なる、かように考えます。
  17. 小林信一

    小林(信)委員 それは長官がこういう監察を、調査をさせる趣旨とは全然合わないのですよ。あそこで大砲を撃ったら——あなたもやはり総理大臣と同じですか。あの山だけが富士山だとお考えになるのですか。さっき私は説明が足らなかったのですが、あそこには植物も繁茂しておりますよ。生物も生息しておりますよ。大砲を撃ったり火炎放射器でもって焼き払ったり、ブルドーザーでもってどんどん掘り起こす、これはおよそ富士保全とは逆のものなんです。片っ方が私は満足します、片っ方も満足します、これはやっぱりあなたの考え方も私は賛成できなくなるわけです。大体あなた方は御存じないかもしれませんが、米軍があそこを使用したときには当初は、精進湖という湖が西のほうにあります、それから約二十キロぐらい離れたところにいまの北富士演習場があるのですが、その精進湖の周辺に陣地を置いて、そこから大きな大砲をどんどん撃ったものです。だからちょうどその真下は山梨県のやはりこれは所有地ですが、しかしあの青木ケ原なんていう、木を一本も切ることもできない、だから人間が入ってときには行方不明になることさえあるようなあの樹海があります。そこに住む生物、そして樹木ですね、こういうものを保護するために国は指定しているのですよ。その上を大きな大砲でもってどんどん——下には富士吉田という人口五、六万の都市もあるのですよ。その上を大砲をどんどんぶち込んで向こうの林がどうなろうとこうなろうとかまわない。それに抵抗したのは私たちなんです。そうしてそれをだんだん縮小して、きょうの北富士という一画に縮小したのですが、それでもなお東富士からオネストジョンなんていうミサイルまで撃ち込んでおります。そういうものと富士山自然保護という問題が一致できますか。だからこの際富士保全は要らない、演習場が可能であればいい、そういうふうにあなたたちの態度は言わなければならないわけなんです。きょうの本協定を結ぶならば、いま政府が用意しておる富士保全法案というものは撤回しなさい、この際出してはいけませんよ、私はそういうことをいまお二人にお願いをしておるわけなんですが、どうですか、両立しますか。まず行政管理庁長官からお願いします。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国の安全保障の見地もまた十分考えなければならぬ問題である、こういうふうに考えるのであります。安全保障の問題は全然考える必要はないというならば小林さんのような結論にも到達するわけかと思いまするけれども、わが国はとにかくこの狭い国土を基盤といたしまして安全保障をするためには、やはり自衛隊というものを持たなければならぬ、また自衛隊が十分に整備されない現状においては米軍の駐留もこれを認めなければならぬ、そういう立場にある。そうすると、やはりその演習場というものが必要なんです。どこに演習場があるか、どこにも求めるところはない、そこでやはりいままで使用してまいりました北富士演習場ということになってくるわけなんです。この北富士演習場の演習行動、演習活動をどういうふうに自然破壊と調和してやってまいるかということがこれからの課題になってくるんではあるまいか。  私は今度の冨士保全法案、これは何も演習場だけの問題じゃない、あの富士山全域に関係する問題を取り上げておるわけなんでありますが、そういうことでありますれば、この演習場以外の地域につきましてはかなり前進した諸施策がとられる、こういうことになる。演習場につきましても、ただいま申し上げましたような配慮のもとにこの演習活動を行なうということになりますれば、また演習揚地域内も改善される、こういうことで、たいへん富士保全法案というものは、われわれの大事にしておる日本一の富士の山がまたずいぶん損壊されておりまするけれども、この損壊を防ぎとめる上に有効な働きをなすであろう、こういうふうに考えておる次第であります。
  19. 小林信一

    小林(信)委員 いまお話を聞いておって、企業も成長させなければならぬ、人間も尊重しなければならぬ、これはやっぱり一つ政治の行き方として苦しむ点だと思いますよね。人間尊重ばかりやって企業のほうの経済成長をやらなかったらこれはやはり問題でしょう。そういう場合にそれを口実にして問題をごまかす、そういうことが日本公害をますます増大させ、いつまでももとの姿に返すことができない根本じゃないかと思うのです。いまの行政管理庁長官のお説もそこに通ずると思うのです。あなたはいま触れておらなかったのですが、この富士保全法というものは自然を保護いたしますというふうなものばかりじゃないのですよ。特にほかの法律では出さない金まで何とかして出して、そして地元の人たちにがまんしてくださいよ、そういうごまかしのために使う法律なんです。取引のためにつくる自然保護法なんです。そういうことが環境行政を今後遅滞をさせたりあるいは信頼を失わせるもとになるんじゃないか。そしてあなたは盛んに国土の防衛ということも大事だ、こうおっしゃっていますが、しかし富士山は、あなたはいま日本一と言ったけれども、世界の富士山だと、こう世間では言っていますよ。世界の富士山の地帯に大砲をどんどん撃ってそこに住む鳥獣もいなくなるようなそういうことを放置しておって、環境庁長官が「一国の文明の度合いは、その国が、環境保全にどれだけの努力を傾注するか、また、破壊された環境復元にどれほどの能力を有し、熱意を示しているかにあると言っても過言ではない」こういうことを言っている以上、決してあなた方の立場からすれば演習場をなくなせとは言わぬ、しかし世界の富士山のそのすそ野に広大な演習場があって、そこでもって火炎放射器が使われたりブルドーザーが使われたりあるいは大砲がどんどん撃ち込まれておる、そういうことでもいいんですかね。もっと何か政府にも知恵がありそうなものだ。その知恵を出そうとしないのがいまの政府のあなた方の実体じゃないのか。そういう中から環境行政というものがかすかな息をしているというふうにしか私は受け取れないのであります。  検非違使役をつとめる行政管理庁長官には、きょうは時間もありませんので、いずれ立ち入って詳しくお伺いをしようと思います。とにかくあなたは監督をする役目ですから、環境庁監視する役目ですから言っておきたいのですが、私はこういうことを環境庁の役人に話したのです。あなたは、環境行政という面ですべてをチェックする役目でしょう。したがってそこに演習場があって、それが大砲を撃ったり生息する鳥獣に非常な影響を及ぼすというふうな場合には、たまを撃ってはいけない、どんなことがあっても火炎放射器は使ってはいけないというふうな何か規定をしたかと言ったら、演習場として一つ使用条件というものがなされている以上、環境庁はそれには条件をつけることができません。こう言っておりました。しかしだれが一体そういうものに対してチェックをするんだ。環境庁なんかあってもないのと同じじゃないか。権力が強かったりあるいは金を持ってくるものがあったりなんかした場合には、それに従っていくというふうな形になってしまうんじゃないかということまで言ったのです。それほどあなたが監視しなければならぬ環境庁、この勧告権の中には環境庁というカッコがないところはないくらい環境庁に非常に要求しているところがあるのですが、そういう具体的な問題を深く掘り下げて問題を考えていただきたいと私は思います。  あなたのおっしゃった自然と、そして演習場国土防衛という問題についても、あなたのおっしゃることでは決してだれも納得ができないと私は思う。何かばく然と、そうだろう、これは前の価値観。新しい価値観というものを国民立場で認めるならば、そんなありきたりのものでごまかしてはいけない、私はこういうふうに警告をいたしておきます。  そこで、時間がもうなくなってしまいましたが、三木長官にお尋ねいたしますが、きょうの本協定自衛隊使用転換までいくというその条件富士保全法を出す、いささかもあなたは良心的に苦しむところありませんか。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、北富士演習場の本協定の代償という感じは、私にはないのです。これはやはり別の、従来ずっと使用してきておったのは、やはり国の安全政策という立場から、安保条約あるいは自衛隊法等の関係で、従来北富士演習場を使っておったわけでありますが、でき得べくんば、私は小林委員と同じように富士演習場がないほうが理想だと思っているのです。何かそういう点で方法はないものかということも防衛庁に私自身が話をしたわけです。ところが、やはり代替地がないのですね。あれだけのやはり——まあ諸外国であればそういう場所は発見できるでしょうが、日本のような場合にはやはりない、とこういうわけなんですね。そういうことで、ないとするならば、日本一つの防衛上の見地から演習場は必要でありますから、しかも新たにするというわけでない、いままで継続して使用されてきておったわけですから。そこで小林委員の御出身の県である山梨県は、たいへんに富士環境保全法の制定に対して熱心なんですね。知事をはじめ、県当局は熱心です。その必要というものはあると私は思うのです。それはこの環境保全法の適用範囲が半径二十キロぐらいのところまでを考えておるわけですが、その地域が、富士というものが世界的な有名な地域であるだけに、やはりいろいろな乱開発なども行なわれるし、あるいはまた湖の汚濁も、小林委員も御指摘になっておりましたけれども、下水などの整備も十分とはいえないし、したがってこういう条件のもとにおいて、できるだけ富士周辺環境保全し、整備していこうという必要は現にあるわけですね。だから何かわれわれの環境庁立場は、その代償としてこれをやったので、環境保全というものはそういうものでないというふうには考えない。われわれは環境保全の今度の立法を一つのうしろだてにして、きびしい態度で環境保全というものに当たっていきたい。いろいろな審議会もできますから、そういう場合においても環境保全するという立場に立って、今後できるだけ富士周辺というものを、ああいう地域にふさわしい一つ環境保全につとめたいと思っておるわけであります。それは出発点がそういうのですから、小林委員がそういう代償だというふうにいわれる立場もわからぬではありませんが、環境庁に関する限り、それの代償だから環境保全というものはつけたりのものだというふうには考えない。この置かれておる現実、これは意見小林委員とは違いましょうが、われわれの立場に立って、そういう現実の上に立って富士環境保全ということに、この立法を生かして、全力をあげたいというのが私たち環境庁立場でございます。
  21. 小林信一

    小林(信)委員 あなたがそういう弁解をすればするほど、あなたの所信表明は、これはもう空文である、死文である、こういわざるを得ないわけなんです。  大体、さっきからくどくど申し上げておりますが、あなたが自然保護をするという場合に、湖の問題だとかいうふうなことばかりじゃない。あそこに住んでいる生物、生息するものを一体調査したことがありますか。毎日大砲をどかんどかん撃たれて、頂上には雷鳥もいたのですが、いまではそういう姿も見られませんよ。そういうものと、一方でもって富士保全法をつくって、そして富士の自然も守ります、だから演習場をさらに継続して米軍使用させ、さらに自衛隊使用転換をさせてもだいじょうぶでございますなんという、そういう弁解がましいことを言わずに、あなたが何となく最初に言われました、私もここに演習場がないほうが望ましいんだ。それをあなた一人でもって努力するということが環境行政じゃないと私は思う。総理大臣も説得し、各閣僚も説得しなければ、利害相反するような問題を、自然保護環境優先という問題に運び込むことは私はむずかしいと思うのですよ。あなたがたくさんの閣僚を向こうに回して、みんな企業に動いている場合に、あなた一人でもってがんばったってそれは不可能なんですよ。そういうふうに全知全能をしぼっていかなければならない。それが環境庁の仕事じゃないかと私は思うのです。でなければこんな重大な決意をあなたが持つ必要ない。時の流れにまかしておけばいい。そして窮地に立ったらいまのようなごまかしの答弁をしていけばいい。  私ども法律が、まだ内容を見せてもらっておりませんけれども、どんなきびしいものであるか。もう本質的に、歴史的に昨年の七月二十七日、民法六百四条が適用されて困った政府——大体田辺知事は全面返還を県民に公約をして出た知事なんですよ。その知事が、自衛隊使用転換をするという政府の強圧に屈しなければならぬ場合に、せめて富士保全法でも——それは知事のほうから言い出したかあるいは官房長官のほうから言い出したか、そこらは私どもはつまびらかでありませんけれども、おそらくそういうものを政府のほうから押しつけて、君これでがまんしろ。とにかく県民がやはり全面返還、あの富士山をもとの姿に返して美しい自然に置きたい、そういう要望から田辺知事を出したわけですよ。その田辺知事が心をひるがえして、いまのような世界情勢が緊張緩和の方向に向かうときに、それと相呼応して富士山演習場の問題は解消できるじゃないか。そういう希望の中に、あなた方は知事という権力者をつかまえて、それをしゃにむに説得して、そして一方代償として富士保全法を用意した。これはそのときに交換文書の中にはっきり載っておるし、そして富士保全法の推移を見て田辺知事が腹をきめたというふうに、もうこの問題はあなたの主体的な問題でなくなっているんだ。ただ政治的に環境庁が利用されたにすぎない、私はこういうふうに思うわけなんです。この所信表明をなされたり勧告をされた両長官が、ほんとうにこの気持ちでいるならば、私はきょうの本協定を結ぶことについて、少なくとも自衛隊にまでいくというのはあまりに火事場どろぼう過ぎるじゃないかというぐらいのことは言えないものかと思うのですがね。どうですか、行政管理庁長官
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 自衛隊北富士演習場が返ってくる、これは私はたいへんけっこうなことじゃないかと思うのです。いままではとにかく米軍管理しておった。それがわが自衛隊に返ってくる、こういうので、歓迎すべきことではあるまいか、こういうふうに考えております。
  23. 小林信一

    小林(信)委員 もう質問いたしませんが、返ってきて、そして環境保全のほうは永久に可能でなくなることもあなたは歓迎するのですか。
  24. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは歓迎いたしません。つまりわが国は、国土環境保全するという問題もあります。しかし同時に、わが国の安全保障という問題もあるのです。その両者をどういうふうに調整するか、これがむずかしいところでありまして、その一方だけの目的だけを言うことは簡単でございまするが、その両者をどういうふうに調整するか、その辺に政治のむずかしさがある、こういうふうに考えております。とにかく富士が非常に自然環境破壊されているということは私も非常に心を痛めておるわけでございますので、主管庁である環境庁、これと提携して、またバックアックいたしまして、何とかひとつこの二つの目的が円滑に遂行されるようにいたしたい、かように考えております。
  25. 小林信一

    小林(信)委員 もう時間がございませんから、関連質問を用意されているようですから申し上げませんが、いま企業優先のために公害が起きた。それからアメリカ追随の外交というものがいろいろな災いを残した。やっぱりその範疇から、両大臣、出たいような出たくないような、まことにあいまいな態度を伺ったわけでありますが、もう少し本腰を入れて、この環境庁長官所信表明にありますようなもっと決断というものが——行政管理庁長官だって、苦しんでおりますということで、私どもに納得させるものが何にもないでしょう。まだないのでしょう。ひとつ勉強してきていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  26. 佐野憲治

    佐野委員長 この際、関連質問の申し出がありますので、これを許します。岡本富夫君。
  27. 岡本富夫

    ○岡本委員 いまの北富士の問題でありますけれども、今度の富士保全法の中にこの北富士演習場が網がかぶさっているかどうか、その点についてひとつ長官から……。
  28. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほど申したように二十キロ半径ですから、かぶさっているということでございます。
  29. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、北富士演習場で、先ほどからも小林委員から話がありましたように相当な環境破壊がされていくということでありますから、これほど大きな公害はないわけです。したがってこの網の中で、将来米軍演習場が返還され、それからおそらく防衛庁自衛隊に引き継がれると思いますが、この富士山というのはこういった大切なところですから、これも将来そういうものをなくしていこう、こういう環境庁長官考え方から網をかぶせておるのか、これはしかたがないんだという考え方なのか、これをひとつ一応お伺いいたしたいと思います。
  30. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほど申したように、私は富士山の山ろくに演習場がないほうが好ましいと思っているのです。しかし、日本の安全保障上の立場から演習場が必要である、ほかになかなか代替地がないということで、現在の場合はこれはやむを得ないものであると考えておるわけであります。しかし、いまそういう条件のもとでありますから、この中で網がかぶさっておるわけですから、大砲を撃つなといえばこれは演習場ではなくなるわけですが、しかし環境保全については可能な限り、自衛隊はもちろん、米軍の協力を求めたいと思っております。そういう考えです。
  31. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、いまは米軍がいますが、ほかに今度はそういう演習場が求められるならば、それならばもうこれは一日も早く自然保護の場所にしていく、こういう決意ですね。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 ほかにこれに対して代替地ができて、演習に支障のないような場所ができれば富士山ろく演習場がないほうが好ましい、これは私の考え方、いつも申し上げておるとおりでございます。
  33. 岡本富夫

    ○岡本委員 行政管理庁長官、そうしますと、いま三木長官から、環境保全の考えからはこの演習場がないほうが望ましい、こういうことでありますから、いま米軍があちらこちら日本国土で相当使用していますね、それがどんどん返還されてくるということになれば、おそらくこの北富士を使わなくてもほかで演習ができる、こういうことになってくると私は思うのです。その場合、行政管理庁として、これは富士という大切な日本の史跡を保存するために、そういう時期になったら一日も早く山梨県に返還するとか、あるいはそういう自然保護の場所にするとか、こういう決意はおありなんですね。
  34. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま岡本さんからお話しの点は、全く三木長官からお話のあったとおりに考えております。他に適当な場所が物色できるということになりますれば、富士保全というために、もうこの北富士演習場というものは廃止すべきものである、かように考えております。
  35. 岡本富夫

    ○岡本委員 もう一つだけ、ここに行管から勧告した中に、京都の笠置山とそれから嵐山、この二つの勧告が出ておりますけれども、文化庁からこの勧告に対するところの答えだけをひとつお聞きして関連質問を終わりたいと思います。
  36. 佐野憲治

    佐野委員長 関連だからまだ呼んでいないそうです。
  37. 岡本富夫

    ○岡本委員 それじゃ午後にします。
  38. 佐野憲治

    佐野委員長 島本虎三君。
  39. 島本虎三

    ○島本委員 「自然保護に関する行政監察結果に基づく勧告」が行政管理庁から出され、この報告をただいま受けました。自然公園審議会諮問中の道路問題についての経過報告環境庁長官からただいま受けました。これについて、それぞれの見解に対しての質問が行なわれておるわけでありますが、私はいままでの報告、この価値を高く評価するのです。同時に、いままでの所信の表明の中に十分解明のできない点がまだ多々あることを遺憾とするのです。私は内閣を代表する両長官ですから、この際にやはりはっきりさしておいてもらいたいと思います。あくまでもこの「自然保護に関する行政監察結果に基づく勧告」、これは私は高く評価します。それで、企業の成長も人間環境保全もともに大事だ、これは行政管理庁長官ことばの中に、ただいまの北富士演習場のように、演習地として存続させることは、これはもう自然の破壊になる、そして環境保全も必要だ、こういうようになりますと、企業の成長も人間環境保全も必要だということばの裏には、具体的には破壊も認め環境保全も認める、まっすぐ二頭の馬車が走らなければならないのに、両方とも引っぱり合うという結果、これはやはり国民に対して疑惑を与えるもとになると思います。こうあってはならないと思います。私は、演習地としての破壊か、それとも環境保全か、こういうような場合には、いずれをもってやれというふうに今後勧告なさろうとするのですか、その点に対して的確にひとつ表明願いたいと思います。
  40. 福田赳夫

    福田国務大臣 環境庁長官からお話がありましたように、富士山ろくに、あるいは中腹といったらいいでしょうか、そこに演習場が存在するということがないことが望ましいと考えます。しかし、国の安全という見地からいたしまして、ただいまのところ富士演習場にかわる適地がない、代替地がない、こういう現状におきまして、これは必要悪というか、そういう立場で理解さるべき問題じゃないか、そういうふうに思うのです。でありますから、私は、北富士演習場演習場としての機能を尽くさなければならぬ、ならぬが、その尽くす過程におきまして環境破壊というようなことのないように最大の注意を払わなければならぬ、そういう問題だと思います。これは環境庁において厳重に演習活動をそういう角度から監視しなければならぬ、また主管の官庁である防衛庁におきましても、そういう心がけでなければならぬ、そして二つの目的を両々相並行して遂行できるようにしなければならぬ、こういうふうに考えております。そういう方面の努力は思いを新たにして極力推進いたしい、いたすべきものである、かように考えます。
  41. 島本虎三

    ○島本委員 富士だけじゃなしに、もし演習そのものを認めなければならないとするならば、大砲を撃ったり——おそらく、その場所に植物がある場合には生態学的にも変化を起こさせたり、また物理的にその場所に重大な変化を起こさせたり、そのものを保全することと反対行為環境保全と一致すると言うことができますか、私は、できないものを両立させるのはおかしいじゃないかというのです。どっちかやめさせなければだめだ。
  42. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも、国の運営は、これは一つの目的だけでやっておるわけじゃないのであって、多目的であります。したがいまして、環境保全ということにも留意しなければならぬ、同時に国の安全ということも考えなければならぬ、その両者をどういうふうに調整するかということが問題だろう、こういうふうに思います。環境保全、特に問題になっております北富士演習場の問題につきましては、今度新しく成立しようとしておる富士保全法の領域にも入るわけでございますが、そういうことになりますれば、環境庁を中心にし、また主管の官庁である防衛庁におきましても、これはほんとうに心を正して、えりを正して環境保全というものにも取り組まざるを得ないということになるわけです。ただ、演習という目的があるものですから、これは先ほども申し上げましたように、必要悪だ、必要悪は最小限にとどめなければならぬ、こういうことだけは心して取り組まなければならぬ問題である、かように考えております。
  43. 島本虎三

    ○島本委員 前総理の佐藤榮作さんは、公害に対しては必要悪ということばを使ったのですが、あとから取り消されたわけです。いま公害そのものから環境破壊ということばに変わってきたのです。公害イコール環境破壊——いま、佐藤さんより数歩前進的であり進歩的であると思われるあなたから、環境破壊に対して、逆に必要悪を認めろ、こういうようなことばを聞くのは私は心外であります。ことに、演習はしようがない、こうだとすると、まぼろしの外敵に備えるために一生懸命演習して、それを必要悪だとして認めるとするならば、私としてはいままであなたが言ったことばが疑問になってきます。ひとつ読み上げます。小林信一さんに対することばです。防衛庁は自然を破壊しないように思いを新たにして当たらなければならないとおっしゃったのです。自然を破壊しないで演習できますか。演習地を認めて自然を破壊しないということができますか。できないことをやろうとすれば、まさに魔術であります。魔術師福田行政管理庁長官ということになるわけです。そういうようなことはいまの状態では許されない。私は、これはまことに遺憾だ。ただ食いとめなければならないというならば、はたしてあなたに食いとめる意思があるかどうか。私はあらためて富士保全法にも匹敵するような問題点がここにあるということを示唆しなければならない。  それは航空自衛隊のナイキJ基地に予定されている北海道空知支庁管内の長沼町馬追山の水源涵養保安林の指定が解除されたのです。これは航空自衛隊のナイキJ基地に予定された場所を、演習地としてそこを指定して解除したのです。拡大ではありませんか。富士のみにとどめたい、こんなことを言いながら、今度は富士だけではなく、北海道では——水源涵養林は自然環境保全するためには絶対に必要なものです。これを、ナイキの基地が建設されることになった、現在は森林として、それも水源の保安として、こういうような役目を一切ないものにしてしまって、これを認めようとする行き方は、私としてはとらないところなんです。やってはいけないことなんです。北海道ではこれがやられておりますが、この点については、行政管理庁長官勧告すべきじゃありませんか。
  44. 福田赳夫

    福田国務大臣 とにかく一般的に申し上げまして、国の安全保障ということは非常に重大な問題でありますので、その立場からいろいろな施策が行なわれる。それに環境保全という立場と衝突する場合もあろうかと思うのですが、その辺をどういうふうに調和するかということ、これが政治の非常にむずかしい点ではあるまいかというふうに考えるわけです。長沼地区の問題につきましては、私は承知しておりませんので、お答えすることができませんが、これは農林省に取り調べてもらいます。
  45. 島本虎三

    ○島本委員 現にそういうようなことで、水源涵養林までも破壊して自衛隊の基地を拡張することは違憲であるということで、もうそれが訴訟になっているのです。そういうような状態で一農民でも立ち上がっているのです。それだのに、いまのことばは、安全保障のために自然破壊は必要悪である、いたし方ないのだ、こういうような考え方で今後調和しなければならないという考え方——調和でないのじゃないですか、規制じゃないのですか。やらせないように規制するのが管理庁長官として当然の態度ではないのですか。調和というのは、百求めたならは全然やりたくない人は五十でがまんしなさいというのが調和なんです。依然として福田さん、あなたはこれらをやはり認めて、自然破壊もやむを得ない——何のためにこれを出したのですか。私は、どうもいまのような考え方の上に立って、自然保護に関する行政監察結果に基づく勧告を何百冊出したって、効果は全然ないと思う。この実効あらしめるために、長官、何かはっきりした決意をお持ちですか。
  46. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほども報告申し上げましたが、今回の勧告は、許可、認可そういう事項が適正に行なわれておらぬ。そういうようなことから許可を要すべきものはちゃんと許可をとってやらなければならぬ。また、許可をする場合においては、適正な基準をもって政府は臨まなければならぬ。いろいろな点を指摘しておりますので、これらが改められると、私はこの勧告というものは国土保全上非常に有効な結果を生むであろう、こういうふうに確信をいたしておるわけであります。ただ、演習場の問題になりますと、どうも島本さんのほうと少し根っこの立場が違うものですから、どうもかみ合わぬところがあるわけですが、国土保全ということには留意しなければなりませんけれども、同時に安全保障上の必要に対しましては、これまたこれに対応する施策がなければならぬ。それをどういうふうに調和して環境破壊というものが行なわれないように、——さっき行なわれないようにすると言ったらおしかりを受けましたが、できる限りそういうことが少なくなるようにというように訂正をいたしますが、その辺に行政の苦心の存するところがあるのではあるまいかと考えるわけでありまして、とにかくこういう時世でございますので、相対立する問題の処理にあたりましては、特に環境保全、そういうものには留意して臨まなければならぬ時期に来ておる、かように考えます。
  47. 島本虎三

    ○島本委員 結論。安保条約ある限り破壊はやむを得ない。それに続くのが環境保全であって、破壊先行、これよりやむを得ないのだ、こういうように解釈してよろしいですか。
  48. 福田赳夫

    福田国務大臣 安全保障条約はそもそも国土を安全に守り抜こうというための条約でございまして、決して国土破壊を目的としているわけじゃないのです。(島本委員「演習はどうですか、演習は。」と呼ぶ)ただ、しかし、その目的を達成するために常時演習活動が必要である。その演習活動が自然環境破壊ということをかもし出す。そういうケースもあるのですが、そういうことのなるべく少なくなるように努力する、そういうことが政府の置かれておる立場であろう、かように考えます。
  49. 島本虎三

    ○島本委員 私は福田長官を閣内随一の進歩的な人である、こういうように思いたかったのであります。しかし、この勧告を見て、この中でもやはりそうできる点もないわけではないと思います。たとえば、国立公園指定されておって、そのそばにコンビナートがあって、そしてコンビナートからの経済活動、産業活動によってその国立公園内の松や樹木が枯れてしまう、こういうようなものに対して、具体的に勧告としてどういうようにさせますか。
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは環境庁でいろいろ考えてくださることと思いますが、やはり国立公園周辺に何か国立公園自然環境破壊するというような施設があるという際におきましては、その国立公園指定範囲を拡大する、そういう結果、国立公園対象の施設というふうな考え方もできましょうし、何かいろいろくふうがあると思います。また、施設が存在するにいたしましても、そういう樹木を枯らしてしまうというようなそういうような公害現象、こういうものが絶対になくなるようにというような措置もできるであろうし、これはいろいろ道があると思います。
  51. 島本虎三

    ○島本委員 特に七ページの中ほどに「国立国定公園の特別地域内における国有林施業についての自然公園法に基づく協議に関しては、昭和三十四年十一月に環境庁(当時は厚生省)と林野庁が協定し、施業の方法、協議の手続などを定めた。」とあって、その下にそれについてずっと述べてあるのですが、もうすでに岡山県の水島臨海工業地帯、あそこからの産業活動の結果の排煙、こういうようなものによって、国立公園の特別地区の鷲羽山の松が枯れているのです。それでもコンビナート活動はそのままやらしているのです。これはこういう経済活動をそのままにさしておいたらどうにもならぬじゃないですか。そういうような実態をもう少し把握すべきです。そしてこういうものはやめなさい、こういうようなことさえも勧告すべきです。黙ってこのままやらせておいて、ことばだけよく飾ったって、実態はよくなるものじゃないのです。そういうような実態が水島にあるということ、それなのにまた再びこういうようないいことばずくめの「自然保護に関する行政監察結果に基づく勧告」が出ておるという点、現実と矛盾いたします。  それと同時に、私が行政管理庁長官に聞かなければならぬことがあります。と申しますのは、何としても現在の日本のGNP方式、電力とGNPの関係についてもう少し行政管理庁長官として日本経済全体に対して指導すいべきじゃなかろうか、こう思うのです。と申しますのは、鉄鋼では直接分だけでも三割が輸出用になっています。それから、使用した機械や自動車を含めると、鉄鋼は約五割が輸出に向けられているわけであります。そのために電力が五百億キロワット以上使用されているわけであります。それが結局は輸出を増大させる結果になり、円を何度切り上げたらいいのかわからないような状態になるわけであります。こういうような状態からして、勧告すべきは、その辺にも十分要素がありはせぬか。それで、現在の電力関係、どんどんつくらせようとしております。原子力だけで、もうすでに安全性の試験がないまま、四十八年度の後半にわたってようやく原子力の安全性の点について科学技術庁で試験に入るのです。あとは日本で試験さえしていないのです。そしてアメリカで学者が安全だというから安全だといって、日本でもうすでに稼働中のもの五基です。いますぐこれから稼働しようとするものが十五基です。計画中のものが相当数です。そういうようになってまいりますと、今度原子力の長期計画によると、昭和六十年までにいまの三十倍くらい、六千万キロワットの計画が続くといわれているわけです。八割以上が産業用です。その中で特に電力が使われるのが多いのは鉄鋼、石油化学、こういうような方面です。そういうようにしてやると、いま言ったようにしてどんどん輸出に向けられる結果、円の切り上げは再三、再四行なわれる。それでも今後は輸出が増加しなければならないというような方式をとるならば、やはり何としてもいまのやり方そのものを認めることが、日本経済全体に対しても相当の変化をもたらすことになる。安全性も確認されないままに原子力発電はもう稼働中のもの五基、すぐ稼働せんとするもの十五基、その他まだ計画中のものがたくさんある。こういうようなことからして円の切り上げが行なわれても輸出が増加していけば再三、再四また切り上げられる。ますます混乱におちいる。こういうようなことの矛盾をそのままにして、電力そのものを、増高の方向だけをたどらせておくということは、やはり一種の矛盾ではないか。同時に今後は鉄鋼、石油化学、自動車、こういうようなものの輸出を押えて、そのためには志布志湾だとか、現在計画されておるむつ小川原であるとか、あるいは北海道の苫小牧東部の巨大な開発計画であるとか、こういうようなものに対しては十分考えなければならないのではないか。そして四十五年たったら地球上から資源として抹殺されるかもしれないといわれておる重油専焼の火力発電をつくらせようとしておる。こういうような一つ企業本位の矛盾、こういうようなことこそあなたでなければできない一つ勧告じゃありませんか。どうしてこういうようなやり方に対して勧告をなさらぬのですか。いままでの富士保全法の問題の裏づけですか、こういうようなものを聞いて私はあ然としたのです。しかし、あなたでなければできない。この勧告はこういうふうにしていまあるのではありませんか。こっちのほうの勧告はしなさらぬのですか。これがむしろ重大ではありませんか。これに対してひとつ御高見を拝聴させていただきたいと思います。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまのお話は、大筋はたいへん示唆に富んだものと拝聴したわけであります。いまちょうど国のかじとりの転換期にある、こういうふうに一般にいわれておるのです。それはいろいろな側面があるわけでございますが、一つは、いま御指摘の経済の側面、経済政策、いままでは何といっても工業品を中心とした生産増強、それに基づくところの高度成長ということであったのでありますが、もう世界でアメリカ、ソ連、日本といわれるだけの経済力をたくわえた日本、また、外貨百八十億ドルを保有するというような立場に立ったわが日本、こういうことになりますと、経済の発展というものは一体何のために必要なんであるかという原点に立ち返って考え直す必要がある時期に来ておるのじゃないか。経済の発展は経済の発展に目的があるわけじゃないのでありまして、われわれの生活を豊かにする、快適にする、われわれの福祉のために経済発展があるのだということを、いまほんとうに透徹した考え方を持って国政に取り組まなければならぬ時期に来ておるのじゃないか、そういうふうに思うわけであります。そういうことを考えますときに、いままではいまお話しのように、工業製品の生産増強ということが中心でありましたが、これからは経済の成長をストップしたらどうだというような説もありますが、ストップするということは妥当ではないと私は思うのです。経済の成長は進めなければなりませんけれども、進めるための主軸になる推進力は何であるか、こういうとやはりわれわれの福祉のための産業、住宅産業でありますとかあるいは福祉諸施設の産業でありますとか、公害を防除するための産業でありますとか、そういうわれわれの生活を主体とした産業、これが経済発展の推進力になる、こういうふうな体制に持っていかなければならぬし、また同時に、いまエネルギーに触れられましたが、とにかく資源のないわが日本が世界じゅうから資源を集めまして、わが国の国土を荒らしながらその資源をわが国において製品化するという考え方につきましては、これは現地においてある程度の製品化を行なう、こういうような考え方に改めなければならぬだろうと思うし、また、これからの世界を大きく展望いたしますれば、やはり資源という問題は非常に重大な問題になると思うのです。ローマ・クラブじゃありませんけれども、もう石油も数十年しか寿命がない、こういうふうになる、おそらくそうなってくるだろうと思うのです。そういうことを考えますときに、少し時間がたちますと、十年、二十年というような先におきましては、資源問題というものが世界政治の非常に大きな課題となって浮かび上がるであろう。そういう際に、わが日本というものは資源を国に持たない、非常に弱い立場になってくる。そういうこともまた踏まえましてかじとりもしなければならぬ、こういうふうに思うわけです。お話を承りまして、全く同感です。しかしこれは行政管理庁政府勧告するという問題としてはなじまない問題であります。それ以前の問題であって、内閣において十分検討いたしており、また検討さるべき問題である、さように考えております。
  53. 島本虎三

    ○島本委員 申しわけありませんが、そうじゃないということをいわざるを得ないわけです。と申しますのは、いまのような立論からして、三井銀行の相談役の佐藤克三郎さんをはじめとしたあの産業計画懇談会で、電力や鉄鋼や石油化学、石油精製、こういうような九業種の生産規模、これはばく進すべきじゃない、縮小してもいいんだ、こういうような一つの所論の発表があったようです。内閣の中で経済企画庁長官はそれは老人のたわ言だと言っておるわけです。そうだとすると、いま長官がそういうような行政あり方に対して、はっきり勧告すべきだということは当然じゃないかと思うのです。必要ないですか。
  54. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、私が行政管理庁長官立場においていわゆる行政勧告をする、こういう問題としてはなじまない問題なんです。これはそれ以前の国の大きなかじをどうするかという問題なんであります。そういう角度におきましては島本さんのお話、全く同感に考えます。資源の問題、これはこれからの、国民もそうでありますが、政府の政策のあり方としては、資源は先々なかなかむずかしいことになるのだ、そういうことを踏まえまして、諸施策に取り組まなければならぬ、こういうことでありますが、これは行政管理庁長官として勧告をするという以前に、それ以上にまた重大な問題である、私は個人としてはそういう考えを持っておりまして、企画庁長官とも寄り寄り話をいたしておる、それをひとつ御承知おき願いたいと思います。
  55. 島本虎三

    ○島本委員 ことば長官それでいいのです。経済発展は生活を豊かにし、福祉のために経済の発展があるはずである、したがって、それは越えてはだめなんだということ、それはそれでいいのですが、現実はそうじゃないということで、ここにはっきりした政策を打ち出す、また内閣の一員でもございますから、その点ははっきりとここに打ち出すべきである。ことに破壊保全とは違うのですから、富士や、いま言った長沼の問題を含めまして、安保がある以上、これを破壊してもやむを得ないというこの考え方をもう一回考えてみて、だれが攻めてきてだれがどうするから富士山破壊するのだ、長沼の保安林を解除するのだ、まぼろしの外敵に備えるためにそういうことが必要なのかどうか、この点からもう少し深くメスを入れて考えていってもらいたいのです。環境保全はそこから始まるわけです。それを一歩出て、やむを得ないのだという考え方に立てば、富士は四方八方、上から下まで破壊し尽くされなければならないわけです。また北海道の自然など、ほんとうに守られている山も、水源涵養という重大な目的を持っていても切られ、荒らされなければならないわけであります。もう一つ、その点を十分考えておいてもらいたい、このことを心からお願いし、最後に御高見を承っておきたいのです。
  56. 福田赳夫

    福田国務大臣 自然環境はどこまでも保全をしなければならぬ、こういうふうに考えますが、どうも島本さんと立場がまるっきり違う点があると思うのです。それは国土防衛、安全保障、こういう問題でありますが、この問題の根幹にさかのぼりますと、これは幾ら議論をしても、議論の尽きるところがないと思いますので、それには触れませんけれども、とにかく国土防衛、安全保障という見地で、演習場の存在が必要である、そのために環境破壊という問題が起こる、起こりますが、これは必要最小限にとどめるという努力を最大限にいたすということでひとつ御了承願いたいと思います。
  57. 島本虎三

    ○島本委員 環境庁長官並びに通産政務次官も来ておられるようでありますが、ただいまの続きなんであります。環境庁長官は以前からいろいろ意見を伺っております。それと同時に、行政管理庁長官からもいまのような所信の表明があったわけです。私自身としても、今後も北海道の中で、行政そのものの中で、石炭専焼の火力発電、これについては十分住民との納得の上に立って、今後は北海道を先にし、次いで九州のほうに持っていきたい。田中内閣総理大臣が総理になる直前から言い、なってからもこのことを言明しておる。中曽根通産大臣も当然そのことをつい先ごろこれを言明した。しかるにかかわらず、四十五年も掘ったならばなくなるはずの油、重油専焼の火力発電を何のために北海道の最も風光明媚な国立公園のすぐそばのあの伊達にこれを建立して、そして住民との間にトラブルを起こさせなければならないのか。北海道電力の行き方は、まさに国の行き方と全然逆のほうへ走っているじゃないか。この指導も、通産省はほとんどそういうふうなことをやっていないと言いながらも、下部のほうでは、北海道では盛んにそれをけしかけているようであります。  そして、つい最近であります。北海道議会は三月の二十九日に終わる予定だったのです。ところが真夜中までかかりました。当然終わっておるのかと思って——緊急に着工しないと言っておったはずの伊達の火力発電所、これが三十日に砂利を敷き、資材の運搬のための道路をつくった。当然真夜中までかかった道議会が一日会期を延長した。延長した結果、それがはっきり議会の問題になり、緊急質問がなされ、知事不信任を提案されたりして、ついに三日間延長して終わっておるのです。  こういうふうに地域に混乱を巻き起こすような通産行政あり方は、全くもって環境破壊の最右翼じゃないか。なぜこういうような点について、環境庁も黙っておるのはふがいないのでありまするけれども、通産省自身がはっきりした指導をしないのですか、これは。一体以前の、慎重にして、住民の意向を十分確かめた上でないと着工しないという言明はどうなんですか、これは。国会まで無視して、知事の発言まで無視しても一企業がそれほどやれるような指導を通産省でなすっているのですか。前回の皆さんの答弁と符合させながら、この件について答えてもらいたい。国会をあまりにも侮辱している。
  58. 塩川正十郎

    ○塩川政府委員 先ほど先生のお話の一部着工にかかった、砂利を敷いて着工の準備にかかったという御質問でございましたが、私たちよく調べてまいりましたら、この砂利を敷きましたのは、住民の方々が何かヘドロのようなものを取り去って、少し砂利を敷いてくれぬかという要望があってやったように聞いておりまして、一部新聞にはそういうふうな報道も実は出たのでございます。  根本的な問題を申し上げますと、先ほどお話がございました、北海道には石炭が産出される。この石炭を利用して電力を起こす。これは私は理想の形態であろうと思いますし、また現在そのように石炭政策の中に進めておりますし、電力会社に対しても要請いたしておるところでございます。石炭を使うことのコスト云々ということは、こんなことは度外視して、有益な資源を活用するということの方向に進めさせておるわけでございますが、だからといって、石炭をたくことによって公害の問題が住民との間にすっきりと片づくのかどうかということにつきましては、これは十分な努力をしなければなりませんでしょうが、まだそこまで早急に片づくような気配もないように思うのであります。けれども、石炭に関する火力についてのもっと真剣な取り組み方をやはり電力会社も考えていくべきだ、このように行政指導をしておるところであります。問題の石炭をおいて、なぜ重油専焼の火力発電所をこのように急ぐのかということでございますが、別に通産省といたしましては、住民の意思なんて、あるいは道の意見なんというものを無視して火力発電急げというようなことは、全然これは指導いたしておりませんし、むしろ逆でございまして、できるだけ地元住民の意見を聞いて進めるべきであるということを指導しております。  そこで問題となっております住民との争点の問題も、これは私が申し上げるよりも一番よく御存じなのは島本先生なんでございまして、先刻御承知のとおりでございますが、まあだんだんと煮詰めるところは煮詰めていっておる。そこでそういうようなものが完全に煮詰まって住民の了解が取りつけられるまでは、着工を急ぐべきでないという指導をいたしておるのでございまして、その点は御了解いただきたい。道なりあるいは地元の方の意向に反して通産省がこれを強行しろと言っておるものではさらさらございませんので、その点十分御理解賜わりたいと思います。
  59. 島本虎三

    ○島本委員 そういうことを言ったり、早急にやらないと言ってみたり、住民とのコンセンサスを得てからこのものに対して取りかかると言ってみたり、慎重にいたしますといままで言ってきたのです。  井上公益事業局長おりますか。あなたもそれをはっきり言ったはずです。それから、これはもう十分考慮して早急にかかるべきじゃないということを経済企画庁からも言われておるはずです。宮崎仁局長から言われておるはずです。にもかかわらず、下部のほうがこういうようにやって独走して、そうしていま塩川通商産業政務次官のほうからわりあいにわかったようなことを言っておりますが、あれは会社側がそれを言っているのです。知事はそれに対して、たとえそういうようなことを言っても着工の一部であるからこれは遺憾だと言っております。住民感情としても、前の契約や約束からしても、それさえも着工とみなされるような状態なのに、あなたは北電から来たそのまま私に答弁している。一体あなたは北電の代行者ですか。そういうような通産省の姿だから公害はなくならないのだ。もう一回、今度ここへ大臣来てもらわないとだめです。いまのようにして国会のほうにまでペテンにかけて、そうしてそれをやって、先に手を打ってしまう、そうなったら住民はあきらめるだろう、こういうように言っているのです。どうして、公益事業局長、それをそう急がせなければならないのですか。それをあなたは札幌通産局長に十分注意をしたのですか、しないのですか、事務的にはっきりこれを答弁してください。
  60. 井上保

    ○井上政府委員 伊達火力の着工の問題でございますが、これにつきましては先般いろいろ御注意もございまして、北海道電力の責任者を東京に呼びまして、着工については十分に配慮するところがあるように申し伝えてございます。なお通産局の公益事業部長も上京いたしまして、その折にもそのことを伝えております。  特に通産省として全体的な需給調整の観点から着工の必要性は認めておりますけれども、それは地元の意向を無視したりして着工しろというようなことを指導したことは一度もございません。
  61. 島本虎三

    ○島本委員 それでいいのですか、答弁は。
  62. 井上保

    ○井上政府委員 今回の問題につきましては通産局自体をいろいろ調べてもらったわけでございますが、ただいま政務次官から御答弁申し上げましたようなことのようでございますが、なおかつ慎重にやるようにということを北海道電力へ注意いたしてございます。
  63. 島本虎三

    ○島本委員 その場所というのは国立公園地帯、北海道では一番環境のよい場所、室蘭、苫小牧にわりあいに近い場所、そして北海道の湘南といわれているような風光明媚に加えて今度は自然環境の一番すばらしい場所なんです。北海道にこれ以上の適地がないといわれるほど保養上もいい場所なんです。その一番いい場所の周辺近くに国立公園もあるのです。そこは国立公園からはずれている周辺にあるのです。なぜそういうような場所を選んで重油専焼の火力発電を建てなければならないのですか。もっとはずして、泥炭地帯もあるでしょう。海は四方にあるのです。水をとるのにどこにもあるのです。どうしてそういう場所にやらないで風光明媚な環境破壊しなければならない場所を選んで、トラブルを起こしてまでもこの着工を急がせるのですか。こういうようなことは環境庁自身がなめられている証拠じゃありませんか、長官。なぜ場所の選定をもう一回考え直せとか、火力発電の場合は石炭専焼でやるならば、もうよごれた山もありいろいろあるのです。そこに対していままでやった以上の優秀な施設で、脱硫装置や集じん器やこういうものを完備したならいいから、住民総意によってやってもらいたいという個所が数カ所あるのです。コストが合わないからといってコストを合わせるために一番いい環境の場所にこれを強行しようとするのです。環境庁長官なめられているのです、あなたは。こういうような通産行政の行き方をそのまま認めることは、環境庁あってなきがごときものなんです。調整権はここで発動すべきではありませんか。あの広い北海道、四国と九州と中国を足して広島を引いたぐらいの広大な土地です。なぜ一番いいその個所に強行させなければならないのですか、長官長官の御高見をこの機会に拝聴したいのです。
  64. 三木武夫

    三木国務大臣 まあ強行さしておるわけではないわけでありますが、いろいろな電源開発の審議会等の手続を経てこれが現実の問題になってきたわけですが、環境庁としても地元の意向、その意向の中には環境汚染等の懸念というものがあるし、いろんな環境破壊等の懸念もあるから地元でいろいろな意見が出てきたわけでしょうから、地元の意見もよく聞いて、地元民の理解を求めるようにということは、北海道庁あるいは北海道電力にも申してあるわけでございます。  さらに、この公害防止協定というもの、われわれとして非常にこれは重要視せざるを得ないわけであります。これについてもある一時はあんまり防止協定ども十分でない時期があったので、防止協定というものに対してはこれを明白にすることを要請して、現在の防止協定は相当きびしい公害防止協定になっておる。この上は地元民の理解を求めて、そういう形でこの事業が推進されることが望ましいと考えております。
  65. 島本虎三

    ○島本委員 それも環境庁に重大な関係のある環境権の問題、いまこの環境権そのものも定着させなければならない。かつては日照権の問題も根拠立法がないままにもう定着してしまったじゃありませんか。環境権そのものももうすでに、自然が破壊されたならばもとへ戻らない、りっぱな環境保全させねばならないということで、これさえ定着させるような動きがいま国民の流れとして大きくなっているのです。いまその裁判が行なわれているのです。その裁判が行なわれている最中にこれを強行させるということは慎まなければならないと思うのです。よくこの推移を見た上で堂々とやったらいいじゃありませんか。なぜちゃっきり金太のようにしてこういうようなことをやるのですか。塩川通産政務次官、これはいま環境権の問題で法廷で争われているのです。現地のほうへも今度は行くことになっているかのようにも承っているのです。その前に自然をそのまま破壊してしまって既成事実をつくってしまって、これであきらめムードによって、ちょうど富士保全法が出される前提として演習地を認めたようにいままた先に着工させてしまって、あきらめなさいといってあそこをやろうとするのです。北海道一の環境のいい場所です。いま環境権が訴訟によって争われているのです。裁判が進行中なんです。この裁判の結論を見た上で堂々とおやりになるのが通産行政としても正しい男らしい行為じゃありませんか。通産政務次官これをやるべきです。またやらせるべきです。同時に環境庁長官、いま環境権そのものも定着させるための一つの大きい流れがあるのですから、それの定着する前にそういうように出てきて理不尽なことをやろうとするかのような行為は慎ませなければならないと思うのです。お二人の御高見をお伺いいたします。
  66. 三木武夫

    三木国務大臣 いま環境権という立場に立って訴訟が行なわれておることは承知をいたしておるわけでございます。この環境保全ということについてはおそらく将来とも大きな問題になってくる。法概念としてこれが定着をするのには時間を要しましょうけれども、しかし政治一つの理念としては、環境権というものは無視できない大きなものとなりつつあることは私も認めるわけでございます。ただ、この問題についてはわれわれ自身としても非常に関心を持っておるわけで、したがって、公害防止という見地から非常な関心を持ってきておるわけですが、北海道庁等においても、あるいは今後公害防止などに対して、より一そう定着することによって、地元民の理解を得るために最大の努力を払うことになると思いますので、そういう努力というものを要請しながら、いまここで環境庁として伊達火力発電所を中止せよという命令を出す考えはございません。
  67. 塩川正十郎

    ○塩川政府委員 三木大臣の仰せられた大体考えでございまして、環境権が争われていることは十分承知いたしております。したがいまして、私たちもこの裁判の成り行きには重大な関心を持っております。しかしこの環境権訴訟問題と電力発電所を進めていくということとは、これは行政立場に立ちました場合には一つの別個の問題として見ていかなければならぬと思っております。そこで、先ほど来何か政府が強行させておるように島本先生おっしゃっておられますが、決してそういうことではない。できるだけ地元の意見をくんで円満に解決しろ、そしてそこの中に完全な調和をとって協力体制をつくってもらうようにしろということをやかましく私たちも指導いたしておりますので、その点につきましてのわれわれの指導も御理解いただきたい、こういうように思います。
  68. 島本虎三

    ○島本委員 それが指導ならば通産省は指導を無視されているのです。それと同時に長官、いまこれは法概念的に定着するようになりつつあるけれどもという話ですが、実際的にそういうふうに判例さえも重なり合ってきているのです。二月の十四日に広島県の吉田町にも同類の判決が出ているのです。屎尿処理場にごみの焼却場建設、これはしてはいけないというような判決が出ているのです。これも建設の前に環境権を理由に争った。したがって、住民の生活環境が優先するというふうに判決が出されております。だから予防裁判、はっきりこれで確立しているのが実例としてあるのです。ないんじゃないのですから、そういうような点から考えて、環境庁たるものは、やはり環境権に対してまず優先的にこれを守るべきが任務だ、私はこういうふうに思っているわけでございます。今後この問題等については、いままでの長官の態度は、かつてないように私は満足いたしません。まことにこれは消極的です。きょうは両方の長官消極的だったのです。どうも私は、まことにきょうは残念なんです。  それと同時に、もう一つは、海上保安庁長官来ていますか。いま水俣の判決がなされました。そして水俣に関しては水俣港、以前はヘドロの問題では富士市の田子の浦港、こういうようなところでは、港内においての船舶交通上の安全及び港内の整とんをはかることを目的とする法律が港則法として存在しております。その中で水路の保全のために、廃棄物、廃物、こういうようなものは一切捨ててはならないことが二十四条の第一項にきまっているのです。一、二、三項とありまして、はっきりとこれはきめられているのです。「みだりに、バラスト、廃油、石炭から、ごみその他これに類する廃物を捨ててはならない。」ことになっているのであります。いま水俣の場合のヘドロ、富士市の場合の、あの田子の浦のヘドロ、両方ともこれは法発生以来でも依然として同じようにやっているのですが、これは港則法に触れないのか、なぜこれをやったものを検挙できないのか、この点について保安庁の考えを聞かしてもらいたい。
  69. 紅村武

    ○紅村政府委員 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘いただきましたとおり、田子の浦あるいは水俣その他の港もございますけれども、汚泥が堆積いたしまして問題になっておるわけでございます。こういった原因といたしましては、港に流入いたします河川その他に含まれます土砂あるいは工場排水中に含まれます浮遊物質等が原因だというふうに思われるわけでございます。こういった物質が堆積をいたしまして、ただいま先生御指摘いただきましたように、港内におきます船舶の交通の安全に支障を来たすというような場合になりますと、これは当然港則法の違反ということになるわけでございます。しかしながら工場排水につきましては、水質汚濁防止法が別にございまして、一定の排水基準を設けているわけでございますが、この排水基準の範囲内での排水は許容されておるわけでございまして、基準に違反したものに対しましてはもちろん罰則を科するわけでございますけれども基準のワクの中で排出しております場合、こういった排水中に含まれまする物質が堆積いたしました場合には、これを実は直ちに港則法違反として取り上げるのは、私どもといたしましてはちょっと法律上もむずかしいのではないかというふうに考えられるわけでございまして、私どもといたしましては、工場排水につきましては、第一義的にはやはり水質汚濁防止法違反の有無という面から検討してまいる必要があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、特にただいま先生から御指摘をいただきました田子の浦港でございますけれども、これにつきましては御承知いただいておりますとおりに、多数の工場からの排水が直接海域に注がれておるのではございませんで、岳南排水路というものに集まりまして、そこから港の中に排出されておるという状況になっておるわけでございます。  そこでこれらの排水路に排出されます段階で、まず水質汚濁防止法の基準違反になっておるかなっていないかという点につきまして、これは実は私どもの所掌ではございませんで、県あるいは警察でチェックをしていただきたいというふうに考えておるわけでございます。  現在田子の浦の港内に堆積しております約九十万トンというふうに推定されておるわけでございますけれども、これは四十八年度におきまして、県の公害防止事業といたしまして除去が計画されておるというふうに承知いたしておりますけれども、私ども海上保安庁といたしましても、港の機能の維持あるいは船舶交通の安全確保といった見地から、港内の状況監視を行ないまして、必要があればただいま申し上げましたように、県あるいは警察等に所要の措置を求めるようにしたいというふうに考えておるわけでございます。  それからなお、排水基準違反として摘発されましても、なお港内の機能に支障を及ぼすというような排水を行なっております場合には、これは港則法違反といたしまして、私どもといたしましても必要な措置をとるという考え方でございます。
  70. 島本虎三

    ○島本委員 岳南排水路へ出すと、それは個々の企業の排出物じゃないからそれでよろしいんだ、こういうような考えですか。
  71. 紅村武

    ○紅村政府委員 お答えいたします。  岳南排水路へ出す場合はよろしいというわけではございませんけれども、実は岳南排水路に出ております排水口は海上保安庁の所掌の範囲外でございます。したがいまして、ただいま申し上げましたように、県あるいは警察のほうとも連絡をいたしまして、適当な措置をとっていただくことが必要だというふうに考えております。
  72. 島本虎三

    ○島本委員 出されたものは全部海へ行ってもう海洋を汚染しているのです。その点はやはりよく連絡し合ってやるのが当然なんです。ここから先、海のほうから私のほうだ、流れてくるものはあなたのほうだ、こんな官僚的な行政の取り締まりをやるからだめなんです。一生懸命にやる人をほかのほうへ左遷してしまっている。そういうような海上保安庁の態度というものは許されません。いままでにない愚劣な答弁です。田子の浦、ああいうようなのは排出してもいいのですか。これは環境庁……。
  73. 岡安誠

    ○岡安政府委員 田子の浦周辺の工場につきましては、現在水質汚濁防止法が適用されておりますが、県におきましてはさらに上のせ排水基準をすでに設定をいたしまして、それによって規制をいたしております。ただ御指摘のとおり、現在におきましても必ずしもすべての工場が基準以下の排水を守っているという状態ではございません。昨年約一年間におきまして、県が三百十六件の立ち入り調査をいたしておりますが、残念ながらその中で六十七件は基準に違反をいたしておりました。そこで県といたしましては、そのうちの八件につきまして一週間の操業停止というような処分もいたしておりますし、それから改善命令その他の行政措置もいたしております。さらに今後とも基準の厳守ということを確保する意味におきまして、三月の二十七日に百十八工場につきまして夜間の一斉立ち入り調査を県で実施いたしております。その結果によりまして厳重な措置をいたしたい、かように考えております。
  74. 島本虎三

    ○島本委員 そういうふうにしてやった結果起きたのは、水俣の水銀を含むあのヘドロ、あれさえもいまやどうにもできなくなってしまっている状態、やはり行政の指導体制はまだまだ甘い。基準そのものだってまだまだとろい。川崎あたりでは、大企業がすでに基準以下の煙を排出しながらも、ほとんど毎日のように公害病患者はふえていっている。全面的に洗い直すべきです。それから自分の立場だけに固執して、それ以上に手を伸べないというやり方は、公害をこれ以上ふやすようなやり方に手をかすことになる。少なくとも環境保全関係公害防止関係は、他の領分にでも入っていってその大もとをとめるように各官庁がこぞってやらなければこれは改善にならないのです。このことを強く申し上げまして、総反省の上に立ってがんばってもらうようにお願いして私の質問を終わります。
  75. 佐野憲治

    佐野委員長 中島武敏君。
  76. 中島武敏

    ○中島委員 先ほどから質疑の中でいろいろ明らかになってきておりますが、富士演習場使用転換の本協定がきょう結ばれる。これはまさにニクソン・ドクトリンに基づく自衛隊に対する肩がわり政策の実行であるというように私どもは思っております。また、巷間伝えられるところによりますと、知事にこのことをのませるために富士保全法を出すということで、すでに閣議決定もされたというように聞いております。先ほどからの長官の答弁を聞きますと、富士演習場はないほうがいい、しかしかわる場所がないのでやむを得ないというふうな考え方を答弁されておられたと思うのです。そして一方で安全保障ということを強調されて、安全保障と環境保全を調和させていくのだというような意味合いのことばもあったと思うのですが、私は率直に申しますけれども、安全保障といいますけれども、中身を具体的に突き詰めて考えれば、この富士の問題におきましては、きわめてはっきりしておりますように、環境破壊するという具体的な事実が生まれてくるわけですね。そうすると、環境破壊するということと環境保全するということが統一的にとらえることができるものかどうか、私はできないと思うのです。あるいは調和させることができるか、とてもこれは調和させることはできないと思うのです。それで私は先ほどからの長官の答弁を聞いていて思うのですが、もし統一させるとか調和させるとかいうふうにおっしゃるのであれば、一体どんなふうにして調和させるというふうにお考えになっていらっしゃるのか、統一させるというふうにお考えになっていらっしゃるのか、まずそこをひとつ聞きたいと思います。
  77. 三木武夫

    三木国務大臣 政局を担当しておるという立場に立ちますと、やはりこういう問題というのはしばしば逢着する、性質が違っても。だから二者択一といいますが、これかこれかという場合、そういうふうに簡単に割り切れない問題がある。そういう場合に割り切っていくことも一つの行き方でしょうが、割り切れない問題に対してどのようにして両立さしていくかということが、常に政治をやる場合の一つの大きな苦悩でもあるわけであります。しかし一面からいえば、そのために政治が必要だともいえないわけではない。だから北富士演習場の場合も、大砲を撃ったりすることは環境破壊につながることはだれの目にも明らかです。しかし、その中においても、われわれの考えておることは、演習場にするわけですから、できる限り大砲を撃つなと言うことは目的に反するわけでありますが、演習の直接の目的以外のことに対して、あれは日本人の象徴的な場所ですから、自衛隊に対しても米軍に対しても環境保全のための最大の協力を求めることは当然のことだと私は思っておるわけであります。そこは、いま中島委員のようにどちらかどちらかというときには私の答弁は不徹底に考えられるでしょうが、しかしえてしてやはり現実の政治というものを処理していこうという場合には、そういう問題にぶつかるものである。これもその一つである。そこで一方においては、演習場については最大限の協力を要請する。一方においてはその地域以外の、むしろそれ以外にもっと広い地域環境保全法の適用範囲になるわけですから、それはすっきり演習場もなくなれば私もいいと思うのですよ。この努力は続けていきたいと思っているのです。しかし、いまここで代替地もないし、どうにもならぬ、そういうことで、演習地はいま言ったようなことであるし、またそれ以外の広大な地域に対してはほんとう環境保全という見地から、いままで実際環境はいろいろ破壊されておる面というものが目につくわけですから、そういう見地、そういう厳正な気持ちに立って富士環境保全というものに当たっていきたい。だから、与えられた現実の上で環境保全のために最大の努力を払いたいというのが私たちの今日の立場でございます。
  78. 中島武敏

    ○中島委員 私は長官の答弁は、率直にいいますが、さっぱりわからぬのですよ。じゃ、もっと具体的にお伺いしますけれども米軍自衛隊に最大の協力を求めるというふうに、それは演習場に関して、あるいは演習に関してでしょう、言われますけれども、じゃ、どのような協力を求められるお考えですか。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 演習自体というものは、そのものに対して演習をやめろと言うことはいかぬけれども、しかしそういう演習というような直接の事態以外に、環境破壊を伴うようなことは極力やはり避けて、お互いにああいう日本人の象徴的な場所ですから、そういう演習をするという環境保全のために悪い条件ですから、それ以外のことでやはり協力を求めるということでございます。それは、そういうことで心がけて協力してもらいたいという要請をすることは当然のことだと思います。
  80. 中島武敏

    ○中島委員 いまの長官の答弁によりますと、演習についてはものが言えないから演習以外のことについて協力を求めるという、こういう御発言でございますね、私の聞き間違いでないとすれば。間違いございませんか。
  81. 三木武夫

    三木国務大臣 あるいは施設をするような場合は当然のことであるし……。
  82. 中島武敏

    ○中島委員 演習以外のお話ですね。
  83. 三木武夫

    三木国務大臣 ええ、演習以外です。——演習のことですよ。演習場の中のことですよ。中でいろいろの施設をする場合とか、その他演習に直接関係のないようなことで環境破壊を避けるための行為……(「そんなことは当然のことじゃないですか」と呼ぶ者あり)当然のことではありますが、これはやはり強く要請をしていきたい。
  84. 中島武敏

    ○中島委員 私は、これは納得ができないなどということばでは表現がちょっとできないですね。これじゃお話にならないと私は思いますよ。そういう面からいいましても、環境の面からいいましてもどんどん破壊されていくということは明らかじゃありませんか。最大限の協力を求めるといっても、肝心かなめの演習について実際には何も求められるわけでもないわけですよ。私は、やはり日本環境保全する、特に富士の場合には保全しなければならない。だからこそ富士保全法も出しているのだ、こういうふうにむしろ言われるくらいだと思うのですから、どうしてもこれはやらなければならない。私は、この問題は二者択一ではないと言いますけれども、両立は絶対にできないと思うのです。やはりこの問題は二者択一という問題であると考えます。  そこで、ほんとう環境保全ということを優先させるという立場政府機関の中でとることができる機関は環境庁しかないと私は思うのです。その環境庁長官がいま言われたような答弁では、とても環境保全は私はできないと思います。それははっきり言えます。これじゃできません。だれがほかに一体政府機関の中でこのことではっきりものを言えるのか、私はほかにないと思うのですよ。環境庁しかないあるいは環境庁長官しかいない。そういう意味で、私ははっきりした立場に立っていただきたいと思います。もっとはっきり言うならば、あの演習場なんかはやめてしまえ、そんなものは撤去しなさいというふうに防衛庁なり何なりに環境庁長官として申し入れるべきじゃないかと思うのです。長官、いかがですか。
  85. 三木武夫

    三木国務大臣 そういう問題に触れると、考え方の相違もいろいろその根本にはあると思いますね。それは自衛隊あるいは安保条約、そういうものに対して基本的に立場が違っておる中島委員から言えば、演習場なんかは簡単に全部断わってしまえ、そして環境保全それ一本にしぼっていけということであればこれはきわめて明白ですが、しかしわれわれの立場はやはり自衛隊あるいはまた安保条約というものを認めておる以上は演習場も要るわけです。富士というのは好ましくないからどこか適当な代替地はないかということを私自身も防衛庁と話し合いをしたわけでありますが、現在のところはなかなかああいう広大なところはない、こういうことであります。しかしこれも永久のものだと私は思っていないわけです。しかし、現在の時点であれの返還を求めて、そうしてそれを全部演習場のない富士周辺地域にするということには、現在のところはそういう解決はできない。その上に立っていわゆるその演習地以外の地域というものは、環境保全のために今後はいろいろな規制をいたしましたりいろいろな整備もやっていこうという考えであります。中島委員のお考えから見れば、私の言うことは不徹底だとお思いになるでしょう。しかし、それはものの考え方に根本の違いがあるわけですね。そういうことで、そういう与えられた条件の中でできるだけ環境というものを守りたい。それはおまえの言うことはささやかな努力じゃないか、演習に使っておったら環境破壊だと言われれば、確かにそういう面はあるけれども、そういう中でできるだけ施設とかその他の面においても環境保全に協力を求める。しかしそれ以外の地域、演習地以外の地域に対しては環境保全ということ、それは中島委員一緒です。すっきりしたその目標のもとに環境保全をはかっていきたい。こういう立法があることは富士環境保全にプラスにはなる。それは何かといったら、いま自然公園でカバーしてない地域がありますからね。そこはああいう場所ですからいろんな乱開発が行なわれるのですよ。そういうふうに考えておる次第であります。
  86. 中島武敏

    ○中島委員 長官は、中島委員の考えは根本的に違うというふうにおっしゃっておられますが、これは私個人の考えじゃないのですよ。やはり現在ほんとう環境保全を要求するというのは、私は日本国民の要求だと思いますね。単に私個人の要求だ、また個人の見解だ、だから見解は相違するんだからということでは、私はこの問題は済まないと思うのです。国民全体が希望し、期待し、要求しておることじゃありませんか。この国民の声に、やはり環境庁長官たる者は謙虚に耳を傾け、言うべき発言はするというようになさらなければ私はうそだと思うのですね。その点では、先ほどからの答弁を聞かしていただきましても、私はとてもこれは受け入れることができないどころか、これでは一そう環境破壊が進んでいくということをいわざるを得ないと思うのです。ほかのところは保護できるというようなことを長官言われました。しかし一番肝心かなめのところを譲ってしまって、あと枝葉末節なところでやりましても、これは一番中心問題が抜けてしまっているのですよ。ここが問題なんですよ。このことを考えますと、長官の答弁は、とてもこれでは環境保全していくことはできない、きわめて残念ながらそう思います。
  87. 三木武夫

    三木国務大臣 私が根本的に違うというのは、やはり自衛隊とか安保条約、それの存立を認めれば演習という事態も要りますね。そういうものをやはり否定される立場に立った場合には、演習場というようなものは不必要で、そういうものを認めるのはもう環境破壊だ。環境保全とは言えないですからね。破壊される面もあるわけで、そういう環境破壊にもつながるような演習場を認めることはいけないのだというお立場ですね。そういうことを言うのですよ。それは国民環境保全をすべきであるという自然環境保全というものに対しては、国民の強い要請があることに私たちは耳をおおうものではないのですよ。しかし一方において、やはり演習場というものは現在の段階で必要であろうということに対しては、全部が必要でないとは、そういう意見国民のコンセンサスだとも私は思わないのです。そういう点で、自然環境を守るということについてはもう全国民の声ですからね。その中でいまの演習場という問題については、必ずしも中島委員の声が国民全体の声ではないということが、中島委員と私との違いであります。根底にある自然環境を守るということに対しては、あなたと私との間に異存はないのです。
  88. 中島武敏

    ○中島委員 それは長官、やはり安全保障といいますか、このことを第一に考える、あるいは米軍を、あるいは自衛隊を、このことを優先させて考えるというそういう見地じゃありませんか。ことばをかえて言うならば、やはりそのもとでは環境破壊を守る、環境保全するということは従属させられる、そういうことを長官は言っておられるのじゃありませんか。私はそれはだめだということであります。もっとやはり環境庁長官は、はっきりした環境保全するという立場、この立場からしっかり発言をしてもらいたいと思いますし、繰り返しますが、演習場なんということはもうやめるべきだ。環境保全という見地からいうならば、少なくともその見地からいうならば、発言できるはずであります。そのことからだけでも、その見地からだけでもそういう発言を私はするべきじゃないかというふうに考えるから、先ほどの質問を行なったわけであります。
  89. 三木武夫

    三木国務大臣 その自衛隊とか安保条約というものは、安全政策に対する政府、自民党の一つの政策としてこれを支持しておるわけで、大きくいえば国の安全という見地に立ってそういう決断を下しておるわけですから、環境保全とどちらを優先するかというこの二つを並列的に置いて、どっちかということには無理のある問題だと私は思うのです。自民党政府は、国の安全を確保するということは国土保全のやはり一つの大きな基礎であるという考え方に立っておるわけですから、そういう上に立って演習場というものの必要を認めるわけでありますから、おまえは軍事優先で環境第二だと、一緒に並列して、どっちを優先しておるかというふうに比較するのにはちょっと無理のある一つの問題だと思います。もしこれが企業の場合には、確かに言われることもあると思います。しかし、国の安全確保という基本的な問題と両方比較してどちらかということに対しては、多少比較に無理があるのではないかと思います。
  90. 中島武敏

    ○中島委員 これ以上この問題についてはやりませんが、とてもではありませんけれども、これではほんとう国土破壊が進行するだけであるということと、それから、もっと環境保全立場というものを長官に貫いていただきたいということを申し上げて、この問題に関してはきょうはこれでやめます。  次の問題ですが、私は前回水俣の問題について質問をいたしましたが、前回質問をしようと思ってまだやり残している部分がありますので、しばらく質問させていただきたいと思っております。  長官にお伺いしたいのですが、裁判の判決で損害の認定額が出されましたが、これは患者の受けた損害の一部だと私は思うのです。長官はこの問題についてどういうふうに考えられるか、これを最初にお尋ねいたしたいと思います。
  91. 三木武夫

    三木国務大臣 中島委員のように一部といえるかどうか、やはり生命を失った人もおりますから、だから、受けた被害というものは償いのできないものだというふうに感ずるのです。それだけにやはりこういう事件というのはたいへんな問題であるというふうに考えるのですが、せめていろいろな現在の状態において損害賠償という民法上の規定もありますから、ああいう賠償額の決定が裁判所で出されたのでしょうが、償いというようなことになってきますと、なかなか千何百万円であってもそれは償いとはいえない、これは単にチッソばかりでなしに、われわれがえりを正してこういう深刻な事態に対して考えてみなければならぬ大問題であるというふうに、私は判決を受けとめておる次第でございます。
  92. 中島武敏

    ○中島委員 これと関連して、患者の治療費を引き上げる問題とか、あるいは通院手当とか入院手当あるいは介護手当、おむつ手当などを引き上げる、総じていえば医療費関係の要求ですね。それ、からさらに生存者年金や遺族年金を要求している。これは永久補償というふうに呼んでいいでしょうが、こういうことも要求しておりますし、あるいはまた水俣病の研究と治療の施設ということも要求いたしております。前回質問しましたヘドロの除去、環境の回復ということもこの中に入っておりますが、十四項目ばかり患者が要求をいたしておるようでありますが、この要求について長官はどんなふうにお考えになりますか。
  93. 三木武夫

    三木国務大臣 裁判所でああいう慰謝料の金額というものが判決として出されたわけであります。その判決後においても、いろいろ医療とか年金の問題について、会社側といわゆる直接交渉派といわれる方々の間に直接話し合いが行なわれておることは、承知をしておるわけでありますが、こういう問題については、現在の段階では両当事者で話をされて、円満な解決を得られることが私は一番好ましい形であろうというふうに考えておるわけでございます。両当事者で話し合って、そしてそういう問題を解決をする、ただ、私は、考えることは、あれだけの大ぜいの水俣病の患者の人なども、会ってみましたが、みなたいへん気の毒なのですから、そういう人たちの治療といいますか、健康管理というか、これについてはわれわれもできるだけ、こういう水俣病に限らず、なかなか治療のほうがむずかしいという奇病とか難病とかいうのもありますね。そういう患者の人たち立場に立ってみれば、何か治療の方法がきまっておるというならともかく、なかなかむずかしいというような病状にある人たちは全くお気の毒な立場ですから、水俣病についての治療を中心とした研究体制というものは、やはり強化していかなければいかぬ、こういう点については政府としてこれから最大の努力を払っていきたい。  また、ヘドロの処理についても、これは運輸省の港湾局長などとも話して、港湾局長のところが中心になってヘドロは処理する。あれをそのまま置いておけば過去のものは取り除かれないわけですから、ヘドロを処理するという方針のもとに、処理の方法というものに対して検討を加えておるというのが現状でございます。
  94. 中島武敏

    ○中島委員 いま長官、両当事者間で話し合って解決することがいいと考えているというふうに言われましたし、また、新聞報道で知ったわけですが、先月三十一日の午後に、チッソの島田社長を参議院内に呼んで、あらん限りの誠意を会社側は示せということを長官は言われたそうでありますが、これは新聞報道ですから、長官は直接そういうふうにおっしゃったかどうかお聞きもしたいと思うのですが、私は、これをもとにして言いますと、あらん限りの努力という、これはすべてを包括した言い方ではあるかもしれませんが、同時に非常に抽象的な表現ともとれるわけです。いま私が申しましたような、また実際に患者の人たちが要求しておられるようなこの要求をむしろ積極的に支持して、そしてチッソはきちんとこれに応じろというふうに長官のほうからも言うという、そういうお気持ちはありませんか。
  95. 三木武夫

    三木国務大臣 島田社長を私が呼びました理由は、先日患者の代表者が私のところに見えたのです。そして文書で回答を島田社長からされた、その文書の回答が、補償金以外の金銭的要求というのでは話に応じられないという意味の文面であったですから、それでは取りつく島もない、もう少し患者の立場、非常に被害を受けた人の立場に立って、もっと誠意を尽くして話し合いをするべきではないかという具体的な条件を私は出したのではなくして、何か会社の交渉の態度というものに対して反省を求めたのが、島田社長を私が呼んだ理由であったわけでございます。一つの、ああいう原因者が明白な場合の公害については、やはり原因者の負担の原則というものがどうしても貫かれる必要があると私は考えております。したがって、交渉の中に、われわれが年金を出したらどうだ、医療費を出したらどうだという、現在の段階で私がいろいろなことを会社側に言うことは、やはり適当だと思わないのです。何とかして解決できぬかという気持ちはあるのですよ。ああいうことで患者の人々が上京して、そして徹夜で何日も交渉をやるということは健康の上から言っても好ましい交渉ではないですからね。であるけれども、今日のこの段階で、私から解決の内容に触れて、これをどうしたらどうだ、あれをどうしたらどうだと言うことは適当だと思わないのです。その根底の中には、やはり原因者負担の原則というものがありますからね。そういうことで、私は交渉の態度というものに反省を求めたので、中島委員の御指摘になるような、内容にわたって私は具体的な提案はいたさなかったのであります。
  96. 中島武敏

    ○中島委員 ちょっと長官の時間がなくなってきましたので、私、次の問題に入りますが、それも手短にやりたいと思うのです。  それは、水俣の裁判の判決ですね。これに照らしてみたときに、現行法、現在の公害関係諸法ですね。公害対策基本法あるいはその他の個別法、これは非常に不備であり、かつ欠陥を持っていると私は思いますが、長官はこの点についてどういうふうにお考えになるか。そしてまた、現在の公害関係法を改正をしようという意思をお持ちかどうかということについてお尋ねしたいと思います。
  97. 三木武夫

    三木国務大臣 いますぐに改正して、この国会に提出したりするという、そういうスケジュールは考えていないのですが、公害立法のようなものは新しい立法ですから、やっぱりそういう立法は絶えず、いろんな客観情勢にも変化が起こっておるのですから、絶えず見直す態度が必要である。古い法律の体系をなしたようなものではないわけですからね。新しい必要に応じてそういう立法が起こったわけでありますから、したがって、絶えず見直して、いろんな時代の変化に適応した法律にしていかなければならぬ。だから、常に見直しはやってみたいと思っておるわけでございます。いろんな変化も起こっておることは事実ですからね。いまの国会に提出するというような、一つのタイムテーブルを立てて、そして見直しをするというような段階にはないわけでございます。
  98. 中島武敏

    ○中島委員 私は、この判決の中に、いろいろ非常に重要なことを述べていると思っております。それはたとえば何カ所か、ちょっと引例しますと「その安全性に疑念を生じた場合には直ちに操業を中止するなどして必要最大限の防止措置を講じ、とくに地域住民の生命・健康に対する危害を未然に防止すべき高度の注意義務を有するものといわなければならない。」というふうにして、公害発生のおそれがあるときにはみずから操業を停止して、そして最大限の防止義務を発揮しなければいかぬというようなことであるとか、あるいは未然防止の高度の注意義務というようなことを、企業に対してこの判決は要求していると思うのです。  あるいはまた「事前に常に文献調査はもとよりのこと、その水質の分析などを行なって廃水中に危険物混入の有無を調査検討し、その安全を確認するとともに、その放流先の地形その他の環境条件およびその変動に注目し、万が一にもその廃水によって地域住民の生命・健康に危害の及ぶことのないようつとめるべきである。」といって、結局この事前の調査、そしてまた事後の環境変化についての調査、これをやらなければいけないということを要求しております。  あるいはまた、別の個所ですが、「終始過失があったと推認するに十分であり、被告工場における廃水の水質が法令上の制限基準行政基準に合致し、その廃水処理方法が同業他社事業場のそれより優れていたとしても、そのことは前記推認を覆すに足るものではなく、」、つまり法令上の基準やあるいは行政基準に合致していても、危険な可能性のある廃水を出してはならないというようなことを述べているわけであります。私は、こういうことが現実に判決の中で指摘をされているのに、ひるがえって現在の公害対策基本法など、あるいは水質汚濁防止法などでもよろしいですけれども、それらを考えてみたときに、長官、この事業者の責務、たとえば公害対策基本法では事業者の責務についてどういうふうに言っているか。国や地方自治体の行なう施策に協力しなければならぬというような趣旨を述べているわけですね。これとこの判決が指摘しているものとの間には、私は天と地の開きがあると考えるわけです。私は、そういうことからいっても、これは現実に起きている公害、このことを踏まえた上でこの判決は出されているとすれば、法律も実際にはその役に立つものでなければいけないものである、公害を防ぐ上で大いに役に立たなければならないもののはずであります。現行法はこの判決に照らしてみたときに役に立つかということになりますと、私はそれこそほんとうにきわめて不備、欠陥を持っているというふうに言わざるを得ないと思うのです。  ですから長官が、これは将来見直しをして改定することにやぶさかでないと、一般論として言われますけれども、私は一般論ではなくして、もはやすでに一つのこういう判決もあり、また現実に公害がどんどん進行しているという具体的な事実に立って、やはり公害ほんとうに未然に防止して、あるいは公害を減少させていく、防いでいくという立場を貫こうとするものならば、現在の公害法をもっと改正をする、そしてもっと役に立つものにするという立場に直ちに立たなければいけないのではないか、こういうふうに私は考えるわけです。そういう点で長官の一般的な答弁ということでなくて、具体的にどういうふうに考えられるかということを重ねてお尋ねしたいと思います。
  99. 三木武夫

    三木国務大臣 いま御指摘の点もやはり見直すを場合の一点だと私は思います。ほかにも、いろいろな世の中の変化に応じて見直さなければならぬ個所も多々あると思います。そういう点で一般的にお答えしたのですが、しかし、一面から言うと企業側にも、あるいはチッソばかりでなしに全体の企業に対しても、一つの大きな警告であったと思います。チッソは、これはあれだけの被害を起こしたら、現在事後策というものに対しても、会社の経営もなかなか困難なくらいの全精力を集中しなければならぬわけですから、単にチッソのみならず、日本の全企業というものに対してやはり大きな教訓的な示唆を与えたと思います。したがってこれからは企業としても、これはもうああいう公害問題を起こせばたいへんだ、そういうことで企業自身が公害防止ということに対して、これからの安全確保といいますか、公害に対しての安全、防止の確保に対してもう最高、最大の配慮をしなければ企業は成立しないという、あの判決というものはそういう強い、大きな警告をやはり与えておると思いますから、したがって、いまああいう判決が出たからすぐに法律を、何か公害の基本法を変えないと、またああいうことを繰り返すじゃないかというふうには考えない。単にそういう個所ばかりでなしに全体として見直しをすることは必要だと思いますが、あの水俣事件というものが与えた日本の産業界に対する一つの、何というのですか、大きな注意を喚起したという影響というものは、そんなに軽いものではない。もうみなが、企業の側も、これは世間の注目を浴びた事件ですからね、寄るとさわると、これからはたいへんだ、ああいうことになったらたいへんだということで、判決が持つ企業への一つの影響というものはたいへんに大きなものがあったと思います。だからいいというわけではないのですよ。そういうこともあるので、いますぐこの国会でもというふうに考えておりませんが、全体としての公害関連法案というものは、これは見直しをすべきだと思っております。
  100. 中島武敏

    ○中島委員 長官がいま後段で言われましたように、企業公害防止する、そのために安全をほんとうに確保しなければならない、まさにそのとおりなんですね。そのとおりなんですが、それがそれぞれの企業にまかせられていていいものでしょうか。私は法律というもの、特に公害法の場合にはそういうことがきちんと企業者に、事業者に義務づけられなければならないと思うのです。そうしてこそ初めてほんとうに効果ある法律になるんじゃないか、実効ある法律になるんじゃないかと思うのです。ですから長官のいま言われたことを押し進めていえば、やはり単に見直しというだけではなくて、現実にこれを実効あるものとして改正をするということが必要だということをむしろ長官自身が、そういうことばではないけれども、言われていることではないかと私は思うのですね。だからはっきりいえば、政治の側、行政の側、あるいは法律という面からいえば、このことの改正の必要を大いに迫っているものであると私は思うのです。そういう点からいって、ひとつ長官のほうでも、一般論ではなくて、やはり具体的に検討してみるということが必要ではなかろうかというように私は思います。
  101. 三木武夫

    三木国務大臣 見直しということは検討するということでございますから、検討はいたしたいと思っておりますが、しかし一方において私思うのには、やはり企業側自体も、法律でないかもしらぬけれども、これからの企業経営者のモラルとして、もう公害は絶対に——これは起こしたら企業としてもたいへんな被害を国民に与えるのだというモラルというものを確立するということが、——それは、私は法律は要らぬという意味じゃないんですよ。その根底にあるものはそういう近代的企業経営者の責任感というもの、それが根底にあることが絶対に必要である。その上に立って立法も、いま言われるように相当きびしく規制をしていくことが必要でしょう。しかし根底にあるものは、そういう、むしろ範囲を広げれば国民全体と言ってもいいかもしれぬですね、やはり人間の健康とか生命というものは何にもまして守らなければならぬという、こういう社会的な風潮というものがあり、また企業家は、日常そういういろんな危険を持っておるわけですから、さらにきびしく企業経営者がそういう責任感に徹する。法律もまた、そういう国民意識企業家の責任関係にささえられて相当きびしい法の規制もある、こういうことでないと目的というものはなかなか達成できませんので、やはり法律だけの問題でもないという気が私はするのであります。
  102. 中島武敏

    ○中島委員 企業者のモラルももちろん必要でしょうけれども、しかし同時に、行政があと追いにならないためには、私が先ほど申しましたように、法の改正も早急に行なって、実際に公害防止に成果をあげるというようにしなければならないと私は思います。そしてそのことを長官に要求したいと思います。  もう長官の時間がなくなりましたので、私きょうはこれで質問を終わります。
  103. 佐野憲治

    佐野委員長 この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後直ちに再開いたします。    午後一時三十六分休憩      ————◇—————    午後四時四十二分開議
  104. 佐野憲治

    佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡本富夫君。
  105. 岡本富夫

    ○岡本委員 行管の長官のほうが何かお忙しいそうですから、そっちのほうから先にやります。  午前中に引き続きまして、自然保護に関する行政監察結果に基づく勧告につきまして、この勧告行政管理庁長官がなさっておりますけれども、まずこの勧告の効果といいますか、行政管理庁で、費用をかけてこれだけの調査をしたわけですから、その結果というものをどういうように行政面にあらわすのか、その結果というものをあなたのほうでチェックなさるかどうか、そしてまた発表なさるかどうか、まずそれをひとつ……。
  106. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、勧告をした以上、その結果につきましては十分心をいたすわけでございます。そこで、勧告を受けました各省庁におきましては、その勧告をどういうふうに処置するかにつきまして回答するという手続になりますが、私どもといたしましては、勧告をいたしたとおり実行してもらいたい、かように考えています。  今回の調査は、二百案件についてのいわばサンプル調査みたいなものでございまするけれども、この趣旨というものは、これは二百のサンプル事例にはとどまりません。今後、この種の行政を執行するにあたりましては、あらゆる自然公園等につきましてそのような精神でやってもらうという方針でございます。
  107. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、これは全部を聞くわけにはいきませんので、けさも少しお聞きしたのでありますけれども、この中の笠置山、ここは史跡の名勝でありますが、ここにおける文化財保護法に基づくところの違反、この事例について、これは行管の大田さんからでもよろしいが……。
  108. 大田宗利

    ○大田(宗)政府委員 お答えいたします。  史跡名勝笠置山の無許可の建築の事例でございますけれども、これは笠置山の指定地域内、京都府の笠置町でございますが、ここに京都府及び民間業者が、昭和四十三年以降、文化財保護法に基づく許可を受けないで橋のかけかえ、道路舗装、それからガソリンスタンド、バンガロー、旅館等の建設が行なわれたものであります。
  109. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは、民間業者が許可を受けないで橋をかけたり道路舗装をしたのですか。この点……。
  110. 大田宗利

    ○大田(宗)政府委員 そのとおりでございます。
  111. 岡本富夫

    ○岡本委員 私のほうに報告があったのは、許可を受けないで橋をかけたり道路舗装をしたのは、これは京都府、それからガソリンスタンドやバンガロー、旅館を建てたのは、これは民間、こういうふうに説明を受けているのですが、どうですか、その点……。
  112. 大田宗利

    ○大田(宗)政府委員 京都府もございます。
  113. 岡本富夫

    ○岡本委員 ひとつはっきりしてもらいたいのですよね。京都府もございます——このうち、どれが京都府でどれが民間だ。あれはあなたのほう、行政管理庁のほうで勧告をしておきながらどうもはっきりしないように思うのですがね。これはひとつはっきりしてください。   〔委員長退席、森(喜)委員長代理着席〕
  114. 大田宗利

    ○大田(宗)政府委員 京都府の場合が二件ございまして、一件は、笠置大橋のかけかえの工事でございます。それからもう一件は、府道笠置公園線の舗装工事でございます。それから民間の場合には、バンガローの建築、それからガソリンスタンドの建築、旅館の建築の三件でございます。
  115. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは文化庁の長官許可を得ずに京都府がこういうことを行なったということに対して、文化庁長官はどう処置をとるのか、これをひとつお聞きしたい。
  116. 安達健二

    ○安達政府委員 笠置山につきましては、全体が約百三十ヘクタールもございまして、その中に市街地等も含んでおるわけでございまして、この保存、管理につきましてはいろいろむずかしい問題があるわけでございますが、先ほど来御指摘のございましたような無断現状変更が行なわれましたことははなはだ遺憾に思っておるわけでございまして、私どもといたしましては、京都府並びに笠置町に対しまして再三にわたりまして、この種の事案についての是正あるいはまた今後の処置に遺憾なきを期するように指導をいたしておるところでございます。
  117. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは指導しておっても京都府が聞かない場合はどうなんですか、行管の長官にひとつ……。
  118. 安達健二

    ○安達政府委員 文化財保護法によりまして、無断の現状変更につきましては、その現状変更の停止等を命ずることができ、また原状回復を命ずることができる、こういうような行政措置がございまするほか、現状変更等によって史跡名勝天然記念物を滅失、棄損、衰亡に至らしめた者につきましては五年以下の懲役、禁錮または三万円以下の罰金、科料がございますし、また許可を得ないでやった場合におきましては三万円以下の科料というような制度があるわけでございまして、時宜に応じまして、こういうような処置をやる必要がある場合も出てくると思うのでございます。
  119. 岡本富夫

    ○岡本委員 民間のほうはそういうことで聞くと思うのですが、京都府の場合、知事を五年以下の懲役にするのですか。文化庁のほうでこれはどうなのですか。
  120. 安達健二

    ○安達政府委員 この舗装工事、府道の笠置公園線の舗装工事につきましては工事中に発見をいたしまして、四十六年の二月二十三日付で現状変更の許可を行なっておる、こういう事態でございます。
  121. 岡本富夫

    ○岡本委員 行政管理庁はこの道路舗装工事について実際調査なさったのですか、いかがでしょうか。
  122. 大田宗利

    ○大田(宗)政府委員 現地に参りまして調査しております。
  123. 岡本富夫

    ○岡本委員 文化庁の言うのとちょっと違いますね。文化庁のほうはこの道路舗装工事については、それを発見して昨年原状復旧をさせたのであれば、これはもう舗装工事をやってないはずだ。
  124. 安達健二

    ○安達政府委員 先ほど申し上げましたのは、工事中に発見をいたしまして、昭和四十五年十二月二十六日許可申請を提出させまして、四十六年の二月二十三日に現状変更を許可したわけでございまして、原状回復命令を出したわけではございません。
  125. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、文化庁としては現状変更命令を出して、そしてきちっと許可をしておる、それに対して行政管理庁のほうは違反である、こういうのはちょっと私実際に調べておかしいように思うのですが、いかがですか。
  126. 福田赳夫

    福田国務大臣 それはあらかじめ京都府が文化庁長官許可を得て工事に差しかかるべきものなんです。その文化財保護法の規定にかかわらず許可を得ずして工事に着工した。そこが問題なんです。その点を指摘しておるわけでございます。
  127. 岡本富夫

    ○岡本委員 それからもう一つ許可を受けないで橋のかけかえをした笠置橋ですか、これも京都府がやっているわけですね。それに対して文化庁はどういう手を打っているわけですか。
  128. 安達健二

    ○安達政府委員 このことは昭和三十四年のことでございまして、その違反につきまして厳重な注意をするにとどまっておったというのが事実でございます。
  129. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、この一つの事例を見ましても史跡名勝、こういったところが文化財の保護地域である。しかしそこでいろいろなことをやりましても、あとで見つかった、あるいはまたそれを知ったから厳重な注意をして終わった。それだけでは私は文化財保護法を非常になおざりにしているのじゃないかと思うのです。そんな力しかないわけですか、この文化財保護法には。
  130. 安達健二

    ○安達政府委員 御指摘のとおり史跡名勝天然記念物を確実に保存するということは私どもの大切な任務でございますが、非常に指定地域が広範であるもの等につきましては、それぞれの史跡名勝天然記念物の指定の趣旨等に即しつつ、さらに地域の実態に応じました現状変更の具体的方針を含む管理計画、こういう程度の現状変更ならよろしいとか、これ以上はいけないとかいうようなことを含みました管理計画をあらかじめ定めておく、それに従って適切な管理をするということが必要であると思うわけでございまして、またこの際には地元の管理団体とも協議いたしまして、実態に即するようにしなければならぬ、文化庁、都道府県教育委員会との間に考え方のそごがないようにしなければならない、こういうことは必要でございまして、従来からこの方針に従いまして管理計画を定めてきたものもあるわけでございますけれども、なお未制定のところもございますので、この制定化に努力いたしたいということでございまして、ただいま問題になっておりまする笠置山につきましても、先ほど申し上げましたように、地域も百三十ヘクタールというように広範にわたっておりまするし、中に市街地等もございますので、こういう地区に応じました管理計画を立てる必要があるということで、地元の笠置町と同時に京都府にも協議をいたしまして、早急に保存管理計画を立てて、それによって現状変更等にも対処してまいりたい、こういうことで今後処理いたしたいと考えているところでございます。
  131. 岡本富夫

    ○岡本委員 これはひっくるめて嵐山の問題を行管のほうで指摘しておりますけれども、これもやっぱり史跡名勝の指定地域内になっておるわけでありますが、これは民間業者の樹木採伐を伴うホテル建築を許可した、ところが、府の教育委員会は文化庁に対するところの意見申達にあたり、許可基準がないから、的確な判断に苦慮した、こういうようなことを、これは行管のほうから言っているわけですが、これについて文化庁長官はどういうように考えているわけですか。
  132. 安達健二

    ○安達政府委員 この両件につきまして、京都府の教育委員会とも協議をいたしたわけでございまして、この仮設物の無許可設置につきましては、昭和四十七年度の申請に対しまして、期限後はこれを撤去の条件を強く伝えまして、撤去しないときは来年度の許可を行なわないというようなことを伝えて、厳重に注意をいたしておったところでございます。  また、住宅の無許可建築につきましては、改築の時点で指導を行なうようにする、こういうことでございますけれども、根本的には、先ほど申し上げましたような管理計画の策定と、それに基づく適切な行政処理ということは、これは行管のほうの勧告でも強く言われておるところでございますので、その勧告の線にも沿いつつ、この管理計画を早急に定め、処理してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  133. 岡本富夫

    ○岡本委員 それで、文化庁の人数、要するにあなたのほうの頭数になりますけれども、わずかな人数で全国のこういったものをほんとう管理できるのかどうか。これについては、行政管理庁長官のほうでどういうふうにお考えになっておるのか。まあ定数は非常に少ないけれども、全国のこういうものがあるわけですね。おそらくこれは行政管理庁のほうから指摘されるまで文化庁ではわからなかったと思うのです、いろいろ答弁なさっていますけれども。これに対して、こういった大事な日本の文化財です、また自然保護ですが、これを人数の少ない文化庁で、こういうことが今後再び起こらないようにしていくためには、どういうふうにあなたのほうで勧告をしていくのか、あるいはまた指導していくのか、これをひとつお聞きしたい。
  134. 福田赳夫

    福田国務大臣 笠置山につきましては、先ほど京都府のお話がありましたが、そのほかに民間の人が無許可でやっている、こういう問題があるわけです。  嵐山につきましては、これはそれと少し性質が違いまして、許可は文化庁から得ておる。許可は得ておりまするけれども、その許可のやり方が妥当でない、こういうことで、この許可基準をつくるなり適正な許可となるように気をつけられたい、こういう勧告をいたしておるわけであります。  行政管理庁は、広範な行政各般にわたって監察をしておるのですが、とにかく二百カ所の自然公園などにつきまして、短時日で調査ができたのですから、文化庁が一いま私はその定員等につきまして詳しくは承知しておりませんけれども、ほんのわずかな人員で行政管理庁がとにかくそれだけの調査をしておる。文化庁ができないはずはないんじゃないか、こういうふうに私は思いますが、なおそういう面において足らざるところがあるということを、まあ発見するならば、定員の是正というようなことを考えてみる必要もあるかもしれません、こういうふうに思いますが、大体現在の定員でやっていける性質のものじゃあるまいか、そういうふうに見ております。
  135. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、あなたはいま感じたことをおっしゃっただけであって、実際には、おそらく調査をなさっての御発言でないように思うのです。というのは、先日当委員会で、自民党の理事をやっておった橋本龍太郎君が、やはりこの文化庁のあり方について意見を述べられたのでありますが、文化庁は環境庁と同じような仕事をしているのです。ところが環境庁のほうには、これも少ないのですけれども、各都道府県という手足があるわけです。そういった面を一ぺん検討していただきたい。私は、文化庁をいま責めても、ほんとうのところを言えば人数が少ないし、こんなに全国あちこちに史跡等も広がっているわけですから……。私どもがやかましく言いました生態学、生態的にいろいろ調査しているのも文化庁だけなんですね。天然記念物の残すところ、あるいは緑の指定植物の残っているもの、これを管理しているのは文化庁だけ、しかも非常に予算が少ないし、それから人数も少ない。ですから自然公園あるいは自然を保護していくためには、相当文化庁の仕事も大切であろうと思うのです。ところが現状を私もちょこちょこ聞いてみたり調べてみても、いまの状態ではとても無理だ。したがって、ここでもう一度再検討しまして、これは文部省の所管だから私のほうは知らぬなんてひとつおっしゃらずに、行管のほうでここまでお調べになったのですから、もう少し立ち入って、文化庁の現在の定数なりあるいは業務がもっと進むように、あなたのほうで協力するとか、あるいはまた協力するよりもいろいろ意見を出して、私は、もう少し根本的に、もう一ぺん考え直さなければならぬのではないかと思う。実力大臣のあなたやら、それから三木さんがおるときでなければ、これはできないですよ。まああなたも総理になったらまたやるかわからぬけれども、まあそういうわけで、私は特にあなたに来てもらって、この点を強調している。もうすでに自民党の中からもそういう声が出ておるわけですから。それでなかったらこの自然保護はできないのです。また、残していくということはむずかしい。見てごらんなさい、日本の姿を。   〔森(喜)委員長代理退席、委員長着席〕 諸外国特にヨーロッパあたりへ行きますと、一つの昔からの建築があれば、それと同じような色を出して、そして同じような建物にして復旧している。日本はぼっとつぶしちゃって、そして霞が関ビルみたいなああいうものばっかり建てちゃう。だから人間の心はますます殺伐になっていきますよ。私はここらでほんとうに人間性を取り戻すような、やはり日本の文化のあり方にしなければならない、こういうことを提案するわけですが、ひとつ実力大臣長官の御意見を承っておきたい。
  136. 福田赳夫

    福田国務大臣 文化庁は総定員が八百名をこえるという人員を擁しておるわけでありますから、私はそう定員上問題があるというふうには一応考えませんが、しかし勧告をしてこれが実行できないということでは、これは勧告とはいえない。でありますから、定員の問題、問題があるのかないのかその点よく調査していくことにいたします。
  137. 岡本富夫

    ○岡本委員 私が言ったことをもう一つ。定員も一つあれですけれども、それよりも大事なことは、これはほんとう環境庁がやるような仕事なんですよ。同じようなことなんですよ。ですから文部省にあるというのが、この前も橋本君もそう言っておりましたが、そこを一ぺん検討していただいて、そうしてそういった面までのもう少し抜本的な、あなたのほうで行政あり方について監察をして勧告を出していく、これのほうが私は画期的だろうと思うし、それでなかったら、いままでもあれですよ、八百名、いま急にふえたのと違うのです。ほとんどできてないのですよ。また、できないのです。ですから環境庁のようなもっと手足のあるところに一緒にしていくとか、まあ私、一緒にせいとは言いませんけれども、もう少し考えていくような……。ただ定数のことばかりあなたはおっしゃっていますけれども、これはどうですか、もう一つ進んで……。
  138. 福田赳夫

    福田国務大臣 確かに、お話のように、この問題の処理は環境庁でやるという考え方もまた成り立ち得る問題だろうと思います。でありますが、これは環境庁を設立する際に十分検討いたしまして、これは史跡保存だということで文部省に置くことが妥当である、文部省には文化庁というりっぱな役所があり、しかも定員は八百人もおる、環境庁はわずかに五百名である、こういうようなことでありますので、これはどちらに置いても要するに史跡がきれいに保存されるということであればいいのです。それができるような予算、定員というものがそろっておるかどうか、こういうことと同時に、その予算と定員、これが目的どおり着実に実行されておるかどうか、これをねらって運営さるべきものじゃないか、そういうふうに思います。しかし、勧告をした以上それが実行されないでは困りまするから、その辺はよく調査してみます。
  139. 岡本富夫

    ○岡本委員 私がいま申しましたのは、勧告しても結局できなかったら何にもならない、ただ国会の答弁だけに終わってしまったのでは困るというのをいま申し上げて、あなたは抜本的な行政機構の改革を掲げていきたいということを言っておるわけですから、その点を十分ひとつ頭に入れておいていただきたい。  次は、環境庁の政務次官が出ておりますので……。  あなたにも質問したことがありますし、長官にも御質問申し上げたことがあるのですが、航空機の騒音の環境基準の設定を三月末までにやるという言明をここでいただきましたが、まだできてない。来年の三月と違うでしょうね。四十八年の三月というふうに聞いたのですが、その点ひとつ……。
  140. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  先生から御指摘を毎回受けておりますが、三月一ぱいまでに中公審の騒音振動部会において、専門委員会でまとめをするよう事務当局からお願いしてまいりましたのですが、まだまとまらなかったのでございますけれども、やはりどうしてもこの問題は国際的な問題の横並べと申しますか、この辺が問題が多く入ってまいりまして、しかも世界で環境基準という形で航空機の環境基準をつくっておるところがどこにもないものでございますので、それらをもう一度よく検討するということで、あと一回会議が延びましたのでございます。したがって、今月中に専門委員会のまとめをぜひやっていただくということで、もうあと一回の会議で一応専門委員会結論が出るというふうに私ども推測しております。そういう事情で三月一ぱいまでにでき上がらなかったことを御了承いただきたいと思います。
  141. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると大体四月一ぱいには必ず——これは毎日毎日飛行場の下で航空機の騒音の被害を受けておる人たちは、耳を立てて、答申の出るのを一生懸命にいつ出るかいつ出るかと待っているのです。環境庁にしても非常に重大なことなんですね。これはひとつ政務次官からはっきりお答えをいただきたい。
  142. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 環境庁としましては、三月一ぱい中にも審議会から答申をいただきたい、こう思って私どももそれなりに努力をしておりますが、いま局長の申しましたように、まだその専門委員会から答申が部会に出てきておらないという現状であります。それで四月一ぱいにとおっしゃることでありまするが、これは専門委員会に私どもが早くお願いをしたいということは言えますが、四月中に出せという命令をするわけにもまいりませんし、心から一日も早からんことを期待をいたしておりますが、いまここで四月中に必ずお出しをいたしますとは申されませんけれども、しかし早急に、航空機騒音に悩んでおる人たちのために基準づくりをしたいというその誠意においては、環境庁は人後に落ちるものではない、この点を御了承を願いたいと思います。
  143. 岡本富夫

    ○岡本委員 山形大気保全局長、次の専門委員会はいつ行なわれるのですか。
  144. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 現在専門委員会の先生方と、それから部会の先生方の御都合を聞いておる最中でございますが、中旬を目途に聞く予定でございます。
  145. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると大体中旬を目途にできる、あと一回で大体結論をきめてしまう、こういう答弁でございましたね。
  146. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 専門委員会報告があと一回で出ると思っております。それが出てすぐ部会を開きます。その部会で達成の方途、期間の問題が出てまいりますので、やはり部会で何回か審議をしていただくことになると思いますので、専門委員会報告そのものが部会を開いて一回できまるということはまず困難かと思います。
  147. 岡本富夫

    ○岡本委員 私一番心配なのは、たとえば専門委員会でこれだけだという一つの案をきめてきますね、これを今度部会で、みんなが寄ってそれを骨抜きというとおかしいけれども、後退させてしまう、これは達成できないからと。これが一番私はおそろしいのですよ。要するに環境基準というのは、健康をもとにし、人間の生活をもとにしてきめられるわけですから、それを航空機に合わしてきめられたのじゃたまったものじゃないわけです。だからそこのところをひとつ——きょうここでやかましく言ってもしかたがありませんが、政務次官ひとつ、あなた副大臣なんだからね。たとえば専門委員会できまってきたものに対して、これはとても無理だからとあっちこっちから圧力があるかもわからぬけれども、これはしかし後退させないという約束をあなたひとつしておいてください。いかがですか。
  148. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 部会の専門家の皆さん、それから専門委員会はもちろんわが国の権威者でございましょうし、この方々におかれては、人の健康というか、環境というものを第一に考えるわけでございまして、飛行機あるいは運輸行政というものを優先して考える方はおらぬと私は信じております。環境庁もそう強く期待をいたしておるわけでございまして、そういう先生方の権威ある答申というものを私どもは信じていま期待をしておるというところでございまして、環境庁はその答申を尊重をしていく、こういう気持ちであります。
  149. 岡本富夫

    ○岡本委員 あまりはっきりした答弁できないでしょう。  そこで、次に硫黄酸化物の環境基準につきまして、この間の、これは三十一日でしたか、環境庁で開かれた同審議会大気部会に報告された硫黄酸化物の新環境基準、こういうものが報道されておるわけでありますが、これにつきましては、大体これは「二十四時間値(日平均)で〇・〇四ppm以下」、「一時間値で〇・一ppm以下」の二項目からなっておる。これを年平均に換算すると〇・〇一二ないし〇・〇一五PPM以下だ。要するに現行の四分の一、こういうような報道があるわけですが、これはほんとうは四年ほど前でしたか、こういうようなものが出たわけですが、結局産業界の圧力によって非常に後退したということでありますが、現在〇・〇五PPMですか、これではたくさん被害者が出ておる。まだ患者が出てくるということでおそらく答申があったと思うのですが、これに対する環境基準の設定についてどういう考えを持ち、またどうするのか、これをひとつ聞きたいと思います。
  150. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 三月三十一日に開催されました中央公害対策審議会大気部会の専門委員会の先生方から、先生御指摘のような御報告がありました。これを今後部会に上げまして、この環境基準の改定につき御審議をいただくことになっております。部会におきましてどういうことをやっていただくかと申しますと、環境基準の基本原則、基準値、これをきめるのでございますが、そのほか測定方法とそれから達成期間、達成の方途等、これは環境基準の一環としてきめられるべき事項を御審議いただくことになっております。これはできれば四月中に部会の答申をいただくようにいま準備を進めておる最中でございます。  前の厚生省のときに同様な専門委員会の提案に対して、当時は二十四時間平均値で〇・〇五でございました。一時間値は〇・〇一PPMと同じでございましたが、それが部会において少しゆるめられたという御指摘でございましたが、当時は専門委員会報告は四十三年でございまして、その当時これを達成するためには、非常に過密になって、しかも工場等が多いところ、これらに対しての低硫黄燃料の不足というような根本的な問題がございましたので、達成方途、期間等にいろいろ検討を加えた末、二十四時間値を年間に引き伸ばして安全率をとった環境基準ができたのでございます。今回改正されます環境基準につきましては、四日市の判決もあったことでありますので、私ども関係当局にお願いいたしまして、ローサルファの供給というような問題について協力をしていただいて、何とかこれがなるべく早く達成されるように環境基準をきびしくするという目的でやっていただいておりますので、それらが達成されるように努力するつもりでございます。
  151. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、環境庁で、今度の部会の案というものが中心になって達成期間も出てくるでしょうが、大体こういう環境基準が出てくるということは間違いございませんか。いかがですか。
  152. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 これもいま部会の先生方がお集まりになって、これの根本的なディスカスをしていただきますが、よって来たりましたデータは全部そろっておりますので、これらの検討をしていただいた上、達成方途、達成期間等においてのディスカスが中心になると思いますが、根本的な数字が変わるかどうかという点については、いま私からこの場ではちょっと申し上げられないと思いますが、これらの数字が出るまでにたくさんの、従来日本で測定してまいりました数多くのデータが集まっておりますので、基礎的データは十分備わったものと解釈しております。
  153. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、この報道を見ましても、このデータは、専門委員では、小児ぜんそくを防止する、慢性呼吸器病患者に悪影響を及ぼさないための安全限度として一日平均〇・〇四PPM以下という数字をはじき出した、こういう報道であります。  ここで私、北海道の、先ほど島本君からも話がありましたが、伊達火力の建設につきまして——これは通産省公益事業局長いないから、政務次官にひとつお伺いします。伊達火力に私たちがなぜ反対するか——北海道電力の伊達火力発電所の説明の資料、四十七年七月、これは公害防止協定などを結ぼうとしておるのです。その中にこういうことが書かれています。「〇・〇五PPM以下の濃度ではどのような植物でも一年以上連続して亜硫酸ガスに接触しても異常のないことが実証されております。」ところが、私先ほど申しましたように、〇・〇五PPMでは小児ぜんそくやあるいはまた慢性呼吸器病の患者がたくさん出てくるというわけでありますから、環境庁はその基準をもっときびしくきめなければいかぬと言っているのです。通産省でこれを認可したときにはなるほど〇・〇五PPMが環境基準でありましたけれども、今度は環境基準がきびしくなるわけです。この辺について今度の認可にあたって、まだ建設されてないわけですから、やはり配慮をしなければならぬのではないかということを考えるのですが、政務次官、いかがでございますか。
  154. 塩川正十郎

    ○塩川政府委員 それはできるだけ被害が減少しますように、濃度の高いものを拡散しないようにするのが当然のつとめであろうと思います。  そこで、やはり設計は、その当時許されました基準をもとにして設計しておると思うのでありまして、そういう点につきましては、基準の変更があるたびごとでその基準に合わすように行政指導をしてまいりたいと思うております。
  155. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたも急で何かわからないようでありますが、これは事務当局の方はどうですか。通産省がこの伊達火力を認可したときの状態それから現在と非常に違うわけですよ。ですからもう一度認可するにあたってはやはりいろいろ仕様書あるいはまたほんとうにこういった環境基準を守れるようになるのかどうか、こういうことでチェックをもう一度やり直さなければいかぬと私は思うのです。その点いかがですか。
  156. 和田文夫

    ○和田説明員 公害防止には非常に意を用いておりまして、当初の計画でも硫黄酸化物の最大着地濃度が〇・〇一九PPM、これは一時間値でございます。こういうことになっておりますので、情勢の変化に応じて先生のおっしゃるような案を見直しの必要はあろうかと思いますが、その当時の基準よりはるかに小さな数字で、そういうことで環境上も問題はないということで認可されたわけでございます。
  157. 岡本富夫

    ○岡本委員 前の基準では、環境庁も問題がないであろうということで、あなたのほうに回答がいってあなたのほうが認可したと思います。ところがいまこの環境基準を現行の基準の四分の一にもきびしくしよう、こういう答申が出てきて、そしてこれから実施しようとするときです。そうしますと、当時認可したのとは違うでしょう。ですからもう一ぺん、いま政務次官が言ったようにチェックのし直しをしなければならぬのではないですか、いかがですか。
  158. 和田文夫

    ○和田説明員 今後改正される環境基準にもよりますが、さっきお答えいたしましたように現在の施設でも、あるいは現在たく予定にしております燃料で最大着地濃度が一時間値〇・〇一九PPM、非常に小さい数字でございまして、生活環境審議会報告にかかるいわゆる閾濃度の一時間値の〇・一PPMの約五分の一の数字になっておりますので、四分の一程度の改正なら新基準の中に入るのではないか、こういうふうに思っております。
  159. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたのところの通産省の考え方環境庁考え方と違うのですよ。なぜかといいますと、通産省はどうしても煙突を高くしてK値、要するに拡散方式ばかりを頭に入れている。もうそんな時代と違う。もうこれからは環境総容量をきめようというような時代なんですよ。ですからもうすでにこれができていてやっている。そうでなかったら電気もなくなるというんだったら、燃料を何とかしなければならぬといろいろこそくな手段をやらなければならぬと私は思うのですけれども、これから建設するというのですからね。ですからK値が〇・〇一九PPMですか、K値というのは煙突を高くして途中で風速を見て計算するのですよね。あの計算だってごまかそうと思えば幾らだってごまかすことができるのですよ。ですからほんとうに住民の皆さんはそんなK値だのなんのかのと言っているのじゃないのですよ。この伊達町やあの付近が公害に悩まされるので困っているわけですからね。あなたはK値の問題ばかり言って、それでは話にならないですよ。しかもこの公害防止協定を結ぶにあたって伊達火力について説明している北海道電力のこの資料の中に、前の基準をそのまま入れておる。しかも「〇・〇五PPM以下の濃度ではどのような植物でも一年以上連続して亜硫酸ガスに接触しても異常のない」、そうじゃないのですよ。また中を調べますと、公害防止協定を結ぶにあたって一時間値〇・〇八PPM以上の濃度で初めて警戒体制をとる。〇・〇五PPMでいま被害が出ておるのに、〇・〇八PPM以上でないと警戒体制をとらないというのです。またそれを四分の一に。これでは病気がたくさん出るからというので環境庁ではもっと規制をきびしくしようといっている。だから北海道電力は前の考え方そのままをもって公害防止協定を結ぼうとしている。いいですか。だからその点をあなたのほうでよくチェックして、環境庁とも相談してもう一度施設等あるいは公害防止のいろいろなものについて見直しをしなければならぬのじゃないかと私は言っているのですよ。いかがですか。
  160. 和田文夫

    ○和田説明員 私がちょっとことばが足りなくて申しわけありませんでした。〇・〇五というのは年間平均値でございまして、北海道電力のいっている〇・〇八PPMで警戒体制をとるというのは一時間値でございますので、測定する次元が全然違うわけでございます。ただ先生のおっしゃるような問題もあろうかと思いますから、今後関係方面と連絡をとりながら十分協議していきたいと思っております。
  161. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなた、一日平均一時間値〇・〇四PPM以下にしようというのが環境庁考え方なんですよ。それがいままでは〇・〇五だったのですよ。これをもっときびしくしようというのです。いまあなたのおっしゃったようにもう一度チェックをし直す、こういうことであれば了承しますけれども、政務次官どうですか。もう一ぺん伊達火力のあれはチェックし直しますか。もう認可してしまっているけれども……。
  162. 塩川正十郎

    ○塩川政府委員 私は岡本先生みたいになかなか専門的な知識を持っておりませんし、先生のおっしゃることは専門家としての御意見だと思うのでございますが、つきましては、事態がそういうことの状態にあるのかどうかということにつきまして純粋な技術的な面とあわせましてよく協議いたしたいと思います。
  163. 佐野憲治

    佐野委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。林義郎君。
  164. 林義郎

    ○林(義)委員 ただいま岡本委員、また午前中には島本委員からの本問題についての御質疑がありました。私はこれは基本的な問題ですから政府にお尋ねしておきたいのです。  伊達火力の問題はすでに電源開発調整審議会でお認めになったし、通産省もすでに認可しておられる案件であります。その認可をしたときの前提としては、北海道と北海道電力との間で公害防止協定がありました。それで先ほど来お話しになりましたような環境基準化するような協定になっておるということであります。ところが、これからはいままでの〇・〇五PPMというような基準ではやはりよろしくない、健康上問題があるという点で環境庁のほうで基準を少しきびしくする、こういうふうな話であります。健康という観点からすれば、そういうふうな形できびしくしていくことが必要であるとなれば、やはりこれはやっていかなければならないだろうと思うのです。  ところでその場合に、一つ法律的な問題があると私は思うのです。すでに認可をしたものについて認可の取り消しということは、はっきりいってなかなかできないと思うのです。したがって、それにつきましては大気汚染防止法の何条でしたか、改善命令というものが出せるような仕組みになっております。新しくそういったものについては改善命令を出す、あるいは改善の勧告をするというような体制でやっていくという形で一切の処理をされるのか。これは単に伊達火力だけではありません。全国の発電所について多かれ少なかれ同じような問題があると私は思うのです。そういったものについて政府はどういうふうな形で考えておられるかということであります。この点はひとつはっきりしておかなければならないのではないか。私はこの際、確認しておきたいのですけれども、伊達火力はすでに認可をされた案件でありまして、したがって、現段階においてはこれからさらにどうだこうだ、また認可をするとかいう話ではない。それから確かに北海道のほうでいろいろと問題があったということでありますが、私もつまびらかにしませんけれども、北海道の道議会でどうだこうだという問題ではない。電源開発審議会というりっぱな審議会で、しかも電気事業法の中では、はっきりと公害防止に対してやるという一項が入っているわけでありますから、それに基づいた審議会で、しかも公害関係のことも十分に配慮された上でおやりになったのだから、私はそれでどうだこうだということはないと思うのです。ただ一般論としては、先ほども申し上げたような問題がありますから、まさに新しい基準をつくって、そしてそのときにどうしてやるか。やりますといったところで、なかなか簡単にやれませんよ、はっきり申し上げて。大きな発電設備をつくった、それで今度それをどういうふうな形で変えるかといったって、そう一ぺんに簡単にできない。できるとしたら、むしろいまやっておかなければならない。できないからこそいまいろいろ問題があるのだろうと思う。そういった点について、政府のほうでどういうふうな考え方でおやりになるのか。これからいろいろな環境基準というものも変えていくということですから、そういった点について政府のほうはどういうふうに考えているのか、この点についてお尋ねをいたします。
  165. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 正式に部会で答申が得られてから申し上げるべきかもしれませんが、新しい基準がもしきまりましたら、それは新しく立地するところでやりますものについては適用したいという考え方だと思います。いまお話しの伊達火力の問題に関しても、私ども大気に関するデータは全部ひもときました。当時はいずれ環境基準の見直しがあるからということを先方も承知をしておりまして、それで前に厚生省のときにつくりました非常にきびしい環境基準の案がございましたが、それをもとにしてやりましたので、私いまここにデータを持ってきておりませんが、私の記憶では今度の基準でもまず通る、大気に関しましては数字的にパスするものだと思います。それ以外にまだ脱硫装置その他低硫黄の問題等、からめて対応策はまだたくさんございますので、伊達火力に関する大気汚染の問題に関しましては、環境庁としてチェックした場合に関しましては、新しい基準にもパスするものだと思っております。ただ、前にも申しましたように、今度できます新しい基準というものは、新しい場所に適用していこうというのが答申として出てくるかと思います。
  166. 塩川正十郎

    ○塩川政府委員 山形局長からお答えいたしましたので大要は尽きておると思うのですが、やはり基準が変わりましたら、それに伴って、その基準に合わすように改善命令を出していくべきでございますし、従来からもそのようにいたしております。しかし林先生が期待しておるように、すぐに改善する、実効が出てくるということ、これはなかなかむずかしいだろうと思うのですけれども、そこに目標を置いて電力会社は努力すべきであるし、またそれがための対策といたしましては、やはり役所も積極的に協力する。たとえば低硫黄を、それだけのものを多量に確保するなり脱硫装置に対する設備が早急にできるように、あらゆる協力をしていくというようなことをやって、その基準に合わしていくべきだ、こう思います。したがって、基準が改正されましたら、古いものは基準が改正されてもほっておくのだという態度ではわれわれ臨んでおらないので、新しい基準に合わすように改善命令をしていくべきだと思っております。  先ほど来岡本議員からお話しでございました伊達火力につきましても、これはおおよそ環境庁から基準の改正が何らかの方法で打ち出されるであろうということで、先を見まして、あらかじめ先取りした、低い濃度の基準に合わして設計をしておるということを私たちも聞いておりますので、その辺については、最大限の努力をして御迷惑をかけないようにするであろうと期待もし、そのような指導をやっていきたいと思っております。
  167. 林義郎

    ○林(義)委員 どうもはっきりしないのですけれども、先ほどの山形局長のお話だと、新しい基準は新しい工場だけに適用するというお話ではなかったかと思うのです。政務次官のお話は、そうではなくて、当然に改善をさせていく、しかしすぐに基準を適用することはなかなか現実の問題としてむずかしいからということなんですね。環境基準の本来的な性格というのは、人の健康を守っていくというところにあると思う。それならば、その環境基準に合うような形に早急にやっていかなければならない。そういった意味で、普通の行政法の原理からすれば不遡及の原則というものがあります。一ぺん認可をしたら、認可の取り消しをやるということはなかなかたいへんなことであります。しかしながら、そういった原則をも無視してやるというようなことになるのじゃないかと私は思うのですけれども、一体法律的にそれがはたしていまの法律で可能なのかどうか。私はそう簡単な問題じゃないという気がするのです。もちろん通産省の行政指導力でいろいろとおやりになることはありますけれども、法律論として申し上げたならば、一ぺん認可したら、私のほうはこれで認可を受けたのです、何も条件がついていないので、そのときにたまたま基準が変わったから新しいものでやれといわれたところで、私は認可をもらっていますからという形で論争になったときには、これはなかなかむずかしい問題だろうと思うのです。その辺は一体どういうふうに考えるのか。むしろ私はこれは環境基準の問題と、もう一ぺん法律の見直しをしなければならないような問題がまた出てくるように思いますから、もう一ぺん明確な御回答をいただきたいと思います。
  168. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 少しことばが足りないで失礼しました。  環境基準というものが部会で正式に答申になりましたあと、私どもは今度は排出基準をきめます。これには、先ほど申しました新しい場所、あるいは非常に過密な場所、いま進行しておる場所、これらについて、すでにオーバーしているところはどれくらいまでのステップでやるか、こういう問題が今度は部会で審議されるのでございます。したがって、それにはまだ時間がかかりますので、新規でも一つてやれる方法というのをどうするかというのが部会の審議事項になっておるのでございます。環境基準の答申が出てその日から新しい規制がすぐ始まるというものではございません。排出規制と排出基準はそのあとにきめるものでございます。
  169. 林義郎

    ○林(義)委員 そうなりますと、排出基準の規制をやっているのだから、排出基準をきびしくすることは法律上できるということで、現実に実際問題としては、先ほど政務次官のお話にあったように、いろいろな改善命令その他を出していくことができる、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。  そうしますと、もう一つお尋ねしますけれども、伊達火力の問題は、すでに認可をされたものですから、そういった形でこれからずっと指導していく、これは当然のことで、環境基準が変わり、排出基準が変われば、それによって指導していく、そういうことで了解してよろしゅうございますね。
  170. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 そのとおりでございます。
  171. 岡本富夫

    ○岡本委員 先ほどから聞いていて、どうも矛盾がある。伊達火力はすでにきびしい環境基準によって設計をしている、だから間違いない、これはあなたがそう感じただけでしょう。この伊達火力発電所の説明によれば、年平均〇・〇二PPMとしております。ところが、環境庁が今度答申が出てきてこれをきめようとしておるのは、〇・〇一二PPMから〇・〇一五PPM以下にしようというのですよ、ところがこの伊達火力、これは四十七年の七月ですが、年平均で〇・〇二PPMにしようとしておる、こういうことなんですよ。なるほど前よりは少しきびしいように見えますけれども、今度環境庁がきめようとしておるのは〇・〇一二あるいは〇・〇一五PPMですか。ですから、一ぺんつくらせて、そしてそれを、じゃこういう環境基準になったのだから改善命令をかける。かけられるほうはたまったものじゃないですよ。それだけのことを全部やらなければならぬのですから。一ぺん施設して、そしてまた全部改善する。するのであれば、いますでにこうして答申が出てきておるわけですよ。それを今度環境庁で採用しようとしているときに、まだ何もできてないのだから、じゃいまの間にここまで落とすような設備の計画を出させ、それをチェックする。これが大事だと私は思うのですがね。二重投資しなくていいじゃないですか。一つ言えばですよ。
  172. 塩川正十郎

    ○塩川政府委員 私はそういう専門的なことはちょっと知識を十分持っておりませんので、ただいま専門的な先生の問いに対するお答えは和田技術長にちょっと答弁させたいと思いますので、お許しをいただきたいと思います。
  173. 和田文夫

    ○和田説明員 おそらくその資料を私拝見しておりませんが、〇・〇二というのは正確に計算すると〇・〇一九の数字かと思いますが、これはある条件を考えたときの一番亜硫酸ガスの濃度が濃くなる地点の最大着地濃度の一時間の値でございます。でございますから、風向きや何かも一年間で非常に変わりますので、年間平均にしますとこれよりはるかに下がる数値になるはずでございます。従来は、大体一時間値が〇・一PPMで年間平均が〇・〇五PPMこういうふうな関連になっております。そういうことからいっても、この数字よりははるかに下がる数字になる。  それから、先生のおっしゃる今後の改善を要する場合の改善対策でございます。これは使用する燃料のS分を下げるとか、あるいはこの伊達火力の場合、四分の一の容量の排脱装置をつけることになっております。これを増設するとか、いろいろな種類の対応策がございますので、そんなに困難ではないかと思います。
  174. 岡本富夫

    ○岡本委員 これで終わりますけれども、あなたはこの伊達火力発電所の説明資料をひとつ読みなさい。いいですか。これで公害防止協定をつくろうとしておるのですよ、これをもとにして。ですから、こうしてせっかくまた新しい環境基準がきびしくきめられるというのですから、常識で考えても基準の見直しが必要でしょう。この説明資料には年平均〇・〇二PPMとしておるというのですよ。こういう説明なんです、これが。ですから、もっと多いときもあるのですよ。いいですか。  それから、もう一度ひとつ再調査をする。政務次官も、私は全然そんなことは関係ないんだ、私は技術的なことはわからぬ、専門家でございませんからというような顔をせぬと、あなた、政治責任としてひとつもう一度伊達火力の件については、もうあしたあたり着工しようなんで言っているんですよ、四日に。そんなばかなことはありませんよ。だから、私はそういった面からもう一度再検討してもらいたい。再検討すると言えばいいのですよ。いかがですか。
  175. 塩川正十郎

    ○塩川政府委員 あすから着工するというお話でございますが、これは先ほど来何べんも申しておりますように、地元住民との話し合いが了解が得られない限り着工はやはりできないと思いますし、またそういう状態の中で強行着工するということに対しましては、こちらのほうからもきびしく指導いたしております。ただおっしゃる、環境基準に合わすようにというお話でございますが、これは先ほど来山形局長なりあるいは和田技術長がお答えいたしておりますように、やはり電源開発審議会におきましてこういうことは十分に審議されたことであろうと思うのです。しかし、何と申しましても専門家の岡本先生がそうして資料に基づいて調査しておられるのでございます。したがって、それはどこに食い違いがあるかという点——おそらく食い違いがないと思うのでありますが、そういう点につきましてはわれわれも一応資料の見直しをやってみようと思いますが、しかし先ほど局長が言っておりましたように、新しい環境基準ができてもそれに対する対応策としては伊達火力で十分にとれておるということも言っておりますし、それをまた実際に裏づけるために低硫黄の燃料を確保すること等々、そういうこともやはり詰めていかなければならぬと思いますし、しますので、あらゆる努力を傾注いたしまして御心配ないようにいたしたいと思います。
  176. 岡本富夫

    ○岡本委員 不足ですけれども、終わります。
  177. 佐野憲治

    佐野委員長 坂口力君。
  178. 坂口力

    ○坂口委員 だいぶ時間もおそくなってまいりましたので、重点的に申しまして、議事進行に協力させていただきます。  文部省の局長さんがお急ぎのようでございますので、具体例が先になって話が多少前後いたしますが、そちらのほうからやらせていただきたいと思います。  きょうお聞きしたいのは騒音、特に道路にまつわる騒音でございますけれども、その大まかなことをお聞きします前に、時間の都合で、先ほど申しましたように具体例から先に申させていただきますが、一例といたしまして申しますと、四日市市に納屋小学校というのがあるのですが、この小学校ができましたあと、その小学校にちょうど隣接いたしまして名四国道ができました。PTA等もその建設には反対をいたしましたけれども、結果的にはそれができまして、現在大体一日にざっと五万台ぐらいそこを通過しておるのです。それがまた今後その道路がさらに延長されるというようなことがございまして、さらに今後車の台数はふえるのではないかというふうに思われます。そのままですと大体八十ホン前後ございますが、現在二重窓がつくられておりまして、一応二重窓にいたしますと中で五十五から六十ホンぐらい、これぐらいな教室内の騒音になっております。ただし、これは児童をみな出してしまって、からにしたいわゆる騒音でございますね、これが大体五十から六十ぐらいな値になっている。こういうふうな現状にあるわけでございますが、文部省としてこの教室内の騒音というのは大体何ホン以下ぐらいが好ましいか、と申しますか、一応好ましいということばが当てはまっているかどうかわかりませんが、何ホン以下ぐらいが好ましいとお考えでございますか。その辺からひとつお聞きしたいと思います。
  179. 菅野誠

    ○菅野説明員 施設部長の菅野でございます。  お答えいたします。  お話の出ました三軍県四日市納屋小学校の概況につきましては、私のほうで承っております数字も大体おっしゃるとおりの数字になっております。  ホンの基準につきましては、中で委員会などをつくっておりまして、いろいろ研究も従来進めております。それで、実はホンもなかなかむずかしい点がございまして、都市あたりでは、相当ひどい騒音でもあまり騒音と感じないというところもありますし、また、いなかに行きますと、それほどでない騒音でもちょっと騒音に感ずるという部分もあるようでございまして、一がいに騒音の基準は何ホン以上、以下がいいということを端的に申すことは非常にむずかしい問題があろうかと思います。  なお、時間帯によりまして、一時間の中にそのホンが、何ホン以上のが連続的に起こるという場合と、単発的に起こるという場合等がありまして、なかなか一がいに言うことはむずかしいわけでございますが、常識的に簡単に申しますと、窓開放時において五十五ホン、それから閉鎖時において五十ホン以下が教育的には望ましいというふうに、一般的にいいますとそういうような基準になっておるわけでございます。
  180. 坂口力

    ○坂口委員 レベルのとり方はいろいろあるかと思いますが、欲をいいますと、国際的な許容騒音レベルと申しますか、まあ教室等の中では、でき得れば四十ホンぐらいで押えられれば一番いいわけですけれども、最近の日本のように、どこでも騒音が非常にひどくなってきた現在におきましては、そういう無理もいえないかと思うわけでございます。ところが、この学校なんかの場合には、二重窓にしまして、それも締めましてなおかつ最低でまあ五十——五十にはなかなかならない。五十二、三が最低で、そしてひどいときには六十をこえる。しかも、この学校の場合には、前の国道のところに二カ所信号がございまして、一たんそこで車がとまってわあっと出るものですから、その発進するときの騒音がまた非常に大きくなりまして、常時五十二、三ホンで、さらにひどいときには六十五、六ホンから七十ホンぐらいになる、こういう状況でございます。  そこで問題になりますのは、二重窓にして締めてしまって、そうしますと今度は、これから夏場にかかると、去年もそうだったようでありますが、非常に高温多湿になりまして、室になってしまって、どうにもこうにも中で勉強ができないというようなことが起こるわけでございます。文部省としては、もしもそういうふうに騒音が非常にひどいというような場合にはどういうふうな指導をなすっているのか、その辺ひとつお考えを……。
  181. 菅野誠

    ○菅野説明員 お答え申し上げます。  おっしゃるように、教育的にはやはり騒音ということは教育上好ましくないことでございまして、できるだけこれに対しまして防止措置を講じたいということでございますが、一般的にまず申し上げますと、この騒音に対しましてはそれぞれの原因者がございまして、たとえば飛行機の場合には、その航空機のもとでありますところの、たとえば運輸省でありますとかあるいは防衛施設庁、防衛庁というようなこともあるわけでありますが、また、たとえば高速道路という場合には道路関係の公団というような原因者が明らかである場合には、その建設者にその防音の関係の費用を負担していただくのをたてまえにいたしております。ただ、原因者が不特定多数ということであったり、道路などでいつの間にか非常に道路がひんぱんに使われるようになって騒音が激しくなるというようなことで原因者が不特定であるという場合につきましては、この防音装置等、たとえば二重窓にいたしますとか、それからただいまおっしゃいましたような空気清浄装置を必要とするというような場合の公害防止装置につきましては、教育上非常に緊急であり、いま申し上げましたように、原因者が特定できないという場合に対しましては、文部省関係の予算におきまして、公害防止工事に対する補助をいたしております。  なお、この公害防止工事だけで処理できない場合には、学校の移転、改築等に対しても補助ができる道を講じておるわけでございます。
  182. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、原因者がはっきりしている場合にはそこに言う。国道のような場合、この場合には、原因者が国だといえば国になりますし、はっきりしないといえばはっきりしないことになります。私は一応国だろうと思いますが、そういった場合にはそこへ防音装置等を要求する。そうしてそれでもなおかつできないときには移転等を考える。いまおっしゃいましたのは公害防止校に指定するということですか。
  183. 菅野誠

    ○菅野説明員 お答え申し上げます。  いま問題にしておられる場合は、国立の学校ではなくて、公立の学校でございますね。
  184. 坂口力

    ○坂口委員 そうです。
  185. 菅野誠

    ○菅野説明員 公立の学校の場合には、一次的にはやはりその公立である設置者である、この場合には市になりましょうと思いますが、市町村が設置者でございますので、設置者が一次的にはその計画を行なうということでございまして、その場合に公害対策事業としての補助申請書を文部省のほうに提出するということになるわけでございます。その補助申請書を審査いたしまして補助金を交付する、かようなことになるわけでございます。
  186. 坂口力

    ○坂口委員 わかりました。  いずれにいたしましても、教室内のいわゆる学校教育にとりましては一番大事な場でございます。そこがこういうふうに環境的に非常に悪いということは、子供の教育上これから非常に問題になってくることだと思うのです。この場合にも先に学校ができまして、そうしてそのあとそこに道路ができる、そのときに、おそらくこういうことになるのではないかというので、PTAあたりがかなり反対をした。だけれども、もうそこに道路ができてしまった。そうしたら、心配したとおりに実はなってきたわけです。この学校の環境等を今後考えていく場合に、すでに学校があって、そうしてそこにあとから道路等ができてくるというような場合には、文部省としては、子供の教育を守る立場からもう少し強力な発言ができないのでしょうか、どうでしょう。
  187. 菅野誠

    ○菅野説明員 先ほど設置者の問題をお話し申し上げたのですが、道路その他をつくる場合には、やはり地元との話し合いをするというのがたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、道路建設あるいは高速道路設置というような場合にはやはり地元の了解がなければできないということでございまして、地元で第一次的には話をするわけでございますが、その話がつかないあるいは非常に困るというようなことが文部省のほうまで上がってくれば、また文部省もこれに力をかして、助力して、助言をして差し上げる、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  188. 坂口力

    ○坂口委員 もう一問お聞きをしたいと思いますが、今度は先生のほうの立場になりまして、先生が教室でいろいろお話をなさる、その場合に、先ほどおあげになりました窓を締めて五十ホン以下であれば、大体その辺であれば、これは先生の声はうしろまで通る、こういう御意見でございますか。いわゆる先生の労働条件から考えてそれはどうでございましょうか。
  189. 菅野誠

    ○菅野説明員 先ほども申し上げましたように、ホンのとり方というのは、なかなかむずかしい場合、頻度その他があるわけでございまして、先ほど申し上げました数値は、いわゆる騒音測定の中央値としての値のとり方の場合を申し上げておるわけでございますが、中央値としてのただいま申し上げました五十五、五十というような数字は、教育的にもまあまあがまんできるというような答申になっておる数字でございます。
  190. 坂口力

    ○坂口委員 大体、教室も大きい、小さいありますけれども、先生のところから一番うしろまでせいぜい九メートルか十メートルだと思います。九メートルぐらい離れておりますと、一応五十五ホンというのが専門委員会の大体のレベルになっている。そういたしますと、この学校の場合なんかは、ぴしゃっと窓を締めてしまって、先生の話が一番うしろの子に聞こえるか聞こえぬかというぐらいの程度になるわけです。やかましいときには一番うしろのほうは聞こえない、非常にいいときには聞こえるという形になるわけです。こういうふうな騒音下の学校につきまして、いま文部省のほうからは一応窓をあけて五十五ホン、締めて五十ホンという値が出たわけですが、環境庁のほうでは、教室内での騒音というものについてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  191. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 環境庁のほうでは、騒音規制法がございまして、それに騒音にかかる環境基準をつくってございます。これは朝夕と昼間と夜間という三つに分け、また非常に静穏を要するたとえば病院、療養所のある地域とか、あるいは住居をおもにしている地域、あるいは商工業に供される地域、この三段階に分けましてつくっております。たとえば普通の住居の用に供されるところでは、昼間は五十ホン以下、朝夕は四十五ホン以下、夜間は四十ホン以下、こういうのが一つの例でございます。
  192. 坂口力

    ○坂口委員 重ねて環境庁のほうにお聞きをしますが、公害防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律というのがございますね。これの第二条に、公立の義務教育諸学校のことが書いてございます。この「移転又は施設整備の事業で、公害による被害を防止し、又は軽減するために実施されるもの」というのがございます。これは四十六年にできた法律です。これに当てはまるのは、騒音の場合だったら大体どのくらいなレベルですか。——では、いま調べていただいている間に、長官このあとお忙しいようでございますので、先に長官にお聞きをしておきたいと思うのでございますが、騒音がいろいろな場所で問題になってまいります。今後も道路等がどんどんできてくると思うのです。非常に過密地域におきましては、そこにいままでありました学校ですとか病院のはたに道路ができる。いままでは道路ができれば非常に便利になると喜んでばかりいたわけですけれども、もうそうは言っていられなくなってしまいます。特に学校等の場合に、授業にも非常に差しつかえてくる、締めれば蒸しぶろになる、あければやかましくてどうにもならない、こういうふうな環境のところにある学校に対して、公害防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律、こういうような法律もできておるわけですね。それで、地元のほうから、この学校について移転をしたい、あるいは同じ学校の内部で道路からもう少し離れたところに教室を移したいといったような申し出が今後たくさん出てくると思うわけでございます。これは環境庁のほう、それから文部省のほうあるいは自治省のほうというふうにわたると思うのですが、こういう申し出があれば、この法律からいきますと、国は二分の一ないし三分の二負担をするという形になっておりますが、できる限りそういうふうな申し出は受けていただかねばならないと思いますが、ひとつ御見解を承りたい。
  193. 菅野誠

    ○菅野説明員 先に前に御質問になったことについてお答え申し上げますが、学校の場合につきましては、やはり教育的な見地がございますので、ホンにつきましては文部省関係基準を重視してやっていただくというのがたてまえになっております。ただ、先ほどの法律の適用につきましては、指定された地域について負担率をよくするという部分がございます。したがいまして、その基準による指定地域については、その負担割合をよくするということについて運用の上で操作しておる、こういうことになるわけでございます。
  194. 三木武夫

    三木国務大臣 坂口委員の御指摘になったように、道路なんかの今後の建設の場合には、一つ環境というか立地条件というか、よほど考えないと、騒音問題というのは日本では非常に問題になってくるので、環境庁も、今度幹線自動車道建設審議会には環境庁から入りまして、少し発言の場はあるわけでして、今後道路建設というものはそういう面からいろいろチェックする必要があると私は思うのですが、いま坂口委員の御指摘になったような、既設の、現に騒音の被害を受けておる学校などは、これは実は学校教育で教育の効果を減殺する結果になりますから、それはいろいろ問題が起こった場合には、いま言われた地元の負担を軽減するということは補助率を高めるということでしょうから……
  195. 坂口力

    ○坂口委員 負担を軽減するのではなくて、三分の二ないし二分の一負担するということでしょう。
  196. 三木武夫

    三木国務大臣 要するに負担率を上げるということですから、これは各省にまたがることがあっても、学校教育の重要性にかんがみまして、そういう具体的な問題があれば各省間と連絡をいたします。
  197. 坂口力

    ○坂口委員 長官、どうもありがとうございました。  建設省の方、お越しいただいておりますか。たいへんお待たせいたいました。  先ほどから出ておりますような問題が一例としまして具体的にはあるわけでございますけれども、一般論といたしまして、いま環境庁長官のお話にもございましたが、住宅でございますとかあるいは病院、学校とかいうような公共の施設があります場合に、現在までのところそういったものをどのように配慮をされて道路建設というものをしておいでになるか。今後の問題は別にいたしまして、ひとつお伺いいたします。
  198. 浅井新一郎

    ○浅井説明員 御指摘の点ででございますけれども、現在、道路をつくる際にいろいろ環境問題に対する十分な配慮をしておりまして、従来の経験に徴していままでの道路づくりにかなり反省を加えて、これからの道路づくりでは、いま御指摘のような納屋小学校のようなああいうひどい事例は避けられるようにという考え方道路をつくっておりますが、環境問題に対処するためには自動車自体の改善の問題、それから道路構造上の配慮、それから土地利用の適正化あるいは都市再開発の問題もありましょうが、そういうような対策を総合的に取り上げて対処しなければならないと思うわけでございます。道路づくりの側からは、いままでは確かにこういう事例があるわけでございますから、今後こういう形でつくっていくという姿勢はわれわれとしてはとりたくない。十分反省して、まあルート選定の際に避ければ十分避けられる問題でもございますので、そういうことで今後の道路づくりは考えていきたいというふうに考えております。
  199. 坂口力

    ○坂口委員 いまあげました四日市の道路の場合なんかも、できますときにはおらそく関係者もこれほどひどくはならないであろうと思われたと思うのです。反対をしましたPTAのほうも、反対はしたもののこれほどまでにひどくなろうとは思われなかったと思うのです。予想外に車の台数がふえ、しかも今後ますますふえていく傾向にございます。  そこで、もうすでにでき上がってしまって、先ほど申しました一例のように非常な騒音公害が出ているという場合に、文部省の部長さんは原因者がはっきりしている場合にはとおっしゃったわけですけれども、国道ですからこれは一応国である——国が原因したという言い方がいいかどうかわかりませんが、一応国と考えていただいて、学校あるいは病院があって現在そういうふうに騒音が非常にひどいような場合には、建設省としてはどういう対処をされるのか。その辺のところをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  200. 浅井新一郎

    ○浅井説明員 現在、道路をつくる場合には、ルート選定の段階で学校とは十分距離をおいて避けていきたい。それから、まあやむを得ず近づくような場合には、その間に防音築堤とかあるいはは防音壁とか、道路側からできます最大限の措置を講じましてやっていきたいと思います。ただ、これは非常にまれなケースでございますが、場所によってどうしても前後の関係から学校に近接してつくらざるを得ないというような場合もないとはいえませんので、そういう場合には、新設、改築にからんで二重窓等の最小限の補償は道路側でも考えたいというふうに考えております。
  201. 坂口力

    ○坂口委員 たいへん具体的な問題になりますけれども、私きょう写真を持ってこようと思ったら、ちょっと間に合わなくて皆さんにお示しすることができなかったわけですが、建っております校舎にすぐ接して道路になっておるわけです。それだけにその騒音が非常にひどいわけでございますが、この場合に、道路と学校との距離の関係で、防音壁というものはできるのかどうか。そういったあれが私ちょっとわからないのですが、できればそうしたものをしていただければたいへん違うんじゃないかという気がいたします。  それから二重窓にはすでになっているわけですが、なっておりますけれども、なおかつかなりな騒音があるわけでございます。だから、まあ防音壁ができれば多少は違うかと思います。私もいままで騒音のことはやってまいりましたけれども、騒音というのは少々壁みたいなものをつくりましてもわりに減らないものですが、しかしやってもらえば多少は減るであろうと思うわけです。  それから締めてしまいますと教室の中が室のようになるわけです。先日、この学校に行きまして見せてもらいましたら、いわゆる電車の中で空気を動かす、何というんですか、螢光灯のような細長いので空気だけを動かすと申しますか流動させるのがありますね。まあ一種の扇風機でしょうか、ああいうふうなものがつけてあります。多少空気が動きますので、感じとしては生徒も楽だということを言うと言っておみえになりました。しかしこれから夏めいてまいりますしいたしますので、そういうふうなところにはたとえば冷房をつけるということが、とりあえずの問題としまして大事かとも思うわけであります。  まあ、抜本的にはその学校を移転をして、もう少し道路から離すということにすればかなり違うのではないか。職員室におじゃましましたら、職員室はあれで五十メートルぐらい道から離れておりますでしょうか、そこまで行きますと非常に楽になるわけです。同じ敷地内でのわずかな違いで非常に楽になると思われますので、そういったものは今後建設をやり直す、あるいは移すというようなことを根本的には考えなきゃならぬと思いますが、さしあたってはそういう冷房等の装置というふうなものも必要になってくると思うのです。いまおっしゃったのは、その辺までは含めて建設省のほうでお考えいただけるかどうか、その点、もう一度ちょっとお伺いしたいと思います。
  202. 浅井新一郎

    ○浅井説明員 初めにお尋ねの防音壁の構造の問題についてでございますが、これは場所によって非常に効果があがる場合とない場合とございまして、一例で申しますと、少し高いところに学校その他住宅等の施設がある場合には、掘り割りの肩のところに防音壁を設けることによってかなり効果的な設置ができるわけでございます。そういうような構造上の配慮を十分考えていくわけであります。  それから補償の範囲の問題でございます。納屋小学校の例なんかは、道路との間が二、三メートルというようなことで非常に極端な例でございますが、これは過去、昭和三十八年ごろ名四国道が開通しまして、その前後から徐々に交通量がふえて、現在そういう状況になったわけでございますが、これについては市当局等にお願いして、二重窓あるいは現在では送風機等の設備にもかかっていただけるように聞いておりますが、そういうことで、今後つくる場合には被害の実態に応じてその範囲を考えたいと思っております。ですから、送風機までとかあるいは二重窓までとかいうふうなことではなく、その実態に応じて必要なものを考えていきたいと思います。  まあ、公共物に対しては一応現在いろいろな事例があるわけでございますが、公共施設以外に対するそういった補償というものはまだ考えておりません。それで建設省はもう少しそういう公共補償の基準というものを、これから十分考えていきたいということで、内部に学識経験者を入れました研究会をつくっていま検討中でございますが、できればそういう場で補償の範囲等も検討していただいたらどうかというふうに考えております。
  203. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、いまもお話にございましたように、この道路騒音というものは、これはまた一つ基準が大事になってくると思うのですが、環境庁のほうではどうでございますか。道路騒音の基準というものについては、いままで御検討なすっておるでしょうか。
  204. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 騒音規制法の中で、先ほど言いました環境基準ができておりますが、その際道路に面する地域というふうにやはり基準ができております。ただ、実際問題としてこれは現実問題として非常に交通量の多いところは達成がなかなか困難でございまして、環境基準の達成期間のところでもできるだけ早くやれとは書いてありますが、五年をこえてまだできないときはそれからなるべく早くやれというただし書きまでついておるくらいで、現実問題としては非常に道路騒音のむずかしさがございます。私どもも、いま先生おっしゃったような事例についての陳情を多く受けるわけでございますが、それを事情聴取いたしました際は建設省、道路公団等と相談いたしまして、何とかそれを軽減できる方法、先ほどお話がいろいろありました対策でとれるものを何とかとってほしいということを間に入って報告を求めたり、あるいは地域住民の話し合い、納得が得られるような面でやっておりますが、根本的な対策としては、やはり私どもいま実態調査を続けておりますが、自動車、発生源の音をもう少し何とか下げることはできないかという問題にいま取り組んでおります。それから防音対策の遮音壁、防音壁等の問題は建設省と管理者のほうの仕事としてやっていただいておりますが、交通規制の問題もまたありますので、それらも警察庁とも連絡をとって、そういう問題の多いところは何とか少しでしも下げ得るような施策を共同してやろうということで、作業を進めておる最中でございます。
  205. 坂口力

    ○坂口委員 先ほど私もちょっと説明不足だったのですが、基準の中で特に病院とか学校とかというような特別なものがありますときの基準という意味で、私申し上げたわけであります。  そこで、今後騒音の発生が予想されるような場合には、道路建設というのを一応許可しないというはっきりとした態度を環境庁としてとられるかどうか。これは長官お見えのときに聞けばよかったんですけれども、もうお帰りになりましたから山形局長にお聞きしたいのですが、ここに道路をつくったら将来そういうふうな問題が起こる、また住民の健康にも害があると考えられるときには、この許可を一応差し控えてほしい、許可しないというような方針に環境庁としての意見を申されることがあるかどうか。この点どうでしょうか。
  206. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 現在は一応昭和四十七年、昨年の六月六日に閣議了解がありまして、「各種公共事業に係る環境保全対策について」という了解事項の中に、道路の問題の計画立案、工事の実施等に関して、公共事業の実施に、公害の発生、自然環境破壊等、環境保全上重大な支障をもたらすことのないようにやるという問題が閣議了解されております。ただ問題は、先生おっしゃったような、環境庁としては一応権限はございませんが、都市計画法のもとでは建設大臣環境庁長官に市街化区域における道路の問題については意見を聞かねばならぬということになっておりますので、先ほど長官も言われましたように、その点は十分配慮されますし、また今度の国土開発幹線自動車道路建設審議会委員環境庁長官が新たに加わるということが、国土総合開発庁設置法の附則で措置されることになっておりますので、これらを通じて私ども先生の言われたように、あくまで自動車騒音の軽減、これを目ざして、その点でできる限りそういう騒音公害が発生しないようにつとめてまいりたいと思っております。
  207. 坂口力

    ○坂口委員 最後にもう一つ建設省のほうにお聞きしたいわけでございますが、すでに発生してしまったこういうふうな公的な施設等に対しては、建設省の立場としては、でき得れば、そういうたとえば学校だとか病院だとかいうような場合には移転をしてもらうという方向に臨まれるのか、その辺のいままでの実例でそういうのがございますか。さっきちょっとおっしゃりかけておっしゃいませんでしたけれども、いままでのこういった実例についてございませんか。毎日の子供たちの教育の問題でございますので、なおざりにしておけない問題である。これは私申しましたのは、一地方の学校の一例でございますけれども、現在各地でこういうふうな問題はかなりあるのではないかと思うわけであります。それに対して、先ほど基準というものが十分にできていない。今後基準をつくっていきたいというお話でございますが、建設省のほうとしてもこれは環境庁あるいは文部省と早急にお話し合いをいただいて、そしてたとえば騒音であればこれ以上になればこういう手を打つという、これはどうしても基準を早急につくってもらわなければならぬ。それを先ほどそちらもおっしゃっていただきましたので、早急にひとつ着手をしてもらいたい。前向きにいつか検討するというのではぐあいが悪い。早急にこれは着手をしてもらいたいということと、それから方向としてはそういうふうな学校については建設等をもう少し離れたところにしてもらうという方向要望されるのか、その辺のところの御意見をひとつお聞かせいただきたい。
  208. 浅井新一郎

    ○浅井説明員 騒音問題で既設の道路がうるさくなって学校が移転したという、またその移転について建設省が補償したという例はいままで聞いておりません。まあいずれにいたしましてもこの問題は道路サイドとしてはできるだけのことをやるわけでございますが、それは一応構造的に考えられますものは多少の幅の緩衝緑地とかあるいは遮音築堤あるいは防音壁、はなはだしい場合にはトンネルでかぶせるようなものまで最近は案として出ておりますが、そういうことで最大限の努力をして、構造的に考えるわけでございますけれども、これには一応やはり限界がございまして、路側から離すということになりますと、百メートルくらい離れてやっと十ホーン前後の効果しかないというようなことで幹線道路をつくる場合に全部両側百メートルずつ、合わせて二百数十メートルの道路をつくるわけにもいきませんので、これは道路サイドとしてやれる一応の限界があると思います。そしてそのあとはやはり車自身の改善とそれから場合によっては道路の沿道の土地利用のやり方を少しあわせて考える。学校に対してはいままでのような全国各地にこういう事例がございますので、これからの道路づくりは、毎度申しますように、これを避けて離れていくような線形をやることをまず先決に考えているわけでございますけれども、それにしても近接する場合が出てまいります。そういう場合には構造的にそれに対処したいというふうに考えております。
  209. 坂口力

    ○坂口委員 もう一問だけで終わりにしたいと思いますが、いままでの問題をちょっと離れまして、新幹線の場合の騒音では、国鉄が二重窓等について設備をするというようなことも今回出ております。建設省としては、一般の家庭、一般住宅への騒音公害ということに対しては、やはり同じような考え方で進まれるわけでございますか。したがって、ことばをかえれば、人口が密集しているような地域には今後国道はつくらない、さっきのお話からしますと、こういうふうに理解させていただいてよろしゅうございますか。
  210. 浅井新一郎

    ○浅井説明員 人口が密集しているような場所はなるべく避けて道路をつくるという考え方でやりたいと思っておるわけでございます。しかし、こういった非常に土地利用の高度化した国でございますので、どうしても人口の密集したところあるいは集落というようなものに部分的にひっかかるわけでございまして、そういうところに対しては、道路サイドからは先ほど言いましたような対策を講じるというふうに考えておるわけでございます。
  211. 坂口力

    ○坂口委員 だいぶ時間もおそくなってまいりましたので、きょうはこの辺にさせていただきます。いま申しましたような学校が多々ございますので、ひとつ最大限の善処をしていただきたいということをお願いいたしまして、終わりにしたいと思います。  ありがとうございました。
  212. 佐野憲治

    佐野委員長 次回は、来たる四月六日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時四十二分散会