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1973-03-06 第71回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月六日(火曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 佐野 憲治君   理事 稻村左近四郎君 理事 菅波  茂君    理事 登坂重次郎君 理事 林  義郎君    理事 小林 信一君 理事 島本 虎三君    理事 中島 武敏君       小澤 太郎君    田中  覚君       村田敬次郎君    阿部未喜男君       木下 元二君    岡本 富夫君       坂口  力君    小宮 武喜君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君  出席政府委員         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君         環境庁長官官房         長       城戸 謙次君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         通商産業省公害         保安局長    青木 慎三君         通商産業省公益         事業局長    井上  保君  委員外出席者         公害等調整委員         会事務局次長  小熊 鐵雄君         文部省管理局教         育施設部長   菅野  誠君         厚生省医務局国         立病院課長   佐分利輝彦君         建設省道路局日         本道路公団・本         州四国連絡橋公         団監理官    西原 俊策君         参  考  人         (日本道路公団         理事)     三野  定君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公害対策並びに環境保全に関する件(大気汚染  及び騒音対策等)      ————◇—————
  2. 佐野憲治

    佐野委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件について、本日、参考人として日本道路公団理事三野定君に出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐野憲治

    佐野委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決定いたしました。      ————◇—————
  4. 佐野憲治

    佐野委員長 公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
  5. 島本虎三

    島本委員 これは環境庁のほうへ伺いますが、環境庁ができるときの決議並びに方針等によって、環境外交推進のためにアタッシェとして今度加藤三郎君を発令し、海外派遣、こうなっているという報道が最近なされました。その後、あえてこれを打ち消していないようであります。否定していないのは当然そのとおりになるものじゃないか、こう思いますが、環境外交推進というものはどの程度の任務を持って、どういうようなことを海外で行なうものであるのか、どういういきさつで選考されたものか、その任務とその範囲、こういうような点について少し伺っておきたいと思いますが、これは所管は外務省ですか、環境庁ですか。
  6. 城戸謙次

    城戸政府委員 アタッシェ予算そのもの外務省予算でございます。ただ、その環境面での国際協力を積極的に展開する上には、私ども非常に責任もあるわけでございまして、積極的にこういうアタッシェが実現しますように、予算要求段階からやってまいりましたことでございます。  今回認められましたものは、OECD日本政府代表部に今年秋から駐在する、こういうことで予定がなされております。人につきましても、すでに報道されておりますが、私ども、この加藤君を現在予定しておりまして、すでに外務省研修所研修も終了いたしておる、こういう状況でございます。
  7. 島本虎三

    島本委員 任務……。
  8. 城戸謙次

    城戸政府委員 この任務でございますが、これは当然OECD代表部におきまして書記官として働くわけでございますから、OECD代表部仕事そのものが積極的に展開されますように考えているわけでございます。特にOECDは、御承知のように、一九七〇年から環境委員会を置きまして、その下にセクター・グループあるいはアドホック・グループあるいは経済専門家委員会等、いろいろなものを設けまして、あらゆる面におきます環境問題を先進国グループ検討している非常に重要な役割りを果たしております。私ども、そういう意味で、OECDアタッシェを置きますことによって、こういう専門分野におきまして、あらゆる面の国際協力推進される。特に日本考え方が諸外国に徹底しますと同時に、また、諸外国環境政策、その動向、こういうものを私どもとしても十分見えますように、代表部を通じて環境庁との接触もとっていきたい、こう思っているわけでございます。
  9. 島本虎三

    島本委員 昭和三十五年の八月のころでございましたけれども、私どももかつて国会派遣アフリカ西欧諸国をちょっと視察調査に派遣されたことがあるのです。そのころ、アフリカエチオピアへ参りましたが、エチオピアはああいうような高原地帯であります。日本企業進出もあるわけであります。そしてちょうどわれわれが行った際には、エチオピア日本鋼管波形トタン製造企業進出しておったわけであります。その際、エチオピアは、ごらんのとおりの国柄であります。そのまだ石器時代というか、また明治維新前というか、こういうような時代をごっちゃにしたような生活さえまだ残っているのであります。そしてその中に、近代顔を出したような企業もまたあるわけであります。そこへ日本企業進出していっております。そして純利潤は四〇%を下回らないのであります。それを国のほうでは、一〇%ぐらいにとどめてくれ、こういうように言うので、それに対して、不満であるということを盛んに工場長並び関係者がわれわれに申し述べておりました。その状態をよく見ましたところが、海外日本企業進出しておって、そしてその環境保全等公害対策というものはほとんど考えないような状態で運営しておった。と申しますのは、その辺でおそらくもう利潤はあがるだけはあげていたでしょう。工場の拡張もしているでしょう。しかしながら、住民のほうから、水の味が変わって、色も変わってきたという、地下水を飲んでいる住民から、そういうような訴えが絶えないのであります。隣のほうには、ちゃんとオランダの砂糖会社があるのであります。そこでは周辺を整えて、そしてきちっとやっておって、利潤は一〇%で打ち切りということで押えている。日本利潤をあげながら公害たれ流しを依然としてエチオピアのこの中でも行なっておったというのが、昭和三十五年の実態であります。おそらくは、環境外交等推進をしていくというならば、こういうような点等についての指導も当然考えてしかるべきじゃないか。海外進出している企業のこの実態等についても、環境庁としても十分その辺を意識して指導するような任務もあっていいんじゃないか。ただ派遣されておっただけでこれは事足れりとするものではないだろう、こういうふうに思うわけであります。この海外企業実態公害対策環境保全、こういうようなことに対しての指導、こういうようなものは全然ないのか。もしないとするならば、そういうような点について、国の名誉にもかかわることですが、どなたが指導し、どこの省がこれを管轄しているものであるか、この点についてひとつ御明答を賜わりたいと思います。
  10. 城戸謙次

    城戸政府委員 これはいま御指摘のような問題は、今後開発途上国におきましていろいろ出てくると思います。先般のストックホルム会議におきましても、そういう開発途上国のいろいろ今後開発をしていく上におきまして特に環境に配意するということが、その中にもいろいろ盛り込まれております。援助をいろいろしております先進諸国におきましても、当然そういう面も考え援助をしていくということが要請されているわけでございます。ただ、そういうものと関係なしに自由に企業進出する場合、これをどういうぐあいに指導していくかということにつきましては、環境庁は直接的にはできませんが、これから通産省のほうともよく連絡をとりながらやっていきたいと思います。いまできますアタッシェにつきましては、一応はOECD代表部外務省書記官と、こういうことになるわけでありますから、直接その仕事を持つわけではございませんが、こういうOECDの場を通しまして、いろいろそういう意味での情報も入ってくると思います。いい情報だけでなしに、そういう悪い情報もあれば、私ども把握しました上で、関係省庁と相談して、そういう非難を受けないようにやってまいるべきだと思います。
  11. 島本虎三

    島本委員 やはりもう現実の面では、まだいままでと同じような考え企業海外進出が依然として行なわれている。はっきり言うと、公害たれ流しをしながら利潤をあげるような、こういうような指導が依然として行なわれている。エコノミックアニマル、こういうような印象をまざまざと植えつけておる。後進国だからいいだろう、こういうような安易な考え方の上に立ってこれを実施しているということであれば、せっかくの環境外交推進ということも、まさにこれは仏をつくって魂を入れないようなこういうことになってしまいがちでありますので、そういうような点等も十分考えて、そうして海外進出している企業日本の体面をけがさないように、この点だけの指導あたりでも、外務省を通じてもいいし、同じ日本政府だから、どちらでもいいだろうと思うので環境庁を通じてもいいし、これは十分その辺の任務づけもしてやって、海外企業がエコミックアニマルと、こう言われることのないように、敢然とこれは指導しておくべきだ、私はそういうふうに思っているわけです。この点等においては、答弁は要りませんが、特に私から要請しておきたい、こういうふうに思いますので、この点はくれぐれも要請しておきます。——答弁は要らないと言ったけれども答弁を求めましょうか。
  12. 城戸謙次

    城戸政府委員 御指摘の点、よくわかりました。
  13. 島本虎三

    島本委員 いつでも問題になっている問題で、また最近の問題等につきましての国民が関心を持っている問題の一つ、公害損害賠償保障制度、この問題があるわけでありますが、四日市、また水俣病をはじめとして次から次と新しい患者が出ております。同時に、それらの裁判もいま、水俣裁判判決が出ようとしているのであります。そういうようなさなかに、公害損害賠償保障制度、この法案化の問題はほんとうに急がれてしかるべきだと思うのです。準備の点は万遺憾ないだろうと思っております。そしてこの提案の見込みもほぼ立っておるだろうと思います。この点についてはどうなっていますか。
  14. 船後正道

    ○船後政府委員 公害に係る健康被害者損害賠償を保障する制度につきましては、昨年の末に中公審中間報告が出されております。この中間報告の線に沿いまして、現在細部の検討をいたしておるという段階でございます。あの中間報告におきましても、たとえば財源の求め方、あるいは賦課徴収給付の機構の問題等につきまして、なお検討を要する問題点が残されております。こういった点につきまして、現在詰めを急いでおります。かねがね長官も申しておりますとおり、本国会にぜひとも提出するという方向で作業をしておるところでございます。
  15. 島本虎三

    島本委員 われわれも論議をし、皆さんの意のあるところを聞いて、その成文化がこの公害損害賠償保障制度法案としてあらわれてくるのじゃないかと思います。  それで、民事責任を踏まえた損害賠償保障制度である、こういうようなことで構成されるものだと思います。それと同時に、財政方式賦課方式考えられておるものだと思います。その性格は、保険制度考えているのですか、共済制度というふうに考えているのですか。これはいかような考えの上に立って立案を進められておりましょうか。
  16. 船後正道

    ○船後政府委員 制度の基本的な性格は、民事責任を踏まえた損害賠償を保障する、このように構成いたしたいと考えております。したがいまして、その費用は、大気汚染あるいは水質汚濁等健康被害原因となる者にその寄与度に応じて負担を求めるということになるわけでございます。ただ、その負担の求め方といたしましては、たとえば労災保険というような保険制度として、保険事故というものを前提として、保険事故発生率に応じた負担を求めるというような構成のしかたは、この制度では非常にとりにくい、かように考えておりますので、原因者のこういった環境汚染に対する寄与度に応じて費用負担を求める。したがいまして、毎年毎年の財源はそのような寄与度に応じて原因者負担していただくという原則をとりたいと考えております。
  17. 島本虎三

    島本委員 寄与度に応じての財政負担考え方式である。わかりました。こういうような場合には、従来の医療救済法救済範囲を一応広げるのが前提だ。したがって医療手当介護手当のほかに生業補償にまで及ぶものであろう、こういうような考えが、大臣からも、もうすでにこの点の意見開陳もなされております。当然自動車の排気ガスであるとか、川崎、四日市等に見られるようなあの相手方の不分明な不特定多数による被害救済のためにはまことにこれは効果ある措置で、これがなければ画竜点睛を欠くものである、こういうようなこともよく理解されるのであります。  ただ問題にしてこの際われわれとしてはっきりしておきたいのは、この生業補償という意味を、単なることばの上で、第一次産業農業漁業、その漁業農業考えようによってはどの辺までの考え方に立つのかということも大きいのであります。いまこれを考えておられるのか、考えないで、これはもう従来の医療救済法救済範囲だけで考えられているのか、それとも生業補償という点まで入れて考えているのか・それとももう一歩出て、昭和四十六年七月二十三日、六十六国会で、大石長官答弁による、財産被害も取り入れて、財産権の問題も対象にしたいという、こういうような答弁もあったわけであります。これは財産権の一部も取り入れるのか、または全然別なのか、生業というものをその中に入れて考えているのか、考えていないのか、この点についてひとつ明らかにしておいてもらいたいと思います。
  18. 船後正道

    ○船後政府委員 現在検討をいたしております制度対象となる被害は、健康被害としての疾病でございます。現在の特別措置法救済によりますと、この健康被害の中でも、医療費あるいは医療費に密着した医療手当の支給という給付にとどまっておるのでございますが、新しい制度におきましては、当然健康被害として疾病にかかられた方々のいわゆる生活補償と申しますか、所得補償と申しますか、そういった労働能力喪失度等に応じました損失補償的なもの、こういった給付考えておるわけでございます。  当然、公害にかかわる被害といたしましては、健康被害のほかに先生指摘のように広く財産被害もあるわけでございます。このような財産被害につきまして、それでは全然問題にしないのかという点でございますが、この点につきましては長官も申しておりますとおり、さしあたりこの健康被害を中心として制度をつくっていく、そうしてこれを軌道に乗せまして、次の段階におきまして、財産被害、その中でも特に救済必要性がいわれております農林漁業等生業被害救済といったようなものを制度的に構成し得るかどうか、これは非常に技術的にもむずかしい問題を含んでおりますが、そのような検討を四十九年度あたりにはとりかかりたい、そのような予定作業を進めておるところでございます。
  19. 島本虎三

    島本委員 本委員会では、その問題等は、他の委員会や場所で論ずるよりももっと的確にしておいたほうがいいし、船後企画調整局長はその道のベテランとしてまさに有名でありますから、これはことばの点のあやだけではなしに、実際の点の意見開陳を、ここではしてもらいたいのです。また、いまでもよくわからぬのでありますけれども、これは医療費と、たとえば医療手当介護手当のほかに、当然いま実施するならば四十九年度からという、その発想も入れておくならば、大臣答弁の裏づけとして、生業補償の点も考えておかなければならないというのがおおかたの常識。大臣生業補償までやると言うのに、今度事務当局では医療救済だけをやる、こういうことをしたら、これはやはり官僚大臣や内閣を牛耳るわけにまいりませんから、皆さんはまさに大臣の言うことを聞かない不良なる官僚ということになるわけであります。その点においては事欠かないようにすべきだと思います。  じゃあ生業補償は入れないで発足させ、四十九年から入れるものである、その生業補償は一次産業において農業漁業に限るものであるというような意味に解釈していいのか、本人生活費である、こういうように考えていいのか、この点はまだ不分明であります。あなたの立案のうちではどの方面を志向しておられるのでありましょうか。
  20. 船後正道

    ○船後政府委員 現在検討いたしておりますのは、公害の中でも健康被害としての疾病、いわゆる公害病に悩んでおられる方々対象といたしまして、こういう方々に対する給付といたしましては、医療費あるいは医療手当といったものにとどまらず、そういう疾病にかかったことによりまして、あるいは労働能力が減少する、あるいは日常の生活困難度を加えるといった面に着目いたしました、いわゆる所得補償的なもの、こういった給付、つまり補償費としての給付、これもあわせて行なうことを検討しておるわけでございます。  それで、一般に生業補償といわれておりますのは、私どもの理解するところでは、たとえば汚染物質の排出によりまして、直接に、たとえば農業では野菜とか果樹に被害が生じた、あるいは漁業では養殖しておった魚がそれによって死んだといった面の補償問題をどうするかという意味生業補償の問題は広く財産補償の一環でございますが、こういう生業補償制度的にどのように救済し得るかという点につきましては、なお原因と結果あるいは費用負担の求め方等につきまして、非常にむずかしい問題も残されております。  そこで、私どもの順序といたしましては、当面最も救済を必要とされる健康被害、これに着目して制度を構築する、そしてこれを軌道に乗せました上において、引き続き財産被害、その中でも特に問題となる農林漁業等生業被害、こういうものを制度的に救済するということを検討しております。この場合は当然原因と結果に対する因果関係の究明の問題でございますとか、あるいはこれらの農林漁業につきましては現在種々の共済制度といったようなものがあるわけでございます、これらの制度との関連というものも検討していかねばならない、かように考えております。
  21. 島本虎三

    島本委員 所得補償ということの考え方のようであります。まあ具体的にいってあの空気がたいへん悪い。悪いから健康被害を受けて、そして入院されている人もある。その人は病院にいながらも、その病院そのもの空気清浄室である。そうして病院の中でもきれいな人造的な空気を吸わせて、そして少しでもぜんそく発作をとめるようにしておる。しかしながら、生活はできない。現状として、次の朝病院を抜け出て自分で働いて、そしてまた夕方帰ってきて、その病院できれいな空気を吸って発作をとめておる、こういうような状態が継続しておるから、このままの状態では病人はいかに医療補償だけを見てやってもなおる問題ではないのだ、なおれないのだ、なおる余地がないのだ。したがって、今度の場合には特にそういうような点を考慮して、生活に事欠かないようにするための補償考えるのだとすると、その所得補償生業補償なのか、いわゆる生活保護法的な補償なのか、また一定の基準を置いておいて、そしてその人たちが働かなくても食べれるだけのもの、そういうようなものをきちっとしてやって、療養に専念できるようにしてやるという考えなのか、この点に対しても、私、不敏にして十分理解できないのです。ほんとう意味所得補償というならば、まさにいま私が言ったような点になるのではないかと思うのです。ところが生業補償ということになりますと、第一次産業である漁業農業、当然とれるべき問題も予想されますから、いままでの五年間の平均を見ると、これは相当の数にもなるだろう、それだけのものをちゃんと補償してやるのだ、こういうようなことになります場合には、これはやはりいまの考え方ではこれは延ばせないということにも当然なるわけであります。いまの所得補償の点で、これを生業補償の限界まで入れて考えるとするならば、これはやはりことば巧みにして国民をあざむくことにもなるんじゃなかろうか、またそのおそれもあるのじゃなかろうか、こういうようにはっきり思います。しかし、財産被害も入れるということになりますと、その一部だということになりますと、これはもっと財産権の問題の範囲は拡大されるわけであります。どうもその辺がつまびらかじゃないし、どうもその辺の考え方も十分われわれは納得できないわけであります。くどいようでありますが、私よくわかりませんから、そこを納得させるように、官僚答弁ではなく、一年生にものを教えるように答弁してもらいたい。
  22. 船後正道

    ○船後政府委員 現在検討しております制度は、いわゆる公害病に苦しんでおられる方々救済というものを考えておるわけでございます。この場合に、先生のただいま例として御指摘になりましたように、大気汚染によりましてぜんそくにかかり、これによって入院しておる、したがいましてその入院期間中は所得収入が得られないという方があるわけでございます。現行の制度では、そういった収入喪失というものに対しましては何らの補償もいたしておりません。そこに非常に社会的な問題が生じておるわけでございます。新しい制度ではこの点に着目いたしまして、そういった方々に安んじて療養に専心していただけるというような考え方を持っておるわけでございます。その給付を、これはまあ金銭的な給付になるわけでありますが、どのようにして行なうかというのがこの制度の中心的な課題になるわけでございます。病気になって療養しておられる、それに伴って従来あった収入が減るという方もございますし、それから現実に、たとえば不動産収入あるいは年金、利子収入というようなものに依存しておられる方は、入院いたしましても別段に収入は減らない、こういうふうに収入所得の源泉によりまして、入院ということに伴う御本人所得の減少の度合いが違うわけでございます。そういったことを制度的に一々個別的に審査するということは、これはおそらくできないであろう、このような前提に立ちまして、現在考えております制度におきまして、やはり四日市判決に見られておりますようなものの考え方によりまして、ある一定の年齢度という方にとりましては、その平均的な所得収入というものを想定いたしまして、それが病気にかかった度合い、それによりまして減少するであろうというふうに制度を構成し、結局、労働能力喪失度あるいは生活困難度というものを等級づけいたしまして、それに応じて患者方々補償費を毎月支給するというような制度考えておりますから、したがいまして、その患者の方が現実にサラリーマンであるかあるいは無職であるか、あるいは小売り業をしておられるかあるいは農林漁業に従事しておられるかといったような面によって差別はしない、そういういわゆる所得補償を実施したい、こう考えておる次第でございます。
  23. 島本虎三

    島本委員 わかりました。じゃ、これは所得補償であって、生業補償ではないということですね。
  24. 船後正道

    ○船後政府委員 生業補償ということばは、法律上も確定した概念ではございません。私どもがいままで理解しておりました限りでは、生業補償というのは、広く財産補償、つまり公害汚染物質の排出によりまして何らかの財産的被害が生ずる。これはまあ物的被害でございますから、建物の耐用年数が減少するとか、あるいはトタン屋根が腐るとかいったような物的被害のほかに、さらには畑の作物に被害があった、あるいは養殖しておりましたハマチが死んだといったようなものでありまして、人の健康とは関係がない、そういう物的被害があるわけでございます。そういう物的被害の中で、特に農林漁業等にかかわる被害というものを取り出して、これを生業的な被害、こう理解しておったわけでございます。この生業被害をどのようにして救済するかという点につきましては、人の健康被害以上に、物質と被害との間の因果関係というものがまだ不明の点が多いし、さらに先ほども申しましたように、このような農林業被害につきましては、それぞれ共済制度あるいは天災融資といったような制度が他方にあるわけでございますから、このような制度との関連におきまして損害賠償を保障する制度考えていく必要があろう、そういう意味で、こういう物的被害としての生業補償の問題は、長官も申しておりますとおり、健康被害に関する制度軌道に乗せた上において検討してまいりたい、こういうスケジュールでおるわけでございます。
  25. 島本虎三

    島本委員 物的被害農林漁業の第一次産業、そこはわかったのですが、その辺まで及ぼすというのでしょう。及ぼさないのですか。
  26. 船後正道

    ○船後政府委員 現在検討しております制度は、人の健康被害にかかわる疾病というものを対象にして制度を構成してまいりたいと考えております。しかし、これでもって公害にかかわる被害問題というものがすべて終わったものとはわれわれ考えておりません。やはり物的な被害というものもあるわけでございますから、このような物的被害をいかに制度的に救済するかということは、われわれ引き続いて検討する必要がある。しかし、これは引き続き検討するわけでございまして、ただいま考えております健康被害救済をする制度には、物的被害を取り込むわけにはいかないという現状にあるということを申し上げたわけでございます。
  27. 島本虎三

    島本委員 いますぐの問題は、救済範囲医療救済範囲である。そのあとで物的な補償考える。その際にはやはり生業補償範囲まで入るのだ。そうすると、まず考えておられるのは、医療補償だけである。四十九年というふうなあれもはっきり大臣は言っているのですが、そうすると、いま健康被害救済に端を発して、四十九年度からすぐ生業補償にはいれる、またそういうような準備の上に立ってこれを立案するのだ、こういうことにならなければおかしい。四十九年度という一つのラインがここにあるわけです。それは大臣だってはっきり答弁しているのですから、それをずらして立案するということは許されない。いかに有能な官僚であろうとも、それをやったとたんにあなたは指弾されることになる、首が飛ぶことも覚悟しなければならない、こういうようなことにも相なることをおそれるわけであります。いま言ったようにして四十九年度からこれを入れられるような組織形態並びにそれの上に立って四十八年度は医療補償の形態だけでやっていく、そうでないとおかしいよ。
  28. 船後正道

    ○船後政府委員 ただいま検討しております制度は、先ほども申しておりますとおり、人の健康被害というものを対象にいたしておりますが、内容といたしましては医療補償だけではございません。先ほど来も申しておりますとおり、疾病にかかったことによりまして現実収入が減るというような点に着目いたしまして、その疾病にかかった方々労働能力喪失あるいは日常生活困難度等に応じまして補償費を支給するという内容の制度考えておるわけでございます。こういう制度を早急に立案いたしまして、四十九年度早々には現実給付が行なわれるようにいたしたい。  これとは別な問題といたしまして、人の健康とは関係のない物的被害というものがあるわけでございます。こういう物的被害につきましても何らかの損失補償を行なう制度を当然考えねばなりません。ところがこの物的被害ということになりますと、赤潮の問題一つ考えましても、原因と結果、汚染物質の排出と被害の発生との間の因果関係その他のメカニズムにつきましては、なお科学的に究明すべきものが多々残っておるわけでございまして、それがもう少し見当がつかなければ、一体だれからどういう基準で費用を徴収いたしましてそのような赤潮被害補償に充てるかという点が、なかなか制度としては構成しにくい、このように考えておるわけでございまして、今回の健康被害が中心でございますと、やはりいままでの種々の医学的な究明の結果、大気汚染あるいは水質汚濁というものによりましてある特定の公害病が発生する、その原因はかくかくの物質あるいは物質の複合であるということがわかっておりますので、そういう面に着目して費用負担は求められるわけでありますが、物的被害ということになりますと、先ほども申し上げましたように、費用負担の求め方という点につきまして、なお種々検討を要する点がある。したがって、これは健康被害を中心とする制度に引き続き検討するという意味のことを長官も申しておるわけでございます。
  29. 島本虎三

    島本委員 それは中央だけで組織的にそれを行ないますか、それとも地方においてもこういうような救済制度を行なわせますか。これは中央だけですか、地方にも全部やらせますか。
  30. 船後正道

    ○船後政府委員 ただいま考えております制度は、法律をもって強制する制度でございますから、適用地域は全国的になるわけでございます。現在地方ごとに現在の国の特別措置法に準ずるような制度あるいは特別措置法よりは若干給付の程度あるいは給付の種類が異なる制度が行なわれておりますけれども、私どもは、現在地方で行なわれております制度の大部分は、この新しい制度ができれば吸収されるのではないかと思います。しかし、地方ごとにはやはり地方ごとの特殊事情によるところの問題が残るであろうと思いますから、そういった問題まですべて中央の制度一本に統一することはあるいは困難ではないか、このような考えを持っております。
  31. 島本虎三

    島本委員 地方の都道府県では、公害被害者の認定審査会というものがあるようであります。これは申請人がたとえばいまならば水俣病なんかの被害であるかどうかについて、医学的見地からこれを判定するという機関であって、これは医療担当者がおもにこの構成員になっているようであります。もしこの基金ができて、いまのように所得補償、それから物的補償の点までも伸びていくということになりますと、生業被害についても損害賠償給付をすること、この範囲の拡大は、結局は生業被害の定額化や定型化をしにくいという結果になってしまって、そこにはもう算定が大きい問題になってくるだろうということが想定されます。そうじゃないような画一的なものの考え方なのか、やはりその点等については単なる医学的な判定だけで足りるのか足りないのか、その範囲補償なのか。私はそうじゃないと思いますけれども、そうじゃないとすると、都道府県に置かれている公害審査会、こういうようなところでは、それぞれ調停や仲裁、こういうようなところまでも行なっているようであります。どの程度行なわれているかはわかりません。これらの機能を強化して地労委的な組織にして生業補償の認定をもさせるのだ、こういうような考え方であるならば、これはわかるような気がいたしますが、そうじゃなしに、生業被害についての賠償の給付は、これは単なる医療機関である医者だけで構成される、その面からのみの判定によるものであるとするならば、この機構そのものによってはっきりわかるわけであります。いずれを考えておられるのですか。
  32. 船後正道

    ○船後政府委員 現在の特別措置法を運用する機関といたしまして、御指摘のとおり府県ごとに認定審査会が置かれております。この認定審査会の業務は、申請に係る患者、この患者病気公害病であるかいなかということを医学的に判断する機関でございますから、したがいまして現在の認定審査会のメンバーがいずれもお医者さんでございます。新しい制度考えております機関は、やはり現在の制度と同様、まず公害病にかかっておるかどうかということはもっぱら医学上の問題でありますから、やはり実施機関といたしましては地方ごとに現在の認定審査会とほぼ似かよったような構成の機関が要る、かように考えております。  なお、新しい制度では、先ほども申しましたように、申請に係る患者公害病であるかどうかという認定のほかに、その患者労働能力喪失度あるいは日常生活困難度といったようなものの等級づけをしなければなりません。したがいまして、こういう等級づけの問題ということになりますと、必ずしもお医者さんだけに限るというわけにはまいりませんので、やはりその方面の専門家というものの参加も必要ではなかろうか、かように考えております。  なお、もう一言申し上げますと、将来純粋に物的被害というものを対象といたしまして損害賠償を保障する制度考えました場合には、当然これは健康被害を中心とした制度とは違いますから、費用負担の求め方も違いますし、それから給付の内容も違ってまいりますから、その性格に応じたしかるべき実施機関というものは別個の判断でもって構成する必要があるのではないか、かように考えております。
  33. 島本虎三

    島本委員 四十九年と四十八年は一年くらいでしょう。月にすれば十二カ月でしょう。日にしたら三百六十五日でしょう。その一年後のことをいま考えているというのに、すぐまた改正をしなければならないような組織で発足するということは、これはあまりにも無知なやり方じゃないでしょうか。もしそういうふうになるなら初めからそういうような機関にして発足させて、その間にお医者さんもいるから認定にはこと欠かないと言っておいたほうがいいでしょう。ではちょっとその判定に不服だという人があったらどうしますか。
  34. 船後正道

    ○船後政府委員 現在考えております制度は、あくまでも人の健康被害というものを中心とした制度でございますから、病気であるかいなかの認定はお医者さんが中心になる。そして新しい制度は現行法と違いまして保障を行なうわけでございますから、そういう意味においてお医者さん以外の参加を求める必要があろう、こういうことを申し上げたわけであります。これは今国会に提案いたしますこの制度の実際の実施というものは四十九年度早々を予定いたしておるわけでありますから、それに間に合うようにこの法律が国会で通りますれば、提案いたしまして通りますれば所要の準備を四十八年度中に行なう必要がある。  その問題と、実は新たに健康被害とは全然別の物的被害補償するという制度考えますならば、これは全く別の制度でございます。別の制度の中におきましてどのような実施機関が妥当であるかどうかという問題は四十九年度になりましてから引き続き検討してみたい、かように考えておるわけでございまして、現在の健康被害を中心とする制度をそのまま延長いたしまして、物的被害まで取り入れるという制度として構成することは困難であると考えております。
  35. 島本虎三

    島本委員 そうしたならば、どうも語るに落ちたようなあんばいで、結局所得補償も何もしないで健康被害だけで発足するということですか。どうも私はわからぬからわかるように言ってくれということです。そうでなければ、この労働能力喪失、この者も見てやるのだということになったら、私の能力の判定、日常の活動によるところの収入、こういうようなのを見るとするならば、お医者さんではできないでしょう、それは。ですから、そういうような判定にこと欠かないような組織にしておかないとだめだからそこを考えておるのかというのですが、そうでありそうでなさそうでわからぬのだがね。わかるように言えないだろうかね。特に私は頭が悪いようでありますけれども、その点もっとつまびらかにしておいてもらわぬとわからぬです。労働能力喪失、それに対する補償、こういうようなのは大きい問題ではないか。お医者さんだけの判定でこれだけのものができるだろうか。
  36. 船後正道

    ○船後政府委員 御指摘のとおり、労働能力喪失度あるいは日常生活困難度等の判定という問題になりますと、必ずしもお医者さんに限らない、かように考えております。したがいまして、新しい制度における認定審査会的な機構の中には、お医者さんのみならずその道の専門家も参加していただくというような構成を考えております。
  37. 島本虎三

    島本委員 大体それでわかりました、たいした期待を持てないような気にもだんだんなってまいりましたが。それにしてみても、公害等調整委員会というようなりっぱな機構が国家行政組織法第三条機関として発足してあるのですが、こちらのほうもなかなか消極的でこれを拡充するような意思もない。公害被害あたりに対しても、今後は地労委的な拡充の必要も考えられないという答弁を正々堂々と国会の中でしている。どうも公害被害者に対してのこういうようなことに対しても、両方とも消極的過ぎる。むしろ患者の立場、国民の立場からするならば、どっちの機構でもいいから的確にそれを判定し、的確に患者救済補償をできるような、こういうようなところまで手を伸ばしてもいいはずなんです。そのための国家行政組織法第三条機関の権能を持っている公害等調整委員会にしてもしかり。さっぱりこれをやる意思もなさそうである。ですから、もう環境庁のほうでは、自分らお医者さんだけで判定せざるを得ないようなことになってしまう。これは国民的な重大な一つの損失になります。公害等調整委員会のほうとしても、こういうような問題について不服だったりまたは異議の申し出があって争いになった場合には、これはどういうふうにして取り上げられますか。取り上げられないでしょう、これは。
  38. 小熊鐵雄

    ○小熊説明員 お答え申し上げます。  もしいまの損害賠償保障制度において、都道府県の審査会等を利用するというような方針がもし・出されれば、機能、機構等について十分検討してまいりたいと思います。
  39. 島本虎三

    島本委員 環境庁のほうでは、いまの点では認定に不服な者でもそれを押しつけて満足させるような考え方しかないように思われる。そっちのほうへ持っていかないような考え方のように思われる。しかし、これではもう私はまことにりっぱなものじゃないと思うのですが、これはこの点ではどうなんですか、船後さん。
  40. 船後正道

    ○船後政府委員 現在考えております制度はやはり制度としての保障でございますから、一定の要件に該当しますれば一定給付をするというような仕組みになるわけでございます。これは地方ごとに置かれます審査会というところでもって本人公害病であるかいなかあるいはまた労働能力喪失度等が何等級に該当するかといったような個別的な判定事務をするわけでございますが、それに不服がございますれば、現在考えておりますのは、たとえば労災保険制度におきまして地方の労働基準監督署で行ないました認定に不服があります場合には、中央の審査委員会でもってそれを裁くというような一つの不服審査のルートがあるわけでございます。それに似たような機構をひとつもうけたい。それでなおかつ不服があると言いました場合にはこれは裁判所の問題、そういったことになろうかと思いますが、しかしこれはあくまでも制度上の給付に対する問題でございまして、それ以外に本人が民事の問題といたしましてなお裁判所で争いたいというような問題も制度的には残るだろう、かように考えます。この点は、現在工場労働者の業務上の傷病につきましては、労働基準法及び労災法の体系でもって措置するわけでございますが、しかし個々の労働者が個々の工場主を相手どりまして裁判を提起するという民事上の権利は、これは留保されているわけでありますから、その点は、私どもの新しい制度ができましてもほぼ同じような構成をとりたい、かように考えております。
  41. 島本虎三

    島本委員 その不服審査の場合は別な機関ですか、内部の機関ですか。
  42. 船後正道

    ○船後政府委員 やはり制度内の給付に対する不服審査でございますから、制度内の機構として考えてまいりたい。この点は労災保険制度における不服審査のやり方と同じような機構を考えております。
  43. 島本虎三

    島本委員 たとえばこの白ろう病の場合の認定、公務員であるならば、これはもう所属の官庁じゃなしに、これは人事院である。それから一般の民間労務者の患者であるならば、その認定は基準監督局である、こういうようなことになっております。あなたのほうだけ認定は、そうすると同じ内部のほうでだけこうやってがまんさせようとして、めんどうくさいことは裁判に行きなさいと、こういうようなお考えなのですか。
  44. 船後正道

    ○船後政府委員 労災とほぼ似たような制度考えているわけでございまして、労災でございますれば第一次的には地方の労働基準監督局で認定いたします。それに対して不服がございますれば、中央における審査会で判断するという仕組みになっております。それと似たような機構、つまり府県ごとに認定審査会を設ける。この認定審査会は、先ほど申し上げましたように公害病であるかいなかという医学的な判断と、それに加えまして労働能力喪失度等の判定をするわけでございます。これに御本人が不服があるということになれば、これは行政不服の特例といたしまして中央に一つの審査会を設ける。そこでもってさらに審査するという機構を考えておるわけでございます。
  45. 島本虎三

    島本委員 その場合、同じ官庁ならば同じ官庁の中、都道府県の中に、この公害被害認定審査会というものがあるけれども、こういうようなものもあって、調停、仲裁も行ない、地労委的な組織に拡大してでもそこにやらせたならばその場で済む。同じ都道府県の中にある。その場合にあくまでもそれを利用しないというような根拠を明らかにしてもらいたい。
  46. 船後正道

    ○船後政府委員 私ども考えておりますのは、この制度制度としての給付でございますから、したがいまして法律上要件が定められる、その要件に該当すれば一定医療費の支給あるいは損失補償の支給をする。そういう制度の中の給付条件というものに対しまして、不服があったという場合の措置を先ほど申し上げたわけでございます。当然これ以外に、たとえば現在でも労災法の給付に対しまして、それ以外になおかつ民事上不服があるという問題は直ちに裁判所に行くというような扱いになっておりますから、そういう関係はこの制度においても同じというふうに考えておりますので、あくまでも制度内の給付制度内の不服審査の機構によって処理することが妥当である、かように考えております。
  47. 島本虎三

    島本委員 概要がわかってまいりました。わかると同時に、たいした発想の飛躍もなさそうに思える。だんだん声もやわらかくかぼそくなってくるわけであります。この制度によって被害者をその限度で補てんされるものと考えるが、原因者たる事業者の賠償責任そのものはその限度で免責されたものかどうか、この制度の発効がそのまま事業者の公害責任に対する免罪符になるものかどうか。この点についてのお考えはいかがでしょう。
  48. 船後正道

    ○船後政府委員 この制度によりまして一定補償が行なわれますと、同一の案件につきましては、その価額の限度におきまして事業者等は民事上の責めを免れるという構成をとりたい。この点は現在の労災法と民事責任関係と同じように考えておるわけでございます。
  49. 島本虎三

    島本委員 生業補償や財産の一部に及ぼすようなこういうような被害をおそらく補てんするような、補償するような状態になっても、依然としてその制度に加盟している人は、これを支払った場合は免責されるのである、こういうようなお考えなのですか、この制度は。
  50. 船後正道

    ○船後政府委員 制度によって補償をいたしますと、その価額の限度において民事責任が免れるという構成でございますから、事業者のほうはこの制度給付があるからといって、何もかも免責されるという意味ではございません。
  51. 島本虎三

    島本委員 この問題についてはこれで終わっておきたいと思います。もっともっと聞きたいと思いますが、きょうは同じような状態でのれんに腕押しのような結果になることをおそれますので、この問題はこの程度にして、次のほうに進ましてもらいます。  次は、原子力発電の安全性と環境の保全、こういうようなことについてひとつお伺いしたいのであります。  この問題については、昭和四十五年三月現在で日本で運転中の原子炉は実験装置を含めて二十二基、そして十基が建設中、この他方の放射性同位元素使用事業所は一千八百をこえる、それから百の事業所が核燃料物質を扱っておる、こういうようなことが報道されているのであります。これは自動車の数が想像を上回ってふえているようなこういうふうな状態と同じで、急増の可能性もあるわけであります。周知のように、原子力は取り扱いを間違えると多数の人に危害を与えるということになり、あえて言うと、環境の汚染から地球の破壊にまで及ぶというまことに重大なしろものであります。その安全性には万全を期さなければならないのであります。環境庁ではこの点を十分に考えて、いままで許可したものに対しての安全性が完全だとお考えになっておりますか。また、科学枝術庁においては、この点において万遺憾がないものである、こういうようなお考えでいままでずっとその建造を許可してきたものであるか。この点について、まず両省から御高見を賜わりたいと思います。
  52. 成田壽治

    ○成田政府委員 原子力発電につきましては安全性が非常に第一の要請でありまして、申請が出た場合には、原子力委員会、それからその下にありますところの原子炉安全審査会——これは日本じゅうの各方面の最高権威であるところの専門家、学者等三十名ほどで構成されておりますが、そこで環境放射能等の安全性につきまして厳重な審査をやって、その上でこれが合格である場合に許可しておりますので、これまで許可がおりた原子力発電炉については安全性は十分確保されているというふうに考えております。
  53. 船後正道

    ○船後政府委員 放射性物質によるところの環境汚染防止の措置は、公害対策基本法によりまして、原子力基本法その他の関係法律の定めるところによりまして、ただいま科学技術庁から御説明がございましたとおり、科学技術庁で一元的に措置しているわけでございます。これは、放射能に関する問題がきわめて専門的、技術的なものであるという観点からこのような一元的な取り扱い方がされておるのでございますが、環境庁といたしましては、原子力発電所の建設に関連するところの自然環境の破壊の問題でございますとか、あるいは温排水の問題でございますとか、こういった点につきましては、当然、科学技術庁等と十分な連絡をとりまして、遺憾のないように措置いたしておるわけでございます。
  54. 島本虎三

    島本委員 一九七二年、昭和四十七年の八月一日に、「米国内の五つの原子力発電所原子炉で使われている特定の形の燃料棒に、燃料棒の被覆管が変形し内部の放射性ガスが炉内に漏れる欠陥があることを発見したので、この春以来一部の原子炉の運転を制限して原因を調べている」こういうような発表があったわけであります。同時に、「関西電力ニューヨーク事務所の話では、同型の燃料棒は関西電力美浜原子力発電所一号炉でも使われている。」こういうような発表がなされておるのであります。これは去年の八月の時点であります。そして「米原子力委の発表によると、ニューヨーク州オンタリオのギネー原子力発電所でこの四月燃料棒の取替え作業中、一部の燃料棒が平たくつぶれたように変形しているのが発見された。この原子炉はウエスチングハウス社製で、燃料のウランがジルコニウム合金の被覆管に封じ込められ、管のなかは加圧していないという特殊な燃料棒を使っていた。変形を起した燃料棒は内部が加圧されていなかったため、中の粒状のウラン燃料が何らかの理由で収縮したとき内圧がさがって、外を取巻く一次冷却水の高圧に耐えきれなくなったのではないかと、米原子力委は推定している。同型の燃料棒を使っている加圧水炉は、サウスカロライナ州ハーツビルのロビンソン発電所二号炉、ウィスコンシン州マニトウォックのポイントビーチ発電所一号炉、ミズーリ州カラマズーのパリセード発電所のほか、いま原子力公害反対運動で問題になっているニューヨーク市近くのインディアンポイント発電所二号炉(出力二〇%で試運転中)でも使われている。ニューヨーク・タイムス紙によると、ロビンソン、ポイントビーチの二炉では異常高温が記録された。」こういうような報告があるわけであります。そして、「関西電力ニューヨーク駐在員の藤井隆一郎氏によると、同種の欠陥は昨年夏すでにスイスのNOK発電所で発見されていた。日本では福井県美浜町の関西電力美浜一号炉(出力三十四万キロワット、四十五年十一月から運転開始)が同種の非加圧型ジルコニウム合金燃料棒を三分の一使っているが、今のところ異常は認められず、メーカーのウエスチングハウス社からの対策の勧告を待っているところだという。」こういうようなことが去年の八月現在で発表されているわけであります。そしてこれによると、科学技術庁の児玉勝臣原子炉規制課長は「アメリカの調査結果に関する情報を集め検討したい。」こういうように言っているわけです。すでにアメリカでもこういうようになったのを、日本ではまだ検討する段階にある。これはすでに去年です。この安全性が確実に保証されぬということになると、私ども環境庁の調整権や存在さえも少し疑念を持たざるを得ない。こういうようなことに対しては絶対安全なんですか、そうじゃないのですか。
  55. 成田壽治

    ○成田政府委員 アメリカで問題になりました燃料棒の炉はギネー発電所等でありまして、これは加圧型、PWRという型であります。日本も関西電力等でこの型の炉をいま使っております。ただ、先生指摘のように、問題になりましたのは古い型の非加圧型の燃料棒でありまして、日本でいま採用しておりますのは新しい形の加圧型の燃料棒になっております。ただ、御指摘のとおり関西電力美浜発電所の四分の一ほどの燃料体は、ギネー発電所と同じ非加圧型の燃料棒でありまして、こういう現象がありましたのでわれわれも厳重に注意して、ことに関西電力の燃料棒が破損していないか十分に検査等をやって、その限りでは全然徴候がないということになっておりますが、さらに念を押してこれはことしの三月ごろに取りかえる計画になっております。したがいまして、それ以外は全部新しい型の加圧型の燃料棒のPWRを採用しておりますので、問題はないというふうに考えております。
  56. 島本虎三

    島本委員 初めから皆さんは問題ないと言いながら、あとからあとから実験をしているのです。この緊急冷却装置についての安全性、これくらい重大な問題をかかえているにもかかわらず、これは二月二十四日ですか、予算の一般質問のときにあなたも出ていらっしゃいまして、緊急冷却装置はいままで計画だけで進めてきたが、計算を実証するために四十八年度から実験を始める——あなたが言っているのは、四十八年度から実験を始めて確かめるのでしょう。もうすでにアメリカあたりでは、いろいろな点でこういう疑問が出、ガス漏れの危険やその他燃料棒に欠陥があるということを指摘されている。日本は何らない。何らないといいながらも、方々に、東海村のガス漏れや、そしてまた従業員からこれに対するいろいろな訴えがあったり、いろいろな問題点が惹起されている。あなたは依然として何でもない。しかしながら、これは、緊急冷却装置はいままで計画だけで進めてきたけれども、計算を実証するために四十八年度から実験を始めるのだ、日本では実験してないじゃありませんか。アメリカがやったのだから何でも正しいのだ、こういうような考え方の上に立って考えていいのですか。科学者であるならばもう少し科学者らしく、どのように未知の問題が含まれているかと考えるのは科学者の常識で、すべて科学者が机上の計算だけではこれは十分じゃないということはわかっているはずです。したがって、科学を工業に適用させるためには、先行して絶えず実験が必要なはずなんです。特に人間の安全にかかわる科学技術である場合には、工業化後あるいは工業化と並行してでも実験を行なうのではまさに手おくれの状態なんです。必ず実験のほうが先行しなければならないはずなんです。これが安全性の確認というものじゃありませんか。  いま日本では、全部で、操業中の原子炉は何炉ありますか、これから計画中のものは何炉ありますか、それをはっきりさしてください。
  57. 成田壽治

    ○成田政府委員 現在日本で動いておりますところの発電炉が五基あります。これはもう商業炉、発電炉で、研究炉は入ってないものであります。それから、政府の許可をもらいまして現在建設中が十六基、トータル出力としましては千三百万キロワットになっております。
  58. 島本虎三

    島本委員 もうすでに稼働中が五基、すぐ稼働または建設中のものが十五基、その他計画中のもの多数、こういうふうな状態であります。そうすると、依然として日本では安全性を確かめる検査というものは——これは四十八年度から実験を始めることになっておる、これだけではたして、安全性を完全チェックいたしました、環境庁もそれをちゃんと確かめました、こういうようなことが言えるでしょうか。これはどうしても大臣が必要な場所なんですが、かわるべき人がいませんから、そこにいる局長全部です。これはアメリカのマサチューセッツ工科大学のケンドール教授、この人たちの計算によりますと、原子力発電所で冷却材の喪失事故が起こった場合、これは水ですよ。万一緊急冷却装置が十分に機能しなければ、七十万キロワット一基でも、三・二キロメートルの幅で風下百二十キロメートルにわたって致死的影響を及ぼすほどの放射性物質が放出されるものである、これははっきりケンドール教授の発表もあるのです。こういうふうなことに対しても、日本では四十八年度から小規模な実験を始めるのだ、こういうふうに言っているのです。そうすると、これくらい緊急冷却装置は重要であるし、四十八年度の後半から緊急冷却装置の機能の試験をするという、これでは安全性よりも建設や稼働のほうが先行しているということなんです。どうしてこういうふうなことをしなければならないのですか。もっと国民のために、環境破壊のないように、公害のないように、安全性の問題はもっときちんとなぜ調べてから建設や稼働させることができないのですか。どうしていつでも安全性や研究よりも建設や稼働のほうが先行しなければならないのですか。これでだいじょうぶだと言えるのですか。
  59. 成田壽治

    ○成田政府委員 御指摘のECCS問題、これは昨年アメリカで起こりまして、いろいろ問題を惹起したのでありますが、これにつきましては、その後アメリカの、民間だけでなくてEC原子力委員会等の実験も多々ありまして、その結果いろいろ安全をとった基準を、新しく暫定指針をとりまして許可をアメリカでもやっておるわけであります。したがって、日本が実験を現にやっていなくても、アメリカ等の実験で十分に確認されております。また日本も、電子計算機等の利用によって、計算上絶対安全であるという計算が出ておりますが、ただ四十八年度から原子力研究所で実験を計画してやらせる予定になっておりますが、これは計算を実証するという目的もありますが、日本で燃料棒等をつくる場合に、やはり実際やっておった場合に非常にプラスになるという点もありまして、そういう意味から四十八年度から原研に行なわせるのでございます。したがいまして、日本が、実験が先のほうがベターだとは思いますが、外国等の実験、アメリカ政府の実験あるいは電子計算機等による高度の開発によって、計算上絶対心配ないということは、関係の学者等も認めているところでありまして、その点は問題ないと思います。
  60. 島本虎三

    島本委員 この問題については、私のいまあげた情報は新しいデータです。あなたは古いデータといって考えておるようですが、これはつい最近の新しいデータです。あなたのほうは実験していないからわからないのです。日本では全部アメリカにたよっているからそういうふうなことを言わざるを得ないのだ。一体これはどういうふうなことですか。いま言っているのは、安全性を大事にして、そうして国民のために——建設や稼働のほうが先行してはならないのだ。もっと安全性を確実にしてからやるのでなければ民族の問題にもなるのだ、このことを言っているのです。あなたはさっぱり民族的なことも、安全性のことも考えないで、だれの代弁か知らないけれども、ただ、安全だ安全だ、だれだというとアメリカなんだ、アメリカの安全と日本の安全とは違うじゃありませんか。あなたはどこの原子力局長なんですか。そういうふうなことじゃだめだ。現にこの反対があっても、何でも皆さんはやっていこうとしているのです。  この中で、緊急冷却装置の機能を見る試験、これは冷却材の喪失時における緊急冷却装置の機能を見る試験、全くいままで日本はやっておらなかったのですね。ようやくこれから研究所で小規模な実験がなされるような段階、これは不十分な小規模実験で、おそらくあなたがいまやろうとしていることでさえも、結果が判明するまでには数年かかるでしょう。それなのに、安全だ、安全だ、一つ覚えのようにそればかり言っている。これじゃ国民の立場に立った科学技術庁ではないのじゃないか、こう言わざるを得ないじゃありませんか。日本の原子力委員会の安全審査会、これでも日本には緊急冷却装置の実験を実際行なっている学者は一人もいないでしょう。やはり全部アメリカ中心なんです。もしものことがあって取り返しがつかなくなったら、それからいかに答弁をしてももうおそいのです。  こういうふうなことからして、稼動中のやつが五基だ、すぐ稼働または現在建設中のもの十五基だ、そのほか計画中のものはこれ以上、多数だ、こういうふうに、もう実用化されているのに、依然としてこの緊急冷却装置に対しての安全性の実証、これがなされておらない。四十八年度から始める、それも後期からだ、こういうふうな状態で、だれのための原子力なんですか。これはとんでもないことなんです。  環境庁に聞きますが、これは安全性の問題を中心にして、皆さんのほうでは調整権がこれによって発動したものである、その結果安全なんだ、こういうふうなこと言えますか。
  61. 船後正道

    ○船後政府委員 放射能の問題は、科学技術庁で一元的に所掌をいたしておりまして、したがいまして、その安全性の確認の問題ということにつきましても、科学技術庁が全責任を持ってそれをやる、こういう仕組みになっておるわけでございますから、環境庁といたしましても、当然そういった意味の安全性が確保される、担保されておるという点につきましては、重大な関心を持っているわけでございます。
  62. 島本虎三

    島本委員 どうも環境庁は弱腰だね、この点では。  それから科学技術庁の成田さん、まあいろいろあなた言っているけれども、アメリカではだいじょうぶだといっているそうです——アメリカでは担当者がこれほどもう専門家として疑念を持っているということを、あなた知っているでしょう。それと、技術はまだまだ未知数で、これは命にかかわるような緊急冷却装置でありますから、この問題に対しては念には念を入れてその基準等についても安全性の問題でも高めなければならないのだということを知っているでしょう。あなたが安全だとおっしゃいましたのは、その新しい暫定基準自体がいま問題である。これはアメリカの原子力委員会であるとか国立の研究所で、専門家が疑念を持っているのです、この問題で。アメリカで安全だという——またその専門家が疑念を持っているのに、はるか太平洋かなたの日本のあなたのほうが安全だと言っている。アフリカでもあなたのようなことを言う人はないだろうと思います。ところが依然としてこういうことをあなたが言っている。その新しい暫定基準自体が問題であるということをあなた知っていますか。そしてアメリカの原子力委員会や国立研究所の専門家がこの疑問を持っているのだということを知っていますか。まあこれをもってでも、アメリカがだいじょうぶ、アメリカ政府がだいじょうぶだというからいいんだ、これで日本では、安全性のそれがはっきりしないままにもう実用に供さしている。これでいいんですか。まだまだ不十分じゃありませんか。何のために企業べったり、アメリカべったりにならなければならないのですか。あなたの信念を聞きたい。
  63. 成田壽治

    ○成田政府委員 アメリカでは基準をつくります場合にヒヤリング、公聴会をやってそしてきめることになっておりまして、ECCSに関する暫定基準がいま公聴会にかかって、その上で基準ができる、そういう手続になっております。それから、この暫定基準等につきまして、まあ学者等の一部でいろいろな異論を言っておる人もあることはわれわれも十分聞いておりまして、その点は原子力委員会等におきましても、十分そういう異論に対する検討も、まあ国内にもありますが、いろいろ検討しておるところであります。  それから、アメリカが実験でだいじょうぶだから日本もうのみにしているということではありませんので、先ほど言いましたように日本の原子力委員会あるいは安全審査会において、十分計算を実証的にやって、しかも電子計算機等による計算によってだいじょうぶであるという……(島本委員「いや実験」と呼ぶ)実験は、まあECCSをつけますのは四十八年度からでありますが、ROSA計画等、数年前から原研で冷却材の喪失の実験もやっておりまして、そういうデータも出ておるところであります。したがいまして、決して日本がただアメリカのそれをうのみにしているということでなくて、やはり日本が主体的に実証してそして確認して、初めて安全審査会等の許可が出ているということであります。  それから、日本の原子力委員会等におきましての考え方も、決してただエネルギー対策として原子力発電を進めればいいんだという考え方でなくて、やはり安全環境対策というのが一番大きな問題であって、毎日そういう安全環境の確保のための、さらに安全にするための方策について、原子力委員会が最も第一の要請として検討しておるところでありまして、これは去年できました原子力委員会の長期計画におきましても、非常にはっきり出ておるところであります。
  64. 島本虎三

    島本委員 計画計画、電算機で計算、そういうようなのを幾らやってもだめなんだ。何回言ってもあなたとこれは合意に達しません。わからないようだ。私の場合は、そういう非科学技術庁的な発想はどうも納得できないのです。これは学者の場合には机上の計算だけでは、未知の問題が多く含まれておって、すべて科学者は、実験をしてからでないとだめなんだ。まして科学を工業に適用させるためには、先行して絶えず実験が必要なはずであって、特に人間の安全にかかわる科学技術である場合には、工業化のあとやあるいは工業化と並行して実験を行なうのではこれは手おくれなのだということは、科学者のもうすでに常識なんです。にもかかわらず、あなたはまだやっていないで、計算だけして安全だと言う。まさに机上の空論みたいなことを言っているんです。しかし、これは住民が反対してもあなたのほうではこれを強行するんでしょう。なぜ住民が反対しても強行するのですか。やる場合には地元町村長の同意を得てやっている、こういうようなことを言っているのですが、これは同意を得るというようなのは、だれの同意を得ていままでこの原発だとかまたは火力発電だとか、こういうようなものを強行していたんですか。これは同意は完全につけてあるのですか。
  65. 成田壽治

    ○成田政府委員 原子力発電所をつくる場合に地元の理解と協力なくしてはつくれないし、また円滑に運転もできませんので、地元の了解を取りつけるというたてまえでやっております。そして、まあ地元というのは知事の意見を聞き、また関係市町村の公共団体等の代表の意見も聞きますが、ただそれだけではなくて、いろいろ反対の方も一部にはありますので、まあ反対の了解を全部取りつけるのが一番理想的でありますが、府県知事あるいは市町村等の意見を聞いて、大方の了解を得た場合に初めて許可をすることにしております。  それから、この点はさらに地元の了解と協力を得るために、いま原子力委員会で、必要な場合には、これから申請の出る大型炉とか集中化する場合等につきましては公聴会を開いて、いろいろ反対の意見も聞いて、その上でいろいろ判断をしてきめる、そういう公聴会制度の採用も委員会としていま具体的にどういう手続でやるか等検討しておりまして、考えておるところであります。
  66. 島本虎三

    島本委員 住民の同意というのはまあ知事や市長の意見を主にするのですが、その知事や市長または住民、これが市長なんかの場合には、特に住民代表や署名、こういうようなのが反対の意思として強力にあらわされている場合に、または市町村や知事の見解が異なる場合、これは住民の署名や代表、こういうようなのと知事の見解というものが全然違う場合、どちらをとるのですか。
  67. 成田壽治

    ○成田政府委員 知事だけの意見ではありませんので、関係市町村長等の意見も聞いておりまして、まあ反対の署名等があります場合には、またそれについても十分検討して判断をしておるのであります。
  68. 島本虎三

    島本委員 検討して判断しておると言ったって、いままではそういうようなことを全然検討しないで着工してしまっているでしょう。公聴会もやったと言うが、全部やりましたか、これからやるのですか。こういうような手続上住民に不安を与えながらこれをやっているわけです。建設しているわけです。着工しているわけです。どうもこういうような点ではだめだ。これも強く指摘しているのです。まして知事や市町村長の選挙にそれを目的として争われてこなかった人たちが多いでしょう。また、これを目的にしてやった場合には、その住民の意思として受け取れるかもしれない。それを目的として選ばれたものではない知事、市町村長、こういうような人の意見を聞いて、そして住民の意思と考える。こういうようなことはあまりにもしゃくし定木的な考え方で、ほんとう意味の民主主義的な考え方ではないのです。おそらくは住民の直接の意思として住民投票それから反対署名、こういうようなものがよけいな場合にはせめて着工を見合わせる、そして公聴会なりまた十分話し合った上でないときめない、こういう態度が必要なんです。これからのことはわかったのですが、いままでとったのですか。それを言ってください。
  69. 成田壽治

    ○成田政府委員 公聴会はこれからの制度でありまして、これまでは反対運動の非常に強い場合には、部落ごとに説明会をやったり、あるいは反対の方の陳情を受けて、いろいろな説明をしたり、いろいろな機会を持ってそれで相当な審査期間もかけて、その上で知事あるいは市町村長あるいは議会等の意見もいろいろ検討しまして処置しておるのでありまして、われわれとしては、公聴会制が従来なかったのでありますが、それにかわるような地元の意見を十分聞くような努力はしてきたつもりでございます。
  70. 島本虎三

    島本委員 そういうふうに受け取れないのです。ことに、そのために伊達火力の問題では市長がリコールを食らいました。こういうような問題すら起きている。その問題は主じゃないからあなたはそっちへ逃げなくてもいい。リコールさえ食らっているのです。その問題を主にして当選した市長なり首長じゃないからそういうような現象が起きるのです。そういうような場合は着工を見合わせるとか、行政的に十分配慮しなければならないのに、それさえ配慮してない。そして急いでいる。さあつくれ、つくれでやって、稼働中五基、建設中十五基、その他計画中のものは多数というようなことで、急いでばかりいる。そして安全だと言っている。なぜ急ぐのですか。なぜ急いで通産省なり原子力発電関係のこういうような皆さんなりがこれを許可を与えてつくらせるのですか。これはなぜ急ぐのですか。
  71. 成田壽治

    ○成田政府委員 原子力委員会としては、発電を急ぐとか、そういうたてまえではありませんので、長期計画は昭和六十年度六千万キロワットになった場合に日本のエネルギー需給がよくなるというような見通しはありますが、原子力委員会としましては、事業者から申請があった場合に初めてアクションがくるのでありまして、その申請が安全性、あるいは地元との関係等、あるいは計画、平和利用の原則に合っているかとか、そういう法律上の許可基準がありまして、それにマッチしておった場合には許可をせざるを得ない。そういうたてまえになっておりまして、発電を急ぐというのは原子力委員会の態度ではないのであります。
  72. 島本虎三

    島本委員 どうして通産省は急ぐのですか、公益事業局長……。
  73. 井上保

    ○井上政府委員 現在の電力の需給状況でございますが、非常に需要が伸びてまいっております。これは大ざっぱに申しますと、今後大体九ないし一〇%程度の伸び率を示すということでございまして、いまの現有の火力、あるいは水力、原子力等の発電能力では五十年ないし五十一年には非常に不足するということでございます。したがいまして、われわれといたしましては発電所の建設は、これを需要に見合うようにやっていきたいと考えております。ただ、だからと申しまして安全性の確保ができていない発電所をつくるということではございませんで、原子力委員会のチェックを受けまして、あるいはそれぞれ安全性を十分に確認した上で計画に入れていく、こういう態度でやっておるわけでございます。
  74. 島本虎三

    島本委員 需要が伸びている。需要に見合って建設を急ぐ。それならば、それのうちの八割以上が産業用であって、その中でも特に多いのは鉄鋼、石油化学であるということははっきりしているわけです。こういうようなことからしても、電力とGNPの関係についても、鉄鋼が、直接分だけでも三割輸出している。使用した機材や自動車を含めると鉄鋼は約五割を輸出している。このため電力はもう五百億キロワット以上も使われている。こういうふうにしてどんどん輸出するために需要が伸びているんです。そしてそういうようなことによって円の切り上げがもたらされるわけです。何度円の切り上げをやっても、輸出が増加していけば、またそれ以上円の切り上げも行なわれる、こういうことになって、ますます混乱におちいるような状態、これは一つの矛盾として皆さんはいま日本的な立場からその点考えなければならないところなんです。当然その需要というのは鉄鋼やその他の石油化学関係ですから、こういうような方面は輸出するために需給を大いに要求している。そして大いに供給してやって、そして急いでやって、安全性も確かめないでやって、そして今度はますます円の切り上げに拍車をかけている。そうして混乱におとしいれている。むしろ鉄鋼、石油化学、自動車の輸出、こういうようなものを押えて、そして現在の開発についても十分にチェックしていくのがこれからの一つの国家的な行き方であり、当然これは発電所の増設なんかについてもまさにチェックしていかなければ。日本経済全体の問題だということになっているじゃありませんか。それにもかかわらず、盛んにこういうように急いでいる。再三再四円の切り上げがまた行なわれる。その行なわれる原動力はあなたたち二人じゃありませんか。きょうは大臣いないからしようがないですが、あなたたちは、国家的な見地から見れば、まさに国民を混乱におとしいれている張本人だ。もう、いま国民にとって必要なことは、発電所を住民の犠牲でつくらせることじゃないはずです。国民福祉のために使わせるのが一番大事なことなんです。円の切り上げ、こんなもののために苦しむのは国民ですから、そのためにも、国民に犠牲を押しつけてまで輸出を伸ばすために電力を供給すればいいというような考え方、これは間違いです。おそらくはこういうような上に立って十分考えなければならないはずなんです。それだのにむつ小川原で、また志布志湾でも、苫小牧での東部開発でも大いに急いでやらせる。まさにもう、どこか狂っているじゃありませんか。環境庁も、当然チェックしなければならないところをあなたまかせにして、これもしてない。民族的な問題です。国家的な問題です。もっとこういう点では慎重に考えなければならないはずです。このために、全部輸出を増大させるために皆さんは一生懸命やっていることと同じことです、結果は。これが円の切り上げを促進している。こういうようなことはもう、まさに国家的に見て一つの重大な犯罪にも該当するような錯覚ですよ。こういうようなことを強行しないことを私は望みたいのです。環境庁をはじめ、お三方の御高邁なる御意見を賜わりたいと思います。
  75. 井上保

    ○井上政府委員 先ほど申し上げました電力需要の伸びでございますが、これはさっきお話がございましたような産業用の電力の伸びもございますし、あるいは業務用であるとか民生用、あるいは電灯の需要もございます。産業用電力の大口、特に中小企業を除きますと、大口産業用電力というのは半分以下でございます。その半分以上は大口電力以外のものの伸びでございまして、なおかつその伸び率を申しますと、最近は大口電力以外のところの伸び率のほうが高くなっております。これは従来行なわれました輸出第一主義であるとかあるいは重化学工業主義というものがだんだん修正されてまいりまして、国民福祉の方向に向いてきている一つのあらわれではないかと思っております。かたがた電気事業、電力サイドといたしましては、国民生活あるいは経済の方面から要求される電力というものを供給する義務がございます。したがいまして、そういう民生用の伸びあるいは工業用の伸びに対しましてこれを供給するということで、そごを来たさないように極力努力したい、こういう事情でございます。
  76. 成田壽治

    ○成田政府委員 安全性が十分確保され、環境が破壊されない、そういう形で原子力発電というのは進められるべきだというふうに考え、またそういう考え方をとって今後の施策をやっていくべきだと考えております。
  77. 島本虎三

    島本委員 環境庁から答弁ないから、これは皆さんじゃだめなんだ。やっぱり大臣でないとだめなんです。だから大臣が来たときやろうと思ったのだけれども、やむを得ない。もう一回大臣が来たときゆっくりやるから、そのとき出てきてください。いま言ったように、八割以上が産業用電力なんです。でないなら、この次までにデータを出してください。そういうようなことからして、これが鉄鋼や石油化学が中心、同時に自動車も入る。こういうのをつくらせるための電力の供給なんです。これが円の切り上げにつながっているんです。結局これが国民を混乱させているんです。こういうような一つのメカニズムを十分考えなければならないんです。この問題はこれで終わったことじゃありません。安全性の問題が一つ。まだ放射性物質の問題、廃棄物の問題があります。温排水の問題があります。ましてやそれを海洋投棄を考えているなんてもってのほかです。  この次もう一回目を改めて私はやることにいたしまして、きょうはこの程度で終わっておきます。
  78. 佐野憲治

    佐野委員長 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      ————◇—————    午後一時四十三分開議
  79. 佐野憲治

    佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡本富夫君。
  80. 岡本富夫

    ○岡本委員 きょう私お聞きしたいことは、いま全国に相当な交通公害によって起こっておるところの被害、たとえば私が調査したところは国道四十三号線でありましたが、その地域を調べますと、五軒に一人のぜんそく、あるいは肺気腫、こういうものが起こっておりますし、また騒音、振動で夜も眠れないというような問題が多発をいたしております。公害の総点検をやりましたときも、一番被害を訴えますのは騒音問題であります。これは大臣もよく御存じだと思います。  そこで、まず交通騒音規制について、これは内田厚生大臣のときだったと思うのですが、私は早く基準をきめてもらいたいということで基準がきまりました。この基準を見ますと、第一種区域、すなわち「良好な住居の環境を保全するため、特に静穏の保持を必要とする区域」、これが一種、それから二種が「住居の用に供されているため、静穏の保持を必要とする区域」、こういうようにありますが、この一種を見ますと、昼間が五十五、夜間は四十五それから朝夕が五十ホンということになっておりますが、実際に今度は自動車の騒音の大きさの許容限度を見ますと、一番大きな「車両総重量が三・五トンをこえ、原動機の最高出力が二百馬力をこえるもの」これは定常走行騒音及び排気騒音が八十ホンになって、加速走行騒音が九十二ホンになっております。たとえば九十二ホンのトラックが、ここでは一日に七万から七万五千台通っているわけです。こういうことを考えますと、自動車の騒音の大きさに比べてとても環境基準が守れないのではないかということを私はつくづく感ずるわけでありますが、こういう対策についてどういうように考えての環境基準であるのか。これはすでに環境庁に移っておりますので、この点についてお聞きしたい。
  81. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  道路、ことに高速道路に関して自動車の騒音の規制の問題について先に申し上げますと、先生いま御指摘環境基準、一応これは四十六年五月に決定されておりますが、そのときに定めましたいろいろの数値、これらは御承知のとおり、住居が集合している地域、病院とか学校の周辺の地域、そういう住民生活環境を保全する必要があると認められる地域、これを都道府県知事が関係市町村の意見を聞いて指定するということと、それから環境基準を維持、達成するために、知事は、この指定地域内で騒音の大きさを測定するという測定の問題と、三番目に、その結果自動車騒音が総理府令で定める限度をこえることによって、道路周辺の生活環境が著しくそこなわれると認められるときは、都道府県の公安委員会に対して、道路交通法に規定する措置をとるべきことを要請する、また、必要に応じて道路の構造の改善等、自動車騒音の減少に資する事項に関して、道路管理者等に意見を述べることができる。この三つの大筋で処しておるわけではございます。ただ御指摘のように、自動車騒音の大きさの許容限度において、非常に重量のあるトラック等に関しては、なかなか音源そのものの対策が進んでおりませんので、個々の自動車についてはなお高いホン数が出ております。それからなお、たくさんの自動車がそうやって走っていく場合に相当な騒音を呈しておるということは事実でございますが、それらに関して、私どもいま言いました三つの問題を特に関係省庁連絡して、これをできるだけ強く伸ばしていくという方向でいま作業しておる最中でございます。
  82. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは芦屋市のデータでありますけれども、四十三号線のデータを見ますと、最近は夜間も昼間も、それから朝夕も、ひっきりなしに車がたくさん通っております。そのために、調査をしますと、この道路の側面、ここで大体九十ホン、八十二から九十ホンですね。それから五十メートル地点で、その側道から五十メートル入ったところで六十ホン、百メートル入りますと今度は六十二というように音響が大きいわけでありますが、これは実は長官にお聞きをしたいのですが、環境基準をきめるのは環境庁の役目であって、あとは各省でやるのだというようなことでは、環境基準をおきめになってもほんとうの対策、環境を良好にしていくという対策はできないと思うのですが、長官考え方、どういう対処のしかたをしたらいいかということについてちょっと御意見を承っておきたい。
  83. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま政府委員から御説明いたしましたように、騒音の環境基準については、ちゃんと一つの規制の方法というものは三つの類型に分けてできておるわけです。これを励行するということで騒音防止の目的を達成することが非常に現実的だと思いますが、実際の場合に励行されてない場合も、これはいろいろ御指摘のようにあるわけでありますから、この問題については地方の自治体ができる限り適宜の処置がとれることになっておりますから、そういう騒音規制のいろんな立法的な処置が講ぜられておるのですから、その処置に従って騒音を防止して生活環境を守るということに一段と地方が力を入れてもらうということが一番現実的だと考えておるわけでございます。
  84. 岡本富夫

    ○岡本委員 なかなかしかし現実は行なわれてないわけですし、なかなか行なわれにくい。たとえば東京都におきましても一美濃部知事とそれから警視総監ですか、なかなかうまく意見が合わない、こういうようなことで、結局苦しむのは住民であります。  そこで、私一つの提案といたしまして、たとえばぼくは、現実に絶えずそのそばにおりまして、皆さんからやかましく言われるわけでありますから、一つの例を申し上げますと、思い切って一車線ぐらい植樹をしてしまう。そうしますと、騒音あるいは排気ガス、あるいは鉛、こういうような有害物質が相当ここで浄化されるといいますか、一つの例をとらえて申し上げますと、これは東京都内のデータでありますけれども、あの有名な大原交差点というのがありまして、これは排気ガス、鉛、一酸化炭素で困っておる。ここは大体一時間の交通量が約一万五百台です。それに対して、CO、一酸化炭素は二・七PPM、鉛が三・三マイクログラム・パー・リッター、二十四時間平均値であります。ここはなぜほかと比べてこんなに交通量が多いのにCOが比較的少ないかというと、弱々しいけれども街路樹が並んでおる。それからもう一つ、高円寺の陸橋のところでありますが、これも約一万三百台ほど一時間の交通量がありますけれども、これもCO、一酸化炭素は五・五、それから鉛は三・三マイクログラム・パー・リッター、それに引きかえまして、これは千住の二丁目というところがありますが、ここでは一時間の交通量は四千三百台ですが、半分以下ですね。そこがCOが一九・〇PPM、それから鉛はちょっとはかっておりませんが、それから宮園通りというのがありますが、これが一時間に三千六百八十台、大原と比べますと三分の一です。ところがここは全然街路樹がありませんがために、SO2が一三・三PPM、鉛が四・四マイクログラム・パー・リッターですか、こういうように、要するに街路樹といいますか、こういった緑があるのとないのと、こんなに顕著に違うわけです。ですから私は、こういった排気ガスあるいはまた騒音問題、これは計算したものがあるわけですけれども、相当思い切ったこういう勧告なり、あるいはまた行政に対して住民皆さんの健康あるいは生活環境を保全するために提案と申しますか、特に三木長官は副総理でありますから、相当強力に発言権もあろうと思うのですが、こういう提案をして、現在のこの交通騒音をなくしていこうという考え方にはどうでございましょう。
  85. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私はアイデアとしてはおもしろいと思っています。やはり一車線にして、中に森林地帯のようなものが続いて、一つのアイデアとしては非常に興味のあるものですが、実際問題として自動車の台数に比べて道幅あるいは道路のマイル数も実際は少ないわけですから、小さいわけですから、だからそういうことによってまた車が迂回して違った道に殺到するというようなことで、何か切り離してのアイデアとしては興味があるけれども、全体の道路政策としては新たなる問題を引き起こす可能性がある。だから将来はもう少しやはり道路を緑のある——土地の取得が困難なので、よその国に比べてむずかしい点はあるけれども、すでにそういう例はよその国でもあるのですね。そういうことで、将来の問題としては、全般的にということをいまやることはむずかしいにしても、部分的にでもそういうアイデアを取り入れてひとつやってみるということはやはり一つの考え方だと考えております。
  86. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、アイデアは私のほうから提案したみたいなことを言っておりますけれども、もうすでにたくさんなデーターが出ているわけです。環境庁でやはりこういった新しい方法を取り入れなければ、いつまでたっても交通公害ですか、これはなくならないと思う。だから私たちが環境庁に特に申し入れをいたしましたのは、緑を大量に残すようにしてもらいたい、植樹してもらいたい。というのは御承知のように、かつてヨーロッパでローマ帝国が滅亡したその背景には、森林に火をつけて全部焼いてしまったとかあるいはまた放牧によるところの無秩序な伐採があった。またイタリアやスぺイン、フランスの諸国がその復元に立ち上がっているが、それは潜在の自然植生をも定められないほど——要するに自然の植生ですね。植物や生物、そういうものが破壊されて復元がなかなか困難をきわめておる、こういうことをいっております。そこでヨーロッパにおいては、アメリカもそうですが、特にドイツなんかは力を入れまして、二百年前から植生図——植物、生物の潜在の植生を調べましてきちっとした図面になっておるのですね。開発のときにはこれをもとにしなければ開発をしてはいけない、そういう規制になっているわけです。ですからこちらに道路をつけよう、これは非常に安くつくかわからないけれども、この植物がだめになるとこっちまで連鎖しておりますから、そういうことでこっちへ回すとか、そういうふうな科学的な調査に基づいて非常にきびしい開発をやっています。わが国では、悲しいことには文部省の文化庁で天然記念物の付近を少しやっているだけで、一年で二百万円ぐらいの予算でしょう。できないですよ。これから手をつけなければ、日本列島改造なんてやったらめちゃくちゃになってしまいますよ。そういった面から考えてみましても、そこからでも手をつけていくべきである。すでにデーターとして出ておりますものでは、アカマツは一ヘクタール当たり三十二トンのじんあいを処理する。またヨーロッパブナは六十八トンのろ過能力を持っている、こういう科学的な証明ができておるのです。また人間の酸素必要量は一日一人当たり五百ミリグラムである、こういうこまかいデーターがいろいろ出ておるわけです。  したがって、これをやるということは相当予算とそれから植生図——こういう生態学の先生、これも少ないですね。これの養成も必要でありますが、そういうことを考えますと、まず当面の問題ですが、通過交通によって毎日悩んでいる人たち、しかも最近は国道の上にバイパスをつけまして、ちょうどふたをしているでしょう。排気ガスも騒音もみんな外へ逃げないようにしている。特に四十三号なんか、あれは万博のときに突貫工事をやりまして、いま阪神道路公団ではそれを大阪まで延ばそうとしておるが、それがあるからみんな反対で、とうとう裁判まで持っていっていまとめておりますよ。  こういうことを考えますと、やはり環境庁のほうで考えて、こういった抜本的な——抜本的といいましても、工場やあるいは田園地帯は必要ないと思うのですよ。まず住居地帯だけでも一車線ぐらい犠牲にしてそういうふうにきちっとやらなきゃ、これは将来しんぼうできないんじゃないか。と申しますのは、いま大気保全局長が車を制限するんだと言う。車を制限するんであれば、道路を狭くしたってかまわないんですからね。四車線もあるんですからね。そういう考え方に立って推し進めていく。どこか一つそのサンプルをつくって徹底的に試験する、こういうような長官の英断が必要だとぼくは思うんですが、いかがでしょうか。
  87. 三木武夫

    ○三木国務大臣 前半の問題は道路全体の政策とも関連しますから、いますぐそういうふうにやるということの現実的困難性はありますけれども、ある地域で実験的にやってみるということは私も賛成でございます。
  88. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、まあこれはあっちこっちあろうと思いますけれども、まず私がいま提案しているところの四十三号線ですね。これはあなたもお帰りになるとき通るから御承知だろうと思うのですが、ここらあたりでひとつ、そういうようにこうすればこうなるんだということがなければ住民皆さんも納得しない。納得しないから裁判にかけて次の工事をとめている、とめているからまたよけい車が停滞する、これを繰り返しているんです。まあ、各省庁間の調整もあろうと思いますけれども、ひとつ実力大臣の力によって——あの道路はあれですよ。前の河野さんが実力あったというんで、めちゃくちゃにあわててやったのですからね。そのくらいのあれですから、今度は三木長官の副総理としての実力を発揮して、そういう提案を取り入れてここでひとつ実験をやってもらいたいと思うのですが、どうですか。もう一ぺんはっきりお答えいただきたい。
  89. 三木武夫

    ○三木国務大臣 具体的な道路を指定してお答えをするということは軽率のそしりを免れないと思いますが、ある地点でそういうアイデアを生かすようなことがあるということについては、やってみることには私は賛成である。そういうお答えの限度以上に、この道路はあの道路はという具体的なことでお答えをするのは適当でないと思います。
  90. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたのほうは適当でないかもしらぬけれども、こっちは適当なんですよ。だからまあ一応どこかで——どこかでというとおかしいけれども、必ず実験をやってもらう、こういうふうに受け取ってよろしいですね。  そのときにもう一つ提案がございます。樹木の立ち枯れといいますか、公園なんかよく芝生が枯れてしまったり、あるいはまた、これは全部データがあるんですけれども、街路樹が相当立ち枯れておるわけです。それで、これを見ますと、排気ガスによって倒れているというのはほとんどないのです。原因は水なんですね。御承知のように皇居の前の公園でも、ごらんなさい、みな道路より高くしましてね。それでその上に土を盛って、上に芝生を植えているでしょう。それをまたほかから買ってきて芝生を植えかえている。それで上から水をやっている。路面に落ちた、道路に落ちた雨水が全然入らないのです。私、ずっとヨーロッパのほうを回りますと、公園は道路より少し低いです。道路に落ちた水が公園にどんどん入りまして、だから芝生の中に幾ら入って遊んでもかまわないようになっていますね。日本では、芝生の中に入るべからずといって水やっていますね。だから雨水の利用というものが非常に欠けている。こういう面も私は環境庁として——まあ、これは建設省の仕事といえば仕事でありますけれども、そんな面も勘案して勧告もし、やることが必要であると私は思うのです。  なるほどわが国は昔から水は非常に豊富だ。だから公園が少し高くてももったと思うのですが、最近は非常に水が少なくなってきて、地下水がどんどん少なくなった。ということは道路が舗装されて水が入らなくなっておりますね。それがみんな下水に流れてしまう。それから舗装されたところも街路樹が立っておるわけですが、そのまぎわまで舗装しているわけですから水がない。ぼくがチェコのプラハに行きましたときには、まぎわまで舗装せずに、相当大きなところまで舗装されてありますけれども、あと金網か何かで上から囲って、そこは土になっておりますね。そこへ雨水が全部入れるようになっている。こういうところの配慮が日本は現在どうもないんではないか。またできるだけ土をそのまま残すことが大事なのに全部舗装してしまうわけですね。  京都の衛研の調査ですか、研究を見ますと、土の中でバクテリアが排気ガスやそういうものをどんどん食べて、相当浄化する、こういうデータも出ているわけですが、こういった問題は、都市の環境をよくする、自然浄化の力をつける一つの大きな原因になると私は思うのです。したがって、そういった面も長官のほうで配慮をし、皆さんにも言って研究をしてもらう。そして都市計画あるいはいろいろなところに公園を計画するときにそういった配慮をするような姿勢が望ましいと思うのですが、いかがですか。
  91. 三木武夫

    ○三木国務大臣 樹木に対して排気ガスの影響がないという岡本委員の説にはにわかに賛成いたしかねますが、地下水関係というのは非常に大きな影響があるんでしょう。そういうふうなことも将来きめこまかく配慮して日本の樹木を育てていこうという考え方がないと、次第に枯渇をしていくわけでございますから、御指摘のような面も今後考慮しなければならぬ問題だと考えます。
  92. 岡本富夫

    ○岡本委員 そんな頭でいますから——樹木に対する排気ガス関係というものは賛成しかねるというのは、これは私は間違いだと思うのです。あなた、じゃそういうデータを持っておりますか。私はこまかいデータを全部持っていますよ。いま時間がありませんからね。これはぽっと感じただけじゃいけないと思うのです。各所のデータを——私、一部だけ国会で取り出したわけですが、東京都の美濃部知事は、実は私どもの調べたものを提案したのですが、確かにこれはそうであるということで、今後取り入れていこうというような姿勢になっております。ですから、突然のことでありますから知識があまりなかったのかもしれませんが、排気ガスと樹木の関係については、これは研究に値するし、また取り入れる大きな要素になろうと私は思うのです。  中国のほうへ参りますと、工場の付近はどんどん森林をつくって、植樹して、そして出てきた排気ガスをそれによって浄化していこう、もうそういうことをするのです。だから三木長官がそういう頭ではちょっとぐあいが悪い。その点いかがですか。もう一ぺん考えてください。
  93. 三木武夫

    ○三木国務大臣 科学的な調査という面で、そういう問題についてはいろいろ検討しなければならぬ問題があるんでしょうが、私は常識的に考えておってお答えをしたわけですが、これは、いままでそういう問題について調査をしたデータもありますから、そういうことで十分検討しなければならぬと思います。
  94. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ、前向きにこれは取り組んでいただくということにしまして、そこで、ちょっと日にちを忘れたのですが、環境庁長官、これは小山長官のときでありましたが、芦屋市の市長さんがデータを持ってきまして、これは芦屋も西宮も、あっちこっちそうだと思いますが、交通公害によって起こったぜんそくあるいはまた肺気腫、こういうものも公害病にひとつ認定をしていただきたい。そのとき環境庁長官としてはこういうお答えだった。これはたいへんなことだから、いますぐというわけにいかぬだろうけれども、宿題にさしていただきたい。宿題にしてもう半年になるんじゃないかと思うのですが、宿題がどないになったか。これは何だったら、長官のほうがぐあい悪ければ事務当局からでも……。
  95. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 自動車排気ガスと人体の健康被害、この関係についてその後どういうふうな検討をしておるかという御指摘だと思います。  私どもは、自動車排気ガスの問題につきましては、一応一酸化炭素と炭化水素と窒素酸化物、この三つを対象にやっておりますが、一酸化炭素についてはすでに環境基準をつくりましてその規制方式に進んでおりますが、炭化水素と窒素酸化物についてはなお環境基準——窒素酸化物のほうをいま先につくろうとしております。自動車に対しては、将来マスキー法に準じた施策をとろうとしておりますし、炭化水素においても一般的な措置として次々に手を打っておる最中でございます。ただ、自動車排気ガスだけの人体影響ということになりますと、この問題は、非常に急性の毒性の問題からいえば一酸化炭素だけになりますが、慢性毒性の問題とからみまして、しかも複合汚染の問題あるいはその住んでおられる場所の問題等々がからみますので、一般的な閉塞性呼吸器疾患と自動車排気ガスとの因果関係だけの問題になりますと、これは非常に複雑になってまいります。そこで、現在私どものほうとしては、目下とりあえず何から手をつけておるかといいますと、自動車の排気ガスの中の、いま言いましたガス体以外にいろいろな微粒子の物質がございます。これの中に有害なものがいろいろこまかく検出されるようになってまいりましたので、それの検討から現在入っておるというのが実情でございます。
  96. 岡本富夫

    ○岡本委員 実はこういう道路は、もと住宅地だった。特に芦屋とか西宮とかいうのは田園住宅地だった。そこに道路ができてから病気になった。付近の道路から約五十メートルくらいですか、大体五軒に一人くらいそういう人たちがいる。まだ完全に全部はやっておりませんけれどもね。それで移るに移れないというようなことです。これは各所にあるんではないかと思うのです。この前、いつだったか、私、当委員会で話したときには、損害賠償保障制度ができたらそれを入れるんだというような話、そういうようにお聞きしたのですが、そうじゃなかったのですか、いかがですか。
  97. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 その問題はおそらく窒素酸化物の慢性海性、慢性的な影響のことからそういう呼吸器性の疾患が一応考えられるので、将来の課題としてこういう窒素酸化物の慢性影響というものが問題になるであろう、こういうふうに解釈されたものかと想像いたします。
  98. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣現実になるほどぜんそくとかそういうものは体質にもよりましょう。しかしそういうのは山の中にも、自動車の通らない、排気ガスのないところにもいましょうけれども、それは体質的にもそういうものがいましょうが、いままでそういうことがなかったところに、こういう大量の、一日七万台以上の車が通って排気ガスを出す。それが原因でなったということを疫学的に医者が、要するに医師会あたりで証明できればやはり救済してしかるべきではないか、こういうふうに考えるのですが、その点についていかがでしょうか。
  99. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 先ほどのお答えに追加いたしますが、現在の賠償制度問題等については当然窒素酸化物の慢性影響の問題等についても考えざるを程なくなりますので、この点につきましては先ほど先生おっしゃいましたようないろいろな因果関係のデータが整備され、その関係が確立していけば当然将来の問題として見ていかなければならないことだと考えております。
  100. 岡本富夫

    ○岡本委員 何か窒素酸化物ばかりにこだわっているような感じを私受けるわけです。一酸化炭素だって病気になるのですよ。ですからあなたのほうでは——これは大気保全局長が答えることじゃないんだ。あなたの所管と違うでしょう。長官、これは大気保全局長のところと所管が違うのですよ。その人に聞いたんじゃ話にならない。
  101. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 一酸化炭素もあると先生おっしゃいましたが、一酸化炭素は急性毒性の非常に強いもので、これに対する疾病のことでございますので、たとえば先生おっしゃったぜんそくとの関係では、一酸化炭素は関係ございません。ぜんそくという呼吸器系の疾病の名前が出たものですから、これは自動車排気ガスの中では窒素酸化物でございます。したがって、この窒素酸化物の慢性影響の問題が将来疫学的なことで因果関係等確立すれば、当然この問題もその対象疾病として考えざるを得ない、こういうふうに私申し上げたのでございます。
  102. 岡本富夫

    ○岡本委員 われわれ国民は一酸化炭素が来た、窒素酸化物が来た、そんな勘定をして吸っているのじゃない。車が走りだしてから、通過交通がどんどん多くなりだしてから、そういうところに五軒に一人ずつの病気が起こっているというのです。ですから窒素酸化物の問題がきちっとしなければ救済しませんよなんて、そういうことよりも、現在たくさんの子供がどんどん病気になっているわけでしょう。前はなかった、前は別荘地帯ですからね。そこへ大きな道路がついて、七万台も七万五千台もどんどん、夜中じゅう走っているのですよ。終夜走っている。ですから、そういった人たちに一日も早く救済の手を差し伸べてあげるということが血の通った政治ではないか、こういうことで、この点について検討をして公害病に認定していけるようにしよう、あとの窒素酸化物の問題は関係ないです、病気になった国民から見れば。ですから、あなた専門的にお答えになったと思いますが、政治的な配慮として大臣からこの点もお聞きしておきたい、いかがですか。これは宿題になっておるのです。
  103. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは都市型の大気汚染、これによる健康被害というものはいろいろなものが複合されるわけですから、範囲を広く考えるという態度でまいりたいと思います。
  104. 城戸謙次

    城戸政府委員 先般も先生の御質問にお答えいたしましたのでございますが、現在検討いたしています損害賠償保障制度は当然非特異的な疾患を対象とするわけでございます。その際、たとえば硫黄酸化物だとか窒素酸化物だとかいろいろな物質が関与してくるわけでございますが、これは疾病の指定をし、地域の指定をしました上で、認定をするわけでございますが、その汚染のレベルを検討します場合に、当然その場合に固定発生源とともに移動発生源からの分が相当の寄与率を持っておることは明らかでございまして、したがいまして、そういう地域の指定につきましても、当然移動発生源からの分も前提にこれを行なわざるを得ないし、同時に徴収についても移動発生源からの徴収もしておきませんと制度の仕組みができないということでございます。現在の健康被害救済特別措置法ではそういう仕組みになっておりませんので、移動発生源を主にしたような地域だけを指定せよと言われてもできないのが現状でございます。この間御説明しましたのは大体そういうような考え方でございます。
  105. 岡本富夫

    ○岡本委員 現在の救済法をやはり改正しなければならぬと思いますが、今度賠償保障法ができてきたときには、こういった交通公害によって発生した病気と疫学的に判定されるものは、これはすべて私は救済すべきだ、こういうふうに思うのですが、もう一度それをはっきりしてください。
  106. 城戸謙次

    城戸政府委員 ただいまの点は全くそのとおりでございますが、ただ非特異的疾患でございますから、当然汚染のレベルが相当のレベルになるし、有症率が相当のレベルになるということが地域指定の前提でございます。この点については今度の予算にも給付関係、徴収関係合わせまして一億近くの調査費が計上されております。こういう調査費をもって制度が発足されますと、予定されている四十九年度までにそういう調査も完了しよう、こういうことで予定しております。
  107. 岡本富夫

    ○岡本委員 大体わかってきました。  それで、地域を指定することが大事だと思います。だからこの指定も、道の両側何メートルとか、そういうことになろうと私は思うのです。そうでなければ、道から五百メートルも千メートルも調査は必要ないわけです。ですから五十メートルだとかあるいはまた百メートルとか——五十メートルでしょう。これくらいのところ、これはぼくも調査をしないとわかりませんが、そういった指定のしかたになろうと思うのです。そこで四十九年度からこういう問題を取り上げるということですからそのくらいにしておきます。  そこで、交通公害についていま中国縦貫道路をつくっておりますが、ここに、西宮市の名塩というところ、もともと静かなところでございまして、大阪伊丹空港の騒音に悩まされて、向こうを立ち退いてこういった静かなところに行った。ところが最近になってここに中国縦貫道路ができてそこにサービスエリアをつくろう、こういうことでいま盛んにやっておりますけれども、まず一つは、この名塩という場所はちょうどまわりが山でありまして盆地になっている。ここに三百台も車がとまって排気ガスを出す。御承知のように、車が走っているときのガスよりもとまって出すところのアイドリングというのですか、約八倍の排気ガスが出る、こういうふうにいわれております。したがって、この点についての配慮がどうなっておるか。しかもまた小学校や幼稚園がすぐそばにある、住宅もすぐそばにある。こういうところにこんな大きなサービスエリアをつくるということは、これはけしからぬではないかというのが住民皆さんの御意見です。これについて建設省の西原監理官ですか、あなたはどういうふうにお考えですか。
  108. 西原俊策

    ○西原説明員 高速道路のサービスエリアは、先生御承知のとおり運転者あるいは同乗車の休憩とか給油あるいは食事等のための施設でございまして、交通安全の面から必要な施設でございます。高速道路のサービスエリアというのは大体五十キロに一カ所というふうな間隔をもちまして設置しているものでございます。場所といたしましては交通安全の面から平面、縦断あるいは扇形、こういったものの良好なところに設置する必要がございます。そのほか地質、地形、こういったものも十分考慮いたしまして、インターチェンジ、こういったものも考えて場所を選定するわけでございます。六甲サービスエリアにつきましては、東のほうは東名高速道路の大津のサービスエリアから約六十キロでございまして、西のほうの中国縦貫道の加西のサービスエリアから約五十キロの地点であります。この六甲の山地は先生御承知のとおり地形、地質の点いろいろ問題がございまして、なかなか適当なところがないわけでございます。それで、まあこういった環境の問題でございますので、いろいろ環境保全対策、こういった面を考えているところでございますけれども、もよりの人家は、本線からいいまますと百メートル離れてございますけれども、サービスエリアの端からですと二十メートル近くの距離にございます。それから名塩の小学校、これは本線から二百メートルほど離れてございますけれども、サービスエリアからは百メートルくらい離れておる、こういうふうなところでございますので、環境保全の対策の面から、遮音壁の設置あるいは先ほど先生指摘のありました植樹、こういったことを実施いたしまして環境保全につとめてまいりたい、こういう考えでございます。
  109. 岡本富夫

    ○岡本委員 西原さん、あなたはこの場所を見ましたか。
  110. 西原俊策

    ○西原説明員 昨年一ぺん現地を見さしていただきました。
  111. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたはここを見てサービスエリアの設置に非常にいいところだ、こう感じておるのですか。それともぐあいが悪いと感じておるのですか。どっちですか。
  112. 西原俊策

    ○西原説明員 六甲の付近にサービスエリアを設置するということになりますと、ほかにいろいろな技術的な条件がございますので、それらを勘案いたしますと名塩、こういったところでいろいろ環境対策を実施しながらやっていく、ほかに適当なところがあればさらに望ましいわけでございますけれども、まあこういった点種々勘案いたしますと、相当環境対策を実施してサービスエリアを設ける、こういったことにならざるを得ないのじゃないかというような感じでございます。
  113. 岡本富夫

    ○岡本委員 西原さん、要するに環境対策を実施しなければならぬようなところがもうそもそもだめなんです。きまっておるじゃないですか、そうでしょう。こんな住民の、しかも住民はたいへんな騒音やあるいはまた排気ガスで困るという考えでみなあそこへ来た、あそこはそういう人が多いのです。しかも先ほど私が申しましたように盆地になっている海抜約百七十メートルのところ。そして四万七千四百平方メートルですか、こんな大きなところに車を大小合わせて約三百台ですよ。しかもあなたがおっしゃったように壁をつくるというが、伊丹の飛行場に行きましても、排気ガス、騒音を出すのにそんな壁をつくったくらいで何がそんなもの防げますか。またもう一つの面から見ますと、百七十六号線がすぐそばに来ているわけです。ここが毎日もう道路交通で排気ガスがものすごい。また上のほうから中国縦貫道路ができて、それでここへ車がとまってそこからじゃんじゃんやる。もうそこにおれなくなりますよ。私はここの住民皆さんが反対されるのは無理ないと思うのです。これについて、私は道路公団理事長を呼んでおったのだけれども三野さん、あなたの考え方はいかがですか。
  114. 三野定

    三野参考人 ただいま御指摘の問題につきまして、私ども考えを申し述べたいと思います。  監理官からも御説明申し上げましたように、サービスエリアは高速道路にとって必要な施設であると私ども考えておりますが、その位置関係それから地形、それから高速道路本線のいろいろな技術的な条件、そういうものから見まして、この名塩付近より以外にあの辺ではないという判断であそこに持ってまいったわけでございます。  公害問題につきましては、排気ガスにつきましては現在私どもの知り得ますいろいろな科学的な方法によりまして推定をいたしましたところ、大体御心配になるような事態にはならないというふうに判断をいたしておるわけでございます。それから音につきましては、一番近い民家というのがサービスエリアの一番端っこから約十七メートルのところにございます。なお本線からは百十メートルほどのところにございまして、騒音的な計算養いたしますと、先ほども監理官から申し上げました遮音壁を建てる必要があろうというふうに考えておりますが、これはもちろん排気ガスのためではございません。それから百七十六号との関係でございますが、百七十六号につきましては、四十六年度の交通調査によりまして昼間の十二時間におきまして、現在通っております車の数は約一万一千台でございます。これが夜間の分を含めますとおよそ一万二、三千台になろうかと思います。私どもの高速道路の交通量の推定におきましては、この百七十六号からもちろん交通が転換することを考えております。で、百七十六号線はただいま申しましたように約一万二、三千台の車が通っておりまして、非常に名塩の方も困っておられます。それは交通安全の問題並びに騒音問題もあろうかと思いますが、これはいわば名塩地区の生活道路でもあり、幹線道路でもあるわけでございますのでなかなか手のつけようもない。しかもこの一万二、三千台という交通量は、この地区の百七十六号線の車道幅員が六メートル五十でございまして、私どもの適当といたします交通容量のおよそ倍が入っているという、先生御存じのとおりの状態でございます。  私どもはこの交通を軽減するためにも中国自動車道をつくっておるわけでございます。この交通の約六割が中国自動車道に転換するというふうに考えておるわけでございます。その意味におきまして、まさしく私どもの中国自動車道、これはこの名塩地区の現道の公害対策という面で進められている交通対策、並びに交通公害対策というふうに申し上げてよろしいかと私は思うのでございます。  なお今度は高速自動車国道になりますと、やはりそれ自体の持つ騒音の問題というようなものがございますが、これは新しい道路でございますので対策も立てやすいわけでございます。先ほど申しましたような私どもの現在知り得る科学的な知識で考えますと、遮音壁等で騒音の対策はできる、こういうふうに考えておるわけでございます。  またサービスエリアがこの部分にはくっつくわけでございますが、サービスエリアは車が休むところでございまして、アイドリングをやるような状態のところではございません。この辺はやはり住民の方に説明が足らないかということを反省をいたしておるのでございますけれども、現在私どもがすでにつくっております高速道路におきましてサービスエリアが十四カ所ございますが、こういう問題が起こっていないということをひとつ御銘記いただきまして、われわれもちろんできるだけ予防措置として、公害問題に対しましては、排気ガスに対しては植樹の問題、騒音に対しましては遮音壁というような手を尽くしていきたいと思います。どうぞ御理解をいただきまして、ひとつお願いをいたしたいと思います。
  115. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうするとあなたは、ここのサービスエリアは最高のところにあると思っているのですか。そこにつくるのが一番いいところにつくっていると思うのですか。
  116. 三野定

    三野参考人 一番いいところにあるという意味は、いわゆる地域の中で一番必要な地域と申しますと、先ほど監理官から御説明申し上げましたように、大体サービスエリア間隔五十キロ前後、最大六十キロくらいのところで求めるのが適当であろうというふうないままでの基準をつくっておりますけれども、そのいわゆる適当とされる位置、そういう間隔の付近におきまして求めますと、地形的な条件、それから本線の技術的な形、そういうものから見ますと、もちろんそれはどこへでも全国見渡せばということになれば、これが最適ということは申せないと思いますけれども、あの付近におきましてはまああそこが一番いいのじゃなかろうか、やむを得ぬことではございますけれども、一番いいところじゃなかろうかというふうに私は思っているわけでございます。
  117. 岡本富夫

    ○岡本委員 ちょうど盆地みたいなところですよ。あなたのほうは道路をつくるために、ちょうど五十キロですか、そのくらいだから、あなたのほうではいい、こう思うかもしれませんが、そこにおる住民皆さんから見れば、これはそんなところにつくられては困るわけです。しかも大体出てくるのは排気ガス、この中には一酸化炭素ですか、これは比重が一ですね。それから二酸化窒素は比重は一・六、オゾンは一・七、プロパンが一・五、こういうように一つずつ調べますと、どうしても排気ガスというのは下へずっと行くのです。私の家もちょうど国道のすぐそばになっておりまして、家がこう下になっておるんですね。そこでずっと排気ガスのくさいのが入ってくるわけです。隣の家の人なんか応接間にいると絶えず頭が痛いと言っています。こういうようなところにおいて、今度はかりに三百台の車を置いて、アイドリングしないと言いますけれども、車というのはガソリンを入れてふかして、それから出て行くのですよ。必ずアイドリングして出なければならないのです。とまってこうあれするのですから。走ってきてパッととまってエンジンをパッと切って、またつけて走って行く、そんなわけにいかない。  しかも下のほうはそうであり、今度は上にもたくさん家があります。これは下で毎晩、昼夜ですからずっと朝まででしょう。いままで静かだったところが、こんなところにサービスエリアを持ってきて、次から次と車が来て、そこでまた食堂も昼夜やるのでしょう。夜中、夜通しやるのでしょう。これはたまったもんじゃないですよ。それが最適であるというのだったら、あなたは普通の市街地のことを頭に入れてもらったんじゃ困るのです。ここはちょっと言えば別荘地みたいなところです。みんなそういう騒音あるいは排気ガスをのがれてここに来ているわけですよ。そういうところに今度はそういう元凶を持ってこられたんじゃ話にならないと思うのです。もう一ぺん再検討してどこかに寄せてもらわなければいかぬ。もっと人家の少ない、あるいは小学校や幼稚園のないところに持ってくることが望ましいと思うのです。  次に、ちょうどあなたのほうの中国自動車道路をつくっているときに相当な山くずれがしておりますね。そして墓石が倒れたりあるいはまた家にひびが入ったり、こういうようなことも起こしているではありませんか。しかもあなたのほうの下請けをやっている会社のダンプカーもどんどんその中国縦貫自動車道路の工事のために入っているのです。いま一万二千台ですか、この中にあなたのほうの工事をする車も入っている。これはたいへんなんです。それが名塩橋のたもとの信号のところでハンドルを切りそこねて電柱に激突してガードレールの端をへし折った。そして、よその家をこわしておりますね。これが昨年の十一月二十五日の午前十一時です。電気が停電し、また車が渋滞し、宝塚から名塩まで二時間もかかった。もしも時間がずれていたら保育園やあるいは幼稚園、小学校に行く子供たちの群れに突っ込んでいたと思う。このときにあなたのほうでは、公団の皆さんへ電話したところが、みな慰安旅行に行ってしまって、いなかった。こういう監督不行き届きなことをいまやっているじゃありませんか。この点についていかがですか。
  118. 三野定

    三野参考人 昨年末おっしゃるような交通事故を起こしました。まことに御迷惑をかけまして申しわけないと思っております。私どももその後住民の方と、こういう問題を避けるために具体的にはどういうふうにするかというようなことにつきましても、現場で御相談をいたしまして、御承諾を得ながら進めておるわけでございまして、今後とも十分に注意をいたしたいと思っております。  それから地すべりのことでございますが、地すべりを起こしましたのは名塩よりももっと神戸よりの地点でございます。多少油断をいたしまして、小さな地すべりを起こしました。直ちに対策を講じまして、現在おさまっているというふうに報告を受けております。もともと注意をいたしておったわけでございますけれども、ちょっと油断をいたしましたので、今後とも十分に気をつけていきたいというふうに思っております。
  119. 岡本富夫

    ○岡本委員 大体工事もずさんですよ。私もこの工事をしておる人たちのところをずっと回りましたけれども公害とか、あるいはまたよその民家に迷惑をかけるということに対する費用というのは全然ないのですよ。あなたのほうから下請に出してまた下請に出しておるわけですからね。非常にその点についてはずさんでありました。しかも、これから起こってくる問題というのは、あそこにサービスエリアをつくったために、水系と申しますか、あるいはまた危険に対する——これから雨期ですね。こういうときにどうなるのだろう。非常に心配です。ですから、これはもう一度あなたのほうで検討をして、そしてほかへ持っていくところがあったら持っていく、持っていかなければならぬと私は思う。こんなところではとても承服ができない。  そこで、文部省の方にお聞きしますが、あなたのほうでは学校あるいは幼稚園——いままで何もなくて非常に静かだったところにこういうものができて、どういう被害があるだろうかというのが住民の声であり、住民感情が非常にきびしいところです。あなたのほうの考え方はいかがでしょうか。
  120. 菅野誠

    ○菅野説明員 ただいまのお話につきまして、具体的な例をまず申し上げますと、高速自動車道の建設等にあたりましては、原則的に、最初に文部省に協議するということではなくて、地元の市町村と協議されるのが第一段階になっております。したがって、路線の決定の際には十分市町村と協議がなされることがたてまえであるということが第一点でございます。今回のものも協議なされているはずだと思うのでございますが、なお、騒音あるいは大気汚染等の障害が起こった場合どうなのかという第二の点になるわけでございます。その点に関しましては、原因者が明らかな場合には、この場合にはある程度明らかなものと思われるわけでございまして、その原因者に防止措置を講じてもらうことを原則としております。なお、原因者が明確でなくて、教育上著しい障害があるという場合につきましては、設置者の要求によりまして、二重窓でありますとか、あるいは場合によりましては移転等の、予算措置を講じまして補助をしたい、このように考えておるわけでございます。
  121. 岡本富夫

    ○岡本委員 実はいま私が話しておりますサービスエリアにつきましては、名塩というところなんですが、いままでは非常に環境がよくて、たとえばちょうどいなか町みたいなものですね。ですから、京阪神で環境の汚染で困ったという人たちがそこへみんな逃げてきたわけですよ、移転費をもらったりして。そこへこういうサービスエリアなんか持ってきましてまたよごそうというわけです。長官、先ほどからお休みになっておったからわからぬかもしれぬが、ひとつ考え方をお聞きしたい。
  122. 三木武夫

    ○三木国務大臣 道路を建設する場合に、環境破壊をできるだけ伴わないような道路建設をしなければならぬわけでありますから、高速道路の問題も十分検討いたしてみることにいたします。
  123. 岡本富夫

    ○岡本委員 何をおっしゃったかさっぱりわからぬ。  それで最後に建設省の西原さん、それから道路公団三野さん、そこにサービスエリアができて、そこから出るところの排水、あすこには西宮市としては下水道はまだ昭和五十年までできないわけです。そこまではまだむずかしいのだから、そこへどんどんそういう排水を流されてはどうしようもないのです。また水の問題もあります。あの名塩というところは水がなくて、夏になるとあの部落の人たちは節水しなければならぬ。いま丸山ダムなんか計画しておりますけれども、そういうような水のないところへ、そして排水で皆さんに迷惑をかけるようなところへなぜ設置しようとするのですか。だから、お二人の方にもう一度再検討を要求して、私は一応時間ですから終わります。
  124. 佐野憲治

    佐野委員長 木下元二君。
  125. 木下元二

    ○木下委員 私も、いま岡本委員が質問されましたサービスエリアの問題の質問を予定いたしておりますので、重要な問題であると思いますので質問をいたします。  日本道路公団にお尋ねをいたしたいと思います。  この六甲サービスエリアの問題につきまして兵庫県の西宮の市議会が公団に対して申し入れを行なっております。こう言っております。「昼夜の別なくサービスエリアを利用する車の騒音、振動、排出ガスのため、住民の健康阻害、教育施設の環境悪化、農作物への悪影響、河川への汚水流入、地すべり等の被害を誘発し、憲法が保障する健康かつ快適な生活を営む権利を侵す」、こういって六甲サービスエリアの撤去を強く要求いたしまして、二月二日に日本道路公団等に申し入れを行なっております。公団はこの問題について、この申し入れに対してどのような検討をされたでしょうか。
  126. 三野定

    三野参考人 ただいま木下議員からお話のございました西宮市議会の二月二日の申し入れというのはちょっと私どものところへまだ届いておりませんですが、聞きますところによりますと、たぶんこのことだろうかと想像いたしますのは、西宮市議会の御決議だと思いますが、それを受けまして市長から何か文書をいただくということになったやに聞いております。それに対する御回答も大阪支社において用意をいたすということになっているように伺っております。
  127. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、その市長から私がいま申しましたような趣旨の申し入ればあったわけですか。
  128. 三野定

    三野参考人 二月二日付で確かに市議会の議長からいただいております。これは昨年の九月三十日に市議会で御決議になったものでございまして、これは昨年の九月三十日以来現地において折衝いたしておりますので、その結果を待ちまして現地において折衝いたさせております。
  129. 木下元二

    ○木下委員 その折衝というのは、いまあなたが言われたように昨年の九月から折衝されておるということでしょう。私が伺っておるのは、そのいまあなたが言われた市議会から二月二日に申し入れを行なった、それは認められたわけです。その申し入れに対してどのように検討されたか伺っているのです。別にされてなかったらされてなかったでけっこうですよ。
  130. 三野定

    三野参考人 二月二日にいただきました文書に対しまして、まだそれに対する返事はいたしておりません。
  131. 木下元二

    ○木下委員 その返事はされていない。内部のほうで御検討されておるのですか。検討も特にされておりませんか。
  132. 三野定

    三野参考人 サービスエリアの撤去の問題でございますけれども、これにつきましては昨年来の問題でございまして、何回も繰り返し検討いたしておるわけでございますけれども、まだ私どもいまのところ動かせるほかに適地を発見し得ないでおりますし、そういうことで、現在支社におきまして西宮市並びに市議会と折衝を重ねながら対策を練っているわけでございます。そういう状況でございます。
  133. 木下元二

    ○木下委員 ちょっと私の質問をよく聞かれて、私の質問にだけお答え願いたいのですが、私はさっきから聞いておるのは、二月二日に申し入れを行なっておる、その申し入れに対して特に検討されたことがあるかないかを伺っているのです、前からどういう経過があったのか、支社でどういう検討をしたのかということでなくて。その申し入れに対しては検討がなかったわけですね。イエスかノーで答えてください。
  134. 三野定

    三野参考人 まだやっておりません。
  135. 木下元二

    ○木下委員 そこで次は、西宮市の教育委員会が昨年の九月六日に日本道路公団大阪支社長あての要望書でこう言っております。  「貴公団が附帯施設の名塩地区サービスエリア建設にあたり、何等、当委員会に事前の協議連絡をなされないまま突如として着手されたことは、本市教育環境保全整備について直接市民に全責任を負う当委員会として誠に遺憾に存ずるところであります。」このエリアに隣接する名塩小学校、名塩幼維園、名塩公民館等の教育環境を破壊すると抗議をするとともに、「公団は当地域に、種々問題のあるサービスエリアの設置がなされることは、全く地元の教育環境保全整備に対する念願と努力を無視したものであり、エリア設置を勇断をもって中止してほしい。」このように申し入れを行なっております。教育環境の保全につきまして地元市民の全責任を負っております市教育委員会意見を事前に聞かれなかったのはなぜでしょうか。特に理由があったのでしょうか。
  136. 三野定

    三野参考人 私ども市の行政当局並びにこの名塩地区の対策協議会等といろいろ折衝をいたしまして御理解を得たことはやっておりますけれども、教育委員会と直接やってはおりませんでした。いままでそういうやり方をいたしておりませんでした。
  137. 木下元二

    ○木下委員 そこで、次は文部省に伺いたいのですが、現在名塩小学校沿いに国道百七十六号線が走っております。そしてここ二、三年の間にこの百七十六号線は大型車、特にこれは中国縦貫自動車道路の関係の車でありますが、これが急激に増加をいたしております。そのために昨年の児童の身体検査の結果を見ますと、頭痛やいらいらが非常に増発をいたしております。頭痛、いらいらを訴える児童が急増しております。しかもその地域、この百七十六号線から二百メートルないし三百メートルくらいしか離れていないところにこの中国縦貫自動車道路をつくって、しかもサービスエリアまでを建設しようとしておるわけでありますが、このような実態について文部省としてどのように考えられておるんでしょうか。
  138. 菅野誠

    ○菅野説明員 お答え申し上げます。  教育環境が阻害されることにつきましては文部省としても、被害者と申しましょうか、はなはだ遺憾だと思っております。それでこのような場合、教育環境を悪くするようなことにつきましては、できるだけ事前に地元においてよく解決するようにという指導をしておりまして、具体的な路線決定等の際には十分市町村と協議をしていただきたいというふうに申しておりますし、教育委員会のほうにもそのような指導はいたしております。  それで先ほど岡本委員のお答えにも申し上げたところでございますが、一般的に申し上げまして、このような騒音でありますとか、大気汚染とか、原因者が明らかなものにつきましては、その原因者のほうにおきまして防止措置を十分講じていただくというのを第一次的の原則にいたしております。なお原因者が明確でなくて、かつ教育上著しい支障があるという場合に、設置者の要求がありますれば、二重窓の設置等障害防止の対策につきまして、文部省におきましても公害防止対策の予算措置を講じまして補助を行なうというのをたてまえにいたしております。  それから先ほど御指摘がありました百七十六号線との関係でございますが、これにつきましても教育委員会からの報告によりますと、四十三年度にブロックべいを設置いたしておるようでございます。それから四十七年の八月に二、三階の窓をアルミサッシに改造したというような措置は講じておるようでございます。
  139. 木下元二

    ○木下委員 その被害実態について文部省のほうがよく御存じなんでしょうか。どの程度の被害が生じておるか。その被害の状況については調査をされたことがあるでしょうか。
  140. 菅野誠

    ○菅野説明員 調査は市町村、公立学校の場合におきましては市町村になりますので、そちらのほうでいたしますので、文部省が直接いたすことはございません。
  141. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、その報告も受けていられないということですか。
  142. 菅野誠

    ○菅野説明員 現在のところ受けておりません。
  143. 木下元二

    ○木下委員 私から申しますが、たとえばこの名塩幼稚園では鼻にさわらないのに鼻血が出る園児、これが三百四十人中七十九人もおります。二三%であります。それから頭痛を訴える者二四%、へんとう腺二四%、かぜをひかないのにせきが出る園児一八%、手足のしびれを訴える者一六%、いらいらの症状を訴える者二九%、こういう結果が出ております。これは四十七年十月十五日付の朝日新聞にも載っておることであります。こういうひどい状態が出ておるわけでありますが、いま文部省が言われたのは、地元の方と話し合ってもらえばいいのだということでありますが、その地元というのは教育委員会をさしておるのでしょうか。
  144. 菅野誠

    ○菅野説明員 内容が教育にわたる面とそれから財政的な面にわたる部分といろいろあると思います。したがいまして、この場合に地元と申しますのは、公立の学校の場合にはその設置者である市町村及びその市町村の教育委員会というふうに考えております。
  145. 木下元二

    ○木下委員 ちょっとその意味がもう一つわかりにくかったのですが、設置者である教育委員会というのは、市教育委員会のことになるのですか。
  146. 菅野誠

    ○菅野説明員 設置者であると申しましたのは、たとえば県立の場合には県及び県の教育委員会、市の場合には市及び市の教育委員会、かようなつもりでございます。
  147. 木下元二

    ○木下委員 この場合はどうでしょう。
  148. 菅野誠

    ○菅野説明員 この幼稚園はたぶん市立の幼稚園だと思いますので、市及び市の教育委員会と思います。
  149. 木下元二

    ○木下委員 私はこの問題は教育問題としてもたいへんな問題だと思うのです。このサービスエリアの設置が、さっきからお話のありますように、付近住民の健康をむしばむということはもちろんでありますが、特に近接をする小学校、幼稚園の児童、幼児の健康と心身の発達を著しくそこなうものであります。  で、私から多くを申すまでもありませんが、たとえば教育基本法はその一条で「心身ともに健康な国民の育成」をはかる、これが教育の目的だというふうにうたっておるわけであります。そうしてまた教育行政というのはこの「教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」このように十条でうたっております。学校教育法は小学校教育の目標として特にその十八条七号で「健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養い、心身の調和的発達を図ること。」これを目標として掲げております。幼稚園についても同様の定めがあります。こういうふうな教育諸法規の定める教育の目的、あるいは教育活動の上から申しましても、これはゆゆしき問題であります。だから、地元の教育委員会もこれを問題にしておるわけであります。この教育基本法やあるいは学教教育法をじゅうりんする教育条件の破壊が行なわれておる。これは教育諸条件の整備確立を任務とする教育行政の大きな責任だと思うのです。したがいまして、この問題についてこれはもう地元の教育委員会にまかしておるということではなくて、文部省がひとつ道路公団と話し合うべきものだ、こういう教育環境の破壊を来たすという重大な問題でありますから、文部省としても地元の教育委員会に一切をまかして放置しておるということでなくて、道路公団と話し合うべきだ、こう思うのですが、どうでしょう。
  150. 菅野誠

    ○菅野説明員 地元の意見を十分道路公団にお伝えするようにいたしたいと考えております。
  151. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、地元の教育委員会道路公団とが話し合う。それが普通でしょうけれども、その話し合いが思うようにいかなかった場合には、文部省としてもひとつ積極的に乗り出して公団のほうと話しを詰めていただくように、特に私は要請したいと思います。  それから先ほども少し話の中に、地元のほうの了解と申しますか、地元のほうとの話し合いがあったように言われたのですけれども、これは私のほうの調べによりますと、昭和四十四年の四月十五日に地元対策委員会、十一月に市のほうに対しての計画概要の説明、それから四十五年二月と四月に地元対策委員会関係地主に対する設計の説明、こういうことが行なわれておりますけれども、それ以上のものは行なわれておりません。関係地主やあるいは言うならば地元のボスに対して説明が行なわれておる、私はこのように思います。このサービスエリアの建設によって、地元に与える影響というのは非常に大きいものがあるわけでありまして、ただ単に金銭的に利害のある地主とかあるいは地元のボスの意見を聞くというだけでなくて、もっと広い範囲住民の意向を聞くべきだと私は思います。被害者になるわけですから、その被害者になる住民の広範な層の人たちと話し合う、あるいは意向を聞く、こういうことをやるべきだと思うのですけれども、そういうことはやられていないわけでしょうか。これは道路公団のほうに伺いたいと思います。
  152. 三野定

    三野参考人 私ども実際に高速自動車国道の建設の施工命令をちょうだいいたしました上は、具体的な調査を行なうわけでございます。その上で地元の意向を徴するわけでございますが、関連する公共施設の管理者並びに地元の行政庁等と接触をいたしまして、これで住民の意向を吸い上げるといいますか、お伺いするということをやっております。  それからさらに横断構造物、側道等、これらにつきましては、地元の対策委員会とかなり長い時間をかけまして協議をいたしまして、それから実際の設計にかかる、こういう手順を踏んでおります。
  153. 木下元二

    ○木下委員 いま言われた地元対策委員会というのは、これは決して全住民を代表するような組織ではないのですよ、これはもうあなたのほうもよく御存じのとおりだと思いますけれども。いま言われましたように、市当局を通して、そういった行政機関を通して住民の意向を吸い上げるというふうなことではなくて、これはやはり直接被害が及ぶのは住民でありますから、そうした住民方々と話し合うという姿勢はないわけですか。
  154. 三野定

    三野参考人 私どもは地元の行政庁に民意が反映されるものというふうに考えてまいりまして、それで従来いろいろ御相談をし、あるいはいろいろ御指摘を受けて変更する等やってまいったわけでございます。
  155. 木下元二

    ○木下委員 昨年九月八日の西宮市の市議会の行政公害対策委員会でもこのことが問題になったわけですけれども、そこで西宮市当局が、住民代表はこの問題に参加をしていなかった、エリアの位置は公団がかってにきめたのだ、こういうふうに言っておるのです。この点はどうでしょうか。
  156. 三野定

    三野参考人 市当局の御発言のことは私よく存じませんが、位置につきましてはここがよかろうと思って、いかがですかというふうに私どもが積極的にお願いをしたということは事実だと思います。
  157. 木下元二

    ○木下委員 このサービスエリアは、六甲山系の山を削って谷を埋めて建設をされるというもので、この地域はさっきからお話にありますように盆地になっております。この六甲サービスエリアの三十メートル下に、文教施設あるいは住宅地が密集をしておるという状態であります。ここに写真を持ってきておりますけれども、このサービスエリアのすぐ下に住宅があり学校があり幼稚園がある、こういう状態であります。道路公団は、地元市民や住民に対しまして排気ガスは許容量を越えない、こういう説明をしておりますけれども、この国道百七十六号線の排気ガスだけでも、すでに、先ほど申しましたように幼児や学童に対して被害が出ております。さらに中国縦貫サービスエリアができますと、その被害は倍加以上の大きな被害が起こるであろうということが予想されますが、その点はどうなんでしょうか。そういうことは起こらないという保証はあるんでしょうか。
  158. 三野定

    三野参考人 私どもはサービスエリアに関連いたしまして起こるべき、予想されるような排気ガスの問題、騒音の問題等について、現在得られますところの最も信頼すべき方式によりまして推定をいたした結果を、地元にも御説明をいたしておるわけでございます。百七十六号との問題でございますけれども、これは百七十六号が非常にひどい状態でございますので、中国道の建設を急いでおるということがあるわけでございまして、現在すでに交通量はわれわれが望ましいと考えている交通容量の倍という状態に百七十六号はなっております。これは昭和四十六年度の観測の結果でございますから、その後はまた多少ふえておるかと思います。そういう百七十六号はひどい状態でございまして、交通安全問題並びに沿線のいろいろな交通に関連する公害と申しますか、そういう事情も起こっておるわけであります。中国道の建設によりまして、私どもの推定いたしております転換は、約六割が中国道に転換するという判断をいたしております。で、中国道の交通がそのまま現在の百七十六号と重なるというふうには考えていないのでございます。  なお私どもは、この六車線の中国道が将来その交通容量のほとんど一ぱい近い状態になったらどうなるかという計算をいたしまして、それを予想される排気ガスなり騒音の問題として御説明をいたしておるわけでございます。それによりましても、排気ガスは御心配かけるようなことにはならないだろう。それから騒音につきましても、遮音壁を設けることによりまして御迷惑をかけないようになるだろう、こういう判断をいたしております。  なお、小学校までは私どものサービスエリアの一番端からでさえも百メートルございまして、通常の場合、心配しないということで現在まで全国的にやっておるわけでございます。多少ローカルなポジションがあるかもしれませんけれども、私どもの現在の判断では御迷惑をかけない。百七十六号の交通の軽減によりましてむしろいい状態に抜けられるのではなかろうかという期待も持っておるわけでございます。
  159. 木下元二

    ○木下委員 この現場に地すべり地域というのがありますね。この地すべり地域が非常に危険だと思うのですが、この地域は特に市街化区域からもはずされていきましたけれども、ここの山を削ったり谷を埋めたりするということはたいへん危険ではないかと思うのですが、その点、どうでしょうか。
  160. 三野定

    三野参考人 御指摘のように地すべり地域でございまして、砂防指定地になっております。地すべりと申しますのは、大体起こります形が裏返しにしましたまんじゅうのような、上のかたまりがまんじゅうの表面に沿ってすべり落ちる、こういう状態に通常なるものでございます。このまんじゅうの重み自体ですべるわけでございますから、まんじゅうの下のほうを削りますと、下のほうが軽くなってすべりやすくなる。それから上のほうを削りますと、そのまんじゅうの重さが減りまして、すべりにくくなります。ここの地域につきましては、御承知のとおり大半はほかの地域から、前後の地域から土を盛ってまいりまして、まんじゅうの根元のほうを押えるという形に土を盛っておりますので、従来よりも安全性は増しておるというふうに私どもは技術的に考えております。  また、上のほうの一部につきましては若干削ったところがございます、ほんのわずかでございますけれども。これはやや名塩を西にはずれましたところで削っておりますが、これにつきましては、京都大学の専門の先生の御指導を得まして慎重な工法をとりましたので、現在、十分に自信のある安全性の状態にあるかと判断をいたしております。
  161. 木下元二

    ○木下委員 いま言われました、いまの質問の前の問題ですけれども、この百七十六号線は適当量の倍走っておる。それが中国縦貫ができればその交通量の六割を転換するんだというお話がありまして、だからもう公害はたいしたことはない、こういうふうに結論されるのですが、これは交通量が変わらずに百七十六号線の六割がこの中国縦貫に移るということになれば、これは公害というものは現状でも起こっておるのですけれども、現状とそう変わりはないと思うのです。しかし、交通量そのものが、全体がふえるわけでしょう。中国縦貫をつくるのは、交通量がどんどんふえるということでこれをつくるわけですから、全体は交通量がふえるわけですよ。そのことに対して一体どういうことになるのかという問題ですね、それに対してはお答えがなかったように思うのですが、その点はどうでしょうか。
  162. 三野定

    三野参考人 まあ中国自動車道の交通も将来ふえてまいるであろうと考えておるわけでございます。それで、その交通容量一ぱいに近い状態になるだろうというふうに判断をいたしまして、それで一応どういうような状況になるか、こういう推定はいたしておりますが、その際における百七十六号の状態につきましては、これはおそらく、私ども、ちょっと所管外でもございますので、そこまでは調べておりません。
  163. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、現在の百七十六号線の車の通行量ですね、それはそのままの状態ということで、そして今度の中国縦貫に車がどんどん走るというふうな状態になった場合に、一体排気ガスはどうなのか、その数値はどうなのか、そういった計算はされていないのですか。
  164. 三野定

    三野参考人 私どもは、あり得べき状態を仮定していまやっておるわけでございます。私どもの高速道路の将来状況ということの範囲において検討いたしたわけでございます。かりに百七十六号から転換しないというような状態になりますと、中国自動車道の交通はそれほど多くならないかと考えます。
  165. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、いまのあり得べきと言われる、その計算をされたもとになるものが私、よくわからぬのですがね。あの百七十六号線、いま走っておる車の六割が中国縦貫に移る、その六割だけが中国縦貫を通行するということで、それを仮定して計算を出しているわけですか。そういうことですね。
  166. 三野定

    三野参考人 それから六割は中国自動車道に転換するであろう、それからそのほかの交通も来るだろう、こういうことで中国自動車道の交通が大体極限の状態になったらどうなるか、こういう状態を想定して計算したのでございます。
  167. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、その計算では、百七十六号線は四割に減ったということで計算しているのですか。
  168. 三野定

    三野参考人 百七十六号との複合した状態については、私どもはやっておりません。高速道路並びにサービスエリアの影響について申し上げているのでありまして、百七十六号の状態については、私どもはやっておりません。
  169. 木下元二

    ○木下委員 それから、いまの中国縦貫についても、その極限まで走った場合にはどうかと言われましたけれども、それはいまあなたが言われたように許される限度内の極限という意味であって、たとえばその百七十六号線に予想される通行量の倍、現状は走っている。そういう事態を予想して仮定したものではなくて、この中国縦貫には幾ら走るのだという計算を出して、それに基づいてやっておるので、あるいはそれ以上走るという事態、ちょうど百七十六号線のような事態というものは、計算外に置いているわけでしょう。
  170. 三野定

    三野参考人 高速道路の容量がほとんど一ぱいな状態に、かなり先の話でございますけれども、なった場合、かなり遠い先の状態を予想してやったものでございます。したがいまして、これから先何が起こるかということはわからぬといえばわからぬということかもしれませんけれども、私どもの持っておる計画の技術という範囲におきましては、私どものこういう推定はかなり正しいものだというふうに思っておるわけでございますが、かなり遠い将来のことでもございますし、今後どういう状態になるかということは、いまからすべてを予想できるというものではございません。したがいまして、それらに対しましてはまた必要な対策を常に考えていかなきゃならぬ、これがわれわれ道路管理者の責務であるというふうに考えております。
  171. 木下元二

    ○木下委員 ちょっと伺いますが、いまの百七十六号線は通常の通行量の倍走っているといわれたのですけれども、そうしますと、それは一日約五、六千台ですか、五、六千台で、そしてその倍ということで、現状は夜間を含めて一万二、三千台走っている、そういうことですね。
  172. 三野定

    三野参考人 そのとおりでございまして、大体キャパシティーが六千台、現状は約一万二、三千台ということでございます。
  173. 木下元二

    ○木下委員 そうすると、中国縦貫のほうは、さっき言われました一ぱいとか極限とか言われるのは、何台を予想されているのですか。
  174. 三野定

    三野参考人 私どもは約八万台が限度だろうというふうに思っておりますが、私どもの予測では、昭和六十一年の状態で七万七千六百台という交通量になるのではないかというふうに計画をいたしております。
  175. 木下元二

    ○木下委員 昼夜、一日じゅうですか。
  176. 三野定

    三野参考人 はい、一日です。
  177. 木下元二

    ○木下委員 一応そういう予想をされましても、実際はあるいはそれ以上の通過量になるかもわからない。一体将来の事態を予測することができない、こういうことだと思うのですが、いまの七万何千台という数量であるとしても、これだけのものが中国縦貫を走ればたいへんな交通量で、その周辺の特にサービスエリアができた場合の被害というものは、たいへんなことが私は予測されると思うのですが、これはたいしたことないのですか。どういう数値が出ておるのでしょう。
  178. 三野定

    三野参考人 交通騒音につきましては、先ほど来御説明をいたしておりますように、七万七千六百台という状況になった場合に、騒音の状態を、遮音壁も何もやらないという状態考えますと、小学校までサービスエリアの端っこから約百五メートルございますけれども、この小学校におきまして、これは学校でございますから昼間が問題になると思いますが、六十三ホンという数値になるのではないか。朝晩で五十七ホンになるのではないか。それから、一番サービスエリアに近い民家、これがサービスエリアの端から十七・五メートルのところにございますけれども、ここにおきましては、これは夜が一番きびしい制限でございますので夜を申し上げますと、五十六ホン程度になると考えております。したがいまして、これらに対しまして若干の施設を要するのではないかというふうに考えております。遮音壁を本線の路側並びにサービスエリアの端にそれぞれ設けますと、これによりまして、ただいま申しました民家におきましては、夜間五十ホン以下に下げられる。小学校におきましては昼間でも四十九ホン、それから朝夕四十七ホン程度、こういう計算をいたしております。
  179. 木下元二

    ○木下委員 排気ガスはどうですか。
  180. 三野定

    三野参考人 排気ガスにつきましては、まず一酸化炭素でございますけれども、サービスエリア、本線交通合わせまして生じます一酸化炭素は、一時間当たりの最大が一〇・六PPM、これは夕方の五時から六時というふうに考えております。それから、連続する八時間における一時間値の平均、これが基準値が二〇になっておりますが、これに対しまして一〇・二、それから連続する四時間における一時間値の平均、これは一〇が基準値でございますが、これに対しまして七・五という数値になるというふうに考えております。  それから、鉛公害の問題がございますけれども、これにつきましては、連続する八時間における一時間値の平均、これが暫定的な基準で一立方メートル当たり五マイクログラムというふうにされておりますが、これに対しまして〇・九、それから、連続する二十四時間における一時間値の平均といたしましては、暫定基準の一・五マイクログラムに対しまして〇・七というふうな計算が出ております。こういうことで、私どもは、御心配をかけるような状態にはならないであろうというふうに考えておるわけでございます。
  181. 木下元二

    ○木下委員 いま数値を言われましたけれども、これは調査を実際にされたんでしょうか。特に現地の状況をもとにした調査をされたのでしょうか。そうでなくて、机の上だけの計算ではないでしょうか。
  182. 三野定

    三野参考人 ただいま申し上げましたのは、私どもの計算値でございます。なお、現地で実際に交通がある状態を実現するということはできませんので、似たような状態にあると思われます、たとえば神戸市の東灘区における阪神高速の魚崎新堀ランプあるいは同じく神戸の第二神明道路の高丸インターチェンジ、あるいは東京付近でございますが、東名高速の港北パーキングエリア、こういうところで実際にはかった資料がございます。これらの数値を見ましても、問題になる状態になっていないということで、私どもはこの方面からも大体御心配をかけることはないというふうに思っております。
  183. 木下元二

    ○木下委員 この問題は単に机上の計算だけによって車の台数は何台走るか、それから生じる排気ガスはどうか、騒音はどうか、こういうことをはじき出すのではなくて、やはり現地調査をして、専門的、科学的な立場から慎重な十分な調査をすべきだと私は思うのです。大体、現地の状況というのはいろいろ気象条件も違います。風向きも違います。それから地形などの具体的な条件、そういうものを無視してただそろばんだけはじいたのでは、これは出てこないと思うのですよ。特に、さっきからお話に出ておりますように、盆地になっておって、そうして排気ガス空気より重くて下にたまりやすい、特殊な条件のところなんです。そういう条件のもとでこれだけ車が走ったらどうなるのか。特にこれはもう、すでに百七十六号線が横に走っておって、ここで、さっき言われたように、一万二、三千台走っておって、すでに幼稚園や小学校で大きな被害が出ておる、こういう状況から、しからばすぐそばに中国縦貫ができて一日七万、八方の車が走ればどんな被害が起こるか。これはあなた方がいかにそろばんをはじいて計算しましても、こういう現地の状況と現在出ておる被害の状況から見て、これはもう答えは明らかであります。こういう現地の調査をぜひともしていただきたいと思います。  そして、これはいまのお話によると、サービスエリアと中国縦貫の通行数量から生じる排気ガスや騒音の計算をされたように言われましたけれども、これはさらに、このすぐそばを通る百七十六号線、これの被害排気ガス、騒音、こういうものと一体のものとして考えるべきことです。これは、百七十六号線はまた別問題、それは知らぬ、こういうことでは困ると思うのです。これはもう当然一体のものとして被害考えるべきである。騒音や排気ガス考えるべきだ。そうでしょう。その点どう思われますか。
  184. 三野定

    三野参考人 まず最初に、机上の計算ではございますけれども、もちろん私どもはいろいろな現地条件を想定をして、仮定をしてやったものでございまして、これが科学的でないとは決して思っておりませんが、実際に以たような状態、それは私ども、先ほどあげました三カ所の実測値、これはいずれも高速道路もしくはこれに以た自動車専用道路の状態でございまして、これらの中には、実際に下の一般道路、一般国道と複合した状態のものもあるわけでございまして、そういう実例に徴して心配ないだろうという判断をいたしておるのと、もう一つは、これらの自動車専用道路におきましては、百七十六号のような一般の国道、一般の道路、信号が多くあるいは昔からのいわゆる家並みの中を走っているスピードのあまり上がらない道路、そういうものよりも、そういうところの実測値よりも、いずれもこの自動車専用道路における排気ガス状態というのは良好である、こういう状態でございまして、この点は私どもは高速道路の一つの値打ちであろうかと思っております。  複合公害につきましては、そういう実例からはまず心配ないと思いますけれども、しかし実際にどういう計算をするのか、これにつきましては、ちょっと私どもまだ十分な計算の根拠を持っておりません、まだやってないわけでございます。
  185. 木下元二

    ○木下委員 いや、そうしますと、いまの複合汚染の、百七十六号線の排気ガスと複合した一体のものとしてとらえるということにおいてその計算はされていない。これはできないことはないと思うのですが、ただその百七十六号を別にしておいて、それはそれだ、中国縦貫とサービスエリアだけで計算をして、たいしたことはない、こういうことでは困ると思うのです。これでは科学的な調査とはいえません。これは当然一体的なものとして調査をしてもらえるでしょうか、お尋ねします。
  186. 三野定

    三野参考人 一般道路、高速道路、これらの複合した状態をどうとらえるか、これはたいへんいまのところむずかしいと申しましたけれども、これはしかし、われわれ技術者として、科学者として、将来同様なケースも起こるでございましょうから、私ども真剣に取り組んでいかなければならない、こういうふうに思っております。
  187. 木下元二

    ○木下委員 いまの問題は前向きに検討してもらうということに理解をいたします。  一般的な問題として、これはサービスエリアを含めて、本件のようなサービスエリア一般の問題ですね、あるいは道路でもけっこうですが、こういうものの建設にあたって、事前に慎重かつ十分な調査、この付近住民健康被害について十分な調査をすることが私は必要だと思うのですが、この点についてどのように考えられておるか、これは道路公団よりもむしろ環境庁長官に伺いましょう。
  188. 三木武夫

    ○三木国務大臣 国道百七十六号線、中国高速道路二本が並行して走るから谷間のようなところができるわけで、大気汚染の心配をされる理由はあると思います。いままではこういう道路に対してはわれわれと協議をするということではなかったわけです。しかし、いまいろいろ御質問があったような不合理な点も生じますので、今後は環境庁長官が道路建設の計画には協議に加わるということになりますので、いろいろ環境の保全については、環境庁の立場から、計画の当初からわれわれが加わって、環境の保全に遺憾のないようにいたしたいと思っております。
  189. 木下元二

    ○木下委員 それはたいへんけっこうなことでございますが、そうしますと、本件のサービスエリアの問題についても環境庁として協議に和わってくださるわけですか。
  190. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  本件のことにつきましては、私ども陳情をたくさん受けておりますし、そのつど道路公団のほうにいろいろ申し入れをし、先ほど先生がおっしゃったような騒音の、地形の問題あるいは風向、風速の問題その他いろいろの条件をそのつどチェックし、そのデータをいただきながら検討しております。
  191. 木下元二

    ○木下委員 そこで、先ほど私、質問したのですが、お答えがなかったようですけれども、こういうふうなサービスエリアの建設について、環境庁として協議に加わるということとともに、こういった建設工事をするのについてあらかじめ調査、研究をする、その付近の住民被害を与えないかどうか、そういうことについて調査、研究をするということはどうなのでしょうか。
  192. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 私ども、こういう高速道路の問題は非常に最近ケースが多くなってまいりましたので、その環境のアセスメントの手法をどうやって開発するかということにいま取り組んでおる最中でございます。例を申しますと、その周辺の環境、騒音の実態調査もやっておりますし、それから、今後やるべき問題として、高速道路のいろいろなモデルによって、いろいろな拡散の研究等もシミュレーションモデルを使ってやっていこうというような検討を、いましておる最中でございますので、今回のような問題についても、いろいろな条件で当てはめることができるように、いませっかく研究、調査を進めようとしておる段階でございます。
  193. 木下元二

    ○木下委員 一般的な道路あるいはサービスエリアをつくる場合の調査、研究、これも必要でしょうけれども、私が伺っておるのは、具体的に西宮市でこのサービスエリアをつくるという場合に、そこでいろいろ被害が起こるおそれがあるという問題が起こった場合に、あらかじめそういった具体的な調査、研究はされないのかどうか、こう伺っておるのです。
  194. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 現在の段階では、先ほど申しましたとおり、道路公団のほうがやっておりますので、そのデータについて私どもそれを見まして、そのつど問題の指摘あるいはその改善の方策等についての注文をつけて、さらにそのデータをもらっていく、こういうふうな進め方をしております。
  195. 木下元二

    ○木下委員 この点はぜひこういうふうに住民が反対をし、そして事実健康被害が起こるおそれがあるという問題が起こっている場合には、十分な具体的な調査、研究を私はしていただきたいと思うのです。これはもう私から引用するまでもなく、四日市公害判決が、あの石油コンビナートの注意義務違反の判断にあたって、立地上の過失と操業上の過失を認定いたしております。立地上の過失を認定するにあたって、一音だけ引用いたしますと、「汚染の結果が付近の住民の生命・身体に対する侵害という重大な結果をもたらすおそれがあるのであるから、そのようなことのないように事前に排出物質の性質と量、排出施設と居住地域との位置・距離関係、風向、風速等の気象条件等を総合的に調査研究し、付近住民の生命・身体に危害を及ぼすことのないように立地すべき注意義務があるものと解する。」本件の場合には、こういった何らの調査、研究もなさずに、漫然と立地したことが認められ、この場合には立地上の過失がある、こういう判断をしておるのですよ。これは、石油コンビナートの場合であってもサービスエリアの場合であっても理屈は同じだと思うのです。だから、軽々にこういった立地上の調査、研究もせずに工事にかかるということは、そして工事にかかって、これが完成して住民被害を与えるということになれば、これはまさに不法行為であります。四日市の場合と私は全く同じだと思う。四日市の二の舞いを二度と起こさないためにも、このことを強く要望いたしておきます。  時間が来ましたので質問を終わります。
  196. 佐野憲治

    佐野委員長 田中覚君。
  197. 田中覚

    ○田中(覚)委員 たいへんお疲れのところと思いますが、しんがりを承りまして、大臣はじめ関係御当局に若干の御質疑を申し上げたいと思います。  その前に、三木副総理、環境庁長官に御就任以来、環境問題を当面の最大の政治課題としてとらえ、これまでのあと追い行政を前向きの姿勢に転換するために、いろいろと基本的な政策を法律、予算、いろいろな面で強力におとりいただいておることに心から敬意を表したいと思います一私もこれまで長い間三重県知事をいたしておりまして、先ほども御発言がございましたけれども四日市公害問題については、これを惹起した大きな政治責任を痛感いたしておりますだけに、その対策につきましては法律違反といわれるようなどぎつい亜硫酸ガスの総量規制を実施いたしましたり、そのほか、今日国のほうでいろいろお取り上げをいただいておる対策の萌芽的なことをやってまいりました。しかし、何と申しましても地方行政のワク内では法律的にも、また財政的にも大きな制約がございまして、思うような手が打てずに悩み続けてまいったのであります。そういう際に、歴代厚生大臣、また環境庁ができましてからは環境庁長官御視察の最初の行事として、必ず四日市へおいでいただいております。そのつど異口同音に申されましたことは、日本大気汚染に関する公害問題を解決する突破口としても、あるいはこれからの新しい開発を円滑に進める上においても、この四日市公害問題をモデル的に解決しなければならない、そのために国は特別の援助をしたい、こういうことを異口同音に言われておったのでありますが、私ども地元といたしまして大旱に雲霓を望むような気持ちで政府のあたたかい援助や施策を待ち望んでおりました。しかし結果的には残念ながらあまり大きな援助を実は得られなかったのでございます。これはぐちを申し上げるわけではなしに、私も責任がございますので、天につばするようなことではございますけれども、結果はそうなっております。  そうこうしておりますうちに、先ほどもお話がございました四日市公害裁判判決がございまして、局面が一変をいたしました。端的に申しますと、一部の住民方々は自分たちの要求は自分たちの手で、自分たちの力で貫徹しなければ実現できないのだ、こういったいわゆる政治不信といいますか、あるいは行政不信といいますか、そういった気持ちを強めてきております。ことに裁判の結果、金の入った方とそうでない方との間に隣同士等の関係で不公平感が出ておるというようなことも事実でございまして、そういったいろいろな事情が総合的にからみ合いまして、現在の四日市の市民生活の雰囲気の中には、何となしにしっくりしない違和感といいますか、そういうものが芽ばえでおりまして、これが県政、市政の一つの大きなガンになっております。そのために、何と申しましても、このような状態を一日も早く脱却をいたしまして、昔の平和な市民生活の姿、みんなが手をつないでやってきたああいう姿をひとつ取り戻したい、あるいはまた、正しいこれまでの恵まれた生活環境を取り戻したい、そしてあれだけ騒がれた四日市公害問題がこういう形でモデル的に解決された、こういうことを天下に示したい、あるいは示してもらいたい、こういう強い熱願をもって、悲願といいますか、これがいま地元住民の偽らない気持ちでございます。今度は三木長官、副総理も兼ねておられますので、あらゆる面からひとつ総合的な施策を今度こそは講じてもらえるだろう、そういう強い期待を持っておりますので、そういうことをまず前提的に申し上げまして、以下若干の点について大臣の御所見を伺いたいと思います。  その一つは、すでに二月二十七日でございましたか、中島委員から御質疑のあった問題でございますが、大気系の疾病の認定患者が指定地域外へ移転をいたしまして三年経過をいたしますと、医療費の支給が打ち切られるという問題でございます。大臣検討中というようなお答えをされたようでございますが、一口に大気系の疾患と申しましても、たとえば肺気腫などは一度これにかかれば、もういまの医学では絶対にもとへ戻らない。したがってこれにかかったが最後廃人同様の状態になるといわれておりまするし、それ以外の大気系の疾患につきましても、気管支炎だとかあるいはぜんそくども、一部の方はもちろん指定地域外へ移転すれば発作の回数も少なくなる、これは事実でございます。しかしまた一部の方は、指定地域外へ移転をしました後においてもあまり状態がよくならない。ことに老人などはそういう方が非常に多いのが常態でございます。しかるに現在国のほうでは、これが非特異性の疾患であるという理由で移転後三年を経過したら医療費を打ち切るということをしておられるわけでございますが、これは実態から申しましていかにも酷であり、非人道的ではないかという感じを私は強く持っております。ことに四日市などではそういう具体的に該当する人が出てまいりましたので、やむを得ず市が単独措置として、再審査をいたしました上で医療費の支給を継続することにいたしております。四日市のほかに川崎市だとかあるいは大阪市などにも同様の状況におちいる人が出ておるということを承知をいたしておりますが、この点につきましてはひとつ大臣の御英断をもって、何らかの形で移転後三年を経過いたしましても、医療費の支給が継続できるような措置をぜひひとつお考えをいただきたいと思います。そしてまた現にそういうことで医療費の支給が打ち切られた方が出た場合には、国の特別措置が講ぜられるまでの間、暫定措置といたしましても、過去に遡及をして医療費の支給ができるようなあたたかい措置を講じていただきたい、この点につきまして、まず大臣の御所見を伺いたいと思います。
  198. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御指摘のように、公害にかかる健康被害に対する特別措置法は、公害病患者として認定を受けた人たちに対して、三年間を限って健康の障害があった場合に医療費の支給をするという制度であります。これは昭和四十五年二月からでありますから、その当時ではこういう大気系の疾患のような非特異性の疾患は、その汚染地区から移転をして三年も経過すれば、そういう状態というものはなおっていくのではないかという想定のもとにそういう規則ができたわけであります。しかしその後、田中委員も御指摘になりましたように、あるいはまた中島委員でしたか、御指摘になりましたが、実際実情と沿わない面も出てきておる。これは健康の被害を受けられた人々、できるだけそういう人たち救済をしようという社会保障的性格を持ったものでありますから、いろいろ私も検討してみて、どうもこの点は不合理である。それで今後やはり治癒しない者に限っては、三年を経過しても医療費が打ち切られない、実際に実質的に医療費が打ち切られないような処置を講じていきたいと考えております。この手続を行ないますその間においても、医療費の支給が中断しないような処置を講じてまいりたいと考えております。
  199. 田中覚

    ○田中(覚)委員 ただいまの点につきましてはたいへん前向きに、またある程度具体的なお答えをいただきましたので、私はぜひすみやかにその措置をおとりいただきますように要望をいたしまして、この点についての御質疑は終わりたいと思います。  その次にお伺いいたしたいのは、これも先般坂口委員から御質疑のあった問題でございますが、三重県のこの四日市市に隣接いたしております楠町という町を健康被害救済法の指定地域にしていただけないものかという問題でございます。この点につきましても検討をしていただくというようなお答えをいただいたようでございますが、実際には至難であるというお考えのように仄聞をいたしますので、この際私の所見も申し上げまして、もう一度御再考をわずらわしたいと思うわけでございます。  と申しますことは、これは地図を広げて見れば一目りょう然でございますが、楠町というところは、鈴鹿川をはさみまして、四日市市とは、立地的にも、また経済的にも一体の地域でございます。それがたまたま行政的に分立をしておるというだけのことで、一方の四日市市は指定になったけれども、楠町のほうはその指定からはずされておるということでございまして、いかにもこれは不合理である。楠町の町民は、国の措置についての非常な不公平感を実は持っております。  現に、昭和三十九年でございましたか、ばい煙の排出規制が制定をされましたときにも、またその後の大気汚染防止法の制定以降におきましても、四日市市と楠町は常に一体として地域指定を受けてきた経緯がございます。とりわけ、大気汚染防止法におきましては、亜硫酸ガスの排出規制におきまして、拡散希釈の効果を考慮いたしまして、いわゆるK値規制という措置がとられたことは御承知のとおりでございますけれども、その際も四日市と楠町はまっ先に取り上げられて、一般の排出基準の半分以下のきびしい特別排出基準を適用されたという経緯がございます。  地域指定に関する環境庁の基準についての考え方も大体は承知をいたしております。そういう点から申しまして、現在の楠町の汚染の状況がそれ以下である、またぜんそく患者発生率も、国のほうでお考えをいただいておる程度に達しておらぬということが一つの大きな理由のように承っておりますけれども、しかしこれは、こまかいことを申し上げるわけでもございませんけれども、この楠町の大気汚染についての観測数値というのは例の導電率法による数値と二酸化鉛法による数値との間に相当の食い違いがあります。後者は前者の数値に比べて大体七割から八割ぐらい高く出ております。でありますから、導電率法の数値をおとりいただくと、なるほどこれはもう問題にならないということがいわれるかと思いますが、他の数値もあるわけであります。  総体といたしまして、これは四日市もそうでございますが、大体東のほうが高くて、つまり海に近いところが高くて、西へ行くほど低い数値が出ておることは事実でございます。しかし、ぜんそく患者発生率、いわゆる有症率から申しましても、なるほど国のお考えほどは高くはございませんけれども、汚染されておらない一般地域に比べますと、少なくとも二倍ぐらいの高さにはなっておりまして、これは相当の高さではないかというふうに考えておる次第でございまして、いろいろお考えもあろうかと存じますが、この点につきましてはぜひひとつ、もう一度御調査をいただくなり、何らかの形で政府のあたたかい措置に均てんできますよう、格別の御配慮がお願いできないものか、こう考えておりますので、御所見を承りたいと思います。
  200. 三木武夫

    ○三木国務大臣 特別措置法による地域指定は、汚染が著しくてしかも有症率の高い地域を指定をする、しかもこれを全国的なにらみ合わせのもとに緊急の度合いの強いところから指定していくということになっておりますので、楠町をいま直ちにというのには困難がいろいろ出てくる。統計上の数値というものは困難なものがあるわけでございますが、最近のデータなども調べまして、調査検討いたしてみることにいたします。
  201. 田中覚

    ○田中(覚)委員 調査検討をしていただくということでございますから、それ以上強くお願いをするのもいかがかと思いますが、実は汚染の状況は、現在の時点で申しますと、四日市も、楠町も、最近はかなり公害対策も徹底をいたしてまいりまして、以前の状態に比べるとかなり改善されております。でありますから、現在の時点に即していろいろ御議論をされると、なかなかむずかしいというような問題も出ようかと思いますが、しかし楠町でいま窮状を訴えておる患者は、かつて大気汚染のはなはだしかった時期に罹患をした患者が多いのでありますから、いまもう状況がよくなったから、昔悪いときにかかった患者のめんどうを見ないというのは、ちょっと国の考えとしていかがなものかということを私は実は思っております。  あの四日市公害裁判におきましても、さばかれたのは、時点から申しますと昭和三十五年から四十年くらいの時点における問題でございまして、その当時は確かに亜硫酸ガスの汚染の程度は現在に比べますと三倍以上も高い。そういう時期の問題がああいう形でさばかれておるのです。同様な趣旨において、指定地域の適用におきましても、いまはなるほどよくなったかもしれぬ。しかし昔ひどかったときにかかった患者が相当いるということであれば、これは私はもう当然御配慮をいただいていい問題ではなかろうか、こういうふうに実は思うのでございますが、いかがでございましょう。
  202. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いまお話の点も踏まえて、これは十分検討を加えることにいたしたいと思います。
  203. 田中覚

    ○田中(覚)委員 御検討をいただくということでございますので、ぜひひとつ前向きで御検討をいただけるというように理解をいたしまして、この問題は打ち切りたいと思います。  次に、第三にお伺いいたしたいのは、NOxの規制と水質汚濁の総量規制の問題でございます。SO2につきましては、幸いにいたしまして規制の体制が相当整備されてまいりました。またそれだけにこのNOxの規制というものが大きな問題になっておるわけでございますが、これにつきましては、仄聞いたしますと、まだ観測の方法なり体制が確立しておらない、あるいはデータが不備であるというようなことで、一部の業界に反対もあるというようなことも仄聞いたしておりますけれども、大体いつごろからこのNOx規制が始まるものか、その準備の状況をひとつ承りたいと思います。
  204. 三木武夫

    ○三木国務大臣 予算委員会でも、数カ月のうちにはきめると言ったのでありますが、御承知のようになかなかこれは窒素酸化物の基準をきめるということには技術的にいろいろ困難もありますので、数カ月という時間をちょうだいしてきめたいということを申し上げて、いま鋭意努力をしておるところでございます。
  205. 田中覚

    ○田中(覚)委員 数カ月後に大体結論を得て実施される、こういうことのようでございますが、これにつきましては観測機器の整備、これは亜硫酸ガスほどまだできておりません。したがって、たとえば今後地域指定などにもSOxと並んでNOxを取り上げるということにいたします場合にはかなり全国的に観測機器の整備等をしなければいかぬのじゃないかというふうに思っておりますが、この点については国のほうで予算補助等の措置を新年度の予算でお考えをいただいておるのでございましょうか。
  206. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 新年度から自動測定のシステムでやっていく予定予算を組んでおります。
  207. 田中覚

    ○田中(覚)委員 次に、水質汚濁の総量規制の問題でございますが、これにつきましては昨日の新聞によりますと東京都は国より先に実施に踏み切るというような記事も出ておりましたけれども、国としてこの水のほうの総量規制に踏み切られる時期あるいは方法等はどのようにお考えでございましょうか、承りたいと思います。
  208. 三木武夫

    ○三木国務大臣 東京都は踏み切ったというか計画的にやろうということをいっておるわけでございますが、どうしても水質の汚濁防止のためには現在のような濃度規制だけでは不十分でありますので、総量規制をやりたいということでいま盛んに検討を加えておるわけです。これには自然の浄化能力の問題もございますし、地域指定の範囲の問題であるとかあるいはまた排水に対してどのような割り当てをしていくか、いろいろ技術的に困難な問題もありますので、しばらく時間もかかると思いますが、しかしどうしても水質汚濁を防止するために総量規制によらなければ十分目的は達成できないということで、総量規制を行ないたいという方針でございます。
  209. 田中覚

    ○田中(覚)委員 総量規制の具体的な考え方などはまだ固まっておらないのでございましょうか。
  210. 岡安誠

    ○岡安政府委員 水の規制に現在の濃度規制に加えまして量規制を導入するということ、私どもその目標で検討いたしておりますが、いま長官からお話がございましたとおり二、三問題はございます。  まずその一つでございますけれども、量規制をする以上はやはり地域の水域につきましての自浄能力の範囲内でこれを押えるということでなければならないわけでございまして、水の自浄能力またそれを水域ごとにある程度確定をするという作業がございます。これは現在急いでおります。  それからもう一つは、やはり法的に量規制をいたすためには各特定事業場ごとの排出口につきまして、自動的に排出の量とそれから濃度を測定するという機器の開発が必要でございます。その機器の開発のためには現在のCOD方式、BOD方式では、なかなかこれは困難ではなかろうかというふうに考えておりまして、指標そのものからこれを変えていかなければならないという問題がございまして、現在その指標の変更につきましても検討を加えておりまして、それを急ぎまして私どもは法的な規制に踏み切るというようなスケジュールを持っておるわけでございます。
  211. 田中覚

    ○田中(覚)委員 大体いつごろから実施に入れるお見込みでございますか、それをお伺いしておきたいと思います。
  212. 岡安誠

    ○岡安政府委員 量規制につきまして、かりに指導といたしますれば、私どもはなるべく早い機会にこれは実施できると思いますけれども、法的に強制するためには指標の変更を含みますので、指標の変更がいつごろ完了をするかということになりますと、やはりここ二、三年先にならざるを得ないというふうに考えております。
  213. 田中覚

    ○田中(覚)委員 それに関連をいたしまして、環境庁のほうでは伊勢湾の水質汚濁調査をするための予算を四十八年度に東京湾と並んでおとりいただいておるようでございます。これはたいへんありがたく思っておりますが、御承知のように運輸省がすでに知多半島で大規模な水理模型実験をやっておりますし、それから木曽三川の協議会におきましても、また愛知、三重両県ともそれぞれ調査費を計上いたしましてこの問題に取り組んでおるわけでございますが、これはせっかくやっていただくのであれば何か環境庁のほうで御指導をいただいて調査項目などの重複の出ないように効果的な調査をぜひやっていただきたいと思っておりますが、この点についての御所見はいかがでございましょうか。
  214. 岡安誠

    ○岡安政府委員 東京湾、伊勢湾は来年度から始めるわけでございますが、今年度は瀬戸内海につきまして同様の調査をいたしておりまして、その際も関係省庁並びに関係府県と十分連絡をとりまして既存のデータの活用並びに調査の進行等につきましても御協力をいただいておるわけでございますので、伊勢湾につきましても御趣旨のような線でやってまいりたいと考えております。
  215. 田中覚

    ○田中(覚)委員 今度は別の問題で、公害防止計画の第一次指定を受けました四日市、千葉県の市原、岡山県の水島、この三地域につきましては新年度において公害防止計画の見直しをしていただくということになっておるようでございますが、この見直しのポイントは一体どこに置かれておるのか、伺いたいと思います。
  216. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは見直しをしてそうしてその結果に基づいてその公害防止のより実効のあがる公害防止計画を立てていくというための見直しでございます。
  217. 田中覚

    ○田中(覚)委員 その見直しの考え方の重点は、現在の計画の実施期間を短縮することに重点を置いていただくのか、あるいは逆にその後の公害状況にかんがみまして新しい対策を取り入れるということに重きを置いていただくのか、その辺のところを伺いたいと思います。
  218. 船後正道

    ○船後政府委員 四日市公害防止計画は第一次地域といたしまして四十五年十二月に承認いたし、四十六年度に五カ年計画になっておるわけでございます。この作業はかなり古いデータに基づいておりますことと、それから初めての計画でございまして、その後第二次、第三次と重ねるにつれまして防止計画の策定手法そのものが進歩いたしております。他方また客観情勢にもかなりの変化がございますし、さらにまた大気関係について申し上げますとNOxの新基準の設定とかあるいはSOxの基準の強化といったような問題があるわけでございますから、このような基準の改定強化及び客観状況の変化並びに計画手法そのものの進歩というような観点から、第一次地域の三地域につきましては、計画の見直しを行ないました。そして、その結果によるわけでございますが、当初の計画をどの程度変更するか、あるいは年限その他を動かすか、そういった問題は、見直しの作業の際に具体的に検討いたしたいと考えております。
  219. 田中覚

    ○田中(覚)委員 そういたしますと、かなり全面的な見直しをしていただくことになるものと理解をいたしたわけでございますが、完成時期を早めるにいたしましても、あるいはいまお話しのようにNOxなんかの問題も入ってくる、そのほか地元の四日市におきましては、実はあの当時は国の補助率が低いために、ほんとうは都市改造などももっと徹底的にやりたいという希望があったのでございますが、とても地元の負担にたえられないというようなことで割愛したものもあったりいたしましたので、こういった問題も含めて、全面的な見直しをしていただきたいということを強く御希望申し上げるわけでございます。その際に一番肝心なことは、これまでの公害防止計画におきましてもそうでございますが、県・市の負担、ことに四日市市の負担が相当かさんでまいりまして、現在の五カ年計画でも、負担の面でたえられるかどうかという心配が非常に強かったのであります。そういうことでございますので、今度、この公害防止計画の見直しをされるにあたりましては、地元の財政負担につきまして、補助率の引き上げなり、あるいは起債の大幅な充当なり、いろいろな形で特別の御配慮をひとついただくように、これは特に副総理にお願いをしておきたいと思います。  次にお伺いしたいと思いますことは、これは長官にお伺いいたしたいのでありますが、国連の第二回環境会議日本で開催することについて、日本政府も国連に申し入れをされたということを新聞紙上で承知をいたしております。この問題については、カナダ、メキシコ等からも意思表示があるということも聞いておりますけれども、ぜひひとつ日本で開催できるようにお骨折りをいただきたいものだというふうに私どもは期待をいたしております。その際に、開催までに日本公害問題を極力軌道に乗せていただいて、世界の公害についての日本の悪いイメージを環境会議の際に払拭をするというくらいの決意で、この問題に取り組んでいただく。つまり第二回の人間環境会議の開催を、この公害対策を前向きに前進させる一つのバネとして活用していただくというようなことでお取り組みをいただきたい。この点につきましては、実は、地理的なことを申し上げて恐縮でございますが、名古屋の中部経済連合会などは、早くからその運動をいたしております。そういった点も御勘案をいただいて、今後強力に御推進をいただけないものか、この点についての大臣の御所見なり、お見通しをお話しいただきたいと思います。
  220. 三木武夫

    ○三木国務大臣 昨年の国連総会の第二委員会でありましたか、政府が正式に日本に第二回の人間環境会議を招致したいということの申し出を行ない、先般、国連の事務総長が参ったときにも、私、要請をいたしたわけでございます。現在、田中委員御承知のように、カナダ、メキシコ等も熱心に勧誘をいたしておりますが、日本もいろいろな条件から人間環境会議の開催国としては適当な要件を備えていると思いますので、ぜひとも実現をしたい。そして、それが実現をするという機会に、日本もできる限り公害防止を軌道に乗せるようにしたい。そういう世界的な会議が開催されることを一つの契機として、公害防止のいろいろな施策が前進することは非常に好ましいことだと考えております。  名古屋の中部経済連合会が非常に熱心で、できれば名古屋に誘致したいという話も聞いております。東京、大阪、いろいろ催しがあったので、名古屋も国際会議を招致したいという希望が生ずることは当然のことだと考えております。
  221. 田中覚

    ○田中(覚)委員 ただいま前向きの御答弁をいただきましたが、ぜひ日本で開催ができますように、ひとつ御努力を重ねてお願いいたしたいと思います。  公害損害賠償制度の問題につきまして、私も実はいろいろお伺いしたい問題があったわけでございますが、午前中に島本委員からいろいろ突っ込んだ御質問がございましたので、この問題につきましてはただ一点だけ希望を表明しておきたいと思います。  それは、ほかでもございませんが、企業から徴収する賦課金につきましての賦課の方法でございますが、少なくとも企業公害防止に対する努力を正しく評価できる方法をひとつ原則的に打ち立てていただきたい。そういたしませんと、四日市地域などは、公害判決以来、各企業ともかなり真剣に、多額の投資をいたしまして、実は防止対策に取り組んでおる最中でございまして、こういった努力が賦課の際に正しく受けとめられないということでは、公害の未然防止に対する努力を今後怠らせる結果にもなりますので、この点につきましての格別の御配慮を強く要望しておきたいと思います。  次に、これは厚生省に伺いたいのでございますが、厚生省のほうは新年度の予算において難病対策を新しく打ち出されまして、新しい施策をおやりになるようでございますが、これはたいへんけっこうなことだとわれわれも敬意を表しておるわけでございます。公害病につきましても、四日市ぜんそくをはじめといたしまして、水俣病、イタイイタイ病あるいはカネミ油症、いろいろ病気の種類はございますが、これらの病気が医学的に見て難病であるかどうかということは、私も専門家でございませんのでよくわかりませんが、社会的に難病であることは間違いございません。健康被害救済などのように金銭的な対策を講ずることももちろん必要でございますけれども、この治療対策そのものをやることも必要ではなかろうかというふうなことを痛感いたしております。昨年開催されました第一回の人間環境会議におきまして、日本患者代表がストックホルムまで出かけてあの痛々しい姿を世界の人に訴えておりましたことは、私も当時その会議出席をしておりまして、まことに言うに言われない感じを実は受けたのであります。現に、有力な外国の代表が、大石長官がどんなりっぱな演説をされても、こんなことをしているようでは話にならぬじゃないかといったような趣旨のことを申しておりました。いまだに、つい数日前でございましたが、カネミ油症の患者がその症状と治療についての訴えをするために国会にも陳情に来ておりました。そういう状況から見まして、この際、公害病について厚生省はその治療の研究だとかあるいは患者を収容する施設の整備だとか、こういったことについて一体どのようなことを考えておられるのか、ひとつ御所見なり対策を伺いたいと思います。
  222. 佐分利輝彦

    ○佐分利説明員 厚生省といたしましては、環境庁や地方自治体と十分協議をいたしまして、ただいま先生から御指摘がございましたように、国立病院、国立療養所が公害病患者の診療だとか研究を積極的に担当するようにいたしたいと考えております。そして公害にはいろいろ種類がございますので、急性期のものは国立病院で担当いたしますし、また慢性期のものは国立療養所で担当する方針でございます。さらに子供の場合には教育もあわせて行なう必要がございますので、養護学校を付置しております国立の機関に入っていただいて、医療と教育をあわせて行ないたいと考えておる次第でございます。  なお、国立東京第一病院に明年度の予算で研究所の新設費が入っておるわけでございますが、この研究所では公害病や難病の基礎的、臨床的な研究を大いに進めていく予定でございますし、また同病院の新しい病棟が近く全館オープンいたしますが、その際には二百床を使いまして、ただいまお話のございましたような公害病や難病の患者を特に集中的に収容をいたしまして、治療とか研究を推進していく予定になっておりますので、念のために申し添えておきます。
  223. 田中覚

    ○田中(覚)委員 この問題につきましては、公害病の発生がある程度地域的になっておる関係もございまして、地方において特別にそういった公害病の研究などをやっておるところがございますが、そういったところに対しまして少なくとも国のほうで相当の指導、財政援助をやってもらうようなことをひとつ今後ぜひお考えをいただきたい。そういう研究をむしろ育てるようにぜひ御配慮いただきたいと思いますし、特に私ども長い間地方におりまして気づいておりますことは、国立の療養所のベッドがだいぶあいてきております。こういうベッドをもう少し活用をして、公害病患者のための収容施設にしてもらいたい。ことにいまお話もございましたが、小児ぜんそくだとかあるいは難治性の老人ぜんそく、そういうような患者を収容するのには一番適当な施設ではないのかというふうなことも実は考えておりますので、だいぶあっちこっちの療養所が老朽化しておりますが、ひとつ新しい構想で再建整備をぜひ考えていただきたい。できることなら、だんだんこの老人の問題も重大化してまいりますし、老人のサナトリウムみたいなものにでも充てるというようなことくらいのあたたかい施策をぜひひとつ積極的に考えてもらいたい、こういうことを考えておりますので、ひとつお含みをいただきたいと思います。  実はほかにもいろいろ伺いたいことがあったのでございますが、時間もだいぶ経過いたしておりますので今回の御質疑はこの程度にとどめさしていただきたいと思います。ありがとうございました。
  224. 佐野憲治

    佐野委員長 関連質問の申し出がありますのでこれを許します。坂口力君。
  225. 坂口力

    ○坂口委員 先日も実は楠町の指定の問題をお聞きをいたしまして、いままた田中議員から御質問があったわけでございますけれども、いま長官から前向きに検討をするというおことばをいただいたわけでございますが、これはもうかなり長い期間検討をしていただいておりますので、患者発生率等を見ますと四日市の非常にきびしいところよりは低うございますけれども四日市のこの認定になっております地域の少ない部分よりもきびしい数字が出ております。何とかしてこの地域指定にひとつ御尽力をいただきたいと思うわけでございます。  先日お伺いいたしましたときに、一応いま慢性の気管支炎の有症率が五・一%という数字が出ておるわけであります。この数字が少し低い目のために地域指定にならないのか。これがもう少し、たとえば六%、七%くらいならば、なるのか。まことに込み入ったことを聞いて申しわけないのですけれども、その辺のどういうふうなところが一番ネックになっているのかということを、それだけひとつお聞かせいただきたいと思います。
  226. 船後正道

    ○船後政府委員 楠町の問題につきましては、磯津に隣接しておる地域でございますから、地元のほうで種々御要望のあることは私ども承知をいたしております。ただ楠町の場合は、先ほど田中先生からのお話がございましたが、大気の客観的な汚染状況というのが過去数カ年間を振り返ってみましても環境基準は満たしておるというような状況でございまして、そういった点から全国的な見地で見ますと指定の優先順位という点はおのずから低くなるという状況であったわけでございます。有症率あるいは受療率につきましては、これは地元のほうで種々御調査もあるようでございますが、私ども指定のときに用いておりますような意味の有症率の調査はいたしておりません。それで先ほど長官が申しておりますように楠町の問題は引き続き私ども検討せよということでございますので、大気の汚染状況、有症率の状況その他につきましては今後ともさらに検討を続けてまいりたいと考えております。
  227. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、一応国の基準でもう一度御調査をいただくというふうに理解さしていただいてよろしゅうございますでしょうか。
  228. 三木武夫

    ○三木国務大臣 もう一ぺん調査検討を加えるということでございます。
  229. 坂口力

    ○坂口委員 ひとつよろしくお願いいたします。
  230. 田中覚

    ○田中(覚)委員 ちょっと、それに関連いたしましてもう一言伺っておきたいと思いますが、この地域指定についての考え方は、環境庁としてはオール・オア・ナッシングという考え方に徹底されるわけでございますか。それとも、何かそこにいまのように、たとえば有症率の状況だとか大気汚染の状況だとかいろいろ程度はあるわけですね。少なくとも非汚染地域に比べてかなり高い数字を示しておる。しかし現在の環境庁の基準には現時点では達しておらない。しかし、先ほど私が申し上げたように、過去のもっと汚染のはなはだしかったときに発生した患者である。そういうような場合に、これを割り切ってオール・オア・ナッシングというようなことで対処をされるのか、あるいは何かそこに弾力的な措置考え得られないものかどうか、その点についてひとつ御所見を承りたいと思います。
  231. 船後正道

    ○船後政府委員 公害病の指定につきましては、特異的な疾患でございますと、これは個々の患者を診察いたしまして、汚染物質原因してこの病気になったという診断も可能ではございます。しかし大気系の非特異的疾患につきましては、個々の患者を診察することによりまして原因物質との関係を究明することは、医学的にはほぼ不可能に近い、かようにわれわれ承知いたしております。したがいまして、大気系の疾患につきましては、指定地域という一つの制度のもとに、疫学的に有意の関係にあるという指定地域の範囲においてかかった当該地域の患者公害病であるという制度をとっておるわけでございます。そうでございます限りは、この指定地域の線の中と外という点ではどうしてもオール・オア・ナッシングという考え方にならざるを得ないわけでございまして、これは指定地域をどこに広めましょうとも、日本全国が指定地域になりません限りはどこかでこのような関係が出てくるわけでございます。  そこで、どこを指定地域にするかという点につきましては、先ほども申しましたように、大気の汚染が著しくて疾病を多発しておるという法律の趣旨をくみまして、少なくとも過去数カ年間にわたりまして環境基準をオーバーするような状況があり、かつまた通常の有症率を著しくこえるような地域、しかも社会的に救済する必要があるというような地域を指定してまいったのでございます。  こういういままでの指定の基準から考えますと、楠町の場合には、もちろん有症率の調査はいたしておりませんけれども、客観的な大気の汚染状況が数年間、四日市市内の磯津等の状況と比べますとかなりいい。全国的に見ましても、楠町の大気の状況は年平均値も大体〇・〇二四といった前後、最近では〇・〇二を割りつつあるような状況でございます。そういう状況でございますので、全国的なバランス上、楠町は地域指定の区域外、こういうことにしてまいったのでございます。  ただ、地元のほうでは有症率が著しく高いといったような問題もあるようでございますので、長官も先ほど申しておりますように、検討せよということでございますから、地元とも十分相談いたしまして、どのような調査をいたしますか、その点は事務的に進めたいと考えております。
  232. 田中覚

    ○田中(覚)委員 局長のお考え、私もよく理解をいたします。この問題は先ほどせっかく大臣から前向きに調査検討するという御返答をいただいておりますので、そっとしておいたほうが実りが多いんじゃないかと思います。実はまだちょっと言いたいことがあるんですが、これはこの際申し上げないほうがいいかと思いますので、ひとつ、何とぞよろしく御配慮のほどをお願い申し上げまして、終わります。
  233. 佐野憲治

    佐野委員長 次回は、来たる三月九日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四分散会