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1973-02-27 第71回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十七日(火曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 佐野 憲治君   理事 稻村左近四郎君 理事 菅波  茂君    理事 登坂重次郎君 理事 林  義郎君    理事 小林 信一君 理事 島本 虎三君    理事 中島 武敏君       大石 千八君    村田敬次郎君       阿部喜男君    土井たか子君       木下 元二君    岡本 富夫君       坂口  力君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君  出席政府委員         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁次長 鶴崎  敏君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         環境政務次官  坂本三十次君         環境庁長官官房         長       城戸 謙次君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         水産庁次長   安福 数夫君         運輸省港湾局長 岡部  保君         建設政務次官  松野 幸泰君         建設省都市局参         事官      大塩洋一郎君  委員外出席者         環境庁企画調整         局損害賠償保障         制度準備室長  橋本 道夫君         環境庁企画調整         局公害保健課長 山本 宜正君         海上保安庁警備         救難監     貞廣  豊君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件(公害対策  並びに環境保全基本施策等)      ————◇—————
  2. 佐野憲治

    佐野委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部喜男君。
  3. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 環境庁長官にお伺いいたしますが、さきに所信表明が行なわれまして、公害対策並びに環境保全行政に打ち込む長官姿勢としては非常に格調の高いものであった。その限りにおいては私は敬意も払いますし、またきわめてごりっぱだと思っております。ただ私は、いまの日本政府姿勢の中で、・はたしてあの格調の高い長官所信行政の中に生かされていくだろうかということについて、非常に危惧をいたしております。  具体的に少し私が危惧するゆえんについて、いまから長官にお伺いをしたいと思うのでございますが、まず新聞報道によりますと、長官は第二回の国連人間環境会議日本招致するようにワルトハイム国連事務総長要請をする、こういう報道がなされておりますが、これは事実かどうか、その間の経緯について少しお聞かせ願いたいと思います。
  4. 三木武夫

    三木国務大臣 阿部委員も御承知のように、去年の国連総会外務大臣が正式に希望表明したわけでございます。そして日本開催国としてのいろいろな条件を持っている。それはアジアにおける唯一の工業先進国であるし、日本環境問題に対して世界の中でも一番問題をかかえておる国であることは事実である。そういう意味において、日本が主催をしたいという日本希望は非常に日本として一つ合理性を持っている。そういうことで、いまは御承知のようにメキシコとカナダが名乗りをあげて、カナダは熱心ですが、しかし私は実現するものと考えておるわけでございます。大体一九七七年ぐらいを予定しておるようですから、まだ期間もあるわけですが、国連事務総長には手紙で私の真意を伝えて、宮中の午さん会のときにその手紙を渡して、ただ簡単な話というよりは、その強い希望表明して書面でそれを伝えたわけでございます。まだだいぶ期間がありますからわかりませんが、ぜひ実現をさせたい、こういう希望を持っておるものでございます。
  5. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 いま長官は、去年のストックホルムの第一回の国連人間環境会議外務大臣がそういうことを希望したというふうにお話しになったように思うのですが……。
  6. 三木武夫

  7. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 わかりました。  そこで、実はいまお話がありましたが、昨年の六月の第一回ストックホルム人間環境会議で、当時の大石環境庁長官も、いまの長官と同じお考えで、また当委員会としても島本委員等要請もありまして、ぜひ第二回の国連人間環境会議日本招致すべきであるという意見が多かったわけであります。大石長官も、当時外務大臣大蔵大臣と非公式の打ち合わせをして、第一回国連人間環境会議出席ざれた。ところが、途中で外務省からの一本の訓電によって、この招致に対する発言を押えられた、そういう経緯があるわけでございます。そういう経緯があったのに、今日突如としてまた第二回の会議日本招致したいというように政府としての方針が変わってきたのはどういうわけか、それをお伺いしたい。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 私、その当時のいきさつ承知いたしませんが、変わったのではないと思いますよ。何かそのときに端的に大石長官希望表明しなかったということは、まだそれだけの閣議においての了解も得ていなかったというようないきさつもあったので、第二回の会議日本招致することに反対とか消極的であって、今度変わったというのではなしに、いろいろ諸般の手続が整ってなかったために積極的な発言ができなかったというのであって、方針の変更だとは私は思っていないのです。日本側はこれだけ環境問題に対してたくさんの問題をかかえて、世界の各国の人たちが寄って会議をすることの意義というものは、日本でも十分に意義を持っておるものですから、これを日本主宰国になるのに反対だという意見はその当時から持っていなかった、私はこのように考えております。
  9. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 実は長官、当時私も非常に疑問に思って、この委員会大石長官質問をいたしまして、ここに詳細な当時の議事録がございます。この議事録でも明らかなように、大体大石長官出発をされる前に、申し上げましたように、大蔵外務等関係大臣話し合いをした。おおよその了解を得て出発をしたのだけれども、途中で、当時の長官のことばによれば下っぱ——下っぱと言っては失礼ですが、そういう下っぱ人たち一介訓電によって自分発言制約を受けた、まことに残念である、こういうふうにおっしゃっておられるわけです。そこで、外務省のほうの関係の方々にもいろいろお伺いをしたのですけれども、せっかく話し合いをして大臣が出て行ったのに、だれがそういう訓電を打ったのかということで、当時かなり追及をしまして、事務当局のほうの責任は明らかになりましたが、それを指示した大臣についてはここではひとつがまんをしてくれということで、私も大体各省の機構の中から判断をして大臣名前まで聞くのは酷だろうと思いましてがまんをしたのです。しかし、今日になって、まだ一年を経ないうちに、しかも長官お話と少し違うのは、日本公害先進国である、こういう状態を見せたくないというのが当時この招致をやめた大きい原因であった。その後むしろ日本公害状況は当時よりもますます悪くなっておりこそすれよくなっていないとすれば、当時の大石長官をして招致を断念せしめた状況がどう変わったのか。特に長官御存じなければ、当時の外務省の方でもけっこうですが、その当時の状況をもう少し明確にしていただかないと、私は、委員会なり国民を愚弄するものだ、こういうふうに思うのです。少しその間の状況を詳細に説明してもらいたい。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 それは事務当局から詳細にお話をいたすことにいたしますが、見せたくないという考え方は間違っておる。こんな世の中に、国際化時代では、どんなにていさいの悪いことでも全世界の前にさらされているものだ。隠すことができないのが今日の国際化時代です。こんなことは、諸外国に知らせたくないことだってみな知っておる。それを前提にして今後の政治はやらなければ、日本だけがていさいの悪いことを世界の前に隠していこうという考え方では政治はやっていけない。だから、そういうことは日本主宰国にならぬ原因としてはきわめて恥ずべき考え方だと私は思っております。
  11. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでは事務当局のほうの説明を聞かしてもらいたいと思いますが、私もその限りでは長官と全く同じ考えです。そして前の大石長官もまたそういうお考えで第一回の環境会議出席されたのです。ところが、大石長官だから途中で訓電によって変更された。今度の長官は大ものだからそれが通るということになってきますと、政府方針は大もの小ものの大臣で変わってくるのか、私は全く不可解になってくるわけです。同じ考えがかつては通らぬでいまは通る。しかも実情等に大きい変化がないとすれば、まさに事務当局なりその訓電を発せしめた大臣判断が誤っておったといわざるを得ない。ですから、これは事務当局でもけっこうですから、詳細にその当時の状況を報告をしてもらいたいと思います。
  12. 影井梅夫

    影井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま環境庁長官から御説明がありましたとおりに、昨年の六月ストックホルム会議に臨むに際しまして、日本といたしまして、この第二回の国連環境会議日本招致問題をどうするかという問題があったわけでございます。私ども事務当局といたしまして御説明申し上げられますことは、当時日本に第二回の会議招致すべきであるということ、それからそれに対する反対論というのがあったのは御承知のとおりでございます。事務当局として申し上げられますことは、大石長官が、あの環境会議に御出席になる前に、最終的な日本政府立場というものは決定されていなかった。ただ、申し上げます意味は、第二回会議反対であるという意味ではございません。これはただいま環境庁長官から御説明があったとおりで、第二回の会議を開く、それからその場所として日本招致するということも含めまして検討した次第でございますが、最終的な合意がないままに当時の大石長官は御出発になったということでございます。  そこで、第一回のストックホルム会議で、日本は、この第二回の会議がもし開かれるならば、日本としては積極的にこれに協力したい。ただその段階におきましては、御承知のとおりに、ストックホルム会議では、第二回を開催する、しないということを確定的に決定する権限を持っておりませんので、その段階では日本招致を打ち出すのはまだ早かろうという判断に基づきまして、第二回を日本へというところまでは表明しなかったという経緯がございます。
  13. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 ことば巧みに、日本へというところまでは言わなかったといいますけれども大石長官は、先ほど申しましたように答弁の中で、出発前に大蔵外務と、それは決して公式なものではなかったけれども外務大臣大蔵大臣と相談をしてそして出発した、こうおっしゃいました。さらに、自分としてはこういうふうに出発したかったということまで新聞発表されております。そして、しかも最後に、この下っぱ電報訓電一本で押えられたことは、制約を受けたことは非常に残念だったと、こうもおっしゃっておるわけです。そうすると、いまのお話ですと、日本招致をしないというのではなかったけれども意見がまとまっていなかったからというお話ですが、意見がまとまっていなかったからというけれども、最終的には、招致を発表するなということをあなた方は訓電指示したんでしょう。招致するということを発表するなということを訓電指示したわけでしょう。指示した以上は、そういう訓電を発せられた根拠があるわけだから、そこをはっきりしてもらいたいのです。
  14. 影井梅夫

    影井政府委員 当時日本政府といたしまして、最終的な合意合意と申しますか決定、これがないままに大石長官が御出発になった。それからその後、現地にお着きになりましてからの大石長官の御意向その他を私ども事務的に承りました。念のために、それは私ども事務当局限りではございませんで、よく確かめました上で、ストックホルム会議においては、第二回会議というものに賛成ではあるけれども日本招致というところまではまだ時期尚早であるから、それは表明しないようにという電報を発したわけでございまして、これは単なる一介事務当局限りの電信ではございません。
  15. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それは前からそう聞いておるのです。そこまでおっしゃるならば、もう少し、あなたがこの前答弁したことを私は取り上げざるを得ないのですが、気の毒ですけれども申し上げますよ。あなたはこうおっしゃっている。影井さんですね、そうでしょう。「御承知のとおりに、本件環境会議に関しまして日本の国内で関係する省庁はかなりあるわけでございますが、そのうちの一省から、その大臣の御注意というものに基づいて私のほうに連絡がございました。その連絡に基づきまして種々事務的に協議を重ねて」結局、ある一省の大臣から注意があったから事務当局がこういう訓電を発するような協議をした、こうなっているわけですね。そこで、私はある一省の大臣とはだれか。きわめて不都合ではないか、あなたは大臣名前まで言わせないでくれ、こうおっしゃった。しかし、今日になってみるとその大臣こそまさに政府全体の方針にもとる、きわめて不都合な大臣であったといわなければならないし、それが一つの行政府国務大臣としての発言であったわけですから重大な責任があると思うのです。そうなると、私はこの大臣はだれであったか明らかにしてもらわなきやならないと思います。だれですかその大臣は。
  16. 影井梅夫

    影井政府委員 大石長官ストックホルムにお着きになりましてからのいろいろの談話その他に基づきまして、ただいま先生御指摘のような接触が私ども外務省にあったわけでございまして、ただそれだけに基づきましてあの訓電を発したという次第ではございません。その発端は先般、ただいまお読みになりましたような議事録のとおりないきさつがございますが、ただ、それだけに基づいて事務当局が直ちにあのような電報現地大石長官に打ったという次第ではございませんで、大臣の御発言をもとにいたしまして、何と申しますか、日本政府最高方針と申しますか、これを十分に詰めていただきました上で、私ども事務当局といたしましてあの電報は発した、こういう次第でございます。
  17. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 あなたはそう言っていないでしょう。はっきりここに、そのうちの一省から、その大臣の御注意というものに基づいてそして事務当局は検討した、こうなっているのですよ。ある一省の大臣から注意があったので、それに基づいて事務当局協議をして訓電を発した。あなたはこう言っておるのですよ。いまのお話だと、国の最高方針がきまったとかきまらないとかいいますけれども最高方針ならばある一省の大臣ではなくて、閣議決定が行なわれたとか、そういう方向で、それに従って事務当局訓電を発したのならば、それは国の最高方針でございましょう。しかし、あなたのこの前の答弁は明らかに、ある一省のその大臣注意に基づいて事務当局判断をした、こうなっているのですよ。いまの答弁と違うじゃありませんか。
  18. 影井梅夫

    影井政府委員 ただいまお読みになりました議事録、そのときの説明ぶり、それが実は不正確であった。今日ここで申し上げました経過が正しい経過でございます。
  19. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 もうはっきり、この段階だからそんなに隠さぬで、いま長官もおっしゃったように隠す筋合いのものではないと思うのですよ。だから、誤っておったなら誤っておったということではっきりすべきであって、あなた方がここで言を左右にして、また過去のあやまちを繰り返していくおそれがあるから、私は長官に、せっかくりっぱな所信表明があったが、ほんとうにそれがやれるのですか、もっと端的に言うならば、事務当局に振り回されてまたうやむやになるのじゃありませんかと——これだけじゃありません。いわゆる公害対策なり環境保全の問題について、いかに長官がりっぱな所信をお持ちであろうとも、あなた方補佐をする事務当局に振り回されてうやむやのうちになっていくおそれがある、そういうことを懸念するがゆえに、特にいま一つの問題としてこれを取り上げて、このいきさつを明確にする中から、今後こういうあやまちをおかしてはならない、そう思うから申し上げておるのです。  そのときの続きを読みましょうか。あなたの答弁ではその次にこう言っていますよ。「これは、ただいま申し上げましたように、事務当局から発動いたしましてそうしてこういう電報を出したのではない。さらに、ただいま先生質問の、具体的にどこの省の大臣からどういう経路という御質問でございますが、これはひとつ私ども立場をお考えいただきまして御了承願いたい、こう考える次第でございます。」これは明らかに、一つの省の大臣からその注意があってそれに基づいて事務当局はやったのだけれども、その大臣名前だけはこらえてくれ、そしてここで速記をとめまして、この日大石長官から、まあ事務当局としてそれ以上言わせるのは酷だからというお話があったから、私もこれに関連する質問をやめたのですけれども、いまのように詭弁を弄されるならば、これはもう新聞に出ていますよ。これは二月十三日の毎日新聞の夕刊です。これに「ワ総長招致要請」という、長官発言に基づいて書かれておるのは「第二回会議わが国招致する予定だったが福田外相(当時)の「訓令電」で「公害先進国であるわが国の恥を世界に知らせるようなもの」と横ヤリがはいり第二回会議招致が流産した。」、あなたがどのように強弁をされようとも、この新聞を見ている国民は、少なくとも、第二回会議大石長官招致できなかったのはこんなような理由であったというふうに理解するような報道をされておるのですよ。それを解くためには、そうでないというならばもっと明確に、これが福田さんであったのかどうか、それで招致をしなかった理由がこういう理由であったのかそうでなかったのか。ずいぶん食い違うでしょう。明確にしてもらわなければわれわれも困るし、国民も納得がいかないと思うのです。この新聞記事うそかどうかはっきりしてください。
  20. 影井梅夫

    影井政府委員 速記録に載っております私の答弁のしかたから、ある省の一人の大臣からの御指示に基づいて事務当局が全部やったというふうな印象を与えました点は、これは私ここで訂正させていただきます。確かに、ある一省の大臣からの御発言というものに基づきまして、そして日本政府立場をあらためて確認いたしまして、これを現地大石長官にお伝えしたというのがほんとうの姿でございます。
  21. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それでは、ある省の大臣の御注意に基づいて事務当局協議をした、その協議をしたメンバーはどういうメンバー協議をして国の最高方針がきまったのか、これが一点。  もう一点は、この毎日新聞に書いてあるその訓電を発するに至るまでの経緯、何がために訓電を発しなければならなかったのか。しかもその内容が、新聞にいうように「公害先進国であるわが国の恥を世界に知らせるようなもの」だという理由訓電を打ったのか、あなたのおっしゃるように招致をするという決定までに至っていなかったから訓電を打ったのか、その辺明確にしてもらいたいと思います。
  22. 影井梅夫

    影井政府委員 日本招致をするというところまでの決定がなかったということを確認したいというのが電報の趣旨でございます。  それから日本招致ということを当時打ち出さなかったその理由はどこにあるかという御質問でございますが、その中にはいろいろな理由があると思います。ただ昨年のストックホルム段階で、あの段階でまだ第二回会議というものの開催が必ずしもはっきりしていないという段階で打ち出すのは早過ぎるんじゃないかというのが一つの大きな理由でああいう訓電を発したということでございます。
  23. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そういう詭弁を弄して逃げるようなことをせずにはっきりすべきものははっきりすべきだ。それじゃはっきり言いますが、この新聞に書いてある当時の外務大臣であった福田さんが言ったのか言わないのか。もっと具体的に聞きますが、言ったのか言わないのか。それからこの新聞にある当時われわれもそう理解しておったのですが、公害先進国わが国の恥を世界に知らせるようなものだから、基金を出したんだからそっちのほうは遠慮せよということになったんだと当時の新聞報道しております。それはうそかどうかはっきりしてください。
  24. 影井梅夫

    影井政府委員 訓電を発しましたが、ああいう訓電になりましたその理由、これはいろいろあると思います。しかしながら確かに一部には日本招致することが不適当ではないかという意見もあったのは確かでございます。しかしながら最終的にああいう訓電を発しました理由は、この国連人間環境会議というものが初めてストックホルムで開かれる、そのストックホルム会議権限と申しますか、それが必ずしもはっきりしていないという、そういう段階で第二回を日本招致するというところまで言うのはまだ時期尚早であろうというのが根本の理由でああいう訓電を発した次第でございます。
  25. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 しかし、当時から今日にかけて少なくとも第二回の国連人間環境会議日本招致するということを大石長官が言わなかった理由は、いま私がこの新聞記事で申し上げましたように、われわれも理解してきておるし国民も理解しておるのです。おそらく新聞といえども何の根拠もなしにこういうことを書くはずはないんですよ。おそらく事務当局なりいろいろの情報を集めての判断だと思いますし、あるいはもっと正確に事務当局がはっきりそう言ったのかもしれませんが、国民はそう信じておる。政府方針が、公害先進国であるこの日本のぶざまなかっこうをそこまで見せなくてもいいじゃないかという、そういう方針でああいう訓電を発したと理解しておる。ところがあなたの答弁ではそういうことではなくて、政府部内が招致するというふうに方針がまとまっていなかったのでというお話ですが、それならそれで事務当局としては正確な報道を行なうように措置すべきだったと思うのです。それからもう一点、あなたは私の質問に対して落ちておりますが、福田外務大臣からの指示があったわけですか。
  26. 影井梅夫

    影井政府委員 ああいう種類の非常に大事な訓令でございますので、当時の福田外務大臣の御了承を得てあの電報を打ったということは申し上げられます。
  27. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 あなたは御了承を得たと言っているんですが、私が聞いたのは、ある一つの省の大臣から注意があった。ある一つの省の大臣はどの省の何大臣からそういう忠告があったのかということです。
  28. 影井梅夫

    影井政府委員 これは先般もお願いいたしましたとおり、私ども立場というものを御了承願いたいと思います。ただああいう大事な訓令を打つに際しまして、外務大臣の御了承を得ないで打ったということはございません。
  29. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 あなたの立場了解をしまして、ただ新聞に書いてある。それは新聞には書かれておるのです。委員会ではだれも知らない。だれがそういう指示をしたのかわからないが、新聞にはこれははっきりと当時福田外務大臣訓電を打たしたんだ、こういうふうに書いてある。そうするとある省のある大臣というのは福田さんかどうかということになってくると、どうもそうではないかということになってくる。もしそうでないならば、福田さんにとってはたいへん不名誉なことで気の毒ですし、そうなればやはりはっきりしたほうがいいのではないですか、どうですか。
  30. 影井梅夫

    影井政府委員 その点は、私ども立場をひとつ御了承願いまして、お許しを願いたいと思います。  ただ繰り返して申し上げておりますとおりに、全く事務当局限りで打った電報ではないということは申し上げたいと思います。
  31. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 長官、お聞きのとおりこれ以上押し問答しても影井さんが気の毒な気がいたしますけれども、しかしどう考えても、長官、おかしいと思いませんか。去年の六月ですよ。去年の六月、しかも大石長官ははっきり——当時は福田外務大臣です。外務大臣大蔵大臣と話をして了解を得て第二回の国連人間環境会議日本招致をしたいという環境庁長官としての腹をかためてストックホルムにおいでになった。それが長官のことばによれば、それが下っぱ役人の訓電によって押えられて制約を受けた、こうお話しになっておる。国民はまたその理由が、いま私が新聞報道を援用いたしましたけれども公害先進国日本を見せなくとも、基金を出したのだから、それでこらえてもらえ、こういうことで訓電を発したのだというふうに理解をしておる。それが、いま聞いてみると、そうではなくて、政府最高首脳の意思統一が行なわれていなかったからだというようなことをおっしゃっておる。これは六カ月前に意思統一が行なわれていなかったものがその後情勢の変化もないのに今日第二回の国連人間環境会議招致すべきであるというように決定をされるということになると、その間どういう情勢の変化があったのか、日本政府最高首脳の私は頭の動きを疑わざるを得ないと思うのです。六カ月の間あるいは八カ月の間にどういう変化があったのですか。これは長官、ひとつあなたからお答え願いたいと思います。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 人間進歩するものですから、どういう期間にどういう変化があったか私はよくわかりませんが、とにかくいかに日本にいろいろの公害の問題があっても、それを世界の前にさらけ出して、みんなでその問題に取り組むというのがやはり今日の事態ではないでしょうか。そういうことでぜひ第二回の人間環境国際会議日本招致したいという強い希望を持っておるということだけを申し上げたいのでございます。
  33. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこで事務当局、これはそこまでくると、外務省責任ということにはならぬと思いますが、外務省にも一半の責任はあろうと思いますが、そういう環境庁長官の強い意思について事務当局のほうはどうお考えですか。  それともう一つ、今度の長官の第二回国連人間環境会議招致については政府最高首脳でおきめになったことですか、どうですか、事務当局のほうからひとつ。
  34. 影井梅夫

    影井政府委員 御承知のとおりに、昨年九月に国連の第二十七回総会が開催されまして、この総会ではいろいろ多数の問題を取り扱っておりますが、その中の一つの重要な問題として環境問題、これが国連の総会の第二委員会で取り扱われた次第でございます。  私どもこの環境問題というものの重要性、これを考えまして、昨年の総会が開会されますやこの環境問題を国連総会においていかに取り扱われるかということを公式、非公式の場を通しましていろいろ各国の態度を打診してまいりました。第二回環境会議というものの開催が多数国の意向であるということを私ども情報を入手いたしまして、これに基づきまして、先ほど長官から御説明のありましたとおりに、昨年の十月二十日でございますが、大平外務大臣がワルトハイム事務総長にお会いになるときに日本の態度をはっきり打ち出した。その直後に国連の総会の第二委員会においても、日本から第二回の会議日本招致したいという意向を明確に表示しております。  今後、ただいまこの第二回会議招致したいという名乗りをしておりますのは、カナダ、メキシコでございますが、それに劣らず日本招致の運動を続けたい、こう考えております。
  35. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 外務省もずいぶん変わったものですが、せっかく努力をしていただいて、長官所信のように第二回の国連人間環境会議日本開催できるように骨を折ってもらいたいと思います。  それともう一つ政府方針がそう朝令暮改で、きのう言ったこと一ときょう言ったことが変わったのでは国民も迷惑をしますので、あまり軽々な措置はとらないように、慎重にやってもらいたい。  まだ実は申し上げたいのですけれども、この辺でその問題については打ち切っておきたいと思います。  次に、経済企画庁が急ぐそうですから経済企画庁にちょっとお伺いしておきますが、やはりこの前の委員会で私は周防灘総合開発の問題についてちょっとお伺いをして、当時まだ何も具体的な計画にはのぼっていないというお話でしたが、このほうはかなりその後情勢の変化が行なわれておるようでございますから、この周防灘総合開発の問題についてのその後の経済企画庁の取り組みの模様を知らしてもらいたいと思います。
  36. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 前に御質問がございましたときにお答えしました点は、周防灘については基礎調査を実施しておりまして、基本的な計画はまだ定まっておらないということを申し上げたように記憶しておりますが、その現状は現在でも変わっておらないというふうに考えております。
  37. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 たしか下河辺さん、あなただったと思うんだが、当時、埋め立て方式だけでいくことについてはかなり疑問がある、埋め立て方式についても再検討してみたいと思う、そういうようなお話だったように記憶していますが、今日田中内閣になって、特に環境問題等もやかましく、瀬戸内海の汚濁防止等が具体的な日程にのぼってきつつあるのですが、どうですか、その埋め立てについてどうお考えですか。
  38. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 六〇年代の高度成長期にありましては、やはり内陸部の浅瀬の大型しゅんせつ船によります埋め立てによりまして重化学工業基地をつくることに意味があると信じてわれわれ仕事をしてきておりますが、今日の時点になってみますと、やはり遠浅の海を埋め立てることについては相当慎重な判断を要するというふうに考えております。
  39. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 政府答弁は非常にじょうずで、慎重な判断を要するとかいうことになるとやるともやらぬともわからない。このあたりではっきり政府方針として、あるいは経済企画庁の方針として瀬戸内海の埋め立てはやらない、こうおきめになったらどうですか。
  40. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 その点につきましては、現在工事中のものあるいはいま計画しているもの等いろいろな段階のものがございますから、その段階に応じてかなりきびしい態度で規制するという方向で議論を進めたいということは考えておりまして、先刻環境庁長官お話もいただきまして、私どもといたしましても瀬戸内海の埋め立てをさらに増強して重化学工業を増大することについてはやめたほうがよろしいという考え方でおります。
  41. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 経済企画庁は大体それでいいです。  実はいま経済企画庁からもお話がありましたが、長官、二月十四日だったと思いますけれども、瀬戸内海沿岸十一府県の県知事と三市の市長を集められて瀬戸内海の汚染防止について長官話し合いをされまして、この中で、特に新規の埋め立てを禁止するとか工場の新増設も規制するとかあるいは総量規制をやるとか、十項目かにわたる対策を示されたというふうに承っておりますが、この瀬戸内海環境汚染防止について長官のお考えを承りたいのです。
  42. 三木武夫

    三木国務大臣 阿部委員も御同感だと思いますが、瀬戸内海、これは世界有数の恵まれた資源の環境を持っておるわけです。これをもう一ぺんきれいな瀬戸内海にしたいということは、国民的願望だと思う。そういう前提に立てば、あそこに大規模な埋め立てを次々にやって、重化学工業の立地をさらに進めていくということと瀬戸内海をきれいにすることとは両立しないことは明らかであります。したがって、今後はきれいにしようという前提に立つならば、埋め立てに対しても、いま工事中のものもありますが、工事中のものでもその用途というものに対しては再検討するくらいの態度を持つべきである、あるいは新規の埋め立ては極力抑制するということは当然であります。その他、とにかく瀬戸内海の汚濁をこれ以上進ませないためのいろいろな施策というものを推進しなければきれいな瀬戸内海にはならぬわけです。しかし、そうするためにはやはり沿岸の各県が瀬戸内海をきれいにしようというそれだけの熱意あるいはまた合意というものがないと進んでいかないわけですから、知事、市長の会議を招集して率直な私の見解を述べて、そしてこういう非常な決意を持って、沿岸県市などが協力しなければこれは実現はしないのだということで率直な話し合いをやったわけでございます。私はいまでもそのように考えております。
  43. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 その点についても私は長官の決意について満腔の敬意を表します。ただ、そうなりますと、実際問題として各地方自治体はまだ今日地域開発というふうなものに非常に大きい執着を持っておるようでございますし、先ほど私が質問いたしました周防灘総合開発にしても、関係県市あたりでは、地方自治体では非常にまだ執着を持っておるようでございます。しかしいま長官もおっしゃったように、このまま放置しても、瀬戸内海はもう汚濁した、魚の住まない死の海になることは火を見るよりも明らかでございます。したがって、私はいま瀬戸内海の浄化と申しますか、汚染防止は焦眉の急だと思うのです。  仄聞するところでは各党ともこの国会に瀬戸内海の環境を守るための議員立法を提案したいというような用意もあるやに聞いておりますが、環境庁として、特に長官としてそれだけの決意をお持ちならば、この国会に瀬戸内海の環境保全のための特別な立法をなさるのが至当ではないかと思いますが、いかがでしょう。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 瀬戸内海を浄化するためには現行法規だけでは不十分ではないか。やはり特別立法のようなものが必要ではないかという見地に立って環境庁が検討しておることは事実です。また国会の側においても各党で瀬戸内海の環境保全に対してのいろいろな立法的な御検討は進められておることに対しては非常にわれわれとしては敬意を表しておる次第であります。何らかのこれは結論を得なければならぬ問題だと考えております。
  45. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 もう少し具体的に……。これは議員立法であろうと政府のほうから提案をされようと、法律に変わりはございませんけれども長官がそれだけの決意、意欲をお持ちならば、むしろ議員立法が提起をされる前に、政府としてこの立法措置を講ぜられるべきではないか。なぜ政府から法律をつくってお出しになるという姿勢にならないのか、そこにちょっと疑問を持つわけですが、どうでしょうか。
  46. 三木武夫

    三木国務大臣 いま申し上げたのは、そういう場合に、これはいろいろな利害もいま阿部委員の御指摘のような、ある県によればもっと開発をしたいという希望を持っておる県もあるでしょうし、なかなか立法化する段階というものは検討しなければならない問題がたくさんある。府県の利害ばかりでなしに各省間の調整も要りますから、そういう点で、いまは政府としてこの国会に出しますというお答えをする段階には達してないわけですけれども、われわれも検討をいたしておることは事実でございます。
  47. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そうなりますと、たとえば端的に申し上げまして、議員立法が成立をしても、法律に違いがないわけでございますから、政府は忠実にこれを守っていかなければならないと思います。その場合に議員立法で提案をされる法律を、長官の決意に基づいて運用される行政となれば、議員立法よりも政府の提案をされる内容のほうが行政府として私はやりやすいのではないか、そういう気もするわけですが、あえて議員立法を待って、政府から提案をしないというあたりに、決意とは少し変わったものを感ずるんですが、どうでしょう。
  48. 三木武夫

    三木国務大臣 政府が提案をしないということをわれわれはきめておるわけではないわけでございます。だから、政府のほうも検討をする、また国会側においても十分御検討を願って、目的は瀬戸内海をきれいにするためにどうするかということでございますから、われわれの考え方、国会側の考え方、基本においてはあまり違いがないわけでございますので、何か、やはりこれがあまり悠長にそのままの状態で放置することはできないことは御承知のとおりですが、そういうこともにらみ合わせて、今後この特別立法については対処していきたいと思っておる次第でございます。
  49. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 端的にいって、長官は議員立法が出れば、それも賛成だ、こういうお考えですね。
  50. 三木武夫

    三木国務大臣 国権の最高機関の国会でおきめになったということに対しては、これはわれわれとして尊重するということは当然だと思います。
  51. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 瀬戸内海問題でもう一つ聞いておきたいのですが、瀬戸内海と呼ぶ場合には一つの定義があろうと思います。たとえば、東は鳴戸海峡から瀬戸内海のほうとか、あるいは豊後水道からとか、関門海峡からとかあろうと思うのですけれども、瀬戸内海の汚濁を防止をして浄化するということになれば、その瀬戸内海の海域に影響を与える。たとえば響灘、それから大分県で言うならば佐伯湾あたりが入るのではないかと思いますが、そういう地域も含めないと瀬戸内海の浄化というものが非常に困難だと思いますので、その場合に、瀬戸内海と呼ぶか瀬戸内海地域と呼ぶかは別として、大体そういうものを含めるものが妥当でしょうか、含めないものが妥当でしょうか、長官どう考えますか。
  52. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いまの瀬戸内海の範囲はどうかというお話でございますが、瀬戸内海というのはやはり常識的には一定の限られた区間だと思います。ただ瀬戸内海を浄化するために、どこの水域についてどういうような規制をするのか、対策を講ずるかということになりますと話は別でございまして、おっしゃるとおり瀬戸内海に隣接する海域につきましても、何らかの対策を必要とする場合もあろうというふうに考えております。
  53. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 われわれもそういうふうに考えておりますので、これからいろいろ議論をしていく中で、瀬戸内海の浄化というものについては、いまおっしゃられたように、隣接をする海域についても十分な瀬戸内海の浄化に含めての対策を講じていく、そういうふうに理解していいわけですね。  次に長官にお伺いしますが、長官は、所信表明の中で、公害にかかわる健康被害の救済に関する特別措置法が不十分だから、公害被害者の損害賠償を保障する制度を創設する考えを明らかにされておるようでございますが、その骨子はどういうものでございましょうか。
  54. 三木武夫

    三木国務大臣 この国会に提出するということを約束しておるわけであります。そしてこれは大気汚染、水質汚濁、公害の被害、健康被害、これに対して救済をしようというのが目標でございます。いまの特別措置法では、阿部委員承知のように、医療費を中心とした補償でありますが、これは相当広範囲にわたって、たとえば、遺家族に対する補償まで含めて、そして要するにどうしたら被害者の被害を広く救済できるかという見地に立ってこの損害保障法案というものを考えていきたい。しかもその基金は企業側からの強制徴収によるということが骨子になるわけでございます。ただ、いまは健康被害だけに限られている。それは阿部委員もこの点は御不満な点があろうと思いますが、とにかくこういうことをやってみようということでございます。あまり先例のないことですから、一つの健康被害を中心にして損害賠償保障制度を軌道に乗せて、いろいろな範囲の拡大というものは、次の段階考えていきたい。一ぺんに先例もないような法案をつくるのに何もかもということになってきたら、この制度は軌道に乗らないことになる危険もありますので、これを軌道に乗せて、そして漸次この範囲を拡大していきたいという基本的な考えでございます。
  55. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 実は私は長官のこの所信表明のときに、いまおっしゃった新たに公害被害者の損害賠償を保障する制度、公害被害者というのは公害の健康被害だけでなく、ものの被害にも及ぶものというふうに理解しておったわけです。私、いまのお話、先般の御答弁を聞いて、今回は健康被害だけというふうに理解せざるを得ないのです。健康被害にとってはまことに前進でございますけれども、全体的な公害の救済というものは、いま大臣がおっしゃったように、これはものの被害にまで及ばなければ決して十分であるというふうには私は考えられないわけです。そこで、いわゆるものの被害についても救済をするという法律はいつごろを予定されますか。
  56. 三木武夫

    三木国務大臣 まず第一段階としては、この健康被害を中心にした保障制度を軌道に乗せて、昭和四十九度年からそういう財産被害についても本格的な研究を始めていきたい、こういうことでございます。
  57. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大臣は予算委員会だそうですから、大臣に対する質問はこれで保留しておきます。そちらに御出席願いたいと思います。  次に質問を続けさせてもらいます。  水産庁お見えになっていますね。最近、去年の夏ごろから特にですが、例の瀬戸内海の汚染に伴って家島で養殖ハマチが大量警死をする問題が起こりましたし、去年の暮れからことしの正月にかけて大分県の中津の沖のほうで、これは油によって養殖のノリが大量の被害を受けております。瀬戸内海は御承知のように去年、おととしにわたってですが、響灘の大規模開発に伴って、響灘で養殖のハマチがやられる、そういう水産の漁業被害が非常に激発しておるのですが、農林省はこれに対してどういうふうに対策をお立てになっておるわけですか。
  58. 安福数夫

    ○安福政府委員 お答えいたします。  海面におきます漁業被害につきましてはいろいろな被害がございますけれども、おもなものは油の被害と赤潮の問題だと思います。これの原因につきましてはそれぞれすでに御存じのとおりと思いますけれども、あるいは都市下水あるいは産業廃棄物、船舶からの油の流出、そういったものがおもなものになるわけでございますけれども、これにつきましての対策でございますが、恒久的な対策と臨床的な対策と、それから救済措置、その三つぐらいに分かれるのじゃないかと思います。  恒久的対策といたしまして、赤潮の問題は、はっきり申しましてまだ赤潮の発生の原因というものは実態が必ずしもはっきりしていない。いろいろ現象的な、あるいは基本的な問題はわれわれも十分認識しているつもりでございますけれども、何が起爆になって赤潮が発生するか、こういう問題についてはまだ詳細な検討がされておりません。したがいまして、そういった基本的な、基礎的な研究調査という問題をやはり引き続いてやる必要がある。こういう面につきましてかなりの予算も組んでおります。  それから臨床的な問題といたしまして、発生したものをどういうふうにその時点においてできるだけ被害を少なくするか、こういう問題がさしあたっての問題になるわけでございますけれども、赤潮については、これまた救済措置について、そういう臨床的な措置についてどういうふうにしたらよいかというのは必ずしもはっきりしておりませんけれども、こういったことをやったらいいだろう、こういうある意味では常識的な対策にすぎぬかと思いますけれども、基本的には、あるいは海底のヘドロをどういうふうに抜いたらいいだろうか、あるいは赤潮が発生しておる原因物質を至急に取り除く、こういった企業化試験なり防除技術の研究、そういったものも実際の防除措置としましてやっておる。さらに、赤潮発生につきまして、発生したときに、ハマチを逃がす、その対象海域からできるだけ新鮮なところへ移す、そういう設備、装置、そういったものについての助成措置も考えております。これは四十八年度でございますけれども、そういったいろいろな臨床的なこともございます。  それからさらに発生予察の問題、これも原因との関係がございますけれども、一応現象的に赤潮が発生するんじゃないだろうか。たとえば海水の温度が高まるとか、あるいは海水の塩分濃度が低下するとか、あるいは鉄分なりそういった促進剤的な役割りを果たす物質がある。こういった予察の事業も完備を必要とする。これは四十六年から三カ年計画で自動観測のブイなんかを非常に重要な海域について設置いたしまして、予察の事業の情報体制、そういったものも整えつつあるわけでございます。それから、あるいは根拠地の船なんかに一応そういった船をきめまして、情報を通報願う、そういうことについての助成措置も四十八度年では講じております。  それからまた、いわゆるどぶさらいということで一般にいわれておりますけれども、昨年、四十七度年は八地域でそういった予算を組みましたけれども、今年度は倍額をあげまして、主として大部分は瀬戸内海海域にそういう助成がいくだろうと思いますけれども、海底のヘドロというものが一つの大きな問題になるだろう、こういう問題がございまして、そういった予算も二千六百万ばかり組んでおります。  こういった臨床的なものがございますけれども、油につきましてもこれまた実際は油を海に流さないという一つのモラルの問題が一番根本的な問題でございますが、海上保安庁その他と十分連絡をとりながら、海面にそういった不法行為を起こさない、こういう体制を整えておるわけでございますけれども、実際相当な油が海面に流れるということでございます。そういった面につきまして、これまた臨床的な、非常につけ焼き刃的な対処しかないわけでございますが、オイルフェンスであるとか、あるいは油に対する処理剤であるとか、そういった助成措置の予算を組んでおります。現段階では必ずしもわれわれとして十分とは思いませんけれども、そういった臨床的な、あるいは救済的な予算措置を組んでおります。  最後の救済措置でございますけれども、これまた先ほど環境庁長官からもお答えがございましたけれども、物的な被害についての救済措置ということは、制度としては必ずしも一完備いたしておりません。したがいまして、われわれとしましてはケース・バイ・ケースに起こったものについてこれをどう対処していくか。あとあとということになっておりますけれども、それぞれ現在許されます制度なりあるいは助成なり、そういった面でできるだけの対処をしてまいりたい、このように考えております。  具体的に申しますと、昨年度七月の下旬から八月にわたりまして、瀬戸内海に非常に大規模な赤潮が発生いたしたわけでございます。総被害額が七十一億、こういう数字にのぼっておりますけれども、これにつきましては異常な海象現象がございまして、そういった面でいわゆる天災融資法の発動、こういう形で緊急融資をいたした事例がございます。そういったことでやっております。
  59. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 たしか去年の家島のハマチ以来、天災融資法か何かでおたくのほうが若干の措置をしておるのは承知しておるのですけれども、ことし、おたくは水産庁ですが、ミカンができ過ぎて、その対策にたとえば倉敷料とか金利の補てん等をミカン三十万トン分について措置をした、こういう経緯もあったのですが、この漁業被害は、ミカンの過剰生産以上に各漁業家にとってはたいへんな死活の問題になってくる。場合によっては健康被害にもまさる悲劇を起こしておる、そういう状態になっておるわけですが、最近は赤潮も夏ではなくて、必ずしも水温の高くない十一月、十二月でも赤潮が発生しておる。これはおたくのほうで十分把握されておると思うのですが、この赤潮対策についても十分な議論をしたいのですが、時間の関係もありますから、いずれ赤潮対策の問題は次の機会に譲って議論してみたいと思います。  そこで、いま具体的な最後の救済措置としておとりになっておる中で、去年の十二月の二十一日から二十二日にかけて、九州の周防灘の中津の沖で起こった、黒い油によるノリの被害、ごく狭い範囲内であるけれども、二億円以上の損害が出て、ノリの養殖をやっておる方々が非常に困っておるのですが、これについての対策、救済措置はどんなふうにおやりになっているのでしょうか。
  60. 安福数夫

    ○安福政府委員 お答えいたします。  一応私どもはケース・バイ・ケースにこういった被害については措置してまいりたい、こういう考えでございますが、先ほど御質問の中で、被害状況でございますけれども、約一万七千枚、それくらいの網の被害が出ております。大体一枚約一万円くらいの換算でありますから、約一億七千万という被害報告を聞いております。大体二億円近い被害でございます。これにつきましては、必ずしも現在どういう措置をとるかということは私ども考えておりませんけれども、まず一義的に県、市町村、そういう段階で、県の財政の許す範囲内におきまして何らかの措置をしていただく。それを受けまして、国のほうでそれを何らかの措置をすべきだ、こういう結論が出ますれば国が追っかけてそれについて対策を講じていく、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  61. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 何らかの措置というと非常に範囲が広くて、何らかだろうとこっちも思わざるを得ないのですが、もう少し具体的に、いままでの例もありましょうし、何らかの措置ではなくて、県がこういう対策をとるべきだ、国はこういう対策をとるべきだ、そういう指導を行なう、それがやはり国の機関としての水産庁の仕事ではないか。第一義的には県が何らかの措置をとる、第二義的には国が何らかの措置をとる。——何らかというのは非常に範囲が広くて、私どもわからないのです。具体的に水産庁として、そういう場合には県はこういう措置をとるべきだ、国はこういうような措置をとりましょう、そして安んじて漁業に進めるようにやっていくのが私は行政姿勢だろうと思います。そこで、何らかではなくて、具体的にこういう措置をとりたいということを明確にしてもらいたいのです。
  62. 安福数夫

    ○安福政府委員 お答えいたします。  被害の実態、緩急の度でそれに差をつけるというのは基本的にはどうだという議論があろうと思いますけれども、かなりローカルな問題につきましては、できるだけ地方公共団体の範囲内で処理できるものはしてもらいたい。それについて、たとえば融資の原資が足りないとか、そういった問題がありますと、系統資金をある程度持っていくとか、そういった措置ができると思いますけれども、現在の大分県の場合には、私ども考えではある意味ではローカルな措置をお願いいたしたい。そういった面の方法なり指導については私どものほうでは一応連絡をいたしておる、こういう段階でございます。
  63. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 時間がないようですから、結論ですけれども、油の被害などというものは、本来的にこれは工業開発をやり、瀬戸内海の中にタンカーを引っぱり込んで油を積んで歩かせて、そしてその油が出てきたためであって、これは漁民の責めに帰すべきものではない被害なんですね。言ってみれば、これは国の施策の中で生まれてきた被害といわざるを得ません。水産庁のほうではいろいろな予算関係で、これは国全体でやるべきで、水産庁の範囲はここでございますとあなたはおっしゃるかもしれないが、被害を受けた漁民なりあるいは国民全体から考えてみますと、そういう被害が起こった場合にはやはり国全体として措置を講ずべきものであると私は考えます。したがって、環境庁がどういう法律をつくるのか、物に対する被害の救済をどうするのかきまらなければ、水産庁としてはしかたないというふうなものであってはならない。水産庁としては積極的にこういう被害についてほんとうの救済——お金を貸すという程度のものではなくて、ほんとうの救済の措置を講ずる姿勢があっていいのではないかと私は思うのです。そういう点について抜本的に、さっきおっしゃったように基本的に赤潮の除去なり、あるいは油の投棄を規制するとかいろいろありましょう。臨床的な問題もいろいろありましょう。同時に被害の起こった場合の救済について、国としての態度を、水産庁も入って明確にすべきだと思うのですが、どうですか。
  64. 安福数夫

    ○安福政府委員 お答えいたします。  ただいまの御指摘の点につきまして、私どもも同感でございまして、水産庁といたしまして、水産庁立法になるかどうかわかりませんけれども、基本的にやはり原因者不明という場合は——公害問題につきましては原因者追及、原因者負担という原則で一応措置されておりまして、そういった面の原因者が那辺にあるかということについて、われわれ関係各省との間において十分な連絡をとりながら詰めておるわけでございますけれども、どこまで詰めましても原因者がどうしてもわからない、あるいは非常に不特定多数にわたる、こういった問題もございます。そういった面につきまして私どもも何らかのそういった制度的な救済措置があっていいのではないか、基本的にはこう考えております。水産庁は水産庁なりにそういった面での検討を進めておる段階でございます。これが制度になるためには関係各省とのいろいろな協議があろうと思いますけれども、そういった面の方向については御同感でございます。
  65. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 お役人というのは非常にじょうずに、何らかの措置ということで逃げてしまいますが、私はこの漁業被害の救済についてはもっと水産庁が積極的に、特に原因者不明の場合あるいは不特定多数の場合等にあたっての漁民の救済について、もっと積極的な救済の姿勢を示すべきだというふうに考えます。いずれ議論する機会もありましょうけれども、水産庁としても、そういう姿勢で積極的に漁民を守るという立場から救済について取り組んでもらいたい。このことを最後に要望して質問を終わります。
  66. 佐野憲治

    佐野委員長 坂口力君。
  67. 坂口力

    ○坂口委員 先日のこの委員会で岡本議員が大気汚染防止法における指定地域の問題をお聞きいたしまして、この大気汚染防止法において指定地域というのははずされましたけれども公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法においては指定地域というのが存在する。これを取るお気持ちはありませんかという質問をされましたときに、たしかこれを取ってしまうと、汚染の少ない場所では一般のたとえばぜんそくと、それから公害によるぜんそくというようなものとの区別がつきにくい、そういうふうな意味からこの指定というのははずすことができないのだというふうにお答えになったというふうに私記憶しているわけでございますけれども、本日その問題からもう一度お聞きしたいと思います。
  68. 山本宜正

    ○山本説明員 お答えいたします。  いままで地域を指定いたしますにあたりましては、汚染の度合いを測定いたします。あわせてその地域における公害疾病の有症率を調査いたしまして、測定の結果として汚染のひどいところから逐次地域を選んでいく、従来こういう考え方をとっておりますが、私ども考え方といたしましては、先生おっしゃられるとおりに、現在指定しております四疾病と申しますのは、汚染のない地域にもございます。これはかっての鹿島の開発が行なわれる前におきましてした調査等におきましても、その地域に約二ないし三%程度のこういうような疾病がございますので、これは必ずしも大気汚染と特異的なものではない、そういうぐあいに考えておりますので、現在なお地域の指定制をとる、こういう態度で進んでおるわけでございます。
  69. 坂口力

    ○坂口委員 いまお答えいただきました中にも含まれておりましたけれども、地域指定というのはかなりむずかしい問題を含んでいると思います。先日そのお答えを聞きましたときに私、感じたわけでございますけれども、非常に汚染の濃度の高いところだから普通のぜんそくとそれから公害によるぜんそくとの差がつきやすい。汚染の少ないところだから区別がつきにくいというようなことは少し考えにくいというふうに私、思ったわけでございます。そういたしますと、先日お聞きしました、指定地域をはずすと、ぜんそくに例をあげますと、一般のぜんそくと公害によるぜんそくとの区別がつきにくくなるから、だから指定地域を取ることができないのだ、こういうだけの理由ではないわけでございますね、その点もう一度お願いいたします。
  70. 山本宜正

    ○山本説明員 もう一ぺん繰り返してのお答えになるかと思いますけれども、御承知のようにぜんそくなどいわゆる閉塞性の疾患と申しますのが、汚染によって疫学的にその地域では高まる、こういうことでございます。したがいまして汚染地域の中に汚染によってそのような閉塞性の疾患を起こす方がふえてきておるわけでございます。逆に申しますとそれ以外の原因による閉塞性の疾患というのもその中に混在しておるわけでございますが、その辺はひとつ行政的な割り切りといたしまして、指定地域内におきましてはそれを救済の対象にする、こういう考え方をとっておるわけでございます。確かにおっしゃいますとおり指定の地域をきめることはなかなかむずかしゅうございますけれども、いま申しましたように疫学的な判断であるということと、その疾病が非特異的な疾病であるということからいたしまして、行政的な手段としてそのような考え方を導入しておる、このように御理解をいただきたいと思います。
  71. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、この指定地域の決定ということは、先ほどお述べになりました汚染度合い、それから有症率というようなものが基準になっていると思いますが、このほかに、地域を指定されるにあたって基準にされているものがございましたらひとつお教えをいただきたいと思います。
  72. 山本宜正

    ○山本説明員 私どもいままでの地域指定をする場合の経験並びにばい煙影響調査と申しまして大気汚染による健康調査を昭和四十年当時から続けております。そのようなデータから見てまいりまして、その地域におきまして、いま申し上げました閉塞性の呼吸器疾患によって医師の門をたたくと申しますか、医療機関の治療を受ける方、俗に、私どもこれを受療率というぐあいに呼んでおります。これらも参考にいたしまして、汚染の度合いとそれらの受療率が地域的にどのような関係であるかということも、これは全く参考データといたしまして、その地方地方によってやっておるケースがございます。私のほうですべてのところにその方法をするように指示はしておりませんが、そのようなデータ等を勘案いたしまして、地域の指定を考える、このようなことをしております。参考に使っておる、こういうことでございます。
  73. 坂口力

    ○坂口委員 そういたしますと、その指定地域というのは、まあ工場の立地条件あるいはまたその他のいろいろの条件の変化によりまして変化し得るものだというふうに思うわけでございますけれども、これは大体何年目ぐらいにチェックをやられるのか、、その点ひとつお聞きをしたいと思います。
  74. 山本宜正

    ○山本説明員 私どもは現在逐次指定を拡大しておるわけでございますが、これにつきましては、いま申し上げましたような方法でやっております。指定したあとにおきまして、その地域の汚染の状況につきましては、これは御承知のように現在大気汚染の観測網がございますので、そのデータを私ども絶えず見ております。御承知のように四日市等におきましては、指定の以前におきます大気汚染の状況はたいへん著しいものがあったわけでございますが、最近におきましては、御承知のようにかなり下がってはきております。が、それと並行いたしました形での、いま申しました有症率あるいは受療率というようなものの調査につきましては、フォローアップ的な調査は現在いたしておりません。しかし、都道府県におきましては、それぞれの独自の立場で地域的に部分をとりまして調査をしている、こういうケースがございまして、私どもいろいろその調査についての指導などもいたしておりますが、結果につきましてもデータをちょうだいしておりまして、いろいろと行政的な資料として勘案させていただいております。
  75. 坂口力

    ○坂口委員 たとえば四日市の例がいま出ましたけれども、非常に煙突等が最近高くなってまいりました。そういたしますと、限られた一つの地域でなしに、飛んで、その周辺部についてはわりにいいんだけれども、存外離れた地点へ非常に汚染した空気が行くというようなケースが、煙突が高くなればなるほど出てまいります。そういたしますと、いままでのように線引きをして、ここからこの中は指定地域だ、ここからあとはもうそうじゃないんだという分け方がたいへんできにくい状態になってきたと思うのでございますけれども、その点どうでございましょう。今後は、そういうふうに一つの指定地域があって、そうして離れたところに離れ島のような形でまたそういうふうなことがあれば指定されるというようなことも起こり得るわけでございましょうか、お伺いいたします。
  76. 山本宜正

    ○山本説明員 お答えいたします。  仰せのとおり、最近の高煙突化によりまして汚染が広がったという実態はあちこちにございますけれども、同時に汚染の濃度も低下している場合もございます。したがいまして、私どもはその辺の事情を、現在の大気汚染の測定網のデータから勘案してまいりたい、こう思っております。一、二の県、市におきましては、そういったことを勘案の上、若干現在の指定地域外のところにおきます健康調査ども進めておる事例がございまして、そのようなデータも私どもおりおり拝見しております。
  77. 坂口力

    ○坂口委員 先ほど出ました四日市の問題にからみまして、四日市に隣接しております、たとえば楠町という小さな町がございますけれども、この場合に健康調査等をやってみますと、四日市市内、すなわち指定地域内と同程度と申しますとちょっと語弊がありますけれども、その指定地域内の軽いところより強く有症率とか健康状態の破壊が出ているわけでございますけれども、そういった場合には、その指定を要請すれば、将来は、そういうふうなデータが出ましたら、これは受ける形になるのかどうか、その点ひとつお伺いをしたいと思います。
  78. 山本宜正

    ○山本説明員 仰せの調査につきましては、県のほうが楠町につきまして調査をなさいましたデータを私どもも拝見しております。拝見いたしますと、現在BMRC方式によります調査では、楠町は.平均いたしまして約五%前後ぐらいの有症率というようなデータを聞いております。これは確かに、現に四日市を指定いたしましたその後の四日市市内での汚染の低い部分の有症率よりかも若干高いかと思いますけれども、現在全国的な規模で、いままでのところ、指定をいたしましたところでは、おおよそもっと高い有症率になっていると思います。と申しますのは、先ほど一例として引用いたしました鹿島地域のデータが二・八倍ぐらいと記憶しておりますけれども、現在指定しておりますところにおきましては、約六%から一〇%ぐらいの有症率のところが指定地域と指定されております。したがいまして、楠町につきましても、これは県の当局あるいは町の当局ともいろいろと今後相談をしてまいりたい部分ではないか、かように考えておる次第でございます。
  79. 坂口力

    ○坂口委員 この指定地域というものと関係なしに、それでは少なくとも公害によって発生したと思われるような患者さんを救う方法をお考えになっているか。これは政務次官、ひとつお伺いいたします。
  80. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 いまのところなかなかむずかしゅうございますが、将来の賠償、補償制度、それを行なう上で、その中に含めて検討したい、こういうことでございます。
  81. 坂口力

    ○坂口委員 初めにも触れましたし、山本さんからもお答えになりましたとおり、この地域指定というのはたいへんむずかしい問題だと思うわけでございます。各個人による公害に対する感受性というようなもの、大気汚染に対する感受性というようなものも違いますし、非常に濃度がきびしいところだから発生するかと思いますと、あるいは濃度がかなり薄いところでも発生することもあるというようなことで、これはたいへんむずかしい問題ではございますが、一応この四日市に隣接する、たとえば楠町というようなところでかなりな患者さんが出ている。その指定地域になるとかならないとかいうことは、その地域の人々には問題はないわけでございまして、何とかしてその人たちを救いたい、どうしたら救えるかということが大きな問題になってまいります。ですから、私は、この指定地域というのは、現在までのところやむを得なかった一つの処置ではあったかもしれませんけれども、これは科学的に因果関係が成立するところであれば、一定地域を設けずに、将来そういうふうな人を救っていくという道を講ずるべきではないかと思いますけれども、これは急な話ではございませんが、将来の問題といたしましてそういうふうな方向を御検討いただけるかどうか、もう一度政務次官にお聞きをしたいと思います。
  82. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 おっしゃるお気持ちは非常にわかりますが、いまのところ、指定地域という行政的な一つのメモといいましょうか、それをはずしてどうするかということはまだ考慮中というところで、ちょっとむずかしいように思います。
  83. 坂口力

    ○坂口委員 指定地域をはずしてほしいという言い方が悪いかもしれません。いままでのように、非常に汚染の濃厚な場所を指定地域として一つ設ける、そうしてそれ以外のところはたとえ患者さんが出ても、数が少なければそこはもう指定地域にしないというような形ではなしに、私が申し上げているのは、たとえ島のように飛び飛びになっても、一つの工場群と、それに影響を受けた、健康を害するその地域との間の科学的な因果関係の成立するところは随時認めていくというような形にならないであろうか。ことばをかえれば、現在の形の指定地域というものはとるということにもなるかもしれませんけれども、それをやらないと、こちらの人は受けられるけれども一つ道を隔てた向こうの人は同じようにぜんそくで悩んでいるんだけれども、その人を救うことができないという矛盾が起こってまいります。そういうふうな人々を何とかして救う道を考えていただきたい、私はこういうことを申し上げているわけです。
  84. 山本宜正

    ○山本説明員 先生もたいへん御専門でございますので、質問がたいへんむずかしゅうございましてお答えにくいわけでございますが、私どもの気持ちといたしましては、今後も地域を指定する場合には次第に拡大していくということを思っております。しかしながら、御承知のように、逆のケースとして考えますと、個々の医師に大気汚染によって起こる疾病というものを特異的に診断させる。たとえば四日市の周辺の鈴鹿市とかそういうようなところで特殊な濃度の高いところが出てきたら、その地域の患者さんが医師にかかった場合に、これが大気汚染によるものだということを特異的に判断ができますならば非常にやさしいわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、汚染のない地域にも全国的に二%ないし三%程度はある疾病でございますので、これを特異的な診断をするという技術がまだできておりません。したがいまして、現在もこのような閉塞性の呼吸器疾患についての研究を進めておりますが、そういったものが進めばもっとそういう特異的な診断方法というのは確立できると思いますが、いまの段階ではそれができませんので、やむを得ず行政的に指定地域をとる、こういう方法をとっております。私の気持ちといたしましては、この指定地域を次第に拡大したいという気持ちは持っておりますけれども行政的な判断としての指定地域制をはずすということは、いま申しましたような理由からたいへんむずかしいことだ、こういうぐあいに思っているわけでございます。
  85. 坂口力

    ○坂口委員 何とかして指定地域を拡大するなり、あるいはまた、その周辺部の、明らかに公害によってぜんそくあるいは慢性気管支炎といった病気にかかっているというふうに診断をされている人々の救済の道というものをぜひお考えいただきたいということを、政務次官にもう一度お願いを申し上げまして、でき得ればもう一度その点の御決意をお聞きをして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  86. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 よく御趣旨を体して、一生懸命に前向きに検討をいたします。
  87. 佐野憲治

    佐野委員長 岡本富夫君。
  88. 岡本富夫

    ○岡本委員 ただいま坂口委員から質問がございました救済法につきましてちょっと詰めておきたいのですが、いま山本さんは地域の拡大といいますか、指定したところから道一本隔ててそういう病気のあるところに対しては、都道府県あるいは市町村が調査をしておる、それだけの答えだったので、確かに調査をして現在の指定地域と同じような状態であれば、あるいはまたそうした病気の方々がたくさんおればそういう指定地域を拡大する、こういう意味答弁でしょうか、これだけもう一ぺんはっきりしてもらいたい。
  89. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 これは一般論としては、諸種の条件が整えば拡大をする、こういうことでございます。
  90. 岡本富夫

    ○岡本委員 次には、いまの救済措置法ですけれども、企業群のところ、それを指定しておるように見えますけれども、通過交通、交通公害によってその付近の人たちが排気ガスで有症率が非常にふえている。これは先般、私は前の小山環境庁長官のときに、芦屋市の市長さんでしたが、医師会の調査あるいはまた市独自の調査を持って環境庁に陳情に来たわけでありますが、そのときに、これについてはひとつ宿題にさせてもらいたい、こういうことだったと思うのですが、宿題の答えはいつごろ出ますか。学校の子供でも、宿題というのはそんなに二年も三年もかからないのですね。だから、大体いつごろこの宿題はできますか。
  91. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 大気汚染系の疾病が、工場からの分だけでなしに、移動発生源からのいろんな排気ガスその他の影響もあるということは当然考えられるわけでございまして、今度損害賠償保障制度を組み立てる段階で、両方の発生源からのいろいろな汚染物資について、両方から資金的にも徴収しますし、またそれに基づく給付もする、こういう制度をつくり上げていこうと考えておりまして、現在の健康被害救済特別措置法では、いま御指摘ございましたように移動発生源からの分は考えておりませんので、それを対象にしたいろいろの救済措置を講ずるということはできないわけでございまして、新しい制度でその分を取り入れたものにしたい、こう考えております。
  92. 岡本富夫

    ○岡本委員 賠償法については、また次の法律案が提出されたときに質疑をいたしますけれども、そこで現在あるところの救済措置法、これは私どもが論議したときに、一応原因者がわかるまでのつなぎ的な性格のものである、こういうことを答弁されておるわけでありますが、間違いございませんか。
  93. 山本宜正

    ○山本説明員 お答えいたします。  そのとおりございます。
  94. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、これはひとつ政務次官、判断してくださいよ。要するに原因者がいて、そして病気になった被害者がいる。この原因者がわかるまでのつなぎ的な救済がこの救済措置法である。そうしますと、交通事故によって被害を受けた人が自賠法を受けるときは所得制限はないわけです。交通事故で、なくなった。あなたのところは相当金があるのだから、それはもう自賠法から金を出さないというのじゃないのです。ですから、この法律の中に所得制限があるというのは、どうも私そういう観点からいえばおかしいと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  95. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 ただいま先生も御指摘のように、現在の健康被害救済特別措置法は、つなぎ的な措置でございまして、社会保障的な見地を加味した制度でございます。したがって、国なり自治体なりの公費負担も入っているわけでございまして、おのずから今後の損害賠償保障制度の場合とは形が違ってくるわけでございます。現在では、そういうことでございますから、ほかの社会保障制度でございますような所得制限のものはございません。ただ、私どもは、これは毎年できるだけ所得制限をはずすような方向で努力をいたしているわけでございまして、年々所得制限のレベルも緩和されてまいっておるわけでございます。
  96. 岡本富夫

    ○岡本委員 憲法二十五条の規定には、健康で文化的な生活をする権利を国民に保障しているということでありますから、公害によって受けた病気の人は全部救われるというような措置でなければならないと私は思うのです。ですから、これは、漸次所得制限を撤廃していくということでありますから、そこで今度損害賠償法ができれば、この救済措置法は全部消滅するのですか。これは今度の賠償法の中に含まれてしまう、こういうことですか。
  97. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 損害賠償保障制度につきましては、現在まだ中央公害対策審議会の段階で審議中でございまして、ただいま御指摘のような点につきましても、現在その審議の中に含めてやっておりますが、水質関係の健康被害も救済措置法の中に取り入れるということになれば、当然現在の健康被害救済特別措置法は消滅するということになるわけでございまして、その辺は新しい損害賠償保償制度がどの範囲をカバーするかということできまってくるわけでございます。
  98. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、今度、介護手当ですが、介護手当が五千円から一万円になるというようなことでありますけれども、実際に入院しておる人を介護する、この介護人を雇うのに、一番安くて三千円、うかうかすると四千円もとられるというのが現状なんですね。ですから、これは日数によって少し違うわけですが、一カ月五千円とかあるいは一万円までというような限度で介護ができるのかどうか、この点も考慮ができるのか、ひとつお聞きしたい。
  99. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 介護手当につきましても、現在の健康被害救済特別措置法の、先ほどおっしゃったような、つなぎ的な性質ということで、いろいろな金額上のレベルが低いということもございますが、またいろいろな給付する場合の制限もございまして、これにつきましては新しい損害賠償保障制度では、民事責任も踏まえた責任になりますから、当然介護手当的なものをどこかに含めるわけでございますが、その際、たとえばここにありますような、介護を現にしてもらった上に現に金を支払っているというような、現在の介護手当についているような条件は撤廃される、こう考えております。
  100. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、いままでの四日市あるいはあちらこちらを見ておりますと、そこの当主が病気してしまうと、直ちに生活に困るわけですね。個人的な事情で生活に困ったのではなくして、公害の病気によって一家が生活に窮している。したがって、この生活保障手当というものをわれわれは要求しているわけですが、これについてはいかがな考え方ですか。
  101. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 これも前の十二月に出ました中央公害対策審議会の専門委員会の中間報告の中に触れられておりまして、医療費のほかに患者本人に対する補償費あるいは遺族補償費あるいはいまの介護手当を含めました特殊手当あるいは死亡した場合の葬祭料、こういうものを全部含めるべきであるということでございますから、ただいま先生の御指摘のようなものもこの制度の中に包括される、こういうぐあいに考えております。
  102. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、公害病によって病気になった患者さんのリハビリテーション、こういうことはお考えになっておりませんか。
  103. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 ただいまのようなリハビリテーションの問題、これは子供の場合もございますし、おとなの場合もありますが、こういうものは新しい制度の付帯的事業の中に取り入れるという方向で検討いたしております。
  104. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、現在は居住制限があるわけですね、三年と五年。三年間そこに居住している、あるいは五年間そこに通勤している、これは現実に合わない。たとえば私の知っているのは尼崎ですが、西宮に住んでいて尼崎に一年住んだだけで、もう一家四人家族で三人まで発病しているわけですね。そうして三人ともまた転地療養しているというような状態なので、出ていくと今度は公害の認定を受けられないものですから、公害認定を受けるまでじっとその場所におるわけにいかない、健康を害しますからね。そういうようなことで非常に矛盾があるのです。この点居住制限についても一応検討の余地があると思うのですが、これはいかがですか。
  105. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 ただいまの居住制限の問題、大気汚染系疾病の場合だと思いますが、大気汚染系疾病につきましては、先ほどいろいろ公害保健課長からも御説明いたしましたが、非特異的な疾患であるということからしますとおのずから制約があるわけでございまして、居住の関係を全くはずしまして認定するということは不可能だと考えております。
  106. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、現実に他の市から移ってきて、そうして公害汚染地域に——これはまた学校の先生でしたが、そこへ移った。こうして一年足らず、まず一番下の子が発病した。その次の子供がかかる、今度は奥さんがかかる、こういう病気、これははっきりしておるわけでしょう。非汚染地区から汚染地区に移ってきて、そうして発病しているわけですから。それでも公害の認定を受けられない、救済されない、どうもおかしいと私は思うのです。
  107. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 私の申し上げましたのは、大気汚染系疾病につきましては非特異的疾患である、たとえば四十歳以上の成年者がいますと三%前後の慢性気管支炎の患者がいるということでございますので、全国全部いわば公費負担でこういう患者を救済するということになれば、その限りにおきまして、全部の公害によります同じような疾病が拾われるわけでございますが、公害の救済の見地から拾っていくということになりますと、そういう三%プラスアルファもある、公害によるものであるということが疫学調査ではっきりしているものから拾っていかざるを得ないという制約があるわけでございまして、その場合居住要件ということが一つのファクターになってくるわけでございます。ただその居住期間が現在の制度のままでいいかどうか、この点につきましては三年でなしに二年でいいじゃないかあるいは一年でいいじゃないかあるいは子供の場合はもっと短くていいじゃないか、これはいろいろあると思いますが、この辺はさらに今後検討していく課題だと思っております。
  108. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると居住制限は三年あるいは通勤は五年ということに対しては一応検討の余地がある、こういうことですね。疫学的な調査というものが、それはあると思うのですよ。お医者さんの診断でなければ、それはぜんそくだといったってそういう特異体質の人であればこれは公害認定は受けられないと私は思いますけれども、それはあなたがいまもう一度再検討するということですからそのくらいにしておきます。そして損害賠償保障制度の法案が出たときにもう少し詰めていきたいと思います。  そこで次に、これは文部省から二十二日に発表された文部省の学校保健統計調査速報ですか、これを見ますと小学生、中学生、高校生のぜんそくがどんどんふえておるわけですね。ということは、これは全国的でありますけれども、大気汚染が相当増加してきておるのではないか、また広域的になってきておるのではないかというようなことも考えられるわけでありますが、確かに汚染地区——あるいは三月なんか減ったところもありますけれども、やはり国土全体を総点検をしていかなければならぬ時期に入ったのではないか。そこで大気中に含まれる三・四ベンツピレンは、御承知のようにガンの発生の原因になる物質らしいのですが、私はいまアメリカ、イギリスの二つのデータを言っておるわけでありますけれども、一九五八年あるいは五九年、こういうような調査がされておりまして、たとえばアメリカのロサンゼルスのデータを見ますと、大気がよごれるのは一月、二月、三月、あるいは十月、十一月、十二月で、四、五、六、七、八、九というのは少ないのですね。こういうデータが出ておりますが、たとえばアメリカのロサンゼルスの報告を見ますと、一九五九年第一.・四半期の一、二、三月で平均すると六・六。それが一九七〇年には二・四マイクログラム。これは一立方メートルの大気中からです。また十、十一、十二、このときには平均が一九五九年には六マイクログラムあった。それが一九七〇年には二・〇六マイクログラムになっている。こういうようなデータが出ております。またわが国におきましても大阪の公害監視センター、ここでも最近やっておるが、労働省の研究所の発表によりますと、川崎付近ですが、最低四・八から最高四一・一マイクログラム、こういうように発表されているが、わが国では非常にデータが少ないわけですね。大阪の市の衛研の姿を見ますと工業地区、ここは濃度が非常に高い。住宅地域あるいはまた商業地区は低い。こういうようなデータも出ておるわけですが、環境庁としてもこの発ガン性物質の大気中にあるところの状態というものをつかんでおるのかどうか、こういう研究あるいは調査をしておるのかどうか、まずこれを聞きたいのです。
  109. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  三・四ベンツピレンの問題に関しましては、これは現在発ガン性物質として知られておりますけれども、これの大気中の環境濃度とガンとの関係について、いろいろまだ問題がございまして、現在厚生省のほうでガン研究の一環としてこの調査、研究が進められております。昭和四十七年度は特殊環境における肺ガンの発病頻度及び環境における化学的発ガン因子の研究という二つのテーマについて研究がなされております。環境庁の私どものほうといたしまして、この一つのベンツピレンの問題についての大気汚染の実態調査並びに環境濃度のいろいろな推定その他分析等は、残念ながらまだ手をつけていない段階でございます。
  110. 岡本富夫

    ○岡本委員 米国の調査を見ますと、いなかの空気のいいところ、それから汚染地区、これで発ガンした、要するに肺ガン、これが汚染地区は二倍であるというようなデータも出ております。またこれは厚生省の大臣官房統計調査部の人口動態統計、これを引き出してみますと、昭和十年には気管あるいは気管支、肺の発ガン、この死亡率が男は一・三、女は〇・六、これは人口十万に対してでありますけれども、それと同じようにしますと、四十五年には男が一〇・五、女が四・二、約八倍の肺ガンでなくなっている人たちの統計が出ているわけです。こういうことを考えますと、環境庁のほうでこれは相当大気中の三・四ベンツピレンの調査を行なわなければならないのじゃないか。そしてこれだけが肺ガンの全部の原因とは考えられませんけれども、これは一つの大きな原因なのではないか、こういうふうに私は思うのですが、その点についていかが考えますか。
  111. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 おっしゃるとおりこの問題について私たち十分認識しておりますが、私どもの大気保全局でいま仕事を進めてまいっております過程は、大気汚染防止法における工場、事業所等から排出される大気汚染物質、それから自動車の排出ガスから出るもの、これらの中で有害物質でいままでにきまっておりますカドミウム、鉛、塩素、塩化水素、弗素、弗素化合物、これらにさらに追加しようとして現在作業を進めておりますものは、クロームとか硫化水素とかあるいは化学反応工程から排出される硫黄酸化物等々、現在手をつけておる最中でございます。昨今PCBの問題が出ましたので、これについては暫定的な焼却処分の排出許容限度をきめました。しかし、これらを一つ一つ詰めていきます場合に、先ほども申しましたが、まず第一にテクニックが非常にむずかしいという点が一つ環境中の濃度の測定に、正確な統一分析表をきめねばならないこと、あるいは排出施設の調査や排出口、排出量等の構造実態の把握等にも非常にむずかしい問題がございますので、これらにつきましては専門学者の委員会を設置して、排出基準の設定のための調査研究に取り組むような形で一つ一つやってまいったわけでございます。しかし、この三・四ベンツピレンの問題は私どもいますぐには取りかかれませんけれども、たとえば測定法の統一の問題あるいはその他できるところから手をかけていきたい、検討していきたいと思っております。
  112. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは一九一五年に東大の山際、市川、この両先生がコールタールを動物実験に使って、そして発ガンをした。その後一九三三年には、イギリスのクックという教授がやはりコールタールの中からベンツピレンを発見している。一九五二年にロンドンのワラーという教授がロンドンスモッグからベンツピレンを発見しておりますが、その後労働省あたりでも聞いてみますと、なかなか測定法が簡単でなかった。四日も五日も一週間もかかった。だからこういうことをやる学者、研究員がいやがったというようなこともありましたけれども、最近では非常に簡略な測定法が発見された、こういうようなことも伺っておるわけであります。  石油たん白の問題もああして問題になっておるが、やっぱり三・四ベンツピレンですね、こういったものの分析法というのがはっきり簡単にできるようになった現在、やっぱり環境庁としては大気汚染の大きな原因になるこういう有害物質ベンツピレンを早くとらえ、そして先取りをしていかなければ、どんどんどんどんこうやって肺ガンになってなくなっていく人が出てくるという、国民の健康状態を環境面から押えていく環境庁の仕事が必要ではなかろうか、こういうふうに私は思うのですが、政務次官からひとつ確たる一だいぶやりとりで聞いていたと思うのですが、言いっぱなしではだめですよ。
  113. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 厚生省のほうでいま研究をやっておるわけでありますから、ひとつその調査研究の結果をとらえまして、そしていま岡本委員言われるような方向で、必要ありと認めたときは直ちに規制の対象としてこれをとらえていく、そういう方向でやっていきたいと思います。
  114. 岡本富夫

    ○岡本委員 坂本政務次官、厚生省のほうでどのくらい進んでいますか、それを一ぺんひとつ……。
  115. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 私、細部についてはよく存じておりませんですが、厚生省のほうのガン助成課題は非常に広範にわたっております。ただ、肺ガンというものの因子をつかまえていく方向では、環境における化学的な発ガン因子ということからいろいろ攻めていく方向と、それからいま一つは特殊環境、たとえば労働環境でいろいろな発ガン関係等の関係がございますので、それを中心にした発病頻度を中心にして調べていく。二つの課題がこれに一番関係のあるものとされております。  ただ、大ざっぱなことを申して恐縮でございますが、実験動物の段階においても、動物の種類によっていろいろな発ガン状態が違う問題。それから環境の中における三・四ベンツピレンとなりますと、非常に濃度が薄くなりますものですから、その薄い濃度と発ガン因子とに、それだけの発ガン因子の問題とそれに加わる別な問題との相関と申しますか、これらの問題の攻め方が非常にむずかしいということを聞いております。私どもはこの問題をすぐ手をつけないというのでございませんで、先生承知のとおり、これは多環性の炭化水素でございますから、大きくつかんだ炭化水素対策は、自動車のマスキー並みの規制の問題、あるいは四十八年度から使用過程車においても、従来あまりやっておりませんでした炭化水素の規制の措置をとっておりますし、それから工場や有機溶剤を使っておるところから発生する炭化水素に関しては、これを規制すべく四十八年度には環境基準をつくろう、こういう作業をしておるわけでございます。そのたくさんある多環性の炭化水素の中の一成分のベンツピレンだけを取り上げてこれの規制問題を考えてみました場合に、どうやってこの微量のものを規制するか、煙突中からのものを規制するか、あるいはそのほかから出てくるものの規制をするかという点に非常にむずかしい問題がございますので、まず測定法等の確立をし、それから全般的なベンツピレンに対する大気汚染の実態を調査して、こういうふうに攻めていこうと思いまして、厚生省の研究と相まってこちらもやろうという気がまえでおるわけでございます。
  116. 岡本富夫

    ○岡本委員 この問題は確かに厚生省も少し手をかけておるのですが、労働省もこうやって大気汚染の分析をやっているわけです。ですから、各省またがっていると思うのですよ。それと同時に、分析とそれから疫学ですか、こういった連携もとらなければならぬと思うのですね。ですから、アメリカではやはり環境保護庁でやっておるわけですよ。ですから、こういったものを厚生省でできるまで待たなければしょうがないとか、それじゃおくれてしまいますから、やはり環境庁できちっとした方針を立てて、そしてこの予算も出してどんどん研究さしていきませんと、何か事故が起こってから、問題があってから初めて手をかける。PCBでもそうでしょう。こんなことをやっていたのでは先取りができないと私は思うのですよ。ガンだって、死んでからやったっておそいですものね。ですから、私はもう少し前向きに——だから坂本政務次官に——それだったら役人さんと変わらないわけですよ。だから、その点をもう少し熱心に、そしてこういう問題を全部解決しようという意欲がなければいけない、先取りしなければいけない、こういうわけで私はあなたに質問申し上げたのですが、いかがでございますか。
  117. 坂本三十次

    ○坂本政府委員 おっしゃるとおりでございまして、環境庁の基本姿勢としては、できてしまったような公害のあと追いをする、あと始末をするなどというようなことは、これはもうこれからは許されるわけではないと思います。もちろん公害対処は大切でありますが、岡本委員のおっしゃるような先取りをする姿勢というものが非常に大切でございまして、行政一般の姿勢としては、いまの国土の総合利用に関する法律などにつきまして環境庁がアセスメントを行なう、いわゆるあと追いではなしに、事前に診断をするという、そういう行政政治姿勢を持っておるわけなんですが、事このベンツピレンなどにつきましては、まことに化学的に非常に未知なるものを含んだむずかしい問題でありまして、これは政治判断だけで前向きというわけにまいりませんが、政治姿勢はかくのとおりでございますが、ひとつ化学的な究明を十分に行なって、しかる後にそういう政治的な姿勢をもって一生懸命やっていくということをひとつ御了承賜わりたいと思います。
  118. 岡本富夫

    ○岡本委員 政務次官、まだ未知の分野でむずかしいんじゃないのです。もうアメリカでは全国的にやっているのです。日本だけやってない。これに取り組もうという人は——今度東京都でも大阪でもやろうとしているのです。まだ全然やってないのは中部です。福岡も九州大学でやっているのですよ。だから、そういうばらばらなことでやっているのでなくて、力を結集してやれば、もっと早くいろいろなことができると私は思うのです。そういう音頭とりといいますか、そういう調整、あるいはそういった問題を環境庁のほうから強力に進めれば——新しい問題と違うのです。ただ、何といいますか、三・四ベンツピレンがそこにあって、飲んでひっくり返った、これはぱっと出たのじゃないから、事故があったというならなかなかあれですけれども、いまのような状態ですと、緩慢でありますから、ついおろそかになってしまう。そして、そういう研究をする人だけが陰でわずかな研究費でもってやっている。これでは私は進まないと思うのです。ですから、そういった研究する人たちを優遇していけるようなシステムを環境庁で音頭をとってやらなければ進まない。これを私は各省で見てきたり、大阪とかあちこちで聞いてきまして、ここに隘路があるのだなということをつくづく知ったわけです。ですから、そこをひとつアメリカの環境保護庁ぐらいの力を出して、三木さんのときにやるようにしなさいよ。どうですか、坂本さんもやるだけの力はあるのですからね。
  119. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 初めに申し上げませんでしたが、ガンの研究問題は、全部厚生省あるいは文部省二つに分かれてガンの助成の交付をやっております。そこで、私どものほうはガン問題から別に逃げるわけではございませんで、厚生省のほうでこのむずかしい問題を環境問題の研究課題として取り上げろというふうになりますのを実は待っておるわけでございますけれども、まだ私のほうでガンの問題に関しましては、たとえばバナジウムというものに非常に着目して、そちらのほうの作業も進めておりまして、この三・四ベンツピレンのことを度外視しておるわけではございません。新聞にニュースが出ました労働省の先生もこの厚生省の研究費の中でおやりいただいたものと理解しておりますが、それらの簡易な、非常に精度の高い測定法等の御紹介がありましたので、これらを早く府県の公害センター等の先生方もやれるように、私どものほうで積極的にこれを押していく方針でございます。
  120. 岡本富夫

    ○岡本委員 もう時間ですから、防衛施設庁に伺います。  二十六日の午前十時に各務原の航空自衛隊の基地内から油が流れて、大きな火事を出しておりますね。この問題は、立川基地ですか、あすこでも油が流れていた。航空機燃料というのは、御承知のように四エチル鉛、これがやはり入っているわけですよ。米軍基地からも相当出ているわけですけれども、こういうどちらかといえば普通の油ではなくて有毒物質が入っているのですね。私はこれは予算委員会で一ぺんやらなければならぬと思っておったのですが、きのうこうした事故があったからやるのですが、これが流れたためにいままではたんぽとかあちこちで非常に迷惑を受けている人たちがずいぶんいた。表へ出てこなかっただけですけれども、これについて施設がどのようになっておるのか、ちょっと一ぺん聞かしてもらいたい。
  121. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 お答えします。  立川の問題につきましては、残堀川において昨年十月に油の流出事故がありました。それから最近二月十五日横田におきまして航空機燃料が横田飛行場の南側約一キロの宮崎という農家の古井戸から発見をされたという事実がございます。そこで、二月十七日に立川消防署と立川市の当局がこの宮崎さんのところを中心に約七百メートルの範囲で調査をいたしまして、約十戸の井戸について調べましたところ、そのうち七戸についてやはり油が発見された、こういう経緯でございます。そこで、この採取しました油を消防庁の消防科学研究所で分析をいたしましたら、やはりこれは航空機燃料類似のものであるということが判明をしまして、当庁の立川事務所の担当の者と立川消防署長が昨二十六日横田基地の米軍司令官に会いまして、この分析の結果によればどうもこれは航空機燃料のようである。したがって、米軍の基地内のそういった危険物を貯蔵しておるような施設について十分に点検をしてもらいたい。それから米軍が現に保有しておる航空機燃料のサンプルを提出してもらいたいという申し入れをやった、こういういきさつがございます。過去におきましても米軍基地の周辺でこういう事故がございまして、そのとき厳重に米軍に申し入れもし、被害者に対しては補償もいたしておりますが、今回の事件につきましても、いずれ調査の結果米側から回答が来ると思いますが、もしこれが米軍基地に原因があるということが明確になりましたならば、関係者に対しては当然必要な補償をする、こういうことになろうかと存じます。
  122. 岡本富夫

    ○岡本委員 各務原の航空自衛隊の傭うはどうなったのですか。
  123. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 お答えいたします。  ただいま岡本先生から御指摘の各務原の油漏れの事件につきまし七は、御承知と思いますが、二十六日の午前八時から——実は洗かんを一週間やりまして、その終わった直後でございましたが、二十六日の八時から約四十五分間にわたりまして約三十キロリットルJP4というジェット機用の油を入れまして、そのあとに、実は現在調査中でございますが、作業手順を十分踏まないためと私どもは現在の段階では解釈しておりますが、作業手順を踏まなかったために、排水バルブが閉鎖していないままに注入をいたしましたために、それから流れ出した油が結局は基地の外側の排水口を通りまして約千五百五十メートルばかり流れ出してしまいました。ほぼその距離の間延焼をいたしたわけございます。現在の段階では約十二軒の民家に被害を与えておりまして、鋭意調査中でございます。  先生御指摘のその油の処置のしかたでございますが、従来ですとこの各務原にあります油のタンクは大正十三年に実はつくられたものでございまして、旧陸軍から引き継いでおりますが、現在十一のタンクがございまして、そのうちの三つは非常に破損がひどいので現在使っておりませんが、八つのタンクは現在地上におきましてコンクリートでささえをつけまして地上円筒式というタンクでございます。これは数少ない形でございますが、この地上の約四メートルの高さにありますタンクから下に油が漏れたわけでございますが、平生の管理におきまして油がどのように外に出ていくかということでございますが、やり方はタンクの底にたまります水分、不純物がございますが、実はそこには少量の油が入ります。それをメーターで測定をいたしまして、その水分を抜き取るわけでございますが、抜き取る作業中にどのような油が外に流れるかということになると思いますが、これは平生の場合でございます。その場合には集合ますというのが途中にございまして、地上にございまして、その集合ますに一ぺん入りまして、これは縦、横、深さ大体一・四メートル程度のますでございますが、そこで撹拌をされまして、それからさらに油分離槽という槽が三つございまして、この三つの槽を経由いたしまして排水口に流れ出ております。大部分が水分でございまして、そこに幾ぶんの油が入りますが、これは油分離槽でほとんどが分離されておりまして、現在これは排水基準その他十分な調査を従来受けておりまして、ほとんど出ておらないというふうに考えております。今般はたまたま先ほど申し上げましたとおり、現在調査中でございますが、不手ぎわでございまして、作業手順が不十分であったために三十キロリットルもの油が流れ出してしまったということでございます。その後の措置といたしましては、現在第二補給処の全職員をあげまして民家の復旧作業を第一にいたしまして、また流れ出した油をできるだけ吸着回収作業をいたしておりまして、現在までのところ約一・三キロリットルばかり回収しております。そのような状況でございます。
  124. 岡本富夫

    ○岡本委員 本会議の予鈴が鳴りましたからあとできませんが、私どものほうでも調査しましたが、あなたのほうの廃油処理というものはもう少しぴちっとできていない、それが一つ。それから東京都内である会社がやはり油を流して、それで東京都から告訴されていますよ。防衛庁長官を告訴するわけにいかないでしょうけれども、あなたが向こうから聞いたもので答弁せずに、もう一ぺんあなたのほうから再調査しなさい、私のほうが調査したのと違うのだから。いいですか。それだけ要求いたしまして、きょうは終わります。
  125. 佐野憲治

    佐野委員長 この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後直ちに再開いたします。    午後零時五十四分休憩      ————◇—————    午後二時四十七分開議
  126. 佐野憲治

    佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。島本虎三君。
  127. 島本虎三

    島本委員 私どもは、二十四日、二十五日、二十六日と三日間、長官も先般来関心を持っておりました瀬戸内海並びに響灘、この方面の海域並びに水質汚濁、漁民被害の状態、こういうような問題を調査してまいりました。それで私どもとしては、やはりこの点についてはどうしても長官の意をただし、行政当局に解明しておかなければならない数点について感じましたので、いまこれを解明させてもらいたい、こういうように思ってまいったわけです。  まずその一点ですけれども、やはり先ほどからの質問もあったと思いますが、瀬戸内海のよごれは依然としてひどいものがあります。ことに昭和三十三年に工場排水の規制法や関係立法二つ一緒に出ましたが、それが修正され、改正されて現在になっておりますが、依然として工場排水またはその他による水質の汚濁は回復しておりません。やはり法律があってもそれを行なう行政サイドの強力な一つのかまえというものも問題ではないか、十分それを感じてきたわけです。それで、やはり私は、この際長官のいろいろなかまえを行政サイドの面で徹底させるべきではなかろうか、つくづくそれを思ってまいりました。  まず、長官が二月の十四日に瀬戸内海でいろいろと関係都道府県知事を集めて十数項目にわたって、これは聞いたのか、それを言い渡したのか、いろいろあったようでございます。その中で私は四つの点だけはこれはもうきびしく行政サイドに反映させてみたい、こう思っていることがあります。その一つは、特にこの瀬戸内海に関しては、新しい埋め立てはこれは許可しない。それと同時に工事中のものでも規制を加えるということ。同時に三つ目には新増設の工場で公害源になるものはこれは規制するということ。四つ目には総量規制を行なう、これはやはり正しいと思います。これでなければならないのでありまして、長官としても国民の声を代表して、行政サイドにこのことを徹底さしてもらいたい、こう思うわけです。この四点に対しての長官の今後の行政サイドにおきましての徹底はどういうふうにしてするのか、また確信はどうなのか。まずこの点について国民の前にはっきりとひとつ所信表明をしてもらいたい、こう私思うわけであります。いかがでございましょうか。
  128. 三木武夫

    三木国務大臣 二月十四日に知事、市長の会議を開いたのは、いま御指摘のように、これは瀬戸内海をきれいにしようというためには、みんながきれいにしようという熱意、行動というものがなければ、ただ環境庁だけでということでは目的は達成できませんので、やはり関係の県あるいは市、その首長が瀬戸内海をきれいにするためにはこういうことが必要だということをみんなが同意をして——いま御指摘の四つの問題は、やはり根幹に触れた問題だと思います。きれいにするのはけっこう、自分の県はまだ開発がおくれておるから、そういう一般的な規制というのはごめんこうむりたい、こういうようなことではこれはできるわけがない。みんながこの機会に相当の決意を持って瀬戸内海の浄化の問題に取り組まなければ、もういまでもおそ過ぎるくらいですから、目的は達成できないのだということで、沿岸の自治体の合意を得ることがやはり必要である、こういうことで会議をいたしたわけでして、いま御指摘のような、どのようにして考え方を末端まで浸透さすのかということには、いま言ったような自治体というものの熱意、行動というものが必要だというために会議を開いたわけでありまして、そういう面からこの問題と取り組んでいきたいという考えでございます。
  129. 島本虎三

    島本委員 同時に環境庁としては特に開発関係、それから港湾の問題では港湾の建設関係、それから屎尿処理関係はもちろんでありますけれども、都市の下水関係、こういうような広範な面で、行政が直接自分の所管でない他省庁の所管になっている、そういうような分野に対しても、環境破壊や公害防除のためには調整権を当然発動さしてもよろしい。いま言った四つの問題は特に瀬戸内海では大きい一つの問題点をえぐったわけでありまするけれども、それと同時に他の法律、他の行政の中にも、環境庁長官としては環境保全公害防除のためには調整権を発動させる。またそうしてもよろしいし、そうしなければならないものだ、こう考えておるのでありまするけれども長官はやはりいまの時点に立っては副総理であるだけではございません、環境庁長官のこの重要な使命の前に、当然これはやるべきことだ、こういうふうに私は信じて疑わないわけです。ここに調整権ということばは、特にあってないようなものでありますけれども、あるいはこれがあるように、あるいはまだこれが付与されていないように思っている人もあるかもしれないと思います。しかしこれは長官の重大な一つ権限である、こういうふうに私は思っておるのであります。これで他の公害源に対しましての除去並びに環境保全のためにこれらの開発に対しては今後調整権の発動も十分考えておかなければならない、こういうように私は思いますが、長官の御意見を承りたいと思います。
  130. 三木武夫

    三木国務大臣 政府もしばしばGNP第一主義はやめて国民の生活福祉を充実する方向に政策の転換を行なうということを国民に約束しておるのですから、私は環境保全公害の防止ということを幾ら強調しても強調し過ぎることはないと信じておるわけであります。したがって、四十八年度の予算についても、私がいろいろ要請をしたのは環境庁の予算ばかりではなかったのです。今後もやはり全体としての環境保全公害防止という見地で大所高所から、自分の省庁の予算だからというような狭い視野でなくして、予算の編成のときからいろいろな調整というわけですか、調整権——どういうことを島本委員は頭に描いていられるのか、実質的には言われるようにこれは予算の作成の時期から環境保全公害の防止ということについては前提にするくらいの決心でないと、いっておることが口頭禅に終わる危険がある、しっかりしなければならぬと考えておる次第でございます。
  131. 島本虎三

    島本委員 ことに瀬戸内海並びに他の臨海工業地帯でも同様に発生しておる問題として、水質汚濁、この根幹になる燐、窒素、こういうようなものに対してはやはり規制の対象として今後取り締まるべきではなかろうか、こう思いますが、厚生省並びに環境庁事務当局では、この問題に対してどのようにお考えですか。
  132. 岡安誠

    ○岡安政府委員 お話しのとおりに瀬戸内海の汚濁、特に富栄養化の規制のためには、燐、窒素の排出の規制をしなければ基本的には対策になりませんし、また赤潮の発生等の防止のためにも燐、窒素の排出規制をやりたいというふうに考えております。しかし問題は現在燐、窒素を除去する施設等につきまして技術的になかなか問題がたくさんございますので、おっしゃるとおりまだ規制をいたしておりませんが、私どもはなるべく早い機会に規制に踏み切りたいということで、いま現在関係方面とも折衝し、また技術開発のほうにつきましても、これを促進するようにつとめているというふうな段階でございます。
  133. 浦田純一

    ○浦田政府委員 瀬戸内海汚濁、ことに赤潮の原因一つであるという疑いを持たれております屎尿の海洋投棄につきましては、これはことしの四月一日以降は瀬戸内海海域には屎尿投棄を禁止するということでもっと問題を根本的に解決したいと考えております。すでに各市、県と、和歌山県あるいは高知県との間の屎尿の遠洋における海洋投棄についての実際的なやり方についての覚え書き等も、厚生省が特にあっせんいたしまして締結されておるということで、四月一日からの採尿の瀬戸内海海域への投棄は禁止されるというふうになると思います。  それから屎尿の処理施設等から出ますいわゆる処理水、これは下水道の終末処理場から出る処理水も同じ状況にあろうと思いますけれども、これのさらに高次的な処理技術につきましては、建設省などを中心といたしましてその新技術の開発、さらにはそれの行政への取り入れということについて早急に実現するように、現在努力中でございます。
  134. 島本虎三

    島本委員 それは瀬戸内海というとどの辺までというのが問題になりますが、当然響灘のその周辺も入るものであるというふうに、われわれは周辺も認識しておりますが、やはりいまのお答え、四月一日から禁止するということになると、内海並びにその周辺というふうにわれわれは解釈しておりますが、この点は私の解釈でよろしゅうございますか。それとも厳密に関門海峡より中をさすものでありますか。この点について環境庁、厚生省、もう一回ひとつ。
  135. 浦田純一

    ○浦田政府委員 実質上、昭和五十年以降、距岸五十海里以遠に投げ捨てるという線でもってこれを取り扱っているところでございます。したがいまして、単に関門海峡から内とかいった、そういったいわゆる瀬戸内の地理的な解釈に限るものではございません。
  136. 島本虎三

    島本委員 そうすると、距離を遠くして依然として海洋投棄は許す、認めるんだ、四月一日以降もそうだ、こういうことなんですか。
  137. 浦田純一

    ○浦田政府委員 原則的には、できるだけ近い将来、すなわち現在の第三次整備計画が完成した暁には、屎尿の海洋投棄は全面的に禁止するというたてまえでやっております。しかし、それまでの間五十海里以遠の沖合いに持っていって捨てるということで、できるだけ、捨てるにしてもいろいろと、たとえば海産物あるいはことに陸地へ漂着するとかいったような、そういった被害が起こらないように万全の注意をしてやる、こういうことでございます。
  138. 島本虎三

    島本委員 長官、まだ行政の点では、行政サイドでは手が抜けているのです。しけになった場合、じゃどうなりますか。それがいま一番問題点なのです。荒天の際には、いかに地域を指定しても、距離を指定してやっても、途中でこれを投棄して逃げて帰ってくる。何よりも、仕事よりも人命が大事ですから。また、そうしないと自分の生活が成り立ちませんから、近くへ投げてくるのです。このために困っているというのが現状なんです。距離を離して投げさせても、依然として投げさせていたら、あらゆる条件を加味して、これはいまと同じ状態が続くということです。これでは長官がそのように考えても、やはり旧態依然たるものであるということになるじゃありませんか。私はやはり今後一段と、こういうような点は下水道処理を徹底させる、五十年以降は全部下水道処理だ、そしてなまのままで海洋投棄は認めないんだ、こういうような線まではっきり出せないものですか。厚生省は、こういうような点をはっきり計画でやっていたじゃありませんか。
  139. 浦田純一

    ○浦田政府委員 少し明確でなかった点がありますので、再度お答え申し上げます。  ことしの四月一日から、瀬戸内における屎尿の海洋投棄は一切禁止いたします。それから、現在の第三次整備計画が完了しますのは昭和五十年度でございます。したがいまして、五十一年以降は、屎尿の海洋投棄は全面的に禁止するということでございます。
  140. 島本虎三

    島本委員 それで、これは響灘の埋め立て計画になりますが、これは現在でも深刻な問題を起こしておるのですが、この埋め立て計画そのものも、これ以上の計画については再検討を要するのではないか、こう思われるのです。また、現在の計画そのものでも、これは計画の変更はしかるべきじゃないかと思われる点もあるのですけれども、この点等については万全の措置をしておったのですか。どういうふうにしてあの計画を策定して実施しておるのか、計画手続その他においてはすべて尽くして万遺憾なかったのですか、まずこの手続上の問題からひとつお伺いしたいと思います。
  141. 岡部保

    ○岡部政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生のおっしゃいました響灘地区の埋め立ての問題でございますが、最初に申されましたように、今後の埋め立て計画あるいは拡張計画というものについては非常に慎重に取り扱う必要があるということで、現在いろいろな意味での調査を実施中でございます。  そこで、現在までにすでに確定いたしております計画について申し上げますと、いわゆる響灘地区と申しますか、北九州市の若松区の北側にございます北九州港の洞海湾地区でありますが、このところに約百七十ヘクタールの面積の埋め立て地の計画を追加いたしましたのが昭和四十六年でございます。これは都市再開発用地あるいは公共用地、いわゆる港湾用地という利用目的で、これを新たに計画を追加いたしたわけでございます。それ以前にすでに計画が固まっておりましたので、それの隣接地域で、工業用地として約三百九十五ヘクタールの埋め立て地がございます。現段階では、この三百九十五ヘクタールの工業用地と、それから百七十ヘクタールの主として都市再開発用地を利用目的といたしております埋め立ての計画でございます。  この計画につきましては、当然港湾管理者でございます北九州港管理組合が発議いたしまして、この計画を実施いたしたいという要請に従いまして、運輸大臣として港湾審議会に諮問をいたしております。そこで、この諮問をいたしました計画について、これは差しつかえなかろうということで了承を得ましてこの計画が確定したという手続をとっております。したがいまして、港湾の計画上、またこの計画をオーソライズする実施の過程上、当然関係各省とも御相談を申し上げて、審議会には現実に関係各省の方も委員として入っておられます。あるいはその審議会の事前に、幹事会というものがございまして、各省の担当課長等にお集まりいただきまして、いろいろ討議をしていただいております。したがいまして、こういうような手続を経て現段階まで進んできたということでございます。  ただ、先生の冒頭おっしゃいましたように、今後のこれは相当大規模な計画を、北九州港管理組合としては計画で固めたいという意思を持っておるのは事実でございます。そこで、その埋め立ての計画につきましては、もう少し慎重に調査をいたしまして、現実にこれは環境庁とも十分御相談をいたしまして、これがどういう必要があり、あるいはどういう被害を与えるおそれがあるかというような点についてもっと検討した上でこの計画をオーソライズする、あるいは全く変えるのか、そこの辺についての検討をいたしたいという考えでございます。
  142. 島本虎三

    島本委員 現在まで許可した分、すなわち四十六年度は百七十ヘクタール、その以前三百九十五ヘクタール、こういうふうに言われましたけれども、その中で特に公有水面埋立法、これはその後も改正されておりますけれども、その中の三十二条によって、埋め立てをする場合にはいろいろな要件をきめておりますが、いわゆる地方長官の監督権です。その中の四番目に、「埋立ニ関スル工事施行ノ方法公害ヲ生スルノ虞アルトキ」、それから「六 公害ヲ除却シ又ハ軽減スル為必要ナルトキ」、この場合には「埋立ニ関スル工事竣功認可前ニ限リ地方長官ハ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ニ対シ本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リテ其ノ為シタル免許其ノ他ノ処分ヲ取消シ其ノ効カヲ制限シ若ハ其ノ条件ヲ変更シ、埋立ニ関スル工事ノ施行区域内に於ケル公有水面ニ存スル工作物其ノ他ノ物件ヲ改築若ハ除却セシメ、損害ヲ防止スル為必要ナル施設ヲ為サシメ又ハ原状回復ヲ為サシムルコトヲ得」こういうふうにあるのであります。  いま、この計画そのものの実施が、周辺の漁民に対して重大なる悪影響をもたらしておることは御存じのとおりなんです。もうすでにこの計画を停止せい、新たな計画をやめよ、その理由は赤潮の発生である。その赤潮も普通の富栄養的な体系じゃなくて、そのものが押し寄せたら、ハマチでもタイでも、養殖中のものはみんな死んでしまうのだ、こういうような、比類のないような赤潮だということ。その被害は去年受けている。その以前にも受けている。こういうようなものがあるのです。当然これは法によって、こういうようなものに対しては原形復旧するか、または差しとめなければならないはずじゃありませんか。これに対してどういう措置をし、どういうような監督権限を行使されましたか。
  143. 岡部保

    ○岡部政府委員 先ほど申し上げました御説明で、四十六年に百七十ヘクタールの計画をオーソライズしたと申しました埋め立てにつきましては、これは公有水面埋立法の許可が出ておりません。失礼いたしました。したがいまして、工業用地の三百九十五ヘクタールと申し上げましたほうは、すでに埋め立ての免許をとっておるというところでございます。  そこで、いまの先生の御説でございますが、まず公有水面埋立法の問題で、公害関係で原状復旧等の措置をするべきではないかという問題、あるいはこの件について、ここで北九州港の港湾埋め立て計画についてすでに埋め立ての免許をとっておる事案について、これを何らか措置するべきではないかという問題について、結論的にまず申し上げますと、おことばを返すようでございますが、現段階で埋め立て工事と、先生のおっしゃいました赤潮との因果関係、この問題は、私どもはまだ明確ではないという判断に立っております。これはおことばを返すようでたいへん恐縮でございますが、私どもとしては、確かにあそこに赤潮を生じておるという事実も存じておりますし、これがどういう原因で、どういうふうになっていくかという点についていろいろ調査をいたしていることは事実でございます。ただ、私、赤潮についての専門的な知識を持っておりませんから、あるいは言い過ぎの点があるかもしれませんけれども、私どもとしては、この土地ができたために、この上に乗っかる上物から汚物と申しますか、公害の源が発生される、それが外へ出ていく、それでこの地域を汚染しているというケース、それからこういうものをつくりましたためにこの付近の潮流が変わる、したがって、従来もっと拡散したであろう公害源がある一カ所に固まったというようなために、この赤潮の問題が非常に強く影響をあらわしたと見る面、そういうようないろいろな考え方、があると思うのであります。  そこで、私どもいま現地で、これは私どもの出先の第四港湾建設局におきまして、この埋め立て地をつくったために潮流、がどういうふうに変わり、この付近のたとえば汚染源から流れるといたしましても、それがどういうふうに変わるかという点の模型実験あるいは数値計算等を現在いたしておる最中でございます。それで、まだ残念ながら確たる結果は出ておりませんが、これはもう少し時間をかしていただいて継続いたす予定でございます。  そこで、明らかに、埋め立て工事で土地ができたということのために潮流が変わり、そこでこういう被害を与えたということならば、当然この地形を直さなければいかぬという問題が出てくるわけであります。それから、上物によって何か被害が出たとすれば……
  144. 島本虎三

    島本委員 上物というのは何ですか。
  145. 岡部保

    ○岡部政府委員 土地をつくりまして、その上にたとえば工場がつくられるとか、そういう上にできた構築物という意味でございます。  そういう上物によりまして発生する汚染であるということになりますれば、これはむしろその上物の汚染源をとめなければいかぬという、全然別の問題になるわけでございます。  そこで、そういうようないろいろな考え方がございますので、先ほど冒頭に申しましたように、たいへんことばを返すようで申しわけございませんが、埋め立ての地形を直せばこの汚染を除去できるというはっきりした明白な関係というものをまだ十分つかんでおりませんので、現段階ではそのままにしておくという考え方でございます。
  146. 島本虎三

    島本委員 現在ではそのままにしておくというより、もっと悪い計画を考えているのじゃありませんか。藍島から約二千六百メートルにわたってこれまた堤防を出し、北九州側の白州、この手前に約千五百メートルと二千メートルにわたって三千五百メートルの堤防をまた出し、そしてこれまた西部地区のほうからは二千五百メートルの堤防を出し、これを全部出した場合は、潮流は逆に全部日本海のほうへ行くように変化してしまうんじゃありませんか。こういう計画さえも計画して、新たに——これはもうすでに計画が決定し許可したのですか、この計画は。
  147. 岡部保

    ○岡部政府委員 ただいまの大防波堤の考え方あるいはさらに埋め立て地を何千ヘクタールと追加する計画、これは原案者として北九州港管理組合がこれを検討いたしていることは事実でございます。私どもとしては、この計画をオーソライズするにはあまりにもいろいろな問題があり過ぎます。現在、これをオーソライズは現段階ではできない、もっと十分調査して、ほんとう意味でこれが絶対に悪影響を及ぼさないものであるという確証がなければ、新たにこれを認めるということはしないつもりでございます。
  148. 島本虎三

    島本委員 同時に、この際ですので、われわれもその点は十分地域実査をしながら関係者の意見を聞いてまいった。その結果においては、漁業会のほうでは養殖ハマチ、養殖タイ、こういうようなものは、おそらくは億の金にも数えられるようなこういう施設をして、県補助によってこれを行なっているのであります。それがいわゆる赤潮という、普通の富栄養体系のものじゃなくて、来たならば全部それは死んでしまうというような赤潮が寄し押せたのが最近なんです。去年なんです。そして、去年やっておるその最中には、その埋め立てのそれをしゅんせつをやっておる。同時に洞海湾の周辺のしゅんせつもやっておる。その最中にこれらの被害が起きておるのであります。これがはっきりするまでは——はっきりしないうちにこういう被害が全部起きるのであります。これは運輸省のほうでは、一応はつくるのがたてまえだ。しかしながら水産庁、皆さんの場合は、漁民、魚族を守るのが立場でなければならない。こういうような被害に対しては知らないわけがないわけだ。一回ぐらいじゃないはずなんです。これに対して水産庁は、同じ行政サイドにある官庁として、何か話し合いをし、原因を究明し、そしてそれを阻止する努力をなすったのですか。いまお聞きのとおり、運輸省のほうでは、あまり膨大なものは、研究調査の結論が出ないうちはやらないと言っている。やらないうちにもう被害が発生している。それに対して水産庁はどういうふうな措置と調査をしたのですか。
  149. 安福数夫

    ○安福政府委員 お答えいたします。  響灘のハマチの被害が実際起こりましたのは四十六年の八月、四十七年の六月、この二回の報告を私どもは聞いておるわけでございます。したがいまして、この被害につきまして、私どものほうでは、両県の水産試験場と私のほうの西海区の研究所がございますから、その指導、協力のもとに二回調査をいたしました。第一回目が四十六年の十月でございます。二回目が四十七年の一月、第二回目の調査結果を現在検討中でございます。昨年の七月だったと思いますが、中間報告が一応まとまっております。  ただ、調査だけでは必ずしも十分因果関係なりそういったものが証明できないということがございますけれども、非常に近接海域でございますし、したがいまして非常に疑わしい一つのあれがございました。その調査の結果、その後も補完的な調査を両県の水産試験場を中心にずっとやっておりますけれども、そういった材料を持ち寄りまして、ちょうどきょうから北九州市で、大学の先生なり関係研究者を集めまして、きょう、あす、あさって三日間にわたりまして、最終的な結論を出す一つの詰めを行なっております。この整理はおそらく二、三カ月かかると思いますけれども、そういう調査を水産庁としては行なってまいっておるわけでございます。
  150. 島本虎三

    島本委員 漁民と漁業の問題では、水産庁は親でしょう。漁民のためには親でしょう。漁業のためには指導的な所管官庁でしょう。こういうような被害が起きたときには、すぐに救済の手だてをしなければならないはずでしょう。原因究明もしなければならないはずでしょう。四十六年にも起きて、四十七年にも起きておる。ちょうどしゅんせつ工事をやっているそのころなんです。なぜ早く手を打たぬのですか。いまこれからやる。やらないよりもいいんですが、おそきに過ぎませんか。もう少し骨のあるような官庁になって、できなければ、環境庁長官もいることだし、環境保全のために、水質汚濁防止のためにということで、両官庁間で話し合いぐらいできるでしょう。建設サイドは、国民を犠牲にしたり漁業を犠牲にしたりしてまでの建設は許さないのです。水産庁がもう少し漁民、魚族のことを考えないとだめです。少しとろ過ぎる。現地へ行って漁民の声を聞いてごらんなさい。官庁の中で、ああいうじゅうたんの上にすわっておるからそういうことになる。これからあらためて考えるなんてとろ過ぎる。何ですかそんなこと。工事は一応中止ということに当然しておかなければだめでしょう。そういうような要請ぐらいなぜしないんですか。当然そういうようなことをしてやらぬとだめなんです。あれは巨大なものでしょう。
  151. 安福数夫

    ○安福政府委員 お答えいたします。  被害の実情につきまして、地元の県議会なり県庁あるいは漁協、県漁連、そういう段階からしばしばこの問題については、私ども承知しておりますから、私どものほうから、現地について十分それを調査しようということでいたしておるわけでございます。  先ほど申し上げましたように、北九州市の港湾埋め立て事業がこの海域の赤潮発生に必ずしも全く関係ないんだというふうには、私ども承知しておりません。したがいまして、昨年の九月だったと思いますが、私どものほうから運輸省のほうに、これについて一応善処方を申し入れた経緯がございます。それから、実際の公害発生に基づくその後の事後措置につきましては、そのつど私ども現地県庁を通じまして、県段階ででき得ることについての指導対策は講じてまいっている次第でございます。
  152. 島本虎三

    島本委員 新規計画についてはいますぐ認める意思がないことはわかりました。同時に、この問題は環境庁長官も十分考え——そのように潮流まで変え、その方法が現在もうすでに悪質な赤潮を発生させて、養殖ハマチ、タイに対して重大な損害を与えている。その因果関係がわからないということで、まだいろいろなことを研究されているようです。因果関係の解明なんかを医学的また科学的になんといったら、ほとんどできないのです。まずそれよりも推定が先なんです。着工した時期——その辺で操業している工場の廃液が潮流によって当然到達する可能性があるならば、いまの法律ではなくても、裁判では先行して推定しているじゃありませんか。公害では推定しているのです。そういう状態の中で魚族の問題一つさえもできない、こういうようなことはとんでもないことだ。もうことしの夏のことを心配しているのです。それに対してどうしていいのか漁民は心配しているのです。水産庁、養殖しているその辺へ水でカーテンをやれないだろうか、また赤潮が来たならば閉鎖して、去ったならば水を入れるようなものができないだろうかというようなことまで検討しているのです。開発そのものよりも、環境保全公害除去のほうが先なんです。そのための環境庁でもあるのですから。運輸省でもそこを考え——いままた膨大な計画を進めようとしているのです、第三セクターのほうへ行って。向こうは仕事をやらなければだめなんだから、そういうふうにバトンタッチしている。ただ進めるばかりなんです。それはまさに日本を破壊する結果になるかもしれない。そういうようなことをさせないで——新規計画はいますぐ認めるということにはなっておらないのですね。その場所でいいから、立ってちょっと言ってください。
  153. 岡部保

    ○岡部政府委員 そのとおりでございます。
  154. 島本虎三

    島本委員 計画変更については許可の対象になっているのですか、いないのですか。
  155. 岡部保

    ○岡部政府委員 ただいま先生のおっしゃいました意味が、私はっきりつかみがねたのでございますが……
  156. 島本虎三

    島本委員 もう一回言います。以前計画しておった第一期の三百九十五ヘクタール、この分に対してその計画を変更する。斜めのものを立てるとか、横のものを縦にするとか、いろいろな計画の変更が当然あるのです。この計画を変更した場合にもう一回許可の対象になるのか、そのままそれをやらしていいのか、どっちなんですか、こういうことです。
  157. 岡部保

    ○岡部政府委員 わかりました。これは港湾計画としての変更それから公有水面埋立法上の埋め立て計画としての変更、この二種類の行政行為があるわけでございます。港湾計画としての変更は、特に許可というような手続は踏まないことになっております。ただ、公有水面埋立法でこの法線が変わり、ただいまの地形が変わって埋め立てをするということになりますれば、当然これは設計変更の手続をとらなければ実施できないということになります。
  158. 島本虎三

    島本委員 この変更はどっちのほうになりますか。
  159. 佐野憲治

    佐野委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  160. 佐野憲治

    佐野委員長 速記を始めて。
  161. 岡部保

    ○岡部政府委員 いまおっしゃいました点について、もう一度繰り返して申し上げますと、まず先行いたしますのは港湾計画でございます。したがいまして、港湾計画として、北九州港管理組合がこういうふうに計画をいたしたいということで——港湾計画、これは本来港湾管理者である北九州港管理組合がつくるものでございます。したがって、こういうものでやるのだ。それに対して運輸大臣は、これが国の考え方に合っているかどうかということで、計画を提出させるということができることになっております。提出をさせまして、それを港湾審議会の議を経て、この計画が適当であるかどうかという、国の立場での検討をいたします。その際に関係各省とも御相談を申し上げることがこの手続中に含まれておるわけでございます。  そこで、この計画が、たとえば建つほうの計画がよろしいということになれば、これは一応計画としてよかろうということで結論が出るわけでございますが、それと別に、公有水面を埋め立てをするということで、やはり同じように、こういう法線をもって埋め立てをいたしたいという手続が行政的に行なわれなければならないわけでございます。この場合に、許可権者は、やはり北九州港の管理組合の長が機関委任事務としてこれを許可するわけでございますが、こういう場合に、許可をするに先立って運輸大臣の認可を求めてまいります。その際に運輸大臣は、先ほど申しました港湾計画として認められておる法線と食い違っておれば、当然これを是正させる、またこれが港湾計画等で審議されました法線と全く一致しておる、この利用計画についても同一であるということであれば、ここで認可をする。したがって、公有水面埋立法においては、運輸大臣は非常に公権力を持っておるわけでございます。  それから港湾計画につきましては、事実上これを変更しなさいと求めることはできますが、こういう許可をするとか認可をするとか、そういう権限は運輸大臣としては持っておりません。
  162. 島本虎三

    島本委員 では、この場合は、変更はそのまま許可、認可なしにできる、こういうように解していいのですか。
  163. 岡部保

    ○岡部政府委員 変更は、港湾管理者の意思があって、それから国の関係行政機関との相談もございますが、そういう議を経てやれば、許可、認可の手続ではなくて、よかろうということはあり得ることでございます。
  164. 島本虎三

    島本委員 この変更は来ておりますか。
  165. 岡部保

    ○岡部政府委員 まだ来ておりません。
  166. 島本虎三

    島本委員 わかりました。もしそうだとするならば重大なことであります。これは許可も認可も要らない、変更はわれわれがかってにできるのだ、こういうふうに管理事務所は言っておりますから……。重大な侮辱ですよ。いま言ったことと全然違います。一たん許可を得たものを変更するのはわれわれの自由である、あらためて許可も認可も、こういうようなものは要らないのだ、現地ではそういう考えを持っております。あなたの考えと違う。では、もう一回調べていただきたい。十分調べた上で、との計画がどういうようになって、許可、認可が必要ないのか——まだ来ていないとするならばなおさらのことであります。向こうは、かってに変更してもやれるのだ、こういうふうに言っておりますから、事重大であります。すぐ調べて、この結果を私のほうへ報告してもらいたい。
  167. 岡部保

    ○岡部政府委員 わかりました。御報告いたします。
  168. 島本虎三

    島本委員 次に、私は、廃棄物の処理についてお伺いしますが、埋め立てそのものは、鉱滓その他工場廃棄物、この処理のための埋め立てだ、こういうふうなことになっておるのですが、そういうふうになっておるのですか。
  169. 浦田純一

    ○浦田政府委員 島本先生の御指摘の場所がわかりませんが、この計画書の上では、第四期分といたしまして廃棄物処分を計画しておるというところがございますが、第一期、第二期、いずれもその点は明確でございません。私ども承知しておりません。
  170. 島本虎三

    島本委員 この廃棄物処理、そのために一定の場所を指定して船が入れるような航路をつけて、その中に廃棄物を捨てさせて、そうしてその捨てたもので埋め立てをしていって、そうしてその埋め立てた跡をまた埋め立て地として売り渡して使用しようとする計画です。現にこれは実施中なんであります。そうして、持ってきた鉱滓並びに廃棄物、それを海の中へ捨てるのと同じです。そこへ捨てるのです。そういうふうなやり方を厚生省並びに運輸省では許可してあるのですか。
  171. 浦田純一

    ○浦田政府委員 廃棄物を埋め立て処分するということは、一定の基準に従って行なう場合には、これを禁止しているものではございません。
  172. 島本虎三

    島本委員 すなわちこの埋め立て、北九州響灘の埋め立て、この場所の産業廃棄物の処理、その埋め立てに使う、それは一つの処理です。それを企業家の負担において行なわなければならない義務があるのです。一般廃棄物ならば国並びに都道府県、市町村、産業廃棄物は企業家が責任をもって処理しなければならないわけです。それを監督するのは厚生省です。いまやっているこの方法が妥当だとしてこれは許可したのですか。現に行ってその場所を見て、ちゃんと知っているのですか、北九州の。これは重大なんです。
  173. 浦田純一

    ○浦田政府委員 廃棄物を埋め立て処分する場合、これはその物によりまして、たとえば有害なものを含んでいる場合には浸透しないように、地下水の汚染が起こらないようにといったような処分の基準を、これは最終処分の基準は環境庁のほうで行なうことでございますけれども、そういったふうな基準に適合するようにしてさせるということでございます。  それから御指摘のような場合、これは廃棄物の処理をするかどうかという計画につきましては運輸省のほうで、運輸審議会でございますか、あちらのほうでおきめになることでございますが、その辺の基準が適合しているかどうかということにつきましては、関係省庁とも十分に連絡をとりまして監視をしなくちゃならない問題でございます。私自身は当該の地域はまだ見ておりません。
  174. 島本虎三

    島本委員 やはり責任者として一回十分見て、そしてそういうふうな状態を知っておいてもらいたい。  漁民の話によると、まだ熱いものを持ってきてその辺に捨てていく。じゅうじゅうと煮えたぎるような、そういう音さえも聞こえる。当然赤潮がそういうふうなときによけい発生してくる。こういうふうなことさえも言っているのです。洞海湾並びにこの埋め立て、そうして埋め立てするためにしゅんせつをする。そこをスクリューでもってかき回すのです。洞海湾の底は、明治以来鉱滓がたまりにたまっているのです。どういうものがたまっているかわからぬほどでしょう。それに物が流されていく、行きつくところはハマチを養殖している、こういうふうなことで、水産の被害が起きるのは当然じゃないか。水産庁も少しとろいですよ。それをやったとたんに気がつかなければならないのです。私はどうも官庁がとろ過ぎるように思う。同時に、そういうような鉱滓を持っていって埋め立てている、これはもう産業廃棄物ですから、当然これについては厚生省もよく知っておらなければならないはずです。同時に、どういうようなものをどういうような方法で投げているのか、そしてどういうようにして埋め立てているのか、こういうようなのを見ておかないと、これはその事業家の責任というところまで追及できないじゃありませんか。よく見ておいてこれはやるべきです。  話に聞いたところによると、港湾管理者の説明によると、赤どろの処理だけは全部おおって流れないようにして、あと十年分ほど入れてもこれはだいじょうぶだ。澄んだ上のほうには魚が泳いでいる。まことにこういうようないい話がありましたから——遠くて、見ておられませんでした。もっと時間があったならば行って見るはずだったのです。はたしてどういうものが泳いでいるか、早くこれを調べておいてほしい。そして、これがはたして妥当なものかどうか、埋め立ての方法としても、人畜に被害ないのか、こういうようなものを十分調べて、ひとつ私に知らしてもらいたい。厚生省、それからこれは運輸省のほうで十分これを、私どものほうへ資料として出してもらいたい、このことをお願いしておきたいと思います。私は、いまのやり方は妥当じゃないと思います。ですから、もっとこれは細心の注意を払うべきだ、こう思いますがゆえに、もう一回調べて、その報告を私のほうに出してもらいたい、このことを要請しておきたいと思います。  次に、あの辺には最近いろいろな——海流の変化じゃありません、この赤どろ並びに赤潮が発生している、こういうようなことを言うのです。海洋汚染防止法が施行されているのです。水質汚濁防止法には、公有水面であるならば、特定の地域指定というものをしないで、これは全部取り締まりの対象になっているはずです。港であるならば、港則法によってそういうような有害なもの、こういうようなものは捨てられないことになっているはずです。それに対していかなる調査をしているのか。海上保安庁あたりはさっぱりやっておらないようです。はたしてこれをやったのかどうか。この規制措置に対してどういうような方法をとったのか。野放しにしておいた理由を問いたいのです。——海上保安庁来ておりますか。
  175. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 お答えいたします。  当該海域には、観測地点を定めまして、そこに随時船が行きまして、簡易な観測用具でもって調査をいたして、水質基準に適合しているかどうか計画的に監視をいたしております。
  176. 島本虎三

    島本委員 貞廣さん、この洞海湾の周辺において赤潮が発生したり、また異常なる緊迫した状態にありますが、あそこは第何区に当たるかわかりませんが、もう法によって、仕事としてこの調査をなすったか、なさらないかということです。
  177. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 常時計画的に調査をいたしております。
  178. 島本虎三

    島本委員 では、その報告が来ておりますか。
  179. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 いま具体的に資料を持っておりませんけれども、来ております。
  180. 島本虎三

    島本委員 これも十分調べて、どういうような状態なのか調査してもらいたい。四日市においても、保安庁あたりが一生懸命やって、一つの水質汚濁、こういうようなものの端緒をつかみ得た。北九州のほうでは漁民が騒ぎ、そして関係住民が主張しているにもかかわらず、保安庁はさっぱり動いていない。こういうようなことでは、今後のためにも困ると思います。ことに最新式の機械をもって、水質汚濁の状態、油濁の状態、こういうようなものは調査でき得るものだ、こう思います。こういうような点において手を抜いちゃならない、こう思いますが、今後十分にこれに対して検討し、前後の事情も知らしてもらいたい、こう思います。よろしゅうございますか。
  181. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 そのようにいたします。
  182. 島本虎三

    島本委員 運輸省港湾局にもう一回お伺いしますが、洞海湾の工場の廃液並びに新規の埋め立ての汚水、こういうようなもので漁業が成り立たなくなっているんだということが、いま重大な関心になっているんです。しかし、埋め立てする場合に、これは被害の及ぼす範囲、こういうようなものに対しても今後十分考えなければならないんじゃないか。当然地先漁業権のみを規制の対象として、それだけやればいいんだ、こういうような考えでは、これからはやはりいろいろな意味で海洋汚染、水質汚濁、こういうような点で被害を他のほうに及ぼすことになるんじゃないか、こう思いますが、被害の及ぼす範囲を考えて今後築堤並びに埋め立て、こういうようなものは実施しなければならない、こう思うのですが、いまの場合にはあまり地先漁業権、こういうようなもののみを規制の対象として、あとは野放しにしている傾向でありはせぬか。これでは困るのでありますが、今後やはり被害の及ぼす範囲も十分考えるべきだ、こう思いますが、御所見を承りたいと思います。
  183. 岡部保

    ○岡部政府委員 ただいまの先生のお考え方、私賛成でございます。ただ現行法では、いわゆる港湾法体系では、そういう許可とか等々の点はどうも非常にはっきりしない点が多いわけでございますが、はっきりその点言えますのは、公有水面埋立法の手続においてでございます。いま先生おっしゃいましたように、地先の漁業者、漁業権、そういう一つの既定の私権設定されておる権利というものを保護するという意味から、その周辺の地域の権利者というものだけを対象にいたしております。  そこで、これは私が現段階で申し上げるのははなはだ不適当なんでございますが、ただいま建設省と運輸省と両省で、公有水面埋立法の一部改正を検討中でございます。その中で考えておりますことは、要するに埋め立て行為を行なうというときに、この問題は埋め立ての一つの計画というものが問題であろう。したがって、こういう埋め立ての計画があるんだ、そういうものを出願したんだということを何か公示をできないか。公示をすれば、それに対して直接の権利の関係者のみならず、その周辺の関係者も、たとえば異議を申し立てるということができるんではなかろうかというような意味で、現在、法の一部改正を検討中でございます。したがって、でき得れば今国会に御提出申し上げて御審議いただきたいと考えておりますが、ただいま作業中でございますので、もう少し具体化いたしましたら、また先生に御説明を申し上げたいと思います。
  184. 島本虎三

    島本委員 なかなかこの公示制度というものがないから、いろいろな意味で住民の意見も聞けないし、それに対するいろいろな自分らの言うことも言えない。こういうような結果が一つの紛争のもとにもなる。さっそくこの公示制度を考えた、これは一歩前進です。ぜひこれを取り入れて被害の及ぼす範囲、こういうものを十分考えてやって、住民サイドに立って行政を実施してもらいたい。  それとあわせて、当然これは公聴会制度による運営ということも考えていいんじゃなかろうか。住民無視というような状態で計画だけ進められる。このもとにせっかく埋め立てた、埋め立てたら、埋め立ての地先は普通のとおりに埋め立てする。埋め立てられたその地点は、埋め立てたものよりも一メートルも下がってしまっている。だって現在住民がいるところは、もうすでに埋め立てたとたんに水がふき出てしまって、どうにもできなくなった。三百戸集団移転しなければならなかった。こういうような計画であるとは知らなかった。現にこういう住民がいるじゃありませんか、山口県に。あるのです。住民の声を聞かないでただやると、こういう結果になるのです。あるのですよ。ですから、これは公聴会の制度も十分に考えて実施すべきだ、私はそういうように思います。これは下松の恋ケ浜の埋め立てで、現在そのとおりなんです。住民は何も知らない。その地先を埋め立てた。その埋め立てたほうの土地が一メートル以上高いのです。埋め立てられたその住民の住んでいるところは、一メートルほど低いのです。ゼロメートル地帯なんです。埋め立てたとたんに、その住宅地帯に塩水がふき出してくるんです。温度のついた水ならば、これは温泉になっていいでしょうが、ただの塩水ですよ。その辺では住めなくなって、三百戸集団移転をさしてくれ、これでまた新しい問題が起きているのです。なぜ公聴会くらい開けないのか。これ、重要じゃありませんか。この制度もぜひ取り入れるべきだ、こう思います。現に被害者がいるじゃありませんか、同じ山口県に。下松の恋ケ浜です。この実態知らないでしょう。ですから公聴会が必要なんです。せっかく公示制度をとりたい、ここまでいったのですから、一歩進めて、この公聴会制度も当然とって、運営の中に入れるべきです。御高見を拝聴いたします。
  185. 岡部保

    ○岡部政府委員 どうもあまり御高見がございませんで申しわけないのでございますが、一応現行法におきまして、地元市町村の意見を聞くということが公有水面埋立法で規定されております。したがって、従来の私ども考え方でいえば、こういう地元の市町村の、しかも議会の議を経て意見が出てくるということが地元の御意見を承る一つの道であるという考え方に立っておった一つのの法体系であります。したがいまして、ここで新たに公聴会制度を開くということは、現実に法制の作業段階でいろいろ議論も出ましたのですが、まず公聴会で意見を聞くというよりは、現在の市町村の意見を聞くということと公示制度とを合わせれば、現実にそういういろいろな意見が出てくるんではなかろうかという感じでいま考えておるのが事実でございます。
  186. 島本虎三

    島本委員 市長は、これを推進するために積極的に意見を具申しているのです。具申したことを町民は知らない。その周辺は高速道路、並びに前面は全部埋め立てて工場が来るんです。その周辺は全部工場と高速道路に囲まれてしまうのです。そして、そこを埋め立てたとたんに水がふき出してくるのです。市長はこれを推進しているのです。では、住民をどういうようなことで救済できるのですか。いまの市長のような立場は、えてしてこういうようなケースが多いのです。したがって、その場合に市長は必ず公聴会などを開いて、住民の意向を完全に把握してやってくれとかできるじゃありませんか。あなたはりっぱな官僚として、これくらいのことはやるべきです。できませんか。
  187. 岡部保

    ○岡部政府委員 私、できないとは申しません。ただ、現段階まで私ども考えてきた経過がこうであったということを御説明申し上げたのです。したがって、まだ最終的な案に達したところではございませんので、今後もちろん、この作業段階でもう一度、そういう考え方はどうであるかということは検討させていただきます。ただ、現実に、いま申しましたように、一つ段階として、こういうことでいき得るんではなかろうかという考えがあるという事実を申し上げたのです。
  188. 島本虎三

    島本委員 検討願います。  松野建設政務次官がおられますが、この瀬戸内海の環境破壊一公害の問題は、いまの状態ではどうしても工場排水と家庭汚水、それからふん尿を含めたところの屎尿関係のたれ流しと海洋投棄、こういうような面が多いということははっきりしているのです。この流域下水道の計画がないようでありますけれども、ことに国立公園であって、公園をよごしてはならないという立場からするならば、率先してこういうようなものを考えられなければならないんじゃないかと思うのです。琵琶湖の開発計画が出たときに驚いたのは、大津市一市だけで、あとは全部琵琶湖へたれ流しておったという実態がわかったのです。いま、いろいろな屎尿関係の点でも、家庭汚水の問題でも、建設省のほうとしては、流域下水道計画についても、公害対策の一環としても、これは早期に完成をはかるべきではなかろうか、こう思っているのですが、瀬戸内海沿岸についてはどのような計画とお考えでございましょう。
  189. 松野幸泰

    ○松野政府委員 瀬戸内海の水質汚濁防止のために、沿岸都市の公共下水道の整備を促進するとともに、流域を一体として整備する必要のある地域については、流域下水道事業を積極的に推進していくこととしております。  現在、流域下水道事業を実施している個所は、琵琶湖、桂川、淀川右岸、淀川左岸、安威川、寝屋川、猪名川左岸、猪名川右岸、武庫川、大和川上流、大和川下流、太田川等十二カ所でありまして、四十八年度新規として大阪南湾岸と児島湖を予定しております。  また、安威川、寝屋川、猪名川等はすでに一部運転を開始しており、その他の流域下水道についても、早期の供用開始を目標として促進してまいりたいと存じております。
  190. 島本虎三

    島本委員 早期に促進されるように、また早く実現の日を見るように要請いたします。  なお、環境庁長官、運輸省関係の岡部港湾局長、松野建設政務次官並びに建設省、厚生省の皆さん、われわれはきのう、住民の声として血のにじむような陳情を受けたのです。これを最後に皆さんにお伝えして私はやめたいと思います。  一、現在響灘開発の名のもとに進められているしゅんせつ並びに埋め立て工事を即時中止してもらいたい。  二、新たに認可申請されようとする計画については、これを絶対に認可しないでもらいたい。  三、都道府県域を越えて他の地方自治体に被害を及ぼすと考えられる大規模海面埋め立ての認可にあたっては、付近周域の関係漁民、関係自治体の承認を得ることを必須の条件とするよう法的措置を講じてもらいたい。  四、国会機関によって現地調査を実施するとともに、国、県の責任において早急に科学的調査を行なってもらいたい。  五、現に受け、また今後受けるべき漁業被害については、その全額を補償する措置を講じてもらいたい。  血のにじむような叫びとしてこの五つの要請を受けてまいりました。これを皆さんにお伝えして、これに対する対策を早く完全に練ってもらうことを要請して、私の質問を終わります。  なお、環境庁長官並びに関係の皆さん、この五つの問題に対しては、いずれまたこの委員会へ来てもらって、その後どうなっているかということをお伺いする、このようなことがあり得ますから、このことを念頭に置いておいてもらいたい。そしてこの措置を早くつけてもらいたい。このことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらしてもらいます。たいへんありがとうございました。
  191. 佐野憲治

    佐野委員長 中島武敏君。
  192. 中島武敏

    ○中島委員 環境庁長官は過日の所信表明の中で「公害の発生を未然に防止するため、各種公害にかかる環境基準や、排出基準、排水基準等の設定、見直し強化につとめるとともに、総量規制方式の導入をはかってまいりたいと考えております。」こういうふうに環境基準や排出基準、排水基準などの設定、見直し強化という問題を強調されております。そこで私は、きょうは第一に環境基準の問題、それも新幹線の騒音の環境基準について質問を行ないたいと思います。これも過日予算委員会の総括質問におきまして、私は若干の質問を行ないました。そして長官のほうから答弁をいただきましたが、その上に立ってさらに質問を行ないたいと考えております。  長官は、新幹線の騒音の暫定基準八十ホンは地下鉄ぐらいの音であるから満足する数字とは思わない、だから、近い将来正式な基準をきめたいと言われました。そこでお尋ねしたいのですが、近い将来というのはいつのことを考えていらっしゃるのか、さしていらっしゃるのか、このことをまず最初にお伺いしたいと思います。
  193. 三木武夫

    三木国務大臣 新幹線の騒音については、騒音に対する評価の方法とか住民に対する影響、これはもう少し調査をやらなければならぬ問題がありますので、四十八年度の予算もとっておりますので、そういう調査をやって、だから、いまいつまでにということを申し上げることはちょっとまだそういう調査が残っておるだけに困難でありますが、しかしできるだけ早く新幹線の環境基準、全体の新幹線に適用される環境基準をきめたいと思っておりますが、いつまでという時期をこの段階で申し上げるのはちょっと困難と思います。
  194. 中島武敏

    ○中島委員 ちょっと聞き方を変えたいと思うのですが、いま予定されております新幹線、たとえば東北新幹線あるいは上越新幹線、これは昭和五十二年完成だというふうに聞いておりますけれども、この五十二年のときにはもちろん、幾らなんでも問に合うんだと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  195. 三木武夫

    三木国務大臣 これは当然に、新しく今度敷設される新幹線に間に合わないようなことでは環境基準をきめる意義が薄れるわけでありますから、それまでかけぬようにしたいと思っておるわけでございます。
  196. 中島武敏

    ○中島委員 もちろん、これは何年も先のことでありますから、それまでかかるとは私も考えていたわけではありません。しかし、念のためお伺いしたわけであります。  御存じのように、この新幹線の騒音問題というのは非常に大きな影響がありまして、私自身も、問題になっております名古屋市内における騒音を実際に調査を行なったことがありますが、なかなかこれはひどいのですね。しかも振動とともにやってくるわけです。ごろごろごろというような音がやってきてそれで消えていく。もうそのときには、近くの家で会話しておりましても、ああうるさいといって、どうしても話を中断してしまわなければならないというような状態であるわけであります。また、いろいろ事情を聞いてみますと、特に病人の人などは床にじかに寝ることができないというような状態で、宙に寝るところをつくって寝ているというような実態であります。夜中まで非常に安眠を妨害される、睡眠を妨害されるということであります。そういう点では既設の新幹線の沿線では、特に市街地の中では、これの環境基準を早くきめてほしい。前回予算委員会でも申しましたですけれども、現在のあの八十ホンという暫定基準では話にならない。もっときびしいものを早くきめてほしいという、そういう熱烈な意見、要求が出ているわけであります。そういう点から申しまして、先ほど環境庁長官から、評価の方法あるいは住民に対する影響など、もう少し調査をしなければならない点があるというふうに答弁がありましたが、もう少し具体的に、この辺いつまでにできるものかというようなことをはっきり答弁をいただきたいというように思うのです。
  197. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  環境庁ができましてまず第一に取り組みました騒音問題は、航空機騒音の問題でございまして、中央公害対策審議会のほうで、伊丹、羽田に対する見るに見かねる現状を早く処してほしいというので、暫定基準のつくりを先にやりました。それから航空機の環境基準づくりにという作業の予定でございましたが、既設の新幹線においても非常に問題が多いということで、航空機関係で行ないました手法を用いて新幹線騒音に対する緊急的な指針をつくろうという作業をやっていただいたわけでございます。現在、航空機の環境基準に相当するものを専門委員会において本年度中、すなわち来月一ぱいまでにその答えを出してほしいと先生方にお願いをしておる最中でございまして、それが済み、正式な答申の手続を済ませた上、私ども、新幹線の環境基準の作業に入ろう。それから、先ほど長官からも御答弁ありましたように、四十八年度にはいろいろ調査費がついてございますので、これらについてあわせて私ども調査を行なった上環境基準の作業に入りたい、こういうことでございます。
  198. 中島武敏

    ○中島委員 そうすると、大体一年以内ぐらいには答申が出てくるというような程度でしょうか。
  199. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 四十八年度の調査費で調査をいたしますので、その結果を見た上で作業に入りますので、一年以内でできるかどうか、ちょっと私、この席でお約束できません。
  200. 中島武敏

    ○中島委員 これはこれからのことですから、いつといっても明快にはっきり答えが出ないということだと思うのですが、先ほども申し上げたように、実情というのは、ほんとうにたいへんなものなんですね。そういう点からいいますと、これはもう一年といわず、ほんとうに督励して早く正式な環境基準をきめるというようにしていただかなければならないと思うのです。  実は、この問題に関連して、ちょっと長官に念のためお尋ねしておきたいと思うのですが、予算委員会におきます総括質問長官答弁の中で、新幹線の拡張も行なわれるわけであるから早くきめなければいかぬ、暫定基準をきめたわけである、こういうふうにおっしゃった。そういうふうに読み取れる個所があるわけなんです。ちょっとそこを読みますと、「これはやはり、」——これはとはつまり暫定基準のことですが、「これはやはり、正式な基準というものは近い将来きめたいと思っておりますが、新幹線のいろいろな騒音に対しての苦情もあるし、また新幹線の拡張も行なわれるわけでありますから、新幹線の騒音に対する問題はやはり緊急を要する問題なので、暫定的な基準として出したもので」と、こういうふうにおっしゃっていらっしゃるのです。「新幹線の拡張も行なわれるわけでありますから」と長官は言っておられるわけでありますけれども、これは既設の新幹線のことを言っておられるわけであって、新しい新幹線にこれを適用しようという意味でおっしゃったのではなかろうと思うわけですけれども、この点、念のためお伺いしておきたいと思います。
  201. 三木武夫

    三木国務大臣 それは少し私のことばが足りなかったので、やはり新幹線、これから敷設される新幹線は今度きめる環境基準というものが基礎になるわけですが、しかし、おそらく私の頭にあったのは、新幹線を敷設する場合に、騒音問題というのはこれほどやかましくなっておるから、国鉄当局もよほど騒音対策というものには近代的技術の最高水準を使って、そうして騒音対策をやる必要があるということが頭にあったことが、そういう表現になったんだと思うのですが、それは東海道新幹線、山陽新幹線というものを対象にして暫定の指針をきめたわけであります。これから新しくできる新幹線については、環境基準によって規制を受けることになるということでございます。
  202. 中島武敏

    ○中島委員 長官自身も、暫定基準八十ホンというのは満足すべき数字だとは思わないというふうにおっしゃっておられるわけであります。そこで、どの程度が環境基準として適当だというふうにお考えになっていらっしゃるか、お尋ねをいたしたいと思います。
  203. 三木武夫

    三木国務大臣 人間の生活環境という点からいえば、低いにこしたことはないわけです。そういう基準は低いほどいいわけです。しかし、そこはいろいろな技術の面もありましょうし、技術開発の段階もありましょうから、一体そういうのをどのように評価し、どのように沿線の住民の人たちの影響というものを考えるかということで、環境基準をきめるについてもう少し調査研究をしたいという内容は、そういうことがあるから調査研究をしたいということで、将来の一番理想的な一つの騒音の度合いとしてはこれだけだということを、この段階で私から申し上げるのは適当でないと思います。
  204. 中島武敏

    ○中島委員 いま長官が、低ければ低いほど人間の生活環境としてはいい、それは私はそのとおりだと思うのです。しかし、同時に技術改良の面もあるというふうにおっしゃったわけで、私はちょっとひっかかります。技術改良ができなければ人間の生活環境、人間の健康を守れる環境基準をきめられないという意味でしょうか。ここはちょっとお尋ねしたいと思うのです。
  205. 三木武夫

    三木国務大臣 それはやはり、世界的に騒音というものは非常に問題になっているわけですね。だから、そこで音源対策としての研究というものは世界的な課題である、またこれが進んでくると思います。進んでこなければ、航空機にしてもあるいは新幹線のような一つの列車にしても、たいへんな社会的な摩擦が起こってくる。利便というだけからは判断できないものがありますから、そういう点で、今後この問題は、非常に技術開発が急速に進んでくると思いますが、そればかりではありません。それもまたわれわれは無視して考えるわけにはいかない。現実にこの問題と取り組もうという以上は、技術開発の問題も無視するわけにはいかぬが、一方においては、あるいは防音対策であるとか、あるいは車両とか線路の改良もあるでしょうし、あるいはまた被害者に対する騒音防止のいろいろな対策があるわけですから、技術開発ばかりということではありません。それも一つの要素ではあるけれども、そのほかにもたくさんのものがあります。騒音の基準をきめるときにはいろいろな方法を組み合わせて、国民のいま一番苦情の多いのは騒音に対する被害ですから、国民のそういう生活に与えておる、あるいは健康に与えておる被害を最少限度に食いとめるためには、あらゆる問題がその中には含まれておると考えております。
  206. 中島武敏

    ○中島委員 技術開発あるいは長官の言われるあらゆる問題、こういう問題が解決しないと環境基準を設けられないというふうに、もしいま長官がおっしゃったのだとするならば、私はこれは間違いだと思うのです。この辺ちょっとくどいようですけれども、そこの意味は、それらの技術改良あるいはまたあらゆる問題と言われた点の解決のめどがついたということで、それから後に環境基準を設定されるというお考えなのかどうか、もう一度お尋ねしたいと思うのです。
  207. 三木武夫

    三木国務大臣 人間の健康あるいは生活環境に非常な被害を与える、しかし技術開発はそれに追いつかない、そうすれば、他のいろいろな方法が考えられる。それによってその騒音から来る被害を防止するよりほかにはない。技術開発がすべてだと私は考えていないわけです。しかし、技術開発というものも促進しなければ、いろいろな問題、公害防止の面においても、やはりこれから取り組まなければならぬのは、これだけの近代の科学技術の時代といわれておるのですから、そういう公害防除に対する技術開発というものにもよほど力を入れて、まあこれからこれに対しての投資というものを相当やるべきだという私は意見です。そういう点で、この新幹線に対する騒音防止のための技術開発に力を入れたらいい、こういうことであります。
  208. 中島武敏

    ○中島委員 長官が技術開発を強調されるのは私も同感であります。しかし、その技術開発なりあるいはそのほかの方法なりが開発されない限りは環境基準を設けないのかという、そこのところをお尋ねしたわけです。
  209. 三木武夫

    三木国務大臣 それはやはり、技術開発の進み方がわれわれが予期するような状態にならなくても、環境基準をきめて、その環境基準に合致するような新幹線の運営をしていくよりほかには私はないと思います。
  210. 中島武敏

    ○中島委員 私も、長官所信表明の中で、従来の環境行政が、公害が発生して、自然の環境破壊が深刻になってからようやく対策を講じるという、あと追い行政についての反省を行なっておられ、そしてまた、これらの事業が環境破壊をもたらさないと認められる場合に限り事業実施を認める制度の確立をはからなければならないと強調され、そしてまた、現在国土全般にわたる計画的な地域開発が推進されようとしておりますが、これにあたっては、さきに述べたような基本方針のもとで、厳正なチェックを行なってまいる所存である、こういうふうに所信表明をされていらっしゃるわけで、私は、やはりこの問題は、新幹線の環境基準を設けるという問題につきましても同様でなければならないと思うのです。技術改良あるいはそのほかの問題が必要であることは、これは論をまちません。しかし、現実には新しい新幹線の建設も進行しておりますし、また既設の新幹線沿線の住民は、日夜この騒音、振動問題で非常に悩んでいるわけです。そういう点からいって、長官所信表明どおりこれを実行に移す、一日も早く環境基準を設ける、しかもその環境基準の程度、内容というのは、私はやはり住民の生活環境を守る、健康を守れる、そういうものとして一日も早く設定されなければならないというふうに考えるわけであります。  なおもう一つ、これは過去の騒音の基準を設けた場合におきましてもそうなんですけれども、実は率直に言って骨抜きにされていった傾向があるわけです。これはもうすでに長官も御存じだとは思いますが、現行の騒音の環境基準は、A地域は昼間五十ホン、朝が四十五ホン、夜間四十ホン、こういうふうになっておりますけれども、ところが、ただしということで、道路に面する地域に特例を設けまして、二車線を有する道路に面する地域は五ホンずつゆるめたわけです。それから、二車線をこえる道路に面する地域ということで、さらに五ホンずつゆるめる。ところが、これでも足りなくて、道路に面する地域については、設定後五年以内に達成すればよいことにしてしまった。しかも、それも、さらに驚くべきことに、幹線道路については五年以上でもよいということになったわけです。しかも、幹線道路というのは、聞くところによりますと、これは環境庁説明のようでありますけれども、二車線道路は幹線道路であるという説明をされたことがおありだそうで、そうすると、ほとんどの道路がみんな実際には、環境基準が道路に面する地域というのは適用されないという事態を来たすわけです。そうすると、幾ら幾ら、何ぼ何ぼという基準が設けられましても、結局それが実際上は骨抜きになっていってしまう、実際には生活環境を守るための役には立たないという結果を来たすわけであります。  私は、新幹線の問題についても同様だと思うわけです。やはり、ほんとうに人間の健康が守れる、そしてまた生活環境を守れる基準を一日も早く設定する。同時に、何か猶予期間を設けて、いままだ技術の改良が十分でないからというようなことで先へ延ばしていくというような、こういうことがあってはならないと思うのです。はっきりそういうふうに過去の経験もあり、現行法がすでにそうなっているわけでありますから、この騒音の環境基準も、そういう点からいって、ぜひそうでないように要求をいたしたいと思いますし、この点についての長官の見解を伺いたいと思います。
  211. 三木武夫

    三木国務大臣 どうも、この騒音というものに対してのいままでの配慮というものが足りなかったことは事実です。そこに騒音対策というものの立ちおくれのあったことは事実だと思います。しかし、いまでは、世論調査の統計など見ましても、公害の中で端的な苦情の一番多いのは騒音です。また事実上それだけ生活の上において、健康にもその他心理的な不愉快、あるいは仕事等にも差しつかえるような被害を与えておることは事実ですから、だから、これはよほど今後騒音というものの防止には、非常に公害対策の中で——特に従来、この問題がこれだけの大きな問題として取り扱われていなかったところに、いろんな面でこの防止に対する対策の立ちおくれが確かにあったと思いますので、今後は御指摘のように、やはり住民の健康、生活を守る。しかも、新幹線があることによって非常に利便を受けておりますから、新幹線もみんな否定するということは、これまた住民の意思ではない。そこに国民の健康、生活を守りながら、新幹線の利便も享受するように、これはやはり政治の大きな責任だと思いますから、今後御指摘のような方向でこの問題を対処してまいりたいと考えます。
  212. 中島武敏

    ○中島委員 次に、私は大分市の騒音問題について質問をいたしたいと思います。  ちょっと経過を最初に申しますと、昭和四十六年八月十九日付で「騒音規制法の一部を改正する法律の施行について」という環境庁次官通達が出されておりますが、この次官通達の解釈をめぐって、住民の側と大分県並びに市当局との間で争いが起きたわけであります。  臨海工業地帯に新日鉄の大分製鉄所がありまして、そのすぐわきに住宅地域が隣接しているわけであります。新日鉄の騒音は五十五ホン程度、ただし風向きによりましては六十ホンをこえることもあるわけであります。そして大分市には騒音防止条例がありますが、これは昭和三十八年三月十日に施行になっております。この隣接している住宅地域は第三種区域に指定されておりまして、一番きびしい基準、昼間五十五ホン、朝夕五十ホン、夜間四十五ホンというふうに指定されているわけです。これは隣接している住宅区域と大分の新日鉄を含めてそういうふうにされているわけであります。市では新日鉄との間に公害防止協定を結びまして、それは昼間は六十五ホン以下、夜間五十五ホン以下と、こういうものなのです。これは市条例にもちろん違反しているわけでありまして、これは市条例違反ではないかということで大問題になったわけであります。ところが、市の見解によりますと、これは騒音規制法の施行によって条例が死文化した、こういう解釈であります。問題は、なぜ騒音規制法の施行によって条例が死文化したと考えたかというところに問題があるわけであります。その根拠となったのが次官通達の解釈をめぐってなんです。  次官通達にはどういうふうに出ているかと申しますと、この第二の「指定地域の範囲の拡大に関する事項」という中で「法第三条第一項の規定にてらし、指定地域の指定にあたっては、工業専用地域、臨港地区の分区、工業のための埋立地、飛行場、原野等住民の生活環境保全すべき実態がない地域については、指定地域から当然除外されるものであり、市町村の全地域を機械的に一律指定することは避けられたい。」こういうふうに次官通達には書かれております。  私は、この次官通達によって条例は死文化したと考えた市当局に最大の問題があると思います。しかし、ひるがえって考えますと、この次官通達にも私は問題があると思うのです。つまり、市当局に誤った解釈を許す余地があるということであります。  そこで、これは長官にお尋ねいたしたいのですが、「工業専用地域、臨港地区の分区、工業のための埋立地、飛行場、原野等住民の生活環境保全すべき実態がない地域については、指定地域から当然除外されるものであり」云々というふうに言って、除外するということに重点を置いた書き方がなされております。私はこの書き方、この考え方、これについて長官はどうお考えになるか、この点をお尋ねしたいと思うのです。
  213. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 私からお答えいたします。  先生御指摘のとおり、次官通達の読み方が少し複雑みたいに書いてございますので、あるいは誤解を生む点もあるかと思いますが、当時の意見では、やはり工場があるそういうところを一々指定しても意味がない、それから原っぱで何も問題がないようなところを指定しても意味がないというようなつもりで書かれたものが、ちょうど埋め立て地みたいなところに隣接した場合にそれをどうするかということをこまかく書きませんでしたものですから、そこのところが誤解を生むことになったのかと解釈をしております。
  214. 中島武敏

    ○中島委員 長官、それでよろしゅうございますか。
  215. 三木武夫

    三木国務大臣 そういう次官通達が地元にいろいろ新たなる誤解を生じておるとするならば、それをよく説明をして誤解を解くようにいたしたいと思います。
  216. 中島武敏

    ○中島委員 私は、騒音規制法の第一条の目的、ここにも、この法律は、生活環境保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする、こういうふうにいっているわけであります。第三条におきましても、「住民の生活環境保全する必要があると認める地域を、」指定するというふうに述べているわけであります。つまり別のことばでいいますと、やはり騒音規制法の精神とするところは、住民の生活環境並びに健康を保護するということに目的を置いているわけでありますし、そういう立場で書かれているものだと思うのです。  私は、この法律を施行するというときに、次官通達を出される、改正を加えられるという場合には、当然人間の健康を守る、生活環境を守るという立場から問題を述べるというのが正しいと思うのです。そういう点では、現実に出されております次官通達は「当然除外されるもの」であるといって、むしろ除外するところを非常に強調していることになっているわけなんですね。私はこれは逆じゃないかと思う。除外をなぜ強調するのか。むしろ、守らなければならないことはこうだというふうに強調するのが、次官通達としては当然ではないか。結論的に言いますと、この次官通達は、私はこれが最大の原因ではないということは先ほども申し上げましたけれども、大分市の当局に最大の問題があると考えますけれども、しかし、次官通達にもそういう解釈を許す余地がある、やはりこれは訂正をしなければならないんじゃなかろうかというように考えます。  それで、具体的にどう訂正するかという問題について、私自身も、こういう誤解を生まないようにということで、つまり工業専用地域、臨港地区の分区、工業のための埋立地、飛行場、原野等については周辺住民の生活環境が守られるよう配慮して行なうべきであるというふうに、むしろ守る側を強調したふうに訂正されてしかるべきじゃないかというふうに考えるわけでありますが、いかがでしょう。
  217. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 中身は先生のおっしゃるとおりでございます。ただ、その読み方が、工業専用地域というところでなしに、生活環境のあれがない実態というところにつながっているところが読み方の違いかと思いますが、趣旨は先生のおっしゃるとおりでございますので、私どもそういうふうに指導してまいりましたが、市当局がそれを工業専用地域というところだけを解釈して読んだということになれば、これは間違いでございますので、十分に指導してまいります。
  218. 中島武敏

    ○中島委員 大分市以外に、ほかにもこういう例が出ておりませんでしょうか。
  219. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 大分市以外、私どもまだ聞いておりません。
  220. 中島武敏

    ○中島委員 大分市以外に出ていないとすれば大分市だけでしょうが、しかし、たった一市でもこういうようなことが出てくるというのには、率直に申し上げて、先ほどから申し上げましたような若干の欠陥を含んでいるというふうに考えるわけであります。ですから、むしろこれを改定するといいますか、訂正するといいますか、誤解の余地のないようにされることがいいことじゃないかというように考えます。
  221. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 主管部課長会議あるいは課長会議その他いろいろな面を通じて徹底して指導してまいります。
  222. 中島武敏

    ○中島委員 次に、救済問題について質問をいたしたいと思います。きょうは時間の関係もありますので、詳しくは他の機会に譲りたいと思うのですけれども、幾つかの点について長官の見解をお尋ねしたいと思います。  一つは指定地域の問題であります。この問題も総括質問でも触れたわけでありますが、あらためてお尋ねしたいと思います。  現在の硫黄酸化物の環境基準では健康が守れない、このことは非常にはっきりしていると思うのです。そこで、現在中央公害対策審議会で硫黄酸化物の環境基準の改定を審議中だ、何か聞くところによりますと、二月中にもあるいはは三月の初めにも出るのではないかというように私聞いておりますが、一方、地域指定の基準を考えてみますと、これは汚染の状況、有症率、有病率などいろいろ勘案してきめられるわけでしょうけれども、大体柱は環境基準に適合しているかどうかというところがその中心だろうと思います。そういうふうになるのは当然じゃないかと、一面で私は思いますけれども、そこでいま申し上げましたように、二月のうちと申しますとあともう一日だけ、あるいは三月の初めというふうに聞いているのですが、この問題について、ちょっと最初にお尋ねいたしたいと思います。
  223. 三木武夫

    三木国務大臣 来月一ぱいに硫黄酸化物の環境基準を出す予定でございます。
  224. 中島武敏

    ○中島委員 そうしますと、あと一カ月で答申が出てくる、新しい基準がきまるということでありますが、いま公害病の患者というのは非常に苦しんでいるわけであります。政府が認定されました者だけでも八千名をこえているわけであります。もっとほかにも多くの公害病の患者がたいへんな苦しみをなめておりますが、新しい環境基準が出ましたら、直ちにその環境基準に従って指定地域を広げてほしいと私は思うのです。もっともっと拡大してほしいということですね。この点についての長官の見解をお伺いしたいと思います。
  225. 三木武夫

    三木国務大臣 今度は公害の被害、ことに大気と水質の汚染からくる被害については、ことに健康被害については損害賠償保障制度、ここで——いままでの特別措置からくる欠陥がいろいろあります。これは範囲の問題も含めていろいろな欠陥があるので、それを機会にそういう欠陥というものを是正したいと思っております。  ただ、この特別措置法のもとにおける健康被害については、環境基準ばかりでもないのです。汚染の度合いとかあるいは有症率とか有病率とか、そういうふうな問題もありますので、環境基準が新たにきまったことによって直ちに自動的に認定患者が拡大するというふうには考えていない。そのほかのいろいろな要素もありますから、そういうこととにらみ合わして、拡大の必要があれば拡大するということになる。いずれにしても、今度新たにわれわれが立法を考えておる損害賠償保障制度には、いろいろな矛盾をできるだけ是正するものにしたいと考えております。
  226. 中島武敏

    ○中島委員 環境基準だけが患者を認定する場合の基準でないということは、私はわかるのですけれども、しかし、環境基準が非常に重要な一つの基準とされているということも、私は事実だと思うのです。これはすでにどういう地域を指定地域として指定しているかということを環境庁の資料によって調べましたけれども、これは絶対とはいえないわけですが、大体環境基準に適合しているかいないかということによってきめられていることは事実であります。  そこで、長官、先ほど言われましたように、新しい環境基準が出されるということになりましたならば、私は、その環境基準が守られていないところ、これの地域を広げるようにしていただきたいと思います。いま損害賠償保障制度のことを長官は言われましたけれども、これはまだ国会に出されていない。近く出されるとしましても、これの実施は一年あとでございましょう。そうしますと、公害病患者を救済するという上からいっても、また一年間待たなきゃならないというような実態が生まれてくると思うのです。そういう点で私は、重ねてこの指定地区の拡大ということを要請いたしたいと思いますし、重ねて長官の見解をお伺いいたしたいと思います。
  227. 三木武夫

    三木国務大臣 汚染のひどいところから地域指定を拡大していくわけですから、新たな環境基準がきめられて、汚染度の非常にひどい地域というものは、そのほかに有症率、有病率等もあわせて考えますけれども、そこにいろいろ検討する一つの材料になることは事実だと思います。
  228. 中島武敏

    ○中島委員 政府の指定を待たないで、自治体が独自に指定地域を設けて救済を行なっているところがたくさんあるわけです。少なくともこういうところに対しては、地域を広げていくということが当然じゃなかろうかというように私は考えるわけです。環境基準だけじゃないんだ、有症率、有病率、汚染の状態であるということを繰り返されますと、これ以上は広げませんよというふうに聞こえてくるわけです。そうじゃなくて、政府がやらなくても、自治体は独自にどんどんやっているというところもたくさんあるわけでありますから、少なくともこれぐらいは広げなければいけないということで広げられてしかるべきじゃなかろうかというように考えるわけであります。
  229. 三木武夫

    三木国務大臣 方向としては、私は拡大の方向だと思います。いろいろ健康被害を受けておる気の毒な人に、特別措置法は社会保障的性格があるわけですから、できるだけ多数の人が救済できるということが理想的ですけれども、どこかで基準が要るわけですから、そういう点で一つの限度が要るということであります。方向としては、できるだけ公害病の患者を救済するという方向がこの特別措置法の目的であることは事実であります。しかし、限度は置かなければならないということであります。
  230. 山本宜正

    ○山本説明員 若干、こまかいことになりますが、補足させていただきます。  御承知のように、現在の大気汚染によって起こります指定疾病が四つございます。これを俗に閉塞性呼吸器疾患と申しますが、これは、いままでの医学的データによりますと、汚染のない地域にもございます。したがいまして、こういったような閉塞性の呼吸器疾患というものを疫学的に調査いたしました結果、大気汚染がひどいところではひどくふえて起こってくる、しかし、ないところにもあるということは、とりもなおさず大気汚染以外の原因でも起こり得るということでございます。したがいまして、全国津々浦々どこにでもある疾病でございます。したがいまして、私どもといたしましては、汚染の地域を、他の疫学的なデータあるいは汚染のデータということで勘案いたしまして、一応行政的に地域を指定する、こういうことをしておるわけでございます。このような疾患につきまして、逆に、医師が診断をする場合に、その疾病が大気汚染によるものか、そうでない原因によるぜんそくであるかという区別ができませんので、行政上やむを得ずこういう措置をとっておるわけでございますのを、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  231. 中島武敏

    ○中島委員 長官はどこかに線を引かなければならない、私もどこかに線を引かなければならないと思うのです。これはそのとおりだと思うのです。そしてまた、拡大の方向がその気持ちであるというふうに言っていらっしゃる。これもそのとおりだと思います。しかし、その辺をもう少し具体的にできないだろうか。もっと早く拡大をするということができないだろうか。公害病の患者の苦しみというものは相当なものでありますから、私はそのことをほんとうに強く要請したいと思うのです。よろしい、はっきり広げるという御答弁でしたらあれですが、そうでなければ——そういう答弁をされますか。
  232. 三木武夫

    三木国務大臣 特異疾患ですね、これは地域指定でなしに、地域に必ずしもとらわれないで、臨床的な検査によって、その地域でなくとも指定をしていきたい。だから、そういう点については、われわれはできるだけ広く救済の対象にしたいという考えであります。いまいろいろ御説明もしたように、非特異的な疾恵については、どうもどこかで線を引かなければならぬことである。必ずしも汚染との因果関係がすぐに端的に出てくるというわけにもいかないわけですから、汚染のないところにも慢性気管支炎などは起こり得るというわけですから、そういう理屈から線を引いておるわけです。特異的な疾患は、いま中島委員の御指摘のように、これは地域にとらわれないで、そういう臨床的な検査によって救済の対象にする、非特異的な疾患にはある程度線を引くという考え方で、特別措置法は組み立てられておるわけでございます。今度できるいろいろな損害賠償保障法については、そういう問題についてもいろいろ再検討したいと思っておるわけであります。
  233. 中島武敏

    ○中島委員 私は、特異的なものではなくて非特異的なものについてのことを申し上げたのでありますし、そしてまた、大気汚染がないところでも病人が発生するという、それはそのとおりであります。私はそこのことを問題にしているのではないのです。そうではなくて、疫学的にもこれは公害病として認定してよろしい、公害の結果であるというふうに認められるものであって、現在指定地域からははずされているというところがずいぶんあるわけです。先ほどからるる申し上げておりますのは、自治体自身が国の指定を待たずに、あるいははずされているということから、独自にやっているところがあるわけであります。私は線を取り払えという主張ではありません。地域指定の方針それ自身がいけないということを言っているわけではありません。実際にはもっともっと下げなければいけないのではないか。もっと基準を下げて、そしてもっと地域を拡大するということが必要じゃなかろうかということを申し上げているわけです。しかも新しい環境基準ができ上がってくると、これは公害による汚染だということが非常にはっきりしている。そして新しい環境基準ができてくる。そうすれば当然、これは広げることが至当だというふうに私は考えるわけであります。くどいようですけれども、私何回も同じことを申し上げているわけであります。長官、この点について……。
  234. 橋本道夫

    ○橋本説明員 いま御質問のございました点で、私、現在損害賠償保障制度をつくります準備をいたしておりますものですから、若干御説明申し上げたいと思います。  従来の救済制度は社会保障の補完的な制度ということでございまして、損害賠償とは何ら関係がないという制度でございます。今度私ども環境庁で準備いたしております損害賠償保障制度といいますものは、民事責任考えられる損害賠償保障という原則を踏まえた上でこの制度をつくろうということでございますので、本質的に、社会保障の補完的な制度と、民事の損害賠償の原理に立脚した制度というところの違いがあるわけでございます。そういう点におきまして、救済法の制度におきます地域指定の考え方と、今度新しく出てまいります損害賠償保障制度の地域指定の考え方には本質的な相違があるということが、理屈の上では当然出てくるわけでございます。以降におきまして、どのように円滑にこれをやるのかということは、当然出てくる問題かと思いますが、原理としては、これは違うということを一つ申し上げます。  第二のポイントは、従来の救済法におきまして、患者さんの医療費の自己負担分だけを公費で見るという制度で、きわめて給付が薄い。それによって非常に生活の不安がある。どうにかその人々に対して生活の保障等のできるだけ手厚い給付をするようにというようなことが一つのねらいになっております。  そういう観点からいきますと、ほんとうに必要な方にできるだけ手厚い保障を加えていくということになりますと、因果関係の上で蓋然性があれば公害病としていいんだという議論がありますが、ではどのくらいなところで蓋然性がありということになるのかといいますと、いろいろな法学者に聞いてみておりますが、なかなか明らかなところはございません。まず間違いがないという程度の相当な程度なければこれはいかぬのではないか。もちろん、これは裁判ではございませんで、裁判と同じようなことをやるわけにはいきませんが、そういうぐあいになってまいりますと、給付をできるだけ、たとえば四日市の裁判の水準ということを頭に置いて考えた場合に、できるだけ確からしいものということのラインをどこに引くか、これは給付の水準をどこにきめるかということとも非常に密接に関連してまいります。  そういうことにおきまして、私どもは、長官のおっしゃいましたように、できるだけ救済の充実を期するということが私どもの基本的なねらいでございます。もっとも、私どものねらいとしますところは、ほんとう公害の被害を受けて、ほんとうに困っている方にできるだけ手厚い保障の措置が、逸失利益を含めてできるようにということを期することが基本的な大事なことではなかろうかということで、現在審議会で検討中でございます。これは将来、線を引く場合に、非常にむずかしい問題が多いこととは重々私ども考えておりますが、私どもが審議会で議論しております、従来の救済法と損害賠償保障制度との本質的な相違、どういうところをねらっておるかという点につきまして御理解願えれば幸いと存じます。
  235. 中島武敏

    ○中島委員 では、また新しい制度の問題につきましては、別の機会に十分詳しくやりたいと思いますので、地域を拡大するというような勇断の返事があろうかと思いましたけれども、そこまではまだなかったようで、非常に残念です。  また関連してですが、指定地域以外に転出した場合には、御存じのように三年間たつと医療費等の支給が受けられなくなるというように現行法ではなっております。しかし、実際には治癒していない人で今度の場合に期限が切れてしまうというような人が相当出てくるわけであります。この点について、何人くらいそういう方が出てくるかということについて、環境庁のほうでつかんでいらっしゃるでしょうか。
  236. 山本宜正

    ○山本説明員 正確な数字は、現在私ども存じておりませんが、それらを把握するようにいま調査を進めております。
  237. 中島武敏

    ○中島委員 これは四日市の例でありますけれども、九百二十四人の認定患者のうち四日市外に転出している人が八十人いるんですね。約一割近くが転出しているわけです。これはもちろん、全国の傾向としてはっきり言うことができるかどうか、これははっきり言うわけにはいかないと思いますけれども、しかし、約一割近くの人々がすでによその地域に転出してしまっている。そのために、この法ができましてからぼちぼちちょうど三年であります。したがって、期限が切れ始めるということになってくるわけです。これはテレビなんかでも非常に実は問題になっております。そういう点からいいまして、救済法の目的というのに照らしてみましても、実際に治癒してないのに切られてしまうということになりますと、これは法の目的にも反しますし、実際の救済にもならないと私は思うのです。この問題についても継続するということが必要ではないかと考えるわけでありますが、長官の見解をお伺いいたします。
  238. 三木武夫

    三木国務大臣 いま、私もお気の毒なという感じがいたしまして、何か行政的に救済の方法がないかということを事務当局とも打ち合わしたのですけれども、法律で三カ年というように制限を加えられている。そういうことで、行政の措置としてこれを——いまの法制のもとにおいては救済の方法がないということ、それは何か研究はいたしましょう。この点はさらに研究をいたしますけれども、現在のところは法制上の制約がある。何か方法がないかということについては、検討をいたします。
  239. 中島武敏

    ○中島委員 この三年間という期間は、環境庁長官の告示によってなされているわけですね。長官がきめることになっておるわけです。ですから、これは三木長官が、三年というのをたとえば四年にするとか五年にするとかというふうに告示をし直しなさるならば、これは幾らでも変えることができるわけであります。きちっと告示さえおやりになれば延ばすことはできるわけですから、長官の趣旨からいいますと、何とか行政の指導の方法はないか、どうもないようだとおっしゃいますから、私はそうやられたらいかがでしょうかということを御提案申し上げたいわけなんです。
  240. 三木武夫

    三木国務大臣 それは十分検討いたします。
  241. 中島武敏

    ○中島委員 私、実はまだあと幾つかの問題給付の問題、それからさらに現行法の認定要件の問題について質問いたしたいと思っておりましたが、すでに予定の時間が過ぎておりますから、きょうはこれで質問を終わりにいたしたいと思います。
  242. 佐野憲治

    佐野委員長 次回は、来たる三月二日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時九分散会