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1973-02-23 第71回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十三日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 佐野 憲治君   理事 稻村左近四郎君 理事 菅波  茂君    理事 登坂重次郎君 理事 林  義郎君    理事 小林 信一君 理事 島本 虎三君    理事 中島 武敏君       大石 千八君    田中  覚君       中山 正暉君    橋本龍太郎君       阿部未喜男君    岩垂寿喜男君       土井たか子君    木下 元二君       岡本 富夫君    坂口  力君       小宮 武喜君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君  出席政府委員         防衛施設庁総務         部長      河路  康君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         科学技術庁計画         局長      長澤 榮一君         環境庁長官官房         長       城戸 謙次君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁自然保護         局長      首尾木 二君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         厚生政務次官  山口 敏夫君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         水産庁次長   安福 数夫君         通商産業省公害         保安局長    青木 慎三君         通商産業省化学         工業局長    齋藤 太一君  委員外出席者         外務省アメリカ         局外務参事官  角谷  清君         外務省国際連合         局社会課長   恩田  宗君         農林大臣官房審         議官      下浦 静平君         林野庁林政部長 平松甲子雄君         水産庁生産部長 大場 敏彦君         通商産業大臣官         房審議官    鈴木哲太郎君         運輸省港湾局技         術参事官    大久保喜市君         運輸省自動車局         整備部長    景山  久君         海上保安庁警備         救難監     貞廣  豊君         建設省河川局水         政課長     伊藤 晴朗君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   米原  昶君     木下 元二君 同月二十三日  理事米原昶君同月二十一日委員辞任につき、そ  の補欠として中島武敏君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  公害対策並びに環境保全に関する件(公害対策  並びに環境保全基本施策等)      ————◇—————
  2. 佐野憲治

    佐野委員長 これより会議を開きます。  まず、理事補欠選任の件についておはかりいたします。  理事米原艇君が去る二十一日委員辞任され、理事が一名欠員となっております。  この際、その補欠選任を行ないたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐野憲治

    佐野委員長 異議なしと認めます。よって、さように決定いたしました。  それでは中島武敏君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 佐野憲治

    佐野委員長 公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  5. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、いま日本の各方面において問題になっています赤潮問題につきまして、特に典型的な例といたしまして、響灘に起きました赤潮問題を中心にいたしまして、政府の見解その他をただしていきたい、こう考えております。  まず事実関係を申し上げたいと思います。  四十六年の六月に響灘一帯赤潮発生いたしまして、八月七日、八日、赤潮異常発生をいたしました。山口県豊浦郡の黒井におきまして七万五千尾のハマチが斃死し、豊北町の和久におきまして二万尾が死んだという報道があります。被害総額は約二千五百六十万円である。続きまして昭和四十七年の六月九日に、同じく黒井被害発生したということがございます。黒井和久というのは養殖漁業でございますが、そのほかに響灘一帯の沿岸におきまして、下関市竹ノ子島、六連島周辺漁場で、海が濁ったためほとんど出漁できない状況がもたらされ、いそ釣り漁業が非常に迷惑を受けている。また、マス網漁業が、昨年の三月以降主漁獲魚種のクロダイが全く漁獲されなくなった。一本釣り漁業が釣れなくなり、延なわ漁業漁獲が非常に少なくなった。敷き網、これはカタクチイワシウルメイワシ、マイワシといった小イワシ及び小アジ等をとる漁業でありますけれども、集魚灯に魚が集まらずに漁獲量が減小している。小型底びき網漁業につきましても、昨年の五月ごろから網にどろが入って網が引けなくなった。刺し網漁業につきましても、魚がなかなかかかりにくい。ワカメの養殖についても、海中の濁りのために品質が非常に悪くなってきているというような状況が続出しておるのでありますが、この辺につきまして、政府のほうでそういった実態をつかんでおられるかどうか、まずお聞きしたいと思います。
  6. 岡安誠

    岡安政府委員 いまお話しの響灘の問題でございますが、まず水質汚染状況につきまして申し上げたいと思います。  昭和四十六年の十月と四十七年の一月に山口県と福岡県の両県で合同調査をいたしておりますが、概況を申し上げますと、響灘につきましては、やはり南部ほど汚染度が高くなっておりまして、北部に行くに従いまして漸減をするというようなかっこうでございます。たとえば汚染の指標について二、三申し上げますと、CODについて申し上げますと、全般といたしましては、大体〇・一PPMから一・三PPM範囲に入っておりますけれども、一PPMをこえるというようなところは、大体北九州市から五キロぐらいの幅で北上しておりまして、その先端は大体二十キロぐらい先の網代の鼻の沖に達しているというような状況でございます。  それから、赤潮原因はいろいろ複雑ではございますけれども、一応その一つといわれております燐酸塩について見ますと、南部海域では〇・五から〇・九PPB——これはPPBでございますけれども、そのぐらいの濃度で分布しております。それから北部海域では〇・一PPBということで、これはそう濃度は濃くはないというふうに考えております。  アンモニア性の窒素につきましては、これもPPB単位で申し上げますと、南部で五から一〇PPB範囲でございますけれども、北のほうでは一PPB程度というような程度になっております。  それから透明度も、南部のほうは一・六から二メートルの範囲でございますけれども、北のほうは十メートルから十一メートルというようになっておりまして、大体南が汚染度は高く、北のほうが汚染度は低いというような状態になっております。
  7. 林義郎

    ○林(義)委員 その漁業被害が出てきているという点につきまして、相当出ているんだということは、水産庁なりどこかで聞いておられるんだろうと思いますが、その辺はいかがですか。
  8. 安福数夫

    安福政府委員 ただいま林委員からの御質問の実情については、水産庁で十分承知いたしております。四十六年、四十七年と引き続きましてかなりの被害が出ている。四十六年度につきましては、漁業共済関係地元に五百五十七万七千円でございますか、その程度共済金が支払われている、こういうことでございます。
  9. 林義郎

    ○林(義)委員 いま環境庁及び水産庁のほうからお話がありましたが、地元では、対岸であるところの北九州市で響灘埋め立て工事が行なわれていて、そこに洞海湾の土砂が埋め立て工事に使われ、また海底がかき回されることによってきたないものが流れてくる。海流に乗ってそれが北のほうに参りますから、それが非常に大きな影響である。そのほかにこういった被害が起こる原因というのは考えられない、こういうふうなことをいっておるのであります。  そこで、まず響灘開発の問題でありますが、私が調べたところでは、これは運輸省のほうだと思いますけれども、ちょっと控えておいていただきたいのですが、四十三年から四十六年までに三井鉱山の埋め立て、四十五年から四十九年の三月までに北九州管理組合埋め立て、四十三年から四十六年までに同じく北九州管理組合埋め立て、以下新日鉄、旭硝子、三井アルミナ電源開発、こういうふうな埋め立てが四十三年以降に認められ、それがすでに造成をされて終わっておる、または現在造成中である。こういうことだというふうに私は理解をしておるのでありますけれども、この埋め立て工事許可権限は一体どこにあるのか。港湾法に基づくものなのか、公有水面埋立法という非常に古い法律がありますが、この法律に基づくものなのか。いま申し上げましたその事実関係と、それから法律関係がどうなっているのか、これにつきまして当局から御説明をいただきたいと思います。
  10. 大久保喜市

    大久保説明員 お答えいたします。  ただいま先生お話のございました響灘埋め立てにつきましては、御指摘のように埋め立て工事がいろいろな企業体によって行なわれておりまして、すでに二十六年以降に免許を取得したもので現在約千九百万平米ございます。それで、この免許につきましては、公有水面埋立法によって港湾管理者免許することになっております。免許するにつきましては、公有水面埋立法は、一般的には建設大臣認可権限を持っておりますが、港湾区域につきましては運輸大臣認可権限を持っております。したがいまして、北九州港は特定重要港湾でございますので、港湾管理者免許をするにあたりましては、公有水面埋立法の定めるところによりまして運輸大臣認可を受けて免許をする、そういうような仕組みになっております。
  11. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、公有水面埋立法に基づくところの権限で、第四条に免許をしない場合という規定がありますけれども、この規定に基づいて免許をする、こういうことだと思いますけれども、この権限というのは「地方長官」とここに書いてあります。現在の都道府県知事であります。古い法律だから地方長官ということになっているんだろうと思います。都道府県知事であるが、この法律に基づいて運輸省許可をするということか、あるいは港湾法の四十八条で、重要港湾については審議をしますという規定に基づいて運輸省が介入するのか。その辺はどうなっていますか。
  12. 大久保喜市

    大久保説明員 お答えいたします。  公有水面埋立法におきましては「地方長官」ということになっておりますが、港湾区域につきましては港湾管理者ということに定められておりまして、それで、港湾区域において埋め立てをされる場合につきましては、港湾という空間が非常にいろいろな面での利用がされるものでございますので、港湾計画支障ないということが必要でございます。そういうことで、運輸大臣認可を経て港湾管理者免許をするわけでございますが、その免許するにあたりましては、先生ただいま御指摘のように、埋立法四条におきまして、次の各号に定める場合以外には免許できないということになっております。いわゆる許可基準がございますが、その前に第三条におきまして、まず地元市町村会意見を徴するということがございまして、その上で、免許をするにあたりまして、権利者の同意と、それから利益が損害を超過しているとか、法令に基づく事業である、こういうような場合以外のものは免許できないということになっております。なお、法律規定ではそのようになっておりますが、さらにいろいろと運用の面で指導行政ができることになっております。たとえば、公害発生のおそれのある場合には、いろいろ条件を付することもできるようになっております。それで、現在、指導通達などを出しまして、慎重にやるようにいたしております。
  13. 林義郎

    ○林(義)委員 少し議論を整理するために私聞きたいのは、四条の免許をしない場合、これは確かに免許基準です。それからその前に第三条に、地元市町村議会意見を求めることがあるということになっています。これもそのとおりですが、港湾法公有水面埋立法との関係はどうなっているんですか。この公有水面埋立法規定からしますと、これは一つ法律ですから、この中で免許権を行なうということがあります。ところが、港湾法のほうで、私読みますと、運輸大臣は「重要港湾港湾管理者に対し、港湾施設の配置、建設、改良その他当該港湾開発に関する計画提出を求めることができる。」二項に、「運輸大臣」は「港湾利用上著しく不適当であると認めるときは、これを変更すべきことを求めることができる。」という規定がある。いまの響灘地域重要港湾として指定してあるのでしょう。したがいまして、この港湾法に基づくところの権限と、それからこちらのほう、公有水面埋立法権限との関係は、どういうふうに解するのですか。いままでの通達とかあるいは取り扱いがどうなっているのか。その二つの法律関係はどうなっているのかを、ちょっと法律的に御説明いただきたいと思います。
  14. 大久保喜市

    大久保説明員 港湾法公有水面埋立法関係でございますが、先ほど申しましたように、港湾区域については、免許権限港湾管理者に移っております。それで、港湾管理者免許をいたしますにつきましては、やはり港湾計画支障のないということが非常に大事な点でございまして、その意味におきまして、重要港湾におきましては——失礼しました。港湾のまず計画でございますが、港湾計画港湾管理者が立てることになっております。これは、港湾法に基づいてそのようになっております。それで、まずその港湾計画支障がないかどうかということが、港湾管理者としてまずチェックする点でございます。これは重要港湾におきましては、さらに港湾管理者の立てた計画港湾法四十八条に基づきまして運輸大臣がその計画提出を求めまして、その計画が国の開発上も支障がないかどうかもチェックをいたしまして、一応認められた港湾管理者計画というものがあるわけでございます。その計画に違背していないかどうかということが、港湾管理者免許行為をする際の一つのよりどころになっておるという関係で、公有水面埋め立て免許ということは、公有水面埋立法で手続的にはきまっております。そして、免許する基準につきましても、公有水面埋立法できまっております。それで、さらに港湾の中におきましては、特殊な状況がございますものですから、その上に港湾管理者港湾計画というものがもう一つ網としてかぶっている。港湾管理者免許するときに、その計画との調整ということを一つかぶせるという仕組みになっております。
  15. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、地方長官というか港湾管理者がその第四条の免許をしない場合ということがありますけれども、その場合には、港湾法規定に基づくところのいろいろな港湾審議会の議を経て運輸大臣がきめるところの裁量に従って免許をしなければならないということ、いまのを私はそう理解するのですけれども、そういう理解ならば、免許取り消しとかということも同じような形においてできるのかできないのか。いままで免許したことがある。その免許をしたところが、非常に情勢が変わってきましたから、変わってきたことに基づいて運輸大臣は、この港湾はこうしなさい、重要港湾はこうしなさいということで、変わってきたならば変わったことに基づいて免許内容変更とかあるいは追加条件を指定するということができるのかどうか。ここに免許ということが書いてあるから、免許というのは特権的な行為を与えることであるから、一ぺん与えたらできないという解釈なのか、この辺はどうなんですか。
  16. 大久保喜市

    大久保説明員 お答えいたします。  先ほど私の説明が若干あいまいなところがございましたので、訂正いたします。  いわゆる公有水面埋立法に基づく免許行為は、公有水面埋立法に基づいてやるわけでございますが、その際に港湾区域におきましては、港湾開発利用上重大な支障のあるものにつきましては、免許をしないことができるわけでございます。したがいまして、裏返しますというと、港湾計画に違背しないものにつきましては、公有水面埋立法に基づいて、他の条件を満たしておれば免許できるということになるわけでございます。それで、なお、そのようなことで公有水面埋め立て免許を取得をした場合におきましても、竣工認可前に限りまして、公有水面埋立法の三十二条におきまして「左ニ掲クル場合ニ於テハ埋立ニ関スル工事竣功認可ニ限リ地方長官ハ埋立免許受ケタル者ニシ本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リテ其ノ為シタル免許其ノ他ノ処分取消シ其効カヲ制限シハ其条件変更シ埋立ニ関スル工事施行区域内ニ於ケル公有水面ニ存スル工作物其ノ他ノ物件ヲ改築若ハ除去セシメ」云々ということが「得」ということになっておりまして、その中に「埋立ニ関スル法令規定又ハ之ニ基キテス処分ニ違反シタルトキ」ということと、免許処分の「条件ニ違反シタルトキ」ということ、それからいわゆる「詐欺ノ手段」によるものと、四番目に「埋立ニ関スル工事施行方法公害ヲ生スルノ虞アルトキ」五番目に「公有水面状況変更ニ因リ必要ヲ生シタルトキ」六番目に「公害除去シハ軽減スル必要ナルトキ」七番目として「法令ニ依リ土地ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得ル事業ノ為必要ナルトキ」という、そういう場合においては、いまの免許取り消しができるわけでございます。ところが、港湾計画変更したときということにつきましては、必ずしもすんなりとはまいりません。むしろ港湾計画を立てる際にはそういう免許をされている要するに既存の権原というものをどうしても配慮しなければならないことになるわけでございます。
  17. 林義郎

    ○林(義)委員 わかりました。  そうしますと、三十二条で「公害除却シハ軽減スル必要ナルトキ」には免許権制限をすることができる、こういうことですね。
  18. 大久保喜市

    大久保説明員 そのとおりでございます。
  19. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、あとは「公害除却シハ軽減スル為」ということの立証をすれば、当然地方長官としてはこれはやらなくてはならない、現在の状況からすればこういうことに私はなるだろうと思います。  そこで、もう一つ、私はお尋ねをしておきたいと思うのです。  実は、先ほど申しましたほかに、響灘開発計画構想というので、四十八年から五十年、それから五十年から五十五年、それからそのほかに第四期として六十年以降、こういうような計画があるということですが、これはまだこの公有水面埋め立て免許申請も出ていなければ、現在だれがやるかという話もまだきまっていない。大体一期から四期まで計画があるようでありますけれども、そういったことで、これにつきましては、重要港湾ですから、港湾審議会審議を経てやります、それで地方長官港湾審議会審議を経たところに基づいて公有水面埋立法の第四条に基づいて免許をすることに——もしもいろいろなことを調べてよければする、ということでよろしゅうございますか。
  20. 大久保喜市

    大久保説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘響灘開発計画でございますが、現在のところ港湾法四十八条に基づいて審議を受けました港湾計画といたしましては、響灘地区につきましては、一番最近のもので、四十七年七月に一部修正されたものがございます。しかしながら、その計画におきましても、いま先生指摘の五十年以降の計画等につきましては、いま先生が仰せられましたような響灘開発構想といって世上論じられておりますそういう構想は、まだ入っておりません。  それで、既定の計画に、いま申されましたような構想を取り入れようといたしますと、あらためて港湾管理者計画の案をつくりまして、それを運輸大臣提出していただいて、それで審議することになるわけでございます。それはまだ済んでおりません。
  21. 林義郎

    ○林(義)委員 わかりました。  そういたしますと、実は、いま申しました埋め立てのほかに、沖のほうに、白州とか藍島の沖に防波堤をつくるという話がある。防波堤をつくるということは、一体公有水面埋立法の中の免許の対象になるのか、港湾計画だけになるのか。いまのは埋め立てですから、陸上からずっと埋め立てていく。それでなくて防波堤を先のほうにつくるという話は、これはやはり港湾審議会審議を待たなければならないのか、これはかってに金がつきさえすればよろしいということなのか、その辺をちょっと御説明をいただきたいと思います。
  22. 大久保喜市

    大久保説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘防波堤は、これは埋め立てとは別でございまして、この防波堤計画は、これもまだ四十八条に基づく港湾計画の審査、これを経ておりません。防波堤のような工作物は、手続的に申しますと、港湾管理者許可を得て工作物を設置することになるわけでございます。  それで、防波堤は、いま関門航路安全対策として防波堤が必要だということで、港湾管理者において計画を立案しておりますが、これもいろいろと埋め立て計画その他とのからみもございますものですから、響灘地区を含めた北九州港の計画改定の際に一緒に出てくるものと考えております。
  23. 林義郎

    ○林(義)委員 わかりました。  そうすると、防波堤工事重要港湾のいろいろの埋め立ての問題と一環で考える。結局この防波堤は、埋め立てをするためには外から波が来たならば困る、なかなか埋め立て工事ができないから、それを先にしてやるものだ、それ以外の目的でもない、漁業のためのものでもない、一般の海岸の荒波を防ぐためのものでもない、もっぱら埋め立てをするためであるということでしょうから、その点もいまのお話のように一緒審議をしなければ、港湾法に基づいて港湾審議会一緒審議をする、こういうことだろう、私はそう了解をしているのですが、もし私の言うことに違いがあればあとで直していただきたいと思います。  そこで、ひとつこれお尋ねをしたいのですが、北九州の沖の汚染状況ですが、先ほど環境庁のほうからお話がありました北九州の辺につきましては、洞海湾内及び埋め立て地周辺につきましては、四十五年の十一月二十日水質基準の決定がされ、四十六年の五月二十五日に環境基準が決定され、その中で見ますと響灘Aランクということになっている。Aランクになっているということについての状況は、一体だれが確認をしているのか。また最近の状況は、この環境基準が守られているかどうか。これは北九州の辺のいろいろな工場汚水がありますから、相当な程度で監視をしてなくちゃいかぬわけですけれども、この辺の確認というのはだれがやっているのか。もしも最近の数字があれば出していただきたい。なければ、あとでもけっこうですから資料として出していただきたい、こう思います。
  24. 岡安誠

    岡安政府委員 この海域につきましての状況調査等は県がやっているわけでございまして、先ほどちょっと申し上げましたけれども、たとえばCODについて見ますと、A海域というのは大体CODで二PPM以下ということでございますが、先ほど申し上げましたとおり、北九州の沖におきましても大体二PPM以下に入っておりますので、状況といたしましては環境基準が守られているというふうに考えております。
  25. 林義郎

    ○林(義)委員 いまの調査はいつの調査ですか。
  26. 岡安誠

    岡安政府委員 四十六年の十月、四十七年の一月に両県が合同調査した結果でございます。
  27. 林義郎

    ○林(義)委員 わかりました。  確かに十月とか一月とかいうのを調べればそういうことだろうと私は思うのです。この辺は、両県でなくて、環境基準がきまっているのですから、できるだけ定期的に、しかもインターバルを少なくして、ひとつ調査のほどをお願いしておきたいと思います。  そこで先ほどの話に返りますが、「各種公共事業に係る環境保全対策についての閣議了解事項」というのが四十七年の六月六日付でございます。それでは、政府または地方公共団体等が行なうところの公共事業につきましては、公有水面埋め立て等の事業を行なう場合には、環境に及ぼす影響の内容、程度、環境破壊の防止策、代替案の比較検討等を含む調査研究を行なわしめ、その結果を徴し、所要の措置をとらしめる等の指導を行なうものとするような通達が、閣議了解でありますから、出ておりますが、こういったものは当然にこれからの、いまの響灘埋め立て、現在の工事中のもの、それから新しく埋め立てをするというものについて、規定の適用が、この指導がされるべきであるということは、これ当然のことだと思いますが、ちょっと確認をしておきたいと思います。
  28. 大久保喜市

    大久保説明員 お答えいたします。  閣議了解につきましては、私どもといたしましても、当然そのとおり実行しなければならないわけでございます。それで、そういう点につきましては、港湾局といたしましては、これまでも公有水面埋め立てにつきましては、埋立法の運用の面につきまして、先ほどちょっと触れたのでございますが、四十五年に港湾局長名で、実は公害対策等につきまして特に慎重な配慮をするようにという通達を出してございます。それで、これの運用を的確にやることによりまして対処できるものと考えておりまして、その点は重ねて管理者を指導しておるわけでございます。それから、公共事業につきましても、その実施につきまして、常々いろいろな機会をとらえまして港湾管理者並びに直轄の出先に対しまして指導いたしておるつもりでございます。
  29. 林義郎

    ○林(義)委員 大体埋め立てのほうはわかりましたが、埋め立てからいろいろなものが出てくる。環境基準としては、いまのところ非常によろしいという話であります。しかし、現実にはやはり赤潮発生しているということであります。その赤潮発生の規模につきましては、響灘だけでなく全国的に発生してきている。しかも、年々発生する場所というものはふえてきているのであります。これは環境庁のほうではたびたび言っていますけれども、PとNとの富栄養化が一番の問題である。原因としては、環境庁の指導によりますと、工場排水及び都市下水の流入あるいは屎尿の投棄等による汚濁物質の流入に伴う窒素、燐等の栄養塩類の補給が発生要因の一つとなっている。ただし、まだはっきりわからないからさらに調査をするということで、環境庁の作文の中には書いてあります。また、環境庁も、いままでそういうふうな形で御答弁をしておられますが、この辺の調査というのは、環境庁だけではなく、水産庁なりそのほかのところでいろいろとやっておられると思います。現在までに、いま申し上げました発生要因の一つとなっているということ以外の説明がつくような、新しい学問的な研究というのがないのかあるのか、その辺につきまして簡単に御説明をいただきたいと思います。それが一つ。  もう一つは、この響灘の場合には、埋め立てによるところの潮流の変化であるとか、埋め立てに伴うところのしゅんせつ物の投棄であるとか、しゅんせつに伴う汚濁の拡散というのも一つ原因になるということが考えられるわけであります。こういったようなものについては、いま申し上げましたようなことは全然問題にならないという見解なのか、この辺もまだよく調べてみなければわからないのかどうかということをお答えいただきたいと思います。
  30. 岡安誠

    岡安政府委員 赤潮一般につきましては、先ほど先生が申されましたメカニズムですか、それは四十二年から四十四年までやりました科学技術庁の調査の中間報告として出ているわけでございますが、それでは必ずしも十分でないので、四十六年から三カ年計画で、各省庁と連絡いたしまして、共同によりまして、現在原因の究明を進めているということで、新しい発見といいますかができたというふうに私はまだ聞いておらないわけでございます。  次の御質問の水流その他でございますが、私ども特に響灘につきましてはなかなかむずかしい問題があります。たとえば赤潮発生の基礎となると考えられます窒素、燐につきましては、先ほどちょっと申し上げましたように、響灘につきましては汚染程度が非常に低いわけでございます。いわゆる富栄養の段階に来ているという窒素、燐の含有量に比べまして非常に低い。にもかかわらず、赤潮発生をしているということがございますので、響灘につきましては、やはり特別に原因を究明をする必要があろうということで、現在そのための調査委員会を両県合同でもって持ちまして進めているという段階でございます。
  31. 林義郎

    ○林(義)委員 私の聞いておりますところでは、海域環境調査、四十七年度の七月から十月まで、調査点三十六点、山口県側二十三点、福岡県側が十三点、(日本海南部海域赤潮調査(第二次)というのが一つあります。  それから海底質調査、四十七年度の八月から十月まで、海底質の汚染、汚濁の拡散状況の実態把握を行なう調査があります。調査点が十八点、これが第二番目の調査です。  四十七年度で汚濁源調査、汚濁発生源別の汚濁負荷量調査によって汚濁寄与度の算定を行なうという調査を、福岡県、北九州市と山口県とで共同してやっております。  それから四番目に、潮流等自然条件調査、漂流物の漂着実験によって潮流実態を把握する。四十七年度の十月、人工クラゲを流して、それで大潮、小潮の状況調査するという調査をしておる。  それから潮流・拡散の変化に関する調査、模型実験結果のデータの収集、整備、潮流・拡散の変化に関するモデル計算、これをやっている。  第六番目に、潮流汚濁拡散に関するモデル計算というのをやっている。  大体以上のようなことをやっていると聞いておりますが、いろいろと専門家が調査しておられます。ところが私、非常に思いますのは、一つ調査がぱっと出てくる、中間報告が出てくると、これはあまり影響がないというのが出てくる。そうするとまた中間報告がぱっと出てきて、これは影響があるというようなことを新聞が報道される。私は両県で一つ話をして、いまいろいろな形での調査をやっていかなければ問題の解決にならない。全体の調査をまとめてやはり判断をしなければしようがないと思うのです。一つだけの調査で、いいとか悪いとかいえる簡単なものではない。したがいまして、いま申し上げました六つほどの調査がありますが、この調査について、やはり両県にまかしてやるのか、あるいは環境庁が指導的な姿勢で両県を呼んで話をしていただいて——両県のほうも確かにあるだろう。県側にしますと、これは福岡県のほうで免許したのだから大きな影響はない、こう言わざるを得ない立場にある。山口県のほうは、影響があると言わなければならない立場にある。両県だけで話をしたのではなかなか話がつかないと思います。思い切って学者なり中立委員というか専門家を入れた委員会でやったらどうかというふうな気がするのです。五つも調査があって、それぞれでかってなことを言っておったのでは、何のために調査したのかわからない。実態はこの赤潮がどこから何によって起こってきたかということの真実を追及することが目的だろうと思います。そのために調査をやっているわけですから、それをぜひやらなければならない、こう思うのです。  そういったことを一体環境庁としては積極的におやりになるお考えがあるのかどうか。いまのお話では、福岡県と山口県が話をしているから、話がつくのを待っておるというようなお話かもしれませんけれども、それでは問題の解決にはならない。一歩前進してやっていかなければならないのではないかと私は思いますが、環境庁のお考えはいかがでございますか。
  32. 三木武夫

    ○三木国務大臣 お説ごもっともだと思います。実態調査をやっておるということは、赤潮発生のメカニズムというものを究明しようというためにやっているのですから、そういうことで各県のエゴイズムというものが出てくる余地は、科学的にはないはずであります。調査も四十六年度から三カ年計画でやって、だんだんと実態の調査も進んでおりますから、これを環境庁で取りまとめて、総合的な評価をやるために積極的に取り組んでいきたいと思います。漁民にとってはやはりたいへんな、赤潮発生による被害というものは看過することのできない状態になっておりますから、積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
  33. 林義郎

    ○林(義)委員 長官の御答弁になったように、ぜひ積極的に環境庁としてはお取り組みをいただきたいと思います。  この際私は申し上げておきたいのですけれども、昨年の十二月の二十三日の日に、日経新聞でありますけれども、このように中間報告で「汚染・潮流に問題なじ」というようなことが出ておる。中間報告であります。中間報告でそんなものが一般的に出される。そうすると、やはり漁民のほうは、かっかしてしまってこうやる。ところが、今度はまた逆に——逆でもないのかもしれませんけれども、今度はこのように「響灘埋立て陳情もフイ」、こういうふうに出ておる。これはごく最近の、二月二十一日の新聞です。山口県の議会から福岡県側に陳情に行った。ところが、開発公社をつくるという創立総会が開かれたというような話です。開発公社が開かれても、先ほどのお話のように、埋め立てしないということになれば、開発公社を開いてもしようがないのかもしれませんが、そういうふうに一つ一つ進んでもあれですから、やはり全体の計画というものはほんとうに慎重に進めていただかなければならない。環境保全、これは漁業に対する被害の問題ではなくて、環境の問題という形で、非常に全体的な姿勢でもって進んでいなければならない問題だろうと私は思います。  こんな開発公社をつくられたということでありますけれども、やめるということになるとまたこれは非常に問題ありますでしょうけれども、開発公社をつくっても、埋め立て権の問題とは別である、これを私は、この際運輸省御当局なり環境庁御当局からはっきりしていただきたい、こう思いますが……。
  34. 大久保喜市

    大久保説明員 お答え申します。  開発公社の発足は私も聞いております。それで、開発公社がやろうとしております事業計画も、情報としては聞いております。それで、その構想というのが、先ほども申しましたように、現在のところ、四十八条に基づく港湾計画の審査を経た計画のうちには入っていない。一部は入っておりますが、全面的には入っていないという状況でございます。  そこで、先ほど来の御質疑の中でありました響灘地区海域調査でございますが、まず現状がどうであるかということの解明と、それから関門航路安全対策として必要な防波堤をやったり、それからいわゆる公害対策としてどうしても埋め立てをしなければならない、廃棄物の捨て場を確保しなければならない、こういうような意味合いでの埋め立てもやらなければならないという北九州市側の要望がございます。そういうようなことをもしやった場合には、どのような海流の変化が起こり、問題が出てくるかということを、関係者が集まりまして調査をやっておる状況でございます。  それで、実は港湾計画が改定されておらないというのも、そこいらの環境に及ぼす影響というものが明確になっていない段階で、あいまいなまま計画を固めてしまうことは非常に問題がある、そういう意識から現在慎重にこの問題を取り扱っておるわけでございます。  それで、現在私どもが聞き及んでおりますところの見通しといたしましては、先生が先ほど掲げられました環境調査につきまして私どもが聞いておるのでは、この三月には一応取りまとめができるであろうというふうに聞いております。それで、この取りまとめのできた段階で両県の県際協議会を開きまして、そこでその成果を検討する。それで結論が出るかどうかはまだはっきりいたしませんが、もしさらに問題があれば引き続いての調査が必要になろうかと思います。  しかしながら、ともかく科学的にといいますか、必要なものはやらなければならないし、しかし、やったがために公害を起こしては困りますので、そこいらのところは、私どもといたしましても慎重に、関係者でほんとうに客観的な事実に立って検討するということを強く要望いたしまして、その線で進めているはずでございます。  以上でございます。
  35. 林義郎

    ○林(義)委員 重ねて聞きますけれども、開発公社をつくったところで、いまのお話のように、新しい埋め立てというものは別の観点、考えでやります。したがって、きたないものが出てくる、それを埋め立てをしなければならないとか、公害防除のためにいろいろなものが必要であるというような形で計画変更されることもあるし、そういったことで開発公社をやるのですか。それとも、あくまでも基本の計画に基づいてやるという姿勢なのか、どちらなのか。運輸省のほうじゃないのかもしれませんが、運輸省のほうではどういうふうにこの辺を考えておるのか。私としては、開発公社があってもほんとうに環境基準、環境のアセスメントがはっきりしないうちは、この埋め立ては認めるべきでないという考え方をしておりますけれども、そういうふうに考えてよろしいかどうか。
  36. 大久保喜市

    大久保説明員 お答えいたします。  開発公社がやります事業は、私ども聞き及んでおるところでは、北九州市の都市廃棄物、産業廃棄物等の捨て場を確保する、それを埋め立てという形で捨て場を確保するしか方法がないということで、そのためにいわゆる第三セクターと申しますか、開発公社をつくって、それでその事業を実施させるのだ、そういうように伺っておるわけでございます。  ただしかし、そうは申しましても、先ほど来御説明申し上げましたように、開発公社が実際に埋め立て処分をしようといたしますと、公有水面埋立法によるところの埋め立て免許をとる必要がございます。それで、その埋め立て免許をとるにつきましては、まずその埋め立ての申請が北九州港の港湾計画、四十八条の審査を経た港湾計画に適合しているかどうかということのチェックがなされます。したがいまして、その計画に合っていなければその免許はなされないということになるわけでございます。  なお、補足して申し上げますと、北九州港湾管理者といたしましては、そのような新しい事態も踏まえまして、海域、環境の問題も考えて、現行の港湾計画を修正いたしたいということで、先ほどの調査結果等も踏まえまして、計画を改定したいということで作業中と聞き及んでおります。
  37. 林義郎

    ○林(義)委員 実態はわかりましたが、私は一つ御提案をしたいのです。現在公有水面埋立法の改正ということを政府のほうで検討しておられるという話を聞いております。公有水面埋め立てでいろいろと問題がありますのは、やはり何といっても沿岸の漁民であります。すなわち、公有水面埋立法だと「公有水面ニ関シ権利ヲ有スル者埋立ニ同意シタルトキ」、こういうふうな規定があります。埋め立てをするところの漁業権者が同意をしていればよろしいということでありますが、先ほど来私は申し上げていますように、皆さん方すべておわかりのように、問題はいまの響灘の、北九州の沖の漁業権者だけではないのであります。問題は非常に広く及ぶというふうに私は思うのです。どこまで及ぶかというと、また非常に問題がありますけれども、事前に公害が必ず出ないという実態的な調査をやる。事前に相当の立証をして埋め立てというものをやらなければならないんじゃないか。そのためには、単に埋め立てをするところの漁業権者だけではなくて、関連するところの水面についての漁業をやっている人の意見も当然に聞かなければならない。この第三条に、地元市町村の意見を聞くと、こう書いてある。これほど埋め立てが大きくなっておるのですから、単に当該埋め立て地を持っておる、管轄しておるところの地元市町村だけではなくて、関連の市町村の意見も当然聞かなければならない。やはりそういった形でこの埋め立てというものについては考えていかなければならない。港湾の場合におきましても、当該港湾だけではない、及ぼすところの影響は非常に甚大なことになると思うのです。そういった意味で公有水面埋立法という法律の改正を考えている。大正十年の法律でありますから、これは当然に変えていい法律であります。私は、昨年のこの公害委員会においても、公有水面埋立法の改正をぜひ早くやらなければならないと申し上げて、当時建設省のほうから御答弁がありましたのは、必ず改正するというお話がありましたが、依然としてまだ出てきていない。そこで私は、これは古い法律でありながらなかなかできないのは、役所間に非常にむずかしい問題があると思うのです。はっきり申し上げて、役所間に非常にむずかしい——先ほど来話のありましたように、港湾運輸省である。漁港は水産庁である。ではほかのところはだれがやるんだ。建設大臣がやるんだとかいろいろなことがあるんだろうと思うのです。私はこの際、そういった基本原則というものを立てた法律をやはりしなければならないと思いますが、その点につきまして、運輸省当局、それから水産庁当局、建設省も関係があるのでしょうから建設省当局、それぞれから、これはまた政府部内の意見がまとまってないから、ここで言うのはどうかということがあるかもしれませんが、その場合には、個人的な見解でもけっこうですから御答弁いただきたい。まず運輸省、その次に水産庁、その次に建設省、御答弁いただきたい。
  38. 大久保喜市

    大久保説明員 お答えいたします。  公有水面埋立法の現行の第三条の規定は、地元市町村ということになっておりまして、現行の規定から申しますと、影響を受け得るであろう他の地域の意見というのは、このままでは入らないわけでございます。ただ、港湾区域におきましては、先ほど申しましたように、その港湾計画を立てる段階で、埋め立て計画というものが環境の悪化につながらないかどうか、慎重にチェックいたしまして、そういうことで対処しようと考えておりまして、それで今国会に港湾法の改正の案も御提出申し上げまして御審議いただくことを予定しておりますが、港湾計画の立て方につきましても、在来の港湾法のままでございますと、重要港湾については運輸大臣の審査ということがございます。しかしながら、重要港湾以外のものにつきまして、計画立案のルールが明確でございません。そういうようなこともございますものですから、今回の港湾法の改正は、環境対策、安全対策を主にしたものを予定しているわけでございますが、その際に、いま申しましたような見地から、計画のルール化を少し明確にするということも考えて案をつくっておるわけでございます。  それから、公有水面埋立法そのものの改正につきましては、建設省御当局におきましていろいろと御検討になっておられますが、私どものほうといたしましても、非常に関係ございますので、事務的に緊密な連絡をとりながら作業をいま進めている段階でございます。
  39. 安福数夫

    安福政府委員 それでは一言申し上げさせていただきます。  先ほど私的な見解でもけっこうだということでございますので、わりあいに気楽にお答えできるかと思いますけれども、まああえて水産庁の立場を申しますと、まだそういう埋立法の改正についての連絡を受けておりませんので、ここでこうだということは申し上げられませんけれども、漁業の立場、水産の立場ということから考えますと、現在のように経済が非常に大きくなってまいっております。かつまた土木技術も非常に進歩いたしておりまして、埋め立てによります影響というものは、非常に大きな影響を及ぼすことは先ほど御指摘のとおりでございます。そういったことで、現在全国的に各地でこういったものが連鎖反応的にかなりのトラブルが起きていることは御承知のとおりでございます。響灘につきましては、ことに県境を越えこの問題になっておるわけでございます。そういった面で先ほど来運輸省の参事官からもるる御説明がございましたけれども、何ぶんにも法律が大正年代の法律、御指摘のとおりでございます。従来の埋立法の考え方といたしましても、地先主義になっておるような感じがいたすわけでございますけれども、先ほど申し上げますように、経済がこれほど大きくなっておる、こういう現状を見ますと、それを越えた広範囲での広域的な影響というものを配慮した法律体系がぜひ必要ではないだろうか、われわれはこういうふうに考えております。  ただ、これは法律だけの問題ではなくて、先ほど指導その他の関係も御指摘がございましたけれども、そういったところで確保できるという問題もございますけれども、漁業の立場で申しますと、それが法律で保障されるということが非常に望ましいのではないかと考えておるわけでございます。そういった意味で公有水面埋立法の改正が議題にのぼるという場合には、そういう観点に立った一つの協議をいたしたい、このように考えております。
  40. 伊藤晴朗

    ○伊藤説明員 今国会に公有水面埋立法の一部改正を予定いたしまして、所管省でございます運輸省建設省におきまして、現在成案を得べく検討中でございまして、来週あたりから関係省とも協議に入りたいと考えております。  改正の内容は、そういうことでございますので非常に流動的ではございますが、現在考えております改正点、技術的な事項を別にいたしますと四点ございまして、これは先ほどからるるお話もありますように、非常に古い法律でございますので、当初は全文改正というようなこともいま現に検討はいたしておるわけでございますが、何ぶん多岐にわたる問題を含んでおりますために、とりあえず必要最小限度のものにとどめたいというわけでございます。内容の第一点は、これはかねがね行政的な指導をいたしておる点ではございますが、公共公益のためにする事業とか、周辺地域の土地利用の増進のために適切なものであることはもちろんでございますが、埋め立てが環境の保全及び災害防止上支障がないこと、それから国土の利用開発に関する計画に適合しておること、そういったような埋め立て免許基準をはっきり法律上明定をいたすことによりまして、環境保全、災害防止等に支障がないようにいたしたいというのが第一点でございます。  改正予定といたしております第二点は、埋め立て地に関する権利の設定または移転の規制でございまして、現在埋め立て地につきましては、免許権者が免許の際に条件を付して嘱託登記をいたした場合に限り、当該埋め立て権者からの土地所有権等の移転につきまして許可制をしいておりますが、これをすべての埋め立て地につきまして、竣功認可後一定期間それの転々売買されるところまで全部免許権者の許可にかからしめることによりまして、埋め立て地の適正な利用、さらには伝えられます利権化防止の一助ともいたしたいということを考えております。  同じような観点で、改正内容の第三点といたしまして、埋め立て地利用目的の変更、それから利用開始の時期の義務ということを予定いたしておりまして、権利移転の場合と同じように、埋め立ての目的以外に当該埋め立て地利用する場合に、やはり一定の期間、十年間くらいは免許権者の許可にかからしめる。また、埋め立て地が遊休化しないように、竣功認可後一定期間内にその利用を義務づける。当然それらに伴います必要な罰則等の規制がかかるわけでございます。  最後に、第四点といたしまして、これは昨年来先生から御指摘されておりますように、免許の手続の問題といたしまして、公有水面埋め立ての施行地区内の水面権利者の同意だけ得ればいいようになっております点につきまして、広く周辺地域の住民等の意見を聞くべきじゃないかという御指摘を受けまして、埋め立て免許の際にはっきり埋め立て事業計画または埋め立て計画という計画書を提出させまして、それを免許する前にもちろん市町村長等に送付いたしまして意見を徴することはもちろんでございますが、広く公示または告示いたしまして、あわせてその埋め立て事業計画を縦覧に供する。そのことによりまして、一定期間を付して利害関係者からの意見提出を求めまして、そのことによって免許の判断を慎重にいたしたい、そういう形の改正内容を予定しておる次第でございます。  以上でございます。
  41. 林義郎

    ○林(義)委員 公有水面埋立法の考え方、わかりましたが、これは、いまこの段階で法律が出てないのですから、私は議論する気はありません。  ただ、大体考え方はわかりましたけれども、埋め立てというのは、先ほど来申しましたように、非常に影響するところが大きい。この影響については十分な配慮をやはりしていかなければならない。そこで、いま住民の意見を聞くとかいろいろな話がありました。どういうふうな形にするのがよろしいかというのは別途議論いたしたいと思いますが、一つだけお願いしておきたいのは、環境アセスメントということがぜひできるような体制をひとつつくってもらいたいということが一つであります。  それから、これは埋め立てのほうの考え方でありますが、先ほど来申しましたように、赤潮被害、最初に申しました赤潮被害というのは四十六年から発生しておる。四十六年から四十八年、ことしの三月に、さっきのお話では調査が出る。出てもまだそれでは足りないこともあるかもしれないという話でした。ところが、漁業をやっておるほうからすれば、生業であります、この生業をやっている人は、そんなゆうちょうな結論を待って、二年も三年も待ってやるほどの余裕はないと思うのであります。そういった結論が出るまでには、生業をやっぱり救ってやるということをどうしても考えていかなければならない。生業を救ってやらないから、政府は何もしてくれないではないか、埋め立てだけをやって済んでいるではないかという話になると私は思うのです。したがって、これは当委員会で私はやらなければならない問題ではないかと思いますけれども、生業被害に対する対策というものにいろんな手を使ってやってやる。原因がわからないのですから、どこから金を持ってくるかというのはなかなかわからないかもしれないけれども、一時立てかえ払いでもいいから、払ってやって、あとでいろいろ原因を究明してやって、そしてこの被害額を——それは新日鉄の流した汚水かもしれない、あるいは北九州市と下関市が海洋投棄をしておる汚水の屎尿の処理の問題であるかもしれない。そういったときに、そういったところについて法によって規制をするとともに、何か資金をプールしてつくっておいて、被害が出たならば、被害に対してまず払ってやる。そうすれば、被害を受けたほうは一応安心する。もちろん、被害を全額払う必要はないかもしれません。八割とかあるいは七割ぐらいのものは払ってやる。そういった基金を私はつくらなければいけないのじゃないかと思います。  無過失損害賠償責任でいろいろいま健康被害の問題が議論され、自民党の中でもこの国会へ出すということになっています。しかしながら、私はぜひ、いま申し上げた問題をこの次には早急にやらなければならないと思います。赤潮被害というのは、ことしはおそらく昨年にも増したような状況で出てくることは、私は当然に予想されるところだと思うのです。そういった点について、そういった形でものごとを進めていかなければならないのじゃないかと思います。  そういった点におきまして、公有水面埋立法、これは建設省だけでけっこうでございますから、公有水面埋立法について、そういった環境アセスメントの考え方を一もう一つ私はこまかく申し上げますが、先ほど三十二条、地方長官の監督権のところに、「公害除却シハ軽減スル必要ナルトキ」には、地方長官免許制限をすることができると書いてあります。これだけでは足りないのであります。なぜ足りないか。これは、公害を除却し、または何をするために必要であるということをはっきり立証しなければこれができない。そうではなくて、その立証責任というものを、すべて埋め立てをする人に対して、埋め立てをする人に義務として持たせるというような体制をつくるべきであろう、私はこう思うのであります。この点が一つ。この点は建設省にお尋ねします。  最後に、いまの漁業救済制度の問題でありますが、これは環境庁のほうからお答えをいただきたいと思います。
  42. 伊藤晴朗

    ○伊藤説明員 先ほど改正内容の点で申し上げました、第一点の免許基準の明定の段階で、環境の保全、公害の防止に支障のないこと、という点の一項を加えることを予定いたしておりまして、これは常々行政指導をいたしておるところでございますが、今回そういう形の免許基準として明定することによりまして、埋め立て申請者のほうから、環境保全上、公害防止上支障のないことを、埋め立て事業計画上の内容といたしまして提出させまして、そのことによって、それが環境保全等に支障がないことを確認してから免許を付するという形の構成をとるようにいたしておるわけでございますが、まあ埋立法そのものが、内水面を含めまして、水面を変じて陸地にする手続法の関係もございますので、どこまでやれるかわかりませんが、御趣旨の点はなお検討させていただきたいと思います。
  43. 三木武夫

    ○三木国務大臣 林委員の御指摘の生業に対する補償ということ、確かに大問題だと思いますが、近く国会に提出を予定されておる損害賠償保障制度では、健康被害というものを取り上げたい。これは、その被害の測定であるとか、それからやはり強制的に、徴収するわけでありますから、その基準であるとか、これは実にやっかいな法律であります。だから、これをひとつ軌道に乗せて、私も予算委員会等でも言ったのでありますが、本格的に生業補償の問題ともこれを軌道に乗せれば、損害賠償保障制度を軌道に乗せれば、四十九年度から取り組んでみたい、こういうお答えをしたわけですから、この問題は確かにこれからの問題であるということは御指摘のとおりだと思います。  ただ、それまでの間、そういうゆうちょうに待ってはいられないという漁民の立場等もよくわかりますから、これは水産庁とも、こういう問題については何らかの方法というものが考えられぬものか、検討をいたしたいと思います。
  44. 林義郎

    ○林(義)委員 ぜひひとつ、前向きでこの問題をやっていただきたいと思います。  時間も参りましたので、これで質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  45. 佐野憲治

    佐野委員長 次に、島本虎三君。
  46. 島本虎三

    ○島本委員 いま林委員からもいろいろうんちくのある質問が展開されたのですが、この際やはり環境優先、公害対策優先という見地から、このように赤潮発生やその他で被害を与え、環境が破壊されておる世界の公園である瀬戸内海、これに対して瀬戸内海の環境保全政府ははっきり考える御意思があるのですか、ないのですか。そういうような考え方に立っておるのですか、おりませんか。まず、これを環境庁長官、聞かせてください。
  47. 三木武夫

    ○三木国務大臣 瀬戸内海においてこういう一つ汚染が次第に深刻化していくわけですから、瀬戸内海をきれいにしようということは、国民的な大きな要望となってきておるわけであります。そういうために、これは、これさえすれば瀬戸内海は浄化できるというのではなくして、いろいろな総合対策というものが必要である。工場の排水規制の問題、埋め立て、産業立地の問題、あるいは下水処理の問題、あるいはまた廃棄物の処理の問題、いろいろな総合的な対策を必要とするわけでありますから、なかなか現行法だけでは無理ではないかという考え方でございます。そういう点で特別立法をわれわれのほうとしても検討をいたしておるわけですが、いまだ結論までは出していないのですけれども、いま検討をいたしておる段階でございます。
  48. 島本虎三

    ○島本委員 国民の世論としてもその方面は強いものがあります。したがって政府は、検討の段階ではもうおそいです。与野党とも立法化しておるのですから、こういうような場合は積極的にこれを受け入れて、制定のために協力する意思がありますか。
  49. 三木武夫

    ○三木国務大臣 与野党の間にそういう強い要望が起こっており、超党派でこの問題を取り扱おうという傾向に対しては、われわれとしても敬意を表しておる次第でございます。
  50. 島本虎三

    ○島本委員 敬意を表する前に、政府としてはこれを勇断し実行に移すかまえはございませんか。
  51. 三木武夫

    ○三木国務大臣 われわれとしても瀬戸内海をきれいにしたい、これは島本さんとわれわれの考え方には違いはないわけでありますから、その目的を達成するためには、政府のほうも、また国会においても、できるだけ協力して、目的達成の促進に資するような方法を考えていきたいと思っております。
  52. 島本虎三

    ○島本委員 最も大事な点になったらばけるのは最も残念であります。それで長官に、それは努力してもらいたいことを要請します。なお、協力してもらいたいことを要請しておきます。  自然環境保全審議会と大雪と美ヶ原の認可の問題についてまず触れます。  この件については、縦貫道路の環境破壊のおそれがあるということで、長官としての考え方としては、保証のない限り建設認可するつもりはないという意向のように承ります。ことに大雪の場合は、私はよく知っておりますが、現行の自然公園法によって第一種特別地域として指定されておる。そのほかに文化財保護法によって天然記念物の地域に指定されておる。それから鳥獣保護法によって特別保護区にこれも指定されておるのであります。したがって、特別保護地域の無車道地域に指定されているのに車を通す、こういうようなことを計画するのがおかしいのであります。それと同時に、北海道には北海道三期計画があるのです。この第三期計画の中にもこれが明示されてあるのに、車道をつくることに対して云々というのは、これはまさにおかしいのもきわまりないのであります。この際、長官としても十分判断されて、こういうようなものに対しては厳然たる態度をもって——無車道地域じゃないか、それなのに産業道路か何か車をしゃにむに通す、冬季の問通れないような道路を通すなんというのはもってのほか、環境破壊に通ずるから、この問題に対しては、長野県の美ヶ原のビーナスラインの問題とあわせて環境保全のために厳然たる態度をとるべきじゃないか。長官の決断を要請いたします。
  53. 三木武夫

    ○三木国務大臣 山岳地帯に一切の道路を否定するという考え方は、現実的でもないし正しくもないと思っております。しかし最近は、ひたすら利便というものを考えて、環境保全の価値というものが軽んぜられている傾向がありますので、今後こういう道路の建設に対しては、安易な開発は私は認めない、こういうきびしい方針で臨んでいきたいと思っております。そのためには、事前の科学的調査といいますか、自然あるいはまた生物間相互の関係であるとか、そういうふうなものを十分に調査をするし、専門家の意見も徴し、そしてまた、その結果が国民の良識に合致するような結論を出すようにきびしい態度で臨んでいきたいというのが方針でございます。大雪山も美ヶ原もこの方針のらち外ではないということでございます。
  54. 島本虎三

    ○島本委員 大体了解できるような答弁にもとれますが、それなら軽々にということば、これはなかなか重大なことばであります。重いことばであります。したがって、これはもう認可する意思はないのだ、私はそういうようにとっていきたい、こういうように思います。しかし、それにしても長官、自然公園法に基づく自然公園審議会、長官の手元にございますが、三月の末には任期が切れるわけです。自然環境保全法によって自然環境審議会が四月から発足することになります。いままでの情勢とは今後法律によって変わるから、やはり開発側の委員というよりも、逆に今度は自然の価値を十分考え得るような委員、当然こういうようなものの選考も新しい立場から考えていいんじゃないか。内容等について再検討すべき時期じゃないか、こう思いますが、新しく発足する審議会に対しての長官の御意向を承りたいと思います。
  55. 三木武夫

    ○三木国務大臣 前段の点でありますが、自然公園の審議会等もありますから、その意見も徴してその意見は尊重するというたてまえになっておりますから、いろいろ道路の建設については審議会の意見も聞かなければならぬ、そういう手続もとらなければならぬことは、島本さん御存じのとおりでございます。しかもその審議会は、環境の保全のための新しい立法によって今度改組されるわけで、四月一日から新しい審議会に移りたいということでございます。  その人選等については、もう国民が納得するような人選にしたいと願っておるわけでございます。国会においても、人選については建設的ないろいろなアドバイスを受けたいと考えております。そういう考えで人選をしたいと思っております。
  56. 島本虎三

    ○島本委員 長野県の美ヶ原と北海道の大雪山の場合、これはいま重大な問題として提起されておりますから、その趣旨に沿って、これを自然環境保全の立場から審議できるような——できるようなといいますか、いままでもそうでしたけれども、特にその価値等についても十分考え得るような人の選考を特に望んでおきたい、こういうように思うわけであります。  それと長官、私は、最近の環境庁の姿勢ということについて、長官は党内の実力者ですから、もっときちっとしておいたほうがいいのじゃないか、この一、二点について承りたいのです。  それは、前の大石長官の見解に対しては、あれは番外の政治的発言だからなんということを所管課長が言った、こういうことを聞いておりますが、そういうようなことは言うべきでございません。自然環境保護のために一課長がどういうようなことでそんなことを言っているんですか、こういうような点は多大に疑問であります。こういう者に対しては厳罰をもって臨むべきであります。  それと同時に、今度は、国土総合開発事業調査費配分等の問題で、最近私どもとしては少し芳しくないことを聞かされております。と申しますのは、水質保全局長の手元で、環境庁サイドでむつ小川原の実態をつかむための水質調査を行なっている、こういうことのようでありますが、その調査の内容としては、透明度等の水質の問題、プランクトン、海底の生物、ヘドロ、潮流、海流、こういうようなことの調査、予算は三千万円、期間は四十八年の一月十七日から二十一日まで、それから二月の十五日から三月の十七日まで、こういうように二回にわたってやるようであります。  その調査仕組みとしては、大蔵省の調整によるところの、経済企画庁の予算を環境庁が譲り受けて、調査項目、調査方法、こういうようなことを決定してこれを行なった。これも入札して民間の海洋デベロッパーへ委託しておる。それは四十七年の暮れに、経済企画庁からこれをやってくれないかという要請を受けている。四十七年十二月二十六日に、この予算を譲り受けて、そしてこれを委託した、こういうような経過のようであります。そういうことをしては、開発誘導に使われるおそれがあるのじゃないかという疑念も生ずる。それと同時に、企画庁で、断わられたものを、環境庁でこれを持っていって地元が了承したという。これはやはり地元に対しての欺瞞行為ではないか。同時に、二県以上の調査については環境庁、たとえば東京湾のようにこれを行なうというならわかるけれども、県だけのものは、当然県が行なわなければならないし、そういうようなものを、法によって明定されている。これを環境庁が経済企画庁の要請によって出ていってこれをやってやる、こういうようなことに対しては多大の疑義がある。それと同時に、県に能力なし、これを論断しておるというのは越権である。ことに県と話し合いも煮詰まっておらない、こういうことさえ聞くのであります。私は、こういうような段階からして、環境庁の長官が就任されたその前後において、何だかこういうようなはっきりしないような行動があったということは遺憾であります。環境保全公害対策よりも開発誘導の口実になることに気づかなければならないと思います。環境庁長官、これは十分戒心しながら答弁してもらいたいと思います。
  57. 三木武夫

    ○三木国務大臣 環境庁という役所は、国民の信頼を失ってできる役所ではない、環境行政は。したがって、われわれとしても、常にその点は強調をいたしておるわけでございます。  新聞記事等でお話があったと思いますが、これは必ずしも真相を伝えている一まあその間に説明の不十分な点もあったと思います。これでいろいろな環境庁の職員の発言というものに対しては、よく説明をして、誤解の生ずる余地のなからしめるようにするということを、私は注意をいたしたのでございます。  また、むつ小川原の水質調査については、これは島本さんにも多少誤解があると思うのですが、政府の予算の仕組みは、環境庁とか企画庁とか科学技術庁とか、総合調整費ということで各省につけて、環境庁の予算もよそへ渡すことがあるし、よその予算も環境庁が使うこともあるんです。その予算の執行状態等ともにらみ合わして、資金の状態などからそういうこともあり得るわけでございまして、そのときに、それだからといって、企画庁の金を使ったから開発の前提として調査をする、そういうことはありません。どうか環境庁の姿勢については信頼をしてもらいたい。そういうよその役所の手先になって、環境保全という本来の職務を忘れるような環境庁ではない。この点は誤解のないように願いたい。予算の使いぐあいでそういうことはしょっちゅうやっておることでございます。  しかし将来は、できるだけ環境庁の予算を多く持って、よそからもらわなくてもやれるような仕組みにはしたいと思いますが、政府の予算の使い方にはそういうことはしょっちゅうあることで、それに特別の意図を持たすことは、やはり少し事実と違うのではないかということを申し上げる次第でございます。しかし、全体としてそういうことの誤解を生じないように、環境庁長官、今後よく注意をせよということばに対しては、これは私もそうであるべきだと考えますので、御注意のように今後とも一そうの注意をいたしていきたいと思っております。
  58. 島本虎三

    ○島本委員 やはり国土総合開発事業調査調整費、こういうふうな中から出た予算で行なうということは、環境庁が、いかにこれは環境保全のためのものだと言っても、この項目が国土総合開発事業調査調整費であるならば、この範囲調査だということは当然理解できるところなんですから、むしろこういうようなのは使わないで、堂々と環境保全のためにやるならば、そのためになぜ予算を取らないか。そのために大蔵省が予算を出さないのであるならば、それこそ三木さん、あなたはなぐり込みをかけてもやらせるのが当然なんでありまして、これが実力大臣として、あなたの存在価値が国民に高く評価されているゆえんなんであります。こういうふうにして、まぎらわしいような予算の使い方、こういうようなことをさしてはならないと思います。同時に、これは、二県以上にわたるような調査、これならば環境庁がやるから、一県だけのものならこれは当然県にまかせてやるべきであって、そうして、まさに話を煮詰めないうちにこういう予算を持っていって環境庁単独でやる、県にまかせるものを環境庁が率先してやる、こういうようなところにも、その誠意が逆に誤解になって生まれるのはあたりまえであります。ですから、こういうような点は十分に気をつけなければなりませんし、ことに大石前環境庁長官の見解は番外の政治的発言だ。所管課長が美ヶ原のビーナスラインの問題でこういうようなことを発言するのは不見識です。こういうようなことを言わしてはだめです。厳罰をもって処せられんことを長官に要請しておきたい、こういうふうに思います。この問題については、もう一つ国民の前にあなたの格調の高い信念を吐露してください。
  59. 三木武夫

    ○三木国務大臣 どうか環境庁の姿勢に対しては信頼をしてもらいたい。いまの問題等も、結果等を通じて、私のここで申し上げることは、信頼に値する環境行政をやるということを明らかにしておく次第でございます。
  60. 島本虎三

    ○島本委員 信頼に値するということは、国民に多大なる疑義を与えておるこの事実と主観的な長官の考えのズレを十分考えておいてください。私は、このような、環境庁長官をはじめとして、それは国民に期待をもって迎えられておる環境庁、これは高く評価をいたします。こういうような事実に対しては、私はそのまま、そうですが、りっぱな行為です、というふうにしてこれを承認するわけにはまいりません。いずれこの問題に対しては、もう一度資料を改めてから質問さしてもらいたいと思いますから、この問題は、まず長官の誠意をいまの段階で期待して、これで打ち切ります。  次に、海上保安庁来ておると思いますが、もうすでに海上保安庁所管になっておりましたろうか、海洋汚染防止法が施行されておると思います。したがって、四十八年二月十九日に発表されたところの海上公害犯罪一斉取り締まり、こういうようなことが行なわれたようであります。それも抜き打ち的に行なわれたようであります。これはいろいろなデータが発表されておりますが、油のたれ流し、屎尿のたれ流し、こういうような悪質なもの、廃棄物の不法投棄、また排出、こういうようなものもあったようであります。これはどういうようなことですか。はっきりこういうような事実があったのですか。何件ありましたか。
  61. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 お答えいたします。  今回の一斉取り締まりの目的は、依然として海洋の不法投棄が衰えないということと、季節的に、ちょうどこの季節は、ノリの養殖の最盛期でございます。一たび油がノリにまつわりますと、被害が非常に大きくなる。それから、荒天のために、いま申されましたように不法投棄、沿岸海域に、沖まで行かないで捨てるというふうなことが予想されましたので、全国一斉総動員をかけてやったものでございます。  やり方は、巡視船、航空機の総動員とともに、港々に停泊する船に対して、約四千隻に対して立ち入り検査等をいたしました。いわゆる広域的な連携を保ってやりました。  その方針としては、船からの油及び廃棄物の投棄を対象として、悪質なものについては徹底的にこれを検挙するという方針で行ないました。その結果、すでに新聞で伝えられておりますように、船からの油及び廃棄物の不法排出事犯のものが七十三件ございました。そのほか、形式犯的なもの、たとえば油濁防止管理者を選任しておらぬとか、油の記録簿を備えつけておらぬ、持っておっても記載しておらぬ、こういったもの等含めまして、悪質犯七十三件を含めまして、二百四十二件の公害関係法令の違反を検挙しております。  この法令別の内訳を申し上げますと、海洋汚染防止法違反が二百七件、廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反が九件、港則法違反が二十六件となっております。それから、このほかに、犯罪形態が特に悪質ではないけれども違反をしておるというものが百七十八件ございまして、これに対しては、厳重に注意を与え、警告処分を行なっております。
  62. 島本虎三

    ○島本委員 ただ、流したものに対して、検挙してこれを処罰しても何にもならないわけです。流さないようにするのがまず必要なわけですが、依然としてこういうようなことをやっているとなれば、これは通産省のほうでこの取り締まりや指導はどういうふうにしているのですか。油、廃棄物並びに屎尿のたれ流し、こういうようなものは法によって禁じられておるはずなんでありますけれども、通産省あたりでは、これに対してどういうふうにしていますか。
  63. 青木慎三

    ○青木政府委員 私どものほうとしましては、直接の指導にあたりましては、そういうことのないように極力指導してまいりたいと存じておりますけれども、実際の取り締まりに当たりますには、やはり法的権限がありますので、海上保安庁のほうのいまのような実態を踏まえまして、企業に対しては、そういうことを今後しないように十分注意して指導してまいりたいと思います。
  64. 島本虎三

    ○島本委員 通産省である限り、幾ら指導しても、これが現実に行なわれているのに指導するということは、十年も前から指導しているでしょう。公害が問題になってからもう十年以上になるのですよ。それから指導してもまだこういうような状態なんですよ。この点においては、ことばだけでごまかせばいいというような考え方ではだめですよ。通産省の姿勢がまず問われる。ほんとうに流さないならば、この際、環境庁長官、こういうような点、どうですか。瀬戸内海はあのようにして汚濁されている。そしてまた水島、あれは全然公害を出さないコンビナートとして発足したが、いまやもう日本の公害の原点になっておるような状態。たてまえと実際は違っている。また、鹿島に至ってもそのとおり。四割か五割くらいの操業でしかないのに、もう人一倍の公害発生しているのが現状。これも、公害を出さない、こういうような発想で着工したコンビナートであります。しかしながら、依然として公害を出しているのが現状。もしそうだとするならば、水質汚濁に関する限りは、この水を循環して使用させる。排水は海や川に直接投げさせないようにする。いわゆるクローズドシステムというか、閉鎖給水体系、こういうようなことを瀬戸内海や日本のコンビナート地帯にやらせるべきです。水や川、こういうものが便利であり、豊富であるから、こういうふうにいって、無制限にこれを使って、きれいな水を使ってきたない水にして還元する。これほど安易なやり方はないのであります。したがって、こういうようなやり方に対しては、もうアメリカでさえも工業用水の排水、こういうようなものをはっきりと生産工程に再投入する。循環させて、その過程で汚濁物質を除去させてしまうようなこのやり方、こういうようなことをいまもうやっておる。西欧諸国でもこういうような行き方をもう採用しているわけです。しかし日本では、高度経済成長によってGNPが世界に誇るような日本になっていても、依然として、瀬戸内海をはじめとして、この水質汚濁はあとを断たない。そうして、企業のモラルによっても、もうすでに公害が出たら、いま発表されたようにして、廃棄物並びに油、こういうようなものを流しては検挙されている。これをやらせないためには、企業そのものの使う水、これを循環して何回でも使用させればいいのであります。これをもうアメリカはじめ西欧諸国ではやっているわけです。なぜ日本はこれをやれないのですか。これをやらない以上、日本は世界からまたその過程において指弾を受けることになるわけです。おそらくこういうようなことはもう西欧諸国ではやっております。アメリカではもちろんやっております。日本でやれないわけはないわけです。こういうような点に対して、環境保全の立場から、環境庁、進んでこの問題を提起して、そうして水質汚濁の防止のためにすぐ着手すべき案じゃないか、発想じゃないか、こう思います。これに対して長官どのようにお考えでしょう。
  65. 三木武夫

    ○三木国務大臣 島本委員と全く同感ですよ。日本は水が豊富であったから水というものを粗末にし過ぎたわけであります。そういう点で、ことにまた公害問題というのが入ってきたわけでありますから、将来はやはりクローズドシステムによって、そうして、そのことは水というものの効率的な利用あるいは公害の防止にも役立つわけでありますから、大企業ではそういう方向に向かっておりますけれども、これはそういう生産工程というものをクローズドシステムにすることに対しては、通産省としても一段と、これはいろいろ技術開発の面もあるでしょうが、力を入れるべきであって、われわれも公害防除の見地から、これは積極的に推進していきたいと考えております。
  66. 島本虎三

    ○島本委員 これは当然環境庁として閣議にかけて、長官としてこういうような方式を採用して、きれいな水を利用する場合にはきれいな水にして還元してやる、この原則の上に立って、いまからでもおそくないから、これを採用することを強力に要請いたします。ことに現在私どもの手元には、北海道のホクレンの中斜里でん粉工場では、これを利用して住民に喜ばれておるのです。また、それによって副産物が得られるので、なお企業者としても喜んでいるわけであります。苫小牧のケミカル工場でもこれを採用しようとしております。砂利の採取に対してはこういうようなものを要請されて、そしてこれを現にやっておる傾向があります。こういうようにしてみますと、砂糖でもこれをやっておるようでありますけれども、これはもうすでに一部ではやっているんですから、瀬戸内海やこういう工業地帯は、特に法をもってしてもこれを厳重に位置づけてやるのが当然だと思うのです。何でもないところでこれをやっているんです。もう汚染地帯では厳重にこれをやらせるべきです。これを私は強く要請をしておきたいと思いますが、長官、私の要請を受けてくれますか。
  67. 三木武夫

    ○三木国務大臣 全く私も同感でありますから、強力に推進をいたしたいと思います。
  68. 島本虎三

    ○島本委員 では私は、もうほかの人の質問時間のために半分以上も時間をさくことになってこれは残念でありますけれども、どうしてもだめだった場合はこの次にまたやらしてもらいますが、最後の一問です。  これは土呂久公害の認定と被害者の救済であります。私はこの問題について、かってこの公害対策環境保全特別委員会で、全国の鉱山の数や、また休廃止鉱山を調べて、そしてこれに対する鉱害発生のおそれがないように国会を通じて政府にこれを厳重に申し上げておるはずであります。その対策が考えられておるようでありますけれども、その対策はどういうようなものなのか。  それと合わせて今度第四の公害病として認定されたのがいわゆる土呂久の砒素中毒なんです。この砒素中毒に対しては何人に認定したのか、この問題に対してもはっきり知らしてもらいたい。そして一部の人には検査項目について県とそれから環境庁との間の意思ではっきり一致しない。したがって、これは皮膚検査と鼻粘膜検査と砒素の量の測定を頭髪によって行なうのと、こういうようなそれぞれの項目によってやるから、勢い皮膚だけにあらわれている現象に対する救済であって、内臓をおかされている者に対してはまだ何ら手が届かないようであります。真の救済は、神経痛それから肝臓障害、呼吸器障害または砒素等によって高血圧障害が起こっている人も現にあるのでありますから、そういうようなものに対してはっきり手を染めるのでなければならないはずです。それが表面的な皮膚の疾患だけにしか及んでおらないということは、これは仏をつくっても魂を入れないたぐいのものであります。環境庁としてもこの点は十分留意しなければならないのじゃないか、こう思いますが、一体これはどういうようになっておるのか。これは長官に聞いても何ですから、事務当局、これははっきりした答弁を願います。
  69. 青木慎三

    ○青木政府委員 ただいま先生の御質問のうち、前半部分の金属鉱害対策でどういうことを考えているかということについて御答弁申し上げます。  国会の決議をいただきまして、私どもとしましては、休廃止鉱山の鉱害について強力な防止策をすることといたしまして、まず第一に調査関係でございますが、休廃止鉱山の実態把握を早急に進めるために、重金属による鉱害のおそれのある千五十鉱山に対しましては、昭和四十五年度から四年計画調査を実施中でございますが、四十八年度も引き続きまして三百二十五鉱山の調査をいたすことにしております。これによりまして千五十鉱山の一応の調査を終わるわけでございます。ただ上記以外にも多数の鉱山がございますので、四十八年度から地方公共団体に概査というものを委託いたしまして、その結果によりまして、あぶない鉱山につきましては精密な調査をやってまいるというような方針で進んでまいることにいたしております。四十八年度は九百四十鉱山につきまして府県に委託をすることにいたしております。  それからさらに、鉱害監督の一そうの強化をはかるという項目がございますが、私どものほうの地方監督局部におきまして鉱害防止課の増設を札幌と仙台に行ないまして、さらに鉱務監督官二十四名の増員を行なうことにいたしております。  それから、休廃止鉱山の鉱害防止対策を進めるにあたりまして、ことに毒劇物につきまして御指摘を受けておりますが、これは厚生省との間に連絡会議を設けまして、私どものほうの鉱山保安法の省令を昭和四十七年六月に改正いたしまして、毒劇物に対する規制を強化しております。  その他一般の対策につきましては、まず第一に、金属鉱物探鉱促進事業団を改組、拡充いたしまして、金属鉱業事業団というふうに直すことにしております。この事業団に、鉱害防止のための資金につきまして長期低利の融資を行なわせる、鉱害防止のための資金の借り入れについて債務の保証を行なわせる、それから鉱害防止のための調査及び指導の業務を新たに行なわせることにいたしまして、現在金属鉱物探鉱促進事業団法の一部改正を今国会に提出しております。  それから、地方公共団体が行ないます鉱害防止工事に対する補助金を、昭和四十七年度二億三千二百万円を、一挙に七億円に、大体三倍にふやしまして、極力この事業の促進をはかることにいたしております。  さらに、金属鉱山の鉱害対策を計画的に処理いたしますために、鉱業権者に鉱害防止工事計画を出させること、並びに、今後採掘いたします鉱山につきましては、将来必要になるべき鉱害防止工事のために積み立て金を強制的に積ませるということを内容といたしました金属鉱物等鉱害対策特別措置法というのを、現在立案中でございます。  以上、簡単でございますが、鉱害対策について御決議をいただきましたことに基づきまして、通産省としては以上のことを立案して、これから進めてまいるつもりでございます。
  70. 船後正道

    ○船後政府委員 先生御質問の後段の土呂久地区における健康被害者の救済の問題でございますが、まず、何人程度が救済の対象になるかという点でございます。これにつきましては、本年二月一日に政令改正をいたしまして、公害病として慢性砒素中毒症を追加し、かつ、地域といたしましては土呂久地区を指定したわけでございます。これに基づきまして、現在宮崎県では審査会を設置すべく人選を急いでおるところでございまして、近く発足すると思います。そういたしますと、正式にはこの審査会の意見を聞きました上で、知事が認定をする、こういうことになるわけでございます。  現在のところ、四十六年に実施いたしました健康調査の結果、七名につきましては慢性砒素中毒という診断がついておりますので、これらの方々から申請がありますれば、おそらく認定ということになろうと考えております。  その他につきましては、なお調査の過程におきまして精密検査に回っておるという方もあるわけでございますし、さらにまた、この政令改正を機会に、宮崎県におきましては近く十人につきまして再度健康診査をするわけでございますから、これらの健康診査の結果さらに砒素中毒症の疑いがあるという方が出てまいりますれば、当然、七人のほかにも認定されるわけでございます。決して七名の方に限ったという問題ではございません。  それから次に、慢性砒素中毒の認定条件の問題でございますが、これは宮崎県の調査を踏まえまして、かねて国の専門委員会でもって検討してまいったのでございますが、データが宮崎県の土呂久地区に限られておるわけでございまして、宮崎県のいわゆる倉恒委員会の報告によりましても、現段階では、皮膚の所見、あるいは鼻の所見というものと砒素の暴露というものとの間に有意の因果関係が認められるという状況でございますので、さしあたり現在はこの二つの認定要件を考えておるわけでございますが、これにしぼったわけでもございません。この点につきましては、先生指摘のとおり、この無水亜砒酸の健康に及ぼす慢性影響といたしましては、皮膚障害のほかにも、呼吸器の悪性腫瘍とか、あるいは肝障害だとか、そういったものが知られておりますので、今後も土呂久並びに土呂久以外のいわゆる砒素山周辺の健康調査、こういったものを踏まえまして、認定要件につきましても引き続き検討をいたす予定でございます。
  71. 島本虎三

    ○島本委員 ことに砒素の問題については、戦前、戦後を通じて、戦争中にはこれは毒ガスに使用しておりましたので、相当の人が後遺症があるのじゃないか、こう思われておるのであります。現在の指定はやはり土呂久地区だけでありますから、その地区から離れてしまったところではそういうような認定を受けられない、こういうようなことでは真の救済にはならないのじゃないか。この点が依然としてわれわれとしては心配なのであります。それと同時に、内臓のいたんでいる者等についても、これはやはり救済の対象にしてやるべきであります。地域指定も問題点がありますから、その点も十分検討すべきです。そして多発でなければこれを指定しないというこの考え方では十分の救済になりませんから、その点等も今後十分考慮してこの対策に当たるべきであります。現在では生じたその場所、そこに住んでいる人以外には対象になっておりませんから、まだまだ行政的措置の指定には手抜かりがある、こういわざるを得ないと思います。十分仏をつくったならば魂を入れて運用するようにはかってもらいたい、このことを強く要請しておきたいと思います。この点はよろしゅうございますか。イエスかノーかでいいです。
  72. 船後正道

    ○船後政府委員 先ほども申し上げましたように、現在の慢性砒素中毒の指定は、二月一日に主として土呂久、もっぱら土呂久地区の調査結果というものを踏まえての措置でございますので、今後の他の地区における調査の進展及び土呂久地区における診査の進展等に合わせまして先生指摘の点につきましては検討してまいりたい、かように考えております。
  73. 島本虎三

    ○島本委員 いまいろいろと土呂久まで、公害対策の点、瀬戸内海環境保全、こういうような問題に触れてきたわけです。これは当然工場排水でアンモニアとか燐酸、こういうようなもの、あわせて家庭排水によって水質の汚濁されている、この現状に対する指導のしかたは今後大きい問題です。瀬戸内海に限らず、いまもうすでに北海道の室蘭も湾内にこれが発生しておるのであります。急遽これに対する対策を練らなければなりません。室蘭は、これはまあ御承知のように新日鉄や日本製鋼、こういうような工場がある人口十六万の鉄鋼都市でありますが、二十万に達しないためにまだこういうような指定都市としての権限が発動できないようになっております。これはやはり人口そのものに関係なしに、当然能力がある市なんですから、これは市、市長がこれに対処するために北海道の権限を行使したいというならば、これを認めてやってしかるべきだと思うのです。これは人口によって認められないということは重要でありますから、少なくてもこの問題は政令都市、指定都市に指定してやって公害対策の万全を期さしてやってもらいたい、このことを要請いたしたいと思います。長官の御意見を伺います。
  74. 三木武夫

    ○三木国務大臣 島本委員の御指摘のように、人口だけというのも不合理がありますから、室蘭市は特別指定を近く行なう方針でございます。
  75. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ、特に私の場合はこれでやめておきます、まだたくさんあるんですけれども。
  76. 佐野憲治

    佐野委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ————◇—————    午後零時三十七分開議
  77. 佐野憲治

    佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岩垂寿喜男君。
  78. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、経済審議会がさきに経済社会基本計画政府に答申をいたしました。この経済社会基本計画がこれから閣議決定の手続をやると思うのですが、この中には、特に環境保全の問題あるいは公害対策の問題が具体的に指摘されていますが、この計画は、閣議決定をされると、田中内閣としては最初のやや中期的な経済政策、経済路線になると思うのであります。この基本計画について環境庁長官の見解を最初に承っておきたいと思います。
  79. 三木武夫

    ○三木国務大臣 経済社会基本計画では、やはり環境の保全の範囲内で開発をする。そのためには、環境のアセスメントというものは十分にしなければならないということで貫かれておるわけです。具体的な五カ年間の目標としては、硫黄酸化物、人の健康に影響を生じない水準の達成あるいはまた汚染の著しい三大港湾、東京とか大阪とか伊勢湾は、硫黄酸化物やBODの排出をおおむね半減をするというようなことが具体的に書かれておるわけでございます。われわれとしても、今後こういう中期計画の線に沿うて排出規制はやはり強化していきたい。また、監視の体制というものも強化したい。また、技術開発というものもこれは推進されていかなければいかぬ。また、下水道とか廃棄物の処理施設というものも整備をしていかなければならない。こういう環境保全のための総合的施策を推進するほか、排出規制の強化については大体こういう考え方を持っておるわけでございます。硫黄酸化物はもう一ぺん排出基準については見直したい。そうして環境基準全体を早急に見直して、そして排出規制等に対してもこれは強化していきたい。それから、窒素酸化物、オキシダントなどに対しては、できるだけいま検討を加えておりますが、環境の基準を設定したい。そして、長期計画にいわれておる一つの目標を達成するように今後努力をしていきたい、こう考えております。
  80. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 従来の経済計画と比べますと、今度の経済計画の中に、計画期間中における目標水準が示されたということは、私は一歩前進だというふうに理解をいたします。特に、いま長官から指摘をされましたように、硫黄酸化物や水質汚濁の問題については、こういう目標を掲げられたことはけっこうなのでありますが、ただ問題は、この計画目標を達成するためのいわゆる法律的な体制とでも言いましょうか、規制の担保がなければ、これはどうも単なるビジョンに終わってしまうだろうと思うので、いま長官が言われましたけれども、私は、この際目標達成のために必要な一種のスケジュールとでも言いましょうか、そういうプログラムというものを環境庁はどのようにお考えになっておりますか。この辺についてお答え願っておきたいと思います。
  81. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  大気保全行政の目標としております環境基準につきましては、硫黄酸化物について早急に見直し強化ということで、現在作業を続けております。それから、まだ未設定でございますが、窒素酸化物、オキシダント、これについても近く設定をすることとしております。そして、これらの目標を達成するために、発生源に対してきびしい排出基準を課するとともに、その地域の実情に応じて特別排出基準、たとえば新しく工場をそこへ建てるあるいは増設するということをきびしく押える。あるいは大都市等においては燃料規制を強化する、こういう手段でやってまいりまして、さらに今後総量規制方式を導入していきたいと検討を加えております。特に三大湾地域につきましては、地域の実情に応じまして、排出規制、燃料規制の強化のほかに、工場の立地制限、移転促進、それから地域の集中冷暖房の導入、こういったような諸施策を総合的に講じていこうという考え方でございます。
  82. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この各論の中で公害規制の問題について、濃度方式から総量規制への移行について触れていますが、この計画案の中ではその移行を検討するというふうになっているわけであります。ある意味ではその点が非常にあいまいでありまして、私は、この際、総量規制を原則とするということを、これは長官の方針の中にもあるわけですが、きちんと明らかにしていただきたい、このように思います。
  83. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これはやはり総量規制をやるという方針のもとに、なかなか技術的に検討を要する問題もあるから、それで、実施という方針のもとに検討しておる、こういうふうに解釈をしていただきたいと思います。
  84. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 計画案によれば、大気汚染あるいは水質汚濁についての目標は示されていますけれども、問題になっている営業用地下水の問題、これについては触れられていないように思いますが、私は、この際一定の期間を示しながら、やはり地下水の扱いについては全面的に禁止をする、こういう態度がいまや必要ではないだろうか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  85. 岡安誠

    岡安政府委員 御質問の基本計画の中には、地下水の問題は触れられておりません。地下水の問題につきましては、御承知のとおりこれが地盤沈下に及ぼす影響非常に重大なものでございますので、現行法でもビル用水法、工業用水法等ございます。ただ、私どもこれだけでは不十分であるというふうに考えておりますので、基本的にはこれらの諸制度の改正を現在考えております。中央公害対策審議会の地盤沈下部会に諮問いたしまして、鋭意検討を進めておるわけでございまして、私どもも近い将来やはり地盤沈下を予防するという観点から、地下水の揚水につきましては、厳重な規制を行ないたいというふうに考えております。
  86. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これはけさの新聞にも出ているわけですが、日照権問題というのは全国でたいへんな問題になっております。これは東京都の専門委員会の中間報告にもあったわけですが、それは別として、日照権問題というものを国民の憲法二十五条に基づく権利として確認をしていく、こういう立場が主張としてあるわけであります。それにしても政府が日照権保護法などというような、日照権問題について、住民の立場、国民の権利を保護していくというための努力といいましょうか、たとえば諮問機関を設けるというふうな課題について、環境庁長官にぜひ決断をいただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  87. 三木武夫

    ○三木国務大臣 どうも役所というものは縦割りになっておって、日照権の問題というのは建設省が取り扱っておるようですが、私は、やはり環境というものに対しての国民の持っておる権限というものは、やはり強化されておる方向だと思います。日照権の問題もやはりその中の一つだと思います。こういうような日照権の問題というものは、いま岩垂委員一つの基本的権利としていろいろ御指摘になりましたが、そういうふうに日照権の問題というものも、建設省としても取り組まなければならぬ問題であると、環境庁長官としては考えるわけでございます。建設省が来ておればこの問題は委員会において答弁されるような取り扱いをしてもらいたいと思います。
  88. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま住民運動や市民運動で一番大きく問題になっておるのがこの日照権の問題だと思うのです。ところが解決の手続、調整というのが非常にあいまいに処理されています。やはりこの際住民の立場、国民の立場というものを保護する、そういう立場から環境庁長官がぜひひとつ政府全体の姿勢をまとめていく努力をお願いしたい、このように思います。  それから、これも基本計画の問題に若干触れてたいへん恐縮ですが、農林業の環境整備の中で、保安林面積の一割程度の増加指定を行なうというふうに書いてあるのです。私は、この緑地の維持及び拡大の問題については、保安林面積を一割程度ふやしたということではどうもならぬのではないか、やはり基本的に緑地をどう残していくかという考え方が、この際立てられなければいけない、そういうふうに思いますけれども、その点についてはどのようにお考えでございましょうか。
  89. 首尾木二

    首尾木政府委員 保安林の整備目標といたしまして、現在の保安林面積の一割程度の増加指定を行なうという数字があがっておるわけでございますが、これは特に危険点検等に基づきまして、全国的な災害調査といったようなこと、あるいは水利用ということで、水の利用の増加に基づく水源涵養保安林の指定という、そういう措置に基づきまして、五年間に約一割程度を設ける、こういう整備目標として掲げてあるものと承知しております。したがいまして、私どものほうといたしましては、これは当然森林の保全ということにつきまして、保安林がその機能を果たすことは申すまでもないことでございますが、私どもといたしましては、自然公園法あるいは自然環境保全法といったようなものがございますので、そういうものに基づきまして、必要な地域の指定をはかっていくということを考えておるわけでございます。
  90. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは、緑や自然を残すということに関連して一つの考え方を伺いたいわけですが、たとえば民間デベロッパーが得た利益の中からそれを還元させて、自然や緑を残していく、そういうために、そういう利益を還元させるというようなことをぼつぼつ考えてもいいんじゃないだろうか、そういうふうに思いますけれども、その辺についていかがお考えでしょうか。
  91. 三木武夫

    ○三木国務大臣 やはり一つの考え方と思います。緑の保存ということは、これはお互い共通に心がけなければならぬ問題でありますから、実際問題として具体的にそれをどういうふうにするかですけれども、一つの道義的な意味からいっても、そういうデベロッパーが、自分はいろいろ利益も得たわけでしょうから、それをやはり社会に還元するという意味からも、そういうことがなされることは好ましいことだと私は思います。
  92. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どうも時間がなくて申しわけないのですけれども、またあとでしかるべき機会をいただいて質問したいと思うのですが、低公害自動車の問題について少しお伺いしたいと思います。  本田技研のエンジンに次いで、東洋工業のロータリーエンジンがマスキー法の規制法に合格したということは御承知のとおりだと思います。そして、それに関連して、東京都では公用車としてこの自動車の使用に踏み切ったわけでございます。私は、こういう無公害自動車の開発や努力に対して、国がやはりできるだけこれを奨励していくという観点が必要かと思うのですけれども、政府が率先してこの低公害自動車を公用車に採用するという考えはないかどうか、その点をお伺いいたします。
  93. 三木武夫

    ○三木国務大臣 自動車の排気ガスが大気汚染というものの大きな原因になっておることは、もう明らかですから、したがって、メーカーが無公害車をつくろうというために努力をされておるということは、非常に推奨すべきことだと思います。したがって、無公害車がいまでき上がったということに対しては、税制上も優遇処置を講ずべきである。また、政府関係の機関、地方公共団体、こういう政府の影響力のあるような方面に向かっては、大いにこの無公害車の使用をこれから推奨していきたい。環境庁も、これはすぐにみな買いかえろというわけにもいきませんが、今後、無公害車にだんだんとかえていきたいと思っておるぐらいでございます。
  94. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 くどいようですが、長官みずからお乗りになっている車にそういうものが採用されることを、国民はやはり見ていると思います。その点でぜひもう一ぺんそんな決意を伺っておきたいと思います。
  95. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私は、もちろんこれが出まして、だから環境庁ひとつすぐ買ったらどうかということを指示しておいたわけでございますから、そういうことに環境庁がだんだんと無公害車に変わっていく、もちろん私もそれに乗るほうがいいと思います。そういうふうにしたい。しかし一ぺんというわけにはいきませんから、そういう方針でいきたいと思っております。
  96. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは運輸省、先ほどちょっと来ておられたのですけれども帰ったようですが、トヨタや日産などいわゆる大手メーカーが無公害車をどうつくっていくかという努力、あるいはそのメーカーの進捗状況がどうなっているかということを、いまでなくともいいのですけれども、ぜひ公表をしていただきたいと思います。
  97. 景山久

    ○景山説明員 生産の問題に関しまして、当面のあれは、通産省が所管をいたしておりますが、私が承知をいたしております範囲でお答えを申し上げたいと思いますが、実は私ども昨年の夏から光化学スモッグ対策につきましてもっと強化しなければいかぬということで、先生御承知のように、四十八年規制ということを実施しているわけでございます。その段階におきまして、各社の技術開発状況を調べたわけでございますが、なべて申しますと、どこの会社が進んでいるあるいはどこの会社がおくれているというようなことはないように感じるわけでございます。ただ、それぞれの時点におきましてやや速度に出入りがございますので、現在のところでは、いま先生お話ございましたように、一、二の会社が、まだ完全に町に供給できるというところまできておりませんけれども、供給に近いところまできているというふうには思っておりますが、全体から見まして、それほどでこぼこはない、こういうふうに見ておる次第でございます。
  98. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう時間ですからあれします。一時から本会議でしょうから、きょうできなかったのですが、光化学スモッグの問題や何かについてまたあらためて……。
  99. 佐野憲治

    佐野委員長 この際、暫時休憩いたします。本会議散会後直ちに再開いたします。    午後零時五十六分休憩      ————◇—————    午後三時十八分開議
  100. 佐野憲治

    佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 私は、この数日来たいへん注目を集めております石油たん白の問題について質問をさせていただきたいと思います。  いままで各省庁が石油たん白の安全性の確保、さらに石油たん白の企業化についてどういう姿勢をとってきたかという問題であります。実は石油たん白と申しましても、今回の場合は特にこれを飼料で使用するのについていかがかという問題が発端になったわけでありますから、その飼料の安全性ということについて探究を進めてまいりますと、行政的には、安全性を確認する調査から始まって、それを企業で製造する過程、さらに販売されるところまで一体どの程度のチェックがなされているか、たいへん問題だと私は実は思うのです。いままで飼料も込めて一連の食品公害にまつわるいろんな事件がございました。たとえば六八年の二月ごろPCBの汚染飼料によって鶏がばたばた死んだというダーク油事件、これは記憶に新しいところであります。しかし御承知のとおりに、原因追及がおくれましたために、これに汚染をされた鶏が市場に出回って、知らない間にこれを食用として食べたという人たちがちまたにたくさんあったわけです。追い打ちをかけるように、御承知のようにPCBの問題、これはもうすでに六八年の二月にダーク油事件が起こったわけでありますから、PCBについては、それなりにこれに対する再調査なり、あるいは製造の過程におけるチェックなり、販売に対しての規制なり、これをすべきであったやに思います。しかし、その辺がなおかつ措置として講じられてなかったことのために、PCBのカネミ油症の事件等々について深く論及するまでもなく事件が引き起こされているわけでありまして、本来、この石油たん白の安全性について問題にしていかなければならなかった厚生省の姿勢というものが、あらためて今回問い直されるのも、こういう由来があったからこそ、これに対しては非常に注目を集めるということになっているということをまず再確認していただきたいと思うのです。  ところで、今回の石油たん白の安全性について、厚生省自体が乗り出さなければならなかった背景というのは、公害に対して世論がだんだんわき起こってまいりまして、七〇年の一月に食品衛生調査会の中に石油たん白特別部会というものが設けられて、事が始まっているわけでありますが、特に今回、この一週間来国会の論議の爼上にのぼって、石油たん白を飼料として使うことが適当でないという風潮が強くなってきている発端は、御承知のとおりに、四十七年の十二月十五日の食品衛生調査会の意見発表に基づくものであります。  ところで、お尋ねをしたいわけですけれども、この厚生省の中にある食品衛生調査会の中で、石油たん白の飼料についての調査をおやりになり、そして意見を発表されたわけでありますから、世上、単純素朴に考えていきますと、飼料として問題にされる以前に、やはりこれが家畜を通じて人体に入ってくるわけですから、食品として取り扱われているなというふうに読んでいる人が大半だったと私は思うのです。ところが・最近、厚生大臣の見解は、二月に入りましてからだんだん変わってまいっておりまして、石油たん白は飼料だから、厚生省が製造を禁止することはできないとか、あるいは試作品が出てきた段階で、あらためてきびしく安全性をチェックして、疑わしいものについては製造させないようにするとか、飼料については食品衛生法の対象ではないから製造禁止できないというような解釈があるけれども、生物に濃縮する形で食品となるものをチェックするという立法措置が必要かどうかを検討するとか、いろいろな見解が披瀝されているわけなんです。どうもはっきりしない。一言でいって、現在厚生省としては、このような問題を食品衛生法の対象として考えていらっしゃるかどうか、その辺をここでいまはっきりとさせていただきたいと思います。
  102. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 先ほど土井先生の御質問の中で、大臣がいろいろ見解が変わってきているではないか、こういう御指摘があったわけでありますけれども、もちろん厚生省の立場としては、法律のもとに公の仕事をする行政当局でありますから、当然法律的な適用の範囲内でものごとを処していかなければならない。ただ私は、しかし厚生行政の中に含まれている多くの問題というものは、率直に申し上げて、討論とか議論の中だけで解決できる問題というものはむしろきわめて少ないのではないか。お互いがやはり、国民の皆さんの命と健康を守る、生活を守るためにはどうすればいいかという形の中で歩み寄って問題に対処していかなければならない。  そういう意味で厚生大臣が、今度の飼料に関しては、法律的にはこれは厚生省が現状においてはチェックでき得ないというワクの中で、しかし国民の皆さんの命と健康を守るためにどうすべきかという一つの過程の中で、いろいろ行政当局にも指示をされ、また大臣としての政治的な判断にも立たれた、こういうことでございまして、特に今回の石油たん白の問題につきましても、もともとはといえば、これが飼料として研究をされておるという段階において、食品衛生調査会のほうで、この問題については十分チェックする必要があるということで調査を始めたのがこのきっかけでございますので、厚生省あるいは食品衛生調査会が、この石油たん白の問題も含めて、国民の皆さんの健康の問題に対して決してないがしろにしておるというわけではない。特に大臣も、この石油たん白の問題の過程におきまして、飼料も含めた厚生省のチェックが十分できるような法的措置を早急に検討しろということで環境衛生局長にも指示しておるということは、土井先生も御承知のとおりでございまして、そういう前向きな姿勢でこういった問題に対して取り組んでいきたい、こういうことを厚生省としては考えておるわけであります。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 一言にしていえば、それじゃいまの次官の御見解からすると、食品衛生法の対象にならずということになるわけですか。
  104. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 食品衛生法の対象はあくまでも食品に限るわけでありますから、確かに飼料を食べた豚なり鶏なりが、また人の口に入る、からだに入る。そういう食物連鎖の中で濃縮されたものがどういう人的な害があるかということについて、素朴な心配なり疑問を社会的に生み出すのは当然だと思うのであります。しかし現状においては、そうした衛生化学等に対する認識の問題もあったのでしょうけれども、一応飼料の範囲内までこの権限が及んでおらなかったということは、現在の法律においてはそこまで規制措置が講じられない、こういうことが現状でございます。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 そういうことをおっしゃるであろうと私は考えたものでございますから、初めにたいへん回りくどい、六八年二月当時からの問題も引き合いに出して、起こってしまってからではおそいですよという意味の説明を申し上げたわけであります。  ところで、ちょっと申し上げますけれども、有権解釈というのはまことに御都合主義でございまして、話が横道にそれるようにお思いになるかもしれませんけれども、憲法第九条の変遷なんというものは、全く既成の事実が先行したことに対して、政府の解釈というものは拡大解釈というか、有権解釈ということで拡大解釈というより歪曲解釈でゆがめられていっているわけです。これが、いまの政府の政策そのものによって解釈というものがだんだん姿、形を変えていくといういい例示にいつも引き合いに出されます。  今回この食品衛生法の四条を見ますと、おっしゃるとおり食品そのものが対象になっているわけですけれども、次官の御認識を聞いていると、なるほどそこのところは的確に御認識なさっていると思う。連鎖の結果、いま家畜に使われる飼料というものがやがてわれわれの健康、人体に対してどういう影響を及ぼすかということもやはり考えて話し合いを進めなければならないとおっしゃっています。一たん汚染されてしまった食品に対して、あとで食品衛生法四条で網をかぶせていったのでは、おそらくまたまたPCBとかBHCの二の舞い、三の舞いをやるということであります。厚生省というのは本来国民の命を守る、健康を守るということが至上命題だと私は思うわけですから、いま食品衛生法以外にこの飼料に対して取り扱う法がない、これを確認なさっているのなら、いま緊急を要するこのときに、厚生省としてはよるべき法律がないからひとつこの四条に即応して考えてみようじゃないか。実は食品といっているけれども、食品の中身はこういうふうに考えていかなければならないという態度ぐらいお出しになってもいいんじゃないかと私は思うのでございますけれども、その辺はいかがでございますか。
  106. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 いろいろ世上御批判もございましたけれども、厚生省が特に石油たん白の問題の中で各省あるいは企業ともいろいろ話し合いを進めていく過程においては、法律の適用範囲内あるいは行政のワク、外ということよりも、こういった国民の皆さん方にいろいろ不安を与えておる現状に対して、高度の社会的な判断というものも必要じゃないか。それからまた、時局認識というものもやはり十分理解すべきじゃないかということで、最終的に、とにかく国民の皆さんの健康の問題に関しては、十二分各省あるいは各企業においても、この点をひとつ留意してほしいということの結果が、大手のそうした製造中止というような結論の中に多少とも、いま先生指摘いただいたような点も、厚生省としては姿勢を示したということは言えるのじゃないかというふうに思っております。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 あれは端的に申し上げますと、厚生省の姿勢によって企業のほうが、製造に対して一応見合わせるということになったとは、私は理解いたしておりません。むしろ世論に押されて、これじゃ企業としてはなかなかやりにくいということが端的な理由であって、企業化を一応見合わせようということになったのじゃありませんか。したがいまして、厚生省の側のき然とした態度ということによってなされた現象だとは、私は見ていないわけです。したがいまして、食品衛生法四条に対する厚生省の立場は一体どうなのか、それではこの節やり切れない、こういうことで、こういう問題に対してはあと厚生省として取り扱いをやりますという態度表明というものがはっきりしなければ、これは困ると思うのですよ。いまおっしゃったような意味というものは、私は理解できないわけです。
  108. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 この石油たん白を研究開発されている企業が製造を中止したということは、これは鶏が先か卵が先か、どちらがその会社の気持ちを動かしたかということについては、いま先生おっしゃったように、大きな国民的な不安というものが企業をして社会的使命の立場から、責任の立場から今回の製造を中止したということになったと思うのであります。しかし厚生省もこれに対して全く手をこまねいて、ただただこの判断を延ばしておったということではなく、やはり厚生省の現状の行政のでき得る範囲内で、いろいろ国民の皆さんの声やあるいは消費者団体の方々のお気持ちも十分お伝えをし、これはあくまで、再三申しておりますように、厚生省としての国民の皆さまの健康というものに対する不安を解消するまでは行政的にも努力をする。特に今回、大臣が再三委員会等でも明快に見解を示しておりますように、今回の食品衛生法の四条の適用という問題について、厚生省がいま一つき然とした態度がとり得ない一つ法律的制約というものがあったわけでありますから、それに対して、飼料に対しても十二分、その食物連鎖の関係から厚生省として堂々と当面の開発あるいは研究材料に対して、十分その指示ができ得るように事務当局がいま法案等の問題において検討しておる、こういうことでございます。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 法案等の検討とおっしゃいますが、それは相も変わらず、こういう石油たん白等々の、いま危険があるかないかということの問題が論議されているような問題に対して、これを正当化する、合法化するための法案であっても困ると私自身は考えるわけですから、特に立法化を進めていらっしゃる法案ということに対しての基本的な姿勢なりお考えなりそれから中身については、この点がポイントと思うから、はずすわけにいかないというところあたりを、少しはっきりさせておいていただきたいと思います。
  110. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 もちろん法律をつくる過程における姿勢というものは、あくまで国民の皆さんのサイドに立ってのことでございますし、その法律がつくられる過程における社会的な状況や背景、国民の皆さんの認識というものが当然生かされなければ新しい法律をつくる意味がないわけでありまして、当然いま先生方が御指摘いただいておるような問題を十分織り込んで、厚生省として国民の皆さんに十分御理解いただける安全を守る法案を検討しておる、こういうことでございます。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 そういう法案を別に御用意なさるなら、ぜひ公害委員会で徹底的に追及する法案として問題にしたいとして私は他日を期したいと思いますけれども、しかし現時点からいうと、厚生省の見解によれば、食品衛生法の対象にならず、しかもこれを取り締まる法律はない、いわば谷間であります。  そこでその谷間を縫ってひとつ問題にしたいことがある。  それは、四十八年の一月三十日付で厚生省の環境衛生局乳肉衛生課長が各都道府県あてに通達を出していらっしゃいます。この中身によりますと「今回安全性確認を行なった三社については、現在次の場所で企業化を計画中であること。」というので、この石油たん白の企業化についてのいろいろな御指示があるわけですが、「企業化は昭和四十九年の予定である。」というところから始まりまして、今回問題になった二社の名前がここに明記してあるわけです。一つは言うまでもなく鐘淵化学の兵庫県の高砂市にある予定地ですね。それからもう一つは大日本インキ化学工業株式会社、この二社とも新聞の報ずるところによればこの企業化を延期したという旨になっておるわけですが、しかしこの鐘淵化学のほうに一月二日付でこの石油たん白についての問いただしをやっている。これは鐘淵の場合は御承知のとおりに商品名はカネプロンということでありますね。これについての問いただしをやって、一月十六日に公式回答が寄せられておるわけです。ところがこれを見ますと、こういう部分があるわけですよ。その辺を間違いなく、これをそのまま読み上げますけれども、こういうことがあるわけですよ。「厖大な資料を厚生省に提出し、部会の専門の先生方の審査を戴き、チェックに三年数ヶ月を要した訳でありまして、その間カネプロン生産時に用いる酵母菌をも実際に先生方にチェックして戴き、その結果、昨年十二月十五日厚生省の食品衛生調査会の正式認可が降りた次第です。  この結果、私共はカネプロンの安全性に関しましては一〇〇%の自信をもった次第です。過去の食・飼料に於てこれ大幅広く、奥深く検査されたものはありません。」とたいへん自信を持ってあの十二月十五日の問題の食品衛生調査会の意見を正式認可というふうに公表しておるわけです。したがいまして、いま、先ほどから尋ねたとおりに法律の規制では谷間でしょう。世論がやかましいから、企業のメンツもある、したがって、延期を一応はしますということですが、この認識で厚生省の食品衛生調査会のあの意見は生きておりますよ。しかもあの中身は正式認可でありますよと考えられていたらたまったものではないと思うのですよ。いつ何どきでもこれは企業において再開をしようとしたらできるのだ。いつ何どきでも生産を開始しようとしたらできるのだということだと思うのです。したがいまして、厚生省とされては、この食品衛生調査会のあの意見に対して、あれを白紙撤回ということになさるか、それとももう一度ないものとして出直しますということを言われるか、それともあれは一応研究段階でほごにしたいというふうに思われるか、その辺の意見というものをはっきり聞かしていただきたいわけであります。
  112. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 先ほど食品衛生法の改正等の問題に対して、いままた土井先生からも委員会で十分追及をしたい、こういうことでございましたけれども、冒頭申しましたように、厚生省の仕事やあるいは問題というものは、お互いがひとつ十分御理解をいただいて、少しでも生活環境をよくしていく、こういうことでございますから、いろいろそういう法案等の問題の中においても御理解なり御意見も賜わりたいというふうに思うわけでございます。  そこで、ただいま申しましたように、その二つの代表的な企業は延期ということではなくて、はっきりと今回の石油たん白の製造については中止をするということを両方のトップの方が厚生省の記者クラブを通じて国民の方に明快に見解を発表したわけでありますから、これはもう石油たん白がまた延期された過程で再製造されるということは、現状においてはないと御理解いただいていいのじゃないかと思うわけであります。  しかし、厚生省の食品衛生調査会は、試験段階における一つの安全度については一応合格である、しかし、これを商品化して製造する過程においてはもう一度きびしいチェックをして十分検査をする、こういう二段がまえで十二月のその決定を見たわけでありますから、その文書がどういう形で出されたかわかりませんけれども、私どものほうといたしましては、それがそのまま商品化を認めたというような理解には立っていないわけであります。
  113. 土井たか子

    ○土井委員 企業のほうが製造中止ということをやるのは、これは企業責任の問題です。片や、いま私が次官に質問をさせていただいているのは、政治責任の問題です。企業責任がいま企業の手によって何とかなされようとしているからそれでいいじゃありませんかじゃ、これは困る、政治責任を私は問いただしているわけですからね。したがいまして、これは誤解と言われれば誤解かもしらぬ。しかし、会社のほうは公式な回答書としていま一般に「食品衛生調査会の正式認可が降りた次第です。」とちゃんと文書にしたためて公表されているわけでありますから、そういう認識がある限りは、この認識をはっきりと改めてもらわなければ困るわけですよ。あれは正式認可ではない、そればかりではなく、あの調査会自身はこういうことだったと、また厚生省としてはあの調査会の意見に対して現在こう思う、いまの時点でこれをはっきりさせるというのは、何と言ったって政治責任を果たすということから言えば最小限度のABCだと思うのです。この点に対してまだ何ら手を打たれていないわけでありますが、一体厚生省としてはどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
  114. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 いろいろ、食品衛生調査会のほうの発表が出る段階において、企業から出したデータをもとにしているとか、あるいは癒着しているとかという御批判も実際ございました。しかし、あくまで厚生省といたしましては、企業の利潤追求とか、あるいは生産主義よりもこれは何と言ったって国民の皆さんの生命と健康が第一義にあるわけですから、当然そういう立場に立って専門的な学者の先生方やそれぞれの権威の方に十分御調査いただいて、そして一つ調査会の結論を出したわけであります。  そういう中で、この石油たん白の安全度があいまいなままで、一方においては安全である、また国民の皆さんのほうには、はたして石油たん白がほんとうに食品公害であったんだろうか、あるいは学者の方々が出された一つの、あくまでこれは試験段階における結論でありますけれども、安全度というものの確認はそのまま生きておるんだろうかというような一つの問題点を残したまま企業が製造を中止したということに対しては、やはり厚生省としても一つの見解を持たなければならないのは当然でありますし、国民の皆さま方に対する政治的な説明もいたさなければならないのは当然でございます。したがって、そういう意味においては、私どもは、食品衛生調査会の一つの結論はいまもっても尊重はしておるということは、この際はっきり申し上げておかなければならないわけであります。しかし、同時に、消費者の方々を中心とした市民運動、食品調査会の調査そのものに対する一つの批判や不信の声が、たとえば企業側から出されたデータ云々というようなことも含めましてあったのは、現実の問題としてわれわれも理解をしておるわけでありますから、こうした国民の皆さんの直接健康や生命につながる問題を、こうした厚生省の諮問機関である食品衛生調査会というようなところでいろいろ検査あるいは研究をする場合においては、十分国民の皆さん方、消費者の方々の御理解を得られるような形をやはり検討すべきではないかというふうに私自身思っております。
  115. 土井たか子

    ○土井委員 先ほど厚生大臣の見解のところで、石油たん白は飼料だから厚生省が製造を禁止することはできないとかというふうな見解があってみたり、それからさらにはこの食品衛生法の対象ではないので製造を禁止できないというふうな解釈であるというふうにおっしゃっているにもかかわらず、厚生省の食品衛生調査会のこの資料に基づいて十二月十五日のあの意見発表、見解発表がすなわち正式認可だと企業者側が受けとめているというこの現実ですね。これはまことに矛盾しているわけです。この点はやはりはっきりと厚生省としておただしにならなければだめですよということを私はいま申し上げている。したがいまして、どういう姿、形でこの間の矛盾というものを氷解する努力を厚生省としてはおとりになるか、これを私は先ほどからお尋ねしているわけです。
  116. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 先ほど来からお答えさしていただいておりますように、いろいろ厚生大臣の御判断が変わっておるという御指摘ですけれども、これは判断が変わっているということではなくて、できるだけ現行法の中でそうした国民の皆さん方の不安を解消するにはどういう結論の出し方がいいか。たとえばこの石油たん白の問題自身におきましても、もうすでに研究段階から一つの製造商品化の過程において、国民の皆さんの健康を守るという厚生省の立場から、これにちょっと待ってくれということで調査あるいは検討をいたしたという事実は、土井先生も御理解をいただけると思うのであります。したがいまして、この問題が起こる過程において二年なり三年なりというものの調査をいたしたということは、私は、法的な規制措置があるなしにかかわらず、国民の皆さん方の世論と結びつく過程においては、これはもう全部が全部厚生当局のやった一つのこの問題に対する対処のしかたが御批判ばかりではないと思うのですね。しかし、現実において、こうした問題が広く社会的な問題になり、国民の皆さん方の一そうの不安あるいは心配を買ったという時点において、やはり厚生省としては食品衛生法の改正の問題、あるいは調査会そのものが広く国民の方々の理解と認識をいただけるような一つの運営のあり方等について、十二分にさらに一そうこの問題を契機にして検討をし、世論にこたえたい、こういうことでございます。
  117. 土井たか子

    ○土井委員 どうも答弁ズレがあるように私は思うのですがね。端的に言いますとこういうことですよ。先ほどわざわざ私は四十八年一月三十日に厚生省の環境衛生局の乳肉衛生課から各都道府県あてに通達がある。その中身で、はっきり安全性の確認を二社について行なったということが認められているわけですね。そして、しかも次の場所で企業化を計画中であるということで、二社はちゃんと指示をされておりますから、この二社についての問題を私は先ほど来この質問の中で展開をしているわけです。したがいまして、こういう通達について、いま事後措置がなければならないのですよ。これはこのまま生きているわけですからね。安全性を確認したと、生きているわけですから。しかも企業者側は、先ほどの——これは正式の回答書ですよ。その中で、食品衛生調査会の正式認可が十二月十五日におりた次第ですといっているのですから、これについてやはりはっきりさせておいていただかないと、それは政治責任がとれないでしょうと申し上げているのです。企業のほうが生産中止をやったからいいじゃないかというわけじゃありません。
  118. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 ですから、要するに厚生省としては、農林省が一つの許認可の直接官庁ですから、農林省に対して食品衛生調査会の結論を提示したわけですね。企業側に対して厚生省が直接合格点を出しましたよ、こういうような通達というものは、これはもう当然常識として出てないわけです。ただ私は、こういう問題に対して、各省が別にキャッチボールで、そっちの責任だ、あっちの責任だということではなく、こういうような問題が十分事前にチェックされて、そして国民の皆さん方の不安を取り除く、やはり万全の措置は講じなければならない。ことに直接食物と申しますか、いろいろ難病、奇病、新しい科学文明の中で現代人が健康をむしばまれておるという、解明できないようないろいろな病気もたくさんあるわけでありまして、それがどこにつながっているかわからない。少なくとも石油たん白の安全性という問題については、私は科学者ではございませんから、あくまで専門家の方々の一つの権威あるデータなり発表を信ずる以外にないわけでありますけれども、しかしそういう結論は結論としても、やはり国民の皆さん方の一つの不安というものに対しては、当然国としてはこたえていかなければならない。  私は、たいへん話が脱線をして、おしかりになられるかもしれませんけれども、これはやはり石油資源の開発なり、あるいは石油たん白の研究開発というものに対しては、企業のトップの方々は企業利潤あるいは企業の使命というものも含めまして考えているかもしれませんけれども、若い研究者や科学者の方は、それなりの社会的な使命をもってこれらの問題に取り組んでこられたと思うのですね。そういう点においては、この石油たん白の問題に対して、当然今回の結論というものは歓迎するわけでありますけれども、一人の政治家といいますか、代議士の立場に立ったとき、十年、二十年後の将来においてもこういった結論の中で、若い研究者や科学者が挫折感だけで仕事を放棄することなく、いろいろな角度から人類に貢献するような部分もないものだろうかという、この問題に対する一そうの研究開発については努力してもらいたいなあという気持ちは率直にあるわけであります。  しかし、あくまでも国民の皆さん方の健康に対する考えというものは、これは何人といえども一番基本的な問題でありますし、特に厚生省は、そうした新しい科学やあるいは研究がこれからどんどん開発され促進されるわけでありますから、そういった気持ちは気持ちとして私は理解を持っておりますけれども、しかし、厚生省は、やはり国民の皆さんの健康を守るためにはどうすべきかという点については十分事前に、これは少なくとも不安や心配が出てからやるということじゃなくて、これはこういった国会の場やあるいは行政の場において先取りするくらいのつもりで、こういった問題に対する研究もあるいは問題認識も深めていかなければならない、こういう気持ちでおるわけであります。
  119. 土井たか子

    ○土井委員 私は学術研究の論議をやっているわけじゃないのであります。学術研究の研究成果としてはいろんな意見が出てくるでしょう。しかし、それは現実の問題として生かした場合にどういう実績があり、どういう実害があるか、これについてやはり実害があるなら、それをチェックすることを最大限にやるのが政治家のつとめだと思います。特に私は、一政治家として先ほど来聞いているわけじゃなくて、厚生次官という行政面で責任ある立場にある方に質問している。したがいまして、すでに厚生省から出ているこの通達の中身は、研究の問題じゃないですよ。学術研究の問題じゃないです。「今回安全性確認を行なった二社については、」と始まっている。したがって、責任をもって厚生省が一たん安全性確認を行なったというこの現実に対して、いまどういうふうにこの通達に対して態度決定をなさいますかということで聞いているわけです。学術研究の問題じゃありません。
  120. 浦田純一

    ○浦田政府委員 事実関係の御指摘でございますので、政府委員のほうから答えさせていただきます。  ただいま担当の課長にもその辺のところを問いただしましていきさつを聞いているのでございますが、残念ながら、いまその現物そのものは持ち合わしておりません。したがいまして、記憶によりましてお答えいたすことになりますのは恐縮でございますけれども、こういうことでございます。  かねて飼料としての石油たん白を工業化するという問題につきましては、先ほど政務次官からもるる御説明ございましたように、また土井委員の御案内のように、私どもといたしましても非常に問題にしたわけでございまして、当然、担当の各都道府県の衛生主管部局長も非常に大きな関心を持っておったわけでございます。したがいまして、昨年の十二月十五日に食品衛生調査会の見解が示されたその以前に、実は農林省の畜産局長のほうから、飼料としてのいわゆる石油たん白の安全性についての見解を、文書でもって私あてにただしてきておられますので、そういったこともあり、この見解を資料として実は直ちに各都道府県に送達したところでございます。追っかけまして、そのような乳肉衛生課長の見解なるものを示したわけでございますが、また同時に、農林省との間の話もこうなっておりますということも通知しているところでございます。したがいまして、当然各都道府県の衛生主管部局長は、その辺のいきさつを承知しておるわけでございまして、あるいは安全性確認云々といったような誤解を招く表現であったかもしれませんけれども、事実、前後を通じまして、また公式の会合の場でもって、その辺のところも口頭でもって十分に説明してございますので、誤解ないものと思います。  それから企業側が、いかにも正式に厚生省の認可があったごとき文書が出ておるとすれば、これは、私は全くいままで存じませんでしたけれども、それは私どもの一切関知しないところでもございますし、また承服できないところでございます。
  121. 土井たか子

    ○土井委員 前者については、それじゃ申し上げますが、一応こういう書式でもって通達をなすったことを、今度は事情が変更したということによって、口頭で通達をすれば足りるという原則はどこにもありません。一たん書式でもって通達をされたことに対して、後に変更があるならば、同じく書式で通達をやるべきですよ。原則であります。したがって、前半はこれは聞けない。  それから後半については、そういうことを関知しなかった、いま聞いたので、よくそういうことはわからないけれども、もしあったとするならば遺憾だというふうな意見表明がございました。私、ひとつはっきりとこれは調べていただきたいと思うのです。調べていただいて、これに対してはっきり厚生省側は適切な措置を講じていただかなきゃ、私はあとあとこのことが必ず問題になってくると思う。というのは、そもそも食品衛生調査会それ自身の性格も問題になってまいりますけれども、必ず問題になってくると思いますから、ひとついま早急に事実を調べていただいて、それなりの措置を講じていただくようにお願いします。
  122. 浦田純一

    ○浦田政府委員 前段のくだりでございますが、ただいまのこのような状況、決着につきましては、文書でもってあらためて早急に都道府県のほうに通知いたしたいと思います。  それから第二段階のことでございますが、これは決して厚生省逃げるつもりはございませんが、企業側に私どものほうから直接に御通知申し上げているのではないのでございまして、農林省の局長のほうの御照会に対して回答申し上げたのでございますので、その点は誤解ではないかと思います。また、万一そういったような文書が流れておったということについては、私どもとしてはまことに納得しがたいということでございます。
  123. 土井たか子

    ○土井委員 納得しがたいでは済まないと思うのです。やっぱり一応出ちゃっているのですからね。これは早急に事実を調べてくださいませんか。そうして、調べてそれなりに厚生省としてははっきりした態度を表明してくださらなきゃ困ります。まず、それについてお答えいただきましょう。
  124. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 ただいまの書類につきましては、さっそく調べまして、しかるべく責任のある措置を講じたいと思います。
  125. 土井たか子

    ○土井委員 ところで、いまここに私が問題にいたしております文書の中でひっかかるのは、やはり食品衛生調査会の正式認可という部分なんですが、食品衛生調査会、すなわち厚生省ぐらいに考えて、非常にこれを重視しているという向きが企業側にはあるわけですね。しかも、この部門の専門の先生方に審査をしていただいている中には、カネプロン生産時に用いる酵母菌のことも、実際にチェックしていただく資料を現に企業から提供しているということを企業者側がはっきり認めているわけですよ、一つは。そしてさらに、御承知のとおりであります、二十二項目の安全基準というもの、これを企業側にもうすでに食品衛生調査会のほうでは示していらっしゃいますが、しかし二十二項目それ自身の試験データというのは、メーカー自体が行なわれたものによっている。企業側が技術開発の協力を依頼していたところと同一の研究機関でなされたものであります。こういう資料に従っていままで調査会が調査を進められてきたということは、一般の消費者、国民の側から見るととても公正な調査研究というものがあの場所で行なわれるなんという期待を持てないわけですよ。いままで私はしばしば、調査会、審議会という名によるところの政府の諮問機関に対して、これじゃ困る、これじゃ困ると声を大にして言い続けてまいりました。とうとう今回のこの食品衛生調査会そのもののあり方、いままでの運営のしかた、あるいはこれの構成そのものを見た場合に、どうももっともっと黙っておれない気持ちになりまして、ひとつこれは制度的に考え直していただかなければ困るということを声を大にしてまた申し上げたいわけであります。  つまり、第三者機関とおっしゃいますけれども、しかし、いままでの構成なり運営なりを見ていると、とても第三者機関とはいえない。少なくともこれは、事、食品問題、特に最近は食品公害ということに対して消費者側からはいろいろと危ぶまれる問題がたくさんあるときでありますから、少なくとも第三者機関といわれる以上は、これに対してはいろいろな要件が備わっていなければならないと思う。たとえば公開制の問題、いかがでしょう。実は、私はこの食品調査会の調査会資料というのを要求しました。調査会の意見を出されたときの、あの意見資料というのはありますよ。しかし、意見を導き出すところのための基礎資料であります。討議資料であります。これを要求したけれども、一片の紙だに見せてもらえなかったですよ。出すことはできないと言われます。まず、いろいろ公害問題、環境問題、食品なんというのは端的な問題でありますけれども、こういうことについて一般の国民、消費者に対して、第三者機関である、十分に納得していただけるところの研究成果をここに出しましたと言わんがためには、その成果を出すに至るまでの基礎資料というふうなものをまず公開すべきじゃありませんか。こういうものによって調査をやったのですよ、研究を進めたのですよということでなきや、調査結果に対しては納得できないというのはあたりまえの話だと思う。こういう公開制について、いまこの食品衛生会というものは規制によって運営されているのか、あるいはどういうようなことで運営されているのか、その辺からして問いただしたいわけでありますが、一体どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  126. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 今回の石油たん白に関する食品調査会は、現段階における最も科学的な究明を十分はかって、特に調査会のほうからも二十二項目でしたかを出して、それをチェックしている。その上において、実験段階における安全度という一つの結論を出したわけですね。しかし、いま土井先生が御指摘のように、やはり企業サイドから出されたデータを中心に検討しておるじゃないかという点も含めまして、いろいろ調査会そのものに対する御不審もあるようでございます。そこで、当然に調査会の信頼というものが、これから特に食品調査等をする場合においてきわめて大事なことでございますし、それが公開がいいのか悪いのか。たとえば昨年までは業界の代表とか、あるいは消費者の代表というような方々も含めて一つ調査会等があった。しかし、今日において学識経験者だけでやっているわけですね。学識経験者だけがいいのか、あるいは消費者、あるいはたまたまそのものを生産される業界の方も入れたほうがいいのか、いろいろな意見があると思う。特に、学識経験者だけではあるいは国民感情が入らないじゃないかという面もありますし、企業側が入れば当然そういうペースに持っていかれるのじゃないか、いろいろなことを言われるのですね。しかし同時に、厚生省でも、ほかの制度審や審議会もありますけれども、結局各分野の方々が、あるいは各団体の方々が、あるいは各政党の方々が入って構成されておる。そういうように、特に国民の皆さんの命にかかわる問題ですから、その調査会そのものが、国民の方々に、おまえたちにまかせるのだ、あなたたちにまかせれば安心だと言われるような権威あるものにするためには、いろいろくふうもしていかなければならないし、その運営については検討していかなければならない。特に公開という形をとるのか、あるいは委員長が、適時いままでのように調査の過程を公表しながら国民の方々にこたえていく方法がいいのか、そういう点も含めて、いま土井先生の御指摘もっともだと思いますので、いろいろな角度から私は事務当局と相談をしてみたいと思うわけであります。
  127. 土井たか子

    ○土井委員 権威あるものというのは、押えつけで生まれるものじゃ決してないと私は思うのですね。やはりその中で最も命だ、暮らしだ、健康だと言われている対象は国民お一人お一人でありますから、その一人一人に生かされていなきゃ権威あるものには決してならないわけであります。公開主義の原則なんということは、そう考えた場合の要件の第一じゃないでしょうかね。したがって、検討したいとおっしゃる山口政務次官の姿勢はまことにけっこうですが、現実そうでないのですよ。ほんとうにこの調査会自身なんか端的な例であります。  私は国会議員だからというわけじゃないのですけれども、やはり国会議員には国政調査権というのがある。なぜ国政調査権があるかというと、これは国民の代表であるという意味でしょうね、国民の代表であるという立場において国政調査権が発動できるということでしょう。私は決して権威づくで資料要求したわけじゃない。国民のお一人お一人に納得いただけるような中身になっているかどうかということについて、公開制ということがやはり原則だということが念頭にあるわけですから、資料についての要求ということをしたわけであります。その点に対しての拒否なんというふうなことが現実にあったわけでありますから、これなどはもう私は十分身に覚えがあるわけであります。まことにこの資料それ自身についても、それは信憑性を欠くといわれても反論はむずかしかろうと思っておりますが、いかがですか。
  128. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 公開制の問題については、やはり問題が問題ですから、公開制も含めて、十分国民の皆さん方に信頼と安心をしていただけるような方法で運営をしていかなければならない。ですから、石油たん白等の問題に対しましても、どういう調査会の発表やあるいは先生方のお手元に届く資料というものがあったかについては、正直なところ勉強不足でありますけれども、そういう点についても十分資料等でいろんな角度から検討していただけるような公表も指示してみたいというふうに思います。ただ、化学製品等は特許の問題とかいろいろ——専門的な知識が多少欠けておりますけれども、そうした特殊な事情で特に公表でき得ないという問題以外は、これはもうとにかく直接であれ間接であれ、人の口に入り、それが何らかの人体的な影響に関連してくるというテーマですから、これはもう先生の御指摘のような方法も十分採用すべきではないかと私自身は思っておりますし、そういうものを行政当局にも次官の立場からも強く指示をしたい、かように思っております。
  129. 土井たか子

    ○土井委員 いまこういう調査会などの運営は、また構成は規則によっているのですか、それとも政令ですか。
  130. 浦田純一

    ○浦田政府委員 食品衛生調査会の大もとの運営の取りきめは食品衛生法の第二十五条、これは先生御承知のとおりでございます。それで七項目ほど——いろいろときめてございますが、八項目目に「前各項に定めるものの外、食品衛生調査会に関し必要な事項は、省令でこれを定める。」となっておりまして、省令でございます。  さらに細則につきましては、調査会の自治と申しますか調査会の中でもっていろいろと取りきめてやっておられる、こういったのが実態でございます。
  131. 土井たか子

    ○土井委員 今回の問題は単に厚生省だけでなしに、これは調査機関としては、ほかに農林省がありあるいは通産省にもあるわけですね。したがいまして、各省局でこういうふうな事環境問題あるいは公害問題、それから人体の健康に関する問題等々について、少なくともこの調査の中身というふうなものが一般の国民に知れるような状態に持っていく、こういうことをまず基礎的な、基本的な問題として考えていく必要が私はあるんじゃないかと思うのです。いまおっしゃったとおり、それは省令でしょう、具体的な細則をおきめになるのは。しかし、その省令の中身でこれが生かされているかいないかということは私は大きな問題だと思うのです。これは厚生省だけに言う問題じゃなくて、やはり環境保全とか人体の健康についての保全という、一般のこれは公害にかかわる問題でありますから、したがって環境庁長官、先ほどからおすわりでいらっしゃいますので、こういう調査会の行き方、審議会の行き方について、基本的に省令で定める場合に、こういう公開制の原則というものをはっきりすべきではないかという私の考えに対してどういうふうに考えていらっしゃるか、ひとつ鮮明にお答えいただきたいと思います。
  132. 三木武夫

    ○三木国務大臣 食品などに関しては、直ちに人間の生命、健康に影響する。飼料といったところで、その飼料によって乳とか肉とか卵とかいうことでありますから、間接といってもそれはやはり間接ということにあまり大きなウエートを置いて考えることはあやまちになる。やはり結局においては食品に変わってくるわけですからね。そういう意味で、食品衛生調査会の使命というものはたいへんに重いと私は思いますね。  第一番に必要なことは、食品衛生調査会できめられたことは国民が信頼をする。これはそのために、いま山口政務次官も、人選等については再検討をしたいという御発言があったのでありますが、やはり非常に適当なことだと思います。  その信頼が第一番で、第二番目には土井委員も言われるように、国民にその決定ができるだけ周知徹底される、そういうことであることが必要だと思います。  公開については非常に長所もありますけれども、またやはり弊害のある点もありますから、これは調査会のメンバーが国民の信頼を得る人選であること、その決定が国民に周知徹底されること、これはもう今後のこの調査会の運営は、そういうことを頭に入れて運営をすべきものだと私は思っています。
  133. 土井たか子

    ○土井委員 したがって、そういういま長官が言われたような運営方法というのは、やはり省令に従って具体的には考えられていくべき問題——法制度のもとでそれが認められているとか認められていないとかいうことがしょっちゅう問題にされるわけでありますから、まず、認められていなくたって、よいことはどんどんやることが政治の基本姿勢として忘れてはならないことだと思います。きめられたことでもなかなかやらないことがときどきあったりいたしますので、少なくとも省令の中でそういうことをはっきりさせていただくということが当面どうしても必要だと思います。  特にこの節申し上げておきたいのは、これは食品を問題にするのは、やはり消費者的立場というのを忘れてもらっては困るわけですね。したがいまして、消費者の監視下で検査を行なうこと、それから、常に一般の批判というふうなもとで研究というものは進められるということ、これを確保できるような体制をひとつ調査会なり審査会なりの中ではつくっていただくということを、この節強力に申し上げておきたいと思うのですが、いかがでございますか。
  134. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 食品衛生調査会の先生方もこれ消費者でありますし、それぞれ健康の問題に対しては十分考えておられるわけでありますけれども、いま土井先生がおっしゃったように、やはり国民感情を、ぜひ信頼を得られる立場において運営をしていくということについては、特に厚生省、ほかの役所もそうでしょうけれども、厚生省の問題というのは直接国民の生活につながるわけですから、命につながるわけですから、その点、早急に指示して検討したいというふうに申し上げたいと思います。
  135. 土井たか子

    ○土井委員 時間のほうがだんだん迫っておりますので、ひとつ先に進みたいと思うのですが、いまのは確かに省令ではっきりさせていただきたいと思いますよ。そして運営の方法、構成の中身、それを申し上げたとおり、はっきり変えていただきたいと思います。  さて、鐘化のほうが今回製造中止ということに踏み切ったということを新聞紙上どの新聞も報道したわけだし、テレビにもそれが報道されたわけでありますが、しかし、現実にああいう石油たん白というものが企業ベースに乗っかって製造されてから、一体どれだけそれに対しての監視、あるいはそれに対してのチェック、それをきかすことができるかというと、なかなかこれが心もとないわけですね。農林省は飼料でありますから立ち入り検査ということができるという範囲にとどまっている。しかも、これを企業が立地計画をやり、しかもその工場に対していろいろ工事に着工するまでの間には、工場立地の調査等に関する法律に従って、九十日前までに届け出をしさえすればよいことになっているわけですね。しかも、さらにこれは操業を開始しまして事業を行なうその二週間前までに、これもまた飼料の問題でありますから、農林省に対して届け出をすれば済むわけでありますね。したがって、これは届け出をしさえすればそれで事が済んでしまって、そして、いざ操業を開始して、そういう生産を始めてからのチェックもなかなか——これは立ち入り検査はそのつどできるということであるかもしれないけれども、心もとない次第なんです。一体これに対して歯どめというのがどの程度考えられているかということが、実に今度のこの石油たん白、特にこれは飼料に使われるということを契機に、鐘化なんか、あるいは大日本インキなんかを対象にしてみた場合に、はっきり浮き彫りにされてくるわけでありまして、何とかこういう問題については、これは単なる届け出で済ませてよいかどうかという論議も当然私は出てくるだろうと思うのですね。ひとつこういうことについて、関係省庁、通産省そうであります。農林省そうであります。厚生省だってこれに対しては、安全性の確認ということについて一役をになわれたわけでありますから、やはり意見を出していただきたいと思います。どういうふうにお考えでしょうか。
  136. 下浦静平

    ○下浦説明員 お答え申し上げます。  飼料につきましては、先ほど御指摘のとおり、飼料の品質の改善に関する法律というのがございまして、その第三条によりまして、二週間前に製造業者は届け出をする義務がある、こういうことに相なっております。それから、これも先ほど御指摘がありました点でございますが、同じ法律の第二十一条によりまして、やはりこれは立ち入り検査という規定がございます。ただ、この二つをつなぎます間のものといたしまして、飼料の公定規格を定めるということがございまして、これは第三条の二に規定されているものでございますが、その公定規格が定められますと、製造業者といたしましては登録をいたす、もちろんこの登録制度は強制ではございませんが、登録をいたす、こういうことになっております。したがいまして、この公定規格を菌株なりノルマルパラフィンにつきまして、これは成分とあわせまして、きちんと定める、その定められました公定規格によりまして登録をしていただく、こういう段取りがございますわけでございまして、その後におきまして、報告の徴取なり立ち入り検査などを行なってまいる、こういうことに相なるわけでございます。
  137. 土井たか子

    ○土井委員 いまのは農林省でしょう。通産省のほうはいかがですか。
  138. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 飼料として使われます分につきましては、ただいま農林省からお答えがございましたように、飼料の品質改善に関する法律で取り締まりが行なわれるかと存じます。こういった化学品が他の工業用に使われます場合に、それが環境に出まして、環境を汚染して、最後に人の健康を害するおそれがある、こういうものにつきましての取り締まりにつきましては、薬品あるいは食品添加物等はそれぞれ従来規制法がございますけれども、化学品一般につきましては、現在これを取り締まる法律がございません。それで、私どもといたしましては、やはりこの化学品が、PCBの例にございますように、環境に出まして、環境を汚染するおそれがある、こういうものにつきましては、工場で生産され、市販されます前にその安全性を政府確認をいたしまして、安全が確認されなければ市販を許さない、こういった規制が必要ではないかというふうに考えまして、現在特定の化学物質の取り締まり法案というものを検討中でございまして、成案を得次第今国会に提案をいたしたい、かように考えております。
  139. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 食品あるいは飼料の検査、規制の問題に対しましては、先ほど来答弁しておりますように、飼料から食物連鎖で体内に入るという一つの過程を経る、そうした事態を十分理解して、飼料に対してまでも十二分なる調査なりができるように、法的な改正を検討したい。なお、今国会に、これは食品とは関係ございませんけれども、特に厚生省は各省庁とも十分連絡をとりまして、そうした問題に対する行動も起こさなきゃいけないわけでありますけれども、そうした意味から、家庭の中にあるいろいろ電化製品等も含めた、いわゆる健康に影響する問題等についても、十分これらの問題に対してチェックできるような法案を提出したい、こういうことで、厚生省としてもこれから出す予定でありますので、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  140. 土井たか子

    ○土井委員 各省庁にお尋ねしたところでは、法律がない、したがってどうしようもないという御返答でございます。にもかかわらず、どうですか、企業化は昭和四十九年の予定だったわけですよ。やられちゃったらチェックするところはどこにもない、法律がないではこれは済まないのです。安全性の確認がないままで操業に移ってしまったじゃおそいですよ。私はこれは政治無責任だと思いますね。
  141. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 事実問題としては、四十九年度に生産を開始するということは、これはもう完全に中止をされたわけでありますから、政治問題ということがいま指摘がありましたけれども、高度の社会的な判断で、それからまた国民の皆さん方の世論の中で製造が中止をされた。私は法律的にチェックする機能というものを十分整備していかなきゃならないというふうに思いますが、あの段階において一つの結論が出たということの中に、さらにいま早急に、そういった問題を今度は法律的にも十分規制できるように、厚生省としては、先ほど来申し上げておるような法案整備を急いでおる、こういうことでございます。
  142. 土井たか子

    ○土井委員 そもそもの問題は、石油たん白を企業化したいということの申し入れが企業家側からあったからこういう問題になってきたんじゃありませんか。したがって、少なくとも企業のペースに乗っちゃって、製造を始めてからではチェックがきかないということである限りは、やはり企業化するのは見合わせるべきだということが、私は政治責任としてはとるべき最大の問題だと思うのです。それは、安全性の確保ということに対して忘れてはならない非常に大きなポイントです。この物質に対して研究をしてみた調査会の結論はこうでした、ただ言ったのはそれだけだというふうに言われたのじゃ、これは政治責任は通らないと思う。やはりそこで安全性の確認があるならば企業化にすぐ移りますよという意味で、企業者側はこういう問題に対して問いただしをし、申請をやっているわけでありますから、安全性が確認されたらすぐ企業化になるわけです。企業化されてしまってからあとのアフターケアまで知りませんというのでは、私は政治責任は果たされないでしょうということを再三再四言っているわけです。かねてからのいろいろな食品公害の問題は、この点がまことにあと追いあと追いで、企業のあとを追っかけるばかりであったために、現に死人は出るわ、再起不能な人が出るわ、重大な被害が出たあと世論がわき立つということではなかったのでしょうか。
  143. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 そういういま御指摘にございましたような点を、十分行政的使命を果たすという意味において、企業側とも率直に話し合ったわけでございまして、もちろんこうした問題が盛り上がる過程において、消費者グループの方々を中心とした国民的な世論というものが盛り上がり、その中で行政当局がむしろその先行をするくらいの理解と認識というものが、あるいは御批判もございましょうけれども、こういった社会的な問題を十分理解して、法律的にも整備をいたしませんと、どうしても行政当局としてはその範囲内での問題解決ということにまず頭を使う、こういうことになりますので、その点、法案の整備をはかりながら、ただいま土井先生指摘のような問題認識をさらに深めたい、こういうふうに思っております。
  144. 土井たか子

    ○土井委員 まあすべての方が山口次官のようであるならば大きな間違いはなかろうと思いますけれども、そうでないために間違いがいままで起こったわけであります。法律がないことのためにこれに対しての規制はできない、規制はできないけれども、まあ一応安全だからつくってよろしかろうという態度、これが困るのですよ。やはりどこまでいっても安全性というのはここで確保されますよ、ここで確保されますよということを十二分にはっきりさせていかなければならない。その点が、ここはそれを規制する法律がないから規制できない、ここはこれを取り扱う法律がないからチェックができない。いざ起こってしまってから、問題になるであろうことはいまわかっている段階で、そういう法律がないままにこの石油たん白についても企業化を認めるがごとくに安全性の確認を待っているということ自身が、私は問題だと思います。いろいろな調査結果はこうですけれども、こういうことに対して企業化は認めません、なぜかというと、あとあと行政が責任を負ってそれに対してチェックができないからであります、せめてこれぐらいの行政指導があって初めて良識ある行政指導ということじゃないかと思うのです。行政指導というのは常に先取りしなければならない、山口次官のお説ごもっともです。それはそのとおりです。そのとおりでありますがゆえに、いままで申し上げたようなことは、基本的姿勢として忘れられてはならない。ところが、現にそうでなかったわけですよ、この一連の事例から見て。そこで早急にこれから法律を検討しますということでいらっしゃるようでありますが、それについては今国会に提出なさる予定でありますか。
  145. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 厚生大臣も、再三、社会労働委員会はじめ石油たん白の問題に関係する委員会において、飼料に対しても十二分チェックできるような法案を整備したいという見解をはっきりしておりますので、できる限り今国会に提出をしたいというふうに思っております。
  146. 土井たか子

    ○土井委員 行政指導あるいは行政措置というものを先取りしていきたいとおっしゃいますから、ここで一つ問題を提起します。  それは、鐘淵化学は今回国内における生産は一応中止したというふうに考えていいでしょう。ところが、もうすでに昨年イタリアの化学会社リッキー社に、頭金十億円、売り上げの三%を技術料として受け取るという条件で、製造技術を輸出いたしております。少なくとも、国内の生産は見合わせる、中止をするという中身を持ったこの問題について、すでに技術を外国に対して輸出しているということ。  これまた、法律で規制をするところが何もないとおっしゃるに違いないと思うから、だから私は質問しているわけです。行政の先取りが必要だと言われるから言っているわけです。どのようにこれをお考えになり、これに対しての措置をおとりになるか。多くを言う必要はないと私は思います。いかがですか。
  147. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 御指摘のように、鐘淵化学は、昨年の一月にイタリアのリッキー社に石油たん白の製造技術の技術輸出をいたしまして、この契約につきましては、外国為替管理令による許可が要りますので、昨年の一月二十一日付で通産大臣が外国為替管理令に基づきまして許可をいたしております。この管理令が、大体契約に基づきます資金の受領が適正に行なわれるかどうかという外貨面の規制を実は主としてやっておりまして、一回払いであれば、標準決済ということで許可は要らない。ただこれは延べ払い、八回の分割払いになっておりました関係で、申請が出てまいりまして、まあ問題はないということで実は許可になったわけであります。  安全性のチェックをどうしたかという点でございますけれども、この件につきましては、外国にこういうものを出します場合に、大体各国ともそれぞれの国内法に食品衛生法的な法律がございまして、それぞれ各国の法律で規制が行なわれております。したがいまして、技術の輸出につきましては、そういった面の規制はその国の政府の規制に、ゆだねるという考え方をとっておりまして、一応為替管理令に基づきます国際収支の確保という観点からの審査をいたしまして、許可をいたした次第でございます。
  148. 土井たか子

    ○土井委員 その支払い方式がどうのこうの、為替管理令がどうのこうのの問題ではありません。外国から頼まれれば、安全性が確認され得ない、まだ確認されていないものについても、どんなものでも輸出していいということになりはしないかと思うのです、いまの感覚からすれば。それが困るのですよ。現にOECDあたりでは、御承知だと思いますが、日本は公害先進国として有名であります。いま為替管理令のお話をされましたけれども、それから考えても、外国との取引ではまず信用第一じゃありませんか。そういう点から考えていくと、信用度ということを考えても、私は単に支払い方式がどうのこうのの問題では済まないだろうと思うのです。しかも、昨年の一月段階、御承知のとおりにまだ厚生省あたりではこの石油たん白の飼料について安全か安全でないかということに対しての意見が出されていない段階ですよ。そのときに、こういう問題に対しては何ら顧慮せずに認められたという通産省の態度はいかがかと私は思います。これについてはいまどのように責任をお感じになっていらっしゃいますか。
  149. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 イタリアに技術輸出をいたしました分につきましては、ただいまイタリア政府の審査が行なわれておりまして、まだその結論が出ておりませんように聞いております。それで、イタリア政府の安全性に関する審査が終わらない間は、当然イタリアでは着工できないものというふうに考えております。先生御案内のように、イギリスではすでにBP社によりまして石油たん白の企業化が行なわれております。それからフランスにおきましても、同じくイギリスのBP社によります工場が現に稼働をいたしております。それからソビエトにおきましても、相当大きな石油たん白の工場が現に稼働いたしておりまして、それぞれの国の事情によりまして、この石油たん白に対する規制のしかたが違うようでございます。もちろん、これからまた新しい技術輸出の話が出ました場合には、慎重に対処すべきであると考えておりますけれども、やはり相手国政府がそういった審査をいたしておりますので、私どもとしては、相手国政府の意向にむしろゆだねるべきではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  150. 土井たか子

    ○土井委員 商魂たくましいといいますか、それはもうエコノミックアニマルの面目躍如たるものがあると私はただいま拝察するわけでありますが、問題は取引、お互い同士の会社間で考えることでありまして、イタリアはイタリアの事情を考えればいいのです。いま問題になっているのは、鐘淵化学がイタリアにそういうものを輸出してやることが一体どうであろうかという問題を問題にしているわけですから、リッキー社のことを考えているわけじゃない、イタリア政府の出方を考えているわけじゃない。通産省としてはよろしいということをおっしゃった、その鐘淵化学に対して、どのようにお考えになっていらっしゃるかということを私は聞いているわけです。いかがですか。
  151. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 この石油たん白の技術につきましては、御承知のように発展途上国等でもいろいろたん白不足の問題がございまして、非常に注目をされております。国連等からは、日本のこの技術を発展途上国のたん白不足の解消に役立ててもらえないかというような実は勧告も参っておるような事情もございます。この鐘淵化学の出しました技術につきましては、確かにまだ完全に無害であるという点は企業化が日本で行なわれておりませんので、確認はされておりませんけれども、実験室段階でつくりました製品につきましては、食品衛生調査会で一応害はないというところまでの結論が出ておるわけでございまして、そういう段階でございますので、これを技術輸出するということにつきましては、あとは相手国政府の審査にゆだねたい、こういうふうに私どもとしては考えておるところでございます。
  152. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、先ほどからこれはもう繰り返し繰り返し同じことを言うことになるわけでありますが、いまの厚生省の食品衛生調査会そのもののあり方をだから問題にしたわけですよ。ここに出ている資料というのは一体どこから出ているのですか、討議資料というのは……。それに対していま注目を集めているのはなぜですか。一つはそのことを考えていただきたいのです。その調査会から十二月十五日を期して意見が出て、その意見の中身を見るとだいじょうぶらしいからいいじゃないかじゃ、私はこれは困る。国連からそういう勧告があった。しかし、国連加盟国としての責任はやはり自信を持ってこれこそ安全だということですよ。そのことが確認されてないときに勧告だから何でもかんでもきかなきやならないという態度こそ隷従的態度です。これはやはり主権国として独立国としての威信から考えても私はもとると思いますね。そういう辺をどういうふうにお考えですか。
  153. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 イタリアにつきましてはすでにもう技術輸出済みでございますので、すでにその技術も先方に渡っておりますので、これはあとイタリア政府の審査の結果を待ちたいと存じておりますが、今後もし技術輸出の申請がありました場合は慎重に対処してまいりたい、かように考えます。
  154. 佐野憲治

    佐野委員長 土井委員に申し上げますが、時間が参っておりますので、結論をお願いいたします。
  155. 土井たか子

    ○土井委員 それではもう一問。  それでは今後慎重にやってまいりたいというふうに考えているといまお答えでございますが、昨年のイタリアにすでに輸出済みの問題については何ら措置は講じられない。イタリアの政府の出方待ちということでありますが、鐘淵化学に対して何らかの申し入なり、これについての中止というふうなことに対しての行政指導はなさらないかどうか、この辺はっきりひとつお聞かせいただきたいと思います。
  156. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 間もなくイタリア政府の審査が三月中にも結論が出るやにも聞いておりますので、その結論を待ちたいというふうに考えております。
  157. 土井たか子

    ○土井委員 実に通産省の姿勢というのは、どういうふうな立場でものを言われるかというのがよくわかる答弁でありますから、これ以上幾ら繰り返して言ったって、それ以上の返答というのは出てこないだろうと私は思います。時間のほうが先に来ちゃいました。それであと私実はたいへん大きな問題で、今回飼料のための石油たん白の開発ということで問題になってきたわけですから、当面農林省が飼料ということに対してどういうふうに考えていらっしゃるかという基本姿勢を実は伺いたかったわけです。石油たん白の開発を早急にしなければどうにもならないことなのか。しかもそれは企業化ということを早急にやらなければどうにもならないことなのか。あるいは自然から飼料に対して何とか求めていくということに対して努力をどういうふうに払われて、今後それに対する見通しをどういうふうにお持ちになっていらっしゃるか。これはやはり環境保全だとか、食品公害というふうなことを考えていきますと、非常に大きな問題になりますから、農林省がお持ちになっていらっしゃる飼料に対する基本的姿勢というのを実は問いただしたかったわけですが、時間のほうが先に来ちゃいましたので、これは非常に大きな問題ですから、次回に譲ってひとつお伺いしたいと思いますから、農林省のほうとしてもその御用意をお願いします。  それじゃこれで質問を終わります。
  158. 佐野憲治

    佐野委員長 岡本富夫君。
  159. 岡本富夫

    ○岡本委員 三木長官、いま問題になっておるのはこれなんですよ。たん白——あなたは初めてだから、わからなかったらまずいと思いますので、見てもらったらけっこうです。   〔岡本委員、資料を示す〕
  160. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこでこの石油たん白について現物を初めてごらんになったので、おわかりにならなかったと思いますが、今度のこの問題の発端は、御承知のように消費者の皆さんの大きな運動があったからこれが表面化してきたのでありますが、そこで農林省はこれを炭化水素酵母、こういう名前で実は試験をやったり、また飼料化しようとしておられる。炭化水素酵母と言うたら、一般の方にわからないわけですよ。厚生省のほうで石油たん白と、こういうふうにはっきりしたから、これが表面に出てきて、そうして今日国民の皆さんの世論で製造中止。長官御承知のように、PCB問題であんなに騒いだわけでありますが、日本の国に現在約七万トンくらいあるのじゃないか。こういうときにも実はこういったものについてはまず毒性検査をしなければならぬということでずいぶんやかましく言ったわけでありますが、基本的な考え方として、これを含めて今後もやはり製造する前にきちっとした、いやしくもこれは食料になるわけです、ですからきちっとしたところの、何といいますか、チェックといいますか、これは政府の姿勢としてやらなければならぬじゃないかと私は思うのですが、まず基本姿勢を長官からお聞きしたいと思います。
  161. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま私も厚生省の山口政務次官をはじめ答弁を聞いておったわけですが、この食料に対する関係法規というものが、これはやはり再検討して、そうしてこの国会にもできるだけ出したいということを言われておった。飼料という問題もその中に——食品衛生法、その中に入れよという考え方でしょう。そういう確かにやはり立法上のいろいろこういう場合を考えてみると不備な点がありますね。そういうことでやろうと——今回は山口政務次官非常に精力的に大日本インキとか、鐘淵化学、企業者を呼ばれて、そうして国民の一般の不安を解消するために非常に働かれた。私は高く評価をいたしておるわけでございます。しかしやはり一方においてこの食品衛生法の不備な点は土井委員のいろいろな御質問の中にもそういう点が確かにあると思います。これはやはり改正をして、いやしくも食品——飼料もやはりよく似たものですが、結局において人間の生命、健康に関係をするわけですから、こういうものは国民が不安なしに、食品などに対しては国民が不安のないような状態に置くことが必要だと思います。  こういう点で、法の不備は整備するし、あるいは調査会の陣容も整備するし、われわれとしても、これは環境の保全に影響があるわけですから、われわれも特に協力をして、そして飼料とか食品というものに対する国民の不安を解消するために努力をしなければならぬ。これは国民に対しての大きな責任である、こういうふうに考えております。
  162. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま長官から、責任である、今後は責任を感じておる、こういうふうに言っております。  そこで、通産省は、四十四年の秋に石油たん白の調査——軽工業生産技術審議会、そこの石油蛋白部会で、すでに無害である、こういうように結論をつけております。  そこで、この軽工業生産技術審議会の中には疫学的な調査をする、要するに医学者、こういう人たちが入っておったのか、入ってなかったのか、これをひとつお聞きしたい。
  163. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 お答え申し上げます。  通産省でも、この石油たん白が企業化されるということでございましたので、お話のように軽工業生産技術審議会に石油蛋白部会というものを設けまして、四十四年の秋ごろから審議をやったのでございますけれども、まあ私どものほうでございますので、先生指摘のように医者の方とか、そういったメンバーが入っておりません。そのためにあまり突っ込んだ審査が実はできなかったわけでございます。  ちょうどそのころ、厚生省の食品衛生調査会のほうで石油たん白の安全性につきまして諸検討を始める、こういうお話でございましたので、私どもしろうとがこの審議会で検討するよりは、食品衛生調査会におまかせしたほうがよかろうということになりまして、一応三月に審議状況の中間報告というような形で、要するにもうこれ以上審議はやらない、むしろ厚生省の食品衛生調査会に専門的な審査をお願いしようということにいたしまして、この軽工業審議会のほうは審議を中途で打ち切った次第でございます。
  164. 岡本富夫

    ○岡本委員 PCB問題で非常に、こういった新しい化学工業品についてはそういった健康のほうからも調査をしなければならぬ。PCBのJISの規格をつくったときに、そういう人が入ってなかった。だからいまのような問題になったのだということで、当委員会でもやかましく言ったわけですけれども、やはりそれでもまだこの通産省の考え方が改まってない、これはまあ四十四年ですから。これが一点。  それから、今後はどうしてもこういう新しいものをつくるときには、そういった医学者を入れなければいかぬ、これをひとつ提案をしておきます。あまりこれは時間をとってはいけませんから……。  次に農林省。農林省はいま現在どこまでこの試験ができておるのか、ちょっと説明してもらいたい。
  165. 下浦静平

    ○下浦説明員 お答え申し上げます。  農林省におきましての試験研究は、たん白質飼料資源の開発に関する研究という、これは私どものほうの農林水産技術会議という付属機関がございますが、その関係で取り上げております試験でございます。その試験の一環といたしまして、畜産試験場、それから家畜衛生試験場、これが国の試験場でございます。さらに岡山県、鳥取県、岐阜県、埼玉県、広島県、熊本県、この六県の各養鶏試験場の協力を得まして、共同研究ということで行なわれているものでございます。  試験の方法といたしましては、一県当たり対照区百羽、それから試験区が百羽という、百羽ずつの試験をやっております。この試験の内容といたしましては、三十六週齢時、四十四週齢時、五十二週齢時にそれぞれ種卵をとりましてふ化試験を行ないまして、それからさらに五代まで試験を行なうということにいたしております。これは昭和四十五年から始めまして現在継続中でございますが、現在は四代目ということになっております。各代それぞれ無作為抽出をいたしまして、病理組織学的な検査を実施をいたしております。  試験項目といたしましては、育成率、体重、成熟体重、産卵率、飼料摂取量、卵重、生存率、受精率、ふ化率、奇形の有無、各臓器の病変等の有無、それから血液等につきましての試験でございます。  現在までの試験結果、これは三代目まで試験結果が出ておりますが、これは延べ四千三百十八羽につきまして、四万五百九十二個の種卵によりますふ化試験を行ないましたが、その成績は、産卵率、成熟体重、育成率、飼料摂取量、卵重等は対照区と差がないというような結果が出ておりまして、生存率はこの試験区のほうがやや高いという結果が出ております。それから受精率、ふ化率につきましては、統計的な有意差はないという結果でございます。奇形につきましては一羽も出ておりません。  それから初代鶏百二十羽につきまして十九部位の病理組織学的検査を行ないましたが、これにつきましても異常は認められていない。  以上のようなことでございます。
  166. 岡本富夫

    ○岡本委員 農林省はまだあと続いて試験をするというわけですね。  そこで農林省に聞きたいのですが、外国で、たとえば英国あるいはフランス、こういうところで現在使用して、どういうような状態が出ておるのか、これを調査しておりますか。しているか、してないか、どっちか。簡単でいいです。
  167. 下浦静平

    ○下浦説明員 お答え申し上げます。  外国におきまする試験は、主としてBP社、主としてと申しますよりは、BP社の製品につきましてオランダ王室試験場といったところで取り上げて試験をやったという事実がございますが、その一部は私どもの手元にございます。
  168. 岡本富夫

    ○岡本委員 通産省の化学工業局長さんはもうみな外国でやっているんだ、こういう話ですが、量的にこう見ますと、たとえばBP社ですか、これなんかは四千トンでしょう。それからフランスのラベラ工場ですか、これが一万六千トン。わが国のように何万トンも一ぺんにやるなんというプラントはどこも考えていないですよ。そういう調査も考えない。先ほど土井さんにもそういう答弁していましたけれども、いかにも外国でやっているからだいじょうぶだと言わんばかりの答弁をしておったけれども、ぼくはどうもそれは納得できない。しかもこのたん白の中に発ガン物質が入っておるわけですね。ベンッピレンですか、これの許容限度が一PPBですか。こういうように調査会の厚生省のあれを見ますと出ていますけれども、この一PPBというのは非常にはかりにくい。しかも聞いてみると業界からは一〇PPBくらいにしてくれというようなことも言っておるというのですね。したがって、ほんとうにそういった根本的な調査もせずにあなたのほうも許可したこの責任というものはぼくは重大だと思うのです。きのうでしたか、大蔵大臣がそれに対して、まあ遺憾でありますと言っておりましたけれども、遺憾というのはいまごろ言ったっておそいわけです。それから発展途上国に対してもきちっと毒性検査もせずにこういうものをどんどんやると、結局日本はエコノミックアニマルということでまた諸外国の感情も悪くなる。こういうことですから、これは適切な処置をひとつ要求しておきます。どうする、こうするということについてはいまあなたがお答えはできないと思いますから、大臣とよく相談して、長官にも政府全体について、いろいろ広く調査をしてもらいたい。どういう結論を出せるか。いま製造を中止したからそのままでおくというわけにいかないと私は思うのです。  それからもう一つ、厚生省の環境衛生局長は消費者の皆さんが来たときに、絶対無害ですとがんばったという報道が出ているのですけれども、その点ひとつはっきりしておいてもらいたい。環境衛生局長さん、浦田さん、あなただよ。
  169. 浦田純一

    ○浦田政府委員 いわゆる石油たん白ということでございまして、いわゆる石油たん白、これはもっと的確にいえば炭化水素酵母あるいはパラフィン酵母とでもいうべきかもしれません。食品衛生調査会でも「いわゆる石油たん白」というふうに「いわゆる」という字をつけておるのでございますが、これは大体生物学的製品といいますか、決して石油からとりました化学工業、合成品じゃございませんので、私は純粋な石油たん白というものについては無害である、安全であるというふうに確信いたしております。
  170. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたが無害である。それから厚生大臣はこれはストップせにゃいかぬ。どっちがほんとうなんですか、山口さん。
  171. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 いわゆる大日本インキあるいは鐘淵化学のトップの方の厚生省クラブにおける会見においてもこれが有害であるから製造を中止するということではなくて、いわゆる食品衛生調査会の現段階における安全度というものの結論は尊重しているわけです。したがいまして、一応製造を中止したということは、この製品が消費者の方々あるいは国民の方々の心配の中で企業化され、生産化されるということは、やはり高度の社会的判断というものを考えるときにこれは適切でないということで、やはり国民の方々に期待され、歓迎される形の中でこうした新しい製品が開発され、研究されるということが望ましいわけでございますので、先ほど来土井委員とのやりとりの中にもございましたが、法律的規制というようなことでなく、十分話し合いの中で高度の社会的判断の中から今回は製造を中止した、こういうことでございますので、結論は環境衛生局長、厚生大臣の結論、何ら不一致でないというふうに思っております。
  172. 岡本富夫

    ○岡本委員 三木長官、先ほどから土井さんもいろいろ話をしていましたが、こういうようにまだ国民の皆さんの健康というものを将来守らなければならぬというほんとうに反省の上に立っていないわけですよね。まあだいじょうぶだ。先ほど申しましたように発ガンのベンッピレンですか、これは一PPBがまあ限度だ。一〇PPBにしてくれというようなことをメーカーのほうでは言っているわけですよ。これについて食品衛生調査会の先生方のいろいろな調査も企業のデータに基づいてやっているわけですよ。決していま農林省がやっているような実地試験といいますか、そういう実態検査はやっていないですよ。ただ総合して検討しておるだけです。ここでいろいろな面から言ってみましてもまだほかのことをやらなければいけませんので、長官ひとつ、ただみんなが反対してなじまないからやめただけでどうも残念だと、こうがんばるところは私はもっともっと解明しなければならぬのではないかと思うのです。したがって、ほんとうに安全だというのはもっともっと私は調査が必要だと思うのです。ですから、その点を政府のほうで取りまとめてひとつ当委員会へ報告していただく、こういうことにして、林君がぜひひとつ長官に石油たん白の問題でお聞きしたいということですから一言……。
  173. 佐野憲治

    佐野委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。林義郎君。
  174. 林義郎

    ○林(義)委員 岡本委員から向こうの席でやると自民党側ではないかという話でありますから、こちらの席に変わりまして話を申し上げますが、私はいま土井委員、岡本委員お話を非常に興味深く聞いておりました。二つほど私は問題があると思うのです。これはこれからいろいろ実行されるときにぜひ考えてもらいたい問題だと思う。今回の石油たん白の問題にいたしましても、いろいろと政府のほうでも調査をされた、また調査の結果もいろいろある。調査の結果が不十分であるかどうかということは非常にあります。いろいろと公開しなければならないとか、こういった問題がどうだとか、こういった問題があります。しかし私は、基本となるのはやはり人間の生命を守ることだろうと思うのです。これはだれが考えても一番大切なのは、人間の生命を守るというのがわれわれ国会議員にもまた政府にも与えられた一番大きな役割りじゃないかと思います。憲法の中でもはっきり書いてある。何人も侵すことのできない人権であります。そういった場合にいろいろ考えてみますと、私は食品衛生法上の問題である、あるいは農業のほうの飼料取り締まり法であるとかそういった問題があります。そういったいろいろな法律体系がありますし、さらに言うならば、農薬の問題があります。それから、おそらく次に出てくるでありましょうPCBに関係するところの特定化学工業品の取り締まり法というものがあります。こういった問題で新しい物質が出てくれば常にこういった問題が出てくるだろうと私は思うのです。政府のほうでいろいろお調べになる、また業界のほうでも申請者ももちろん調べて出す、引き続き政府のほうでもいろいろ調べますけれども、私は非常に卑近な例を申し上げますけれども、たとえばサリドマイドという問題があります。あのときも薬事法の関係で徹底的に政府のほうでも調べられたのでしょう。そしてよろしいという判断が出た。アメリカでは逆の結論が出た。日本のほうではよろしいということになった、それでやったところがいろいろと問題が出たわけであります。さらにもう少し古くいうならばDDTだとかBHCというものは、かつては非常にいい農薬だということでみんな使った。私自身も頭から振りかけられたこともあります。そんな形で非常にいいものであった。ところがいまの段階になってみればこれは農薬として非常に危険である。むしろ残留農薬とかなんとかいうことで調べていかなければならないという問題になった。私はそのときそのときの段階で人間の知恵、学者の知恵というものも進歩してくると思う。かつてはいいと学者が言ったところのものも、十年たったならばこれは間違いだったということが出てくるのは、これは科学の常識だと私は思うのです。そのときそのときでいいとか悪いとかいったところで、先々になって変わってくるということは当然考えられます。知識が変わってきたからこれで人間の生命をどうしてよろしいというわけにはいかない。人間の生命というものは悠久であります。その人間の生命を救うためには、最終的にはこれは企業責任だと思うのです。企業が全部その責任をとるということをやはりはっきりさせなければならないと思うのです。ところが現在食品衛生法とかいろいろな法律でやっています。サリドマイドの裁判を見てごらんなさい。あの裁判でやはり被害者のほうは立証責任で非常に苦労する。政府のほうでいいと言ったんだから企業のほうは過失はないんだ、こういうふうな話になります。いまの法律体系からするとそうなります。そういった点はやはり企業に責任を転稼するとか、あるいは別の体系をつくって被害者の救済というものを考えていくようなことを考えなければならないと私は思うのです。これは政府だけではない、与野党一致して考えていかなければならない基本的な問題だろうと私は思うのであります。三木長官は大政治家でありますし、非常に尊敬すべき大先輩でありますから、三木長官と政務次官の先生の御見解を、政治家としての御見解をこの際承っておきたいと思います。
  175. 三木武夫

    ○三木国務大臣 林委員の御指摘のように、やはり企業家の責任というのはたいへん重いと思います。ただ利潤追求ということだけではいけない。社会的な責任というものも企業側は持っておるということでありますから、いろいろな新しい化学的な物質、こういうものを製造する場合には、もう非常に念には念を入れて、そして企業側においてもその開発、研究を進めるという態度が必要である。また政府としてもやはりいま言ったような食品衛生法であるとか、通産省が今度新しい化学物質に対する規制の法律をいま検討しておるようでありますが、そのときにもやはり人間の生命、健康を守るということに対しては非常な綿密な一つの規制が必要である。食品というものは国民の信頼が薄くなったらこれはだめですからね。飼料にしてもそうです。そういう点で林委員の御指摘はまことにごもっともであると私は同感をいたすわけでございます。
  176. 山口敏夫

    山口(敏)政府委員 林委員の御指摘、私は御見識のとおりだと思います。ただ、私どもにいたしましてもあるいは委員先生方にいたしましても、政治家としての立場から総体的にどう判断すべきかということになりますと、かなりの弾力的な一つの結論というものを導き出すことはできるわけでありますけれども、やはり公のもとに、行政の名のもとにいろいろと国民の皆さんの信頼や期待にこたえていかなければならない行政の場所におきましては、やはり法律的なある程度権限なり規制的な持置というものが背景にございませんと、十二分に国民の皆さま方の信頼にこたえていくというわけにいかない場面も役所の中にはある。そういう意味において私どもが社会的な状況の変化あるいは現代的な一つの認識の上に立った科学の問題あるいはそうした新製品の開発の問題に対しましてもそうした十分なる研究……(発言する者あり)いま初答弁ですから清粛によろしくお願いいたしたいわけですが、そういうことで、よろしく行政が円滑にいけるように政治的な背景というものを十分法律の中に先生方と御協議の上で考えていかなければならないのじゃないか。そういう意味で大いなる人の命の問題、健康の問題というものに対しましても、ひとつわれわれが十二分に理解をして、これはもう率先してぶつかっていかなければならない問題だというふうに認識しております。
  177. 林義郎

    ○林(義)委員 どうもありがとうございました。これはいろいろと問題があると思います。いずれこの問題はまたその関係法律を出されるでしょう。そのときに私は議論したいと思います。あとは、岡本先生待っておられますから、岡本先生のほうにバトンタッチをします。
  178. 岡本富夫

    ○岡本委員 きょうは三木長官が長官になられて初めての委員会でありますので、三木長官は最近開発環境保全の調和、こういうようなことをおっしゃって、そして環境庁は各開発立法について協議権を挿入する、こういうように各省庁に要求している、こういうことをお話しされていると思うのですが、これについてお伺いしたいと思うのです。  そこで、どうも開発環境保全の調和、こういうことを聞きますと、ちょうど前の公害対策基本法の中に産業との調和という事項があって、これをわれわれ野党がやかましく言いましてそれを抜いたわけですけれども、どうもそういうような発想のように聞こえてならない。どうも後退したのではないかというように思われるわけでありますが、長官のほんとうの御趣旨をひとつお聞きしたい。
  179. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私は環境保全開発かという二者択一の議論を好まないんですよ。一つだけをとって一つは否定する、そういうものではない。まあ大きく言えば両立さすような一つの英知というものを働かすことが政治の役割りだと私は思っているのですよ。しかしいつも私が言っておることは、どうも最近の開発というものは一ぺん破壊されればなかなか再現できない。環境の価値、これはなかなかGNPの計算に乗らないかもしれないが、この価値というもののウエートを少し軽く見る傾向が今日はある。だからむしろ開発は環境の保全を前提にする、こういう態度をとらなければいかぬ。だからこそ国土開発関係する法案にはすべて環境庁長官の協議権を要求したわけであります。いまでも資料の請求権とか勧告権はあるのですよ。どうもそれだけでは不十分であるということで、私も国土開発に関連する法案があんなにたくさんあるとは予期せなかったわけですが、しかしそれに対して協議あるいは審議会等に対しては審議会のメンバーなりあるいは協議権を規定する、そして環境の保全というものに対してもう少しウエートを置かなければいかぬ、こういうことでありますから、私の環境行政に対する態度は、岡本委員御心配なさる必要はないので、少しも後退はありません。そういうことでございます。
  180. 岡本富夫

    ○岡本委員 私、なぜこういうことを言うかといいますと、初代の環境庁長官の大石さんは、このわが国の環境の現状について、もはや失われるべき自然はわが国にはない、こういうような発言をしているわけです。ですから、もう開発するところはないんだというような意見を述べておるわけでありますが、その認識を長官は追認なさいますか。
  181. 三木武夫

    ○三木国務大臣 大石長官の発言は、初代の環境庁長官として、国民に対して自然の保護の重要さを警告する意味の発言であると私は受け取っております。
  182. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、その程度の御認識と、こういうことでございますね。
  183. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それは、もう何にも残る自然はない、全部破壊されたということは、一つ環境保全というものの重要さを強調したことばとして言われたものだと思うのです。私は、環境は破壊されてはおりますが、しかし、なお残さなければならぬ自然の環境というものはあるわけでありますから、全部ないというふうには考えていない。これから守っていかなければならぬ自然の環境というものは残されておる。これをやはり守っていかなければならぬ。また、守るだけでなしに、新しい環境の創造もしていかなければいかぬ。そういう意味で、その精神はわかるが、守るべき自然の環境は全部ないとは私は思っていない。大いに守らなければならぬ。創造もしなければならぬ。明治神宮だって五十年前は畑ですからね。環境は保全するばかりでなく、やはり環境の創造ということも保全の大きな仕事の一つだと考えております。
  184. 岡本富夫

    ○岡本委員 環境庁が最初、各開発法の立法について、承認権、要するに環境庁長官の承認がなかったならば開発できない、こういう強い姿勢でもって臨まれた。私はこれを了としていたのです。しかし、姿勢の弱い環境庁長官では話にならぬ。また力のない環境庁長官では話にならぬのですが、少なくとも副総理ですから、私たちは非常に期待しておった。それがいつの間にやら協議権、こういうように後退したように見受けられるのですが、そうではないでしょうか。これをひとつ……。
  185. 三木武夫

    ○三木国務大臣 法律的な用語としては、協議をするということがこういう場合には使われるわけであります。協議といっても、ただ話したということだけではいかないので、同意を必要とするのですから、結果的には、その承認とか同意とかいう目的が達成できるということで、従来こういう法律に使われておる法律用語に従ったわけで、後退を意味するものにあらずとお答えをいたしておきます。
  186. 岡本富夫

    ○岡本委員 ことばじりをとらえておかしいのですけれども、承認権を要求した、こういうふうに私たち了解していたのですが、そうすると、初めから協議権を要求したのですか。こう了解していいわけですね。  アメリカの環境庁なんかの姿を見ますと、あるいは各国の姿を見ますと、環境庁の承認がなければ開発できないというくらいやらなければこの地球は守れないというような相当すごい——すごいというのはおかしいけれども、そのくらいきびしく地球の表面の環境汚染をとらえておるのが現在の国連の姿だと私は思うのです。ましてこの小さな日本列島、ここで御承知のように、いま二億キロリットルくらいの石油がたかれておるわけですが、これから六十年代になると、いまの三倍か四倍、こういうことになってくるわけですからね。そうすると、相当きびしい姿勢でやらなければ、環境庁がほんとうにしっかりしてもらわなければもう人間は住めなくなる。企業は残ったけれども、人間はみな残らなくなる、こういうことになりかねないと思うのですがね。こういう点についてもう一ぺん、ひとつきびしく……。
  187. 三木武夫

    ○三木国務大臣 その点は、私もそう思います。環境庁という役所が持っておる役割りというものはたいへんに重いものがある。したがって、環境庁の機構、これはやはり今後、皆さんの御協力も得て強化していきたいと思っております。しかし、その背景にあるものは、環境保全に対する国民全体の強力な理解また熱意であって、こういうものが環境保全をささえるものである。これは声を大にして言わざるを得ない。しかし、一番行政の責任を負っておるのは環境庁でありますから、これはわれわれとしてほんとうにしっかりしなければいかぬ。そうでないと、これ以上環境の汚染を日本に許しては、これはもう美しい日本ではなくなるわけです。住みよい日本でもなくなるわけですから、岡本委員の御指摘のとおり、環境庁の責任の重大なことはわれわれも十分自覚をいたす次第でございます。
  188. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは事務当局に聞きますけれども、現在、環境庁の協議権は非常に後退したように私は考えておるわけでありますが、下水道整備緊急措置法、廃棄物処理施設整備緊急措置法あるいは国土開発幹線自動車道建設法の改正には、環境庁長官の協議権を入れるということが大体きまった。また国土総合開発法案、これは仮称でしょうが、その中にも入れようということです。あと残っておる工場立地法、港湾法、森林法あるいは電源開発促進法、こういうものの中にもやはり入れなければならぬのではないか、私はこう思うのですが、これについての検討はしているかどうか。
  189. 船後正道

    ○船後政府委員 環境庁に対する協議権につきましては、すでに開発庁設置法附則で措置いたしましたもののほか、先生指摘のように、今国会に提案を予定しております国土総合開発法あるいは工場立地法等をはじめとする諸法案につきまして、それぞれ現在関係省庁と、この環境庁の協議との関係について事務的に折衝を重ねておる段階でございます。
  190. 岡本富夫

    ○岡本委員 事務的に調整をしているという話ですが、私がいま言うたのは、抜けているところの港湾法とか森林法あるいは電源開発促進法、こういう中にもやはり協議権を挿入するのかどうかということを聞いているのですがね。
  191. 船後正道

    ○船後政府委員 私事務的にと申し上げましたのは、それぞれの法文の内容に即しまして判断する必要がございますので、その点を主務省庁の法案作成作業に合わせながら検討しておるわけでございます。なお、先生指摘になりました諸法のうち、たとえば電源開発法、これは現在環境庁長官審議会のメンバーになっておりまして、それを通じまして十分チェックをいたしております。なお、たしか電源法は今国会に改正を予定しておりますか、どうですか、まだこの点は主務省のほうからは聞いておりません。それからまた港湾法その他につきましても、それぞれ必要な個所に必要なる協議権を規定するという方針のもとにただいま内容その他を詰めておるという段階でございます。
  192. 岡本富夫

    ○岡本委員 やるならこれを全部入れて、全部チェックしてやっていただきたい、これを要求しておきます。  そこで、大気汚染防止法をこの前私たち野党がやかましく言いまして、公害国会で改正されたわけでありますが、このときに、それまでは地域指定が入っていたわけですが、この地域指定はなくなって、全国的にこの法律の規制が及ぶようになった、こういうことになったわけですが、なぜその地域指定を削ったのか、これをひとつお聞きしたい。OECDや各国から、日本には大気汚染防止法のかかるところは地域指定があるのだということで、ずいぶんやかましくいわれたことがあると思うのですが、この地域指定をなぜ削ったのか。
  193. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  ちょっと先生の御質問の意味を取り違えてお答えすることになるかもしれませんが、私の理解するところでは、この改正ができる前は、どちらかといいますとよごれた地域だけを対象に処置していく法律体系であったものを、今度それを日本全土に広げるという形で地域指定を取ったわけでございますから、考え方としては日本国じゅうにこの大気汚染防止法の網をかけるという解釈になったと理解しております。
  194. 岡本富夫

    ○岡本委員 ということは、ちょっといま資料を持ってこなかったのですが、全国的にこの大気汚染防止法が全部かかってきた、ということは全国的に汚染がある、こういうことなんですね。そうしなければその法律体系に合わない。こういうことで、著しいところの四日市、あるいはまた川崎、大阪、東京とか、それが全国的になったわけでありますから、全国的に大気汚染防止法を適用しなければならない、こういうような日本の国土の事情になった、こういうことなんですね。
  195. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 よごれるほうからの見方でございませんで、ミニマムをきめてそれを守り通そうということですから、環境基準をきめ、それから地域ごとに排出規制をきめ、それでK値をきめまして、強いところ、弱いところを次々に数字をきめまして、二年に一回それをさらに排出規制を強くしていく、そして健康を守るべき環境基準を維持、達成しようということにしましたわけでございますから、それには予防的措置が入っておると解釈できます。
  196. 岡本富夫

    ○岡本委員 この前私たちは地域指定を削れということをやかましく言ったわけです。ということは、あの地域だけに限られてこの大気汚染防止法が働いておった。そうでないところがやはり相当よごれておるということで、私どもは全国的にこれをかけたらどうだということではずしたと思うのですけれども、そこで、大気汚染防止法がそういう状態で全国的になったわけですから、そうすると大気汚染あるいは水質汚濁によって被害を受けている人たち、こういう人たちも、地域指定というものをのいて、そしてほんとうに公害によって病気になった人、これがきちっとわかる人たちに対してはやはり救済をすべきじゃないかと思うのです。前の大石長官でしたか、たとえ一人でも公害によって被害を受けている人に対しては救済をすべきだ、こういうことを言ったことがあるわけですが、この点についての考え方はいかがですか。
  197. 船後正道

    ○船後政府委員 ただいま大気保全局長のほうから大気汚染防止法の系統における地域の考え方というものを御説明申し上げたわけでございます。先生のただいまの御質問は、健康被害の救済に関する特別措置法、この系統におきましては地域指定という制度があるわけでございます。これは御承知のとおり、この法律が、「相当広範囲にわたる著しい大気の汚染又は水質の汚濁が生じたため、その影響による疾病が多発」しておるというような状態に着目いたしまして、緊急に救済を必要とする被害者の方に医療費をはじめとする給付をするという仕組みになっているわけでございますが、その点につきまして若干理屈じみたことを申し上げますと、特異的疾病といわれております水俣病あるいはイタイイタイ病等につきましては、病気とその原因物質というものとの因果関係が、個々の患者さんにつきまして診断が可能でございます。でございますから、こういう特異的な疾患につきましては、指定地域の制度がございましても、明らかにその人が、水俣湾でございますと、水俣湾で汚染された魚を摂取したことによって水俣病にかかったという事実が明らかになれば、指定地域外でも公害病の指定をするという扱いをいたしております。これに対しまして非特異疾患といわれております大気系の疾患につきましては、何といたしましても慢性呼吸器疾患という疾病とその原因物質といわれております種々の硫黄酸化物あるいは粉じん等との関係が、一対一の対応でもって証明しにくい。したがいまして裁判例等でも、御承知のとおり疫学的な手法を用いまして集団現象としてその疾病の状況をとらえておるわけでございます。こういう見地から、非特異的疾病につきましては、指定地域という制度をはずして公害病の認定ということは、現段階では医学的にほとんど不可能に近い、かように考えております。
  198. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは、医師会の皆さん方に聞いてみますと、大気の状態がどうだ、ここに住んでいて、あるいはまたどこかから来て、それでそこで病気、ぜんそくになったということは、こういうことは大気の汚染にきまっている。そしてこれまたどこかへ転地をするとなおるわけですね。こういうようなはっきり証明された人を一また現在地域指定されておるところの姿を見ますと、道一本隔ててこちらからは指定、尼崎でもそうですが、こっちは違うということで、非常に不公平だ。こういうことをひとつ考えて、もっと地域指定については、いままでは公害基金というものが金のほうが非常に不足したから予算の範囲内ということでしぼっただろうと思うのですが、あれは緊急措置法でしたからね。今度は次に基金をつくって損害賠償も取ろうということになってくるのですから、私は、こういう健康被害の人たちはもっと広く多く救っていくべきである。この救済法についてきょうはやろうと思ったのですが、ちょっと時間がありませんから、この次にやりますから、この点については長官ひとつ検討をさせておいてください。  そこで、私の本論です。  この間長官が予算委員会におきまして、米軍基地の公害問題について立ち入り調査をするということを、前の特別委員長の社会党の田中委員でしたかの質問に答えていらっしゃるのですけれども、はたしてそれがはっきりできるのかどうか。外務省から来てますね。安保条約の地位協定の第七条ですか。これを見ますと、「合衆国軍隊は、日本国政府の各省その他の機関に当該時に適用されている条件よりも不利でない条件で、日本国政府が有し、管理し、又は規制するすべての公益事業及び公共の役務を利用することができ、並びにその利用における優先権を享有するものとする。」というふうに、治外法権になっているわけですよ。ですから、はたしてそこに立ち入って検査ができるかどうか。これについてひとつ外務省の見解をお聞きしたい。
  199. 角谷清

    ○角谷説明員 お答えいたします。  ただいま立ち入り権に関しまして第七条の御指摘がございましたが、第七条は、これはたとえば水道料金であるとか、たとえば電気料金であるとかいうものに関する規定でございまして、立ち入り権とは直接関係ございません。  そこで、先生指摘の、要するに立ち入りして検査ができるかどうかというような問題であろうと存じますけれども、これにつきましては、外国軍隊がその国の承認のもとに駐留しております場合は、一般国際法の原則からいたしまして軍隊が管理権を有しておりまして、これを立ち入り権というような形でこちらが立ち入りをするということは認められておらないところでございます。ただ、しかしながら、米軍なり相手側の同意を得てこれを行なう、つまり同意を得た上で施設なり何なりに入るということ、これはもちろん可能でございます。
  200. 岡本富夫

    ○岡本委員 四十七年の十月十八日、立川基地の重油の流出事故があったわけです。このときに東京都が、何とかひとつ、農作物あるいはその付近に相当公害が起こるのでというわけで立ち入りを申し入れたところが、断わられておる。こういうことを考えますと、はたして長官がおっしゃった米軍基地へ立ち入って調査もできるということが可能なのかどうかということを私は疑問に思うわけですが、これについてひとつお聞きしたいのです。
  201. 三木武夫

    ○三木国務大臣 米軍がいろいろな軍隊としての特権を持っておることは先ほど言ったとおりでありますが、しかしその国の国民の生活、こういうものに対していろいろ影響を与えるような問題に対して、こちらのほうが必要がありと認めて米軍の同意を得れば、これは当然に立ち入って調査をすることが認められると私は信じておるものでございます。現にアメリカに対しても、排水などからくる環境の汚染について、こちらのほうから調査のデータを要求しておるわけであります。これに対して回答もある。そして、どうしても必要なときには、米軍の同意を得て立ち入って調査をすることもあり得ると私は考えております。  ただ、それは権利というもの、立ち入り調査権というもので考えていないが、国民の生活環境を守るということは、これはもう当然にアメリカ軍としても協力すべきものですから、そういうことで同意を得て調査は可能であると私は思っております。
  202. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、私はそう思いますじゃ、ちょっとどうも……。大体、こういった公害問題というのは国よりも地方自治体なんですね、直接担当しておりますのは。  そこで、ひとつ具体的なことをお聞きしたいのですが、私ども公明党で米軍基地の再総点検をやりましたときに、これは沖繩でありますが、沖繩の金武湾のところの陸軍貯油施設、それからキャンプ・マクトリアス、それから普天間の飛行場、それから嘉手納の飛行場、キャンプ・ハンセン、ここで四エチル鉛の入った油が相当流れておる。そして付近が非常に田畑がやられておる。御承知のように四エチル鉛というのは急性の場合は〇・一グラムで致死量に至るわけですが、何と陸軍貯油施設においては三一五OPPM、それから普天間では一九・六PPM、嘉手納では三九一PPM、キャンプ・ハンセンでは一二八PPMというような四エチル鉛のあれが出ているわけですが、これについてどういうような処置をなさいましたか。これは私のほうから、前の小山長官のときに申し入ればしておるわけですが、その後の処置、現地に聞きますと、どうもそのままのようであります。ということは、やはり米軍基地でありますからなかなかうまくいかないという状態ではないか、こういうように思うので、どうも長官のおっしゃったことは私は納得いかないのです。これについてひとつお聞きしたい。
  203. 岡安誠

    岡安政府委員 先般、公明党のほうから御調査の結果につきましての対策の御要望があったわけでございまして、その際の御調査の基地は沖繩におきまして七つ、それから内地におきまして一つというようなことでございました。私ども、これらの汚染状況等につきましてはやはり基地内の状況というものを的確に把握いたしませんと、今後汚染対策を確実に実施するわけにいかないというふうに考えまして、御要望の八つの基地を含めまして、十九の基地につきまして、まず基地内におきます汚染その他の原因と思われます施設の調査データを現在要求をいたしております。そのうちすでに四つばかりにつきましてはデータが来ております。それらを現在検討中でございますが、これらのデータが私どもの手に入り次第、検討いたしまして、必要に応じまして立ち入り調査をいたすということにいたしておりまして、その間の打ち合わせを、外務省を通じまして現在米軍といたしておるというのが現状でございます。
  204. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうもいまの答弁では、長官、お聞きのとおり——これは昨年ですからね、小山長官に申し入れしたのは。それから、米軍のほうにデータを出してくださいと言うているが、データはこっちで出ているわけですよ。もう付近は相当被害がありまして、みんなおそろしがっているわけですよ。米軍の中のことはわかりませんが、これを出してくださいといったところで、なかなか出ないですよ。その間どんどん被害は進行するわけです。この安保条約の二十五条、合同委員会にこれをかけたのですか、どうなんですか。
  205. 角谷清

    ○角谷説明員 ただいま局長のほうからお話のありました十九カ所というものにつきましては、これは特に合同委員会というようなものにはかけてございませんで、通常の外交ベースをもってアメリカ側に申し入れた次第でございます。
  206. 岡本富夫

    ○岡本委員 それでは長官、御承知のように米軍の治外法権ですか、このためにただこれからしていくというだけでなかなか出てこないし、出てきたところで今度はそれを検討して、また外務省に頼んで、安保条約の二十五条に基づいて合同委員会にかけて、それからと、こういうことになるのでしょう。これでは私は、いままで公害調査をずっとやった、あるいはまた被害を見まして、これはどうももう一つはっきりしないと思う。調査を米軍がやるのか、日本側の担当官庁である環境庁がやるのか、この点についてひとつ。
  207. 岡安誠

    岡安政府委員 私どもが立ち入り調査をいたす場合には、環境庁が中心になりまして関係省庁の技術職員の方たちと共同で立ち入り調査をいたしたいというふうに考えまして、現在準備をいたしております。
  208. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間ですからもうあれですが、これはいつごろやりますか。どうもこんな手ぬるいことでは話にならないと私は思うのですよ。
  209. 岡安誠

    岡安政府委員 なるべく早い機会に行ないたいというふうに考えております。
  210. 岡本富夫

    ○岡本委員 なるべく早い機会……。  最後に、長官、こういうようなことです。ですから、お答えいただきましたのでできると思うということでありましたけれども、こんなに手ぬるい……。これではどんどん被害が大きくなっていく。四エチル鉛というものはほんとうにおそろしいものなんです。これをちょっと吸って発狂した人がたくさんおるわけです。沖繩もわが国土です。岩国もありますけれども。岩国もやはり流れているのです。こういう一つ一つわれわれが調査をして初めてわかったということでなくして、やはり環境庁でもっと力を入れて、そしてひとつこの環境問題についてははっきりした態度をとってもらいたい。これをひとつ要求いたしたいと思うのですが、長官の最後の御答弁をひとつ。
  211. 三木武夫

    ○三木国務大臣 地位協定の中にもやはり、合衆国軍隊は公共の安全に妥当な考慮を払って、そしていろいろな施設及び区域内における作業をしなければならないという規定が第三条の第三項にあるわけでございます。当然にそういう点の義務を私は負うておると思う。こういう点から、いまデータを要求をしたのは十三月、昨年の暮れでありますが、これは合同委員会にかける必要はないですよ。このデータをできるだけ督促をして、そしてデータを通じて納得のできない問題については先方の同意を得て立ち入り調査もやりたい、やる、こういう考えでございます。
  212. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、そういう答えが出てくるのであれば、私どものほうからちゃんと、もうこれは日本分析センターのきちんとしたデータを出して、そして環境庁に申し入れをしておるわけです。ですから基地内のいろいろなデータをもらったって、基地内よりも困るのは外へ出た一般の住民の民家の人たちです。ですから基地内のデータより、こっちの被害を受けたほうのデータを調査をするのがあたりまえと違いますか。そして、こんなにあるから、ひとつ施設を改善してもらいたい……。おかしいじゃないですか、それは。私はそういうのも含めてやっていただけるかということでお聞きしたわけです。
  213. 岡安誠

    岡安政府委員 おっしゃるとおり基地の運営に伴います公害というのは、基地周辺公害の影響を受けるわけでございまして、私ども基地周辺の水の汚染状況、その他環境の汚染につきましては調査はいたしております。ただ、問題は、その原因が基地内の何によるのか、またそれについてどういう改善をしてもらう必要があるのかどうかということを私どもは確かめたいということのためにデータを要求をし、そのデータによりまして立ち入り調査をいたしたい。もちろん立ち入り調査の暁には、基地内におきます処理が適当であるかどうか、また基地内についてどういう排出水が出てくるかということも資料を採取をし分析をするつもりでおります。それでやはり発生源のほうから改めるということで、現在基地につきましての環境汚染対策を講じてまいるというような考え方でものごとを処理したいと思っております。
  214. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に、長官、毎日毎日たれ流しているわけですよ。どこからきたかというと、基地のすぐそばで出ているわけですから。ですからもうちょっと——私のほうからちゃんとしたデータもつけておるのですから、いまの水質保全局長ですか、あなたの考え方ではへっぴり腰じゃないですか。第三条にそれがあるならば、もっと強く外務省も一緒になって、ひとつきちっとした態度で臨んでもらいたい。そして一日も早くその付近の人たちが安心をして生活できるように、特に強く要求して終わります。
  215. 佐野憲治

    佐野委員長 小宮武喜君。
  216. 小宮武喜

    ○小宮委員 今月の十二日から来月の二日まで、野生動植物の保護条約を締結するために、ワシントンで国際野生生物会議が開かれておりますが、この保護条約を環境庁としては大体どう評価しておるのか、まず長官からひとつ御答弁を願いたい。
  217. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ただいま御指摘のように、ワシントンで会議が開かれておるわけなんです。この会議の目的は動植物など、それが根絶するようなことを防いで、自然の環境を保護するために国際的に協力しようという趣旨の会議でありますから、その会議のねらいというものに対しては、われわれも賛成である、これに協力をしなければならぬ。ただ、環境庁の立場というものは、そこで一つの規制をしようというものが絶滅のおそれがある、こういうものに対して科学的な調査、科学的な立論、そういう基礎に立ってこの会議に臨みたい。それが一体、そういう動植物が絶滅のおそれがあるかどうか、こういうものを科学的な立場に立って検討をしながら、この会議環境庁は臨みたいというのが基本的な態度でございます。
  218. 小宮武喜

    ○小宮委員 環境庁の態度としてはわかります。しかし、この条約が締結された場合に、わが国に与える影響、これがどのような影響を与えるのか、この点について環境庁からまず御答弁をいただいて、特に必要あれば私、また通産省、水産庁からも、農林省からも答弁を願いたいと思いますが、その点について環境庁としてはどう評価するかという上に立って、わが国に与える影響がどの程度の、どのような影響を与えるのか、ひとつまず長官から御答弁願います。
  219. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この条約がいままだ会議の途中にありますから、どういうふうな決定、合意に達するかということによって影響は違うと思いますが、われわれの立場では、どうしてもこの規制をしなければこれが絶滅するということであれば、どんなに経済的に影響があっても、長くやっていけないですから、なくなるというんだから、そういうものは規制をしなければならないという立場で、それ以外のものについてはいろんな規制の条約もありますし、それはいろんな取り扱いも違ってまいりましょうが、この影響というものについてはどういう条約になるかということと関連があるので、いま、これはほかの役所のほうにおいては、あらゆる場合を検討しておるかもしれませんが、ほかの省から答弁をするほうが適当であると思いますが、われわれのほうとしては、そういう動植物の根絶を防ぐという趣旨で協力をしておるわけでございます。
  220. 小宮武喜

    ○小宮委員 環境庁としては、いま長官が言われるように、資源が絶滅するということについては非常な関心を持っておることは当然であるし、その場合、やはりこの条約に対してある程度協力しなければならないということは、これはもう環境庁の立場としてはよくわかります。しかし、そのことによってどのような影響をわが国が受けるのかという点について、ひとつ通産省とそれから農林省に御答弁を願います。
  221. 鈴木哲太郎

    ○鈴木説明員 通産省の関係では、ただいまのこの条約の付表に載っておりますべっこう用のタイマイ、それからハンドバック用のワニ皮、それから人造真珠用のイシガイという三つの品目に特に関心を持っているわけでございます。ただいまの条約案の原文では、これらの品目が別表第一という、つまり絶滅のおそれがある品目として最もきびしい規制をかけるべきであるという項目に分類されておるわけでございまして、かりにこの会議の結果、原案どおりに条約ができたといたしますと、わが国のこれらの業者、べっこう業界その他、いま申し上げたような業者は、原材料の調達を一〇〇%海外に依存しているわけでございますから、深刻な影響を受けることは必至であって、わが国古来からの伝統工芸は壊滅する、それはまた経済的、社会的に非常に大きな問題だというふうに考えております。したがって、したがってというわけではございませんけれども、まずわがほうとしては、はたしてこれらの種類の動物がほんとうに絶滅のおそれがあるものであるかどうか、これをまず科学的に十分に検討いたしたいというふうに考えております。  現にわれわれ見ますと、たとえばワニにつきましては、アジアの諸国、たとえばシンガポールとかマレーシア、タイなどでは養殖が行なわれているというように聞いておりますし、またカメについてはキューバあたりでは国が保護しております。たとえばキューバではカメの養殖であるとか、それからまたほかの南米の国では、捕獲したのと同じ数の幼いカメを放流しなくてはならぬ、そういう状況になっておりまして、われわれとしては、いまの段階ではこの条約の原案にありますように、これらの動物が絶滅に瀕しているということがいえるのかどうか、必ずしも明らかでないというふうに考えております。それで、これらの動物の生産国とも十分話し合って、原案のように最もきびしい規制に置かれるというような事態を避けたい、そういう方向で極力努力するというつもりでございまして、現にワシントンではそういうふうに努力している最中でございます。
  222. 大場敏彦

    ○大場説明員 水産庁関係のものといたしましては主として鯨類がございますけれども、これに対しますわがほうの考え方といたしましては、先ほど長官からお話がありましたように、水産庁といたしましてもその絶滅に瀕している野生動植物の保護ということには全面的に賛成だ、こういう態度で臨んでおります。ただ一方、鯨をはじめとする魚族その他の水産資源につきましては、別途各国が協同して資源の協同保存をはかるというような国際条約、その他の資源の保存機構が数多くできておりますから、それと矛盾が起きないような形でこの条約が制定されることが望ましい。鯨を例にとりますれば、国際捕鯨条約という条約がございまして、科学的知見に基づきましていろいろな規制もやるし、あるいはまた、特定の鯨種につきましては禁止の措置もとっておりますし、それからまた、無制限な捕獲というものはもちろんいたしておりません。きびしい制限をしておりますから、そういう制限のもとに、資源の保存をはかりつつ、また人類がそれを合理的に利用していくという、そういう合理的な利用と資源の保存との調和を考えながら、別途条約がありますから、そういう条約と矛盾しないような形でこの条約が締結されるように、いま交渉を現地の代表団にお願いしておる状況でございます。  具体的に、かりにいま鯨を例にとりますと、付表に載るようなことがございますれば、国際捕鯨条約ですでに五鯨種禁止をしておりますが、それだけに限定した形で処理したい。そういうことでございますれば、実際的な影響というものは、すでに採捕そのものから禁止されているわけですから、もちろん日本はとっておりませんし、そういう状態は影響はない、こういうぐあいに考えておりますので、要するに、いろいろな国際資源保存機構と、いま制定が議論されております条約との矛盾をなくするような形で対処してまいりたい、かように考えております。
  223. 平松甲子雄

    ○平松説明員 林野庁でございますが、私のほうの所掌物資といたしましては、フタバガキ科という植物学上の名前で提案されておるようでございますが、ラワンがそれに相当すると思います。先ほど環境庁長官からお話がございましたように、絶滅に瀕している野生動植物を保護するということにつきましては、私ども趣旨において全面的に賛成でございますが、ラワンにつきましては、東南アジアに広く分布しておるということでもございますし、また更新も可能であるというふうに考えておりますので、私どもは、この条約の対象として規制をする必要はないんじゃないだろうかと考えまして、目下ワシントンでその線で対処しているところでございます。
  224. 小宮武喜

    ○小宮委員 いま環境庁、通産省、農林省、いろいろ意見を聞いてみまして、やはり必ずしも意見が完全に一致しておるというようには見受けられません。環境庁の立場としては、科学的に検討してどうしてもやはり資源が枯渇するということであれば、この条約には賛成しなければならない、賛成すべきだという考え方。通産省のほうも、どうしても資源がないということであればやむを得ないけれども、こういった事情のもとに、第一表から第二表のほうを主張していく。水産庁のほうも、いろいろと鯨の問題もあるが、大体同じような意見だし、結局林野庁のほうはラワン材については反対していくといういろいろな——そこがそれぞれ各省の立場によってニュアンスが違ってきておるわけですね。  そうしますと、いまこの国際会議に行っておる人は大体外務省、それに通産省、環境庁、農林省でしょう。そういった各省の人が行かれる場合に、たとえば日本側として一つの、こういう態度で臨もうではないかというような何らかの結論を持って行ったのか、それとも各省でそういうような立場立場でものを言っておるのか、その点について何か各省間の調整をやって出席したのか、わが国が会議に臨むにあたっての態度について、そういうような調整をやられたのかどうか、その点どうでしょう、長官。
  225. 三木武夫

    ○三木国務大臣 基本的には、自然環境を保護するために国際協力をしよう、わが国がそういう自然の環境を保護していくということに協力しないという、こういう態度は成り立たないわけです。だから積極的に協力をしよう。ただしかし、今度の条約は、野生の動植物の根絶を防ぎたいということからきておるわけです。そのための商取引を禁止しようというわけですから、そういう角度から、これは利害もいろいろ錯綜すると思いますから、そういう国際野生の動植物の保護ということに対しては前向きの姿勢で協力をしていこう。個々の問題については、それが実際に根絶の危機に瀕しておるかどうかということには、日本側と、またこの条約を締結するための会議に出席をしておる人との間にいろいろな評価の違いがあるかもしれぬ。それはやはりその会議を通じてよく話し合ってみようということで、大体の意思統一はできて行ったわけですよ。しかし、会議に臨んでみないと、各国の根絶というものに対する科学的な根拠というようなものについても、これはなかなかむずかしい問題ですから、そうしたことは、そういうようなことで会議を通じていろいろ各国の意見も徴し、また必要があったら出先においてもいろいろ協議をしながら対処していこうということで出発をしたわけでございます。
  226. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは現在の会議状況はどうでしょうか。それぞれ各省から——外務省からひとつ御答弁願います。
  227. 恩田宗

    ○恩田説明員 会議は二月の十二日から三月の二日までということで、ワシントンの国務省の国際会議場において開催されました。集まった国は六十七カ国でございます。この中にはソ連、東独のように東欧の諸国も入りまして、かなり幅広い国が参加されておると思います。ただ、この会議は昨年のストックホルム会議において採択された勧告に基づいた会議でございまして、そういう意味で非常に幅広いサポートのもとに開催されたものですから、参加国は多いのですが、実際上きわめてこの会議に利害関係のある国というのは必ずしも多くないということで、主として後進国で野生動植物を輸出しておる国、それからそのような野生動植物を輸入しておる国、たとえば輸入しておる国は日本のような国ですが、現在までのところ会期の約半分を過ぎておりますが、委員会を三つつくりまして、動物は動物、植物は植物、それぞれ科学的な知識のある専門家が集まりまして、どのような動植物を対象とすべきかということをやっております。これは着々と進んでおるという状況でございます。  それともう一つ委員会で、基本的にこの条約をどの程度範囲を広げるべきかとか、どのくらいの規制の強さにするべきかとか、そういう基本的な問題がございまして、いままでのところその基本的な問題ということで議論が進んできております。したがって、常識的に考えますと、三月の二日までの間にこの条約を仕上げるということはなかなかむずかしかろうと思いますが、現在私どもがワシントンにいる代表団から得ている情報によりますと、米国はこれに非常に力を入れている。これは米国の主宰の会議でございます。ぜひこの条約を仕上げたいと言っておりますので、たぶん会期の数日の延期は行なわれるかもしれませんが、いまのところは今回の会議において大体条約が仕上がるということになるのではないかと思います。もちろん、いろいろこまかい点でまだ詰めていく問題がありますので、あるいはし残す問題があるかもしれませんが、いまのところは大体仕上がるのじゃないかと考えております。
  228. 小宮武喜

    ○小宮委員 特にいまこの条約が締結された場合にわが国に与える影響というのは、先ほどから各省から答えているようにかなりあるわけですね。ですから、私が聞きたいのは会議全体の全般的な動きじゃなくて、むしろそういった日本に与える影響、たとえばべっこうの原材料であるタイマイとか、あるいは皮革材料になるヘビだとかワニだとか、それからいま言う鯨の問題だとか、あるいはラワンの問題だとか、そういうような問題について三つの委員会をつくってやっておるということを言いましたね。そういった各三つの委員会の動きについて、わかっておればもうちょっと掘り下げて説明してください。
  229. 恩田宗

    ○恩田説明員 お答え申し上げます。  タイマイとかワニについては、ちょうど会議がきのうきょうあたりから始まったところで、詳しい報告は来ておりません。私どものほうからは、担当の国内の官庁の方々からいろいろ情報をいただきまして、日本の事情等を十分説明し得るような統計、情報、その他を送ったところでございます。外務省からも全世界のタイマイ生産国、そういうようなところへも電報を打ちまして、情報を取り寄せ、東京からまとめて送ったところでございます。したがって、タイマイ、ワニについてはいまのところこれからだということでございます。鯨につきましては、先ほど水産庁のほうから申し上げましたようにIWCの原則による規制ということになっておりますので、これは大体実質的には問題なかろうかということだと思います。
  230. 小宮武喜

    ○小宮委員 特にそういった意味で、いまの時点で今後の見通しについていろいろお伺いしても無理ではなかろうかと思いますが、一部では、この条約が原案かあるいは原案に非常に近い線で締結されるのではないかというような話も聞いておるわけですが、いまからまだ十日間ぐらいありますけれども、この条約がどういうふうに審議されるかよくわかりませんけれども、その意味では、この見通しということについても非常にむずかしい問題ではありますけれども、外務省としてはどのように考えておられるのか、その見通しがあれば、ひとつ御参考までにここで御答弁願いたいと思います。
  231. 恩田宗

    ○恩田説明員 お答え申し上げます。  この条約の基本的な内容というのは、絶滅しつつある、絶滅するおそれのある動植物の輸出入及びその海から採取、これを規制しようということで、この基本的な考え方はこれは変わらないと思うのです。変わり得るのはどういう種類のものをこの対象にするか、それから、どういう種類のものをどの程度強い規制にするかという点だろうと思います。したがって、これは非常に各個別の問題になりまして、また各個別にそれぞれ利害関係のある国があって、なかなか錯綜した問題だろうと思います。しかし、この条約の趣旨としている、貿易とか輸出入によって、国際的な取引によって絶滅に瀕しているようなものについて、その取引を規制しよう、この基本的な骨組みは、このままほとんど原案どおりで通るのだろうと思うのです。したがって、日本側として努力すべきことは、世界に向かって、日本が不当に経済的な利益から絶滅しつつある動物をもとろうとしていることでない、合理的な線で日本の経済的な利益にも合うようなものに、各種目の品目をそろえることだと思うのです。したがって、条約そのものとしては、大体原案の骨組みというものが残るのではなかろうかと考えております。
  232. 小宮武喜

    ○小宮委員 絶滅するおそれのあるものは、これは当然のことなんです。しかし、先ほどから科学的な根拠だとか、科学的に調査をするとか言っておりますけれども、実際問題としてこの会議の中でそういった科学的に調査をするとか検討するとかいっても、これは非常にむずかしい問題だと思うのですね。だから、やはりその中で出された資料に基づいていろいろ検討するとか、特にその場合に一番重要な何といいますか影響力を持つのは、やはりそういったものを産出しておる国ですね、それから輸出しておる国、そういうようなところあたりの意向が非常に大きく影響するのではなかろうか。そういうようなところの意向というものは、私どもも非常に関心を持っておるのです。一般的には六十七カ国集まっておるけれども、実際そういった中で、そういった品物を日本に輸出しておる国、それらの意向というものが私ら非常に関心を持つわけですけれども、そういうような点はなかなかわかりにくいでしょうが、わかっておったらちょっと御参考までに教えてもらいたいと思うのです。
  233. 恩田宗

    ○恩田説明員 お答え申し上げます。  特に日本の関心のあるような品目でございますね、カメですとかワニですとか、あるいは木材、そういうものに関連して、それらの野生動植物を輸出しておるような国について、私ども外務省のほうから調査しましたところ、実はなかなかこの条約をよく知ってないのですね。また一つは、これらの輸出している国自体も、やはりこういう動植物を守っていかなければならないという雰囲気が意外に強いということでございますね。したがってタイマイ、カメなどについても非常に多くの国が、結局この条約に入りますと自分の国から輸出できなくなるわけですから、彼らにとっても経済的な損失になるわけなんですが、意外に輸出を規制していこう、適当な程度に規制していこうという雰囲気がある。したがって、主としてこういう後進国でございますが、基本的にはこの条約の趣旨に賛成して乗っていこうというのが大体の雰囲気であろうと考えられます。ほかにいろいろ調べてみないとわからないと思いますが、いままでのところそういうことでございます。
  234. 小宮武喜

    ○小宮委員 まだいろいろ質問がありますけれども、大体半時間ということですから先を急ぎますけれども、特に私、長崎の出身ですが、長崎県ではべっこう細工は長崎県の特産物として、一番今度のこの条約の締結を非常に大きな関心をもって見守っておるわけです。特に長崎のべっこう細工というのは、この業界は全部中小零細企業でありまして、大体百社くらいおるわけです。しかし、こういったべっこうの原材料になるタイマイが結局輸入できないということになると、いまのべっこう業界はもう全滅するということはこれは明らかなんです。その意味で、通産省あたりが絶対禁止という別表第一表から第二表のほうの努力をしておられることについては非常に敬意を表します。しかし、将来この条約はどうなるかわかりませんが、そういうことになった場合は、このべっこう業界はもう全滅することは明らかなんです。したがって、かりに万一そういった最悪の事態になった場合は、こういう中小零細企業のためには、やはり政府としても特に何らかの救済策を講じてもらわなければいかぬということを私、考えておるわけですけれども、そういった意味で、これはまだまだほかに問題があります。たとえばワニとかヘビとか、これらの問題が輸入規制になれば、皮革材料あたりどんどん上がっていくし、たとえば鯨にしても、鯨を加工して鯨油を輸出しておる業界、これについても問題が起きてまいりますし、ヨーロッパのサケが規制されるということは、ひいては日本の北洋のサケがこの次に規制されるようなおそれがないのかどうか。そういうようなことを考えると、今度の保護条約の締結というのは、やはり日本のあらゆる産業に非常に重大な影響を及ぼすことはもう明らかでございます。そういうような意味で、非常に資源が枯渇するようなものであれば、これは当然やむを得ないとしても、実際問題として、それを科学的に検討する、調査するといってもむずかしい問題ですから、そういった意味では環境庁の言い分もよくわかります。われわれもそれに賛成ですが、そういったわが国が保護条約を締結されることによって受ける打撃、影響ということも十分考慮されまして、当初は、この会議に臨まれるにあたって、皆さん方各省が考えておられるような態度で最後まで臨んでいただきたいし、また、もし最悪の場合は、そのような人たちに対して、この業界、特に中小零細企業に対しては、やはり万全の救済策を講じていただきたいということを申し上げたいわけです。いま、まだ来月の二日まで、さらにまた延びるかわからぬというような状況ではありますが、その時点になってこの問題をまた取り上げる気持ちもありますけれども、やはりそういった状態の中で、こっちの実情も十分考えていただいて、そうした救済策の問題あるいはそういった状態を十分考えながら、今度の保護条約の締結にあたっては、十分の努力をしてもらいたいと思います。その点ひとつ各省から一言ずつ御答弁を願います。
  235. 三木武夫

    ○三木国務大臣 われわれは、われわれの立場で最善を尽くす考えでございます。
  236. 鈴木哲太郎

    ○鈴木説明員 通産省といたしましては、条約の基本的な精神というものにはもちろん賛同しているわけでございまして、他方、個別の品目になりますと、業界の実際の利益ということで、困った、事態になる。したがいまして、条約審議におきまして、わがほうの努力が功を奏さずに、原案のままというようなことになった場合には非常なジレンマにおちいるわけで、そのときにどうするか、非常に重要な問題になると思いますけれども、いまの段階では、先ほども外務省から説明ございましたように、動物小委員会でこれから議論するというような段階にありますので、まだ先のことはちょっとお答えするのはむずかしいということで、とにかくわれわれといたしましては、そういう条約の精神、それから業界の利益というようなものを考えまして、業界と一緒に考えていく、いまの段階では、当初の方針どおりがんばるというつもりでおります。
  237. 大場敏彦

    ○大場説明員 水産庁といたしましては、先ほどお答えいたしましたとおり、たとえば鯨については国際捕鯨条約がある、それからいま先生から御指摘のありましたサケ・マスにつきましても、日ソ漁業条約あるいは日米加漁業条約といったれっきとした国際的な資源保存機構というものができているわけでございますから、そこで科学的知見に基づいて資源の保存をしているという現実があるわけですから、それと矛盾しないような形で本条約というものを締結していきたい。もちろん本条約の絶滅に瀕している野生動植物の保存ということについては、水産庁としても、これは海のことに関係がありますから、積極的に賛成して、うしろ向きの態度はもちろんとるつもりはありません。
  238. 平松甲子雄

    ○平松説明員 林野庁といたしましては、先ほどお答え申し上げましたように、この条約の対象に山も含める必要はないのではないかという線で対処してまいりたいというふうに考えます。
  239. 小宮武喜

    ○小宮委員 これで質問を終わります。
  240. 佐野憲治

    佐野委員長 次回は、来たる二十七日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十五分散会