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1973-03-07 第71回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月七日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 久保 三郎君    理事 大竹 太郎君 理事 奧田 敬和君    理事 唐沢俊二郎君 理事 左藤  恵君    理事 中村 弘海君 理事 井上  泉君    理事 太田 一夫君 理事 紺野与次郎君       阿部 喜元君    越智 通雄君       加藤 六月君    片岡 清一君       佐藤 守良君    斉藤滋与史君       野田  毅君    野中 英二君       野坂 浩賢君    横路 孝弘君       平田 藤吉君    沖本 泰幸君       松本 忠助君    渡辺 武三君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 新谷寅三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      坪川 信三君  出席政府委員         総理府総務副長         官      小宮山重四郎君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      須藤 博忠君         警察庁交通局長 片岡  誠君         運輸政務次官  佐藤 文生君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 住田 正二君         運輸省航空局次         長       寺井 久美君         運輸省航空局技         術部長     金井  洋君         海上保安庁次長 紅村  武君         気象庁長官   高橋浩一郎君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         建設政務次官  松野 幸泰君         建設省都市局参         事官      大塩洋一郎君  委員外出席者         運輸省自動車局         業務部長    高橋 寿夫君         運輸省自動車局         整備部長    景山  久君         運輸省航空局技         術部検査課長  川井  力君         建設省道路局次         長       中村  清君         日本国有鉄道常         務理事     内田 隆滋君         日本国有鉄道常         務理事     阪田 貞之君         日本国有鉄道施         設局長     篠原 良男君     ————————————— 二月二十六日  東北縦貫自動車道開通に伴う川口市、鳩ケ谷市  の交通安全対策に関する請願(小川新一郎君紹  介)(第四六二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  交通安全対策に関する件      ————◇—————
  2. 久保三郎

    久保委員長 これより会議を開きます。  交通安全対策に関する件について調査を進めます。  質議の通告がありますから、順次これを許します。唐沢俊二郎
  3. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 交通安全対策に関する関係大臣所信表明に対しまして、若干質問をいたします。  御承知のように、交通事故による死傷者は、昭和四十五年をピークとして減少傾向をたどっております。このことは、われわれ委員としても非常に喜ばしい限りでありまして、まず第一に、交通安全対策に携わっておられる諸官庁や各種民間団体に心から敬意を表するものであります。しかしながら、それでも昨年中の交通事故による死傷者は九十万人をこえている、死者が一万六千名ということであります。このことは人命尊重国民福祉の上からも非常にゆゆしい問題でもあります。さらに、本年に入ってからは、死者がもう二千名をこえておる、若干また増加傾向短期間ではあるけれども見られるわけでありますし、さらに長い目で見ても、道路整備やモータリゼーションの進展、また、各種交通機関の発達等考え合わせますと、交通安全対策はさらに重要性を増すのだ、そして綿密で周到な対策を立てて、さらに対策を強化する必要があるわけであります。鉄道や海上の交通安全に対しましては、いずれ与野党の尊敬すべき議員から御質問があるでありましょうから、本日は、交通事故の大宗をなしております自動車と、被害の大きい航空機について若干お伺いいたしたいと思います。  そこで、まず第一に総務長官にお伺いいたしたいわけでありますが、自動車事故は、非常に件数も多いし、事故態様が非常に複雑多岐にわたっておるわけです。そうして、その態様に合わせてこまかな対策を講ずることが、事故減少させる第一の道であります。たとえば、二輪車事故が減った、これは試験の方法を変えるとか、レルメットの着用を指導したということが如実に効果をあげておるわけであります。ところで、自動車事故態様と申しますのは、いつも同じではなくて、時代とともに変わっておるわけであります。最近、非常に変わっておる。そこで、最近におきます自動車事故状況特徴等についてどのように把握しておられるか伺いたい。
  4. 坪川信三

    坪川国務大臣 唐沢委員、最近の交通事故のまことに憂えるべき現象についてのとうとい御意見を交えての御質疑でございます。  全く御指摘になりましたとおり、交通事故ということは、われわれ国民にとっては最も大切な生命につながる重要な課題であり、私は国民的課題だと考えておる次第でございます。そうした面を考えますと、いまもお話がありましたように、四十五年度をピークといたしまして、最近ここ四十六年、七年と、いささか交通事故の数も減少の道をたどっておることは、不幸中の幸いとしていささか喜んでおるわけでございますが、四十七年度の不幸な交通事故発生件数は、約六十五万件に及んでおるという状況でございます。そのためにとうとき人命を失われた方が一万五千九百十八人に及んでおる。また、負傷者が約八十九万になっておる。こういうようなことでございます。  しかし、最近の交通事故特徴を見ますと、都会にも事故の増発は見受けられますけれども農村部に多くなったということ、その次に特徴として考えなければなりませんことは、昼間より夜間のほうが多くなってまいったということ、それからお気の毒にも、大事な国の将来を背負ってくれなければならないかわいい幼児の方々が不幸な目にあっておられる、こうした現象、それからいわゆる観光県、その観光県に至るまでの通過県、こういうところに非常に多発を見ておるということ、それから農村部に非常に交通事故が顕著になってきたということ、こういうような実態を踏まえまして、総理府といたしましては万全を期したい、こう考えておるのでございますが、御承知のとおりに、文部省文部省で、交通事故防止教育というようなことをやっておられる、労働省労働省として、いわゆる労務行政の立場からの交通問題を考えておられる、警察庁は御承知のとおりに、いわゆる交通事故発生に対する処置を講じておられる、あるいは歩行者天国というような、日曜日など各都市中心部にそうした処置をとっておられますというような状態建設省建設省で、御承知のとおりに、歩道橋あるいは歩道というような処置をとっておられる、こういうような各省庁間にまたがっておる非常に重要な問題でございますので、総理府といたしましては、これらの各省庁との連絡、調整をはかりながら、交通基本法に徹しまして、なるべくこうした不幸な事件の発生のないようにいろいろの措置を指示あるいは講じておるような次第であります。
  5. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 ただいま総務長官の御説明にありましたように、特徴並びに対策はおっしゃるとおりであろうと私も考えております。順次その特徴なり対策について伺いたいと思いますが、その前に、一般論でありますが、最近非常に自家用車による事故が多い。オーナードライバーによる事故が多い。ところで、このオーナードライバーに対する指導というものは世界各国非常に頭を痛めている。ロンドンの警視庁には、ロンドンの地図がありまして赤い旗がたくさん立っている。これは何かといって聞いたら、その地区割りにしてこまかな指導をするんだ、これ以外にないんだというくらい、非常にオーナードライバー指導がむずかしいわけでございますので、これについて伺いたいと思います。  関連いたしまして、免許制度でありますが、一度免許をとると、短期間講習でもって半永久的に保持できるわけでございますが、交通法規時代の流れとともに改正を余儀なくされている。さらに、若いころ免許をとると、そのときは元気であっても、だんだん年をとって動態視力なんか落ちてくる場合がある。これは免許を取り上げることはないでありましょうが、その人に注意くらいしたっていいけれども、それもなかなかできないというような状態です。警察で、交通違反者があります、この違反者講習をしたらどうかというけれども、いまの交通警察の人員では、これもとてもできない。非常にむずかしいことだ。そこで、今度運輸省自動車事故対策センター設置される計画で、これはたいへんけっこうだと思うのですが、この内容には、御承知のように二つあって、被害者保護事故未然に防ぐ方策がある。事故未然に防ぐためには、健康管理指導とか適性診断をやっておられるが、これも大体、主として業務用を対象としておって、一般人が参加することは非常に少ないと、自動車局長も言っているわけです。そこで、そういう一般オーナードライバーが、自動車事故対策センター適性診断を受けるなり、いろいろな指導を進んで受けるような方法をぜひ考えていただきたい。これは、何かメリットを与えなければ、なかなか受けないと思うのですが、そういうオーナードライバーに関する対策を考えておられるようでしたら、それを伺いたいと思います。
  6. 佐藤文生

    佐藤(文)政府委員 オーナードライバーに対する指導ということは、これはたいへん広範囲なものですから、非常にむずかしい面があります。ただしかし、御承知のとおりに、免許が一定の期間を経まして、書きかえのときがあります。そういう免許の書きかえのときに、視力とかあるいはその他全般にわたっての的確なる検査をやるようにすることが、私は大切だと思います。それが往々にして、いままであなたはとっているんだから、免許証だけ差し上げようなんというようなルーズな面が数年前一、二件ありましたので、私はそういう面を的確にやるように要請をいたしております。免許の書きかえの時期における適性検査を的確にやるということ、それからオーナードライバー事故の大部分原因は、やはりスピードというものが非常に大きなシェアを占めておりますので、スピード違反というものについて警察当局と十分な連絡をとって、ハイウエーあるいはその他のスピードを出しそうな可能性のあるところには、先般すでに新聞でもごらんになったと思いますけれどもドライバーにわからないような個所において、スピード違反を的確に現場主義において発見ができるような装置をするとか、そういうことにして、スピード違反に対するところの処置をやっていく、こういったような両面からやることが大切だ、こういうぐあいに考えております。
  7. 片岡誠

    片岡政府委員 オーナードライバー対策というのは、御承知のように、量的に非常にたくさんの数を相手にするだけに、非常にむずかしいと思います。御承知のように、大体、現在二千八百万の免許人口がございます。免許更新にその三分の一が毎年参っておるわけでございます。私どもとしましては、しかし、これは捨ててはおけないので、御承知のように、六十七国会で道交法改正をいたしまして、更新時の講習を義務化するという手を打ちました。昨年四月から、更新時に大体二時間ぐらいの講習をやっております。これは、映画を使いましたり、スライドを使ったりして、視聴覚教育をやっておるようでございます。  それから、交通違反なり事故を繰り返した人に、免許取り消し停止をやる。その停止のときに講習をいたしております。この処分者講習の中身をよりよくしていく。特に、長い間停止するような長期間の停止にかわる講習の場合には、単に長くだけではなくて、実技も見ていく、あるいは適性検査も厳密にやっていくという方向で、現在やり始めております。御承知のように、アメリカでは、デフェンシブドライビング、防衛運転というのが民間運動として盛んに行なわれている。私どももそれを取り入れて、単に更新だとか処分のときの講習だけではなくて、何かもう少し、各地にございます安全協会中心にして、自発的な講習というものを広めたいという考えでおります。とりあえず二輪車についてそれを始めておりますので、この経験を踏んまえて、さらに四輪まで広げてまいりたい、こういうように考えております。
  8. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 いま、佐藤政務次官交通局長さんのお話のようなことだと思うのですが、それをひとつ徹底してますます強化していただきたいと思います。  いま、スピードの問題が出たのですが、これは建設政務次官に伺いたいと思いますが、高速道路で最近交通事故が増加しております。そして高速自動車網は、今後急速に整備されようという時期でありますので、御承知のように、非常にスピードを出す道路でありますので、新たな交通安全対策が必要だと思う。もちろん検討しておられると思いますが、どのような対策を検討し、かつ実施せられておるか、その点について伺いたい。
  9. 松野幸泰

    松野政府委員 高速道路事故率を名神及び東名高速道路について見ますと、一億台キロメートル当たり百二十件でありまして、一般道路の二分の一、三分の一程度であります。また、これを諸外国高速道路と比べても、最も事故の少ないようになっております。しかしながら、高速道路においては、一たび交通事故発生すると大事故につながることとなる可能性が大きいことにかんがみまして、中央分離帯ガードケーブル設置など、すでに建設時に構造面から必要なあらゆる配慮を行なうことはもちろん、橋梁部も、車両の走行安全を確保するため随時補修を行なうなど、細心の措置を講じております。また、道路情報板車間距離確認板等設置や、交通管理員による道路巡回の実施、さらに車両制限令違反車両に対する指導取り締りの強化などによって、高速道路における事故防止につとめております。さらに、自走式標識車を大幅に整備いたしまして、事故処理中における二次的な事故発生防止につとめております。  以上、答弁いたします。
  10. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 では次に、先ほど総務長官指摘されました最近の交通事故の特色につきまして一つ一つ伺いたいと思うのですが、先ほどお話がありましたように、地域別に見ると、交通事故が大府県から近郊県、特に観光県通過県に、大都市から農村に移っておるわけでございます。これは簡単に言えば、オーナードライバーがレジャーのために出かけて、そしてよその地方へ行って事故を起こすということだろうと思うのですが、私がかってに言って恐縮ですが、その原因一つ地理の不案内だと思うのです。全然行ったこともない土地へ行くんですから、これは事故が起きる。道を知らない人がかってに運転するぐらい危険なことはない。これは一般論であります。  次は気象条件があるわけですね。最近起こった事例で、自動車指導員というんですか、テストドライバーが淡雪の上でカーブを切れなくて大事故を起こしたことがある。技術は非常にうまいけれども気象条件を知らなかったわけであります。これに対する対策は私もいろいろ考えたのですが、たとえば気象条件が変わりやすいところとか、積雪寒冷地帯なんかは、きょうは国道何号線はチェーンをつけたらいいとか、国道何号線は非常にスリップするから注意せよとか、こういうような道路情報をもう少しひんぱんに流す以外にないのじゃないかと私は思うのですが、交通局長さんにその点伺いたいと思います。
  11. 片岡誠

    片岡政府委員 御指摘のとおりだと思います。従来、道路情報は、各府県警察本部なりあるいは道路公団、あるいは各地方建設局、そういうところに電話で聞いてきたり、あるいは一部分カーラジオに乗っけておったわけでございますけれども、それでは不徹底だということで、建設省と私どものほうで、御承知のように、日本道路交通情報センターというものをつくりまして、そこへ道路管理者のほうの情報網、それから警察のほうへ入りました情報網を全部集めていく、そしてカーラジオを通じて、あるいは場合によっては一部テレビを通じて、道路に関するあらゆる情報を提供していくという体制をとり始めております。まだ全国的に行き渡っておりませんけれども、主として主要府県からその体制ができ上がってまいっておりますので、そういう点で御期待に沿うように今後とも努力したいと思います。
  12. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 いま気象条件お話がありましたが、次は、道路特殊性もあると思うのです。高速道路につきましては、建設政務次官の言われたように、設計のときから非常に気をつけてやっておられるが、昔からの旧態依然たる道路を拡幅して使っているようなのが非常にたくさんある。地理的条件に非常に制約されて、山岳地帯に行けば急な匂配カーブが避けられないとか、あるいは土地柄、非常にスリップしやすいところもあるわけです。こういうところに、従来の標識以外に、地県から来た人、全然その土地に不案内な人にわかるような新しい標識や何かを検討しておられますか。
  13. 片岡誠

    片岡政府委員 御承知のように、ルートナンバーとか地名とか案内標識道路管理者所管になっております。それから、ここの場所が危険だという警戒標識道路管理者所管、それから交通規制、つまり禁止したり制限したりするのは公安委員会所管というように、一応分担しております。  その案内のほうにつきましてはあとで建設省のほうからお話があろうと思いますけれども、昨年も伊吹山のバス事故が起こりました。それを機会に私どもも反省いたしまして、道路管理者と協力いたしまして、そういう観光道路道路条件が悪かったり気象条件の問題のあるようなところを総点検さすということで、中部管区内、関東管区内は終わっておりますけれども、全般的にそれをやっていこう、そしてそのときに、道路管理者と一緒になって、そういうよその県から来るドライバーに対する情報を十分に整備していくということをやってまいりたいと思っております。
  14. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 同じようなことですが、もう一つ例をあげますと、私は松本市というところに住んでおるのですが、これは古い城下町でありまして、道は徳川時代の道もあるわけで、非常に不規則なわけであります。したがいまして、全国平均で交差点の事故は四割くらいだと思うのですが、その城下町では六割くらいあるということです。特に、最近のように観光ブームでよその県の車が来る。そして町の状況がわからず、出合いがしらに事故を起こす、こういうところもあるわけですね。  そこで、この対策はどういうのがあるかというと、オーバーハングとかセンターポールとかあるいはキャッツアイのような、金のかかるものもかからないものもいろいろあるのですが、こういうものももう一度検討していただきたい。高速自動車道とか都市のりっぱな道ではなくて、最近事故農村地方に移っておりまして、地方道路交通往来が非常にひんぱんになっておるので、そういう地方道路行政といいますか、交通安全対策について、新たな目で検討していかなければならぬと思うのであります。  そこで、ひとつ建設省政務次官に、大きな道路でなくて、そういう農村地方道路に対する交通安全対策を伺いたいと思います。
  15. 松野幸泰

    松野政府委員 御指摘のように、近年交通事故大都市では減少しておるにもかかわらず、地方部、特に観光県通過交通の多い県などで、死者が増加している県があるのは御承知のとおりであります。  このため建設省では、このような交通事故の増加している地域については、特定交通安全施設等整備事業の一そうの推進をはかるほか、昭和四十八年度から発足させることにしておりますところの第七次道路整備五カ年計画におきましても、道路の新設、改築による交通安全対策事業重点を進めてまいりたいと考えております。
  16. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 次は、先ほど御指摘がありました夜間事故であります。夜間事故はたしか四七%だと思うのですが、これは走っている自動車の数からいったら非常に高い数字であります。ですから今後は、昼間よりも夜間対策重点を置いていただきたいわけでありますが、夜間事故は、当然のことながら視界がきかないということです。特に、対向車が来れば目がくらんで、物や人の判別がむずかしいということになっております。私はある交通警察官の方から聞いたのですが、少しでも早く発見すれば交通事故というものは避けられるかあるいは非常に軽くて済む、もう一瞬が問題だということを言われておる。ですから、黒っぽい服を着た御老人交通事故夜間は非常に多くて、逆にミニスカートのお嬢さんが助かった。これは特に色が白かったのでしょうが、そういう事例がある。ですから、早く目につくということ、これが第一。  そこで、これは前から当委員会で問題になっておって、わが党議員も主張しておったのですが、四輪車の場合ですが、ナンバープレート自動車後尾夜光塗料を着色するのはどうか。これはトラックやなんかには簡単につけられるが、りっぱな乗用車にはなかなか夜光塗料を塗るところがないんだというお話でございましたが、やはりその夜光塗料の採用ということを考えなければいけない。特に二輪車につきましては、これは二輪車に乗っている人の生命安全のために、自転車には必ず後尾とか車輪に夜光塗料を着色したらどうか。何か外国でやっておるところもあるというように聞いておるわけであります。さらに、歩行者についてはどうかといいますと、これはまあ老人幼児が多いわけですが、これも夜光塗料を着色した腕章もあるし、それから反射鏡もあるわけですね。こういうものの指導をもっと強化するか——私はここで特にお願いしたいのは、これは補助金でも出して、老人クラブなり学校に、児童に、これはたいした額じゃないと思うので、これを一応渡して、できるだけふだん使用してもらうということになったら、夜間交通事故は非常に避けられると思うのです。だから、四輪車、二輪車歩行者、三つ申しましたけれども、そういう点について、これは要望を兼ねた質問ですが、これは各省にまたがるかもしれませんが、御答弁いただきたいと思います。
  17. 景山久

    景山説明員 ただいま先生からお話のございました、車両夜間におきます後部視認性の向上でございますが、これにつきましては、私どもも実は、道路運送車両保安基準という構造基準を持ち合わせておりまして、年々それを、平均いたしまして年に一回あるいはそれ以上の改正をいたしまして、事故態様の変革に合わせてきているところでございますが、ただいま御指摘のありました件につきましても、実は運輸技術審議会というのがございまして、これで、自動車安全確保のための安全規制長期計画といいまますものにつきまして、先般実は答申をいただいております。この中にも、いま御指摘尾灯あるいは後部反射器制動灯あるいは番号灯、こういったものにつきましての答申をいただいております。つきましては、この番号灯あるいは尾灯制動灯、こういった灯火類、あるいは後部反射器、こういうものにつきまして、近くこの保安基準改正をしようということで、ただいま実は準備を進めてきているところでございます。特に大型トラックなどにつきましては、一般車より大きい後部反射器を備えつけさせようというふうに考えております。  それから、登録番号標板の件でございますが、先生指摘のように、これもひとつもっと視認性を向上させるということで、夜間事故防止にも役立つというふうに考えておりまして、実はちょうどこのものにつきまして、耐久性あるいは反射光度とか、夜間視認性はよくなるはずでございますが、今度は昼間の視認性の問題でございますので、そういったようなことにつきまして、技術的な観点から検討を始めたところ、こういうことでございますので、できるだけ早くこういった措置をいたしたい、こう考えておるところでございます。
  18. 須藤博忠

    ○須藤政府委員 ただいま先生から、夜間事故が多いというようなお話、まことに御指摘のとおりでございまして、私ども、都道府県を通じまして、住民に対する交通安全教育をいろいろ推進しているわけでございますが、特に最近お年寄りの事故も相当多い、しかも、昔と違いまして、核家族化といいますか、お年寄りの方も夜間相当外出する機会が多いというようなことから、やはりできるだけそういうお年寄りの方には、夜間目につくものあるいは自動車のヘッドライトで反射するような反射板というようなものを携帯していただくとか、あるいは自転車の後部には反射テープを張っていただくとかそういう指示を、都道府県あるいは市町村に対していろいろ私ども指導しておりまして、ところによりましては、老人家族にそういう反射板などを地方公共団体で全部配るというようなこともやっておるわけでございます。私どものほうといたしましても、できるだけそういう意味での住民に対する交通安全教育を、さらに推進してまいりたいというふうに考えております。
  19. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 じゃ、須藤室長に重ねて伺いたいのですが、夜間事故防止については、都道府県指導しているわけだけれども府県によって非常にばらつきがあって、非常によくやっているところとやってないところがあるわけですね。それは、総括される総理府でもっと強力な指導をすれば、いま非常に徹底している府県と、ほかの府県がだんだん同じになるわけです。だからこれは、都道府県や何かにまかせることよりも、ぜひひとつ、この点について特段の強力な指導をしていただきたいと思うのですが、最近どんな措置をとっておられますか。
  20. 須藤博忠

    ○須藤政府委員 昭和四十五年に、御承知のように、交通安全対策基本法が制定されまして、この法律によりまして、国及び地方公共団体の交通安全に関する責任というものがはっきり法律的にも規定されるようになったわけでございます。この法律に基づきまして、各都道府県におきましては、知事を会長とする都道府県交通安全対策会議というものが設けられまして、この対策会議で、国の基本計画に即した安全計画をつくることになっております。これはもうすでに、各都道府県全部できております。単に計画をつくったというだけではなくして、実際に効率をあげる、あるいは各般の施策を強力に推進していただくというためには、できるだけ私どものほうも都道府県に出向いたり、あるいはブロック別の都道府県の担当者会議というようなものもやっておりますし、あるいはまた、担当者の研修というものも昨年から始まりまして、各都道府県に対しましては、一律の指導ではいかぬ、やはり事故の多い県は多いなりの、実情をよく分析した上での対策を立てるというような指導を、現在やっておるところでございます。
  21. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 いま伺いましたのは、最近事故が減っているのは、やはり交通安全対策基本法が四十五年に制定されたその効果だと思って、私も、そのとき当委員会に属した一員として、非常に喜んでいるわけです。ですから、今度は、いよいよそれに肉づけして、さらに強力にそれを推進していく時期だ。確かに、いまお話しのように、今後は府県別、ブロック別にさらにこまかな指導をしてもらいたいと思います。  それから、先ほど御指摘のありました、幼児事故が相変わらずふえている。将来のわが国をになうべき幼児が、ほんとうに小さいときに人命を失う、これはたいへんな問題だと思うわけであります。これに対する最近の対策について、まずお伺いをいたしたい。
  22. 須藤博忠

    ○須藤政府委員 御指摘のように、わが国の交通事故特徴は、非常に幼児の犠牲者が多いということでございます。同じ子供の事故と申しましても、学童のほうは、学校において安全教育が相当推進されてまいりまして、学童の事故率というものは、諸外国に比べてもむしろ低いほうであるといっても差しつかえないと思います。ところが、学校へ上がる前の、厳密に言いますと、未就学児童と申しますか、この幼児が非常に高い事故率を示しておりまして、しかも昨年も、事故が減っておるにもかかわらず幼児の占めるパーセンテージというものが減っておらないというような状況でございます。私ども、実はこの問題を一昨年から取り上げまして、中央交通安全対策会議に専門委員という制度がございまして、一昨年から、専門委員にその道の専門家になっていただきまして、いろいろ審議願いまして、昨年の四月に、この専門委員の方から出された幼児交通安全対策というものを、中央交通安全対策会議の決定ということにして、関係省庁及び都道府県に対して方策を示しているわけでございます。  その内容を申し上げますと、まず幼児事故特徴でございますが、幼児の中では三歳から五歳までの事故が非常に多いということ、それからまた幼児事故は土曜、日曜に多い。それから時間的に見ますと、午後の二時から六時まで、特に午後の四時に一番集中して事故発生しているということ、それから、幼児の歩行中の事故を見ますと、自宅から大体百メートル以内で起こっている事故が圧倒的に多い。五百メートル以内で起こっている事故を含めますと、大体八〇%くらいかと思います。それから、幼児事故特徴は、やはり八〇%ぐらいが飛び出し事故、急にぱっと道路に飛び出したために車にはねられたというような事故が非常に多い。それに、車の直前、直後の横断を入れますと、ほとんどこれで幼児事故はカバーしてしまうというような状態でございます。それからさらに、歩行中の事故では、保護者が同伴中の幼児事故も大体四分の一くらい占めておるというような結果が出ておるわけでございます。  結局、こういう事故を分析してまいりますと、むしろ幼稚園とか保育所というようなところから帰ってきてから、しかも家庭の付近で事故にあっているということは、やはり親の子供に対する関心といいますか、注意力というか、そういうことが非常に問題ではなかろうか。もちろん、遊び場をふやすとか、あるいは通園路の整備というようなことも非常に大切ではございますが、幼児事故防止については、それだけでは防ぎ切れない。幼児につきましては、やはり交通安全教育というものを考えていかなければならない。まず、母親に対する教育を考えていく、さらにまた、専門家の意見では、幼児は大体三歳ぐらいから簡単なことは教え込めばできる。たとえばイギリスなどは、三歳くらいから、そういう面で、歩道の縁石でとまる、カーブドリルといいますか、そういう努力だけをやらして非常に成果をあげているというようなことも聞いておりますので、私どものほうといたしましても、そういう面で、これから幼児事故防止のために、母親あるいは幼児そのものに対する交通安全教育、あるいはさらに幼稚園保育所における安全教育というものに力を入れてまいりたい、そういう面で関係省庁とも十分相談してまいりたいというふうに考えております。  それからさらに、幼児事故防止のためには、やはり家庭で子供に教える、あるいは母親としての心がまえというようなテキストブックが必要ではないかというような意見も出されておりますので、これを現在、専門家あるいは関係省庁の御協力を得て、この面につきましても現在テキストを作成中であるという状況でございます。  そのほか、春、秋の全国交通安全運動というようなものにおきましては、できるだけ幼児重点にしてまいるというふうに考えておるわけでございます。
  23. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 幼児事故を伺いまして、学童の事故は減っているというお話でございましたが、低学年は相変わらず高い率にあるわけであります。  そこで、学童となると、うちへ帰ってきても、うちで遊ばない。また学校へ出かけていって一学校の近所で遊んでいることが非常に多い。だから、学校の付近の交通安全対策をすることが、即、学童の事故対策につながるわけであります。その意味で、スクールゾーンの設定を昨年ですか、やられまして、これはたいへんけっこうなことだと思うのですが、今度の説明書の中にちょっとひっかかることがあります。その中には、「路側帯の設置を強力に推進するほか」といって路側帯の設置を非常に重く見ておられるが、これは私は間違いだと思うのです。     〔委員長退席、井上(泉)委員長代理着席〕 ただ白い線をかいて、ここだけは安全だということになったら、かえってあぶないのです。だから、できれば歩道、できなくともガードレールか縁石を設けて、ほんとうに安全通学路をつくらなければいけない。路側帯をつくって、このしるしをした、それで安心だという考えは、むしろ非常に危険ではないか。路側帯は一日も早くやめて、歩道かガードレールか縁石を、全部と言いません、スクールゾーンですからね、わずかな範囲なんだから、そこだけは至急に設置するように強く要望して、できれば確約もいただきたいくらいなんでありますが、いかがですか。
  24. 中村清

    中村説明員 お答え申し上げます。  通学路におきます歩道設置の問題これは最重点にして設置をしてまいりたいというふうに考えておりまして、実は五カ年計画が、来年度から新しくまた第七次というものが発足いたしますけれども、その中でも重点として整備をしてまいりたい、かように考えております。
  25. 片岡誠

    片岡政府委員 私どもはペイントだけで処理できるとは思っておりません。ただ、全然ないよりはましだろうということでやっておる状態でございます。したがって、先生おっしゃるように、かさ上げした歩道か、ガードレールか、あるいはせめてコンクリートブロックででも分離交通すべきだ。ただ、道路管理者のほうで、いろいろな事情があろうと思いますが、まだそこまでいかないという場合に、せめてペイントで分離するのはやむを得ないのじゃないかというふうに思っております。  それから、狭い道路のような場合は、むしろ自動車をとめてしまって、そこに起終点のある車だけを原則として警察署長の許可で通すという、歩行者道路という制度も道交法でつくりましたので、それも活用してまいりたい、こういうふうに考えております。
  26. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 ごく最近の傾向でございますが、農道や林道が大型化しております。これらの道路は、耕うん機運搬とか材木の運搬等の特別の目的を持つものであるけれども、現実には多目的に使われていて、一般の人が使用している。一般の人に入っちゃいかぬということは言えないわけですね。ところで、その大型農道、特に大規模農道になりますと、道路管理者が一体だれなのかわからない場合があるわけですね。そして、現実にはもう事故も起きておるわけです。これは建設省でも、農林省所管だから知らないということじゃなくて、御検討もしておられるし、各省間の調整も要する問題であるから、総理府でも検討しておられると思うのですが、こういう新しい種類の道路に対する今後の交通安全対策、これについて伺いたいと思う。
  27. 須藤博忠

    ○須藤政府委員 農道、林道の安全対策の問題につきましては、これは確かに唐沢先生指摘のとおりでございます。特に最近は、四車線もあるような幅の広い大規模な農道もつくられております。そういうようなことでございまして、現に、一部の府県におきましては、その安全対策に非常に苦慮しておるという面もあるわけでございます。私どもといたしましても、だいぶ前からこの問題を取り上げまして、何か対策を打たなければいかぬということを考えておったわけでございまして、近いうちに私どもとしては、農林省あるいは建設省と十分協議をいたしまして、安全対策を推進してまいりたいというふうに考えております。
  28. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 以上、たいへんこまかいことを伺いましたが、自動車事故対策は、要するにこまかい対策の集積になるわけです。基本法や基本計画だけで片づくものではないということで、あえて申し上げたわけでございます。今後とも綿密な対策をとっていただくよう希望いたします。  それから、今度は運輸省に航空機関係のことを伺いたかったのですが、もう時間がありませんので簡単にお伺いをいたします。  近年、御承知のように、飛行機による事故が多発している。四十六年における函館の東亜国内航空機の事故、雫石上空における全日空機事故、それから四十七年のニューデリーやモスクワ等における日航機の事故等、事故が多発いたしておるわけであります。航空交通安全確保につきましては、過日運輸大臣からも御説明がありましたわけですが、航空機の事故は多数の死者を伴う大惨事になるわけであります。したがって、人命尊重という見地から、念には念を入れていただく、予算は幾らとってもとり過ぎることはない、私はかように考えております。一つお願いではありますが、航空機による事故は、一度起きたら同じ事由による事故は絶対起こさないということで、この点は私は徹底していただきたいと思います。  ところで、幸いわが国では一度も起こっていない事故発生原因もあるわけでありまして、これについてはどの程度把握しておられるか、私はわからない。幸い国際民間航空機構には世界じゅうの事故の資料が整っているそうであるし、三社も研究しているそうでありますが、航空行政をあずかる運輸省でも、そういうことについて、もっと検討、調査をしていただきたい、これを御要望いたしておきます。  時間がありませんので、小型機につきまして簡単にお伺いしたいと思います。資料によりますと、昨年一年で三十二件の事故発生して、十名死亡、十八名が負傷しております。ことしになって、一月十四日に千葉県鴨川市でエアロスバルが防波堤に激突している。二月十一日には福岡空港から八尾空港に向かった三人乗りのセスナ機が行くえ不明になり、さらに二月二十五日には日本フライングサービス所属のセスナ機が超低空で飛行をしていて多摩川の土手に墜落したということであります。  ところで、最近の小型機による事故原因についてどのように見ておられるか、伺いたいと思います。
  29. 佐藤文生

    佐藤(文)政府委員 小型機の事故原因につきまして、私は次のように把握いたしております。  大体、日本における小型機の保有台数は、唐沢先生、もう御承知のとおりに、昭和四十五年ですから、一九七〇年当時の調査ですが、七百四十機、現在は大体八百機を越しておると思います。これはアメリカに比較いたしまして、アメリカが十三万機ですから相当な格差はありますけれども、すでに八百機を越しておる。そこで、四十七年度で  一般の小型機、これが十四件事故を起こしております。それからヘリコプターで十四件、グライダーで四件、三十二件起こっておりますが、その事故原因は、パイロットのミスによって二十二件、それから機材そのものの原因によって五件、その他、大体これは気象関係だと思いますが、その気象関係その他でもって三件、それからそのほかの原因によって二件、こういうぐあいに原因がつかまえられておりますけれども、パイロットにおける事故が大体六八%を占めておるわけです。したがって、このパイロットの技術の的確なる把握といいますか、小型操縦免許を与える場合におけるそういう試験制度について、より一そう厳重な試験制度を実際に実施する必要があるということで、その指導をいたしております。  なお、四十八年度には五件起こっておりますけれども、その原因については現在調査中であります。  以上であります。
  30. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 国民のレジャーが多様化して、飛行機の操縦を練習して免許をとることが静かなブームとなっている。その結果として、小型機による飛行が大衆化しておるわけであります。     〔井上(泉)委員長代理退席、中村(弘)委員長代   理着席〕 そして実際小型機による事故は操縦者の運転ミスが多いわけでありますが、日本フライングサービスのような、こういうパイロットの養成所があるわけですね、そこの指導、監督がやはり今後非常に重要である。あまり粗製乱造の小型機のパイロットが誕生するのでは、われわれも非常に危惧の念を持っておるわけであります。そういう養成所に対する指導、監督を今後とも強化する必要があると思うのですが、現在とっておられる措置、あるいは今後こういうことをおもにやっていこうということがありましたら伺いたい。
  31. 佐藤文生

    佐藤(文)政府委員 いまの問題ですが、昨年大体千四百名くらいの小型操縦免許をとりたいという希望者がありまして、第一次試験で、学科をやっているのですけれども、大体五〇%くらいはねられまして、途中でもって放棄する人もありまして、大体第二次試験の実地に移っていくのが三百七、八十名くらいであります。実地試験に入りましてから、厳重な実地試験を一日マンツーマン方式で試験をやりまして、三百名くらいが合格しておるというのが過去の実績であります。  したがって、この内容を私自身も検討してみましたけれども、そのような試験の内容と訓練のしかたあるいはテストのしかた、そういうようなことを細密に検討してみましたけれども、私は大体これで間違いなかろうと思っております。
  32. 唐沢俊二郎

    唐沢委員 小型機の機数もふえ、パイロットもふえておる、そうして事故がいまのように起きているわけです。最近の新聞論調にも、小型機の規制強化が散見されるわけであります。ところで、いま佐藤運輸政務次官より、政府の小型機の事故対策について伺いました。いろいろ講じておられるようでありますが、小型機についても民家等への墜落等副次的な被害が憂慮される現状でございますので、この際、大型機の安全対策と同様の対策を立てまして、さらにその措置に万遺漏なきを期していただくことを特に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  33. 中村弘海

    中村(弘)委員長代理 井上泉君。
  34. 井上泉

    ○井上(泉)委員 きょうは、大臣のそれぞれの交通安全の所信に対する質問ということになっておりますが、時間の関係上、特に運輸大臣の所管する航空関係について若干質問をいたしたいと思います。  航空機事故につきましては、これはほんとうに一〇〇%死ぬという非常に犠牲の大きい事故であるわけですし、これにつきましては、それぞれ慎重な交通安全対策というものも講ぜられておると思うわけでありますけれども、ごく最近、一昨日におきましても、フランスにおきまする空中における衝突事故、こういうことからも、私どもは航空機というものがすでに、これはもう十年くらい前ならば、一部の人たちの足であったと思うわけですけれども、今日ではもう交通機関の中で航空機というものも大衆の足になっておる。ことにまた、子供をかかえた旅行者等にとりましては、ほんとうに大切な交通機関としての役割りを果たしておるわけでありますので、それに対する安全対策はもっともっと慎重であってあり過ぎることはないと思うのですが、その点につきましても、大臣の航空に対する所信表明でありますか、これも毎年——三年くらい前に、私国会におったときの交通安全の委員会の中における大臣の所信表明も、大体これと一緒です。字がちょっと変わるだけで一つも変わらぬです。これだけ交通安全対策というものは、お役人が作文したものを大臣がお読みになって、これこれでということで、いわばマンネリ化した経過をたどってきておるのではないか、かように感ずるわけでありますので、大臣として航空安全についての、今日緊急にこういう処置がなされなければならない、そういうお考えがあるならば、そのお考えを、この所信表明を補足する意味において説明を願いたいと思います。
  35. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 航空の安全対策でございますが、これは非常に多岐にわたると思いますが、私は就任いたしまして以来、まだあまり日もたちませんが、とにかく航空といわず、運輸省というところは、人命に関する問題そういう事故を起こしがちでございまして、ことに航空関係につきましては、昨年は相次いで非常に大きな事故が起こったわけでございます。そういう点にかんがみまして、とにかく交通機関というものは安全を第一にしようじゃないかということを、就任のときにも申し上げたのでございまして、以来、各部門にわたりまして、いろいろ検討をいたしておりまして、実行できるものから一つずつこれを実行に移すという積極的な態度で臨んでまいりました。  航空のほうの分野につきましては、御承知でもございましょうが、実は昨年の暮れ、就任早々でございましたが、日航の幹部を呼びまして、こういう事故原因は、これはそれぞれの国で事故の調査委員会原因を究明されると思うけれども、しかし、日航自身の中で、やはりこの航空安全についてのかまえ方、姿勢が足りないところがあるのではないか。それについて、これは単に操縦かんを持っておる操縦士がミスをやったということだけでなしに、やはり整備のほうの部分もありましょうし、人事管理の面もございましょうし、関係のいろいろな部門がお互いに協力をして、一体になって、そうして安全運航体制というものを整備するようにしなければいけないんじゃないか、特にそういう操縦ミスがあるとすれば、それはやはり乗務員の責任感といいますか、使命感といいますか、そういったものが、長い間の事故がないということに甘えてゆるんでいるという点はないのか、こういった点について、会社全体として再検討をし、必要な対策をすみやかに講じてもらいたいということを申し渡しまして、それについて現在とっておる対策、それから、これからとろうとする対策について具体的に詳細に報告をするようにということを命じたのでございます。それにこたえまして、日航は自分の意見なりそういう対策についての報告をいたしました。同時に、井上委員承知のように、日航に対しましては、特に最近の事故の内容にかんがみまして、これは御承知のように、特別の立ち入り検査もいたしまして、いろいろの面から事故原因を究明したのでございます。その報告書も整いましたので、その報告書に基づきまして、再度日航に対しまして警告をいたしました。その結果、先般、二月二十八日に、私のほうとしてはこういう対策をとり、今後さらにこういった点について十分注意をしてやりたいというような報告を持ってまいりました。それで幹部に対しましては、これは運輸省に対する日航の約束である、これはこのとおりに厳重に守ってくれないと困るということを厳重に申し渡した次第でございます。いまはそういう姿勢でもって運航をしていると考えておりますし、同時に、日航の事故というものは、単に日航だけでございませんで、全日空にも東亜国内航空にも共通の部分があると考えまして、一月早々に両社の首脳部を呼びまして、やはり同様のことを言い渡しました。現在とっておる対策、これは人ごとじゃない、あなた方自身の問題なんだから、自分の問題として考えた場合に、どうしたか、今後どういう点について改善しようとするのか、その具体的な対策を報告してもらいたいということを申し渡しました。それぞれ意見を提出してまいりました。それを航空局のほうで十分技術的な面から審査をいたしまして、それぞれそれに対する必要な指示を与えたような次第でございます。三社とも、現在のところは非常に緊張いたしまして、特に人事管理面におけるいろいろの考慮を払いまして、全社内が一本になって上下左右各部門とも連携をとりながら、いやしくも人命に関するような事故は起こさないようにということで、非常に気をつけてやってくれておると私は信じておるのでございます。  なお、これに関連いたしまして、もしも、国内において必要とする保安施設、航空局が担当しております保安施設について、希望があるならば言ってほしいということも申しました。これは残念なことでありますけれども、まだ十二分とはまいりません。しかし、現在の航空を安全にするための必要最小限度の施設はできておると思います。なお、これを整備充実していく必要があることは言うまでもございません。この点につきましては、五カ年計画におきましても取り上げて、逐次充実しておりますが、なお、四十八年度予算におきましても、これに必要な相当な予算を計上しておるつもりでございます。これは、航空会社に対しましてそういうように強い姿勢で臨みますとともに、運輸省自体もいろいろの法律その他の規定を整備するとともに、設備のほうの整備もいたしまして、今後ああいった大きな事故が再び起こらないようにということで、われわれも懸命の努力をしておる次第でございます。
  36. 井上泉

    ○井上(泉)委員 運輸大臣が時間的にずっとしまいまでおれるかどうかわかりませんので、まず運輸大臣に限って質問を続けていきたいと思います。  当時、いま日航の問題が提起されましたので、私は、日航の安全対策というものをずっと検討する中で、採用の方式、これはやはり何といいましても人でありますから、この人については、日航では、採用試験の実施に際しては、特に適性、人格及び語学力等一そう厳格にし、さらに、従来採用試験を実施しなかった航空大学校卒業生に対しても、採用試験を実施することにより、乗務員としての不適格な者を採用時点より厳格にエリミネートしていくこととする、こういうことで、採用方式の見直しということになったわけです。それとちょうど歩調を合わせるがごとく、航空大学の卒業生が大幅に落第をした、こういうことを新聞記事で承知したわけであります。それはやはり、日航という政府が関与しておる会社であるから、そうしてまた、運輸省がやっておる航空大学であるから、いままでも日航の人事に対してあまりにも政府が干渉し過ぎやしないか。少なくともこれは日航という一つの会社経営をやっておるものが、政府のほうからいろいろと人事問題にまでもやかましく言うてこられるというと、やはり社内の空気、あるいはパイロットあるいは整備士あるいは一般職員というような者、社内としての体制というものが、運輸省で一々干渉されるから、こういうことをやっていてもだめだ、だめだということで、何かしらそういうムードというものが会社の中に生じておるのではないか。その結果、運輸省指摘をするようないろんな問題点を出される中で、それならもっと採用をする場合には厳格な試験をやってやらなければならぬ、いままでは航空大学の卒業生は日航は一〇〇%採らしてきたじゃないか、これが一事が万事日航に対する政府の介入のしかたじゃなかったかと思うのですが、その点について大臣どうですか。
  37. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 運輸省といたしましては、法律に規定がございます以上には、人事問題については介入することを今日までもしていないと思っております。私も、就任いたしまして以来、会長がなくなりましたりいたしましたので、いろいろ法律上、運輸大臣の認可を得なければいけないような問題も起こっておるわけでございますが、これはむしろわれわれのほうは、会社がどういう体制で今後人事機構を整備しようとするのか、そういったことを見ながら、それを受けて考慮したいと思っておるのでございまして、おっしゃるように管理体制につきまして運輸省が法律以上に出て非常な介入をしているというようなことは、私の承知している限り今日までにございません。  それからそれに関連する問題かと思いますが、いまの航空大学卒業生に対しまして、日航が今度は非常にきびしい態度で採用試験を行なったということも聞いております。これはおそらく、日航自身としましても、今日までの採用方針が少し甘かったというようなことを反省いたしまして、航空事故が起きるというようなことにも関連してとった措置であると考えておるのでございまして、適正なあれかどうかというような問題につきましては、私は非常にむずかしい問題だと思います。抽象論ではこれは済まないのでありまして、ほんとうに個人個人の適正を見て決定したのだろうと思いますが、それにつきましては、いろいろ派生する問題が出ておるようでございまして、航空大学の入学の資格をどうするかとか、教育内容をどうするかとか、訓練の内容をどうするかというような問題に関連して、いろいろな問題が起こっておるようでございます。これらの点につきましては、あとで事務当局のほうから、詳細に、実情なり今後とるべき方針なりについて御説明をさせたいと思いますけれども、私としましては、とにかく先ほども申し上げましたように、管理機構がきちっと一体となって、航空安全というところに集中するような形で決定いたしました場合に、その管理者たちがお互いに航空安全を第一義として、どういうふうな資格要件で操縦士を今後採用し、訓練し、育てていくかということは、単に技術方面だけでなしに、あらゆる部門が協力してやってくれないとできないことでございますから、そういう体制がだんだんできつつあると考えます。しかし、まだ足りない部分もありましょうから、そういう点について一そうの努力をして、いま申し上げたような安心のできる管理体制を早くつくり上げてくれることを希望しておるのでございます。  答弁の足りないところは主管の局の政府委員からお答えをさせていただきたいと思います。
  38. 井上泉

    ○井上(泉)委員 また政府委員の方には質問をいたしますが、大臣の答えは、よく言えば親切ですけれども、ちょっと長過ぎて私の質問時間が少なくなりますから、その辺はかげんして答弁してほしいと思います。  日航についてはあまり干渉をしてないというような話、もちろん法律違反して日航に干渉する道理はないでしょう。これは常識です。法律に違反して日航に干渉なんかしておったらたいへんですけれども、実際に、日本航空株式会社法というものを見ますと、日航の会社運営そのものについても非常な権限といいますか、ものを持っておるわけで、日航そのものの会社を規制する力を政府が持っておる。たとえば事業計画に関する監督というようなものでも、これはちゃんと運輸省令で定めて、当該年度の事業計画一資金計画、こういうものを出して、これの承認を得なければいかぬということになっておるでしょう。ちょうどNHKの予算もこれに類似すると思うわけです。しかし、NHKの予算につきましては国会の中でもいろいろ論議されるわけですが、日航が毎営業年度の開始前に出すものを国会の中で——私不勉強で承知しませんけれども、これは運輸委員会なりその他の機関で日航から出されてくる計画等を検討する場所はありますか。
  39. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 NHKのほうは国会に出す必要がございまして、国会が唯一の、監督というとおかしゅうございますが、審議機関であると思います。日航に関しましては、そういう規定もございませんので、運輸省において審査はいたしますけれども、国会に提出する必要書類ではないというふうになっております。
  40. 井上泉

    ○井上(泉)委員 必要書類でないということで、国会で論議されたことはないと思います。  ところで、人事権についてはかなりの権限を持っておるように承知するわけです。やはり会社の社長については他の職務についてはならない、こういうことが規定されておるわけです。日航が、事故発生の経過から顧みてたるんでおるということが指摘されておることは、当然なすべきことだと思いますが、それに基づいて、私どもが新聞紙上で拝見するのに、どうも日航の社長がいかぬからかえなければいかぬ、こういうことを政府、運輸当局は言っておる、こういうことを聞くわけですけれども、それは本末転倒もはなはだしい。やはり政府が人事権を握っておるから、ひとつ田中内閣のときに、あるいは新谷運輸大臣のときに、この社長をかえてひとつ恩義をかけておこう、こういうけちな考えで人事というものを見ておるのじゃないかと思うのですが、そういう事故責任と社長というものをこうやっていくというと、それを承認をした運輸大臣あるいは総理大臣の責任ということに当然なってくるわけですが、そういうことは運輸当局は考えておるのかおらないのか、これをひとつ大臣から。  大臣、運輸委員会のほうに引っぱられておりますので、この点についての御意見を聞きまして、あとはまた事務当局と質疑をかわしたいと思います。
  41. 新谷寅三郎

    ○新谷国務大臣 その人事問題につきましては、法律には認可権があるようになっておりまして、でございますから、最終的に決定いたしますのには、運輸大臣が認可しなければならぬということはもちろんのことでございますが、この、いまの具体的な現在の状況では、認可権がございますから、認可をしてもらわないと困るから、これは社長としましては、そういう認可権のある人事については、おそらくあらかじめ相談に来ると思います。その相談に来た場合には、それはもちろん話を聞きまして、意見も言うというようなことになる、これは通例でございます。そういうことになろうと思いますが、今日までそういう事実はまだございません。(井上(泉)委員「いやそれは社長交代とか」と呼ぶ)  その社長の問題は、これは運輸省が何か言ったという話でございますが、その事実を私はよく存じません。私はこう言っておるのでございます。これは、そういう事故が起きた、起きたからすぐにだれか責任者を出せということでは、これはむしろ安全運航体制ができないんじゃないか、いまは会社が総力をあげて世間に対しておわびする意味でも、安全運航体制というものをつくるのが先決である。したがって、社長以下全員がその責任を感じて運航体制を早く整備しなさい、それが現在非常に航空機に対して不安を持っている国民に対する責務であろうということを申しておりまして、同時に、そうでありますから、いま人事に対しましては、私どもとしては白紙でございます。そういうことを、新聞で質問されましたときにも答えましたし、他の委員会、予算委員会等でお聞きになりましても、そういうふうにお答えしておるのでございます。といいましても、それならどんな事故が起こってもだれも責任がないのかというと、そうじゃないと思います。日航自身も責任がございましょうし、監督をしております運輸省においても、もちろんそれは責任があることは言うまでもございません。その責任をどうして果たすかということにつきましては、これはこの安全運航体制ができましたあとでみんなが考えて、それぞれの立場において国民に対して持っておる責任を果たすような努力をしなければならない、こういうふうに考えておるのでございまして、ああいう事故を起こしたから重役陣は交代しろとかなんとか、そういったことを運輸省から言ったことば、私は、私の知っている範囲ではないと考えております。
  42. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そこで、ひとつ委員長にお願いしたいのですが、この事業計画については、これは運輸大臣に出すだけであって、国会に協議をするというか審議をする必要のない条項でありますけれども、やはり安全対策で航空会社の実情を把握する意味において、この日航から出されております、もうおそらくこの日航法に基づく昭和四十八年度の営業計画というものが出されておると思いますが、これをひとつ資料として提出をお願いをしたいと思いますが、そのようにお取り計らいを願いたいと思います。
  43. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいま、四十八年度の日航の事業計画について資料として御提出の御要求がございましたが、これはまだ正式には提出されておりません。われわれ内々事務的に日航の考え方を聞きまして検討しておる段階でございます。
  44. 井上泉

    ○井上(泉)委員 内々といっても、何じゃないですか、日航は、年度は五月か六月ごろですか。やはり四月から新しい年度であれば、日航のような大きな会社になれば、事業計画とか資金計画、収支予算、そういうようなものはもう出されてないと、いま検討中ということは非常におかしいですが、それが事実ですか。
  45. 寺井久美

    ○寺井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘ありましたけれども、正式に出ておりませんというのは事実でございます。これは慣例になっておりまして、出したものをさらに変更するということのないように、十分意見の交換をやりまして、詰めた上で正式の書類が出るという慣例になっております。
  46. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、いま正式に出されていない。これではどうでしょうと、こう運輸省へ出してきておる、こういうわけだね。こういうものでどうだろう。ところが運輸省が見て、どうもこれはいかぬじゃないか、これはこうせなければいかぬじゃないか、人件費がこうじゃないか、あるいはこの点がどうだというようなことで、ここで日航の運営に対しては、表現として適当かどうかわからぬけれども、そこで業務干渉ということをいまやっておる最中、そういう経過ですか、現在は。
  47. 寺井久美

    ○寺井政府委員 お答えいたします。  ただいま、ことばがいいかどうかという意味で業務干渉ということを申されましたが、われわれとしては、業務干渉という意味のことではございませんで、安全に運航できるかどうかということに主眼を置きまして、全体の資材繰り、運航計画に無理がないかということを中心に相談をしておる状態でございます。
  48. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは航空局長にお尋ねしますが、今年度の航空大学の卒業生の採用に特に日航がきびしく対処したことにつきまして、これはきびしいというのじゃなしに、これは適当に航空会社、それぞれの航空会社が厳正にやられたと思うわけですが、いまの航空大学校の養成方法に、新聞にも指摘されておるような欠陥というもの、これは直接現場の、つまり航空会社が採用する資格にも該当しないような者、それをたくさんの金を投じて航空大学を卒業さす、こういうふうなやり方、つまり航空大学校の養成法に結果的には欠陥があったといわざるを得ない。あるいは能力のない者を何かの関係で入れて、そうしていままでは、国立だからということで運輸省が働きかけて、日航にも全日空にも一〇〇%採らせておった。そういうことが未熟な運転者というものを入らしてくる。そういう政府のやり方に対するある程度の反発というものも、パイロットの中でも、あるいはまた整備士の中でも、そういうようなのの中にもありはしなかったかという気がするわけですが、養成方法に欠陥なしとここで表明ができるかどうか、欠陥ありとするならばどういう点に欠陥があったのか、その点をひとつ御説明願いたいと思います。
  49. 寺井久美

    ○寺井政府委員 お答え申し上げます。  本年度の航空大学校の卒業生につきまして、多数の不合格者を出しました点につきましては、これは一つには、一昨年以来の事故発生後、定期航空会社が、当局の指導に基づきまして、操縦士の適正の審査を一そうきびしくしていく措置をとったこと、そのきびしい基準を航空大学生の入学試験にも適用したためであるかと考えております。  また、第二といたしましては、成田空港の開港の遅延、航空機騒音対策に伴う離発着回数制限による稼動率の低下、あるいは機長昇格訓練の強化などによりまして、最近定期航空会社の副操縦士に余裕が出てきたために、採用を手控えたことが一つ原因だと考えております。  また、ただいま御指摘のありましたように、航空大学校の教育のしかたに問題がなかったと言えるかという点でございますが、この点につきましては、当局といたしましても反省をいたしておりまして、従来、航空大学校の生徒には落第をさせるということがございませんでしたが、もう少し厳格に教育を施していく必要があるのではなかろうか。特に精神的な教育面を重視して、たとえばしつけを厳格にするというようなことも、これを機会に考えておるところでございます。  また、なおつけ加えますと、本年不採用になりました航空大学の卒業生につきましては、追加試験その他で、技量が向上すると考えられます者につきましては、留年等の措置を講じまして、定期航空会社への再受験の機会を与えたい。また、定期航空操縦士には不向きであるけれども、航空機の使用事業等に向いている者につきましては、これらの会社への就職のあっせん等を考慮している次第でございます。
  50. 井上泉

    ○井上(泉)委員 きびしくやるというか、精神訓話的なことで養成していくということ、それを反省をしておる、こう言いますけれども、航空会社が採用試験にとった処置というものは、きびし過ぎると思うのか。いまあなたはきびしいと言うのですけれども、これくらいのきびしさを持ってやってもらわなければならぬ、こういうふうにお考えになるのかどうか、これをひとつ御意見を承りたいと思います。
  51. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいまの御質問の御趣旨は、航空会社がとった試験の方法がきびし過ぎるかきびし過ぎないかということだと存じますが、航空会社が、安全面を第一に考えまして、より質の高いパイロットを選択するという点につきましては、われわれといたしましても、当然の措置であるというふうに考えております。
  52. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それじゃむしろ、当然の措置であるから歓迎すべきやり方で、いままでのやり方がいわば間違っておった、航空会社の採用のしかたが間違っておった、こういうことになってくるわけで、そういう間違った採用のしかたによって毎年毎年航空大学の卒業生を航空会社に送り込んでいくということについては、私は、これをやってきたことについて、運輸当局としても重大な反省をせねばならないと思いますので、これはもう会社に送り込んでいますから、これをまた、手前へ戻せ、今年度のような試験でやるということにはならぬと思いますが、自分たちがやったこと、運輸省の国立の航空大学でやっておるのだから、何が何でもとってもらわなければ困る、こういうふうな姿勢というものは、もう本年度限り一掃していただいて、何かこの学校の教頭の話でも、非常にこれから厳格にやる、こういうことを言っておるのでありますので、私は、厳格にやっていただかなければならないと思います。     〔中村(弘)委員長代理退席、太田委員長代理着   席〕  そこで、航空会社の安全対策の中で、全日空の安全対策の中でこういうことが載っております。「空港整備関係等」で、「施設整備が遅れている、高知、宮崎、秋田、宇部、奄美大島等のローカル空港の整備促進をお願い申し上げます。」こういうことが「要望事項」の中で出ておるわけですが、たとえば高知、私は高知ですが、日興証券の副社長じゃないけれども、月に何回も乗っておるのですから、これは安全が確認をされた上で飛んでおるとは思いますけれども、航空会社から、今日まだこれだけ「施設整備が遅れている、」こういう要望が出されておるのですが、これは一体どうなっているのですか。高知空港を例にあげて恐縮ですけれどもひとつ御説明願いたいと思います。
  53. 寺井久美

    ○寺井政府委員 高知空港につきましては、航空保安施設は、現在NDBとVORの二つを運用中でございますが、四十八年度におきましてはVORにDMEを付加する計画でございます。DMEというのはその地点からの距離がわかるという装置、VORというのは方向がわかる装置でございます。さらに、滑走路等の基本施設の整備にあわせまして、四十八年度以降五十二年度までにILS、ASRの整備を実施して、航空機の安全性をより高めたいという計画になっております。
  54. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そしてまた、「定期ダイヤが天候、航空管制上等の理由により、遅延する場合は大衆の利便を大巾に阻害する結果になります。さらに各ローカル空港の運用時間ぎりぎりの運航では、パイロットの精神的負担が極めて大であり、安全性阻害の原因ともなりますので、大巾な延長でない限り弾力的行政措置が為される様お願い申し上げます。」これは確かにこのとおりだと私は思うわけです。パイロットに精神的負担をかけるということほど危険なことはないと思うわけです。パイロットみずからがこういうことを言っておるのに、弾力的な措置がなされないということは、あまりにも行政当局としての、いわば官僚的姿勢むき出しのやり方ではないかと思います。  このことは、私は知識がないので十分わかりませんけれども、飛ぶのか飛ばぬのか、こう言うと、何時までに天候が回復しなかったらもう飛びませんとかいう放送がされる。それから半時間後、ずっと天候が回復してきて、そして飛べるような状態になってきた、それを申し出ても、いやもうこれはちゃんときまっておるから、これ以上飛ぶことはできません、もう、きょうの便は取り消します、こういう話をときどき聞くわけですが、やはり運転者に精神的な負担を——お客さんはどっさり来ておるし、何とかして飛べないだろうかというような危険というよりか、自分は乗って行きたい、そんな心配ないから乗って行きたいというような気持ちの中で、待ち合い室でごたごたしている、こういう状態の中で、やはり航空会社があるいはパイロットとしても、何としてでもこれは、せっかくお客さんが待機しておるのだから、もうちょっと待って、飛べるようになったら飛ばしてやりたい、こういう気持ちが出てくるのが当然であるが、それを押え込むようなことではなしに、いまこの要望事項として出ておる弾力的な配慮というものはなされないのかどうか、その点ひとつ御説明願いたいと思います。
  55. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいまの先生の御指摘、まことにごもっともで、われわれといたしましても、何とか、たとえば五分、十分というようなものについては、弾力的にはからいたいと考えておりますが、実際問題といたしましては、管制官の定数等とも非常に関連がございまして、空港によりまして、八時間運営とか、十一時間半運営とか、二十四時間運営とか、いろいろございます。交通量の多い空港のほうが、当然のことながら、運用時間を長くいたしておりますが、ただいまのようなお話は、往々にして八時間運営の空港に発生するケースかと存じます。これも、その空港、空港の交通量がふえますに従いまして、管制官等を補充いたしまして、運営時間を延ばしていくことが基本的な解決になるかと思います。
  56. 井上泉

    ○井上(泉)委員 安全運航上、管制官の任務というものは非常に重要なわけでありますが、管制官というのは、全体的に定数というか、運輸省の航空局のほうでまとめておる定数というのがどれぐらいであって、大体それがどういうふうな配分、空港もたとえば東京や大阪とかいう大きな空港、あるいは高知だとかあるいは宮崎だとかいうようなローカル空港があるが、こういうようなものにおける管制官の数とか勤務の状態とかいうようなものを、簡単に御説明願いたいと思います。
  57. 寺井久美

    ○寺井政府委員 まず、管制官の定数と実数が現在どうなっているかという全体のお話を申し上げたいと思います。  管制官の定員は、四十七年度で八百三十七名でございます。四十八年度の予算案では、さらに百二十七名を増加することを認められております。合計九百六十四名となる予定になっております。これに対しまして、暦年、四十七年末の実員が八百十名、つまり八百三十七名に対しまして二十七名ほど不足いたしておりますが、これらの欠員及び来年度の増員につきましては、航空保安大学校の本科、研修卒業生、これが年間百三十五名出てまいりますし、このほかに防衛庁の割愛によって補充していくことを考えております。  そこで、この定員が大体どういうふうに分かれているかといいますと、航空路管制のために三百八十五名、それから各地にございます空港に五百七十九名配置されております。例を申し上げますと、高知空港の場合は、五人管制官が配置されえおります。
  58. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、航空の安全をはかるための管制官はこれくらいの定数で十分であるがために、本年度の人数をこうしたのか、あるいは航空当局としてはもっとほしかったけれども、予算の関係上これだけにしぼられたのか、その点について……。
  59. 寺井久美

    ○寺井政府委員 管制官の実員の要求につきましては、その年度、次年度に予想されます航空量を勘案いたしまして、毎年要求しております。当然のことながら、要求いたしました人数がまるまる全部認められるというわけではございませんが、来年度の場合につきましても、大体これで予想される航空需要に対処していけるものというふうに考えます。
  60. 井上泉

    ○井上(泉)委員 航空関係では、これはやはり人の問題というものが、絶対的に安全を確保する面で重要なことというふうに考えるわけですが、いま航空局次長が、管制官の人員というものはこれでけっこうだ、こういうことで、それはけっこうですから、いいことですが、飛行士というか、各航空会社というものが、全日空にしろ日本航空にしろ、あるいは東亜国内航空にしても、パイロットだとかあるいは整備士とか、そういうふうなものが不足をしておるという状態はないのか。十分な人員が確保されておるのかどうか、その点をひとつ御説明願いたいと思います。
  61. 寺井久美

    ○寺井政府委員 定期航空会社のパイロットにつきましては、たとえば日航のごときは、まだ外国人。パイロットを使っておりますが、全体といたしまして、パイロットが不足であるという状態にはございません。また、整備士につきましては、これもいまの整備方法を勘案いたしまして、整備士が不足の状態にあるということは考えられません。
  62. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それでは、要員は十分確保されておる、こういうことに理解をするわけですが、けさのニュースを聞いておりますと、宮崎空港から飛び立って燧灘の上空まで行くと、片肺になっておって、それで引き返した、こういうわけですが、それまでの所要時間がどれだけかかるのか、私は専門家でないからわかりませんけれども、宮崎から飛び立ってすぐにそういうふうに片肺になるということは、飛び立った時点が片肺であったのか、上を飛んでおってそういう状態になったのか。そしてそれは、一体どういうところに原因があるのか。その点、航空機のことでありますので、すぐ報告が参っておると思いますが、きのうの、片肺飛行で引き返して、乗員、乗客ともに無事であった、こういううれしいニュースでありますが、参考までに、それについて説明していただきたいと思います。
  63. 寺井久美

    ○寺井政府委員 昨日の宮崎の異常運航につきましては、これは宮崎空港を離陸いたしましたボーイング727が、右側エンジンの油圧が低下したために、右側のエンジンをとめまして、宮崎に引き返した。地上で点検いたしました結果、右側のエンジンの内部に故障があるというふうに考えられまして、現在エンジンの交換を行なっておる。なお、事故原因につきましては、エンジンをオーバーホールいたしまして調査する予定になっておりますので、具体的な原因につきましてはまだ判明いたしておりません。
  64. 井上泉

    ○井上(泉)委員 何ですか、飛行機が、たとえば大阪から宮崎へ飛んできて、今度宮崎から大阪に引き返す場合には、これはその間に点検をするでしょう。そういう作業というものはなさっておるのかどうか。  それから、いま、右側の油圧が低下したためにエンジンをとめたということですが、その低下はなぜしたのか。それがそういう点検の際にわからぬようなものであるか。これはどうでしょう。ひとつ説明していただきたいのです。
  65. 寺井久美

    ○寺井政府委員 航空機が飛行場につきまして、次に出発するまでの間に、当然航空機のチェックをいたします。これは主として外部から判明し得る点のチェックでありまして、エンジンの内部に発生しました原因によって、ただいまの例のように、油圧が低下したというようなことになりますと、そのチェックでは判明いたさないわけでございます。ただ、航空機は、片一方のエンジンがとまりましても、相当距離を飛ぶことができますし、それが直ちに不安全につながるというような仕組みになっておりません。その点は御了承いただきたいと思います。
  66. 井上泉

    ○井上(泉)委員 片肺であればそれはいいわけですけれども、油圧が低下して片肺になった、そういう状態が両肺になったらどうなるのですか。片肺であったらある程度飛べるからそんなに心配はない、こういうわけですけれども、心配だから引き返したのでしょう。それが内部のことでわからぬということは、それはエンジンをいわゆる分解してみぬとわからぬというのですか。あなたは専門家で技術者でしょう。
  67. 寺井久美

    ○寺井政府委員 エンジンの仕組みにつきまして、検査課長が参っておりますので、検査課長からお答えいたしたいと思います。
  68. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私は、あなたは技術者だと思って、それでお聞きをしておったわけです。  それでは、検査課長から説明を願いたいわけですが、飛び立つ前、そうして飛び立ってローカル空港へ来れば、二十分ばかりおって引き返すわけですから、その間、いわゆるエンジンをどういう形で点検をするのか、そういう一連の作業、点検の経過を説明してもらいたいということと、こういう油圧が低下するというような二とが、飛び立たなければわからぬものかどうか、その点ひとつ説明していただきたいと思います。
  69. 川井力

    ○川井説明員 地方空港におきまして、飛行間点検と申しまして、主として外観点検をやっております。エンジンの場合でも、外観からわかりますタービン、コンプレッサー、ファン関係の損傷、それから油の量の点検をやっております。  なお、エンジンの内部故障といいますか、この場合は、いま予想されますのは、タービンエンジンのシャフトについておりますベアリングを潤滑する油の系統に異状があったのではないかと予想しております。こういうケースでありますと、飛行間点検では発見しにくいものでございます。     〔太田委員長代理退席、委員長着席〕  またこの場合には、離陸直後に起きるかあるいは飛行中に起きるかというのも、ちょっと予測できない性質のものでございます。
  70. 井上泉

    ○井上(泉)委員 こういう場合で、事故の起こった例があるのか、事故につながった例があるのかないのか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  71. 川井力

    ○川井説明員 エンジンのベアリングの関係で事故が起きた例というのはございません。
  72. 井上泉

    ○井上(泉)委員 しろうとになると、片肺になった、それで急いで返ってきた、それで乗客も乗員もみな安全であった、こういう新聞記事を見てほっとするわけですが、片肺飛行という状態については、いま検査課長さんのお話を聞いても、これらについてはそう重要視していない。この片肺飛行が行なわれたことについては、離陸直後で発生するのかあるいは航空途中で発生するのか、これはわからぬからということですが、こういう場合には、あまり重要な欠陥というようには見ていないのですか。
  73. 寺井久美

    ○寺井政府委員 片肺が停止するということは、やはり飛行機にとりましては重要なことでございます。それがどういう原因によって発生するかということを究明いたしまして、そういうことが起こらないようにエンジンの改良を進めておるわけでございます。ただいまの737のように、ベアリングの関係で事故が起こるということであれば、その点の改良をまず行なわなければならないわけでございまして、同じようなことが頻発いたします場合には、十分注意をいたしまして改良をいたしておる次第でございます。
  74. 井上泉

    ○井上(泉)委員 航空関係については、これは私、質問の前段で申し上げたように、全員死につながるところの非常に悲惨な事故であるわけなんで、航空機の安全対策というものは十分な上にも十分せねばならぬ。そういう点について通産大臣も説明をされたわけですが、そういう中で、たとえばパイロットが、航空大学の卒業生が四分の一も不合格者が出る。国立の養成の機関でさえ、ことし試験をやってみて四分の一も不合格が出てくる。これは日航の場合には四分の一以上ですから。いま整備士にしろ航空士にしても、ここ数年総じて飛行機の乗務員というものは、こういう形で養成をされておると思うわけですが、乗務員について、これを総点検をするというふうなことはできないのかどうか、いわゆる直接飛行に関係のある技術職員についての総点検をすることはできないかどうか、この点ひとつ説明を受けたいと思います。
  75. 寺井久美

    ○寺井政府委員 その点、総点検ができるかできないかという点につきましては、できるわけでございまして、日本航空を例にとって申し上げますと、昨年の事故以来、全パイロットの総点検を実施中でございます。もちろんこのパイロットの中には、副操縦士、機長というふうにランクが分かれておりますが、各分野におきまして再訓練を実施し、また、性格的に好ましくないという者が発見されますと、乗務員からはずすという方針を、日本航空ではとっております。したがいまして、こういうふうな再点検を実施するということは可能なわけでございます。
  76. 井上泉

    ○井上(泉)委員 これは全日空、日本航空、まあ、日本航空は、政府の管掌の中にある会社ですから、政府のほうからもいろいろと話をされておると思いますし、あるいはまた全日空も、航空法の中で規制されたことで監督もされておると思うわけですが、われわれといたしましては、こういう航空関係の乗務員というふうな方から直接安全に対する意見を承る機会というものがなかったので、ぜひ当交通安全対策特別委員会として、会社側そしてまた会社における乗務員の代表というふうな方の御意見を聞いて、また、われわれの意見も開陳をする、そういうテーブルというか場所を設けていただきたいと思うわけですが、委員長、いかがでしょう。
  77. 久保三郎

    久保委員長 御提案の趣旨は十分了解できますので、いずれ理事会で御相談申し上げましょう。
  78. 井上泉

    ○井上(泉)委員 いま委員長が御提案の趣旨は了解されるということで、理事会で取り上げてやっていただくということになろうと思うわけですが、それに対しては、やはり政府も積極的に取り組んでもらわなければならないと思います。そのことにつきまして政務次官の御見解を承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  79. 佐藤文生

    佐藤(文)政府委員 ただいまのお話をずっと承りまして、航空機の安全に対して特に運輸省が力を入れていきたい、こういうぐあいに新谷運輸大臣も考えまして、就任以来連日この航空機の安全対策について考えております。これは基本がありまして、運輸省は、飛行場なりあるいは航空の保安施設の整備計画を年次別に立てておりますけれども、それを具体的に明確に実行していくということ、これをはっきり確認しようじゃないかということを大臣がはっきり明示しまして、確認を航空局をして連日させております。  それから、企業の指導では、もう運輸省の責任としては航空機の検査というのがやはりあるわけです。それから航空従事業者に対する資格審査権というのがやはり運輸省にあるわけですから、その審査というものを明確にやっていく。  これはもう先生承知のとおりに、国際的にパイロットの資格というものについて突き進んだ高度な最終目標がまだなかなか確認されていないというのが現況でございます。たとえば、心理面とかあるいは生理面、具体的にいえば、糖尿病になった者とかあるいは梅毒患者というような者は、パイロットにとっては絶対に不適格なんです。そういったような生理面あるいは心理面に対してどのような資格基準をつくっていくかということにまで、日本の航空業界は突っ込んでいくべきである、こういうことについて指導していこうというふうに思っております。  さらに、運航、整備、そういったような規程の認可ということも運輸省にありますので、そういった運航面あるいは整備面について、規程どおりやっているかどうかということを、明確に企業側に明示をして指導をしていく。  さらに、三つの定期航空会社がございますが、そういったような運航能力がほんとうに備わりつつあるのか、前向きに行っておるのかどうか、こういう面についても、免許の権限が運輸省にあるわけですから、指導したい。  したがって今度は事業者自体といたしましても、航空機の整備とかあるいは乗り組み員の訓練あるいは余裕のある事業計画をやっているかどうか、特に乗り組み員に対しては資格要件なり労務の制限というのがあるわけですから、そういう面について規程どおりやっているかどうか、こういったような面も十分に指導していきたい、こういうふうに考えておるわけです。  したがって、いま先生が言われました事業者あるいは乗り組み員、そういう者の直接の意見を聞いて、交通安全対策委員会の皆さん方の今後の資料にしていきたいということはけっこうなことだ、このように思っておるわけでございます。  以上お答え申し上げました。
  80. 久保三郎

    久保委員長 沖本泰幸君。
  81. 沖本泰幸

    ○沖本委員 私は、大臣の所信表明を受けまして、きょうは主として航空行政並びに海上保安庁の所管する事項について御質問したいと思います。  前もって委員長にお願いしたいのは、きょうは、次官はお見えなので、決して次官を軽く見ているというわけではございませんが、大臣に御出席いただいて御質問したいところは留保させていただいて、あらためて御質問をすることにいたします。次官にもきょうはできるだけ責任あるお答えをちょうだいしたい、こうも考えております。  航空事故に関してでございますが、まず第一番に、フランスの空港がいま管制官のストで、日航のほうは、迂回してロンドンへ飛んだり、あるいはフランクフルト、アムステルダムあたりでとまっている、こういうことになっておりますが、日本の管制官にスト権がある、ないということは別問題として、同じような状態事故が、いわゆるストップするような問題が起きた場合に、運輸省としてはどういう措置をおとりになりますか。
  82. 寺井久美

    ○寺井政府委員 先生の御質問にお答えさしていただきます。  まず、管制官のストライキによって飛行ができなくなるという状態は、極力避けたいということで、日ごろわれわれ航空局の人間一同、一丸となって努力をいたしております。  ただ、不幸にして、管制官のストライキというような事態が発生して、航空管制が十分できなくなるというような事態になりましたならば、これは非常に制限された航空機の交通しか維持ができなくなりますので、事実上、民間航空のサービスは麻痺するということになると思います。
  83. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そういう点につきまして、これは想定として将来のためにお聞きしておきたいわけですけれども、現在の民間航空を担当している各空港の管制塔なり管制業務、それと、自衛隊の持っているところの管制業務との違い、あるいはそういうものが一緒になって航空管制を行なわなければならないような事態が起きた場合は、いま日本でどういうふうな形が起きるかという点について、お話し願いたいと思います。
  84. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいまの想定の御質問でございますが、まず実態を申し上げますと、飛行場の管制官につきましては、自衛隊の管制官につきましても、航空局の管制官と同様の資格審査をやっております。したがいまして、その特定の飛行場に関する限り、管制能力に甲乙はないと思います。ただ、航空路の管制につきましては、自衛隊は全然やっておりません。したがいまして、自衛隊と一緒に航空路の管制をやるということは、不可能でございます。でありますから、自衛隊に航空路の管制をいま直ちにあすからやれといっても、できないというのが実情でございます。
  85. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この問題は、またあらためて十分質問したいと思います。  そこで、いままでは日航の安全運航は世界一だ、こういうふうに豪語をしていらっしゃったわけですが、ニューデリーで墜落、ボンベイで間違えた、続いてモスクワで墜落した、こういう事故が相次いで、運輸省としては、実際、点検をいましていらっしゃるし、いろいろ改善命令をお出しになる、こういう状況であるわけですけれども、総点検をおやりになって、結果的に運輸省としてどういう問題点を得られたか、その点についてお伺いしたいと思います。
  86. 寺井久美

    ○寺井政府委員 お答え申し上げます。  昨年のボンベイの事故の後に、乗員の訓練並びに審査体制あるいは機長に対する実地審査などの立ち入り検査を行ないました。その結果、十一月の十三日付をもって、規程類の順守、国際線の乗務員の技能の保持、国際線運航乗務言の語学力の向上、新規程の整備などにつきまして、日本航空に対して改善命令を出しました。また、モスクワの事故の後、昨年の十二月七日から二十日までの間、再度特別監査を実施いたしました。  その結果、本年の二月一日付をもちまして、全社員に対する責任観念の徹底、指導管理体制の確立、会社内各分野の意思疎通と信頼関係の確立、それから、良質の技術要員の確保などについて改善をはかるとともに、今後事業の拡大については、慎重に配慮するよう勧告いたしました。  この改善勧告に対しまして、本年二月二十八日、日本航空から、安全運航確保のために必要な具体案が提出されておりまして、それを目下、当局において内容を検討中でございます。  付言いたしますと、こういう監査の結果何がわかったかということでございますが、巷間伝えられておりますように、日本航空が非常に営利優先で、その結果こういうことになったのではないかという疑問につきましては、航空企業の間、特に国際線におきましては、非常に激しい競争が行なわれておりまして、このために活発な営業活動が行なわれていることは事実でございます。ただ、この監査に際して、セールスの積極性が、機材の運用、整備あるいは乗員繰り等に何か悪い影響を及ぼしていないかという点につきましては、特に注意をして調査いたしましたけれども、その事実はございませんでした。  ただ、この一連の日本航空の事故原因は、主として運航乗務員の安全運航に対する責任感の不足と運航乗務員に対する管理体制の不備によるものと判断せざるを得ないという印象を持ちました。その背景には、非常に急速に事業が拡大したために、社内の管理体制が十分にこれに対応できなかったのではないかということが考えられました。  したがいまして、今後、同社の事業規模の拡大につきましては、慎重な配慮が必要であろうというふうに判断された次第でございまして、この点につきましては、日本航空に対する改善勧告においても指摘いたした次第であります。
  87. 沖本泰幸

    ○沖本委員 私の伺ったところによると、いま次長がお答えになった、いわゆる中を監査なさった事故原因、そういうものについての得られた結果とは、全然逆になっているわけです。  それで、まず、ここに組合の人たちの意見がいろいろと出ております。そういうものを。これは実際にはいろいろ会って聞いたわけですけれども、内容からいきますと、私たち航空事業に携わる者にとって、空の安全ほど切実なものはない。組合のほうも、これに対して働く立場から会社に安全のための要求を数多くやってきている。しかし、生産性向上と利潤追求を第一にして、そして日航労組や乗員組合の要求、いろいろなものに対しては、無視し続けてきた。その結果の今回の事故について、私たちは会社の責任をきびしく追及しなければならない。こういうふうな意見を述べております。  そこで、ニューデリーで起きたところの事故の背景というものについてここに述べておりますけれども、起こるべくして起きたのだ、こういうことを述べているわけです。統計上、一般に一件の大事故発生したときに、その陰に約三十件の小事故が起こっている。そして、さらにその背景には約三百件の、一見この事故とは何かのかかわり合いもないようなトラブルが隠されている。いわば一つの大事故は、三百件のトラブルと三十件の小事故をすそ野とするピラミッドの頂点のようなもので、ニューデリー事故についても、そのような立場から光を当ててみる必要があるのだ。こういうふうに言っております。言いかえれば、統計的にはとっくに大惨事の発生する臨界状態に達していたと見なければならない。このことを日航の社員が口にすることは非常に勇気が要るのだということも述べております。  そこで、政府の航空安全行政の立ちおくれというものに対して、航空安全会議が去年の二月にまとめたアンケートの中にも出てきております。  アンケートの質問として、「定時制確保を優先するために安全運航を阻害されたことがありますか。」こういう乗員グループに対するアンケートで、「ある」と答えたのが五四・二%あるわけですね。それから「ない」と答えたのが三六・八%。それから「現在の点検作業時間で充分であると思いますか。」と整備員のグループの方にアンケートを出したところが、「不充分」と答えたのが四三六%、「不充分だがまずまず」こう言った人が四六・一%、こういう答えが出ております。「現在の点検項目で安全を充分維持できると思いますか。」と、こういうアンケートに対して「安全と思うが自信がない」というのが四六・八%、「ほほ安全である」と言っているが四四・一%です。こういう数字が出てきております。  そこで、私たちに一番ショッキングな内容がここに出ているわけです。これはもうえらいことだと思うことが内容に出ているわけですね。これは航空局も問題になると思います。実際に飛行機を操縦しているのですが、乗員の状況について教育訓練不足を訴えている。たとえば、副操縦士になったある人は、訓練を終えて免許を得るときに、航空局の試験官に、「君たちの操縦は決してじょうずではない、しかし三百時間以前の訓練としてはこんなもんだろう。」そのあとがたいへんなんですよ。「お客さんを乗せてじょうずになってほしい」と、こう言っているわけです。これは問題ですね。そういうためにお客さん乗せられておったら、これはたいへんなことになると思うのですよ。運輸省の航空局の試験官がそういうことを言っている。  そして、依然として問題になるのは、これは日航の場合ですけれども、機長は四十四年に全員管理職にすることを口実に組合を脱退させられたということなんです。そこで結局、一人一人が孤立してしまって、訓練の簡略化からくる不安感や整備に対する不安を仲間と話すことさえできなくなった。操縦室は、三、四人が連携をとり合い、仕事を分担し合って、多くの人命と高価な飛行機や積み荷の安全を維持するという重い責任を持たされているけれども、その操縦室も、ほんとうに安全だとは思えない。そして、事故が連続した直後、社長からの速達が各職員の家庭に入ってきて、その事故原因は心のすきである、こういう内容で、労務の速報も同様の内容と、信賞必罰というて個人の責任にするという方向に向かっている。だから、精神主義問題はもう限界に来ている、こういうことです。  あなたのいまのお答えですと、乗務員の責任感の欠如だ、こういうお答えもあるわけです。しかし、責任がいわゆる精神主義、もう限界に来ていると、こう言っているわけです。それ以上にその責任感をどうして持たせるかということになるじゃありませんか。  で、今度は、なぜそういうことになるか。ここに「乗員の安全要求」というところがありますけれども、そこでは、暗いところでSCN——ドプラー・ロラン航法のためにペーパーワークをすることは非常に疲れる。目を悪くする。したがって、操縦席を明るくするようにして、SCNをINSに切りかえてほしい。それから、時差の影響は、南北のルートに比べると東西のルートのほうが大きい。回復のために多くの日数が必要である。乗務割りに考慮がほしい。現在のイヤホーンを使っていたらみんな難聴になってしまう。教育訓練をもっとしっかりと。座学はもっと時間をかけてやってもらいたい。南回りヨーロッパ路線において、空港周辺で位置不明になったケースがある。デリ、テヘランにおけるものが報告されている。全路線の航法援助施設を再点検して、不良度の大きいものがあれば公表してほしい。ボンベイ事故の以前、七月三日にこれが出されているわけですね。それから、機長の路線見習いの回数をふやすこと。現在のように片道では少な過ぎる。これも七月、三日に出ております。東京では整備を完全に行なうこと。キャリーオーバーしないこと。それから、気象レーダーの性能を向上させること。それから、定時点検整側方式として、不良になるまで使用することをやめること。こういうことが出ております。これは乗員の安全に対する要求が出されているわけです。これについて何一つ改善されていないわけです。ですからこういう内容をはらんでおりながら、それで責任がない、こう言うのはこれはもう全然反対である。全く営利主義で、先ほど井上さんが御質問になったとおりに、全くパイロットの責任にこういうものをしわ寄せされると大問題になってくるということになるわけです。  それから、まだまだ注目しなければならない問題が出ております。機体のオーバーホールを廃止したということです。最近行なわれた整備方式のうち、最も大きなものとして、ボーイング747導入に伴って実施されているH整備があげられる。従来DC8が行なってきた機体オーバーホールを廃止し、その作業内容を分割し、タイムチェック時に、実施しようという方式だ。したがってタイムチェック時には、機体の一部をまる裸にして実施する膨大な作業が入り込むことになります。なぜかこれまで約五十回ほど行なわれたボーイング747のタイムチェックには、これらの作業を一度も行なっていません。このH整備方式をDC8にも適用したい意向であるといわれている。オーバーホールから次のオーバーホールまでの時間、タイムチェックから次のタイムチェックまでの時間をそれぞれTBO、TBTと言いますが、それらは年ごとに延長されていっているというのです。TBTについていえば、昨年夏にボーイング747は千二百時間、DC8は千三百時間にそれぞれ延長された。近いうちにそれぞれ三百時間の再延長を予定している。だから機体のオーバーホールについても同じことが言えるということです。  先ほど宮崎の事故についてのお答えがありましたけれども、もっとひっかかる問題が出ているのです。  操縦装置や降着装置の動力源として、油圧を多く用います。それらは多くの作動筒や制御弁等によって構成されているけれども、これらの部品は、従来、一定時間が来ると、故障の有無にかかわらず交換されていましたが、オン・コン方式に変わりました。オン・コン方式とは、故障を生じない限り部品の交換を行なわないというものです。  油圧装置は飛行機の筋肉に当たるものであり、油漏れを防ぐためにたくさんのシールを用いています。これらのシールは、すり減ったり、劣化したりするもので、もし油漏れを生じたら、その系統が不作動になり、場合によったら油圧系統のすべてが不作動になる。  DC8のエンジンは、エンジンを幾つかの部分に分けて、一定時間が来たら必要な部分だけを整備するというエンジン・ヘビー・メンテナンス方式が取り入れられました。また、ボーイング川のエンジンは全くのオン・コン方式です。各種の電子装置もオン・コン化されましたということが出ているのです。  こういう点においてお調べになりましたか。こういう点について御理解になっているわけですか。ここに述べていることは全くうそだということになりますか。この油圧系統の問題も、油圧系統に問題が起きたから引き返したということになっているじゃありませんか。これを裏づけるように、その油圧系統で何度か作動がおかしくなって、ランプがついたりつかなかったり、いろいろなことで飛行をとめたりあるいは引き返したり、そういう事故が一ぱい出ているじゃありませんか。この点どうなんですか。
  88. 寺井久美

    ○寺井政府委員 最後の機体のオーバーホールの関係、整備の関係につきましては、後刻検査課長から、どういうふうに見ておるかということについてお答えさせていただきたいと思いますが、その前に、組合側からいろいろ安全に関して進言があった、それが取り入れられていなかったのではないかという御指摘につきましては、われわれもあるいはそういう点があったのではないかという印象を持っております。と申しますのは、いろいろな意見が、社内のどこかでパイプが詰まって、ほんとうの上層部まで通じていなかった疑いがございます。したがいまして、個々の事例について私は関知いたしておりませんが、一般的な印象といたしまして、そういう事実があったのではないかという印象を持っております。  それから。パイロットの責任感といいますか、についてやや説明が不十分であったのではないかと思いますが、責任感の徹底ということを私が申しましたのは、少なくともつくられている規程類、守るべきことを守っていなかったということでございまして、守るべきことを守るという意味で、責任感ということを申し上げた次第でございます。  整備の関係につきましては、検査課長から御説明させていただきたいと思います。
  89. 川井力

    ○川井説明員 まず、機体のオーバーホール整備に関しまして御説明いたします。ボーイング747は、導入当初からオーバーホール方式を採用しておりません。これは過去の経験から申しまして、オーバーホールをやる必要のないような構造にしている。必要のないような設計をいたしましたということと、オーバーホールで一時期にやるよりも、それを分割してやったほうが効果があるという、二つの理由からメーカーが考えましたのをアメリカの航空局が承認した方式でございまして、それを導入当初から使っております。また、DC8と727に関しましては、従来どおりのオーバーホールをいまでも採用しております。  それから油圧系統の問題でございますけれども、油圧系統は、普通は二重、三重になっておりまして、一系統が故障を起こしましても、他の系統が作動いたしますので、安全上特に支障があるという問題ではございません。これだけでは不十分でございますが、油圧系統の各部品は、昔は確かに、先生指摘のとおり、一定の時間が来るとオーバーホールを実施しておりました。ただし、その後技術研究いたしました結果、故障を起こしていない部品をオーバーホールすることによりまして、いままでなじみのついていたものがかえってなじみが悪くなる、あるいはオーバーホール作業に伴います誤作業の入る可能性がある、こういう面から、むしろオーバーホールをしないで、状況を絶えず監視いたしまして、これは機構上監視できるようになっております。状況を監視いたしまして、状況が悪くなったら修理をする方式、これをオン・コンディション方式といっておりますが、それを採用しております。その結果、昔のオーバーホールを採用していた時代に比べまして、特に品質が悪くなったという例はございません。  以上でございます。
  90. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまのオーバーホールの点につきまして、私は以前、民社党の受田先生委員長時代に、当交通安全対策委員会委員として、羽田へ実際に視察に行っております。そのとき日航の修理工場のほうへ案内されて、そのときの説明では、いたんだら、あるいは油圧系統の問題でもすべて全部かえますということを、私たちは説明を受けていたのです、すっぽりかえますと。ですから絶対に御心配要りません、こういう説明を実際に飛行場で受けているわけです。そういう内容と、いまお答えになったのとは全然話が違うわけです。  それと、アメリカでは採用された、こういうことになるかもわかりませんけれども、次に出てくるのは、結局、あのときにチェックインしたJA8049は、その故障、ふぐあい点の多さ、その内容の深刻さ、また、それに対する整備側の対処のしかた等を一つ事例としてあげてみると、いわゆるこれのタイムチェックは、管理目標として二十時間のあれが与えられております。しかし、最近では、この時間内に完了するのはきわめてまれだ。特にいま言った機体に対しては、四倍の時間をかけた、それでも対処しきれずに、約七十件の故障、ふぐあい点が残っておった。しかし、就航を急いで、結局、これらの故障、ふぐあい点は、直されないままチェックアウトしてしまった。それで結局、整備の手がすいているときに直し、それまでは飛ばそうということになっている。こういうことなんです。  さらに、アメリカと違うところじゃないかと思いますけれども、飛行機は、飛行中あるいは地上点検で、さまざまな故障を生じたり、発見されたりするが、それらをすべて完全に修理して飛行しているわけではない。キャリーオーバー・スタンダードというものが定められており、必ず修理せねばならぬ故障と、そうでないものとを区分しておる。それで結局、時刻表を見ただけではわからぬけれども、スケジュールをこなすために、飛行機が到着してから出発するまでの時間は非常に短くなってきておる。特に国内線においては、燃料補給が精一ぱいというのはまれではない。たとえば十月十三日に8041はTYOに二度発着しましたが、地上におる時間は、スケジュールでそれぞれ六十分と五十五分。スケジュール上これより短い時間のものもあります。現実には、航空機が慢性的に混雑していく、到着時間がおくれるのは日常化しており、地上におる時間はさらに短くなっておる。これは私たちうなづけます。そして燃料補給に十分から十五分はかかる。部品をとりに行くだけでも十分は優にかかる状態だ。定時性確保がきびしく言われているため、勢いキャリーオーバーがふえている。こういう事実があげられているわけです。これは十分うなづけます、この点は。だからいわゆる安全第一主義ではなくて、結局は営利第一主義に傾いて、それぞれの方向へ持っていっているということになるわけです。  それからさらに、一機当たりの整備員数は、いまどういうことなんでしょうか。
  91. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいまの御質問の一機当たりの整備員の数につきまして、お答え申し上げます。  これは、飛行機の大きさがいろいろございますので、同じ値に直した等価機数当たりの人員でございますが、これを見ますと、たとえば、四十四年に四十六名、四十五年に三十九名、四十六年に三十五名、四十七年に三十八名というふうに変化いたしております。現在のところ、ですから、大体三十八名というふうになっております。
  92. 沖本泰幸

    ○沖本委員 結局、その全従業員に対する整備員の数の割合がうんと低いのじゃありませんか。飛行機の安全を確保するためには、パイロットの確保と、さっきの井上先生の御質問で、パイロットは余って断わられているという現状にあるわけですけれども整備員が足りない。それで十分だということ言えますか。
  93. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいま御指摘のありましたように、例を日本航空にとってみますと、現在、直接整備に従事いたしております整備員が約二千八百名でございますが、これは四十年から四十七年にかけて一・七倍になっております。これに対応いたします年の運航乗務員のほうは、二・五倍になっております。したがいまして、御指摘のように、運航乗務員のほうは二・五倍になったけれども整備員のほうは一・七倍という実情にございます。しかし、必要な整備の工数当たりの整備員という観点からこれを比較いたしますと、四十年に比べて四十七年は約一・一倍、ほぼ横ばい状況でございますが、これは航空機機材の整備の方式の改善、機材の信頼性の向上のための改修というものを積極的にはかった結果でございまして、現在のところ、この現在数の整備員で安全上支障はないものというふうに考えております。
  94. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それは、実際に日航の職員の方に私自身が聞いたんですけれども、日航側は、客室にはたくさんの金をかけてやってはおるけれども整備費の関係は一番安い、こういう点も指摘をしておりました。この点はよくお調べにならないとわからないところかもしれませんけれども、いま、いわゆる中をいろいろ点検なさっているところから、営利優先でないかというのは、全くそういうところに当てはまってくる内容になってくるわけです。こういう点と、パイロットの方々が言っていましたけれども、スチュワーデスの方は、国際線に一度乗ってから結婚するんだということを言って、最初は整備工場へ連れていかれて、すばらしい並んでいる機材、いろんなものを見させられると、全く安全だという思うけれども、そうではなくて、危険が一ぱいなんだということを、直接話をしておりました。  そういう内容から見てみると、結局、その安全性を高めるため、あるいは安全をはかるために、真剣な努力を払ったけれども、なおかつ、やむを得ず事故が起きたということではなくて、もう十分指摘されるべき不安全な内容を一ぱいはらみながら、営業のほうにばかり力を入れて、そして事故が起こるべくして起こった、こう指摘されてもしかたがない、こういうふうな現状ではないかと考えるわけです。  そして、国際線には活発な営業活動があったというただいまの御報告ですけれども、国内線にしましても、結局、その国内線にDC8を無理やり押し込んできて、そしてその利益のほうをはかっていっている。まあ一口に聞きますと、いわゆる国際線で利潤があがらないものを、国内線のお客をうんと拾い上げて、それでもうけの幅をやっていこう、こういうふうにしている。あるいは、円問題から起こってきて、民間航空三社あるけれども、二社は赤字を出してきている、しかし、日航だけはゆう然と黒字でどんどんいっているじゃないか、こういう点ですね。そして、むしろほかの会社に対しては圧力をかけて、そのほかが一生懸命開拓した路線まで乗り込んでいって、手を入れていって、割り込みをやっている。  一番最初、日航法の中で出てきた中には、主要幹線についてはやるけれども、そのほかはやらないということが基準になっているはずなのです。だのに、だんだん広がっていっている、そういうふうな内容。それからいわゆる近距離の国際線についても、自分のほうの名前だけでチャーター方式を取り入れている。そういうふうなことは、日本の飛行機はあくまでも日航だけだ、こういうふうにいってしがみついているように見えるわけですね。ちょうど日中国交回復に伴って、日航と全日空の二社が同じような資格のもとに中国に乗り入れをしている、こういうふうな事実を考えてみても、いつまでもそういうふうなことに固執し、それを運輸省のほうでただ見ておるというような形であってはおかしいのだ、私はこう考えざるを得ないわけです。  前の、同じ佐藤次官ですけれども、前内閣の運輸次官もおっしゃっておりましたけれども、確かにその飛行機の受け持つ範囲というのは、飛行機の機種によって分けられるべきであるというふうに私たちは考えるわけです。そういう点を考えてみても、どうしても納得のいくような現在の航空行政ではない。ですから、日航は、国際線は、いわゆる遠距離に向かってどんどん進んでいく国際線に力を入れ、また、政府も力をかしてやる。そういう点にうんと力を入れていき、そして近距離の国際線については、ほかの全日空とか東亜国内航空とかいうところを充実させながら、競争原理に従って競争させていくということのほうが、将来の航空に対して大きな意味があるのではないか、私はそういうふうに考えるわけです。  その点について、次長さんでは、広い政治的なものも含まれるし、いろいろな問題がありますから、今度は次官は、どういうふうにこの点についてお考えになりますか。
  95. 佐藤文生

    佐藤(文)政府委員 まず第一点の、日本航空の事故が続発しました問題について、先生がるる指摘をされました国際線の競争の激化というものと、それから非常に短時間に成長したという企業の内容、そういうものがやはり事故に無関係であると私は考えておりません。やはりあると思います。  したがって、新谷運輸大臣が再三日航の責任者を大臣室に呼びまして話したところに私陪席しておりましたけれども、常に言っていることは、こういう背景があるので、運輸省としては、この事業の拡張とかあるいは管理、運営面、そういう企業内部における面についてじっくり考え直したらどうか、こういうことで毎回指導いたしました。したがって、先生がかねてから言っておられたような、事故につながる企業内部における管理、運営面とか、あるいは国際競争にうちかつための無理なそういう状態というものが、これ以上続いていかないということで、日航としては、大西洋線を一時中止するといったようなことで、一時原点に返って航空事故対策をやり直しているというのが現況でございます。  それから、第二のお話でございますが、航空三社に対する今後の指導のあり方というのは、先生承知のとおりに、昭和四十五年十一月二十日の、航空企業の運営体制に関する閣議了解において、先生の言われたような、第一点である「国際定期航空については、原則として、日本航空が一元的に運営する。」二点としては、「近距離国際チャーター航空については、日本航空と全日本空輸の提携のもとに余裕機材を活用し、わが国国際航空の積取比率の向上に資するよう努める。」これが大体基本でございます。ところが、昨年の七月一日に、前佐藤政務次官中心になって、そして大臣の示達になりました、以上の閣議了解の範囲内において今後の方針を示したその内容というのは、第一点は、日本航空は、国内の幹線及び国際線の運営を行なうものとするが、今後一そう国際線運営の充実につとめるというのが第一点です。それから第二点が、全日本空輸は国内幹線及びローカル線の運営にその主力を注ぐとともに、逐次近距離国際チャーターの充実をはかっていくとされております。したがって、現在のところは、以上の考え方に私どもは従いまして対処する方針でありますが、国際情勢の変化、国内の航空企業体制の変化に応じて、妥当な措置を考えていきたい、こういうぐあいに思っておる次第であります。
  96. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ほかにも質問内容がありますので、また時間をあらためて質問することにいたしますが、もう一つ、気象庁にお伺いしたいわけです。  運輸省の人員削減の一番のやり玉に上がったのが気象庁であって、その人員削減によって、いろいろ錯誤が起きている、こういうことでもあり、航空については、地上から三万フィートの間を主体的につかんでいただいて、いろいろ観測結果をもとに安全をはかってもらわなければならないけれども、そういうことについても、人員削減から起こってくるいろいろなことによって、事故を起こすような内容にだんだん手が薄められてきている。特に都市部においては、高層ビルであるとかあるいは高速道路、そういうようなものによって乱気流がいろいろ起こっている、そういうものに対するチェックも非常にしてもらわなければならない、こういう点もありますし、それから気象レーダーというものをもっとちゃんとしてもらわなければ、飛行機の安全運航については問題点が出てくるのだ、こういうことがいわれておりますが、その点どうですか。
  97. 高橋浩一郎

    高橋(浩)政府委員 ただいまの点についてお答えいたします。  削減計画によりまして、政府の御指示によりまして削減するわけでございますけれども、気象の仕事は災害とかあるいは航空の問題につきましていろいろございますので、そういった点について十分考えに入れまして、外へのサービスと申しましょうか、そういった面には差しさわりがないように計画を立てております。そして、それに伴いまして、またそれと同時に、航空気象などにつきましても、さらに発展していかなければならない部分がございますし、そういった点につきましては、新たに人員を要求いたしまして、むしろ従来よりも、結果面の精度やなにかは向上するような考え方で進んできております。特に航空気象に関しましては、繰り返すようでございますけれども人命に関することでございますし、また経済運航という問題もございますので、そういったことの計画に関しましては、原則的には人は現状維持でやる、ただ、一部仕事の合理化によって若干人を浮かせる、そういう見地でやっております。  次に都市気候と申しますか、こういう問題でございますけれども、この面は非常にむずかしい面がございまして、特に航空関係のことになってまいりますと、非常にこまかいことでございまして、これは気象の問題というよりは、むしろそういったものがどういうように影響するか、そういったような研究が非常に問題になってまいります。その辺がはっきりいたしませんと、航空気象でどういった情報を流していいかという点がわからないわけでございます。そういったような意味で、都市気候についての研究ということは、別にどこかの研究機関でやっていただく必要があるのではないか、こういうふうに考えております。  現在、気象庁には気象研究所というのがございまして、そこで飛行場の風の模様や何か、これを観測、研究しておりまして、そういった面にも寄与しているような状況でございます。
  98. 沖本泰幸

    ○沖本委員 こういう内容は、もっとまた別の機会にやらせていただきたいと思います。  それでは、海上保安庁のほうにお伺いいたします。時間がなくなりましたので、急いで御質問するような形になりますが、まず、この間、山陰で廃油の投棄があって、非常に海岸線をよごし、漁村に対しあるいは海岸線にたいへんな損害を与えたという点、それから日本列島全体にわたってこの種の事件がどんどん起きてくる場合、被害額ですね。被害額は、むしろこれを予防する立場に立つために要る予算、あるいは設備費用というものなんかから比べると、もう考えられないほど多額の被害額を生じてくることになるわけです。私たちは、去年、海上交通法というものについていろいろ議論もやり、私たちは替成しなかったわけですが、法律は通ったわけでして、海上交通法はできているわけですけれども、それができても、なおかつ、水島においてはタンカーから流出があったわけです。幸い流出量が少ない。少ないといっても、それだけでも相当な被害を起こしておるということにもなり、あるいは岡山県側の水島付近で起きたことが、直ちに香川県とか愛媛県にまで影響が及んでいく。もしあれがもっと大型のものになっていった場合にはどうなっていくかというような、非常な問題があるわけです。そういうものに対する点は、どうなっているか。  それから、一ぺんに御質問しておきます。消防艇ができました。消防艇ができて、二隻予定されておって、一隻が双胴で「ひりゅう」というのですか、できたわけですね。相当な性能を持っており、消火について非常な効力をあげるという点かあげられているわけです。それについてどうこう言うわけじゃありませんけれども、現在の、たとえば、水島はいま申し上げましたけれども、さらに徳山、下松、光、あるいは水島、姫路、大阪の臨海工業地帯、あるいは四日市、京浜地帯、さらに鹿島、いろいろなところに石油コンビナートなり何なりがどんどんできているわけです。さらに日本列島改造から見れば、もっと大きな石油基地ができることが予想されるわけですけれども、そういうものについて、比較するのは悪いわけですけれども、二隻ぐらいでお茶を濁しているとしか考えられないということになります。大きい企業ですから、企業にその負担を十分に持たせなければならないし、事故が起きた場合には、もう付近の住民なり、あるいはいろいろな大きな事故につながっていく、こういうことが予想されるわけです。ですから、そういうものに対して、企業にどれだけの災害予防に対する責任が負わせられるか、あるいは、将来、そういうものに対して保安庁としてどの程度の防御能力があるか、あるいはどの程度足りないかですね。まあ一番ひどい例から見ると、旧海軍からおろされた内火艇が、ちゃちなポンプを据えて、消火だけはできますという内容もあれば、いろいろなものもあるわけですし、また、ぼりばあ丸なり何なりの事故があったときに、現場まで到着するのに非常に時間がかかった。スピードの問題、老朽船の問題^いろいろあるわけですけれども、そういう中にあって、こういうような石油コンビナートに対して、将来に向かって災害を予防する海上保安庁として、どれだけ責任を持てる処置がとれるかとれないか、できているかできていないか、その点。三つの点についてお伺いをいたします。
  99. 紅村武

    ○紅村政府委員 お答えいたします。  まず最初の油の不法投棄、たれ流し等に対する監視体制の問題でございますが、海上保安庁は、先生承知いただいておりますとおりに、海洋汚染事件が多発いたしておりますこういう事態に対処いたしまして、従来からも積極的に監視、取り締まりに当たってまいっているわけでございますけれども、残念ながら、海洋汚染の事犯は年々増加しつつあるという傾向でございます。したがいまして、私どもといたしましては、今後さらに監視、取り締まり体制の充実強化をはかってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  現在の体制といたしましては、海上保安庁の本庁に、海上公害課、それから海上保安試験研究センターというのがございます。それから出先に管区本部がございますけれども、その第三、これは横浜でございます。第四、名古屋、第五、神戸、第六、広島、第七が門司、この管区本部に海上公害監視センターというのを設置いたしております。それからまた、監視用のヘリコプターの増強、あるいは分析測定用器材の整備、それからさらに赤外線によります夜間にたれ流しをいたしました油を発見する装置がございますが、そういったような整備をはかっておるわけでございます。こういった体制によりまして、汚染の多発いたします重点海域には、毎日、航空機、それから巡視船艇を配備いたしまして、厳重に監視につとめておるわけでございますが、これを四十八年度にはさらに強化してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  この四十八年度の施策を具体的に申し上げますと、まず巡視船艇でございますが、これは四十八年度におきましては、三十二隻の巡視船艇を代替建造いたしまして、性能を相当強化をさせるつもりでございます。それから、沖繩の第十一管区本部というのがございますが、そちらに巡視艇二隻を増強するつもりでございます。それからなお、航空機の関係といたしましては、ヘリコプターの八機を代替整備をいたす予定にいたしております。現在非常に航空機も老朽化して性能が悪いものが多うございますので、これを八機代替整備することによって、機数はふえませんけれども、非常に性能が悪いあるいは行動範囲が狭過ぎるといったものが、飛躍的に強化されることになるわけでございます。それから先ほど夜間の油を発見する装置のことを申し上げたわけでございますが、実は監視を強化をいたしますと、監視の目をくぐりまして夜間に油をたれ流すという事犯が増加する傾向にございます。こういった傾向がござ  いますので、現在一機分すでに羽田にございますけれども、四十八年度におきましては、さらに瀬戸内海を対象にいたしまして一台増強いたしたいというふうに考えております。それから公害監視用の機動艇といったようなもの、あるいは監視取り締まり用の器材といったものを大幅に整備することを考えております。それからさらに現場におきましてこの公害監視、取り締まりに当たります海上保安官も十六名増員いたしたいということでございます。それからまた、最近非常に新しい科学知識等を要求されるわけでございますので、海上保安大学校それから海上保安学校等で、海上公害といったものを教科科目の中に取り入れまして、また、現場の担当職員に対しましても、専門的知識の研修強化をはかっていく、こういうようなことを考えておるわけでございます。  次に、消防体制の問題でございます。  ただいま先生が大型の消防艇が二隻と御指摘がございましたが、これは現在三隻ございまして、それで配備いたしておりますのは、東京湾、伊勢湾、大阪湾の下津地区にこの三隻を配備いたしておるわけでございます。それで、これでだいじょうぶか、こういう御指摘であったわけでございますけれども、現在、ただいま申し上げました大型の消防艇の三隻のほかに、海上保安庁の保有いたしております巡視船艇、これは全部通常の船舶火災に対処することのできる消防ポンプを備えております。中には、ただいま先生指摘になりましたように、昔のほんとうに古い船で、小さなガソリンポンプを持ってやっておるというのもございますけれども、こういったものを早期に代替整備いたしたいというふうに考えております。現在、十四隻の巡視船、それから百五隻の巡視艇、これには油火災に対処し得るような、特に科学消防能力を付与いたしまして、タンカー等の火災に備えておるわけでございます。それから、ただいま申し上げました大型の消防船につきましては、大型タンカーの出入港が多いところ、具体的に申し上げますと、先ほどの三カ所でございますが、ここに配備をいたしております。それから水島のお話もございましたが、水島につきましては、現在消防艇を一隻配備いたしております。しかし、これは実は非常に古くございまして、消防能力も決してすぐれているとはいえないものでございます。私どもといたしましては、四十八年度にこの代替船といたしまして、中型の消防艇を建造するという予定にいたしておるわけでございます。  それから、これも先生指摘になりましたのですが、石油コンビナート等におきます自衛消防という体制も、やはり今後私どもといたしましては考えてまいらなければならない問題だと思っております。現在、もうすでにある程度整備されております。これは油の防除措置とも関連いたすわけでございますけれども警察、それから消防機関、地方公共団体、それから民間関係機関、こういったところが官民一体となりまして、大型タンカー事故対策連絡協議会というものもつくっておるわけでございます。私どもといたしましても、今後の消防体制につきましては、広い観点から一そう強化いたしますように検討していく覚悟でございます。
  100. 沖本泰幸

    ○沖本委員 もう時間が来てしまいましたので、思ったとおりのことが御質問できないわけですけれども、いまこういうことをするというお答えがありただけで、やるとおっしゃったその内容で、はたして現在の置かれている問題に対してどれだけの効果が出てくるか、どの程度のものが危険をはらんで残されているかという点があるわけですが、きょうは時間がありませんので、それはこの次に譲らしていただくことにいたします。  質問を保留いたしまして、終わりたいと思います。
  101. 久保三郎

    久保委員長 午後二時再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  102. 久保三郎

    久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平田藤吉君。
  103. 平田藤吉

    ○平田委員 私は、あとで大臣が見えるのだろうと思いますので、きょうは特に国鉄問題を中心質問をしたいと思います。最初から大臣がおられる予定で準備してきたのですけれども、大臣あとになるということなので、順序を少し変えて質問していきたいと思います。  初めに、通勤地獄の問題、通勤者の安全をめぐる問題についてお伺いしたいと思います。  最近、通勤者の間で小さい思わざる事故が頻発しております。たとえばホーム一つを見ましても、混雑が非常にひどくなっております。一たん間違いが起こりますと、たいへんな惨事に発展するという状況が各所にあらわれています。また、ドアにはさまれて引きずられるなどの事故も起こっており、転落してなくなられた方も出ているというような状況で、通勤者の安全を守るために、これらの事態について個々の対策を立てていくことが、非常に重要であるというふうに考えるわけです。特に、東京、神奈川、千葉、埼玉、いわゆる首都圏といわれる地域をはじめとして、全国的に、主要都市中心にして通勤地獄といわれる状態がひどくなっているわけです。そこで、幾つかの点をお聞きしたいと思うのです。  まず初めに、全国全体を、といいますとこれもたいへんですから、特に部分にしぼって、高崎線に中心を置いてお聞きしたいと思うのですけれども昭和四十二年と四十七年の乗客数を示してもらいたいと思います。これは一般的に一日何名というのではなくて、特に朝、いわゆるラッシュ時といわれる六時半から八時半前後の乗客数について明らかにしていただきたい。それも押えにくいものですから、深谷、籠原、熊谷、吹上、鴻巣、北本、桶川、上尾、宮原、大宮という順に、ややこしい説明は要りませんから、数字をあげてみていただきたいというふうに思うわけです。
  104. 内田隆滋

    ○内田説明員 いま、高崎線の混雑状態ということでございますが、この地区は、従来は汽車区間でございますので、電車と汽車とが分かれておりません。それで、統計といたしましては、いわゆる通勤関係が統計として分かれましたのは、四十四年からでございます。四十四年が三万一千人、これはラッシュの一時間の数字でございます。四十五年が三万三千八百人、そのくらいで……。
  105. 平田藤吉

    ○平田委員 それはどこですか。
  106. 内田隆滋

    ○内田説明員 宮原−大宮間でございます。  それで、先生指摘のように、東北線のいわゆる中電、中距離電車による伸び率はやや頭打ちでございますが、高崎線につきましては相当の伸びを示しております。
  107. 平田藤吉

    ○平田委員 どうも話が違うのでちょっと驚いているのですけれども、統計上とっていない。これからはどうなさるおつもりですか。
  108. 内田隆滋

    ○内田説明員 御承知のように、現在新幹線をつくっております。新幹線がただいまのところでは五十二年の春……。
  109. 平田藤吉

    ○平田委員 統計数字をとるのをこれからどうするのか、それを聞いているのです。
  110. 内田隆滋

    ○内田説明員 数字の問題は、今後は中距離電車、高崎付近から出てくる中距離電車と、いわゆる長距離客とを別々にとってまいります。
  111. 平田藤吉

    ○平田委員 私がこれを聞きますのは、この安全委員会では、大臣のほうは、「人命尊重の基本理念に立脚した具体的諸施策を機に失せず強力に実施し、事故の絶滅を期して邁進する所存でございます。」こう言っているのですね。一方運輸委員会でなされている大臣の所信表明では、通勤難を解消するという方向で努力するというふうに言っておられるわけです。ですから、ここで言われている安全というのは、通勤問題をも含めているわけでありますから、少なくともこれから施策を実行しようとすれば、最もひどいラッシュ時にどういう状態にあるかということぐらいのことはつかんでおられるのがほんとうじゃないかというように思うのです。そういう意味で、これからどうなさるのかということを聞いているわけです。
  112. 内田隆滋

    ○内田説明員 先生も御承知のことと思いますけれども、今後の計画といたしましては、ただいま武蔵野線をやっております。それから東北、上越につきましては、五十二年の春までという目標で新幹線をやっております。武蔵野線が開業いたしますと、現在の貨物線があくわけでございます。これを通勤輸送に使うということでいま考えておりますし、新幹線ができますと、いわゆる優等列車が現在有効時間帯に上野へ入ってまいります。それらの列車が新幹線に振りかわりますので、それらの穴を使いまして通勤の増強をしていくという、両方のいわゆる計画を持っておるわけであります。武蔵野線に貨物列車を通すようになりますから現在の大宮から山手を回っていく貨物列車、これがほとんどすべて武蔵野線回りと誉ます。したがって、その穴を利用して通勤電車をやるということを考えております。
  113. 平田藤吉

    ○平田委員 具体策の一つとして、京浜貨車線のあきを利用するという考えがあることはたいへんけっこうだと思います。私がさっきから聞いておりますのは、実情を把握することなしに対策は立ちませんよということを言っているわけです。ここのところをデータをつかむのに、私のほうでもずいぶん苦心したのです。たとえば、上尾で見ますと、定期乗車の状態が、四十二年には一万一千二百四十八名であったのですが、四十七年には二万一千百十七名というふうに二倍になっているのですね。それから普通乗客のほうも、二千三百六十二名から五千百二十三名、これも二倍以上になっているという状況です。しかし、主として朝集中するのは、やはり定期乗車券による乗客であるというふうに考えております。したがって、抜本的に通勤難を打開して、通勤者の安全を守るというのならば、このデータをつかんで、打開策について、それこそ緊急に具体的な施策をとっていきますと言っておりますけれども、これはやはりやってもらう必要があるというように思うのですね。私たちも分析して検討するのにえらい苦労したのですよ。ですから、少なくとも混雑しているところについては、通勤時間帯でデータを出さないと、実際のところはから論議になるというように思うのです。そういう意味で、今後ひとつデータをきちんと把握して……。  私も、国会に通うのに毎朝その通勤電車で通っているのです。それはひどいところですよ。ほんとうに国会に着くとふらふらになりますよ。そういう実態でありますから、ぜひひとつそこのところは検討してもらいたい。  ところで、いま言われました京浜貨車線。これは現在貨車線そのものは大宮までとなっているわけです。打開策として、これを調査して、もうちょっと延長することを検討すべきだろうというように思うのですね。同時に、その通勤客の状況から見て、それだけでもまだ足りないくらいだというように思うのですけれども、しかし、一つ一つ急がなければならぬのです。大体、見通しとして、いつごろそれをおやりになるつもりか、お聞かせを願いたい。
  114. 内田隆滋

    ○内田説明員 いま、武蔵野線の開業が四十九年の春ということになっておりますが、多少おくれぎみでございます。それから、いろいろの工事をやりまして、約三年くらいかかるのではないか。これはほんとの約でございます。
  115. 平田藤吉

    ○平田委員 さらに、それだけではまだ足りないのですからね、通勤客が増大している、あるいはラッシュ時に集中している状態、乗客全体がふえてきている。あの沿線は埼玉県、人口増一番ですよ。通勤ラッシュも、これもまた一番の組です。いままでどんなことがやられたかということを調べてみた。そうしますと、乗客が二倍以上になっているのに、列車本数、四十二年の十月に十四本、それから四十七年の十月十二日現在で十六本、二本しかふえてないのですよ。ですから、これはひどくなるのはあたりまえなんですね。そこでやはり通勤難を打開していくためには、京浜東北線の延長なども考えるべきではないかというように思うのですけれども、その点についてはどうお考えですか。
  116. 内田隆滋

    ○内田説明員 いわゆる近距離電車と申しますか、通勤電車、これは大体東京を中心といたしまして、ただいま大宮あるいは千葉、今度は、ことしの春大船まで参りますけれども、その辺が限度でございまして、いわゆる各駅停車の電車をあまり長く延ばしても、遠くのほうにお住まいになる方は大体都心に御通勤になるわけです、したがって、いわゆる中距離電車を増発していくという考え方が国鉄の大体のいままでとってきた方針でございますし、今後もそういうことですから、大宮以北に通勤電車を延ばすという考え方は、現在のところございません。
  117. 平田藤吉

    ○平田委員 これはまたあとで論ずるといたしまして、私は、急増地帯のほんの一例をあげただけなんです。これは、御承知のように、これまでの自民党政府の高度成長政策を強行してきた結果、都市中心に人口が集中する社会現象なんで、当然政府が責任を負わなければならないわけです。したがって、地下鉄の延長なども、政府が肩を入れて、実際に金も出してやって、そして事故も防いでいく、安全を守っていく、しかも、通勤者がいまよりも楽な条件のもとで通勤できるようにしていくというのが当然なんじゃないか。その辺についてどう考えておられるのか。
  118. 内田隆滋

    ○内田説明員 先生のおっしゃるとおりだと思います。
  119. 平田藤吉

    ○平田委員 これはまたあらためて時間をいただいて論議する機会を得たいというふうに思っております。  次に、国鉄の保線をめぐる問題についてお伺いしたいわけです。  いまも申し上げましたように、代々の自民党政府が高度成長政策を推し進めて、旅客、貨物ともに増大させてきたわけですけれども、この五年間で一体、乗客の数はどれくらいふえたのか、貨物の量はどれくらいふえたのか、四十二年から四十六年までの五年間について、全国的にどうなっているのかについてお聞かせいただきたい。
  120. 内田隆滋

    ○内田説明員 旅客の、これは億人キロと申しまして、御承知だと思いますが、要するに一人が一キロ歩く場合に一人キロと申します。四十二年が千八百四十三億人キロでございまして、それに対しまして四十六年が千九百三億人キロ、約一〇三%でございます。貨物のほうは五百八十五億トンキロでございまして、これは四十二年です。四十六年が六百十三億トンキロでございます。これが一〇五%ということになっております。
  121. 平田藤吉

    ○平田委員 こうして乗客もふえ、荷物もふえているわけだけれども、国鉄労働者はどれくらい首切りを中心に減らしたのか、やはりこの同じ年代にですね。
  122. 内田隆滋

    ○内田説明員 現在員で、四十二年度は四十六万七千でございます。それから、四十七年度が四十四万一千九百、約二千でございます。
  123. 平田藤吉

    ○平田委員 奇妙な話なんですけれども、旅客がふえ、貨物がふえ、そして列車の本数にしてもひんぱんになり、一両ごとの重量にしても重くなってきておるという状況の中で、しかも、集中するところには集中しているという状況のもとで、この労働者を減らしているけれども、この労働者を減らした分は何によってまかなっているか、お聞かせいただきたい。
  124. 内田隆滋

    ○内田説明員 これはいろいろございますが、一つには、いわゆる過去の十カ年計画におきまして、施設の拡充をやってまいりました。施設の拡充に伴いまして、いわゆる設備の近代化、合理化をやってまいりまして、それによって人間を減らしておる。あるいは実際には、駅の無人化あるいは貨物の統廃合、これらの経済の発展あるいは人口の過疎化、これはおこられるかもしれませんけれども、そういうようなことによりまして、要員の合理化等をやってまいりまして、毎年人数を減らしてきておるわけでございます。
  125. 平田藤吉

    ○平田委員 全国的にいま問題にするといった場合に、やはり抽象的になりがちですから、私は問題をはっきりさせるために、線路の問題をひとつとらえたい。線路の問題といいましても、線路のごく限られた区間、これを抽出して検討してみたいというふうに思うのです。その区間は、東北旅客線の上野保線区間を主としております。そこでまず最初に、全国的な数字が出されましたけれども、この区間に限定して、いま申し上げましたように、昭和四十二年から四十六年までの五年間、この上野保線区の人員の変化をお聞かせいただきたい。特に、人員の変化といいましても、あそこにいまは大塚支区というのが合併させられております。あの大塚支区をとりあえずはずして、そうでないと、途中から合併しておりますから、どうもデータがややこしくなってかなわないから、その、途中で合併した大塚支区のをはずして、四十二年から四十六年までの上野保線区の人員の状態、その数字がどんなぐあいになっているか。特にそのうち、線路の問題ですから保線掛、いまは軌道掛といっておりますか、直接現場で線路を修繕していく労働者ですね。この職員の変化の状態をお聞かせいただきたい。
  126. 内田隆滋

    ○内田説明員 上野保線区の現在の要員の変化は、四十二年度が四百四十名でございます。それが現在四百三十名になっております。これは御指摘のとおり、大塚支区が九十一名入ってまいったのでそういうことになっておりますが、各支区の状況を申し上げますと、田端支区が十六名減りまして八十八名、トータルでは百四名おりましたものが十六名減りまして八十八名、それから赤羽支区が、現在員が六十八名で十五名減っております。したがって、四十二年度におきましては八十三名でございます。それから、上野支区が七十五名でございますので、現在、当初から二十一名減っております。
  127. 平田藤吉

    ○平田委員 もう一つ、いま申し上げましたように、旧上野保線区に限定して、軌道掛の数の変化をひとつお知らせいただきたい。
  128. 内田隆滋

    ○内田説明員 軌道掛の数字につきましては、現在持っておりませんけれども、各支区は、いわゆる軌道掛が検査班の検査掛とか、そういうようなものにランクアップしておりまして、実勢力としはそう変わりないというふうに考えております。
  129. 平田藤吉

    ○平田委員 それはごまかしなんじゃないですか。ランクアップさせたと言っているけれども、私が聞いているのは、軌道掛の数がどうなっているかということなんです。かつては軌道掛に検査掛が入っていた。いまは検査掛というのを別につくったでしょう。それで見ますと、三百三名が軌道全体にかかっていたわけだ。これが現在では八十五名になっているわけでしょう。これはいろいろなことを言っていますけれども、結局検査掛と軌道掛とが一緒になって仕事をしていたものを軌道掛としてはずしているわけですからね。ですから、事実上線路を修繕する人の数というのはえらく減っちゃったことになります。これはお認めになるでしょう。
  130. 内田隆滋

    ○内田説明員 これは職制の変更によりまして、検査掛とか保機掛というのに、いわゆる昔の実際の軌道掛が変わっていったわけでございますが、これは保線の近代化によりまして、機械を導入したことによる、いわゆる保守の方式の変更でございまして、実質的には、たとえば検査掛も緊急の場合は修繕をやっておりますし、いわゆるアウトプットとしては、前と同じであるというふうに考えております。
  131. 平田藤吉

    ○平田委員 あなた、よく御存じないんじゃないかな。そういうふうになっていないですよ。検査掛というのは、どうしてもすぐ直さなきやならない手直しの部分の、ごく小部分のものだけやるという仕組みになっているのです。計画を組んで線路を直していく仕事というのは、これは軌道掛がやることになっているのですよ。あなた方そういうことをきめているんじゃないですか。だめですよ、そういう実態を把握してないんじゃ。私のほうから質問しますよと言ってあるんだから。  そこで、先ほども合理化の話が出ましたし、いまも機械も導入してやっておるという話が出ましたけれども、ずっと調べてみますと、やはりどう考えてみても、軌道掛の減りが最も著しいわけですよ。列車本数はすごくふえているんです。貨車本数も客車本数もふえているわけでしょう。これによって線路のいたむ率は大きくなっている。ところが、線路を修繕する仕事をする労働者を減らしているわけですよ。この事態はたいへんな問題だと思う。その上スピードアップしているでしょう。大宮から上野まで、いま急行、特急は二十分で来ますよ。普通列車でも大体二十五分で飛ばしていますよ。ですから、私も毎日乗っていて、これは重大な事態だなということを感じているわけだ。あなたのほうでは、機械を入れたから差しつかえないんだ、検査掛もあるし、総人員においてはさして減ってないんだから差しつかえないんだというふうに言っていらっしゃるけれども、それならば、たとえば線路を修繕する機械の中心は何という機械です。また、どれくらいの能力を持っていますか。
  132. 内田隆滋

    ○内田説明員 道床固めのものはマルチプルタイタンパーという機械でございまして、われわれの査定では、これは機械の種類によって違いますけれども、和製のもので大体一時間百五十メートルくらい、それから、輸入品ですと一時間に二百五十メートルないし三百メートルくらい行くというふうに考えております。
  133. 平田藤吉

    ○平田委員 オーストリアからの輸入品ですか、プラッサーというのがありますね。それからいま言われたマルチプルタイタンパーの国産のもの、それぞれ修理できる能力を言われましたけれども、それでどれくらい動いておりますか。四十六年の四月から四十七年の十二月までの、その稼働した距離数を出してみてください。何回出動して何キロ稼働したのか。
  134. 篠原良男

    ○篠原説明員 お答えいたします。  四月から一月までの間に、回数にして百五十回稼働しておりまして、約二十一キロ実績がございます。
  135. 平田藤吉

    ○平田委員 少し数字が違いますけれども、二十一キロがよく似ているので、一応それくらいだろうというように想像しますが、これでどうなんです。一年かかって二十一キロという出動状況。一年以上だ、二年近くだ。二年近くかかって二十一キロ、一年間に十キロくらいですよ。そんなことで、あの東北線の保線区の管轄内の線路全部、砂利締めから何からできるんですか。それだいじょうぶなんですか。
  136. 篠原良男

    ○篠原説明員 現在、マルチプルタイタンパーというのが三台入っております。そのうち一台輸入しましたものは、まだ一年たっておりませんので、おそらくまだ機械になれがないのではないかと思います。ほかの保線区同じような線路状況の保線区では、大体二倍くらい稼働しております。今後よく、それでは実績を調査いたしまして、極力ほかの保線区並みに能力をあげるように指導していきたい、かように思っております。
  137. 平田藤吉

    ○平田委員 ほかの保線区といったって、いろいろあります。あなたはほかの保線区並みに何か上げるようなことを言っておるけれども、実際に東北客車線の上野保線区内、またはまわり全体でもいいです。上野保線区全体でもいいですよ。一日に何時間ムカデみたいなものが入って砂利締めをやれる時間があるとお思いですか。
  138. 篠原良男

    ○篠原説明員 貨物線を除きましては、電車線は終電車から初電車まであいております約三時間あると承知いたしております。
  139. 平田藤吉

    ○平田委員 とにかく、この三時間内全部動かせますか。三時間内全部動かせるんだったら、こんな回数でもないし、こんな稼働率というのはないはずですよ。それは三時間全部使えないからこういうことになる。特にひんぱんな部分ですからね。ほかと同じようにやらせますなんて言っているけれども、労働者は、これでは線路はほんとうによくならぬと言っているのですよ。暗くて、見えないし、仕事をやったって、実際に手でやってきたようなわけにはなかなかいかないんだと言っていますよ。その点はどうなんです。あなた方はだいじょうぶだとおっしゃるんですか。
  140. 篠原良男

    ○篠原説明員 先生も御承知のとおりと思いますが、線路の保守というのは非常にむずかしゅうございまして、しかも、なかなか最近需給困難でございます。したがいまして、コンクリまくら木あるいはロンズレールというようにして軌道強化をはかりまして、補修区域を延ばしてまいりました。しかも、まくら木の間隔というものは、継ぎ目を除きましては等間隔でございますから、したがいまして、機械を入れて能率をあげる、しかも、かっこのいい仕事の職場にするというのはわれわれの使命だと思っておりますし、さように考えております。全国に同じような保線区がたくさんございます。したがって、同じような条件、たとえば三時間しか回れない条件で、同じ機械がどのくらい能率があがるかというパーセンテージをとりまして、全国平均でこれくらいでやればこれくらいまでは持っていきたいというように、今後努力したいというように申し上げたつもりであります。
  141. 平田藤吉

    ○平田委員 時間も迫ってきておりますから、先を急ぎますけれども、検測車が走りまして、マヤチャートという記録をとっておられる。そうして線路の上下の狂いや通りの狂いやいろいろやっておられるようです。この高低、通り狂い、この狂いが二十三ミリ以上のものを国鉄では丙修繕個所ですか、丙修といっていますよ。しかし実際に指導上では、東京近辺ではあなた方は二十ミリで押えていますね。つまり二十ミリを丙修に準じてという指導をしておられるようですけれども、このうち、特に基準できめている二十三ミリ以上の狂いのあるところは一体何カ所あったのか。昭和四十七年の十月二十五日の上下、十二月十九日の上り、いまの線路ですよ。それから四十八年二月十三日の上り、このヤマチャートの結果を、大づかみに二十三ミリ以上の狂いがあるところが何カ所あったのかを聞かせていただきたい。
  142. 篠原良男

    ○篠原説明員 まず、最初のほうの御質問の、丙修繕の二十三ミリを東京では二十ミリにしておるんじゃないか、このことでございますが、二十三ミリというのは本社が指導したものでございまして、各それぞれの現場によりましてきめております。極力乗りごこちをよくするために望ましい値として二十ミリにきめようというのは、技術者の良心だと思っております。これは北局だけだと思っております。  それから第二番目の御質問でございますが、実は上下に分けてはとっておりませんが、四十七年十月、二十三ミリをこしました個所は東北旅客では十八カ所でございます。それから四十八年の二月には十四カ所でございます。東北電車線につきましては、四十七年十月はまだありません。ゼロですが、四十八年の二月には東北電車線上下線で十三カ所、このように聞いております。  失礼いたしました。二十三ミリをこすものは、東北旅客線においては十一カ所、それから四十八年の二月には、二十三ミリをこすものは十カ所であります。東北電車線の四十八年二月の検測結果では八カ所、このように聞いております。  先ほどは二十ミリと両方足しましたので訂正いたします。
  143. 平田藤吉

    ○平田委員 二十三ミリだけ、もう一ぺん言ってみてください。
  144. 篠原良男

    ○篠原説明員 二十三ミリだけで申し上げますと、東北旅客線では、四十七年の十月に十一カ所、四十八年の二月に十カ所、東北電車線につきましては、四十八年の二月には八カ所、このように聞いております。
  145. 平田藤吉

    ○平田委員 このうち、どれくらい直してありますか。
  146. 篠原良男

    ○篠原説明員 先生先ほどおっしゃいましたように、北局では二十三ミリを一応目標にしておりますので、先ほど申し上げましたように、二十ミリと二十三ミリを足しますと十八カ所ございまして、これを四十七年十月には十二カ所直しております。それから、これは東北旅客線でございますが、四十八年の二月には十四カ所、二十ミリが四カ所、二十三ミリが十カ所、十四カ所でございますが、これは現在補修中でございまして、実績では二カ所と聞いております。
  147. 平田藤吉

    ○平田委員 非常に時間がかかっておりますね、修繕するのに。やはりあなた方が機械だけに依存してものをやっていこうとすると、たいへんだと思うのですよ。私のほうもいまあなた方のほうに資料要求をしたが、出さない。知られては困ると見えて、おっかながって出さない。議会で審議するのに困る。私のほうもあなたがいま報告したものをもう一度検討し直しなきゃならない。十分検討するだけのゆとりを私に与えてくれない。それから、請求したデータも全部出してもらいたいというように思います。これは出しますね。
  148. 篠原良男

    ○篠原説明員 このヤマ車の検測チャートというのは、実は部内のほんとうの技術的な、技術だけの問題でございまして、読みようによっては非常に誤解される、このように判断いたしましたので、お断りいたした次第でございます。
  149. 平田藤吉

    ○平田委員 何ですか、私が読みようによっては誤解してしまうのですか、それは何ですか。
  150. 篠原良男

    ○篠原説明員 先生にそのように誤解されますというのはあやまりますが、一般的に誤解されると非常に問題がありますので、特に技術プロパーの問題でございますので、われわれ技術屋の判断で処置しておりますので、部外のほうに発表しない、部外に発表されますと誤解を招くおそれがあるのではないか、このようにお返事申し上げた次第であります。
  151. 平田藤吉

    ○平田委員 議会で審議するために必要だと言っているのに、何で誤解を招くのですか。私が議会できょう質問をするために必要だから要求したのですよ。あなた方は、審議を十分させないようにしているのじゃないですか。どうなんです。そういう根性が大体いけませんよ。ないしょ、ないしょで何でもないしょにしているから、ますます国民の疑惑は深まるのですよ。事故は次から次から起こしておいて、ないしょばかりにしておる。そういうことだからいけないので、データは正々堂々と発表して、これこれこうなっております、ここはこういう欠陥がありますけれども、こういうふうにしますというのがあってあたりまえじゃないですか。技術屋であったら、もう少し正々堂々とやるべきですよ。あなた、はっきりしなさいよ。
  152. 篠原良男

    ○篠原説明員 いま、先生おいかりでございますが、これは全く、経過を申し上げますと、約十年間勉強してまいって、まだ実際に理論的に完成したものではございません。それで、それは一つの指針としてやっておるものでございますから、これらのデータをいまいろいろの面でもって先生に御審議願うのはありがたいわけでございますが、われわれとしては、と申しますよりは、国鉄としては、まだ部外に出せないという考えでございます。
  153. 平田藤吉

    ○平田委員 これはひとつ委員長さんにもお願いしたいのですけれども、審議するのに資料をいただきたいと言ったら、それを出せぬと言うのですから、これは重大問題だと思うのですよ。ですから、ひとつ私は大臣が来たら大臣にこの問題は問うつもりでしたけれども議員さん、皆さん質問する際に、ひとつ資料を出してもらえないかと言ったらこういう断わり方。しかも、いま言っているのですよ。答弁しているのですよ。しゃべっているのですよ。それをちゃんと資料として検討できるようにしなさいと言っているだけじゃないですか。聞いているほうは出してきているじゃないですか。何が問題なんです。ですから、これはいま言われたような返事ですから、私はそれは受け入れるわけにはいきません。あくまでもこの問題は問題にしていきます。  さて、最後に、時間がなくなりましたけれども、新幹線事故について幾つかの点、御質問したいというふうに考えます。  二月二十一日に事故発生して、二週間以上もかかっているわけですけれども、まだ原因が明らかでないといわれております。この期間も新幹線は平気で走っておるわけです、国民は不安に思っておりますけれども事故後、新幹線を走らせる上で何か特別の安全対策をとっているかどうかについて御質問したい。
  154. 阪田貞之

    ○阪田説明員 新幹線事故につきまして、たいへん国民の皆さま方に御心配かけたことにつきまして、心から申しわけないと存じておりますが、その後、鋭意、私どもといたしまして’その原因の追及に当たっておりますが、事故の起こりました晩に、その機能のいろいろな検査をいたしまして、現地が復旧しましたあとに、ATCをはじめといたしましてもろもろの検査をいたしましたが、特別な異常はそこに発しておりませんでした。どうもいろいろ考えましたら、あの線はああいう側線から本線に出てくるところの問題に事故のもとは限定されるというような判断をいたしまして、それが三島と……(平田委員「もういいです、時間がないから」と呼ぶ)四カ所ございますので、その点に対しまして確実に手入れしていけばこのような事故はない、このように判断した次第でございます。
  155. 平田藤吉

    ○平田委員 国鉄が、ATCは万能だというふうに誇ってきた。いまもおっしゃったように、調べたけれどもわからなかった。あの列車だって異常がないところで起こっているのです。あなた方に言わせれば、異常がなかったでしょう。それで事故が起こっているのですよ。忘れちゃだめですよ、起こった事実を。それで、調べた結果、何でもありません、危険と思われるところについては徐行措置をとるなり、きちっとしてありますと言うなら納得のしようがありますよ。何にもしないで、調べたけれども何もありませんから。年じゅうそれで事故が起こっているじゃないですか、あなた。まず異常がないはずなのに、異常があってああいう事故が起こった。  このATCが万能でないという証拠に、記録によりますと、事故車には非常ブレーキがかかったことになっているのですね。ところが実際にはかかってないのですよ。記録にはかかったことになっている。  それから二つ目には、一たん非常ブレーキがかかると車がとまって、それから総合指令室の指令が出されて、初めてブレーキが解かれるのですね。そうでなければ、もういじったって何したって、指令部から指令が出ない限りはあれは動かないようにできているのですよ。それなのに、かかったはずのブレーキが何もなしにゆるんじゃっている、こういう状態。ですから、正当なブレーキ操作の手順を踏まないで、かかったことになったものがゆるんでいるという事態があらわれている。  それから三つ目に、何よりも重要なことは、事故車が本線の手前で一時停車するはずだったものが、停車しない。それから、その停車しない場合にATCがかかる区間があるわけだが、その区間に入ってもATCは作動しない。そうして本線に突っ込んでいくという事態になっているわけです。その上、ポイントのところは七〇信号以下、つまり七十キロ以下のスピードということになっている。それ以上の指令は絶対出ないことになっている。ところが、あの地点で百六十キロ、二百十キロの指示が出ている、そういうことになっているのです。  いずれにしても、これらの事実がはっきり示しているのは、ATCといえども現実に故障している、こういうことなんですね。故障の原因は何であれ、故障した事実はあなた方は認めなければだめですよ。これは、はっきり認めなければだめですよ。この故障した事実を認めるならば、いま言ったような返事は出てこないはずですよ。あなた方は、国民の生命を尊重すると言っているけれども、実際には尊重されていないということの証明です。  それではほかにどうなんだといえば、新横浜駅では、脱線事故のあくる日の二月二十二日と二十四日と二十六日と二十七日と、連続して事故があったじゃないですか。しかも、二百キロで走るように指令が出ている一方で、走っていると急ブレーキがかかる、何でもないのに急ブレーキがかかるという状態。運転士は、これを何とかして直してくれ、こんな危険なことがあるか、徐行措置をとるなり何なりしなければだめだと言っているのに、言うことを聞かない。国鉄というのはそういうところなんですよ。そして、こういう問題はひた隠しに隠しておこうとするのですよ。だから、次から次から大事故が起こるのです。そして、昨年の暮れには静岡駅で、御承知のように、ポイントが故障したでしょう。ずうっとホームに回り込まなければならない列車がまっすぐ走っちゃった。あれだって問題ですよ。それから、四十六年の春には新大阪駅で、側線から出てくるのと本線を走ってくるのとが同時に発車している。危機一髪ですよ。こんな事故は年じゅう起こっているのですよ。大事に至らなければ、あなた方は頭下げないのです。こういう国鉄の態度。まず人命を尊重するなんて言っていますけれども、いまの返事を聞いていると、大臣はほんとうに考えているのかと私は言いたくなりますよ。そうでしょう。あなた方にはそういう命令が出ているのでしょう。いま言ったようなこれらの事故を見ると、ATCは万能じゃないんだ。私どもがキャッチできない事故はたくさん起こっているはずなんですよ。そんなことを言うと、国民に不安を与える。何を言っているのです。こういう問題が起こった時期時期に、はっきり検討して直していく。人間の力を中心に据えて、人間の知恵を中心に据えて、そして機械を運用していくという体制に前進さしていくということを考えなければだめですよ。そういうことも全然考えないで、今日に至るも、ATCは故障はございませんでしたというように言っている。  私は、この際、新幹線全体について、重要なところは徐行措置をとるなどして、安全を守るという立場に立って検討すべきだと思うのですけれども、どうですか。
  156. 阪田貞之

    ○阪田説明員 ただいまの先生のおことばですけれども、新幹線に起こりましたいろいろな故障というのは、もうほとんど全部隠しなく出しております。また、こればかりは、そんな、単に私の首をかけてとかいうような問題と違いまして、ほんとうに万が一にもこれが起こりましたときには、私一人の首で済むような問題ではございません。いままで起こりましたことも、ちゃんと出すものは出しております。私も実は一時、新幹線を責任持ってやったことがございますが、新聞記者諸公その他にも全部出しております。そして、それの一つ一つについて、ほんとうにどこが悪いかということをやってまいっております。  今度のあれは、先ほど申し上げましたように、側線から出てくるところに非常停止装置がございますが、それに関連する問題でございます。先ほど先生が徐行措置をしろとおっしゃいましたが、三〇信号が出ていたときには停止位置で必ずとまれと指示しております。それにより、ああいう側線から出てきて、二百十キロで走っておる本線へ車が出ないようにすることによりまして、全部がだいじょうぶだという判断をいたしたのでございます。私としては、単に私自身の責任とかいうようなそんなことでやっているわけではございません。先生おっしゃるとおり、ほんとうにできるだけざっくばらんに出して、いろいろ御意見を伺ってしておるわけでございます。
  157. 平田藤吉

    ○平田委員 時間が過ぎましたけれども、あともうちょっとですから……。  そこで、あなた方国鉄当局がそういう精神でいるならば、改めるべきところは幾らでもあるのですよ。     〔委員長退席、太田委員長代理着席〕  二つ目に私があげたいのは、新幹線の過密ダイヤを直しなさいということです。  ひどいもんですよ。今度の事故は、機械万能で、かせげるだけかせがせるというシステムから生まれてきている。国鉄の営利主義、経営主義ですよ。これを至上命令にした過密ダイヤが安全を無視したものになっているということを、今度の事故も示していると思うのです。  その一つは、事故車があの側線から出てきます。そして、とにかくATCがきかずに本線に入ったとき、うしろから走ってきた一四三Aという列車が停車をした。事故車との距離は幾らあったか。たった四百四十六メーターじゃないですか。そこでとまったわけですよ。この一四三A、つまり後続車の運転者の証言によりますと、事故発生直前、二八〇信号、百六十キロで走れという信号を受けて——二八〇信号というのは、百六十キロ以内という意味だそうですね。それで百四十キロで走っていた。その速度で行きますと、ATCの故障でもあれば九秒間で突っ込んじゃうという距離までいっているわけですよ。距離からはかるとそうなるのですよ。非常に危険きわまりない状態なんですね。  それから、あの後続車は三分おくれて発車しているのですね。事故車の前の列車は四分おくれて通過している。あれが四分おくれじゃなくて六分おくれであの地点を通過していたとしたならば、後続車は事故現場へ差しかかって収拾のつかない事態を生んでいたに違いないということが推定される。救われたのは偶然ですよ。この偶然性に依拠して運転している。  この間も御説明いただいたんだけれども、実は後続車のうしろへ事故車を入れるつもりだった、こういう話です。とんでもないですよ、そのうしろにもう列車がつかえているのですから。こういう過密な中へぱっと軽わざをやってはさみ込んでいくのですからね。だから、一カ所でちょっと間違ったらたいへんなことになるというのは見えすいている。背筋の寒くなる思いがするわけです。  そういう意味で私は、この過密ダイヤについて再検討する用意があるかどうか、これをお聞きしたい。  それから、本線に突っ込んだときは脱線しなかったんだが、あれはバックさせたので脱線した。そのいきさつについては、運転士と指令部との無線交信記録があるはずです。レコーダーに吹き込んでありますね。あれを一ぺん聞かせていただきたい。それができるかどうか。  この二点についてお聞かせいただきたいというように考えるわけです。
  158. 阪田貞之

    ○阪田説明員 過密という初めのお話につきましては、過密ということよりも、やはりああいうダイヤをつくりますときは、必ず各列車間の距離というものをちゃんととりまして、いまですと、一番密度の高いところで四、四ダイヤですから、八個列車が入ります。八個列車が入りますと、六十分走らすのに七分余りの間隔になりますが、七分間の距離というのは、各列車間では、新幹線では相当な長い距離でありまして、一番問題になるのは、いかにそこが七分であろうと十分間隔であろうとも、さっきちょっとおっしゃったように、一つのルールが、鉄道のルールが乱れたときにどう処置すべきかということが一番問題でございます。そういう点につきまして、従来もいろいろそういう事態に対しまして、鉄道という一つ交通機関としてはそのときが一番大切なんで、そのときの処置について私どもとして一番頭をひねっているわけでございます。  それから、いまのテープでございますが、私も聞きたいんで、ちょっといま担当に聞きましたけれども、帰りまして、ございましたら御連絡申し上げます。
  159. 平田藤吉

    ○平田委員 あるのですよ。だいじょうぶですよ。聞かせるか聞かせないかだけの問題です。  それでは時間をとりましたので、私はこれで終わりたいと思うのですけれども、さっきの資料提出問題の一つとってみて、も、国鉄は非常に、外には聞かせたくない見せたくないという体制であるということもはっきりしたと思うのですよ。これではいけない。しかも、運輸省鉄道監督局保安課というのがある。これが全国の国鉄を全部監督しているんだそうですね。聞くところによると、課長さんが一人で、もっとも課長さんというのは一人でしょうけれども、係長が二人、課員が三人、合計六人。これで全国の国鉄を見させているというのですから、いかに国鉄まかせになっているか。政府が実際には監督していないんじゃないかということを心配するような状態ですよ。こういう国鉄のあり方、そして政府が国鉄に対してとっている態度などについても、私はさらに根本的に究明して、事故を根絶し、国民の生命を守っていくという立場を貫かなければならないというふうに考えております。  きょうは大臣が三十分だけはおいでになるというお約束でしたけれども、お見えになりません。私は、引き続いて大臣に対する質問を留保しながら、発言を終わらせていただきます。
  160. 太田一夫

    ○太田委員長代理 渡辺武三君。
  161. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 さきの委員会におきまして、交通安全対策に関する総理府総務長官の所信表明をお聞きをいたしたわけでございます。私は、総務長官所信表明の中では、一番大切なことを実はお忘れになっておるんではなかろうかと思う。うまり「就任いたしまして以来、幼児交通安全対策、行楽観光地における重大事故防止、大型貨物自動車交通事故防止対策等当面の対策を推進してまいりました。」こうおっしゃっておりますが、実は私は、総理府というところはこういう実施省じゃないはずなんだから、本来的にもっとやらなければならない問題点が他にあるはずだ、つまり各省がばらばらで行なっておる交通安全施策そのものの総合的な調整ということ、これが一番大切だと思うのです。ところが、現実にはそれはうまくいってない。このうまくいってないその現況は、私は質問を続ける中で明らかにしていきたいと思いますが、そういう観点から、お忘れになっていなければけっこうですが、落とされたのか、ほんとうにお忘れになっておるのか、まず第一にそれからお聞きをしていきたいと思います。
  162. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 お答え申し上げます。  大臣の所信表明の中で、総合調整の問題についてお触れになっていないという話がございますけれども総理府交通対策本部というのは、三十五年に設置されて以来いろいろなことをやってまいりました。昭和四十五年に交通安全対策基本法が制定されまして、総理府の総合調整機能というものを法的に認められましたわけで、それを基本といたしまして、総理府のほうでそのほうをやっておるのでございますけれども先生おっしゃる面は、確かに戦争という名のつくものということを考えれば、現在では交通戦争だろうと思います。ちなみに死傷者を見ましても、相当数ございます。また、自動車の増加率もたいへんなものでございます。私自身、総理府に籍を置いておりまして、たいへん大ぜいの方々がおなくなりになる、あるいは負傷される、これをどうしたらいいだろうかということでたいへん悩みますし、まだまだわれわれの努力は十分ではないかもしれませんけれども交通対策本部というものを設置して、総合調整ということをいままでやっているつもりでございますけれども、今後とも努力する所存でございます。
  163. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 私は前々から、実は総理府の一番大切な仕事として、とかくばらばら的に行なわれている行政を調整をし、ほんとうに有機的に交通安全施策が行なわれるような方向、こういうことに持っていくというのが一番大切な仕事なんじゃないか。これは前山中長官にも申し上げたことなんですが、いわば国というものは、国民の生命と身体と財産を保護していく使命を持っておる。そこで、一番たくさんの人員を配置し、金を使っておるのは自衛隊であろう、その次には、やはり国民の家屋等の焼失を防ぐための消防隊が編成をされておる、消防庁が独立をしておる、さらにはこのごろは、国民生活の環境を保護するために、環境庁というものが独立をしてこれを見ておる。ところが、現実の社会情勢の中で、現実にいまの時点で何が一番国民の生命と財産を失わせておるであろうかと見ていきますと、交通事故なんですね。一番多くの人がなくなっておる、たくさんの人が負傷しておる、そういうことが現実に起こっている。国民の生命と身体、これに与えておる損害を国の責任においてやはり対処していかなければならないことは当然のことだと思う。ところが、いまも申し上げましたように、他のそういうおそれのあるもの等に対する国の態度等々から比較いたしまして、あまりにも交通安全対策というものがお粗末ではなかろうか。なるほど国の立場では、内閣総理大臣を会長とする中央の交通安全対策会議、あるいは総理府総務長官を本部長とする交通対策がなされておりますけれども、それは一応は形式だけが整っておって、現実の面を見ていきますと、これは私は、非常に手抜かりがあるのではなかろうかと思う。したがって、本来ならば、それらのように、むしろ交通安全庁とかあるいは交通省とか、そういうような独立したものにして、そしてほんとうに真剣になって対処をしていかなければならないほど大きな被害国民は受けておるんだ、こういう認識をほんとうに持っておられるのかどうかすら実は疑わざるを得ない。実際にはそうなんでしょう。現実を見てみますとね。家屋が燃えるのには、消防隊があって、消防庁が独立をして、しょっちゅう警戒をしておる。このごろは、国民の生活環境を整えるために、近々ではありましたけれども、環境庁が独立をしていろいろ見ておる。そういうところから現実に受けている国民被害というものよりも、実際には日々起こっておる交通事故によって失われておる生命のほうがはるかに大きいんです。にもかかわらず、国の対処する姿勢というものがたいへんに低いのではなかろうか。どうなんでしょうか、交通安全庁なり交通安全省なりを設けるお考えはございませんか。
  164. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 総理府交通対策本部を設けておる。まあ各省のセクト主義というものがございます。それの調整機能をやってきているわけであります。諸外国では、そういう意味でも交通省を設けている国もございますけれども、現時点では、それだけの機能というものをある程度果たしておるだろうと思います。また、自動車事故がふえておるということも事実でございますけれども、一時の凶器型から棺おけ型に移動してきておる。そういうことで、モラルの問題もございますけれども、私たち、省庁間のセクト主義を排除して、統合機能を今後とも十分果たしていきたいと思っておりますし、一つの例は国土総合開発庁という非常に大きな構想もございますけれども、いまのところ、交通省をつくる考えはございません。
  165. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 総合調整をはかっていきたいとおっしゃっておりますけれども、現状のままでは、はかり得ないでしょう。現実に、三千何百億の予算を交通安全対策費として計上しております、とこう御報告していらっしゃいますが、実は総理府で自由にでき得る予算というのは何ぼあるのでしょうか。総合調整機能を果たすべき調整費というのは一銭も予算はないわけです。ただ、各省の人を集めて会議を開く会議費ぐらいしか計上されていないというのが実態なんですよ。そういう上に立って、ほんとうに総合調整がはかっていかれるだろうか。いままでの実績から見たって、決してそうではない。たとえば、あとで質問をしようと思いますが、運輸省は、たとえば車両安全基準を設けて、シートベルトというものを車につけなければいかぬという規定をいたしておりますね。ところが、これをじゃそのように取り締まられておるかというふうに見ていきますと、警察庁のほうは、高速道路についてのみはそれで取り締まっておるけれども、他の一般のほうはそのまま、野放しなんですよ。それでは運輸省に、逆にひるがえって、何のために車にシートベルトの装着義務を課したのか、こういう問いをしていきますと、必ず、それは安全を守るためとかいう返事が返ってくるはずなんです。にもかかわらず、それは野放しになっておるのですよ。現実の問題として。お役所が違いますから。そういう問題がほかにたくさんあるのですよ。そういうのを調整をしていくのが総理府の最も大きな仕事でなくてはいかぬ。やれますですか。
  166. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 安全ベルトの問題については、いま御指摘のとおり、(渡辺(武)委員「それは例にあげただけです。たくさんあるでしょう。」と呼ぶ)まあそういう例でございますけれども交通安全対策室というのは、ある意味ではシンクタンク的な存在でもございますけれども、また調整機能をやる仕事でございます。いま例に出されました安全ベルトの問題については、個々に連絡会議等を開きまして、今後指導をやっていくつもりでございます。
  167. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 個々に指導をやっていくとおっしゃいますが、その指導の実効は何もあがっていないわけですね。それはなぜでしょうか。指導をしておるだけじゃ済まされない問題なんですよ。冒頭にも申し上げましたように、国民の生命と財産が一番大きく侵されている問題なんだ。本来的に国がそういう使命を持っておるとすれば、ほんとうに一生懸命になって取り組まぬといかぬ問題なんですよ。だから、国民の家屋が燃えるのには消防庁がおって、独立をしておる。あるいは国民の生活を守るためには環境庁が独立をしておる。それよりも実際には大きな被害を受けておるんじゃなかろうか。いわば局地戦争以上の被害が出ているのだ。生命が失われておるのだ。それに対処する方向として、確かにもっともっと真剣味を持たなければならぬではないか。ところが現実の問題は、いま一つの例をあげましたように、総理府は確かに一生懸命におやりになっているかもしれません、あるいは御指導なさっておるかもしれませんが、実際のその施策を見ていきますと、やはり依然としてばらばらなんですよ。いわば、逆にいえば総理府の言うことなんか聞いてはいないわけですよ、お役所のセクト主義。だから、それだけで放置されておかれたんではたまったものではないということだ。それにはやはり根本的な姿勢を転換する必要があるのではないか。これはもう、前の長官にも申し上げたのです。十分に検討してやっていきます、ことばの上だけの前向きの回答、そういうのはおりおりに返ってまいるわけですけれども、実際には、残念ながらそれは実効のあがらざる状態であるということなんです。特に国会がこういう交通安全対策特別委員会というものまで設けて、そして何とか、ほんとうは真剣になってこの交通安全のために尽くしていこうという努力をしておるにもかかわらず、形式的にそれに対処——これはことばが過ぎるかもしれませんけれども、実際の実行面から見ると、そうではなかろうか。だから、本来ならばもっともっと交通安全対策室なるものも強化をし、もっと権限を持たせ、予算もどっさりつけて、ほんとうに名実ともに調整機能が果たせるような方向にしていかなければいけないのではないか。庁に独立させること、省に独立させることが総理府だけでできないということも十分知っております。総務長官だけではなかなか返事ができないことはわかっておりますけれども、しかし、いまの現状から考えると、いまのままではいけない。本来ならば、交通安全に関する費用はもう全部総理府が握る。そして各省に分配をしてやる。そうでもしなければ、言うことを聞かぬですよ。これは言うことを聞かぬというと、各省に悪いですけれどもね。実際は、各省は各省なりの狭い視野の中でいろいろ安全行政を行なっておられる。ところが、やはり総合的に調整をしなければならぬという問題が起こってくる。そういう大切なときに、どうしてもやはりそれらがうまく調整されていかない。こういう問題があると私は思うのです。それには、やはり総理府がもっともっと強い権限を持たざるを得ないのじゃないか。幸いにして、中央交通安全対策会議なるものがあって、総理がそれに会長となられ、各省大臣がお入りになっているのですから、そこにも総務長官も当然委員としてお出になっておる。だから、そういう時期をとらえて、ほんとうに強力に総理府総務長官が主張をしなければいかぬじゃないか。そういうところへ出て黙っておったのじゃ何にもなりませんよ。現状を説明し、ほんとうに有機的に総合調整をはからなければならないとおっしゃっても、実は予算もないし何もできませんよ、したがって、こうしてもらいたいという総理府としての主張が、当然そういう会議に主張されていなければいけないと私は思うのです。しかし、実際にはやられておらぬでしょう、そういうことは。どうなんですか、総理府自身がもっと強くなろう、権限を持とう、子算を握ろう、こういう努力をなさったことがございますか。
  168. 小宮山重四郎

    ○小宮山政府委員 先生のおっしゃる意味、十分わかるのでございますけれども、現在の各省で持っております予算、それはそれなりに重要なものでございますので、総理府といたしましては、そういう会議でいろいろ主張いたしておりますけれども、いまの先生の御発言の趣旨を長官によく伝えまして、速急に会議を開いていただいて、その趣旨をよく各委員にお伝えするようにいたします。
  169. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 それでは、総理府に対しては、今後ほんとうに、もっと真剣になって取っ組んでいただいて、その調整機能を果たすような名実ともの力を持っていただくために、強く要望をいたしておきたいと思います。  次の問題に移りたいと思いますが、いまも若干関連をいたしました運輸省——運輸省の方、おられますね。運輸省は、道路運送車両法の中の保安基準がございまして、シートベルトの取りつけ義務を課されています。ところが現実には、これはいま一般営業車、タクシーについては、運転者なりあるいは後部座席は三人までですかの設置義務を課しておられる、一般の乗用車については、運転者のみに課しておられる、こういうことでございますが、確かに長期的な安全計画によってこれらを徐々にやっていこうとなさっておられることは、私も十分知っておりますけれども、しかし、現実の面として、日々起こっておる交通事故の中の死亡者を減少せしめるという立場から見たときに、運輸省自身がこのような座席ベルトの取りつけ義務を課せられたのは、安全上の問題からだと存じます。したがって、いま一般車の中で運転者のみに、運転席のみにその義務が課せられておるというのは、何かほかに理由がございますか。
  170. 景山久

    景山説明員 ただいまの先生の御質問でございますが、当初は、これを規制いたしましたのは、四十三年の七月の改正でございまして、四十四年の四月の新車からという規制でございました。その当時は、まだこういった技術につきまして、すべての座席についてやると申しますこと、あるいはそのもの自体の供給体制と申しますか、こういったような問題があったわけでございましたので、普通の自家用車につきましては運転車席だけというふうにしておいたわけでございますが、その後、いま先生から御指摘もございましたように、いろいろ供給体制の問題でございますとかあるいは技術の問題とか解決が進んでまいりましたので、ただいま保安基準改正を手続中でございまして、とりあえず助手席側のベルトを義務づけるというのを早急にやりたいというふうにしております。  なお、自家用車の後部座席でございますとかあるいは大きい車の運転者席あるいは助手席、こういったものにつきましても引き続き保安基準の強化を進めてまいる、こういう所存でございます。もうしばらくお待ちいただきたいと思う次第でございますが、おそくなりまして……。
  171. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 それでは、警察庁片岡局長にお尋ねをしたいと思いますが、いま運輸省のほうは、車両保安基準の中で、いわゆる交通安全をはかるためにシートベルトの着用を義務づけておられる。いま若干義務づけていない座席もございますが、それをいま早急に義務づけていきたいという方向だ、こういうことでございます。現実にタクシーなんかは義務づけられておるのですね。ところが実際には、東京の町の中を走っているタクシー、これはほとんどついておるでしょうか、いろいろお調べになっておると思いますが、いかがでしょうか。
  172. 片岡誠

    片岡政府委員 そういう目的で調査いたしておりませんので、よくわかりません。
  173. 景山久

    景山説明員 ただいまのタクシーへの装着でございますが、車検をいたしておりまして、そのときに確認をいたしておりますが、全部実はついているわけでございますが、その辺にふらふらしておりますとドアの開閉に不便であったりというふうなことで、座席の横のほうにしまっておくという例が多いようでございます。現実には、全部通って、つけております。ついておりませんと車検通りませんから、それはちゃんとなっております。
  174. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 お聞きのように副長官、運輸省のほうは確かに安全性から必要だということでわざわざ義務づけられておられる。ところが実際にはどうかというと、それはじゃまになるから横っちょにしまってあるようだということなんですよ。じゃまになるようなものだったらやめればいいのですよ。義務づけする必要ないわけですよ。交通安全上必要だ、片方ではそう思って義務づけられた。ところが実際には使われていない。そこで、いわゆる調整というのが必要になってくるわけですね。もっと警察は取り締まらなくちゃいけないじゃないかとか、そういう問題は私出てくると思うのですよ。それで、いま警察自身が取り締まっておるというのは、高速道路を走行するときのみベルトを着用しなければいかぬぞ、こういうことになっておるわけですよ。いわばちぐはぐになっておるわけですね。もう、片方は早くから車に取りつけておる。片方の取り締まるほうは、そんなことは一向おかまいなく、高速道路を走るときのみそれを着用しなさい、こういうことになっておるわけです。ところが大部分のタクシーは、いま一般車は運転席だけですけれども、タクシーは運転者のほかに三人の座席の分までも義務づけられておる。そのタクシーはどうかというと、高速道路を走るタクシーというのは少ないわけですよ。ほとんとが一般道路を走っておるのです、実際には。にもかかわらず全然やられてないということなんですから、ほんとうに必要ないというならば、それこそもっと警察庁運輸省と十分に協議をされて、必要がなければ保安基準からはずしていけばいいことであって、片方のほうはその保安基準を設けてどんどん規制をしていきながら、片方では全然横っちょを向いておる、こういう方向ではいけませんよということを私は言っているわけです。  そこで、ほんとうにわが国においてこのシートベルト着用を義務づけた場合に、いま起こっておる死亡事故のうちで、ほんとうに人命が死に至らしめられないような状態になることはなかっただろうか。たとえば、シートベルトをしておったならばあるいは助かったかもしれぬ、こういう事故は、いまの死亡事故の中でどのくらいあるでしょうか。
  175. 片岡誠

    片岡政府委員 シートベルトの問題ですが、計数的な何%あるということは、私、そういった調査もございませんしわかりませんが、現に死亡事故の中で、シートベルトを着用しておったら死ななかったであろうという事故は相当数あろうと思います。それから現にまた、シートベルトを締めておったために、がけから下におっこちた場合でもかすり傷だけで済んだという事例もずいぶんございます。  いま先生のおしかりを受けておりますけれども、実はシートベルトそのものの着用は、運輸省のほうに、私、課長時代にお願いもし、そして保安基準にも入れていただき、やってまいりました。しかし、昭和四十五年また局長で帰ってみますと、どうも道交法の手当てが十分されてないということを発見して、これではいけないというので、御承知のように、高速道路上あるいは自動車専用道路については着用義務をつける。これでしばらく様子を見て、この次のステップでは一般道路にも着用義務をつけたい。さらにまた、外国の立法例もございますので、スウェーデンその他は罰則をもって規制いたしております。そういうこともいずれやらざるを得ない。あるいはやるべきであるというふうに考えております。
  176. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 いまスウェーデンの話が出ましたが、オーストラリアでも最近シートベルトの義務づけを法制化いたしました。アメリカは州によって違いますから、州によっては法制化をしているところがある。それらの実際のデータを見ますと、オーストラリアでは義務づけ以降死亡者の率が、減少率が二〇%だ、こういうふうにいわれております。アメリカでは大体二五%だ、こういうふうにいわれておりまして、確かに人間の生命がそれによって保たれておる。中には、それはシートベルトをしておろうがどうしておろうが、これはもう瞬間的に命がなくなったというようなひどい事故もございますけれども、多く起こっておる事故の中で、シートベルトをしておったならば人命は助かったであろうと思われるようなものが相当数外国の実績から見ましてもあるわけです。したがって私は、早くそれらを義務づけるべきではないだろうか、こういうふうに考えますので、警察庁のほうもひとつ十分にお考えを願って、実施できるものから早急にひとつやっていただきたい、かように考えるわけでございます。  それから、若干補足をいたしますと、いまシートベルトそのものの値段といいますか、それとさらに、これは運輸省があるいは各メーカーに言っておるかもしれませんが、エアーバッグですね。このエアーバッグ等はまだまだ開発途上なんですけれども、これに要する費用等々から比べますと、相当安価であるし、比較的簡単に取りつけられるし、しかも運転者に、あるいは乗員にその認識さえあれば、簡単にほんのちょっとした手間で装着ができるわけですから、私も実は、アメリカの帰りにハワイに寄りまして、ある知人に車に乗せてもらいました。そして、そんなにスピードを出しているわけじゃありませんが、その人はちゃんとベルトをして、私は、日本でずるいことになれておりますから、ベルトをしないでおりましたら、その方に注意を受けまして、ベルトをしなさい、こういうふうに言われたわけなんです。そういうことになれば、ほんとうにいま起こっておる死亡事故そのものがもっともっと減少するのではないか、こういうふうに考えられますので、そういう面から考えますと、エアーバッグの開発もさることながら、現状ですでに完成化され、実用化の域に来ておるものについては、なるべく早く実施ができるような方向で考えていただくということが必要ではなかろうか。運輸省ばかりでなくて、警察庁のほうでもそういうことについては、やはり道交法改正によって着用義務を課していく、こういうことが必要だと思いますので、御検討をお願いいたしたいと思います。  それから、駐車場法の問題についてお尋ねをしておきたいと思いますが、建設省の方お見えになりますか。——いま、駐車場法かございまして、ある一定の面積を持った、三千平米ですか、建物を建築、増築する場合は駐車場の、これは区域が限られておりますけれども、付置義務がなされておる。しかし、現実には建築時において、あるいは建築を許可するときにおいては、そのような青写真が提出され、建築基準に基づく建設許可を受けられる。審査によって建設省は建築許可をされると思いますが、現実にそのビルが活用をされ動き出した、こういう時点において、はたして駐車場として活用されておるかどうか。いつの間にか印刷工場に化けてしまったり、バーに化けてしまったりしておるようなことはないかどうか。また建設省は、いわゆる建てるまで、建てる段階における審査だけであって、建てた後は私ども何にもやっていないんだ、こうおっしゃるかどうか、その辺はどうなっておるでしょうか。
  177. 大塩洋一郎

    ○大塩政府委員 お答えいたします。  建築の際の義務の履行につきましては、おっしゃるとおり、主として建築主事によりまして、確認行為の際に一緒に立ち会ってやっております。それが一たん建てられましてから後は、駐車場法に基づく標準条例の三十一条等の規制でもって、立ち入り調査権とかあるいは是正命令とか、こういうことをすることになっておりますけれども、これが大きな百平米をこす用途変更でございますと、また建築確認、模様がえというような手続が必要でございますので必ずチェックできます。しかしながら現在の駐車場の取り締まり体制というのは手薄いでございまして、常時定期的にこれを見回って監視するという体制が不十分でございます。そういう意味におきまして駐車場がいつの間にか変わってしまっているというようなことが起こり得る危険性は十分あろうと思います。  さらに続けて申しますと、しかしながら、特に東京その他の大都市におきましてはたとえば三千平米とか二千平米とか、こういう大きなものでございますから、大体マンションとかあるいは団地とかでございますが、そういうところで付置義務の駐車場でさえつぶされるということは、そこの入居者にとりまして非常に大きな問題でございますので、必ず苦情なりなんなりが出てまいるというのが通例でございまして、そういう機会をとらえまして、現に現状から回復命令を出したり、あるいは指導いたしまして模様がえ等を抑制したりしておるような実情でございます。
  178. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 いわば建築時にはそういう青写真ができておるにもかかわらず、実際の使用面に至るとそういうことがあるということなんですよ、いまのお答えは。実際は、いつの間にか印刷工場になってしまったり、喫茶店になったりしてしまっているところがある。それはまた、住民の苦情によって改善命令を出しておる、こうおつしゃいますが、私はそういうことが一件でも許されていきますと、だれしも、付置義務が課せられておるからやむなく最初は駐車場をつくるけれども、駐車場ではあまりもうからないから、工場にしてしまえとか、いろいろなことが起こってくると思うのです。これの、やはり私は、あとの問題を監視をしていくためにどう一体すべきか。これは駐車場の問題も当然交通安全に大きな関係があるわけですから、これらをどうしていくかということについての問題点も、私は総理府の範疇に実際は入ってくるのではなかろうか、こう思うのですよ。建設省がなかなか人手が足らぬと、こうおっしゃっておるのです。一体どうするのだ。  さらに、私建設省にお聞きしたいのですが、一応基準がここにできておりますけれども、それらを強化する意味でその三千平米というのをあるいは二千平米にしたり、千五百平米にしたりというような強化の方向、こういう方向が考えられないかどうか。駐車の方法については、路外駐車とか、いろいろな面がありまして、各地方自治団体がそれぞれやらなければいけないというように規定づけられている面もございます。じゃあ、ほんとうに各地方自治団体が都市計画等を行なった場合に、それに要する駐車スペースをとっておるかどうか。この辺のチェックはどうなっておるだろうか。いろいろ考えていきますと、私はたいへん不備な点がたくさん出てくるのではないだろうか。したがって、警察の方がいわば強制駐車違反でレッカー車を使って持っていかなければならぬというような事例が、所々方々に起こってしまう、こういうことなんです。ほんとうに置くのが悪いのか、法律はありながら、実際にやらせなくて、目をつぶっておるほうが悪いのか、どちらがどちらとも言えないような状態が中にはあるのではなかろうか。そういう意味で、私は、もっともこの法律そのものを強化し、そのあと問題点の解決のために一体どうするかというものを真剣にやはり考えなければいけないのではないか、こう考えております。そういう点については総理府はいかがでしょうか。
  179. 須藤博忠

    ○須藤政府委員 ただいま御指摘の問題については、私どものほうといたしましても十分検討してまいりたいというふうに考えております。
  180. 大塩洋一郎

    ○大塩政府委員 駐車場の問題は、現在わが国だけではなくて、ヨーロッパ、アメリカ等におきまして、これは交通問題とからみまして、きわめて大きな問題になってきて、またそれだけ駐車場行政に強い姿勢を示しておる現状でございます。わが国の駐車場法は、御承知のとおり昭和三十二年に制定されたいきさつがございまして、当時はわずか百五十万台に全国の自動車も満たない時代でございました。それから十五年以上たちまして、現在では二千万台をこえるような社会情勢の変化がございます。したがって、駐車場法の考え方自体が、たとえば付置義務の考え方にしましても、一つ建築物の自己保存のためにそういうことをやれというような姿勢でございますけれども、これは車というものはとまるものでございますから、やはり路外駐車場と一体となって、路外駐車場は公共的なサービスをするところですけれども、私的な建物に付置されるべき付置義務駐車場も、非常に社会的な性格が濃くなってきておりますから、一体的に考えて、付置義務駐車場を強化していくという方向は当然の方向であって、そういう強化の方向でわれわれはいま検討したいと考えて、勉強中でございます。
  181. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 そのほかに、いわば駐車場整備地区というのがございまして、これは地方自治団体にまかされておりますね。それじゃ東京の場合はどうだろうかといって見ていきますと、昭和三十七年以来実際には変わっていないのですね。昭和三十七年から、ことしは昭和四十八年ですから、車の数にして相当ふえておるにもかかわらず、実は何も手が打たれておりません。こういう問題についてはどうなんですか。本来自治省がもっと監督しなければいけないのかもしれませんけれども建設省としてはいかがお考えですか。
  182. 大塩洋一郎

    ○大塩政府委員 駐車場整備地区というもののきめ方が、現在の駐車場法によりますと、主として商業地区、しかも自動車のふくそうする商業地区及びその周辺というようなことを中心に指定する基準がつくられておりまして、これ自体、必ずしもいまの自動車交通の実態からいいますと、そういうところばかりでいいかどうかという点につきまして問題がございます。しかも、大都市におきましても、駐車場の整備地区をきめなければならないところで、たとえば堺市だとか、東大阪市だとかきめてないところもあるわけでございまして、こういう面におきまして、われわれは、そういうことを早く指定するということと、それから駐車場整備地区自体の考え方を、もっと都市全体の車の動きというようなものとの関連において配置計画の練り直しをする必要があると考えております。
  183. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 練り直しをしていただくのはけっこうですが、検討をして練り直しているうちに、二年、三年、四年、五年もたっていくのがいままでの通例ですから、そういうことのないように、ほんとうに早急にやっていただきたい。総理府の方々も交通安全対策室でそういう問題点はもう十分吸い上げておられると思いますので、もっともっとプッシュをする必要があるんじゃないか。本来ならばひんぱんに開かれておるはずなんですね。各省の連絡会議あるいは中央の交通安全対策会議等々開いておるんだ、こうおっしゃいますが、開いておるのなら、ほんとうに何をやっておられるのか、具体的にそういう問題が実効をあげていかなければ、集まってたばこを吸っておるだけじゃ何もならぬわけですから、だから、会議を開いておるということだけが実績にならぬと私は思うのです。具体的な問題で実効があがってきて初めてなるほどやっておるな、こう思えるわけですけれども、しかし、どうも遅々として進まないような感じでございますし、実際にいまの問題も、東京都に例をとってみましても、昭和三十七年以降ほとんど変わっていない。この十年間に車のふえた数量を考えてみますと、これはたいへんなことだと思います。一方では、路外駐車の強制撤去ということが始まっておるわけでしょう。ところが一方では、そういうことが全然行なわれていない。こういう相矛盾した状態の中にあるのではなかろうかと私は考えますので、至急そういう問題の善処方を要望しておきたいと思います。  時間が少なくなってまいりましたから、最後に、これは前々から片岡交通局長に何回も申し上げたと思いますが、交通事故調査分析というものがほんとうに交通安全対策というのに結びついていかなければ意味はないんだ、死亡事故が何件起こった、きょう事故が何件発生したという件数だけでは、これは意味がございません。その件数の中で、どうして起こったのだろうか、それは交通環境が悪かったのだろうか、あるいはドライバーの心理状態に非常に異常性があったのか、そういうこまかな分析を行なって、事後の交通安全対策に役立てていく、こういうことが必要なんだということを前々から申し上げてまいって、そのように努力をしていく、こうおっしゃっておりますが、その後、事故調査について、何か進歩のあとがうかがえるような方法に改良されたことがございますか。
  184. 片岡誠

    片岡政府委員 前に、たしか先生からそういうお話もあり、私も二つのやり方をそのとき御説明もいたしましたし、それで第一線を指導しております。  一つほうは、御承知のように、個々の道路部分、地点だとか、あるいは区間だとか、事故の多発しておるところの図面に落として、そしてその道路交通環境に問題があったかどうかということ分析をしていく。その結果、交通安全施設の面なり、指導、取り締りの面なり、安全教育の面で、どういう手があるかということを分析していくというやり方は、現に個々の現場でやっております。  それからもう一つは、私たちのほうにございますコンピュータに、事故原票に全部入ってきております。現場でつくりました事故原票のインプットさえ正しければ、それをもとにした多角的な解析はやっております。できるだけ一面的でなくて多角的な解析は現にやり、またそれを第一線にも流して、あるいはその他の関係機関にもお渡しして、行政の向上のための資料にしていただいておるというのをやっております。
  185. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 局長、いろいろな調査をしておられると思いますけれども、いわゆる交通環境ですね。事故が起こった場合の交通環境はどうであっただろうか、あるいはドライバーの心理状態がどうであっただろうかという、こういう面の御調査はおやりになっておられるでしょうか。
  186. 片岡誠

    片岡政府委員 交通環境につきましては、比較的やりやすうございます。これは客観的に相当できると思います。現にやっております。  ただ問題は、ドライバーの心理状態が、どうしても供述者といいますか、事故を起こした人の供述に基づいていろいろとっていくわけでございますから、しかも、いろいろ事故処理の量が多うございますから、じっくり心理学的あるいは医学的な専門家が調査をしていくということはなかなか行なわれがたいと思います。ただその前に、いつ危険を認識したかとか、あるいはそのときにいつ危険回避の措置をとったかとか、そういう定型的なデータについては、原票に入っておりますので、それなりの分析はしておりますけれども、必ずしもそれが直ちに他に役立つとは私は思いません。できれば、いろいろな分野の専門家のチーム、タスクフォースなんかのチームがございまして、掘り下げた調査をやっていくというのが必要だと思いますが、なかなか、そういうふうに二十四時間体制で待機していただいて現場に出ていくというような学者なり技術者の先生たちも、わが国の場合うまくできないと思います。ぜひ私はやったほうがいいと思っておりますし、外国では若干ございまして、そういうチームがいい分析をした資料も出しておるようでありますので、今後、そういうことはできるだけやってみたいと思っております。
  187. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 私もぜひやっていただきたいと思うのですが、とかく人間の心理として、警察が、事故が起こって、時間がたって、あとから病院等へ行って調べますと、ほんとうのことを言わないのですよ。人間というのは自分をよくしよう、こういうことがありますから、徹夜マージャンをして帰ってきても、ゆうべ十分睡眠をとりましたということになってしまうのですが、実際には、事故を起こしたその場面で、その直後質問をすると、案外すなおに正直にものを言うようでございます。したがいまして、そのときの人間の心理状態というものを、分析を十分にしてみると、いわゆるドライバーの今後の教育等には、相当重要な問題点が出てくるのではなかろうか、あるいはいろいろな施策を行なっていく上においても、ヒントが与えられてくることがあるのではなかろうか。実は私どもは、自主的にそういうことを行なっておるわけです。警察庁へ常時派遣をし、そして実際に調べてみますと、いろいろ従来とは変わったデータが出てまいります。それによって交通安全の今後に資するとしいうことがたいへん大きいと私は思いますので、ぜひ国の立場でそういうことを、全部にやれなくても、モデル地区を選んでしばらくやってみる必要は大いにあると私は思いますので、どうかそういう方向でひとつやっていただきたいと思います。  それから次の問題点に移りたいと思うのですが、道路の沿道ですね。いま日本の国は、広告だとかネオンだとかいうものが非常に多くて、肝心の交通信号、これを見誤ってしまうというようなことが間々起こっておるわけでございます。したがいまして、ネオンだとか看板だとか照明というような、非常に乱雑につけられておりますものが、たいへん交通安全上いろいろな害を及ぼしておるのではないだろうか、そういうことが考えられるわけでございますので、何らかの沿道の規制といいますか、特に車の通る道路の信号の付近のまぎらわしいものについては、法によって規制ができるような措置、これが必要ではないかと私は思うわけですが、そのような、事故に直接結びついたというような例はございませんでしょうか。
  188. 片岡誠

    片岡政府委員 特に結びついた事例は聞いておりません。しかし、確かに、運転しております場合に、そういうネオンが信号機あるいは標識を見る場合にじゃまをしておるというのは、事実だと思います。  これについては、一体どのようにしたらいいかという問題がありますけれども、できれば、都市全体の屋外広告物の規制というのが一番正しいやり方ではないだろうか、そのように考えております。
  189. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 この国会にも屋外広告物法が提案をされるようでございますが、そういうときには警察庁のほうは、そういう交通安全の立場からその法改正についての意見具申、こういうことがやはり当然になされていかなければいけないのではないか、私はこういうふうに考えますが、そういう角度からひとつ十分に、屋外広告物法そのものを警察庁も見ていただきたい、かように考えるわけでございます。  さらに建設省は、実際に担当官が来ておられませんのであれですが、普通日本の道路は、これまた、その道路からすぐに民有地に入ってしまって、道路ぎりぎりにまで建造物が建てられてしまうのです。これは外国ではいろいろな規制がございまして、特にイギリスあたりでは、道路からある一定の幅は家が建てられないということになっておるのですね。日本の場合も、高速道路のみ若干そういう規制がついておるようでございますが、新しくできる道路というものは、ほんとうはそのときから十分にその規制の効果があがるような方向で立法化をしていく必要があるのではなかろうか。そうすることによって、自動車から住民が受ける公害というものは緩和されていくのではないだろうか。えてして公害等の問題になりますと、その発生源の自動車をやめてしまえばいいじゃないか、こういう極論が出てまいるわけですが、少なくとも日本の経済を維持していく上において、いまの物量から考えて、輸送体制全体から考えて必要だとされておるならば、それはいろいろな交通環境で相対的に見ていく必要があるのではないだろうか。そういうふうにしていけば、当然道路のすぐサイドに何ら間隔を置かずに建築物が建てられるといういまの方向というのは、これはたいへん矛盾をしているのではないだろうか、こういうふうに思うわけです。そこには何らかの規制措置が必要ではないであろうか、こう考えておりますので、その点についてもし御見解があれば承っておきたいと思います。
  190. 大塩洋一郎

    ○大塩政府委員 特に都市の中の道路、すなわち通称街路と呼ぶそういうものは、二点間を結ぶ交通手段としての道路と違いまして、その側方に当然家が建つことを予定しているわけでございます。それにつきまして、現在、都市計画法の手法でもって、民地に後退壁面線という制度がございますが、地価の非常に高いようなところで、実情といたしましては、なかなか後退壁面線を思い切って、再開発するとき等以外は、引くことはむずかしい。そこで、新しく団地等をつくります場合に、後退壁面線を指定いたすことは可能でございます。今度都市計画法の一部改正の場合におきましても、緑地帯というような、あるいは緩衝的な植樹帯の規定等が置けるように改正をすることを提案しておるのも、そういうあらわれでございます。環境を維持するということのために、団地の性格によって違いますけれども、工場あるいは住宅、団地等によっては、形状は違いますけれども、いま言いましたような緑地帯的な思想をもちまして改正することはできないか。さらに、現在建築協定というのがございますけれども、これは基準法の中で、これに似た制度といたしまして、緑地協定、緑化協定というようなものが民間の同音心により行なえるようにいたしたい。さらには、公的金融機関が融資したりあるいは公共団体がみずからつくります団地におきましては、この緑化協定が一方的にできるというような制度を含めまして、都市計画法の一部改正を提案しております。  さらに高速道路におきましては、これを緩衝帯と呼んでおりますけれども、予算上これを一定の幅、十メートル十メートルぐらいを今度大阪の阪神高速道路につきましては制度上予算化いたしました。この十メートルの緩衝帯は道路の構造の中に入れまして、道路の費用でもって買収するというような手を打ったのでございますけれども、これはあとから打ちましたために、それを一斉に収用するということではございませんが、これを道路の費用の中において確保するというような手段を講じたような次第でございます。
  191. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 最後に片岡局長さんにお尋ねをいたしますが、これは総理府でもよろしゅうございますけれども、アメリカではスピード基準法というのがございますね。御存じですか。これは何かというと、いま日本でもありますようにある特定の地域スピード制限がされております。その制限以外にスピード基準法というものがあって、たとえば五十キロ制限がされておるところでも車が五十キロの波で走らずに四十キロの波で走っておったとする。ところが実際の規制は五十キロであった。だからあとから来たドライバーが五十キロまでは違反ではないということで、実際に流れておるにかかわらずじぐざぐで走っていく、こういう場合にはそれがスピード違反とされるという法律が実はアメリカにあるわけでございます。日本の場合でも間々そういう事例が見受けられるわけです。私自身もドライバーですから道路を走っております。そうしますと、・実際の規制値は四十であっても、四十で走れないようなところが出ております。にもかかわらず、うしろから来てどえらい勢いで走っていく。あわててこちらがよけなければいけない。ところが実際はその車は規制値ぎりぎりで走っておったとしますと、これはいま日本の法律では警察は取り締まることができない。あるいはもっとほかの問題ならばひっかけて注意をすることができるかもしれませんが、二列縦隊で走っておって片方の車線がこの制限以下で走っておった。こちらはびゅっと走っていったとしても、実は取り締まりができないと思うわけですけれども、実際は非常に危険度が増しておると思うのです。そういうことが実際の、現実の交通の中では起こり得ておると思うわけですが、わが国でも、必要に応じてはアメリカのようなそういったスピード基準法のようなものが制定をされてもいいのではないかというふうに考えるわけですが、その辺の研究をされたことがあるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  192. 片岡誠

    片岡政府委員 スピード基準法というのは、私はまだ存じておりません。しかし、交通規制のしかたとして、最高速度の規制をするやり方と、それから指示速度と申しますか、一定の速度で走る、あるいはそのときの道路交通の条件に応じてその前後の許容度を認めるという規制のしかたは、アメリカでもやっておるという話は聞いております。  ただ、日本の場合にそういう制度を取り入れるのがいいのかどうか、一度検討したこともございますけれども、まだ検討のままになっております。確かに仰せのように、流れを乱す車というのは一番危険だと思います。そういう意味で、今後とも最高速度あるいは最低速度との関係も含めて検討させていただきたいと思います。
  193. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 申し上げたいこと、まだたくさんあるわけですが、時間が参りましたので質問を終わりたいと思いますが、最後に総理府に要望いたしておきます。  確かに、この審議を通じても、私は、おわかりいただけたと思いますが、各省庁それぞれが進めておる交通安全施策そのものの中でも、相互に調整をしていかなければならない問題が実は非常に多いわけなんです そういう意味で、途中でも申し上げましたように、やはり総理府がもっともっと力を持っていただきたい。そのためにはあらゆる努力をされるべきだ、こういうふうに考えておりますので、どうか今後そういう方向で一生懸命がんばっていただきたいことを要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  194. 太田一夫

    ○太田委員長代理 野坂浩賢君。
  195. 野坂浩賢

    ○野坂委員 先日、各大臣から、それぞれ交通安全対策についての所信の表明がございました。特に運輸大臣におかれましては、交通安全の確保は最も重要な課題一つであると考えておる、運輸大臣に就任をしてから輸送についての交通安全確保こそ運輸行政の最大眼目である、と言っていらっしゃいます。そして最後に、人命尊重の基本理念に立脚をした具体的な諸施策機を失せず強力に実施をして、事故の絶滅を期する、こういう所信の表明が述べられております。  そこで、この方針に基づいて今後具体的な施策を実施をされるわけでありますが、人命が何よりも大切である、こういう意味で、すべてに優先をして安全第一方式を策としてとっていかれる、こういうふうに私は理解をしてよろしいか、お願いいたします。
  196. 佐藤文生

    佐藤(文)政府委員 いま先生が言われましたとおりに、新谷運輸大臣が就任と同時に、安全というものを第一に掲げて、そうして、いわゆる交通スピード性というものを常に追求しておった時代から、スピード性ということも一応はやはり考えねばなるまい、そこで第三番目としては、公害といったような問題についても当然考えていくべきであろう、それと同時に、交通地域住民に与えるいろんな影響、それが非常に大きくなったので、こういったように面について十分配慮する必要があるというお話を、運輸省で方針として大臣が述べられました。  その中で、安全面について、いま先生が言われたとおり、陸海空にわたってひとつ総点検をやれ、こういうようなことで、新谷運輸大臣のもとで、陸上交通、それから海上交通、それから運輸行政全般にわたって、具体的に諸施策を従来からやってきたことをさらに進めて、またさらに検討を加えてやっていくべきことである、こういうことで現在行政を進めておるわけでございます。
  197. 野坂浩賢

    ○野坂委員 わかりましたが、これからの運輸行政の骨幹は、第一が安全、第二がスピード、第三が公害の排除、こういう順序でこれからの運輸行政に取り組む、こういうお話がございました。  そこで、この所信表明にいろいろと書いてありますが、陸海空ありますが、これだけではなかなか絶滅を期することは不可能であろうと私は思います。したがって、時間がありませんから質問を先に進めますが、今日までの交通事故というのは、私どもいただいておりますし、資料の中にもございますが、交通活動の活発化に伴って依然として激化しており、市民意識の高まりと相まって大きな社会問題となっておる、こういうのが実相ですね。いたお話しになったとおりに、四十五年ごろで国民的な損失を統計をすると、約八千億円、道路の総投資額の約五〇%にも当たっておる、こういうのが現状であります。  そこで、政務次官がお話しになりましたように、安全というのは非常に重要になってくるということになろうかと思いますが、これからは、日本列島改造論の中にも示されておりますが、すでに自動車等は二千万台、その当時になれば四千万台をはるかに凌駕する、こういうような将来の展望にあるわけでありますが、さらに交通安全の重要性というものは強調されなければならないかと思います。  いま前者の皆さんが航空機なり列車について重点的にお話しになりましたので、私は、私鉄の問題なりバスの問題なりハイヤーの問題なり貨物の問題等に入りたいと思いますが、最近の私鉄の資本の皆さんは、今日の社会情勢を反映して、民間デベロッパーといいますか、そういう方向に向いておる、そう私は感じております。したがって特に、鉄道ということよりも、レジャーなりあるいはスーパーなりあるいはデパートなり、そういう資本を総合してみますと、その方向により力を入れられておる、こういうふうに思うわけですが、政務次官はどのようにお考えになっておりますか。
  198. 佐藤文生

    佐藤(文)政府委員 先生が言われましたとおりに、私鉄の企業全般の経営形態を合理化するために、先生が言われたようなあらゆる部門について、手を伸ばして経営をやっているということは実態でございます。
  199. 野坂浩賢

    ○野坂委員 重ねてですが、そういう方向で、私は輸送の面についての抜かりがあるような気がいたします。国鉄の方もおいでだと思いますが、たとえば列車の事故あるいは自動車事故、そういうものの事故だけではなしに、今日、交通ラッシュ等の写真はどこでも見られますし、あなた方も列車その他にラッシュ時にお乗りになると超満員、こういうことになっております。皆さん方が記憶を新たにし、体験をしていらっしゃるたとえば省線ですね、大都会における国鉄の環状線、そういうのはすし詰めになっておるところが非常に多い。安全第一ということでありますが、これは指数にしてどの程度まで下げていくのか。たとえば、不自由であるけれども週刊紙を読める程度だとか、そういう目標があろうかと思います。それはどれくらいが目標であって、いつごろ具体化するものであるのか、お尋ねをいたしたい。
  200. 佐藤文生

    佐藤(文)政府委員 お答えします。  国鉄の大都市圏内における通勤通学、こういった方々を中心にした混雑度をなるべく低下させて、そうして通勤通学の方々が安心して乗れるためにはどういうことをすればいいかということを、運輸省としては国鉄に一つの方針を示しております。  大体を申し上げますと、五年先と十年先ぐらいに一つの例をとりますと、四十八年度から着実に実行していきまして、五年後の五十二年前後には東京の中心あるいは近郊、こういったところの混雑度を、現在は二五〇で、大体人間が斜めになって押し込まれるという状況がラッシュアワーには続いておりますが、これを五十二年前後には大体二一〇ぐらいにもっていきたい。そして五十七年ぐらいまでには大体百九〇ぐらいの混雑度にもっていきたい。一九〇%ぐらいになりますと立って新聞が読める、二〇〇%ぐらいというのは大体週刊紙が読める程度でございます。したがって、そういうことを目標に四十八年、四十九年、五十年と逐次年次計画を立てまして、車両十二両編成のところを十五両で運行するとか、プラットホームを手直しするとかあるいは線増をやるとか、こういったようなことを計画的に実行して、先ほど言った目標に達する、こういう方針であります。
  201. 野坂浩賢

    ○野坂委員 まあ普通でいうと五十七年、十年先にようやく新聞が読める程度になるということであります。先ほど確認をされましたように、機を失せずにやるという方向ですが、そういうことから、混雑度の緩和というのは国民の声ですね。またあなた方の声でもあろうと思うのです。それをスピートアップだけに力を入れて——新幹線方式も重要でありましょうけれども、今日在来線で非常に困っておるというこの現状を一日も早く打破していく、このことは政治的に、また安全性から考えて、必要だろうと思うのです。それを一八六が普通——普通といいますか、ややというところでありますが、それを五十七年度というのは、運輸大臣も政務次官もおらぬころだろうと思うのです。そういうことではなしに、運輸行政が国民に信頼をされる、そういう体制を確立するためにも、もっと短期間に縮めて実施すべきではなかろうか、こう思うのですが、それに対しての御見解を承りたいと思います。
  202. 佐藤文生

    佐藤(文)政府委員 私、政務次官になりましてから、先生と同じような意見で、大臣も同様に考えまして、予算を編成するにあたって、そういうことで事務と詰めてみました。一挙に一九〇なり二〇〇に持ってくるということがいかにむずかしいことであるか。たとえば線増一つとりましても、都市中心土地の買収からかからねばならないといったようなことも起こりまして、なるべく早い時期にやろうということで、ようやく先ほど言ったような目標をつくりあげていまの方針としてやっておるわけです。ただ、先生の御意見もありますので、都市交通緩和、通勤通学者に対するサービスの面ということは思い切った措置をやっていくということで、御期待に沿うように努力していきたい、こう考えております。
  203. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは次に進みます。  いまも順番をつけてお話しをいただいたのですが、今日、私鉄その他は、安全性ということも社会問題でありますから当然口にされておりますし、また、われわれも否定するものではありませんが、先ほどの質問者にもありましたように、民間デベロッパーといいますか、その営利第一というのがそういう方向に走らしておる一つの要素だと思うのです。  それで、運輸省あるいは自動車局が指導しております中で、バスその他にワンマンカーというのがありますね。この間も新聞で、小学校の二年生が後車輪のほうでひかれてなくなった。運転手は見えないと言い、乗客は見えたと言う。そういう問題点がたくさんありますね。ワンマンカーというものは、いろいろとテレビをつけたりあるいはミラーをつけたり、そういうかっこうで一応の基準で許可をしていらっしゃいますけれども、やはり安全第一ということになると、二人よりも一人のほうが危険度が高いということが常識的に言えます。そうすると、これが多発をしていないから、わずかだから、例外だからということだけでは済まされないと思うのですね。それについていろいろ基準がありますけれども、根本的に、ワンマンカーについてはそういう問題が伏在しておる、こういうふうに思います。さらに交通事情がふくそうしてまいりますから、その点についてさらに運転手も過労になってまいりますね。それらから考えてワンマンカーというものは危険度が高いと思うのですが、これに対しての基準をもっと高く上げる、もっときびしくする、できるだけ少なめでいく、こういう方向が今日、合理化よりも人命尊重という意味で必要であろうかと思いますが、どのようにお考えになっておりますか。また、どのようにして今後の行政指導をなされるおつもりか。
  204. 景山久

    景山説明員 いま先生お話しのように、ワンマンカーの構造につきましては、基準を設けまして、それに合うものということでやってきておりますけれども、やはり世の中の交通事情、それから技術の開発、こういったものを踏んまえまして、逐次この基準をレベルアップしていきたい、こういうふうに思っております。     〔太田委員長代理退席、井上(泉)委員長代理着席〕  それで、ことしになりましてからも、実は少し基準を改正いたしまして、もう少し見やすいもの、運転のしやすいものあるいはお客さんが利用しやすいもの、こういうふうに直してきているところでございます。
  205. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いま私が営利第一主義ということばを使いましたが、いまのタクシー業界、ハイヤー業界、そういうものの中で、最近リース制というものが徐々に広がりつつあります。いわゆる名義貸しといいますか、そういうリース制によりますと、いわゆる本人の自動車ということに内容的にはなりますから、労働基準局長の出しております二・九通達というようなものも無視されて、非常に疲れ果てるまで走っておる、こういうことだと思うのです。これに対しては、運輸省自動車局のほうでもよく承知をしていらっしゃると思うのですが、それらの点についての指導はどのようにされておるか、お尋ねします。
  206. 高橋寿夫

    高橋説明員 お答え申し上げます。  いま一般にリース制といわれておりますものの中身、実はいろいろなものがございます。最近言われておりますのは、名前はリース制といっておりますけれども、実際内容的には、雇われている運転者と雇い主との間の収入の配分の一形式としてリース制と称するものを適用している場合もございます。この場合につきましては、その収入の配分方式、つまり働いている人が経営者からもらう給与でございますが、その配分方式が労働基準法等に照らして合法的なものであるという限りにおきましては、私どもはそれで何らの措置もしておりません。ただ、内容にいろいろ立ち入って調べてまいりますと、時に、先生指摘のような名義貸し類似のもの等もございます。そういうものが明らかになりました場合には、直ちに指導いたしまして、適切な処分をいたしております。現在のところ、そのような体制で監督しております。
  207. 野坂浩賢

    ○野坂委員 よく理解ができませんが、とにかく交通安全といいますか、事故が起きる原因ですね、たとえば自動車あるいはトラック、これは陸上交通の場合ですが、そういう事故の最大の原因は一体何かということをまずお尋ねしたい。
  208. 高橋寿夫

    高橋説明員 お答えいたします。  いろいろ事故原因につきましては、たくさんのものがあると思いますけれども、いま先生の御質問の問題に関連して申し上げますならば、やはり適正な労務管理のもとに働く、そういったことが確保されているということが大事だと思います。したがいまして、これに関連いたしましては、たとえば一日の走行キロの限度でありますとか、あるいはお示しのような二・九通達、そういうようなものが出ておりまして、これに従いまして私どもは事業者を監督いたしております。
  209. 野坂浩賢

    ○野坂委員 運行管理が、名義貸し、リースというのは、やはりそのほうが営業利益を守るという立場で非常にやりやすいのですね。労務管理もそう十分やらなくてもいい、こういうことから蔓延をする傾向を最近示しておるのじゃないかと思うのです。だから、その運行キロ数というのは、三百六十キロですか、今日調査されたことがありますか。たとえばよく業者を調べて、リースその他、あるいはいろいろな会社も調べられて、一〇〇%三百六十キロを守っておるとお考えになっておりますか。私どもが調べたのでは、それとは非常に違ったものが出ておるのです。
  210. 高橋寿夫

    高橋説明員 私どもの手元にあがってきております情報では、おおむね三百六十キロを守っている。特に都市部等におきましては、交通混雑等の原因によりまして、三百六十キロ以下になっているということも聞いております。ただ、これは事実の問題でございますから、先生お示しのようなそういう事実があることは、私は否定はいたしません。あるかもしれません。ただ、私どもが知っている情報では、そういうものはないと承知いたしております。
  211. 野坂浩賢

    ○野坂委員 たとえばタクシーのリースの場合に、その会社に連帯保証に三万円を添えて入社をする。そして一日に五千円を出す、これがリース上の払いですね、十五万円。あとは自分で燃料を買って、事故で故障した場合等は自分で直す、そういうかっこうなんです。だから、十五万円以上かせがなければ、油代も部品代も払えない。そのためには、死にもの狂いでやらなければならぬ。その運転者の皆さんに聞いてみますと、もしあなたが自動車が故障してその自動車が使えないというような場合にはどのようになるのですかと言うと、もうおれたちは死んでしまうんだ、こういう言なんですね。だから、平均をして四百二十から四百五十は走ると言っています、事実。そうすると、勢い過労になるし、その基準以上のものが出る、こういう結果になりますね。  そこで、それらの点について、あなたのほうには三百六十キロ以下、そういうところだけしか調べていないということですが、現実にあるわけですから、そういう点をもっと詳細にやると同時に、一ぺんそういう交通安全という立場で全部を点検する必要があるではなかろうか、こう思うのです。  それと、労働省からおいでだと思うのですが、二・九通達等も守られておるかどうか非常に疑問の点が多いと思うのです。それらの点についてお答えをいただきたいと思います。
  212. 高橋寿夫

    高橋説明員 初めに申し上げましたように、名前はリースといいましても、実際問題として経営者に雇われている運転者の場合には、当然のことながら、二・九通達その他の規制がかかることはそのとおりでございますので、その励行につきましては、今後なおきびしく監督したいと思っております。そして先生いまお示しのような総点検というようなことにつきましても、やりたいと思っております。そうして違法なことが行なわれないように監督をいたしたいと思っております。
  213. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 昭和四十二年の自動車運転者等の労働時間等の改善基準、いわゆる二・九通達に関しましては、それを出しまして以来、それを徹底させ、励行させることに極力つとめておるわけでございまして、その結果につきましても、毎年の監督等によりましてこれの把握につとめておるわけでございます。だんだんとこの趣旨も浸透しつつあると私どもは考えておりますけれども、監督結果によりますと、まだまだ違反がかなりあるということは、まことに遺憾なことだと存じておるわけでございますが、運輸省と相互通報制度をとる等によりまして、違反の発見及びその是正につとめさせ、今後ともぜひこれを守らせるように一そう努力をいたしたい、かように思っておるわけでございます。  なお、先ほどからお尋ねのリース制等につきまして、これは雇用関係がある場合ない場合いろいろあると思いますが、私ども、雇用関係があるものにつきましては、やはり二・九通達を守らせる、こういうことで監督をいたしておるわけでございまして、今後ともそういうことでまいりたいと思っております。
  214. 野坂浩賢

    ○野坂委員 車は車検があるわけですが、先ほどもいろいろお話があったのですが、この車検のときにはうまくいくのですか。極端なのはこういうのがあります。自分でかせがなければなかなかやっていけませんから、タイヤの山がないタイヤのほうがいい。それは、たとえばとまるにしても、まる坊主になれば車の回転は早い。それだけキロ数が上がっていく。そういう意味で、山がないほうがいいというような話までときどき私どもは聞くわけです。そうすると、勢い労働者は、生きていくためにより以上無理をする。無理をすれば過労になる。過労になれば、居眠りなりその他の事故というものにつながっていく。私は、これは陸上交通における一つの問題点であろうと思います。だから、今後雇用関係があろうとなかろうと、名義貸しあるいはリース制、そういうものがなくなるような行政指導が私は必要ではなかろうか、こう思うのです。明確に企業は企業というかっこうでしなければ、運輸大臣が言われる安全第一、そういう事故の絶滅、そういったことにつながらないのではなかろうか、こう思うのですが、そのような指導体制を強化する、こういうふうに考えていいのかどうか、野放しでいくのか、お尋ねしたい。
  215. 高橋寿夫

    高橋説明員 タクシーの事業の遂行、特に労務管理にあたりまして、走行キロの制限、あるいは二・九通達等を守りまして厳正にやることはそのとおりでございますけれども、リース制といわれるものの扱いにつきましては、これが経営者と労働者の間の自由な契約ででき上がった一つの収入の配分方式という限りにおきましては、その運行の形態が、ちゃんと走行キロ制限を守り、二・九通達を守っているという形で経営されている場合には、それもまあ一つのやり方というふうに考えざるを得ないと思います。それまでも全部否定をしてしまえという御意見につきましては、いま直ちに全部否定することができますというお答えをすることは、ちょっといたしかねます。  ただ、先ほど申し上げましたように、問題は、やはりそれによるリース制というふうなことが契機となりましたところの労働強化、あるいは走行キロオーバーということは絶対に許せぬことでありますので、これにつきましては、労働基準監督署とも連絡をとりまして、監督を強化したい、そういうふうに考えております。
  216. 野坂浩賢

    ○野坂委員 どうも私はぴんとまいりません。  政務次官にお尋ねをしますが、先ほど私が言ったことについては理解ができるだろうと思います。雇用契約、会社の内部のことであるからやむを得ない、一ぺんに否定はできない、こういうことですけれども、企業の中では、やはり八時間労働、睡眠は睡眠としてとる、休養は休養としてとる。ところが、たとえばリースということになれば、言うならば請け負い主義でありますから、自分がかせいだだけはかせげる、そうなれば、どうしても千円より二千円のほうがいいのはわかっているわけですから、勢いそういう方向に走るのが人情の常だと思います。  それと、三百六十キロで集約できるという話ですけれども、そうじゃないのですから、現実の問題としては。それら、あるいは二・九通達も浸透しつつあるけれどもというのは、一つの明確な会社の中ではそういうことは言えると思いますが、それをやっておるからなかなか利益があがってこない。だから経営者は利益第一主義で、交通安全というのは第二義的に考えてリース制をやる。すべて君の責任であるという責任回避もここに出てくる。こういう結果になるわけです。  そういうことからして、運輸行政の所信表明とうらはらのものを私は感ずるわけです。今後やはりそのような方向を強めていく、すべて取り締まり等はきびしく、総点検等もやって、問題点を提起していくということが必要であろうと思いますが、政務次官、どうです。
  217. 佐藤文生

    佐藤(文)政府委員 先生お話を聞きまして、実はタクシー業界に起こった新しい大きな問題だと私は思うのです。そこで新谷運輸大臣が、一ぺんにタクシー業界を洗ってみろ、大切なことだ、人命に関するいろいろな問題が内在しているのだから当たってみろということで、一昨日運輸省で新聞社にも発表しましたのですが、東京都内に法人が三百六社ございます。昨年の十月から十二月に至った間にいろいろなトラブルを起こして、一番悪いワースト三十社、これが、タクシー近代化センターからの報告が出ましたので、それを都民に発表しました。そしてその三百六社の中で、ベスト三十社、これも序列的に出ましたので、あわせて発表いたしました。ところが、内容を見ますと、会社の大きい、小さいによってこういう事故が起こったり起こらなかったりしているのじゃないということが、このデータからわかってまいりました。  そこで私いろいろ調べてみますと、この数年間に非常に個人タクシーもふえまして、現在、法人が大体二万両くらいに東京都内はなっておる。そして個人タクシーが一万五千両くらい。ほぼ同等くらいになっておる。そして法人のほうから優秀なタクシーの運転手さんがだんだんと流れていくという現況になっておるのが、現在の東京を中心にしたタクシー業界の姿だと思うのです。そこで残っているのが悪いかという、そういう意味で私は言っているのじゃないのですけれども、そこで法人の会社の中で、こういうリース制とか、あるいは自分の企業を守るために企業内における個人、いわゆる雇用契約のないリース制、そういうようないろいろなことが考えられているようでありました。  私も数日前タクシーに乗りまして、運転手さんにいろいろ話を聞いたら、近いうちに雇用関係のない個人タクシーを会社の中でやるような話が進んでいるのだからというような話がありましたので、私はそうかなというような話を、新しく聞きました。  そうして、雇用であろうが、雇用契約を持っておるリース制であろうが、雇用契約のないリース制であろうが、私は安全面とサービスの面から考えて、適時な休養とか、あるいは労働時間とか、あるいは休養施設をつくるとか、あるいは運行管理者の再教育とか、たとえば今度自動車事故対策センターをつくりたいと考えているのも、ここを中心にそういったような運行管理者の再教育をしていく、こういったような面を大臣の方針として逐次いま検討を始めて、突っ込んでいく最中でございます。幸い先生から貴重な意見が出ましたので、私は前向きにこれと取り組んでいきたい、こういうぐあいに考えております。それが大臣の方針だったと思いますので、お答えをいたしたいと思います。
  218. 野坂浩賢

    ○野坂委員 おもにタクシーの話をしましたが、次に、トラックがだんだん大型化していきます。ここ十年から七、八年前は、四トン車というのが普通でしたが、五トン車になり、八トン、十トン、十一トンというのが今日通例です。しかもスピードが非常にきびしくなってきている。その事故の起こる原因は、いまお話をしましたように、自動車の場合は運転者の過労、もう一つは、トラックの場合は過積みということが大きな問題になりますね。この過積みは、ここにも写真がありますが、四トン車で十一トンのものを平気で積んでいる。スプリングはもうこんなのがこんなになっている。こういうのが実態です。過積みをなくする方法というのは具体的にどのような措置をされておるのか、ちょっとお尋ねをしたいと思います。
  219. 景山久

    景山説明員 私からお答えできます範囲は、車の構造の面でございますが、これにつきまして、例のダンプ等の車につきましては、自重計というものの備えつけを義務づけているわけでございます。しかし、これでは不十分であるということで、かねてから何かよい方法はないかというお話もございましたし、私どももその方向でいろいろ検討をさせております。自重計を、ダンプのような荷台をあげないような車にも何とかならないかという見方もございますし、あるいは箱そのものを有蓋車のようにしてしまって積めないような方法、あるいは、たくさん積みましたら車が動かなくなるというのであれば一つ方法かとも思いますが、いろいろ実は検討させておりますが、現段階ではやはり、そういったものをいたしました場合に、今度は逆の副作用が出まして、途中で急に車がとまってしまう、そういうようなこともやはり危険につながりますので、まだ、これならば強制できるというものが残念ながらでき上がっておりませんが、何かいい方法はないかというのを鋭意、車の構造としては現在検討中でございます。またそのほかに、いろいろな施策が総理府中心として現在考えられているような段階でございます。
  220. 野坂浩賢

    ○野坂委員 警察の方いらっしゃいますか——いらっしゃいませんね。  いま過積みのことは肯定をしたような話だったのですが、大体トラックが過積みをしておるというのは何%くらいあるというふうに把握をしておられますか。
  221. 高橋寿夫

    高橋説明員 たいへん申しわけないのでありますけれども、過積み自体は道交法違反の問題でありますので、私どもでは数字をつかんでおりません。
  222. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これはあとにしまして、あとで警察庁のほうからもお答えをいただきたいと思います。  先ほど私が過積みと言ったのは、運転者は積みたくないのですね。積みたくないのですけれども、積ませられるほうなんです、これは。たとえば荷主がどうしても積んでくれ、いやそれは道交法違反だからいかぬ、こう言えない弱さをそれぞれの運転者は持っておるわけなんです。頼まれてやむを得ず、大事な荷主だから、あるいはもうここの荷主に使ってもらうことができない、泣く泣くでも積まなければならぬ。事故を起こせば両罰規定によって処分をされる、こういうことなんです。したがって、警察庁が来てから言いますが、検量計というのがありますね、各道路に。ああいうものの予算を見ますと、ほとんどない。こういうものを各地域につくってそういうことを実施をすると  いうことがいま必要ではなかろうかと思うのです。それについては、もし担当の方がおれば、どのような検量計といいますか、自重計といいますか、そういうものがつくられており、今後の計画があれば、教えていただきたいと思います。
  223. 須藤博忠

    ○須藤政府委員 過積みのことを御質問ございましたが、実は私どものほうは昨年の夏から、この大型貨物自動車にかかる交通事故防止ということで、この問題をとり上げまして、関係省庁といろいろ御相談いたしまして、昨年の十一月の十二日に、私のほうとそれから運輸省建設省警察庁、通産省、さらには労働省、こういったところに入っていただきまして、いろいろ検討いたしまして、事故防止について申し合わせをしたわけでございます。  その内容をちょっと申し上げたいと思いますが、御承知のように、相当過積みというようなことも行なわれておるということも事実だろうと思います。先ほど運輸省整備部長もお答えになりましたが、それ以外の問題でも、たとえば過積みの原因となる差しワクといったようなものにつきましては、つけないように業界を指導しようということ。さらに、これは道路運送車両法の違反になるということで、そういった面の取り締まりも強化しよう。それから、自重計の問題も先ほど出ましたが、この点についてもこれを検討しよう。それから土砂等を運ぶダンプカーの問題につきましては、現行の車扱い運賃制というものを励行させるように、関係者を指導するというようなことを申し合わせております。それからさらに、これは警察道路管理者所管になりますが、固定式なはかり、重量計を全国の主要な地点に整備する。それによって違反車両というものを摘発しよう。さらには、運搬できるような重量計をもっとふやして、そうして重量違反というものの取り締まりを強化しようということを申し合わせております。それから、労働条件の改善も行なうように事業者の管理指導をやるというようなこと。それからまた、大規模な土砂などを運ぶ工事というようなことにつきましては、たとえばそこの地方公共団体、工事関係者といったような、そういった地域地域ごとに輸送計画というものを作成するとか、輸送経路の選定をやるとかいうようなことを、十分地元と協議していくというような方針も申し合わせたわけでございます。  さらに、今後とも大型自動車特に貨物自動車事故発生可能性が非常に高いわけでございますので、いろいろ今後、引き続いて関係省庁が検討していこうということになっておりまして、御指摘の点についても、私どもでできるだけ安全対策を進めてまいりたいと考えているところでございます。
  224. 野坂浩賢

    ○野坂委員 警察庁がおいでになってから、それらの点についてはさらに詳しくお尋ねをします。  いま、お話の中で、労働条件の改善問題が話し合いに出たということです。今日トラックなりタクシーというものの賃金形態というのは、たとえば南総通運というようなのは、大体十万円ですね。十万三千四百五十円の給料のうちに、基本給というのは三万二千五百円です。石岡通運というのがありますが、これは八万九千円で、基本給というのは三万九千三百四十三円ですね。また関東通運というのがありますが、十万一千円に二万三千五百カ十三円。その他手当もありますが、いわゆる歩合給という姿が漸次そういう企業の中に出てきた。固定給というものから半固定になり半歩合になってきた。こういう姿が今日のいわゆる組織のない企業には非常に多くなってきたような傾向を示しております。したがって、歩合給ということになりますと、先ほどもお話ししたようなリースと同じような方向をたどっていきます。  この間私どもが調査したところによりますと、自分のうちへ帰って寝るというのが五日以内が一一・五%、十日以内というのが二〇・六%、十五日以内というのが二二・七%。大体半分は、月半分は家では寝ない、長距離輸送に出ていく。こういうのが今日の現状でありますし、さらに時間等にしても、普通、労働基準法で定められております四十二時間ですね、これまでの人が八・三%ですね。五十時間までというのが一三・七。七十時間までやるというのが、時間外をやるというのが三二・二、四四・二という資料ももらっておるのです。こういうことになりますと、家にも帰れないわ、超過労働はあるわということになると、勢い先ほど言ったように、非常に疲れてくる。したがって労働省としても、これらの指導体制と賃金の形態を、でき得るなれば、でき得る限り固定化をして、安全輸送第一という姿をとってもらわなければ、世の中が近代化をし、営利を追求するという業者と荷主とのはさみ打ちにあって、むしろ労働省は過積みと超過労働という姿になれば、おもむくところ交通事故の頻発ということにつながると私は思うのです。そういう面での労働省の姿勢といいますか、指導としては、できるならば固定制、固定給の方向で、しかも憲法で保障されておるように、健康で文化的な生活を営む賃金というものを与えていくという姿勢が必要であろうと思いますが、これらについての把握と、どのような指導をしておられるのか、お伺いをしたい。
  225. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 労働者の生活安定のためには、一定の賃金が確保されているということが重要であることは申すまでもないところでございます。したがいまして、基準法におきましても、歩合制をとる場合においても、一定の保障給を設けることが基準法で定められておるところでございますが、この保障給ができるだけ高ければ高いだけ、それだけ安定性があるわけでございますので、私ども、この問題のタクシー、トラック自動車の運転手につきましては、先ほど申し上げました二・九通達におきましても、通常の賃金の六割以上の賃金が保障されるよう保障給を定めろ、こういうことで指導をいたしておるところでございます。  なお、昨年の四十七年十月に労働省が調査したところによりますと、トラック運送業だけでございますけれども、その例で申しますと、オール固定給の事業所が全体の六割、歩合給のある事業所は約四割、かような数字が出ておりまして、賃金総額の中で、歩合給の推移につきましても逐年その割合は低くなっておりまして、四十六年におきましては、歩合給をもあわせとっておる事業所におきまして、その歩合給の割合は一八%という数字が全国平均では出ておるところでございますが、なお同じ歩合給と申しましても、非常に刺激性が強い、たとえば一定額以上の水揚げがあると歩合率が一そう高くなるというような累進歩合給というようなことになりますと、その線を越えれば歩合率がよくなるというようなことで、無理をすることがございます。したがいまして、歩合給をとる場合におきましても、そういう刺激性の強い歩合給はやめるようにということでこの二・九通達でも指導をいたしておりまして、一番刺激性が強い累進歩合給につきましては、四十二年の通達以来極力業界にその是正を指導いたしました結果、ほとんど累進歩合給はなくなって、単純な歩合給ないしは積算的な歩合給ということに徐々になってきておるというふうに考えるわけでございます。  なお労働時間につきましては、これは、長時間労働が労働者の健康にとって有害であるばかりでなく、いろいろ交通事故原因になりますことは御指摘のとおりでございます。そこで、この点も二・九通達については一定の基準を明確にいたしまして、それを守らせるようにつとめておるところでございまして、基準法上の労働時間は、先ほど四十二時間というお話がございましたが、一週四十八時間というのが基準法の定めるところでございます。これは変形性と申しまして、今週は長く働く、来週は短く働くというようないわゆる交代勤務のような場合もございますので、二・九通達では、二週間を平均いたしまして一週間四十八時間ということにいたしております。その中におきまして、たとえばそういうところでございますと、初めの週は長い路線を走らす、翌週は短い路線を走らすというような、路線の交代などをやる場合もございますが、二週間平均いたしまして一週間四十八時間、それから長い路線を走らせるような場合におきましても、一日には実作業十一時間、それから二人乗務のような場合はこれは十二時間までよろしい、それから隔日勤務のようなときにはタクシーなどは十六時間、そのかわり翌日はすっかり休ませるというような明確な基準を設け、どうしても忙しいということで時間外労働をさせる場合においても、それにプラス二時間の限度内ということでこれをやらせるよう、極力監督指導につとめておるところでございます。
  226. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いろいろお話しをいただきました。しかし、そういう組織的な企業の場合にはそういう点が明確ですが、トラック業者あるいはハイヤー会社というのは非常に中小、零細企業の多い現状であります。トラック一台持っておっても、あるいは三台持っておっても十分できる。それらのところに一番問題があります。勢いそれが過積みという方向になってまいりますし、運賃のダンピングで十分競争させるというようなことであれば別ですけれども、法律に違反をしてまでそういう姿は好ましくないと思います。特にそれを助長するのは、白ナンバーのトラックの最近の現出です。それらについての取り締まりは、具体的にどのような指導体制がなされ、進められておるか、伺いたいと思うのです。これもだめですか。
  227. 高橋寿夫

    高橋説明員 自家用自動車が純粋な意味で自家用貨物を運ぶ場合には、これは現在の道路運送法では取り締まりはできないわけでございますけれども、自家用自動車が営業行為をするという、いわゆる白トラでございます。これがお話のように値くずしとかあるいは労働時間のあおり、こういったことに悪い影響を及ぼしていることは事実でございまして、これは従来からも各陸運局、陸運事務所等を督励いたしまして、いわゆる白トラというものの取り締まりをやっております。ただ、何ぶんにも街頭で取り締まりをいたしませんとなりませんものですから、手が足らない点もありまして、第一線の警察官等の協力も得ましてやっております。ただ、手が足らないために、私どもが理想とするだけの回数できないことはたいへん遺憾でございますけれども警察を頼みまして街頭取り締まりをやりまして、その結果厳正な処分をいたしております。ただ、私どもが期待する十分な線まで行っていないことは事実でございますが、これはさらに高める努力はいたしたいと思います。
  228. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間が参りましたので結論に入りますが、いまお話がありましたように、歩合給というようなものも年次減りつつあるというお話ですけれども、最近リース制といいますか、個人償却制とも呼ばれておるようですけれども、そういう姿が徐々に業界の中に浸透し始めてきた、そういうふうに私は思われてなりません。非常によく聞くんです。過密の都市にあっても過疎の地域にあってもそういう姿が出てくる。これについては、そのために交通事故が起きてくる要因になっておるということはいなめない事実だと思うのです。また、警察庁おいでになっておりませんが、過積みの問題等も、それにつながる大きな要因を持っています。したがって、いま申し上げましたような点について、運輸省並びに関係官庁においては、十分に配慮をしていただくと同時に、今後、白トラックの営業行為についてはさらに厳重に取り締まって、人命尊重の立場に立って、交通安全が全うできるように強くお願いをして私の質問を終わります。
  229. 井上泉

    ○井上(泉)委員長代理 次回は公報でお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時十分散会